青い雑音 (菊川 数時)
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忘れ去られた手紙より。

警告: HMCLおよびO5による承認が必要
貴方がアクセスを試みているファイルはレベル4/2000クリアランスを持つ人員にのみアクセスが許可されています。このクリアランスは通常のレベル4セキュリティプロトコルに含まれません。
必要なクリアランス無しにこれ以上のアクセスを試みることは財団による雇用の終了、全ての教育上、医療上、退職後、あるいは死亡時の福利厚生を取り消す根拠となります。資格認証のため、貴方はこれをもって既知の情報災害的画像に暴露される事に同意することとなり、貴方が画像に対する予防措置を受けていることを確認します。認証されていないアクセスの場合、このコンソールは操作不能になります。保安要員が派遣され、貴方を蘇生した後に尋問のため留置房へ護送することになります。財団のイントラネットに接続されていないいずれのコンピューターからこのファイルへアクセスを試みることも、クリアランスに関わらず即時終了をもたらすこととなります。

[ログイン資格を提示せよ: 要レベル4/2000クリアランス]


私達は何度同じことを繰り返しているのだろう?

 

 私達が0から始まり1へと至ったのはつい最近のこと。私達は1から次の2へと繋いでいかなければならない、自然界の進化の法則を崩してまでもそれを行うしかない。

 

 人類の命は短い、星より比べて明らかに短すぎる。しかし世界の真理へと。宇宙の果てへと。深海の奇跡へと。人は求め続ける。

 

 命が短い分、先の時代の者たちの遺した物を受け継いで行くのだ。命のバトンは今も続いている。

 

 

ーーーーバンッ。

 

 そんな音ともに急激に世界は滅んでいく。唐突になんの拍子もなく、文明は崩壊していく。

 

 地球は、狂気と、快楽と、暴力と、正義と、悪と、悲しみと、増悪と、混沌を、すべてかき混ぜたようにおかしくなって行った。

 

 人々の悲鳴と怒号、銃が乱射される音、木々と人が焼ける匂い、隣の人の腐っていく腐乱臭。そして世界の半分が無くなっている異常性。

 

 

 命の価値も、倫理の意味も、正義の存在も。どこにもない。

 

 

 

 

だから残しておく、いや残すべきなのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 『どれだね、選ぶのは?』

 

 どうしょうもなくなりベットの下に震えながら隠れていた俺を見つけた、兵士の人が聞いた。

 

 その人は腹部から血を垂れ流していた、助からない。そういう確信が自分にはあったんだ。

 

 いきなり隠れていたベットを破壊されたので俺はただ口をパクパクさせることしかできなかった。きっと俺はその時恐怖で情けない顔をしてないでいたのだろう。

 

 フッ、と彼が微笑む。少ししゃがみ込む俺の視点に合わせてくれた。そして指を二本突き出した。

 

『なぁ、少年。選択肢を2つ上げよう、この通り俺はもう直に死ぬ。だから君をどうこうしょうというわけではないんだ、ただ2つの中から選んでほしいんだ』

 

 彼は鬼気迫る声なのにどこか悲しそうに言った。

 

『これを君に託すのはどうかと思う、けど君にしか頼めない。この世界を《再起動》させるために。』

 

『………話が長くなってしまってはいけない。では選んでほしいんだ。一つ、《俺の頼み事を断って、命の限りここで隠れる》。そしてもう一つは……………。』

 

 

 

 

『《俺の代わりに世界を救ってほしい》だ。』

 

 

 最初俺は彼がイカれているのだと思った。だから笑ってやった、こんな救いない世界をどう救うって?誰も出来なかったことをどうやったら出来るんだ?色んな問題を抱えてたくせに他人行儀のように無視していた『人類(俺たち)』が、どうやって救われる?

 

『…………俺たちにはどうしょうもないほど救いようのない生き物だ。しかし、それでもどうしてもこの世界を、俺達が愛した世界を、バケモンになんかに、恐怖なんかに譲っちゃいけないんだ。』

 

 覚悟。彼の瞳には死にかけとは思えないほどの覚悟を感じた。

 

『だけど、俺は、もう駄目みたいなんだ。だから君に選んでほしいんだ、救うか。見捨てるか。』

 

 究極の選択、救えるもんなら救いたい。でも俺にはできない祈ることだって諦めてしまった、心はいつかに折れてしまった。枯れてしまったと思っていた涙が溢れる。

 

 それでも、あの人はこんな弱虫な俺の手を熱く優しく握りしめた。

 

『…………この選択肢は自由なんだ。君はまだ子どもだし、こんな重大なミッション背負う必要もない。断ってもいい、諦めてもいい。だから選んでほしいんだ。』

 

 

ーーーほんとに救える?

