尾形と杉元♀がヒロアカ世界に転生して幼馴染する話 (ゆめ子)
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序章

昔からどこか違和感があった。

どこかと言われてもどうとも言えずにむず痒く感じていた「何か」。

それが氷解するのは一瞬の出来事だった。

 

 

その日は、「ボク」と「さっちゃん」がいつも遊んでいた公園で、いつもと変わらずに「さっちゃん」が「ボク」を引っ張って行って他のみんなと鬼ごっこやかくれんぼやヒーローごっこをして遊んだ。

 

「ボク」はみんなと一緒に遊ぶのが余り好きではなかったけど、「さっちゃん」がニコニコ笑いながら「ボク」の手を引いてみんなの輪の中に入っていくので「ボク」は何も言わずにみんなと遊ぶようになった。

 

「さっちゃん」はとてもかわいい女の子だ。

綺麗な黒髪を肩まで切りそろえている。

いつもニコニコ「ボク」に笑いかけてくれるのがとても嬉しくて好きだった。

お母さん同士が仲が良かったからか、産まれる前からボク達は幼馴染だったらしい。それも嬉しく思う。

 

でも「さっちゃん」の顔を見ていると、何かが足りないと感じてしまう奇妙な感覚に陥ることが多々あった。

「さっちゃん」の綺麗で整った顔にはホクロひとつ、シミひとつ、「傷」ひとつ無い。それが「ボク」には何故か奇妙に思えてしまった。そう感じるのはおかしいと分かっていたので何も「さっちゃん」に言ったことはなかったけれど。

 

「ボク」と「さっちゃん」の共通点は2人ともまだ「個性」が出てないことだった。

もう小学校に入学しそうな年になったのに、未だに「個性」が出てこない。4歳の頃不安になったお母さんに連れられてお医者さんに見てもらったけれど、「無個性」ではないらしい。

「さっちゃん」もそうだって言われたみたいだけど、何故「個性」が発現しないのかは分からないともお医者さんに言われた。

でも「個性」が無くても別に困らないし、「さっちゃん」とお揃いなら別に個性が現れなくても構わないと思った。

「さっちゃん」はオールマイトに憧れてるから早くかっこいい個性が欲しいって言っていたけれど…。

 

周りからは「無個性」って思われてるみたいだけど、「さっちゃん」も居るからいじめられたり仲間はずれにされたりはしなかった。

でもきっと周囲の大人達の間では「ボク」と「さっちゃん」が「無個性」だと噂になってたんだと思う。

 

「さっちゃん」と「ボク」はみんなが帰った後も二人で公園で遅くまで遊んでいた。

「さっちゃん」のお母さんはまだ帰ってこないし、「ボク」のおじいちゃんとおばあちゃんもまだ帰ってこないから、良く二人で遅くまで公園で遊んでるのが日課だった。

だからその日も遅くまで遊んでいた。

 

 

「君たち仲が良いね〜」

 

突然大人から声を掛けられて驚いた。

笑顔で近づいてきたけれど、目が笑ってないように思えて不気味だった。

「さっちゃん」も怪しんだのか訝しげに相手を見ていた。

 

「2人とも何ていう名前なのかな?おじさんに教えて欲しいなあ〜」

 

突然そんなこと聞かれても答えるほど「ボク」と「さっちゃん」は警戒心が無いわけでは無かったため、答えなかった。

 

「あれー警戒してるのかな〜?大丈夫だよ〜怖くないよ〜?」

答えなかった「ボク」達に構わずその不審者は更に近づいてきた。

 

「ところで無個性の子供2人って君たちで合ってるのかなぁ?」

猫なで声で聞いてくる内容に二人で驚いた。何故この男が、正確には違うが自分たちを「無個性」だと知っているのか、嫌な予感がして「ボク」は「さっちゃん」の手を引いて逃げ出そうとした。

 

しかし、時は既に遅く、その不審者以外にも2人も知らない大人にいつの間にか背後を取られていた。

 

「さっちゃん!!」

「ひゃくちゃん!!」

 

二人で何とか逃げ出そうと足掻いたけれど、「個性」も発言していない子供が抵抗しても無駄で、不審者達に捕まりそいつらの個性なのか口に手を当てられ、もがきながらも意識が遠のいっていった。

 

 

 

…何時間経ったのか分からないけれど、気づいたら薄暗い小汚い部屋に閉じ込められていた。

ここはどこなのか分からず不安と恐怖に押しつぶされそうになったが、「さっちゃん」が居ないことに気づき、まず「さっちゃん」がどうなったか気になって仕方なくなった。

 

縛られた手足でモゾモゾと部屋の中を見渡す。何か手足を縛る紐を切るものが無いか探す。奇跡的に棚の上に斧っぽいものが見えた。何とか落とせないかと不自由な身体で渾身の体当たりをする。ぐらりと大きな音を立てて落ちてきた。大きな音であの不審者達が来ないかヒヤヒヤしたけれど来なくてホッとした。

 

手早く手足を縛っている紐を切り、自由になる。大きくて重く持つのがやっとだけれど武器を捨てていくことは出来ない。斧を持ち、ドアノブに手をかける。

 

(ああ、こんな斧じゃなくて銃があれば…)

 

銃など撃ったことも無いのに、何故かこの時は銃があれば良かったと思ってしまう自分を不思議に感じた。こんなこと考えてないで早くあの子を探しに行かなければ…。

手足を縛っていたからかドアに鍵は掛けられていなかった。

 

 

早く「さっちゃん」を探さないと。

知らない建物の中を忍び足で隠れながら探す。

結構広い建物のようだ。何故あの不審者達は自分たちをこんな所に連れてきたのだろうか…答えは出ない。いや、今はそんなことはどうでもいいことだ。今は一刻も早く「さっちゃん」を見つけないと。もしかしたら「さっちゃん」も自分を探して無茶なことしてるかもしれない。急がないと。

 

何部屋か調べたが、「さっちゃん」は見つからなかった。数部屋は「ボク」達を拐った犯人達の仲間と思える男達を何人か見かけた。

幸いにも見つかって捕まるという事はなかったが。

 

ふと耳を澄ましたら小さいが声が聞こえてきた。何か大人の男が怒鳴りあってるような声だ。「ボク」は嫌な予感がして素早く足音を立てずにその部屋へと近寄った。ドアは半開きになっていて中をそっと伺うことが出来た。

 

「てめえ何商品に傷つけてんだ!!あぁ!?分かってんのかこれ、売りもんなんだぞ!?」

 

「うるさいなぁ…ちょっと顔に傷付けただけだよ?」

 

「ちょっと!?これのどこがちょっとなんだよ!!でけぇ傷つけやがって!せっかくの上玉が台無しじゃねえか!!てめえは顔が綺麗な女が来るとそうやって傷つけやがって、自分の仕事分かってんのか!?ああ!!??」

 

「わかったわかった。もうやらないし、また前と同じように傷を綺麗に治せばそれで文句無いでしょ?」

 

二人の男達が話してる足元に、ぐったりと横たわっているのは「さっちゃん」だった。

顔はこちらを向いてなくて確認出来なかったけど、あれは間違いなく「さっちゃん」だ…!

 

「ボク」は冷静じゃなくなった。2人が出ていくのを確認して後で隙を見て入れば良かったのに、2人の会話から「さっちゃん」が傷つけられたと分かり頭に血が上ってしまった。

 

「さっちゃんから離れろ!!!!」

 

「アア?なんだぁ??」

 

「あれ?あのガキ何で…?手足縛っといたのに」

 

斧を握り威嚇するように突き出して部屋の中に入った。

犯人の2人は手足が自由になってる「ボク」を見て驚いたようだ。しかしすぐに向こうは冷静になってしまった。

 

「おい、ガキ、痛い目にあいたくなきゃその斧捨ててこっちに大人しくこい。手間かけさすんじゃねえ」

犯人の1人が心底面倒くさそうに言ってきた。あの怒鳴っていた方だ。

まるで「ボク」の抵抗を子供のわがままのように扱ってるみたいだった。実際子供が駄々を捏ねているように思ってるのだろう。

 

「こっちにゃ銃もあんだぞ。その重たそうな斧で俺たちを切りつける前にこの銃ぶっぱなしゃあお前が死ぬだけだぞ?」

 

銃!あったら良かったと思っていた銃がまさか犯人達が持ってるとは思わなかった。

犯人の言葉に勇気がみるみる萎んでいくのを感じた。

どうしたらいい…そう焦っていた自分に小さな小さな声が届いた。

 

「ひゃ、く…ちゃん、に、げ…て…」

 

「さっちゃん」の弱々しい声だった。こちらを向こうにも向けずに身体が痙攣している様だった。明らかに弱った声に、怒りが爆発した。

 

「うあああああああああああ!!!!!」

 

斧を振りかぶって犯人に特攻した。

 

「ウグッ!!」

がら空きだった胴に思い切り犯人の蹴りが入り、吹っ飛ばされる。

やはりどんなに意気込んでも大人には勝てないのか。ゲホゲホと咳き込んでいると頭を鷲掴みにされ床に何度も叩き付けられ、顔面が血に染まる。

 

「うーん、君はあんまり興味なかったんだけど、さっきの表情は良かったから、君にも傷を付けてあげよう」

顔を無理やり上げされられるともう1人の犯人が血にまみれたナイフを持ち上げてこちらを覗き込んでいた。

 

「おい、さっき傷つけるのは最後だって言っただろ!?」

 

「いーじゃんこんな生意気な子、もう反抗しないようにしとかなきゃいけないんだしさ、これでほんとに最後最後!」

 

「…チッ、ちゃんと後で傷消しとけよ…」

 

頭上でのそんなやり取りを朦朧とした意識で聞いていた。すると顔を無理やり上に向かせられる。

 

「はーい、じゃあちょっとザックりいくよ〜!うーん君はどういう風に傷をつけて上げようかなあ…?よし!決めた!君は猫っぽいから両頬に猫のヒゲみたいな傷を付けてあげよう!」

理解したくない言葉を一方的に投げつけられ呆然としてると今度は顎を鷲掴みにされる。

 

「はい、動くと危ないからね〜痛くなーい痛くなーい」

そんなわけが無い言葉と共にナイフが顔に近づけられそして…

 

「あああああああああああ!!!!」

顎の両側を深く斬られた。焼けるような痛みに意識が更に遠のく。

傷をつけて興味を失ったのか、手を離されそのまま床に激突する。

荒い呼吸をして痛みに耐える。痛い。痛い。

ああ、こんな痛み、昔どこかで感じたことがあった気がする。痛すぎておかしな考えまで出てくる始末だ。

犯人たちがまだ何か喋っていたが何も耳に入らない。

床に倒れ伏していたら、同じように倒れている「さっちゃん」が目に入った。

いつの間にかこちらを向けたのか、やっと「さっちゃん」の顔を見ることができた。

 

「さっちゃん」の顔には縦に二筋、横に一筋の大きな大きな傷が出来ていた。

「さっちゃん」の綺麗な顔に醜悪な傷が出来た。でもそれはとても自然なものに感じた。

いや、これで正しいとすら思える。

何故、何故、そう考えるのか。

 

 

 

「さっちゃん」と目が合った瞬間、全ての記憶が弾けた。



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序章2

全て思い出した。

軍のこと、北海道での金塊争奪戦、前世での自分の数々の悪行、そして、「不死身の杉元」。

 

自分が、「俺」が何者であったのか、全てを思い出した時、なんとそれはあの「不死身の杉元」も同じだったらしい。

 

犯人達がこちらを向いているのをいいことに、「さっちゃん」…いや杉元は立ち上がり、銃を持ってた犯人の背後を素早く取り、締め上げた。

 

「うお!?グゥっ…」

 

「は?なに?」

それに気づいたもう1人の、ナイフを持って俺たちに傷を付けた方に俺は素早く足払いを掛け転がした。

銃を持ってた方を締め上げ終わった杉元がナイフを持った犯人に襲いかかった。

 

「俺は不死身の杉元だ!!!!!!!!」

 

 

 

小学校に上がる前の子供とは到底思えない力がある様だ。ナイフを持ってる犯人と互角以上に戦っている。

いや、あの馬鹿、前と同じような自分を顧みない戦い方のようで犯人のナイフに掠りつつ攻撃している。

 

何とかナイフの方の犯人を殴り倒した杉元はボロボロになっていた為俺は焦ったが、驚くことに顔面の傷を除いた身体中の傷が瞬時に癒えていくのを目で捉えた。

 

「おい、杉元なんだそりゃ、個性か?」

 

「うおっ!?なんだこれ、これが俺の個性なのか?」

 

本人も驚いていたが、こんな不思議現象、個性以外ないだろう。

大の大人を締め上げることが出来た子供離れした馬鹿力も恐らくは杉元の個性なのだろう。

 

「ていうか、お前…あの尾形だよな?」

 

「どの尾形かは知らんが、俺は尾形百之助だぜ?」

 

杉元がアホ面しながら聞いてくる。やはり俺と同じく前の…恐らく前世ってやつの記憶が蘇ったらしい。

前の世じゃさんざん殺しあった仲のこいつと幼馴染になるなんて誰が思うだろうか。神という輩の考えてる事はまったく理解ができん。

 

「やっぱりクソ尾形じゃねえかー!俺の大事なひゃくちゃんはどこ行ったんだー!!」

 

「傷つくなぁ、俺もそのひゃくちゃんだぜ、「さっちゃん」。」

 

「さっちゃん言うんじゃねえ!鳥肌たつわ!」

 

そんな軽口叩きながら俺は犯人が持っていた銃を拾う。俺自身も子供なのに、さっき斧を持った時より重さを感じなかった。

目に集中すれば、望遠鏡のように遠くのものまで良く見えることにも気づいた。

恐らく俺も杉元と同じように、記憶と共に個性が現れたのだろう。まったくもって都合が良い。

 

「おい、杉元。そのナイフと斧を拾っとけ。他の奴らを殺りに行くぞ。」

 

「は?他にまだいんの?」

 

「ああ、他の部屋を偵察した時何人か見かけた。こいつら単独犯じゃねえだろうな。」

 

「おいおいマジかよ…」

そう言うと杉元は転がっていたナイフと斧を軽々拾った。

 

「俺がこいつで援護してやる。いくぞ」

 

「おい、ちょっと待て尾形。犯人達をぶちのめすのは良いが、殺すのはなしだ。そんな事すれば母さん達が悲しむし、俺たちも面倒ごとに巻き込まれるだろ。」

 

「チッ…めんどくせえ時代になったな…仕方ねえ足か肩狙うか…。」

 

「あと尾形、これが終わったら色々聞かせて貰うからな。」

 

「…ああ、分かった。」

俺もお前に色々聞きたいしな杉元。

 

そうしてあの偽アイヌの村でやったような蹂躙を俺たちは開始した。

 

 

 

 

 

 

結果を言えば、俺たちは無事保護された。

俺達が捕まったのは、でかい人身売買組織だった。今どき珍しい「無個性」(俺たちはそうじゃなかったが)の男児と女児が珍しいと誘拐されたらしい。

 

俺達が暴れ回って建物内に居た犯罪者を全員半殺しにした後すぐにヒーローやら警察やらが来て事なきを得た。

地獄を創り出したのがまだガキ二人ということで、説教がセットで付いてきたが、「個性」を使ったこともお咎め無しで、俺達が捕まることもなかった。

 

だったらもっと早く助けに来い無能共と思わなくもなかったが、免許も取ってない銃をぶっぱなしまくった事も厳重注意だけで済んだので良しとしておこう。

 

保護者たちも大急ぎで駆けつけてきて、それぞれ大泣きされて困惑したが、それもまあいいだろう。ばあちゃんには心臓に悪いことをしてちっと悪かったなと殊勝にも思ってしまった。

杉元も母親に大泣きされて抱きしめられていた。少し照れくさそうにしていたが嬉しそうだった。

 

この地獄を創り出した大半の原因は杉元と分かると説教と共に、大人達が恐ろしいものを見る様な目を向けている事にも気づいた。

杉元は真面目に反省していたのでそれに気づいているのかどうか…恐らく気づいてないだろう。

 

ヒーローオールマイトもこの捕物劇に参加していたので、中々の規模の組織だったのだろう。そのオールマイトからもお説教&励ましの言葉を頂いた。

 

「君たちはやりすぎたが、こんな組織を二人で掻い潜ってほぼ壊滅させるなんて普通のヒーローでも出来ることではないよ。君たちもヒーローを目指すと良い、きっと2人とも良いヒーローになれる。勿論、やりすぎを反省しないとダメだけどねHAHAHA」

とか何とか言っていた。それに杉元は感銘を受けているようだった。やはり杉元は阿呆だな。

 

 

これが終わったら話をすると杉元と約束したが、二人きりで話せる時間が何日も中々取れずにいた。

警察とヒーローから保護され病院送りにお説教、保護者の登場にさらなるお説教、取り調べの上個性が発現した事も報告し書類を作成、個性発現に伴う身体検査、健康診断、などなどやらなくてはならない事が多すぎた。

 

ついでにマスコミも沢山来ていた。勿論シャットアウトしたが、事件のあった公園も騒ぎになって中々入ることは出来なくなってたようだ。

ようやく2人だけで会うことが出来たのは1ヶ月ほど後になった。更にもう余り公園には行くことが出来なくなったため、自分の部屋に杉元をあげた。

 

 

「よ、よう……元気だったか…?」

 

「なんだ、世間話でもしに来たのか「さっちゃん」は」

 

「さっちゃんて呼ぶなクソ尾形!!!!世間話じゃなくて色々聞くって言っただろ!!」

 

「ああ、分かってるって…で、何を聞きたいんだ?」

そう聞くと杉元はもごもご言ってきた。

 

 

「その…お前って前の記憶が全部有るんだよな…?あと前の記憶じゃなくて、前まで一緒に遊んだりしてた記憶はどうなった…?」

 

「ああ、前の自分が生きて死ぬまでの記憶がある。今生でお前と前まで遊んでた記憶もちゃんと有るぜ。まさかお前とちょっと前まで仲良しこよしの幼馴染してたなんて笑えねえ冗談だよな…。お前の方はどうなんだ?前世の記憶と今世の記憶きちんと両方有るのか?」

 

「………両方、ある。」

 

沈黙が続いた。

杉元が口を開いた。

 

「…お前との、前の殺し合いは忘れてねえ…裏切りも…でも今の、記憶が戻る前とのお前との、「ひゃくちゃん」との思い出も忘れちゃいねえ…。俺は、「ひゃくちゃん」と一緒に居たい…居たいんだ…」

 

それは意外な告白だった。「さっちゃん」からあの不死身の杉元に戻ったら、俺のことはきっと許さないと思っていたからだ。

 

「…きっと肉体に精神が引きづられてんだよ…すぐに元の不死身の杉元に戻って「ひゃくちゃん」なんて存在忘れるさ…」

俺は思ったことをそのまま口にした。

 

首が閉まった。杉元に胸倉を掴まれたからだ。

 

「お前は!「ひゃくちゃん」はどうなんだよ!!「ひゃくちゃん」は俺と一緒に居たくないのかよ!!もう俺のことは、「さっちゃん」のことはどうでもいいのかよ!!!!」

泣きそうになりながら、懇願される。

前世だったら絶対に泣かないだろう杉元も、肉体の年齢にやはり引っ張られてるのだろう。涙が零れそうだ。

やめてくれ、俺は「さっちゃん」の涙に弱いんだ。

 

 

「………どうでもよくなくねえよ…」

 

「!ひゃくちゃ…」

 

「でももう俺は俺なんだよ。お前を、裏切り殺そうとした尾形百之助だ。」

 

「!!!!」

 

そう、前世でお前を裏切り、その頭に銃弾を叩きつけた「尾形百之助」でそれ以上でも以下でもない存在となってしまったのだ。

 

お前が求める「ひゃくちゃん」は俺でもあるがそれだけではなくなってしまったのだ。

 

もう「さっちゃん」が無邪気に信頼を寄せられる「ひゃくちゃん」ではないのだ。

 

 

 

「関係ねえ!!俺はひゃくちゃんを信じる!!そして尾形、前のお前を、許す!!!!」

 

杉元はその力強い澄んだ目で俺の目を捉えて離さなかった…。

 

まさか前世のことを杉元に許されるとは思わなかった俺は呆然としてしまう。

 

そして、笑ってしまった。本当にこいつは阿呆だ。自分を殺そうとした相手を許して信じるとまで言うなど、真性の阿呆じゃ無ければ出来ない芸当だろう。

そう思ったら余計に笑がこみ上げてきた。

 

「お、尾形てめえ!人が折角前のお前の所業を許すって言ったのに何大笑いしてんだ!!!!喧嘩売ってんのかテメーは!!」

杉元は顔を真っ赤にしながら怒ってきたが、目にまだ涙が残っていたので怖くはなかった。

 

「いや、悪いお前があまりに甘ちゃんだと…」

 

「んだとてめえ…!」

 

「俺もお前を信じる。」

杉元が止まった。

 

「そこまで言われちゃ俺も観念した。お前のことを信じるよ杉元。そしてもう二度とお前を裏切らないと誓おう。」

 

杉元が、嬉しそうに泣いて

そして笑った。



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序章3(オマケ)

オマケ

 

「しかしお前、その顔の傷治らないのか?」

 

「あ、これ?なんかわかんねえけどこの傷だけどうしても治らないみたいだ。俺の個性でもこれだけ治んなかったし」

 

「そう言えばお前の個性ってなんだ?回復とあのゴリラみたいな力か?」

 

「ゴリラって言うなよ!!まあ、そうあの強い力と超速回復らしい。」

 

「本当に化け物じみてるなお前は…まんま不死身じゃねえか。」

 

「ふふふ、良いだろう〜この強い力も前以上になるぜきっと!強い力とかオールマイトみたいでかっこいいよな!!どうだ尾形!羨ましいだろう〜!!」

 

「ハイハイ羨ましい羨ましい」

 

「棒読みやめろよ!!たくっ、そう言う尾形はどうなんだよ?お前もあの時個性出たんだろ?」

 

「ああ…俺は個性「山猫」らしいぞ。」

 

「え?猫ちゃん??」

 

「猫ちゃんじゃなくて山猫だ阿呆。山猫並の視力聴力脚力とか身体能力も強化されてる」

 

「へー結構いいじゃねえか!!」

 

「あとネコ科の動物の言葉なら分かる」

 

「尾形いーなー!!!!!!」

 

「話戻すがお前の顔のその傷はお前のチート個性でも治らないのか?」

 

「ああ、なんでか治らないんだよな…まあ別に慣れてるし俺はいいんだけど、母さんが気にしててなあ…」

 

「俺のこの傷跡も個性での治癒でも何故か治らんみたいだし、呪いみたいなもんなのかもな…」

 

「呪いって…嫌なこと言うなよ尾形…」

 

「呪いじゃなきゃなんだってんだよ。そう言えばお前は今生じゃ女なんだよな…女でその顔の傷じゃ嫁の貰い手が付かんぞ。」

 

「あーあんまり俺は女って感じしないから別にいいんだよ…嫁とかなる気もないし…。」

 

「じゃ、俺が貰って構わないな?」

 

「は!!!???」

 

「構わないな?」

 

「はあ!!!!????」

 

「か・ま・わ・な・い・な・?」

 

「…ぉぅ…」

 

(尾形満足之助)

 

 

 

 

 

オマケ2

 

「俺はヒーローになる!!!!」

 

「なんだ唐突に」

 

「唐突じゃない!元々ヒーローに憧れてたし、ヒーローになればアシリパさん達に見つけて貰えるかもしれない!こっちからも探しやすくなる!あと母さんに楽させて上げられる!一石三鳥だぞ!」

 

「他の連中ねえ…例え居ても前の記憶があるか分からんぞ?」

 

「俺を見て思い出すかもしれないだろ!」

 

「そう上手く行くかねえ…それにヒーローは敵と戦うっつっても殺しちゃなんねーんだぞ、お前こっちを殺そうとしてくる相手を殺さないなんてそんな器用な真似出来んのか?」

 

「うっ…でもこの間の事件の時は1人も殺さなかったし、やればできる!はず…」

 

「それにヒーローになるなんてすげえ倍率の学校に受からないとならないんだぞ?お前勉強もちゃんと出来んのか?」

 

「うううっ…き、きっと今から頑張れば合格するよ!きっと…」

 

「……………はぁーーー………仕方ねえ、じゃあ俺はお前のサイドキックになってやるよ。」

 

「………は?え?お、尾形もヒーローになりたいの????」

 

「俺は別にヒーローなんぞになりたかねえよ。お前がヒーローになるなら俺もなってやるって言ってんだよ。お前のサイドキックとしてな。」

 

「はあ!???俺、別にお前にサイドキックになって欲しいだなんて言ってませんけど!?」

 

「じゃあお前は1人でヒーローになるってことでいいんだな?」

 

「うっ…」

 

「いいんだな?」

 

「うう…」

 

「…二人でヒーローになった方が人探しにゃ効率が良いだろ?」

 

「…おう…。」

 




はい、尾形と杉元♀が記憶を取り戻すまでのお話でした。
これからわちゃわちゃイチャイチャしながらアシリパさん達を探すためにヒーローを目指して尾形と杉元♀が頑張ります。


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尾形と杉元♀の設定

●尾形百之助

前世の記憶が戻る前から杉元♀とは幼馴染の関係でなんと仲は良好だった。杉元♀とある事件に巻き込まれて2人とも顔に大怪我を負い、そのショックで前世の記憶を全て取り戻す。

前世では殺し合う仲だったが、今世でのそれまでの良好な関係も有り前世での殺し合いなどは水に流す事に。その後も何やかんや言いながらずっと幼馴染を続けている。

 

前世と同じく父が居ない家庭環境だったが、一応認知はされている。(父親はヒーロー武器などの製造会社社長)母親は今世では壊れずに愛情を注いで貰えていた(しかし尾形が前世を思い出す前に病気で亡くなる)ので今世では不穏な事はする予定は(一応)なし。今生もじいちゃんばあちゃんに育てられる。ばあちゃん子。

今生でも勇作さんも2個下に居て懐かれているが迷惑がっている。しかし杉元♀にいい弟さんじゃないか!と言われ、勇作からも杉元♀との間を応援されているので勇作さんを後から撃つ気は無い。(一応)

 

杉元♀については、前世では殺し合う仲ではあったが言葉にできないような感情も抱いていた(杉元には伝えてない)。今世では幼馴染だったため、記憶が戻る前は好きな女の子と認識していた。記憶が戻ったあとも複雑な感情を抱くも、杉元♀に明確に執着していることを自覚している。

 

個性は「山猫」

山猫の身体能力を持ち、特に「山猫の目」は狙撃手の尾形には最高に相性の良い能力となった。

身体能力も底上げされ、前世で得意ではなかった近接戦闘もかなり出来るようになった(それでも杉元♀にはやはり及ばない)。

銃で戦うのは前世と変わらないが、身体能力では今生の方が高いので、射撃の腕も更に上がり、現在では例え暗闇の中だろうと射撃を外すことはほぼない。

因みに猫科の動物と意思疎通が出来る。

 

雄英受験の際には父親にヒーロー達も使う銃を借りてほぼ射撃1本で乗り切った。(それまでも射撃の腕を衰えさせないように父親経由で訓練を怠らずにいた)(勿論銃の取り扱い免許は取得済み)

大型仮想敵ロボットは流石に銃の火力が足りなかったから無理だったが、山猫の身体能力で素早く射撃に適した高所を陣取り、遠くからの狙撃で敵ポイントを素早くゲット。カッチャンを抑えて敵ポイント最多得点となった。なお、敵ロボットから危険な生徒を見かけたらそちらを優先して撃ったらレスキューポイントもゲット出来た。その為、雄英入試はなんと首席(尾形ドヤ顔)。筆記の方もサイ〇パス特有の自頭の良さで難なくクリアできた。

個性が「山猫」と、射撃とは直接関係ない能力なのに、驚異の精密射撃を誇るので、射撃系ヒーローのスナイプ先生からも一目置かれる。

 

ヒーローにはなる気はさらさら無かったが杉元♀がなる気満々だったので、じゃあお前のサイドキックになってやると約束して杉元♀と共にヒーローを目指すことになった。

本音は杉元♀には危ないヒーローになって欲しいとは思ってないが、自分が言って聞くわけないのでそれなら自分が守れる隣に立とうとヒーロー志望に。将来的には夫婦ヒーローになって子供が産まれたら杉元♀には引退させようと画策している。

 

クラスメイト達とは一線を引いての付き合いだが、杉元♀が人懐こいので杉元♀絡みでクラスメイト達とも多々戯れてる。

あと無駄にカッチャンを煽りまくる(悪意100%)

クラスメイト達からは杉元♀と付き合ってると思われている(間違いではない)

 

尾形の容姿はほぼ変わらずにツーブロックのオールバック。顎の両側に手術痕。ただし、高校生の為に顎髭はなし。

ヒーロースーツはほぼ第七師団の軍服的なモノ。(尾形を見て前世での知り合いが釣れるかもしれないと杉元♀からの要望によるもの)

 

ヒーロー名は杉元♀が適当に考えた「百発百中百之助」とか出して却下される。自分では「孤高の山猫」とか出すけどそれヒーロー名じゃないよねと一蹴される。じゃあ「ワイルドキャット」とか出したけどワイプシと被るのでそれも没を食らう。(最終的にショットガンとかなんかそれっぽいヒーロー名になる)

 

杉元♀が女として生まれたのは自分と一緒になる為だと思っちゃってる。

 

 

●杉元佐一♀

今生では、前世で殺しあった仲の尾形とは幼馴染の関係の上、女として産まれ前世と同じ顔面の傷を負うという不幸を背負う。が、本人はそんなに気にしていない。地獄の特等席にしては生ぬるすぎるなと思ってる。

 

前世の記憶が戻る前はきちんと女の子していた。消極的な尾形を引っ張って遊びに誘う様な天真爛漫な女の子だったが、尾形と共に事件に巻き込まれて顔に前世と同じ消えない傷を負う。その際に前世の記憶を全て取り戻す。自分が「不死身の杉元」だった事を思い出した事と今世の個性のおかげで犯人達を半殺しの返り討ちにする。(犯人を半殺しにした為警察やヒーロー達からはお説教&要注意人物認定されてしまう)

 

尾形とは前世で裏切られ殺し殺される関係だったが、今世での幼馴染としての絆の方を取り、前世の事は水に流した。

因みに前世の記憶が戻る前まではお互いをひゃくちゃん、さっちゃん呼びしていた(お互い早くも黒歴史化)。その後は「尾形」「杉元」呼びに戻る。

 

記憶が戻る前は尾形のことを好きな男の子として思っていたが、記憶が戻ってからは複雑な感情を持ちながらもなんだかんだ好いている(のを絶対に認めない現状)。

今生では女なのに前世と同じ大きな傷が顔面にある為、尾形から嫁の貰い手も無いだろうから俺が貰ってやると言われてキレたが満更でもない様子。

一人称は相変わらず「俺」。

 

家庭環境は母子家庭の一人っ子。父親は物心着く前に事故で死亡。シングルマザー同士で尾形の母と自分の母の仲が良かった。

時々現れる尾形の二つ下の腹違いの弟ともそれなりに仲が良い(義姉様と呼ばれる)。

尾形のおばあちゃんとも仲が良い。家族ぐるみの付き合い。

 

個性は「超速回復」と「身体強化」と言う単純な脳筋系チート個性。大怪我を負っても瞬時に回復するし、馬力はオールマイト並とは言えないがかなりのものの上まだまだ発展途上。まさに不死身の杉元。

 

雄英受験では、尾形から渡された防具一式を着て拳のみで挑んだ(今世で身体能力が強化されたので、元々苦手な方だった銃は使わなくなった)。とんでもない身体能力と持ち前の超速回復で前世と同様どころか前世以上の怪我や自分の命を顧みない戦闘方法で仮想敵ロボットを次々撃破。まさにバーサーカー。(それらを観ていた相澤先生に危なっかしい戦い方を目につけられ度々注意を受けることになる)

終了間際、麗日さんのように巨大仮想敵に危なくなってる人を発見し、巨大仮想敵も拳で単身撃破してしまう(それを後に知った尾形は杉元さんの化け物具合に戦慄し且つ更に惚れ直した)。結果、実技試験ならカッチャンや尾形を抑えてぶっちぎり1位に。ただし、筆記がかなりギリギリだった為、首席通過はできなかった。(勉強は尾形がみっちり教えてくれていた)

 

記憶が戻る前からもオールマイトなどのヒーローに憧れていたが、巻き込まれて記憶を取り戻したきっかけとなった事件の際、自分が半殺しにした敵を捉えに来たオールマイトから諭されて、ヒーローになる決意が更に高まった。(なお、他ヒーロー、警察からは要注意危険人物認定されているのには気づいていない模様。)

また、自分が有名になればアシリパさんや白石達にも会えるのではないかと考え、小さいうちからヒーローになる事を決める。

前世で多くの人を殺してきたのもあり、今世では人を救うことをしたいというのもあった。

その事を尾形に話したら、深いため息と共に「仕方ないからお前のサイドキックになってやる」と言われる。

言い方にムカついたが、射撃の腕等は認めており、サポーターとして頼もしい事も分かっていたため、それを渋々了承し、二人でヒーローを目指すことになった。

因みにヒーローも好きだが、少女漫画など乙女チックなものも好きなのは前世から変わらずにいる。

 

クラスメイト達とはすぐに仲が良くなれたが、カッチャンとはお互いに反りが合わない上にカッチャンが喧嘩を売ってくる為、多々衝突する。その際、尾形もカッチャンを悪意100%で煽ってくるので内面いいぞ尾形と思っている。

デク君とは個性が似ているのもあり、中々に仲が良い(のを尾形が気に食わなさそうな目でよく見てくる)。

女子達とも良好な関係を築いているが、着替えなど一緒なのが申し訳なくなっており見ないようにしている。

峰田から自分がセクハラされるのは頓着しないが、他の女子にセクハラが及ぼうとすると頭を鷲掴みにして締め上げる。

尚、峰田が杉元♀にセクハラをすると尾形から即狙撃される(not実弾)。

 

杉元♀の見た目は、顔に大きな傷があるのでそれに目が行きがちだが、かなり整った顔をした美少女JKである。

スタイルもグンバツなので、初見じゃバーサーカーゴリラだとは誰も見抜くことは出来ない。

 

ヒーロースーツは前世でずっと被っていた軍帽に軍服を超魔改造したセクシーなもの。尾形のヒーロースーツを第七師団の軍服に指定したので、じゃあお前のも軍服にしろと尾形に言われたため&本人はヒーロースーツは何でもいいと思っているのでこうなった。

傍目には尾形と揃いのヒーロースーツと思われている。

 

ヒーロー名は勿論「不死身の杉元」を出すがあえなく却下される。(多分レディ・イモータルとかミス・ノスフェラトゥとかになる)

でも何かあると普通に「俺は不死身の杉元だ!」って言っちゃうので、結構「不死身の杉元」と認識されてる。

 

早くアシリパさん達を見つけて再会したいと思ってる

 

●他

アシリパさんは北海道でアイヌの血を引く無個性の少女に(でもやっぱり弓が得意で強い)。尾形と杉元を雄英体育祭のテレビ中継で存在を知る。

 

白石は雄英の近くの高校の普通科に二つ上で居ると判明した。(放課後など度々ウザ絡みしてくるようになる)

 

谷垣ニシパは雄英の普通科に、インカラマッは2個上の普通科に居る。

 

先生として牛山さんが居る(奥さんは家永♀)。ヒーロー名はまんまで「アンビートン・ブル(不敗の牛)」

 

士傑高校の方に鯉登さんや月島さん、二階堂兄弟、宇佐美が居る。

 

士傑高校の先生に鶴見さんが居る。(教頭)

 

キロランケ、土方歳三は今のところ未定



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雄英高校入試編

あの金塊争奪戦を経て、まさか次の世に産まれいでるとは誰も予想は出来ないだろう。当然俺もそんな事あるとは思わなかった。せいぜい生前に犯した悪行によって地獄にでも落ちる位しか妄想はしなかった。

 

しかも次の世が、摩訶不思議な「個性」という超常現象を起こす力を持った人間が溢れてる世界だとは、神は何を思って人間にこんなおかしな力を授けたのか。

まあ、いい。使えるものはなんでも使う主義だ。

力があるに越したことはない。

 

前世ではさんざん殺しあった仲のあの「不死身の杉元」と幼馴染なんぞしていたせいで俺も丸くなったのか、前世のことは水に流すことで、俺たちはまだ幼馴染を続けている。

勿論、記憶が戻ってからはお互いを「さっちゃん」「ひゃくちゃん」などと言う薄ら寒くなるような呼び方なぞしなくなったが。

 

俺は前の世と似たような家庭環境だったが、今生の母は病気で死ぬ寸前まできちんと俺を愛してくれていた。父親も別の家庭を持ってはいるが、認知はしていて養育費もしっかり払っているようだ。前世では一目父に会いたくて軍にも入ったりしたが(一目合うだけでは終わらせなかったが)、今生では会おうと思えば普通に会える父親(そう言えばヒーロー武器製造の社長らしい)に特に何かしようと思うことはない。

 

現代では戦争もなく日本はまったく平和な世になったらしい。つい最近杉元と誘拐されもしたが、それでもあの時代より余程平和なのは確かだ。

 

さて、折角新しい生を(別に望んでもいなかったが)得たのだが、特にやりたい事はなかった。

そんな時に杉元の阿呆が何を思ったのか「ヒーローになる」などと言い出したのだ。

なんでも前の世で出会ったアイヌの少女アシリパや白石達を探して会いたいと。

俺たちのようにこの世に居るかどうかも分からん相手を探すのは泥の中から1粒の砂金を探すよりも可能性が低いだろう。

だが杉元は前世で北海道で出会った奴らは俺たちと同じように転生しているだろうと信じているようだ。確かに俺や杉元が居るように、あいつらが居ても不思議ではないが…。

そう思うと、俺と杉元がまさかの幼馴染として一緒に居たというのはまさに奇跡なのだろう。

杉元は、前世で特に懐いていたアシリパというあのアイヌの少女にまた会いたいのだろう。

 

ヒーローとは人々の超常現象が加速した中、爆発的増加した犯罪を抑える為の公的職業だ。言ってしまえば警察や軍と似たようなものだが、知名度が違う。

確かにヒーローになれば、報道を介して向こうから自分たちを見つけやすくするだろう。またこちらも様々なコネが手に入り人を探しやすくなる。

ヒーローは人気職だ。狭き門だろう。だが、杉元の、前世の呼び名の如くの強「個性」ならば、ヒーローにもなれる可能性は高いと考えて良いだろう。実際、人身売買組織の構成員の大多数を半殺しにした実績もあり、あのナンバーワンヒーロー・オールマイトからもヒーローを目指すといいとお墨付きを貰ったのだから。(ただ、齢7歳で敵組織を半殺しの目に遭わせた(俺を含む)杉元を見る警察や他のヒーロー達からの目は化け物を見る目であったが…)

 

俺はヒーローになんてさらさら興味は無かったが、杉元がなるのなら俺もなった方が良いだろう。

アシリパがいない今こいつの手網を取らなきゃならんのは俺しか居ないからな。

確実に取れる自信はないし、前世の状態だったら絶対に俺の言うことは聞かないだろうが、今は幼馴染の「ひゃくちゃん」でもある。少しは杉元も絆されているだろう現状なら、多少は俺の言うことも聞くだろう。

現に、「お前のサイドキックになってやる」と伝えたら、渋々ながらも認めたのだ。

ははあっ!あの杉元が、この俺を隣に立たせることを認めるとは、幼馴染様々だぜ。

ついでにあの顔の大きな傷が消せない事をだしに、嫁に貰うことを約束させたのも良い思い出だ。

 

話が逸れたが、杉元と共にならヒーローになるのもまあ良いだろう。注目されるのは特に好きでもないが、軍や警察と違い上から命令されることはあまり無いと思える点は利点だ。実力のみでのし上がれるのも魅力的だ。

 

なると決まれば、話は早い。

まずはヒーローになる為の学校に入る為、今からそれまでは準備期間だ。

能力…いや「個性」を更に磨き、義務教育である小学校・中学校で良い成績を残す。

記憶が戻ってからは、ガキ達と混ざって足し算やら引き算やらをやらなくてはならないのはうんざりするが、準備期間だと思えば目を瞑れる。それに杉元は勉強面に不安があるからな。俺も覚え直すのに丁度いい。

 

「偏差値79か…」

「は?なにが??」

「雄英高校の偏差値だ。現状でヒーローになる為の1番の近道がその高校だ。ヒーローになるんだろう?」

「いやいや、なんで雄英って高校一択なんだよ!もっと勉強しなくても良い学校だってあるだろ!?」

「あるにはあるが、そういう学校じゃまともにヒーローとしてやってる奴はあんまり見かけねえぞ?それに雄英高校はお前が好きなオールマイトの母校だ。」

「うっ…そうなんだ…」

「お前、本気でヒーロー目指すんならそのくらいの高校目指さなくてどうすんだよ。」

「うぅぅ…分かったよ…でも俺勉強出来ないぜ…?尾形は出来んのかよ?」

「まあ、お前より出来るのは確かだな。心配するな、お前にもみっちり教えてやる。」

「ぜ、全然安心できねー!」

 

そんなこんなで進路は雄英高校に決まった。士傑高校でも良かったが、あっちは関西圏で遠いので却下だ。

 

進路が決まればあとは日々訓練と勉強の毎日となった。杉元はアシリパ達を探したそうだったが、今のガキの俺達が出来ることはない。それよりきっちり雄英生になって体育祭中継などで映れば向こうから見つけてくれる確率が高い。今は雄英受験に向けて努力すべきだ。などなど説得したら渋々杉元も引き下がり、勉強や個性の特訓に打ち込んだ。

個性の特訓では、杉元と組手を毎日こなしたが、やはり杉元は化け物だ。

俺は前世では近接格闘は得意では決してなかったが、今世の「個性:山猫」のおかげで前世より身体能力が大幅に上がった。そのおかげでそこらのちょっとした格闘技を習った程度の大人には負けはしないと自負できたが、杉元はおかしい。勝てた試しがない。お互い個性を使用した組手だが、杉元の「身体強化」の個性は反則だろう。何せ素手で岩なんかを粉々にする程度の能力だ。やった事はないがフルで力を出せばビルぐらい軽く倒壊させるだろう。

そんなわけで俺は杉元に組手は連敗してるが、そんな化け物と毎日組手をしてれば嫌でも強くなる。俺も対人格闘では生半可なやつには負けるつもりは全くなくなった。

反対に勉強面ではやはり杉元は劣等生だった。が、俺が何とか根気よく教えていたので学校での成績も好成績を何とかキープしていた。

俺は小学校・中学校の勉強もそこそこに流し、雄英入試の過去問を漁ったりして対策を建てるなどしていた。勿論勉強はずっと一位をキープしてだ。

 

また、俺は銃の取り扱いを父親経由でできるようにした。父親との連絡を取るのも億劫だったが、使えるものはなんでも使う主義だったため、ダメ元で父親を頼ってみた。

雄英志望で将来ヒーローになると伝えれば、意外なことに快くOKを出されて拍子抜けした。父親はヒーローの武器を作製している会社の社長だから、婚外子と言えど自分の子供がヒーローになるのは良い宣伝になると考えての事なのだろうか。まあいい、俺もそのコネをうまく使ってやろう。

銃免許を取るのも、銃を撃つ訓練も面倒な手続きが必要だったが、必要なのだから仕方ない。前世では滅多なことでは手放さなかった銃だ。今世でもヒーローをやるのなら手放す気は毛頭ない。

銃の腕は前世でも中々の腕前を持っていると自負していたが、今世での腕は前世よりも上だろう。

「山猫」の目は俺にピッタリの力だ。前世では暗闇の中では射撃も外してしまっていたが、今生では真っ暗闇でも外すことは無いだろう。目だけではなく、聴覚や嗅覚、力や脚力なども軒並み上がっている。まさしく個性様々だ。

 

小学校・中学校でも俺は友と呼べる存在を作らなかった。前世からも、そして記憶が戻る前でも「さっちゃん」以外とは人付き合いはほぼ無いようなものだったが、記憶が戻ってからは精神年齢が違いすぎて友人などは出来るわけもなかった。

杉元はそんな事ないかのように、それなりに人付き合いをしていたみたいだ。…杉元自身、精神年齢が元から低いのだろう。

俺は杉元と家族以外とは特に交流なく過ごしたし、それで困ったことはなかったので別にそれで構わなかった。学校からも何かあれば杉元経由で知らせが来たしな。

俺があまりに杉元と一緒に居るせいで、学生特有の「お前ら付き合ってんのかよ〜」というからかいもあったが、将来嫁に貰う約束もしてる為間違ってないと俺は訂正しなかった。(杉元は大慌てだったが)

 

中学へ入り、2年生の際の、高校への進路志望も2人とも「雄英高校」への志望だ。

杉元は筆記の模試判定がギリギリだったが何とか合格圏内であり、杉元や俺の個性も強いと周知されていたため、進路希望はあっさりと通った。

この頃になると俺は杉元にひたすら入試の過去問を解かせ、入試対策をしていた。

ヒーローになると言った張本人を差し置いて自分だけ受かっては笑い事にならない。

杉元、これだけ俺に手間をかけさせたのだ。お前には絶対に、何がなんでも、雄英高校に俺と一緒に受かってもらうぞ…。

 

さて、雄英高校入試ももう間近だ。入試要項によると、実技試験で「模擬市街地演習」なるものがあり、持ち込みなんでも自由とある。勿論俺は父親経由で手に入れた銃剣を持ち込むつもりだ。

実技試験はそれぞれの「個性」を見せる場になるはずだ。「模擬市街地演習」と書いてはあるが詳しくは記載していない。「持ち込み自由」と書いてあるのだから、武器の持ち込みもOKということだ。何をさせるかわからん以上用心に越したことはない無いだろう。事前に申請して実弾、ゴム弾両方持っていくつもりだ。

杉元にもなにか武器をと思ったが、素手で岩を粉々にするメスゴリラだ。しかも即回復する悪夢のようなメスゴリラだ。

武器なんぞなくても大暴れ出来るだろう。

一応念の為、俺と同じ軽装の防具を持たせた。回復するから要らねえよと言っていたが無理やり持たせた。

前世以上に己を顧みない戦い方をどうにかしたかったが、下手に回復能力があるもんだからそれは叶わなかった。今後の課題だな…。



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雄英高校入試編2

入試当日、俺と杉元は一緒に電車を乗り継いで雄英高校へ臨んだ。

でかい。今世では「異形型」と呼ばれる個性持ちの見た目化け物みたいな奴らがうじゃうじゃ居るから、そのための配慮なのだろうが、それでも馬鹿でかい。

 

俺はそのでかい学校を見ていたのだが、1人のもじゃもじゃした髪の奴が転けそうになってるのを杉元が転ばないように駆け寄ったのを目の端で捉えた。

 

「おい、大丈夫か…ってなんか浮いとる!?」

「わっ!えっ!?」

「大丈夫?」

 

近くに居たもう1人の個性だろうか?転びそうになってた奴は文字通り宙に浮いていた。

 

「私の個性。勝手にごめんね。でも転んじゃったら縁起悪いもんね。緊張するよねえ。」

「へ…ああ…ええと…」

「おい、助けてもらったんだからお礼ぐらい言わねえとアンタ。」

「はっ…そ、そうだよね、ごめん!あの、ありがとうございます!!」

「いーよいーよ」

「あなたも助けようとしてくれてましたよね?ありがとうございました!」

「いーよ、俺はなんもしてないから」

「お互いがんばろーね!じゃあ」

 

1人助けた方の女子が去っていった。

俺は杉元に声を掛ける。

 

「チッ、おい杉元、もう行くぞ」

「分かったよ!じゃあ、俺も行くな。お互い頑張ろーぜ!」

「あ、は、はい!」

 

そうして俺達も試験会場へ入っていった。

一人残したもじゃもじゃ髪の男子が(女の子と2人も話しちゃったー!)と思ってたなんぞ知らないまま。

 

 

 

筆記試験が全て終わった。俺は合格圏内より数段上は取れただろう。

問題は杉元の方だ。

「おい、杉元、お前ちゃんと点数取れただろうな?」

「まっ、まあまあ取れた………と、思う…」

「まあまあだあ?合格圏内じゃなきゃ意味ねえんだぞ。分かってんのか?」

「だーっ!分かってるよ!多分、そこそこ、取れてるはずだ!それに筆記がアレでも実技で取り返すから大丈夫だ!多分!!」

「お前なあ…」

 

まあここでグチグチ終わった筆記のことを言っても仕方ないだろう。

それに杉元なら本当に実技で取り返すことは可能だろう。それ位杉元の個性は規格外だ。

 

実技試験会場へ二人で入る。ここも驚くほどでかい建物だ。横並びに隣同士で座る。

プレゼント・マイクとかいう雄英の先生兼ヒーローが実技試験の概要を伝えてくる。

入試要項の通り、「模擬市街地演習」だ。

配られたプリントを見れば、俺と杉元は別々の会場だ。

 

「あれ?俺と尾形、会場が違うな。」

「友人知人同士で協力させないつもりなんだろう。」

「ああ、なるほど。」

「だが、こっちの方が俺たちにとっちゃあ都合が良いだろう。」

「へ?なんで?」

「こりゃ恐らく得点の取り合いになる。俺とお前が同じ会場じゃあお互い高得点が取りずらくなるだろ。」

「たしかにー!」

 

「…そしてそこの君たちも!コソコソと小さい声のつもりなのだろうがここまで聞こえてるぞ!イチャイチャしたければ即刻雄英を出て別の場所でしろ!」

俺と杉元がコソコソと話していると、プレゼントマイクに質問中だった男子1人が注意してきた。俺は別に流すつもりだったが杉元が

「い、イチャイチャなんてしてねえよ!!!!どこに目をつけてんだゴラァ!!」

とキレ出した。「イチャイチャ」の部分が引っかかったのだろう。

「いやあ、すみませんねえ、イチャイチャしてて以後気をつけますよ。」

と俺はニッコリと愛想笑いでその場を収めた。杉元はまだなんか言ってたが口に手を当てて抑えた。

周りからの嫉妬の視線を感じたが素知らぬ顔をする。杉元は顔に大きな傷があると言っても黙っていればスタイルの良い美少女だからな。思春期の男子達からは小・中学校でも嫉妬を買っていたが、それはどうでもいい話だ。

 

プレゼント・マイクの実技試験の説明も終わり、全員移動を始める。

 

「おい、杉元」

「あ、なんだ尾形?」

「出せよ、全力。これで落ちたらシャレにならんからな。暴れて来い。」

「!!!!おお!大暴れしてくるぜ!!尾形も絶対この試験落とすなよ!!」

「ああ、当然だ…。」

 

杉元と別れる前に発破をかけておく。

これで杉元は全力を出して敵ポイントを借り尽くすだろう。

俺もできるだけ敵ポイントを取れるように試験会場に入り武器の準備を始める。

武器の準備ができた所で丁度試験開始の声がやる気なく響いた。試験と言っても実践形式だ。他の受験生達がぽかんとしてる中、俺はすぐに飛び出した。

見通しのいい所の高い建物を見つけて、サッとよじ登る。前世ではできなかった芸当も今世の「個性:山猫」の力でどうとでもなった。

高いところを陣取るとすぐに仮想敵のロボットがワラワラ地上に現れた。

それをすぐに狙撃する。固そうだったのでカメラになっているのであろうレンズ部分を狙ってドンドン仕留めていった。

仮想敵も優秀なのか、狙撃されてると知ると、こちらによじ登ってくる奴らが何体か居たが、そいつらも撃ち落としていく。

途中、別のビルから飛び乗ってきた仮想敵も居たが、銃の先についている銃剣で同じくレンズ部分を破壊してなぎ倒して行動不能にしてやった。これも毎日化け物みたいな杉元と組み手をしてきた賜物かもな。

時々ビルを跳んで移動しながら狙撃を続けていく。

 

もう実技試験が終わるだろう数分前に現れた、周辺のビルの2倍はありそうな巨大な仮想敵には驚かされた。が、思ったほど動きは早くないので、残りの敵を撃ちつつ撤退した。

一応、装甲の薄そうな部分を狙って巨大仮想敵にも狙撃してみたが、無理だったので諦めた。

しかしあんなでかい敵を出して、死者を出さないのだろうか?まあ、入試に出してるのならそこまで危なくないのかもしれないが。

逃げている途中、遠くから鼓膜を震わすようなでかい破壊音がこの「山猫」の耳に2つほど届いた。恐らくあの巨大仮想敵をぶち倒した奴が居るのだろう。

1人は杉元だろう。あいつの本気の力ならあの巨大仮想敵もぶっ壊せるはずだ。

しかしもう1人、巨大仮想敵をぶち壊せる奴が居るのか…。一体どんなゴリラなのだろうか。

そんな事考えているうちに、終了の合図がプレゼント・マイクから発された。

巨大仮想敵は倒せなかったが、他の仮想敵はそれなりに倒せたので試験結果は大丈夫だろう。上から狙撃しつつ試験会場を見ていたが、俺以上に仮想敵を行動不能にしているやつはこの試験会場では恐らく居ないはずだ。

 

筆記試験、実技試験、両方無事終わり、杉元と合流して帰路につく。

 

「おい、尾形!お前実技試験どうだった??大丈夫だったか?」

「ああ、あの実技試験会場で俺以上に敵ポイントを取ったのは居ないはずだからな。」

「おお!すげえ!!でも俺も沢山敵のロボットぶち壊したぜ!」

「それはそうと杉元、あの最後に出てきたクソでけえ0ポイント仮想敵、お前ぶち壊しただろ。」

「えっ!?なんで尾形知ってんだ!?」

「やっぱりか。俺の聴力は「山猫」並だからな。でけえもん壊してる音が2つもしたら嫌でも分かるぜ。」

「え?2つも??俺、一体しか倒してないけど??」

「つまりお前以外にアレを倒したのが他に1人居るってことだろ。」

「えー!アレ倒したの俺以外にも居たんだ!すげえな!一体どんな奴なんだろ?」

「ああ、きっとお前みたいなゴリラかもしくはメスゴリラだろうな。」

「ゴリラって言うなクソ尾形!!!!」

 

やはりあの巨大仮想敵を倒した1人は杉元で間違いなかったことが分かった。

もう1人、巨大仮想敵を倒したやつは気になるが、雄英高校に通うことになればいつか分かることだろう。

帰ったら杉元と筆記試験の答え合わせをしよう。こいつ、実技はともかくもし、筆記がダメだったら………いや、あれだけ勉強を叩き込んだんだ。きっと大丈夫だろう…………。

 

……………もしダメだったら俺だけヒーローになってさっさとこいつを嫁にしよう。

そんな事を考えながら帰った。



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雄英高校入試編3

雄英高校入試試験から1週間経った。

そろそろ合否の通知が来る頃だ。

あれから帰って2人で答え合わせをして自己採点したら、杉元はかなりギリギリだが合格ラインだった。

実技の方もどのくらい出来たか知りたかったが、「どのくらいぶっ壊したかなんて覚えてねえよ…」と言われた。そのぐらい覚えておけ。俺は何ポイント取ったかきっちり計算していたぞ。

まあ、杉元のことだ。恐らくは実技の方は大丈夫だろう。下手したら俺よりも取ってる可能性がある。

俺の方は筆記も高得点で完全に合格圏内だった。

「なんで尾形ってそんなに頭がいいんだよー!!不公平だー!!」

と杉元が嘆いていた。知らん。お前と頭の出来が違うだけだ。

 

 

「私が投影された!!!!」

映写機からオールマイトがでかでか映った。

俺と杉元の元に、それぞれ合否の通知が届いた。杉元は通知を持って俺の部屋に来たので部屋に上げて一緒に開けることにした。

「だって1人じゃドキドキするじゃーん」とか杉元が言っていた。まあ、俺は受かってるだろうから1人で見ても2人で見ても同じだから構わないが。

封を開けると紙と共に小型の映写機が入っていた。まず映写機を見ようと杉元が言うので同封の書類は見ずに映写機をつけた。

杉元は俺は後で良いと言い張ったのでまずは俺からだ。

何故雄英と無関係なオールマイトが映ったのかは知らんが、オールマイトが現れて杉元は大興奮だ。

 

「実は私がこの街に来たのは他でもない、雄英に務めることになったからだ。」

映写機の中のオールマイトはそう言った。

ナンバーワンヒーローが教師なんてしている暇が有るのか?俺はそう思ったが、映像は続くので意識を切り替える。

 

「尾形くん、あの大規模人身売買組織の事件以来だね。私が言った通り、ヒーローを目指してくれて嬉しいよ。」

もう何年も前の事件の事を覚えていたのか。まあ、たった7歳未満のガキ2人が人身売買組織を壊滅させてれば記憶にも残るか。

 

「そうそう、試験の結果だったね。筆記は文句なしの高得点。君は頭も優秀なんだね。実技の方も二位通過だ。ほんとすごいよ!」

やはり大丈夫だったようだ。しかし、実技が二位通過とは気になる。1位はもしや杉元か?

 

「敵ポイント86点、救助ポイント13点。あ、救助ポイントというのはね、審査制の、我々雄英が見ていたもう一つの基礎能力さ!文字通り、困ってる人を救助出来ていたかを見ていたんだけど、君は仮想敵に危なくなっている受験生を見たらそちらを優先的に排除していたね!ヒーローの資質ありだ!」

もしかしたらと思って、危なくなっている奴らの獲物を優先的に取ったのが功を奏したか。受験生の獲物を取ったという妨害行為と断じられる可能性もあったから余りやらなかったがこれならもっとやっとけば良かったか…。まあ、数ポイントだが入ってよかったとしよう。

 

「尾形百之助、99ポイント!!筆記試験、実技試験、総合して君は首席合格だ!!素晴らしい!本当におめでとう!雄英で待ってるよ!!!!」

小型の映写機が止まった。

雄英合格をひとまずの目標として日々過ごしてきたが、蓋を開けてみたら首席合格だ。

努力の甲斐があったってもんだ。

 

「尾形お前首席合格かよ!!すげえな!」

「どんなもんだい。」

「ドヤ顔腹立つ〜!!!!」

 

同封された紙にも首席合格のことが書かれている。これをばあちゃんに見せたら喜ぶだろう。一応父親にも伝えておくか…。

 

「つ、次は俺だな!うう…合格してるかなあ…」

杉元は不安そうに映写機のセットをした。

不合格なら小型映写機なんぞ入れてないで恐らくは紙だけの通知だろう。

不安がってる杉元が面白いから伝えないでおくが。

 

「私が投影された!!!!」

「実は私がこの街に来たのは他でもない、雄英に務めることになったからだ。」

俺の時と同じくオールマイトがアップで映り、全く同じことを言っている。

 

「杉元くん、あの大規模人身売買組織の事件以来だね。君もヒーローを目指してくれていて嬉しいよ。勿論、あの時の様に無茶はしていないだろうね?」

俺を覚えていたのだから、杉元の事も当たり前に覚えていた。

「うぉぉ、オールマイト、俺達のこと覚えていてくれてたんだな!」

杉元がオールマイトに覚えていてもらえたことに感激している。

それよりも無茶をしてないか心配されてることに気づけ阿呆。

 

映像のオールマイトは続けて言った。

「試験の結果だけど、筆記の方はぶっちゃけギリギリだよ!本当にギリギリ!ギリギリ過ぎだよ!!」

「そんな何回もギリギリギリギリ言わなくたっていいじゃん…」

あまりにも筆記はギリギリだったらしく、オールマイトが汗をかきながらギリギリと連呼している。まあ、自己採点でもギリギリだったからな。だがギリギリでも合格範囲なら、まあ良いだろう。

 

「筆記は本当にギリギリだったけど、実技試験の方は文句なし!!2位以下をぶっちぎって実技試験首位通過だ!!」

「!!!!ほ、ほんとか!?」

やはり杉元が実技1位だったようだ。それにしても2位の俺をぶっちぎるだなんて、

コイツどんだけ暴れ回ったんだ…?確かに試験開始前には暴れて来いとは言ったが…。

 

「敵ポイント102点!救助ポイント84点!

救助ポイントというのはね、審査制の、我々雄英が見ていたもう一つの基礎能力さ!文字通り、困ってる人を救助出来ていたかを見ていたんだ。君は仮想敵に危なくなっている受験生を見たらすぐにそちらの敵を倒して他の受験生を助けたね!ヒーローの資質大だ!」

「レ、救助ポイント84点!?俺そんなに救助してたのか!?」

「審査制って言ってただろ。かなり審査員に優秀に写ったってことだろ。」

 

「しかも君は巨大仮想敵に逃げ遅れてた受験生を見てすぐに駆け出し、0ポイントの敵にも関わらずぶっ飛ばしちゃってたね!あの巨大仮想敵をぶっ飛ばしちゃう受験生なんて今回君の他に1人だけだ!こんなこと並のヒーローだって中々出来ることじゃない!」

やはり、杉元の他に1人あの巨大仮想敵をぶっ飛ばした奴が居るのか…恐らく合格者だろうが、一体どんなゴリラだ…?

 

「杉元佐一、186ポイント!!残念ながら、筆記試験と総合すると首席合格ではないけれど、実技試験だけなら堂々の首席合格だ!!!!胸を張れ!雄英で待ってるよ!!!!」

映写機が止まった。

 

「や、やったー!!!!雄英合格だー!!!!あ、母さんに伝えねえと!!

にしても実技首席合格だとよ!どーだ尾形!!お前に勝ったぜ!!」

「でも筆記はギリギリだろバカ杉元。」

「う、受かったからいいじゃん別に!は〜これでやっと地獄の勉強から解放されるな〜!」

「馬鹿か。高校は義務教育じゃねえんだから赤点ばっか取ってたら卒業できねえんだよ。勉強はこれからもっとやっていくぞ。」

「ええー!?折角これでやっと勉強から解放されると思ったのによぅ…。」

 

杉元が雄英に受かったためさっそく勉強を放棄しようとしたが、そうは問屋が卸さない。

雄英へ行けば、勉強も益々難しくなるだろう。何せ杉元が合格したとはいえ難関校だ。

入りましたが卒業出来ませんでしたじゃあ意味が無いのだ。俺もまだまだ杉元に勉強を教えてやらないとならないのだ。

 

「はーまあ、いいや。ひとまずこれでヒーローになる足がかりになったってことだよな。これでアシリパさん達にも会える可能性が高くなったんだよな。」

「ああ、雄英は何かと注目されるし、文化祭や体育祭のテレビ中継もある。もしかしたらヒーローになる前に見つかるかもしれんぞ。」

「おお!これで絶対にアシリパさん達を見つけてみせるぜ!!」

 

俺たちの高校生活が始まる。



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雄英高校入試編4(オマケ)

オマケ

 

「実技総合成績出ました。」

 

 

「敵ポイント102点に救助ポイント84点!とんでもない逸材だねえ。」

 

「1ポイント、2ポイント、3ポイント、どんな敵も問答無用で即行動不能にしちゃうなんてまるでバーサーカーみたいな戦い方だったなあ。」

 

「あと「俺は不死身の杉元だ!」って叫びながら倒してたんだって?面白い女の子だね。」

 

「個性は「身体強化」だったっけ?単純だけど強いねえ。」

 

「いや、「身体強化」だけじゃなくて「超速回復」なんて個性も持ってるらしい。ほら、ここ、頬の怪我が一瞬にして治ったぞ。」

 

「「身体強化」に「超速回復」か…チートだな。」

 

「自分で「不死身」って言えちゃうのも納得だね。」

 

「それに、なんと言ってもあの0ポイントのアレに立ち向かった上にぶっ飛ばしちゃったのはすごいね。そんなの久しく見なかったのに、今年はそれが2人も出てくるなんてすごいね。今年は豊作だ。」

 

「俺も思わずyeah!って言っちゃったからなー」

 

「しかも、アレぶっ飛ばしたもう1人の方と違って無傷なんだろ?あ、傷があってもすぐに回復しちゃうのか?」

 

「だが、戦い方が余りにも自分を顧みなさすぎだ…。いくら瞬時に回復すると言ってもそれは頂けないでしょう…。」

 

「でもyeah!って言っちゃたしなー」

 

「でもそう言えばこの子筆記試験が足引っ張っちゃって首席合格じゃないんでしょう?」

 

「もったいないね。せっかくの実技試験ぶっちぎりの1位だったのに」

 

「そう言えば実技二位通過で総合首席合格の子も凄いわよ。たんたんと射撃で仮想敵のカメラレンズ部分をピンポイントで次々撃ち抜いて。まさにスナイパーね。」

 

「確か彼、個性と射撃能力がリンクしてるわけじゃないんだろう?それであの精密射撃とは恐れいるね。本当にただの中学生か?」

 

「確か彼の父親が花沢重工の社長だったはずだから、父親経由で射撃の腕を磨いたのかもねー。」

 

「しかも射撃の腕だけじゃない。近くに寄ってきた仮想敵も近接戦で撃破してる。ビルとビルの間を跳べる上ビルまで登れる力、近接戦での格闘、冷静な判断力。精密な射撃。特別派手な個性ではないが、彼はもう既に完成していると言っていい。」

 

「敵、救助総合値99点か。例年なら単独トップに出れる点数だね。」

 

「それを大きく上回るこの杉元って子は本当に規格外ね。」

 

「そう言えば、この2人って同じ中学じゃないっけ?」

 

「ああ、同じ金神中学校だね。仲いいのかな?」

 

「俺が実技試験の説明してる最中、コソコソイチャイチャしてるようだったぜー!」

 

「彼氏彼女なのかしら?」

 

「リア充爆発しろ。」

 

「まあまあ、仲良きことは美しきかな、ですよ。」

 

「あっ!!!!思い出しました!!!!大変です、この一位通過と二位通過の子達、数年前にあった人身売買組織壊滅事件の被害者兼壊滅させた張本人たちですよ!!!!」

 

「え、あの、確か7歳に満たない子供2人が人身売買組織に捕まって、犯人たちを半殺しにしたってやつよね…?」

 

「あの時は大騒ぎになったよね。未就学児のたった2人の男児と女児が攫われたと思って、大勢のヒーローと警察が連携して組織に足を踏み入れたら死屍累々…犯人たちの死者は1人もいなかったけど、全員重傷を負ってたって…一体誰がと思ったらなんとその攫われた男児と女児がやったっていう…」

 

「あったあった!あの時は大騒ぎになったからなあ…。でも確か男児も女児もマスコミには公表しなかったんだよね。」

 

「流石に7歳にも満たない子供2人が人身売買組織を壊滅させましたーなんて間違っても公表出来なかったからねえ…。」

 

「ま、まあでも犯罪者達を懲らしめたってだけだから別にいいんじゃないかな?」

 

「懲らしめたって言うか、半殺しにしたって言うか…」

 

「これは2人とも要注意ですなあ…」

 

「(コイツら相変わらずむちゃくちゃしてるな…)…。」

 

「?牛山先生どうかしましたか?」

 

「いや、何でもない。」

 

「まあ、そんな過去の事件があったからって合格は翻らないし、これから皆さん先生達がこの二人を正しく導けば良いだけの話ですよ。」

 

「頑張れ相澤先生。」

 

「なんで俺のところ決定なんですか。」

 

 

以上、先生達の実技試験の尾杉♀批評でした。

2人が通ってる中学の名前を「金神中学」ってしときたかっただけです。

ヒーロー科は本来だと推薦組も含めて20人2クラス体制なんですが、この小説では尾杉♀が入学するので一クラス22人体制ってことにしといてください。勿論2人ともA組です。

そしてちらっと出た牛山さんは雄英で先生&ヒーローしてます。奥さんは家永♀。牛山さんは先生なんでそのうち2人と接触します。

 

 

 

 

 

 

 

オマケ2

 

「兄様、雄英高校入試、首席合格おめでとうございます!!」

 

「勇作…」

 

「あ、勇作くん!こんにちはー!」

 

「義姉様!こんにちは!!義姉様も雄英高校受験したのですよね?どうでしたか?」

 

「俺も受かったぜー!」

 

「わあ、おめでとうございます!!義姉様なら合格すると思っていました!!」

 

「嬉しいこと言うな〜勇作くんは〜!ヨシヨシ。」

 

「おい、杉元、あんまり勇作を構うな。勇作もなんでここに…」

 

「はい、実は父上から兄様が雄英高校に首席で合格したことを聞いて、兄様をお祝いしたくて来てしまいました。」

 

「………そうか…。」

 

「親父さんも喜んでるみたいだし、勇作くんにも祝われたし、良かったじゃねえか尾形。」

 

「…まあ、試験に持ってったあの銃も、あの人から貰ったものだしな…一応合格報告しただけだ。」

 

「素直じゃないな〜尾形は〜。」

 

「兄様と義姉様、2人とも本当におめでとうございます!春からは2人とも雄英生ですね!

