可愛い部下が異世界で無双するのですが…… (エスト瓶)
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召喚は突然に
「イクス様 今回の任務の報告書を届けに参りまた」
「ああ、ありがとう」
書類を渡してきたのはイクスが率いる部隊の中でも暗部に属している部隊の小隊長のグレイシア・ルキフグス。主に情報収集・暗殺・隠蔽工作・人拐いと言った表では行えない様な任務に付いてくれているとても優秀な可愛い部下の1人だ
それと部隊の服装が独特で統一性が全く無い。話を聞けばマリア(前作の王女兼イクスの嫁の1人)が暗部部隊の服装を決めていたらしい。クノイチ系の服装や明らかに暗部に向いてない服装までマリアが一つ一つスキルで作ったらしい。因みにグレイシアの服装はBLEACHの砕蜂に出てくる衣装だとか。普段は上に何か羽織っているが部隊以外の人が居なければ上を脱いでいる
「あ、あの! この後お暇なら一緒にお食事でもどうですか!?」
「良いぞ。 丁度グレイシアからの報告書も来たから一休みにと考えていたしな」
「本当ですか!? そ、それじゃあ少々お待ちください!」
音も無くその場から姿を消したグレイシアがほんの一、二分で戻ってきた。その手には風呂敷に何かを包んでいる様な物を持って
「も、もし良かったら僕が作ったお弁当を食べてもらえませんか?」
書類が置いていない机に風呂敷で包まれたお弁当箱を置いてこちらに視線を向けてくる。その視線には不安の色合いが含んでいる事に気が付いた俺は優しく微笑みながら椅子から立ち上がる
「勿論頂くよ。 折角グレイシアが作ってきてくれたんだ、食べないわけ無いだろ?」
「はぅ!! あ、ありがとうございます!イクス様!」
俺の部隊は1人の例外も無く可愛い存在だ。そんな可愛い存在が作ってきた料理を食べない訳無いだろうに
「あ、あの、こちらの卵焼き等はどうでしたか? アーシャ様から教えて頂いたのですが上手く出来ていましたか?」
先程食べた卵焼きの感想を求められたので素直に答えると真剣に聞きながらメモ帳に書き占めていく
食事も終わり、日常会話に華を咲かせている時に突然足元に見た事の無い魔方陣が浮かび上がってきた
「イクス様!」
突然の事にイクスもグレイシアも一瞬だけ不意を突かれたがいち早く立ち直ったグレイシアがイクスに駆け寄ると同時に魔方陣が強く光ったと同時に部屋から二人の姿は消えていた
「遂に念願の勇者召喚に成功しましたな!」
とある異世界の国で勇者召喚の儀を行っていたがつい先程勇者召喚が完了した。砂煙の中から人の気配を感じて眼鏡を掛けた男は王に喜びを表していた
「そろそろ砂煙が消えますよ」
砂煙が消えるとそこには四人の人間が居た。二人は何処かの学生服を着た少年達、1人はこの国でも見た事が無い程の魔力を纏った黒い鎧を着た騎士、そして最後に残ったのが少し露出がある異性の目を引く美女だった
勇者召喚されてしまった二人の運命はどうなるのか!?
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勇者とかマジで勘弁してくれ……
皆さんお久し振りです。前作の一応主人公だったイクスです。あれから色々あって19歳になってから部隊が思いの外大きくなってしまったので毎日送られてくる書類との格闘を繰り広げていました。あ、それと今はアーシャ達と結婚して今は子供も産まれて父親もやってます。現在子供達は2歳ですよ。何故か俺が1日1回は抱いてあげないと泣き止みませんし気が付けば他の子達が足に群がってきてますよ
そんなどうでも良い報告は良くて、何故か部下のグレイシアと食事を終えて楽しい昼食後の会話をしていたら何処からか現れたのか分からない魔方陣にグレイシアと一緒に巻き込まれてしまった。こんな無能の隊長ですまない、マジですまない
それに俺達以外にも勇者召喚された奴等が居るし。ああ、何時ものダブル主人公達ですね、分かります。何故俺達まで召喚されたんだよ?
「こ、ここは何処ですか!?」
「ここはリース王国じゃ。そしてお主達は異世界から勇者召喚で呼ばれたのじゃ」
イケメンの学生の質問に王冠を被った老人の王がゆっくりと答えてくれた。俺って勇者よりもタンク型なんですが……
何でも魔王が出てきたので勇者として魔王を倒して来て欲しいとの事だがハッキリ言ってやる気が起きません!そんな無駄な事をするのならグレイシアと会話をする方が何千倍も有意義だ。それに仕事もまだ残ってるのに
しかも珍しい事にイケメンの学生も一切乗り気が無いぞ。普通の勇者召喚物の勇者って二つ返事で受けるのにこの子はやる気が無いらしい
「……っと言うことじゃ。どうか引き受けてくれぬか?」
「……僕は真人の言う事に従うよ」
「何で俺なんだよ?でもまあ、良いんじゃないか?ここでもお前の凄さを分からせれば?」
「分かったよ、真人がそう言うのなら。それにこれで魔王を倒したら真人と夫婦に……」
あ(察し)ふーん
どうやらあのイケメン君は女に興味が無いようで。生前の事を思い出すと自分も笑えないんだよなぁ。寝てる間に親友に貞操を奪われてたんだからさ
そんな事を考えていると学生二人は勇者になる事に了承したらしい。良かった良かった、よし俺達を返してくれ。今日までに終わらさなきゃいけない書類がまだ残ってるんだよ
「そちらのお二方はもしや何処かの国に使える者で?」
「ええ、私達はある国に使えている騎士です。私も彼も重役に着いてるので元の場所に戻して欲しいのですが?」
俺が答える前に何時の間にかローブを羽織り、答えてくれた優秀な部下に涙が禁じ得ないよ。後でお礼に頭を撫でてあげよう。セクハラじゃないよ?
「ふむ、そうしたいのは山々だがこの術は呼ぶ事は出来ても戻す手段が見付かってないのだ」
「は?」
王の信じられない言葉に思わず殺気が乗った声を発してしまったが俺は悪くないと思う。いきなり呼び出されて魔王倒せとかふざけた事を抜かして挙げ句の果てには帰れないだと?滅ぼすぞ(嫁達が)
「イクス様、あの者を殺しますか?」
手には短刀が握られている。グレイシアが握っている短刀は入隊時にマリアが支給した武器の一つだった。短刀一つ一つに同じ能力が付与されており、その一つに一撃でどんな場所でも致命傷を与える能力が付与されている。他にも短刀一本で楽々と人体バラバラに出来るとか在るらしい。本当にマリアは規格外のチートレベルを越える程だな
そして今現在俺達と王が居る距離を見てもグレイシアならこの場に居る者達では捕らえる事は不可能な程の速さで王の頸動脈と喉笛を切り裂いて戻ってくるだろう
「待て、まだ殺すな。もしかしたら帰る為の魔法が在るかもしれん。それに最悪の場合はアイツ等がこの世界に侵略してくるだろう」
「イクス様がそう仰るのなら自分はそれに従うまでです」
短刀をしまったグレイシアに頭を軽く撫でると顔が紅く染まり、体がビクンと震えている ……あー、今は止めておこう
「悪いが俺達は勇者になるつもりは無い。此方にも此方の事情があるので」
ふむ、我ながら決まったと思うぞ
そして俺達は勇者になる事を拒んでから1週間が過ぎた頃、俺達はとある場所に居た
その場所とは
「は~い!皆さん!今日は転入生が二人来てますよ!」
「俺はマサト・クサナギだ。よろしくな!」
「……イクス・クラウンだ」
何故かリース王国にある魔法学園に通わされてます
何でだあああああああああああああああああああ!!
今作のヒロインは部下のグレイシアですけどね!
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よし、ギルドマスターはマリアの餌にしてやる!上編
俺が魔法学園に入った原因となったのは今よりも数日前の事だった。 俺達は勇者にならない事を伝えてから城を出て先ず最初に向かったのは換金屋だった。 例え世界が違っていても金銀銅はどの世界でも存在するとマリアが言っていたので手持ちの金を売り捌くことにした。 結果を言えば問題無くこの世界の通貨を手に入れた、その際に半分の通貨をグレイシアに渡そうとすると「これはイクス様の資金です。もし仮に私が同じ様に金を換金してもイクス様に全額渡していました」とこの様に遠慮されてしまった。 本当に俺の部下は可愛いなぁ。
そんな事もあり宿屋で泊まれる部屋が無いか聞いてみると
「今は一部屋しかありませんね。それで良いのでしたら用意しますが?」
受付の女性に言われてチラッとグレイシアを見ると小さく頷いた。これはOKのサインだな
「それで構いません」
「分かりました」
受付の女性から部屋の鍵を受け取り2階の一番奥の部屋を開けるとそこにはシングルベットと木の机と椅子だけが用意されていた。俺は一息つく為に椅子に腰を下ろす。 グレイシアは扉の真横に立ち、手を後ろで組んで待っていた
「今は俺達は騎士団の隊員じゃないんだぞ?」
「いえ、例えどんな場所であろうとイクス様が存在する限り私達は貴方の手足の存在であり、飼い犬です」
そう言って嬉しそうに脱ぎ始めるグレイシアを上半身を脱いだ所まで眺めた後に止めた。幾ら俺に好意があるからと言って堂々と脱ぐのは興hじゃなくて倫理的に間違ってるぞ。 それにしてもグレイシアも随分と筋肉を付けたな、見た目からは分からないが確かに筋肉は付いていた。 それと言っておくがグレイシアは【男】だからな?と言うかうちの部隊はアリア以外は全員【男】だからな?
「イ、イクス様?少し視線がイヤらしいですよ?」
上着を着直したグレイシアに頭をかきながら苦笑を浮かべてしまった。暗殺部隊に居るメンバーは全員が超高級娼婦よりも美女や美少女揃いなのでつい目が行ってしまう。もしそう言った店で働いていたらその店は今頃大儲けをしていただろう
「すまない。それと少し話がしたいからお前も座れ」
「はい。全てはイクス様の望むままに」
1度頭を下げてから椅子に座り、しっかりと俺の目を見つめる。グレイシアは仕事ではない時は肉食獣の如く俺を見つめてくる。いや、正確に言うのであれば俺の部隊の全員がグレイシアと同じ視線を向けてくる。 実際に何度か複数人に襲われてそのまま事に及んでしまった事もあった
そして話し合いはこの世界に召喚されてからどうやって速く元の世界に帰るかが重要な事だった。俺が不在なだけで部隊の書類が溜まるのもそうだがアーシャ達が暴れだしてこの世界に俺が居ると分かれば俺を連れ戻すのと一緒にこの世界が消し去られる可能性があるからだ
話し合いの結果はグレイシアが王宮の閲覧を禁じている書物を幾つか盗ってきてそれを読んで元の世界に帰れないかと言う結論に至った。恐らくは今のグレイシアなら誰にも見られることは無いだろう。 そして困った事にこの世界に召喚された影響なのか俺もグレイシアもレベルが大幅に下がっていた。 レベルが本来の半分になっていた時は流石に崩れ落ちるほどに衝撃的だったな
そして話し合いが終わると共に俺は着ていた鎧を脱いで脱いだ鎧はグレイシアの【虚空】と言う一定数の物を異空間にしまうスキルに入れさせてもらった。 なるべく速く元の世界に帰らなくちゃな
男の娘でも余裕で受け入れられるイクス君
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よし、ギルドマスターはマリアの餌にしてやる!中編
朝目を覚めると何故か隣にグレイシアが寝ていた。その理由は昨夜にグレイシアに襲われたからだ。 本人曰く「お風呂上がりの姿を見てムラムラ来たからです」との事らしいがハッキリ言ってグレイシアは色々と大金を叩いてでも相手をしてもらいたい程のテクニックを持っている
そんな事もあり支度をしたのは昼過ぎになり、グレイシアも何事も無かったかの様に振る舞うので俺もその様にしている。
そして今日はこの国のギルドに来ていた。
理由は簡単に言うと身分証とある程度の金稼ぎをしてこの世界にしか存在しない鉱物や道具と言った物を集めてマリアに渡す為だ。 マリアは珍しい物やスキルを複製するスキルがあり元の性能のまま他の存在にフルコピーする程の物を持っている
そんこんなで俺達は今現在ギルドに入る為の手続きをしていた。基本的に受け答えはグレイシアがしていたが話している最中ずっと右手拳を強く握り、ミシミシと言う音を立てながら受付嬢に笑顔で接していた。 何故強く握りしめているかと言うとグレイシアを含めて俺の部隊の居る奴等は人間と言う種族が嫌いだからだ。理由は多々ある。迫害、身売り、生け贄、奴隷と言った人間の汚い部分を見過ぎてきた結果彼等は人間と言う種族を憎んだ。 ハーフの者や純粋に人間の者も居るがやはり部隊以外の人間を強く恨んでいた
「最後にですが魔力量を調べるので此方に」
受付嬢の指示に従って俺達は個室に案内されて水晶玉が乗った機械の様な物が置いてあった
(あ、この展開知ってるぞ。無駄に魔力が有りすぎで色々と面倒な事になるパターンだ)
この先の展開を見越してイクスはグレイシアに小声で此方に来る様に指示するとすぐに此方に来た
「はい。何でしょうか?」
「魔力を普段通りに流すな、普段よりも5割に落とせ」
「了解しました」
イクスの言葉に何の疑問も持つ事無くグレイシアは水晶に手を置いて魔力を流すと水晶の色が透明から赤に変わった
「ルキフグス様の魔力は中ですね」
この世界では魔力を多い順に大、中、小と別れており、一番多いのが大らしい
「お次はクラウン様です」
(俺は元々魔法の才能も魔力も無かったからな。3割くらいで良いか?)
そんな事を考えながら水晶に魔力を流すと今度は白に変わっていた
「クラウン様の魔力は小ですね」
(ふむ、落とさずにやっていたら中にもなっていたのか?)
