進撃の過負荷 (起式)
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第-1箱 「行っておいで」

初めて小説を書くので拙く、見にくく、キャラ崩壊があると思いますので不満、厳しいアドバイスお待ちしております。
それでは本文をどうぞ


彼は球磨川禊、箱庭学園を卒業した後に行った彼なりの贖罪の旅も終わりを告げ暇を持て余していた彼だが、うっかり交通事故に遭って死んでしまった。

 

『やれやれ、僕も最近は死ぬことは無くなったと思ってたんだけどな』

 

死んでいるというにも関わらず軽い口調で、ヘラヘラ笑いながら彼はいつものように教室に現れ、教室を見渡す。

 

『やっぱりこの教室に安心院さんがいないと、少し寂しいかな。いったいいつになったら復活してくれるんだろ···?』

 

そう呟いた時、突然背後から声がかけられた。

 

「やあ、久しぶりだね。そんなに僕に会いたかったのかい?球磨川君。水槽学園の制服を着ていないところを見るとまた随分幸せになったみたいじゃないか」

 

声を聞いた球磨川がゆっくりと振り返る。

 

『···やあ、久しぶり。噂をすればなんとやら、やっと生き返ったんだね安心院さん』

 

「言彦の不可逆の破壊が消えたからね。バックアップを取るスキル「私のかわりはいくらでも(マイオルタナティヴ)」のおかげで生き返ること自体はそんなに難しいことじゃなかったんだけど、ちょっとした準備に今の今まで手間取ってたのさ」

 

『ふーん、そうなんだ。ま、僕には関係ないし、今週のジャンプがまだ読めてないから、今日のところは帰らせてもらうね』

 

「おいおい、待てよ球磨川君、君には用があるんだ」

 

『僕に…用事だなんて、珍しいこともあるもんだね。それで、その用事ってのはなんなの?僕に全開パーカーでもしてくれるのかい?』

 

今までの経験から、嫌な予感を感じつつも球磨川は尋ねた。

 

「別に用と言うほどでもないんだけどね。僕が死んでいる間に面白い所を見つけたんだ。死んでた間、遊ぶこともできなかったからね。蘇った暁には球磨川君をそこに放り込んで遊ぼうと決めていたんだ」

 

『···ちなみにそこは、どんなところなんだい?かわいい女の子が沢山いるような平和なところじゃないと僕、嫌だからね?』

 

「キミの要望どおり、壁の中の人類が壁の外にいる巨人と戦っているとても平和な世界さ」

 

『嫌だ!僕はそんな訳のわからない所になんか行きたくない!今すぐに、この教室から出させてもらうぜ。悪く思わないでよ、安心院さん。僕は悪くない』

 

球磨川がそう言い放ち教室の扉を開けると目の前には光を塗りつぶしそうな程の深い闇が広がっていた。

 

「もう遅いよ。その扉を開けた時点で君の異世界行きは決定だ。向こうとこっちの「辻褄合わせ」は適当にやっておくから、適当に楽しんでくるといいよ。さあ行っておいで、球磨川君。せいぜい僕を楽しませておくれよ?」

 

『まったく、やっぱり安心院さんには敵わないなあ』

 

球磨川がそう言った瞬間、球磨川の体が闇に吸い込まれる。

 

『あーあ、行きたくはないけどしょうがない。安心院さんの言ってた通り適当に楽しむとしようかな。せめてかわいい子がいっぱいいるといいんだけどね』

 

そんなことを呟いているといつの間にか闇は晴れ、光が差し込み景色が見えてきた。

 

『まあ、どんなところであれこの僕、球磨川禊が行くんだから、ろくな事にはならないだろうけどね』

 

こうして混沌よりも這い寄る過負荷、球磨川禊は巨人と人が戦う世界に迷い込むのであった。

 

「さあて、球磨川君はこの世界をどんな風に台無しにしてくれるんだろうか?本当に楽しみにしてるぜ、球磨川君」




次はもっと文章を多くしたいです

追記、少し前より文を増やしました


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第-2箱 『初めまして』

既にあるストーリーに異物を螺子込むのはかなり難しいですね。
それでは第2話、拙い文ですがお読みください。


「貴様は何者だ!?」

 

「シガンシナ区出身!アルミン・アルレルトです!!」

 

闇も光もなくなり景色が見えるようになって球磨川禊が最初に聞いた言葉がそれだった。

 

『うーんと、ここはどういう所なのかな?』

 

さすがの球磨川禊も、この唐突な場面転換には対応できず、今自分はどこにいて、今何が行われているのか、そして自分の体に何がおこったのか(・・・・・・・・・・・・・)を把握しきれていなかった。

 

(『もしかして、これが安心院さんの言っていた「辻褄合わせ」ってやつなのかな?僕の体が12歳のときに戻っているぜ。服も、周りの子達と同じのになってるし、安心院さんはサービス精神旺盛だなあ』)

 

そういえば肉体を若返らせる童謡使いとも出会ったな、などと考えていると整列した人々の後ろから2人の男が歩いてくるのを発見する。

 

「やってるな···」

 

「お前も訓練兵の時は初っ端からあれだったろ?」

 

「懐かしいです。でも···あの恫喝にはなんの意味が···?」

 

「通過儀礼だ。それまでの自分を否定して真っさらな状態から兵士に適した人材を育てるには必要な過程だ」

 

(『なるほどね、今やってるのはそういうことか。だったら張り切って自己紹介しなきゃ、なんたって僕は自己紹介のプロだからね』)

 

男達の話し声を盗み聞きし、そう意気込むも先程から恫喝をおこなっている男は彼の前を見事に通過し、彼を無視した。

 

(『あれ?おかしいな、なんで僕は無視されちゃったんだろ?他の子には話しかけてるのに、いくら僕が気持ち悪くても差別はよくないなあ』)

 

自分を無視した恫喝をおこなっている男を螺子伏せようかと思っていると、また2人の会話が聞こえてきた。

 

「?···何も言われてない子がいるようですが」

 

「ああ···、すでに通過儀礼を終えたものには必要ない。おそらく2年前の地獄を見てきた者達だ。面構えが違う」

 

(『なんだ、そんなことか。確かに何人かは僕みたいに何にも言われてないや。でもなんだか僕が優等生(エリート)みたいだなあ。それだけ、僕がぬるくなったってことなのかな』)

 

彼はそんなことを思っているが実際は、恫喝をおこなっている男、キース・シャーディスがかつて「負完全」とも言われた球磨川禊の過負荷(マイナス)を感じ無意識のうちに彼を躱してしまっただけである。

 

(『立ってるだけってのも退屈だから、せっかく新しい世界の、素晴らしい仲間たちが名を名乗っているんだから、みんなの名前でも覚えとこーっと』)

 

彼がそう思い、必死に名前を覚えていると、キースが信じられないものを見た顔で声をあげた。

 

「オ···イ····貴様は何をやってる?」

 

「!?」 「?」ムシャモグ

 

なんと訓練兵の1人が場の空気も読まず、芋を食っていたのだ。これには球磨川禊もただ、苦笑するしかなかった。

 

「貴様だ!貴様に言っている!!貴様···何者なんだ!?

 

「ウォールローゼ南区ダウパー村出身!サシャ・ブラウスです!」

 

「サシャ・ブラウス···貴様が右手に持っている物は何だ?」

 

「「蒸した芋」です!調理場に丁度頃合いのものがあったので!つい!」

 

「貴様···盗んだのか···なぜだ···なぜ今···芋を食べだした?」

 

「···冷めてしまって元も子もないので···今食べるべきだと判断しました」

 

「···!?イヤ···わからないな、なぜ貴様は芋を食べた?」

 

「···?それは···「何故人は芋を食べるのか?」という話でしょうか?」

 

「···?あ!」

 

「!」

 

「半分···どうぞ···」

 

「は···半···分···?」

 

「フーッ」

 

こうして通過儀礼は終わり、球磨川達は木造の寮へ移動しその寮の前で球磨川と、丸刈りに似た髪型の少年コニーと、顔にソバカスがある少年マルコと会話をしていた。

 

『やあ、初めまして僕は球磨川禊、いや、君たち風に言うとミソギ・クマガワかな?僕って寂しがり屋だからさ、一刻も早く誰かと友達になりたいんだ!』

 

コニーとマルコは突然話しかけてきたあまりにも気持ちの悪い少年に驚きを隠せなかった。話すだけで気分が悪くなるやつがこの世にいるなどと思いもしなかったが、それでも向こうから友好的に話しかけてきたのだから仲良くはしようと考えた。

 

「やあ、初めましてさっき聞いてたかもしれないけど僕はマルコ・ボットだよ。よろしく」

 

「俺はコニー・スプリンガーってんだ!よろしくな!」

 

お互いに自己紹介を終え、しばらく話していると未だに走り続けるサシャの姿が見えた。

 

『あ!ねえ見てよ、あのお芋食べてた子まだ走ってるよ』

 

球磨川がそんなことを言うと黒髪で目つきの悪い少年、エレンが会話に入ってきた。

 

「すごいな、5時間ぶっ通しか」

 

『でも死ぬ寸前まで走れって言われた時より今日はメシ抜きだって言われた瞬間の方が悲壮な顔してたよね』

 

「ダウパー村ってのは確か、人里外れた山奥にある少人数の狩猟の村だ」

 

「まだそんな村があったなんてな····、そういえばキミ達2人は出身とか聞かれなかったけど···どこに住んでいたんだい?」

 

球磨川は今日この世界に来たばかりなので当然のように嘘を吐くことにした。

 

『僕はなんかすごい山奥の村から来たよ』

 

「俺はこいつと同じシガンシナ区だ。そこから開拓地に移って···12歳になるまでそこにいた」

 

エレンは隣にいる金髪の気弱そうな少年、アルミンの肩を掴みそう言った。

 

「···そうだったか···それは···」

 

「ってことはよ、「その日」もいたよなシガンシナに!」

 

エレンの出身を聞き気まずそうにするマルコとは裏腹に、コニーはかなりの食い付きをみせる。

 

「オ、オイ!」

 

「見たことあるのか?超大型巨人!」

 

「ああ···」

 

夕食の時間になってもエレンに対する質問は止まらないばかりか、どんどん人集りが出来ていく。球磨川禊も当然そのうちの1人だ。

 

「···だから···見たことあるって···」

 

「本当か!?」 「どのくらい大きいんだ!?」

 

「壁から首を出すくらいだ···」

 

「何!?俺は壁を跨いだときいたぞ!」 『僕も!』 「俺の村でもそう言ってた!」

 

「イイヤ···そこまででかくはなかった」

 

「どんな顔だったの?」

 

「皮膚が殆ど無くて口がでかかったな」

 

「ウォール・マリアを破った「鎧の巨人」は!?」

 

「それも見た、そう呼ばれているけど俺の目には普通の巨人に見えたな」

 

『じゃあ、普通の巨人はどんなのなんだい?超美人な巨人とかっていなかった?』

 

その時、「普通の巨人」というワードと球磨川の放つ過負荷(マイナス)によって、過去のトラウマ、母親が巨人に食われる瞬間がフラッシュバックする。

 

「ウッ···」

 

エレンは思わずえずき、スープを飲むのに使っていたスプーンをテーブルに落としてしまう。その光景を目にし、ついさっきまでざわめいて質問をしていた同期たちが黙る。

 

『ねえねえ、美人でセクシーな巨人はいたのか聞いてるんだけど?』

 

球磨川以外は、だが。

 

「···クマガワ君···、みんなも、もう質問はよそう。思い出したくないこともあるだろう」

 

「す、すまん!色々と思い出させちまって···!」

 

マルコがみんなに質問をしないように言い、コニーが謝るなか、エレンは冷静さを取り戻し、否定をした。

 

「違うぞ···」

 

「え?」

 

「巨人なんてな···実際、大したことねぇな。オレ達が立体機動装置を使いこなせるようになればあんなの敵じゃない!」

「石拾いや草むしりじゃなくてやっと兵士として訓練できるんだ!さっきは思わず感極まっただけだ!」

 

「そ、そうか···」

 

