転生したら遠坂家!? 二代目赤い悪魔の魔術師生活 (狩宮 深紅)
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改変

キャッチーなオープニング(ダブルミーニング)


 「・・・っ!」

 

五河士道は目を見開いた、先ほどまで地震に狙いを定めていた折紙の反転精霊の

【羽】をオレンジ色のビーム光が通ったかと思うと、そこにあったはずの【羽】は全て消えていた。

士道を【羽】の攻撃から守ったのは彼が封印した精霊達ではなく、また、対話に失敗し

士道を守るように立っている()の士織でもなかった。

 

「その様子だと君たちの対話は失敗したようだね」

 

肘の部分にあるオレンジ色の粒子を放出するエンジンを様な何かを操作しゆっくりと降下してくる。

彼の名は遠坂紅輝、DEMの魔術師(メイガス)にして

士道の通っている学校の先輩でもあった。

 

「ま、待ってくれ遠坂先輩!まだ手はあるはずなんだ!もう一度対話をすれば—————

「本当にそう考えているのかい?」——っ!」

 

「それに、チャンスは一度きりといったはずだよ、士織も口を開かないけれど分かっているはずさ。士道、君は彼女の拒絶をはっきりと感じただろうこれ以上は無駄だよ。

それに、これ以上は被害が増えるだけだ」

 

ここで黙っていた士織が口を開く。

 

「だけど、私たちはやらなくちゃならない、折紙ちゃんを救えるのは私たちしかいないから・・・!」

 

「そうだ!もう一度チャンスをくれ!次は必ず成功させる、だからもう一度チャンスをくれ、いや・・・ください!」 

  

その言葉と同時に士道は紅輝に頭を深々と下げる。紅輝は少し考えるがすぐ答えを出す。

 

「だめだ」

 

その言葉に士道と士織は苦し気な表情をする。

 

「どうしてですか!?先輩はいいんですか!折紙が、同じASTの仲間が苦しんでいるんですよ!それなのに・・・!」

 

今にも噛みつきそうな士道を士織が制す。

 

「・・・今の君たちには不可能だよ、特に士織、君の力は確かに対話を成せる力だよ。

だけど君の力は純粋な対話の力ではないんだよ、トランザムバーストによる対話は君たちの精霊を救うという絵空事を確立させる手助けにはなっただろう、以前の≪プリンセス≫の反転体の時は見事だと称賛を送ろう。だけど今は状況は違うのだよ、それに士織は先ほどで粒子を使ってしまっただろう?もう一度言おう、()の君たちには無理だよ。もう手遅れなのだよ。来い、バンダースナッチ!」

 

紅輝の言葉に反応し近くに待機してあったバンダースナッチが士道と士織を取り囲む

バンダースナッチは二人にレーザーブレードを向けるが攻撃する様子はないだが、少しでも動こうものなら即座に彼らの体を切り刻めるだろう。

 

「くっ、このままじゃ折紙が!」

 

「安心したまえ、君たち二人は殺さないよ、上からの命令があるのでね。それじゃあ」

 

そういって紅輝は反転体の折紙の元へと飛び立った。

 

「やめてくれ、紅輝先輩!」

 

彼を止めるために八舞姉妹の力を使おうとするがバンダースナッチにレーザーブレードを

首元に向けられ動けなくなる、士道は士織の方を見ると同じように首元にレーザーブレードを向けられていた。

 

「くっ、逃げろ、逃げてくれ!折紙ぃぃぃぃぃ!」

 

五河士道の叫びは少女に届くことなくむなしく響いていた

 

 

 

 

 

 

遠坂紅輝は一直線に反転体の折紙に向かっていた。しかし、そう簡単に事が運ぶはずもなく、

反転体から放たれた【羽】が敵を排除しようと砲撃をしかける

「簡単にいかないのはわかっていたが、これは数がおおい、少し掃除をしなければいけないな、ゆけ、ファング!」

 

その言葉とともに腰と盾に備えられていた【(ファング)】が放たれる。

【牙】は【羽】を食いちぎるように次々と破壊していく、ビームライフルでも【羽】を打ち落としながら、エレンの方を一瞥すると三体の精霊と【羽】を相手に立ち回っていた。

彼女からの支援は期待できそうにない、彼はそう判断すると自分の手で鳶一折紙を殺す方法を思考する。

 

「まずは・・・」

 

折紙の反転体にバスターライフルを数発撃ちこむが【羽】に阻まれ全く届きそうにない様子だった。

それどころか先ほどの砲撃で明確に敵と認識したのか、前よりも【羽】はその数を増やしていた。

 

「なるほど、出し惜しみをしている状況ではないようだ、大型ファングの方の粒子はチャージは終わっているな。いけ、フィンファング!」

 

【牙】を回収し次に大型のファングを放ち【羽】を次々と打ち落としてゆく、紅輝自身も

バスターライフルをエンジンに直結し高威力の砲撃を放ち周囲の【羽】を次々と打ち落とす。

折紙との距離を縮めると急激にその数を増やし、紅輝を撃ち抜かんと砲撃の雨を浴びせる。

 

「このままではじり貧か、仕方ない。」

 

戦闘中のエレンのプライベートチャンネルを開きコールをかける。

三コールほどが鳴り響きエレンがコールにでる

 

「エレン、聞こえているかい?」

 

『・・・執行部長と呼べといったはずですよ、紅輝、それで、なんの用です、今忙しいのですが。』

 

彼女の言葉の通り精霊たちとの剣戟音やビームが通りすぎるような音がしているが、彼女の声には息が切れていて様子はない、流石は人類最強の魔術師といったところだろうか。

 

「なに、簡単なことさ、今の君はとても忙しそうだからね、バンダースナッチの指揮をする暇がなさそうだ、そこで僕が君の代わりにバンダースナッチの指揮を執るために指揮権の譲渡をしてほしいのだよ。」

 

エレンからの返答はすぐに帰ってきた。

 

『まあ、いいでしょう、指揮権を遠坂紅輝に譲渡します。それと、トランザムシステムは不確定要素が多いため使わないように』

 

エレンの音声で指揮権の譲渡が行われる。

 

「わかっているさ、ありがとう。それじゃあ、そっちはまかせたよ。

そういってチャンネルを切り、次にバンダースナッチのチャンネルを開く

 

「バンダースナッチ隊に命ずる、出力を最大にしてあの反転体に特攻するんだ」

 

紅輝は淡々と言い放つと、バンダースナッチはエンジンを最大展開させ一直線に突っ込んでゆく。

【羽】はバンダースナッチを落とそうと砲撃を放とうとするも紅輝の放った合計八つものファングとフィンファングが打ち落とし、なかなかバンダースナッチを落とせずにいた。

何機かを落とすことができているが、それを上回る量のバンダースナッチが次々と折紙の反転体へと当たり、瞬時に大きな音を響かせ爆発してゆく。

本体その攻撃は折紙本人には何のダメージを与えることができていないが、彼女を囲んでいる【羽】は次々と剥がされてゆき、数分もしないうちにすべてのバンダースナッチは跡形もなく無くなったが、同時に折紙を守っていた【羽】は無くなり、その姿が露わになっていた。

紅輝はその姿を視認するとファングをすべて収納する。

 

「フィナーレといこうか、リボーンズキャノン!」

 

CR-ユニット背にあった砲門を全て前方に移動させ、砲撃体制に入る。

 

「慢心はしない、全力で殺す、トランザム!」

 

その言葉とともに音声認証が反応し機体の中に貯蔵してあった粒子を一気に開放する

機体が赤く発行し砲門にエネルギーを充填してする。

 

「圧縮粒子開放、・・・鳶一折紙、君は優秀な魔術師だったのだがね。さよならだ、君のことは忘れはしないよ」

 

その言葉とともに引き金が引かれ、開放された巨大な粒子砲が放たれ、折紙に直撃する。

 

そして数秒後、粒子砲が止み、折紙がいた場所には彼女の姿はなく、そこにあるのは暗く輝く宝石のようなものが浮かんでいるだけだった。

紅輝はトランザムを解除しそれを手に取ると笑いだす。

 

「ふふふ、はははは!ついに手に入れたぞ!反転体の《霊結晶(セフィラ)》を!」

 

紅輝はしばらく笑うとアイザックから渡されていたケースに入れる。

そんなとき、彼に急速接近するものがいた

 

「憤怒、よくもマスター折紙を!!!」

 

八舞夕弦、鳶一折紙をマスター折紙と親しみをもって接していた少女である。

弓弦は手のペンデュラムで怒りに身を任せ高速の攻撃を繰り出す。

紅輝はすぐに回避行動をとり回避が無理そうなものは盾とビームサーベルでいなしていた。

 

「君は・・・、確か〈ベルセルク〉の片割れか、邪魔をしないでくれるかい、僕は今とても気分がいい。今すぐ攻撃をやめるのであれば、今日は君たちにこれ以上何もしないよ。」

 

「却下、許しません!あなただけは!」

 

尚も攻撃の手を緩めない夕弦に紅輝はため息をつく。

 

「やれやれ、そんなに命を捨てたいのかね君は!」

 

そしてまた精霊と魔術師たちの戦いが始まった。

そしてここには既にこの場を鎮められるものはいなくなっていた

 

 

 

 

 

 

 

 




誤字脱字があれば報告お願いします

用語解説(簡単に説明します)

トランザム(TRANS-AM)・・・赤くなって出力が一定時間3倍になる。
トランザムは使うなよ。
了解、トランザム!

トランザムバースト・・・GN粒子という万能粒子の力で精神同士で対話をできるようにするもの
ただし、今作ではこの技を使った後はしばらく本来の力を出せなくなるようになります。

バンダースナッチ・・・今作のバンダースナッチは形状の変化はありませんが、高出力での自爆機能が搭載されています。

ファング・・・オリ主が装備しているCR-ユニットに搭載されている無線誘導兵器、
相手を貫くための小型のファングが盾と腰に4機ずつ、背中のほうに大型の砲撃を放つフィンファングが存在する



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紅輝リスタート
設定


この小説を見やすくするための設定のつもりです。

主にキャラ説明が主になりますので詳しい世界観については申し訳ありませんが諸事情で省かせていただきます。
申し訳ありません!




~今作の世界観

この世界はデート・ア・ライブの世界を軸とし、肉付けとして型月の世界でなりたっています。

Fateで言えば衛宮士郎がUBW(に限りなく近い)ルートを通った世界で遠坂凛と衛宮士郎が倫敦の時計塔を出た後に結婚した。

正規ルートとの違いは、桜が養子に出されるのは間桐ではなく、時臣が昔のツテを使いエーデルフェルトの方に養子をだした。

という点が主な点で後は些細な点のみである。

冬木市は衛宮士郎達が倫敦に行っているときに起こった空間震により、都市機能が破壊されてしまい隣町である、天宮市と合併することになり、シェルターの普及率が一気に増加し、日本有数の空間震対策設備が最も高い街となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~遠坂紅輝

本作の主人公。親が遠坂凛と衛宮士郎の息子、魔術回路の本数はメインが40本、サブがそれぞれ20本とかなり恵まれている。

属性は火、土、水、の3属性を持っており

さらに衛宮士郎の起源である”剣”も継承出来た。

 

自分が転生者であると自覚したのは小学校に入る直前、前世の記憶は断片的にしかなく、ほとんど覚えていない。

幼い頃から遠坂家の次期頭首として育てられ、本人もそれを了承し日々魔術の鍛錬に勤しんでいる。

小学校では遠坂家として完璧を追い求め、対人関係以外は全て完璧にこなすことができた。

だが、ある時違うクラスではあったが五河士織がクラスの女子からいじめられている場面を発見し、士織助け、その女子達にお話(意味深)をして解決させた。

魔術師として振る舞う時はリボンズ・アルマークのような言動をしている。(なんでかって?・・・作者がリボンズキャラが好きだからだよ!)

 

いわゆる転生特典はなく、デート・ア・ライブの知識は全く無く、親に遠坂凛と衛宮士郎がいることからこの世界のことを型月の世界だと考えている。

 

イメージ・・・特に指定はありませが、皆さんが考えるリボンズ・アルマークプレイができるようなキャラを想像してください!

 

 

 

~五河士織

本作のメインヒロイン。本来なら実在しない存在であったが転生者という異物が入ったことにより実在する人物であり・・・。(ここから先しばらくはかすれて見えないようだ)

どこにでもいるような普通の女の子、士道の実の姉で五河家になってからも士道を支え、琴里のことも本当の妹のように接している。

 

改変・・・・の世界・・・・・霊となる・・・の男に会い・・・・の中で・・か対話・・・・を・・かを・・・・際、彼女は・・を選んだ。(ページが汚れておりところどころ読むことが出来ないようだ)

 

 

 

 

 

 

 

~レティシア・エーデルフェルト

エーデルフェルト分家の次期頭首、親は遠坂桜とトレーズ・クシュリナーダ(に限りなく本物に近いそっくりさん)。

ブロンドの長髪に性格はルヴィアの影響を強く受けている。魔術の腕は両親のどちらからも完璧に受け継がれており、魔術の腕だけならばオリ主よりも高い。オリ主は知らないがとあるキャラクターに似ている妹がおり、その妹の模範になれるような姉として振舞っている。

オリ主よりも1歳年上で、オリ主のことは、馬が合わないものの、魔術師としては高く評価し、認めてはいるが、やはり年上としてのプライドなどが邪魔をしいつも喧嘩ばかりしている。

そんな彼女であるが、ひとたび人の上に立てば潜在的なカリスマ性やエレガントさを発揮するため、時計塔の中での隠れファンは意外と多い。

 

イメージ・・・ルヴィアの背を少し小さくし、目元や顔立ちは桜に似せた感じ。

イメージボイスは能登麻美子

 

 

 

 

 




もうちょっとここを説明会して欲しい、という部分があれば少し前に投稿した活動報告の方にご質問下さい!

可能な限り返答したいと考えております!

今回はとても短いですがここまでとさせていただきます!
出来れば今週の木曜日に投稿する予定ですので見ていってください!


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始まり

二話めです

オリ主の一人称は“自分”です


やあ!見た目は子供、頭脳はおっさん!迷宮だらけの転生者!遠坂紅輝だ!僕はいまピカピカの

小学6年生!しかももうすぐでそれも終わり!さらに言うと時期遠坂家の当主さ!

友達?小学生卒業間近で片手で数えられるほどしかいねぇよ!文句あるか!(泣)。

みんなの知っている通り、生まれ変わった世界はなんとびっくり型月だったよ。

 

うわぁい、死亡フラグ満載だぁ!

 

まあ、図書館や家にあった資料、母さんたちに聞いた話からこの世界が自分が知っている型月世界とは少し異なっていることが分かった。

型月の世界、というか自分のもといた世界にすらなかった空間震?っていう明らかに魔術が関わっているような災害が起こっていること。空間震のほかにもDEMっていう大企業があった。まあ、もしかしたら書かれていないだけであったのかもしれないが・・・。

 

空間震の影響は冬木の地でも起こったらしく冬木市は壊滅、その時にはすでにシェルターがある程度普及していたことから被害は最小限に済んだらしいが、

都市機能が大きく損なわれたことから冬木市と隣にあった天宮市が合併したという。

その時は父さんや母さんはロンドンに居たからその被害は被らなかったらしい。

ほかにも、型月世界とは違った点は・・・

 

「・・・って紅輝くん、聞いてる?」

 

砲撃をぶっぱする魔王様に似ているロリボイスが自分を回想から呼び戻す。

彼女の名前は五河士織、自分の数少ない友達の一人である(こっちが勝手に思いこんでいるだけなので向こうがどう思っているかは分からない)そんな彼女はこちらの顔を覗き込んでいた。

 

「ん…、聞いているぞ五河。妹の琴里ちゃんが兄の士道にべったりってことだろ?」

 

「そうなんだよ…、琴里ってばいくら何でも…って違う!紅輝君はどこの中学に行くのってことだよ!それと、わたしのことは士織って呼んでって言ってるでしょ。」

 

うむ、なかなかに良いノリ突っ込みだ。この子は将来良い芸人になれるかもしれないな…

中学校か、自分はとりあえず小学校を卒業したら時計塔に行く予定だ。

そこで魔術の腕を磨いて遠坂家の当主としてふさわしい魔術師にならないといけないからな。

親戚以外は知らないけど、士織になら魔術的なことを隠して話してもいかな?自分の数少ない友達だし…。

 

「自分は来年からイギリスっていう外国に留学することにしているんだ。」

 

「えっ」

 

士織はさすがにこんな急な話をしたからか目を点にして驚いていた。しばらくすると士織の顔にはじわじわと涙が溜まっていき…

 

「紅輝くん、外国に行っちゃうの?もう紅輝くんとは会えないの?ど、どうして?もしかして私のこと嫌いになっちゃった・・・?」

 

士織の声がどんどん上ずっていき、目にたまっている涙は今にもこぼれ落ちそうになっていた。

それにつれて周囲の目線がどんどん冷ややかになり、また同時に明らかに憎悪のこもった視線も感じた。

それもそのはずである、士織はクラスの中でもかなり上位の可愛さを持っている。

まあ、一時期はその容姿に嫉妬したほかの女子生徒にいじめられていた時期もあったが、そのいじめがあまりにも悪質だったから少し顔を突っ込んでしまったこともあったな。

それに、男子生徒の中で好意を持っている生徒も多いと聞く。それを理由は何であれ泣かせそうになっていから当然である。

 

「お、落ち着け、いつk…士織、帰ってくる、ちゃんとこっちに帰って来る、勉強に行くだけだけだよ。だから、泣かないでくれ!」

 

「ほんとに?」

 

「ああ、本当だ。」

 

「ほんとに、本当?」

 

「ほんとに、本当だ。」

 

「……それならよかった!」

 

繰り返してやっと信じてくれたのか士織顔はパァッ…と明るくなり笑顔が戻った。

うーん、やっぱり年下の子供の相手はまだ慣れないな…。

 

士織のさっきの言葉でやっと周囲の視線はもとに戻る。何人かはまた納得してはいないみたいだが、さっきよりはましだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、小学校の最後の日がやってきた、いわゆる卒業式である。

自分の担任だった教師や何人かの生徒たちは涙を流して別れの時を悲しんでいた。

自分はこういったものは何度経験したかは覚えていないが、涙悲しいともさみしいとも思わないから慣れてはいるのだろう。まあ、友達は片手で数えられるほどしかいないからかもしれないけどネ!

卒業式が行われていた体育館から出ると母さんが出迎えてくれた。

髪は伸ばして結んでいないが、卒業式というだけはあって周りの奥様がたよりもいい服を着ていた。

 

「紅輝、卒業おめでとう。主席で卒業なんてさすがは私の息子ね、だけど、あなた最後まで友達を家に呼ぶことをしなかったから、これからが少し心配だわ。」

 

母さんはわざとらしく、はあ、とため息をつく

むう、言い返せないのが悔しいがその通りである。

我が母ながらなかなか痛いことを言ってくれるじゃないか。

そういえば父さんが見当たらないな、卒業式の最中には見かけなかったから来ていないのだろうか。

 

「…そういえば、父さんは?」

 

「士郎のことなら帰ってからのお楽しみよ♪あなたも今日ぐらいは羽根を伸ばしたっていいのよ、何なら友達でもよんで……最後のはあなたにとって余計だったわね。」

 

ちょっとやめて!そんな目で自分を見ないで!いるもん、友達ぐらい…士織とか岸波さんとか、藤村さんの息子さんとか…!

自分が改めて自分の友達の少なさに絶望しているとき。

 

「おーい!紅輝くん!」

 

士織が卒業証書の入った筒を抱きしめ、手を振りながらこっちに走ってきていた。

 

「士織じゃないか、どうしたんだ?もう友達とは話さなくていいのか?」

 

「うん、みんなとは大体話したからね。・・・!もしかして紅輝くんのお母さんですか?」

 

ああ、そういえば士織と母さんは会うのは初めてだったな、授業参観とかは全部父さんが来ていたからな。

 

母さんは少し驚いた顔をするが小さい声で、ふぅんと言うと士織の目線までしゃがむと。

 

「えぇ、そうよ。私は遠坂凛、この子の母親よ、あなたは…士織ちゃんといったかしら?」

 

「はいっ、五河士織です!紅輝くんとは()()()()()は友達です!」

 

「・・・へぇ、そう。良かった、紅輝にも友達はいたのね。士織ちゃん、紅輝とこれからも仲良くしてやってね?紅輝もこんな可愛い子を泣かせたりしなかったでしょうね?」

 

「…そんなこと自分がするわけないじゃないか。(はからずも泣かせかけてしまったことはあったが)」

 

「ふーん、それならいいけど。それで士織ちゃん、紅輝に何か用でも?」

 

母さんが士織に自分や父さんにはほとんど見せないような優しい声で尋ねる。

 

「あ…、その…紅輝くんに伝えたいことがあって……。」

 

士織は少し顔を赤くしながらこっちをちらちらと見ていた。

 

母さんは何か驚いた顔をしたが、こっちを向いてニヤニヤしながら、なるほどねえ、といい。

 

「分かったわ、士織ちゃん頑張ってね、私は少し話してくるから」

 

そういって母さんは奥様方の集団の方へと歩いて行ってしまった。

 

「えっ?ちょっと母さん!?」

 

事情が分からず母さんを引き留めようとすると

 

「こ、紅輝くん!ちょっと向こうでお話ししない?」

 

震えるように声であったがそこには有無を言わせぬような迫力を感じた。

そして、士織が指差しをした方向には体育館から少し離れた桜の木だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お互い無言同士で士織が先導するように歩くこと二分程度、例の桜の木のもとにつくと士織は自分の方に振り向き真面目な顔でくちを開いた。

 

「紅輝くん、一つ伝えたいことはあるんだ…。」

 

「・・・。」

 

自分は士織の言葉を黙って聞く、この時点でやっと士織が伝えようとしていることは分かったが自分が口を開くのはまだ早い。

士織は目をつむり、過去を思い出すようにゆっくりと言葉をつなぐ。

 

「私が4年生の時、私が虐められていたとき、紅輝くんは私を助けてくれたよね…。

あの時、本当にうれしかったんだぁ。友達に助けてもらいたかったけど、それのせいで友達が虐められるかもしれないって思ったら怖くて言えなくて…。

でも、そんなときに紅輝くんがいじめっ子たちを追い払ってくれてとても嬉しかった、

それが解決した後も紅輝くんは何度も、大丈夫か?また虐められてないか?って声をかけてくれたから今の私がいるんだと思う…。だから、本当にありがとう!」

 

士織のその言葉と共にでたそのとびきりの笑顔は自分が今まで見てきた中で一番の笑顔だった。

 

「…自分は大したことはしていない、あいつらに()()()()をしたら分かってくれたからな。」

 

「そうだったんだ…、そうだとしてもとっても嬉しかった。私にとってあの時の紅輝くんは、そう、まるでテレビに出てくるような()()()()()のようだった!。」

 

———正義の味方、その言葉を聞いたとき自分の全身が奮い立つような感覚に襲われた。

あぁそれは、自分にとってなんと甘美な言葉なのだろうか、もちろん、自分は”エミヤ”ではないではないが自分は士織にとって正義の味方になることができたのだろう。

それならばあの時士織を助けたことは無駄ではなかったようだ。

 

さらに士織は言葉を続ける

 

「その時からかな、わたしは紅輝くんのことを自然と目で追っていたし、一緒に居ると心がぽかぽかするんだ。これって本で読んで分かったんだけどこれはきっと私が紅輝くん君のことが好きっていう気持ちなんだと思うんだ。…だから、ちゃんと言うね?―――――――私は好き!紅輝くんのことが好き!だからずっと一緒に居て!私とずっと一緒に居てほしいの!!」

 

士織は心の中にあったものをすべて吐き出すように告白をした、一世一代の告白であることが自分でもよく分かった。こんな告白をしてくれたのだから中途半端な返事は絶対に許されない、だからこそ

 

「…士織。君の気持ちは十分伝わったよ、こんな自分を好きになってくれてありがとう。自分からも返事をしないといけないな。」

 

「…っ。」

 

「士織、もちろんOKだ、だけど、士織もわかっているだろう、自分は来週には外国に行って最低でも三年以上は会えないし、この考えを変える気はない。それを君が嫌だと考えるなら今すぐにでも諦めた方がいい、そうでないと士織は必ず後悔することになる、それでもいいのか?」

 

「うん、紅輝くんならそういうと思ってた。大丈夫、覚悟はできてるから、

だから待つよ!三年でも五年でも十年でも!ずっと紅輝くんのこと待ってるから。

でも一つだけ条件を付けてもいい?」

 

「条件?」

 

「うん、条件、それはね」

 

 

士織はそういうと一気にこちらに近づいて自分の唇を奪う。

一瞬だけのキスであったが彼女の唇の感触がはっきりと感じられ、その一瞬がとても長く感じられた。

 

「・・・ん、ふへへ、キスしちゃった」

 

士織は顔を真っ赤にして恥ずかしそうに笑っていた。

 

「紅輝くんは帰ってくるまで、私とのキスを忘れちゃだめだよ、忘れたら許さないから!」

 

「・・・わかった、忘れない、だから、士織もおぼえておいてくれよ」

 

「うん!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次から一気に時間がとびます


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始動

三話めです。




 

あれから少しと一年が経った、魔術師の総本山である時計塔はやはりレベルが違った。

 

一年のうちに目的の一つであるロードエルメロイ二世との友好的な関係を築くことができただろう。

問題は全くなかったとは言えなか年齢故か影ながら馬鹿にされていることが少なからずあった。

だが、そんなことをしてくる輩は大体がたいしたことのないやつらばかりだったから

実力をもって二度とそういうことが言えなくなるまでおはなし(・・・・)をした。

 

仲のいい学友も小学校のころに比べて作ることができたといってもいい。

・・・まあ、一人だけ相容れないやつはいるが。

 

金銭面は宝石魔術の費用のおかげで無駄遣いはできないが、何とかやりくりをして

それなりの生活はできていた。

 

手持ちの宝石はヤツよりも少ないがそれなりに多い量は確保できている。

母さんとは違うのだよ、母さんとは!

 

以前提出した宝石魔術に関する論文はそれなりにいい評価もしてもらい時計塔生活は順調といったところだろうか。

 

 

 

 

遠坂紅輝の朝は・・・・遅い

朝の七時半に起床し身支度を済ませエプロンをきて台所に立つ。

一年ほど自炊をすれば自然と家事スキルも身についてきた。

トーストとベーコンエッグ、コーンスープという、いつもの朝食を食べ時計塔へと向かう

この日は一限から基礎魔術の講義があるのである。

講義が終わったら、次の講義がない場合は図書館へ言って本を読む、一日の講義がすべて終了したら友人たちと雑談しながらアパートに帰宅。

夕食は大量に買い置きしてある食材から何かを作り食べた後は魔術の鍛錬をする。

一通りのノルマが終わったらお風呂に入り就寝といった日が続いている。

自分はこの生活に満足しているし、この生活が卒業まで続くと考えていた。

 

 

そう、あの日までは、

 

 

 

 

時計塔生活が二年目になろうかとしている五月だった。

自分はいつもどおりに現代魔術の講義が終わり、次の鉱石かの講義を受けようと

次の教室に向かっていたときだった。

 

「すきあり」

 

聞き間違えよもないヤツの声、それに伴いヤツが自分の頭部に向けて手刀を振り下ろしてきた。

 

「あたるかよ!」

 

そう返しながら、ヤツの手を魔術で強化した手の甲ではじき返す。

ヤツは不意打ちが外れたことを意にも介さず余裕の笑みを浮かべる。

ヤツの名はレティシア・エーデルフェルト、次期エーデルフェルト家の頭首であり、

認めたくはないが、自分がライバルとして認めているやつでもある。

 

「あらあら、まさか反応されてしまうだなんて、運のいいお方。」

 

「微塵もそんなこと思っていないくせによく言うね、それで何用、今忙しいのだけれど」

 

「まあ、そんなに邪険にされたら悲しいわね、同じ血が流れているんですから

もう少し仲良くしてくれてもいいじゃないですか」

 

彼女は自分の反応が予想通りだったのかくすくす笑いながら話す。

 

「そう思っているのだったら、君も自分に対する行為を改めるべきではないか?

君の態度と行動が変われば自分も君に対する行動を改めようじゃないか」

 

素っ気なく返事を返し次の教室へと向かおうとすると、レティシアが自分の隣を歩く

 

「何だエーデルフェルト、君の教室は自分とは違うだろう。」

 

「掲示板を見ていないのかしら、私の担当の教授は今日はお休みですから

同じ教室で講義を行うのよ。」

 

・・・自分の講義に関する変更はなかったからよく見ていなかったのが仇となったか。

まあいい、エーデルフェルトの近くに座らなければいいだけの話だ。

 

教室に入ると黒板には一枚の紙が張られていた。

合同で授業を行うからか、今回は席が指定されているようだ。

自分の席を確認して、割り振られた席の隣にはエーデルフェルトの文字が書かれてあり

ヤツは面白いことが起きたときのように口元を隠しながら笑っていた。

 

「あら、紅輝さん、どうやらお隣のようですね、くれぐれも私の邪魔はしないでくださいよ」

 

「それはこちらの台詞だよ」

 

そんなこんなで始まった今回の講義であるが、色んな意味での問題児が一ヶ所に集まればどうなるかは想像は容易くはないだろう。

 

確かにお互いの授業妨害はしなかったが、お互いの発言のたびに片方が余計な一言や

論破をしあうものだから二人ともヒートアップしいつ殴り合いになってもおかしくない

状態だった、その場は教授の一声によって収まったが周りにいた生徒たちは気が気ではない状態だっただろう。

 

講義が終わった瞬間に二人はすぐさま中庭に出るとお互いをにらみあっていた。

周りの人間は“またやってるよ”といった感じで笑い、止めるものは居なかった。

 

「授業前にいいましたよね、私の邪魔はしないでって」

 

「邪魔してきたのはそちらだろう、君のあの一言はあの場で言う必要なかったと思うのだけど」

 

「あら、私はあなたに足りていない知識を教えただけよ、決して邪魔なんかじゃないわ」

 

「は?」

 

「あ?」

 

両者がお互いににらみ合いを始める、もしここが漫画の絵のなかであったなら二人の視線の間には火花散っていることだろう。

その瞬間、お互いに地面を蹴りプライド(笑)を賭けた肉弾戦闘(リアルファイト)が始まった。

 

 

 

 

あれか数分後、二人の喧嘩は思わぬ事態によって幕を閉じた。

二人の殴りあっている地面に埋まっていた大き目の石が戦闘の衝撃によって中に浮かび

たまたま紅輝が放ったガンドとレティシアの放ったガンドがその石に直撃し勢いよく弾かれた石は時計塔に勤めているある教師の研究室のガラス窓を割り、その中にあった研究史料を破壊してしまったのである。

 

二人はその後、罪の擦りつけあいをしているうちに騒ぎを聞きつけた教員が発見し、二人とも仲良く?罰金と弁償、一週間の謹慎処分になった。

ロードエルメロイ二世が中間に入ったことにより二人の処分はここまで軽くなったが二人の名が悪い意味で知れ渡ったのは当然だろう。

 

そして、後に二人に届いた罰金と弁償の請求の額は日本円にして

 

五百万円だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やべぇ、やべぇよ、どうすんだよこの金額!流石に自分も悪いとは言えこの金額はまずい。

手持ちの貯金じゃまず絶対に足りない、宝石を手放すか?

いや、それはだめだ、宝石魔術を研究するなら絶対に宝石は必要だ。

レティシアはさっさと支払いを済ませているみたいだが、こっち、もちろん日本の実家にもそんな金額があるわけがない。

 

非正規雇用のアルバイトをするにしても、何ヶ月かかるか分かりやしない。

まぁ、おそらくあっち(・・・)系の仕事なら探せば何とかなりはするだろうが、

命の保障はまずないだろう。

 

 

通達が来てからの三日間は雇ってもらえそうな所をあちこちを回ったが、

年齢か、それとも東洋人だからかなのか全く相手にしてもらえなかった。

どうしようもなくなって、公園のベンチに近くのカフェで買ったコーヒーを片手にうなだれていたときだった。

 

「君こんなところでどうしたの?具合悪いの?」

 

 

自分はその声の主を見上げると、美しい金色の髪に透き通った青色の目を持つ少女が

こちらをまっすぐに見つめていた。

 




補足としてですが、この作品ではデートアライブにおける魔力と型月における
魔力のオドを同じものとしてみなしています。
霊力に関してですが、型月世界で言う魔力のマナと同じものとしています。

オリ主の魔術属性は火、土、水と三属性もちで残念ながら凛からすべての属性を受け継ぐことはできなかった。
起源は衛宮士郎の起源を継承しており、いまだに固有結界を開くことはできないが、
剣の貯蔵は定期的に行っている


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ターニングポイント(前編)

四話目です。

書いていると長かったので前編と後編にわけて投稿します


「・・・君は?」

 

「私の名前はアルテミシア・ベル・アシュクロフト、君の名前は?」

 

「自分の名前は遠坂紅輝、日本人だ」

 

「へえ!あなた日本人なのね!ところで君は見たところ私と同い年に見えるのだけれど何歳?

あ、私は十四歳だよ。」

 

彼女はそういいながらにっこりと笑う、その笑顔はとてもまぶしく士織のことがなければ即落ちしてしまうほどの可愛らしい笑顔だった。

一瞬だけ見とれてしまったが、すぐに戻し内心を隠す。

 

「奇遇だな、自分も十四歳だよ。」

 

「本当に!?ここで会ったのも何かの縁ね、話をしない?ここでうなだれてたったてことは

時間はあるんでしょう?」

 

彼女は自分の声も聴かず自分の手を引っ張って彼女の家と思しきところまで連れて行かれた。

・・・なるほどこれがコミュ力お化けか。

 

 

 

 

 

「ふむふむ、簡単に言うとお金に困っていると、最初はお金に困っているなんていったから、

危ないお薬でもやってるかと思ったよ。親に頼むのは無理なの?」

 

「親は日本に居てな、親に言ったら確実にどやされる未来しか見えないんだ・・・。」

 

自分とアシュクロフトは流石に解決策が思いつかなく唸るばかりだった。

 

「うーん、ごめんね。私もそんな大量のお金は持ってないし、手助けできそうにないかな。

・・・自分で声をかけていてなんだけどごめんね。」

 

アシュクロフトは“しゅん”という効果音が聞こえてきそうなぐらい、自分の悩みをまるで

アシュクロフト自身の悩みにように考えていることがよく伝わってきた。

始めて会ってまだ時間がたってないが、自分にはこの子が根っからの信頼することができる

善人だと感じた。

 

「いや、君が気に病むことじゃないよ、元よりこれは自分の責任だからね仕方ないよ。」

 

「うん・・・」

 

アシュクロフトのその言葉が最後になんとも重苦しい空気があたりを支配し

そのままお互いが無言になってしまう。

しかし、その空気を一変させる音が響いた。

 

『―――空間震警報です。皆さん落着いて速やかにお近くのシェルターに避難してください。

これは訓練ではありません。繰り返します、―――』

 

「空間震警報だって!?、アシュクロフト、今すぐ近くのシェルターに、っ・・・!」

 

アシュクロフトに声をかけようとして気づいた、彼女は今空間震という災害におびえるのではなく、何かと戦う戦士の顔をしていることに。

 

「うん、分かってる。でも私絶対にやらなくちゃいけないことがあるから、先に行っててね。それじゃあ!」

 

彼女はそう言うと、玄関から飛びだして外の方向に行ってしまった。

 

「え、あいつは何を言って・・・、あぁ、もう!さっき知り合った女の子を見殺しになんか

できるか!」

 

アシュクロフトの足は以外にもかなり速かったらしく自分が外に出るころにはその姿は見えなかった。

避難警報がなっているからか、町のほうはすでに人の姿はなく、ここには自分ひとりになっていた。

こうなったらこちらの都合が良い、自分は持ち歩いている宝石入れから宝石を一つ取り出し

空中へと放り投げる。

投げられた宝石はその形を変え、鳥のような姿になると周囲の観察をするために羽ばたいていった。

Anfang(セット)!頼むぞ、宝石の無駄遣いは元からできないけど今回は特別だ!」

 

自分も周りに人がいないかをもう一度見回し、人のいる様子が確認できなかったから

足に魔力で強化し一気に駆け出す。

 

走りだして数十秒、全身が何かに対して激しい警告音を鳴らしていた。

自分は状況からこの警告音が空間震のことだと推測し、近くのシェルターの入り口の壁に身を潜める。

そして念には念を入れ、そのシェルターの壁には耐久力強化の魔術で強化しておいた。

 

その数秒後、3km先ほどの先の場所から爆音が鳴り響き、激しい衝撃波が発生し

自分が潜んでいるところまでその余波が伝わってきていた。

その衝撃が収まったころに壁から身を出すと衝撃の光景が広がっていた。

発生地と思われる場所の建物はすべて木っ端微塵となり、自分と少し離れていた場所の建物は衝撃波で倒壊していた。

 

「・・・これが、空間震。って、呆けている場合じゃない、アシュクロフトは!?」

 

使い魔との接続を試みるが案の定先ほどの空間震で壊れてしまっていた。

もしかしたらと思い、発生地のほうに駆け出す。

 

 

発生地まであと200mといったところで魔力で言う強いマナを感じた。

そちらのほうに向うとそこには見た目は可憐な少女の見た目をしているが明らかに人間のものとは違っているものがクレーターの中心地に存在していた・

しかも、彼女が身にまとっているのはこの場にはとても似つかわしくない漆黒と血で塗られたようなドレス、さらに、手に持つのは二つの大きさの違う二丁拳銃、このまま安易に進めば

あの二つの拳銃で撃ち抜かれておしまいだろう、故になるべく見つからないように気配の消して瓦礫に沿って最短距離で近づく。

自分の推測が間違っていなければ、彼女から感じられるマナのことも合わせ、空間震がただの災害でないとするのなら、この空間震は彼女が起こしているのだろう。

今の手持ちと剣製でヤツを倒せるか・・・?

いや、無理だろう、あの存在の能力は未知数であり、どんな能力を持っているかもわからない。

うかつに突っ込めば返り討ちに合うのは間違いないだろう。

どうするかを考えていたときだった。

突然、大量の発砲音が聞こえてきた、それと同時にクレーターの上にいた少女が飛び上がり

飛来する銃弾を回避する。発砲音が聞こえた方向を見るとSFで登場しそうな武装をした人間達が空を飛んでいた。

 

・・・なにあれ。型月世界の化学技術はあんなにも進んでいるのか!?

え、マジでこの世界どうなってんの、自分が知っている型月世界と違いすぎるんですけどぉ!?

そんな風に呆けていると武装人間達と少女との闘いが激しくなっていた。

幸い流れ弾等は来ていないが自分の理解を超えているいのは明らかであった。

両者の戦いの中でふと、武装人間のなかで一人だけ動きの違うものがいるのに気づく。

 

目に魔力を流し強化してその姿を見るとその姿は先ほど出会った少女、

アルテミシア・ベル・アシュクロフトだった。

 

 




良ければ感想や評価をお願いします。
作者のモチベーションアップになります。

それと、この作品をお気に入りに登録してくださった。
海藤さん、瀬笈葉さん、アトリエの狐さん、博麗 霊夢さん、削り武士さん、
非想非非想天の娘さん、幻想境界と禁書目録さん、メルヘム@さん

ありがとうございました。

誤字報告も見つけ次第報告していただけると幸いです。


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ターニングポイント(後)

5話目です。


そこに居たのは先程出会った少女

――――アルテミシア・ベル・アシュクロフトだった。

 

 

もう、わけがわからないよ(・д・`*)

 

呆けている自分を尻目に空ではアシュクロフトが

黒ドレスの少女をじわじわと追い詰めていく、黒ドレスの少女は焦りを感じたからなのか一旦アシュクロフトから距離をとると黒ドレスの少女が背後に大きな時計を展開し何か大きな声で叫ぶ。

すると少女と同じ顔、姿をしたものが現れた影から次々と現れた。

 

そこからは数の暴力だった、先程とは違い今度はアシュクロフトが黒ドレスの少女達に徐々に追い詰められていき、ついには囲まれてしまい腹部に強力な蹴りを入れられ地面に叩き落とされた。

アシュクロフトの仲間達が助けに行こうとしているが、

黒ドレスの分身体?に阻まれていた。

アシュクロフトは瓦礫に体が埋もれてしまい身動きが取れない様子だった。

アシュクロフトにトドメを刺すためか本体と思わしきやつが地上に降りてきてアシュクロフトの頭部に銃口を向ける。

 

自分はどうすれば良いだろうか・・・。

恐らくこのまま物陰に潜み気配を殺していれば黒ドレスの少女に見つかることもなく、何事もない日常に戻るのだろう。だが、そうすれば、あの黒ドレスの少女は引き金を引き、アシュクロフトの命を刈り取るだろう。

つまりそれは、もしかしたら助けられる少女を見殺しにするということになる、自分はアシュクロフトを見殺しにしてこの先、なんの罪の意識を感じること無く生きることなどできるだろうか。無論、不可能だろう。

 

 

・・・もしかしたら、この世界は何か計り知れないことが起きているのかもしれない。

そして自分は今、それに巻き込まれ選択を迫られているのかもしれない。

 

だったら・・・!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アルテミシアside

 

「なかなか手強かったですが、残念ですわね。」

 

そう言いながら最悪の精霊<ナイトメア>は私に銃口を向けてくる。

 

「ぐっ・・・」

 

体へのダメージは大したことはないがCR-ユニットが、さっきの衝撃で破壊されてしまい、さらに蹴り落とされたときに建物の瓦礫に足が埋もれてしまい動けなくなってしまった。

私はここで死ぬのかな、精霊を打破できないまま、

人の役に立て無いまま精霊の手によって殺されるのか。

仲間は<ナイトメア>の分身体に手を焼かされて防戦一方、この状況を打開する方法は私にはもう無い。

 

「恨んで貰って構いませんわ、また会うときは地獄で会いましょう、優秀な|魔術師<ウィザード>さん。」

 

そう言いながら<ナイトメア>はその引き金を引き

 

――パンッ

 

という発砲音が響いた瞬間私は目を瞑った。

頭の中に浮かぶのは先程出会った男の子、上手くシェルターに避難出来ただろうか、結局、彼の役に立てないままだったなぁ。

 

 

 

 

?「Anfang!『座標固定、障壁展開!』」(ドイツ語で言ってます)

 

どこかで聞いた様な声と放たれた弾丸が弾かれる音が聞こえた。

 

――カンッ!

 

「なっ、弾かれた!?これは一体・・・!?」

 

<ナイトメア>の動揺した声が聞こえてくる、恐る恐る目を開けると<随意領域(テリトリー)>では無い、エメラルドグリーンの壁があり、私を弾丸から守っていたのである。

 

「助かった・・・?」

 

驚きのつかの間、さらに誰かの声が聞こえる。

 

?「投影、開始(トレース・オン)!」

 

その言葉が聞こえると突然<ナイトメア>を囲むように

鉄製の剣が現れ、剣の檻を形作る。

 

「い、一体何が!?取り敢えずここを脱出を・・・!」

 

?「壊れた幻想(ブロークンファンタズム)

 

すると突然、剣の檻が大きな爆発的を起こし、<ナイトメア>にダメージを与える。私は壁のおかげで何とかなったが、至近距離でくらった<ナイトメア>は霊装や、

体のところどころが焼け焦げていた。

さらに、どこからか現れた人影が目にも止まらぬ速さで<ナイトメア>に肉薄すると鈍い音がし、そのまま拳で吹き飛ばした。

<ナイトメア>はそのまま建物の壁に激突すると、

「がっ!?」と言うとそのまま倒れる。

新たな精霊か、と思ったがその姿を見て驚愕した。

その人影は私が先程出会った男の子

―――遠坂紅輝だった。

 

遠坂君は、こっちを見ておらず、<ナイトメア>を殴り飛ばしたであろう手をグーパーしていた。

もしかしたら、彼も魔術師(ウィザード)なのかな、でもワイヤリングスーツを着ていないし、ただの一般人がどうやってあんな力を・・・?

 

「大丈夫か?アシュクロフト。」

 

「う、うん、大丈夫。」

 

「それにしてもあれ(・・)もう動けるみたいだな、普通の人間なら死んでるはずなんだけどね。驚いたな。」

 

遠坂君は<ナイトメア>の方に向き直り、何か呪文を唱えると、二つの白と黒の剣が現れ、迎撃機の姿勢をとっていた。

<ナイトメア>は精霊持ち前の回復力で回復していたが

まだ十分に動ける様子ではない。

今なら<ナイトメア>をたおせるかもしれない!

 

「遠坂君!早くあいつにトドメを!」

 

「了解」

 

その一言で遠坂君は<ナイトメア>に肉薄する。

だが、

 

「そうはいきませんわ!」

 

遠坂君の前に何発もの銃弾が撃ち込まれ、彼が下がった瞬間に3体の分身体が降りてくる。

1人は本体の方を支え、残り2人はこちらに銃口を向けていた。

 

「お1人で動けますか、わたくし?」

 

「まだ、厳しそうですわね、ここは1度撤退しますわよ。」

 

「わかりましたわ、わたくし。」

 

<ナイトメア>は分身体と共に影の中へと入ってゆき、

その姿を消した。

空の方を見ると、本体が姿を消すと同時に次々と消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よっと、これで大丈夫、動けるか?」

 

アシュクロフトの足に乗っていた瓦礫を武装人間の人達と退かしてアシュクロフトを救出する。

どうやら、彼らはSSS(スペシャル・ソーシャリー・サービス)という、英軍の対精霊組織らしい。

ここでの精霊は型月での精霊ではなく、先程の黒ドレスの少女(<ナイトメア>と言うらしい)達のこと。

 

「遠坂君、助けてくれてありがとう。君がいなかったら私は死んでたよ。それに、精霊の撃退までしてくれるなんて・・・。あ、でも、君がどんな存在かは分からないけど、ちゃんとシェルターに避難しないと駄目だよ?

まぁ、助けて貰った身でそんなことを言うのはどうかと思ってはいるけど・・・。」

 

「わかった、けど、もうその必要はない」

 

「え?」

 

アルテミシアは思った。

彼は何を言っているのだろうか、空間震や精霊の驚異を知っていてそう言っているのなら、本当は危ないお薬をやっているのかも。

 

「なぁ、アルテミシア(・・・・・・)

 

彼は私の肩を痛くない程度にがっちりと掴むと物言わせぬ顔でこちらを見つめてきた。

彼はそこそこ顔は整っているか、見つめられると恥ずかしくなってしまい、顔を背けてしまう。

しかもここで名前呼びだなんて・・・。

 

「な、何かな・・・」

 

「アルテミシアは要するに軍に所属しているんだよな?」

 

「まぁ、そうだけど。」

 

「給料は出るのか?」

 

「出るっていえば、出るけど、もしかして・・・。」

 

もう、この時点で何を言われるかを分かってしまった、

彼は。

 

「あぁ、自分はSSSに入隊する、腕の心配はしなくていい、必ず役に立ってみせる!」

 

あぁ、やっぱり、そうだったかぁ・・・。

彼の境遇を考えると納得出来ないわけじゃない。

こちらとしては元々足りない戦力に加えて、ワイヤリングスーツやCR-ユニット無しに精霊を撃退できる力の持ち主だ。喜ぶべきなのだろうけど・・・。

もう一度彼の顔を見ると、彼の目は冗談を言っているものではないのは明らかだろう。

 

「はぁ、わかったよ、今の君に何を言っても無駄だろうからね、上司に掛け合ってみるよ。」

 

私がそう言うと彼はガッツポーズをとって喜びを表していた。

 

「ありがとう!アルテミシア!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




補足として
剣の檻の壊れた幻想で狂三が死ななかったのは
投影した宝具のランクが低いのと、オリ主の投影のレベルが低かったからです。

感想と評価をして貰えれば幸いです。

次から本格的にSSSとして動いていきます。

カブトさん popopoさん、赤紫セイバーさん、Mr.Uさん
その他のお気に入り登録してくださりありがとうございます!


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衝撃

六話目です

今回は皆さん大好きなあるキャラが登場します。
あのキャラはこんな口調じゃない!とかおもうかもしれませんが、
ここは二次創作ということでどうかご容赦ください。


 

あの後、SSSの隊員の人たちに基地まで案内してもらい、アルテミシアの言っていた上司に会わせてもらえることになった。アルテミシアが先に話をしてくれていたからか、すぐに

対面させてもらえることになった。

 

少し緊張するな・・・、前世での就職面接みたいだな。

 

「入りたまえ」

 

扉の向こうからどこかで聞いたことのあるような声で入室許可が下りる。声の思い当たりは思い出せなかったので考えるのをやめ、扉に手をかける。

 

「失礼します」

 

扉を開き中に入ると、アルテミシアに加え、一人のエレガントな雰囲気を出している男性がいた。

・・・って、トレーズさんじゃないか!?何でここにいるの!?

マジでこの世界どうなってんだよ・・・。

お、落ち着くんだ、こんなときこそ家訓を思い出すんだ・・・!

遠坂たるもの常に(以下略)×3

・・・ふう

 

「なるほど、君が件の少年か、名はなんと言う」

 

「はい!自分は日本人の遠坂紅輝です。精霊を打倒すべくSSSに志願します!」

 

ここでトレーズさんが自分の名前をきいて不思議そうな顔をする。

あ、あれ?今何か変なこと言ったかな・・・。

 

「遠坂?遠坂といったか?」

 

「はい、自分の名は遠坂と言いますが、どうかしましたでしょうか・・・?」

 

「ふっなるほどな、いやなに、私の名はトレーズ・エーデルフェルトという名でね。娘がお世話になっているね。」

 

・・・え?自分は衝撃の事実に驚きを隠せないでいた。え、あのレティシアとトレーズさんが

家族!?全然性格が似てないんですけどぉ!?

 

「つかぬことをお聞きしますが、エーデルフェルトさんはどなたと結婚なされたのですか?」

 

「ん?ああ私が結婚したのは義姉のルビアではなく養子にきた桜のほうだよ、驚いたかね。ああ、それとトレーズで構わないよ」

 

「と、ということは、トレーズさんは私の叔父に当たるということですか?」

 

「まあ、そういうことになるな。」

 

アルテミシアも今知らされた事実に驚きを隠せず、「えっ・・・」という声を漏らしていた。

 

「とりあえず、君には理由が何であれSSSに入ることは拒みはしない、しかし君は人類のために命を賭けることができるかい?」

 

トレーズさんの言葉には、軽いものではなく、非常に重たい覚悟があるかという意味が含まれているように感じた。生半可な覚悟では必ず死ぬだろうという。

 

「・・・ふっ、もとよりそのつもりですよ、ですけど、もとより死ぬつもりはありません。なんらゾンビになってでも戻ってきてやりますよ!」

 

自分の覚悟が伝わったのか、トレーズさんはふっと笑うとこちらをまっすぐに見つめる。

 

「おもしろい、ならば君の事は一人の甥ではなく、一人の軍人として接しよう。早速だが君には顕現装置(リアライザ)の適正検査を行う、着いてきたまえ。」

 

「はい!」

 

部屋をでようとするトレーズさんに続いて自分も部屋を出ようとすると、突然アルテミシアが自分たちを止める。

 

「え、ちょっと、待ってください隊長!魔力を生成、コントロールするための手術をしなくて良いのですか?」

 

「アシュクロフト伍長、そのことなら彼は問題ない、実を言うと私もなのだが、彼も

元から(・・・)魔術師だからね。」

 

“私も”という発言からやはりトレーズさんも魔術師なのであろう。

というか、この世界の技術って一般人から魔術師が生み出せるのかよ、ついに魔術と科学が交差しちゃったよ・・・。

前世との圧倒的技術格差に圧倒されつつも、その技術がどこまで進んでいるのかも気になっているのかも少し気になりながら、トレーズさんの魔術の腕の方が気になっている自分がいた。

 

「ともかく、だ。伍長も先ほどの説明で十分だろう、さあ、適正検査に行こうじゃないか。」

 

「了解です!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの後、色んな機械やSSSの人たちが持っていた武器やらを持たせられ、いろんな検査を行った。もともと魔術師だったからか、アルテミシアほどではないがそこそこ高い数値を出したらしい。遠坂の血様様といったところだろうか、おじい様やお母さま、お父様には頭が上がらないです。

・・・しかし、こんなに武装できる機械を見ていると前世のガンダム好きの血が騒ぐもんだなあ!

いろいろ改造してみたいが、流石にプラモデルはともかく精密機械を扱うのはまだできないので自重しよう。・・・後で開発部の人たちにアイデアを送ってみよう、たぶん採用されないとは思うけど。

 

 

 

 

 

それからの日々は忙しかった。

トレーズさんに金銭の事情を説明すると、給料の前借という形でお金をもらうことができ、

何とか弁償金を払うことができた。

まあ、その代わり最低でも一年間以上はただ働きだが・・・。

 

レティシアとも一応トレーズさんの仲介の元、エーデルフェルト邸で仲直りができた。

その時に訪問して驚いたというか、再認識したというのか、桜さんが本当にレティシアのお母さんなのだということに驚かされた。原作の桜さんとは違い、性格はどちらかというとルビアさんよりになっていたが、それでもやはり大人の女性という雰囲気を感じられた。

 

そして最近一番うれしかったことといえば、遊び一割、本気九割で設計した。ガンダムseed destinyに登場する<ソード><ブラスト><フォース>の元にし、戦闘中に戦闘スタイルを変更できるようにしたCR-ユニット?案を提出してみたら技術班の皆様に採用されてしまったことである。

技術班の方々もロマンのある人たちですぐに仲良くなることもでき、CR-ユニットの整備方法なども教えてもらったし、作られた試作品のテストパイロットとしてあるガンダムゲームにある動きをまんまパク・・・参考にしながら立ち回ったところ、案外高評価をもらえた。やったぜ。

こんな風にSSSと時計塔の学生生活を両立させるのはかなり大変であるが、この生活も充実してきているので問題ない・・・が、一つだけ挙げさせてもらうとするなら。

あのワイヤリングスーツってやつ、男性用はいいのだが、女性用のデザインが少し際どくないか?たまに目のやり場に困るから困るのだ・・・。

精神はともかく肉体は健全な思春期男子なのである、どうにかならないものだろうか。

そしてその問題は解消されないまま、紅輝は結局禁欲した分、魔術の鍛錬や軍人としての訓練に費やすのであった。

 




良ければ感想や評価をしていただければ作者のモチベーション向上になりますのでしていただけると幸いです。

やわたんさん、 白霧 剣さん、空想創造家さん、 三日月 青葉さん

お気に入り登録ありがとうございます。
これからも見ていただけると幸です。


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Show the courage. Knock down a devil.

7話目です。

唐突ですが、自分はデート・ア・ストライクの三人娘の中でセシルが1番好みです。

それと、テンションを元に戻していきたいと思います。



「<ブラスト>班はミサイルを一斉射撃で敵をかく乱しろ!<ソード班>はミサイルの間から奴を追え!相手に隙を与えるな!<フォース>班は敵の攻撃を防ぐ準備を整えながらビームライフルで相手の逃げ道を塞ぐんだ!」

 

『『『了解!』』』

 

自分が3つに分けた班に同時に指示をだす。《プリンセス》と呼称されている精霊は剣の薙ぎ払いによって生み出される衝撃波でミサイルを撃ち落としながらもビームライフルを巧みに避けていく。しかしその顔には少々苦しそうな表情を浮かべており、普段とは違う敵の攻撃に翻弄されている様子であった。

自分は<フォース>のウェポンパックを装備しており、

ビームライフルを撃ち込んでいるがいずれも当たることはなかった。

だが、アルテミシアは<ソード>班で《プリンセス》に食らいつく様に2本のエクスカリバーで攻撃を仕掛けていた。

アルテミシアの戦闘力は非常に高く、CR-ユニットを使った戦闘でならば、SSSに並び立つものはいないと言っても過言ではないだろう。

アルテミシアが果敢に攻撃を仕掛けていると、彼女は何とか鍔迫り合いまでに持っていくと、そのまま押し返したのである。

 

これは自分達にとって滅多にない奴の大きな隙だ。

 

「今だ!<ブラスト>班はケルベロス砲を最大出力で発射しろ!」

 

自分の指示を受けた<ブラスト>班が《プリンセス》に向かってケルベロス砲を発射する。

《プリンセス》は回避は不可能だと判断したのか<防性領域(テリトリー)>に似た障壁をドーム状に展開し、高出力のビーム砲を受け止める。

今なら奴の動きは止まっている、仕掛けるなら今しかない。

 

()も前に出る!レナ、エクスカリバーを貸すんだ。他の隊員も僕に続くんだここで決めるぞ!」

 

『了解!』

 

ソード班の1人に声をかけ、エクスカリバーを渡してもらい<フォース>の機動力で一気に加速し、その途中でエクスカリバーを1本に合体させると、バーニアを一気に噴かせる、シールドは突っ込む際に邪魔になるため投げ捨てた。

 

ケルベロス砲が止んだ瞬間に剣先を障壁に向かって突き刺し、バーニアの出力を最大にする。

他のソードの隊員も自分と同じように剣を障壁に突き刺し押し込んでいた。

 

「はあぁぁぁぁあ!」

 

少しづつだが、剣先が障壁を突き抜けていき、中に入っていくのを視認し、これなら行ける!と、思った時だった。

《プリンセス》はここに来て余裕の表情を見せていた。

 

「な・・・?そういうことか!!皆!退避しろ!」

 

その瞬間、《プリンセス》は持っていた大剣に力を纏わせ、障壁を解除した瞬間に一気に振り抜いた。

 

自分は緊急で<防性領域(テリトリー)>を展開するが意図も容易く切り裂かれてしまい、何とか盾のように構えたエクスカリバーで受け止めようとするが衝撃を殺しきれず、そのまま吹き飛ばされた。また、エクスカリバーは先程の攻撃によって破壊され、使い物にならなくなってしまった。

幸い、自分は浅い切り裂かれた程度ですんだものの逆転の一手は潰されてしまった。

 

「くっ・・・、やはり一筋縄では、いかないか!・・・っ!?」

 

周りの隊員の生存確認をしている時に自分はある人影を見つけた。

自分の倒れている場所の少し近くに自分と同年代程の女の子が重症の状態で倒れていた。

 

《プリンセス》の方を見ると、指揮を取っているのが自分だと確信したからか、自分を真っ先に潰そうと剣を先程とは比べ物にならないほど大きくし、こちらに狙いを定めていた。《プリンセス》はとても冷徹な目をしており、その視線から感じられる殺気はとても強かった。

 

「お前がこいつらのリーダーだな、目障りだ、消えろ!!」

 

《プリンセス》は剣を全力でこちらに振り下ろす、あれに直撃すれば自分は肉塊すら残らないくらい木っ端微塵にされるに違いない。

だが、まだ自分の纏っているCR-ユニットは生きている。全速力で逃げればカスリはするだろうが重症は免れるだろう。

しかし、この攻撃を避けようとすれば、さっきの女の子はどうなるだろうか、まず間違いなく死ぬだろう。

見殺しにするか?自分が?

だが、あの攻撃を防ぐのはほぼ不可能だろう。

 

 

・・・だとしても!仮にも自分は英国の軍人だ!

 

 

魔術と<随意領域(テリトリー)>制御で身体能力を強化し女の子を庇うように抱きつき、<防性領域(テリトリー)>を全力で展開する。

 

「うっ・・・、だ、誰・・・?」

 

いきなり抱きしめられたからか、女の子が驚いた様な声をあげる。

 

「安心するんだ、君は僕が守る。だから安心してくれ。」

 

《プリンセス》の一撃が自分の<防性領域(テリトリー)>に直撃し、一瞬で大きなひびを入れる。

そのひびはどんどん大きくなっていき制御に力を割いていなければ今にも破られそうであった。

 

このままじゃ不味いか・・・!?

流石にこれでは不味いと思い<防性領域>の制御の他に魔術で<防性領域>の補強をする。

宝石による盾はあの攻撃には盾にもなりはしないだろうがエメラルドを3つ使用し3枚の壁を作っておく、他に剣製で硬さに特化した宝具をいくつか投影し備えた。

 

投影をし終えた瞬間、意識を途切れされてしまい、<防性領域>が大きな音を立てて破壊され、その間にあったらエメラルドの盾も障子を破るように意図も簡単に破られ投影した剣も、1秒は保ったがそのまま破壊されてしまう。

 

もうダメかと思い、女の子だけでも守ろうと強く抱きしめる。

 

その時だった。横から猛スピードでアルテミシアが<フォース>にわざわざ換装し、シールドでその攻撃を受け止めていた。

 

《プリンセス》の大剣とアルテミシアのシールドがぶつかり合い、激し音を立て衝撃波を発生させる。

その数秒後、アルテミシアが<防性領域>を併用し、やっとの事で何とか受け止めたのである。

 

《プリンセス》は先程の攻撃が受け止められるとは思っていなかったらしく驚きの表情をしていた。

 

「大丈夫!?遠坂君、死んでない?」

 

アルテミシアも流石に防ぎきるので手一杯だったのか息も絶え絶えになりながらもこちらに気を遣ってくれた。

 

「あぁ、何とかね感謝するよ、アルテミシア。だが・・・。」

 

《プリンセス》の方を見ると、こちらをまるで親の仇を見るようかの目でこちらを見ていた。

だが、そんな時、《プリンセス》の体は粒子に包まれていた。

 

「ちっ、もう時間か。」

 

そう言うと、《プリンセス》の体は消滅する、恐らく<消滅(ロスト)>したのだろう。

 

 

《プリンセス》の<消滅>により、張り詰めていた緊張の糸が一気に緩み、脱力してしまう。

 

「ふぅ、何とかなったようだ、今回ばかりは死ぬかと思ったよ。君、大丈夫かい?」

 

自分は女の子の様子を改めてみると、かなり酷い状態だった。いくつか後遺症が残るかもしれないがまだ間に合うかもしれない。

 

「アルテミシア、今すぐ基地の医療室に行くぞ!あそこの医療用顕現装置(メディカルリアライザ)ならまだ命は助かる。急ぐぞ!」

 

「わ、わかった!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、魔力をフルで使い、全速力で基地に向かい、すぐに基地の医療用顕現装置での治療をしてもらった。自分を含め、負傷をしている隊員も多かったが、女の子に真っ先に使うことを拒む隊員はいなくてよかった。

負傷度の高い人から医療用顕現装置をつかっていったが、自分は傷が浅く、自分で何とかできる範囲だと判断し、他の隊員に先に使うように言っておいた。

 

そして、自分は軍医さんにあの女の子の様子を聞くためにあの女の子がいる、治療室の前に向かった。

自分がつく頃にはアルテミシアもその部屋の前に来ており、彼女はとても悲しそうな顔をしていた。

 

 

「アルテミシア、君も来ていたのか」

 

「あ、遠坂君、あなたも彼女のことで?」

 

「まぁ、な」

 

「私達、また、悲しむ人を増やしちゃったね。

精霊を打倒できる力を持ちながらも未だに一体も倒せていない、こんなんじゃ・・・。」

 

アルテミシアは言葉から分かるように酷く落ち込んでいた。その気持ちは自分も良くわかる、今回の作戦においては自分が周囲の確認をもっとよくしておけば、いち早くあの女の子を見つけ、すぐにでも治療をすればあんな重症にならなかったかも知らないのだ。

だから、アルテミシアが自分自身を責めるのはお門違いというものだ。

 

「自分自身を卑下するのは辞めるんだ、君はよくやってくれている、今回は自分の指揮が悪かっただけだ、責任は自分にある。」

 

「違うよ、私がもっと強ければ・・・!」

 

 

そうしているうちに、あの女の子が治療室から出てきた。

女の子はベッドの上で寝ており、ぱっと確認しただけで外傷は治っている様子だった。

中から出てきた軍医さんに、自分は話を聴いた。

 

「軍医さん、彼女の状態はどうなんでしょうか?」

 

「外傷はバッチリ治ったさ、だけど時間が経過しすぎた影響で、彼女の目と足はもう二度と治らないだろう。

こればっかりは医療用顕現装置でも不可能だ。」

 

「・・・っ!