雄英なら体育祭や文化祭もテレビ中継されますし、ご活躍期待していますね!!」

 

「ははは、おう!沢山テレビに映れるように頑張るぜ!な、尾形!」

 

「あー、はいはい。」

 

「いいですね、雄英高校。兄様と義姉様が居るのなら、私も雄英志望しようかなあ…」

 

「おお!勇作くんならきっと雄英だって受かるぜ!な!尾形!!」

 

「おい…」

 

「いいじゃねえか、勇作くんが雄英に進学したって。」

 

「………お前は、あの人の跡を継ぐんだろ?………まあ、確かに経営科ならいいかもな…。経営科なら実技試験もないし…。」

 

「おお!そうだな経営科ならいっぱい良いヒーロー武器とか開発してくれそうだぜ!」

 

「兄様、義姉様…!はい!私も雄英の経営科に入れるように今から頑張ります!!」

 

「おう!勇作くんその意気だ!!尾形も応援してやれよ!!」

 

「…………まあ、頑張れよ…。」

 

「はい!あ、そうでした、兄様!父上が兄様が使われる銃や武器のバックアップはしっかり受け持つので何かあれば知らせてほしいとのことです。」

 

「………そうか。分かった。」

 

「良かったな、尾形!」

 

「義姉様ももし何か武器が必要ならば遠慮せず仰って下さい!私が父にかけ合いますから。」

 

「ははっありがとうな勇作くん。でも俺には今のところ武器は必要ないかな…拳一つあれば事足りるし。」

 

「こいつはメスゴリラだからな。武器なんて必要ないんだ。」

 

「メスゴリラとか言うんじゃねえ!!」

 

「そうですよ、兄様!こんな美人な義姉様に向かってメスゴリラなどと失礼ですよ!」

 

「ええぇ…勇作くん、俺が美人とかお世辞言わなくていいんだよ…。尾形は勇作くんを少しは見習え。」

 

「はいはい美人美人。」

 

「絶対に思ってないだろ!!!!」

 

「思ってるよ。お前は美人だぞ。」

 

「…は!?な、何言ってんだよ!おおお尾形の馬鹿野郎!!!!」

 

「兄様と義姉様の仲が良くて私は嬉しいです。」

 

 

雄英合格後の勇作さん襲来話でした。

勇作さん超捏造。

勇作さんは二つ下設定なので、杉元と尾形が3年になったら経営科に入ってきそうですね。いや、恐らく入ってきます。

そして尾形のお父さんもこの世界では尾形の事を、ヒーローになる打算もありますがちゃんと思ってます。良かったね!尾形!!尾形を幸せにしてあげたい…杉元さん頼んだ…!

あと、「花沢重工」はちょいちょい出て来るかもですね。とりあえず尾形の銃と、2人のヒーローコスチュームとかは花沢重工が作製します。尾形コネフル活用!!!!



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個性把握テスト編

俺達が無事に雄英入試を突破して合格をもぎ取り、じいちゃんばあちゃんと杉元の母親に祝われささやかな祝賀会が開かれたあと、俺達がまずしたことと言えば中学3年間の総復習と高校の予習だ。

杉元は凄く嫌がっていたが、筆記試験をギリギリでパスした奴が悪い。寧ろ懇切丁寧に教えてやる俺に感謝すべきだろう。

勉強と共に、日課の訓練や組手も欠かさない。(組手は相変わらず勝てんが…)

 

そんなこんなを過ごしているうちに、雄英高校入学日となった。新しい制服に腕を通し、家を出た。すぐ近くの杉元の家に行き、杉元を迎えにいく。

杉元が慌てて出てきた。杉元も当然だが新しい制服姿になっている。ブレザーの胸元がとても窮屈そうだったが、それなりに似合っている。やはり今世の女の杉元は、顔の傷に目が行きがちだが、よく見れば(そして黙っていれば)美少女の類だ。

 

「おい、尾形、ジロジロ見んじゃねえよ。見物料取るぞこらぁ。」

おっと、つい見すぎてたみたいだ。

「いや、悪いな。その制服良く似合ってるぜ。可愛いぞ杉元。」

感じた通りの感想を述べると、杉元は真っ赤になった。

「か!可愛いとか馬鹿じゃねえの!?勇作くんを見習えとは言ったけど、薄ら寒いお世辞なんてすんじゃねえよクソ尾形!!!!」

折角褒めてやったのに、杉元はお世辞と捉えたのかへそを曲げてしまった。

杉元は今世の自分の容姿の良さに気づいてないのか、この手の褒め方をしても謙遜するか怒るかだ。まあ、今の所はその方が何かと都合が良いので訂正はしないがな。

 

「分かった分かった。いいからもう行くぞ。このままだと遅刻する。」

「うおっほんとだもうこんな時間じゃねえか!初日に遅刻とか洒落にならん。かーさーん!!いってきまーす!!」

杉元は玄関から大きな声でいってきますと言うと、奥の方から行ってらっしゃいと聞こえてきた。

「よし、急ぐぞ尾形!!」

「言われなくても。」

俺たちは入試の時と同じ様に電車で雄英に向かった。

 

雄英に着いた。やはり馬鹿でかい。

無駄に広い敷地を突っ切って自分たちのクラスの教室を目指す。

俺と杉元は幸い同じクラスだ。杉元を抑えるのには別クラスだとやりずらいため、この采配はありがたかった。もしかしたら中学の教師達から俺と杉元の聞き取り調査なんてもんがあってそれで同じクラスにしたなんて事も有り得るがそれは考えすぎだろう。

 

指定された教室まで何とか始業前に着けた。教室のこれまた馬鹿でかいドアの前にもじゃもじゃ頭の男子が1人佇んでいた。

 

「おい、入るんならさっさと入ってくれ…。」

「ひょわっ!?あ、すす、すみません…。」

俺が声を掛けるとその男子は驚いたのか変な声を上げた。うん?コイツどこかで見たな…。

「あー!あの入試の時コケそうだった人!」

杉元がでかい声で言った。ああ、そう言えばこんなやつ居たな。俺も思い出したぜ。

「ああ!あなたは入試の時の2人目の良い人!!」

男子の方も思い出したのかよくわからん事を杉元に言った。

「お前も受かったんだな〜!良かったな!!」

「は、はい。あなた達も受かったんですね。凄いです。」

「ははは、凄いって受かったお前もじゃん。」

などと杉元と男子はドア前で褒めあった。

 

「おい、褒め合うのは良いが、いい加減教室に入らないか?」

俺が呆れて教室へ入るのを促した。

「あ、そうですね。すみません!入ります!!」

そう言って男子は慌ててドアを開けた。

 

「机に足をかけるな!雄英の先輩方や机の製作者方に申し訳ないと思わないのか!?」

「思わねーよてめーどこ中だよ端役が!」

ドアを開けるとガラの悪いチンピラみたいな男子生徒と真面目っぽいメガネの男子生徒が言い争っていた。

ドアを開ける前から「山猫」の聴力で誰だかが言い合ってるのは聞こえていたが、しょうもない事で言い合っているなと思った。

高校生に俺達も上がったが、周りはまだまだ子供と言える。これは高校でも友人と呼べる相手は作れないだろう(作りたいとも全く思わないが)。

 

もじゃもじゃ頭の男子が小声で「ツートップ」と言っていた。なんだ?嫌なヤツらツートップって事か?

ドアを開けた事でこちらに気づいたらしい言い合っていた真面目っぽい方の男子がこちらに近づいてきた。

というかこの男子も、入試の実技試験説明の時俺達を「イチャついてる」と注意してきた奴ではないか。

「俺は私立聡明中学の…」

「聞いてたよ!あ…と、僕緑谷。よろしく飯田くん…。」

もじゃもじゃ頭もとい緑谷が自己紹介をした。

 

「あ、俺は金神中学の杉元佐一。杉元でいいぜ。んで、そっちのが幼馴染の尾形。これからよろしくな!」

杉元がつられて自己紹介をした。ついでに俺を紹介するな。

「ほう、2人は幼馴染なのか。幼馴染揃ってこの難関校に受かるとはすごいな。」

「へ、へえ…幼馴染か…仲のいい幼馴染で羨ましいよ…」

早速俺達が幼馴染だと杉元のお陰でバレた。いや、別に隠したいわけではないから別に構わないのだが…。

確かに傍から見ればただの幼馴染2人が揃って雄英に受かるのは珍しいことなのだろう。

だがこっちは雄英受験対策に数年掛けているのだ。受からなければ嘘だろう。

 

「そう言えば緑谷くん、君はあの実技の構造に気づいていたのだな。俺は気づけなかった…君を見誤ってたよ!!悔しいが君の方が上手だったようだ!」

メガネの飯田がそんなことを言い出した。

実技の構造とは伏せられていた救助ポイントの事だろう。アレに気づけるやつはまああまり居なかっただろう。

緑谷は驚いたような顔を浮かべている。果たして本当にコイツ気づいていたのだろうか?

 

「あ!そのモサモサ頭は!!地味目の!!」

教室のドアからまた新しい生徒が入ってきた。

緑谷の事を指しているのだろう。こいつもあの入試の時、転けそうになっていた緑谷を宙に浮かせて助けてた奴だ。

その女子生徒ははしゃぎながら緑谷に話しかけている。

 

「おい、杉元、そろそろ教師が来る頃だ。着席しておいた方が良いだろう。」

「あ、確かにそうだな。えーと席はどこだー?」

そろそろ教師が来る時間だ。話に盛り上がってる緑谷と女子を無視して杉元に着席を促す。

黒板に書かれてる席順を確認する。あいうえお順での席次らしいが、俺は廊下側の1番後ろで、杉元は一番前の上に教卓の真ん前だった。

杉元はこれじゃサボれねえとかブツブツ言っていたが、勉強しやすいという点ではいい席を引き当てられただろう。しかし杉元と席が離れるのは痛いな。コイツが暴れたら誰が抑えられるのか。

「てか尾形1番後ろかよ。ずっりぃ!」

「日頃の行いの賜物だろうな。」

「そんなわけないだろ!!」

そんなどうでもいい会話を杉元としていたらまたしても嫉妬のような視線を複数感じた。美人な杉元と親しげに話している事を羨む男子生徒でも居るのだろう。勿論どうでもいい事なので素知らぬ顔をしておく。

 

そうこうしているうちに、始業の鐘の音が鳴った。杉元との話はやめにして自分の席に向かい、黙って前を向いていたら声が聞こえた。

「お友達ごっこがしたいなら他所へいけ。」

低い声だ。廊下の外から聞こえたが、騒いでいた緑谷達の声が止んだ。

「ここはヒーロー科だぞ。」

飲むゼリー飲料を吸いながらその教師は言った。教室に入ってきた教師は、教師にしては無精髭なんぞはやして小汚い感じがしたが、動きに隙がない。雄英の教師は全てヒーローと言うからにはこの男もまたヒーローなのだろう。

「はい、静かになるまで8秒掛かりました。時間は有限。君たちは合理性に掛けるね。」

静かになるまでが8秒なら、このクラスは随分「いい子」が多いのだろう。

 

「担任の相澤消太だ。よろしくね。」

やはり教師で合っていたか。この無精髭の男が担任ということでザワついてる奴らも居るみたいだ。

 

「早速だが体操服を着てグラウンドに出ろ。」

何をやらせるのかは知らんが、入学早々にめんどくさい事をやらされそうで俺はため息をつき、着替えるため席を立った。



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個性把握テスト編2

「個性把握…テストォ!?」

 

体操服に着替え、グラウンドに集合した際、告げられたのはそんな言葉だった。

「個性把握テスト」とは、一体何をさせるのか。いや、字ヅラだけならそのまま、「個性」をどの程度「把握」しているか、出来ているかを図るテストだろう。

しかしそんなものは入試の実技試験でおおよそ見せている。今更何の意味があるのか。

 

しかし雄英が「自由」を校風にしているからと言って、入学式やらガイダンスやら吹っ飛ばしていきなりグラウンドで「個性把握テスト」とは、教師も自由過ぎるだろう。

 

「ソフトボール投げ、立ち幅跳び、50メートル走、持久走、握力、反復横跳び、上体起こし、長座体前屈。中学の時からやってるだろう?「個性」禁止の体力テストだ。」

この担任の相澤の言葉で俺はピンと来た。こいつは体力テストを「個性」アリでやらせるつもりだ。

思った通り、相澤はあの口の悪いチンピラみたいな男子生徒…爆豪に個性を使って思い切りボールを投げてみろと言い出した。

爆豪は「死ね」という掛け声とともに個性を使い…恐らく「個性:爆破」ってところか…思い切りボールを投げてみた。

みるみるボールが小さくなっていく。

爆豪の記録は705メートルか、俺でもそこまで出るかどうか分からないが、まあやって見るしかない。「個性:山猫」の力で身体能力もかなり伸びてる今ならそこまで苦では無いだろう。

杉元も「うぉぉ!すげえ!!俺もやってみてえ!!」と他の生徒達と一緒にはしゃいでいる。

 

「…面白そう、か…ヒーローになるための3年間、そんな腹づもりで過ごす気でいるのかい?」

誰かが言った「面白そう」という言葉に担任の相澤が反応した。いや、今まで個性を抑えられていたガキたちだ。これは面白そうと思うのも無理ないだろう。

俺はそう思ったが、相澤はそうは思わなかったらしい。

 

「よし、トータル成績最下位の者は、見込みなしと判断し、除籍処分にしよう。」

相澤はとんでもない事を言い出した。

だが、これも教師の権限として有るのだろう。とんでもない学校だ。上の命令が絶対なんて軍のようで全く笑えねえ。

だが担任の相澤は恐らく本気だろう。

本気で「見込みなし」と判断すれば除籍処分を下すはずだ。

 

「生徒の如何は俺たちの「自由」。ようこそこれが雄英高校ヒーロー科だ。」

 

他の生徒達が理不尽だなんだと当然の猛抗議をしてる中、杉元が寄ってきた。

「よっしゃ、尾形!勝負だぜ!!」

「…お前、除籍処分が掛かってるんだぞ分かってんのか?」

「分かってるって。つまり最下位にならなきゃ良いんだろ?俺は最下位なんかになる気は更々ねえからな。お前もそうだろ?」

「当たり前だ。」

「なら、俺とお前で個性把握テスト勝負だな!!」

「…お前のチート個性に俺が勝てるわけないだろ…。お前の勝ちが目に見えてる勝負なんか誰がするかよ。」

「んだよ尾形!ノリ悪いぞ!!」

「狙撃訓練とかだったら乗ってやっても良かったけどな。」

「そんな勝負お前の一人勝ちになるだけだろ!」

「へいへい、それより杉元、お前このテストでも全力出してみろよ。」

「へ?良いのかよ全力なんて出して。」

「良い、ここにいる奴ら全員の度肝ぶち抜いてやれ。かませ杉元。俺も全力出してみる。」

「おお!じゃあ俺も全力でやってみる!!俺は実技試験みたいにブッチギリ1番を目指すぜ!尾形も絶対最下位なんかになるなよ!」

「言われなくても分かってる。」

杉元に発破かけてるうちに、相澤と生徒のやり取りも終わったらしい。

 

「さて、デモンストレーションは終わり。こっからが本番だ。」

相澤がそう宣言した。

 

 

 

 

 

 

結果から言うと、総合成績は杉元が1位で、俺は3位だった。

分かっていたことだが、杉元は宣言通俺たち2位以下をぶっちぎった。

握力なんかは機械を壊して測定不能をたたき出しやがった。知ってはいたが、やはり杉元はメスゴリラだ。

走る系の競技も軒並み1位だった。

平凡な記録は長座体前屈のみだ。それでも十分柔らかい体をしていた。杉元はここに白石が居たら長座体前屈は白石が勝ってただろうなと俺に笑いながら言った。

テストの後半に行った持久走は1人の女子が己の個性でスクーターを出して走らせるという反則技を出したが、それに並走する杉元はやはりおかしいのだろう。ちなみに俺はその少し後ろで杉元達を追いかける形で走っていた。杉元と日々訓練していた賜物だ。

しかし、流石に持久走でスクーターを出したり、ボール投げで大砲を出して飛距離を稼いだり、万力を出して握力測定をしたりと、杉元と別の意味でやりたい放題だった2位の八百万百という女生徒には流石に俺も勝てなかった。それに勝ててしまう杉元はもはや人間ではないのかもしれない。

 

競技途中で杉元の異常さに気がついた生徒達の一部ががワラワラと杉元や俺の元に集まり凄い凄いと騒ぎ立てて来もした。すぐに担任の相澤が競技中だと散らして来たが。

 

 

ボール投げの際は別の生徒のことで一悶着あった。あのもじゃもじゃ頭の緑谷だ。

俺は他の生徒達も観察していた中、奴はそれまでの競技で目立った成績は出していなかった。

「個性」を全く使ってないように思えた。

このままではアイツが除籍処分になるだろうなと冷めた目で見ていた。

 

すると大きな声で「ったりめえだ!無個性の雑魚だぞ!」と聞こえた。

あれは爆豪か。その後

「無個性!?彼が入試時に何を成したか知らんのか!?」と飯田のでかい声が響いた。

爆豪が何をもって緑谷を「無個性」と断じたかは知らんが、無個性であの入試の実技試験を乗り越えるのは難しいだろう。

いや、俺のように射撃が得意ならば無個性でもパス出来るかもしれんが…それでもかなり難しいだろう。

それに飯田の奴は随分と緑谷を買っているようだし、入試で緑谷が何かをやらかしたと言っていた。……………まさか緑谷なのか?杉元の他にあの巨大仮想敵をぶっ飛ばしたのは…?

いや、それにしては今のところ何の個性も出してない。断ずるのは早計だろう。

そう考えてたら、緑谷がボールを投げた。

しかし、記録は普通の、平凡なものだった。ここでも「個性」を使わないつもりなのかと思っていたら、違ったようだ。

「「個性」を消した。」

どうやら担任相澤の「個性」のようだ。

しかし、「個性」を消す「個性」とは、この個性社会の中では脅威的な「個性」だ。

発動型の個性は消せるだろうが、異形型なんかにはどうなるのだろうと考えていたら相澤は気になることを緑谷に言っていた。

「見たとこ…「個性」を制御出来ていないんだろう?また行動不能になって誰かに助けてもらうつもりだったか?」

「山猫」の耳を持つ俺には聞こえたが、離れていた他の生徒達には聞こえてなかったようだ。

「個性」を使うだけで行動不能になるとは難儀な「個性」だ。発現したてなのか?まあ、俺や杉元は「個性」発現と同時に使いこなせてたので人によるのだろうが…。

 

「おい、尾形…さっき先生は緑谷になんて言ったんだ?」

杉元がヒソヒソ聞きに来た。

「緑谷はどうやら「個性」の制御が出来ないらしい。それで担任に注意を受けていた。」

俺が簡潔に伝えると杉元は驚いた。

「え!?「個性」の制御できないのか?じゃあこのテストヤバいじゃねえか。」

「ああ、このままなら緑谷が除籍処分になるだろうよ。」

「マジかよ…折角雄英に受かったってのに…。」

悲しげに杉元が囁いた。

「なんだ?もう情でも湧いたのか?お優しいことだな。」

「そんなんじゃねえけど、折角クラスメイトになったのにここではい、サヨナラじゃ残念じゃねえか。」

そんなことを杉元と喋っていると緑谷が再びボールを投げた。驚異的な飛距離だ(杉元には及ばなかったが)。

「どうやらまだサヨナラが決まったわけじゃなさそうだぜ杉元。良かったな。」

 

 

その後爆豪が緑谷に突撃していき相澤の捕縛武器にとっ捕まるなどのちょっとしたトラブルもあったが、無事全ての競技種目を終えた。

そして総合成績が貼り出される際には最下位の除籍処分は嘘だったと分かった。

担任が言うには「合理的虚偽」らしいが…恐らくそれこそ嘘だろう。あの担任は本当に見込みがなければ簡単に切って捨てただろう。

つまり最下位の緑谷にも「見込みアリ」と判断しただけだ。なぜそんなこと分かるのか?それはテストが終わり解散になった後、オールマイトと担任相澤のやり取りがこの「山猫」の耳に聞こえてきたからだ。

なんとあの男、去年受け持った1クラス全員を除籍処分にしたらしい。とんでもない野郎だ。

だが、そんな男が俺達を「見込みアリ」と判断したのだからまあ、良いだろう。

 

その後、教室に戻り配られたカリキュラムなどの書類に目を通し、こうして雄英高校入学初日が終了した。

 

「は〜終わった終わった〜帰ろうぜ尾形〜」

下校時間となり杉元が帰ろうと話しかけてきた。

「ああ、さっさと帰るか。」

しかし帰ろうとしたところで他の奴らに呼び止められた。

「なあなあお前ら仲良いけど同中だったりすんの?あ、俺は上鳴電気って言うんだけど」

金髪に一部黒いメッシュが入ったチャラそうな男子生徒だ。

「あ、俺は杉元佐一、こっちは尾形だ。杉元でいいぜ。同中ってか、幼馴染だ。」

「へー!幼馴染かあ!幼馴染で雄英進学とか何気にすげえな!!てか、こんな可愛い子と幼馴染とかあんたが羨ましいぜ。」

「可愛いとかお世辞は要らねえよ。そんで、こいつとは腐れ縁みたいなもんだ。一緒に雄英に入ったのは…た、たまたま?」

「あんだけ必死こいて勉強教えてやったのは誰だったっけな杉元〜?」

「う、わ、わっーてるよ。」

「なになに、勉強教えて貰ってたの?杉元ちゃん結構勉強苦手な方?俺もあんまり得意じゃなくってさ〜。」

「お、おう、割りと苦手だ。」

「割りとじゃなくてかなりだろう。筆記試験ギリギリだったくせに。」

「う、うるせー!いいんだよ俺は実技でぶっちぎったんだし!!」

「そう言えば個性把握テストでも杉元ちゃん、断トツ1位だったし、入試でもやっぱ凄かったの?」

「コイツは実技試験ブッチギリの1位だぞ。筆記はギリギリだったくせに。」

「筆記のことはもういいだろ!!!!」

「お、なになに?入試試験の話しか?あ、わり、俺は切島鋭児郎。」

「おお、俺は杉元佐一、杉元でいいぜ。こっちは幼馴染の尾形だ。」

「幼馴染なんだ、いいな幼馴染で仲良く雄英進学だなんて。で、杉元さんが、実技試験1位だったんだって?すげえなそりゃ。」

「なー、すげえよな、個性把握テストだけじゃなく実技試験1位だったなんて!え?もしかして首席合格??」

「いや、俺はその、筆記があんまり良くなかったんで首席じゃない…首席はそっちの方。ついでに実技試験も2位だぞそいつ。」

「えっあんたが首席合格なの!?しかも実技試験も2位かよ!すげえなあんた!そう言えば個性把握テストも3位だったよな〜てか首席って事は頭もいいって事か〜羨ましい。」

「首席合格か〜!やるなあ!!男らしいぜ!!」

「どんなもんだい。」

「だから、そのドヤ顔腹立つ!!!!」

そんなことを大きな声で騒いでいたら、教室でBONっと爆破音が響いた。

 

何事かと思ったら近くにいた目つきの悪い男子生徒…爆豪が手のひらで「個性:爆破」をしたようだ。こちらを向いてギロりと睨み、盛大に舌打ちをして去っていった。俺と杉元は特にビビりもしなかったが、金髪のチャラい男子もとい上鳴と赤い髪をツンツンに固めている切島は「うわ、びっくりした」と驚いていたようだ。

杉元は「なんだアイツ、感じ悪いやつだなあ」と眉をひそめて言っていた。

大方、俺達が入試試験首席と実技試験1位と知って不貞腐れたのだろう。プライドの高そうなガキだったしな。

ここで盛り上がるのも良いが、今日は個性把握テストで無駄に疲れた。話もそこそこに切り上げ、俺と杉元は帰路につく。



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個性把握テスト編3

電車に乗る前の帰路の途中、緑谷と飯田と女子…確か麗日か…と出会った。

 

「あ!えーと確か杉元佐一さんと尾形百之助くん!」

麗日が俺達を指して言った。

「おお、えーと緑谷と飯田と…えーと…」

「麗日お茶子です!」

「麗日さん!ごめんな名前覚えてなくて…」

「ううん、いーよいーよまだ入学初日だし。それよりおふたりさんも駅まで行くの?なら一緒にどうですか?」

「おう!いいぜ!な、尾形」

「勝手に決めるな杉元…」

「じゃーお前は先に1人で帰ってろ!」

「…チッ」

仕方ないので俺たちは3人組の後ろを歩くことにした。

 

「おふたりさん仲良いね〜!幼馴染なんだっけ?」

「おお、まあ腐れ縁みたいなもんだけどな」

「い、いや2人とも凄く仲良さそうだし、いい幼馴染だと思うよ…」

「そう言えばデク君と爆豪って人も元から知り合いっぽかったけど同中なの?」

「デク?」

「あ、本名は緑谷出久なんだけど、頑張れって感じのデクです。」

「蔑称だぞ緑谷くん!それでほんとに良いのか!?」

「い、いいんだ!コペルニクス的展開だから!あ、かっちゃんとは同中というか…実は僕らも幼馴染なんだ…」

「へえ緑谷とあの感じ悪い爆豪が幼馴染とはなあ」

杉元が悪意なくそう言った。やはり爆豪に対してあまりいい感情を抱いてないのだろう。その点は同感だ。

 

「あ、でも尾形君と杉元さんみたいに仲良い幼馴染じゃないんだ、本当に…。ていうか感じ悪いってかっちゃんがなんかしましたか??」

「いや、放課後ちょっと他の奴らと談笑してたんだけど突然大きな爆破音立てて睨まれて舌打ちされただけだ。」

「うわあああかっちゃんがすみません!!!!」

緑谷が爆豪に代わりペコペコ謝り出した。

 

「いや、緑谷が謝る事じゃないだろ。頭上げろよ。」

「そうだぜ、あいつは恐らく俺達が入試首席と実技試験1位って分かって嫉妬しただけだ。ありゃガキだな。」俺も一応補足しておいた。

 

「え!おふたりさん入試首席と実技試験1位なの!?凄いっ!!そう言えば今日の個性把握テストでも2人とも凄かったもんねえ!特に杉元さんなんかブッチギリだったもんね!」

「入試首席に実技試験1位とは凄いな…今日の個性把握テストでも思ったが、ぼ、俺ももっと精進しないと…。」

「なるほど、入試首席と実技試験1位じゃかっちゃんもみみっちいから嫉妬するだろうな…でも本当に凄いや…確かに今日の個性把握テストあんまり周り見る余裕がなかったけど、杉元さんの個性は身体能力強化っぽくて単純だけどとても、いやかなり強い個性って感じだった…。少しオールマイトの個性にも近い感じがあった…。尾形君の個性も身体能力強化って感じだったけどブツブツブツブツ」

3人とも驚いていたが、緑谷が途中から自分の世界に入ったかのようにブツブツ喋り出した。バグったか?

 

「お、おい、緑谷大丈夫か?」

「はっ!?ご、ごめんなさい、つい癖で」

「癖でそんなんなるのか、ははっお前面白い奴だな。そう言えばボール投げん時指腫らしてたけどもう大丈夫なのか?」

「あ、うんリカバリーガールのお陰で。でも治してもらったけど代わりに体力が減ってどっと疲れたよ。」

「へえ、人に治してもらえるとそんなんなるんだな。俺は回復しても体力削られる訳じゃないから良かったぜ。」

「へ?どういう…?」

「おい、杉元、お前の「個性」を知らないやつに話してもそれじゃ訳分からんだろうが。」

杉元が自分の個性を知ってる前提で話したから周りにはチンプンカンプンだろう。

 

「あ、わりいわりい、俺の「個性」も回復なんだ。って言っても自分しか回復できねえけど。」

「ええ!?杉元さん回復系個性なの!?えっでも個性把握テストじゃ身体能力を強化する個性だと思ったんだけど…。ええっ…?」

今日の個性把握テストを見ていただろう緑谷が混乱している。それも仕方ないことだろう。何せ…

 

「コイツの個性は「身体強化」と「超速回復」だ。チートだぞ。いやチートというかメスゴリラだ。」

「だからメスゴリラとか言うんじゃねえはっ倒すぞクソ尾形!!!!」

「えー!杉元さん「個性」2つも持っとるん!?」

「「身体強化」だけでも凄まじい能力なのに、その上「超速回復」…能力的に瞬間に回復するという個性だろうか?」

「ああ、この顔の傷以外なら傷を受けてもすぐに回復してなんともなくなるんだ。」

「ひゃああ、まさしくチートやねぇ。すごいなあ杉元さん。」

「よ、よせやい。」

「(かわいい)」

「(かわいい)」

「(かわいい)」

「(かわいい)」

杉元が照れた。素直に可愛いと思ってしまった。これは絶対に杉元には伝えられんな…。

 

「そ、それより緑谷、お前「個性」を制御できないってほんとかよ?大丈夫なのかお前。」

「え、なんで杉元さんそのことを…」

「あ、わりい尾形から聞いて…」

「なんで尾形くんが…?」

「………悪いな緑谷、俺は耳が少しばかり良くてな。お前が担任と話してる内容が聞こえたんだ。」

杉元が焦って別の話題にするのは良いが、これでは俺が盗み聞きしたようではないか。話す話題も少しは考えろ杉元の阿呆め。

 

「あ、そうだったんだ…なら気にしなくて良いよ。うん、実は個性が現れてからあんまり経ってなくて制御が全然効かないんだ…でもすぐにコントロールしてみせるから大丈夫だよ!!」

「そっか…なら大丈夫だな。」

「………ところで緑谷、入試の実技試験でゼロポイント仮想敵をぶっ倒したもう1人はお前か?」

「え、なんで尾形君その事を…!?」

「やっぱりお前か、今日の個性把握テストのボール投げで、人差し指のみであの飛距離をたたき出したんだ。あの仮想敵をやったのがお前でも不思議じゃないと思ってな。」

「そ、そうだったんだ。尾形くん観察眼凄いね。」

やはりあの巨大仮想敵をぶっ壊したもう一人は緑谷だったか。どんなゴリラかと思っていたが、まさかこんな華奢な奴がアレをぶっ壊してたとは驚きだ。

まあ、杉元も見た目だけはスレンダーな美人だからな。中身はバーサーカーメスゴリラだが。そう考えるとおかしくはないのだろう。

 

「おお!あの仮想敵ぶっ倒したもう1人って緑谷お前だったのか!!アレ結構硬かったよな〜」

「……………えーともしかして…」

「あの巨大仮想敵を倒したのはお前だけじゃないってことだ。コイツも倒してんだよ。」

「あれ杉元さんも倒したんですか!?」

緑谷はかなり驚いたようだ。確かにアレをぶっ壊せるのは中々居ないだろう。実際には受験生の中で2人もいたのだが。

 

「そう言えば入試首席と実技試験1位だもんね!あれ?てことは杉元さんが実技試験1位で尾形くんが首席合格?あれでも杉元さん首席合格じゃないんだね??」

「コイツは筆記がギリギリだったからな。筆記がもう少しマシだったら首席も有り得たかもしれんがな。」

「だから、もう筆記の事はいいってば!!!!」

「良い訳ないだろう。あんだけ俺が教えてやってたのにギリギリ合格しやがって。」

「ギ、ギリギリでも合格したんだからいいじゃねえか!!」

「筆記はギリギリだったんだね…。まあ、でも入試難しかったしね…。」

「あー、だよね私も結構やばかったよ〜入試。流石雄英高校だよねえ。」

「ああ、流石雄英高校だ。俺もかなり手を焼いた。」

「なー!ほらみろ尾形!俺だけじゃなくてみんなギリギリだったって言ってるぞ!!」

「いや全員ギリギリとは言ってないだろ。」

 

そんな阿呆な話をしていたら、すぐに駅に着いた。

3人組と別れて俺と杉元は電車に乗る。

「どうだった尾形?入学1日目は。」

「どうだったも何も…あの個性把握テストなんて無駄にやらされて疲れただけだ。」

「だらしねえなあ尾形。俺は全然余裕だぞ。」

「お前がゴリラだからだろう」

「だからゴリラ言うなクソ尾形!!マジではっ倒すぞ!!」

「ハイハイ悪かった悪かった。」

「全然心がこもってねえ!!」

 

杉元がまだブチブチ文句を言ってくるので仕方なくこちらからも話を振ろう。

「そういうお前はどう思ったんだ?入学初日。」

「俺か?うーんそうだなあ…まあ、クラスの奴らはみんな良さそうなやつっぽいし、仲良くなれそうで良かったぜ。1人を除いて。」

…1人を除いてというのは恐らく爆豪の事だろう。杉元の奴は今日たったの1日で爆豪の事を嫌ったらしい。俺も奴は嫌いなタイプであったのでまあ問題は無いがな。だが、ああいうプライドが高い手合いはおちょくって怒らせるのは楽しそうだ。鯉登少尉を思い出す。

 

「尾形とも仲良くしてくれそうで良かったぜ。」

「…俺は別に仲良くしたいとは思ってないが…。」

「いいからお前もいい加減友達の1人くらい作れよ。」

「お前が居れば十分だろう?」

「…………………お前時々そうやって恥ずかしい事言うよな…。」

 

杉元が顔を真っ赤にした。

こういう表情が見れるようになった今世は、悪くないと思えるものだった。




入試でもそうでしたが、杉元♀さんやりたい放題ですね。
尾形も中々のチート個性なのですが、杉元♀さんは…うん、化け物です。不死身の杉元だからね。仕方ないね。


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個性把握テスト編4(オマケ)

オマケ

 

「実技試験1位か…個性把握テストもブッチギリの1位だったし杉元さんは凄いなあ。」

 

「うんうん、凄いよね!しかもあの0ポイント仮想敵もデク君みたいにぶっ飛ばしちゃったってことだよね!凄い力だね!!」

 

「杉元さんも凄いが、首席合格の彼も優秀だろう。何せ別の会場に居たにも関わらず少しの手がかりで緑谷君が巨大仮想敵をやっつけたと推理したのだ。かなり頭がキレるのだろうな。」

 

「2人とも凄いよね〜。ところでやっぱり付き合ってるのかなあの二人?」

 

「ぶふっ!!う、麗日さん突然何を…!」

 

「え〜だって男女の幼馴染でなんか2人ともツーカーの仲って感じだったし、凄く距離感近かったよね?尾形君なんか杉元さんにベッタリって感じだったし、もしかしたら付き合ってるのかなあ〜って。」

 

「きっと周りが思っても言えなかったことをそんなハッキリと…」

 

「確かに、彼らは入試の実技試験前の説明会の時もコソコソイチャイチャしていたようだったな。」

 

「ほらほらー!飯田くんもこう証言してるしさー!気にならへん?私気になります!!」

 

「うーん気になるけど、杉元さんに聞いたら顔を真っ赤にして怒りだしそう…いや全くの想像だけどね…。」

 

「確かにありそう!!」

 

「では、尾形君の方に聞いてみたらどうだろうか?」

 

「尾形君かあ…うーん、尾形君に聞いたらニヤッと意地悪な顔をして想像に任せるとか言いそう…それか恥ずかしがることなくあっさり肯定してきそう…いや、これも全くの想像なんだけど…。」

 

「ありそーう!!」

 

 

 

以上、尾杉♀は1日にして周りから付き合ってる疑惑を掛けられるお話しでした。

因みに私は尾形に夢を見てるので、尾杉♀は周りからは中々の美男美女カップルだと思われてます。蓋を開ければサイコパスとバーサーカーのカップルなんですけどね!!

いいや!そこが尾杉の魅力だ!!

 

 

 

 

 

 

 

オマケ2

 

「いや〜杉元ちゃん、可愛いなあ〜!」

 

「なんだ、上鳴、お前杉元さんが好きなのか?でも会ってまだ1日だろ?」

 

「いや、杉元ちゃん好きってわけじゃなくて…いや、好きだけど、このクラスの女子全員レベル高いなって話。だってみんな可愛い子ばっかりじゃね?雄英入れて良かったぜ!」

 

「お前なあ…」

 

「オイラもその意見には賛成だぜ!!雄英万歳!!」

 

「うお、いきなりなんだ!?えーとあんたは…」

 

「オイラ、峰田実。ヨロシクな。このクラスの女子の話だろ?オイラも混ぜろよ!」

 

「お、お前もいける口か?よっしゃここは女子ももう居ないし語ろうぜ!!」

 

「ああ、兄弟!ほんとに雄英に入ってよかったぜ!レベル高い女子がこんなに居るなんてここは天国だ!特に見たか?あのヤオヨロッパイとスギッパイ!!特にスギッパイなんて視界の暴力だ!最高オブ最高だぜ!!」

 

「分かるぞ兄弟!!みんないい子なんだけど、ヤオヨロッパイとスギッパイは素晴らしいな!高一が持っていい持ち物じゃねーよなアレは!」

 

「分かってるな兄弟!!スギッパイはスレンダーなのに出るとこで過ぎてる所がたまんねえぜ!!」

 

「てか、杉元ちゃん、顔のでかい傷が目立つけどよく見りゃめちゃくちゃ美人だよな!!くー、俺もあんな可愛い幼馴染欲しかったぜ!ちくしょう尾形め!!!!」

 

「いや、寧ろあの顔の傷がアクセントとなって可愛さを際立たせてるとオイラは思うぜ!!それにこれからオイラ達だってあの可愛い子達とずっと一緒に居られるんだぜ?ずっと視姦出来るってことだぜ!?」

 

「「ヒーロー科最高ー!!!!」」

 

「付き合ってらねぇ…。」

 

 

 

 

以上、知らんところで上鳴と峰田に性的に見られる杉元さんのお話でした。

スギッパイはヤオヨロッパイより有る設定です。前世の雄っぱいがおっぱいになりました。

1-Aの女の子可愛い子しか居ないよね。勿論杉元♀さんも可愛いのです。

因みに入学初日の始業前に尾形に嫉妬の視線を向けていたのは上鳴と峰田です。特に峰田は親のかたきのように尾形を見ていました。嫉妬ってこわいね!



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戦闘訓練編

入学2日目。

雄英高校のカリキュラムではもう入学2日目で通常授業が始まる。

午前中は必修科目の英語数学などの普通の授業だ。やはり雄英。腐っても進学校だ。レベルが高いのが分かる。一応中学までの復習と、少しの予習を杉元にも施してきたから授業には遅れをとりはしない。杉元も何とか授業についていけるようだ。

昼は食堂で食べた。ばあちゃんにこれから毎日作ってもらうのも悪いので昼は専らここの食堂で食べることになるだろう。

杉元は母親が作ってくれるらしいが、初日位はクックヒーローが作るというランチを食べたいからと言って弁当は持ってこなかったらしい。杉元は無駄に的確なグルメリポートを披露しヒンナヒンナと言いながら美味そうに食べていた。

 

そして午後からの授業は「ヒーロー基礎学」だ。これはヒーロー科特有の授業のようだ(当たり前か)。カリキュラムによれば、戦闘訓練や救助訓練などを行うらしい。まあ、ヒーローになる為には戦闘や救助は切っても切れないだろう。単位数も最も多い。

多くの生徒がソワソワしながら待っていると、オールマイトが大きな声でドアから普通に入ってきた。

ただのスーツではなくヒーロースーツだ。

俺は特にヒーローに興味もないので詳しくは知らなかったが、何でも銀時代(シルバーエイジ)のコスチュームとやららしい。無駄な知識がひとつ増えた。

オールマイトに憧れている杉元も周りと一緒にはしゃいでいるようだった。

 

今日は早速戦闘訓練らしく、生徒全員ヒーロースーツに着替えるように促された。

雄英のヒーロー科には「被服控除」なるものがあり、入学前に「個性届け」「身体情報」を提出すると学校専属のサポート会社がコスチュームを用意してくれるシステムがある。それに加えて「要望」を添付するとできるだけその「要望」に沿ったコスチュームに仕上げてくれるらしい。

だが、自前でコスチュームを持ってくるのも良いとのことだ。

俺と杉元のヒーロースーツは、俺の父親が社長をしている「花沢重工」に任せてある。

「花沢重工」は主にヒーロー達の武器開発を手がけている大手の会社らしいが、ヒーロースーツの開発にも力を入れていきたいらしい。

俺たちのヒーロースーツもその先駆けとして快く作製してくれた、と腹違いの弟である勇作が言っていた。

因みに杉元の分も勇作が口添えしてくれたようだ。

今世の勇作も何かと兄様兄様と煩わしいが、まあ、いい。使えるものは何でも使っておけばいい。

 

どんなコスチュームにするか杉元に聞いた時、お前は折角だからあの第七師団の軍服っぽいものにしろと言われた。

なんでわざわざと思ったが、杉元が言うには前世で着ていた軍服なら前世であった奴らに認識してもらいやすいのではないかとのことだった。

まあ、別に機能が良ければ特に不都合はないので俺と杉元で前世で着ていた第七師団の軍服を思い出しながら要望に記載した。

 

杉元は、前世で被っていた軍帽が欲しい。それ以外はなんでもいいやと投げやりに言っていたので、じゃあお前も軍服っぽいものにしろと言ってやった。それなら軍帽を被っていても不自然ではないからな。

そう言うと杉元は何の不満を言うことなく了承した。…自分から言ったことだが、コイツに少しは自分が着る服ぐらいに頓着しろと言いたくなった。

俺も機能がよければどうでもいいとは思ったが、それでもコイツは一応今世では女だろう。全く女らしくないなと改めて感じた。

…いや、自分が着る服のことは頓着しない杉元だが、そう言えばコイツは少女漫画やら小動物やら花やらと、可愛いものが好きだったなと思い出し、別の点では女らしいっちゃ女らしいのか…?と思った。(だがその趣味は男だった前世からだったな…)

 

ヒーロースーツに着替え終わり、集合場所に移動する。…こりゃまんま第七師団の軍服だな…。素材やら性能やらは段違いだろうが…。着心地も全く違うなと思いながら他の奴らを待つ。着慣れたものだったため俺は特に手こずることなく着替えられたが、普段着ないような服に手こずってる連中も多いのだろう。杉元もまだ来ない。

…あいつ1人で着替えられてるのか…?

杉元のヒーロースーツへの要望は「軍帽」と「軍服」としか書かなかったので一体どんなスーツになっているのやら…。

チラホラ集まってきた中、杉元はまだ来ない。アイツ遅いなと思いながら待ってると、ようやく杉元がやって来た。

 

「やっと着替えられた…。」そう言いながら杉元が来た。杉元のヒーロースーツは要望通り軍帽&軍服だ。デザインなどは丸投げしたのだが、軍帽はともかく、軍服は「軍服風」と言っていいほど魔改造されていた。嵩張らなくていいとは思うが、パツパツすぎるのでは無いだろうか?防御力はそれなりに有るのだろうが…。

俺と同じ花沢重工で作ったからかは知らんが、俺と揃いのヒーロースーツにも見えなくもない。まあ、それに関しては別に良いのだが。

 

「遅かったじゃねえか杉元。なんだ?1人じゃ着替えられなかったか?」

「ちっげーよ!1人でも着替えられたわ!着替えられたけど…その、目のやり場に困って…あんまり早く着替えられなかったんだよ…くそっ。」

杉元が頬を染めながらそう言った。未だに男の感性なのだろう杉元は、周りが女子だらけの更衣室ではさっさと着替えられなかったようだ。全くウブな野郎だ。(今は野郎ではないが)

 

「つーか、尾形お前、本当にまんま第七師団だな。要望通りだけど。これなら前の奴らがお前を見ても誰だかすぐに分かっていいな!ははっやっぱりこれにして正解だったな。」

「お前のほうは…………パツパツ過ぎじゃねえか?」

「俺だって好きで着てんじゃねーよ!そんでまさかこんなだとは思ってなかったよ!!」

「ま、いいんじゃねえか。俺と揃いの様にも見えるし。可愛いぜ杉元。」

「可愛いとか言うんじゃねえクソ尾形!!あと別に揃いじゃねえだろ!!」

 

またも顔を赤くして怒ってくる杉元だ。

格好も相まって全然怖くはないが。

 

「おふたりさん、お揃いのスーツなの?やっぱり仲いいね〜!そんで軍服モチーフ?カッコイイ!!」

着替え終わって既に集まっていた麗日が杉元に話しかけてきた。やはり杉元と揃いのスーツだと思われている。

 

「いや、麗日さん別にコイツとお揃いってわけじゃないぞ…」

「えーでも尾形くんと杉元さんのスーツ、デザインとか凄くそっくりだよ!!カッコイイし可愛いよ!」

「いや、コイツの親父さんの会社にコイツと一緒にスーツの要望丸投げしたらこうなっただけだから!!あと可愛いっていうなら麗日さんの方がずっと可愛いぞ」

「えへへ、可愛いだなんて…ありがとう〜。

え、でも杉元さん達被服控除使ってないんだ?尾形くんのお父さんの会社ってヒーロースーツ作ってたりするの?」

「あー…それは」

「おい、喋りすぎだ杉元…。」

俺はあまり父親の事を周りに話したい訳では無いから会話を遮った。杉元もそれに気づいたのか「わりい、尾形。」と珍しく謝ってきた。

 

「………一応ヒーロー武器とかを作ってる所らしいが、ヒーロースーツにも力を注ぎたいらしくてな。それで俺と杉元のヒーロースーツを頼んだんだ。」

「へーそうなんだ!良いお父さんだね!」

「……………そうかもな…。」

まあ、前世の俺と母を捨てた父親よりは、こうして子の要望を聞き届ける位はしてくれる父親は、まあ、大分良い父親なのだろう。

…今世の俺は祝福された道を歩けているのだろう。

 

その後遅れて緑谷が最後にやって来た。

麗日や杉元は地に足ついてるなどという褒め言葉なのか微妙な言葉で褒めていた。ぶどう頭の生徒は何を見て何を思ったかは知りたくもないが「ヒーロー科最高」と緑谷に絡んでいた。

これで全員揃った。

 

 

「始めようか有精卵共!戦闘訓練のお時間だ!!」オールマイトがそう叫んだ。




今世では尾形にはきちんと祝福された道を歩いて行ってもらいます。杉元♀さんと共にな!!


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戦闘訓練編2

どうやら戦闘訓練は、屋内での対人戦闘訓練になるらしい。

「敵組」と「ヒーロー組」に別れて、2対2の屋内戦闘だ。

それについていろいろと聞きたい生徒達が一斉にオールマイトに群がり、矢継ぎ早に質問をぶつけていた。オールマイトが「聖徳太子」と叫ぶ。ナンバーワンヒーローと言えど、流石に複数の言葉は聞き取れないようだ。

 

オールマイトがカンペを読みながら詳しい説明をする。設定は敵が核兵器をアジトに隠し、ヒーローがそれに対処するというものだ。ヒーロー側は制限時間の15分以内に敵を捕まえるか核兵器を回収。敵側は制限時間まで核兵器を守るかヒーローを捕まえる、というルールだ。

 

「じゃあクジで対戦相手を決めるから。」

オールマイトがそういうが、2人1組ならば全員で11グループ出来上がる。1グループ対戦から溢れる事になるが…。

同じことを考えたのか、八百万がオールマイトに質問していた。

「11グループになりますけど、1グループ溢れます。どうするのでしょうか?」

「ああ、5回戦終わったら余裕がありそうな1チームにはもう1回対戦してもらうことになるね。」

オールマイトが回答してくれたため、俺の疑念も晴れた。

「了解しました。」

「じゃあみんなちゃっちゃとクジ引いちゃおうか!」

全員でクジを引く。チーム相手が杉元ならば個性を把握しているからやりやすいが、クジだからな。まあ、俺は誰と一緒でもそれなりに動けると思うが。…爆豪はコントロールしづらそうで嫌だが。

 

「(Kチームか…)」

「おい、尾形何だった?俺はKだったけど。」

まさかの杉元と一緒だ。これは幸運だろう。

「まさかお前と一緒だとはねえ…つくづく腐れ縁だな。俺もKだ。」

「げ、尾形とかよ!」

「なんだ?俺じゃ不満なのか?傷つくぜ。」

「いや、お前ばっかじゃなくて、たまには他の人とも組んでみてえって思っただけだ。」

確かに今生になってからずっと杉元と一緒だからな。しかしこればかりはクジの結果だ。

「クジなんだから仕方ねえだろ。」

「分かってるよ。仕方ねえ。」

 

クジでチームが決まると今度は対戦カード決めだ。

第一戦目はAチームヒーロー側の緑谷・麗日ペアとDチーム敵側の爆豪・飯田ペアに決まった。

戦闘訓練開始の前に俺たちを含む他のチーム連中は屋内戦闘をするビルの地下に移動した。どうやらここからモニタリングできる様になっているみたいだ。複数のモニターが表示されている。

「さあ、君たちも考えて見るんだぞ!」

オールマイトがそう言った。確かに戦闘を見ることでも経験になるだろう。

緑谷達の屋内戦闘訓練が始まった。

 

 

 

 

緑谷達の戦闘訓練は言ってしまうとお粗末なものだった。

「核兵器」の取り合いという設定なのに爆豪は屋内で大規模攻撃をするし、そもそも緑谷への私怨丸出しの戦闘だった。

緑谷も緑谷で、終了間際天井へ向かっての大規模攻撃だ。演習だから出来たが、本当に「核兵器」を確保する場合ではそれは出来ないものだろう。そして個性を制御出来ずまたもや保健室へと退場していった。

麗日も核兵器確保のため忍んでいたのに気を抜いたせいで途中で気づかれ、最終的に核兵器に向かって(正確にはその近くにいた飯田に向かってだが)石つぶてを放つという乱暴な攻撃を行ったのだ。

唯一敵役に徹していた飯田が良かったぐらいか。

それらの点を簡潔に指摘した八百万は良く観察していると言えた。

 

その後、ボロボロになった屋内の代わりのビルに移り、戦闘訓練を続けた。

しかし第5戦まで終わったが、俺たちはどうやら溢れた組となり、まだ戦闘を行えずにいた。

「おいおい俺たちの順番いつになったら回ってくるんだよ…。」杉元がぼやき始めた。他の生徒達の戦闘訓練を見てウズウズしてきたのだろう。

「今やってるチームの戦闘が終われば俺たちの番になるだろ。だからそんな焦るな。」

「ううん、早く俺も暴れたいぜ。」

「おい、きちんと設定と役に徹して好き勝手に暴れるなよ。じゃねえと緑谷や爆豪達みたいに低評価になるぞ。」

「分かってるって。きちんと核だと思ってやるよ。大規模攻撃もしねえ。」

「分かってるなら良い。」

杉元も馬鹿ではない。これならきちんと役に徹して行動するだろう。頭に血が上らなければだが。

 

やっと5組目の戦闘が終了し、ようやく俺たちの番が回ってきた。

「じゃあ最後はKチームだね!もう1戦Kチームとやっていいと思ってるチームは居ないかな?やってもいいって人は挙手!!」

オールマイトが他のチームに挙手を促した。

すぐに1人、手を挙げた奴が居た。コイツは2回戦目でヒーロー側として、個性の氷を使ってすぐに勝利した奴だ。名前は確か轟と言ったか…。

「俺はやっても良いです。障子、良いか?」

轟はチームメイトに確認を取る。聞かれた方も頷いたので、コイツらが相手になるのだろう。

「よし、じゃあ君たちにお願いしよう。君たちは1回ヒーロー側でやったから、今度は敵側でやってみるといい。なのでKチームはヒーロー側だ。」

「分かりました。」

そういうことで、俺たちはヒーロー側で戦うことになった。

 

「杉元、あの氷には気をつけろよ。」

「言われなくても分かってら。ありゃやりづらい相手だ。でも屋内訓練なら大規模攻撃もできないだろうし、凍りつかせても俺なら無理やり引っペがせる。」

「…あんまりスプラッタはやらん方が良いだろうが、そうも言っちゃいられねえか…。」

準備時間中に杉元に注意を促す。

杉元でも轟相手はやりづらい相手だろう。杉元なら凍りつかせられても出血覚悟で引き剥がすことが出来るだろうが、出来たらやらせたくはない。

リカバリーガールも居ることだし、俺は実弾を使うつもりだった。実弾は危険だが、俺ならば急所をわざと外して攻撃するのはわけない事だ。だが、爆豪が殺傷能力の高い武器を構わずぶちかましたせいでオールマイトからストップがかかった。仕方ないので殺傷能力の低いゴム弾のみの使用となった。恨むぜ爆豪。

 

準備時間も終わり、杉元と揃ってビルに入る。

「山猫」の耳をすませば、大体の敵の位置が分かる。

「4階南側の広間に1人居るな。恐らくそこに核が有るんだろう。

もう1人、比較的図体のでかい奴がこちらに来てる。障子だろう。このまま行けば2階でかち合う。」

「了解!このままダラダラしても時間が勿体ねえ。飛ばしていくぞ尾形!」

「へいへい、全く。外から実弾で狙撃させてくれりゃあ手っ取り早いんだがなあ…。」

「それじゃ屋内対人訓練にならないってオールマイトに却下されただろ!」

そう、俺はオールマイトに俺一人だけ別行動で外から狙撃させてくれないか一応交渉してみたのだ。結果はダメだったが。

実戦を想定しているならそれもアリじゃあダメなのか?

 

時間もない事なので、杉元と俺は走って4階広間を目指す。やはり途中で障子に出会った。

「来たか…1戦願おうか。」

障子は隠れもせずに正々堂々の勝負を挑んできた。狭い通路での格闘となる。

「ははっいいねえわかりやすい!じゃあ俺から行くぜ!!!!」

杉元は嬉嬉として障子に襲いかかろうとした。だが俺は杉元が襲いかかる前に、障子の複製された口や耳などの比較的柔らかそうな所を狙って早撃ちした。

ゴム弾ならば殺傷能力は低いが至近距離ならばこれで充分な威力だ。

怯んだ所を「山猫」の瞬発力で懐に潜り、顔面を銃の底で思い切り叩き上げた。脳を盛大に揺らしてやったのだ。堪らず巨体が崩れ落ちた。

 

「悪いな複製怪人さん、あんたは前座だ。さっさと退場してもらうぜ。」

「おい!尾形!!俺が先にやろうとしたのにてめぇ!!」

「時間がないんだぞ。どちらがやるでもいいじゃねえか。さっさとコイツに確保テープ回すから手伝え。」

「チッわーったよ!」

杉元が渋々引き下がり、障子に確保テープを巻き付けるのを手伝った。

テープを巻き終えた障子を廊下に転がして、俺たちは先に進んだ。

 

4階の南側の広間前に着いた。

「おい冷気がここまで漂ってきてるぞ。」

冷気が既にこちらまで漂ってきていることに嫌でも気付かされた。部屋は一体どんな極寒地獄になっているのやら。

「時間かけてても凍りつかせられるだけだ。早く中入ってさっさと捕まえんぞ。」

杉元がドアを開け放ち中へと入ったのに俺も続く。

 

殺風景な部屋の中、でかい「核兵器」がある光景は異様だ。それ以上に異様なのは凍りついているこの部屋全体だが。

「2対1だ。大人しくしろ。」

俺は実際のヒーローらしく一応投降勧告をしてみる。

「はいそうですかと大人しくするとでも思ってんのか?」

まあ、当然投降はしないよな。

「そーかよ。」

俺は即座に弾丸を轟の眉間に叩き込んだが、氷の壁に阻まれた。…実弾ならこんな遮蔽物も構わずぶち抜けるんだがとイラつきチッと舌打ちをする。今度は轟の番だとばかりに氷が襲いかかってくる。

それを杉元が拳でぶち壊す。氷の破片が当たりに散らばった。

杉元を脅威と判断したのだろう。氷の剣が杉元に殺到していく。だが杉元はそれも構わずドンドンぶち壊していく。

俺も隙を見て狙撃するが、全て氷に阻まれてしまう。クソっ…。

 

このままでは拉致があかないと轟も感じたのだろう。杉元の両手と俺の両足を一瞬で凍りつかせた。

 

「動いても良いが、足の皮と手の皮剥がれるぜ?」

轟が1回戦目の時と同じように勧告してくる。

俺はここから動かなくても銃弾をぶち込めることが出来るが、実弾を使えない状態では防がれてジリ貧だろう。

杉元は…このまま大人しくする訳ないだろう。

 

「こんなんじゃ俺は殺せないぜ!!」

俺が懸念した通り、杉元は皮膚が裂けるのも構わず無理やり氷を剥がして轟に迫る。派手に血が出るが、「個性:超速回復」で瞬時に傷が塞がっていく。

まさか無理やり氷を剥がし血が出るのも構わず突っ込んでくるとは思ってなかったであろう轟は一瞬固まってしまった。

そこを杉元が見逃す訳もなくその勢いのまま轟に組み付いて大きく吠えた。

「俺は不死身の杉元だ!!!!!」

 

杉元は轟を背負投げして床に大きく叩きつけた。

「ガハッ!!………ぐっ…。」

盛大に叩きつけられて息が詰まったのだろう。轟が呻いた。

勝負はあった。俺は足を覆う氷を銃の底でたたき割り脱出する。

「ほら杉元、確保テープだ。」

「サンキュー尾形。」

呻いていた轟に確保テープを巻こうとした杉元だったが、轟の目は死んでおらず、まだ足掻こうとフラフラと立ち上がりかけていた。

ので、俺は轟の両肩と両足にゴム弾を叩き込んでやった。弱っていたからか今度は氷には阻まれなかった。

「ぐっ!!」轟が更に呻いた。

俺は髪をかきあげながら呟く。

「これで動けんだろう。」

「…お前なあ…。それじゃ敵だろう…。」

杉元は呆れたように言ったが心外だ。

「敵を無力化するのもヒーローの務めだろ?」

轟へ確保テープを巻き終える。

 

「ヒーローチームWIN!!」

オールマイトの声が響いて、俺達の屋内戦闘訓練は終了した。



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戦闘訓練編3

室内での模擬戦闘も終わり、オールマイトがやって来た。

「君たち良く頑張ったね!さ、講評をやるからモニタールームに戻ろう!!轟少年は起き上がれるかい??」

オールマイトがそう言って轟を立ち上がらせようとしていた。

 

「っ…大丈夫です…。」

拘束を解かれた轟はオールマイトの手を掴み起き上がった。ゴム弾とはいえ至近距離で両肩両足にしっかり食らったはずなんだが、意外とタフな野郎だ。まあ、まだ痛そうにはしていたが。

途中で意識を取り戻していた障子を拾い、全員でモニタールームに戻ろうと歩き出す。

 

「おい、杉元。お前両手大丈夫だろうな?」

「あー?大丈夫に決まってるだろう。ほらもう両手無傷だぜ。」

「血まみれじゃねえか…。」

モニタールームに戻ろうと歩きながら、俺は杉元の血にまみれた手を掴みジロジロみた。あれだけ盛大に血を撒き散らかしてた癖にもう傷跡は無かった。恐るべき「不死身の杉元」だ。

「おい、もういいだろ。離せよ尾形。」

鬱陶しそうに杉元が言った。

 

俺はふと、何となくコイツの嫌がる顔が見たくなって、杉元の血にまみれた片手をベロりと舐めてやった。鉄くせえ。

「うおおおおぉ!!尾形!!てめぇ!!な、な、な、何しやがる!!」

「鉄くせえ。」

「当たり前だ!!この馬鹿!!クソ尾形!!バカ猫!!頭おかしいんじゃねえの!?」

「お前よりは頭大丈夫だ。これに懲りたらもうあんまり無茶すんなよ。あと、バカ猫ってなんだよ。」

「だからって舐めるやつが居るか!!ほんと、お前わけわかんねーよ!!」

ギャーギャー杉元が喚いているとオールマイトが寄ってきた。

「あー、おほん、杉元少女に尾形少年、仲がいいのはいい事だが、今は授業中だ。イチャイチャするのは授業が終わった後にしなさい。」

と苦言を呈してきた。

俺は「すみません、わかりました。」と言ってそそくさと歩を進めた。杉元はまだ何か喚きたそうだったが、オールマイトに注意されたためか何も言わずに歩き出した。

轟と障子がこちらを呆れたような目で見ていた気もするがそれは無視した。

これに懲りて、杉元も暫くは無茶しないだろう…多分。

 

「さっ講評だ!今回は2チームどんな感じだったかな?」

モニタールームに戻り、オールマイトが生徒達に発言を促す。

 

「やっぱり杉元ちゃんがベストじゃね?あの凄かった轟すらぶっ倒しちまったし。」

「杉元さんも凄かったけど、尾形君も良かったよね?障子君を手早く戦闘不能にしたし、轟君相手に善戦して最後は轟君の行動を不能にさせたし。」

「てか2人ともすごい速かったよね!核がある場所知ってたみたいに迅速に動いて、ビシッと敵側をやっつけて。まさに颯爽と人を助けるヒーローって感じだったよ!」

「殆ど格闘技でやっつけたのも良かったと思うわ。尾形ちゃんは銃使ってたけど、1発も核兵器に当てなかったし。ちゃんと核兵器を想定してる戦いだったと思うわ。ケロ。」

「でも杉元さん最後、氷を無理やり剥がしたから手が血まみれだったのちょっと見てられなかったよ。アレもう血、止まったの?大丈夫??」

などなどの感想を生徒達が出し合ってきた。

 

「そうだね、みんなが言ってること、大体正解かな。尾形少年は冷静に敵側の位置を察知し、的確な指示を出し、素早い判断力で障子少年を戦闘不能にした。最後の敵が諦めずに不穏な動きをしたのを想定して轟少年の動きを止める攻撃も良かった。ま、実弾だったら少しやり過ぎだったかもしれないが殺傷能力がほぼないゴム弾だからね。そこは仕方ない。銃を使用してたが、1発も核兵器に当たらないよう配慮して攻撃していたのも良かった点だろう。

杉元少女は圧倒的な攻撃力で轟少年の怒涛の攻撃を防いだのが良かったね。核にも配慮していたのも分かったよ。轟少年を倒したのも杉元少女だし、君が居なければヒーローチームの勝利は低かっただろう。

しかし、最後の轟少年の攻撃から抜け出すためとはいえ、自分を、怪我を顧みないのは…いや、確かにプロヒーローは自分の怪我や命を恐れていてはダメなんだが、君は少し怪我なんかに頓着しなさすぎだ。君の個性ですぐに回復するとは言えそれは良くないことだ。その点はこれから改善していこう。」

などとお言葉をいただいた。

「よって、ベストは僅差で尾形少年と言えるかな。杉元少女や負けた轟少年、障子少年も悪くは無かったよ。」

俺がベストにえらばれた事に杉元は不服そうだったが、オールマイトには文句を言えないようだった。

 

総評も全て終わり、全員で地下のモニタールームを出て、地上に戻る。

「お疲れさん!!緑谷少年以外は大きな怪我もなし!しかし真摯に取り組んだ!!初めての訓練にしちゃ皆上出来だったぜ!」

オールマイトがそう締めくくった。昨日の突然の個性把握テストと違い、真っ当な授業だったので面を食らってる生徒が何人か居るようだった。

オールマイトが着替えて教室へ戻れと言うと、急いでるのか、すぐに居なくなった。

 

全員教室へ戻ろうと歩き出す。俺も杉元と連れ立って教室へ戻ろうと歩いていたら、杉元が声を掛けられた。声をかけたのは轟だ。

「なあ、あんた強いんだな。」

「あ?なんだよいきなり。」

「いや、負けるなんて久しくしてないもんでな。あんたの個性、強化系だしオールマイトに似てるな。すげえ強かったよ。」

「お、おう。そうか?あんがとよ。」

負けたことが久しぶりだったらしい轟が杉元を褒めてきた。そりゃ「半熱半冷」なんてチートな個性を持っていたら中々負けないだろうな。

 

「あんたも、実弾使われてたら多分防げなかっただろうしな…。上には上が居るもんだな…。」

轟は俺にも話しかけてきた。確かに実弾を使えるのであれば、俺も轟には負けるつもりは無い。

「そりゃどーも。でもあんただってもう片方の個性使えば今回の勝負どう転んだか分かんなかったぜ?」

そう、コイツがもしも「熱」の方を使ってたらどうなっていたかは分からん。俺がそう言うと轟は眉を寄せて言った。

「…いや、こっちの方は使わねぇって決めてんだ…。」

轟が自分の左側のコスチュームに覆われた方を触りながらそう言った。目に暗い光を宿したかのように見えた。コイツにも暗い何かが有るのだろう。

だが俺は特に興味は無いので「そうか。」とだけ答えた。

杉元も何か感じ取ったのか、何も言わなかった。

 

「でも、次やる時は負けないぜ?」

と、轟が不敵な笑みでそう言った。

俺と杉元もニヤリと笑う。

「「次もぶち負かしてやるよ。」」

どちらとも無くそう言ってやった。

 

着替えを手早く済ませ教室へと戻る。

あとは杉元を待って帰るだけとなった。ガヤガヤとほぼ全員が着替えを終えて教室に戻る頃にやっと杉元が戻ってきた。恐らくコスチュームを着た時と同じように、周りに女子が居るから上手く着替えられなかったのだろう。

「杉元帰るぞ早くしろ。」

俺は席を立ち、杉元の机の前で待つ。

「分かった。ちょっと待ってろ。」

と、杉元は帰る支度をする。

だが、杉元が帰る準備をし始めたら、他の奴らがワラワラ話しかけてきた。

 

「今回の戦闘訓練も杉元さん達凄かったな!!あ、今みんなで訓練の反省会してたんだ!」

「ねー!凄かったよ轟の攻撃全部拳で退けるなんて!良く退けたよ〜!」

「俺も強化系だから胸が熱くなったぜ!!」

「尾形ちゃんも早撃ちで障子ちゃんを行動不能にして凄かったわ。それにあなた銃だけじゃなくて近接格闘も出来るのね。」

 

切島を皮切りに知らない奴らまで話しかけてきた。

「お、おうありがとうな切島。と、えーと…?」

まだ名前を覚えてないであろう杉元が首を傾げて戸惑っている。

「私、芦戸三奈!良く退けたよ〜!」

「俺!砂藤。」

「蛙吹梅雨よ。梅雨ちゃんと呼んで。」

知らない奴らが杉元に自己紹介をした。

「おう、芦戸さんに砂藤に蛙吹さん…じゃなくて梅雨ちゃん。これからよろしくな!!ほら、尾形も!!」

「………よろしく。」

杉元がうるさいので仕方なく挨拶をする。

このまま一緒に反省会をしようと言われたが、俺はこのままみんなで仲良く反省会などする気もサラサラないので辞退する。

杉元にも帰るように促す。

すると今度は麗日がこちらに来て話しかけてきた。

 

「ねえねえ、ちょっとデク君みんなで待たへん?」

と聞いてきた。

「待たない。」

俺は即答で断った。何が楽しくて緑谷を待たねばならない。

「尾形お前なあ…良いだろ少し待つくらい。反省会しながらみんな待つようだしよう…。」

杉元はそう言って残りたそうにしていたがダメだ。

「爆豪は帰っただろう?それに杉元、今日帰ったら早めに課題やるんだろう?それとも何か?俺がお前の課題見なくてもいいって事か?それならそれで俺は別に構わんが。」

「麗日さんごめん!先帰るわ!!皆も悪い!!緑谷にはよろしく伝えといてくれ!!」

分かればいい。

 

そうして俺たちは帰ることにした。他の奴らは結構残るみたいだった。人気者だな緑谷。

しかし、俺達が校内を出る途中、凄い勢いの緑谷が俺たちを抜かして校舎から出ていった。余りに急いでいたのか俺たちにも気づいていないようだった。

「緑谷どうしたんだろ?」

「さあな」

別にどうでもいいだろう。

 

校舎を出ようとしたら入口のところで緑谷と爆豪が言い争ってる声が聞こえた。

いや、爆豪が一方的に怒ってるだけのようだ。

「だからなんだ!?今日…俺はてめぇに負けた!!!そんだけだろが!そんだけ……」

「氷の奴や銃野郎、キズ女を見て敵わねえんじゃって思っちまった…!!クソ!!!」

「ポニーテールの奴の言うことに納得しちまった…」

「クソが!!クッソ!!てめえもだ…!デク!!こっからだ!!俺は…!!こっから…!!いいか…!?俺はここで1番になってやる!!!」

 

そんな事を爆豪は緑谷に吠えていた。

その後オールマイトもやって来て爆豪を慰めてる様だったが、爆豪には不要そうであった。

緑谷も俺達が後ろに居たことに気づき、驚き狼狽えていた。

「す、杉元さんに尾形君!!!??い、いつからここに居たの!?」

「爆豪が俺のことを「キズ女」って言ってた辺りかなあ。なあ〜、緑谷、アイツ今度締めていいか?」

杉元がにこやかな顔で指をパキパキ鳴らしながら緑谷に問うていた。「キズ女」はお気に召さなかったらしい。かく言う俺も「銃野郎」だが。

「わ、わあああ!かっちゃんがごめんなさい!!!!」

緑谷がまた爆豪の代わりにペコペコ謝り出した。

「あーもういいって。てかこれも緑谷が謝るもんじゃねーだろ。」

「う、そうですね…あ、じゃあその前の僕の話は…聞いてませんでしたか?」

「おう、俺たちがここに来た時はもう爆豪がなんか騒いでた所だったぜ?それがどうかしたか?」

「いえ、聞いてなければそれでいいんだ。」

緑谷がほっとしたような顔をした。

 

爆豪が吠える前に言っていた緑谷の「人から授かった個性」とは何なのだろうか。

 

俺の「山猫」の耳のおかげでここへたどり着く前に聞こえてきた緑谷の言葉だ。

借り物の力だの何だの言っていたが、緑谷が秘密にしておきたいことは恐らくこの事だろう。さてどうするか…。

「お、尾形君も聞いてないよね…?」

俺の耳がいい事を知ってる緑谷が不安げに聞いてきた。

 

「…ああ、聞こえてきたのは爆豪の怒声だけだぜ。」

「………そっか。それなら良かった。」

緑谷が信じたかは分からんが嘘をついておく。面倒ごとに巻き込まれそうな気がしたんでな。それに緑谷の「個性」が借り物でも何でも俺にはどうでもいいことだ。聞こえていたことをあえて伝える必要も無いだろう。

 

「じゃあ俺たち先帰るから。緑谷もまた明日なー!ゆっくり身体休めろよ〜!」

「うん、ありがとう杉元さん。尾形君も、また明日〜!」

そう言って杉元が緑谷と分かれた。

俺たちは連れ立って歩いて帰る。

「で、緑谷は何を秘密にしてるんだ?」

杉元が聞いてきた。相変わらずこういう事には聡いやつだ。

「何のことだ?」

「惚けんなよ。お前のことだからどうせ聞こえてたんだろ?なんだ?緑谷の秘密って厄介事か?」

「お前が緑谷の身を心配するような秘密じゃあねえよ。」

「…そっかなら、良い。」

俺がそう答えたら杉元はそれ以上聞いては来なかった。全く甘いやつだ。

 

俺は帰り、電車に揺られながら緑谷の個性について考えていた。どうでもいいとは思ったが少し気になったことがあった。緑谷の個性は、全開にすれば恐らく杉元と同等かそれ以上になるだろう。杉元以上のパワーの持ち主なんぞオールマイト位なものだ。授かったと言っていたが…………まさかな。




かっちゃんから尾形は「銃野郎」、杉元♀は「キズ女」と呼ばれてることが分かりましたね。


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戦闘訓練編4(オマケ)

オマケ

 

「緑谷と爆豪の闘いも熱かったけど、やっぱり杉元さんと轟の戦いが激しくて良かったよな〜!」

 

「うんうん、杉元さん凄かったよね〜轟の攻撃全部拳で叩き潰しちゃうんだもん。びっくりだよね〜!」

 

「でも最後の氷剥がして両手血まみれになったの、俺見てて思わずいててててって思っちゃったよ。」

 

「でもオールマイトが講評の時言ってたけど、「個性」で治っちゃったんでしょう?」

 

「身体強化の「個性」だけじゃなく回復の「個性」も有るなんてほんとチートじゃん。轟もチートすげえと思ったけど、やっぱり杉元さんもチートだよなあ。」

 

「でもコンビの尾形君も地味にすごいよね。何処に核が有るのか分かったのって彼の「個性」のおかげなんでしょ?」

 

「そうみたいだよね〜。尾形君、銃の取り扱いも凄いよね。スナイプ先生みたい!それに障子君倒したみたいに近接格闘も出来るみたいだし。接近戦も出来て、近距離遠距離両方いけるなんて何気凄くない!?」

 

「そう言えば彼の「個性」って何なんだろう?やっぱり射撃系の「個性」かな?アレでも個性把握テストじゃ増強系っぽかったような??うーん何だろう…。」

 

「後さ〜杉元さんとも息ぴったりって感じのコンビネーションだったよね〜やっぱり幼馴染だからかなあ?」

 

「…でも尾形ちゃん、全然私達に話しかけてこないわよね。杉元ちゃんは話しかけてくるけど。シャイなのかしら?」

 

「しゃ、シャイって感じはしなかったけど…どちらかと言うとクールだよね。なんか無表情だし。」

 

「でも杉元さんと話している時は少し楽しそうな顔してたよね。」

 

「え、そうかな…?」

 

「そうだよ〜多分!雰囲気的に!!」

 

「やっぱりあの2人付き合ってるのかしら?」

 

「梅雨ちゃんいきなり言っちゃうんだそれ!」

 

「ごめんなさい、私何でも思ったことを言っちゃうの。」

 

「うーんでもどうなんだろう?2人とも幼馴染とは言ってるけど、付き合ってるとは言ってないし。」

 

「でもただの幼馴染にしては距離近くない?それにヒーローコスチュームまでお揃いだよ!?あそこまで普通の幼馴染じゃやらないでしょ普通!!」

 

「付き合ってても、杉元ちゃんが恥ずかしがって秘密にしてるのかもしれないわ。」

 

「「「「有り得そう。」」」」

 

「機会があれば、今度付き合っているのか聞いてみようかしら?」

 

 

 

 

以上、尾杉♀がやはりクラスメイト達からも付き合っている疑惑をかけられるお話でした。

入学二日目で早くも付き合ってると思われるのも、まあ無自覚に距離が近い上イチャイチャしてるから仕方ないよね!!

