二代目クロノスは仮面ライダー(凍結) (嵐川隼人)
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プロローグ
青年、二代目クロノスになる


転生する前の内容になってます。

それだは、どうぞ。

※会話が見辛かったので、間を作ってみました

※9月29日、タイトル変更しました


 目が覚めると俺は真っ白な空間に立っていた。

 はて、と俺は疑問に思った。記憶が正しければ俺は豪雨の中自転車をこいでいて、疲れたから休もうと思って自転車から降りたとたん雷かなんかに打たれて、『あ、俺死んだ』状態になったはず。なのになぜ………

 疑問に思っていると、何かが後ろに現れたような感覚が走った。振り向くと、()()()()()()()はずのその場所に二人の女性が正座していた。片方は淡い黄土色のロング、もうひとりは黒髪のロングだった。そして二人は思いっきり頭を下げて一言

 

 

「「本っ当にもうしわけございませんでしたああああぁぁぁぁぁぁぁ!」」

 

「へ?あ、あの」

 

「まさかあんなことになるなんて思わなかったんです!」

 

「私たちの不注意であなたを巻き込んでしまって!」

 

「わかった、わかったからいったん落ち着いて!」

 

 

閑話休題

 

 

「とりあえず、二人とも落ち着きましたか?」

 

「は、はい………」

 

 

 何とか二人を落ち着かせる。年上に思える人は返事をしたものの、声に震えがあった。もう一人に関しては返事すらもできないぐらいの泣き顔だった。

 

 

「それで………ここはどこですか?」

 

「ここは神界、天国よりも上に存在する、神のみが入ることを許された世界です」

 

「ふぅん……………それで、なんで死者のはずの俺がこの世界に?記憶が正しかったら、俺はさっき雷に打たれて死んだはず………」

 

 

 急に二人の顔が青ざめる。

 これはあくまで俺の予想だが、もしかして二人は何かをやらかしてしまったのではないだろうか。そしてそれに巻き込まれたのが俺なんじゃないか?つまり、本来死ぬべきではないところで俺は死んでしまった。だからそれを謝るために魂をここに呼び寄せた、ということなんじゃないか?そう考えると合点がいく。

 しばらくして、泣き顔だった方の女性が口を開いた。

 

 

「えっと………じ、実は………私達、さっき喧嘩していて………色々物を投げあっていたんです。その時………誤って、生者の棚と呼ばれる、今現在人間界で生きている人を整理する棚から本を取り出してしまって………」

 

「それが生者の本であるとは知らず………気が付いた時には、雷で………」

 

「燃やしてしまった、と。そして死んだのが俺………というわけか」

 

「は、はい。ゆ、許してもらえるなんて思っていません。あなたには謝っても許されないことをして………グスッ、ご、ごめんなさい………」

 

 

 再び二人は泣き始める。そんな二人を見て、俺は笑顔で答えた。

 

 

「いいですよ」

 

「「ふぇぇ⁈」」

 

 

 許されるとは思ってなかったのだろうか、二人は驚いた表情で顔を上げた。

 

 

「い、いいんですか⁈私達は、あなたの人生を………う、奪………」

 

「謝ってくれたじゃないですか。それでもう十分ですよ」

 

「で、でも、でも………あなたは、私達の喧嘩に巻き込まれて………」

 

「過ぎたことを責めることはできませんよ。起こってしまったものは仕方がありません」

 

「だ、だからって………」

 

「………じゃあ、こうしましょう。今から願いを言うので、それをかなえてください。それで今回の件はチャラにします」

 

「は、はい!どんな願いでも言ってください!」

 

ほんとにどんな願いでも叶えてくれそうだけど………俺の一番の願いはあれだけだ。

 

「それじゃあ──────

 

 

 

 

 

─────二人とも、僕の家族になってください」

 

 

 

 

 

「「………………はい?」」

 

 

 間の抜けた声を出す二人。そんなことでいいのかとでも言いたそうな顔だ。けど、俺にはこれだけでいいんだ。

 

 

「実は俺……………家族がいないんです。なんでも幼い頃みんな死んでしまったらしくて…………だから、家族というものに、とても憧れていたんです。それに、二人とも優しそうだから、二人が家族になってくれたらうれしいな………なんて。ダメ、ですか?」

 

「い、いえ、そんなことありません!でも………そんなことでいいのですか?」

 

「そんなこと()いいんじゃありません。そんなこと()いいんです」

 

 

 二人の顔から不安が消える。そして二人は笑顔になって立ち上がった。

 

 

「わかりました。あ、いや………わかったよ、かな?」

 

「うん、それでいいですよ………じゃなかった、いいよ。そういえば自己紹介がまだだったね」

 

 

「俺は仮野(かりの) 創真(そうま)。よろしく」

 

「創真、創真………うん、覚えた」

 

「それで………俺はこれからどうすればいいのかな?」

 

「えっとね、創真は私たちの手違いで死んでしまった、つまり本来死ぬべきではなかった人間なの。そうなった人間は原則として、違う世界で新たな人生を歩んでもらうことになってるの」

 

「違う世界って、それを俺は選べるの?」

 

「もちろん。あと、その世界に転生する際、転生者が望む何かしらの特典を渡すのがルールなの」

 

「へぇ、特典か。それって制限ある?例えば、不老不死にはなれない、みたいな」

 

 

 さすがに制限はあるだろう、なんて考えは即座に消された。

 

 

 

「「ないよ、だって創真神様になるんだし」」

 

 

 

「………はい?」

 

 

 ちょっと待て、今彼女たちは何と言った?俺が、神様になる?

 いや、確かに俺は神様の二人に家族になってほしいとは言ったよ。でも神様になりたいなんて一言も言ってないぞ。

 

 

「えっと………神様になるっていうのはどういうことなのかな?」

 

「まぁ、正確には私の息子、そして()()の弟になったことで、自動的にある二代目の神様になった、というのが正しいかしら?」

 

「………………今更だけど、二人って何の神様なの?」

 

「あ、そっか。謝ることに夢中で私たちのこと言ってなかったわね」

 

 

 まぁ、息子・弟・そして片方の女性の名がレアということからなんとなく予想はできるが。

 

 

 

「私は、ギリシャ神話の地母神が一人、二代目ガイア。そしてこっちが」

 

「同じく地母神が一人、二代目レア。よろしくね」

 

 

 

「ガイアとレア………………ということは俺は、クロノスってことになるの?」

 

「うん、そういうこと」

 

 

 なんとなく予想はできていた。しかし一つ気になることが。

 

 

「あの、俺が二代目ってことは、初代がいたってことだよね?その人に許可をもらわなくてよかったのかな」

 

「あー………やっぱり気になるか………」

 

 

 再び二人の顔が暗くなる。聞いてはいけないことだったのだろうか。

 

 

「あのさ、創真。さっきあたし達喧嘩してた、って言ったよね」

 

「うん、言ってたけど………」

 

「その喧嘩の原因が初代クロノスなの。実は彼、ある理由でその座を奪われたの」

 

「ある理由って?」

 

「初代クロノス……………あの子は禁忌を犯したの。元々とても真面目で、誰よりも頑張り屋だったのだけど、ある日彼は人間界から一か月以上も神界に帰ってこなかった事があってね。帰っては来たのだけど、その日から人が変わったように力を求めるようになって……………ついには他の神に攻撃をするようになったの。それに怒った主神たちは初代クロノスから神の座を奪い、人間界に追放したの。それによりクロノスの座は空席になった。だから二代目を決める必要があったの。そしてその役目を私たちに与えられたのだけど………」

 

「二代目にふさわしいものは誰かで意見がすれ違い、喧嘩に発展した………ってことか」

 

「そう。それであなたが巻き込まれて………」

 

「あー、その話はもう禁止。済んだことは何回も言わなくていいから」

 

 

 ただ、と俺は顎に手を当てながら不安になっていることを伝えた。

 