そう、ですか。わかりました、ありがとうございます。」

 

「いや、こちらこそ、この程度の治療しか出来なくてすまない。」

 

「いえ、軍医さんは今ある設備で十分やってくれました。これ以上を望むのは罰が当たるというものです。

それでは自分は今からあの女の子が目を覚ますで近くに居ようと思います。アルテミシアはどうする?」

 

「私もそっちに行くよ。」

 

「わかった、それでは軍医さん、他のみんなの治療もお願いします。」

 

「あぁ、任せてくれ、それじゃあ、そっちは頼んだよ。」

 

軍医さんはそう言うと、他の隊員が使用している医療用顕現装置の元へ向かった。

自分とアルテミシアはあの女の子がいる病室へ行き、彼女が目を覚ますまで待っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

あの女の子は1時間もしない内に目を覚ました。

 

「・・・ここは?」

 

「目が覚めたかい?ここは軍の基地内の病院だ、空間震に巻き込まれた君をこちらで保護させてもらった。」

 

「・・・なるほど、私の目と足が動かないのはそういうことだったのですね。」

 

「・・・君は賢いみたいだね。アルテミシア、例の説明を頼む。」

 

「わかった。あ、その前にあなたの名前を聞いていなかったね、貴女の名前は?」

 

「私は、セシル・オブライエンです。」

 

「ありがとう、それじゃあ説明するね、貴女の巻き込まれた空間震、それを起こしたのが私達がさっき戦っていた存在、精霊だよ。私達はその精霊を倒すための組織、SSS私からの説明は以上だよ。」

 

アルテミシアが説明を終えるとセシル・オブライエンは恐る恐る手を上げる。

 

「あの、1つ聞いてもいいですか?」

 

「何かな?私が答えられることなら何でも答えるよ。」

 

「私の・・・パパとママはどこにいるのですか?」

 

彼女の言葉にアルテミシアは固まってしまっていた。

自分はそのフォローをするためにセシル・オブライエンの質問に答える。

 

「君を保護したときには、周囲に誰もいなかった、君と君の家族がシェルターに入っていなければ、恐らくは・・・。」

 

 

「っ!そんな・・・、う、ぐす、うぅっ、パパ、ママぁ・・・。」

 

セシル・オブライエンは自分の言った真実に泣き出してしまった。

無理もない、成熟した精神でさえも心に大きなショックを与えるのに、未だ未成熟な精神での肉親の死と言うのは非常に大きすぎるものだ。

 

 

自分とアルテミシアはその悲しみを少しだけでも和らげるために二人で彼女を抱き、泣き止むまでその悲しみを受け止め続けた。

 

 

 

 




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用語解説

ウェポンパック編

<フォース>・・・モチーフはガンダムSEEDデスティニーに登場する、インパルスガンダムの装備の一つである、フォースシルエット。
ビームサーベルとビームライフルという標準的な武装に加えて、機動力に特化したバーニアもバーニアスラスターにより、従来のCR-ユニットの機動力向上を目指した。左腕に装着されているシールドは防性領域と組み合わせることにより圧倒的防御力を誇るようなる。

<ソード>・・・モチーフは<フォース>とほぼ同じで
インパルスガンダムの装備の1つである、ソードシルエット。
2つの大型レーザー刀とビームブーメランを装備しており、原作のソードインパルスとは違い、完全に近距離特化でビームライフルは装備していない。2つの大型レーザー刀、エクスカリバーは合体させることにより1本の大型刀にすることが可能。

<ブラスト>・・・モチーフは他の2つと同じインパルスガンダムの装備の1つである、ブラストシルエット。
二門の大型ビーム砲、ケルベロス砲に加え、レールガンや面制圧用の大型ミサイルポッドが装備されており、単純火力だけならばこの装備が1番高い。



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模擬戦でぇ!エリートでぇ!百戦なんだよぉ!

8話目です。

ダンジョンメーカー楽しすぎやしませんかねぇ・・・。
私の時間のほとんどを取っていきましたよあのゲームは・・・(言い訳)




あの後、少女、セシル・オブライエンは親と自分の体の仇を取る。と、SSSに志願した。

トレーズさんの命令で彼女の生活やCR-ユニットの制御などは自分とアルテミシアが世話をすることになった。

 

詳しく言うと、顕現装置(リアライザ)の制御はアルテミシアが戦闘技術に関しては自分が指導をし、住むところはアルテミシアが所有者している家に住むことになった。

 

幸い、時計塔との距離は近く、寮よりは遠くはなったが通える距離だったので自分もそこに住むことになった。

・・・いや、正確に言えば住まざるを得なくなったが正しいか。

アルテミシアとの1年の付き合いの中で分かったが、彼女は料理が壊滅的に駄目なのである。レシピ本を持たせても自分が見ていなければ暗黒物質(ダークマター)(比喩)を作り出すほどである。

 

アルテミシアだけならカップ麺生活で何とか良いもののセシルもそこに住むと言うのならば話は別である。

昼ごはんは基地の食堂で食べるから良いが朝と夜はそうはいかない、セシルにまでカップ麺生活をさせる訳にはいかなく、朝と夜は自分が作るようになったのである。

 

アルテミシアに掃除や洗濯をして貰っているが、言ってはいけないことだと分かっているが、正直に言って自分がやったほうが綺麗にできる気がした。

 

 

さらにある日のことだった。

アルテミシアは他の隊ではぐれ者になっていた、アシュリー・シンクレアという女の子、また別の日には

レオノーラ・シアーズという、これまた他の隊で厄介になっている子を連れてきたのである。

アルテミシアに本人には微塵の悪意が感じられないし、自分としても、1度こうして関わったからにはほっとけないため、トレーズさんに頼み込み人員交換をしてもらい、うちのインパルス隊で面倒を見ることにしてもらった。

そして、アルテミシアの家はいつの間にか1家族ほどになったのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

月日はまた流れ、セシルやアシュリー、レオノーラがうちの隊に馴染んできた頃だった。

 

 

アルテミシアや自分を含めた5人で次に精霊が出た時の連携方法を考えていたときだった。

 

「私と戦え、アルテミシア!!」

 

突然現れ、アルテミシアに宣戦布告をしたのはSSSの中でもトップ2の実力を持つと言われている魔術師(ウィザード)ミネルヴァ・リデルだった。

 

「お前は模擬戦にはろくに参加していない、お前のSSSでの評価は全て精霊戦によるものだけだ。故に私はお前を倒しトップの座を手に入れる。さあ、武器をとれアルテミシア!!」

 

そういう彼女はまるで獣が牙を向け、敵意を丸出しにしている様子であった。しかし、アルテミシアはむき出しにされている敵意を全く意に介さず、穏やかな表情をミネルヴァに向けていた。

 

どうやらミネルヴァの眼中には自分やアシュリー達の姿はないらしくこちらに意識をむける様子は全くなかった。

 

「ミネルヴァ・・・、私はたとえ模擬戦でも無駄な戦いはしたくないの。私はね、精霊を倒して平和を守れる力があればそれでいいの、だから、誰がトップだなんてそんなことには興味はないの。」

 

そう言うアルテミシアの言葉には優しさが溢れており、

彼女がだれも嘘を言っているようには感じないだろう。

 

「ふっ、私では実力不足と言いたい訳か、流石は皆から認められるSSS最強の魔術師様だ。」

 

駄目だ、アルテミシアとミネルヴァで全く話が噛み合ってない。

このままでは争いごとになると感じた自分は2人の間に割って入る。その際に自分の意識を魔術師モードに切り替えておく。

 

「落ち着きたまえ、ミネルヴァ・リデル上等兵、魔術師同士の私闘は禁止されている。それに君が思っているほどアルテミシアは傲慢ではない。」

 

ミネルヴァはやっと僕の存在を認知したのか、投げやりな態度をとる。

 

「お前は・・・。あぁ!アルテミシア達の隊長殿か、私はあんたに用はない、私が用があるのはアルテミシアだけだ。」

 

「そういう訳にはいかないさ、確かに僕はアルテミシアよりも弱いが一応、彼女達の上に立つものなのでね。

どうしてもと言うのなら代わりに僕が相手をしようじゃないか。」

 

「はぁ?なにを言ってるんだお前は、ん?そういえばお前も模擬戦にはほとんど、というか強制参加以外の時以外は出てなかったな。まぁいい、そこまで言うなら相手になってやるよ、精々アルテミシアを誘い出す餌になってくれよ。」

 

「その気になってくれて助かったよ。さぁ、模擬戦場に行こうじゃないか、申請書は僕がだそう。」

 

「ちょっとまって!?遠坂君が戦わなくても・・・!」

 

アルテミシアが僕を引き止める。優しい彼女のことだ、きっと僕が彼女自身のせいで酷い目にあわされると考えているのかもしれない。

 

「安心するんだアルテミシア、君ほどではないが僕は強いよ。」

 

僕はそう言い、模擬戦場へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

僕とミネルヴァは模擬戦場でお互いに向き合っていた。

お互いの手に握られているのは対精霊用の標準装備である〈ノーペイン〉。模擬戦は一応同じ条件で戦わなければいけないから僕がいつも使っている<インパルス>のビームサーベルではない。(他の手を使わないとは言っていないがね。)

 

「さて、始めようじゃないかミネルヴァ。」

 

「ルールは模擬戦と同じ、1本とったら終わりだそれでいいな。」

 

「あぁ、それで構わないよ。」

 

僕がそういうとミネルヴァは<ノーペイン>を構え戦闘態勢をとる。

自分も肩の力をぬき、いつ来てもいいようにしておく。

 

「じゃあ、私から行かせてもらう。・・・はぁ!」

 

そういいミネルヴァは随意領域を使った瞬間加速でこちらに突っ込んでくる。その速さはアルテミシアには届きはしないがトップ2と評価されるのも納得の速さであった。

 

だけど、真っ直ぐに突っ込んでくるとは僕も大概になめられたものだ。

 

「そうそう、君に言い忘れていたことがあったよ。」

 

僕は両手で持っていた<ノーペイン>を片手で持つ。

 

(強化、開始)

 

両手の筋力を魔術で強化し、ミネルヴァの<ノーペイン>を受け止め、押し返す。

 

「なっ!?」

 

(投影、開始)

 

無銘の西洋剣を投影し、ミネルヴァの怯んだ一瞬で随意領域と魔術でのブーストでその剣を彼女の喉元に向け、寸止めをする。

 

「僕の戦いにおいて随意領域の操作はあくまで補助に過ぎない、従来の戦い方では僕には勝てないよ・・・てね。まあ、もう遅いだろうが。これで僕の勝ちだ。君に慢心がなかったら対処出来たかもしれないし、文句は受けつけないよ。」

 

「くっ・・・、貴様ァ。」

 

ミネルヴァは忌々しそうな目でこちらを睨んでいた。

気持ちは分からないことはないが、運が悪かったと諦めてほしい。

 

「さぁ、これでわかっただろう。僕に勝てないようじゃアルテミシアにも適わないよ。さぁ、君も早く自分の所属の部隊に戻りたまえ。僕はこれで失礼するよ。」

 

そう言って僕は投影を解除し、西洋剣を消した後、未だに睨みつけてくるミネルヴァを放っておき模擬戦場を立ち去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

セシルside

 

私は彼のことが気になってしまい模擬戦場で行われた遠坂紅輝とミネルヴァの試合をこっそりと窓の外から見ていた。

実際は”見ていた”と言うほどの試合時間はなく、一瞬の出来事であり、随意領域で強化してある私の目で追ってやっと見えるほどだった。

しかも、その中で紅輝が見せた一瞬の所業、突然虚空から現れた1本の西洋剣。

ただの西洋剣はSSSでは精霊にダメージを与えられず、絶対に使われないため、基本顕現装置(ベーシックリアライザ)に組み込まれているはずの無いものである。

 

「あれは・・・?どういうことなのかしら。」

 

「あれは魔術だよ。」

 

突如、声が聞こえ振り向くとそこにはトレーズ・エーデルフェルト少将が私の後ろに立っていた。

 

「いつの間に・・・!?あ、す、すみませんエーデルフェルト少将!とんだご無礼を・・・。」

 

「気にしなくていい、それよりも君は見たみたいだね。」

 

「見た・・・とは、何をでしょうか。」

 

「遠坂紅輝伍長が見せた奇跡の事さ、何もない場所から剣をだした。その場面を君は見たのだろう?」

 

「・・・はい。」

 

「本来なら君達魔術師(ウィザード)でさえも知らなくていいことだ、正当な処置としては記憶を消すところだが・・・。」

 

「ひっ・・・!」

 

エーデルフェルト少将の目は戯れを言っているように聞こえず、少将から感じられる威圧感に私は耐えられず後ずさりをしてしまう。

 

「冗談さ、安心したまえ。君はいつも彼の傍にいるからね、露見するのも時間の問題だったさ。

それが偶然、時期が早まった、それだけの話だよ。気になるのなら彼に直接聞いてみるがいい。それじゃあ、私は執務に戻るとしよう、くれぐれもこの事は他に漏らさないでくれたまえよ、記憶処理も少々手がかかるからね。ちなみに社内恋愛は禁止してはいないよ。」

 

「・・・え?」

 

そう言うと、エーデルフェルト少将はそのまま去っていった。

私は少将の言ったことに呆気にとられてしまいしばらく動けないでいた。

 

 

 

 

 




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主人公の戦闘スタイル
基本的に対精霊はガツガツ攻めるタイプだが、対人戦は相手の攻撃に対し、カウンターを決めてそのまま一撃で決めたり、初見殺しをよくしたりする。

ちなみにオリ主が模擬戦に参加しないのは力に慢心しているわけでもなく、アルテミシアのように無駄な戦いはしない、みたいな考えでもなく、ただ、時計塔に時間を割いているだけです。


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人は誰しも見られてはいけない部分がある

9話目です。

皆さん、Newガンダムブレイカーは買いましたか?
私は最新作のガンダムブレイカー3を買いました。


遅れすみません、それと今回は少し短いです。


12月23日

 

セシル・オブライエンは結局”魔術”のことを紅輝に聞けず、月日は流れてしまっていた。だが、やっとこの日、クリスマスイブ前日になり、やっと紅輝に聞く決心をし、紅輝の部屋の前に来ていた。

 

 

・・・ふぅ、落ち着くのよ私、部屋に入って、ただ話を聞くだけ、何を動じる必要があるの!

 

 

か、髪が乱れていないかしら・・・、少しでもいい格好をしないと・・・!。

 

一旦深呼吸をし、意を決してドアノブに手をかけようとした時

 

―ガチャ

 

不意に紅輝が部屋の中から出てきて、私は咄嗟に車いすを操作し、後ろに下がる。

 

「あれ?セシルじゃないか、どうした?」

 

「あ、えっと、その・・・、紅輝、今から暇かしら?」

 

紅輝は少し悩むと申し訳なさそうな顔をする。

 

「あー、すまない、今から学校の方に出ないといけないんだ・・・。その後でなら全然構わないが。」

 

「え、えぇ、構わないわ。行ってらっしゃい。」

 

「ありがとう、遅くても夕方には帰ってくるよ。じゃあ、行ってきます。」

 

そう言うと、彼はそのまま玄関を出て、外に行ってしまった。

 

「はぁ、決心したと思ったらこれだなんて、私ってなんて運が悪いのかしら・・・。」

 

諦めてリビングにいるアルテミシア達のところに戻ろうとしたとき、私はふと気づいた。

 

紅輝が、急いでいたからなのか、彼の部屋の鍵が開いているのである。いつもなら彼が外出するときは外鍵をかけて行くはずなのに、今回は鍵を閉めるような音はしなかった。

もしかしたら、と思い、ドアノブを回すと。

 

―やはり、開いていた。

 

い、良いのかしら。いや、駄目よ私!勝手に人の部屋に入るなんて!

 

 

だけど、す、少しだけなら良いわよね・・・。ちょっとだけ、ちょっとだけなら大丈夫な、はず・・・。

私は結局、誘惑に負けてしまい部屋の中に入ってしまう。しかもわざわざ顕現装置を使い目が見えるようにして・・・。

 

 

意を決して入ってみた部屋の中はとても普通であった。どこにでもあるような、男の子部屋。

だけど、私は何か不思議な気分に襲われた。

 

「なにか、・・・おかしい?あっ!」

 

その原因はすぐにわかった。確かに普通であるのだが、あまりにも普通すぎる(・・・・・)のである。

紅輝だって男である。何かしらそういうものがあってもおかしくはないが、良くありそうな隠し場所などは全く見当たらず、ましてや、その人を表すような部屋を着飾るような小物でさえも全く見当たらなかった。

 

「いや、考えすぎかしら・・・」

 

そう思い、もう一度見渡すと窓際の机の上にある写真が目に止まった。近いて見てみると、写っているのは小学生程の紅輝と彼の母親らしき女性。それに青い髪を持つ、紅輝と同い年程の女の子がいた。

 

「これは・・・?」

 

写真の中の様子はきっとエレメンタリースクールの卒業式だろう。サクラという木があり、手には何かの包をもっている。

そして、写真の中の紅輝とその女の子はとても幸せそうだった。

 

その時、私の中でとても黒い感情か溢れだしそうになる。

―きっと紅輝と女の子はとても親しいはずよね。私よりもずっと・・・。あぁ、なんて羨ましいのかしら。

 

だが、はっと我に返った私はさっきの考えを無理やり振り払う。

 

「私ったら何を考えているのかしら・・・!だ、大体、紅輝が誰と仲良くしたって・・・。」

 

気を紛らわせるために私は他の場所に目線を移すと、何か不自然な場所を見つけた。部屋の壁の中に小さく他の壁よりも色が少し異なっている所を見つけてしまった。少し触れてみると押せそうな感じがしていた。

 

「・・・少し怪しいわね。だけど、流石に押さない方が良いわよ・・・ね。」

 

そうだ、そうしよう。これ以上は駄目だ、心の中でそう決めこの部屋から出ようとするが、体は動いていなかった。

やはり、どうしてもさっきのボタンらしきものが気になってしまう。

 

・・・ま、まぁ、何かが起こると言うわけでもないのだし1回だけ!1回だけなら・・・。

 

私はまたもや誘惑に負けてしまい、結局、押してしまった。

 

 

 

 

が、何も起きない。

 

10秒ほど経っても何も起きない様子だったので、ほっと胸を撫で下ろす。

 

「ただのくぼみだったみたいね。さぁ、紅輝が帰ってくる前にアルテミシア達のもとに戻りましょう。」

 

 

 

そう、安心しきった瞬間だった。

 

―ガシャン

 

そんな機械音がなると私のいる足場だけが的確に無くなる。

 

「えっ・・・!?きy――ガシャン。

 

私はそのまま突然空いた穴の中に抵抗する間もなく落下して行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~その頃リビングでは・・・

 

 

大きめのリビングの中、備え付けられていた大きなテレビで、アシュリー・シンクレアとレオノーラ・シアーズ

が大○闘スマ○シュブラザーズをしていた。アルテミシアは交代の順番を待っているようで、ニコニコしながら2人を見ていた。

 

「ん?なぁ、レオ、アルテミシア、今セシルの声が聞こえなかったか?」

 

「そう?私は聞こえなかったけど・・・。」

 

「アシュリー、隙ありだよ。」

 

その瞬間、アシュリーが操作していたア○クがレオノーラの操作していたベヨネ○タに吹き飛ばされ画面外に行き、大きな音を立ててアシュリーの残機がゼロになる。その後画面に映るのはGAMESETの文字。

 

「あぁ!レオ、てめぇやりやがったな!?だいたいお前は―――」

 

「アシュリー?負けたら交代だよ。」

 

「アルテミシア・・・、ぐっ、ちくしょぉー!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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遅れましたがキズナアイさん!誕生日おめでとうございます!



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望むものは大概、努力をすれば手に入るものである。

10話目です。

感想を・・・下さい・・・!(直球)

あ、もちろん、強制というわけじゃないですよ?
そこで改善点などを書いて貰えればなーとか思ってます!

余談ですが。
最近見たアニメの中で1番面白そうなのがありましてて・・・。ゴクドルズって言うのですけど、見てない方は1度見てみてはいかが?


「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁあ!?」

 

私の体はそのまま落下し真っ暗で底の見えない穴に落ちているような感覚に陥っていた。

 

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁあ!?」

 

とりあえずいつ地面に激突しても良いように随意領域を展開しておき、衝撃に備えたときだった。

 

落下速度が一気に落ち、エレベーターのふわっと、なる感覚が私を一瞬だけ襲いしばらくするとゆっくりと落ちてゆき、簡単に着地することができた。

 

とりあえず、状況を把握するために近くに光源のスイッチか何かを手探りで探して見るが、それらしきものは見つからなかった。

しかし、そのうちに目がこの暗闇に慣れてきて、少しだけではあるが周りが見えるようになった。この場所は石レンガで周りが囲まれており、まるで地下迷路のような印象を受けた。

 

 

目を凝らしてみると、どうやらこの先に真っ直ぐの一本道があるようだ。

落ちてきたところから元の場所に戻れなさそうであったため、諦めてこの道を進むことにした。

 

「はぁ、この先に進むしかないようね・・・。」

 

私はそうつぶやき、警戒を怠らずに前に進む。

すると、私が歩いた傍から突然空間に小さな光が発生し、その光が集まり、塊になるとそれらはランプとなり壁に固定され辺りを照らす。

 

「これも、魔術・・・なのかしら。」

 

そのランプは一本道の向こう側まで続いており、視力を随意領域で強化し、目をこらす、すると、向こう側に木製の扉がひとつあった。

 

 

私はそのまま歩きながらその木製の扉の方に行こうとした、その時だった。

 

 

 

 

 

突如、さっきまで辺りを照らしていた、ランプが文字通り消滅し、当たりが一気に暗くなる。

 

「なっ!?一体何が起こったの!?」

 

 

私は警戒レベルを最大に引き上げ体を自由に動かせるようにしておく。

 

その時、周りの壁のところどころから、ぽつ、ぽつ、と不思議な文字が浮かび上がり、そのレンガの部分が壁から引き抜かれ中に浮くと、そのレンガの横の面を全てこちらに向けてきた。

 

「何かくるっ!?」

 

すると、そのレンガから何か小さい黒いエネルギーの塊の様なものが放たれる。しかも、その他の全てのレンガが同じように。

 

「まずい!」

 

私はすぐにその場から後退し放たれるものを躱す。私が元いた場所のレンガはえぐれており、私がその場所にいたら、恐らく軽傷では済まされなかっただろう。。

 

――どうする!?随意領域で防ぎきれるかしら・・・?

恐らくあれも何らかの魔術よね。魔術が随意領域に通じるか不安ね・・・。こうなったら一か八かかけてみようかしら!

 

頭の中で随意領域の制御をしながら一気に私がいた場所へとバックステップで下がる。すると、中に浮かんでいるレンガが一斉にこちらを向き先程と同じ、黒いエネルギーのような塊を発射してくる。

 

「随意領域テリトリー展開!」

 

私にできる最大の防性の随意領域を展開し、黒いエネルギーの塊に備える。

 

 

これで貫通してくるのなら私は一巻の終わり、どうかお願い!防いで!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――バチ!バチッバチバチ!

 

やった!何とか防げてる!

 

私の願いがかなったのか、随意領域は黒いエネルギーの塊を何とか防いでいた。けれどもそう長くは持たないと直感的に把握する。私はレンガが密集している場所の1番脆そうな所を持ち前のの観察眼で見つけることができた。

 

「そこね!」

 

私は一気に地面を蹴り、随意領域を展開したままその部分に全力で蹴りを入れて突破する。正直いって随意領域は限界だが、根性で随意領域を維持させて一気に扉へと駆け出す。

 

 

 

 

扉まで後3秒

 

レンガ達は突破した私の方向を向きエネルギーを収束させていた。私は分け目もふらず一気に扉の方まで走る。

 

 

 

扉まで後2秒

 

レンガに収束されたエネルギーが私に向けて放たれる。

私は最後の随意領域を強化し、エネルギーに備えながらも走り続ける。

 

 

扉まで後1秒

 

レンガから放たれたエネルギー弾が私の随意領域に次々と直撃し、今にも破られそうであった。

私は最後の一蹴りで扉に向かってジャンプし飛び蹴りを食らわせる。

 

「開いてぇ!!」

 

飛び蹴りが直撃した扉は吹き飛び私はそのままの勢いで中に転がり込み、エネルギー弾の射線から自分の身を逸らす。

そのまま私は近くの机と思わしきものの下に身を隠す。その際に随意領域を操作し、周りの空気に気配を紛らわせる。

 

 

 

レンガは中に入ってきてしばらく周りを巡回するように漂った後、元の場所へと戻っていった。

 

「・・・ふぅ、何とかなったみたいね」

 

 

随意領域操作を解除し、机と思しきものの下から出る、変わらず周りは真っ暗のため目の方を強化し、ライトのスイッチようなものがないかを探していると扉のすぐ横の壁にあった。スイッチをオンにすると、備え付けられていたライトが明かりを灯す。

 

そして、ようやくこの部屋の全貌が明らかになった。

この場所はまるで映画などに出てきそうな錬金術師の工房のような場所で現代のものとは思えなかった。

1度ぐるりと周りを見渡すといくつかの木箱の中に乱雑に入れられている、見ただけでも凄そうな剣がいくつも入ってあり見ただけでも凄そうな剣がいくつも入っており、また、この部屋の内側を囲むように配置されている机の上には数々の宝石がガラスケースの中で大切に保管されていた。

 

 

 

「す、すごい・・・!こんな場所が紅輝の部屋の下にあったなんて。」

 

 

数々の宝石の中でも一際目立つ宝石が私の目に止まった。それは拳大の大きなルビーで何かとても大きな力を感じた。しかも、そのルビーは他の宝石とは違い1番奥の壁に埋め込まれており、触れることができるようであり、私は何故か(・・・)心を奪われてしまう。

 

そして、私はその宝石の不思議な力に導かれるようにそのルビーの元へ歩み、自分の手でそのルビーに触れてしまう。

 

 

その瞬間、何か体が読み取られるような感覚に襲われ、はっと我に返った私は急いでその手を離し、その場を急いで離れると、突然、背中に何かが刺さるようなチクッとした痛みを感じると、身体が急に激しい麻痺に襲われ、体を動かすことが出来なくなってしまった。

 

「うっ、これは・・・。麻痺矢・・・!?か、体が、う、ごか、な・・・い。」

 

 

私が地面に倒れているあいだに、機械音がしたかと思うと、部屋の机などが全てしたの方へと収納され、先程の大きなルビーがあった場所には何か大きな人型の物体が見える。残っている意識で随意領域を操作し、目だけでも動かせられるようにし、その人型をみると、そこには全身が大きな宝石で形成されたゴーレムだった。

 

そのゴーレムはこちらのことを視認すると、こちらがもう動けないことを理解しているからなのかゆっくりとこちらに向かって歩いてくる。

私は随意領域操作を全力で行い、何とか逃げようとするが麻痺のせいで全く体が動かすことができず、ついにはそのゴーレムは私の目の前に立つ。

 

私の身体は動きはしないが内心は完全に震えてしまい、ついには完全に声さえも出せないほどの恐怖心が私を襲う。

 

ついに、そのゴーレムはその宝石で形成された大きな腕を振りかぶり、こちらに狙いを定め、一気にその拳を振り下ろした。

 

「・・・!!!!」

 

流石にもう駄目かと思い、私は完全に思考を放棄してしまった。随意領域操作も手放し、後はもうすぐ訪れる”死”を待つのみだった。

 

 

 

そして、そのゴーレムの拳が私に当たるその瞬間だった。

 

 

「ゴーレム!そこまでだ!」

その言葉と共にゴーレムの動きがピタリと止まり、元の直立の姿勢に戻る。

 

「大丈夫か、セシル!」

 

紅輝の声が聞こえ、扉があった場所から紅輝が駆け込んでくる。

 

「あー、やっぱりか、すまない、少し体を触るぞ。」

 

彼はそう言うと、私の背中に刺さっている麻痺矢を抜き、恐らく持っていたのであろう黄金色をした液体を口を開かせて飲ませてくれる。その液体は少し苦かったがその効果はちゃんとあり、その液体を飲むと、体の麻痺がゆっくりと引き少しづつではあるが動かせるようになる。

 

「彼女のゴーレムは優秀だが、遠隔操作が出来ないのが難点だな。動けるか?セシル。」

 

「え、ええ、紅輝。それと、ごめんなさい、勝手にあなたの部屋に入ってこんな所まで来てしまって・・・。」

 

私は紅輝に対し頭を深く下げる。

 

「・・・顔をあげてくれ、セシル。」

 

そう言われて紅輝の顔を伺いながら顔を上げる。たが、私の心配とは違い、彼はとても穏やかな顔をしており、そのまま私のことを抱きしめた。

 

「・・・え?」

 

「よかった、君が無事で、それに僕にも君がここに入って来ないと過信していたから起こってしまったことでもある、君を咎めることは僕には出来ないよ。」

 

「で、でも・・・。」

 

「それにトレーズ少将からも既に話は聞いていた、それを知っていてなお、警戒を怠ってしまった僕の責任でもあるんだ。それに、アルテミシアは既にこのことは知っているし、君達なら赤の他人には話さないだろうという、信頼もある。だから、そんなに自分を責めないでくれ。」

 

「紅輝、ごめんなさい。ありがとう・・・!」

 

私は紅輝が許してくれたことに安心し、肩の力が抜けてしまう。そこで随意領域制御も一緒に切れてしまい、立つことが出来なくなる。

 

「あっ・・・」

 

「セシル!?・・・と、危ない。」

 

紅輝は、私の手を掴み腰に手を回して倒れないようにしてくれた。急なことで恥ずかしかったが、彼の優しさが私に向けられているようでとても嬉しかった。

 

投影、開始(トレース・オン)

 

彼が何かの呪文を唱えたかと、思うと紅輝が私を椅子に座らせてくれた。その椅子の感触は私がいつも使っている車いすと同じだった。

 

「さて、と、僕も座ろうかな。」

 

すると、近くで木製の椅子が引きづられるような音かして、私の近くに紅輝が座った。私は紅輝がしていることへの考えがわからず、質問する。

 

「えっと、紅輝、今から何をするの?」

 

「何って、君は知りたいことがあったからここまで来たのだろう?僕の魔術について。」

 

「・・・っ!」

 

恐らく今が、私が紅輝のことを聞く最大のチャンスだ。

これならここまで来た甲斐があったと言うものだ。

 

だから私は紅輝を真っ直ぐに見つめて口を開く。

 

「お願いします。」

 

 

 

 

 

 

 

 





今回も見ていただき、ありがとうございました!
感想や評価をして頂けると、作者のモチベーションの向上になりますのでどうか、よろしくお願いします!

また、お気に入り登録して頂いた。

DxDさん、ストレートなこしあんさん、正宗03698さん

ありがとうございました!

これからも見ていただけると嬉しいです!


ではまた次話をお楽しみください!


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SSSでのクリスマスイブ

11話目です。

今回でセシル視点メインの話は終わりです。
次からはオリ主視点の話に戻していきます!

人狼ジャッジメント始めてみました。
全然考察出来なくて、何回もスケープゴートにされてしまった・・・。
まぁ、楽しかったのでいいんですけどね!

あ、それと皆さんちゃんとゴクドルズ見てくれました?
見てない人はぜひ見てみてください!
私の今季オススメアニメです!


 

12月24日

 

~セシルside

 

世間はすっかりクリスマス気分になり、街はクリスマス1色に染まっていた。

私、セシル・オブライエンの心境は街の雰囲気と同じく、かなり浮き足立っていた。

その理由は、23日の出来事の後、紅輝がお詫びにと外出に誘ってくれたのである。

私にお詫びと言われても逆にこちらにも責任があったのでそこは素直に喜べないけど、紅輝が外出に誘ってくれたことには両手をあげて喜びたいぐらいだった。

まぁ、正確にいえば、みんなでクリスマスイブとクリスマスに休日を貰ったので、せっかくだからみんなでクリスマスを祝おう!って、なったから紅輝がクリスマスの飾り付けを用意しようと言ったことが始まりなのだけどね。

それに、紅輝の言葉の裏に何もなかったとしても、他の子ではなく私を誘ってくれたことが何よりも嬉しかった。

 

私は身だしなみを整え、リビングに向かうと、紅輝が既に用意して待っていた。

 

「ごめんなさい、待たせたわね。」

 

「いや、問題ないさ。じゃあ、アルテミシア。自分とセシルは飾り付けを用意してくるよ。」

 

「うん、わかった。いってらしゃい二人とも。」

 

 

アルテミシアに見送られ、玄関から外に出ると、外の冷たい空気か一気に私たちに吹き付けてくる。

 

「やっぱりかなり寒いわね・・・。」

 

「そうだな。なるべく早く用事を済ませようか。」

 

(あ、うん)・・・そうね。」

 

・・・寒いのはあまり好きじゃないけど、紅輝と二人きりになれる時間が減るのなら少しは我慢してもいいのだけれどな・・・。

 

 

 

 

 

 

紅輝が私の車いすを押してしばらく経つと、動きが止まった。近くの雑貨屋さんまでは、経験上まだ少しかかるはずなのだけれど・・・。

 

「紅輝?もう着いたの?」

 

「まあね、雑貨屋さんではないがクリスマスの飾り付けを貸してもらえるところが有ってね。」

 

彼がそう言うと、紅輝の方からスマートフォンを操作する音が聞こえる。そして、コール音がなるがなると、直ぐに誰かが出たようだった。

 

「もしもし?レティシアかい?うん、到着したよ門を開けてくれ。・・・うん、分かってるさ、ありがとう。」

ピッ、という音が鳴り、どうやら電話が終わったようだ。

 

少しすると、前方の方から足音が聞こえた。足音の感じからするにかなり階級の高そうな歩き方、それも女性のものだ。

 

「待たせてごめんなさい、今開けますね。」

 

聞きなれない女性の声が聞こえ、恐らく先程の足音はこの女性だと判断する。

その女性の言葉の後、突然大きな門を開くような音が聞こえる。

私は今私の前で起こっていることが把握出来ずに少し戸惑っていた。

 

「こ、紅輝?ここはどこなの?」

 

「あぁ、すまない、言うのが遅れていたね。ここはエーデルフェルト邸さ。」

 

「・・・え?」

 

私は今紅輝から聞かされた言葉に驚愕し、固まってしまう。

 

え?え、エーデルフェルト?その名前は確かトレーズ中将のファミリーネームだったような・・・。

い、いや、まさかもしかしたらただ名前が同じだけなのかもしれないし・・・。

 

「エ、エーデルフェルトって、中将殿の?」

 

「あぁ、そうだよ。」

 

やっぱり!!?、こんなことなら聞かなきゃ良かったかもしれないわ・・・。

 

「ん?こちらの方ははじめましてね、私はレティシア・エーデルフェルトです。あなたの名前は?」

 

突然、その女性に名前を聞かれ私は少し恐縮してしまう。

 

「わ、私はセシル・オブライエンです。」

 

「そう、わかったわ。これからよろしくねセシルちゃん。」

 

そう言ってその女性、レティシアさんは私の手をとった。その手は同じ女性ながらとても柔らかく、彼女の手からは優しさも、感じることが出来た。私とレティシアさんがそうこうしていると紅輝が気まずそうな声をあげる。

 

「あー、お二人さん、少しいいかな?」

 

「おっと、そうでしたね。はいこれ、約束のものよ。」

 

レティシアさんかわそう言うと少し大きめの紙袋の音が聞こえる。

 

「ありがとう、感謝するよ。忙しいところ、すまなかったね。」

 

「いえ、問題ないわ。私の方は既に飾り付けは終わっていますから。」

 

「それなら良かった、じゃあ、よいクリスマスを・・・。」

 

「ええ、そちらこそ。」

 

 

 

 

そして、紅輝は再び私の車いすを押して、この場を去った。

 

 

・・・気が気じゃなかった!!紅輝には悪いけど正直言って気が気じゃなかったわ!まぁ、無駄なお金を使わずにクリスマスの飾り付けを貸してもらえたことは良かったけど・・・。

うん、この場を離れられて少し安心したわ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クリスマスの飾り付けを借りた後、紅輝はしばらくしても家に帰る様子はなく、逆に街の方に来ているようで、周りからは軽快なクリスマスソングが流れていた。

・・・まぁ、私としては紅輝と二人きりに慣れているから嬉しいと言えば嬉しいのだけれど。

そう思っていた矢先、紅輝の話の内容を中断し、私の肩を軽く叩いた。

 

「ん?どうしたの紅輝?」

 

「セシル、君が良かったらだけど少しカフェに行かないか?」

 

「えぇ、構わないわ。時間もまだ大丈夫なのでしょう?」

 

「良かった、それなら行きつけのお店があるから案内するよ。」

 

嬉しい!嬉しいわ!紅輝があんなことを言ってくれるなんて!お、落ち着くのよ私!ここで変なことをしたら台無しよ!・・・そう言えば、紅輝の行きつけのお店ってどこなのかしら?少し気になるわね。

 

内心はウキウキしながら、顔を表情をなるべく乱さぬまま(自己申告)しばらくすると紅輝の言っていた、行きつけのお店に着いたようだ。

 

「いらっしゃいませ、ん?今日は珍しいお客さんも一緒かい?」

 

中に入ると、コーヒー豆の香ばしい匂いがし、恐らく初老と思われる男性の声が聞こえた。とても落ち着いた雰囲気で紅輝の行きつけというのも納得出来た。

 

「こんにちは、マスター。今日はお嬢様が一緒だからね、最高の席とコーヒーをお願いするよ。」

 

「かしこまりました。」

 

マスターと呼ばれた男性はソファーのある、お店の窓の近くの席に案内してくれた。私と紅輝はその席にゆき、紅輝が私の肩を二度軽く叩く、これは今から体を触るという合図だ。

 

「今から少し持ち上げるよ。」

 

「ええ、わかったわ。」

 

私がそう言うと、紅輝ら私を車いすから持ち上げ、お姫様抱っこのような状態で、抱き抱えるとソファー席に座らせてくれた。

 

お姫様抱っこは、いつもやってもらっているけど、まだ慣れないわね・・・。紅輝のいない時はレオにやってもらっているけど、やっぱり紅輝のほうが少し緊張するわ。

 

紅輝も私の向かい側に座り、二人で世間話をしていると、案外早くにコーヒーが運ばれてきた。しかし、その後にもう一度机に二人分のお皿が置かれるような音がする。

 

「ん?マスター、こちらのショートケーキは?」

 

紅輝が不思議そうに聞くと、マスターと呼ばれた男性は小さく笑い、紅輝に耳打ちする。

 

「私からのささやかながらのクリスマスプレゼントですよ。もちろんこの分の代金は請求しませんのでご安心を

そう言うと、マスターはカウンターへと戻って言った。

私と紅輝はマスターに感謝しながらもコーヒーとショートケーキを堪能した。

 

うんうん、コーヒーもケーキも美味しかったし、機会があればまた来てみたいわね。

 

 

 

 

そして、二人とも食べ終わって少ししたぐらいだった。

 

「セシル、ちょっといいか?」

 

紅輝が神妙そうな口ぶりでいった。

 

「構わないけれど、どうしたの?」

 

「あー、その、なんだ・・・。」

 

私は、紅輝にしては珍しいはっきりしない声色で何かあったのかと思う。

 

「どうしたの?はっきりしなさいな。」

 

「そうだな・・・。よし!メリークリスマス、セシル!1日早いけど、クリスマスプレゼントだ。受け取ってくれないか?」

 

「え・・・?え、えぇ!もちろんよ!」

 

「なら、良かった!」

 

紅輝はそう言うと、私の手に長方形の箱を手渡してきた。

 

 

こ、紅輝が私にクリスマスプレゼント!?ほ、本当なのかしら!こ、心の準備が出来てないから思わずにやけてないかしら!?

 

「こ、紅輝。これ、開けてもいいかしら?」

 

「あぁ、もちろんさ、開けてほしい。」

 

私はその箱を開き、中身に触れてみると、それはネックレスの様だった。

 

「これは・・・ネックレスかしら?」

 

「うん、でも、自分には女の子の好みはわからないから実用性を兼ね備えたものにしてみたんだ。」

 

「実用性?」

 

どういうことかしら?ネックレスに実用性なんて・・・何かの健康器具と、いうことなのかしら?

 

「あぁ、付けてみれば分かると思うよ。」

 

「ふむ、それじゃあ、紅輝、貴方に付けてもらえるかしら?」

「ええ!?・・・分かった、君がそれを望むのなら。」

 

紅輝は箱からネックレスを取り出し、私の首にかけてくれた。

 

「んー?何か起こって居るようには感じないけれど・・・?」

 

「セシル、顕現装置を使って随意領域(テリトリー)を開くようにしてみて。」

 

「?わかったわ。」

 

そう言われ、やってみると、すごく簡単に随意領域を開くことができた。普通なら顕現装置なしで随意領域を開くのはかなり難しいのである。それがこんなにも簡単に出来たということは、これは小型の顕現装置と言うことかしら。

 

「んっ、同じように開ける!これなら・・・!」

 

そのまま、目と足に随意領域を使ってみると、足が動き、目が見えるようになったのである!カフェのオシャレな内装も、紅輝の顔も、紅輝がくれたネックレスだって!全部見えるようになっていた!

 

「どうかな?わかったかと思うけどこれはかなり小型化した顕現装置だよ。開発部の人達に頼み込んで作ってもらったんだ。デザインはそのまま女性の方に任せて見たけど、どうかな?」

 

紅輝の少し不安そうな顔をはっきりと見ることができ、基本顕現装置(ベーシックリアライザ)無しで目が見えるという喜びと、紅輝への感謝の気持ちで、私の気持ちは表しようのないくらいに高まっていた。

 

「とっても嬉しいわ!紅輝本当にありがとう!」

 

「そう言って貰えて嬉しいよ、自分も開発部の人達に頼み込んだ甲斐があるってものさ。」

 

「それじゃあ、私も紅輝に何かお返ししなくちゃいけないわね。」

 

私がそう言うと、紅輝は驚いたような顔をしていた。

 

ふふ、やっぱり、紅輝は表情がころころ変わって面白いわね!

 

「い、いや、そこまでしてくれなくても大丈夫だよ!」

 

「いいからいいから。少し待っててもらえる?驚かせたいから、目を瞑ってちょうだい。私からのお願い(・・・)よ。」

 

私は今、紅輝が”お願い”という言葉に弱いことを知っていてあえてつかった。紅輝は私の思惑通り通り、少し困ったような顔をして、わかったよ、と言うと目を瞑った。

 

私のお返しはもう決まっていた。

 

私は意を決して彼の顔に近づいて。

 

 

 

 

―――――ちゅ

 

彼の頬に短くキスをした。

 

 

「も、もう、目を開けていいわよ・・・。」

 

彼の顔は何が起きたかわからない顔をしており、私は意を決してしたのはいいが、恥ずかしさのあまり、すぐに顔を背けてしまう。

 

あ、あぁぁぁあ!!?やった、やってしまったぁぁぁぁぁあ!いや、でも後悔はしてないわ私!頑張った!頑張ったのよ私!

 

「え・・・と、セシル、あ、ありがとう。」

 

「ど、どういたしまして。」

 

その後はそそくさとカフェを出て、すぐに家に戻った。紅輝に車いすをおしてもらっている時はお互いに終始無言になってしまっていた。

 

 

 

 




今回も見ていただき、ありがとうございました!
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ありがとうございました!

これからも見ていただけると嬉しいです!


さらにさらに!!
前回でUAが5000を超えました!!
私とても感激しています!
こんな駄文を見ていただけるなんて本当に光栄です!
これからも頑張っていきますので、また、見ていただけると嬉しいです!

それではまた次回をお楽しみに!

ちなみに、今回出てきたマスターのイメージボイスは三木眞一郎さんです!


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SSSのクリスマス

12話目です。

最近は縄跳びダイエットを始めた深紅です。

実際、効果があるのかは分かりませんが、とりあえず3ヶ月は続けてみようかた思ってます!

最近は猛暑のせいで熱中症になる人がかなり多い見たいですね・・・。皆さんは熱中症にならないようにこまめな水分補給と休養をきちんととってくださいね!






12月25日

 

「おーい、そろそろターキーが焼き終わるから皿を出してくれないか?」

 

「「「はーい!」」」

 

自分の言葉にアルテミシア、アシュリー、レオノーラが明るく返事をする。

今年のクリスマスは、去年のような戦場でのクリスマスではなく、初めての、みんなで集まってのクリスマスだった。

 

「コウキ!持ってきたぜ!」

 

そう言って、アシュリーがターキー用の大きな皿を棚からだして持ってきてくれた。アルテミシアやレオノーラはセシルが作った料理の皿の方をリビングのテーブルへと運んでいた。

 

「ありがとう、アシュリー。んー、よし!このくらいかな。アシュリー、火傷するから近づくんじゃないぞー。」

 

「了解したぜ!」

 

オーブンを開けると鶏肉の香ばしく焼ける匂いが広がり、自分の食欲も激しくそそられてしまう!

 

オーブンからターキーを取り出し、アシュリーが持ってきてくれたお皿にのせる。

焼き加減も十分だな!ターキーを焼くのは初めてだったが我ながらよく出来たものだ!

自分がターキーをお皿にのせると、待ってましたと、言わんばかりにアシュリーがすぐ、リビングのテーブルの方へと持って言った。

 

「あ、飾り付け。まぁ、後でも大丈夫か。」

 

そう判断し、セシルの方をみると、あちらの料理も既に終わってあり先に片付けの準備をしていた。

 

「流石はセシル、手が早いな。」

 

「そんなことないわ、わざわざ紅輝が手のかからないやつを私の方に回してくれたんでしょ。当然のことよ♪」

 

「そうか?それでも君の手際は凄かったよ。下手したらすぐに追いつかれるかもしれないな。」

 

「ふふ、そう言って貰えると嬉しいわ。」

 

 

「おいおい、二人とも何話してるんだ、早く食べようぜ!」

 

「うんうん、私も待ちきれないよー!」

 

「こんなご馳走、初めて・・・!」

 

自分達に声をかけた、アルテミシア達3人は既に待ちきれない様子で席に座っていた。自分とセシルは少しおかしく思って、思わず笑ってしまう。

 

「もう待ちきれないみたいだね。」

 

「それじゃあ、私たちも席につきましょうか。」

 

自分とセシルは席につくと、アルテミシアが掛け声をかける。

 

「それじゃあみんな!手を合わせて・・・いただきます!」

 

「「「「いただきます!」」」」

 

今年のクリスマスはとても楽しくなりそうだ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「「ご馳走様でした!」」」」」

 

 

 

 

 

 

ディナーも食べ終わり、自分とセシルは最後のクリスマスケーキを準備をしていたときだった。

テレビを見ながら、レオノーラがふと呟いた。

 

「こうしていると、なんだか本当の家族みたい。」

 

レオノーラの言葉に周りにいた全員が目を丸くする。

そして、アルテミシアが優しく微笑むと、レオノーラとアシュリーの手をとる。

 

「レオン、何言ってるの♪私達はもう、本当の家族よ!」

 

「はっ、そんなこと当たり前だぜ!あ、でもそれなら家族構成はどうなるのかな?」

 

 

――え、それ言っちゃう!?

 

 

アルテミシアの言葉に同調したアシュリー、最初の言葉は良かったが最後に軽い爆弾を落とした気がした。

 

「んー。そうだねぇ、コウキくんは男だからお父さんか、お兄さんポジションになるとして・・・私はお母さんかな!」

 

 

「「「「いや、それはない。」」」」

 

「えぇ!?みんなして酷いよ!」

 

ここに来てアルテミシア以外の全員の意見が完全に一致した。

いや、アルテミシアがお母さんは無理があると思います。向き不向きかあるとはいえ、家事全般が出来ないのはちょっと・・・。

 

「アルテミシア、お母さんになりたいならもう少し家事能力を身につけた方がいい。と自分は思うよ・・・。」

 

「そ、それなら、私はお母さんはセシルが向いてると思う。」

 

レオノーラが自分と一緒にケーキを作っていたセシルの方を見ながら言う。

 

「え?私?」

 

「う、うん、家事もできるし、美味しい料理も作れるし、何より紅輝と一緒に料理を作っている時なんかはまるで夫婦みたいだったから。」

 

「確かに!オレもそう思ってた!」

 

「え、えぇ!?ほ、本当にそう思うのかしら・・・?」

 

セシルの顔は既に真っ赤になっており、とても恥ずかしがっている様子だった。

かく言う自分もとても恥ずかしく顔が赤くなってまっているかもしれない。自分としては士織のことが少し困ってしまう。

 

そう言えば、アルテミシア達に日本のこととか、あまり話してなかったな・・・。

 

 

 

 

 

 

ここから先はほぼカールズトークの領域に入ってしまっており、男の自分が入り込めるような隙間はなかった。

私は悲しいポロロン

まぁ、そんな中でもクリスマスケーキの準備を、そつなくこなすセシルは将来、本当にいいお嫁さんになるのではないだろうか。

 

そんなことを考えていると、少し日本にいる士織のことを強く思い出した、今頃はどうしているのだろうか、SNSでやり取りをしているとはいえ、現在はあまり音沙汰がない。もしかしたら・・・。

いやいや!士織がそんなことするはずないよな!

浮かんできてしまった。嫌な考えを無理やり追い払う。

既にクリスマスケーキの皿分けは終わっていて、後はみんなで食べるだけの状態だった。

 

さて、自分もクリスマスケーキを食べるかな!

 

自分は自分の席に着くために周りの簡単な片付けを素早く終わらせていた

 

 

 

だけどいつか、みんなに日本に帰ることを言わなきゃならないんだよな・・・。

やっぱり、こういうのは早い方がいいのだろうか・・・。

 

 

こんな不安を考えながら。

 

 

 

 

 

 

 

~セシルside

 

 

皆がターキーの魔の睡眠導入に為す術もなくやられ、寝静まったころ。

日課である、随意領域制御を今日は以前、紅輝から貰ったネックレスを使い制御訓練を終えた後。

シャワーで汗を流し、私も眠る前の水を1杯飲むために台所に行くと、リビングのテーブルで、何かを書いている紅輝を見つけた。

それは手紙のようなもので、随意領域で大幅に強化されてある目で見ると、それは以前この家のみんなで撮った写真を使った、ニューイヤーカードだった。

 

「紅輝、まだ寝ていなかったの?」

 

私が声をかけると、紅輝はビクッと驚いた様子で私の方を見ると、安堵の息をもらす。

 

「セシルか、驚かさないでくれよ。」

 

「ごめんなさいまさかあんなに驚くとは思わなくて。それは・・・ニューイヤーカードね?誰に送るの?」

 

「日本にいる人達にさ。イギリス(こっち)の方は既にポストに入れたけど、日本宛てを書くのが遅れてしまってね。たまたま自分の、知り合いが明日日本に行くらしいからその時に届けて貰おうかなと。」

 

日本に・・・と言うことはやはり彼の御両親などだろうか。だが、私の記憶のなかから、つい先日見た写真の女の子のことがよぎる。

 

「なぁ、セシル。」

 

しかし、彼の邪魔をしてはいけないと、思い自分の部屋に戻ろうとすると。

突然、紅輝が真面目な声色で私を呼び止めた。

 

「どうしたのかしら?」

 

「1つ、聞いてほしいことがあるんだ。」

 

彼の神妙な面持ちに普通のことでは無いと考え、私は紅輝の前に座った。

 

「それで、聞いてほしいことって言うのは何かしら?」

 

彼は先程まで持っていたペンを机に置くと、何か決心したような顔でこちらを真っ直ぐに見つめてきた。

 

「あと、早くて1年、遅くても2年後には自分は日本に帰ろうかと考えているんだ。」

 

 

「・・・え?」

 

「自分の学校での通う期間は実質あと1年で終わりになる。だから留学生活も終わって自分がこのイギリスにいる理由の半分が無くなるわけだ。」

 

紅輝のあまりに唐突な話に私は戸惑ってしまう。だけどなんとか顔には出さないようにして、冷静な振りをして口を紡いだ。

 

「・・・な、なるほど、ね。それじゃあSSSのことはどうするつもりなのかしら?」

 

「SSSのことについては予めトレーズ少将に話は通してある。自分の扱いは日本にあるAST部隊への配属扱いにしては貰えるらしい。だが、君達のことは―――」

 

「待って、1つ聞いていいかしら。」

 

「・・・大丈夫だよ。」

 

私は紅輝の言葉を遮り、私も決心する。もしかしたら、私にとって最悪の答えが返って来るとしても、聞かないといけない気がするから。

 

「あなたの家族の他に・・・その、大切な、恋人のような人は日本にいるの?」

 

紅輝は私の質問に少し驚いたような顔をするが、すぐに元に戻す。

 

「・・・ああ、いる、さ。日本にはこっちに来る前に恋人になった人がいるんだ。」

 

やっぱり、か。あぁ、彼の目には私は映っていなかった。映っていたとしても、それは異性に対するそれではなくて、家族としか映っていなかったのね。

 

「・・・それは、貴方の部屋にあった、写真の女の子かしら?」

 

「っ!見てたのか。そう、彼女が自分の恋人だよ。」

 

そう、か。それなら仕方ないわね。これで私はきっぱりと諦められる(本当に?)

 

「わかったわ、それなら仕方ないわね。(そんなわけない。)」

 

「貴方がやっていた家事はみんなですればなんとかなるだろうし(私はずっと貴方の隣にいたい・・・!)」

 

「私達のことは大丈夫よ。(嘘!本当はずっとここにいて欲しい!日本に・・・帰らないでよ!)」

 

「すまないセシル、君には迷惑をかけてばかりだな・・・。だけど、自分も年に何回かはこっちにくるようにはするよ。」

 

「いいのよ、貴方は安心して日本に戻りなさい。(違う!私が望んでいるのはそれじゃない!私は貴方にそばにいて欲しい、そして、私のことをもっと見て!)」

 

「ありがとう、セシル。」

 

彼は申し訳なさそうに私に頭を下げていた。

 

心を押しつぶし、なんとか紅輝に重荷にならないような言葉を発することができた。今、私の顔をちゃんと平静を装えているのかしら。もしかしたら酷い顔をしているのかもしれないわね・・・。

 

「じゃあ、私も一言言ってもいいかしら?」

 

「ああ、もちろん構わないよ。」

 

私は昨日みたいに紅輝に顔を近づける、だけど、今日は彼のの頬じゃなくて、耳元に近づける。

 

「I Love you.」

 

「・・・え?」

 

「これでいいわ、それじゃあ紅輝、おやすみなさい。」

 

「セシルっ・・・!」

 

私はその場から逃げるように自分の部屋へと戻った。紅輝が私のことを呼び止めていたけど、今回は無視をさせて貰った。

 

だって、その時の私はきっと、彼に見せられないような顔をしていたから。

 

 

 





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おかしいですね・・・プロットの時は3000字程度だったのにいざこっちに書くとなると1000字ほど増えていた・・・。


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強奪任務(前編)

13話目です。

最近、ガンオペ2にどハマりした狩宮深紅です!
何回か遊んでみたらすごい楽しかったー!
前作はやってないから前作がどんなのかは知りませんがかなり良作だと思います。

うーん、newガンブレとガンオペ2、同じガンダムゲーでどうしてこうもクオリティが違うのか・・・。
まぁ、そもそも開発陣が違うから仕方ないとは思いますけどね。アプデで良くなるといいですけどねぇ。





 

あのクリスマスから数週間が経ち、年も新しくなった。自分としては最後の時計塔生活でもある。実際はもうほとんどの単位は取ってあるため、後は自分のやりたい研究をして、それを論文にすればいいだけであるから、楽でもある。

 

 

 

 

・・・あの夜の後、セシルの様子はいつもと何ら変わりない様子で自分達に接していた。セシルのポーカーフェイスは上手く、事情を知っていなければ見破る程が出来ないほどだ。だけど、セシルが自分に好意を抱いてたのを気づけなかった自分が情けなく思った。今思い返してみれば思い当たる節がいくらでも有ったはずなのに。

 

 

自分は結局、まだアルテミシア達には話さないように決めた。セシルを傷つけてしまったようにアルテミシア達が自分の事で精霊撃退戦の時に支障をきたしては元も子もないからだ。アルテミシア達がどう思っているかは確信は出来ないが、少なくとも自分は大切な家族だと思っている、それが急に居なくなるというのはとても悲しいものだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――プルルルル。プルルルル。

 

「ん?誰からだ?トレーズさん?どうしたのだろうか。」

 

「はい、こちら遠坂紅輝です。どうかしましたでしょうか。・・・え?自分にですか?はい、分かりました。今すぐそちらに伺います。はい。失礼します。」

 

 

 

 

 

 

自分は隊長室の前に直立し、ドアをノックする。

 

―コンコン。

 

「遠坂紅輝伍長、ただいま参りました!」

 

『入りたまえ。』

 

「失礼します!」

 

自分はドアを開き中に入ると、いつものように隊長室の椅子の座っているトレーズさんと、見覚えのないつんつんの白い髪の毛でかなり高そうなスーツを着ている男性が、いつもはあまりに使われていないソファーに座り、紅茶を飲んでいた。

だが、その男性は明らかに一般人の雰囲気では無く、どちらかというと、自分達(魔術師)に近い雰囲気であった。はっきり言って雰囲気だけでもかなり危険なやつだ。

 

「・・・ん”ん。トレーズ少将、今回はどのような用件でしょうか。」

 

「遠坂君、今回君に用があるのは私ではない、そこの男だよ。」

 

トレーズさんは件の男性の方に手を向ける、すると、持っていたティーカップを置くと自分の方を真っ直ぐ見ながら立ち上がった。。そして、自分に向けて爽やかに笑った。

 

「やぁ!はじめまして!君が遠坂紅輝君だね、話は聞いているよ。なんでもここじゃあかなりの実力みたいじゃないか!」

 

「・・・お褒めに預かり光栄です。あの、すみませんが、良ければお名前を伺ってもよろしいでしょうか。」

 

「おっと、そうだったね。私の名前はアイザック・ウェストコット。君達SSSに装備提供をしているDEMインダストリーの業務執行取締役さ。今回は君に・・・というか、君と他数名に頼みたいことがあってね。」

 

あのDEMインダストリーの重役がこんな所に?しかも1人で来るなんて普通はありえない。それにトレーズさんのアイザック・ウェストコットと名乗った男性に向ける視線はあまりに好ましいものでは無い。

それに気づいた様子もなく、あるいは気づいていて敢えて気づいていないフリをしているのか読み取ることは出来ないが、アイザック・ウェストコットという男性は自分の懐から1枚の封筒を取り出して、自分に渡してくる。

 

「自分達に頼みたいことですか・・・。」

 

「あぁ、そうなんだ。ところで、君はアスガルドエレクトロニクスを知っているかい?」

 

「はい、一般知識程度には把握はしておりますが。」

 

「おお、それは良かった!説明の手間が省けたね。さて、本題に入ろう。アスガルドエレクトロニクスは我社のライバルと言っても過言ではない。

 

それはもちろんCR-ユニットに関してもだ。」

 

アイザック・ウェストコットはまるで演劇の語り部のような話し方で、用件とやらを話し始めた。

 

「・・・。」

 

「しかし!事実として我社のCR-ユニット製造技術はかの会社に劣っている。これは認めなければならない事実だ・・・。だが!あろうことにあのアスガルドエレクトロニクスは我社の新技術の情報を盗み出し、さらに、その技術を用いて新しいCR-ユニットを製造したという!」

 

「あまつさえ!奴らは精霊を倒すためにCR-ユニットを作っているのではないのに・・・。故に!」

 

「なるほど・・・。大体理解できました。」

 

大体この男性が言いたいことがわかった気がする。つまりだ。この男性は――――。

 

「その技術を使ったCR-ユニットを強奪して(借りて)きて欲しいんだよ。」

 

借りてきて、ね。この男、本当に底がしれない。この男の本心が未だに読めなく、かなり不気味だ。

 

とは言え、新しい情報も知ることができた。アスガルドエレクトロニクスがCR-ユニットを製造していたとは知らなかったな。あの男の言っていることが本当ならば、なぜCR-ユニットの制作を?確かに災害現場での活躍はかなり優秀ではあるが、あれは一般人が知らないようにされていると聞いたことがある。そう考えるとアスガルドエレクトロニクスも少し胡散臭い感じがするな・・・。

 

「あ、そうだった!この件で手に入れたCR-ユニットは君達が使うといい!エレンは使いそうにないし、君達なら使いこなせると思っているからね。もちろん、特別ボーナスも出そう、どうかな?受けてくれるかい?」

 

正直いって、この男がどこまで本当のことを言っているのかは分からないが、新型のCR-ユニットというのが、精霊を殺しうる性能を持っているのならば・・・。

 

やってみる価値はある・・・!

 

だが、この任務はどう考えても汚れ仕事に近しい、他の誰がやることになったら最悪死人が出るかもしれない。そうなるぐらいなら自分が手を汚した方がまだマシだろう。特にアルテミシア達には絶対に汚させない・・・!

 

「分かりました、その任務受けさせてもらいます。」

 

「そうか!それなら良かった!任務の内容は全部さっき渡した封筒の中に入っているから熟読しておくんだよ。それじゃあ、用事も住んだことだし帰らせてもらうよ。じゃあね、トレーズ。それに遠坂君も。」

 

「・・・あぁ。」

 

「はい、失礼しました。」

 

そう言うと、あの男は隊長室から出ていった。

 

しばらく無言の状況が続き、しばらくすると、トレーズさんが口を開く。

 

「・・・君はその任務どう思うかね。」

 

「強奪任務ですよね。こんな任務、いつかやらないといけないのかな、と思っていたら本当にやることになるなんて思いもしませんでしたよ。」

 

「それについては本当にすまないと思っている。私だけなら断っていたが上の他の奴らがうるさくてね、断りきれなかったんだ。」

 

「い、いえ!気にしないでください。

・・・それに、精霊との戦いじゃなくても人が死ぬのはあまりに気分のいいものではありませんから。」

 

「・・・そうだな。私も可能な限りサポートする、何かあれば言ってくれたまえ。」

 

「ありがとうございます。では、私はここで失礼させていただきます。」

 

「あぁ、ご苦労だった。」

 

 

 

 

 

自分は先程受け取った封筒を強く掴みながら隊長室を出た。これから行わなければならない行為(強奪)のことが、常に自分という存在に強く揺さぶりをかけていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~イギリスにある、ある図書館の中

 

 

???「こんな愛し方もあるのね・・・。これなら彼だって私のことを・・・!ふふ、ふふふ」

 

???「セシルー、どうかしたかー?」

 

セシル「え!?あ、あぁ、ごめんなさいアシュリー。なんでもないわ。さぁ、次のところに行きましょう。」

 

アシュリー「おう!ていうか、時計塔って図書館もあるんだな・・・。私初めて来たぜ。あれ?そう言えばレオノーラはどこに行った?」

 

セシル「嘘、あの子ったらまた迷子になったのかしら?」

 

???「あら?貴女は・・・セシルちゃん?」

 

セシル「え?その声は・・・。」

 

 

 

 

 

 





今回も見ていただき、ありがとうございました!
感想や評価をして頂けると、作者のモチベーションの向上になりますのでどうか、よろしくお願いします!

また、お気に入り登録して頂いた。
リーチャードさん。

ありがとうございます!また見ていただけると嬉しいです!


あ、FGOでスカディが20連で引けました!引けてない皆さんのカルデアにもスカディが来ることを祈っています!

では皆さん体調を崩されないようにお気をつけてくださいねー!




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強奪任務(前編)

14話目です

FGO夏イベ始まりましたね!
皆さんは水着ジャンヌといった限定サバは引けましたか?
私?私は次に来るであろうBBちゃんのために温存するつもりです。
最近、友達がFGOアーケードにどハマりしそうで少し心配です。確かに1度やって楽しいとは思いましたがお金が・・・。あれが現ナマの重みってやつなんですね・・・。ギルガメッシュ当ててたのですごい羨ましいです。



―任務内容

・我社の技術を盗み、作られたCR-ユニットがアスガルドエレクトロニクスのイギリス社に安置されている。4月5日の起動実験の日の前日に安置されている4機(現状分かっているもの)を入手し、その後指定のポイントまで撤退すること。

・物資はこちらが手配するため、その2つにおける準備は行わくても良い。

・その日の午後10時00分から作戦指示を行う。

・そちらから4人、回収要員を手配するように。

 

―以上。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―4月4日午後10時42分

~アスガルドエレクトロニクス、イギリス社

 

 

 

 

「おい!侵入者はそっちに行ったぞ!追え!」

 

「「「はっ!」」」

 

「見つけたぞ!撃て!」

 

けたましいサイレンが鳴る屋内、アスガルドエレクトロニクスのCR-ユニット格納庫の近くで多くの発砲音が鳴り響く。警備兵の追っている人物は随意領域で銃弾を防いだのか分からないが、全くくらっている様子はなくそのまま走り続けていた。

 

「ちっ!ウイザードか!ということは・・・。おい!奴の狙いは恐らく格納庫にあるCR-ユニットだ!絶対にあれを奪わせるな!」

 

 

 

 

 

 

そしてまた別の場所では・・・。

 

「くっ、奴らめ一体どこへ・・・」

 

ある1人の警備兵は侵入した輩を探すために周りを見渡していた時だった。

 

ふと、自分の肩が叩かれそちらの方を向くと、そこには何やら不気味な笑いを浮かべている1人の少女がいた。

 

「こんばんは、そしておやすみなさい。」

 

「はっ?っ!貴様まさか侵入sy―ゴスッ

 

銃口を向け、発砲をしようとした瞬間、その少女から放たれた回し蹴りが彼の頭に直撃し一瞬で意識を刈り取る。

そしてその少女はその警備兵が持っていた認証キーをその男の懐から奪うと彼女の仲間に話しかける。

 

「認証キー、手に入れたわ。さ、格納庫に行きましょ。」

 

「(うわ、今のセシルめっちゃ怖!?)・・・そ、そうだな。セシ・・・じゃなかった《ブリッツ》、早く行こうか。」

 

「ふふふ、あら?アシュ・・・じゃなかった《デュエル》何か怖いものでも見たような顔をしてどうしたのかしら?」

 

「い、いや!なんでもないぜ!」

 

「ねぇ、レオ、最近のセシル何かおかしくない?(小声)」

 

「う、うん。アルテミシアも思ってたの?実は私も最近そう思ってたんだ・・・(小声)」

 

そんな彼女ら2人の会話を知ってか知らずか《ブリッツ》は2人の肩を叩いた。その少女の顔を笑っているものの目がとても濁っているように見えた。

 

「内緒のお話かしら?《ストライク》、《バスター》?別にするのは構わないけど後にしましょう。彼が・・・《イージス》が敵を引き付けている今のうちに格納庫に急ぐわよ。」

 

 

「ひっ!?そ、そうだね急ごうか!」

 

「う、うんうん早く格納庫に行こう!」

 

触らぬ神に祟りなし、二人は直ぐに会話を止め。先に走りだした《ブリッツ》と《デュエル》に続いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~紅輝side

 

―パンッ、パンッ。

 

全速力で走りながら後ろ方向へとDEMから支給された特別性の睡眠弾を使い、追ってをできる限り減らす。当たっているかの確認はできていないが、()を追ってきている足音は減っているところ、当たってはいるのだろう

。今現在、格納庫へのルートを通っていたからか既に目的はバレてしまっている。だが、これも予想の内らしい、このルートを通ると作戦指示を聞いた時には正直考えたやつは阿呆なんじゃないかと思っていたが、予想は以上に追っては少なかった。

もしかしたら裏でDEMが何か細工をしていたのかもしれない。

セシル達は上手く認証キーを手に入れることができただろうか。アルテミシアがいるから最悪何とかなるとは思うがやはり少し心配だ。

 

―パンッ、カチッ、カチッ。

 

「ちっ!弾切れか!」

 

急いで腰につけて合った予備の弾倉を取り出そうとするが、相手の銃弾がそれに直撃し、遠くに弾き飛ばされた。

 

「っ!しまった!」

 

「そこまでだ!大人しく投降しろ!」

 

拳銃を投げ捨て<ノーペイン>を抜き構えると3人の警備兵が僕に向けて銃口を向けていた。

 

―どうする?やろうと思えば3人ほどなら制圧できるかもしれないが、そうなると確実に新たな追っ手が来る。

最悪魔術を使うことも考慮に入れないと行けないか・・・?

