魔法少女リリカルなのは 〜ありがちな転生生活〜 (妖魔夜行@)
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プロローグ
プロローグの様なもの


初めまして!妖魔夜行です!ハーメルンでは初めての投稿です!まだ不慣れですが頑張りますんで応援よろしくお願いします!

ではどうぞ!


俺の名前は小鳥遊碌斗。2度目の小学校生活を送っている小学五年生だ。

 

「ふわぁ…7時か…そう言えば今日は日曜日だったな……二度寝二度寝…」

 

休日は9時まで寝ると決めているので俺は時計を確認すると速やかに布団に潜る。そのまま睡魔に誘われて眠りにつく……事が出来なかった。何故なら…。

 

「ロクトー!!朝だよ!遊園地行こう!!」

 

壊れかねない勢いで扉を開けて俺の部屋に入ってきたコイツに安眠を阻止されたからだ。

 

「レヴィ…何度も言ってるけどもう少し優しく開けてくれ、扉が壊れる」

 

「はーい、今度から気をつけるよ。それより土曜だよ!遊園地行こう!」

 

「先週行ったばっかじゃねぇか。というかお前それ昨日も聞いたぞ…」

 

青髪のツインテールの少女、こいつは小鳥遊レヴィ。血は繋がってないが俺の家族だ。

 

「こらレヴィ。ロクトが困ってるでしょう?」

 

「おはよーシュテるん!でもシュテるんも遊園地行きたいでしょ?」

 

「遊園地はたまに行くから面白いんですよ。ご飯が出来てるので先に行ってて下さい」

 

「はーい!」

 

シュテルがそう言うとレヴィは部屋から出ていった。

こいつは小鳥遊シュテル。シュテルもレヴィと一緒で血は繋がってないが俺の大事な家族だ。

 

「さ、ロクトも早く起きてください。目は覚めたのでしょう?」

 

「あぁ、すっかりな」

 

レヴィのせいで眠気なんか吹っ飛んでしまった。残っているのは朝特有の怠さくらいだ。

 

「ではリビングに行きましょう。それとも着替えてからにしますか?」

 

「うんにゃ、朝飯食べてからでいいや。行こうぜシュテル」

 

「はい」

 

リビングに行くと先程突撃してきたレヴィが椅子に座っておりその隣に座っている少女が見える。

 

「おはようユーリ、レヴィ」

 

「おはようございますロクト」

 

「おはよーロクトー!」

 

「珍しいなレヴィはともかくユーリまで寝巻きのままなんて」

 

「今日は休日ですしたまには良いかなって思って」

 

そう言って照れるように笑う少女は小鳥遊ユーリ。こちらも血は繋がってないが俺の大事な家族だ。

 

「あれ、ディアーチェは?」

 

「我ならここだ。シュテル、朝食を運ぶのを手伝ってくれ」

 

「はい、分かりました。では私は目玉焼きを持っていきますね」

 

「ああ、頼む。それとおはようロクト」

 

「ああおはようディアーチェ。今日はディアーチェが作ったんだな」

 

「まぁな、今運ぶから座って待っててくれ」

 

そう言ってキッチンに戻って朝食を取りに行くディアーチェ。ディアーチェも血は繋がってないが大事な家族だ。

少しして俺、シュテル、レヴィ、ディアーチェ、ユーリは食卓の席に着く。

 

「では食べるとするか」

 

「あっ、ちょっと待ってくれ。アラジンも呼んでくる」

 

「その必要は無いさ碌斗くん」

 

そう言ってリビングに入ってくるアラジン。アラジンも家族の1人だ。

アラジンは俺の隣の椅子に座って箸をとる。

 

「おはようアラジン」

 

「おはようございますアラジン」

 

「おはよーアラジン!」

 

「うむ、おはよう」

 

「おはようございます」

 

「おはよう皆」

 

俺、シュテル、レヴィ、ディアーチェ、ユーリの順で挨拶していく。

アラジンが箸を持ったのを見て皆で手を合わせる。

 

「「「「「「いただきます!」」」」」」

 

こうして俺の1日は始まる。




ここまで読んでいただき、ありがとうございました!

感想、評価お待ちしております!(批評や酷評も受け付けます。と言うかそれしか来ない予感が……)
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プロローグ、に見せかけた説明話

まだプロローグです。ゴメンなさい。次回からちゃんと1話に入るのでよろしくお願いします!


俺の名前は小鳥遊碌斗。え、もう知ってた?あ、ごめん。

じゃあ名前以外についての俺の事や家族について話そうか。

 

 

 

……俺、誰に向かって話してんだ?

 

 

 

俺は今2度目の小学校生活を送っている小学五年生だ。何故2度目かと言うと俺は前世の記憶を持っている転生者というやつだからだ。

 

俺は前世では両親がおらず孤児院に住ませてもらっていた。物心がついた頃には孤児院にいたので親の顔など全く知らない。因みに小鳥遊と言う苗字は孤児院の院長先生からもらっている。

アレは21歳の頃だったな。俺は高校を卒業したらすぐに孤児院の近くにあった工場に就職して働き始めた。そこの工場長と院長先生は小学生からの同級生だったらしく親交があり俺もよくして貰っていた。俺は給料の殆どを孤児院に入れていた。院長先生は成人もしているんだからお金なんか入れなくていいよと言ってくれていたが孤児院には俺の事をしたったくれている弟や妹達が何人もいた。それに今までお世話になった分の恩返しをしたいと言ったら院長先生は無理はしないでねと言ってお金を受け取ってくれた。

そしてそれは突然だった。俺のボーナスが入った日で、また子供たちに玩具や服を買ったあげれると思って嬉しくなり急いで孤児院に帰っていた時、俺は突然降ってきた雷に当たって即死したらしい。

いやびっくりしたぜ。目が覚めたら美少女が俺に向かった土下座してたんだから。

その美少女が実は神様で俺の事をうっかりミスで死なせてしまったらしいのだ。そのお詫びと言って俺を自身が担当しているリリカルなのはの世界に転生させてくれる事になった。

リリカルなのはは高校時代の友達が好きだったのだそいつからマンガやゲームを何度か借りたくらいなのでそこまで詳しくなかったし、それに俺が死んだら孤児院の収入はぐんと減るのでどうするのかと迷っていたのだが、俺が死んだあとも孤児院に充分な収入が入る事を神様が約束してくれたので俺は転生することに決めた。

転生するに当たって幾つか神様から特典が貰えるらしくその特典の内容が願い事を何でも3つ叶えてレアスキルを1つ上げるというものだった。

俺は前世でマンガやゲーム好きの友達から何度か本やゲームを借りた事があり、その時にとても好きになったマンガとゲームがあったのだその能力を使えるようにしてもらうという願い事に決めた。

 

1つ目は『マギに出てくるキャラの武器や能力を全て使えるようになる』という願い事。

これは金属器や眷属器、それを使うことによって使える技や極大魔法、それに魔法や魔力操作に魔法防御、そしてマギがもっているルフの加護にアラジンのソロモンの知恵などを使えるようになるという事だ。

そう、俺が好きだったマンガはマギだ。そしてゲームの方は東方Projectで、2つ目の願い事は『東方Projectの十六夜咲夜、フランドール・スカーレット、八雲紫の能力が使えるようになる』という願い。

何故この3人かと言うと、全員の能力があったとしても使わないだろうと思ったからだ。なので時間操作、破壊、移動と使い勝手のいい能力をもつ3人にした。

そして最後に3つ目なのだがこれはこの時は叶えてない。これ以上チート能力があっても無駄なだけなので必要になった時に叶えてほしいという事にした。

 

そしてレアスキルなのだがこれは2つ貰った。本来は1つだけなのだがその理由が有名な他作品のキャラクターが持っている特殊能力や固有技能等は強力すぎるからという事なのでオリジナル、つまり自分が考えた物なら2つくらい上げても問題ないとの事らしい。

 

そこで俺が貰ったレアスキルは【霊体化(ゴーストルール)】と【存在遮断(シャットアウト)】というの2つの能力。【霊体化】の方は任意で体を霊体にする事が出来て、霊体になったいる間はどんな攻撃も無効化するというレアスキルだ。ちなみに壁などの障害物をすり抜けたり体を透けさせたりなども出来る。【存在遮断】の方は文字通り自分の存在を遮断するレアスキルで、【存在遮断】を使っている間はどんな能力やレーダーでも俺を認識することが出来なくなるというものだ。例え目の前で使っても相手には急に消えたようにしか見えずレーダー等からも俺の反応は消失するというかなり強力なレアスキルだ。

あと言っておくが名前をつけたのは俺ではなく神様だからな?俺は能力を考えただけであって名前は神様がつけたんだからな?そこん所勘違いすんなよ?

 

あとは俺の他にも転生者が2人いるらしい。何でも1人は嬉々として原作介入して原作キャラハーレムを作るなどと言っていたとか。もう1人はなのは達をサポートしたいと言っていたらしい。

まぁそんな奴がいるんだったら俺は別に無理に原作に介入しなくてもいいかなーと思って普通に過ごすことに決めた。神様に一般的な家で高町なのは達原作キャラ達と関わらないようにしてくれ、と頼んだのだが住んでるところを変えることは出来ないので海鳴市になるがその代わり小学校は違う小学校に通えるようにしとくと言っていたので大丈夫だろう。

 

そして最後はデバイスだ。 デバイスの性格や形は自由に決めていいと言われたので俺はマギのアラジンの性格にしてくれと頼んだ。そして待機状態の時はアラジンが頭に付けている赤い宝石のネックレスになり、セットアップ時には頭に固定されるようにして貰った。後はバリアジャケットと武器だが、マグノシュタットの制服は恥ずかしいのでアリババがマグノシュタット編で着ていた服をバリアジャケットにしてもらい、武器は金属器などがあるのでそこまでこだわらずアリババがレームで剣闘士をやっていた時の剣にして貰った。デバイスが武器にはならないのでかなり特殊なデバイスとなった。

そしてこのアラジンだが何と、原作のあのアラジンの姿にもなれるのだ。要するに人にもなれるデバイスと言うことだ。

 

色々と設定が終わりそして俺はリリカルなのはの世界に転生した。

 

転生して嬉しかったのは家族がいたということだったな。父親と母親、どちらもいたのだ。聞いてた会話を通りだと父親は海外で軍隊だか重要人物の警護だかの仕事をやっているらしく、かなりの強さらしい。母親は世界を駆け回るビジネスウーマンで1年の殆どを海外で過ごすことなど日常茶飯事で、酷い時は3年に1度しか帰ってこない時もあった。いや父親もそんな感じなんだけどね。だから俺は小学生になるとすぐ家に1人になった。ただ父さんも母さんも小学生になるまではずっと家にいた家事と育児をしていた。時折、穏やかな親の表情と言うのを見せるので俺の事を愛してくれているのは分かった。なんだか嬉しかったな……。

ちなみに小学生になってから父さん達は家に帰ってくることは本当に3年に1度とかになっていたが毎月お金は振り込んでくれていたし、ハウスキーパーも雇っていたので衣食住には困らなかった。

まあ一応料理は作れるんだけどね。ただ身長が足りないしこの時の体だと危ないからしなかったけど。

 

そして学校に通いある程度親しい友達も作り、成績も優秀(小学生のレベルの勉強だしな)。順調に平凡な人生を送っていた。

 

アイツらが来たのは転生してから9年だから9歳の頃か…懐かしいな。あの時は原作のキャラ達が闇の書の防衛プログラムを一斉攻撃する日だったんだよなぁ、後で聞いた話だけど何故かもう1人の転生者がそこにいたらしい。

ま、それで家に着いたら家の前で傷だらけの少女達が倒れていて取り敢えずこのままじゃ凍傷になりかねんから家の中に入れたんだが入れたあとに「あれ?マテリアル娘じゃね?何かユーリもいるし。何で?」って気づいたんだよ。

取り敢えず神様に連絡とってみたらリリなのの平行世界で巨大な次元震が丁度ユーリを止めるために戦っていたマテリアル娘達とユーリのすぐ側で起こったらしく、全員傷だらけで満身創痍だった為逃げることが出来ずに次元断層に巻き込まれてこの世界にやってきたとか…。そして更に衝撃な事実を言われた俺が転生したこの世界は何でも完全原作のリリカルなのはの世界ではなくリリカルなのはの原作に限りなく近いifの世界らしく原作通りに行かない事もあるかもしれないとの事。

そうやって神様から説明を受けているとマテリアル娘達とユーリがどんどん弱ってきて今にも死んでしまいそうだった。

練紅炎の金属器のフェニクスを使っても全員を完治させるには厳しそうだったので俺は保留にしておいた最後の特典の願い事を神様に言った。この4人の傷を治して欲しいと。

すると神様はチート能力はいいのか?とか特別な力入らないの?とか聞いてきたけどもう貰ってるからいらねぇよって言ったらすぐ4人を治療してくれた。そした何故か4人を人間にしてくれた(・・・・・・・)

その理由を聞いてみたところ、「人間の方が何かと都合がいいでしょうからサービスでしておきました」との事。

その後目を見知らぬ場所で覚まして戸惑っていた4人に事情を話し(怪我は俺の魔法で治したという事にして人間にしたことはレアスキルでやったことにした)何とか理解してもらうと4人同時に腹の音がなったので、取り敢えず飯にするかと晩飯を作った。

晩飯を作り終わったあと少し話したのだが、4人は身寄りがないとのことで俺の家で過ごすことになった。そして俺が自己紹介すると彼女達も自己紹介をしてきた。

 

高町なのはと瓜二つなショートカットの少女はシュテル・デストラクター。

フェイト・テスタロッサと瓜二つの青髪の少女はレヴィ・スラッシャー。

八神はやてと瓜二つな白髪の少女はロード・ディアーチェ。

そして3人よりも少し幼い姿をした金髪の少女がユーリ・エーベルヴァイン。

 

 

歳も近かったからかすぐ打ち解けることが出来た。その日の夕食は過去1番に賑やかだったな。

その日は俺の家族が4人増えた日になった。

 

 

それから日常生活に必要な服や道具を買って家事や料理が出来るように特訓して原作キャラと関わらせるのは危険なので俺と同じ小学校に転校扱いで入学させた。

あれから一年近くたった今、トラブルに巻き込まれることもなく平穏に過ごしてきた。

願わくばこれからも平穏に過ごせますように……。

 

 

 

 

 

あれこれフラグ?




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空白期
学校での日常は非日常である


本編入ります。


side碌斗

 

家から歩いて約10分程離れた所に俺達が通う小学校がある。

 

市立海鳴小学校。1学年2クラスで1クラスに約40人。全校生徒数479人のそこそこ児童が多い学校だ。

学力はそこまで高くなく全国平均から見れば中の中といった所にある。

ただ部活動、特にサッカー部は強豪で全国大会の常連となっている程だ。

ん?俺?俺は何の部活も入っていない帰宅部だよ。というか小学生で部活入っていないのは別に珍しくは無いと思うんだが…。

 

「ロクト、どうしたのですか?先程からどこか上の空と言った感じでしたが」

 

「ん…?あぁ、いや何でもない。今日の給食は何だったけなーって思ってさ」

 

「今日の給食はハヤシライスだよ!」

 

「お、マジか。これは争いが起きるな……」

 

ルーの取り合いという名の戦争が。

 

「男子は凄いですよね、給食であそこまで盛り上がれるんですもん」

 

「確かにあの盛り上がりようは中々目を見張るものがあるな……たまにレヴィも混じっているが」

 

そう言ってジト目でレヴィを見るディアーチェ。当の本人は先程から「ハッヤシライス♪ハッヤシライス♪」と言いながらスキップをしているのでディアーチェの視線に気づいていない。

因みにアラジンは待機状態で俺の首にかけている。

 

「しかし、どうしよっかな。今日の晩飯はカレーにするつもりだったんだが…」

 

「別に我はいいぞ?気にせんしな」

 

「私も別に大丈夫ですよ、ハヤシライスとカレーは似て非になるものですし」

 

「私も大丈夫ですよ、ロクトの作る料理はどれも美味しいので飽きることなんてありませんし」

 

『僕も気にしないよ!』

 

ふむ、4人とも別に気にしないみたいだな。レヴィは…多分気にしないだろ。

 

「じゃあ今夜はカレーだな。辛口でいいよな?」

 

『「「「それは却下です(だ)(だよ)」」」』

 

何故だ。

 

 

教室につくと半分程生徒が席に座っていた。近くの席の友達と話したりしてるやつが殆どだ。因みに俺とシュテルは1組でレヴィとディアーチェ、ユーリは3組だ。

 

「おっすおはよう碌斗。そ、それとおはようございます!シュテルさん!」

 

「おはよう健介」

 

「おはようございます竹中くん。じゃあロクト、私は日直なので日誌を取りに行ってきます」

 

「おう、いってらっしゃい」

 

今俺達に挨拶をしてきたのは竹中健介。サッカー部でエースストライカーをやっている運動神経の良い奴だ。

 

「そう言えば健介見たか?昨日の体〇会TV」

 

「見た見た!凄かったなアレ!まさか全部のパネルを打ち抜けるとはな!」

 

「いやぁ…あの寸分狂わず蹴り抜くキックは流石だよなぁ、引退して10年以上経つのに衰えてないもんな」

 

「だよなー!すげえよなー…流石伝説のストライカーだよ」

 

俺と健介が話で盛り上がっていると2人の少年が近くの席に座った。

 

「やぁおはよう碌斗君、健介君」

 

「おっす!碌斗、健介」

 

「悟史と圭一か。おはよう」

 

「おっす、悟史、圭一」

 

今俺と健介に先に挨拶したのは北条悟史。金髪のサラサラヘアーでいつもニコニコしている奴だ。成績優秀でこのクラスの委員長をしている。下級生、上級生どちらからもモテるイケメンだ。

そしてもう1人の少年は前原圭一。茶髪のショートヘアーで元気がいいクラスのムードメーカーだ。但しかなり変態なやつでよく学年中の男子達と猥談をしている。

そう、もうお気づきだろうが…こいつらはあの『ひぐらしのなく頃に』シリーズに出てくる主要キャラ、「前原圭一」と「北条悟史」本人達だ。

この世界は『魔法少女リリカルなのは』ににたifの世界…つまり、他の作品のキャラがいてもおかしくない何でもありの世界らしい…と神様が言っていた。因みに2組には「竜宮礼奈」がいて3つ下の学年には「北条沙都子」と「古手梨花」、「古手羽入」がおり、1つ上の学年には「園崎魅音」と「園崎詩音」がいる。

あと余談だがここは海鳴市なのでオヤシロ様の祟りなんかないし、怪奇事件も起こっていない。その証拠に『ひぐらしのなく頃に』キャラ達は平穏に暮らしている。

こんな感じにリリカルなのはの世界に馴染むように修正されているらしい。

 

「なぁ聞いてくれよ!俺昨日聖小の女神達にあってしまったんだよ!」

 

「「「「「「!?本当ですか!リーダー!!!」」」」」」

 

「「「うおっ(うわっ)!?」」」

 

圭一が話したあとクラス中の男子が全員俺らの方を向いて叫んできたのだ。それに驚いて俺と健介と悟史は揃えて声を上げてしまった。

聖小の女神達と言うのは原作キャラの高町なのは、フェイト・テスタロッサ、八神はやて、アリサ・バニングス、月村すずかの事だ。

 

「あぁ、お前らにもその時の話を聞かせてやろう!そして戦利品を見せてやろう!!」

 

「「「「「「おおおぉぉお!!!!」」」」」」

 

「コレだ!!」

 

そう言って圭一が取り出したのは……写真?

 

「コレは女神達の生写真だ!!」

 

「「盗撮じゃねぇか!!」」

 

俺と健介が同時に突っ込む。だが圭一はそれを聞いても「ちっちっちっ」と目をつぶって指をふる。

 

「違うね、コレはちゃんと女神達に断わってから撮らせてもらったものだ!」

 

「「「「「「おおお!!!!」」」」」」

 

「そしてコレを!我等が同士にも分けてやろう!」

 

「「「「「「いええええええいいい!!!!!!」」」」」」

 

………うるせぇ。

 

 

そして授業が終わり放課後になる。 いやなんにも無かったから仕方ないじゃん?

 

「ロクト、帰りましょう」

 

「あぁ、じゃあな健介、圭一、悟史」

 

「おうまたな」

 

「ちくしょう!何故アイツの周りばっかり美少女がいるんだ!俺のところに来てくれてもいいだろ!じゃあな!」

 

悪態をつきながらも律儀に返事をしてくれる圭一。でもお前…後ろ見た方がいいぞ……。

 

「またね碌斗君。それと……圭一君、後ろを見た方がいいよ」

 

「え?ぎゃぁあー!!れ、れ、レナー!!??い、い、い、いつのまに!」

 

「圭一くん…少しレナとO☆HA☆NA☆SIしようか…」

 

「い、い、いやぁぁあああー!!!」

 

哀れ圭一……ご愁傷様。

圭一の悲鳴を聞きながら俺たちは教室を出るのだった。

 

 

「あっ、ロク!シュテるん!」

 

「何だお前達、態々待っててくれてたのか?」

 

「そうですよ別に先に帰っていても良かったんですよ?(そうすれば私はロクトと一緒に二人きりで帰れたのに…)」

 

「ふん、家族を待つのは当たり前だろう(それに我等が先に帰ってしまったらロクトとシュテルが二人きりになってしまうではないか!そんな羨ましい事はさせぬぞ!)」

 

「それともロクトは私たちに帰って欲しかったんですか?(そんな事したらロクトとシュテルは二人きりに…羨ま、許せません!)」

 

「いやいやそう言う事じゃねぇよ。確かに言い方が悪かったかもな、すまんすまん」

 

何やらディアーチェとユーリの顔が急に険しくなったので取り敢えず謝って頭を撫でる。うちの家族は機嫌が悪くなると俺にO☆HA☆NA☆SIと言う名の制裁を受けさせてくる。頭を撫でたりすると機嫌が直るので俺は良く皆の頭を撫でている。

まあ孤児院でも良くちびっ子達を撫でてたからその慣れから来てるのもあるけどな。俺は撫で方が上手いから撫でられてて気持ちいいって言われた事もあるし。

 

「あっ…えへへ…/////」

 

「む…ふわぁ…/////」

 

見ろよこのディアーチェとユーリの蕩けた顔。やっぱ俺の撫で方は上手いみたいだな。良かった良かった…。

 

と思っていたら今度はシュテルとレヴィまで機嫌が悪くなっていたので順番順番に撫でてやった。でも校門の目の前で撫でていたから男子達からの嫉妬と殺意の混じった視線が酷かった。




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食後のデザートはルビに争いとつく

前書きなんてないんですわぁ。(⌒,_ゝ⌒)
よく考えたら空白期だから本編とか無かったですね。


sideロクト

 

「それじゃ俺はこのあとちょっと寄るところがあるから先帰っといてくれ」

 

「分かりました、余り遅くならないでくださいね?」

 

「分かってるよ。そこまで長居はしないつもりだし、もし遅くなりそうだったら連絡するから」

 

「なら良いですが…ではレヴィ達にも伝えて起きますね」

 

「ああ、頼んだ」

 

そう言って教室を出て大急ぎで靴を履き替え校門を出る。何故こんなに急いでいるかと言うと今日は週に一度、高町なのはの両親が経営している店、翠屋に行く日だからだ。

転生してからずっと食べてみたかった翠屋のケーキを初めて口にしてから3年。俺はすっかり常連となっていた。

 

「こんにちはー」

 

「やぁこんにちはロクト君。今日は何にする?」

 

笑顔で出迎えてくれたのは高町士郎さん。『魔法少女リリカルなのは』の主人公、「高町なのは」の親父さんだ。

 

「いつものでお願いします。あと家族用にケーキを5つお願いします」

 

「はいはい。種類はどうする?」

 

「そうですね…ショートケーキが2つ、チーズケーキが2つ、モンブランが1つでお願いします」

 

「わかったよ。じゃあ少し待っててね先ずはロクト君のいつものメニューを持ってくるから」

 

「はーい」

 

そうして待つこと数分後、士郎さんがチョコレートケーキとストロー付きコーラを持ってきてくれた。

うん、いつ見ても美味しそうだ。

 

「どうぞ召し上がれ」

 

「頂きます、あむっ……うーん、やっぱり翠屋のケーキは最高ですね…何度食べても飽きない美味しさ…」

 

「あはは、そう言って貰えると嬉しいよ。僕達も作ったかいがあるってものさ」

 

暫く翠屋のチョコレートケーキを楽しんだ後、家族用のケーキを買って店をあとにした。

外に出ると空は赤くなって夕日が沈んでおり、やや暗くなっていた。

 

「うーん…ここから歩いていくと確実に遅くなるな。仕方ない、スキマを使うか」

 

周囲に人がいないことを確認してスキマを開く。俺の目の前の空間が裂け、端がリボンで結ばれ目が幾つも蠢く空間が見える。

幻想の境界(ネクロファンタジア)】。俺の持っているレアスキルの1つで、能力は東方Projectに出てくる八雲紫の『境界を操る程度の能力』と同じ力を使えるレアスキルだ。

スキマを通って家に到着する。そしてすぐさまスキマを閉める。あんなの誰かに見られたら説明のしようがないからな。

 

「ただいまー」

 

「おかえりなさいロクト。先にお風呂入りますか?ご飯にしますか?」

 

扉を開けるとユーリが出迎えてくれた。時刻は丁度5時半を過ぎたあたり、夕食にするには少し早い時間だ。

「どっちもいいかな。あ、それとコレ。お土産のケーキだ」

 

「わぁ!翠屋のケーキですね!すぐ冷蔵庫開けてきます!」

 

翠屋のケーキを見せた瞬間、ユーリは目を輝かさせケーキを持ってキッチンへと向かっていった。

 

「相変わらずだな…アラジン、人型になっていいぞ?」

 

『はーい』

 

俺がネックレス型のデバイス、アラジンを外すとデバイスは赤い光に包まれてやがて収まっていく。するとそこにはマギに登場するアラジンがいた。

 

「ねぇねぇ碌斗くん。僕の分のケーキは?5つしか買ってなかったけど…」

 

「何言ってんだよアラジン。俺は翠屋で食べてきただろ?あのケーキはお前、シュテル、レヴィ、ディアーチェ、ユーリの分だよ」

 

「えっ、でもいいの?」

 

「いいに決まってるだろ。ほら飯作るから待ってろ」

 

「……はーい!」

 

アラジンはリビングでユーリと一緒にゲームをしにいき、俺はそのままキッチンへ行くとレヴィが冷蔵庫からシュークリームを出しているのが見えた。

 

「おいレヴィ、何をしている?」

 

「ふぇっ!?ロク!!」

 

「お前それ…これから夕飯作るから食うのは明日にしとけ。折角ケーキも買ってきたんだから」

 

「でも僕は今食べたいんだよ!」

 

「そうかなら今日のカレーはレヴィだか無しな」

 

「ええぇぇー!!??分かった!分かったよ!明日にするからカレーは!カレーだけは!!」

 

必死に俺の首をガックンガックン揺らしながらそう言うレヴィ。

 

「わ、わかったから離せ!」

 

うえ…揺らされすぎて気持ち悪くなった…。

レヴィはカレーが食べれることになった安心したのか鼻歌を歌いながらリビングへゲームをしに行った。

 

「全く…さてそろそろやるか」

 

冷蔵庫から野菜を取り出し包丁とまな板を用意する。野菜を軽く水で洗って皮を剥いているとディアーチェがキッチンに入ったきた。

 

「ロクト、何か手伝う事はあるか?」

 

「ディアーチェか。そうだな…鍋の用意をしておいてくれ。俺は野菜を切り終えたら肉を焼くから」

 

「分かった。なら煮込むのは我がやろう」

 

「ああ、頼む」

 

ディアーチェと作業を分担しながらカレーを作ること30分。後はルーを入れてかき混ぜるだけ完成だ。

…そう言えば料理中何度かディアーチェが挙動不審になっていたな、顔も赤くなってたし風邪か?後で聞いてみるか。

 

「っと、そろそろいいかな?ディアーチェ、皆を呼んできてくれ」

 

「うむ任せろ」

 

そう言ってディアーチェはエプロンを外してリビングへ向かっていった。それと同時にシュテルがやった来た。

 

「ロクト。手伝う事はありませんか?」

「ん、それじゃあご飯よそっておいてくれ。ルーかけるから」

 

「はい、分かりました。お皿はこれでいいですか?」

 

「あれ?カレーライス用のお椀があったはずだが…あぁ、そう言えばレヴィが前割ったんだったか」

 

アイツは1ヶ月に1回は食器を割るからなぁ…頼むからもう少し注意してくれ。

 

「じゃあ皿はそれでいいよ。ルーをかけたら持ってってくれ」

 

「分かりました。レヴィー!カレーですよー」

 

「カレー!!」

シュテルの声に反応にしてレヴィのツインテールが跳ね上がった。

…え?どうやったの今。

 

 

「それじゃあ、頂きます」

 

「「「「「頂きます!」」」」」

 

俺が頂きますと言ったあとに5人も続けて言う。

 

「あむっ…むぐむぐ…うん、普通だな」

 

「そう?僕はとっても美味しいと思うけど?」

 

「ええ、ロクトの料理はいつも美味しいですよ」

 

「おかわり!」

 

「早すぎるぞ!?もっと味わって食べんか!」

 

「こらレヴィ、まだカレーはあるんですからそんな慌てて食べないで下さい」

 

「でもロクトのカレーが美味しいのがいけないんだよ!スプーンが止まらなくなるもん!」

 

「はいはいありがとな。ほれ」

 

レヴィの皿に先程より多くご飯とカレーを盛る。というかさっきのも皆より多めに盛ったんだけどなぁ…。

 

結局レヴィはあれから更におかわりをしてカレーを3杯食べた。

作った方としては嬉しいけどな。

で、今はデザートとしてテーブルの真ん中にケーキが入った箱を乗せている。

 

「ショートケーキとチーズケーキが2つずつ、モンブランが1つだ。好きなのとれ」

 

「僕ショートケーキ!!」

 

「じゃあ私はチーズケーキを」

 

「我もチーズケーキだな」

 

「私はショートケーキがいいですね」

 

「じゃあ僕はモンブラン♪」

 

順にレヴィ、シュテル、ディアーチェ、ユーリ、アラジンの順だ。

皆が食べ始めようとする時シュテルが首を傾げた。

 

「あれ?ロクトは食べないんですか」

 

「俺は翠屋によって食べてきたから良いよ」

 

「じゃあ碌斗くん、僕のモンブラン1口上げるよ!はい、あーん!」

 

「「「「!?」」」」

 

そう言ってアラジンはモンブランが乗ったスプーンを俺の口に持ってくる。

 

「別に気にしなくていいんだぞ?」

 

「やっぱり皆で食べた方が美味しいじゃないか!」

 

「…それじゃあ有難く…あむっ」

 

「「「「!!??」」」」」

 

うん、やっぱり翠屋のケーキはどれも最高だな。俺はチョコレートケーキが1番好きだけど普段あまり食べないモンブランも美味い。栗の程よい甘みが口の中に広がっていく。

 

「…うん、美味い。ありがとなアラジン」

 

「どういたしまして♪折角だから他のケーキも1口貰ったら?」

 

「いやそれは流石に悪「「「「いいえ全然!!寧ろ是非!!さぁ!!!」」」」い…え?」

 

4人は目をギラつかせながら俺にスプーンを向けてくる。

……怖いよ。

 

ケーキはとても美味しかったです。流石翠屋。4人が食べさせたがるのも頷ける。




主人公のプロフィールです。

名前・小鳥遊 碌斗(たかなし ろくと)
イメージボイス(中学生卒業まで)小林ゆう。

性別・男

年齢・10歳

魔力ランク・(F)(B+)(S+)SS+(普段はリミッターをつけている。その上にさらに強力なリミッターを付けている)

魔力光・赤っぽい黒

容姿
・やや癖毛な黒髪。前髪をヘアピンで留めている。目の色は黒。イケメンかどうか聞いた場合、10人中7人が普通と答え2人がイケメン、特殊な1人が男の娘と答えるような顔。ややイケメンよりのフツメン。
イメージはSTEINS;GATEの漆原るかを男っぽくした感じ。

レアスキル等の説明は本編で説明していきます。多分。

感想、評価お待ちしております。
誤字脱字の報告があればよろしくお願いします。


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買い物終わりのクレープって美味いよね

お気に入りが10件行ってました!皆さん!ありがとうございます!


sideディアーチェ

 

我は小鳥遊ディアーチェ。かつて闇統べる王と呼ばれたマテリアルだ。

今我は近所のスーパーに買い物をしに来ている。

…ろ、ロクトと一緒に/////。

 

「ディアーチェ、このジャガイモのこのジャガイモどっちがいいと思う?」

 

「ふむ、我はこっちの方がいいと思うぞ」

 

「そうか、じゃあこっちにするか。後は何を買うんだ?」

 

「今日は肉じゃがを作ろうと思っているのでな。後は牛肉と糸こんにゃくを買って終わりだ」

 

「牛肉か…そう言えば牛肉は今日確か4割引きだった筈だぞ?」

 

何だと!?こうしてはおれん!

 

「ロクト!早くゆくぞ!」

 

「待て待て走るな!カートがぶつかるだろ!」

 

「む、スマン」

 

少し急ぎすぎたようだ…折角ロクトと一緒にふ、ふ、2人で買い物に来ているのだ…もう少しゆっくり時間をかけて歩いても罰はあたらんだろう…。つ、ついでに手を繋いで歩くくらいしてもいいだろう…。

そう思い我はロクトの手を握る。

 

「?急にどうした?」

 

「そ、そのだな、また我が1人で行かないように…て、手を繋いでて欲しいのだ/////」

 

「え、でも別に手を繋がなくても「い・い・な?」…はい」

 

ふふふふ…二人きりで手を繋いで並んで歩くなどこれは最早、でででデートでは/////!?

 

「ん?ディアーチェちょっと握る力が強くなって、万力に締められるように痛い!?」

 

おっと、嬉しさの余りつい力を強めてしまったようだ。

 

「す、すまない。ロクトと一緒に手を繋げるのが嬉しくて、つい、な?/////」

 

「つい、で骨を砕かれちゃ堪らねぇよ…」

 

むう…そんな強く力を込めれるわけ無かろう?

 

「まあさっさと買いに行くぞ。売り切れたら困るしな」

 

「べ、別にゆっくり歩いてもよかろう?/////」

 

「いやさっきお前早く行こうって言ってたよな?」

 

「い、いいからゆっくり歩くのだ!今はそういう気分なのだ!/////」

 

本当にコイツは我の気持ちに気付いてないのか?偶にわざとなのではないかと思うほど鈍感だぞ…。

 

「はぁー、まぁいいけどさ」

 

こうして我はロクトと一緒に買い物デートをする事が出来た。一歩前進だな。/////

 

 

「じゃあ帰るか」

 

「えっ、もう帰るのか?(もっとロクトと一緒にいたかったのに…)」

 

「当たり前だろ?買う物ももうないし」

 

「むぅぅ…確かにそうだが…」

 

何故コイツは我の気持ちに気付かんのだ!

我が不満げにしている顔が見えたのかロクトは怪訝そうな顔をしたあと我の手を急に握って歩きだした。

 

「な、きゅ、急に何をする!?(ロクトから手を握って来ただと!?)/////」

 

「まあちょっと待てって…おじさんチョコバナナクレープ1つ下さい」

 

「あいよ!560円だよ!」

 

「はい丁度」

 

「毎度あり!少し待ってな!」

 

クレープ屋…まさかロクト…自分の空腹をこんな所で満たすつもりなのか?しかも我の好きな味を1つだけとは……。

我がロクトを睨んでいる間にクレープ屋の店主はクレープを作り終わり、ロクトにクレープを渡していた。

 

「また来てくれよ!」

 

「うん、ここのクレープは美味しいからね、さぁ帰るぞディアーチェ」

 

「……ふん!」

 

「お、おい、ディアーチェ?」

 

我はロクトの事を放って早足でクレープ屋を離れる。だが、やはり荷物が多かったからか直ぐに追いつかれてしまった。

 

「全く…急にどうした。ほら、荷物かせ」

 

「……ん」

 

……こういうさり気無く優しい所がロクトのいい所なのだ。

 

「あとほい」

 

「む?何だ?」

 

「クレープだよ。ディアーチェこの味好きだったろ?」

 

じ、自分の分ではなく我の分だったのか…うぅ、早とちりしていた自分が恥ずかしい…。

 

「どうした?食べないのか?」

 

「食べる!」

 

「じゃあ、ほら」

 

「っ!!??//////////」

 

ロクトから差し出されるクレープ。こ、こ、これは恋人同士がやる「あ〜ん」と言うやつだな!?/////

我は差し出されたクレープにかぶりつく。

 

「いや持って食えよ」

 

「ふぁにっ!?」

 

ま、また間違えてしまった……。だがそれならそれで教えてくれてもいいではないか。

 

「そんな目で見られてもな…」

 

「むぅー…」

「取り敢えず渡すから口離せ」

 

…このまま離せばロクトは我に普通に食べさせるのだろう。

だから我はそのままこの状態のまま食べ続けることにした。

 

「はむっ!」

 

「こらディアーチェ…全く…」

 

「あっ…」

 

ロクトは少し強引に我の口からクレープを引き抜いた。

 

「全く…飯前だしこれくらいにしとけ」

 

「もぐもぐ…んぐ…だがあと半分程残っているぞ?というかクレープを買ったのはロクトではないか」

 

「いやだって何かディアーチェ急に不機嫌になったから腹が減ったのかと思ってな。夕飯までの繋ぎとしてクレープを半分食べれば落ち着くかなーって」

 

「レヴィじゃあるまいし多少腹が空いたくらいで不機嫌になるか!」

 

「じゃあなんで急にあんな不満そうな顔になったんだよ」

 

「そ、それは…」

 

お前の事を考えてたから…等と言えるか!

 

「そ、それよりその半分残ったクレープはどうするのだ?」

 

少し強引だが話を逸らす事にした。

 

「ん?それは、あむっ」

 

「!?」

 

「むぐむぐ…俺が食べる。1つならともかく半分なら夕飯が入らなくなる、ってことは無いからな」

 

そう言いながらクレープを食べているロクト。しかしロクトが食べているクレープは先程まで我が食べていたものなのでこれは……。

 

「(か、かかか間接キス!?//////////)」

 

「ごくんっ、ふぅ。やっぱりあそこのクレープは美味いな。あれ?どうしたディアーチェ?顔真っ赤だぞ?」

 

「う、うるさい!何でもないわ!さっさと帰るぞ!」

 

「お、おい。急に走るなよー」

 

こういう事を天然でやるから…!/////

 

「…少しは自分に対する好意というものに気付け」

 

「はぁ、やっと追いついた…

、何か言ったか?ディアーチェ?」

 

「何も言っておらぬわ……ん…」

 

ロクトの左手をそっと握って手を繋ぐ。するとロクトは首を傾げて不思議に思いつつも握り返してくれた。

 

「どうした?」

 

「別に、ただ手を繋ぎたくなっただけだ…/////」

 

「?変なディアーチェだな」

 

そうして手を繋いで2人で帰った。

 

 

この後、シュテル達に手を繋いで帰ったことがバレて2人揃ってシュテル達のO☆HA☆NA☆SIを受けるのであった。

 

 

 

side碌斗

 

解せぬ。

 

『(相変わらず碌斗くんは鈍感だなぁ)』




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サッカーやろうぜ!それは超次元ですか?

side碌斗

 

「ロクー、プライレやろー」

 

土曜日、今日は一日中ゴロゴロしてるかと思っているとゲームを片手にレヴィが部屋に入ってきた。

 

「別にいいけど…お前宿題やったの?」

 

「…… さぁやろう!」

 

やってねぇのかよ…。

プライレ、プラズマイレブンと言いサッカーをテーマに収集・育成要素を盛り込んだ、異色のロールプレイングゲームなのだ。プレイヤーは弱小サッカー部のキャプテンとなり、部員の勧誘や練習試合を繰り返しながらストーリーを進行させてフットボールフロンティア全国大会での優勝を目指す。ゲーム中に登場する部員候補は1000人以上に及び、普通に話しかけるだけで入部してくれる者から、マネージャーによるスカウト、部員の人脈、他チームからの引き抜きまで、入部条件も様々でやりがいがある。これらのキャラクターを編成することで自分だけのオリジナルチームを作ることができ、更に友達と対戦やトレードを行うことも出来る、超次元サッカーRPGだ。(Wikipediaから引用)

因みに俺らがやってるのは『プラズマイレブン3世界に挑戦ボム/サンダー』という続編で俺はボム、レヴィはサンダーをプレイしている。

 

「へっへ〜、僕のチームは最強だからね!」

 

「ほーう、俺に負け越しているくせしてよく言うな」

 

「今日は勝つもん!」

 

俺のチームはストーリーで出てきた敵チームのエースやキャプテンなどを集めたライバルチーム。

対してレヴィはゲームを始めてから1度もメンバーを変えていないストーリーチーム。

因みに戦績は46勝38敗12引き分けと俺が勝ち越している。

 

「むぅー!今日こそ目にものを見せてやるんだから!」

 

「そりゃ楽しみだ」

 

そして俺達は携帯ゲーム機からペンを取り出して試合を始めた。

 

 

「うぅ〜…」

 

「レヴィ…何であんな変なメンバーにしたんだ…?」

 

結果は俺の圧勝。何故かレヴィはメンバーを総入れ替えしており、ガチャで手に入る弱い選手ばかり入れていたのだ。

 

「だって、意表を突けるかと思って……」

 

「確かに驚きはしたが……」

 

弱すぎだろって意味で。

 

「むぅーー……あっ!そうだ!ロクト!」

 

「なんだ?」

 

急に立ち上がってツインテールをぴょこぴょこ揺らすレヴィ。

いや、だからどうやってんのそれ?猫の尻尾見たいな感じで動かせんの?

少しびびっている俺を気にすることもなくレヴィは笑顔でこう言った。

 

「サッカーやろうよ!」

 

 

「いっけー!ファイアートルネード!」

 

「何でだァー!?」

 

炎を纏ったボールがゴールに突き刺さる。ネットが焦げ付く匂いが辺りに充満する。

 

「おい燃えてんじゃねぇか!?水!水!」

 

「わわわわ!ど、どうしよう!?」

 

サッカーゴールから黒い煙が上がり慌てるレヴィ。

 

「サッカーボールが燃えちゃうよ!」

 

「そっちの心配かよ!?」

 

何とか火を消して落ち着いた俺達は近くのベンチに腰を下ろしてた。

何故こうなったかと言うと、レヴィがサッカーをやりたいと言った事がきっかけだった。近くの公園でサッカーをしているとレヴィがプライレの技をやりたい等と言い出し、やれるもんならやってみろと俺が煽ったら本当にやりやがった。

 

「全く…いや煽った俺も悪かったけどさ…」

 

「そうだよ。そもそもロクが僕に負けていればこんな事にならなかったぎゃん!?」

 

少しレヴィが調子に乗ったのでゲンコツをレヴィのつむじ目掛けて振りおりした。

 

「うぅ〜、いったぁーい!何すんのさロク!」

 

「お前が少し調子に乗ったからそれを制しただけだ。それでこれからどうする?」

 

時刻は午後3時。帰るには少し早い時間帯だ。

 

「うーん、じゃあ1対1のミニゲームでもやろうよ!ルールは先に1点決めた方が勝ち!」

 

「いいぜ、やるか」

 

「ふっふーん!ゲームじゃ負けたけど現実じゃ勝つからね!」

 

「ほーう言ったな」

 

腕を組み自信満々に言い張るレヴィ。

そして俺ボールからミニゲームが始まった。

 

「行くぜレヴィ!」

 

先ずは軽く様子見でボディフェイントを仕掛けてみる。だがレヴィはそれに惑わされることなくボールを奪いに来る。

 

「そんなのに引っかからないよっ!」

 

「そうかい!」

 

ボールを奪おうとして来るレヴィを俺はサイドステップで躱してゴールへ向かう。

 

「貰った!」

 

そのままシュートを打とうと右足を振り上げる。

 

「させないよ!キラースライド!」

 

「はっ?うおっ!?」

 

突然後ろからスライディングをされてバランスを崩してしまう。一応足には当たっていないのでファウルにはならない。

というか…。

 

「おいレヴィ、それってプライレの技じゃねぇか」

 

「へっへーん!僕くらいになると出来るようになるのさ!勝負はもらったよ!」

 

「あっ待て!」

 

そのまま猛スピードで俺のゴールまでドリブルして上がっていくレヴィを追いかける。するとレヴィは何故かセンターラインを超えた辺りで急に止まった。

すると体を捻り始めて飛び上がった。

 

「ってまさか!?」

 

「ファイアー…トルネード!!」

 

炎を纏ったボールがゴールへと向かっていく。俺はレヴィが飛び上がっている間にペナルティエリアに着いている。

 

「くっ…これなら、どうだ!流星ブレード!!」

 

俺は一回転してボールを蹴り込み、流星を纏ったボールがゴールへ向かっていき、そのまま突き刺さる。

 

「ええぇぇーー!!??ロクも必殺技使えたのー!?」

 

「いや、俺が1番驚いてんだけど…」

 

イメージしたら出来んたんだけど…大丈夫かこの世界のサッカープレイヤー?

 

「って、そろそろいい時間だし帰るか」

 

空を見上げるともう真っ赤に染まっており夕日が沈みかけていた。

 

「えぇーー!!勝ち逃げなんてズルいよー!」

 

「あのなぁ…もう6時近いんだぞ?いくらここが近所だからって俺達子供が遅くまで外にいちゃダメなんだよ」

 

「うぅ〜…でも〜……」

 

「全く…別にサッカーなんて何時でも出来るだろ?またやればいいじゃんか」

 

先程まで小さくなっていたレヴィのサイドテールがぴょこんと跳ね上がり反応した。

…もう何も言うまい。

 

「また僕と一緒に遊んでくれるの!?」

 

「当たり前だろ?俺ら家族じゃんか。ほら帰るぞ」

 

一応時間も遅いのでレヴィがどこかに行かないように手を差し出す。

 

「…うん!!」

 

俺の手をしっかりと握り2人で並んで帰る。夕日に照らされた俺たちの影は交差するように映っていた。

 

 

『ところで2人とも、サッカーボールは?』

 

「「あっ」」

 

急いで取りに戻った。



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クッキーとラッキーの一撃

sideユーリ

 

私の名前は小鳥遊ユーリ。かつて砕けえぬ闇と言われたマテリアル…でした。今はロクトのおかげで人として暮らしています。

そのロクトが今キッチンで何かをしています。

 

「ロクト、何を作ってるんですか?」

 

今日はシュテルとディアーチェは買い物、レヴィは近所のサッカーチームの所へいきサッカーをしているので家には私とロクトの二人きりなのです。/////

 

「ん?ああユーリか。いや久しぶりにお菓子でも作ろうかと思ってな」

 

「お菓子…またあのカップケーキを作ってるのですか!?」

 

ロクトが作ったカップケーキ…あぁ、思い出しただけで涎が出てきそうです。

 

「いや今日は普通にクッキーとか作ろうと思ってな」

 

「クッキーですか……」

 

「何なら一緒に作るか?」

 

「…え?」

 

 

「手、洗ったか?」

 

「はい。洗いましたよ」

 

「よし、じゃあ始めるか」

 

「は、はい」

 

「んな緊張しなくてもいいぜ?これから作るのは本当に簡単なクッキーだから」

 

そう言いながらボールや材料を用意するロクト。

 

「えと…どんなクッキーを作るのですか?」

 

「ホットケーキミックスで作るプレーンクッキーだ。まず俺が作ってみせるからそれを真似して作ってみな」

 

「はい!」

 

そう言うとロクトはオーブンを温め始めました。170度に余熱するそうです。

その次にボールにホットケーキミックスとサラダ油と牛乳を入れて手で混ぜます。

ある程度混ぜたら生地を小さく丸めて鉄板の上に置きました。その丸めた生地をロクトは手のひらで押しつぶして平たくします。

そして砂糖を振りかけて指で馴染ませるように撫でました。

 

「ま、こんなもんだな。後は15分くらい焼けば完成だ」

 

「ほ、本当に簡単なんですね」

 

「だから言っただろ?本当に簡単だって。それじゃあ焼いてる間に作っちまうか」

 

「はい!」

 

私は先程のロクトの様にクッキーの生地を作り始めます。

上手く作るんです!

 

 

 

「うーん…まぁ元気出せよ。初めてなんだから仕方ないって」

 

「ううぅ…」

 

ロクトが慰めの言葉をかけてくれます。あのあとロクトが焼いたクッキーを取り出して私もクッキーを焼きました。焼いたんですが…何故かまっ黒焦げになっていました……。ロクトのは綺麗な色をしているのに、何で私のは…。更にもう1回作ったんですがそれもまっ黒焦げになっていました……何ででしょう?

