狼娘のヒーローアカデミア (三元新)
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キャラ設定

先に主人公含めたその他のキャラ設定てす! まだ作成途中なため、後々キャラが増えていく予定。

それ以外にも、ストーリーが進んでいくごとに設定が変化していきますのでお楽しみに!

※投稿する場所間違えたので移動なのですよ。


主人公の家の家族構成

祖父祖母、父母、8人姉妹、主人公

 

家柄:獣神一族

※主に獣に関する"個性"持ちが昔から産まれている。獣であるならば、魔物や妖、神話上の生物でも個性として産まれる子供も現れている。神話上の個性持ちは世界中に見ても希である。

さらにこの一族の家系の特徴として、女性の方が多く産まれているもよう。理由は不明。個性の特徴としては、その殆どが"獣"と""何かしらの"複合型"の個性である。

いまは代々続いてるヒーローの一族。

この幻獣一家の他にも、あと4家がいる。

 

 

 

 

 

 

主人公

幻獣椛(ゲンジュウ モミジ)

※影狼と双子(妹)

 

容姿:犬走椛(東方Project)

 

個性「白狼天狗」

主に白い狼みたいな耳と尻尾が生えた容姿の畏敬型と、千里先を見通す事ができる『千里眼』持ちの身体強化系の複合型個性

 

設定:普段は大人しい女の子。ただ、馬鹿にされた対象が家族の事になると恐ろしいまでの激情家となり相手を叩き潰す凶暴性も持つ。周りはこの事を『狂犬状態』と読んでおり、中学に付けられたあだ名が『赤い狂犬』だった。当本人はその当時の事を気にしている。

最近、姉や妹たちの相手がいろいろと大変で苦労しているようだが、本人はとても満足そうだ。料理が大好きで、母と祖母から料理を学んでいる。料理以外にも学んでいるようだが、どう見ても花嫁修業にしか思えなく最近は少しそれで悩んでいるが、楽しいので結局は気にしないことにした。

料理の中では、スイーツ作りに凝っていて、家族が美味しそうに食べてくれるので更に美味しくしようとますます腕が上がっている様子。

 

 

 

幻獣神狼(ゲンジュウ シント)

 

容姿:フェンリル(シャイニングブレイド)

 

個性「フェンリル」

神狼フェンリルができることならなんでも出来る。神殺しの牙は神を殺せる代わりに、どんな個性持ちだろうと一撃で致命傷を負わせる事ができる必殺の牙となっている。

爪も強靭なまでの強度と鋭さを持っており並大抵の硬さでは歯が立たないので注意。

 

設定:普段は忙しく家にいないが、休みの日は必ず家族の為にと時間を削るパパ。優しく人思いな男の人であり、何より家族を大切にしている人物。プロヒーローとしての知名度も高く、TOP10のヒーロー程ではないが人気のヒーローである。

交流関係も深く、プロヒーローTOP10のヒーローは皆、家に1度は招待したことがあるほど。それ以外にも友人は多数いる様子。中でもオールマイトとその師匠であるグラン・トリノとはいまも交流があり、オールフォーワンの事もオールマイトの先代の事も知っているようだが……?

 

プロヒーロー名

【神狼】フェンリル

 

 

 

幻獣紅月狐(ゲンジュウ アキコ)

 

容姿:九尾狐カヨウ 千年戦争アイギス

 

個性「天狐」

天狐ができることならなんでもできる。

 

設定:夫のそばに常に寄り添う良妻賢母。夫を支えるのが自身の役目だと言わんばかりに夫と常に活動している人。母としても完璧で、世の母親は彼女を見らなわんとしているほど。世の子持ちの母親の為の講演会も開いており世の母親達に対しての発言力は彼女が大きい。

プロヒーローとしての実力も本物で、その戦闘力はオールマイトに匹敵すると噂される程。

多数の子供を産んでいるが、その容姿は変わりなくむしろより妖艶さが増したとか。ファンクラブにはこの妖艶な姿に惑わされた男達はいるが、それ以上に女性が多く大半が子持ちの母親だったりする。

娘達を溺愛しており、最近 椛や影狼が雄英高校に入学したので、テンションが上がりまくり満開全席並の料理を一人で作り上げる程……。これでも古くからある家のお嬢様でもあり、偶に当時の当人いわく姫口調なる口調が出るとかでないとか……。

最近の楽しみは娘の椛に料理を教えること。料理以外にも家事や男の見分け方を教えており、幻獣狼奈と一緒に理想の花嫁化計画を秘密裏にたてた修業を椛にさせている。しかし、自分達の血が通った娘な為か元々の嫁力が高くて嬉しい反面、自分の仕事が無くなりそうで悲しい気持ちがあるもよう。

 

プロヒーロー名

【お狐様】テンコ

 

 

 

祖父

幻獣篁(ゲンジュウ タカムラ)

 

容姿:ガデム(シャイニングブレイド)

 

個性「猫神」

異形型の個性。普通の猫や妖怪猫又や火車などの猫に冠する力を自由に使うことができる。

 

設定:幻獣神狼の父。主人公の祖父にあたる人物。普段は物静かで無表情な祖父であり、何を考えているのかわからない人。武人体質なためか少し脳筋であり主人公の父親たる神狼もその血を引いている。プロヒーローとしては過去にTOP10にランクインするほど、その実力と人気共に凄かった。いまは現役引退しておりヒーローファンでも知っている人は少ない程マイナーなヒーローとなっている。しかし、現役当時はファンが多くおり、現役時代の年代の殆どがこの人物の事を覚えており、いまだファンクラブがあるほど。ただ、日本よりもアメリカで活躍していたという事もあり、日本よりアメリカの方が知名度は高い。アメリカではいまだこの男を知らない人はいない程の知名度を誇る。

ちなみにだが、普段は本邸奥の和室にて庭を眺めながら余生を楽しんでいる。

 

プロヒーロー名

キャットマン・ダディ

※イメージはにゃんこ大戦争のキャットマンダーク

 

 

 

祖母

幻獣狼奈(ゲンジュウ ロウナ)

 

容姿:ブリオッシュ・ダルキアン(DOG DAYS)

 

個性「狼娘」

主に身体強化と異形型の個性。

 

設定:幻獣神狼の母。物腰柔らかな武士口調に長身で中性的な印象のある人物。武器は大太刀を扱う。 世界でも有名な剣豪の一人。人間国宝に選ばれているほどの人物。普段は別荘の傍にある道場で門下生に剣術を教えている。しかし、本格的な剣術は教えておらずあくまで護衛程度の剣術。だが、見込みがある者のみ本来の武術を教えている。

普段は本邸でゆったりと過ごしている老人。しかし、その見た目はかなり若々しく20代と言われても何ら変ではないほど。しかし実年齢は――(この先は血が滲んで見えない)

 

最近の楽しみは孫の椛に料理を教えてること。料理以外にも教えており、幻獣紅月狐と一緒に理想の花嫁化計画を秘密裏にたてた修業を椛にさせている。最近はますます完璧な嫁となっており、安心している反面、未来に嫁に行く時が寂しいなと思っている。でも、曾孫を見るのが楽しみな気持ちもある。

 

プロヒーロー名

【狼侍】ダルキアン

 

 

 

祖父

神凪亜嵐

 

容姿:程よく日焼けたゴリマッチョの大男。

 

個性『神砂嵐』

両腕から凄まじく回転する風を纏い、その両腕の風によってできる真空状態の圧倒的破壊力によってあらゆるものを粉砕する力をもった個性。

 

設定:幻獣紅月狐の父。一体どうなったらこの父からあの娘が産まれるのかわからないほど似ていない父親。しかし血は繋がっている。常に己の肉体を鍛えるべく世直しの旅と称して世界中を飛び回っている。ヒーローではないが、その数ある功績からヒーローの様な扱いをされており、世界中でも有名な人物でもある。個性は凄まじい程の威力を持っているが、本人は個性がなくとも素の戦闘力がアホほど高く、過去に全盛期のオールマイトを負かすほどの実力がある為、別に個性を使わなくとも大抵の事は何でも出来ちゃう。

 

 

 

幻獣藍(長女)

 

容姿:八雲藍(東方Project)

 

個性「九尾」

発動系と異形型の複合型個性。九尾ができることなら何でもできる。ついでに式神を作れて頭もすごく良くなっている。特に計算系が。

 

設定:幻獣雪風と双子の姉。同じ妖怪狐だが、九尾の狐なため雪風よりも戦闘力は上。普段は冷静沈着なクールな女性。スーツがとても似合っており、先生としての人に教える才能にも優れた人物。

しかし、妹達の事になると究極のシスコンになる。特に下の白音、泉奈、橙の三人に対しての過保護は凄まじい。なお、妹たちが遊んでいる姿を見るだけでご飯3杯はいけるそうだ。妹たちの可愛い姿を見るだけで常に鼻から愛が溢れているダメ姉でもある。

最近は同じ学園に椛と影狼が入学してきたため、同学年や下の学年の男子生徒といった悪い虫共が寄ってこないか眼を光らせている雄英高校三年生。実力だけなら学園トップどころか並のプロヒーローすら足元にすら及ばない。実際に戦闘訓練では雄英高校ビック3も差し置いて圧倒的に1位である。しかし等の本人は騒がれるのは面倒な為、表向きの実力者はビック3の3人である。

知識量も個性の影響か高く成績も学園トップ。よく校長室でチェスや将棋といったボードゲームも根津校長とやっているのを見かける。

 

我が妹達に少しでも近づこうなら………(この先は紙が破られ見ることができない)

 

プロヒーロー名

【妖怪狐】玉藻

 

 

 

幻獣雪風(次女)

 

容姿:ユキカゼ(DOG DAYS)

 

個性「妖狐」

主に妖狐ができることならなんでも出来る発動系と変化系の複合型個性。個性を使って忍者の様な事ができる。例えば水の上を走ったり、分身したり、変化したり等など。

 

設定:幻獣藍とは双子の妹。ござる口調が特徴の狐の女の子。明るく元気で天真爛漫。姉妹の中では特に祖母の狼奈と仲が良く姉妹の中で一番狼奈の技を体得している。

椛と影狼の師匠であり、忍術の使い手。忍者の様に隠れ、動き、分身や変装、忍術も使え、まさに忍者そのものである。雄英高校三年生。とても元気でその天真爛漫な明るさゆえに学園でも有名な人。元気なだけでなくとても親身で困ってる人の手伝いや悩み事などを一緒に考え解決してくれる優しさもありとても大人気な学生。将来は双子の姉と共にプロヒーローを目指し姉と実家の影となり表と裏で活躍するのが夢。

 

プロヒーロー名

【狐忍者】ユキカゼ

 

 

 

幻獣黒歌(三女)

 

容姿:黒歌(ハイスクールDxD)

 

個性「猫魈」

猫魈と呼ばれる妖怪猫又の上位種。仙術がとても得意。異形型と発動系の複合型個性。

 

設定:幻獣一家の三女。黒い猫耳に二又の尻尾を生やしている女性。母親の血を受け継いでいるのかその容姿は母親同様とても妖艶で、男性ファンが多い。戦闘力はソコソコ。戦いでは主に猫魈が得意としている仙術と妖術を使って身体能力を上げたり、幻術を見せたりして戦っている。姉達も好きだがそれ以上に妹たちを心底溺愛しており、長女の藍と一緒に妹たちに作く悪い虫は排除しようと日々活動している。最近は椛と影狼が自分と同じ雄英高校に入学したため、同じ学園なのに自分の手が届きにくく苦悩しているもよう。ちなみに大人びた性格と容姿でありながら2年生である。1つ上の波動ねじれとは親友関係。裏方特化の動きを目指し影で家族を支える事を目標に日々鍛錬中。裏方に徹する理由は、表は姉や妹たちがいるから自分は裏に徹するのが一番いいと確信したのと、本家にいるとある『賢者』ため裏で暗躍するのがいいとそそのかされた結果。

 

 

プロヒーロー名

【黒猫ヒーロー】くろニャン

 

 

幻獣影狼

※椛と双子(姉)

 

容姿:今泉影狼(東方Project)

 

個性「影狼」

変化系と異形型の複合型個性

 

設定:幻獣椛と双子。雄英高校1年A組。オドオドとした性格の女の子。普段は姉や双子の妹の椛の背に隠れている程の人見知り。いまは隠れるほどではないが、それでも緊張したり恥ずかしくなったりすると椛たちの背に隠れる癖がある。

 

 

幻獣白猫(シロネ)

 

容姿:小猫【白音】(ハイスクールDxD)

 

個性「火車」

自分の周りに白い焔の輪を創る個性。他にはその焔を身体に纏って一時的に身体強化もできる。同じ畏敬型の個性持ちに大ダメージを与えることができる。

※元の能力が仙術も合わさり悪魔や吸血鬼に致命的ダメージを追わせるほどの聖なる属性持ちだったため。

発動系と変化型の複合型個性。

 

設定:物静かな女の子。姿は白く、同じ色の猫耳に尻尾を持っている白猫。妖怪猫又と似たような姿を持っている火車という猫妖怪。見た目は人それぞれだが、噂では旧地獄ではとある悟り妖怪に赤髪の火車が、地獄では巨大な猫がバイクに乗っているそうだ。本人は平均よりも背がちっちゃいのを気にしている。見た目によらずバカ力と鋼鉄の防御力を持っていて、見た目に騙され油断すると痛い目を見ることになる。ちなみに騙されなくても痛い目は結局見ることになる。

スイーツが大好きでスイーツの為なら何でもする女の子。姉である幻獣椛が作るスイーツが大のお気に入り。椛がスイーツを作ると知ると否や、既に机で待機している。

 

中学2年生

 

 

 

幻獣泉奈

 

容姿:いずな(ノゲノラ)

 

個性「血界」

物理限界を超えることができる驚異的なまでの身体強化系統の個性。3分間の驚異的身体強化、代償として一度使うとクールタイムに五分は必要。連続使用は不可。

発動系(増強型)と異形型の複合型個性。

 

設定:語尾に『です』が付く不思議な口調を持っている女の子。同じく双子の橙と同様姉が大好きな女の子。普段は大したことはないのだが、物理限界を超えることができる驚異的な身体強化持ちの個性のため、鍛えればオールマイトですら軽く凌駕する人物になる。でも、いまはまだ個性と身体共に未熟な為長い時間発動できないが、元々が獣人…獣の個性持ちと言うのもあり身体能力は常人よりも上で、充分な驚異ではある。ちなみに、白音同様、姉である椛のスイーツが大好きで中でもドーナツがお気に入り。

口調はとある人物が小さい時に教えこんだのが影響している。いったいその人物とは何九尾ナノダロウカ。小学2年生。

 

 

 

幻獣橙香(ゲンジュウ トウカ)

 

容姿:八雲橙(東方Project)

 

個性「猫又」

主に妖怪猫又ができることができる。異形型の個性。

 

設定:天真爛漫でとても明るい女の子。年齢に似合った性格をしていて家ではみんなのアイドル的存在になっている。個性の影響で妖術も使え、人の姿以外にも猫の姿をとれる。将来の夢は黒歌みたいな立派な黒猫になること。普段は泉奈と一緒によく遊んでおり、泉奈同様姉の椛のスイーツはドーナツが好き。小学2年生。



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1話

…………………………ノゲノラゼロやら東方やら、けもフレやらハイスクールDxDやら、DOG DAYSやらゼロから始めるやら見てたら、今期の僕ヒロ見ててふと思いついたんだ……。

『あれ? これ、"個性"としていけるんじゃね?』

……と。

更に言うと、それこそハーメルンでの僕ヒロではちょくちょく東方キャラいるし、それ以外にもいろいろとチートじみたキャラやクロスオーバー、挙句の果てにはMUGENシリーズなどの存在そのものがザ・チート能力持ちのキャラだって出ているしまつ。

……なら、獣系統のキャラだけを集め、そのキャラの姿をした獣耳一族を作っちゃってもいいよね! なぁんて、頭の中で一瞬で思いついちゃったんで投稿しちゃいました。……ほかにも小説あんのに何してんだろぅ…0(:3 _ )~

でも後悔していない!


……と、言うことでゆっくりしていってね!


この世界の物語の始まりは中国、軽慶市。

 

“発光する赤児”が生まれたというニュースだった。

 

以降各地で「超常」が発見され、原因も判然としないまま時は流れる。

 

そして現在は世界総人口の約8割が何らかの“特異体質”である超人社会になったのである。

 

そして、その特異体質の事を人々は後に"個性"と呼ぶようになり、その個性を持って犯罪を侵す者のことを"敵(ヴィラン)"と……。そして、その敵(ヴィラン)を取り締まり平和を守る物を"ヒーロー"と呼ぶようになった。

 

いまや、"ヒーロー"は昔の様な限られた"英雄(ヒーロー)"ではなく、誰でもなろうと頑張ればなれてしまうヒーローと言う名の"職業"と化していた。

 

そんなヒーローと呼ばれる者達が数多く存在する今の世の中で、代々"獣"に関する個性を持った子が産まれる家がある。その家は昔から……それも、今のように世間一般で個性が日の出に出るようになるさらに昔から日本を支えてきた古き家であり、現在もヒーローとして"表世界"でも"裏世界"でも活躍している家が五つあった。

 

そんな家のひとつ。寝殿造りと武家屋敷を合わせたような巨大な和風の屋敷にすんでいる1人の女の子が目を覚まそうとしていた……

 

ピピピピ、ピピピピ――

 

「……ぅん…」

 

少女の部屋は純和風と言うべき部屋だろう。そんな部屋の敷布団の中でもぞもぞと動くものがあった。

その敷布団からは、布団からはみ出すように白いフワフワしたものがはみ出ていた。

 

ピピピ、ピピ――ガチャン

 

「…………朝、かぁ…」

 

アラームを止めようとしていた手は、何度か空ぶるが何とか止めて、ムクリと身体を起こした。

 

身体を起こしたたさい、布団に隠れていた少女の頭からピョコッと耳が出てきた。そう、耳――それも獣耳である。

 

「ぅぅ〜ぅ――ん……くぁぁ………今日もよく寝れたなぁ。

さて、今日は大事な日だ。早く起きて準備しないと」

 

少女は背を伸ばしながら布団から出て敷布団を畳もうとしていた。

 

「姉様、朝だぞ。さっさと起きやがれ、です」

 

すると、そこへ『タタタタ…』と床を走る音が聞こえたかと思うと、障子がスターンッ!と勢いよく開き、そこには紫色の髪色のした獣耳幼女がいた。

 

「うん。起きてるよ、いずな。それとおはよう」

 

布団をテキパキと畳んでいた白色少女は紫幼女に、にこやかに微笑みながら近づいて頭を撫でていた。

 

「おはよう、です。それよりもっと撫でやがれ、です!」

 

獣耳幼女はとても気持ちよさそうに目を細めながらおねだりをする。その証拠に尻尾はブンブンと風を切りながら振られており、おねだりをされている側の少女はとても幸せで満足そうな笑顔を浮かべながら、内心ではあまりにもの萌さに悶え、鼻から愛が溢れているのだった。

 

「うんうん。今日も一段と可愛いね、いずな」

 

「えんりょーはいらねぇ、です。その調子で、もっと撫でやがれ、です」

 

ズキューン!……と効果音がついたかのような反応をする少女だが、彼女にとって今日はとても大事な……それも彼女の今後の人生には必要不可欠とも言っても過言ではない程の大事な日なので、心を鬼にして耐える少女。

 

「ごめんね? 本当はもっと撫でてあげたいけれど今日は高校の入試試験日だから、続きはまた帰ってきてから、ね?」

 

そう言いながらも、ものすごく名残惜しい顔をしながら頭から手をのける少女。

 

「…………もう、止めるの、です?」

 

しかし、獣耳幼女は彼女の撫でテクがよかったのか悲しそうな名残惜しそうな顔で彼女の服のはしを掴み潤んだ瞳で彼女を見上げる。

 

対する少女――つまり彼女自身にとっては可愛い妹であり、獣耳の幼女が悲しそうな目付きでこちらを上目遣いで見てくるという状態になってしまっており、早速心の良心が悲鳴をあげていまにも崩壊しそうであった。

 

「…………お主ら、いったい朝から何をしているのでござるか?」

 

そこへ古風な口調の女性が通りかかる。その女性の瞳には『なにをしているんだ?』という、疑問ありふれたの目をしており、不思議そうな者を見ている様子だ。

その女性には、白色狼の獣耳少女や紫狐の獣耳耳幼女とは違う、茶色の狼耳と尻尾を生やした長身の古風な口調の女性だった。

 

その声にいち早く反応したのは、もう少しで心の良心が崩壊しかけていた少女であり、その女性を見る顔はまさに、自身が死にかけた時に颯爽と現れたヒーローを見ているかのような顔をしていた。

 

「………あぁ、なるほどなるほど」

 

すると、その少女の顔を見て、すぐそばで少女を見上げている幼女――いずなを見て全てを察した。

 

「ほれ、いずな。こっちにきなさい。お前の姉上は、忙しい。なんたって今日は大事な試験日なのだからな。邪魔をしたらいかんよ」

 

女性は少女の服を掴んでいる手を優しく剥がしながらいずなを抱き上げる。

 

「ほら、椛もそこでボーッと立っておらんと、朝食を食べておいで。早く試験会場へいかねばならぬのだろ?」

 

椛と呼ばれた少女はとても明るい笑顔で女性といずなを見る。

 

「あ、そうだった! ありがとう、お祖母様! 先に朝ご飯食べてくるね!」

 

タタタタッと廊下を走る椛。そんな慌ただしい後ろ姿を見ながら嘆息する女性。どうやらこの女性は少女―椛のお祖母さんのようだ。だが、お祖母さんと呼ばれるのにはかなり若々しい肌と見た目をしており、お母さんと言っても違和感のないほどの若々しさをしている。

 

「まったく。あの娘はいつも騒がしいものだな。……いずな。お前はもっと落ち着きのある娘に育つのじゃぞ?」

 

「……? うん、わかった、です。」

 

おばあさんに抱えられてる いずなは何かわかっていないながら大きく頷いたのだった。

 

――――――――――――――――――――――

 

 

 

時は過ぎ……現在、私、幻獣椛は試験会場にいます。どこの試験会場だって? そんなの一つだけに決まっているじゃないですか。雄英高校ですよ! それもヒーロー科です!!

 

 

「おっと、こんな所で油を売ってる暇ではありませんでした。早く会場へ行かなくては」

 

そそくさと会場へと足を運ぶ私。途中、緑色のボサボサ頭の男の子が転けかけて女の子に個性かな? そのまま支えられていたのを目かけたんだけど、私はそれをスルーして会場に入った。

 

 

「(ずいぶんと視線が来ているけれども、私の顔に何かついているのかな?)」

 

 

私は周りの視線が少し気になっているものの、悪意ある視線はないし無視することにした。

 

 

 

 

――ちなみにだが、椛は自身が美少女という自覚がない。故に自分に向けられた視線は全て人の性と言うものであり、誰もが見ても美少女な椛の頭には髪と同じ色の白い狼の様な獣耳が生え、腰からも同じ色の尻尾が生えていた。その尻尾は見るだけでも凄くふわふわしていそうな尻尾の為か、一部の者はその尻尾を触りたくてた仕方が無い様な表情をしている者さえいた。

姿勢も正しい為かただ歩くだけの姿さえも美しく綺麗なため、自然と人の視線は釘つけになってしまうのだ。

そしてなにより、その大きくたわわに実った二つの山は歩く度にタプタプと揺れ、男女問わずみんなの視線を釘付けにしていた。

 

 

 

 

 

「――くしゅんッ(……誰か私の噂でもしているのかしら?……まぁ、いいわ。そんな事よりも今を頑張らなきゃ!)」

 

それから私はいつも以上に気合いが入った状態で筆記試験に挑んだ。

肝心の筆記試験に冠しては大きな手応えを感じつつ、終わったらすぐに移動し実技試験の説明に入る。

 

実技試験の説明にはプロヒーローであるプレゼント・マイクがその任を預かっていたのだ。確か、妹の白音が毎週マイクのラジオを聞いているのを覚えてる。…………試験終わってもし会えば、サインもらおうかな。

 

 

 

『今日は俺のライブへようこそ!エヴィバディセイヘイ!』

 

 

 

プレゼント・マイクの叫び声に、しかし試験前ともあり応えるものはいない。

 

このような場所でなければ生徒達は素直に叫んでいたんだろうけれど、それくらいの自制心はあると思うなぁ私は。なんでこんな試験会場であんなにも楽しそうなんだろう? 私たち受験生の緊張をほぐす為なのかな?それともわざと? 

 

『こいつぁシヴィ―――!!! 受験生のリスナー! 実技試験の概要をサクッとプレゼンするぜ!! アーユーレディ!?』

 

 

たまに妹と一緒にラジオ聴いてるけど、本当に元気な人ね。個性の影響でうるさいとは言え、この人はたとえ個性がなくてもうるさい気がするのは気のせいかしら?

 

 

『入試要項通り! リスナーにはこの後! 10分間の"模擬市街地演"を行ってもらうぜ! 持ち込みは自由! プレゼン後は各自指定の演習会場に向かってくれよな!』

 

私の個性は異形型のため常時発動しているせいなのと、狼は耳がいいので周りの同じ受験生達の声がよく聞こえてくる。……どうやら同じ学校同士の者は会場を別々になっているらしい。恐らくはずるをしないためなのでしょう。

 

 

『演習場には仮想敵を"三種"、多数配置してありそれぞれ【攻略難易度】に応じてポイントを設けてある! 各々なりの“個性”で“仮想敵”を行動不能にし、ポイントを稼ぐのが君達リスナーの目的だ! もちろん、他人への攻撃等アンチヒーローな行為はご法度だぜ!?』

 

 

 

なるほど、プリントと見比べてシルエットで大体のポイントを覚えろと言うことかな? 何体のロボットが会場にいるかわからないし強さもわからないけど、とりあえずどれだけ効率よく最短ルートで最高点数を叩き正せるかが鍵だろうね。

 

 

…………でも、このプリントには"4体"シルエットがある。この残りの一体はなんだろう?

 

 

 

プレゼント・マイクの説明に、しかし横槍を入れる眼鏡の青年が立ち上がった。

 

 

 

「質問よろしいでしょうか? プリントには"四種"の敵が記載されています! 誤載であれば日本最高峰の恥ずべき痴態です! 我々受験者は規範となるヒーローのご指導を求めてこの場に座しているのです!」

 

 

何度も見直しをしているが、やはりプリントには"四種"と書かれているのが見て取れる。それはつまり説明されていない、あと一体が存在しているということだ。

 

だけどプリントを見ていたら、眼鏡の少年が後ろを向き「ついでにそこの!」と声を荒げて、緑髪のもじゃもじゃ頭の少年に指を指した。

 

 

「説明中にさっきからブツブツとうるさいぞ! 物見遊山で来たのならすぐにここから帰りたまえ!」

 

 

怒られたモジャモジャ君は、すごすごと小さくなった。

 

 

『受験番号7111くん。ナイスなお便りサンキューな! 四種目の敵は0P! そいつはいわばお邪魔虫だ! 各会場に一体! 所狭しと大暴れするよう『ギミック』よ! 戦わず逃げることをお勧めするぜ!」

 

「ありがとうございました!失礼いたしました!」

 

 

 

それで着席する眼鏡の少年。

 

 

 

『俺からは以上だ!最後にリスナーへ我が校『校訓』をプレゼントしよう。かの英雄ナポレオン・ボナパルトは言った!

「真の英雄とは人生の不幸を乗り越えていく者」と!“Plus Ultra”!それでは皆、良い受難を!』

 

 

そうして私達はそれぞれの受験会場に出向くのだった。

 

 試験会場に到着して私は身体をある程度解しながら周りを確認すると皆思い思いにストレッチなどで体を温めている。準備は万全にしてきたようで誰もが自前のコスチュームを着て今か今かと試験が始まるのを待っていた。私が今着ている服はいつもの学生服だ。だって、これが1番着慣れているし、試験なのだから制服が一番だとおもったからね。

 

 

『ハイ、スタートー!』

 

 

 

 それを聞いた瞬間、私は体に力をいれ前に蹴り出す。

 

 

 

 

―――ドゥッ!

 

 

 

「にゃぁぁっ!」

 

 

 

「うわっ」

 

 

 

「えっ、なになに?! 何が起きたの!?」

 

 

 

 飛び出した衝撃でズンッと地面が一瞬揺れたようで、隣にいた私と同じ髪色の猫耳の女の子が軽く仰け反るのを見ながらも、他の受験生もみんな固まっていた。

 

 

 

『おらお前ら、もう試験は始まってんぞー!』

 

 

 後ろの声を聞きながら私は広い道路を高速で駆け抜けていくと、さっそく1P敵ヴィランが視界に入ってきた。

 

 

『標的発見ブッコr――』

 

 

ドグシャッ!!