エレンはトラウマを払拭するかのように自身の目的を、夢を語り始めた。

 

「そんで調査兵団に入って···この世から巨人共を駆逐してやる!そして···」

 

「オイオイ正気か?」

 

エレンが夢を語っていると横から入ってくるものがいた。茶色い髪の馬面の少年、ジャンである。

 

「今お前、調査兵団に入るって行ったのか?」

 

「! あぁ···そうだが···」

「! お前は確か···憲兵団に楽したいんだったっけ?」

 

「オレは正直者なんでね···心底怯えながらも勇敢気取ってやがる奴より、よっぽどさわやかだと思うがな」

 

「そ、そりゃオレの『ちょっと聞き捨てならないかな』

 

エレンがジャンに何かを言い返そうとした時、なぜか球磨川禊が2人の間に芝居がかった口調で割って入っていった。

 

『心底怯えながらでも、心を折らずに立ち向かうことは素晴らしいことじゃないか!君はそんなこともわからないのかい!?』

 

ジャンは急に入ってきた球磨川に嫌悪感を抱いたがあくまでも冷静に、大人に振る舞うことにした。

 

「あー、すまない。正直なのはオレの悪いクセだ。気ぃ悪くさせるつもりもないんだ」

 

その時、カンカンと夕食の終わりを告げる鐘が鳴った。

 

「晩飯は終わりだ。片付けるぞ」

 

「あんたらの考えを否定したいんじゃない。どう生きようと人の勝手だと思うからな」

 

「もうわかったよ、オレも喧嘩腰だったな」

 

『僕も急に割って入って熱くなっちゃってごめんね、そうだ!せっかくだから仲直りの証に握手をしようよ!』

 

「ああ、それで手打ちだ」

 

「ああ」

 

そう言って右手でエレンと握手し、球磨川とも握手しようとしたが球磨川に手を指し伸ばされた瞬間、とてつもない嫌悪感を抱き思わず手を引っ込めてしまった。

 

『? どうしたんだい?』

 

「い、いや何でもねぇよ。ほ、ほら早く行け」

 

『···そうだね、じゃあまた明日とか』

 

こうして球磨川禊の異世界生活、第一日目は終わりを迎えた。




今更ですが虚数大嘘憑きはその形を保てなくなって、大嘘憑き及び安心大嘘憑きになりました。
あと、球磨川先輩が普通に他キャラと話しているのは球磨川の過負荷が減っているからとお考えください。


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第-3箱「これがオレの武器だ!」

やはり球磨川禊というキャラクターを存分に扱いきれていない感じがします。まさかここまで「らしさ」を出すのが難しいとは…
それでは拙い本文を、どうぞ


球磨川禊の異世界生活2日目が始まった。今日は朝から教官の声が響き渡る。

 

「まずは貴様らの適性を見る!両側の腰にロープを繋いでぶら下がるだけだ!!全身のベルトで体のバランスを取れ!これができない奴は囮にも使えん!開拓地に移ってもらう」

 

そうしてさっそく適性検査が開始される。それと同時に昨日の通過儀礼の際にもいた2人組の男が現れた。

 

「これはまだ初歩の初歩だが、この段階から立体機動装置の素質は見てとれる」

 

そういって見渡すと特に優秀な訓練兵、ミカサを発見した。

 

「ん···見ろ···あの子だ。まったくブレが無い···何をどうすればいいのかすべてわかるのだろう···素質とはそういうものだ」

 

そしてコニー、サシャ、ジャンと次々姿勢制御訓練をクリアしていく。

 

「んん···今期はできるものが多いようだ」

 

しかし、当然ながらこの世には成功者(プラス)もあれば必ず失敗者(マイナス)も存在するのだ。

 

「あの···彼らは···」

 

「···素質というものだろう人並み以上にできることがあれば···」

 

「『』」プラーン

 

「人並み以上に出来ないこともある」

 

「何をやっているエレン・イェーガー!!ミソギ・クマガワ!!上体を起こせ!!」

 

(「え···?何だこれ···こんなの···どうやって···」)

 

無様に反転したエレンの瞳に映るものは、こちらを指差し笑う者、バカにしたようにこちらを見つめる者、そして、驚いてこちらを見る幼馴染。瞳に映るその全てが屈辱的だった。しかし、今の反転した彼には、足掻くことも、何をすることもできない。

 

(「ウソ···だろ?こんなはずじゃ·······」)

 

その隣で球磨川禊も同じく無様に反転していた。

 

(『うわあ···なにこれ···?みんな簡単そうにやるから僕でもできるかもとか思ってたけど、全然そんなことないや···。まずいなあこのままだと別に僕はいいんだけど、開拓地になんかいったら安心院さんが何かをしに来るだろうしなあ···』)

 

適性検査終了後、球磨川とエレンはその場でうなだれていた。

 

「このままじゃあ開拓地行きになっちまう···!」

 

『このままだと安心院さんに何をされるかわからない···』

 

まるでこの世の終わりのような雰囲気が醸し出されていた空間に声がかかる。

 

「おーい!エレーン!」

 

「お前は···アルミン!?どうしたんだ?」

 

「いやあ、ミカサと話し合ってエレンに姿勢制御訓練の練習をしてもらおうと思って···」

 

「本当か!?よし!今すぐ始めようぜ!」

 

『ちょっといいかな?その練習、僕も混ぜてほしいんだ』

 

「お前は···えーっと···」

 

『ミソギ・クマガワだよ。僕も開拓地になんかいったら非常にまずいことになりかねないんだ。だから、僕も練習に混ぜて欲しい』

 

「ああ、いいぜ。よろしくなクマガワ!俺はエレン・イェーガーだ!」

 

『うん。よろしくね、エレンちゃん』

 

ミカサの到着後すぐに2人は練習を開始する準備を始めた。

 

「基本通りにやればできるはず。上手くやろうとは考えなくていい。上半身は固く、下半身は柔らかく、前後のバランスにだけ気を付けて腰巻きと足裏のベルトにゆっくり体重を乗せる。」

 

「落ち着いてやればできるよ。運動苦手な僕だってできたんだから」

 

『あははっ!イメージはできたよ、これでできるはずさ!さあアルミンちゃん、上げてくれ』

 

「確かに、今度こそできる気がする。上げてくれミカサ!」

 

「いくよ」キリキリ

 

「エレン、上げる」キリキリ

 

2人の足は徐々に地面から離れてゆく、そしてついに!バランスをとることが!

 

「『』」グルン!

 

「あ!?」

 

「え!?」

 

「『』」ゴッ!

 

やはりできずに、そのまま地面に向かって思いっきり頭をぶつけるのだった。

 

「やあ球磨川君。異世界に旅立って2日も経たずにこの教室に帰ってくるだなんて…そんなに僕に会いたかったのかい?」

 

『僕はできたら君とは会いたくなかったよ、安心院さん』

 

「おいおい、冷たいことを言うなよ球磨川君。あ、そうだ君の新しいお友達のエレン君は君とは違ってちゃーんと生きてるから安心するんだぜ?(安心院さんだけに)」

 

『…ところで、安心院さんに聞きたいことがあるんだ』

 

「ん?なんだい?」

 

『もし僕が姿勢制御訓練ができずに、開拓地にでも送られたら僕をどうするつもりなんだい?』

 

「わっはっは、別にそんな酷いことはしないよ、強いて言うなら君を無限の苦しみが味わえる地獄にたたき落とすくらいさ。だから、別に無理して合格しなくてもいいんだぜ?」

 

『···わかったよ、僕は絶対合格してやるぜ。じゃあね、安心院さん』

 

「あ、まちな球磨川君、ひとつ言っておきたいことがある」

 

『···なんだい?安心院さん』

 

「あの世界ではやたらめったら大嘘憑き(オールフィクション)とかのスキルをあんまり使わないでくれないかな?」

 

『安心院さんがそういうなら別にいいよ。僕もそんなにあの面白手品に頼る気はないしね。でもどうしてだい?』

 

「そんな深い理由じゃないよ。単純にあの世界にはキミや僕が持つようなスキルはないからね、怪しまれて牢屋にでも入れられたら面白くなくなるからさ。ま、絶対使うなって訳ではないよ。じゃ、もう行っていいよ球磨川君」

 

『わかったよ、じゃあね、安心院さん』

 

そういって球磨川は扉を開け、去っていた。

 

「さあて期待してるぜ球磨川君」

 

球磨川が気づけば既に夕食の時間であった。自分のベッドから起き上がった球磨川は取り敢えず自分の頭に包帯を巻き、傷があるように見せかけてから急いで食堂へ向かい、自分の夕食を取るとエレンの隣の席に腰を下ろした。

 

『···頭の怪我は大丈夫かい?エレンちゃん···エレンちゃん?』

 

しかし球磨川が呼びかけてもまったくもって反応がなかった。

 

「オイ···あいつ確か昨日の晩に···巨人を皆殺しにしてやるなんて言ってた奴だよな?」

 

「それがあの初歩の姿勢制御訓練で既に死にかけたんだと」

 

「本当かよ···あんなこともできねぇ奴がいるのか···」

 

「あいつ···どうやって巨人を皆殺しにするつもりなんだ?」

 

「さあな···しかしこのままじゃいずれ、ここを追い出される。役立たずに食わせるメシなんかねぇからよ」

 

こんなまる聞こえの陰口を聞いてもエレンは反応しない。

 

「エレン、エレン」ユサユサ

「エレン!」ミシィ!

 

「いでッ」

 

ようやくエレンの意識がこちらに帰ってきたようだ。

 

「気にしても仕方ないよ。明日できるようになればいいんだから。それより、ちゃんと食べて今日失った血を取り戻そう」

 

『そうだよ、エレンちゃん、今日できなかったからって悔やむことは無い。明日できればいいんだから』

 

「···明日···、明日できなかったら···オレ·······どうすりゃいいんだ···」

 

「だから今は悩んでも仕方ないって···」

 

「情けねぇ···こんなんじゃ奴らを···根絶やしにすることなんか···」

 

「もう、そんなこと目指すべきじゃない」

 

「···は!?」

 

「え?」

 

『へぇ、ミカサちゃんがそんなこと言うの、意外だね』

 

「向いてないのなら仕方ない。ようやくできる程度では無駄に死ぬだけ。きっと夢も努力も徒労に終わる」

 

「何だって···?」

 

「兵士を目指すべきじゃないと言っている。生産者として人類を支える選択もある」

「何も命をなげうつことだけが戦うことじゃない」

 

『うーん、確かミカサちゃんの言うことにも一理あるね。もう生産者やってたほうがいいんじゃない?』

 

「お···お前らなあ···オレは···あの日あの光景を見ちまったんだぞ···?そんな理屈で納得できると思うのか?」

 

(『あの日ってなんのことだろ?』)

 

「···でも、その覚悟の程は関係ない」

 

「は?なんでだよ、言ってみろ」

 

「兵士になれるかどうか判断するのはエレンじゃないから···」

 

「う···」

(「このヤロー、そんなことは分かってんだよ···まずアレができなきゃお話にならねぇのは事実だ···正論だ···オレは今、何も言う資格がねぇ···、バカ言ってんじゃねぇよって感じなんだろうな···何でも簡単にこなしちまうお前にとっちゃよ!」)

 

エレンがそう思うと夕食終了の鐘が鳴り、皆が片付けを始める。

 

「私は···エレンだけ開拓地に 「行こうぜアルミン、クマガワ」

戻れといってるんじゃない···」 「う、うん」 『はーい』

「その時は私も一緒に行くので···だから···そんなことは心配しなくてもいい」

 

ミカサがそう言いながらエレンがいた隣を見るとそこに既にエレンの姿はなく、なぜか代わりにサシャが座っていた。

 

「ん?えーと?つまり?それ(パン)貰ってもいいってことですか?」

 

そう言うサシャを無視し、ミカサはパンを口に入れた。

 

「コツだって?悪ぃけど、俺···天才だから"感じろ"としか言えん」

 

「オレは逆に教えてほしい、あんな無様な姿晒しておいて正気を保っていられる秘訣とかをよぉ···」

 

「お···お前ら、クマガワが頭下げて頼んでるってのに···」

 