 

「投降しない、と言ったら?」

 

「残念だが、君の命を奪わせてもらう。」

 

「まぁ、当然だろうね、残念だけど死ぬつ――「誰が命を奪うですって?」

セシルの声が聞こえたかと思うと3人の内の左にいた1人が突然、蹴り飛ばされる。

 

「なっ!?何者だ!」

 

「残念だけど答える義理はないわぁ!」

 

そしてまた1人右側にいたやつが、今度は頭部にセシルの蹴りがクリーンヒットし僕の後ろまで蹴り飛ばされる。

 

「き、貴様!!よくも!」

 

「あらぁ、それはこっちのセリフよぉ!」

 

その台詞と共にセシルが真ん中にいた男の股間を蹴りあげる、あまりの男としての痛みに耐えられなかったのだろう。彼は泡を吹いて倒れてしまった。・・・敵ながらこれには同情してしまう。死んでなきゃいいが・・・主に男として。

 

「・・・《ブリッツ》、助けてくれたのはありがたいが、最後のは流石に可哀想と思うのだが。」

 

「そうかしら?それよりも!ちゃんと認証キー取ってきたわ。これでいいのよね。」

 

「あ・・・うん。そうだね。よくやったよ《ブリッツ》」

 

「うふふ、ありがとう。さぁ、格納庫に急ぎましょう。 」

 

そう言うとセシルは格納庫の方へと走っていってしまった。

先程までセシルの後ろにいた《デュエル》が自分に話しかけてくる。

 

「なぁ、《イージス》。近頃《ブリッツ》と何かあったのか?最近の《ブリッツ》は時々怖いぜ・・・。」

 

「・・・いや、僕の思いつく限りでは何も無いよ。」

 

「そうか、ならいいんだけどよ・・・。」

 

無い、とは言いきれない、きっとあのことだろうから。だけど、それを口にして言うのはまだ早いだろう。今のセシルのおかげで助かったのも事実だ、この任務が終わってから何とかしないとはいけないかもしれないな。

 

 

 

 

 

 

《ブリッツ》の後を追い、格納庫の扉の前に立って認証機に認証キーをスキャンすると、扉が開かれる。

 

中には汎用CR-ユニットがズラリと並べられていた。しかし、その中でも形の違うものが5つ有った。4機と言う情報だったが1つ多いいな、これはアルテミシアを連れてきて正解だったかもしれないな。

 

「有ったぞ!恐らくこれが例のCR-ユニットだ。」

 

しかし、そこにあったのは色や形がどこかで見たようなことがあるものだった。

 

機体名を見てみると<デスティニー>、<アルケー>、<ケルディム>、<エピオン>、そして<ν(ニュー)>と書かれていた。

 

 

 

 

――ってこれ、まんまガンダムの機体じゃん!!そりゃ、どこかで見たかと思ったわ!てか、<ν>って!ここはアナハイムかよ!いや、サイコミュ自体はアナハイムじゃなかったんだっけ?だけどそんなことは今はどうでもいい!

お、落ち着くんだ僕!こんな時こそ家訓を思い出すんだ!

 

遠坂たるもの常に余裕を持って(ry ×3

 

・・・ふぅ。何とか落ち着いたぞ。さっさと回収して帰ると撤退しないとな。

 

 

「それぞれ自分が使えそうなものを認証するんだ、そしてその後直ぐにここから脱出するぞ!」

 

「「「「了解!」」」」

 

各々CR-ユニットの前に立つと認証機に手を触れ認証を開始する。

 

アシュリーは<エピオン>に、レオノーラは<ケルディム>に、セシルは<アルケー>にそして僕は<デスティニー>を纏う。しかし、1番肝心なアルテミシアがまだ認証できていない様子だった。オロオロしている姿は可愛いとは思うが今はそれどころでは無い。

 

「アルテミシア?認証はまだできないのか?」

 

「いや、それが、全く認証出来ないの・・・。それどころかエラーばっかりでてるの。」

 

どういうことだ?教わった情報のなかには全ての機体は認証されていないはずだ。もしや誤情報だったのか?それならまずいな。いや、誤情報では無いな。そもそも奪う予定だったのは4機だ。アルテミシアが認証しようとしているものが例外と言うことなのかもしれない。

 

「仕方ない。認証はあとにして持ち帰るだけ持ち帰ろう。認証は後でロックを解除してもらってからでも大丈夫だろう。レオノーラ、アルテミシアを運んでくれるか?僕はこれを待機状態で持っていく。時間がかかるだろうから先にポイントまで撤退しておいてくれ」

 

「わ、わかった。アルテミシア、しっかり捕まってて。」

 

「う、うん。ごめんね遠坂君、レオノーラ任せたよ。」

 

そう言うと、レオノーラはアルテミシアを連れて先に指定ポイントまで飛び立っていった。それに続きアシュリーやセシルも先にポイントまで向かっていった。

 

 

「さて、と。この会社には悪いがさっさとこれを持っていくか。」

 

 

<ν>を担ぐために持とうとしたその時だった。

 

―パンッ!

 

「なっ!?」

 

持とうとしてい手の甲を何者かに撃ち抜かれ咄嗟に<ν>から距離をとる。

撃ち抜かれな手からはどくどくと血が流れ落ちていた。

 

「流石にそれまでも持っていかれるのは許容できないな。」

 

渋い男性の声が聞こ、咄嗟に<デスティニー>のビームライフルを向ける。

 

「誰だ!」

 

僕がそう言うと、格納庫の裏口と思われる場所から車椅子に乗った男性とそれを押している女性の姿が有った。

男性の手には少し大きめの拳銃が握られており、銃口からは硝煙の煙が立っていた。

 

「盗人に名乗る名は無いと、言いたいところだが。そうだね・・・簡単に言えばここの責任者と言えば分かるかな?」

 

「なるほど、こんな所まで責任者がわざわざ出迎えてくるなんてね。よっぽどあれ(・・)が大事というわけか。」

 

「そういう事だよ。私としては君達が盗もうとしているもの全てを返して欲しいのだがね、この状況を考えられなかった私の落ち度でもある。故に君のを含めた4機は諦めよう。たが、<ν>だけは渡すことはできないな。」

 

「っ!」

 

その瞬間男性からのとてつもない殺気が感じられ、思わず後ずさりしてしまう。この男、只者じゃない、確実にアルテミシアと同じレベル、いや、それ以上なのは間違いない。ここで相手にするのは愚行だろう。

 

「・・・わかった。僕はここで引かせてもらうよ。」

 

「そうしてもらえると、こちらとしても嬉しい。」

 

 

僕は格納庫の入口まで直ぐに下がる。

ゆっくりと外にでて、撃ってこないことを確認し、悔しさを感じながら男性を睨み付け指定ポイントに向かうため飛び立った。

 

 

だが、ふと思う。今回の悪はどちらだ?精霊を殺そうとしていないのにCR-ユニットを製造している会社か、それとも本当にあのアイザック・ウェストコットとやらが本当のことを言っているとしても、扱いようによっては人を容易く殺すことのできる兵器を強奪した僕達。

・・・こんなの小学生でも分かる、明らかに僕達の方が悪だ。僕がSSSに入ってしたかったことは本当にこんなことか?最初はお金目的だったが、今となっては大切な仲間がいて人々を精霊という悪から守るためにこの仕事をしていた。士織が言ってくれた正義の味方、それになったつもりだったのかもしれない。

 

だけど、今僕がしていることはなんだ。人々を守る正義の味方が、命令とは言えこんなことをするのか?

 

 

・・・もう、正義の味方は名乗れない。だったら僕はこの仕事をする時は別の名を名乗ろう、仕事モードの人格を作り出そうじゃないか。その時の僕は冷徹な魔術師だ。

 

 

「僕の名は・・・リボンズ・アルマーク、人類を救うため。大切な人達を守るため僕はこの力を奮おうじゃないか」

 

 

 

 

 

 




今回も見ていただき、ありがとうございました!
感想や評価をして頂けると、作者のモチベーションの向上になりますのでどうか、よろしくお願いします!

また、お気に入りに追加してくださった。

ザウルスウイロウさん、エンプティさん。

ありがとうございます!また見ていただけると嬉しいです!

さらに!皆様のお陰でついに!お気に入りが50人突破しました!!
これも皆様のお陰です!
これからも見ていただけるように頑張りたいと思います!エタらないように頑張っていきたいので良ければこれからも支えていただけると幸いです!

ではまた次回をお楽しみに!

もしかしたらコールネームでだいたいの展開を察せた人もいるんじゃないかな?

出てきた機体が分からない!ってかたはピクシブなどで調べてみてください。全部載ってますし、私が説明するより早いと思うので・・・。、




8月11日、最後のところが見直してみて少し気に入らなかったので書き直しました。


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激突〈ベルセルク〉

15話目です。

BBちゃん、引けませんでした・・・。
腹いせに普通のBBちゃんに聖杯を捧げてレベル100にしたいと思います。

初めに謝っておきます!
耶倶矢好きの方ごめんなさい!!
まぁ、リョナラーの方はむしろウェルカムなのかもしれませんが・・・。


それと最後にはご都合主義的展開があるけど、物語の進行上許してね♡






強奪任務からまた数日が経ったある日のこと

 

いつもの様に、ポストを確認しているとアルテミシア宛に一通の手紙が届いていた。

 

 

 

その手紙の差し出し先はあのDEM社だった。

 

 

 

 

 

「アルテミシア、君に手紙だ。」

 

「え、私に?一体誰からだろう?」

 

不思議そうに首を傾げながらアルテミシアは手紙を受け取ると、大胆にも封筒を手で切り開ける。

 

 

・・・相変わらず女子力が低いなぁ。まぁ、別にいいんだけど・・・。

 

アルテミシアは中に入っていた1枚の紙を取り出し広げるとしばらくその内容を見ていた。

 

正直、渡そうか迷ったが、一応DEMはSSSの上司にあたる会社だ、自分の勝手な判断で行動して彼女達に被害が及ぶ可能性だってある。自分も共犯とはいえ、あの会社はあまり信用したくはないな。

 

しばらくするとアルテミシアの目付きが変わっていた。それはいつものような優しい顔ではなく、精霊と戦うときのような、戦士の顔だった。

 

「どうかしたか?アルテミシア?」

 

「うん、少しね・・・。いや、ここは話しておこうかな。遠坂君、朝食の後時間ある?」

 

「・・・なるほど、わかった。アシュリー達はどうする?」

 

「そうね・・・伝えるべきだと思う。」

 

「わかった。アシュリー達にも言っておこう。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「「ご馳走様でした。」」」」」

 

全員が食事を終え、食べ物への感謝を言葉にする。

 

「いやー!やっぱ、コウキとセシルの料理は美味しいな!」

 

「そう言って貰えると嬉しいよ。作りがいがあるというものさ。」

 

「ふふ、和食って結構単純そうで難しいものだったから上手くできててよかったわ。」

 

食後の談笑の最中、アルテミシアが話を切り替えた。

 

「ちょっといいかな?みんなに相談したいことがあって・・・。」

 

「相談?あぁ、そういえばコウキが言ってたな。いいぜアルテミシア!なんでも相談しな!」

 

「う、うん!アルテミシアの相談ならいくらでものるよ。」

 

「ふふ、そうね。二人の言うとうりだわ。アルテミシアが相談なんて滅多にないし、結構重要なことなんでしょう?」

 

「ありがとう、アシュリー、レオ、セシル。相談したいことってこれの事なんだけど・・・。」

 

そう言ってアルテミシアは先程の手紙の中身を机の上に置いた。それはアルテミシアの類まれなる随意領域操作能力の調査、といった内容だった。

 

手紙の内容の前半部分には先日の強奪任務のことも少し触れられており、後半部分の最後にはこの調査のあかつきにはアルテミシア専用のCR-ユニットを開発、プレゼントするとも書かれていた。

 

 

なるほどな、確かにアルテミシアの随意領域操作能力はSSSの中でも最高レベルだ。その調査によって得られる価値は計り知れないほどだろう。

だけど、自分はDEMのことはあまり信用したくはない。それに、アルテミシアの身に何か起こらないという確信は持てない。

 

「なんか、これ胡散臭いよな。」

 

「そうだよね・・・。なんか怪しい。」

 

アシュリーが正直な感想を述べる。それに続いてレオもあまりに好ましくないという感想を言った。

 

「ふーん、なるほどね。私はこのお誘いを断るべきだと思うわ。これ絶対に裏に何かあるわよ。」

 

「・・・なるほど、内容は理解したよ。自分としてはDEMはあまり好ましくない会社だが、それはあくまで自分の意見だ。君自身はどうしたいんだ?」

 

「っ、私は・・・。私の力がみんなの役に立てるなら、精霊を倒して、みんなと仲良く暮らせるなら・・・!この誘いに乗ってみたい・・・かな。」

 

 

 

 

流石アルテミシアと言ったところかな。みんなの役に・・・か。夢物語みたいな考えだけど自分と違って彼女なら、いつか実現できるのかもしれないな。

だけど、やはり心配だ・・・。アルテミシアには悪いがこれは止めるべきかもしれんな。

そう結論づけ、アルテミシアにそう言うとした時だった。

 

「それに・・・。何かあったら、みんなが何とかくれるって信じてるからね!」

 

 

その言葉にアルテミシア以外の全員が一瞬ポカンとしたあと、思わず笑いだしてしまっていた。

 

「はははっ!当たり前だぜ!そう言われちゃ私はアルテミシアを止められないな!」

 

「ふふ、そうね。アルテミシアの信頼には答えなくちゃ。」

 

「あ、アルテミシアは私たちの家族だからね。そのために頑張るのは当然だから・・・ね!」

 

「あぁ、アシュリー達の言う通りだ。家族が何かあったら助けるのは当たり前だからな。それなら自分は君の考えを尊重しよう。」

 

「みんな・・・!ありがとう!私、絶対に帰ってくるから!精霊を倒せるくらいになって戻ってくるよ!」

 

 

 

 

 

しかし、次の日にアルテミシアがDEMに行き、帰ってきた彼女があんなことになるなんて自分たちは思いもしなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~10月5日 台風の日

 

「〈ベルセルク〉が来た!全員、戦闘体制に入れ!」

 

「「「「了解!」」」」

 

 

荒れ狂う暴風が吹く中、1対の精霊と機械の鎧を纏った戦士達が居た。

 

1対の精霊〈ベルセルク〉は自分たちの勝負の水を差した者達へと視線を向けた。

 

「かかっ!我らの神聖なる闘いに水を差す無礼者には、我が闇の裁きを下してやろう!」

 

「賛同、全員まとめて吹き飛ばします。」

 

1対の精霊が天空を高速で翔ける。並のものならばそれを視認することは叶わず、その速さに翻弄されるのみだろう。

それは魔術(ウィザード)であっても例外ではない。

 

 

そう、並の者でならば。

 

 

ーバシュンッ!

 

この戦場の中、高速で翔ける精霊を的確に狙った一つの光が〈ベルセルク〉の片割れである耶倶矢を捉えた。

 

「なっ!?」

 

「耶倶矢、危ない!」

 

もう1つの片割れである夕弦がその光を【縛める者(エル・ハナシュ)】で軌道を逸らす。

 

光が向かってきた方向に目を向けると、長身の女が狙撃銃でこちらを狙っていた。幸い何発も連射はできないらしく、二射目が来ることは無かった。

 

しかし、その狙撃に対し、足を一瞬止めてしまった二人に肉薄する赤い影があった。

 

そう、<エピオン>を装備したアシュリーである。

 

「はあぁぁぁ!!」

 

出力を上げたビームソードで叩き切ろうとするが、〈ベルセルク〉は持ち前の反射神経を活かし、身一つで回避する。

 

「ちっ!」

 

アシュリーは仕留め損なった精霊を睨めつけさらに接近を始める。

 

〈ベルセルク〉の2人は最大速度ですぐにアシュリーから離れると戦場を把握するために二手に別れて旋回しながら戦場を観察する。

 

その圧倒的な速さで旋回をした2人はお互いが交わる瞬間に情報共有をする。

 

見た限り同じような武装をしている人間が多く、その中でもさっきの赤い女と狙撃の女を含めた4名がそれぞれ違った武装をしていた。〈ベルセルク〉は狙いを絞り、まずは厄介な狙撃の女を狙うことにした。

 

お互いにアイコンタクトを取りながら意思の共有をし、狙撃の女が居る方向にお互いに交差しながら一気に接近する。

 

レオノーラの狙撃は正確に〈ベルセルク〉を捉えるが、着弾する直前にお互いをカバーするように霊装でその射撃を弾く。

 

「レオ!?くそ!間に合え!」

 

アシュリーがスラスターの出力を最大にするが、相手は最速の精霊。一向に追いつく様子はなく、それどころかその距離をさらに広げさせられていた。

レオノーラも何発か撃ち込み、このままでは自身の身が危険になると判断し、狙撃銃を収納し、ホルスターから2丁のビームピストルを撃ちながら後退する。しかし、〈ベルセルク〉の接近は止まらず、あっという間に2人の攻撃範囲内まで接近されてしまう。

 

「くっ。」

 

「くはは!もらったぁ!」

 

「てやー。」

 

耶倶矢は【穿つ者(エル・レエム)】で、夕弦は【縛る者(エル・ハナシュ)】でレオノーラを挟撃する。だが、レオノーラもやられまいと随意領域を展開し、その攻撃を防ごうとする。

〈ベルセルク〉の攻撃がレオノーラにあたる直前、紅輝とセシルがその攻撃の間に何とか入り、防ぐ。

 

「なにっ!?」

 

「驚愕、受け止められた!?。」

 

渾身の一撃が受け止められた〈ベルセルク〉はその動きを一瞬止めてしまう。

そして、その攻撃を見逃す彼らでは無かった。

 

「セシル、今だ!」

 

「ええ!行きなさい!ファング!!」

 

セシルの駆る<アルケー>から10機ものファングが放出され、〈ベルセルク〉に狙いを定め砲撃を放ち、二人の霊装を僅かながらであるが傷をつける。

 

「くぅ!おのれ!」

 

「提案、下がるべきかと!」

 

このチャンスを紅輝は逃すことはできない。

 

「この僕を――忘れてもらっては困るなぁ!」

 

紅輝は<デスティニー>のアロンダイトで耶倶矢の腹部を斬るのではなく、殴り飛ばす。魔力と随意領域操作によって爆発的に上げれらた身体能力によって殴り飛ばされた耶倶矢は夕弦と離されてしまう。

 

「がっ!?」

 

「耶倶矢っ!!今助けます!」

 

「おっと、あなたの相手は私達。」

 

「そう簡単には抜け出させないよ。」

 

夕弦が耶倶矢を僅かながら受け止めに行こうとするが周りは<アルケー>のファングと紅輝によって囲まれ身動きが取れずにいた。

 

 

耶倶矢は精霊としての身体能力で何とか姿勢を立て直す。青ジミにはなってはいるが致命傷になっていないためすぐに回復するだろうと判断した耶倶矢は夕弦が囲まれているのが見え、助けに行こうとした時だった。

 

目の前に赤い女、アシュリーが現れ、ビームソードで既に斬り掛かってきていた。

 

「終わらせてやるぜ――〈ベルセルク〉!!」

 

「ひっ!?」

 

<エピオン>のビームソードが完全に耶倶矢を捉え、彼女の霊装に大きな切り傷をつけた。

 

だが、アシュリーの攻撃はまだ終わらなかった。

 

すぐにビームソードを構え直すと随意領域操作を利用し、人間がだせる限界を超えた速度で連続斬撃を繰り返し耶倶矢の霊装をズタズタに切り裂いていく。

 

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァ!」

 

そして、最後の一撃にとビームソードの出力を最大まで上げ、上段の構えから一気にビームソードで耶倶矢を叩き切った。

いくら化け物じみた精霊とはいえ、これにはひとたまりもなく、地面にそのまま叩きつけられてしまう。

叩きつけられた耶倶矢の姿は体のあちらこちらに深い切り傷があり、ただの人間ならば既に出血死してもおかしくない量の血が流れていた。

 

トドメを刺そうとアシュリーがビームソードを構え直そうとするが、先程の随意領域操作の不可が全身を襲いふらふらと地面に着地した。しかし、アシュリーはそのまま不可に耐えられず、そのまま倒れ込んでしまう。

 

「っ、耶倶矢!今助けます!絶対に―――殺させない!はあぁぁぁ!」

 

「これは、竜巻!?うっ―――きゃぁぁぁ!?」

 

「くっ、こんな力があるとは・・・!。セシル!?レオ!アシュリーを回収しろ!このままじゃ巻き込まれて死ぬぞ!」

 

「わ、わかった!アシュリー!!」

 

夕弦が耶倶矢を助けるには今しかないと判断し、精霊としての全力を使い、周囲に巨大な竜巻を発生させ、周りにいた鬱陶しい人間達をその暴風で吹き飛ばす。

 

レオノーラは身動きの取れないアシュリーを竜巻に巻き込まれる寸前で何とか回収に成功する。

 

そして、その竜巻は次第にその大きさを拡大させ、耶倶矢が倒れているところまで移動すると、その動きを止め停滞し続けた。

 

 

 

 

 

 

竜巻の中心、傷だらけて倒れている耶倶矢に夕弦は近づいて霊力を分け与え、自己回復を促していた。本来ならば精霊であっても己の霊力を分け与えるのはほぼ不可能に近いが、元は同じ、1人の精霊であったからこそできることであった。

 

「耶倶矢!耶倶矢!しっかりしてください!あなたがここで死んだら、真の八舞を決める戦いはどうするのですか!いつもみたいに変な言葉を使いながら恥ずかしい言動をするあなたはどこに行ったのですか!ぐすっ、だから・・・早く目を開けてください・・・!」

 

そんな夕弦の必死の声が届いたのか耶倶矢の目が少し開く。

「っ耶倶矢!大丈夫ですか!気をしっかり持って!ここで死ぬなんて夕弦は許しませんよ!」

 

「ゆ、づる・・・。は、はは、いつも、みたいにからかってこないのね・・・。」

 

「何を言っているのですか!こんなときに耶倶矢をからかえるわけないじゃないですか!」

 

「そっ、か・・・。夕弦、実を言うとね、私は真の八舞になれなくてもいいと思ってたんだ・・・。」

 

「っ!なにを・・・言って―――。」

 

「今でしか、言えないと思うけど、自分勝手だとも、思うけど・・・。私は、夕弦のことが大好きだから―――。夕弦に、真の八舞になって欲しい。だから、私の力をあなたにあげる。」

 

 

 

「・・・ふざけないでください。」

 

「・・・ぇ?」

 

「夕弦だって、夕弦だって!耶倶矢のことが大好きです!真の八舞になれなくたって、耶倶矢さえ生き残ってくれれば!夕弦はそれでも構わない!だから夕弦は耶倶矢が死ぬことは許しません!絶対に!絶対にです!―――私を・・・1人にしないでぐたさい・・・!」

 

「ゆづる・・・。だけど、この竜巻も、後少ししかもたないん、でしょ。両方、死ぬよりも、ゆづるが私を吸収して、真の八舞に・・・なれれば、この状況を、打開できる。だから・・・!」

 

「まさか!だめです耶倶矢!やめてください!」

 

耶倶矢は傷だらけの体にムチを打ち夕弦の腕を握り、自分の霊力の全てを夕弦に流し込む。夕弦も霊力を押し返そうとするが耶倶矢の譲渡の量の方が上回っており、後数秒もせずに耶倶矢は夕弦に吸収され、真の八舞が誕生するだろう。

 

「私の!力を!夕弦に託す!――――――――大丈夫、私は夕弦の中で生き続けるから・・・!」

 

 

 

 

 

 

その言葉を最後に、耶倶矢の霊力は全て夕弦に譲渡され、耶倶矢の身体は消滅し、光の粒となると夕弦の中に吸収されていった。それと同時に夕弦の霊装が発光し始めると。霊装が以前の、1人の八舞として顕現したときに戻っていた。

 

 

「・・・耶倶矢。」

 

竜巻の中、1人の残された真の八舞、夕弦はポツンと呟いた。だが、彼女の中では煮えたぎるような憤怒で思考が塗りつぶされていた。

 

「仇は―――とりますよ。」

 

その言葉と共に八舞は自身を囲む竜巻を解除した。そして、空からこちらを伺っていた憎き人間達を鋭い眼で睨みつけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

竜巻の外、SSSの隊員達はその竜巻が晴れるのを今か今かと待っていた。

竜巻が発生してから10分後、次第に風の勢いがおさまっていき、中の様子を確認することができるようになる。

 

「竜巻が晴れたようだ。ん?1人減っている?」

 

疑問に思った紅輝だが、恐らく死したか、消滅したと判断し、残りの一体を殺すためにアロンダイトを構える。

 

だが、その瞬間、その残りの一体の精霊が視界から消えた。

 

「っ、消えたどこに・・・!」

 

神経を研ぎ澄まし、周囲を探っていると自分と反対方向に配置していた、隊員達が次々と地面に堕とされていっていた。

 

「キャッ!?」

 

「エナ!?え?キャアァ!?」

 

「うわぁあ!?」

 

次々と周りの隊員達の悲鳴が聞こえ、地面に叩き堕とされていっていた。また1人、また1人と落とされていく隊員達にこのままでは全滅する可能性が高いと判断する。

 

「全員!こちらに集合しろ!孤立するな!孤立した瞬間に堕とされるぞ!。」

 

自分の声に近くに残っていた隊員は全速力でこちらに向かってはいるが、それでも次々と堕とされていた。

 

 

 

先程までは全力ではなかったということか・・・!これが精霊の全力か。この僕がまともに視界で追えないとは・・・!

〈ベルセルク〉が攻撃している瞬間はまだ視界におさめることはできるが、それ以外は全く視認することができなかった。

 

思考していた、その時、全身の毛が逆立つほどの殺気を感じ、その方向にアロンダイトを振るうと、先程までもう1人が持っていた突撃槍を片手に持ち、こちらを睨みつけていた〈ベルセルク〉がいた。ここでやっと精霊の姿をしっかりと視認する。明らかにさっきとは雰囲気が変わっており、精霊の鎧とも言える霊装も少し変化している様子だった。

 

「感嘆、私の速さに着いて来れますか。だけど、無駄。」

 

八舞は突撃槍を力任せに払い、アロンダイトを押し返す、思わず仰け反りかえってしまった瞬間、腹部に強烈な痛みが走ったかと思うと、いつの間にか凄い勢いで吹き飛ばされていた。

 

「がっ!?」

 

そのまま僕の体は地面に叩きつけられ、その衝撃て意識が飛びそうになるが、気合いで意識を繋げる。しかし、肺かどこかが出血したのか、口から吐血してしまう。

 

「ゔっ、カハッ。・・・はぁはぁ、くそ、化け物め・・・!」

 

随意領域操作で何とか止血しアロンダイトを杖替わりに何とか立ち上がる。

状況を確認するために空を見上げると、セシルが防戦一方ではあるものの何とか凌いでいた。その他の隊員は既に堕とされており、残るはセシルただ1人となっていた。対する〈ベルセルク〉は息一つ上がっておらず、淡々とセシルを追い詰めていた。

 

「賞賛、私の速さにここまで着いてこれるとは、貴女が初めてですよ。」

 

「はぁ、はぁ。それはどうも。こちとら目の強化には慣れているから。」

 

「そうですか、でもここで終わりです。貴女の後ろにいるあの赤い女を殺して耶倶矢の仇をとります。」

 

「はっ!私がそれをさせるとおもうかしら?アシュリーは私たちの家族、絶対に守ってみせるわ。」

 

「口だけではどうとでも言えますよ。」

 

「――え?」

 

―ザクッ

 

その瞬間、〈ベルセルク〉が消えたかと思うとセシルは腹部を突撃槍に貫かれていた。

 

「セシル!!?くそ!」

 

「あ・・・、う、そ・・・?」

 

〈ベルセルク〉は突撃槍で串刺しにしたセシルを無造作に投げ捨てると。既に倒れているアシュリーに目を向ける。レオノーラがアシュリーを守るため庇うように立ってはいるが、恐怖で足は震えており、今レオノーラが立てているのもやっとの状態であった。

 

「〈颶風騎士(ラファエル)〉【天を駆けるもの(エル・カナフ)】・・・!」

 

夕弦がそう叫ぶと霊装である羽が大きな弓となり、先程持っていたペンデュラムがその弓の弦となり、夕弦は突撃槍をその弓に番える。

 

 

「消えろ・・・!人間!!」

 

夕弦は弓を全力で引き、精霊としての全力を持ってその一撃を放った。

 

レオノーラはこのままでは二人とも死んでしまうと察し、自分の持てる全てを随意領域操作をし、アシュリーを庇うように防御目的の随意領域を展開する。

 

そして、その命を刈り取る一撃が随意領域にあたる寸前――――。

 

 

紅輝が二人の前に立っていた。

 

Iam the born of my sword(体は剣でできている)熾天覆う七つの円環(ロー・アイアス)!!!」

 

紅輝の詠唱と共に7枚の花弁型の障壁が展開され、放たれていた突撃槍と激しい衝撃波を発生させながら衝突する。

 

しかし、宝具とはいえ、投影物であるためその勢いを止めることは難しく、1枚らまた1枚と破られていく。

そして、ついには最後の2枚となり、それを支える紅輝の腕は既に限界に達していた。

 

「ぐっ、くそ・・・!止まれ!止まれぇ!!!」

 

2枚目もついには破られ、残すは最後の1枚になっていた。その弓の一撃の衝撃がほぼ直で紅輝の腕を襲い、少しでも気と魔力を抜けば、その瞬間紅輝を含め、後ろにいる二人共死んでしまうだろう。

 

「死なせない!絶対に死なせたりはしない!!」

 

声に出すことによって意識を何とか繋げ、盾の維持を続けさせる、だが、紅輝の腕はとうに限界を超えてしまっていた。魔力も随意領域の制御を解除し、止血をやめ、リソースを防御に回していため、かなり危険な状態でもあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、数秒後。紅輝は、最後の1枚は破られたものの、精霊の一撃を止めきったのである。

 

流石にこれには夕弦は驚きを隠せず、狼狽してしまう。

 

「なっ!?馬鹿な!あの一撃を止めるなんて・・・!」

 

「く、はぁ、はぁ。どうだ・・・!これが人間の意地だ、化け物!」

 

 

「・・・っ!仕方ない、ここは一旦退かせてもらいます。だが、絶対にあなた達は殺します。だから敢えて言わせていただきます。覚えていないさい!」

 

〈ベルセルク〉はそう言うと霊装であった弓を解除し、空の彼方まで一瞬の内に飛び立っていった。

 

紅輝は〈ベルセルク〉が完全に見えなくなるまで見届けると、そのまま地に付してしまう。

 

「コウキ!!は、早く本部に連絡をいれないと・・・!」

 

この後、レオノーラはすぐさま本部に連絡をし、その後すぐさま救助隊が到着したため、隊員全員は一命を取り留めることができた。

 

しかし、重症を負っていた紅輝は魔力不足も相まってしばらく目覚めることができなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~大西洋上空

 

「ぐすっ、耶倶矢ぁ、耶倶矢ぁ・・・!」

 

大切な半身を失った〈ベルセルク〉の1人、夕弦は泣きながらも海の上を飛行していた。

これからどうするか、1度臨界に戻れば耶倶矢は戻ってくるのだろうか。など、叶うはずのない願いを考えながらただ闇雲に飛行していた。

 

だがその時、不思議なことが起こった。

 

夕弦の体が発光すると、霊装から光の粒が出たかと思うと、その光か収束し、人の形を取ったかと思うと先程自分の中に取り込まれた耶倶矢が現れたのである。

 

「う、そ・・・。耶倶矢?・・・耶倶矢!!」

 

「ん・・・?ゆづる・・・?っ!夕弦!!」

 

もう二度と会えないと思っていた、故にこの状況は異常ではあるものの二人にとってそんなことはどうでもよかった。

 

「安堵、よかった!耶倶矢!もう一度会えて・・・!」

 

「夕弦・・・!私も、私もだよ!」

 

 

 

もう、お互いに大切そうに抱きしめ合う二人を邪魔する者はここにはいなかった。

 

 

 

 

 

 

 




今回も見ていただき、ありがとうございました!
感想書いて頂けると、作者が死ぬほど喜ぶのでよろしくお願いします!

また、お気に入りに追加してくださった。

両儀識さん、Raven(ゴミナント)さん、凛々♪さん。

ありがとうございます!また見ていただけると嬉しいです!


今回、結構投稿が遅くなってしまい、申し訳ございません!でもそれに見あったボリュームを頑張って書いてみました!

誤字があるかも、というか確認をしてはいますがある気がしますので見つけたら報告して頂けると嬉しいです!





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アシュクロフト計画

16話目です。

今回はいつもより短めです!すみません・・・。

今回からデート・ア・ストライクの内容にはいって行きます!見てない人にも分かるようにはしていく予定ですが、ここがわからない!と言うところがあれば感想にて教えてください!ネタバレにならない程度で説明します!


最近、ミルクセーキにハマってます。(どうでもいい)




2月14日

 

世が浮き立つバレンタインデー、だが、SSSではかなり重苦しい雰囲気が流れていた。

 

アルテミシアがDEMに行きだしたあの日から1ヶ月置きに帰ってきていた彼女が、年を越え、しばらく帰ってこなくなった。もしかしたら何かあったのではないか、そんな心配をしていた矢先。アルテミシアがDEMから帰ってきた。

 

 

ほぼ、植物人間になった状態で。

 

 

 

 

 

 

 

「くそっ!どうなっていやがる!どうしてアルテミシアが!」

 

アシュリーは感情を隠さず、リビングのテーブルに八つ当たりをするように叩く。

一方で、セシルはDEMに直接問い合せようとしているが虚しくコール音が鳴り響くだけであった。

 

「だめね、DEM社に問い合わせても全く出る様子はないわ。」

 

「くそっ!こうなったらDEMに乗り込んで直接聞きにいくしかねえ!」

 

今にも出ていきそうな状態のアシュリーを、レオノーラが何とか止める。

 

「だ、だめだよアシュリー!そんなことしたら私達SSSに居られなくなっちゃうよ!」

 

「くっ、離せよレオ!」

 

このままではまずいと思った紅輝はレオノーラと共にアシュリーをとめる。

 

「落ち着くんだアシュリー、無闇に乗り込んだところでどうにもならないのは分かるはずだ。」

 

「・・・そうだな、レオごめん。」

 

「そ、そんな。アシュリーの気持ち、分かるから謝らないで。」

 

「でも、レオの言う通りアシュリーの気持ちはよく分かるわ。私だって今にでも飛び出したいほどだもの。」

 

「セシル・・・。」

 

 

 

 

そんな時だった。

 

――コンコン。

 

玄関から扉をノックする音が聞こえ、外から聞き覚えのある声が聞こえる。

 

「私だ、開けてくれたまえ。」

 

直ぐに扉を開けると、いつもとは違い、コートを着ているが、トレーズ・エーデルフェルト少将がいた。

 

「トレーズさん!どうしてここに?」

 

急いで中に入ってもらい、セシルに紅茶を入れてもらう。

トレーズさんは、リビングにあるテーブルのアルテミシアがいた席に座ってもらう。

 

自分とアシュリー、レオノーラは先に席に座り、待っていると、トレーズさんは鞄の中から1つの資料を取り出した。

 

「これを見てくれ。」

 

そして、その資料を自分に渡す。

その資料にはアシュクロフト計画と、簡潔にタイトルが

つけられていた。

 

内容はさほど長くはなく、パラパラとめくり、内容を頭に入れていくと、衝撃の事実を知った。

 

 

簡潔に言うと、DEMの新型CR-ユニット<アシュクロフト>シリーズ開発において、誰でも高度な随意領域操作を可能にするためにアルテミシアに脳内情報を抜き出し(・・・・)、使用しているということだった。

さらに、開発されたCR-ユニットは日本の天宮市の陸自に配備されることになるという。

 

かなりショッキングな内容に、思考が少しストップしてしまったが何とか戻す。

 

自分も魔術師だ、今回のようなことは日常茶飯事とは言わないもののいつか経験するものではあるが・・・。やはり気持ちのいいものでは無い。

 

それどころか今自分は仲間をこんなふうにされたことによる怒りの方が勝っている。

 

「・・・なるほど、元からこういうつもりだったわけか。トレーズさん、これを一体どこで?」

 

「あぁ、この件に関しては、私も流石に我々最強の戦士が戦場で散るのではなくこうもされては、腹が立ったのでね、優秀な部下を忍ばせてもらったよ。彼はこの資料を持ち帰ってくれたが、その際、痛手を負わされてしまった。ミネルヴァ・リデルによってね。」

 

「ミネルヴァ・リデル?あぁ、あの小娘か。なるほど納得した、あいつはアルテミシアを恨んでいる節がある。以前自らDEMに所属したのもこれのためだったと考えるべきですかね。」

 

「いや、私はそうは思わない。むしろその逆では無いかな?アルテミシア君に復讐するチャンスをずっと伺っていたときに、舞い降りてきたチャンスを掴んだのではないかと考えている。」

 

「なるほど。それで、今回の件、トレーズさんはどのようにするのですか?もし、アルテミシアを救出することを考えているのであれば、我々を使ってください!」

 

自分は席を立ち、深く頭を下げて頼み込む。

横にいたセシルやアシュリー達もトレーズさんに向けて頭を下げる。

 

「私からもお願いします!」

 

「私からも!お願いします!」

 

「わ、私からも!」

 

10秒ほど頭を下げ続けているとトレーズさんから声がかかった。

 

「君たち、頭を上げてくれたまえ。部下に頼りすぎるのは私自身気が引ける所ではあるが、もとよりそのつもりだよ。」

 

「それじゃあ!」

 

「あぁ、トレーズ・エーデルフェルトが君達に任務を与える。アルテミシア君救出作戦をね。」

 

「「「「ありがとうございます!」」」」

 

自分達は再びトレーズさんに深く頭を下げる。

自分にとって何よりもトレーズさんが信頼してこの任務を任せてくれたということが喜ばしい事だった。

 

「早速だが、君達には作戦内容を伝える。予め言っておくがこれは長期戦だ。セシル・オブライエン、アシュリー・シンクレア、レオノーラ・シアーズは今から1週間後、私が用意する足を使って日本の天宮市に向かってもらう。

そこで情報収集と土地勘の把握だ。いざと言う時の地の利を無くしておくのも重要だからね。

 

そして、<アシュクロフト>シリーズが実戦配備される前にこれを持ち帰って貰いたい。

 

次に遠坂紅輝、君には同じく1週間後、DEMに派遣社員、テストパイロットとして潜入してもらう。そこで今回の件に関わった人物の調査をして欲しい。タイムリミットは天宮市に配備される予定の<アシュクロフト>シリーズが実戦配備されるまでだ。もしかしたら、君には暗殺を命令することになるかもしれないが、構わないかい?」

 

「はい、問題ありません。」

 

「そうか、流石私の戦士だ。期待しているよ。

作戦内容は以上だ。何か質問はあるかね?」

 

セシルが遠慮がちに手をあげる。

 

「はい、少しよろしいでしょうか?」

 

「構わないよ。」

 

「では失礼ながら、どうして、紅輝が潜入任務なのでしょうか。暗殺も考慮に入れるのであれば小柄なアシュリーなどが最適ではないでしょうか?」

 

「なるほど、君の意見も確かに正しい。では、その答えを言おうか。それはこれだ。」

 

そう言うと、トレーズさんは3つのドックタグを取り出す。それは待機状態の<エピオン><ケルディム><アルケー>だった。

 

「まず一つはこれだ、君達3人の分しか持ち出すことができなかった。<デスティニー>だけ別の所に保管されていてね。もし、実戦配備された<アシュクロフト>シリーズと張れるのはこちら側にはこの3機しかない。

2つ目の理由は彼が純正魔術師(メイガス)だからだよ。それにこの4人の中で暗殺の成功確率が高いのは彼だと踏んでいる。この点に関しては遠坂君に配慮してこれ以上は言えないがこれで満足して貰えないかもしれないがこれでいいかね?」

 

「はい、ご説明ありがとうございます。紅輝の件は私も少しは理解をしているつもりですので今ので十分です。」

 

「そうか、それならよかった。では作戦内容はこれで終わりだ。各自、1週間後のために準備をしておいてくれたまえ。」

 

トレーズさんは、そう言うと席を立ち再びコートを着ると、帰ってしまった。

 

 

 

 

 

そして、その日から1週間後に備え、自分たちはできる限りのことをした。

 

セシル達3人にはこの1週間で日本語をほぼマスターしてもらった。レベル的にいえば日本語で書かれた小説を読める程度にはマスターさせた。

 

自分による日本語教室の合間に、自分は地下の工房から使えそうな宝石を用意して、さらに、自分でできる限りの結界を自分たちがすんでいる家の周りに張った。

 

日本にある遠坂邸ほどのレベルではないが、魔術に詳しいものでないと解けないレベルまでにはできた。

 

 

 

 

 

待っていろアルテミシア、今約束を守る!

 

 

 

 

 




今回も見て頂きありがとうございます!

お気に入り登録して頂いた。
ごく普通の付与術師さん、ユダキさん。

ありがとうございます!

これからも見てくれると嬉しいです!

それと、感想や評価をしていただけると主が死ぬほど喜びますので、良ければお願いします!

誤字報告も見つけ次第して貰えると嬉しいです!



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アルテミシア救出作戦(前編)

17話目です


夏の盛りがすぎてこれから涼しくなって行くといいのでけどね・・・。
パソコンスペックが低いせいで黒の砂漠ってネトゲが出来なかった・・・。

その代わり友人に勧められたテイルズオブエクシリアを買ってみました。
予想以上に面白くて、いい買い物をしたと感じています!

ここでそれを勧めてくれた友人に感謝を・・・。



 

あのバレンタインから1週間後、セシル達は日本に向かい1週間に1度は定期報告が来ていた。

最悪の事態になったとしてもあの3機があれば何とかなるだろうが、目的地であり、自分の故郷の天宮市のASTの実力は未知数だ。数年前には1度合同演習を行ったことがあるが、彼らの実力は大きく上がっていると考えるのが良いだろう。

この世界型月で神はクソだがひとまずは彼女達の無事を神に祈っておこう。

 

 

自分は派遣社員という形でDEMに入ることができた。

 

さすがに普段の名前では危ないため、リボンズ・アルマークという仮りの名を使うことにした。

 

だが、あのアイザック・ウェストコットには顔が知られている、だからいちいち暗示の魔術をかける訳にもいかないため、予め認識阻害の魔術をかけたマスクを着用することになった。

 

だが、それでも油断は禁物だ。

 

自分やトレーズさんの様な元から魔術師な連中もいないとは限らない、特に怪しいのは世界最強の魔術師にして、アイザック・ウェストコットの秘書である、エレン・ミラ・メイザースだろう。

 

アルテミシアの様な例外もいるが、かなりの実力の持ち主だと聞く、気を抜けば認識阻害の魔術に気づかれる可能性だってある。なるべく関わらないようにするのが最善だろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、任務開始から2ヶ月後。

 

 

――ふふふ、ふはははは!

 

この2ヶ月で僕はDEM社におけるかなりの信頼を勝ちとった!

 

毎日夜遅くまでテストパイロットをしながら雑用をこなし、昼の休憩時間には、なるべく話の輪の中心になるように立ち回る。

 

午後のティータイムも僕におまかせ!

 

整備師の方々には作業を手伝いながら、コミュニケーションを取りながらの情報収集。

 

様々な部署の飲み会に同行し、周りが楽しくお酒を飲めるように気を使う!これがジャパニーズ接待だ!!

 

僕だってミス・パーフェクトの子だ、母にできて僕にできないことなどない!

さながら、作中いおいて、リボンズのアレハンドロ・コーナーに対しての立ち回りだと自負してもいいだろう!

そして、今や僕はDEM社において知らぬ者は居ないだろう!

 

 

 

 

――まあ、あまりのキツさにこの歳で胃薬を使うハメになりましたけどね。HAHAHA

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~4月15日

 

 

「それじゃあリボンズ君、後お願いできるかな?」

 

「はい、任せてください、いつも通りにしておけば良いですよね。」

 

「うん、じゃあまた明日ね。」

 

「お疲れ様です。(ニッコリと笑いながら)」

 

いつもの様にあと片付けをして、自室に戻る。セシル達からの報告が入っていないのを確認すると、そろそろ使い慣れてきたベットに腰を下ろし一息つく。ふと、時計で時間を見ると夜の20時をすぎた頃だった。

 

そう言えば最近は室内プールで訓練が出来ていなかったな。時間も閉まるまであと少し時間もあるし、情報収集も兼ねて行ってみるか。

 

そうと決まれば直ぐに用意をして、社内プールに向かった。流石に時間が時間であるため通路にほとんど人はいなかったが、監視カメラ以外気をつけるものが無いためこれは逆に好都合でもある。

管理人さんに会釈をして更衣室に入り、訓練用の水着に着替える。

準備体操をして、いざ、プールへ。

 

 

「ふう、ここに来るのは何度目かだが、やっぱり広いな。SSSにもこの位の規模のものがあればいいのだがね。」

 

 

そんな独り言を言いながら周りを見渡す。

 

 

まぁ、流石に誰も居ないよな。

 

 

――って、居た。

 

 

25メートルプール真ん中のレーンを1人で、かつ、ビート板に捕まりながら必死にバタ足をしている人物が―――。

 

自分以外に人がいることに少し驚きはしたが、誰しも苦手なことはある。それを克服しようと努力しているように見え、そっとしておこうとプールの端っこのレーンにいこうとした時だった。

 

その人物がプールの真ん中程で迂闊にもビート板から手を滑らせてしまい、制御を失う。

 

そしてそのままその人物は水の中に沈んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――って、おいいいいっ!???

 

その人物が上がってくる様子もなく、このままでは溺れ死ぬと判断した自分はすぐにプールの中に飛びこんだ。

 

急いでその人物を水の中から引っ張り上げると直ぐにプールサイドに上げる。ここでやっとその人物の顔を見ることができた。

 

 

その人物とは、かの世界最強の魔術師、エレン・ミラ・メイザースだったのである。

 

だが、今は緊急事態、正直厄介な相手か減ると考えて、見捨てても良いがそれは自分の良心が痛むため。

 

関わらない方が良いとは分かってはいるが、助けられる命は助けるべきだ。

 

「しっかりしてください!エレン・ミラ・メイザースさん!だめだ、意識が無い!」

 

あまりしたくはないけどしのごの言ってる場合じゃないか!

 

 

応急手当をするために仰向けにし、人口呼吸で気道を確保しようとすると、意識が戻ったのか、咳をし始めた。

 

「ゴホッゴホッ!ゴホッゴホッ!」

 

「よかった、とりあえず、タオルと毛布を持って来なければ!」

 

急いで更衣室に戻り、備え付けられていたタオルと毛布を持って、メイザースさんにかける。

 

「大丈夫ですか!僕の返事に答えられますか?」

 

自分の声が何とか届いた様子でメイザースさんはこちらをチラリとみると、息も絶え絶えに返事が返ってきた。

 

「え、ええ。ありがとうございます。ゴホッ。私のこんな姿を見られたのは許し難いですが―――い、命を助けて貰った相手にこのようなことを言うのは失礼というものですからね・・・。」

 

「良かった、話せる状態なら幾分かはマシみたいですね。」

 

そう言いながら、自分はメイザースさんに毛布を巻き付ける。

 

「ありがとうございます・・・。貴方は確か・・・。」

 

「僕の名前はリボンズ・アルマークです。4ヶ月間の短い期間ですが派遣社員として働かせてもらっています。」

 

「私も名前は聞いていましたが貴方でしたか、意外と若い人だったのですね。」

 

「―――ええ、まあ、色々と事情がありましてね働かざるを得ないのですよ。そうだ、1度ストーブを出しましょうか?室内プールと言えど季節はまだ4月ですし寒いでしょう。管理人さんにいえば出して貰えるでしょうし。」

 

自分はそう言って、1度プールを出ようとしたとき、メイザースさんが自分を呼び止めた。

 

「ま、待ってください!」

 

「どうしましたか?他に何か欲しいものでも?」

 

自分がそう聞くとメイザースさんは少し恥ずかしそうにしながら小さく呟いた。

 

「あ、いえ、その・・・。私としても執行部長としての肩書きがあるので、なるべく他の人に知られたくないと言いますか・・・。」

 

・・・なるほど。この人、結構プライドとかを気にするタイプの人か。うんうん、その気持ちは分からないことはないぞ。

実際、そんな人物を時計塔で嫌ってほど見てきたからね。メイザースさんよりもタチの悪いやつらを・・・。

 

「・・・ふふ、分かりました。何とかしましょう。少々お待ちくださいね」

 

そう言って自分は更衣室に戻り、誰も居ないのを確認してから湯たんぽを投影する。そして、シャワールームのお湯を湯たんぽに入れ、布で包んだ。

 

―――うん、これで多少はマシだろう。

 

急いでプールに戻り、端っこで震えていたメイザースさんに湯たんぽを渡す。

 

「はい、どうぞ。ストーブは流石に無理でしたがこれで多少は暖まれるはずです。」

 

「あ、ありがとうございます。これは・・・?」

 

「湯たんぽというものです。日本に1度行った時に友人に勧められて買ったんですよ(大嘘)。なんでも寒い日にこれを抱いて寝れば快眠できるとか・・・。」

 

「なるほど・・・。確かに暖かいです。」

 

メイザースさんは、先程までの凍えそうな表情からだんだんと顔色が良くなってきて、湯たんぽの暖かさに顔を綻ばせていた。

 

 

まあ、しっかし。世界最強と謳われる執行部長殿がまさか水泳ができないなんてね。思わぬ収穫が手に入った、今日はここに来て正解だったな。

 

 

―――ほんと、(僕にとって)いい意味でね。

 

 

 

 

 

―――数分後。

 

メイザースさんの顔色もほぼ普通の状態に戻り、プールの終了時間も迫り始めた頃。

 

「メイザースさん、そろそろ大丈夫ですか?1人で立てそうですか?」

 

「ええ、もう大丈夫でしょう。リボンズ・アルマークさん。貴方のおかげで助かりました。」

 

「いえいえ、助けられる人の命を助けるのは当たり前のことですよ。それに、フルネームではなく、リボンズとお呼びください。ここで知り合ったのも何かの縁でしょう。短い間ですがよろしくお願いしますね。」

 

「ふふ、分かりましたリボンズ。貴方の様な人物に会えて私も光栄です。それでは。」

 

そう言ってメイザースさんは去っていった。

 

自分も流石に更衣室に戻ろうと思い。歩きだそうとした時だった。

 

――ビタン!

 

後ろから誰かが倒れた音がし、振り向くとメイザースさんが倒れていた。

 

「って!?全然大丈夫じゃないじゃないですか!」

 

すぐさまメイザースさんに駆け寄り肩に担ぐ。意識ははっきりしているが体に力がはいっていなかった。恐らくだが先程ビート板から手を話したのはこれが原因じゃないのだろうか。

 

「何度もすみません・・・。」

 

「気にしないでください。メイザースさん、心当たりってありますか?」

 

自分の質問にしかし考えるような仕草をすると、そう言えば・・・、という。

 

「最近、まともに休んでない気がします・・・。アイクの後始末や残業が重なっていつも就寝するのは早くても日をまたいでから・・・。そう考えると私だけ何だかブラックでは?」

 

うわぁ、この人、日本のブラック企業のサラリーマンみたいな生活してる。それはぶっ倒れるのも納得ものだ。

 

「それで今日は早く仕事が終わったからプールに来たと。」

 

「ええ、まあ、そんなところです。」

 

「とりあえず、女子更衣室まで連れていきますね。着替えが終わったら、その後更衣室前で待っててください。倒れた人を一人で戻らせる訳には行きません。」

 

「しかし・・・。」

 

「しかしも何もありません。それに、この時間帯なら人はほとんど居ませんし安心してください。メイザースさんもここに働き込みなんでしょう?案内して貰えればお送りしますよ。」

 

「・・・分かりました。今回は甘えさせていただきます。」

 

そうしているうちにも更衣室前に着き、メイザースさんが無事歩けるのを確認して自分も男子更衣室に戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

自分も着替え終わり、女子更衣室の前に行くとすでにメイザースさんが扉の前で立っていた。予想以上に早く着替えが終わっていたことに驚き、謝罪する。

 

「すみません、お待たせしました。」

 

「いえ、更衣室に顕現装置をおいてあったので体を無理やり健康状態にさて着替えたので驚くのも無理はありません。」

 

「なるほど、そういう事でしたか。長話をしている暇は内容ですし、どうぞ。」

 

自分はそう言っておんぶの姿勢をとる。

 

「え、どうぞって、その。流石に少し恥ずかしいのですが。」

 

「顕現装置使って無理やり歩くよりは何倍もマシです。それになるべく監視カメラに映らないように行きますから安心してください。」

 

「―――はぁ、分かりました。・・・そ、それでは失礼します。」

 

そう言いながらメイザースさんは恐る恐る自分の上に乗る。

 

意外と軽いな、ちゃんと食べてるのだろうか?

 

「じゃあ、上げますよ。よっと。」

 

「・・・この年になっておんぶされる日がくるとは思いませんでした。」

 

「メイザースさんの寝泊まりしている場所はどこです?」

 

「宿泊棟の最上階の角部屋です。」

 

「え、かなりいい部屋ではないですか。契約社員な僕には一生縁のない部屋ですね。」

 

「そんなことありませんよ。貴方が我が社に正社員もして入って昇進すればいいのですから。」

 

「――まあ、考えておきます。」

 

そんな風には雑談をしながら、なるべく監視カメラに映らないようにメイザースさんの部屋まで歩いた。

 

 

 

 

 

 

「ありがとうございます。ここで構いませんよ。」

 

メイザースさんの部屋の直前に着くと、そう言って自分の背中から降りた。

どうやらもう完全に歩けるようで少し安心した。

 

「そうですか、分かりました。あ、それと、お節介かも知れませんが夜ご飯はもうお食べになりましたか?」

 

「・・・いえ、まだですが。」

 

「それならよかった。メイザースさんさえ良ければ僕がお作りしますよ?」

 

「そ、そんな!流石にそこまでして貰うのは――」

 

突如として、メイザースさんの方からお腹がなるような音が聞こえた。

 

件のメイザースさんは、羞恥心のあまり頭を伏してしまっていた。

もしや・・・、

 

「メイザースさん、正直に答えてください。最後にまともな食事を取ったのはいつですか?あ、まともって言うのは主食、主菜、副菜のある食事ですよ。」

 

自分がそう言うとメイザースさんは露骨に目を逸らしながら答えた。

 

「・・・今日の朝です。――「嘘ですね。」うっ、」

 

「うぅっ・・・ここ何週間はまともに食べてません。」

 

マジかよ、流石にこれじゃ放っておけないな。

 

「はぁ、予想はしてましたが本当にそうだったなんて。メイザースさん、部屋の鍵開けてください。」

 

「え?」

 

「いいから。」

 

「わ、分かりました。」

 

メイザースさんは手持ちのバックからカードキーを取り出すと電子機器にスキャンさせると。―ぴっ。と音がして鍵が開く音が聞こえる。

 

「メイザースさん、入っていいですか?見られたら不味いものがあったら今すぐ片付けて来てください。」

 

「いや、あの。リボンズが私の部屋に入るのは確定事項なのですか?」

 

「さっきの話を聞いて、はい、それじゃあさよなら、なんてできるわけないですよ。今日は貴女にきちんとした食事を取ってもらいます。幸い、明日は日曜日、今日早く仕事が終わったってことは明日は休みなんですよね?」

 

「え、えぇ。そうですけど・・・。やっぱりそこまでしてもらうのは悪いです。」

 

「いいから!不味いものがあるなら早く片付けて来てください。僕はその間に僕の部屋から食事の材料を取ってきますから。」

 

「え、ちょっと、待ってください!」

 

自分はメイザースさんの声も聞かず、自分の部屋へと材料を取りにいった。

 

と言っても何があったかな?お米はあったし、そう言えば昨日作って余ったカレーがあったな。後は・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

「~♪」

 

カレーの入った鍋がグツグツと音を立てて、カレー特有の香ばしい匂いを発していた。

 

紅輝はその間にお気に入りの音楽を鼻歌で歌いながらレタスを切りながらサラダの用意をしていた。

 

一方、部屋の主であるエレン・ミラ・メイザースは自分の部屋でありながら心ここに在らず状態で机にきっちりと座っていた。

 

(い、一体この状況はどうなっているのでしょう!ていうか、自分の部屋に男を入れるなんて初めてなような気がします。アイクとはそのようなことはなかったですし!てか、めっちゃカレーのいい匂いがするんですが!!?)

 

と、こんな風には世界最強(笑)の内心は乱れまくっていた。

 

しばらくすると、料理が終わったようで棚から食器を出す音が聞こえてきた。そして、厨房からリボンズが出てくると、2人分のカレーライスとサラダがエレンの皿の前に置かれた。

 

「お待たせしましたメイザースさん、お口に合うかどうかは分かりませんがどうぞ。」

 

「あ、ありがとうございます。・・・いただきます。」

 

「それでは僕も、いただきます。」

 

エレンは恐る恐るカレーライスをスプーンで掬い、口に運ぶ。

 

そして、口に入れたその瞬間、エレンに衝撃が走った!

辛さはそこそこあるものの、スパイスがよく効いており、食べにくくなるような辛さではなく。自然と二口目を口に運ぶ。中に入っていたジャガイモが噛んだ瞬間にホロりと崩れ、ニンジンも食べやすい柔らかさに加熱されている。

 

エレンはこんなにも美味しいカレーライスを生まれて初めて食べた。そして、その美味しさに思わず涙が零れてしまう。

 

「・・・うっ、うぅ、美味しい、美味しいです。私、こんなに美味しい食事をしたのは初めてです・・・!」

 

「な、泣くほど喜んで貰えたのならこちらとしても用意した甲斐がありましたよ。」

 

「リボンズがこんなに美味しい料理を作れるなんて、どうです?DEMの・・・いえ、私やアイクの専属のシェフになりませんか!」

 

エレンはかなりの気迫で紅輝の両手を掴み、スカウトしようとする。

 

「あ、ははは・・・。そ、そうですね。精霊を倒し終わったらそんな道もいいかも知れませんね。一応考えておきます・・・。」

 

 

 

 

 

この後、エレンと紅輝は食事を終え。酒を飲みだしたエレンの愚痴を彼女が眠ってしまうまで聞き、紅輝はその日を終えた。

 

 

 

 

 

 

――まさか、あの最強と名高いエレン・ミラ・メイザースがこのような女性だったとは。アルテミシアよりは女子力があるがこの人も低い部類に入るな。

まぁ、そんなことは重要なことではない。このまま、エレン・ミラ・メイザースともっと接触し友好を築いておくのが吉だろう。

 

婚活では無いが、まずは胃袋をってね。

 

 

 

 




今回も見ていただきありがとうございます!
お気に入り登録をしていただいた。
白霧 剣さん、メリールウさん。
ありがとうございます!これからも見てくだされば嬉しいです!

感想や評価をしてもらうと作者が死ぬほど喜び、モチベーションも上がりますのでぜひお願いします!
それと、誤字報告も見つけ次第どんどんしていってください!



おかしいな・・・。プロットとかなり違う展開になってて自分でもびっくりしています。

それもあってか1週間の周期に間に合わなかった・・・。まぁ、周期はともかく、プロットと展開がかなり変わるってないですかね?・・・かね?







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アルテミシア救出作戦(中編)

18話目です

9月9日にデレマスのLIVEに初めて行きました!!
たまたまチケットが当選したので一人で行ってみよう、と思って行ったのですが最高でした!!
またチケットが当たれば行きたいものです!