 

こんなもの食べれませんよね…捨てますか……。

 

私が作ったクッキーが置いてある皿を持ってゴミ箱へ捨てに行こうとするとロクトに止められました。

 

「何ですか?」

 

「それ捨てる気か?」

 

「…だってこんなの誰も食べれませんし……」

 

「俺が食うよ」

 

「え?」

 

ロクトはそう言うと私の手から皿を奪ってまっ黒焦げのクッキーを食べ始めました。

 

「ろ、ロクト!?何で食べてるんですか!」

 

「何でって…勿体ないだろ?それに案外美味しいぞ。ほれ」

 

「!?」

 

そう言って私の口元にクッキーを突き出してくるロクト。まるでロクトが私にはあ〜んをして食べさせてくれてる見たいじゃないですか!/////

…そう言えばディアーチェはロクトに間接キスのクレープを食べられたんでしたっけ。

なら私は………。

 

「あむっ」

 

「ゆ、ユーリ!?」

 

私はロクトの指ごとクッキーにかぶりつきました。

 

「んちゅ…んむ…ぷはっ……確かに、意外と美味しいですね/////」

 

「あ、あぁ、そうだろ?/////」

 

お互い顔が真っ赤になります。うぅ…恥ずかしい…/////

で、でも!これで私もディアーチェに追いつけた筈です!というかロクトの指を舐めたのですから追い越したのでは!?

チラリと皿を見るとまだまだクッキーは残っている。

 

「…ロクト」

 

「な、何だユーリ?」

 

「まだクッキーは余ってますよね?」

 

「え?あ、あぁ…そうだな?」

 

「……食べさせてくれますか?/////」

 

「え、いやそれは「くれますよね?」…はい、ヨロコンデ」

 

それから私は30分近くかけてロクトからクッキーを食べさせてもらいました。

役得です…//////////



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勉強しましょう。なんの?

sideシュテル

 

どうも、小鳥遊家ではしっかり者の長女的な立ち位置にいる小鳥遊シュテルです。

私は最近怒っています。何故かと言うとロクトが私に構ってくれないからです。ディアーチェとは買い物デート(※碌斗は普通に買い物だと思ってます)をしたり、レヴィとはサッカーデート(※碌斗は普通にサッカーをry)をしたり、ユーリとはイチャイチャお料理をしたり(※碌斗はイチャついてるつもりはry)…なのに私はずっと1人(※碌斗と一緒に暮らしています)…少しぐらい構ってくれてもいいのに…。

なので私は実力行使に出ました。

 

「…という訳です。理解出来ましたか?ロクト」

 

「いや全く、全然理解出来てませんから」

 

私の目の前にはロープで縛られたロクトが座っています。

…なんと言うか、こう、縛られているロクトを見ると昂ってくるものがありますね。

 

「(な、何だ?寒気がしたぞ?)」ゾクッ!

 

「要するにロクトはあの3人ばかり構いすぎなのです」

 

「いやそんな事ないだろ。というかシュテルと一緒にいる時間の方が長いと思うぞ?」

 

「?何でですか?」

 

「ことある事にお前が俺にO☆HA☆NA☆SIをしてくるからだよ。何で気付いたら1時間もたってんだよ。怖ーよ、一体その1時間の間に俺は何をされてんだよ…」

 

「それはもう…色々と……………いえ、なんでもありません」

 

「え、まってごめん、怖いんだけど。何、その間?」

 

「ではロクト、折角家に二人きりなのですから勉強でもしますか」

 

「ねぇまって俺の話聞いて?何さっきの間?」

 

「あ、勉強道具持ってきますね」

 

「だから俺の話聞いてって。あの間は何?」

 

ロクトと二人きりの勉強…ふふふ…どさくさに紛れて、ロクトとあんな事やこんな事を……/////

 

 

それから何分かして私とロクトは勉強を始めました。あ、勿論ロクトの縄は解きましたよ?

私は国語の成績が少し他の教科より悪いのでロクトから国語を重点的に教えて貰っています。

 

「そこ、少し違うぞ?」

 

「え?何でですか?」

 

「これじゃあシュテルの考えになってるだろ?そうじゃなくてこの問題は文に込められた作者の気持ちを書くんだよ」

 

「成程…分かりました」

 

「その問題解き終わったら少し休憩にしよう」

 

「はい」

 

 

「…ロクト、終わりました」

 

「はいよ、おつかれ」

 

私が解き終わった問題を見せるとロクトはいつの間にか用意していたジュースを私に差出してクッキーをテーブルの上に置きました。

 

「あ、ありがとうございます。このクッキーはロクトが?」

 

「ああ、この前作ったやつをとっといたんだ」

 

クッキーは小さな正方形の形をしておりココア味の黒いクッキーとプレーンの白いクッキーが半々ずつ皿に乗っています。

ココアクッキーを手に取り齧るとサクサクとした食感とココアの優しい甘みが口の中に広がってきます。やはりロクトが作るお菓子は美味しいです…私ではここまでの味を出せません。

 

「美味いか?」

 

「ええ、とっても美味しいですよ」

 

「そりゃあ良かった。所で休憩終わったらまた勉強再開するのか?」

 

「そうですね……」

 

チラリと時計とを見ると短針は3を指しており、長針は5と6の間を指していました。

どこかに出かけるには少し微妙な時間ですね…。

 

「では…こうゆうのはどうでしょう?」

 

side碌斗

 

「んっ…あっ…そこ……んん…!」

 

「変な声だすな」

 

「いや折角なので臨場感を出してみようかと」

 

「出さなくてよろしい…ったく、ほれ反対側だせ」

 

「はーい」

 

やらしい事してるとでも思ったか?残念!耳かきでした!

大体小学生相手に欲情する程変態ではないつもりだ。精々微笑ましいと思うくらいだな。

 

「(うーん…やはりロクトの耳かきは気持ちいいですね…このまま眠ってしまいたく、なる…よう、な……)」

 

「ほい終了って…寝てるのか…」

 

シュテルは俺の膝の上ですぅすぅと可愛らしい寝息を立てていた。

 

「ホント…高町なのはそっくりだな、シュテルは…」

 

まぁクローンみたいなもんだから当たり前なんだけどな。

でも性格は違うんだよな…O☆HA☆NA☆SIをするのは変わらないけど。

 

「んん……すぅ…すぅ…ロクト……」

 

「……?」

 

シュテルの頭を撫でているとシュテルがなにか寝言を言い始めた。

 

 

 

 

 

 

「…早く裸で溶岩の中を泳いでください………」

 

「夢の中で何させられてんの俺!?」



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帰ってきた両親。いやそりゃ帰るよ

side碌斗

 

それは一通の電話から始まった。

 

「ええぇぇぇーーー!!??今日帰ってくるぅー!?」

 

『ああ、私も母さんも仕事が一段落着いたのでな。少しの間だが自由に動ける時間が出来たのだ』

 

『だから久しぶりに日本に帰ろうかと思ってね。ほら、成長した碌斗ちゃんも見たいですし♪』

 

「いや、まあ…会えるのは嬉しいんだけど…もうちょっと早く教えてくれても良くないかな?」

 

『仕方がないだろう、私達も先程聞かされたばかりだったんだ』

 

『じゃあそういう訳なので、あっ!そっちには夕方頃着くのでって、シュテルちゃん達にも言っといて欲しいです♪じゃっ!』

 

「あー、って切れた!?こっちの返事も聞かずに!?」

 

相変わらず破天荒な母さんだ……。

因みに母さんと父さんはシュテル達のことを知っている。次いでに言うと俺の魔法の事も知っている。

魔法はちょっと練習している所を父さんに見つかって説明することになった。まあ流石に前世とか転生のことは話してないけど、取り敢えず何かいつの間にか使えるようになったって言っておいた。

シュテル達のことはアイツらを助けた時に2人に連絡して一緒に住んでもいいか確認をとった。結果はあっさり了承され、許可をもらった。

4人の写真を(ちゃんと頼んで撮らせてもらった)送ったら母さんが速攻で許可したらしい。何でも母さん曰く…

 

『あんな可愛い子達が家族になるんだったら全然OKです!!可愛いは正義!!これすなわち世界の心理なり、です!!』

 

とのこと。まぁ父さんには間違いを起こさないようにと釘を刺されたがね。いや流石に起こさないよ?小学生に何言ってんのやら…。

俺が固定電話の受話器を置いてため息をついているとシュテルが不思議そうに首を傾げていた。

 

「誰からの電話だったのですか?」

 

「ああ…その、皆が集まってから話そうと思う……」

 

「はぁ?では取り敢えず3人を呼んで来ますね?」

 

「ああ、頼む」

 

そうしてリビングに俺、シュテル、レヴィ、ディアーチェ、ユーリ、アラジンが集まる。皆、椅子に座っている状態だ。

 

「…で、何で我等は呼び出されたのだ?」

 

「どこかに遊びに行くのー?」

 

「レヴィ…これから学校ですよ?」

 

ディアーチェ、レヴィ、ユーリの順に話す。

 

「それで、一体どうしたんですか?先程の電話が関係しているのは分かりますが…」

 

「電話?」

 

「はい、ロクトが出たのですが何やら揉めてる様子でしたので…」

 

レヴィの疑問に答えるシュテル。

 

「その、だな。今日の夕方頃に俺の両親が家に帰ってくるんだ」

 

ピシッ!と空間が固まったような気がした。

 

「えーと…皆さん?」

 

「………ロクト」

 

「な、何だ?シュテル?」

 

「…菓子折を厳選して来るので今日は学校を休みます!!」

 

「僕ご馳走を作るための材料買ってくるから学校休む!!」

 

「我は豪華な料理を作るから学校を休むぞ!!」

 

「私は家中掃除してピカピカにするので学校を休みます!!」

 

「いやしなくていいし買わなくていいから!親が帰ってくるだけで学校休もうとすんな!」

 

「あはははは〜」

 

笑ってないで止めろアラジン!

この4人を宥めるのに30分弱かかって遅刻しそうになった。

アラジンェ……。

 

 

そして放課後、いつも通り帰宅。

え?学校の描写がない?だっていつも通り何も無かったんだからいいじゃないか。

 

「緊張します……」

 

さっきからこのセリフを何度も繰り返しているシュテル。

 

「あー、ロクのお父さんとお母さんってどんな人達なんだろー」

 

ツインテールを揺らしながらリビングを行ったり来たりしているレヴィ。

 

「………………」

 

椅子に座って平静を装っているがソワソワしっぱなしのディアーチェ。

 

「すぅ…はぁー…すぅ…はぁー」

 

かれこれ10分近く目を瞑ってずっと深呼吸をしているユーリ。

 

「〜〜〜♪」

 

鼻歌を歌いながらカルピスを飲んでいるアラジン。

…お前は呑気だなぁ。

 

「コレで終わりっと…」

 

そして8人分の晩御飯を作り終えた俺。

 

そして俺がテーブルに料理を運ぼうとするとインターホンがなった。

 

ピンポーン

 

「「「「!!!!」」」」

 

その音に一斉に反応する4人。

 

「お、やっと来たか?はーい」

 

玄関に向かって鍵を開けて扉を開くとそこには…

 

「久しぶりだな、碌斗」

 

「碌斗ちゃん久しぶりです〜!」

 

「久しぶり…父さん、母さん」

 

俺の両親がいた。

 

 

2人をリビングに通して椅子に座らせる。テーブルを挟んで反対側に俺達も座る。

 

「えっと、じゃあまずはこっちから紹介していくよ。まずこの茶髪のショートヘアの子がシュテル」

 

「よ、よろしくお願いします」

 

「隣の水色の髪のツインテールがレヴィ」

 

「初めまして!」

 

「で、こっちの白髪の女の子がディアーチェ」

 

「よ、よろしく頼む」

 

「その隣に座っているのがユーリ」

 

「ど、どうぞよろしくお願いします」

 

「最後にこいつが…」

 

「アラジンだよ!宜しくね!」

 

俺の膝の上に乗っているアラジンが元気よく言って紹介は終わった。何だか4人から視線を感じるが気にしないでおこう。

 

「「「「((((アラジン……羨ましい…!))))」」」」

 

「じゃあ次は私たちですね。私は小鳥遊小萌!主に海外で仕事をしているのです!」

 

「私は小鳥遊秀勝。仕事は主に重要人物の護衛などをしているよ」

 

シュテル達が父さんと母さんの姿を見た時、全員口を開けてポカーンとしていたな。まぁ気持ちは分からなくもない…何故なら……、

 

俺の母さんは俺達よりも低い背丈をしており、父さんはオールバックで左眼に眼帯とまさに歴戦の戦士のような容姿をしている。

 

そして2人の見た目…これは俺か俺みたいな転生者しか分からないと思うが、母さんは「とあるシリーズ」に出てくる「月詠小萌」そっくりで、父さんは「鋼の錬金術師」に出てくる「キング・ブラッドレイ」そっくりなのだ。

初めて見た時は驚いたがまぁ何度も見れば慣れ始める。これも恐らく限りなく近いifの世界だから有り得ることなのだろう。

 

「で、碌斗ちゃん」

 

「何?母さん」

 

「誰が碌斗ちゃんの彼女なのですか?」

 

「「「「「ブッ!!!???」」」」」

 

俺とシュテル、レヴィ、ディアーチェ、ユーリは5人同時に吹いてしまった。

 

「な、ななな何言ってんだよ母さん!」

 

「あれ?違うのですか?はっ!まさか、全員が彼女というハーレムを……!」

 

「違ぇーわアホ!!」

 

「ハッハッハ!」

 

「あははは!」

 

そこの男2人!一緒に笑ってんな!

 

それからお互いに質問をし合ったり父さん達からお土産を貰ったりしているとレヴィとアラジンのお腹から「グゥー」という音が鳴った。

 

「ねぇロクー、僕お腹すいたよー」

 

「あらもうそんな時間ですか?」

 

「ああ、ちょっと待ってろ。シュテル、ディアーチェ、ユーリ、運ぶの手伝ってくれ」

 

「「「はい(ああ)」」」

 

俺が先程作っておいた料理を温めたりしてからテーブルの上に並べていく。

 

「ふわぁー、相変わらず碌斗ちゃんのお料理スキルは凄いですね」

 

「ほう…とても美味しそうだな」

 

「ね、碌斗くん。早く食べよう。僕もうお腹ペコペコだよー」

 

「そうだな…んじゃ、手を合わせて」

 

「「「「「「「いただきます」」」」」」」

 

 

「何このオムライス!すっごい美味しい!!」

 

「うわぁー!ふわとろだよぉー!」

 

「この照り焼きチキンも中々…チーズを乗せただけでこんなにも上手くなるものなのか?」

 

「いやディアーチェ、その照り焼きは味付けに少し拘ってんだ」

 

「ロクト、ロクト、そこのドレッシング取ってください」

 

「あ、ユーリちゃん。後で私にも貸してくださいー」

 

「ふむシュテルちゃん、これも美味しいぞ。食べたまえ」

 

「あ、ありがとうございます…わっ、美味しい!」

 

皆和気あいあいと飯を食べる。打ち解けるのに時間はかからなかった。

因みに今日作ったオムライスと照り焼きチキンをコイツらに食わせるのは初めてだ。好評のようでよかったよかった。

 

「そう言えばおか……小萌さんは海外で働いてると仰ってましたがどんなお仕事をなさっているのですか?」

 

「えっとですね…と、その前にシュテルちゃんに言っておくことがあります」

 

「え?私に?」

 

「あっ、レヴィちゃんとディアーチェとユーリちゃんとアラジンちゃんにもです」

母さんの言葉に皆箸を止めて母さんに注目する。

 

「……シュテル、レヴィ、ディアーチェ、ユーリ、アラジン。貴方達はもう私達の家族です。小鳥遊家の一員なのです……だから、私の事を母親と思ってくれて構わないのよ?」

 

「………え」

 

「勿論私も同じ考えだよ。シュテル、レヴィ、ディアーチェ、ユーリ、アラジン。君達は小鳥遊家の一員、家族なんだ。私達は碌斗同様、大事な息子と娘達と思っているよ…だから……」

 

「「私のことをお母さん(父)と呼んでください(くれないか)」」

 

「「「「っ!」」」」

 

「………」

 

父さんと母さんの思い…今2人が言ったことは間違いなく本心だ。シュテル達のことを自分達の本当の子供だと、家族だと思っている。2人の顔を見ればわかる。

シュテル達を見ると4人は涙目になっていた。ただアラジンだけは顔を俯かせていたので分からなかった。

と、シュテルが話し始める。

 

「わ、私、達は…家族でいいんですか?お二人の…子供になっても、いいんですか?」

 

やや震える声で、しかし潤んだ目はしっかりと2人を見つめながら、シュテルは話す。

 

「勿論です!ね、秀勝さん!」

 

「ああ、当たり前だな。というより、私達は既に家族だと思っていたぞ?」

2人がそう言うとシュテル達は一斉に涙を流し始めた。

 

「俺も前に言ったはずだぜ、たとえ血は繋がってなくてもお前らは大切な家族だって…アラジン、お前もだぞ」

 

「…!」

 

俯いていたアラジンの肩がピクッと揺れる。

 

「どうせお前のことだ。自分はデバイスだから、人ではないから、家族にはなれない、そう考えていたんだろ?」

 

「………」

 

なおも俯いているアラジンの顔を上げさせてその額にデコピンをする。

 

「ふん!」

 

「あいたっ!?」

 

「バカかお前は?お前は俺のパートナーだろ?相棒だろ?人だとかデバイスだとか関係ねぇ、お前も俺の、俺達の家族なんだ。だからそんな悲しそうな顔をすんな」

 

「………僕も、家族になっていいの?」

 

「だからバカかって言ってんだよ」

 

「あいたっ!?」

 

もう1発デコピンを食らわせた。

 

なっていい(・・・・・)じゃねぇ、もうなってる(・・・・・・)んだよ。分かったか」

 

「…うん………うん……!」

 

アラジンは手を目に当てて涙を隠そうとしていたが、隙間から涙が零れ落ちていた。

 

 

「…じゃあ、私達のことをお父さん、お母さんと呼んでみてください」

 

「呼び方は自分達の好きな言い方で呼んでくれて構わんよ」

 

5人が泣き止んで落ち着くと母さんと父さんはそう話した。

 

「で、ではまずは私から…お父様、お母様」

 

「じゃあ次は僕…お父さん、お母さん」

 

「では次は我だ……ち、父上、母上…」

 

「私ですね…こほん……父様、母様」

 

「じゃあ最後は僕だね……お父さん!お母さん!」

 

シュテル、レヴィ、ディアーチェ、ユーリ、アラジンが順々に父さんと母さんを呼んでいく。

その姿は照れながら、でも何処か喜びながら、嬉しそうに呼んでいた。

 

「はい♪私達の子供達♪」

 

「うむ、息子、娘達よ」

 

父さんと母さんも嬉しいそうに微笑みながら応えていた。

 

 

それからすっかり冷めた食事を再開させ、テーブルの上の料理を全て平らげた。今は俺とユーリで食器を洗ってシュテルとディアーチェが洗い終わった食器を片付けている。レヴィとアラジンは2人の相手をしている。

 

「所で父さんと母さんはいつまで日本(こっち)に入れるんだー?」

 

「うむ、何分急に決められた休暇でな、大体1週間ほどだ」

 

「私は秀勝さんに合わせて有給を取ってきたので私もそれくらいですね〜」

 

「じゃあお父さん達と遊べるの!?」

 

「ああ、遊べるぞ」

 

「ホント!わぁーい!何して遊ぼうかなぁー」

 

すっかり「お父さん、お母さん」呼びに慣れたレヴィとアラジンはもう一緒に遊ぶ約束をしている。やはり両親が出来たのが嬉しいのだろう。その証拠にレヴィのツインテールがブルンブルン荒ぶっている。

…うん、もう何も言うまい。

 

「よし、洗い物終了っと」

 

「流石に8人分となると大変ですね…」

 

俺とユーリは濡れた手をタオルで拭きながら話す。

 

「こっちも片付けが終わったぞ」

 

「ユーリの言った通り…8人分は大変ですね…」

 

すると食器を片付け終わったディアーチェと軽く息を整えているシュテルがいた。

 

「碌斗ちゃーん!シュテルちゃん達もこっちに来てほしいのですー!」

 

「どうしたのですか?お、お母様…///」

 

「はぁぁ〜可愛いですねぇ〜♪」

 

「母さん……それで、何なの?」

 

このままだと話が脱線してしまう予感がしたのでさっさと俺達を呼んだ本題に移らせてもらう。

 

「はっ!そうでした。碌斗ちゃんに渡すものがあるんですよ」

 

「渡すもの?」

 

「えーっと…あった!コレです!」

 

母さんは鞄からピンクのファイルを出すとその中から1枚の紙を取り出して渡してきた。

シュテル、レヴィ、ディアーチェ、ユーリも気になるのか4人とも紙に注目している。

 

「えっとなになに?私立聖祥大学附属小学校転入届(・・・・・・・・・・・・・・)……って」

 

 

 

 

「「「「「えええええぇぇぇぇぇーーー!!!!!?????」」」」」



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転校するんだ?じゃあフラグがたつね!

sideなのは

 

私の名前は高町なのは。普通の小学五年生です。

 

「おはようアリサちゃん!すずかちゃん!」

 

「おはよう二人共ー」

 

「おはよーなのは、咲」

 

「おはようはのはちゃん、咲ちゃん」

 

「フェイトちゃんとアリシアちゃんとはやてちゃんはまだ来てないんだね?」

 

「珍しいわね、フェイトが遅いなんて」

 

「多分もう少ししたら来るんじゃないかな?」

 

「そうよ、はやてとアリシアはともかくフェイトが寝坊する事なんてないでしょうからね」

 

「ちょっとアリサちゃ〜ん?それどういう意味やー!」

 

「私とはやてはともかくってそれどういう意味なのかなー?」

 

「はやて!?アリシア!?いつの間に!」

 

「今の間やー!」

 

「にゃー!」

 

「あはは…おはようなのは、すずか、咲」

 

「おはようフェイトちゃん」

 

「おはようフェイト」

 

「うん、おはようフェイトちゃん。アリサちゃん、はやてちゃんそれくらいにして早く学校行こう?」

 

「姉さんも、ほら」

 

「ん?そうやな、ほな行こか」

 

「そうだね」

 

「ちょっとはやて!アリシア!良くもやってくれたわね!?」

 

「あーアリサちゃん抑えて!抑えて!」

 

「あはは……なんかさっきから私苦笑いしてばかりのような…?」

 

咲ちゃんとアリサちゃんやすずかちゃん、フェイトちゃんにアリシアちゃんとはやてちゃんと一緒に登校する。その際にこうやってふざけ合う。

これが私の日常風景です。

 

 

私達は全員同じクラスです。席も近いのでよく机を合わせて話します。

私の席は窓側の1番後ろの席で隣は空席になっています。フェイトちゃんは私の前の席でアリシアちゃんはフェイトちゃんの隣、アリサちゃんはフェイトちゃんの前の席です。アリサちゃんの2つ隣の席がはやてちゃんの席でその後ろがすずかちゃんの席です。すずかちゃんの隣の席が咲ちゃんの席です。

 

カバンを机の上に置いて私達が談笑をしているとそこに嫌な声がかけられます。

 

「よぉー俺の嫁たち!今日も可愛いなー!」

 

「げっ…」

 

「うへっ…」

 

今アリサちゃんとはやてちゃんが声に出しましたが私達も声に出さなくても顔に出ていると思います。

この男の子は「神崎王我」君。初対面で私達のことを嫁と言ったり勝手に頭を撫でて来ようとしてくる変な子です。正直、私達は彼のことを嫌っています。

だって女の子の頭を勝手に触ってくるんだよ?それに無意味に笑いかけてくるし時々私達のことをいやらしい目で見てくるの……。

 

「おいおいなんだ?照れてんのか?安心しろよ俺はお前ら一筋だからよ」

 

「何いってんのか分からないけどさっさと席に着いたら?もうチャイムなるわよ」

 

「じゃ、じゃあまた後でね皆」

 

「う、うん。いこ、フェイトちゃん」

 

「うん」

 

アリサちゃんがキツめの言葉を言って席に戻るとそれに続いてすずかちゃんがはやてちゃんと一緒に席に戻ります。それを見て私もフェイトちゃんと一緒に席に戻ります。

 

「ハハハ!相変わらずツンデレだなアリサは!」

 

「うっさい!キモイのよアンタは!」

 

神崎くんはそう言うと席に戻りました。神崎くんの席は廊下側の一番後ろなので私達の席とは離れています。でも休み時間になるとすぐこっちに来るのやめて欲しいの…。

そうこうしていると先生が教室に入ってきてそれを見て他の子達も席に着き始めます。

 

「はい、それじゃ朝の会を始めるその前に皆の新しいお友達を紹介しまーす」

 

その言葉を聞いた途端周りのみんなは騒ぎ始めます。

 

「先生!男の子ですか?女の子ですか?」

 

「男子の皆は残念、男の子ですよー」

 

その言葉を聞いて男子の皆はあからさまに落ち込みます。逆に女子の皆はキャーキャーと言って喜び始めました。

前の席のフェイトちゃんとアリシアちゃんが後ろを向いて話しかけてきました。

 

「どんな子だろうね?」

 

「私は運動が出来る子だったら嬉しいなー」

 

「アリシアちゃんは体育好きだもんね」

 

私は体育が苦手なのでちょっと羨ましいの……。

 

「ハイハイ静かにして!それじゃあ入って来てー!」

 

先生が声をかけると教室の扉がガラリと開いて男の子が入った来ました。

男の子の顔は長い髪の毛で目が隠れており素顔を見ることはできませんでした。

でも、何処か懐かしいような雰囲気がありました。

 

「(……あれ?)」

 

「はい、じゃあ名前を教えてね」

 

「はい…」

男の子は先生に言われるとチョークを持って黒板に名前を書き始めます。

 

「…小鳥遊碌斗です。よろしくお願いします」

 

これが私とロクトくんの再開(出会い)でした。

 

 

side碌斗

 

どうしてこうなった……。

 

俺は今教卓の前で質問攻めを受けている。

 

なんでこんなことになったんだっか…俺は数日前の記憶を思い出す。

 

 

「どういう事だよ母さん!転入届って!」

 

「それは私から話そう」

 

今まで朗らかに笑っていた父さんが急に顔を引き締め仕事の時の顔となる。

 

「…何かあったの?」

 

「ああ、どうやら私の事を付け狙うヤツらにお前の事がバレてしまってな。このままでは周りに被害が及ぶと思ったので取り敢えずの処置として転校させることにした」

 

「だけど何故転校なんだ?別に俺を狙いに来るんだったらこのままでもいいだろ?そんな奴らに負ける程俺は弱くないつもりだし」

 

「何を言っている、誰がお前の心配をしていると言った。私だってお前があの程度の連中に負けるとは微塵も思っとらんわ」

 

えー…信頼されてるんだけど心配されてないんだが……。

 

「あ、周りに被害ってのは…」

 

「そうだ。お前の友達にも飛び火が散るかも知れん。まあシュテル達なら大丈夫だろう。大方お前と同じような事が出来るのだろう?」

 

「まあね」

 

魔法の事はもうすっかりバレてるので言っても問題は無い。

 

「だからターゲットをお前1人に集中させる為に転校してもらいたいんだ。分かったか?」

 

「まあそれは分かったけど…いつまでそっちに入ればいいんだ?」

 

「うむ、小学校を卒業するまでいてくれればいい。それくらいの時間があればその組織も完全に叩き潰せる」

 

いい笑顔で恐ろしいこと言うな、我が父は。

と、そこで先程から黙っているシュテル達が気になってふと見てみると……。

 

「「「「……………」」」」

 

真っ白になっていた。

 

 

あの時はアイツらを元に戻すのが大変だったな……。

軽い現実逃避をしているとクラスメイトから質問が飛んでくる。

 

「小鳥遊君は彼女がいますかー?」

 

「いえ、今までいたことがありません」

 

「運動と勉強どっちが好きー?」

 

「どちらかと言えば勉強ですね」

 

「部活に入っていましたかー?」

 

「家の用事で忙しかったので入っていませんでした」

 

「なんで転校して来てきたのー?」

 

「親の仕事の都合で…」

 

俺はいつもの口調とは違い、丁寧な口調で質問に答えていた。

何故かって?そりゃあ原作キャラ達や転生者達に目をつけられたくないからさ。パッと見ただけでこのクラスには高町なのは、フェイト・テスタロッサ、アリシア・テスタロッサ、八神はやて、アリサ・バニングス、月村すずか、それに銀髪オッドアイの転生者君がいる。

…ツッコミどころが満載だな。

まずなんでアリシアは生きている?転生者が手伝ったからストーリーが変わったのか?いやこの世界は魔法少女リリカルなのはに限りなく近いifの世界…元から死んでいなかったのか?だがそれではなのは達と仲良くなる友達フラグが立たない……やはり転生者達の仕業だな。そっちの方が辻褄が合う。

と、俺が考えていると原作キャラの1人、八神はやてから質問が飛んできた。

 

「はいはーい、小鳥遊君って兄弟とかおんの?」

 

「兄弟はいませんが妹や弟のような家族はいます」

 

「へぇー…なぁなぁそれって」

 

俺がそう言うと八神はやては興味深そうな顔をして更に言葉を続けようとする。だがそれは大声によって遮られた。

 

「おいこらモブゥ!!何俺のはやてと喋ってんだ!!はやてが嫌がってんだろ!!」

 

銀髪オッドアイの転生者君によって。恐らくこんな事は日常茶飯事なのだろう。クラスメイトの皆は「またか」みたいな顔をして呆れているし原作キャラ達は露骨に嫌そうな顔をしている。当の本人であるはやてなんかため息ついてるし…あ、先生もついた。

 

「…神崎君、今は小鳥遊君への質問の時間です。貴方が怒鳴る時間ではありませんよ」

 

「あぁ!?うるせぇんだよクソババア!今俺が喋ってんだろ!はやて、心配すんな!俺が守ってやるからな!」

 

……こいつ、頭やばくね?担任の事をクソババアとか初対面の相手にモブだとか…中々ありえない根性しているぞこいつ。

先生の顳かみがピクピクしており、そろそろキレそうになってるなと思っていると1人の女子生徒が銀髪オッドアイに向かって話し始めた。

 

「神崎…あんたいい加減にしたら?はやてはアンタみたいな自意識過剰野郎の嫁なんかじゃないし、先生に対しての暴言とか何回目よアンタ。それに初対面の転校生をモブ扱いしたり…馬鹿じゃないの?小鳥遊君も呆れてるわよ?」

 

「いえ…そんな事は……」

 

「だからてめぇ誰の嫁に向かって喋ってんだ!?それにしても咲〜今日はいつに増してもツンデレだなぁー!」

 

「不愉快だから止めてくれない?というか息の根を止めてくれない?」

 

「おいおい照れんなよ!」

 

「……チッ!」

 

うわぁ…なんて言うかあそこまで行くと最早才能だな…アイツ。それにしても咲って呼ばれてたあの少女…原作ではあんなキャラいなかった……つまりアレが2人目の転生者って訳か。にしても嫌われてるなぁ…銀髪オッドアイ。

俺が心の中で呆れていると授業が終了するチャイムがなった。

 

「あら、チャイムがなっちゃったわね。それじゃあ小鳥遊君は何処か空いている席に座ってね。それと神崎君はちょっと先生に着いてきなさい。生徒指導室でお説教をします」

 

「はぁー!?ふざけんなよ!!誰が行く「フン!」カバっ!?」

 

おいおい…あの先生、銀髪オッドアイに対してラリアットをぶち込んだぞ……あ、白目剥いて気絶している。

皆が平然としているということはこれも当たり前なのか……。

先生は銀髪オッドアイを引きずって教室を出ていった。

俺が唖然としていると先程銀髪オッドアイに向かって話をしていた咲と呼ばれる少女が近づいてきた。

 

「小鳥遊君、ゴメンなさいね。アイツちょっと頭がおかしいの。だから言動もおかしいんだけどアイツの言う事は大抵無視していいからね」

 

「あはは…分かったよ、えっと……」

 

「あ、私は御林咲よ。よろしくね」

 

「うん、よろしく。御林さん」

 

「折角だから私の友達も紹介するわ。なのはー!」

 

「うん?なーに咲ちゃん」

 

あれ?コレって……。

 

「いやね、さっき小鳥遊君があの馬鹿のせいで迷惑しちゃったでしょ?そのお詫びを言うついでに自己紹介したからどうせならなのは達も紹介しとこうかと思ってね。ほら、クラスに何人か話せる人がいた方がいいでしょ?」

 

「えっと、御林さん?あまり気にしなくてもい「そうだね咲ちゃん!小鳥遊くん!私は高町なのは!なのはって呼んで!」…えっと、よろしくお願いします高町さん」

 

友達フラグを立てられそうだったが苗字で呼ぶことによって何とか回避する。

 

「むぅー…なのはって呼んでいいんだよ?」

 

「いやいや初対面の女の子を、しかもこんな可愛い子を名前で呼ぶのは僕にはハードルが高すぎますから」

 

「か、可愛い!?ななな何いってんの小鳥遊くん!」

 

可愛いと言われ慣れてないのか照れて顔が真っ赤になっている。

 

「落ち着きなさいなのは。小鳥遊くんの言う通り、初対面でそれは厳しいわよ」

 

「うぅー…でもぉ…ってあれ?初対面?」

 

高町が首を傾げる……まずい、バレたか?

 

「ねぇねぇ小鳥遊くん。私達どこかであった事無かったっけ?」

 

「え?いえ、ないと思いますが…気のせいでは?」

 

「うーん…そうかなぁ…?」

 

「そ、それより僕はどこに座ったらいいんでしょうか」

 

取り敢えず話を逸らそう。この話題はまずい。

俺の疑問に御林が答えてくれた。

 

「そうね、確かなのはの隣が空いていたしそこにしたら?」

 

「いやいやいやいや、それは高町さんが嫌がりますよー。初対面の、しかもこんな怪しい男を隣に座らせるなんて」

 

「怪しいって自覚あったのね小鳥遊君…まぁメガネかけてるのに目が隠れるほどの長さの前髪だしね…というか小鳥遊君、貴方さっきからやけに初対面(・・・)って言葉を強調するわね……」

 

ギクリ。

 

「き、気のせいですよ。高町さんも嫌ですよね?僕が隣に座るの」

 

「え?全然嫌なんかじゃないよ?私も小鳥遊くんともっとお話したかったし!」

 

「うっ!!」

 

眩しい…眩しすぎる笑顔…!

 

「それとも…小鳥遊くんは私の隣に座るの…いや?」

 

「ぐはっ!?」

 

上目遣いでの問いかけ。効果は抜群だ。

 

「ほらーなのはもこう言ってる事だし、いいんじゃないの?」

 

「…ダメ?」ウルウル

 

「……えっと、よろしくお願いします」

 

そんな感じで俺の席は高町なのはの隣となった。



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即興の昔話と取ってつけたような回想

side碌斗

 

「おはよー小鳥遊くん」

 

「おはよう佐藤さん」

 

「よっす小鳥遊!」

 

「よっす田中君」

 

俺の名前は小鳥遊碌斗。私立聖祥大学附属小学校に通う小学五年生だ。

自己紹介で見た目より明るい性格だと思われたらしく、クラスメイトと挨拶する程度には仲良くなった。

 

「ふぅ…」

 

俺は自分の席に着くと通学鞄からこの前父さんに買ってもらったある本を取り出し読み始める。

冒涜的な表紙なのでブックカバーを付けている。

 

「おはよー小鳥遊くん!」

 

「…………」ペラリ

 

ふむ…やはり不気味だな…だけど何処か惹かれる物がある……俺のSAN値はもうゼロか?

 

「えっと、小鳥遊くん?」

 

「…………」ペラリ

 

「…小鳥遊君?なのはちゃんが話しかけてるよー?」

 

「…………」ペラリ

 

うっ…やべ、開きすぎた…昨日このページをユーリに見せたら大泣きしたんだよなぁ…それに気づいたシュテル達が何事かって見に来てこれを見せたらシュテル達も泣き始めたし。

勿論その後4人からしっかりとO☆HA☆NA☆SIを受けたよ。でもアラジンは興味深そうに見てたんだよな。むしろ俺の胡座している股の上に座って「次のページ早く捲って!」って急かされながら一緒に見ていたからな。

 

「……グスン」

 

「ちょっと小鳥遊!さっきから話しかけてるでしょ!無視しないでよ!」

 

「……………うっ」ペラリ

 

「?さっきから何見てるの?小鳥遊君」

 

やっぱりシュブ=ニグラスはグロいな…というよりエグいと言った方が合ってるか?

と、俺が更にページを捲ろうとすると不意に俺の上から影に覆われたことに気がつく。

 

「ん?」

 

「「「「…………き」」」」

 

後ろを振り向いてみるとそこには本を覗き込んでいた高町なのは、アリサ・バニングス、月村すずか、御林咲がいた。全員顔を青くしており、高町なのはに至っては目に涙を浮かべている。

俺はこの後何が起こるか察して咄嗟に本を閉じて耳を塞ぐ。

 

「「「「きゃあああああああ!!!!!!?????」」」」

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「…で、なのはの挨拶を無視していた訳ではなく本に熱中していただけだと」

 

「う、うん。そうなんだよ。僕一度本に熱中すると周りの声が聞こえなくなっちゃうんだ。ごめんね高町さん、バニングスさん、月村さん、御林さん」

 

俺は4人に向かって頭を下げる。確かにさっきのは話を聞けなくなるほど本に熱中していた自分が悪いからな。

 

「た、小鳥遊くん!?いいよ!私怒ってないから!だから頭を上げて!」

 

「…いいの?」

 

「ま、まぁ悪気があった訳じゃないならいいわよ!」

 

「うんうん、私もよく本に集中しすぎてファリン達に呼ばれても応えられないときがあるもん。あ、ファリンっていうのは家で働いているメイドの事だよ」

 

「私もただ驚いただけだから気にしないで。というか小鳥遊君…貴方何の本を読んでたの?正直、朝、学校で読む本じゃないと思うんだけど…」

 

「ああ、さっきのはクトゥルフ神話の神々達っていう本で題名通りクトゥルフ神話に出てくる神の絵や説明が書いてある本なんだよ。この前父さんに買って貰ったんだ」

 

ちなみにこっちの世界にもクトゥルフ神話は存在している。まあ仮面○イダーやプリ○ュアがやってるくらいだからな。

それに『這いよれ! ニャル子さん』のアニメもやってたし。

 

「で、でも神様にしては何か凄い怖い絵だったよ」

 

すずかがシュブ=ニグラスの姿を思い出したからか震えながらそう言う。

 

「まあクトゥルフ神話って異形の神々しかいないからね」

 

「ほ、他の神様もあんな感じなの?」

 

アリサが若干震え声で聞いてくる。

 

「うん。見せて上げようか?」

 

「「「いい!いい!いい!いい!」」」

 

「小鳥遊くん…今のわざと?」

 

「?何が?」

 

「…天然ドSか」

 

取り敢えず皆に言われたので本を鞄にしまう。すると教室の扉が開かれ、はやてとアリシア、そして息を切らしながら歩いてくるフェイトが入ってきた。

 

「おはよー!みんなー!」

 

「おはようさん皆」

 

「姉さんもはやても速いよ…おはよう……」

 

「おはようフェイトちゃん、はやてちゃん、アリシアちゃん」

 

「おはよう、フェイトも朝から大変ねぇ」

 

「おはよう3人とも」

 

「全くアリシアとはやてはもう少しフェイトに合わせて歩いて来なさい」

 

「えぇー、でもフェイトが遅いのが悪いと思うんだけどー」

 

アリシア、はやて、フェイトが挨拶するとなのは、アリサ、すずか、咲も挨拶を返す。

 

「おはようテスタロッサさん、八神さん、テスタロッサさん」

 

「おはようロクト!だから私とフェイトのことは名前で呼んでよー、まぎわらしいでしょ?」

 

「姉さん…それを言うなら紛らわしいだよ。おはよう小鳥遊くん」

 

「おはようさん小鳥遊くん。私も名前で呼んでくれてかまへんのになぁー」

 

「あはは…やっぱり女の子を名前で呼ぶのは少し恥ずかしくてさ、ゴメンね」

 

「むぅー、まぁいつか呼んでもらうからね!」

 

アリシア、はやて、フェイトと挨拶を交わす。

何故アリシアだけ俺のことを名前で呼んでるかと言うとアリシアは「人の事は名前で呼ばないとなんかモヤモヤすると」と言って聞いてくれないので仕方なく諦めた。なお、銀髪オッドアイは苗字で呼ばれている模様。

 

「そう言えばなのはの目赤いけど何かあったの?」

 

「あ、えっとそれはね」

 

フェイトの問いになのはが答えようとすると、

 

「よぉー!!おはよう俺の嫁達!今日も可愛いな!」

 

銀髪オッドアイが現れた。

 

「ん?何でテメエがいんだモブ!!俺のなのは達から離れやがれ!!」

 

あぁまたか……というのも転校初日から今日まで土日を挟んで約1週間。ずっと絡まれているのだ。俺からなのは達に近寄ってるわけでも言いよってるわけでもないのに突っかかってきて先程のような事ばかり言ってくる。

そしてなのは達が反論すると

 

「ちょっと神崎くん!私達は別に神崎のお嫁さんでもないし所有物でもないんだよ!」

 

「何だよ〜照れんなよなのは〜」

 

「いやどう見ても1ミリも照れてへんやろ。私らは自分達から小鳥遊くんに挨拶しただけやのに何で神崎くんにそないな事言われんとあかんの?」

 

「は?自分達から?テメェモブゥ!はやて達に何しやがった!!」

 

このように自分にとって都合のいいように脳内変換される。大抵はなのは達がツンデレと思われるか俺が嫌がるなのは達を無理やり近づけていると思っているらしい。

 

「別に何もしてないってば」

 

「んなわけねぇだろ!!じゃなきゃ俺のなのは達がお前みたいなモブに近づくわけねぇだろぉが!!!」

 

「ちょっと神崎!いい加減にしなさいよ!小鳥遊が可哀想でしょ!!」

 

「いやバニングスさん、別に気にしないで」

 

「てめぇ誰のアリサに話しかけてんだ!!ぶち殺すぞ!!」

 

「あぁもう……………………うざいな」

 

「え?」

 

やべ、なのはに聴こえちゃったか?

流石に鬱陶しいので俺はレアスキル、【幻想の境界(ネクロファンタジア)】を発動させる。

 

「神崎くん。そろそろ朝の会が始まるし、席に着いた方がいいと思うよ」

 

「あぁ!?ちっ!次はねぇからな!!モブゥ!」

 

そう言うと神崎は自分の席に戻った。

今俺が弄った境界は『神崎の物事に対する優先度』の境界。俺に対して怒りをぶつける事よりも朝の会を受ける事の方を優先させたのだ。

 

「一体何がしたかったのかしら…あの馬鹿は」

 

「ゴメンね小鳥遊くん…私達のせいで…」

 

「いやいやテスタロッサさん達のせいなんかじゃないよ。もう慣れたからそんなに気にしないでよ。そんな事よりそろそろ席に着いた方がいいと思うよ」

 

「そうね、じゃあまた後でね小鳥遊君」

 

「うん、御林さん」

 

御林が席に戻るとそれを皮切りにはやて達も席に戻り始める。

 

「ゴメンね小鳥遊くん、迷惑だったよね」

 

「さっきも言ったけど僕は気にしてないから大丈夫だよ、高町さん」

 

「ねーねーロクトー。ずっと思ってたんだけど髪切らないのー?眼鏡かけててもそれじゃあ見えずらいんじゃないの?」

 

俺の前髪は目を隠すほど長くなっている。1週間前まではそんなに長くなかったのだが原作キャラ達…特に高町なのはと八神はやてには俺の素顔を見られる訳にはいかないので魔法で髪を伸ばして伊達眼鏡を作った。

コレで大丈夫だろうと思っていたのだが…まさか転校初日に声だけで気づかれそうになるとは思わなかった……。あの時は焦った………。

 

先程からまるで俺が原作キャラ達と既に会ったことのあるような事を言っているが実は彼女達、と言っても高町なのはと八神はやてだけなのだが…その2人とは初対面ではないのだ。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

アレは5歳の頃…自由に動き回れるようになった俺は海鳴市中を探索しようと思い街中歩き回っていた。そして夕暮れになり日が沈み始めたので家に帰ろうとしたら近くの公園から少女の泣き声が聞こえ、気になってその声のする方へ行ってみたのだ。

そこに居たのはブランコに乗って涙を流していた幼い少女、「高町なのは」だった。

だかしかし、その時の俺はその少女が「高町なのは」とは知らず純粋に何故泣いているのか気になって話しかけていた。

 

「何で泣いてるんだ?」

 

「ふえ?」

 

「どこか痛いのか?それとも誰かに苛められたのか?」

 

「ううん………さびしいの…」

 

「寂しい?」

 

「うん…おとうさんがおっきなおけがして…ずっとねてるの……それで、おかあさんも、おにいちゃんも、おねえちゃんも…みんないそがしそうで……かまってもらえなくて…でも、わたしがわがままいったら…おかあさんも、おにいちゃんも、おねえちゃんも、みんなこまっちゃうから…」

 

「ふーん…じゃあさ、俺に話してみろよ」

 

「…え?」

 

「寂しくて、甘えられなくて辛いんだろ?苦しいんだろ?だったらその苦しみを一度全部吐き出してみろよ。そしたら少しはスッキリするかもしれないぜ」

 

「でも………」

 

「あーもう………先謝っとくぞ」

 

「え?むぎゅ!」

 

俺は目の前のなのはを抱きしめたのだ。頭に手を回すようにして落ち着かせるように後頭部を撫でる。あ、銀髪オッドアイみたいに邪な感情は無いからな、俺はそんな幼女に発情する程飢えてもないしな。というかその頃5歳だし。

 

「ふぇ!?な、な、何してるの!?」

 

「頑張ったな」

 

「…え?」

 

「寂しかったのに…辛かったのに…苦しかったのに…今まで1人でよく頑張ったな。よく我慢出来たな」

 

「………」

 

「でもな…もう1人じゃない」

 

「…?」

 

「俺がお前の友達になってやる。お前が寂しい時、苦しい時、辛い時、俺がお前の側にいてやる。お前は今まで1人で頑張ったんだ。だから、もう泣いてもいいんだぜ?」

 

「っ!」

 

「寂しかったら、苦したかったら、辛かったら……泣いてもいいんだ」

 

「う、うぅ……うわああああああぁぁぁぁぁんんんんん!!!!!」

 

それで俺はなのはが泣き止むまで抱きしめて頭を撫で続けてやった。うん、今思うとかなり黒歴史だな。初対面の少女相手に何言ってんだか…というかなのはもなのはでいくら同い年だからって初対面の男相手に警戒心がなさすぎだろ。

まあこの時はんな事何にも考えてなかったけどな。

10分くらいか経つとなのはも落ち着いたのか泣き声はしなくなった。

 

「もう大丈夫か?」

 

「…うん、ありがとう。あっ…おようふくが…」

 

見ると俺の服はなのはの涙でびっしょり濡れていた。それを見て申し訳なさそうにしょんぼりするなのは。

 

「気にするな。こんなのは洗えば良いだけだ。それよりお前が泣いてくれてよかったよ」

 

「なんで?」

 

「お前の中の寂しさやら苦しみやらが吐き出されたからさ。泣いたらスッキリしたろ?」

 

「うん!」

 

なのはの顔にはもう寂しいという感情ら無かった。

 

「…じゃあ俺は帰るな」

 

「あ、まって!だきしめてくれてありがとう!」

 

「そ、そういう言い方は止めような?いや間違っては無いんだけどね?」

 

「ねぇねぇ!あしたまたこのこうえんにこれる?」

 

「あーゴメンな。俺明日から忙しくなるからもう来れないと思うんだ」

 

実はその日は修行の休憩日にしていたのだ。それ以外の日は殆ど魔法や身体能力を鍛えるトレーニングをしていた。まあ体の方はまだ成長仕切っていないから軽い物から初めてたんだかな。

俺がそう言うとなのはは悲しそうな顔になる。

 

「…また、あえる?」

 

「会えるさ、きっと……じゃあな」

 

俺はそれだけ言うと公園から出て行った。少し歩いていると後ろから、

 

「バイバイ!ありがとう!」

 

というなのはの声が聞こえてきたので手を挙げて応えた。

 

で、家に帰ったあとあの少女が高町なのはって言うことを思い出して「やっちまった」ってなったんだよな。

 

 

次は八神はやてだな。アレは夏だったか?