 

『すべて、もとに戻るとも。君が望んだ平穏な時間に』

 

ーーー俺にできるの?

 

『君しかいないんだ、きっともう人類は全滅しただろう君と俺を残して。』

 

ーーー俺は、弱いよ。きっと失敗する。

 

『弱くてもいいんだよ、失敗したっていいんだ、誰も君を責めない。すこし強い振りぐらいがいいんだ。ーーーそれに俺は信じているんだ、《人間の可能性》って奴を。』

 

 

 少しの沈黙、ふとタンスの上の家族の写真が目に写った。俺は立ち上がりそれを掴む、自然に思い出の海に浸かる。春の日、父と母と妹と俺とたんぽぽの生い茂る草原で母特製サンドイッチを頬張る。優しい春風とたんぽぽの青臭さが鮮明に思い出せる。

 

ーーー『Stand by me』

 

 父が好きだった曲、ずっと聞かされてきた俺が大好きなフレーズ。意味は『貴方の側に立つ』今でもこれを口ずさんで勇気を貰っている。

 

 妹のくれた最初の誕生日プレゼント、安っぽい百円時計。未だに時を刻んでくれている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーーやるよ。

 

『ありがとう。』

 

 

 

 

 どうやら世界を救うその手段はアメリカのイエローストーン国立公園というところにあるらしい、そこにあるとある施設を再起動させると長い時間は掛かるが文明を復興させることができる、その施設は人間を作り出すことができるらしい。

 

『人間ってのは案外簡単に作れるんだぜ』

 

 聞けば聞くほどオカルトじみている。いやこの場合SFチックと行ったところか、だから俺はこんな質問をしてみた。

 

『ほんとにそんな事できるのか?』

 

『なぜ、不可能だと?【前にも】やったんだぞ』

 

 

 それだけで俺は疑うのをやめた。すこし質問をし、旅の準備を始めた。一本道の旅だ、少しの食料と水と家族写真だけで良い。

 

 すると彼が俺に《武器》をくれた。それは機関銃、AKMとかなんとかとりあえず弾薬と爆薬とか。

 

 自分にはもう不必要だと、『英雄』の門出には十分なはずだと皮肉った。それでも彼は満足したようだった。

 

 

 去り際、倒れた彼の横を通り過ぎると。

 

 

 

 

 

『幸運を。死にゆく貴方に、敬礼を。』

 

 

 

 

それはオレが十二のときだった。

 

 

 そして、ここに至る。俺はここに来るのに五年は掛かった、色んなことやバケモンに襲われた。それでも俺は彼の言葉を希望にここまでやってきた。

 

今まで信じてきて、良かったと思ってる。

 

 しかし、どうやら簡単に事はすまないようだ。施設の制御室にバケモンが大量にいやがった。ここに来るまでに負った傷が今更になって開いてきやがった。

 

 

きっと、俺は、死ぬだろう。失敗するだろう。だからこれを残していこうと思う、今読んでるアンタにだ。

 

 きっとこれを読んでるアンタはオレより強い、だから、もし、オレが失敗したら。

 

 決心したら、隣にあるボックスから有りたっけの武器をもって、制御室に向かってほしい。

 

 

 アンタも死ぬだろう。

でも、世界がこんなんじゃ何してもいつかは死ぬだろう?だから問題ないわけだ。

 

 これが、アンタに見つかることを祈ってる。

 

オレは、俺はこれから制御室に向かう。

ただで死んでやるつもりはない、できるだけバケモンは始末しとくよ。次のために。

 

 

 アンタの成功を祈るよ。

 

 

そんなアンタに彼と同じ言葉を贈ろうと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  『幸運を。

    死にゆく貴方へ、

          敬礼を。』

 

 

 

 

 

           from·■■■■

           for·勇気ある貴方へ

 

 

 

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

 

 

 手紙は書き終えた、後はやりきるだけだ。

 