ちなみにデレマスで推しは渋リンです。


あ、それと、マキオンプレイヤーの皆さんエクバ2の稼働日はいつだと思います?なんか10月上旬ていう噂が流れていますがどうなんでしょうか・・・。


後数話で原作に介入できると思いますのでお楽しみに~。



 

5月21日

 

 

あれからまた1ヶ月と半分が経った、アシュクロフト計画の事を探っているが一向に手がかりが掴めていない状態だった。否、正確には多少は掴めている。が、それはDEM社の中での認知度は極めて低かった。

この3ヶ月間にそれとなく聞き込みもしてみたが、誰もそのような計画は知らない様子であった。精々、そういうCR-ユニットが極秘で作られているのかも、といった薄い情報しか手に入らなかった。

 

正直に言ってかなりやばい、トレーズさんが持ってきてくれたあの計画書の予定ではそろそろ日本に送り出されても問題ない日付だろう。自分の仕事はCR-ユニットの破壊ではなくこの計画の立案者の暗殺だが、自分が立案者を見つけなければまた新たな被害者が現れてしまい根本的な解決にはならない。自分がここに居れる時間はもうほとんど残っていない、早急に発見しなければ・・・。

 

 

そして次の日、セシル達から連絡が入った。

 

――すでにアシュクロフトシリーズは日本に運ばれていた。通信設備の都合上、報告が遅れてしまい申し訳ない。奪ったアシュクロフトだが、日本の部隊に2機のアシュクロフトを奪われてしまった。最悪の場合を想定し〈G〉シリーズの使用許可を頂きたい。

 

報告は以上である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ある日、DEMが誇る最強の魔術師であるエレン・ミラ・メイザースは機嫌が悪かった。最近、毎朝のように起きると作られていた朝食がなく、仕方なくトーストを焼いて一人で食べることになったことに加え、社長室に行ってもアイクは居らず、30分ほど待ったが一向に来る気配がないため社内を歩き回るハメになったのである。

 

「はあ、まったく、リボンズもアイクもどこに行ったというのですか。後行ってないところと言えば・・・。」

 

社内をくまなく探し回り、残っている場所はただ一つ。

そう、屋上である。何故彼女が最後までそこに行かなかったのかというと、屋上に直行するエレベーターがなく、最低でも2階分の階段を上がらないと行けないからである。

 

「いつか会社のお金を使ってでも屋上行きへのエレベーターを作らせましょう。えぇ、そうしましょう。」

 

彼女はそう固く決心し、階段を上り始めた。

 

 

 

 

 

「――はぁ、はぁ、はぁ。あ、後少しです・・・。」

 

数分かけて2階分の階段を上り終え、屋上への扉を開こうとすると、扉の向こう側から声が聞こえてきた。

2人の男性の声であり、エレンはその声を間違えようもなかった。

 

「やっと見つけましたよアイク!!」

 

さっきの疲労はなんとやら、勢いよく扉を開けたエレンの前に広がっていたのは異様な光景だった。

 

いつもは殺風景なはずの屋上だが、彼女がみた屋上は優雅な雰囲気の漂っており、そこにはこの会社のどこにあったのか、高級そうなテーブルや椅子があり、その1つの椅子にはアイクが座っており、ゆっくりと紅茶を嗜んでいた。さらに異様なことにアイクの隣には執事服をきたリボンズが立っており、その手にはティーポットがあった。

アイクはエレンに気がつくと、紅茶を1度カップの上に置くと小さく笑う。

 

「やぁ、エレン、遅かったじゃないか。少し先に頂かせて貰っているよ。」

 

「いや、遅かったって。すでに仕事の時間は始まってますよ!何を呑気にお茶を飲んでいるのですか・・・。なぁ、それにリボンズ、貴方もですよ!朝ご飯が作られていなかったじゃないですか!」

 

すでに彼女の怒りのボルデージは最高潮に達しており、暴れ回らないのはアイクが近くに居る、ということと、先程までの階段を上りのおかげだった。

エレンはその怒りの矛先をアイクの隣に立っているリボンズにも向ける。が、リボンズは不思議そうな顔をすると、口を開いた。

 

「昨日に今日は早めに出る予定があるから朝ごはんは作れないといったはずですが、もしかして聞いていなかったのですか?」

 

リボンズにそう言われ、昨日のことを振り返る。

 

 

 

 

『明日は僕が早出なので自分で朝ごはんを作って食べて下さいね。』

 

『あ”ー、はい、分かりました・・・。リボンズ、私は先に寝ますね。流石に今日は限界です・・・。』

 

エレンはその日、部下の戦闘指導に夜遅くまで付き合っており、疲労で汗を流した後、直ぐに寝入ってしまったことを思い出した。

 

「そう言えば、そうでしたね・・・。そうだとしてもです!お茶会をするなんて私は知りませんでしたよ!いつ決まったのですか!」

 

「あぁ、それは私が彼、リボンズ君を朝の食堂で見つけた時さ、私が頼んだら二つ返事で了承してくれたよ。」

 

「むぅ・・・、そうですか。」

 

「まぁまぁ、エレン、そんなにむくれないてくれよ。彼の紅茶はとても美味しい、それに、このスコーンの焼き加減も絶妙だ。君も食べるといい。」

 

そう言いながらアイザックはエレンを自分の正面の席に誘う。

エレンは内心、リボンズの紅茶やスコーンは食べたことがあるためその美味しさは知っている。そして、知っているからこそ仕事と比べたとき、彼女はその甘い誘惑に負けてしまったのである。

 

「はぁ、し、仕方ないですね。少しだけですよ!これが終わったら直ぐに仕事に戻りますからね!」

 

エレンは言葉ではそう言いながらも、体は楽しみにしているかのように席に座る。

 

エレンが席に座ると、リボンズが彼女の前にカップを1つおき、紅茶を注ぎ始めた。いつも見ている光景に少し心が落ち着き、注がれた紅茶に1口つける。

 

(この香りはいつもモーニングとして飲んでいる紅茶ではなく、これは休憩をするとき用のですね。)

 

エレンは心のなかで今まで飲んできた、紅輝の紅茶の中から種類を判別する。そしてカップを1度おき、スコーンに手をつける。

スコーンの隣に置かれている生クリームを彼女の好みであるたっぷりと乗せて1口食べる。

そのスコーンは焼きたての状態にほぼ近く、少し冷えて持ちやすい温かさになっているが、食感は焼きたてと変わらなくいつも彼が焼いてくれるスコーンと何ら代わりがなかった。生クリームは彼女が好きなこってりとした生クリームで、エレンは自分のために作ってくれていまように感じ、先程の苛立ちもすっかり収まった。

 

「―――んく、やっぱりリボンズのスコーンは美味しいですね。」

 

「ふふ、そう言って貰えると光栄ですよ。そうそう、君のために面白いものを作ってきたんですよ。」

 

そういうと、リボンズはクーラーボックスの中からビンを取り出して蓋を開ける。

 

その瞬間にいちごの甘いに香りがエレンの鼻孔をくすぐる。

 

「ジャパンにあるいちごでアマオウという名前のいちごで作ったいちごジャムです。これも一緒にどうぞ。もちろん、ウエストコット様もどうぞ。」

 

「ほう、日本のいちごですか。」

 

「リボンズ君、私もいいのかい?」

 

「ええ、もちろんですよ。」

 

 

 

 

 

~そんなこんなで楽しいお茶会が幕を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~紅輝side

 

 

『リボンズ・アルマーク君へ

君の目的物はここにはもうない。探すのは諦めた方が賢明だ、勿論信じるかは君しだいだがね。

そろそろだと思うから君に面白いものを聞かせてあげよう。研究棟68階のエドガー・F・キャロルの執務室の前に夜9時ぐらいかな?そこに行けばば良いものが聞けるかもしれないよ。

 

 

追記、朝のお茶会、とても楽しかったよ。またお願いしたいものだ。

 

遠坂紅輝(・・・・)君』

 

僕の部屋のポストの中に入っていたこの手紙、差出人は明らかだ。くそ!アイザック・ウエストコットめ・・・!最初から知ってたってことか。手紙の冒頭部分の内容は真だ。セシル達の報告でその事は把握している。認識阻害の魔術を持ってしても騙せないということはアイザック・ウエストコットも魔術師だったということか。正体が分かっていてもこちらに何もしてこないということは何かまた企んでいるに違いない。

それこそ、この手紙の内容が罠だと言う可能性も無いとは言いきれない。

 

 

 

・・・だが、今の僕にはこれしか無い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~5月22日21:19分。

 

手紙が書かれていた場所の前にきた僕は自分にみえなくなる認識阻害の魔術をかけ、扉の前に立っていた。

廊下のあかりはすでに消えており、監視カメラもこの近くには不自然になかった。昼に1度見回りをした時には監視カメラが以前取り付けられていた跡があったため、恐らく意図的に取り外されたのだろう。

ここまでくるとあの手紙の信憑性が僕のなかで少し上がった。

さらに、扉の隙間からは中の光が漏れており、エドガー・F・キャロルかその関係者がまだ中にいることが分かる。

 

そんなことを思考しながら10分ほどたった頃。

 

扉の外から男の大きな声が聞こえた。

 

 

『おい、ミネルヴァか!?』

 

『なんだじゃない!経過の報告をしろと命じたはずだ!―――』

 

『他の2機はどうした!元SSSの3人は始末したのだろうな!ミネルヴァ!返事をしろ!!』

 

『――――アシュクロフトの秘密を知るものは全て消さなければならない!!奪われた残り2機のアシュクロフトの回収も急がなければならん!』

 

『これ以上の計画の遅延は――――。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――はは、ははははっ!

見つけた!やっと見つけた!!!こいつか!こいつがアルテミシアをやったやつか!!殺そう、よし殺そう!

どうやって殺そうか、普通に殺すのも面白くない。

そうだ、じっくり、じっくりと弱らせてから殺そう!

 

そうと決まれば早速準備をしよう。

 

 

簡易的なものは今のうちにやっておくか。

 

そう決めると、僕はあえて扉の前で足音を立てた。

 

『―っ!?誰だ!』

 

その言葉と共に扉が大きく開かれエドガー・F・キャロルが部屋の中からでてくる。

 

その瞬間に扉の上に潜ませて置いた使い魔を2体、魔術行使用と、耳と目の確保用を放つ、2体を直ぐに部屋の中に入らせ姿を隠させた後。

 

僕は直ぐにその場を離れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――ふふ、明日が楽しみだよ。

 




今回も見ていただきありがとうございます!!
感想や評価をして頂けるとモチベーションアップに繋がるので些細なことでもいいのて書いて貰えると嬉しいです!

また、お気に入り登録をしていただいた。
戦駆王さん、ARIA4646さん、ツチノコ脇さん。

ありがとうございます!また見てくださると嬉しいです!





最後に、自分が不甲斐なくてあまり話題を出したくないのですが、私は皆さんとの前作の約束事を守れていません。ぁ、r18・・・シーンを書くという約束なのですが・・・。今作でもそういうシーンをカットするので、お気に入りが100人を超えたらきちんと今作分のr18シーンを書きたいと思っています。

その事で皆さんの意見を聞きたいので、この投稿が終わった後、活動報告にてアンケートを行いますので是非答えてくれると嬉しいです。

私は皆さんが紳士(解釈による)であることを願っています。






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アルテミシア救出作戦(後編)

19話目です。

少し投稿が遅くなってしまい申し訳ありません!

その分そこそこ長く書いたので楽しんで頂けると幸いです!
原作介入まであと残り数話、予定としては25話までには入りたいなと思っています。




 

セシル達からの報告で自分は有益な情報を得った。

 

自分がDEMに潜入してから1度も見ていなかったミネルヴァが日本に向かっていたなんて・・・。しかもそのミネルヴァにアシュクロフトの1つを奪われてしまったという。

 

「なるほど、ミネルヴァがそちらに?」

 

『ええ、ごめんなさい、紅輝。アシュクロフトの1つを奪われてしまって・・・。』

 

特秘回線から聞こえるセシルの声色からも謝罪の意志を感じられる。

だが、これは自分のミスでもある。送られてきたアシュクロフトのデータを見て、慢心し、前日のガンダムタイプの使用を認めなかったからである。

やはり、万が一の事を考えてガンダムタイプの使用を認めるべきだった。

 

「いや、ミネルヴァの事、《G》の使用許可を出さなかった僕の責任でもある。君一人の責任ではない。だから落ち込まないでくれ。」

 

『・・・ありがとう。それで、あれ(・・)はもう使っていいのかしら?』

 

「ああ、これ以上アシュクロフトを失う訳にはいかない。緊急時の《G》タイプの使用を許可する。そうそう、こちらも黒幕を捉えた、明日中には始末できるよ。」

 

『っ!本当!?』

 

「もちろん、すでに準備は済んでいる。ふふ、明日がやつの命日だ。僕からは以上だ。君やアシュリー達は他に何かあるかい?」

 

『いえ、無いわね。そちらの健闘を祈るわ。』

 

「それはこっちの台詞でもあるよ。それじゃあ。」

 

『ええ、また明日。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お疲れ様、今日も助かったな!」

 

「いえいえ、いつもやってることですからね。こんなことでいいなら任せてくださいよ。」

 

整備員のおやっさんからの感謝の言葉をもらい、それに答えるように自分も笑顔を見せる。

この人は本当にいい人だ。あの自分のイメージ最悪のDEMの中でもかなりいい人の部類に入る。

 

「そう言えば今日は故郷の親御さんからの電話があるって言ってたよな。早くいってやれよ!ガハハハ!!」

 

「・・・まったく、茶化さないてくださいよ。それでは僕はそろそろ行きますね。」

 

「ああ!また手伝って欲しいことがあったら頼ませてもらうよ!」

 

 

 

 

 

 

さて、そろそろ準備をしますかね。

 

 

 

会社の通常業務が一通り終わり、特に用のある社員以外はすでに退社した時間。

エドガーは謎の体調不良(・・・・)に悩ませれながらも必死に証拠の隠滅をしていた。

ミネルヴァが元SSSの小娘達に敗北したと、連絡があったからである。

 

今日の朝から目眩や倦怠感、体の震えが止まらなく、エドガーは風邪かと思いながらも必死に体に鞭を打ちながら、急いで部下に証拠の隠滅に取り掛からせていた時だった。

 

―コンコン。

 

と彼の部屋の扉のをノックする音が聞こえた。

 

ビクリと体を震わせ、エドガーはもうアイザック(ヤツ)にバレたのかと思い、頭のなかで必死に謝罪の言葉や命乞いの言葉を作っていた。

 

しかし、少し待ったが、外にいる人物は入ってくる気配が無い。

不思議に思った彼は一か八か、外にいる人物に声をかけた。

 

「だ、誰だ、今私は忙しい。用なら明日の朝にきこう。」

 

(誰だ?こんな時間に・・・!しかしおかしいな、外には警備兵を雇っていたはずだが。やはりすでにバレていたのか!?)

 

彼がそう言ったにも関わらずその扉が開かれた。そして、扉が開かれ外にいた人物が見えるようになる。

その人物はあのアイザック・ウエストコットではなく、1人の青年だった。

そして、その青年は軽くお辞儀をすると、エドガーの目をじっと見つめながら、不気味ににこりと笑う。

 

「こんばんは、エドガー・F・キャロル様。何やらとてもお忙しそうな中、突然すみません。貴方に少し用がありまして、誠に勝手ながらお部屋に入らせて貰いました。」

 

「お前は誰だ。わ、私に一体何の用だ・・・。」

 

「あぁ、申し遅れました。僕の名前はリボンズ・アルマーク。この会社に今年の二月から短い間、派遣社員として働かせて頂いているものです。ところで、顔色が優れていないようですが、どうかされましたか?」

 

「お前には関係のない事だ!用なら明日聞いてやる、さっさと出て行かんか!私は今忙しいと言っているだろう・・・!」

 

ついには、怒鳴りあげるエドガーにリボンズと名乗った青年はやれやれと言うように、ため息をつく。

そして、リボンズは急に目付きを変え、先程とは想像もつかないほどの怒りに満ちた目でエドガーを睨みつけていた。

 

「貴方に明日はありませんよ。なぜなら貴方はここで死ぬからです。そして、冥土の土産として、種明かしと、自分を殺す相手の名くらいは知っておいた方がいいでしょう。自分(・・)の名前は遠坂紅輝、元SSSインパルス隊の隊長、そして、アルテミシア、アシュリー、セシル、レオノーラの家族だ。」

 

紅輝のその言葉にエドガーは、ミネルヴァの報告の中に最後の一人の男の魔術師がいなかったことを思い出した。そして、さっきの言葉だけで紅輝の目的を察し、生物の本能が無意識にもエドガーを後ずさりさせていた。

 

そして、咄嗟に地面に膝をつき、頭を下げた。

 

「わ、悪かった!許してくれ!今すぐにでもあの娘を元に戻すし、欲しいものならなんでも差し出そう!だ、だから命だけは・・・!!!」

 

大の大人が1人の青年に必死に頭を下げながら命乞いをする姿は醜いの一言に尽きるが、エドガーにはこの場から生き残るために手段を選んでは居られないのである。

 

「いえいえ、そんなことをする必要はありませんよ。それより、今朝からの体調不良の秘密知りたいでしょう?」

 

そう言い、紅輝は足で地面を軽く蹴ると、そこにはこの部屋に仕掛けられていた、大量の魔法陣がビッシリと浮かび上がった。そう、これら全てが紅輝が出来うる限りの呪いの魔法陣である。

 

「な、なんだこれは!?魔法陣・・・?ま、まさかお前は・・・!」

 

「そう、僕は純正魔術師、元々魔術師だったものですよ。どうです?この魔法陣の数々、気に入って頂けましたかな?―――まぁ、おふざけはここまでにして。」

 

そう言うと、紅輝は基本顕現装置を起動し、ワイヤリングスーツを身に纏う。その手にはSSS御用達の〈ノーペイン〉が握られていた。

 

そして、頭を必死に地面に擦りつけ土下座をするエドガーをこれ以上無い程の憎悪の目で睨みつけながら、ゆっくり、ゆっくりとエドガーに近づく。

 

「ひっ!?い、嫌だ!まだ私は死にたくない!お願いだ!どうか、どうか、許してくれ!私の全てを貴方に差し出しますのでどうか、命だけ――――。」

 

 

 

 

 

紅輝はエドガーの命乞いを無視し、無慈悲に首を斬り飛ばした。

 

そして、エドガーの体はすぐさま力なく倒れ、首から大量の血を吐き出しながら息絶えた。

 

 

(・・・これが人を殺す感覚か。少しは罪悪感を感じるかと思ったがまったく感じない。もしかすると、精霊も人型だからそういうことに慣れてしまったのかもしれないな―――。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紅輝はその後、レティシアに教わった炎のルーンでエドガーの死体を一気に燃やし、人を焼いたときにでる異臭を逃がすため部屋の換気をしていたときだった。

 

 

 

 

強烈な殺気が紅輝を襲った。

 

「っ!!?」

 

咄嗟に〈ノーペイン〉を殺気が来た方向に振るうと、受け止めた剣ごと、相手を吹き飛ばさんとする重さの一撃が紅輝を襲った。

 

「ぐっ!――誰だ。」

 

すぐさま部屋の中央に移動し、〈ノーペイン〉を構え、襲ってきた存在を視認すると。

 

そこに居たのはCR-ユニット〈ペンドラゴン〉を纏った、エレン・ミラ・メイザースがそこにはいた。

 

「今の一撃を受け止めるとは見込んだ通りの実力ですね、リボンズ。」

 

そう言いながらエレンは手に持っている剣を構え直す。

急な展開に理解が追いついていない紅輝は頭をフル回転させて打開策を考える。

 

(エドガーの敵討ちか?いや、恐らくそれはないだろう。あの手紙を僕に送ったのはアイザック・ウェストコットだ。その線は低いだろう。どうする?ワイヤリングスーツだけでは絶対に勝てる相手じゃない。いざとなったら・・・)

 

「一体何が目的です?メイザースさんに襲われる心当たりはないのですが。」

 

「それは生き残ることができたら教えます・・・よ!!」

 

 

その言葉と共に随意領域を使った加速で一気に距離を詰めてくる。

咄嗟に〈ノーペイン〉で防ぐが出力の差が顕著に現れ、このままては簡単に押し切られてしまうことを直感で理解する。

 

「ぐっ、流石はDEMの誇る執行部長殿ですね。今にも殺気で死んでしまいそうですよ。」

 

「戦いの最中におしゃべりとは余裕ですねリボンズ!!」

 

そのまま、エレンは持っている〈カレドブルッフ〉で一気に力を込め薙ぎ払い。紅輝はエレンのゴリ押しに耐えきれず、〈ノーペイン〉ごと押し切られ仰け反ってしまう。

 

流石にこのままではまずいと判断し、紅輝は魔術の行使に踏み切る。〈ノーペイン〉を投げ捨て、隠しておいたルビーとエメラルドを取り出しエレンに向かって投擲する。

 

Anfang(セット)!発火して吹き飛べ!」

 

「っ!宝石魔術!?」

 

投げた宝石から激しい熱と暴風が吹き荒れエレンを一旦下がらせることに成功する。

 

「まだまだ!」

 

後退したエレンに、手を銃の形にして魔術刻印を起動させ、高速のガンドを放つ。

 

「ちっ!」

 

しかし、エレンも随意領域を展開しガンドの猛攻を難なく防ぐ。さらに、随意領域を展開したまま、紅輝に向かって切りかかってくる。

 

「嘘だろ!?こうなったら!」

 

紅輝は最終手段として、この部屋に元々の仕掛けられていた魔法陣の対象を全てエレンに切り替える。

 

すると、部屋の中にあった魔法陣が一気に発行しだし、効力を発揮させる。

エレンに様々な体調不良を引き起こし、その動きを鈍らせる。

 

 

 

 

 

――と思っていた。

 

「っ、どんな小細工かと思えばたったそれだけですか。」

 

「なっ、ぐぅっ!?」

 

結果としてエレンにその効果は無く、効果が効くことを前提として行動していた。紅輝の腹部ににエレンの鋭い一撃が入る。すぐさま部屋の端まで後退し、体制を整える。

 

幸い致命傷に至っておらず、血は流れているが随意領域で止血ができる範囲内でギリギリ済んだ。

 

「リボンズ、貴方の実力は本当にその程度ですか?確かに宝石魔術には驚かされましたが、私も魔術の知識は多少なりともあります。まぁ、それを知らないあなたにこんなことを言うのは酷だとは思いますが、この程度なら殺しても問題なさそうですね。」

 

「いやはや、これは手厳しい。予想はしていましたがまさか本当に貴女が魔術のことを知っていたとは。ですが、それならこちらも神秘の漏洩の心配が多少は下がりましたね。ここからは僕も切り札を切るとしましょうかね。」

 

投影、開始(トレース・オン)

 

紅輝がその詠唱をすると、何も持っていなかった手なは一対の剣が握られる。

そう、エミヤの剣として、型月作品で活躍した干将莫耶である。

エレンは宝具を投影する紅輝に少し驚くも投影魔術がどんなものかを知っているためさほど脅威に感じられなかった。

 

「なるほど、投影魔術ですか。ですが、そんな贋作で何ができますか。時間稼ぎのつもりでしょうが、そんな簡単にはやらせはしませんよ!」

 

「時間稼ぎ?いや、これが僕の切り札ですよ。」

 

 

―――鶴翼、欠落ヲ不ラズ《しんぎ むけつにしてばんじゃく》。

 

 

先程投影した干将莫耶を魔力を込め、全力で投擲する。

投げられた一対の剣はエレンに向かって真っ直ぐ飛んでいく。

 

「馬鹿にしているのですか、この程度!」

 

一投目の一対の剣は随意領域に弾かれあらぬ方向へ。

 

 

―――心技、泰山ニ至リ《ちから、やまをぬき》。

 

―――心技 黄河ヲ渡ル《つるぎ、みずをわかつ》。

 

そして、そのまま二対目を投影し、一気に接近する。

 

(ここに来て、接近!?いや、それでも問題ない!)

 

エレンは迎撃の体制に入り、正面から向かってくる紅輝に対して、斬りかかった。

 

 

――が、その瞬間、二対目に引き寄せられるように後ろから飛来した一対目の剣がエレンの背部を切り裂いた。

 

「くっ!?何が!?」

 

その一瞬に紅輝は正面のエレンが展開したままの随意領域を何度も切りつけ、二対目を随意領域に突き刺す。

 

―――唯名 別天ニ納メ《せいめい りきゅうにとどき

》。

 

―――両雄、共ニ命ヲ別ツ《われら ともにてんをいだかず》・・・!

 

バックステップを踏み、三対目を投影し硬直しているエレンに最後の一撃を叩きこむ。

 

「鶴翼三連!!」

 

そのまま、エレンの随意領域を切り裂き、エレン本体をも切り裂いた。

 

 

「ぐっ!?だが、この距離を受け止めれられますか!!」

 

しかし、エレンも執行部長という意地か、はたまた強敵と出会えた高揚感からか、倒れることなく1度は手放しかけた《カレドブルッフ》をもう一度強く握りしめ、紅輝に斬りかかった。

 

「なっ!?馬鹿な!」

 

流石に紅輝も予想であり、緊急で防性随意領域を展開した。

 

――その瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

「そこまでだ、お疲れ様二人とも。」

 

その言葉に反応するようにエレンの攻撃はピタリと止み。紅輝も反射的にそちらの声の方向を向いていた。

 

そこには、アイザック・ウエストコットの姿があり、彼はまるで演劇を見た観客のように拍手をしながら部屋の中に入った。

 

「いやー、済まなかったね二人とも、遠坂紅輝・・・。おっと、ここではリボンズ・アルマークくんと呼んだ方が良いかな?ともかく、君の実力を見たくてね。エレンをけしかけてみたら想像以上だよ!まさか、初見とはいえエレンを負傷させるとはねぇ。」

 

「・・・。」

 

「おや。そんなに怖い顔をしないでおくれよ。私は君を大いに賞賛しているんだ!流石、聖杯戦争を成立させた御三家、といったところか。部屋の中に仕掛けられている魔法陣の数や質も申し分ないじゃないか、私としても驚きだよ!」

 

「・・・茶番は結構です、僕をどうするつもりですか?部下を殺した僕をこのまま処分するつもりですか?まぁ、それならこちらも刺し違えても貴方を殺しますがね。」

 

「まさか!もう、エドガーに興味なんて1ミリもないよ、それよりもさっきも言った通り、私は君を高く評価しているんだ。君さえ良ければこのままDEMに働いて貰いたいぐらいだよ!」

 

・・・本当にこいつは何を考えているか分からない、いや、実力主義ということか?しかし、こいつが聖杯戦争のことも知っていたとは。

御三家のことも知っていた、最悪、お母様達に被害が被ることもあるかもしれない、やはり警戒は必須レベルか。

 

「・・・残念ですが、僕は元とはいえSSSの人間です。そして、トレーズ・エーデルフェルトの戦士ですので。」

 

「んー、それは残念だ。仕方ない、私も強要は出来ないからね。そうだ、褒美といってはなんだがあることを思いついたよ。楽しみにしているといい。さて、そろそろ私も次の準備があるからね。帰らせてもらうとするよ。エレン、行くよ。」

 

 

「えっ、あ、はい。分かりました。

――リボンズ、いえ、遠坂紅輝でしたか、貴方は誇っていいですよ。なんせ私に傷を付けた2人目の人間なのですから。それでは・・・あ、それと明日の朝ごはんはいつものやつでお願いしますね。」

 

「え、あ、はい。」

 

 

 

そう言うと、エレン・ミラ・メイザースとアイザック・ウエストコットは去っていった。

いや、まぁ、確かに期限まで後数週間あるけど!

メイザースさん、さっきまで貴方と殺しあってたはずなんだけど。

 

いや、あれが強者の余裕というものか。

 

 

・・・そうだ、そういうことにしておこう。

 

 

 

 

 

 

 

 




今回も見て頂きありがとうございます!
感想を書いてくれたり、評価をしていただけるとモチベーションアップに繋がるので良ければお願いします!

また、お気に入りに登録して下さった
なかに17さん、Vilukissさん、タイプ・ネプチューンさん、黄昏のMKさん、neevsさん。

ありがとうございました!

これからも見ていただけると嬉しいです!

台風にどうか皆さんお気をつけて。
災害対策はしっかりとして、いざという時に備えましょう!


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解決そして最後の波乱へ

20話目です。

皆さん、いかがお過ごしでしょうか、月も10月になり、少し肌寒くなってきましたね。季節の変わり目で風邪を引かないようにお気をつけください。
それはそうと、この小説に艦これの提督さんはどのくらいいるのでしょうか?

今回の私はE4で心が折れてしまいました・・・。
情けない丙提督ですが、最低限ゴトランドを無事に掘ることが出来ました。友達がゴトランドが当たらなかったら那珂ちゃんのファンやめます宣言してたけどどうなったのでしょうか・・・。

E5をクリアできた提督さん達に敬意を(  ̄ー ̄ )ゞビシッ





 

あれから1週間が経った。

 

日本のASTであるオカミネミキエ、トビイチオリガミの助力が有ったらしく、無事《アシュクロフト》シリーズの中にあったアルテミシアのデータを回収することに成功したらしい。

 

送られた脳内データをアルテミシアの中に戻すことも難なく成功し、セシル達には悪いが一足先に目を覚ましたアルテミシアと対面した。

 

 

 

 

 

 

 

~SSS基地内病院。

 

 

「ん、・・・んう・・・。あれ?ここは?」

 

先程まで、ピクリとも動かなかったアルテミシアが小さく声を上げたかと思うと、4ヶ月ぶりにその目を開けた。

 

「紅輝さん!無事成功しました!アルテミシアさんが目を覚ましましたよ!」

 

「ああ!アルテミシア、自分だ、遠坂紅輝だ。分かるか?」

 

無事に目を覚ましたアルテミシアに、自分と医師さんは、跳ね上がる様な気持ちで喜んだ。アルテミシアは最初はなんの事だか分からない、と言うような顔をしていたが暫くすると何かを感じ取ったのか、それとも、あの場・・・の事を知っているのか。以前のように優しく微笑む。

 

「うん・・・、ただいま。遠坂くん、先生!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アルテミシア、体の方は大丈夫か?不自然に動かないような箇所はあるか?」

 

自分がそう聞くとアルテミシアは手をグーパーさせてみたり、体を捻ったりしてみる、一応自分の目線だと大丈夫に見えるが・・・。

 

「うん、今のところはなんとも無いかな?体が訛っている感じがするけど少し体を動かせば直ぐに元に戻ると思うよ。」

 

そう言ってベッドからアルテミシアが出ようとした瞬間、慌てて先生がアルテミシアを制止した。

 

「アルテミシアさん!まだ回復したばかりなんですから直ぐに動いたらだめですよ!足腰だって暫く動かしてないんですから!いきなり立ったら脚が体を支えきれずに倒れてしまいます。最低でも一週間は車イスとリハビリですよ!」

 

「えー。あ、でもたまにはセシルの気持ちを味わうのも悪くないかもしれないね。遠坂くん、私をセシルを扱うときみたいに扱ってね♪」

 

軽くウインクをしながらアルテミシアはそういった。冗談のようにも聞こえるし、本気て言っているようにも聞こえる。その姿は以前のアルテミシアとなんら変わりなく、改めて彼女を救うことが出来たのだと実感できた。

 

「・・・はぁ、全く、君は変わらないな。まあ、それが君の魅力でもあるけど。了解した、僕らのプリンセス殿。」

 

「うんうん、苦しゅうない。」

 

「そうそう、セシル達が帰ってきたら盛大に出迎えてやってくれ。実際に体を張って頑張ってくれたのは彼女達だからね。」

 

「もちろんだよ。私も美紀恵ちゃんの近くで3人の頑張りを見てたからね。私に出来ることならなんでもしてあげないと割に合わないよ。」

 

「よし、それじゃあ。それまでにリハビリをして少しでも早く回復しないとな。先生、アルテミシアをお願いします。」

 

「ええ、任せてください。アルテミシアさんは必ず1週間には自力て歩けるようには・・・いや、走れるようにまで治します。」

 

「私の意志とは関係無しに話が進んでる!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、セシル達がイギリスに帰ってきた時にはアルテミシアはほとんど体調が回復しており、車いすなしでも軽い運動なら出来るほどに回復していた。

 

自分はつい先日の時点でDEMとの派遣期限が切れ、名実ともにセシル達と無職になった。

まあ、それに関しては自分としてはなんら問題はなかった。元々、7月中には日本に帰る予定であったし、いざという時には、トレーズさんが仕事先を紹介してくれるという。

 

本当にトレーズさんには頭が上がらないな。ここに来て何から何までお世話になった。

聞いた話によると、トレーズさんは、今回の件でやつエドガーから金を握らせてもらっていた奴らを裏で一気に捕まえることに成功したらしい。今のSSSに残っているのは、トレーズさんの直轄の部下か、トレーズさんと親しい者しか上の人間は残っていないらしい。

 

これで実質的にSSSの実権はトレーズさんが握ることになった。

この件についてはなんら心配は要らないだろう、何かあったとしてもトレーズさんのことなら、直ぐに解決出来るだろうしな。

 

 

 

 

 

しかし、ここに来て幸運と言うべきか不幸と言うべきか、あのアイザック・ウエストコットから手紙が贈られてきた。

 

簡潔にいうと、形式上のセシル達の処分、これは本当に形式上のもので大したことがなかった。だが、自分のへの処罰では日本の天宮市のAST部隊への転属と言った内容が記されていた。内容への不満は全くない、むしろ今回の事件が無かったとしても、トレーズさんに頼んでそうしてもらうつもりだったからである。

 

封筒の中にあった2枚目の手紙には、アイザック・ウエストコットが直筆したと思われる手紙があり、処罰の経緯と今後やその他諸々に関して期待しているといった内容だった。

 

 

 

 

―――期待か、そう言えば最近日本での精霊出現件数が増えているという情報も聞いた事がある。・・・《アシュクロフト》シリーズも搬送目的は戦力の強化が主になっていたはずだ。

もしや、アイザック・ウエストコットは何か掴んでいる?だとすれば今までの行動に多少の理由付けが可能になるかもしれない。

 

これは、本当に仮定に過ぎないが日本での出現場所が今回の件である天宮市に集中していると仮定すれば、今回の処罰という形をとって日本に送る内容にも納得がいく。

セシル達の処罰を形式上で軽くしたのもこのためか?いざという時にはイギリスのSSSから招集を掛けて即席の戦力にはなる。

 

 

―――まあ、いいだろう。何を企んでいるかは分からんが乗ってやろうじゃないか。それに天宮には士織がいる。本当に精霊が天宮に多く出現しているのだとしたらいつ士織が危険に晒されるか分からないからな。

 

 

だから、この仮定が仮定のままならいいのだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――

 

6月25日

 

 

あれからさらに日が経った。

アルテミシアのリハビリもトラブルが起こることなく、完全回復し、SSSとしての訓練もこなせるようになったので、もう完璧といってもいい程だ、

 

自分はというと、

 

 

―――日本に帰るための準備をしていた。

 

 

何か月前にセシルだけに話した内容とは少し変え、与えられた処罰にも沿って日本に帰るという話をした。

 

セシルは以前話をしたことかあるため反応は大きくなかったが、アシュリーやレオノーラは半分涙目にながらも引き留めようとしたが、セシルやアルテミシアが説得してくれた。

自分もその代わりではないが年に1回は必ずイギリスに戻ってくることを約束することで何とか納得してもらえた。

 

アルテミシアに地下の工房は埋めてくれて構わないと言ったが、彼女は優しく微笑んで首を横に振った。

 

「ここは遠坂くんのもう1つの部屋だからそんなことはしないよ。それに年に1度は帰ってくるんでしょ。それならその必要はないわ。」

 

そう言われて、自分もその言葉に甘えさせて貰った。本当に必要な物は既に特別な手順を踏んで実家の工房に送ってもらっているため残るのは最低限の研究機材ということになる。

最悪の場合、いざという時に駆け込める様な場所になるように、アルテミシア達に関しては入ってもトラップが作動しないようにしておいた。並の攻撃ではビクともしないように結界は張っているから何とかなるだろう。

まぁ、困った時はトレーズさんに頼ればSSS関連や魔術関係でもあらかたどうにかなるとは思うが、念には念を重ねてレティシアにも頼んだ方がいいかもしれないな。

 

 

 

 

 

 

一応、既に飛行機のチケットは取っている。日本に帰るのは7月に入ってからでそれまでは最後のイギリスをゆっくりと過ごすことにした。お世話になった人達にお礼参りをしながら最終日を迎える予定だ。

 

 

 

しかし、その日の夜。就寝しようと自分の部屋の電気を消そうとしたときだった。

 

 

――コンコン。

 

「紅輝、私よ。少しいいかしら?」

 

セシルの声が扉の外から聞こえ、一体どうしたのだろうと思いながら返事をする。

 

「セシルか、どうした?鍵は開いているから入っても構わないよ。」

 

自分がそう言うと、扉が開かれ、車いすに乗り、寝間着に着替えているセシルが部屋に入ってきた。

 

 

「紅輝、こんな夜遅くにごめんなさい。」

 

「いや、大丈夫さ。それよりもどうしたんだい?」

 

 

ベッドに腰掛けて何気なく聞くと、セシルはこっちの顔をじっと見ると、こういった。

 

 

「紅輝は、私のことを異性(・・)としてどう思っているかしら。」

 

 

 

 

突然のセシルの言葉に自分は言葉を一瞬失ってしまった。

 

 

 

 

 




今回も見ていただきありがとうございます!
感想や評価をつけて下さると、作者のモチベーションアップに繋がるので、ぜひよろしくお願いします!

また、お気に入りに追加してくださった。
滝の八百屋気さん、黑杵 四鐘さん、野良猫集落さん、Panzerkampwagenさんありがとうございます!

次回も見ていただけると嬉しいです!



今期アニメの「ゴブリンスレイヤー」は今期の愉悦枠だと思います。




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最後のわがまま

21話目です。

投稿ペース空いてしまい申し訳ありません。
最初はイチャラブを書きたかったんですがね。私にはまだ難しく悪戦苦闘しているうちに時間が・・・。
その結果あっち系に頼らなけれはならなかった私をどうかお許しを・・・。

最近、本格的に寒くなってきましたね。体調管理にお気をつけてお過ごしください!

追記

シトナイちゃんは当たりませんでした。



 

「紅輝は、私のことを異性としてどう思っているかしら。」

 

セシルから放たれたその言葉は自分の思考を止めるのことは容易かった。

しかも、セシルの表情が冗談を言っているような顔ならそのようなことは無かっただろうが、セシルの表情は真剣そのものだった。

 

紅輝はすぐさま意識を戻し、セシルの言葉に返した。

 

「・・・それは、自分に日本に恋人が居ると知っての質問と捉えていいのか?」

 

「ええ、もちろん。知っていてのことよ。」

 

もう一度、セシルの目を見る。彼女の目は開いていない目だが、そこには覚悟があるように見えた。

ならば、自分も中途半端な答えは許されない、彼女の問いに真摯に答えるべきだ。

 

「そうか。セシル、自分は君のことはとても魅力的な女の子だとは思っている。」

 

「・・・。」

 

「だけど、自分の中では君よりもっと魅力的な女の子がいる。だから、自分の中で君は家族の・・・そうだな、歳の近い妹の様なものだ。」

 

 

しばらくの沈黙の後、セシルはため息をつく。さっきの覚悟に満ちた表情ではなく、いつものような穏やかな目をしていた。

 

「・・・はぁ、分かったわ。紅輝のその娘への気持ちは本物なのね。でも、良ければだけど私の最後のわがままを聞いてくれるかしら?」

 

「わがまま?」

 

「ええ、明日の昼から、私と貴方二人っきりでデートをしてくれないかしら?そ、それと、その間だけでいいから私のことを・・・その、こ、恋人として扱って欲しいの・・・。」

 

「セシルを・・・恋人として?」

 

「だ、ダメかしら?」

 

セシルはそう言って、先程の表情とはまた変わって、不安そうにこちらを上目遣いで見ていた。

 

 

最後のわがままか、セシルには今まで色々助けられたところがあるし、最後くらいはセシルのわがままをきかないと割に合わないよな。

 

「・・・分かった。そのわがままを受け入れよう。」

 

そう言うと、セシルの顔がパァと綻んだ。その表情は今まで見てきたセシルの表情の中でもとても可愛らしく、一瞬だが、ドキッとさせられてしまった。

 

「ありがとう、紅輝。それじゃあ私、明日を楽しみにしているわ。あ、お昼は私が用意するから、昼食のことは心配しなくていいいわ。それじゃあおやすみなさい♪」

 

「あ、あぁ、おやすみなさい。」

 

セシルはそのまま、自分の部屋から去っていった。

 

「恋人・・・か、士織は今頃なにをしているのかな。」

 

結局5年間ずっとイギリスで過ごすことになった。そうはいってもこのイギリスでの5年間を後悔している訳ではない。大切な友達や、守るべき仲間だってできた。魔術を切磋琢磨していくライバル達にも出会えた。充実した5年間だったと胸を張って言えるだろう。

 

だけど、士織はどう思っているだろうか、5年間も顔を合わせなかったんだ、もしかしたら愛想をつかされている可能性だって・・・。

 

 

 

いや、変な想像は止めよう。明日に備えてデートプランを考えないと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だけど、また(・・)あの経験をするとは思っても見なかった

――――――――――――――――――――――

 

6月26日

 

翌日、自分は昼までにデートプランの確認をしながら、デートの準備をしていた。

 

よくよく考えれば今回のデートがこの人生で初のデートということになる。前世ではどうだったかはもう覚えていないが、ここは年長者として落ち着きのある行動をしていきたいな。

いやまあ、本当前世の記憶がほとんどないから、前世での女性とお付き合い経験はあるのかと聞かれても、国会にいる胡散臭い政治家のように”記憶にございません”としか言いようがないだがね・・・。

 

セシルからは、昼からのデートまでは私を見ないで欲しいと言われているため、とりあえず集合場所だけ伝えてセシルの希望に従った。

 

 

 

 

 

そうして、約束の時間の少し早めに集合場所である。

ロンドンの市内にあるハイド・パークのケンジントン宮殿前に着ていた。周りを見渡すと、休日だからか特にカップルや親子連れが多く、人々が思い思いにこの公園で過ごしていた。

 

時計を見ると長針は今にも12を示しそうになっていた。

そろそろ待ち合わせの時間か・・・。

 

「待たせたわね。」

 

セシルの声が聞こえ、その方向を振り向いた。

そして、自分はセシルの姿を見て、思わず見とれてしまってた。

 

ベージュのワンピースに、スカート部分から見えるスラっとした足が年頃の女の子特有の色気を感じさせた。首には以前自分がプレゼントしたネックレスがかけられており、ワンポイントアクセサリーとして派手過ぎず目立ち過ぎずでセシルの魅力を引き出していた。

さらに、普段の彼女ならしないようなメイクが施されており、彼女のこの日への気合いの入りようがよく分かった。

 

「・・・っ!驚いたよ。とても綺麗だ、セシル。」

 

「ふふ、そう言って貰えて嬉しいわ。頑張ってオシャレしたかいがあったわね。」

 

そう言って彼女はニッコリと微笑むと、自分の手を優しく握った。

 

「さぁ、デートを始めましょう。時間は有限よ♪」

 

「あぁ、それじゃあさっそくだけどあちらでお昼にしようか。」

 

自分は池の近くにある1本の木の下を指さした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

先程指さした木陰に着いた自分は持ってきたいたカバンからレジャーシートを取り出し、地面に広げた。

セシルも持ってきていたバスケットをレジャーシートのうえに置いた。自分もシートに腰を降ろし、セシルに隣に来るように促すと彼女も自分の隣に座った。

 

「さぁ、ランチにしようか。セシルは何を持ってきてくれたんだ?」

 

「ありきたりなものかもしれないけどサンドイッチとお惣菜を作ってきたの、今開けるわね。」

 

 

そう言い、セシルはバスケットを開く。

バスケットの中には、見るだけで食欲が湧いてきそうなサンドイッチや、色とりどりの惣菜が所狭しと言わんばかりに入っていた。

 

「おお、すごく美味しそうじゃないか!」

 

「ふふ、もちろんよ、腕によりをかけて作ったんだから。あ、そうだった。はい、ウエットティッシュ。」

 

「すまない、助かる」

 

自分はウエットティッシュで手を拭き、さっそくセシルの作ったサンドイッチに手をかけた。

 

最初は定番のハムレタス、自分はセシルが作るサンドイッチの中でもこれが1番好きだ。味付けを教えたということも関係はしているが、自分の好みの味を見事に再現している彼女のハムレタスはマイフェイバリットだ。セシルの方をみると彼女も自分と同じものを手に取っていた。

 

「それじゃあ、いただきます。」

 

「いただきます。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

昼食を食べ終わった後、自分とセシルはハイド・パークを歩き回りながら二人っきりで過ごした。

 

他愛の無い話をしながら池の周りをまわったり、歩いている途中で見つけた野生のリス達とも触れ合ったり・・・。

正直、デートと言うよりはピクニックに近い感じになってしまったが、セシルがとても楽しそうで良かった。

 

そして、楽しい時間はあっという間に過ぎてしまい。時計の針は既に夕刻を示しており、周りにはもうほとんど人影はなくなってしまっていた。

自分達はダイアナ妃記念噴水で靴を脱いで、水に足をつけながらくつろいでいた。

 

 

 

 

 

 

「セシル、今日のデートは楽しんで貰えたかい?」

 

「ええ、とても楽しかったわ。そして、今までで1番幸せな日だった。」

 

「それならよかった。そう言って貰えると恋人冥利に尽きるってものだよ。」

 

自分がそう言うとセシルの表情に少し曇が現れる。セシルは自分の右手を握って俯く。

 

「ねえ、紅輝。今日の私はどうだったかしら、貴方の恋人として相応しい人間に成れたかしら。」

 

「・・・自分は楽しかったよ。自分だって今日みたいに誰かと過ごすなんてことがないから、恋人らしくってのは分からないけど、自分が楽しくて好きな人も楽しい。

 

これはデートにおいて重要なことなんじゃないかな?だからその点に関してはセシルはどこも否の打ちどころが無いよ。それに、自分は誰かに相応しいって言われるような人間じゃないさ、君と同じような人物でしかないよ。」

 

「いいえ、私にとって貴方は特別な存在よ紅輝。私が初めて恋をした、心を奪われた唯一の人なんだから。」

 

そう言ってセシルは自分に肩を寄せると、そのまま抱きついて、自分の胸に顔を埋めた。

その力は弱々しく、振りほどこうと思えば簡単に振りほどけるものだった。さらに、彼女の体が密着していることによって、小さくではあるが彼女の体が震えていることに気づいた。

 

「セシル・・・。」

 

「ねえ、私じゃ駄目なの?どうしても日本にいる娘じゃないと駄目なの?私は貴方のことを愛しているのに・・・。貴方のためなら私、何だってできるのに・・・!」

 

「・・・。」

 

「私を・・・選んでよっ。日本にいる娘じゃなくて。私を・・・!う、うぅ・・・。」

 

セシルはそういったきりで泣き出してしまった。

だけど、彼女には申し訳ないとは思うが、自分には士織がいる。

セシルの気持ちには答えられない。

 

「すまない。」

 

「・・・いいえ、貴方は悪くは無いわ。悪いのは私なんだから。

 

 

 

 

・・・だから、私は墜ちるところまで落ちるわ。」

 

「え?」

 

セシルのその言葉の後に、何かとてつもない寒気が自分を襲った。

自分はその寒気の正体がセシルだと直感的に理解したが、考えの甘い自分は彼女が原因だと思えなかった、いや、思いたくはなかった。

 

 

瞬間、体が急に地面に引っ張られるような感覚が襲い、身動きが取れなくなる。

自分はその体の重さに耐えきれず、草むらにほぼ叩きつけられる形で背中をつけた。

この感覚は随意領域操作によるものと理解させられた、そして、それができるのはこの場においてただ1人。

セシル・_オブライエンのみ。

 

「セシル!?一体なにを!」

 

その時見た彼女は今まで見た、どんなものよりも怖かった。幽霊や精霊なんてそんなちゃちなもんじゃあ断じてない、もっと人間としての本能が恐怖を訴えていた。

その位不気味な笑顔を浮かべていたセシルの顔は怖かった。

 

「うふふ、ごめんなさい紅輝、私にはこれしかないの。」

 

そう言うとセシルはどこからか取り出した錠剤を口に含むと、そのまま自分の唇を奪った。

しかも先程よりもさらに随意領域の重圧が激しくなり、抵抗することもできず、為す術もなく押し倒される。

キスをした瞬間に口の中に何かの錠剤を無理やり彼女の舌と一緒に口に入れられ、そのままずっと口を塞がれたままだった。

 

そして、ついには錠剤が喉を通って閉まった。

セシルは自分が飲み込んだことを確認すると、やっと唇を離した。

 

「・・・ぷふぁ、うふふふ。紅輝、貴方の唇を奪ってしまったわ。あら?そんな顔しちゃって、でも以外だわこんな状況なのに怒るんじゃなくて、未だに信じられないって顔してる。うふふふふ、ついでに教えておくわ。さっき貴方に飲ませた薬。あたな自身過去に1度飲まされたことがあるお薬よ。」

 

そう言われてハッとする。詳しくは言えないが(えっちぃことはダメだから!)過去に1度、時計塔からの依頼でレティシアと共に調査に赴いたときに、この薬を無理やり飲まされた。

 

そして、そのまま自分の初体験は奪われた。

 

その時は結局、レティシアの気が済むまでやられ、起きた次の日には、いつもの様子だったレティシアを見て夢だったと思っていたが、そう都合の良いことなんて無かった。

 

しかし、ここで重要なのはこの事じゃない。問題なのはセシルがどうやってあの薬を手に入れたかということだ。

 

「いま、あのお薬をどうやって手に入れたのか〜。て思ってるでしょ?」

 

「っ!?」

 

心を読まれたかのようなセシルの発言に自分は驚きを隠すことが出来なかった。

「ある日、レティシアさんにたまたま会った時に少し相談させて貰ったの、気になっている異性がいるけど、どうすればいいのかって。そしてらレティシアさんが、これを・・・て渡してくれたのよ。うふふ、そういえばそろそろ効き始める頃じゃない?」

 

そう言われ、気がつくと手足が麻痺で動かなくなり、自力でセシルを振り払うことなど不可能なほど力が入らなかった。

 

「セ・・・シル、や、めてくれ、こんなこと。」

 

こんな弱々しい声しか出せない自分が情けなく、そして恥ずかしくて仕方なかった。

だが、自分の悲痛な叫びはセシルの劣情をさらに掻き立ててしまった。

 

「あはっ。紅輝ったらそんな可愛い声出しちゃってたまらないわぁ。安心して、抵抗しなければ直ぐに終わるから。」

 

そう言うと、セシルは自分は担ぎ上げると、どこかへ歩き出した。

 

 

 

 

 

そして、セシルが自分を担いで向かった目的地は想像通りというか、案の定というか。ラ○ホテルだった。

 

セシルは自分の意思とは相反し、その中に入り1泊で部屋を取ると、自分をその部屋まで連れて行き、その部屋の中のベッドに寝かせた。

 

自分の体は未だに動かせる気配は無く、そんな自分をセシルは獲物を前にした、肉食獣のように舌なめずりをしていた。

 

「うふふふふふ。あぁ、紅輝、紅輝、紅輝♡ずっとこうしたかった。貴方をこうしたかった♡さて、それじゃあ始めましょうか。」

 

「・・・っ!?」

 

 

そう言ってセシルは衣擦れの音をたてながら、下着姿になっていた。

その姿はとても艶めかしく、気を抜けば一気に彼女の虜になってしまいそうな程だった。

 

「大丈夫、安心して。(私にとって)今日は安全な日だから。貴方は天井のシミでも数えていればいいわ♡」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうして、自分は結果的にとはいえ、セシルと体を重ねた。

だけど自分はセシルを責めることはできない、こうなったのは、士織がいるのに、セシルの気持ちをそのままにしておいた自分のせいでもあるのだから。

 

 




今回も見ていただきありがとうございます!

暮ヶ丘 叡都さん、nao透けさん。
お気に入り登録ありがとうございます!
これからも見ていただけると嬉しいです!

次話は来週の木曜日までには投稿すると思います。



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帰還の日

22話目です。

今回はいつもより短いと思います・・・。
次回から本格的に原作に介入して行くつもりですので、楽しみにして頂けると嬉しいです!

エクバ2解禁されましたね。ガンダム勢の皆様はもうプレイされましたか?
私は地元に設置店舗が無く、未だにプレイ出来てません。
早く近くのゲーセンに設置されないかなぁ、と日夜思っています。

皆様の愛機は上方修正されましたか?それとも・・・。



 

7月13日

 

 

日本に帰る日になった。

自分の心中は、日本に帰ることができることの嬉しさと、慣れ親しんだイギリスを離れなければならないことの寂しさ。そしてもう1つ、あの日抵抗できなかったとはいえ肌を重ねてしまったセシルのことだ。

あの時は危険日ではないとセシルは言っていたが、次の日から彼女はわざわざ(・・・・)自分の方を見ながら腹部を愛おしそうに撫でているのを何度か見た。疑うのはどうかと思うがあの言葉は嘘なのではないかと勘ぐってしまう。いや、セシルを信じよう、彼女があんな嘘を着くはずがない。・・・そのはずだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

自分は日本に帰るための空港に着ていた。空港までの車はトレーズさんが出してくれた。

トレーズさんには本当に何から何までお世話になったものだ。あの方には本当に頭が上がらない、自分がここまで来れたのもトレーズさんお陰だ。近い将来、精霊を倒したあかつきには菓子折りをもって改めてお礼を言いに行きたいな。

 

 

「遠坂くん、着いたよ。」

 

「ありがとうございます、トレーズさん。何から何まで。」

 

「構わないさ、私にできるのはここまでだからね。 そうだ、もし日本で神無月恭平という男ににあったらよろしくと伝えてくれ、かつて私と同等の実力を持っていた魔術師(ウィザード)だ。きっと君の新しい刺激となるだろう。」

 

「なんと、そのような人物が・・・!分かりました、会ったら必ず伝えておきます。」

 

「ありがとう、それじゃあ私はもう行くよ。」

 

「はい、お気をつけて!

 

自分がそう言うと、トレーズさんは車の窓を閉めると去っていった。

 

 

 

 

 

自分は空港の中に入ると、時刻表を確認し搭乗する飛行機の再確認をする。

――良かった、間違っていなかったな。

 

手続きまで時間はまだある、ソファーにでも座って待っていよう。

そう思い、歩いていると見知った人物がいた。

 

「あら、やった見つけた。ミスター紅輝、遅いですよ。」

 

そう言いながら、自分に近づいてきたのはレティシア・エーデルフェルトだった。また、その近くには時計塔で一緒に学んだ仲間たちが居たのである。

 

「みんな・・・!もしかして見送りに来てくれたのか?」

 

「当然じゃない、貴方は私達の良き友人でありライバル、そのような人物を見送りするのは当然よ。」

 

「そうだぜ紅輝!日本に着いたら連絡くれよな!」

 

「ふん、俺は嫌だったんだが皆がどうしても言うから来てやったんだ感謝しろよ。」

 

「全く、ルインっちは素直じゃないんだから。あ、いつかイギリスに帰ってきたら日本のお土産よろしくね☆」

 

自分は時計塔で出会った仲間たちがわざわざ見送りに来てくれたことに思わず涙ぐんでしまった。歳を取ると涙脆くなると聞いたが本当なのかもしれない(前世での年齢はもう覚えてないけど・・・。)

 

「うぅ、皆ありがとう、君たちの見送りがあるとは思わなかったから嬉しくて・・・。」

 

「ミスター紅輝、泣くのはまだ早いわよ。まだ彼女達だっているんだから。」

 

「え?」

 

レティシアがそう言って奥にいた人物達を手招く、そこに居たのはアルテミシアやアシュリー、レオノーラそして、セシルだった。

 

「うふふ、どお?遠坂くん。驚いた?」

 

「アルテミシア!それに3人とも、さっきまで家に居たんじゃなかったのか?」

 

「やっぱ、見送りするなら空港まで来ないとなんねーと思ったからよ。レティシアさんに頼んで送ってここまで連れてきてもらったんだ。」

 

「うぅ、や、やっぱり少し寂しいけど・・・。またイギリスにも戻って来てくれるの待ってるね。」

 

 

「もちろんだよレオノーラ、自分にとって君たちは2つ目の家族なんだから。」

 

そう言ってレオノーラは自分の手をがっちりと掴んでぶんぶんとふった。

自分たちの中で1番の年長者だが、彼女はとても素直で、一時ではあるが別れを惜しんでくれていることに、また少し涙ぐみそうになる。

 

 

 

「紅輝。」

 

セシルが自分の名前を呼んだ、その声色はこの前のような恐怖を感じるよなものではなく、とても優しい声だった。車椅子に乗って目が見えない彼女だが、その時の表情を想像するのは容易かった。

 

「私の手に触れてちょうだい。」

 

そう言って、手を伸ばしたセシルの手を自分も姿勢を低くし、しっかりと掴む。

そうすると、セシルは一気に自分の手を引っ張り、自分を抱き締める。そして、周りに聞こえないように耳元で囁いた。

 

「この前はごめんなさい、紅輝。私、貴方との繋がりがどうしても欲しくてあんなことをしてしまったわ。

 

でも、私はあのことを後悔していない。悪い女と思ってもらっても結構だわ、でも、私が貴方のことを愛しているということを忘れないで欲しい。

そしていつか絶対、貴方を振り向かせて見せるわ。」

 

そう言うと、セシルは自分から離れる。

 

・・・確かに、セシルの行為は倫理的には不味かったのかもしれない。だけど、セシルの気持ちをきちんと分かった上で正面で向き合っていなかった自分の責任でもあった。

なのに、彼女にいまみたいなことを言わせてしまった自分が少し情けなく感じた。

 

次がもしあったとしたなら必ずセシルの気持ちを向き合おう。・・・必ずだ。

 

 

 

 

 

 

そうしているうちに、飛行機の手荷物検査の時間になってしまった。

 

自分は皆に改めて見送りをしてくれたお礼をし、手荷物検査に向かった。

特に何か引っかかることも無くすんなりと行けて閉まったことに、何故か一抹の寂しさを感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、自分はついに日本行きへの飛行機に乗り、イギリスを去った。

 

 

 

 

 





今回も見ていただき、ありがとうございます!
また見ていただけると嬉しいです!

お気に入り登録をしていただいた。

黄昏の空さん、イナズマ号さん、塾長ほむほむさん、野良猫集落さん、怠惰な真祖さん。

ありがとうございました!これからも見ていただけると嬉しいです!

ぎりぎり1週間です・・・。自分の計画性の無さをどうにかしなければいけない・・・。

あ、皆様はシトナイちゃんを引けましたか?
え?私はだって?・・・そんな娘、(い)ないよ。




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今明かされる衝撃の真実ぅ!

23話目です。

サブタイは思いつきです、特に深い意味はありません。
やったー!やりました!エクバ2が近く(5駅分)のゲーセンに入るようです!
やっと強くなったクアンタくんを使うことができる!

最近、ドールズオーダーっていうアプリにハマりました。エクバ勢の皆さん、ゲーム内容は結構似ていますのでぜひやってみてはいかがでしょうか?



 

空港で、日本に帰った自分を出迎えたのは、父さんと母さんだった。5年ぶりにちゃんと顔を合わせるため、なぜだか新鮮な気持ちと懐かしい気持ちを感じた。

だけどそこには士織の姿はなく、少し寂しく感じた。

 

「おかえりなさい、紅輝。ちゃんと時計塔で勉強してきた見たいね、桜の旦那さんから連絡が入っていたわよ。」

 

「え?トレーズさんから?そうだったのか・・・。」

 

「ええ、貴方が時計塔でやらかしたこともね。」

 

「・・・え?」

 

何それ、聞いてないんですけど!?いや、まぁ、確かにSSSに入る理由はそうだったけども!母さん達に知られたくなかったからあえて連絡しなかったのに!

こ、これは想定外だ、どうする、どうやって切り抜ける!?

 

「あ、えと。・・・そのなんと言いますかお母様。」

 

「んー?何かしら?」

 

まずい!お母様の表情が笑っているけど、内心は笑ってない!

 

「凛、紅輝をビビらせるのはそこまでにしておけよ。」

 

冷や汗をかいている自分は助けて下さったのはお父様だった。

やっぱりいざと言う時に頼りになるのはお父様だ!

 

「お、お父様ぁ!」

 

自分は年甲斐もなくお父様の元に行き、母さんから隠れるようなことをする。

 

「お、おいおい紅輝・・・まあ、いいか。凛、さっきの問題は既にエーデルフェルトさんから連絡があって自分で何とかしたみたいだから、特に言うことはないって話合って解決しただろ。」

 

「もう、士郎ったら直ぐに教えちゃうんだから、面白くないわね。」

 

「え?怒ってない?」

 

自分が恐る恐る聞くと母さんはさっきまでの怒気がスっと無くなり、穏やかな表情になる。

 

「ふふ、当たり前じゃない。――でも、貴方がイギリスでどんな仕事をしていたのかも知っているわ。」

 

「っ!!」

 

いや、驚くのは間違いだ。先程の件を伝えていたんだ。むしろ連絡していない方がおかしいだろう。息子が親の許可なく軍隊に入っていたんだ。もしかしたら、無理矢理にでも止めさせられてしまうかもしれない・・・!

それだけは―――!

 

「全く、少しぐらい親を頼りなさい。」

 

そう言って母さんは自分を強く抱きしめた。

 

「・・・え。」

 

「道を踏み外さないかぎり、貴方のためなら私達はなんでもするわ。それとも、そんなに私達が頼りないかしら?」

 

「そ、そんなことは・・・!」

 

「なら私の目を見て1人で抱え込まないって誓える?」

 

そう言うと母さんは自分の体を離し、肩を掴むと自分の目を真っ直ぐ見つめてくる。

 

自分は今まで気づけていなかった、母さん達が今までどれだけ自分のことを心配していたのかを。さっき母さんに抱きしめられたとき、久しく感じていなかった温もりを感じた。

その感覚はできればずっと感じていたい温もりで、これが母親の温もりと本能的に理解できた。

そんな状況であんなことを言われたら逆らえないじゃないか・・・。

 

「分かった、誓える。」

 

「そう。それなら良かったわ。さぁ!家に帰るわよ!今日はご馳走よ!」

 

「そうだな、久しぶりに俺も腕によりをかけて作らせてもらうよ。」

 

 

 

その後、自分は久しぶりの家族との食事を楽しみ、あまりの懐かしさに思わず涙を流してしまうのだった。

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――

 

7月15日

 

日本に帰ってきた次の日、その日の午後に自分は来禅高校の編入手続きを終わらせ、速やかに学校を出た後AST天宮駐屯地に着ていた。

 

警備員にDEMから発行されている書類を見せると、快く中に入れて貰えた。

 

「ふう、時間通りに着けたな。さて、隊長室はどこだろうか?」

 

うろちょろ歩き回っていると、アシュリーと同じくらいの身長の女性隊員が周りをキョロキョロしながら走り回っているのを見つける。

 

ちょうど良かった、ここの隊員なら隊長室も知っているだろう。

 

「君!少しいいかな?」

 

???「え?わ、私ですか?」

 

栗色の髪を黄色いリボンで括ったツインテールの少女はこちらを何やら慌ただしい様子で振り向いた。

 

「そう、君だよ。ここの隊長室がどこにあるか分からないくてね、良かったら案内してもらえないか?」

 

「え、そ、それは構いませんけどすいません。今、とおさかこうき?って方がこちらにくるはずで探しているんですよ・・・。」

 

「・・・それ、多分僕のことだね。」

 

自分がそう言うと、少女は一瞬硬直すると手元に持っていた紙を見た後、こちらをもう一度じっくりと見てくる。

 

「あ、あわわ!?本当です!し、失礼しました!私、陸上自衛隊AST隊員、岡峰美紀恵二等陸士です!」

 

「オカミネミキエ? オカミネミキエと言ったか?」

 

「え?はい。そうですけど・・・。」

 

「そうか、それなら僕も名乗らないといけないな。

元SSSインパルス隊の隊長。遠坂紅輝少尉だ。アシュリーやセシル達が君たちにお世話になった。本当にありがとう、感謝する。」

 

「え、ええええええええ!?」

 

自分の言葉に岡峰美紀恵は驚きの声をあげた。

 

この少女、いちいちの反応が面白いな、3人が言っていた通りだ。

 

 

 

 

 

 

その後、岡峰美紀恵同伴で無事、隊長室に着くことができた。中には長身の女性が椅子に座っており、自分を見るとゆっくりと立ち上がると敬礼をする。

 

自分もその敬礼に対して敬礼を返した。

 

「はじめまして、私は陸上自衛隊AST隊長、日下部燎子一尉です。本日よりよろしくお願いします。」

 

「御丁寧にありがとうございます。本日よりこちらに配属されました。元SSSインパルス隊、隊長の遠坂紅輝少尉です。よろしくお願いします。」

 

その後、必要な書類を書いたり、事務的な話をして終わった。

日下部燎子か、彼女は歳若いのにここを纏められているのは素直に尊敬すべきだろう。

トレーズさんには及ばないが実力も、それなりにあると見た。

あまり、会話はなかったが人柄の良さはそれでも十分感じとることができた、この人ならある程度の信頼はおけるだろう。

 

 

 

 

 

手続きも終わり、岡峰美紀恵に施設内を案内してもらいながら話していたとき。

 

「へえ―、あの後、アルテミシアさん無事に回復したんですね!良かったぁ。」

 

「4人とも君に本当に感謝していたよ、もちろん。僕も君にとても感謝している。そういえば、君の他にもう2人、トビイチオリガミという人物とタカミヤマナという方に会って礼を言いたいのだが、どこにいるか分かるか?」

 

 

自分がそう言うと、彼女の表情が少し曇った。

ん?もしかしてまだ学校にいるのだろうか?

 

「・・・折紙さんは、あの件でASTを辞めて(・・・)しまいました。居場所も知らされてなくて分かりません。」

 

彼女の言葉に自分は思わず動きを止めてしまう、いや、この仕事は激務だ。しかもあの件はミネルバが関わっていた、もしかしたらその時に負傷したのかもしれない。

 

「なっ、・・・そうだったのか。それならタカミヤマナはどこだ?」

 

「崇宮真那さんは、以前〈ナイトメア〉が出現した際に負傷して、今は病院にいると聞きました。」

 

「〈ナイトメア〉だって?あいつがここに出現したのか!?」

 

「え、ええ・・・。その同時期に出現した〈イフリート〉と交戦後、消滅(ロスト)したそうですが。」

 

「〈イフリート〉だと?それはまだ日本にしか出現してない炎の精霊のことか?」

 

「イギリスには出現されていなかったんですか?」

 

「ああ、そんな精霊は見たことないな、良ければ後で資料集に連れて行ってくれないか?どんな精霊か詳しく見てみたい。」

 

「分かりました、それなら今からでも行きますか?」

 

「ああ、そうしてくれると嬉しいよ。」

 

 

 

 

天宮市に精霊が集中的には出現しているというのは本当のようだ。・・・なにか出現を促す原因があるのか?

なんにせよ、この街に精霊がよく出現するのなら都合がいい。全部倒してアルテミシアの言っていた平和な世界を作るたけだ。

 

 

 

 

 

 

 

 





今回も見ていただきありがとうございます!
次回も見ていただけると嬉しいです!

お気に入り登録して下さった。
dragonヤマダさん、バンブータイガーさん、ミョーさん、グリスブリザードさん。

ありがとうございました!
これからも見ていただけると嬉しいです!

さらに、前回の時点で超えていましたが、ついにUAが10000を超えていました!
これも皆様のお陰です!

これからも精進して行きますのでよろしくお願いします!


