乙女(A-RISE)は年下の女の子?に恋してる。 (CLOVER)
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運命の出会い

初めまして、読み専だったのですが書いてみました。
μ'sはたくさんありますがA-RISEはあまりないので……。A-RISEが大好きです! 





「何故……」

 

 

 

 ぼく……コホン、私は今転入先のUTX学園(女の園)の入り口にあるエスカレーターの更に上、建物の壁面に設置された大きな画面を見ながら心の中で絶望していた。

 

 

 

 事の発端は中学時代から高校に入って尚続くイジメが酷くなり過ぎて母親にバレたのだ。普段無関心に等しかったお母さんが烈火の如く怒り狂い結果、イジメをしていた生徒達はことごとく罰をくだされ、ぼ……私は賠償金&慰謝料をイジメをしていた何人もの相手の親から受け、その合計額から私は将来働かなくても暮らしていけるほどの額を手に入れた。

 

 

 

 

 

 だから、就職はそこまで考えていない。ただ、いざという時の為に学歴は良くしておきなさいと母さん……お母さんが言い、とは言え……"私が元々住んでいた所の県内にある"高校をお母さんは既にこれっぽっちも信用していなかった。そして……お母さんが考えた案は――――

 

 

 

 

 

 

 

 私(男だよ?)を女の園の学園にて学ばせる事だった(白目)

 

 

 

 イジメの実態をすべて調べたお母さんは中学時代のイジメは男子が主だってやっていた事、女子も加担してはいたけど……皆、"普通の家柄"だとわかった。 そこで、新規の学園でしかも富裕層向けのUTX学園が出てくる。実はこの学園私のお母さんの大親友が理事長をしているのだ。加えて、寮も完備していて地方からも富裕層の入学希望者をバッチリ受け入れているから生徒数も問題がないのだ。しかも偏差値は私が元々住んでいた県内のトップクラスの進学校と比べても"上"。

 

 

 

 そう、新規でありながら東京の中でも間違いなくトップクラスなのだ。……私が何徹もしながらまさしく死んて魂が口からが出そうなくらい頑張ってようやく入る事ができたほど難しい。

 

 

 

 ……ううん、入れた事が奇跡かな。ともかく、私は三度目の正直とばかりに……今度こそ平穏に学生生活を刷るつもりだ。

 

 

 

 それに……ここ"UTX学園"に通う為に私がやらされてい、やっている事がバレたら私は一生家から出ないだろう…なにせ――――――"女装"なんかしているのだから……。

 

 

 

 

 

 

 

 当然の話だけど、女の園に本来は男の子の私が通える訳はない。そこを無理やり通す為の案が"女装"なのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 普通の男子なら、女装なんて無理。した所で気持ち悪いだけ。 ところが、私は顔立ちも細い身体付きもがお母さんに似過ぎている上に、普段読書ばかりして太陽の光を浴びて日焼けすることとは無縁でいるインドア派であり……おまけに、間食もしないので下手をしたらお母さんより細い。 身長は私の方が高いけど、二歳年下の妹の方が体重は重い(遠い目)

 

 

 

 

 

 と、まあ……始めは転入先が出来て数年の新規の進学校だと聞かされていただけで私は安心しきって転入を承諾した。

 

 

 

 

 

 

 

「……結果」

 

 

 

 

 

 これだよ……通りで髪を切る事をお母さんが禁止したりしたわけだよ。もともと長めのショートカットだった私は今は更に伸びて来ていて、前髪で私は目元を隠している。

 

(漫画とかに出て来る子で目元がわからない子いるでしょ? あんな感じ)

 

 

 

 

 

 深いため息をしつつ、今更戻れないので仕方無しに受付に向かう。先ずは理事長室かな?

 

 

 

 

 

 そう思い歩き出し、建物に近付いたその時――

 

 

 

 

 

 前髪で目元を隠しているので視界の悪い私は、前を歩いていた他の生徒さんにぶつかったみたいだ。

 

 

 

「あ、ご、ごめんなさい、すみ、すみません……」 

 

 

 

 平謝りする私に、どうやら三人組の中で先頭を歩いていた女子生徒が話し掛けてきた。

 

 

 

「気にしなくていいわよ。えと…………荷物の量からしてもしかして転入生さんかしら?」

 

 

 

「は、はい、今日から……こちらで学ばせて頂く事になっています、あ、あの私は二年に転入してきました、七音八千(ななおとやち)と言います。よろしくお願い致します」

 

 

 