原作だと「P・T事件」が終わってフェイトが嘱託魔導師認定試験を受けて合格した頃の筈だ。俺は図書館に来ていた。

 

「暑っつ…」

 

あの日は特別気温が高くて茹だるような暑さだった。

 

「あ〜涼しい〜」

 

図書館に入ると冷房が効いており、流れ出る汗を乾かしてくれた。

で、俺は勉強をしに来たんだよ。家で冷房つけると電気代が大変な事になるし、でもこう暑いとべ湯に集中が出来ない。ならどこか冷房が効いてるところへ行こう。という訳で私立図書館に来た。

 

「さて、何か教材探すか」

 

丁度買っておいた教材もやり終えていたので何か代わりになるモノを探そうとしていた。

 

「う〜ん!う〜ん!」

 

「ん?」

 

すると車椅子に乗った少女が必死に手を伸ばして本を取ろうとしているのが見えた。

流石に見て見ぬふりをするのは心苦しいので手の先にあった本を取ってあげる。

 

「ほい、コレであってるか?」

 

「え?あ、あぁおおきに」

 

「おおきに?(それに車椅子…ってまさか…)」

 

「ああ私関西生まれなんですよ。本取ってくれてありがとうございますぅ」

 

「いや気にしないでくれ、何か困ってるように見えたからさ」

 

「それで実際に動ける人は余りいませんよぉ。あ、自己紹介がまだでしたね、私は八神はやて言います。貴方は?」

 

「(あぁやっぱりか…)俺はえっーと、ロクト、それと多分同い年だと思うからタメ口でいいぜ」

 

「え?嘘、ロクトくん何年生なん?」

 

「小三」

 

「同い年やった!?」

 

「逆に年上だと思っていたのかよ…」

 

何でもはやて曰く雰囲気が大人っぽかったからてっきり年上と思ってたとの事。まぁあながち間違ってはいない。

 

「ロクトくん、もうそないな所勉強してるんや」

 

「まぁな、学校の授業は暇でつまらないからな」

 

俺がやってた問題集は高校卒業程度レベルの問題集。前世では高校卒業と同時に就職したから大学の勉強はしていないのだ。なので今世で出来たら大学行きたいなーと思っているので今から勉強をしている。自慢じゃないが、前世でも勉強はそれなりに出来ていた。

 

「それより八神…お前、こんなの見てて面白いのか?」

 

「はやてでええってば、もうロクトくんも頑固やなぁ」

 

「うっせ」

 

「まあ見てておもろいっちゅーよりは楽しいって方が大きいかもなぁ」

 

「楽しい?」

 

「せや…見ての通り私、足悪いんよ…だから学校も休学しておってな。家でも1人だし…」

 

という事はまだヴォルケンリッターは登場していないのか。

 

「だから歳が近い子とこうやって話すのも久しぶりやったから…何か楽しくて」

 

「……そうか」

 

それから俺達は無言で時間を過ごした。どちらも話さなかったが何処か居心地のよい時間だった。

 

「…ふう、一段落………ん?」

 

「すぅ…すぅ…」

 

勉強が一段落してふと横を見てみると机に向かって穏やかな寝息を立てているはやてがいた。

俺ははやてを起こさないようにそろっと席を立って教材を戻しに行く。

そして席に戻る、はやてはまだ寝ていた。

仕方が無いので声をかける。

 

「おーい八神ー」

 

「すぅ…すぅ……ロクトくん……」

 

「…何で俺の名前が出るんだよ、おい八神、起きろ」

 

「ぅん…ん……ロクトくん?何でうちにいんの?」

 

「寝ぼけてんな、もう5時すぎるから俺は帰るぞ」

 

「えっ、あっ待ってーな!私も帰るから!」

 

それで俺とはやては2人で図書館を出た。

 

「おい八神」

 

「ん?何やロクトくん?」

 

「もう時間も遅いから送ってく」

 

「え?いやいやそんなん悪いて。それにロクトくん家は家族待ってんやないの?」

 

「俺の家は今俺しか住んでいない。だから遅くなっても心配する人は家にはいない。だけど八神は女だ、それに車椅子だから変質者とかにあったら逃げることも出来ないだろ」

 

「せやけど私みたいな子供を襲う男なんかいやへんて」

 

「バカかお前は?お前はかなり美少女の部類に入る顔をしてるんだぞ?それに世の中にはロリコンという名の変態もいる。ここの治安がいいからと言って犯罪が起きないわけじゃない。だから送ってく」

 

「び、美少女……/////」

 

「?まあそういう訳だからナビゲート頼む。お前の家知らないし」

 

「ふふっ、分かった。じゃあまずはあそこの交差点を右や!」

 

「はいよ」

 

「出発進行や!ロクト号!!」

 

「誰がロクト号だ」

 

そしてはやてを家まで送って帰った。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

いやーはやてとは小三の頃会っていたからバレるかなって思ったけど何とかギリギリセーフだった。

おっと話を戻すか。

 

「それに関しては大丈夫だよ。隙間から見えてるから」

 

「でもでもそんな長いと邪魔でしょ?」

 

「うーんまぁね。それよりテスタロッサさん、1限目は国語だけど宿題やった?」

 

「あぁー!忘れてたぁー!フェイト見せて!」

 

「姉さん…偶には自分でやろうよ…」

 

「あはは、相変わらずだねアリシアちゃんは………ねぇねぇ小鳥遊くん…」

 

「何?高町さん」

 

「私達……やっぱりどこかで会ったこと無かったかな?多分、ちっちゃい頃……5歳くらいの時に…」

 

これは気づいているのか?俺がなのはを慰めていた少年だということに…。いや、恐らく俺かもしれないと思っているが確証がないから踏み切れないって所か。

 

「うーん…前も言ったけど高町さん見たいな可愛い子は見たら忘れないと思うんだよね。それに僕、小学校に入るまでは海鳴市にいなかったから」

 

「か、かかか可愛い……/////って、え?そうなの?」

 

「うん、小学校に入る少し前に親の仕事でここに来たんだ」

 

「そう、だったんだ…ゴメンね、変なこと聞いちゃって」

 

「いいよ、気にしないで」

 

さっきの話は嘘だしね。

これ以上聞かれるとボロが出そうなので話題を変える。

 

「ところで明日テストだけど対策は大丈夫なの?」

 

「「「あ」」」

 

変えた話題はなのはだけでなくフェイト、アリシアも反応した話題であった。



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なにかの順位といつかの記憶

sideアリサ

 

「さあ今日は待ちに待った順位発表の日よ!」

 

「待ってるのはアリサだけだよぉ…」

 

「うぅ今回も国語ダメだったよお」

 

「アリシアちゃんとなのはちゃんは相変わらずやな」

 

「私も国語は少し不味いんだけどね…」

 

「フェイトは真面目にやってるから大丈夫よ。なのはは国語の勉強になると集中力が無くなるからねぇ。アリシアは…手遅れに近いわね」

 

「咲ちゃん、アリシアちゃんが凄い目で見てるよ」

 

順に私、アリシア、なのは、はやて、フェイト、咲、すずかが話す。

なのはとフェイトとアリシアは国語…今回も文系がダメみたいね。この学校で私と張り合えるのは咲ぐらいだから少しつまらないわ…私も咲もケアレスミスがあるかないかの違いで1位と2位を行ったり来たりしてるからね。

 

そして今回はどっちが1位なのか掲示板に目を向けるとそこには驚く名前が書かれてあった。

 

1位「小鳥遊碌斗」合計点500点

2位「アリサ・バニングス」合計498点

2位「御林咲」合計498点

 

それを見た瞬間私はそいつの元へ向かって走りだしていた。

 

side咲

 

アリサが掲示板を見て直ぐ教室に向かって走り出していった。いつものアリサなら「今回は私の勝ちだったわね!」か「次は負けないんだから!」のどちらかを言ってくるのだが、急に走り出したので何事だろう?と思って私も掲示板を見ると驚く事に1位の欄の名前には1週間程前転校してきたあの少年、「小鳥遊碌斗」の名前が書かれてあった。

 

「咲ちゃん、アリサちゃん急に走っていったけどどうしたの?」

 

「なのは…すぐ追いかけるわよ」

 

「え?ちょっと咲ちゃん!?」

 

「うわっ!ロクトってあんな頭良かったの!?」

 

「ほえー、アリサちゃんと咲ちゃんを抜かして1位ってえらい頭よかったんやな小鳥遊くん」

 

「ところで咲ちゃん、何でそんなに急いでるの?」

 

「このままじゃアリサが小鳥遊君に手を出しちゃうかも知れないのよ。あの子、プライドが高いでしょ?それに言い方がちょっと刺々しい時があるからもしかしたら小鳥遊君と喧嘩になっちゃうかもしれないの」

 

「そんな、いくらアリサでも…ありそうだね」

 

「フェイトがダジャレを…あいたっ!」

 

アリシアがバカなことを言いそうだったので頭を叩いといた。そして私達は急いで教室に行った。するとそこには……………

 

 

 

 

頬を抑えて床に倒れるように座っている小鳥遊くんと神崎に向かって必死に何かを言っている涙目のアリサがいた。

 

side碌斗

 

俺はいつも通り学校に登校していた。シュテル達と途中まで一緒に歩いて、交差点のところで別れる。

そして学校に着くとなにやら教務室の前で人集りが出来ているのが見える。恐らくこの前のテストの順位が張り出されているのだろう。

と、ここで思い出す。

前の学校ではこのような実力テストなどなかったから順位が張り出されるということも無かった。だから油断していた(・・・・・・・・・)

普通にいつも通りテストの問題を解いてしまった。私立の学校だからとはいえ、所詮は小学校。前世の記憶がある俺達転生者には簡単すぎる問題だ。だが普通の小学生には少し難しい。ましてや満点を取る(・・・・・)ことなど以ての外だ。

そう、ここのテストで満点を取れるのは本来ならアリサ・バニングスだけなのだ。

だがここでもし、アリサ・バニングス以外に満点を、若しくは|アリサ・バニングス並にいい成績を取る者がいたら《・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・》?

…不味い……非常に不味い。

アリサ・バニングスよりもいい成績、同じ成績な者。それはつまりそいつが転生者である(・・・・・・)という事を指している。

何故なら原作を見れば分かるがせいしさの成績トップはアリサ・バニングスしかいないからだ。そして転生者は原作を知っている。

………今のうち言い訳を考えておこう。

 

「おはよう小鳥遊くん」

 

「おはよう佐藤さん」

 

「テストの順位見たよ!小鳥遊くんって頭良かったんだね!」

 

「あはは、僕昔から勉強が好きでさ。自慢出来る事はそれくらいしかないんだよ」

 

すみません嘘です。

 

「へ〜、やっぱり凄いんだね小鳥遊くんは。あっ!ゴメンね呼び止めちゃって」

 

「いいよ、気にしないで。僕も佐藤さんと話せて嬉しかったから」

 

「っ!小鳥遊くん、そ、そういうのは余り誰にも言わない方がいいよ!/////」

 

佐藤さんはそう言うと他の友達のところへ行ってしまった。なにか怒らせるようなことをしたか?

ま、関係ないか…多分そろそろアリサ辺りが来ると思うから何か言い訳を考えとかないと…。

俺がそう思いながら鞄を机に下ろすと先程俺が入ってくる時に閉めた教室の扉が勢いよく、まるで叩きつけるように開かれた。

教室にいる生徒達がその音に驚き視線を集中させる。視線の先にはアリサ・バニングスがいた。

アリサは俺を見つけると早足で俺の近くへ歩いていてきた。

 

「えっと、おはようバニングスさん」

 

「おはよう小鳥遊。それより聞きたいことがあるんだけどアンタってあんなに頭が良かった?」

 

腕を組み、睨むようにアリサが話しかけてくる。

 

「えっ?あぁ、うん。昔から勉強するのが好きだっから人並み以上の学力はあると自分では思っているよ」

 

「ふぅーん…」

 

「えっと、もしかして…僕がカンニングしたって思ってる?」

 

ここで俺は自分が不正したのではないかと疑っているの?と聞く。そう言うことでアリサは恐らく慌てて否定に入るだろう。

 

「え、あっ!?ち、違うのよ!ただ私や咲以上の得点を取ってる人が珍しかったから聞いただけでそんな事思ってないわよ!」

 

「あ、そうだったの?ゴメンね、早とちりしちゃって」

 

「い、良いのよ。気にしないで」

 

計 算 通 り。

アリサは自分の言い方に非があると思っているからこそ先に謝ってきた俺に強く聞くことが出来ない。これで少なくとも追求される事は避けることが出来た。

と思って油断していた。

 

「よぉアリサ!どうしたんだ急に走ったりするなんて、ん?テメェモブ!!!何俺のアリサ困らしてんだ!!」

 

突如現れた銀髪オッドアイに胸倉を掴まれる。それを見てアリサが神崎に慌てて呼びかける。

 

「ちょっと!なにやってんのよ神崎!!その手をはなしなさいよ!!」

 

「アリサ、怖かっただろ?安心しろ!こんなやつ俺がボコボコにしてやるからな!!よくもアリサを怖がらせてくれたなぁ!モブゥ!!!」ニコッ

 

どうやらそれは火に油だったらしい。と言うかいつの間にか困ってるから怖がってるに進化してるし。

 

「かっ、神崎くん…苦しいから、離して…くれないかな?」

 

「あぁ!?ふざけんなモブ!!!アリサを怖がらせたてめぇにそんな事言う資格なんざねぇんだよ!!!」

 

そして神崎の拳が振り下ろされる。

 

バキッ!!

 

「うぐっ!」

 

拳は俺の左頬を殴りつけ、その衝撃でロッカーまで吹き飛ばされ、頭を打ち付ける。殴られた拍子にメガネが飛ばされる。

…こいつ今、魔力で身体強化して殴りやがった。

頬がじんじんと熱くなり、段々鈍い痛みが響いてくる。頭を触ってみるとぶつけた時に切れたのか、ぬるりとした感触が手に触れる。手を見てみると少し赤く染まっていた。どうやら血が出ているようだ。

それを見て顔を青くするアリサ。恐らく自分が話しかけてなければこんな事にはならなかったとでも思っているのだろう。

一方神崎は俺を殴ってスッキリしたのかニヤニヤとムカつく笑みを浮かべて見下ろしてくる。

 

『《碌斗くん大丈夫!?》』

 

「《少し切っただけだから大丈夫だ。安心しろ、間違っても回復魔法なんか使うなよ。あいつらにバレる》」

 

アラジンが心配して念話をかけてきた。正直地味に痛いけど我慢出来ないほどではない。取り敢えず立ち上がろうと思って腕に力を持つ込めると、

 

「神崎くん…何やってるの?」

 

高町なのは達原作キャラが教室に入ってきた。

 

sideなのは

 

咲ちゃんに言われて教室に向かうと教室内からザワザワと声が聞こえる。

 

「ねぇ咲ちゃん…どうしたんだろ?」

 

「さぁ…取り敢えず入りましょう(まさかアリサ…本当に殴ったんじゃないでしょうね?)」

 

咲ちゃんを先頭に私達が次々と教室に入っていくと私の目に驚きの光景が飛び込んできた。

目線の先にはほっぺを抑えて床に座っている小鳥遊くんとそれをニヤニヤと見ている神崎くんがいたからだ。アリサちゃんは神崎くんに向かって「何やってるのよ!?」と叫んでる。

 

「神崎くん…何やってるの?」

 

「おお?なのはじゃねぇか!それに俺の嫁達まで!」

 

「質問に答えて」

 

「ん?あぁ、このモブがアリサを困らせてたから身の程をわきまえさせてやったんだよ」

 

「…小鳥遊君、保健室いきましょ。立てる?《なのは、フェイト、はやて、アリシア。多分こいつ魔力で身体強化して殴ったんだと思うわ。さっき魔力反応があったから》」

 

「っ!?…咲、体制的に頭をぶつけてるかも知れないから余り揺らさない方がいいよ《一般人に身体強化して暴力を振るうなんて何を考えてるの!?》」

 

「せやな、小鳥遊くん。大丈夫か?《上に報告…しても無駄やろーな。神崎は魔力だけは高いから上のお気に入りやもん。どうせ子供の喧嘩、程度で処分は無しになるんやろーなぁ》」

 

「う、うん…大丈夫、ちょっとぶつけただけだから」

 

「えっ!ロクト!頭から血が出てるよ!《そんな…ロクトは魔法もなんにも知らない一般人だよ!?》」

 

「あはは、多分ぶつかった拍子に切っちゃったんだと思う…痛っ…」

 

咲ちゃんやフェイトちゃん、はやてちゃん、アリシアちゃんが念話をしながら小鳥遊くんを介抱している。

すると神崎くんがまた何かを言ってきた。

 

「おいおい俺の嫁達、こんなモブなんかほっといて俺と話そうぜ?」ニコッ

 

「あ、あんたねぇ!いきなり小鳥遊の事殴って置いて何言ってるの!!」

 

アリサちゃんは一部始終を見ていたのか涙目で神崎くんに詰め寄る。

 

「なんだぁ?照れてるのか?ホンット可愛いなぁアリサは」

 

「いい加減にしてよね!!気持ち悪い!!」

 

「ひゃはは!相変わらずツンデレだなぁ!」

 

「《皆、アリサには悪いけど今のうち小鳥遊くんを保健室に連れていくわよ。身体強化して殴られるなんて最悪、骨が折れてるかもしれないわ》」

 

「《分かった》」

 

「《了解したで》」

 

「《じゃあ私はここに残ってアリサ達をカバーしてるよ》」

 

「《頼んだわよアリシア》すずか、私達小鳥遊くんを保健室に連れていくからもし先生が来たら言っておいてくれる?」

 

「うん、任せて。小鳥遊くん、大丈夫?」

 

「う、うん。大丈、痛っつ…」

 

「小鳥遊くん、余り喋らない方がいいよ。頬骨が折れてるかもしれないから」

 

「せや、無理して喋る必要はあらへん」

 

咲ちゃんとフェイトちゃんが小鳥遊くんを支えてはやてちゃんが誘導しながら保健室に連れていこうとする。

私もついて行こうと足を踏み出すと何かぶつかった。小鳥遊くんがいつもかけていたメガネだ。

 

「あっ、小鳥遊くん。これ」

 

「僕のメガネ、ありがとう高町さ、痛てて…《アラジン、もしかしなくても折れてる?》」

 

『《うん、折れてるよ》』

 

「《マジかー》」

 

「だ、大丈夫!?」

 

「う、うん。ゴメンね」

 

「ほら、いいから行くわよ。小鳥遊くんはもう喋らないで。無理して喋ると痛いわよ」

 

咲ちゃんの言葉に小鳥遊くんは頷いて答える。

 

「よし、はやて扉開けてくれる?」

 

「わかったで」

 

「なのはも来て。小鳥遊くんを保健室に送ったら私と一緒に先生に言いに行こう」

 

フェイトちゃんが小鳥遊くんを支えながら私に話しかけてきます。

 

「うん…」

 

「おいおいなのはぁどこ行くんだ?」

 

「神崎くん…」

 

「ちょっと神崎!!なのは達に近づかないでよ!!」

 

「(何だ?なのはに構ってるからって嫉妬してんのか?)大丈夫だ、俺は皆が一番だからな!」ニコッ

 

「はぁ?何言ってんの?アリサ、何があったか後で教えてね」

 

「う、うん」

 

「大丈夫だよ、アリサちゃん」

 

すずかちゃんがアリサちゃんの手を握って落ち着かせます。

神崎くんが2人に気を取られているうちに私達は教室をあとにしました。

 

 

 

「失礼しまーす、ってこんな時に限って先生がいない…」

 

「咲、取り敢えず小鳥遊くんを座らせよう。大丈夫?」

 

「……《すっげぇ痛てぇ、脂汗が止まらねぇよ》」コク

 

小鳥遊くんは苦笑いしながら頷きますが多分かなり痛いんだと思います。その証拠に髪の毛が汗で張り付いているもん。

 

「はやて、フェイトと一緒に教務室行って保健の先生呼んできてくれる?私となのはで入れ違いにならないように手当しながら待ってるから《あと、どっちかクロノかリンディさんに連絡をしておいてくれない?》」

 

「うん、わかったよ《じゃあ私が後で連絡しておくよ》」

 

「ほな行ってくるなぁ」

 

フェイトちゃんとはやてちゃんが保健室から出ていき今保健室は私と咲ちゃんと小鳥遊くんだけだ。

小鳥遊くんの顔を見るとかなり痛いのか汗でびっしょりだった。

 

「私、タオル濡らしてくるね」

 

「小鳥遊くん、切ったところちょっと見せてくれる?」

 

「…(何するんだ?)」スッ

 

「少し切っただけみたいね…血はもう止まってるみたい(回復魔法…)」

 

「っ!?(魔力反応?頭の痛みも引いていくし…回復魔法か?バリアジャケットを纏わずにやるとは…)」

 

「タオル濡らしてきたよ!小鳥遊くん汗が凄いから少し拭こう?《咲ちゃん、さっき回復魔法使った?》」

 

「…」コクリ

 

「制服も脱いだ方がいいかもね、汗で汚れちゃうと悪いし《ええ、頭は危ないからね。少しだけ回復魔法を使わせてもらったわ》」

 

小鳥遊くんは上の制服を脱いで私からタオルを受け取ります。顔の汗を拭く時に小鳥遊くんは髪の毛を上げます、すると小鳥遊くんの素顔が見えました。

 

「…………え?」

 

「どうしたの、なのは?」

 

小鳥遊くんの顔は、忘れもしない。私が子供の頃、一番苦しかった時にあの公園で出会って私を助けてくれた、少年の顔とそっくりだったからだ。

 

その顔を見た時、私は聞かずにはいれなかった。

 

 

 

「たか、なしくん…私と、会ったこと、あるよね?」



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嘘八百とでまかせ

side碌斗

 

「小鳥遊くん…私と、会ったこと、あるよね?」

 

「っ!?」

 

不味い…遂にバレたか?

今なのはは「会ったこと無かったっけ?」ではなく「会ったことあるよね?」と確信めいた口調で言ってきた。

油断していたな…まさか汗を拭く時に素顔を見られるとは…いやとう言うかはやてならまだ分かるんだが何で5歳の頃から成長しているのになのはは分かるんだよ。

 

「えっと、痛てて…」

 

「だ、大丈夫小鳥遊くん?」

 

「まだ喋るのはキツそうね…(なのはが言っていた事が本当だとすればやっぱり小鳥遊くんは転生者?なら士郎さんが一命を取り留めた理由にも納得がつく……一つ賭けてみようかしら)ミスト、セットアップよ」

 

『all light master set up』

 

「なっ!?」

 

「えっ!?《な、何でいきなりセットアップしてるの!?咲ちゃん!》」

 

な!?何故いきなりセットアップを…てか御林のバリアジャケット、『家庭教師ヒットマンREBORN!』にでてくる黒曜中の制服じゃん。いつも指輪していると思ったらそれがデバイスだったのか……しかもよく見たら封印が取れたボンゴレリングじゃねえか、色的に霧か。

取り敢えず驚いたフリをして置くか。

 

「なっ、え?服が変わっ、痛たた」

 

「まずはその傷から治療しましょうか。フィジカルヒール」

 

「っ!?……痛みが、引いていく?」

 

御林のやつ凄いな…折れていた骨が完全に治った。

 

「あわわわわ《ちょっ、ちょっと咲ちゃん!小鳥遊くんは一般人なんだよ!何でいきなり魔法なんか使っちゃったの?》」

 

「《まぁ聞いてなさい》いきなりゴメンなさいね…それとなのは、小鳥遊君は一般人じゃないわ、恐らく……魔導師よね?」

 

「えっ!?」

 

「……い、いきなりの事でついていけないんだけど…なんの事?それにさっきの服がいきなり変わるヤツとか…とか魔法とか…もしかして御林さん魔法少女とかだったりするの!?」

 

「え?ええ《…もう少しわかりやすい反応をしてくれるかと思ったら、これはどっちか見分けがつかないわね》」

 

「え、えっと…《どういう事?》」

 

「…魔法少女、って言うよりは魔導師って言った方が正しいわね《小鳥遊君が魔導師だったら多分私たちの事を事前に知っている筈…だから余り驚かないと思ったの…でもこの態度だと、本心なのか演技なのか見分けがつかないわね…仕方ない、少し手荒な真似をさせて貰おうかしら》」

 

「へぇー魔導師かぁ…もしかして高町さんも?」

 

一体、何をする気だ?今の反応からすると俺が黒か白か決めかねている感じだが…。

 

「ふぇ?う、うん。一応…《な、何をするの?》」

 

「小鳥遊くん、先に謝っておくわ。ゴメンなさい《こうするのよ!》」

 

「え?なっ!?」

 

突如俺の足元から火柱が立ち上る。俺はそれを後方に跳ぶことで回避する。

 

「な、な、な、何これ!?火!?火事!?消防!?警察!?」

 

「あ、あれれ〜?おかしいぞぉー?《…ごめんなのは、やっぱ一般人かも》」

 

「《ちょっと咲ちゃん!?》」

 

俺が慌てている演技をしていると御林はバリアジャケットを解除する。すると立ち上がっていた火柱も消える。だが不思議な事に天井や床に焦げ目はついておらず、凄まじい熱量がありそうだった、実際に熱いと感じたはずなのに室温は全く変わらない。

 

「き、消えた?いまのは一体…」

 

「(仕方ない…今までの事を少し忘れてもらいましょう)小鳥遊君…私の目を見て」

 

「へ?」

 

言われて目を見ると御林の右目には漢数字の「六」が浮かび上がっていた。

 

「なっ、目が!?《アラジン!8型防御魔法頼む!》」

 

「《う、うん!》」

 

「第一の道…地獄道」

 

その声を聞いたあと俺の意識は途切れた。

 

 

side咲

 

「ふうっ、危なかったわ」

 

「危なかったじゃないよ咲ちゃん!小鳥遊くん、本当に一般人だったじゃない!」

 

「…ゴメンなさい。私が迂闊だったわ」

 

小鳥遊君は本当に転生者じゃなかった…?

まぁどちらにしても地獄道で今までの出来事は夢だったって思わせたから問題ないでしょう。

レアスキル、【六道輪廻】。私が転生する際に神様から貰った特典の一つだ。

私は『家庭教師ヒットマンREBORN!』に出てくる「六道骸」、「クローム髑髏」の技や武器、能力を使えるようになることを特典として貰った。

そして「六道骸」の能力、六道輪廻。まぁ説明はまた今度でいいかしら?さっきのは六道輪廻の能力の一つで、相手に幻覚を見せると言ったモノで、火柱を出したり小鳥遊君を眠らせたりしたのもその能力だ。

私がなのはに謝っていると保健室にフェイトとはやてが入って来た。

 

「咲、ゴメン。保健の先生いなかったみたい。でも先生には言っておいたから大丈夫だよ」

 

「そう言えばさっき何か咲ちゃんの魔力反応がしたけど、どないしたん?」

 

「ああ、その事なんだけど…」

 

私はさっきの事を全て2人に話した。話終わると2人はジト目で私の事を見てくる。

 

「まあ百歩譲って治療をしたのはええと思うよ」

 

「でも幾ら怪しいからって一般人に幻術を使うのはどうかと思うよ…」

 

「咲ちゃん…反省してなの」

 

「うぅ…ゴメンなさい…」

 

なのはも加わって私をジト目で見ながら説教をしてくる。

まさか精神年齢30近くで小学生に説教されるとは思わなかったわ…。

 

「にしても運がないなぁ小鳥遊くんも…わぁっ!」

 

はやてが小鳥遊くんに同情していると窓から突然風が入り込んできて私達の髪を撫でつけた。

 

「うひゃーびっくりした…って、あぁー!!」

 

「ど、どうかしたの?はやて」

 

「ろ、ろ、ロクト君やー!」

 

「「「え?」」」

 

はやてが言うには何でもまだ足が悪かった頃、図書館で困っているところを助けて貰ったらしい。

これでまた分からなくなった。彼は転生者なのか、それとも私達のせいで産まれたイレギュラーなのか。

 

「いやーでも何であないな嘘ついたんやろーなぁ」

 

「え?」

 

「いやぁなぁ、小鳥遊くんの声はなーんか聞き覚えのある声や思っとったんやけど小鳥遊くんに聞いても私みたいな人は会うたことないーって言ってたんよ」

 

「それって小鳥遊くんがはやての事を忘れてるだけじゃないの?」

 

「いやーその後に小鳥遊くん、「八神さんみたいな綺麗な人、1度見たら覚えてますよ」って微笑みながら言ってたんよ。(思い出すと恥ずかしぃーなぁ)/////」

 

「うーん、じゃあ嘘をつく必要があったとか?」

 

「何で態々嘘をつかないといかないんだって事になるわよ?」

 

「せやなぁ、何か秘密でもあるんとちゃうんかな」

 

私達が考えているとなのはが小鳥遊君に近づいて顔をじっと見つめていた。

 

「やっぱり…」

 

「どうしたの?なのは」

 

「うん、間違いないの。小鳥遊くんと私、ちっちゃい頃会ったことあるの」

 

「えぇ!?なのはちゃんもなんか?」

 

「うん、咲ちゃんなら分かると思うんだけど私と咲ちゃんが友達になった時に言ったこと覚えてる?」

 

えぇと、私がなのはと友達になった時…私は神様に頼んでなのはの家の隣に住む幼馴染にして貰ったんだ。

それであの公園でなのはを慰めて仲良くなろうと思ったのだが…何故か公園に行ってもなのはは居らず、私と会う時には向日葵のような笑顔をしていた。

で、私は気になって聞いたんだっけ、「寂しくないの?」って、そしたらなのはは「あの子に助けて貰ったから平気!」と言っていた。

 

「まさか…あの時言ってたあの子って言うのは小鳥遊君だったの?」

 

「うん!あの時より成長しているけど顔は面影があるもん!」

 

やっぱり小鳥遊君は転生者?でも名前は分からなかったみたいだし…あーもう!分からない事だらけよ!

 

「取り敢えず、教室に戻りましょう。いつまでもここにいちゃ小鳥遊君も休めないわ」

 

「そうだね、それに姉さん達も気になるしね」

 

「ほな戻ろーか」

 

「あ、私はここに残ってるよ。保健の先生がいないなら小鳥遊くんが起きた時1人じゃ困ると思うし」

 

「そう?じゃあ任せるわよ、なのは」

 

「うん、任せて」

 

なのはの言葉を聞き、私達は保健室を出た。

小鳥遊碌斗…要観察ね。

 

 

 

 

 

 

「あ、そう言えば咲、クロノにさっきの事話したんだけど帰ったら反省文だって」

 

「oh......」



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自分の思いと君の本音

side碌斗

 

心地よい風が頬を撫でる。

 

「ん………」

 

誰かに頭を撫でられているのか?妙に気持ちいい。

うっすらと目を開けるとそこには、「高町なのは」がいた。

 

「おはよう小鳥遊くん。気分は大丈夫?」

 

「ん…ぅん?」

 

段々と意識が覚醒してくる。後頭部には柔らかい感触があり、頭はなのはが撫でているのかまた瞼を閉じてしまいたくなるような気持ち良さがある。

「ここは…?」

 

「保健室だよ。小鳥遊くん、神崎くんに殴られて気を失ってたんだよ」

 

「気を……?」

 

そうか、それで保健室に……。

 

 

 

 

 

いや違う。

 

頭に残る、酷い違和感。曇りガラスのように思い出せない記憶…。

 

「《アラジン…説明頼む》」

 

『《うん。実は…》』

 

 

 

マジかよ…幻術や幻覚対策の8型防御魔法を貫通するとか…どれだけあの幻術は力が強いんだ?

アラジンから俺が気を失っていた間と消された記憶の説明を受けた。なんつーか、流石は転生者ってところか。

 

「《…じゃあ俺が転生者って事はまだバレてはいないんだな?》」

 

『《うん。でも御林ちゃんは「かもしれない」程度には疑っているからね》』

 

「《うーん…誤魔化しきれなくなって来たな》」

 

「あの…小鳥遊くん?」

 

「何?高町さん」

 

「そろそろ…起きれるかな?」

 

「え?」

 

なのはにそう言われて俺の体制を見る。後頭部に柔らかい感触、目の前にはなのはの顔、どうやら俺は今、なのはに膝枕をされているらしい。

 

「うわあぁぁ!!ゴメンなさぁーい!!」

 

すぐ降りて土下座した。

 

「ふええええ!?なんで!?頭あげてよ!というか土下座なんかしないでよ!」

 

「許してくれるの?」

 

「まず許すも何も怒ってないから!」

 

許可を貰ったので普通に立ち上がる。弁明しとくが俺は断じてロリコンではないからな。あとMでもない。

 

 

 

 

「で、高町は俺に聞きたいことがあるんだよな?」

 

俺は意識を切り替えて高町に話しかける。いつもと話し方が違う事にか、それとも急に雰囲気が変わったからか、はたまた両方か、なのはは驚いているみたいだ。

俺が猫かぶりをやめたのは別にヤケになったからではない。これ以上あの事を隠し通すのは無理だと判断したからだ。恐らくこのまま嘘をついても彼女は俺があの時の少年である証拠を掴むまで付き纏う事だろう。そうするも一緒に住んでいるシュテル達の事もバレかねん。それだけは何としても阻止しなければならない。

 

「で、どうなんだ?無いのか?あるのか?」

 

「…あるよ」

 

戸惑っていた瞳はもう揺れておらず、俺の事をしっかりと見つめていた。

まあ今の俺は前髪が目を隠しているから半分顔見えないんだけどね。

 

「小鳥遊くん…私ね、ずっと会いたかった人がいたんだ。5歳くらいの頃、私が公園で1人、ブランコに乗って泣いていた時…私を慰めてくれた男の子…」

 

「……………」

 

「私ね、その時…凄い辛かったんだ。お父さんが事故にあって、大怪我しちゃって、それで入院して…お母さんはお父さんがいなくて悲しいはずなのに、弱い所を見せずにお父さんの分の仕事まで1人でこなして……お兄ちゃんは、お父さんがいなくなったから、お父さんの代わりに自分が家族を守らなきゃって思ってて、ピリピリしてたし……お姉ちゃんは、お母さんの手伝いや、私の送り迎えを、好きだった剣のお稽古を辞めてこなしていたの……でも、私には何も出来ることが無かった。私は、なのははいらない子なんじゃ無いのかなって、ずっと考えてた…皆は忙しいから、なのはが我儘言うと困らせちゃうもん…だから、できるだけ邪魔にならないように、いつも遅くまで公園にいた。いっつも1人で、寂しくて、辛くて、泣いていた……………でもそこに、貴方が来てくれた(・・・・・・・・)

 

「……………」

 

「貴方は、私の事を、励ましてくれた。慰めてくれた。抱きしめてくれた……貴方がそうしてくれたお陰で、私は家族に本音を話すことが出来たし、お母さんもお兄ちゃんもお姉ちゃんも私の事を大事に思っていてくれたのが分かった。本当に……ありがとう」

 

「……あー、その、何だ?どういたしまして?」

 

「ふふっ、何で疑問形なの?」

 

「面と向かって礼なんか言われた事ないからだよ…それとな、最後の方は俺のお陰じゃねぇぞ」

 

「え?」

 

「お前が家族に本音を話すことが出来たのはお前が家族と話す勇気を出したからだ。俺はお前の悩みを少し解消しただけだ」

 

「…素直になってもいいと思うの」

 

「俺は超素直だよ。うん」

 

「ふふっ、あはははは!」

 

「ぷっ、ハハハハ!」

 

俺達は何が面白いのか、2人で笑いあった。

暫く笑いあって落ち着いた頃、なのはが俺に話しかけてきた。

 

「ねぇ、小鳥遊くん。名前で呼んでもいい?」

 

「あ?まぁ、別にいいけど」

 

「ホント?じゃあ早速呼んでみようかな…コホンッ………ロクトくん」

 

「ッ!?……何だ高町?」

 

「むぅー、私は名前で言ったんだから碌斗くんもなのはって呼んでよー」

 

「気が向いたらな」

 

「むぅー…絶対呼ばせるもん」

 

一瞬、コイツに名前を呼ばれた時、ドキッとしちまった。

可愛らしい、華のような笑顔に、不覚にも、ときめいてしまった。

 

 

 

「さて、これからどうするか」

 

「?教室に戻らないの?」

 

なのはが首を傾げて聞いてくる。時計を見ると時刻は11時を過ぎていた。なのはの話によると俺が寝ている間に先生が事情を聞きに来たらしいが、なのはが俺が目を覚ましたら先生のところへ連れていくと言ったところ、すんなり聞き入れてくれたらしい。

因みに神崎は先生にこってりと絞られているらしい。後で聞いた話だが先生は昔レスリングのアマチュアチャンピオンだったとか…。

 

「戻ってもどうせ自習だろうし、クラスのヤツらに色々聞かれるのがオチだ。そんな面倒臭い事になるならここで昼休みになるまでのんびりしてた方がいいだろ?」

 

「いいのかなぁ?」

 

「高町、こういうのは深く考えたら負けだ」

 

にしても何するか…昼休みになるまであと1時間はあるぞ。

 

「うーん、じゃあロクトくん。お話しよ!」

 

「断る!」

 

「何でなの!?」

 

「誰が好き好んで自分からO☆HA☆NA☆SIを喰らいに行くか!」

 

「うん?何か発音がおかしくない?」

 

どうやらなのはが言っていたお話は普通にお話だったらしく、俺が想像していたO☆HA☆NA☆SIとは違ったようだ。

 

「ねぇねぇロクトくん、今度うちに来ない?私のお父さんとお母さんが開いているお店があるんだけどお料理もスイーツもとっても美味しいんだよ」

 

「翠屋だろ?知ってるよ」

 

「えぇーー!?何で知ってるの!?」

 

「何でって言っても…俺、翠屋の常連だし。ついでに言うと士郎さんや桃子さんとも仲良くさせて貰ってるし、恭弥さんや美由希さんには偶に剣の稽古をつけてもらった事もあるからな?」

 

「そ、そんな…因みにどれくらいから通ってたの?」

 

「ざっと3年だな。小二くらいの頃からだ」

 

「しょ、小二…なのに家族で私だけ知らなかった…」

 

「まぁ俺も高町を見た時は驚いたけどな。まさか高町が士郎さん達が言ってた子供だとは思わなかったし」

 

本当は知ってたけどな。

なのはとの話題は尽きず、気づけば30分近く話していた。ひとしきり喋ると、なのはは何やら言いづらそうに口を開いたり閉めたりしていた。

 

「どうかしたか?」

 

「……あの、ロクトくんってさ…魔法とか、信じる?」

 

これは…御林の言葉を聞いて俺が魔導師かどうか疑っているみたいだな。

 

「魔法、ね。ゲームやマンガでよく聞く言葉だな」

 

「うん。それって実際にあると思う?」

 

「…………」

 

さて、これは何と答えるのが正解だろうか。下手に答えると最悪、管理局に連れていかれるかもしれない。

 

「そうだな…あるんじゃないか?世界は広いしな」

 

「そ、そう?」

 

「ああ、だって日本だって呪いや、占星術とかがあったんだぞ?だったら魔法があっても不思議ではないだろ。ま、俺は魔法使いなんか見た事ないけどな」

 

「そ、そうなんだ〜」

 

…おいおいなのはさんや、その反応は「え?もしかしてお前魔法使いなの?」って聞かれてもおかしくない反応だぞ。

 

「おっ、そろそろチャイムなるな。行くか」

 

「えっ?あっ、本当だ」

 

俺が立ち上がるとなのはも立ち上がり、俺達は保健室をでる。

 

 

さーて、なのはの問題はクリアしたが次の問題ははやてだな……図書館の事はバラしてもいいが、御林に俺が転生者だと言うことはバレてはならない……さて、どうするか…。



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ヘマやらかしすぎな主人公の思案

side碌斗

 

教室に着くと案の定クラスメイトがワラワラと寄ってきた。だが、俺がその対応に困っていると何とアリサが助けてくれた。

 

「ありがとう、バニングスさん」

 

「ええっ!?」

 

「?どうしたのよなのは?あと別に気にしなくていいわよ小鳥遊」

 

「ちょ、ちょっとロクトくん、さっき私と喋ってたみたいに話さないの?」(小声)

 

なのはが小声でそう聞いてくる。

 

「いやいきなり口調が変わったら怪しまれるだろ。それこそ頭打ったせいでおかしくなったのか?とか」(小声)

 

「そ、それもそう…なのかな?」(小声)

 

「ちょっと2人共!何コソコソ話してんのよ」

 

「べ、べつに私はコソコソなんかしてないよ?」

 

「うん、それよりバニングスさん、大丈夫だった?」

 

「え?な、何が?」

 

「あの後神崎くんに何かされたりしなかった?」

 

「それなら大丈夫だよ!私とすずかで先生にキッチリ説明して神崎には蹴りを入れて置いたから!」

 

「わ、私はアリシアちゃんに言われたから蹴っただけだよ?」

 

すずかも蹴ったのか…夜の一族の身体能力の蹴りを喰らうとは…神崎、ご愁傷さま。

 

「そや!小鳥遊くん弁当やろ?一緒に食べへん?」

 

「え?えっーと僕はいいけど皆は大丈夫なの?」

 

「別にいいわよ」

 

「私も小鳥遊くんと話したかったしね(転生者かどうか気になるし)」

 

「私も大丈夫ですよ」

 

「私もOKだよ!」

 

「私も大丈夫だよ」

 

「わ、私も一緒に食べたかったから全然大丈夫なの!」

 

アリサ、御林、すずか、アリシア、フェイト、なのはの順で答える。さいでっか。

 

そんな訳で今俺は屋上でなのは達と飯を食っています。男女比は7対1。うん、肩身が狭いね。使い方あってるか分からないけど。

 

「なぁなぁ小鳥遊くんってその弁当自分で作ってんの?」

 

「うん、まぁ大体は自分で作ってるね」

 

「うわぁ…唐揚げ美味しそう…」

 

「ちょっと姉さん…でも本当に美味しそう…」

 

じっと俺の弁当にある唐揚げを見つめてくるテスタロッサ姉妹。

 

「えっと、良かったら食べる?」

 

「えっ!いいの?」

 

「うん。まだあるし、たまには他の人の意見も聞いておいた方がいいと思って。はいどうぞ」

 

「それじゃ、いっただきまーす!あむっ!むぐむぐ…美味しい!めちゃくちゃ美味しいよこの唐揚げ!」

 

「あはは、それなら良かったよ……ってどうしたの皆?」

 

「いや、小鳥遊くんが今普通にアリシアにあーんをしたからびっくりして…」

 

「あ…」

 

し、しまったぁー!!やっべ、いつもレヴィにやってたからその癖でついやっちまったー!アリシアとレヴィは雰囲気が似てるから……。

 

「えっと…よく家族にもやっててさ、慣れてるんだよ」

 

「へぇー、アンタ弟とかいたのね」

 

「うーん…弟って言うよりは妹の方があってるかな?」

 

「そう言えば小鳥遊くんのご両親って今どうしてるの?」

 

すずかがお弁当(重箱)を食べながら話しかけてくる。豪華ですね。

 

「二人共外国に戻って仕事してるよ」

 

「えっ!じゃあ今子供だけで暮らしているの?」

 

「まぁ一通りの家事や料理は出来るからね。それに分担してるから負担は少ないよ」

 

「分担って、小鳥遊くんの家って今何人で暮らしているの?」

 

「えっーと…僕含めて6人かな」

 

「「「「6人!?」」」」

 

うおっびっくりした。さっきまですずかと喋っていたらすずかだけじゃなくてなのはやアリサ、はやてが会話に入って来た。

 

「ちょ、ちょっと!いくら兄弟でも6人は多すぎじゃない!?」

 

「いや実際は血は繋がってなくて…養子みたいなものでさ」

 

「な、成程ね…それなら納得出来るわ」

 

「その子達って何歳くらいなん?」

 

「殆ど同い年だよ」

 

「「「「同い年!?」」」」

 

またか。

 

「ロクトくんは同い年の女の子と一緒に暮らしているの!?」

 

「あぁまあな。と言っても別に変な事はしてないぞ?第一家族だし」

 

「ちょちょ、ちょっと待ちなさい」

 

俺となのはが話していると御林が手のひらを前に出して話を止めてきた。

 

「何?咲ちゃん」

 

「なんだよ御林」

 

「いや、なのは…あんたいつから小鳥遊くんの事を名前で呼んでいるの?あと小鳥遊くん、貴方喋り方と雰囲気がさっきまでと全然違うのだけれど…」

 

「あ゛……」

 

し、しまったぁぁああ!!!!なのはが普通に名前で呼んできたから普通に話していたー!!ってか俺今日やらかしすぎじゃね!?

 

『《碌斗くん…》』

 

「《やめろぉ!そんな呆れたような声で俺を呼ぶなぁ!》」

 

「で、小鳥遊くん?どうなの」

 

御林のその目は「嘘は言わせねーぞ」と言う迫力があった。

 

「えっとですね……あー!!あんな所に神崎くんが!!」

 

「「「「「「「えっ!?」」」」」」」

 

皆が俺の嘘に気を取られている隙に俺は猛スピードで弁当を片付けて屋上を脱出した。

 

 

 

side咲

 

「何よいないじゃな、いない!?」

 

アリサがホッとした様に小鳥遊くんの方を向くと小鳥遊くんはもうそこにはいなかった。

 

「逃げ足が速いわね…」

 

「まぁでも事情を聞くだけならなのはだけで充分じゃない?」

 

「えっ?」

 

一斉にみんなの目がなのはに向く。

 

「さあなのはちゃん、何があったか話してもらうでー」

 

「え、えっと実は…」

 

それから私達はなのはから話を聞いた。

話を聞いた後、皆(なのは以外)は小鳥遊くんの変わりように驚いてたみたいだけど私は納得した。

 

「(小鳥遊碌斗…彼は転生者!)」

 

なのは、はやて、共に私が会う前に会って友達フラグを建てている所(※碌斗は全くの偶然です)や露骨な性格の変化(※ただ碌斗がヘマをしただけです)、そんなのは二次創作に出てくる主人公以外ありえない…!

転生者という事はつまり…小鳥遊くんは魔導師!

だが、この事実をどうやっと説明する?何故私が彼が魔導師である事が分かるのかって事になる。

私がどうするか思案しているとはやてが話始めた。

 

「うん、やっぱり小鳥遊くんはロクトくんやったんや」

 

「それってはやてが昔図書館であった子のこと?」

 

「そうや、口調といい声色といいロクトくんそっくりやったんやから後は顔見ればもう間違い無いで!」

 

「ま、それは追追聞いてみましょ。というか小鳥遊くん、翠屋の常連だったのね…しかも恭也兄さんや美由希姉さんに稽古を付けてもらうほど仲が良いなんて…」

 

「もしかしたら私達が気づいてないだけで、どこかで会っていたかも知れないね」

 

すずかが微笑みながらそう話す。確かにその可能性は大いにある。だが「P・T事件」や「闇の書事件」で私達は彼とあったことがない。神崎とは鬱陶しいほど会うって言うのに…アレだろうか?原作キャラとは関わらず平穏に暮らしたいと言うやつだろうか。それならば少し悪い事をしたかもしれない。

 

「そうだ!なら今日ロクトと一緒に翠屋行こうよ!」

 

突然アリシアが立ち上がってそんなことを言う。

でも、案外いいかも知れないわね。

もしかしたら彼がボロを出すかもしれない、そんな期待を持ちながらアリシアの提案に賛成した。



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真名を言え!白状します……

side碌斗

 

「じゃあ早速キリキリ吐いてもらおうかしら?小鳥遊くん」

 

「反論、拒否権は?」

 

「却☆下」

 

「ですよねー」

 

はいどうも、翠屋で女子7人に取り囲まれ尋問中の小鳥遊碌斗でーす。そこっ!羨ましいとか言わない!