 

「俺、クロノスといっても、()()()()()()()()()()()()、そういうので時間を止める能力があるんだ、ぐらいの知識しか………」

 

「あー、確かに同じクロノスだけど、それとは別よ。ていうか創真知ってるの、仮面ライダークロノスのこと?」

 

「もちろんだよ。自慢じゃないけど俺、平成仮面ライダーグッズはビルドまで全部持ってるし」

 

「「え⁈」」

 

 

 なんか二人にめっちゃ驚かれた。いや、今時平成ライダーのグッズ全部持っている人なんてザラにいるよ。というかむしろ、神様の二人が仮面ライダーのこと知ってるほうがびっくりだよ。

 

 

「二人とも、仮面ライダーわかるの?」

 

「もちろん!だって私もお母さんも仮面ライダーファンだもの!」

 

「え、そうなの?ちなみに一番好きなライダーは?」

 

「あたしは鎧武!葛葉紘汰の『ここからは俺のステージだ!』っていう決め台詞がめっちゃ好きなの!なんかこう、『反撃開始!』みたいなフレーズが!」

 

「私はやっぱゴーストかしらね。偉人たちが主人公に力を貸す、ていうのがよかったわ」

 

「うわぁ、どっちもわかる!」

 

「でしょでしょ!創真は?」

 

「俺はやっぱ平成最後のライダーって言われてるビルドかな。有機物と無機物のフルボトルを組み合わせたときの『BEST MUCH‼』って音がたまらないんだよね!」

 

「あ、あたしもそれわかる!いいよねあの音!それであの………」

 

 

 その後も会話は進み、気が付けば一時間ぐらいずっと仮面ライダーの話で盛り上がった。思えば誰かと仮面ライダーの話で盛り上がったのはいつぶりだろうか。その時ふと、特典についていくつかいいことを思いついた。

 

 

「そういえば………さっき特典に制限はないって言ってたよね」

 

「うん、そうだよ。もしかして決まったの?」

 

「うん………あ、その前に一つ。本人が望む以外に何か特典が付くこととかあるのかな?」

 

「あるよ。えっとね、まず身体能力が底上げされるよ。それと豊穣神になった事である程度自然を自由に操れる、これぐらいかな」

 

「その身体能力って、具体的にはどれくらい?」

 

「そうね、少なくとも私達よりかは強くなるわ」

 

「うん、軽く済ませてるつもりだろうけど、十分チートだよね」

 

 

 そうかな、みたいな顔してるけど、神様二人より強くなるってすごいチートだよ。

 

 

「それで、創真の欲しい特典は?ちなみにいくつでもいいよ」

 

「あー、うん。とりあえず欲しい特典を紙にまとめたいから、紙とペンか何かくれないかな」

 

「オッケー、それじゃこれ」

 

 

 初めから用意してたかのようにレアは懐から白紙とボールペンを出した。神様ってホントすごい。

 

閑話休題

 

 

「……………よし、とりあえずこんなところかな」

 

「書けた?」

 

「うん」

 

 

 そういって二人に紙を渡した。内容はこんな感じだ。

 

 

『1.仮面ライダークロノス及びビルドに変身できる能力

 2.必要な時のために他の仮面ライダーの変身用の道具(トランスチームガン・ガシャット等)を自由に作れる能力

 3.豊穣神クロノスとしての能力を使いこなすための修業場所

 4.転生するまで他の神様と交流を深める機会

 5.転生先でも母親と姉にいつでもどこでも会える能力

 6.これから家族になる二人から()()をおしえてもらう』

 

「ねぇ、創真。1と2はわかるよ。3はどういうこと?」

 

「あぁ、それね。ほら、僕は豊穣神クロノスになるわけでしょ?力は持ったけど使い方わからない、とかなったら恥ずかしいじゃん?だから、自由に使えるようになっといたほうがいいな、って。あと4は、神様になったのならほかの神話の神様、北欧神話とか日本神話の神様に僕が二代目になったってこと話さないといけないでしょ?」

 

「なるほどねぇ。それじゃ、最後の二つは?」

 

「えっとね・・・まず5からだけど、転生先で困ったときとか、一緒にいてほしいなって時すぐに来てほしいっていう個人的なものだよ。それに、せっかく家族になったんだしね」

 

「そっか。それじゃこの6は?これの意味があまりわからないんだけど」

 

「6はなんとなく二人を見て考えたことだよ」

 

「私たちを?」

 

「だってさ──────

 

 

 

 

 

──────二人とも二代目ってことは、ちゃんとした元の名前があるわけでしょ?」

 

 

「………なんだ、気づいてたんだ」

 

「いつからわかったの?」

 

「二人が自己紹介した時だよ。さっき二人とも、自分たちのこと二代目って言ったよね。それってつまり、初代か周りの神様によって任命されたってことでしょ。ということは、ガイアやレアという名はいわゆる肩書のようなものになる。だから、神としての名前以前に本当の名前があるんじゃないかな、って思ったんだ」

 

「すごいね、あの一言だけでわかるなんて。その通りだよ。私は地母神レアだけど、本当の名前は瑞樹(みずき)。創真の家族になるから、今度からは仮野 瑞樹って名前になるね」

 

「私も肩書はガイアだけど、聖奈(せいな)って名前があるの」

 

「瑞樹と聖奈か……………いい名前だね。やっぱ聞いててよかったよ」

 

「ありがとう。それじゃ名前も言ったことだし、さっそく特典を渡すね」

 

 

 そう言うと、二人は俺に向けて手をかざし、何かを唱えた。すると二人の手に光が収束していき、一瞬眩しく光り、閉じた目を開くと俺が見たことのある道具がそこに浮かんでいた。片方はレバーのついた黒いベルト型の機械に兎と戦車のマークがそれぞれ入った手のひらサイズのボトル、もう片方はゲームのABボタンらしきものが付いた水色の機械と緑色のカセットのようなものだった。

 

 

「これが第一の特典、ビルドドライバーとラビットフルボトルにタンクフルボトル。そしてバグルドライバー(ツヴァイ)に仮面ライダークロニクルマスターガシャットよ。どっちから試してみる?」

 

「え、いいの?それじゃ………まずビルドドライバーから」

 

 

 聖奈からビルドドライバーとラビットフルボトルとタンクフルボトルを受け取り、ドライバーを腰に当てると聞いたことのある音声が流れて腰に装着された。興奮した俺は、あの名台詞を言った。

 

 

「さぁ、実験を始めようか」

 

 

 右手にタンクフルボトル、左手にラビットフルボトルを持ち、勢いよく振る。すると俺の後ろから様々な物理の方程式がいくつも現れる。しばらくして方程式が現れなくなったのを確認すると、フルボトルの蓋部分をボトルに合わせ、ドライバーの右にラビットフルボトル、左にタンクフルボトルを挿した。

 

 

 

 

RABBITTANK!BEST MUCH!】

 

 

 

 変身待機音声が鳴り響き、俺はレバーを回した。装着したフルボトルから中の成分であるトランジェルソリッドがドライバーに入り、中で混ざり合う。そしてドライバーから赤と青のパイプが伸びると同時に、スナップライドビルダーが周囲に展開される。パイプ内の成分は前方と後方にハーフボディを形成した。

 

 

 

【Are you ready?】

 

「変身!」

 

 

 スナップライドビルダーに形成された二つのハーフボディが近づき、俺の体を包んだ。大量の煙がスーツから放出され、ベルトから音楽が流れた。

 

 

鋼のムーンサルトラビットタンク!イェーイ!】

 

「勝利への法則は、決まった!」

 

 

 決め台詞を言った後、俺は今の自分の姿を確認した。まぎれもない、平成最後の仮面ライダー、ビルドだ。

 

 

「すごい………ほんとにビルドだ!」

 

「喜んでもらえてうれしいわ。それじゃ次、試してみる?」

 

「もちろん!」

 

 