『そうだぞ!せっかく僕が土下座してまで頼んでるっていうのに君たち、その態度はなにさ!』

 

「まぁまぁ」

 

現在球磨川たちは男子寮にて、今回の姿勢制御訓練がうまかった者達にコツを聞いていた。

 

「コニーとジャンの他にも上手いって言われてたのはあっちにいる2人だよ。名前は確か···」

 

「う~ん···姿勢制御のコツか···」

 

「頼む!2人もすっごく上手いって聞いたぞ、ベルトルト···、ライナー··」

 

現在球磨川達はマルコの勧めで、背が高いが、大人しいベルトルトとガタイのいい兄貴分のライナーに話を聞いていた。

 

「すまんが···ぶら下がるのにコツがいるとは思えん。期待するような助言はできそうにないな···

 

「そうか···」

 

「明日に懸けるしかない···」

 

「クマガワ君以外の2人は···あのシガンシナ区出身だよね?」

 

「うん···そうだけど···」

 

「じゃあ···巨人の恐ろしさも知っているはずだ。なのに···どうして兵士を目指すの?」

 

「えーと、僕は···直接巨人の脅威を目の当たりにしたわけじゃないんだ。開拓地に残らなかったのも···あんなめちゃくちゃな奪還作戦を強行した王政があることを考えるとじっとしてられなかっただけで···」

「体力に自信はないし自分に何かできることがあるか···わからないけど···この状況を黙って見てることなんて···できないよ」

 

「そ、そっか···」

 

「オレも似たようなもんだ···」

 

『じゃあさ、君たちの出身はどこなの?』

 

「···僕とライナーはウォール・マリア南東の山奥の村出身なんだ···」

 

「···!!」

 

「えっ!?そこは···」

 

「あぁ···川沿いの栄えた街とは違って壁が壊されてすぐには連絡がこなかった。なにせ、連絡より先に巨人が来たからね」

「明け方だった···やけに家畜が騒がしくて、耳慣れない地響きが次第に大きくなり···それが足音だと気付いて急いで窓をあけたら━━」

「その後は···えっとあまりよく覚えてない···皆ひどく混乱したんだ。僕らは馬に乗ってウォール・シーナまで逃げた。後は君たちも同じだろ?」

 

「2年間開拓地に務めて今に至る···」

 

「まったく···お前は何だって突然そんな話すんだよ」

 

「ご···ごめん···えっと···つまり僕が言いたかったことは…君たちは彼らとは違うだろ?」

 

「彼ら?」

 

「巨人の恐怖を知らずにここにいる人達だ。彼らがここにいる大半の理由は世間的な体裁を守るため…12歳を迎えて生産者に回る奴は臆した腰抜けだって…ウォール・マリア陥落以降、反転した世論に流されて訓練兵になった。かといって調査兵団になるつもりもなく、憲兵団を目指しつつ駄目だったら駐屯兵を選んで憲兵団への異動を窺う…臆病なところは僕も彼らと同じだ」

 

「えっ?」

 

「体動かすの得意だから…憲兵団の特権階級狙いで兵士を選んだ。それが駄目だったら全部放棄するかもしれない…僕には…自分の意思がない。羨ましいよ…自分の命より大事なものがあって…」

 

『ま、そりゃそんな目にあったなら、自分の命を大事にすることだって立派なことじゃないかな』

 

「そうだぜ、オレなんか壁が壊される前から調査兵団になりたいとか言って、頭がおかしい奴としか思われなかったからな…おかしいのはこっちだ…」

 

「ん…?てことは…巨人と遭遇した後もその考えは変わらなかったつってことか?」

 

「ま…まぁ今となっては兵士になれるかどうかってとこだけどな…恐怖もたっぷり教わったがそれ以上に…殺さなきゃならねぇと思ったよ…奴らを…一匹残らず」

 

「…俺にも…俺にもあるぜ、絶対曲がらないものが…帰れなくなった故郷に帰る。俺の中にあるのはこれだけだ…絶対に…何としてもだ…」

 

「あぁ…」

 

「ベルトの調整から見直してみろ、明日は上手くいく…」

「お前らならやれるはずだ、エレン・イェーガーとミソギ・クマガワだったっけ?」

 

「あぁありがとよ…ライナー・ブラウンだよな?」

 

『zzz…』

 

次の日球磨川とエレンは姿勢制御の再訓練を受けていた。

 

「エレン・イェーガーにミソギ・クマガワ、覚悟はいいか?立体機動装置を操ることは兵士の最低条件だ。できなければ開拓地に戻ってもらう…いいな?」

 

「はい!」

 

『はーい』

 

(「やる!オレは絶対やる!!オレには素質がねぇかもしれねぇけど…根性だけは誰にも負けねぇ!」)

 

(『やらなきゃ安心院さんにお仕置きされる!それだけは嫌だ!エレンちゃんは真面目に攻略するだろうけど、僕はそんなこと知ったことじゃない!なりふり構わず攻略する!』)

 

「始めろ」

 

(「理屈なんか知らん!根拠も無い!でもオレにはこれしかねぇ!これがオレの武器だ!」)

 

「おお!!」

 

(「『やった…できた!!』」)

 

「ああ!!」グルン ゴン

 

『あ』

 

「!」

 

「ま…まだ…!」

 

「降ろせ」

 

「ま、まだ!!オレは!!」

 

「早く降ろせ」

 

「オレは…」

 

『エレンちゃん…』

 

「ワグナー」

 

「ハッ」

 

「イェーガーとベルトの装備を交換しろ」

 

(「な…何で!?できたぞ…急に…」)

「これは…一体…」

 

「装備の欠陥だ。貴様が使用していたベルトの金具が、破損していた。正常なら腰まで浮いた状態から反転しても地面に頭をぶつけられる訳がない」

 

「え?」

 

「ここが破損するなど聞いたことはないが、新たに整備項目に加える必要がある」

 

「な…!で、では…適性判断は…」

 

「……問題ない…修練に励め」

 

(「やった!やったぞ!どうだミカサ!オレはやれる!巨人とも戦える!!もうお前に世話焼かれることもねぇな!!」)

 

「何とかなったようだな…」

 

「目で「どうだ!」っていってるよ」

 

「いや違う、これで私と離れずにすんだと思って安心してる…」

 

(「特別優れているわけでもなさそうだが…だが…しかし…この破損した装備で一時姿勢を保った、そんなことがあの胡散臭い少年(・・・・・・・・)以外にできる者が他にいるだろうか…グリシャ…今日、お前の息子が…兵士になったぞ」)

(「しかし、そうなるとやはり問題なのはあの少年(・・・・)だ。通過儀礼の時に感じた巨人とも違うあの嫌な感じ…グリシャの息子と共に開拓地に行かせようと思い、装備を破損させたが…なぜあの状態で体が固定できるんだ?」)

 

「やったなクマガワ!これでお前も開拓地に行かなくてすむな!に、してもどうやってそんな上手く体を固定してるんだ?」

 

『ん?ああ、これはね、このロープと僕の腰を螺子を螺子込んで無理矢理固定してるんだよ。これなら絶対反転しないでしょ?』

 

「お、お前そんなことやって大丈夫なのか?その…傷とか」

 

『その点は大丈夫気にしないでいいよ。そんなことより今は姿勢制御訓練を突破したことを喜ぼうじゃないか!』

 

「そ、そっか…そうだな!」

 

こうして球磨川禊は異世界生活における最初の試練を螺子伏せることに成功、しかしこれはまだ、ほんの序章に過ぎない。超えるべき試練はまだまだ沢山あるのだから…




お気に入り登録ありがとうございます。このことに舞い上がりながら続きを黙々と制作していきます。
最初に、文章を多く書きたいとか言いましたが、この調子で書くことがどんどん増えるとそのうちとんでもない文章量になるかもしれませんね。


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第-4箱 「兵士としての責任」

今回は球磨川先輩がほとんど出てこず、空気と化しています。
それでは拙い本文をどうぞ。


あの姿勢制御訓練の日から早くも2年の月日が経過していた。現在は対人格闘術の訓練中であり、エレンとライナーがペアを組んでいた。

 

「イテテ…ほら、次はお前がならず者をやる番だ。まったく…俺の巨体を投げ飛ばすとは…」

 

「悪い…力の加減が下手でよ。」

 

「お前、取っ組み合いに慣れてやがるな?」

 

「街にいた頃はでかいガキ大将が遊び相手だったからな…」

 

「へぇ…」

 

「しかし…どうなんだ?この訓練は?兵士が人なんか相手にしてどうする?」

 

「教官に聞こえねぇようにな…」

 

「そもそも得物に素手で対応しようなんてバカがやることだ。」

 

「じゃあ、どう対処すりゃいい?」

 

「逃げりゃいいんだ。そんなもん」

 

「んな無責任な…」

 

「こんな木剣じゃ何もわかんねぇよ。こんな格闘術…上手くいった所でそりゃ、運が良かっただけだ。実際は…上手くいかずに終わるのがほとんど。ガキの戯れとは違う…」

 

「…お前の言いたいことはわかった。でもな…それじゃあやっぱり無責任だと思うぞ。俺達は兵士だろ?」

 

「……」

 

「いくら不利な状況でも逃げてはいけない時がある。守る対象が脅威に晒された時、その間に入って盾にならなければならない」

「相手が何であろうと、だ。俺達は大砲でも格闘術でも使いこなして力をつけなきやならん…それが…力を持つ兵士としての責任だと思う…俺は…」

 

エレンとライナーが話をしていると、空から見知った男が降ってきた。

 

『うわあ!』

 

「うお!…なんでクマガワが降ってくるんだ!?」

 

球磨川禊である。

 

『いやあ、ミカサちゃんに挑戦したんだけどね。また勝てなかったよ』

 

「お前…アルミンにも勝ったことないのにミカサに勝つなんて無理だろ…」

 

『あはは、そうなんだけどね。ところで今何を話していたんだい?』

 

「ああ…ライナーに兵士の責任って奴を教わってたんだ」

 

「いやいや…偉そうに説教しちまっただけさ。訓練に戻ろうぜ…ん?オイ…アイツ…」

 

ライナーが指さす先には訓練をサボっている金髪の怖い顔をした少女、アニがいた。

 

『ああ…アニちゃんか。また教官にバレないようにうまくサボってるね』

 

「…よーしエレン、クマガワ、アニにも短刀の対処を教えてやるぞ」

 

「は?」

 

『え?』

 

「あの不真面目な奴にも説教だ。兵士とはどうあるべきか…教えてやろうじゃないか」

 

(『なんで僕も巻き込まれてるんだろ?』)

 

球磨川がそう思うも、ライナーはアニに話しかける。

 

「教官の頭突きは嫌か?それ以上身長を縮めたくなかったらここに来た時を思い出してまじめにやるんだな」

 

「は?なんだその言い草…」

 

『わあ!アニちゃんっていっつも怖い顔してるなあと思ってたけど本当に怒るともっと怖い顔になるんだね!』

 

球磨川がそんなことを言っている間にライナーはエレンに木剣を渡した。

 

「そら!始めるぞエレン!」

 

対してアニは通常の近接格闘術の構えとは全く違う構えをとる。

 

「!アニ?これは刃物の対処を形式的に覚える訓練だぞ?やり方はしってるだろ?行くぞ!」

 

エレンがアニに向かって駆け出すとアニはエレンの脛にむかって勢いよく蹴りを繰り出した。

 

「!! いッ!?」

「んな…なんだ…足…蹴られたのか?」

 

「もう行っていいかい?」

 

アニが去ろうとしエレンは安堵したが、ライナーはそれを阻んだ。

 

「まだだ!短刀を取り上げるまでが訓練だ!」

 

「……オイ!ちょっと待てよ!」

 

ため息をつきながら、去ろうとしていたアニは再びエレンに向き合う。

 

「まっ…!!待てよアニ!これにはやり方があるんだって!」

 

アニはエレンの言葉に耳を貸さず、エレンの背後に回り左手で顎を、右手で木剣を持った手をつかむと、バランスを崩しにかかる。

 

「もがッ!!」

 