俺が冷や汗を流していると黒い笑みを浮かべたはやてが近づいてきた。

 

「まずは私からやな。小鳥遊くん…いや、ロクトくん。久しぶりやな」

 

「…はぁー。ああ、そうだな。久しぶりだな八神」

 

「やっぱロクトくんやったか。何で今まで隠してたん?」

 

「勘違いするな。俺は本当に忘れていただけ「はい、ダウト」はい?」

 

俺が嘘八百で誤魔化そうとすると、御林が途中で遮ってきた。

 

「小鳥遊くん、はやてにこう言ったらしいわね『八神さんみたいな綺麗な人、1度見たら覚えてますよ』って、あとさっき図書館であったって事を認めたわよね?そしてはやては図書館であった時も小鳥遊くんが転校してきて自己紹介した時も、どちらもはやてはフルネームで『八神はやて』と自己紹介しているわ。いくら2年前の事だからって同姓同名の人物を、ましてや自分から『1度見たら覚えている』って言った相手を忘れたなんて、ありえないわよねぇ?」

 

何コノ子コワイ。

名探偵バーローさんやじっちゃんの名にかけて探偵さんもびっくりな推理だよ。

 

「はぁ…誤魔化すのは無理か…」

 

「やっぱり嘘だったのね」

 

「何で嘘なんかついたん?」

 

「私の時もだよ…私、ずっと会いたかったんだよ?」

 

「いや、なのはは単純に名前教えて貰ってなかったしこっちも教えてなかったから」

 

まぁ後で気づいたんだけどな。

 

「そう言えばそんな事言ってたわね」

 

「あとはやてに関してはメンドくさかったから」

 

「なんやそれ!?」

 

「いやだって、転校初日にいきなりあんな奴に絡まれるなんて面倒な事しかねぇじゃん」

 

「「「「「「「あぁ、確かに」」」」」」」

 

声を揃えて言ったよ、この子達。

 

「じゃあ次は私ね、直球に聞くわ。貴方魔導師でしょ?」

 

「は?魔導師?なんだそりゃ?」

 

「隠さなくてイイわよ。ここにいる皆、魔法の事も管理局の事も知っているから」

 

「…聞いていいか?何故そう思う?」

 

「そうね。まず第一に貴方から微弱な魔力反応がする。まぁ自分自身が気付かないだけで魔力を持っている人って結構いるからコレだけなら別に気にしなかったんだけど…二つ目に小鳥遊くん、貴方…私の幻術を防いだでしょ?」

 

「えぇ!?咲の幻術を防いだ?嘘でしょ!?」

 

「それ本当なの?咲」

 

「えぇ、私の幻術は特殊だから分かるんだけど…小鳥遊くんは地獄道を幻術対策のプロテクションか何か防いだみたいね」

 

「で、でもほんなら咲ちゃんかなのはちゃんのどっちかが魔法陣に気づくやろ?それに魔力反応にも気づくはずや」

 

「魔法陣は別に隠すのは難しくないわ。幻術を防ぐだけのプロテクションなら頭の中にちっちゃく張れば良いだけだもの。ただ魔力反応に関しては推測になるんだけど…デバイスに何かしてもらったのかしら?」

 

「ろ、ロクトくん、デバイスも持ってたの!?」

 

うわぁ…殆どバレてらぁ。御林のやつ、本当に探偵になれるんじゃないか?

 

仕方ない…ここまで来たらバラしてもいいか。

 

「《アラジン…魔導師って事と御林だけに俺が転生者だって事をバラすぞ》」

 

「《いいの?》」

 

「《あぁ、ここまで来たなら仕方がない。これ以上隠し通すのは無理だ》一つ聞いてもいいか?」

 

「何かしら?」

 

「魔法関連の事は、お前らの親も知っているのか?」

 

「そうねぇ…私となのはの家族は全員知ってるし、フェイトとアリシアは家がミッドだし…知らないのはアリサの家族とすずかの両親だけね。忍さんは知っているわ」

 

成程…殆ど知っているって訳か。というか御林のやつ、さりげなく転生者かどうか探ってきやがった。すずかの姉の名前なんか俺は聞いたことがない。だが、原作知識としては知っているからここですずかの姉は知っているのかと反応すれば転生者だと断言出来るようになる。

 

「はぁ…本当に、何処ぞの小学生探偵にも負けない名推理をしてくれるな、御林」

 

「!…つまり、認めるのね?」

 

「あぁ、俺は魔導師だ。デバイスはコイツ…アラジンだ」

 

首にかけていた待機状態のアラジンを皆に見せる。

 

『やぁ、僕はアラジン、よろしくね!』

 

「アラジン…?アラビアンナイト?」

 

「まぁそんな感じの元ネタから来ている。それより、俺は自分が魔導師である事を話したが…どうするんだ?俺は別にこっちで魔法を使った事は無いぞ?」

 

「別に管理局に突き渡すなんて事しないわよ。ただ気になったから聞いただけよ」

 

「そうかい、なら良かった。じゃあ俺にはもう用が無いな?帰ら「せると思った?」…まだ何かあんのかよ」

 

「アリサやすずかが着いてこれてないでしょ?貴方の性格が変わったことも含めて」

 

「別に俺は性格が変わった訳じゃねぇぞ。これが素なだけだ」

 

「じゃあ何よ、いつものは嘘だったった訳?」

 

アリサがどこか不機嫌そうに聞いてくる。

 

「まぁな、だが勘違いすんなよ。偽ってたのは口調と魔導師である事だけだ。それ以外は本音で話していたぜ」

 

実際、原作に関わりたくなかっただけでこいつらを嫌ってる訳では無い。むしろ人としては好きな部類に入る方だ。

 

「ふ、ふーん。じゃあ私達のこと名前で呼びなさいよ」

 

「は?何でそうなる」

 

「私達に嘘をついていたのは事実でしょ、ならそのお詫びとして名前で呼びなさい」

 

「いやまぁ、騙していたのは本当だからそれくらいで許されるなら別にいいけど…お前らは俺が名前で呼んで良いのかよ?」

 

「私は別に構わないわよ」

 

「私も呼んでほしいな」

 

「そうだよ!というか私は名前で呼んでって頼んでたよね?」

 

「私も同じかな。いつまでもテスタロッサじゃ紛らわしいしね」

 

「勿論私もおんなじや!それに図書館の時頼んだのに断られたしなぁ」

 

「わ、私は大歓迎だよ!」

 

御林、すずか、アリシア、フェイト、はやて、なのはがそう言ってくる。アリサに視線で問い掛けると「勿論私もよ」と言ってきた。

 

「はいはい分かったよ」

 

「じゃあ今ここで練習として呼んでみようよ!」

 

「おっ、いいやんか。ほら言ってみぃやロクトくん」

 

コイツら…他人事だからって面白がって…。

 

「はぁ……アリサ、咲、すずか、アリシア、フェイト、はやて、なのは……コレでいいのか?っておい、どうしたお前ら、顔赤いぞ?」

 

「な、何でもないわよ!///(うぅ〜名前を呼ばれるのがこんなに恥ずかしいなんて…あのアホに呼ばれてもなんにも動じないのにぃ!)」

 

「えへへ…ロクトくんがやっと名前で呼んでくれた…なのはってなのはって…//////」

 

「い、いやぁー。面と面で向かって言われるのってなんや恥ずかしぃなぁ//////(ロクトくんに名前呼ばれただけでドキッとしてもうた…まさか、うち……この歳で心筋梗塞?)」

 

「(ふーん…今のところ落ちているのはなのはとはやての2人で落ちかけているのがアリサって所ね。フェイトとアリシアとすずかはやっと名前を呼んでくれた友達って所かしら?)…面白くなってきたわね」

 

顔を赤くしているアリサ、なのは、はやてを見てニヤリと笑う咲。フェイトとアリシアと俺はそんな光景を見て一緒に首を傾げていた。

その後、俺等はシュークリームを食べながら談笑していた。

 

なのはside

 

「…じゃ、俺はそろそろ帰るぞ」

 

そう言ってロクトくんは席を立ちます。

 

「えー、もっと話そうよー」

 

アリシアちゃんはまだ話し足りないのかぶーぶー言っています。

 

「めんどくさい。高ま「なのはなの」…なのは、代金は幾らだ?ついでだからお前らの分も払ってやる」

 

「あ、お金は気にしないでいいよ。お母さんが良いって言ってたから」

 

「…桃子さんが言ってたなら仕方ないな。んじゃお土産に何か買ってくか。士郎さーん、シュークリームありますか?」

 

ロクトくんはそう言ってお父さんがいるカウンターの方へ歩いていった。

 

「…にしても今日は驚く事ばかりね。私と咲がテストで負けた事とあのアホがアイツの事を殴ったり、実はなのはの家族とは親しかったり、魔導師だったり……濃い一日だったわね…」

 

アリサちゃんは話終わるとため息を吐きます。それを見て苦笑いしながらフェイトちゃんが話します。

 

「でも確かに驚いたよ。ロクトが咲の幻術を防いだなんて…」

 

「気になったんだけど咲ちゃんのその幻術ってそんなに凄いの?」

 

「そら凄いでぇ。咲ちゃんの幻術はリアリティが半端じゃないんや。例えば……実際に見せてあげたらどうや?」

 

「確かに説明するのは面倒かもね。アリサ、すずか、今から見せるけど驚かないでね」

 

咲ちゃんはそう言うと小さい結界を形成します。

 

「第一の道、地獄道」

 

咲ちゃんの右目に「一」の字が浮かび上がります。すると私達のすぐ横に小さい火柱が立ち上ります。

 

「キャッ!こ、これが幻術なの?」

 

「凄い…本当にそこにあるみたい。熱っ!」

 

「あっ、気をつけてね。実際には火傷しないけど熱いって感覚はあるから。それじゃ次は凍らせようかしら」

 

すると火柱は消えて代わりに結界が氷漬けになります。

 

「うわっ!今度は寒い!」

 

「さ、咲ちゃん!もう分かったよ!」

 

「そう?じゃあ結界も解くわね」

 

そう言って咲ちゃんは結界を解く。いつものお店の風景に戻る。

やっぱり咲ちゃんの幻術はすごいなぁ…レアスキルなんだっけ?

 

「おい、咲。何でいきなり結界なんか張ってんだ?」

 

「ひょあ!?」

 

結界が無くなった瞬間、隣にロクトくんがいたのだ。それにビックリして変な声を上げちゃった…恥ずかしい……。

 

「なんだその叫び」

 

「おっ、驚いただけだもん!」

 

「ふぅん。で、何してたんだ?」

 

流された!?

私がショックを受けている間、咲ちゃんが結界を形成した理由を説明していました。

 

「お前のそれ、レアスキルだろ」

 

「あら、良く分かったわね」

 

「一応見てたんでな」

 

「へぇ…そうなの…」

 

2人はお互い目を逸らさずに睨み合ってるように会話してます。

 

「そっ、そう言えばロクトくん、シュークリーム買ってくれたんだね!」

 

「ん?ああ。家族用のお土産として買わせてもらった。っと、聞きたいことも聞けたし、帰るわ」

 

ロクトくんはそう言って店の出口に向かいます。

 

「あっ!ロクトくん!」

 

私は別れの挨拶をしようとするとロクトくんが扉を開くより早く、扉が開かれました。

 

「おっと、すまない…ん?お前…ロクトか?」

 

そこには私のお兄ちゃんがいた。



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お久しぶりですね、おい決闘しろよ

side碌斗

 

「久しぶりだなロクト。元気にしていたか?」

 

「お久しぶりです恭也さん。ボチボチと言った感じですかね」

 

この人は高町恭也。高町なのはの兄だ。『とらハ3』で主人公を務めた人でもある。とらハ3での彼の人生は中々ベリーハードなので省略するが詳しく知りたい人はwikiやpixivで調べてくれ。

まぁこの世界だと『リリなの』に限りなく近いifの世界なので少し違うかもしれないが。

 

「帰るところだったか?」

 

「ええ、まあ」

 

「ふむ…なぁロクト。最後に模擬戦をしたのはどのくらい前だったか覚えてるか?」

 

「えっと…大体1年前くらいですかね」

 

あの頃はシュテル達と暮らし始めたばかりだったので色々忙しかったのだ。それ以来、家族が増えた事でやる事も色々増え、忙しくなったので1年近く恭也さんから稽古を付けてもらうことはなかった。

まあ単純にタイミングが悪かったり会えなかったりと言ったものもあったが。

 

「どうだ?折角会えたんだ。久しぶりに稽古をつけてやろうか?」

 

「…そうですね。お願い出来ますか?」

 

俺が了承するとは思っていなかったのか恭也さんは目を丸くしていたが、数秒経つとその目を好戦的なものに変えて俺を見てきた。

 

「俺から言っておいて何だが…怠けていた体では着いてこれないと思うぞ?」

 

「久しぶりすぎて目が濁りましたか?俺がトレーニングをサボっていたように見えますか?」

 

こう見えて、俺は毎朝トレーニングを欠かさずしている。

朝5時に起きて5キロランニングをする(約25分程度)。走りきると次には剣術、槍術の訓練。マギのアリババが使う『王宮剣術』や白龍の使う槍術などを使いこなせるように仮想の敵相手でイメージトレーニングをする(約30分程度)。因みに敵は恭也さんをイメージしているのだが未だに勝てるイメージは3割をきらない。偶に父さんを仮装の敵として戦ってみるのだが勝てるとイメージが1度も湧かない。

一通り訓練し終わると次は結界を展開させて魔法のトレーニングと金属器や眷属器を使った戦い方や技の訓練、魔装の練習をする(約1時間程度)。そしてシャワーで汗を流して朝食を食べ登校する。因みに夜には腹筋や背筋、腕立て伏せ等をやる。無駄な筋肉は付けたくないので全て100回程度で終わらせている。

大体この内容を毎週日曜日以外繰り返している。

そして補足なのだが俺が特典で貰った『マギに出てくるキャラの武器や能力を全て使えるようになる』の能力の所にはキャラクターの特技なども含まれるようで俺がアリババや白龍の剣技や槍術を使える理由だ。だがそれはあくまでアリババ、白龍の技であって俺のでは無い。だから俺はその動きを脳内で再生してトレースする事によって自分のものにしようと思っているのだ。剣技の方は大体9割近くはものにしたが槍術はまだ6割程度と言ったところだ。

話が逸れたな。俺の挑発に聞こえるセリフを聞いて士郎さんはニヤリと笑った。

 

「フッ、確かにサボってはいないようだな。よし…着いてこい」

 

「はい」

 

俺は士郎さんについて行って翠屋を後にした。

 

sideはやて

 

私達はなのはちゃんのお兄さんとロクトくんの会話を聞いていたのだが…なんやら面白そうな事になったなぁ。

 

「なのはちゃん、折角やし見に行かへん?」

 

「ふえ?で、でもいいのかなぁ?」

 

「いいんじゃない?士郎おじさんももうお店閉めるみたいだし…2人の事見に行くんですよね?」

 

「やっぱり咲ちゃんは鋭いね。2人が模擬戦やるなら審判が必要だからね、それにもうお客さんも来ないみたいだし」

 

なのはちゃんのお父さんも見に行くみたいやな。これは便乗するしかない!

 

「ほんなら私達もついて行っていいですか?」

 

「構わないと思うよ。二人共見られたりするのは余り気にしないみたいだし」

 

「よっしゃ!なら善は急げや!行くでみんな!」

 

「はやて…それ使い方間違ってるわよ…」

 

アリサちゃんの呆れた呟きが後ろから聞こえた気がした。

 

side碌斗

 

「ん?何だお前らも来たのか」

 

俺と恭也さんが高町家の道場に到着して準備運動をしているとなのは達御一行が道場にやってきた。

 

「ロクトが戦うって聞いて!」

 

「私も興味があって」

 

「私は面白そうやったから!」

 

「はやてと同じく」

 

「私は気になったからかな」

 

「わ、私は別に皆が行くから来ただけよ!」

 

「お兄ちゃんとどっちが強いのか気になって」

 

アリシア、フェイト、すずか、なのはの理由は分かる。まぁアリサの理由も分かる。だがはやてと咲、テメーらはダメだ。

 

「遊びじゃねぇんだが…」

 

「あー大丈夫よ、冷やかしに来た訳じゃなくて純粋にどれくらい強いのか気になったから来たのよ」

 

「まぁ別にいいけどな…そろそろやりますか恭也さん?」

 

「あぁ俺は大丈夫だが、ロクト。お前はその格好でいいのか?あと髪も邪魔じゃないのか?」

 

恭也さんに指摘され俺の服装を確認する。そう言えば聖祥の制服のままだったな。

このままやるか着替えるか、そもそも着替えが無い…いや、そう言えば。

 

「あのー恭也さんと士郎さんに聞きたいんですが」

 

「なんだ?」

 

「どうかしたかい?」

 

「お二人は魔法の事知ってるんですよね?」

 

「…驚いた、ロクト君も知っていたのかい?」

 

「ええまぁ、俺も魔導師なんで」

 

2人はその言葉に驚いて数秒間、俺を凝視していた。

 

「たしかに制服のままだと動きにくいんでちょっと着替えようかと思いましてね、咲!俺の鞄の中から杖とってくれ。見たら分かるから」

 

「杖?まぁいいけど……ってコレ!?」

 

「そうそうそれ。投げてくれ」

 

咲が投げたのをキャッチする。その杖とは『マギ』でジュダルが使っていた短い方の杖だ。

そして俺は【ソロモンの知恵】を発動させる。すると俺の額にソロモンの魔法陣が浮かび上がり、光始める。その光は俺の髪を靡かせる。

 

「ロクトのおでこが光ってる!?」

 

レアスキル、【ソロモンの知恵】。マギ作中内で使われている魔法を全て生身の状態でも使うことが出来るレアスキルだ。だがその代わりマギ以外の作品の魔法は使う事ができない。まぁ必要ないんだけどな。

 

「〈錬金魔法(アルキミア・アルカディーマ)〉」

 

俺がそう言って杖をかざすと何も無い空間から黒いジャージが現れる。

 

「なっ!いきなり服が出てきた!?」

 

恭也さんが突然現れた服を見て驚いている。

錬金魔法(アルキミア・アルカディーマ)

これは空気中の分子を集めて再構成することによって 新しい物質を生み出すことが出来る魔法だ。使い勝手はかなりいいが魔力の消費が激しいのが玉に瑕だ。

 

「〈隠者の水膜(シャラール・マグド)〉」

 

「わっ!?今度はロクトが消えちゃった!」

 

 

いい反応をありがとうアリシア。

隠者の水膜(シャラール・マグド)

 水を集めて水蒸気を作り出して、光の屈折を操作することによって自身の姿を消す事が出来る魔法だ。

俺の姿を消している間に先ほど錬金魔法で出したジャージに着替える。

 

着替え終わったので隠者の水膜を解除する。

 

「わっ、出てきた」

 

「人を虫みたいに言うんじゃねぇよフェイト。にしてもまだ髪が邪魔だな…〈錬金魔法〉」

 

俺はもう一度錬金魔法を使いヘアピンとアリババのナイフそっくりな木刀を生み出す。

俺はヘアピンで前髪を留めて顔を出す。視界良好だ。

 

「ではやりますか。士郎さん、審判お願いします」

 

「あ、ああ。では恭也も準備はいいか?」

 

「多少驚いたが問題ない」

 

そう言う恭也さんの手にはいつの間に持っていたのか木刀が握られていた。

 

少し間を開けてお互いに構えをとる。静寂が道場を包み込む。

 

「これより高町恭也対小鳥遊碌斗の模擬戦を始める!では…両者構えて………始めっ!!」

 

士郎さんの声によって試合が始まった。



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決闘後のフラグ乱立

この作品は本当に頭の悪い作品なので頭をすっからかんにしたい時に読むのがオススメです()


side碌斗

 

「…どうした?来ないのか?」

 

「…では、行きます!」

 

俺は木刀(短剣サイズ)を構えながら恭也さんに向かって走り出す。

 

「シッ!」

 

狙うのは手首。刃を下にして突きを繰り出す。

 

「ふん!」

 

だがそれを恭也さんは簡単に受け流す。そしてそのまま斬りかかってくる。

俺はそれを防ぐのではなくステップを踏むことによって回避する。

 

「んな攻撃当たりませんよ」

 

「そんな事は、知っている!」

 

恭也さんはそう言いながら更に袈裟斬りをしてくる。

少し足を開いて木刀で削るようにして勢いを殺す。

 

「ッ!」

 

それを見て恭也さんはすぐさま離脱する。

やはり恭也さんは強い。ここまで一撃も当てれていない。が、それはあちらも同じこと。

 

俺が恭也さんに見せている剣術はアリババの王宮剣術だけ……アレを見せてみようかな。

 

「ふむ…確かにサボってはいなかった様だな。一つ一つの動きのキレが増している」

 

「ありがとうございます。ですが…まだ褒めるのは早いと思いますよ?」

 

「何?」

 

俺は王宮剣術の構えを解いて、少し上半身を捻った構えをとる。

 

この形の木刀で出来るかどうか分からないが…。

 

「初めて見る構えだな…霞の構えに似ているが……」

 

「まぁやってみれば分かりますよ」

 

「そうだな。そうさせてもらう!」

 

恭也さんはそう言って肉薄して、そのまま勢いを利用して唐竹割りをしてくる。

俺はそれを木刀の側面(・・)を使って受け流す。

 

「なっ!?」

 

「そして…こうだっ!」

 

「ぐぅ!!」

 

すぐさま王宮剣術に切り替えて連撃をしかける。

 

「首!肘!肩!どうしました恭也さん!」

 

「くっ!このっ、調子に乗るな…!御神流!薙旋!!」

 

「うおっ!?」

 

抜刀からの四連の斬撃。それを何とか受け流すが、体勢を前にいる崩してしまい片膝を着きます。

それを見てチャンスとばかりに攻め上がる恭也さん。

右薙ぎをしてくる恭也さんの木刀を俺は木刀で防ぐ。だがそれだけでは恭也さんは止まらず木刀を振り下ろしてくる。

それを待ってた(・・・・・・・)

振り下ろされる木刀を右側にスライディングする事で躱す。

そして、素早く背後に回り恭也さんの首元に木刀を振り下ろす。

勝った!

 

「え?」

 

「…驚いたぞ。まさか…神速を使わせる程強くなっていたとはな」

 

気づいた時には恭也さんは俺の後ろにいて、木刀を俺の首元に当てられていた。

 

「……参りました」

 

「勝者、高町恭也!」

 

士郎さんの声によって試合が終わった。

 

sideフェイト

 

速い。

どちらも凄まじいスピードだった。生身の体であんなスピードを出す2人を見て、私は身震いした。

そして最後になのはのお兄さんが見せた技…確か神速って言ってたっけ?アレを使った瞬間、お兄さんは私の、いや恐らく皆の視界からも消えた。まるで瞬間移動をしたかのように、いつの間にかロクトの後ろに回っていたのだ。あのスピードは私のソニックムーヴと同じくらいの速さだった。

 

「凄かったね!フェイト!」

 

「うん…速かった…」

 

それにロクトが前髪をヘアピンで留めた事によって彼の素顔を初めて見ることが出来た。

カッコよかったな……。

 

「フェイト?どうかしたの?顔が赤いよ?」

 

「えっ!?な、何でもないよ姉さん!」

 

「(おやおやこれはー?)流石ね…でも、ロクト君ってカッコよかったのね」

 

「「「え!?」」」

 

咲ちゃんの一言になのは、はやて、アリサが一斉に反応した。

 

「ま、まままさか!咲ちゃんまで!?」

 

「ロクトくんに惚れムグゥ!?」

 

「ちょっ、ちょっと!何言ってんのよはやて!アイツに聞こえちゃうでしょ!べ、別に私はどうでもいいけど!」

 

やっぱり3人ともロクトの事を好きなのかな…?

 

…何だろう?今心の中でチクッとした………。

 

「安心しなさい。私は違うわよ…それにしても恭也兄さんは大人気ないわね…神速まで使うなんて」

 

「その神速って何なの?」

 

すずかが私も疑問に思っていた事を咲に聞いてくれた。

咲が言うにはなのはのお兄さんが使っている古流武術の奥義の歩法らしく、それを使うと周囲の動きが止まっているように感じ、そに加えて無意識にかかっている肉体のリミッターが外れ、限界以上の身体能力を発揮出来るようになる技らしい。周りから見れば急に消えて突然現れた様にしか見えないらしい。

 

「凄いね……人ってそんな事も出来るようになるんだね」

 

「いやぁ…それは高町家の人間だけじゃないかしら?主に恭也兄さんと美由希姉さん」

 

なのはの家族は凄い人しかいないということが分かった。

私達が話していると、あちらも話終わったのかロクトとお兄さんがこちらに近づいてきた。

 

「あぁー疲れた」

 

「何だ?たった1回の模擬戦をやっただけで、だらしがない」

 

「恭也さんとの試合は普通の5倍は疲れるんですよ。それにしても神速かぁ…どうやって対処しようかな…」

 

「そんな簡単に対処されては奥義の面目が無いんだが…今日はもう帰るのか?」

 

「ええ。元々今日はあの時に帰ろうと思っていましたからね。まぁ久々に恭也さんと戦えて楽しかったですけど」

 

「ふっ、俺もだ」

 

2人は仲良さそうにお互い笑いながら話しています。

そしてなのは達が2人に近づいて行きます。

 

「ロクトくん!すっごい強かったんだね!」

 

「そ、その…かっ、カッコよかった…わよ///」

 

「と言うか聞きたかったんやけどロクトくん、何で学校では顔隠してんの?その、そんなにかっこいいのに///」

 

「ん?目立ちたくねぇからだよ。元々はお前らに顔を見られたくなかったってのもあったが…バレちまったし明日からは短くして来るか?」

 

「「「「いいと思う!」」」」

 

ロクトの言葉を聞いて私となのはとはやてとアリサは声を合わせて言った。

 

「お、おお。どうした?って何ですか恭也さん」

 

「ロクト…幾らお前でもなのははやらんぞ」

 

「何言ってるんですか、いりませ「それはなのはに魅力がないと言うことか!?」あーメンドくさい状態になったなぁ……それじゃ俺帰るわ!じゃあな!」

 

ロクトはそう言うと素早く荷物を纏めて道場から出ていった。

 

「じゃあ恭也さん、士郎さん、今日はありがとうございました!次は負けませんからね!」

 

「待てっ!まだ話しは終わってな「お兄ちゃん…」なのは?」

 

「ちょっとO☆HA☆NA☆SIしよーか?」

 

…なのはの周りから黒い何かが出ているのが見えます。それを見ると何故か震えが止まりません…道場にいる大半が皆震えています。

私達は2人を放置して帰ることにしました。なのはのお父さんからお土産を貰ってみんなと別れました。

 

 

 

その後、お兄さんが開放されたのは1時間後だったとか。



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秘密を打ち明ける。それは真実?

side咲

 

「《明日、なのはが泣いていた公園で9時》」

 

恭也兄さんとロクト君が模擬戦をした日の帰り、ロクト君からこの念話が届いた。

 

「よぉ、随分早いな」

 

「それは貴方もでしょう?」

 

「まあ呼んだのは俺だしな。呼んだ理由については察しがついているんだろ?」

 

「ええ…まぁね」

 

私が答えるとロクト君は周囲に結界を展開させた。

 

「悪いな、だがこの話を聞かれると困るのはお前も同じだろ?」

 

「別に怒ってなんか無いわよ…さ、本題に入りましょう」

 

「いやその前に聞きたいんだが、お前は一体いつこの世界に来た?」

 

それはつまりいつ転生したか?という意味の質問だろう。

 

「恐らく貴方や神崎と同じだと思うわよ」

 

「ふむ…じゃあもう一つ、お前はいつ亡くなった?あぁ、答えたくなければ言わなくていい」

 

「大丈夫よ。平成○○年よ」

 

「…やはり、か。俺は平成○○年だ」

 

それを聞いて驚いた。何故かと言うと…彼が亡くなった年は私の2年後だったからだ。

 

「やはりって、どういう意味かしら?」

 

「まぁそれも含めて説明するからちょっと待ってくれ。取り敢えず座れよ」

 

ロクト君がそう言うと公園のど真ん中に机とソファが現れる。

 

「じゃあまずは俺から話すか…知っての通り、俺もお前と同じ転生者だ。死んだ理由は――」

 

それから30分近く話を聞いた。彼の話によると、彼は不幸な事に神様のうっかりミスによって亡くなってしまったらしい。それで今まで私達の前に現れなかったのは単純に原作に関わりたくなかったからだった。

 

「悪い事しちゃったかしら?」

 

「いや、気にすんな。それより次はオレの特典についてだな…俺の頼んだ特典は『マギに登場するキャラクターの武器や能力が使えるようになる事』だあと二つはまぁ気にしないでくれ。レアスキルとかの説明はめんどくさいから省略させてもらう」

 

「…まぁいいけど、それってかなりチートじゃない?」

 

マギは私もアニメをそれなりに見てたから分かる。金属器や魔装を使えるって事だから戦闘に関してはかなり強い。

 

「まぁな。あくまで俺はマギが好きだから頼んだだけで原作キャラでハーレムを作りたいから貰った訳じゃねぇぞ?何処ぞの銀髪オッドアイと一緒にすんなよ」

 

「誰もあんな馬鹿とは一緒にしないわよ。それにハーレムを作るつもりならもっと序盤に、それこそ無印から絡みに来るはずだからね。あの馬鹿みたいに」

 

「そういうこった。まだ何か聞きたいことはあるか?」

 

「そうね…さっきのやはりってのはどういう意味?」

 

「ああ、あれか……これから話すのはあくまでも俺の予想だ。それでもいいか?」

 

「ええ」

 

「なら話すが、まず俺が死んだのが平成○○年で、お前が亡くなったのが平成○○年だ。つまりお前が亡くなってから2年後に俺は死んでいるって訳だ。ここまではいいな」

 

ロクト君の言葉に頷いて答える。

 

「じゃ、話を続けるが…さっきお前はこっちの世界に来たのは俺や神崎と同じと言ったよな?そこがおかしいんだよ」

 

「どういう事?」

 

「お前は俺より2年早く亡くなっている。神崎は知らんが…お前が俺より2年早く転生しているのなら俺はお前と2つ歳が離れてないといけない」

 

「…あっ、確かにおかしいわね」

 

「だろ?でだ、咲、お前誕生日いつだ?」

 

「えっ、4月3日だけど…」

 

「俺は2月1日だ。神崎は知らんが、この誕生日、前世と一緒か?」

 

「いいえ、違うわ」

 

「俺もだ。つまりこの誕生日に何かがある。転生する時の年齢は特典で頼まない限りは0歳からスタートだ。だが2年も空いていると俺の辻褄が合わなくなる。そこで神は俺をお前が0歳の頃に転生させた、誕生日というインターバルを使ってな。前世で空いた2年を誕生日を空けることによって違和感がないようにされたんだと思う」

 

「な、なるほどね…」

 

驚いた…そこまで推理できるなんて…。

私が呆けているとロクト君が足を組んで私の目を見た。

 

「じゃ、俺は話したし次はそっちの事を話してもらおうか」

 

「え、ええイイわよ。じゃあまずは私が転生する前の、前世の事を話しましょうかね」

 

 

前世の時の私は、幼い頃から病弱だった。病気になりやすい体質の私はしょっちゅう風邪を引いたりして学校を休んでいた。そしてそれは小学5年生の頃、突然だった。

不治の病、私は新種の病気にかかってしまった。その病気は体を動かすとどんどん筋力を失っていき、最終的に心臓が止まり死んでしまうという病気だった。私はその日から病院のベッドの上で生活する事になった。

日が経つにつれて、どんどん体は動かなくなってくる。最初は体が重く感じる程度だったが、16歳になる頃には人の手を借りなければご飯も食べれなくなったしまった。そのせいで、両親には迷惑をかけてしまっていた。自分は両親にとって邪魔な存在では無いのか?日に日にそう考えるようになっていた。だがある日、両親の会話を聞いてしまった。それはどうにかして私の病気を治せないか、と言う内容だった。外国なら治療する方法もあるのではないか、とか何であの子がこんな目に合わなきゃ行けないの、とか母の泣く声も聞こえた。それを聞いて私は涙が止まらなかった。

そして私が18歳の頃、病状が突然悪化して私は死んでしまった。

 

そして神様が私の人生を不憫だと思い、『魔法少女リリカルなのは』の世界に転生させてくれることになった。リリなのは小さい頃から見ていて知識はあるので転生しても困らないと思った。

私は病弱だったので神様に、『病気にならない健康な体が欲しい』という事を願った。神様はそれを了承して叶えてくれた。残り二つの特典は、リリなのの世界でなのは達のサポートをしたかったので前世で見ていた『家庭教師ヒットマンREBORN!』に出てくる六道骸、クローム髑髏の武器や能力を使えるようになる事と、ユニゾンデバイスとして『ムクロウ』を貰った。

転生する際に、神様から名前や顔はどうするか聞かれたが、親から貰った大切なものなのでこのままでいいと言った。

そして私は転生した。

それからなのは達と友達になり、一緒に色々な事件を解決して今まで暮らしてきた。

 

 

「とまあこんな感じよ」

 

私が話終わるとロクト君は複雑そうな顔をして謝ってきた。

 

「…その、悪かったな。辛い事を言わせちまって」

 

「別に気にしなくていいわ。もう吹っ切れているから。昔は昔、今は今よ」

 

「…強いんだな」

 

「それは貴方もでしょう?」

 

お互いの秘密を打ち明けあったからか、何だか前より距離が縮まった気がする。

 

「そうだ、気になってたんだけど…士郎さんの怪我を治したのってもしかして貴方?」

 

なのはの父、高町士郎はなのはが小さい頃に仕事で大怪我を負う。トラはではそのまま亡くなるのだが、リリなのでは一命を取り留めるのだ。

だがこの世界はリリなのに限りなく近いifの世界なのでもしかしたら死んでしまうかも知れないと思い、私は神様から『文豪ストレイドッグス』に出てくる「与謝野晶子」の能力、【君死給勿(きみしにたもうことなかれ)】をレアスキルとして貰った。

 

君死給勿(きみしにたもうことなかれ)】。このレアスキルは外傷であれば完全治癒させることができる能力で、他人だけではなく自身の傷をも癒やす事が出来る。が、瀕死の人間相手にしか発動しない能力という事で『文豪ストレイドッグス』の与謝野晶子は解体したり瀕死状態にしてから能力を使う事で恐れられていた。

私は士郎さんが入院した時にこの能力を使って治そうと思っていたのだが、都合が合わず、なのはと友達になってから1週間後くらいに士郎さんの意識が戻ったと聞き、見に行くと士郎さんは歩く事が出来る程度まで回復していた。

 

「貴方が治したって言うのなら納得行くわ」

 

「あぁ…確かにそれは俺だな。フェニクスで癒した」

 

ロクト君はそう言って剣を取り出した。その剣の柄頭の所に飾りがついている。

 

「フェニクス、慈愛と調停を司るジンだ。どんな大怪我でも一瞬で治す治癒の能力がある。他には…フェニクスの術を掛けられた者が殺意を抱くと戒めを受けるという効果があるな。簡単に言えば敵対する奴を縛り付けるって感じだな」

 

「それで士郎さんに怪我を治したの?」

 

「ああ。何かスマン」

 

「助けるのが早いか遅いかの違いだけだから気にしないで」

 

使えるなら使ってみたかったけどね。

 

「で、聞きたいのはこれだけ?」

 

「いや、なのはとフェイトの髪型についても聞きたい。アイツらはもうA"sが終わったこの時期だと髪型を変えてる筈だ。だが変わっていない」

 

「多分それは私やあの馬鹿が原作に介入したせいね。まあこの世界自体、リリなののifの世界だから少し変わってるのかも知らないけど」

 

「成程、まあ余り気にしなくていいか。じゃあ次なんだが

 

 

 

 

アリシアの事だ」

 

やはり来たか。

 

「これは多分貴方の想像している通りよ」

 

「つぅことはプレシアも無事って事か」

 

「そ、あのままじゃ悲しいからね…」

 

「まあな。助けたくて救えたならいいんじゃないか?それよりどうやってアリシアを生き返らせたんだ?…まさかジュエルシードを?」

 

「流石に使わないわよ。プレシアさんとアースラの技術を合わせて仮死状態まで戻したの。元々仮死状態に近い状態だったから戻すのも結構楽だったわ。それで戻したら私が【君死給勿】を使って生き返たの」

 

「…よく管理局から許可がおりたな」

 

「許可なんて取ってないわよ。私が幻術で本部に見つからないようにしてから生き返らせたんだもの」

 

「…それ、不味くね?」

 

「バレなきゃ犯罪じゃないのよ」

 

某神話生物少女のセリフを借りて言う。

 

「じゃあ次だがアリシアがいるって事はリインフォースもいるよな?」

 

「…驚いた、知ってたの?」

 

「いや。アリシアだけじゃなくプレシアまで助けようとするお人好しならリインフォースも助けてるんじゃないかと思っただけだ。どうやら当たりのようだな」

 

その通り、私はリインフォースも助けたかった。なのでリインフォースが消える前に幻覚でバグを隠した。そうした事でリインフォースは私が幻覚を解かない限り暴走することはなくなったので、今も普通に八神家で暮らしている。その内姉妹機としてリインフォースIIも産まれる事だろう。

 

「ん?バグは隠しただけで無くなってはいないんだよな?」

 

「ええ…私の力じゃそれが限界なの…」

 

そう、私の幻覚がなにかの拍子で解けてしまったらリインフォースはまた暴走してしまう。そんな事になったら今度こそ、リインフォースは消えてしまうだろう。

 

 

私が自分の力の無さを呪っていると、それをあっさり壊す一言を目の前の少年は言った。

 

「もしかしたらそれ、壊せるかも知れないぞ」

 

 

 

 

 

 

 

「はい?」



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守護騎士は戦闘狂!

side碌斗

 

「2年ぶりか…」

 

俺は目の前にある表札に『八神』と書かれた家を見て呟く。

インターホンを押すと、家の中から「は〜い」という女性の声が聞こえてきた。

 

「お待たせしました…あら?君は?」

 

「えっと…はやてから聞いてると思うんですけど、小鳥遊碌斗です」

 

「ああ君が小鳥遊くんね!どうぞ上がって下さい」

 

「お、お邪魔します」

 

俺を家にあげてくれた女性、闇の書を守る守護騎士『ヴォルケンリッター』の1人、「風の癒し手」湖の騎士シャマルだ。

シャマルに案内されてリビングに通される。

 

「はやてちゃーん!小鳥遊くんが来てくれましたよー!」

 

「おっ!態々ありがとなぁロクトくん」

 

「いや、元は俺から提案した事だ。気にすんな…それで本人はどこだ?」

 

「あ、ちょっと待ってぇな。今呼ぶさかい」

 

そう言うとはやては念話で呼ぶのか目を瞑り黙った。すると数十秒後、2階から足音がして女性が降りてきた。

腰まで伸びた綺麗な銀髪と紅眼が特徴的だ。

 

「お呼びでしょうか?我が主…そちらは?」

 

「昨日咲ちゃんが言っていた小鳥遊碌斗くんや。信頼出来る人やから睨むのやめーや。ロクトくん、この子がリインフォースや。皆からはリィフって呼ばれてるんよ」

 

「…八神リインフォースだ。宜しく頼む」

 

おーおー怖ぇ…はやてに止めろって言われてるのにめっちゃ睨んできてるよ。というか宜しくする気ないだろアンタ。

 

「はやてが言ってくれたが、小鳥遊碌斗だ。今日は咲に頼まれてアンタのバグを壊しに来た」

 

「…ふっ」

 

鼻で笑われたよ。めっちゃ馬鹿にされてるよ。

 

「主…申し訳ありませんが私はこの様な軟弱そうな輩に闇の書の防衛プログラムを取り除くことが出来るとは到底思えません」

 

「随分と言ってくれるな」

 

「思った事を言った迄だ。実際に貴様の魔力値を計測してみたが精々Fランク。主も、あの咲でも出来なかった事を貴様如きが出来るわけ無いだろう」

 

咲さーん、貴方が凄い信頼されてるせいでピンチなんですけどー。

 

「リィフ、それくらいにしとき」

 

「ですが主」

 

「ならば実力を測ってみたらどうだ?」

 

突然違う女性の声が聞こえ、扉の方を向くとそこには凛々しい風貌をした20歳くらいのポニーテールの女性がいた。

 

「シグナム…」

 

「シグナム、いきなり何言ってるんや。あっロクトくん、こっちはシグナム言うて私の家族の1人や」

 

「シグナムだ。よろしく頼む」

 

「俺は小鳥遊碌斗と言います。こちらこそよろしくお願いします…で、さっきのはどういう意味ですか?」

 

「そのままの意味だが?」

 

そうだった…シグナムは戦闘狂でしたね……。

この女性はシャマルと同じ、闇の書を守る守護騎士『ヴォルケンリッター』の1人、「烈火の将」剣の騎士シグナムだ。

 

「リインフォースと戦えと?」

 

「いやリィフは今戦えない。下手に魔法を発動させると防衛プログラムが起動するかもしれんからな」

 

「ではどうするのですか?」

 

「簡単だ、私と戦えばいい」

 

ですよねー。分かってた。

恐らくはやてからこの前の恭也さんとの模擬戦の事でも聞いたのだろう。

 

「ですがここには道場の様な場所がある様に見えませんが?」

 

「何を言っている、お前も魔道士なのだろう?ならば1つしかあるまい。何、私も主から話を聞いてお前と戦って見たいと思ったいたのだ。あの高町の兄と互角の勝負をしたと聞いたぞ?」

 

「…はやてぇ」

 

「う、嘘はついてないからモウマンタイや!…すんまへん」

 

俺のジト目が聞いたのか素直に謝った。

 

「はあ…仕方ない、でもこんな所でやる訳には行かないから移動してもらいますよ」

 

「それくらい構わないが…小鳥遊は転移魔法が使えるのか?」

 

「いやレアスキルです。【幻想の境界(ネクロファンタジア)】」

 

俺が右手を上げてそう呟くと空間が裂けて、スキマが出来る。スキマとは『東方Project』のキャラクター「八雲紫」の『境界を操る程度の能力』で開けた空間の事で、裂け目の両端にリボンが結ばれており、その開けている空間の中から多数の目が覗いているのが特徴だ。

空間の境界を操って裂け目を作り、離れた場所同士を繋げて移動することができる。因みに、夢や絵、物語にも行けるらしい。

突然現れたスキマに驚いてすぐ様臨戦態勢になるシグナム達守護騎士。

 

「あー、そんな構えなくていいですよ。これは俺のレアスキルですから」

 

「そ、そうなんや…何か不気味やなぁ」

 

「まぁ女子には少し怖いかもな。移動用のレアスキルだと思ってくれ。今は管理外の無人世界に繋いでいるから入ってくれ」

 

俺は八神家の皆にそう言ってスキマを潜った。

目の前に広がるのは草一つ生えていない荒野の大地だった。

 

「うわっ!ホンマに移動してる!」

 

「凄いな…」

 

「一瞬でこんな所に来れるなんて…」

 

「…………」

 

「ほう…確かにこの管理外世界に生命反応は無いな」

 

「うっわ何だこれ!?」

 

ん?後半2名は初めて聞いた声だぞ?

 

「ザフィーラ、ヴィータ、来てたのか」

 

「そりゃあんな面白そうな事大声で話してりゃ聞こえるし気になるだろ」

 

「我はそこの少年の実力が気になるから来た」

 

「えっと…小鳥遊碌斗です。よろしく」

 

「おうヴィータってんだ!ヨロシクな!」

 

「ザフィーラだ」

 

こっちの赤毛の三つ編みの少女は闇の書を守る守護騎士『ヴォルケンリッター』の1人、「紅の鉄騎」鉄槌の騎士ヴィータ。

なのはのデバイス、レイジングハートを大破させた事もあり、原作で唯一なのはに黒星を付けた相手だった筈だ。

見た目が幼いので海鳴市のおじいちゃん、おばあちゃん達から可愛がられており、またそれを本人も素直に喜んでいる。

こっちの青い狼は、闇の書を守る守護騎士『ヴォルケンリッター』の1人、「蒼き狼」盾の守護獣ザフィーラ。

人間形態にもなれて、人間時筋骨隆々とした青年のような姿になりヴォルケンリッターの中では最年長といった感じになる。普段は獣状態で過ごしているらしいがその理由は、はやてが犬を飼いたがっていたからという理由から。そのせいでご飯もドッグフードや犬用の食品皿に盛り付けられる事が殆どらしい……仲良くなったらメシ作ってあげよ。

 

「さて、そろそろ始めようか。レヴァンティン、セットアップ」

 

『set up』

 

機械的な声が流れるとシグナムの服装が変わって騎士服のようなデザインのバリアジャケットとなる。

シグナムは飛び上がると地面から15メートルほど離れた空中に留まった。

 

「ここまで来たしな、やるしかないか…アラジン、抑制用リミッターを1つ外してセットアップだ《戦闘用リミッターは解除しなくていい》」

 

『うん!セットアップ!《分かったよ》』

 

アラジンの声により、俺の体が光に包まれる。光が収まると俺の服装はレーム帝国で剣闘士をやっていた時のアリババの服に変わる。腰にはアリババが剣闘士をしていた時に使っていた剣を差している。俺はこの姿をバリアジャケットとして着ている。

抑制用リミッターを外した時の俺の魔力は大体B+程度になる。

抑制用リミッターとは、戦闘用のリミッターの上に更にかけるリミッターの事を言っており、魔力量をFランク以下まで抑え込むことが出来るリミッターだ。俺が魔導師である事を隠す為にしていたリミッターだ。

戦闘用リミッターとはその名の通り、状況に応じて魔力量を上げるためにつけているリミッターだ。こちらは3つ付けている。リミッターを付けることでトレーニングにもなるしな。

 

俺もシグナムと同じくらいの高さまで浮び、シグナムと20メートル程離れた所で剣を構える。

 

「ほう、リミッターを掛けていたとは…やはり小鳥遊も剣を使うのか」

 

「ええ、まあ……はやて、シャマルさん達も一応バリアジャケットを着といて下さい。流れ弾が行かないとは限らないんで」

 

「わかったで〜」

 

「あと、誰か審判というか合図をしてくれる人いませんか?」

 

「それなら我がやろう」

 

ザフィーラがそう言うと人型になって飛んでくる。丁度俺とシグナムの中間辺りで留まる。

 

「む…驚かないのだな?」

 

「あーえっと、咲から少し聞いていたんで」

 

「成程…それなら納得だ」

 

「……あと、今度良ければ飯作りますよ」

 

「……後で詳しく聞かせてくれ」

 

「…はい」

 

苦労してるんだな…。

俺はザフィーラに飯を作る時、めいいっぱい彼の好きな物を作ってあげようと思った。



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烈火の将と試合!

side碌斗

 

「皆バリアジャケット着たでー!」

 

「…らしいぞ。二人共、準備はいいか?」

 

「ああ」

 

「ええ」

 

「それでは……………

 

 

 

 

 

 

初め!!!」

 

 

ザフィーラの声により戦いが始まる。

先に動いたのは俺だった。

 

「〈光線(フラーシュ)〉!」

 

左手を前に突き出してレーザーを放つ。

 

光線(フラーシュ)。3型ルフの魔力で発動できる光魔法の一つでその名前の通り、光線を発射する魔法だ。

『マギ』では「ティトス」等が使用していた魔法だ。

因みに俺は今、【ソロモンの知恵】を発動させて魔法を使っている。だが、恭也さんと模擬戦をした日みたいに杖は使わず手から出している。何故杖を使わずに魔法を発動できるかと言うと、答えはアラジンだ。

セットアップしている時はアラジンが杖の代わりとなってサポートしてくれているので俺はそのまま魔法を使える。因みにバリアジャケットを着ている時は額は光らない。

 

「〈灼熱の連弾(ハルハール・ラサース)〉!」

 

俺の周囲に数十の火炎球を展開させ、 シグナムに向かって放つ。

 

灼熱の連弾(ハルハール・ラサース)

1型のルフの魔力で発動できる熱魔法の一つで中級魔法に該当する。

『マギ』原作では「アラジン」が使用していた。

 

火球は全てシグナムに向かって行く。先程のフラーシュの衝撃で出来た煙幕のせいで当たっているかどうかは分からないが……。

煙が晴れると無傷のシグナムが空中に立っていた。

 

『うわぁ…直撃した筈なのにピンピンしてるよ、あのお姉さん…』

 

「いや直撃はしてないぜ。全部剣で斬ったんだ」

 

「前座はそれで終わりか?なら次は…こちらから行くぞ!」

 

そう言うと猛スピードで俺へ向かってくるシグナム。

 

「っ!王宮剣術!」

 

「はあぁぁ!!!」

 

ギィン!!!

 

俺とシグナムの剣がぶつかり合い、火花が散る。

 

「らあっ!」

 

「ふっ!」

 

俺の右薙ぎを簡単に受け止め、そのまま剣尖で俺の顔に一撃を当てようとしてくる。

俺はそれを首を捻って躱し、蹴りを入れる。が、それを簡単に躱されお互いに距離をとる。

 

「ふむ…やはり強いな」

 

「何言ってるんですか。まだ戦い始めてから5分も経ってませんよ」

 

「私は剣の騎士だ。相手が剣士なら、1度切り結んだだけでどれくらいの手練か分かる。お前のそれは長い年月、かなり訓練をしてきたのが分かる。先程の剣技の鋭さがそれを教えてくれた」

 

「…そりゃどうも」

 

「だから、少し本気を出させて貰おう」

 

へ?

