[キリ×ユウの日常]誕生日sp [ユウキ家を買う] (迷劉/めいりゅー)
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[キリ×ユウの日常]誕生日sp [ユウキ家を買う]

ユウキ誕生日おめでとぉぉ!!

Pixivで出したやつです!2018版!


5月20日

ALO内のとあるエリア

 

ここは周囲一体からモンスターがリスポーンする、高難度な狩り場として、隠れたスポットである。そしてここに今、2人のプレイヤーが次から次に出現するモンスターに、縦横無尽に斬りかかっていた。

 

うち一人は少年。黒を基調とした黒の黒…とまでは行かないものの、影妖精族(スプリガン)という種族からして、黒のイメージを持っている。そんな彼の名は[キリト]。かつて、SAOというゲームにおいて、最高の反射神経を持つプレイヤーに与えられる、[二刀流]のユニークスキルを授けられたプレイヤーだ。その反射神経は今も尚健在であり、トップ層を走る一人だ。

 

そして、もう一人は少女。こちらは紫を基調とした、闇妖精族(インプ)のプレイヤー。ちょんっと伸びたアホ毛や、額に巻いたヘアバンド、などの特徴を持つ少女。可愛らしい見た目とは裏腹に、ここALOでは[絶剣]という二つ名を持っている。由来として、絶対無敵の剣、空前絶後の剣、というやはり強者として付けられた二つ名である。

 

かれこれ小一時間、2人は狩りに狩って、ようやく引き上げを決めて、安全圏内へと向かっていた。

 

キリト 「……なぁ、ユウキ。」

ユウキ 「せりゃぁっ!…どうしたの、キリト?」

 

この間ほぼ無言で戦闘に勤しんでいたため、久しぶりとなる会話をキリトは切り出した。ユウキは飛びかかってきたモンスターを、切り伏せキリトの話に返答をする。

 

キリト 「この後暇かな…良ければ俺と──」

ユウキ 「キリト、そっちにモンスターが…」

キリト 「──お昼ご飯にでもぐはっ!?」

 

まだ残っていたモンスターが居たらしく、ユウキにご飯の誘いを申し込もうとしていたキリトに、不意打ちの突進を御見舞する。無論、ユウキに目を向け、意識を向けていたキリトは、ノーガードの脇腹にその突進を受け入れた。呻き声と共に、ノックバックで吹き飛び、どさっとユウキの足元に着地した。

 

ユウキ 「…だ、大丈夫?結構飛んでたけど。」

 

警戒するように周りを見渡しながら、キリトに一言気遣いの言葉をかける。そのモンスターは草むらに隠れたらしく、ユウキには視認出来なかった。

しかし、未だタゲはキリトへと向いている。つまりはそのモンスターは再びキリトに襲撃するチャンスを伺っているのだ。

 

キリト 「あ、あぁ…油断してたぜ…。それでこの後お昼ご飯に──」

 

あまり強くないモンスターだったらしく、そこまでのダメージは負っていなかった。ユウキの心配は不要だったようだ。

キリトはふらりと立ち上がり、諦めもせずにユウキへと誘いの言葉をかける。

 

ユウキ 「キリト!」

 

またもやナイスなタイミングで、モンスターがキリトの後ろから突進を仕掛けてきていた。それに気づいたユウキは、迎撃しようと剣を抜こうと柄に手をかけた。

 

キリト 「──でもいくぁ!…ないか!?」

ユウキ 「お見事!流石はキリトだね〜。」

 

2度目はない、とキリトは誘いを無理やり続けながらも、襲撃してきたモンスターをぶった斬った。残念ながらユウキには誘いの言葉は聞き取られず、キリトの見事な動きに見惚れていた。

 

キリト 「そ、そうか?ユウキに言われると嬉しいな。」

ユウキ 「えへへ♪そうかな〜。」

キリト 「…ってそうじゃない!いや、ユウキのことについての、そうじゃない訳じゃないんだ。話が逸れたことについてのそうじゃない訳で…!」

ユウキ 「あはは、分かってるよ。さぁキリト、お話の続きをどうぞ〜。」

 

ユウキはキリトの焦りように、少し笑いをこぼしてから、キリトの方を向き直った。

 