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24話目です。

実際にクアンタ使ってきました!
でも・・・正直、なんか扱いづらくなってません?
前作からつかってると射撃チャージ使わないから腐り武装になってしまいます・・・。

とまあ、エクバ2の話はここまでにして、今回から本格的には原作に突撃して行きますよ!

自分にできる最大限のイチャラブを書いて見ました。
やはりイチャラブは難しいですね・・・。
ランキングに載ってる作品みたいなイチャラブを書けるようになるまで精進必須ですね!

まぁ、私が本当に書きたいのは殺し愛なんですけどね(ボソッ)





 

7月16日金曜日

 

 

やぁ君たち、僕はリボンズ・アルマーク(仮)。今日から来禅高校に編入することになった魔術師(いのべいたー)さ。

朝は相変わらずきついが、流石に編入初日から遅刻というのはまずいからね。目覚ましを何重にもかけて何とか起きることに成功したよ。

昨日帰った後は父さんと模擬戦をして汗を流した後に就寝したからよく眠れたしベストコンディションだね。

 

既に時計塔を卒業している僕にとって高校なんてものはほぼ不必要だけど通っておいた方が体裁的にもベストだからね、郷に入っては郷に従え、という諺もあるくらいだしそこは素直になっておくのが吉だろう。

 

 

「紅輝ー、ふざけてないで早く学校に行きなさい。」

 

母さんが自分の心情を読んだかのごとく呆れた声を出しながら学校に行く催促をする。

 

時計を確認すると、既に時刻は7:45になっており、そろそろ家を出ないとまずい時間だ。母さんが自分に声をかけたのも納得できた。

 

それはともかく・・・

 

「母さん、自分の心読んだ?」

 

「分かるわけないじゃない、でもろくなこと考えてないんだろーなって思っただけよ。」

 

「くっ、母さんが朝から辛辣で自分は悲しい・・・。」

 

「はいはい、いいから早く学校に行きなさい。士郎はもう出てるわよ。貴方も早くでたら?」

 

「りょーかい、それじゃあ行ってきます。」

 

そう言いながら今を出て玄関に行こうとした時だった。

 

―ピンポーン

 

「あら?こんな朝から誰かしら?」

 

インターフォンが家に響き、一瞬足を止めたが母さんが出たのを確認して、ドアを開けるとそこにいたのは

 

約5年ぶりの再開であり、とても大人らしく成長した五河士織だった。

 

 

 

 

 

「おはよう、こうして直接会うのは久しぶりだね、紅輝くん。」

 

「・・・っ」

 

そう言って微笑んだ彼女に自分は思わず息を呑んで見とれてしまっていた。

 

「あ、あれ?反応が無い?おかしいな、私の姿そんなに変わってないはずなんだけど・・・。」

 

5年前のカワイイ系魔王ボイスからクール系死神のボイスに声変りしている・・・だと・・・!?

いや、人間にそんな出来事が起こることをなんてあるのか!?

ま、まてよ!?そう言えば人間は喉の風邪を引いた時に声が変わるとも聞いたことがある、それの影響か!?

はっ!?なんにせよそろそろ反応を返さないともしかしたら士織かいじけてしまうかもしれない!

 

「い、いや、そんなことは無い。それに君の写真なら毎年年賀状を送ってくれていたから忘れてなんかいないさ。でも写真じゃない、本物の君に会えたから思わず見とれてしまったんだ。許してくれ。」

 

「ほ、ほんとに?それなら良かったぁ。それじゃあ、えい!」

 

士織は自分に飛び込むように抱きついてきた、急なことで驚きはしたが何とか受け止め、士織を抱き返す。

 

密着した士織の身体からは女性特有の甘い香りとふくよかに育った”肉”を感じられ、それに反応してか自分の心臓の鼓動が早くなるのが分かった。

 

「ふふ、会いたかった、ずっと会いたかった。ずっとこうして抱きしめて欲しかったよ。」

 

彼女は約5年ぶりの再開の喜びを表すように自分の体をぎゅっとする。自分もそれに答えるように士織が痛みを感じない程度で強く抱きしめた。だが、自分が本気で抱きしめていないことを悟ったのか士織は顔を上げ、上目遣いでむくれた顔を見せた。

 

「むぅ・・・紅輝くん。手加減してるでしょ。痛くてもいいからもっと強く、強く抱きしめて・・・。」

 

「・・・分かった。」

 

士織の望みに答えるために先程よりも強く抱きしめる。自分も士織の身体を傷つけない範囲で強く抱きしめ返した。少し痛いかもしれないが彼女が望んでいるのならそれに応えるのが男の責務ってものだ。

 

「あぁ。感じる紅輝くんが私のすぐ傍にいるって事を感じる・・・。ねぇ、5年前の約束、覚えてる?」

 

突然、顔を上げた士織がそういって不安そうな表情を、浮かべていた。

 

「ああ、もちろんさ。」

 

「なら、さ。今から覚えてるって証明してよ・・・。」

 

士織はそう言うと、目を閉じ唇を自分の方へと近づけた。自分もそれに合わせるように口づけをするため、合わせようと――――。

 

「あらあら、こんな夏の暑い日の朝っぱらからよくやりますこと。」

 

「「っ!!?」」

 

自分と士織は突然の声に慌てて離れる。自分は既に声の主は分かっており、玄関の方を振り向くとニヤついている母さんがいた。

 

士織は母さんを見ると、直ぐに姿勢を正すと頭を下げた。

 

「お、おはようございます。凛さん。」

 

「えぇ、おはよう。二人ともお熱いのは構わないけれどもう少し周りに見れるようになりましょう?」

 

母さんにそう言われてハッと気づく。たまたま見られてはいなかったが、道の向こう側にの方には人がチラホラ見え始めていた。あのままキスをしていたらかなり恥ずかしい思いをしていただろう。

 

「ようやく気づいたようね。さ、早く学校に行きなさい、このままじゃ遅れるわよ。」

 

「はい・・・。行ってきます。」

 

恥ずかしい思いはせずにはすんだが、自分と士織は母さんから逃げるように学校へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――

 

 

学校についた自分と士織は一旦別れ、士織は自分の教室へ、自分は職員室に立ち寄る必要があるため、職員室のある方向へと向かっていた。

 

すると、2年生の昇降口の方からなにやら大きな声が聴こえ、ふとそちらを見ると写真でみた姿と同じの五河士道が見えた。

自分はまだ、少し余裕があるため少し脅かしてやろう思い、近づいていくと―――。

 

「おーい!シドー待ってくれー!」

 

元気いっぱいに士道を呼ぶ声が聞こえ、一旦踏み止まる。

恐らく士道の彼女か何かだろうと思い、自分のついさっきまでのことを重ね合わせてしまい、2人の邪魔をするのは良くないと思い、巻き返そうとした時だった。

 

士道の後ろから現れた女の子は去年まで出現していた精霊、〈プリンセス〉にそっくりだったのである。

 

 

 

 

 

―っ!!!???

 

 

 

ど、どういうことだ!?

どうして精霊がこんな所に!と、とりあえず落ち着こう。空間震が起きていないということは、噂に聞く静粛現界と言うやつか?

 

いや、そもそもただのそっくりさんという線もまだある。だが、やつが本物の〈プリンセス〉なのだとしたら士道が危険だ!パッと見友好そうな態度を取っている様子を見ると直ぐに暴れるということは無いだろう。

とりあえず、一旦コンタクトをとるとしよう。

 

「やぁ、士道、久しぶりだね。遠坂紅輝だよ覚えているか?」

 

自分の声に気づいた士道だが、一瞬、だれ?みたいな表情をとったが直ぐに思い出したかのように声を上げた。

 

「ああ!紅輝さんか!お久しぶりです!いつイギリスかは帰ってきたんです?」

 

「む?シドーこいつは誰だ?知り合いなのか?」

 

「あ、そうだった。十香には話してなかったな、この人は遠坂紅輝さん。姉ちゃんの彼氏さんで、今までずっとイギリスに留学していたんだ。」

 

「いぎりす?はよく分からないがすごい人なんだな!」

 

「まぁ、そう言って貰えると悪い気はしないね。日本に帰ってきたのはつい一昨日でね。近くの来禅高校に編入ってことになったんだ。ところで士道、”とうか”と呼ばれているそちらのお嬢さんは?」

 

「ああ、彼女は夜刀神十香って言います。十香も少し前にここに転校してきたばかりなんですよ。」

 

「うむ!夜刀神十香だ、よろしく頼むぞコーキ!」

 

そう言って十香と呼ばれている少女は太陽のような眩しい笑顔で握手を求めてくる。

 

 

ふむ、やはりただの勘違いだったか?自分が知っている〈プリンセス〉はこのような性格ではなかった。

念の為カマをかけてみるか。

 

「ああ、こちらこそよろしく頼むよ〈プリンセス(・・・・・)〉?」

 

その瞬間、言葉通りと言わんばかりに空気が凍った。

さっきまで笑顔を浮かべていた、少女の顔に曇りが見え、士道の顔からも疑いの表情が現れていた。

 

―――これはビンゴだな。

 

そう確信した自分は表情を一転させてにこやかな顔で笑う。

 

「ははは、なんてね。英国ジョークさ。君が物語のお姫様のように美しいからつい口に出てしまったのさ。どうかな?気に入ってくれたかい?

それはそれとして、改めてよろしく頼むよ夜刀神十香君。」

「う、うむ。」

 

「それじゃあ、自分は職員室に行かなきゃならないから。グッバイ。」

 

 

 

自分はそう言って、固まっている二人を置き去りにして職員室へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 




今回も見ていただきありがとうございます!
次回も見ていただけると嬉しいです!


本格的に寒くなってきましたね。
皆様、特にこの時期からの疾病にはお気をつけください。うがい手洗いしっかりと、ですよ!


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初デート?

25話目です。

投稿感覚が空いてしまい、申し訳ないです!
ですが、その分今回は頑張ってみました!

精一杯のイチャラブを書いたので何卒見てくだされぇ!

ちょっとだけエッチなところがあるかもね?


「皆さんはじめまして遠坂紅輝です。一昨日イギリスから日本に帰ってきました。こんな時期からの編入ですが、仲良くしてください。趣味は身体を動かすことと、料理をすることです。」

 

自分はクラスの壇上に立ち、流暢な日本語で挨拶する。当たり前と言えば当たり前だが、クラスには小学校の頃の友達は士織しか居ないが、見た感じ特に突っかかってきそうなやつはいなさそうで良かった。

 

 

 

 

―だが、この時の自分は日本の高校生達を少し侮ってあたのかもしれない。

 

 

あの後、ホームルームが終わった途端、周りにいた生徒達からの質問ラッシュにあったが士織のサポートのお陰で何とか乗り越えることができた。

その中でもやっぱり質問が多かったのはイギリスの料理は不味いのか、という質問だ。

まぁ、気になる気持ちも分からないこともない。1部の料理は本当に日本人には合わないからな、とは言ってもイギリス人でも合わないものもあるが・・・。

 

 

閑話休題。

 

流石に疲れて一息ついていると士織がお茶を買ってきてくれていた。

 

「ふふ、お疲れ様。紅輝君大人気だね。」

 

「ありがとう士織、日本の学生というのは皆こんな感じなのか?改めて日本人の凄さを感じたよ・・・。」

 

「何言ってるの、紅輝君だって日本人でしょ。」

 

「あはは、そうだったね、すっかり忘れていたよ。」

 

「もぅ・・・。そうそう紅輝君、ちょっといいかな?」

 

士織はそう言うと自分に耳打ちをする。

 

「女の私からこう言うのはどうかとは思うけど、良かったら明日、で、デートでもしない?あれから天宮市もだいぶ変わったし、その紹介も兼ねてね。」

 

士織は一旦顔を戻し、周りを少し見渡す。こちらを見ている人が居ないことを確認してからもう一度こちらに顔を近づけてくると?

 

「明日は就学旅行で家にはだれもいないんだ、良かったら・・・ね?」

 

そう言う士織の顔はとても真っ赤で、照れている顔もとても可愛らしくそんなことを言われてしまってはYESとしか言えないじゃないか!

 

「っ!分かった。予定を空けておこう。」

 

士織は自分の返事に朝のような笑顔をみせた。

 

「それじゃあ、明日の11時、天宮タワーの前に集合でいいかな?」

 

「了解した。」

 

 

 

日本に帰って来て初めてのデートだ。入念に準備をせねばな。

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――

 

7月17日 土曜日

 

 

自分は今日から、士織とのデートのために集合場所である天宮タワー前に来ていた。

7月も中頃に入り夏の暑さも本格的になってきており、観光地である天宮タワーにもマイナスイオンを放出して気温を下げる装置等が機動していて、そこで涼んでいるひとも多くいた。

 

自分はと言うと日陰にあるベンチで士織を待っていた。

 

すると、集合時間10分前ほどに士織がやってきた。

 

士織は肩と胸元が少し露出しているワンピースドレスを来ており、足元もスラリと伸びた健康的な足が見え、とても大人の女性と感じられるようだった。

 

「ごめんね、待ったかな?」

 

士織は少し申し訳なさそうに言う。しかし、すかさず自分も言葉を返した。

 

「いいや、自分もさっき来たところさ。」

 

ドラマなどで見る、デートでの決まり文句を現実で言う日が来るとは・・・。

 

士織もどうやら同じ考えらしくお互い軽く笑いあった。ああ、今日は楽しい一日になりそうだ。ASTとしての仕事も緊急時以外はOFFを貰ったし、精霊のことを考えなくていい日なんて久しぶりだな。

 

 

自分がそう考えていると、士織は自分の手を取る。

 

「さぁ、紅輝君行こう?今日は私がリードしてあげる。」

 

「ありがとう、それは楽しみだな。」

 

 

 

 

 

 

そして、自分は士織に手を引かれ5年間の内に変わった所を見て回った。

5年間も経てば、やはり無くなってしまっているものも多かったが、逆に新しくできたものもあった。

最初に入った水族館もそうだったし、都心にあるようなス○ーバックスとかもちらほら見られた。

 

十年一昔と言うが、やはり5年間でもかなり変わってしまうものだなとも思い知らされた。

 

お昼が過ぎ、日差しが1番強くなる時間帯になる頃、自分と士織はショッピングモールに来ていた。

士織が夏休みの間に海に行くための水着を買いに行きたいという。自分はそれに二つ返事で了承し、ついでに自分の分も買うことにした。

 

やはり、男女で水着コーナーは別れていたので、1度二手に別れて各々自分の水着を買いに行った。

自分は直ぐに決まり、シンプルな水着にしたが、士織はまだ決まっていない用で、集合場所を設定していたがなかなか来なかったため、女性用水着コーナーに行くと、未だ迷っている様子だった。

 

「士織、いいのは見つかったか?」

 

自分が声をかけると士織はこちらを向きその手には購入候補と思われる2着の水着を持っていた。

 

「あ、ごめんね。意外と迷っちゃって・・・。あ、そうだ、ここは紅輝君に選んで欲しいなーなんて・・・。」

 

「士織がいいなら喜んで。」

 

「本当?なら紅輝君はどちらがいいと思う?」

 

士織は手に持つ2着の水着を自分によく見えるように見せる。

1つ目はシンプルな黒色の三角ビキニ。

もう1つは白と青2色のパレオタイプの水着だった。

 

「ふむ、確かにどちらも選び難いな―――」

 

「そ、それとも・・・。こ、これ?///」

 

士織はどこに隠してあったのか、ある水着を見せてきた。

その水着は布面積がかなり少ない、いわゆるマイクロビキニと呼ばれるもので・・・。

 

 

 

 

自分は思わず、士織がマイクロビキニを来ている姿を妄想してしまう。

 

太陽の降り注ぐ砂浜、そのマイクロビキニを着た士織がこちらに身体を寄せて―――。

 

「なっ、なんてね!じょ、冗談だよ!」

 

「そ、そうだよな。は、ははは・・・。」

 

「・・・むぅ、紅輝君、何だか残念そうだね。・・・エッチ。」

 

「こ、これは不可抗力だ!そ、そうだ!さっきの2つの水着を試着してみてくれないか?それで決めたいと思う。」

 

自分は何とか話を逸らし元の話題に切り替える。このままでは何かとても不味い気がしたからだ。

「わ、分かった。ちょっと待ってて。」

 

そう言って士織は試着室の中に入っていった。

 

1分ぐらい経つと試着室の中からOKとの声が聞こえ、カーテンが開かれる。

 

士織が先に来ていたのはな黒の三角ビキニで、バランスのとれた士織の身体に白く瑞々しい肌に対象的な黒いビキニが可愛らしくも大人のセクシーさを感じさせとても魅力的だった。

 

「Very beautiful・・・。」

 

 

・・・はっ!思わず英語が出てしまっていた!

しかも真顔で。

 

士織は顔を林檎のように真っ赤にして、目を伏せていた。

 

「・・・あ、ありがとう///それじゃあ、もう1着の分も着てくるね!」

 

そう言って、勢いよくカーテンを閉めてしまった。

そしてまた数分後、試着室のカーテンかゆっくりと開かれ、今度は白と青のパレオタイプの水着を着た士織が現れる。

 

「ど、どうかな・・・?」

 

上半身は白の端に青い布地の2色のビキニで、下半身は上と同じタイプだが、腰に巻き付けてある水色のパレオが彼女の魅力を1層引き立てていた。

「・・・とても、魅力的だ。正直に言って他の男なんかに見せたくなんかないくらいだよ。」

 

「うぅぅ、紅輝君、そんな言葉ずるいよぉ・・・。はっ、そ、それで!どっちがいいと思う?」

 

士織の今の姿はとてもいじらしくて、口には出さないが、今にでも襲いたいくらいヤバかった。

だけど、2つの水着を見て自分の答えは決まった。

 

それは―――。

 

 

「どっちも買おう。」

 

「え、でも、それじゃあお金が・・・。」

 

「どちらも自分が払うから問題ない。理由としては自分がもう一度どちらの水着を着た士織を見てみたい。これじゃあ駄目か?」

 

「~~~~~っ!!!///わ、分かった。それじゃあどちらも買おうかな・・・。///」

 

そう言うと、先程よりもさらに早い速度てでカーテンを閉め、試着室に戻っていってしまった。

自分でもくさい台詞を言ったのは理解しているがそれが自分の本心だ。後悔は無い。

 

 

 

 

 

数分後、試着室から洋服に戻った士織と一緒に2着の水着を購入した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――

 

その後、約1時間ほどショッピングモールで過ごし、最後に自分と士織は5年前に通っていた小学校に来ていた。

流石に土曜日の夕方であるため校庭には誰も居らず、2人だけの静かな空間であった。

 

「ふふ、ここに来るのは久しぶりだね。」

 

「そうだな、五年ぶりにここに来たが、変わっていなくて良かった。」

 

「あ。あれを見て、あの桜、まだ残っているよ!」

 

士織は5年前、自分と士織が恋人になった桜の元に自分の手を引いて駆けた。

 

流石に夏場であるため桜は緑色の大きな葉っぱを付けており、風が吹く度にサラサラと音をたてて揺れていた。

 

士織は改めてこちらを向くと、真っ直ぐこちらの目を見てくる。

 

「紅輝君、今日はありがとう、私とデートしてくれて。」

 

「何を言っているんだ、士織。彼女からデートに誘ってもらえるなんて男冥利に尽きるってものだ。むしろ、こっちがお礼を言いたいくらいさ。」

 

「ふふ、そうかな?それじゃあ、私にお礼、してくれる?」

 

士織はそう言いながら昨日の朝のように目を細め、顔を近づけてくる。

自分も士織に”お礼”をするために顔を近づけながら士織の身体を抱き寄せる。

 

――そしてそのままお互いの唇が触れ合った。

 

「ん、――んん、ん。」

 

ついばむような軽いキス。だけど、彼女の色っぽい声が自分の気持ちを高めていく。

もっと、士織か欲しいという気持ちが高まり、さらに士織の身体を抱き寄せる。

 

「士織・・・。」

 

「うん、大丈夫・・・。」

 

自分は士織の言葉に自制心がかなりの勢いで崩れていくのが分かった。

 

さっきのような軽いキスではなく。唇を奪う、という表現があっているような激しい、いわゆる、ディープキスをする。

 

「んん、れろ、むんっ。・・・はぁ、んむぅ・・・。ぷふぁっ。」

 

数十秒だったが、何分にも感じられるような長いキスが終わり、お互いの気持ちが高まり、周りのことなど、既に視界から外れており、見えているのはお互いの姿だけ。

 

もっともっと士織が欲しくなり。

 

「――士織。自分は・・・。」

 

 

 

 

 

/―だが、災厄というの突如として現れるものである。

 

 

――――――ウゥゥゥゥゥゥウ!!

 

 

けたましいサイレンが鳴り響き、2人の意識は2人だけの世界から現実に引き戻された。

 

そして、2人はこのサイレンを良くも悪くも聞き慣れていた。

 

そう、空間震警報であった。

 

 

 

 




今回も見ていただきありがとうございます!
次回も見ていただけると嬉しいです!
お気に入りに追加して下さった。
sisiyaさん、外道麻婆今後ともヨロシクさん、ありがとうございます!
これからも見ていただき幸いです!

ついに12月ですね、インフルエンザなどにはご注意ください!

FGO、石全部使ったのに項羽引けませんでした・・・。
蘭陵王は2体当たったのに。


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00ライザー襲撃 前編

26話目です。

プロットの時点で長かったので2つか3つに分けました。
正直サブタイトル考えるのにかなり時間をかけてしまうのをどうにかしたいです・・・。
ランキングに乗っている人達のサブタイトルって見るだけで、面白そう!、て思います、やっぱり凄いですよね!

愉悦がそろそろ始まってくるのでわたし的にも楽しみですねぇ!





 

空間震警報が鳴り響き、現実の世界に引き戻された2人で最後に動いたのは紅輝だった。

 

「空間震警報か・・・。とりあえず避難しよう。」

 

「あ…。うん、そうだね。(どうしてこんなタイミングで・・・)。」

 

さっきのキスの余韻が残っているのか、士織は顔をまだ赤くした状態で頷いていた。

今の士織をこんな状況でなければ今すぐにでももう一度抱きしめてキスしたいぐらいだが、ここはぐっと堪える。

 

それに、1度ASTの方にも連絡を入れる必要がありそうだ。全く、本当に空気の読めない精霊だ。今日は見逃してやるからさっさと消滅(ロスト)して欲しいものだ。

 

とりあえず、士織を安全な所に避難させないと。

 

「幸いにもここは学校だ、校舎の方にシェルターはあるからそっち行けばいいだろう。士織、自分は今から来る人達をシェルターに誘導する、だから、先にシェルターに入っていてくれ。」

 

「え!?・・・・分かった、直ぐに戻ってきてね。お願いだよ?」

 

そう言う士織の顔はとても心配そうな顔をしていて、自分としても早く今回の件を解決して、士織を安心させないと。

 

「あぁ、安心してくれ士織。君のためにもすぐに戻ってくるさ。」

 

 

自分はそう言って基地の方へと走り出した。

 

途中でASTの方に連絡を入れる、3コールの後、日下部隊長が出てくれた。

 

「日下部隊長!状況はどうなっている?空間震までの時間は分かりますか?」

 

『あと、3分って所ね。でも安心して、震源地と予測される場所の近隣住民の避難は既に終わっているわ。』

 

「対応が早いな、流石と言ったところか。僕も今すぐ現地に向かう、場所を送ってくれ。」

 

『分かったわ。そちらの端末に送っておくわね。』

 

「ありがとうございます。」

 

自分は通信を切り、念の為と持ってきていた〈デスティニー〉を装着する。

 

「・・・はぁ、今日は精霊のことを考えなくていい日なんて思ってたのに、ついてない。まさか本当にこいつを使うハメになるなんてな。」

 

〈デスティニー〉のブーストを全力で吹かしていると、予測地の近くで空間震が起きた。

 

『空間震、来ます!』

 

音声通信が来ると共に前方で空間震が発生する。規模はそこまで大きくはないがその衝撃は飛んでいる自分の所まできていた。

 

そして、空間震が収束すると共に自分も現地に到着した。

他の隊員は既に現地に着いており、武装をして精霊を待っていた。

 

そして、空間震が起きた場所の中心には今回の空間震を起こした精霊の姿を見ることができた。

 

その精霊は今まで見てきた女性のような姿ではなく、男性の姿をした精霊だった。

 

しかも、自分はその精霊の霊装に見覚えがあった。

その姿は、ガンダム00に登場する機体、00ライザーにそっくりだったのである。

 

 

 

 

 

 

その精霊は周りを見渡すと急に喋り出す。

 

「お?転生していきなりなのに囲まれちゃってる?まぁ、俺って精霊だし仕方ないか、いいぜ!かかってきなASTども!チュートリアルの始まりってなぁ!」

 

そう言うと精霊は肩にあるGNドライブのような何かを作動させ、一気に上空へと飛び、ミサイルの雨を降らせる。

 

日下部隊長がいち早く反応し、〈随意領域〉を展開し防御するように指示をだす。

自分は〈デスティニー〉のビームシールドを展開させ、そのままミサイルの雨を突っ切る。

 

「なっ!?デスティニーガンダム!?どういうことだ!?」

 

「はぁ!」

 

何やら驚愕している精霊を無視し、アロンダイトビームソードでそのまま上段切りをする。

 

「くっ!?つ、強い。いや、これは俺がまだこの力に慣れていないからだぁ!」

 

そう言いながら右手の大型実体剣(恐らくGNソードIIIをモチーフにしたものだろう)で受け止め、押し返してくる。力任せの振りに少し驚きはしたものの、このような輩は〈プリンセス〉の相手で慣れていたため、直ぐに体制を立て直す。

 

そして、精霊の足が止まった一瞬の内に他の隊員からのミサイルやビームカノンの攻撃が精霊を襲う。

 

このままでは直撃すると考えたのか精霊はGNフィールドらしきものを展開させ、さらに上空へと離脱する。あいにくミサイルなどはGNフィールドに防がれてしまったが、ビームカノンの砲撃がかフィールドの防御が発生する前に何発か命中していた。

 

 

「ちっ!めんどくせぇ奴らだ!一気に蹴散らしてやる、トランザム!!」

 

 

「っ!やはり持っていたか。」

 

精霊がトランザムと言うと、肩のGNドライブから放出される粒子の量が一気に増大し、霊装が赤く発光する。

 

「まずい!何か大技が来るぞ!皆距離をとれ!防御か回避に専念するんだ!!」

 

精霊は自分の言葉を知ってか知らずか不敵な笑みを浮かべるとGNソードⅢを天へと向ける。

 

「はんっ、おせぇ!喰らいやがれ!ライザーソォォォド!!!」

 

 

精霊はそう叫ぶと、00ライザーが劇中で見せた、ライザーソードを横薙ぎに繰り出した。

 

僕や日下部隊長を含め、何名かの隊員は避けることに成功したが、残りの隊員はその光の奔流に巻き込まれてしまう。

 

しかし、幸いなことに直撃した隊員達は直前で随意領域を展開していたらしく、気絶はしているが死んではいなかったようだ。

だが、これで戦力が大幅に削られてしまった、さらに街への被害は大きくライザーソードが当たった場所は地面が抉れ、もう少し出力が高ければシェルターまで届いていたかもしれないと思うとゾッとした。

 

自分が戦慄し、動きを止めていると、精霊は自分の所へGNソードⅢでこちらに切りかかってきた。

 

「はあぁ!!」

 

自分はアロンダイトで何発かを受け止めることに成功する。しかし、その剣先が頬を掠め、切り口から少し血がしたたる。

 

頭をフル回転させ、どうするか考えていると精霊が再び剣を振りかぶり、自分は両手でアロンダイトを支えることによって鍔迫り合いをする。

 

すると、精霊がこちらに向かって話しかけてきた。

 

「おい、お前。俺と同じ転生者だろ。少し話をしようぜ。」

 

「・・・戦いの最中に、ましてや、精霊と話すことなんてない。」

 

「はっ!いいのか?俺がもう一度ライザーソードを撃てばシェルターの中の民間人がどうなるかなんて分かるだろぉ?安心しなって、他の奴らを下げさせる猶予は与えてやるさ、その間は俺は何もしねぇからよォ。」

 

精霊はそう言うと鍔迫り合いをやめ、一旦後ろに後退する。

 

精霊の言葉に従うのは大変遺憾だが、他の隊員のことも考えると気絶している隊員を守りながらこの精霊を殺すのは不可能だ。

 

――仕方ない。

 

 

「・・・分かった。」

 

自分は回線を開き、日下部隊長にコールを入れる。日下部隊長は直ぐに応答し、それと共にライザーソードから逃れられた隊員達も一旦攻撃を止める。

 

「日下部隊長、負傷している隊員を1度基地に運んでください。やつは僕とのサシを望んでいる。それに気絶している隊員達に目掛けてさっきの技を撃たれたら防御するしかなくなり全滅しかねない。お願い・・・できますか?」

 

『・・・了解よ。ごめんなさい遠坂少尉。貴方はまだ着任したばかりなのにこんな重役を押し付けてしまうなんて、私、隊長向いていないのかもね・・・。』

 

「そんなことはないです。ここの隊長をできるのはは貴方しか居ませんよ。僕も元SSSNo.2です、必ず生きて帰りますよ。・・・では、お願いします。」

 

『ええ、分かったわ。くれぐれも無理はしないで。』

 

 

その言葉の後に他の隊員が負傷した隊員の救助に向かっているのが見えた。

 

「これでいいかい?」

 

自分がそう言うと精霊はまたもや不敵な笑みを浮かべると口を開いた。

 

「ああ、それでいい。さ、話し合いをしようぜ、同類。」

 

 

 

 

 





今回も見ていただきありがとうございます!
次回も見ていただけると嬉しいです!
お気に入りに追加していただいた。
不知火零さん、星の空さん、青空が好きさん、サイバー研究者さん。ありがとうございます!

これからも見ていただけると嬉しいです!


私の住んでいる地域も本格的に寒くなってきました・・・。皆さんの住んでいる地域はどうでしょうか?
くれぐれも風邪など引かないように注意してください!
手洗いうがい大切です!



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00ライザー襲撃 中編

投稿ペースが開いてしまい、申し訳ないです!

学校がようやく終わり、冬休みに入ったので次の投稿は1週間以内にできると思います!


ここから別の話なんですが、FGO最後の最後でブラダマンテを当てることができました!
私、イベントのモチベーションとガチャの結果が直結しているので全く今回のクリスマスイベントやる気が起きなかったんですよね・・・。
皆さんはどうですかね?






 

 

五河士織は、紅輝が小学校から出ていった後、シェルターに入っていなかった。理由として紅輝が帰ってくるのを待つ、というのがあったが、もう1つ、彼女にもしこのことを聞いたら否定をするだろうが、脳裏にあったのは前日、弟の士道から聞いた話。

 

――遠坂紅輝がASTまたはDEMの魔術師だということ。

 

士織は精霊という存在を知っており、彼女達との仲もよく、士織的に誰が士道と結ばれても良いと思えるくらいいい子達だった。

しかし、その精霊を良しと思わない存在もいる。それがASTやDEMという存在。

だが、世間一般的に見れば彼らの方が正当性があるのは当然であり、どの国の教科書にも載っているユーラシア大空震を引き起こしたのも一般には知られてはいないが精霊だ。

 

だけど、五河士織は実際に精霊と接し、(一部を除いて)彼女達が望んで空間震を引き起こしているのではないということを知った。

だから、苦しんでいる彼女達を見て救いたいと思った。

そして、彼女達を士道が救うことができるということも知り、手助けしたいと思った。

 

 

だけれど、想い人である遠坂紅輝は違っていたのかもしれない。。

 

 

イギリスにいた時の彼を、士織は知らない。

もしかしたら本当に魔術師ウィザードなのかもしれない。だけど士織は信じていたかった。本当はただの士道の勘違いで、紅輝君が魔術師なんかじゃない、と。

 

 

しかし、さっきの紅輝の行動が士織の奥底にあった不安を呼び起こした。

 

紅輝は空間震警報が起きて、シェルターに真っ先に避難しようとするのではなく、自分は残って街の人々の避難誘導をすると言ったのである。

 

そして、士織に先にシェルターに入るように言い、彼は街の方へと走っていってしまった。

 

これが五河士織ではなく、普通の女の子であるなら彼の心配をしつつ自分の身を守るためシェルターに入るのだろう。

だが、彼女は違った。彼女は遠坂紅輝に対し、どうしても不安を拭うことができず、今こうしてシェルターの近くではあるがシェルターの外にいた。

 

「やっぱり士道が言ってたとおり、紅輝君は魔術師なのかな・・・。」

 

ポツリ、考えが漏れるように呟く。

そして、その瞬間街の中心部で空間震が発生する。規模は大きくなく、被害もそんなに出ているようではない。

だけど、確実に言えるのは精霊が現れた、ということである。

 

小学校のグラウンドからは遠くてよく見えないが、既にASTが出動していて、直ぐに戦闘が始まっていた。

 

不幸なことに士道は修学旅行で天宮市におらず、精霊の霊力封印はできない。

しかし、このまま何もしない五河士織ではない。せめて精霊の姿だけでも写真に収めようとスマートフォンのカメラを起動し、限界まで倍率を上げ連写する。

 

 

そして、やはりというか、信じたくなかったものが写る。

そこに写っていたのは初めて見る男の精霊と他のAST隊員とは違う装備に身を包んだ遠坂紅輝の姿だった。

 

「そん・・・なっ・・・!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――

7月17日 午後17時49分

 

「さ、話し合いをしようぜ、同類。」

 

そう言って精霊はニヤっと笑う。その余裕はどこからきているのか。己の実力を考えてのことなのか、それともただの慢心か・・・。

 

「話し合い、というが僕は君と話し合いをする気はないのだがね。」

 

「まあ、そういうなって。1つ確認するがこの世界がなんの世界か分かっているのか?」

 

先程とは違い真剣そうな表情に変わり精霊・・・いや、転生者はそう言った。

 

「・・・型月ではないのか?」

 

「んーや、違うここはデート・ア・ライブの世界だぜ。」

 

「何?」

 

「その表情を見るに知らなかったみたいだな。なるほどねぇ、なんでお前がASTなんかにいる理由が分かったぜ。」

 

そう言うと転生者は突然ニヤニヤと気持ち悪い笑みを浮かべた。やつの考えなどどうでも良いが、どうせろくなことではないのだろう。

 

「オーケーオーケー。良し、じゃあ質問だ。今日は何月何日だ?」

 

「7月17日だよ。」

 

「あー、やっぱそうかぁ。1期終わってるじゃん、あの神様マジで使えねー。四糸乃の攻略できねえじゃんかよー。」

 

転生者は己を転生させてくれた神に悪態を着いているのだろうか、自分としては、神なぞに1度もあったことは無いが生き返らせて貰っておいて、その態度はないのではないかとおもう。

 

まぁ、この無駄と思っていた会話の中にも一つ新しい情報を知ることができた。

それはこの世界が型月の世界ではなく、デート・ア・ライブという世界によく似た世界だということ。転生者の話し方を聞く感じ、自分でこの世界を望んだか、”神”とやらに行先を決めてもらったのか知らんが、収穫の1つはあった。

 

これ以上の会話は必要ないな。士織も待たせているし、時間をかけすぎるのも良くないだろう。

 

何かブツブツ呟いている転生者に向かって左にあるビーム砲を構え狙いを定める。

 

だが、引き金を引いた瞬間、転生者に気づかれてしまう。

 

「なっ!?てめぇ!」

 

即座に反応され、砲撃を回避されてしまった。

 

「これ以上の会話は僕には必要ない、転生してきて悪いが早々に死んでもらうよ。」

 

「ちっ!ASTに入った雑魚がいきがってんじゃぁねぇよ!」

 

やつはそう言うとGNソードⅢを構えこちらに切りかかってくる。自分はすぐさまブーストを吹かし上に上昇してその斬撃を回避して、自分もアロンダイトを構える。

 

転生者は、GNソードⅢをライフルモードにすると何発かの砲撃を放ちこちらを追撃してきた。こちらに当たりそうな何発かはビームシールドで防ぎ、残りは最小限の動きで回避する。

 

「これならどうだ!」

 

やつは0ライザー部分のミサイルポッドを開き、砲撃と共に誘導ミサイルを放つ。弾幕の量に回避は不可能と判断し左部のビーム砲を横薙ぎに放ち、ミサイルを破壊したミサイルの爆破で誘爆させ、残り僅かになったミサイルと一緒に放たれている砲撃をシールドでガードするがミサイルの爆風が紅輝の視界を奪う。

 

 

そして、その一瞬に転生者は肉薄しており、GNソードⅢで斬撃を繰り出す。

 

「っ!厄介な!」

 

紅輝はアロンダイトで何とか防御に成功するが、その力に押し込まれ、後ろに仰け反ってしまう。

 

「もらったぁ!!」

 

もちろん転生者はその隙を逃すはずもなく一気に畳み掛けるためにさらに肉薄しGNソードⅢを振りかぶった。

 

VL(ヴォワーチュールリュミエール)!!」

 

〈デスティニー〉の持つ武装であるヴォワーチュールリュミエール(以下VL)を展開し、後ろ方向に一気に後退することにより何とか転生者の攻撃の躱すことに成功する。

転生者は攻撃が外れたことに驚くが直ぐに体制を整えると紅輝を睨む。

 

「しぶといヤツめ、まぁいい、これで決めてやるぜ!トランザム!!」

 

その言葉と共に再び肩部のGNドライブから大量の粒子が放出され霊装が赤く発光しだす。

 

そして、転生者はトランザムの機動力で一気にこちらに接近してくる。

そのスピードは先程とは比べものにならない程で、気を抜いたら一気に押し切られてしまうことが容易に想像できた。

 

「確かに速いな・・・。だけど!」

 

自分も魔力生成機をフル稼働させ、そのリソースのほとんどをVLに回す。

トランザムにまともに正面から撃ち合うのは馬鹿のすることだ、やつのトランザムが切れるまで回避と防御に専念する。

 

今は耐え忍び、チャンスをものにする!

 

VL(ヴォワーチュールリュミエール)!」

 

〈デスティニー〉のウイングを最大にまで広げ、大量の魔力を放出しながら自分も一気に加速する。

 

しかし、やつは勝負を決めにきているのか、たびたび追いつかれそうになり、その度にカウンターを決めているがカウンターが当たる直前で量子化してしまい。こちらはジリ貧だった。

 

「はっ!さっきの勢いはどうした!逃げてばかりじゃ死んじまうぜ!」

 

「くっ。」

 

こちらを煽るように挑発し、なおも攻撃を止めようとしない転生者は、こちらの思惑を知ってか知らずか、その攻撃の勢いを止めず、肩部のGNドライブからも大量の粒子が放出されていた。

 

――いくら無尽蔵と呼ばれるツインドライブの00ライザーでもあの調子なら恐らくだが、トランザムは後1分か2分程度だろう。だが、それまでこちらの魔力生成機が焼き切れてしまわないかが心配だ。

 

このままでは本当に押し切られる、何か新しい策を考えなければ!

 

 

――っ!、あれなら!

 

「し、しまったー(棒読み)。」

 

そう言って自分はVLを打ち切り、あたかも魔力が切れたかのように振舞ってみる。

 

自分はスラスターの方も出力を打切り、そのまま自由落下する。

 

どうだ?食いつくか・・・?それとも・・・。

 

やつの方を見ると、これを好機と捉えたのかこちらに向かって一直線に向かってきていた。

 

「くそ!」

 

自分はそう言い、アロンダイトからビームライフルに持ち変え、やつに向かって乱射する。

 

「はっ!そんなもん当たんねぇよ!死ねや!」

 

既にやつのGNソードⅢの攻撃範囲に入ってしまい、攻撃が当たる直前、自分は随意領域を使い、アロンダイトを真っ直ぐ上に射出した。

 

「今だ!」

 

「なっ!?」

 

ほぼゼロ距離で放たれた大剣は避けることは不可能だ。

しかし、反撃に驚いた表情をみせた転生者だがすぐさまニヤリと笑うと、その体は再び粒子に変わり、その攻撃をなかったかのように再び距離をとった状態で現れた。

 

「残念だったな!お前の演技下手くそで丸わかりだったぜ!これで終わりだ!」

 

自分はあのまま自由落下し地面に落ちたが、衝撃は随意領域で無効化に成功した。だが、やつは既にトランザムは切れていたが、少しもダメージを受けている様子では無かった。

そして、自分の真上。およそ50メートル離れた距離からGNソードⅢとGNビームマシンガンの銃口をこちらに向けていた。

 

 

 

 

「次の君のセリフは、「消しとべ雑魚が!」という!」

 

「消しとべ雑魚が!・・・ハッ!」

 

自分は回収されてない(・・・・・・・)対精霊用実弾ライフル。CCCを拾い、そのの引き金を引いた。

 

―バァンッ!!

 

「ぐあぁ!?」

 

高速で放たれた弾丸がやつのGNソードⅢを持つ手に直撃し大きく仰け反り、GNソードⅢはあらぬ方向に弾き飛ばされる。さらに体勢を崩したやつにさらに追撃が入った。

 

「がっ!?な、なにぃ!?」

 

そう、それは上空から落下してきたアロンダイト。

CCCの攻撃は意識をこちらに向けさせるためのものでしかない。ゆえにあえて武器を狙った。

 

そして、その瞬間にもう一度VLとスラスターを展開させ、一瞬で肉薄する。

 

アロンダイトをやつの体から思いっきり引き抜き、パルマフィオキーナを発生させた右手でライザー部分である左のGNドライブを掴む。

 

さすがにやつも自分の身がどんな状況になったのかハッキリと自覚したのか自分を振り落とそうと暴れ回る。

 

「くそ!放せ!放しやがれ!」

 

やつの言葉を無視し、パルマフィオキーナの出力をさらに上げ、破壊した。

 

「がぁぁぁ!?」

 

片方の推力を失った転生者は、バランスを取れなくなりそのまま落下する。

自分はさらに追撃の手を緩めず、落ちていく転生者に追いつき、残ったもう片方のGNドライブにアロンダイトを突き刺し切り上げの要領で引き抜き、続けざまに両肩のビームブーメランを突き刺し、ダメ押しにビーム砲を接射する。

 

「うわぁぁぁぁ!?」

 

これで完全に転生者の推力を無力化した自分はアロンダイトを再び握り、野球のバットを振る感じで斬り飛ばす。

抵抗もできぬまま飛んでいくやつに一瞬で追いつき、そのまま地面に向かって全力で叩き下ろした。

 

 

 

 

 

叩き下ろされた精霊が激突したのは、紅輝がさっきまでいた小学校のグラウンドだった。

紅輝はすぐさま、地面に降りると動ける様子ではない転生者にアロンダイトを向ける。

 

狙うは心臓部、それでも死ななければ首を切り落とす。

 

そう決め、両手で柄を掴み、一気に突き刺した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「駄目えぇぇぇぇぇぇ!!」

 

「っ!」

 

アロンダイトの剣先がやつの心臓部に当たる直前、士織の叫び声が聞こえ思わず手を止めてしまう。

 

声の方向を振り向くと、案の定そこに居たのはシェルターにいるはずの五河士織だった。

 

「士織・・・!」

 

「精霊を殺すなんてダメだよ、紅輝君・・・。」

 

 

 




今回も見ていただきありがとうございます!
次回も見ていただけると嬉しいです!
お気に入りに追加して下さった

夜霧さん、犬よりネコさん、霧沢さん、白虎さん、読み書き91さん。

ありがとうございます!これからも見ていただけると嬉しいです!

今回は頑張って戦闘シーンを書いてみましたがやっぱり難しいですね。迫力のある描写を書けるように頑張らねば・・・。






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00ライザー襲撃 後編

28話目です。

皆さんあけましておめでとうございます!!

皆さんは福袋引きましたか?

私は新宿のアーチャーでした!!
持っていなかったので嬉しいです!!

まぁ、本音を言えば夏に当てられなかったBBちゃんが欲しかったですけど・・・。

紅閻魔ちゃん?いえ、知らない子ですね?


正月鯖は今までも当たらなかったのでそろそろ察してきますよね・・・。

他のアプリでもいいもの当たらなかったですし・・・。



「精霊を殺すなんて駄目だよ、紅輝君・・・。」

 

士織の言葉で自分は確信へと至った。

やはり士織は精霊を知っていて何らかの関わりがあるということ。

だが、そんなことは関係ない。自分は目の前の精霊を殺す。

 

「すまないが、その言葉はいくら士織の言葉であっても聞けない。だが、なぜシェルターに入ってなかったのも聞かないでおこう。」

自分は改めてアロンダイトを握りしめ精霊に向き直る。

だが、士織がそれを許さず、こちらに抱きついて止めてきた。

 

「1度離れてくれ、この精霊を殺せない。」

 

「・・・嫌だ。離さない。紅輝君、精霊を殺すなんて駄目だよ。精霊だって生きてるし、心もあるんだよ・・・。」

 

・・・分かっている、奴らは生きていて、心もあるということは。

だが、これだけは譲れない。精霊は存在するだけで悲劇をもらたす”悪”だ。

「士織も知っているなら分かるはずだ、精霊はこの世ならざる存在。我々人類に害をなす存在だ、その最たる例が空間震。30年前に起きたユーラシア大空震でどれほどの罪無き人達が亡くなったのか、君も知っているはずだ。」

 

自分は士織の方を向き、冷たく言い放つ。

しかし、自分がこう言っても士織の目は迷いは無く、ハッキリとした目でこちらを見ていた。

 

「もちろん、知っているよ。だけど、それはあの子達が望んで起こしたものじゃない。それにあの子達は本当は優しくて、良い子達なんだよ!殺すなんて駄目だよ・・・。」

 

「・・・夜刀神十香や〈ハーミット〉、琴里ちゃんのことか。」

 

「知ってたんだ・・・。なら尚更だよ、十香ちゃん達も今は精一杯生きているのにそんな子達を殺すなんて駄目。それに、私の知っている紅輝君は・・・。いや、正義の味方(・・・・・)はそんな子達を殺したりしない。」

 

「っ!!!」

 

士織の言葉に雷に撃たれたような感覚に襲われる。

”正義の味方”それは自分が一年ほど前に捨てたもの、だけど、士織はそれを知っているはずがない。

それでも・・・それでも!

まさか5年前のあの時の台詞を言われるなんて思いもしなかった。

 

さっきまでテコでも動かないと決めていた決意が、あの言葉に揺らいでしまう。

 

決心が揺らいでいる自分に士織は追い討ちをかけるように言葉を紡いだ。

 

「お願い紅輝君。イギリスに行っていたときに何があったのかは私には分からない。これはわがままだって分かってる。でも、この先、私の大好きな人が大好きな人達を殺す姿なんて見たくないよ・・・。」

 

 

 

 

 

 

 

「・・・はぁ、分かった、士織。君に負けたよ。こいつは殺さない。」

 

 

自分はそう言って武装を解除する。

士織にそこまで言われてしまったら仕方ない。これが惚れた弱みってやつかな。

 

やつは()のところは殺さないでおこう、後々役に立つかもしれないしな。もし、もう一度向かってくるなら容赦無く殺すけどね。

 

自分はとりあえず士織の手を取ってこの場を離れることにした。さて、ASTの報告書をどう書くかな・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――

 

 

「・・・くっ・・・そ・・・!こんなはずじゃあ、ない。俺が、こんな、ところで・・・!」

 

精霊となった転生者は、意識を取り戻す。

 

この世界に来て、転生特典である精霊の力でASTやDEMに無双しヒロイン達を攻略しようと企んでいた。

しかし、その考えは転生して初めての戦闘で儚く崩れ去った。

この世界に先に来ていた転生者によってズタボロにされ、無様な姿を晒している。

 

殺されると思っていたが、いくら経ってもその瞬間は訪れず、助かったのか?と思い、目を何とか開けると、彼自身をこんなふうにした転生者が、こちらに背を向け、さらに武装も解除した状態で歩いていた。

 

彼はそこで時間は経っていないことに気づき、また、この短時間で意識を回復させてくれた、この肉体に感謝した。

 

そして、転生者は憎悪の炎を燃やした。彼をこんな目に合わせたあいつに、一矢報いなければこの怒りは収まらない。

そう思い、何か攻撃出来るものが無いか、と思考を巡らしているうちに1つ、先の戦闘で使用していない武器を思い出し、粒子残量を確認すると、まだ1発も打っていないためか、まだ全然残っていた。

 

――なぜ、殺さなかったのか分からねぇがそれが命取りだ!お前のその甘さがてめえの死を招いたんだよォ!

 

内心ではマグマの様に煮えたぎる怒りを外に出さないようにし、ゆっくりとやつに気づかれないように腰に手を伸ばし、GNソードⅡの柄を掴むとゆっくりと外さないように狙いを定め、引き金を引いた。

 

――バシュンッ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――

 

――バシュンッ!

 

 

「っ!紅輝君危ない!!」

 

「なっ!?」

 

突然、士織に突き飛ばされ尻もちをついてしまう。

 

とっさに士織の方を見る、そして自分は見てしまった。

転生者の放った粒子ビームに本来貫かれるはずだった俺の代わりに士織の心臓部が貫かれる姿を・・・。

 

「なに!?しまった!」

 

後ろの転生者が何か言っているが自分はそれどころではなかった。心臓部を貫かれた士織はそのままの勢いで倒れ伏せてしまう。

 

「士織!!!」

 

〈デスティニー〉を装備し、すぐさま士織の方に駆けつると、ビームに貫かれた士織の心臓部からはおびただしい量の血液が流れていて、今までの経験上から分かってしまう。

 

後数分もしない内に士織は大量出血で死ぬ、ということが。

 

ここには〈医療用顕現装置〉はない。いまから全速力で基地に行ったとしても間に合わない、手持ちの宝石を使っても大きく空いた心臓部を治すことは不可能だ。

 

「こうき、くん・・・、ごめ、んね・・・。」

 

「士織!まってくれ!目を閉じてはだめだ!今君の傷を治す!だから意識をしっかりもってくれ!!」

 

嘘だ、士織はもう助からない。だけど、認めたくなかった。そこで認めてしまうと、自分は壊れてしまうかもしれないからだ。

 

「ね、ぇ。こうき君。かお、こっちに向け、て近づけ、て・・・。」

 

自分は士織の言葉のとおりに顔を近づける。

 

 

士織は自分の唇に小さくキスをする。

 

そのキスが終わると同時に士織はこと切れるかのように力が抜け、そのまま目を閉じた。

 

自分の唇には、たった今キスをした感触が士織の命のように薄らと消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、あぁぁ、ぁぁぁぁああ。嘘だ、嘘だ嘘だ嘘だ!。」

 

――なぜだ?何故こんなことに?こんなことになったのは誰のせい?

 

自分に攻撃した転生者?

 

それもある

 

たけど、こんなことになったもう1つの原因は自分自身だ。

 

 

「僕が、あいつを殺すのを止めたせいだ!!!

士織の言葉に絆され!あいつへのトドメを刺さなかった僕のせいだ!!」

 

自分は憎しみだけで人が殺せそうなほどの怒りに満ちた目で転生者を睨みつけた。

 

「ひっ!?」

 

「〈デスティニー〉!!!僕の魔力の全てを持っていけ!!」

 

魔力生成機の他に、自分の持っている魔力も〈デスティニー〉に出力させ。過去、自分でも試したことの無い程の魔力(エネルギー)の量を〈デスティニー〉に流し込んでいるためか、アロンダイトのビーム部分は大きく膨張し、VLは常時発動しているかのように魔力が漏れていた。

 

 

「許せないし、許さない!!お前も自分自身も!!!」

 

逃げようとしている転生者の脚をアロンダイトで斬り飛ばす。

 

「がぁぁぁ!?足が!足がぁ!?」

 

痛みのあまりに悲鳴をあげる転生者を無視し、そのまま倒れ込んだやつの両腕を切り落とし、再生しにくいようにビームライフルで切り口を焼いた。

 

「ゔぁ”ぁ”ぁあ!??腕がぁ!!?わ、悪かった!

俺が悪かった!もうあなた様には近づかない!なんでもするからっ!ゆ、赦してくれぇ!!なんでもする!なんでもするから!!あなた様の駒にでも何にでもなる!だから・・・」

 

「・・・なんでもするって?」

 

先程の炎のような自分の勢いから急に態度が変化したことに驚いたいた転生者だが、直ぐにハッとする。

 

「へっ?あ、はい!します!何でもします!この世界の情報でもなんでも話します!」

 

 

 

 

 

 

「・・・分かった。それなら惨たらしく死んでくれや。」

 

自分はそう言ってダルマ状態の転生者の顔面を右手で掴むとパルマフィオキーナを容赦無し、全力の出力でビームを何発も何発も撃ち込んだ。

 

 

何発撃ったか数えるのを辞めたてからも撃ち続け、ヤツの顔は見るも無惨な姿になり、既に事切れているかのように反応が無くなっていた。

 

自分は無言でアロンダイトを構え、首を撥ねた。

そして、念を押して次に心臓部をアロンダイトで突き刺した。

 

 

すると、ヤツの体は翠色の粒子へと崩れていき、そのまま砂のように粉々になり、消滅した。

そして、やつの体があったところから青と翠色に輝く宝石のようなものが浮かんでいた。

 

「・・・精霊の心臓のようなものか。」

 

自分はそれを手に取ると、無性に虚しさが込み上げてきた。

 

「クソ!!こんなもので!士織は助からない!!!こんなものぉ!!!」

 

自分は怒りをぶつけるように、精霊の心臓部(霊結晶(セフィラ))を地面に叩きつけようとした、その時。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『あの娘、助けたい?』

 

 

どこからともなく、謎の声が聞こえ。自分はアロンダイトを構えて周りを見渡す。

 

すると、突然。ノイズの塊のような存在が自分の目の前に現れる。

「さっきの声の主はお前か。誰だかしならないが用がないならさっさと消えろ。」

 

『まぁ、落ち着きなって。それに、あの娘のこと助けたいんでしょ?』

 

目の前のノイズの塊は士織の方を指さしをしているかのような仕草でこちらに尋ねてくる。

 

「・・・自分はお前が何者か分からない。それに、死んだ人間を生き返らせるのは、かの聖杯でもなければできない。早く自分の前から消えろ、さもなくばアロンダイトで叩き斬る!」

 

自分がそう言うと、ノイズの塊はやれやれと言わんばかりの仕草をすると、にやりと笑う。

 

『ふーん、本当にそれでいいの?私が欲しいのは君の持っているそれ。それを渡してくれればあの娘を助けると誓おう。』

 

この存在が一体何者かは分からない。だけど、自分の心を揺さぶるには”士織を助ける”という言葉は充分なものだった。

 

 

 

「・・・本当に、これを渡せば士織の命を助けてくれるのか?」

 

『あぁ、もちろん。君も魔術師なら等価交換は基本だろう?それは私にはとって命にも等しいもの。心配なら自己強制証明(セルフギアス・スクロール)でも書こうかい?』

 

「・・・いや、いい。今この時点だけ、お前の言葉を信用しよう。これを渡せばいいんだな?ほら。」

 

自分はノイズの塊に先程の、精霊の心臓?を投げ渡す。

ノイズの塊は、それを受け取ると、『確かに受け取ったよ。』といい。士織の体に近づく。

 

そして、手を伸ばし、穴の空いている心臓部に手を当てると、激しい光を発生させる。

 

 

「くっ、この光は!?」

 

自分はあまりの眩しさに目を背けてしまう。

 

ほんの数秒後、光が収まり。士織の穴の空いていた心臓部を見ると、傷痕が全く残っていない状態で元通りになっていた。

 

「士織!!」

 

直ぐに近づき、脈の確認をすると、正常に脈を刻んでおり、呼吸も正常だった。

 

「良かった!生きている、生きている!!」

 

『これで契約は完了したよ、あとは君次第だ。』

 

ノイズの塊はそう言うと空気に溶けるように消滅した。

 

やつの正体はなんであれ、今のところは感謝をしておこう。

 

 

自分は未だに目覚めない士織をおぶると、ASTに精霊を殺した。と報告してこの場を去った。

 

買い物袋は士織の隠れていた場所に置かれていたので転移の魔術で五河家の玄関に送っておいた。

 

 

後始末は他のAST隊員に任せよう。精霊を殺したんだ、これくらいはいいよな。

 

 

 

 

 

 

 

 




今回も見ていただきありがとうございます!
次回も見ていただけると嬉しいです!!
お気に入りに追加して下さった。
Kalisさん。
ありがとうございます!
これからも見ていただけると嬉しいです!!

ちなみに、察しのいい皆さんなら気づいているとは思いますが、ノイズの塊はファントムさんで、生き返らせた方法は霊結晶を使って蘇生させました。


オリ主は士織を1度死なせてしまいましたからね、精霊に対して原作の折紙さんのように憎悪の炎を燃やすでしょう。

そして、近い将来。士織の姿を見て、彼はこの日の自分の行動をどう思うでしょうねぇ?

愉しみですねぇ!!


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You're watching,aren't you?

29話目です。

最近、やっと任天堂スイッチとスマブラを買いました!
私が最後にスマブラをしたのはWiiのころのやつなので知らないキャラがいっぱいいてビックリしました!

今のところのお気に入りのキャラはDXのときにも使っていたピカチュウです!(対人戦で勝てるとは言っていない。)

今回はプロットに書いていないことなので内容が雑になっているかも知れません・・・。
見にくかったり、分かりにくかったらすみません・・・。

次からはちゃんとプロットがあるので安心してください!


 

精霊との戦いが終わり、空間震警報のせいで誰も居ない道を自分は士織を背負って歩いていた。

 

士織の服は何とか魔術で修復し、これからどうするかを考えていると、おぶっている士織が目を覚ました。

 

「・・・あれ?ここは・・・?」

 

「っ!目を覚ましたか士織、どこか痛いところとか無いか!?」

 

「え?あ、うん。ごめん紅輝君、私今の状況がよく分からなくて・・・。空間震警報が起きて紅輝君を待ってたところまでは覚えているんだけど・・・。」

 

・・・何?今士織はなんて言った?

 

考えられるとすれば、どうやら殺される直前の記憶は無くなっているようだ。

いや、自分自身の死など覚えていることなどよっぽどの精神力の持ち主でない限りできないだろう。

人間の本能として当然のことだと考えていい。

 

だが、それなら話は変わってくる。

先程のことを誤魔化すべきか、それとも全てを話した上で改めて話し合うか・・・。

 

 

 

 

 

いや、士織はまだ意識が回復したばかりだ、今はまだ話すべきではない。

それに、いつ記憶が元に戻るかも分からない、今のところは安静にしておくべきだ。

 

今はごまかしておこう。

 

 

「士織は空間震の余波を受けて意識を失っていたんだ。すまない、自分がシェルターに戻るのが遅くなったばかりに・・・。」

 

 

「う、ううん。大丈夫。結果的に助かったんだから。」

 

そう言った士織だが、内心は疑問が湧いていた。

空間震が起きたなら精霊が現れたはず。

そして、精霊が現れたのならASTが出動し精霊との戦闘になる。

そして、ふと公園にある時計が目に入った。

気を失う前の時間から、30分以上過ぎており、精霊が現れASTとの戦闘が終わるまでの時間としては充分だろう。

 

ゆえに、士織は疑問をそのままにしておくことができなかった。

 

 

「ねぇ、紅輝君。私に何か隠してる?」

 

「っ!?・・・いや、何も隠していないよ。」

 

「・・・嘘だね、紅輝君は嘘をつく時は無意識に手に力が入ってるんだよ。」

 

「な?!」

 

紅輝はしまったと言わんばかりに足を止め手の力を抜いてしまう。

だが、それはこの状況ではしては行けない行為。

そして、これを見た士織の疑問は確信へと至った。

 

「・・・やっぱり何か隠しているんだね。」

 

「・・・なんの事かな。」

 

「もう隠しても無駄だよ。私の予想だと、紅輝君はASTの魔術師。さっき空間震で現れた精霊を逃がしたか、撃退した。

 

 

 

 

 

―――もしくは殺害した。違う?」

 

「・・・。」

 

「沈黙は肯定と受け取るよ。」

 

「・・・君は、自分が思っていた以上に頭が回るみたいだ。そうさ、さっき出現した精霊は自分が殺した。だが、自分を恥じるような行為ではないと思っている。」

 

自分がハッキリとそう言うと、士織はさっきのような自分に探りを入れるような声色ではなく、ぽつり、ぽつりと呟くような声色に変わった。

 

「私は、ね。私の大好きな人が私の大好きな人達を殺す姿なんて見たくないよ・・・。紅輝君がイギリスにいた時に何があったのかは分からない。だけど、お願い。

精霊を殺さないで・・・。」

 

紅輝は士織のこの言葉に口をつぐむ。

だけど、つい直前に士織に起きたことが脳裏に焼き付いていた紅輝はその言葉を素直に受け入れることは。

もう、できない。

 

 

 

 

 

だから、彼は士織に優しい嘘をついた。

 

 

「・・・分かった。自分は精霊をよっぽどのことがない限り殺さない。それこそ士織、精霊が君の命を奪うということがない限りね。」

 

「本当に?」

 

「あぁ、本当さ。」

 

「・・・その言葉、信じていいんだね。」

 

 

そう言うと士織のこちらを抱きつく力が少し強くなる。

自分はそれに応えるために士織を支える腕の力を少し強めた。

 

 

 

 

――そう、精霊が1度でも士織、君を殺さない限りは、ね。

 

 

 

 

 

 

 

 

あの後も誰もいない街を歩き、もうすぐ五河家に着くといったところで士織が自分の肩を叩いた。

 

 

「紅輝君もう大丈夫だよ。1人で歩けるから・・・。それに、もうすぐ家に着くから。」

 

「嫌だ。」

 

「え?」

 

「こんな我儘をいうのはどうかとは思うが。士織、今君を離したくないんだ。だけど・・・本当に嫌なら言ってくれ。」

 

士織は紅輝におぶられているため、紅輝の顔が見えなかったが、今まで聞いてきた彼のどの声よりも弱々しく感じた。

その言葉に士織は不思議な気持ちに襲われた。

 

――こ、これは、何かくるものがある・・・!紅輝君がこんな声を出すなんて・・・!?ハッ!しっかりしろ私!

 

「ううん。・・・嫌じゃない、けど。でもこれじゃあ紅輝君の顔が見えないから少し嫌かな?」

 

「っ、そうか!それならこうしよう。」

 

そう言うと紅輝は士織を1度背中から下ろすと、いわゆるお姫様抱っこをしたのである。

 

「これならちゃんと顔が見える。」

 

「え、あ、その。これは予想外かな///。でも、嬉しい、かも・・・。」

 

「それなら良かった。それじゃあ、最後までエスコートしますよ。マイプリンセス?」

 

「もう///からかわないでよ!」

 

 

 

 

――――――――――――――――――――

 

~DEMイギリス本社

 

彼、アイザック・ウエストコットは高級なオフィスチェアに座りながら、日本に現れた新種の精霊とASTとの戦いをモニターで観ていた。

場面はすでに終盤を迎えており、大量の魔力を放出させた紅輝が精霊を殺しているシーンだった。

 

「ふむ、やはり、彼の実力は中々のものだ。あの時に引き抜けなかったのが我が社の大きな損失だ。君もそう思わないか、エレン?」

 

彼の隣で同じくモニターを見ているノルディックブランドの髪をもつ女性。エレン・ミラ・メイザースはその言葉に対し短く言葉を返す。

 

「ええ、そうですね。」

 

「相変わらずつれないなぁ、エレン。おや、どうやら殺せたようだね。」

 

モニターを見ると、遠坂紅輝が〈デスティニー〉のアロンダイトを使い、精霊の首を撥ね、心臓を突き刺した。精霊はそのまま消滅し、霊結晶のみがその場に残された。

だが、その時。同じく画面上にノイズの塊のようなものが現れた。

 

「ん?エレン。画面の右中央をアップしてくれ。そう、そこだ。」

 

アップした先には先ほどよりも見やすくなったノイズの塊が映されており、それが遠坂紅輝に近づいて何か話していた。

 

「エレン、今の会話の音声拾えるかい?」

「わかりました、やってみます。」

 

エレンがリモコンを使い、音声を拾おうとしたその時だった。

 

画面全体がノイズに覆われ、何も見えなくなったと思いきや。そのノイズが人の形を取ると、男とも女とも。子供とも老人とも取れるような声でそのノイズの塊は言った。

 

 

 

『アイザック・ウエストコット、貴様、観ているな?』

 

 

その言葉と同時に中継機器が破壊されたのか、バキッという音声の後、映像が流れなくなってしまう。

 

「アイク・・・!。今のは一体・・・?」

 

エレンが驚きを隠せずにアイザックに聞くと。

アイザックは驚きや恐怖を見せるわけでもなく。

 

彼は笑っていた。

 

 

「く、くく。ははははっ!なるほど!してやられたか!!どうやら私達はまだあの女の手の上で踊らされているようだ!」

 

狂ったように笑うアイザックだが、数秒もするとその表情を元に戻すとエレンに視線を向けた。

 

 

「―――さて、エレン。次は君の話だ。或美島での件はどうなっている?」

 

「・・・はい、今のところは順調です。夜刀神十香という〈プリンセス〉の反応を示す女子生徒の写真もここに。」

 

そう言ってエレンは封筒から現像した写真をデスクの上に広げる。

 

「ふむ、やはり見れば見るほどそっくりだ。だが、念には念を入れよう。このまま調査を続けてくれ。」

 

「わかりました、それでは私は或美島に戻り任務を再開します。」

 

 

 

 




今回も見ていただきありがとうございます!
次回も見ていただけると嬉しいです!!