瞬間、シグナムの姿が消える。

 

「ガハッ!?」

 

そして強烈な衝撃と共に地面に叩きつけられる。

 

「ぐう…」

 

防御魔法(ボルグ)が発動しなかった?いや、発動したんだ。ちゃんと攻撃は防いだのだ、だが衝撃までは塞げず吹き飛ばされてしまったのだ。

 

「くっ…」

 

「寝ている暇は無いぞ…陣風!」

 

『Sturm wellen!』

 

レヴァンティンから「ガション!」と音が出て薬莢が飛び出す。カートリッジを1つ消費したという事だ。

 

「〈防御魔法(ボルグ)〉!ぐっ!」

 

「どうした?防ぐだけでは勝てんぞ!」

 

「分かってますよ、それくらい!〈熱魔法(ハルハール)〉!」

 

俺はシグナムに向かって掌から熱の塊を打ち出す。

熱魔法(ハルハール)

名前の通り熱を操る魔法だが、この場合は熱の塊を相手にぶつけるようにしている。

 

「烈火の将相手にこの程度の炎!生温い!」

 

シグナムはあっさり熱魔法を切り裂く。

だがそれによって一瞬動きが止まる。

 

「〈隠者の水膜(シャラール・マグド)〉!」

 

俺は水蒸気を作り、光の屈折を操作することによって姿を消す。

 

「む、消えただと?」

 

シグナムが俺を見失った間に猛スピードで離れる。

 

「〈水魔法(シャラール)〉…〈熱魔法(ハルハール)〉……〈力魔法(ゾルフ)〉………」

 

「そこか…レヴァンティン!シュランゲフォルム!」

 

『change forum 』

 

「飛竜一閃!!」

 

レヴァンティンが蛇腹剣の様な形に変わるとそれを鞘に収めて振り抜いてきた。

 

「…よし、出来た!」

 

『碌斗くん!来てるよ!』

 

「分かってる!〈防御魔法(ボルグ)〉を張りながらこのまま突っ走る!」

 

迫ってくる連結刃を躱しながらシグナムに接近する。すると打ち出されてきた魔力が飛んでくる。避けようとしたが読まれており、連結刃が迫ってくる。

 

「ちっ!」

 

ドォン!!!

 

俺はそれを防御魔法(ボルグ)を硬くする事で何とか耐えた。

そして俺は10メートル程手前にいるシグナムにバインドをかける。

 

「チェーンバインド!!」

 

「何!?」

 

「喰らえ…〈大閃光(デストロクシオン)〉!!」

 

先程作っておいた黒い球体をシグナムの元へ飛ばす。フワフワと飛んでいき、シグナムの前1メートル付近で球体は爆発して、耳を聾する炸裂音が響く。

 

大閃光(デストロクシオン)

水、熱、圧縮を組み合わせた魔法で調律魔法という自然が引き起こす災害を魔法で再現する魔法だ。手順としてはまず水を発生させて、それに熱を加えることで水蒸気を発生させる。 その水蒸気を圧縮させてから、一気に解き放つことにより、爆発を巻き起こす、と言った感じだ。

これは「ティトス・アキレウス」が得意としていた魔法だ。原理としては火山の噴火と同じらしい。

 

「や、やった―危ねぇ!フラグ建てるところだった!」

 

『攻撃当てて姿が見えなくなった敵相手にそのセリフはちょっとね…』

 

「まぁフラグ建ってなくても…ほらな」

 

煙が晴れる。そこにいたのはバリアジャケットが少し汚れた(・・・・・)シグナムだった。

 

「驚いたぞ。あんな威力の魔法を使えたなど」

 

「こっちも驚きましたよ。あれ喰らってほぼ無傷だなんて」

 

本当にな。作中ではアラジンの防御魔法も破壊したって言うのによ……。

 

「魔法じゃ通用しないって事か…」

 

「さあ続けようじゃないか」

 

そう言ってレヴァンティンを構え直すシグナム。するとカートリッジが1つ消費され、魔力が刀身へ集まっていく。

 

 

「行くぞ小鳥遊!紫電一閃!!」

 

「くっ、王宮剣術!!」

 

お互いの技と技がぶつかり合う。

 

「はぁぁああああ!!!!」

 

「うぉおおお!!!」

 

やはり力は俺の方が弱いのか、徐々に押され始める。

 

「どうした!!その程度か!!」

 

「ぐぅうう!!!」

 

必死に堪えていると、突然、一瞬だけ剣にかかっていた重さがなくなる。

 

「なっ!?」

 

「紫電、一閃!!!」

 

するとシグナムの剣が再度振り下ろされ、吹き飛ばされる。

 

「ぐぁあああ!!?」

 

「まだだ!レヴァンティン、シュランゲフォルム!シュランゲヴァイセン!!」

 

「くっ…〈防御魔法(ボルグ)〉っ」

 

「アングリフ!!!」

 

レヴァンティンから繰り出された剣尖での一撃は、簡単に俺の防御魔法を打ち砕いた。

 

「しまっ!?」

 

「はあぁー!!!」

 

ドォオオン!!!

 

 

sideシグナム

 

 

「ふう…まさかこんなに技を使わされることになるとはな……」

 

小鳥遊碌斗…確かに強い。が、テスタロッサや高町と比べるとどうしても見劣りする…咲は何故あいつに防衛プログラムの破壊を頼んだんだ?

 

私が構えを解いて下に降りようとすると、

 

 

小鳥遊がいる場所から魔力が溢れ出る。

 

 

「な、何だ!?」

 

「…やっぱりシグナムレベルの強者相手だと、抑制用リミッター1つ解除した程度じゃ歯が立たないか………だから、戦闘用リミッターを1つ解除させて貰う(・・・・・・・・・・・・・・)

 

まさか……私と戦っている時は全力じゃなかったのか?

そう思うと段々と怒りが込み上げてきた。

勝負に手を抜かれた、という侮辱に対する怒りが。

 

「あ、勘違いするなよ。俺は全力で戦ってたぜ、手を抜いていたわけじゃない」

 

「…リミッターを付けて戦っていたやつがそんな事を言っても説得力がないぞ」

 

「いや、仕方ないだろ?もしかしたら魔力反応を検知して管理局がやってくるかも知れないだろ?」

 

「む…そう言われると確かに一理ある。だが、手を抜いていたのは事実だ」

 

「だーかーらー、全力は出していたっつの。さっきまでの力で出せる全力はな」

 

「ほう……」

 

挑発にも聞こえる今の小鳥遊の言葉を聞きレヴァンティンを構え直す。

 

「まあ、さっきまでの俺と同じだと思わない方がいいぞ」

 

「それくらい理解している…む?何故剣をしまう」

 

小鳥遊は持っていた剣を腰に差し戻した。

 

「こっちの剣は使わないからな。俺が今から使うのはこっちだ」

 

小鳥遊がそう話すと、小鳥遊の手から光が溢れる。その光は形を成していき、光が収まると小鳥遊の手には先程とは違った形の剣が握られていた。

 

「行くぞ、武器化魔装…………[バアル]!」

 

小鳥遊の剣に落雷が落ち、土煙が舞う。

すると煙を切り裂き、中から小鳥遊が出てきた。

 

その腕は蒼い鱗に覆われていて、まるで龍の腕のようだった。

剣の形も変わっており、バスタードソードの様な形となっていた。

 

「さぁ…第2ラウンド、開始だ!!」

 

side碌斗

 

「[雷光(バララーク)]!!!」

 

俺がバアルを掲げるとバアルの金属器から雷のビームがシグナムに向かって発射される。

 

「何っ!?ぐう!!」

 

突然の事で反応しきれなかったシグナムは避け損ねてビームが掠った。

 

雷光(バララーク)

『マギ』の登場人物、シンドバッドが持つ金属器バアルの雷を操る能力によって使える技の1つで、剣の魔法陣の部分から雷の光線を発射する攻撃だ。

この技は『マギ』本編では登場しておらず、『マギ シンドバッドの冒険』で若い頃のシンドバッドが使った技なのだが、何故使えるかと言うと神様いわく、『シンドバッドの冒険』は『マギ』の外伝作品、つまり『マギ』の作品に含まれるので『シンドバッドの冒険』に出てきた金属器や技も使えるらしい。

 

 

俺は怯んでいるシグナムに接近して斬りかかる。

 

「ふっ!」

 

「ぐっ!随分速くなったじゃないか…!」

 

「まだ本気では無いんですが、ね!!」

 

力を込めて殴るように斬りつけるが上手く躱され、シグナムは俺から距離をとる。

 

「くっ……その武器はお前の能力か?(さっきの掠った一撃が地味に効いているな…あの威力はテスタロッサの砲撃魔法並だぞ…!)」

 

「まあそんな感じですね。悪いんですけどもう終わらせます」

 

俺はバアルに魔力を流し込む。すると空に暗雲が募り始め、蒼い落雷が降ってくる。雷は剣に集まり青白い光を発している。

 

「な、何だこの魔力は……天候を支配した、だと?」

 

「シグナム、貴方に聞きます…今ならまだこの魔法は解除する事が出来ますが…どうしますか?」

 

今のシグナムではこの技は防げないだろう。耐えれたとしても戦えるわけがない。

だがシグナムは「フッ」と笑い俺を睨みつけてきた。

 

「舐めるな…私はヴォルケンリッター烈火の将、剣の騎士シグナム!ベルカの騎士は敵を前にして逃げる事などありはしない!!」

 

「…そう言うと思ったぜ。じゃあ喰らってみな…![雷光(バララーク)…」

 

「受けて立つ…!紫電…」

 

俺は空に向けていた剣をシグナムに向け振り下ろし、シグナムは俺を見据えレヴァンティンを振るう。

 

(サイカ)]!!!!」

 

「一閃!!!!」

 

俺の剣から雷撃を纏った極太のレーザーが放たれる。それをシグナムは紫電一閃で受け止める。

 

「ぐっ!!ぁぁあああ!!!」

 

「………はぁあ!!!」

 

 

 

 

閃光が視界を覆い尽くし、刹那、轟音が空間を駆け巡る。

 

 

 

光が収まると地面に倒れ伏すシグナムとそれを見下ろす俺がいた。

 

 

「…………はっ!勝者!小鳥遊碌斗!!!」

 

唖然としていたザフィーラはすぐに我に戻ると、勝者の名前をあげた。

 

俺の勝ちだ。



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次の反省に生かそう

今年の初投稿がこれとは……今年も頭空っぽにして見たい人だけどうぞ。


sideリィフ

 

最初見た時は平凡以下だと思った。

咲がああまで言うくらいだから余程凄い強者が来るのだと思っていた。だが来たのは咲や我が主と同い歳くらいの少年だった。

少年の魔力は多く見積もっても精々Fランク程度、咲や我が主達の魔力に比べれば雀の涙程度の魔力だ。

なのにこの少年は主と親しそうに無礼な態度で会話をする。それを見て少し怒りが湧いた。するとシグナムがやって来て実力を測るために戦う事になった。

私にはシグナムがただ戦いたいだけだと思ったが…まぁそれは言わないで置いた。

レアスキルを持っていたのは驚いたがそれだけでシグナムを倒せる筈がないと思っていた。あっさり負けるのだろうと思った。

だが戦いが始まると違った。少年はシグナムと互角に戦っていた。途中、何度か攻撃を貰うがそれでも少年は強かった。

リミッターを2つもつけており、魔力量はFランク等ではなく、B+に上がり、更にS+まで跳ね上がっていた。

そしてなのはやフェイトにも劣らない魔法を使い、シグナムを圧倒して勝利した。

 

恥ずかしかった。表面だけを見て、少年を理解しようとせず、思い込みだけで弱いと思っていた自分が、恥ずかしかった。

 

戦いを終えた少年は武器を仕舞い、シグナムを抱えてこちらにやって来ていた。

 

side碌斗

 

危なかった…。

正直、さっきの戦いはシグナムが動揺してくれたのとシグナムの魔力がもう殆ど空だったから勝てたのだ。正攻法…というか金属器無しで戦っていたら負けていた。

というかシグナムのやつ、いくら武器化魔装で全力じゃない[雷光剣(バララークサイカ)]だとしても…紫電一閃で7割も防げるか(・・・・・・・)

シグナムは紫電一閃で雷光剣を弾いていたのだ。だが途中で魔力が無くなったのか直撃を喰らって落ちていった。まぁ直撃と言っても3割くらいしか喰らってない見たいだけど。

 

「っと、シグナムを連れていかないとな」

 

俺は倒れているシグナムの元までとんでいく。そしてシグナムを抱えてはやて達の元へ戻る。

 

「シャマルさん、治療して上げてください。はやての家で」

 

「え?ここでせぇへんの?」

 

「多分だが…管理局の連中が来ると思うぞ?」

 

いくら管理外の無人世界だからと言ってバカでかい魔力反応があれば確認しに来るだろ。しかも1つは自分達が知っているシグナムのものでもう1つの方は初めて見る魔力反応と来た。そしてシグナムの魔力反応は消え、見知らぬ魔力反応は残っている。俺が管理局員だったらSランクオーバーの怪物、もしくは次元犯罪者がシグナムと戦闘し、それによってシグナムが敗れたと思うね。そしたら勿論どうなっているか気になるわけで管理局員に様子を見に行かせる。

すると見知らぬ少年が仲良さ気に管理局の中心人物達と会話をしている。当然それを見た管理局員は俺のこと聞いてくるだろう。そんなめんどくさい事に絡まれてたまるか。

その事をはやて達に伝えるとすぐ様納得してくれ、俺が開けたスキマに入ってくれた。

 

はやての家に戻ると案の定質問攻めにあった。(主にはやてとヴィータから)

 

「ロクトくんあんな強かったん!?なんなんあの雷の魔法!フェイトちゃん並みの強さやったで!?」

 

「それに最後のアレ!なのはのディバインバスターと同じくらいの威力があったぞ!?」

 

「お、落ち着け。まずはリインフォースに聞かなきゃならないことがあるだろ」

 

俺は2人を宥め、リインフォースの方を向いて話しかける。

 

「さぁ、どうだ?シグナムと戦ったが…まだ実力は足りないか?」

 

「……いや、シグナムはヴォルケンリッターの将だ。それを倒したのだ、実力不足とは言えん」

 

「んじゃ信じてくれると?」

 

「…不本意だがな」

 

どうやら認められた見たいだし、早速やっちまうか。

 

「じゃあちょっと手、貸してくれ」

 

「…は?……何故だ」

 

「いや別にやましいことなんて考えてねぇから…そのゴミを見るような目で見ないで、お願い」

 

リインフォースのあの目はなのは達が神崎を見る時と同じ目をしていたぞ。つまり神崎はなのは達からゴミを見るような目で見られているのか……何したんだよアイツ。

 

「ただ魔力を流してどこに防衛プログラムがあるか調べるだけだよ。今は咲が幻覚で隠してるんだろ?ソレを見つけるには魔力を流して感知するのが手っ取り早いんだよ」

 

「……仕方ない」

 

「安心しろ10秒もすりゃ終わる」

 

俺は渋々といった様子で伸ばされるリインフォースの手を握り魔力を流す。

手を握る際にはやてが羨ましそうな視線で見てきたけど君達家族だよね?手くらい何時でも握れるだろ?

 

「………そこか」

 

「見つけたのか?」

 

「ああ、だからさっさと終わらせるぞ。【幻想の境界(ネクロファンタジア)】」

 

「わっ!?また出た!」

 

俺は空間の境界とリインフォースの防衛プログラムがある境界を繋げる。そしてそこに手を入れ、俺はもう1つレアスキルを発動させる。

 

「【U.N.Owen(悪魔の妹)】」

 

U.N.Owen(悪魔の妹)

『東方Project』に登場するキャラクター、「フランドール・スカーレット」の「ありとあらゆるものを破壊する程度の能力」を使えるレアスキル。自分が壊したいと思ったものを破壊することが出来るのだが、神様の修正によって生物の命は破壊する事が出来ないようにされている。

この状況でこれを使うのは、そう。もうお分かりだろう。

 

「キュッとして…ドカン!」

 

俺が手を握るとリインフォースの防衛プログラムは咲の幻覚ごと破壊された。

 

「どうだ?」

 

「………驚いた…、本当に無くなっている。主!防衛プログラムが無くなりました!!」

 

「ほ、ホンマに…?これで、もう、大丈夫なん?」

 

「ああ、根源から破壊したからな。防衛プログラムは欠片一つ残ってないだろうな」

 

「や、や、やった!リィフ!!ロクトくん!!ありがとなぁ!!!!」

 

はやては涙を流しながら喜んでいる。原作だとリインフォースは自分から消えるか一緒に過ごせたけど死ぬかのどちらかだったもんなぁ…アインスは除外するとだけど。

リインフォースもはやてに抱きしめられながら涙を流している。ヴィータは2人の様子を見て理解したのかはやて達のところにダイブしに行ったし、ザフィーラは腕を組んで微笑んでいる。

シャマルはシグナムの治療中だがその目には涙が溜まっている。

…俺は邪魔だな。

 

はやて達にバレないように音を立てずに部屋から出る。

そのまま玄関へ行き、靴を履いて外へ出ようと扉に手を伸ばす。が、それより早く外から扉が勢い良く開かれた。

そこには焦った様子の御林咲がいた。

 

「リィフ!!はやて!!幻覚が消えたけど大丈夫なの!!??ってロクト君?何でここに………あっ!まさか、成功したの!?」

 

「あ、ああ。無事防衛プログラムは破壊できたよ。多分もう暴走する事は無いだろ」

 

「…ロクト君」

 

「うん?」

 

「ありがとう。リィフを救ってくれて…」

 

咲は目に涙を溜めてそう言ってきた。

 

「救うって…どういう意味だ?」

 

「あの子、あのままだといつか私達の前からいなくなっちゃうと思ってたの。防衛プログラムは私が隠しているだけで、無くなった訳じゃない。もしかしたら、また暴走してしまうかも知れない…そう考えてた筈…それで、もし私が倒れちゃったりしたら」

 

「暴走する前に自分から消える、か」

 

「……そうよ。でも、ロクト君のおかげでその心配もなくなったわ、ありがとう」

 

「気にすんな。元々提案したのは俺の方だしな」

 

そのまま家から出ようとするとリビングからはやてが出てくる。隣にはリインフォースも一緒だ。

 

「咲、来ていたのか?」

 

「あっ、咲ちゃん!来てたんやな!ってロクトくん何帰ろうとしてん!?」

 

「えっ、いや俺の仕事終わったし帰ってもよくね?」

 

「ダメや!お礼をしてへん!」

 

「いやいらねぇよ」

 

「主のお礼が受け取れないだと…?」

 

「ならはやてがご飯作ってあげたら?」

 

「おっ!ええやんそれ!なら咲ちゃんも一緒に食べへん?」

 

「おい俺の話聞いてるか?俺家に帰りたいんだけど」

 

「うーん、私は厳しいかもね。お母さんがご飯作ってると思うし」

 

「そっか、ならしゃーないな。ロクトくんは何食べたい?」

 

「いや、だから話聞いてる?俺、帰りたいんだけど。俺も家で飯作んないといけないんだけど」

 

「主の料理ならどれも美味しいので何でもいいと思いますよ」

 

「そうね、はやては料理上手だもんね」

 

「えへへ…そんな褒められると照れるわ〜」

 

「あのさ…話、聞いてくんない?」

 

 

 

 

結局、1時間かけて事情を説明してやっと納得して貰った。

帰ったらディアーチェに怒られた……。



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凶報からのお話

side碌斗

 

どうしてこうなった。

 

右側には仁王立ちで睨んでくるディアーチェ。

左側には腰に手を当てて「怒ってるよ!」と言った感じで見下ろしてくるレヴィ。

背後には絶対零度の微笑み&眼差しを向けてくるユーリ。

正面にはもう能面と言っていいほどの無表情で俺の目をひたすら見つめてくるシュテル。

その中央で冷や汗を流しながら正座をしている俺。

部屋の隅でガクガクと震えているアラジン。

 

もう一度言おう。

 

どうしてこうなった?

 

 

説明するには数時間前に遡らないと行けない。

 

 

今日は7月25日、俺達小学生にとっては夏休み1日目だ。その現在、小鳥遊家のリビングでは…俺以外が宿題をしていた。

 

「ロクト、ここの問題が分からないのですが…」

 

「ん?ああ、そこは教科書のここに…ほら載ってるだろ」

 

「ありがとうございます」

 

「コラ、レヴィ。寝るんじゃない、我の肘が当たるではないか」

 

「だってー…何で夏休み初日から宿題やんないといけないのさー!」

 

「いやそりゃあ早めに終わらせておいた方が残りの夏休みをなんの心配もなく満喫出来るからだろ」

 

「というかレヴィは去年宿題やらなくて最終日に私達に手伝わせたじゃありませんか」

 

「我等はコツコツとやれるからな、別に態々今日終わらせなくてもいいのだぞ?」

 

「でもレヴィは絶対に1人だとやりませんよね?」

 

「だから俺達も一緒にやってあげてるんだぞ。普通は感謝してもらいたいくらいだが?」

 

「ぶぅ〜…でもロクはやってないじゃん!」

 

「いやもう終わってるし、ほれ」

 

聖祥の宿題を見せる。その量はシュテル達のと比べて1,5倍程多い。

 

「早!?」

 

「聖祥は私立だからそこそこ量が多かったな。ま、貰った日に終わらせたけど」

 

「ロクトは仕事が早いな」

 

「レヴィも見習って下さい」

 

「うぅ…分かったよぉ」

 

ディアーチェやシュテルに言われて渋々問題集を始めるレヴィ。

…そう言えばさっきからユーリが静かだな。

 

「………………」ガリガリガリガリガリガリ

 

すごいスピードで黙々と宿題をやっていた。もう半分は終わったんじゃないか?

 

「す、凄い勢いだな…」

 

「ですね…」

 

「あ、ディアーチェそこ間違ってるぞ」

 

「何?どこだ?」

 

「ここ、ここ。そこアじゃなくてイだ」

 

「む、確かに…」

 

「ねーロクトー、ここ分かんないよー」

 

「どれどれ、あぁそこはなー…」

 

こんな感じでそれぞれ宿題をしていた。

そして何度か休憩を挟みながらも数時間宿題をしているとユーリが夏休みの宿題を全て終わらせた。

 

「疲れました……」

 

「おつかれ、丁度昼だし飯にするか。お前らも区切りのいいところで止めとけ」

 

「はい」

 

「うむ」

 

「やったー!お昼だー!」

 

「話聞いてたかレヴィ?区切りのいいところでって言ったよな?」

 

「丁度最後までやった所だよ!ほら!」

 

「…所々空欄があるのが気になるがまぁいいか」

 

午後からやれば良いだけだしな。

 

俺は簡単に昼飯を作り、皆の所へ持っていった。

 

「アラジン、飯だぞ」

 

『うぅん…はぁーい』

 

待機状態のアラジンを人型にする。どうやら宿題の邪魔をしないように寝ていたようだ。

 

「今日はチャーハンなんですね」

 

「ああ卵がギリギリだったんでな。オムライスにしようか迷ったんだが、そこまで卵の数が無かったからチャーハンにした」

 

「なら午後から買い物に行くか?我も付き合うぞ」

 

「む、私も着いていきます。というかディアーチェ達はまだ宿題終わらせていませんよね?」

 

「ふん!もう半分以上終わっている!後は夜にコツコツやって行けば7月中に終わる計算だ!」

 

「私もそんな感じですね。レヴィはどのくらいまでやったのですか?」

 

「え!?えーっと、4割くらいかな?」

 

「嘘つけ3割も行ってねぇだろ」

 

「そんな事よりまずはご飯食べようよ〜、僕お腹ぺこぺこだよ〜」

 

アラジンが目を><こんな風にしながらお腹を抑えている。

 

「そうだな、食うか。んじゃ手を合わせて」

 

「「「「「「頂きます!」」」」」」

 

一斉に食べ始める。アラジンは急いで食いすぎて途中、噎せていた。何やってんだが………。

 

 

「「「「「「ごちそうさまでした!」」」」」」

 

「おう、お粗末さまだ。シュテル、俺が皿洗うから洗い終わった食器を拭いてくれないか?」

 

「分かりました」

 

「あと宿題はしなくていいぞディアーチェ。シュテルもな。半分終わってんなら明日から少しずつやっても7月以内に終わると思うし。あ、レヴィはちゃんとやるからな」

 

「なんで僕だけ!?」

 

「お前はさっさとやっておかないといつまで経っても手をつけないからだ。ユーリ、ディアーチェ。2人で教えといてくれ」

 

「うむ、任せろ」

 

「分かりました。さあレヴィ、計算ドリルを出してください。厄介な物から終わらせていきますからね!」

 

「ひぃ〜ん!」

 

ユーリとディアーチェに早速宿題をやらされているレヴィ。俺とシュテルは皿洗いをしながらそれを見ていた。

アラジン?ゲームしてるよ。

因みに俺達は食事から30分後に歯磨きをする事になっている。そっちの方がいいとか何とかテレビでやっていたからだ。

 

俺が皿洗いを終え、後はシュテルが拭くだけになると、電話がかかってきた。

 

「お父様とお母様ですかね?」

 

「珍しいな。夏休みだからまた帰ってくるのか?アラジン、電話出てくれ。俺食器片付けてるから手が離せん」

 

「はーい」

 

俺が頼むとアラジンはとたとたと足音を立てて電話へ向かっていく。

 

「はい、もしもし小鳥遊でーす…え?えっと違うよ?碌斗くん?碌斗くんに代わればいいの?うん、分かったよ。碌斗くん電話ー!」

 

「誰からだ?」

 

「なのはちゃんからだよー」

 

「なのは?」

 

「なのはだと?」

 

「なのは?って誰だっけ?」

 

「シュテルのオリジナルですよ」

 

なのは?何でまた…と言うかシュテル、無表情で見つめてこないで、怖い。

 

「なんなんだ一体…悪いシュテル、あと頼んでもいいか?」

 

「ええ、構いません」

 

「サンキュ……もしもし、電話代わったぞ」

 

『あーもしもし?なのはちゃんやけどー!明日一緒にでかけ―ブチッ!ツー、ツー、ツー』

 

「おいアラジン。詐欺電話だったぞ」

 

「ええ?本当?」

 

「ああ」

 

かけてきたのは「なのは」じゃなくて「なのは」の名前を使うタヌキだったからな。

するとまた電話がかかってくる。

仕方なく受話器を取る。

 

『誰がタヌキや!!』

 

「お前だよ」

何で考えていた事が分かるんだよ。エスパーかよ。

 

「それで、何の用だタヌキ。まさか、なのはの名前を語ってイタズラ電話をしたかったのか?」

 

『アレはちょっとした遊び心やよー。というか電話かけたのはなのはちゃんやで、ここにおるもん。って誰がタヌキや!』

 

『にゃはは…ゴメンねロクトくん。はやてちゃんに私が電話かけてって言われたから…』

 

「いやまあ別にいいが…で、何の用なんだ?タヌキ」

 

『いい加減タヌキやめーや!』

 

「はいはい、でなんだ、つまんない事なら切るぞタヌキ(はやて)

 

『何や名前に違和感あるけどまあええわ…実は私ら明後日から三日間アリサちゃん家の別荘にお泊まりする事になったんやけど、良かったらロクトくんも「断る。じゃあな」どうって待ってや!』

 

はやての話の途中で受話器を置こうとするとはやてが受話器越しにギャーギャー騒いでいる。仕方ないので電話に戻る。

 

「あのなぁ…女子の中に男子1人なんか嫌に決まってんだろ。それこそあの馬鹿でも誘えよ」

 

『絶対嫌や。それと男は別にロクトくんだけやあらへんで。高町家の皆さんととザフィーラも一緒やからな』

 

「……一体何人行くんだ?」

 

『え〜と、なのはちゃん家と咲ちゃん家な家族全員とペット1人、すずかちゃん家からすずかちゃんとお姉さん。フェイトちゃん家はフェイトちゃん、アリシアちゃん、2人のお母さんとお手伝いさん、それとペット1人。アリサちゃん家はアリサちゃんとお手伝いさんが来て、私ん家は家族全員参加や!』

 

「………多すぎじゃね?」

 

高町家はユーノも入れて6人、御林家は確か咲含めて3人、月村家は2人、テスタロッサ家はアルフ含めて5人、八神家はザフィーラ入れて6人。アリサは自分の家の別荘に行くんだから1人でも不思議ではないが……計23人だぞ…多すぎだろ。

 

「おいおい、いくら何でも多すぎだろ。そこに俺まで加わったら迷惑になるだろ」

 

『その心配は無いわよ、明日行く別荘は家が所有している中でもかなり大っきい物だから。20人くらい余裕よ。まだ全然部屋が余るわ』

 

「アリサ…お前もいたのか…てかいつの間に代わったんだよ……あと忘れてると思うが、家には家族が5人いるんだ。アイツらを置いて俺だけ泊まりになんかいけねぇよ」

 

『ならその家族も連れて来ればいいじゃない。さっきも言ったけど部屋ならまだまだ余ってるんだから』

 

「……さいですか。因みに断るのは?」

 

『却下。断ったら今からアンタの家に皆で乗り込みに行くわよ』

 

「いや家分かんねぇだろ。誰にも教えてないんだぞ」

 

『忘れたの?私の家は結構お金持ちなのよ。それに有能な執事もいるの。時間とお金をかければ貴方の家なんかすぐ分かるわ』

 

「………」

 

これは本当に断ったら乗り込んで来るな……いや。まだだ!まだ終わっておらんぞ!

 

「まてアリサ。流石に俺だけの意見で決めるわけにはいかん。家族にも相談しないとダメだ」

 

『むぅ…確かにそうね。じゃあ決まったら電話しなさい』

 

「いやお前らの電話番号わかんねぇよ。というか逆に何で俺の家の電話番号知ってんだよ」

 

『何言ってんの?この前連絡網配られたじゃない』

 

そうだった…確かに貰ったな。

 

『じゃあ俺は誰の家に電話をかければいいんだ?なのはの家でいいわよ。私達今なのはの家にいるし』

 

「了解……じゃ決まったら電話する」

 

『ちゃんと電話しなさいよね!』

 

アリサがそう言うと電話が切れた。

はぁ…あいつらに一体どう説明するか……。

 

「何の電話だったのー?」

 

「ああ、はやて達に明後日、アリサの家が所有している別荘に泊まりに来ないかって誘われたんだ」

 

「はやてだと…?ロクト、お主いつから小鴉を名前で呼ぶ様な間柄になったのだ?」

 

「それに今アリサって…それって僕達は聞いたことない名前だったよ…?」

 

「先程は私のオリジナルの事を呼び捨てで呼んでいましたね……」

 

「ロクト…どういうことか……」

 

「「「「説明して(よ)貰いましょうか(貰おうか)」」」」

 

 

 

 

 

そして現在に戻る、と。

 

 

「えっとですね…皆さん?」

 

「…何ですか?」

 

背後からユーリが応える声が聞こえる。声音は平坦としているのだがそれが余計怖い。

 

「俺がアイツらを名前で呼ぶのは山より高く、海よりも深い事情があるんですよ」

 

「ふぅーん、で?」

 

左から珍しくキレているレヴィの声が聞こえる。因みに俺はシュテルから(何故か)目を逸らせないので左右も後ろも見れない。

 

「だから理由を聞いて欲しいなぁーと思いましてね?」

 

「ほう、理由か」

 

右から威圧するようなディアーチェの声が聞こえる。

 

「はい、なのでその…お話をさせて貰えませんかね?」

 

「…分かりました。なら私がロクトにミッチリとO☆HA☆NA☆SIをして上げます」

 

俺の目をじっと見つめながらシュテルが死刑宣告をする。

 

「いえ、お話を」

 

「O☆HA☆NA☆SIだな。我も勿論やるぞ」

 

「僕もやるよ。ロクトにO☆HA☆NA☆SIしたいもん」

 

「そうですね。ここは仲良く4人でO☆HA☆NA☆SIをしましょうか」

 

ディアーチェ、レヴィ、ユーリもシュテルに続いて死刑宣告をしてくる。

有無を言わさぬ4人の威圧に俺は悟った……「あ、死んだな」と。

 

「《アラジン……》」

 

「…《な、なんだい?ろろ碌斗くん》」ビクビク

 

アラジンもすっかり怯えきっている。

そんなアラジンに俺は遺言を頼む。

 

「《冷蔵庫にあるおはぎ…俺の分まで食べといてくれ……誰も食わないのは、勿体ないからな……じゃあな……》」

 

「《ろ、ロクトくぅーーん!!!》」

 

俺はアラジンと念話を切る。シュテルに襟を掴まれて引きづられながら念話をしていたのだ。

 

 

「さて、始めますか」

 

「何か遺言があればきくぞ」

 

「聞くだけだけどね」

 

「さ、言いたいことがあるなら言ってください」

 

「……遺言は、言ってきた」

 

男は2度、同じ言葉を言わねぇ…!

 

「そうですか…では」

 

「「「「始めましょう(るか)(よう)」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

「イェア゙ア゙ア゙ア゙!!!!!」



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早すぎた準備

sideユーリ

 

どうも、小鳥遊ユーリです。今、私達の目の前にはボロボロになったロクトがいます。

何故こんなになっているかと言うと、ロクトがシュテル達のオリジナルやその友人の女達と仲良くなっていた事を隠していたので、その事について詳しく聞くためにO☆HA☆NA☆SIをしたからです。

 

そして先程、話を全て聞き終わった私たちは色々会議をしています。

 

「……聞いてませんよ、私のオリジナルとロクトが子供の頃会っていたなんて…(子供の頃のロクト…さぞかし可愛いんでしょうね…///)」

 

「……あの小鴉もだ。ロクトが自分から家に送っていくなど…(くっ!だが我は同じ家に住んでいるからな!転校する前は登下校も一緒だったしな!)」

 

「いーなーヘイト達。僕もロクトと学校でお昼食べたいよー」

 

「夏休み中はずっと一緒に食べれますよレヴィ。それよりどうします?私はどちらでもいいんですが。あとフェイトですよレヴィ」

 

行かないのであれば幸いにも私達の事は話していないみたいなので、私達が泊まりに行かないと言えばロクトも行かなくて済むと思います。

 

「何を言っているユーリ。行くわけなかろう!」

 

「えー、僕行きたいなー」

 

「レヴィ!?」

 

レヴィの言葉に反対していたディアーチェは驚いています。かく言う私も驚いているんですけど。

 

「だって僕ふ、へ、ふぇ…いとにまた会ってみたいし。それに夏休みなんだから遊びたいんだもん!」

 

「…私もまたナノハに会ってみたいです。また話がして見たい」

 

「シュテルもか!?」

 

「私は皆が行くんだったら行きますよ」

 

「ユーリまで…うぐぐ…!なら我も行く!準備するぞ!」

 

結局みんなもロクトについて行く事になりました。

楽しみですね。

 

sideアラジン

 

「碌斗くん、碌斗くん。起きて」

 

「ぅ、ぅー……ん…あら、じん?」

 

「うん。結局皆も碌斗くんについて行く見たいだよ」

 

「あ゙ー、結局そうなったのか……じゃあ別に俺O☆HA☆NA☆SI受ける必要なかったんじゃ…?」

 

「あ、アハハ…皆は水着とか下着とか泊まりに必要な物を買いに行くから碌斗くんが起きたらアリサちゃん達に電話で伝えといてって言ってたよ」

 

僕の道具は碌斗くんが〈錬金魔法(アルキミア・アルカディーマ)〉で用意してくれるから買いに行く必要は無いんだよね。みんなもそうすればいいのに態々買いに行ってる…女の子はよく分からないや。

 

「んじゃ、電話するか…シュテル達のことは…咲に説明しといて貰うか」

 

「咲ちゃんもいるのかな?」

 

「いるだろ。はやてやアリサが居るくらいだしな」

 

碌斗くんはそう言うと電話の方へ向かっていきました。

 

じゃあ僕アイス食べてよーっと!

 

 

 

side碌斗

 

 

プルルル、プルルル、プルル―ガチャ

 

『はいもしもし高町です』

 

「もしもし小鳥遊ですけど」

 

『あらロクトくん?なのはに代わるわねー』

 

「ありがとうございます」

 

電話に出たのは桃子さんだった。話が早くてありがたい。

10秒後、なのはが電話に代わった。

 

『もしもしロクトくん。決まったの?』

 

「ああ、家族全員、俺含めて6人で行かせてくれるなら行ける事になった。大丈夫なのか?」

 

『ちょっと待ってね、アリサちゃーん……………大丈夫だって!』

 

「そうか、じゃあ咲に代わってくれ。話したいことがあるからな」

 

『え?分かったよ』

 

 

 

『はーい電話代わったわよ。どうしたのロクト君』

 

「いや俺の家族に着いてなんだが―――」

 

俺はシュテル達が家族になった大まかな経緯を咲に話した。

 

『…まさかマテリアルっ()達と一緒に暮らしているなんてね。分かったわ、なのは達には私から説明しといてあげる』

 

「サンキュー。にしてもあんま驚かないんだな」

 

『まぁ今更ね…もう慣れたわよ。伝える事はコレだけでいいのよね?』

「ああ。あ、そう言えば集合場所は何処なんだ?」

 

『翠屋よ。明後日行くアリサの別荘は少し離れた所にあるらしくてね、朝5時半前に翠屋の前に集合よ』

 

「随分早いんだな」

 

いつものトレーニングは無理だな。

 

『…そこまでしないとあの馬鹿が着いてくるのよ』

 

「納得」

 

『じゃ、そういう事だから。またね』

 

「ああ、じゃあまたな」

 

俺は咲にそう言って受話器を置いて、何か飲もうかと冷蔵庫に向かった。

 

「何か飲む物はっと…コーラでいいか」

 

「あ、碌斗くん。電話終わったの?」

 

「ん?ああ。明後日の5時半に翠屋の前集合だそうだ」

 

「うわぁ、随分早いんだね。レヴィちゃん起きれるかな?」

 

「まあ俺が起こすから大丈夫だろ。アラジンも飲むか?」

 

「ううん。コレがあるからいいよ」

 

そう言ってアラジンは俺にアイスを見せてくる。因みにそのアイスはゴリゴリ君ソーダ味というアイスバーだ。

 

「ただいまー!」

 

「こらレヴィ。そんなに走るでない。転ぶぞ」

 

どうやらアイツらが帰ってきたみたいだ。O☆HA☆NA☆SIを喰らった後にアイツらの笑顔見ると震えが止まらなくなるんだよな…。

 

「ただいまロクト!」

 

「おう、おかえりレヴィ。それにディアーチェ」

 

「うむ。電話はしといてくれたか?」

 

「ああ。明後日の5時半に翠屋に集合だと」

 

「えぇ!?僕そんなに早く起きれないよ!」

 

「俺が起こすから心配すんな。所でシュテルとユーリは?」

 

「ああ、あの二人なら…」

 

「「ただいまー」」

 

ディアーチェが玄関を見たので俺もつられて見ると、パンパンになった袋を片手に1つずつ持っているシュテルとユーリがいた。

 

「…なにあれ?」

 

「4人分の荷物だ。2人がジャンケンに負けたから我とレヴィの分を持っている」

 

「それでお前らは手ぶらだったのか…」

 

「重いです…」

 

「疲れました〜…」

 

2人は玄関につくと荷物を下ろして座り込みました。

 

「おつかれさん。こんな沢山何買ったんだよ」

 

「服や水着などですよ」

 

「レヴィはそれに加えてお菓子等を大量に買ってましたけどね…」

 

「遠足気分だな…いやまぁ近いけどさ」

 

 

 

俺も準備するか…つっても着替えとかをバッグに詰めるだけなんだけどな。



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同一人物だけど他人なあの子

side碌斗

 

朝4時半。いつもより早く起床。

 

「ん…快晴だな。まだ暗いけど」

 

少なくとも今日一日はずっと晴れるくらいに雲はない。

俺は隣で寝息を立ているアラジンを起こさないようにベッドから出る。

 

「朝メシ作るか…」

 

音を立てないように部屋から出て階段を降り、キッチンへ向かう。

少し離れていると言っていたから移動にはそれなりに時間がかかる筈だ。

なのでその移動中にメシを食えるように今から作っておく。車の中で食べるのだから箸やフォークなどを使わないものがいいだろう。

 

「となるとサンドイッチかおにぎりか…あ、そう言えば米使い切ったんだっか…サンドイッチだな」

 

10人分近くのサンドイッチをパッパと作ってラップで包む。包んだ物をサンドイッチバスケットに詰めていく。

 

 

 

「ふう…こんなもんか?」

 

作り始めてから20分、2つのバスケットにはラップに包まれたサンドイッチがぎっしりと詰まっている。ざっと見て20人分以上あるだろう。

 

「作りすぎたか…いや、もし余ったらなのは達に食ってもらえばいいか」

 

「おふぁよーろくとくん…」

 

「おはようアラジン。まだ寝ててもいいぞ?」

 

「ぅうん。おきてる…かおあらってくるねぇ〜」

 

そう言うとアラジンは洗面台の方へ向かって行った。

俺はもうする事ないしな…。

 

「着替えてくるか…ふわぁ…」

 

流石に4時半は眠いぞ。

 

 

 

 

「ふう…コレでいいか…」

 

俺が着ているのは左胸の所に白いロゴが入った黒の半袖Tシャツに明るめな黒のカーゴパンツ。そして腰に赤黒チェックのシャツを巻いている状態だ。

 

「碌斗くーん。僕何着たらいいのー?」

 

俺が着替え終わると直ぐに、顔を洗い終えたアラジンが入ってきた。

因みに今アラジンが来ているのは兎の全身パジャマだ。

 

「普通にコレでいいんじゃねぇか?ほらよ」

 

俺がアラジンに渡したのは青白のボーダーTシャツと紺色のハーフパンツだ。

 

「じゃあコレに着替えるね」

「おう。俺はアイツらを起こしてくる」

「はーい」

 

時計を見るともう5時を過ぎている。女子は支度に時間がかかると言うが大丈夫なのか?

 

コンコン

 

「シュテル、ユーリ、起きてるか?」

 

俺はネームプレートに「シュテル、ユーリの部屋」と書かれてあるドアをノックする。すると中から既に着替え終わっていたシュテルが出てきた。

 

「おはようございますロクト」

 

「おはようシュテル。もう起きてたんだな」

 

「ええ。目覚ましをかけておいたので。ユーリも今着替え終わった所ですよ」

 

「ロクト、おはようございます」

 

「おう、おはようユーリ。二人とも準備出来てるんだな?」

 

「「はい」」

 

「それじゃリビングで待っててくれ。朝メシは後で渡すから今食わないでくれよ」

 

「分かりました。では行きましょうユーリ」

 

「うん」

 

2人はそう言うと荷物を持って1階へ降りっていった。

次はアイツらだな…。

俺は隣の部屋の前に行き、ネームプレートに「レヴィ、ディアーチェの部屋」と書かれたドアをノックする。

 

コンコン

 

「おーい2人とも起きてるか?」

 

すると中からとたとたと足音が聞こえてドアが開く。

 

「ロクトか、おはよう。我はもう少しで準備し終わるから先に下に降りててくれて構わんぞ。レヴィもさっき起きたところだからな」

 

「おふぁよーロクー」

 

「おはよう2人共。じゃあ下で待ってるからな」

 

そう言ってドアを閉める。

リビングに行くと着替え終わったアラジンと荷物を持ったシュテルとユーリがいた。

 

待つこと10分。ディアーチェとレヴィが降りてきた。

 

「全く、だから昨日早く寝ろと言ったのだ」

 

「だってぇー、楽しみで眠れなかったんだもん。おはよー皆!」

 

「おはようございますレヴィ、ディアーチェ」

 

「おはよう二人共!」

 

「おはようございます」

 

「じゃあ全員準備出来たみたいだし外出るぞ」

 

俺達は靴を履いて外へ出た。俺はスポーツサンダルだけど。

 

「よし…【幻想の境界(ネクロファンタジア)】ほら入れ」

 

俺は庭にスキマを開いてシュテル達に促す。全員が潜ったのを確認して俺も入る。

 

スキマを通ると翠屋の前に着いた。翠屋にはどうやら俺達以外全員集まっていたようだ。

 

「ロクト…多くないですか?」

 

「まぁ、俺達合わせて30人近くいるからな」

 

「あっ!へいとだー!」

 

「フェイトですよレヴィ」

 

「む…小鴉もいるのか。相変わらずのタヌキ面よのう」

 

シュテル達はそれぞれ思った事を口に出している。一方なのは達はいきなり俺達が現れたからか驚いている。はやて達には1度見せたことがあるからそうでもないな。

俺が士郎さん達に挨拶しに行こうかと思っているとシュテルがなのはの所まで歩いていった。

 

「久しぶりですね、ナノハ」

 

 

sideなのは

 

 

「遅いわね…ロクトのやつ…」

 

「アリサちゃん。まだ5時半になるまで20分もあるから」

 

「それでもこうゆう時は何分前とかに来るのが普通でしょ?」

 

「20分前行動はちぃとキツいんちゃうかな」

 

アリサちゃんがイライラしているのをすずかちゃんとはやてちゃんが宥めています。

今翠屋の前では私の家族、咲ちゃんの家族、すずかちゃんと忍さん、アリサちゃん、はやてちゃんの家族がいます。

 

「おーい皆ー!」

 

「おはようなのは。遅れちゃったかな?」

 

「おはようフェイトちゃん。そんな事ないよ」

 

朝から元気だねアリシアちゃん…。

フェイトちゃんとアリシアちゃん、それにアルフと2人のお母さんのプレシアさん、お手伝いのリニスさんが一緒に歩いて来ました。

 

「今日はありがとうございます。アリシアやフェイトだけではなく私達まで参加させて頂いて」

 

「いえいえ、フェイトちゃんとアリシアちゃんにはなのはと仲良くして貰ってますし、それにお礼ならアリサちゃんに言ってあげて下さい」

 

お父さんとプレシアさんが話をしています。するとリニスさんが近づいてアリサちゃんにお礼を言いました。

アリサちゃんは照れてたのか「べっ、別にいいですよそれくらい!」とそっぽを向きながら言っていたけど…。

 

「あれ?ロクト達はまだ来てないの?」

 

「もうちょっとで来るんじゃないの《なのは、フェイト、はやて…昨日言ったこと、覚えてるわよね?》」

 

「そ、そうだね《うん…マテリアルの…シュテルちゃん達の事だよね?》」

 

「《あの時は、ちゃんと話も出来なかったしね…》」

 

「《でも私らが戦った王様たちとはまた違う王様たちなんやろ?》」

 

「《それでも、また話したいの…》」

 

今度こそ…お友達になりたいの…。

 

私達が念話をしていると突然、私達の目の前の空間が裂けて、中から今まさに話していたシュテル達とロクトくんが出てきました。

 

「ロクト…多くないですか?」

 

「まぁ、俺達合わせて30人近くいるからな」

 

「あっ!へいとだー!」

 

「フェイトですよレヴィ」

 

「む…小鴉もいるのか。相変わらずのタヌキ面よのう」

 

それぞれあの時のバリアジャケットとは違い、可愛い私服を来ていました。

私が驚いていると、シュテルが私の前まで歩いて来ました。

 

「久しぶりですね、ナノハ」

 

「う、うん…久しぶり…シュテル」

 

「と言っても貴方が知る私とは違う私なのですが…」

 

それは平行世界から来たから、という事だろうか?