 すぐさまドライバーからフルボトルを外し、ベルトをとって変身を解除する。そして俺は次にレアからバグルドライバーⅡと仮面ライダークロニクルガシャットをもらい、同じようにバグルドライバーを腰に装着した。

 

 

【ガッシャ―――ン】

 

 

 これも聞いたことのある音声が鳴る。俺はベルトのAボタンを押して変身待機音を鳴らし、あの台詞を言ってガシャットを起動させた。

 

 

「今こそ審判の時」

 

仮面ライダークロニクル

 

 

 起動した仮面ライダークロニクルガシャットは緑の光を放ちながら俺の周りを飛び、バグルドライバーにセットされた。

 

 

【ガシャット】

 

 

 俺は一度深呼吸し、バグルドライバーの変身ボタンを押した。

 

「変身」

 

 

【Buggle up‼天をつかめライダー‼(ウォー!)刻めクロニクル‼今こそ時は、極まれり‼(ウォー!)】

 

 

 上空に仮面ライダークロニクルのデータが浮かび、自分の周りにギリシャ数字が時計回りに現れ、Ⅻが現れたところでデータが急降下し、仮面ライダーエグゼイドの劇中ラスボスである仮面ライダークロノスへと変身させた。

 

 

「おぉ………こっちも変身できた。やっぱカッケーな、クロノス」

 

「ちゃんと動いたみたいでよかった。とりあえず特典の1つは完了っと。次の特典は………」

 

 

 その後も特典の受け取りと確認作業が続いた。無論、ちゃんと他の神様にもあいさつには行ったし、修業場所も提供してもらった。そしてやるべきことがすべて終わったあと、とりあえず休もうと思って俺は母さんたちが住んでいるという神界の家に向かった。家に行って何をしたかって?特に何もせず、ひたすら寝たよ。今日は色々ありすぎた。さすがに疲れたからね。後はひたすら修業して、仮面ライダーの力を確認して、の日々が始まったよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あ、そういえば転生先決めてないや。ま、いっか、そのうち見つかるでしょ。

 

 




いかがでしたか?

一応主人公たちの姿で参考にしたキャラがいるので、イメージしやすいよう書いてみました。

創真:『GOD EATER 2』の主人公(初期状態)

瑞樹:『姉なるもの』の千夜(角生えてない時の方)

聖奈:『通常攻撃が全体攻撃で二回攻撃のお母さんは好きですか?』の大好真々子

なんとなく想像はできたでしょうか。
以上、第一話でした。


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クロノス、箱庭に転生す

前回のあらすじ

神様親子の喧嘩に巻き込まれ死んだ仮野創真は、家族になるという形で二代目クロノスとなる。
そして彼は、仮面ライダービルドと仮面ライダークロノスの力を特典としてもらう。

以上




今回は問題児たちの世界に転生する話です。

ではどうぞ。



 俺が死んでから………いや、二代目クロノスとなってからの方がいいか?

 どっちにしろ、それから百年ぐらいが経った。

 この百年の間で知ったのだが、ギリシャ神話においてクロノスという神は二人存在するらしい。内ガイアの息子でレアの弟のほうは豊穣神クロノスで、時間を操る方のクロノスは時刻神カイロスの弟で、この二人は何の関係性もないらしい。しかし俺が仮面ライダークロノスに変身できる能力を得たことにより、立場上豊穣神でありながら時間神に似た力も使えるという何ともややこしい(あくまで自分の感覚だが)ことになった。

 後、様々な神話の神様とも交流を深めることができた。中でも日本神話の天照大神さん、北欧神話のオーディンさんの二人とは仮面ライダーの話で気が合いとても仲良くなった。ちなみに天照さんは仮面ライダーイクサが、オーディンさんは仮面ライダーメテオが好きだそう。神様って意外と仮面ライダー好きなんだな。

 そうそう、形式上自分の息子に当たる絶対神ゼウスと冥界神ハデスとも会った。初めて会った時はとても緊張した。しかしいざ会ってみたら、二人とも親しく話しかけてくれたので本当に助かった。ハデスさんが引きこもりのアニヲタだったのは、正直驚きだったけど……

 そんなこんなで百年が過ぎたある日、事件は起きた。

 

 

 それは、仮面ライダー関係の道具を色々作ったり確認していた時のことだった。

 ちなみにこの時、俺はビルドのすべての力を扱えるわけではないことが判明した。

 まずビルドの記念すべき最初の強化アイテム【ラビットタンクスパーキングボトル】である。これはラビットフルボトルの成分とタンクフルボトルの成分をもとに作られた、炭酸ジュースの入った缶のようなボトルで、使用中は他のベストマッチフォーム専用アイテム(四コマ忍法刀、カイゾクハッシャーなど)を同時に使用できるようになるのだが、ビルドをまだ扱いきれていない今の俺では反動が大きすぎて変身できないのだ。無論母さんと姉さんに身体能力を底上げしてもらった上でだ。おそらく、ビルドの世界において強さを示す基準となるハザードレベルというものがまだそのボトルを使えるレベルに達していないからだと思われる。

 それと同じ理由だろうか、ハザードレベルを一気に上げる【ハザードトリガー】、ハザードトリガーのオーバーパワーを制御しつつ最大限使える【フルフルボトル】、そしてすべてのフルボトルの力を持った【ジーニアスフルボトル】も使えないのだ。これはさすがの母さんも姉さんもどうしようもできなかった。自力でなんとかハザードレベルを上げるしかないだろう。ただそのかわり、一応全てのベストマッチフォームは現状使えるため、しばらくはこれだけでもなんとかなると思う。

 話を戻そう。俺が自室で転生する前に様々な仮面ライダーの道具を確認していた時、部屋の外からドタドタと走る音が近づき、勢いよく扉が開かれた。驚いた反射で扉を見ると、マジでやばいです感のある顔をした母さんと姉さんが何かの小説をもって立っていた。

 

 

「ど、どうしたの二人とも⁈」

 

「ぜぇ………ぜぇ………そ、創真。大変なことが起こったの!これ見て!」

 

「これは………【問題児たちが異世界から来るそうですよ?】?」

 

「この本の最後のイラストを見て!」

 

 

 言われたように俺は本を開いた。そして俺はイラストを見て驚愕した。

 

 

「………これは………」

 

 

 本来負けていないはずのノーネームが見るも無残な姿で倒れていた。だが俺を驚かせたのはそこではなく、そのイラストにいるノーネームに勝利したと思われる者だ。

 地球儀を思わせる金色の肩パーツと胸パーツ、赤・青・金で禍々しく彩られたアーマー、そして頭部には口を開け牙を剥くコブラを思わせるマスクに正座早見表のようなものが付いていた。仮面ライダーファンである俺には、それが何か理解した。

 

 

 

 

「仮面ライダー────エボル?!」

 

 

 

 

 仮面ライダービルドにおいて、火星を滅ぼしたとされる最強最悪の生命体エボルトが変身するダークライダーエボル。その姿がはっきりと描かれていた。

 

 

「なんで問題児たちの世界に、仮面ライダーエボルが………」

 

「わからない。ただこの世界に異常が起きていることは確かよ。他にもレティシアの奪還失敗、ペストとのギフトゲームの敗北………どれも本来とは異なる内容になっているの」

 

「そして事実と異なる出来事が起きているところには、必ず仮面ライダーの力が関わっているの」

 

「仮面ライダーの………力が………」

 

「そう。本来なら私達のような神様が歴史を元に戻すのだけど………今回ばかりはそれができなかった、いえ、もはや私達では手に負えないぐらい、エボルトが強くなりすぎてたのよ」

 

「なんで?エボルトは確かに強いけど、普通に考えたら十六夜達でも十分、というか十六夜1人で潰せる程度のはずだよ?それに母さんや姉さんみたいな神様なら尚更できる気がするんだけど」

 