結果を聞かされてからそんな考えを巡らしながら俺達は再び受け付け前に戻ると他の受付嬢が少し慌てた様子で対応していた。 チラッと原因を見てみると鎧でガッチリと固めた少し厳ついおじさんと灰色のローブを着た老人が立っていた
(強いな。鎧は恐らくは術系を半減以下に威力を落とす類で大剣は何かの加護なのか常時雷を纏ってるな。 それも人間や魔物が塵になる程の威力を……)
(ローブを着た老人の方はノーム(大5師団隊長)やフル姉さんよりは力は下って事はそれなりの魔法使いか)
チラッとグレイシアの方を見ると俺を庇うように一歩前に出てローブの中で短剣を握りしめていた
「あの人達は?」
「この国一番と呼ばれる戦士と魔導師です。戦士の方は王国一の剣使いヤクト・ワン、魔導師の方は万能の魔導師ジュン様です」
受付場から説明を聞いた俺は再び視線を彼らに向ける。今の俺のレベルでは彼等を相手にするのは少し厳しいか、グレイシアなら問題は無いが
「今なら不意を付いて暗殺できますがどうしまうか?」
「いや、今彼等を殺せばこの国を敵に回す。今の俺達じゃそれは厳しい」
グレイシアの提案を理由を付けて否定するとまるで最初っから理解していたのか反論は特に無くその場に止まった
その後は俺達は手続きを済ませてからギルドカードは明日には出来ると言われたので後日取りにギルドに向かうと何故か俺達はギルドマスターの部屋に通されていた
一昔に流行った異世界転生のテンプレの如く物語が進んでいきますね
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よし、ギルドマスターはマリアの餌にしてやる!下編
「良く来てくれたな」
ギルドマスターの部屋に通されて最初に出迎えてきたのはうちの元隊長のアルトリウス(第18師団隊長)を更に筋肉質にした気だるげな男が机越しに挨拶してきた。 俺達を手招きして部屋に入る様に促してきたがそれよりも面倒な事があった。 それはこの部屋に俺達以外にも二人くらい魔法で姿を隠している人間が居ることだった
「…………」
チラリとグレイシアを見ると無表情で視線だけで周囲を見渡した後に俺達部隊にしか分からない秘密の暗号を出してくれた。その場所に気配を向けると確かに人の気配を感じる事が出来たが俺達に害が無ければ特に気にしないでいよう
「お前達の事は大体の事は調べている。そこで1つ俺の頼みを聞いてはくれないか?」
椅子に座るとギルドマスターがそんな感じで話を進めてきた。俺は特に引き受ける気は無いんだがなぁ
「お前達に勇者二人の護衛を頼めないか?」
「あ?」
ギルドマスターの言葉にグレイシアが反応し、声をあげると部屋全体が凍り付いた。 今のグレイシアの一言で部屋全体が物理的にも凍った。グレイシアは感情が高まりすぎると周囲に魔力を噴出して周りの物を凍らせてしまう。普段は感情を剥き出しにする事は無いがイクスや部隊に対して誹謗中傷や利用しようとする物にはこうやって威嚇する事がよくある
「グレイシア落ち着け。今ここで凍らせても意味が無いだろ?」
「……申し訳ありません」
イクスの言葉にグレイシアは深く反省したのか凍っていた物が一瞬で溶けて砕け散った。ただしイクスには何処にも凍った形跡が無い事から無意識でイクスの事は凍らせなかったようだ
「それで?俺達に何を頼みたいんですか?」
視線をギルドマスターに向け、気配を隠れている二人に向けながら話を始めるイクスに咳払いをしてギルドマスターは説明を始めた
説明が長いので割愛するが様は魔王を倒す為に魔法や剣を習わす為に勇者二人はこの国の魔法学園に入れられる事になったらしい。魔王が現れるのは1年後の事らしいので今の内に実力を付けて来いとのことらしい。 そして間違えて呼ばれた俺とグレイシアに二人の護衛を頼むことにしたらしい。 この国の王や各属性を極めた帝達の推薦との事らしい
「それで? 幾ら出すんだ?タダ働きはごめんだからな」
「王からはそちらが望む額をとの事らしい」
望む額か……、俺一人で決めるのも悪いのでグレイシアにも聞くか
「グレイシアはどうだ?」
「はい。先ずは前金で私達が快適に暮らせる為に最低でも中級貴族以上が住む邸を望みます。 勿論生活費を含めて。その後は成功した時に残りのこの国にある禁術と魔剣を全てを報酬として貰います」
グレイシアの発言に俺以外のメンバーが目を見開いて口を開けていた。 うん、普通はその反応が正しいが戦力で言えばそれくらいあってもお釣りが来るぞ(グレイシア一人で)
「ふざけるな!そんな要求が飲めるか!」
机を強く叩くギルドマスターを見ても表情1つ変えないグレイシアは流石だと俺は思うな
「ふざけてませんが?私達は至って真面目に答えてます。 こちらも暇じゃないのですよ?この世界が滅び様が人間が死滅しようが私達にとってはどうでも良い存在ですから」
冷たく良い放つグレイシアにギルドマスターはグレイシアの瞳の奥の冷えきった部分を見て息を飲んだ
「それが出来ないのであれば他を当たってください」
言いたい事を言い終えたのかグレイシアは再び目を閉じて周囲に気配を向け始める
「……分かった。少し待ってろ、今から聞いてくる」
ギルドマスターが部屋から出ていって物の数分で帰って来た。答えはOKだったらし。 ただし邸の準備はしばらく時間が掛かるからしばらくは宿で過ごしてくれとの事らしい。 その際に宿代が入った袋を渡されたのでそれを受けとる
依頼を引き受けた俺達は部屋を出て行くのと同時に部屋に残されたギルドマスターが小声であの女何時か犯してやると小声で言っていたので今度会った時には半殺しにしてマリアの実験台にしてやる。 俺の仲間をそう言った目で見る奴は誰であれ例外無く殺す
そしてそれから数日が過ぎて俺達は魔法学園に入学した
設定では嫁達も男の娘の事は許しているので【仲良く】しても特に気にしません。だから男の娘達も安心だね!
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ちょこっとキャラクター紹介!
名前:イクス・クラウン 年齢:19歳 性別:男
髪の色:灰色→白髪 瞳の色:灰色→深紅
好きな物(者):家族、部隊の仲間達、たこ焼き
嫌いな物(者):家族や部隊を愚弄する者、転生者、山芋
前作の主人公で今作の主人公の一人である。前作から2年余りの時間が過ぎて今では嫁全員が双子を妊娠して16人(その内2人はあの双子)の子持ちの父親になった。イクスの部隊の殆どががイクスが拾ってきた孤児や親を失った子供を引き取って1から部隊員に仕上げたのでそこら辺の魔物や騎士じゃ相手になら無い程に強くなった。他にはイクスに憧れて入隊する者も居た。今では部隊内でも幾つかに分かれて各小部隊に隊長を付けて管理している。 部隊の仲間からは尊敬の眼差しで見られており何かをする度に黄色い声が上がるのは既に諦めていた。ある日部隊員に襲われた(性的な意味)イクスは全員返り討ちにしてからは完全に部隊員達は彼に服従していた。
最近の悩みは夜に嫁達に襲われて朝や昼には暇を見付けては襲ってくる部隊員に頭を抱えている。 イクスは特に男が相手でも気にしません(ガチムチ系は即死します)
名前:グレイシア・ルキフグス 年齢:16歳 性別:男の娘
髪の色:漆黒 瞳の色:漆黒
好きな物(者):イクス、イクスを崇める事、読書
嫌いな物(者):人間、魔族、部隊を愚弄する者、イクスを汚す奴、女(イクスの家族除く)
魔族と人間の間に産まれたが両種族から忌み嫌われて道端に踞っている所をイクスに保護される。最初はイクスの事を警戒していたけど次第に警戒心は消えて今ではイクスの為なら笑顔で自分の喉を切り裂く事や仲間を殺す事に躊躇わない。イクスに拾われてからイクスの素晴らしさに気が付いた彼女は彼を神の如く信仰している。部隊が大きくなった事でイクスに新しい部隊を任せられた一人である。 彼女が抱える部隊は主に暗部の方なので多くは語られない。 因みにイクス襲撃計画を提案した一人である。 イクスを誰よりも愛しており、将来の夢はイクスの子供を産んでイクスの素晴らしさを語り継いでもらいたいと考えている。イクスに拾われた順番は3番目
名前:カーラ・グレモリー 年齢:16歳 性別:男の娘
髪の色:金髪 瞳の色:碧眼
好きな物(者):イクスを崇める事、祈りを捧げる事、生物をミンチにする事
嫌いな物(者):イクスに危害を加える者、部隊を愚弄する者、ミンチになった物、女
元々は天使と人間との間に生まれたカーラだったが両種族の迫害に会い、両親を目の前で殺された後は隠れる様に暮らしていた所をイクスに保護されてからはグレイシアと同じ様にイクスに育てられる。 イクスの為ならば自分が死ぬことになっても恐れはしない。 イクスに任せられた部隊の1つの小隊長をしており、彼女が所属する部隊は治癒専門の部隊で怪我をした者を治す事に特化している部隊なのだが小隊長であるカーラに加虐体質があるせいか治療する者は何時も治療が終わる頃には入る前よりも疲弊している。 彼女が相手をミンチにする理由は両親を殺された憎しみと相手が死ぬ瞬間に浮かべる顔を見て性的興奮を覚えるからである。 その方法は数多く有り、普通にミンチにしたり空中に投げてバラバラにした後にその相手の血を浴びながら肉片を食べると言った物まで様々である。 ミンチになった後は興味が無くなり道端に落ちているゴミ程度の認識に落ちる。その事から周りからは鮮血のカーラと呼ばれるようになった。イクスに拾われた順番は4番目
勇者達
岡田真人
親友の直樹に巻き込まれて勇者召喚された巻き込まれ主人公。特技は剣術で一度見た技は自分の物に出来る(ただし、武器に依存しきった物は不可)
最近の悩みは親友の直樹から熱い視線を向けられる事
坂本直樹
真人の大の親友と回りに言いふらして真人に抱き付く王道系勇者。 王子様系の顔から多くの女性を虜にしてきたが直樹は女性に一切興味が無く、真人の恋人になる為に日々努力している
最近の悩みは真人があまり相手してくれないこと
イクスの嫁達
マリア・クラウン
元第2王女様。現在は王国の王を勤めている。天然チート化け物の一人
出すかは不明
アーシャ・クラウン
元勇者。現在は王のマリアの護衛をする仕事に付いている。天然チート化け物の一人
出すかは不明
フル・クラウン
騎士団魔法部隊の総隊長。現在は騎士団に所属する全ての魔法使いの隊長を勤めている
出すかは不明
アリア・クラウン
第19師団副隊長。現在は隊長のイクスの代わりに訓練を見てくれたりと色々と頑張ってくれている
出すかは不明
アーケスト・フェニックス・クラウン
現魔王。魔王の座を明け渡す事無く現在も魔王として君臨し魔族を導いている天然チート化け物の一人
出すかは不明
ツクヨミ・クラウン
現メイド長。現在はイクスの邸でメイド長として勤めており邸のメイドの全てを動きを把握しながらも的確に指示を送っている
出すかは不明
シルフィリア・アルカード・クラウン
吸血姫、現在は双子のヘンゼルとグレーテルの遺伝子を研究してより良い個体を作る為に部屋に籠っている
出すかは不明
第19師団小隊長
ミルト・マモン。弓兵部隊を任せられている小隊長。ボクっ子で常にイクスの事を考えながら業務に勤しんでいる。イクスに拾われた順番は5番目
フィーリア・レヴィアタン。騎兵隊を任せられている小隊長。一人称は私で通しており、祐介に関する事で何かあるとすぐにキレる事が多い。イクスに拾われた順番は8番目
エリゴ・サタン。追撃隊を任せられている小隊長。 隊の中では唯一俺と言う。 好戦的な性格ではあるが周りを良く見て冷静に戦況を見極める。 イクスに拾われた順番は12番目
ミュラー・ベルフェゴール。魔法部隊を任せられている小隊長。 常に本を読んでいてイクスの声以外には反応を示す事があまり無い。 自身が得意とする魔法は相手を生き埋めにする事である。 イクスに拾われた順番は20番目
アンジェ・ルシファー。護衛部隊を任せられている小隊長。 イクスの事を神と思い込み深く信仰している。 常に優雅に振る舞っているが意外と好戦的な面もある。 イクスに拾われた順番は1番目
ロスト・ベルゼブブ。尋問部隊を任せられている小隊長。 相手の秘密を暴く事を趣味として日々尋問相手の秘密を全て暴いている。 少し傲慢的な態度はあるがイクスの事は誰よりも信仰している。 イクスに拾われた順番は9番目
ラキュース・アスモデウス。 拷問部隊を任せられている小隊長。 相手を徹底的に痛め付けてその表情を見るのが人生の2番目の快楽感じている。 イクスに誉められる為に日々拷問が激しくなってる模様。イクスに拾われた順番は2番目
改めて前作を見てもイクスのお嫁さん達は最強ですね!そして男の娘も強いですよ!(白目)
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テンプレは部下に任して俺は寝る
俺とグレイシアが勇者達の為に転入したのは良いがこの学園は本当にテンプレ通りの学園だった。クラスはA~Dに別れており、Aが最高ランクでDが最低クラスになっている。グレイシアはイケメン君が居るAクラスに編入し俺は巻き込まれ君が居るDクラスに編入した
Aクラスに所属している生徒達は全体的にDクラスの生徒達を見下している。 はっきり言ってかなり不快以外に何者でも無い。 後は人種差別をする輩も居たが流石に見逃せなかったので睨み付けて黙らせた
「さてと、少し寝ようかな」
自己紹介が終わり生徒達を勇者である真人君に任せて俺は屋上に来て人目がつかない場所に寝転がり、目を閉じる。 流石にこの歳で周りと合わせてワイワイする歳じゃないし何よりも巻き込まれチームと組むと絶対に良くない事が起きるに違いない
「イクス様?次の授業はAクラスとDクラスの合同授業で体育館に集まる予定ですよ?」
ウトウトとしていると耳に響く心地好い声にイクスは意識を覚醒させると隣には女子生徒の制服を着たグレイシアが其所に居た。黒を基調とした制服はグレイシアの髪と瞳によく似合っている
「悪いが俺はパスだ。今更友情を確認する歳でもないしな」
「イクス様が行かないのであれば僕も……」
「お前は授業に出ろよ?」
危うくグレイシアが行かない発言をするので慌ててたグレイシアの言葉を被せるように言った
「何故でしょうか?僕があの様な者共に遅れを取ると?」
「いや、お前が他の奴等に劣るわけ無いだろ?それにお前に授業に出てもらう理由もちゃんとあるぞ」
ムッとしたグレイシアにイクスは笑みを浮かべながら答える。テンプレ通りならこの後の展開も分かる
「この後は使い魔召喚と魔石を使って武器召喚だろ?」
「はい。武器召喚の後に使い魔召喚ですね」
「悪いが俺には使い魔は必要ないからな。それとグレイシアには魔石を数個盗ってきて欲しいんだが」
「……分かりました」
少し不貞腐れているグレイシアに優しく頭を撫でると頬を赤くして気持ち良さそうにしてくれた
「さ、そろそろ授業が始まる。行ってきなさい」
「はい。後で必ず迎えに来ますので」
屋上から離れようとしたグレイシアにイクスは思い出した様にグレイシアを呼び止めた
「グレイシア」
「はい。何でしょう?」
「『肉食獣』には気を付けろよ?」
「は、はぁ、分かりました」
イクスの忠告を聞いて今度こそグレイシアは屋上から離れていった。残されたイクスは誰も周囲に居ない事を確認してから懐から手帳を取り出してその中身を見る
「…………これは魔王と言うよりも邪神に近い存在だよな」
次からはグレイシア視点かな?
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使い魔はまさかの同僚!?