 

 

「まずは1ポイント」

 

私は敵が攻撃に動き出す前に自身の強靭な爪を使い切り裂いた。ロボットは綺麗に裂けバチバチと音をだして爆発する。

 

「よし、これならいける。この調子でいこう!」

 

 

私は順調にポイントを稼いでいた。道中、他の受験生の個性に巻き込まれたのか瓦礫に足をはさんだりして怪我をしたりした人がいたので、私はよく怪我をする双子の姉用にと常に持ち歩いている消毒液と包帯を使い、瓦礫を撤去したあとそのサイドテールの女子を軽く治療した。本格的な治療は恐らくこの学校の保険医の先生がしてくれるだろう。

 

そんなこんなでポイントを稼ぎつつ困っている人がいたら助けたり軽く手伝ったりしていると、強い地震と轟音が響いてきた。何事かと思って音のするほうへ急ぐと、なんと巨大な機械が建物を押しのけながら移動しているのが見えた。

 

 

 

「…………これは、流石に予想外だったかな」

 

 

 

私は思わずそう吐いてしまうほど、そのロボットは桁違いの大きさを持っていた。

他の受験生達が逃げ惑っている中、私は物陰に隠れ状況を把握するために観察をしていると、どうやらこれが例の四体目、0P敵ヴィランであることがわかった。

 

 

他の受験生は逃げ惑っている中でもしっかりと、ポイントを稼いでいた。私はとりあえず面倒ごとは嫌いなのでスルーしようと後ろを向くと……

 

 

 

 

 

「きゃあああああ」

 

 

 

 短い悲鳴がどこからともなく聞こえてくる。私は自慢のこの頭の上にある自身の獣耳をフルに使い悲鳴が聞こえた方へ全力で走り出した。自分とは迎え側の0P敵(ヴィラン)に近い場所にいた少女に崩れた建物の瓦礫が降ってくる。咄嗟に瓦礫を密で引き寄せ助けられたが、腰が抜けてしまったのか少女は座り込んだまま動けず0P敵(ヴィラン)もすぐそこまで迫っていた。

 

 

0P敵(ヴィラン)の振り上げた腕は側のビル上部を倒壊させる。倒壊した瓦礫が座り込んだ少女の頭上に降ってきた。

 

 

「――っ! 危ないっ?!」

 

 

 私はとっさに少女に飛びつき、少女を抱えながらゴロゴロと遠くへ転がった。少女のいた場所には大きな瓦礫が多数積み重なっており、あと一歩おそければ危うく瓦礫の下敷きになる所だった。

 

よくみると、この少女は開始時私のスタートの時に衝撃で軽く尻もちをついた猫耳の女の子だった。

 

 

「君っ!大丈夫かい?」

 

「……う、うん。ありがとう」

 

少女はすぐに反応して返した。どうやら軽く見た感じかすり傷と捻挫で済んでいた。恐らくこの敵(ヴィラン)に驚いて尻もちをついた際、足下の瓦礫につまづき捻挫をしたものだろう。

 

 

「立てるかい?」

 

 

私は手を差し伸べながらいう

 

「ん……ごめん、たてないや」

 

どうやら痛みが激しいらしく立てないようだ。捻挫した足の見た目はそうでも無いが、もしかしたら骨にひびが入っているかもしれない。

 

 

このままおぶっていくにももう目の前にいる0P敵(ヴィラン)。おそらくこの大きさの歩幅ならすぐに追いつくだろう。それに、どうやらこちらに気がついているのか向かって来ているしね。

 

 

「……しかたがないね。だって後ろに守るべき人がいるんだもの。ここで逃げたらヒーロー失格よね」

 

最初は面倒ごとは嫌いだといい逃げようとした私だが、いま後ろには怪我をした同級生でおなじ受験生のライバルがいる。どんな理由にせよ、動けない怪我人を放っておいて自分可愛さに敵(ヴィラン)から逃げるようではヒーローと名乗れなくなる。

 

 

―――だったらやる事は、ただひとつよね

 

 

「いいじゃない。いっちょ、やってやりますよ!!」

 

 

そう私は叫び目の前の巨大敵(ヴィラン)に向けて指を指した。

 

 

「あなたをぶっ飛ばす!」

 

 

私は叫び終わると同時に走り出した。全力疾走をしながら次々と距離を一気に詰めて、敵(ヴィラン)から10mほど離れた所で高々とジャンプする。

 

 

『標的、ブッころ――』

 

 

「砕け散れ! このデカブツが!!」

 

 

 カッと目を見開いて弓を引くように力いっぱいに溜めた拳を0P敵(ヴィラン)の顔面めがけて振り抜いた。

 

 雷が落ちたような轟音とともに0P敵ヴィランの顔面が潰れ、首の機械部分が衝撃に耐えきれずブチブチと配線が切れる音がしたと同時に頭部が吹き飛んでいった。頭を無くした0P敵ヴィランは行動不能になったようでしばらくフラフラするとズズーンと大きな音を立てながら、膝立ちの状態で固まって動かなくなっしまう。

 

 

 

『終了~!』

 

 

 

 それと同時にプレゼント・マイクの声が会場に取り付けられた拡声器から響く。まだ動き回っていた他のロボットもそれにあわせて機能を停止したようで、緊張が一気に途切れたのか他の受験生たちも座りこんだり壁に背を預けたりと思い思いに休憩していた。

 

 

「よっと…………ふぅ」

 

 

 私も地面に難なく着地し、先ほどから足を痛め座り込んでいる少女のもとまで近づいていく。

 

 

「どう?足は大丈夫?」

 

「…あ、うん。 大丈夫だよ!平気へい――~〜ッッ?!」

 

 

 未だに座り込んでいた少女は私が声をかけると、痛みはないアピールをしようとしたのか捻挫している方の足でたとうとしたが、想像以上の激痛がきたのか足を抑えてうずくまってしまった。現に目頭には涙が溜まっている。

私はそんな彼女に呆れ嘆息しながらも、立てないようなので、背負って連れて行こうと思いおんぶする。私自身鍛えていることもあり軽々と彼女を持ち安全な場所まで運んだ。

 

その広場では、この学校の保険医……プロヒーロー"リカバリーガール"が治癒の個性を使い治療していた。ついでにハリボーという煎餅もわたしている。

 

 

「それじゃ、あとはリカバリーガールに見てもらいなよ。特にその足、もしかしたらヒビがはいってるかもしれないからね」

 

私はおぶる前に軽く治療し包帯を巻いた足を撫でていた。

 

「うん。あっ、そうだ! 助けてくれて、ありがとう」

 

 

すると、突然彼女は私に向かい笑顔でありがとうと言ってきた。

 気持ちが込められた感謝の言葉。それはとても心地よく私の心に響いた。

 

 

「ふふ、どういたしまして」

 

 

 私は微笑み返したあと、その場を去った。去ったあと合否通知の説明を軽く説明されたあと、実技試験は終了したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(やだ…かっこいい///)」トゥンク♡

 

 

一方その頃、椛に助け出された1人の少女が目をハートにさせながら椛の後ろ姿を熱く見ているのだった。



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2話

入学試験後の事である。雄英高校ヒーロー科の会議室では、雄英の校長や教師陣が出席する重要会議が行われていた。

 

「実技総合成績が出ました」

 

 

雄英高校教師陣達は本日行われた試験の結果を見ながらそれぞれ満足そうに頷き合っていた。

 

 

 

「いやー、今年は豊作かもしれませんね」

 

 

 

 前方の大画面に受験生の名前と成績が上位からズラリと並ぶ。それを見た教師陣から感嘆の声が複数上がった。

 

 

「救助ポイント0点で3位とはなあ!」

 

 

「後半、他が鈍っていく中、派手な個性で敵を寄せ付け迎撃し続けた。タフネスの賜物だ」

 

 

「対照的に敵ポイント0点で8位」

 

 

「アレに立ち向かったのは過去にも居たけど…ブッ飛ばしちゃったのは久しく見てないね」

 

 

「思わず、YEAH!って言っちゃったからなー」

 

 

 

 ワイワイと騒ぎながら講評を行う教師陣。そして話題は次の注目者に移った。

 

 

 

「そして……圧倒的トップで1位、幻獣椛。敵ポイント92点、救助ポイント93点とは過去に類の見ない良い好成績だな」

 

 

「試験開始直後誰よりも動き早々に敵(ヴィラン)ロボを破壊。その前半は移動しつつ会場をあちこち走り回っていた所を見るに会場の大きさと現場の把握をしていたのでしょう。元に中間時点では前半よりも動きが良く効率のいい道でポイント稼ぎをしているぞ。後半なんて前半と比べるとその動きには天と地の差がある程だ」

 

 

「たしかに。仮想敵も受験生もバラけ始めた中盤では、最低限の動きだけで仮想敵(ヴィラン)を倒している。それに最初は仮想敵を狙って破壊していたが、道中ピンチな者や救護者を発見する度に手助けしたり、手持ちの医療道具で助けているな。常に持ち歩いている感じか?」

 

 

 椛の試験の様子がいくつかの画面に映し出される。教師陣は時に頷きながら、時に感心しながらその姿を見る。

 

 

「く~、この時、他の学生がポイント稼ぎに夢中になっている中、自身はそんなのお構い無しに救護に動いている姿を見れば、本当にすごいと思う。しかもその治療法も的確で治療し終わったあとは安全な場所まで運んであげているからな。こんだけすれば救助ポイントだって必然的に上がるさ。まさに自己犠牲の塊だな!ここまでくるとこの救助ポイントのこと知ってるんじゃないかって思うぜ」

 

「確かにな。それにこの子はあの幻獣一族の娘さんだそうだ。知っていてもおかしくはないだろう」

 

「……いや、それはないんじゃないか?特にこの子の父親があのフェンリルじゃないか。彼がそんな不正をすると思うか?」

 

一人の教師の言葉に何人かが頷いていた。 

 

「そんなことより、注目すべきはこの185ポイントという高得点を前半と中盤だけでほぼ稼いでいたという件です。後半は主に救助活動に力を入れている。最後なんか0ポイント仮想敵ヴィランが出てきた際、迎撃した動きが彼女に見られますね」

 

 すると画面が移り変わり、そこに映された映像には巨大ロボットに対して怪我した女子生徒を庇いながらも、仁王立ちする椛が映し出された。彼女は指を指し『あなたをぶっ飛ばす!』と叫ぶと同時に駆け出し、力いっぱいに拳を振り下ろし0ポイント敵(ヴィラン)を一撃の元に粉砕した。轟音と共に頭の無くした敵(ヴィラン)は機能を停止させ崩れ落ちる。それを見た教師の一人プレゼント・マイクは思わず歓声を上げた。

 

 

「YEAH!何度見てもスゲェ力だ!緑谷も相当だがこの嬢ちゃんはそれ以上の力だな! まさかあの大きさの頭部がこうも簡単にぶっ飛ぶなんてな。どういう力をしていやがるんだぜ。どれだけの火力ぶちかましたんだ、コイツ?」

 

 

「確かに緑谷くんが0ポイント仮想敵の頭部を凹ませ破壊したに対し、彼女は頭部を完全に破壊した上でぶっ飛しました…その後、緑谷くんが腕と両足が変色する程の大怪我をして落下していくにたいして、彼女は無傷かつ数十メートルという高さから落ちたのにも関わらず軽々と着地していますね。……いったいどれ程の個性を持っているのやら」

 

 

 画面には会場を疾走する椛の姿が映し出される。正直、どう見ても人体ではありえない程のスピードなのだ。正直、個性だけではない気がしてきた。

 

 

「たしかに、このプロフィールでは個性『白狼天狗』と登録してあるけど、詳しくは書かれていないみたいだね。身体強化型と異形型の複合個性ってだけはわかるみたいだね」

 

 

 ネズミのような、犬のような姿の生物がそう話す。彼こそが雄英高校の校長である。

 

 

 

「また、試験終了後は、そばにいた女子生徒を他の受験生にもやった治療をしリカバリーガールの元へ運んでいます。その後も具合の悪い生徒や大怪我をした生徒の介抱に動いていますね。トリアージ判断も含め治療の腕は凄まじい。リカバリーガールも彼女の事を褒めていましたよ」

 

 

「幻獣一族と言えばもう一人いた入試二位の子……そうそう、この幻獣影狼も凄まじい子だったな。0ポイント敵(ヴィラン)は相手にしていないが、彼女の個性で作られたであろう、影の狼軍団は凄まじい働きをしていた。ポイント稼ぎだけじゃなく他の受験生の救助もやっているあたりすごい個性だな。しかも、彼女自身もしっかり働いてるから好感も持てる…………ただ、彼女自身は凄まじいまでのドジなんだな。なぜ何も無いところであんなにも転けるのだろうか?」

 

「さぁな。確かにそれは謎だな。そういえば、プロフィールでもみたが、彼女達は双子の姉妹らしい。彼女が姉で幻獣椛が妹だそうだ」

 

「ほう。それはそれは……」

 

 

全員がこの二人の資料に視線を向けていた。

 

他にも向ける子はたくさんいるのだけどやはり二人の戦果があまりにも大きいので後回しになってしまっているのは仕方がない事だ。

 

 

そんな教師陣はワイワイと意見を言いながら今後の方針を考えるのだった。

 

 

 

――――――――――――――――――――――

 

試験から1週間がたった。私は入試試験には自信があり何も心配ないのだが……私の双子の姉、幻獣影狼はさっきから私の目の前を行ったり来たりとウロウロしていた。

 

 

「――はぁ。……ねぇ、影狼…そんなにソワソワしないでよ。いいかげん鬱陶しいわよ?」

 

「ワウっ!?……うぅ〜、椛ちゃんは冷たいなぁ。なんで椛ちゃんはそんなに落ち着いてるの? 怖くないの?」

 

「何がよ」

 

「合格通知だよ!つ・う・ちッ!」

 

「……あー、それね。ええ、怖くないよ? 頑張ったし、トップは取れなくともそれなりにいい成績ではないのかな? 少なくとも合格の確率のほうが高いと思ってるわ。絶対とは言いきれないけどね?」

 

私だって内心は別にドキドキとしていないわけじゃない。もちろん本当に合格しているかなんて心配だし不安だ。でも、あの時の私は全力の全力でやりきり悔いのない入試試験とした。だからこそ、ここまでの自信がくるのだ。やるべき事はやった。たとえ不合格だったとしてと、悲しくはあれど後悔はない。そんなレベルだ。

 

 

「椛様、影狼様。結果発表が来ました」

 

 

すると、メイドの一人が私たちに封筒を渡してきた。少し重い。一体何が入っているのだろうか。

 

中を確認すると中には丸い機械が入っており、まるで投影機のようだ。

 

私は家族に見守られる中、その機械に触れ起動させる

 

 

『私が投影された!!』

 

 

 

 筋骨隆々な逞しい身体、力強く跳ね上がった二つの前髪、威風堂々とした佇まい、アメコミヒーローのような画風。もちろん誰もが知っているNo.1ヒーロー。

 

 

「あ、オールマイトだ」

 

「オールマイトですね」

 

「あら、オールマイトじゃな」

 

「ふむ。オールマイトか」

 

「にゃ?オールマイトだにゃ」

 

「お〜、オールマイトでござる!」

 

「む、オールマイトか」

 

「お、オールマイトだぁ」

 

「オールマイトさんですか」

 

「おぉ、 おーるまいと!です!」

 

「おーるまいとでしゅ!」

 

家族の面々が様々な反応で機械で投影されたオールマイトを見る。なぜNo.1ヒーローが出てきたのに対しこの反応なのかと言うと、実は私たちはオールマイトと友達なのだ。オールマイトの事なら世間の誰よりも知っていると自負している。オールマイトの個性は勿論、オールマイトの今の現状と何故そうなってしまったのかもしっている。何故かって?それはもちろん全てオールマイト本人から聞いたからだ。ちなみにオールマイトは月三回のペースで家に遊びに来る。その度にお土産を持ってきてくれるので、私たち姉妹はそれが楽しみにだったりする。

 

 

『久しぶりだね幻獣椛くん!何故、私が投影されたのかって?ハハハ!それは私がこの春から雄英に教師として勤めるからさ!さあ早速、君の合否を発表しよう!』

 

 

一瞬画面が暗くなるが、すぐに明るくなりその画面には【合格】の2文字が投影されていた。

 

 

『おめでとう!合格だ!筆記試験は問題なく、実技は185ポイント!合格者の中でもトップクラスの成績だ!』

 

185ポイント?随分と大きな数字ですね。いったい何にそんな点数が……

 

 

『筆記試験は満点だった。パーフェクトだ。

 

さらには実技試験ではヴィランポイントは一番の92ポイント。それに加えてレスキューポイントという隠された項目があるのだが、君は同じ受験生達を助け、最後は女子を救うために0ポイント仮想ヴィランを倒した。それが採点されたために93ポイント。

 

よって合計185ポイント……幻獣ガール!!』

 

オールマイトは1度そこで溜めて大きな声で言う。

 

『君は雄英試験トップ通過だ。おめでとう!!

 

来いよ、幻獣ガール! 雄英高校、ここが君のヒーローアカデミアだ!』

 

 

 メッセージはソコまでで、映像は切れた。今度は皆、放心したように映像が消えた空中を見続けていた。だが……

 

 

 

 ――わぁ!と一斉に大きな歓声が上がった。

 

 

「椛!やるじゃないかトップ入学だなんて!影狼は入試二位。二人してトップ合格だなんて私たちは鼻高々だぞ」

 

「うんうん。私たちの妹は優秀だにゃ! お姉ちゃんは嬉しいにゃん♪」

 

「うむ、拙者も嬉しいでござるよ。拙者の妹たちは実に優秀だとクラスで自慢出来るでござる!」

 

「椛様、影狼様、合格おめでとうございます」

 

「影狼姉様、椛姉様、合格おめでとうございます。私もとても嬉しいです」

 

「椛姉さまも影狼姉さまもすごいぞ、です!」

 

「もみじねえしゃま! かげろうねえしゃま! すっごいです!」

 

みんなが私と影狼を取り囲んで頭をわしゃわしゃと撫でてきたりと、私達以上にはしゃいでいる。普段冷静沈着でクールな籃姉様でさえテンションが凄まじい程だ。黒歌姉様と雪風姉様はいつもテンション高いがいつもの倍テンションが高かった。妹の白音、泉奈、橙香もテンションがすごい……ここまでくると逆に恥ずかしいな。

 

「椛、影狼。よく頑張ったな。父さんも嬉しいぞ」

 

「私もですよ。椛、影狼。母さんは安心しました。特に影狼ちゃんがまたやらかしていないかと心配でしたもの」

 

「ありがとうございます。父様、母様」

 

「あははは〜……」

 

隣の影狼は、困ったかのように苦笑して頬をかいている。我が双子の姉はおっちょこちょいでかなりのドジっ娘だ。よく躓いたりして転んだり、しょっちゅう何かしらやらかしているからとても心配だった。でも、私の次の入試二位だった所を見るととても安心したのだ。ちなみに影狼の機械に投影された人は18禁ヒーローミッドナイトだった。

 

 

ガラリと襖の開ける音が聞こえ顔を向けると、そこにはお爺様とお祖母様がたっていた。

 

「椛、影狼、おめでとう。トップクラスで合格だったそうじゃな。すごいぞ、我が孫達よ」

 

「うむ。よく頑張ったな。拙者達も誇りに思うぞ」

 

 お祖母様が私と影狼をギュッと抱きしめた。他の皆もその姿を優しげな目で見守る。

 

 

 

「父様、母様、お爺様、お祖母様……みんなのおかげでこうして合格できました。とても感謝してもしきれないです。本当にありがとうございました…………でも流石にちょっと恥ずかしいのですが…」

 

そう私が言うがいまだ頭を撫でてくる母様とお祖母様。……私の半身たる双子の姉は顔をトマトのように真っ赤にしながらも尻尾は物凄い勢いでブンブンと振っている。

 

「ふふふ、本当によかったのじゃ……さあ、みんな。今日はお祝いじゃ!まずは買い出しに行くとしよう。何人か付いてきてくれ。ああ、主賓はゆっくりしているといい。そうだ、封筒に書類が入っていたじゃろう?それをしっかり確認しておくのじゃ。見落としが無いようにだぞ!」

 

「では紅月狐、拙者もついて行くとしよう。孫のためにも腕をたんと振るわんとな」

 

「ありがとうございますお母様。娘達も喜びますよ!」 

 

 ようやく二人から解放された私は書類を確認するため封筒片手に自室へと戻る。面倒くさそうな入学書類ばかりであったが、それを見ていると本当に合格したんだなぁ〜と思い、ついつい頬が緩んでしまった。こんな顔、ほかのみんなには見せられないね。だってからかわれてしまうから。

 

それにお祝いの夕食がとにかく待ち遠しかった。何せ、お祖母様もお母様も料理の腕は超一級。美味しくないわけがない。特にお祖母様は滅多に料理台に上がらないぶん、その楽しみも二倍なのだ。

 

 



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3話

な、なんか気がついたらいつの間にか凄い高評価を受けてた……び、ビックリなのですよ(^ω^;)


皆様のご期待に添えるよう頑張りたい!……てなわけで最新作を〜ポイッ! なのですよ〜

※プレビューで確認しようとして間違えて投稿しちゃいました、ごめんなさい!m(。>__<。)m


合格通知から時が経ち、今日から私達も雄英高校新一年生です。姉様方は先に学校へ行った。朝から忙しいそうだ。

 

「……影狼。準備は出来た?」

 

「ま、待っふぇ〜、もみひひゃ〜ん」

 

私の視線の先にいる姉の影狼。目に薄く涙をため、食べかけのパンを口に咥えながらこちらへ走ってくる。

 

ああ、そんなに走っちゃ――

 

 

「――へぶっ!?」ベチッ!

 

 

ほら、転けた。

 

 

「はぁ。何をしてるのよ影狼。あれ程廊下は走るなって言ってるのに……まあ、今回は自業自得ね。きっとその罰が下ったのよ」

 

 

そう、双子の姉たる影狼は今日の様な大事な日に限って寝坊したのだ。時間になっても降りてこなく部屋を見に行くと呑気に寝ていたので、仕方なく私は彼女を叩き起したのだ。学校までの時間的にはまだあるとはいえ、もうあと10分遅れると、電車の距離と時間を考えたら、次の電車では確実に入学式には間に合わないだろう。昨日は余裕を持って早く出ようと言っていたのに……

 

「まったく。いくら明日が入学式だからって緊張しすぎて眠れなかったとか………貴女は馬鹿ですか? いえ、馬鹿でしたね」

 

「あうっ?!…………椛ちゃんが冷たいよぉ」

 

胸を抑えシクシクと泣く影狼。

 

「ほら、手を出して。早く行かないと遅刻するから、早く立ちなさい」

 

私は嘆息を小さく吐きながら、まだ座っている影狼に手を出す。本当に早くしないと遅刻するから早く立ちなさいな

 

「うぅ、ありがとう、椛ちゃん」

 

「早くしなさい。もう時間がないんだから走るわよ」

 

「……別に、椛ちゃんは先に行っても良かったんだよ?」

 

不安そうな、申し訳なさそうな顔で言う影狼。

 

「ふん。別に先に行っても良かったんだけど、同じクラスの貴女が何らかの理由で仮に遅刻すると、家族として貴女の妹として私が恥ずかしいからよ。だから、仕方なく待ってあげてるの! 決して初登校は影狼と一緒に行きたかったなんて思ってないんだからっ! 勘違いしないでよねっ!」

ズビシッ!と指を向けて私は言った。

 

「椛ちゃん――(私、椛ちゃんの想いまで聞いてなかったんだけど…そっかぁ。椛ちゃんは私と一緒の登校を楽しみにしてたんだぁ――えへへぇ)」

 

影狼は、なにニヤニヤしているのかしら?

 

「ほら、早くしなさいっ!」

 

私は無理やり影狼の手を握り立ちあがせる

 

「――椛ちゃん、ありがとう」

 

影狼は私の手を取り立ち上がると、すっごく嬉しそうな笑顔で私に笑みを浮かべた。

 

「べ、別に貴女のためなんかじゃないから! これは、私の勝手なんだからっ! ほら行くわよ影狼」

 

私は影狼から顔を背けながら、手を取り家を出て走り出すのだった。

 

「椛ちゃん、顔、赤いよ?」

 

「う、うるさいっ!バカッ!」

 

「馬鹿っ?!……あぅ〜。やっぱり今日の椛ちゃんは冷たいよォ」

 

別に恥ずかしくて顔を赤くしてるわけじゃないんだからっ!

 

 

――――――――――――――――――――――

 

何とか時間までには間に合った私達。そこから常時発動型である異形型の個性の身体能力をフルで使って人に見つからないよう屋根の上を忍者の如く飛び跳ねながら雄英高校にたどり着いた。

 

そんなこんなで教室にたどり着いた私たちだが……

 

 

「扉、大きいね」

 

「うん。大きいね、椛ちゃん。バリアフリーかな?」

 

「そうじゃない?」

 

すると、何かを考え込む影狼。そして考え事が済んだのか、すごく真剣な顔をして口を開き

 

 

「すごく……大きいです…」

 

「!?」

 

 

とんでもないことを口走った

 

 

「な、何を言ってるのよ影狼っ!?」

 

「いや、昨日、藍姉さまが部屋に来て、『教室前に着いたらこう言え。そうしたらいい事起きるから!(主に私がっ!ハァハァ)』って、鼻息荒くして言ってきたからとりあえず言われた通りにしてみた」

 

あ、あの馬鹿姉! なんでよりにもよって影狼にあんな汚らわしいものを教えるのよ! 私の時もそうだったけれど、あの言葉のせいで中学校の時恥ずかしい思いしたんだからっ!

 

今でも思いだす……とある合宿でその言葉の後、急にシーンとなる部屋。急に男子が何故か股を抑えて息を荒くしながら私を見てきた。 変な空気になり訳も分からず私が固まっていると近くにいた友達が教えてくれた。あの時、私は穴があったら入りたい気持ちだったわよ!

その言葉の意味が、その、だ、男性のアレ、の事だな、んて………………ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"!!!!!////////////

 

 

―――――――――うん

 

 

「影狼、今すぐ忘れなさい。その言葉、絶対に忘れなさい。そして二度と口にしないで。私の前でも、それ以外でも……」

 

「あ、あの、椛ちゃん? その、顔が怖いよ」

 

「もし、約束を破ったら―――」

 

「や、破ったら…?」

 

「…………ふふふ」

 

「え?」

 

「――さぁ、教室に入りましょう。こんな扉の前にいても邪魔になるだけだしね」

 

「…………え? も、椛ちゃん? 気になる、気になるよ!? 約束破るとどうなっちゃうの私! ねぇ、椛ちゃん、椛ちゃんってばァ!!」

 

「うるさい。扉開けるわよ」

 

 

私は不安がる影狼を無視して扉を開けると

 

 

「机に足をかけるな! 雄英の先輩方や机の製作者に申し訳ないとは思わんのか!」

 

「思わねぇよ! テメーどこ中だよ?  端役が!」

 

 

―――パタン

 

 

私はそっと扉を閉めた。

 

 

「ねぇ、影狼。私達、教室間違えていないわよね?」

 

「う、うん。……たぶん?」

 

「ここは―――1-A…うん。間違いないようね」

 

……はあ。せっかくワクワクして教室を開けたのに……あぁ、もう! 最悪じゃない!

 

「まぁ、いいわ。どうせここにいても仕方が無いし、意を決めて入りましょうか」

 

「そ、そうだね」

 

私はいつでも動けるよう、影狼の前に出て庇うようにしながら教室に入る。

 

 

「聡明中だぁ? クソエリート校じゃねーか、ぶっ殺しがいがあるな」

 

 

「ぶっ⁉︎ 君は本当にヒーロー志望なのか⁉︎」

 

 

………………

 

「帰ってもいいかしら」

 

「だ、駄目だよ椛ちゃんっ!?」

 

影狼が驚いた顔で私を掴みしがみつく。……いや、だって仕方がないじゃないですか。すっごく濃い人がいるんですよ? 言葉と表情がもはや敵(ヴィラン)ですよ。…………あっ、そう言えば似た人達いましたね。あの人は元気でしょうか? まぁ、元気でしょうね。むしろ元気じゃないのが想像できません。そう言えば、同じ高校に転校してきたアイズさんという女の人にゾッコンだそうですね。……はてさて、その恋は叶うのでしょうかね?

 

「も、椛ちゃん? 現実逃避してないで戻って来て欲しいかなぁ〜なんて」

 

「やめてください影狼。この状況をあまり考えたくなかったのに」

 

あぁ、やはりこれからの事が不安です。

 

そう思いながら私は影狼と共に自分の席に座ると、見覚えのある顔と目が合った。

 

「お久しぶりですね。椛さん、影狼さん」

 

「あっ! モモちゃんだ!」

 

「百ちゃん。本当に久しぶりね! 1年ぶりかな?」

 

「ええ、そうですわね」

 

そう、彼女の名前は八百万百。私達の幼馴染で家同士の付き合いが昔からある家の長女だ。

 

「百ちゃんが推薦入試で合格していたのは知っていたけど、百ちゃんが同じクラスだったのは驚きね」

 

「私もですわ。でも嬉しいです。また同じクラスになれて。これからが楽しみですわ」

 

ふふっと上品に笑う桃ちゃん。

 

「ふふふ。ええ、そうね。私も嬉しいわ。また百と一緒にお勉強ができるもの! これからも、よろしくね?百ちゃん」

 

「ええ、こちらこそよろしくお願いしますわ!椛ちゃん!影狼ちゃん!」

 

「「「ふふふっ」」」

 

私達はつい可笑しくなり、笑いあった。

 

「……あら?もう開始の時間ね。」

 

私は時間をみてそう呟くと同時に開始のチャイムがなる。

 

「今日って式とかガイダンスだけかな?先生ってどんな人だろうね。緊張するよね」

 

「そうね。私は初日早々貴女がドジをやらかさないかが心配だわ」

 

「それはひどいよ椛ちゃん! 私、そんなドジじゃないもんっ!」

 

「それはどうだか」

 

私が影狼をいじっていると

 

「お友達ごっこしたいなら他所へ行け」

 

 

突如、そんな声がした。

 

席からチラッと見れば、廊下に寝袋にくるまった人がそこにいた。

 

―――え? 何してるのあの人

 

 

「ここは………ヒーロー科だぞ」

 

そう言ってエネルギーゼリーを飲み干す彼。相澤消太。私達は知っているから慣れているけど……

 

彼を知らないみんなの第一印象は………なんだ、これ。だろうね。

 

 

 

あまりにもあんまりな登場に、クラス一同が静まり返った。

 

それを見計らったように、寝袋の彼はそれを脱ぎながら立ち上がる。

 

 

「ハイ、静かになるまで8秒かかりました。時間は有限。君たちは合理性に欠くね」

 

 

寝袋を脱いだ彼はだらしのない印象で、くたびれた様子だ。相変わらず、ヒーロー時と日常時で凄い落差のある人だ。

 

 

 

「担任の相澤 消太だ。よろしくね」

 

 

 

それは驚きね。ここに来たからこのクラスに関わると思ってたが、まさかの担任だとわ。でも、去年の1年A組も彼が担任だったから、固定なのかな?