「えぇ、これはあくまで予測だけど、エボルトという存在に箱庭のルールが適用されて神性が付与されたか、もしくはエボルトが憑依した存在が神性を持つ強大な存在だったかの二つが考えられるわ。どちらにせよそうなったあいつはもう生命体じゃない

 

 

 

 一種の破壊神に匹敵するわ」

 

 

 破壊神・・・それは、神の世界において最も力のある存在。そのように表現されるほど、神性が付与されたエボルの力は強力だと二人は言う。

 だが二人は、一つだけ方法があるとつづけた。

 

 

「………………大きな賭けになるけど、一つだけ方法があるわ」

 

「大きな賭け?………その方法って」

 

「目には目を、仮面ライダーには仮面ライダーを。つまり、こっちも仮面ライダーの力を使うの。けど、相手はエボルだけじゃない。他にも何人もいる。つまり、私と瑞樹が変身できるようになったとしてもたったの三人、相手には到底かなわない。ならばどうするか」

 

「……………まさか、原作のキャラを?」

 

「そう。問題児たちの世界に存在する原作のキャラ・・・すなわち逆廻十六夜、久遠飛鳥、春日部耀たちノーネームの人たちにも仮面ライダーの力を使わせるの。でも、彼ら全員が変身できるかはわからない。もしかしたら誰も変身できないかもしれないし、最悪変身時の副作用で支障をきたす可能性だってある。そうなったら、歴史は更に最悪な方向へ進むかもしれない」

 

「それが………大きな賭け………」

 

 

かなり大きな賭けだと思う。もし全員が仮面ライダーに変身できるのであれば、それはノーネームをさらに強くし、その上歴史の改変を防ぐ大きな手助けにもなる。だが、全員変身することができなかったのなら、歴史の改変を食い止めるのはおろか、最悪ノーネームそのものがさらに悪い方向へ向かう可能性だってある。

 この賭け、乗るべきかどうか………俺は悩んだ。悩みに悩んだとき、ふと俺は問題児たちの表紙に映る青年、逆廻十六夜を見つめた。その顔はまるで、『悩んでいる暇があるならさっさと行動しろ』とでも言っているように感じた。俺はクスッと笑った。

 

 

「創真?」

 

「ごめんごめん。あのさ………前に、転生先は何でもいいって言ってくれてたの、覚えてる?」

 

「え、えぇ。覚えてるけど」

 

「じゃあそれ、この世界にして。僕が直接行って、十六夜達の適性を確かめてくるよ」

 

「適性を確かめる………って、どうやって?」

 

「これだよ」

 

 

 俺が取り出したのは、バグルドライバーⅡだ。が、それは見た目だけ。実はこれにはある機能を追加していた。

 

 

「これはバグルドライバーⅡを改造した、バグルドライバーⅢってところかな。これを使えば、相手の情報が読み取れるようになっているんだ」

 

「触れた相手の情報………てことは!」

 

「そ、適正仮面ライダーを見つけることだって可能なはず。これを使って、適任者を捜してみるよ」

 

「す………」

 

「す?」

 

「「すっごーーーーい!創真すごいよ!」」

 

 

 いきなり二人に抱きつかれ、俺は後ろへ吹っ飛んだ。二人の顔には笑顔があった。

 

 

「さっすが創真!あたしの弟だね!」

 

「さすがは私の息子!お母さん嬉しいわ!」

 

「わ、わかったから!とりあえず落ち着いて」

 

 

 これも百年間の間に起った変化なのだが、最近母さんと姉さんの俺大好き愛が凄まじいことになった。最初のころはかなり気まずかったのに、気が付けばふたりとも俺をみるなり抱き着くことが多発した。嬉しいよ。嬉しいけど、二人とも神様だからか威力が半端ない。もし俺が人間のままだったら、間違いなく体が上下にもげてたと思う。

 

 

「ふぅ………よし。それじゃ確認しよう。まず、問題児たちの世界に仮面ライダーエボルを筆頭にダークライダーを含む多数の仮面ライダーが存在している。そしてそいつらによってノーネームは最悪なバッドエンドを迎えている。それを防ぐために俺がまず黒ウサギの手紙に呼ばれた、という形で箱庭に転生し、ノーネームに所属する。そしてノーネームの中から仮面ライダーの適合者を見つけ、仮面ライダーの力を渡す。後はシナリオに沿って可能な限り歴史の改変を食い止めつつ、犯人をとっ捕まえる。こんな感じでいいかな」

 

「オッケー。一応あたしもこのことを全神話の主神達に伝えしだい箱庭に行くから」

 

「わかった。母さんは?」

 

「私は箱庭世界に存在する私達のコミュニティ“ユグドラシル”に行って、ノーネームと同盟を結べるよう手配しておくわ。私達のコミュニティは2桁だから、ノーネームより行動範囲は広い筈だし、情報とかも手に入りやすくなるはずよ。一応そっちが終わりしだい、私も創真のところに向かうわ」

 

「ありがとう、母さん。あと、今さらりとすごいこと言ってなかった?」

 

 

2桁のコミュニティって相当凄いぞ。いや、神様が所属しているぐらいだから当然なのか?・・・まぁ、いいや。

 

 

「それじゃ、今から箱庭へのゲートを開くわ。そこを通ったら、十六夜達と同じパラシュート無しのスカイダイビングが始まるから気をつけてね。あと、貴方にも手紙がきていることが前提になってるから、そこは彼らに合わせてね」

 

「わかってる。それじゃ、また後で会おう」

 

 

そう言って、俺は母さんの作った空間転移のゲートを通った。その瞬間、俺は空中に飛び出し、そのまま落下した。下には大地、地平線の先には世界の端のようなものが見える。そして、周りにはシナリオ通り彼らが落下していた。

 

 

「わっ⁈」

 

「きゃっ⁉︎」

 

『お嬢おおおぉぉぉぉぉぉぉおおおお⁈⁈』

 

「ヤハハハハハハハハハ、アハハハハハハハハ、ハハハハハハハハ!」

 

「箱庭………心が躍るなぁ!」

 

 

こうして、俺は箱庭に転生した。




作っているときに思ったのですが

キャラの会話って、誰がどの台詞を言ってるのか明記したほうがいいでしょうか?

感想などでどっちがいいか書いてくださると大変助かります。

以上二話でした。


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YES!ウサギが呼びました‼︎
問題児、箱庭に召喚される


前回のあらすじ

クロノスになって百年後、転生先を考えていた創真は問題児世界での異変を知る。歴史の改変を防ぐべく、創真は箱庭にパラシュート無しのスカイダイビングをした。

以上



それでは三話目です、どうぞ
*今回試験も兼ねて、会話の最初に誰の言葉かを明記しています。


問題児たちの世界で起きた歴史の改変を防ぐべく転生した俺は、上空4,000メートルからのパラシュート無しスカイダイビングを体験していた。周りにはヘッドホンを付けた金髪の学生、お嬢様感半端ない少女、そして猫にしがみつかれている物静かそうな少女がいた。

一応落下先には湖があるので怪我をすることはまずないだろうが、やっぱり濡れるのは嫌なので、俺はビルドドライバーをセットし、ボトルをセットしてレバーを回した。

 

 

TAKA!GATLING!BEST MUCH‼︎Are you Ready?】

 

創「変身!」

 

大空の暴れん坊ホークガトリング!イェーイ!】

 

 

ホークガトリングに変身した俺はタカボトルの能力で空を飛び、落下する三人を脇に抱え、猫を頭に乗せて着地した。全員が無事なのを確認してからボトルを抜いて変身を解除する。すると、学生服の青年が興味深そうにこちらを見ていたのに気がついたが、あえてスルーした。

着地してから数分後、第一声をあげたのはお嬢様風の少女だった。

 

 

?「し、信じられないわ!まさか問答無用でひきずりこんだ挙句に空中に放り出すなんて!」

 

?「右に同じくだクソッタレ。場合によってはゲームオーバーコースだぜ。これならまだ石の中に呼び出された方がマシだ」

 