ここにいない轟と障子も、尾形の杉元のおててぺろぺろ事件で付き合っていると思ってます。オールマイトも青春だなって思ってます。




今回のオマケ話はこれだけです。もし楽しみにしていた方がいらっしゃったらすみません…。尾杉♀は学校から帰ったあと杉元♀さんが課題持って尾形の部屋で勉強を見てもらいました。会話文にしようかと思ったけど、特に話が進むわけでもなく尾杉♀が無自覚にイチャついて終わるだけなのでなしにしました。皆さんの脳内で尾杉♀をイチャつかせといて下さい(丸投げ)。


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学級委員長投票編

今回は学級委員長投票編なので短いですが、比較的尾形と杉元♀がイチャイチャしてます(当社比)


「オールマイトの授業はどうですか?」

入学3日目。雄英に登校途中、そんな声が聞こえてきた。

もう数分歩けば雄英の校門に差し掛かる。

恐らくオールマイトが雄英に教師として着任したことがマスコミを活気づかせ、校門前で生徒達に質問をしているのだろう。

思った通り、校門前はマスコミ共で人だかりができている。

「うわ、なんだあれ?マスコミか??」

一緒に登校していた杉元がマスコミの多さに驚いている。

「大方オールマイトが教師になったんでそれ目当てだろう。」

「ふーん、マスコミ連中も暇なんだな。」

それは同意だが、ナンバーワンヒーローの知名度のせいだろう。有名税だがオールマイトも大変だな、と人事のように思った。(実際人事だ。)

校門を潜ろうとしたら、俺たちにもマスコミ共がマイクを片手に押し掛けてきた。

「あなた達はオールマイトについてどう…うわキズ凄い!!!!!!どうしたのあなた達のその顔のキズ!?」

とてつもなく失礼な質問だ。

今まで驚かせる事はあったが(特に杉元のキズは)、面と向かって、初対面でこんなにも無礼な質問はされなかった。これもマスコミ特有の厚顔さがあってこそのものだろう。

杉元も突然の質問に驚いている。

「俺達のキズはあんたらには関係ないだろう。杉元、行くぞ。」

固まっていた杉元の手を取り、更に質問してきたマスコミ共は無視して校門を潜った。

俺達が校門を潜ったあとは、担任の相澤が授業の妨げとなると言ってマスコミ共を追い払っていた。因みに相澤はマスコミにも小汚いと思われて若干引かれていた。

それでも構わず取材しようと校門を潜ろうとした愚かなマスコミは、通称「雄英バリアー」なるセキュリティにより締め出されたようだった。

 

教室に着くと、杉元の他の奴らへの挨拶もそこそこに朝礼の時間となった。

担任の相澤が教室に入り、教壇に立った。

「昨日の戦闘訓練お疲れ様。Vと成績見させてもらった。」

そう言うと、相澤はまず爆豪に昨日の失態に対し苦言を呈し、次に緑谷にも「個性」を制御出来ずに腕をぶっ壊した事について注意と発破をかけていた。相澤は更に続けた。

「それと杉元、お前は自分の怪我なんかを顧みなさすぎだ。いくら自分の「個性」で治るって言ってもやり過ぎるな。お前なら回避も出来るだろう。横着すんなよ。あんまり酷いようなら自傷行為と見なすぞ。お前はR-18Gでミッドナイトの様な18禁ヒーローになりたくはないだろう?尾形、お前も杉元の事よく見とけよ。」と昨日の杉元の戦いに対して注意を飛ばした。何故か俺に杉元を注意してみておけとのオマケ付きで。

「何故俺が杉元を見とかにゃならんのですか…。」

「幼馴染だろう?心配ならお前が手綱をちゃんと握っとけ。」

「………はあー………分かりましたよ…。」

にべも無く流された。まあ、俺も杉元に無茶をやらせようとは全く思ってもいない為、言われなくても杉元は良く見張るつもりだ。

なので、これ以上は俺も何も言わなかった。

杉元は「何で尾形なんかに…。」と小声でごにょごにょ何か言ってる様だった。

 

「さてホームルームの本題だ…。急で悪いが今日は君らに…」

相澤は続けて言った。入学初日に個性把握テストなんぞ強制した教師だ。また何か臨時テストでもやらされるのかと生徒達はみな緊張した。

「学級委員長を決めてもらう。」

「「「学校っぽいの来たー!!!」」」

緊張し損だった。

 

しかし学級委員か…全くもって面倒くさい。

俺はそう思ったが、他の連中はそうは思わなかったらしい。ほぼ全ての奴らが学級委員長をやりたがり、ハイハイと挙手していた。

ヒーロー科において委員長は、集団を導くリーダーの素地を鍛えるとか何とかなるものらしい。

リーダー等なる気もない俺には関係ないことだ。

一番前の席に座っている杉元は手をあげる素振りもしなかった。恐らく俺と同じに面倒くさいと思っているのだろう。

喧騒の中、「静粛にしたまえ!!!」と一際大きな声が上がった。飯田だ。

飯田の発言により、学級委員長は投票で決めることとなった。

他の奴らも文句を言いつつそれに従った。

俺は特に誰かに入れたい共思わんがどうするか…。

すると杉元がこちらをチラリと振り返った。

………………コイツまさか俺に投票するつもりじゃねえだろうな…。

俺は嫌な予感がしたので紙に大きく「杉元」と書いてやる。

全員の投票が終わった。

 

開票するとなんということだろうか。緑谷が3票で委員長に決まった。

それは別にどうでもいい。問題は俺に誰かが2票入れた事だ。

俺は副委員長にされてしまったのだ。

1人は恐らく杉元だろう。だがもう1人は誰だ…?全く心当たりがない。

副委員長なぞ全くもって面倒くさい。一体誰が入れやがったクソ…。

他の奴らは「緑谷なんだかんだ熱いしな!」やら「尾形も何考えてるか分かんねえけど、個性把握テストも昨日の戦闘訓練も凄かったしな〜。」等と受け入れている。やはりコイツらは「いい子ちゃん」だな。もっと不満をもってやり直しを要求するぐらいしやがれ。

委員長、副委員長として緑谷と共に前に立たされる…。俺はやる気は無いので何も言わなかったが、緑谷は「ママママジデマジでか…!!」とテンパっている様だった。

すると杉元がニヤニヤ笑ってるのが良く見えた…クソがぁ…。

 

ホームルームが終わり、午前の通常授業が始まる。昨日も感じたがやはりレベルが高い。杉元が昨日何とか終わらせた課題片手に答えを発言している。俺が確認したから当たり前だが正解の様だ。……………クソ面倒くさいこと押し付けやがって。課題見てやらねえぞ…。そんな事を心の中で愚痴った。

 

午前の授業が終わり、昼飯のため、杉元と共に大食堂へ移動しようとすると、麗日達が声をかけてきた。

「おふたりさんも大食堂行くん?ならもし良かったらウチらと食べません?」

と、一緒に食べないかと誘われた。

俺は一緒に食べたいとも思わなかったし言わなかったが、杉元が「誘ってくれてありがとう麗日さん!じゃあ一緒に食べようか!」と即答したため、仕方なく、麗日・緑谷・飯田の3人組と昼食を共にすることになった。

 

食事を取ってると、緑谷が「いざ委員長やるとなると、務まるか不安だよ…。」と弱音を吐いてきた。それに対して麗日、飯田、杉元は「務まる」「大丈夫さ」「お前なら出来るさきっと」と励ましの言葉を送っていた。俺も一応「お前次第だろう」と言葉を送った。

そして会話の流れで緑谷に投票したのが飯田だと判明したのに加え、飯田はヒーロー一家の子供ということが分かった。

相変わらず俺はヒーローに興味もなく疎いので知らなかったが、「ターボヒーローインゲニウム」というヒーローを兄に持ってると言っていた。それに対してヒーローオタクだという緑谷はとても興奮していた。杉元も「お前の兄ちゃんヒーローなのか!すげえな!」とはしゃいでいた。

飯田の話が終わったので、俺は聞きそびれていたことを杉元に聞いた。

 

「そう言えば俺に投票した1票はお前だろ、んー?杉元〜。」

「えっ!?何でお前俺が投票したって分かったの!?」

「お前の考えてる事なんてお見通しなんだよ…。たくっ面倒くさい事押し付けやがって…。」

「いや〜悪い、まさか俺の票でお前が副委員長になるとは思わなくて…でもお前も自分に入れてたんならやりたかったんだろう?」

「俺はお前に入れたんだから、他に誰かが俺に1票入れたんだよ。誰だか知らねえが…。」

「お前何俺に入れてんだよ!!このバカ猫!!一体誰が入れたんだろうなと思ったわ!!」

「お前も俺に投票したんだからあいこだろ。」

「うっ…まあ、そうなるな…てかじゃあお前に入れたもう1人って誰なんだよ?」

と、杉元は首を傾げたが、もう殆ど誰が入れたかは絞れている。

「他の奴らは殆ど自分に入れてたからな…0票だったのはそこの飯田と麗日と、あと轟だ。飯田は緑谷に入れてた…となるとあとは…」

「あ、私はデク君に入れたよ!」

「う、麗日さんだったの!?」

緑谷が盛大に驚いた。となると答えは出たな。

「轟が尾形に入れたのか!ふーん、でもなんでだろうな??」

「さあなあ…。」

俺には心当たりがない。

「きっと昨日の戦闘訓練で尾形君に1票入れたくなる何かがあったんだよきっと。」

「そうだねえ。尾形君、昨日の戦闘訓練も大活躍だったもんね!轟君もきっと凄いって思ったから入れたんだよ!」

「確かに昨日の戦闘訓練は杉元さんも凄かったが、尾形君もかなりいい動きしていたからな。何か轟君の琴線に触れたのだろう。」

「そんなもんかねえ…。」

確かに昨日の戦闘訓練は俺達が勝ったが、轟自体に勝ったのは杉元だ。何故杉元でなく俺に入れたのか…。

「何にせよ面倒くさい事を押し付けられたぜ…。」

そう俺がボヤくと、生真面目な飯田が注意してきた。

「尾形君!君は「多」をけん引する責任重大な仕事を任されたんだ!面倒くさいと嫌がるべきじゃないだろう!!」

「そんな事言われてもねえ…面倒なのは面倒なんだよ…」

「君は!全く、もっと責任の自覚というものを…」

飯田が更に言い募ろうとした時、警報が鳴り響いた。

 

「なんだあ?」

「警報だな。」

杉元が首を傾げる。俺は事実を端的に言った。

どうやらこの警報はセキュリティ3突破という、誰だかが雄英に侵入した際の警報らしい。屋外へ避難しろとの事だが、如何せん大食堂は人が多すぎた。多くの生徒が出口に殺到している。

緑谷達もすぐさま移動しようとしたが、人波に攫われて行った。

杉元も出口に移動しようとしたので、俺は手を掴みそれを阻んだ。

「おいなんだよ尾形。俺達も早く移動しねえと。」

「まあ待て杉元。侵入したのはどうやらマスコミ連中みたいだぜ。」

食堂の生徒達の声で外の声を拾いづらいが、外から「オールマイト出してくださいよ!居るんでしょう!?」「一言コメント頂けたら帰りますよ!」等の声を「山猫」の耳のおかげで幾つか拾えた。

「マジかよ!じゃあみんなに知らせねえと…!!」

と杉元は言ったがこの状態では無理だろう。

「この状況じゃあ無理だ。沈静化するまでこのまま待った方が良さそうだぞ。」

「けどよ!外にマスコミ来てるだけだって知ってるの俺たちしか多分居ないんだろう?

どうにかしてみんなに教えてやらねえと…!」

と杉元と口論していたら、大きな声が食堂全体に響いた。

 

「大丈ー夫!!!!!!!」

この声は飯田か?

声は続けて、外の侵入者はただのマスコミで、パニックになることはない。最高峰の人間にふさわしい行動を、とデカい声で簡潔に伝えた。

そのおかげで食堂の混乱は収まった。

「すげえな飯田のやつ!アイツのおかげでパニックが収まったぜ!!」

「ああ、そうだな。これでおしくらまんじゅうすること無く教室に戻れそうだ。」

これなら少しは飯田に感謝してもいいだろう。

少し経つと、警察も駆けつけてきて、マスコミも追い返せたようだ。全くろくな事しねえなマスコミ共は。

 

午後、他の委員を決めるための時間となった。俺は仕方ないので前へ出て取り仕切ることになった。緑谷が緊張して何も言わないので仕方なく俺が促す。

「おい、緑谷…委員長だろ、早く進めろ。」

そうすると緑谷は何を思ったのか突然、「委員長はやっぱり、飯田君がいいと思います。」

等と言い出したのだ。

おいおい、そりゃないだろと俺は思ったが、食堂での一件を見ていた奴らも、飯田で良いと言い出しやがった。

俺は呆気にとられたが、この流れを逃す気は無かった。

 

「じゃあ俺も副委員長は八百万が良いと思うぜ。個性把握テストじゃあ俺を抜いて2位だし、昨日の戦闘訓練でも皆の戦闘を冷静に且つ的確に見抜いていた。俺なんかよりずっと副委員長に向いてる。」

と、他の奴らが納得しそうな理由を並べ立て、八百万を生贄に捧げた。

八百万は戸惑っていたが、やはり副委員長をやりたいようなので任せることができそうだ。

やいのやいのしてると担任が「何でも良いから早くしろ…時間が勿体無い。」と進めるよう促してきたので、俺は有耶無耶の内に副委員長を八百万に押し付けることに無事成功した。

全くやれやれだ。

 

因みに副委員長を蹴った為、俺は杉元と共に「緑化委員」になった。花やら木やらの面倒もかったるいが、杉元が率先して面倒を見るだろうから、俺は楽できるだろうという目論見だ。案の定、杉元はどんな花を植えようかな〜とご機嫌で考えてるようだ。これで少しは他の委員より楽できるだろう。

 

放課後になり、杉元と連れ立って帰ろうとした際、杉元の前を轟が通り過ぎる。

杉元は何を思ったのか轟を呼び止めた。

「あ、おい轟ー!」

「?なんか用か杉元。」

「いや、用って程じゃねえけど、今朝の委員長決めの時に、尾形に投票したのあんただろ?俺も尾形に入れたんだけど、轟も何で尾形に入れたのか気になってよお。なんで?」

と轟に聞いていた。確かにそれは俺も少し気になっていた。直接聞きたいとは思ってはなかったが。

「………昨日の戦闘訓練で、尾形が的確な指示を出てた様だし、委員長にいいんじゃねえかと思っただけだ。」

やはり昨日の戦闘訓練が轟に響いた様だ。なるほどな。短い理由だがわかりやすい。

「そっかそっかなるほどな〜、あ、引き止めて悪かったな!じゃあまた明日な轟!!」

「…おう、また明日な杉元。」

そう言って轟は先に帰っていった。

 

俺達も連れ立って教室を後にする。

すると何故か杉元がニヤニヤしだした。

「なんだ杉元、ニヤニヤして。気持ち悪いぞ。」

「気持ち悪いってなんだよ!人がせっかく微笑んでるのに気持ち悪いとはなんだ!!」

本当のことだから仕方ないだろう。

杉元がニヤニヤ笑いながら続けた。

「いや、尾形の事買ってるやつが居て良かったな〜と思っただけだ。でも良かったな尾形。轟となら友達になれそうじゃねえか!」

なんだそんな事で喜んでいたのかこいつは…恥ずかしい奴だ。

「…だから、友達なんぞ俺には必要ないと言ってるだろうがこの阿呆。」

「またまた〜照れちゃって「ひゃくちゃん」たら〜!目指せ友達100人!!」

杉元が記憶を取り戻す前の呼び名で呼んでからかってくる。

「俺の「お友達」は後にも先にもお前だけだぜ「さっちゃん」。」

俺も記憶を取り戻す前の呼び名で杉元を呼んだ。

「…………っ!!!!このっボッチ野郎!!

お前なんか一生ボッチで居ろ!!ばーか!!」

そう言って杉元が走り出した。

ちらりと見えたその頬と耳は真っ赤になっていた。俺はフッと笑って杉元の後を追った。




因みに、杉元♀が緑化委員に入るのを見て尾形が緑化委員になったので、尾形は周りから独占欲の強い彼氏だと更に思われることになりました。まあ、間違ってませんね。


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学級委員長投票編2(オマケ)

オマケ

 

「おい尾形急げ!!次の電車逃すぞ!!」

 

「おい、無駄に急ぐなこの馬鹿。帰りの電車なら1本位逃しても構わんだろう。」

 

「良いから!今日は見たいテレビがあんだよ!!課題さっさと終わらせてえんだよ!協力しろ尾形!!」

 

「あ〜ハイハイ。分かったからそんな急ぐな。ほら、電車も丁度着く。」

 

「よし!丁度だぜ!うわっぷ…。」

 

「おい、大丈夫か?杉も…………」

 

「おっと、大丈夫ですか?」

 

「すみません、俺が前見ずに突撃しちゃって…て………………………谷垣……????」

 

「え?どこかでお会いしたことが……………………………………………………………………………お前杉元、か………?」

 

「うおおおおぉ!!!!谷垣だ!!!!!!

お前!!!!!谷垣だ!!!!!!!!!えっ?えっ?その反応、記憶、あるんだよな!!!???」

 

「落ち着け杉元、おい、谷垣も、一旦電車から出るぞ。」

 

「お、おう…ってお前、尾形か!!!!!!お前は…………髭はないがあの頃のまんまなんだな。」

 

「髭がないのはお前もだろう谷垣源次郎一等卒。」

 

「うおおおおぉ谷垣とこんな所で出会えるなんて!!!!ちょ、ちょ、どっか落ち着ける所行こうぜ!!な、いいだろう??」

 

「ああ、俺は構わないが…。」

 

「じゃあここから近いサ○ゼにでも行こうぜ!!!!」

 

「良いから杉元、お前は少し落ち着け…。」

 

「これが落ち着いて居られるかよ!?うおおおおぉ谷垣だ!本物だぞ!!!!」

 

「あ、ああ、俺は谷垣だぞ。杉元。」

 

「谷垣に本物も偽物もないだろ…。」

 

 

 

 

 

 

 

「っは〜、まさかこんな所で谷垣と会うなんてなあ…。おいおい、谷垣、お前元気にしてたか?」

 

「俺もこんな所でお前達に会うとは思わなかったぞ。ああ、壮健だ。お前達も…元気そうだな。」

 

「おー、元気元気!なっ尾形!!」

 

「そうだな…。」

 

「あっ!なあなあ!記憶、ちゃんとあるんだよな??俺たちは生まれてから死ぬまでの記憶、北海道であった事、全部覚えてるぜ!!」

 

「ああ、俺も前の世で生まれてから死ぬまでの記憶がちゃんとあるぞ。お前達は………北海道での記憶が全部有るのに一緒に居るのか………?その、杉元お前大丈夫なのか…?」

 

「あ〜…まあ、今世で色々あってな………。

俺達記憶が戻る前は幼馴染だったんだ。それで色々あって記憶が戻って、で、まあ、前世の事は水に流すってことになったんだ。」

 

「そうか………まあ、杉元お前がそう決めたんなら俺は何も言わん。………しかしお前達が幼馴染とはなあ…………というか、杉元お前、まさか女になってるとは思ってなかったぞ。だから最初全然分からんかった。その傷でもしやって思ってやっと気づけたぞ。」

 

「ははっ、まあ俺も記憶戻った時は戸惑ったけど、女なのも、もう慣れたもんだぜ?まあ、俺は自分が女って気もしてないけどな。」

 

「お前はいい加減自分が女だって事を自覚しろバカ。」

 

「うるせー!俺はこれでいいんだよ!!」

 

「ははは、お前ら今生は仲いいんだな。

ところでお前らのその制服…。」

 

「ああ、雄英だ。お前もだろ谷垣。何年生だ?あとやっぱりヒーロー科なのか?」

 

「いや、俺は1年の普通科だ。お前達は何年生で何科なんだ?」

 

「俺たちも1年だぜ!!同い年だな!んで、尾形も俺もヒーロー科だぜ。」

 

「お前達ヒーロー科か、すごいな。俺もヒーロー科狙いだったんだが、恥ずかしい事に落ちてしまってな…。」

 

「何をやっとるんだ谷垣一等卒。」

 

「はは、もう一等卒ではないだろ。尾形上等兵。…まあ、これからの成績によってはヒーロー科への編入の可能性もあるからそれを狙おうかと思ってる。」

 

「そっか…。そう言えば谷垣、今のお前にも頬の傷があるんだな。右側のココの。」

 

「ああ、コレか?小学生くらいの時にちょっとな…。だが、杉元と尾形も前世と同じ傷跡なんだな。特に杉元は目立つだろう?」

 

「あーまあなあ。俺達もちょっとな。記憶が戻る前の時に敵っつーか人身売買組織に二人揃って捕まっちまってよお。そん時にこの傷が出来たんだ。なんでかこの傷は何しても消えなくてよお…。あ、でも、お互いこの傷を見て前の記憶が戻ったんだよ。ついでに個性も発現したから尾形と一緒に俺達を捕まえたヤツらをボコって何とかした。あ、もしかして谷垣は自分の顔の傷を見て思い出したとかか!?」

 

「……………おい、なんか今とんでもない事を聞いた気がするんだが…。」

 

「気にするな谷垣。「不死身の杉元」の記憶が蘇りゃ犯人半殺しなんて当然のことだろ?寧ろ殺さなかった事にビックリしねえか?」

 

「………納得した。しかし、今生は戦争もないようだが、色々物騒な世の中だよな。まあ、戦争が無いだけ全然マシなんだろうが…。

ああ、記憶がいつ戻ったかだったよな。いや、俺は顔に傷が出来る前に記憶が戻ってた。」

 

「へー、何か切っ掛けとかあったのか?」

 

「ああ、実はインカラマッが近所に居てな。インカラマッに小学校の時出会ってそれで思い出した。」

 

「インカラマッも居んのかよ!!」

 

「ああ、今は雄英の普通科に2個上で通ってるぞ。「個性」は前世で得意だった「占い」だ。精度は今生の方が上がってると言ってたから今度会ったら占ってもらうと良い。」

 

「しかも雄英に通ってんのか!はー、やっぱり俺たち以外にも居たなあ尾形!!しかも雄英に通ってるとはなあ。」

 

「ああ、驚いたな。だが、やっぱり俺が言った通り雄英にしといて良かっただろ杉元。」

 

「あ〜、まあ、そうだな。

あっ!なあなあ谷垣、前にあった奴には、インカラマッ以外にも会えたか?アシリパさんとか…。どうだ?」

 

「そうだな、今生では実はあの二瓶鉄造と会ったぞ。前の時の記憶は無いようだったがとある猟友会の会長をしていたぞ。アシリパ達とは…すまん、会ってない。」

 

「そうか…やっぱアシリパさん達とは会ってないか…。」

 

「………だが谷垣とは会えたんだ。インカラマッや二瓶鉄造も居る。アシリパ達もこの世のどこかにいる可能性が高いぞ。それが分かっただけでも良かったじゃねえか杉元。」

 

「…おう、そうだな。きっとアシリパさんもどこかに必ず居るんだ。絶対見つけ出してみせるさ。ついでに白石も。」

 

「ククッ、その意気だ。」

 

「………ほんとにお前達今世は幼馴染なんだな…。めちゃくちゃ仲が良さそうでホッとしたぞ。」

 

「……………はあ!?おおお俺達のどこが仲がいいんだよ!!谷垣!!勘違いすんなよ!!コイツとは幼馴染という名のただの腐れ縁だからな!!腐れ縁!!!!」

 

「おいおい、酷いぜ杉元。お前を嫁にする約束もした仲じゃねえか、傷つくぜ。」

 

「は???????嫁!!!!!?????」

 

「クソ尾形てめえ!!!!なんでこのタイミングで言っちゃうの!!!???谷垣違うんだこれは〜、あ〜、その〜、あの〜、その〜。」

 

「違わねえだろ。それともお前承諾した約束、今更反故にするつもりか?おい、どうなんだ杉元??」

 

「………………はい、約束しました…。」

 

「もっと大きな声で言え杉元一等卒。」

 

「約束しました!!!!」

 

「との事だ。谷垣、ないとは思うがお前杉元に手を出すなよ。俺の未来の嫁さんだからな。」

 

「……………………俺は一体何を見させられているんだ…????」




以上、谷垣ニシパと出会う尾杉♀のお話でした。

そして無駄に牽制をする尾形上等兵。
大丈夫、谷垣ニシパにはインカラマッという姉さん女房が居るから。安心しろ尾形。
盛大に惚気られ尾形に無駄に牽制食らう谷垣ニシパかわいそ…。

インカラマッや二瓶鉄造も居ることが分かりましたね。二瓶さんにはありませんが、インカラマッには記憶が有ります。お互い小学校の時に顔を合わせて記憶が戻りました。
谷垣も、杉元達と似たような考えで、有名になれば、前世で会った人達にも会えるかもしれないと思って雄英を志望しました。この人もめっちゃ勉強頑張った。ヒーローになれなくても、将来マタギの仕事が出来ればと思ってる。そして息子の様に思っていたチカパシにも会いたいと思ってます。

谷垣の「個性」なんですが、あんまり考えてないんですよね…。うーんどうしよう…。「個性:マタギ」とかかなあ(安直)。獲物を狙えば百発百中とか…。でも尾形と違って身体能力は上がらない能力なので常人並なのでヒーロー科には残念ながら受からなかったとかそんな感じですかねえ…。なっとらんぞ谷垣一等卒。秋田に帰れ(尾形)。あ、谷垣さん秋田出身にしておこう。インカラマッもね。なので2人とも一人暮らししてます。そのうち寮ぐらしになるかな?

とりあえず、みんな大好きドスケベセクシーマタギを登場させることが出来て満足です。これからもちょいちょい登場させたいです。ムッワアアァ。


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USJ襲撃編

雄英に入学してから数日が経った。

毎日勉学に追われ、杉元はひいひい言いつつも授業には何とかついていけてる様で何よりだ。俺が見てやっているんだからそうじゃなければ困る。

本日の午後からのヒーロー基礎学は人命救助訓練だ。

どうやらこの授業は担任の相澤とオールマイト、そしてもう2人の教師が取り仕切る大掛かりな授業になるようだ。

ヒーローコスチュームの着用は各自の判断に任され、訓練場は少し離れた場所の為バスでの移動になるらしい。

ヒーローコスチュームの着用は自由との事だが、殆どの生徒はコスチュームに着替えようとしている。かく言う俺もヒーローコスチュームに着替えるつもりだ。やはり体操服よりも防御や動きやすさが違う。杉元も同じく着替えるつもりみたいだ。

 

全員が着替え終わりグラウンドに集合する。杉元があの俺と揃いに見える軍服風のヒーローコスチュームに着替え終わるのはまたもや最後の方だった。この調子ではさっさと着替えられるようになるにはいつのことになるやら…。

バスに乗り込もうとすると委員長である飯田が「バスの席順でスムーズにいくよう番号順に二列で並ぼう!!」と大きな声で取り仕切った。

しかし、いざバスに乗ると、バスのタイプが飯田の想定と食い違っていたのもあり、各々好きな席に座っていった。

俺は何処でも良かったので適当に杉元の隣に座った。

バスでの移動中、生徒達は各々好きなことを喋っている。そんな中、何処と無くカエルに似ている女子…蛙吹が緑谷と杉元に話しかけてきた。

 

「私思ったことを何でも言っちゃうのは緑谷ちゃん、杉元ちゃん。」

「あ!?ハイ!?蛙吹さん!!」

緑谷はテンパった返事をしていた。

「梅雨ちゃんと呼んで。」

それに対して蛙吹は名前+ちゃん付けで呼んでほしいと要求していた。

「おう、なんだ梅雨ちゃん?」

杉元は蛙吹を下の名前で呼び快活に返事をしている。

「あなた達の「個性」オールマイトに似てる。」

と蛙吹が言った。

それに対して緑谷は声にならないほど驚き、キョドりながら否定していた。

…緑谷の個性は「借り物」らしいが、やはりオールマイトに似ていると感じたのは俺だけでは無かったようだ。やはりこいつの個性はもしや…。俺は思考の渦に飲まれそうになったが、杉元の声で引き戻された。

「ははっ!俺も自分でもちょっとオールマイトの「個性」と似てるかな〜って思ってたんだ。そう言われると嬉しいぜ!!」と嬉しそうに笑って答えていた。

この話題には蛙吹の隣に座っていた切島も食いついた。

「待てよ、梅雨ちゃん。オールマイトは怪我しねえぞ。緑谷とのは似て非なるアレだぜ?

でも杉元さんの「個性」は確かにオールマイトに似てるな!めっちゃ強いもんな〜あんなに強力な「個性」、プロの中にも中々居ねえぜ!!」

「ははは、ありがとな切島。俺のことはもう杉元でいいぜ?さんは要らねえ。」

「お?そうか?じゃあ今度からは杉元って呼ばして貰うな。」

と、杉元と和やかな会話を交わした。

「しかし緑谷や杉元の増強型のシンプルな「個性」は良いな!派手で出来ることが多い!

俺の「硬化」は対人じゃ強えけどいかんせん地味なんだよな〜。」

切島はそう続けて言った。

「地味といえば尾形は「個性」派手じゃないけど強えよな!個性把握テストじゃ3位だったし、入試の実技も2位通過なんだろ?」

と突然俺に話が振られた。

「そう言えば尾形ちゃんの「個性」って何なのかしら?個性把握テストだと増強型っぽかったけど、屋内対人戦闘訓練じゃ敵の位置を的確に把握してたし、でも銃の扱いもプロ並みだったわ。あなたも轟ちゃんや杉元ちゃんの様に複数の「個性」持ちなのかしら?」

蛙吹が俺に「個性」はなんなのか聞いてきた。周りの視線が俺に集まる。

俺は「個性」をひけらかす趣味も無ければ、こいつらの話に付き合う義理もない為無言を貫こうかとも思ったが、杉元が「おい、話振られてんだからちゃんと答えろよ。」と肘でつついてきたので仕方なく答えてやった。

「……………俺の「個性」は「山猫」だ。山猫並みの身体能力を持ってるからな。だから増強型にも見えたんだろう。敵の位置を把握出来たのもこの「山猫」の耳のおかげだ。個性はコレ一つだけだ。」

そう答えれば、周りは盛り上がった。

「へー!山猫並みの身体能力か〜いいなあ色々出来そうだな!」

「そうだったのね。あら、でも射撃能力と直接は関係ない個性なのね?てっきり尾形ちゃんは射撃能力と関係ある個性も持ってるのかと思ってたわ。」

「………射撃の腕は悪いが自前だ。まあ、切島の言う通り、杉元なんかに比べりゃ派手さもない、地味な個性だぜ?」

俺がそう自虐すると緑谷が否定してきた。

「そんな事ないよ!尾形君の個性も汎用性の高い強い「個性」だし、「個性」が直接関係ないのにアレだけの銃の腕前を持ってる人なんてプロでもそうそう居ないよ。

それと、切島君の個性も僕はすごくかっこいいと思うよ。プロにも十分通用する「個性」だよ。」

とお褒めの言葉を頂いた。

「プロなー!しかしやっぱヒーローも人気商売みてえなとこあるぜ!?」

切島がそう嘆いた。確かにヒーローは人気商売だ。カッコよく派手な強「個性」持ちが有利だろう。そう思うとやはり杉元の「個性」はヒーローに向いているのだろうな。

「派手で強いっつったらやっぱ杉元と轟と爆豪だな。」切島がそう続けた。

蛙吹が「爆豪ちゃんはキレてばっかだから人気でなさそ。」と言うと、案の定爆豪はキレた。そこから上鳴が爆豪に向かって「クソを下水で煮込んだ性格」と的確な罵倒を飛ばし、更に爆豪をキレさせるという一幕となった。

俺は上鳴の的を射た正確な罵倒を心の中で賞賛した。なんて的確な罵倒だろう。そのボキャブラリーに拍手した。杉元も大笑いしていた。

 

「私思った事を何でも言っちゃうって言ったじゃない?杉元ちゃん、尾形ちゃん。」

少し騒ぎが収まったところで蛙吹がまたそんなことを俺と杉元に言い出してきた。

杉元は「ああ、そう言ってるな梅雨ちゃん。またどうかしたか?」と聞き返していた。

俺も仕方なく「………なんだ蛙吹?」と聞き返した。

「杉元ちゃん、尾形ちゃん、あなた達って、やっぱり付き合ってるのかしら?」

そう蛙吹が問うて来たら、車内が水を打ったような静けさに包まれた。

「…………………ばっ!!!!????なななななななななななな何を言ってるんだ梅雨ちゃん!!!!!!??????」

杉元が真っ赤になり車内全体に響くような声を上げた。

「ケロ、だってあなた達、気づけばいつも一緒に居るし、距離も近いし、登下校も一緒だし、ヒーローコスチュームもお揃いだし、委員会も同じにしてるし、まるで熟年夫婦の雰囲気だし、今も隣の席に座っているしで、とてもただの幼馴染の関係には思えないのだもの。」

「イヤイヤイヤイヤ、コイツとはただの幼馴染だから!!!!腐れ縁だから!!!!距離が近いとかなんとかは梅雨ちゃんの思い違いだよ!!!!!!!!!????????」

「杉元ちゃんはこう言ってるけど、尾形ちゃんはどうなの??」

杉元は必死に否定する。車内は俺達のやり取りを固唾を呑んで見守ってるようだった。

……………………しかし杉元、コイツにここまで否定されるのも無性に腹が立ってくる。

折角車内のクラスメイト達も俺の言葉を待っている様だし、俺は杉元への嫌がらせを行うことに決めた。

 

「ああ、確かに付き合っては居ないな。」

「な!!ほらな!!!!!!!」

「付き合っては居ないが、将来コイツを嫁に貰う約束はしてあるぞ。」

「「「「「ファッ!!!!!!??????」」」」」

「ファッ!!!!!!??????」

杉元含めた車内の全員が言葉を失った。

「ぉぉおおおおおおお尾形お前ー!!!!なんで、なんでそれをバラすんだよ!!!!谷垣1人にバラすのとはわけが違うんだぞ!!!!????」

杉元が涙目になりながら俺の胸ぐらを掴み揺さぶってくる。馬鹿力で苦しいだろう。やめろ阿呆。

「お前が俺とただの幼馴染だのただの腐れ縁だのと誤魔化すお前が悪い。俺は本当の事を言ったまでだ。」

そうだ。俺は本当の事しか話してないぞ杉元。俺との仲を誤魔化そうとしたお前が悪いんだ。

「お前…!もっ、お前もおおおおおおぉぉぉぉ!!!!!!!」

杉元の絶叫がバスの中こだました。




杉元♀を将来嫁に取ることを暴露する尾形です。


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USJ襲撃編2

杉元と俺との仲を暴露したため、車内は

「えっ尾形君と杉元さん、付き合ってるとは思ってたけどまさか結婚の約束してるだなんてすごーい!!めっちゃ進んでるね〜!!」

「この歳で結婚の約束だなんて素敵ー!!」

「ただの幼馴染とかただの腐れ縁とか言ってたの、やっぱり杉元さんの照れ隠しなんやね〜。杉元さん可愛い〜!!」

「やっぱり杉元さんと尾形君付き合ってたというか、結婚の約束なんてしてるんだ…すごいなあ…。」

「へー、結婚の約束とか、進んでんねー。あたしにはまだ想像つかないわ。」

「結婚を前提にお付き合いだなんて美しい交際ですわね。」

「ふ、不純異性交際は学生のうちでは良くないぞ杉元さん、尾形君!!」

「いいなあ彼女が居るなんて…。」

「ああ、しかもあんな美人な女子とか羨ましいぜ…。」

「騒々しい…。」

「チッうぜえ…どうでもいいわ…。」

「…………やっぱり杉元と尾形、付き合ってたんだな…。」

「…………。」

「…………。」

「結婚の約束だなんて、君たちも煌めいてるね☆」

「うお〜マジかあ杉元ちゃん…薄々付き合ってるんじゃないかとは思ってたけどまさか結婚の約束だなんて…クソっ…!!尾形の野郎…!!!!」

「ちくしょう!!!!尾形羨ましい!!!!尾形が憎い!!!!尾形だけ爆発しろおおおおおおおお!!!!うわあああああ!!!!」

「尾形お前!!ほんと、お前なあああ!!!!なんでここでその事バラすんだよ!!!!尾形の馬鹿野郎!!!!!!!!!」

「うるせえぞ杉元。揺さぶるんじゃねえ。手ぇ離せ。」

などなど、車内は一時騒然とし、混沌を極めたが(主に杉元が)、担任相澤の「………もう着くぞお前らいい加減にしておけ…杉元と尾形、お前達がイチャつこうが結婚を前提に付き合おうが一向に構わんが、授業にはちゃんと集中しろよ。」

との注意によって、車内の混乱は収まった。

杉元も涙目になりながら俺の首元を掴みガクンガクンと揺さぶっていたが、その一言と周りから落ち着けと言われ、自分の席に渋々と座った。

杉元はそのまま下を向き項垂れながら「尾形のせいだ…これからどんな顔して皆と接すりゃいいんだ…クソっ…尾形のせいだ…」と、赤い耳をしたままブツブツ言っていた。

お前が誤魔化そうとするからだ。俺は全く悪くない。

俺にはあからさまな妬みの視線が複数届いていたが、いつもの事なので無視しておく。

 

そうしてると数分で、大きな建物の前でバスが停車した。建物はどこぞのテーマパーク程の大きさで、生徒達は皆先程の喧騒を忘れたかのようにその大きさに圧倒されているようだった。

「でっかーい!!」

「なんかテーマパークみたいだな!」

「なんかUSJっぽくない!?」

そう騒ぎながら全員バスを降り、入口を通って中へと入っていく。

中へ入ると更にこの建物の凄さが分かる。様々な救助現場を再現しているようだ。全員キョロキョロ辺りを見回していると、1人まるで宇宙服の様な格好をした奴が出てきた。

「あらゆる事故や災害を想定し、僕が作った演習場です。その名も…ウソの災害や事故ルーム(USJ)!!」

生徒達が言っていた通り、USJだった。

くだらないダジャレだ。だが、俺はこういうダジャレは嫌いではない。

出てきた宇宙服の奴は「スペースヒーロー13号」というヒーロー兼教師だった。

まあ、ここにいるのだから教師だろうとは思っていたが、コイツは担任の相澤と違い、生徒達にもそれなりに知名度があるらしい。

麗日が好きなヒーローだと言ってピョンピョンとはしゃいでいた。

13号と相澤が授業の打ち合わせを始めるようだ。俺達生徒とは少し距離が離れていて小声だったが、「山猫」の耳のおかげで、オールマイトは仮眠室で休んでいることが分かった。

しかし、「通勤時に制限ギリギリまで活動してしまった」とはどういう事なのか。オールマイトに制限時間があるのか?…そう言えば授業が終わると毎回急いでるかのように去っていっていたが…いや、しかしそれは普通の座学の時でもだ。制限とはなんなのだろうか…。

また、思考の海に落ちていると、豪快な笑い声が建物内に響いてきた。

 

「ガハハハハ今年もいい面構えのひよっこ達がたくさん入ってきたな!」

もう1人恐らく教師であろう輩が出てきた。

確かに授業説明の際、4人体制で授業を行うと言っていたからコイツが4人目なのだろう。かなりデカい図体に、頭に牛の様なマスクを被っている。

………しかし、コイツの声はどこかで聞き覚えがある気がするのだが…。

「暴牛ヒーローの「アンビートン・ブル」も居るんだ!!」

「おお!俺、結構好きなんだよなアンビートン!!戦い方も熱いしまさに漢だよな!!」

緑谷達が騒ぎ立てた。

しかし「アンビートン・ブル」か…。

直訳すると「不敗の牛」…こりゃもしかしなくても…。

 

「なあ、あんた、もしかして、いやもしかしなくても「不敗の牛山」…………牛山辰馬か?」

俺は杉元の手を掴み、「アンビートン・ブル」のそばまで行き、直接聞いてみた。牛山の可能性は高くても、記憶があるかどうかは分からなかったが、俺達の入学資料の写真等を見て記憶が戻ってる可能性もある。最悪記憶がなくても誤魔化す事はできるだろう。

杉元も「やっぱそうなのか!?」と聞いてきた。流石にこの図体にこの声、しかもヒーロー名だ。杉元も正体に気づいたみたいだ。

 

「おう、杉元に尾形、お前ら久しぶりだな。まあ、俺はお前達の事、入学前に気づいていたが、ったくお前ら今回もやりたい放題だな。」

思った通りこの図体のデカい牛マスク野郎の正体はあの牛山で合っていた。

「うおおおおぉ!!牛山も居た!!尾形、牛山も居たぞ!!谷垣に続いて2人目だ!!いや、まだ会ってねえけどインカラマッを入れりゃ3人目か!てか牛山あんた先生してたんだな!ははっ似合わねえ〜!!」

「うるせえぞ杉元、今は俺はお前達の先生なんだぞ。ちったあ敬え。」

「そりゃ無理だろう。牛山先生さんよ。あんた教師って柄じゃねえだろ。よく雄英に雇ってもらえたな?」

「尾形、相変わらず口悪いなてめぇ。これでも一応そこそこ有名なヒーローなんだぞ?崇め奉れ。」

「ははっやなこった!」

牛山と旧交を温めていると相澤が寄ってきた。

「牛山先生、この2人と知り合いだったんですか?」

今生では初対面だが、知り合いと言えば知り合いだ。

「ああ、こいつらは古い知り合いだな。」

確かに前世での間柄のある俺達は、「古い」知り合いと言えるだろう。

「はあ、そうですか。ですがそろそろ授業を始めますので、旧交を温めるのは授業終わった後にしといて下さい。」

「ああ、すまんな。」

そう言うと牛山は「そういう事だから、お前ら、話すんなら授業終わった後で話すぞ。」と小声で伝えてきた。

杉元も小声で「分かった。後で色々聞かせて貰うぜ。」と伝え、俺と共に生徒達の輪に戻る。

 

「まさか牛山が雄英で先生なんてしてるとはなあ…意外すぎるぜ。」

「ああ、全くだ。」

と杉元と喋っていると近くにいた緑谷が

「2人ともアンビートン・ブルと知り合いなの?」とソワソワしながら聞いてきた。

コイツは自他ともに認めるヒーローオタクだ。俺達が牛山と喋っていたのが気になったのだろう。

「あ〜まあ、俺達の古い知り合い?みたいなもんだよ。」

杉元が簡潔に答えた。緑谷はもっと色々と聞きたそうにしていたが、13号が授業を進めるため前に出てきた為それ以上は聞いては来なかった。

 

「えー始める前にお小言を一つ二つ…三つ…」

そう前置きをして13号が話し始めた。

曰く、人によっては簡単に人を殺せる個性を持つやつも居る。それを忘れるな。この授業では人命のためにどう「個性」を活用するか学べ。お前達の個性は人を傷つけるためにある訳ではなく助けるためにあると心得ろ。などということらしい。

全くもって綺麗事だ。

だが、ヒーローはその綺麗事を実行するのが仕事だ。俺もせいぜいその綺麗事を表面上だけでも取り繕うとしよう。面倒ではあるが誰が見ても完璧に、な。

 

13号の前置きが終わり、生徒達が拍手し終え、相澤が授業を進めようとした時だ。

視界の端に何か黒い霧の小さな渦のようなものを捉えた。また、それにより空気の流れや匂いも少し変わった。

相澤や牛山、杉元も気づいた様だ。

相澤と牛山が叫ぶ。

「ひと塊になって動くな!!!!!」

「お前達、何か来るぞ!!!!!」

「え?」

生徒ではキョトンとしている奴が多いが、杉元と俺は臨戦態勢に入った。

「13号!!生徒を守れ!!!!」

相澤がそう13号へ指示を飛ばすと黒い霧は一気に広がり気持ちが悪い見た目のヤツらがうじゃうじゃと入り込んできた。

 

切島が「何だありゃ!?入試ん時みたいにもう始まってんぞパターン?」と呑気に発言した。

いや、見たら分かるだろう。ありゃあ敵の出現だ。悪意やら殺意やらビンビン感じる。

 

敵達が話す声が聞こえてくる。

「13号にイレイザーヘッド、アンビートン・ブルですか…先日いただいた教師側のカリキュラムではオールマイトがここにいるはずなのですが…」

相澤にも聞こえたようで「やはり先日のはクソ共の仕業だったか」と言っている。

「先日の」というのは、マスコミ共が不法侵入してきた件だろう。入口のセキュリティのシャッターがボロボロに崩れていたのだ。

 

この敵共はどうやらオールマイトが目当てのようだ。頭や身体に「手」を付けている猫背の男が言った。

「子どもを殺せば来るのかな?」

生徒達を殺す気なのだろう。殺意が膨れ上がったように感じた。

俺はすぐさま銃を背中から取り出し、教師共の許可を取ることもなくあの「手」男の頭を目掛けて実弾で狙撃した。どう考えても緊急事態だ。構わないだろう。

しかし、弾は当たる直前に隣にいた脳みそ丸出しの筋骨隆々の怪物に阻まれてしまった。

チッと俺は舌打ちをする。弾丸より早く動けるとか見た目通り化物かよ。

 

「………おい、今俺狙撃されたぞ?脳無の一体に俺を守れと事前に命令しておいて良かった…。しかし誰だ?生徒か?…アイツか…。」

そう言って「手」男は俺を睨みつけてるようだった。



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USJ襲撃編3

「おい、尾形、緊急時だから教師の許可なしのいきなりの発砲には目をつぶってやるが、ヒーローになりたいんなら例え敵相手でも最初からヘッドショットは一応やめておけ。お前の腕なら頭狙わなくても無力化出来るだろ。」

俺が黒い霧の渦から出てきた手男相手にヘッドショットをぶちかましたら(阻止されてしまったが)、担任の相澤から、敵を警戒しながらもそんな注意が飛んできた。

やはり腐ってもヒーローか。例え緊急時で殺気を漲らせた敵相手だとしても最初から殺人に直結する攻撃は咎められたか。分かっていたことだが、これは全く面倒な足枷だ。

こちらを殺す気満々の犯罪者相手だ。殺されても文句は言えんだろうと俺は思うが、現代の倫理観とヒーロー観ではそれは許されないのだという事も分かっている。

俺は小さく舌打ちをして、相澤に短く「了解です。」と伝えた。

 

そうこうしている内に、敵が黒い霧の中からゾロゾロとお出まししてきた。

先程まで呑気に演習かと思っていたようだった切島は「敵ンン!?バカだろ!?ヒーローの学校に入り込んでくるなんてアホすぎるぞ!」と叫んでいた。

まあ確かに敵に堕ちる様な落伍者共の集まりだ。愚かなのは確かなのだろうが、この建物にあるはずだろう侵入者用センサーも反応せず、こちらの予定を知っていた素振りを見ると、これは用意周到に仕組んだ襲撃なのだろう。何かしらの「勝ち目」があると信じて侵入してきたはずだ。

それに、あの脳みそ丸出し野郎は、こちらの狙撃にも反応し、己の肉体を盾にし銃弾を食らった上でピンピンしているような化け物だ。

舐めて掛かれば誰かしら死ぬだろう。

俺がそう考えていると、相澤は13号と牛山に生徒達の避難と外部への連絡を試すように指示を出てきた。

どうやら相澤は1人で戦うことにしたようだ。

1人だけでの正面戦闘を心配する緑谷達に「一芸だけじゃヒーローは務まらん」とだけ残し、相澤は飛び出して行った。

その言葉に嘘は無いようで他対一にも関わらず、相澤は敵達を次々と片付けていった。

相澤の「個性」で消せるのは発動系や変化系のみで、異形型には効かないようだが、筋骨隆々の異形型の敵を近接格闘ですぐさま地に沈めていた。単純に肉弾戦にも秀でている事が見てて分かった。

相澤を心配して見ていた緑谷も感心している。

 

戦闘は相澤に任せ、13号と牛山は生徒達を逃がすため、出口に引き換えそうと引率し、生徒達の前を13号、後ろを牛山が守っていた。

しかし、引き付けていた相澤の一瞬の隙をついたのであろう。あの黒い霧の渦を生み出した敵が目の前に立ちはだかった。

大勢の敵を出現させたのと、ここまでの距離を一瞬で現れたのを見るに、こいつの「個性」は「ワープ」で間違いないだろう。全く、便利な「個性」で嫌になるぜ。

 

現れた黒い霧の男は悠長に自己紹介を始めた。

この襲撃を行ったのは「敵連合」と言う名の組織であり、雄英に侵入した目的は、平和の象徴であるオールマイトに息絶えてほしいからということだった。

なら、オールマイト1人でいる所を狙えばもっと可能性あがるだろう馬鹿が、とも思ったが、もしかしたらそれだけが目的じゃないのかもなと考えた。

黒い霧の男はそう伝え終えると、何かをコチラに仕掛けようとする素振りを見せた。

後ろにいた俺や杉元は攻撃を仕掛けようかと思ったが、その前に何かしようとした13号が見えたので咄嗟に攻撃を中止する。

しかし、爆豪と切島が13号が動く前に黒い霧の男に対して攻撃を仕掛けてしまった。

だが、攻撃を受けた黒い霧の男は身体中から出ている黒い霧が揺らめくのみで、ダメージは全く負っていないようだった。

黒い霧の男は「散らして、嬲り、殺す」と宣言して、身体中から発している黒い霧を一気に広げ、俺たちを包んだ。

 

「散らす」と言うからにはコイツの「個性」からして俺たちをどこか別々の場所に移動させる気だろう。

杉元も気づいたのか、「尾形!!!!」と叫んで俺の腕を掴んできた。

杉元の掴んできた手の体温を感じながら、視界が黒く塗りつぶされる。

次の瞬間、俺と杉元は炎上している市街地に放り出されていた。

 

「うわっ!!熱っちい!!!!なんだここ!?」

杉元が俺を掴んでいるからすぐ近くで騒ぎ出す。うるせえ。

とりあえず、俺を掴んだ杉元の腕を外しながら「恐らくここは火災現場の救助訓練を行う場だろう。」と杉元に伝えてやった。おかしな場所に飛ばしやがってあの黒い霧の男。ヒーローコスチュームのおかげで服の上から少し炎で炙ったくらいでは火は通さないだろうが、全く暑い上煙たくてかなわん。

「訓練場か…言われてみれば人が居ないからそうだろうな。」

そう杉元は判断したようだが、少し違ったため、訂正をする。

「いや、人は居るだろう。ほら、ゾロゾロやってきたぞ。」

倒壊し炎上している建物の陰などから、ワラワラと敵共が湧いて出てきた。

頭やら身体の一部から炎を出してる敵も多く見かける。「個性」が炎に関係する奴や、炎に強い「個性」を持ってる敵達なのだろう。周到な事だ。

「へへへ、来た来た。」

「わりいけど、命令だからな。お前達には死んでもらうぜ。」

「はは、まだそんなに若いのに可哀想にな。」

敵共が口々に好き勝手喋ってくる。

 

「おい、尾形。早くコイツらぶっ倒して元の場所に戻んぞ。」

「ああ、分かった。ならさっさと出口を見つけるぞ。」

「みんな無事だと良いけどよぉ…クソっ…。早く戻らねえと。」

「おい!!てめえら何俺たちを前にしてシカトしてんだゴラァ!!!!ぶっ殺してやる!!!!」

無視して喋っているのが気に食わなかったのであろう敵共が俺達に特攻してくる。

杉元は向かってきた敵の1人の武器を素手で破壊し、その敵の手首を掴むと杉元に向かってきていた敵2、3人に向かって軽いものでも振るうかのように投げ飛ばした。その近くにいた敵共も多く巻き込んでいる。

俺も向かってくる敵数人に対して足を狙い素早く弾丸を打ち込んだ。あの脳みそ丸出しの化け物と違い、打たれた奴らは誰一人大丈夫では無いようで泣き叫んでいる。

残った奴らは俺達の戦闘能力に対してビビってしまったのか、酷く焦っているようだった。

あの脳みそ丸出しの化け物クラスはここには居ないようで一先ず大丈夫そうだ。

というか、コイツらは全然雑魚だ。散らばった生徒達の先を囲っているであろう敵共もこの程度であれば、戦闘力がそれなりにある生徒ならば容易く撃退出来そうだ。

 

「おい、こっちは急いでいるんだ。あんたら来ないんならこっちから行くぞ。」

完全にビビってしまっていて、こちらをこれ以上襲おうとしてこない敵共に対して、杉元はそう言いながら進もうとする。

が、大きな地響きの様な音が聞こえた為、杉元は歩みを止める。

「なんだぁ?」

地響きは大きくなってコチラに近付いてきた。

ドオオオオン!!!!と大きな音を立てて、近くにあった炎上している廃車が吹っ飛ばされる。どうやら何者かに思い切りタックルされたらしく、放物線を描いて敵共が多く居る場所にその廃車は降ってきた。敵共が怒号や叫び声泣き声をあげている。

「おい、お前ら無事か!?…て、なんだ杉元と尾形、おめぇらか。」

そう言って、炎上していた廃車を吹っ飛ばした原因…いや、張本人がやってきた。

あの地響きもコイツが走っていた音だったのだろう。

「杉元、尾形、早くこんな場所出て他の奴らと合流するぞ。ここに居る敵共は俺が何とかするから少し待っていろ。あ、教師命令だからちゃんと待っていろよ。お前らも一応大事な生徒だからな。ガハハ。」

「ちょ、おい、牛山!!」

そう言って俺達の返事を待たず、この場にまだ残っている敵共を倒しにまた走り出した。

背中に吊るしていた1人の生徒を置いて。

 

「尾形君に杉元さんもこの火災ゾーンに居たんだね。俺と牛山先生もここから少し離れた場所に出されてたんだ。」

そう言ったのは、毛皮の付いた柔道着に大きな尻尾を生やしている男子生徒…コイツの名前は何だったか…。

「そうだったのか、それでお前の方は大丈夫か?えーと………。」と杉元は少し困っている。何せ入学してから結構経つのだ。名前を覚えていなくて気まずいのだろう。俺もコイツの名前は覚えていないが…。

「あー、尾白だよ。尾白猿夫。」

「ああ、悪い尾白。入学して結構経つのに…。」

「いや、良いよ大丈夫。俺って影薄いから…ははは…。」

と尾白は引きつった笑を浮かべた。

確かになんだか地味だなコイツは。俺がコイツの名前を覚えていなかったのも仕方ないことだろう。

 

「でも牛山先生に加勢しなくて良いのかな……………と思ったけど牛山先生全然大丈夫そうだね…。」

尾白が言った通り、牛山は危なげなく残った敵共を戦闘不能にして行った。手助けは不要だろう。まさにちぎっては投げ、と言ったところだ。

牛山が残りの敵を無力化して戻ってきた所で、牛山も「ここ火災ゾーンは出口から1番遠い。早くUSJ出入口の所まで戻るぞ。13号と相澤、残りの生徒達が心配だ」と言ってきた。

だが、その前にやることが有るだろう。俺は近くに倒れてボロボロになっている敵1人を仰向けにして銃を突き付けた。

「おい、お前達の目的は本当にオールマイトを殺すことだけか?答えろ。痛いのは嫌だろう?」と軽く脅迫したら敵はペラペラ喋り出した。

「し、知らねえよ!俺達はオールマイトを殺せる算段がついたって聞いたから着いてきただけで詳しい事は聞いてねえよ!!」

「チッ、じゃあオールマイトを殺せるっていうその自信の算段ってのはなんだ。早く答えろ。」

「か、改造人間が居るんだよ!オールマイトもぶっ殺せる力を持ったっていうな!実際すげえぜあれは。は、はは、お前らもアレに殺されちまえ!」

「そーかよ。」

「がぁっ!!」

俺は聞きたいことを聞くと銃でぶん殴って尋問していた敵を昏倒させた。

「オールマイトを殺せる力を持った改造人間ねえ…ほんとにあの人倒せちゃうほど力を持ってるんだか…。」

他の奴らも聞いていたようだ。杉元が疑問を呈している。確かにあのオールマイトを殺せる力を持つ等と眉唾のようにも思えるが、あの反射速度と弾丸を撃ち込まれても何ともない様な態度…信憑性はあると言って良いだろう。

ここにはもう用がないので、牛山を先頭に全員で急いで火災ゾーンを後にし、一先ず建物の出入口まで走ることにした。



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USJ襲撃編4

俺達が走って相澤が戦っているであろう中央広場にそろそろ着こうとする際、俺の「山猫」の耳には不穏な音が届いてきた。

戦闘音が止んでおり、骨でも折れるような音だ。そしてあの手だらけ男の声も拾った。

「対 平和の象徴。改人「脳無」。」

 

あの他対一でも敵共を圧倒していた相澤を、あの脳みそ丸出しの巨漢…「脳無」とやらが更に圧倒したらしい。骨が折れる音も相澤からだろう。

走っている内に、他の奴らにも目視で小さく確認出来たようだ。相澤は脳無の巨体に馬乗りにされて、両腕をボロボロにされていた。

「あ、あれ相澤先生じゃ…!?」

「む、いかんな。助けなければ。」

尾白と牛山はそう言った。杉元はあの光景を見て大人しくなんてしないだろうと、呼びかけようとしたが、声をかける前に杉元はすぐさま列から飛び出し、猛スピードで脳無まで一直線に襲いかかった。

「てめえ!相澤先生に何してやがる!!!!」

杉元の猛烈な右ストレートによって、相澤に馬乗りしていた脳無が盛大に吹っ飛ばされた。しかし、杉元の全力の拳はビルすら倒壊させる力だ。それを吹っ飛ばされる程度で済んだのだ。やはりあの「脳無」も戦闘力だけでなく規格外の防御力を持っているのだろう。

「相澤先生!大丈夫か!?しっかりしろ!!」

杉元は倒れている相澤に駆けつけた。

俺達も遅れて相澤と敵の間に滑り込んだ。

 

「おいおいおいおい、あの脳無が吹っ飛ばされたぞ…対オールマイト用兵器だぞ…。なんなんだこの傷女…金の卵とは言え生徒にもこんな化けもんが居るのかよ…聞いてないぞ先生…クソが…。」

と手男が首をガリガリ掻きむしりながらブツブツと呟いている。杉元の戦闘力は敵連合共にも誤算なのだろう。ざまあみやがれ。

 

尚もガリガリブツブツしている手男の近くに、また黒い霧が渦巻いた。

「死柄木弔」

黒い霧の本体があの手男に対してそう言った。死柄木弔、それがあの手男の名前なのだろう。

「黒霧、13号は殺ったのか?」

死柄木弔が答えた。あの黒い霧の男は黒霧か…まんまだな。

黒霧が言うには、13号は戦闘不能にしたが、生徒1名に逃げられ、外に脱出されたとの事だった。

その答えを聞くと、死柄木弔は深いため息を吐き、更にガリガリと首を掻き毟ると、黒霧に対してお前がワープゲートじゃなければ粉々にしたと告げた。

「折角脳無も用心して三体連れてきたけど、何十人ものプロ相手は流石に無理だな…ゲームオーバーだ。あーあ、今回はゲームオーバーだ。」

と心底残念そうに告げた。

ゲームオーバー?コイツ、ゲーム感覚で雄英襲撃してオールマイト殺そうとしてたのか?イかれてやがんな。

だが、死柄木弔はそれだけでは終わらずに、すぐ近くの水難エリアの湖の端まで黒霧でワープすると、湖から顔を出していた蛙吹の顔に手を当てた。

近くには緑谷やぶどう頭の奴も居る。恐らく水難エリアまで飛ばされていて、ここまで戻ってきたのだろう。

死柄木弔は蛙吹に向かって何らかの「個性」を使おうとしたのだろう。だが、牛山に抱き起こされた相澤が自身の「個性:抹消」で、奴の個性を消して不発に終わらせた。見るからに重傷を負っていて少し動くだけで辛かろうに、これが教師という生き物か…。

「本っ当かっこいいぜ、イレイザーヘッド。」

と死柄木弔も呟いている。それには同感だが、俺も他の奴らもコイツらをはいそうですかと帰させる気はサラサラ無い。

俺は死柄木弔の蛙吹の顔に伸ばした腕を狙って実弾で狙撃する。

しかし、これも側で待機していた、杉元が吹っ飛ばした奴とは別の脳みそ丸出しの怪物…脳無によって阻まれた。チッ、やはり反射速度も化け物だ。

蛙吹のそばに居た緑谷も死柄木弔に殴りかかったが、また別の脳無に阻まれていた。

「おい、また狙撃されたのか俺は…実弾撃ってくるなんて全く物騒なガキだぜ…。それにスマッシュって、そっちのガキはオールマイトのフォロワーかい?まあ、良いや、君…。」

と死柄木弔が緑谷達に何かをしようとした時だ。

出入口の大きな扉は吹っ飛ばされ、砂煙とともに現れたのはオールマイトだった。

 

「もう大丈夫。私が来た。」

死柄木弔に襲われかけていたぶどう頭の小さなクラスメイトは「オールマイトーーーー!!!!」と大きな声で叫び泣いていた。

死柄木弔はオールマイトを見て小さく呟いた。「あー、コンテニューだ。」と。

 

オールマイトは出入口の階段を一瞬で跳躍したかと思えば、目にも止まらぬスピードで残っていた敵共を全て倒し、蛙吹や緑谷達を救出していた。俺に「山猫」の目がなければ、何をしたのかも分からなかっただろう。緑谷達の救助ついでに死柄木弔にも一発入れていた。

オールマイトに一発入れられて軽く吹っ飛んだ死柄木弔は顔に付けてた「手」が取れた様で、落っこちた手を「ごめんなさい」だの「お父さん」だの呟きながら拾った。…気色の悪い奴だ。

死柄木弔は落ちた「手」を拾ってまた顔にくっつけると、またボソボソと喋り出した。その中で気になる言葉があった。「やはり本当だったのかな…弱ってるって話」という言葉だ。

…オールマイトは弱っているのか…?