「そうなのね、じゃあ私達も自己紹介するわね。私はUTX学園三年生、綺羅ツバサ。ここUTX学園でA-RISEと言うスクールアイドルグループのリーダーをやっているわ。私こそよろしくね♪」

 

 

 

「次は私ね、私もツバサと同じく三年生で名前は優木あんじゅって言うの。そしてツバサと同じくA-RISEのメンバーよ、ヨロシクね♪」

 

 

 

「最後は私だな。私も二人と同じく三年生でA-RISEの最後のメンバーだ。名前は統堂英玲奈だ、わたしからも宜しく頼む」

 

 

 

 

 

 成り行きで何故か自己紹介を行なってしまったけど……この人たちって、よく見たらさっき外で見た超大型のディスプレイに映し出されていた人達じゃない。 三人とも容姿がそれぞれに綺麗で仕草も可愛かったりと、スクールアイドルが何か私にはわからないけど……テレビに出ている本物のアイドルに全然負けて無い気がする、と言うか明らかにそれよりも可愛いし綺麗だ。

 

 

 

 

続く




読んで下さりありがとうございました。

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物事は自然に流れる

第二話目となります。
前回読んでくださった方々、本当にありがとうございます。

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「それで七音さんは事務所に行って手続きをするのよね?」

 

 

 

「は、はい」

 

 

 

「なら此処で出会い頭にぶつかるって言う運命的な出会いをしたのも何かの縁だから、私達が案内するわね♪」

 

 

 

 え"、……ウ"エエェェ!? や、普通は自己紹介が終わったんだからここで別れて、学年も違うからもう会わないって言う展開じゃないの!!? ま、まずい……あんまり一緒に居るとどこかでボロが出てバレかねないし……。ここは、断る方向で――

 

 

 

「い、いえ……私は一人で大丈夫ですから、き、綺羅先輩方のお手を煩わせる事程のことではないので…………」

 

 

 

 低姿勢に低姿勢を貫く、これなら先輩達も引くでしょう。

 

 

 

「遠慮なんてしなくていいのだぞ、我が学び舎に新しい同胞が増えたのだから。喜ぶ事はあっても、迷惑に思う様な心の狭い生徒などこの学園にはいないのだよ」

 

 

 

「そうそう♪ 皆良い子で親切な子ばかりだから、困った事があったら気軽に聞くと良いわ♪ それにしても……七音さんって――――肌がすっごく、綺麗よね♪ 色も白くて」

 

 

 

 そう言うや否や、優木先輩は私に近付いてきて襟元から露出している首筋を指で撫でて来た。

 

 

 

「ひうっ――」 

 

 

 

 触れられて、つい条件反射的に声が出てしまう。って言うか、困った事があったら相談してって……今困っているんですけど、ダレカタスケテェー!!(白目)

 

 

 

 

 

「こら、あんじゅ、七音さんがびっくりしているだろ。いくら同性でもそう簡単に触れるのは駄目だぞ」

 

 

 

 統堂先輩がたしなめてくれたお陰で、優木先輩は首筋に触れていた指先を引いてくれた。統堂先輩、ありがとうございます!

 

 

 

「ゴメンね〜、悪気は無くて。貴女の肌がとっても綺麗だったから、つい♪」

 

 

 

「い、いえ、気にしていませんから……」

 

 

 

 何だろう、優木先輩会ったばかりのさっきより距離感が近くないですか?

 

 

 

「しかし、七音さんは背が高いのだな。A-RISEのメンバーの中で、と言うかUTX学園の全生徒の中で私が一番背が高かったんだが……あっさりと抜かれてしまったな」

 

 

 

 ま、不味い不味い! 一緒に居るからどんどん見られて情報を取られてそれを元にどんどん話し掛けてくるよー! 身長は誤魔化しようが無いし……どう答えたらいいのかな…………。

 

 

 

「七音さんは何かスポーツをされていたりしたのかしら?」

 

 

 

「い、いえ……私、運動は全然不得意で駄目なので……普段から読書しかしていないです。……た、たぶん背が高いのはお母さんが高いからだと思います……」

 

 

 

「ナルホドね〜。でも、英玲奈をついに身長で抜かす子が現れたのは驚きかなー」

 

 

 

 な、何とか誤魔化せた? かな……。

 

 

 

「これは、文化祭の演劇とか楽しみじゃない♪?」

 

 

 

「――え?」

 

 

 

「ああ、ウチの学園では文化祭で演劇をするのだが……先ずは全クラスにどんな人がいてどんな役がやれそうか、話し合って――そこから投票が始まるんだよ」

 

 

 

「そうそう♪ ちなみに去年は英玲奈が主人公をやったのよ、そして私とツバサはダブルヒロインを♪」

 

 

 

 ……頭が痛い。今から転校出来ないかな(白目) いやいや、無理だから! 大勢の前に立つなんて!