?「いや、石の中に呼び出されたら動けないでしょう?」

 

?「俺は大丈夫だ」

 

?「そう、身勝手ね」

 

?「此処………何処だろう?」

 

?「さぁな。さっき世界の果てっぽいのが見えたし、さしずめどっかの大亀の背中とかじゃねえか?」

 

 

俺の記憶が正しければこの三人(俺を含めると四人)は初対面のはずだ。なのに此処まで自然と会話できるのが、彼らのすごいところだと思う。

 

 

?「んで………一つ確認しておくが、もしかしてお前らのところにもあの変な手紙が?」

 

飛「そうだけど………まずお前って言い方を訂正して。私は久遠飛鳥。飛鳥でいいわ。そこで猫を抱えてるあなたは?」

 

耀「春日部耀。以下同文」

 

飛「そう、よろしくね春日部さん。それで、そこにいる野蛮で凶暴そうなあなたは?」

 

十「高圧的な自己紹介をどーもありがとよ。見たまんま野蛮で凶暴な逆廻十六夜です。粗野で乱暴で快楽主義と三拍子の揃ったダメ人間なので、用量と用法を守った上で、適切な態度で接してくれよな、お嬢さん?」

 

飛「あんたの取扱説明書があったら、読んであげなくもないわ」

 

十「ヤハハ、マジかよ。じゃあ今度作ってやるから覚悟しておけよな」

 

飛「それで………最後に、よくわからないベルトで姿を変えて私たちを助けてくれたあなたは?」

 

創「俺は仮野創真。さっき使ったのはビルドドライバーって言う特別な変身アイテムだよ。まぁ仕組みとか話し始めると日が暮れるだろうから、詳しくはまた今度ね」

 

飛「そうなの。よろしくね、仮野君」

 

 

ところで、と十六夜はわざとらしく辺りを見回した。

 

 

十「ところで、人を呼び出しておいて歓迎一つないのはどういうことだ?」

 

飛「たしかに。自分勝手な上に失礼ね」

 

創「一応これでも俺は神様のはずなんだけどなぁ………まだ認知度が低いのかなぁ」

 

耀「創真、神様なの?」

 

創「まぁ、二代目だけどね」

 

十「へぇ、何の二代目なんだ?」

 

 

俺が神様だと言った途端、三人はとても興味津々な顔(特に十六夜が)でこちらを見つめた。まぁ、言っても問題はないだろうし、俺が誰かわかったら木陰に隠れている彼女もすぐに姿を見せるだろうしな。

 

 

 

 

創「それじゃ改めて、俺は仮野創真。又の名を────二代目クロノス」

 

 

 

 

十「クロノス?クロノスと言えば二人いるが、お前が言ってるのはギリシャ神話のウラノスとガイアの間に生まれたティーターン十二神の末弟の方か?」

 

創「一応正解。といっても二代目になったのは100年前だし、そこまで知られてはいないと思う」

 

十「一応ってことは、時間神のクロノスとも関係があったりするのか?」

 

創「そうだね。それにしても十六夜、だっけ?結構神話に詳しいんだね」

 

十「前に神話関係の本を読み漁ったことがあるからな。ある程度の知識は持ってるぜ」

 

創「ふーん、そうなんだ。まぁ、君の質問には追々答えることにしよう」

 

 

話していると木陰から何かが飛び出た。バニースーツをきたうさ耳の青髪少女だ。少女はボルトも驚く速さで駆けつけ、世界大会があったら優勝間違いなしの完璧な土下座をしながら俺の前に現れた。

 

 

?「本当に申し訳ございませんでしたああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!!!!!!!」

 

創「ちょっ、落ち着いて!」

 

?「わざとやったわけではないのです!!黒ウサギの手紙に手違いがあったのか予定の場所から4,000メートルも上空に呼び出してしまった挙句、挨拶一つもなく木陰に隠れて一人コソコソ品定めなどという失礼極まりない行為をしていました!!!」

 

創「わかった、わかったから!」

 

 

閑話休題

 

 

創「落ち着いた?」

 

黒「イ………イエス………」

 

 

予想以上の過剰反応に戸惑った俺は、とりあえず黒ウサギを落ち着かせた。なんか100年前の姉さんと母さんみたいだな。

 

 

創「とりあえずさ、黒ウサギ………だっけ?俺たちが呼ばれた理由と、この世界のことについて出来る限り詳しく教えて」

 

黒「イ、イエス!了解したのですよ♪」

 

 

尻尾をフリフリしながら耳を真っ直ぐ立てて気を取り直す黒ウサギ。その姿に一瞬キュンとなってしまったのは秘密だ。

 

 

黒「それでは皆さん、ようこそ箱庭の世界へ♪今回我々はギフトを持ったみなさんに“ギフトゲーム”への参加資格をプレゼンするため召喚させていただきました♪」

 

「「「ギフトゲーム?」」」

 

黒「はい♪もうすでにお気づきかと思われますが、あなた方皆さんは普通の人間ではございません」

 

 

思い当たる節があるのか、三人は首を上下に動かした。

 

 

黒「その特異な力は様々な修羅神仏から、悪魔から、精霊から、星から与えられた恩恵でございます。『ギフトゲーム』はその恩恵を用いて競い合うためのゲーム。そしてこの箱庭の世界は強大な力をもつギフト保持者がオモシロオカシク生活できる為に造られたステージなのでございますよ♪」

 

飛「一ついいかしら。貴女の言う我々とは、貴女を含めた誰かなの?」

 

黒「YES!異世界から呼び出されたギフト保持者は箱庭で生活するにあたって数あるの中から1つの"コミュニティ"に必ず属していただきます」

 

十「嫌だ!」

 

黒「属していただきます!そして“ギフトゲーム”の勝者はゲームの“主催者”が提示した商品をゲットできるというとてもシンプルな構造になっています」

 

耀「……………主催者って誰?」

 

黒「様々ですね。暇をもて余した修羅神仏が人を試すための試練と称して開催されるゲームもあれば、コミュニティの力を誇示するために独自で開催するゲームもございます。前者の特徴はハイリスクハイリターン、後者はそうではない場合が多いですね。一部例外も有りますが」

 

耀「そのリスクとリターンって、例えばどんなの?」

 

黒「リスクはゲームの難易度によっては命を落とすことと、こちらの賭けたものが奪われることですね。リターンは相手が掲示したものを手に入れられることですね」

 

飛「そのチップって何を賭ければいいのかしら?」

 

黒「それも様々です。金品・土地・名誉・権利・人間………そしてギフトをかけることもできます。簡単に言えば、お互いが納得するものであれば何でも構いません」

 

耀「ゲームはいつ始められるの?」

 

黒「コミュニティ同士のゲームを除けば期日内に登録してもらえばOKです。商店街や露店では飛び入り可能なゲームが開かれていることもありますよ。さて、以上で箱庭に関する説明は終わりますが、黒ウサギに何か質問はございますでしょうか?どんなことでも構いませんよ」

 

十「じゃあ俺から質問だ」

 

黒「はい。ゲームですか?ルールですか?」

 

十「いや、違う。そんなことはどうでもいい。俺から聞きたいのはたった一つだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この世界は………面白いか?」

 

黒「………YES♪黒ウサギは箱庭の世界は外界よりも面白いと保証しますよ♪」

 

 

十六夜の質問に黒ウサギは笑顔で答える。そして唯一質問していない俺の方を見た。

 

 

黒「ところで、クロノス様……あぁ、いや、創真さんは質問などよろしいのですか?」

 

創「俺?うーん………」

 

 

こんなこと言ってはいけないのだろうが、俺は黒ウサギの所属するコミュニティの現状をすでに把握している。黒ウサギ自身は隠せているように思ってるだろうが、少なくとも十六夜は気づいているだろう。だがここで黒ウサギにそのことを聞いてしまうのは些か可哀想だ。あ、そうだ。

 

 

創「じゃあさ、黒ウサギ。ずっと気になってたんだけどさ………なんでバニースーツなの?そういう趣味なの?」

 

黒「断じて違います‼︎黒ウサギとてこのようなふざけた格好をしたくてしているわけではございません‼︎」

 

創「じゃあなんで着てるの?」

 

黒「黒ウサギが世話になっている方に渡された水着やらレースクイーンやら巫女服やら訳の分からない服の中で露出度がマシだったのがこれしかなかったのです!」

 

創「何その人、相当変態だよね」

 

十「へぇ、そいつわかってるじゃねえか」

 

創「共感しちゃうんだ」

 

十「おい、黒ウサギ。今度それ全部着ろよ。写真に撮ってやるから」

 

黒「絶対嫌です!」

 

創「アハハ……………」

 

 

正直なところ、黒ウサギの巫女服姿を見てみたいという思いがあったのはここだけの話。

 

 




いかがでしたか?