キリト 「あ、ありがとう。でさ、良ければなんだが、この後お昼ご飯でも食べに行かないか?」

 

ようやく誘いの言葉を、ハッキリと落ち着いて言えたよう。因みにキリトの「ユウキを飯に誘う」の戦歴は2勝0敗35分けである。引き分けの要因として、アスナの妨害を受けてしまうのだ。ユウキと2人で行動出来るのが少ないにも関わらず、ご飯の時になると、どこからとも無くアスナが現れ、結局3人以上での食事となる。

今日は珍しくアスナもログインしておらず、誘うには絶好のチャンスだ、とキリトは考えていたのだ。

 

ユウキ 「うーん、ごはんか…でも遠慮しとこうかな。実はね、今度ボクもマイホームを買いたくてさ。そのために今は節約してるんだよね。」

キリト 「へぇ…どこを予定しているんだ?」

 

申し訳ない、とユウキは手を合わせる。

しかしキリトは、ユウキがホームを持つということに興味が向き、先のご飯の件より重大と判断された。よって、断られたことについてショックを受けるより先に、そちらの質問がなされたのだ。

 

ユウキ 「んーとね、多分キリトのホームの直ぐ近く、かな。あそこら辺に良い物件があってね。即決したかったんだけど、あまりお金に余裕がなくて、今はとりあえず貯金中。」

キリト 「そっかそっか。俺のホームの近くかぁ。」

 

キリトがホームを構えているのは、自然豊かでモンスターのポップがない、という事が利点である、新生アインクラッドの22層だ。キリトもそこの自然溢れ、開放された土地を、心底気に入っている。

キリトは、ユウキもその土地を気に入ってくれたこと、と言うよりはむしろ、ユウキが近くに住み移るという事に喜び、思わず口元が緩んでしまう。

 

ユウキ 「うん。でもね、何故かアスナには反対されちゃったんだ…。何でもその付近には恐ろしいモンスターが居るんだとか。それで、ボクも悩んじゃってさ…。キリトはどう思う?」

 

キリト (そのモンスターって、絶対俺のことを指してるだろ!?ことごとく邪魔してくるな…!)

 

アスナの事だ。そういうデマ…ある意味事実なのだが…を流し、ユウキをそこに住まわせないと図ったのだろう。なぜならそこに住むキリトは、そんなモンスターに1度も出くわしてないからだ。

 

キリト 「俺は大賛成だし大歓迎だ。それに俺はそんなモンスター見たことないぞ。住んでいる俺が言うのだから、間違いない。」

ユウキ 「そっか…確かにキリトがいないと言うのなら、いないのは間違いないよね!うんありがとう、キリト!ボク購入することを決意したよ!」

 

キリトの話を聞いたことで、すっかりと迷いが失せ、ユウキは

 

キリト 「それは良かった。ご近所としても色々手伝うから、何かあったら話してくれよ。」

ユウキ 「わぁ、ありがとう!キリトは頼りになるな〜♪」

 

上機嫌に軽い足取りで歩を進めるユウキ。それを後ろからキリトは微笑ましく眺めていた。

何かある事を忘れてないか…と、ようやく事の本題へと思考が戻る。

 

キリト 「よし、そういう事なら昼飯は俺が奢るよ。」

ユウキ 「え、いいの?」

 

まるで今決めたかのように、キリトはそれを口にする。が、当然の事ながら、元よりキリトは奢ろうとしていたのだ。最近は買うものも少なくってしまい、使い道と言ったら食事しかなくなってきた、というのも理由の内の一つである。

 

キリト 「全然大丈夫だ。ご飯の一回や二回くらい、どうってことないよ。強いて言うなら、ユウキに奢ってくれと言われれば何度でも。」

 

キリトはさも当然のように、キッパリとそう言い切った。

 

ユウキ 「流石にそこまではお世話になれないけど、本当にありがとね。じゃあ今日は奢ってもーらおっと。」

キリト 「よしっ!どこに行くか?何ならすごく高い所でもいいぞ。」

ユウキ 「いやぁ…ボクもそれは気が引けちゃうよ。喫茶店っぽいとこにしない?そこならお手軽だと思うな。」

キリト 「おう。ユウキがそれでいいなら、そこにしようか。」

 