確かに、13号も「制限時間」が云々言っていたようだったが…。

 

緑谷はオールマイトを心配していたが、オールマイトは笑顔で大丈夫と答えて脳無の一体に突っ込んで行った。

「1号と3号もオールマイトを殺せ!!」と死柄木弔は他の脳無にも命令を下した。

だが、相澤を尾白に託した牛山と杉元がその行く手を阻んだ。

「オールマイトを殺したければ、この「不敗の牛山」………じゃなかった、この「アンビートン・ブル」を倒してからにしろ!まあ、不可能だろうがな!!」

「おい、そっちの方の脳みそ丸出しヤロー、てめえの相手はこの俺だ。」

と立ちはだかった。これで3対3だ。杉元は生徒だが、杉元の規格外の個性ならば遅れを取ることもないだろう。

そして3対3の乱戦となった。

 

こちら側の3人は全員パワーで殴るタイプの脳筋「個性」だ。牛山の「個性」は詳しくは知らないが、道中敵共を倒している感じからして間違ってないだろう。

全員が殴り合いとなった。だが、脳無にはダメージがほぼ効いてないかのようだ。

すると死柄木弔がご丁寧に脳無にはショック吸収の「個性」がある事を教えてくれた。

それを聞いてオールマイトは脳無にバックドロップを仕掛けた。まるで爆発したかの様な轟音が轟く。しかし、ワープゲートの黒霧が上手いこと脳無の身体を半分に移動させ、がら空きだったオールマイトの胴体へ指を食い込ませた。余程の怪力なのだろう、指が食い込んだオールマイトの胴から血が滲んだ。

牛山と杉元も攻めあぐねている様だ。

俺はオールマイトの方を攻めている脳無に向かって発砲した。狙いはむき出しの脳みそだ。

狙い通り、脳無は脳を庇い、片腕で銃弾を阻んだ。脳無の拘束が緩んだオールマイトはその一瞬を逃さずに、脳無の拘束から抜け出した。

「助かったぞ、尾形少年!!」

オールマイトが俺に感謝の言葉を述べながら、脳無とまた向き合った。

すると、脳無が突然、一瞬で凍りついた。

この「個性」は轟か?

続いて爆豪も現れ、黒霧に強襲し、黒霧というワープゲートを抑えることに成功した。

切島も現れ死柄木弔を襲ったが、死柄木弔はスレスレでその攻撃を避けていた。やはりリーダー格の死柄木弔も戦闘にはそれなりに長けているようだ。

着々と戦闘能力の高い生徒達が中央広場に集結した。

 

「出入口を抑えられた…こりゃあピンチだなあ…」と全然ピンチと思っていないような声で死柄木弔が呟いた。

更に死柄木弔は凍りついた脳無に命令する。

「脳無、爆発小僧をやっつけろ。出入口の奪還だ。」

命令された脳無は凍りついている部分をお構い無しに動かし、ボロボロと身体を崩れさせていた。しかし、崩れた部分の肉が一気に盛り上がる。どうやら杉元の個性に近い「超再生」という「個性」も持っているらしい。崩れ去っていた腕やら足が完全に復活した。

とんでもない怪力の上に「超再生」か…杉元と同じ化け物だなこりゃあ。

敵に回るとこれ程脅威な複合「個性」もないだろう。

再生を終えた脳無が爆豪に襲いかかる寸前、オールマイトが爆豪を庇い、拳を受ける。

オールマイトが咳き込みながら加減を知らんのかと発言すると、死柄木弔が答えた。

「仲間を助けるためさ、仕方ないだろ?

さっきだってホラそこの、あー、無表情のやつ、2回も俺を狙撃しただろ?それに脳無のデリケートな脳みそも狙って躊躇いなく撃ったんだぜ?末恐ろしいガキだぜ。

そうそう、で、誰が為に振るう暴力は美談になるんだ。そうだろ?ヒーロー?」

死柄木弔は続けて思想犯的な戯れ言をオールマイトに垂れ流していたが、自分が暴力を楽しみたいだけの嘘つきだとオールマイトに看破されていた。

 

轟達が言った。「5対8だ。」「俺らでオールマイトをサポートすれば撃退出来る!!」

切島達はそう意気込んだが、そう上手くは行かないだろう。さっきもオールマイトに庇われていなければ、爆豪は脳無にミンチにされていたはずだ。

オールマイトもそう考えたのだろう。

「ダメだ!!!逃げなさい」と轟達に言った。

俺も撤退した方が良いだろうと考えたが、杉元だけを残しては行けない。それに俺なら遠くからでもサポートが出来る。何とか粘るしかないだろう。

 

緑谷がオールマイトに「時間だって無いはずじゃ…」と小声で言っていた。

やはり、オールマイトには活動するための時間の制限がある様だ。緑谷はオールマイトの秘密なんかを知っているのか…。いや、今はどうでも良い。

俺は杉元の加勢をしに行く。杉元と牛山はそれぞれオールマイト達から少し離れて戦っている。先程のオールマイトと脳無との戦いで、脳無には「ショック吸収」「超再生」がある事が分かっていたので、決め手がないまま膠着状態に陥っていた。

牛山は柔道の寝技で何とか抑えつけている様だった。杉元は脳無相手に圧倒的に押してはいるが泥沼の殴り合いとなっている。

「おい、杉元、牛山!そいつらは殴っても仕方ねえ!!手足切っても再生しちまう。身体中の関節を外せ!!」

俺は2体の脳無の頭を撃ちながらそう言った。狙撃は脳無の手によって阻まれるが、その分確実に隙を作る。

牛山は俺の言葉に従い、次々と脳無の関節を外して行っている。脳無も抵抗するが、俺の狙撃もあり、どんどん関節を外されて行った。そして両手両足の関節を外されて地面に転がった。モゾモゾと動こうとしていたが、もう立てはしないようだった。

だが、杉元の方は俺の言葉を無視して殴り合いを続けていた。

「おい!杉元!!聞いてんのか!?関節を狙え!!」

「うるせえ尾形!!!!コイツならあとちょっとで倒せるんだよ!!!!!!」

と杉元はそう叫んだ。…確かに圧倒的に杉元が押している。どんどん杉元のパンチのラッシュが加速している。

「おおおおおおおおおおおお!!!!てめえじゃ俺は殺せねえ!!!!俺は、不死身の杉元だああああああああ!!!!!!」

そうして最後、杉元の渾身のパンチを受け、脳無はドーム状の天井をぶち破り、吹っ飛ばされて行った。

………………なんつう、規格外の化け物なんだ。杉元、お前は。

杉元の闘気に、俺はぶるり、と震えた。

俺はお前のその鬼神のごときの戦いぶりが、前世の頃から好ましいんだよ。杉元。絶対に伝えないけどな。

杉元が顔中を敵の血だらけにして立っていた。

「ほら見ろ、勝ったぞ尾形。」

そう言って杉元は微笑んだ。

敵の血を全身に浴びて微笑むお前は凄惨で、美しかった。

 

「たく、今のお前は本当に美しいバケモンだな。」

「………は!?なんだよいきなり綺麗とか言って!?馬鹿じゃねえの!?」

「拾うとこはそこかよ。まあ、間違ってねえが。」

「………お前ら元気だな…。こんな時にイチャイチャしやがって…。」

「おう、牛山、お前の方も終わったのか。てか、イチャイチャなんてしてねえから!!」

「あー分かった分かった。ところで杉元お前、全身血まみれだぞ…。大丈夫か?」

「全然大丈夫だぞ。これは殆どあの脳みそ丸出しヤローの返り血だからな。」

「………本当お前、前世もむちゃくちゃだったが、今世は更にとんでもねえな。」

「全くだぜ。ほら杉元、これで顔拭っとけ。」

と、俺は杉元に持っていた小さなタオルを渡してやった。「サンキュー尾形。」と杉元も素直に受け取り血まみれの顔をゴシゴシ拭っていた。これで少しは血の汚れもマシになるだろう。

 

そう話していると、向こうからもでかい殴り合いの音が轟いた。オールマイトだ。杉元と同じく何発も脳無と殴りあっているのが少し遠くからでも見える。重たいパンチの応酬だ。

最後も杉元と同じく、オールマイトが脳無を天井まで吹き飛ばし、天井をぶち破り遠くまで脳無が飛んでいった。

「おお!やっぱすげえなオールマイト!!」と無邪気に杉元ははしゃいでいたが、全く同じことをお前もさっきやってのけただろう杉元よ………。

俺と牛山ははしゃいでいる杉元を無視して、オールマイト達の元に近寄っていった。

「やはり衰えた…全盛期なら5発も撃てば十分だったろうに…300発以上も撃ってしまった。」

オールマイトがそう言った。アレ相手に全盛期なら5発かよ…やはりオールマイトも化け物だ。しかし、アレ相手にオールマイトよりも少ない手数で吹っ飛ばしただろう杉元も、もっと鍛えたらオールマイトの全盛期も夢ではないのか?とそんな考えをしていたら、死柄木弔が憎々しげに呟いた。

「チートが…!」心底同意だ。だが、お前達の自業自得だ。

続けて死柄木弔はブツブツ呟いた。「全っ然弱ってないじゃないか!!あいつ…俺に嘘教えたのか!?しかも脳無も余分に2体増やして来たのに全員ダメじゃないか…。1人は生徒の女に吹っ飛ばされてたぞ…クソがっ…!!」

「あいつ」か…あの主犯格だと思われる死柄木弔にオールマイトが弱っているなどと吹聴した奴が居るのか…。そう言えば「先生」がどうとかとも呟いていたなコイツは。

 

オールマイトは土煙に紛れながら挑発した。

「どうした!?来ないのかな!?クリアとかなんとか言ってたが…出来るものならしてみろよ!!」と死柄木弔達を睨みつける。

死柄木弔と黒霧はそれに気圧されてるようだ。

だが、黒霧と死柄木弔は話し合い、冷静さを取り戻したようで、オールマイトに特攻を仕掛ける。無謀なことだと思ったが………よく見るとオールマイトはぷるぷると小刻みに震えているのが見て取れた。そして死柄木弔達が迫るのに動こうとしない。

…やはりオールマイトには活動するための制限があるのか?そう考えてると、緑谷が咄嗟に飛び出してきた。「個性」を使ったのか、かなりのスピードだ。「オールマイトから離れろ。」そう言って緑谷は死柄木弔達に攻撃を仕掛けるが、黒霧はモヤとなり、途中で死柄木弔の腕をワープさせた。未だに奴の「個性」はなんなのか知らんが、恐らく触ると発動する何かなのだろう。緑谷に死柄木弔の手が迫る。

俺は緑谷に死柄木弔の手が届く前に、その手に銃弾をぶち込んでやった。

だが、銃声は2発、弾丸も死柄木弔の手に2発届いていた。俺の他に一体誰だ?と射線を辿って出入口の方を振り返ると、そこには多数の教師達プロヒーローが集結していた。

そのうちの1人が銃を構えていた。アイツが撃ったのだろう。

「1のAクラス委員長飯田天哉!!ただいま戻りました!!」とヒーロー達と共に飯田が大きな声で発言した。

黒霧が1人生徒を逃がしたと言っていたので、飯田が教師達を呼びに脱出したのだろう。

 

教師達プロヒーローが集結したのを見て、今度こそ諦めたのか、死柄木弔達はゲームオーバーだと言って撤退を始めた。

撤退を始めた今なら黒霧のワープもそれに集中するため、弾丸を返されるという心配もないだろう。俺はそう判断して、ワープしかけている死柄木弔に向かって容赦なく弾丸を数発お見舞してやった。本当は脳天に銃弾をぶち込んでやりたかったが、1度相澤に注意された上、他の教師達が見てる中ではそれは叶わなかった。だが、しっかり両足両肩を撃ち抜いてやった。ついでにさっき撃っていた教師も撃ったようで更に両腕も撃たれていた。当分は身体も満足に動かすことも出来ないだろう。いい気味だ。

死柄木弔達が逃げ出す間際、死柄木弔はこう言った。

「今回は失敗だったけど、今度は殺すぞ平和の象徴オールマイト。それに銃のお前と脳無をやった傷の女、お前らも殺してやる。」

そう言い残すと、死柄木弔は消えた。

どうやら俺と杉元は顔を覚えられたらしい。そう簡単に殺されてやる気はサラサラないが。

「おい、杉元、殺してやるだってよ。」

「はっ!上等じゃねえか!!返り討ちにしてやるぜ!!」

「おい、殺すんじゃねえぞ。」

「分かってるわ!!きちんと生きたまま捕まえてやるよ!!」

そう杉元が意気込んだ。




最初は杉元♀さんも牛山と同じように関節を外すことで脳無を無力化すると言う風に考えていたのですが、杉元♀さんのチート振りをもっと全面に押し出したかったので、オールマイトと同じように脳無を文字通りぶっ飛ばしてもらう事にしました。杉元♀さんマジチート。


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USJ襲撃編5

「プロヒーローか…ここにこれだけ集まるってことは学校全体に仕掛けてきたってことじゃ無さそうだ。」

と、轟が集まった教師陣を見て言った。

確かにその通りだろう。

 

「個性」を使って反動で足を折ったのだろう緑谷に切島が大丈夫かと言って駆け出した。

すると、人外の姿をした教師の1人が、「個性」で壁を作ってそれを阻止した。

いや、緑谷に駆け寄ろうとした事を阻止したのではなく、その途中でオールマイトに近寄る事を阻止したかのように見えた。

その教師が生徒の安否を確認したいからゲート前に集まるよう俺たちに指示を出した。

杉元も行こうぜ尾形と腕を引いてきた。

俺は「ああ…」と返事をして杉元と共に出入口前に行くため歩みを進めたが、後ろから教師とオールマイトのやり取りが「山猫」の耳に届いてきた。

「ありがとう、助かったよセメントス。」

「俺も貴方のファンなので…このまま姿を隠しつつ保健室へ向かいましょう。」

などというやり取りだ。

「姿を隠しつつ」だと…?一体何故姿を隠す必要がある?オールマイトは活動時間の制限があり、姿を隠さなければならない秘密がある様だ。………まあ、平和の象徴の力の衰えは確かに気にはなるが、俺には関係ない事だ。

俺は戦いの疲れもあってその時は思考を放棄した。

 

出入口に集まると、生徒全員が集まっていた。ボロボロの奴もいるが、どうやら死人や重傷人は出なかったらしい。…いや、1人足を折っていた奴が居たんだったな。

警察も来て、襲撃してきて返り討ちにあった雑魚の敵共に手錠をかけて連行していく。

刑事が「両足重傷の彼を除いてほぼ全員無事か。」と言ってきた。

生徒達は緊張が溶けたのだろう、何処のエリアに居たのだの、敵は弱かっただの、思い思いに喋り出した。

「杉元さん、すっごい血まみれだけど、大丈夫なの!?」

と、麗日や飯田が杉元を心配して駆け寄ってきた。

「ああ、これは殆どあの脳みそ丸出しヤローの返り血だから、俺は全然大丈夫だ。」

と、聞いても逆に安心できないような返事を返していた。飯田はそれに少し引いたようだが、麗日はそれなら安心だね!!と返していた。………麗日も中々にネジが飛んでいる。

 

「尾白くん、今度は燃えてたんだってね…でも杉元さんや尾形君も居たんでしょ?それに牛山先生も居たんなら楽勝だったんじゃない?」

「あ、うん、牛山先生とずっと一緒だったんだけど、敵を瞬殺してたよ…。尾形君や杉元さんもすぐに敵倒しちゃってて、俺はそんなに戦闘しなかったよ。」

と、尾白と透明人間の葉隠がそう話しているのも聞こえた。

全員好き勝手に喋っていたら、蛙吹が担任の相澤の安否を刑事に聞いていた。

どうやら相澤は両腕粉砕骨折の重傷を負ったらしい。

他にも13号は背中から上腕にかけての裂傷が酷いが、命に別状はない。

オールマイトも命に別状なく、リカバリーガールの処置で十分とのことで保健室へ行った。との事だった。

 

ここからそこそこ遠くで教師達が話している声を拾えた。

ネズミのような校長の話によると、セキュリティの大幅強化が必要だそうだ。まあ、そうだろうな。

約400メートル先と200メートル先の雑木林で敵と思われる人物を2名確保したという警察官の声も届いた。オールマイトと杉元が吹っ飛ばしたあの脳無達のことだろう。2体とも無抵抗のようだが、呼びかけに一切応じないらしい。牛山が関節を外して倒した脳無の方も同じ状態のようだ。

死柄木弔の言葉に忠実のようだったし、主人が居なくなって機能を停止したのだろうか?

これならやはり最初から死柄木弔の頭を隙を見てぶっ飛ばせば早かったかと思ったが、もう終わった事だ。今考えても仕方ないことだろう。

 

俺たちは教室に戻り、早々に帰らされた。

事情聴取は明日臨時休校になるようだし、明日に行われるのだろう。

返り血が酷かった杉元がシャワーを借りてから着替えるのを待ち、出てきてさっぱりした杉元と共に帰ることににした。

本当は今生で再会した牛山にいろいろ聞きたがった杉元だったが、学校がこんな状態では無理とのことで、臨時休校明けにでも牛山と話すことを約束した。

「明日は臨時休校らしいけど、俺たちは事情聴取かーめんどくせえな。」

「まあ、しょうがねえだろ。ちゃんと正直に話せよ杉元。まあ、お前があの化け物ぶっ飛ばしたって知られりゃまた警官に怯えられるかもしれんがな。」

「おい、嫌なこと言うなよ!!てか、またってなんだよまたって!!」

「昔半殺しにした人身売買組織の時も、恐ろしいガキだって目で怯えられてただろうが。」

「うっ…………で、でも今回は皆を守ったんだし、きっと大丈夫だ!うん!」

「そうだと良いがな。」

俺も明日は事情聴取だ。いきなり敵の主犯格の頭をぶっ飛ばそうとしたことは黙っておくべきか否か迷うところだ。

そんなことを考えながら、俺たちは帰路につき、敵共に襲撃された1日が幕を下ろした。

 

 

 

 

 

どこかのバーと思しき店の中、黒い霧が現れる。徐々に大きくなったそれから、両肩両足を撃たれ、立つことも出来なくなった死柄木弔が現れた。

「ってえ…両腕両足両肩撃たれた…完敗だ…。

脳無も3人も連れてったのに全員やられた…。

手下共は瞬殺だ…。子どもも強かった…。特に顔にデカい傷がある女は脳無を吹っ飛ばしやがった…。銃持ってた奴にもバンバン撃たれてこのザマだ…。何より平和の象徴は健在だった…!話が違うぞ先生………。」

死柄木は憎々しげに呟いた。薄暗い店内の中、点灯しているモニターから声が響く。

「違わないよ。」

「ただ、見通しが甘かったね。」

「うむ、舐めすぎたな。敵連合なんちうチープな団体名で良かったわい。」

モニターからは二人分の声が響く。

「ところで、ワシと先生の共作、脳無は?回収してないのかい?」

疑問に答えたのは黒霧だ。

「吹き飛ばされました正確な位置情報を把握出来なければいくらワープとはいえ探せないのです。一体の脳無は近くには居ましたが、すぐ側にプロヒーローのアンビートン・ブルも居ましたので無理でした。」

「折角オールマイト並のパワーにしたのに…まあ、仕方ないか…残念。」

そうモニターの中の声が答えると、死柄木は呟き出した。

「パワー…そうだ…二人…オールマイト並の速さを持つ男の子どもと、オールマイト並のパワーを持った女の子どもが居たな…。女の方はさっきも言ったけど、オールマイトと同じように脳無をぶっ飛ばしてた…。」

「……………へえ。」

モニターの声は興味深そうな声を返した。

「あの男の邪魔と、銃を撃ってきた奴の邪魔がなければオールマイトを殺せたかもしれない…ガキが…ガキ…!!特に撃ってきた奴は、頻繁に俺を狙いやがった…次は絶対に殺してやる…!!」

死柄木のブツブツとした呪詛が静かな店内に響いていた…。

 

 

 

 

 

敵の襲撃に遭った次の日、俺は朝早くから杉元の家の前に来た。

昨日の事情聴取を警察に受けに行くためだ。

至極面倒だが、仕方ない。

俺は杉元の家のチャイムを鳴らし、杉元が出てくるのを待つ。

「おはよう、百之助くん。佐一ー!もう百之助くん来てるわよー!早くしなさーい!!」

玄関から杉元の母親が出てくる。

今世で女になった杉元によく似ている母親だ。いや、杉元がこの母親に似たのか。

「聞いたわ、百之助くん、昨日大変だったんでしょう?でも佐一も百之助くんも無事で良かったわ。本当に良かった…。」

杉元に昨日の事情を聞いたのか、杉元の母親が心配そうな顔で言ってきた。

うちのじいちゃんばあちゃんも昨日俺の説明に腰を抜かすほど心配していたからな…。

「2人ともヒーローになるんだから、危険なこともあるって分かっては居ても、いざこうして危険があると心配で仕方なくなるわね…。しかもまだ学生なのにこんな事があるだなんて…昨日佐一に聞いて本当にゾッとしたわ…。」

杉元の母親が杉元に似た目で俺を真っ直ぐに見つめて言った。

「百之助くん、佐一をよく見ていてあげて…。佐一がなにか無茶をしそうになったら止めてあげて…。まだ学生の貴方にこんな事頼むなんておかしいって分かっているのだけれど、昔から佐一を引っ張っていってくれてる百之助くんにしか頼めないの…。何かあったら佐一を助けてあげて…お願い…。」

そう懇願された。

これが母親の愛か…。普通ならば母親とは皆こうなのだろう。遠い昔の記憶である前世の母親と俺の記憶が戻る前に逝ってしまった今世の母親の記憶を、少し、思い出した。

俺なんぞよりよほど戦闘力のある杉元だ。そうそう何かあるとは思わないが、俺も杉元に無茶をやらせたい等とは思ってないので、杉元の母親の頼みにすぐに是と返した。

杉元の母親は嬉しそうに笑った。

「百之助くん、貴方も十分気をつけてね。貴方に何かあったら私も悲しいし、貴方のおじいさんおばあさんもとても悲しむわ。それをよく覚えておいてね。」

そう杉元の母親に言われ、俺はなんとも言えない気持ちにさせられた…。

 

少しすると杉元がやってきた。今日は学校ではないので私服だ。勿論俺もそうだが。

「待たせたな尾形。じゃあ警察署に行くか。」

「行ってらっしゃい、佐一、百之助くん。気をつけてね。」

そう杉元の母親に見送られて、俺達は警察署に向かった。

 

「はい、では今から調書を取りますね。緊張せず楽にしていいですよ。」

俺はそんな事を言われながら、警察の事情聴取を受けた。

昨日現場に来ていた塚内とかいう刑事だ。

「じゃあ君は先生の発砲許可なしにその主犯格の頭を狙って撃ったんだね。緊急事態と言えど、ヒーローの卵なんだから、いくら敵とはいえ、最初から頭を狙っちゃいけないよ。分かったね?」

「はい、申し訳ありませんでした。以後、気をつけます。」

俺は隠しても相澤や他の生徒達に喋られたら意味はないと思い、結局包み隠さず何をしたかを正直に話すことにした。

案の定、小言を賜ったが仕方ない。外行きの面で謝っておく。内心は敵相手にそんなんだから世間からの警察の評判も低いんだろと毒づいておく。

「じゃあ、君と杉元佐一さんはUSJの火災ゾーンに2人で飛ばされたんだね。」

「そこで敵達を数人発砲して足を撃ち抜いたと、足を撃たれてた敵が何人も居たけど、君がやったんだね。」

「牛山先生と尾白猿夫君と合流して、敵達を倒して火災ゾーンを脱出、と。」

「そこから中央広場まで行って、相澤先生を助けだしたんだね。偉いよ。」

「そこに脳がむき出しになった怪人…脳無が三体と黒霧と死柄木弔という主犯格が居たんだね…なるほど。」

「オールマイトと牛山先生はともかく、杉元佐一さんは何を考えてそんな危険な敵と対峙したんだ…君もお友達ならきちんと止めないとダメだよ。」

「オールマイトが脳無に捕まった時、脳無の脳を狙ったんだね…。敵相手でもヘッドショットはダメだと言ったが、相手に必ず遮られるという自信があったんだね…仕方ない、ここは目を瞑るとするよ。君のおかげでオールマイトも抜け出せたんだしね。」

「ふむふむ、君が脳無の関節を外すことを提案したのか。両手両足折っても、例え欠損してもすぐに回復してしまうらしいと聞いたからね、的確な判断だ。賢いな君。」

「………………え、牛山先生がもう一体の脳無を吹き飛ばしたんじゃなくて、杉元佐一さんが建物の外まで吹き飛ばしたの…?ははは、そんな冗談………………え、マジで?」

「まじかー、オールマイトみたいだなその子…。………まさかオールマイトみたいにムキムキの女の子なの??え、違う?」

「脳無がいなくなった後、黒霧と死柄木弔がオールマイトに迫って、緑谷出久君が飛び出してきたから、死柄木弔の手に発砲、命中、と…。」

「黒霧と死柄木弔が逃げる間際、死柄木弔に対して発砲、両肩と両足を撃ち抜く…と。君射撃の腕凄いんだね?誰に習ったの?え、自己流??………すごいね。」

「うんうん、じゃあこれで調書も出来たし、帰っていいよ。お疲れ様。………え、杉元佐一さんの調書を待つの?はは、君たち仲いいね。もしかして付き合ってるの?………あ、ほんとに付き合ってるんだ…そう…。今どきの高校生は進んでるな………。」

と、俺の事情聴取は終了した。

一緒に来ていた杉元の番を待ってる間、クラスメイトの奴らともチラホラ会ったが、特に喋ることもなく挨拶だけ交わして杉元を待った。

杉元の事情聴取も終わり、警察署を後にする。杉元と連れ立って歩き出す。

「尾形どうだった事情聴取?なんか怒られたか?俺、怯えられはしなかったけど、あの脳みそ丸出しのヤローと戦ったって言ったら危険な事しちゃダメだって結構怒られたぞ…。」

駅までの道を歩きながら杉元が聞いてきた。

「別に…まあ、あの手男に初っ端ヘッドショットかました事に小言を貰ったくらいだな。」

「あー、アレか。明らかに悪いヤツらなんだから、ちょっと位急所狙ったって良いだろうになあ。そこんとこヒーローは融通利かねえよな。」

と、杉元も前世の倫理観で語ってくる。

全く同意だったが、この世界でヒーローになるには持っていてはならない価値観なのだろうことも理解している。

「全く同感だが、そういう事は周りには言うなよ。厄介な事になる。」

「わかってるって。ヒーローってのは悪人の命だって取っちゃならねえもんだからな。お前相手だから言ってんの。」

「分かってるなら良い。」

俺相手だから、か…。フッ…。

 

「もうじき昼か…どこかで飯食ってから帰るか…。杉元、お前どこが良い?」

事情聴取は思ったより早く終わったので今は昼前だ。どこか駅周辺で昼食を取ろうと杉元に提案した。

「俺、肉が食いてえ。ついでに尾形奢れ。」

「学生に集んな。自分で払え。」

「俺も学生だよ。チェッ前世だったらお前の方が年上だったのによ〜。」

「………前と同じで俺の方が年上だったら、お前と一緒に高校も通えんだろ。同い年で良かったじゃねえか。」

「あー…………確かに。お前と同い年で良かったかも。」

そんなどうでもいい会話をしながら俺たちは適当なファミリーレストランに入って昼飯を食べた。杉元は宣言通りハンバーグを注文していた。

少しダラダラしてから帰り、日課のトレーニングをして杉元のまだ終わらせてなかった課題を見てやって臨時休校の1日が終わった。




相澤先生の怪我は、杉元♀達の介入によって両腕粉砕骨折だけという原作よりも少しだけ軽くなりました。それでも重症なんだけどね。


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雄英体育祭編1

敵連合襲撃により臨時休校となった次の日、学校へ登校した。朝のホームルームの時間間際になると、飯田がでかい声で席へつけと促してくる。

全員席について暫くすると、担任の相澤がやって来た。両腕を包帯でぐるぐる巻きにしていたが、アレで授業など出来るのだろうか?

ほかの生徒達は「相澤先生復帰早えええええ!!!!」と驚いているようだった。

相澤は「俺の安否はどうでもいい。何よりまだ戦いは終わってねぇ。」と言い出し、教室がザワついた。

戦い…?まだ何か続いていたのか…?

そう考えていたら、相澤は続けた。

「雄英体育祭が迫ってる!」と。

紛らわしい言い方するんじゃねえと思ったが、周りは「クソ学校っぽいの来たあああ!!」とホッとしながらも体育祭と聞いてはしゃいでいた。

 

杉元も体育祭!と言ってはしゃぎたいようだった。何しろ雄英を受験した理由の1つがこの「雄英体育祭」だ。

雄英の体育祭は相澤が説明しているように、日本のビッグイベントと言っても過言ではないからだ。日本中にテレビ中継され、多くの人の目にとまる。体育祭で目立つことが出来れば、他の奴らと同じように転生している可能性の高いアシリパや白石達の目にもとまるかもしれないのだ。

アシリパや白石達に会いたがっている杉元はこの体育祭、何がなんでも目立とうとするだろう。そして杉元の個性ならば優勝する事も十分可能だろう。

他の奴らが言っているように、プロヒーロー達の目にもとまり、その事務所にでもスカウトされれば将来の道も開ける。その為他の奴らも死にものぐるいで優勝を目指してくるだろう。

相澤も「年に一回…計三回だけのチャンス。ヒーロー志すなら絶対に外せないイベントだ。」と締めくくった。

将来が掛かっているのだ。面倒ではあるが、俺もそれなりに結果を出せるようにするか…。

 

午前の通常授業が終わり、昼休みになった。

生徒達は思い思いに休憩を取るが、そんな中、切島達は集まってワイワイと体育祭についてあれこれ盛り上がっていた。

「あんなことはあったけど…なんだかんだテンション上がるなオイ!!活躍して目立ちゃプロへのどでけぇ一歩を踏み出せる!」

そんな事を言っていた。やはり皆考えることは同じなようだ。

「尾形〜昼行こうぜー。」杉元が弁当を持って昼食に誘ってきた。「ああ。」と返事をして食堂へ向かうことにする。

「あ、杉元さん尾形君も、お昼行こう。」と緑谷も誘ってきた。

最近は緑谷・飯田・麗日とも昼を共にしている。杉元も「おう、行こうぜ〜。」と返していた。

「でも皆すごいノリノリだね。」と緑谷は盛り上がっている切島達を見てそう言った。

それに対して飯田は「ヒーローになるため在籍しているのだから燃えるのは当然だろう!?」と独特なポーズと共にそう返していた。(通りかかった蛙吹にも変と言われていた。)

黙っていた麗日が「デク君、飯田君、杉元さん、尾形君………頑張ろうね体育祭。」と麗らかでは無い形相で言ってきた。どうした麗日。顔が凄いことになってるぞ。

麗日の突然の豹変に緑谷や杉元だけでなく、盛り上がっていた切島達も動揺していた。

「おい、さっさと昼飯行くぞ。」と、いい加減面倒になった俺はそう言って食堂に向かって歩き出した。

麗日を構っていた杉元が「待てよ尾形!!」と追ってきた。緑谷達もそのあとを着いて来るようだった。

食堂に向かう途中、緑谷が麗日に「そう言えば聞いてなかったけど…」と前置きして、何故ヒーローを目指すのかを聞いていた。

それに対して麗日は若干恥ずかしそうに「究極的に言えばお金が欲しいから…」と返していた。まあ、中にはそう言う理由でヒーローを目指す奴も居るだろうな。杉元だって母親に楽させてやりたいからってのも一つの理由だ。

俺も収入が良いから、ってのはヒーローを志望するに足る動機だと考えている。

飯田も「生活のために目標を掲げることの何が立派じゃないんだ?」と答えていた。

緑谷は「でも意外だね…」と返していたが、麗日の自分の父親と母親に楽させてやりたいという真剣な考えに息を飲んでいた。

麗日が麗らかでなかった理由は、体育祭でプロヒーローへの道が掛かっていると真剣に考えた結果だったのだろう。

「あ、俺も母さんを楽させてやりたいからってのが一つの目的だから、同じだな麗日!」と杉元は笑って返していた。

俺も「………まあ、目的は人それぞれだからな。別にいいんじゃねえの。」とだけ返しておいた。

麗日は「杉元さんもそうなんだ!!やったーお揃いや〜!!あ、でも一つの、ってことは他に何か目標とか目的があるの??」と聞いていた。

杉元は「ああ、ある人を探しているんだ。」と返した。俺は言っていいのか?とアイコンタクトを取ったが、杉元は良い、と言っているようだったので俺は何も言わなかった。

緑谷達は「ある人?」とハモりながら聞き返していた。

「ああ、俺と尾形の古い知り合いなんだけど、ある事情で今は何処に居るか分からないし、相手も俺達がここに居ることを知らないんだ…。でも俺にとっちゃ凄く大切な人だから絶対に見つけてまた会いたいんだ…。だから、俺達が有名になれば向こうから見つけてくれるかもしれないし、俺達もヒーローになれば見つけやすくなるだろ?雄英は体育祭でテレビ中継が有るし、だから俺達は雄英に来たんだ。」

そう話した杉元に圧倒されたのか、3人組は一瞬言葉を失くした。

「そ、そうなんだ…杉元さんに尾形君、その大切な人と早く再会出来ると良いね…。」

「ヒーローになればきっと見つかるよ!!今度の体育祭で活躍すれば向こうから気づいてくれるかもしれないよ!!」

「しかし、お互い何処に居るのか分からないなんて…大変だな杉元さん。」

と思い思いに杉元に返していた。

「ところで、その杉元さんにとって大切な人ってもしかして男性…?」と、麗日が俺をチラチラ見ながら杉元に聞いてきた。

「ん?女の子だぞ(多分今生も)。俺たちより年下だな(多分)。」と杉元がそう返したら、麗日は「そうなんだ〜良かったね尾形君!!」と何を思ったのか知らないが、俺にそう言ってきた。何が良かったね、だ麗日。

 

「尾形君もその人を探すためにヒーローになったの?」と緑谷が聞いてきたので面倒だったが「………俺は」と答えようとした所で、廊下の角から「おお!!緑谷少年がいた!!」と大きな声で遮られた。声の主はオールマイトだ。相変わらず画風がおかしい。

一体緑谷に何の用なのかと思ったら、「ごはん…一緒に食べよう。」と昼食の誘いだった。

その仕草に麗日はツボったのか「乙女や!!!!」と吹き出していた。

誘われた緑谷は「ぜひ…。」と答えて、こちらに断りを入れてからオールマイトの後を着いて去っていった。

緑谷が抜けたので4人で連れ立って食堂へ行き、昼食を取る。

緑谷が何故オールマイトに誘われたかを話題にしつつ、飯を食べる。

「デクくん何だろうね?」

「オールマイトが襲われた際1人飛び出したと聞いたぞ。その関係じゃないか?………いや、でもそれだと杉元さんや尾形君も誘われるはずか…。うーむ、一体なんだろうな?」

「うーん、緑谷の「個性」ってすごい強いし、オールマイトにも似てるから、気に入られてんじゃねえか?」

「いや、確かに緑谷君の超絶パワーもすごいが、君だってすごい「個性」でオールマイトに似ているだろう…。」

「そうか?似てるとかありがとうよ飯田。うーんじゃあなんで緑谷呼ばれたんだろうな〜?単純にオールマイトが緑谷を気に入ってるからとかか?」

「確かに、そうかもしれないな。」

俺は緑谷がオールマイトの秘密を知っているからだと思っている。緑谷はオールマイトの制限時間を知っているようだし、2人は何らかの関係が有るのだろう。それにいつだか爆豪に言っていた「借り物の個性」だという緑谷の個性も気になる…。と俺が考え事をしていたら、麗日が俺に話し掛けてきた。

 

「そう言えば、さっき聞きそびれちゃったけど、尾形君のヒーローの志望動機ってなあに?やっぱり杉元さんと同じでその大切な人を探すため?」

「ああ、それは俺も気になるな。」

と飯田も乗っかってきた。2人がじっとこちらを見つめてくるので仕方なく返事をする。

「………それも有るが、俺は杉元がなるって決めたから、俺もヒーロー目指しただけだぜ?」

「え…………」

「………それってどういう…?」

「そのまんまだ。杉元のこのバカ、さっき話してた理由で小さい頃いきなりヒーローになりたいとか言い出してな。しょうがねえから俺もコイツのサイドキックとしてヒーローになるって決めただけの話だ。」

「クソ尾形!!バカとはなんだバカとは!!」

「バカだろう。何の計画も立てずにヒーローになるなんて言いやがって。お前、俺が居なかったらまず雄英にも入れてなかったぞ。」

「う、うるせぇ!!尾形なんか居なくてもきっと…!!」

「いや、無理だろ。特に筆記の時点で。」

「ぅうううう………!」

俺と杉元のそんなやり取りを聞いていた麗日と飯田が生ぬるいものを見るような目でこちらを見てきた。

「なんというか…………。」

「うん…………ブレないね尾形君…………。」

お前達が聞きたいと言ってきたから答えただけだろう。なんだその目は。何が言いたい。

しかも近くの席に座ってこちらの話が聞こえていたであろう知らない奴らまでもが生暖かい目を向けてくる。おい、こっちを見るなウザってえ。

「いやほんとブレないよね尾形君…すごいよ…。」

麗日がしみじみそう言った。

 

午後の授業も終わり、約束していた牛山に話をしに行くだけとなり、杉元と連れ立って教室を出ようとするが、何やら廊下が騒がしい。

どうやら他のクラスの連中が1のAの教室を廊下から覗くために集まっているようだ。凄く邪魔だ。

「あっ、谷垣じゃん。おい、どうしたんだよコイツら。すげー邪魔だぞ。」

杉元が廊下に居た谷垣を目ざとく見つけて手招いた。悪意なく「邪魔」呼ばわりした(実際邪魔だが)ため、周りのヤツらの空気が少しピリピリしだしたが、杉元は構わず谷垣に手招きしている。

谷垣も手招きされて居心地が悪そうだったが、手招きをやめない杉元に観念してか、廊下から1のAの教室に入ってきた。

「杉元さんその人誰ー?お友達??」

と、麗日が聞いてきた。

「ああ、俺達の古い知り合いだ。谷垣って言って俺らとタメで普通科だ。」

「どうも…。」

「こんにちは〜。」

 

「おい谷垣なんだよこれ。なんでこんなに人が集まってんだ?」

「ああ、お前ら一昨日敵に襲撃されたって聞いて、噂になってるんだ。体育祭前だし、みんなどんな奴らか興味津々なんだろ。」

「え、お前もそうなの?」

「俺はお前達が襲撃されたって聞いて少し心配してやって来ただけなんだが…。」

「俺達は全然大丈夫だぜ?あ、そうだ谷垣!!お前牛山が雄英でヒーローてか教師やってたって知ってたか?」

「は!?牛山も居るのか!?しかも教師だって!!!?牛山が教師…………………似合わんな…。」

「なー、俺もすげえそう思ったよ。あ、今から尾形と一緒に牛山に話しに行くんだけど、谷垣、お前も良ければ一緒に行かねえか?」

「ああ、じゃあそうさせてもらうかな…。」

杉元が谷垣とそんな平和的な会話を繰り広げている間に、帰ろうとした爆豪が廊下の奴らを煽り、その中でも普通科の奴と同じヒーロー科のB組の奴に宣戦布告を貰っていた。1のAは中々に周りの連中から顰蹙を買っているようだ。

「上に上がりゃ、関係ねえ。」そう爆豪が言った。

「同感だ。勝てば必然と周りからの妬みやら嫉みやらを買う。そんなもんに一々構っちゃ居られんからな。」

そう俺が珍しく爆豪に同意すると、

「銃野郎、てめえも体育祭じゃ、ぶちのめしてやるよ。キズ女、お前もな。」

「………お前じゃ無理だろ。」

「ハッ出来るもんならやってみやがれ。」

俺は挑発し、杉元もそう返すと、爆豪はチッと舌打ちをしてコチラを睨んだあと帰っていった。

 



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雄英体育祭編2

爆豪が廊下の生徒達の波を掻き分けて帰っていくと、他の連中もチラホラ同じように帰っていった。

俺達も牛山に会いに行くために緑谷達に別れの挨拶をしてから谷垣と共に教室を出た。

職員室へ行くと目当ての牛山が居た。

「待ってたぞ、杉元、尾形。それに谷垣も来たのか。」

牛山が席を立つ。

「ここじゃ込み入った話も出来んだろ。空き教室に行くぞ。」

そう言って職員室を出ると、すぐ近くの空き教室に入っていった。

 

空き教室の椅子を適当に並べて座る。

「さて、お前ら何が聞きたい?」

そう牛山が問うてきた。

「牛山、アンタ、前の世の記憶全部あるのかい?」

俺がそう聞くと牛山は是と答えた。

「ああ、前の世の、前世の記憶はしっかり有るぞ。前世で抱いた女の事もしっかり覚えてるぞガハハハハ。おっと、今は杉元は女だからあんまりこういう事は言わん方がいいか。」

「別に構いやしないぜ。昔の俺のままだと思って接してくれよ牛山。」

「お、そうか?お前らもしっかり前世の記憶は有るんだろうな?杉元、尾形、谷垣。」

牛山が俺達の記憶の有無を確認してきた。

 

「ああ、俺も尾形も前の記憶はしっかり持ってるぜ。じゃなきゃこんなに話出来ねえだろ?」

「俺もしっかり覚えてるぞ。」

「そうか…しっかし、前世の記憶が有るんならなんで尾形と一緒に居るんだ?しかもお前ら緊急時にもイチャイチャしやがって。どういう心境の変化だ??」

牛山が前に谷垣がしてきた質問と同じ事を聞いてきた。

 

「イチャイチャなんてしてねえよ!!!!

………まあ、尾形とは今生で色々あってな…。俺達幼馴染なんだよ。ビックリするだろ?まさか尾形と幼馴染なんてな。まあ、それで色々あって記憶も思い出して、前世でのコイツの所業は水に流すことにして、まあ今でも幼馴染続けてんのさ。」

「そうだったのか…まあ、お前が良いならいいんじゃねえか?」

「ああ、まあ、俺達のことは別に良いだろ。牛山、あんた記憶を取り戻した切っ掛けってなんだ?入学の時俺達の写真見たから、って訳じゃねえだろ?」

「ああ、勿論違う。お前らが入学するずっと前から記憶は戻ってた。お前らが知ってる奴にたまたま出会ってな。お互いそれでだ。」

「知ってる奴って誰だ!?まさかアシリパさんじゃねえだろうな牛山!?」

牛山の「知ってる奴」という言葉に、杉元は大きく反応した。

 

「杉元、期待してるとこ悪いが俺が会ったのはアシリパじゃねえぞ。ついでに白石でもねえ。」

「…………やっぱそうだよな…。……じゃあ一体誰なんだ?」

牛山の否定に杉元は大きく肩を落とした。

俺達が知ってる奴というとかなり絞られるが、まさか第七師団じゃあねえだろうな…。

「………おい、まさか第七師団の連中じゃねえだろうな…?」

不安になり俺はそう聞いたが、答えは違った。

「いや、違う。俺が会ったのはカノだ。」

「……………カノ?……カノって…誰だっけ…??」

「聞き覚えは有るんだが………ダメだ出てこない。」

「……おい、カノって確か………。」

杉元と谷垣は記憶の底から出てこなかったようだが、俺はピンと来たぞ。

「ああ、家永の事だ。」

「家永かよ!!あの爺さんも居るのか!」

「杉元、カノはもう爺さんじゃないぞ。」

「へ?」

「今生じゃあ俺の妻だ。勿論正真正銘女だ。」

「………ええええええええ!!!???」

「待ってくれ、情報量が多すぎる…。」

「…マジかよ………。」

流石に俺も言葉を失くした。杉元も前世と違い今世は女だが、まさか杉元以外に性別が変わってる奴が居るとは全く頭になかったぜ。

 

「杉元、お前だって今生は女なんだ。他の奴らが女でも別におかしい事じゃ無いだろう。」

「いや、まあそうなんだろうけど………えぇー。ほんとにぃ?」

「まさかあの家永の爺さんがなあ…確かに前世の容姿も爺とは言えなかったが…。」

「しかも女好きの牛山と、なあ…。牛山、あんた1人の女で満足出来てんのか?」

あの性欲の権化と言えた牛山だ。家永を娶ったことも驚きだが、身を固めたこと自体が信じられん。

「ああ、何せカノはいい女だからな。俺達は大恋愛の末結ばれたんだ。そう、あれはいつだったか…」

「いや、聞きたくない。聞かせなくて良いから。」

「ああ、俺も聞きたくない。」

「同意。」

牛山が家永との恋愛話を聞かせてこようとしてきたが、俺達は全力で拒否した。

誰がお前らの恋愛話なんぞ聞くか。

「なんだよお前ら…。」

牛山は自分の恋愛話を話せなくてガッカリしたようだった。お前らの恋愛話なぞ心底どうでもいい事だ。

 

「まあ、それはともかく、じゃあ他の奴らとは会ってないんだな?」杉元が念の為牛山に確認を取る。

「………会っては居ないが風の噂で同姓同名の奴の名前ならチラホラ聞いたことは有る。」

「!!誰だ!!!!????」

「土方歳三…あの爺さんなら警察のお偉方に居る、って噂で聞いた。あの爺さんは有名だからな。まんま「土方歳三の生まれ変わり」って言われてるらしい。会ったことは今のところねえから本人かどうかは分からんが…。」

「そうか…あの土方歳三が居るのか…。」

「しかも警察のお偉いさんかよ…なんか厄介な事にならなきゃいいけどよ…。」

谷垣と杉元は土方歳三の名を聞いて驚いているようだ。俺もまさかここで土方の名前を聞くとは思わなかったが…。

「まあ、本人かも分からん上に、本人であったとしても記憶を持ってるかどうかもわからん以上、どうしようもないだろう。それに別にどうしても会いたい相手でも無いだろ?」

そう俺は考えた。

「………そうだな…。尾形の言うとうりだ。あの爺さんが今生居たとしても別に会いたいとも思わねえ。………それよりアシリパさんか白石の情報、何か持ってねえか?」

杉元はそう割り切り、アシリパと白石の情報を持ってないかどうかを牛山に確認した。

「………悪ぃな杉元、あの嬢ちゃんや脱獄王の情報なんて持ってねえ。」

「………そうか…クソっ…。」

杉元が再度肩を落とした。

「杉元………。」

「………嘆くなよ杉元。今度の体育祭で活躍すればテレビ中継で俺達も映る。それをアシリパや白石が見るかもしれねえだろ?そしたら向こうからコンタクト取って来るかもしれねえじゃねえか。」

俺はそう言って杉元を少しばかり慰めてやった。

 

「尾形………そうだな。体育祭、目立てるように頑張るわ。」

「ああ、お前なら優勝も狙えるだろ?」

「おう!そうだな!!絶対優勝して目立ってアシリパさんに見てもらうぜ!!」

そう言って、杉元の気分は向上したようだった。

「おお…尾形が杉元を慰めてる…俺の目がおかしくなったのかと思ったわ。」

「ああ、変われば変わるもんだな…。」

「まー、実際生まれ変わっとるしな俺達。ガハハ。」

全く、うるさい外野共だ。

「しかし、体育祭か…俺も頑張って上位を目指そうと思う。そしてヒーロー科へ編入する…!」

谷垣がそう言って目標を掲げた。

「そう言えば、谷垣、お前もヒーロー科志望だったんだよな。教師として贔屓は出来んが頑張れよ。」

「ああ、わかってる。…………しかし、インカラマッからは牛山、あんたが雄英で教師をしてるだなんて何にも聞いてなかったが…。」

そうだ、2つ上に居るというインカラマッと交流が有るのならば、谷垣は牛山が居ることを知っていても不思議ではなかったが何故だ?

「ああ、谷垣、お前を驚かせたいからお前が雄英に入学するまで黙っておくって前に言ってたぞ。」

あの占い女らしい理由だった。

「インカラマッめ………たく。」

「女は怖いな谷垣一等卒。」

そう言って俺は谷垣をからかった。

俺達は暫く前世の出来事も交えて談笑してから解散した。

 

杉元と連れ立って帰る途中、杉元が静かに言った。

「尾形、体育祭、どうせならお前も優勝狙えよ。」

「………そこそこ上位は狙うが、もしもお前とタイマン勝負とかになったらまあ、間違いなくお前が勝つだろ。」

これは本当の事だ。まともにコイツとやり合えば先ず俺は負けるだろう。殺すつもりの奇襲ならばコイツにも勝てるかもしれないが、体育祭でそれは出来ないし、俺も現世のコイツを殺す気は更々ないからな。

「俺もお前相手に負けるつもりはねえけど、最初っから諦めんなよ!!アシリパさん達に俺達がここに居るって知らせられる大チャンスだぞ!!お前も全力でやれよな!!」

杉元が暑苦しく言ってくる。

まあ、コイツが熱くなるのも仕方ないか。アシリパ達から見つけてもらえるチャンスだからな。

「………まあ、お前以外には負けるつもりはねえから安心しろよ杉元。もしお前が相手になっても最初から勝ちを諦めるつもりも無いしな。お前こそ、油断して足元すくわれんじゃねえぞ。」

そうだ。意気込んどいてうっかり決勝にすら行けなかったら目も当てられんぞ。

「おう!分かってるって!!あ、ところで尾形。なんか相澤先生が体育祭の1年の部で選手宣誓お前がやらなきゃならんとか言ってきてよぉ。今からドキドキするし、話す内容は自分で決めろって言うんだけど、なんて言ったらいいと思う??でも選手宣誓なんて俺じゃなくて筆記含めて1位のお前がやればいいのによぉ…。」

杉元がそんな事を相談してきた。

杉元が選手宣誓だと?体育祭だから総合1位の俺じゃなくて実技試験ぶっちぎりの杉元にしたのだろうな。

「お前実技試験1位だったからな…。まあ、適当に選手宣誓してから、俺が優勝するとか言っとけばいいんじゃねえか?」

俺はそう適当にアドバイスした。

「え、いきなり優勝するとか言って大丈夫ぅ?俺、周りから反感買わない??」

俺の適当なアドバイスを真面目に受け取った杉元は周りから反感を持たれないか心配なようだ。

至極適当に言ったつもりだったが、選手宣誓の際に杉元に優勝宣言させるのはいいかも知れんな。そっちの方が面白い。

「お前、優勝するんだろ?だったら先に言っといても構わんだろ。それにそう言っとけば目立つぞ。………まあ、反感は買うだろうがな。」

「やっぱり反感買うんじゃん!!嫌だわそんなもん!!」

「うるせえ、じゃあ反感買わんように工夫しろ。優勝宣言しつつ周りから反感貰わんようにな。俺も一緒に考えてやるからいいだろ?」

「えぇーなんでお前そんなに俺に優勝宣言させたいのぉー?いいよー、普通でぇー。」

「目立つからだって言ってるだろう。良いのか?目立つことなくアシリパに俺達の存在を知られなくても。」

「いや良くないけど…………。」

「じゃあ良いだろう。」

「うう、いいのかなぁ…?」

「(そっちの方が面白いからな。)」

俺はそうして杉元を丸め込み、選手宣誓の際には優勝宣言させる事にした。クク、今から楽しみだ。

 

それから2週間、俺達は学校に通いつつも、日々のトレーニングや組手の時間を少し多めに取り、体育祭に向けての準備も少しばかりした。

体育祭当日、観戦しに来た大勢の一般客だけでなく、出店やら取材陣やらで人がごった返した。それは一高校の体育祭とはとても思えないものであった。

セキュリティ強化とも言っていたので、当日は各地に散らばっているプロヒーロー達が多く警備にあたっているようだった。

俺達も通常より早く登校し、体操服に着替え、クラス毎の待合室で出番を待つことになった。因みにヒーローコスチュームは他の科の奴らと公平を期すために着用不可なので、全員雄英指定の体操服着用だ。

 

クラスメイト達は思い思いに入場まで過ごしていたが、突然轟が「緑谷」と、緑谷に話し掛けてきた。

「轟くん…何?」

緑谷は不思議そうに返事をした。

轟は、

「客観的に見ても実力は俺の方が上だと思う。」

「お前オールマイトに目ぇかけられてるよな。別にそこ詮索するつもりはねえが…おまえには勝つぞ。」

と、なんと緑谷に宣戦布告してきた。

どうやら轟も緑谷とオールマイトは浅からぬ関係だということに気づいたようだ。

轟はそれだけに終わらずに、コチラを向いて更に続けた。

「杉元、お前も「個性」オールマイトに似てるよな…。今の実力じゃあお前のが強いかもしれないが…俺はお前にも負けるつもりはねえ。」

と、隣に居た杉元にも宣戦布告してきたのだ。杉元は突然の宣戦布告にポカンとしている。おい、お前は喧嘩売られたんだぞ。しっかりしろ。

周りは「おお!轟、緑谷と杉元ちゃんに宣戦布告か!?」と騒ぎ立てている。

面倒見のいい切島が、轟に対して「急に喧嘩腰でどうした!?直前にやめろって…」と仲裁に入ったが、轟は「仲良しごっこじゃねえんだ。何だって良いだろ。」と意に介さなかった。

まあ、轟の言う通りだ。俺達は今から競い合うんだからな。

轟の挑発に対して、緑谷は最初はネガティブなことを言ってはいたが最終的に「僕も本気で獲りに行く!」と返していた。

ポカンと成り行きを見ていた杉元に俺が肘でつついて「おい、喧嘩売られたんだ。お前はどうなんだ杉元。」と言うと、杉元もハッとして言い返した。

「ハッ!悪いけど、俺も目立たなきゃなんねえんだ。優勝は俺が頂くぜ?ついでに2位も尾形が取るからワンツーフィニッシュは俺達だ。」と、俺も巻き込んで挑発し返していた。

まあ、間違いはないので、「そういうことだ。悪いな緑谷、轟。」と俺も挑発しておいた。

緑谷や轟だけでなく、そばで聞いていた奴ら(特に爆豪)も言い返そうとしていたが、そこで入場時間を知らせる合図が鳴ったので、全員入場する準備のために何も言い返しては来なかった。

 

入場口からプレゼント・マイクの声が響いてくる。

「雄英体育祭!!ヒーローの卵たちが我こそはとシノギを削る年に一度の大バトル!!

どうせてめーらもアレだろこいつらだろ!!?敵の襲撃を受けたにも拘わらず鋼の精神で乗り越えた奇跡の新星!!!!

ヒーロー科!!1年!!!A組だろぉぉ!!?」

プレゼント・マイクの紹介と共に入場する。

かなりの観客で、一部のクラスメイト達が浮き足立っている。まあこれだけの客に見られるんだ。それも仕方の無いことだろう。

杉元も「すげー人だな…。」と浮ついている。

「おい杉元、あんまりキョロキョロするな。見てて恥ずかしいぞ。」と伝えると「う、うるせー!尾形!!キョロキョロなんてしてねえよ!!」とキレだした。いや、確実にキョロキョロしていただろう。まあ、これで落ち着いたなら良い。

「選手宣誓、きちんと覚えてるだろうな杉元。これで忘れたとか言ったら恥ずかしいことになるぞ。」

「大丈夫だって!!ちゃんと覚えてるわ!!」

ならいいが。

「杉元、盛大にかましてやれよ。」

と俺が言うと、杉元は「おう!!」と不敵な笑みを浮かべた。

全員が並び終わると1年用の主審なのだろう18禁ヒーローのミッドナイトが壇上に上がって「選手宣誓!!」と言った。

…どうでもいい事だが、18禁ヒーローが18歳未満の子供が多くいる学校に居ていいのだろうか。

「選手代表!!1のA杉元佐一!!」とミッドナイトは壇上から杉元を呼んだ。

緑谷や麗日は「選手代表杉元さんなんだ!」

「尾形君じゃないんだね〜?」と言ってきたので、「実技試験はぶっちぎりの1位だからなアイツ。」と返しておいた。

すると、普通科の奴らの「ヒーロー科の入試でな。」と言う嫌味が返ってきた。

やはりヒーロー科は他の科から疎まれているようだ。

別に周りの科のヤツらからどう思われようがどうでもいいとしか思わないがな。

杉元が壇上に上がり緊張しているようだが、選手宣誓をする。

「えーと、宣誓!!えー、俺…じゃない、我々選手一同は、ヒーローシップに則り、正々堂々戦い抜くことを誓います!!」

ここまでは普通の選手宣誓のため、周りの奴らは「普通だな…。」「なんか拍子抜け。」「あの子可愛いな…。」「普通。」とか何とか言っていた。

だが、本命はここからだ。

 

「それと!この体育祭、この俺、杉元佐一が優勝します!!!!!!」

ククク、本当に言いやがった。

いいぞ杉元。

大胆不敵な優勝宣言に、「調子乗んなよA組!!」やら「大胆不敵だな杉元さん!」やら「あの子すごい自信だ…。」やら、賛否両論飛び交った。

 

「あっ、ついでに2位はそこに居る尾形百之助がするんで。俺達がワンツーフィニッシュします!!!!以上!!!!宣誓終わり!!」

 

……………………………杉元の野郎………俺まで巻き込みやがった………。ご丁寧にフルネームな上、指差しまでしやがったコイツ………。

そんなこと言えなんて指示してないぞ俺は…。

周りからの視線が突き刺さる。

選手宣誓を終わらせた杉元はニヤニヤコチラを笑いながら戻ってきた。

「これで尾形、お前も何がなんでも2位にならねえと恥ずかしいことになるなあ〜?」

そう杉元が心底楽しそうに言ってきた。

実弾で撃ってやろうかコイツ…。

俺が怒りで物騒なことを考えていると、杉元は急に真剣な顔をして言ってきた。

「尾形、俺はお前と決勝に残りたいんだから気張れよ。」

……………仕方ない。ここまでされちゃ、俺もやるしかないだろう。

「………決勝で俺が勝っても知らんからな。」

「ハハッ上等!!」

体育祭が、始まった。




全国ネットで尾杉♀がイチャつき始めましたね。宣戦布告ですら、コイツらイチャつきやがって…と周りは思ってます。恥ずかしいヤツらですね…いいぞもっとやれ。


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雄英体育祭編3

杉元の選手宣誓兼優勝予告が終わり、第1種目が発表される。

会場の中央に設置された馬鹿でかいモニターに「障害物競走」とデカデカと標示された。

第1種目は障害物競走らしい。

 

主審のミッドナイト曰く、コースはスタジアムの外周4kmで計11クラスの総当りレースとなるようだ。しかもコースを守れば何をしても構わない…か。

これは他の奴らからの妨害も視野に入れておいた方が良いだろう。

だが、どんな障害が出てくるかはわからんが、レースならば俺と相性は悪くない。今世の俺の「山猫」の身体能力でなら、短距離走も長距離走も持久走も苦にもならん。杉元もそうだろう。

ゲートが開かれ位置につきまくれとミッドナイトがアナウンスしてくる。

誰もがいい位置につきたがり、皆前へ前へと出ようとしている。

俺は面倒なので後ろの方のポジションを取った。とりあえず単純だが策は考えてある。

杉元も前には行かずに俺の隣に来ていた。

「考えることは一緒にみたいだな尾形ぁ。」

と杉元はニヤリと笑った。

 

ゲートに付いている開始を合図するランプが点灯する。

3つ目のランプが着くと「スタート!!」と大きな掛け声が上がった。

 

俺と杉元はその瞬間、大きく跳躍し、ランプが点灯しているゲートの上に飛び乗り、そこを足場に更に跳躍し地面に着地した。

これでもう結構後続との差ができた。

後続は思った通り大人数が狭いゲートを通るのでギチギチと密集していて、通り抜けるのにも苦労してそうだった。

 

「おっーと!選手宣誓&大胆不敵にも優勝宣言をした1のA杉元・尾形ペアが開幕の大ジャンプで後続を引き剥がしたぞ!!」

プレゼント・マイクが実況しているのだろう。そんな声が届いてきた。

 

早速杉元が先頭に躍り出た。くそっ相変わらず速えなコイツ…。

杉元の後ろを走っていると、後から冷気が漂ってきた。反射で避けると俺が居た場所と杉元が居た場所が凍っていた。

後ろを振り返ると少し後ろに轟が追走しており、チッと舌打ちをしていた。

やはり妨害してきたか…。だが、俺も杉元もどんどん避けながら走る。

轟は後ろにも足止めのため凍りつかせていたらしく、大勢が足止めを食らったようだった。しかし、轟の妨害を想定していたのかA組連中は上手く回避していた。

 

「ハハッうちの連中もやっぱり速いな!!」

「笑ってる場合じゃねえだろ杉元。それに前からも来るぞ。」

 

走っていると、入試で見たような仮想敵がワラワラと出てきやがった。

 

「さあ、いきなり障害物だ!!まずは手始め…第一関門ロボ・インフェルノ!!」

実況のプレゼント・マイクがそう紹介していた。

 

入試の時出てきた0ポイント巨大仮想敵までうじゃうじゃ出てきやがった。

だがまあ、こいつらは動きがノロい。サッと攻撃を避けながら駆け抜けていけば特に問題にもならんな。

杉元は…

 

「邪魔だぁ!!!!!!!」

 

0ポイント仮想敵まで跳躍し、拳1発で仕留めていた。あの馬鹿、避けた方が速いだろうに…。

 

「1のA杉元!!ロボ・インフェルノを真正面からパンチ1発で仕留めやがった!!入試ん時も思ったけどなんだコイツ、チートかあ!?」

実況のプレゼント・マイクも杉元の馬鹿力加減に驚いてるようだ。チートと言うのも同意だな。

杉元は次々と巨大仮想敵を仕留めながら進んでいった。

 

後続の1のA連中も各々のやり方でこのロボット地獄を抜け出しつつあるようだ。

俺はさっさと通過して杉元に並んだ。

 

「馬鹿正直にぶっ倒しやがって。それで時間取られてりゃ世話ねえぞ。」

「うるせえ尾形!!これから引き離すからいいんだよ!!」

 

俺と杉元が走りながらそんな会話してると、次の関門が見えてきた。

 

「オイオイ第一関門チョロイってよ!!んじゃ第二はどうさ!?

落ちればアウト!!

それが嫌なら這いずりな!!

ザ・フォーーーール!!!!」

 

第二関門は大穴の中、飛び飛びの地面に綱が張ってある。それでどうにかして進めと言うことだろう。

杉元は綱なぞ意に介さず、大跳躍で地面を駆け抜けて行った。

俺は流石に連続の大跳躍なぞ疲れるので、縄を足場に跳躍しながら進んだ。

 

後ろから轟や爆豪が進んでくるのがチラと見えた。

距離はまだ結構離れてはいるが、油断はできん。素早く第二関門を突破する。

 

「先頭は一足抜けて下は団子状態!!上位何名が通過するかは公表してねえから安心せずに突き進め!!

そして先頭の杉元・尾形ペア、うん、もうコイツらペアで良いな。杉元・尾形ペアは早くも最終関門!!かくしてその実態はーーーー…

一面地雷原!!!怒りのアフガンだ!!

地雷の位置はよく見りゃ分かる仕様になってんぞ!!目と脚酷使しろ!!

因みに地雷!威力は大した事ねえが音と見た目は派手だから失禁必死だぜ!」

 

地雷かよ…こりゃ先頭ほど不利な仕様だな。

だが、俺の「山猫」の目と嗅覚があればこれも特に問題にならん。地雷の位置が丸わかりだ。

俺は地雷を避けながら走る。

隣の杉元は…

 

「地雷だかなんだか知らねえがこれじゃ俺は止まんねえぜ!!!!」

 

と地雷が盛大に爆発してもお構い無しに真っ直ぐ進んでいった。

 

「1のA杉元!!なんと地雷原をもろともせずに走り抜ける!!重戦車かなんかかアイツ!?

対して横並びの1のA尾形は少し離れた場所で地雷の位置を的確に把握して避けながら走る!!地味だけどいい仕事してるぜ!!」

 

全く、隣でボンボンやられちゃかなわん。俺は杉元から少し離れて走る。

 

「おっと、ここで轟と爆豪が杉元・尾形ペアを猛追してきた!!だが、まだ距離はそこそこ離れているぞ!?後続もスパート掛けてきた!!だかやはり先頭2人がリードか!?」

 

そんな実況を聞きながら走っていると、突然後方から何かが大爆発したかのような音が聞こえてきた。いや、したかのような、ではなく大爆発したのだろう。なんと緑谷がその大爆発の爆風に乗って猛追してきやがった。

いや、猛追どころか俺達の頭上を抜いてきやがった。

 

「緑谷ぁ!!!???」

「ッチ、抜かれるぞ杉元!!走れ!!」

 

俺達は緑谷を追いかけ、緑谷が失速しなんなく追い抜いたと思ったら、緑谷は持っていた大きな鉄板を思い切り地面に叩きつけてまた爆風に乗りやがった。しかも近くに居た俺を爆風に巻き込みやがって。クソが。

杉元も爆風に巻き込まれていたが、奴はそんな事など構わずに緑谷を追っていった。化け物め…。

 

「緑谷、間髪入れずに後続妨害!!なんと地雷原即クリア!!イレイザーヘッド、お前のクラスすげえな!!どういう教育してんだ!」

 

全くプレゼント・マイクに同意だ。

緑谷、お前もまたとんでもねえな。

 

俺は緑谷・杉元の後を追い、地雷原を抜け、そろそろスタジアムのゴール前に着きそうな時にそのアナウンスは降ってきた。

 

「さぁさぁ、序盤の展開から誰が予想出来た!?