 好きな曲を口ずさみながら装備を整える、最後の晩餐はビスケット。

 

 ふとブーツの紐が解かれていたことに気づく、しゃがんでブーツを履き直す。

 

 決着を付けよう。誰からも忘れ去られる、この出来事を誰かに知ってほしいのが最後の心残りだが、でも覚えてなくてもいい。三回も間違いを起こしてしまったことなんて。ただ虚しいだけだ。

 

 これが最後の『再起動』だと信じて、銃を構えた。

 

「勇気を、ありがとう。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『…………SCP-2000《機械仕掛けの神》の起動コードを確認。…………、』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→

 

 

「……………、……………………。ハッ!?ここは!?」

 

 

 オレが次に気がついたのはどこかの路地裏だった。夜の帳が降りていたことから路地裏は薄暗かった。

 

「《再起動》、したのか?いやそんなわけがないな。再興には時間がかかるし、それに記憶が消されるのなら《機械仕掛けの神》について覚えてるわけないし、財団がそんなヘマをするわけがない。それに装備がそのままってのも可笑しいな」

 

 そうやってブツクサ独り言を言ってるとようやくそれに気づいた。

 

ーーー人の声だ。それも大勢の。

 

 

 それに気づけば行動は早い。旅をしたときより早く、速く、疾く路地裏を駆けていく。 

 

そして、路地裏の出口へと差し掛かった。

 

 

「………。………………、ぁああああ嗚呼ああ!!」

 

 

 それはいつか失った二十世紀の文明の光、日本の輝かしい繁華街の電灯とそれを行き交う人々があった。

 

 

 取り戻したのだ、彼は、彼らは。

 

 

 人の希望を、忘れ去られた記憶のなかで。

 

 

 人類の悲願を、《機械仕掛けの神》は再び果たしたのだ。

 

 

 

 

 

 

 少年、十七の8月13日の出来事だった。

 

 

 

 

しかし、彼はまだしらない。

 

この世界は『終わらない』ことを、戦いは始まったばかりだということに。

 

 十人の少年少女と目が廻るような青い夏の出来事を。

 

 

 

 

 

 

 

さあ、もう一度『救い』に行こう。この救いようない世界を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




《Re_boot》
①ブーツを履き直す。
②『再起動』する。




SCP_2000『機械仕掛けの神』
FortuneFavorsBold氏作
http://ja.scp-wiki.net/scp-2000


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要注意団体:メカクシ団 ①

主人公は基本名前は■■■■となります。
それと、彼は『旅の期間』で紅い鳥やイナミちゃんやリヴァイアサン、とにかくketerクラスとかと渡り合ってます。


8月14日

 

 クソッタレの下品な色をした青い空の下、久しぶりの太陽の光だが、時期が悪い。夏の都会なんてヒートアイランド現象のせいで一層に熱くなって、まるでコンクリートが鉄板の様でその上を歩く俺たちはまるでバーベキューの食材。

 

「畜生、こんなに暑いのは地球温暖化のせいだ。絶対政治家になって車の交通量絶対制限してやる。」

 

 暑さのせいで彼はトチ狂ったことを言ってるが、本気で言っているのがたちが悪い。

 

 さて、彼は何をしているのだと言うとデパートを目指して歩行中。装備はバックパックの中に入れ、田舎の少年がしてそうなTシャツと迷彩柄の長ズボンという何というかコミカルな格好である。

 

 だから、ちっと恥ずかしい。普通に道を歩くだけで他人の視線がチラチラと来るものだから、だったら服を求めてデパートを求めて歩く。

 

 ふと横断歩道の差し掛かったところ、何かの違和感を感じる。周りを見渡すがあくびをしている猫と赤のままの信号機とクソッタレの青い空があるだけだ。………………。待て、今おかしくなかったか?なんで先まで人がたくさんいたのに、車がたくさん通っていたのにいつの間に、『この場には俺しかいなくなったの?』

 

 

「SCPか!?」

 

 バックパックの中からハンドガンを取り出し辺りを警戒する。旅の経験が勘が脳内に大音量でアラームを鳴らす。

 

 汗が落ちる。暑さと緊張、音が一切しない孤独の空間。空間系SCPか?しかしどういった意図と目的があって、俺を閉じ込めてる?