昼食を取る店が決定し、2人はその店がある街へと飛んで行った。と、言ってもそこまではあまり距離もなく、数分の飛行を楽しんだ後、お店へと着いた。

2人とも適当なメニューを注文し、それを食している最中。

 

キリト 「そう言えば、ホームを買うのに足りないユルドって…いくらなんだ?」

ユウキ 「もぐもぐ……ん。えっとね、正確に言うとホームと家具を買う分なんだ。そして、めでたくホーム分は今日ので集まったよ〜。」

 

サンドイッチとポテトフライを注文したユウキは、頬張っていたサンドイッチを飲み込み、キリトの質問に返答する。無論、今日ので、というのは先程までの討伐分である。

 

キリト 「ふむふむ…確かにすっからかんの家は嫌だよな。俺は何も考えずに、後からちょこちょこと買ってったなぁ。」

 

キリトもユウキと同じメニューを取りながら、ユウキのホームについて考えていた。

 

ユウキ 「ボクはね、最低でも机と椅子は欲しいんだ。そうすれば辛うじて皆呼べるでしょ?頑張って明明後日のボクの誕生日までに間に合わせたいんだ!」

 

どうやらユウキは誕生日会を、新ホームで執り行いたいらしいのだ。そして、誕生日を祝ってもらうのに、開いてもらうのではなく、自分で開いて呼びたい、とそういう事のようだ。

 

キリト 「確かに、それまでに間に合わせたいな。」

ユウキ 「うんうん。…で、さ。お願いなんだけど、明日もユルド稼ぎを手伝ってもらえないかな?今日はキリトにお世話になりまくってるけど…。」

 

こうしてキリトにお願いしているのは、アスナ達に頼れないからだろう。ユウキは知る由もない理由(キリト)のせいで、アスナはホームを反対している。とは言っても、ユウキが買うと決めればそれ以上に否定はしないだろう。ただ、やはり肯定してくれるキリトに、頼りやすかったのだ。

 

キリト 「俺から直接ユルドを出す事は出来ない…と言うかユウキが嫌だろうけど、そういう事なら何なりと。いくらでも付き合うよ。」

 

無論、キリトは何の迷いもなく承諾をする。頼られていること、2人の時間を過ごせること、その二つの喜びを噛み締めながら。

 

ユウキ 「ほんと!?やったぁ〜♪キリトが一緒なら百人力だね!」

キリト 「出来る限りを尽くさせてもらうぜ。」

ユウキ 「よーし、明日の午後7時にここで集合ってことで、よろしくね!」

キリト 「あぁ、分かった。」

 

こうして翌日もキリトのボーナスデイとなる事が決まり、心の中でガッツポーズを連発する。あくまで冷静な表情を保ちながらも、その裡にはニヤケ笑いが溢れ出ていた。

その後暫く話し合いをしてから、丁度いい時間となる。

 

ユウキ 「明日も頑張ろー!」

キリト 「おう。それじゃまた明日。」

ユウキ 「うん、じゃあね〜!」

 

2人は別れ、各自ログアウトをして、この日を終えた。

 

5月21日

PM7:00

 

ユウキ 「こんにちはーキリト!待たせちゃったかな?」

キリト 「いいや、全然。課題も終わらせたし、特にすることもなかったしで、少し早く来ただけさ。」

ユウキ 「ボクも終わらしてきたよ〜。だから今日は、ノルマまで飛ばしてこーっ!」

 

キリトもユウキも学生の身。それなりの勉強と課題は2人とも背負っている。今日はそれらを片付け、夕食を摂った後に集合と決めていたのだ。

 

ユウキ 「むむむ…やっぱりこのクエストが一番効率いいよね?」

キリト 「確かにそれは効率が良いけど、素材を全て売ることを前提とするなら、こっちの方が稼げるんじゃないか。」

ユウキ 「なるほど!流石キリト、頼りになるよ♪」

 

結局2人が選んだのは、指定モンスター郡の討伐であった。それは他に重複しているクエストがあるため、一気にまとめて行えるのだ。一番効率の良い稼ぎ方を、昨晩キリトは調べ上げたことは、ユウキには内緒である。

 

-2時間後-

 