 

 

「早速だが、体操服コレ着てグラウンドに出ろ」

 

 

 

寝袋から取り出したのは学校指定の体操服。

 

私達はそれぞれ着替える為に体操服を持って指定の部屋へ行く。……体操服が生暖かいのは気にしないでおこう。

 

そんなわけがわからず体操服をきて集合する私達。そんな、集合したグラウンドで待ち受けていたのは予想外のことであった。

 

 

 

「「「個性把握テストォ!?」」」

 

 

 

「そ。雄英は“自由”な校風が売り文句。そしてそれは“先生側”もまた然り。 ソフトボール投げ、立ち幅跳び、50メートル走、持久走、握力、反復横跳び、上体起こし、長座体前屈。中学生の頃からやってるだろ? 要はそれを“個性”ありでやってもらう」

 

 

……確かに学校で必ずやる体力想定。それを個性でやるということは…………去年の噂は本当なんだろうか?

 

 

「まずは……幻獣椛。 中学の時、ソフトボール投げ何メートルだった?」

 

 

「確か82メートルです」

 

 

 個性なしでも元が元なため持力は一般人より上だ。それに、家の都合上、敵(ヴィラン)に狙われやすいというのもあり私達姉妹はみな家の訓練を受け常日頃鍛えているのだ。だからこそ、このクラスの誰よりも強い自身はある。……でも、慢心は出来ないかな。オールマイトの"後継"もいるそうだし

 

 

「じゃあ、個性を使って投げてみろ。円からでなきゃ何してもいいよ」

 

 

投げ渡されたのはソフトボール大の機械だった。

 

個性ありで、何してもいい……か。なら

 

 

「では――いきます!」

 

 

私は円の中に入ると、幻獣一族のとある技を使う為身体強化をし槍投げの如くグググっと力を限界まで溜めるそして溜まりきったその力を――解き放つ!

 

 

「紅砲ー破軍ーっ!!」

 

 

――轟っ!! 

 

 

そんな音がなり、辺りに衝撃による突風が吹く。そんなに強い突風ではないが、後ろのみんなは思わず目を隠した。

 

 

「まずは自分の“最大限”を知る。それがヒーローの素地を形成する合理的手段」

 

 

相澤先生の手元の機械に、先ほどの距離が表示される。

 

距離は7500メートル。……ふむ。思っていたよりもいきましたね。

 

ちなみにこの技、本来は槍もしくは砲弾の弾など、戦国時代に編み出されたと言われている技だ。私達のご先祖さまの中に、【ゲンコツ流星群】なる技を編み出し、素手で砲弾を雨の如く投げていたとかいないとか。

 

そんな技を改良して女性でも使えるようにしたのがこの技なのだ。

 

 

「なんだこれ‼︎ すげー面白そう!」

 

 

「7500メートルってマジかよ!」

 

 

「個性思いっきり使えるんだ!! さすがヒーロー科!!」

 

 

 

「…………面白そう、か」

 

 

 

盛り上がっていたクラスメイトを尻目に、相澤先生の纏う空気が変わる。これは、凄い気迫だ。

 

 

 

「ヒーローになる為の三年間、そんな腹づもりで過ごす気かい?よし、トータル成績最下位の者は見込み無しと判断し、除籍処分としよう」

 

 

 

「じょっ!?」

 

 

 

入学1日目だというのに、まさか除籍勧告を受けるなんてね。誰が予想していたでしょうか。いえ、普通の考えなら、まず思いもしないだろうけれどね。

 

それにあの目、彼は嘘などついていない。相澤消太は合理的主義者だ。この人はそれが不合理なら簡単に切り捨てる。だからこそ、これは本気で最下位を除籍するつもりだ。……この人なら確実にやりかねない。

 

 

……やっぱり。去年のA組、つまりいまの2年生が全員初日早々除籍処分をくらったという噂は本当のようだ。最初はいくら彼でもそこまでしないだろうと思い半信半疑だったが、これで確証がもてた。

 

――これは、本気でやらなければならないね。

 

 

 

「生徒の如何は俺たちの“自由”。ようこそこれが―――雄英高校ヒーロー科だ。」

 

 

 

ニヤリと笑う相澤先生。彼の笑みでクラスのみんなが固まる。

 

ふむ。除籍になるつもりなどさらさらないけれど、それでも油断せず、気を引き締めないとね。

 

ふと影狼を見ると、可哀想なほどガタガタと震えていた。隣にいた百ちゃんが子をあやす様に撫でている。私はそんな彼女をみて嘆息をつく。

 

そして影狼と同様、周りの空気も引き締まり、全員の緊張が伝わるようであった。



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4話

先週ぶりににハーメルンを開いて、次作を作ろうとここを開いたら、前に投稿してたと思った話が投稿出来ていなくて慌てて投稿(´・ω・`)

予約投稿で、先週の土曜日に投稿したつもりが出来てなかった…………バックアップ……とってて良かったぁ(´;ω;`)


まず初めの競技は……

 

 

【第一種目 50m走】

 

 今の所のトップは飯田くんの3.04秒だ。

 

 それはともかく、自分は50m走をどう走るべきかと一瞬悩むが、結局のところ狼型の個性持ちである自分には普通に走ってと特に問題ないと判断し準備をする。隣には影狼がいる

 

「椛ちゃん。今日こそ勝たせてもらうよ!」

 

「ふふ、なら私は今回も勝たせてもらうわ」

 

 『ヨーイ』と聞こえ、は構える。スタートの合図と同時に2人は走り出した。

 

 

 

結果、50m走  

 

幻獣椛  2.58秒  

幻獣影狼 2.59秒。

 

 

「ああああ! また負けた……次こそ勝ったと思ったのにぃ!」

 

「ふふん。そう簡単に負けてたまるものですか」 

 

 

私と影狼は歩きながら話をする。そう、私たち姉妹はこのような訓練や体育などの運動時に、いつも競争をしているのだ。理由は多々あれど、1番の大きな理由は単純にその方が楽しいからだったりする。

 

 

 【第二種目 握力】

 

これには腕を複製した障子くんが540㎏の記録を叩き出していた。思わず、あの副腕は見た目によらず凄まじいんだなと思った瞬間でもある。

 

ちなみに私は53kg、影狼が32kgだった。私達は狼男ならぬ、妖怪の狼女なので多少なりとも筋力はある。私は武器の関係上、筋力はないとキツイのでこれくらいが普通だ。影狼は普段は素手なので筋力は余りない。ちょっとした情報なのだが、家のお父様とお爺様は両方とも800キロを軽く超えるらしい。

 

 

 

 【第三種目 立ち幅跳び】

 

 これは得意な科目だ。私たち姉妹は幼き頃から家の敷地内にある大森林を庭とし遊んでいて、森の中を駆け回り飛び回ってもいた。文字通り、木と木の間をジャンプしながらね。だからこそ、足腰には自信があるのだ。とは言っても、さすがに空を飛べる人には勝てないけどね

 

 結果 87m あと少しで100mに届きそうだ。

 

 

 

 【第四種目 反復横跳び】

 

 ここでは流石に活躍出来ないわ。いくら足腰鍛えようとも、あのぶどう頭の人には勝てなかった。あと、競技中、こちらをガン見する彼の視線が気になってしまい、あまり集中ができなかったりもする。

 

結果は163回しかできなかった

 

 

 

 【第五種目 ソフトボール投げ】

 

 ここで浮遊個性を持つ麗日さんが無限の大記録を出し、爆豪もまた700m超えの記録を出した。

ちなみに私は先程投げた7500mを少し超えて、7525mが最長となった。

 

「次、緑谷、お前だ投げろ」

 

 複雑な表情で緑谷くんは位置に付く。彼は増強型だというのにいまの所成績に目立つモノは無い。このソフトボール投げ以外の競技は持久走、上体起こし、長座体前屈。そろそろ大記録と呼べる記録を叩き出さないと、最下位となる生徒は彼となってしまうだろう。と言うより彼ならする。

 

緑谷くんが投げた……

 

結果、ソフトボール投げ(1回目) 緑谷出久 46m

 

 

「な…今確かに使おうって…」

 

 

 絶望した表情で彼は呟く。そんな彼を相澤先生は髪を掻き上げ、そんな姿を“視ていた”。

 

 

「個性を消した。つくづくあの入試は合理性に欠くよ。お前のような奴も入学できてしまう」

 

 

 

「消した…!あのゴーグル…そうか!視ただけで人の個性を抹消する個性!抹消ヒーロー・イレイザーヘッド!!」

 

 

 

 

 

 イレイザーヘッド、有名なヒーローではないが、個性を消す個性を持っている武闘派のヒーローだ。テレビに出ない理由は面倒臭いのと、いつもの合理性に欠けるからだそうだ。ちなみにドライアイである。あと、家によく遊びに来る人でもある。

 

 

「個性は戻した…ボール投げは2回だ。とっとと済ませな」

 

 

 相澤先生から指導を受けていた緑谷くんは解放され、2度目のボール投げに向かう。暗い表情でブツブツと何かしら呟きながら円に入る緑谷くん。思いっきり振りかぶり……

 

 

 

「SMASH!」

 

 

 

 かけ声と共にボールをブッ飛ばした。結果は700m超えの大記録。おぉ…やるではないですか。

 

 

ただその代わり、彼の指は紫色になるほど変色しており、大怪我をしている。あれは完全に折れている……いや、折れているなんて生温いものじゃないね。

 

 

 

「先生…! まだ…動けます」

 

 

 

 そんな緑谷くんは指の痛みに涙を浮かべるが、変色して腫れ上がった人差し指すらも握り込み、力強い拳を作って相澤先生にアピールする。相澤先生も思わず目を見開きニヤリとする。しかし……

 

 

 

「どーいうことだ!ワケを言え!デクてめぇ!」

 

 

 

 そこに一人ブチ切れた爆豪くんが右手を爆破させながら緑谷くんに襲いかかる……が、一瞬で相澤先生に捕縛された。

 

 

 

「炭素繊維に特殊合金を混ぜ込んだ捕縛武器だ。ったく、何度も個性使わすなよ・・・俺はドライアイなんだ。時間がもったいない、次、準備しろ」

 

 

『もったいねぇ……』

 

 

きっと、このクラスの皆はこの気持ちがひとつになったのだろう。私たち幻獣姉妹だって、初めて聞かされた時そう思ったぐらいだから。

 

 

 最後にももちゃんが大砲を作り、ボールを撃ち出して28kmという大記録を叩き出した。ももちゃん…

 

 

 

長座体前屈と上体起こしはとくにこれといったか記録はないので端折るよ。

 

 

 

 【最終種目 持久走(5km)】

 

 

 

「見ての通り雄英はグラウンドもでかい。カラーコーンを置いたレーンの外周は1周1kmある。5周走れ。他の奴を妨害するなよ。周回数のチェックは機械がしているから、ずるは出来ねぇぞ。準備いいか?位置について、スタート」

 

 

 

 皆一斉に走り出す。やはり速いのは『エンジン』の個性を持つ飯田くんだ。続いて轟くんや爆豪くんなど、身体能力と個性に優れた生徒が後に続く。まぁ、持久走なんてそんなものだ。特に飯田くんなんかはヒーローの家系で兄でプロヒーローがいるからと、彼の個性もあり持久走などの走る競技と体力のいる競技は鍛えているため得意だそうだ。

 

ちなみに私と影狼は勿論トップを争っているぞ。

 

 

 

 しばらく走っているとエンジン音がした。まさか飯田がもう周回して後ろから追いついたのかと思ったが、どうやら違った。

ももちゃんが原付バイクに乗って疾走しているのだ。わざわざヘルメットまで作っているところは相変わらずももちゃんらしい。

 

 創り出すのに時間がかかったようであるが、十分遅れを取り戻すスピードで原付に乗ったももちゃんは次々と華麗に抜き去って行った。彼女は握力測定では万力を作り出し1.2tトンの大記録を、ソフトボール投げでは大砲を作り出していた。個性『創造』、かなり利便性の高い個性である。正直に言うと羨ましいとは思うが、その為にはプロヒーローの1人であるミッドナイト同様、肌色成分の多い衣装じゃないと個性が発動できない。何故なら身体から出てくるということは、上から服を来ていたら服の中で出てきちゃうからだ。ただ、それ以上にエネルギーを使うので多様は出来ないのも欠点だろう。

 

 

 

 『流石にありゃ反則だろぉ!?』と誰かが相澤先生に訴えるも、相澤先生は問題なく許可していた。だってこれはあくまで"個性を使った体力測定"。これも一つの個性の使い方なのだから。

 

 

そうして走り終わった結果が……

 

1位 幻獣椛  2位 幻獣影狼  3位 飯田天哉

 

 

 

 残念なことに惜しくも、ももちゃんは飯田くんに追いつけなかった。彼の個性が『エンジン』というスピード特化である以上、いくら原付が速いとはいえ、最初からフルスピードで走っていた飯田くんには追いつけない。むしろ、後から来てよくくいついたと言うべきだ。最初から原付で走っていれば間違いなく追い越していた筈だ。

 

昔と比べれば創造の速さは随分と早くなったが、まだまだのようだねももちゃん。

 

 

 

 

 これをもって全種目を終了――。トータル最下位が除籍となる運命の時。20名全員が集められ、その前に相澤先生が立つ。ふと近くにいた緑谷くんの顔を見る。彼の顔ははすごく暗い。何故なら、結局彼はソフトボール投げ以外で好記録をマークする事が出来なかったからだ。贔屓目抜きでみれば恐らく…彼が最下位だろう。

 

 

 

「んじゃ、パパッと結果発表。トータルは単純に各種目の評点を合計した数だ。口頭で説明すんのは時間の無駄なので一括表示する…ちなみに除籍はウソな。君らの最大限を引き出す、合理的虚偽」

 

 

『はーーーーーーー!!!!?』

 

 

 

 相澤はハッと鼻で笑いながら結果を表示する。その言葉に多くが叫ぶ。特に緑谷くんの顔が凄いことになってる。彼にはしつれいだが、思わずクスリと笑ってしまった。

 

そんな結果になって不満たらたらなクラスメイト達、しかし、ももちゃんなど一部の生徒はソレに気付いていたようだ。

 

 

 

「あんなのウソに決まっているじゃない…ちょっと考えればわかりますわ……」

 

 

 

「そゆこと。これにて終わりだ。教室にカリキュラムなどの書類あるから目ぇ通しとけ」

 

 

 

 そう言って相澤先生は緑谷くんに保健室利用届けを渡すとその場から去って行った。皆は呆然としていた。

 

 

 

(…ウソ…ねぇ………相澤さんの"その言葉"こそが嘘だのに。まぁ、良かったね緑谷くん)

 

 

私はそんな事を思いながら、白く石になって固まっている彼を見つめるのだった。ちなみに総合順位は私が一位だった。僅差で同率2位の影狼とももちゃん。あとは想像通りかな。

 

 

 

放課後、私は教室でももちゃんと話していた。

 

「学園で、しかも入学当日に退学なんて普通は有り得ませんわ。少し考えればわかりますもの」

 

そうももちゃんが言うが、私はそれに修正を入れる。

 

「実はねももちゃん。あの人……相澤先生は一度やると言ったらやるよ? それこそ、彼にとって余程の事が起きない限り早々その発言を変えるつもりは無い、言わば頑固者。現に、それでいまの二年生。それも私達と同じA組が除籍処分をくらって一クラス丸々無くなってるんだよ?」

 

『え?』

 

私がそう言うと、残っていたクラスメイト達が一斉に声を揃えて驚いていた。……あれ? 皆聞いてたんだ

 

「も、椛ちゃん。そ、それは本当の事ですの?」

 

「うん。ホントも本当。なんなら私の家名に賭けていい」

 

「………」

 

私は自信満々にいい、ももちゃんはそれが本当の事なんだと理解したのか停止していた。

 

「通算除籍指導数154回。既に7クラス分は見込みなしと切り捨ててきてるの。これはお父様からも、そしてご本人からも聞いているから間違いないわよ。端から見れば冷徹な男と見えるけれど、あの人が除籍する人達って聞いたところによるけどヒーローになった所で長続きしない人や、そもそもがヒーローの器ですらない人達ばかりだったの。

今の時代、ヒーローはただの職業と成り果ててるけれど、でもやっぱりヒーローの本質はあくまでサービス業だから資格のない人がヒーローになった所で社会の迷惑になってしまうからね。だからこそ、あの人はそれがわかっているから厳しくふるい落とすのですよ。」

 

私はそういい終えた。

 

「……驚いたわね。それより、今日の朝から気になっていたんだけれど、幻獣椛さんと八百万百さんは随分仲良しだけれど、お友達なの?」

 

すると、私たちに問いかけるように蛙吹梅雨さんが聞いてきた。

 

「うん、そうなんだよ蛙吹さん。私と影狼は隣にいる八百万百ことももちゃんと幼い頃から幼馴染なんです。それも家ぐるみで随分と古くから…ね」

 

「そうなんです。私と椛ty――椛さん、影狼さんは昔から八百万家と幻獣家と家同士のお付き合いがございまして、こうして幼馴染としてご一緒させていただいています。私の、大切な大切な親友ですわ!」

 

隣にいるももちゃんは鼻息をフンスとだし、少し興奮気味で言い切った。

 

「わうう…ももちゃん、恥ずかしぃよ」

 

ももちゃんの反対側にいた影狼は、顔を真っ赤に染め両手で隠しながらイワンイヤンと言わんばかりに顔を左右に振っていた。かく言う私も少々恥ずかしい。顔は赤くなっていないでしょうか?

 

「もう、ももちゃんったら……あ、そう言えばまだ私も自己紹介していませんでしたね。では、改めまして。

私の名前は、幻獣椛。幻獣家の五女で、そこにいる影狼とは双子の妹になります。そして、影狼を除けば上と下にそれぞれ三人ずつ姉妹がいます。全員で8人姉妹です。呼び方は皆様のご自由に及びください。この3年間、姉共々よろしくお願いしますね」

 

「わ、私の名前は、幻獣影狼。椛の双子の姉です。私の読み方も椛ちゃんと同じで好きなように呼んでね?

あと、えーと……うぅ、よ、よろしくお願いします」

 

私と影狼はそれぞれ自己紹介をし、軽くお辞儀をする。

 

「そう。なら私もするわ。私の名前は蛙吹梅雨。下に弟1人と妹が2人いるわ。私の事は梅雨ちゃんって呼んで?」

 

蛙吹さん……いえ、梅雨ちゃんが右手を差し出しながら自己紹介をしてくれた。

 

「ええ、こちらこそよろしくお願いします。梅雨ちゃん」

 

「よろしくね!梅雨ちゃん!」

 

私と影狼は梅雨ちゃんの手を握りながら挨拶をした。

 

そのあとは、残っていた何人かのクラスメイトと軽く自己紹介をしながら、この雄英高校での初日は幕を下ろしたのでした。

 

 

――――――――――――――――――――――

 

 

翌日。

 

 今日から授業がはじまります。午前の授業は特にこれと言った事はなく……いえ、嘘を着きました。

やはり雄英高校らしく現プロヒーローの人達が教師をするという一般人からとても羨ましく思われそうな授業を終え、現在は昼休み。みんな思い思いに過ごしながら、教室にいる私は影狼と百代の3人でお昼ご飯を食べていた。

 

「この後の授業……楽しみですわ」

 

「ももちゃん。何が楽しみなの?」

 

「それはもちろん……あの、オールマイトが先生として授業をするからですわ!」

 

そう、次の授業は、あのNo.1ヒーロー オールマイトが先生として私たちが授業を受けるのだ。オールマイトらしく実技らしいのだが、私は少し不安だ。

何故かって? ふぅ……理由は簡単です。あの人は、おっちょこちょいだからだ。あの人は元気はいいのだが、普通の話や敵(ヴィラン)が関わらない行事などになると変に空回りする時が多く、何かしらやらかさないか私は不安で仕方がない。何せ、家に来る度、お世話になるならばと手伝ってくれるのは嬉しいのだが失敗する回数が多いのだ。だからこそ、不安も出てくるというものです。

 

ふと影狼を見ると、影狼も顔が少し強ばってる。恐らく、考えていることは同じでしょうね。

 

そんなこんなで、お昼休みは過ぎていった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

午後のヒーロー基礎学の時間。

 

 

「わーたーしーがー!!! 普通にドアから来た!!!」

 

 

 

 そこには、みんなの憧れるトップヒーロー。オールマイトがシルバー時代のヒーロースーツで入ってきた。みんな画風が違うだの、本物だの、とても賑やかだ。

 

 

そんな中、私はオールマイトがまたポカをやらかさないか心配で少しハラハラしている。私のいまの心境を例えるならば、おっちょこちょいな子を見守る母親だ。

 

 

「ヒーロー基礎学! ヒーローの素地を作る為、様々な訓練を行う課目だ!! 単位数も最も多いぞ!」

 

 

…………今のところは問題ないかな。

 

 

 

「早速だが、今日はコレ!! 戦闘訓練!!」

 

 

 

 その言葉にざわめくクラスメイト達。みんなの表情から感情を読み取ると、いきなりかという緊張と、ようやくかという興奮が伝わってくる。みんなそれ程までに楽しみにしていたようだ。

 

 

「そしてそいつに伴って、こちら!! 入学前に送ってもらった個性届と要望に沿ってあつらえた……戦闘服コスチューム!!!」

 

「「「「「おおお!!!」」」」」

 

 

 

 その言葉にさらにざわめくクラスメイト。今度は完全に期待と興奮が緊張を押し退けたようだ。みんなはまだまだ子供ね。

 

 

「着替えたら順次グラウンド・βに集まるんだ!!」

 

「「「「「はーい!!!」」」」」

 

 

 

 そうして男女別れて更衣室に移動しようとコスチュームを手に持ち、まだ席に座っていた影狼に声をかける。

 

 

「ほら、影狼。さっさと更衣室に行くわよ………………影狼?」

 

 

影狼から返事が来ない。私は不思議に思いながら影狼をよく観察すると

 

 

 

「…………」( ˇωˇ )

 

 

―――イラッ

 

 

スパァァァァァァン

 

 

「わふッ!!?」

 

 

私は無言で影狼の頭を本気で叩いた。凄まじい音と共に影狼が目を覚ます。……全くこの子は、なんで爆睡しているのだろうか。通りでいつも以上に静かだと思った。

 

「い、痛いぃ…」

 

「ほら、さっさと立って! 授業に遅れる」

 

私はついでに取っていた影狼のコスチュームも持ち影狼の腕を引っ張りながら更衣室へと向かう。

 

更衣室では、もう、私たち姉妹を除いた他の女子達が着替えを始めていた。

 

私たちもそそくさと慣れた手つきでコスチュームに着替え、装着し終えたところで麗日さんが声をかけてきた。

 

「わ~椛ちゃん、その衣装かわいいね!巫女服なのかな? 何より椛ちゃんの髪色にすごく合ってるよ! 黒と赤色のスカートに紅い紅葉が刺繍されているんだね。椛ちゃんだから紅葉なのかな?」

 

 私のコスチュームは全体的に黒白で半分づつに別れており、巫女服風で下は膝下まで隠れるロングスカートとなっている。巫女服風の上半身はお腹が隠れる程度の長さで、軽く飛べばおへそが露出してしまう程。普通の巫女服と違い肩と脇は出ていて、袂を含めた袖口部分は二の腕辺りから紐で括られ固定されている。所々紅い紐が白衣に線状となって色合いのアクセントとなっている。

下半身は黒を下地に紅い紅葉が刺繍されているロングスカート、足に伸縮性耐火耐水耐湿性等などの色んな性能がある抜群の万能ニーソックスに下駄という、和の古風を意識した作りになっている。

 

姉様曰く私の白い獣耳尻尾の獣っ娘な容姿にプラス和風の衣装のおかげで、獣耳巫女さんが出来てすごく萌える(誤字にあらず)らしい。途中から、何を言っているのかわからなかった。

 

「ええ、まぁ、私の名前の由来ですからね。それに私も紅葉は好きですから。あと、巫女服風の衣装になりますね。一応、実家では巫女も務めていますがね」

 

私は初めてこの衣装を来た当時の鼻息を荒くした藍姉さんの顔を思い出しながらも、麗日さんの疑問に答えていた。

 

「へぇ〜、そうなんだ! 影狼ちゃんの衣装は……カッコイイね! でも、椛ちゃんがソレなら、何かしらの意味があるのかな?」

 

「うん!あるよ! 私のはね、この白い部分が月を表していて、赤色の部分は紅い夜空を表してるの! ほら、よく昔から狼と月って関係あるでしょ? 狼男なんて満月になると変身する〜みたいな。それで、私は狼は狼でも、影を操る狼。だからこそ、よりミステリアスな紅い月と夜空をイメージした服でより一層、影狼としての妖さを出してるの!」

 

「おお!そんな意味があったんだね!」

 

「ちなみに、これはここをこうして広げると……ほら! 満月になるでしょ?」

 

「ホントだ〜! すご〜い! どこで作ってもらったの!?」

 

影狼が興奮しながら麗日さんにコスチュームを教えているので、最後の質問に私が答えた。

 

「はい。私の実家では専用の発明家さん達がいますので、コスチュームや道具などは基本その方に頼んでいますよ」 

 

「おお〜! いいなぁ〜、私も専属とか欲しいなぁ」

 

「そうですね。あのオールマイトも専属の発明家……と言うよりはパートナーがいるみたいですし、麗日さんもプロヒーローになればきっと専属が着きますよ。私だってあくまで専属は家なので、私個人の専属じゃないですしね」

 

「麗日ちゃんもかわいいよ……ていうかカッコいいぞ!」

 

「ありがと~。でも、要望ちゃんと書けばよかったよ……。パツパツスーツんなった……」

 

 「はずかしい」と小声で呟いたのが聞こえた。

 

 

まぁ、確かにかなりパツパツ具合ですね。色々と強調されています。

 

 

「要望を出して先生に頼んだらきっとどうにかしてくれますよ。一度、頼んでみてはいかがです?」

 

 

「そうだね……うん! そうする!」 

 

 

 

 

 そんな問答をしながらもグラウンド・βへ移動する私たち。ついたそこはグラウンドとは名ばかりのビル群だった。

 

 入試会場もそうだったけど、雄英はこういうのにお金かけすぎだと思うのは私だけだろうか。

 

「ふわ〜……すっごいお金かかってそう! この広さ軽く見ても億は超えるかな?」

 

うん。影狼の言う通り軽く見積ってもそれぐらいはくだらないだろう。それ程までに広大なのだ。外見だけならともかく、運動場と同じ実技をする場所として作ったのなら恐らく中身も凄いのだろう。

 

 

 

そして、ここに入って来た時から気になっていたのだが、ブドウの様な頭の人の視線が鬱陶しい。……確か、名前は峰田実…でしたっけ?

 

――いえ、私だけじゃないですね。彼に気づかれないようによく観察すると、奴の視線は全ての女子の間を行ったり来たりしながら、一人一人舐めるように観察していました。

 

 特に露出が激しいももちゃんやパツパツスーツの麗日さん、そしてこのクラス内では胸が大きな私やももちゃんの次に大きい影狼に送られる視線が半端ない。

 

私はさりげなく彼の視線から影狼を守るように立つ。彼は一瞬悔しそうな、残念そうな表情を作るが、嬉嬉として今度は私の胸部や尻部をジロジロと目に穴が開くのではないかと言うぐらい、目を見開いて血走った眼で私を凝視していた。と言うか、視線がよく見た変態の視姦と同じ目をしている。

 

いままで男性に会う度あったので少しは慣れたものだが、正直かなり辛い…。でも、影狼を守る為ならこれくらいなら大丈夫。少なくても彼は視姦だけで実力行使に映らないだけでも随分マシな方だからだ。

 

 そんな精神攻撃を受けている中、他の皆にちょっと遅れて緑谷くんがやって来た。

 

 ジャージっぽい服に、特徴的なマスクを付けたコスチュームを着てる。

 

……それにしても、あのマスク、随分と分かりやすいのですね。

 

 頭の部分の角みたいなパーツが、オールマイトの髪型を意識してるのが一目で分かる。

 

オールマイトの後継が緑谷出久くんだということは知っているのと、彼がすごくヒーローオタクでオールマイトの大ファンだと言うことも知っている。だからこそ彼を意識した衣装に思わず笑みが出てしまう。何だか、ヒーローに憧れる純粋無垢な少年って感じが出まくっていて可愛く見える。と言うより、すごく微笑ましい。きっと、彼のお母様も微笑ましそうに見ていたのだろう。

 

かく言うオールマイトも、『わかりやす!』といった感じで口に手を当て視線を逸らしていた。ほら、バレてるよ?緑谷くん

 

「おお! 出久、カッコイイよ!」

 

「あ! デクくん! かっこいいね! 地に足ついた感じ!」

 

「影狼さん、麗日さ……うおおお…っ!」

 

 緑谷くんの目が、影狼と麗日さんのコスチュームを見て見開かれる。

 

 特に胸に。まぁ、目のやり場に困るのも納得です。麗日さんも影狼も胸部は強調されていてすごくわかるものね。

 

 

「ヒーロー科最高」

 

「ええ!?」

 

 

 

 峰田くんが緑谷くんに近づいて何事かほざいていた。

 

 

私は思わず、影狼と麗日を守る為にスっと前に出た。

 

「も、椛ちゃん?」

 

「椛さん?」

 

影狼と麗日が何か言っているが、今は無視する。何故なら、私の役目は彼女達を汚らわしい視線から守る為だから。

 

 

「さて、みんな揃ったようだね。――さあ、始めようか有精卵共!!! 戦闘訓練のお時間だ!!!」

 

 

 

 その一言で、オールマイトの教師としての初めての授業が始まった。私としてはこの授業はぜひとも成功させてあげたい。と言うよりは、お父様にオールマイトのサポートをしてくれと頼まれた。私も失敗して落ち込むオールマイトやガッカリするクラスメイト達を見たくないので影ながらも、できるだけ且つバレないようにサポートに徹しよう。

 

そんな事を思いながら、私たちの初の実技授業が始まろうとしているのだった。



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5話

やっはろー! かなり遅れて投稿デース! 久しぶりにゲームにハマり、仕事が忙しいのもあったけれどそれ以外の時間をほぼゲームにそそいだらいつの間にか1年経ってたww びっくりだねww これからは最低でも一月に1話は投稿したいなぁ。できるかな? いや、頑張ろう。そろそろストック増やさなきゃなぁ。アニメばっかで単行本が18巻で止まってるぞ。

さて、それは置いといて・・・・最新話を〜
(*ノ・ω・)ノ⌒。ぽーい

それでは、ゆっくりしていってね!