お気に入りに追加していただいた。
英雄王(ゝω・)さん、Mig-21@0さん、ダーシンさん。
ありがとうございます!
これからも見ていただけると嬉しいです!!



ちなみにタイトルはとあるキャラのセリフを英語にしてみただけです。





2/21 文字化け?していた所を修正しました。


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勉強会?

30話目です。

皆さん、おはこんばんにちは!!
またまた投稿間隔が少し空いてしまいました・・・。
理由としては今週学期末テストがあったのでそのための勉強をせざるを得なくなった。ということです。
それに伴い今回はかなり短くなってしまったことに謝罪させていただきます。
次話は今回の2倍ぐらいある予定なのでどうかご勘弁を・・・。

唐突ですが、超次元ゲイムネプテューヌに登場するキャラクターのパープルハートっているんですが、そのキャラクターのネクストフォームが私の性癖にどストライクなんです。どうしたらいいですかね? (どうでもいい。)




 

8月1日 土曜日

 

高校3年生の夏休みは通称、受験の天王山とも言われている。それは来禅高校でも同じようで、進学クラスではない我がクラスも多少の影響を受けていた。

 

まぁ、自分は表向きは親の仕事を継ぐと言っているが、高校卒業後もASTで働くことになるだろう。

だけど彼らの気持ちは前世できっと自分も大変な思いをしていたと思うからよく分かる。

 

 

なぜ唐突にこんな話をしたかと言うと、士織も受験組にならって勉強をしている1人だからだ。

士織は近くの医療系の専門学校に行くつもりらしく、そのための勉強が必要らしい。

 

まぁ、彼女がこうやって頑張っているのだから、一応、彼氏として手伝いたいと思うのは当然ではないだろうか。

だから今日は士織のために二人きりで勉強会をすることになった。

 

高校3年の内容は前世プラス時計塔で終わらせているためよっぽど難しい問題でなければ解けるだろう。

 

 

「さて、と。そろそろ士織を迎えに行きますか。」

 

ぽつりと呟き。五河家へと歩みを進めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――

 

「ねぇ、紅輝君。どうして私の家じゃなくてわざわざ図書館に?」

 

五河家に士織を迎えに行き。図書館に向かっている途中、士織が不思議そうに聞いてくる。

まぁ、当然の疑問と言えば当然だろう。勉強会なら別に士織の家でもできる。

こんな夏の真昼間から歩きたくない、という気持ちも少し含まれているかもしれない。

 

だが、五河家に士道がいる。

否、正確には士道の周りには精霊が少なくとも3体の精霊がいるのだ、何か間違いが起きて士織の命の危機に会うなんてことは起きて欲しくない。

過保護と言われても仕方ないと思う。だけど彼女は1度目の前で失ったのだ。

もう二度と士織を危険な目に会わせたくない。

だが、とりあえず理由は必要だろう。

 

「確かに君の部屋でも良かったかもしれないが・・・。その、なんだ。恥ずかしい話、君の部屋に居ると自分が勉強に集中できそうにないんだ。それに、士道や琴里ちゃんに気を使わせるのも悪いしね。」

 

「むぅ、それなら仕方ないかな別に襲ってくれてもいいのに・・・。だけど、そのかわり何か飲み物奢ってね?」

 

「そのくらいでいいならお安いご良いさ。」

 

 

その後も、たわいのない会話をしながら1度コンビニによって飲み物を買って、市立図書館に着いた。

 

中に入ると、図書館特有のにおいとクーラーの涼しい風を感じる。

自分達の他にも涼みに来ているのか、チラホラ他の人達の姿も見えた。

 

「ふぅ、やっと着いたね。どこでしようか?私的には暑いから窓際の席は少し遠慮したいかなぁって。」

 

「確かに、あ。あそこなんてどうだ?奥の方だが窓側じゃないしエアコンの風も直に当たる場所じゃないから結構いいんじゃないか?」

 

その席がある場所を指さしながら士織に尋ねる。

 

「うん、私もそこがいいと思う。」

 

そういった士織の手を引きながらその席のある場所に着くと士織が座った席の隣に座る。

 

士織は持ってきた鞄から英語の問題集を取り出した。

その問題集には可愛らしい付箋が貼られており、士織はそのページを開くと不正解となっている所を指さす。

 

「さっそくなんだけど、ここの和訳ができなかったんだけど・・・。」

 

「あぁ、なるほど。その文はこれと、この単語が────。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────────────────

 

あれから数時間、士織の分からないポイントをぶっ続けで解説などをしながら。ついに、最後の問題を解き終えた。

 

「んんー!はぁ〜。紅輝君今日はありがとう。おかげでわからない所はあらかた解決できたよ。」

 

士織は持っていた筆記用具を筆箱の中に直し、最後に開いて生物の問題集を閉じ、鞄に直した。

 

「いや、こちらも大切な復習になったから良かったよ。他にも自分にできることが有ったらなんでも言ってくれ。」

 

「ふふ♪ありがとう。あ、話は変わるんだけど8月10日って予定空いてるかな?」

 

ふむ?8月10日は特にこれと言った用事はなかったはずだよな。学校も既に夏休みに入っている・・・うん。大丈夫だな。

 

「特にはないが・・・どこか行きたい場所でもあるのか?」

 

「ふふ、じゃーん!良かったらこれに行かない?」

 

士織がそう言って鞄の中から取り出したのは元冬木市にあるレジャー施設。【わくわくざぶーん】のチケット入場チケットだった。

 

「おお!士織、これを一体どこで手に入れたんだ?」

 

「少し前にショッピングモールの福引で当たったんだ。それに・・・せっかく水着を買ったから着ないと勿体ないから、ね?」

 

少し恥ずかしそうに顔を赤らめながらチケットの片方を自分に手渡して来たのを喜んで受け取る。

正直言ってかなり嬉しかった。この夏のうちにプールか海に士織と一緒に行きたかった所に渡りに船と言わんばかりにこんなことが起きるなんて・・・!

 

「ありがとう、士織。君はやっぱり自分のエンジェルだ。」

 

自分はそう言って士織の手をがっちりと掴んだ。

 

「え、エンジェルなんて・・・///。もう!大袈裟だよ//。」

 

 

周りの人達「(こんな所でイチャつきやがって・・・!)」

 

 

 

 

もちろん、士織が持っていたわくわくざぶーんのチケット。誰が用意したなど賢い皆様なら想像は容易いでしょう。

 

 

 

 

 

 




今回も見ていただきありがとうございます!
次回も見ていただけると嬉しいです!
お気に入りに追加して頂いた。
みょんぽにゅさん、シャロ0802さん、量産試作葛根湯さん、秋桜44さん。
ありがとうございます!これからも見ていただけると嬉しいです!


話は変わるんですが、先日携帯をAndroidのエクスペリアからiPhoneXrに変えました。機体の性能は圧倒的にiPhoneの方がいいはずなんですが今までずっとAndroidの携帯を使ってきた身からすると、まだまだ慣れない部分が多くあって戸惑ってしまっています。
早くiPhoneの操作に慣れたい・・・。

後、私ってあまりVチューバーを見ないタイプなんですよ。正確には今まで誰とは言いませんが、首絞めさんのことはちょくちょく見てただけであまりVチューバーに興味がなかったんですよね。ですが最近、ふと目に止まったVチューバーグループ?が意外と面白くて少しハマってしまっています。
まぁ、通称演劇部って言われている方々なんですけどね?
皆さんもぜひ見てみてはいかがでしょうか?(ダイマ?)




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わくわくざぶーん

31話目です。

皆さん、おはこんばんにちわ。
最近、39度の熱を出し、生死をさまよいかけました。
いやー!健康って素晴らしいですね!!

皆さんも健康にはぜひ気をつけて下さいね!
風邪などを引いてしまうとできるものもできなくなってしまいますから!


 

8月10日

 

士織とわくわくざぶーんに行く約束をし、ついにその当日となった。

自分は集合時間の20分前に、わくわくざぶーん行きのバスが止まる天宮駅のバス停の近くのベンチで士織を待っていた。

夏真っ盛りなこの時期であるため、夏の風物詩たる蝉も己が存在を主張するためにうるさい程鳴いていた。

ここに来る途中で買ったスポーツドリンクに口を付けながら周りを見渡していると、白いTシャツにスカートというシンプルな組み合わせにペーパーハットを被った士織がいた。

士織もこちらに気づいたらしく、手を振りながらこっちに走ってきた。

 

「ふぅ、お待たせ。やっぱり紅輝君も早めに来てたんだね。」

 

「あぁ、自分も楽しみで仕方なかったからな。思わず早めに来てしまったよ。」

 

「ふふ、私も楽しみだったからお互い様だね。どうする?まだもう少し時間があるけど・・・。」

 

確かに、時計を見るとバスが来る時間まで15分もあった。

ふむ、15分か。何もしないと長いし、何かをしようとすると短い、そんな微妙な時間。そう言えば士織は飲み物とかは買ったのだろうか?

ふと思った自分は士織に聞いてみた。

 

「そう言えば、士織。何か飲み物は買っているか?一応、君の分のスポーツドリンクも買ってあるが・・・。」

 

「あー、そう言えば買ってなかったね。時間もあるし中に何か飲み物でも買いに行こうよ。」

 

「よし、それじゃあ行くか!士織は何が飲みたい?」

 

「うーんと。あ、そう言えばシェイクを売っている店があったよね。私はそこのバニラシェイクがいいかなー。」

 

「それじゃあ自分もそれにしようかな。」

 

 

 

 

 

自分と士織は駅の中に入り、無事時間内にバニラシェイクを手に入れることができた。外に出て、時間を確認すると、バスが来るまで後数分になっておりちょうどいい時間になっていた。

 

2人でたわいの無い話をしていると、時間通りにわくわくざぶーん行きのバスが到着した。

 

「お、きたきた。紅輝君、楽しみだね!」

 

「あぁ、本当に士織さまさまだよ。」

 

わくわくざぶーん行きのバスはバス停に着くと、停車し、扉が開く。

 

「さ、紅輝君?」

 

士織はそう言うと自分に手を差し出してくる。

自分は士織の考えを察し、彼女の手を取って言葉を返す。

 

「もちろん。おまかせくださいお嬢さま?」

 

士織は自分の言葉に少し顔を赤らめながら、可愛らしく笑った。

その笑顔はとても眩しく、改めてこの笑顔をずっと守っていきたいと思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───────────────────

 

その後、約1時間程で、遂にわくわくざぶーんに着いた。

バス停から降りると、わくわくざぶーんはすぐ目の前にあり、完全ガラス張りのドームであるため、太陽の光をキラキラと反射しておいた。

わくわくざぶーんは自分が小学生の時に父さんに連れて行ってもらったきりで1度も来ていなかったから。かなり久しぶりで楽しみであった。

 

「改めて思ったがここに来るのは久しぶりだなぁ。」

 

「へぇ、そうなんだ。私は一昨年くらいに家族と1度来たかな?」

 

「なるほど、よし、それじゃあさっそく行こうじゃないか。」

 

「うん!。」

 

入場口で係員さんにチケットを渡した後、更衣室前で一旦別れ、自分はこの前買った水着に着替え、消毒などを済ませたのちに女性更衣室から少し離れた場所で士織を待っていた。

 

待っている間、周りをしっかりと見回すと、わくわくざぶーんの凄さを改めて目の当たりにした。室内プールでありながらも日本で1番規模が大きいと言われても納得の広さでありながらも、プール以外の施設も充実しており、ここだけ海外のリゾート地かと見間違うほどだ。

 

「恐るべき英雄王の遺産と言うべきか・・・。」

 

「紅輝君、お待たせ。」

 

女性更衣室の方から、この前買った、黒色のビキニタイプの水着を着た士織が出てきた。

自分は改めて士織の水着に見とれてしまう。前にショッピングモールの試着室で見た時よりも心なしか魅力的に見える。

 

「とても可愛い、それに魅力的だ。ここが施設じゃなかったら誰にも見せたくないくらいだ・・・!」

 

「え、ええ!?あ、ありがとう・・・///。」

 

自分でもこんな臭い台詞がすらすらと出てしまうほどに士織の水着姿は魅力的だった。

そらに士織の反応もとても可愛く・・・。あぁ、もう本当に可愛い!(語彙消失)

 

「こほん、さあ、最初はどこに行きたい?君のチケットのおかげでここに来ることができたんだ。君の行きたいところに行こう。」

 

「え?いいの?やったあ!それじゃあ最初はあそこに行きたいかな。」

 

そう言って士織が指さしたのは施設の1番の目玉と言っても過言ではない巨大なウォータースライダーだった。

しかも、その内のペアで乗ることのできるアトラクションの様で、離れている自分たちのところにまで体験者達の叫び声が聞こえていた。

 

「分かった、それじゃあ行こうか!」

 

自分は士織の手を握って、そのウォータースライダーまで向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────────────────

 

「「きゃぁぁぁぁぁぁぁああ!!??(うぉぁぁぁぁぁぁぁあ!?)」」

 

 

─ざばぁぁぁぁあん!!

 

「・・・・ぷふぁ!紅輝君!楽しい!これもう1回いこう!!」

 

「はぁ、はぁ。え?マジで?いや、わかった・・・。」

 

 

結局この後5回くらい乗った。

 

 

 

 

 

─────────────────────

 

「次は流れるプール行こう!」

 

「OK、分かった。(た、助かった・・・。)」

 

流れるプールをこの後3周くらいした。

 

 

─────────────────────

 

流れるプールから上がって、なお元気いっぱいの士織について行きながらプールサイドを歩いていると、士織は次にビーチプールの方を指さしながらはしゃいでいた。

 

「次はビーチプールの方に行こうよ!」

 

「了解、ん?もう、こんな時間か。士織、後20分で昼にしないか?もうすぐ12時だし士織も一旦休憩しよう。」

 

「あ、ほんとだ。分かった。それまで向こうで一緒に泳ごう!」

 

「よし、いいだろう。テムズ川で鍛えた水泳能力を見せてあげよう・・・!」

 

 

 

 

 

そんなこんなで20分を大幅に過ぎてしまったが、何とか士織を説得し、現在はフードコートへと向かっていた。

 

「どうする?士織は何を食べたい?」

 

「うーん、そうだね。やっぱりこういう施設にきたからには焼きそばとかき氷は食べたいよね。あ、それと、確か2階の方にタピオカがあったからそれも飲みたいかな?」

 

「うーん、なら自分はたこ焼きでも食べようかな?飲み物は自分もタピオカジュースにするか。士織タピオカジュースは何味がいい?」

 

「えーと、マンゴーかな?」

 

「分かった。自分も士織と一緒でマンゴーにしようかな。」

 

「あ、紅輝君!あそこ、席空いてるよ。」

 

士織の言う方向を見ると、ほとんど席が埋まっているところに運良く誰も座っていない席があった。

急いでその席を確保し、腰を落ち着かせることができた。

 

「それじゃあ自分は昼ごはんを買ってくるから士織はここで待っててくれ。何かあったら携帯に電話してくれ。」

 

「分かった、行ってらっしゃーい。」

 

 

 

 

 

 

 

「毎度あり!」

 

「こちらこそありがとうございます。」

 

屋台のおじさんからたこ焼きを受け取って、全ての買い物がおわり、士織の所へと戻ろうとしたときだった。

 

「──!!」

 

「───。」

 

「───。」

 

士織が待っている席の方から声が聞こえ、急いで戻ろうとするが、人の波にのまれそうになりながら近くまで行くと、士織の声がハッキリと聞こえた。

 

大学生くらいのにーちゃん2人が士織に絡んでいた。士織の表情や声のだし方からして明らかに知り合いではないと判断し、少し頭にきた自分はにーちゃん達に声をかけようとした、その時だった。

 

 

「しつこいって言ってるじゃん!あっちいってよ!」

 

士織の腕を掴もうとしたにーちゃんを払い除けたのか、ものすごい勢いで一人のにーちゃんは吹き飛ばされ、近くのプールに落下した。

 

「え?・・・あれ?私こんなに力あったかな?」

 

驚いている士織に目もくれず、相方を投げ飛ばされたもう1人のにーちゃんは逆上し、今にも士織に襲いかからんとしていた。

 

「くそっ!このアマァ!」

 

「まずい!士織!」

 

このままではまずいことになると思った自分はにーちゃんの腕を掴もうとしたが空を切った。

 

「離して!」

 

士織が掴まれた腕を全力で払ったのか、まるで士織に怪力でもあるようににーちゃんは、さっきもう1人のにーちゃんが吹き飛ばされた方向に飛んで行った。

 

「・・・・はっ、士織!大丈夫か!?」

 

あまりの出来事に少し放心してしまったが何とかすぐに意識を元に戻し、士織に駆け寄った。

 

「!紅輝君!」

 

自分の声に気がついたのか、士織が胸に飛び込んできた。

 

「うぅ、怖かったよぉ・・・。」

 

「すまない士織、自分がもっと早く戻ってきていれば・・・。」

 

泣きそうな士織を抱きしめ、頭を撫でながら、先程のにーちゃん達の方を見ると、何とか岸に上がったようだった。自分が見ていることに気がついたのか、そそくさと奥の方へと去っていった。

 

 

これでひとまずは安心かな。

 

「士織、もう大丈夫だ。ほらせっかく昼買ってきたから食べよう?」

 

「・・・させて。」

 

「ん?」

 

「食べさせてくれなきゃ・・・いや。」

 

──か、可愛いい!!??

 

涙目+上目遣いのコンボによって自分の心はもう、YESとしか答えられない状態になってしまった。

 

「分かった。食べさせてあげるから、ほら泣き止んで?」

 

「・・・うん。ふふっありがとうね。紅輝君大好き。」

 

そう言って涙を拭い、にっこりと笑う士織に自分は見とれてしまった。

やっぱり、士織は自分が何としても守らなくては、もし、今いる精霊全てと殺し合うことになったとしても・・・。

 

 

 

その後、言葉通りに周りの注目を集めながらお昼を食べさせ合うことになった。

 

 

 

 

 

──────────────────────

 

辺りもすっかり夕方になり、自分と士織は帰りのバスに揺られながらプールでの疲れを癒していた。

士織は途中ですっかり眠ってしまい、今は可愛らしい寝息をたてていた。

 

精霊との戦いとは全く無関係な今の平和な時間。

この時間がずっと続けばいいのに、と考える。

こうして、士織と二人っきりで遊んで・・・本当なら士道や琴里ちゃんとも仲良く遊んでみたかったな。

 

だけどそんなに人生は上手くいかない、なにより、琴里ちゃん自身が精霊だ。

イギリスでアルテミシア達と目指した"精霊の居ない、平和な世界"にするため。いつかは琴里ちゃんをも殺さないといけない日がくる。

だが、精霊を殺せば士織は悲しむだろう。

なにより、琴里ちゃんを殺せば自分は士織に嫌われてしまうかもしれない。

 

いや、かもしれないじゃない、確実に嫌われてしまうだろう。

だけど、それで士織が危険な目に合わなくて済むのなら、自分は心を鬼にしよう。

 

 

それが、1度、自分の甘さで君を死なせてしまったことへの償いだから。

 

 

 

 




今回も見ていただきありがとうございます!
次回も見ていただけると嬉しいです!

お気に入りに追さて下さった。
マサキングさん。ありがとうございます!これからも見ていただけると嬉しいです!

皆さん、質問?アンケート?みたいなものなんですが、
未だにプロットは書き続けているんですが、先日、デアラの3期を一気見してて思ったことがあったんですよね。
1話の1番最初に劇場版の描写がほんの少しだけあったんですよね。
ですので本作品も劇場版の方をした方が良いでしょうか?
プロットは今ちょうどその辺であと少しで美九編が書き終わるので一応聞いておきたいなぁと思いました。
良ければ答えて頂ければと思います。

最後に、皆さん本当に健康には気をつけて!!



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覚醒-めざめ-

32話です。

皆さんおはこんばんにちわ!
ありきたりなサブタイで申し訳ないです・・・。

あ、最近、やっと自動車の免許を取得出来ました!!
まぁ、今のところ原付バイクは持ってるんで車を買う予定はないですが・・・。持っていて損は無いので早いうちに取れて良かったです!







 

五河士織は気がつくと不思議な空間にいた。

そこは士織が今までに見たことの無い場所であり、一面真っ白な世界だった。

 

「ここ・・・どこだろう?夢なのかな?。」

 

それもそのはず、彼女にあるのはわくわくざぶーんから帰った後、疲れを癒すために早めにベッドに入った記憶しかない、しかし何故か服装は出かけた時の服装になっていた。

疑問を解消するために士織は自分の腕を少しつねり、その痛みを感じることができたことによってここが夢の中ではないと判断した。

 

思考を続ける内に、士織はいつだか夜刀神十香と精霊のことについて話した時のことを思い出した。

 

「もしかして、ここが十香ちゃんの言っていた隣界ってやつなのかな・・・。」

 

とりあえず、少し歩いてみよう、と。考えた士織は何もないただ白いだけの空間を歩いていると突然、今までの真っ白な空間から、一瞬で青空と一面の花畑に変化した。

 

「え!?なに・・・これ。 でも、何だかとても綺麗・・・。」

 

急な景色の変化に驚いた士織だったが、その驚きを超える目の前の景色の美しさに思わず心を奪われてしまっていた。

 

ふと、目の前の景色を見回すと、士織の目に飛び込んできたものがあった。

 

それは、花畑の中に佇んでいる大きなSFに登場するロボットの様なもの。体のほとんどが花に覆われ、本来の姿を見ることができないが、"それ"は人型のロボットが膝をついているようにも見え、翼のような形をしたものからはキラキラと翠色に光る粒子が放出されていた。

 

「もしかして、これが精霊の力の元である天使・・・?それにしては、十香ちゃん達のものに比べて何倍も大きい・・・。」

 

「天使とは少し違うな。」

 

「っ!だれ?」

 

突然、背後から男の声が聞こえ、振り向くと。

そこには何かの制服のようなものを着た、顔立ちの整っている男が立っていた。

 

「あなたは・・・?」

 

「俺の名は刹那・F・セイエイ。良ければ君の名前を教えてくれ。」

 

「・・・士織。五河士織。刹那さん?だっけ、さっきの言葉の意味はどういうことなの?天使とは少し違うって。」

 

「あれはガンダム。争いを止め、対話を実現するための力だ。」

 

刹那という男はそう言いながら、ガンダムと呼ばれた大きなロボットに近づいていく。

 

「がんだむ?」

 

士織は刹那の言葉を反復する。だが、彼女にその言葉は聞きなれない単語であり、刹那という男の言っていることが、突拍子すぎて頭がついていけなかった。

 

「あぁ。そして、これは今君の中にある〈霊結晶(セフィラ)〉の元となった存在だ。」

 

「っ!?私の中に・・・〈霊結晶〉が・・・?」

 

士織は、身に覚えのない真実が知らされ、〈ファントム〉にあった記憶を探そうとするが、当然あるわけが無い。

だが、記憶を探す中、1つだけ記憶が飛んでいるときがあったことを思い出す。

紅輝とのデートのおわり、空間震が起きてから意識を取り戻すまでの空白の時間。

 

「あの、刹那さん・・・。」

 

「刹那と、呼び捨てで構わない。」

 

「分かりました。刹那、少し前に空間震が起きて私が意識を失っていた間、何があったのか知ってる?」

 

「・・・もちろん、知っている。」

 

「っ!教えて!!私の知らないところで何が起きていたのか!その時に現れた精霊は本当に紅輝君が殺したのかを!」

 

士織は我を忘れ、鬼気迫る様子で刹那に詰め寄った。

 

「いいのか?今なら君はこの世界のことを全て忘れ、君が望むのならこの〈霊結晶〉は君の中に永久封印され、その力が発現しないようにすることができる。今日、君が体験したような平和な日々を送りたいのならやめておいた方がいい。生半可な覚悟なら紅輝という彼も、君自身さえも後悔する結果になる。」

 

士織は刹那にそう言われ、一瞬躊躇うような顔をするがすぐに元に戻す。

 

「・・・覚悟は今したよ。だから、教えて。あの時何が起きたのか。」

 

士織が刹那を真っ直ぐに見つめ、十数秒が経つ。その間士織は1度も刹那の目から自身の目を逸らさなかった。

そして、刹那は小さく「分かった。」と言うと、士織の額に人差し指で触れた。

 

 

その瞬間、士織の脳内にあの時どんなことが起きていたのかが、あの男の精霊目線での記憶が流れ込んでくる。

それと同時に、あのとき失っていた記憶が一緒に元に戻った。

 

「─つぅ・・・。そう、だったんだ。私は紅輝君を庇って1度精霊に殺されて・・・。紅輝君は殺した精霊の〈霊結晶〉を〈ファントム〉に渡して私を生き返らせた。そして私は〈ファントム〉の力で精霊に、か・・・。」

 

過去に何があったのか識った士織は一瞬達観したような顔を見せる。

脳裏に焼き付いたのは、紅輝の精霊に対する憎悪に満ちた表情が何度も頭の中をチラついていた。

 

そして、思い出すのは、自分が精霊になったあの日、紅輝が士織に向けて言った言葉。『精霊が君の命を奪うということがない限り。』

確かに嘘はついていない。事実として士織は1度精霊に命を奪われている。

つまり、紅輝が精霊を殺すための条件が既に達成されているということ。

 

「紅輝君が精霊をそこまで憎んでいるなんて・・・。

 

それなら、私は紅輝君を救いたい・・・。私はもう二度と紅輝君にあんな顔をさせたくない!だから!刹那、私にできることを教えて!!覚悟はもうできている!」

 

士織の言葉を聞き、刹那は彼女の信念の強さを感じ取った。

そして、かつて共に対話を実現するために共に戦った仲間たちのことを思い出す。

──五河士織、君が覚悟を俺に見せるなら、俺はその覚悟には答えねばならないな。

 

「五河士織、俺は君の強さを見誤っていたようだ。ひとまず謝罪させてくれ。・・・すまなかった。さあ、本題に入ろう。五河士織、君には二つの選択肢がある、1つは"戦い"の力を求めるか、それとも"対話"の力を求めるか、だ。」

 

「"戦い"と"対話"・・・。」

 

刹那が言った言葉に含まれている意味が分からず、反復し口に出す。

 

「君の選択によって、この機体、ガンダムは姿を変える、だが、士織、君がどちらを選んだとしても俺は最大限の力を貸そう。」

 

突然の選択肢に驚き、戸惑ったが。士織はハッキリとした口調で言葉を返した。

 

「前の精霊はどちらを選んだのか教えてもらえるかな?」

 

「・・・あいつは戦いを選んだ。」

 

それを聞いた士織はさらなる決意を固めた。

 

「分かった、私は"対話"のための力を選ぶよ。争いを止めるための対話の力を!」

 

「その言葉聞き届けた。五河士織、君に"対話"のための力を渡そう。そして、力を貸すこの機体の名前を教える。──その名は、ダブルオークアンタ。」

 

「ダブルオー・・・クアンタ・・・!」

 

士織がその名を呼ぶと、後ろで佇んでいた機体(ガンダム)が翠色の粒子へと変化する。その粒子は士織の周りに集まると、精霊の持つ鎧である霊装へと形作る。

粒子は士織の身体を包み込むと、ハードタイプのレオタードのような生地を生成し、同じく、肌の露出を防ぐためなのであろう、脚部も膝上まで薄い生地に覆われる。

そして、腕や胸部、脚部にまで元々ダブルオークアンタにあった装甲が士織の身体に合わせるように着けられる。

右手には青と翠の銃剣が握られており、左肩の近くには銃口のある大きな盾に六つの剣が着いていた。

士織は見た目の重そうな雰囲気とは異なり、手足の動きを阻害しないの体の軽さに驚きつつ、改めて、自分が精霊になったのだと自覚する。

 

「これが・・・私の姿・・・。これが、対話のための力。」

 

「そうだ。五河士織、君はこれから数多の困難にぶつかるだろう。だが、君の心が諦めない限り、俺とクアンタは力を貸し続けよう。」

 

「・・・ありがとう。それじゃあ、早速だけど、この武器の使い方を教えて、前の人がどれだけこの力を把握したいたかは私には分からない。でも、刹那、あなたができる最大限を使って私に戦い方を教えて!私は紅輝君のためなら何だってやるよ・・・!」

 

「その覚悟、確かに受け取った。俺も君の気が済むまで付き合おう、だが、手加減はしない。」

 

刹那がそう言うと、今度は周囲の景色が一面の大空に変わり、士織と刹那は宙に浮いていた。

既に刹那は自らダブルオークアンタを身にまとっており、すぐにでも戦闘ができる状況にしていた。

 

「もちろん、寧ろ手加減なんてしたら許さないから。」

 

「いくぞ、五河士織!!」

 

「・・・こい!」

 

 





今回はここまで!次回も見ていただけると嬉しいです!
お気に入りに追加して下さった。
fumin02さん、零桜紅雅さん、コンチキさん。
ありがとうございます!これからも見ていただけると嬉しいです!

次回からついに美九編に突入します。
もちろん、主人公と士織の活躍もちゃんとありますのでおたのしみに!



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新たな不和

33話目です。

皆さん、おはこんばんにちわ!
投稿期間が開いてしまい申し訳ないです…。
改めて原作の方を読み直していると矛盾点が多く、プロットの修正をしたいたら意外と時間がかかってしまいました・・・。
まぁ、言い訳はこの程度にして・・・。
実は!コードギアスの映画を見に行って!その影響を受けていろいろプロットを書こうとしてたらほとんどボツになったので、少し萎えてサボってました!すみませんでした!(泣)


今回の最後にオリジナルのCR-ユニットが登場します!
ある程度のインフレを抑えるための処置として考えてみましたが、プロット内では今のところ破綻していないので大丈夫だと思います・・・。



 

9月8日

 

夏休みは終わったが、未だに夏の暑さが残る中、来禅高校はもうすぐ開催されるこの辺りの地域にある高校が合同で取り組む文化祭、天宮祭に向けて浮き足立っていた。

近隣の高校と合同での文化祭であるため、天宮市総出での準備も行われ、規模もかなり大きいらしい。

2年生達はそれぞれ何か出し物をするらしいが、3年生は自由参加であるため、我らが3年1組の何人かは他のクラスも巻き込んで何か企画をする予定らしい。自分としては、士織と一緒に回りたいと考えていて、その旨を士織に伝えると喜んで承諾してくれた。

 

 

文化祭か・・・。自分はずっとイギリスにいたからここの学園祭がどういったものかは知らないが、士織が案内してくれるみたいだし何とかなるかな?

 

しかし、学校が始まってから明らかになった問題が1つある。

それは、1度イギリスで片割れを倒したはずの〈ベルセルク〉が両方揃ってこの学校にいるという事だ。

目にした時はあまりの衝撃に士織に心配をかけてしまった。

ただでさえ〈プリンセス〉が士道と近くにいて危ないというのに、また危険度の高い〈ベルセルク〉がこの学校に来るなんて!

 

1度ASTに報告をして、〈ベルセルク〉に霊力があるか調べてもらったが、〈ベルセルク〉の霊力は検知されなかったが〈プリンセス〉のことがある。

恐らくだが、士道もしくはそのバックに居る組織には霊力を偽装する類いの力があると考えられる。

それに、最近のASTが観測した精霊出現場所には決まって士道と思しき少年が現れていることを見ると、その他の多くの精霊が今の〈プリンセス〉や〈ベルセルク〉のように士道の近くにいるということも考えられる。

 

そんな精霊が集結しているような場所に士織を置いておかないと行けないということに無力感を感じる。できることなら、士織だけでも安全な場所、それこそASTの基地で保護したいぐらいだ。

 

だが、士織がそれを望んでいない以上無理やり保護することなどできない。

 

それに、最近士織との距離が少し離れたような気がする。

今までなら五河家に着くまで送っていたのだが、最近はその手前で自分の家に返されてしまっている。他にも上げればキリがないが周りにさ気づかれていないため、士織との不仲を疑われることはなかったが、やはり、少し寂しい。

うーん、何か失敗したのだろうか。今度改めて話し合ってみよう。

 

 

 

 

 

 

──────────────────────

 

─AST天宮駐屯地

 

下校後、自分はすぐに基地の方に向かった。

なんでも、イギリスに本社を構えるDEMの魔術師(ウィザード)が10人配属されるらしい。

昨日の時点で"無理な配置だ!"とか"うちは野球チームじゃない!"って日下部隊長はかなり愚痴を言っていたから落ち着かせるのが大変だった。

DEMからどんな奴らが配属されるかは自分も聞かされていない、分かっているのは全員が英国人だと言うことだけ。

DEMの魔術師は英国にいた頃から分かっているが実力は保証できる。

だが、やはりDEM自体はあまり信用できる組織ではない。

それに、精霊を殺すなら自分にだってできる、戦果だってこの前出した、今更誰が配属された所で何もかわりはしない、少し殺すのが楽になるだけだ。

恐らくウェストコットが何か企んでいると考えてもいいだろう。

 

 

基地内を歩き回り、今日配属されるというDEMの魔術師達を探していると、

塚本三佐の部屋から日下部隊長の怒鳴り声が聞こえた。

 

『やっぱり納得いきません!!100歩譲って配属するのはいいとして、あの権限はなんです!?』

 

『そ、それは・・・。』

 

『ちっ!もういいです!!失礼しました!!』

 

その言葉と共に、扉が勢いよく開かれ日下部隊長が部屋から出てきた。

日下部隊長は扉の外にいる自分に気がついたのか、少し驚いたいた。

 

「っ、遠坂少尉、貴方もきていたのね。みっともないところを聞かせて悪かったわ。」

 

「いえ、日下部隊長のお気持ちはよく分かります。上層部はなんと?」

 

「だんまりよ、裏で何か回ってるのは確実ね。」

 

「まぁ、そうでしょうね。塚本三佐があの様子じゃあダメでしょう。それこそ自衛隊本部に掛け合ってもだんまり決めこまれるのがオチでしょう。」

 

「ええ、───っ、今日の主役達が来たようよ。」

 

そう言って日下部隊長が腕を組みながら親指で自分の背中の方を指していた。

 

そこには聞いていた通り、10名の外国人がこちらの方に着ていた。

全員イギリスにいた時に見たことのある顔ぶれがほとんどであったが、その中でも先頭にいる赤毛の女は嫌でも何度も見た女だった。

 

「っ!アプデタスIII・・・!」

 

「あラ?アナタもこっちに来ていたの、リボンズ・アルマーク?いや、こっちでは遠坂紅輝って呼んだ方がいいかしラ?」

 

その女の名はジェシカ・ベイリー。

DEMに潜入していたときに、よく模擬戦をさせられた相手だ。

性格は好戦的であるが、アイザックに対する忠誠心は激しく、いつかはエレン・ミラ・メイザースを超えたいとも話していた。

 

「どっちでも構わない、君の好きなように呼べばいい。」

 

「つれないわねェ、ま、いいワ。リボンズはともかく。・・・ふーん。」

 

そう言ってジェシカ・ベイリーは日下部隊長を見て口を少し歪ませた。

 

「資料で見た顔。ASTの隊長、日下部燎子、ね。」

 

「・・・あんたは?」

 

日下部隊長の隠しきれていない苛立ちを無視するかのようにジェシカは大仰に頷いてから右手を差し出す。

 

「今日付でASTに配属になったジェシカ・ベイリーでス。以後よろしク。」

 

「・・・ふん。」

 

日下部隊長は不快そうに顔を歪め、手を弾くように押し付けジェシカの握手に応じた。

 

「あんた達がここに何しに来たのかは知らない。だけど、ASTに配属された以上、上官である私の指示に従って貰うわ。」

 

隊長の言葉にジェシカは目を丸くし、後ろにいる他の部下たちと目を合わせてから肩をすくめた。

 

「あなたの命令に従えば精霊は倒せるのかしラ?」

 

「・・・なんですって?」

 

AST(こっち)の噂はいろいろ聞いているのヨ?ここ、数年、空間震が世界で最も多い地域の対精霊部隊なの二ィ。未だに一体の精霊も狩れていないオママゴトチームってネ?あ、ごめんなさイ。そう言えば最近やっと一体狩れたみたいネ。配属されたばかりのリボンズ・アルマークの活躍によっテ。」

 

「・・・っ!!」

 

明らかに挑発するような態度をとるジェシカに何とか怒りを堪えている様子を見て、流石にこれ以上は不味いと感じた自分は2人の中に入った。

 

「ジェシカ・ベイリー。君がどんな目的でここに来たのかは知らない。だが、仲間への謗りは許されないことだ。仲良くしようとは言わない。だけど最低限の礼儀とマナーは守るようにしてくれ。」

 

「フフ、相変わらずネ。私はあなたのことはちゃんと認めているし、結構気に入っているのヨ?何でも、なんの情報もなかった新種の精霊を単騎で倒したっテ。アイザック様もお褒めになっていたワ。」

 

「・・・そうか。ありがとうございます、とだけ言っておいてくれ。話はそれだけかい?それならいまから君達の宿舎に案内するよ。日下部隊長、いいですよね?」

 

「え?え、えぇ。構わないわそれじゃあ頼んだわよ。」

 

一刻も早く日下部隊長からジェシカ達を離すため、彼女達が使用する予定の宿舎に案内しようとしたとき────。

 

けたましいサイレンがAST基地内を駆け巡った。

 

「っ!」

 

「空間震警報・・・!」

 

「ちょうどいいワ、私たちも出撃しましょウ。アナタ達に私たちの戦い方ってものを教えてあげるワ。ただしィ・・・。」

 

ジェシカは日下部隊長を見て人差し指を振りながら言葉を続ける。

 

「私たちは特別な任務を帯びているノ。場合によってはそちらを優先させてもらうワ。」

 

「特別な任務だと・・・?」

 

「えエ、それじゃあネ。アンタ達!出撃準備ヨ!」

 

そう言ってジェシカは、後ろにいる部下達に声をかけ格納庫に向かった。

 

「っ!私たちもいくわよ!─もしもし!サイレンは聞いてるわよね!全員出撃準備よ!!」

 

『了解!!』

 

「日下部隊長。」

 

自分は、今にでも駆け出そうとする日下部隊長に声をかけた。

 

「・・・何かしら?遠坂少尉。」

 

「もし、彼女らの任務とやらが精霊を殺すものなら僕は彼女らに協力しましょう。ですが、もし、一般市民に危害を加えるものなら──。」

 

「もちろん、全力で妨害するわ。」

 

「!それが聞きたかった・・・!」

 

聞きたい言葉か聞けた自分は、日下部隊長と共に格納庫に走った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────────────────

 

同日、午後13時頃

〜イギリス、SSS独自開発室。

 

ここは、SSSが独自にCR-ユニットを開発する場所。

DEMのCR-ユニットにばかり依存してはダメだと少し前に新しく設立された施設である。

いつもなら多くの技術者が新しいCR-ユニットの開発に向けて勤しんでいるのだが、今日は違った。

この場所にいるのは、アルテミシアとトレーズ・エーデルフェルト、それにトーレズが直接雇った技術者の男しかいない。

 

「本当にこれを日本に送っていいのかい?アルテミシア君。」

 

トレーズがアルテミシアに最後の確認と言わんばかりに聞いた。

だが、アルテミシアの目は1ミリの迷いすらなく、寧ろそれを望んでいることを示していた。

 

「はい、私の脳内情報を元に作られた5機のCR-ユニット全ての力を持ったこの機体、〈不思議の国のアリス(アリス・イン・ワンダーランド)〉ならきっと遠坂くんと美紀江ちゃんの力になってくれるはずだから・・・!」

 

「ま、アルテミシア嬢がそういうなら仕方ねぇな。上への報告は開発に失敗したとだけ言っておきますよ。」

 

技術者の男がアルテミシアにサムズアップして、席を離れ報告書作成に取り掛かった。

 

「ありがとう、ジェームズ。このお礼はいつか必ずさせてくれ。アルテミシア君、あとは私に任せなさい。3日以内に彼の元に届けて見せよう。」

 

「ありがとうございます!」

 

「構わないさ、それにセシル君の体調もまだ悪いんだろう?2人の手伝いに戻るといい。」

 

「はい、お気遣いありがとうございます!それじゃあ私は家に戻ります。何かあったらまた連絡をください!」

 

そう言って開発室を飛び出していくアルテミシアをトレーズは見送ると、目の前にある〈不思議の国のアリス〉へと目を向けた。

 

「この機体がこの先、未来をどう切り開くか楽しみだね。」

 





今回も見ていただきありがとうございます!

お気に入りに追加して頂いた
ちくちゃんさん、優希@頑張らないさん。ありがとうございます!
これからも見ていただけると嬉しいです!



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〈ディーヴァ〉接敵

34話目です。
皆さんこんにちわ!
最近やりたいことが多くていい意味で多忙な時間を過ごしています。
まぁ、そのせいで投稿感覚が少し空いたんですけどネ・・・。
少し前には黒い砂漠というアプリがでたり、近くのゲーセンにボンバーガールが設置されたりと嬉しいことが多いです!




話は変わりますが、先週のデート・ア・ライブでついに折紙ちゃんが反転しましたね。
折紙ちゃんの絶望が見れて私的にはとても愉悦を感じる回でした。
後、思ったこと?というかアニメの描写に少し驚いたことがありまして・・・。
絶滅天使、救世魔王の『羽』数少なくない!?
数えたら14個しかなかったんですが・・・。
wikiとか原作にも無数って書いてあったので最低でも20はあると思ってたのですが・・・。いやまぁ、アニメ化するにあたって描写の問題もありますから仕方ないとは思うんですけど・・・。


故に、本作限定で絶滅天使、救世魔王の天使の内容を少し変更させていただきます。正確にいうと、1話のオープニングに合わせるようにしました。

『羽』→原作では14個でしたが、本作の力バランス調整のため、大型の『羽』と小型の『羽』に分け、大型は原作通り14個。小型は霊力の続く限りそれこそ無数に展開できるようにしました。それに伴い。小型の『羽』の耐久値を本来考えていたものよりもさらに低くしました。

ただし、『羽』の制御はあくまで折紙ちゃんが行うものなので、精密な操作をしようとすればそれなりの負荷がかかるものと考えています。

その代わり、絶滅天使、救世魔王の耐久値を想定していたものよりもより多く設定します。(覚醒ゲージを溜まりにくくしました。ボソッ)

アニメを見てからの作品を見る方がいるかもしれませんのでこのような形で報告するような形にしました。


それでは本編をどうぞ。


空間震警報がなり、すぐに空間震が起きた場所に急行し、自分達は空間震が発生したと思われる天宮アリーナの上空で待機、すぐにでも突入できるようにしていた。

解析班からの連絡が入り、精霊がいる場所はアリーナの中でステージ付近にいるという。さらに、霊派の特徴から〈ディーヴァ〉という極めて出現回数の少ない精霊ということがわかった。

 

「作戦を通達するわ、今回はこのドームを利用して精霊を倒す。私と遠坂少尉を含めた少数でアリーナの中へ突入し、精霊を追い詰める。その他の皆はこのドームの出入口を封鎖して待機。精霊がこのドームから逃げられないように包囲して、出てきたところをその場の全員で集中砲火よ。」

 

『了解!』

 

日下部隊長からの指示が伝達され、ASTの皆の顔が引き締まる。

自分も返事を返しながら、解析魔術で〈デスティニー〉のコンディションを今一度チェックする。

 

──異常なし、これなら大丈夫だ。

 

「あんた達はどうするのよ。」

 

日下部隊長がぶっきらぼうなもの言いでジェシカ達に尋ねる。

ジェシカはそれに対しさも当然というような表情をすると、言葉を返した。

 

「私と、そうねェ。この子達を中の部隊に入れるワ。その他はそちらの作戦通リ、出入口の封鎖をさせるワ。」

 

そう言ってジェシカは後ろにいた3人の魔術師を指名する。

 

「分かった。1分後に作戦を開始するわ!総員持ち場に着いて!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────────────────

 

「突入!!」

 

日下部隊長の号令と同時に、空きっぱなしになっていた入口を通り、一気にステージのある中央に向かってブーストを吹かして行く。

 

数秒もしない内にステージへの扉の前に到着すると、その扉を勢いそのまま蹴破って中に入った。

入った瞬間目に入ったのは、真っ暗な座席とは対照に明るいスポットライトが何重にも重なりステージの上に立っている人型を照らしていた。

 

──あれが〈ディーヴァ〉!

 

その精霊のあり方はその名の通り歌姫と表すように、キラキラと輝くドレスを身にまとい、見るものを魅了するだろう。

 

だが、そんな煌びやかな霊装とは反対にその顔は何かを蔑んだ顔をしており、目線の先を見ると、ステージから落ちまいとする一般人と思われる少年の手を踏みつけていた。

 

「日下部隊長!一般人が!!」

 

「分かってる!美紀江!保護をお願い!」

 

「は、はい!!」

 

「あらぁ?新しいお客さんですかぁー?」

 

なおも少年の手を踏みつけながら呑気な声をだす〈ディーヴァ〉に少し苛立ちを覚えながらも、自分はアロンダイトを構える。

美紀江が先行し、一般人の保護をしに行ったタイミングで自分もVLを発動させる。

 

「はあぁ!!!」

 

一気に加速し、〈ディーヴァ〉に肉薄するとアロンダイトで切りつける。

最大スピードで接近しためか、〈ディーヴァ〉は反応が遅れ、自分の攻撃をモロにくらってステージ後方に吹き飛ばされた。

 

「きゃあああ!?」

 

どうやらやつはそこまで戦闘に特化した精霊では無いらしいな。これが〈プリンセス〉や〈ベルセルク〉なら反応されていただろう。

よし、このまま畳み掛けて一気に仕留める!

 

 

追撃のため地面を蹴り、やつの心臓部を貫くためにアロンダイトを刺突体制をとり、VLで突撃する。

 

「たァァァァァ!!」

 

しかし、これを甘んじて受ける〈ディーヴァ〉ではなかった、意識を一瞬失いかけたが精霊としての肉体がすぐに意識を回復させ、敵を排除するために霊力を己の声にこめた。

 

「わ!!」

 

「っ!!」

 

〈ディーヴァ〉の大きな声と共に空気が衝撃波となり紅輝を襲う。その衝撃波をモロにくらったため、勢いよく後方に吹き飛ばされてしまう。

だが、何とかステージギリギリで踏みとどまるとすぐさま〈ディーヴァ〉を睨みつけ、アロンダイトを再び構え直す。

 

その間にも〈ディーヴァ〉は少しよろつきながらも立ち上がると、たった今攻撃してきた男を憎悪に満ちた目で睨み返した。

 

「よくも、よくも!私に傷を負わせてくれましたね!!」

 

「ふん、精霊なぞに──「だまれ!!穢らわしい男が私の前で口を開かないでくださる?」

 

もとより話などするつもりはない。何も言わず傷を負っている今のうちに仕留めようと足に力を入れようとすると、聞き覚えのある声が聞こえた。

 

「紅輝先輩!もうやめてください!!」

 

「あっ!ちょっと!うわぁ!?」

 

声のする方向を見ると美紀江が保護していた少年は五河士道で、その士道が美紀江の元を離れ、自分を説得しようとしているのかステージの付近まで走って来ていた。

 

「士道か・・・。残念だけどその言葉は聞き入れられない。精霊は殺す。1匹たりとも残さない。精霊が死ぬ姿を見たくないのであれば目を背けているんだね。」

 

自分はそう言い放ち、再び〈ディーヴァ〉に向き合ったとき。

 

「ふぅん、あれがイツカシドウ、ネ。」

 

突如、後方に控えていたジェシカが何か呟くのが聞こえたかと思うと、士道の方にDEM製のスタンロッドを持ちながら急接近していた。

 

「「っ!!」」

 

自分は咄嗟にステージの上から降り、ジェシカの持つスタンロッドをアロンダイトの背の部分で受け止める。

 

「・・・ジェシカ、どういうことだこいつは一般人だぞ。」

 

声色を低くし、少し怒りをこめてジェシカに尋ねる。

 

「あラ、私は一般人の保護をしようとしただけヨ。何か問題でモ?」

 

「それなら美紀江だけで充分だ。ジェシカ、君がわざわざこいつを保護しようとする必要はない。」

 

「現にできてなかったじゃなイ、そこにいる未熟者よりも私の方が上手くできるワ。」

 

「何・・・?君は美紀江の強さを知らないみたいだね。彼女は未熟者なんかじゃない。」

 

「あラ、余程あの子高く評価してるみたいネ。まぁいいワ、そこをどきなさイ。」

 

「それは受け入れられない言葉だ。それに今からでも遅くない、君も精霊を倒すためにその力を上にいる〈ディーヴァ〉に振るうんだ。」

 

 

 

「わ!!!!」

 

「「「「っ!!!!?」」」」

 

自分とジェシカが口論をしていた時、ステージの方から先程のものとは比べ物にならない程の声量と激しい衝撃波が自分達を襲った。

突然のできごとであったため、思わずその声に怯んでしまう。

そして数秒もしない内に響きわたる音は消え、怯みから回復することができた。しかし───。

 

「み、皆さん!精霊と五河君が消えてしまいました!」

 

しまったと思い、精霊がいたステージを見るとその姿はすでになく、恐らく逃げたか、〈消滅〉したのだろう。

 

「・・・ちっ!日下部隊長、すみません。せっかくのチャンスを逃してしまいました。罰ならなんでも受けます。本当に申し訳ありませんでした。」

 

「あ・・・。ちょっと!」

 

自分は日下部隊長に頭を下げ、誰よりも先に逃げるようにこのドームから出た。

 

 

 

 

 




次回も見ていただけると嬉しいです!

お気に入りに追加していただいた
yakaさん、ゆうの少年さん、抹茶ごまさん、そこにいるだけの存在さん。
ありがとうございます!これからも見ていただけると嬉しいです!



数日前にTwitterでレッドフレーム改がトレンドに上がっていて何かと思ったら斗和キセキさんというVチューバーさんの背中に着いているものががレッドフレーム改のタクティカルアームズに似ているという感じで盛り上がっていたみたいですね。
私も気になって斗和キセキさんの動画を見に行ったのですが、思っていた以上に凄い(語彙力無し)と感じました!
歌もとてもパワフルで元気がでるように感じましたし、自己紹介動画もレスラーさんをわざわざ呼んでの企画も面白くてチャンネル登録をしました!
あ、もちろんTwitterのフォローもしましたよ!
ですので皆さんも是非フォローやチャンネル登録を!!


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作戦会議

35話目です。

皆さんこんにちわ!

ついに今日(昨日)デート・ア・ライブ20巻が発売されましたね!!
十香ワールド・・・、見出しだけでも楽しみがとまりません!!
まぁ、私の近くの本屋には売っていなかったのでAmazonで購入しましたが・・・。

それに、ついに!お気に入りが100件行きました!!
皆さんにこれからも見ていただけるように精進して行きたいと思います!
それに合わせてr18版の方もボチボチ書いていくので18歳以上の方はお楽しみに!!



9月9日

〜ラタトスク艦内

 

 

〈ディーヴァ〉が出現し、AST側としては撃退。ラタトスク側としては最悪のファーストコンタクトにとなった日から一日が経った。

 

現在、ラタトスク艦内には五河琴里司令を含めたいつものクルーにプラスとして士道と士織が居り、〈ディーヴァ〉攻略の作戦会議が開かれていた。

 

「───つまり、まとめると〈ディーヴァ〉は百合っ子でこのままじゃ攻略どころか好感度を下げるだけってことよね。」

 

琴里が今までの意見を纏め結論を下す。

百合っ子だけならまだなったのかもしれない。

しかし、〈ディーヴァ〉はさらに男を毛嫌いしていると来た。これはもう士道が男性である限りどうやっても攻略は不可能。

だが、ここで折れるようでは精霊を救うなどそれこそ夢物語、ラタトスクはすでにこういった場合に対する対策を出していた。

 

「それで、一体どうするんだ琴里。」

 

「安心なさい士道、こんなこともあろうかとすでに対策は用意してあるわ。神無月!」

 

「はっ!既にこちらに。」

 

名前を呼ばれ艦橋の後方から現れた神無月が手に持っていたのは士道が通っている來禅高校の女子用の制服だった。

士道は困惑すると同時に神無月への、あぁついにここまで来たか。という考えが浮かび上がったが、それと同時に違和感を感じた。

 

──俺が着たらピッタリなんじゃないのか・・・。

 

「〈ディーヴァ〉が百合っ子なら対策はこれよ!士道、あなたが女装して彼女に近づきなさい。」

 

「え、えぇ!?ちょっ、ちょっと待ってくれよ!俺にそんな趣味はないし!そもそも女装なんてしたこと───。」

 

「大丈夫よ士道、ラタトスクの技術に任せなさい。それに士道は元々中性的な見た目だから結構可愛くなるはずよ。だから安心して2人目のおねーちゃん♪」

 

「さ、士道君。向こうに行ってメイクアップの時間だ!」

 

「大丈夫!士道君ならきっと美少女になれるわ!!」

 

琴里の言葉と共にラタトスクのいつものメンバーが士道を拘束する。

男として絶体絶命のピンチに士道はさっきから微妙そうな顔をして隣にいる士織に助けを求めた。

 

「ね、姉ちゃん!!た、助けてくれ!!」

 

「あー、うん。お姉ちゃんは士道がどんな姿になっても大丈夫だから安心して、ね?」

 

「なんで最後疑問形!?う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

〜少女?着替え中・・・

──────────────────────

 

「ふふ、似合ってるわよ士道、いや、士音(しおん)おねーちゃん。」

 

あの後、ラタトスクの精鋭が誇るメイクさん達の手によって士道は事情を知っているものしか見分けがつかないくらい別人へと変貌していた。

 

「こ、これが、俺・・・。」

 

「お、お姉ちゃんは、可愛いと思うよ!!」

 

「ねーちゃん、それフォローになってない・・・。」

 

鏡の前でガックリと項垂れる士道もとい、士音。

髪型は後ろに長く伸ばしたポニーテールに、胸には今回の件のために製造された特注のパッドがあり、控えめながらも服の上から自己主張をしていた。

士道の実の妹を名乗っている崇宮真那が成長したら、というコンセプトであり、ASTの関係者がもし士道のこの姿を見れば崇宮真那の親族かと考えるほどである。

 

「士道、これからあなたには女の子の仕草を身体に叩き込むわ。週明けまでには完璧な女の子になりなさい。」

 

「え、もしかして、今から・・・?」

 

「もちろん、今から・・・て言いたいところだけど今回はこの件の他にもう1つあるわ。」

 

からかうような表情から一転、琴里が改めて指揮官モードに入り顔もちを固くする。

 

「もう1件?他にも精霊がいるのか?」

 

「それもあるけど、本題はASTの件よ。」

 

「AST?そう言えば昨日、見慣れない外国人のASTがいたような・・・。」

 

「そうね、その事もあるけど本題は違うわ。令音。」

 

「あぁ、この件は士織が私に報告したことの内容だ。まずはここにいる皆に報告が遅くなったことをお詫びしたい。それでは本題に入る。2ヶ月前、我々が〈ベルセルク〉攻略を行っている時期と同じタイミングでここ天宮市で新たな精霊が出現した。まずはこれを見てくれ。」

 

 

天井から大きなスクリーンが現れ、プロジェクターから映像が映される。

 

そこには7月17日に出現した新種の精霊とASTの戦いだった。

 

さらに、その映像の中に現れた精霊は今までのような少女のような姿ではなく、男の精霊だったのだ。

定点カメラの映像を繋ぎ合わせて作られた映像であるため所々抜けているところがあるがそれでもその精霊の力、そして、その精霊をほぼ1人で相手する魔術師の姿は士道の目にハッキリと写った。

 

「琴里・・・。これって。」

 

「ええ、男の精霊。それに私達が知る中でもかなり身近な存在である遠坂紅輝という魔術師。かなり厄介な問題よ。1つはこれから先、この精霊の他にも男の精霊が存在するかもしれないということ。2つ目は遠坂紅輝、この魔術師の実力はかのエレン・ミラ・メイザースに近い実力を持っているということ。士道、これから先この精霊のように男の精霊が現れたとき、あなたは封印できるかしら?」

 

「男の・・・精霊。」

 

士道は琴里の言葉が脳内で反復していた。男の精霊、それは今まで出現していなかったからこそ考えられなかった存在。否、士道も頭のどこかでは考えていたのかもしれない。だけど、それは仕方の無いことだ。士道が今まで遭遇した精霊はどれも可愛らしい少女の見た目をした精霊ばかりで、これから出現する精霊も全員少女の姿をしていると勝手に思い込むのは仕方の無いことだった。

 

「・・・今直ぐに答えを出せなんて言わないわ。ただし、覚悟をしておいてちょうだい、男の精霊もいるってことを。」

 

「・・・分かった。」

 

なかなか答えを出せない士道に琴里は助け舟をだす。琴里は令音を一瞥すると話を元に戻して貰うようにした。

 

「シン、男の精霊の件だが、実は映像の精霊はもう居ない。」

 

「なっ・・・!?それって・・・。」

 

「倒された、もっと正確に言うと、遠坂紅輝の手によって殺害された。そうだね、士織。」

 

「うん、令音さんの言う通り、あの精霊は紅輝君によって殺されてしまったんだ。私はその場面を観た(・・)から知っている。」

 

「そんな・・・。」

 

士道は自分が知らない内に精霊を1人殺させてしまっていたことを悔いた。

己が〈ベルセルク〉の攻略中で天宮市にいなかったといって、仕方がなかった、で片付けるにはあまりにも重すぎるものだった。

下を向き、唇を噛み締める士道に士織は彼の顔を両手で挟むと無理やり前を向かせた。

 

「士道、あなたの気持ちはよく分かる。だけど、ここで折れちゃ駄目、士道は決めたんでしょう。精霊を救うって、それなら死なせてしまった精霊のためにも今は〈ディーヴァ〉を攻略しないとでしょ?後悔は全部終わった後でもできるんだから。」

 

普段あまりしないような真剣な顔の士織に士道は少し驚きながらも、士織の言葉を受け止める。

 

「・・・ねーちゃん。そうだな、ここで挫けてなんか居られない!」

 

「さすがお姉ちゃんね。それじゃあASTの件に移るわ。

さっきも話したけど今までもだけどこれからの精霊攻略はASTの作戦の隙を見て行っていかないといけないわ。だけど、遠坂紅輝・・・、お姉ちゃんの彼氏さんの魔術師としての実力はエレン・ミラ・メイザースに近いものがあるわ。昨日の作戦だってASTの内輪もめがなかったらもしかしたら〈ディーヴァ〉はASTによって殺されていたかもしれない。」

 

「じゃあどうするんだ?ASTに潜入工作員でも送り込んでまた内輪もめを起こさせるとか?」

 

「・・・あんたも結構えぐいこと言うわね。まぁ、それもひとつの手だけど・・・。フラクシナスでの戦闘妨害も考えたけどこの前みたいな室内戦になったらさすがに難しいわよね。」

 

「司令官、私が出撃するという手もありますが?」

 

静かに神無月が手を挙げ、意見をだす。

神無月の随意領域操作の技術はASTの上層部が惜しんで籍を残すほどであり、さらにいくつかのCR-ユニットもフラクシナスには積んである。

 

「・・・そうね。それは最終手段にしましょう。でも精霊達に時間稼ぎをさせることなんてできないし。」

 

「やっぱASTが介入してくる前に攻略するしかないってことか・・・。」

 

「まぁ、それが最善ではあるわね。だけど──「私が何とかするよ。」──え?」

 

士織が琴里の声に被せるように言う。

 

「私が紅輝君を何とかするよ。」

 

士織の言葉にこの空間にいたほぼ全員が固まった。それもそのはず、皆が知る五河士織という少女は精霊でもましてや魔術師でもない裏の世界のことを少し知っているただの少女である。

だが、士織の目には冗談を言っているようには見えなかった。

 

「ねーちゃん、気持ちはありがたいけど、ねーちゃんは魔術師でも精霊でも無い。危ないだけだって。」

 

士道が諭すように言うものの士織の表情は変わることが無い。

 

「士道、心配してくれてありがとう。本当はもっと後に言うつもりだったけど・・・。令音さん、いいかな?」

 

「・・・キミがそれでいいのなら私は止めやしないさ。」

 

「ありがとう、士道、。守る力(・・・)ならあるよ。」

 

そう言って士織は霊力を解放させ、精霊としての姿をとる。

霊力の解放と共に翠色の粒子が現れ、士織を囲むと局所に集結し精霊の鎧である霊装へと変化した。

 

「ふぅ、精霊の力があれば紅輝君を止められる。これで大丈夫かな?」

 

「「「「「「え、えええぇぇぇぇぇえ!?」」」」」」

 

 

 

士織の思わぬカミングアウトにそこにいたほぼ全員が驚きの声を上げた。

 

「ね、ねーちゃん!?その姿は一体・・・。」

 

「士道も知っている精霊としての姿だよ。皆には隠してたけどね。あ、勘違いしちゃダメだよ、私が精霊になったのはごく最近だから。」

 

「どうして・・・。いや、〈ファントム〉にあったのか?それに最近っていつ・・・?」

 

困惑する士道に士織は落ち着いた声で言葉を返す。

 

「七月十七日だよ。」

 

「っ!それって映像の精霊が・・・!」

 

「うん、まさにその日。私は1度死んだ(・・・)。精霊の攻撃から紅輝君を庇って。そして、紅輝君は殺した精霊から手に入れた霊結晶を使って・・・。いや、〈ファントム〉がちょうどそこにいたんだろうね、私を生き返らせることを条件に紅輝君は霊結晶を〈ファントム〉に渡した。まさか渡した霊結晶が私の蘇生に使われるなんて思っても見なかったんだろうけど。」

 

「そんな・・・!それじゃあ紅輝先輩は〈ファントム〉に騙されたってことなのか?」

 

「そこまでは私には分からない、でも霊結晶のことを知っているのなら〈ファントム〉に渡そうなんて思ってなかっただろうし・・・。それに、紅輝君の精霊への憎しみは私を死なせてしまったこともひとつの原因だと思うんだ。」

 

「え?どうしてだ?現にねーちゃんは生きてるじゃないか、精霊になったとはいえ・・・。」

 

不思議そうにしている指導に琴里が何かを察したように士道に言った。

 

「・・・守れなかったからよ。私としてはお姉ちゃんを守ってくれなかったことに対して1度ぶん殴りたいけど、気持ちは分かるわ。目の前で大切なものが奪われる悲しみを、そして、それが自分の力不足で起こってしまったのならなおさらよ。」

 

「そう、か・・・。」

 

「だけど。お姉ちゃんは本当にいいの?最悪の場合最前線に立つことになるのよ?私としてもあまりおすすめできないわ。」

 

「十香ちゃん達は強いとはいえ霊力を封印されている状態、だけど、私は霊力を封印されていないから精霊としての力を最大限に使える。それに、私の力は戦うための力じゃない、〈対話〉のための力だから・・・!」

 

「・・・分かったわ。私達も最大限にお姉ちゃんをバックアップするわ。」

 

「ちょっと待てよ琴里!いくら精霊の力を持っているからってねーちゃんを戦場に駆り出すなんて!!」

 

士織の言葉を受け入れた琴里に対し、士道がそれに突っかかる。弟として、姉を最悪戦場のド真ん中に放り込むようなことになるのは到底受け入れられるものでは無い。

 

「士道、お姉ちゃんは大丈夫。それに、私以外に今の紅輝君を止められる人間なんていない。だから、私が行かなきゃ行けないんだよ。それに、ASTが来る前に士道が精霊を攻略すればいいはなしでしょ?それなら、今よりもっと男を磨いてお姉ちゃんを安心してさせなさい!あ、今は女の子だったね。」

 

士織はそう言うとニッコリと笑う。士道はその笑顔に折れ、士織の考えを受け入れた。

 

「・・・分かったよ。ねーちゃん。」

 

「それじゃあ決まりね、士道はこれからさっき言ってた女の子の仕草を身体に覚えさせるわ。」

 

「お姉ちゃんと私はこれから具体的なないようについて話すわ。それじゃあ各自持ち場に着きなさい!!」

 

「「「「「了解!!」」」」」

 

 

 




次回も見ていただけると嬉しいです!

お気に入りに追加していただいた
ほっかさん。
ありがとうございます!これからも見ていただけると嬉しいです!