今一番にスタジアムへ帰ってきたその男ーーー」

 

…チッ、杉元はダメだったか…。

 

「緑谷出久の存在を!!!!」

 

結局緑谷が一位着か、意外すぎる展開だ。

だが、そのすぐあとにアナウンスが流れる。

 

「二位は序盤からぶっ飛ばしてたこの女!!

杉元佐一!!!!緑谷とは殆ど僅差だ!!、惜しかったな!!」

 

それを聞き終えないうちに、俺はゴールテープを切った。

 

「三位は尾形百之助!!杉元が言った二位になる予定の男!!今回は三位だがこれからその実力を見せつけられるのか!?」

 

…うるせえ、何とかするしかねえだろう。

 

暫くすると、轟と爆豪が入ってゴールテープを切った。

こいつらも中々早いなと思って見ていたら、思い切り爆豪に睨みつけられた。俺の方が順位が良かったからだろうな。まあ、どうでもいい事だ。

 

「さあ、続々とゴールインだ!順位などは後でまとめるからとりあえずお疲れ!!」

 

そうアナウンスされた通り、後続組も続々とゴールテープを切っていった。

 

「緑谷〜!!お前、すっごいな!!最後まさかあんな風に追い抜かれるとは思わなかったぜ〜!!緑谷って結構無茶するよなあ!!」

 

杉元は何が面白いのかニコニコしながら緑谷の背中をバシバシ叩いて緑谷に絡んでいた。

緑谷は困ったように「近い…」と呟き赤くなりながら「す、杉元さんの方が凄いよ…最初っからずっと1位だったし、僕は運が良かっただけだよ本当に…」と語っていた。

確かに最後のなんてかなりの博打だったのだろう。だが、その博打に勝ったのも緑谷だ。

杉元もそう思ったのだろう。謙遜するなよとまた緑谷に絡んでいた。

俺は緑谷と杉元のやり取りを見ていると杉元と目が合い、今度はこちらにやってきた。

 

「尾形もお疲れさん〜。」

「おい、ヘラヘラ笑ってんじゃねえぞ二着。」

「なんだよ!いいだろ二着でも!!お前だって三着じゃん!!」

「うるせえ、お前宣言通り優勝しないと大恥かいて終わりだってこと分かってんのか?」

「分かってるわ!でもまだ1種目目じゃん!!大丈夫だって!!まだまだこれからだぜこれから!!」

「お前なぁ…。」

 

「杉元さんと尾形君、競技終わったばっかなのに元気だね…。」

緑谷が俺達を呆れたように見ながらそう言った。

 

暫くしたら飯田が、また暫くして麗日がゴールして緑谷達に近寄った。

「デクくん、杉元さん、尾形くん…凄いねえ!特にデクくんは一位凄い!!悔しいよちくしょう〜!!」

「この「個性」で遅れをとるとは…やはりまだまだ僕…俺は…!」

麗日はともかく、飯田はアイデンティティが揺らいでるようだった。

 

他の連中を待ってる間に休憩を取り、42人がゴールし終えた所でこの競技は終了した。

どうやら42人が次の種目へと足を進めることが出来るらしい。

42人目以降は足切りとなり、途中でも競技は取りやめになったようだ。

 

途中でやって来た八百万の尻に引っ付いてゴールするなどというふざけたあのぶどう頭のクラスメイト…峰田を見つけた瞬間、杉元が「何八百万さんにセクハラしてんだてめぇ…!」とアイアンクローをかましていたが、それ以外は特に何事もなく、上位42名が出揃った。

どうやら谷垣もギリギリだが42名の中に滑り込んでいるようだった。

それを目ざとく見つけた杉元がゴールして肩で息をしている谷垣に、「谷垣も結構早いじゃねえか!」と背中をバシバシし叩いていた。谷垣が辛そうだからやめてやれ。

 

1年全員が再び会場の中央に集められると、ミッドナイトが壇上から声を張り上げた。

 

「予選通過は上位42名!!!残念ながら落ちちゃった人も安心なさい。まだ見せ場は用意されているわ!!

そして次からいよいよ本選よ!!ここからは取材陣も白熱してくるよ!気張りなさい!!」

 

本選か…次は何をさせるんだ?と思っていると、中央のモニターにデカデカとそれが標示された。騎馬戦。

 

騎馬戦…って事はチーム戦か…。

杉元と組むか、と思っていたら、向こうもそう考えたのだろう。杉元がコチラをチラリと見た。

ルールは2〜4人でチームを自由に組み基本的には普通の騎馬戦のようだ。

ただ、振り分けられるポイントは第1種目の順位ごとに変わってくるらしい。組み合わせによってはポイントが全然違う騎馬が出来上がるな…。

 

そして爆弾が落とされた。

「1位に与えられるポイントは1000万!!!!」

全員が一位通過の緑谷を見た。

緑谷は1000万ポイントと聞いて凄い形相で固まっている。

 

「上位の奴ほど狙われちゃう下克上サバイバルよ!!」

ミッドナイトの言葉が会場にこだました。



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雄英体育祭編4

騎馬戦は2人から参加可、か…。

杉元と2人だけでも良いのだが、奴を肩車して数分間動き回るのはキツいな…。

いや、だが杉元が俺を肩車すればいけるか…?しかし絵面的にそれは絶対にごめん被りたいので却下だな。

俺が悩んでいると、説明は更に進んだ。

制限時間は15分であり、騎手はそのポイントが標示されたハチマキを装着し、取ったハチマキは首から上に巻け、との事だった。

そしてハチマキを取られても、騎馬が崩れてもアウトにはならないということだ。

つまり、全チームが15分間までずっとハチマキの取り合いを続けるという事だ。勿論個性発動あり。

やはり安定性を考えて誰かを騎馬として捕まえた方が良さそうだ。だが、誰を入れるべきか…。

 

そう考えていると、15分間のチーム決めの時間となった。

俺はすぐさま隣の杉元に「おい、俺と組むぞ杉元」と伝えた。

杉元は「命令すんなクソ尾形。…まあ、その案に乗ってやるよ。」と返してきた。素直じゃねえな。

 

他にどんな奴がいいかと俺が考えていると、A組連中がワラワラと自分と組めと言ってきた。

まあ、特に杉元の個性は破格だからな。コイツは騎手でも騎馬でも上手く熟すだろう。

そういう俺も中々に人気者になっている現状だ。

「おい、誰にする杉元?お前の希望も一応聞いておいてやる。」

「偉そうに言うな尾形。」

そう言いつつも、杉元の目線の先は緑谷を固定している。

 

アイツは1000万ポイントだからな。これだけいるヤツらから避けられまくっている。

どうやら麗日にはチームを組んでもらえたようだが、普段仲が良さそうだった飯田には断られてるようだ。

それを見た杉元が周りに集まってる人混みをかき分けて、緑谷達の方に向かった。

おい、本気か杉元…。

杉元の意図が読めた俺だが、こいつは決めたら何を言っても聞かないだろう。

俺は仕方なく杉元の後を追うと、やはり杉元は緑谷の前に行き、「緑谷、まだ決まってないなら俺達と組まねえか?」と言い放った。

 

緑谷は「ええええ!?杉元さん、尾形君、い、良いの!?」と死ぬほど驚いていた。

 

「はは、だってお前らと組んで15分間逃げとけば勝つだろ?それに、そうした方が俺達も目立つ。」

と、事も無げに杉元は言い放った。

緑谷は俺に「い、良いの?尾形君は…?」とおずおず問うてきたが、「コイツが1度言い出したら話なんて聞きゃしねえからな…。まあ、こいつの言う通り、ガン逃げすりゃ、まあ、なんとかなるだろ。」と答えておいた。

それに個性も録に知らない奴らより多少なりとも気心知れてる奴らと組んだ方がマシだろう。

 

こうして俺と杉元は、緑谷・麗日を入れて4人で騎馬を組むことになった。

あと数分で騎馬戦開始となる。

役割分担を決めねばな…。

 

「緑谷、麗日、杉元で騎馬を組んで、俺が騎手をする。攻撃は俺が何とか躱す。以上。」

俺がそう言うと、杉元は「お!わかり易い!でもお前が騎手かよ尾形〜。」と俺が騎手で不満そうにしていた。緑谷と麗日はそれで大丈夫なのかと言う顔をしてきた。まあ、当然だろうな。

 

「他の奴らからのハチマキ奪取の手は俺が回避する。まあ、俺の「個性」の反射速度なら何とかなるだろう。麗日と緑谷が後ろ横の騎馬になり、俺への死角からの攻撃を感知する。麗日、緑谷、お前らが俺への死角からの攻撃を早めに察知するのが重要だ。分かったな?杉元、お前は前方の騎馬になり俺を支え続けろ。お前が踏ん張らねえと、俺が自由に動けねえからな。そして最悪お前が皆を担いで素早く逃げろ。お前の馬鹿力なら出来るだろ?できるだけバトルにならんように逃げて貰う。15分間逃げ続けることになるからな、お前ら気張れよ。」

大雑把な策だが、まあ杉元も居るし行けるだろう。

 

準備時間がまもなく終了するのでフィールドにいる全員、騎馬を組む準備をする。

 

「よぉーし組み終わったな!?

準備はいいかなんて聞かねえぞ!!

いくぜ!!残虐バトルロワイヤル

カウントダウン!!3!2!1!…」

 

俺を騎手にしていつでも逃げられる姿勢をとる。

 

「スタート!!」

始まりの合図と共に、2チームがこちらに突撃してきた。

 

「実質1000万の争奪戦だ!!」

「はっはっはっ!!尾形君!いっただくよー!!」

B組の奴らと透明人間の葉隠を騎手にしたA組の奴らが突っ込んできた。

 

「右へ回避!!」

俺が上から指示を出す。それに従い全員右側に逃げるがB組の奴の個性なのか地面が沈み、足を取られる。

 

「杉元、全員掴んで跳べ!!」

早速杉元の出番だ。事前に麗日に麗日以外を浮かせておいたため(麗日自身は個性により浮かせられない)、杉元は軽々と大跳躍した。

「うおっ!いつもよりすげぇ飛ぶ!!麗日さんの「個性」やっぱすげえな!!」

と跳んでる最中杉元は呑気にそんな事を言った。

「えへへ、ありがとう杉元さん。でも杉元さんの方が凄いよ。こんな大ジャンプ!!」

麗日も杉元を褒めだした。

「おい、呑気に互いを褒めあってる場合か。次来るぞ。」

俺がそうつっこみを入れると、障子が一人突っ込んできた。いや、1人じゃ無いのだろう。複腕で覆っている背中に何かいそうだ。

案の定、背中から何かが投げられてきた。

 

「麗日!足元に何か飛んできたぞ!注意しろ!!」

「へ!?わっほんとだ!!これって峰田くんの…?」

危うく黒く丸い物体を踏むところだった麗日は何とかそれを回避する事が出来た。

 

「やるなぁ、尾形…。」

と障子の背中から峰田が喋りかけてきた。

緑谷は「なあぁ!?それアリィ!?」と驚いていたが、主審のミッドナイトがアリと言っているのだからアリなんだろう。

 

すると更に障子の背中を覆っている複腕の中からムチのように舌が飛び出し、俺のハチマキを取ろうと動いた。俺はそれを屈んで避ける。この舌は蛙吹だな。

 

「流石ね尾形ちゃん…!」

蛙吹も顔を出してそう言ってきた。

 

「逃げろ杉元。」

「おう!」

とまた杉元に頼んでその場を大跳躍して離脱した。

すると自分も爆破で跳躍したのか、爆豪がこちらに向かって飛んできた。

 

「調子に乗ってんじゃねえぞクソ銃野郎!!」

「今は銃は持ってねえぞ爆発野郎。」

爆豪が掌をコチラに向けて爆破してきたのを寸でのところで避けて手首を掴んで捻る。

「がぁっ!!」

爆豪が痛そうに唸り、捻られた手首を無理やり引き剥がした。落下していく爆豪にテープの様なものが引っ付き、それに引っ張られて元の騎馬の上に戻って行った。

爆豪の野郎、油断も隙もねえな…。

「まさか空中で爆豪君が来るとはね…びっくりしたあ…。」

「かっちゃんの爆破を避けただけじゃなくて更に腕までひねりあげるなんて凄いよ尾形君!」

「おい、尾形!今のは危なかったぞ!油断すんなよ!」

ありがとうよ、緑谷。だが、今のは確かに危なかった。

 

実況では先程の爆豪の、騎馬から離れた状態に良いのかと疑問の声を上げていたが、主審がテクニカルなのでOKという答えを返していた。

 

7分経過して中途発表が出された。

ハチマキを奪われてない俺達が1位なのは当然として、現在2位から4位はB組の奴らが占めているようだ。

どうやら途中で爆豪もハチマキを奪われたようだ。情けねえな。

B組の物間と言う奴が言うには、B組の多くは第1種目は様子見に徹してA組やライバル達の個性などを観察していたらしい。ついでに爆豪を煽りまくった。爆豪は「尾形達の前にコイツら全員殺そう」と標的を俺達から物間の騎馬に移していった。敵が減るのは有り難い。

 

だが、とうとう轟チームが俺達の前に立ちはだかった。そう簡単に逃がしてはくれないようだ。

 

「さあ、残り時間半分を切ったぞ!!

B組隆盛の中果たしてーーーー1000万ポイントは誰に頭を垂れるのか!!!!」

そんな実況が流れた。1000万ポイントは勿論俺達のものだ。

 

轟を含めた周りの奴らが俺達目掛けて突っ込んでくる。轟達は騎馬の上鳴の個性を使って周りの奴らを電気で足止めをしてから、轟が一瞬にして凍りつかせた。

俺たちとは距離があったため、痺れも凍りもしなかったが、至近距離でやられていたらヤバかっただろう。

 

「杉元、距離を取れ!!」

「分かってる!!」

 

そこから俺達は轟達を寄せ付けぬようにひたすら杉元頼みで距離を取った。

ッチ、銃の持ち込み許可が降りていれば遠距離からの牽制が出来たんだがな…。

だが、無いものを嘆いても仕方ない。

 

「杉元、まだイケるか?」

「おー、結構しんどいけどまだ大丈夫だ。」

杉元も流石に辛そうだが、あと1分だ。持ちこたえられるだろう。

 

「残り時間約1分!!轟、フィールドをサシ仕様にし…そしてあっちゅー間に1000万奪取!!とか思ってたよ5分前までは!!尾形チームなんとこの狭い空間を5分間逃げ切っている!!第1種目一位二位三位が居るチームは伊達じゃねえってか!?」

 

残り時間あと1分。離れた場所で飯田が轟達に何かを伝えている。

「皆、残り1分弱…この後俺は使えなくなる。頼んだぞ。しっかり掴まっていろ。」

 

「山猫」の耳にそう伝わってきた。

これは飯田、何かやる気だな。

俺は密かに構えた。

 

「取れよ轟くん!トルクオーバー!」

来る!!!!

 

レシプロバースト!!!!

 

飯田が飛んでもないスピードでこちらに突っ込んできた。

轟が俺のハチマキに手を伸ばす。

だが、俺は事前に何かをすると分かっていた。反応できない程ではない。

額のハチマキを抑え、轟の手を寸での所で躱した。躱しきった。

 

「なーーーー!?何が起きた!?速っ速ーーーー!!飯田そんな超加速があるんなら予選で見せろよーーーー!

ライン際の攻防!その果てを制したのは………尾形チームだ!!

なんとあの超加速に反応して避けたのか尾形!?飛んでもねえ反射神経してやがるぜ!!!!」

 

かなり際どかったがな。事前に聞こえてなければ取られてた可能性の方が高いだろう。

だが、防ぐ事が出来た。聞こえてきた内容が事実なら、飯田がもう1回仕掛けてくるという事は無いだろう。

 

「………悪い、飯田。取れなかった…。」

「…仕方ないさ轟君。尾形君の反射神経を正直舐めていた…。」

 

飯田が動けないのならもうアタックはコチラに出来ないだろう。

「よっしゃナイスだ尾形!!」

「飯田君めちゃくちゃ速かったけど、避けれた尾形君も凄いね!!」

「良し、後はこのまま逃げ切ろう!!」

「ああ、あと数秒だ。油断すんなよお前ら。」

 

破れかぶれに突撃してくる数チームを躱す。

爆豪達も遠くからやって来るのが見える。だが、この距離ならば時間内にコチラまで辿り着くのは無理だろう。

 

「そろそろ時間だ!カウントダウンいくぜ!

エヴィバディセイヘイ!

10!9!8!7!6!5!4!3!2!1!」

 

俺達の勝ちだ。

 

「TIMEUP!!!!」

 

「やったああああ!!」

「やったね尾形君、杉元さん、麗日さん!!」

「よっしゃあ!!ほらな!!やっぱり何とかなっただろ!?」

「ああ…これで一段落だな。」

全員、勝利を噛み締めた。

 

「早速上位4チーム見てみよか!!

1位、最後まで逃げ切りやがった尾形チーム!!!!

2位、爆豪チーム!!

3位、鉄て…アレェ!?オイ!!!!心操チーム!!

4位、轟チーム!!

以上、4組が最終種目へ…進出だああーーーーー!!」

 

色々ギリギリだったが、ちゃんと最終種目へ進出出来たんだ、まあこれで良いだろう。

騎馬を解き、身体を解す。

すると杉元がやって来た。

 

「な、俺が言った通り、15分間逃げ切れば勝つって言っただろ?やっぱり緑谷と組んで良かっただろ?」

「………ああ…まあ、危なかった所も結構有ったが、まあコイツらと組んで正解だったんじゃねえか?」

「そーだろそーだろ!!」

「痛てぇ、馬鹿力でバンバン叩くなこの馬鹿。」

杉元も勝てて嬉しいのだろうが、馬鹿力でバンバン叩くんじゃねえ。

 

「1時間ほど昼休憩挟んでから午後の部だぜ!じゃあな!!!」

そうアナウンスが流れたので昼休憩となった。A組連中と歩いて会場を後にする。

だが、その時、轟が「緑谷、杉元、ちょっと話がしてえんだが、良いか…?」

と真剣な顔をして杉元と緑谷を呼んでいた。

俺も杉元を待つため途中まで一緒について行ったが、曲がり角で尾形はここで待ってろと言われた為に話が終わるのを待つ。

 

しかし轟、この距離じゃあ俺の「山猫」の耳ならお前の話が筒抜けなんだが良いのか?

それともこの距離なら聞こえないと思ったのだろうか?

途中、何故か爆豪が轟達の方へ通り過ぎていったので、話は更に爆豪にまで聞かれることになるかもしれないな。

 

轟は緑谷と杉元に「お前らはオールマイトの隠し子か何かか?」と聞いていた。杉元は「はぁ?」と答えたが、緑谷は「そんなんじゃない」と言いつつもとてもキョドって言い募っていた。オイオイ、それじゃあオールマイトと何かありますと言っているようなもんだぞ緑谷。

轟もそう思ったのだろう。何かしら言えない繋がりが有るのだろうと緑谷に断言した。

そこから轟は身の上話をしつつ宣戦布告をした。他人の身の上話なぞ全く興味は無いが、どこにでもある様な、ありふれた不幸話だ。まあ、録でもないとは思ったが、前世の俺よりかは幾分マシな家庭環境だっただろうとだけ言っておく。

 

杉元は同情するかと思ったが、

「お前の家庭環境にゃ同情はするけど、俺には関係ねえからな。悪いが俺は俺の目的の為にこの体育祭、俺が優勝する。お前と当たっても俺は容赦はしねえからな。」

と返していた。そうだな、杉元、お前なら同情はしても自分の目的を果たすためならそこは曲げねえよな。安心したぜ。

 

緑谷も、「君たちに比べたら些細な動機かもしれない…でも僕だって負けらんない。僕を助けてくれた人たちに応えるためにも…!さっき受けた宣戦布告、改めて僕からも…僕も君たちに勝つ!」と答えていた。

話が終わったので、杉元達がコチラに帰ってくる。その前に爆豪が足早に通り過ぎていったが。

 

「尾形〜腹減った〜早く飯にしようぜ〜!」

「お前が待たせたんだろうが…。」

「あ、緑谷も一緒に食堂行こうぜ!!早くしねえと昼休憩終わっちまう!」

「あ、うんありがとう杉元さん。じゃあ一緒にお昼にしよっか。」

そうして俺達は食堂へ向かった。

 

昼食を食べ終えると、峰田と上鳴が杉元に話しかけてきた。

「杉元ちゃーん!急がないと!!」

「は?何を??」

「女子は全員午後から応援合戦しなきゃなんなくなったらしいぜ!」

「は??応援合戦??」

「ああ、ほら、あそこに座ってる女子達見たいに着替えて応援しなきゃならないんだってよ。相澤先生から言付かったんだ。」

「はー?マジかよめんどくせえなあ…。」

「衣装は八百万から受け取ってくれ。ほら、急がないと昼休憩終わっちまうぜ!!」

 

峰田と上鳴がそう話しているのを聞いたが、コイツらの言うことだ。十中八九嘘だろう。

スケベ心で女子達のチアリーダー姿を見たいだけだろう。

俺はそう思ったが、杉元がチアリーダーの格好をして応援する姿を想像し、面白そうなので黙っておくことにした。

「杉元、さっさと行ってこい。時間ねえぞもう。」

と、俺も援護射撃してやった。

杉元から見えない位置で峰田と上鳴が親指を立てるサインをしてきた。

杉元も相澤命令と聞いて観念したのだろう。すごすごと八百万の所まで行き着替えにいった。

 

そして昼休憩が終わり、再度会場へと移動となった。杉元は応援団として先に会場へ行ってるらしい。

今から杉元の滑稽な姿を見るのが楽しみだ。

 

午後はどうやら本選以外にレクリエーションがある様だ。会場に入っている途中でアナウンスがそう掛かった。

 

会場に入ると、杉元が死んだ様な顔でチアガールの格好をしている。

はははは、あの「不死身の杉元」がチアガールなんてしてら。しかも今生の姿では無駄に似合っている。それもまた面白い。

俺が腹を抱えて笑ってやっていると、横から緑谷が「尾形君も笑うんだ…」と小声で呟いていた。

俺だってあんな格好の杉元を見れば笑うさ。

杉元が俺を見つけてずんずんやって来た。

どうやら騙された事に気づいたらしい。

 

「尾形ああああ!!てめえ!!分かってて急げとか言いやがったなコノヤロウ!!!!」

当たりだ杉元。だが、俺はしらを切る。

「何の事だ杉元、俺は上鳴達にそう聞いたから急かしただけだぜ?俺は何も知らなかったぞ。」

「嘘つけてめえ!!このくそ尾形ああああ!!ニヤニヤしやがって!!!!」

「はははは、まあそう言うなって。杉元、すげぇ似合っているぞ。」

「全然嬉しくねえんだよ!!」

「そういうなって、可愛いぞ杉元。」

俺が可愛いと言うと、杉元は赤くなって「可愛いとか言うな!!ぶん殴るぞ尾形!!!!」と言って顔目掛けて殴ってきた。

もうぶん殴ってんじゃねえか。照れ隠しなのか知らねえが、俺じゃなければ避けられないスピードだったぞてめえ。

隣の緑谷達が「またイチャついてる…」とか言ってきたり、俺への嫉妬の視線を向けたりする奴も居たが、無視しておいた。

杉元は着替えてくる!と言って戻ろうとしていたが、もう午後の部が始まるためそれは出来なかった。

 

「さあさあ、皆楽しく競えよレクリエーション!それが終われば最終種目!

進出4チーム総勢16名からなるトーナメント形式!!一対一のガチバトルだ!!」

 

午後の部の最終種目が始まる。。




発目さんと常闇くんファンの方、2人の出番バッサリ行って申し訳ない…。2人の代わりに尾杉♀が本選出場です。


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雄英体育祭編5(オマケ)

選手宣誓から午後の部始まる前までで、某ちゃんねるネタです。
苦手な方は読み飛ばしても本編に支障はありません。


オマケ

 

【雄英体育祭】体育祭実況スレ【1年ステージ】

 

1 名無しの雄英生

スレ立て乙乙〜

 

2 名無しの雄英生

乙〜今年も来たな、雄英体育祭!

 

3 名無しの雄英生

今年はなんと言っても1年A組でしょ!

 

4 名無しの雄英生

敵に襲撃されたしな

 

5 名無しの雄英生

入学して数日で敵に殺されかけるとかカワイソスw

 

6 名無しの雄英生

でも返り討ちにしたんだろ?

 

7 名無しの雄英生

オールマイトと他の教師兼プロヒーローがな

 

8 名無しの雄英生

てかオールマイトに教えてもらうとか羨ましぬわ

 

9 名無しの雄英生

>>8それな

 

10 名無しの雄英生

マジ羨ましい

 

11 名無しの雄英生

オールマイトマジかで見れるとかいいなあ…

 

12 名無しの雄英生

俺はミッドナイトを間近に見れるのが羨ましぬ

 

13 名無しの雄英生

>>12クソ同意

 

14 名無しの雄英生

>>12それな

 

15 名無しの雄英生

>>12寧ろそれ以外はどうでもいいわ

 

16 名無しの雄英生

おい、そろそろ始まるぞ。

 

17 名無しの雄英生

はじまたたたた!!

 

18 名無しの雄英生

今年も始まったか

 

19 名無しの雄英生

とりあえず青田買いしなければ

 

20 名無しの雄英生

いい個性のこ居るかな〜?

 

21 名無しの雄英生

いいおっぱいの子居るかな〜?

 

22 名無しの雄英生

>>21コラ

 

23 名無しの雄英生

>>21あかん

 

24 名無しの雄英生

>>21まだ15歳やぞ

 

25 名無しの雄英生

>>21お巡りさんこっちです

 

JKぺろぺろ

 

26 名無しの雄英生

>>25てめえもな

 

27 名無しの雄英生

主審はミッドナイトか〜相変わらず服やべえ

 

28 名無しの雄英生

ミッドナイトきゃわいい

 

29 名無しの雄英生

ミッドナイトは可愛いってより美しいだろJK

あの鞭にぶたれたい…

 

30 名無しの雄英生

俺もミッドナイトにヒールで踏まれたい…

 

31 名無しの雄英生

ミッドナイトに踏まれる奴らが集うスレはここですか?

 

32 名無しの雄英生

お前ら専用板にでも行ってこいw

 

33 名無しの雄英生

 

34 名無しの雄英生

今年の選手宣誓女の子か!

 

35 名無しの雄英生

顔のキズやばい

 

36 名無しの雄英生

うわ、この子傷大丈夫か?めっちゃ痛そう…

 

37 名無しの雄英生

あ、でもこの子よく見たらめっち可愛いぞ

 

38 名無しの雄英生

ほんとだ…美人さんやん

 

39 名無しの雄英生

しかもおっぱいでけえ

 

40 名無しの雄英生

ぶっちゃけ顔の傷より先におっぱいに目がいってました。

 

41 名無しの雄英生

>>40

あれ?俺いつの間に書き込んだ…??

 

42 名無しの雄英生

>>40

よう、俺。

 

43 名無しの雄英生

>>40

俺だけじゃなくて安心したε-(´∀`*)ホッ

 

44 名無しの雄英生

しかしこの子選手宣誓もたどたどしいな…w

可愛いw

 

45 名無しの雄英生

えーととかつっかえつっかえかw

 

46 名無しの雄英生

しかも途中で俺って言わなかった?俺っ子か?

 

47 名無しの雄英生

顔にでっかい傷あって巨乳の俺っ子って属性が渋滞してるなw

 

48 名無しの雄英生

お?

 

49 名無しの雄英生

おおー!

 

50 名無しの雄英生

何?

 

51 名無しの雄英生

優勝宣言しやがった!!

 

52 名無しの雄英生

かっけー!

 

53 名無しの雄英生

でもこれで優勝できなかったら恥やぞw

 

54 名無しの雄英生

相当地震あんだろな

 

55 名無しの雄英生

ちょwwwwww

 

56 名無しの雄英生

まって、今の子可哀想www

 

57 名無しの雄英生

めっちゃびっくりしとりますやんw

 

58 名無しの雄英生

ワンツーフィニッシュ狙うとか大胆すぎでしょ

 

59 名無しの雄英生

でも絶対この男子生徒事前に聞いてなかったでしょ。ポカン顔で固まっとるw

 

60 名無しの雄英生

オガタヒャクノスケくんカワイソスwwwwww

 

61 名無しの雄英生

酷い巻き込みを見たw

 

62 名無しの雄英生

この子も2位取らないとかなり恥ずかしい事に…w

 

63 名無しの雄英生

あ、でもスギモトサイチちゃん、ヒャクノスケ君の方に戻ってなんかコショコショ話してる

 

64 名無しの雄英生

2人とも仲いいのかなあ

 

65 名無しの雄英生

彼氏彼女じゃね??

 

66 名無しの雄英生

リア充かよしね

 

67 名無しの雄英生

青春してるなあ

 

68 名無しの雄英生

雄英というクソエリート高に入れて、1年生という若さで超可愛いおっぱいおっきい彼女が居て顔もイケメンとか勝てる要素が1個もねえな…

 

69 名無しの雄英生

>>68

やめろください

 

70 名無しの雄英生

>>68

辛くなるからやめて…

 

71 名無しの雄英生

このオガタヒャクノスケって野郎は早々に大勢の視聴者を敵に回したな…

 

72 名無しの雄英生

彼女が可愛いからね仕方ないね

 

73 名無しの雄英生

>>72

まだ彼女と決まったわけではありませんしお寿司…

 

74 名無しの雄英生

あの親密さで友達はないでしょ

 

75 名無しの雄英生

スギモトサイチちゃん、もう既に非処女なのかな…あんなにおっぱいおっきくて可愛い子が……………ウッ

 

76 名無しの雄英生

>>75

逆に興奮してきた

 

77 名無しの雄英生

>>76逆じゃなくても興奮するだろ

 

78 名無しの雄英生

てか第1種目始まるやんもう

 

79 名無しの雄英生

雄英はせっかちだよなこういうとこ

 

80 名無しの雄英生

サクサクしてっていいと思うけどな

 

81 名無しの雄英生

障害物競走か

 

82 名無しの雄英生

どうせ雄英だから超おにちくなレースなんでしょ?

 

83 名無しの雄英生

期待

 

84 名無しの雄英生

もう始まんのかよ。マジでせっかちだな

 

85 名無しの雄英生

おお!!

 

86 名無しの雄英生

スギモトサイチちゃんとオガタヒャクノスケ君!速い!!

 

87 名無しの雄英生

宣言通り1位2位取れるんじゃね?

 

88 名無しの雄英生

>>87

いや、まだ早いでしょ。これからこれから

 

89 名無しの雄英生

紅白饅頭みたいな頭の子も氷使っててすごいやん

 

90 名無しの雄英生

>>89

2人とも躱したけどな

 

91 名無しの雄英生

2人ともはええ!!!!

 

92 名無しの雄英生

身体能力増加系の個性かなやっぱ?

 

93 名無しの雄英生

ロボ出た

 

94 名無しの雄英生

でけえ…

 

95 名無しの雄英生

こんなん出すのかよ雄英

やっぱ頭おかしい

 

96 名無しの雄英生

雄英の通常運転

 

97 名無しの雄英生

ちょ

 

98 名無しの雄英生

まじか…

 

99 名無しの雄英生

オールマイトやん

 

100 名無しの雄英生

スギモトサイチちゃんTUEEEE

 

101 名無しの雄英生

あれワンパンとかwwwwww

こんな強固性久しぶりに見た

 

102 名無しの雄英生

まあ、確かに選手宣誓したってことは入試1位の子なんだろうけど、だからってまさかこんなゴリラとは思わなかった…

 

103 名無しの雄英生

スギモトサイチちゃん可愛いけどこんなに力あるんじゃ痴漢とかも全然怖くないね

 

104 名無しの雄英生

>>103

痴漢したら殺されるだろうな

 

105 名無しの雄英生

>>104

マジレスするとヒーロー志望だから殺さんとは思うけど、まあボコボコにされるぐらいは有るだろうな

 

106 名無しの雄英生

てか地味にオガタヒャクノスケが速い。

スギモトサイチ見たいに真正面から挑まずにあの速い攻撃全部避けきっとる

 

107 名無しの雄英生

まあ、常人ならあれに真正面から挑まないでしょ

 

108 名無しの雄英生

まあでもいい動きしてるよかなり流石ヒャクノスケ

 

109 名無しの雄英生

>>108

身内かよw

 

110 名無しの雄英生

おっ!あの紅白饅頭あたまの奴も一瞬で凍らせやがった!!こいつもすげぇ!!

 

111 名無しの雄英生

今年は粒ぞろいって感じだな〜

 

112 名無しの雄英生

てか上位陣ほぼ1のAが独占じゃん

 

113 名無しの雄英生

クラスで優秀なんだな

 

114 名無しの雄英生

ザフォールとかどうやって用意したんだろ…

 

115 名無しの雄英生

てか落ちたら死にそう…こわ…

 

116 名無しの雄英生

俺だったら絶対渡りたくないから棄権するわ

 

117 名無しの雄英生

サイチもヒャクノスケもどんどん行くな

 

118 名無しの雄英生

躊躇も戸惑いもなしかよ鋼の心臓か?

 

119 名無しの雄英生

てかスギモトサイチちゃん紐すら使ってないじゃんwww凄すぎワロタwwwwww

 

120 名無しの雄英生

ヒャクノスケ、ロープの上を飛び跳ねるんじゃない!!心臓に悪いわ!!!!

 

121 名無しの雄英生

コイツらよゆーやな…マジ身体能力優秀すぎでは?

 

122 名無しの雄英生

後ろの奴らも来たな

 

123 名無しの雄英生

でももうすぐ第2関門突破すんぞこの2人

 

124 名無しの雄英生

アフガンwww

 

125 名無しの雄英生

地雷とかヤバすぎでしょ雄英

 

126 名無しの雄英生

やべー死ねるわ…

 

127 名無しの雄英生

まあ、流石に人死を出すわけないだろうから低威力なんだろうけど…

 

128 名無しの雄英生

サイチちゃんwwwうぇwww

 

129 名無しの雄英生

突っ切るなw少しは避けろwww

 

130 名無しの雄英生

「これじゃあ俺は止められねえぜ!!」

 

131 名無しの雄英生

かっけえええw

 

132 名無しの雄英生

凄い爆発だけどこれ大丈夫とかスギモトサイチ戦車かよ

 

133 名無しの雄英生

スギモトさん強すぎwww

 

134 名無しの雄英生

オガタヒャクノスケは手堅いな。

 

135 名無しの雄英生

この人全然地雷踏んでないですやん

 

136 名無しの雄英生

でも走ってるし、地雷が埋まってる場所分かるんかな

 

137 名無しの雄英生

こいつも充分チートなのにスギモトサイチちゃんを前にすると霞むなw

 

138 名無しの雄英生

>>137

可哀想だから比べてあげるなw

 

139 名無しの雄英生

お、後続も来たな

 

140 名無しの雄英生

紅白饅頭ともう1人、猛追してきてる奴いるな

 

141 名無しの雄英生

でも流石にこの距離じゃ逆転は難しいっしょ

 

142 名無しの雄英生

スギモトサイチとオガタヒャクノスケ、どっちが勝つかな?

 

143 名無しの雄英生

俺はスギモトサイチちゃんが良い!!野郎はどうでもいい!!

 

144 名無しの雄英生

>>143

本音が酷いw

だが、同意

 

145 名無しの雄英生

!?

 

146 名無しの雄英生

すげぇうるせえ!!!!音量おかしい

 

147 名無しの雄英生

は?誰?

 

148 名無しの雄英生

ぇぇええええ爆風で飛んできたのこいつ?クレイジーかよ

 

149 名無しの雄英生

ちょ、スギモトサイチとオガタヒャクノスケぬくぞwww

 

150 名無しの雄英生

いや、2人も走る!大丈夫!!

 

151 名無しの雄英生

あーダメだ、もう一撃決めやがった

 

152 名無しの雄英生

オガタが吹っ飛ばされたwざまあw

 

153 名無しの雄英生

爆風無視できるスギモトがおかしいんだよなあ…

 

154 名無しの雄英生

あー逆転された

 

155 名無しの雄英生

てか誰?

 

156 名無しの雄英生

いきなり知らんヤツ出てきたな

 

157 名無しの雄英生

ミドリヤイズクかあ…なんか野暮ったい子だなあ

 

158 名無しの雄英生

普通っぽいからオガタヒャクノスケより親近感湧く

 

159 名無しの雄英生

あーサイチちゃん2位か…ドンマイ

 

160 名無しの雄英生

オガタヒャクノスケ3位。でもコイツ結構凄くね?スギモトサイチに隠れるけどさ

 

161 名無しの雄英生

>>160

地味に強キャラっぽいよな。2位を狙えるぐらいには強いって事じゃね?

 

162 名無しの雄英生

本人申告じゃないから信ぴょう性ますよね

 

163 名無しの雄英生

紅白饅頭となんか爆発してる人もゴールしたね

 

164 名無しの雄英生

お、どんどんゴールしてくるね

 

165 名無しの雄英生

後ろの奴らにはあんま興味ないからはよ終われ〜

 

166 名無しの雄英生

早く次の種目みたいな

 

 

 

202 名無しの雄英生

42名か〜42人で何すんのかな?椅子取りゲーム?

 

203 名無しの雄英生

>>202

42人で椅子取りゲームとかワロタw

人多すぎやろ

 

204 名無しの雄英生

ミッドナイト可愛い

 

205 名無しの雄英生

騎馬戦か〜熱いね!

 

206 名無しの雄英生

チーム戦になるのか

 

207 名無しの雄英生

1000万ポイントwwwwwwwww

ふぁーwwwwww

 

208 名無しの雄英生

1位のポイント多すぎぃ!!!!

 

209 名無しの雄英生

皆ミドリヤ見やがったwww

 

210 名無しの雄英生

1位の人絶対狙われるやんwかわいそw

 

211 名無しの雄英生

俺だったら絶対組みたくないわw

 

212 名無しの雄英生

しかもコイツ個性まだよくわからんしな

 

213 名無しの雄英生

そう言えばこのミドリヤって子の個性なんなんだろうな?いきなり出てきたからわからん

 

214 名無しの雄英生

お、CMか

 

215 名無しの雄英生

CM開けに騎馬戦かな?

 

216 名無しの雄英生

オールマイトのこのCMワイ好きやな〜

 

217 名無しの雄英生

このCM見るとビール飲みたくなるんだけど

 

218 名無しの雄英生

わい、ビール片手に観戦。勝ち組

 

219 名無しの雄英生

CMそろそろ明けるかな?

 

220 名無しの雄英生

てかめっちゃ長いやん

 

221 名無しの雄英生

ちょ、ニュース挟んだwww

はよやれや

 

222 名無しの雄英生

敵も活発してんのかな〜?

 

223 名無しの雄英生

なんかセキュリティ強化の為に雄英が多数のヒーローに警備お願いしたらしいし、だから各地で敵も活発化すんじゃね?

 

224 名無しの雄英生

お願いだから俺のとこの店には押し入らないでくれ敵

 

225 名無しの雄英生

ようやくCM明けそう

 

226 名無しの雄英生

え!そういう組み合わせ!?

 

227 名無しの雄英生

えー前競技の種目1、2、3位が同じ組とかバランスめっちゃ悪ない??

 

228 名無しの雄英生

まあ、15分で決めなあかんかったみたいやししょうがないんちゃう?

 

229 名無しの雄英生

まあ、1000万ポイントの前ではどんなポイントも霞みましすお寿司

 

230 名無しの雄英生

てかスギモトサイチとオガタヒャクノスケ同じ組みやん…あ(察し)

 

231 名無しの雄英生

いやまだ彼氏彼女って決まったわけでは…

 

232 名無しの雄英生

ラブラブですやん!!

 

233 名無しの雄英生

こんな時まで一緒にいたいんかい!!コイツら!!真面目に競技やれ!!

 

234 名無しの雄英生

お、始まるな

 

235 名無しの雄英生

やっぱり1000万ポイント欲しいよな。2組も襲いかかられてるじゃん

 

236 名無しの雄英生

スギモトサイチ!跳びまーす!!

 

237 名無しの雄英生

すっげー馬力

 

238 名無しの雄英生

あ、なんかこの女の子の個性で軽くしてるみたいよ

 

239 名無しの雄英生

ほー、浮かせる個性か〜使い勝手良さそう

 

240 名無しの雄英生

ん?1人の騎馬??

 

241 名無しの雄英生

>>240

いや、上に小さいのが乗ってるっぽい

 

242 名無しの雄英生

舌も出てきた!!ハチマキ惜しい!!そこでオガタヒャクノスケから奪ってくれ!!

こいつの悔しがる姿が見たいんだ!!

 

243 名無しの雄英生

>>242

オガタヒャクノスケに何か恨みでもあるのか?www

 

244 名無しの雄英生

また大ジャーンプ!!

 

245 名無しの雄英生

軽くしてるからってこんなに普通飛べないやろ

 

246 名無しの雄英生

>>245

第1種目見てればスギモトちゃんが普通じゃないなどすぐに分かるだろ

 

247 名無しの雄英生

うお!!あぶねえ!!誰だ?

 

248 名無しの雄英生

確か5位の爆発する人か

 

249 名無しの雄英生

え、オガタヒャクノスケ反射神経ヤバくない??

 

250 名無しの雄英生

あの一瞬で爆発太郎の腕取って捻るのか…やっぱりオガタも地味に強いな

 

251 名無しの雄英生

てか良いのか騎馬から離れて………あ、いいんだテクニカルなんだ…

 

252 名無しの雄英生

そろそろ7分立つな

 

253 名無しの雄英生

7分間逃げ切ってるオガタヒャクノスケチームやっぱり凄いな!俺ならすぐにハチマキ取られるわ

 

254 名無しの雄英生

あ、爆発さん太郎ハチマキ取られた!!

 

255 名無しの雄英生

てかなんかB組?のチームの方が上位に入ってない??

 

256 名無しの雄英生

オイオイ、オガタチーム以外上位チームB組ばっかじゃん!A組期待はずれか??

 

257 名無しの雄英生

お、紅白饅頭くん、オガタチームの前に来たぞ!取りに来たか??

 

258 名無しの雄英生

うわ、電気ヤバい!!!!めっちゃ痺れそう!

 

259 名無しの雄英生

その後の凍りもやべえな。一瞬で周りのチーム凍らせたぞ

 

260 名無しの雄英生

それを飛び跳ねまくって回避してるオガタチームっていうかスギモトサイチちゃんが凄い

 

261 名無しの雄英生

ぴょんぴょん飛び跳ねるねうさぎかな?

 

262 名無しの雄英生

ほぼタイマン勝負になってるけどやばいな

でも追い詰められてるって感じもしないね

 

263 名無しの雄英生

氷やばい

 

264 名無しの雄英生

雷もやばい

 

265 名無しの雄英生

でもそれ全部避けてるスギモトサイチェ…

 

266 名無しの雄英生

バケモンかよ

 

267 名無しの雄英生

メスゴリラだろ

 

268 名無しの雄英生

こんな可愛いメスゴリラなら抱きたい

 

269 名無しの雄英生

>>268

オガタヒャクノスケ「もう俺が抱いたぞ(ドヤ顔)」

 

270 名無しの雄英生

>>269

があああ言いそうで腹立つ!!!!

 

271 名無しの雄英生

お、また避けた。すげえないつまで避け切るんだ?

 

272 名無しの雄英生

てかそろそろ1分切るぞ

 

273 名無しの雄英生

ふぁ!?

 

274 名無しの雄英生

はっや

 

275 名無しの雄英生

何が起きたか分からんかった

 

276 名無しの雄英生

全然目が追いつかんかった

 

277 名無しの雄英生

あのメガネか…こんな隠し球あるんならもっと早くやりゃ良かったのに

 

278 名無しの雄英生

>>277

いや、争奪戦だからギリギリを狙ってやったんだろ

 

279 名無しの雄英生

あれ?でもハチマキ取れてないぞ

 

280 名無しの雄英生

あ、ワイプでスロー再生してくれるんだありがてえ!!

 

281 名無しの雄英生

はっややっぱりめちゃ速いな

 

282 名無しの雄英生

嘘でしょこの速さで避けるとか

 

283 名無しの雄英生

オガタヒャクノスケ反射神経めちゃくちゃやべえな

 

284 名無しの雄英生

流石3位通過

 

285 名無しの雄英生

ひぇぇしゅごしゅぎぃ…

 

286 名無しの雄英生

でももっかいやりゃ良いのになんでもっと仕掛けないんだろ?

 

287 名無しの雄英生

>>286

やりたくても出来ないんじゃない?

 

288 名無しの雄英生

てかもう終わるよ〜

 

289 名無しの雄英生

カウントダウンはじまたw

 

290 名無しの雄英生

10

 

291 名無しの雄英生

9

 

292 名無しの雄英生

8

 

293 名無しの雄英生

8

 

294 名無しの雄英生

7

 

295 名無しの雄英生

5

ちょっと早いかな?

 

296 名無しの雄英生

6

 

297 名無しの雄英生

5 !

 

298 名無しの雄英生

5

 

299 名無しの雄英生

5

 

300 名無しの雄英生

4

 

301 名無しの雄英生

3

 

302 名無しの雄英生

3

 

303 名無しの雄英生

2!

 

304 名無しの雄英生

2

 

305 名無しの雄英生

1!!!!

 

306 名無しの雄英生

しゅーりょー!!!!

 

307 名無しの雄英生

TIMEUP!!

 

308 名無しの雄英生

終わった〜!!

 

309 名無しの雄英生

なんかあっちゅうまだね

 

310 名無しの雄英生

てか1000万ポイント逃げ切りおった…

 

311 名無しの雄英生

これはMVPスギモトサイチ

 

312 名無しの雄英生

>>311

いや、最後のあのメガネの一手を避けたオガタヒャクノスケがMVP

 

313 名無しの雄英生

2人ともMVPでええやん

 

314 名無しの雄英生

凄かった

 

315 名無しの雄英生

てかミドリヤイズクなんもしとらんwww

 

316 名無しの雄英生

確かに結局何の個性なのかもわかんなかったなアイツ

 

317 名無しの雄英生

あの爆発くんも中々熱い戦いをしていたぞ

 

318 名無しの雄英生

皆熱かったね…

 

319 名無しの雄英生

あれでも3位のチームあんまり映らなかったせいかいつの間にかに3位になってるな

 

320 名無しの雄英生

紅白饅頭のチームも1000万ポイント取れなかったけど頑張ったな

 

321 名無しの雄英生

最終戦が待ち遠しいでござる

 

322 名無しの雄英生

リアル昼食ターイム

 

323 名無しの雄英生

モグモグタイム入ります

 

324 名無しの雄英生

俺もなんか買って食お…

 

325 名無しの雄英生

今日はてんやもんでカツ丼でも食うか!

 

 

 

 

345 名無しの雄英生

再開だ〜!!

 

346 名無しの雄英生

モグモグタイムしゅーりょー!!!!

 

347 名無しの雄英生

さて午後は何かな〜

 

348 名無しの雄英生

ふーん午後は本選の前にレクリエーションねえ…

 

349 名無しの雄英生

レクリエーション興味ないからはよ本選やってくれ

 

350 名無しの雄英生

>>349

そうか?俺は学生がホンワカしてるとこが見たいから楽しみだぞ

 

351 名無しの雄英生

うーん相変わらずミッドナイト美しい

 

352 名無しの雄英生

はよ始まれ

 

353 名無しの雄英生

ファッ!?????

 

354 名無しの雄英生

wwwwwwwwwこれはwwwwww

 

355 名無しの雄英生

うおおおおぉぺろぺろぺろぺろ!!!!

 

356 名無しの雄英生

>>355通報しました

 

357 名無しの雄英生

何やっとんじゃコイツらw

 

358 名無しの雄英生

え、待って、1のAの女の子達、みんなレベル高くない??

 

359 名無しの雄英生

1人透明人間いるっぽいけどなwww

 

360 名無しの雄英生

いや、でもこれほんとみんな可愛いぞ

 

361 名無しの雄英生

可愛くて強いとか最高じゃん

 

362 名無しの雄英生

青田買い決定

 

363 名無しの雄英生

黒髪ポニーテールの子のおっぱいも中々…

 

364 名無しの雄英生

俺はあの黒髪おかっぱのささやかな胸がいいなあ

 

365 名無しの雄英生

やっぱ1番でけえのはスギモトサイチちゃんだな。ダントツですわ。

 

366 名無しの雄英生

みんなかわええ…

 

367 名無しの雄英生

でもなんでこの子達だけチアガールの格好してんの?罰ゲーム?

 

368 名無しの雄英生

>>367

なんか知らなかったっぽいからそうかもな

 

369 名無しの雄英生

でもみんな似合ってるからいいじゃん

これで1人でもブスな子が混じってたら悲惨…

 

370 名無しの雄英生

>>369

そういうこと言うなよ…

 

371 名無しの雄英生

スギモトちゃんなんかキレ出したぞwww

 

372 名無しの雄英生

ってオガタヒャクノスケのとこに行くんかーい!!

 

373 名無しの雄英生

おい、リア充がいちゃつき始めたぞおい…誰か止めろ…

 

374 名無しの雄英生

ぷんすこ怒ってるけどなんでだ?

 

375 名無しの雄英生

オガタヒャクノスケめちゃくちゃ笑ってたからじゃね?てかコイツこんなに笑うんだ意外…

 

376 名無しの雄英生

>>375

ずっーと無表情だったもんな怖いくらいに

 

377 名無しの雄英生

えー!?僕のスギモトサイチちゃんが赤くなったんだけど!?オガタヒャクノスケてめえ!!なんて言ってサイチちゃんを辱めたんだ!?よくも僕のスギモトサイチちゃんを!!!!

 

378 名無しの雄英生

>>377

オガタヒャクノスケ「これ俺のだから」

 

379 名無しの雄英生

めっちゃ腹立つwwwwww

 

380 名無しの雄英生

あぶねえwwwwww

 

381 名無しの雄英生

ちょ、スギモトちゃんそれは危ないwww

 

382 名無しの雄英生

これオガタヒャクノスケじゃ無かったら頭吹っ飛んでたんじゃw

 

383 名無しの雄英生

照れ隠しかな?めっちゃ物騒な照れ隠しだけどw

 

384 名無しの雄英生

いいぞスギモトちゃん!もっとそいつを殴ったれ!!

 

385 名無しの雄英生

しかしイチャついてるのには変わりなかったでござる…

 

386 名無しの雄英生

やっぱりコイツら付き合ってんの?

 

387 名無しの雄英生

付き合ってるんだろうなあコレは…




ちゃんねるネタ書くの久しぶり過ぎて色々間違ってると思いますがそこは目を瞑って下され…。
ネット上でもイチャイチャしてる思われる尾形と杉元♀でした。


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雄英体育祭編6

最終種目は一対一のトーナメントバトルか…これは組み合わせがかなり重要だな…。

もしも杉元とすぐにでも当たるような組なら目も当てられん…が、こればっかりは天に任せるしかないな。

 

「トーナメントか…!毎年テレビで見てた舞台に立つんだあ…!」

切島が感慨深げに言った。

 

「形式は違ったりするけど例年サシで競ってるよ。去年は確かスポーツチャンバラしてたハズ。」

醤油顔の男…瀬呂が他のクラスメイトの毎年トーナメントなのかという疑問に答えていた。

 

去年はスポーツチャンバラだったのか…対杉元戦ならばそちらの方が勝利の確率が上がったのになと残念な気持ちになる。

 

「それじゃあ組み合わせ決めのくじ引きしちゃうわよ。組が決まったらレクリエーションを挟んで開始になります!」

と、主審のミッドナイトがくじ引きの箱を取り出しながら言った。続けてレクリエーションは進出者16名は参加するかしないかは自由とのことだ。

俺は参加する気は無いが杉元はこういうのに興味ありそうだな…。

 

一位チームからくじを引く様にミッドナイトが促そうとした時、クラスメイトである尾白が突然辞退を申し出た。

プロに自分の力を見せる機会をわざわざ自分から潰す行為に、他のクラスメイト達から批難の声が上がった。普通はそうだろう。

 

「騎馬戦の記憶…終盤ギリギリまでほぼボンヤリとしかないんだ。多分奴の「個性」で…。」

と尾白が答えた。

「奴の個性」というのは…記憶が無いということから恐らく洗脳系の「個性」か…。

尾白が組んでたのは他にA組の青山と、谷垣、そして谷垣と同じ普通科の奴か…。

確かコイツは数週間前に爆豪に宣戦布告をしていた奴だな…しかし洗脳系の「個性」だと推測出来るが厄介な「個性」だ。

奴と当たれば、その発動条件を探らないとならないだろう。

 

尾白はチャンスの場と分かった上で辞退するようだ。プライドの問題なら仕方ないだろう。周りのA組の女子達は尚も尾白に考え直すように言い募っていたが、奴の意思は固いようだ。ついでに何故チアガールの格好をしているのか疑問を呟いていた。

 

尾白がそう言っていると、今度は谷垣も辞退を言い出してきた。

「すまない、同じ理由で俺もこの戦いには辞退させてもらう…。何もしていない俺がこの舞台で戦うのは相応しくないだろう。」

そう谷垣が言うと、杉元は「………良いのか谷垣。お前ヒーロー科編入を狙ってんだろ?このチャンス逃すのか?」と真剣な顔で問うていた。

 

「………ああ、正直悩んだが、そこのA組の奴が言った通り、これは俺のプライドの問題だ。………ヒーロー科編入はここで諦めはしないがな。」

そう谷垣は答えていた。

杉元もそれに納得したのだろう。

「そうか…まあ、お前がそういうんなら俺は何も言わねえよ。」と返していた。

 

主審のミッドナイトはこういう展開が好みとの事で2人の棄権を認めた。因みに尾白、谷垣と同じグループであり、同じく洗脳されてたであろう青山だけは辞退せずに最終種目に参加するようだ。まあ、選択は人それぞれだからな。

 

繰り上がりで、B組から2人が新たに選出され、やっとくじ引きとなった。

 

上位のチームからくじ引きとなったので、まず俺がトップバッターで引くこととなった。

その後、緑谷、麗日、杉元とくじを引いていった。

俺と杉元はなんと奇跡的に上手く駒を進められれば、決勝戦で当たるという割り振りとなった。これで一先ずは安心だな。

次々とくじを引いていき、全員引き終わった。

 

くじの結果、俺は初戦から八百万とやり合う事になった。俺の決勝までのブロックでは、他に芦戸や青山、切島、麗日、爆豪なんかが居る。

初戦から八百万とは遣りづらそうだが、まあなんとかなるだろう。

爆豪…初戦の相手の麗日には悪いが、順調に駒を進めれば、恐らくコイツと準決勝をやり合う事になるだろう。面倒な相手だ。だが、勿論負ける気はしないがな。

 

杉元の方は、A組で言えば、緑谷や轟、瀬呂、上鳴、飯田達が居る。

初戦は飯田だが、まあ杉元ならば余裕だろう。厄介なのは轟や上鳴か…だが、まあ杉元の「個性」ならばものともしないだろう。

寧ろヤバいのは普通科の洗脳系だと思われる「個性」持ちの奴だ。もしも掛かってしまい、自分から場外に出ろと命令されでもしたらそこで終わりだ。

緑谷がそいつと初戦で当たるからよく見ておくべきだろう。

まあ、もしかしたら案外緑谷がサクッと倒してしまう可能性も有るが…。

 

俺がそう思考を巡らせていると、またアナウンスが掛かった。

「よーしそれじゃあトーナメントはひとまず置いておいて、イッツ束の間。楽しく遊ぶぞレクリエーション!」

これからレクリエーションが始まる様だ。

 

「ヨーッシャ!尾形、レクリエーションだぜ!!折角だから俺達も何か参加しようぜ!!」

杉元が呑気にレクリエーションに参加しようと誘ってきた。言うかもしれないと思ったが、やはりコイツは阿呆だな。

 

「しない。お前…これから本選なんだぞ。ちったあ緊張感を持ったらどうだ?これから戦うヤツら観察するとかでもしたらどうだ?」

俺は呆れながら言ったが、まあまず無駄だろう。

「その緊張を解すんだよ!!それに今からじたばたしたってしょうがないだろ?良いから、お前も出るぞ尾形!!」

案の定、俺の声は聞き届けられなかった。

 

「……………はあ、分かった。しょうがねえから1回だけ付き合ってやる。1回だけだからな。」俺は1回だけと譲歩して杉元に付き合ってやることにした。

「あと、その前に運営本部に行くぞ。」

「え?なんで運営本部なんかに??」

杉元はそう言って首を傾げた。

これはお前の許可もなきゃいけねえからな。

一緒に来てもらうぞ杉元。

「良いから行くぞ。」

そう言って俺は杉元の腕を引いて、ある許可を得るために運営本部まで歩いていった。

 

手続きは恙無く終わったが、しばし時間を取られた。杉元が「おい、戻らねえとレクリエーション終わっちまうじゃねえか!!」とギャンギャン言いながら急かし、今度は杉元が俺の腕を掴み、試合会場に引っ張っていった。

 

試合会場に行くと、最後のレクリエーションらしい借り物競争の参加者を募集していた。

杉元は「あー!もう最後じゃねえか!!アレでいいからやるぞ尾形!!」と募集している場所まで俺を引っ張っていった。

俺と杉元は滑り込みで同じチームで競技することになった。

意外なことに、本選に出る予定の上鳴や瀬呂も出場するようだ。

お前ら今からそんな事してて良いのか?と思わなくもなかったが、人の事は言えん状態なので特に何も言わなかった。

 

借り物競争はどんどん進み、杉元の出番となった。

杉元はお題の紙が落ちているところまで誰よりも早くたどり着いたが、拾ったお題を見てワタワタしていた。そんなに難しいお題を引いたのだろうか?

 

借り物競争が終わったであろう峰田が通りがかりに「オイラのお題、「背脂」だったぞ…あんなお題クリアできるわけねえじゃねえか!」と愚痴っている声が聞こえた。

 

杉元も難しいのを引いたのだろう。

あたふたした後、杉元はチアガールとして応援していた八百万のところに一直線に進んだ。因みに杉元は運営本部に行く前に着替えたいと言って、既に運動服に着替えていた。チアガール姿は笑えたからそのままで良かったのにな。

 

杉元は八百万に頼みこんで何かを出してもらっていた。…あれは枕だろうか?確かにこんな場所で枕を所持している者など殆ど居ないだろう。杉元があたふたしていたのも頷ける。

 

杉元を観察していたが、俺の番が回ってきた。素早くお題の紙のところまでいき、その中から適当な紙を拾う。

…………このお題は………。

俺は紙に書かれているお題に一瞬だけ呆けたが、すぐに借り物競争を終えた杉元の元に行く。

 

「杉元、こっちに来い。行くぞ。」

俺は杉元の返事を待たずに杉元の腕を掴み、ゴール場所まで走る。

杉元は「は??なんだよ尾形!!てかお題、なんだよ!?」と走りながら言ってきたが、とりあえず無視して走る。

 

ゴールまで行くと、お題を回収している係員に、「お題とお題のモノを見せてください。」と言われたので、紙を見せて杉元を前に押し出した。

 

係員は「………はい、OKです。」と言うと、別のゴールした奴の方に歩いていった。

 

「おい、尾形!いい加減何なのか教えろよ!!」と杉元がうるさく騒ぎ立てたので教えてやった。

 

「うるせえな、お題はコレだよ。」と、紙を見せてやった。

「………は…………?」

杉元がポカンと呆けた。

 

お題にはデカデカと「恋人」と書かれている。

 

杉元は大きな声で「尾形てめえええええええ!!!!」と真っ赤な顔をして殴りかかってきたので、俺は「ははははは」と、愉快な気持ちで杉元の拳からトーナメントが始まるまで逃げ回った。

 

レクリエーションが終わり、ついにトーナメントが始まった。



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雄英体育祭編7

セメントを操るセメントスという教師が試合会場の舞台を作り上げ、試合開始のアナウンスをプレゼント・マイクが流し始める。

 

第一試合は緑谷対普通科の心操という奴だ。

プレゼント・マイクのアナウンスによるルール説明では、相手を場外に落とすか、行動不能にするか、「まいった」と言わせたら勝ちのようだ。

道徳倫理は一旦捨て置け、とまで言っていたが、やはり命に関わる様な事まではアウトらしい。ヒーローは敵を捕まえる為に拳を振るう、ねえ…。

やはり、俺や杉元はそういう点に置いてはヒーロー失格なのだろう。

だが、そんなものはどうとでも猫かぶりできる。せいぜい化けの皮が剥がれんように気をつけるだけだ。俺も杉元も、な。

 

さて、緑谷対心操の戦いが始まったが、試合開始の掛け声と共に、緑谷が早々に心操の「個性」に引っかかりやがった。

尾白や緑谷の声を拾うに、どうやら声をかけられ、それに返事をすることが「洗脳」のトリガーとなるようだ。

完全なる初見殺しの「個性」だが、カラクリが分かればそこまで脅威ではないな。

だが、杉元のバカならカラクリを分かっていても声を返しそうな気がするな…。

まあ、もし心操と杉元が戦う様であれば、返事を一切せずに一瞬で場外に出すなどして勝負に挑めとアドバイスするしかないな…。

 

勝負の行方を見守っていると、「個性」に掛かった緑谷が場外まで歩いて行こうとしていたが、場外寸前に緑谷が自身の「個性」を暴発させてストップした。

 

そこからは早かった。

もう一度口を開かせようと、心操が緑谷を煽るが、種が割れてるトラップにわざわざ引っかかるはずもなく、そのまま緑谷が心操を場外へと背負投して終わった。

 

「あれ、知らなかったらかなりヤべぇ「個性」だな。完全に初見殺しだぜ。」

杉元は感心したように心操の「個性」を褒め讃えた。

「ああ、アイツが初戦の相手じゃなくて良かったな杉元、絶対ありゃ負けてたぞ。」

「それを言うならお前だってそうだろ。」

確かに、アレは知らなければ俺も負けていただろう。

「良く緑谷アレに勝てたな〜、やっぱり緑谷も凄いやつだぜ!」

…そうだな、緑谷、アレに打ち勝つとは一体どういう神経してんだかな。

 

第一試合の話をしていると、治療から戻った緑谷が、麗日・飯田達のところに座ったところで第二試合が始まろうとしていた。

第二試合は、瀬呂対轟だ。

まあ、順当に行けば轟の圧勝だろう。

 

瀬呂は開始直後、テープを素早く射出し、轟の身体を縛り上げるとそのまま場外へとぶん投げようとしていた。

戦略的に最善だったが、轟は一瞬で瀬呂を凍りつかせ、巨大な氷山を作り上げた。

………とんでもねぇ火力だな…。いや、この場合氷力か?

あの凍てつかせる速度、俺でもギリギリ避けられるかどうかだな…。同じブロックだったらかなり危うかった。

 

瀬呂に対するドンマイコールの中、杉元は目をキラキラ…いや、ギラギラさせながら言った。

「やっぱり轟の野郎は凄まじいな…早く俺もやり合いたいぜ…。」

あの攻撃力を見た直後にこう言えるんだからお前は本当に化け物なんだろうな。

まあ、実際に杉元ならば轟相手でも力技でなんとか出来るだろう。そこは信頼してるぜ杉元。

 

第三試合は上鳴対B組の塩崎とかいう女生徒の試合だ。

杉元はこの次が初戦となる。

杉元が控え室へ行くため席を立つ直前に、一言だけ「油断するなよ」とだけ伝えておいた。

杉元は「おう、勝ってくる」と返事を返し、対戦相手の飯田と連れ立って出ていった。

 

第三試合、上鳴の「個性」はかなり厄介と言える強「個性」だが、今回は対戦相手の塩崎の「個性」と相性最悪だったため、完封の上、上鳴は瞬殺された。

塩崎の頭髪の茨の蔓が上鳴を縛り上げ、大量の茨の蔓が上鳴の電気を遮ったからだ。

 

上鳴も相性最悪とはいえもう少しやりようが合っただろうが、焦って全てを台無しにしたな。まあ、負けたヤツの事を考えても仕方ない。

杉元が次の試合に勝てば次に当たるのが、塩崎だ。杉元の個性ならばあの茨の蔓も引きちぎって終わりそうだがな。

 

第四試合、とうとう杉元の試合が始まる。

相手は飯田だ。

正面戦闘で杉元が負けるとは思えないが、相手は飯田だ。油断は出来ないだろう。

両者とも出揃う。

 

「ザ・中堅って感じ!?ヒーロー科飯田天哉!

バーサス

2位、1位と強すぎる女!!同じくヒーロー科杉元佐一!!」

 

 

プレゼント・マイクが両者の口上を読み上げる。そして試合開始の声が上がった。

 

飯田が騎馬戦の最後に見せた超加速で、杉元の元まで一瞬で迫った。

杉元相手だ。一気に方を付けに来たか。

杉元の背後に周った。背中でも取って場外へ出そうって魂胆か?紳士的な事だ。

だが、杉元相手にそれは悪手だろう。

 

背後に回り杉元の体操服を掴んだ飯田だったが、杉元もそれに反応して背中に回された飯田の腕をガッチリと掴んだ。

「飯田よォ、お前の事だから俺に怪我させないように場外に放り出そうとでもしたんだろうけどよお…。それじゃあ俺は倒せないぜ?」

杉元は凄絶な笑みを浮かべ、捕まえた飯田を反対側まで思い切りぶん投げた。

 

飯田はそのまま何も出来ずに会場の壁まで飛んでいきぶち当たり、崩れ落ちた。

 

「飯田君、場外!!2回戦進出!杉元さん!!」

主審のミッドナイトが声を張る。

 

「一瞬の決着だ〜!!重たそうな飯田をこの距離ぶん投げやがった!!この女、強すぎる〜!!」

プレゼント・マイクも負けじと実況した。

 

杉元の初戦も見た事だし、そろそろ俺も控え室に行くとするか。

次の次が俺の試合だ。

第五試合の芦戸対青山も対策を立てるためにも見ておきたかったが、仕方ないだろう。

 

俺が控え室に向かうと、丁度杉元も控え室に戻ってきたようだ。

飯田が居ないが、恐らくコイツに盛大にぶん投げられ壁に叩きつけれたせいで脳震盪にでもなったのだろう。保健室にでも行ったか。

 

「お疲れさん、杉元。一瞬だったが良かったのか?」

「は?何が?」

「あんな一瞬の勝負じゃあ全然目立てないだろ?」

「あー!確かに!!」

「なんだ、分かってなかったのか?お前。」

「あー…でもまあ、良いや。

真剣な試合だし、俺も流石にそこまで気は回せねえよ。」

それもそうだな。舐めて掛かって負けましたじゃ意味もないしな。

 

俺達が控え室に入ると、麗日が緊張しているのか眉間に皺を寄せた形相で控えていた。

杉元がどうしたのか聞いていたら、途中で俺を呼ぶ係員が来た。

どうやら早々に第五試合は決着が付いたようだ。勝ったのは芦戸か…。

俺が控え室を出ようとしたら、杉元が近寄ってきた。

 

「尾形、相手は八百万さんだ、油断していい相手じゃねえ。負けんなよ。」

真剣な顔で言ってきたので、俺は余裕の表情で言い返した。

「負ける予定はねえよ。」

 

選手入場口を出て、試合上に立つ。

反対側の入場口からも八百万が出てきた。

 

「第六試合!!ドンドン行くぜぇ!!