 

 

 

「――うん。七音さん、貴女なら良い配役が出来ると思うわ。背が高い子は本当に貴重だから、今年の演劇は主人公二人になるんじゃないかしら」

 

 

 

 綺羅さんが顎に手をあてながら頷いている……。や、やりたくないんですけどー……。何とか断らないと。

 

 

 

「あ、あの……すみません。私あんまり身体が丈夫ではないので……ご期待には添えかねるかと思います……」

 

 

 

「そうなのか、悪い事をしたな。すまない」

 

 

 

 そう言いながら統堂さんが頭を下げて来た。――――なんと言うか……ああ、成程。お母さんがここにした訳が分かった気がする。この人達からは一切のマイナスな感情を感じられない。

 

 

 

「い、いえ……大丈夫ですから。ありがとうございます統堂先輩」

 

 

 

 私からも頭を下げる。誠意に対しては私も誠意で返したい。

 

 

 

「っと、着いたようだな。ここがUTX学園での手続きを一手にしている所だ」

 

 

 

「あ、…ありがとうございます」

 

 

 

「構わないわ」

 

 

 

「ツバサ、七音さんの代わりに話してあげたら?」

 

 

 

「そうね、私から先に用件を伝えてもいいかしら? 七音さん」

 

 

 

「え、は、はい」

 

 

 

 勢いに流され頷いてしまう。三人の中でも綺羅さんの持つオーラは一際大きい気がする。勿論優木さんや統堂さんも大きいけど……多分得意な場面とかで変わるのかもしれない。 そんな事を考えていると――

 

 

 

「貴女が今日からUTX学園の寮に入り、二年生のクラスに転入する七音八千さんね。貴女のお話は理事長先生からお聞きしています。では、寮の鍵はこちらになります。それで部屋の方なんですが実は少々ありまして貴女の部屋は寮の最上階になります。案内は……」

 

 

 

「良ければ私達で案内します」

 

 

 

「あら、ありがとうございます、綺羅さんに優木さんも統堂さんも。では、寮への案内の前に理事長室に案内をしてあげてもらってもいいかしら?」

 

 

 

「はい分かりました」

 

 

 

 

 

 言葉を発する前に全てが済んで行くのを初めて見ました(白目)

 

 

 

 

 

 

 

続く




今回も読んで下さりありがとうございました。



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旧知の仲でも礼儀は忘れずに

こんばんは、第三話目となります。
お気に入り登録ありがとうございます、引き続きよろしくお願いします。


 

 

 

 

今私はUTX学園内の廊下を歩いている…………優木先輩に何故か腕を組まれながら(白目)

 

 

 

 女子のコミニュケーションにボディタッチがあったりするのはわかっていた、わかってはいたんだけれど……その対象が今日、それもさっき会ったばかりの私ってナンデ?と思ってしまっています。

 

 

 

「あんじゅ、さっき私が言った言葉を忘れたのか?」

 

 

 

「ううん、忘れて無いわ♪ ただ、……何て言っていいのかわからないんだけれど……私、七音さんと仲良くなりたいの♪」

 

 

 

 近い近い近い。とか言いたいところだけれど……近いって言うより、くっついちゃってますからね? 正面で両手を使い荷物がぎっしり詰まっている大きなバッグを持っている私、その腕を右側から自然に腕を組んでいる優木さん。歩きにくいかと言えばそうでもない……絶妙な力加減と歩行に合せる動き、スクールアイドルだから出来るのだろうか?