最後にひとつアンケートを・・・。少し前に言っていた劇場版編を書くかアンケートを取りたいと思います。ぜひ答えていただけると嬉しいです。



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すれ違い

36話目です。

あぁ、春休みが終わってしまう・・・。
新学期が・・・。
どうも、何とかフル単を取れて安心している時にバイトのシフトが希望を出した曜日に入れられずバイトに入れない状態になり来月の収入がかなり不安になってきた狩宮深紅です。

まぁ、そんなどうでもいいこと(?)はさておき。
デート・ア・ライブの次回で最終巻ですね・・・。ネタバレを考慮して20巻の内容には今回は触れませんが、また好きな作品が終わってしまうことに一抹の寂しさをおぼえますね・・・。まぁ、話の内容が終わったら着地点が見えるので描きやすくなるという利点も私としてはありますが・・・。



 

 

紅輝side〜

9月11日

 

 

〈ディーヴァ〉との戦闘から週が明け、いつも通りの日々が始まった。

空間震警報もならず一日が平和にすぎていき、士織と過ごす時間は精霊との戦闘の疲れを忘れさせてくれる。既に昼休みになり、士織と一緒に屋上(士道を含めた精霊が屋上に来ないことを調べた。)で父さんが作ってくれた弁当を食べ終え、ゆったりとした空気が流れていた。

 

 

だが、自分は全く気分が落ち着いていなかった。

先週の金曜日に接敵した〈ディーヴァ〉は、あの後〈消滅〉扱いにされ、撃退に成功したと上に報告したが実際のところ自分を含め、日下部隊長や他の何人かの隊員達は〈消滅〉していないと考えている。

いくら精霊とはいえ、あの短時間で〈消滅〉するのは不可能に近く、〈ディーヴァ〉はそれこそ〈ベルセルク〉のように素早い動きを得意とした精霊とは思えなかった。

だが、あの包囲していたステージから誰も出てきていないという報告(・・)を受けたからには上も〈消滅〉したと判断するしかない。

故に自分はまだ〈ディーヴァ〉はまだ〈消滅〉しておらず、この街のどこかに潜伏しているのではないのか?と思い気が気でない。

 

─くそっ!ジェシカがあんなことしなければ少なくとも〈ディーヴァ〉に重症を負わせることも可能だっただろうに!!。

 

心の中で愚痴りながらも、頭の中ではもっといい方法があったのではないかと1日の殆どの時間で考えていた。

 

──いや、戦闘時間は短かったが得るものも多かったはずだ。〈ディーヴァ〉は自分と相対したとき、霊装は纏っていたが攻撃武装を持っていなかったことを考えるとSSSで1度しか接敵したことのない〈ウィッチ〉と同じタイプか?

 

「──き君。」

 

──そうなると、他の精霊よりも霊力の操作が長けていると考えてもいいだろう。1番考えられるのはあの逃げられた時に使っていた声の衝撃波か・・・?

 

「──うき君ってば!」

 

───それに、〈ディーヴァ〉は自分、もしくは"男"に対して何らかの負の感情を持っていることは確実だろう。自分があいつに何か言おうとしていた時のあの反応は異常だったからな、それを利用すればもしかしたら〈ディーヴァ〉打破の一手になりうるかもしれない。そうと決まれば基地に行ったときに日下部隊長に相談してみよう。〈ディーヴァ〉のことはこれでいいだろう。もう1つの不安要素、ジェシカ達はどうするか───。

 

「もう!紅輝君ってば!」

 

士織の突然の大声とそれと同時に抓られた腕に鋭い痛みか走る。

 

「いっ!?ご、ごめん。士織、どうしたんだ?」

 

「どうしたんだ、じゃないよ。さっきから凄い怖い顔して黙ってるから心配してたんだよ。」

 

士織は顔を膨らませ、少し怒った表情からこちらを心配しているような表情になってこちらをじっと見ていた。

 

「そうだったのか、心配かけてごめん。少し考えごとをしていて・・・。」

 

自分がそう言うと、士織は自分が何を考えていたのか察したかのように、また悲しそうな表情を浮かべる。

 

「精霊のこと・・・?」

 

「ちが───「嘘。」っ・・・。」

 

「紅輝君があんな怖い顔してまで考え事するなんて精霊のことしかない。・・・また殺すの?精霊を。」

 

「・・・殺しはしない、君と約束したとおり、精霊が1度でも君を殺したりしない限りは、ね。」

 

自分はまた嘘をつく。あの時の記憶が抜けている士織にはその意味が分からない嘘を。この前のようにこれで逃れようとした自分に士織が予想外の返しをしてきた。

 

「・・・そうだね、だから紅輝君が精霊を殺す条件は整っているんだよね。」

 

「っ!?な、なにを・・・言っているんだい。」

 

士織の言葉に喉元に刃を突きつけられたような感覚に襲われる。

どうして、それを知っているんだ!?

記憶を失っていたはず・・・。あのときの行動は演技だったのか?

・・・いや、そんなはずはない。そうでなきゃあんな反応はしなかったはず。

考えられるのは失われていた記憶が五河姉弟の周りにいる精霊の霊力からの影響を受けたからか・・・!?

 

「私はもう知ってるんだよ紅輝君。私が1度紅輝君を庇って心臓を撃ち抜かれて死んだこと。これって私は1度精霊に殺されたって判断になるんだよね、紅輝君・・・?」

 

淡々と言う士織に、自分は言葉が返すこともできず、思わず黙り込んでしまっていた。直ぐに、それは判断にならない、と返せば良かったのだろうがそれを言ってしまえば自分の中の精霊を殺す、という決意が揺らいでしまいそうで、言うことができなかった。

 

「そ、れは・・・。」

 

何とか口を動かそうとして出た言葉がこれだけということに、自分でも驚きが隠せずにいると、さらに士織が追撃を掛けてきた。

 

「私は私を殺した精霊を憎んでなんかいない、寧ろ私は紅輝君を守る勇気と力をくれたあの精霊に感謝しているよ。だから、もう、精霊を殺すなんて止めようよ。紅輝君は精霊を殺す必要なんてない。私の仇を打つ必要なんて───。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「───それ以上は言わないでくれ!!!」

 

ダメだ、それ以上は駄目だ。

士織が精霊を憎んでいないのは知っている、精霊への仇討ちを望んでないのも知っている。だけどそれを自分の目の前で、彼女自身の言葉で言われるのは今の自分という存在の否定と同じ意味のように感じるから・・・。

 

「・・・どうして。どうしてなの。なんで紅輝君はそこまで精霊を殺そうとするの。」

 

「・・・精霊はこの世界を壊す存在だから、だ。」

 

自分が震える声で士織の言葉に返すと、士織はしたを向いて俯いたかと思うと、キッとこちらを睨みつけた。

 

「私が聞きたいのはそういうことじゃない!!私が聞きたいのはどうして!紅輝君が!精霊を殺そうとしているかということ!!紅輝君が正義の味方なら救ってよ!!皆を!精霊を!!!」

 

涙目になりながらもこちらを見て叫ぶ士織に圧倒されてしまう。

それに、士織からの"正義の味方"という言葉。それは士織がまだ自分を"正義の味方"として見てくれているということがわかってしまった。

だけど自分は士織の言葉にYESと答えることができない。自分は精霊が憎い。

SSSにいたときも何人もの隊員達が精霊によって殺された。それを、残念だったね、不幸な事故でした。で済ますことなんてできない!

 

「・・・士織、正義の味方ってのは万能じゃない。それに、自分のお爺ちゃんが言っていた。誰かを救うということは誰かを救わないってことなんだ。

・・・それに!君に分かるか!目の前で!己の不甲斐なさ故に大切な人を失ってしまった悲しみが!!精霊は悲しみを生み出す権化だ!()はそれを断ち切らなければならない!!もう二度と僕と同じ人間を作らない為にも!!それに、アルテミシアとも約束した!必ず精霊のいない優しい世界を作るって!これが僕の精霊を殺す理由だ!!!────っ。」

 

思わずカッとなって士織に叫びつけてしまい、言い切ったところで士織の顔から涙が流れていることに気がついた。

 

「ぁっ───す、すまない、士織。怒るつもりはなか───。」

 

「なら・・・私は紅輝君と違う方法で悲しみの連鎖を断ち切るよ。」

 

「っ。なにを・・・いってるんだ。」

 

「私は紅輝君に精霊を殺させない、全部守ってみせる。誰かを救わないことを選ばないといけない未来なんて私が絶対に許さない!!それに、今の紅輝君は私嫌い(・・)。」

 

士織はそう叫ぶと、屋上の入口から出ていってしまった。

 

「士織・・・。」

 

───どうして、どうしてなんだ。自分は君のために、君が安心して暮らせる世界を作りたいだけなのに。

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────────────────

 

 

あれから2週間が過ぎた。

あの時のから自分と士織の関係は最悪の状態だった。

一緒に学校に行くことも無くなり、顔を合わせてもそっぽを向かれてしまう。

 

 

 

そして、それは天宮祭前日の今まで続いている。

 

 

9月24日

 

この日も夜までストレスをぶつけるかのように難易度の高いシュミーレーターでの訓練をこなし、基地内を岡峰隊員と休憩がてら歩いていた。

 

「遠坂さん!聞いてください!最近、五河士音っていうポニーテイルの可愛い子がいたんです!」

 

「へぇ、五河という名だが、あの五河士道との関係性はあったりするのかい?」

 

ある程度ストレスが軽減されているおかげか、こうして気を落ち着かせて岡峰隊員とも話すこともできている。本当なら士織と過ごしている方がストレスはは無くなるのだが避けられている以上、そうすることはできない。

 

「聞いたところによると五河君の従兄妹らしいです!なんでも急用ができた五河君に変わって天宮祭の実行委員を手伝ってくれているらしいですよ。」

 

「なるほど・・・。僕も1度その人に会ってみたいものだ。」

 

そんなことを話しながら隊長室の前を通り過ぎようとしたときだった。

隊長室の中から日下部隊長の怒鳴り声が聞こえてきた。

 

『ふざけないで!』

 

『これは上からの命令ヨ、意見は上に言うことネ。』

 

ジェシカ・ベイリーの声も同じく聞こえたかと思うと、扉が開かれジェシカ・ベイリーか が出てきた。

 

ジェシカは自分を見ると少し驚いた表情をするが、直ぐにいつもの調子に戻るとこちらに話しかけてくる。

 

「リボンズ、あなたはここで実力を燻らせて置くべきではないワ。その力、DEMに来ればもっと強くなれル。精霊を本当に倒したいのならこちらに来なさイ。」

 

ジェシカの言葉から冗談を言っているようには感じられず、本気で自分をDEMに入れたがっていることがよく分かった。

 

 

「・・・確かに、精霊を倒せるのならその誘いはとても魅力的だ。」

 

「そうでしょうウ?なら──。」

 

「だけど、君たちDEMが僕の家族にしたことを忘れたつもりもないよ。」

 

自分はジェシカの目を見て拒否の意志を感じさせるように言った。

ジェシカも自分の考えを感じ取ったのか肩をすくめ残念そうに息を吐く。

 

「──そウ、なら忠告ヨ、明日は大人しくしておく事ネ。」

 

そう言うとジェシカは自分たちに背を向け去ってしまった。

 

「遠坂さん・・・。」

 

岡峰隊員がこちらを心配そうにこちらを見つめていたが、自分は無言でジェシカを見送った。

 

───大人しく、か。やつらは何かを起こす気だろう。だが、何を起こすかわからない以上どうすることもできない。

聞いて答えてくれるかは分からないが1度、日下部隊長に聞いてみた方が良さそうだな。

 

「日下部隊長、少々お時間よろしいでしょうか。」

 

扉をノックし中にいる日下部隊長に声をかける。

 

『え?あ、あぁ。問題ないわ、入ってどうぞ。』

 

「「失礼します!」」

 

自分と岡峰隊員が中に入ると椅子の上で頭をかかえている日下部隊長がいた。

 

「日下部隊長───。」

 

「遠坂少尉、大丈夫よ言わなくても分かるわ。あの女と話していたことの内容でしょ?」

 

「はい、その通りです。もし良ければ教えていただいてもよろしいでしょうか。」

 

「どうせ、後で通達しないといけないものだから何も問題ないわ。あの女の言う上、要するにDEMから命令が来たわ。内容は度々〈プリンセス〉の反応が観測されている人間、夜刀神十香の身柄と五河士道と呼ばれる少年の確保よ。」

 

「えっ・・・!?五河君が?それに、夜刀神十香ってそんな!?」

 

「岡峰隊員、君の気持ちも分かる。だけど今は1度落ち着くんだ。」

 

「・・・はい。」

 

あまりの驚きに動揺している岡峰隊員に声を掛け一旦落ち着かせる。

かく言う自分も内心驚きが隠せずにいたが何とか押し込め、日下部隊長に話を続けてもらう。

 

「すみません、日下部隊長。続けてください。」

 

「分かったわ。夜刀神十香って子のことは私達も何度かその姿を見たことがあるから理解できるわ。だけれど、五河士道って子は一般人だけど〈ディーヴァ〉が出現したときにいた男の子よね、記憶処理のためなのかもしれないけれどその方法が問題というか、頭がおかしいとしか言えないわ。」

 

「その方法ってなんなんですか・・・?」

 

岡峰隊員が恐る恐る隊長にその方法についてたずねる。

 

「天宮祭開催中の中、騒ぎを起こしてその混乱に動じてその子達の身柄を強奪だそうよ。」

 

「・・・っ!そんな命令従えるわけないじゃないですか!」

 

「僕もその作戦に賛同できないね。」

 

「ええ、私もよ。だけど私たちの考えを見越してかAST隊は連絡があるまで基地内で待機だそうよ。」

 

「なっ・・・!?」

 

「そう、だから私たちにはどうすることもできない。あの女達が好き勝手する様を指をくわえて見ているしかないってことよ。」

 

そう言うと日下部隊長は椅子から立ち上がると自分たちの前を通り過ぎると振り返り自分たちを見る。

 

「美紀恵、少しいいかしら更衣室で乙女の恋バナでもしましょ。」

 

「え?いきなり何をいって────。」

 

「いいから。遠坂少尉も早く出なさい。ここももう閉めるわよ。」

 

「・・・分かりました。」

 

自分も何の解決策も出せていないことに納得できてはいないが、直ぐに隊長室からでると、日下部隊長はわざとらしく喋り出した。

 

「あー、遠坂少尉に精霊を倒した特別給与を与えてなかったわね。」

 

そう言うと、日下部隊長は制服のポケットから少し厚めの紙の封筒を自分に手渡してくる。手に取った感触は明らかにお金が入っている感触ではなく中身のことを聞こうとする前に日下部隊長は岡峰隊員を連れて女子更衣室に行ってしまった。

 

日下部隊長が何かをしようとしていることは分かったが、その内容を聞き出そうにも自分が女子更衣室に行くことはできないため、一旦中身のことを聞くのを諦め、少し時間を開けてからプライベートの電話で中身について聞くことにし、自分は自分の家への帰路についた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────────────────

 

そして、あれから十数分。

そろそろ我が家につこうとしているときだった。

 

プライベートの携帯電話の方から着信音が鳴り響く。

もしや中身のことか?と思い。メールの差出人を確認すると、そこに表示されていたのは岡峰美紀恵という文字が表示されていた。

 

メールの内容は単純でシンプルに『中身を見てください。』というものだった。

 

中身を見てください、というのは恐らくさっき日下部隊長に貰った封筒のことだろう。

何が入っているのかは分からないが明日起きることへの解決策なのだということは直感的に理解できた。

 

カバンから封筒を取り出し、中身を見てみるとその中には折りたたまれた1枚の紙と、1つの鍵だった。

紙を開くとそこには短く『第二格納庫』と書かれており、一緒に入れられていた鍵がなんなのかがすぐに分かった。

 

そして、中身を終えた直後。岡峰隊員からもう一度メールで連絡がはいる。

 

『会えますか?』

 

それに対し、自分はすぐさま返信した。

 

『分かった。中央公園に。』

 

 





次回も見ていただけると嬉しいです!
お気に入りに追加してくださった。
携帯砥石さん、I 人類さん、みるくてぃー㌠さん、玉田 ヒロさん。
ありがとうございます!これからも見ていただけると嬉しいです!

最近、クロスアンジュという作品を見ました。
女性キャラばかりと聞いてすこし抵抗感を覚えていたのですが、いざ見てみると案外面白くて思わずハマってしまいました!
ヴィルキスカッコイイ・・・。



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戦闘準備

37話目です

待たせたな!

皆さん久しぶりです。
投稿間隔が空いてしまい申し訳ありません!
本当ならもう少し早く投稿する予定だったのですが・・・。

それはともかく、この前実施したアンケートで意外と劇場版の内容もやって欲しいという答えが多いですね。
このアンケートは次話まで実施しますので、まだ答えていない方はぜひ答えていただけると嬉しいです!


 

 

9月25日 〜天宮祭開催日。

 

14:30

 

天宮市中央公園。

 

 

「岡峰隊員、行けそうか?」

 

魔術で人払いをした天宮市の中でも最も広い中央公園に自分と岡峰隊員は居た。

 

「はい!問題ありません。初めての起動ですがかなり馴染みます!」

 

SSSで製造され、日下部隊長に極秘で渡されていたCR-ユニット

 

──〈不思議の国のアリス(アリス・イン・ワンダーランド)

 

そのCR-ユニットを纏ったその姿は不思議なことに現状の岡峰隊員の変化は無くASTの隊員なら誰でも装着する〈基本顕現装置(ワイヤリングスーツ)〉と変わらず、特徴的な部分を上げるとするのならかなりの大きさのある1冊の機械仕掛けの本が空中に浮遊していることである。

 

「ふむ、説明書によればそれは君が過去に使った〈アシュクロフト〉の能力を1つに纏めたものだそうだ。

 

だがまぁ、日下部隊長の判断は正しいな。僕はは1度も〈アシュクロフト〉を使ったことがない。だけど君はあの時に〈チェシャーキャット〉を纏ってセシルたちと戦った、その性能と能力を充分に発揮できるのは鳶一折紙がいない今、君しかいない。という訳だ。」

 

岡峰隊員に渡されていた説明書を見ながら、〈不思議の国のアリス〉の性能を確認していると、岡峰隊員が声を掛けてきた。

 

「あの、遠坂さん。天宮祭行かなくて良かったんですか?」

 

「・・・いいんだ。だけど、それは君もだろう?友達と一緒に見て回る予定とかあったんじゃないか?」

 

「私は大丈夫です!午前の内に友達と色んな所を回りましたから!あ、そうじゃなくって!遠坂さんはずっと今回の作戦のために朝からここで用意してたじゃないですか・・・。彼女さんと一緒に回らなくて良かったんですか?」

 

岡峰隊員の本心からの心配に心が少し痛むが、今の自分と士織で一緒に天宮祭を回ることなんてもう無理だろう。

 

「・・・心配してくれてありがとう。だけど今は一般人達を守ることが僕のやるべきことだ。そのためならなんてことはない。僕はアレ(・・)の最終チェックをしてくる。作戦開始は20分後からだ、それまでに岡峰隊員も心と機体の準備を終わらせておいてくれ。」

 

自分はそう言って天宮駐屯地から持ち出したCR-ユニットの最終チェックをするためにこの場を一旦去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────────────────

 

 

「遠坂さん・・・。」

 

私、岡峰美紀恵はもうすぐ重大なミッションを遂行することになります。

あのDEMからきたいけ好かない魔術師達から一般市民を守るという大切なミッションです。

私の他にもう1人、あのSSSからきた遠坂紅輝さん。とっても頼りになる人で、私にお兄ちゃんがいたらあんな感じなのかなって思うほどです!

ですが、最近。厳密に言えば一週間ほど前からずっと基地に来ては難易度の高いシュミレーターに入って帰宅時間までずっと訓練をしていていつか体を壊すんじゃないかとても心配です・・・。彼女さんがいると聞いたこともありますし、もしかしたらその人と喧嘩をしたのでしょうか・・・。

 

 

『彼が心配なのですか?』

 

「え・・・?」

 

突然私の心を見透かしたかのような声が聞こえ、周りを見回すが人らしきものは見えなかった。

 

「だ、誰ですか・・・!」

 

『ここですよ。』

 

私の声に答えるように今私が纏っているCR-ユニット〈不思議の国のアリス〉を起動した時に現れた巨大な本が私の目の前で浮遊するとその存在を主張するように私の周りをグルグルとまわりだす。

 

『初めましてですね、マスター。私の名前は〈ベルMarkII〉です。マスターの戦闘から日常生活までサポートするISD(インテリジェエント・サポート・デバイス)です。以後、よろしくお願いします。』

 

「べるまーくつー?」

 

『・・・恐らく今マスターが想像している、スクールなどで集めて交換するポイントのことではないと断言しておきます。』

 

なに・・・?このデバイス、人の心が読めるのか・・・!?、

 

「じょ、冗談だよ!えーと、MarkIIってことは〈チェシャーキャット〉に搭載されていたアルテミシアさんの意識とは違うんだよね?」

 

『YES、私はオリジナルの意識データを参考に新たに作られたサポートAI〈ベル〉の後継機に当たるものです。もちろん、〈ベル〉が得た経験データもそのまま私に引き継がれていますので、マスターの無茶な戦い方もデータにあります。』

 

「あ、ははは・・・。」

 

なんだか釘をさすように〈ベルMarkII〉に言われ、思わず苦笑いがでてしまう。

 

『本題に戻ります、マスター。先程の質問ですが、彼・・・遠坂紅輝のことが心配ですか?』

 

「・・・うん、やっぱり心配かな。私には遠坂さんに何があったかのは分からないですけど、できることなら私は遠坂さんの力になってあげたいです。」

 

『なるほど、マスターは彼に対してかなり良い印象を持っているのですね。』

 

「うーん、そうなのかな?遠坂さんはなんだかお兄さんみたいな感じだしね。」

 

『兄ですか。マスターは彼に対し肉親のような親しみを覚えている。ということでしょうか?』

 

「まぁ、そんな感じかな。あ、そうだった!私、〈チェシャーキャット〉しか使ったことがないから他のアシュクロフトのCR-ユニットがどんな感じか知りたいんだけどいいかな?」

 

『了解しました。まずはモード:ユニコーンから始めます。』

 

〈ベルMarkII〉のその機械音声と共に〈不思議の国のアリス〉の象徴である大きな本が開かれると中から明らかに物理容量を超えたアーマーが出てくると私の〈基本顕現装置〉の上に装着される。

それと共に〈基本顕現装置〉の色も、黒とグレーのカラーから〈ユニコーン〉の機体色を元にした白と蒼のカラーリングに変化する。

右手には大きな突撃槍が握られ、背中には大型のブースターが取り付けられている。また、ブースターの基部に大型のシールド兼ブースターが伸びており、3次元起動ができるようになっている。他にもその機動力を高めるために付けられたブースターが足や腰にも装着されており、以前戦闘した〈ユニコーン〉に改良が加えられていることが直ぐに分かった。

 

「凄い・・・!」

 

『テストフライトを行いますか?』

 

「・・・いや、大丈夫。時間も少ないし次に行こう。」

 

『了解です。次はモード:レオンに移行します。』

 

「それに・・・。いざとなったら頼りにしてるね。〈ベルMarkII〉!」

 

『・・・承りました。』

 

「あ、そうだ!私、いいことを思いついた!」

 

『?いいこと・・・とは?』

 

「ふふ、それはね?─────。」

 

 

 

そうと決まれば一刻も早くこのミッションを終わらせないとね!

 

 

 

 

 

ここに、1人の少女の決意が固く決まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────────────────

 

 

14:54分

 

 

「美紀恵、準備はできているか!」

 

アレの最終チェックを終え、あとはミッションを実行に移すだけとなった。

美紀恵の方を見ると、白い装備に大きな槍と特徴的なブースターを見るに〈ユニコーン〉だろう。美紀恵はこちらを見ると小さく頷く。

 

「はい!問題ありません!私もベルも行けます!」

 

・・・ベル?

美紀恵の言葉の最後に出てきた"ベル"という単語。ベルと言えば以前セシル達に聞いた〈チェシャーキャット〉に搭載されていたアルテミシアの意識データのことだと聞いたことがある。まさかあの〈不思議の国のアリス〉にアルテミシアの意識データがまた搭載されているのか!?

 

「美紀恵、少し聞いていいか?ベルとは一体なんだい?」

 

「あ、そういえば言い忘れていました!このCR-ユニットに搭載されているISD?らしいです!」

 

『よろしくお願いします。ミスター遠坂。』

 

「!これは驚いたな。こちらこそよろしく頼む。・・・そろそろ時間だ調度いいベル、残り5秒からカウントダウンをお願いできるかい?」

 

『了解しました。───────カウントダウンを開始します。』

 

 

『5』

 

 

自分と美紀恵はお互いに発信体勢をとる。

 

 

『4』

 

 

自分は、第二格納庫から持ち出した理論上精霊を単騎で討伐できるCR-ユニット、〈ホワイト・リコリス〉を起動させ。身に纏う。

明らかに一般的なCR-ユニットとは大きさの違う武装が展開され、その巨大な砲塔や数多の武装の数々が今では頼もしささえ感じさせるほどである。

 

 

『3』

 

 

〈ホワイト・リコリス〉と〈不思議の国のアリス〉モード:ユニコーン、のブースターから起動音がなり始め、発進の準備が完全に整う。

 

 

『2』

 

 

自分と美紀恵はお互いに目を合わせ、お互いに準備が整ったことを確認し合う。

 

 

『1』

 

 

「行くぞ!美紀恵!」

 

「はい!」

 

 

『0』

 

 

ブースターの出力を最大にし、自分達は天宮アリーナ上空へ向けて、ジェシカ達の作戦を止めるために飛び立った。

 

 

 

 

 

 

 






次回も見て頂けると嬉しいです!

お気に入りに追加していただいた。

椎崎紫苑さん、やまろんさん。ありがとうございます!
これからも見ていただけると嬉しいです!


新ユニコーンのモチーフはキマリスヴィダールの背中にキマリスブースターが着いた感じです。

次回は戦闘回、頑張るぞー!


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戦闘開始

38話目です。

皆さん、おはこんばんにちは狩宮深紅です!

前回の更新が長引いたお詫びに前回の倍は書きました!
書いてて思ったこと。あれ?〈不思議の国のアリス〉ぶっ壊れじゃね?(今更)

ま、まぁ、その分原作よりもDEMの人達有能にしてるつもり(つもり)だから大丈夫かな・・・。



 

14時59分 ~天宮アリーナ上空。

 

ジェシカ・ベイリー率いる、DEMの部隊はアイザック・ウエストコットからの命令遂行のため、部隊を整い終え、後は作戦開始時間を待つだけである。

この日のためにDEMから最新のCR-ユニットと武装、〈バンダースナッチ〉を与えられている。邪魔になるASTはおらず、唯一の懸念点であったリボンズ・アルマークも、今自分達が装備している武装の数々と〈バンダースナッチ〉が相手ではいくら高性能CR-ユニット〈デスティニー〉であっても敵ではないだろう。

 

perfect(完璧ね)・・・。」

 

 

ジェシカは思わず破顔してしまう。それもそのはず、この質と量を備えた部隊に隙はほとんどなく、今のASTには〈デスティニー〉を超えるCR-ユニットなどない。いつかこの駐屯地に運び込まれたというあの欠陥機(・・・・・)はそもそも扱える魔術師がいるはずもない。

 

 

「・・・そろそろネ。撃ち方用意!!」

 

ジェシカの一声により、前方と後方に展開している〈バンダースナッチ〉や、アプデタスナンバーの魔術師達が各々の武器を構える。

 

 

15時00分。

 

 

「fir────」

 

その瞬間、ジェシカの視界の端に小さい赤い光が映る。

 

「───ん?」

 

刹那

 

後方にいたジェシカ達を含めた魔術師達の視界に赤い一閃が走ったかと思うと、前方に展開させていた〈バンダースナッチ〉の全てに、中心に大きな穴がこじ開けられていた。その後、〈バンダースナッチ〉は大きな音を立てて爆発する。

 

「何ガ───!!」

 

一瞬のうちに10機もの〈バンダースナッチ〉が破壊されたことにより動揺するが、その中でもジェシカの目には赤い閃光が走り抜けて行った先からもう一度赤い光が見えた。

 

そして、もう一度赤い閃光がこちらに向かって走ってくる!

 

そして、今度は後方に展開してある〈バンダースナッチ〉に向かっていることを瞬時に判断できた。

 

「そうわさせないワ!!」

 

ジェシカはとっさに手持ちのレーザーブレイドを振るい、赤い閃光の攻撃を受ける。

 

「ぐうぅっ!?なん、て、勢いなノ・・・!?」

 

随意領域制御を持ってしてもジェシカはその威力を完全に殺すことはできず、後ろにいた〈バンダースナッチ〉を2機ほど巻き込まれてしまう。

 

そして、ジェシカ・ベイリーは見た。先程の赤い閃光とは違い、白と青のカラーリングをした巨大な槍と異常なまでの推進力を求めたと一目見てわかる程のCR-ユニットを纏う魔術師、岡峰美紀恵の姿を。

 

「オカミネ、ミキエ・・・!!」

 

ジェシカは驚きと苛立ちの混じった声で彼女の名を呼んだ。

それに対し、美紀恵は一旦距離を離し、その巨大な槍をジェシカに向けた。

 

「はい、岡峰美紀恵です。貴方達を止めにきました!!」

 

 

「・・・Shit!!部隊を再構築!EF1!目標を岡峰美紀恵に変更、落とセ!!」

 

「「「「「Yes mam!」」」」」

 

失った〈バンダースナッチ〉の分を補うためにフォーメーションを変更し、岡峰美紀恵を囲むように部隊を整えようとしたときだった。

 

 

 

「ジェシカァー!!!!」

 

叫び声と共に、ジェシカの直上から大きな熱源反応が先程の赤い閃光ほどでは無いものの、かなりの速さで近づいてきていた。

そう、それは普通のCR-ユニットでは考えられないほど大きな砲塔とビームブレイド発生装置、無骨に装備された4つの複合兵装を備えたCR-ユニット。通称『最強の欠陥機』〈ホワイト・リコリス〉を装備した遠坂紅輝の姿があった。

 

遠坂紅輝が大型ビームブレイドをジェシカを狙い振り下ろす。ジェシカは防性随意領域を何重にも展開し、それをなんとかガードするも、随意領域維持のために消費した魔力は馬鹿にならないほどであった。

 

「なぜ・・・っ。リボンズが〈ホワイト・リコリス〉を動かせているノ!?」

 

ありえない、と言った感じに紅輝にむかって叫ぶジェシカに、彼は美紀恵のいる位置まで後退すると、その言葉に答えた。

 

「誰だか分からないが僕でも扱えるように出力調整がされていてね。いや、本当に、誰がやったんだろうね?」

 

「くっ!あいつの差し金ネ・・・!」

 

「ジェシカ、昨日の忠告を返そう、大人しくしておくんだ。僕は作戦のために一般市民が巻き込まれるなんてのは認められない。遠坂紅輝として、リボンズ・アルマークとして、AST天宮駐屯地所属の魔術師として!!」

 

「何を馬鹿なことを言っているのリボンズ!!貴方が今何をしているのか分かっているノ!?貴方も軍人なら上の命令は絶対遵守なのは分かっているでしょウ!!」

 

「あぁ、それは分かっているよ。だけど、罪なき一般市民を守るのも軍人の役目だ!」

 

自分がそういうと、ジェシカは説得は不可能と判断したのか武器を構えた。

 

「・・・貴方がそういうのならもう仕方ないワ。目標を追加!私が直接リボンズを叩く!貴方達はあの岡峰美紀恵を潰しなさイ!容赦は要らないワ!そちらが片付き次第、一気に〈ホワイト・リコリス〉を囲んで制圧する!」

 

「「「「Yes mam!」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────────────────

 

「美紀恵、ベル、任せていいか?」

 

「大丈夫です。私とベルならなんとかなります!」

 

『おまかせを、必ずマスターを勝利へと導いてみせます。』

 

 

それを聞いて自分は改めてジェシカに向き直る。〈ホワイト・リコリス〉はこの性質上、長時間の稼働は向いていない。ミルドレッドさんに調整はしてもらってはいるが過信は禁物だろう。なるべく短時間で決着を付ける!

 

 

 

 

 

 

自分は一気に〈ホワイト・リコリス〉のエンジン出力を上げ、リーダーであるジェシカに狙いを定め、二門のビームカノンを連続で発射する。

同時にミサイルポッドを解放し、現在装填されているミサイルをジェシカに向け放つ。

 

「そんな攻撃当たらないワ!!」

 

「くっ!想定道りの速さ・・・!」

 

一瞬のうちに距離を詰められてしまい、レーザーブレイドで切りつけてくるが、なんとか手持ちの大型ビームブレイドでなんとか防ぐ、すぐさま新たに装填し直されたミサイルを全てジェシカに放ち、その距離を離す。

 

ジェシカはこちらの得意とする中遠距離の間合いから小回りの聞くCR-ユニットが得意な近距離戦に持ち込もうとする。

近距離での戦闘は小回りのきかない〈ホワイト・リコリス〉であるため、自分も全力でブーストを吹かし、中遠距離を維持する。

 

だが、ジェシカはDEMの中で指折りの実力者、自分の放ったミサイルや砲撃は尽く避けられ、再びジェシカの得意距離にまで詰められようとしていた。

 

「くっ!さすがアプデタスナンバー3と言ったところか・・・。だが!」

 

複合兵装をミサイルモードから砲撃モードに変更する。

 

「とっておきだ!食らうがいい!!」

 

ミサイルポッドがあった部分が回転し、中に引っ込み代わり主砲よりも2回りほど小さな砲塔がひとつに付き三門現れる。

網膜投影されたバレットサークルの全てをジェシカに合わせ、そのまま引き金を引くと、計12門もの砲塔から一斉に砲撃が放たれた。

 

「なっ!」

 

さすがのジェシカでもこの砲撃を躱すことが困難であるのか、防性随意領域を展開し、防御する。

しかし、防御したときの爆風が広がりジェシカは遠坂紅輝の位置を見失ってしまう。

 

ジェシカは経験から爆風の中からすぐさま退避しようとしたが何故か体が動かなかった。

 

「な!何ガ・・・!?」

 

そうしているうちにも爆風が晴れ、何が起きていたかハッキリとわかる。

 

手首と足首が空中に固定されるように随意領域が展開され、身動きが取れないようになっていたのだ。

 

「随意領域!!?まさカ!?」

 

ジェシカの真正面にはその巨大な砲塔に魔力エネルギーを充填し終えた紅輝がそこにいたのである。

 

「意外と早い決着になったねジェシカ?君の他に何人か人員をこちらに割いていたらこの結末は変わっていたかもね。安心したまえ、君たちの任務は代わりに僕がやっておくさ。」

 

紅輝はなんの躊躇いもなく引き金を引くと、二門の砲塔から巨大な魔力の奔流が放たれ、ジェシカを襲う。

 

「リボンズゥゥゥゥウ!!!」

 

ジェシカも瞬時に防性随意領域を展開するもののフルチャージされたその砲撃の威力には耐えられず、そのまま撃墜されてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────────────────

美紀恵Side

 

 

 

巨大な爆発音も共に遠坂さんと戦闘を行っていたジェシカさんが落とされていました。あの火力、流石は『最強の欠陥機』と呼ばれる〈ホワイト.リコリス〉です。

 

「ベル、向こうは終わったみたいだよ。」

 

『もちろん、それは確認済みです。』

 

「それじゃあこちらも決めに行くよ!!」

 

『Yes,master!!』

 

すでに〈バンダースナッチ〉の半分は撃破し終え、残りの数は〈バンダースナッチ〉と魔術師を合わせて10体。

そろそろ相手方もこの〈ユニコーン〉の速さに慣れてきているみたいです。

それなら別の手を使うまでです!。遠坂さんからは、あまり手の内を見せない方がいいと言われていますし、次で決めるとしましょう。

 

「ベル!モード:レオンで行くよ!」

 

『accept,モード:レオンに換装します。』

 

「何かするつもりだ!好き勝手させるな撃て!撃てぇ!!」

 

アプデタスナンバーが1番高い魔術師が危機感を察知したのか、すぐさまに、そうわさせまいと射撃支持を出す。

 

その言葉と同時に〈バンダースナッチ〉や、他の魔術師達もが装備しているレーザーガンをまさに雨の如く撃ち込む。

いくら高性能なCR-ユニットであったとしてもこの弾幕の量を受けたとすれば防性随意領域を貼ったとしてもひとたまりもないだろう

 

 

 

「撃ち方止め!!」

 

数秒後、全員が1マガジンを打ち切ったところで指示を出しているアプデタスナンバーが射撃を止めさせる。

 

「さすがにこれなら死んではいなくてもボロボロでしy────。」

 

しかし、彼女が見たのは先程の射撃でダメージを受けたと想定されているASTの魔術師ではなく、先程の白と青のCR-ユニットとは違い、薄いトリコロールカラーのCR-ユニットを纏った岡峰美紀恵の姿だった。

 

 

『換装終了。オートバリアを解除します。』

 

球状の防性随意領域が解除され、岡峰美紀恵は新たなる鎧を身に纏う。

基本顕現装置に大型のビームライフルとマルチウェポンシールドのみならず、頭から被るように装備されている巨大なフライトユニットがその存在を主張していた。

 

「行って!〈レオン・ファング〉!!」

 

美紀恵がそういうと、フライトユニットの内側からミサイルのようなものが現れ、魔術師達に襲いかかる。

 

「ミサイルがくるワ!!総員回避!」

 

そのミサイルのようなものは、魔術師達に一直線に飛んでいくだけであったのでアプデタスナンバーを含め、ほとんどの魔術師は回避に成功した。

 

「な、何よ、ただの虚仮威しじゃない。」

 

この中の誰かがそういった。その瞬間。

 

そのミサイルのようなものは急激にその動きを変え、ミサイルとしてはありえない曲がり方をした後、飛翔の助けとなっているスラスター部分を完璧に捉え、爆発を起こした。

 

「何?何が起こったの!?」

 

「きゃぁぁぁ!?」

 

「まさか、ほとんど実用化されていないビット兵器だって言うの!?」

 

そうしているうちにも、次々と仲間が落とされていく状況に見かね、指示を出していたアプデタスナンバーが美紀恵に対し、一気に接近する。

 

──あのずうたいじゃ機動力は見ての通り低いみたいね、一気に接近して翻弄できれば!

 

一気に近づき、レーザーブレイドを振りかぶるが、美紀恵もその接近は読んでいたため、シールドでガードする。

 

「アンタのそのCR-ユニット、随分とおかしなものだけど接近してしまえばさっきのミサイルもどきは使えないでショ!」

 

「確かに〈レオン・ファング〉は使えません。ですが、この距離まで安直に近づいてきたあなたの負けです!」

 

「何を言って────っ!?」

 

その瞬間、美紀恵は随意領域で閉じ込める。そして、フライトユニットとシールドに内蔵されているメガ粒子砲をその魔術師に向けた。

 

「ごめんなさい、痛いかもしれませんが死にはしませんから!」

 

その言葉と共に砲撃が放たれ、アプデタスナンバー4はその砲撃に直撃し、落とされてしまった。

 

「ナンバー4が落とされた!?」

 

「バンダースナッチも全部落とされたワ、ここは一旦撤退を!」

 

「何言ってるの!?ジェシカも落とされてこのままヌケヌケと帰るわけ!?」

 

 

残存部隊を纏めながら罵りあいをするDEMの魔術師たちに、美紀恵は叫んだ。

 

 

「今すぐジェシカさんたちを回収して撤退してください!撤退するならこちらからはもう手出しはしません!」

 

「そんなことできるわけないじゃなイ「───それは残念だね。」──っ!?」

 

「遠坂さん!」

 

〈ホワイト・リコリス〉を装備した遠坂紅輝が、気絶したジェシカを雑に抱えて岡峰美紀恵に合流した。

 

「君たちが退くならジェシカをそちらに引き渡そう。だが、君たちがこれ以上僕達と戦闘をするというのなら、僕はこのジェシカを盾にでも使おうかな?それに、あちらでも何か起きたようだしね。」

 

遠坂紅輝は天宮アリーナの方に目を向ける。地上では先程のライブが行われていたときの状況とは全く違う状況になっているようだった。

 

 

この状況、戦力比はこちらが不利なことは明らかである。〈バンダースナッチ〉も全て落とされてしまい。残っているのはほんの数名のみ。

彼女たちはDEMへの忠誠心を多少とはいえ持ち合わせてはいても、戦力比が読めないほどDEMに心頭しているわけではなかった。

 

「・・・分かった。総員!残存部隊を纏めて撤退するわ!撃墜されたやつも回収なさイ!」

 

「しかし・・・!」

 

「早くなさイ!」

 

「い、Yes.mam!」

 

「賢明な判断、感謝するよ。」

 

そう言って紅輝はジェシカを無造作にアプデタスナンバー5に投げつけた。

 

「なっ、ちょっと!?──────・・・この件、上に報告させて貰うワ。」

 

「好きにするといい。」

 

 

その後、DEMの魔術師達はDEMの日本支部の方向へと撤退していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────────────────

 

「やりました!やりましたね!遠坂さん!!」

 

嬉しそうに空中でぴょんぴょん跳ねる美紀恵にサムズアップを送り、天宮アリーナの方を見ると、中で何か騒ぎが起きていることが明らかだった。

 

「美紀恵、天宮アリーナの中の様子がおかしい。もしかしたら〈ディーヴァ〉が再び現れたのかもしれない。もうひと頑張りできるか?」

 

「はい!大丈夫です!それと、遠坂さん!少しいいですか?」

 

「もちろん構わないがどうした?」

 

「良ければこれが終わった後。・・・よ、良ければ私と少し天宮祭を回りませんか?も、もちろん、良ければですが・・・。」

 

恐らく、天宮祭に行けていない僕に気を使っての言葉だろう。

本当に美紀恵は優しい子だ、アルテミシアが信頼している理由が改めてよく分かった。

 

「あぁ、もちろん構わないさ。この戦いの報酬として、その位はお安いご用さ。」

 

「ありがとうございます!それじゃあ残業を早く終わらせないとですね!」

 

「そうだな、僕も一旦〈デスティニー〉に変えよう。室内じゃ〈ホワイト・リコリス〉はただの邪魔しにかならないからな。」

 

〈ホワイト・リコリス〉を解除し、転移魔術で中央公園に送った後、〈デスティニー〉を纏う。

 

 

 

その後、天宮アリーナの天上に取り付き、人が入れるほどの大きさより少し大きめの穴を〈アロンダイト〉で開ける。

 

「行くぞ、美紀恵。」

 

「はい!」

 

その穴から中に侵入すると、中に広がっていた光景は僕達が想像していたものより遥かに最悪の状況だった。

 

そう、そこには天宮アリーナという密室に〈ディーヴァ〉〈ベルセルク〉〈ハーミット〉〈プリンセス〉が存在していた。さらに、〈プリンセス〉が士道を守るように他の精霊たちと戦闘を繰り広げていたのである。

 

「っ!!最悪の状況か!だが!美紀恵、モード:アリスで観客を守れるか!そのうちに一気に〈デスティニー〉で精霊を外に出す!そこでなら安全とは言い難いかもしれないがここよりはマシだ!」

 

「了解!ベル、モード:アリス!」

 

『accept、モード:アリスに換装します。』

 

機械仕掛けの本が開かれると、中からまた明らかに中に入っていたとは思えない装備が現れ、美紀恵に装備されたいた〈レオン〉の装備が別のページに収納されると、〈アリス〉の装備が美紀恵に装着される。

 

基本顕現装置が水色に変化し、ビームライフルと、円型のバックパックには大型の砲塔も装備されていた。

 

「ベル!デッカイの広げるよ!」

 

『OK。』

 

美紀恵がそういうと、観客席を防性随意領域が包むように展開された。

〈アリス〉のカタログスペックを見た僕もこの随意領域制御には、驚かされる。しかもこれが全て鉄壁の硬さを誇るというのだ、一体一でモード:アリス破ることは困難だろう。

 

「今のうちに!」

 

自分が精霊どもの注意を引くため、戦場のど真ん中に行こうとした、その時だった。

 

自分の目の前にこの世界よものでは無い、そして、ここにあるはずのないはずのものが現れる。

 

自分が前世で何度もみたその形、円状にあらわれる00クアンタのソードビットである。それは守りにも使われるがその能力はもう1つある。

 

そう、量子ジャンプである。

 

そして、その中からどこでもドアをくぐるように現れたのは自分がよく知る存在。絶対にその事実を認めたくない存在だった。

 

 

 

 

 

 

「なん、で。君がここに・・・!」

 

 

 

 

 

「言葉どおり、皆を守るため。そして、君を止めるためだよ。紅輝くん。」

 

 

 

遠坂紅輝の恋人、そして、五河士道の姉。五河士織である。

 

 





次回も見ていただけると嬉しいです!
お気に入りに追加して下さった
魔神!さん、イシュリーさん、後上 斗夏さん、白夜00さん。
ありがとうございます!これからも見ていただけると嬉しいです!


革命機ヴァルヴレイヴ面白くない?ストーリーは、ん?って思うところあったけど、面白くない?こう思うのは私だけなのかな・・・。
ロボットデザインとか設定とかすごく好きなんだけどなぁ・・・。


あ、モード:レオンのモチーフは、ペーネロペー。モード:アリスのモチーフはGセルフのパーフェクトパックです。さすがにフォトントルピードは使えませんがね。


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乱戦

39話目です。


こんにちは!狩宮深紅です!

更新期間がまた少しあいてしまいましたね・・・。
うーん。皆さん的には更新頻度が高いのと文字数がいっぱいあって読み応えかある方が良いのでしょうか・・・。
なぜ更新が遅れたのか一言で申しますと、イベントが、クリアできません・・・。
ムズすぎだよぉ・・・。あれのどこが中規模なんだよ・・・。


あ、最後にアンケートをします、内容はさっき書いた、皆さんは文字数と更新頻度を優先して欲しいかです。もちろんどちらの結果になったとしたも最前は尽くすつもりです!


 

「言葉どおり、皆を守るため。そして、君を止めるためだよ。紅輝くん。」

 

「・・・その姿は、なんだ。」

 

「分からない?紅輝君なら分かっているでしょ、1度倒したことのある精霊なんだから。」

 

それは分かっている、だけど脳がその事実を認めようとはしなかったのだ。

いや、クアンタのソードビットを見た時点で僕のなかではほぼ確信していた。

あの日僕があの謎の存在に渡した精霊の核のようなもの、あれが士織の蘇生に使われたということ。なんだ、全部自分の自業自得じゃないか。

 

それに気がついたとき、思わず笑いが込み上げてくる。

人はどうしようもなくなった時、笑いがでるというのは、きっとこういうことなのだろう。

 

「・・・は、ははは、はははははっ!」

 

「紅輝くん・・・。」

 

「そうか、僕のせいか!君が精霊になったのは!はははははっ!あぁ、なんて愚かなんだ!」

 

この世に神がいるのなら、よっぽど僕のことが嫌いらしい!

 

 

どうする?士織は僕の憎むべき存在、精霊となった。僕はASTだ、精霊を殺すのが仕事だ。でも士織は自ら望んで精霊になったわけではない、彼女が精霊になったのは僕のせいなのだから。

 

・・・それなら。まだ、チャンスはある、恐らくまだ士織は精霊の力に馴染んでいないはず。それなら何らかの方法で戻す方法はあるはずだ。

 

 

確証のない根拠で己の戦う意志を高める。それがどんなに滑稽であったとしても彼にはもうそう信じるしかないからだ。

 

 

「・・・士織、そこを退くんだ。」

 

「っ!それはできないよ、ここをどいたら紅輝君は精霊を殺すでしょ!」

 

「なら、君はこの状況で一般人の、1人の犠牲をださずに鎮圧することができるのか?僕と美紀恵ならできる。」

 

「それは・・・。」

 

士織は少し俯きながら言葉を濁らせる。

当たり前だ、ここ最近精霊の力を得た元タダの人間にそんなことができるはずがない。

 

「生半可な覚悟で戦場にくるな、その甘い感情が罪なき人間を殺すんだ。分かったらそこを退け。」

 

「っ!・・・。」

 

VL(ヴォアチュール・リュミエール)。」

 

「っ、待って!」

 

士織の意識が自分から逸れた一瞬のうちにVLを発動させ一気に士織の横を通り過ぎる。後ろからGNソードVのビームライフルを打ってくるがVLの速さに対応できていないのか全く当たらない。

 

「美紀恵!僕を撃っている精霊を随意領域で閉じ込めることができるか?」

 

『!了解です、やってみます!』

 

美紀恵の返事が通信から聞こえると、士織の周りに球状の随意領域が展開され、彼女を閉じ込める。

 

「いいぞ!そのままその範囲限界までを縮めるんだ、あの精霊がでてきたときのような量子ジャンプて逃げられなくするんだ。」

 

『はい!』

 

士織がモード:アリスの随意領域に閉じ込められたことを傍目で確認すると、そのうちに乱戦状態になっているステージの方へとたどり着き、〈ディーヴァ〉に切りかかる。

 

「でやぁあ!!!」

 

「っ!またお前か!!四糸乃さん。お願いします!」

 

「はい、お姉様!」

 

『任せて〜。』

 

僕と〈ディーヴァ〉の間に〈ハーミット〉が割って入り、氷の壁を形成する。その氷の壁は厚く、突破するのに一筋縄ではいきそうにない。

 

「ちっ!ならば!」

 

あの日、全身の魔力をこの〈デスティニー〉に込めたとき、過剰なエネルギーがCR-ユニットに供給されたときにリミッターを外すことができた。それを応用すれば!

 

自身の魔力を〈アロンダイト〉のビーム発生装置に全力で流し込む。

すると、予想どうりにビーム刃が膨張する。

 

「はぁっ!」

 

「そんなっ!?」

 

〈ハーミット〉が展開した氷の壁を熱したナイフがバターを切るようにいとも簡単に両断する。そのままの勢いで大きな兎?のような天使に乗っている〈ハーミット〉の本体と思われる女の顔を掴む。

 

「きゃっ・・・!?」

 

『四糸乃!』

 

「安心したまえ、今回は気絶させるだけだ。」

 

自分は〈ハーミット〉の頭を掴んだ左手の〈パルマフィオキーナ〉を起動させ、ビームの威力で全力でステージの床に叩き付けた。

 

いくら精霊と言えどもこの攻撃には耐えられず、〈ハーミット〉は気絶し、大きな兎のような天使もただのパペット人形のようなものに変化した。

 

「あとは君だけだ〈ディーヴァ〉。」

 

「っ!!耶倶矢さん、夕弦さん!」

 

〈ディーヴァ〉の、その一声で反対側で〈プリンセス〉と戦っていた〈ベルセルク〉がこっちに向かって飛んでくる。

 

「〈ベルセルク〉!」

 

〈ベルセルク〉は〈プリンセス〉と同等の力を持つ精霊。短期決戦にするには最初から全力で行くしかない!

 

向かってくる〈ベルセルク〉に対し、まずは夕弦と呼ばれていた片割れの方に狙いを絞る。

VLを展開し、一気に接近してリミッターを限定解除している〈アロンダイト〉で素早く切る。もちろん、これで倒せるとは思わない、想定するのはSSSにいた頃、本気を出した〈ベルセルク〉の速度。

 

「驚愕、早い!ぐぁっ!?」

 

だが、〈ベルセルク〉には想定していた速度はなく、夕弦と呼ばれていた片割れの腹部に深い切り傷が刻まれる。

?どういうことだ。何故あのときの素早さを発揮しない?

それによく見ればあの時と違い、霊装も中途半端にしか展開していない。

 

・・・こちらを軽く見ているのか、随分と舐められたものだな。

まあ、いい。あちらが僕を見くびっているのならそれを利用させてもらうだけだ。

 

夕弦と呼ばれていた片割れをそのままステージの壁に向けて蹴り飛ばす。

 

「きゃぁぁぁ!?」

 

「夕弦!!。っ!お前は・・・!」

 

「どうやら思い出したようだね。悪いけど、早々に決めさせてもらうよ。」

 

「おのれ!」

 

〈ベルセルク〉のもう1人の片割れ、耶倶矢と呼ばれていた方に接近し、〈ベルセルク〉の突撃槍と〈アロンダイト〉がかち合う。

だが、こちらも先らの片割れと同じく想定していたような力を感じられなかった。しかし、〈ベルセルク〉の顔を見れば手を抜いているようには見えない。

 

「どうした〈ベルセルク〉!君の力はそんなものかい!」

 

「くぅ!」

 

VLの推進力で一気に押し切り、そのままの勢いで相手の突撃槍を弾く。

体制の崩れた〈ベルセルク〉に〈パルマフィオキーナ〉のビーム砲を何度も打ち、〈ベルセルク〉が後退した瞬間に肉薄し、その体に高エネルギー長射程ビーム砲を向け、ドームの天井に打ちつけるようにゼロ距離で砲撃を撃った。

 

数秒後、爆風が晴れ耶倶矢と呼ばれていた〈ベルセルク〉が気絶していることを確認すると残っている〈ディーヴァ〉の方を見る。やつの表情は恐怖に支配されており、足がすくんでいた。自分はゆっくりとステージの方に飛行しながら美紀恵に通信を入れる。

 

「美紀恵、ほとんどの精霊を鎮圧した、一般人の避難はできそうか?」

 

『それが・・・、通路までの道を随意領域で囲んだのですが、人々が全く避難しないんです・・・!お姉様、お姉様って言うばかりで・・・。』

 

「なに?・・・なるほど、そういうことか。了解した。美紀恵、あともう少しだ、随意領域の維持まだ可能か?」

 

『はい!ベルがサポートしてくれているのでまだまだ余裕です!』

 

「頼もしいな、僕も早く終わらせるとしよう。」

 

通信を切り、ステージに着地する。

 

「〈ディーヴァ〉、今すぐ一般人達をドームの外のシェルターに避難するように命令するんだ。そうすれば君の命までは取らんさ(大嘘)。」

 

「ひっ・・・!?お、男の言うことなんて・・・!」

 

足がすくんでいるとはいえ、こちらに対しまだ反抗的な態度を取ってくることは以前の戦闘から学んでいる。

 

「ほう?君がそういう態度を撮るのなら・・・。」

 

僕はステージの壁でダウンしている〈ベルセルク〉の片割れの首を掴み──。

 

「君の運命はこうだ。」

 

見せつけるように〈ベルセルク〉の腹部を〈アロンダイト〉で貫いた。

いきなり腹部を貫かれたからか、気絶していた〈ベルセルク〉は一瞬で目を覚まし、苦悶の表情と声を上げる。

 

「ぎゃっ・・・!?」

 

「ひっ!?あ、・・・あ、あぁ。で、でも・・・。」

 

「ふむ、まだその決心はつかないか、おっと、余計なことをしたり、逃げようとするんじゃないぞ?もし逃げようとするものなら───。」

 

僕は次に肩のフラッシュエッジで〈ベルセルク〉の片足を突き刺した。

 

「あ"あ"ぁぁ!?」

 

「っ!!?夕弦さん・・・!!」

 

「さぁ、早く人々に命令するんだ、それが君の精霊としての力なんだろう?」

 

「・・・っ!!」

 

ここまでしたが、〈ディーヴァ〉はこちらを親の仇のような目で睨みつけてくる。

 

「はぁ、仕方ない。・・・あぁ、そう言えば君はアイドルだったね。精霊の癖に人々の支持を集めるとは、本当に度し難い。それなら君の1番のアイデンティティの喉を使えなくしてあげよう。」

 

〈ベルセルク〉を〈ディーヴァ〉に向かって放り投げる。〈ディーヴァ〉は〈ベルセルク〉を受け止めるとこちらを睨みつけてくる。

 

「きゃっ!?な、何するんです────。」

 

が、その瞬間に〈ディーヴァ〉後ろに随意領域を発生させ、〈ディーヴァ〉をこちらに押し出す。そして、やつの首を右手で掴む。

 

「さぁ、早く人々に命令するんだ、僕の手には武器が付いていることはさっき見ただろう?僕の言うことが聞けないのなら君の喉を焼いてしまおうかな?」

 

僕はできる限りの加虐的な笑みを浮かべながら〈ディーヴァ〉に向かってそういった。

 

「ひっ!?ぐぅっ、わ、分かり──ました・・・。だ、から喉だけは辞めてくださいぃ・・・。」

 

やはり、己のアイデンティティを害されるのは耐え難いのか、体を震わせながら僕の言葉に頷く。

 

「み、皆さん。今すぐシェルターにひ、避難して、ください・・・。」

 

 

〈ディーヴァ〉がそう言うと、ドームの中にいた人々がぞろぞろと、ドームからでていく。〈ディーヴァ〉の力を借りるようになってしまったが、元はと言えばこいつのせいであるため別にどうも思わないけどね。

 

 

さて、こいつを殺した後は・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────────────────

 

士道Side〜。

 

 

「強い・・・!」

 

これが単騎で精霊を倒した魔術師、遠坂紅輝。

 

姉ちゃんはもう1人の魔術師の展開した随意領域に閉じ込められている。

普通のASTの随意領域であるなら万全の精霊である姉ちゃんなら簡単に破れるはずなのに閉じ込められているままだ。恐らくあの見たことの無いCR-ユニットの力のせいだろう。さっきの数分で操られていた四糸乃も耶倶矢と夕弦も紅輝先輩にやられてしまった。

 

「シドー、どうするのだ?このまま逃げるか?今ならこのいっぱいの人達に紛れて逃げられるぞ?」

 

「それは、出来ない。このままじゃ紅輝先輩にみんな殺されてしまう!」

 

そうしている内に、〈ディーヴァ〉が紅輝先輩に殺されようとしていた。

 

 

「そんな!約束が違います!言うことを聞けば私を殺さないって・・・!」

 

「さて?そんなこと言ったかな?それじゃあね。」

 

 

「美九!くそっ!」

 

「シドー!」

 

言葉がでたときにはすでに身体が動いていた。

殺させない!絶対に!これ以上精霊を殺させちゃだめだ!

 

 

「やめろおおおおおおおおおおおお!」

 

一気にステージの上まで上り、美九を殺そうとしている紅輝先輩にタックルをしようとした瞬間───。

 

身体が強い力で地面に引き付けられ、バランスを崩してしまいその場に倒れてしまう。

紅輝先輩はこちらを上から見下すかのように睨みつけてきた。

 

「士道、いい加減にしてくれ。これ以上僕の邪魔をするのなら君に危害を加えなくてはいけなくなる。」

 

「紅輝先輩!精霊を殺すのは辞めてください!先輩が姉ちゃんを精霊に殺されて、精霊を憎む気持ちも分かります!でも、それじゃ何も変わらない、憎しみの連鎖を生み出すだけです!」

 

「・・・それを知っていながら、なぜお前は精霊に味方できる。自分の姉を殺した精霊が憎くないのか!僕は憎い!確かに、士織を殺させてしまったのは僕の実力がなかったからだ!だけど、いや、だからこそ僕のように悲しむ人間を生み出さない為にも精霊は殺すべきなんだ!憎しみの連鎖を生み出す?そもそもの原因を作っているのは精霊だろう!」

 

「っ!でも、精霊は望んで人を殺したり、空間震を起こしているわけじゃない!」

 

「〜っ!!だからなんだと言うんだ!望んでいなかったら人を殺していいいと言うのか!偽善者ぶるのも大概にしろ!」

 

 

「っ・・・。俺は偽善的なんかじゃ───「シドーを離せぇぇえ!」十香!?」

 

十香が俺の後方から紅輝先輩に向かって〈鏖殺公〉で切りかかる。

 

「ちっ、〈プリンセス〉め、邪魔をするな!──いや、ちょうどいい。ほら、お前達が救いたがっている精霊だ、ちゃんと受け止めるんだよ?」

 

紅輝先輩はそう言うと、美九を十香に投げつけて、十香の攻撃を止める。

 

「きゃっ!?」

 

「くっ!己のよくも美九を!───あ。」

 

紅輝先輩は先程美九にしたように、十香の視界を奪い、その瞬間に持っている大きな剣で十香の腹部を貫いた。

 

「十香!!」

 

「シ、ドー・・・。大丈夫、だ。はぁぁぁぁ!!」

 

「何!?ぐぅっ!」

 

十香は腹部に突き立てられた剣を〈鏖殺公〉を持っていない方の手で掴むと無理矢理引き抜くともう片方の手にある〈鏖殺公〉で紅輝先輩を、切りつけた。

 

「遠坂さん!」

 

姉ちゃんを随意領域で閉じ込めているASTの魔術師がこちらに飛んできて、紅輝先輩と十香の間に立つ。

 

「っ!お主は岡峰美紀恵!お前もメカメカ団の仲間だったのか・・・。」

 

「・・・私は十香ちゃんが精霊だったなんて知らなかったよ。」

 

お互いに真実を知り、重たい空気が流れる中でも雰囲気は一触即発であった。

その時だった。随意領域て閉じ込められている姉ちゃんがいる方から赤い光が

放たれていた。

 

「あの光は・・・!」

 

紅輝先輩は何か知っているのかその表情は険しいものになっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────────────────

 

〜時は数分前に遡る。

 

 

「刹那!何か手はないの!?このままじゃみんな殺されちゃう!」

 

すでに四糸乃ちゃんや、耶倶矢ちゃん夕弦ちゃんは倒され、誘宵美九ちゃんも士道が紅輝君に向かっていなければすでに殺されていただろう。

 

『無いことは無い、だが、この狭い所に閉じ込められている以上リスクが高すぎる。』

 

「・・・教えて。死ぬことはないんでしょ?それならやらないとだめ!」

 

『分かった。だが、それはこちらの切り札を使うことになる、1度使えば暫く出力が大幅に下がる、それを覚えておいてくれ。』

 

刹那は私に念を押すように注意してくる。だけど、リスクを気にしていたらみんなを守ることはできない!『覚悟』はもうできている、紅輝君に生半可なんて言われたくない!

 

「分かった。『覚悟』はできてる!だからその方法を教えて!」

 

『了解した。行くぞ士織、意識を集中させろ。GNドライブの出力を上げるんだ。』

 

「了解!」

 

刹那に言われた通りに意識を集中させ、GNドライブの出力を少しづつ上げていく。1分程経つと体感的に出力が最大になったと感じ取れた。

 

『士織、行くぞ、TRANS-AM(トランザム)と叫べ。』

 

「分かった。TRANS-AM(トランザム)!!」

 

その瞬間、霊装に貯蓄されていたGN粒子が解放され、霊装が赤く発行する。

力が全身にみなぎり、今ならなんでもできそうな気持ちに駆られた。

 

『士織、GNソードVを壁に突き立てろ、そのまま2つのGNドライブを直列に繋げるんだ。』

 

刹那に言われた通りにソードビットが着いているシールドに内蔵されているGNドライブを背中のGNドライブに直列に繋げる。それによってGN粒子を精製、供給しながらの一撃を放つことができるからだ。

 

『今だ、一気にGNソードVで撃て!』

 

「はぁぁぁぁ!!」

 

「っ!美紀恵!随意領域を補強するんだ!このままでは───!」

 

GNソードVから巨大な砲撃が放たれ、随意領域内をエネルギーの奔流が満たす。それは士織自身にダメージを与えながら、随意領域内のエネルギーが爆発的に高まり、数秒もしない内に鉄壁の守りを誇るモード:アリスの随意領域に罅が入る。

 

「ベル!くっ、なんて威力・・・!!」

 

『・・・っ!抑えきれません。随意領域が破られます!』

 

「くぅぅぅっ!でも、こんな痛み!!!」

 

 

 

─────その瞬間、大気を震わせるほどの爆発が起き、その余波でドームの内部の至るところが破壊される。

観客はすでにおらず、この場に残っているものは全て人を超えたものであったがため、被害は抑えられていたが、もし、観客がまだ残っていたらその人間達は吹き飛ばされてしまい、ただことでは済まないだろう。

 

 

 

煙が晴れ、無事随意領域から出た私は驚愕の表情を浮かべている紅輝君を見て言った。

 

「・・・確かに、これは恐ろしい力だね。でも、私は絶対にこの力で人を殺したりなんてしない。これが私の『覚悟』だよ。それに、この程度の傷、みんなを守るためならなんともない!」

 

「・・・。そう、か君はその力の使い方をものにしたか。なら僕、は・・・。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────────────────

 

紅輝Side〜。

 

「・・・。そう、か君はその力の使い方を完全にものにしたか。なら僕、は・・・。」

 

頭の中がぐちゃぐちゃになる。夢ではない、現実を目の当たりにし次になんの行動をしようとしていたのかが頭から抜けてしまう。

まだ、精霊の力が馴染んでいないのであれば何らかの方法で士織を元に戻せるのかもしれないとも考えた。だけどあれはもう戻すことはできない。

・・・士織はもう人間ではない。

士織は本当に精霊になってしまった。僕に彼女を倒せるか?いや、倒さねばならない。精霊は敵、倒すべき敵なのだから。

 

「遠坂さん、私がやります。」

 

「っ。美紀恵。駄目だあの精霊は〈プリンセス〉と同等かそれ以外の強さを持っている。1人で相手をするのは、無茶だ。」

 

「いいえ、無茶ではありません。あの精霊は今少しではありますが負傷しています。傷が治る前に〈不思議の国のアリス〉のフルパワーで押し切ります。遠坂さんは今の内に任務の遂行を!それでは岡峰美紀恵!行きます!!」

 

「待て!美紀恵!くそっ!」

 

美紀恵にまたもや気を使わせてしまった。肝心なときに役に立たないなんて、上司失格だな。本当に。だが、美紀恵のお陰で何とか目的を思い出せた。

やるしかない、今は僕のやるべきことをやるしかない。

 

「どんな手を使ったとしても・・・!」

 

自分は一気に〈デスティニー〉に魔力を注ぐ。今度は〈アロンダイト〉ではなくVL発生装置に対して───。

 

VL(ヴォアチュール・リュミエール)っ!」

 

一瞬で〈プリンセス〉に接近し、アロンダイトを構える。

〈プリンセス〉もこちらを迎撃をするために大剣を構え、鋭い目でこちらを睨みつけてくる。

 

1秒にも満たないその刹那。

 

紅輝は〈プリンセス〉の横を通り抜け、女装している士道の襟首を掴みまるで人質をとるように〈プリンセス〉から一気に離れる。

 

「ぐぁ!?こ、紅輝先輩!?何を────」

 

「動くな、士道。ここで殺されたくはなくば、な。」

 

「この卑怯者!シドーを人質にとるなど!!」

 

「なんとでも言いたまえ、最後に勝つのは僕だ。」

 

「十香!俺のことはいい!紅輝先輩を止めてくれ!!」

 

「シドー・・・。だが・・・!」

 

「取引だ〈プリンセス〉。愛しの王子様を救いたければ今すぐに君の手に持っている剣で、そこにいる〈ディーヴァ〉を殺せ。」

 

「っ!駄目だ十香!紅輝先輩の言うことを聞くな!」

 

「分かっておる!だが、シドーは・・・!」

 

「さぁ、早くするんだ!さもなくば士道の命はこの場で終わりだよ?」

 

僕はアロンダイトの剣先を士道の背中、心臓がある部分に向ける。

がこの状態を破るものが現れる。

 

「「十香(〈プリンセス〉)!!」」

 

「わ、私は・・・・!」

 

──バァン!!