どんなものでも生み出しちまう中々のチートガール!八百万百!!

バーサス

杉元の影に隠れがちだがコイツも充分ヤベー奴!!尾形百之助!!」

 

こんな紹介ですら杉元がチラつくとは、俺達はどんだけペア扱いされているんだろうな。

別に間違いではないので訂正しようとは思わないが。

そんなことを考えていると八百万が、臨戦態勢を取った。

 

八百万、コイツは何でも生み出しちまうのが厄介だ。コイツはコイツで杉元と別ベクトルでチートと言える存在だろう。

だが、モノを生み出すまでの時間もそこそこ掛かる上に、そこまで近接格闘が出来るって柄でもねえだろう?

 

試合開始の声と同時に俺は八百万の所まで一気に間合いを詰めた。

飯田の必殺技程じゃあ無いかもしれねえが、俺も中々速いもんだろう?

 

反応できない八百万の襟首を引っ掴み、そのまま場外近くまで走り、その勢いのまま、八百万を場外へとぶん投げた。

これは恐らく飯田が杉元にやろうとした事まんまだろう。

特に見せ場も盛り上がりも無い戦い方だが、八百万相手にダラダラと持久戦はやりたくないからな。

とりあえず勝ちゃいいだろう。

 

「八百万さん、場外!尾形君2回戦進出!!」

「なんだよ尾形!お前も杉元と同じで場外へ突き飛ばしかよ!あっちゅー間の決着だなおい!もっと盛り上げろよ!!」

アナウンスが喧しい。

 

「うう、全然見せ場も作れませんでしたわ…。」

場外へと吹っ飛ばした八百万は、特に怪我もないようだ。そんな事を呟きながら起き上がった。いや、やはり身体のどこかでも打ったのか、少し痛そうにしていた。

 

勝ちは勝ちだ。俺は髪をかき上げて試合会場をあとにした。

 

控え室に戻ると、杉元達が居た。

「お、どうだった尾形!?」

「勝ったに決まってんだろ。」

杉元が試合の結果を聞いてきたので、簡潔に答えてやった。

 

「おお!八百万さん相手にやったな尾形!まあ、そうじゃねえと俺も困るけどな。」

杉元が笑いながらそう言ってきた。

麗日もこわばった顔で「おめでとう、尾形君」と言ってきた。緊張しているなら無理しなくていいぞ麗日。

 

途中で緑谷が控え室に入ってきた。

どうやら麗日に、対爆豪の策を考えて持ってきたようだ。お人好しだな緑谷。

だが、麗日はその申し出を断った。

麗日もこの体育祭を通して、何か思うものがあったのだろう。

 

「皆将来に向けて頑張ってる!そんなら皆ライバルなんだよね…だから、決勝戦で会おうぜ!」

麗日は覚悟を決めた目で、震えながらもそう言った。

 

俺達が控え室を出て会場の席に戻ると第七試合の切島対B組の鉄哲の戦いが終わろうとしていた。両者とも身体を固くすることが出来ると言う似たような「個性」持ち故か、派手な殴り合いをやっていたようだった。

両者同時ダウンで引き分けのようだが、回復後に腕相撲勝負で決着を付けるとアナウンスされた。

 

第八試合が始まる前に、保健室から飯田が帰ってきた。

「杉元さん!君に負けてしまいとても悔しいが、やはり君は強いな…。俺もこれからもっと精進して次こそはリベンジしようと思う!!」

と、杉元に言っていた。

杉元は「まあ、いつでもリベンジは受け付けるけど、俺も次だって負けないぜ。」

と笑って返していた

 

飯田が緑谷の隣に座るとすぐに第八試合が始まった。爆豪対麗日だ。

他のクラスメイト達も不穏な空気を感じ取っている。

「麗日さん、大丈夫かなあ…。」

杉元も麗日が心配なのかぽそりと呟いた。

あの超攻撃型の爆豪だ。控え室で緑谷が言っていたように例え女子相手でも全く躊躇せずに攻撃をするだろうな。

 

案の定、懐へ飛び込もうと入っていった麗日を爆豪は何度も爆破で迎撃している。

麗日の策はそれも含めての作戦の様だがそれでも爆豪相手に勝つのは難しいだろう。

 

爆豪の余りの容赦の無さに1部の観客からブーイングが巻き起こりもしたが、それは相澤の解説と言う名の説教で沈静化した。

 

麗日は爆豪の爆破で作ったコンクリート片を宙に大量に浮かべ、爆豪目掛けて一斉掃射したが、それも爆豪の強爆破によって全て無に帰された。

 

麗日はまだやる気の様だったが、身体の方が持たず、行動不能と判断され、爆豪の勝利となった。

麗日は負けはしたが、俺の予想以上の動きをして見せた。ここまで戦ったのだ、充分誇っていいだろう。

杉元も「麗日さん、すっげえ頑張ったな」と、優しそうな目でそう言っていた。

 

これで切島と鉄哲の決着が付けば、2回戦進出メンバーが全員出揃うな。



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雄英体育祭編8

1回戦が一通り終わり、小休憩を挟んだら第2回戦をやるとアナウンスが流れた。

第2回戦のトップバッターは緑谷だ。席を立って控え室に向かっていった。

 

緑谷の次の相手は轟か…正直轟相手では緑谷の荷が重いだろう。だが、あの超パワーを轟に直接的ぶち当てられれば可能性は無くはない。

 

そう考えていたら、試合会場で何かやる様で動きがあった。

どうやら切島と鉄哲の決着をつけるために、腕相撲する為の台をセメントスが作ってるようだ。

切島と鉄哲がデカい試合会場でこじんまりと腕相撲で決着を付けるというシュールな状況だ。

そんなシュールなバトルに勝ったのは切島だった。

これで2回戦進出メンバーが全員出揃ったな。

 

2回戦、まずは轟対緑谷だ。

俺は杉元によく観察しておけよと伝えておいた。

どちらが勝っても油断出来ない相手だからな。

杉元もそれが分かってるのか素直に頷いていた。

 

スタートの合図直後に、轟が広範囲のデカい氷結を緑谷に向けた。

やはり轟も緑谷のあの「個性」を用心したのだろう。

緑谷は迫る氷結を指一本で相殺していた。

だが、弾いた指は腫れ上がってもう使い物にはならなさそうだ。相変わらずデカい代償だな。

何度も襲う氷結から身を守る為に、ドンドン指をダメにしてってりゃジリ貧だぞ緑谷。

 

途中で切島が観客席に戻ってきた。

爆豪との会話の中で、爆豪が気になることを言っていた。

コイツは強烈な範囲攻撃もポンポン出せる訳じゃねえだろうと、轟の事を指して言っていたようだが、それは自分にも返ってくる言葉だろう。

恐らくこいつの強力な爆破にも、出せる威力の限度ってもんが有るのだろう。

そこを突けば俺にも充分勝ち目が有るな…。

 

そんな事考えてる内に試合が進む。

もう緑谷はボロボロだ。全部敵の攻撃じゃなくて自分の攻撃の反動ってのが逆にすげえがな。

 

だが、緑谷はまだ諦めていないようだ。

いや、それどころか、「熱」の方を使わない轟に対し全力を出せと挑発している。

…相手が全力出してない内に倒せるなら倒しちまった方がいいだろうに、コイツは何を考えてるんだろうな…。

 

轟は、氷を使い過ぎたからか、体に霜が降りてから動きが格段に鈍くなっている様だ。

緑谷に懐に入られて一発貰った。

だが、ここで場外まで吹っ飛ばせなかったのは緑谷に取っては致命的だろう。

杉元だったら、今の一撃で場外まで吹っ飛ばせただろう。失敗したな緑谷。

 

だが、緑谷はそんな事お構い無しのようだ。

緑谷は、轟に必死で何か伝えている。

喧騒の中で拾いづらいが、どうやら緑谷は全力を出さない轟にイラついてる様だ。

だが、轟は轟で、ズケズケと轟の内面に無遠慮に入り込んでくる緑谷は鬱陶しいのだろう。

あーあ、聞いてられねえぞこんな青臭いやり取り。

 

だが、緑谷の粘り勝ちの様で、轟はとうとう「熱」の方を使い出した。

 

最後は両者とも全力を出したのだろう。

打ち合いの結果、大爆発を引き起こし、ステージ中央をぶち壊しやがった。

熱風が、スタジアム全体を襲った。

 

結局緑谷は打ち負けたのか、場外へと飛ばされ、轟が3回戦進出となった。

 

「すげえ試合だったな尾形…。」

「…ああ、そうだな。」

「緑谷は本気出した轟に勝ちたかったんだろうけど、なんかそれだけじゃ無さそうだよな…。」

「……………さあな。」

俺達が知ったこっちゃない理由だろう。

 

ステージ中央が崩壊した為、修復作業の時間が出来たので、麗日・飯田・蛙吹・峰田と共に緑谷にお見舞いに行こうと杉元が言い出した。

…お前、次試合だろうが。

そう言ったが、杉元が聞くはずもなく、俺も強制的に緑谷の見舞いに行くこととなった。

だが、保健室まで緑谷の見舞いに来たはいいが、緑谷は今から手術らしい。派手にやったな緑谷。

 

手術だという緑谷の為、リカバリーガールに保健室から追い出された。

そのまま杉元は控え室に行くようだ。

 

「杉元、次の相手は茨の蔓使いだ。対策は考えてるんだろうな?」

そう俺が聞くと

「ま、何とかするさ。」

と返した。何とかする、だとコイツなんも考えてないんじゃねえだろうな………まあ、コイツの「個性」だ。何とでも出来るだろう。

「そうかよ、油断はするなよ。」とだけ返しておいた。

 

一緒にいた麗日、飯田、蛙吹、峰田が口々に杉元を激励し、杉元は控え室に去っていった。

 

観客席に戻るとステージの補修も終わったようだった。

杉元対塩崎の戦いがもうすぐ始まる。

 

「上鳴を完封&瞬殺した塩崎!!

バーサス

これまた飯田を瞬殺した杉元!!

まさしく女傑対決だー!!!!」

 

スタートの合図と共に、塩崎が髪の茨の蔓を伸ばし、杉元に絡みつかせ完全に拘束した。

杉元の奴、避けれる癖にわざと捕まりやがったな…。

 

「おおっと!杉元!!塩崎の茨に絡みつかれたー!!これには流石の杉元もなす術なしか!?」

そんな実況が流れるが、杉元はそんなヤワではないだろう。

 

思った通り、杉元は絡みついた茨を無造作に引きちぎり蔓の拘束から難なく脱出した。

これには対戦相手の塩崎も大いに驚いたようだ。いや、対戦相手所か大勢の観客や教師達も驚いてるか。

 

「杉元、塩崎の拘束を引きちぎったー!!?」

実況も熱が入ってら。

 

塩崎は近づいてくる杉元に猶も茨の蔓を差し向けるが、その全てを杉元は引きちぎり、塩崎の前まで悠々と近づいた。

 

「どうする?まだやるか?」

杉元がそう問うと、塩崎は悔しそうに項垂れ、「参りました」と小さな声で負けを認めた。

 

「塩崎さん降参!杉元さんの勝利!!」

「あの茨の蔓を易々と引きちぎりやがったぞおおお!!どんな握力してるんだー!?パワーの底がまだまだ見えないぞ杉元ーーー!!!!3回戦進出だー!!!!」

 

杉元は危なげ無く勝利した様に見えたが、もしもあの蔓の拘束から抜け出せなかったらどうするつもりだったんだあのバカ。

そう小言を言ってやりたいが、次は俺の番だ。観客席を立ち、急いで控え室に向かう。

 

控え室で待っていると、すぐに係員に声を掛けられ、入場する。

次の相手も女か…。まあ、男でも女でも俺は関係なく戦うがな。

対戦相手の芦戸も出てきた。

 

「強力な酸攻撃にトップクラスの運動神経の芦戸!!

バーサス

えっぐい反射神経&スピードに的確な判断力の尾形!!

さあ今度はどちらに勝利の女神は微笑むのかー!?」

 

スタートの合図が大きく響いた。

コイツは強烈な酸攻撃が厄介な奴だったな。

俺は芦戸に向かって走り出した。

芦戸は俺に向かって次々と酸を掛けてくるが、俺はそれら全てを左右に避けながら接近する。

この程度の速さなら対応は簡単だ。

しかし、この酸、コンクリートを溶かすほどだが、試合に使って大丈夫なのだろうかとそんな事すら考えていた。

 

易々と芦戸の懐に入り込む。

芦戸は近接格闘でコチラに殴りかかったが、腕を取りひねり揚げて床に引き倒す。

そのまま体重を掛けて伸し掛ると、下から「痛い痛い痛い痛い!!!!!」という悲鳴が上がった。

 

俺は「さあ、どうする??降参するなら止めてやるが?」

と聞くと芦戸はもがきながらも「降参なんかしないってば!!」

と返してきた。

 

俺は更に体重を掛けてやると益々悲鳴が上がり、最終的に涙声で「こ、降参しますー!だから退いてえええええ!!!!」という声が会場に響いた。全く、最初からそう言えば余り痛い思いもしなくて済んだだろうによ。

 

「芦戸さん降参!尾形君勝利!!」

 

俺が退いてやると半泣きで芦戸が超痛かった〜ううーでもめちゃめちゃ悔しい〜と言っていた。

 

「やっぱりえっぐい反射神経だな尾形!!そんでお前結構ドSなんじゃな〜〜い!!??3回戦進出だー!!」

誰がドSだ誰が。

 

勝負を終えて控え室に戻ると杉元が待っていた。

「勝ったんだろうな?」

「当たり前だろ。」

「ま、そうじゃなきゃ困るからな。」

短いやり取りをして観客席へ杉元と連れ立って向かう。

 

爆豪と切島の戦いはもう始まっている様だ。

席に戻る途中で、緑谷と飯田に出くわした。

緑谷はもう手術は終わったのだろう。

 

「緑谷ー!手術終わったんだな。大丈夫か?」

「あ、うん杉元さん。もう大丈夫だよ。

所で2人とも、試合どうやって勝ったの?特に塩崎さんのイバラの攻略とか…。僕もちゃんと見たかったなあ…。」

手術で見れなかったのだろう。緑谷がそう呟いた。

 

「俺は絡んできた茨、力ずくで全部引きちぎって勝った。」

「ええっ!!あの強力そうな拘束引きちぎったの杉元さん!?や、やっぱり凄いパワーだね…。」

「コイツ、ゴリラだからな。」

「誰がゴリラだクソ尾形!!!!」

「ゴリラだろうあんな力に頼った勝ち方しやがって。お前わざと拘束受けただろう?拘束引きちぎれなかったらどうするつもりだったんだ?あ?」

「うっ、い、良いだろちゃんと引きちぎれたんだからよぉ!」

「はあああ、たくっお前は本当に脳筋だな…。」

 

俺と杉元が言い合いしていると、緑谷が慌てて、「お、尾形君はどうやって勝ったの?」と聞いてきたので答えてやった。

 

「俺は芦戸の酸攻撃をひたすら躱して接近。芦戸を引き倒して上に乗っかって体重掛けてやって降参させた。」

「ああ、あれは素晴らしい手際だったな。尾形君。俺でもあんなに素早く避けられるかどうか…。」

「そうだったんだ。凄いね。2人の戦いちゃんと見たかったよ。」

「後でVTRを見させてもらうといいぞ緑谷君。」

 

談笑している内に、爆豪達の試合も動いた。

爆豪の爆破を硬化で耐えていた切島だったが、とうとう耐えきれ無くなり、その綻びを爆豪が怒涛の爆撃で切島を沈めた。

 

「爆豪えげつない絨毯爆撃で3回戦進出!!

これでベスト4が出揃った!!」

そうアナウンスが流れた。

次は準決勝、轟対杉元だ。

 

杉元が行ってくると控え室に戻ろうとしたので、また俺は声を掛けた。

 

「杉元、あの轟が相手だ。全力出せよ。」

そう言えば、杉元は

「おう!全力で暴れてくるぜ!!」

と大きな声でそう返した。

 

緑谷や飯田も杉元さん頑張ってね、と声を掛け、杉元は控え室に去って行った。

 

「轟君と杉元さんの戦いかあ…凄い試合になりそうだね。」

観客席に戻り、緑谷がそう言った。

「ああ、かなり激しい戦いになるだろうな。」

飯田が緑谷にそう返した。

 

「激しい戦いになるだろうが、まあ、アイツが勝つだろ。」

俺がそう言うと、緑谷達は「杉元さんのこと信頼してるんだね。」と言って笑った。

信頼なんかじゃねえよ。今までの杉元のデタラメな戦い方を見てりゃ、誰だって思うことだろうよ。

 

試合ステージに轟と杉元が出てきた。

「お互い超強力な個性持ちだ!!これは激しいバトルになるんじゃねーの!?

轟焦凍 バーサス 杉元佐一!!!!」

 

試合の合図が大きく響いた。

轟は開始直後、全力で杉元に対して氷結を繰り出した。

会場から大きくはみ出す氷山が出来上がった。

 

「おーっと!轟、開始直後に全力だー!!

杉元は思いっきり氷山を食らったが大丈夫かー!!??」

 

そんな実況が流れる。

すると馬鹿でかい氷山が爆発したかと思う程、弾け飛んだ。会場にデカい氷の結晶が降り注ぐ。

杉元が氷山を拳で粉砕したのだろう。

 

「轟ぃ〜!!こんなんじゃ俺は倒せねえぜ?

緑谷の時みてぇに炎使ってこいよおお!!!!」

杉元の挑発が大きく響いた。

 

轟は猶も氷結で杉元を凍らせようとするが、全て拳一つで相殺する。

緑谷と違って杉元は自滅なんてしないぞ轟、さあどうすんだ?

 

杉元が轟の所まで一気に跳躍した。

空中で轟の襟首を掴みあげ、そのまま一気に場外へと投げ飛ばした。

「舐めてんじゃねえぞ轟ぃ!!!!」

 

杉元は本気で場外へと投げようとしなかったのだろう、轟は投げ飛ばされはしたが、地面に転がるように投げ飛ばされたので地に手をついて氷壁を作り、場外負けを回避できた。

 

「轟、てめぇが何を思って炎を使わないのかは聞いたけどよお、でもそれじゃあ、俺には一生、勝てねえぞ!!!!」

 

杉元がまた跳躍し、轟が跪いている所まで一気に距離を詰め、拳を放ち、轟は間一髪で飛び避けた。

杉元の放った拳でステージがドゴオオオオンと音を立てて盛大に割れる。

まあ、割れはしたが、戦闘は続けられない程では無いから戦闘は続行するだろう。

思った通り、主審からは何も無かった。

 

「杉元、ステージを拳一つで盛大にぶっ壊しやがったー!!!!この女もう何でもアリだな!!轟、防戦一方だー!!!!どうする轟ー!?」

実況も白熱している。

 

「轟、俺は緑谷みたいにてめぇに言葉を尽くさねえが、良いのかおい、てめえがこのままなら確実に俺に負けるぜ?だからよお、そっち側、使って来やがれ!!そっち側だって確かにてめぇの力だろ轟ぃ!!!!」

 

杉元はそう言って轟を追い詰める。

チッ、杉元、あのバカ、勝てる内にさっさと勝っときゃ良いのにお人好しが過ぎるぜ。

杉元も杉元なりに轟の身の上話を聞いて何か感じているのだろうが………。

 

杉元の気迫に気圧されたのか、言葉が響いたのかは分からねえが、轟は緑谷の時と同じように炎を出しやがった。

杉元の馬鹿が、これで負けたら承知しねえからな。

 

「杉元………緑谷もそうだが、ほんとお前らお節介だな…。これでお前が負けても知らねえぞ?」

「はっ、お前がそれ使った上でねじ伏せてやるよ!!!!」

 

轟が炎を全開にして、杉元に打って出る。

轟が全力の業火を杉元に打ち込む。

会場が炎の熱気で満たされた。

 

だが、杉元は不敵な笑みを浮かべ、渾身の一撃でそれをかき消しやがった。

「おおおおおおおおおおおお!!!!俺は、不死身の杉元だああああ!!!!!!」

 

杉元の一撃は熱風までかき消し、上昇気流により、一時的ににわか雨まで降らせやがった。………全力の杉元なんぞ早々見ないからな。やはりコイツは化け物だ。

 

試合の方はというと、衝撃に備えて氷壁を張り巡らしていた轟は、その氷壁すら吹っ飛ばされて、場外へと転がされていた。

 

「なんだこれ雨まで降ってきやがった!?天気すら変えたってかあ!?規格外すぎるぜ杉元佐一!!

轟場外!!杉元、決勝進出だ!!!!

てか準決勝でこれかよ!?」

 

「凄いね、杉元さん…まるでオールマイトみたいだ。」

「ああ、あの最後の超絶パンチ、とんでもなかったな。」

緑谷達が杉元の規格外さに改めて驚愕している様だ。

杉元の決勝進出。俺が言った通りだったろ?

 

さて、次は俺の番か…だが、杉元がステージをバキバキに壊したせいで、ステージ補修に少し時間が掛かるだろう。

俺は観客席を立ち、のんびりと控え室にでも向うか。

 

席を立つ時、緑谷と飯田に「尾形君も頑張ってね!!」とエールを貰う。

俺は一応「ああ。」とだけ答えて控え室に向かった。

 

控え室に入ると杉元が居た。

「ちゃんと勝ったぜ尾形。」

ニヤリと杉元が言った。

 

「ああ、だがやりすぎだろうこの馬鹿。」

俺がそう言うと「お前が全力出せって言ったからじゃねえか!」とギャーギャー騒いだ。だからって限度ってもんが有るだろうよ。

まあ、勝てたから良いか。

 

「お前も相手はあの爆豪だぞ、やり辛えとは思うけど絶対勝てよな!!」

杉元が真剣な顔で言ってくるので、俺も「負けねえよ。」とだけ返しておいた。

 

ステージの修復が思いの外早く終わったようだ。係員が呼びに来た。

「勝てよ!」と猶も言う杉元に背を向け片手だけ上げて振り返らずに準決勝のステージに向う。

 

ステージにはもう爆豪が立っていた。

こちらを思い切り睨みつけてくる。

 

「銃野郎、てめえに勝って、その後あの傷女にも勝って、この体育祭は俺が優勝するぜ。」

爆豪が睨みながらそう宣言した。

 

「今は銃持ってねえって言ってんだろ阿呆。それにお前じゃ杉元には勝てねえし、俺にも勝てはしねえぞ、爆発野郎。」

そう煽りかえしておく。

 

「勝って傷女は守るってかこの腰巾着野郎が。」

「アイツが俺に守られるってたまかよ。その目は節穴か?頭湧いてんのか?」

 

罵りあいが白熱してくるが、主審に両者とも静かにと注意され、お互い口を紡ぐ。

爆豪は一言、「殺す」と言って黙り、俺を睨みつづける。

 

「爆破キリングキング!!派手野郎爆豪!!

バーサス

えげつないスピードスター!!影の実力者尾形!!」

 

スタートの合図が響いた。

さて、爆豪か…コイツの爆破は本当に厄介だな。

合図直後、爆破でブーストしてコチラにぶっ飛んできた爆豪の爆破を早速躱す。

 

「お得意の銃がなけりゃ、てめえは攻撃力ゼロの雑魚だろ!!逃げることしか出来ないカスが!!」

 

言いたい放題だな爆豪。確かに俺は銃がなければかなり攻撃力がダウンするが、攻撃手段が無い訳では無い。ある意味これは切り札だったから準決勝で見せたくなかったんだがな…。

だが、ここで出さずに勝てはしないだろう。

仕方ねえな…。

 

爆豪の爆破ラッシュを全て紙一重で躱す。

コイツは時間が経てば経つほど動きが良くなってくる変態だ。早めに決着をつけねば。

 

「オラオラ、躱すのが精一杯か!?腰巾着ちゃんよお!!!!」

 

「爆豪の爆破ラッシュに堪らず尾形も防戦一方かー!?だが、このラッシュを全て躱しきる尾形も並じゃねえ!!このピンチどうするー!?」

 

爆豪から少し距離を取り、わざと隙を作る。

爆豪がそれを見逃さずに両手で爆破を仕掛けて来る。

掛かった。

 

俺は爆破を紙一重で避け、爆破し終えた所を逃さずに、爆豪の両の掌を思い切り「山猫」の両の爪で引き裂いた。

 

「があああああああああ!?」

爆豪の悲鳴が響き渡った。

爆豪の掌は深々と切り裂かれ、血が滴り落ちた。

 

「尾形ここに来て隠し球ーーー!!!!?

何と尾形、爪を巨大な肉食獣の様に変化させ、思い切り爆豪の掌を引き裂いたー!!!!

爆豪、これは大ダメージだああああ!!

てか尾形、爪ってウル〇ァリンかよ!!」

 

誰がウ〇ヴァリンだ。あそこまで爪長くねえし手の甲からは飛び出してねえよ。

 

「クソがああ、てめえそんなもん隠してやがったのか…!!クソがああ!!」

爆豪が辛そうに唸りながら言った。思い切り引き裂いたからな。かなり痛いだろう。

だが、これで爆豪お得意の爆破はもう使えないだろう。

 

「痛そうだな爆豪、早く負けを認めて保健室にでも行って見てもらってこいよ。」

「誰が負けるかクソ爪野郎。てめえなんか爆破なんぞなくても殺してやるよ!!」

「そうかよ。それにしても元気だなお前。」

 

俺が親切で、そう、親切で言ってやったのに、爆豪は負けを認める気は更々無いようだ。

俺は素早く走り、爆豪の拳を屈みながら躱して、今度は両足を思い切り切り付けた。

服の上からだが、俺の「山猫」の爪と腕力ではそんなもの諸共せず、爆豪は堪らず膝を地につけた。

 

両の掌と両足をダメにしたのだ。もうこれで奴は思う様に動く所か、戦闘なんてもう無理だろう。

 

「流石にもう降参するだろ?」

俺はそう爆豪に問うたが、爆豪は

「誰がするかカスが!!!!ぶっ殺してやる!!!!」

とまだ鼻息荒く叫んだ。

 

俺は主審のミッドナイトに

「だ、そうだが、どうする?

この状態で降参しねえから、次はコイツの両肩でもぶっ刺してやろうかと思ってるんだがアンタどう思う?」

と伝えると、ミッドナイトは

「これ以上は爆豪君は戦闘続行なんて無理ね。だから貴方もこれ以上攻撃しちゃダメよ。」

と返してきた。

 

「爆豪君行動不能!!よって尾形君決勝進出!!」

とミッドナイトが大きな声で叫んだ。

 

爆豪は「ふざけんな!!まだ俺はやれるわ!!」とミッドナイトに叫んだが、「どう見ても無理でしょ爆豪君。もう立てない上に手も駄目でしょう?早く保健室へ行ってリカバリーガールに診てもらいなさい!!」

とにべも無く行動不能と判断された。

 

俺は猶も喚き続ける爆豪を放って、控え室に戻った。

少しすると杉元、緑谷、麗日、飯田が控え室になだれ込んできた。

 

「決勝進出おめでとう尾形君!!爆豪君相手に勝っちゃうなんて凄いわ〜!!」

「おめでとう、尾形君。かっちゃんの爆破全部躱したのも凄かったけど、あんな隠し球持ってたなんて全然気づかなかったよ!!あれも「個性:山猫」の能力の1部だよね!?」

「尾形君、俺もスピード重視のヒーローとして、君と戦ってみたかったよ。決勝進出、おめでとう!!」

 

麗日・緑谷・飯田に、そう矢継ぎ早に祝福の言葉を贈られた。

 

「勝ったな、尾形。」

杉元はそれだけ言った。

 

俺は「ああ、これで俺は最低でもお前が言った2位には宣言通りなれるな。」とニヤリと笑い、続けて言った。

 

「だが、ここまで来たんだ。お前にも負けるつもりはねえぞ。」

「上等だ尾形!寧ろ全力出さなかったらぶっ飛ばすからな。」

「ああ、お前を倒して恥じ掻かせてやるよ。」

「はっ、言ってろ尾形!勝つのは俺だ!!」

 

俺と一通り喋って杉元は別の控え室へと去っていった。

 

いよいよ杉元と決勝戦か…。



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雄英体育祭編9

いよいよ決勝戦が始まる。

 

と、思ったその前に、何やら俺の攻撃から回復したのだろう爆豪が、予定の無かった3位決定戦をやらないのかとミッドナイトに持ちかけ、ミッドナイトがそう言う熱い展開が好きとのことで決勝前にやり出した。

 

轟対爆豪、俺の予想では轟が勝つだろうと思っていたが、轟は対爆豪戦では最後まで炎を使わずに、場外負けしたらしい。

因みに爆豪は俺の時には出さなかった(出せなかった)大技を披露し、それで轟を場外まで吹っ飛ばしたらしい。

 

緑谷や杉元と戦った時の様に、炎を使っていたら確実に勝てただろうにな。何か轟にも複雑な思いが有ったのだろう。まあ、どうでもいい事だがな。

 

爆豪はその結果に納得がいかず、倒れた轟に掴みかかった所で主審のミッドナイトの「個性」によって眠らせられたとの事だ。

今頃轟と一緒に保健室で寝ているのだろう。

こうして、3位は本人的には不本意だろうが、爆豪に決まった。

 

ようやく決勝戦だ。

俺は準備をして控え室を出た。

 

入場口を出て試合のステージに立つ。

決勝戦だからかかなり観客も熱狂しているのだろう。四方八方から歓声が聞こえる。

杉元も気になったのだろう。周りを見回しながら出てきた。

 

「すげえ歓声だな。下手な試合は出来ねえなこりゃ。」

「ま、決勝戦なんだ。仕方ねえだろ。」

 

もう、試合の合図が出る。

俺は銃を構える。

そう、銃だ。俺が銃を構えたことにより、観客席からざわめきが起こった。

 

「尾形が銃を取り出してザワついてるけどな、これは事前に申請されているから静まっとけ。対戦相手の杉元も納得済みの事だぜー!」

「尾形は普段は銃を扱っているからな。今回はもし決勝で杉元と当たるなら、全力を出したいからという理由だ。わざわざ杉元と共に申請しに来たからな。お互い納得済みなら武器の使用もOKとなった。」

プレゼント・マイクと相澤が交互に解説してきた。

 

俺はレクリエーション前に、杉元に了承を得て、体育祭運営から銃を使用する許可をもぎ取っていたのだ。

コイツ相手なら遠慮は要らんからな。

杉元も遠慮なく使ってこいと言うので、申請も何とか通ったのだ。

 

「全力出せよ尾形あ〜!」

「言われんでもお前相手じゃ全力だ。」

 

スタートの合図が大きく上がった。

 

まず杉元が突撃してくる。

俺は慌てずに杉元の両足を素早く撃ち抜いた。崩れる杉元に観客からの悲鳴が出たが、この位で止まるわけもない。

 

杉元がまだ回復しきらないうちに両肩も撃ち抜いておく。

素早く杉元の元まで走り、杉元の襟首を掴み場外まで投げ飛ばそうとするが、もう足の傷が治ったのだろう杉元が足で踏ん張り投げ飛ばすのを阻止される。

 

杉元はまだ治ってないだろう肩を無理やり動かして俺に掴みかかろうとする。

俺は咄嗟に避けて距離を取る。

両肩撃ち抜いてなきゃヤバかっただろうな。

 

「両足と両肩撃ち抜かれた杉元!!超ピンチの筈がなんだああ!?もう回復しちまったのか!!!???」

「杉元は「超速回復」と言う「個性」も持ってるからな…だが、場外へ投げ出されると気づいてまだ回復しきらん内に無理やり動かしたんだろう。相変わらず無茶しやがる。」

相澤の解説が入る。

 

「いってえええなああああ、このクソ尾形、思い切り撃ち抜きやがって。」

「お前相手だ。当然だろ。前の時みてえに頭撃ち抜かないだけ感謝して欲しいぐらいだぜ。」

 

軽口を叩き合うが、こいつに勝つ打開策が見つからねえ…。

回復した杉元がお返しとばかりに迫り、拳と蹴りのラッシュを俺に向けた。

俺は一発も貰わないように全ての拳と蹴りを捌く。くっそ掠った。掠ってこのダメージかよ。やってらんねえな。

 

杉元の拳と蹴りを全て躱し、隙を見て後ろに跳躍し、また杉元と距離を取る。

 

「杉元の猛ラッシュにピンチかと思った尾形だったが、あの猛ラッシュ全部躱しきったああああ!!やはり、この男の反射スピード半端ねえな!!!!」

 

俺はまた銃を構えると、杉元は照準を合わせないよう左右に走りながら向かってきた。

かなりのスピードだが、俺ならば狙い撃つのもわけはない。

俺は杉元の肩に一発銃弾をぶち込む。

たたらを踏んだ杉元の肩に更に三、四発連射し、同じ箇所にぶち込む。

堪らず跪いた杉元まで一直線に走り、杉元の懐へまた飛び込んだ。

お返しだ、と呟き銃弾をぶち込んでまだ回復仕切らない傷の部分を強化した爪で更に抉った。

杉元も流石に堪らずグアッと呻き顔を歪めた。

その一瞬の隙を逃さずに俺は渾身の蹴りを杉元の腹に決めて、杉元を吹っ飛ばした。

 

「おおっと尾形渾身の強烈な蹴りが決まったああああ!!これは場外へ決まるかあ!?」

 

杉元は盛大にゴロゴロと転がり、場外へと出そうになった。

やったか…!?

だが、その手前で杉元がステージの床に手をめり込ませ、場内へと留まった。

 

チッ…俺は間髪入れずに杉元の元まで跳躍し、更に蹴りを放ち杉元を場外へ出そうとしたが、蹴りを放った方の足を取られてしまった。クソっ。

 

杉元は「お返しだぜ尾形」と行って今度は俺の腹に思い切り蹴りを入れた。

俺は咄嗟にガードしたが、ダメージは殺せずそのまま吹っ飛んだ。

反対側の場外近くまで飛ばされ、更に杉元が大跳躍して追撃してきやがった。

でかい蹴りを転がって避ける。避けた部分のステージが盛大に割れる。馬鹿力が。

 

俺は立ち上がり立て直そうとしたが、その隙を杉元は見逃してくれなかった。

 

杉元が俺の懐に飛び込み、拳のでかい一発を腹に貰い、堪らず俺は場外へと吹き飛んで行った。

あーあ、また勝てなかったか。

 

「尾形君、場外!!よってーーーー杉元さんの勝ち!!!!」

 

「以上で全ての競技が終了!!今年度雄英体育祭1年優勝はーーーーA組 杉元佐一!!!!」

 

歓声が爆発した。

 

…………まあ、俺にしちゃ頑張った方じゃねえか?

にしても杉元から貰った蹴りと拳のせいで盛大に内蔵と肋骨部分と庇った腕が痛え…こりゃ何本か折れてるか…?

 

「おい、尾形大丈夫か?」

この大怪我の原因もとい張本人が、吹っ飛ばされた俺の所まで来て、俺を抱き上げた。

 

「お前の蹴りと拳まともに食らったんだぞ………大丈夫なわけあるか…。」

日常でも杉元と組手を頻繁に行っているが、ここまで大怪我する戦闘は余りやらないので、こんな大怪我は杉元と誘拐された時以来だ。いや、もっと酷い。

 

「わ、わりい尾形…あんまり手加減出来なくて…………」

「おい、手加減しましたとか言ったらまた銃弾ぶち込むからな…。」

「いや、それはねえよ。」

「なら、いい。」

 

杉元は既に怪我も自己回復してピンピンしている。

杉元は俺が運んでやろうか?と完全に善意で言っている様だったが、俺は全力で拒否した。

誰が今の見た目のお前に運んでもらいたがるか。プライドまでへし折る気かてめえ。

 

暫くして、担架ロボットがやってきた。

それに乗り、保健室に運ばれる。

杉元も一緒にくっつい来るようだった。

 

保健室に行くと、まだ寝ている爆豪が目に入った。まあ、コイツが目を覚ませばまた暴れるだろうからな。

 

俺が横になって診察され、レントゲンやら取られると、やはり肋骨が何本か折られていた様だ。痛え訳だよ。あとは打ちみやら打撲やら何やらも有るみたいだ。

折れた肋骨は内蔵を傷つけずに綺麗に折れているとの事から、リカバリーガールの治癒だけで回復出来るようだ。

 

俺が治療を受けていると、A組の奴らが押しかけてきて、杉元におめでとうと祝福したり、健闘を讃えたりした。

俺にも良く戦ったやら、残念だったけど2位おめでとうやら、抱き上げられた時杉元のおっぱいに頭乗せた感想は?やら言われた。

最後のコメントは勿論峰田なので答えの代わりに銃の柄で頭を殴っておいた。

 

治癒を終えて、リカバリーガールに保健室から全員追い出される。因みにこの時爆豪が目を覚まし暴れ出したので教師達が爆豪を拘束するという一面があったがそれはまあ、どうでもいいな。

 

保健室に突撃してきたメンバーに、飯田が居なかったので、杉元が疑問に思い緑谷に聞いたら、家の事情で早退したらしい。

話を聞くと、飯田の兄であるヒーローが敵にやられたということだ。

………ヒーローだからな。戦ってりゃ、敵に殺される事も充分有り得るだろう。

杉元も「そうか、大変だな飯田…。」と飯田を心配しているようだった。

 

席に戻る途中、杉元が、何故爆豪戦の時に炎を使わなかったのかを、轟に問うていた。

 

「緑谷と戦ってキッカケを貰って、お前とも戦って………でも分からなくなっちまってな…。俺が吹っ切れてそれで終わりじゃ駄目だと思った。だからこっちは使えなかった…。精算しなきゃならないモノがまだ有るからな………。」

と杉元に言っていた。

轟のその顔は穏やかだった。

 

「………そっか、今の轟なら、きっと精算出来るさ…。」

そう杉元が言った。

 

表彰式が始まるので1年全員スタジアムの中央に集まり並ぶ。

俺と杉元は表彰台の上に乗れとの指示だったので、杉元が1位、俺が2位の台に立った。

 

「おお!俺、表彰台とか乗るの初めてだぜ!」

杉元はそう言ってはしゃいだ。

 

3位の爆豪は余程この順位が気に入らないのだろう、両腕と口元をガッチガチに固められ拘束されながら表彰台に無理やり立たされていた。

…ここまでやるのなら別に表彰台に立たせなくても良いんじゃねえか…?

杉元も「うわぁ…爆豪……うわぁ……。」と呆れるというか引いていた。

 

「メダル授与よ!!今年メダルを贈呈するのはもちろんこの人!!」

ミッドナイトが声を張り上げると、スタジアム外壁の頂上から、オールマイトが降ってきた。

 

「私がメダルを持って来t」

「我らがヒーローオールマイト!!!!」

 

オールマイトの声とミッドナイトの紹介が被ってしまった。締まらねえなあ。

 

オールマイトがまず爆豪にメダルを渡そうとする。オールマイトは「爆豪少年!」と呼んでから、「こりゃあんまりだな…。」と、爆豪の口枷を取り払った。

 

爆豪は鬼のような形相をし地を這うような声で、「オールマイトォ…こんな順位何の価値もねえんだよぉ…世間が認めても自分が認めなきゃゴミなんだよ!!!!」とぶちまけていた。

オールマイトはそれに対し、不変の絶対評価を持ち続けられる人間はそう多くいないと爆豪を評価した上で、メダルを傷として忘れぬように貰っとけと言い放った。

 

爆豪はそれでも要らぬと突っぱね続け、メダルを受け取ろうとしなかったが、オールマイトは首に掛けるのは諦めて爆豪の口に引っ掛けて強引にメダルを渡した。

 

爆豪の次は2位の俺の番だ。

「尾形少年!!おめでとう!!!!強いな君は!」

首にメダルを掛けられる。

俺は「………どうも…。」と返しておいた。

 

「身体能力もかなりのモノだったが、直接の「個性」でない君の射撃の腕前も確かなものだ。それに判断力も素晴らしかった。更に地力を鍛えれば、取れる選択肢も益々増えるだろう。とにかく、おめでとう!!」

オールマイトはそう言うと俺に抱擁してこようとしたので、やんわりとそれを避けた。

大男に抱きつかれる趣味は無いのでな。

オールマイトは少し寂しそうな表情を浮かべたが、気を取り直して杉元の方へと向かった。

 

「さて、杉元少女!!伏線回収見事だったね。ああ、それは尾形少年もか。」

伏線とは杉元の宣誓の時にした優勝宣言の事だな。俺も巻き込まれたが、杉元の宣言通り、2位を取れたから恥をかかずに済んで一安心だ。

 

「杉元少女、第1種目からその実力を周囲に見せつけ、最後まで他を圧倒するその力で人々を沸かし、魅了し続けたね。正しく君はヒーローでエンターテイナーだったよ。まっこと素晴らしい!!

そして宣言通りの優勝、本当におめでとう!!!!」

 

そう言ってオールマイトが杉元の首にメダルを掛け、杉元と抱擁すると客席が沸いた。

歓声が響き渡った。

杉元はオールマイトの言葉に感動した様だ。

照れながらも笑顔でオールマイトに抱擁し返していた。

 

…………チッ、オールマイトだからと言ってヘラヘラしてんじゃねえぞ杉元…。

 

そして最後にオールマイトが大きな声で、次代のヒーローはその芽を確実に伸ばしていると観客に伝えて、最後の締めの言葉を述べようとする。

 

「てな感じに最後に一言!!皆さんご唱和下さい!!せーの」

「「「「「「プルスウルトr」」」」」」

「お疲れ様でした!!!!!!!!!!」

 

まったく、締まらねえなあ…。

 

体育祭が終了したので、全員体操服を着替えてそれぞれ教室へと戻る。

教室に戻り、早退した飯田以外、全員席についてると相澤が現れ教壇に立ち言った。

 

「おつかれっつうことで、明日明後日は休校だ。」

ああ、そう言えば休みになるんだったな。

 

「プロからの指名などをこっちでまとめて休み明けに発表する。ドキドキしながらしっかり休んどけ。」

 

プロの指名か………俺は2位だし、まあ他の奴らよりも実力をアピール出来てもいるだろう。

さてどの程度プロからの指名が有るのか…また、行きたいと思えるプロから指名が有るか…。

 

そんな事を考えていたら、帰りのホームルームが終わった。………帰るか。

俺はもう既に荷物をまとめてあるので、杉元の席まで行き、「帰るぞ杉元。早くしろ。」と杉元に声を掛けた。

 

杉元は今から帰る準備をするのか、「ちょっと待ってろ尾形。」とゴソゴソしている。

もっと早めに準備しておけ。

 

準備しながら杉元が「プロからの指名だってよ尾形〜どんだけ来るか今から楽しみだよな〜。」と陽気に言ってきた。

まあ、今回1位はお前だし、普通に考えればお前に1番声が掛かるだろうよ。今回の体育祭じゃ超速回復を盾にした無茶という名のスプラッタは見せなかったしな。俺との戦いでは盛大に血を出してたが、無理をした結果ではないからな。

 

「まあ、普通に考えたら、お前のとこに1番来んじゃねえか…?」

そう返すと杉元は「え?そ、そっかな〜?だといいけどぉ〜。」と何故か照れていた。

 

帰る支度が出来た杉元と、他の連中に別れの挨拶をしつつ教室を後にする。

 

「でもよぉ、やったな尾形。」

駅までの道を歩いていると杉元が突然言ってきた。

 

「何がだ?」

「俺が優勝して、お前が2位、俺とお前でワンツーフィニッシュ達成出来た事だよ!!」

 

ああ、確かにお前のおかげで俺も大変だったぜ。

チートなお前と違って俺は一歩間違えれば負けてただろうからな。特に最終種目は組み合わせのおかげと言っても良いだろう。

 

「ああ、その事か。まったく恥じ掻かずに済んで良かったぜ。」

そう返すと杉元は不満そうな顔をした。

 

「それだけじゃないだろ尾形〜!もっと色々有るだろう〜??」

「色々って何がだ。」

何が言いたい杉元?

 

「だぁから、嬉しい!とかやったぜ!とかそういうのだよ!!」

嬉しいやら、やったぜ、やらねえ…。

前世ではそんな感情そうそう感じはしなかったのだがな…。

 

「………まあ、良かったんじゃねえの…?」

「そうそう、そういうのだよ!!そういうの!!」

俺の返答に杉元がにかりと微笑んだ。

…………俺を良くむず痒い気持ちにさせるよな、今生のお前は。

まだ、杉元に言ってなかったことを気まぐれで言ってやった。

 

「………杉元…優勝出来て、良かったな…。」

「!!おう!尾形も準優勝おめでとうな!!」

杉元は益々嬉しそうな顔を俺に向けた。

 

前世では仏頂面ばかりを向けてきたお前だったが、今生で向けてくるそういう顔は、まあ悪くは無いな。



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雄英体育祭編10(オマケ)

前回のオマケの続きです。
某ちゃんねるネタです。

苦手な方は読み飛ばしても本編に支障はありません。


オマケ

 

388 名無しの雄英生

俺もこういう青春送ってみたかったぜ…

 

389 名無しの雄英生

レクリエーション始まるな

 

390 名無しの雄英生

最初は玉転がしか

 

391 名無しの雄英生

なんかすげえ早いヤツとかいそうw

 

 

 

 

430 名無しの雄英生

障害物競走おもれーw

 

431 名無しの雄英生

背脂は酷いwwwwww

 

432 名無しの雄英生

あのぶどう頭の奴、絶望の顔だったなwwwwww

 

433 名無しの雄英生

背脂てwww

 

434 名無しの雄英生

鬼畜すぎる借り物競争w

 

435 名無しの雄英生

あ!!スギモトサイチちゃんじゃん!

 

436 名無しの雄英生

この子も借り物競争出るんだ〜なんか意外と本選出る奴らもちらほらレクリエーション参加してるんだな

 

437 名無しの雄英生

はっや

 

438 名無しの雄英生

スギモトちゃん相変わらず足速いねえ

 

439 名無しの雄英生

はえー

 

440 名無しの雄英生

でもなんかワタワタしてるけどw

 

441 名無しの雄英生

どんなお題引いたんだ?w

 

442 名無しの雄英生

難しそう

 

443 名無しの雄英生

何だろな?

 

444 名無しの雄英生

お、走り出した

 

445 名無しの雄英生

やはり速い

 

446 名無しの雄英生

チアガールの黒髪ポニテの子になんか頼み込んでるな

 

447 名無しの雄英生

てかサイチちゃんなんでチアの格好辞めちゃったの〜!?折角可愛かったのに…

 

448 名無しの雄英生

>>447

キレてたし、あの格好やだったんじゃない?

私だって嫌だわあんな格好

 

449 名無しの雄英生

でもスギモトサイチちゃん以外みんなチアガールのままだなw

 

450 名無しの雄英生

黒髪ポニテの子なんか身体から色々出す子か

 

451 名無しの雄英生

なんかエロいよな

 

452 名無しの雄英生

>>451

それな

 

453 名無しの雄英生

>>451

良く分かってるな

 

454 名無しの雄英生

なんか出すね

 

455 名無しの雄英生

マクラw

 

456 名無しの雄英生

確かに会場じゃマクラは無さそうw

 

457 名無しの雄英生

まあ背脂よりはマシかな

 

458 名無しの雄英生

比較対象が酷すぎるw

 

459 名無しの雄英生

 

460 名無しの雄英生

オガタヒャクノスケもいるやん

 

461 名無しの雄英生

オガタも足はええな

 

462 名無しの雄英生

てか2人とも同じレクリエーションに…

 

463 名無しの雄英生

イチャイチャしやがって

 

464 名無しの雄英生

いや、たまたまレクリエーションが一緒だった可能性も…

 

465 名無しの雄英生

>>464

ないだろ

 

466 名無しの雄英生

>>464

ねーよ

 

467 名無しの雄英生

ん、ヒャクノスケ、サイチちゃんの方に行ったぞ

 

468 名無しの雄英生

速い

 

469 名無しの雄英生

ちょ、スギモトサイチちゃんの腕引っ張って走っとるw

 

470 名無しの雄英生

距離ちけえ

 

471 名無しの雄英生

てか何のお題だったの?

 

472 名無しの雄英生

これはまさか………

 

473 名無しの雄英生

ざわ…ざわ…

 

474 名無しの雄英生

いやいや、「気に入らないクラスメイト」とかかもしれんぞ

 

475 名無しの雄英生

「嫌いな女」とかかもよ

 

476 名無しの雄英生

「爆乳」とかかもしれないよw

 

477 名無しの雄英生

>>476

有り得るwwwww

 

478 名無しの雄英生

>>467

いや、雄英体育祭じゃあ流石にそれはないだろ

 

479 名無しの雄英生

ゴールした

 

480 名無しの雄英生

結局なんなの?

 

481 名無しの雄英生

係員OK出したぞ

 

482 名無しの雄英生

なに?

 

483 名無しの雄英生

サイチちゃんめっちゃキレてますやん

 

484 名無しの雄英生

お題の紙渡されたらキレ出したな

 

485 名無しの雄英生

てか赤

 

486 名無しの雄英生

ちょwwwwwwwww予想通り過ぎるwwwwwwwww

 

487 名無しの雄英生

恋人wwwwwwwwwwww

 

リア充は爆発してくれないか?

 

488 名無しの雄英生

うわぁーそんな紙映さなくて良かったよカメラ〜知りたくなかった〜サイチちゃーん(´;ω;`)

 

489 名無しの雄英生

思った通りだったでござる

 

490 名無しの雄英生

これは読めてた

 

491 名無しの雄英生

スギモトサイチ非処女確定www

 

492 名無しの雄英生

やだーーーーー!!!サイチちゃんはぼくのだーーーー!!!!

 

493 名無しの雄英生

いや、怒ってるってことは勝手に恋人だって言われて怒ってるのかもよ?

 

494 名無しの雄英生

>>493

でもそれだけであんなに赤くならないでしょ普通

 

495 名無しの雄英生

オガタヒャクノスケ死ね

氏ねじゃなくて死ね

 

496 名無しの雄英生

オガタヒャクノスケ絶許

 

497 名無しの雄英生

ちくしょう、ニヤニヤ笑いやがって…しね

 

498 名無しの雄英生

オガタ死ね

 

499 名無しの雄英生

あんなおっぱい大きくて可愛い子が彼女とか羨ましすぎる

 

500 名無しの雄英生

リア充うぜえ

 

501 名無しの雄英生

あんな可愛い子が非処女とかめちゃくちゃ興奮するわ

 

502 名無しの雄英生

>>501

今日のオカズが決まったよな

 

503 名無しの雄英生

>>502

俺達が1人でシコってる間にオガタヒャクノスケはスギモトサイチのワガママボディを好きに出来てるんだぜ?

 

504 名無しの雄英生

>>503

オガタヒャクノスケに殺意しか湧かんな

 

505 名無しの雄英生

オガタ許せねえ…!!

 

506 名無しの雄英生

オガタヒャクノスケへの呪詛でスレがkskしてる間にレクリエーション終わって本選始まるぞ

 

507 名無しの雄英生

ほんとだwオガタへの殺意でスレ加速とかわらうwwwwww

 

508 名無しの雄英生

おい、本選始まるぞ

 

509 名無しの雄英生

本選wktk

 

510 名無しの雄英生

トップバッターはミドリヤイズクか

 

511 名無しの雄英生

相手普通科じゃん

 

512 名無しの雄英生

どっか勝つかな〜?

 

513 名無しの雄英生

普通に考えればヒーロー科のミドリヤでしょ

 

514 名無しの雄英生

>>513

いやでも個性なんなのかまだ分からんし

 

515 名無しの雄英生

始まるぞ!

 

 

 

 

 

726 名無しの雄英生

茨ちゃんTUEEEE!!

 

727 名無しの雄英生

完封やん

 

728 名無しの雄英生

電気の子弱w

 

729 名無しの雄英生

>>728

いや、かなり相性悪かったからでしょ

 

730 名無しの雄英生

折角強い個性なのに勿体無い試合だったな

 

731 名無しの雄英生

もっと上手く立ち回れてたらワンチャン有っただろ

 

732 名無しの雄英生

無様

 

733 名無しの雄英生

あの拘束は逃れられんわ

 

734 名無しの雄英生

次だ次

 

735 名無しの雄英生

次佐一ちゃんじゃん!!!!

 

736 名無しの雄英生

杉元ー!俺だ!!結婚してくれ!!

 

737 名無しの雄英生

>>736

尾形「阻止」

 

738 名無しの雄英生

>>737

早いw

 

739 名無しの雄英生

相手はあのめっちゃ速いメガネか

 

740 名無しの雄英生

飯田天哉な

 

741 名無しの雄英生

早くやれ

 

742 名無しの雄英生

始まるぞ

 

743 名無しの雄英生

!?

 

744 名無しの雄英生

速すぎ

 

745 名無しの雄英生

メガネはえー

 

746 名無しの雄英生

メガネkskした

 

747 名無しの雄英生

 

748 名無しの雄英生

メガネ吹っ飛ばされたー!!

 

749 名無しの雄英生

あーダメだわ

 

750 名無しの雄英生

激突痛そー

 

751 名無しの雄英生

決着早い

 

752 名無しの雄英生

一瞬だったな

 

753 名無しの雄英生

てかあの重たそうなメガネ反対側の場外まで投げ飛ばして壁に激突させるとか杉元佐一マジゴリラ

 

754 名無しの雄英生

杉元ちゃん可愛いのに相変わらずゴリラでござる

 

755 名無しの雄英生

腕力やべえな

 

756 名無しの雄英生

一瞬過ぎておもんない

 

757 名無しの雄英生

>>756

そうか?確かに決着早かったけど割と面白かったぞ

 

758 名無しの雄英生

ずっと杉元佐一の乳揺れ見てた

 

759 名無しの雄英生

wwwwww

 

760 名無しの雄英生

分かる、アレは見るよなw

 

761 名無しの雄英生

>>758

寧ろそれ以外楽しみがない

 

762 名無しの雄英生

>>761

お前はもっとそれ以外をよく見て楽しめ

 

763 名無しの雄英生

次は〜?

 

764 名無しの雄英生

青山って奴と芦戸って奴

 

765 名無しの雄英生

女の子の方可愛いな

野郎の方はどうでもいい

 

766 名無しの雄英生

そろそろ始まる

 

 

 

 

784 名無しの雄英生

どいつもこいつも決着着けるの早すぎでしょ

 

785 名無しの雄英生

良いアッパーだったな

 

786 名無しの雄英生

レーザーは凄かったけどね

 

787 名無しの雄英生

ただし、レーザーはへそから出る

 

788 名無しの雄英生

wwwwwwぐるぐるかw

 

789 名無しの雄英生

ベルト壊されてからワタワタし過ぎ。減点ですな。

 

790 名無しの雄英生

芦戸ちゃんの動き良かったね

 

791 名無しの雄英生

次もう始まるぞ

 

792 名無しの雄英生

来た、尾形百之助

 

793 名無しの雄英生

尾形負けろ

 

794 名無しの雄英生

尾形負けろ

 

795 名無しの雄英生

尾形負けろ

 

796 名無しの雄英生

みんな尾形の事嫌い過ぎだろ

 

797 名無しの雄英生

尾形が何したってんだ!

 

798 名無しの雄英生

>>797

彼女と乳繰りあってるのが悪い

 

799 名無しの雄英生

>>798

それな

 

800 名無しの雄英生

相手の子可愛いな

 

801 名無しの雄英生

八百万ちゃんかわええ

 

802 名無しの雄英生

八百万ちゃん頑張れ!尾形をぶっ倒せ!!

 

803 名無しの雄英生

誰か尾形百之助の応援もしたれやwww

 

804 名無しの雄英生

やだ

 

805 名無しの雄英生

八百万ちゃん、何でも身体から作る子か

 

806 名無しの雄英生

八百万ちゃんはものづくりチートやな

 

807 名無しの雄英生

どんな戦いになるかな

 

808 名無しの雄英生

ワクワク

 

809 名無しの雄英生

てかプレマイも尾形のこと杉元の影に隠れてるとか言ってて笑うw

充分ヤベー奴なのは同意

 

810 名無しの雄英生

そろそろ始まるぞ

 

811 名無しの雄英生

尾形はえー!!!!

 

812 名無しの雄英生

こいつもめっちゃ速いな

 

813 名無しの雄英生

ちょ、ももちゃん引きずらないで可哀想!!

 

814 名無しの雄英生

首閉まりそう

 

815 名無しの雄英生

あー早い

 

816 名無しの雄英生

場外

 

817 名無しの雄英生

早すぎてやっぱつまらん

 

818 名無しの雄英生

もっと盛り上げてくれよ

 

819 名無しの雄英生

八百万ちゃんが勝つかと思ったんだけどなあ

 

820 名無しの雄英生

八百万のチート個性を使わせなかった判断は認める

 

821 名無しの雄英生

確かにあの個性相手にしてらんねえよな

 

822 名無しの雄英生

八百万ちゃんもうちょい接近戦戦えればワンチャンあったのになあ…

 

823 名無しの雄英生

いや、あのスピードの中足掻くのは無理だろ

 

824 名無しの雄英生

尾形腕力もやっぱそれなりに有るんだな

 

825 名無しの雄英生

>>824

そりゃ有るだろ

 

826 名無しの雄英生

つまらん

 

827 名無しの雄英生

もっと殴り合うような戦いが見たい

 

828 名無しの雄英生

八百万ちゃん勝ってほしかった…

 

829 名無しの雄英生

誰か尾形止めて2位宣言阻止してくれ

 

830 名無しの雄英生

また次始まるぞ

 

831 名無しの雄英生

お次は誰だー?

 

832 名無しの雄英生

次は切島鋭児郎と鉄哲徹鐵って奴

 

833 名無しの雄英生

鉄哲徹鐵ってすげえ名前w

 

834 名無しの雄英生

この2人確かデカいロボットに押しつぶされてピンピンしてた奴らじゃね?

 

835 名無しの雄英生

今度こそ熱い試合期待

 

836 名無しの雄英生

始まるー

 

 

 

 

896 名無しの雄英生

すげえ試合だったな

 

897 名無しの雄英生

スタジアム壊れたでしょアレ

 

898 名無しの雄英生

轟も凄いけどアレ全部相殺した緑谷のパワーやべえな

 

899 名無しの雄英生

でもあれ反動でバキバキになってたじゃん

超パワーでもアレじゃ使えないでしょ

 

900 名無しの雄英生

緑谷、轟の懐に入ってパンチした時に轟場外までぶっ飛ばせば良かったのになんで手加減したんだろ?

 

901 名無しの雄英生

>>900

手加減しなきゃ轟死んでただろ

だからだよ

 

902 名無しの雄英生

>>901

もっと上手く加減してたら場外まで飛ばせてただろっていってんの

 

903 名無しの雄英生

しかし緑谷ズタボロやん

 

904 名無しの雄英生

見てられんかったわ

 

905 名無しの雄英生

アレ全部轟の攻撃でああなったんじゃなくて自爆って所がすごいな

 

906 名無しの雄英生

緑谷轟挑発して何がしたかったんだ?意味わからん

 

907 名無しの雄英生

何にせよすごい試合だった

 

908 名無しの雄英生

エンデバさんも息子さん勝って喜んでたな

 

909 名無しの雄英生

>>908

親バカ何だろな

 

910 名無しの雄英生

次そろそろ始まるな

 

911 名無しの雄英生

次は塩崎さんと杉元さんか

 

912 名無しの雄英生

どっちが勝つかな〜?

 

913 名無しの雄英生

杉元佐一も流石にあの茨に囚われたらヤバいやろ

 

914 名無しの雄英生

杉元ならあの茨位ぜんぶ避けるくらいするやろ

 

915 名無しの雄英生

どっちも可愛いからどっちも負けて欲しくない…

 

916 名無しの雄英生

2人とも美人だよね

 

917 名無しの雄英生

茨ちゃんの儚い感じすこ

 

918 名無しの雄英生

僕は杉元佐一ちゃん!おっぱいは正義!!

 

919 名無しの雄英生

リアルキャットファイト

 

920 名無しの雄英生

どっちが勝ってもおかしくないよな

 

921 名無しの雄英生

でもやっぱ杉元の超パワーだろJK

 

922 名無しの雄英生

茨で捉えて塩崎が勝ちそう

 

923 名無しの雄英生

始まるぞ

 

924 名無しの雄英生

2人ともかわいー

 

925 名無しの雄英生

塩崎先制攻撃!!

 

926 名無しの雄英生

あっー杉元ちゃんー!!

 

927 名無しの雄英生

捕まった

 

928 名無しの雄英生

なんか逃げなかったね

 

929 名無しの雄英生

 

930 名無しの雄英生

は?

 

931 名無しの雄英生

おうふ…引きちぎりやがった…

 

932 名無しの雄英生

杉元TUEEEE!!!!

 

933 名無しの雄英生

あの茨の束普通引きちぎれるか??

 

934 名無しの雄英生

うーんこれはゴリラ

 

935 名無しの雄英生

塩崎さんもびっくり

 

936 名無しの雄英生

俺達もびっくりだよ

 

937 名無しの雄英生

悠々歩いてくるなw

 

938 名無しの雄英生

塩崎さん諦めるな!!頑張れ!!

 

939 名無しの雄英生

うーんどんどん引きちぎっていくなあ

 

940 名無しの雄英生

杉元ゴリラすぎやろ

 

941 名無しの雄英生

塩崎さん顔が青い

 

942 名無しの雄英生

あー

 

943 名無しの雄英生

参ったか〜

 

944 名無しの雄英生

いやこれは誰でも降参するやろ普通に

 

945 名無しの雄英生

自分の攻撃全く効かないんじゃ心折れるよなあ…

 

946 名無しの雄英生

茨ちゃんカワイソス

 

947 名無しの雄英生

杉元マジ美人すぎるメスゴリラ

 

948 名無しの雄英生

これ杉元に勝てるやついんのか??

 

949 名無しの雄英生

>>948

次で轟と当たるから轟に期待しろ

 

950 名無しの雄英生

轟VS杉元とか相当やばい試合になりそう

 

951 名無しの雄英生

次また始まるぞ

 

952 名無しの雄英生

芦戸ちゃん対尾形百之助か

 

953 名無しの雄英生

尾形女の子と当たってばっかじゃんしね

 

954 名無しの雄英生

尾形今度こそ負けろ

 

955 名無しの雄英生

尾形しね

 

956 名無しの雄英生

尾形へのヘイトが凄いなこのスレはwww

 

957 名無しの雄英生

彼女持ちだからね、仕方ないね。

 

958 名無しの雄英生

まだ彼女と決まったわけでは

 

959 名無しの雄英生

>>958

現実から目をそらすな

 

960 名無しの雄英生

始まるぞ

 

961 名無しの雄英生

芦戸ちゃん頑張れー!!

 

962 名無しの雄英生

だから尾形速すぎ

 

963 名無しの雄英生

うわ、あんなジグザグに走ってこのスピードかよ

 

964 名無しの雄英生

芦戸ちゃんの攻撃当たんねー!

 

965 名無しの雄英生

芦戸ちゃん危ない!!!!

 

966 名無しの雄英生

そこだ芦戸ちゃん殴れ!!!!

 

967 名無しの雄英生

あー

 

968 名無しの雄英生

痛そう

 

969 名無しの雄英生

女の子痛めつけんなクソ尾形!!

 

970 名無しの雄英生

これは痛い

 

971 名無しの雄英生

やめたげてー!

 

972 名無しの雄英生

降参を引き出そうとしてるんだろうけど…

 

973 名無しの雄英生

なんかドS顔だわコイツ

 

974 名無しの雄英生

あー芦戸ちゃん降参かー

 

975 名無しの雄英生

まあ仕方ないよねあの状況じゃ

 

976 名無しの雄英生

尾形女の子相手でも容赦ねえな

 

977 名無しの雄英生

>>976

爆豪よりマシだろ?

 

978 名無しの雄英生

>>977

比較対象が酷すぎるw

 

979 名無しの雄英生

まあ、尾形も真剣に優勝狙ってるってことだろ?

 

980 名無しの雄英生

>>979

優勝じゃなくて2位じゃね?

 

981 名無しの雄英生

てかぼちぼちこのスレも1000行くな

 

982 名無しの雄英生

誰か次のスレ立て頼む

 

983 名無しの雄英生

やっぱり雄英体育祭、めっちゃおもしれえなスレが進むわ

 

984 名無しの雄英生

それな

 

985 名無しの雄英生

それな

 

986 名無しの雄英生

とりあえずksk

 

987 名無しの雄英生

次スレ立てたぞ〜

【雄英体育祭】雄英体育祭実況スレPart2【1年ステージ】

 

988 名無しの雄英生

次スレあざーす

 

989 名無しの雄英生

あざす

 

990 名無しの雄英生

そっち移るか

 

991 名無しの雄英生

じゃあ、1000なら轟が優勝する

 

992 名無しの雄英生

1000なら宣言通り杉元佐一ちゃん優勝!

 

993 名無しの雄英生

1000なら杉元ちゃん優勝するけど尾形は2位じゃない

 

994 名無しの雄英生

酷いwww

 

995 名無しの雄英生

1000なら杉元ちゃんと尾形は付き合ってない

 

996 名無しの雄英生

1000なら杉元ちゃんは処女

 

997 名無しの雄英生

おいwwwwwwどんだけ杉元の処女に固執するんだwwwwww

 

998 名無しの雄英生

1000なら杉元と尾形が別れる

 

999 名無しの雄英生

1000なら杉元ちゃんと俺が付き合う

 

1000 名無しの雄英生

1000なら杉元&尾形、宣言通りワンツーフィニッシュ!!

 

1001 名無しの雄英生

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雄英体育祭編11(オマケ2)

前回のオマケの更に続きです。
某ちゃんねるネタです。

苦手な方は読み飛ばしても本編に支障はありません。


オマケ2

 

【雄英体育祭】雄英体育祭実況スレPart2【1年ステージ】

 

1 名無しの雄英生

スレ立てあざーす

 

2 名無しの雄英生

スレ立て乙乙

 

3 名無しの雄英生

Part2でも盛り上がってこうぜ!!

 

4 名無しの雄英生

早速轟VS杉元という好カード

 

5 名無しの雄英生

やばい試合になりそう

 

6 名無しの雄英生

轟VS緑谷でもめちゃくちゃ凄かったからな

 

7 名無しの雄英生

緑谷の上位互換感ある杉元じゃ、試合どっちに傾いても不思議じゃないよな

 

8 名無しの雄英生

けど流石に轟には勝てないんじゃない?

 

9 名無しの雄英生

あのロボットを一撃で破壊する杉元だぞ?

 

10 名無しの雄英生

どっち勝つかな〜?

 

11 名無しの雄英生

杉元ちゃん頑張れ!!

 

12 名無しの雄英生

轟焦凍イケメンだから応援したくない

杉元頑張れ

 

13 名無しの雄英生

>>12私情がすごいw

気持ちはすげえ分かる

 

14 名無しの雄英生

ここまで来たら宣言通り杉元が優勝して欲しい

 

15 名無しの雄英生

俺は轟が勝って、杉元ちゃんが涙目になるのを待ってる。想像するだけで興奮するわ

 

16 名無しの雄英生

>>15

よう変態

 

17 名無しの雄英生

杉元ちゃんかわ

 

18 名無しの雄英生

こんな可愛い子がゴリラとか世の中分からんな

 

19 名無しの雄英生

轟イケメンだな〜爆ぜろ

 

20 名無しの雄英生

始まるぞ

 

21 名無しの雄英生

うわっいきなり凄いな轟

 

22 名無しの雄英生

氷山やん

 

23 名無しの雄英生

ちょ、これ杉元ちゃん大丈夫なの??