ユウキ 「いやぁ…疲れた…。」

 

同じ喫茶店に戻ってきたユウキは、ボロボロに疲れ果てており、机に突っ伏したらそのまま寝てしまう勢いである。流石のユウキでも2人だけで、モンスター討伐を2時間続けるのはキツかったようだ。

 

キリト 「お疲れ様。ほら、冷たいジュースでも飲むか?」

ユウキ 「ひゃぁ、冷たいっ、気持ちいいっ。」

 

ユウキに比べて元気そうなキリトが、ぼーっとしているユウキのおでこに、ジュースの入ったガラスを当てる。ふわふわと飛んでいたユウキの意識が、その刺激により一緒にして舞い戻った。

 

ユウキ 「ちゅー…美味しい…癒されるなぁ…。」

キリト 「途中、ポーションが美味しい、って言い始めた時は、少し危ないと思ったよ。体調とか悪いとこないか?」

ユウキ 「あはは…もう平気だよ。心配かけてごめんね。」

 

大丈夫、とアピールをするユウキだが、疲れが明らかに見て取れる。

 

キリト 「…そうか。ま、何はともあれノルマは達成したんだろ?」

ユウキ 「うん、キリトのおかげでノルマ以上にまで貯まったよ。」

 

後半から金額の事を頭に置かず、無我夢中で戦闘をしていたため、かなり余分に貯めてしまったのだ。あって困るわけではないが、疲れを伴っているのだから、多少の後悔をしている。

 

ユウキ 「そうだなぁ…家具含めて、色々買うのは明日にしようかな。…明日もお願いしてもいい?」

キリト 「うーん…明日の午後から予定が入っているから、それまでだったら大丈夫だ。」

ユウキ 「そっか…実は明日の午前は、ボクの方に予定があるんだよね。頼みづらいけど、アスナに頼もうかな。」

 

ユウキのホーム購入計画が、ここまで辿り着いたのは、キリトのおかげもある。だからこそ、ラストである買い物は、是非ともキリトにも付き合って欲しかったのだ。そのため、キリトに用事があって同行出来ないのは、ユウキとしては残念な事であった。

 

キリト 「本当に申し訳ない…。」

ユウキ 「キリトが謝ることじゃないって!2日も付き合ってくれたことに感謝だよ!」

 

キリトが頭を下げてまで謝ろうとするので、ユウキは慌ててキリトに本意として伝える。

 

ユウキ 「…あ!忘れてた…アスナ達に用があるんだった!…ねぇキリト、ボクの今の顔ってどう?」

キリト 「いつも通り整っていて可愛い顔だぞ。」

 

ユウキの顔を確認してから、さらりと答える。キリトには珍しい実の本音である。かなり長い間、ユウキとの時間を過ごしていたため、段々と大胆になってきているのかもしれない。

 

ユウキ 「う、嬉しいけど、そうじゃなくて…疲れてるように見えないよね?」

 

キリトから初めて聞いた、「可愛い」という言葉に少し照れながら、聞きたい本質的な質問に変えた。

 

キリト 「…残念ながら、いつもより疲れてるように見えるな。」

ユウキ 「そっか…でもアスナには明日の事を言うわけだし、仕方ないか。」

 

恐らく疲労感を見せれば、アスナに余計な心配をかける、そう思ったからだろう。しかし、今から明るく振る舞うのに使えるエネルギーも無く、致し方ないと諦めをつける。

 

ユウキ 「今日は本当にありがとね!明後日はボクのホームに招待するから、絶対に来てよね!」

キリト 「ああ、また明後日。」

 

そう言ってからユウキは夜の空を飛んでいった。ユウキを見送ったあと、キリトは身体を脱力させ、机に突っ伏した。

 

キリト 「あー俺の心の支えが抜けた感じが…。」

 

キリトがユウキより疲れてなく、余裕があるように見えたのは、常にユウキというポーション並の回復があったからなのだ。それが離れてしまい、キリトは本来の状態へと戻ったという事だ。

 

キリト 「くっそぉ、俺のバカ野郎…!ユウキへのプレゼントを、もっと事前に準備しておきゃ良かった…!聞くのに時間かかったとかあるけど、明日じゃなくてだなぁ…!」

 