エレンがバランスを崩し、左足を上げたところでアニは、右足の膝裏に蹴りを繰り出す。

 

「うッ!!」

 

その結果、エレンは空中で半回転し、ケツを突き出す形で地面に落下した。

 

『わーお』

 

「はい」

 

アニはエレンから取り上げた木剣をライナーへと投げる。

 

「!」

 

「次はあんたが私を襲う番だね」

 

「イ…イヤ…俺は…」

 

思わず後ずさりし、拒否しようとしたライナーの背中を球磨川が軽く押す。

 

『やれよライナーちゃん。兵士としての責任を…教えてやるんだろ?』

 

「……あぁ…兵士には引けない状況がある。今がそうだ」

 

そして、ライナーもエレンと同じく無様に地面に落下する。

 

「お前の倍近くあるライナーが宙を舞ったぞ…」

 

『うん本当に感服したよ。じゃあ僕はこれで…』

 

言い訳をいいながら逃走しようとした球磨川の足元に木剣が放り投げられる。

 

「あんたもやんなよ」

 

『ふっ…いいだろう。だがアニちゃん僕をこの2人と同じにしないことだね!』

 

『また勝てなかっ…!!』

 

威勢よく向かっていった球磨川は、空中で一回転半を記録した。

 

今度こそ去ろうとしたアニにエレンは質問を投げかけた。

 

「すげぇ技術だな。誰かからおそわったんだろ?」

 

「…お父さんが…」

 

「親父さんがこの技術の体現者なのか?」

 

「…どうでもいい…」

 

「え?」

 

「こんなことやったって意味なんか無いよ」

 

「……この訓練のことか?意味がないってのは…」

 

アニは顎を使って視線を促す。

 

「「対人格闘術」なんか点数にならない。私を含め内地志願者はああやって流すもんさ…過酷な訓練の骨休めに使っている。それ以外はあんたらのようなバカ正直な奴らか、単にバカか…」

 

「マズイ!教官だ!」

 

エレンとアニが単なるバカ達の元に現れた教官を発見し、アニは木剣をエレンに突きつけ訓練をしている振りをする。

 

「とにかく…点数の高い立体機動術じゃなきゃやる意味が無い。目指しているのは立派な兵士ではなく内地の特権を得ることだから。なぜかこの世界では巨人に対抗する力を高めた者ほど巨人から離れられる。どうしてこんな茶番になると思う?」

 

「…さぁ、何でだろうな!」

 

エレンはアニの腕を引っ張り体制を崩しにいくが、足払いを受け逆に仰向けになり、アニに乗られてしまう。

 

「それが人の本質だからでは?」

 

「う…!」

 

「私の父もあんたらと同じで…何か現実離れした理想に酔いしれてばかりいた…幼い私は心底下らないと思いながらも…この無意味な技の習得を強いる父に逆らえなかった…私はもうこれ以上この下らない世界で、兵士ごっこに興じれるほど、バカになれない」

 

そういってようやくライナーが起き上がり、アニは立ち去っていく。

 

「お前は兵士にとことん向かんようだな…」

 

その頃球磨川はまたもや、あの教室にいた。

 

「やあ球磨川君、また死んでしまったねえ」

 

『安心院さん、僕をいつまであの世界に置いておくんだい?まさか2年もあそこで過ごすとは思ってなかったんだけど…』

 

「おいおい、何を言っているんだい球磨川君。まだ物語はプロローグってところだぜ?あと1,2年はあっちで過ごして貰うよ」

 

『あと1年って…僕普通だったら20歳だぜ?』

 

「なあに大丈夫さ。君が事故で死んだあの日から元の世界は1秒だって動いてないんだ。だから君が歳をとる道理もないし、君の過負荷(マイナス)だって、減りも増えもしないよ。今の君は固定された精神が、作られた肉体に入っているようなものなのさ」

 

『理屈はよくわからないけど、碌でもないって事だけはわかったよ』

 

「そうかい。なら、もう行きな。いつまでも起きない君をお友達が待ってるぜ」

 

『それは大変だね。早く行かなくちゃ。…じゃあね安心院さん』

 

そう言って球磨川は異世界へと帰っていく。1人残った教室で安心院なじみは呟いた。

 

「うんうん、そろそろ巨人が攻めてくるころだね。君の活躍を楽しみにしているよ。球磨川君」




次回は先輩の出番を多く書きたいですね。


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第-5箱 「5年ぶりだな」

シナリオ上トーマスに消えていただくことになりました。トーマスファンの皆様申し訳ございません。
それでは、拙い本文をどうぞ


対人格闘訓練から一年が経ち、卒業試験も終了し、残った340人の訓練兵団解散式が行われていた。

 

「100年前の平和の代償は惨劇によって支払われた。当時の危機意識では突然の「超大型巨人」の出現に対応できるはずもなかった…この結果…先端の壁「ウォール・マリア」を放棄、人類の活動領域は現在我々のいる「ウォール・ローゼ」まで後退した。」

「今この瞬間にもあの「超大型巨人」が壁を破壊しに来たとしても不思議ではない。その時こそ諸君は「生産者」に代わり自らの命を捧げて巨人という脅威に立ち向かってゆくのだ!心臓を捧げよ!!」

 

「「「『ハッ!!!』」」」

 

「本日、諸君らは「訓練兵」を卒業する…その中で最も訓練成績が良かった上位10名を発表する。呼ばれたものは前へ。」

 

「首席 ミカサ・アッカーマン、2番 ライナー・ブラウン、3番 ベルトルト・フーバー、4番 アニ・レオンハート、5番 エレン・イェーガー、6番 ジャン・キルシュタイン、7番 マルコ・ボット 8番 コニー・スプリンガー、9番 サシャ・ブラウス、10番 クリスタ・レンズ、以上10名」

 

「本日を以て訓練兵を卒業する諸君らには、3つの選択肢がある。壁の強化に務め、各町を守る「駐屯兵団」、犠牲を覚悟して壁外の巨人領域に挑む「調査兵団」、王の元で民を統制し秩序を守る「憲兵団」、無論新兵から憲兵団に入団できるのは、成績上位10名だけだ。後日、配属兵科を問う。本日はこれにて、第104期「訓練兵団」解散式を終える…以上!」

 

「「「『ハッ!』」」」

 

解散式終了後、球磨川達は街中のレストランで打ち上げをおこなっていた。

 

『まさか僕が卒業試験に合格できるなんて、夢にも思ってなかったよ!』

 

球磨川が喜んでいると、ジャンが口を挟んでくる。

 

「オイオイ…クマガワ、お前は繰り上げ(・・・・)でなんとか兵士になっただけじゃねぇか。普通だったらお前は不合格だったよ」

 

『うん、そうだね。だから僕は心が折れたとか言って辞退していった彼らの分まで、必死に頑張るよ!そう言うジャンちゃんは6番だっけ?すごいじゃないか!もちろん憲兵団に入るんだよね?』

 

「ハァ?当たり前だろ。何のために10番内を目指したと思ってんだ。内地で安全で快適な暮らしができるんだぞ?」

 

「なぁ…」

 

するとそこにエレンが割り込んでくる。

 

「内地が快適とか言ったな…この街も5年前まで内地だったんだぞ。

ジャン…内地に行かなくても、お前の脳内は”快適”だと思うぞ?」

 

「オレが頭のめでたいヤツだと、そう言いたいのかエレン?それは違うな…オレは誰よりも、現実を見てる」

「4年前、巨人に奪われた領土を奪還すべく…人類の2割を投入して総攻撃を仕掛けた…そして、その殆どがそっくりそのまま巨人の胃袋に直行した。あと何割か足せば領域は奪還できたのか?巨人を一体倒すまでに平均30人は死んだ。しかしこの地上を支配する巨人の数は人類の30分の1では済まないぞ」

「もう十分わかった。人類は…巨人に勝てない…」

 

ジャンの言葉に先程まで騒がしかったレストラン内が静まり返っていた。

 

「はぁ…見ろ…お前のせいでお通夜になっちまった」

 

「それで?」

 

当然の如くエレンはジャンの発言に噛み付く。

 

「はぁ?話聞いてたか?」

 

「「勝てないと思う(・・・・・・・)から諦める」って所まで聞いた」

「なぁ…諦めて良いことあるのか?あえて希望を捨ててまで現実逃避する方が良いのか?そもそも、巨人に物量戦を挑んで負けるのは当たり前だ」

「4年前の敗因は巨人に対しての無知だ…負けはしたが得た情報は確実に次の希望に繋がる。お前は戦術の発達を放棄してまで大人しく巨人の飯になりたいのか?……冗談だろ?」

「オレは…オレには夢がある…巨人を駆逐して、この狭い壁内の世界を出たら…外の世界を探検するんだ」

 

「はッ!何言ってんだお前!?めでたい頭してんのはお前の方じゃねぇか!」

 

「…なんだと!!」

 

「見ろよ!誰もお前なんかに賛成なんかしねぇよ!」

 

「あぁ…そうたな…わかったから…さっさと行けよ内地に…お前見てぇな敗北主義者が最前線(ココ)にいちゃあ士気に関わんだよ」

 

「勿論そのつもりだが、お前こそ壁の外に行きてぇんだろ?さっさと行けよ。大好きな巨人がお前を待ってるぜ?」

 

「…めんどくせぇ」

 

「へっ……」

 

剣呑な雰囲気から喧嘩が始まることを見越した球磨川が2人めがけて突っ込んでいった。

 

『やめなよ2人とも!喧嘩なんて虚しいことはよすんだ!』

 

2人の間に入ったものの、2人の体を押したおかげで本来なら1発ずつ2人の顔にはいるはずのパンチが、

 

『ぶべら!』

 

球磨川の顔面にクリーンヒットしてしまった。

 

「あ、おいクマガワ!大丈夫か!?てめぇジャン!よくも!!」

 

「テメェも殴ってたじゃねぇか!この死に急ぎ野郎が!」

 

再び再発しそうだった喧嘩はエレンがミカサに運ばれて行ったため事なきを得たという。

 

次の日、球磨川とエレン達は固定砲整備4班として壁上にある固定砲の整備をしていた。

 

「はぁ…!?調査兵団にするって?コニー…お前8番だろ!?前は憲兵団に入るって…」

 

「憲兵団がいいに決まってるだろ…けどよ…」

 

『昨日のエレンちゃんの演説が効いたんだってさ』

 

「は!?」

 

「イ…イヤ!!オレは…アレだ…そう!ジャンだ。オレはアイツと同じ兵団に入りたくねぇだけだ!」

 

『調査兵団に入る説明になってないよ…』

 

「うっ…うるせぇ!!自分で決めてたんだよ!」

 

『そう照れるなよ。やるべきことはわかっていても、踏ん切りがつかないこともあるさ』

 

「あのぅ…、皆さん…」

 

先程まではいなかったサシャが背後から話しかけてきた。

 

「上官の食料庫からお肉盗ってきました…」

 

どうやら、肉を窃盗してきたようである。

 

「サシャ…、お前独房にぶち込まれたいのか…?」

 

『サシャちゃん…キミは本当におバカだねえ』

 

「バカって怖ぇ…」

 

そんな仲間たちの心配をよそにサシャは肉をどう食べるかを考えている。

 

「後で…皆さんで分けましょう。スライスしてパンに挟んで…、むふふ…」

 

「戻してこい」

 

「そーだよ。土地が減ってから肉なんてすごく貴重になったんだから」

 

皆の意見を無視し、食料の入った木箱に肉を仕舞いながらサシャは答える。

 

「大丈夫ですよ。土地を奪還すればまた…、牛も羊も増えますから」

 

「え?」

 

『なるほどね。ウォール・マリアを奪還する前祝いに頂こうってわけだね。食べたからには覚悟決めるしかなくなるからね。僕は嫌いじゃあないぜ?そういうの』

 

「クマガワ…」

 

「………オレも、その肉食う!!」

 

「わ…私も食べるから!取っといてよ…!!」

 

「何つっ立ってんだエレン。作業に戻んねぇとバレちまうぞ!」

 

「お昼はまださきだよ」

 