ハッキリ言って僕は人間が大嫌いだ。 イクス様に出会うまでに人間の汚さは嫌と言う程に見てきた、だから僕はイクス様と部隊の仲間以外誰も信じないし信用する気も無い。 今回もイクス様の命令でなければ僕はさっさとこの場から離れて他の事をして居ただろう。 僕ごとき低脳な存在がイクス様の考えを理解する事は出来ないけど僕が想像してるよりも遥かに凄い事を考えてるに違いない!! だから僕はイクス様の役に少しでも立てる為に今はこの時間は我慢しよう
教師の指示で幾つか注意されたがどうでも良かったので全て聞き流した後で僕は教師から魔石を受けとるのと同時に2、3個盗って適当な場所でその魔石を全て【虚構】に入れてからその場で待機する事にした
「なあ、そこで暇してるなら俺達と組まないか?」
突然話し掛けてきたのは今回の護衛対象の1人であるマサキ・ヒナタだった。ハッキリ言って興味も何も感じないから断る事にする
「興味が無い。それに私はもう終わってるから」
視線を動かさないで護衛対象に答えると少し驚いた風にしていたがどうでも良い事だ。早くどっかに行ってくれないだろうか……
そんな事を考えてると諦めたのか護衛対象は待っていた他のメンバーの所に戻っていった
それから時間が経過して使い魔召喚の時間になった。僕は順番が来るまでイクス様の事だけを考えていると教師に呼ばれたので使い魔召喚をする事にした。召喚時に部隊の仲間は元気かと考えてると目の前に火花が散ったかと思うと目の前に見知った人物が立っていた
「あら?シーア?何で貴女が私(わたくし)の目の前に居るのかしら?」
僕が召喚したのはまさかの部隊の仲間の一人だった。 煙が晴れて現れたのは深くまでスリッドが入った魔改造されたシスター服を着た人物だった。 彼女の名前はカーラ・グレモリーと言って僕と同じ小隊長の地位に付いて彼女が最も得意とするのは治癒関係なので治癒部隊を任せられている。 隊の中でも上位に入る程に彼女の部隊は何かと重宝している。 因みにカーラの別名は鮮血のカーラと呼ばれている。 何故そう呼ばれているのかはまた今度話そうか
「私、確かイクス様の行方を探して執務室でイクス様の椅子で自制じゃなくて調査してましたのに……」
「おい待て、今聞き捨てならない事を言ったよね?何イクス様の椅子で性欲満たしてるの?バカなの?死ぬの?いや、今ここで殺してあげようか?」
腰に付けていた短刀を手を掛けながらカーラの胸ぐらを掴む
「あら、貴女だってよく部隊の皆の前でイクス様にやられてだらしのない顔を曝してましたよね?その時の光景は今でも思い出せますわ♪」
「よーし、ぶっ殺す!君とは何かと合ったけど今日でこの縁も切れるな!イクス様には僕から言っておくから安心して死ね!」
「あらあら♪貴女の方こそ今日ここで肉片になってイクス様に報告しておきますわ♪」
グレイシアは腰に付けていた短刀を取り外し構え、カーラも腰に付けていたモーニングスターを構える。 お互いにニッコリと微笑みながら得物を構えて胸ぐらを掴んでいたら普通に周りから人が居なくなるのは当たり前たがそんな事を気にしてる余裕は二人には無かった
とそんな馬鹿な事をしていると近くで使い魔召喚を失敗した太った生徒が汚い悲鳴をあげた事で二人は漸く視線を外して悲鳴をした方に視線を向けると
「あれはキメラですわね」
「そうだね。しかも複数の種族が混ざりあったキメラだね」
ライオンに山羊の頭と蛇の尻尾を生やした見事のキメラに二人はしばしばそんな光景を見ながらそんな事を呟いた
「あ、イクス様が言っていた『肉食獣』ってこれの事だったんだ」
「は?イクス様が此処に居るのですか?何処ですか!早く吐きやがれですわ!」
再び胸ぐらを捕まれて揺らされるグレイシア
「ま、先ずはキメラを倒してからね!」
「分かりました!ですが約束を破ったり逃げたりしたら追い詰めて爪先から砕いてやりますわよ!」
そんな事を良いながら二人はキメラに向かって走り出した。カーラのモーニングスターでキメラの顔にぶつけるとライオンの顔だけが吹き飛び壁に激突した。グレイシアも山羊の頭と蛇の尻尾を一瞬で切断することに成功した
まさに一瞬の事で周囲の生徒達も口を開けて驚いていたのは言うまでも無い
金髪ドリルの髪型のシスターがモーニングスターを振り回す絵は想像しにくいですね……
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鮮血のカーラ
キメラ退治を終えたグレイシアは少し疲れた表情を浮かべながら何事も無かったかの様に戻ろうとしたが先程まで腰を抜かして泣き喚き散らしていた豚…デブの生徒が問い詰めてきた
「何て事をしてくれたんだ!あ、あれは僕の使い魔だったのに!」
「知りませんよ。 それにあの場であれを殺さなくちゃ今頃は血の海が出来ていたでしょうね」
突っ掛かってきたデブにグレイシアは冷めきった瞳で生徒を見るが怒りが収まらないのか更に喚き散らす
「それに何なんだよ!お前の使い魔は!そんな只の平民の奴なんか呼ぶ様な平凡n「バキッ!」え?」
太った生徒の言葉は最後まで言われる事は無かった。何故なら隣に立って居たカーラがモーニングスターで太った生徒の下顎を砕いたのだから
「あらあら♪すみませんね。 余りにも汚く喚き散らす豚が居たのでついつい顎を砕いてしまいましたわ♪」
まるで何事も無かったかの様に言うカーラにその場に居た生徒や教師は恐怖に刈られた
「お詫びに砕いた顎を治してあげますわ♪」
「あーあ、私、知ーらない」
グレイシアは太った生徒とカーラから少し距離を取って視線を外した。これから起きる惨劇をグレイシアは余り見たくなかった
「ふふ、では治しましょうか♪」
カーラは砕いた顎に触れる事無く、太った生徒の腕を掴む。 すると次の瞬間に太った生徒の片腕が破裂した。それは 比叡では無く、本当に片腕が破裂したのだ。 破裂した事で血がカーラに飛び散るが彼女は表情を変えずに残った片腕も同じ様に破裂させる
「ふふふ、この感じ久しぶりですわ♪」
声が出せずに泣いている太った生徒を無視して今度は足にカーラは触れると触れた片足はまるで風船が膨らむ様に膨らんだ後に弾けとんだ。 そして弾けとんだ事でその場に赤い血の雨が降り注ぐがカーラは嬉しそうな笑みを浮かべながらその降り注ぐ雨を笑顔で浴びていた。そして残った方も同じ様に破裂させて四肢を失った太った生徒にまるで聖母の様な笑みを浮かべて彼の真横に膝を曲げて屈んだ
「怖いですか?大丈夫ですよ♪神は貴方を助けてくれますから♪」グシャ
その言葉と同時にカーラは彼の腹の中に突き入れた
「神のご慈悲を♪」
「や、やへ!」
手を引き抜きカーラは彼の制服を掴んでそのまま空中に投げると同時に太った生徒の体は綺麗に弾けとんだ。 そしてまた彼女の周りに赤い雨が降りだす
「ふふ、この雨こそが私達人が唯一傷を癒せる癒しの雨です♪皆様もそう思いますよね♪」
ニッコリと微笑むカーラに生徒達は悲鳴を上げて我先にと出口を目指す。それは当たり前だ、何故なら次は自分がああなる未来を想像してしまったからだ
「あらあら♪この神聖な光景を見て逃げるとはどうかしてますわね」
「…………」
その後確りと血を浴び尽くしたカーラはそこら辺に散らばっている肉片を人摘まみしてそれを口に放り込んで味を確かめる
「んー、脂肪が有りすぎますわね」ペッ
「そんな事はどうでも良いからその肉片を元に戻しなよ」
「一通りの神聖な儀式も終わりましたので別に構いませよ」
そう言ってカーラは魔方陣を展開して肉片になった元生徒を完全に修復した
「はい、出来ましたわ」
「うん、それじゃあ僕達も行こうか」
「何処へですか?」
「イクス様が居る所」
「さあ!何をしてますの!速くイクス様の所に案内しなさい!」
「はぁ、本当にカーラは……」
カーラチャンカワイイヤッター
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部下との再会
イクスside
「ふぅ、大体今回の召喚された理由が分かってきたな」
グレイシアに盗ってきてもらった王家の保管室に保管されていた本を読み終えたイクスは一息着く。 今回イクス達が呼ばれたのは本当に偶然らしかったがあの王はどうやら魔王を倒した後にイクス達に罪を着させて勇者に無理をさせようとしていた。 理由は魔王を倒す程の戦力は何れは他国が侵略する口実にされるからだ。 そして魔王を倒した俺達を魔王の手先として認識させて共倒れを狙っていたらしい。 書物の方にも代々勇者の葬り方が乗っている事から、この国は初めっから勇者を使い捨てる気だったようだ
「一番恐ろしいのは神や魔王よりも人間だな」
大義名分の為なら例え世界を救った勇者ですら切り捨てるこの国はハッキリ言って最悪な場所だ
「さて、どうやって逃げるか……」
こんな下らない事で死ぬつもりは無いけどこの世界にしかない物をなるべく集めたいから脱出方法を見付けてもすぐには帰らない事にした
そんな事を考えているとグレイシアの気配を感じてイクスは立ち上がりながら、体に付いたホコリを落とし、グレイシアの方に視線を向けるとグレイシアの隣にはよく見知った金髪ドリルヘアーをした、痴女ギリギリレベルの危うさを持ったシスター服を着たカーラが視線に入った
「カーラ?何でこn「イクス様!」ぐぁ!」
イクスが何故ここに自身の部下のカーラが居るのかを聞こうとしたがそれよりも早くにカーラが動いて全身を使ってイクスに抱き付いたせいで、そのまま床に押し倒す形になってしまった。 その際に背中に強い衝撃を受けたのは内緒だ
「イクス様の匂い!体温!味!そして最後に鼓動!ああ、主よ、このお道引きに感謝いたします!」
暴走したカーラは祐介の上着を無理矢理シャツまで脱がせて舌で祐介の体を舐め始めた。 その光景を見て流石のイクスも顔を引き吊りながら何とか引き剥がす事が出来たが体がベトベトになってしまったイクスはグレイシアの方に視線を向けるとグレイシアは無言で魔法を発動させてイクスの汚れを全て消した
「……何故ここにカーラが居るんだ?」
先程までの光景を一度横に置いてイクスはカーラに向けて質問すると
「はい、私がここに居る理由は使い魔召喚に巻き込まれてシーアに召喚されたからです」
ああ、やっぱりテンプレ通りの展開になったな。恐らくはイケメン君は女神かそこらで、真人君はドラゴンか堕天使か大天使かそれとも別の何かを召喚してるだろうなぁ。草生やす奴だったら悪いが死んでもらうが
「カーラ、この世界の事情はどのくらい知っている?」
「先程此処に来るまでにシーアに全て聞きました」
流石はグレイシアだな。 こう言った事は部隊の誰よりも早く、尚且つ正確な情報を伝えてくれる
「そうか。 なら今からこっちで調べた事を二人にも話すぞ」
いやー、変態僧侶系カーラちゃんはこの先キャラが立つのか心配ですね
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今後の方針と勇者達の処遇
「こんな感じで王族は俺達を切り捨てる様だな」
先程まで書物の内容を二人に話してみると案の定鬼の形相を浮かべて手に持っていた石(カーラに投げ付けていた)を砕いていた、それも手に残った石が砂になるほどまでに潰されていた
「イクス様、ご命令してください!あの様な愚かな王族を一刻も早く殺せと!」
「そうですわ!イクス様を捨て駒扱いなど万死に値しますわ!主もこの殺戮は認めてくださります!」
自身の武器を取り出して殺る気満々の部下二人を見てイクスは小さい溜め息を吐く。此処に他の小隊長達が居ない事に本当に感謝していた。 もし仮にこの場に全部隊の小隊長達が集まっていたらイクスですら止める事が出来ずに1日で城に居る人間は例外無く殺され、王国の国民と言うことで一般人達にも被害が出ていただろう。 1日で王国の8割が死体に変わっていただろう
「お前等は少し落ち着け。 そんな事だから何時もアイツ等に小馬鹿にされるんだぞ?」
「「うぐっ!!」」
この二人は本当に頭に血が上り易い為に行動が少しと言うよりもかなりイノシシ思考なのがどうなのかと日々考えている
「今の所は俺達に害は無いから見逃しているが、今後何かあったら俺に報告しろ、それが些細な問題でもな。俺もお前達に情報を渡す。良いな?」
「「ハッ!」」
情報は何よりも大事だ。 例え些細な情報でも見落としてしまえば此方が危なくなるのは分かりきっている。 だからどんな小さい情報も部下には報告させる。 それが生き残る事なら尚更だ
「イクス様、勇者の方はどう処分致しましょうか?」
「勇者か……」
正直言って今の彼等を助けるメリット一切無いし、助ける理由も無いからどうなっても俺達にとってはどうでも良いんだがな
「お前達の意見を聞かせてくれ」
「僕は顔が良い勇者には好感が持てるので出来れば助けても良いかと」
「まあ!シーアはあんな顔だけの男に靡くのですね?イクス様を裏切るとはぶち殺すぞ?」
グレイシアの返事に何時もの口調が消えたカーラはモーニングスターを手に持ち、グレイシアに向けながら殺気をぶつける
「カーラ、落ち着け」
「ですが!」
「落ち着け! 理由を聞かせてくれるか?」
イクスの強めの言葉にカーラは渋々と言った感じでモーニングスターをしまうが殺気だけは先程よりも強くグレイシアにぶつける
「あの勇者は僕達に似ている所を感じました」
「……それは容姿とかの意味でか?」
「いえ、根っこの部分です。 僕達はイクス様に救われました。 そして僕達は部隊の仲間とイクス様の奥様達しか信用できません」
「…………」
「僕達はイクス様に対して強い依存をしています。 イクス様が望むのであれば僕達は喜んで自害をします。 恐らくはあの勇者ももう一人の勇者に依存しています。 それもアーシャ様の様に強い依存心です」
「アーシャと同じか……」
グレイシアの言葉に頭の中でアーシャを思い浮かべた。 確かにアイツは生前の頃から異常な程の依存心があり、アーシャの話によればあのツンデレの精神を破壊しかけた程だったとか
「それにあの勇者も僕達と同じ臭いがしてましたし」
「……一応聞くが何の臭いだ?」
「僕達と同じ様に一人の男性を愛する狂った獣の様な臭いで」
「まあ♪」
その言葉を聞いて俺は膝から崩れ落ちた。 何で最近のイケメンはヒロインとイチャイチャするよりも親友とイチャイチャするんだよ!多くないか!俺か!?俺が原因なのか!そうだったらごめんなさい!
「ですからあの勇者を一人前の【女の子】に仕上げたいと」
「ふぅ、シーアの熱意分かりましたわ。私もシーアの意見に賛成ですわ。 それとさっきは誤解して武器を向けて申し訳ありませんわ」
待って!カーラは何を納得したの!最近俺の回りに男付きの人が集まる理由はお前達の影響か!街を見回りしてる時に視線を感じるのはお前達のせいか!
その後勇者達の処遇は彼等の行動次第で一緒に助ける事にした
イクス君のお腹に穴が!誰か胃薬を!
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試合は実力が同じか少し上が適切だと思うよ
最近の胃痛の悩みの原因の一部を見つけた俺は時間も時間なので教室に戻ると教室が騒がしかったが無視して自分の机に座り、持参した小説を読み始める。 この作品は妻であるマリアが作ったホラーミステリーなのだが中々に面白いので愛読しているのだ、犯人が毎回意外な人物でトリックも思い付かない様な仕掛けをしてくるから新刊が出る度に俺はそれを楽しみに読んでいる
「なあ、ちょっと良いか?」
小説を楽しんでいた所を邪魔されたせいで多少不機嫌になったイクスは声を掛けられた方に向くと護衛対象の岡田真人が話し掛けてきた。 内心舌打ちをしてから真人の方に向き直る
「……何だ?」
「さっきの授業に居なかったが何処行ってたんだ?」
「少し体長が悪くてな」
愛想笑いを浮かべながら適当に誤魔化した後に小説に目を戻す。 生憎と俺はテンプレに付き合うほどお人好しじゃないんでな。 今日中にこの新刊を読み終えたいんだよ
読んでる途中に教師が来たので読書を中止して教師に視線を向けると次の授業の説明をされた。 次の授業はAクラスと合同で練習試合をするので急いで体育館に集合との事らしいが全員が顔を真っ青にしていたが何かあったのか?
体育館に集まるとAクラスの連中も青い顔をしてブルブルと何かに怯えていた。 アイツ等は一体俺が居ない間に何をしたんだ?
「イクス様」
声を掛けられて振り向くと微笑みながら近付いてくるグレイシアとカーラに回りは道を開けて必死に目を合わせないようにしていた
「……一体何をしたんだ?」
「私達は特に何もしていません。 私達には有象無象の考える事は分かりません」
本当にどうでも良い事と思ってるのかグレイシアは俺の側で待機し、カーラは一体何処で手に入れてきたのか調理された燻製肉を淡々と食べてるし、でも美味しそうだから少し分けてもらった
そしてそこからは教師が来て試合の事を話していた。 くじ引きで決まった相手と対戦する形式らしい。 なので同じクラスの奴と当たったりA対Dになる事も十分にあり得る
そして始まった試合は何れも低レベルな試合で欠伸が出る程に退屈すぎで暇だった。 この程度の相手なら俺の部隊の新人が相手でも余裕だな
そんな事を考えてるとグレイシア達の番になったので対戦相手を見ると丸々と太った男子生徒だった。 そしてその男子生徒はグレイシア達の顔を見ると泣き叫びながら試合を放棄して逃げてしまった
(本当にアイツ等は何をしたんだ?)