と、大切なユウキとの時間を蔑ろにし、その機会をアスナに譲るという、己の過ちを悔やむ。そして机に頭突きをしては、ため息をこぼしてまた頭突き。これを繰り返すこと数分、遂にキリトは明日の事を諦め、大人しくログアウトをして、明日に備えることにした。

 

5月22日

 

PM4:00

 

ユウキ 「結構迷いに迷ったけど、これにて終了ーっ!」

アスナ 「大分良いのが手に入ったよね。値段相応ってやつ。」

ユウキ 「うん。ギリギリだけど間に合って良かった〜。これも全てキリトのおかげだね!」

アスナ 「…あれ?今そのキリト君が走ってない?」

ユウキ 「ほんとだ…確かキリトは用事があるって、言ってたけど。ALOの中でのだったのかな?」

アスナ 「まぁ、こっちに気づいてなかったし、それほど大変な事なら邪魔しない方がいいよね。」

ユウキ 「そうだね。じゃ、本命の方に行こう!」

 

そして、無事にユウキはマイホームを買うことが出来、アスナと2人で、買い揃えた家具などを設置し、更には明日の準備まで整えた。

一方キリトはとある目的の物を得るため、フィールドや街を縦横無尽に走り回っていた。 キリトがクエストを始めたのが午後1時。既に3時間に渡る対峙を続けていた。

 

こうして、各々が準備を重ね、ユウキの誕生日の前日であるこの日が終わった。

 

5月23日ユウキの誕生日当日

 

会の始まりは午後の7時からと決めていたので、それまでにユウキはキリトに再度お礼を言おうとしていた。しかし、午前中はログインせず、連絡をしてみると、キリトの代わりに妹であるリーファが現れた。

 

リーファ 「本当に申し訳ございません!お兄ちゃん…今朝から体調を崩してしまってまして…。それでもログインしようとするもので、今は無理やり寝させました。会が始まるまでに治す、と言ってたから、多分大丈夫だと思うよ。」

ユウキ 「そっか…お大事にって言っといて。あと、無理には来なくても良いから、体を大切にしてねって。」

リーファ 「はい。なんか昨日も長い時間やってたらしく、その疲労が祟ったんだと思うから、ユウキはそんなに気にしなくて大丈夫だよ。じゃ、私はこれで。」

 

そう言い残してリーファはログアウトをした。

 

ユウキ 「でも、やっぱりボクが付き合わせたからかな…。」

アスナ 「ううん、違うよ。キリト君はユウキのためにとやってたんだから、それくらいではヘタレないわよ。とにかく復活することを願って、私たちは料理準備を済ませちゃお?」

ユウキ 「うん。…よーし、美味しい料理を作ろー!」

 

自分のせいかも、という不安を心に仕舞いこみ、ユウキはアスナの指示の元、手作り料理に取り掛かった。

 

PM7:00

 

遂にユウキの誕生日会が始まった。集まったのはスリーピングナイツのメンバーを始め、シノンやシリカ達であった。しかし、キリトは出席しなかった。

 

リーファ 「えー、伝言を頂いてます。「参加出来ない事がとても悔しいが、俺のことは気にせずどうか楽しんでくれ。あとユウキへ、お誕生日おめでとう。体調管理が悪くて本当に申し訳ない。」だ、そうです。熱が下がったらログインしてくるそうですが、多分可能性は低いです。」

 

と、キリトの欠席をリーファは伝える。変に悪化したらしく、1日だけでは身体が治らなかったのだ。

 

ユウキ 「そっか…あとでキリトにはちゃんとお礼をするよ。ってことで、キリトには申し訳ないけど、始めよっか!」

アスナ 「そうだね。キリト君の分まで、楽しまないとね。それじゃ──」

 

「「誕生日おめでとう、ユウキ!!」」

 

皆の揃った祝福の声で、ユウキの誕生日会は始まった。ユウキとアスナの精一杯を込めて作った、かなり贅沢な料理。更には、シノン達が持参したドリンクで、会は大いに盛り上がった。

 

ユウキ (そうだ。一応キリトにメッセージを送っとこう…。)

 

和人の部屋

 

和人 「けほっけほっ…ユウキのご飯食べたかった…。」

 