 

「へいとも久しぶりだねー!」

 

「へいとじゃなくてフェイトだよ。久しぶり、レヴィ」

 

「小鴉もあの時と同じタヌキ面をしているな」

 

「誰がタヌキやねん!王様も全く変わってへんな!」

 

フェイトちゃんやはやてちゃんも懐かしそうに話しています。はやてちゃんは微妙だけど…。

 

「ちょっとなのは。その子達が昨日言っていたそっくりさんなの?」

 

「髪の色とかが違うだけでそっくりだね…」

 

アリサちゃんとすずかちゃんが驚き半分、興味半分と言った様子で聞いてきます。

 

「うん、そうだよ」

 

「なのは、アリサ。その話は移動中にしましょう。全員集まったみたいだしね」

 

そう言って周りを見るように促す咲ちゃん。お父さん達も皆我に返ってシュテル達をまじまじと見ていました。

 

「咲」

 

「あらロクト君。おはよう」

 

「ああ…それより、説明しといてくれたんじゃなかったのか?士郎さん達唖然としてるぞ」

 

「失礼ね、ちゃんとしたわよ。なのはとフェイトとアリシアとはやてとアリサとすずかに」

 

「その中に大人達も入れといてくれよ…」

 

ロクトくんが咲ちゃんと話してる…と言うか今気づいたんだけど、ロクトくんの私服姿…普段は制服しか見たことなかったから何か新鮮だなぁ…それにカッコイイの…///

 

「ろ、ロク「それじゃあ車に乗りましょう!鮫島!みんなを乗せてちょうだい!」」

 

「かしこまりました。では親御様はコチラへ、お嬢様方はコチラの車へお乗り下さい」

 

途中でアリサちゃんに遮られてそのまま車に乗ることになりました。

うぅ…ロクトくんにおはようって言えなかったの…。いや、でも一緒の車に乗るんだからそこでお話すれば……。

 

 

 

「あれ?」

 

「どうしたの?なのは」

 

「な、な、何でロクトくんいないのー!?」



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談笑しているけど初対面なんだよね

side碌斗

「あら?ロクトくんもこっちに乗るの?」

 

「ええ。あんな女子だらけの所に男子1人はキツいっす」

 

シュテル、レヴィ、ディアーチェ、ユーリ、なのは、フェイト、アリシア、はやて、咲、アリサ、すずか、ヴィータ、アルフ…13対1はキツすぎる…。あ、でもユーノとアラジンいれたら3人か。

 

子供組の方は今あげた女子+ユーノ(フェレット)が乗って大人組の方は俺とアラジンを初め、士郎さん、桃子さん、咲の両親2人、恭也さん、美由希さん、忍さん、シグナム、シャマル、リインフォース、ザフィーラ、プレシア、リニスだ。

 

よくもまあこんだけの人数が乗れる車を2台も用意出来たもんだよ。流石はアリサってか?

 

「お、ロクト君。君もこっちでいいのかい?」

 

「さっき桃子さんにも言いましたけど10人以上の女子の中に男一人はちょっと……」

 

「ははは、それもそうか。そうだ、ロクト君は初めて会う人ばかりだと思うから紹介しよう。咲ちゃんの親で僕と高校時代からの付き合いの泰三と美代子だ」

 

「咲の父親の御林泰三です。宜しくロクト君…でいいんだよね?」

 

「あ、はい。小鳥遊碌斗です。こちらこそ宜しくお願いします」

 

「若いのに礼儀正しいのね〜。私は咲の母親の御林美代子です。宜しくね」

 

「宜しくお願いします」

 

咲の両親…なんつーか二人共、高町夫妻に似て若いな。大学生でも通用するぞ。

 

「じゃあ次は私かしら?私はプレシア・テスタロッサ。アリシアとフェイトの母親よ。宜しくね」

 

「私はプレシアの助手をしているリニスと言います。宜しくお願いします」

 

「ども、小鳥遊碌斗です。宜しくお願いします」

 

プレシアさんもアニメで見るより若いな…これも咲が何かしたのか?リニスは普通に可愛いです。

 

「まあ私達は会うのは2度目だが一応、シグナムだ」

 

「シャマルですよ。久しぶりですね」

 

「ザフィーラだ」

 

「…リインフォース」

 

「あの時以来ですね。お久しぶりです」

 

リインフォースの防衛プログラムを壊してから会ってなかったからな。随分久しぶりだ。

 

「私と恭ちゃんは別にいいよね?あ、こっちは忍さん。すずかちゃんのお姉さんで恭ちゃんの彼女さんなんだよ♪」

 

「おっ、おい美由希!」

 

「月村忍です。宜しくねロクトくん」

 

「宜しくお願いします。恭也さんにはお世話になってます」

 

「あらホント?やるわね恭也」

 

「…ロクト」

 

「間違った事は言ってないっすよ。と、そう言えばコイツの紹介をしてませんでしたね。コイツはアラジン。俺の相棒です」

 

「小鳥遊アラジンだよ!宜しくねお兄さん、お姉さん!」

 

アラジンは笑顔で皆さんに挨拶する。まだ6時にもなってないのに元気だな。

 

「碌斗くん…お腹が空いたよ…」

 

「あー、そう言えばシュテル達にも渡してなかったな」

 

「朝ご飯なら途中にあるパーキングエリアで食べるらしいよ?」

 

「作ってきちゃったんで…よっと」

 

俺は【幻想の境界(ネクロファンタジア)】を使って家のリビングからサンドイッチが入ったバスケットを取る。

 

「よっと、ほらアラジン。持っててくれ」

 

「わぁーい!あれ?多くない?」

 

「なのは達も食うかと思って作ったんだが…こっちには乗ってないからな。恭也さん達が良ければ食べてくれませんか?」

 

先程の出来事に唖然としていたが、俺の声に反応した恭也さんが応えてくれた。

 

「あ、ああ。なら有難く頂くが…さっきのは何だ?確かこっちに来る時もアレと似たような物から出たきたよな?」

 

「あーアレはレアスキルって言って俺の持っている能力の1つで…簡単に言えば移動用の能力です」

 

「って、待って下さい!小鳥遊君は魔導師なのですか!?」

 

俺がレアスキルの説明をしているとリニスが俺に聞いてくる。隣のプレシアもどこか驚いているようだ。

 

「ええ、と言うかフェイト達から聞いてなかったんですか?結構前にあいつらに話したんですけど…」

 

そう言いながらもう一度【幻想の境界】を使ってスキマを開き、シュテルに念話でサンドイッチを渡すと伝えサンドイッチが入ったバスケットをスキマに入れる。無事受け取れた様なのでスキマを閉じる。

その間リニスは口を開けてポカンとしていたがプレシアは興味深そうにスキマを見ていた。高町夫妻と御林夫妻?もう慣れたのかのほほんとしてるよ。

 

「あの2人…大事な事を黙ってるなんて…」

 

「あの…猫耳と尻尾、出てますよ?」

 

俺が魔導師である事を黙っていた怒りからか、変身魔法が解けて猫耳と尻尾が露わになった。

それを見てリニスは「ニャー!?」と何とも隠す気があるのかないのかよく分からない叫び声を上げた。

 

「…貴方が魔導師ならもう分かっていると思うけど、リニスは山猫の使い魔なのよ。あっちの車に乗っているアルフはフェイトの使い魔で素体は犬よ」

 

「成程…ではあのフェレットは誰の使い魔なのですか?魔力を感じましたが…」

 

「あの子はなのはちゃんのパートナーよ。使い魔ではないわ。スクライア族と言って人と獣の姿になれる部族なの」

 

「へぇ…それまた珍しい」

 

まぁ本当は知ってるんですけどね。

 

「ごちそうさまでしたー!」

 

「もういいのか?」

 

「うん。おなかいっぱいだよ」

 

「じゃあ恭也さん達も良ければどうぞ」

 

サンドイッチを1つ取って口にしながら恭也さんに渡す。

 

「では有難く頂こう……美味いな」

 

「ロクトくん、私も食べていい?」

 

「どぞ、というか皆さんも食べてくれて構わないッスよ」

 

バスケットを回して一人一つずつサンドイッチを手に取る。

まあ概ね好評価だったし良かった良かった。

 

そのまま俺達は談笑しながらアリサの別荘へと向かった。



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一方その頃

sideシュテル

 

「何でロクトくんあっち乗ってるの…」

 

「そりゃこんな女子だらけの所に男子1人はキツいでしょ」

 

「でももう1人男の子がいたし、ここにはユーノ君もいるの!」

 

目の前の席で頬を膨らませながら怒っているのは高町なのは。私のオリジナルだ。隣にいるのは確か…御林咲?と言っていた筈、この人も魔力が高い…車に乗っている殆どがかなり出来る魔導師だ。

 

「と言うかそろそろ聞かせて頂戴。私達はただなのは達とそっくりな女の子が来る事しか教えて貰ってないんだから」

 

金髪の…アリサ・バニングスが私達を見ながらナノハ達に話しかけます。

 

「そうだねー、このフェイト…と言うよりはアリシアにそっくりなこの子の事も気になるしねぇ」

 

「それに、はやてそっくりのコイツが何でいるんだよ。あの時アタシらがしっかりと倒した筈だぜ」

 

犬の使い魔…アルフはレヴィを見ながら、鉄槌の騎士、ヴィータはディアーチェを見ながらそれぞれ話します。

 

「えっとねー」

 

「レヴィ、それについては我等が話す必要は無い。そこの女がロクトから聞かされているはずだからな」

 

そう言って御林咲を睨む様に見つめるディアーチェ。だが御林咲はその視線にたじろぐこともなく頷いて応える。

 

「そうよ。じゃあ説明しましょうか。この子達の事を…これはロクト君から聞いた事何だけど――」

 

御林咲は私達の事を話し始めました。私達が違う世界でユーリと戦っていたこと、その最中に次元震に巻き込まれてこちらの世界へやって来たこと、そしてロクトに助けられて人にして貰ったこと…この内容を御林咲は話しました。

 

「―と、こんな感じね。間違ってる所とかはないわよね?」

 

「ええ(うん)(ふん)(はい)」

 

4人、声をそろえて応えます。

と、なにやらナノハ達がソワソワと様子をおかしくしています。

 

「どうかしたのですか?ナノハ」

 

「ふぇ!?え、えっと、その…私達は、こっちの世界では結局お友達になれなかったから…シュテルちゃん達が良ければ、お友達になってくれないかなって思って…」

 

友達…私達とレナや沙都子達みたいな関係ですね。

 

「…はい、ナノハが良ければ是非」

 

「ホント!?じゃあこれから宜しくね!シュテルちゃん!」

 

「ねーねー、僕はー?」

 

「レヴィも良かったら友達になって欲しいな」

 

「じゃーなるー!僕もふぇ…いと達と友達になるー!」

 

「王様はどうするん?」

 

「ふん!我は友などいらぬ…が、お前達がど、どうしてもと言うなら仕方がないな!特別に我の友になる事を許そう!」

 

「ユーリ…ちゃんはどうする?友達になる?」

 

「え、えっと、あなた方が良ければ…その、お願いします!」

 

どうやらレヴィ、ディアーチェ、ユーリも皆と友達になる事が出来たようです。

それから打ち解け談笑をしているとロクトから念話が届きます。

 

「《シュテル、今大丈夫か?》」

 

「《どうしたんですかロクト?》」

 

「《いやアラジンが腹減ったらしくて朝飯出したんだけど、お前らも腹減ってないかと思ってな》」

 

そう言えば朝食がまだでしたね。レヴィ辺りは思い出したらお腹空いたとでも言うでしょうし…。

 

「レヴィ、お腹は減ってませんか?」

 

「え?うーん、思い出したらお腹減ってきたよ!」

 

「分かりました《ロクト、お腹が空いてるようです》」

 

「《了解。じゃ、今から送るから取ってくれ。あと量多いかもしれないから多かったらなのは達に食べさせてくれ》」

 

ロクトとの念話が切れると直ぐにスキマが開き、そこからバスケットを持ったロクトの手が出てきます。私がバスケットを掴むとロクトは手を離してスキマが閉じます。

 

「はい、どうぞレヴィ」

 

「ありがとーシュテるん。ロクトと念話してたの?」

 

「ええ。なのは達も良ければどうぞ。ロクトの手作りサンドイッチです」

 

「レヴィ、1つとったら我に貸せ、バスケットを回していく」

 

「はーい。シュテるんディアーチェに渡してー」

 

「どうぞディアーチェ」

 

「うむ。シュテルも1つ取れ。そしたらユーリに回す」

 

ディアーチェに言われて自分の分を取ります。ディアーチェも自分の分をとるとユーリにバスケットを渡して、ユーリもそれにならいます。

 

「アリサもどうぞ」

 

「あ、ありがと…ユーリ」

 

アリサ、すずか、アルフ、ヴィータ…と順々に取っていく。

 

「皆取りましたか。では頂きます」

 

[頂きます]

 

一斉にサンドイッチを食べます。相変わらずロクトの作るものは何でも美味しいですね…。

 

「うっま!?何やこのサンドイッチ!美味すぎるやろ!」

 

「はやて並にギガ美味だぜ…」

 

「男子のくせにぃ…なんでこんなに美味しいのよ!」

 

「フェイトちゃん達も美味しいって言ってたもんね」

 

「リニスと同じくらい美味しいかもね〜」

 

「やっぱりロクトの料理って美味しいなぁ!」

 

「…唐揚げの時もそうだけど、女子として自信なくしそう…」

 

「…これは、いつか桃子さんに追いつくんじゃないかしら?」

 

「私もお母さんにお料理教わろうかなぁ?」

 

皆の感想を聞いて私はなんだか嬉しくなりました。好きな人の事が褒められるのは気分がいいです。レヴィ達もどこか誇らしげです。

 

「当然だ。ロクトが作ったんだからな!」

 

「何で王様が胸張ってんのん?」

 

 

何故か奇妙なものを見る目で見られましたが。



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夏だ!海だ!到着だー!

side碌斗

 

「……くん……とくん……碌斗くん。着いたよ」

 

「う……アラジンか?」

 

「うん。もう皆車から降りてるから碌斗くんも降りよう」

 

「おー」

 

アラジンに起こされて車から出る。その際に運転手さんに一礼をするのは忘れない。

 

「あ、ロクトくん!」

 

「遅いわよロクト!」

 

「悪い…って俺そんなに寝てたのかよ」

 

精々5分程度だと思ってたのだが…。

 

「それよりアンタ荷物は?ユーリ達は自分の持ってるけど…」

 

「ロクトなら自分のレアスキルで家から取り出せるんですよ」

 

「それならレヴィ達のも置いてくれば良かったんじゃないの?」

 

「僕らのはその…し、下着とか入ってるし…///」

 

「別にお前らの見てもなぁ…」

 

精神年齢30近くだし…俺ロリコンじゃないし…というかお前ら名前で呼び合うくらい仲良くなったんだな。

 

「む…じゃあ何さ、ロクトはなのはのお姉さんやはやてのお姉さん達の下着が見たいって言うの?」

 

「アホか。俺らはまだんなもんに興味持つ歳じゃねぇだろ…」

 

「でも圭一とかはいっつも言ってるよ?」

 

「K1ェ…アイツらがおかしいだけで俺は普通だ。つーかさっさと行こうぜ。保護者の人たちも待ちくたびれてるぞ」

 

士郎さんとか泰三さんとか苦笑いしてるじゃねぇか。

 

「そうね、じゃあ行きましょうか。鮫島、案内してちょうだい!」

 

「かしこまりました。では皆様こちらへ」

 

俺達は鮫島さんに案内されてアリサの家の別荘へ入っていった。

一つ言わせてもらおう、別荘デカすぎだろ…。

 

 

俺は3階の1番奥にある部屋でアラジン、ユーノと同じ部屋となった。

 

「宜しくねロクトくん、アラジンくん」

 

「宜しく、ユーノくん。あとユーノくんが良ければ呼び捨てでいいよ」

 

「僕もね!」

 

「じゃあそうさせてもらうよ。ロクトとアラジンも呼び捨てでいいよ」

 

「そっか、じゃあユーノ。同じ男同士仲良くしようぜ!」

 

「宜しくねユーノくん。僕の口調は癖みたいなものだから気にしないでおくれ」

 

ユーノとも良好な関係を築けたし良かった良かった。同年代の男友達って本当に少ないんだよな…俺……。

 

因みに他の部屋割りはこうなっている。

3階に、

なのは、フェイト、アリシア、咲の部屋。

はやて、アリサ、すずか、ヴィータの部屋。

シュテル、レヴィ、ディアーチェ、ユーリの部屋。

2階に、

美由希さん、忍さん、アルフ、リニス、シグナムの部屋。

桃子さん、美代子さん、プレシアさん、シャマル、リインフォースの部屋。

恭也さん、士郎さん、泰三さん、ザフィーラの部屋。

 

因みに1階はフロントと大宴会場などがあり、4階には男女別れた大浴場があるらしい。デカすぎでしょ。

 

「そう言えばこの後は海に行くんだったか?」

 

「らしいね。水着でフロントに集合だって。ただ少し歩くらしいから何か羽織るものを着て行った方がいいよ」

 

「りょーかい。アラジン、水着持ってきたか?」

 

「勿論!」

 

どうしよ…俺買ってきてねぇよ。

 

「ロクトは忘れたの?」

 

「ああ…どうすっかなぁ」

 

「〈錬金魔法〉で作っちゃえばいいんじゃないかな?」

 

「ま、それが一番無難か…〈錬金魔法〉」

 

俺はポケットから杖を取り出して魔法を発動させ、黒のサーフパンツを作り出す。

 

「わっ、それがなのは達が言ってた魔法なんだね」

 

「ああ。なんて言ってたかは知らねぇけどな。上は…半袖パーカーでいいか」

 

バックから赤いラインが入った白のフード付き半袖パーカーを取り出して水着に着替え、その上に羽織る。

俺が着替え終わるとユーノとアラジンも着替え終わったので、財布を持って三人一緒に部屋を出てフロントへ行く。

 

 

「あらら、俺達が1番みたいだな」

 

「そうみたいだね」

 

とりあえず休憩スペースの座って皆が来るのを待つ。

2、3分後くらいに士郎さん達と桃子さん達が降りてきて更に5分後に美由希さん達が降りてきた。

残りのなのは達は10分後にやっと全員揃って降りて来た。皆パーカーやTシャツを来たりしている。

そして男性陣がビーチパラソルやシートなどの道具を持って海へと向かった。

 

歩くこと5分、直ぐに海岸へと着いた。夏休みシーズンという事もあり、そこそこ人がいる。

 

「じゃ、僕達はパラソルとかを建ててるから子供達は海へ行っておいで」

 

「あ、俺手伝いますよ。レジャーシートしくのにも浮き輪を膨らますのにも人が必要でしょうし」

 

「そうかい?ならお願いしていいかな?」

 

「勿論。ユーノ、アラジン、悪いけど手伝ってくれるか?」

 

「うん。いいよ」

 

「任せてよ!」

 

俺とユーノ、恭也さん、ザフィーラでシートを敷いて、士郎さんと泰三さんがパラソルを建て、アラジンが浮き輪を膨らませる。こうして準備が完了した。因みにその間、女性陣はクーラーボックスから飲み物を取り出したりサンオイルを塗ったりしていた。

 

「じゃあ僕は泳いでくるよ!」

 

「ちょっと待てアラジン。先に準備運動をしとけ。途中で足がつったなんて言ったら大変な事になるからな」

 

「はーい」

 

「ね、ねぇロクトくん…」

 

「ん?」

 

呼ばれたので後ろをむくとそこには水着を着たなのは達がいた。

 

「こ、この水着…どうかな?」

 

「どうって言われても…普通に似合ってるけど、全員」

 

全員元が可愛いからな。何着たって似合う。

俺が素直に感想を述べると皆の顔が赤くなる。日射病か?

 

「(似合ってるって言われてもーた///)なーなーロクトくん、サンオイル塗ってくれん?///」

 

「あ?そんなの男子にやらせるか普通?」

 

「ちょっとはやて!抜け駆けは良くないわよ!」

 

「そうだよはやてちゃん!はやてちゃんが塗ってもらうなら私にも塗ってほしいのロクトくん!」

 

「いやだから塗らないからな?「ロクト」ん?」

 

はやてとアリサ、なのはが何やらサンオイルを塗る塗らないで揉めていると水玉模様が入った赤い水着を着たシュテルと水色のワンピースタイプの水着を着たレヴィ、黒いビキニタイプの水着を着たディアーチェ、エメラルドグリーンのワンピースタイプの水着を着たユーリがいた。

 

「私達には塗ってくれますよね?サンオイル」

 

「家族なんだから別に意識することなんてないでしょ?」

 

「それに前は自分で出来ても背中は手が届かないのでな」

 

「という訳でお願いしますロクト」

 

そう言ってズズいっと一斉にサンオイルを差し出してくるシュテル達。なのは達は羨ましそうな目で見るなよ…全く。

 

「仕方ない…背中だけだぞ?お前らも塗るんだったら来い、面倒だからさっさとやるぞ」

 

俺はその後、シュテル、レヴィ、ディアーチェ、ユーリ、なのは、はやて、アリサ、そしてそれを見て自分もとやって来たアリシアとフェイトにサンオイルを塗ってやった。連続は辛い…。

 

そしてサンオイルを塗り終わったみんなは準備運動を終え、泳ぎにいこうとしていた。

 

「あれ?ロクトは泳がないの?」

 

「少しは休ませろ…9人連続で塗り続けたんだぞ…間隔開けずにきやがって…」

 

「にゃはは…ゴメンねロクトくん」

 

「つーわけでお前らだけで行ってこい。何かあったら咲か俺に念話飛ばせ、すぐ行くから」

 

「うん、分かったよ」

 

そう言うと皆海へ行ってしまった。すると先程の様子を見ていたユーノが苦笑いしながら近付いて来た。

 

「大変だったねロクト」

 

「そう思うんなら手伝えよ…」

 

「僕が頼まれた訳じゃないからね。と言うかロクトは気付いてないの?」

 

「?何がだよ」

 

「(シュテル達は勿論、なのは達もロクトに好意を持っている事だよ…フェイトとアリシアは微妙だけど…これは神崎とはまた違った意味で鈍感だね)何でもないよ」

 

変な事を言うユーノだな?

俺は溜息を吐くユーノを不思議に思いながら暫く海を眺めていた。



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軟派な男がナンパを仕掛けてきた

side咲

 

「にゃは〜…ロクトくんに体を触られちゃった…///」

 

「なんや凄い上手やったなぁ…///」

 

「気持ちよかったねフェイト!」

 

「う、うん…///」

 

「わ、私としてはもう少しくらいゆっくり塗ってくれても良かったんだけどね!///」

 

なのはもはやてもアリシアもフェイトもアリサも、ロクトくんにサンオイル塗られてから顔が赤くなっているわね…アリシアはまだ分かんないけどフェイトはもう堕ちてるのかしら?あそこのグループは考えるまでもなく堕ちてるわね。

そう思ってシュテル達の方を見る。

 

「はぁ…もう少し堪能したかったです…ロクトの指…」

 

「言い方が卑猥だぞ…シュテル」

 

「でもシュテるんの言ってること分かるよ。ロクってマッサージとか上手いもん」

 

「確かにそうですね。気持ちよすぎて眠ってしまいそうになりますからね」

 

ロクト君はマッサージとかもできるのね…今度やってもらおうかしら?

 

「とりあえず泳ぎましょうか。あんまり沖の方には言っちゃダメよ?」

 

「分かってるって!フェイト!レヴィ!一緒に行こー!」

 

「分かったよアリシア!とおっ!」

 

「ちょっとレヴィ!姉さん!待ってよー!」

 

フェイトの苦労が一人増えたわね…本当にレヴィのオリジナルがアリシアって言われても違和感無いわよ。

 

「王様はどうするん?泳ぐん?」

 

「ふっ、我は子鴉と違いそんな幼稚な行為などせぬわ。このロクトから借りたボートに乗って海上でゆったりと過ごしてくるのだ」

 

「なら私も乗せてーな。そんで家でのロクトくんの事教えて欲しいやけど」

 

「誰が教えるか…って、待て子鴉!貴様勝手に我のボートに乗るんじゃない!」

 

「ケチケチしないで一緒に乗った方が楽しいでー」

 

「それは貴様が勝手に思ってるだけって待て!待つのだ!」

 

はやてとディアーチェはなんだかんだ仲良く?やってるわね。

 

「ねぇねぇシュテルちゃん…私思うだよね、何でロクトくんは私達の気持ちに気付いてくれないのかな?って」

 

「それは私達も殆ど毎日考えている事です。もう態とではないかと思うくらい酷い時もありますからね…」

 

「なら今日折角お泊まりに来てるんだからロクトくんを頑張って振り向かせ…るのは無理だとしても意識させるの!」

 

「…そうですね、幸い温泉には混浴もあるらしいですし…なのは、一緒にロクトと入りませんか?」

 

「ふええええ!!?」

 

へぇー混浴もあるのねここは。流石バニングス家、凄いわね。

 

「アリサとすずかは泳がないのか?」

 

「あっ、ヴィータちゃんとシャマルさん。ゴムボートを借りてきたんでそれに乗ろうとしてたんですよ」

 

「なんならヴィータ達も一緒に乗る?」

 

「いいのか?じゃあ私も乗らせて貰うよ」

 

「じゃあ私もお言葉に甘えて♪」

 

アリサとすずかとヴィータとシャマル。珍しいわね、すずかとヴィータ達なら分かるけどそこにアリサも加わるなんて…。

 

「あの…」

 

「え?あ、ユーリじゃない。どうしたの?」

 

私が皆を見ていると後ろからユーリに声を掛けられた。

 

「その、一緒に泳ぎませんか?」

 

そう言って上目遣いで浮き輪を渡してくるユーリ。

うーん可愛いわね…百合じゃないけど私が百合だったら即惚れている所だったわ。

 

「ええ、喜んで♪」

 

「本当ですか!じゃあ行きましょう!」

 

私はユーリに手を引っ張られて一緒に海へ入っていった。

 

 

sideリインフォース

 

最近、何処か体がおかしい。アイツの事を考えると鼓動が早くなる。逆にアイツが主や咲達と話しているのを見ると胸の奥にチクッと痛みが走る。シャマルに聞いても風邪等の病気では無いと言われた…一体何なのだろう?

 

「おっ、そこのおねーサン。今1人?良かったら俺らと遊ばなーい?」

 

「…失礼、連れと来ているので」

 

「んじゃその連れの女の子も一緒に遊ぼーぜ。こんな海で泳ぐより気持ちいいことさせてあげるからさ!」

 

「…結構だ」

 

金髪に染めた軟派そうな輩とパンチパーマのサングラスを掛けた男達に絡まれた。この様な輩は執拗いのでウンザリしてくる。

 

私が断っても何度も誘ってくる男達を無視してパラソルに戻ろうとすると軟派そうな男に腕を掴まれた。

 

「おいおい、無視とかすんなよおねーサン。ちょっと遊ぶだけだからさ」

 

「…離せ」

 

「怖い顔しないでさー、ほら一緒に行こーぜ?」

 

「…チッ、離せと言ってるんだこの下衆が」

 

「あ?おい…あんま調子乗ってんじゃねぇぞ!?」

 

「女だからって乱暴されねぇと思ったら大間違いだからな!?」

 

「黙れ、先程から下心丸出しで強引に私を連れていこうとした下衆共が口を開くな。不快だ、失せろ」

 

「こんのアマァ!!」

 

難破そうな男が私の腕を掴みながら声を荒らげる。

 

「おい…貴様等、リインフォースに何をしている」

 

「シグナム…」

 

「ん?何だ何だ、また綺麗なおねーサンが来たな」

 

「なーに、俺らはただ一緒に遊ぼうって誘ってただけだよ。何ならおねーサンもどうよ?」

 

「いいからその腕を離せ…さもなくば切り落とすぞ」

 

「ああ?なんだ?気が強いねぇ、まぁアンタも一緒に行こーぜ!」

 

「……」

 

「ガアッ!?」

 

「いつまでリインフォースに触れているつもりだ…行くぞ」

 

「ああ」

 

シグナムが私の腕を掴んでいる男の顔面を殴りそう言い放つ。シグナムと私はそれから目を離してパラソルへ戻る。

すると男達は逆上して殴りかかってきた。

私は咄嗟のことで動けず、このままでは私の顔に男の拳が当たる筈だったのだがそれは当たらなかった。

 

 

「このクソアマァ!調子のってんじゃ!「はいそこまで」なっ!?」

 

「男が女に手をあげちゃだめだろ?」

 

何故なら、以前私の防衛プログラムを壊してくれた少年がその拳を受け止めていたからだ。

 

side碌斗

 

皆にサンオイルを塗り終わってから、俺はパラソルで寝ていた。

 

「ロクトは泳がないの?」

 

「ん?あぁ。俺泳げねぇんだよ、カナヅチだから」

 

「ロクトでも出来ないことってあるんだね」

 

「おいそりゃどう言う意味だ」

 

俺だって人間なんだから出来ないことの1つや2つ、あるに決まってるだろ。それに泳ぐのは前世から無理なんだよ。

 

「いやぁ、なのは達から聞いた話しだとロクトって何でも出来そうだったからさ」

 

「あのなぁ…俺は小学生だぞ?ただちょっと魔法が使えるだけだ」

 

「ちょっとって…」

 

苦笑いするユーノ。

別に間違ったことは言ってないぞ?俺は神から能力を貰っただけで本当は何の力もない一般人なんだからな。

 

俺達が駄弁っていると、人間形態のザフィーラが近づいてきた。

 

「小鳥遊」

 

「あ、ザフィーラさん。どうしたんですか?」

 

「我の事はザフィーラでいい。それに敬語もいらん」

 

「そう?じゃあ俺の事も名前でいいよ」

 

「ならロクト、それにユーノ。今から屋台に行き飯を買おうと思っていたのだが…一緒に行かぬか?」

 

「俺はいいけど、ユーノはどうする?」

 

「じゃあ僕も行こうかな」

 

俺とユーノとザフィーラは近くにあった焼きそばの屋台に行った。因みにアラジンは海で浮き輪に乗って浮いている。

 

屋台に着くと、そこには焼きそばだけではなくフランクフルトやお好み焼きも売っていた。何でも3人兄弟でそれぞれが作って販売しているらしい。

 

「うわぁ、美味そう…」

 

「おっ!見る目があるね坊主!どれにするんだい?焼きそば、お好み焼き、フランクフルト、どれも1つ200円だよ!」

 

香ばしい香りとジュージューとやける音につい呟いてしまった俺の言葉に焼きそばを作っているハチマキをまいた五分刈りの青年が大きな声で話しかけてきた。

 

「じゃあ焼きそばとお好み焼きを2つずつ、それとフランクフルトを3つ下さい」

 

「何だ少年、そんなに食うのか?」

 

お好み焼きを焼いている金髪ショートの青年が聞いてきた。まあ普通はそうも思うよな。

 

「うん、だって滅茶苦茶美味そう何だもん。それに腹減ってるから全然食えるよ」

 

「ほぉー大した少年だ。そこの褐色のお兄さんと大人しめな少年はどうする?」

 

「そうだな…焼きそば、お好み焼き、フランクフルトを1つずつ頼む」

 

「僕はそんなに食べれないから焼きそば1つで」

 

「あいよ!うちは頼まれてから作るから少し時間がかかるんだ、だからそこのベンチで少し待っててな!」

 

「これでも飲んで待っててくれいや」

 

そう言ってフランクフルトを焼いていた坊主にグラサンの青年が俺たちに1本ずつラムネを渡してくれた。

 

「ありがとうございます」

 

「有難いが、いいのか?」

 

「いいって事よ!作るのを待ってて貰うんだからな!まぁゆっくりしててくれいや!」

 

そう言うと坊主の青年はフランクフルトを焼く作業に戻っていった。

気のいい兄ちゃん達だなー、と思い青年達見ているとユーノが俺にラムネを見せて聞いてきた。

 

「ねぇロクト、これってどうやって開けるの?」

 

「ん、あぁそれはなぁ。この蓋をこうやって…ほら開いた」

 

「へぇー面白い飲み物だね」

 

「だろ……ん?アレって…」

 

視界の先に何やら2人の男に絡まれているリインフォースの姿が見えた。片方の男がリインフォースの腕を掴んで話しかけている。

 

「ナンパか」

 

「どうしかしたのか、ロクト」

 

「いや…リインフォースがナンパされて、ってシグナム?」

 

リインフォースが何か話していると何やら男達が怒り始めた。そしてその間にシグナムが仲裁に入った。

 

因みにシグナムの事を呼び捨てなのは、あの戦いが終わって帰る時にシグナムが俺を好敵手と認めたから対等に話してくれと言ってきたのでそうさせて貰っている。

 

「…止めに行った方がいいか?」

 

「あの二人だったら大丈夫じゃないかな?逆にあの男の人達の方が可哀想だよ」

 

「たしかに、っ!」

 

リインフォースが後ろを向いている時、シグナムに殴られた方の男が大声で叫びながら拳を振りかぶっていた。

 

反応できていない、そう思った俺は一気にリインフォースと男の間に入って男の拳を掴む。

 

 

「男が女に手を上げちゃダメだろ」

 

「なっ、何だ!このガキいつの間に!?」

 

「とっとと帰ったら。じゃないとこの手、握りつぶすよ」

 

掴んでいる右手に少し力を入れる。それだけで男の拳はミシミシと悲鳴を上げていく。

 

「イデデデデデ!!!わかった!分かったから!離せ!!」

 

「離せ?」

 

立場を分からさせるために手の力を更に込める。

 

「あぎゃあああ!!??すいません!!離してください!!」

 

「ん、もう二度とすんなよー」

 

「「ひいぃぃぃ!!!」」

 

男の手を離すともう片方の男と一緒に走って逃げていった。ちゃんと力は加減したから折れてもいないしヒビも入ってはいないだろう。

 

「さて、大丈夫か?」

 

「あ、あぁ」

 

「ロクト、今のはどうやったのだ?物凄い速さの移動だったぞ」

 

俺が2人に聞くとリインフォースは戸惑いながら頷いて、シグナムは目をキラキラさせながら詰め寄ってくる。

近い、近いよシグナム。鼻が当たる程近いよ。

 

「し、シグナム、少し離れてくれ…顔が近い///」

 

「む。す、すまない。つい気になってな///」

 

そう言うとシグナムは2歩程後ろに下がる。その隣では何故かリインフォースが俺を睨んでいた。

 

「あのー、何でリインフォースは俺を睨んでるんだ?」

 

「別に…何でもない」

 

「いや、怒ってるよな?何故に?リインフォースになんかしたか俺?」

 

アレか、余計なお世話だったってヤツか?

 

「………フだ」

 

「え?」

 

「リィフだ!」

 

「お、おお。どうしたんだよいきなり」

 

「私は主等からそう呼ばれている。だからお前もそう呼べ。その代わり私はお前の事をロクトと呼ぶ」

 

「えぇ…まぁいいけどさ」

 

確かにリインフォースだと長いからな。

 

後で気になって聞いたのだが、リィフと名付けたのは咲だった。

 

 

 

「おっ!坊主、さっきはカッコよかったぞ!」

 

ザフィーラ達の所へ戻ると焼きそばを焼いていた兄ちゃんが俺に声をかけてきた。どうやら一部始終を見られていたらしい。

 

「そんな少年におまけで1個ずつプレゼントだ」

 

「えっ!いいんですか?」

 

「あったぼうよ!俺達は坊ちゃんの行動に感動した!だからこれはその気持ちだ!」

 

気持ち…気持ち?感動させてもらったからそのお礼って事か?なんかよく分からんがまぁ貰えるなら有難く貰っておこう。

 

「それじゃお言葉に甘えて…ありがとうございます。あ、これ代金です」

 

「あいよ!毎度ありぃ!またのお越しをお待ちしてるぜ!」

 

俺は焼きそばの兄ちゃんにお金を渡してリィフ達と一緒に保護者がいる所へ戻った。



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昔話でもしたくなるいい湯だなって

side碌斗

 

その後俺達は、ひとしきり泳いで満足したなのは達と合流して昼食をとったりスイカ割り等をしてアリサの別荘に戻った。

 

「いやー泳いだね!」

 

「楽しかったね!アリシア!」

 

笑い合っているアリシアとレヴィとは対照的にフェイトは疲れきっている。

 

「二人共休まず泳ぎ続けるんだもん…」

 

「大変だったな。なんなら後でマッサージでもしてやろうか?」

 

「え?」

 

こう見えて俺はマッサージが得意なのだ。まあ前世でアルバイトしていから上手くなったんだけどな。

 

「まぁ嫌ならいいん「嫌じゃないよ!」」

 

「全然嫌じゃない!だからお願い!」

 

「お、おお。フェイトがいいんだったらやるけどさ」

 

「うん。じゃあお風呂上がった後にお願いしてもいい?(ロクトがマッサージ……私の体をマッサージ……///いや、何意識してるの私!)」

 

フェイトはガッツポーズをしながら何やら悶えている。そんなに疲れていたのか?

すると俺とフェイトの会話を聞いていたのかなのはとシュテルが近づいて来た。

 

「ちょ、ちょっとロクトくん!私にもして欲しいの!」

 

「ロクト、私にもです。フェイトにやるなら私にもやって下さい」

 

「え?何、お前らも疲れてるの?そんな風には見えねぇんだけど…」

 

「凄い疲れてるの!マッサージが必要なくらい疲れてるの!」

 

「私もです」

 

いやそんな気迫込めて言われてもなぁ…あとシュテル、近い、近いよ。何で段々距離詰めてきてるのこの子?

とりあえずシュテルから離れて2人に「時間があったらする」と言って部屋へ逃げるように戻った。だって2人の後ろにはやてとかディアーチェとかいたからさ、あの様子じゃ絶対自分もやれって感じだったからな。ディアーチェは注文が多いからめんどくさいんだよ…。

 

部屋に戻ってから5分後、アラジンとユーノも戻ってきた。

 

「あ、ロクト。さっきアリサ達が怒ってたけど何かしたの?」

 

「アリサ達が怒ってた?いや別に何もしてねぇけど、何か言ってたのか?」

 

「うん。何か私にもやりなさいよー!って言いながらはやてとディアーチェと一緒に探してたよ」

 

「oh......」

 

「それとレヴィちゃんが碌斗くんのマッサージの上手さを皆に話してからきっと大人の皆からも頼まれると思うよ」

 

「oh.........」

 

まぁレヴィ達にはよくマッサージして上げてたからな。でもなぁ、20人近くやれと言われても無理だぞ?

俺が凹んでいるとユーノが優しく声をかけてくれた。

 

「ま、まぁとりあえずお風呂行こうよ。露天風呂になってるみたいでサウナもあるらしいよ?」

 

「露天風呂か…じゃあ行くか。汗もかいたしな」

 

俺達は着替えとタオルを持って4階の大浴場へ向かった。

 

 

 

sideすずか

 

「あーもう!どこに行ったのよアイツはー!」

 

「ロクトめ…シュテルとレヴィには承諾したのに我から逃げるとは…」

 

「むぅ…いっその事ロクトくん連れて混浴に入ろうかな?」

 

「はやて…流石にそれは止めた方がいいわよ」

 

さっきロクトくんに逃げられてご立腹なアリサちゃんとディアーチェちゃん。はやてちゃんの危ない発言を咲ちゃんが指摘しています。

 

「そ、それにしてもアリサちゃん。ここのお風呂ってそんなにおっきいんだね。10人以上も一緒に入れるなんて」

 

「まあね。ちょっとした銭湯みたいになってるからね」

 

「やっぱアリサはお金持ちなんだねぇ」

 

頭にタオルと服を乗せながら歩いているアルフさんが感心したように言います。それをアリサちゃんは苦笑しながら「私じゃなくて私の家がですよ」と返します。

 

そうこうしている内にお風呂前に着いたので脱衣所に入り服を脱ぎ始める。

 

「わぁ…やっぱりすずかちゃんも大っきいんだね…」

 

「え?ちょ、ちょっとなのはちゃん。恥ずかしいから余り見ないでよ///」

 

流石に女の子同士でもそんなにじっくり見られると恥ずかしいです。

「あ、ゴメンね!…やっぱりロクトくんも大きいのが好きなのかな?」

 

そう言って自分の胸を触って落ち込むなのはちゃん。なんと言って励まそうかと思ったら既に服を脱ぎ終わってタオルで体を隠したシュテルちゃんが寄ってきました。

 

「なのは、落ち込まないでください。まだ私達は小学5年生です。成長の余地はまだあります」

 

「あとロクトは胸の大きさなど気にしてないぞ。あやつに前聞いた事があったのだがその時に『人を好きになる基準に胸の大きさとか関係あるのか?』と言ってたからな」

 

「だからちっちゃくても関係ないと思うよ〜」

 

シュテルちゃんの言葉に続いてディアーチェちゃん、レヴィちゃんも答えます。

その言葉にホッとする4人(・・)

 

「え?今フェイトちゃんも…」

 

「な、何のことかな?さぁ姉さん、早くお風呂に行こう。私早くシャワー浴びたいなー!」

 

「うわっ!フェイト。待ってよー」

 

フェイトちゃんはそのままアリシアちゃんと一緒にお風呂に行ってしまいました。今の行動を見てなのはちゃん、はやてちゃん、アリサちゃんが集まって相談をしています。

 

「ちょっと…まさかフェイトもなの?」

 

「いや、そんな筈あらへんやろ…私等はともかくフェイトちゃんがロクトくんに惚れる要素なんか……あれ?アリサちゃんは何でロクトくんに惚れたん?」

 

「え!?えっと、それは……その、前にアイツが恭也さんと戦ってる時に見た楽しそうな顔が頭から離れなくて…って何言わせんのよ!///」

 

「いや自分から喋ったやん」

 

「でもアリサちゃんの言うこと分かるかな。ロクトくんの顔余り見た事無かったから不意打ちであんな楽しそうな表情見せされたら誰でもドキッとしちゃうよ」

 

普段隠れてた顔をいざ見るとカッコよくて尚且つ笑顔なんだもん。アリサちゃんやフェイトちゃんが好きになるのも頷けるよ。

私がそう思っていると3人は驚いた様子で私を見つめていた。

 

「どうしたの?」

 

「ま、まさか…」

 

「すずかちゃんまで…」

 

「またライバルが増えるの!?」

 

「ち、違うよ!そんなんじゃなくて純粋にカッコイイって思っただけだからね!?」

 

3人が勘違いしているので慌てて訂正する。私達がそんなやり取りをしていると咲ちゃんが呆れた表情をしていた。

 

「そんな事より早くお風呂に行きましょうよ。流石に寒いわよ」

 

「そ、そうだね。ほら行こ?アリサちゃん」

 

私も咲ちゃんにならってアリサちゃんの手を引っ張って浴場へ行きます。

好きな人、かぁ…私にはまだ先のことかな?

 

side碌斗

 

「わぁー!大っきいー!」

 

「こら、はしゃぐなアラジン」

 

「ロクト」

 

「あ、恭也さん。恭也さんこっちに来たんですね」

 

「ああ。俺だけじゃなく父さんと泰三さん、それにザフィーラも来ているがな」

 

「忍さんと一緒に混浴じゃなくていいんですか?」

 

「当たり前だ……全く、お前も咲も同じ事を言って…」

 

俺達は話しながらシャワーが置いてある所まで行く。

てか咲も言ってたのかよ。

 

体を洗い終わり、頭を洗っていると同じく隣で頭を洗っている恭也さんが話しかけてきた。

 

「なぁロクト。ここの別荘の近くにはアリサちゃんの家が所有している道場があるらしいんだ」

 

「…何でそんなもんがあるんすか」

 

「何でも護衛の方々の訓練に使ってたようだぞ。それで相談なんだが…風呂を上がったら一戦、相手してくれないか?」

 

まぁ…何となく分かってたけど。

 

「別にいいですけど…許可とかは貰ってるんですか?」

 

「ああ。さっき鮫島さんに聞いたんだが使ってもいいと言われた」

 

頭の泡をシャワーで流して恭也さんの方を向く。丁度恭也さんも洗い終わった所だった。

 

「とりあえず風呂入りましょうか」

 

「そうだな」

 

 

side恭也

 

「ふぃ〜〜……あぁ気持ちいい…」

 

「極楽だねぇ碌斗くん」

 

「おじさんっぽいよ二人共」

 

浴槽でゆったりとしているロクトとアラジン、それを見て苦笑しているユーノ。

こう見ると唯の小学生なんだがな……アイツらはなのは達と同じ魔法使い何だよな…。

そう言えばアイツに稽古を付け始めたのはいつからだったか…確かあれは……

 

 

あれは俺がまだ高校生の頃、美由希と一緒に翠屋の手伝いをしていた時だったな。

その日は休日だったが客が少なかったのでよく覚えている。

 

「いらっしゃいませ。おひとり様ですか?」

 

「あ、はい。そうです」

 

「じゃあ席はどの席がいい?」

 

「えっーと、あそこで」

 

美由希が接客をして少年がカウンター席に座った。そして父さんが少年に注文を聞く。

 

「いらっしゃい。何にする?」

 

「そうですね…オススメのケーキとコーラを1つ」

 

「かしこまりました。じゃあ出来るまで少し時間がかかるから待っててね」

 

「はい」

 

そう言って父さんは厨房へ入って行った。その際に俺に少年の話し相手になって上げろと言ってきたので渋々少年の隣の席に座る。

 

「えっと…こんにちわ」

 

「…ああ」

 

…なんと言うか、気まずい。それから微妙な時間が流れたが話題作りの為に少年の年齢を聞くことにした。

 

「見たところ小学生っぽいが何歳なんだ?」

 

「7歳ですね、小学2年です」

 

「へぇ…俺の妹と隣の家の子も同い年なんだよ」

 

「あ、そうなんですか」

 

なのはと咲と同い年だと言うこの少年に少し興味が湧いた。

それから身の上話をして最初より随分親しくなった。

 

 

「じゃあ両親がいないと大変なんじゃないか?」

 

「そうでも無いですよ。家事は自分一人分くらいなら出来ますし、料理も好きですからね」

 

「ロクトはしっかりしているんだな」

 

「いやいや」

 

「大分打ち解けたみたいだね。はい、オススメのショートケーキ」

 

俺達が話していると父さんがケーキを持ってやってきた。

 

「うわぁ…美味しそう…頂きます!…うまっ!?」

 

それからロクトはケーキをもうひとつ注文して食べてから帰って行った。

 

 

それからロクトは毎週、曜日などは変わるが週に1回は翠屋に来るような常連になっていた。

 

そしてロクトが通い続けてから一年近くたったある日の事だ。

なのはや咲と一緒に神崎という少年が翠屋に来て、俺を見つけるとこう言ってきたのだ。

 

「おい!俺に剣を教えろ!!」

 

「ちょっと神崎くん!いきなりお兄ちゃんに何言ってるの!」

 

「そうよ。アンタみたいな馬鹿が恭也さんの指導に耐えれるわけないでしょ」

 

「おいおい、そんな照れんなって」

 

「照れてなんかないの!!」

 

「何をどう見たらそんな考えになるの?眼科行っていっその事目を取り替えてきたら?」

 

あの普段大人びている冷静な咲があそこまで露骨に嫌悪の表情を浮かべているのにあの神崎と呼ばれた少年は気づいていない。それどころか照れ隠しだと思っているらしい。

面食らったがどうやらどこから聞きつけたか御神流の剣技を教わりたいらしい。お望み通り基礎から教えてやったのだが練習は不真面目、言うことを聞かない、なのはや咲ばかりにちょっかいをかけている。余りにも酷いので俺は二度と来るなと言ってアイツをたたき出した。

 

その次の日にロクトがやってきた。そしてロクトに先日の事を話すと彼はこう言った。

 

「じゃあ俺に教えてくれませんか?俺も少し齧ってるんですよ」

 

その言葉通り、ロクトは俺が見た事ない剣術を使っていた。だがその剣術はどこかぎこちなく、完全に扱えてはいないようだった。なのでロクトは俺にその指導をして欲しいと言ったのだ。

ロクトは神崎とは違い、俺が上げた改善点等もちゃんと聞いて、文句も弱音も吐かずに指導を受けてくれた。

 

偶に美由希や父さんからも稽古を付けてもらっていたがな。

 

 

「懐かしいな…」

 

「何がですか?」

 

つい零れた呟きにロクトが反応してきた。

 

「いや、お前と初めて会った時のことを思い出してな」

 

「あー…恭也さんの顔が怖かったの覚えてますよ。あんな不機嫌そうな顔、普通の小学生が見たらビビりますよ」

 

む…そんな顔だったのか?

 

「…別に不機嫌だったわけでは無いのだがな。さて、ではそろそろ上がるとするか」

 

「了解です。アラジン、ユーノ、俺は先に上がるからな」

 

「はーい!」

 

「僕らはもう少し使ってから上がるねー」

 

ロクトが2人に返事をして俺達は浴場から出た。

 

 

さて…今回はどれくらいまで食いついて来るか…見ものだな。



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おい、試合しろよ

sideフェイト

 

「いいお湯だったね」

 

「そうだねフェイトちゃん。所で…ロクトくんのとこに行くの?」

 

お風呂上がり、浴衣を着た私たちは1階にある宴会場へ向かう為、階段を降りていた。その際になのはに突然そんな事を言われた。

 

「え?えっと、約束してるから一応」

 

「…私も行くの。私もしてもらう約束したからね」

 

「勿論私も行きます」

 

「わっ!シュテル!?いきなりビックリさせないでよ」

 

シュテルは気配を消して後ろから声をかけてくるから怖いよ…夜とかにやられたら特に。

 

「すみませんフェイト。次からは気をつけます。それにしてもロクトは何処でしょうか?私達より早く上がってる筈ですが…」

 

「私達より早くリニスが出てたからリニスに聞いてみようよ」

 

1階に着くとリニスが外に向かっているのが見えたのでリニスの元へ行く。

 

「リニスー!」

 

「あら?フェイトになのは、それに…シュテル。どうかしたのですか?」

 

「えっと、ロクトくんを探しているんですけど見てませんか?」

 

「ああ。彼なら恭也さんと試合をやるらしく道場へ向かっていましたよ。先程士郎さん達から聞いたので私も見に行こうかと思って」

 

恭也さんと?あの時みたいにまたやるみたいだね。

…それにしても私達にマッサージをする事のを忘れて試合?