「次、クラウン!」
名前を呼ばれたので思考を一度切ってからイクスは前に出ると同じクラスの護衛対象の岡田真人が対戦相手だった
「使い魔、魔武器の使用を許可する。 相手が参ったか気絶したらその場で試合は終了する。 では始め!」
教師の合図と共に真人はイクス目掛けて突撃してきたがイクスは何の焦りも無く、事前に用意していた鉄の盾で真人を受け止める
「なっ!?」
「どうした?お前の力はそんなものか!」
驚いている真人を無視してイクスはがら空きである真人の脇腹に蹴りを入れて距離を取りながら相手を観察する
(剣術や踏み込みはまあまあだな。 これは前の世界では剣道をやっていた落ちか?剣が正直過ぎるのも考え物だな)
盾で全ての攻撃を弾きながらそんな事を考えていると不意に後ろから気配を感じてその場を離れると光の槍が突き刺さっていた
「悪い。ミスった」
「いや、今のは俺のミスだ」
真人の隣に降り立ったのは天使の見た目をした男が申し訳無さそうに謝っていた
「天使……いや、智天使クラスか……」
イクスの言葉に二人は驚いた表情を向けながらイクスを見詰めてくるがそんな事を無視してイクスは二人に仕掛ける。 鉄の剣で真人に仕掛けるがギリギリの所で智天使に邪魔をされたが直ぐ様に剣を手放して盾で智天使の顔を殴ってから落ち掛けている剣を掴み取り真人の首スレスレに刃を向ける
「勝負あったな……」
その言葉と共にイクスは興味を無くしたのか剣と盾をしまってその場から離れていった
キャラ紹介の所にカーラと勇者達のプロフィールを更新したので興味がある方は是非見てください
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小隊長達のお茶会
第19師団隊長イクスが納める部隊には幾つかの部隊が存在し、各部隊に小隊長が置かれている。 普段は仕事で会えない彼女達がその日はたまたま何人かが集まる事が出来たので久々に細やかなお茶会が始まった
「はぁ、最近イクス様に抱いてもらってない……」
「……キミの頭は遂に壊れたのかい?」
「はぁー?僕の頭が何時壊れたの?逆に聞くけどキミの方も随分と壊れてる様に見えるけど?」
「は?キミと一緒にされるのは屈辱以外に何者でも無いよ」
「「…………」」バチバチ
「止めなさい!全く貴女達はどうして顔を合わせる度に喧嘩をするのかしら?シーア、ミルト」
彼女の名前はミルト・マモン、イクスに弓兵部隊を任せられている。 ボクっ子でイクスを見付けてはおんぶをせがむ可愛らしい男の娘
【衣装はFGOのアストルフォを思い浮かべてください】
「コイツがボクのイクス様に汚らわしい事を言ったからだよ!」
「誰が誰の者ですって?」ギロ
「ひっ!」
「顔が怖いよ。フィーリア」
「あら、ごめんなさい」
グレイシアに指摘された人物の名前はフィーリア・レヴィアタン。 イクスから騎兵隊を任せられており、フィーリアが率いる騎兵隊は国一と噂されるほど。 ただし少し短気なので扱いは難しい
【衣装はTOBのベルベット・クラウンを思い浮かべてください】
「何で俺がこんな馬鹿共と一緒に休憩しなきゃいけないんだか……」
「あら、エリゴったらまだそんな野蛮な口調が治ってないのね」
「悪いが俺はお前みたいに自分を騙せる程に嘘が得意じゃないからな」
「あ?やんのか?脳筋猿が……!」ビギビギ
「ああ、良いぜ!!今日と言う今日は決着をつけるか!!」
カーラと睨み合う人物の名前はエリゴ・サタン、イクスから追撃部隊を任せられている。 彼女達の部隊から逃げられた者は居ないと言われる程に
【衣装は偽りの仮面のノスリを思い浮かべてください】
「……はぁ、静かに本も読めない」
5人の騒ぎに一切関わらないで本を読んでいた眼鏡を掛けた少し気だるい雰囲気を出しながら用意した紅茶に口を着ける
彼女の名前はミュラー・ベルフェゴール、イクスに魔法部隊を任せられている。 彼女が率いる魔法部隊は相手の足場を崩し、そのまま生きたまま生き埋めにするのがポリシーだとか。
【衣装はゼロの使い魔のダバサを思い浮かべてください】
「おやおや、これはまた彼女達の暴走でお茶会は無しですかね」
「ハッ、これだからガキは……」
「余りイクス様が居ない所で暴れられても困るのですが……」
彼女達の名前はアンジェ・ルシファー、ロスト・ベルゼブブ、ラキュース・アスモデウス、彼女達はイクスから護衛部隊、尋問部隊、拷問部隊と言った部隊を任せられている
【アンジェの衣装はfateの黒セイバーの衣装をイメージしてください】
【ロストの衣装はFGOのクーフーリンオルタの衣装をイメージしてください】
【ラキュースの衣装はデート・ア・ライブの時崎狂三のイメージしてください】
会話の流れからでも分かる様に彼女達、小隊長達は物凄く仲が悪いです。 顔を会わせればお互いに嫌みを言い出しては訓練と言う名の死合をしてイクスに拳骨と説教を食らっている
そして今現在来ていない他のメンバーも大体がお互いに仲が悪いが決して業務に支障を来したりはしていないのがせめてもの救いだった。 最近は何かと胃薬を必要としているイクスにとっては有り難いことだった
「キミが死ねば新しい小隊長は誰になるのかな?」
「気になるのなら殺してあげようか? そしたら分かるかもよ?」
「貴女達!」
「よーし!武器を取りな!今日こそお前との因縁を切ってやる!」
「出来るものならやってみてくださいな♪」
「……五月蝿い。沈めるよ?」
「はぁ、僕はイクス様の所に行ってるよ?」
「そうだな。私も付いて行くか」
「あ、付いて行きます」
その後四人の小隊長が部屋で暴れ回ってるとの報告を受けたイクスが暴れ回っていた馬鹿四人を鉄拳制裁をして事件は終息した
「このお馬鹿共めが!報告書を書く俺の身にもなれ!」
「「「ごめんなさい!」」」
そして案の定イクスはその日、執務室で徹夜をした
うん。イクス君マジ不憫
でもそんな部下でも可愛くて仕方ないんですよね
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休日の日には何故かよくエンカウントするよね
あの対戦から何日か過ぎて今日は学園が休みで俺達は伸び伸びと約束通りの屋敷に住んでいるがはっきり言って住人が3人だと暇だと気が付いた。 家事や洗濯と言った物は全部二人がやるからする事が無かった
普段なら山程の書類を片付けたり、部隊の稽古をしたり、会議に出たり、子供達や妻達の相手をしたりと自分に割く時間は無かったからいざ休みを与えられると暇だ……
ギルドカードも作ってからは1回も使用していないからランクも一切上がってないからモンスター討伐も出来やしない。本当に暇だな…………
「……散歩に行くか」
最終的に悩みに悩んだ結果俺は適当に近くを散歩する事にした。 これでは休日の全国の暇を持て余したお父さんじゃないか。 まあ、俺も一応はお父さんなんだがな
散歩に出たのは良いが特にこれと言った興味を引く物は無いな。 酒はたまにゆっくりと飲みたい時に寝る前に飲むし、女が商売している店には元から興味が無いし、名店や隠れ屋等は初日に全て見付けて品揃え元から覚えてるから意味が無いしな
そんな事を考えながら歩いていると目の前の女性専門店にグレイシアとカーラが何かを探していた。 そしてよく見れば隣には勇者の片割れが紙袋を持って何やら真剣な眼差しで口紅を見ていた
「……いやいや、まさかな」
最近何故か二人が街に出掛けては大量の化粧道具や変装道具や魔法薬と言った物を集めてるからと言ってそんな筈は無いだろう……
これ以上見ていると何故か駄目になりそうだったのでその場を離れた。 そして気がついたら飲食店中心の場所に来ていた
「そう言えば腹減ったな。何処か食べて行くかな」
そう言ってキョロキョロと辺りを見渡してみると左から怨念の様な存在を感じてそちらに視線を向けると長身美女の白髪の女性が涎を垂らしながらサンプル品を眺めていた
「…………」
はっきり言って物凄く逃げたい。 絶対にアレと関わると良い事が無いと俺の今まで作り上げてきた勘がそう言っている!
「うぅー、お腹すいたよぉ……」
その心からの声に俺の中の躊躇いが消えてしまった。 どんな場所であろうと俺は困っている人が居れば見捨てられない性分らしい
「折角の美人な顔が台無しですよ?」
「ふぇ?」
イクスの声にショーウィンドとにらめっこしていた女性が視線を上げると困った顔を浮かべながらイクスは会話を続ける
「そんなに見てるのなら入れば良いんじゃないか」
「あ、えっと、今お金が無くて……」グゥー
彼女の言葉と共に彼女のお腹から小さい音が聞こえてきて、イクスは小さい溜め息を吐いてから彼女の手を掴む
「ほら、行きますよ」
「え?」
未だに状況を飲み込めていない彼女をイクスは気にする事無く店の中に連れ込んだ
何時か嫁さん達に刺されないかと心配になりますね
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上が駄目だと下も色々と大変なんだなぁ……
「ご注文は?」
「俺はこれとこれで。貴女は?」
「え?えっと、じゃあ、これとこれで」
「畏まりました。少々お待ち下さい」
注文を聞き終えた店員は奥へと消えた事を確認して女性に視線を向ける
「先ずは自己紹介しませんか?俺の名前はイクス、イクス・クラウンです。 貴女は?」
「あ、えっと、私の名前はオフィリア・ダルクです」
「えっとダルクさん?」
「オフィリアで大丈夫ですよ。 そちらの方が呼び慣れているので。 えっとクラウンさん?」
「自分もイクスで結構ですよ」
お互いに自己紹介を終えてからオフィリアは何処か落ち着かない様子を示していた
「どうかしましたか?」
「あの、私今持ち合わせがなくて……」
「ああ、その事ですか?安心してください。 今回はオフィリアさんと知り合いになれた事に対してのお祝いに俺が奢りますよ」
「い、いえ!悪いですよ!」
「大丈夫ですよ。 それにオフィリアさんくらいの美人と食事が出来るなんて本来ならお金を出す程ですしね」
「まあ♪」
イクスの冗談にオフィリアも口に手を当てて驚いた表情を浮かべた後に小さな笑みを浮かべる
「もし、食べ足りなかったら注文をしてくれて構いませんからね」
運ばれて来た料理を見てオフィリアは目を輝かせながら置かれた料理に感謝の言葉を述べてから食べ始める。 食べ方が汚い所か王族の様な品のある食べ方で出された料理を次々と食べていく
料理を次々と食べていくオフィリアを眺めながら祐介は彼女の容姿を改めて確認した
金髪碧眼で腰にまで伸びる綺麗なロングヘヤーに整った顔に肉付きもそこらに居る女性よりも遥かに良い。まるで何処かの旗を持って戦う聖女様を思い出すな。 しかもかなりの大食いだし……
「ん~♪お腹が減っていたから普段よりも更に美味しいですぅ♪」
料理を頬張るオフィリアに祐介は何も言う事は無く、ただ静かに自分の分の食事に手を付ける
「ふぅ、御馳走様でした♪」
「本当によく食べたね」
あれからかなりの量を食べたオフィリアは満足気に頬を緩ませた表情を浮かばせていた。 俺は店員から差し出された料金を見て小さく溜め息を吐きながらオフィリアに向き直る
「さて、話を聞かせてもらえないか? 何で【天使】が地上に居るのかを」
「…………」
イクスの言葉に先程まで笑顔を浮かべていた天使は表情から笑みを消して祐介を見る。 その表情はまるで能面だ
「何時から気が付いていたのですか?」
「君がガラスに張り付いてる頃からだな」
仕事柄気配には敏感になっていたがまさか天使が人間が経営している料理店のガラスに張り付いてるとは思わなかったがな
「……貴方から魔族の気配もしませんし、良いでしょう。 食事を恵んでくれた恩として先程の質問に答えましょう」
「私達は逃げた元智天使様を探しています。 数日前に忽然と姿を消していました。」
「智天使ねぇ」
そう言えばあの巻き込まれ勇者君の使い魔が智天使だったな。100%あれだろうなぁ
「因みにその智天使は何かやらかしたのか?」
「そうですね。 複数の女性天使との不倫ですかね」
……かなり面倒な存在だったな、アイツ
「だから彼の息の根を止めて首だけでも持って帰らないと大天使様に怒られてしまうんですよ」
こいつらも大変だな。流石にこのまま帰すのは可哀想だからヒントでも教えるか
「その智天使ならこの前見たぞ」
「本当ですか!?」
暗い表情から一気に希望に満ちた顔になるオフィリアに少しドキッと来たのは内緒だ。 バレたら殺される……
「ああ、少し前に智天使を使い魔にしている奴を見掛けたが顔までは分からなかった」
「いえ!それだけでも十分な情報です!ありがとうございます!このご恩は何時か必ず返します!」
凄い勢いで席から立ち上がったオフィリアは店から出ていってそのまま人混みの中へと消えていってしまった
「…………帰るか」
会計を済ませてから近くにあったお土産を買ってから帰宅した
オフィリアと会ってから数日後にある事件が起こった。それは複数の村が何者かによって壊滅させられると言う事件だった。 生存者は0で村に来た商人がこの事件をギルドに報告したと言う事だった
「ふふ、お父様は一体何処に居るのかしら?」
「ガウガウ!」
「あら、今度はあっちね?なら行ってみましょうか♪」
この世界に魔王よりも恐ろしい存在が現れた模様
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悪魔の様な少女
その日は何時もの様に晴れた良い天気だった。村には5,60人の村人達が平和に暮らしていた。 そんなある日、村に貴族の様な衣装を着た少女が村を訪ねてきた。 近くに居た村人が何か用が有るのか聞くと
「この村に黒い鎧を着た若い男性は来ませんでしたか?」
と可愛らしい笑顔で村人に微笑むが顔半分を包帯の様な物で隠されていた事で村人は何処か違和感の様な物を感じたが村人は
「いや、この村にはその様な人は居ないな」
と答えると少女は少し残念そうな顔を浮かべながら「そうですか」と言ってそのまま村から出ていってしまった
少女が去ってから数日が過ぎた頃に村人達は異変を感じた。 ここ最近になって飼っている犬達は毎日吠えていたかと思うと急に怯えだして部屋の隅に隠れていた。 他にも近くの森に普段は居る獣達や鳥達が姿を見せる事が無かった
そんなある日だった何時もの様に眠っていた村人は外から何やら騒がしい物音が聞こえてきたので眠たい目を擦りながらドアを開けるとそこには地獄が広がっていた。周囲の家が燃えて村人達は逃げ惑うがそれを逃がさない様に三つ首が生えた犬の様な存在が村人達を襲ってはその肉を貪り、双頭の犬の様な存在は家を焼き払いながら逃げ惑う村人達を焼き払い、最後は銀色の様な美しい毛色をした狼が目にも追えない速度で村人達を食い殺していた
村人は何が起こってるのか分からずに少し呆けていると
「あら?まだ生き残りが居たのね」
あまりにも場違いな声色に村人は声がした方に視線を向けると数日前にこの村に来た貴族の様な衣装を着た少女だった。 真っ白なワンピースには所々に赤い染みがあり、少女の顔にも血が付いていた
「私達お腹が空いていたので今日はここでお夕食なんですよ♪」
少女は何でも無いような風に答えるが村人は少女の姿を見て震え上がった
「ふふ、今日は中々栄養が有りそうな物が居てとても嬉しいです♪」
何故なら数日前に見た少女の姿とは似て居なかったからだ。 少女の体半分は植物のツタが絡み合っていたり腕からは複数の根が生えておりウネウネと蠢いていた。 そして何よりも目を引くのは少女の左顔には色んな花が埋め尽くす様に咲き誇っていた
「これもお父様に会う為の我慢です。だから」
「ヒッ!た、助け「グシャ!」モゴッ……」
村人は少女から逃げようとするが足に木の枝が絡み付き、逃げられなかった村人は少女の根が生えた腕に眼球と口の中に無理矢理入れられて数秒痙攣した後にその場に崩れ落ちた。 先程まで逃げようとしていた村人は全てを吸い出されたのかミイラの様に枯れ果てた姿に変わっていた
「まあまあね。ケロちゃん!オルちゃん!フェンちゃん!そろそろ行きますよ!」
少女の声に獣達は補食を終えて少女の前まで近寄りその場に座り込む
「ここでもお父様の手懸かりは無かったですね。 そろそろ大きい街に向かいましょ。 ここから近い国は何処かしら?」
「ガウ!」
「あら、地図ですね? えっと聖国ですね。 私あまり神聖な所は好きじゃないですがお父様に会う為には仕方ないわね。行きましょうか」
少女は三つ首の犬の様な獣の背に乗って聖国の方に向かって行った
それから数日後に依頼で来た勇者一行が村の悲惨な惨状を王国に報告に戻った
一体誰がこんな酷いことを!