 

 

「ジェシカ達はやはり失敗しましたか。おや、なるほどあなたでしたかリボンズ。」

 

天宮アリーナの天井を破るものが現れるそれは騎士王の名を冠するCR-ユニット〈ペンドラゴン〉を纏った世界最強の魔術師。

エレン・M・メイザースだった。

 

 




今回も見ていただきありがとうございます!
お気に入りに追加して頂いた。
爽花さん、ZHIENDさん。ありがとうございます!
これからも見て頂くと嬉しいです!

感想、良ければくださいなー。



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衝突

40話目です。

こんにちは、狩宮深紅です!
今回は頑張って1週間以内に投稿しようと思っていたのでしたが、筆?が進んで文字が増えてしまいました・・・。
ま、まぁ皆さん的にも読み応えがあっていいのかな?
最近、また20巻を読み直したのですが、改めて見て確認できたのですが、折紙さんの殲滅天使ファンネルの数増やしてたんですが・・・。

いや、まぁアニメの作画上仕方の無いこととは思いますがね・・・。



「やはりジェシカ達は失敗しましたか。おや、なるほどあなたでしたかリボンズ。」

 

エレンはアリーナの中を見渡すと、倒れている〈ベルセルク〉と〈ハーミット〉を見てこれを誰がやったのかを想像するのは簡単だった。

 

「メイザースさん、わざわざ貴方が出てくるとはよっぽどのことというわけか。」

 

「ええ、アイクが今回の作戦の成功を望んでいますから。」

 

淡々と話す姿は、自分がDEMにいたときとは全く違う雰囲気を纏っていた。

 

「・・・、メイザースさん。なぜこの作戦でこの五河士道を捉える必要があるのですか。こいつはただの一般人です。」

 

「リボンズは知らないのですね。五河士道からは精霊と同じ反応が観測されています。それも1度や2度ではありません。」

 

「っ!!それは、本当なのですか・・・。」

 

「ええ、本当です。さらに五河士道からは今まで観測されている複数の精霊の反応も微量ながらですが確認されているため、詳しい調査が必要なのです。そして也より、私がそこの五河士道が精霊の天使を展開したことを実際にみました。」

 

・・・なるほど。そういうことか。某漫画で登場する能力使いのように精霊同士は惹かれ合うということか。

 

「おい、五河士道、さっきの話は本当か。お前は本当に天使を使ったのか?正直に答えろ。」

 

〈アロンダイト〉をもう一度突きつけ、嘘は許さないと言うように士道に聞く。

 

「・・・顕現させました。だけど!十香や耶倶矢、夕弦を守るためだ!後悔はしていない!」

 

はっきりと、明確な意志を持って放たれた言葉に紅輝は士道が嘘をついていないと判断する。

 

「そうか、ならもう1つ聞く。お前は精霊か?」

 

「違います、俺は人間です!」

 

「なら、なぜ精霊の力である天使を使える?」

 

「っ、それは・・・。」

 

口ごもる士道に紅輝は短くため息をつく。

 

──士道が精霊か人間かどうかは今のところは分からない、か。だがいいことを聞いた。もしかすると士道が士織を人間に戻す鍵になるかもしれない。

 

「〈プリンセス〉、気が変わった。あそこにいるメイザースさんに、同行するんだ。そうすれば士道を殺したりはしないさ。」

 

「なっ。」

 

「十香!俺のことはもういい!逃げろ!」

 

「おっと、逃げるなよ?もし、逃げたり抵抗したりしてみろ、その時は士道の首と胴体はさらならだ。」

 

「くっ・・・。」

 

「メイザースさん、連れて行ってください。」

 

「ふふ、貴方も中々に外道ですね。」

 

「君は精霊相手に手心を加えるのかい?」

 

「それもそうですね。」

 

エレンは、自分のやり方にそういうが顔は笑っており、本気で自分のことを外道とは思っているがどこか嬉しそうであった。

 

「十香!俺のことは気にするな!あれ(・・)があるから何とかなる!だから・・・!」

 

「・・・シドー。それでも私はシドーが傷つく姿を見たくないんだ。───連れて行け。」

 

その言葉を聞き、エレンは十香を抱え飛翔する。

数秒もしない内にエレンは入ってきた場所からアリーナから出ていき、見えなくなる。

自分はステージの床に投げるように士道の拘束を解き、ビームライフルを騒動に紛れて逃げようとしている〈ディーヴァ〉に向かって撃つ。

 

「きゃぁ!?」

 

「どこへ行こうと言うのかね?」

 

 

「っ!やめろ!」

 

士道直ぐに立ち上がると、僕と〈ディーヴァ〉の間に立ち腕を大きく広げ〈ディーヴァ〉を守るようにする。

 

「紅輝先輩達の狙いは俺と十香だろ!それ以外に手をだすな!!」

 

「士道、お前は自分の前にあるご馳走を食べずに取っておくタイプか?お前を捕まえることはそこの〈ディーヴァ〉を殺した後にもできる。」

 

「くっ・・・。(使えるか分からないけど、力を貸してくれ!)鏖殺公(サンダルフォン)〉!」

 

士道が剣を型どっている天使の名を叫ぶ。すると、彼の思いに答えるように霊力は収束し、その姿を顕現させる。

 

「・・・っ、どうやら話は本当のことだったようだね。僕の前でそれを出すということはもう言い逃れはできないよ。覚悟はできているかい?」

 

「覚悟なんざとっくの昔にしてる!うぉぉぉお!!」

 

士道は雄叫びを上げながら真っ直ぐこちらに向かってくる。

だが、その動きはほぼ人間とは変わりない。剣が士道の筋肉量とつり合っていないのか軸もぶれている、そんな状態で剣を振るったところでまともに扱えるわけが無い。

 

「・・・論外だよ。」

 

僕は〈アロンダイト〉を軽く振るい、大剣にぶつけて士道の体勢を崩す。

 

「うわっ!?」

 

そのまま士道の足を引っ掛けこかせる。

 

「ぐっ。」

 

「弱い、弱いよ。そんなのじゃ誰も守れない、僕と同じように失うだけだ。・・・それが嫌なら力をつけろ、士道。何ものも守れるほどの力を。そして、これは僕ができる最大限の慈悲だ。」

 

士道の頭に手を添え、人が許容できるかできない程度の魔力を流し込む。

 

すると、案の定脳が負荷に耐えられなかったのか。士道は声を上げることもなく気絶する。

 

──とりあえず、士道をDEMに連れていくか。士道は自分としても殺されては困るからな、士道に何かをするときは自分の監視を付けるという条件をつけさせて引き渡そう。

 

「そうと決まればさっそく───────。」

 

?「あらあら、士道さんを連れていかれるのは困りますわねぇ。」

 

「っ!誰だ!」

 

「ここですわ。」

 

その言葉と共に自分の背後に何者かが現れたことを察する。

己の後頭部に鉄の硬い感触が直に当てられていることから、身動きを取れば自分のことを今すぐに殺せるということをこちらに示していた。

自分は仕方なくアロンダイトを手から離し、両手を上げる。

 

「・・・っ。思い出したよ。お前とエンカウントするのはいつぶりかな〈ナイトメア〉。」

 

「思い出して頂いて光栄ですわ、遠坂紅輝さん。」

 

「こちらもまさか名前を覚えられているとはね。」

 

「わたくしとしては5年前の借りを返したいところですが、今はそれどころではないようですわね。ですので手短かにさせていただきますわ。【七の弾(ザイン)】」

 

その弾丸の名を聞いた瞬間、自分の意識はとぎれた。

 

そして、気がついた時には目の前に〈ナイトメア〉も士道も居らず、他の精霊共の姿も消えていた。

 

「〈ナイトメア〉め、僕から士道達を逃がしたか。まぁ、いい。士道が〈プリンセス〉のことを気にかけているのなら恐らく助けに行くだろう。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─────────────────────

 

「やあぁぁぁぁぁ!!」

 

「くっ、やめて!私は貴方と戦いに来たわけじゃない!」

 

「貴女に無くても私にはあるんです!」

 

美紀恵は一直線に〈クアンタ〉を纏う士織に突っ込む。

一直線のその行動だが何も考え無しの行動ではない。壁状の随意領域で士織の動きを阻害した上でその拳に魔力を込め、そのまま殴りかかる。

 

士織は、その攻撃に対し、ソードビットが付いているシールドを前にしてガードをするが美紀恵の猛攻に対抗できずにいた。

否、〈クアンタ〉の能力であれば、美紀恵の攻撃に対抗することは容易くは無くとも可能である。しかし、士織の優しさが無意識にその攻撃に反撃することを躊躇わせていた。

 

「ここから出ていけえぇぇぇぇ!!」

 

美紀恵の全力の一撃は、ガードをしていた士織を後方にはじき飛ばし、アリーナの天井を破り士織をアリーナの外に出した。

 

美紀恵は攻撃の手を緩めず、アリーナの外にでた士織を追い、自分も外に出ると、ビームサーベルで切りかかる

 

「こうなったら!行って!ソードビット!」

 

「っ!」

 

何とか反撃を試みた士織の攻撃を美紀恵はソードビットの攻撃をモード:アリスの機動力を活かし回避する。モード:アリスはユニコーンほどでは無いもののかなりの機動力を有しているため、その動きを捉えることは難しい。

 

「トラフィックフィン!ベル、制御お願い!」

 

『accept.』

 

〈アリス〉からビットのようなものが射出され、士織の起動線上に回り込むと突っ込み爆発を起こす。

 

「きゃあぁ!?」

 

「まだです!」

 

美紀恵はバックパックを砲撃モードに変更すると、士織に向かって照準を合わせ、砲撃を放った。

 

『士織!気を保て!』

 

「つぅっ・・・分かってる!」

 

脳内に響く刹那の声を聞き、士織は気合いで意識を繋ぐと、射出したいたソードビットを円状に展開し、GNフィールドを発生させ、美紀恵の攻撃を防ぐ。

 

美紀恵は砲撃が塞がれたことに少し驚くが、直ぐに意識を切り替え次の攻撃に移る。ビームライフルを撃ちながら一気に距離を詰め、そのビームサーベルで

もう一度斬りかかった。

 

士織も、GNソードVを美紀恵の攻撃に合わせ、鍔迫り合いを行う。

 

「美紀恵ちゃん、て言ったよね。なぜ貴方は紅輝君に味方するの?ASTの仲間だから?」

 

鍔迫り合いの中、士織は何とか美紀恵との戦いを辞めるために対話をしようとする。

美紀恵は士織の言葉に眉一つ動かさなかったが押す力を緩めずに言った。

 

「確かに、それもあります。ですがその前に1つ聞かせください貴女は遠坂さんに取って何者ですか!」

 

言葉に感情をのせ、美紀恵は押し切る。

 

士織は仰け反ったが追撃されぬように一気に後方へと下がる。

士織は、美紀恵が言葉を返してくれたことに対し、対話するなら今しかないと考え、美紀恵の言葉に答える。

 

「私は、紅輝君の恋人だよ。そういう美紀恵ちゃんは紅輝君の何者?」

 

「貴女が・・・。ううん、私は遠坂さんの後輩で味方です。」

 

美紀恵は目の前の精霊が、遠坂紅輝の恋人だということを知り、少し悲しげな表情を浮かべるが、直ぐに士織の言葉に答えた。そして、さらに言葉を重ねる。

 

「貴女は、遠坂さんがASTだと知っていて恋人になったんですか・・・!さっき貴女の力を見た遠坂さんの反応は並々ではない反応でした。それに!貴女は知らないでしょうけど、ここ最近の遠坂さんの様子は普通ではありませんでした、ずっと思い詰めた様な顔をして、基地に来ても夜遅くまで訓練ばかりして!・・・本当ならこういうときに彼女である貴女が支えるはずじゃないんですか!?」

 

「っ、それは・・・。」

 

「私は遠坂さんの恋人ではありません、どちらかというと私が勝手に兄のように慕っているだけです。そもそも、恋人同士の痴話喧嘩に赤の他人が首を突っ込むべきではないとは思います。ですが、私はこれ以上遠坂さんの辛そうな顔は見たくありません!・・・貴女がこれ以上遠坂さんを苦しめるというのなら今すぐに別れてください!」

 

美紀恵はビームライフルを士織に向けて睨みつけた。

 

最後に言った美紀恵の別れろという言葉は、基本的に怒らない士織の怒りに触れた。

 

「っ!!好き勝手言って!貴女に何が分かると言うの!?」

 

『冷静さを欠くな、怒りに任せては対話はできない!』

 

「私だって紅輝君のことが大好きだよ!でも、紅輝君は精霊を憎んでいる!それに!私が精霊の力で守らないと紅輝君は精霊の皆を殺しちゃうんだよ!?貴女は私に大切な人達が殺されるのを見ていろって言うの!?ふざけないでよ!」

 

『五河士織!!』

 

「っ!・・・ごめん、刹那。」

 

「・・・私は、精霊に殺されかせたところをASTの魔術師さんに偶然救われました。私もASTでの経験は長いわけではありませんが色々な人達を見てきました。空間震のせいで家族を失った人、精霊と私達の戦闘の余波に巻き込まれて大切な人を失った人。どれも私たちが守れなかった人達です。遠坂さんは言っていました、『僕の大切な人達のために精霊の居ない安心して暮らせる世界を作る』って。───私はその世界を作る手助けをしたい!さあ、構えてください!貴女が精霊で私がAST、それならやることは1つです。」

 

「・・・ごめんね刹那、私のせいで対話できそうになくなっちゃった。」

 

『士織、君の気持ちは分かる。だが、こちらに対話の意思がなければ対話は不可能だ。それだけは覚えておいてくれ。』

 

「うん・・・。」

 

「来ないのならこっちから行かせてもらいます!はぁぁぁぁぁあ!!」

 

美紀恵はビームサーベルを構えながらトラフィックフィンをベルに制御させ一気に近づく、士織はGNソードVを何とか相手のビームサーベルに合わせながらソードビットを操り、トラフィックフィンを撃ち落とす。

 

「くっ!ならばこれです!」

 

美紀恵は随意領域を展開し士織を閉じ込める、が、士織もさすが同じ手は喰らうまいとGNフィールドを展開し、量子ジャンプをし随意領域から脱出する。

 

士織が量子ジャンプからでた先は美紀恵の後ろ、GNソードVを射撃モードに変更すると、霊力を充填し中型のエネルギー砲撃を撃つ。

 

「あまり撃ちたくはないけど・・・!」

 

「っ!後ろ!ベルお願い!」

 

『随意領域展開。』

 

砲撃から美紀恵を守るために展開された随意領域は一切の傷が付かずその防御力の高さを物語っていた。

 

「これじゃ埒が明かない・・・!刹那!あれ使うよ!」

 

『分かった、だが俺達の目的は対話だそれを忘れるな。』

 

「うん、大丈夫!TRANS-AM!!」

 

その言葉と共に再び士織の霊装がGN粒子を放出し赤く発光する。

そして、士織はGNソードVにソードビットを繋げ、バスターライフルへと変形させる。

 

美紀恵は先程のアリーナでの経験を思い出す、随意領域が破られ目の前の精霊を解放させてしまった経験である。

 

「・・・!ベル、さっきの攻撃もう一度くるよ。準備はいい?」

 

『マスター、提案ですがこちらにも所謂、必殺技と呼ばれるものがあります。』

 

「っ!本当?それ、いまから使える?」

 

『yes、ですがそれを使えばこのCR-ユニットの貯蓄魔力は無くなります。その後の戦闘はマスター自身の魔力を使って頂くことになります。』

 

「いいよそれでも!ベル、その必殺技の準備をお願い!」

 

『accept.』

 

ベルmkIIが本状態で展開し、中からそれぞれのモードの武装を取りだす。

ユニコーンからは槍の部分を、レオンからはメガ粒子砲とそのトリガーを、ジャバウォックからは杭状の特殊弾頭を、チェシャーキャットからは今回は対精霊であるため魔力エネルギーを。

 

それぞれが変形し、巨大な超電磁砲に変化する。

 

「っ重い・・・。でもこれなら!」

 

それを士織に向け、標準を合わせる。

数秒後には標準が士織を捉え発射準備が完了する。

超電磁砲の前方にいくつもの威力増加のための随意領域が展開され、特殊弾頭にも様々な魔力強化が施される。

 

士織の方もGNバスターライフルに霊力を充填させ、それを美紀恵に向ける。

 

「刹那!威力は3割引だよ!」

 

『了解した。』

 

「ベル!行くよ!全力で!!」

 

『yes sir!』

 

「『トランザムライザーソード!!!!』」

 

「『フルアリスパワーフィニッシュッッツ!!』」

 

その瞬間、大きな爆音と共に二つの砲撃が放たれ、衝突する。

 

GNバスターライフルから放たれた巨大なエネルギーの奔流が美紀恵を捉える、が、その奔流の中を突き進むように超電磁砲から放たれた特殊弾頭が進む。

 

そして、数秒もしないうちに美紀恵が霊力の奔流に飲み込まれるが、杭状の特殊弾頭も奔流を掻き分け、抜け出すと士織の心臓を穿いた。

 

 

 




今回も見ていただきありがとうございます!
これからも見ていただけると嬉しいです!

良ければ感想くださいな〜。


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覚悟

皆さん、おはこんばんにちは!狩宮深紅です!

最近ワザップジョルノの元ネタを知りました。
思ってた以上に結構似てて笑いました!

話は変わるのですが艦これのイベントほとんどクリアできませんでした・・・。難易度丁で姫級?三体おるのおかしいやろ・・・。



〜紅輝Side

 

アリーナ内の紅輝にも聞こえるほどの爆音が聞こえ、紅輝は直ぐに外に行った士織と美紀恵のことが頭によぎる。

 

「っ美紀恵、」

 

誰もいなくなったアリーナを飛びだし、外をみる。

 

上空で戦闘が行われていたからか、地上にはひとつの被害も無かった。

しかし、周りを見渡しても、美紀恵と士織の姿は見当たらず、レーダーで確認すると、自分のいる場所か1km程離れた場所に美紀恵のCR-ユニットの反応が見つかった。

 

「良かった、CR-ユニットの反応があるなら生きてはいるはずだ。」

 

士織の姿は、見えないが一先ずは美紀恵を助けに行くために彼女がいる方向に飛んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─────────────────────

 

〈デスティニー〉の機動力のおかげで数分もしないうちに美紀恵のいる場所に着くことができた。〈ホワイト・リコリス〉を隠している公園とは別のアリーナの近くにある公園の森の中から美紀恵の反応を感知していた。

 

「恐らくこの辺りのはずだが・・・。」

 

美紀恵を探すために周りを見渡していると、いつの間にか自分の周囲、否、ここ一帯に翠色の粒子が浮かんでいることに気がつく。

 

「GN粒子・・・!」

 

その瞬間に、自分はGN粒子の濃度が高い場所に士織がいることを察した。

 

──士織が美紀恵を殺すのとは考えられない。だが、何かが起こってからは遅い、急がなければ!

 

「美紀恵!居るか!返事はできるか!」

 

すると、自分の声に反応してか、〈不思議の国のアリス〉から発せられたと思われる機械音が聞こえ、急いでその場所に向かう。

 

音を頼りに美紀恵を探していると1分もしないうちに美紀恵を見つけるのとができた。

が、その場所にはやはりというか、案の定精霊である士織の姿があった。

士織はGNドライブからGN粒子を放出しながらそれを傷だらけの美紀恵に浴びせるようにしていた。

 

「なぜ、美紀恵の治療をする。」

 

「あ、紅輝君・・・。」

 

士織がこちらに気づいたのか少し驚くようにこちらに振り返る。

そして、自分はその時に気がついた。士織の心臓部からは大きな傷があり、そこから血がおよそ隠せるほどではない量の血が流れていた。

 

「っ、その傷はなぜ治さない。君の力は自分の傷を治すことだって可能なはずだ。」

 

「うん、まぁね。だけど美紀恵ちゃんの傷は私がつけた傷だから、それを優先して治すのは普通でしょ?」

 

「なぜ敵にそこまでの情けをかけることができるんだ・・・!君は優しすぎる!どうして───。」

 

「紅輝君も私にならそうするでしょ?」

 

少し苦しそうな表情を浮かべながらもニッコリと笑う士織にたじろぐ。

 

「・・・そうとは限らない、君は精霊になった。そして、僕はASTの魔術師だ精霊を倒すのが使命だ。魔術師が精霊を治療するなんて───。」

 

「なら、どうしてさっき精霊になった私を見たときに直ぐに攻撃してこなかったの?紅輝君が本当に精霊を倒すことしか考えていない非道な人なら、あのとき既に私はもう一度死んでいたはずだよ。」

 

そう言われ、自分は言葉に詰まってしまう。

確かにそうだ。自分はあのときに士織を見て、士織を殺すことを躊躇った。だからこうして美紀恵が傷ついているんじゃないのか?

言葉が出ずにいた自分に士織は申し訳なさそうに続けた。

 

「それに、私は紅輝君に謝らないといけないことがあって。あの時はごめんね。私もついカッとなっちゃって紅輝君のこと嫌いって・・・。」

 

「それは、こっちも言えることだ君との時間なのに君への配慮が欠けていたことは謝らなければならない。」

 

「ふふ、精霊を殺すことを考えたことについては謝ってくれないんだ。」

 

士織はイタズラっぽい笑みを浮かべながらそういう。

 

「すまないが、それだけは譲れない。君がどんなに優しい精霊であったとしても、他の精霊達は違う。」

 

「・・・やっぱり、そう言うと思ってたよ。だから、紅輝君には精霊のみんなのことをもっとちゃんと知って欲しいんだ・・・。精霊は紅輝君が思ってるみたいに悪い子達じゃないんだよ。」

 

「知るもなにも、奴らは災害だ。もし、君の言う通りに君の周りに現れた精霊を無害にできるとしよう。だが、精霊はそいつらの他にも存在する、新たに現れたそいつらを全て無害化するまでにどれだけの被害がでると思っているんだ。」

 

「・・・そうだね。でも、精霊だって殺されたくない、紅輝達が精霊を殺そうとしたら精霊だって抵抗する。そうなったらさらに被害が増えるんじゃないかな?それに、空間震ならシェルターがあるからそこに避難してもらってその内に精霊を無害化する。これが1番誰も傷つかない方法じゃないかな?」

 

「だが、無害化できるような方法はない。だから精霊を殺す必要があるんだ。」

 

「そんなことする必要は無いよ、だって精霊を人にする方法があるんだから。」

 

「・・・それは本当か? 本当に精霊が人に戻れると?」

 

今、士織は何と言った?精霊を人にする方法だと?いや、確かに士織は僕が精霊の核のようなものをあの謎の存在に渡した。そして、士織の蘇生に使われたのは確かだろう。それならもう一度あの核のようなものを取り出せばいいということなのか?

 

 

「うん、だから精霊を殺す必要はないんだよ。」

 

信じ難いが士織が嘘を言っているようには見えない。

しかし、そんな方法が本当にあるのなら士織を────。

 

「う、うぅ・・・。」

 

「っ美紀恵!」

 

 

美紀恵の意識が戻ったのか、小さな声を上げて目を覚ます。

美紀恵は目の前の士織を見た瞬間、目を見開き攻撃しようとするが痛みが残っているのか、体が動いていなかった。

 

「っ!つぅ。」

 

「ごめんね、美紀恵ちゃん。一応、応急手当はしたけどまだ動けないと思うんだ。だから後で病院に行って治療して貰ってね。」

 

「美紀恵、ありがとう。よく頑張ってくれた後は僕に任せて君は休むんだ。」

 

「あ・・・。遠坂さん・・・。はい、分かりました。あ、でも、ごめんなさい約束守れそうにありません・・・。」

 

「いいんだ、僕はその気持ちだけでも嬉しいよ。だから今はゆっくり休むんだ。」

 

 

自分がそう言うと美紀恵は安心したかのように眠る。ちゃんと規則正しい寝息を立てていることから、命に別状はないことを確信する。

最も、士織がGN粒子による治療のおかげなのかもしれないが。

 

「・・・随分と信頼されてるみたいだね。」

 

士織が少し不機嫌そうな顔をして頬を膨らませる。

 

「あぁ、こんな僕に着いてきてくれる大切な後輩だ。」

 

(そういうことじゃないんだけどなぁ。)

 

「何か言ったか?」

 

「ううん、何も!それで、紅輝君は今からどうするつもり?」

 

「とりあえず美紀恵を病院に連れていく。医療用顕現装置を使えば何とかなるだろう。」

 

「なるほどね、ちなみにその場所ってどこにあるの?私の能力で一気に送ることができるから教えてくれない?」

 

「流石に精霊となった君の力で送るなんてことがあったら大騒ぎだ。病院といっても基地内だ、どうせ自分も1度戻らなくてはならないから不要だよ。」

 

「ふーん。基地内にあるんだ。それなら・・・えい。」

 

士織は周りに隠してあったのか、GNソードビットでGNフィールドを発生させると、美紀恵をその中に放り込んだ。

咄嗟のことで反応できずに美紀恵をどこかに連れ去られてしまった。

 

「なっ、美紀恵!?士織、どういうつもりだ・・・!」

 

「ねぇ、紅輝君。取引しようよ。」

 

そう言って士織は自分に擦り寄ってくる。

後ろに下がろうとするが、士織のソードビットが剣先を自分に向けており、逃げることは許さないと言っているように見えた。

 

「逃げちゃダメ。ここには私と紅輝君しか居ない。私たちの対話(デート)を止める邪魔者はいないよ。」

 

「美紀恵はどうした・・・。」

 

「・・・はぁ。紅輝君ってばこんな時にも美紀恵ちゃんの心配をするんだ、少し妬けちゃうなぁ。美紀恵ちゃんは私達の組織の船に送ったよ。私の取引に応じてくれるなら軍の病院に送ってあげる。どうかな?」

 

ニッコリと笑いながらもGNソードVの剣先を自分の腹部にくっつける。

その目からはこちらを真っ直ぐに見据えているものの、その目の中にはさっきの言葉通り嫉妬に狂っているように感じられた。

 

だけど、士織の言葉が仮に本当のことだとしもまだ頷くことができない。

士織の取引の内容がどんなものか分からない以上、どんなに親しい仲だとしても警戒せざるを得ない。

 

「君の言う取引の内容とはなんだ、内容によっては答えなくもない。」

 

「ふふ、そうだねすっかり忘れていたよ。取引って言うのは、紅輝君が今から私の監視下の元で数日間一緒に過ごすこと。もちろんその間に精霊が現れても出動はさせないし紅輝君の纏っているCR-ユニット?もこちらで預からせて貰う。どうかな?」

 

「どうかな?だと?そんなの応じる訳にはいかない!今この時でさえ〈ディーヴァ〉や〈ナイトメア〉がこの近くに潜伏しているんだ。それをみすみす見逃せと言いたいのか。」

 

「ん?当たり前だよ。私の目的は紅輝君を戦場に出さないようにして、みんなを守ること。それに、この取引に応じてくれたら美紀恵ちゃんは基地の病院に送ってあげる。どうかな?悪くはないと思うけど。」

 

「そんなこと────。」

 

断るに決まっている。そう言おうとする前に士織は僕の口を指で塞ぐ。

 

「全く紅輝君はわがままだね。ふふ、そんなところも好きだけど。それじゃあ1つ勝負をしようよ。」

 

「・・・勝負だと?」

 

「うん、勝負。正確には紅輝君には『覚悟』を見せて貰うよ。」

 

「『覚悟』か、いいだろう。」

 

「そうこなくっちゃ、ならルールを説明するよ?

 

1つ、私はここから1歩も動かない。あ、だけどソードビットだけは浮かせてもらうよ。紅輝君に逃げられたら困るからね。ま、逃げたら美紀恵ちゃんがどうなるか想像は簡単だと思うけど。

 

2つ、紅輝君には私の心臓を君が持っているその剣で貫いて(・・・)もらうよ。」

 

「っ!どういうことだ・・・!そんなことをしたら君は今度こそ──!」

 

「うん、死ぬかもね。だけど、紅輝君が『覚悟』を示してくれて、その上で大好きな貴方に殺されるのも悪くないのかもしれない。」

 

「ふざけるな!それは君が言っていた決意と矛盾している、それを裏切ると言うのか!」

 

「ううん。だから紅輝君、私にその決意を裏切らない為にも心臓を貫いた後に治療して欲しいんだ。」

 

「なっ───。」

 

おかしい、狂っているとしか思えない勝負に声が出なくなる。

確かに、あの日以来、何があっても良いように必要最低限の宝石は持ち歩いている。治療魔術の腕にもそれなりの自身もある。

だけど、そういうことじゃない。僕はアルテミシアの言う精霊のいない優しい世界を作るために戦っている。そして、僕は士織が精霊から人に戻して、君が安心して暮らせる世界を作りたい、それなのに僕は彼女をこの手で傷つけなければならない状況に心が拒否している。

 

「さぁ、どうするの?私を貫いて『覚悟』を示すのか、それとも、私と一緒に数日間同じ場所で過ごすか・・・。私としてはどちらでも構わないんだけどせっかくなら後者がいいかな?」

 

「・・・分かった。僕は『覚悟』を示そう。」

 

「そう、か。それなら、さぁ、私を貫いて『覚悟』を示して・・・。」

 

士織は一歩後ろに下がり腕を広げて胸を少し前に突き出す。

心臓部の傷は精霊特有の回復力でもう無くなっていたが、霊装は復元されておらず、胸元が大きくはだけている。

故に僕の攻撃を防ぐ装甲は無く、〈アロンダイト〉を真っ直ぐにつき刺せば、簡単に士織の心臓を貫くだろう。

 

僕は〈アロンダイト〉を握り、その剣先を士織の胸元に着ける。

 

後は手に力を入れて貫けだけだ。

 

貫け、『覚悟』を示せ。心の中でそう何度も身体に命令するが体が金縛りにあったように動かない。

体に力は入る、だけど体が、本能がこれ以上手を前に突き出すことを許さない。

 

「どうしたの?私に示してくれるんでしょ?」

 

「・・・あぁ。」

 

士織にはそう返したが、情けないことに手が動かない。

早くしろ、ここで油を売っている場合じゃないだろう。

頭の中で何度も何度も体に命令を下すが手が震えるばかりで動かない。

 

「5」

 

「っ?」

 

「4」

 

士織が数字を数え出す。

ここでこのカウントダウンが何を意味するか分からないほど自分はバカではなかった。士織は僕を急かしているのだ、急かすことで正常な判断をしにくくするようにしているのだ。美紀恵の生殺与奪は私が握っているのだと。

 

「3」

 

なりふり構って居られなくなり、体と本能の拒否を無視して、手に力を込めて〈アロンダイト〉を前に出す。

 

が、傷つけられたのは皮1枚に切り傷が入った程度だった。だが、さっきの状態からは少しであるが進歩した!このまま───────。

 

「2、んっ。」

 

士織が〈アロンダイト〉でできた切り傷に痛みを感じたのか、少し苦しそうな表情を浮かべた。

もし、このまま貫いたら士織ほはこれ以上の苦痛に侵された表情を浮かべるだろう。

 

──僕は彼女にそんな顔をさせていいのか?

 

──よくはない、だけどここでやらなければ、〈ナイトメア〉と〈ディーヴァ〉はどうなる。

 

──自分が戦っている意味を思い出せ、なんのために自分は戦っている。

 

「1」

 

「うぉぉおおお!!!」

 

雄叫びを上げて力を込める。躊躇うな、今までだって精霊を刺し殺そうとしたことは何度だってあったはずだ。

今度も同じようにやればいい。

大丈夫、備えはある。直ぐに治せる。治療魔術なんて今まで何度だって使ってきただろう。

殺せ、一旦殺して治せ。自分ならできるはずだ。

 

──殺れ。

 

──殺れ。

 

──殺れ殺れ殺れ殺れ殺れ殺れ殺れ殺れ殺れ殺れ殺れ殺れ殺れ殺れ殺れ殺れ殺れ殺れ殺れ殺れ殺れ殺れ殺れ殺れ殺れ殺れ殺れ殺れ殺れ殺れ殺れ殺れ殺れ殺れ殺れ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「0、残念時間切れだよ。」

 

士織のその終わりの言葉を聞いた自分は膝から崩れ落ちてしまう。

〈アロンダイト〉に握る手から力が抜け、そのまま地面に落ちる。だが、どこかで士織を傷つけることがなかった自分に安心している自分に情けなさを実感する。

 

「く、そっ・・・駄目だ、僕は、君だけは、君だけは、殺せない。それが直ぐに治すものだとしても、、、できない・・・。」

 

「ふふ、紅輝君はやっぱり優しいね。その優しに免じて美紀恵ちゃんは病院に送ってあげる。」

 

士織がそう言うと、さっきまで消えていた美紀恵の反応が、基地のある方角から観測された。

 

「さ、勝負は私の勝ち。紅輝君は数日間私とラブラブデイズだよ。ふふ、楽しみだね。紅輝君。」

 

「・・・・・・あぁ。」

 

自分にはもうまともに答えることができない程に己に対する自信を持つことができなかった。

 

 

そして、気がついたときには五河家のリビングのような場所に飛ばされ。

〈デスティニー〉も自分の持ち物から無くなっていた。

 

「ようこそ紅輝君、私たちの船《フラクシナス》へ、歓迎するよ♡」

 

 




何で負けたか、明日まで考えといてください。
そしたら何かが見えてくるはずです。
ほな、いただきます。(〈デスティニー〉と主人公の身柄)


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強襲

42話目です。

皆さんお久しぶりです。狩宮深紅です。

皆さんはちゃんと投票に行きましたか?
有権者の皆さんはなるべく選挙に言った方がいいですよ!まぁ、無理強いはしませんが。
私?私はちゃんと行きました!


 

紅輝が士織に投降し、美紀恵は士織の力によって基地内の病院に送られた。

突然現れた美紀恵に病院内は騒然としたが、日下部隊長の機転によってスムーズに美紀恵の治療が行われた。

 

「ん、んぅ・・・?ここは・・・病院?」

 

「ようやく起きた ようね。」

 

美紀恵が寝ぼけ眼で声のした方を見ると、そこには日下部燎子がおり、少し呆れたような表情をうかべていた。起きた瞬間に上司がいたことから、寝ぼけていた目は一気に覚め、びくんと、肩を震わせた。

 

「た、隊長!?お、お疲れ様です!」

 

「ええ、お疲れ様。貴女達のおかげでアリーナにいた人達を含め一般市民のシェルターへ避難は完了したわ。」

 

美紀恵はその報告を聞くと、自分たちがやったことは意味があったんだと実感し、安堵の息をもらした。

 

「ほっ、良かったです・・・。あ、そう言えば、遠坂さんはどこにいらっしゃるのですか?姿が見えませんが・・・もしかして基地の方にいるのですか?」

 

美紀恵が燎子にそう尋ねると、彼女は不思議そうな顔をした。

 

「あれ?少尉の場所は貴女が知ってるんじゃないの?」

 

「い、いえ。私は新しく現れた精霊を遠坂さんに任せることしかできずに意識を失ってしまったので・・・。」

 

「新しい精霊・・・ね。以前現れた精霊と霊力の波長が似ていたから亜種みたいなものかしら・・・。困ったわね・・・、あ、そうだ。美紀恵、作戦中にプライベートチャンネルは繋げていた?一度通常回線で繋げてみたけど繋がらなかったのよ。そっちなら繋がるかも。」

 

「分かりました。やってみます。〈ベル〉?」

 

here(ここに)

 

CR-ユニットのタグが、音声と光りで存在を示す。さすがに展開していないため本状態であることは厳しかったのか。タグの状態で美紀恵の声に応答した。

 

「遠坂さんの〈デスティニー〉に戦闘時に使っていたチャンネルに繋げてくれる?」

 

『OK Colling』

 

〈ベルMkII〉がプライベートチャンネル経由で〈デスティニー〉へと繋げるが3コール経過してもでることはなく、少し待ち、10コール、15コールを過ぎてもでる様子はなかった。

 

「こっちでも出ないとすると少尉の身に何かあったかもしれないわね。」

 

「そうかもしれません・・・。」

 

そう答える美紀恵の頭に浮かんだのは遠坂紅輝の彼女を名乗っていた精霊。

あの場所で、美紀恵が気絶する前に戦闘を行っていなかったことを考えると、あの精霊が言っていたことは嘘ではなかったとも考えられる。

 

だが、本当にそうなのであればあの女が遠坂紅輝の情につけ込んで彼の身柄を捕らえた可能性がある。

 

「〈ベル〉もう大丈夫だよ。」

 

『OK』

 

プライベートチャンネルを切り、美紀恵は治ったばかりの身体の調子を確かめるために少し腕を回すなどをして確認する。

 

「隊長、私に心当たりがあります。だから、私に天宮市を含め近くの市町村の住民情報へのアクセス権を認めて頂けませんか?」

 

「・・・貴女、今とても危険な立場にいるということは分かっているかしら?私も責任は取らされるだろうけど、特に貴方達は"命令無視"に勝手に〈ホワイト・リコリス〉を持ち出しているの。これ以上勝手な行動をすれば、良くて記憶処理を施されてクビ、最悪死刑よ。」

 

「それは、承知の上です。ですが、私はそうなるだろうという覚悟はできているつもりです。それに、このまま何もせずに後悔するぐらいなら、私は行動を起こします!」

 

「・・・はぁ。私もとんでもない部下を持ったものね。いいわ、認めてあげる。だけど、貴女のIDを使うことは許可しない、使うのなら、私のIDを使いなさい。」

 

「そ、そんな!隊長をこれ以上巻き込む訳には・・・!」

 

「いいからいいから、部下がここまで覚悟を決めてるんだから、上司にも少しは良いかっこさせなさい。」

 

そう言って燎子は自分のIDカードを無理やり美紀恵に渡す。

 

「・・・ありがとうございます!」

 

そういうと、美紀恵は治ったばかりの身体に鞭を打ち、ベッドから抜け出すと基地の中にある自分に与えられている個室に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────────────────

 

〜フラクシナス内部 第1話隔離室。

 

「ふふ、紅輝君。こうして同じ部屋に二人きりでいることは久しぶりだね。」

 

「・・・そうだね。自分もその点に関しては嬉しいことではあるけど、これは一体どういうことだい?」

 

自分はそう言い、少し座り心地の良さそうな椅子に手足を手錠で縛られていることを示すが、士織はさも当然のことと言わんような顔をする。

 

「だって、紅輝君を自由にさせておいたら逃げちゃうかもしれないでしょ?だから私としても心苦しいけど我慢してね?」

 

「自分が士織から逃げるわけないじゃないか。それに賭けは君の勝ち、敗者は勝者に従うだけだよ。だからこれを外してくれないかい?」

 

「だーめ、それに紅輝君今言ったよね敗者は勝者に従うって。だから、紅輝くんはこれから数日間、トイレとお風呂以外はずっとこのまま。」

 

「おっと、これは1本取られたな、でもな士織、自分はこの腕で君のことを抱きしめられない。せめて腕だけでもこの手錠を解いてくれないか?」

 

そういうと士織は少し悩むようにするが、直ぐに返答が帰ってきた。

 

「それでもだめ。それに、抱きしめることなら私がいくらでも紅輝君にしてあげられるから大丈夫。」

 

・・・やはり、一筋縄では行かないな。だが、まあ逃げないことは本当なのだが。CR-ユニットが手元にない以上逃げようがない。転移魔術を使おうにもこの場所がどの場所にあるか分からない以上座標の固定ができない。一か八かこの拘束を抜け出したとしたも、ここが少なくとも普通の大きさの施設では無いことは今までの経験上わかる、そんな状態で抜け出そうとしたところでもう一度捕まるのがオチだ。

 

「ふふ、どうやら諦めてくれたみたいだね。そんな紅輝君にご褒美だよ。ちょっと待っててね。」

 

そう言うと士織はぱたぱたとこの部屋のキッチンにあたるスペースの方に行くと、何やらスパイスの良い匂いがしてくる。

 

少しすると、士織がお盆の上にカレーライスを載せて戻ってきた。

 

「もうこんな時間だしお腹すいてるでしょ?私が作ったカレーだよ。本当なら今日の夕飯だったんだけど、1番先に紅輝君に食べさせてあげる。はい、あーん♡」

 

自分はそれに抵抗することも無く、口を開けてそれを食べる。

その味は5年前に1度五河家にお邪魔した時に食べたカレーの味からアレンジが加えらているように感じた。

だが、今の自分にはせっかく士織が作ってくれたカレーを楽しむ余裕は無く、今どうすべきかさえ考えつかなかった。

 

「美味しい?」

 

「あぁ、5年前に食べた五河家のカレーを思い出したよ。これは君が1人で作ったものかい?」

 

「うん、そうだよ。お母さんのレシピを参考に作ってみたんだぁ。」

 

にっこりと笑う士織に、なるほど、と心の中で思う。

そうしている間にも士織が二口目を自分に向けていたときだった。

 

──コンコン。

 

外に繋がる扉からノック音が聞こえる。

 

「お姉ちゃん、少しいいかしら。」

 

「・・・もう、せっかく良いところだったのに。どうしたの?琴里ー?」

 

扉が開かれ、恐らくここの組織の制服を纏った五河琴里が現れる。

 

「ごめんね、お姉ちゃん。私から紅輝さんに少し話したいことがあってね。そう時間は取らないわ。」

 

自分は己の知っている五河琴里とは全く違う様子に少し驚くが、精霊であると考えれば精神が彼女の同年代に比べて成熟していてもおかしくはないと思う。

 

「んー、仕方ない。分かったよ琴里。だけど、紅輝君を傷つけるのはダメだよ。」

 

「そんなことしないわ。それにこれはお姉ちゃんにも利益がある事よ?」

 

そう言って五河琴里は士織に耳打ちをする。すると、士織の顔はなるほど、といった表情になり、「なるほど、それならOKだよ。」という。

 

「お姉ちゃんから許可も貰ったし、少しお話をしましょうか紅輝さん。」

 

「無駄な話はしないつもりだ。僕は士織との賭けに負けてここにいる。ただそれだけだ。」

 

「まぁ、そう言わずに、お姉ちゃんから聞いたわ。紅輝さんは約2ヶ月前にお姉ちゃんを守れなかったことを悔いているって。」

 

「・・・。」

 

「多分だけど、その時にお姉ちゃんが精霊になったのも紅輝さんは知ってるんでしょ?そして、貴方自身の力の無さとお姉ちゃんを1度殺した精霊を憎んでいる。だから精霊を倒すことを目的にしている。違うかしら?」

 

「違う。僕が精霊を倒すのはイギリスに居たときにアルテミシアと精霊の居ない世界を作ると約束したからだ。君が言ったことも合ってはいるが、それは理由の一つに過ぎない。」

 

「なるほどね。じゃあ、このことは知っているかしら、精霊を人間に戻す方法のこと。」

 

「っ、そういう方法があると士織から聞いてはいる、信じてはいないがな。」

 

「まぁ、私も何もなしに信じろだなんて言わないわ。だけど、ASTの観測機で精霊の霊力反応は感知できない。それに、空間震もここ半年で発生数が減少している。これは私たちが精霊を人間に戻す方法を知っているからよ。」

 

「信憑性が無いな、そう断言できる方法を僕は知らないからね。それに───そういう話をするために僕と話に来たんじゃないのだろう?、本題を言ったらどうなんだい?」

 

「話はここからなのに、意外とせっかちね。だけど、紅輝さんがそう言うなら仕方ないわ。単刀直入に言うわ、遠坂紅輝さん、ASTを裏切りわたし達の組織、〈ラタトスク〉に入って欲しいの。もちろん、タダでとは言わないわ。三食食事付きに給料もASTの頃よりも出すことは約束するわ。それだけじゃない、お姉ちゃんを人間に戻すことを約束するわ。」

 

そう言って琴里ちゃんが取り出したのは羊皮紙で書かれた1枚の契約書。それは魔術に精通しているものならば大抵のものが知っている契約書に酷似していた。

 

自己強制証明(セルフギアススクロール)・・・?いや、少し違うな。」

 

「ええ、私達は魔術師の家庭では無いわ、だから貴方達魔術師が用いる自己強制証明は意味をなさない。だから特別なものを用意させてもらったわ。それこそ魔術刻印を持たない私達でも通用するものをね。」

 

そんなことが可能なのか。いや、自己強制証明(セルフギアススクロール)自体は呪いの一種だ。呪い自体はどのような人物であったとしてもかけることができる。ただし、一般的な呪いの範囲は(詳しい内容が定められていない限り)広くなれば広くなるほどその呪いの効果は薄くなる。故に、今回の自己強制証明(セルフギアススクロール)もどきにどのようなことが書かれているのか。また、そもそもこの契約書が本物であるかを見極めなくてはならない。

 

「契約内容を見せてもらおうか。」

 

「ええ、もちろんよ。」

 

 

 

 

 

 

対象: 五河士織、五河士道、五河琴里及び、ラタトスク機関に関係する全ての人間

 

 

五河士織、五河士道、五河琴里及び、ラタトスク機関に関係する全ての人間の魂が命ず。 各条件の成就を前提とし、制約は戒律となりて、例外無く対象を縛るものなり。

 

 

制約:五河士織、五河士織、五河琴里及び、ラタトスク機関に関する全ての人間は、遠坂家7代目当主遠坂紅輝、またはその家系の人物を対象とした殺害・傷害の意図、及び行為を永久に禁則とする。また、上記の対象となる人物は遠坂紅輝からの五河士織を人間に戻す方法の使用を命じられた場合、いつ、如何なる時であっても必ず実行しなければならない。

 

 

条件:遠坂家7代目当主遠坂紅輝はラタトスク機関に属す。

 

 

 

 

 

 

「魂だと・・・。そんなことが可能なのか・・・!?いや、恐らく可能だが、この条件達成しようとするならば契約成立の時点で魂に干渉するためにも莫大な魔力と、かなりの技量をもった魔術師が必要なはずだ・・・。五河琴里、この契約書を書いたのは一体誰だ。」

 

「ふふ、驚いた?その質問には答えられないけど、内の上はその契約を成立させる程の魔術師を抱えているのよ。それに、貴方程の実力と血筋をもつ魔術師をこちら側に迎え入れることができるならこれくらい喜んでやると言っていたわ。さぁ、紅輝さん、貴方はどうする?」

 

「・・・文面は確認した。自分の手でその自己強制証明(セルフギアススクロール)が魔術的に本物か確認させてくれ。右・・・いや、聞き手じゃない左手でいい。この拘束を解いて欲しい。」

 

五河琴里は自分の提案に少し思考すると、分かったわ。と答える。琴里が指を鳴らすと、先程五河琴里が入ってきた扉からブロンドの髪をもつ1人の男性が現れる。驚くべきことに、この男無駄な動きが全くなく脚運びを見るに何らかの武道や戦闘技術を極めた人物であると理解できた。もし、僕が不振な動きを見せたりでもした場合、すぐに対応されてしまうだろう。

 

「神無月、彼の拘束を左手だけ解いていいわ。だけど、変な真似をしたら容赦なく再拘束していいわよ。」

 

「了解しました。それでは遠坂紅輝さん少し失礼します。」

 

そう言って神無月と呼ばれた男が僕の左手の拘束を解く、だが、手首はがっちりと掴まれており、逃げることは許さないといった風だった。

 

「それじゃあ実際に確かめてもらおうかしら。」

 

そう言って五河琴里は僕の左手に自己強制証明(セルフギアススクロール)を触れさせる、魔力を反応させ、この契約書が本物であり魔術的な仕組みがしっかりと組み立てられているかを確認する。

数秒もかからないうちにも文字が魔力に反応し淡い光を放つ、同時にこの契約書に文字を書き換える術式や、入れ変える術式が組み込まれていないかをも確認する。

 

「・・・確かに本物であることを確認した。それに不正もない、完璧だ。」

 

「それじゃあ答えを聞かせてもらおうかしら。おっと、その前に神無月。」

 

「はっ。」

 

さっきまで解放されていた左手がもう一度拘束され、内心舌打ちをする。

 

「───少し考えさせて欲しい。」

「・・・分かった。それじゃあ明日の朝また来るわ。それまでに決めておいてちょうだい。」

 

「配慮、感謝する。」

 

そう言うと五河琴里と神無月と呼ばれた男が扉から出ていこうとした。

 

 

 

その時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───緊急事態発生、緊急事態発生。何者かによってこの艦の空中制御システムと迷彩システムにハッキングが仕掛けられています!

 

けたましいサイレンが鳴り響き、赤色のランプが点灯する。

 

機械音が鳴ったかと思うと、自分が入れられている部屋を含めた全てのドアが開かれた。

 

すると、五河琴里はスマートフォンの様な端末を取り出すと、どこかに連絡し始めた。

 

「対応急ぎなさい!令音、逆探知はできそう?────駄目よ、3分以内になさい!」

 

「琴里、侵入者ってこと?」

 

「ええ、恐らくね。だけどこの場所がどうやって・・・。いや、そのことを考えるのは後ね。お姉ちゃんは紅輝さんをお願い。多分だけど狙いは紅輝さんよ。」

 

「え、うん。分かった!」

 

士織のその言葉を聞くと、五河琴里はこの場所から離れていく。

この部屋に残ったのは僕と士織だけ。だが、僕は椅子に縛られ、士織は僕のすぐ隣に佇み、GNソードVを展開させていた。

 

そして、しばらくすると、サイレンが鳴り止み部屋の明かりも元に戻る。

 

侵入者が捕まったのかそれとも何かの事故だったのか。それも、分からないまま1分、2分と時間が過ぎていく。

 

その中で静寂を破るように士織が口を開く。

 

「捕まったのかな・・・。ねぇ、紅輝君。私は魔術のことはさっぱりだけど、どうしてあの契約を迷ったの?アルテミシアって言う人と約束したって言ってたけど・・・。その、こんな言い方をすると嫌な女って思われるかもしれないけど、私よりもその人との約束が大事なの・・・?」

 

「・・・そういう訳では無い、けど。いや、もう言っていいかもしれないな。僕は君のために精霊の居ない世界を作りたかったんだ。君が精霊によって命を脅かされない世界、そんな世界を作れればって・・・。だけど、それも僕の力不足のせいで目的と過程が矛盾するような状況になってしまったけどね。」

 

僕がそういうふうに自嘲気味に笑うと士織は悲しそうな顔をした。

 

「そう、だったんだ。」

 

士織は短くそう言うと黙り込んでしまう。

 

その時だった。

 

「なるほど、遠坂さんが戦う理由は士織さんのためだったんですね。」

 

突如、何も無いところから僕と士織、どちらも聞いたことのある声が聞こえる。

 

すると、先程までテリトリーによる光学迷彩を発動していたのか、その迷彩を解き、黒いCR-ユニットを纏った岡峰美紀恵が現れた。

 

 

 

 

 

「良い雰囲気のところすみません。ですが、迎えに来ました遠坂さん。」

 

 

 

 

 





おや?美紀恵ちゃんのヒロイン力が・・・?

お気に入りに追加してくださった。

U777さん、ラインズベルトさん、桑原広正さん、リューオさん、もんじさん。ありがとうございます!これからも見ていただけると嬉しいです!

それではまた次回!


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策戦

皆さん、お久しぶりです、狩宮深紅です!

やっとテストが終わり、ひと段落着くことが出来たので何とか1話書くことができました!

いやー、夏も真っ盛りですね、皆さんは熱中症にお気をつけてください。
最悪、死んでしまうかもしれないのでこまめな水分補給を心がけるようにしてください!
楽しい夏を過ごせるように頑張っていきましょう!



 

 

「良い雰囲気のところすみません。ですが、迎えに来ました遠坂さん。」

 

 

「「美紀恵(ちゃん)!」」

 

「はい、岡峰美紀恵です。おっと、士織さん、仲間を呼ぼうとしても無駄ですよ。この部屋の防音は完璧、それにブザーをならそうとしても無駄です。この部屋の電子機器類はすでにジャックしています。」

 

何やら、ブザーの様なものをならそうとしていた士織だったが美紀恵の纏っているCR-ユニット〈不思議の国のアリス〉モード:ジャバウォックの効果により、無効化されている様だった。

 

「・・・嘘を言っているようには見えない、な。だけど、紅輝君は渡せない。私達の組織としても、私個人としても!」

 

士織は霊装を展開させ、戦闘態勢をとる。

しかし、美紀恵はそれに対して戦闘態勢をとる訳ではなく、無防備な状態で立っているままだった。

 

「士織さん、剣を下ろしてください。私は今回戦いに来たわけではありません。」

 

「・・・でも美紀恵ちゃんは紅輝君を奪いにきたんでしょ?」

 

「そうですね。遠坂さんの彼女である貴女からしたら私は彼氏さんを奪いに来た泥棒猫といったところですか。最初は私も力づくで奪おうとしていましたが状況が変わりました。これを見てください。」

 

そう言って、美紀恵は随意領域の応用で空中スクリーンを出すと、そこに映っていたのは、恐らく天宮アリーナの近くと思われる場所で何かを探しているように歩き回る大量の一般人がいた。この時点で自然的な現象からかけ離れているがこの一般人の様子は少し前に見たばかりの光景に酷似していた。

 

「〈ディーヴァ〉の仕業か。」

 

「はい、恐らくと言うよりはほぼ〈ディーヴァ〉の力によるものです。しかもその探している標的は五河士道(・・・・)です。五河君を助ける為にも、お手伝い頂けますよね。五河士織さん。」

 

美紀恵にそう言われ、士織は言葉に詰まってしまう。

だが、数秒の後彼女は何かを決めたかのように拳に力を入れ、口を開いた。

 

「分かった。協力するよ。」

 

「ご協力感謝します。それでは────。」

 

「ただし!紅輝君は渡さない・・・!紅輝君はここに残ってもらうよ。」

 

美紀恵の言葉を遮り士織は条件として、僕がここに残ることを提示した。

美紀恵はその言葉は想定外だったのか、少し驚くような表情を浮かべるが、すぐに元の冷静な表情に戻す。

 

「残念ながら、状況としてその条件は厳しいです。」

 

「それは・・・どうして?」

 

「貴女方の組織が精霊を匿っていることを知っています。ですが、その匿っている精霊は今や〈ディーヴァ〉の傀儡になっています。先程の戦闘で負った〈ハーミット〉や〈ベルセルク〉の傷もそろそろ癒えている頃でしょう。その2体の精霊はどうやって対処するつもりですか?」

 

真剣な眼差しで士織を見つめる美紀恵に、彼女はその言葉を待っていたかのように言葉を発する。

 

「それも含めて私が何とかするよ。」

 

「・・・その言葉の根拠はあるのですか。」

 

「あるよ。だって、私の精霊の力は対話のため(・・・・)の力だから。」

 

力強く断言する士織に美紀恵は肩を竦める。

 

「・・・はぁ、分かりました仕方ありません。遠坂さんは一旦ここに置いておくとしましょう。」

 

「なっ・・・!?」

 

美紀恵の言葉に思わず言葉を漏らして閉まった。いや、助けに来てもらっている時点で僕に文句を言う筋合いはないのだが、あまりにあっさりと諦める美紀恵に驚かずにはいられなかった。

 

「すみません、遠坂さん。ですが、わかって貰えると嬉しいです。」

 

そう言ってぺこりと頭を下げる美紀恵にこれ以上言葉をかけるのは良くないと思い、押し黙る。

 

「それじゃあ美紀恵ちゃん。交渉はこれで終わりでいいんだよね。」

 

「はい、この後、私も精霊の迎撃行動に入ります。士織さんはその対話のための力というものを使用してください。ですが、万が一騙すようなことがあれば────。この船を堕とします。」

 

「・・・っ。分かったよ。それじゃあ行こうか。」

 

そう言って、美紀恵と士織はこの部屋から出て行ってしまう。

部屋に取り残された僕は、手足を縛られた状態で椅子に括りつけられており、どうすることも出来なかった。

 

 

 

「・・・一体、どうすればいいんだ。」

 

誰もいなくなったからか、思わず口から言葉が零れる。

 

 

僕は一体何をすればいいんだ。偉そうに言っておいて覚悟も無く、その上この状況に対して自分が何をしたいのかも決められていない。

それに、今の僕にはCR-ユニットもなく、精霊を倒すこともできない。

魔術はあるが、精霊は通じない。それこそ、サーヴァントが持っているような宝具でもない限り────。

 

『遠坂さん、おはようございます。』

 

「っ!誰だ。」

 

突如、機械音声が聞こえ、反射的に周りを見渡す。

だが、よく今の音声を思い出してみると、美紀恵のCR-ユニットに搭載されている〈ベルMk.II〉の声に酷似していた。

 

「もしや、〈ベル〉なのか?」

 

『YES、その通りです。マスターが私に貴方の脱出の手伝いをした欲しい、と仰り、ここに置いていかれたのです。』

 

「そう、だったのか。ここまでするとは本当に美紀恵は凄いやつだな・・・。」

 

『YES、マスターはとても素晴らしいお方です。ですが、貴方も凄いお方です。』

 

突然、〈ベルMkII〉が僕を褒めるような言葉を発したかと思うと、さらに言葉を続けた。

 

『私の記録の中には先代のサポートAIである。〈ベル〉・・・いえ、アルテミシア・ベル・アシュクロフトの記憶データも保存されています。その記憶の中で貴方は彼女達家族の支えとなっていました。私のオリジナルもセシル・オブライエンもアシュリー・シンクレアもレオノーラ・ティアーズも貴方のことを大切な人物として認めていました。』

 

〈ベルMkII〉は本状態のまま、ふわふわ浮きながらそう言う。

 

「だけど、僕は今回。1番大切なところで覚悟を示すことができなかった腑抜けだ。そんな僕が何かをしたところで意味はない。」

 

『Why?どうしてそう思うのでしょうか?』

 

「それは・・・。半端な気持ちで何かをしても、半端な結果しか残らないからだ。それに僕が今までいたところはそういうところだ。半端な気持ちじゃ、ただ殺されて死ぬだけだ。」

 

『なるほど、貴方のその考えは今までの経験から来ている、ということですか?』

 

「・・・そう、だな。」

 

『では、新しい考えを持ってみてはいかがでしょうか。貴方の戦う理由は五河士織が笑って暮らせる世界を作ること。ですが、貴方は今、覚悟を示すことが出来ずに立ち止まっている。しかし、私は人間という生物が、悩み、苦しみ、挫折しながら生きていく生物だと認識しています。そして、貴方は現在、挫折、という状況に陥っているのではないでしょうか?』

 

「挫折・・・か。確かにそうかもな。それで?僕に一体どういう考えを持てと?」

 

『JAPANの漫画にこういう言葉がありました。「逆に考えるんだ、あげちゃってもいいさ」とこの言葉を応用すれば・・・「逆に考えるんだ、覚悟を示さなくったっていいさと」です。』

 

よく、ネットなどで聞くような言葉を淡々と発する〈ベルMkII〉だが、その言葉にはどこか誇らしげにしているような感じを帯びていた。

だけど、この状況で〈ベルMkII(こいつ)〉の言った言葉がおかしくって、さらに機械音声だから本気で言っているのか、ジョークで言っているのか分からないが、それに対してふと、笑いが込み上げてきてしまった。。

 

「はは、なんだよ、それ。それじゃぁ死んじゃうかもしれないんだぞ?」

 

『なら覚悟がなくても死なないようにもっと強くなればいいのです。』

 

脳筋が言いそうな台詞を躊躇いも無く発するこのAIに、どこかアルテミシアの影を見た気がした。

 

いや、元は一緒だからそれも当然なのか?

 

「・・・お前、本当にAIか?実はアルテミシアの脳内データが残っているんじゃないのか?」

 

『それは有り得ません。私は私です。それに、これで気持ちは少しでも楽になりましたか?』

 

「はっ、お蔭さまでね。覚悟がなくても死なないように強くなる、ね。いいよ、やってやろうじゃないか。」

 

僕はそう言って魔術回路を起動させ、腕の筋力を限界まで強化し拘束を無理やり解く。

足の縄も投影したナイフで切り、四肢が完璧に動かせるようになった。

 

「〈デスティニー〉は・・・さすがに見当たらないな。」

 

改めて周りを見渡し、〈デスティニー〉がないか。確認するが辺りにそれらしきものは見当たらない。

 

『貴方のCR-ユニット、〈デスティニー〉ならあの五河士織と呼ばれる女性からその反応がありました。現時点での回収は不可能かと。』

 

「おいおい、どうするんだ?魔術だけじゃ精霊と戦うにはキツすぎるぞ?」

 

『ご安心を、CR-ユニットなら他にもありますので。具体的にはこの艦の中には2機(・・)ほど積まれていますね。』

 

「ほう?そんなことまで分かるのか。」

 

『YES、この艦全体をスキャンした時にCR-ユニットの反応がありました。』

 

「・・・驚いた、お前って本当になんでもできるんだな。」

 

『NO、私にできることは、機能内の範囲でしかありませんよ。』

 

「十分だよ。それじゃぁ案内してくれるだろう?」

 

『ACSEPT。案内を開始します。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─────────────────────

 

〈ベルMkII〉の案内により、1度も誰かに見つかることもなく、そのCR-ユニットが保管されている場所に着くことができた。

 

『到着しました、ここが例の場所です。』

 

そこには第一格納庫と書かれた看板があり、電子ロックで閉じられている扉があった。

 

「〈ベルMkII〉開けることができるか?」

 

『EASY、この艦のシステムは全て把握しております。』

 

「ほう、それは頼もしい、それではお願いしようか。」

 

〈ベルMkII〉がピピと言う電子音が鳴ったかと思うと、電子ロックで閉じられていた扉がいともたやすく開かれた。

 

音を立てないように中に入るとそこには、〈ベルMkII〉の言っていた通り2機のCR-ユニットが存在していた。

近づいて確認してみると、そのうちの一機が僕には見覚えがあった。

 

それは、僕が以前アスガルドエレクトロニクスに潜入した時、一機だけ入手することができなかったあのCR-ユニットだった。

 

「これは、〈ν〉じゃないか。どうしてこんなところに・・・。いや、アスガルドエレクトロニクスが協力していたのは、この組織だったということか。」

 

もう一つのCR-ユニットの名前を確認して見ると、そこには〈Is〉と名を付けられているCRユニットだった。

 

「あいえす・・・?これはいったいなんだ?いや、そもそもすべてのCRユニットにガンダムの名前が付けられているとは限らないか。」

 

実際に、ASTの装備はDEMの使っている装備はガンダムの名前は付けられていない。そう考えると、この名前の付け方は普通のことなのかもしれない。

 

そんな僕はCRユニットに夢中になっていたせいか、背後から近づいてくる影に気づくのが少し遅れてしまった。

 

「そこを動かないでください、あなたが今回の騒動の犯人でいやがりますね。」

 

「誰だ!」

 

咄嗟に右手を後ろに隠し、ナイフを投影して声をかけてきた人物にそのナイフを向けた。

 

しかし、そこにいたのは五河士織によく似た中学生位の少女だった。

 

 

 

 

 

 





お気に入りに追加してくださった。
炎髪さん、コノコムトさん、ウァイオリンさん。
ありがとうございます!これからも見ていただけるとうれしいです!




単位取れるかなぁ…。


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