「今回の授業は戦闘訓練だ!」

 

なるほど、早速対人戦の授業ですか。まあ、今日は初日なので流石に細かい設定はされていないでしょうがそれでも、ある程度の設定は決まっているはずですね。

 

 

「各自くじ引きをして、引いた文字と同じ文字のクラスメイトがチームとなる。それぞれ敵チーム、英雄チームに別れて、戦闘を行ってもらう!設定はこうだ、ある敵が核爆弾を街にセットした!英雄チームはそれの排除をしてもらう!敗北条件はそれぞれ、捕縛テープを巻かれるか、英雄チームが、核爆弾にタッチすれば、英雄チームの勝利となる!」

 

 

 

 

 

 

 

…昔見た漫画みたいな設定ですね…

 

 

 

 

 

「・・・・・わう?つまりどういう事、椛ちゃん」

 

 

オールマイトの演説(カンペを見ながら)が終わる。すると、影狼が私の隣に来てコソコソと小さな声で話しかけてきた。・・・・・まだ寝ぼけているわねこの娘。

 

―――はぁ、全く仕方がないんだから。

 

 

私は常に懐に忍ばせていたメモ帳(耐熱耐水防弾仕様のにとり製)とペン(同じくにとり製)を取り出しながらスラスラとまとめたものをノートに書き写していく。

 

「――とりあえず、紙に書くよ?

簡単にまとめると・・・・こうね・・・・・・

『①くじ引きをする、クジを引いた番号と同じ人とチームを組む。二人一組のチームでヒーロー役とヴィラン役になり、それぞれの勝利条件を満たせば勝ち。

 

 ②ヒーローはヴィラン二人を捕獲テープで確保するか、ヴィランが仕掛けた核爆弾に触ることで勝利。

 

 ③ヴィランはヒーロー二人を戦闘不能にするか、核爆弾を制限時間守り抜けば勝利。

 

 ④戦場は屋内戦を想定。しかし、両者とも、戦場となる建物への被害を最小限に抑えること。一定を超えるとその時点で判定負け。戦闘訓練であるが、明らかな危険行為であると監督官(オールマイト)が判断した場合、そこで強制中止。

 

 ⑤ヒーロー側はスタートの合図から五分後に行動が出来る。ヴィラン側はその五分間、直接攻撃以外のあらゆる行動が可能。

 

⑥なお、核は本物と想定して行動擦ること』

―――以上が今回の訓練の内容よ」

 

 

書き写したメモを影狼に渡す。クラスメイト達がオールマイトに質問しているようだが、私はそれよりも影狼が不甲斐ないから丁寧に答える。べ、別にすごく心配だから書いた訳じゃないんだからね!

 

 

「ありがとう、椛ちゃん。・・・・・・一緒のチームに慣れるといいね」

 

 

影狼がハニカミながら私にそう言ってきた。

 

 

「・・・・・・・・・・そうね」

 

 

私はそんな事があればいいなと少し楽しみにしながら答えるのだった。

 

 

 

 

 

とうとう、くじ引きの時間だ。クラスメイト達はみんな次々に引いていき少しずつチームが出来上がっている。もうすぐ私と影狼の順番が回ってくる。因みに影狼が先で私は後だ。

 

 

「わうっ! 私はこれ!」

 

 

どうやら影狼が引いたようだ。では私もちゃっちゃと引いちゃおう。

 

 

「椛ちゃん!いっせーのーでで引こうよ!」

 

 

影狼が楽しそうにそう提案してきた。今は授業中なのだが、他のクラスメイトたちも似たような感じだし、何よりオールマイトが微笑ましそうに見ているので構わないのだろう。

 

 

「わかったわ」

 

 

「じゃ〜、いくね? いっせーのーでっ!!」

 

ペラ――

 

 

私と影狼のナンバーは・・・・・

 

 

「「・・・F」」

 

 

―――どうやら一緒のチームのようだ

 

 

「やったね椛ちゃん!一緒のチームに慣れたよ!!」

 

 

影狼が私に抱きつきながら嬉しそうにそう言った。ブンブンと尻尾が揺れているので相当嬉しいのだろう。

 

 

「そうね、私も一緒になれて嬉しいわ。頑張りましょう? 影狼」

 

 

「うん! 頑張ろうね、椛ちゃん!」

 

 

私と影狼は笑顔でそう言い合ったのだった。

 

――なお、そんな2人の様子を見ていたクラスメイトの反応は、影狼の尻尾はブンブンと勢いよく揺れ、椛の尻尾はゆらゆらと、しかし嬉しそうにピンと上に張って揺れていた。そんな2人の様子をある低身長の男子生徒が『キマシタワー』とボソッと呟き、その呟きを聞いた彼の周りの男子生徒もウンウンと頷くのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いま、私たちの目の前には、フィールドとなるビルの地下、そこにモニタールームに集まった十七名の生徒と一人の教員は、一組目の開始を待っている。

 

 30はあるモニターに映し出された、ビル各所の様子。その内二つのモニターに映る、言い争う二人と相談する二人を眺めていた。

 

 

 

 

 

「――まるで水と油ね。爆豪さんと飯田くんは」

 

 

 

「わふ。どっちが油でどっちが水か、多分満場一致で決まるね。でも仕方がないよ、あの飯田くんだもん。委員長気質の彼が、あの見た目からしてThe不良といった感じの爆豪くんとそりが合わないのは見てわかるよ?」

 

 

「まぁ、その通りなのだけれど・・・・・あのまんまだと、将来プロヒーローになった時に苦労しそうね。もしかしたら見た目敵(ヴィラン)なヒーローランキングでトップ上位を貫いているギャングオルカさんを越えるかもね?彼は」

 

 

「あはは〜(^ω^;) いまのを見るのに否定ができないのが悲しいね椛ちゃん」

 

 

「・・・・・そうね。自分で言ってなんだけど、悲しいわね・・・・・・・・・・ま、まあ、流石に彼も変わるでしょう! ずっとあのままだなんてないわよ!きっとそうよ、ね?影狼」

 

 

「そ、そうだね!椛ちゃん」

 

 

私と影狼は小声でそんな話をしながらモニターを見ていた。

 

 対して、ビルの外で相談しているのは緑谷・麗日ペア。チームワークにポイントがあったとしたら、すでに圧倒的大差が生じているだろう。彼と彼女はどうやら試験会場で一緒の会場だったらしく、後で先生に聞く話によると、固まって動けず例の0ポイントの巨大ロボットに潰されそうになった所を助けてもらったそうだ。しかし、彼はその反動で腕と両足が砕け、墜落しかけたところを麗日さんが個性で救出。しかし、緑谷くんはポイントが殆どなかったらしく動こうとしたがその瞬間に試験が終了してしまったそうだ。そのあとは麗日さんは先生にポイントを彼に分けれないかと相談したが却下。そんな事をしなくてもいいと言われながら、1週間後の通知発表が来てから更に日がたった入学日に、また再開、それも同じクラスでしたようだ。

 

そんな感じで何やかんやで今のところ一緒に行動する事の多い彼らだが、果たして爆豪と飯田ペアに何処まで対応できるのか楽しみですね。

 

 

 

因みになぜ今回このような形式で授業をする事になったのか聞くと、「世間では知らないプロヒーローと一緒に仕事をする事なんでざらにある事だ。あと現場に行ったら『他のヒーローがいる』なんて事もよくあるんだよ。だから、私たちは常に臨時チームを組む事も想定していないといけない。無論、その時に個性の把握もしないと場合によっては足を引っ張る可能性もあるから、どんな状況でも臨機応変に対応する能力を鍛えるのが、今回の授業の目的なのさ!」と、いつもの笑顔で言われた。とてもいい事を言っているので先生しているなぁーと思ったが、カンペをチラチラと見ながらだったのでそれが無ければ本当にカッコよかったと惜しむのだった。 

 

 

 

 

 

 

 

戦闘が終わり、緑谷くんが保健室へ運ばれていく。モニタールームに戻ってきた爆豪くんは視線が定まらず、動揺しているようだった。講評の時間となり、オールマイトがモニターの前に立ち、咳払いをした。

 

 

 

 

 

「ゴホン……さて、それでは今戦のベストを発表しよう。今戦のベストは――飯田少年だ!」

 

 

 

 

 

オールマイトが手の平で示した飯田を見て梅雨が首を傾げた。

 

 

「勝ったお茶子ちゃんか緑谷ちゃんじゃないの?」

 

 

「ん~そうだな~何故だろうな~…わかる人!!」 

 

 

オールマイトの言葉に、ハイ――と透き通るような声と共に百が手を挙げた。

 

 

「飯田さんが一番状況設定に順応していたからです。爆豪さんの行動は戦闘を見た限り私怨丸出しの独断、そして先程先生がおっしゃられていた通り、屋内での大規模攻撃は愚策。緑谷さんも同様…受けたダメージから鑑みても、あの作戦は無謀としか言いようがありませんわ。麗日さんは、中盤の気の緩み、そして最後の攻撃が乱暴すぎた事…ハリボテを核として扱っていたらあんな危険な行為は出来ませんわ。相手への対策をこなし、核の争奪をキチンと想定していたからこそ飯田さんは対応に遅れた。ヒーローチームの勝ちは、訓練だという甘えから生じた反則の様な物ですわ」

 

 

 

淡々と言葉を並べていく百ちゃんに周囲は黙って彼女の意見を聞いている。オールマイトに至っては寧ろどこか困っているようなそぶりさえ見せていた。多分言いたいこと以上の事を言われたのだろう。そういう顔をしている。・・・・・あっ、目があった。

 

「ゴホン。まさに八百万少女の言う通りだ!だから君たちも、それを踏まえた上で訓練をしたまえ! これは仮の訓練だが、あくまでも核を想定した戦闘訓練だ。いくらハリボテだと言え、それがもし本物だったら今頃ここら一体は火の海と化していただろう。君たちはまだ入学して2日目とはいえ、もう立派なヒーローの卵だ!よく考えて行動するように! わかったかな!?」

 

『はい!オールマイト先生!』

 

オールマイトの言葉に返事をするクラスメイトたち。なんだか勢いで言いきった気がするし、『ふー、何とか威厳を保てた』なんて表情をしている気がしなくもないけれど、まあ、見なかったことにしてあげましょう。

 

 

さて、次は私たちですか・・・・・相手は

 

 

「轟くんと障子くんですか」

 

 

ヒーロー側、轟焦凍・障子目蔵 私たちが敵(ヴィラン)側のようですね

 

 

「頑張ろう、椛ちゃん!」

 

 

「ええ、やろっか影狼」

 

 

さて、まずは情報の確認っと

 

 

「ヒーロー側の、戦う相手について話そっか。まずは……『轟焦凍』くんだね」

 

 

「私達の目線の先にいる赤と白の髪色の男子だよね? 確か〜、氷の個性ぽいかな? 個性把握テストで少し見ていたけれど、随分と個性の扱い方に凄く慣れてたもん。50m走とか氷を次々重ねて高速で移動してたよ?」

 

 

「……ねぇ、影狼。その後、轟くんが氷を溶かしている所を見た?」

 

 

私はある事が気になり影狼に聞いてみた。すると影狼は私の言いたい事がわかったのか、軽く頷きながら口を開く

 

 

「うん、見てたよ。作った氷に手を当ててジュワーって溶かしてたね。もしかしたら個性は氷系じゃないかも?そこの所どう思う?椛ちゃん」

 

 

私に近づきながら言う影狼。私は腕を組み少し考えながら口を開いた。

 

 

「うん。私もそうおもっているわ。これは少し父様に聞いた話なのだけれど、No.2ヒーロー、エンデヴァーっているでしょ? 彼、どうやらそのエンデヴァーの息子で、その事で有名だった。それに、自分を越える個性が生まれたとかなんとか話しているのを聞いたみたいなの。そこから考えられるのに、氷だけじゃ恐らくエンデヴァーは『自分を越える個性』だなんて言わないと思う。特に個性について自信とプライドが高い彼がそんだけの事でそんな事を言わないと考えると・・・・・・・・・・

轟くんもエンデヴァーの個性。つまり氷だけじゃなくて、炎熱系の個性も持ってるんだと思う」

 

 

「やっぱり、エンデヴァーの子供が推薦で雄英に入ったっていう噂はホントだったんだ。確かに椛ちゃんの言う通りなら納得かも」

 

 

「ええ。それに個性にはデメリットてのが付き物よ。とくにその個性が強力なほどに・・ね。そんな彼の氷の個性がデメリットなしだなんてありえないと思うの。私の感だけれども。恐らくデメリットとして、氷の個性を使えば使うほど自身の体温が低下するんじゃないかしら? 前の個性把握テストでの水蒸気を見る限り、出した氷の吸収なら水蒸気なんてもの出るはずないから、恐らくそれで氷を溶かしたり、低下した体温を温めたりする為に何かしらの熱系列の個性も持っている、いわゆる複合個性もしくは二属性個性といった所かしら?」

 

 

「なるほど、椛ちゃんの言う通りだと思う。私もその意見に賛成! わふっ。だとしたら、あの氷の個性の慣れ具合を見る限り、もしかしたらこのビル事凍らしちゃうかも?」

 

 

影狼がふとそんな事を呟いた。

 

 

「この五階建てビルを・・・ね。普通ならありえないと言いたいところだけれど、彼のテスト中の個性の慣れ具合と推薦組ということも加味すると―――全然ありえなく無いわね。むしろ、それぐらいならできそう。」

 

 

私はしばし考え、そして影狼に指示を出す。

 

 

「影狼、常に周りを警戒。恐らく轟くんみたいな人の場合、開始早々速攻で決めてくる可能性が大きいから常に耳と目を凝らして警戒を! 目視してから1秒以内に緊急離脱。天上に届かない程度にジャンプすれば避けられるはずよ。仮に凍っても完全に足が凍ってしまう前に全力で殴り壊しなさい! 多少強く殴ったところで私たちの肉体は壊れないわ、いままでそう鍛えてきたのだから! さぁ、影狼。私たちの特訓成果、みんなに見せてあげましょう」

 

 

「わふっ! 椛ちゃん、私も頑張る! いままでの特訓がどれだけ効果を出せなかったら母様や姉様達に怒られるから、そうならないよう頑張ろう!」

 

 

影狼が若干震えながらそう言った。その瞬間、私の脳裏に敗北した時、バレて捕まる私のビジョンが見えた。

 

 

「そ、そうね。そうならないよう全力で頑張りましょう!」

 

 

―――しばらくたち、とうとう時間がやってきた。そしてオールマイト開始の合図と同時に

 

 

「影狼!!」

 

「うん!」

 

 

 

フロアが全て凍りついた。

 

 

私たちは目視してから緊急回避したおかげで足が凍らずに住んだようだ。

 

 

「・・・・・わふぅ。やっぱり凍らしてきたね椛ちゃん」

 

 

「・・・えぇ、そうね。それにしても流石ね、ここまでだなんて予想外だわ。ご丁寧に5階へ上がる階段も、外へ出るための窓も全て凍っているわ。凍ってないのは階段の入口だけかしら?」

 

 

「・・・・・・・・・・それにしてもちょっと肌寒いね椛ちゃん」

 

「・・・・・ええ、そうね。雪山遭難時の特訓がなければ、いまの数十倍はもっと寒かったでしょうね」

 

 

ほんと、つくづく訓練を怠らず幼い頃から頑張っていたかいがあったわ。

 

「さて、影狼。身体をあっためるついでに動くとしますか。私が下に行く、影狼は核をお願いね?」

 

「わふわふっ! 任せといて! 絶対に阻止してあげるから」

 

そうして、私たちの戦いが始まるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―ヒーロー side―

 

 

「4階に核らしき物と2人の姿を確認。2人とも今は核と一緒にいるようだ」

 

「・・・・・わかった、開幕俺が入口から上全部凍らせる。それで決着が付く。」

 

 

「なに?そんな事できるのか…」

 

 

訓練が始まってすぐ、俺はパートナーの障子にそう宣言した。

 

この大きさのビルなら全域を凍らせる事は容易だ、直ぐに決着を付ける。忌々しい左も使う気は全くない。あの忌々しいクソ親父の力を使うこと無く完封する。あの獣姉妹がどんな個性か知らないが、見た感じ身体能力系に特化している個性だろう。そうなら俺の個性に対抗手段は無いはずだ

 

 

「・・・・・・・・・・よし」

 

 

俺は床に手を当て、右の力を使う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――その瞬間、文字通り一瞬で、ビルは氷漬けになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・ブザーが鳴らねえ。」

 

 

 

その後少し待ってもオールマイトからの通信もない。

 

相手が行動不能になれば訓練終了を告げるブザーが鳴る筈だ、それが鳴っていないという事は、ヒーローチームがまだ行動可能という事。

 

 

 

「障子、いいか。」

 

 

「なんだ轟、トラブルか?」

 

 

「悪い。直ぐ終わると思ったが、まだヴィラン側は諦めてねえみたいだ。警戒してくれ。あと、移動してるかもしれない、索敵してくれるか?」

 

 

「わかった」

 

 

障子が壁に耳を当てながら進んでいくと。

 

 

「4階に核と人が1人、三階にもう1人いるようだ」

 

 

「わかった。だったら、三階のは俺が相手する。4階の核を頼めるか?」

 

「わかった」

 

 

こうして俺と障子はビルの中へと入るのだった。

 

 

 

 

 

 

しばらく進み、とうとう目的地の1つ三階へ付き――

 

 

――ブゥン!

 

 

風切り音と共に、パラパラと前髪が何本か切れた

 

 

 

「あら、避けられちゃったか」

 

 

「・・・・・ちっ。障子、このまま上にいけ。ここは俺が食い止める」

 

「わかった」

 

そうして障子は上にいった。

 

 

「止めなくていいのか?」

 

 

「止めに行かせないでしょ?」

 

 

「あぁ、もちろんだ」

 

 

「だったら、ここであなたを倒して私は上に行くわよ。その方が手っ取り早いし」

 

 

「俺を倒せると?」

 

 

「倒せるか、倒せないかの問題じゃない。倒すのよ。それ以外はないわ」

 

 

そう言った彼女は構える。

 

 

「――始めましょうか? ヒーロー」

 

 

「ああ、お前を倒して先へ進む」

 

 

こうして俺達の戦いの幕が上がった




すみません! 結構短いです。次回が主人公戦闘回。上手くかけるといいな〜。


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6話

何とか、今年度中には投稿できたな。ふぅ・・・・・・危ない、危ない。なかなかリアルが忙しいこの時期。本当にしんどいのですよ〜。

あと先日がちょうど休みの日でしたので、ヒロアカの映画見に行ってきました・・・・・・・・・一言で申しますと、もう最高ですね。本当に今回の映画はテンションが上がります。それにしても、映画館にいたお客さんの殆どの人の感想が『圧倒的最終回』ですね。でも凄くわかるんですよね、これがww この意味は是非とも映画館に見に行ってください! この伝えたい意味がすぐわかりますので!

てなわけで、最新話を(*ノ・ω・)ノ⌒。ぽーい


それでは皆様、ゆっくりしていってくださいね?


 

打って変わって、4階の核エリア。そこには一人の少女―――影狼が耳をピンと立てながら静かに立っていた。

 

ピクピク

 

「・・・・・・わふ。椛ちゃんが戦闘を始めたみたいだね。――――ねぇ、そこに隠れているのはわかってるの。出ておいでよ、障子くん?」

 

影狼の言葉に続き、階段近くの柱の影から複製腕の個性を持つ障子目蔵が出てくる。彼は肩から生えた2対の触手の先端に、自身の体の器官を複製できるという個性の持ち主であり、見た目以上の力持ちでもあり入学式の時に測った体力測定では握力540kgを記録した程だ。そんな彼と影狼が今まさに激突しようとしていた。

 

 

「わかっていたのか」

 

 

「うん。だって私の個性は影狼――つまり、狼だよ? それぐらいの探知能力ぐらいはあるよ。狼の嗅覚、舐めないで貰えるかな?」

 

 

そう言いながら、影狼は爪を立て構えをとる。

 

 

「さて、妹も頑張ってる。だから―――こっちもやろっか? ヒーロー」

 

 

「・・・・・・!」

 

 

影狼の瞳が怪しく光る。

 

ここに、ヒーローと敵(ヴィラン)の戦いが始まった。

 

 

――――――――――――――――――――――

 

うって変わって幻獣椛VS轟焦凍。二人の戦いは静かながらも白熱しあっていた。

 

「―――シッ!!」

 

 

シュバッ

 

 

椛の鋭い爪が轟を襲う。

 

 

「・・・・・・ッ」

 

しかし、いとも容易く避けられた。

 

すると彼は、右足より冷気を放出するノーモーションの攻撃で、椛とその周辺を氷結させる。・・・・・・が、椛の脅威的なまでの身体能力から発する脚力で氷を一瞬で砕き爆散させた。そして彼女はその壊れた氷を蹴り砕いた方の足とは別の足で、回し蹴りの要領で脚力に任せて蹴り飛ばす。

 

強靭な脚力で蹴り飛ばされた氷は、鋭利な武器となり轟に向かっていくが、彼はそれを難なく氷の壁で防いだ。

 

轟は右手を振るい、今度は強めの氷結攻撃を仕掛ける。だがそれも一瞬で、殴り砕かれる。しかも氷は先程の蹴られた時よりも細かく粉砕され塵へと変わってしまう。霧のようにキラキラと砕かれた氷が宙に漂う中、『チッ』という轟の舌打ちが椛の耳にも届いた。

 

―――と、同時に氷の軋む音も拾う。

 

 

ピキンッ!

 

 

「よっ・・・と」

 

 

クルクルクルクル――――シュタッ

 

 

「ふぅ・・・・・・流石は推薦組。どうしてなかなか」

 

 

危なげなく回避し、綺麗に着地した椛はそう言いながらも汗ひとつかかず佇んでいる。

 

 

(いや本当、思っていたよりも地力が高い。能力もそうだけど、体術のほうも相当鍛錬を積まれていたようだ。いや・・・積まれたのではなく、積んだのかな?)

 

 

冷静に轟焦凍を観察する椛。

 

 

「お前こそ、やるじゃないか」

 

 

「ふふ、それはそうよ。伊達に鍛えてないわ」

 

 

そう言いながらも、椛は構えをとる。

 

 

 未だ本気では無い2人。対する轟も、自身の氷結攻撃を防がれながらも焦っていない。むしろ、戦いの中で椛の動きを観察していた。

 

 

「じゃぁ・・・・・・いくよ?」

 

 

「・・・・・・こい」

 

 

そんな言葉と同時に二人は激突した。

 

 

――――――――――――――――――――――

 

 

あれから数分たち、幻獣影狼と障子目蔵の戦いは派手になっていた。

 

 

「わおーん!『スターファング』ッ!」

 

 

カブッ!

 

 

「クッ・・・・・はぁ!」

 

 

腕に噛み付いた影狼を無理やり剥がし投げ飛ばした障子。しかし、影狼は空中で難なく体勢を立て直し綺麗に着地する。

 

 

「ほら、まだまだ行くよ? 『スターリングパウルス』!!」

 

 

ゴウッ!と音がなり物凄いスピードで突進してくる影狼。

 

 

「ぐあっ!?」

 

 

咄嗟に避けようとしたが一歩遅く、そのままの勢いで轢かれてしまった。

 

 

「ほらほら! そんなんじゃ核を奪うなんて夢のまた夢だよヒーロー!」

 

 

どしんと音がする程の勢いで地面に落ちた障子は、突進攻撃を多少避け受身を取れたものの、突進攻撃の威力は凄まじかったのかとても辛そうな表情をしている。

 

 

「・・・ああ、確かにそうだな。だからこそ、ヒーローを舐めるなよ、敵(ヴィラン)!」

 

 

だが、彼の闘士は消えてないのか、目をギラギラと輝かせている。

 

 

「―――くふ、そうこなくっちゃ」

 

 

対する影狼も舌なめずりをしながら障子を見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな彼女達の戦いを、激しい攻防にモニター前からは歓声が上がる。固定カメラでは見にくい箇所もあるが、それでも二組の実力者同士の戦いは見所があり過ぎた。

 

 

「危ねぇ!障子の奴、すげーな。あの突進攻撃を辛うじてとはいえ避けやがった。俺だったら反応出来ずに轢かれてるぜ」

 

 

「椛さんもスッゴーイ!周りの氷を全部壊しているよ!女子チーム頑張れー!」

 

 

「影狼さんは素早さで障子さんを翻弄しながらも、的確に急所へと攻撃していますわね。流石ですわ」

 

 

「轟はスゲーな。ほぼノーモーションで氷を形成してるぜ、流石は推薦組なだけはあるか。つーか、俺のテープの個性じゃ瞬殺間違いなしだな、椛や影狼だからこそここまで戦えてるってわけか」

 

 

 切島は手に汗握ってモニターに熱中し、芦戸は楽しげに椛たちを応援している。他のクラスメイトもモニターを熱心に見つめ、時にコンビや友達と議論を交わす。

 

 

 

 だが、紛れた瓦礫攻撃の攻防に気がついたのは、クラスの中では爆豪のみだった。第1戦で実力では大きく劣る緑谷に負け、八百万の講評に納得してしまった。意気消沈の中に現れた轟&障子と椛&影狼のライバルたちに爆豪は思わず『俺じゃ敵わねぇ』と思ってしまい、そう思ってしまった自分に激しい嫌悪感を抱いていた。

 

 オールマイトはモニターを見ながらも、そんな爆豪を気にかける。肥大化した自尊心の塊であった爆豪。膨れきった自尊心ほど脆いものだとオールマイトは思っている。教師として、爆豪へのカウンセリングをしっかりとしなければならないと考えていた。

 

 

(それにしても、観ないうちに随分と成長していないか? 椛少女に影狼少女。最後に会った時はまだあんな素手で氷を粉砕なんて出来なかったはずなんだが・・・・・・さすがだな、伊達にあの御仁に鍛えられてる訳ではないか。早く、緑谷少年もここまで来る時が来るようにもっと鍛えなければ)

 

 

オールマイトは自分の思ってた以上に、この短期間で急成長していた幻獣姉妹の実力の高さから驚きつつも、いつか自分の後継である緑谷出久がこのレベルに来るよう、彼女たちとその師匠を目標に鍛えてみるのもいいかな?と考え込んでいた。

 

 

 

 

一方、椛は少し攻めあぐねていた。理由は単純に火力不足である。

 

 

(やはり、素手では多少はキツイですね。私のコスチュームは本来この手に盾と刀を持って初めて完成なのですが・・・・・・このコスチュームの製作者である、にとりがこだわりすぎて未だ盾も刀も完成していないのですよね。)

 

 

そんな事を考えながら椛はどう攻めるかけいさんしていた。

 

 

(・・・・・・いえ、攻めあぐねているのは装備のせいではありませんね。単純に私の実力不足。武器がないから勝てませんでした・・・なぁんて、理由になりませんから。そんなんで救えた命を零すのは愚かなことです。もっと鍛えなければ)

 

 

そんな椛の様子に対し、轟も同じように攻めあぐねている。

 

 

(個性が全然あたらねぇ。アイツを捕らえるように個性で周りを凍らせようとも、氷を飛ばして攻撃しようともまるで全て見透かされているように動かれ意味をなさないでいる。下手に凍らしても簡単に砕かれるし、かといってこのフロアごとまた建物全体を凍らそうとすると、奴はまるで察する様に直接攻撃してきて俺は避け無きゃなんねぇ。さすがにあの蹴りやパンチを喰らえばただじゃすまねぇしな。だが、だからと言ってこのままでは埒があかねぇ。・・・・・・右の個性を使えば変わるだろうが、俺は、こんな親父の個性なんかなくても勝てる。いや、勝たなきゃなんねぇ。俺はこんな所で負ける訳にはいかねぇんだ。――だったら)

 

 

轟はあえて氷を地面から突き刺すように生やし、同時に地面も凍らしながら椛に攻撃する。すると椛は読んでたかのように右に飛んで避ける。地面も同時に凍らしているので、当然椛はジャンプし飛んでよける。

 

だが、それが轟の狙いだった。

 

 

「ここだ」

 

 

椛が着地すると同時に右腕ごと地面から生やした氷で凍結させた。

 

 

「動くな」

 

轟は忠告する。

 

 

「その右腕は完全に凍らせた。外側を凍らせたのとは訳が違う。変に腕を動かすと腕ごと氷が割れるぞ。凍らせたまま早くリカバリーガールの所に行って来い、凍傷どころの話じゃ――」

 

 

「――そうね。でも、問題ないわ」

 

 

 しかし、椛は轟の注意を無視して一言呟くと、無造作に左腕に力を入れ、凍った右腕の氷に向けて力いっぱい殴る。

 

 

――バキッ!