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所詮ランクは何の意味もない
テンプレの1つに何故か学園側が用意したギルドの依頼物をやると言う流れがあるが実際に体験すると何と言うか面倒以外に何物でも無いな
「今日はよろしくな」
「ああ」
そして今俺は岡田真人とその仲間達と一緒にギルドに来ていた。 グレイシア達にはもう片方の奴に着いてもらっている。そらに何故かグレイシア達の事を師匠と言い初めてる事に俺は何処か諦め始めてきている
そして現在俺達はギルドに来ていて学園が受けた依頼書を手に受付嬢さんに正式に許可を取りに来ているわけだ
。今回依頼された内容は近くの村の付近で狼が数頭出てくるから討伐してくれとの依頼らしい
「此方の依頼は最低がDランクからですので皆様のギルドカードの提示をしてください」
受付嬢の言葉に全員がギルドカードを提示し始めたので俺も提示する。 流石に最低ランクのEだと何も出来ないからDには上げてあるぞ
「はい、確認しました。 討伐した際にはキチンと討伐の証を持って帰ってきてくださいね」
ギルドカードを返してもらってからメンバーが全員外に出たのを確認してから自分も外に出る。 前を歩くメンバーは楽しそうに会話をしながら歩く姿を後ろから見ながら頭の中では帰った時の書類の山に頭を痛めていた。アリアが代わりにやっているだろうが重要書類は自分がしないと溜まっていくから帰ったらしばらくは徹夜で執務室で缶詰なんだろうなぁ……
「なぁ、クラウンはどうなんだ?」
「何がだ?」
つい他の事に意識が行っていて突然話を振られて少し動揺したが回りに悟られずに聞き返す
「いや、だからな。 クラウンのギルドランクはどうなんだって話だよ」
「ああ、その事か。 俺はDランクだよ」
イクスの発言に全員が驚いているが本人は気にした様子も無くメンバーの前を歩き出す
所詮はギルドが決めたランクなのでそれが本人の本当の実力にはならないし、俺みたいに力を押さえてわざとランクを低くしている奴等も大量に居る
それにここで永久に暮らす訳じゃないしある程度の地位と金さえあれば後はどうでも良いし知ったことでは無い。 例えこの世界が滅び掛けていても俺は手を貸さない、何故なら俺はこの世界の人間じゃないからだ。 その世界の事はその世界の人間がどうにかするのが世の決まりだ。 下手に干渉などしたら後が大変だからな
多少話はズレたが黙々と歩いていると目的の村が見えてきた。 そしてその村の前に見覚えのある人影が見えた。
あれは……
「あ、イクス様ああああああああああああああ!!」ドン!
「グハッ!」
そこには何故かグレイシア達が居て、イクスを見つけた瞬間にグレイシアとカーラは全速力でイクスにタックルを食らわせて抱き着いてきた
(何故お前達は俺が行く所に先回りしてるんだ……)ガク
イクス君のお腹に更にダメージが!
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狼はな!手なずければ愛らしいんだぞ!
二人にタックルを受けてからしばらく経ってから俺達は森の奥に進んでいた。 何故森の奥に進んでいるのかと言うと依頼の狼の姿がその奥に有るからだ。 そしてグレイシア達はその森に住むキラーラビットの討伐との事らしいが……
そして現在グレイシア達の頭に大きなたんこぶが出来ているが気にしないでくれ。 最近何かと風紀を乱す現況にお灸を据えただけだから気にしないでくれ
「どうやらここの様だな」
真人の声に全員が足を止めて各々の武器を取り出す。 さて俺は少し気配を消してお手並み拝見と行きますか
「ふむ、全体の動きが悪いな。 彼処の場合は見方を守りながらカウンターを入れた方が確実なんだがな」
戦闘が始まってから少し経ったがやはりより即席メンバーではチームワークはこのくらいか
「クゥーン……」
チームメイトを眺めていると足に何か引っ張られて視線を下げると仔犬くらいの大きさの真っ黒な狼が俺を見上げていた
「……お前はあの狼と毛色が違うんだな」
「アウ!」
持ち上げてみると尻尾が引き千切れるくらいに尻尾をブンブンと左右に揺らしながら純粋な目で俺を見詰めてきた
「お手」
「アウ!」
「お代わり」
「アウ!」
「ちんちん」
「アウ!」
「……メスか」
「キューン……」
ついでに雄雌を確認したら仔狼に泣かれてしまった。 コイツは随分と人懐っこいな。 狼は仲間意識が強く、外敵には警戒心しか見せないはずだが
「アウ!アウ!」
抱き上げた狼は俺の腕から抜け出して俺の頭をよじ登って頭のてっぺんにペタんとお腹をくっ付けて、まるで此処が自分の指定席だと言わんばかりに仔狼の目が輝いていた
そして何度か頭から下ろしては腕の中に入れるが抜け出しては同じ所に居座るので流石に俺も諦めた
「……もしかして付いてくるのか?」
「アウ!アウ!」
当然と言わんばかりの表情を浮かべながらキラキラした目で見てくる仔狼に俺はどうしたものかと考える。 仮に飼ったとしてもアーシャ達が許すだろうか……
『家には狼を飼う必要性は無いでしょ!返してきなさい!』
『……非常食』
『実験に使って良いのでしたら』
……駄目だ。あの3人に見付かったらこの狼の命が無くなってしまう!
「仕方無い。お前の処遇は保留と言うことで連れて帰る。何か反論は?」
「アウ!」
無い!と言わんばかりに高らかに答える仔狼に俺は何処か家の小隊長の一人に似ている事で笑みが零れてしまった
「この糞狼が!貴様ごときがイクス様の頭の上に乗るとは万死に値する!」
「アウ!アウ!アウ!アウ!ウウウウウ!」
依頼が終わる頃に再び合流したグレイシアが頭の狼を見て血相を変えて仔狼相手にマジギレしてる所に俺はどうすれば良いのだろうか……
ここで遂にイクス君の癒しが登場か!?
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たまには自分で探すのも良いもので
※今回投稿が遅れた理由は主にFGOの影響です。 オフィリアちゃん可愛いですね
仔狼を飼ってから1週間が過ぎたが相変わらずこの仔狼は俺の頭か肩に乗ることが多かった。 俺が移動すれば仔狼が付いて来ては必死に追い付こうと頑張るけど追い付けないので最終的には仕方無く肩に乗せて歩くと周りから物凄い注目を浴びる事になってしまった
あ、因みにコイツの名前はクロマメになった。 最初は蘭丸とか絶丸とかにしようとしたがクロマメがこれを拒否して悩んだ末にクロマメに決定となった
クロマメを飼う事になった初日は色々と酷かった。 少しトイレで席を外して戻ってくるとカーラがモーニングスターを振り上げてクロマメを追い詰めていた。 しかも笑顔を浮かべながらだ。 その後は慌ててカーラを止めてから色々と事情聴取をしてからクロマメを飼う事を伝えるとグレイシア同様にブチギレていた。 何故だ
そんな波瀾万丈な事もあり、俺は現在とある場所を目指していた。 そのとある場所と言うのは
「へへ、この女は良い金になりそうだぜ」
「売る前に少し味見をしようぜ!」
「俺が1番な!俺が追い詰めたんだからな」
路地裏に入ると男三人が気絶した女を犯そうとしている場面に遭遇した。 いや、まあ、想定の範囲内なんだがな
「あ?誰だてめぇ……」
「失せろ!俺達はこれからお楽しみなんでな!」
「ぶち殺すぞ!」
「はぁ、何時の世界もこう言った屑共は居なくならないんだな」
イクスの独り言が聞こえたのかどうかは分からないが男達が一斉に襲い掛かってくるがイクスは動じる事なく頭に乗せたクロマメを乗っけたまま男達の目に追えない程の速度で剣を抜いた
「ま、所詮はこの程度か」
剣を鞘にしまうと男達の頭はずるりとずれて地面に落下してしまった。 恐らくは男達も何が起きたのかなど理解できてないだろう 。 首から上を無くした男達の懐やポケットを探っているとお目当ての物が見つかった
「『奴隷商人マルット』…………アタリだな」
イクスが探し求めていた物が見つかり多少なりとも情報を手に入れることが出来た
「後はこの女を起こして帰るだけだな」
その後、倒れている女性を起こしてからイクスは帰り道にクロマメと一緒に屋台の出し物を買い食いしながら帰宅した
「イクス様♪今日は私と一緒に寝ましょう♪」
「……たまには一人で寝たいんだが」
「駄目ですわ!1日でもイクス様の床を離れては何時他のビッtこほん!女性を襲うか分かりませんからね。私が夜のお相手を致します」
「いや、そこまで俺は性欲は強くないからな?」
「ダ・メ・ですわ!」
カーラのグイグイ来る性格にどうしたものか悩んでいると
「そうは行かないよ! イクス様とは僕と寝るんだからね!」
「また貴女ですの?シーア!」
「いい加減諦めなよ。 イクス様は僕と寝たいんだからね!」
「いや、誰もそんな事は……」
「ふん!そんな事ありませんわ!」
カーラとグレイシアの口論は既に火が付いており既にイクスには止められなくなっていた
「……よし、クロマメ寝るか」
「アウ!」
今の所はクロマメがトップでイクス君の癒しに入っています。 主に胃の刺激を押さえてくれる意味で
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奴隷売買のイベントは主人公達が来るよりも早く終わらせるのがミソだぞ♪
「奴隷商人ですか?」
「ああ、ここ最近どうにも奴等の動きが目に余ってきたからな。 ここは一つ全員皆殺しで行こうと思ってな」
時刻は既に真夜中を越えており部屋の中には武装をしてグレイシア、カーラ、イクスがおり、これから何が起こるのかは彼等の武装を見れば一目瞭然である
「イクス様、先程から鎧からバチバチと紫の電流が流れているのですが、平気なのですか?」
「ん? ああ、多少は痺れるがこれくらいなら大した事は無いな。 コイツが本気を出せば着ている俺は今頃灰だけになってるからな」
イクスの言葉に二人は驚愕な表情を浮かべながらも特に何も言えなかった。 例え何かを言ってもイクスは変えるつもりはないと言うからである
「さて、カーラは従業員と護衛を殺せ。 グレイシアは客を一人残らず殺せ。 俺は商人とその元を殺す。 良いな?」
「「分かりました」」
バンッ!
凄まじい音と共に目の前の扉を蹴破るとまさに商売は始まったばかりの様で客も司会者も驚いた表情を浮かべていた
「殺れ」
その一言で二人は動き始める。 カーラは司会者をモーニングスターで頭を潰してから二撃目に胴体に入れると司会者の身体はバラバラに吹き飛んだ。 それを合図に逃げ出す客達をグレイシアは手に持った長い鎌を使って客達の頭を落としていく
そしてイクスは幹部や共を逃がす前に全員手足を削ぎ落として動けない状態にしてからある物をゴソゴソと机の中を探しだす
「お、あったあった」
机の中から取り出した物は顧客名簿と帳簿と奴隷達の出所に関する本を数冊見付けて近くに倒れてる幹部に近寄る
「3秒時間をやるから答えろ。 誰が実行犯だ?」
「し、知らな「バシュ!」」
「時間切れだ」
腰に着けてある短剣で男の一人の頭を残りのメンバーに見えるように首を跳ねた。 そしてイクスは次の標的を見付けて近くに近付いて腰を下ろして問い掛ける
「3秒時間をやるから答えろ。誰が実行犯だ?」
「ヒッ! こ、殺さない「ザシュ!」」
先程と同じ様に女の首を跳ねてから近くに居る幹部に近寄り腰を下ろす
「3秒時間をやるから答えろ。誰が実行犯だ?」
「じょ、上流階級のオルクだ!俺達はそいつに頼まれて拐って売ってたんだ!」
「オルク……オルク……ああ、あの宮殿に居た太ったキモデブのおっさんか」
召喚された際に端の方でグレイシアを舐め回す様な視線を向けていた男が居たことにイクスは顔を思い出した
「って事はあのおっさんの狙いはグレイシアか…………潰すか」
マグマすら凍らす程の寒気さを醸し出したイクスに生き残った幹部メンバーは震え上がった
そしてその5分後に勇者達を引き連れた冒険者達が雪崩れ込んできたが既に会場は血の海に染まっており、幹部メンバー、奴隷、商人は生き残り、幹部メンバーと商人は見事に捕まり、真人には何故か妹が増えたとか
そろそろイクス君に胃薬を渡さなくてわ……
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少女は神か悪魔か……
「あぁ…… お腹が空いたわ。 とてもお腹が空いたわ」
真っ白のワンピースを着た少女は銀色の狼の背に乗りながら自身の空腹を訴えた。 最後に食事をしたのは昨日だがそれは獣であって生きの良い獲物では無かった
「聖国はまだなのかしら? 私、お腹が空きすぎてフェンちゃんを食べてしまいそうだわ」
その言葉に銀色の狼は速度を上げる。 狼はこの少女に捕食されたくない為に速度を上げたのだ
「もし聖国にお父様が居なかったらお腹を満たす次いでに聖国に居る人達を全員食べましょうか♪ そして残った『皮』を使って獲物を誘き寄せては食べるとか良いかも♪」
クスクスと笑う少女に狼達は何も言わずに目的地を目指す。 早くこの化け物から解放されたいが為に狼達は己の限界が許される速度で目的地を目指す
「私、お父様にまだ1度もお会いした事が無いのよ。 何でもお母様がお父様の誕生日の日にサプライズとして教える予定だったとか。 でも私も早くお父様に会いたいが為に此処まで来てしまったわ」
少女はつまらなそうに狼相手に話し続けるが狼達は一切相槌の様な物はせずにひたすらに走り抜く
「何故お父様は人間と言う下等で愚かで醜い生き物と共に暮らすのか私には分かりません。 お母様達の様に偉大な方々やお父様の部下ならまだ分かりますが私にとっては人間とはただの餌に過ぎません……」
グゥゥゥ
「ああ、お腹が空きました。お腹が空いて頭が可笑しくなりそうです。 フェんちゃん、予定を変更するわ。 近くに村が無いか探してくれる?」
少女の指示に狼は足を止めて2匹の獣に首を動かすと2匹は物凄い早さでその場から離れていった。 そして10秒も経たない内に獣達は戻ってきた。 そして少女が乗る狼は向かっていた方向と少し方向を変えて走り出す
「一応食事の前にお父様が居ないか聞いておかなくちゃね。 もしそこに居たら一人だけ食べないであげましょう♪」
少女にとっては人間の生き死にとはどうでも良い事の様だった。 人が道端に落ちている石を見てその意思の始まりから終わりを考えない様に少女も人間とは道端に落ちている石程度の認識だった
「お腹が空いたわ。 この世界に居る人間全てを食べ尽くしたら私のお腹も少しは満たされるかしら?」
少女は微笑む、その微笑みは端から見れば見惚れる程に美しい笑みだが彼女の考えや行動を見ればその笑みは決して美しい物では無いと言えるであろう
その後、聖国付近での村が複数襲われ生き残りは誰一人として居ないと言われていた