そんな、まだ見ぬ明るい未来への会話をしていると。壁のすぐ近くに濃い黄緑色の電光が一瞬だけ見え、そこには「超大型巨人」が出現していた。

「超大型巨人」が出現した際に生じた圧倒的熱風により、球磨川達は壁上から吹き飛ばされる。

 

「熱ッ……!?な!!?何が!!?」

 

「うわああああああああ!」

 

「みんな!!立体機動に移れッ!」

 

エレンの掛け声によって、吹き飛ばされた全員が我を取り戻し、立体機動装置を駆使し、壁に張り付くが、「超大型巨人」により壁が再び破壊されてしまう。

 

『壁が壊された…』

 

「まただ…、また…巨人が入ってくる…。ちくしょう…やっぱり人類は巨人に……」

 

「固定砲整備4班!戦闘用意!!目的、目の前!!「超大型巨人」!!」

 

「『…!!』」

 

「これは好機(チャンス)だ!絶対逃がすな!!壁を壊せるのは超大型(こいつ)だけだ!!こいつさえ仕留めれば…!」

 

壁上に戻ったエレンは宿敵と相見える。

 

「……よう、5年ぶりだな…」

 

『僕も加勢するぜ、エレンちゃん』

 

超大型巨人は腕を大きく振りかぶり壁上を薙ぎ払うが、球磨川とエレンは壁から飛び降り立体機動装置で超大型の腕に飛び移った。

 

(「チャンスだ!壁を破壊できるのはこいつだけ!こいつさえ仕留めれば…!!」)

 

球磨川とエレンが左右から超大型のうなじへと飛びかかる。

 

「鈍い!」

 

『やったか!?』

 

しかし、超大型は突然、熱を含んだ大量の煙を吹き出し、2人の視界を曇らせる。しかし、負けじと2人はそのまま切りかかる、が

 

(「手応えは無い…!!外した…!?イヤ…違う、消えた…」)

 

そこに超大型巨人の姿はなかった。

 

「超大型巨人が消えた!お前らがたおしちまったのか!?」

 

『ごめーん、逃がしちゃったー』

 

「何謝ってんだ。俺達なんてまったく動けなかった…」

 

「オイ…そんな話してる場合か!!もう壁は壊されちまったんだ!早く塞がないと、また巨人達が入ってくるぞ!!」

 

(『安心院さんの言いつけがなかったら僕が(なお)してるんだけどなあ。もしかして安心院さん、これを見越してたのかな?』)

 

「何をしているんだ訓練兵!!」

 

駐屯兵の上官が慌てて壁上へ飛んできた。

 

「そして”ヤツ”と接触した者がいれば本部に報告しろ!」

 

「ハッ、先遣班の健闘を祈ります!」

 

こうして、ついに球磨川禊と巨人達の戦いが始まった…




投稿ペースが落ちると思います。ご了承ください。


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第-6箱 『教えてやるよ』

ようやく、球磨川先輩の見せ所を書くことができました。しかし、少しだけ無理があったかなとも思います。
それでは、拙い本文をどうぞ


壁が破られた後、球磨川達は本部で巨人迎撃準備を進めていた。

 

「それでは訓練通りに各班ごと通路に分かれ、駐屯兵団の指揮の下、補給支援、情報伝達、巨人の掃討等を行ってもらう」

「前衛部を駐屯兵団が、中衛部を我々率いる訓練兵団が、後衛部を駐屯兵団の精鋭部隊が…、我々は日々のタダメシのツケを払うべく、住民の避難が完全に完了するまで、このウォール・ローゼを死守せねばならない。」

「なお…承知しているであろうが、敵前逃亡は死罪に値する。みな、心して命を捧げよ。解散!!」

 

「「「ハッ!!」」」

 

そして球磨川達、34班は中衛部の民家の上に配属された。

 

「…アルミン、こりゃあいい機会だと思わねぇか?調査兵団に入団する前によ、この初陣で活躍しとけばオレ達は新兵にして…スピード昇格間違いなしだ!!」

 

「…!!あぁ…間違いない」

 

「言っとくけど2人とも…今期の調査兵団志願者は、いっぱいいるんだからね!」

 

そんなことを言っていると、ついに駐屯兵団から指示がとんでくる。

 

「34班前進!」

 

「行くぞ!!」

 

「「「『おお!』」」」

 

34班が前進すると、驚きの光景がそこにはあった。

 

「なっ!?あれは…!?」

 

「オレ達中衛部まで前衛に駆り出されている!?」

 

既に前線が壊滅し、本来中衛部だったはずの34班までもが、前衛部へと駆り出されていたのだ。

 

『まったく、普段威張り散らしてる前衛の先輩はなにやってんだろうね、前衛部隊が総崩れだ。』

 

(「決して楽観視していたわけじゃなかったが、これはあまりにも…」)

 

「奇行種だ!」

 

「避けろ!!」

 

誰かが上げたそんな咄嗟の叫びを、

 

『え?』

 

球磨川禊は受け取り、動くことができなかった。

 

『うっ…!?クソ…』

 

正面から突っ込んできた巨人を避けることができず、巨人にくわえられてしまう。彼の下半身は既に噛み切られ、大量の出血からか、全身に力が入らず、結局大した抵抗もできずに、

 

「ク、クマガワ!!」

 

そのまま彼は巨人に喰われてしまった。

 

「ま…!!待ちやがれ!!」

 

喰われた球磨川を救おうとエレンは単騎、飛び出してゆくが、

 

「下にもう一体いるぞ!」

 

「うッ!!?」

 

彼は潜んでいたもう一体の巨人に気づくことができず、左足を喰いちぎられてしまう。

 

「そんな…エレンが…」

 

「やばいぞ、止まってる場合か!来るぞ!かかれッッ!!」

 

残ったアルミン以外の34班はエレンの左足を喰いちぎった巨人にかかるが、これまた呆気なく、ある者は握りつぶされ、またある者は頭から噛みちぎられ、全滅してしまった。

 

残ったアルミンも今、巨人に摘まれ喰われようとしている。

 

(「ああ…どうして僕の体は動かないんだ…」)

 

そしてアルミンが口の中に落とされ、飲み込まれようとした瞬間、先程まで倒れていたはずのエレンがアルミンの右手を掴み、屋根に放り投げた。

 

「こんなところで…死ねか…、なぁ…アルミン…、お前が…お前が教えてくれたから…、オレは…外の世界に…」

 

「エレン!!早く!!」

 

アルミンは手を伸ばし、自身の身代わりとなったエレンを救おうとするも、巨人の口は閉じられ、エレンの左腕が宙を舞う。

 

「うわあああああああ!!!」

 

かくして、球磨川が最初の巨人を避けることに失敗したがために34班はアルミンを残し、全滅してしまった。

 

「ようやく面白くなったところなのに、また死んじゃったね。球磨川君」

 

『はぁ…、どうせ喰われて死ぬならもっと美形な巨人に殺してほしかったよ』

 

「ははは、君が相変わらずなのは良いことだけど、球磨川君。早く戻らなくていいのかい?キミの所属していた34班はアルミンくんを残して全滅したみたいだけど」

 

『…!?エレンちゃんもかい?』

 

「ああ、彼はキミを助けようとして、左足を失ったあと、アルミンくんの身代わりになったみたいだね。いやあ友情とは美しいものだねえ」

 

『…悪いけど、安心院さん。僕はすぐに戻ってあの巨人共を螺子伏せないといけないみたいだ』

 

「そうかい。ならさっさと行っておいで。この局面においてだけはキミがスキルを使うことを許してあげるからさ」

 

『ありがとう。それじゃあ、また』

 

球磨川が意識を取り戻すと、そこは巨人の胃袋の中であった。それなりに強い酸性の液体の中、球磨川は腰のブレードで巨人の腹を切り、外へと脱出した。

 

『やれやれ、流石の僕でも喰われるのは初めての経験だったよ』

 

球磨川を喰った巨人は早々にその場から離れ、どこかに行ってしまった。

 

『僕の仇を取れなかったのは残念だけど…』

 

しかし、新たな5m級の巨人が、球磨川の前に姿を見せる。

 

『教えてやるぜ。巨人共、過負荷(マイナス)相手にルール無用で戦う愚かさを』

 

手に持っていたブレードを腰に戻し、代わりに何処からともなく取り出した螺子を手に持った。

 

『うん。やっぱりこれ(螺子)の方が僕にはあってるな』

 

そういうと手にした大量の螺子を巨人の足目掛けてぶん投げる。ぶん投げられた螺子は巨人の太腿へ、膝へ、足首へ、と螺子込まれ、巨人はうつ伏せになって倒れ込む。

 

『喰らいな』

 

巨人の頭と手足に、普通ではありえないサイズの巨大な螺子が螺子込まれる。だがそれでは巨人は死なない。失った頭を再生しようとする。が、

 

『無駄だよ。再生しようとしたってそこには螺子があるんだから、再生なんてできっこない。でも僕にはきみを殺す手段なんてないから、きみはそこで永遠に這いつくばってるしかない。』

 

『また、勝てなかった』

 

これからどうしようかと思っていると、壁上へ撤退する合図の金が鳴り響いた。

 

『んー、撤退かー。立体機動装置はあるけど、ガス管の中身が空になってるから壁を登れないや。どうしたもんかな?』

 

球磨川はしばらく悩んでいると名案が思い浮かぶ。

 

『そうだ!一旦本部に戻ってガス管を貰いに行こう!』

 

そう思うと、早速球磨川は本部へと移動を開始する。螺子を撒き散らしながら、巨人を地面に、民家に、磔にしながら。

 

球磨川が本部に到着すると、目を疑うような光景があった。

 

『あれ?巨人って共喰いなんてするものだっけ?』

 

━━━━━━━━━━━━━

 

ガスの補給が終わるとミカサやアルミンは連れてきた「巨人を殺す巨人」が他の巨人に喰われているのを発見する。

 

「どうにかして、あの巨人の謎を解明できれば…、この絶望的な現状を打破するきっかけになるかもしれないと思ったのに…」

 

「同感だ!あのまま食い尽くされりゃ何もわからず終いだ!あの巨人にこびりついてる奴らをオレ達で排除して…。とりあえずは延命させよう!」

 

「正気かライナー!!やっと…この窮地から脱出できるんだぞ!?」

 

ジャンが突っかかったとき、アルミンには見覚えのある巨人が通りかかる。

 

「あ…、あいつは…クマガワを喰った奇行種…!?」

 

その巨人を巨人を殺す巨人が発見すると、今まで大人しく他の巨人に喰われていたにも関わらず、叫び声をあげながら、その巨人へと向かっていき、結局、自身に群がっていた全ての巨人を単体で殺してしまった。

 

「…オイ、何を助けるって?」

 

しかし、力尽きたのかその場に倒れ込む巨人。すると、そのうなじから巨人に喰われたはずのエレンが姿を表した。

 

(「エレンだ…。切断されたハズの腕と足がある…、エレンはあの時巨人に飲み込まれた…」)

「一体…何が…」

 

アルミンがエレンの手を握りしめると、そこにまたも、アルミンにとって、ありえない声がかかる。

 

『おーい!アルミンちゃん!エレンちゃんは無事なのかい!?』

 

「クマガワ…?な、なんで君も生きているんだ!?あの時君は巨人に喰われて……!?」

 

アルミンが球磨川の走ってくる方を見ると向こうに、大量の磔にされた巨人を発見する。

 

「それに、あれは…!?」

 

『僕がなぜ生きてるのか不思議だって顔をしているね。ま、説明してあげてもいいよ。これは僕の持つ(かかえる)過負荷(マイナス)、「大嘘憑き(オールフィクション)」の結果なんだ。』

 

「「大嘘憑き(オールフィクション)」…」

 

『そう、まあこれの能力は、いうなれば「現実(全てを)虚構(なかったこと)にする」っていうものなんだ。それで「僕の死」を、なかったことにしたというわけさ。…理解できた?』

 

「す、全てをなかったことにするだって!?そんな突拍子も無いことができる訳…!!」

 