かなり寝たせいで寝付きが悪くなってきており、じわじわと後悔の念が浮かんできている。その現れとして、ぼそぼそと独り言を呟いていた。

 

ピロリン

 

その時、スマホのメッセージ着信音が鳴る。1人静かな空間であったため、和人は躊躇いなくそれに手を伸ばした。

 

和人 「ユウキ…!えーと、なになに…」

 

『具合はどう?ボクのために長い時間無理させてごめんね。もし体調が良くなって、ログインできるようになったら、今日の何時でも連絡して。ちゃんとお礼と謝罪をしたいから。』

 

和人 「…治そ…12時までにならセーフだよな!?」

 

と、速攻で簡単な返信をしたあと、直ぐに寝についた。あと4時間半以内に体の中の菌を撲滅するために。

 

PM9:00

 

2時間の楽しい会はあっという間に終わり、ここでお開きとなった。残ったのはアスナとユウキで、2人で後片付けをしていた。

 

ユウキ 「今日はありがとね!最高の誕生日だったよ!」

アスナ 「うん。キリト君のために料理も残しておいたんだっけ?ユウキは優しいね。」

ユウキ 「えへへ、ボクらの自信作だもん。キリトにも食べてほしいもんね!」

 

粗方の片付けが終わり、アスナも帰ってログアウトした。1人残ったユウキは庭に出て、ぼーっと美しい夜の星空を眺めていた。

 

PM11:30

 

ユウキ 「あ…キリト!」

キリト 「ハァハァ…本当に申し訳ない!」

 

まだ体調が少し悪いらしく、息を荒くしながらユウキの側に寄った。

 

ユウキ 「いやいや、こちらこそだよ。今日は楽しかった…全部キリトのおかげだよ。本当にありがとね。」

キリト 「何してたんだ?もしかしてずっとここに?」

ユウキ 「いいや、さっきからだけだよ。ちょっと綺麗な星空をね。ボクさ…この星空が好きで、ここにホームが欲しかったんだよね。」

キリト 「俺も好きだな。本当にここからの星空は綺麗だからな。」

 

と、暫く2人で星空を眺めていた。まるで2人で時間を共有するかのように、この時間を楽しんだ。

 

キリト 「あ、そうだ…遅くなったけど、誕生日おめでとうな。…はい、これは俺からのプレゼント。」

 

割と大きめなプレゼントボックスを、キリトはストレージから取り出すと、ユウキに差し出した。

 

ユウキ 「ありがと…って、これ…!?」

 

それは紫色のテディベアだった。抱き心地が凄く気持ちいい、と説明があり、ユウキはそれに一目惚れしていたのだ。

 

キリト 「あぁ、ユウキが欲しいって言ってた、限定のぬいぐるみ。気に入ってくれたか?」

ユウキ 「うん!すっごく嬉しいよ…!も、もしかして…昨日?」

 

ユウキは昨日、キリトが用事として、ALOで走ってたのを見たため、それを予感したのだ。体調不良の原因は昨日の用事だと聞いていたため、それを危惧したのだ。

 

キリト 「ち、チガウヨ…。」

 

明らかなとぼけで、ユウキを誤魔化そうとする。しかし、当然ユウキは騙されることもなく、申し訳なさそうに俯いた。

 

ユウキ 「やっぱりボクのせいじゃん…ごめんね、こんな言葉じゃ足りないけど。」

キリト 「こ、これは…俺がユウキの喜ぶ顔が見たかったからだ。俺のためでもあるから、ユウキのせいじゃないんだぞ!」

ユウキ 「ありがとね。これ大事にするからね!」

 

キリトからのプレゼントであるテディベアを大事に抱えた。

 

キリト 「ユウキが喜んでくれて本当に良かった。今年は俺がラストだったけど、来年は俺が一番におめでとうと言うからな。」

ユウキ 「えへへ、キリトの時もボクが最初に言うからね!」

 

こうして2人で5月23日を終えたのだった。




短編をハーメルンに出すのは初ですね。まぁ、Pixivで出したヤツなのですが…。結構走り気味に書いたので、後半は雑になっしまいました。余裕がある時に修正を加えようと思います。
因みに連載予定は無いです。


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