 

24 名無しの雄英生

え、もしかしてこれで勝負付いた?

 

25 名無しの雄英生

杉元ちゃんやばい誰か早く救出して

 

26 名無しの雄英生

杉元これ全身カチカチなのでは?

 

27 名無しの雄英生

!?

 

28 名無しの雄英生

ええええええ

 

29 名無しの雄英生

氷山が爆発した

 

30 名無しの雄英生

大爆発やん大丈夫かこれ?

 

31 名無しの雄英生

杉元佐一ヤバすぎる

 

32 名無しの雄英生

アレを凌ぐどころかぶち壊すのかよ…杉元すげえ…

 

33 名無しの雄英生

杉元化け物かよ…

 

34 名無しの雄英生

轟がガンガン杉元凍らせようとしてるな

 

35 名無しの雄英生

…全部パンチ1発で相殺してますけど…

 

36 名無しの雄英生

杉元マジゴリラ

 

37 名無しの雄英生

跳んだ

 

38 名無しの雄英生

一気に距離縮めた!!

 

39 名無しの雄英生

杉元また場外へぶっ飛ばす気や

 

40 名無しの雄英生

危ねぇ!氷の壁でセーフ!

 

41 名無しの雄英生

轟じゃなければこれ場外だったでしょ

 

42 名無しの雄英生

杉元、轟に炎使って来いって言ってるな

 

43 名無しの雄英生

全力の相手と戦いたいんだろうな

 

44 名無しの雄英生

戦闘狂かよ

 

45 名無しの雄英生

また跳んだ

 

46 名無しの雄英生

ちょ

 

47 名無しの雄英生

舞台ぶっ壊したwwwwwwwww

杉元佐一馬鹿力すぎるwww

 

48 名無しの雄英生

ステージバキバキですやん

 

49 名無しの雄英生

ステージこれで戦闘続行すんのかよ

 

50 名無しの雄英生

ミッドナイト何も言わねえからそうだろな

 

51 名無しの雄英生

杉元、轟に炎使えってめっちゃ言ってるな

 

52 名無しの雄英生

轟防ぐので一生懸命じゃんピンチ

 

53 名無しの雄英生

 

54 名無しの雄英生

おおー!

 

55 名無しの雄英生

でた!炎!!!!

 

56 名無しの雄英生

これで勝負の行方は分からんくなったな

 

57 名無しの雄英生

轟、来るか?

 

58 名無しの雄英生

ひえっ

 

59 名無しの雄英生

炎やべえー

 

60 名無しの雄英生

この炎はあかん死ぬ

 

61 名無しの雄英生

これはやばい

 

62 名無しの雄英生

死んじゃう死んじゃう!!

 

63 名無しの雄英生

杉元ちゃん避けて!!!!

 

64 名無しの雄英生

は!?

 

65 名無しの雄英生

うわっカメラ大丈夫か?

 

66 名無しの雄英生

一瞬凄い蒸気で何も見えなくなったな

 

67 名無しの雄英生

全部拳でぶっ飛ばしやがった………

 

68 名無しの雄英生

杉元佐一まじで化け物だよこれ…

 

69 名無しの雄英生

なんか「俺は不死身の杉元だ!」って叫んでなかった??

 

70 名無しの雄英生

不死身の杉元か……これは自称でも充分通用するわ強すぎるもん

 

71 名無しの雄英生

轟、デカい氷と一緒に吹っ飛んだな

 

72 名無しの雄英生

場外…てかなんか雨降ってきてね?

 

73 名無しの雄英生

杉元天気すら拳で変えたのかよ…

 

74 名無しの雄英生

なんか偉いもんを見てしまったな…

 

75 名無しの雄英生

これは3年ステージ捨てて1年ステージ張り付いた甲斐あったわ

 

76 名無しの雄英生

>>75

だなーこんな試合、例年の体育祭でもそうそう見れんわ

 

77 名無しの雄英生

もうこれが決勝で良い

 

78 名無しの雄英生

準決でこれかよやばいな

 

79 名無しの雄英生

不死身の杉元、か……マジで不死身なのかもなコイツ

 

80 名無しの雄英生

拳で天気変えるとか確かオールマイトもやってたような…

 

81 名無しの雄英生

杉元佐一、オールマイトの隠し子とかじゃねえだろうな?

 

82 名無しの雄英生

>>81

あの超パワーじゃ有り得そう

 

83 名無しの雄英生

>>83

でも顔似てなくね?佐一ちゃんあんな濃い顔してねえよ

 

84 名無しの雄英生

杉元ちゃん和風美人って感じだもんな

 

85 名無しの雄英生

オールマイト隠し子説浮上

 

86 名無しの雄英生

オールマイト隠し子説なら緑谷を押すわ

 

87 名無しの雄英生

>>86

それはないだろ

 

88 名無しの雄英生

>>86

オールマイトはあんな怪我しない。はい論破。

 

89 名無しの雄英生

緑谷も杉元もオールマイトに似てないし違うだろ

 

90 名無しの雄英生

てか次の試合まだかよ長くね?

 

91 名無しの雄英生

杉元佐一がステージバキバキに壊したからな。修復も時間かかんだろ

 

92 名無しの雄英生

セメントス先生が一生懸命修復してんだから大人しく待ってろ

 

93 名無しの雄英生

早く次見たーい!!

 

94 名無しの雄英生

次は尾形VS爆豪か…

 

95 名無しの雄英生

どっちも応援したくない共倒れしろ

 

96 名無しの雄英生

爆豪ヒールっぽいからな…

 

97 名無しの雄英生

爆豪ヒーローってよりヴィランっぽいよな

 

98 名無しの雄英生

口も悪いっぽいしな

 

99 名無しの雄英生

尾形は特に何も悪いことしてないやろ!!

 

100 名無しの雄英生

可愛い彼女がいる時点でギルティ

 

101 名無しの雄英生

なんかずっと無表情だし雰囲気が腹立つ

 

102 名無しの雄英生

てか尾形も爆豪もイケメンで腹立つ

頼むから死んでくれ

 

103 名無しの雄英生

おまいら2人ともボロカスやなwww

 

尾形爆豪どっちも爆発しろ

 

104 名無しの雄英生

悪口言ってる間に試合始まりそうやぞ

 

105 名無しの雄英生

セメントス先生、仕事が速い。流石です。

 

106 名無しの雄英生

あんなバキバキだったのになw

 

107 名無しの雄英生

爆豪wwwめちゃくちゃ尾形にメンチ切ってるwww

 

108 名無しの雄英生

この顔面は敵ですわ〜

 

109 名無しの雄英生

凶悪過ぎる面だなw

 

110 名無しの雄英生

爆豪やっぱ口悪い

 

111 名無しの雄英生

傷女って杉元ちゃんのこと?

 

112 名無しの雄英生

女の子に傷女とか…許せねえな

 

113 名無しの雄英生

それよりも10野郎って何??

 

114 名無しの雄英生

銃野郎じゃね?

 

115 名無しの雄英生

尾形も今銃持ってないって言ってるやん

 

116 名無しの雄英生

尾形百之助、普段は銃を武器にしてんのか??

 

117 名無しの雄英生

へー普段使ってるモノ使わずにこの強さか…尾形も充分ヤベー奴だな

 

118 名無しの雄英生

プレマイもヤベー奴って言ってるしなw

 

119 名無しの雄英生

てか尾形もあんま爆豪煽んなよwww

 

120 名無しの雄英生

頭湧いてんのかwww酷いwww

 

121 名無しの雄英生

流石にミッドナイトに止められたな

 

122 名無しの雄英生

もっと口汚く罵り合えば面白いのにw

 

123 名無しの雄英生

爆豪、一言だけ「コロス」て怖いわwww

 

124 名無しの雄英生

試合始また!!

 

125 名無しの雄英生

爆豪、爆破で跳んだ!!

 

126 名無しの雄英生

すげえスピード

 

127 名無しの雄英生

うおお!!爆破ラッシュ!!!!

 

128 名無しの雄英生

当たったらやべえ

 

129 名無しの雄英生

尾形すげー全部躱しとる

 

130 名無しの雄英生

尾形相変わらず速い

 

131 名無しの雄英生

アレ捌き切るとか尾形も大概チートやな

 

132 名無しの雄英生

爆豪のラッシュも終わらねえ

 

133 名無しの雄英生

すげえ爆発うるせえな

 

134 名無しの雄英生

避けるよける

 

135 名無しの雄英生

どうやってアレ全部よけんだよ?頭おかしい

 

136 名無しの雄英生

お、尾形距離取った

 

137 名無しの雄英生

まあ、そらそうだよなずっと避けてもらんねえし

 

138 名無しの雄英生

爆豪一気にいった!

 

139 名無しの雄英生

おおおお!!

 

140 名無しの雄英生

いってええええええ!!!!

 

141 名無しの雄英生

何がどうやったのか目で追えないんだけど

 

142 名無しの雄英生

ざっくりいったね血が凄い

 

143 名無しの雄英生

血が…痛いわこれ…

 

144 名無しの雄英生

尾形そんなもん今まで隠してたんか…

 

145 名無しの雄英生

こんなやべー武器隠してたのか〜尾形油断出来ねえ奴や〜

 

146 名無しの雄英生

うわ、爪と手凄い。びっきびきやん。

 

147 名無しの雄英生

まさに肉食獣の爪ですわ

 

148 名無しの雄英生

血にまみれてるのが何ともおぞましいな

 

149 名無しの雄英生

てかこれ爆豪もう爆破できないのでは??

 

150 名無しの雄英生

こりゃ勝負有ったでしょ

 

151 名無しの雄英生

尾形も治療してもらえって言ってんな

 

152 名無しの雄英生

お前がやったことだろwwwwww

 

153 名無しの雄英生

すげえ煽りw

 

154 名無しの雄英生

てかプレマイのウ〇ヴァリン発言にワロタw

 

155 名無しの雄英生

すげえ爪だもんな

 

156 名無しの雄英生

爆豪降参する気無いみたいだぞ

 

157 名無しの雄英生

まあ、あんだけ煽られりゃ降参したくもないやろ

 

158 名無しの雄英生

でももう無理じゃね?

 

159 名無しの雄英生

爆豪殴りかかった!

 

160 名無しの雄英生

根性あるなあ

 

161 名無しの雄英生

うわっ

 

162 名無しの雄英生

これまた痛そう〜

 

163 名無しの雄英生

痛い痛い痛い

 

164 名無しの雄英生

足もざっくりですか…

 

165 名無しの雄英生

両足やられたな

こりゃ立てんわ

 

166 名無しの雄英生

血がやべえ

 

167 名無しの雄英生

ドクドクやん

 

168 名無しの雄英生

血まみれですなこりゃもう無理だわ

 

169 名無しの雄英生

えー!これでも降参しないの!?

 

170 名無しの雄英生

無理やろ

 

171 名無しの雄英生

もう動けねえだろ

 

172 名無しの雄英生

やっぱ口悪いなwカスとかころすとかw

 

173 名無しの雄英生

おい、尾形百之助、ミッドナイトに恐ろしい予告すんな

 

174 名無しの雄英生

両肩ぶっ刺そうと思うとかひぇっ

 

175 名無しの雄英生

無表情なのがまた怖い

 

176 名無しの雄英生

尾形、恐ろしい奴…

 

177 名無しの雄英生

あー、そりゃそうなるよな

 

178 名無しの雄英生

流石にね…

 

179 名無しの雄英生

戦闘不能だわな

 

180 名無しの雄英生

尾形の勝ちか〜意外だわ

 

181 名無しの雄英生

爆豪のが攻撃力あると思ってたからなあ…まさかの隠し球

 

182 名無しの雄英生

爆豪wwwもう無理だろ休んどけwwwwww

 

183 名無しの雄英生

まだ負けてないとかwwwどう見てもお前の負けだよwwwwww

 

184 名無しの雄英生

リカバリーガールにみてもらってこいw

 

185 名無しの雄英生

尾形w爆豪放置して早々に帰るなwww

 

186 名無しの雄英生

てか尾形もう杉元の宣言通り2位確定やんけ

 

187 名無しの雄英生

うわマジだ

 

188 名無しの雄英生

えー尾形百之助2位確定かよ…腹立つわー

 

189 名無しの雄英生

まさかマジでワンツーフィニッシュするとはなあ…

 

190 名無しの雄英生

尾形このまま行けば杉元ちゃんにも勝つんじゃね?

 

191 名無しの雄英生

>>190

それはないだろ

 

192 名無しの雄英生

>>190

お前の目は節穴か?

 

193 名無しの雄英生

>>190

あの杉元の戦闘力見るとなあ…さすがの尾形でも無理やろ

 

194 名無しの雄英生

尾形、轟と戦って負けて欲しかった…

 

195 名無しの雄英生

>>194

トーナメントだからな。しゃーないわ

 

196 名無しの雄英生

とうとう決勝か〜!!

 

197 名無しの雄英生

尾形百之助VS杉元佐一

カレカノ対決か〜

 

198 名無しの雄英生

>>197

だからカレカノと決まったわけでは…

 

199 名無しの雄英生

>>198

もう認めろよ

 

200 名無しの雄英生

CM入るな

 

201 名無しの雄英生

トイレ行っとこ

 

202 名無しの雄英生

もう決勝戦か。あっちゅーまだな

 

203 名無しの雄英生

結構サクサク進んだからな

 

204 名無しの雄英生

切島鋭児郎対鉄哲徹鐵が暑苦しくてすごい良かった

 

205 名無しの雄英生

俺はやっぱ杉元対轟だな

見れてよかったわ

 

206 名無しの雄英生

切島対爆豪も見応えあったよな

 

207 名無しの雄英生

轟VS緑谷は凄かったけど、正直緑谷見てられんかったわ…

 

208 名無しの雄英生

そろそろCM明けるぞ

 

209 名無しの雄英生

あれ?

 

210 名無しの雄英生

決勝戦は??

 

211 名無しの雄英生

3位決定戦かなるほどね〜

 

212 名無しの雄英生

そういう熱い展開好みてwww

ミッドナイトw

 

213 名無しの雄英生

轟VS爆豪か〜

 

214 名無しの雄英生

轟が勝つだろ普通に

 

215 名無しの雄英生

轟だろうな

 

216 名無しの雄英生

いや、爆豪の爆破も充分やべーだろ。

懐に入られたら轟も無事じゃすまんやろ

 

217 名無しの雄英生

うーん爆豪にもワンチャン有りそうだけど、やっぱ轟かなあ…

 

218 名無しの雄英生

VS緑谷戦やVS杉元戦見ちゃうとなあ…

どうしても爆豪が霞むわ

 

219 名無しの雄英生

どっちが勝ってもおかしくない

 

220 名無しの雄英生

野郎どもの戦いとかどうでもいいからはよ杉元ちゃん映せや

 

221 名無しの雄英生

欲望に忠実ニキがおるwww

 

222 名無しの雄英生

そろそろ始まるぞ〜

 

 

 

 

267 名無しの雄英生

3位爆豪か〜意外

 

268 名無しの雄英生

轟炎なんで消したん??

 

269 名無しの雄英生

炎使ってたら勝ってた

 

270 名無しの雄英生

爆豪も納得いかなかったんだろうな

 

271 名無しの雄英生

ミッドナイトに眠らされてたからなw

 

272 名無しの雄英生

まあいいや爆豪3位おめでとう

 

273 名無しの雄英生

あの爆豪の大技かっこよかったよな

 

274 名無しの雄英生

あの大技、尾形の時に使ってれば勝てたのでは…?

 

275 名無しの雄英生

>>274

使う前に掌やられたんだろ

 

276 名無しの雄英生

やっと決勝戦だ

 

277 名無しの雄英生

どうせ杉元が勝つ

 

278 名無しの雄英生

まあ、杉元だろうなあ…

 

279 名無しの雄英生

でも尾形もスピードやばいからな。

ワンチャン場外アウト狙えるやろ

 

280 名無しの雄英生

でも杉元ちゃんもめちゃくちゃ速いからなあ…

 

281 名無しの雄英生

そろそろ始まるで

 

282 名無しの雄英生

杉元ちゃ〜ん!!

 

283 名無しの雄英生

え、尾形なんか持ってね??

 

284 名無しの雄英生

あれ銃じゃね?アリなのそんなん??

 

285 名無しの雄英生

いいんだ…

 

286 名無しの雄英生

杉元ちゃん納得済みならいいんかい

 

287 名無しの雄英生

てか2人で運営に来たとか仲良いね…

 

288 名無しの雄英生

こんな所でもイチャイチャアピールを忘れない

 

289 名無しの雄英生

リア充くそくそくそ

 

290 名無しの雄英生

尾形百之助の銃の腕前はどんなもんかな??

 

291 名無しの雄英生

始まるぞ

 

292 名無しの雄英生

うわっ!!!!?

 

293 名無しの雄英生

早速発砲かよ…

 

294 名無しの雄英生

両足いった〜!!

 

295 名無しの雄英生

痛い痛い痛い

 

296 名無しの雄英生

うわ、肩も撃ち抜きやがった…

 

297 名無しの雄英生

彼女に容赦ねえな…

 

298 名無しの雄英生

勝負ついたやんけ

 

299 名無しの雄英生

うん?尾形場外アウト狙いか??

そのままほっときゃ戦闘不能で勝つやろ??

 

300 名無しの雄英生

えっ杉元ちゃん動けんの!?

 

301 名無しの雄英生

両足両肩やられたのに…

 

302 名無しの雄英生

痛そう…

 

303 名無しの雄英生

杉元踏ん張った!!

 

304 名無しの雄英生

ちょうそくかいふく……なにそれチート

 

305 名無しの雄英生

杉元ちゃん超パワーの上に回復個性も持ってんのかよ

 

306 名無しの雄英生

チートすぎる…こりゃみんな勝てるわけなかったわ…

 

307 名無しの雄英生

あー、尾形回復の事分かってたから場外狙ったのか…ダメだったけど

 

308 名無しの雄英生

杉元佐一つえええええええええええ

 

309 名無しの雄英生

もう回復しとるやんけ早すぎwww

 

310 名無しの雄英生

うおお猛ラッシュ!!!!

 

311 名無しの雄英生

はえー

 

312 名無しの雄英生

尾形また全部避けとるwww

 

313 名無しの雄英生

尾形も半端ねえな

 

314 名無しの雄英生

あ、掠った??

 

315 名無しの雄英生

そりゃ距離とるよね〜

 

316 名無しの雄英生

これ尾形勝てるのかよ

 

317 名無しの雄英生

杉元に勝つとか無理ゲー過ぎるわ

 

318 名無しの雄英生

杉元速い!!

 

319 名無しの雄英生

うお、こいつもジグザグに走ってるのに超はええ

 

320 名無しの雄英生

こりゃ尾形の銃でも当たらんやろ

 

321 名無しの雄英生

って当たったー!!!!

 

322 名無しの雄英生

うお、連射

 

323 名無しの雄英生

全部同じところ当たっとるやんけ!!!!

どんな腕してんだこいつ!?

 

324 名無しの雄英生

痛い痛い痛い痛い痛い痛い

 

325 名無しの雄英生

尾形、銃の腕もチートかよ

スナイプさんのお株奪えるな

 

326 名無しの雄英生

杉元ちゃん痛そー流石に動けんか

 

327 名無しの雄英生

うおおおおぉ尾形!?傷口抉るとかお前鬼か!?

 

328 名無しの雄英生

ぎゃあああ痛いいいいいい!!!!

 

329 名無しの雄英生

うわ、傷口抉ったのモロ見ちゃった…最悪

 

330 名無しの雄英生

流石に杉元もこれは悲鳴上げるわな

 

331 名無しの雄英生

めっちゃ蹴っ飛ばしやがったぞ尾形

マジ彼女でも容赦ねえ

 

332 名無しの雄英生

これは渾身の一撃ですわ

 

333 名無しの雄英生

杉元ゴロゴロ転がってくな

 

334 名無しの雄英生

これは場外!!

 

335 名無しの雄英生

尾形勝ちか!?

 

336 名無しの雄英生

あ!

 

337 名無しの雄英生

杉元、コンクリやぞそれ

 

338 名無しの雄英生

めり込ませて止めるとかマジ人外

 

339 名無しの雄英生

尾形追撃!!

 

340 名無しの雄英生

あ、やばい足取られた!!

やられる!!

 

341 名無しの雄英生

尾形吹っ飛んだー!

 

342 名無しの雄英生

反対側じゃなかったら尾形すぐに場外だったな

 

343 名無しの雄英生

うーん痛そう

 

344 名無しの雄英生

杉元跳んだ!!!

 

345 名無しの雄英生

うわっ、これ尾形避け無かったら死んでたんじゃ…?

 

346 名無しの雄英生

またしてもステージバッキバキに

 

347 名無しの雄英生

少しはステージちゃんいたわってあげて!!

 

348 名無しの雄英生

早く立て尾形!!殺されるぞ!!

 

349 名無しの雄英生

あ、ダメだ

 

350 名無しの雄英生

あー杉元のパンチモロ入った

 

351 名無しの雄英生

めっちゃ吹っ飛ぶなあ

 

352 名無しの雄英生

最後は場外かあ………まあ、尾形が死なずにすんで良かったんじゃね?

 

353 名無しの雄英生

杉元ちゃん優勝おめでとう〜!!!!!

 

354 名無しの雄英生

888888888おめでとう杉元佐一!

 

355 名無しの雄英生

88888888

 

356 名無しの雄英生

おめでとう杉元ちゃん!!宣言通り優勝凄い!!

 

357 名無しの雄英生

最後呆気なかったけど、何はともあれ優勝おめでとう

 

358 名無しの雄英生

いやー、尾形百之助も充分頑張ったよ

寧ろよくあそこまで戦った

 

359 名無しの雄英生

杉元ちゃん嬉しそう

 

360 名無しの雄英生

お、杉元どこ行くんだ?

 

361 名無しの雄英生

尾形のところー!!!!

 

362 名無しの雄英生

抱き起こしやがった…

 

363 名無しの雄英生

これ、尾形の頭、杉元ちゃんの胸に当たってね??ねえ、これパイタッチしてね???

 

364 名無しの雄英生

これはどう見てもラブラブ

 

365 名無しの雄英生

尾形百之助許さねええええええええええええ

 

366 名無しの雄英生

やっぱりカレカノじゃないですかやだーーーーー!!!

 

367 名無しの雄英生

あんなおっきいおっぱい枕にするとか一体前世でどんな善行を積めば出来るんです??

 

368 名無しの雄英生

でも尾形満身創痍やぞ

 

369 名無しの雄英生

満身創痍でもズタボロでも可愛いJKにおっぱい枕されるんならどうなってもええわ

 

370 名無しの雄英生

はああああ尾形百之助………恨めしい…

 

371 名無しの雄英生

担架ロボ来たぞ

 

372 名無しの雄英生

あ、杉元も付いてくんだ…まあ恋人ならそうだろうな…

 

373 名無しの雄英生

どう考えても彼女です。本当にありがとうございました。

 

374 名無しの雄英生

俺達は恋人同士の戦いを見せられてたのか…

 

375 名無しの雄英生

轟頼む〜お前の炎であいつら燃やしてきてくれ〜いや、やっぱ尾形だけ燃やすで頼む

 

376 名無しの雄英生

何にせよ体育祭1年ステージ終わったな

 

377 名無しの雄英生

あとは表彰か〜

 

378 名無しの雄英生

表彰が始まるまでどの試合が良かったか語ろうぜ!!俺は切島対鉄哲!!

 

379 名無しの雄英生

俺は何気に尾形対爆豪が結構好きだったな

 

 

 

 

457 名無しの雄英生

やっぱ今年の1年ステージ例年よりクオリティ高かったよな〜

 

458 名無しの雄英生

そういえば現役ヒーローの息子と弟が2人も居たんだよな

 

459 名無しの雄英生

>>458

どちらもぶっ倒した女の子が居ましてな…

 

460 名無しの雄英生

杉元佐一は本当に規格外だったわ

 

461 名無しの雄英生

轟や尾形や爆豪もつよかったけどな〜やっぱ杉元バケモノだわ

 

462 名無しの雄英生

お、メダル授与そろそろ始まるぞ

 

463 名無しの雄英生

!?

 

464 名無しの雄英生

これはwwwwwwwww

 

465 名無しの雄英生

ふぁーwwwwwwwww

 

466 名無しの雄英生

爆豪www面白すぎるwwwwww

 

467 名無しの雄英生

酷い絵面だwww

 

468 名無しの雄英生

杉元ちゃんもドン引きしてますやんw

 

469 名無しの雄英生

尾形は相変わらず冷めた目で見てるけどなw

 

470 名無しの雄英生

ミッドナイト様美しい

 

471 名無しの雄英生

今年はやっぱオールマイトか

 

472 名無しの雄英生

オールマイトからメダル貰えるとか羨ましい〜

 

473 名無しの雄英生

オールマイトw

説明と被ったwかわいそw

 

474 名無しの雄英生

3位からってこれはw

 

475 名無しの雄英生

うーむ酷い

 

476 名無しの雄英生

あ、口枷外してあげるんだ優しいオールマイト

 

477 名無しの雄英生

へー爆豪ストイックなんだな

 

478 名無しの雄英生

この順位でゴミとか上昇志向だなあ…流石雄英生

 

479 名無しの雄英生

オールマイトw要らないって言ってんのにwww

 

480 名無しの雄英生

口にかけやがったwwwwww

 

481 名無しの雄英生

あ、でも爆豪、メダル落とさないようにちゃんと口閉じるんだなwww

 

482 名無しの雄英生

次は2位!!

 

483 名無しの雄英生

尾形百之助〜!!

 

484 名無しの雄英生

コイツこんな時も無表情なんだなもっと嬉しそうにしとけ

 

485 名無しの雄英生

めっちゃオールマイトに褒められとる。羨ましい〜!!

 

486 名無しの雄英生

確かに身体能力凄かったもんな

 

487 名無しの雄英生

銃も最後だけ使ったけど、かなりの腕前っぽかったもんね

 

488 名無しの雄英生

連続で同じ場所に弾丸当てたのには鳥肌たった

 

489 名無しの雄英生

ちょw

 

490 名無しの雄英生

オールマイトのハグ拒否wwwうえwww

 

491 名無しの雄英生

オールマイトの抱擁拒否とか贅沢だぞ!!!

 

492 名無しの雄英生

オールマイトカワイソスwww

 

493 名無しの雄英生

しょんぼりしとるwオールマイトかわええw

 

494 名無しの雄英生

クールだな尾形百之助

 

495 名無しの雄英生

男に抱きつかれたくなかったんだろうな…w

 

496 名無しの雄英生

次はいよいよ1位!!

 

497 名無しの雄英生

杉元佐一ちゃん!!!!

 

498 名無しの雄英生

やっぱ可愛いぜ杉元佐一

 

499 名無しの雄英生

こちらもベタ褒めだなオールマイト

 

500 名無しの雄英生

杉元佐一、最初から圧倒的だったもんな〜

 

501 名無しの雄英生

うんうん、杉元ちゃん可愛いし強いしでみんなを魅力しまくったよな

 

502 名無しの雄英生

このスレでも杉元ちゃん大人気だったもんな

 

503 名無しの雄英生

杉元ちゃん照れてるwかわええええ

 

504 名無しの雄英生

照れてるの可愛いwww

 

505 名無しの雄英生

杉元ちゃんはしっかりオールマイトとハグするんだねめっちゃ嬉しそうw

 

506 名無しの雄英生

うおー杉元ちゃんそこ変わって〜!!

 

507 名無しの雄英生

寧ろオールマイト、そこ変われ

 

508 名無しの雄英生

美人なおっぱい大きいJKとハグ

ナンバーワンヒーローにでもならなきゃ出来ないことだってはっきりわかんね

 

509 名無しの雄英生

オールマイトにやましい心はないだろうけど、これは絶対杉元ちゃんのおっぱい当たってるよね…

 

510 名無しの雄英生

オールマイトのデカい胸板に押し潰れる爆乳…ウッ………ふぅ…

 

511 名無しの雄英生

>>510

やめろw

 

512 名無しの雄英生

これはオールマイトじゃなきゃ許されませんわあ…

 

513 名無しの雄英生

オールマイト聖人だからなオールマイトならしゃーない

 

514 名無しの雄英生

てか、尾形wwwwww顔wwwwww

 

515 名無しの雄英生

オールマイトにメンチ切るんじゃないwww

 

516 名無しの雄英生

めちゃくちゃ睨んでるじゃないですかやだーーーーーwwwwww

 

517 名無しの雄英生

尾形(俺の女とハグしやがって…)(殺意)

 

518 名無しの雄英生

これは殺意乗ってますわ〜w

 

519 名無しの雄英生

仮にもヒーロー志すならこの顔はあかんwww

 

520 名無しの雄英生

人殺せそうな視線ですねwww

 

521 名無しの雄英生

嫉妬ですね分かりますw

 

522 名無しの雄英生

お、オールマイトがなんかいい事言ってるぞ

 

523 名無しの雄英生

あーもう締めの挨拶かあ〜早いわあ

 

524 名無しの雄英生

あっという間の数時間だったわ〜

 

525 名無しの雄英生

今年も面白かったねえ

 

526 名無しの雄英生

ご唱和ください!!

 

527 名無しの雄英生

おっ

 

528 名無しの雄英生

あれか

 

529 名無しの雄英生

Plus ultra!

 

530 名無しの雄英生

ぷるすうるとら!!

 

531 名無しの雄英生

プルスウルトラ

 

532 名無しの雄英生

プルスウル…え!?

 

533 名無しの雄英生

ええー

 

534 名無しの雄英生

そりゃないよオールマイトwwwwww

 

535 名無しの雄英生

お疲れ様でしたwwwwwwうえwww

 

536 名無しの雄英生

そこはPlus ultra!!でしょオールマイトw

 

537 名無しの雄英生

締まらねえな〜www

 

538 名無しの雄英生

でもオールマイトのこういう抜けてる所すこ

 

539 名無しの雄英生

俺もすきwww

 

540 名無しの雄英生

オールマイト天然で可愛いよねw

 

541 名無しの雄英生

こんなでっかい顔の濃いおっさんが可愛いとか凄い流石オールマイトナンバーワンヒーロー

 

542 名無しの雄英生

>>541

ナンバーワンヒーロー関係ないw

 

543 名無しの雄英生

終わった〜

 

544 名無しの雄英生

おもろかった〜

 

545 名無しの雄英生

今年は1年ステージ見て正解でしたわ

 

546 名無しの雄英生

今年の1年は粒ぞろいでしたね

 

547 名無しの雄英生

来年は2年ステージ視聴するわ

 

548 名無しの雄英生

>>547

俺も

 

549 名無しの雄英生

>>547

同じく

 

550 名無しの雄英生

後で録画しといた2年3年ステージ見よっーと

 

551 名無しの雄英生

今年の1年強い子ばっかだったけど、なんと言っても杉元佐一が強すぎた

 

552 名無しの雄英生

杉元ちゃんはマジ反則だわアレ

 

553 名無しの雄英生

同じ年に生まれた雄英生可哀想

 

554 名無しの雄英生

でも他の奴らも強いヤツいっぱいいたし

 

555 名無しの雄英生

杉元強すぎんだよな…

 

556 名無しの雄英生

轟、爆豪、尾形当たりはめちゃくちゃ強かった。杉元居なければ誰が優勝してもおかしくなかった

 

557 名無しの雄英生

緑谷もあの反動何とかすればかなり化けると思う

 

558 名無しの雄英生

有言実行の杉元であったな

 

559 名無しの雄英生

>>558

2位の尾形もな

 

560 名無しの雄英生

てか、やっぱ今回は見てて面白かったのは杉元・尾形ペアだったな

 

561 名無しの雄英生

どっちもクソ強かったしね〜

 

562 名無しの雄英生

宣言通りワンツーフィニッシュだったしな

 

563 名無しの雄英生

カップルが無双した体育祭だった…

 

564 名無しの雄英生

やはりどう考えても恋人同士なんだよなあ

 

565 名無しの雄英生

あの距離はどう見てもカレカノ

 

566 名無しの雄英生

借り物競争見れば1目同然ですわ

 

567 名無しの雄英生

てか最後のオールマイトとの抱擁見ると、尾形百之助束縛凄そうw

 

568 名無しの雄英生

あの目はやばいwww

 

569 名無しの雄英生

独占欲の塊って感じだったもんなwwwwww

 

570 名無しの雄英生

1年ステージは最初から最後まで尾形×杉元劇場でしたわ

 




以上、尾杉♀がイチャイチャしてるのを全国ネットで見せつけて体育祭編は終了です。


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ヒーロー名考案編

2人のヒーロー名決まりました!
提案して下さった方々に感謝です!


体育祭後の休校2日が過ぎ、俺と杉元はいつもの様に登校する。

 

2日の休校の間は、俺達は家族に体育祭1位2位を祝われささやかな祝宴を上げてもらったりしていた。テレビで体育祭を観ていたのであろう腹違いの弟である勇作が、俺たちを祝うとかなんとか言って襲来もしたが、まあ比較的穏やかな2日間であった。

加えて、体育祭は流石にハードな1日だったからな。休日の2日はトレーニングやら組手やらは無しにして、かなり久しぶりに身体を動かさない日を過ごした。

 

そして本日登校日、休暇明けだからか知らんが、杉元が今朝はワタワタして出るのが遅れた為今日はいつもより家を出るのが遅い。まあ、ギリギリ遅刻はしない時間だ。

外はあいにくの雨だが、電車を乗り継いでいる間だけは雨に濡れる心配はない。

 

混んでる電車内だ。皆雨に濡れた傘を持っている。それに当たらないように避けるのもこの混雑状況だと辛いものだ。

俺が隣の知らないサラリーマンの雨に濡れた黒い傘に当たらないよう気をつけていたら、反対側のサラリーマンから突如声を掛けられた。

 

「杉元佐一さんと尾形百之助君だよね?君たち。体育祭見たよ〜!いやあ、2人とも本当に凄かったねえ。それにとっても凄い「個性」だ。流石は雄英だねえ。」

体育祭を観たのであろう。1人が声をかけてくると、次々と周りの奴等までも話しかけてきた。

 

「君の「個性」凄いね〜まるでオールマイトの様な超パワーだったよ〜はははそれは言い過ぎか?でもそんな凄い「個性」持ってるなんて羨ましいよ〜体育祭優勝おめでとう!」

「君も2位で惜しかったね〜例年の体育祭なら君が優勝してもおかしくなかったと思うよ!」

「いつも2人で学校に行ってるの?仲良いね〜!やっぱり恋人同士なの?」

などなど無遠慮な質問までされる始末だ。

 

無視しても良かったが、杉元はニコニコしながら「うす、ありがとうございます!ほら、尾形も」と俺に返事を促してきたので、仕方なく「どうも…」とだけ返しておいた。

因みに「恋人同士なの?」と言う質問には流石の杉元でもシカトしていた。肯定してくれて構わんぞ?

 

電車を降り、傘をさしながら学校に向かい歩いていると杉元が「おい、尾形。お前もうちょっと愛想良くしろよな。ヒーローになるんだろ?」と俺に苦言を呈してきた。

 

「ヒーローにはなるが、俺は無駄に誰彼構わずヘコヘコする気は更々無いからな。まあ、最低限度のファンサービスは必要とあらばしてやるさ。」

そうだ、俺はお前と違って誰にでもニコニコしたいとも思わんし、する気もない。

必要に駆られればまあ、出来なくはないのでその時は猫をかぶるさ。

 

「お前な〜」と尚も言い募ろうとする杉元だったが、校門前まで行くと緑谷に声を掛けられた。

「おはよう〜杉元さん、尾形君」

「お、おはよう緑谷。」

「…ああ。」

 

挨拶を交わしていると、更に後ろから大きな声を掛けられた。

 

「何呑気に歩いてるんだ!遅刻だぞ!おはよう緑谷君!尾形君!杉元さん!」

 

飯田が雨合羽に長靴を着用してバシャバシャと走って来た。

緑谷が「遅刻ってまだ予鈴5分前だよ。」と言ったが飯田は「雄英生たるもの10分前行動が基本だろう。」と取り合わなかった。

 

心意気は立派だが、担任の相澤が聞いたら合理的でないと切り捨てられそうだな。

緑谷は飯田につられて下駄箱前まで走っていったが、遅刻でもないので俺はそんなことをする気は無い。

杉元も「飯田ってほんと真面目だよな〜。」と笑いつつも走りはしなかった。

 

教室に入ると、俺たち以外の生徒はもう全員居るようだ。ワイワイと談笑している。

どうやら俺達と同じで、通学の時間に声を掛けられた奴ばかりのようだ。

 

皆たった1日体育祭に参加しただけで注目の的になった事に興奮を隠せないようだ。

それでも鐘が鳴り、教室に担任の相澤がやって来るとピタリと静かになった。

 

やって来た相澤に、蛙吹が両の手の包帯が取れたことに気付き、良かったと言っていた。

それに対し、相澤はリカバリーガールの処置が大袈裟なのだと愚痴っていた。

 

「んなもんより今日の「ヒーロー情報学」ちょっと特別だぞ」

と、相澤が伝えると「特別」という言葉に反応して生徒達に緊張が走った。

 

だが、相澤が「「コードネーム」。ヒーロー名の考案だ。」と更に続けると、「胸ふくらむヤツきたああああ!!」と教室が沸いた。

まあ、相澤が睨みつけ、「個性」を発動する仕草をしたら、すぐに静かになったが。

 

ヒーロー名考案は、どうやら体育祭の後のホームルームで言っていた「プロからのドラフト指名」が関係しているようだ。

相澤がその指名の集計結果を発表した。

 

「例年はもっとバラけるんだが、4人に注目が偏った。」

と相澤が言った通りに、杉元、轟、俺、爆豪の順で指名件数1000件以上とかなり来ていて、それ以外のA組の生徒にはちらほら票が入ってるまたは1票も入ってない、と言う偏り具合だった。

1番多い杉元は3000件を超えている。俺の方は2000件を超えていた。

一番前の席にいる杉元はこちらを振り返り、「やったな」と口パクし、ニヤリと笑った。

 

この集計結果を見て、上鳴は「だーーーー白黒ついた!」と嘆き、青山は「見る目ないよねプロ」とキレていた。

 

「流石杉元、指名もぶっちぎってんな…」

「てか轟4位なのに指名2番目に多いのかよ」

「尾形と爆豪負けてんじゃん」

「まあー轟も体育祭、凄かったもんな」

 

そう、俺は僅差で轟に負けていた。

轟は「ほとんど親の話題ありきだろ…。」と言っていたが、最終種目のトーナメントでの轟のあの派手な大規模攻撃は目を引いただろう。もし、俺が轟と当たっていたら負けていた可能性は十分あった。轟が2番目に指名が多いのも頷ける。

 

「これを踏まえ…指名の有無関係なく、いわゆる職場体験に行ってもらう。」

相澤が言った。なるほど、職場体験で使用する為にヒーロー名が必要なのか。

……………だが俺はヒーロー名なぞ何も考えてねえぞ…。まあ、適当で良いか。

 

「仮ではあるが適当なもんは…」

「付けたら地獄を見ちゃうよ!!」

相澤が続けようとしたら、大きな高い声が遮った。声の主はミッドナイトだ。カツカツとヒールを鳴らしながら教室へと入ってきた。

 

「この時の名が世に認知されそのままプロ名になってる人多いからね!!」

そうミッドナイトは続けた。

どうやらヒーロー名をミッドナイトにジャッジしてもらう事になるらしい。

相澤があらかじめ用意していたパネルを生徒全員に配る。それにヒーロー名を書いて発表するのだろう。

 

相澤は将来自分がどうなりたいのか、名は体を表すと言ってしっかり考えろ、と言ってきた。

が、俺はヒーロー名なぞ興味もなかったので全く思い浮かばんな…。

周りはもう書き始めている奴も居る。仕方ない…適当に考えるとするか…。

 

15分ほど経つと、全員書き終わったのだろう。ミッドナイトがやはり前に出て発表しろと指示を出した。

発表形式だと思わなかった奴らも居るのだろう。ソワソワし出す奴らがちらほら見えた。

 

トップバッターは青山か…。コイツの事だからキラキラした名前にするのだろうなと思っていたら、まさかの英語の短文だった。予想の斜め上を行った。

ミッドナイトが真面目にアドバイスを送っているが、良いのかあんなんで。

 

次は芦戸だ。リドリーヒーローエイリアンクイーンか。何処かの洋画を彷彿とさせるな。周りもそうツッコミを入れている。

この流れのせいで、どこか大喜利のような空気となったな。

 

「俺も出来たぞ!!」杉元もそう言って教壇の前まで来た。

 

「俺のヒーローネームはやっぱりコレだ!!「不死身の杉元」!!!!!」

ズギャアアアアン

 

俺の想像通り、あの馬鹿は前世からの通り名を出していた。

 

「めっちゃ苗字!!」

「杉元ちゃんそれはないわ〜」

「でも杉元さんてちょいちょいその「不死身の杉元」って言ってるよな。」

「けどヒーロー名でそれはねえよ。」

 

案の定、クラスメイトからボロカスに言われていた。

そしてミッドナイトにも却下されていた。

 

「えー!?俺、ずっとこれで来たし、これからもこれで行けると思ってたんだけど…。」と杉元は肩を落としてすごすごと席に戻っていった。

 

俺もさっさと発表するか…。

手を挙げて教壇の前に出る。

 

「百発百中百之助」

ズギャアアアアン

 

大昔、前世のまだ杉元達と金塊探しを共にしていた頃、アシリパだか白石だかに、俺の銃の腕前を見て言われたモノを思い出したのだ。

俺は密かに気に入っていたのだが…。

 

「お前もか尾形」

「まさかここに来て尾形のボケが見られるとは…」

「尾形君もボケたりするんだね…意外な一面だだ…」

「面白いけどヒーロー名じゃねえな」

 

ボケたと思われて終わった。

ついでに俺もミッドナイトに却下を食らった。

 

杉元も「尾形それアシリパさん達が言ってた奴じゃねえか…。けど、そりゃねーだろ。」と言ってきた。お前も覚えていたんだなこれ。

だが「不死身の杉元」なんて出した奴に言われたくはねえぞ。

 

「じゃあなんか良い感じのヒーロー名、お前が考えてくれよ。」

俺はもう考えるのが面倒になり、杉元にヒーロー名を考えるのを丸投げした。

まあ、コイツの事だから録な名前出ないだろうが…。

 

俺がそう思っていたら、杉元は悩みながらも真面目に考えたようだ。

「えっ!?尾形のヒーローネーム!?

……………………う、うーん「ショットガン」……ありきたりかな………「孤高の山猫」…………これも没食らいそうだな…うーん」

と長々悩んでいる。

 

「あ、じゃあよ、「リンクス」でどうだ?

お前は「山猫」の個性持ちだし、音の響きが綺麗で良いと思ったんだが…尾形、どうだ?」

 

杉元が考えたにしちゃ、かなりまともなヒーロー名だ。音の響きも良いな。俺はそう判断してミッドナイトにヒーロー名はこれでいいか聞いた。

 

ミッドナイトは「貴方が杉元さんの考えたもので良いと思うなら、私もそのヒーロー名でいいと思うわ。とてもキレイな響きね。」と答えた。

 

「お、尾形良いのかよ俺が考えた奴なんかで…?」と杉元は言ってきたが、ミッドナイトのお墨付きも貰ったことだし、俺も中々にこのヒーロー名は気に入ったのだ。なので俺のヒーロー名は「リンクス」に決まった。

 

ヒーロー名も決まったことなので席に戻ろうとしたら、杉元が

「な、なあ、俺がお前のヒーローネーム考えたんだから、次はお前が俺のヒーローネーム考えてくれよ!いっちょカッコいいのを頼む!!」

と、ねだってきた。

 

コイツも考えるのを放棄したな…とは思ったが、まあ、俺のヒーロー名を考えたのはコイツだしな。俺が杉元のヒーロー名を考えてやっても、まあ良いか…。

 

しかしコイツと言えばやはり「不死身の杉元」しか思い浮かばんな俺も…。

 

不死身か…「ミス・ノスフェラトゥ」とかどうだろうかと一瞬思い浮かんだが、吸血鬼要素はコイツにはねえしな…。

………コイツが好きなアイヌ語で狼の神の「ホロケウカムイ」とか………いや、狼要素も無いしダメだ…。

「アマゾネス」………何かしっくりこない…。

 

やはり「不死身」要素が欲しいな…もうまんま英語の「イモータル」で良いか…だが何か飾りが欲しい所だ…。

 

「…………「レディ・イモータル」でどうだ?

お前を表す「不死身」のまんまで悪いが…。」

俺がそう杉元に囁く。

 

「「レディ・イモータル」か………ま、レディって柄じゃねえけど、「不死身」って入ってるのが良いし、うん、それにするか!」

杉元はそう言って即座に俺が考えた「レディ・イモータル」にヒーロー名を決めたようだ。

おいおい、俺が言うのもなんだが、そんな簡単に決めちまっていいのか?

 

「良いんだよ、俺もこの名前が気に入ったし、ミッドナイト先生もこの名前で良いだろ?」

と、杉元はミッドナイトに話を振った。

 

「ええ、杉元さんが良いと言うなら、私もそのヒーロー名でいいと思うわ。

……………それにしても、あなた達、大事なヒーロー名をお互いで決めちゃうのね…。ねえ、この2人っていつもこうなの?」

とミッドナイトは杉元のヒーロー名にOKを出しながら、呆れながら相澤に聞いた。

 

「ええ、コイツらはいつもこんな感じなんで、おかしな事しなきゃほっといてやって下さい。」

相澤は俺たちのことを至極面倒くさそうに放置しておけと言った。

 

教室からも

「アイツらお互いのヒーロー名お互いが出した案に決めちゃうのかよ…相変わらずお熱い事で…」

「お互いのヒーローネームまで決めちゃうなんて凄いわ〜流石雄英一のカップルだわ〜」

「相変わらずどこでもイチャイチャしてんなコイツら…」

「うぜぇ…何でも良いから早く次いけボケ」

「尾形死ね」

 

などなどの声を拾った。いつも通り、俺への呪詛を吐く奴も居たが、それはいつも通り無視だ。

 

俺たち2人がまともなヒーロー名を出したからかどうかは知らんが、続く蛙吹もまともなヒーロー名を出していた。因みに蛙吹が出したヒーロー名は「フロッピー」だ。

 

どんどん生徒がまともなヒーロー名を発表しOKを貰っていく中、爆豪は1人、「爆殺王」やら「爆殺卿」やら敵名の様なヒーロー名を発表し却下されまくっていた。阿呆だなアイツ。

 

また、飯田や轟なんかは自分の下の名前だけというシンプルなヒーロー名を発表していた。それらが通るなら俺や杉元が最初に出した自分の本名入りの案でも良かっただろうに。なんだ?形容詞がダメだったのか?謎だ。

 

緑谷は「デク」と言う蔑称と思えるヒーロー名を出していた。

緑谷は「ある人に意味を変えられた」と言っていたので何か思い入れのある名前なのだろう。まあ、俺には関係ないことなので、誰がどんなヒーロー名になろうがどうでもいい事だ。

 

こうして、俺と杉元のヒーロー名は「リンクス」、「レディ・イモータル」に決まった。

 

まあ、杉元の事だから、また何かあればヒーロー名ではなく「不死身の杉元」と言ってしまいそうだがな。



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ヒーロー名考案編2

クラス全員のヒーロー名が一通り決まった後(爆豪は結局決まらなかったが)、いつの間にか寝袋で寝ていた相澤が起き出してまた教壇へと立った。

 

「職場体験は1週間。肝心の職場だが、指名のあった者は個別リストを渡すからその中から選択しろ」

相澤が言った。続けて、指名のなかった奴は雄英があらかじめオファーしていた受け入れ可の事務所40件の中から選べと言っていた。

活動地域や得意ジャンルは異なるからよく考えろ、との事だ。

 

最後に今週末、つまり後2日の内に考えて希望の職場体験先を書いた紙を提出しろと言って、本日のヒーロー情報学が終了した。

とりあえず今日帰ったら俺を指名してきたヒーロー達を調べてから実習先を決めるとしよう。

 

俺も紙を貰ってパラパラと流し見する。

よく知らないヒーロー名ばかりだが、大手のとこだとナンバー4ヒーローのベストジーニストやナンバー10のギャングオルカから指名が来ているな…。

他に目ぼしい事務所が無ければこのどちらかにするか…。

 

休み時間になり、杉元が俺の所に来た。

 

「なあなあ、尾形!お前どんな所から来てた!?てかいっぱいあり過ぎてどこ選べばいいか分からねえ〜!!」

自慢とも取れる嘆きを叫びながら杉元が事務所名がズラッと並んだ紙束を見せてきた。

 

「無難にヒーローランキング上位のデカい事務所の所でも選べば良いだろ?」

「ええーそんな簡単な理由で決めていいのぉ〜?デカい事務所ぉ?…………うーん………あ、No.2ヒーローのエンデヴァーの所から来てる!!」

俺がそう言うと杉元はパラパラと紙束をめくり、最初のページに載っていたエンデヴァーヒーロー事務所を指さして言った。

 

杉元のでかい声を聞いたのか、轟が席を立ち、こちらに向かって杉元に聞いて来た。

「杉元、お前も親父ん所からオファー来たのか?」

「おお、そうだけど…。お前も、って事は轟も親父さんからオファー来たのか?」

「ああ、アイツのとこに行くかは迷ってるけどな…。」

どうやら轟は自分の父親がやっている事務所に行くかどうかはまだ決めかねているようだ。

 

「そっか………まあ、オレもまだ何処にするのかは決めてねえけど、もし一緒の実習先になったらその時はよろしくな!!」

「ああ、そうだな…。」

杉元のそんな言葉に、轟も同意していたが、轟はこちらをチラリと見た。なんだ?

 

「でもお前ら、実習先も一緒にするんじゃねえのか?」

と、轟が問うてきた。なんだそれは。

 

「なんだそりゃ。流石に実習先までコイツと一緒とかねえよ。」

と俺が答えると、杉元も

「実習先までコイツと一緒〜!?ナイナイ!!轟も冗談言うんだな。でも面白くねえぞ。」

と答えていた。

 

周りで俺たちの話を聞いていたのであろう奴らは「冗談言ったわけじゃねえんだが…そうなのか…意外だな。」との轟の言葉に同意したかのようにウンウンと頷いていた。

体育祭の時も思ったが、プレゼント・マイクと良い、コイツらはどんだけ俺と杉元をペアだと思ってやがるんだ…。

 

1日の授業を終え、放課後になった。

今日は谷垣と共にインカラマッと会う予定だ。体育祭の準備などでもゴタゴタしていたら、インカラマッとの今生での初対面はこんなに遅くになってしまった。まあ、別にあの女にすぐに会いたいとも思ってなかったしな。恐らく向こうもそんな感じだろう。

 

荷物をまとめ、杉元と教室を出ようとしているとオールマイトがやって来てまた緑谷に声を掛けていた。お前らの間で何か秘密があるんだろう?そんなに頻繁に会っていたら、お前らに何らかの関係がある事に気づくヤツらは大勢出てくるぞ、良いのか?

 

俺はそんな事を思いながら教室から出ていく緑谷を見ていたら、教室から出ていった相澤が戻ってきて俺と杉元を呼び出した。

 

「杉元、尾形、1個忘れてた。ちょっとこっち来い。

お前ら2人にオファーしてきた「スモーカーヒーロー事務所」って所から伝言があったんだ。なんだお前らヒーロー・スモーカーと知り合いなのか?」

スモーカーヒーロー事務所?伝言?一体なんだ?

スモーカーなんてヒーローなぞ俺は知らんぞ。

杉元も知らない様だ。

俺と杉元はお互いを見て首を傾げた。

 

「まあ、良い。それで伝言だが「いれずみにんぴの事は覚えているか?覚えているのなら俺の所に来い。」だとさ。俺には意味はわからんが確かに伝えたからな。じゃ。」

 

!!!!刺青人皮だと…?

俺と杉元は目を丸くし顔を見合わせた。

これは確実に俺たちの前世と関わりがある奴だ。ヒーローなんかになってる奴が牛山以外にも居たんだな…だが一体誰だ…?

 

「杉元…」

「ああ、スモーカーヒーロー事務所って言ってたよな?一体誰だ??」

俺たちはヒーローからのオファーの紙束を鞄から引っ張り出し、パラパラと捲った。

 

スモーカーヒーロー事務所………有った。

住所は都内か…近いな。だが、紙束には簡潔にヒーロー事務所名と住所しか載っていない。

そして俺と杉元はヒーローに疎いこともあり、「スモーカー」と言うヒーローの名は聞いたことがなかった。一体誰だ?しかし心当たりは無い。

ヒーローオタクである緑谷に聞ければ良かったが、生憎とオールマイトの呼び出しで居ない。………仕方ない。緑谷には明日聞く事にしよう。

 

「尾形、とりあえず「スモーカー」って奴は後で調べるとして、谷垣んとこに行くぞ。もう約束の時間だ。」

杉元がそう言ってきた。確かにもう約束してる時間だな。「スモーカー」は気になるが、今は調べられんな。仕方ない。

 

杉元は教室に残っていた奴らに別れの挨拶をして、俺と教室を出て普通科の谷垣の所へ行く。

 

「おおーい!谷垣ー!来たぞー!」

杉元が普通科の教室の入口で大声で谷垣を呼んだ。教室に残ってる生徒がこちらを一斉に見た。おい、杉元でかい声で谷垣呼んでんじゃねえよ。めちゃくちゃ目立ってるだろうが。

荷物はもう既に纏めていたのであろう谷垣がデカい図体を気持ち小さくしながらこちらにやって来た。教室の奴らは谷垣に視線を集中させた。ほら見ろ。谷垣も恥ずかしがってるだろうが、やめてやれ杉元。

 

「杉元…来るのはいいが、もう少し小さい声で呼んでくれ………。」

やはり谷垣も恥ずかしかったのだろう。杉元にそう注意した。

 

俺と杉元は谷垣と共に3年のインカラマッが居る教室へと向かった。

3年が居る場所に、1年が居るのは珍しいのだろう。廊下を歩いていると下校している3年生からジロジロと見られた。

 

インカラマッの居る教室前まで行くと、谷垣は近くに居た3年生にインカラマッを呼んでくれるように頼んでいた。

 

暫くしてインカラマッらしき女生徒がやって来た。

やはりコイツも前世の時より幾分若いな。

…当たり前か。俺達はまだ10代の半ばだ。………言葉にするとかなりわけえな今の俺達は…。

 

「尾形ニシパ(旦那)に杉元ニシパ…いえ、もう杉元さんはニシパでは無いですね。とても美人になりましたね杉元さん。お二人共お久しぶりです。」

「インカラマッ久しぶりだな〜!いや、この場合初めましてか?ははっ。美人とかお世辞は要らねえよ。それにアンタの方が相変わらずずっと美人だ。」

「ふふふ、ありがとうございます。お上手ですね杉元さん。」

 

杉元とインカラマッがキャッキャッと楽しそうに再会を喜んでいた。

見た目だけなら美少女同士で目の保養になりそうだ。片方の中身は不死身のバーサーカーな成人男性だが。

 

「この教室では周りが気になりますよね。何処か空いてる教室にでも行きましょう。」

そうインカラマッが提案したので、俺たちは3年の教室を出て、人が居ない空き教室を適当に見つけて入った。

 

「本当にお久しぶりですね…でも実はお二人が雄英に来るのは私の「個性:占い」で分かってたのですよ?」

インカラマッは空き教室に入ると、相変わらずの妖しげな笑みでそう言った。

 

「ああ、インカラマッの「個性」は占いなんだってな。谷垣から聞いたよ。前世で得意だったのがまんま「個性」になるなんて面白いな。でも俺達が雄英に入ってくるなんてよく分かったな?」

「はい、私の「個性」は占いなんですが、実は「未来予知」みたいな事も可能なんです。凄いでしょう?まあ、「未来予知」みたいにハッキリ未来が見れる事は極稀にしか無い上内容はランダムですし自分でコントロール出来ないものなので、基本占いをしなきゃ色々な事を知れないのです。ですが、占いの力は前世よりもかなり強くて、今では殆ど外れる事は有りません。現代の「個性」って本当に凄いですよね。

ああ、話が逸れました。それでですね、実はお二人が入学する数ヶ月前にお二人が入学するビジョンを「未来予知」でハッキリ見たのです。

その時杉元さんが女の人になってるのを知ってとても驚きましたが。」

 

未来予知だと…なんだその「個性」とんでもねえな…。しかも占いも殆ど外さないなんてインカラマッの「個性」はかなり便利な力だ。

杉元も「未来予知ってすげえなインカラマッ!!」と興奮している。

 

谷垣は眉に皺を寄せながら

「しかしインカラマッ、2人が入学するなんて知っていたのなら、何故俺には教えてくれなかったんだ?」

と言うと、インカラマッはあっけらかんに

「牛山先生の事もそうでしたが、お二人の事教えない方が谷垣ニシパ驚くかと思って。ビックリさせたかったんですよ。」

とニコリと笑いながら答えていた。

この女は相変わらず食えない様だ。

谷垣も「インカラマッ、お前なあ…」とため息をついていた。

 

「なあ、インカラマッ。あんたの「個性」ならアシリパさんや白石の居場所とか分かるんじゃねえのか!?2人のこと何か分かるのなら頼む、教えてくれ…。」

 

インカラマッのチートな力を知って、杉元はインカラマッにアシリパと白石の居場所を教えてくれと懇願し出した。

確かに、インカラマッの「個性」なら2人が今どうしているか、居場所なども分かるかもしれんな。

 

前世では占いなんぞは信じていなかったが、現代のそう言う「個性」として在るのなら話は別だ。

転成した現代は、「個性」と言う何でもアリな能力持ちがあちこちに溢れ返っている。

「未来予知」や「占い」なんて前世では眉唾だったモノも、現代では「個性」としてこの様に現実に在るのだ。

 

「ええ、杉元さんからの頼みです。良いですよ。お二人の事占ってみましょう。」

「ほんとかインカラマッ!!ありがとう、頼む!!」

 

インカラマッは杉元の頼みを快諾すると、鞄から前世で占いの道具として使っていた動物の頭蓋骨…それを取り出して占いの準備をしだした。

 

「インカラマッ、今もその骨で占うんだな。」

杉元がそう疑問を呟くとインカラマッが拾った。

「ええ、前世の時使っていたモノでは勿論有りませんが、シラッキカムイ…占いに使う狐の頭蓋は現在も用いてます。特に霊力の高い白ギツネのモノです。コレも前世で杉元さん達には説明しましたね。」

俺にとっちゃ初耳だ。まあどうでもいい情報だがな。

 

「そう言えばインカラマッって名前今もそうなんだよな?てことはインカラマッってやっぱりアイヌ出身なのか?あれ?でも確か谷垣と同じ秋田出身じゃなかったか?」

「はい、今生の名前もインカラマッです。まあ一応和名も有るのですけどね…。やはり元の名前の方がしっくりきますのでインカラマッで通させていただいてます。

そう言えば皆さんも前世と同じ名前ですよね。転成したのに前世と同じ名前なんて本当に面白いですよね。

あと私はアイヌ出身ですが、小学生位の時に秋田に家族で引っ越したんですよ。だから育ちは秋田ですかね。

まあ、前世の記憶も有るのでそれ含めれば北海道のでの生活の方がまだ長いんですけどね。」

杉元の更なる疑問に、インカラマッは丁寧に答えていた。

 

準備が出来たインカラマッが占い出した。

俺には動物の下顎の骨を頭に乗せて落としてるだけにしか見えないが、インカラマッに取っては重要なプロセスなのだろう。

 

「占った結果ですが、お二人共、白石さんにはどうやらすぐにでも会えるようですよ。」

「え!?本当か!?すぐにでもってどの位すぐなんだ!?」

「すぐにでもはすぐにでも、です。早くて今日遅くても明日位には会えるはずです。」

「うおおおおぉ!?そんなに早く会えるのかよ!!やったな尾形!!」

 

インカラマッの言葉に杉元が嬉しそうに飛び跳ねる。良かったな杉元。まあ、俺は別に白石に会いたいとも思ってないが。白石だからな。

だが、肝心のアシリパの方はまだ聞いてない。

 

「インカラマッ!アシリパさんは!?アシリパさんの方はどうなんだ!?」

「……………残念ながら、杉元さん、あなたと尾形さんがアシリパちゃんと会えるのは当分先の事になりそうです。」

「と、当分!?当分ってどの位だ…!?1年とか2年とか…?まさか10年くらい先って事ねえよな!?な!?」

 

インカラマッの芳しくない返答に、杉元が縋るように聞き返した。

 

「そうですね…数ヶ月は会えそうもないですね。でも1年以内には絶対に会えますので安心してください。」

「1年以内には会えるんだな…!?良かった………!!やったな、尾形!!アシリパさんに会えるんだぜ!?インカラマッ!信じてるからな!!」

 

思っていたより早く会えそうな事が分かり、杉元が子供のように喜んだ。

 

「アシリパの居場所は分からねえのか?」

俺がそう聞けば、インカラマッは恐らく都内に居ると言ってきた。都内かよ近いな。アシリパの事だからてっきり北海道でまたアイヌとして生まれてるもんだと思ってたぜ。

 

けど都内なら探せばもっと早く会えるんじゃねえか?杉元もそう思ったようでインカラマッにそう聞いていた。

 

「いいえ、杉元さん達がアシリパちゃんをどんなに一生懸命探しても恐らく見つかりません。そう占いに出ました。アシリパちゃんに会うにはその運命の日まで待つしかありません。」

そう断言したインカラマッに杉元は少しだけ肩を落とした。

 

「だが、1年以内にはアシリパに会えるんだ。良かったじゃねえか杉元。

もっと時間が掛かるかもしれなかったし、そもそもアシリパが居るかどうかも分からなかったんだからな。」

俺が杉元にそう言えば杉元も

「………ああ、そうだな。アシリパさんに1年以内には会えるんだ…。それまでの辛抱だな。」

と言って早くアシリパさんに会いたいぜ〜と叫んだ。本当にアシリパの事が好きだなお前は。

 

「占ってくれてありがとうなインカラマッ。本当に恩に着るぜ。」

「私の占いがお役に立てて何よりです。他に何か知りたいことが有れば遠慮なく聞いて下さい。お二人なら特別に、無料で占って差し上げますよ。」

そう微笑んだインカラマッに遠慮なく俺は、俺達2人を指名してきたプロヒーロー「スモーカー」が、どうやら前世と関わりがある人物だと言うことを説明して、コイツが一体誰なのか占う事は出来るか聞いてみた。

 

「「刺青人皮を覚えているか」…確実に前世のあの時関わった人ですね…分かりました。占ってみますね。」

インカラマッがまた占いを始めた。これで「スモーカー」と言うヒーローが一体誰でどんな目的で俺たちを呼ぶのかが分かるかもしれんな。

 

「…………なるほど、スモーカーと言うヒーローが誰なのか分かりました。」

「おお!一体誰なんだ!?」

杉元が興奮気味に聞いた。

 

「分かりましたが、これは秘密にしておきましょう。」

「へ?」

「今から誰なのか分かったら杉元さん達は面白くないじゃないですか。だから秘密です。

大丈夫、あなた達に危険は有りません。そこは安心しておいて下さい。」

おい、なんだそれは。

 

「えー!?なんだよそれ!!」

杉元も流石にこれには文句があるようだ。

 

「ふふふ、ドキドキして会いに行ってみてください。」

「おい、まだこっちは実習先そこにするとは言ってねえ。勝手に決めるんじゃねえよ。」

「いいえ尾形さん、お二人の実習先はそこが一番いいと私の占いでも出ました。なのでお二人はそこに行った方が絶対に良いのです。」

ッチ、だが、例え占いの結果だとしても勝手に決められるのは業腹だ。

 

「それと、杉元さん、尾形さん、実習期間の〇月×日は保須市をパトロールしてみて下さい。これはスモーカーにも伝えてください。」

 

俺が実習先をインカラマッの言う通りにするかどうか悩んでいると、インカラマッが突然そんな事を言い出した。

 

「保須市?何でだ?」

「保須市って言ったら確か飯田の兄が敵にやられた所だったはず…それと何か関係あんのか?」

突然何故保須に?それも占いの結果か?

 

「いえ、それとは直接関係有るのかは分かりません。ですが、その日保須市に未曾有の災害…多数の敵に攻められるビジョンを「未来予知」で見たのです。」

「!?それやべぇじゃねえか!!この事は警察や先生に伝えてあるのかよ!?」

「ええ、私も担任に伝えました。私の「個性」も知っているので信じてくれましたし、校長先生経由で警察の方や多数のヒーロー事務所の方にも警告をして下さった様なのですが、一生徒の言葉をどの位信じてもらえてるのかは分かりません…。

なので少しでもヒーローは多い方が良いと思いますので、是非そのスモーカーにも手伝って貰いたいのです。杉元さん尾形さんもこの時保須市には行った方が良いと占いでも出ています。」

 

なるほど、保須市に救援しに行くのなら、インカラマッを知っているであろう「スモーカー」の所に行った方が都合が良いってのも分かる。

相手が前世での知り合いならば、その方が俺達も動きやすいだろう。

………………一体誰なのか知らんがな。

まあ、仕方ない。危険もないと言ってるし、スモーカーとやらに会っても大丈夫だろう。

第七師団の連中だったら色々面倒くさいのでそうじゃない事を願おう。

 

「ッチ、仕方ねえ。実習先はそいつの所にするか…。」

「そうだな、インカラマッもこう言ってるし、保須市に俺達も居た方が良いんだろ?」

「ええ、それがあなた方に取って一番良いはずですよ。あ、そうそう尾形さん、スモーカーに会ったら私がこう言っていたと伝えてもらえますか?」

「?なんだ?」

インカラマッから何やら伝言を頼まれる。

インカラマッはニコニコしながら言った。

 

「「前世で刺された恨みやその他諸々の恨みと因縁は今世には持ち越ししてないので安心して下さい。」と、お願いします。」

 

……………それ、もう誰がスモーカーなのか言っているようなもんだろ。

杉元や谷垣も誰なのか分かった様で頬を引き攣らしていた。



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ヒーロー名考案編3(オマケ)

みんな大好きなアイツが登場です


オマケ

 

「ピュウッ☆

杉元!!尾形ちゃん!!俺だよ!!みんなのアイドル!白石由竹だよ〜〜!!へっへーんどうだ!?俺の突然の登場にお前ら驚いただろお!?あ、お前らちゃんと俺のこと覚えてるよなあ??」

 

「「なんだただの白石か。」」

 

「えー!!!!???何その反応!?そこはもっと驚く所じゃない!?ちゃんと俺のこと覚えてるようで良かったけど、俺達前世振りだよねえ!?」

 

「いやーそうだけどよう、こっちはさっきインカラマッにお前と今日明日には会えるって予告されてたからなあ…校門前になんか見慣れたボウズ頭がいるなあと思ったらお前かよ、みたいな。」

 

「えーーーー!?反応うっす過ぎだろ〜〜〜!酷ーい!!!!もっとビックリして欲しかった〜〜〜!!!!てかインカラマッちゃんも居るのかよ〜〜〜!?」

 

「谷垣と牛山と、あと会ったことないけど家永も居るぞ。」

 

「そんなにいんの!?こっちがビックリ何だけど!?!?」

 

「うるせえぞ脱糞王。ここじゃ邪魔だ。話すんならどっか場所移すぞ。」

 

「脱糞王じゃなくて脱獄王!!!!!!