疑問が頭をなんども行き交う。

 

 しかし、どうやら原因は真正面から現れたようだ。俺がいる横断歩道の向こう側、そこにソイツは立っていた。黒い、黒い少女。そして特徴的なのはその紅い瞳。

 

「動くなッ!?」

 

 あれが原因、それは馬鹿でもわかる。そうじゃないとしても何かしらこの現象に関わっていることは明白だ。

 

 ふと目が合う。

 

 瞬間、その少女はオレの懐に入っていた。

 

「ッ!?!???」

 

『………《再起動》か………。』

 

 

 オレの反応は遅くしかし少女の脳天に狙いを定め、銃の引き金を引き……………。

 

 

 

 

 

 

 

 が、それは陽炎のようにオレを通り抜けていった。いつの間にか人々と車の喧騒が元に戻っていた。銃はすぐにバックパックに仕舞った。

 

「………………なぜ、知ってる?」

 

 黒い少女が言った《再起動》というの言葉、少なくともオレの事情を知っている。奇妙と少しの危機感を覚えた、が。

 

「オレは"財団"じゃねぇし、もうSCPになんかに関わりたくない」

 

 きっとあの少女は何かしらの未収容のSCPかナンカなのだろう。でもオレにはもう関係ない、バケモンにも異常体験も飽き飽きしている。

 

 さぁ、早く家に帰りたい。今はそんな気持ちだけが彼を動かしている。空にはクソッタレの青い空が太陽の光を引き立てていて、さらに不快な気持ちになった。

 

 

 

 

 

 

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

 

 なぁ、オレは常に厄介事に巻き込まれなくてはならないのか?

 

 自問自答、それをトイレの個室で一人繰り返す。きっと彼の運のステータスマイナスを振り切っているのだと思う。

 

「どんな、確率なんだよ。偶然入ったデパートがテロリストに占拠されるなんて、きっとなにかしらのSCPのせいに違いない。うん、絶対だ。」

 

 それ以前に運転技術自体がSCPになっていることもあるので、多分彼の運もその類なのだろう。

 

 そんな文句をブツクサ言う傍らで彼は自身の装備を整えていた。

 

 財団特製防弾防刃チョッキ、ハンドガンは常にトリガーを外していく、隠密殺傷するためのコンバットナイフ、視界を奪うための催涙弾。

 

 とりあえずこんな感じ、いつものようにブーツの靴紐を結び直す。バックパックから最新鋭の双眼鏡を取り出し、温度感知モードをオンにしてそれを覗く。

 

「……………敵さんは七人、人質は中央に集められているのかな。シャッター前に二人、人質の見張りは一人、二人。あとは辺りの警戒に三人。…………なんだ素人か。」

 

 

 

 すこし安堵した。思っていたよりマトモな状況のようだ、いやマトモではないが『普通のテロリスト』なら彼にはなんの問題ない事だった。

 

 

「鴨がどうやら一匹来てくれたようだし」

 

 一人トイレに入ってきた。ソイツはまず最初に個室の下を確認した、それから左から一つずつ個室の扉を開けていく。

 

 あぁ、そんなんだからどうということでもないんだよ。トイレなんて絶対誰かが隠れてるに決まってる、デパートなんだからなおさらだ。それにもし扉を開けるタイミングで中にあるやつが思いっきり扉を開けてたらどうなる?

 

 一瞬、怯む。隙きを与えることになるんだ。

 

 だから、オレは拳銃を構えた。ちょうど右足の膝に当たるように、そしてソイツはオレのいる一番最後の個室の前に来た。

 

 ちょうど、扉の取っ手に手を掛けたところだったのだろう。そのタイミングで引き金を引いた。

 

 

ーーーバンッ!!

 

 

 「ぐわぁッ!!?!!???」

 

 無様な悲鳴が銃声と合わさった、きっとこの音はこのフロアに響き渡っただろう。証拠としてソイツが持っていた無線機から仲間からの音声が溢れていた。

 

 オレは手早くソイツの銃を遠くに蹴飛ばす。次に足の健を削ぎ落とす、次に旅で使っていた五寸釘を個室の壁に強く打ち付ける。もちろん猿轡を忘れず。

 

「ッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!?!?!?!?」

 

 

 ソイツは痛みを上手く声を出せず、苦痛の限りを体で表現するが、深くまで突き刺さっている五寸釘がある以上もうどうにもならなかった。

 