 

 

――と、枯れ枝を折ったかのような音と共に氷は砕け散るが、氷から外れた右腕は無惨にも氷の破片やらで傷だらけとなり、痛々しくも血だらけとなりボロボロであった。さすがにこの行為は轟も予想外だったのか驚き目を見開いている。無論、この映像を見ているクラスメイトやオールマイトも驚き固まっていた。

 

 

「おいおいッ!マジかよッ!?」

 

 

「きゃああ!?」

 

 

「う、腕が・・・!」

 

 

「はぁ・・・相変わらず無茶をしますわね、椛さんは」

 

 

男子も女子も顔を青ざめ、悲鳴を上げる。そんな中、八百万は慣れているのか呆れた様に小さく愚痴をこぼす。

 

 

そんなクラスメイトの様子など知るよしもしない椛は血だらけの右腕をぶらんとさせながら無事な左腕を構えながら轟を見る。

 

 

「・・・・・・なぜ」

 

 

そんな椛を見ながら警戒しつつも轟は聞く。

 

 

「なぜ?・・・・・・変な質問ね。むしろ、何故アナタは私がこの程度で止まると思っていたのかしら?」

 

 

椛はおかしな事でも言っているかのようにサラリと答える。

 

 

「私の個性は『白狼天狗』。個性のカテゴリーとしては異形型の個性。それも、ただの異形ではなく、異形は異形でも『妖怪系』つまり、怪異の類の個性だもの。その中でも『天狗』クラスは総じて耐久力が高いし、ましてや私のは狼系の天狗。普通の天狗の個性よりも耐久性は高いわ。だからこそこんな無茶をできるし、そして何より―――」

 

 

椛は轟の顔を見ながらニヤリと笑う。

 

 

「この程度の氷で私の腕を凍らせれるとでも?――ふふ、甘いわね。私の腕を、いや、私を凍らせようだなんて・・・十年早いわよ?」

 

 

すると、椛の血だらけだった腕の傷がみるみる塞がっていき、しばらくして元の白い綺麗な腕がそこにあった。

 

椛は治った右腕を軽く上げ、掌を開いたり握ったりしながら腕の調子を確認していた。

 

 

「・・・うん。いつも通りの調子ね。美鈴さんの気功術は本当に便利ね」

 

 

椛はそう呟きながら、轟に対して構えをとった。

 

 

「・・・チッ。なんつーデタラメだよ、化け物か?」

 

 

轟の言葉に妖艶に笑う椛。

 

 

「ええ、もちろん。私は妖怪、白狼天狗。たかだか人の子に遅れを取るほど弱くわないし、れっきとした化け物よ」

 

 

自嘲気味に笑う椛。

 

 

「・・・・・・っ。すまん」

 

 

「いいえ、謝らなくていいわ。確かに化け物呼ばわりは辛いけど、事実だもの。それに私はこの姿は好きよ? なんたって大好きな家族や幼馴染達と同じだもの。周りになんと言われようとも気にしないわ。だって、私はこの個性と姿に誇りを持っているのだから」

 

 

椛の表情に轟は謝るが、椛は本当に気にしていないのか優しげに微笑みながら轟に言う。

 

 

「・・・・・・お前は強いな」

 

 

そんな椛の表情に少し影を落とす轟。

 

 

「そうでも無いわね。あなたが今何を思っているのかは知らないけれど、私は弱いわよ。所詮は私だってただの小娘でしかないもの」

 

 

そして、空気を変えるようにパンと両手を叩き、そして両手を広げ挑発する椛

 

 

「さぁ、続きを始めましょ?」

 

 

「―――上等っ」

 

 

ここに、椛と轟の最終決戦が始まった。

 

 

「喰らいなさい『狂犬の鉤爪』」

 

 

一瞬で轟の懐に入り、ジャキンと鋭く伸びた爪を振るう椛。

 

 

「っ! ・・・・・・はっ!」

 

 

それを辛うじて避けた轟は、接近している椛の全身を凍らせ閉じ込めようと氷を放つ。

 

 

「おっと、危ないわね。『狂乱蹴り』」

 

 

椛は一瞬で轟の背後に周り、そのまま回転げりで蹴飛ばした。

 

 

「ぐっ――くらえ」

 

 

ビキンッ!と音がなりフロアが氷つくが・・・・・・

 

 

「だから、その程度では私を捉えることは出来ないわよ。舐めないでちょうだい。」

 

 

「これで、終わらせるわ。狂犬『狂乱の型・飛沫』」

 

 

再度、轟の懐に入りこんだ椛は今度は服を掴み、力任せに投げ飛ばす。

 

 

「ガハッ!?」

 

 

地面に叩きつけられた轟は苦しそうにゴホゴホと咳き込む。そして・・・

 

 

「ごめんなさいね、轟焦凍。私の勝ちよ」

 

 

そう言い轟は捕縛テープにより確保されてしまった。

 

 

「さて、こっちは終わりね。・・・・・・影狼は大丈夫かしら?」

 

 

椛と轟の勝負は、椛の勝利へと終わった。

 

――――――――――――――――――――――

 

影狼VS障子のチームも、最後を迎えていた。

 

 

「はぁ・・・はぁ・・・」

 

 

荒く息を吐いている障子。対して影狼は汗ひとつもかかず佇んでいた。

 

 

「そろそろ終わりにしよっか。たぶん、椛ちゃんもそろそろ終わっているだろうし」

 

 

そう言い影狼は四つん這いになりギラりと目を光らせる。

 

 

「――くっ、ここまでか」

 

 

「楽しかったよ?障子くん」

 

 

―――わおーーーーん

 

 

「天狼『ハイスピードパウンズ』!」

 

 

影狼は四つん這いになり走り抜きながら障子を切り刻む・・・・・・と、いうのが本来の技なのだが、流石に本当に切り刻むわけにもいかないのですれ違いざまに軽く殴り飛ばす。

 

 

「ぐはっ・・・・・・」ドサ

 

 

軽くとはいえそれでも助走をつけて、且つ轢くようにすれ違ったので、その分も威力がのり男子の中でも大柄な障子を3mほど飛ばしてしまった。

 

 

『ヴィランチーム、WIN!』

 

 

影狼は殴り飛ばした障子に近づき捕縛テープを巻いて、勝負は椛&影狼ペアの勝利に終わった。

 

―――――――――――――――――――――――

 

モニタールームに戻ってきた椛達一同。怪我をしていた障子と轟は椛の気功術によって体内の気を活性化させ自然治癒を高め治した。しかし、あくまでも気休めでしかないので、あとで保健室にいきしっかりと治してもらう予定だ。

 

 

「お疲れさん!緑谷少年以外は大きな怪我も無し!しかし真摯に取り組んだ!初めての訓練にしちゃ皆上出来だったぜ!それじゃあ私は緑谷少年に講評を聞かせねば。皆は着替えて教室にお戻り!」

 

 

 

 オールマイトはそう言い残して急ぐように走り去っていった。実際、オールマイトの活動時間は授業時間でギリギリであった。落ち込む爆豪を気にしながらもオールマイトは医務室へと急ぐ。

 

 

「わふ。ねぇ、椛ちゃんオールマイト先生大丈夫かな?」

 

 

クラスメイトから離れ小さな声で椛に聞く影狼。椛はその大丈夫か?という言葉の意味を理解し首をふる。

 

 

「大丈夫ではないでしょうね。あの様子だと活動限界が更に狭まっているようね。・・・・影狼、話はここではなく家でしましょう。いまは大丈夫みたいだけど、このクラスの中には、障子くんみたいに耳もいい人もいるから聞こえてしまうわ」

 

 

「わふ。そうだね。うん、ごめん」

 

 

椛は軽く影狼に注意し、影狼も素直に頷く。

 

 

 

 

 

「なあ!放課後は皆で訓練の反省会しねぇか?」

 

 

「あ、それいいじゃん!やろうやろう!」

 

 

「お、いいな。参加するぜ」

 

 

「あ、俺も」

 

 

 下校時間となり皆が帰る準備をする中、切島が大声で呼びかける。すぐに芦戸が諸手を挙げて参加を表明し、多くが参加する事になった。

 

 

「全員参加か?おーい、爆豪。お前はどうする?」

 

 

「……」

 

 

 切島が声をかけるも爆豪は無言のまま教室を出て行った。今日の訓練で緑谷に負けた事がよほど響いているのだろう。あの敗北以降、爆豪は一言も喋らずに押し黙ったままだった。

 

 

「おいって!・・・帰っちまった。まぁいいか、轟はどうすんだ?」

 

 

「・・・すまない、用事があるんだ。帰らせてくれ」

 

 

「そうか、引き留めて悪ぃな。じゃあまた明日な」

 

 

 また、轟もそう言って帰った。しかし、残りのクラスメイトは参加するようで、教室に残っている。

 

 

「椛と影狼はどうだ?」

 

 

すると、椛と影狼にも声をかけた。

 

 

「そうね、せっかくだし参加しようかな?影狼はどうする」

 

 

「うん。せっかくだし参加しようかな! あ、でもご飯の時間もあるし遅くまでは残れないけどいいかな?」

 

 

「おう、そんな長時間はやらないぜ。オールマイト先生から言われた事も踏まえて、皆で話し合ってみたくてよ。何か新しい発見があるかもしれねぇしな。それにまだ言葉を交わして無いクラスメイトも結構いるからよ、交流会みてぇなもんだ」

 

 

 

 そう言って反省会が始まった。立ち話でワイワイと騒いでいるようにみえるが、実際は真面目に訓練を振り返っている。その辺は流石雄英生といったところであろう。

 

 

 

「それにしても凄かったよな!みんな何喋ってんのか分かんなかったけどよ!」

 

 

「緑谷はまだ保健室だしな。大丈夫かよアイツ・・・」

 

 

 緑谷の右腕は自身の個性に耐えきれずにボロボロに、更に左腕は爆豪の『爆破』によって火傷と裂傷を負い、こちらもボロボロになっている。試合後、気を失った緑谷はすぐに保健室へと運ばれたが、未だ戻ってきていない。

 

 クラスメイトとなって日は浅いが、それでも緑谷を心配する生徒は多かった。

 

 

 

「戻ってこなかったら皆で医務室に見舞いにでもいってやろうぜ!それより、轟ペアと椛ペアのバトルが凄ぇアツかったよな。椛が腕ごと氷を砕いた時はビビったけどよ、最悪腕が無くなってもおかしくなかったのに迷わず氷を粉砕するなんてメチャクチャ格好良いじゃねぇか!まさに漢だな!?」

 

 

「私は女なのだけどね。まぁ、私の個性『白狼天狗』は伊達に狼系の天狗ではないわ。それに、私も影狼も幼い頃から特訓してるもの。もちろん、氷系の個性に対する訓練も受けていたからこそ、真の意味で凍ってしまう前に砕いたのよ。腕さえ残れば回復はできるからね」

 

 

切島の言葉に苦笑する椛。

 

 

「椛さん!昔からそうですが、あまり無茶をしないでください!見ているこっちがハラハラして落ち着けないですわ」

 

 

「わふ!そうだよ椛ちゃん!それ聞いた時本当に冷や汗かいたんだからね! 少しは反省してよ」

 

ぷんすこと怒っている八百万と影狼。そんな二人に詰め寄られている椛は非常に申し訳なさそうな顔をしていた。

 

 

「ご、ごめんなさい・・・」

 

 

しゅんと項垂れる椛。耳も尻尾もへなりと垂れており、そんな姿にクラスメイトはキュンと心をときめかせていた。むろん、その姿をまじかで見た二人はズキュンと効果音がなったかのようによろめいていた。

 

 

そんなこんながありしばらくクラスメイトで話し合っていると、八百万と椛と影狼の所に1人の男子生徒がやってきた。

 

 

――飯田天哉だ。

 

 

「やぁ、椛くん、影狼くん。久しぶりだね」

 

 

飯田は椛と影狼にカクカクした動きで手を上げる。

 

 

「うん、久しぶり天哉くん。・・・小学生ぶりかしら? 確か、パーティー以来ね」

 

 

「わふ、久しぶりだね天哉!私達のこと覚えてたんだ」

 

 

そう何を隠そう飯田天哉は実家が代々のヒーロー一家であり、飯田天哉の両親と椛達の両親は同じクラスメイトの繋がりで実家である幻獣家のとあるパーティーに呼ばれており、その時に知り合ったのだ。

 

 

「挨拶が遅れてしまってすまない。なかなかタイミングが掴めなくてね、この日になってしまったよ」

 

 

「ええ、別に気にしていないわ。お兄さんは元気? まぁ、ヒーロー活動を聞いている限り元気そうだけど」

 

 

「ああ、今日も一日いちヒーローとして街をパトロールしているさ。君たちも相変わらずの元気と仲良しで良かったよ。これからは同じクラスメイトとして、そして同じくヒーローを志す者として切磋琢磨していこう! よろしく頼む、三人とも!」

 

 

飯田は元気よく椛と影狼に握手を求める。

 

 

「ええ、こちらこそ」

 

 

「うん!頑張ろうね!」

 

 

「ええ、こちらこそよろしくお願いしますわ、飯田さん」

 

 

椛と影狼もその手をとり嬉しそうに三人で笑っていた。

 

 

「あ、影狼、黒歌姉さんと藍姉さんが終わったみたい。帰りましょうか」

 

 

「そうなの? わかった!じゃ、また明日ね行こ椛ちゃん!」

 

 

「えぇ、わかったわ影狼。じゃ、二人ともまた明日」

 

 

「ええ、さようなら影狼さん、椛さん」

 

 

「ああ、また明日。影狼くん、椛くん」

 

 

そうして一日が終わるのだった。




ちなみに影狼のハイスピードパウンズは東方キャノンボールをイメージしてます


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7話

・・・やぁ。予約投稿をミスって9日の間ずっと投稿してる つもりでいた駄作者だよ(;^ω^)

いや〜、本当によかった。うん。一応投稿できているかログインしていて本当によかったww

本当にお待たせしました、皆様。やっとパソコンも新しくなり復活し、これで前以上に小説が作りやすくなる!
いや〜、流石にダメだね8年近くも使ってたら。やっぱり、PCゲームや投稿系のインターネットをしっかり使いたいならちゃんと買わないとね(;^ω^)

ただ、リアルが忙しいので月1か月2投稿が多いと思います。宣言が解除されてるいま、さらに忙しくなると思うので、でも頑張って月1〜2話くらいは投稿したい。ネタも描きたい話も沢山溜まってるから。だから、頑張る。・・・毎日投稿してる作者さんは本当にすごいよね。

あと、皆さんはコロナは大丈夫でしたか?私は大丈夫でした。何も無くてよかったですよ、本当に。この時期はよくインフルエンザなどの熱や風邪にかかりやすいので心配してましたが今年は何とか乗り切れそうですww

今回は、かなり駄文となってるかも。簡単な話、前のパソコンで作ってた文書を新しく買い換えた頃にはド忘れしちゃいまして、新たに書き直したのです。何を書きたかったのかも思い出せず、思い出すのは諦めました。なので、ネタもなにもない状態で書いたのでひどいと思います。はい。文字数も前書いてた元の半分もないかも・・・


それでもいいという皆様は、ゆっくりしていってね?


今日もいい天気だ、お日様が気持ちいいわね。私たちはいま3人で学校に向けて歩いているわ。今日は、影狼だけではなく幻獣家の長女であり私たち双子姉妹と同じ双子姉妹である幻獣藍。藍姉さま。次女の雪風姉さまと双子の姉妹だ。そしてこの学園の3年だ。ちなみにまだ姉が1人いてそれが三女の黒歌姉様。ちなみに元2年Aクラスだったが現在はBクラスにいる。

黒歌姉様曰く、元いたクラスのA組は初日早々みんな相澤先生により退学。急遽退学されずに残った姉様は隣のBクラスへと変わった。故に2年Bクラスは現在21名だ。

本当なら私達1年生も通年通り一クラス20名×2クラスで計40名の人数だったはずだが、イレイザーヘッド事、相澤消太先生がクラスまるまる(黒歌姉様を除く)退学してしまったため人数が大幅に減ったのだ。それは去年に限らず相澤先生がクラス担任をしている時は何度か生徒達を退学させている。その為本来であるならば40名がガクッと減り残った人数が隣のクラスに移動するのでどうしてもクラスの人数が増えるのだ。だったら、今年から最大2,3人くらいは増やしても大丈夫かな?大丈夫だよな?大丈夫だと信じよう。減っても増えても問題ないようにすればいいさ!・・・・・・とそんなアバウトな感じで根津校長先生が決めたので、私達新1年生は一クラス22名の44名なのだ。

 

実はここだけの話、入学式1週間前に家の祖父に会いに来ていた根津さんが祖父と飲んでいた時、祖母とお酌していたら『本当は語呂よく50名にしたかったけど、予算の都合上諦めたのさ! なぜって?仮に全員卒業出来たとしたら、その時には訓練で破壊されたり破壊する機械類の類いだけでも毎年億単位で吹っ飛ぶのさ! それ以外の物も含めると・・・・・・HAHAHAHAHAHA☆』・・・と、泣きながら笑っていた。どうやら根津校長の話を聞くに1年ごとにかかる金額は凄まじいようだ。まぁ、日本一のヒーロー高校こと雄英高校だ。プロヒーローの多くはここの卒業生が多い、そんな有名高校でもある。だからこそその分のお金もかけているらしい。なんせ入学式に使われた巨大ヴィランロボなど一体億単位のものらしい。巨大でかつ硬くしようとしていたらお金がかかってしまったのだとか。ちなみにそれを聞いた私は即土下座してしまった。なにせ頭を派手に殴り飛ばしてしまったのだから。気にしないでと頭を撫でられたが申し訳なさでしばらく気持ちが沈んでいた。あと、撫でるのが上手でした。そんなこんなでいろいろな理由が重なり、いまのクラス人数に落ち着いたそうなのだ。

 

実はそんな藍姉さまも巨大ロボを倒しているらしい。腰に生えている九本の尾でズタボロに切り裂かれたそうだ。ちぎったわけでもなく、貫いた訳でもなくて、尻尾で斬られたんだって。流石は藍姉さま。憧れます!

ちなみに、他の雪風姉様も黒歌姉様も試験で巨大ロボットを壊してしまい根津校長はスンッとした真顔をしていたとリカバリーガールさんからお話を聞いた。

 

「お前たちの戦闘訓練は教員の間で話題になっているそうだ。クラス担当の先生からその話を聞いた時嬉しかったぞ? 姉として鼻が高い。雪風も黒歌も褒めていた」

 

「ありがとうございます、藍姉さま」

 

「えへへ〜、ありがとう!藍姉!」

 

そんな事を考えていると、隣で歩いている藍姉さまが褒めてくれた。私達の戦闘訓練が話題になっていて恥ずかしさと褒められた嬉しさでちょっと照れてしまった。顔は赤くなっていないだろうか?

 

「・・・ん? なにか騒がしいな」

 

藍姉さまが頭の狐耳をピコピコさせながら怪訝そうな顔でそう吐いた。私達も耳をすますと確かに聞こえてくる。多くの人・・・それも学生特有の高い声ではなく、成人を超えた大人位の低い声、いや、気持ちが高ぶっているのか上擦った高い声が聞こえてくる。それ以外も、何かの機械音とマイクの様なキーンとした響く音も聞こえてきた―――これは

 

 

「ああ、マスコミか」

 

 

話し声からマスコミの様だわ、オールマイトが教師をしているという事で群がっているようね。だんだんと人影が見えてきたが、凄い数だ。流石にこの数は迷惑ね。

 

「・・・またか」

 

すると藍姉さまが凄く面倒臭いような重い息を吐く

 

「またって・・・何度か来ているの?」

 

「ああ、オールマイトが先生になってからというもの何度か来ているの見ている。私と雪風が休みの日も先生達の手伝いに学校へ足を運んでいるのは知っているな? そこで何度か見たんでな。酷く絡まれたので二回ほどインタビューに応じたが、1度捕まれば嫌でも離さない。いまは別の生徒が捕まっているようだし、いずれ先生方に対応されるだろう。恐らくは相澤先生とマイク先生だな。――さ、二人とも私の手をとれ。マスコミに絡まれる前にさっさとここを抜けるぞ(あんな奴らに私の可愛い妹達を見せるわけにはいかん! というよりテレビなんぞに映させるか! ただでさえ多いのに、余計な虫がもっと出てきたらどうするのだ!)」

 

影狼の質問にそう答えた藍姉さまは、私達の手を軽く握り痛くない程度に強く引っ張る。何を考えているのかはわからないが酷く心配されているのはよく伝わってくる。やはり藍姉さまは優しいのね。

 

あと、マスコミに囲まれていた生徒は飯田くんだった。

 

――――――――――――――――――――――

 

・・・と、言うわけで昼休み。朝方は突然の相澤先生によるクラス委員長決めで一悶着があったものの、多数決により無事に乗り越え委員長が出久くん、副委員長がももちゃんとなった。ちなみに私はももちゃんに、影狼が天哉くんに投票した。私も影狼も性格的に上に立つより下の方がいいのだ。まぁ、影狼は完全な下は嫌みたいだが、私はそれでも構わない。私はどちらかと言うと将棋で言う歩兵タイプだからね。

 

そんなこんなで、いま私はオールマイトと一緒にいます。影狼はクラスに残りももちゃんと昼食だ。私は相澤先生とオールマイトこと八木俊典、俊典さんの所へお祖母様特性のお弁当を持ってきました。私の目の前にいるオールマイトは元の姿が想像できないほどガリガリにやせ細っていて目もくぼんでいるせいでまるで骸骨だ。そんな偉大なヒーローたる彼だが、実は昔ヒーロー活動中に大きな事故にあってかなりの重症を患ってしまい身体が酷くボロボロになってしまったのです。そのせいでオールマイトとして活動できる時間がほんの数時間しかなく長くは保てないそう。

その中でも特に胃のダメージが酷く、全摘出という大惨事だったのですが、そこはまぁ、我が幻獣家を含めた獣神一族お抱えの『死者すら蘇る』と言われている、凄いお医者様がいらっしゃるので治りはしましたが、まだ治っているのは胃のみです。それもつい半月前にやっと胃が治ったばかりなのでまだ急な食事も出来ず、そもそも1度手術してから身体が今の状態へと馴染んでからの手術でしたので、いくら凄腕の私達のお医者様でも完全完治まではまだ数年かかるのだとか。お医者様曰く、いまのまま限界まで活動していると早くて今年度、遅くてもあと2~3年で個性が発動できずに活動出来なくなると仰っていらっしゃいました。お医者様も元々ただの研究者、それも『お薬』専門の研究者なのです。個性も『あらゆる薬を作る』能力なので、その個性のせいで私達獣神一族が住む村からは滅多に出ないそうです。ごく稀に海外に一般より少しいい薬を売りに出かけられますが、それ以外は我らが獣神一族の本家の敷地以外は出られません。しかもオールマイトが怪我したその日はちょうど海外へ出張されていた日でもあり、その為治療も遅れいまに至るのです。ただ、仮にその場にいたとしても傷の具合からして難しいと仰ってました。何せ体型がガラリと変わるほどの大怪我、むしろ生きている方がおかしいと言われる程でしたから。

 

因みにですが、私はその傷はヴィランにつけられたものだというのは知っています。いえ、正確には誰かは知りませんが仙術を黒歌姉さまに習っていたからこそその傷が自然物や人工物によりできた傷ではないと気づきました。因みに私以外で気がついているのは姉様達だけです。影狼と妹達は気がついていないようでした。

 

知っているであろう両親や祖父母、そして本人にも聞きましたが正確には答えてくれませんでした。本当は気になるのですが、家族でさえ誰も答えてくれないとするならば、相手は恐らく相当の強敵。知っているであろう姉様方も口を固く結び『ごめん』と一言漏らすのだから、姉様方も太刀打ち出来ないと言うこと。それ程の敵(ヴィラン)が危険じゃないわけがなく、知られたら命が危ないから誰も言わない。つまり、いまの私じゃ瞬殺もいいところだと・・・・・・

 

だから私はもっと強くなりたいと思いここ、雄英高校へと来ました。ヒーローになりたいのは嘘では無いです。いえ、ヒーローになりたいからこそ、いまのままではダメだとこの件で悟りました。私とてプロヒーローに勝てるとは思っておりません。しかし、負けるとも思っていないのもまた事実。そんじゃそこらの敵(ヴィラン)に遅れは取らないと自負もしています。でも、だからこそ、そんな私も太刀打ちできず逃げれもせずに即死など、市民を守るべきヒーローが守らずに死ぬなど一番あってはならぬ事、それは敵(ヴィラン)にただ負けるよりも酷い事です。守って死ぬのならともかく守らずに死ぬのは1番良くないことなのです。だからこそ、私はもっと力をつけなくてはならないと思いいたったのです。

 

まぁ、そんなこんなで私達が幼き頃から交流のある私達ですので、それを一番理解している私が相変わらずの栄養ドリンクですます相澤先生と俊典先生の専用お弁当を届けるそのついでで、お医者様の弟子たる私がお医者様の変わりに診断しに来ているのです。 本当は適任の大先輩がいらっしゃるのですが、その方はプロヒーローとして日々忙しくでも空いていないので、雄英高校にもいて妹弟子たる私がこうして診断しに来ているのです。

 

「―――はい。終わりました。・・・俊典さん、前以上に活動時間が減っています。むしろ急に失ったかのような感じです。・・・・・・・・・もしかして、見つかりましたか?」

 

私は診断を終えた俊典さん――オールマイトに問うた。本来の予定であるなら胃が全回復してから半月。つまり完全に胃が体に適応したいまなら活動時間がむしろ増えているはずなのです。・・・いえ、正確にはしっかり増えてはいるのです。ただ、失った方が大きく結局はマイナスなのです。

 

「これでは、いままでよりも1時間も活動時間が早まってます。いえ、胃が完全完治し浄化作用も一般並みに復活した今日から流動食から固形食へと変えていくので増える可能性は上がりますがそれでも―――」

 

「いや、大丈夫。もう、大丈夫なんだ」

 

私の言葉を手で制し、大丈夫だというオールマイト。なにが大丈夫なのです

 

「大丈夫って・・・なにを根拠に―――っ。まさか」

 

――後継者が見つかった?

 

「やはり勘のいい君だ。察したようだね。君の想像通り、後継者が見つかったのさ」

 

そう言うオールマイト。その顔はどこか誇らしくも、寂しそうな顔をしていた。詳しくは聞かなかったが、どうやらオールマイトの個性は相手に譲渡する事により代々先代から受け継ぐ個性らしく、誰でも譲渡できる訳では無いが、それでも無個性関係なく譲渡できる個性のようだ。ただ、譲渡すれば勿論己の中から個性は無くなり無個性となる。つまりだ、いまはそんな無個性の状態で、長年溜まっていた残り火で活動しているようなものだと言うことなのだ。

 

「―――〜っ! そんな!そんな事をすればどんなに遅くても今年で活動が出来なくなるじゃないですか!」

 

私は力いっぱい叫んだ。オールマイトを物心着いた時から傍で見てきた私だからこそ、オールマイトが如何に『ヒーロー』というものに血を熱を、そして魂を――込めてきたのかを知っている。知っているからこそ、私は悲しくなった。オールマイトはもう、諦めているのだと。

 

・・・・・・いえ、終わらせません。絶対に終わらせてなるものか! この人が支えてきた人々の想いを、この人が歩んできた歴史を、この人が導いてきた未来を、そして何より、この人が注いできたその『想い』を『魂』を――こんな所で終わらせない!

 

「終わらせません・・・――絶対に・・・ぜーーーったいに終わらせませんから! 貴方が誰にそれを渡したのかは聞きません、でも、だからといってヒーローを諦めていいはずがないのです! と言うより、誰よりも諦めることを知らない貴方が一番ソレをしてはダメじゃないですか!! ですよね、根津先生」

 

私は隣にある校長机に座り黙って見ていた根津校長先生に聞く。すると彼はニヤリと笑った。

 

「そうさ! 諦めることはキミが一番してはいけない事さ! キミはどんな時でも諦めず戦ってきた。そんな姿になってでもこうして今日までヒーローとして、『オールマイト』として活動してきたじゃないか! 個性がないから諦める? そんなのはダメさ! むしろ、新しいオールマイトが産まれたからこそ、余計キミの存在が必要不可欠なのさ! だからキミに私は送ろう『もっと向こうへ、Plus ultra』サ!」

 

ニカッと輝く歯を見せながらハーハッハッハッハッハッ!と高笑いする根津校長。そんな彼の姿にクスリと笑みを浮かべつつ、私はオールマイトへと顔を向ける。

 

「俊典さん――いえ、オールマイトさん。貴方のヒーローはまだまだこれからです。根津さんも言っておりましたが、次代が生まれたからこそ余計諦めてはダメなのです。いま『平和の象徴』たる貴方が諦めてどうするのですか!!

活動限界に関してはどうにかします、いえ、どうにか出来ます! 私の師匠達を舐めてもらってはいけませんよ? なにせ、師匠達はそれぞれの分野の世界一のお人達ですから」

 

エッヘンと胸を張り私はドヤ顔を作る。すると、先程まで沈んでいた顔をしていた俊典さんは呆気に取られた顔をした後、はははと笑みを浮かべていた。

 

「そうだね、そうだよね。私が諦めていてはダメだよね。そう、ここだ、ここからだ、ここからが正念場なんだ。そんな正念場で肝心の私が諦めてどうする、彼を導けるのは私だけだと言うのに!」

 

そして、俊典さんはパンッと両膝を叩きその勢いで立ち上がり、もりもりマッチョ――通称『マッスルフォーム』へと早変わりした俊典さん・・・いや、オールマイトがいつもの歯をキラン☆と輝かせながらいい笑顔で私と根津校長へ向けてサムズアップした。

 

「そう、私は『オールマイト』!どんな時もどんな強敵にも諦めない! 助けを求める声の元へと駆けつける『平和の象徴』さ!HAッーHAッHAッHAッHAッHA!!」

 

片腕を天に高く上げて大笑いするオールマイト。・・・・・・ここは校長室で防音対策もバッチリそして広いけど・・・声が響いて、とても、うるさいです。

 

まぁ、元気になられて良かった。両親や祖父母いがいで唯一憧れているヒーローのへこたれた姿など見たくありませんから。

 

「それにしても熱い熱演だっなのさ! 君に合わないくらい熱く語っていたね!」

 

根津校長が話しかけてくる。それもニマニマした顔で。

 

何となく魂胆が見えている事に呆れながら嘆息を吐く私。

 

「何を思っているのかは知りませんが、あくまでも憧れのヒーローの情けない姿を見たくないだけです。・・・いえ、正確には情けないポンコツな姿はむしろ見飽きているので今更感な感じですが、根津校長も知っていますでしょうけど、私が憧れているヒーローは身内以外いません。それは断言できます。オールマイトもお父様と一緒によく家に観るので私達姉妹にとって従兄弟の叔父さんみたいな感覚ですから、私達幻獣家にとって感覚的には半場身内みたいなものですから。故に恋愛感情はないです。と、言うより好みではないので」

 

そうバッサリ言うとオールマイトの笑い声がピタリとなりやみ氷のように固まっていた。根津校長はそれを見ながらより楽しそうに笑っていた。

 

「うん、知ってるさ! だから聞いたんだならね!」

 

やっぱり確信犯だった。個性によって凄く賢い根津校長だからこそ、そうだろうと思っていたけれど・・・この人はやっぱりSだと思う。

 

まぁ、実際の所、私の好みではないのは事実なのでしかたがない。この質問は前もここで本人の前で言ったと思うけど?