いや、今生じゃまだ脱獄とかしてないけどね!?尾形ちゃん相変わらず酷い!!」

 

「白石も相変わらずだな。とりあえず近くのサ〇ゼにでも行こうぜ。」

 

「あーん、もっと驚いて欲しかった〜〜〜!」

 

「うるせえ」

 

「うるさいぞ白石」

 

「クーン………」

 

 

 

 

 

 

「そんで、白石はどうして俺達の事知ったんだ??やっぱり体育祭か?」

 

「そうそう!!当たり!!雄英体育祭俺好きで毎年観てるんだけどよ〜今年の1年の部が話題だって聞いてたからいつも3年の方見てたんだけど、まあたまには良いかと思って1年の方観てたらなんか見覚えがある奴らが居るな〜なんだろうな〜この既視感って思いながら観てたんだけどよお、お前らのアップが写ったのを観たら、前世の記憶がバーって蘇ってよお。全くあの時は体育祭観るどころじゃ無かったぜ。まあ、観たけど。」

 

「へえー、じゃあ白石は記憶をつい三日前に思い出したのか〜。俺達もそうだけど、谷垣や牛山やインカラマッは随分昔に思い出してたらしいから意外だぜ。」

 

「まあ、記憶のトリガーは前世の知り合いに会って相手を認識することっぽいからな。お前の近くに誰も前世の知り合いが居なければそうなりもするか。」

 

「記憶思い出すのって皆そうなの?確かに俺のそばには誰も前世の知り合いなんて居なかったぜ。」

 

「へえーそうだったのか。やっぱり俺達お互い幼馴染とかすげえ奇跡だったんだな。」

 

「は………?幼馴染?誰と誰が??え………杉元と尾形が?はああああああああ!?お前ら今生じゃあ幼馴染なのかよ!?あの超仲悪かった杉元と尾形、お前らが!?!?

はー………神さんも何考えてお前らを幼馴染なんかにしたんだろうな?」

 

「ははっ、やっぱり前世の俺達の事知ってる奴は驚くよな。」

 

「……………まあ、コイツと幼馴染するのも意外と悪かねえぜ?」

 

「うわ………尾形ちゃんのまさかのデレとか………。マジでお前ら変わったんだな…。

けど、本当に前世の記憶戻った時はおったまげたぜ…。何せあの「不死身の杉元」が女になってるし、尾形ちゃんとは仲良さそうだしで、俺の前世の記憶の方がおかしいのかと疑っちまったぜ、はは。」

 

「あー、俺が女なのはあんま気にすんな。俺も自分が女ってそんなに意識してないし。

コイツとはまあ、アレだ。今世で色々あったから、前世の事は水に流したんだよ。」

 

「へえー、あんな事あったのに水に流すとは杉元も心が広いねえ。いや、絆されたのか??

俺はてっきり今世でも許してないもんだと思ってたぜ杉元。てか前世の記憶有るなら絶対尾形ちゃんの事殺しにかかると思ったぞ。

まあ、それにしちゃ体育祭でお前ら距離近いし気安そうだったしな。

でも最後のトーナメントのお前らの戦い、めちゃくちゃ本気でやりあってたっぽいから俺はいつ杉元が尾形ちゃん殺すかすげえハラハラしながら観てたんだぜ。」

 

「阿呆か。全国放送で殺し合いなんかするかよ。」

 

「全く馬鹿だなあ白石は。」

 

「ええー、これ、俺がおかしいのぉ?」

 

「ところで白石は今何歳なんだ?その制服じゃあ高校だろ?どこのだ?」

 

「ああ、俺は今高3だぜ?お前らの2個先輩だからな。ちゃんと年上を敬えよお前ら。学校は雄英から2駅位離れたふつーの高校に通ってる。」

 

「そっかあ白石はまた年上かあ。まあ、だからって白石を敬おうとは思わねえけど。」

 

「ああ、全く思わんな。」

 

「クーン………。」

 

「やっぱり白石もヒーロー科なのか?」

 

「俺?いやいや、俺はヒーローって柄じゃねえし、「個性」も攻撃には特化してねえからよ。普通科だよ普通科。」

 

「へー、白石の「個性」ってどんな「個性」なんだ?」

 

「あん?俺の「個性」か?そんなに前世と変わんねえぞ。「個性:軟体」だ。身体の骨や頭まで軟体化出来るから前世以上に何処にでも入り込めるしどんな狭いとこからでも逃げられる。まあ、そこそこ便利な「個性」だ。エッヘン。」

 

「へー「個性:軟体」かあ…………気持ちわる………。」

 

「ああ、気持ち悪ぃな。」

 

「ひっどーい!!!!杉元も尾形ちゃんも酷くない!?謝って!!ちゃんと謝って!!」

 

「インカラマッも前世得意だった「占い」が「個性」になってたけど、白石のはそんなに凄くないな。」

 

「ああ、インカラマッと比べりゃ全然全く凄くねえな。」

 

「だからお前ら酷いって!!!!!

ちくしょー!どうせ俺はお前ら雄英生みてえな派手で凄い個性じゃありませんよーだ!!

体育祭で見たぞお前らの個性!!何あれ!?2人とも強すぎじゃない!?特に杉元なんてチートじゃんチート!!前世も強かったけどよりめちゃくちゃ強くなってんじゃん!!!!お前らだけズルい!!俺だってもっと強くてカッコイイ「個性」が欲しかった!!うわあああああ!!」

 

「あーもー、泣くなよ白石〜ほら飴ちゃんやるから…」

 

「うぜぇな白石。」

 

「うう、ありがとう杉元…尾形ちゃんは相変わらず酷いね…。てかお前ら良く雄英高校なんて超倍率高い所に受かったね?しかもヒーロー科だろ?頭も良くなきゃ入れないだろあそこ。」

 

「まあ、そうだが、数年掛けて受験対策取ったからな。逆に受からなきゃ嘘だろ。」

 

「ウンウン、かなり大変だったけどな勉強…。」

 

「数年っていつから受験対策してたの??」

 

「コイツがヒーローなんぞになりたいと言い出したのが7歳になる前だからその辺だな。」

 

「7歳!?はっや!!いや早すぎだろ!?」

 

「丁度前世の記憶取り戻したのがその時だったんだ。ヒーローになれればアシリパさんやお前を探し出せて会えると思ったんだよ。」

 

「杉元…お前、俺やアシリパちゃんに会うためにヒーローになろうと思うだなんて………ぐすっ」

 

「まあ、白石の事はアシリパさんのついでだったけど。」

 

「俺は別にお前に会いたいと思ってヒーローになろうと思った訳じゃねえからな。勘違いすんなよ。」

 

「お前ら俺の涙返せ!!!!

…あ〜じゃあ尾形ちゃんは何でヒーローなんて目指してんだ?てか尾形ちゃんヒーローとかめちゃくちゃ似合わないじゃん。杉元はともかく尾形ちゃんヒーローとか柄じゃないでしょ?寧ろ敵になってなそうなイメージだったんだけど。」

 

「あ?誰が敵だ誰が。善良な一般市民だぞ俺は。それに俺の何処がヒーローの柄じゃないってんだ?敵なんぞ全員頭撃ち抜いてやるぞ?」

 

「だからそういう所だよ!!!!その発想の何処が善良な一般市民なの!?!?尾形ちゃんの腕なら可能な所がより恐ろしいわ!!!!」

 

「冗談だ。流石にヒーローでも敵の頭は撃ち抜いちゃならんらしいぞ。この間襲撃してきた敵の頭撃ち抜こうとして担任に注意されたからな。」

 

「怖い!!!!もう既にやってんじゃん!!??アンタやっぱりヒーローじゃなくて敵じゃん!!全然冗談になってねえよ!!!!」

 

「そうだぞ尾形。敵殺すんならヒーローの見てない所でバレないように殺れよ。」

 

「お前もだよ杉元!!価値観が全然現代に染まってないじゃん!!あの頃のままじゃん!!お前らヒーロー目指してんだろ!?もっと現代ナイズしとけよ!!!!」

 

「「冗談だ。」」

 

「息ぴったりかお前らちくしょう!!お前らが言うと冗談に聞こえなくて怖えんだよ…。

ハア………で、結局尾形ちゃんはなんでヒーロー目指してんの…?やっぱり金?ヒーローって儲かるんでしょ?その点は良いよなヒーロー。億万長者とか羨ましいぜ。」

 

「それも有る。まあ、切っ掛けはコイツが何も考えずにヒーローになるとか言い出したから、仕方ねえから俺もヒーローにでもなるかって決めただけだ。」

 

「…………………………え?マジでそんな理由なの??杉元がなるから尾形ちゃんもなるの????」

 

「?そうだが。コイツ1人だけヒーローとか危なかっしいだろ。俺が見てなきゃ絶対無茶するし暴走するぞコイツ。」

 

「あー………なるほど。(でも昔のアンタだったら絶対に杉元が無茶しようが暴走しようがどうなろうとどうでも良かっただろ………?めちゃくちゃ過保護になってんじゃねえか………。しかもなんだ?無自覚かよコイツ………。)」

 

「ああ?なんだと尾形。誰がいつ無茶したり暴走したりしたよ?あ?」

 

「いやしてるだろ頻繁に…。相澤にもネチネチ言われてんだろ戦闘で無茶するなって…。

あと、コイツだけだと絶対に雄英とか無理だったからな。仕方ないから俺が勉強の面倒も見てやってんだよ。」

 

「へぇーそうなんだ………。(しかも勉強まで見てやってんのかよ…どんだけ杉元に対して面倒見よくなっちゃってんのこの人………。)」

 

「だからドヤ顔腹立つ!!べ、勉強は仕方ねえだろ!!俺だって頑張ってんだよ!!」

 

「はいはい、頑張ってる頑張ってる。そのまま頑張って今度の期末赤点とるなよ絶対。」

 

「うっ……………が、がんばる………。」

 

「……………………………(あの尾形に素直かよ杉元………。)お前ら今世はほんとに仲良くなったんだな…。俺、幻覚でも見てんのかと思ったぜ…。

………つか体育祭の時も思ったんだけどよ、まさかだけどお前ら、つ、付き合ってんじゃねーよな………?」

 

「はっ!!!!????

なななな何バカなこと言ってんだ白石!!!!この脱糞王!!!!

俺達がつつつつつ付き合ってるわけねえだろうが!!!!!!」

 

「あ、そうだよね〜良かった〜ホッとしたわ〜まあ、そりゃそうだよな〜いくら杉元が美少女になって、ちょっと、いやかなりお前ら仲良くなったからって、まさかお前達が付き合うわけないよn」

 

「ああ、まだ付き合ってはいないが、将来コイツを嫁に貰う約束はしてあるぞ。」

 

「は!!!!!?????よよよよよ嫁!!!!????」

 

「尾形ああああああ!!!!また言いやがったなてめえええええ!!!!!!」

 

「いいじゃねえか、谷垣もクラスの奴らも知ってんだし、コイツに言っても別に構やしないだろ?」

 

「だから!俺が!構うんだよ!!!!」

 

「これで分かったな白石?コイツはあの杉元だが、前世の様にベタベタ引っ付いたりすんじゃねえぞ?無いとは思うがもしコイツに手え出そうもんならてめえのその粗末なイチモツと頭吹っ飛ばすからな。」

 

「聞けよクソ尾形!!」

 

「ええー俺、牽制されてるのぉ??ていうか俺は一体何を見せられてるのぉ??もしかして痴話喧嘩に巻き込まれてるのぉ??怖いよ〜アシリパちゃん助けてえ〜〜〜〜。」




最後は谷垣の時と同じですね。ワンパターンですみません。
でも尾形は絶対白石にも牽制すると思うんだ。
多分白石、谷垣だけじゃなく前世で杉元に関わった野郎には全員牽制する(確信)。


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職場体験編

インカラマッの占い通りにするのは些か癪ではあったが、結局俺と杉元は職場体験の実習先を「スモーカーヒーロー事務所」に決めた。

 

一応帰ってから、ヒーロー「スモーカー」を調べてもみた。

コイツはどうやらつい最近独立したばかりのヒーローの様でまだまだ知名度は低いものの、犯罪者や敵を捕縛・無力化にも長けそれなりに社会に貢献している新進気鋭の若年ヒーローとして頭角を表してきている事が分かった。

 

活躍している姿の写真や動画も見つけた。

目元をアイパッチで隠しているが、端正な顔立ちをしていてかなり若い男というのが分かる。

……この見た目だ。目元は隠れてはいるが、インカラマッの伝言から読み取れた予想通り、これは「奴」だろう。

 

杉元も帰宅して検索してみたのだろう。

スマホに「なあ、スモーカーの写真見たけどやっぱりこれ、アイツだよなあどう見ても…」と来ていた。

 

間違いなく「奴」だろうし、「刺青人皮」の事を伝えて俺達を呼ぶという事は確実に前世の記憶があるだろう。

しかし「奴」は、俺はともかく、杉元には禍根と言うか因縁が有る相手だ。

(まあ、俺も相手から全く恨まれてないかと言われたら微妙な所では有るが)

 

俺は杉元に

「ああ、確実に奴だな。どうする?やっぱり会いに行くのは辞めて、別の実習先にするか?お前はコイツとは会いづらいだろう?

コイツと会ったらお前襲い掛かりそうだしな。

もしくは向こうが襲い掛かってくるか…。」

と返信する。

 

「いや、コイツの所に行く。なんで俺達呼んだのか気になる。

俺はコイツを襲う気はねえし、一応コイツも今はヒーローなんだし、今更俺達に危害を加えることも無いだろ多分。

まあ、襲ってきたら俺達で返り討ちにすりゃ良いだろ?

それにお前の前世の所業を許した時点で、今更コイツ程度に会いづらいとかもうねえよ。」

襲われたら返り討ちにすればいい、と事も無げに物騒な返事が返ってきた。

 

だが、まあその通りだな。インカラマッは危険は無いとは言ったが、万が一「奴」が襲ってきたら俺と杉元ならば、まあ何とかなるだろう。プロヒーロー相手だろうと遅れを取る気は更々ない。

しかし普段は全くお互いの意見は合わないが、こういう時は意見が合うから杉元は面白い。

 

それにもう俺すら許してるから、やつ程度では動じもしない、か。

全くお前は豪胆と言うか、度量が広いと言うか………。もしも俺が杉元の立場ならば、俺の前世の所業に対して許しもしないし記憶を思い出した時点でぶっ殺してるだろうよ。

勿論あの時俺と共に杉元を裏切った「奴」に対しても、俺ならば容赦はしないだろう。

 

まあ、良い。杉元が前世の俺達の所業をもう許していると言うなら、俺からこれ以上とやかく言う権利はないだろう。

 

俺は「了解。じゃ、紙にはスモーカーヒーロー事務所って書いとけよ」と返信し、自分の提出用の紙にスモーカーヒーロー事務所と書いて紙を鞄の中にしまった。

 

次の日登校して、ヒーローオタクである緑谷にも一応スモーカーの事を尋ねてみる。

すると、オタク特有の早口で様々な情報をまくし立てられる事となった。

 

曰く、まだ独立したてで、知名度は低いものの敵捕獲件数などで頭角を表してきている実力派若手ヒーローである。

「スモーカー」と言う名前の通り、特製の煙管から出す煙を自在に操り、その煙を硬化などさせて犯人を捕獲している。

本人は伊達男で女性人気もこれから高くなりそう。

都内はヒーロー激戦区であるが、独立してすぐ都内に事務所を構えるなんて凄い。彼の実力や活躍ならば、これからどんどん有名になってくだろう。中々の有望株である。

 

等などの情報を頂けた。概ね昨夜調べた情報通りだったが、ヒーロースモーカーはまだ若手ではあるがかなり有望視されている様だ。

ヒーローオタクであり、分析力に長けた緑谷の言うことだ。間違いないだろう。

 

緑谷には何故スモーカーの事を?と問われたので、実習先にする予定だと正直に話すと酷く驚いていた。

 

「ええ!?尾形君、スモーカーの所にするの!?確かに彼は若手の中でもかなり活躍してるし期待の新人って言われてるけど、でも尾形君ならもっとランキング上位の大手ヒーロー事務所からも指名有ったんじゃないの…?どうしてスモーカーの所に…?」

と疑問の様だった。

まあ、俺も「奴」から誘いが無ければベストジーニストかギャングオルカの所にでも行こうかと思っていたからな。

 

「ああ、実は尾形と俺の古い知り合いでよ。その縁もあって行こうかなって思っててな。緑谷も言ってたけど噂じゃ結構な有望株っぽいから実習先でも大丈夫だろ?」

と、話を隣で聞いていた杉元が俺の代わりに緑谷に答えていた。

 

「えー!?尾形君だけじゃなくて杉元さんもなんだ!?でも知り合いかあ…なら良いのかなあ?知り合いのヒーローの方が色々突っ込んだ話も聞けそうだし、スモーカーは若手だけど中々の実力者だしあと数年もすればヒーローランキングにも入りそうな感じだしね。それなら実習先として全然アリだよなあ。それにしても煙管ヒーロースモーカーと知り合いだなんて羨ましいなあ…。そう言えば杉元さん達は牛山先生…アンビートン・ブルとも知り合いって言ってたし、一体どうやって知り合ったんだろう?」

 

緑谷は俺だけでなく杉元も行くと聞いて驚いてはいたが、知り合いだと言うことを理解すると、勝手にブツブツ呟いて1人で納得し、更に何かブツブツと続けているようだった。いつもの緑谷であり、俺は用も済んだので当然無視した。

 

緑谷はほうって自分の席に戻ろうとするが、今度は俺達のやり取りを聞いていたのであろう周りにいた奴らが絡んできた。

 

「なんだなんだ?杉元と尾形、職場体験の実習先別々だって昨日言ってたのに、なんだよ結局同じところにすんのかよ!」

「俺はそうなるんじゃねえかなってちょっと思ってた。」

「尾形君と杉元さん、ほんと仲良いよね〜あはは。」

「何何?尾形達はスモーカーの所にするの?あのヒーロー結構イケメンだよね〜アレはその内見た目の方のランキングでも入ってきそうだよね。」

などなど言ってきた。目ざとい奴らだ。

 

杉元は「いや、だから、たまたま共通の知り合いがヒーローやってたから一緒になっただけだからな。本当、たまたま、偶然、コイツと実習先同じになっただけだから!」

と必死に弁明していた。

 

俺はわざわざ杉元と実習先が同じ理由をコイツらに説明するのも面倒だし、好きな様に思わせとけば良いと思い、特に何か否定することもせずに席に戻った。

 

杉元は尚も言い募っていたが、始業の鐘が鳴り担任の相澤が来そうになった為、不満そうだったが急いで席へと戻っていった。

 

授業が終わり休み時間になったので、俺と杉元は実習先の希望書を相澤に提出する。

 

相澤は俺達から紙を受け取り書いてあるヒーロー事務所を読むと表情を曇らせた。

 

「………おい、お前ら本当にここでいいんだな?ここでも悪くは無いだろうが、お前らならもっと大手の事務所を選択出来ただろう?大手の所が良いとは一概には言えんが、学べる事が多くあるのは事実だ。

この実習は貴重な行事だ。2年や3年になって別のとこに行けばよかったなんて嘆いてる奴らも居るからな。

それを踏まえてもう一度聞くが、お前ら本当にこれで良いんだな?」

 

相澤は俺達に念を押す様に実習先がスモーカーヒーロー事務所で良いのかと聞いてきた。

 

「はい、実は俺達、ヒーロースモーカーとは古い知り合いだったんです。相澤先生が伝言伝えてきた時には気づかなかったんですけど…。なんで、その縁も有るんでそこに決めました。あ、知り合いですけど、きちんとヒーローの事学んでくるんで大丈夫です!!

知り合いなんでバンバンヒーローの裏事情とかも聞いてきますよ!!」

 

杉元は相澤にそこが良いとアピールする。

 

「………そうか、尾形もここで良いんだな?」

 

相澤が俺にも念を押して聞いてきたので、

「ええ、ヒーロースモーカーは若手ですがやり手とも聞いています。

学べることも多いかと思いますので大丈夫です。実習先はそこでお願いします。」

と返答した。

 

相澤も納得したようで、俺達に「まあ、若手には若手なりに教えるもんも有るか…分かった。お前らしっかりそこでヒーローの仕事を学んで来いよ。

くれぐれも痴話喧嘩とかすんじゃねえぞ。」

と言って、俺達がスモーカーの所に実習しに行くのを受諾した。

 

杉元は「いや、痴話喧嘩ってなんですか!?しませんよそんな事!!」と相澤の最後の一言に噛み付いていた。

 

クラスメイトの奴らも全員実習先を決め、職場体験当日となった。

この日は学校には登校せず、最寄りの大きな駅に早朝集合した。

クラスメイト達は地方のヒーロー事務所にバラけるため、駅集合となったのだ。

 

実習先には筆記用具等の荷物の他に、ヒーローコスチュームも持っていく。

相澤が全員にコスチュームを持ったかを確認し、普段は公共の場での着用禁止であり落としたり無くしたりしないようにと注意が飛ぶ。そしてくれぐれも失礼の無いようにとの注意を最後に飛ばし、各々移動することとなった。

 

「俺達も行くぞ杉元」

 

俺は杉元に声を掛けたが、杉元は麗日や緑谷達と共に飯田を心配するような表情で見つめていた。

 

………飯田はここ最近、飯田の兄がヒーロー殺しに襲われてから、何やら思い詰めている空気を出していたからな。杉元も飯田の事が心配なのだろう。

 

緑谷がそんな飯田に対して、「本当にどうしようも無くなったら言ってね。友達だろ。」と伝えていた。

その言葉に麗日はこくこくと首を縦に振っている。

杉元も「そうだぜ飯田。なんかあったらちゃんと言えよ。」と伝えていた。相変わらずお節介でお人好しだなお前は。

 

飯田は振り向き、笑顔で「ああ。」とだけ緑谷達に答えていた。

………杉元が言っていたのを聞いたが、飯田の実習先は保須だ。恐らく飯田は自分の手で兄を襲ったヒーロー殺しを捕まえたいのだろう。もしくは殺したいのかもな。

まあ、飯田が仇討ちをしようがしまいが俺には関係の無いことだ。好きにしたらいい。

 

だが、保須にはインカラマッの未来予知した日には行く予定であるし、その時は飯田とも会うかもな。

インカラマッの占いは雄英内では有名な様で、相澤もインカラマッが予言した日がどうなるのかを伝えられていた様で、保須市に行く飯田にその日は充分注意するようにと伝えていたようだ。

 

今度こそ杉元を呼び、電車に乗り都内に有るスモーカーヒーロー事務所を目指す。

 

都心からほど近い距離の街にスモーカーヒーロー事務所は有った。

比較的小さなビルだ。中に入ると中々小綺麗な内装をしている。

事務所の有る5階までエレベーターを使って上がる。

 

「………でも本当になんで俺達を呼んだんだろうな?アイツ…。」

エレベーターの中で杉元がそんな事を呟いた。

 

「今から本人に会えば分かるだろ?」

 

俺がそう答えるとエレベーターは5階に止まり開いた。

事務所のドアを開き、受付の電話に雄英から職場体験で来たと伝えると、すぐに案内係がやって来て俺達を会議室だろう部屋へと案内した。

すぐに社長…ヒーロースモーカーが来ますのでお待ち下さいと言って案内係は出ていった。

 

「職場体験とか…アイツの事ばっか考えてたからか、なんかこの雰囲気、今更になってドキドキしてきたぜ…。」と杉元が何やらここに来て弱気な事を言ってきた。

 

「別に緊張する必要もねえだろ。言われた事メモしたり、何かちょっとした事をやらされるだけだろ?それに「奴」相手なんだから気負う事もねえだろ。」

「あー、確かにそうだな。相手もアイツだしなあ…なら大丈夫か。」

 

俺達がそんなやり取りをしていると、カツカツと靴音がドアの向こうからしてきた。

いよいよ「奴」とご対面か。

 

ドアが開く。

 

「よう、お前ら、前世ぶりだな。元気してたか?」

 

前世で因縁の有った相手にする挨拶とは思えない程呑気な事を言ってドアから出てきたのはやはり、長身で髭が特徴的な煙管をくわえた男ーーーキロランケだった。



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職場体験編2

現れたのは、予想通りキロランケだった。

 

「やっぱてめぇだよなキロランケ、俺達を呼んだのは。確かに前世振りだな。で、俺達を呼んだ目的は一体なんだ?キロランケ。」

 

杉元がキロランケに油断なく聞いた。

俺もいつでも動けるように臨戦態勢を取る。

 

だが、俺達のピリピリした空気をまるで感じない様にキロランケはまあまあと言いながら近くの椅子に座った。

 

「落ち着けってお前ら。相変わらず喧嘩っぱやいな。

俺は別にお前達をどうこうしようと思って呼んだんじゃねえし、お前らもそう思ったから俺の所に来たんだろ?

俺はお前達と色々話しがしたくてお前らを呼んだんだ。まあ、とりあえず座れよ。」

 

殺気も戦意もなく悠々と座ってそう言ったキロランケに俺も杉元も気を削がれた。俺達も別にコイツと戦ったり殺りあったりしたくて来た訳では無いので、ひとまず大人しく椅子に座った。

 

「色々話がしたいって何をだ?

俺たちゃ前世で別に仲良しこよしだった訳じゃ無かっただろ?共闘関係にあっただけだ。

まあ、俺とお前の裏切りでそれもおじゃんだった訳だがな。

それで、杉元にとっちゃその裏切り者のお前が今更何を話したいって?」

 

「相変わらず辛辣だな、尾形。

まあ、その通りでぐうの音も出ないんだが…。でも同じ穴の狢だったお前に言われるとは思わなかったぞ…。

俺はお前らを雄英体育祭で見て記憶を取り戻したから、前世の話が出来ると思ったお前らを呼んだんだよ。本当にそれだけだ。誓ってお前達を害そうと思ってお前らを呼んだわけじゃねえよ。大体、お前らを今更どうこうしても俺には何の得にもならん。

まあ、これで俺の存在を知った杉元が俺を許さずに殺しにくるかもっていう不安も有ったが、お前らヒーロー志望の様だし大丈夫な方に賭けたんだが、どうだ?俺は賭けに勝ったか?」

 

「それは杉元次第だろ?」

 

キロランケとのやり取りの後、俺とキロランケは杉元を見た。

 

「…………今更お前が俺や尾形に何かする気もその必要も無いのは分かった。

前世のお前にやられた事はまあ、腹立つけど、もう尾形を許した時点で前世のアンタの所業を責めるのも馬鹿らしいしな。

まあ、ヒーローやってる今のアンタと話す位は別に俺は構わないぜ。」

 

杉元は眉間にシワを寄せながら言ったが、これはキロランケを許すと言ってる事とかわりない。もう杉元が俺達に殺意を持ってないとは分かっていたことだが、前世で裏切られたってのに本当に甘い奴だ。

 

「どうやら俺は賭けに勝ったらしいな。美人に殺されずに済んで良かったぜ。」

キロランケはニヤリと笑った。

 

それからキロランケは様々な事を聞いてきた。何故お前達は前世の記憶が有るのか、他に前世で出会った奴らは居るのか、そいつ等にも記憶が有るのか、何故今になって自分は前世の記憶を思い出したのか、前世を思い出した意味はなんなのか…等など。

 

どうやらキロランケは白石と同じように前世と関わりがある輩は周りには居なかったようで、ついこの間の体育祭で俺達を見て記憶が戻ったと言った。

 

そしてキロランケは白石以上に記憶が戻った事に混乱したらしい。

それで前世を覚えているであろう俺達に、危険かも知れないと思いつつも藁にもすがる思いで接触をしてきたらしい。

因みに俺達に記憶が有ると思ったのは、体育祭で杉元が自分のことを「不死身の杉元」と呼んでいたからと言う理由だった。

俺については杉元と仲が良さそうだったので、記憶は無いのかもしれないと思っていたらしいが、それは生憎だったな。

 

「そうか…俺達以外にも結構前世で関わった奴ら、現世でも居るんだなあ。てっきり体育祭に映ったお前らだけなのかと思ったんだが…。

しかし記憶が蘇るトリガーが前世に深く関わった奴と会う事か認識する事、それでも確定で記憶が蘇る訳じゃ無いらしい、ってそれじゃあ、前世で関わってても一生思い出さない奴がいてもおかしくないな。」

 

「まあ、キロランケ、アンタは思い出した訳だけどな。」

 

「ああ、職場体験で雄英生を指名出来るからって体育祭見てたらまさか前世の記憶が蘇るなんて思いもしなかったけどな。

いやあ、あの時は本当に焦ったぜ、自分であって自分じゃない様な記憶が一気に流れ込んできたからな。しかも現在とは比べ物にならん程殺伐とした記憶だったしな………。

体育祭観戦する余裕なんて無くなったし、一緒に見てた社員達に心配されるしで大変だった。」

 

「でもキロランケ、記憶が蘇ったからって理由だけで俺達を呼んだってのか?それなら別に職場体験としてじゃなくて別に接触すれば良かったじゃねえか。つーかちゃんと職場体験させてくれるんだろうな?俺たちに接触するだけに呼んでおいて、職場体験なんて考えてませんでした、とかはやめてくれよ?」

 

「ああ、そこは安心しろ。きっちり職場体験させてやるからな。

お前達を指名したのは前世の事だけじゃなくて、体育祭録画した奴でちゃんとお前らの能力を確認した上でだ。俺も今はプロのヒーローだからな。そこは妥協しない。

にしてもお前ら前世でも物騒だったけど、「個性」が付いてより物騒になったな。ははは。」

 

「物騒言うな。」

 

「ああ、悪い悪い、凄い「個性」だって褒めたかっただけだ。お前らどっちも体育祭凄かったよ。お前らの実力ならこのまま行けば確実にプロになるだろうと思ってな。

その時になって会うことになるんなら、今のうちに会っといた方が良いだろうって判断をしたんだよ。ぶっちゃけ青田買いって奴だ。」

 

「ほんとにぶっちゃけたなお前。」

 

「ははは。プロの世界はシビアだからな。

俺も独立したからサイドキックを探してるんだよ。お前ら雄英卒業したらどうだ?俺のとこにサイドキックとして来る気無いか?」

 

「アンタも気が早いな。まあ、プロのヒーローになる道筋としちゃ悪くない選択かもしれねえからな。考えといてやるよ。」

 

「尾形、お前上から目線だな…。」

 

「俺は俺の価値をきちんと評価してるだけだ。俺や杉元の実力なら、もっとデカい事務所だって狙えんだよ。アンタも俺達が卒業する時には入りたいと思えるぐらいには事務所デカくしとけよ。」

 

「へいへい、お前らが入れて下さいと懇願する位成長しといてやるさ。」

 

前世でまだ俺達が裏切る前の、みなで旅をしていた時の様に俺達は軽口を叩きあった。

 

「………なあ、キロランケ、お前はなんでヒーローになろうと思ったんだ?」

 

杉元が静かにキロランケに問うた。

 

「…………弱い奴や良い奴を、悪党達から守りたいと思ったからなった。ただ、それだけだ。」

 

キロランケは前世でも、奴の中にあった「正義」なんかの為に動いていた節が有ったが、コイツは今生でも己の「正義」の為に、それを成す為にヒーローになったのだろう。

俺は「正義」なんてもんには興味は無いがな。

 

杉元は「………そうか、守れると良いな」

とキロランケに返していたから、奴がヒーローになった理由に納得したのだろう。

 

俺達はそれからもう少し前世の話や俺達の過去どうやって記憶を取り戻したかなんかを話しをしてから、職場体験の話となった。俺たちにとってはこちらが本命の話だ。

 

「お前らには俺が普段プロヒーローとしてどう仕事してるか見て、実際にパトロールなんかも体験してもらう。」

 

キロランケが説明を続けた。

 

「ヒーローのお仕事は、基本犯罪の取り締まりだな。事件やら事故やらが発生すると警察から応援要請が来る。

それらを対処して、逮捕協力や人命救助等の貢献を申告する。それを専門機関が事実に即しているか調査する。それを経て、やっと俺達ヒーローに給金が振り込まれるってプロセスだ。

勿論、活躍により給料の額も違ってくる。基本、歩合だから厳しいが、活躍できればそれだけ給料も高額になるってな。

ヒーローと言っても人だからな。おまんま食えなきゃヒーロー活動も出来ないんで、流石に無償でのヒーロー活動なんてのは無い。

まあ、趣味でヒーロー活動やってる奴とかも居るには居るらしいが、そういう奴は基本ヒーロー免許なんて持たずに「個性」を行使するから「ヴィジランテ」って言うヴィランとほぼ同義扱いされるな。

話が逸れたが、あとは国から金もらってるからヒーローも一応は公務員扱いなんだが、普通の公務員と違って副業が許されてる。人気ヒーローなんかはCMとかに出たりしてるだろ?ソレとかが副業だな。」

 

「へー公務員扱いなのに副業とかいいんだな。それに専門機関の調査が入ってくるとか結構面倒だな。」

 

「ああ、副業については公務員に定められた当時は相当揉めたらしいけどな。結局市民からの需要やヒーロー人気で許される事になったらしいぞ。

専門機関の調査が入るのは申告に虚偽が無いか見極めるためだからな。面倒では有るが仕方ない。書類作成やら事務所経営やらで、事務員を雇ってる所がほとんどだが、ヒーローも結構そういうので書類作成の業務も有るからな。俺はそういう作業はそんな得意でもないが、杉元お前は苦手そうだな。」

 

「ああ、確実に苦手だな…ヒーローも人助けやってるだけじゃ駄目なんだなあ…。」

 

杉元は苦い顔をしてそう呟いた。

 

「応援要請以外でもヒーローは自主的に活躍するんだろ?キロランケ。

アンタはパトロールでもして点数稼ぎしてんのか?」

 

今度は俺がキロランケに質問をした。

 

「点数稼ぎとか言い方悪いなお前…だが、まあ間違っちゃいない。都内は事件発生件数も高いからな。新宿や渋谷等の人が密集してる所は犯罪が起きやすい。そういう所に行ってパトロールするんだ。

お前達には一週間俺とともにパトロールに出たり、その時起こった事の書類作成等をしてもらう。で、実際の俺の活動を見て学べ。

出動要請もあれば勿論そちらにも来てもらうからな。

お前らヒーローコスチューム持ってきてんだろ?午後からはそれ着て渋谷辺りに行くぞ。」

 

そう言ってキロランケはそろそろ昼にしよう、と言って席を立った。

前世の話やら今世の話やらをずっと話してたせいで気づけばもう12時を回っていた。

 

俺と杉元はキロランケが買ってきた弁当を食べながら更に雑談を交わした。

杉元が女になってる上にかなり美人で驚いたと言う事や俺達が幼馴染だと言うことに驚いたという事、主にキロランケが驚いた事が話題だった。

 

弁当を食べ終わり、少し休息を取ってからキロランケは俺達にヒーローコスチュームの着用を指示した。

それぞれ別室で着替えて出てくると、キロランケは俺達を見て、「………お前ら今生は仲良いとは分かったがまさかヒーローコスチュームまでお揃いにしてるとは思わなかったぞ。」と呆れた声で言った。

 

それに対して杉元は

「お揃いじゃねえよ!!作ってる所が一緒のところだったからデザイン似たようなもんになっただけだ!!」

と大声で反論していたが、キロランケは信じてはなさそうだ。分かった分かったと適当に杉元をいなしていた。

 

キロランケ自身も既にヒーローコスチュームに着替えていたので、軽い注意事項を受けてから、事務所を出た。

キロランケのヒーローコスチュームは何処と無くロシアを彷彿とさせるモノだった。

キロランケは今生はロシアとのハーフだと言っていたからだろう。

 

事務所を出て、最寄りの駅から渋谷へと向かう。ヒーローコスチュームだから当然だが、周りからジロジロと見られる。

キロランケは気にした風もなく、時には手を振られるのを笑顔で振り返していた。

中々に堂に入っている。

 

渋谷に着くと、人通りの多い場所から人気の無さそうな路地裏までまわってパトロールをする。

昼間より夜の方が小競り合いなど起きそうだが、こう言った草の根的な地道な活動もヒーローの仕事の内なのだろう。

杉元は「うーん何にも起きねえな!平和でいいけどよ。」と少し物足りなそうにボヤいていた。

 

パトロールから数時間が経ち、日もくれだしそうな時間に、人通りの多い店の前での殴り合いの喧嘩を見つけた。

どうやら両者とも酒が入っている様だ。

いい歳したオッサンが昼間から酒を飲んで暴れてるのか…警察でも対処出来るような小さな案件だが、事件は事件だ。

 

キロランケが仲裁に入る。

だが、酔っ払って気が大きくなってるのだろう。酔っ払いたちは一時的に喧嘩をお互いに止めたは良いが、今度はキロランケに向かってきた。しかも「個性」を使ってだ。

 

酔っ払いたちはどうやらそこそこ攻撃に特化した「個性」を持っている様だ。

片方は腕が大きくなる「個性」で片方は全身棘だらけになった。

 

キロランケは向かってくる酔っ払い達に慌てずに悠々と煙管を吹かした。

すると、煙管から出た煙が形を変えて酔っ払いに向かって行き、縄のような形に変形して酔っ払い達の身体を拘束した。

煙なのに実体が有るのだろう。酔っ払い達は藻掻くが煙の拘束はビクともしなかった。

 

「往来での「個性」の無断使用、及び傷害罪、って所か。お巡りさん呼んであるから良く反省するんだな。」

 

キロランケは酔っ払い達にそう言って煙をくゆらせていた。

 

ヒーロー名の通りに、キロランケの「個性」は「煙」だ。

ヒーロースモーカーは自由自在に吐いた煙を操る事が出来、その煙は実体すら持ち敵を捕縛する…。調べた通りだな。

 

杉元は「おお!ヒーローっぽい!!」とやっと実際に見ることが出来たヒーローっぽい出来事に目を輝かせていた。

 

実態のある煙を操る事が出来るとは、中々使い勝手の良さそうな「個性」だ。

実際に犯罪者や敵の捕獲等でヒーロースモーカーは中々に活躍しているらしい。そうヒーローニュースの記事に書かれていた。

 

酔っ払い達は駆け付けてきた警察に引渡しキロランケが戻ってきた。

「これが実際のヒーロー活動だ。どうだ?少しはどんなものか感じられたか?」

 

「おう、パトロールとか何も無くて地味だな〜って感じてたけど、やっぱり事件に遭遇したら早めに解決しないとな。キロランケ…じゃない、スモーカー、アンタの迅速な対応良いお手本になったぜ。」

 

杉元がそうキロランケを称えた。

それからまた周辺を少しパトロールしてから、かなり早いが事務所に戻る事にしたらしい。

また電車を乗り継いで事務所に戻り、今日行ったパトロールについての報告書類を作成させられた。

 

「いつもはもっと遅くまでパトロールしてるんだが、今日はお前らが居たからな。

職場体験初日はこんな所で良いだろう。

夜の繁華街なんかは小競り合いが増えるからそれも体験してもらおうかと思ってるが、とりあえず今日はここまでだ。

まあ、ヒーローの日常は概ねこんな感じだ。

非常時なんかだとまた変わってくるがな。」

 

ヒーローは事件が起こってから対処する事が多い。

事件や事故が起こらない限りヒーローのやる事といったらパトロール位が関の山と、正直暇に感じたが、それもヒーローという仕事の本質だろう。平和な事で結構だと思うしかないな。

それに緊急時には自分の命も晒さなければならないだろうから、平穏な時間はそれはそれで大切ではあるだろう。

 

俺達はそれぞれ作成した報告書を提出し、ヒーローコスチュームから制服に着替えて帰る支度をする。

今回の職場体験で泊まり込みの奴も多いだろうが、キロランケの職場は学校や自宅からさほど離れてる距離ではない為俺達は帰宅が許されている。

 

「じゃあお前ら、また明日な。ちゃんと明日も早く来いよ。」

キロランケはまだ仕事が有るのだろうヒーローコスチュームのままだ。

 

「あ、そうだ尾形お前伝言頼まれてんじゃねえか、伝えてやれよ。」

杉元が思い出したように言った。

ああ、そんな用事あったな。

 

キロランケは伝言?なに?誰からだ?

と聞いてきたので1字1句間違いなく伝言を伝えてやった。

 

「「前世で刺された恨みやその他諸々の恨みと因縁は今世には持ち越ししてないので安心して下さい。」だとよ。良かったなキロランケ。」

 

「…………インカラマッか…。なんかそう言われると逆に怖いな…。」

インカラマッからの伝言を聞いたキロランケはそう言って身震いをした。

 

「あとインカラマッが〇月×日は保須市にパトロールへ行けだとさ。」

 

「保須へ?何でだ?」

 

当然疑問に思ったキロランケが聞き返してきたので、インカラマッの「未来予知」の事やその日敵達に保須市が襲われるかもしれない事、少しでもヒーローがそこにいて人々を助けてやって欲しい事等を伝えてやった。

 

「お前らそういう事はもっと早く言えよ……。〇月×日って三日後じゃねえか…こっちにもスケジュールとか有るんだぞ一応…。

だが、分かった。そういう事ならその日は保須へ行こう。そこまで遠くないしな。

お前らも連れていってはやるが、くれぐれも無茶はしないでくれよ?」

 

キロランケは話を聞くと、インカラマッの「未来予知」を素直に信じた様で予言のその日は保須まで行く事に決まった。

 

伝え終え無事に保須へ行く事も決まったので、俺と杉元はキロランケと別れて今度こそ帰宅した。



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職場体験編3

金カムのあの人が登場します


職場体験三日目、今日はインカラマッが未来予知した日なので保須へ行く予定だ。

 

昨日の職場体験は初日とほぼ似たようなものだったが、夜の繁華街をパトロールしたので、中々の事件発生数だった。

まあ、殆どは酔っぱらい同士の喧嘩がせいぜいではあったがな。

 

杉元は事件解決は良いが、それに伴う報告書の作成に早くも辛いと弱音を吐いていた。

ヒーローになればずっとついてまわるものだぞ。今から慣れておけ。

 

保須へは電車を乗り継いで行く。

キロランケが一応事前に保須市へパトロールに行く旨を、保須を管轄しているヒーローに伝えると歓迎された。

どうやら雄英や警察からも保須市が襲われるかもしれないと一応、管轄のヒーローと警察で厳戒態勢を敷いているらしい。インカラマッの「未来予知」あっての事だが、流石は雄英のネームバリューと言ったところだ。

 

インカラマッの「未来予知」では、襲撃は夕方辺りらしいが、早めに現地入りした。

土地勘が無いため、早めに現地を確認したいとキロランケが判断した為だ。

 

休憩や昼食を取りつつパトロールを行う。

それなりに栄えている街だが、極々普通の街だ。この街を襲撃する動機は一体何なのか考えるが、答えは出るはずもなかった。

 

杉元も「こんな平和な街なのに襲撃されるなんてな…全く信じらんねえな…。」と呟いていた。全くだな。

 

そう言えばパトロールの途中、飯田らしきヒーローコスチュームに身を包んでる奴を遠目で見つけた。

奴も職場体験の実習中なのだろう、隣に知らんヒーローが居た。

遠目なので飯田はコチラに気付かずに俺達とは逆側に去っていったが、このまま予知通りに行けば、アイツも敵の襲撃に対する救援を体験する事になるだろうな。

 

パトロールを続けて数時間が経つ。

もう夕方だ。予知通りならそろそろ敵共が襲撃してくるはずだ。

キロランケから「そろそろか…?お前ら気ぃ抜くなよ。そんで無茶はするな。」と、釘を刺される。

 

ドォオオオオオン!!!!

 

ここから少し遠くで何かが爆発した音が轟いた。来たか…。

キロランケは大きく息を吸ったかとおもうと、煙管から大きく煙を吐き出し、煙はモクモクと形を変えたかと思えば大きな2頭の煙の馬となった。

 

「乗れ、急ぐぞお前ら。」

 

キロランケは煙の馬に飛び乗った。

俺と杉元ももう一頭の馬に乗る。俺が前で杉元は後ろから俺に抱き着く形を取った。

準備が出来たらキロランケが「行くぞ!」と言い、馬は爆煙が上がってる方向へと走り出した。本物の馬のような速さと乗り心地だ。

 

爆発した現場へ近づくにつれ、逃げてくる人間が多くなる。

現場に着くと、脳みそ剥き出しの化け物達が大暴れしていた。コイツらは形が少し違うが前にUSJを襲撃してきた脳無だろう。てことはこれは敵連合とかいうクズ共の襲撃か…。

一体奴らは何考えてこんな街襲ったんだろうな。

既に何人かのヒーローが駆けつけており応戦しているが、事態は芳しくは無い様だ。

 

煙の馬から飛び降りると俺達はすぐに臨戦態勢を取った。

「俺はアイツら拘束してくるから、お前らは逃げ遅れてる人の避難誘導や負傷者の救助の手伝いを頼む。」

キロランケが俺達にそう指示を出したが、杉元は「俺達も戦える!!」とキロランケに訴える。

 

「ダメだ。お前達が強い事は知ってるが、まだお前達はヒーローじゃない、ヒーローの卵だ。お前達が今するべき事、出来る事は敵を倒す事じゃない。市民を助ける事だ。分かるよなレディ・イモータル?」

キロランケは杉元をヒーロー名で呼び、そう言って諭した。

杉元も自分の立場をキチンと把握しているのだろう、渋々ながらもキロランケに「…………分かってるよ。」と返していた。

 

「じゃあちょっと行ってくる。リンクス、レディ・イモータル、避難誘導と負傷者救助ヨロシクな。万が一、お前達の方にあの化け物がやって来たら誰でもいいからヒーローを大声で呼べ。それも間に合わずに危害を加えられそうになったらお前達で対処していいぞ。責任は俺が取ってやるよ。」

そう言ってキロランケは今度こそあの脳みそ剥き出しの化け物…脳無達の元へ駆けて行った。

 

俺と杉元はキロランケに言われた通り、逃げ遅れた人間を見つけては避難誘導し、負傷者は近くに来ている救急車まで運ぶなどの救援活動をする。

 

「この辺りは逃げ遅れた人はもう居ないよな?」と一旦杉元と確認していた時、俺と杉元のスマホが同時に鳴った。

なんだこんな非常時に。

俺は無視をしたが、杉元は素早くスマホを確認した。すると、「緑谷からだ…なんだこれ?これここから結構近くの住所じゃねえか?」と言って、スマホを俺にも見せてきた。

どうやら一括送信で位置情報だけを送られてきたようだ。

 

………緑谷は意味も無く位置情報なんて送ってこないだろう。何故緑谷が保須に居るのかは知らんが、恐らくそこで何らかの事態に陥っているという事か…。

杉元も「………これ緑谷なんか緊急事態なんじゃねえか…?」と気づいた様だ。

 

「おい、急いでここまで行くぞ尾形!!」

と急く杉元をまあ待てと宥めて、俺は一応キロランケに指示を仰ぐことにした。勝手に現場を離れて、後々何か言われるのは避けたいからな。

キロランケは、脳無一体の捕縛に成功したようで、別の所で暴れているであろう脳無の所に行こうとしている所だった。

 

「どうしたお前ら?」

脳無にやられたのだろう、少しだけ傷ついているキロランケが近付いてきた俺達に訝しげに聞いてきたので、スマホを見せて事情を説明する。

 

「緊急事態か…分かった、俺もそっちに行こう。お前らちょっと待ってろ。」

キロランケはすぐに緊急事態と判断し、周りのヒーローに増援要請を伝えた後、また煙の馬を作り出して緑谷が送ってきた住所に俺達と共に向かった。

 

送信された住所は路地裏の様だ。

脳無達が暴れている場所でも無いのに、近づくにつれ血の鉄臭い匂いが濃くなっていることに俺は嫌でも気付いた。

 

「おい、血の匂いがする。油断するなよ。」

緑谷からの送信から、5〜10分は経っているだろう。戦闘音もしてこないし、もしかしたら手遅れかもな。

俺はそう最悪の結果を想定しながら、用心深く指定された路地裏に入れば、何とそこには既に伸びて今まさに縛られている敵らしき人物と、緑谷だけでなく飯田と轟が、全員血だらけで立っていた。

いや、知らんヒーローらしき人物も倒れている。

 

「杉元さんに尾形君!?あ、それにヒーロースモーカーも!?2人とも来てくれたんだね!!」

緑谷が満身創痍の体で言った。

 

「緑谷!!無事だったか!?いや、全身傷だらけだな…。それに飯田に轟も…一体何が有ったんだ?」

杉元がひとまず安堵して緑谷達に一体何が有ったのかを聞いた。

 

どうやら飯田がヒーロー殺しをこの路地裏で発見し、まさにヒーローを殺す瞬間、何とかそれを阻止したが、返り討ちにあい、殺されそうになった所で、緑谷が助けに来たが攻撃を受けヒーロー殺しの「個性」て動けなくなり、飯田がまた殺されそうになった所で轟が来て、何とか動けるようになった飯田と緑谷で全員力を合わせてヒーロー殺しをつい先程退けた、という事らしい。

なんというかかなり綱渡りで生命の危機を凌いだんだなお前ら。タイミングが少しでもズレていたら誰かしら死んでいただろう。

折角駆けつけた俺達だが、特に出番もなく、世を騒がせたヒーロー殺しはこうしてお縄となった。

 

ヒーロー殺しの「個性」で動けなくなり殺されかけたヒーローが動けるようになり、全員で路地裏を出た。

満身創痍で動けなくなった緑谷をキロランケがおぶさり、ヒーロー殺しをその殺されかけたヒーロー…ナチュラルが、縄で引きずって出る。

 

路地裏を出た所で、ヒーローの格好をした背の低い老人が緑谷の所まで来て、緑谷の顔面に蹴りをお見舞していた。

緑谷がここに居ることに随分と腹を立てている様だ。

どうやら緑谷は職場体験先のこの老ヒーローの指示を無視して飯田の所、つまりこの現場に駆けつけたらしい。

だか、そのお陰で飯田と殺されかけたヒーローナチュラルの命は助かったのだ。結果オーライと言えるだろう。

まあ、この老ヒーローは監督不行届で罰則を受けるかもしれんがな。

 

そのすぐあとに、ヒーロー達が数人やって来た。キロランケが要請した増援だけでなく、轟の父親であるエンデヴァーからの要請を受けたヒーローも多いようだ。

エンデヴァーも雄英の要請と、ヒーロー殺しを追うために保須に来ていたみたいだ。

要請を受け駆けつけたヒーローはどうやら暴れている脳無に有効ではない「個性」持ちばかりらしい。

キロランケが脳無を一体捕縛していたが、他はもう捕まったのだろうか?

 

俺が考えていると、飯田が轟と緑谷に自分のせいで傷だらけになった事を謝罪していた。

泣きながら何も見えなくなってしまっていたと言っている。やはりコイツも復讐に目が眩んでいたのだろう。俺はそれが悪いとは思わんがな。

緑谷は友達なのに飯田がそうなってる事に気付かずにごめんと逆に謝っていた。コイツも大概お人好しだ。

轟はしっかりしてくれよ委員長だろ、となんだか少しズレた叱咤をしていた。委員長はこの件とは関係ないだろう…。

 

「杉元さんに尾形君も駆け付けてきてくれて、本当にありがとう。だが、もう少しで君達も巻き込んでしまう所だった…。」

と飯田は今度は俺達に礼を言ってきた。

 

「俺達は今回なんもしてないし礼を言う必要なんてないぜ?顔上げろよ飯田。でも何かあれば次こそ俺達に相談しろよ?友達だろ?」

と杉元が飯田に伝えた。

俺も

「………まあ、全員死ななくて良かったんじゃねえか?」

と一応伝えてやった。

 

飯田はまた、ありがとう2人とも本当に…、と言うと涙を無事な方の腕で拭って頭を上げた。

飯田の片腕はヒーロー殺しにやられたのだろう。かなりひどい状態だった。

 

ヒーロー殺しを連行させようと全員で移動していると、上空からバサバサと何かが滑空してくる音に気づき、上を見る。翼の生えたひょろっとした脳無を発見した。

何やらコチラの何かを狙ってるように見えた。

「「伏せろ!!」」

と、背の低い老ヒーロー…グラントリノと声が被った。グラントリノもあの脳無に気づいたようだ。

 

片目から血を流した脳無が勢いよくコチラに滑空してきて、一瞬のうちに緑谷を攫った。

中々速い。

 

咄嗟に撃とうとしたが、その前に杉元が後を追ったので撃つのを止めた。杉元が一瞬で脳無まで跳躍する。

 

「緑谷を離しやがれ!!!!」

 

だが、杉元が跳躍するその前に敵が動きを止めたのに俺は気付いた。

そして、一瞬で脳無まで跳躍したのは杉元だけでは無かった。

 

ヒーロー殺しは意識を取り戻していたらしく、緑谷が攫われてヒーロー達の意識の矛先が変わった時に隠していた刃物で紐を切り、脳無が流していった血を舐め取りその「個性」で脳無の動きを奪い、一瞬でそこまで跳躍したのだ。これだけでヒーロー殺しがかなりの身体能力を持っている事が分かる。

 

脳無は杉元の拳に加え、ヒーロー殺しのナイフを剥き出しの脳に受けて地面に堕ちた。

杉元の拳はともかく、ヒーロー殺しの脳への一撃はダメだろう。あの脳無はもう死んだな。

 

空中で投げ出された緑谷はヒーロー殺しが捕まえそうだったのを、何とか杉元が奪って、ヒーロー殺しと少し距離を置いて着地した。

杉元は緑谷を引っ掴んでヒーロー殺しから更に距離を取り油断なく構えた。

 

ヒーロー殺しは何かをブツブツ呟いている。

「偽物が蔓延るこの社会も徒に「力」を振りまく犯罪者も粛清対象だ。全ては正しき社会の為に。」

だとさ。ご立派な思想だが、自分が犯罪者に堕ちてまでその思想を体現するのは笑えねえ冗談だな。

 

応援に駆け付けていたヒーロー達も臨戦態勢を取ろうとした時、ナンバー2ヒーローのエンデヴァーがやって来た。先程の翼が生えた脳無を追ってきたのだろう。

エンデヴァーはヒーロー殺しに気付くと、コチラにやって来ようとしたが、何故かグラントリノがそれを制した。ヒーロー殺しの異常さに何か気付いた事があるらしい。

 

ヒーロー殺しもエンデヴァーに気付いたらしく、ビリビリとした殺気を漲らせた。

その殺気は凄まじく、あのエンデヴァーすら気圧され、歩みを少し後退させた。

俺もそのプレッシャーには冷や汗をかかされる。

 

ヒーロー殺しが己の信念を説きながら一歩一歩近付いてくる。

 

「俺を殺していいのは本物の英雄だけだ!」

 

ヒーロー殺しはそう言って更に殺気を漲らせた。

それはプロヒーローの何人かがその脅威に尻餅をつく程だ。

 

だが、フッとプレッシャーが消えた。

なんとヒーロー殺しは立ったまま気を失った様だ。

立ったまま気絶するとは何とも剛毅な男だ。

いやはや、それにしても凄まじい気迫だったな…。こんな重たい殺気を受けるのも思えば前世ぶりか?まあその殺気を放った奴は今は俺と共に職場体験なんぞ受けているがな。

 

飯田や轟もヒーロー殺しのプレッシャーから解放され尻餅をついたり崩れたりしていた。

 

杉元は…と、杉元を見やったら、油断なく気絶したヒーロー殺しを見て真剣な表情をしていたかと思えば、ニヤリと大胆にも笑った。

……………杉元、お前は何を思ったら、そんな不敵な笑みが出るんだ?知ってはいたが、怖いもの知らずな奴め。

まあ、そんな所が杉元の良い所では有るがな。

 

気絶したヒーロー殺しを、また縄を切って逃げられないように、今度はキロランケの特製の煙で拘束し、応援の警察が来るのを待った。

 

数分すると、警察車両や護送車がやって来た。

警察にヒーロー殺しを受け渡すと、他のヒーロー達は未だに混乱している現場に散っていった。

緑谷、飯田、轟は怪我が酷いため、保須の大きな病院へ直行させるようだ。

 

俺達はまだ救助活動などを手伝う事になると思っていたが、まだヒーローで無いただの学生と言う理由で、もう十分活躍したから帰れと帰宅を促された。

まだ救助活動などやれると杉元は粘ったが、帰れとの指示一点張りだった為、俺と杉元はキロランケの事務所に戻った後帰宅する事になった。

 

また、警察やキロランケ達から、ヒーロー殺しの件は口外するなと釘を刺され、明日緑谷達が行った保須の総合病院に来るように指示された。

 

恐らくだが、緑谷達がヒーロー殺しを討ち取ったことを無かったことにするのだろう。

何せ俺達もだが緑谷達はヒーローの卵で有ってヒーローではない。

しかも話を聞く限りでは職場体験のヒーローの指示の元、ヒーロー殺しを討ち取ったのでは決して無いだろう。これは未成年者個性無断使用などに当たる。

そのまま発表すれば緑谷達は個性無断使用で罰される事になる。雄英退学なんてのも十分有り得るな。それを回避するため、結局無かった事にするのだろう。

目撃者も少なかった為、別のヒーローの手柄にするのは可能だ。

 

まあ、緑谷達の手柄が無くなろうが、もしくは緑谷達が退学になろうが、俺にとっちゃどうでもいい事だな。

なんにせよ今日は色々と疲れた為、俺達はキロランケの事務所に寄り、服を着替えて早々に帰宅した。

 

次の日、俺と杉元は保須総合病院の緑谷達が居る病室へと向かった。

 

因みに今日は、昨日の保須襲撃とヒーロー殺しの件で話題が持ち切りだ。

特にヒーロー殺しの最後のプレッシャーと演説は、遠くから一般人が撮影していた様でネットを中心にアップと削除を繰り返している。

あの動画は、ヒーロー殺しの思想に共感する奴が多数出現してもおかしくはない。世間には毒にしかならんだろう。

 

緑谷達は全員同じ病室らしく、入ったら3人で話してる所だった。

「えっ?なんで杉元さんと尾形君が?」と緑谷に言われたが、話す前に警察とヒーロー数名が現れた。

コレが保須警察署署長か…顔がまんま犬だな。

 

緑谷達は警察署長が出てきた事に面を食らった様だが、保須警察署署長から緑谷達への言は、俺が昨日想像した通りだった。

緑谷達が敵相手とは言え、保護者に無断で「個性」を使用した事で罰を与えなくてはならない為、緑谷達の活躍を無かったことにして世間に公表するのだ。

俺達を呼んだのも、ヒーロー殺しの件は他言するなという釘さしの為であった。

 

因みに杉元が緑谷を助けるために飛び出して脳無へ一撃入れた件も追求された。

それは一応保護者キロランケが居る元でやった事だったので、何とかキロランケへの厳重注意で済んだようだが、杉元にも十分反省するようにと言っていた。

やはり個性使用許可証…ヒーロー免許がないと不自由だな。仮免でも良いから早く取得しておきたいものだ。

杉元も以後気をつけますと言ってはいたが、顔はぶすくれていた。おい、丸わかりだぞ。少しは隠せ。

 

緑谷達がヒーロー殺しの逮捕はエンデヴァーとスモーカーの功績にする事・これを他言しない事を飲み、保須警察署長がそれに対して緑谷達に頭を下げて礼を言った所でお開きになるかにみえた。が、突然、病室の引き戸が引かれた。

 

「そろそろ入っても良いかね?」

低く艶のある声でそう言って入ってきた人物に俺と杉元は目を疑った。

 

「遅くなって申し訳ありません、土方警視総監殿。」

保須警察署署長が背筋を伸ばし、そう言った。

 

そう、目の前に居たのは、高級そうなスーツを身に纏った、あのかつての鬼の副長、土方歳三であった。

 

保須警察署署長は土方歳三を俺達に紹介した。曰く、警視総監であると。

何故そんな偉い人が!?と緑谷達は大いに慌て驚いていたが、曰く、あのヒーロー殺しを確保したヒーローの卵のことを聞いて労いと感謝をしに来たなどと言っていた。

このじいさんの言うことだ。それは疑わしいものだが、相手がどんな人物か知らない緑谷達は素直に受け止めわざわざご足労頂きありがとうございます、などと感謝していた。

 

たかが一学生を労うために警視総監がわざわざ病院を訪れる。その警視総監があの土方歳三なのだ。たまたま偶然という事はまず無いだろう。このじいさんが何を企んでいるのかは知らないが、前世の記憶を持って俺達に接触してきたのは確実だろう。

 

それから土方歳三は数分間緑谷達と談笑し、そろそろ時間がと言って帰ろうとすると、俺達に向かって、「君達も帰るのだろう?良ければ送っていこう」などと宣ってきた。

警視総監らしいが良いのかそんな簡単に初対面の学生如きの同乗を許して。

 

………これは罠か?と一瞬思ったが、罠ならわざわざ第三者が居る所でこんな誘いは掛けてこないだろう。

何が狙いかは知らんが、かの土方歳三と話せるチャンスは、現在の相手の地位も考えると今後は早々無いだろうと俺は判断した。

杉元とアイコンタクトを取り、「お言葉に甘えます。」と答えた。

 

緑谷達と別れの挨拶をして、俺と杉元は前を歩く土方歳三の後ろをついて行く。

病院を出ると、すぐに黒い公用車が停まった。ここで保須警察署署長と別れる。

 

ドアが開いて車に乗り込み、車が発車すると土方歳三が早速話しかけてきた。

 

「久しいな、杉元佐一に尾形百之助。」

 

「………良いのかよ、運転手に聞かれるぜ?」

 

俺がそう答えると土方歳三はくっくと笑い、「大丈夫だ、この夏太郎も前世の記憶持ちだ。」と言ってきた。運転手がフェンダーミラー越しに会釈して来た。若い成人した男だ。確かに前世で見覚えのある奴だ。

なるほど、用意周到な事で。

 

「アンタがまさか警視総監とはな…しかもわざわざ俺達に接触してくるとは思ってなかったぜ。なんだ?警察は暇なのか?」

杉元が軽く挑発しながら言った。

 

「暇ではないが…お前達と接触したのはなに、ほんの気まぐれさ。特に何かお前達に用事が有った訳じゃない。少し前世の知り合いと昔話がしたくなって、そんな時に丁度いい機会を見つけたから来ただけだ。だから、そんなに構えなくて良いぞ。」

 

土方歳三が事も無げにそう言った。

警視総監様がそんな理由でホイホイ外出していいのかよ。仮にも警察組織トップだろうが。まあ、このじいさんの隙を狙って簡単に殺せる奴がそうそう居るとも思わんが…。

 

「アンタ、前の記憶有るんだな。アンタも俺達を体育祭で観て思い出した口かい?」

 

杉元の質問に土方歳三はNOと答えた。

「いいや、私はまだ小さい頃にガムシン…永倉新八と会ってそれで思い出した。今世でお前達を初めて認識したのは、お前達が何年前だかに起こした人事売買組織壊滅事件の時だ。お前達の名前と幼くして犯罪組織を壊滅させた力を聞いて、前世の記憶を持っているとすぐに分かったよ。」

 

どうやらだいぶ前から俺達が居ることを認識していた様だ。

しかしだったら何故このタイミングで俺達の前に姿を現したのか…本当にこのじいさんのただの気まぐれなのか?

 

俺も杉元も警戒をとかないが、土方歳三は気にした風でもなく、本当に世間話をする様に、俺達の今世の事や前世の記憶持ち達はどうしているかなどを聞いてくる。

 

「………アンタが政府側に居るとはな…。」

杉元のポツリとした呟きを土方歳三は拾った。

 

「これでも徳川幕府が倒れるまでは政府側に居たんだ。警察組織に居ても何ら不思議は無いだろう?それとも、フッ、敵にでもなってるかと思ったか?」

 

「前世で新政府相手に戦争して、更にその後もアイヌの金塊奪おうとしてそれを元手に戦争を企ててたアンタなら、このヒーロー社会の革命のリーダーとして、警察やヒーローに反旗を翻していたとしても全然おかしくねえ感じだろ。」

 

「心外だなそれは。私は私の信念で戦争で戦ったり、ことを起こそうとしただけで、無闇矢鱈に戦争をしたかった訳じゃ無いさ。

それに革命、ねえ…戦争も随分と無いこの平和そのものの社会を無駄に引っ掻き回す気も、無駄に血を流させる気も更々ないさ。

今の私の敵は、この平和を脅かさんとする愚か者の敵共だけさ。」

 

土方歳三があの前世の頃と同じギラついた目でそう言った。

あの幕末の亡霊…いや悪霊が、今じゃ平和を維持する為の政府組織の頂点とはな…。

だが、己の敵には容赦は無さそうなのは前世と変わってないな。

 

「…実は、あの前世の刺青人皮の囚人達の名前で、指定敵として各地に潜伏している者を何名か確認している。それもかなりの凶悪犯も居る。」

 

「「!?」」

 

土方歳三が声を潜めてそう言い放った。

前世の知り合いは何人か会ってきたが、ここに来て刺青人皮の囚人達が敵として居ると分かるとはな…。

 

「先の保須の件で、敵共はこれから活発化するだろう。あのヒーロー殺しステインの思想に触発されてな。

そして雄英は今オールマイトが居る。生徒が狙われる可能性も考えられなくはない。

お前達はまだヒーローの卵だが、十分気をつけておけ。」

 

土方歳三がそう忠告すると、車はスモーカーヒーロー事務所のビルの前に停まった。

 

俺と杉元が出ると車の助手席のガラスが開き、土方歳三が厳かな声で言った。

 

「噂だとオールマイトが討ち損じた巨悪がまだどこかに潜伏しているのでは無いかとも言われている。気を緩ませずに進めよヒーローの卵。この老体からの忠告だ。

じゃあな、わっぱ共。」

 

土方歳三は車の窓を閉めて、去っていった。

 

最後の忠告…オールマイトが仕損じた巨悪、か…一体どんな敵か知らんがオールマイトが捕らえ損なう程の敵、その噂が真実であれば一大事だろう。

 

「………マジあのじいさん何だったんだろうな…。純粋に俺達を心配してくれたのか…?

てか刺青人皮の囚人の敵も居るのかよ…。

しかも最後の話の巨悪ってなんだ…オールマイトが討ち損じるとかかなりやばい敵じゃねえか…。」

杉元がそう疑問を呟いた。さもありなん。

 

「あのじいさんが何を考えてるかは分からんが、これから敵共が活発化する事は確かだろうよ。

刺青人皮の囚人は元々重罪人の集まりだ。今世で凶悪な敵になってても全く不思議でもなんでもないだろ?

巨悪については何も分からんが、心に留めておくに越したことはないだろうよ。

忠告通り、気をつけろよ杉元。無いとは思うが油断して敵組織にでもまた捕まったり、最悪殺されでもしたら、目も当てられんぞ。」

 

杉元は

「分かってるわ尾形!お前こそ気をつけろよな!!まあ、今日の所はとりあえず気持ち切り替えてこれからの職場体験を頑張ろうぜ!!」

と言ってキロランケの事務所のビルの入口に飛び込んでいった。

 

考えたい事もあるが仕方ない、俺も気持ちを切り替えるか…。

さあ、また今日も1日つまらないパトロールにでも行く事になるのだろう。

俺は杉元の後を追った。

また俺達の職場体験の1日が始まる。



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