多分次回、創真くんが神様の片鱗を見せると思います。
それではまた。


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クロノス、人虎と邂逅す

前回のあらすじ

上空4,000メートルスカイダイビングを体験した問題児達と創真。創真がクロノスだと知った黒ウサギは謝罪する。その後箱庭の説明を受ける。

以上



ーある日の作者

「さて、UAどうなってるかな。600あったら嬉しいけど」

UA:1019

「Σ(゚Д゚;)・・・」

読んでくださった方、本当にありがとうございます!




今回、あの紳士(笑)が登場します。それと今回創真君が神の片鱗を見せると前回書きましたが、内容の都合上次回になりました。申し訳ありません!
それではどうぞ。


黒「ジン坊ちゃーん!新しい方を連れてきましたよー!」

 

ジ「お帰り、黒ウサギ。そちらの三人が?」

 

黒「はいな、こちらの御四方が──────」

 

 

 クルリと振り返る黒ウサギ。カチンと固まる黒ウサギ。

 

 

黒「あ、あれー?もう一人いませんでしたっけ?ちょっと目つきが悪くて、かなり口が悪くて、全身から“俺問題児”ってオーラを放っている殿方が」

 

飛「十六夜君のこと?彼ならさっき『ちょっと世界の果てを見てくるぜ』ってあっちに駆け出して行ったわ」

 

黒「はい⁈な、なんで止めてくれなかったのですか⁈」

 

飛「『止めてくれるなよ』って言われたもの」

 

黒「ならどうして黒ウサギに教えてくださらなかったのですか⁈」

 

耀「『黒ウサギには言うなよ』と言われたから」

 

黒「嘘です、絶対嘘です!本当はただ言うのが面倒くさかっただけでしょうお二人さん!」

 

飛・耀「「うん」」

 

 

 ガクリと前のめりに倒れる黒ウサギ。これから彼女が苦労することを知っている創真は慰めるように頭を撫でた。

 それと同時に、ジンという少年は顔を蒼白にして叫んだ。

 

 

ジ「た、大変です!“世界の果て”にはギフトゲームのために野放しにされている幻獣が!」

 

飛「幻獣?」

 

ジ「は、はい。幻獣とはギフトを持った獣のことで、特に“世界の果て”付近には強力なギフトを持ったものがいます。人間じゃ太刀打ちできません!」

 

飛「あら、それは残念。もう彼はゲームオーバー?」

 

耀「ゲーム参加前にゲームオーバー?……………斬新?」

 

ジ「冗談を言っている場合ではありません!」

 

 

 ジンは必死に事の重大さを訴えるが、二人は叱られても肩をすくめるだけ。

 黒ウサギはため息を吐きつつ、立ち上がった。

 

 

黒「はぁ……………ジン坊ちゃん。申し訳ありませんが、こちらの御三方様の案内をお願いします。黒ウサギは問題児様を連れ戻して参ります。事のついでに──────“箱庭の貴族”と謳われるこの黒ウサギを馬鹿にしたこと、骨の髄まで後悔させてやります!」

 

 

 いうや否や、青かった髪を桜色に染め、凄まじい爆風を起こして黒ウサギは十六夜が向かった方へ駆け出した。

 

 

飛「箱庭のウサギって随分速く飛べるのね」

 

ジ「ウサギは箱庭の創始者の眷属。力もそうですが、所持するギフトも多いので、彼女なら余程の幻獣でない限り大丈夫だとは思いますが………」

 

 

 そう、と空返事をする飛鳥。そして心配そうにするジンに振り向くと、

 

 

飛「とりあえず中に入りましょうか。貴方がエスコートしてくれるのよね?」

 

ジ「え、あ、はい。コミュニティのリーダーをしているジン=ラッセルです」

 

飛「私は久遠飛鳥。こっちで猫を抱えているのが」

 

耀「春日部耀。こっちで空気になってるのが」

 

創「仮野創真だ、ってその説明地味に傷つくからやめて」

 

 

 軽く耀が創真をいじった後、四人が箱庭の外門をくぐると、眩しい光とともににぎやかな街の光景が広がった。

 

 

三『お、お嬢!外から天幕の中に入ったはずなのに、御天道様が見えとるで!』

 

耀「本当だ、外から見たときは箱庭の内側なんて見えなかったのに」

 

創「天幕に不可視のギフトとかが作用してるんじゃないか?吸血鬼みたいな太陽の光を直接受けることができない種族のためにフィルターみたいな役割を果たしてるとか」

 

ジ「よく分かりましたね創真さん。その通りですよ。箱庭の天幕は内側に入ると不可視になるんですよ。それと同時に、太陽の光を受けることができない種族のためにあの天幕は設置されているんです。創真さんの言う、吸血鬼とかが一番の例ですね」

 

飛「……………。そう」

 

 

 ジンの言葉に複雑そうな顔をする飛鳥。吸血鬼と同じ町に住むことができるとは思えない、といったところだろう。

 しばらく街を見回った後、四人は近くにあった“六本傷”の旗を掲げるカフェテラスで軽い食事をとることにした。

 注文を取るために猫耳の店員が飛び出てきた。

 

 

店「いらっしゃいませー。ご注文はどうしますか?」

 

飛「えーと、紅茶を二つと緑茶を一つ。あと軽食にコレとコレと、創真君は?」

 

創「アイスコーヒーを一つ、ブラックで。あと」

 

三『ネコマンマを!』

 

創「だそうです」

 

店「はいはーい。ティーセット四つに、ネコマンマですね」

 

 

 ……………ん?と飛鳥とジンは不可解そうに首を傾げる。しかしそれ以上に驚いていたのは春日部耀だった。

 

 

耀「二人とも三毛猫の言葉分かるの?」

 

店「そりゃ分かりますよー、猫族ですから」

 

創「雰囲気からなんとなく予想しただけだよ」

 

三『ねーちゃん可愛い鍵尻尾してはんなー。今度機会があったら甘噛みしに行くわ~』

 

店「やだもーお客さんったら、御上手なんだから」

 

 

 尻尾をフリフリしながら、猫耳娘は店内に戻る。

 その後姿を見た耀は嬉しそうに三毛猫を撫でた。

 

 

耀「……………箱庭ってすごいね。私以外に三毛猫の言葉がわかる人がいたよ」

 

三『来てよかったなお嬢』

 

飛「ちょっと待って。貴方もしかして猫と会話できるの?」

 

 

 珍しく動揺した声の飛鳥に、耀は静かにコクリとうなずいた。ジンも興味深く質問を続けた。

 

 

ジ「もしかして、猫以外にも意思疎通は可能ですか?」

 

耀「うん、生きているなら誰とでも会話できる」

 

飛「それは素敵ね。じゃあそこで飛び交っている野鳥とも会話が?」

 

耀「うん、きっと出来……………る?ええと、鳥で話したことがあるのは雀や鷺や不如帰ぐらいだけど……………ペンギンがいけたからきっとだいじょ」

 