 

そんな事を呟くと、『好みじゃないのはわかってるけどそうハッキリ言われると悲しいのは悲しいのさ』とはははと乾いた笑いをしながらオールマイトはしなだれていた。

 

そのあとは、前回の初授業時の感想を最初は普通な感想を述べていたが、隠さず辛口でもいいから正直に言ってもいいとオールマイトと根津校長の二人から許可を頂いたので、思う存分言うと、オールマイトは灰になり根津校長は椅子から落ちて笑い転げていた。そんな話題の中心たるオールマイトも完全に燃え尽きながら『つ、次こそは・・・』と闘志を燃やしてはいたので、うん、諦めずに頑張って欲しい。父様も期待しているということを伝えると少しやる気がでてきたようだ。

 

そんなこんなで、昼休みを楽しく過ごしていると・・・・・・・・・・・・自体は急変した

 

 

―――ジリリリリリリリ!!!!!!

 

 




今日はここまで、次の話は来週には投稿できます! え?今日中にしない理由? すみません、ブタクサ花粉で目と鼻が死んでますので触れないでいただくと嬉しいのです(´;ω;`)

まさにいま、『目が、目がぁぁぁぁぁあ!?』ってなってる状態ですのでww 目は痒いけど触ると痛い。鼻も痒いし鼻水出てくるけれど、鼻をかんでもすぐ出てくる。ティッシュが飛ぶように消費されてゆくんじゃぁ〜

皆さんも花粉には気をつけてくださいね?

ではまた次回お会いしましょう! ばいばーい(・ω・)ノシ


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8話

新年明けましておめでとうございます。

そして皆々様がた、大変長らくお待たせいたしました。やっと闘病生活に打ち勝ち普通の人生を送れる今日この頃に感謝をします。

みなさん、タバコは気をつけてくださいね?例えタバコを吸わなくても家族が吸っている近くにいたりするとそれだけでも大丈夫だと油断していると全然肺がんになってしまいますから。ウチみたいに。いや本当にキツイですわ、真面目に。


手なわけでまた筆記を開始させていただくのですが1つ言わせてくださいね?…………なんかヒロアカやっべぇ事になってません?なんか3年間見ないうちに凄いことになってません?……いや、何となくヒロアカがMARVEL作品のようなアメコミ作品に非常によく似た作品だと思ってはいましたしなんならもしかしたら絶望シーンも多そうだと思っていましたが……いやぁ……想像以上なのです。はい。

まぁ、元々オリキャラを複数参戦する以上原作を多少なりとも改変し、原作の流れをあまり変えず本来居た敵キャラを別のキャラにすり替える考えでいたのである程度はどうにかなると思ってましたが……どうにかなるか不安になってきました。

でも、せっかく生き残りを賭けて闘病生活を少しでも早く治す為にこの3年間と少し一切の娯楽を妄想以外封じただ治療に専念したので、せっかく復活できたのだから妄想してきたこの作品たちを途中で放棄するつもりは一切ありませんけど……いや、何とか頑張っていきます。

ちなみにですが最初は元原作の年齢通りに八雲藍と雪風を長女と次女にし黒歌を三女にしようと思いましたが結局女神のダイスの結果、黒歌が長女に繰り上がりして黒歌、藍、雪風の順になっていましたが……いまのヒロアカを見ているとあれでしたのでやっぱり最初の設定通り藍、雪風、黒歌の順に変更した事をお知らせします。

てなわけでして、不甲斐ながらもこれからも応援してくれる事を願います。よろしくお願いいたします!!


 

 

―――ジリリリリリリリ!!!!!!

 

大音量の警報が食堂に木霊する。

 

 

 

「警報!?」

 

「何だ……!?」

 

 

 

 根津校長、八木さん、そして私は咄嗟に立ち上がる。

 

 私達は突然の緊急事態故に少し固まって―――続くアナウンスは。

 

 

 

『セキュリティ3が突破されました。生徒の皆さんは速やかに屋外へ避難してください』

 

―――と、アナウンスが流れた。

 

「な、なんだって!?何が起きたのさ!」

 

「私が――「待ってください」――……椛くん?」

 

私は八木さん――オールマイトが動こうとしたので手で制した。……なぜこの人は変身時間は有限だと言うのに動こうとしているのでしょうか?……いえ、愚問ですね。まったく

 

「根津校長、私の能力を使い原因の確認をしてもよろしいでしょうか?私の個性の1つ『千里眼』は文字通り千里の先まで見通す眼ですが、この個性の性能の一つとして千里以内ならどんな場所でも見通す……つまり透視の力があります。私の実力不足故にかなり集中しなければいけませんが、この学園内であれば色どころか葉っぱの細部まで見る事ができますゆえに個性発動の許可を」

 

私は根津校長の目を見ながら真剣に問う。根津校長は私の目に目を合わせたあとゆっくり頷いた。

 

「わかったのさ。なら任せるのさ!」

 

「ありがとうございます!」

 

いい笑顔でサムズアップをいただいたので早速私は個性を発動させた。

 

「『千里眼』」

 

私は発動した千里眼を集中して学園内のみに限定させる。最初は校長室の窓からずっと先に見える民家を見通していたがそれが縮まり、目線をかえ学園を上空から見るように個性を集中させる。

するとふと校門近くの壁に集まる人集りに目が入る。

 

「……これは」

 

私はその集まりが今朝のマスコミだと気づいた。校門近くにいたマスコミのコレが原因だと思い私は根津校長へと伝える。

 

 

「根津校長。原因はマスコミです。壁を破壊して大勢の無関係者が侵入してきたようです――――ん?破壊して?」

 

私はふと違和感に気づく。……確かに校門の壁は破壊されそこになだれ込むようにマスコミが侵入しているが……仮にマスコミの誰かが破壊して侵入したとして何故今頃なのか。壊せる個性がいてこうして壊してでも侵入するなら何故最初のうちにそれをしなかったのか……―――私は獣の勘だと言おうか。嫌な予感がしたので学園により集中して本来予定していた透視の能力を発動させる。私は学園の隅々まで透視し見ていくと……

 

 

――――見つけた

 

 

「――根津校長!緊急事態です!!マスコミとは別口に職員室にて侵入者を発見!!人物は2人。1人は手が身体中に付いた男と、もう1人はバーテンダーの服を着た黒いモヤのような肉体を持つ人物!その2人が現在原因究明で不在の職員室にて何か予定表の様な紙を物色中! 職員室内への侵入経路は外の破壊された壁とは違い壁や床など壊れた部分が無いのを察するにワープ系の個性と判断。どちらかが雄英高校の壁を破壊できるほどの個性と誰にも悟らせず見つからずピンポイントの侵入を出来るワープ系の個性と予想。ただ侵入者2人の特徴を察するに、私の獣神一族の沢山の個性持ちの特徴から予想して、恐らく手が沢山の男が破壊系の、黒モヤの男がワープ系の個性持ちと判断いたします。」

 

「わかった!オールマイト行けるかい!?」

 

「何時でも!」

 

私は早口でそう伝えると根津校長は短く八木さんに頼み。八木さんも既にマッスルフォーム。つまりオールマイトになっており動こうとしたので居なくなる前に咄嗟に私は伝えるべき事を伝える。

 

「オールマイト!敵はワープ個性。恐らく何かの確認だけのもよう。個性の関係上直ぐに居なくなることを考えて相澤先生の机を探っていたのでそこに何があったのか確認してください!恐らくソレが敵の最重要な物です!」

 

「わかった!ありがとう椛くん!では言ってくる!!」

 

そう言いきったオールマイトは校長室の扉に手をかけた瞬間姿が消えた。衰えていてもすごい速さだ。

 

「椛くん、まだ侵入者はいるかい?」

 

「はい。まだ物色中です。しかし黒モヤはわかりませんが手の男の方は口の動きから読み取るにもう目的の物は確認できたようで黒霧?という方にゲートを開くよう伝えてます――ってえ?」

 

そんな私は再度集中して2人の様子を監視している。2人は私の視線には全く気がついていないようで呑気に何かを物色している。そんな2人の元にオールマイトはあと数秒で職員室に到達するだろう……がしかしその前に予想外な事がおきた

 

「そ、そんな――影狼!?」

 

「なんだって!?」

 

オールマイトよりも先にいつの間にいたのか影狼が2人の前に姿を現していたのだ。まるで突然出てきたかのような影狼に2人は驚きそんな2人を影狼は険しい顔で威嚇していた。

 

そんな彼女を見た手の男は見つかったゲームオーバーだと口にして黒霧と呼ばれた黒モヤもすぐさま人を複数人包み込める程の黒い大きなモヤを作り出しそれに飲み込まれて行った。そんな2人を捕まえようとしたのか影狼は追撃しようとしていたので

 

「影狼!やめなさい!!」

 

私は思わず影狼を叱った。聞こえるわけがないと高を括っていたのにそんな私の叱咤が聞こえたのか影狼はびっくりした顔で止まった…………そう言えば影狼は家族の中で1番耳が良かったのを今更ながら思い出した。

 

そうしている間にも侵入者の2人はどんどんとモヤの中に姿が飲み込まれており、私の発見が遅れたためと予想外の人物の登場でオールマイトが職員室に入る頃には敵の2人は黒い大きなモヤに包まれ消えていった。2人はオールマイトには気が付かなかったのかそのまま扉の方を見ずにモヤの中へと消えていった。

 

オールマイトはそんなモヤの方へと厳しそうな悔しそうな目で睨みながら、影狼に目線がいきそこで初めて気がついたのかびっくりした表情をして見つめていた。そんな影狼もオールマイトの目線に居た堪れない様な申し訳なさそうな気まづい表情でシュンと項垂れていた。

 

オールマイトはそんな影狼に困惑するような顔をしながらも私が言った事を思い出したのかすぐさま相澤先生の机のところに向かい険しい顔をしながら物色していた。しばらく探していると何かを見つけたのかオールマイトの顔はさらに険しくなった。気になった私もオールマイトの手元を見るとそこには……

 

「……学園の…予定表」

 

そう、学園のそれも我々1年生のヒーロー科の予定表だ。

 

「――校長先生。もしかしたら侵入者に知られたかもしれません」

 

しかも相澤先生の机の物ならそこから察するにそれは―――

 

「…………私達、1年A組のこれからの予定表を」

 

「なんだって?」

 

私の言葉に根津校長は顎に手を当て考え出す。

 

「…………何故、どう言う理由で侵入者はそれを確認したのかは今の所はわからないのさ。まだこの2人が何者か、どう言う人物達なのか、侵入した理由、何を探していたのか、本当にその予定表を確認したのか……まだわからない事がありすぎて僕の頭脳を持ってしてもありとあらゆる可能性は考えれど、情報があまりにも少なすぎてそのどの可能性なのかキッチリとした答えは出てこないのさ。――でも」

 

根津校長は真剣な顔をして私を見る。

 

「1つわかった事はある。彼らは敵(ヴィラン)。僕たちの敵なのさ。」

 

そう言い切った根津校長は指を1本立てる。

 

「今考えられる事でもし仮にその予定表が目的だったとして彼らがまた何かしらの方法で侵入してくる。そしたら必ず何処かのタイミングで君たちに襲撃してくる可能性は考えられるのさ」

 

「あくまでも今の情報量から考えられる事だから必ず起きるという確証はないのさ。でも、今回普通は考えられない事が実際にいま正に起きている。だから最悪の可能性も考えるべきなのさ」

 

そういった根津校長は私を安心させるかのようにいつものような笑顔で笑いかける

 

「だからまずやる事は、暫くはこの雄英高校の警備の見直しと強化から始めるのさ!そして放送でパニックになっている大事な生徒たちを安心させるのさ!」

 

笑顔で言い切った根津校長は校長室に設備させてある受話器を取り何処かへ連絡を入れる。一言二言喋ったあと受話器を置いて私に微笑みかけた。

 

「心配かけたのさ。だからもう大丈夫。個性を解いてもいいよ椛くん」

 

私は安心させるかのような優しい言葉で語りかけてくる根津校長に、自分でも無意識に力んでいたのか自然と力が抜けていく感覚と同時に、オールマイトに何故いるのか正座させられ説教されている影狼を最後に一目見ながら個性を解いた。

 

………………あの子は帰ってきたら家族会議決定ね

 

 

私はそう心に誓い根津校長に一言お礼を言ってから校長室を後にしたのであった。

 

――――――――――――――――――――――――――

 

そして時間が過ぎて午後。

 

「ほら、委員長始めて」

 

「では他の委員決めを執り行って参ります!けど、その前に良いですか!?」

 

 

 

トラブルのあった昼休みも校長先生達の努力の末に無事終了して午後の授業となったが、未だに決まっていない他の委員を決める話になっていました。クラス委員長になった緑谷くんはももちゃんに促される。緑谷くんはガチガチに緊張していた。が、皆を見渡してから続きを話す。

 

 

 

「委員長はやっぱり飯田君が良いと思います。お昼の時、僕は何も出来なかったけど飯田君は皆を上手く纏めていたから、それが正しいと思うんだ」

 

「あ、良いんじゃね飯田、食堂で超活躍してたし!」

 

「非常口の標識みてえになってたよな」

 

 

私は先程から気になっていた単語が出てきているので影狼に聞いた。なんでも非常口飯田とは食堂にて影狼は食事をしていたところあのトラブルの時に食堂の生徒が一斉に出口に殺到するというパニックが起きたそう。その時にどこからともなく飯田くんが飛んできて扉の上……丁度、非常口マークのような体制でビタっと張り付きその場の全員を釘付けにしてパニックを収めたそうだ。その姿と様子から非常口飯田と今もからかわれているみたい。

 

……私がいない間そんな事があったんだ。――だからあの時、食堂にて壁に変な体勢でくっついてたんだね飯田くん

 

 

「緑谷君……ふ、委員長の指名なら仕方あるまい!しっかりクラス委員長を務めさせて貰おう!」

 

「任せたぜ非常口!!」

 

「非常口飯田! しっかりやれよー!」

 

 

 

緑谷くんに後を任され、皆の声援を受けて、飯田くんは委員長の交代を承諾した。

 

ももちゃんは少し不満そうな顔をしていたがクラス委員長が飯田くん。副委員長にももちゃんが就任した。私と影狼で委員長になれなかったので少し落ち込んでいたももちゃんを励ましながら今日を1日終えるのでした。

 

――――――――――――――――――――――――――

 

そして更に時が過ぎ自宅にて…………家族会議が開かれていた

 

 

「………………あぅ」

 

畳一面の家族の集まりや会議、そして宴会等で使われる大広間にて、上座に現当主の我らが父・神狼(シント)が、その隣に母・紅月狐(アキコ)が、その1段下の正面から見て左に祖父・篁(タカムラ)とその隣に祖母・狼奈(ロウナ)が、反対側には母親に近い順で藍姉様、雪風姉様、黒歌姉様の3人が。

 

そしてその家族達に挟まれるように真ん中に正座させられているのが影狼。

 

そんな影狼の背後に私とその両隣にそれぞれ妹達がみんな正座して座っている。……本来は私も一緒に怒られるつもりでいたので影狼の事を報告したついでに私の事も一緒に叱って欲しいと報告したのだが、事前に根津校長とオールマイトから連絡が来ていたのか私の案は却下。お前は影狼をすぐ甘やかすから影狼の後ろで妹達を見ていろと、母様に怒られてしまいついでに姉様たちにも似たような事を言われ今はちょっと落ち着きのない1部の妹達の世話をしながら影狼の行く末を見ていた。

 

「……影狼よ。なぜこうして家族会議をしているかわかるかえ?」

 

沈黙に目を閉じ腕を組む父様を横目に見つつ、影狼の方へ目線を向けた母様が険しい顔をしながら開いた扇で口元を隠しつつそう問いた。

 

「…………は、はいぃ。勝手に敵(ヴィラン)に接触した挙句、1人でそいつらを捕まえようと動いたからですぅ」

 

涙目になり耳もパタンと下に閉じ、ビクビクしながら母様の問に答える影狼。私はそんな彼女をハラハラしながら見ていた。大丈夫なのかこの子

 

 

「……はぁ。何故そのような事を?」

 

母様は呆れたかのように一つため息を吐きまた問いただす。父様は先程から相変わらずで、お祖母様も表情の読めない顔で静かに見ていて、お爺様もお父様以上に沈黙したような顔で目を閉じて腕を組んでいる。藍姉様は怒ったように、雪風姉様は困ったように、黒歌姉様は呆れた顔をしてそれぞれ影狼を見ていた。

 

妹達だが、白猫(シロネ)以外はあまり理解していないのかキョトンとした顔をしていた。可愛い……じゃなかった――私は目を閉じ邪念を取り払ってから再度、影狼を見る。ふと黒歌姉様と目が合った。すると黒歌姉様からはジト目をもらった…………ごめんなさい。

 

 

私は黒歌姉様に心の中で土下座をしつつ謝りながら心を再度引き締め母様と話している影狼をみる。

 

影狼曰く、食堂にていつも通り食事しているといきなりサイレンがなり緊急事態が発生した事を伝える放送が鳴り響く。その放送を聞いた上級生の人達がパニックを起こし我先にと出口に殺到したため大混乱。

私はそんな人達を見つつどうにかしようとするとふと椛の千里眼を発動した際に感じる視線を察したので本当に何か緊急事態が起きていると判断。

パニックを他所に自慢の耳をすまして集中するとまず外の騒がしいマスコミの音を拾う。コレが原因かと思ったがあくまでもコレは放送とサイレンの原因。千里眼は学園の『外』ではなく『内』それも学園内から感じた。だとすると椛の千里眼の特性を思い出しおそらく【透視】の能力を使っていると断定。だとすると侵入者はマスコミ以外にいると判断し外の音を拾わず捨て去り学園の中だけに集中して音を拾う。すると、職員室にて学園中を駆け回っていて誰もいない無人のはずの部屋にて何者かの音をひろった。

聞いた事のない人物の音だった為、食堂のパニックは飯田くんが収めたため安全と判断し、全員の意識が飯田くんに集中しているその間に影に潜る個性を使用し食堂を脱出。そのまま職員室に向かいその侵入者の前に姿を現したと。無防備に姿を表した理由は音を探している時オールマイトが校長室から出たのを確認しているのでオールマイトが来るまでの足止めしようとしたのだと言う。

ただ誤算だったのは自分の姿を見た瞬間に逃げ出した事。流石に侵入者を逃す訳には行かないと思い後先考えずに飛び出してしまった……と。そう言う理由だそうだった。

 

 

「――あのな?お主のぉ。もしもその者達が凶悪な人物達であればお主は只ではすまぬかったのだぞ?怪我をしとった可能性はあるし、最悪死んでいたかもしれぬ。椛の話によると少なくても1人はワープの個性持ち。しかも任意の場所に飛べる厄介なタイプののぉ。あくまでも仮定故に確定ではないが、それでもそのような個性持ちの敵(ヴィラン)なら、首や胴体の間にワープゲートを開きそのまま閉じて切断するぐらいはできよう。本当に危険な行為をお主はした自覚があるのかえ?のう、御母様」

 

母様はお祖母様にパスをする

 

「うむ。確かにその通りだ。紅月狐の言う通り。一歩間違えたら死んでいたのは影狼。そなただ。無作為に無意味に敵の方へと飛び出すのは危険だとあれ程注意したではないか」

 

…………とそのような感じの説教が2時間続いた。他にも姉達の説教やお父様とお爺様の静かな淡々とした感情の感じられない説教など続いた。その説教は既に2時間を超え3時間になりそうだがまだ終わりそうにない。私は更に粘り3時間過ぎまでは影狼が心配故にずっといたが、白猫以外の妹達がいい加減痺れを切らしだし時間も時間で夕飯の支度もしなくてはいけなかったので、ついに母様とお祖母様から先に夕飯を作って妹達を連れ食間にて待っていて欲しいと念話が来た。私は影狼を1人にする事に抵抗を覚えたが一度説教が始まったこのお二人は長いので、流石にご飯も遅くなるのは妹達の発育にもわるいと思い妹達を連れて広間を後にするのだった。

 

「さぁ、みんな。今日は私が晩御飯を作ります。もう献立は決まっていますが―――デザートは何がいいかな?」

 

キッチンにたどり着いた私はエプロンをつけながら妹達に問いた。食堂というか広間同様の畳一面の食間にて長テーブルに座る妹達はそれを聞いた途端に目を輝かせながらそれぞれ答える。

 

「姉様、私はアイスクリームがいいです」

 

白猫(シロネ)がアイスクリームね

 

「姉様私は、ドーナツが、いい…です」

 

泉奈(イズナ)がドーナツっと

 

「ねぇさま!ねぇさま!わたしは甘いものがいいでしゅ!」

 

橙香(トウカ)が甘い物……ね、良し!

 

「うん、わかったわ。じゃぁみんな!好きなデザートを作ってあげるから料理ができたら運ぶのを手伝ってくれるかな?手伝ってくれる人は手を上げて〜」

 

私がそう言い手を上げると

 

「はい」

「はい、です!」

「は〜いなのでしゅ!」

 

みんながみんな目をキラキラと輝かせながら元気に手を上げる。普段クールな白猫も嬉しそうな顔をしているので余程楽しみにしていると見てる。私はくすりと笑いながら妹達の期待に応える為と、コレから説教が終わり疲れているであろう家族のため……そして、酷く落ち込んでいるであろう私の大切な半身である影狼の為に全力全開でそして愛情を込めて料理を作り始めるのだった。

 

因みに影狼の説教が終わって家族が食間にて揃ったのは私が丁度料理をデザートまで作り終えた2時間後だった。

 

つまり影狼は合計5時間ほどこってり絞られたのだった



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9話

本日二話め〜。1話目は投稿してるのでまだな人は先にそっちを見てね!


それじゃ〜、ゆ っ く り し て い っ て ね?


説教にて影狼がこってり絞られた次の日 

 

再びヒーロー基礎学の時間がやって来た。教壇に立った相澤先生が説明を始める。

 

 

「今日のヒーロー基礎学だが、俺とオールマイト、そしてもう1人の3人体制で見る事になった。内容は災害水難なんでもござれの人命救助。いわゆるレスキュー訓練だ」

 

相澤先生は続けて言う

 

「今回のコスチュームの着用は各自の判断で構わない。中には活動を制限するコスチュームもあるだろうからな。訓練場は少し離れた場所にあるからバスに乗っていく。以上準備開始」

 

 

確かに現在社会では、人災・天災・事故が起きた際に警察やレスキュー隊と協力してヒーローも救助を行う。公共の場で〝個性〟の使用を許されているのはプロヒーローだけであるため、〝個性〟を駆使して迅速に救助できる存在は重宝され、レスキューは社会に求められるヒーローの役割の一つなのだ。

 

 

「これこそヒーローの本分だぜ!」

 

 

と切島くんが嬉しそうに言う。確かに切島くんの個性は『硬化』だ。ただ硬くなるだけだととバカにすると思うが、硬いとはその分瓦礫撤去等の自然災害にて壊れた現場の早急な救助に置いてこれ程までに適切な個性はないのだ。瓦礫に埋もれた救助者を助け出すには何よりもスピードがいる。しかも速さだけでなく如何に瓦礫が崩れないよう救助者を助け出すか見極める目利きも必要なのだ。その為には沢山の道具と人手が必要だが、彼一人いれば少なくても道具は減らせる。硬化で肉体を硬くし瓦礫で傷つかない頑丈な肉体をもってすれば素早く瓦礫を排除できるのだ。救助する側が怪我するリスクが減るからね。

 

 

「水難なら私の独壇場、ケロケロ」

 

 

続いて梅雨ちゃんがそう言う。確かに梅雨ちゃんの個性は『カエル』水場においては独走場。寒さが弱点なので雪国での活躍は対策しない限り難しいが、それでも水場の災害もとても危険な場所故に早期発見と救助が必要。その為梅雨ちゃんの個性は本当におあつらえ向きだろう。

 

かく言う私達姉妹も森林においてはこのクラス――いや、学年の誰よりも上だと断言しよう。これでも実家で鍛えられている。個性の都合上、私達の一族は獣…それも狐や狼といった森に関わる獣の個性持ちが多い為、巨大な森での訓練を物心ついた時からしていたのだ。流石に上の学年となると姉様達がいるので学園一とは言えないが、かと言って同級生に負けるつもりは1歩もない。

 

そんなこんなでみんなは着替え終わりバスの前に集合した。みんなコスチュームを着たり体操服を着たりして思い思いに過ごしていた。

 

 

そんな私達だがもちろんコスチュームを着ている。…………ただコスチュームの付属武器は相澤先生に許可をもらいにとり特性のコスチュームについてるポケットポーチの中に入れている。なんでも本家にいる『賢者』の力を借りてポケットの境界を弄り、まるでゲームや小説に出てくるマジックボックスのような見た目以上に入るバックを作ってしまったのだ。そんな物を作ったにとりはいまは〇次元ポ〇ットを作っている。

 

 

「バスの席順でスムーズにいくよう番号順に二列で並ぼう!」

 

 

飯田くんはいつものように腕をカクカクとさせながらテンション高めで行動している。

 

 

 

「こういうタイプだったか、くそう!」

 

「意味無かったねー」

 

 

 

結局、バスは二席ずつ並んでいるタイプのバスではなかったため、飯田くんは凹み、芦戸ちゃんが慰めていた。

 

そんな私達だが、訓練所に向かう途中、時間が余る為にバスの中で談笑していた。

 

 

「私、思ったことはなんでも聞いちゃうの。緑谷ちゃん」

 

「あ、はい!なんでしょう蛙吹さん!?」

 

 

 

緑谷くんの隣に座っていた、梅雨ちゃんが緑谷くんに話しかける。

 

 

 

「梅雨ちゃんと呼んで。アナタの個性、オールマイトに似ているわ」

 

「そそそそ、そうかな!?いや、でも、僕はその!」

 

「まてよ梅雨ちゃん、オールマイトは怪我しねぇぞ、似て非なるアレだぜ?」

 

 

梅雨ちゃんに指摘されて緑谷くんが妙に慌てていたが、切島くんの発言からオールマイトは反動で怪我をしないということから別物と納得されていた。……まぁ、梅雨ちゃんの感は当たっているのだけどねぇ。そんな話を聞きながらも私は膝上に頭を置いて(いわゆる膝枕ってやつ)、昨日の件でブルーになってションボリしている影狼の頭を優しく撫でながら愛でていた。頭を撫でられて気持ちいのかユラユラと尻尾が嬉しそうに揺れている……可愛いい

 

 

 

「しかし、増強型のシンプルな個性はいいな!派手で出来ることが多い!俺の『硬化』は対人じゃ強ぇけどいかんせん地味なんだよなー」

 

「僕はすごくかっこいいと思うよ。プロにも十分通用する個性だよ!」

 

 

確かに霧島くんの個性は地味で派手さは皆無だが、硬くて倒れないと言うのは敵側からすれば何よりも脅威だ。硬い奴と倒れない奴ほど敵側に出てきた時は本当に厄介なのだ。ましてやその両方を持っているとなると、本当に敵に回したくない相手となる。まだ学生の身ゆえにまだまだ甘いが、きっと霧島くんはこの3年間の間に進化する。……いや、雄英高校のカリギュラムならもしかしたらこの一年間の間に化けるかもしれない。それ程までに彼の個性のポテンシャルは高いのだ。……まぁ、コレに関しては本人で気が付かないといけないので私からは何も伝えれないけれど。……………………燻るようなら、最悪ヒントくらいは出してあげてもいいかな?