 

 

 

「すまんな七音さん、うちのあんじゅが迷惑を掛けて……」

 

 

 

「い、いえ……腕を組まれたのはびっくりしましたけど……あ、歩きにくいと言うわけでもないので……」

 

 

 

「そこはそう出来て当然よ♪」

 

 

 

「――二人ともそろそろ理事長室に着くから、そこまでにしておきなさい」

 

 

 

「はぁい♪」

 

 

 

 優木先輩のその返事とともに私の腕と組んでいた手を離して少しだけ、身を離すと――私に向けてパチリと綺麗なウインクをして来て、顔が少し熱くなりました。

 

 

 

「七音さん、ここが理事長室よ。ではノックをするわね」

 

 

 

 綺羅先輩が再び私の代わりにノックをし、理事長の返事を受けて扉を開け全員で中に入ると話し始めました(白目) さ、流石はリーダー何処でも堂々としてますね……

 

 

 

「あら、綺羅さん優木さん統堂さんに……まあまあまあ、七音さんを案内して来てくれたのね♪ わざわざありがとうございます」

 

 

 

「いえ、私達から言い出してした事なので理事長先生はお気になさらないでください。さ、七音さん」

 

 

 

 すべてお膳立てされてる……綺羅先輩って、やっぱり凄い人だなあ……。 って理事長先生を前にして呆けている場合じゃない。

 

 

 

「あ、改めまして……き、今日からこちらでお世話になります七音八千です。よろしくお願い致します、理事長先生」

 

 

 

 私は理事長先生に対して深々と頭を下げた。

 

 

 

「ふふっ♪ 八千ちゃんは、やっぱり七重(ななえ)ちゃんの学生時代にそっくりですね、背も高いですし髪型もほとんど同じで。でも……どちらかと言えば今の姿にも似ていますね♪」

 

 

 

 理事長先生のこの砕けた物言い……多分普段とは違うのだろう言葉に、綺羅先輩優木先輩統堂先輩は目を見開いて固まっていた。ぼ……私は何となく言われるんじゃないかな? って思っていたので固まりはしなかった。それに顔を見てわかったことだけれど……私は何度か理事長先生に会ったことがあったのだ。

 

 

 

 ――小さい頃からごくごく最近までで。

 

 

 

「七音さんは、理事長先生とお知り合いなんですか?」

 

 

 

「はい、私のお母さんと理事長先生はお母さん曰く、大親友との事です。私自身幼い頃から理事長先生とは何度もお会いしています……でも、何をなさっているのかは今日まで存じませんでした」

 

 

 

「ふふっ♪ まあ……七重ちゃんと一緒に会うか後から…………"合流"したりとかでしたからね。会話もそこまで踏み込んでしていませんし、長く話してもいませんでしたから。ですが、これからは"何かありましたら此処に来て私を頼ってください"ね♪ 七重ちゃんから"お願いされている"のですから♪」

 

 

 

「はい、何かありましたらその時にはお願いします」

 

 

 

 再び頭を深く下げ、言葉を紡ぐ。……今の理事長先生の言葉の中にある心意を理解して、だからこそ本当に感謝の心を込めて頭を下げる。

 

 

 

「理事長先生、失礼ながら私達の学園ではそのような深刻な問題は起こらないと思います。……ですが、小さな悩み事なら起こるかもしれません……しかし、それも隣室の者が必ず助けてくれる筈です。何故なら私達の学園で困った人を見捨てる様な生徒も教師もいないのですから」

 

 

 

「そうね、綺羅さんの言う通り……私達の学園にその様な人はいません。ただ、七重ちゃん関係の事は私にしか出来ませんから。"そう言う事です"、八千ちゃんもクラスメイトや他の同級生、下級生に上級生……それに隣室の人達とも是非是非仲良くしてくださいね♪」

 

 

 

「は、はい」

 

 

 

「八千ちゃんは明日から正式に転入となり授業ですから、今日は自室の片付けとかをした後にゆっくりと休んでくださいね♪」

 

 

 

「お心遣い本当にありがとうございます」

 

 

 

「失礼しました」

 

 

 

 四人で頭を下げ退出をする、と。

 

 

 

「じゃあ七音さんのお部屋まで案内するわね♪」

 

 

 

 そう言いながら、再び優木さんが自然に腕を組んで来た。

 

 

 

 

 

 

続く

 

 

 

 

 




読んでくださりありがとうございました。

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知らぬ間に運命に囲われている

こんばんは、第四話となります。
設定が特殊過ぎるのでしょうか?