恐らくはこの作中で最も人を殺めているのがこの子でしょうね
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副隊長達の会話
「イクス様、頼まれていた物を持って参りました」
「ああ、そうか。 ご苦労だったな」
イクスは書類から目を離して書類を持ってきた奇妙な仮面を着けた人物にお礼を言う
「それでは当方はこれで」
「ああ」
そのまま仮面の着けた部下はイクスに頭を下げてから部屋を出て廊下を歩いて行く。 廊下では他の部下が仕事をして居るが基本的には会話も無いので彼も無言で自分の居場所に戻る
彼女の名前はシルド・スルト、イクスに全滅部隊を任せられている。 常に顔には奇妙な仮面を着けており、シルド本人の素顔を見た者は少ないと言われている。 小隊長の中でも戦闘面では1,2位を争う程の実力の持ち主
【衣装はFGOのシグルドの第一状態を思い浮かべてください】
自分の仕事部屋に戻るとそこには何故か部屋に置いてあるソファーで寛いでいるエリゴと優雅に紅茶を飲んでいるアンジェがそこには居た
「……何故貴殿等が此所に居る?」
「少し暇潰しに来ただけだよ」
「すまない。 私は止めたのだがね」
シルドは深い溜め息を吐いてからソファーの反対側に座り、二人を見つめる
「それで? 貴殿等が当方に何か用があって来たのだろう?」
「そろそろシルドも新しい隊長を欲しくは……」
アンジェが言葉を最後まで言い終える前に目を赤くし、自身の愛剣である魔剣をアンジェの目の前に突き出していた
「それは我が主であるイクス様に対しての反感、反逆と見てよろしいか?」
アンジェが少しでも動けば魔剣はアンジェの頭を貫く、勿論返答次第でも同じ結末が待っている
「冗談さ、相変わらず君は忠義の塊だね」
小さく微笑み、そして何処か困った表情を浮かべるアンジェにシルドはようやく魔剣を消して元の自分の座っていた所に座り直す
「もしもう一度同じ事を言えば当方が持ちいる全火力を持って貴殿を必ず殺すと約束しよう」
「そんな約束は嫌なんだけどね……」
アンジェとシルドはお互いに最強の座を賭けて競い合っていた。 アンジェが持つ聖剣とシルドが持つ魔剣はお互いにマリアが作り出し、与えられた最強の証である
「たまには僕とも勝負をして欲しいんだけどね」
「断る。 貴殿と勝負をした場合の被害とイクス様に対しての罪悪感で当方の身が持たないのでな」
「イクス様に対しては同じ気持ちだけど、それでも僕と競い会えるのが君ぐらいなんだよね」
「暇ならば盗賊でも狩れば良いだろう」
「雑魚を狩っても面白くは無いだろ? それに僕は人間を殺すのは飽きたからね。 しばらくはやらないよ」
「君を怒らせれば、その魔剣を抜いてもらえるのかな?」
アンジェの言葉を無視してシルドは自分で入れた紅茶をゆっくりと飲み始める。 そしてそれから30分後にシルドとアンジェが廊下で本気の殺し合いが始まったが、その原因は不明だった
廊下の被害報告を聞いたイクス君はその後倒れたとか
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最強の生徒会長現れる
奴隷商人の商売を潰してから時間は過ぎた。 元凶である貴族の男は現在聖国と言う国に行っていて居なかったが帰ってくれば確実に奴の人生を破滅させてやる
そして俺は相変わらず学園内では特に交遊を広める事は無く、毎日屋上や日当たりの良い所で昼寝をして居た。何で授業を受けないのかと言う理由は既にこの世界についての事や魔法関係は全て覚えたからである。 それと前に嫌みな教師が来たので適当に相手をしたら教師の心が折れてしまった
「……最近よく視線を感じるな」
「そうですね。 どうしますか?」
「ご命令あればすぐにでもミンチにしますが?」
「……頼むから何でも武力で物を片付ける思考は止めてくれ……」
治療部隊の隊長の筈なのに何故コイツはこんなにも好戦的なのだろうかと時々考えてしまう。 そしてその際に生じた被害書の事を考えて胃が痛くなってしまう……
「良いか? 何があっても殺しや相手に致命的な傷害を残すなよ? 特にカーラはな」
「な、何故私の名前なのですか!?」
「お前は前に相手の四肢を全部砕いた後にミンチにしただろう。 あの時はまだ情報も引き出してなかったのに……」
「うぅ、ご、ごめんなさい」
「だから何があっても相手を殺すな、傷を残すな。 良いな?」
「「はい」」
(さてさて相手さんはどう動くのかね)
そしてイクスの心配は見事に的中した。 放課後にグレイシアはイクスが居る教室に向かおうと廊下に出ると一人の生徒がグレイシア達の前に立ちはだかった
「貴方がグレイシアさんね?」
「…………」
目の前に居る女子生徒の顔を見るなり嫌そうな顔をしながら小さく舌打ちをしてから正面を向く
「そんなに嫌そうな顔をされると流石のお姉さんでも傷付くのだけど……」
「知りませんよ。 貴女がいくら傷付いても私の知った事ではありませんので」
それだけを言ってグレイシアとカーラは隣を通り抜けようとするが
「それは仕方無いわね。 なら貴方達がよく会っている彼に話でも聞こうかしら」
女子生徒のその一言で動き出した足を止めてゆっくりと女子生徒の方に顔を向ける。 その表情にはもしイクスに何かすればただでは済ませないと言う表情を浮かべていた
「そんなに睨まないでくれる? お姉さんが用があるのは貴方達なんだから」
「……何の用ですか」
「単刀直入に言うわね? 私と戦ってくれないかしら?」
「…………何故でしょうか?」
「ふふ、貴方達の強さに興味があるからよ♪」
ニッコリと微笑む女子生徒にカーラもグレイシアも無表情を浮かべながらも目の前に居る存在を殺したい衝動を必死に抑え込んだ
「場所は?」
「グラウンドで良いわよね?」
「分かりました」
お姉さんキャラって何かやりにくい感じですね!
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実力
「殺しは無し、どちらかが気絶か降参を言ったらその人の負けね?」
「分かりました」
グラウンドに到着したグレイシアと女子生徒は勝敗を決めてから少し間をあける
「あ、そうだったわ。 まだ自己紹介してなかったわね。 私の名前はシトリィ・クレハ、この学園の生徒会長よ」
「……グレイシアです」
互いに短く名前を教えてから己の武器を取り出す。 シトリィは魔槍を構え、グレイシアは何時もの短剣では無く、両腕に刺突刃を着けて構える
「珍しい武器ね? 何て名前なの?」
「教える気はありません」
「そう、意地悪なのっね!」
素早い動きでグレイシアの懐に入り、槍を繰り出すがグレイシアは表情を変えずに淡々と槍先を交わしては刺突刃で反撃していく。 グレイシアが脚を蹴り上げるとブーツに仕込んだ仕込みナイフが爪先から飛び出してはシトリィの髪を少し切り落とす
「貴方、曲芸師にもなれるわよ?」
「興味がありませんね」
無表情で答えると今度はグレイシアから仕掛け始めた。 両腕に仕込んだ刺突刃でシトリィがギリギリ避けられる速度で攻めていく
「シッ!」
流れる様にグレイシアは両腕の刺突刃とブーツに仕込んだ仕込みナイフを使ってシトリィを徐々に追い詰めていく
(いくら力を押さえてるとは言え、これ程とは夢にも思わなかったな)
グレイシアは今回の戦いに置いてシトリィに対する評価を改めた。 そこら辺に居る無能達とは違うと理解できた。 そして同時に驚異の度合いも上がった。 シトリィが何処かの組織の物だったら速やかに処理しなくてはならないと
「もう終わりですか?」
「まだまだよ!お姉さんを舐めてもらっちゃ困るわ!」
先程まで切り傷だらけだった姿は一瞬で消えて、元の試合をする前の状態に治っていた
「ここからが本番よ! 悪いけど今からは手加減はしないわ!」
「!?」
先程とは比べ物にならない程の速度で攻めてくるシトリィに思わず思考が一瞬遅れてしまった
「ハァッ!」
放たれた一撃にグレイシアは咄嗟のガードで防げたが防いだ際に腕が異常な程に痺れてしまった
「隠し玉ですか」
「お姉さんを本気にさせた罰よ」
「……凄く面倒です」
小さく溜め息を吐いたグレイシアは一度目を閉じて数回息を整えてから目を開ける
「手加減をするのは止めましょう。 これからは本気で相手をしてあげます」
「っ!? 良いわ!掛かって来なさい!」
お互いの本気がぶつかり合う瞬間に何かが間に入ってきた
「貴様等、一体何をして居る?」
二人の間に現れたのは怒りの表情を浮かべているイクスだった
仕事忙しい……更新出来ない…………アイデア浮かばない…………
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生徒会長の調査報告
その後、イクスの介入により二人の試合は無効にされて、無かった物にされたがシトリィは何処か納得がいかない様な表情を浮かべていたがイクスの睨みで黙らせることが出来た。 そして今回の騒動に関わったグレイシアはイクスから長時間の説教と隊長命令でカーラに軽い罰を与えさせた
無断での武装使用、如何なる理由であろうとも報告をしなかった事に対する罰をグレイシアに与えた。 勿論カーラにも罰を与えたがグレイシアよりは軽かった
仮にこれが他の小隊長達だったらグレイシア達は今頃は打ち首にされて、そこら辺に捨てられていただろう
カーラを使ってシトリィの事や彼女の周辺の事を調べさせて分かったのが召喚された日にあの場所に彼女が居た事が分かった。 彼女は自他共に認める程の力の持ち主で、その日はたまたま護衛の為にその場に居たと言うことだ
「……カーラから見てどのくらいだ?」
「はい。 イクス様が介入する寸前までの力を見れば我々の部隊の中間くらいでしょう」
「それなりの実力者か……」
戦闘スタイルや戦いでの状況判断もそこそこの物だから変に敵対するとかえって面倒な事になりそうだな
「彼女の使い魔の情報や武器の特性は?」
「使い魔の方は名前と種族しか掴めていませんがよろしいですか?」
「ああ、それで構わない」
「畏まりました。 使い魔の名前はウォーティ、種族は水系の精霊らしいです」
「水の精霊か……」
「武装は魔力を宿した槍です。 主に水の精霊の力を借りてのブーストもあるとか」
「槍か、フィーリアが喜びそうな物だな」
「そうですね。 あの子は部隊の中で最も槍使いに長けてますからね」
己の部下の事を思い出しながらイクスは一度資料から目を離して、目を閉じる
「カーラ、お前の召喚術で召喚した使い魔を使ってこの女を監視させろ。 何かあれば俺に連絡しろ」
「畏まりました。 あの愚か者の処遇はどう致しますか?」
「今回は不問だ。 だが2度目は無いとキツく言っとけ。 勝手な行動は部隊を危険にさらすからな」
「承知しました」
カーラは一度頭を下げてから部屋を出ていく。 カーラにとってイクスは己を救ってくれた神であり、父親であり、唯一の希望なのだから。 イクスの邪魔をするのであれば例え仲間であろうとも容赦無く切り捨てるのがこの部隊の暗黙の掟なのだから
お互いに何かあれば容赦無く殺し会うのが今の在り方であり、それが唯一イクスに返せる恩義と思っている。 例えイクスに捨て駒にされても自分達は笑って逝けるだろう
歪んだ信頼は良いですよね
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グレイシアの過去
僕は人間も魔族も大嫌いだ。 自分の事しか考えられない低俗で愚かな汚らわしい者達なのだから。 僕は人間と魔族の間に産まれたハーフだった。 いや、正確に言うのであれば父親である魔族が母親を襲って産ませたと言うのが正解なのだろう
僕はそんな両親から愛される事無く道端に捨てられた。 そして僕は生き残る為に死ぬ気で何でもやって来た。盗み、殺し、強盗、その他にも色々やって来た。 そしてあの日僕はあの人に出会った、漆黒の鎧を身に纏った死神とすら思える程の雰囲気を出しているイクス様に。 その時の僕は生き延びる為にイクス様を倒してでも逃げようとしたが一瞬で意識を刈り取られ、気が付けば知らない部屋のベットで眠っていた
そしてそれから僕はイクス様に拾われてからは知識と技術を叩き込まれてた。 既に僕の前に数人似たような子が居たけど僕よりも遥かに強くて賢い子達だった
一通りの物を教えられた僕はその後は得意だった暗殺を専門に本格的に習い始めた。 当時の僕はいちばん下だった事もあって任せられるのは小物の貴族や要人の暗殺ばかりだったけど、それでも文句を言わずに日々を過ごしていたらある日、イクス様に呼び出された。 そして何時も通りの暗殺の依頼だったけどその内容を見て驚いた。 依頼の中身は僕を生んで捨てた両親だったのだから
それに驚いている僕にイクス様は「この依頼はお前に任す。 生かそうが殺そうがお前の自由だ。 例え殺さなくても誰も咎めない」そう言ってイクス様は執務に戻った。 話を終えた僕は1日だけ考える為に部屋に籠って武器の手入れをしていた
実の両親を殺すのは何処か心の中で抵抗があったのかも知れないが僕にとってこの二人は既に赤の他人なのにその日だけは手の震えが止まらずにまともに武器の手入れが出来なかった。 そして次の日に僕はあの二人が居る場所に向かった。 護衛と言う名の見張りのアンジェが付いてきたが僕は既に心は決まっていた
「君に出きるのかい? 実の両親を殺すことが?」
「……出来るよ。 じゃないとイクス様に見捨てられる」
「フッ、分かってるじゃないか。イクス様の命令は絶対だ。 例え肉親でも一切の油断なく殺すんだよ?」
「…………」
アンジュは昔から僕や他のメンバーの心を追い込んで潰そうとしていた。 この程度で潰れたり、イクス様に敵意を向ければアンジュが直接ギリギリに死なない程度に切り刻み、その後はゆっくりと絶望を感じさせながら死が来るのを待たされる
結果を言えば僕は二人を追い込んだは良いけど殺すことは出来なかった。 別に二人の事は許しては無いが、どうしても殺せなかった。 そして僕が躊躇ってる内に逃げようとした二人は後ろに立っていたアンジェにより肉片に変えられてしまった。 しかも臓物や血しぶきを僕にわざと当てるようにして
「安心して良いよ? 今回の事は僕は何も言わないからね。 イクス様の依頼にもそう言った物は書かれてなかったからね」
クスクスと笑っているが目を見れば何処までも闇が広がっていた
「でも、次は無いから、そのつもりでね?」
あれ以来僕は己の不甲斐なさを痛感して、1から修行に身を投じて例え誰であろうとも決して躊躇わない心をてに入れた
僕達がこの身、この全てを捧げられるのはイクス様だけと思っている。 例えアーシャ様達やアルトリウス様が相手でも僕達は己の死骸を盾に戦い続けるだろうね
1番歪んでいるのはアンジュだった?