ジ・飛「「ペンギン⁈」」

 

耀「う、うん。水族館で知り合った。他にもイルカ達とも友達」

 

創「へぇ、結構幅広いんだな。じゃあ()()()は?」

 

?『~~~~~~♪~~~~♪♪』

 

 

 創真が指を強く鳴らすと、どこからともなく青い小さなドラゴンのような何かが飛んできた。

 緑色の瞳で、身体の左側にはボタンのようなものが四つあり、内一つだけ赤く他は青い。背中には何かがはまりそうな穴がある。ものすごく機械っぽい姿だ。

 

 

耀「ちょっと待って、やってみる…………」

 

?『~~~~♪~~~~~~♪♪♪~~~♪♪』

 

耀「えっと、うん、初めまして」

 

?『~~~♪♪♪~~~~~♪♪~~♪♪♪♪』

 

耀「そんな名前なんだ。私は春日部耀」

 

?『~~~~~~♪♪~~~~~~♪♪♪』

 

耀「・・・・・・・えっ?本当なの?」

 

?『~~~♪~~♪♪♪~~~♪♪~~~~♪♪♪♪~~~~~♪♪♪~~~~♪♪~~♪~~~♪♪』

 

耀「そうなんだ。それは凄いね」

 

?『~~~~♪♪♪♪~~~~♪♪~~~♪♪♪』

 

耀「うん、よろしくね」

 

 

 どうやら会話できたらしい。飛鳥とジンの二人はもちろん、創真でさえ雰囲気からなんとなく予想はできたものの、実際には何を言っているのか全く分からなかったようだが。

 

 

創「なんて言ってた?」

 

耀「えっと、まず『はじめまして、こんにちは』って」

 

飛「あら、礼儀正しいのね」

 

耀「うん。それで次に『僕はクローズドラゴンって言います』」

 

ジ「クローズドラゴン…………ということは、ドラゴンなんですか?」

 

耀「多分。それから『ちなみに僕、創真さんに作られた機械なんです』に『創真さんのおかげで、見た目と構造が機械の一個体の生物として自我を持てるようになったんです』って」

 

飛・ジ「「作られた?」」

 

 

 飛鳥、ジン、耀の周りをグルグル回るクローズドラゴンと創真を見比べる二人。

 確かにクローズドラゴンは機械と言われてもおかしくない姿をしている。しかし、その動きはとても機械とは思えないほどしなやかだ。そのうえ耀が会話できたということから完全に生物だと思っていた二人は、呆気にとられた表情をした。

 

 

ジ「…………す、すごいです!今まで様々な創造系のギフトを見てきましたが、ここまで生物らしい動きをするものは初めて見ました!」

 

創「そうなんだ」

 

ジ「はい!春日部さんも素晴らしいですが、創真さんのギフトも凄いです!」

 

飛「そうね………二人とも、素敵な力や物を持ってるのね。羨ましいわ」

 

 

 彼女らしくない表情で二人に笑いかける飛鳥に、耀は困ったように頭を掻き、創真は心配そうに彼女を見つめた。

 

 

耀「久遠さんは」

 

飛「飛鳥でいいわ。よろしくね春日部さん」

 

耀「う、うん。飛鳥はどんな力を持っているの?」

 

飛「私?私の力は………………まぁ、ひどいものよ、だって」

 

ク『~~~~~!!』

 

 

 急にクローズドラゴンが警戒心を高めて威嚇を始める。何事かと思っているところに、

 

 

?「おんやぁ?誰かと思えば東区画の最底辺コミュ“名無しの権兵衛”のリーダー、ジン君じゃないですか」

 

 

 品のない上品ぶった声とともに、ピチピチのタキシードを着た巨体の変な男が現れた。




以上四話でした。

尚あらすじにも書いていますが、ついに問題児全巻手に入れました!
一度読み込んでから投稿したいと思っていますので、しばらく投稿が遅れます。
気長に待っていただけると嬉しいです。





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人虎、暴露される

前回のあらすじ

KYの人虎現る

以上!


長らくお待たせしました!また再開します!
今回、創真君の凄さがわかる………かも

それでは、どうぞ。

※会話の見やすさを優先し、今回は会話冒頭に名前を書いてません。


「おんやぁ?誰かと思えば東区画の最底辺コミュ“名無しの権兵衛”のリーダー、ジン君じゃないですか」

 

「………一体何の用ですか、“フォレス・ガロ”のガルド=ガスパー」

 

「黙れ、この名無し風情が。コミュニティの誇りのである名と旗を奪われて、それでも未練がましく異世界から新しい同士を呼びやがって」

 

「何だと………⁈」

 

 

 ガルドというピチピチタキシードは、四人が座るテーブルの空席に勢いよく腰を下ろした。するとジンとガルドの間に座っていた創真が、彼に手を差し出した。

 

 

「二人がどういう関係なのかは知らない。だがこういう場で同席を求めるなら、まず氏名を名乗るのが礼儀だと思うが?仮野創真だ、よろしく」

 

「そうね、それと何かしら一言添えるべきではなくて?久遠飛鳥よ」

 

「…………………春日部耀」

 

「おっと、これは失礼しました」

 

 

 愛想笑いをしながら、ガルドは大きな手で創真と握手した。

 

 

 

「私はガルド=ガスパー、箱庭上層に陣取るコミュニティ“六百六十六の獣”の傘下である」

 

「烏合の衆の」

 

「コミュニティ【フォレス・ガロ】のリーダーをしている、って待てやゴラァ‼誰が烏合の衆だ小僧オォ‼」

 

 

 ジンに横槍を入れられたガルドの顔が怒鳴り声と共に激変する。心なしかクローズドラゴンは“ざまぁみろ”と笑っているように体を震わせている。ちなみに“烏合の衆”とは、“規律も統一もなく寄り集まった群衆”という意味。テストには多分でないが、覚えておいて損は無いぞ。

 

 

「口慎めや小僧ォ……………紳士で通っている俺にも聞き逃せねえ言葉はあるんだぜ…………?」

 

「森の守護者だったころの貴方なら相応に礼儀で返していたでしょうが、今の貴方はこの二一〇五三八〇外門付近を荒らす獣にしか見えません」

 

「ハッ、そういう貴様は過去の栄華に縋る亡霊と変わらんだろうがッ。自分のコミュニティがどういう状況に置かれてんのか理解できてんのかい?」

 

「ハイ、ちょっとストップ」

 

 

 険悪な二人を遮るように手を挙げたのは飛鳥だった。

 

 

「事情はよく分からないけど、貴方達二人の仲が悪いことは承知したわ。それを踏まえた上で質問したいのだけど──────ジン君。ガルドさんが指摘している、私達のコミュニティが置かれている状況、説明していただける?」

 

「そ、それは」

 

()()()()()………名を奪われたコミュニティ、だろ?」

 

「ッ⁈…………」

 

 

 創真の言葉にジンは驚き、青ざめる。それに追い打ちをかけるように創真は続ける。

 

 

「箱庭において、コミュニティが活動するには“名”と“旗印”を申告する必要がある。特に旗印はコミュニティの縄張りを主張するのに必要な物だ。例えば、ガルドさんのタキシードに刻まれた旗印だが、それと同じ紋がそこら辺の商店とかにあるのが見えるか?」

 

「えぇ、見えるわ。ということは、この近辺はガルドさんのコミュニティが支配していると考えていいのね?」

 

「そういうこと。さて、ここで二人に質問だ。ギフトゲームとは何だった?」

 

「確か、『ギフトという特異な力を与えられた者達だけが参加できるゲーム』だったかしら?」

 

「その通り。そしてギフトゲームで勝利すればどうなるんだった?」

 

「『主催者(ホスト)側が賭けた賞品を手に入れることができる』だったはず」

 