 

 

 

 

 

 理事長室があった階から階段をおりて、長い廊下を三人の先輩達と歩く。私がこれから、卒業までの二年近くを過ごすUTX学園の寮の部屋へ案内してくれる為に……。

 

 

 

「寮へは、一階のこちらの寮へと繋がるこの通路からのみい行きが出来る。まあ、UTX学園の敷地は正面以外しっかりと壁で覆われているから安全面に於いては問題ないがな」

 

 

 

「更に警備員さんも女性で、巡回も決まった時間では無いから簡単には侵入出来ないわ。それに……監視カメラも沢山あるから、それも高画質4Kどころか8K。他にも色々と防犯用の仕掛けがあるから」

 

 

 

「世界一の電気街である日本の、その街にある学園だからね♪」

 

 

 

 ……過剰とも言える設備だったけど、考えてみればこの学園の生徒達の家は皆が皆ともに富裕層なんだから、当たり前と言えば当たり前と言えるんだよね……。

 

 

 

「……凄い警備設備ですね」

 

 

 

「それだけじゃなくて、体育館もスゴい広いの♪ 勿論プールも凄いのよ♪」

 

 

 

「確かに凄いな学園の体育館もプールも」

 

 

 

「――エレベーターに乗るわ。足元に気をつけてね七音さん」

 

 

 

「はい、ありがとうございます綺羅先輩」

 

 

 

 長い廊下を進み寮の入り口を抜けて更に廊下を進み、つき辺りにあるエレベーターのボタンを操作してエレベーター内に入る。わわっ……床のマット?柔らかい……毛先の長い高級絨毯なのかな?

 

 

 

「七音さんのお部屋は最上階になるから場所を覚えておいてね」

 

 

 

「さ、最上階ですか……?」

 

 

 

「ええ、さっき事務所で見せてもらったお部屋の番号によれば"宮園藤乃"さんのが居た部屋だったから」

 

 

 

「そ、そうなんですか……あの……その方は?」

 

 

 

「宮園さんは先月ご結婚したの。幼馴染さんとだって♪ 羨ましいな♪」

 

 

 

「……ま、そんな訳で七音さんの部屋はそこになった訳なのだ。他に空いている部屋も無いのでな」

 

 

 

「な、成程……わかりました」

 

 

 

 

 

 綺羅先輩、優木先輩、統堂先輩の説明を受けて納得した。

 

(考えてみれば新学期の途中から編入したのだから他の部屋が空いていただけでも助かったと思うべきなんでしょうね……)

 

 

 

 そう内心思っているとエレベーターは最上階に着き、綺羅先輩を先頭に私たちはおりる。…………優木先輩は変わらず私と腕を組んでいた。

 

 

 

 ……ここも床が凄い事になってる、足が沈むって……どう言うことなの……。

 

 

 

 やがて、足の沈む毛先の長い高級絨毯をしばらく歩いた先のとある部屋の前に止まる……どうやらここが私の部屋みたい。

 

 

 

「ここが七音さんのお部屋よ、覚えておいてね。最上階の一番奥の方だから迷わないとは思うけど」

 

 

 

「はい、今日は本当に何から何までお世話になって、ありがとうございました」

 

 

 

 深々と頭を下げてゆっくりと上げる。本当に助かったのだから。

 

 

 

「始めに行った通り、気にしなくていいわ。どおしても気になるのなら……誰かが困っている時に手を差し伸べてあげてね。それだけで私達は嬉しいから」

 

 

 

「そうね♪」

 

 

 

「そうだな、助け合いの精神を忘れてはいけない。人は一人では生きていけないのだから……何か助けられたのなら感謝の気持ちを持ち、それを大事にすること」

 

 

 

「はい……」

 

 

 

 本当に良い先輩達と知り合えて良かった。切っ掛けはあれだったけど……。

 

 

 

「じゃあ、困った事があったら"部屋を訪ねて来てね、私の部屋は七音さんの真向かいだから"」

 

 

 

「私は左隣だ、何かあれば遠慮はいらないから尋ねるてくるといい」

 

 

 

「そして私は七音さんの右隣だからね♪困った事、それが小さな事でも相談に来てね♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――――――え?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 いやいや、嘘でしょ……何この偶然。 仮に、この階が三年生のものだったとしても……これはないでしょう……。これじゃ壁の厚さもわからないんだから、今日のことで枕に顔を埋めて「ああぁ!!」とか叫ぶ事も出来ないのだけれど……。

 

 

 

「どうかしたのか?」

 

 

 

「大丈夫?七音さん?」

 

 

 

「……だ、大丈夫です、少し疲れたみたいです」

 

 

 

「まあ、過ごす環境が変わってしまったのだからな。ゆっくりと休むといい、それと――あんじゅ」

 

 

 

「はぁい♪」

 

 

 

 統堂先輩の言葉で優木先輩は今の今まで私と組んでいた腕を解いてくれた。

 

 

 

 

 

「もう一度言うが、疲れたなら眠る事だ。片付けで手が必要ならば言ってくれれば手伝う、遠慮はいらない」

 

 

 

「ありがとうございます」

 