 

私はそんな事を考えながらもクラスメイトの話に耳を傾ける。

 

「派手で強ぇっつったら、轟、爆豪の2人だな。単純な戦闘力で言えば幻獣姉妹の二人だけど」

 

急に私達の名前が出る。ちょっとびっくりしてしまったのは内緒だ。

 

 

「でも、爆豪ちゃんはキレてばっかだから人気出なさそ」

 

「ンだとコラ出すわ!!」

 

「ホラ」

 

 

 梅雨ちゃん、爆豪くん相手によく言うわね……。

 

 

「この付き合いの浅さで既にクソを下水で煮込んだような性格と認識されてるあたり、爆豪ってすげぇよ」

 

「てめぇのそのクソみてぇなボキャブラリーは何だコラ殺すぞ!!」

 

 

そんな騒いでいた爆豪くん達の会話を聞いた八百万さんとお茶子ちゃんそれぞれが、「低俗な会話ですこと」、「でもこういうの好きだ、私!」と対照的なことを言っていた。低俗なのは会話というより上鳴くんのボキャブラリーな気がするけど、まぁ賑やかなのはいいことだと私も思うわね。

 

 

「かっちゃんがイジられてる……!信じられない光景だ、さすが雄英……!」

 

 

爆豪くんがクラスメイトに弄られる。そんな光景に緑谷くんは震えていた。…………そんな事で驚くのねあなたわ。

 

 

「もう着くぞお前ら、いい加減にしとけよ……」

 

「「「はい」」」

 

 

 

 相澤先生の言葉に、やはり車内はピタっと静粛になった。

 

 

……みんなどんどんと相澤先生に調教されていってる気がするわね。

 

――――――――――――――――――――――――――

 

相澤先生の一言で落ち着いたクラスメイトは到着する事になったので敷地内に入っていく一同。

 

入った敷地内はなんと、

 

 

 

「すっげーーーーー!!! USJかよ!!」

 

 

 

そこにはあらゆる災害現場が再現されているエリアがあった。それは正しくテーマパークのUSJ。私と影狼は事前に聞いていたため感動は薄いがそれでも聞いてたのと実際に見た物とは違うので恥ずかしながらも少し興奮している。影狼も同じなのか目を椎茸のように輝かせて尻尾もパタパタと揺れている。……あぁ可愛いわ。

 

するとそんなスペースの一角に1人の人物がいた。一同が相澤先生につられついて行くとそこにはスペースヒーロー『13号』の姿があった。

 

 

「ようこそ! 1年A組の皆さん! ここは雄英高校でも最大の『災害救助訓練専用施設』」

 

一息入れて再度口を開く 

 

「水難、土砂災害、火事その他の場所を再現した演習場……名付けて『ウソの災害や事故ルーム』―――通称【USJ】です!!」

 

「「「USJだったー!!」」」

 

「「「それでいいのかよ雄英高校!!」」」

 

 

 

あまりにも安直なネーミングにほとんどの者が叫んでいた。私はその名前も姉達やここの担当である13号さんから実家でよく聞いていたので驚きはない。

 

だけどみんなの関心は13号さん……いえ13号先生に集まっていた。特に緑谷くんは当然としてお茶子ちゃんはファンのようでテンションが上がっているようだった。

 

 

「スペースヒーロー「13号」だ! 災害救助で目覚ましい活躍をしている紳士的なヒーロー!」

 

「わー、うちの好きな13号!」

 

 

そんな各自でテンションが上がる中、相澤先生はあることを尋ねた。

 

 

「13号、オールマイトは? 今日は俺とお前、それにあの人の三人で見る予定だったはず。だからここで待ち合わせるはずだが……」

 

「それがですね、先輩。通勤時間に制限ギリギリまで活動したみたいで……本人は大丈夫だと言っているみたいなんですが、『訓練中にマッスルフォームを維持できるかわからないから』と校長先生が…なので仮眠室で休んでいます」

 

「新米だからこそ補佐として二人もついたというのに肝心の本人が欠勤って……不条理にも程があるぞ」

 

「仕方がありませんよ。新米教師とはいえ彼はトップヒーロー。彼の性格上人助けは切っても切れないものですしね」

 

「それはわかっているんだが……はぁ、仕方がない始めるぞ」

 

 

それを最後に13号先生がみんなの前に立って話をし出す。…………オールマイト…あなたって人は、もう!

 

 

 

「えー、始める前にお小言を一つ二つ……三つ……四つ……」

 

 

「(相も変わらず増えますね……)」

 

 

いくつ話すつもりだろうと思う一同だった。

 

 

 

「皆さんご存知だとは思いますが、僕の個性は“ブラックホール”。どんなものでも吸い込んでチリにしてしまいます」

 

13号先生は手を見せながら言う。

 

「この”個性”でどんな災害からでも人を救いあげているんですよね!」

 

緑谷くんが

 

「ええ。ですが、しかし簡単に人を殺せる力です。みんなの中にもそういう”個性”がいるでしょう?」

 

 

 

それで何人かが頷く。かく言う私も、個性の影響か野生動物が持っている狂犬病のウイルスを爪に持っている。このウイルスはON/OFFをできるが普通に人に使えば簡単に殺せる力だ。狂犬病のワクチンはあるとはいえすぐには用意できまい。なのでとても危険な力なのだ。影狼だって自分だけでなく相手を影に沈ませる事も出来る。影狼だからこそ無事だが、影狼以外がその影の中に入るとありとあらゆる音と感覚が無くなる。文字通りの無だ。完全で完璧な外界との遮断のため人と言うのは音も感覚もないと簡単に発狂し廃人となる。つまり彼女の力も人を殺す力なのだ。しかも影に沈んでる途中で閉じる事も出来る為そうした結果起きることは、もちろん切断だ。……だから私たちが個性を発症した時に教えられ常日頃、訓練の度に教え込まれる事は今まさに13号先生が言ってる事なのだ。

 

 

 

「超人社会は”個性”の使用を資格制にし、厳しく規制することで一見成り立っているようには見えます」

 

 

私は13号先生の言葉に耳を傾ける。

 

 

「しかし一歩間違えば容易に人を【殺せます】。俗に言う《いきすぎた個性》を個々が持っていることを忘れないでください」

 

 

私は13号の言葉に頷く。隣の影狼も頷いていた。

 

 

「相澤さんの体力テストで自身の力が秘めている可能性を知り、オールマイトの対人戦闘訓練でそれを人に向ける危うさを体験したかと思います。」

 

 

そこで13号はみんなを見る。

 

 

「この授業では心機一転! 人命のために”個性”をどう活用するのかを学んでいきましょう!」

 

 

そして13号先生はもう一度全員の顔を見渡し

 

 

「――君たちの力は、人を傷つけるために有るのではない。助ける為に在るのだと心得て帰って下さいな。……以上、ご静聴有り難うございました!」

 

 

それで起こる拍手喝采。みんなが13号先生の言葉に感動し、さぁいざ始めようとした

 

 

……とその時。

 

 

 

―――――ぞわりっ。

 

 

 

 私は背すじが粟立つ感覚を覚えた。直後、施設内の照明が次々と光を失っていく。

 

私はその気配を感じた方へと顔を向ける。影狼と感じたのか毛を逆立てて威嚇した顔で同じ方を睨んでいた。

 

 

この館の中央付近、そこにはなにやら黒い霧のようなものが出現してそこからたくさんの人が出てきた。あの時の黒霧と呼ばれた者の個性によるものだろう。こんなにも沢山の人をワープできているのを見るに、本来の危険度を二段階上げる必要が出てきたようだ。

 

 

「相澤先生!」

 

 

私は咄嗟に叫ぶ。そんな相澤先生はコクリと頷きクラスメイトへと視線を向ける。

 

私は次いでクラスメイト達を見るとこれも余興の一つか? とあまり状況を理解していないものもいる中、相澤先生はみんなに警告した。

 

 

 

「一塊になって動くな! あれは……敵(ヴィラン)だ!!」

 

 

 

相澤先生が叫ぶのと同時に私はポーチから盾と剣を取り出し瞬時に装備してクラスメイトの1歩前に出て構えるのだった

 

 



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10話

皆様お久しぶりです(*^^*)
最近、見たい深夜アニメが多すぎてなかなか寝付けず寝不足気味です(;・ω・) 皆さんはちゃんと寝ましょうね。なかなか起きれませんし生活習慣がおかしくなるので(;・ω・)


ではまずは本日1話目です!どうぞ


ヴィランが現れ黒いモヤの中からゾロゾロと出てくる。前方にある広場に突如として黒い靄が湧き出し、そして埋め尽くしていく。

 

 

 

 そこから間を置かず、一人二人と……剣呑な、荒々しい雰囲気を纏う者達が続々と靄の中から姿を現した。

 

 

 

 

 

 一桁はあっという間に二桁へ、そして、A組の人数も軽く超えて……瞬く間に、誰もいなかったはずの広場は埋め尽くされてしまった。

 

 

 

 やがて、50を軽く超えた人数を吐き出した黒い靄は範囲を狭めていき──最後に二人、一団の中央最後尾に現して、完全に消えた。

 

 

 

「13号にイレイザーヘッドですか。先日いただいた教師側のカリキュラムにはオールマイトがいるはずですが」

 

 

 

黒いモヤからそんな声が聞こえてくる。先日?やはりあの時の……

 

 

私は影狼に目線を移し影狼も理解したのかひとつ頷き影へと潜む。

 

 

 

「相澤先生、恐らく奴ら……特に真ん中の手の奴とその後ろにいるモヤが先日の敵かと」

 

 

 

私は近くにいた相澤先生にそう伝える。すると相澤先生はひとつ頷き

 

 

 

「やはり先日のはクソどもの仕業だったか。椛、手筈は整ってるか?」

 

 

「何時でも。既に影狼には私の影に潜んであります」

 

 

 

相澤先生は良しと言って、忌々しそうにゴーグルの下で相手を睨む。私も戦闘態勢をし構える…

 

 

 

「どこだよ…せっかくこんなに大衆引き連れてきたのにさ…オールマイト、平和の象徴…いないなんて……子どもを殺せば来るのかな?」

 

 

 

しかし、手が沢山付いてる男の発言と同時に体中に鳥肌が立つ程の悪寒が走る。凄まじい悪意だ、他のクラスメイトたちも否が応でも気付かされたみたいでみんな顔が強ばっている。ヴィランの襲撃。その事実に生徒の多くが目を見開き、顔を引き攣らせてしまう。

 

 私は影に潜む影狼に今すぐこの建物から出てオールマイトに知らせるよう合図する。襲撃の可能性はあったので事前からもしもの時の合図は伝えあっていた。相澤先生にも話していたのですぐさま動く。影狼にはオールマイトだけではなく全先生達にも動いてもらえるように校長室にまずは行き根津校長に知らせるべく動いてもらう。

 

 

「ヴィラン!?バカだろ!?ヒーローの学校に入り込んでくるなんてアホすぎるぞ!」

 

 

 切島くんが、悲鳴を上げるように叫ぶ。

 

 

「13号先生、侵入者用のセンサーは!?」

 

 

「もちろんありますが……!」 

 

 

 

 八百万さんが発言し、13号先生は焦りを滲ませながら返答する。

 

 

「……いえ、13号先生。奴ら…特に真ん中の手の男とあのモヤの様な男は先日セキュリティを突破し職員室に侵入した者達です。私が個性で、そしてうちの影狼が二人を目撃しているのでその人物たちと特徴は一致しています。恐らくここのセキュリティはあの複数の敵の中に電波系の個性持ちがいて何らかの電波障害を発生していると思われます。」

 

「そ、そんな!?」

 

 

私がそう13号先生に言うとモモちゃんがショックを受ける。私の話を聞いた13号先生は雰囲気が代わりさらに警戒度が上がったように感じた。恐らく急な敵なので最大限の警戒はしていたが、先日の件と関わりがあるとわかったので生徒を1人残らず助ける為に何時でも動けるよう戦闘態勢に入ったのだろう。13号先生は個性の関係上あまり戦闘は苦手だ。できない訳では無いが、下手をすれば簡単に殺せる為に普段は救助活動にのみ個性を使っている。でも戦えない訳ではないので今回は危険度を最大限にまで上げていざと言う時に戦えるように心構えを変えたのだろう。

 

 

 

「何にせよセンサーが反応してねぇのなら、向こうにそういう事が出来る個性ヤツがいるって事だな。バカだがアホじゃねぇ。これは何らかの目的があって用意周到に画策された奇襲だ」

 

 

 

 轟くんは冷静に状況を判断して言い放つと、場の緊張度が更に増す。相澤先生も轟くんと同様の判断を下し、すぐに的確な指示を飛ばし始めた。

 

 

 

「13号避難開始!学校に連絡試せ!センサー対策も頭にあるヴィランだ。電波系の個性が妨害している可能性もある。上鳴、お前も個性で連絡試せ」

 

 

 

「っス!」

 

 

 

 上鳴くんは慌てながらも『放電』を利用した連絡を試す。失敗しても諦めず、あの手この手で試すが結果は振るわない。やはり妨害されているのは間違いないようだ。13号先生も連絡はしてみたがやはり繋がらない。相澤先生に首を横に振り、相澤先生も予想はしていたので表情は変わらずひとつ頷きまた警戒するため敵の方へと視線を向けた。

 

 電波系の個性とは……上鳴くんもだが、本来その系統の個性持ちは、基本的に引く手数多だ。いまの社会的に電波系の個性持ちは主に今回の様な緊急事態に陥った際の連絡網や電波探知機のように瓦礫や土砂等の場で何かを探すのに便利な個性だ。それ以外にも使い方は様々でとても便利な個性である。そんな個性だが、やはり同じ個性もちがいると簡単に電波障害をくらう。雄英高校の室内セキュリティや今回のこの建物のセキュリティすらも無効化し突破してきているのを見るに、いざ敵側に居ることに本当に厄介に感じる。あの先日の時外のセキュリティは反応していたのに室内のセキュリティは反応していなかったのでおかしいとは思っていたが、やはりワープだけではなかったようですね。

 

 

 

 

 

「先生は? 1人で戦うんですか?」

 

 

 

 

 

私がそんな考え事をしていると近くで不安そうな顔をした緑谷くんが相澤先生に訊いた。相澤先生──いや、プロヒーロー『イレイザーヘッド』の個性は【抹消】。対象を見ている間、そいつの個性を消す能力。緑谷くんはヒーロー大好きな所謂オタクと呼ばれる人種で、その知識量は素晴らしくとても膨大だ。ただ好きって訳でなくその個性や戦闘の仕方など様々な点からヒーローを見ている、オタクと言うよりも研究者のような子だ。だからこそか、アングラ系ヒーローでメディアへの露出の少ない相澤先生の戦闘スタイルも網羅しているらしく、多人数に正面戦闘を挑む状況は分が悪いと思ったのだろう。

 

 確かに、ごく僅かに公表されている彼の情報では、緑谷くんがそう判断するのもおかしくない……でも!

 

 

 

 

 

「一芸だけじゃヒーローは務まらん」

 

 

 

 

 

 緑谷くんの不安を払拭するようにそう言った相澤先生は、首元に巻いた捕縛布を広げて勢いよく階段下の敵(ヴィラン)のもとへ飛び出して行った。

 

 

 

そう。相澤先生ことイレイザーヘッドはその抹消個性では確かにあらゆる個性を無効化する強力な個性だが、相澤先生はドライアイなので長くは無効化できないし、何より私や影狼のような異形型……つまり常時発動型は無効化できない特徴を持つ。それに個性の中には煙幕の様なものを出せるやつもあるし、何より個性が無くとも道具を使えば煙幕は張れるし、個性なしに強い敵(ヴィラン)だっている。故に相澤先生は常に肉体を鍛えており肉弾戦をメインとした戦いをしているのだ。

 

 

 

「さあ、皆さん! 僕たちは急いで避難しますよ!」

 

 

 

 

 相澤先生から私たちを任された13号先生は、1人挑んで行った相澤先生に目もくれずに避難誘導を開始した。それだけ、彼の実力を信頼しているということだろう。

 

 緑谷くんは心配していたが、先も説明したが相澤先生はかなりの武闘派なのだ。だから心配はいらない。

 

 

 

「すごい…多対一こそ先生の得意分野だったんだ…」

 

 

「感心している暇はないです!さっさと逃げますよ!皆さんも突っ立ってないで動いて!早く!!」

 

 

 

私はボヤっとしているクラスメイト達に叫ぶ。私の大声に気がついたのかみんながやっと動き出した。しかしそんな中で少しおかしな顔をしている3名がいた。轟くん、爆豪くん、切島くんだ。まるで彼らの顔はやる気に満ちた顔だ。まるでいまから飛び出してしまいそうな……

 

 

私は一旦思考を切り替え、まだ呑気に広場の方を眺めてぶつぶつと独り言を言っている緑谷くんの腕を引いた。私の言葉で入口の方に駆けだしていたクラスメイトの中心にいた飯田くんも私たちに早く来るよう呼び掛けている。

 

 

 緑谷くんが後ろ髪引かれながらも自分で走り出したのを確認次第、私は掴んでいた腕を離しみんなと共に走った。

 

 

本当は相澤先生からは戦闘許可は降りているし、両親からも無理と無茶をしなければ緊急事態ならば全力で敵を倒せと事前に言われているので相澤先生の手伝いをした方がいいのだが、それだとクラスメイトのみんなも一緒になって戦う可能性がある。特に血気盛んな一部の男子達は今にも飛びかからん勢いなのでそれらの監視もあるためこっちにいた方がいいだろう。

 

 

そう言えば影狼は無事だろうか?バレない為に外には敵はいないと思うが絶対とは言いきれない。それにここに襲撃しているのなら学校にも足止めに襲撃を起こしている可能性も無くはない。このクラスでいちばん早いのは実は影狼だ。飯田くんも確かに早いが影狼なら影さえあればどんな障害物もすり抜けられる。それに100m以内なら生き物限定だが影さえあれば『影移動』という短距離ワープも可能だ。だから咄嗟の時はワープすればいい。どうか無事でいて……

 

 

 そんな考え事をしながらクラスメイト追いついたところで、突如、集団の前方が黒い靄によって塞がれてしまった。

 

 

 

「させませんよ」

 

 

 

 靄の中には、怪しく光る一対の目があった。さっきまで広場の中央にいたはずなのに既に目の前に転移している。

 

 

――――ちっ!やはりこの男、見た目通りの異形型個性か!? 発動型と違って常時発動している故に一切のラグがない!なんて厄介な!!

 

 

 

「初めまして、我々は敵ヴィラン連合。僭越ながら、この度ヒーローの巣窟である雄英高校に入らせて頂いたのは……〝平和の象徴〟オールマイトに、息絶えていただきたいと思ってのことでして」

 

 

 

 敵の発言を受けて、みんなに動揺が走る。

 

 オールマイトに息絶えてもらう……つまりあのオールマイトを、殺す?

 

 

 

――そんなことができるほどの戦力が、あるというの?

 

 

 

「しかしどうも、オールマイトの姿が見えない……まぁ、それとは関係なく――今の私の役目はこれ」

 

 

 

 ぶわっ、と矢庭に黒い靄が広がりかけ、全員が身構えた。

 

 

――と同時に13号先生が個性で吸いこもうと構える。彼女の個性ならモヤのような異形型なら捉えられるだろう。そう安心したのもつかの間……それよりもさらに早く、敵(ヴィラン)に向かって飛び出していった二つの影があった。

 

 

――ってあのバカ!?

 

 

「やめなさい!?あなた達!!」

 

 

私はそう叫んだが時すでに遅く、彼らは突っ込んで行ってしまった。私とした事が…何の為の監視だとっ…!

 

 

「その前に俺たちにやられることは、考えてなかったか!?」

 

 

 

時すでに遅し…そう叫んだ切島くんと続くように後ろにいた爆豪くんが黒いモヤの敵に対してそれぞれ一撃を叩き込んだ。

 

切島くんの個性は『硬化』。爆豪くんの個性は『爆破』。硬化による痛烈な強打と爆破による鮮烈な爆撃を一身に受ければ大概の敵(ヴィラン)なら倒せるだろう。当たればどんな敵(ヴィラン)だって大ダメージは必須だ……そう、“当たれば”ね?

 

 

――爆発による煙が晴れた先には、黒い靄を薄れさせつつ現れた先にいたのは

 

 

 

……無傷の敵が立っていた。

 

 

 

……やはりダメージは無しですか。あのモヤの様な身体、それにほぼラグなしのワープ個性。その異形型の特徴とも言うべき人ならざる姿にはそれぞれの見た目に見合った特性がある。例えば岩の様な身体なら岩の如く固く重く、水の様な身体なら水の如く流れる様に滑らかでさらに打撃や斬撃が効かない。恐らくあのモヤもただの見た目だけでなく、その姿通りにあらゆる攻撃を素通りさせるのだろう。やはりこの敵はかなり厄介だ。特に私のような近接特化の者にはこれ程までに相性の悪い者は居ないでしょうね。

 

 

 そしてむしろ、二人が突出し、13号先生と黒い靄の敵の間に入ってしまったことは、状況を更に最悪にする。

 

 

 

「ダメだ!どきなさい二人とも!!!」

 

 

 

 13号先生が叫んだけれど、遅かった。私は咄嗟に飛び出したが一番後方にいて、2人は最前列、さらに目の前にはクラスメイト達の束ができていたため思うように力を入れられなかった為に間に合うはずがなく

 

 

 

「生徒と言えど優秀な金の卵……散らして、嬲り殺す……!」

 

 

 

 次の瞬間、私たちの視界は真っ黒な靄に覆われた。

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――

 

黒い霧……恐らくワープで飛ばされたであろう私は咄嗟に姿勢を整え衝撃に備える。瞬間、空に飛ばされたのか足元が無くなったと同時に落ちる感覚があったので私は着地体制を整え――――地面に着地すると同時に膝をクッションのように曲げ前方に前転し何度か転がり勢いを殺して瞬時に体を起こして両足でブレーキをかける。ギャリギャリと下駄から嫌な音と焼けこげる匂いを感じながら、ある程度スピードが落ちた瞬間を見計らって私は力いっぱい踏み込む。

 

 

ドゴンッと重い音と共に風が吹き砂煙がまい周りを汚した。

 

 

「―――っ!!ゲホッゴホッゴホッ!――あっつい!!」

 

 

私は落ちる時と前転をした際に途中で燃えていた建造物に突っ込んだため親友が所属している場所で作ったニトリ製品のヒーロースーツには傷一つないが代わりに尻尾に火が引火したため叩きながら私は焦げた毛先を見て浮かない顔をする。自慢の尻尾が少しとはいえ焦げてしまった。

 

 

私の気分は少し落ち込みつつもヒーローたる物この程度のことは気にしてはいけないと思い気持ちを切り替え周りを警戒する。鼻と耳を使い探索するが、周りを見る限り私が飛ばされたのは火災ゾーン。場所が場所のためやはり獣鼻は使い物にならないが、獣耳はまだ大丈夫だ。火が燃える音の方が大きいが他の音が聞こえない訳では無い。これでも実家の庭で森で火災が起きた時の訓練をしていたのだ。森の中と比べたら森よりも開けた場所であるここなどどおってことはない。

 

それに、空から落ちていく際に見えたのはここかは右手は水難エリア、左手は山岳エリアだった。入り口から一番奥に飛ばされたようだ。だとすると中央への最短距離はこの後ろだろう。相澤先生の事を思うのならこのまま最短ルートを突っ切り中央へいくのが最善なのですが……

 

 

 

「――いえ、やはりここは他の飛ばされたクラスメイトを探すのが先ですね。幻獣家 家訓『ヒーローたる物助けるべき人を間違えてはならぬ』。かりにも相澤先生はイレイザーヘッド…つまりれっきとしたプロヒーローです。多勢に無勢とは言え過去一度も複数人相手に戦った事は無いっ!……なぁんてそんな事あるわけがありませんものね。それにあの時見た敵の多くはチンピラ風情。本物の敵とは違い恐らく寄せ集めの集団。相澤先生との戦闘中に味方を巻き添えにしていたりして仲違いを起こしていたのを見るに連携などとったことの無い急募で集めた連中なのでしょう。故にこそそんな輩に相澤先生が遅れをとるとは思えません」

 

 

 

――しかしだからこそ不安です。あの多手の男の自信満々の発言とモヤ男の発言。二人の発言からしてオールマイトを倒せる程の切り札があると見えます。本当にそんな者や又は物があるとでも言うのでしょうか?

 

 

 

「………………いえ。わからないことを考えても仕方がありません。寄せ集めとはいえ多勢に無勢。いくら雄英高校を合格したクラスメイト達とはいえやはり数が多いのは強いものです。

それに本当に急募で集めた輩なのだとしたら確実に中央だけでは留まらず各エリアにも大勢いると見ていいでしょう。でなければ私達をこんな場所にただ飛ばした訳ではないでしょうし」

 

 

 

それにあの発言から察するに彼らは私達を確実に殺しにかかって来ています。それに気がかりなのはそれだけでなく、中央グループには“この館内のセキュリティを電波妨害”している敵がいなかったのも事実。恐らく各エリアの何処かに隠れていると見てもいい。それにチンピラ風情とはいえ敵(ヴィラン)は敵(ヴィラン)。厄介なのは変わりなし……ですね。

 

 

 

「出し惜しみなんぞしていられません!ちょっと体力を多く削っちゃいますが――『千里眼』っ!!」

 

 

私は目に個性を集中させて当たりを見渡す。周りを見ていくと水難エリアには緑谷くん、梅雨ちゃん、峰田くんの3人が…ここ火災エリアには尾白くんが…山岳エリアにはモモちゃん、耳郎さん、上鳴くんがいた。みんな敵に囲まれておりいつ戦闘が起こってもおかしくはない状況下だった。私は個性を発動させたまま、同じエリアでひとりぼっちの尾白くんの所へ直行していく。理由はここから一番近くて且つ彼が1人だけ故に一番危険と判断したからだ。

 

 

森の中をトップスピードを落とさずに走れるよう幼い頃から訓練してきた私にとってこの程度の壊れた建物など平地と同じっ!!

 

 

「――見えたっ!!」

 

 

―――私は個性を発動した状態で走りながら尾白くんが見えたタイミングでスピードをさらに加速し斜めに倒れたビルを駆け上って飛び上がる。

 

 

 

「―――尾白くん!!横斜め上にジャンプ!!!」

 

 

 

私は尾白くんへ声いっぱいに叫びながら呼ぶと距離はあれど聞こえたのかこちらに向いたあとそのまま左へ飛び上がる。

 

 

私はニヤリと笑い敵が集まっている中心へ、右足を伸ばし左足を曲げる――所謂ライダーキックのように相手に蹴りをぶちかます。

 

 

 

「幻獣流柔術 突翔(とつか)崩し!!」

 

 

 

着弾と同時に小規模のクレーターができ、衝撃と風圧で大勢の敵(ヴィラン)がぶっ飛んでいく。

 

 

 

私達の家…幻獣一家には先祖代々受け継がれている武術が存在している。私達と他三家を含め四家の獣神一家には総合武術がありそれぞれが最も得意とする武術が各家の武術として総合武術とは別で受け継がれていて、私たち幻獣一家の幻獣流は獣の筋力を余すこと無く発揮できる身体能力のみの柔術が受け継がれている。そのため、素手や足技が多くありこの技もそのひとつだ。

 

 

周りを見渡すが敵はあと数人、それも片手で数えれる程度だ。体よく塊になって集まっていたのが幸をなした為、想定よりも多くの敵を打ち取れたようだ。それに私がここに来るまで尾白くんも奮闘していたのもあるだろう。そのおかげで敵も残り少なくできた。

 

 

 

「尾白くん。急に来てアレですが、尾白くんの奮闘のかいもありまして敵の残りはもう数人。なのでここを任せても大丈夫でしょうか?」

 

 

私は尾白くんにそう言うと尾白くんは強く頷く。

 

 

「ああ大丈夫だ。流石に多くて助かった。ありがとう犬走さん」

 

 

「椛…でいいですよ尾白くん。犬走だと影狼と被りますからね」

 

 

私はそう言うと『わかった』と尾白くんが答える。

 

 

「では私は他の所へ向かうのでここは任せます!」

 

 

「うん、任された!」

 

 

私は尾白くんへそう言い別れると、すぐさま足に力を入れてトップスピードをだし――――『山岳エリア』へと急いだ…

 

 

 

――モモちゃんが危ない!!

 

 

――――――――――――――――――――――――――

 

 

―八百万百 side―

 

 

「くっ……上鳴さん!」

 

 

「やられたっ……完全に油断してたっ」

 

 

 

私は響香さんと上鳴さんとで一緒に飛ばされ敵(ヴィラン)と遭遇し戦闘していましたが、上鳴さんの個性の特性を活かし私が個性『創造』を使って帯電シートを作りその中に響香さんと隠れて敵を一掃しました。そこまでは順調良かったのですが、私達が油断してしまったせいで地面に隠れていた敵に気付かず、個性の影響で少しおバカになってしまった上鳴さんが捕まってしまいました。

 

 

 

「個性…使うなよ。使えば…こいつを殺す」

 

 

 

敵はそう言い上鳴さんを持ち上げる。私達は手を挙げながら何とかしようと打開策を考える。

 

 

 

「(考えなさい!私達の油断でこうなってしまった。椛ちゃんも常に言っていたではありませんか!戦闘後の油断が一番の命取りだと……)」

 

 

「全滅させたと思わせてからの伏兵。こんな事も想定できていなかったなんて」

 

 

 

私は椛ちゃんとの会話を思い出しながら何とかしないとと思い考える。しかし焦っているのかいい考えが思いつかない。

 

 

 

「(……っく、どうすれば)」

 

 

すると敵は私達の考えを読んでいるのか左手に持った上鳴さんを持ち上げながら右手で電気を出す

 

 

 

「同じ電気系個性としては殺したくないがァ……まぁ、しょうがないよなぁ?」

 

 

ニヤリと笑った男は私達を挑発するような声色でこちらを愉快そうに見やる。

 

 

 

 

「電気系……恐らく椛さんと轟さんが言っていた通信妨害しているやつね」

 

 

 

――くっ…こんな所にいたなんて。

 

 

私達が動けないとわかったのかいっそう笑みを深めながらこちらへ歩いてくる。

 

 

 

「そっちへ行く……決して動くなよ?」

 

 

 

手から電気を発生させながら近ずいてくる敵。私はどうすればいいのか悩んでいると―――

 

 

『わおぉぉぉぉおおんっ!!』

 

 

何処からともなく犬のような狼の様な鳴き声が響き渡った。

 

 

―――これはっ!!