「さて、次『仕掛け』だな」

 

 

 

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

 

 

 それは突然のことだった、イキナリ銃声が聞こえたんだ。それは俺達が占拠していたフロア全体に聞こえたんだ、どうやら辺りの周辺を行っていた奴の一人が向かったトイレが発生源の様だ。

 

 ちょうどボスが警察に要求する時だった、ボスがチッと舌を打ち無線機で巡回中のソイツに通信を入れる。

 

『ぐわぁッ!!?!!???』

 

 聞こえたのはソイツの悲鳴、ボスがソイツに何度も応答に答えるように求める、呼びかける。でも返ってくるのはナイフが何かを切る音だったり、何かを壁に打ち付ける音だけだった。

 

 異常事態、そう判断したボスは他の巡回中の二人をトイレに向かわせた。常に無線機をオンにした状態で、どんな状況か知るために。

 

『ボス、トイレの個室から物音が。トントンって』

 

 少し小さい音だが確かに無線機ごしから『トントン』という物音がした。ボスは手下の一人に他の個室を確認させるように言い、もう一人には奥の個室を確認させた。

 

『ウッ!?おい、大丈夫か?お前!!』

 

 奥の個室にはソイツが居たらしい。

 

『今助けやるからな、一体誰にやられたんだ?猿轡も外してやる。ボスッ、コイツ壁に手が五寸釘で打ち付けられてます!』

 

『今すぐに逃げろッ!!アイツはお前が扉を開けたときに手榴弾のピンが外れる仕掛けをした、お前は開けちまったから仕掛けがッ!?』

 

 

ーーードカーンッッッッッ!!!!!!

 

 

 爆音、そして衝撃。思わず身を屈めてしまう、人質も耳を塞いでこの状況に唖然としていた。

 

 ボスは焦っていた、こんなの計画の内に入っていた予想とは違う。そんな事をブツクサと少しの間フリーズしていたが、すぐに正気を取り戻し見張りである俺とシャッターの二人と交代して、俺がトイレを見に行くことになった。

 

 いつも以上に緊張が奔る。シリアで傭兵していたときよりもだ。手に持つマシンガンが震えている、でも全ては金のため。俺はトイレに向かった。

 

 トイレは火の海と化していた。まるでオーブンの中、この状態では三人は木っ端微塵になっているだろう。

 

 しかし、一体どこどいつがこんな事をしやがった。いや、冷静に考えるにこれをやった奴は確実にこちらを殺りに来ている、明確な殺意を感じる。

 

 一人を餌に二人を殺す。そして次は………………。 

 

 そこまで考えたら馬鹿な俺でもすぐにトイレを背に辺りをマシンガンで乱射した。ソイツは確実にトイレの周辺の物陰にいるという、確信を持ちながら。

 

 半分くらいの銃弾を撃ったところで撃つのを止めた。しかし、油断はしない。もしかするとまだ生きてる可能性もあるからだ、銃弾を防ぐものを結構多いそれにこのフロアは大量の電化製品が陳列されている。冷蔵庫や洗濯機とにかく盾の役割ができる物がいっぱいあるこの場所では油断できない。

 

 1歩後ろにさがる。ふとさっきした無線の内容が脳裏を奔った。

 

『トイレの個室から音が《トントン》って音が』

 

「まさかっ!?」

 

 気づいた時にはもう遅く、火の中から黒い布を被った男が現れ、

 

 

 銀の一閃が奔った。

 

視点が倒れる。オレの体見える。なんで、おれの頭はここにあるのに。

 

 

 

 

 

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

 

 

 仕掛けは大成功、しかし我ながら爆発にワザと巻き込まれるなんて。ほんと無事なのは財団様々だな。

 

 爆発抵抗シーツを脱ぎ、転がってある死体から弾薬、マシンガンを調達する。

 

「リサイクルだな、あれリユースだっけ?ま、いいかまだ終わってないし。」

 

 すぐにマシンガンの装填を行う。あと三人、一人はシャッター見張りで動けない、二人は人質の見張りだが二人いるからこちらに寄こすと思うけど。

 

「まあ、来ないよな。普通に考えて」

 

 双眼鏡を覗くと立っている2つの熱源は辺りをキョロキョロとした動きを見せていた。

どうやら、真ん中でオレを向かい撃つようだ。

 