 

 

「さて、ツバサ私達はどうする?」

 

 

 

「レッスンも済んだのだから私達も休みましょう、体を休めることも大切だわ」

 

 

 

 

 

 

 

続く




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理事長先生の本音

こんばんは、第五話となります。
初感想を貰えて、とてもとても嬉しいです。

今回お話は若干長くなってます。


 

 

 

 

「そうね、じゃあまた明日ね、七音さん♪」

 

 

 

「は、はい、優木先輩もありがとうございました。ゆっくりと休んでください」

 

 

 

 

 

 私は三人の先輩達にお礼の言葉を伝えて部屋の中に入り"鍵を閉め"靴を脱いで奥の部屋へ向かう。部屋を見まわして窓のカーテンを閉めて、制服の上とスカートを脱いでハンガーへ。ネクタイを緩めて外し、上着を掛けたハンガーの内側へ掛ける。そしてワイシャツの上から3つほどボタンを外して軽く息を吐いてから、ベッド脇にあるサイドテーブルの上に置かれている封筒を手に取り裏を見ると母の口から聞いたことのある名前が書かれていた。確か……理事長先生のことだよね、……確認の為、開いて中身の手紙を取り出す。

 

 

 

 

 

 【七音八千さんへ

 

 

 

――事情はアナタのお母さんである七重さんから詳しく聞いて胸を痛めています。……同じ教育の現場に居る身の者として、今回の事は重く受け止めるべき事と心に留めているところです。 と、私がどれだけの言葉を紡いでも……八千さんの気持ちを軽くする事も傷付いた心を癒やす事もできないでしょう事は理解しています。ですが、どうか……何か小さな事でもあれば私を頼ってください。七重さん自身のお願いを抜きにしても、私はアナタが小さな頃からずっと見てきました。照れた顔が可愛く、また、七重さんと私が意気投合し過ぎて帰りが遅くなると"迎えに来てくれ"ましたよね……。アナタのその優しい心を、私は大事にしたいのです。明日は編入後初の授業となります、今日はとても疲れていると思いましたので部屋に備え付けてある冷蔵庫に夕飯を入れて置きました。私の手作りです、味には問題ないと思います。それと、ベッドメイクの方も私がしておきましたので安心して休んでください。それでは――――――――理事長=藤澤透子】

 

 

 

 

 

「……理事長先生、気を使わせちゃったかな…………」

 

 

 

 私は手紙を封筒に戻しサイドテーブルに元あったように置くとベッドに横になる。もと居た家からここまで、それほどの距離では無いけど……疲れたのは確かなのだ。目まぐるしい日だったな……。 ……あ。

 

 

 

「電話しないと、ね」

 

 

 

 私からの電話に多分直ぐに出るであろう人物の携帯をコールして鳴らす。1コールで出ました(白目)

 

 

 

『もしもし八千?』

 

 

 

『もしもし、母……お母さん、何とか無事にUTX学園に着いて……事務所で手続きをして鍵を受け取ってから、理事長先生に挨拶をして……寮にある私の部屋に移動して……今は理事長先生が気を使ってくれて予めベッドメイクをしてくださってくれたの。今はそのベッドで横になっているところ……です』

 

 

 

『成程、先ず……八千、ワイシャツが皺になるから着替えなさい。皺付けのワイシャツで授業に出ては駄目よ。 でも、言葉遣いを守れている点は合格。電話での出だしは駄目だったけれど』

 

 

 

『……プライベートな時くらい、普通に話しては駄目なの? お母さん』

 

 

 

『何事にもボロが出ないようにする為よ。……最も、バレてもよければ構わないわよ私は。ここで高校中退だったとしても、"貴方"の生涯を終えるまでに掛かるお金は既に十分に手元にあるのだから――』

 

 

 

『……バレたくは無いんですけど…………』

 

 

 

『なら、しっかりと振る舞いに気をつけなさい。例え、"貴方"でなくとも女の子達は皆がみんな、立ち振る舞いと発言には気を付けているのだから』

 

 

 

『わ、わかっ……わかりました。 それより一つお母さんに聞きたい事があるのだけれど……いいですか?』

 

 

 

『油断はだめよ。……で、どうしたの?』

 

 

 