しかし、アルミンには思い当たることがあった。格闘術では自分にも劣る球磨川が、なぜエレンやジャンのパンチを受けて、すぐに立ち直ることが出来たのか。彼が立体機動装置を無理に使っても、いつも新品かのように整備されていたことを思い出し、アルミンは黙るしかなかった。

 

「…!!」

 

アルミンと球磨川が言い争っていると、駐屯兵団が現れた。

 

「貴様ら…その男達を引き渡してもらおう…」

 

『うわあ、なんだかすごく面倒な人達が出てきたなあ』

 

かくして、球磨川とエレンにはなにやら凄まじい秘密が隠されていると、知られ始めてしまった。それが有益(プラス)であるか、有害(マイナス)であるかは、さておいて…




誤字の指摘ありがとうございます!これからも誤字、脱字は起こり続けると思いますので、どんどん指摘してください。
それと遅くなるのは次回からです。…多分


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第-7箱 「必ず説得してみせる!!」

今回はストーリー上の進展はあんまりです。
それでは、拙い本文をどうぞ


先の戦いによって、異常性が暴露された球磨川とエレンはミカサ、アルミンと共に駐屯兵団によって壁の柱の角へと追い込まれていた。

 

「殺シテヤル…」

 

「エレン…?」

 

先程まで意識がなかったエレンが意識を取り戻すと、何故かミカサとアルミン、球磨川に自分が駐屯兵団に武器を向けられていることを確認する。

 

「……!?」

 

『エレンちゃんおはよう。でもこの状況においては、最悪な寝言だったぜ』

 

「エレン!体は動くか?意識は正常か?知ってることを全部話すんだ、きっと分かってもらえる!」

 

「アルミン…!?…待って…」

 

エレンが、錯乱していると駐屯兵団の指揮を執っていると思われる男が話しかけてきた。

 

「イェーガー訓練兵!意識が戻ったようだな!今貴様らがやっている行為は人類に対する反逆行為だ!!貴様らの命の処遇を問わせてもらう!!下手に誤魔化したり、そこから動こうとした場合はそこに榴弾をブチ込む!躊躇うつもりも無い!!」

 

「…は?」

 

「率直に問う、貴様の正体は何だ?人か?巨人か?」

 

「し、質問の意味が分かりません!」

 

「シラを切る気か!?化け物め!!もう一度やってみろ!!貴様を粉々にしてやる!!一瞬だ!!正体を現すヒマなど与えん!大勢の者が見たんだ!!貴様もだ!クマガワ訓練兵!!」

 

『…』

 

(「クマガワも…オレみたいな事があったのか…?」)

 

「巨人に潰されようが、喰われようが蘇ってくる貴様は何者だ!!我々人類はお前らのような得体の知れない者をウォール・ローゼ内に侵入させてしまっているのだ!!たとえ貴様らが王より授けられし訓練兵の一人であっても、リスクの早期排除は妥当だ!!私は間違ってない!!」

「今にもウォール・マリアを破壊したあの「鎧の巨人」が姿を現すかもしれない!!今、我々は人類滅亡の危機の現場にいるのだ!!もう5年前の失態は許されない!!分かったか!?これ以上貴様ら相手に兵力も時間も割くわけにいかん!!私は貴様らに躊躇なく榴弾をブチ込めるのだ!!」

 

「彼らの反抗的な態度は明らかです。有益な情報も引き出せそうにない…。おっしゃる通り、兵と時間の無駄です」

 

「今なら簡単です!奴らが人に化けてる内にバラしちまえば!!」

 

駐屯兵達がざわめく中、ブレードを装着したミカサと螺子を持った球磨川が1歩、前に出る。

 

「私の特技は、肉を…削ぎ落とすことです。必要に迫られればいつでも披露します。私の特技を体験したい方がいれば…どうぞ1番先に近づいて来てください」

 

『そこから1歩でも動き出してみな。君達の体にもあの巨人みたいに、螺子が螺子込まれることになるぜ?』

 

兵士達はミカサの気迫と、球磨川の過負荷(マイナス)にあてられ、

そこから動くことができなくなっていた。

 

「2人とも…人と戦ってどうするんだ?この狭い壁の中のどこに逃げようっていうんだ…」

 

「どこの誰が相手であろうと、エレンが殺されるのは阻止する。これ以上に理由は必要ない」

 

「話し合うんだよ!誰にも…なんにも状況が分からないから恐怖だけが伝染してるんだ…」

 

エレンが現状を呑み込むことができず、ミカサと球磨川が駐屯兵を威嚇し、アルミンがその2人を説得している中、駐屯兵を指揮する男が再び問いかけてくる。

 

「もう一度問う!貴様らの正体は何だ!!?」

 

「…じ…、自分は…!!」

 

『うーんと、僕は…』

 

「『人間です(かな)』」

 

その回答に一瞬の静寂が訪れるが、それはすぐに消えてしまう。

 

「…そうか…、悪く…思うな…。仕方無いことだ…、誰も自分が悪魔じゃないことを証明できないのだから…」

 

そう言い、男は腕を上げる。それを合図に壁上で榴弾発射の準備がなされる。

 

「エレン!アルミン!クマガワ!上に逃げる!!」

 

「よせ!オレ達に構うな!お前ら!!オレ達から離れろ!!」

 

「…!?上にも…!?」

 

「き、聞いてください!!巨人に関して知っていることを話します。」

 

(「ウソだろ…こんなことが…」)

 

もはや絶望しかけたエレンは、自身の首に父親の持っていた地下室の鍵が掛けられていることに気づき、失われていた記憶をほんの少し、思い出した。思い出すやいなや、エレンは周りの3人を自身の近くに寄せ集める。

そして発射された榴弾を見据え、自らの親指の根元を噛み切る。その瞬間、濃い黄緑色の電光が走り、爆発したかのような熱風が放出される。形成されゆく巨人の身体が、榴弾を防いだ。

 

その頃、ジャン達はウォール・ローゼのトロスト区付近の街で待機をしていた。

 

「そんで何とかガスが手に入ったんだ…」

 

「…そんなことが…」

 

現在コニーが話しているのは、同期から女神と称されているクリスタ・レンズと常にそのクリスタの近くにいるユミルだ。

 

「じゃ…じゃあ、今ここにいない人達は全員…」

 

「…ああ」

 

「本当か?あのミカサもか?」

 

「ん?イヤ…ミカサはジャン達と一緒に遅れて来たと思ったんだが…。ジャン…まさかミカサは負傷したのか?」

 

コニーは隣にいたジャンに話しかける。ジャンは水を一口飲んでから質問に答えた。

 

「オレ達には守秘義務が課せられた…、言えない。もっとも…、どれ程の効果があるのかわからんが…」

 

「守備命令?」

 

「なんだそりゃ?」

 

「隠し通せるような話じゃねぇ…。すぐに人類に知れ渡るだろう。…それまでに人類があればな…」

 

そう言ったその時、唐突に砲声が鳴り響き、新兵達はパニックに陥る。

 

「砲声!?」 「なぜ1発だけ?」 「オイ!?」 「壁の中だ!!」 「水門が突破されたのか!?」 「1番頑丈な箇所だ、ありえない…。榴弾を落としただけだろう」 「にしても…あの煙の量はなんだ!?」 「まさか!?巨人の蒸気!?」

 

いても立ってもいられなくなったのか、ライナーは立体機動装置を使い、蒸気の発生源が見える場所まで移動をする。

 

「ライナー!?」

 

それに続き、アニ、ジャン、ベルトルトも蒸気の発生源を確認しにゆく。

 

「……どうなってんだ…、これは!?」

 

そこには中途半端な肉付きで上半身しかなく、骨も見えている巨人の姿があった。

 

場面は戻り、エレンは困惑していた。

 

「あ、熱い…。なんだこりゃ……」

 

「砲声が聞こえたところまで覚えてる…。その後は凄まじい音と衝撃と…」

 

『熱!、今…僕達は巨大な骨格の内側にいるみたいだね…』

 

「エレンが…私達を守った…。今はそれだけ理解できればいい」

 

「オイ!?大丈夫か!?お前ら…」

 

「エレン!?これは一体!?」

 

「わからん!!…ただこいつはもう蒸発する!!巨人の死体と同じだ、すぐ離れるぞ!!」

 

『そうだね。それに、今のところ駐屯兵団に動きは見えないけど…、そのうち攻撃を続行するだろう。』

 

「ああ…それにこんなもん見せた後で会話できる自信はオレには無い。ただ…一つだけ思い出した…。地下室だ。オレん家の地下室!!そこに行けばすべてわかるって親父が言ってたんだ……、オレが「こう」なっちまった原因も親父だ…。クソッ!」

 

「エレン!?」

 

「だとしたら何で隠した…?その情報は…何千人もの調査兵団が命を落としても求め続けた人類の希望ってやつなんじゃないのか…?それをオレん家の地下室に大事にしまってたっていうのか!?…何考えてんだ…!!そもそもオレ達を5年もほっといてどこで何やってんだよ…」

 

「エレン!今は他にすべきことがある」

 

「!…あぁ」

 

ここで、作り出た巨人が形を崩した。

 

「オレは…ここを離れる」

 

「どこに?どうやって?」

 

「とりあえず、どこでもいい。そこから壁を超えて地下室を目指す…。もう一度巨人になってからな…」

 

『…そんなことが、できるのかい?』

 

「自分でもどうやってやってるのか分からん…。でもできるって思うんだ。どうやって自分の腕を動かしているか説明できないようにな…。さっきは無意識にオレ達を砲弾から防ぐことだけを考えた。だからそれ以上の機能も持続力も無く、朽ちたんだ」

「今度はもっと強力なヤツを…さっき巨人共を蹴散らしたような15m級になってやる!」

 

「エレン!鼻血が…」

 

「顔色もひどい、呼吸も荒い…。明らかに体に異常を来たしている…!」

 

「今は…体調不良なんかどうでもいい…、とにかくオレに考えが2つある。オレ達を庇ったりなんかしなければ…お前らは命まで奪われない。もう既に迷惑かけちまったがオレはここからは同じく狙われているクマガワと動こうと思う」

 

『え!?僕!?』

 

「そんな…!!」

 

「……エレン…、私も行く」

 

「ダメだ置いていく」

 

「私が追いつけなければ私に構う必要は無い。ただし私が従う必要も無い」

 

「いい加減にしろって言ってんだろうが…オレはお前の弟でも子供でもねぇぞ…」

 

「エレン!私は!」

 

「待てよミカサ、考えは2つあるって言っただろ…。これはオレ程度が思いついた最終手段を判断材料として話したまでだ。あとはアルミンの判断に任せる」

 

唐突に任されたアルミンは軽いパニックになる。

 

「え……?」

 

「オレだって今の話が現実性を欠いていることはわかってる。この巨人の力は兵団の元で計画的に機能させるのが1番有効なはずなんだ。無茶を言うが…、アルミンがもしここでオレ達は脅威じゃないって駐屯兵団に説得できると言うなら、オレはそれを信じてそれに従う。それができないと言えばさっきの最終手段を取る。」

「あと15秒以内に決めてくれ、できるか、できないか、オレはどっちでもお前の意見を尊重する」

 

「…エレン、どうして僕にそんな決断を託すの?」

 

「お前ってやばい時ほどどの行動が正解か当てることができるだろ?それに頼りたいと思ったからだ」

 

「いつそんなことが?」

 

「色々あっただろ?5年前なんか、お前がハンネスさんを呼んでくれなかったらオレもミカサも喰われて死んでた」

 

「アルミン…考えがあるなら…私もそれを信じる」

 

『じゃ、僕もアルミンちゃんを信じとくよ』

 

アルミンは3人に意思を託され、決断をする。

 

「必ず説得してみせる!!3人は極力、抵抗の意思がないことを示してくれ!」

 

アルミンは自身の装備を外しながら駐屯兵団へと歩み寄っていく。

 

「貴様!!そこで止まれ!!」

 

「彼らは人類の敵ではありません!私は知り得た情報をすべて開示する意思があります!!」

 

「命乞いに貸す耳は無い!目の前で正体を現しておいて今さら何を言う!」

「ヤツらが化け物でないと言うのなら証拠を出せ!!それができなければ危険を排除するまでだ!!」

 

「証拠は必要ありません!そもそも我々が彼らをどう認識するかは問題ではないのです!」

 

「何だと!?」

 

「大勢の者が見たと聞きました!ならば彼らと巨人が戦う姿も見たハズです!!周囲の巨人が彼らに群がって行く姿も!」

 

「!!」

 

「つまり巨人は彼らのことを我々人類と同じ捕食対象として認識しました!!我々がいくら知恵を絞ろうともこの事実だけは動きません!