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何故学園系のイベントにサバイバルがあるのか……
グレイシアの一件から一月が過ぎた頃、学園ではある行事に生徒達は緊張した様子で日々を過ごしていた。 その原因は毎年行われる1年生達を学園が所有している森の中で1週間のサバイバルをさせられるからである。 勿論サバイバルをやっている間も評価に加算されるので一切の油断もできないと言われている
勿論食料や飲み水なども支給されないので現地調達になる。 特に水は命に関わるので水がある所は自然と激戦区となる。仮に確保できても必然的に他の生徒達から狙われやすくなるから疲弊するのは目に見えている
しかも面倒な事に個人戦と言いながらルールではチームを組むことを禁止していないから複数対一になる事は良くある話だ。 そして終了間際に裏切りや他のチームに密告も有るらしく、チームを組んでもお互いに疑いの目を向け会うと言う事も良くある話だそうだ。 勿論生徒では対処できない事が起これば控えている教師達が出てくるのとか
そしてそんな色々とヤバイ事が起きそうな事態を知りながらイクスはそのサバイバルに参加した。 理由は護衛対象の勇者二人の監視と護衛を兼ねているからである。同じクラスの勇者の真人とは顔見知り程度で済ませているので特に怪しまれる事は無かった。 そして現在は気配を完全に殺して、木の上で護衛対象を監視をしていた
「グレイシア達は今頃はあっちの勇者の監視に入っただろう」
グレイシア達は既にもう一人の勇者とはそれなりの仲になっており、自然と溶け込んでいた。 流石は情報収集と暗殺が得意なグレイシアだな
少し話は変わるが最近王国の動きが何かと怪しくなってきた。 少し調べた結果、一部の家臣達が王に隠れて魔族と手を組んでは勇者を暗殺と俺達の排除を目論んでいた。 理由は家臣達は戦争になれば一部の商人と儲け話の理由から勇者の存在が邪魔と考えており、魔族も勇者と言う存在を排除したいと考えている
家臣達が何をしようが俺には関係無いが俺の部下であるグレイシア達に危害を加えるのであれば俺はこの国を滅ぼす。 俺の家族であり部下であるグレイシア達に手を出すのなら話は別だ。 俺は魔王や神でも殺してやる
パキッと何かが割れる様な音が聞こえたがイクスの耳には聞こえることは無かった
「それにしてもこっちの勇者は順調に恋愛フラグを強化していってるな」
チラッと見たが既に巻き込まれ勇者には義妹、寡黙系の眼鏡っ子、気が強い子とか3人のフラグが建っているな
そう言えばここに飛ばされる前にアーシャが街で見知らぬ男に言い寄られていたな。 その時は適当にあしらっていたがあの時の表情は何処か嬉しそう……
パキッ、パキッ
再び何かが割れる音が何処からか鳴り響く、そしてイクスは不意に視線を下に向けると手に持っていた石が砕け、砂粒に変わっていた
「……何で砂になってるんだ?」
徐々にイクス君の様子が可笑しくなってますねぇ……
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聖女は悪魔か天使か
「貴様は化け物だ!」
「この悪魔め!」
「この子は生まれながらにして悪魔だ!」
「あの悪魔を見付け出して殺せ!」
彼の目の前には老若男女関係無く彼の目の前で武器を鍬や鎌を持ち、襲い掛かろうとするが彼は彼等に向かってニッコリと微笑みながら聖母の様な暖かな笑みを向けながら答える
「ええ、私は悪魔です。なので皆さんは私の為に贄になって下さいね」
彼はその一言を言い終えると【素手】で彼等を肉片に変えていく。 彼等はその光景を見ながら武器を捨てて逃げようとするが彼等よりも先回りして一人一人入念に肉塊に変えていく。 そしてその間の彼は微笑んでいた
「あ、悪魔……」
最後に残った老人はそう小さく呟く
「ええ、貴方達がそう言うのであるから私は悪魔になりました。 それではさようなら♪」
そう言って彼は少し力を入れて真っ二つに引き裂く。 残ったものは彼等の肉片だけたった
そして残った彼は彼等の墓を立てた後にその場でじっとしていると誰かがやって来るのを感じ、振り返るとそこには…………
「カーラ、何時まで寝てるの? いい加減に起きないと短剣を心臓に突き刺すよ?」
「………起きていますわ。 それと寝起きから物騒な事は言わないでもらえますか?」
ゆっくりと目を開けるとそこには短剣を降り下ろそうとしているグレイシアが居り、カーラは降り下ろしてきた腕を掴み、短剣を弾き飛ばし、そのままグレイシアとの体制を逆転させる
「言っておきますが今は【任務中】なので貴方のお相手は出来ませんよ?」
「分かってるよ。 生憎と僕もその気は無いからね」
「そうですか、それは良かったですわ。 それよりも彼等の様子はどうですか?」
「ん?昨日と同じかな。 取り巻きがお互いに邪魔をしてる間は彼もゆっくりと休めてるよ」
「それは良かったです。 こんな場所で退場させられたらイクス様に顔向けできませんもの」
グレイシアに呼ばれてからカーラは持ち前の誰とでもすぐに打ち解けられるので護衛対象の勇者とはすぐに仲良くなることは出来た。 そして勇者の話を聞いていく内にカーラとグレイシアは勇者に対してかなりの好感を持てるようになっていた。 彼の思考はグレイシアやカーラに酷く似ていて気持ちも変わることは一切なかった
だからカーラ達は出来るのなら友人として彼等を助けたいとは思っている。 勿論決めるのはイクスであり、イクスの決定にはカーラやグレイシアでは覆す事は到底できないがイクスも二人の気持ちを組んだ上で判断をすると決めている
「ねぇ、カーラ聞いてる?」
「何かしら?」
「やっぱり聞いてなかったね? もう一度言うよ? 今日の晩御飯は魚と肉どっちが良い?」
「ではお肉が良いですわ。 勿論血液は私が貰いますわよ?」
「いや、僕はいらないからね。 普通はお腹を壊すからね?」
「私には関係ありませんわ」
「はぁ、早くこのサバイバル終わらないかなぁ……」
「私はとても山賊狩りがしたいですわ……」
「……そこら辺の生徒で我慢してね? 勿論殺しは無しで」
「……駄目ですの?」
「駄目だからね」
「………どうてしも?」
「どうてしも」
「…………うぅ」上目遣い+涙目
「そんな顔をしても駄目だからね」
「っち」
やっぱりカーラは聖女ですね!(遠い目)
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守護騎士の片鱗
サバイバル生活が始まってから3日が過ぎて殆どの生徒が脱落した。 生き残ったメンバーは何れも1年生とは思えないほどのポテンシャルを持っており、冒険者ランクで言えばB~Aランクは持ってる程の実力者達だ。 上級生達はこの段階から生き残っている生徒達の情報を集め始める。 そして情報を集めながらも使い魔や魔法を使ってどの様な魔法や魔武器に戦闘スタイルと言った物を研究し始める。 来る武道大会に備えての事前の情報収集だろう。 後は生徒会と言った実力者を欲する所もそうだな
そしてカーラの伝書鳩(血にまみれた鳩)によれば既にあちら側の勇者は相当数の生徒を倒しているらしい。 勿論グレイシア達の手助け無しでの事は分かっている。 そしてこちら側の勇者もチームでそこそこの生徒を狩り終えていた
「実力はこの数ヵ月でミッチリと言うことか。 だが未だに能力や武器に頼りきっているからそこは改善点だな」
この三日間彼等の事を観察していたが他よりも確かに強いが能力や武器に振り回されてる感じがあり、実戦では一回使えば使えなくなる程に今の彼等の実力は微妙だが、それでもこの学園の1年生ならそれなりの実力だ
「さて、そろそろこちら側を覗き見している連中にはお仕置きをしなくてはな」
「!? 気付かれた」
「何?本当か?」
「ええ、確実に気付かれたわ。 そしてこっちに向かってくる!」
「各員戦闘体制!」
男の指示に男を除く5人が己の魔武器を構え、周囲を警戒する
「上!」
女の叫びに全員が空を見上げると何かが急激な速度で落ちてきた。
ドゴオオオォォォォォン!
彼なの丁度中心に落ちてきた【ソレ】は土煙が収まると同時に姿を表す
「随分と人を観察をするのがお好きのようだな。 この学園の上級生達は」
土煙が収まるとそこには騎士団の紋様が入った盾を着けているイクスがそこに居た
「そのネクタイの色から見て3年生ですか。 しかも面倒な事に生徒会メンバーとはこれはこれは……」
わざとらしく溜め息を吐きながらチラリと周囲を観察すると1年生とは比べ物にならない程に鍛えられた者達だった。 しかも生徒会役員は選りすぐりのメンバーだ。一筋縄では行かないだろう
「それで? 何故生徒会の貴方達がこの様な場所に居るんですか?」
「……君の質問に答える事は出来ない」
「まあ、分かっていた返答ですがね。 理由は大体は分かってるので聞くことはありませんよ」
小さく鼻で笑いながら笑みを溢すと何人かの表情がピクリと一瞬だけ動く
「悪いんだが俺達の事は見なかった事にしてくれないか?」
「嫌だと言ったら?」
「悪いがその場合は君にはこの場でサバイバルから退場する事になってしまう」
分かりやすい程の脅し文句だな。 様は『俺達の事を見なかったフリをすれば見逃してやるよ』と言った脅し文句だな
「…………舐めるのも大概にしろよガキ共」
「「「!?」」」
イクスから異常なまでの殺気を感じて彼等は一斉に距離を取った
「別に俺に対してなら監視だろうが実力行使だろうが構わないが、俺の部下であるグレイシア達は別だ。 これ以上監視するのなら貴様等をミナゴロシニスルゾ」
睨み付けられた男は息が出来ずにその場で膝を付き苦しみ始める。 他のメンバーもあまりの恐怖に足が震え、武器がまともに持てない状態になっていた
「今回は見逃してやる。 だが次に同じ事をしてみろ?その時はお前達を必ず長く苦しめた後に殺してやる」
その言葉を言い終えるとイクスは一瞬にして森の中へと戻っていった
自分に対してなら何をされてもキレないイクス君でも家族の様に思ってるグレイシア達に何かしらしたら彼は魔王にでもなれそうですね
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勇者から見た守護騎士
真人side
俺が彼奴と会ったのは学園の入学式を終えた後に決められたクラスでのんびりしてる時だった。 最後に入ってきた人物をチラッと見ると俺はある意味心を奪われた
銀髪の様に綺麗な白髪に宝石みたいな綺麗な真っ赤な瞳、そしてよく見れば整った顔立ちに雰囲気は冷たい雰囲気を醸し出して近付いたら目に見えない刃で切り刻まれる様な感覚すら覚えるほどに彼奴を見た時の俺は忘れることが出来なかった
そして気が付けば俺の体は自分の意思とは無関係に立ち上がり、彼奴の所に一直線に向かっていった。 そして自己紹介と話をするがやはり素っ気ない態度を取られてしまったが俺にとっては嬉しい反応だった。 何故ならその見た目で滅茶苦茶フレンドリーだったら少しイメージが崩れてしまうからだ
そして彼奴…クラウンの声を聞いて瞬間には全身が凍る程の冷たさを感じたと共に俺は笑みをこぼした。 この冷たさこそが今俺が求めていた冷たさだ。すぐに仲良くなる様な奴等を俺は信用できない、表面上は笑っていても心の中では馬鹿にする様な連中が大勢居るからな。 ならば最初っから冷たい態度をするクラウンに俺は入れ込んだのかもしれないな
出来ればクラウンとは仲良くしたいがそこは俺の頑張り次第か……
直樹side
僕が彼を初めて見たのは授業の一環で他の生徒と対戦する時だった。 彼の側には目を奪われる程に美しくて綺麗なクラスメイトのルキフグスさんとその使い魔?の子が居た。 他の生徒達は使い魔召喚以降はルキフグスさん達を避けてるけど僕はそんな事を気にせずにクラスでよく話している
目を奪われる程に美しいルキフグスさん達はまさかの男だった事には驚いたけど特に嫌悪感は無かった。 だって僕の好きな人はこの世界でただ一人の親友である真人なのだから。 人が居ない場所でルキフグスさん達にそれを当てられた時は流石に焦ったけど、その後はどうやったら真人に気を引いてもらえるのか等を教えてもらったり、放課後は時間が許す限りルキフグスさん達に作法やら歩き方やメイクの仕方を教えてもらった
そんなルキフグスさん達も好きな人が居ると教えてもらって聞いてみると何時も一緒に居るクラウンさんだった。 最初の印象は確かに格好いい人だけど冷たい人と言う印象があった。 けどその印象はすぐに消え去った。 何故ならクラウンさんはルキフグスさん達と居る時は何処か疲れた表情を浮かべるけど嬉しそうな表情を浮かべているのだから
そして僕は勇気を振り絞ってクラウンさんに話し掛けてみると最初は口数が少なかったけど次第に会話が増え始めた。 そして最後はルキフグスさん達の事を話していたけどそこでも嬉しそうに自慢をしていたクラウンさんは本当にあの二人が大切なんだなって印象を受けた。 そして別れ際の際にクラウンさんから何かの手紙を受け取り、人が居ない所で読めと言われた。 そして読んだらすぐに燃やせとも
一体何の手紙なんだろう……
グレイシア達のお陰でイクス君も二人に対する好感度は少し高めかな?
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奪われた恋心
シトリィside
はぁ、最近何をしても落ち着かない。 生徒会の仕事をするのも勉学に励んでも全然頭に入ってこない。 理由は分かっている。 あの日から私は一人の男子の事しか考えられなくなっているからだ
「会長、また記入ミスがありますよ」
「え?あ、ああ、ごめんね?サラちゃん」
「ここ最近は特に酷いですよ? 何かありましたか?」
「ううん、心配してくれてありがとう」
生徒会副会長であるサラちゃんに心配される私は本当に記入ミスが酷いんでしょうね。 普段は周りの事に一切興味がないサラちゃんに心配される程だから
「最近の会長は心此処に有らずですよ? 何か悩み事でもあるのですか?」
サラちゃんは本当に興味がないと言うわりには人の事を本当に見てるなぁ
「そうね、サラちゃん以外のメンバーが勝手な行動をしてることを思うと悩みが尽きないわね」
「あー……彼等達ですか」
此方もある意味頭を悩ませてる原因だ。 優秀な人材が欲しいのは分かるけど今年だけは絶対に止めて欲しかった。 今年は確かに優秀なのも居たけど、それ以上にヤバイ連中も居るのだから
「報告によると教師達が気絶しているメンバーを見付けたとか」
「ああそれね、私の所にも来たわ。 ちゃんと叱っておいたから大丈夫よ」
「もう少し余裕を持って行動して欲しいですね」
「ねぇ~」
まあ、あのメンバーが気絶してるって事は大体の事は予想できるから後で謝罪に行かなきゃいけないけど。 それに謝罪に行く次いでに彼に会えるのだから私にとっては良いことだらけだ
「そう言えば聞きましたか? 例の転入生の話を」
「……ええ、聞いたわよ」
「何でも部類の女好きだとか。 狙った女性はどんな手を使っても落とすとか、それが脅迫や脅しでも」
「下衆な野郎ね。何でこの学園に来るのかよく分からないのだけど?」
「調べによると何でも国王が迎え入れたとか」
「あの無能王が……」
「会長、口が過ぎますよ?」
「あら、貴女もそう思ってるんじゃないのかしら?」
「…………否定はしません」
私の返しにサラちゃんも目線をずらしながら答えてくれた。 この国の王は無能にも程がある。 少し頭が働く人達は王の無能さに嘆きながら帝国に亡命をしたりとかする程に今の王は無能なのだ
「その転入生が彼等に手を出さないことを願うわ」
「もし手を出したら?」
「知らんぷりよ。 この学園は貴族や王族の権力が一切使えない場所なんだからね。 それに彼がその転入生を殺ってくれるのならそれこそ万々歳」
「…………今のは聞かなかった事にしますよ」
そんな会話をしながらも私達は残った書類を片付けながら放課後を過ごしていく
「さ、今日はもう帰りましょうか」
「お疲れ様でした」
「うん。今日はお疲れ様! また明日もよろしくね♪」
生徒会室前でサラちゃんと別れた私は少し急ぎ足で彼が居る教室に向かう。 高ぶる気持ちを押さえながら身嗜みを確認してから息を整えて扉を開ける
「グレイシアちゃん!今日こそは一緒に帰りましょ!」
「帰ってください」
私が初めて負けた男の子、そして私の初恋を奪った男の子は女の子よりも可愛い子
生徒会長の恋は一体どうなるのでしょうかね? 今後に期待ですね!
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噂の転入生は騎士の逆鱗を蹴飛ばした
辺りに鳴り響く爆発音にグレイシアはカーラと共に生徒達や護衛対象である勇者達を結界を張りながら目の前の惨状を見る
そこには既にボロ雑巾よりも酷い状態で床に転がる男と目に見える程にドス黒いオーラを放ちながら倒れている男に近づくイクス、しかも此方に来てから能力が半分になっていた筈が何故か元に戻っていた。 そして男に近づいたイクスは空気すら氷らせる程の冷たい声で
「死ね、これは命令だ」
「ギャアアアアアアアア!!」
イクスの言葉に男の身体は一瞬で凍りつき、砕けた。 そして再び元に戻ると今度は全身を炎で燃やされる
「楽に死ねると思うなよ? 先に手を出してきたのはお前の方だからな」
今の彼を止められる者は恐らくはこの世界には誰一人と居ないであろう。 例え彼の妻達でも苦戦を強いる程に今の彼は激情に飲まれていた
「どうした?帝国が誇る最強とはその程度なのか? フッ、帝国の底が知れるな」
イクスは鼻で笑いながらその冷たい視線で未だに息がある男の頭を踏み潰すと同時に再生する。 それと同時に再び火を付けられて燃やされる
グレイシアは何故この様な事になってしまったのか思い返す
「……啓示が降りました」
始まりは朝食をしている時だった。 カーラの言葉に食事中だったイクスは食事の手を止めて視線だけをカーラに向ける
「帝国からこの国に一人何者かが現れます。 その男の実力は偽りの力で国を納めているそうです」
「偽りの力か……」
「その男はこの学園に来る予定です。 目的は……ハーレムを築くとか」
一瞬だけカーラが言葉を詰まらせたがすぐに内容を話してくれた
(偽りの力と言う事は転生者か? そして目的はハーレムと言う事は厄介事以外には他ならないな)
しかもカーラの啓示は100%に近いくらいに当たる物だ。 そしてその啓示が降りると言う事は数日以内から次の日に当たるから今から色々と準備しなくてはならない
「カーラ、他に何か啓示は降りなかったの?」ヒソヒソ
「それがもう1つ面倒な啓示が降りました」ヒソヒソ
「何?」ヒソヒソ
「それが……」ゴニョゴニョ
「…………」
「頑張って生きてくださいね?」
「待って!僕を見捨てないで!僕達同じ仲間でしょ!?」
「オホホホ♪ライバルを助ける事は余りしませんのよ♪」
「カーラ!」
何やら二人が話しているがそれを聞いてしまうと何やら色々と大変なことが起きそうなので後で聞くことにするか……
校門前
「ここが王国でも美少女が多いと言われる王国学園か!楽しみだなぁ♪全員俺の女にしてやるぜ」
下品な笑みを浮かべる黒髪の少年は校門の前でニタニタと笑いながら校舎へと入っていった
やっぱり屑転生者が多いですよね!