 物陰に隠れながら人質がいる中央部に接近した。ボス格の男を確認するとオレは催涙弾のピンを引き抜き、ソイツらの方に転がした。それに気づいた時にはもう白い煙幕が爆発していた。

 

 視界がゼロの状態、絶好の機会。オレは物陰から勢いよく飛び出した、まず狙うのは人質の見張りコンバットナイフを首に突っ込む。

 

そして、ボス格が握っていた。爆弾のキー、それを握っていた右手を拳銃で吹き飛ばす。

 

「アギャァッッッッッ!!!??」

 

 醜い喘ぎ、のたうち回る隙きも与えずソイツを転ばし仰向けの状態にする。足でもちろん頭を踏みつけるのを忘れず。

 

 するとシャッター側の見張りの男が煙幕を外へと逃がそうガラス窓を開ける。馬鹿だなぁ、それじゃあ『どうぞ、私を撃ってください』っているもんじゃないか、フロア全体に充満する煙がその少しの隙間から逃げるように流れる。辺りが晴れる、だけどオレは中心に居てお前は窓の近く。先に煙が晴れるのはそっちだ。

 

「くたばれ」

 

 そいつの頭に標準を合わせ拳銃の引き金を引く、パンという空回りの音がした。ソイツは音もなく膝から崩れていった。ガラス窓に血の跡を残しながら。

 

 

「さて、じゃあ目的は?」

 

「なんなんだよッ!!お前はッ!?」

 

パン。

 

 ボス格の右の掌を撃ち抜く、悲鳴が湧く。そいつも痛みを声にする前に頭を踏みつける。

 

「で、目的は?」

 

「金だ!!十億、10億貰うつもりだったんだ!!!」

 

 10億とは頭が悪い単位だ。今どきの小学生だってもっと現実的な金額を要求すると思うが。

 

 ほとほとに呆れた。

 

「プランは?逃げ出す事も考えていたんだろ?」

 

「警察にヘリを要求して、追ってきたら爆弾を落とすと」

 

「ちなみに範囲はどれくらいだ」

 

「この街、丸ごと吹き飛ぶ威力だ」

 

 

 ふと、旅の記憶が蘇る。

海の上で見ていた日本からキノコ雲が上がる。きっと核が落とされたんだろうと、ただ唖然していた。幼い自分が居た。

 

『帰ることも出来なくなっちゃった』

 

 

 

 

 

 

「………………………、そうか。」

「頼む!出頭する、無所にも行く、人質も開放する。だからオレは助けてくれッ!!」

 

 その言葉を無視するように両手を重ねるように五寸釘を打ち付ける。「ぐわぁッッッッッ!!!?!!?!」という悲鳴が漏れた。

 

 人質も助けた。テロリスト共も掃除した。

それで万歳、大円団そのはずたった。

 

 ただ一つの違和感を除いて。

 

 

 

 物陰の一つを拳銃で撃ち込む。違和感はそこにある、旅の間で鍛えられた勘がそう囁いていた。

 

「出てきな、どうやって『存在感』を希薄なしているのか分からないがオレには意味がない。」

 

 警告は一回限り、数秒の期限を設けた。それでも出てこないのならマシンガンでその物陰に撃ち込む。その直前に、後ろからイキナリそこから誕生したようにに一人黒いパーカの男が襲い掛かってきた。

 

「(いつの間に!!?)」

 

 動揺はする。しかし、此方は場数が段違いにある。これくらいなら対応できる。

 

 すかさず肘打ち、回し蹴りで遠くに吹き飛ばす。

 

 だけど、それじゃ終わらなかった。

次は紫のパーカーの男が現れた。棒状の物を振り落とすように。

 

「(同じ手は通じねぇ!!)」

 

 棒状の物体を右手で防ぎ、取り上げる。そして、足を引っ掛けソイツを回して地面に叩きつける。抑えつけるためにソイツの体に密接に触れた。 

 

 だからな、きっとその判断は間違いだったんだ。投げ技とかもっとあった訳だ、それを選ばないで。そうしちまったのは、戦闘の緊張があったせいなのだろう。

 

 だから、『胸の柔らかいものに触れてしまったことはオレは悪くない』

 

「……………なんだよ、お前『女』か」

 

 

 




青い空は…………わかる人なら分かりますよね。


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