「正解。それじゃあ最後の質問だ。このギフトゲームだが、場合によっては参加するのにチップが必要なこともある。そのチップについて、黒ウサギはなんて言ってた?」

 

「『お互いが納得するものであれば何でも』………あ」

 

 

 何かに気付いたように飛鳥が声を出す。耀も気付いたのか、真剣な表情に変わる。

 

 

「気付いたか…………そう、()()()いいんだよ。たとえそれが()()()()であってもな」

 

「ギフトゲームに負けて、名前と旗印が奪われたコミュニティ…………だから、【ノーネーム(名無し)】」

 

「だろうな。ガルドさんが栄華がどうとか言ってたから、奪われる前は相当すごかったんだろうけど」

 

「なるほどね。でも、創真君の説明だと一つ疑問が残るわ。確かに黒ウサギは、チップは何でもいいと言った。けれど同時に()()()()()()()()()()()()()()とも言ったわ。旗印はコミュニティにとって命そのもの、そう易々と賭けれるものとは到底思えないのだけど?」

 

()()のギフトゲームならな。けど、()()がある。ジン君がリーダーをしているコミュニティは、その()()によってノーネームになってしまった。そうだよな、ガルドさん?」

 

 

 確認するようにガルドを見た創真。するとガルドは、ハッハッハと笑いながら拍手した。

 

 

「いやはや、お見事。箱庭を初めて訪れた人とは思えない完璧な考察でした。確かに創真さんの言う通り、ジン君がリーダーをしているコミュニティは、数年前まではこの東区画最大手のコミュニティでした。何でもギフトゲームにおける戦績で人類最高の記録を持っていたとのことです。しかし、これもあなたの考察通りですが、彼のコミュニティは箱庭における例外、すなわちこの箱庭最悪の天災に目を付けられ、たった一夜で滅ぼされたのです」

 

「……………それが()()、箱庭の唯一最大にして最悪の天災、ってやつか」

 

「なんと!魔王についてまで理解しておられたとは!()()()()()()()()()()()()

 

 

 ガルドが質問した途端、創真はニヤリと笑った。この時ガルドは気付いてなかった。自分で自分を追い詰めてしまったことを。

 創真が懐から、バグルドライバーⅢを全員が見えるように取り出した。

 

 

「これは俺が作った(正確には母さんと姉さんが作ってくれたのを改造した)特殊な道具、いやギフトだ。こいつは俺の体とリンクしていてな、ある条件を満たすことで相手の記憶を読み取り、このギフトで自由に閲覧できる機能が付いている。さっき俺が魔王とかノーネームとかについて知っていたのは、これで黒ウサギの記憶を読み取って見ただけにすぎない」

 

「ふぅん、道理で色々知らない単語が出てくると思ったら、そういうカラクリだったのね」

 

「その、ある条件って?」

 

「簡単だよ。記憶を閲覧したい相手の体のどこかに()()()()()()。頭をなでるとか、()()()()()()な」

 

「ッ⁈」

 

「やっと爆弾発言したのに気付いたか、()()()()

 

 

 しまった、とガルドは後悔した。まさか自分がした質問が、自分の墓穴を掘ってしまうことになるとは思いもしなかった。創真の顔を見ると、まるで『俺がいつお前の味方だと言ったよ』とでも言っているようなニヤつきだった。

 

 

「相手のコミュニティの女子供を攫って脅迫して?ゲームに乗らざるを得ない状況にして?自分の下で従順に働かせるために各コミュニティの子供を数人ずつ人質に取って?更にはその子供の鳴き声がうるさくて殺した上に?証拠が残らないよう部下に食わせる?なぁお二人さん、そんなクソ外道コミュニティどう思う?入りたいか?」

 

「そうね、ある意味素晴らしいわ。そこまで絵に描いたような外道とはそうそう出会えないもの。流石は人外魔境の箱庭の世界といったところかしら?死んでも入りたくないわ」

 

「絶対嫌」

 

「だろうな。でだ、そんなコミュニティのリーダーしているこのアホが堂々と俺たちを引き込みに来た。笑えるね、自分のこと棚に上げて話さないからずっと不思議に思ってたんだ。()()()()()()()()()()()()、ってな。記憶を読み取っておいて正解だったよ、クソ外道。質問したのが仇となったな」

 

「クッ………」

 

 

まぁ、本当は小説読んで知ってるから閲覧する必要はなかったんだけど、実際に見た方が説明する時現実性が増すしね。そう思いながら、創真は自身のバグルドライバーを見つめた。

実は創真が転生する前からこのバグルドライバーを改造していたのには理由があった。それは、『自身が転生者であるが故に情報を持っている』ということをカモフラージュするためだ。どんなに知識があったとしても、この道具を使って知ったということにすれば大体は済むと考えた。この世界ではほぼ無意味に等しいだろうが………

 

 

「(まぁ、無いよりかはマシだな。本当、作っておいて正解だった)さぁ、お前の手の内は全てバラした。これでお前のコミュニティは破滅しか無くなるだろうな。さて、どうする?」

 

「こ………この糞ガキがァァァァァァァァ‼︎」

 

 

プライドをズタズタにされ、怒り狂ったガルドが雄叫びと共に姿を獰猛な人型の猛獣に変貌する。しかし創真は一切動揺せず、ガルドを見て笑った。

 

 

「何笑ってやがる!テメェ、誰に喧嘩売ってんのか分かってんのかァ⁈箱庭第六六六外門を守る魔王が俺の後見人だぞ‼︎その俺に喧嘩を売ってタダで済むと」

 

「へぇ、三桁のコミュニティに属する魔王が後見人か。なるほど、お前の自信の根元は理解した。確かにそれはすごい。けどな、そういうお前こそ分かってるのか?お前の目の前にいるの、二桁のコミュニティ【()()()()()()】が後見人の神様だぜ?」

 

「なっ⁈……………」

 

 

創真の口から出たカミングアウトに、ガルドは言葉を失い固まる。

同様にジンも驚き、目を丸くした。もしかしたら、僕達は今とんでもない大物をコミュニティに誘おうとしていたのかもしれない。

 

 

「さて、と。俺はお前のその絶望に満ちた顔を見れたからスッキリしたが……飛鳥はどうだ?」

 

「まだ物足りないわ。創真君、私はね、こういうコミュニティがただ破滅する程度では満足できないの。特にガルドさん?貴方のような外道はズタボロになって己の罪を後悔しながら罰せられるべきよ。春日部さんは?」

 

「私も同じ気持ち」

 

『〜〜〜〜〜‼︎〜〜〜〜〜〜‼︎』

 

「この子も『ボコボコのズタズタにしてやらないと気が済まない』って」

 

「成る程。ジン君はどうだ?」

 

「ぼ、僕も皆さんに同意です」

 

「よし、満場一致という訳で、俺から良い提案がある。どうするかはガルド、お前が決めな」

 

 

創真は立ち上がり、バグルドライバーの二つの突起物がある方をガルドの目の前に突き付けた。

 

 

「なぁに、簡単な話だ。俺たち四人とお前とで“ギフトゲーム”をする。【フォレス・ガロ】の存続と【ノーネーム】の誇りと魂を賭けてな。どうだ?悪くないとは思うが」

 

「クッ…………良いだろう。ただしゲームの主催は俺がさせてもらう。開催は明日だ、文句は言わせんぞハゲ猿ども」

 

「いいわ。むしろその方がやり甲斐があるってものよ」

 

 

絶対に殺してやる、ガルドはそう吐き捨て、その場を去った。




久し振りに投稿しましたが、いかがでしたでしょうか?

今回これを投稿するにあたり、ストーリーの内容をいくつか改変してみました。前回よりは話の辻褄が合ってると思います。

なお、現在プロットを作成しながら投稿していますので、投稿頻度は前よりもかなり少なくなります。

話は変わりますが、現在東方亜人伝のプロットを作成中です。そちらの方も出来る限り早く投稿できるよう頑張ります。

それでは、また


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