!」

 

「確かにそうだ…」 「ヤツらは味方かもしれんぞ…」

 

このまま行けば、駐屯兵団を丸め込める。そう思った次の瞬間だった。

 

「迎撃態勢をとれ!!ヤツらの巧妙な罠に惑わされるな!!ヤツらの行動は常に我々の理解を超える!!」

 

「な!!」

 

「人間に化けることも可能というわけだ!!これ以上ヤツらの好きにさせてはならん!!」

 

しかし、アルミンは屈しなかった。

 

「私はとうに人類復興の為なら心臓を捧げると誓った兵士!その信念に従った末に命が果てるのなら本望!!彼の持つ「巨人の力」ともう1人のもつ不思議な力に残存する兵力が合わされば!!この街の奪還も不可能ではありません!!」

「人類の栄光を願い!!これから死に行くせめてもの間に!!彼の戦術価値を説きます!!」

 

そんなアルミンの説得虚しく、男の腕が下ろされようとした時、男の背後から腕をつかむ者が現れた。

 

「相変わらず図体の割には小鹿のように繊細な男じゃ。お前にはあの者の見事な敬礼が見えんのか」

 

「ピクシス司令…!!」

 

男が振り向くと、そこには駐屯兵団団長ドット・ピクシスの姿があった。

 

「今着いたところだが状況は早馬で伝わっておる。お前は増援の指揮に就け。ワシは…あの者らの話を聞いた方がええ気がするのぅ」




次回、次回こそ本当に遅れます。


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第-8箱 「塞いで見せます!」

今回も進展があまりなく、短めです、すみません。次回、頑張ります。

それでは、拙い本文をどうぞ


辛くも難を逃れた球磨川達は壁上にてピクシス司令と話をしていた。

 

「そうか…、その地下室に行けば全てがわかると…」

 

「はい…。信じてもらえますか?」

 

「お主自身が確証を得られん以上はとりあえず頭に入れておくといったところかの…。しかし…、物事の真意を見極める程度のことはできるつもりじゃ。お主らの命はワシが保証しよう」

 

その言葉に4人の中に安堵の空気が流れる。

 

「アルミン訓練兵…じゃったかの?」

 

「ハッ!!」

 

「お主は先ほど「巨人の力」と「不思議な力」とやらを使えばこの街(トロスト区)の奪還も可能だと申したな。あれは本当にそう思ったのか?それとも苦しまぎれの命乞いか?」

 

「それは…、……両方です」

「あの時、僕が言おうとしたことは巨人になったエレンが破壊された扉まであの大岩を運んで扉を塞ぐということでした。ただ単純に思いついただけですが…、せめてエレンの持った力に現状を打開できる可能性を感じてもらえないかと…」

 

アルミンがそこまで言うと、ピクシス司令がエレンの前に屈む。

 

「エレン訓練兵よ…、穴を塞ぐことができるのか?」

 

「塞いでみせます!なにがあっても…!!」

 

話が纏まりかけたその時に、球磨川が口を挟んだ。

 

『おいおい、さっきの演説では僕のことも言ってたのに、実際の作戦ではエレンちゃんに頼り切りで僕の出番がないじゃないか。一体僕は何をすればいいんだい?』

 

「クマガワの「大嘘憑き(オールフィクション)…だっけ?僕にはそれが一体どう使えばいいのか分からないんだ。何というか…エレンみたいにわかりやすい実例がないじゃないか」

 

『うーむ、なるほど。確かに言われてみればそうだ。よーし、じゃあ張り切って使用例を見せてあげるよ。ピクシス司令も、ちゃーんと見といてくださいね?』

『アルミンちゃんには前言ったけど「大嘘憑き(オールフィクション)」は現実(全て)虚構(なかったこと)にする取り返しのつかない過負荷(マイナス)なんだ。ああ、過負荷(マイナス)って言い方が言い難いならスキルって呼んでくれてもいいよっと』

 

そう言いながら球磨川は自身の頭に螺子を螺子込んだ。当然、螺子込まれた頭からは血飛沫が吹き出る。白い壁は鮮やかな赤で着色され球磨川以外の全員がこわばった顔をする。

 

「オイ、クマガワ…それ、どうなってんだ?オレには螺子がお前の頭を貫いてるように見えるんだが…」

 

『うん。正真正銘、種も仕掛けもなく貫かれてるよ。でもこの螺子を引っこ抜くと…』

 

球磨川が頭に突き刺さっていた螺子を抜くと、そこにはあるはずの傷跡が、さっきまで飛び散っていたハズの血飛沫が、一切合切「なかったこと」となっていた。

 

「ほう…、これは…」

 

『ま、わかりやすくいくとさっきのが限界かな。やろうと思えば視力とか、記憶も「なかったこと」にできるよ』

 

「ね、ねぇクマガワ…もしかしてそれって壁が壊されたことも「なかったこと」にできるの?」

 

『んー、出来るにはできるけど、今ちょっと訳ありでね。壁の穴だとか、巨人だとかを「なかったこと」にはできないんだ。あと、元から無いものも「なかったこと」にはできないよ』

 

「そうなんだ…。うーんそうなるとやっぱりクマガワのスキルは今回の作戦(思いつき)には不向きじゃないかな…」

 

『そっかー…、ざーんねん!次に期待だね!』

 

話が終わるとピクシスが叫んだ。

 

「話は終わったかの?では参謀を呼ぼう!!作戦を立てようぞ!!」

 

『皮算用ですらない思いつきをいきなり実用するなんて、どうかしてるんじゃないかな』

 

「オレもそう思ったが、多分作戦を実行する以前に根本的な問題があるんだ…。ピクシス司令はその現状を正しく認識してる。敵は巨人だけじゃない」

 

「時は一刻を争う。活躍してもらうぞ、若き兵士たちよ」

 

その頃、壁の下では兵士達が集められていた。

 

「トロスト区奪還作戦だと!?」 「これからか!?」 「嘘だろ!?扉に空いた穴を塞ぐ技術なんか無いのに…!?」

 

先の巨人との戦いで心が折れた者達がざわめき立っている。中には反逆者までもが現れ初め、秩序は崩壊しかけていた。そんな時、壁上からピクシス司令の声が響く。

 

「注!!もおおおおおく!!」

 

それまでのざわめきが嘘のように静まり返り、全ての兵が壁上を見上げる。

 

「これよりトロスト区奪還作戦について説明する!!この作戦の成功目標は破壊された扉の穴を、塞ぐ!!ことである!!」

 

「え…!塞ぐって…一体…どうやって?」

 

「穴を塞ぐ手段じゃがまず彼から紹介しよう!訓練兵所属、エレン・イェーガーじゃ!」

 

エレンの姿を確認した104期生が驚きの声をあげる。

 

「え!?…エ…、エレン!!?」

 

「彼は我々が極秘に研究してきた巨人生体実験の成功者である!!彼は巨人の体を精製し意のままに操ることが可能である!」

 

「んん!?なぁ…今司令が何言ってんのかわかんなかったが…、それはオレがバカだからじゃねぇよな!?なあ!?」

 

「ちょっと黙っていてくれ…バカ」

 

「巨人と化した彼は前門付近にある例の大岩を持ち上げ、破壊された扉まで運び穴を塞ぐ!!諸君らの任務は彼が岩を運ぶまでの間、彼を他の巨人から守ることである!」

 

「あの巨大な岩を持ち上げる…、そんなことが…。人類はついに巨人を支配したのか!?」

 

「嘘だ!!」

 

104期生のダズが叫ぶ。

 

「そんなわけのわからない理由で命を預けてたまるか!!俺達を何だと思ってるんだ!?俺達は…使い捨ての刃じゃないぞ!!」

 

その叫びを皮切りに、次々と命令に逆らい踵を返していく。

 

「オイ!!待て!!死罪だぞ!?」

 

「人類最後の時を家族と過ごします!!」

 

「今日ここで死ねってよ!!俺は降りるぞ!!」 「俺も!!」 「わ…私も…」

 

「覚悟はいいな反逆者共!!今!!この場で叩き斬る!!」

 

秩序が無くなりかけたその時、再びピクシス司令の声が響く。

 

「ワシが命ずる!!今この場から去る者の罪を免除する!!」

 

「な!?」

 

「1度巨人の恐怖に屈した者は二度と巨人に立ち向かえん!巨人の恐ろしさを知った者はここから去るといい!」

「そして!!その巨人の恐ろしさを自分の親や兄弟、愛する者にも味わわせたい者も!!ここから去るといい!!」

 

その言葉で、全ての反逆者の足が止まり、再び兵に戻る。

 

「それだけはダメだ…。それだけは…させない、娘は…私の最後の…希望なのだから」

 

ピクシス司令の発破により、反逆者は消え作戦は実行されることとなる。果たして作戦の結末はどうなる。




『モブキャラのみなさん』を入れたかったですが、整合性が取れなくなるので入れることができませんでした…


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第-9箱 『君のすべてを僕と揃えた』

ほとんど内容を変えていないのにこんなに時間がかかるとは思いませんでした。

それでは拙い本文を、どうぞ


球磨川達は任務を遂行する為壁上を走り、作戦開始地点まで急行していた。

 

「エレン…体は大丈夫…!?」

 

『心配性だねミカサちゃん。でも安心してよ。エレンちゃんの体調不良は僕がなかったことにしてあげたから』

 

「極秘人間兵器とか言ってたが…穴を塞げるのなら何でもいい…。お前を最優先で守る、頼んだぞ!」

 

「は…はい!」

 

「もうすぐ岩までの最短ルート地点だ。今見える限りでは巨人はいない。皆が上手く囮をやっているんだろう」

 

夕暮れの下を走り続け最短ルート地点に到着する。

 

「ここだ!行くぞ!!」

 

立体機動装置を使い大岩のある地点まで移動する。大岩がある事を確認したエレンは自らの手を噛み、巨人となった。

無事に巨人化を成功させたエレンは大岩のもとに歩いていき、作戦は順調に思われた、が。

 

「エレン?」

 

屋根に乗っていたミカサを一瞥すると、突然ミカサに向かってエレンは拳を振り抜いた。それは本当に唐突で、ミカサ以外の誰もが咄嗟に動くことができなかった。

 

『ミカサちゃん!!』

 

球磨川が叫ぶも状況は好転などせず、エレンは2発目の拳を振り下ろす。

それを躱したミカサはエレンの顔へと飛び移った。

 

「オイ!?ミカサ止せ!!そいつから離れろ!!」

 

駐屯兵団の精鋭、イアンが叫ぶもミカサはそれを無視しエレンの説得を試みる。

 

「エレン!!私がわからないの!?私はミカサ!!あなたの…家族!!あなたはこの岩で穴を塞がなくてはならない!!」

 

「作戦…失敗だ!」

 

そう言うとこちらも駐屯兵団の精鋭、リコが作戦失敗を告げる赤の信煙弾を発射した。

 

「分かってたよ…、秘密兵器なんか存在しないって…」

 

「エレン!!あなたは人間!!あなたは「避けろ、ミカサ!!」

 

なおも説得を続けるミカサに3発目の拳が振り抜かれようとした、その時であった。巨人化したエレンの黒髪が白髪へと変化を遂げ、エレンは側の大岩にもたれるようにして力なく座り込む、その胸にはヘッドがマイナス(・・・・)の細長い螺子が突き刺っていた。

 

『「却本作り(ブックメーカー)」、君のすべてを僕と揃えた』

 

「クマガワ…?エレンに何をしたの!?」

 

ミカサが問い詰めるも球磨川は、いつものようにヘラヘラと笑い飄々と答える。

 