 

 

 

「……なんだぁ?犬の叫び声か?どっかのアホが鳴いてんのか?」

 

 

 

敵が何処か違う所を一瞬見たので私は響香さんに目線を向けると彼女も聞こえ、そして理解したのか相手に話しかける。

 

 

 

「上鳴もそうだけどさ…電気系って勝ち組じゃん?」

 

 

 

「あぁん?」

 

 

響香さんの急な話に敵は私達を睨みつける。

 

 

 

「だってヒーローでなくても色んな仕事あるし、引くて数多じゃん。いや、純粋な疑問ね?なんで敵(ヴィラン)なんかやってんのかなぁって」

 

 

 

そう言いながら響香さんは右耳のプラグを足元の装置へ後ろ側から伸ばしていく

 

 

 

「答えたくないならそれでもいいんだけど」

 

 

 

そしてプラグが差し口へ届きそうな時

 

 

 

「やめろ。気付かないとでも思ったか?」

 

 

 

 

脅すような声色で私達に電気を発する手を上鳴さんに向けながら警告する男。

 

 

 

「子供の浅知恵など馬鹿な大人にしか通じないさ」

 

 

 

そう言いながら1歩ずつ近づいできている敵。

 

 

 

 

「ヒーローの卵が人質を軽視するなよ」

 

 

 

彼がそう言うと、効果が切れたのか気絶していた敵達が起き上がってきていた。それに気がついた敵はより残虐的な笑みを浮かべながら近づいてくる。

 

 

そんな笑みを浮かべる男に恐怖を感じながらも私は“彼女”が来るのを信じて待っている

 

 

 

だって―――

 

 

 

「お前達が抵抗しなければこのアホは見逃してやるぜ?」

 

 

 

 

 

 

“彼女”は、私の大切な幼馴染で―――

 

 

 

 

 

 

 

「他人の命か…自らの命か――」

 

 

 

 

 

 

 

“彼女”は、私の大好きな親友で―――

 

 

 

 

 

 

「へへへへ――さぁ、動くなよ?」

 

 

 

 

 

“彼女”は、私の一番で最高の――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――幻獣流 奥義!! 月華蹴嵐(ゲッカシュウラン)っ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ズドォォドォォォォォオオオオオトン

 

 

 

 

 

『ぎゃぁあああああああ!!!?』

 

 

 

 

 

「モモちゃんっ!! みんなっ!! 大丈夫っ!?」

 

 

 

 

 

――――ヒーローだから

 




……最後の方は予定と違ってほぼノリと勢いのまま書いてて思った事。




なんか気がついたら八百万百がヒロインみたいになってた……あれぇ?


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11話

てなわけで本日2話デース。1話目は先に投稿しているのでまずは前の10話から見てくださいデース!


何故だろうか……本来はここまでの肉弾戦特化の子じゃなくて、原作同様の剣と盾持った、どちらかと言えばモンハンの片手剣使いのようなイメージの戦闘予定だったのに、好きなアニメのひとつの『戦姫絶唱シンフォギア』や、最近妹と従姉妹に強制されて全話見る事になった『ひろがるスカイ!プリキュア』。それとなのはシリーズのひとつである『vivio』と『Vivio Strike』。更に押し入れの中にしまっていた本棚タンスの中から出てきた『史上最強の弟子ケンイチ』と『らんま½』をついつい全巻読破にアニメ全話視聴。それに同じ引き出しの中から出てきた東方格闘ゲームの『東方非想天則』と『東方憑依華』。

更に言うと最近アニメ化して放送してて前から全巻持っていた『魔法少女にあこがれて』と『夜桜さんちの大作戦』『転生したら第七王子だったので魔術ry』等など……そんな漫画やアニメゲームをこのひと月以上見続けてしまったせいで、近接特化の女の子キャラが頭に離れないのですぅ。しかも、女性の近接特化キャラって大概みなあほみたいに強い強キャラが多いのでついついうちの椛も釣られてしまいました(;´・ω・)



私は千里眼でモモちゃんたちの危機が見えていたのでトップスピードで走る。

 

途中モモちゃん達にクラスメイトの女子グループと話してた時、私が仲間に助けに行ってる時の合図を教えた時があったのでそれを伝える為に私は叫んだ。

私のこの叫びは特定の音波を出しているためどんな爆音や高音の中でも相手に聞こえるように特訓している。全体的にする方法と個人にする方法と2種類あり今回は個人にする方法を選んだ。因みに個人は特定音波を縮めて圧縮し1本の束のようにするイメージで声を出しており、全体的に出すよりもより遠くの相手に聞こえるようにしている。

 

上鳴くんは兎も角、響香ちゃんに聞こえてるかはわからないけど、小さい時から何度も練習相手になってくれてたモモちゃんなら聞こえているだろうと思いながら私はただひたすら走った。

 

 

そして到着した時には中心にいた電気を手に纏って上鳴くんを持った男と、怒りと欲望とでごちゃ混ぜになったおかしな表情をした敵(ヴィラン)達に囲まれていたのを見て私は思わず怒りに任せて奥義を打ってしまった

 

 

 

「モモちゃんっ!! みんなっ!! 大丈夫っ!?」

 

 

 

私は中心にいた男に蹴りを入れたと同時にひったくった上鳴くんを持ちながらモモちゃん達に言う。

 

 

 

幻獣流奥義 月華蹴嵐(ゲッカシュウラン)。

 

さっき出した飛び蹴りとは違い、ポーズというか体勢は同じなのだが、この技はそこから更に体を横に回転させドリルの様に相手に蹴りをぶちかます技だ。

 

普通ならここまでの威力はないがそこは幻獣一家。獣の力を持つ獣神一族の中でも特に脚力の強い四足歩行の獣が多い私達幻獣一家は文字通りの馬鹿みたいな身体能力を持っている。特に手足の筋肉は常人の人間の比ではなく、女児でもその気になればリンゴを片手で握り潰せる。なんならすりおろしリンゴも作れる。そんな脚力で回転技を放てば小さな竜巻ぐらいは容易く起こせるのです。

 

 

流石に人質がいましたしすぐ近くにモモちゃん達がいた為、怒りに飲まれかけていた理性を戻しとっさに手加減したとはいえそれでも敵を吹き飛ばすぐらいはできました。モモちゃんと響香ちゃんも踏ん張ってくれたおかげで被害を出さずにすんで良かったです。

 

 

 

「モモちゃん!響香ちゃん!大丈夫でしたか?コレらに何もされていませんでしたか? とても欲望に満ちた目で見ていた者共がいたので本当に何もされていませんか?」

 

 

「ふ、ふふふふ。だ、大丈夫ですわ椛ちゃん。だ、だから一旦落ち着いてくださいまし!それで離れてください!」

 

 

「だ、大丈夫!大丈夫だから椛!く、くすぐっt――あっ…すっごいもふもふ」

 

 

 

私が慌ててぺたぺたと身体中を触っているとくすぐったかったのか少し笑いながら大丈夫だと言った。本当に大丈夫だったのでしょうか?肉体的な損傷は戦闘時に負ったであろう傷ばかりでしたが精神的な部分はどうもこうも出来ません。いざとなったら私を使ってアニマルセラピーをしましょう!そうしましょう!

 

 

「ありがとうございますは椛ちゃん。助かりましたわ」

 

「本当にありがとう椛。助かったよ」

 

 

そうお礼を言ってくる二人。上鳴くんは私の足元でウェイウェイ言っている。………それ以上その寝転んだ体勢で近ずいて来ないでください。スカートの中見えてしまいます。

 

 

私がスカートを抑える仕草に気がついたのか響香ちゃんが上鳴くんを回収してくてた。ありがとうございます。

 

 

 

「……私達はもう大丈夫ですわ。だからどうか他の方の所へ行ってくださいまし」

 

 

 

しばらくしてモモちゃんの個性で作ったロープや手錠等で倒れていた敵(ヴィラン)達を拘束し終わったあとモモちゃんが私に向かってそう言った。

 

 

なので私は心配しつつも頷き立ち去ろうと思い立ち上がる。

 

 

 

「わかりました。モモちゃん達がそう言うのであれば他のところへ向かいます。……無理はしないでくださいね?」

 

 

 

私がそう言うと苦笑した顔で2人に『そっち(そちら)こそ』と言われてしまった。私な心配な気持ちがありつつも、意識を切り替え千里眼を使う。すると他のエリアの敵は倒されており中央へと集中していた。するとそこには謎の奇妙な黒い生物に組み付きバックドロップを極めているオールマイトと、倒れふしている相澤先生を見てしまった。

 

 

 

故に私は一言残しその場を去るのだった。

 

 

――――――――――――――――――――――――――

 

そして私はまたトップスピードを維持したまま次の場所へとたどり着く。ここは中央エリア……つまり飛ばされる前にいたエリアなので一番早く到着できた。

 

 

 

そして、私が辿り着いた時にはオールマイトの傷口に指を突っ込む大男だった。大男の胴体にはモヤが渦巻いておりゲートの様に出して、オールマイトの下から攻撃できたのだろう。

 

 

――故に私は咄嗟に

 

 

 

「そこはダメでしょうが!!」

 

 

 

私は走るスピードをそのままにオールマイトのお腹をかするように大男の指をへし折る。

 

 

私達姉妹は特訓のひとつに敵の攻撃をスレスレに避けて反撃する特訓をしている。私達はそれを『グレイズ』っと呼んでいるのだが、これの押領で相手の身体スレスレに技を当てる技術も学んでいる。これは主に相手の手元に捕まっている人質を助けたり、相手の所持している武器を無効化するのに役立つ技術だ。

 

 

 

私の攻撃で手が離れ余裕ができたのかオールマイトも距離を置いた。

 

 

 

「助かったよ椛くん。ありがとう、そして離れていたまえっ!」

 

 

 

オールマイトはそう言いながら私の隣に飛び込んでたっていた。しかしオールマイトの掴まれた傷跡からはおびただしいしい血痕が流れていたためダメージは相当。思いっきり縫ったばかりの傷口に指をッ込まれればそれもそうなってしまいます。

 

 

 

「いやです。万全なあなたであれば下がりましたがいまのあなたは万全とはいきません。傷口がさっきのアレのせいで開いているでは無いですか! そんな状態のあなたをほっとける程私は非常では無いです!」

 

 

私がそう叫ぶがオールマイトは困った顔をしながらも真剣に言う

 

 

「だが君を巻き込むわけにはいかない。君達や君達のお爺様には私は大変お世話になっているからこそ君に怪我をさせる訳にはいかないのだよ。それに私はオールマイトだ。守るべき者に守られてちゃNo.1のヒーローが泣いてしまうぜ」

 

 

ニカッと笑うヒーロー。しかしだからこそ……だ。

 

 

 

「いえ、だからこそ一緒に戦います。あなたを守るとは言いませんし言えません。そこまでの実力はまだありませんから。ですが敵を翻弄する事はできます」

 

 

 

私はそう言い強い意志を持ってオールマイトに言う。

 

 

「――私、足には自信があるのですよ?」

 

 

ニヤッと笑う私にオールマイトは諦めたのか首を横に振りため息をつく。

 

 

「…………全く君って奴は…お姉さん達に似て頑固にも程があるよ」

 

 

「むしろ褒め言葉です!」

 

 

オールマイトに呆れられたが私は問題ない。足に自信があるのは本当だしね。

 

 

 

「無理無茶はしない事。君達姉妹に何があった時まっさきに怒られるのはワタシなのだから。絶対に前に出すぎないことそれを守れるのならいいよ」

 

 

「はい!わかりました」

 

 

オールマイトが提案してきたので頷いた。

 

 

「ちなみに怪我をしたらご両親達に先生たちと一緒に伝えるからね」

 

 

「…………………………………………はい」

 

 

 

オールマイトのその死刑宣告の様な言葉により気を引き締めることとなった………これは咄嗟の無理ができなくなってしまった。流石に無理無茶をして怒られないわけが無い。もしもここで怪我をしてきようものなら――――

 

 

いえ、考えるのはよそう。今は目の前のことに集中すべきですね。

 

 

 

「あれの個性は『ショック吸収』それに『再生』と『怪力』だ。まだ確信は無いけれど恐らくそれらだと思う。少なくてもショック吸収と再生はあそこの連中がそう言っていたから間違いないだろう」

 

 

 

そう構えながら言うオールマイト。なんて面倒な組み合わせの個性なのでしょうか……

 

 

 

「『再生』に『怪力』それに『ショック吸収』ですか……厄介ですね。しかも怪力持ちならばその馬鹿げた力で無理やりスピード出してます?」

 

 

 

私がそう質問するとオールマイトはよくわかったねと言った。……本当に面倒な相手と戦う事になってしまいましたね。

 

 

ですがこれで理解しました。コイツがオールマイトを殺す切り札なのだと。

 

 

 

「では参ります!」

 

 

「いくぞ!!」

 

 

 

私達が動き出すと

 

 

 

「脳無っ!! オールマイトを奴らを殺せっ!!」

 

 

手の男がそう指示を出すと同時に脳無と呼ばれた大男がオールマイトと取っ組み合う。

 

 

オールマイトと大男……脳無がぶつかり合う中、私は自慢の動体視力と身体能力をフルに使いオールマイトの隙を紡いで相手に蹴りやパンチを入れる。常人よりも強靭な肉体を持つ私とはいえ、オールマイトと互角の体格を持っている脳無にはダメージが入っていないのか無反応だ。感覚としてはちゃんと手応えは感じているのだがこれといった反応はない。

 

 

ダメージが入っていないのかそれとも……

 

 

「―――痛覚が存在しないのか」

 

 

私の独り言にオールマイトが反応して戦いのさなか聞いてくる。

 

 

「痛覚がないだって?!」

 

 

「はい…先程からオールマイトの隙を狙って人体の急所を狙って攻撃しているのですが痛がる様子がなく、更に男の急所にも思いっきり蹴りを入れてみたのですが確かな感覚はしたのですが無反応でした。いくらショック吸収の個性だとは言え、痛みまで無くなるわけではないと思ったのですが反応無し。これはダメージがないと言うよりは痛覚がないのかと」

 

 

私が戦いながらそう言うとオールマイトは少し考え。

 

 

「なるほどだからか……」

 

 

何か思い当たる節があるのか殴り合いながらそう呟いた。

 

 

オールマイトと脳無の戦いが更に過激化して言った所で

 

 

突然ちゅうに黒モヤが現れそこから脳無の手が出てきた。

 

 

「しまっ――!?」

 

 

「貴女は鬱陶しいので先に始末させていただきます」

 

 

そう黒モヤから聞こえたと同時に……

 

 

――私は脳無に殴り飛ばされた。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――

 

 

「………っ!?――いってててて」

 

 

咄嗟にガードが間に合ったとはいえ随分と殴り飛ばされてしまった。……ここは中央エリアから土砂エリアに最も近い、小さな岩山にぶつかったようだ。

 

 

頑丈な体で良かった。感覚的には腕にひびが入っているだろうが折れていない。ヒビもそこまで酷くはないだろう。全身もぶつかった箇所は痛いが咄嗟に出たガードとぶつかる瞬間に無意識にした受け身のおかげでダメージは殆どない。せいぜい打撲とひび割れた岩肌による切り傷くらいだ。戦闘には特に問題ない……が

 

 

 

「この気配……影狼が帰ってきたわね」

 

 

どうやら影狼は予定通り根津校長先生と共にヒーロー科の先生達も読んできてくれたようだ。ついでに飯田くんも一緒にいた。何時からかは知らないが飯田くんも知らせに行ってくれていたのだろう。

 

 

私はそっと一息つき安心するのだった。

 

 

 

 

 

先生達が到着したあの後、残りの敵(ヴィラン)達もすぐさま一掃された。そして脳無の方もオールマイトがショック吸収でも吸収しきれない程の打撃を打ち込めばいいと言う脳筋戦法で脳無を殴り飛ばしオールマイトの勝利を掴んだ。唯一残っていた手の男とモヤの男はすぐさま黒霧の中に退散し逃げ出したのだった。……逃げ足の早いやつらめ

 

 

 

――そしてそんな私はと言うと…

 

 

 

「ヴェアアアアアアアア。モミジヂャンンンンン――ブジデヨガッダァァァァアアアアアア」

 

 

 

 

影狼にガチ泣きされていた。

 

 

 

どうやら影狼は飯田くんと先生達より先にきていたらしく理由は私が心配だったからだそうだ。

 

ただ影狼が来たタイミングがちょうど私が脳無に殴り飛ばされた瞬間だったらしくそのせいで影狼はしばしフリーズしていた様だ(近くにいたお茶子ちゃん曰く)。

 

それ見てガチギレした影狼が脳無の方へと行こうとしたため広場の残っていたクラスメイト達と背中がブラックホールで吸われて重傷を追っていた13号先生が止めていたそうだ。……うちの子がすみません先生。

 

 

そのタイミングで私が影狼に気がつき、更に同時に先生達も到着したってわけです。

 

全ての敵を一掃した後は一直線に地面に降り立っていた私に抱きつき今に至るってわけです。……………何気にこの飛びつき行為が一番のダメージなのは言わないでおこう

 

 

 

「ほら影狼…私はこのとおり大丈夫だから…ね?ほら、どこも怪我ないよ?」

 

 

私はグズる影狼の頭を優しく撫でながら言う

 

 

「うそつき〜……ぐすっ…うで、ひびいってるくせにー……ひっく」

 

 

 

――ギクリっ

 

 

 

「(なんでこういう事はすぐ気がつくかなぁ。普段は鈍臭いくせにぃ)」

 

 

 

私はため息をつきつつも何処か嬉しい気持ちがあって変な感じだった。

 

 

「……さぁ、みんなの所に行こ?私が言うのもなんだけどみんなが心配してこっちみてるから…ね?」

 

 

「………………うん」

 

 

ちょっと幼児退行してる影狼の手を引きながら私達はクラスメイト達の待つ場所へと行くのだった。

 

 

――――――――――――――――――――――――――

 

―影狼 side―

 

「……16、17、18、19、20……二名除いて、他の生徒たちは無事か」

 

 

 

 ベージュのコートと帽子を身に付けた、いかにも刑事らしい見た目の刑事――塚内直正さんは、施設の入り口前に集められた私達生徒たちの人数を数えそう呟いた。

 

 

ちなみにこの塚内さんは、ほとんどの人間が知らない、オールマイトの事情を知っている数少ない人だ。

 オールマイトからは警察としても、あるいは個人としても信用されている数少ない人でとても人格者の1人。オールマイトが数少ない友人と読んでいる人物だ。……因みにこの数少ない友人と言っていた際に、母様が可哀想な子を見る目をオールマイトに向けていたのは内緒だ。

 

 

 ただ、今回の襲撃で主犯格と思しき二人の人物――それぞれ死柄木、黒霧と呼ばれていた敵(ヴィラン)たちの逃亡を許してしまったのだ。いくら弱体化しているとはいえあのオールマイトが逃してしまった所を見るに、ただの愉快犯では無いのは確かだ。只者では無いのは今回の襲撃の有様を見てもよく分かる……と言っていました。

 

今回の襲撃とそもそも敷地内への敵侵入を許してしまったことと共に、マスコミからは非難の的になりそうな点ではあると見てます。ましてや先日ではマスコミに紛れていたのですからマスコミがその事を調べていないわけが無いです。黒霧と呼ばれていた敵がかなり自由なワープを可能とする強力な個性の持ち主であると目されていることも、マスコミ相手には言い訳としか受け取ってもらえないだろうと根津校長先生は呟いていました。

 

 

 

………でも、あの時マスコミが騒ぐだけに飽き足らず敷地内に無断で侵入していたのも事実。あれがなければアラームが鳴り響かなったかもしれませんし、そのせいで全先生が駆り出される事もありませんでした。侵入した挙句騒いだマスコミのせいで先生達が足止めをくらい容易く侵入されたのも事実。それが無ければこうして今回襲撃を起こされることもありませんでしたでしょう。入り口には監視カメラがありますし、幸いにもあの二人が壁を壊す所もバッチリ写っていました。その後一斉に侵入するマスコミ達も……もしも今回の件を含め前回の件で騒ぎ立てるのでしたらそれらを全ての局に送り付けて脅しをかけましょう。今回の逃がした件はどうしようもないのですが、前回の件はマスコミが侵入しなければどうにかできた可能性はありますから徹底的に交戦してやる。

 

 

 

「刑事さん、相澤先生は……」

 

 

 

 そんな事を考えていると梅雨ちゃんが塚内さんの所へ行き相澤先生の容態を尋ねていた。

 

 塚内さんは彼女の表情、そして他の生徒たちの暗い表情を見て、すぐに察する。

 

 

 

「……怪我人たちの、容態かい?」

 

 

 

 生徒たちの大半がやはり頷いたので、塚内はひとまず自身が把握している限りを話す。

 

 

塚内さんはスマホを取り出し病院と連絡を取るとスピーカーをオンにし、私達に聞こえるように向けた。

 

 

 

『両腕粉砕骨折、顔面骨折…幸い脳系の損傷は見受けられません。ただ…、眼窩底骨が粉々になってしまいまして…、目に何かしらの後遺症が残る可能性があります』

 

 

 

「だそうだ」

 

 

 

「ケロ…」

 

 

 

その言葉を聞いた峰田くんと梅雨ちゃんが心配そうな顔になる。

 

 

それを見た私は塚内さんに目配せしてそれに気がついた塚内さんは反応する。

 

 

 

「大丈夫。それは普通の病院では…さ。知り合いに腕のいい医者がいてね。そのお医者様は『死者すら蘇る』と言われている程の腕でね?後遺症が残る可能性があるって程度であれば完璧に直してくれるさ」

 

 

そういうとクラスメイト達はホッと一息をつく。本当かどうかは半信半疑なようだがそれでも無事ならそれでいいとおもっているのだろう

 

 

 

「13号の方は、背中から上腕にかけての裂傷が酷いが命に別状は無しとのことだ」

 

 

 

「あの、デクくんは無事なんですか!?」

 

 

 

お茶子ちゃんがそう聞くと

 

 

「オールマイトの近くで倒れていた少年は、保健室で対応可能な範囲だそうだ。今頃はリカバリーガールの下で安静にしているだろうから、心配しなくていい」

 

「デクくん……よかった」

 

 

うん、結構ボロボロだったけれど見た目に反してその程度ですんだのは本当に良かった。

 

 

「……あの、椛ちゃんは」

 

 

モモちゃんがおずおずと手を挙げながら不安そうな声で聞く

 

 

……あっ。しまった。先に椛ちゃんを保健室に連れていこうとしててその後バタバタしてて無事だとモモちゃんに伝えるの忘れていた

 

 

 

「ああ彼女かい?彼女なら無事だよ。事情聴取ではかなりぶっ飛ばされて大岩に激突したそうだけど、本人曰く腕に軽いヒビが入った程度。実際は、腕に軽度のヒビに全身の擦り傷と軽度の打撲程度だったそうだよ。そんな彼女も現在は保健室で寝てるよ。彼女は元気だと言っていたそうだけど保健室の先生が無理やり寝かしたみたいだね」

 

 

そう言った彼の話にモモちゃんは安心しきったのか少し体から力が抜けて一瞬落ちかけた。そばにいた響香ちゃんが咄嗟に支えたが、モモちゃんは一言謝って大丈夫だといい立ち上がった。……ご、ごめんねモモちゃん。

 

 

恐らく今回の保健室を嫌がった理由はオールマイトから怪我をしたら母様達に報告するって話だったから治癒し終わったあとはすぐさま帰るつもりだったのだろう。

 

 

その後少し話したが、塚内さん曰く今日中に事情聴取をするのは無理だろう。また後日、事情聴取することにするとと言い仕事に戻って行くのだった。

 

 

――ちなみに椛ちゃんの報告は確定だ。存分に怒られるといい。

 

 

――――――――――――――――――――――――――

 

―椛 side―

 

時が過ぎ自宅にて…………家族会議が開かれてしまった

 

 

 

 

 

「………………わふぅ」

 

 

 

以前、影狼が説教をされていた大広間にて、いつものように上座に現当主の我らが父・神狼(シント)が、その隣に母・紅月狐(アキコ)が、その1段下の正面から見て左に祖父・篁(タカムラ)とその隣に祖母・狼奈(ロウナ)が、反対側には母親に近い順で藍姉様、雪風姉様、黒歌姉様の3人が。

 

 

 

そしてその家族達に挟まれるように真ん中に正座させられているのが影狼……ではなく私。

 

前と違うのは妹達が寝静まった夜に説教が行われていると言う事だ………

 

 

 

今回は結局あの後オールマイトだけでなく根津校長先生や他の先生達、挙句に塚内さんや影狼からも報告があったそうでこうして家族会議をする羽目になった。

 

 

――――ちなみにリカバリーガールに影狼、そしてオールマイトからは私が怪我しているのに誤魔化そうとした事も報告されている。

 

 

 

「―――さて椛よ。なぜこうして家族会議をしているかわかるな?」

 

 

 

いつものように口を閉じ沈黙し、更に目も閉じ腕を組む父様を横目に見つつ、私の方へ目線を向けた母様が険しい顔をしながら開いた扇で口元を隠しつつそう問いた。……なんか前にも同じセリフを言った気がするデジャブだろうか。

 

 

「…………お主。いま何を余計な事を考えておる」

 

 

 

「―――ご、ごめんなさい!?」

 

 

私がおバカなことを考えていたせいで母様の睨みつける攻撃が更に深くなった。……余計な事は考えないでおこう

 

 

「……それで、返答は?」

 

 

 

母様の威圧が増してしまった。私は内心ではおバカな私をしばきながら母様の質問に答えようと口を開く

 

 

 

「は、はい…負傷しているオールマイトに愚かにも手助けをしようとしたためです」

 

 

「……はぁ。何故そのような事を?」

 

 

 

母様は呆れたかのように一つため息を吐きまた問いただす。父様はいつものように相変わらずで、お祖母様は今回は少し怒りを隠しているかの様に見ていて、お爺様もお父様以上に沈黙したような顔で目を閉じて腕を組んでいる。藍姉様は怒ったように、雪風姉様も怒ったように、黒歌姉様は心底呆れた顔をしてそれぞれ影狼を見ていた。…………やっぱり怪我をしたせいで先日影狼が怒られていた時よりも怒ってるよぉ

 

 

「オールマイトが以前手術した所を直撃でくらい、おびただしい量の血が流れ落ちていて、顔が青くなっていたのと、更に今日既に活動限界まで活動していた中での変身だったため、長くは持たないと確信しできるだけ短期決戦に決め込むためにオールマイトのサポートにと想い行動に移しました」

 

 

「――ふむ、それで?」

 

 

「はい。私の目と身体能力であるならば敵の攻撃を避けつつ普段のオールマイトの行動を見切り慣れている私ならいけると確信し、条件付きでサポートに入ったしだいです」

 

 

「……なるほどのう。―――で?結果は?」

 

 

その言葉と共に母様の重圧が更に重くなる。……私は震える体にムチを打って母様の質問に答えるべく口を開く。

 

 

「―――私は敵の行動を見誤り、回避ができず直撃。幸いにもガードが間に合った故に腕に軽いヒビですんだものの、一歩間違えていたら死んでいました」

 

 

そう言うとお母様の重圧が軽くなった。……無くなった訳では無いが先程よりは息がしやすい。

 

 

「………何故じゃ…何故そのような無茶をした。あれほど――あれ程口うるさく無理、無茶をするなと言ったであろうが!?」

 

 

お母様が立ち上がりながら私の胸ぐらを掴む。………私はお母様の怒りの中に悲しみが入った目を見てしまい罪悪感と申し訳なさで胸がいっぱいになりごめんなさいと言う言葉しか出てこなかった。

 

 

 

「………頼む。頼むから死に急ぐような事はしないでおくれ――親より早く子の死に姿など見とうないぞ――我らの愛し子よ」

 

 

 

そう言ったお母様は胸ぐらを掴んでいた手を離して痛い程に力強く私を抱きしめてきた。泣きながら切実に言われたその言葉はただ怒られて説教をされるよりも心に直撃するように響き、涙が溢れ出て止まらなかった。

 

 

「おかあさまぁ…ごめんなさいぃ…ごめんなさぃぃ」

 

 

「よしよし」

 

 

私が泣き崩れるとお母様は先程までとは打って変わった優しい声色で私の頭を優しく撫でてくる。……あぁ、やっぱり私はお母様が大好きです。

 

 

 

「……椛よ頼む。ヒーローを目指す以上、いくら無理や無茶をするなと言ってもしなければならない時はある。故にもう口うるさくは言わぬ……でものぉ、今回の様な死に急ぐような無理や無茶はしないでおくれ――約束、できるかえ?」

 

 

抱きしめていた私を離したお母様は私の顔を両手で壊れ物を扱うように包み私と目をあわせる。

 

そんなお母様に対して私は

 

 

「わかりました。これからは二度と死に急ぐような無理無茶だけはしないと誓います」

 

 

そう真剣に答えた。

 

 

「……わかった。その言葉しかと聞き届けた故に決して破る事は許さぬからな」

 

 

泣き腫らした目をしながらも真剣な表情で言う母様に私は強く頷いた。

 

 

 

「――よし。ならば今日から1週間、罰として自宅待機じゃ。そして1日8時間は反省室にて勉学じゃ。その時間内は決して誰とも会わぬようにな。これは決定事項じゃ。誰にも覆される。良いな神狼よ」

 

 

お母様がそう言いお父様に顔を向けると

 

 

「ああ、それでいい。文句はない」

 

 

お父様がそう言いきった。そして立ち上がったお父様は私に近づくと

 

 

「……もうこの様な事はするな。だが無事で良かった」

 

 

そう優しげな顔をされながら頭を撫でてくれた。………ごめんなさいお父様。もうしません

 

 

その後は解散となりお爺様やお祖母様達にも小言を言われながらも『無事で良かった』等と言われ抱きしめられたり撫でられたりしていた。

 

 

「あれ程心配されるなといつも言っているのに何故こんなことになったのだ!椛!」

 

「そうでござるよ!1年A組が敵に襲撃されたと聞いた挙句、妹が怪我をして運ばれた等と聞いてしまった私達がどれ程心配したかわかっているでござるか!?もう二度とこんな事はしないでほしいでござる!!」

 

 

「もう本当に仕方の無い子だにゃ。普段は双子の姉である影狼と違ってしっかりしているくせに、こういう事は妹のあんたの方が無茶するんだからもう。本当に心配させるんじゃにゃいよ?……でも無事でよかったにゃん」

 

 

「うぇぇええぇん!もみじぃぃぃ!あ“あ“あ“あ“あ”あ”あ”あ”」

 

 

 

私の姉たちに4方向から抱きしめられてもみくちゃにされている。でもみんなそれ程までに心の底から心配されていたのを見てしまったので、これからは今回のような事は二度としないように強く反省するのだった……




さて皆様、次回はなるべく今月中には完成される予定なのでどうかこれからも応援よろしくお願いいたします。



(`・ω・´)『おめーいつも予定は未定じゃねぇかよ』

(´・ω・`)「…すみません」


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