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鮮血聖女の本音
カーラside
昨日の啓示から一夜が開けました。 既に偽りの力を持つ男は学園でもそれなりの強者を倒して女共を手込めにしている
あの女(生徒会長)は有能な部下や見込みがある女共には極力近づけさせないようにしているがそれが何時まで持つのかは私にも分からない所
「アウアウ!」
「美味しいですか?クロさん」
「アウアウ!」
「それは良かった♪」
クロさんを飼い初めてからそれなりに時間が経ちましたが相変わらずクロさんの大きさに変化は無く仔狼の大きさのままです。 何か原因があるのか魔法や魔導書で探しましたが原因はよく分かりませんでした
「クロさんは何時になったら大きくなるんでしょうね?」
「アウゥ?」
クリクリした瞳で私を見つめてくるクロさんに小さく微笑みながら優しく頭を撫でる
何故動物はこんなにも素直で賢く愛らしく生きられるのに人間はあんなにも醜いのでしょうね……
主は私達に多くの試練を与えてきましたが恐らくはこの醜い感情や思考がある限り我々は決してその先には行けないでしょう
「クロさんにだけには私の本音を吐きましょう。 実は私は争うことはあまり好きではないのです。 もっと言えば争うこと事態が嫌いなんです」
ゆっくりと優しい手つきでクロの柔らかい毛並みを撫でながら目を閉じる
「傷付くのが怖い、仲間の誰かが傷付くのが怖いの。 だから私は争いが嫌いなの、でもね」
ゆっくりと目を開けてクロを両手で持ち上げて抱える
「皆が傷付くのが嫌だから私は他の皆よりも前に出て他の誰よりも傷付いて他の皆を守るの。 だって私は皆が大好きだから、こんな私を受け入れてくれた皆を守りたいから…………」
ギュッとクロを抱き締めるカーラは小さく震えていた。 それは今まで溜め込んできた物が少し溢れ始めていたからだ
「アウアウ」ペロペロ
「あら、慰めてくれるの?」
「アウ♪」
「ありがとう」
クロに舐められてカーラは小さく微笑んだ。 この身は既に隊長であるイクスに捧げて居るのだ、あの人の為にカーラはこれからも笑顔で血を浴びながら狂人を演じ続ける。
だって初めて生きる光を見せてくれた私の主なのだから
ガサッ
「お、こんな所に凄く可愛い子はっけーん」ニヤリ
「…………」
どうやら気をクロに回しすぎたせいで後ろから近付いてくる気配に気が付かなかったようだ
「クロさん、逃げなさい。 ここは私が何とかするから」
「キュウ……」
「早く行きなさい。 そしてイクス様にこの事を伝えなさい」
「アウ!」
クロは大きく吠えた後にイクスが居る方へと走り出していった
さて、どれくらい持つでしょうね。 主よ、お守りください
着実にイクスの怒り爆発が近付いてますね
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友の為に
「ッチ、なんだ男かよ。 あーあ、気分ワリィ」
クロを逃がしてからカーラは1人で目の前の男と戦ったが、かすり傷を付ける事さえ出来なかった。 服はズタズタに引き裂かれ、体にも斬られた痕や殴られて赤黒くなっている場所が大量に存在していた
「マジでキモイな!」
「っ!?」
男の蹴りが肋骨部分に当たると同時にパキッと言う音と共に激痛がカーラを襲う、声を上げなかったのは最後の抵抗なのだろう
「まあ良いや。憂さ晴らしいにその綺麗な顔をボコボコに変形するくらい殴るから」
男に馬乗りにされ拳を何度も何度もカーラの顔に目掛けて殴り続ける。 その度にカーラから出た血が周囲に撒き散らされるが男は気にせずに殴り続ける
「へっ、どうだ?綺麗な顔が台無しだな」
「プッ!」
男がカーラの髪を乱暴に掴みながら顔を見るがカーラは口の中で溜まった血を男の顔目掛けて吹き出す
「テメェ!」
男はカーラの頭を地面に叩きつけると再びカーラの顔を殴り始めた
男の暴行から何れくらい時間が経ったのかは分からないが男は肩で息をする程度には疲労していた。 そして男の手には剣が握られている
「じゃあな。 糞変態野郎が」
男がカーラに剣を突き刺そうとした瞬間に男の手首に何かが強く締め付けた
「あ?何だy「バコンッ!」っ!?」
男が視界を上に上げると共に強い衝撃と共に校舎の壁へとぶっ飛んでいってしまった
「ごめん。遅くなった」
「し……ア?」
「全く何時もの綺麗な顔が台無しだね。 そんなんじゃイクス様に笑われるよ?」
カーラは残った力を使って必死に目を開けるとそこには何時もの優しい笑みを浮かべる親友がそこには居た
「全くカーラは手が焼けるんだから。 でも今日は特別に許してあげるよ」
その笑みは何時もの様な何処か小馬鹿にした様な笑みは無く本当に心の底から溢れた眩しい笑みだった
「だから今はゆっくりと眠っててよ。 次に目を覚ました時はまた馬鹿騒ぎをしよう」
「……そ……ね」
カーラは強烈に襲ってくる眠気にゆっくりと目を閉じる。 彼ならばきっと大丈夫と思えるからだ
「全く本当に君は……」
優しく眠ってしまったカーラの美しい髪を撫でながら後ろから近付いてくる人物にグレイシアは立ち上がる
「ハァ……ハァ……い、いきなり走り出したらお、お姉さん焦っちゃうわよ……」
後ろから近付いてきたのは生徒会長のシトリィだった
「すみません。 そして貴女にお願いしたい事があります」
「何かしら?って聞くまでもないでしょうけど」
チラリと地面で倒れて眠っているカーラに視線を向けるシトリィに小さくグレイシアは頷く
「私の……自分の友を少しの間で良いのです。守ってもらえませんか? そして出来るの事なら治癒の方も」
「…………」
「もし助けてくれるのであれば自分に出来る事ならば何でも致します」
「ちょ、ちょっとグレイシアちゃん!?」
シトリィの前で王に忠誠を誓うかの様に膝を着きシトリィを見上げるグレイシアに流石のシトリィも動揺した
「………お願い致します」
「……ハァ、分かったわ。 私に出来る範囲でこの子を守ります。 我がクレハ家の名に掛けてもね」
「ありがとうございます」
グレイシアは立ち上がり先程吹き飛ばした方に視線を向ければ奥の方から男が出てきた
「テメェ……ただで済むと思うなよ」
「………お前はすぐには殺さない。 我が暗殺術の全てを持って殺し尽くしてやる」
ここで補足です。 カーラは作中では強い風に書かれていますが部隊の中では戦闘力は最弱クラスです。
そして今回の転生者はカーラよりも戦闘力が高かったことにより敗北してしまいました
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グレイシア・ルキフグスの全力
「【スキル・ダブルアクセル】【スキル・トリプルアクセル】」
・ダブルアクセルは使用者の時間を二倍に上げる。 ただしデメリットで心臓への負担が大きい
・トリプルアクセルは使用者の時間を三倍に引き上げる。 使用にはダブルアクセルを使用しなければ使えない
グレイシアがスキルを発動する周囲に軽い風が巻き上がった。そしてグレイシアが少し動いた瞬間に残像を残してグレイシアの姿が消えた
「【スキル・刹那】【スキル・閃光】【・】」
・閃光は相手に強力な光を強制的に視認させて視力を奪う
・刹那は武器を振るう速度を一時的に人が気づけない程の速度で振るうことが出来る。 ただしデメリットはしばらくは腕の神経が死ぬ事である
「避けられると思わないことだ」
「っ!?」
グレイシアから放たれた斬撃に男は避けることも防ぐ事も出来ずに全て受ける
「カーラは僕達の中では戦闘面は最弱も良いところだけどね。それでも他の人間には遅れを取ることは無かった」
腰に着けた投げナイフを男の目に投げ目を潰す。 そのまま悶えてる男の脇腹を短剣で裂けば血と臓物が地面に汚い音を出しながら落ちる
「でもね。僕達は仲間が危機になると全員でその相手を全力で殺す約束をしてるんだ。 だから」
背中に回り横一閃をして男の首を落とす
「君を殺すことに躊躇いも何もないよ」
首が地面に落ちると同時にグレイシアが投げた短剣で串刺しにされ、電流を流され黒焦げになり地面に落ちた
「僕はお前の様な野蛮な男が一番嫌いなんだよ。 この下衆が」
瞳を返してシトリィの方に向かって歩き出す
「っ!グレイシアちゃん!後ろ!」
シトリィの声にグレイシアは一瞬でその場を離れてシトリィを守るように前に立つ
「………コロス」
「なっ!?何で頭を落とされたのに生きてるの!?」
「ッチ、面倒な相手ですか」
グレイシア達が見据える方向には確かに首を落とされ死んだ筈の男が首無しの状態で立っていた。 しかも首から徐々に頭のような物が生え始めているようだ
「不死とは面倒も良いところですね」
「え!?不死ってあの吸血鬼とかにあると言われる?」
「いや、あれはそれよりも悪質でしょうね」
そして完全に首から頭が生えると男はグレイシアを睨み付けながら武器を構える
「コロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロス!!!!」
まるで狂ったかの様に男は同じ言葉しか発しなくなっていた
え、何このキモい敵ドンビキ
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変化
「シネシネシネシネシネシネシネ!」
既に男には正気は無く落ちていた自分の剣を拾い上げ闇雲に振り回しては何かを探している
「アイツ、私達の姿が見えてないのかしら?」
「恐らくは理性も何もかも失って狂人化してるんでしょうね」
グレイシア達は少し距離を離すと男はグレイシア達を見失なっているのかその場で停止した
「何か私達に反応するのかしら?」
シトリィが石を近くに投げ付けるが一切反応せずにただ立ったままだった。そして今度はグレイシアがゆっくりと近付くと男は狂った様に叫びながらグレイシア目掛けて接近して剣を叩き付けてくる
「ッチ、何で僕の接近は気が付くのかな」
「兎に角距離を取って相手を観察しましょ!」
シトリィの言葉に従いグレイシアは距離を取り、相手の行動を観察する
「もしかしてコイツ目が見えてないのか?」
「あの黒い靄に包み込まれてからは何かに蝕まれてるように辺りに攻撃していたのに………」
「なら」
グレイシアは音を出さずに男の背後に回り、短剣を突き刺そうとするが人間の反射速度を越える程の速度で防ぎ、逆に反撃をしてきた
「グオオオオオオオオオ!!」
「な、何!?何が起きてるの?」
「魔力が集まってますね」
男が叫ぶと周囲の魔力は男の体に吸収され、次第に男の体は大きく膨れ上がり、人としての形から変わっていくそれは例えるのなら大型の獣だ
「これは流石に不味いですかね?」
「どうするの!流石にあんなのが暴れたら私達だけじゃ不味いわよ!」
「ここで逃げたら被害も出ますしねぇ。どうしますか」
グレイシアは思考を巡らせる。 一番に思い付いたのは隊長であるイクスに報告することだがそれは自分の仕事を放棄したと見なされてしまう。それはグレイシアにとっては一番避けたい事態だった。 だがそれでも今の自分には恐らくは手に余る事態になるのも予想できてしまう
「恐らくはあの巨体の何処かに核があると思うんですがね」
腰に着けていた細長い棒状の様な物を投げ付け、巨体に深く突き刺さり、グレイシアは強力な電流を流して棒を爆発させるがほぼ無傷だった
「これでダメージが無いって事は確実に何処かに核がありますね」
「今のは何?」
「あれですか? あれは何て言うか色々と使うものですよ。 どうしても知りたいのなら後で教えます」
「むぅ、お姉さんに秘密を教えないなんて悪い子ね」
「それよりもカーラは?」
「治療は終わったわ。後は目を覚ますのを待つだけ」
グレイシアはカーラを見ると確かに傷は消え、安らかに寝ているように眠っていた
おや?グレイシアの会長への好感度が高いような?
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堕天使ラミネート
一方視点は変わり彼等の隊長であるイクスも大変な事に巻き込まれていた
「ッチ!おい!勇者2人!無事か!?」
「な、何とか!」
「此方も」
吹き飛ばされた勇者2人に視線を向けながら襲い来る攻撃を盾で防ぎながら相手を見据える
それは突然だった、今日の護衛をしていた時に不意に岡田真人を狙っての襲撃があった。窓ガラスを破り、そのまま真人が避けれない程の打撃を放とうとしたが何とかイクスが間に合い、それを防いだ
「ケッ!まだ生きていやがるデスカ」
「え?お、女?」
奇襲を仕掛けてきたのは黒い翼を生やした女だった。 その姿にイクスは見覚えがあった。 それは図書館に乗っていた帝国に記載されてる記事だった。 そこには色々な記事が書かれており、中には軍の事も書かれていた。 そしてそこには帝国に味方する堕天使の事もあった
「帝国軍所属の堕天使ラミネートだな」
「ハッ!私の事を知ってるなんて物知りデスネ!」
飛んでくる光の槍を盾で防ぎながらイクスは相手を観察する
(堕天使ラミネートか。 帝国軍ではそれなりの腕があり、戦闘経験もそれなりにあると来たもんだ。 これはこの勇者2人にはキツいか?)
「考え事デスカ!油断しすぎデス!」
迫り来る光の槍を盾で防ぎながらラミネートの腹に蹴りを入れて距離を保ち、勇者二人の前に立つ
「お前達2人で仕留めろ。 俺はお前達が死なないようにサポートはしてやる」
「ハアアアアアア!?無理無理無理無理!!あんな中ボスレベルのボスと戦うなんて普通に無理だからな!」
「真人、やるしかないよ。勝ったらご褒美あげるから」
「お前は何処をどう見たら勝てると思ったんだよ!マジで!」
「余所見とは余裕デスナ!」
「うわっ!?」
ラミネートは2人に接近し、手に持つ鎌で2人を斬り付けてくるがイクスがそれを防ぎ、真人が横から蹴りを放つ
「ぐっ!中々にやるデスネ」
「直樹!」
「おおおおおお!!」
注意が真人に向いたのを見てから直樹は視覚外からガントレットを着けた殴りで吹き飛ばす
吹き飛ばされたラミネートは壁に吹き飛ばされるがすぐに体勢を立て直し、追撃してきた直樹を鎌の柄で腹を突き、真人の方に吹き飛ばす
「ガハッ!ゴホッ!ゴホッ!」
「おい、無事か!?直樹!」
「う、うん、何とか平気だよ。流石は僕を一番分かってくれる真人だね」
そして何故か少し頬を染めるがイクスはそれを無視してラミネートに視線を向ける
「さて、もう1つ厄介な気配とグレイシア達の気配がするが一体どうなってる事やら」
堕天使……巫女服を着させたいですねぇ
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