『実は今日、こちらを尋ねて来て事務所に行こうとした時に……目元を隠している前髪のせいで視界が悪くて、そのせいで女生徒……三年の先輩とぶつかってしまって……。勿論すぐに謝罪はしたのだけれど。ただ、"袖擦り合うも多少の縁"と言うか……これも出会いと取られて、案内役をかってくださって……。確かに助かったの、だけれど……その、紡がれた縁の先輩方は三人いらっしゃるの。それで……お一人にだけなのですが、その……首筋に触れられたり、腕を組んで密着して来たり、とかされてしまったのだけれど……もしかして、私の事バレているのでしょうか?』

 

 

 

『…………バレてはいないと思うわよ。八千、貴方……臭い物、食べてないわよね? 体臭が変わるから食べては駄目よ絶対に。……可能性があるとしたら、――だけれど』

 

 

 

『だけれど?』

 

 

 

『もしかしたら、あなたの身体から発せられる"男の子の、男性フェロモン"に惹かれているのかも』

 

 

 

『…………それって、私にはどうにも出来ない事じゃ無いですか?』

 

 

 

『ちなみになんて言う娘なの?』

 

 

 

『UTX学園の顔と言えるスクールアイドルグループA-RISE、そのメンバーの優木あんじゅ先輩だよ。 ちなみに案内をかって出て下さったのは綺羅ツバサ先輩。A-RISEのリーダーをされている方。 優木先輩に腕を組まれて、困惑している私から優木先輩を離してくれたのが統堂英玲奈先輩、A-RISEのメンバーなの……全員』

 

 

 

『私の子供ながら凄い縁を紡ぐわね……あった、UTX学園スクールアイドルA-RISE。スクールアイドルの世界でトップオブトップ、実力も人気も桁外れね。で、問題の優木あんじゅさんは――――……成程。私から見た感じのあくまでも第一印象ではバレてはいないでしょうね』

 

 

 

『よかった……』

 

 

 

『ただ、八千には今まで話していなかったけれど、女の子はね……"自分が求める相手を匂いで判別して見付けるの"だから……仮説って言うか、まあ十中八九だけれど――優木あんじゅさんには、"七音八千"が"求める相手ってこと"』

 

 

 

『――――――――え?』

 

 

 

『それと、元来、女の子は群れるもの。そうなるとボディタッチとかのコミュニケーションが多くなるだろうから……"貴方"のことがバレないように気を付けてね』

 

 

 

 

 

 

 

 

 続く

 




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油断大敵

こんばんは、なんとか書けました第六話となります。 お気に入り登録、評価、感想、ありがとうございます。



 

 

 

 

 

 

 電話を終えてそのままベッドから立ち上がり冷蔵庫へと向かう。ここまで来る最中は緊張や、自分の置かれている立場からとてもじゃないけれど食欲なんて消えて空腹を一切感じなかった。だけれど……出会い方は置いておいて、この学園で初めて知り合った方々が綺羅先輩、優木先輩、統堂先輩の三人だったのは私にとってまさに救いだったと言える。

 

 冷蔵庫の扉を開けると正面の棚に映画とかで見て私がお母さんに頼んで作ってもらったりした私の大好きなアメリカンクラブハウスサンドがお皿の上に綺麗に盛られてありラップを被されてそこに鎮座していた。理事長先生こと藤澤透子さんの手作りとお手紙には書かれていた。私が好きなものをわざわざお母さんから聞いて作ってくれたみたいだ。空腹を抜きにしても、それはとても美味しそうで……私は理事長先生のお心遣いに深く感謝をしながら理事長先生手作りのアメリカンクラブハウスサンドを目を輝かせながら取り出して、内扉に入っていたミネラルウォーターを一緒に手に持つとテーブルまで移動してアメリカンクラブハウスサンドとミネラルウォーターをテーブルに置き席に着くと――

 

「いただきます」

 

 両手を合わせてそう言葉を言ってから食べ始めた。

 

「お、美味しい……!」

 

 理事長先生の手作りのアメリカンクラブハウスサンドはとてもボリュームがある作りだけれど、味付けとして使用されているマヨネーズとケチャップ、それに塩コショウのよく効いている両面が焼かれているベーコンエッグに酸味を醸し出すトマトとシャキシャキとした食感のレタス、それらが合わさりえも言われぬ味わいを醸し出していた。

 

 ――自分では見れないけれど……きっと、今の私はさぞかし幸せな表情をしていると思う。

 

 

 

 *

 

 

 