 

「なのはとシュテルはどうする?」

 

「私は見に行くの」

 

「勿論私も行きます」

 

何かさっき聞いたセリフだね、シュテル。

私達が玄関の前で話していると、姉さんや咲達が集まってきた。お母さん達はもう既になのはのお父さん達と一緒に道場へ行っているらしい。

結局、私達は全員で道場へ向かいました。

 

道場へ着くと何やら打ち合う音が聞こえる。もう既に始まっていたらしい。

私達は扉を開けて中に入った。するとそこには素手で木刀を捌いているロクトの姿があった。

 

side碌斗

 

「ふっ!はっ!てい!らぁ!」

 

振り下ろされる木刀を左手で弾き、弾き、右手で防ぎ、突く。

恭也さんが少し距離を空けたので俺もバックステップで後ろに下がる。

 

「……行きます!はぁ!」

 

「っ!ぐっ!」

 

足に力を込めて一気に恭也さんとの距離を詰める。そのまま勢いを利用して右手で殴りつける、が、それを木刀で防がれる。俺はそれを見て左足を床に着けて右足でハイキックをする。

 

「ちっ!せい!!」

 

「うお!?」

 

それを上手くいなされて、恭也さんは木刀で俺の喉元を突いてくる。それを首を捻って何とか躱し、また後ろに下がる。

 

このままじゃ千日手だな……よし、1つやってみるか。

 

俺は今までの空手もどきの構えを止めてボクシングの様な構えを取る。

 

「?(構えを解いた?アレは…ボクシングか?)」

 

「行きます……!」

 

「!?なっ!」

 

先程とは違い速さを重視した動き方をする。一撃の威力よりも手数で攻める。

 

ワンツー、左フック、右ストレート、左アッパー、右ストレート。

そして顔に向かって左フックを放ち、それをガードする為に空いたボディに左アッパーを叩き込む。

 

「ふっ!」

 

「ぐぅ!?はあぁ!!」

 

「うおっ!?っと」

 

「…今のは少し効いたぞ」

 

「はぁ…はぁ…それは、どうも」

 

アレだけ殴って「少し」だもんな…もうホント嫌になるぜ。

このボクシングもどきの戦い方だとスピード重視になるからどうしても一撃の威力が足りなくなる。それにスタミナも無くなってきた。

どうすっかなぁ………。

 

「ではそろそろこちらも…本気で行かせてもらおう」

 

「っ!(来るか!神速!)」

 

恭也さんが2本の木刀を構えると姿が消えた。俺はそれを見た瞬間後ろに向かって回し蹴りをした。

 

「なっ!?」

 

「あだぁ!」

 

蹴りは片方の木刀を捉えたが、もう片方の木刀を阻止することは出来ずまともに食らってしまった。

 

「勝負あり!恭也の勝ちだ。惜しかったねロクト君」

 

「いやぁ、いい勝負だったねぇ」

 

士郎さんと泰三さんが互いに感想を述べてくる。むぅ…やはり素の身体能力じゃ木刀を折ることは出来なかったか。

 

「やっぱり強いなぁ…」

 

「いや、前とは違いお前は神速に反応して蹴りを打ち込んできた。まぁ俺がお前の視界から消えてから反応したみたいだから少し遅かったがな」

 

「くっそー…次こそは勝ちますよ」

 

「ああ。楽しみにしているぞ」

 

恭也さんから手が差し出されるのでそれを掴み立ち上がらせてもらう。

 

「はいロクト、お疲れ様。恭也さんもどうぞ」

 

「サンキュー、ユーノ」

 

「む、ありがとう」

 

ユーノからタオルを貰って汗を拭う。それにしても疲れたなぁ…飯前なのにあんだけ動けばそりゃそうか。というかまた風呂に入らない、と…あれ?何か忘れてるような………何だっけ?

 

「って何で皆集まってんだ?」

 

よくよく周りを見渡すと何故か全員集合していた。え?いや何で?

俺が疑問に思っているとすずかが前に出て説明してくれた。

 

「あ〜、そう言えば言ってたなそんな事」

 

「ロクトから言い出したのに忘れないでよ…」

 

「悪い悪い。お詫びに魔法もプラスして使ってやるからさ」

 

8型魔法を使いながらやれば効果も上がるだろ。

 

「そんな魔法があるの?」

 

「まぁな…で、なのはとシュテル。その目は何だ?」

 

「ロクトくん…私にはしてくれないの?」

 

「フェイトだけと言うのは些か不公平だと思います」

 

「…まぁ3人くらいならいいけど「我もだ(私もや)」…おいおい」

 

ディアーチェとはやてまでか…ってレヴィ、ユーリ、それにアリサ。何でお前らまでこっちに来てるの?

 

「シュテるんとディアーチェがいいんだったら僕もいいよね?」

 

「3人やるのに私だけ仲間外れは良くないと思います」

 

「それだけの人数やるなら私にもやりなさいよ!」

 

「おいおい待て待てお前ら。いくら何でも俺一人でそんな大勢は無理だ。めんどくせぇ」

 

…まぁ出来ないことも無いけどさ。

 

「むぅ…じゃあ1番最初のフェイト以外でジャンケンしよう!勝った人がロクトからマッサージして貰えるって事で!」

 

「よっしゃええで!ほな行くで皆!最初はグー、ジャンケン」

 

「「「「「「「「ポン!!!」」」」」」」」

 

白熱してるな…たかがジャンケンで……。

 

「……行くか」

 

俺はジャンケンに熱中しているアイツらをほっといてユーノ達と宴会場へ向かった。



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宴の会

sideアルフ

 

 

「恭也さん風呂行きますか?」

 

「そうだな…いや、また風呂に入って待たせるのも悪い。夕食後でいいんじゃないか?」

 

「それもそうっすね。にしても腹減ったなぁ…」

 

「昼間あれだけ食べただろ……」

 

「ソレとコレとは別っすよ。というか恭也さんと試合をすると腹が減ります」

 

先程からあたしの目の前で会話をしているのはロクトと恭也。

 

にしても…やっぱりフェイトやアリシアが言うだけはあるね。生身でアレだけ動けるなら魔法を使えば……何かあたしも闘いたくなってきたよ。

 

「なぁロクト」

 

「はい?何ですかアルフさん」

 

「あたしの事はアルフでいいよ。それに敬語もいらないよ」

 

「いいんですか?」

 

「ああ。別に構わないよ」

 

「それじゃあ…どうかしたのか?アルフ」

 

「いやぁ…さっきのロクトと恭也との闘いを見てたらさ、何かあたしも体動かしたくなってきちゃってさ」

 

「……流石にもう今日は無理だぞ?」

 

「分かってるよ!だから今度魔法もありで一戦やろうよ!」

 

「うーん、まぁ今度な」

 

よしよし!いやぁいつ闘えるのか楽しみだね!

ま、今日はご馳走を楽しもうかなー!肉肉!!

 

 

sideリニス

 

全く…あの子は本当に自由なんですから……あとでロクト君に謝らないといけませんね。

アリシアやフェイトが言うには私やプレシアと同等の実力を持つ魔導師らしいですが…何であの子達は彼が戦っている姿を見た事ないのにそこまで言えるのでしょうか?ああ、そう言えばシグナムさんと戦ったのをはやてから教えて貰ったんでしたっけ。

ですが…フェイト達も成長の余地はかなりある。咲に関しては既にクロノ君レベルの実力を持っている。小鳥遊碌斗…彼は本当にそれ以上の実力の持ち主なのでしょうか?

 

………私も彼の魔導師としての実力を見たくなってきましたね。

 

「後で私も頼んでみますか」

 

どうせならプレシアも誘って一緒に戦って見ましょうかね。

 

 

side碌斗

 

…何か嫌な予感がした気がする。

 

「どうかしたのかロクト?」

 

「いえ、何でもないっす。にしても…広いっすね……流石バニングス、金のかけ方が違うな」

 

下手な小学校の体育館より広いぞこれ……。

料理が置かれている高級そうな小さな机にこれまた高級そうな座布団が敷いてある。形としては丁度コの字を左に90°回転させた様な形だ。

 

「大人の方々はこちらへどうぞ。お酒が用意されているので。お嬢様方はこちら側の席なら自由にお座り下さい」

 

そう言って士郎さん達大人組を席に案内する鮫島さん。さて、俺はどこに座ろうか…。何かなのは達に凄い見られてる気がするけど気にしないでおこう。

 

「なぁユーノ。端のあの場所に行こうぜ。アラジンもこっち来てくれ」

 

「え?でもなのは達がコッチおいでー見たいな感じで手を振ってるよ?」

 

「俺には見えないな」

 

「ね、ねえ碌斗くん……シュテルちゃん達が凄い形相で見てるんだけど……」

 

「…俺には見えない「なら見せて上げましょう」うをっ!?シュテル!?」

 

お前俺の後ろにいたんじゃないのかよ。何で突然目の前に現われんだよ……。

 

「愛の力です」

 

「意味わからんし、心を読むな。で、何だこの腕は」

 

「ロクトは私の隣の席だと決定しています。よって私達はあそこの席にします」

 

そう言って俺の腕をがっしりと自分の腕で組むシュテル。待て、外れねぇ!シュテルの奴どこにこんな力があんだよ!?

目線でユーノとアラジンに助けを求める。

 

「(ゴメンねロクト…僕には無理だよ…)」

 

「(ごめんよ碌斗くん、僕まだ死にたくないんだ)」

 

ユーノとアラジンは目を逸らして合掌していた。

二人ともぉおおお!!!!!

 

「ちょっと待ってなの!ロクトくんの隣は私が座るの!」

 

「なら私は右側に座りますからナノハは左側に座ってはどうです?」

 

「さあロクトくん座るの!」

 

手の平返しが早すぎんだろ!?もうちょい耐えろよ!2人に両腕を組まれながら座らされる。

 

「はぁ…何でそんなに俺の隣に座りたがんだか……」

 

「それは「あぁ〜〜〜!!!シュテるんとなのはが抜け駆けしてるー!!」残念でしたねレヴィ、早い者勝ちですよ?」

 

レヴィの他にもディアーチェとユーリ、はやて、アリサが口々に言葉を発する。

俺は心を無にしてそれを聞き流していた。するといつの間にか話は終わっていたようで今から乾杯をするみたいだ。

音頭は士郎さんが取っている。

 

「えー、今回もこんな豪華な別荘に招待してくれたアリサちゃんにお礼を言って乾杯しましょう!では皆さんグラスを持って…………乾杯!!」

 

「「「「「「乾杯!!!」」」」」」

 

 

sideフェイト

 

「フェイト〜!アリシア〜!どうして貴方達はこんなに可愛いのかしら〜!!」

 

「お、お母さん!恥ずかしいから止めてよー!」

 

「リニスー!アルフー!助けてー!」

 

私と姉さんは今、酔っ払ったお母さんに抱きしめられています。

 

「ほらプレシア、いい加減にしなさい。フェイトもアリシアも困っていますよ」

 

「仕方ないじゃない!2人が可愛すぎるのがいけないのよ!!」

 

「はぁー、この酔っ払いは……ほら子供自慢なら高町さんや御林さんもやっているからそこで話してきてください」

 

リニスはそう言うと私と姉さんを引き剥がして母さんを同じく酔って子供自慢をしているなのはのお父さんと咲のお父さんの所へ連れていきました。リニス、ありがとう。

 

「やっと解放されたねフェイト」

 

「うん…リニスに感謝しなきゃだね」

 

じゃあ解放された事だしロクトの所に行って約束していたマッサージをしてもらおう。

 

「お、フェイト。来たか」

 

ロクトの所へ行くとロクトはご飯を食べながら…いや食べさせられていた。

 

「はいロクトくん、あーん!」

 

「ロクト、こちらも美味しいですよ」

 

「だからお前らは自分で食え!俺は自分の分があるんだから!」

 

「ではこちらを」

 

「だからって俺の分を食わそうとすんな!自分で食えるから!待て俺のを食おうとするなぁ!」

 

……大変そうだから頼むは後にしとこう。

 

 

 

数十分後、2人から解放されたロクトが私の所へ来た。ロクトも私も他のみんなも料理は食べ終わってそれぞれ話したり遊んだりしていて、大人達はお酒を飲んで話している。

 

「悪いな待たせちまって」

 

「ううん。別に大丈夫だよ」

 

「サンキュー。じゃ、やるからうつ伏せになってくれ。痛かったり力が弱かったりしたら言ってくれ」

 

「うん。わかったよ」

 

そしてロクトのマッサージが始まった。

 

 

 

「ほい終了。どうだった?」

 

「ふにゃあ〜………」

 

すっごい……気持ちよかった………。

そのまま眠っちゃいそうなくらい気持ち良かった。というか、本当に眠気が出てきて……。

 

「ん?眠いのか?なら寝ててもいいぞ。部屋に戻る時に起こしてやるから」

 

「じゃあ…そう、させて……もら…う……」

 

side碌斗

 

「すぅ………すぅ………」

 

「……寝たか。ふわぁ…」

 

俺の膝で寝息を立てているフェイトを見てると何だかこちらまで眠くなったきた。

 

「むむむむむ!フェイトばっかりずるいよ!僕にもしてよ!」

 

「コラ、レヴィ静かにしろ。フェイトが起きるだろ」

 

というかお前は家で隙あらば俺の膝の上に頭乗っけてくるじゃねーか。

 

「ぶー、ふこーへーだー…イイもん!シュテルやディアーチェ達にも言ってくるもん!」

 

「あ、おい!待て!……行っちまった…シュテルやなのはに見られたらめんどくせぇ事に「私やなのはに見られたら何が面倒くさい事になるんですか?」なるうおわぁ!?シュテル、いつの間に…!?」

 

「ロクトが「悪いな待たせちまって」と言ったところからです」

 

「めちゃくちゃ最初じゃねぇか!!!」

 

というか何?シュテル達から解放されたと思ってたら実は近くにいたってこと?何それ怖い。

そう思っているとシュテルが何故か顔を近づけてきた。俺はフェイトに胡座の膝枕をしているので身動きが取れない。

 

「な、何だよシュテル」

 

「………いえ、何でもありません。そのままではロクトもキツくなってくると思うので枕の代わりになるものを貰った来ますね」

 

そう言ってシュテルは給仕さんの元へ歩いていった。一体何だったんだ?

数分後シュテルがまくらと水が入ったコップを持ってなのはと一緒にやってきた。

 

「そうっと下ろして……よし、枕の上に頭を乗せて、と…あとは毛布でも掛けとくか」

 

「あ、じゃあこれ使って。さっき給仕さんから一緒に貰ったの」

 

そう言ってなのはが薄めのタオルケットを渡してくれる。俺はそれをフェイトにかけて起こさないように離れた。

 

「どうぞロクト」

 

「ああサンキュー」

 

シュテルから水を貰いそれを飲み干す。と、体に異変を感じる。

 

「あれ?にゃんかこりぇおかしぃ……」

 

俺の意識はそこで途切れた。

 

 

 

翌日、目が覚めると俺は自室のベッドで寝ていた。隣のベッドにはユーノとアラジンが寝ている、時計を見ると短針が5を指していた。

 

「あれ…?俺いつの間に寝たんだ?昨日の寝た時の記憶がないぞ…?」

 

というか頭が痛い。ガンガンと痛む。過去に2回程経験したことのある痛みだ。

 

「……眠いし頭痛いしとりあえず寝とくか」

 

俺はまた布団を被って瞼を閉じた。



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真相は!いつもひとつ!とは限らない

ミセイネン、オサケ、ダメ、ゼッタイ。


sideなのは

 

「ロクトくんどうしたの!?大丈夫!?」

 

シュテルちゃんから受け取った水を飲んでから様子がおかしくなり倒れたロクトくん。

私はロクトくんの側へ駆け寄って声をかけます。するとロクトくんがゆらりと起き上がって私の顔を見ました。

 

「ロクトくん、大丈夫?」

 

「……ああ、大丈夫さなのは。心配してくれてありがとう。君は本当に優しい子だね」

 

「にゃあ!?にゃ、にゃに言ってるのロクトくん!/////」

 

突然私の肩を掴みそう言うロクトくん。ななな何か様子がおかしいよ!?顔も赤いし………まさか…!

 

「あぁ…これお酒ですね」

 

シュテルちゃーーん!!

ロクトくんはお酒を飲んでこんなになっちゃったの?

私が混乱しているとロクトくんは私のほっぺに手を当てて話しかけてきました。

 

「大丈夫かい、なのは。顔が真っ赤だよ?」

 

「だ、大丈夫なの!/////」

 

「本当かい?熱があるんじゃないのかな?ちょっとゴメンね」

 

「!!!???//////////」

 

ろろろロクトくんが私のおでこにおでこを当てて、もう何が何だかわからないのー!!??

 

「熱いね…それじゃあなのはもあそこで休んでようか」

 

「ふえ〜?にゃっ!?//////////」

 

俗に言うお姫様抱っこをしながら私を持ち上げるロクトくん。もうなんか…恥ずかしすぎて、意識が……。

 

「きゅう〜………//////////」

 

 

sideディアーチェ

 

我がすずか達と談笑をしていると慌てた様子でシュテルが走ってきた。

 

「大変ですディアーチェ」

 

「む?どうしたシュテル。そんなに慌おって」

 

「ロクトが間違ってお酒を飲んでしまって…」

 

「何!?」

 

ロクトが酒を飲んだだと!?いかん、これは非常に不味い!!こうしてはおれん!

 

「シュテル、どちらになった?」

 

「………黒です」

 

よりによって黒か……。

 

「ディアーチェちゃんどうしたの?急に立ち上がったりして」

 

「それにシュテルもどうしたのよ。そんなに慌てて」

 

すずかとアリサはまだ事の重大さを分かってはいないようだな…。

 

「いいか二人共。被害に会いたくなければ即刻ここから立ち去れ。そして夜が明けるまで自分の部屋に閉じ篭っているのだ」

 

「え?い、いきなりどうしたのよ?」

 

「いいから早く行くのだ!じゃないと奴が「どうしたんだディアーチェ、そんな怒鳴ったりして」来……ろ、ロクト」

 

不味い…このままでは……。

我が焦っているとシュテルから念話が届いた。

 

「《ディアーチェ、アリサとすずかを連れて下がって下さい。ここは私が食い止めます》」

 

「《馬鹿な!やめろシュテル!そんな事をしたらお前が!!》」

 

「《私達はこれで2度目です、少しは耐性がついていますから…。行ってください、ディアーチェ》」

 

「《くっ…すまないシュテル…》アリサ、すずか。行くぞ!」

 

「え?きゃっ!ディアーチェちゃん!?」

 

「ちょ、ちょっとー!どこ行くのよー!」

 

我はシュテルに背を向け、すずかとアリサの手を握り走った。

直後、ボフンと言う爆発音が聞こえたので振り返って見ると…

 

「ふにゃぁ/////」ボフンッ!

 

ロクトに陥落されたシュテルがいた。

 

「シュテルゥーー!!!!」

 

 

すずかside

 

私達が談笑していた所に来たシュテルちゃん。シュテルちゃんから話を聞いていきなり焦り始めたディアーチェちゃんに連れられて私達は自分達の部屋に来ていた。

 

「…ねえ、そろそろ教えてよディアーチェ。一体何で私達は部屋に戻されたの?」

 

アリサちゃんが少し怒った様子でディアーチェちゃんに聞きます。

 

「ああ…そうだな、話そう。アレは我等がロクトの元へ来てから半年程がたった時の事だった。その夜、我等は普通に夕食を食べていたのだが…ロクトが間違えて酒を飲んでしまったのだ。どうやらちゅうはいと言うものと缶ジュースを間違えたようでな。最初は呂律がおかしいくらいだったんだが数秒後にロクトが突然倒れてな、当然我は慌てて駆け寄った……するとロクトが我を抱き寄せて、く、口説きおったのだ…/////」

 

「………は?」

 

ディアーチェちゃんの言葉にアリサちゃんは口をポカンとさせていた。かく言う私も同じような顔をしているだろう。

 

「えっ、えっとつまり…ロクトくんは酔っちゃうと女の子を口説いちゃうようになるの?」

 

「うむ…口説くと言うよりは褒め殺すと言った方がいいかの。アイツが素直に思っている事を恥ずかしげもなく言ってくるのだ……こちらはたまったもんじゃないがな…/////」

 

「まあそれは分かったけど…黒ってなんなの?シュテルも言ってたけど…関係あるの?」

 

「ああ。黒とは先程言った近くにいる者を口説いてくる酔い方をしたロクトの事だ、まるで悪魔のようなので我等が名付けた。そしてもう1つ、ロクトには我等が白と呼んでいる酔い方がある」

 

「白?」

 

何だろう?黒の事を悪魔って言うのなら白は天使なのかな?

 

「うむ。白の酔い方をしたロクトは……1番近くにいる者に抱きついて眠り、ロクトが起きるまでずっとそのままの状態でいるのだ。昔我が被害にあったのだが……ロクトに抱きしめられるは寝息が首元や耳などにかかるは寝顔が見れるはそれはもう天国だった//////////」

 

ディアーチェちゃんはその時の事を思い出したのか顔を赤くさせて体を捩らせています。

 

「ディアーチェちゃん、戻ってきて」

 

「はっ!すまない、取り乱したな。まぁ今回は黒だからアリサやすずかまで被害に合わせるわけにいかんのだ。既になのはは被害にあってしまった様だがな…」

 

「ね、ねぇ。さっきから聞いてて思ったんだけどたかがロクトが口説いてくるだけなんでしょ?そこまで過剰に反応しなくても……」

 

「なら聞こう。アリサは耐えれるのか?ロクトが肩を抱いて耳元で囁きかけてくるのを、意識を保っていられるのか?」

 

「う………無理かも………/////」

 

「しかも彼奴は目が覚めると酔って仕出かした事をすっかり忘れているのだ。我等が覚えている分尚タチが悪い」

 

うーん、確かに気まずいかもね…。

 

「まぁそう言う訳だからアリサ達はここにいるのだ。我はシュテル達を回収してくるのでな」

 

そう言ってディアーチェちゃんは扉へ向かっていきます。

それをアリサちゃんが声をかけて止めます。

 

「ちょ、ちょっと!大丈夫なのディアーチェまで行って!」

 

「なぁに心配するな。あの状態は長くても1時間程で眠りにつく。それに我は過去に1回経験しておるから耐性がついているのだ。ではな」

 

ディアーチェちゃんはそう言うと扉を開けて行ってしまいました。

少し経ってからアリサちゃんが口を開きます。

 

「…すずか、私達も行くわよ」

 

「え?でもいいのかな?」

 

「ディアーチェの言い方だと多分なのはとシュテルだけじゃなく何人も餌食になってるわ。そんな人数ディアーチェ1人じゃ運べないでしょ?」

 

「うーん、たしかにそうだね」

 

「じゃ、そうと決まればさっさと行くわよ!」

 

そうして私とアリサちゃんは宴会場へ戻ってきました。

 

「何よこれ……」

 

そこには何処か恍惚として倒れている女性陣とロクトくんの首根っこを掴んでいる恭弥さんがいました。

 

side恭弥

 

「…………な」

 

「「恭弥さーん!」」

 

「うん?アリサちゃんとすずかちゃんか。どうしたんだい?」

 

「それはこっちのセリフです!」

 

「あの…何があったんですか?」

 

「ああ。それはな――」

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

アレは俺と忍が2人で酒を飲んでいた時だった。美由希が慌てた様子で俺たち所へやって来たのだ。

 

「恭ちゃん忍さん大変!」

 

「どうしたの美由希ちゃん?」

 

「何かあったのか?」

 

美由希から話を聞くとロクトが間違えて酒を飲んで酔っ払ったしまい、そのせいでなのは達を口説きまくっているとの事。当然俺はロクトを止めに行った。

 

「おいロクト!」

 

「あ、恭弥さん。どうしたんですかそんなに慌てて」

 

「ね、ねえ美由希ちゃん。本当にロクト君は酔っているの?素面に見えるけど」

 

「あそこになのは達が寝ているでしょ?あの子達全員ロクトくんの囁きで堕ちた子達」

 

美由希が指をさした方を向くとそこにはなのはを初め、はやて、アリシア、シュテル、レヴィ、ユーリ、ヴィータ、リニスさん、シグナムさん、リインフォースさんがいた。

 

「ロクトォーー!!!貴様いい加減にせんかぁー!!これ以上ライバルを増やすなぁ!!!」

 

「あれ?ディアーチェちゃん?てっきり恭ちゃんが爆発すると思ったんだけど…」

 

「というか確かにこれじゃあディアーチェちゃんが可哀想ね…流石に全員惚れてはいないだろうけど今回のでかなり揺らいじゃった筈だし…」

 

「というか既に半分以上がロクトくんに惚れているんだよ」

 

「………なんて言うか神崎って子が可哀想になって来たわね」

 

2人の会話に耳を傾けながら俺はロクトの元へ近づいていた。

 

「おいおいディアーチェ。なに怒っているんだ?可愛い顔が台無しだぜ?」

 

「なっ、ばっ!バカを言うでにゃい!///とっとと正気に戻るか寝るかせんか!!」

 

「そんな事を言う口はこの口かな?」

 

ロクトはディアーチェの唇に指を当てて鼻先にキスをした。コイツ……本当にロクトなのか?

 

「なっなっなななな!?!?はふぅ…//////////」

 

そして顔が真っ赤なり脳がパンクしてディアーチェも倒れた。

流石に見ていられないので手っ取り早く神速で背後をとり気を失わせようと思った。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「とまぁこんな感じだ」

 

「うぅ〜!!(ずるい!ディアーチェ達だけそんな事されてたなんて!)」

 

「あはは…大変だったんですね」

 

「それじゃあもう時間も遅いし皆を部屋へ運ぼうか。二人とも、父さんたちに伝えて来てくれるかい?」

 

「はーい!行こ、すずか!」

 

「うん!」

 

2人はそう言って大人達の元へ向かう。

それを見て美由希が口を開く。

 

「あのこと、話さないの?」

 

「………ああ。」

 

2人には話していなかったが、先程の話には続きがあるのだ。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

神速でロクトの背後に近づく。

ロクトと言え、酔っている今の状態では満足に戦えない。そう思っていた。

 

 

だが、違った。

 

 

「っ!!」

 

ロクトは俺の神速に反応し、右手を伸ばしてきた。

神速を使った時の僅かな敵意、それをロクトは感じ取ったのだ。

 

ロクトの右手が俺の胸郭に伸び、掴まれる。

 

本能が、この右手を潰せと言っている。

 

 

いや、言っていた(・・・・・)。

 

「すぅ……すぅ……」

 

「………は?」

 

先程までガンガンと鳴っていた警鐘は既に収まっており、目の前には眠りこけるロクトがいるばかりだった。

 

「今のは………」

 

「恭ちゃん!!」

 

どうやら先程のロクトを見て美由希も何か感じたのか臨戦態勢でこちらへ来た。

 

「安心しろ…もう心配ない」

 

「…ねぇ恭ちゃん。さっきロクトくん…恭ちゃんの神速、完璧に反応していたよね?」

 

「…ああ。多少気を抜いていたとは言え、完璧に反応された。しかも……」

 

「あの一撃……もしロクトくんの意識があって、喰らってたら…どうなってたの?」

 

ロクトに掴まれた胸郭を見る。

 

「恐らく……意識は飛ぶな。骨も折れるだけで済めば良い方だろう」

 

俺達は『永全不動八門一派・御神真刀流、小太刀二刀術』という戦闘術…か?まぁ俺と美由希と父さんはかなりの腕が立つ剣士だ。俺は父さん程ではないがそれなりに場数を踏んできた。美由希もそんな俺や父さんから日夜剣の指導を受けているから分かるはずだ。

 

ロクトのあの一撃、アレを喰らったらどうなるか、を。

 

「………本当に末恐ろしいな」

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「話してもあの子達が怯えるだけだ。だが………」

 

ロクトとは一度、本気で死合をしてみるか。



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転校生と転生者

side???

 

「どんな人なんだろうな………小鳥遊碌斗、御林咲」

 

「兄さん、そろそろ出発だってさ」

 

「うん。わかったよ時雨」

 

さて、会うのが楽しみだ。

 

side碌斗

 

夏休みも終わり今日から新学期となる。

 

俺はアリサの別荘へ泊まりに行く旅行を終えてから一度もアイツらと会っていない。と言うか何か避けられてる気がするんだよな……シュテル達に聞いても私達は話せないの一点張りだし。

そんな事を考えているといつの間にか学校に着いていた。

クラスメイトなどに挨拶をしながら教室に入り机の上に突っ伏していると頭を叩かれる。顔を上げるとそこには咲がいた。

 

「久しぶりねロクトくん」

 

「そうだな」

 

「何よつれないわね」

 

「眠いんだよ。察しろ」

 

「はぁ…この分じゃ転校生が来るって言っても反応しないわね」

 

「転校生ねぇ……まさか転生者じゃないよな?」

 

原作では聖小に転校生など来ない。だがここはifの世界なので普通にありえる。

 

「ま、見れば分かるか。ほら神崎くると面倒だからさっさと戻れ」

 

「はいはい。また後でね」

 

そう言うと咲は自分の席へ戻って行った。因みに夏休み前に席替えをしたので席は変わっている。俺の席は窓側の1番最後尾で咲の席は廊下側の1番前だ。

ま、最後尾なのは嬉しいな。授業中寝ててもバレにくいし。

俺がまた寝ようとすると声がかけられる。

 

「お、おはようロクトくん」

 

「はやてか…おっす」

 

隣の席になったはやてだ。いつもの活発な姿とは違い、今日は随分大人しい。

顔も何か赤いし…風邪か?

 

「おいはやて」

 

「ひゃい!な、なんやでしょう!///」

 

「…お前大丈夫か?顔赤いし何か変だぞ?」

 

「べっ、別に何でもあらへんよ!うん、私は大丈夫や!/////」

 

「そうか?ならいいが…」

 

本人がそう言うなら大丈夫か。それじゃ、ホームルームが始まるまで寝てるとするかな。

 

sideはやて

 

「すー………すー………」

 

隣で寝息を立てているロクトくんをチラリと見る。

 

「(ああああぁぁぁ!!!!!顔が直視出来へん!!)//////////」

 

夏休みにアリサちゃん家の別荘に泊まりに行った時のアレが原因や……なのはちゃん達もくらったみたいやしな…私らの中で無事やったのは咲ちゃんとアリサちゃんとすずかちゃん、それと寝ていたフェイトちゃんだけやったらしい。

 

ロクトくんが私の頭に手を置いて、ナデナデして…しかも耳も触られて…そんで、

 

『照れてるの?クスッ、可愛いね』

 

あああぁぁあ!!!!ダメや!あの時の事を思い出すんやない!八神はやて!!

心頭滅却、心頭滅却、心頭滅却、心頭滅却、心頭滅却、心頭滅却………。

あ、そう言えばまつ毛長かったなぁ………ハッ!

 

「…お前、何やってんの?」

 

「うぇっ!?/////」

 

何か私が無意識に拳を机にぶつけてたらしく、その音でロクトくんの目が覚めたって言われた…私の痴態を見られてた……。

 

「たくっ、何で悩んでのか知らねぇがもうちょい静かにしろよ。もうちょい寝れたのによ」

 

「ご、ごめんて……」

 

アンタのせいでこんなになってんやろー!!!って口が裂けても言えんなぁ……。

数分後、先生が教室に入ってきてみんなで挨拶をする。

 

「えー、ホームルームの前に皆にお知らせがあります。今日、新しく皆のお友達になる子がいまーす!」

 

先生のその言葉に皆騒ぎ始める。

 

「先生!女子ですか!」

 

「男子の皆は残念。男の子です」

 

「「「キャーー!!」」」

 

「うっせぇ……」

 

女子の皆の黄色い歓声に顔を顰めるロクトくん。

 

「どんな子やと思うロクトくん?」

 

「……神崎みたいな自己中ヤロー」

 

「へ?」

 

「じゃあ入ってきてー」

 

扉を開けて現れたのは……

 

 

 

「よぉ!我が嫁たち!会いに来たぞ!!」

 

金髪のツンツンヘアーの少年だった。

 

 

side碌斗

 

……やっぱりな。

神崎(2号)は吉田先生(担任)を無視して最前列にいるなのはと咲を口説いている。そしてそれを止めに入ったアリシアとアリサも巻き込まれ、更には目に止まったフェイトとすずかも巻き込まれた。

はやては見つからないように机に突っ伏して顔を隠している。

 

「なんだなんだ、我の嫁達は全員我と同じクラスなのか。まぁオリ主の我には当然だな!」

 

と、神崎(2号)は言っているが当然それを黙って聞いていられない男がいる。

 

「おいてめぇ!!誰が誰の嫁だって!?なのは達は俺様の嫁に決まってるだろぉが!!踏み台はすっこんでろ!!」

 

そう。神崎(本家)だ。

俺?何で俺がキレなくちゃいけないんだよ。

神崎(本家)は神崎(2号)に近づくと思いっきり腕を振りかぶって殴りかかった。

 

「おらぁ!!!」

 

「ぐっ!何をする!雑種の分際で!」

 

それを両手でガードして防ぐ神崎(2号)。いやそれくらい避けろよ。

 

「うるせぇんだよ!俺の嫁を口説きやがって!オリ主は俺だ!!」

 

「ふん、何を言うかと思えば。貴様の容姿は踏み台そのものではないか。まさにオリ主である我にピッタリの踏み台だ」

 

「んだとクソ金髪ヤロー!!!」

 

「いい加減にしなさーーい!!!!」

 

ドゴッ!!!

 

神崎(本家)と神崎(2号)の頭にゲンコツを振り下ろす吉田先生。かなりいい音がしたぞおい……。

 

「神崎君は席に戻って聖君はさっさと自己紹介をしなさい!!ほら、バニングスさん達も戻って」

 

先生に言われて渋々席に戻る神崎とやっと解放されたとため息をついて席に戻るアリサ達。

 

「それじゃあ聖君、自己紹介をして下さい」

 

「聖帝(ひじりみかど)だ。我は雑種等と付き合うつもりはない。あと我の嫁に手を出したものは許さん!」

 

「誰がテメェの嫁だ!!なのは達は俺の嫁だ!!!」

 

「ふん、雑種が何を吠えようが俺の嫁であることは変わらん」

 

「だ!か!ら!誰がアンタらの嫁よー!!!!いい加減にしなさいよね!!!」

 

あらら、遂にアリサがキレやがった。

アリサはそれから凄い勢いでまくし立てて神崎と聖を黙らせた。それを好機とばかりに吉田先生が聖と神崎にラリアットを決めて意識を刈り取ってから席を決めて座らせた。それでホームルームは終了となった。

 

 

そして午前授業を終わらせ放課後、俺は速攻で教室から飛びだした。

 

「逃がさないわよ」

 

しかし逃げきれなかった。

 

「離せ咲。めんどくさい匂いしかしない。俺は帰る」

 

「ダメよ。今から翠屋に行くからロクト君も来なさい」

 

咲に襟首を掴まれるが俺はそれを一瞬で振りほどいて脱出する。

 

「あ、コラ待ちなさい!」

 

「やなこった!」

 

今回ばかりは本当に面倒だから俺は逃げる。タダでさえ神崎とか言う面倒な自称オリ主君がいるのにもう1人増えるとか勘弁してくれ。そしてそれに俺を巻き込もうとしないでくれ。

 

俺は脱兎の如く咲から逃げた。

 

side咲

 

「あー行っちゃった…もう!あんな面倒なのを私一人に押し付けて帰んないでよ!!」

 

「あのー」

 

「何!」

 

気がたってる中で声をかけられ荒れた声で反応してしまった。声をかけてきた少年も驚いていた。

 

「ごめんなさい。何かしら?」

 

訂正して再び聞き直す。

 

「あ、うん。僕今日2組に転校してきた氷室吹雪って言うんだけど…君は御林咲さんで合ってるかな?」

 

この子も転校生?そう言えば2組の子が言ってたわね。

 

「そうだけど……何の用かしら?」

 

「えっと、その前に小鳥遊碌斗君はいるかな?彼もいてくれたら嬉しいんだけど……」

 

「……ロクト君なら帰ったわよ」

 

「え、本当?うーん…じゃあ彼は明日でいいかな」

 

「…そろそろ要件を話してくれるかしら?」

 

私も早くなのは達と帰りたいんだけど、という意味も込めて彼にそう言う。

すると彼は慌てて謝罪して告げてきた。

 

 

 

 

「ごめんごめん。同じ転生者同士で話がしたくてさ、今から時間あるかな?」

 

 

 

 

 

 

「はい?」



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数少ない男友達が増えました

ストーカー、ダメ絶対


side吹雪

 

僕の名前は氷室吹雪、転生者だ。

 

「じゃあ兄さんはその翠屋というお店によって帰るんだね?」

 

「うん。だから時雨は先に帰ってて、1人で帰れるかい?」

 

「馬鹿にしないでよ兄さん。僕だってもう小学4年生なんだから1人で帰れるよ」

 

「それでも気をつけて帰るんだよ」

 

「勿論さ」

 

妹の時雨を見送って彼女の元へ戻る。

 

「待たせてゴメンね。それじゃ行こうか」

 

「ええ」

 

僕以外の転生者の1人、御林咲と一緒に翠屋へ向かった。

 

side時雨

 

やあ、僕の名前は氷室時雨。先週、私立聖祥大学附属小学校に転校して通い始めた小学4年生さ。

 

「兄さんは心配しすぎだよ。こんな昼間から犯罪者が現れるわけないじゃないか」

 

僕は通学路を歩いて家に向かう。歩いて15分という長さで結構遠い。

 

「引っ越すんならもう少し近い所でも良かったと思うんだけど……」

 

それから10分程歩いて、人通りの少ない路地に出た。言ってもすぐに抜けれるんだけどね。

でもここはどこか薄気味悪いので自然と早足になる。

 

ジャリ

 

…え?今、後ろから音がした?

 

頭の先から震えが走る。ダメだ、足を止めちゃダメだ。僕はさっきより足を早める。それに合わせて後ろの足音も早くなる。

 

「(あと5メートル!)」

 

僕の足の長さだと大体10歩くらいだ。

早く、早く!

一刻も早くこの路地から抜け出したくて僕は走った。

1歩、2歩、3歩、4歩、大丈夫だ。直ぐに出れる。1歩でも路地から出ればそこは商店街なんだ。お昼だから人も多い。

 

5歩、6歩、7歩、8歩。

やった!もうすぐだ!

 

そして9歩、10歩。僕は路地から出た。

 

 

 

 

が、直ぐに後ろに引っ張られて直ぐに路地に戻ることになった。

 

「うぐっ!」

 

引っ張られる力が強くて尻もちを着いてしまった。そして背後から聞こえる荒い呼吸音ですぐに理解する。

 

「ふー!ふー!」

 

「(いやだ…)だれか助けっむグ!」

 

声を出そうとしたら口に布を詰められる。そして僕の体は軽々と持ち上げられどこかへ運ばれる。

 

「むー!むー!」

 

「ふひ、ふひひ。待っててね、もう少しで着くから」

 

僕を抱えている男の顔を見た。その顔は汗で曇ったメガネをしており、薄い髪の毛、体を見ると酷く太っていた。

 

そのまま運ばれ着いたのはボロボロな雑居ビル。そこに乱雑に降ろされる。

 

「ふひひ、お、大人しくしてね」

 

逃げようとしたところを押さえつけられ両手首を紐か何かで縛られる。足も一緒に縛られた。

 

「むー!!むー!!」

 

「あ、ゴメンね。僕、君みたいな可愛い子を見つけるとつい襲いたくなっちゃうんだ。未成熟の幼女の体を僕が汚す…興奮するよ…」

 

男の顔は興奮と劣情に染まっていた。

 

この人…僕の事、犯す気なんだ。

 

見ず知らずの、こんな男に僕は犯されて、純潔を失う………。

 

これから憧れの人が出来て、恋人になって、愛を育む事によって無くなる純潔を、こんな人に………。

 

「(嫌だ…)」

 

嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ。

 

手足をどうにか動かして抵抗する。

 

「むぅー!!!???」

 

「暴れないでよ…動くと、あ、危ないよ?」

 

男は取り出したナイフを僕の目の前にチラつかさせて脅してくる。

そしてそのナイフで僕の衣服を切り裂いていく。

 

「ふぅーふぅー、こ、これが幼女の肌……!」

 

「ぐすっ…ひぐっ……」

 

制服を切り裂かれ僕の肌が晒される。目の前の男に見られる。

涙が止まらない。

 

そして男はスカートの中、下着の部分に手をかける。

 

「(ああ……僕は、こんな所で汚されるんだ……こんな、人に……無理やり………)」

 

意識が暗くなっていく。どんどん沼に沈まっていくような絶望感によって………。

 

「ふひ、ふひひひひ!!」

 

男が手に力を込めるのが伝わる。そして僕の下着が降ろされる、その瞬間。

 

 

ズドォン!!!!

 

 

「!?な、なんだよ!!」

 

「………おい」

 

入口の所から、僕と同じくらいの少年が現れた。

 

side碌斗

 

咲から逃げて家に帰る途中、夕飯の食材を買おうと商店街によっていた時にそれが見えた。

 

「ん?今の…」

 

目立たない路地裏から白い制服がチラリと見えた、しかしそれはすぐに消えた。

 

……見間違いか?

 

「《アラジン、あそこの路地裏に生体反応ってあるか?》」

 

『《え?ちょっと待ってね……うん、2つあるね。1つは大人の男の人のと、もう1つは小さい女の子のものだね》』

 

それを聞いて、俺は直ぐに先程見えた路地裏の所へ行った。そこから足跡を追ってついた先が………、

 

「…………おい、何してんだテメェ」

 

ナイフを持った男と服を切り刻まれて手足を縛られている少女がいるボロロの雑居ビルだった。

 

「な、なんだお前は!!」

 

「こっちが聞いてんだよ、何してんだテメェ」

 

俺は殺意を込めて男に話しかける。すると男はビクつきながら答えてきた。

 

「み、見てわからないのか?この女の子を汚そうと、してるんだよ!邪魔するならガキだろうがこ、殺すぞ!」

 

男はそう言うとナイフを持って立ち上がった。

 

「…そうかい」

 

男の言葉を聞いた瞬間、俺は男の距離を一瞬で詰めて男の首を掴んだ。

 

「ぐえっ!!??なっ、何でいぎなり、めのばえに…」

 

「……………………」

 

そのまま腕に力を込める。

 

「ぐっ、ぐるじぃ…やべで、じぬぅ」

 

「やめて、だと?テメェはあの子に何したか分かって言ってんのか?」

 

更に力を込める。

 

「お前は!!あの子に!自分のクソみてぇな劣情をぶつけようとしたんだよ!!!それを!ちょっと力を込めただけで苦しいだ、死ぬだ、やめてだと?巫山戯んなよ!!」

 

力任せに男を壁に投げつける。男は大きな音を立てて壁にぶつかるとそのまま気を失った。

 

「はぁっ…はぁっ……大丈夫か?」

 

怒りを抑え、呼吸を整えて少女に近づく。紐を解いて口に詰められた布も取ってやる。

 

「大丈夫か?怪我は無いか?」

 

「…はい、切られたのは制服だから……」

 

白い制服は無残に切り裂かれている。

その破片には見覚えがある。俺と同じ聖祥の制服だ。

 

「君、聖祥の子かい?」

 

「っ、はい」

 

下校途中を狙われたのか…。

少女はまだ怖いのか自分で自分の体を抱きしめている。

 

「とりあえずこれ来てくれ」

 

「あ……」

 

俺は自分の制服の上を少女に羽織らせる。

 

「もう大丈夫だから、安心してくれ」

 

「あ……あぐ…ひっく……うぇ、うええぇぇ……」

 

安心させる為に頭を撫でると少女は俺に抱きついて胸元に顔を埋めて泣き始めた。そりゃそうだ。大の男が襲ってきたんだ、怖かったのだろう。

 

俺はそのまま少女が泣き止むまで頭を撫で続けた。

 

その間にアラジンに警察を呼んでもらうのも忘れていない。

 

10分後、警察官が到着して男を捕縛してパトカーに乗せた。

すると1人の警察官が俺達の元へやってきた。

 

「君が通報してくれた少年だね?」

 

「はい。この女の子があの男の人に路地に連れ込まれるのを見て怪しいと思ったので警察を呼んで追いかけたんです。そしたら……」

 

「成程、じゃあ君も女の子と一緒に来てくれるかな?その女の子も1人じゃ心細いだろうしね」

 

「そうなの?」

 

「……」コクコク

 

少女は首を振って答えた。

 

そして俺は警察に行き少女と一緒に事情聴取を受けた。男については自分が来た時には既に気絶していたと伝えた。男の方が何か言っていたみたいだけど気絶したせいで記憶が混乱していると判断され、そのまま逮捕された。

 

 

「…うん、事情聴取に付き合ってくれてありがとう小鳥遊君。時雨ちゃんの方もお家に連絡した所お兄ちゃんが迎えに来てくれるみたいだからもう少し待っててね」

 

「わかりました」

 

「はい…」

 

この少女、名前は氷室時雨と言うらしく、先週海鳴市に引っ越して来たばかりだったらしい。しかもその家は俺の隣の家。兄と一緒に聖祥に通っているらしく今日転校してきたんだとか。

 

「…所で時雨ちゃん。そろそろ離れられるかな?」

 

先程からこの時雨ちゃん(名前で呼ばないと泣き始めるので仕方なく)、俺に抱きついて離れないのだ。事情聴取を受けている時も離れず、俺の気分は親コアラの気分だ。

 

「まだ…もう少しだけ……」

 

「うーん…」

 

さっきからずっとこんな調子なんだよなぁ…確かに小学4年生であんな男にレイプされかけるってのは怖かっただろうし、それを助けた俺に甘えるのもおかしくはない、のか?

 

「二人とも、時雨ちゃんのお兄ちゃんが来たよ」

 

「時雨!!無事か!?」

 

警察官の人と一緒に来たのは俺と同い年のイケメンだった。顔整ってんなー。

 

「兄さん……うん、怪我はないよ」

 

「そうか…良かった…本当に良かった………君が助けてくれたんだよね?僕は氷室吹雪、今日、私立聖祥大学附属小学校に転校してきた小学5年生だよ。よろしく。それと……時雨を助けてくれて、本当にありがとう!」

 

そう言って泣きながら頭を下げる氷室。いきなり泣かれながら謝られてもこっちが驚くわ。

 

「気にすんな。たまたま俺が近くにいただけなんだから。それと俺は警察を呼んだだけだからな?」

 

「それでもだよ。本当にありがとう…」

 

…いい兄貴じゃん。

 

その後、家が隣ということも話して一緒に帰ることになった。時雨ちゃんはその間も俺から離れようとせず、仕方ないので俺がおんぶしている。

その時雨ちゃんは今日色々あって疲れたのか背中で寝息を立てている。

 

「じゃあやっぱり君も転生者だったんだね?」

 

「まあな。俺のクラスにいる御林咲、神崎王我、それと今日転校してきた…なんだっけな?聖?だったかも転生者だ。咲は信用出来るが神崎と聖はやめとけ、なのは達を自分の嫁と公言して相思相愛だと思ってる奴らだからな」

 

驚いた事にこの氷室吹雪も転生者だったらしい。だが話してみてわかったが神崎や聖とは違い、真面目で良い奴だ。

 

「やっぱりか…神様からその事は聞いていたんだよ。友達になるんだったらその2人はやめとけってね」

 

神様にまで言われるほど性格が歪んでいるのかよ…あの二人は…。

 

「あのさ…碌斗って呼んでいいかな?僕前世では友達いなくてさ、今日も転校して来たばかりで知り合いがいなくて…その、友達になってくれないかな?」

 

「おう別にいいぞ。じゃあ俺も吹雪って呼ばせてもらうぜ?いやー、俺も男友達が少なくてな…吹雪と友達になれて嬉しいぜ」

 

「あはは、ありがとう碌斗。これから宜しく」

 

「ああ。こちらこそ宜しくな」

 

俺達は握手を交わした。



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思いと想いは紙一重

side咲

 

「碌斗、その弁当って君が作ったの?」

 

「ああ。というかシュテル達の分も俺が作ってるぞ」

 

「へー、料理も出来るんだね碌斗は」

 

「吹雪だってそれくらい出来るだろ?」

 

「僕はそんな上手に作れないよ。ねぇ碌斗、その美味しそうな唐揚げ1つ貰ってもいい?」

 

「ん?ああ別にいいぜ。代わりにそのエビフライくれよ」

 

「うんいいよ。はい」

 

「サンキュー……美味いなこのエビフライ」

 

「この唐揚げも美味しいよ」

 

いつも私達がお昼を食べている屋上。

目の前でお互いの弁当のおかずを食べ合うロクト君と氷室君、その光景を見せられている私達。

 

「…ねぇ、氷室君」

 

「何かな御林さん?」

 

「貴方昨日、翠屋に着いて電話がかかってきたと思ったら直ぐに翠屋から出て『また明日話そう!』って言ったわよね?」

 

「うん言ったね」

 

「何でもうロクト君と仲良くなってるの?」

 

どーゆー事だゴラァ、と言った感じでロクト君と氷室君を睨む。

 

「昨日色々あって吹雪の妹を助けたんだよ。それでこいつの引っ越してきた家が隣だったんでな。仲良くなった」

 

「省きすぎよ!もっとちゃんと説明しなさい!」

 

説明になってない説明をされてアリサが吠える。まあ気持ちは分からなくもない。

 

「うーん…吹雪、いいのか?」

 

「コレばっかりは僕じゃなくて時雨に聞かないと……」

 

時雨?妹さんの名前かしら?