「そう騒ぐなよ、ミカサちゃん。「却本作り(ブックメーカー)」は強さ(プラス)弱さ(マイナス)にする過負荷(マイナス)さ。今のエレンちゃんは肉体も精神も技術も頭脳も才能も!ぜーんぶ僕と同じ弱さに落ちて心が折れてるだけだから、さ」

 

「なっ…!」

 

『ああ、でも安心して?「却本作り(ブックメーカー)」はなぜか巨人に対しては効きが悪くてねえ。5分もしたら勝手にはずれるよ。あくまで一時的な処置さ』

 

「そんな事じゃない!なんでエレンにそんな物を使ったの!?」

 

『おいおい、さっきのエレンちゃんは暴れるばかりで作戦の遂行なんてできそうもなかったじゃないか。だから仕方なく僕が「却本作り(ブックメーカー)」を使って、仕方なく彼を沈静化したのさ。だから、僕は悪くない』

 

「くっ…!」

 

「イアン班長!前扉から2体接近!10m級と6m級です!」

 

「後方からも一体!12m級、こちらに向かってきます!!」

 

球磨川とミカサが言い合っているとイアンの部下が巨人の襲来を告げた。

 

「イアン!撤退するぞ!!あのガキ、扉塞ぐどころじゃねーよ!」

 

「あぁ…仕方ないが、ここに置いていこう…」

 

しかし、イアンは答えない。

 

「オイ!?何迷ってんだ!?指揮してくれよ!イアン!?お前のせいじゃない!ハナっから根拠の希薄な作戦だった、みんな分かってる。試す価値は確かにあったし、もう十分試し終えた!!いいか?俺達の班は壁を登るぞ!!」

 

これまた駐屯兵団の精鋭ミタビがイアンに向かってそう言い放つ。するとミカサがブレードを持ちミタビに駆け寄ろうとするも、イアンがそれを止めた。

 

「待て!!」

 

「……」

 

「待て…落ち着け…ミカサ…。」

 

ようやくイアンが命令を下す。

 

「リコ班!後方の12m級をやれ!ミタビ班と俺の班で前の2体をやる!」

 

「何だって!?」

 

「指揮権を託されたのは俺だ!黙って命令に従え!エレンを無防備な状態のまま置いては行けない!」

「作戦を変える、エレンを回収するまで彼を巨人から守る。下手にうなじを切ればどうなるか分からない以上、エレンが自力で出てくるのを待つしかないが…、彼は人類にとって貴重な可能性だ。簡単に放棄できるものでは無い。俺らと違って彼の代役は存在しないからな」

 

「……!この出来損ないの人間兵器様のために…今回だけで数百人は死んだだろうに…。こいつを回収してまた同じようなことを繰り返すっての?」

 

「そうだ…何人死のうと何度だって挑戦すべきだ!」

 

「イアン!?正気なの!?」

 

「では!どうやって!!人類は巨人に勝つというのだ!!リコ教えてくれ!他にどうやったらこの状況を打開できるのか!!人間性を保ったまま!人を死なせずに!巨人の圧倒的な力に打ち勝つにはどうすればいいのか!!」

 

「巨人に勝つ方法なんて私が知ってるわけない…」

 

「ああ…そんな方法知ってたら、こんなことになってない。だから…俺達が今やるべきことはこれしかないんだ。あのよく分からない人間兵器とやらのために、命を投げ打って健気に尽くすことだ」

「悲惨だろ…?俺達人間に唯一できることなんてそんなもんだ…報われる保証の無い物のために…虫ケラのように死んでいくだろう。さぁ…どうする?これが俺達にできる戦いだ…俺たちに許された足掻きだ」

 

「そんなの…納得できない」

 

リコはイアンに背を向けた。

 

「リコ!」

 

「作戦には従うよ…あなたの言ってることは正しいと思う。必死に足掻いて人間様の恐ろしさを思い知らせてやる。犬死になんて納得できないからね…後ろの12m級は私の班に任せて」

 

「立ち話が過ぎたなイアン…行くぞ!俺達は前方の2体だ!」

 

「……あぁ!」

 

「礼には及ばない。お前が何をやりだすか分かったもんじゃないから肝を冷やしたが…当初の作戦通りに自由に動くんだ。その方がお前の力が発揮されるだろう」

 

「はい!」

 

「恋人を守るためだからな」

 

「…家族です」

 

冗談を言いつつイアンもミタビの後を追う。残された球磨川とミカサはふと、エレンの方を見るとエレンに起こった変化に気づく。

 

「刺さっていた螺子が…ない?」

 

『「却本作り(ブックメーカー)」の時間切れだよ。でもエレンちゃんが動き出さないのは不思議だねえ。でも今はどうすることもできないんだし、僕たちにできることからやっていこうか』

 

球磨川達はエレンを守りながら、巨人との戦闘を開始した。

 

「マズイぞ…後ろだ!13m級1体!!建物を横断してエレンに向かって接近しています!!」

 

「ッ!!」

 

「扉から新たに巨人が入ってきます!!およそ10m級4体出現!!」

 

「ミカサ後ろを頼む、エレンの所に向かわせるな!!ここで食い止めるぞ!」

 

「了解!!」

 

ミカサは立体機動装置を巧みに操りエレンに迫っていた巨人のうなじを削ぎ落とす。するとエレンの肩に壁にいるはずのアルミンの姿があった。

 

「ミカサ!!作戦はどうなった!?」

 

「アルミン!?」

 

「エレンはどうなっているんだ!?」

 

どうやらアルミンは、リコの放った作戦失敗を告げる信煙弾を見てこちらに来たらしい。依然動かぬエレンの肩にいるアルミンにミカサは呼びかける。

 

「危険だから離れて!!その巨人にはエレンの意思が反映されていない!私が話しかけても反応が無かった!!もう誰がやっても意味が無い!!」

 

「!!…作戦は!?」

 

「失敗した!!エレンを置いていけないから皆、戦っている…!!そして…このままじゃ!!巨人が多くて全滅してしまう!!」

 

エレンを何とかして動かさなくてはならない、そんな中アルミンは1つの策を思いついた。

 

「後頭部からうなじにかけて縦1m…横10cm」

 

呟きながらアルミンはブレードを取り出す。

 

「…!?アルミン!?」

 

「僕がエレンをここから出す!!ミカサはここを巨人から守ってくれ!!」

 

「え…?何を…?」

 

「巨人の弱点部分からエレンは出てきた…これは…巨人の本質的な謎と恐らく無関係じゃない」

 

「…」

 

「大丈夫…真ん中さえ避ければ!」

 

「な…!?」

 

震えながらも、ブレードを構える。

 

「痛いだけだ!!」

 

「アルミン!!」

 

ミカサが止めに入るよりも早く、アルミンがブレード突き刺す。エレンは叫び声を上げるも暴れはしない。

 

「アルミン!!無茶は止めて!!」

 

「ミカサ!!今自分にできることをやるんだ!!ミカサが行けばたすかる命があるだろ!!エレンは僕に任せろ!!行くんだ!!」

 

ミカサが走り出し、アルミンもエレンに話しかける。ブレード越しに中のエレンにも声が響く。

 

「エレン!!聞こえるか!?しっかりしろ!!ここから出ないと僕ら皆死ぬぞ!!巨人の体なんかに負けるな!!とにかく早く!!この肉の塊から出てくるんだ!!」

 

(「ここから出るだって?何で……?オレ今…眠いんだ…」)

 

「お母さんの仇はどうした!!巨人を駆逐してやるんだろ!?お母さんを殺した奴が憎いんだろ!!」

 

しかし、エレンに反応はない。

 

「エレン!エレン!起きてくれよエレン!?ここにいるんだろう!?エレン!?このままここにいたら巨人に殺される!!ここで終わってしまう!!」

 

(「だから…何言ってるかわかんねぇよ、アルミン…何で外に出なきゃいけないんだ…そうだよ、どうして外なんかに…調査兵団なんかに…」)

 

「エレン…僕達はいつか…外の世界を探検するんだろ?この壁の外のずっと遠くには…炎の水や氷の大地、砂の雪原が広がっている。忘れたのかと思ってたけど、この話をしなくなったのは…僕を調査兵団に行かせたくなかったからだろ?」

 

(「…外の…世界…?」)

 

「エレン…答えてくれ、壁から一歩外に出ればそこは地獄の世界なのに、どうしてエレンは外の世界に行きたいと思ったの?」

 

(「……どうしてだって…?そんなの…決まってんだろ…-オレが!!この世に生まれたからだ!!」)

 

その頃、リコ班とイアン班は。

 

「班長…ここまでですもう私達しか残ってない!!」

 

「…!!一旦岩まで退く!」

 

「巨人が5体…扉から来ます!」

 

「一旦下がるぞ!!エレンの状況に応じて判断する!!」

 

2つの班が岩の方を見た時、それはあった。エレンがついに岩を持ち上げ、運んでいるのだ。

 

「エレン…」

 

「後方から巨人多数接近!!」

 

『アルミンちゃん!!』

 

「エレンが勝ったんだ!!今…自分の責任を果たそうとして…!!エレンを扉まで援護すれば!!僕らの勝ちだ!!」

 

「……!!死守せよ!!我々の命と引き換えにしてでもエレンを扉まで守れ!!お前達三人はエレンの元へ向かえ!」

 

「!?」

 

「え!?」

 

『…』

 

「これは命令だ!わかったか!?」

 

「「『了解!!』」」

 

イアンが地上を見るとミタビ班が地面に降りているのを発見した。

 

「ミタビ班…!?何を!?」

 

「巨人共が俺らに食いつかないんだ!!食いつかれるまで接近するしかない!!」

 

「こっち向けコラッ!」

 

「こっち向かねぇとそのケツに刃ぶち込んで殺すぞ!!」

 

挑発が効いたのか、巨人が1体ミタビ班に食いつく。

 

「来た!!1体かかった!!走れ!建物まで走れ!!」

 

「そんな…!!地上に降りるなんて自殺行為だ!!馬も建物もないんじゃ戦えない!!」

 

「イヤ…もう…あれしかない。ミタビ班に続け!!無理矢理接近してでも目標を俺達に引きつけろ!!」

 

エレンの周りにいる全兵が地上に降り、命懸けの護衛を開始する。

 

(「…!?ミカサ…アルミン…クマガワ…、何してる…そんな所歩いてたら巨人の餌食に…」)

 

そんな様子をエレンも発見したようだ。皆いつ巨人に捕まるか分からぬ恐怖で顔を歪めながら、巨人を誘導していた。そして1人、また1人と巨人に捕まり、喰われてゆく。そしてついに死が、犠牲が報われる瞬間がくる。

 

「い……いけええぇエレン!!」

 

エレンにより扉が封鎖される。その瞬間は、人類が巨人の進行を阻んだ初めての快挙(勝ち)の瞬間であった。

 

「残った巨人が来る!壁を登るぞ!!」

 

「エレンを回収した後離脱します!」

 

球磨川は巨人のうなじから上半身だけでたエレンを引っこ抜こうとしていた。

 

『熱い!これすごい熱いよ!!もうここに置いといてもいいんじゃないかな!?』

 

「クマガワ!エレンは!?」

 

『引っ張っても取れないし、すごく熱いよ!』

 

「体の一部が一体化しかけてる…!」

 

「切るしかない!」

 

「ま、待ってください!!」

 

ミカサの言葉を聞かずリコはエレンの一体化した部分を切断した。

 

『うお!』

 

ずっとエレンを引っ張っていた球磨川は急にエレンを切断されたため、下に落ちていく。そしてふと後ろを見ると巨人が2体、すく側まで来ていた。エレンの巨人が消える際の蒸気で誰も接近に気づかなかったのだ。

 

「エレン!!クマガワ!!」

 

(『これは死んだかな…?』)

 

1回死ぬことを覚悟した球磨川だが、誰かが巨人を2体も討伐してしまう。その人物は球磨川の目の前に着地した。

 

『ミカサちゃん…じゃあなさそうだね』

 

「あれは…自由の…翼…」

 

「オイ…ガキ共…、これは…どういう状況だ?」



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