 食後あまりの幸せ感にぼーっとしていると、ようやく体も落ち着いて来たので今日の最後のやることとして脱衣所へと向かう。残りのボタンを外してワイシャツを脱いで洗濯籠へ入れ、洗面台にてメイク落しを手に取りメイクを落としていく。と言ってもとても薄いナチュラルメイクなのでそこまで落とすのに時間は掛からない。少し前まではお化粧のやり方なんて何一つ知りもしなかったのに……などと思いながら鏡で確認をしたあと、そのまま下着を脱いで浴室へ。

 

 コックを回して熱い温水にして、シャワーを浴びながらバスタブにお湯を溜めつつ先ずはお母さんから渡された結構いい値段のするシャンプーを髪に付けて馴染ませつつ、その間に頭皮をマッサージしながらゆっくりと丁寧に洗っていく。そしてシャンプーを流したあとはコンディショナーをし、更に流したあと髪のパックまでをやり終わったら髪をまとめてタオルで包んで留めると、続いて体を洗い始める。体も無理な力を込めず素手で優しく擦り洗う。そしてようやく一通り終わると、これまでの間にバスタブに溜めておいたお湯の中に身体を浸ける。

 

 

 

「……はー…………気持ちいい〜……」

 

 性別がどうとか関係なく、もともとお風呂は大好きなのでこの瞬間だけは最高にリラックスできる。

 

 チャプチャプとお湯を身体に掛けながら、思う。

 

 

 

「それにしても優木先輩、が……私のことを…………」

 

 

 

 凹凸のほぼ無い私の身体とは違い(当たり前だけど)、出るところは出て、引っ込むところはしっかりと引っ込んでいる。くびれも制服の上から見てもしっかりと有り、ダンスのレッスンからか、元々か……あるいは気を付けているからか、無駄な勢肉なと一切無い。抱き着かれた時に私の手の甲に触れた優木先輩の髪はサラサラとしていて、今はまだ幼さが残る顔も美少女そのもの。きっと、これから成長して行けば大人としての魅力的が現れ、更に美しくなることだろう。

 

 

 

 そんな彼女が……求める相手が私だなんて。お母さんが言う事だから、外れているかもとは疑ってなどいない。それに…… もちろん悪い気はしないどころか嬉しく思う。けれど、今の私の立場というか……やっている事は、彼女、先輩達への親切への明らかな"裏切りだと思う"。だから――――

 

 

 

「……出会い方、立場、生まれ、それらが違っていたのなら……彼女、彼女達と本当の意味での関係を築けたのだろうか?……私が一番欲っしているものに……」

 

 私が望んでも手に入らなかったもの

 

 そんな私の小さなつぶやきは湯気の中に溶けて消えていった。

 

 

 

 *

 

 

 

 お風呂から出て、髪をタオルで包み直して水滴が落ちないようにしながら、もう一枚の大きなバスタオルで身体を拭きつつ、拭き終わったら身体に巻くその丈は丁度、制服のスカートくらい。 額に張り付いた前髪から水滴がポタリと体に巻いていられるバスタオルに落ちて行くさまを感じながら髪を乾かそうと、ドライヤーを用意していると不意にチャイムが鳴った。

 

 

 

「――ん? 何だろう?」

 

 

 

 入浴によるリラックス効果から気が抜けている為か、はたまた私はまだまだこの後に色々とケアをしなければならないので慌てたのか……注意すべき事柄なのについつい"そのままの格好で部屋の入り口まで向かって行き、閉めていた鍵を開けて扉を引いてしまったのだった――そう"相手が誰かも確認せずに。

 

 

 

「あ、よかったわ♪ 七音さんまだ起きていたのね。あのね、さっきツバサと英玲奈とも話したんだけれど明日の朝七音さん私達と一緒に……職、員……し……つ」

 

 

 

 果たして、扉を開けた先には――――――優木先輩が居ました。話し始めに携帯、スマホを見ながら操作していた優木先輩はスマホの画面から顔を上げ私に笑顔を向けてくれて、私を見た途端、目を大きく見開き……言葉が途切れ始め、更に声もだんだんと小さくなって行きついには言葉は聞こえなくなりました。……そんな優木先輩は頬が気のせいか赤くなり始めていました。

 

 

 

 

 

「……明日ですか? 皆さんが私と職員室まで一緒に行ってくださるんですか……あの、私としては本当にとても助かります。ですが……あの、ご迷惑でないですか? なければ、その、お願いしてもよろしいでしょうか?」

 

 

 

 私の言葉を正面で聞きながらも綺優木先輩は何故か固まっている。 出会ってから先程別れるまでのふわふわ感と優しさにあふれていた優木先輩とは違う。頬も時間が経つ程どんどん赤くなってきているような?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く




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