 

「なのは、今日翠屋に行ってもいいか?」

 

「へ?うん、いいと思うけど」

 

「そんじゃ放課後に翠屋に集合してくれ。そこで話す」

 

そう言ってロクト君と氷室君はお弁当箱を仕舞うと屋上から出ていった。

……仲がいいわね。そのせいでロクト君に惚れてる子達が嫉妬しているの分かってるのかしら?

 

後ろではメラメラと嫉妬の炎を上げるなのは達がいた。

 

side碌斗

 

「…まぁというわけで皆に集まって貰ったはいいんですけど」

 

放課後、翠屋には俺、吹雪、時雨ちゃん、咲、なのは、フェイト、アリシア、はやて、アリサ、すずか。まぁここは分かる。

士郎さん、桃子さん、恭弥さん、美由希さん、ユーノ。まぁここまではまだ分かる。

シュテル、レヴィ、ディアーチェ、ユーリ、シグナム、ヴィータ、シャマル、リィフ、ザフィーラ。何でいるの?

 

「おい…何でこんなに多いんだよ」

 

態々翠屋を休業にしてまで話すことでもないのによ…。

 

「私とはやてで連絡しといたのよ。どうせ聞くなら皆いた方がいいと思ってね」

 

「はぁ…それと時雨ちゃん。何で君は俺の腕に抱きついているのかな?」

 

そう。この時雨ちゃん、学校を出てからずっと俺の右腕に抱きついて離れないのだ。

 

「僕が碌斗さんの腕を抱きしめたいと思ったからだよ。ダメだったかい?」

 

「そろそろ離して欲しいかな」

 

「ちぇっ、まぁ碌斗さんに嫌われたくないから素直に離れるよ」

 

やっと離れてくれた……。

 

「(あの子…ずっとロクトくんに抱きついていたの……)」

 

「(ええなー、羨ましいなぁ……)」

 

「(ロクトもロクトよ!何抱きつかれてデレデレしてるのよ!)」

 

「(…帰ったら久しぶりにO☆HA☆NA☆SIしましょうかね)」

 

「(時雨めぇ…我のロクトに勝手に抱きつきおってぇ…!)」

 

「(いーなー時雨ちゃん…僕もロクトにくっつきたいー!!)」

 

「(羨ましいです……妬ましいです……)」

 

「(…別に羨ましくなんてない!)」

 

「(あの時雨って奴、ロクトにベタベタしやがって〜…ロクトもロクトだ!腕組まれたくらいでデレデレしやがって…って私は何で怒ってんだ?)」

 

何か女性陣の視線がすっごい刺さってくるんだけど……怖ぇ……。

 

「まぁ本題に入るか。時雨ちゃん、話してもいいかな?」

 

「………うん。いいよ」

 

「それじゃあ昨日あったことを話すぞ。アレは――」

 

それから20分程かけて昨日、何があったかを話した。皆は真剣に話を聞いてくれた。なのは達女子は時雨がされかけた事を聞いて顔を覆ったりする事もあり、男性陣、恭弥さんなどは妹と近い年齢の少女を襲った犯人に対して殺意を抑えていた。

 

「と、まぁ、こんな感じだな……大丈夫か時雨ちゃん」

 

時雨ちゃんはその時の事を思い出したのか少し体が震えていた。

 

「…うん、大丈夫だよ。碌斗さんが助けてくれたからね」

 

そう言って俺の肩に寄りかかる時雨ちゃん。それを見たなのは達の方から何か亀裂が入る音が聞こえた。

 

「し、時雨ちゃん?さっきから思ってたんだけど少しロクトくんに近すぎるんじゃないかな?」

 

「何を言ってるのなのはさん?好きな人に甘えるのは普通でしょ?」

 

「まあそれはそうだけど……って、ええええ!!??」

 

好きな人?え?どういう事だ?

時雨ちゃんの方を見ると時雨ちゃんは俺の目を見つめながら話しかけてきた。

 

「碌斗さん、僕は貴方のことが好きになっちゃったんだよ。昨日、僕の危機に助けに来てくれて、僕の代わりに怒ってくれた碌斗さんに惚れちゃったんだよ」

 

目を逸らさずにジッと見つめながら想いを話す時雨ちゃん。

 

「………えっと、多分それは一種の迷いというか吊り橋効果に似た何かのせいで起こった勘違い「なんかじゃないよ。逆にあんなかっこいい事をされて好きにならない女の子はいないよ」ええ…」

 

『確かにアレは本当にドラマみたいだったからねぇ。時雨ちゃんが碌斗くんを好きになっても納得するよ』

 

「そういうわけさ。碌斗さん、僕は貴方の恋人になりたいんだけど。どうかな?」

 

「ええっと…悪いが今は恋愛とかする気持ちは無いんだ。ごめんな、時雨ちゃんの気持ちには答えられない」

 

「……そうだよね。確かに僕らはまだ小学生だもんね」

 

「そう。まだ小学生なんだ。だからさ、これも気の迷いな「じゃあ大人になったらいいんだよね?」…えー?」

 

「今はまだ、じゃあ中学生、高校生、大人になったら恋愛をする気持ちになるよね?なら僕はその時まで待つよ。その時になるまで碌斗さんの事を振り向かせてみるよ」

 

ニコリと微笑む時雨ちゃん。はぁ…仕方ないな。

 

「………まぁ、その時になるまで分からないからな」

 

「そうだね。まぁライバルはいないみたいだから僕は気長に待つよ」

 

ビキッ!

 

ん?また変な音がしたぞおい。

 

「ら、ライバルが、いないだと?」

 

「時雨……余り調子に乗らないで下さい」

 

「僕達だってロクトの事が好きなんだからね!!」

 

「私達は2年前からこの気持ちを抱えていたんです!!パッと出てきた貴方よりも長くロクトの事を想ってたんですから!!」

 

ディアーチェ、シュテル、レヴィ、ユーリが席を立って時雨ちゃんを睨みながら言う。

えっと…時雨ちゃんに告白されたと思ったらシュテル達も俺の事を好きだったと?

 

「……頭痛くなってきた」

 

「さあロクト!」

 

「誰を選ぶのか」

 

「今すぐ!」

 

「決めてください!」

 

それから1時間、俺はシュテル達を落ち着かせるのに時間を使った。

 

side吹雪

 

「はぁ…」

 

「おつかれ、何か大変な事になったね」

 

夜、僕は碌斗と一緒にコーヒーを飲みながらベランダで話していた。

 

「他人事みたいにいいやがって……お前の妹だろ、なんとかしろよ」

 

「無理無理、時雨はああなったら止まらないからね。良かったじゃないかマテリアル娘の皆も碌斗の事が好きだったみたいだし。このまま原作キャラハーレム作っちゃえば?」

 

「バカ言うな。……と言うか吹雪って押しキャラみたいのはいないのか?」

 

「僕の押しキャラかい?僕はvividのコロナちゃんだったからね。あと何年も先さ」

 

「ふーん。そう言えば吹雪は何で転生したんだ?」

 

「ああ、それはね…」

 

 

僕は転生する前は20歳の大学生だった。

前世ではこの顔が気に入らないと言われ、小学生の頃から虐められていた。中学、高校でも虐められ、殴られたり金を取られたりは日常茶飯事だった。

そして県外の大学に入ってやっと解放されたと思った矢先に神様のミスで死んでしまった…というわけさ。

この話を碌斗は黙って聞いてくれた。そして僕が話し終わると今度は自分の事を話してくれた。

 

 

「そっか…碌斗も大変だったんだね」

 

「まぁな」

 

「………ねぇ碌斗。碌斗は管理局に入らないのかい?」

 

「管理局、ね……吹雪は入るのか?」

 

「僕は入ろうと思ってるよ。コロナちゃんと会う時に何かきっかけがなくちゃいけないからね」

 

「…なあ吹雪」

 

「なんだい?」

 

「これは咲から聞いた話なんだが…時空管理局は何処か黒い部分があるらしいんだ」

 

「黒い部分…?」

 

「ああ。原作であった最高評議会のような裏の顔があるらしい。まぁ、そんな事は原作知識を持つ俺ら転生者と上層部の僅かしか知らない事だ。で、咲は原作知識より深く管理局の事を探ってみたらしいんだ」

 

僕は黙って碌斗の話を聞く。

 

「そしたら見事に、原作以上に真っ黒だったんだと。正義を免罪符として管理世界、管理外世界どちらにも違法行為を行う研究所がうんさかあるらしい。ま、流石に危なくなったからこれ以上調べるのはやめたって言ってたけどな」

 

碌斗は僕の目を見つめて再び問いかけてきた。

 

「この話を聞いて、吹雪は管理局に入ろうと思うか?」

 

「………僕は…」

 

「まあ焦って決める事でもないけどな。俺達はまだ時空管理局の奴ら…なのは達とは知り合いだが、本部のクロノみたいな奴らに見つかっていない。このまま地球で平穏にすごすのもいいと思う。俺はそれを目標にしていたしな…」

 

「…じゃあ碌斗は入らないんだね?」

 

「…管理局の連中に俺の事が完璧にバレるまでは入らないつもりだ。それにこっちにはシュテル達もいる。俺が入ると言えばアイツらも絶対に着いてくる。考えてみろ…原作でもあった通り次元航行部隊、通称海の奴らは有能な奴らをドンドン引き込んでいた。そのせいで地上の部隊のリーダー、レジアスが悪に染まったんだ。なのは達だけでそうなったのにアイツら以上の実力を持つ俺達転生者や同等の実力のシュテル達が一斉に入局したらどうなる?」

 

「…原作より酷いことになるかもね」

 

「そうだ、だから俺は入らない。でも俺は別に吹雪が入るのを止めたりなんかしないぜ?お前の好きにしたらいい」

 

そう言うと碌斗はベランダから出ていった。残された僕は暫く夜空を見上げていた。

 

 

side碌斗

 

あー…柄にもなく喋りすぎたな。

先程吹雪に話した事を少し後悔した。この世界はアニメではない。怪我をすれば血も流れるし、死ぬことだってある。俺達転生者は形は違えども既に死を体験している。転生という不思議な体験もして、特典という特別な力も貰った。

だが俺達は人間だ。死ぬ時はあっさりと死ぬ。死を1度体験して、力を持っていても人間は簡単に死んでしまう。

俺は死にたくない。だから今まで原作との関わりを避けて、いざとなったら自分だけでも生きれる様に鍛えてきた。

なのに、俺はシュテル達と出会った。なのは達と知り合った。自分以外の転生者を知った。

守るべき大切な存在が出来てしまったのだ。

 

「………俺一人の命じゃ無くなったからなぁ」

 

あいつらが俺に対して好意を持っているのは薄々勘づいていた。だがそれは一時の気の迷い、時が経てば忘れるだろう。そう考えていた。

だが今日聞いたアイツらの気持ち。アレは何があっても揺るがない想いだった。

 

「俺が死んだら…あいつらを守るものが無くなるからな……悪いな吹雪。俺は管理局に今はまだ入らない」

 

まだ(・・)、な。

 

「さて、と。飯食うか」

 

俺は吹雪達も呼んで一緒に食事をする事にした。

 

その時のシュテル達と時雨ちゃんの険悪な雰囲気は二度と忘れないだろう。



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種目決め

sideなのは

 

シュテルちゃん達がロクトくんに告白してから数週間が立ち、学校では今ではすっかり運動会ムードに包まれています。

私はあの時からロクトくんと話せていません…私だけじゃなくはやてちゃんやアリサちゃんも話せてないみたい…はやてちゃんなんか席が隣だから私達より余計に辛い状況みたい。

 

「はい、それじゃあ今から各種目の名前を言っていくから自分が出たいものに手を上げてねー」

 

教卓の前にアリサちゃんが立って黒板の所には咲ちゃんが各種目の名前を書いていってる。

 

「じゃあまずは、借り物競争に出たい人ー」

 

やっぱり借り物競争は人気があるんだね…クラスの男子が一斉に手を挙げたよ。ロクトくんは挙げてないけど。

 

「はいはい、じゃあ借り物競争は後でじゃんけんね。次パン食い競走出たい人ー」

 

こんな感じでたんたんと進んでいきました。途中、ロクトくんの事を見たのですがロクトくんは机に突っ伏して寝ていました。

 

 

「じゃあ最後、仮装レースに出たい人ー」

 

シーン……

 

誰も手を挙げようとしません…それはそうです。だってあの仮装レースは………。

 

「……案の定誰もいないわね…ならそこで寝ているロクト!!起きなさい!」

 

咲ちゃんからチョークを貰ったアリサちゃんがロクトくんに向かってチョークを投げつけます。

 

「…いきなり何すんだよアリサ」

 

そのチョークをロクトくんは見ないで掴んで、顔を上げました。

 

「アンタが寝ているのが悪いんでしょ!それよりロクト、アンタ仮装レースに出なさい」

 

ザワッ!

 

アリサちゃんの言葉に教室がザワつきます。

 

「はいはいわかりましたよ」

 

ザワワッ!

 

ロクトくんの返事に更に教室はザワつきます。

 

「ちょっ!ロクトくんホンマにええの!?かなりキツいであの種目!」

 

「別にどうでもいい。誰も手を挙げてない所を見るとそれ程やりたくない種目だってのが分かる。やりたくない誰かが犠牲になるならやる気のない俺がやった方がいいだろ」

 

「うっ…せ、せやけど!」

 

「はいはいそこまで!本人がいいって言ってるんだから納得しなさいはやて」

 

仮装レースの過酷さをはやてちゃんが伝えようとすると咲ちゃんが手を叩いて止めました。

そしてそれ以降は何もなく、スラスラと種目が決まって行きました。

 

そしてお昼休み、いつもの屋上です。

 

「じゃあ碌斗さんは仮装レースに参加するんだね?」

 

「ああ。コイツらが何をそんなに怯えてんのか分かんねぇんだけどな」

 

サンドイッチを食べながら時雨ちゃんの質問に答えるロクトくん。

あれから私たちは一緒に時雨ちゃんと吹雪くんとも一緒にお昼を食べるようになりました。ロクトくんは、「時雨はともかく吹雪が一緒に居てくれるのは嬉しいんよ。こんな女子だらけの中、男子は俺一人だったからな」と言っていました。

 

「それにしても…神崎と聖の奴らはほんっっとうに懲りないわね!」

 

「特別にクラスを変えてもらってやっと解放されたと思ったのに、休み時間になるとこっちのクラスに来るんだもんね…」

 

そう、今すずかちゃんが言った通り神崎くんと聖くんは普段の態度が酷いという理由で生徒指導の先生が担任をしている2組に移動して、代わりに人数を合わせるために吹雪くんがこっちの組に来たの。

 

「ホンット、何かある度にロクトに突っかかってくるしね!」

 

「最近は吹雪にまで怒鳴ってたよね…」

 

「もう私は諦めていないものとして扱ってるわ」

 

さ、咲ちゃんが最近何も言い返さないと思ったらそういう事だったんだ…。

 

「そうだ碌斗、僕は決めたよ」

 

「何が?」

 

「昨日言ったことだよ」

 

2人が何か真剣な顔で話し始めたので皆もそれに注目する。

 

「………本気なんだな?」

 

「ああ。僕は管理局に入るよ」

 

「……そうか」

 

え……、

 

「「「「ええええ!!!???」」」」

 

side碌斗

 

「吹雪くんも魔導師だったの!?」

 

「と言うか管理局のことまで知ってるって……」

 

「落ち着けお前ら。吹雪は俺と同じ様な魔導師なんだよ。管理局のことも俺が教えといたんだ」

 

とりあえずコイツらを落ち着かせて、と。因みに時雨にも既に魔法の事は説明してある。全く驚かなかったけどな……。

「あ、ついでに僕も入るつもりだよ。その管理局って所」

 

「吹雪の魔力ランクはSS+オーバー、時雨も同じくらいのSはあった、昨日計測したが二人とも魔導師の素質は充分あるぜ」

 

「まぁ時雨にはデバイスが無いんだけどね…僕はあるんだけど」

 

「吹雪くんデバイスまで持ってたんか?なんや驚きすぎて頭痛くなってきた…」

 

「あはは、ほらスノウ。皆に挨拶して」

 

吹雪が右手首を皆に見せる。右手の手首には雪の結晶の形をした腕輪がはめられていた。

 

『はーい、私はスノウ!宜しくね!』

 

「今月末にでも試験を受けれるよう、既に咲に手配を頼んである」

 

シレッとしている咲に一斉に視線が集まる。

 

「ええ、運動会がおわった次の週末にミッドに来てもらうことになるわ。それまでに時雨ちゃんのデバイスを何とかしないといけないんだけど…」

 

「そこん所は俺に任せとけ。もう少しで完成するしな」

 

時雨のデバイスは俺が作っている。どうやって作っているかは企業秘密だ。

 

「ロクトってデバイスも作れたんだ…」

 

「と言うかねぇ、さっきから私達全然話についていけてないんだけど」

 

「吹雪くんと時雨ちゃんもなのはちゃん達と同じ魔導師って事でいいんだよね?」

 

「まぁ詳しい事はこいつらに聞いてくれ、俺は日直だからもう戻る」

 

「あ、僕も行くよ。じゃあまた後でね」

 

「碌斗さんが教室に戻るのなら僕も教室に戻るかな。またね皆」

 

そう言って俺達は屋上をあとにした。



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運動会のはじまりはじまり〜

side碌斗

 

運動会当日。俺達は学校のグラウンドに集まり開会式を行っている。

長ったらしい校長の話を聞き流し開会式を終え、自分の席に戻る。

俺達1組は赤組で、2組は白組、3組は青組、4組は黄組となっており現在応援席ではアリサが大声で皆を盛り上げている。

 

「いーい!やるからには絶対優勝よ!アンタら全員やる気MAXで本気出しなさいよ!!」

 

「「「「「「「「「おう!!!」」」」」」」」」

「…だる」

 

「こらロクト!アンタもよ!仮装レースが1番ポイント高いんだからちゃんとしなさいよね!!」

 

「へいへい」

 

じゃあ自分の出番が来るまで寝てるするかな。

 

sideフェイト

 

「はっ、はっ、はっ、はっ!ゴール!やったー!私がいっちばーん!」

 

「はぁ…はぁ…やっぱり、姉さんは早いよ…」

 

組から二人ずつ出して計8人で走る女子対抗徒競走。赤組からは私と姉さんが代表として出ていた。

1着は姉さん、2着は私。赤組がツートップなので得点もたくさん貰えます。

 

「すごーい!フェイトちゃんとアリシアちゃんのおかげで一気に300点も増えたよ!」

 

「これでほかの組に一気に差をつける事が出来たわね!」

 

なのはもアリサも喜んでます。うーん、私としては1位を取りたかったんだけどなぁ……。

 

すずかや咲、吹雪も褒めてくれたのですが…ロクトの姿が見当たらない。

 

「あれ?ロクトは?」

 

姉さんも気づいたようで辺りをキョロキョロと見渡します。

 

「ああ、碌斗ならあそこで寝てるよ」

 

吹雪が指をさした方向を見るとそこには椅子を2つ使って寝ているロクトとそれを眺めている時雨がいました。

 

「くー…くー…」

 

「あぁー…可愛いなぁ、碌斗さんの寝顔…食べちゃいたいなぁ…持って帰りたいなぁ……」

 

時雨の言葉に私が引いていると吹雪が説明してくれた。

 

「シュテル達の学校も今日が運動会らしくてね、朝早くから弁当を作ったから眠たいんだって。時雨はただ碌斗に会いに来ただけなんだけどね…」

 

「そうだったんだ…なら仕方ないね」

 

「そうも言ってられないわよ。男子の徒競走が終わったら次は仮装レースだからね」

 

2巡目の徒競走を終えた咲が二等賞の札を持って歩いてきた。

 

「本当にすずかは速いわね…正直言って魔法使ってるんじゃないかと思ったわよ」

 

「あはは、それ去年も聞いたよ咲ちゃん」

 

咲と一緒に一等賞の札を持ったすずかが来た。なのは達とハイタッチをしている。

私もすずか達にハイタッチをしに近付こうとしたら突然大声が聞こえてきた。

 

「フェイトー!!アリシアー!!お前らのために俺も走るから見とけよー!!」

 

「流石踏み台神崎だな。誰も貴様の事など見ておらんわ。我が嫁達!!!我が1位をとる所をよく見ておけ!!」

 

「さ、皆。熱中症対策のために水を飲みに行きましょう」

 

「そうね。なのはとすずかも行くわよ」

 

「分かったの。フェイトちゃんとアリシアちゃんも行こ!」

 

「うん。はやて、行こ」

 

「せやな」

 

皆あの二人事は完全にスルーしています。聖が増えてから咲とアリサのスルースキルが凄い成長してるなぁ。

 

「吹雪と時雨はどうする?」

 

「僕は碌斗さんの寝顔を堪能しているから遠慮するよ。安心してよ、別にこんな可愛い寝顔を僕に向けて見せるなんて誘ってるのかなー?襲ってほしいのかなー?襲っちゃおっか。何て考えてないから」

 

「いやバリバリ考えてるやろ!!」

 

「…僕は時雨の事を見張ってるから皆で行ってきていいよ。はぁ…」

 

「あ、あはは…じゃあ行ってくるね」

 

吹雪も苦労してるんだなぁ……。

 

side碌斗

 

「………………て、……………きて………起きてってば碌斗さん」

 

「…ぅん?うぅー…時雨か。何だ…………いやまて何でここにいるんだ?」

 

「碌斗さん達を応援しに来たのさ。それよりほらっ、次は碌斗さんが出る種目だよ?」

 

時雨が指を指した方向を向くとそこには徒競走を終えた男子生徒達が座っていた。

あーもう始まんのか…めんど……。

俺は寝ぼけまなこのまま仮装レースの選手が集合する場所へ行った。

 

 

 

『では次のレース!5年生の対抗仮装レースです!それぞれの組の選手はスタート地点に着いてください!』

 

「もう始まんのか…半分寝てたから他の学年のレース見てなかったけど…いっか」

 

スタート地点に着く。他の選手はどんな奴か見てみると何故か顔が青く、これから起こることに怯えている様に見えた。

 

「(何で怯えてんだ?たかが仮装レースだろ?)」

 

どうせあそこの試着室っぽい所で適当に着替えてゴールに向かうだけなのに…何でそこまで怯えてんだよ?何か隣の白組の女子は涙流し始めたし、いや何で!?

 

『それでは…位置についてぇー、よーい………どん!!』

 

パァン!と言う音と同時に一斉に走り出……さない!?先頭突っ走ってんの俺だけだ!?何で君達そんな足をくじいたみたいな走り方してんの!?

あと赤組から何か時雨の声が聞こえるがとりあえずスルーしておこう。

 

『おーーーっと!!!赤組速い!周りが躊躇している中グングンとスピードを上げて着替えBOXに向かっていく!!』

 

訳が分からないまま「着替えBOX」と書かれた試着室へ入る。そこには…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何っじゃこりゃああああ!!!!!?????」

 

 

side吹雪

 

「L!O!V!E!I!LOVE!碌斗!!頑張れ頑張れろっくとっさん!!」

 

時雨………お兄ちゃんは妹の将来が心配だよ…………。

 

「時雨、もう少し静かにしな。目立ってるよ」

 

「仕方ないなぁ…そう言えば咲さん。何で碌斗さん以外の子達はあんなに怯えてるんだい?」

 

「それは僕も気になったかな。下級生の仮装レースは普通に見えたけど………何で5、6年生はあんなに嫌がってるのかな?」

 

「そう言えば2人は最近転校してきたばっかだもんね。聖祥の仮装レースは着替えが地獄なの。まぁ中にはマシなものもあるんだけど……大半がかなりおかしいもの。ビキニやら全身タイツやら……酷い時には独楽の着ぐるみだったり……下の学年みたいなまともな服や動物の着ぐるみなんかは着れないのよ。しかもその姿を家族に見られるんだから…ね?」

 

それは………みんながやりたくないわけだ。

 

「何じゃこりゃああああ!!!!????」

 

着替えBOXに入って行った碌斗が叫び声を上げる。

その声に観客席にいる保護者や応援席にいる生徒達、全員が驚く。

 

「な、何だ?」

 

「………そう言えばロクト君も知らなかったわね。変な服でキレてないかしら?まあルールとしては途中辞退もアリなのよ。流石に無理やり生徒の嫌がる事をさせる訳には行かないって理由でね」

 

「でも碌斗ってそのルール知ってるのか?」

 

「誰も教えてないから知らないはずよ」

 

…鬼だ。

 

数分後、他の生徒も到着し、恐る恐るBOXの中に入ってはそれぞれ悲鳴を上げる。

だが唯一悲鳴をあげずに勢いよくBOXから出てきた男子生徒がいた。その生徒の服はどうやら『アタリ』だったらしく、警察官の服に着替えた男子生徒が走っている。

 

「コラァ!!ロクト!!何してんのよ!早く出てきなさい!!!」

 

「……わあったよ!!出ればいいんだろ!出ればァ!!」

 

アリサの怒鳴り声に同じく怒鳴り声で返した碌斗がBOXのカーテンを翻して出てきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

腰まで伸びた長い黒髪のウィッグを付け、ミニスカメイド服に着替えた碌斗が。



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走れメイド(女装)

side碌斗

 

本当に腹立たしい。俺の顔は恐らく般若の様な顔になっているだろう。

 

「何でメイド(こんな)服なんか着なくちゃいけねぇんだよ!!」

 

『おおっと!?1組の小鳥遊君はメイド服に身を包んで登場だぁ!!メイド服の提供はメイド喫茶『誘宵(いざよい)』から提供させていただいています』

 

めちゃくちゃ有名な店のやつじゃねーか!?どうりで完成度が高いわけだ……。

チラリと応援席に目を向けるとなのは達が俺に穴が開くんじゃないかって程ガン見していた。唯一吹雪だけが俺を憐れむような同情の視線を送っていた。

おい時雨、その手に持ったビデオカメラを下ろせ。つか何処から出したそれ?

 

「……ハッ!こ、こらロクトー!!出てきたなら速く走りなさい!!」

 

「あぁ…もう……ヤケ糞だこんちくしょう!!」

 

俺はミニスカートなど気にせず全速力で走った。態々こんな格好に着替えたのだ。羞恥心を堪えて、こんな格好に。ならせめて1位を取らなくて気が済まない。

 

「うおおおぉぉ!!!!!」

 

「へ?ヒィっ!?」

 

俺の全速力は先に走っていた男子生徒にすぐ追いつき、そのまま追い越す。

 

『速い!!速いぞ!!ミニスカメイド!!前にいた走者をあっという間に追い越して1位に躍り出たァ!!』

 

「うおおお!!!!…ん?何だアレ……?」

 

実況の言葉を左から右へと聞き流して走っていると前方に勉強机とその上に置かれた鉄のトレイらしき物が見えた。

 

『さぁ仮装レース第1関門、『飴探し』!!トレイに入った小麦粉の中から小さな飴を見つけたらクリアです!!』

 

「ちょっと待てええぇぇ!!!!」

 

は!?仮装レースだろ!?仮装して走るだけじゃないのかよ!?

 

『仮装レースの正式名称は『仮装して障害物競走するレース』です』

 

「………はぁ………………………こんちくしょう!!!!」

 

俺は小麦粉の中に手を突っ込み飴を探す。別に口を使って探せとは言われてないからな。

 

『なんと小鳥遊君、手を使って探しています!!えー、確認したところ飴を探して口に入れればクリアなので問題ありません!!』

 

と放送が言っている間に飴を見つけた。すぐ様それを口に入れる。

これイチゴ味だ。甘ぇ。

 

『さあ小鳥遊君、後続が追ってきてる中飴を素早く見つけ、次のチェックポイントへ進みます!!』

 

関門なのかチェックポイントなのかハッキリさせようぜ放送。

 

次に見えたのは横に4つ並んだ平均台だった。

ただ普通とは違い、高さは1メートル程あり、平均台の下には泥だらけのマットがしいてある。

 

『第2関門!『落ちればドロドロ!高スギィ!!走り抜け平均台!』です!!名前の通り平均台を無事走り抜いたらクリアです。途中で下に落ちると泥だらけになり、初めからやり直しとなります!なお、妨害役として生徒が5人柔らかいゴムボールを投げてきます!それを躱して進んで下さい!!』

 

「ネーミングセンスェ……てかかなり鬼畜だな!!」

 

いざ目の前に立つとかなり高いな………隣の平均台との距離は空いているから怪我の心配は無さそうだが…落ちたら泥だらけだな。

 

「よっと、っとと。やっぱ高いな……」

 

右側に3人、左側に2人、ゴムボール片手に構えている。

ここは………

 

「全速力で走る!!」

 

平均台を駆け抜ける。それと同時にゴムボールが投げれるが俺はそれをバック走やしゃがみ、ジャンプ等をして躱し、渡りきった。

 

『チッ!!小鳥遊君、ここも難なくクリアーです!!』

 

「おい!今舌打ちしただろ放送コノヤロー!!」

 

『さあ続いては最後の関門!!『ヌルヌル!ローションブルーシートコース!』です!!』

 

「無視か!?」

 

ゴール前から10メートル程敷いてあるブルーシート、太陽の光に反射してキラキラ光っている。よく見るとそれは白いローションだった。

 

「あそこを走るのか……」

 

『なお、ここを走ってゴールすればクリアとなります。但しかなり滑るので注意してください!!1度滑ると立ち上がれなくなります!!』

 

そんなにかよ……なら、

 

「フッ!!」

 

俺はブルーシートコースに入るとボードを滑るように体を横にする。そのまま勢いを利用してローションブルーシートの上を滑り抜けていく。

このままゴールだ!と、気を抜いたのがいけなかったのか、バランスを崩して前のめりでコケてしまった。

 

「うおわぁっ!!?」

 

『おっと!ここで小鳥遊君転倒!!!顔からスライディングしていきましたー!!』

 

「…いったー。くそ、ドジっちまった」

 

『「「「「………………………」」」」』

 

「…え?な、何だよ」

 

突然会場が静まり返ったので周りを見る。4年生以上の男子生徒の大半と応援席にいる大きいお友達等が何故か前屈みになっている。

 

「?よくわかんねぇけど………はいゴール」

 

とりあえず立ち上がろうとするとまた転ぶので四つん這いで這いずりながらゴールテープを切る。ワンテンポ遅れて「パンパン!」と火薬銃の音が鳴る。

 

やっと終わった……この服もやっと脱げる。

 

『あ、仮装レースの服はこの体育祭が終わるまで着替えることは出来ないのをお忘れなく』

 

 

「」

 

 

sideなのは

 

「す、凄かったね…色々と」

 

フェイトちゃんが引きつった笑みを浮かべながら呟く。フェイトちゃんだけじゃなく、皆顔が引きつっている。時雨ちゃんを除いて。

 

「えへ、えへへへ…貴重な碌斗さんの女装写真に女装動画、自暴自棄になった碌斗さん……大量収穫だよ……えへへへへ……可愛かったなぁ……/////」

 

「時雨……後でそれちゃんと消すんだよ?」

 

「え、なんで?」

 

「………碌斗に嫌われるよ」

 

「すぐ消すよ」

 

そう言うと時雨ちゃんは素早い手つきでデータを消去していく。

 

「……た、だぃまぁ」

 

そこにロクトくんが帰ってきた。

 

「お、おかえり!ロク、ト、くん………」

 

「「「「「「「「…………………………」」」」」」」」」」」」」

 

「俺、今日1日ずっとこれ何だってよ、あは、あははは、はははははは」

 

「ろ、ロクトくんが壊れたぁー!!」

 

真っ白になって帰ってきた。



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休憩大事、熱中症には気をつけよう

side咲

 

「わ、私は凄い可愛いと思うの!だから元気だして、ね?ロクトくん!」

 

「わ、私もそう思うよ?そんなにメイド服が似合う男子ってあんまりいないと思うなー」

 

「せ、せや!似合ってなくて馬鹿にされてるわけやないんやしそんな落ち込まなくてもええやん!」

 

「…………………お前ら、煽ってんの?」

 

「「「 何で!?」」」

 

「そりゃそう言う反応になるでしょ。不本意で女装した姿を褒められるって…人によるけどかなり地獄よそれ?」

 

全くこの子達は……そう言えばさっきの仮装レースの最後、ロクト君がゴール手前で転んだ時…殆どの男子生徒と観戦席の男達が反応したわね。この子達とロクト君は分かってないみたいだけど。

 

「吹雪君は気付いた?さっきのアレ」

 

「あー……気付いたけどアレはちょっとね、流石に指摘しずらいよね」

 

「?二人とも何の話をしてるの」

 

「時雨ちゃんはまだ知らない方がいい話よ」

 

と言うかロクト君、まだ転んだ時のローション拭いてないからまるで襲われた直後の女の子みたいになってるわね………落ち込み具合とか凹み具合とかも相まってまさにそんな感じよ。

 

「ほらロクト君、そろそろそのベタベタな顔と服を拭きなさい」

 

「……………おう。サンキュ」

 

私が渡したタオルを受け取り顔を拭くロクト君。

………うーん、やっぱり似合ってるわね。

 

「「ただいま〜」」

 

「アリサ、すずか、おかえり」

 

二人三脚を終えた2人が帰ってきた。

 

「二人とも惜しかったわね」

 

「ええ、まさかあそこでアイツらが邪魔して来るとは思ってもいなかったわ…あのバカ共……」

 

バカ共とは勿論神崎と聖の事ね。アイツら二人三脚のペア同士で喧嘩しながら走ってたんだけどその最中にアリサ達と並んじゃってそこからは只管口論よ。2人はどっちの嫁だーとか何とか騒いでもう少しで1位だったアリサ達の肩を掴んで「「勿論俺だよな?」」とか言われてたらいつの間にか他の人に抜かされたみたい。

 

「そう言えばコレで午前中の競技は終わりだね」

 

すずかが時計を見ながらそう言う。つられて見てみると大時計の短針は12持を指す所だった。

 

「そうみたいね。多分あともう1組のレースが終わったら放送が入るんじゃない?」

 

私の予想通り全組の二人三脚が終わると放送が入った。1時までお昼休憩の様だ。

 

「皆一緒にお昼食べない?」

 

「私はええで。多分シグナム達もなのはちゃん家と一緒にいるんやないかな?」

 

「シグナム達どころか咲の家族とフェイト達の家族、鮫島さんと忍さん、それと…メイド?さんが二人いるぜ」

 

「あとは見たことないがアリサの両親とすずかの両親だろ?」と言って自分の椅子の後ろに掛けてあるリュックを漁るロクト君。ここから保護者席まで結構離れてるのに視力いいわね。

 

「………ん?…っかしぃな……あ」

 

「どうしたの碌斗?」

 

「……そう言えば弁当作んの忘れてた」

 

ゲンナリした表情で溜息をつき項垂れるロクト君。

それを見て「閃いた!」と言わんばかりの表情をしてロクト君に急接近するなのは、はやて、アリサの3人。

 

「「「なら私の所で一緒に食べよう(食べなさい!)(食べへん! )!」」」

 

「勿論僕と一緒に食べるよね?心配しなくても碌斗さん1人くらいの量ならあるさ」

 

「……あー、とりあえず士郎さん達の所行こうぜ。そこでどうするか考えるから。吹雪、行くぞ」

 

「はいはい」

 

そう言って保護者席の方へ歩いていく2人の後を私達も着いて行った。

 

side碌斗

 

「すみません、弁当分けてもらっちゃって」

 

俺達は今、高町家、御林家、テスタロッサ家、バニングス家、月村家の皆さんと一緒に昼食を取っている。

なのは達はヴィータやノエルさんだったか?メイドの人達と一緒に談笑しながら食べており、吹雪は俺の隣で親から渡されたおかずを食べている。

 

「気にしないでいいよ。僕達も少し多めに作ってきてたからね」

 

「それに私も家族以外の人の感想や意見も聞きたかったので丁度よかったです」

 

そう言っておかずを紙皿に乗せて手渡してくれる士郎さんとリニスさん。

 

「ところでロクト…その格好については「それこそ気にしないで下さい」そ、そうか。済まなかったな…」

 

隣でおにぎりを食べていた恭弥さんがナニカを言う前に封じさせてもらう。この格好はもう弄られたくないんじゃあ…。

 

「君が小鳥遊君かい」

 

俺が恭弥さんと話していると士郎さん達と話していた男の人と桃子さん達と談笑していた女の人が近づいてきた。

 

「えっと…貴方は?」

 

「おっと失礼した。私はデビット・バニングス、アリサの父親だ。こっちは家内のローウェルだ」

 

「アリサの母親をしてますローウェル・バニングスです。小鳥遊君、宜しくお願いします」

 

ああ成程…この2人がアリサの両親か。

デビットさんの方は士郎さんや泰三さん達のように容姿が若いと言う訳ではなく、渋さが溢れ出るナイスミドル、と言った感じだ。

ローウェルさんの方はアリサと瓜二つだな……アリサがそのまま大人になったような感じだ。性格は違うみたいだけど。

 

「あ、俺はもう知っているかもしれませんが小鳥遊碌斗と言います。こんな格好ですみませんがこちらこそよろしくお願いします」

 

「ふむ…アリサの言っていた通り真面目な子だな君は」

 

「いやコレくらいは普通だと……え?アリサが?……何て話してたんですか?」

 

俺が聞き返すとローウェルさんが微笑みながら答えてくれた。

 

「それはもう小鳥遊君の事ばかりですよ。毎日毎日小鳥遊君が何をした、小鳥遊君と何を話した、と聞かされてばかりで……」

 

「何言ってるのよお母様ぁー!!」

 

先程まで咲達と話していたアリサが凄い勢いでこっちに来た。

 

「あらあらアリサ、はしたないですよ」

 

「それはお母様が変な事を言うからでしょ!?お父様も見てないで止めてよ!!」

 

「ハッハッハ!ゴメンなアリサ。いつも嬉しそうに顔を赤くしながら話してくれるから小鳥遊君がどんな子か気になってな」

 

「キャー!?キャー!?ち、違うからね!私はアンタの事を話してなんかないんだからね!/////」

 

「嘘おっしゃい。食事の時にいつも恋をする乙女の顔で話してくれるじゃない」

 

「お母様ぁあー!!!」

 

………なんて言うか、豪快だな、バニングス夫婦。特にローウェルさん。さっきのお淑やかな淑女の面影が消えて悪戯好きの少女みたいになってるよ。デビットさんとかは父さんと雰囲気似てるし気が合いそうだな。

 

バニングス家が騒いでいる(主にアリサ)と今度は隣から忍さんと一緒に男女がやってきた。

 

「久しぶり、ロクト君」

 

「お久しぶりです忍さん。そちらは?」

 

「今から紹介するわ。私とすずかの母と父よ」

 

「忍とすずかの母の月村朱鷺子と申します。宜しくお願いします」

 

「僕は父親の月村霖之助さ。よろしく」

 

「小鳥遊碌斗です。こちらこそよろしくお願いします……なんと言うかお二人共お若いですね」

 

高町夫妻や御林夫妻より若々しく見える……下手したら高校生カップルに見えるぞコレ…。

 

「ははは、よく言われるよ」

 

「私は身長が低いことも相まって姉妹と間違われますからね……しかも私が妹側で……はぁ…」

 

そう言って溜息をつく朱鷺子さん。母さんと仲良くなれそうだな…。

 

「…にしてもロクト君似合ってるわね、その格好」

 

「……コレについては余り触らないで下さい…はぁ…男なのに……」

 

そうだった…俺今メイド服着てるんじゃん…ウィッグも付けてるし……。

 

「碌斗さん、余り落ち込まないでよ。僕はどんな碌斗さんでも好きだからさ」

 

「時雨…お前最近ドンドン人間離れしてきてないか?」

 

一瞬で俺の真横に現れた時雨にツッコミを入れる。こいつも実は転生者じゃないのか?

 

「その言葉、碌斗にだけは言われたくない言葉だね」

 

そう言って吹雪が俺の事をジト目で見ながらお茶を飲む。

 

「おいそりゃどういう意味だ」

 

「いやだって…君の能力えげつないでしょ…《前言った通り僕の特典はそこまでぶっ飛んでないからね?》」

 

「失礼な。ちょっと特殊なだけだ。お前だって充分チートなレアスキル持ってるだろ」

 

「いや確かに写輪眼は強いけど…僕のレアスキルはそれだけだよ?碌斗は5個以上あるじゃないか」

 

「馬鹿言え、見ただけで技をコピー出来る目とか俺のレアスキルにも無いわ」

 

「ちょ、ちょっと待って!今サラッと凄い事言ったわよアンタ達!?」

 

「あ?何だよ急に大声出して」

 

「どうかしたの咲?」

 

俺と吹雪の会話に咲が反応して来た。と思ったらなのは達魔法関連組も何か信じられないものを見る目で見てくるな。何だ?

 

「あの小鳥遊君…貴方はレアスキルを幾つ持っているのですか?」

 

リニスさんが恐る恐ると言った感じで聞いてきた。

 

「え?えっと…1、2、3、4……8個くらいですかね」

 

「は、8個……………」

 

皆がありえないと言った様子で俺の事を凝視して来る。

 

「ロクト……前私と試合をした時に見せた能力もレアスキルか?」

 

「アレか?アレは違うな。アレは……あれ?一応レアスキル扱いになるのか?」

 

「凄い、今のロクトの会話にアレと言う言葉が5個も出てきた…」

 

「アリシアちゃんそれアレだけちゃう、レアも入っとる」

 

「咲でも3つなのに……」

 

アリシア、はやて、フェイトが俺のレアスキルの数に驚いているがアリサやすずか達は何で驚いているのか分かっていないようだ。

 

「ねぇロクト君…貴方のレアスキル、何があるのか教えてくれないかしら?」

 

「あ?あー……前見せた事がある奴だけは教えてやるよ。今度な」

 

今更だが周りに人がいる状態で話せる内容じゃ無いからな。

 

「そ……まぁ教えて貰えるならいいわ」

 

咲はそう言うとサンドイッチを頬張った。

ぼんやりと空を見上げると雲がひとつも無くなっていた。



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ヒャッハー!騎馬戦だァー!

side碌斗

 

『さぁいよいよ最終種目!騎馬戦です!!5、6年生の男子生徒が3人で馬を作りその上に自分の組のハチマキを付けた女子が乗り、ハチマキを取り合うという種目です!!』

 

放送委員の元気な声に合わせて盛り上がる生徒達。そんな中、グラウンドにクラスメイトの男子2人と一緒に騎馬を組みフェイトを乗せている俺。

各組から騎馬が4つずつ出ているので中々多い。

というかその中で1人だけメイド服だから凄い浮いているな俺。

 

「だりぃ…」

 

「ロクトダメだよ。真面目にやらないとアリサに怒られるからね」

 

「分かってるよ。3人とも、ちょっと作戦と対処法教えるから聞いててくれ」

 

「作戦?」

 

「対処法?」

 

クラスメイトの2人とフェイトに俺が考えた作戦と対処法を説明する。

そして説明を終えると丁度競技が始まる所だった。

 

『それでは最終種目、騎馬戦……よーい…スタート!!』

 

パンッ!!

 

係の先生がスターターピストルを撃つ。

それと同時に一気にグラウンドの中央へ走り出す周りの生徒達。俺達はそれとは逆にグラウンドの隅へと走っていく。

 

「さて、後は人数が少なくなるまでここで待ってるか」

 

「小鳥遊って性格変わってから本当に変わったよなー」

 

「前は真面目な良い奴って感じだったけど今は絡みやすい良い奴って感じになったよね」

 

「お前ら言ってることがよく分かんねーぞ。いや言いたいことは分かるんだが…」

 

「ちょっと皆、騎馬戦始まってるんだよ!?何で呑気に話してるの?」

 

頭上からフェイトがグラウンドの隅っこで呑気に会話していたのでやや焦った感じで声をかけてきた。

 

「安心しろ。さっき話した通り人数が減ってから動けばいい」

 

それまではここに来るヤツらもいないだろ…っとはやてとすずか達が頑張ってくれてるな。もう1つずつハチマキを取っている。この調子で頑張ってほしいものだ。

 

 

「開始5分で大分騎馬も減ったし…そろそろ動くか。まずはあそこにいる青組のハチマキを取るぞ」

 

「「おー!」」

 

「が、頑張るよ!」

 

全速前進!と男子2人が叫びながら近くにいた青組の騎馬へ突っ込む。

 

「フェイト!」

 

「うん!えいっ!」

 

フェイトが手を伸ばして青組の女子のハチマキを取る。

 

「次ははやて達の後ろにいる奴らだ、行くぞ!」

 

「「了解!!」」

 

男子2人に指示を出してはやて達の所へ向かう。はやては後ろの騎馬にまだ気づいていないのか男子達に指示を出している。それを見て白組の女子がはやてのハチマキを奪った。

 

「八神さんのハチマキ貰ったー!」

 

「しもた!?」

 

「へっへーん!油断大敵よ八神さん!!」

 

「そっちもね。ハチマキ貰ってくよ」

 

白組女子がはやてのハチマキを取って油断しているところを狙い、フェイトが白組女子のハチマキを取る。

 

「あちゃー…ゴメンなぁ先リタイアやわ。二人共堪忍なぁ」

 

「大丈夫だよ、はやての分まで頑張るから任せて!」

 

「ま、行ける所までやってみるさ。お前ら、次はすずか達の所へ…げっ」

 

すずか達の方へ進路を向けようとすると、神崎の騎馬がこちらへ向かって来るのが見えた。

 

「うわっ、神崎だ!小鳥遊、さっき言われた通りにやればいいんだな?」

 

「ああ。頼んだ」

 

「でも本当に上手く行くのかな?」

 

「多分上手くいく。だからフェイトもなるべく顔に出さないでくれよ」

 

「う、うん。頑張る」

 

「オラオラー!!モブは退いてろカスが!!っと、フェイトじゃねぇか。お前も騎馬戦に出てたんだな!」ニコッ

 

神崎はフェイトを見ると微笑みながらフェイトに話しかけてきた。

 

「う、うん…」チラッ

 

「ん?どこを見てるんだフェイ…アレは聖じゃねぇか!!俺のすずかに近寄りやがっ「あっ!アレは聖だ!!月村さんが困っている!テスタロッサさんも困っている!あー、誰かがあの聖を止めたら二人とも止めた人に惚れちゃうんじゃないかなー!」あぁ?」

 

「うんうん、絶対惚れちゃうよ!月村さんにとってはまるで白馬の王子様みたいだしテスタロッサさんにとっては友達を助けに行ってくれたイケメンだもんねー!」

 

「すずかぁ!待ってろ俺様が助けに行ってやるからな!!フェイト、お前も俺の勇姿を見ててくれよな!」ニコッ

 

そう言うと神崎達は聖の方へ向かっていった。

コレが俺の考えた神崎と聖の対処法。どちらかがこちらにやって来たら近付いてない方を見て困り顔をフェイトがする。そしたら男子2人が助けるとフェイトの好感度が増える的な事を囃し立てる。そうする事によって近寄って来たやつは遠い方にいるやつの所へ行く、と言う対処法だ。簡単に説明すると神崎が近づいて来たら聖を見て、聖が近付いて来たら神崎を見てフェイトが困り顔をする。そして好感度アップのチャンスだぞー、とそれとなく言う。するとあら不思議、勝手に理解して相手の方へ向かってくれる。アイツら二人とも同じ白組の筈なんだがな……。

でもここまで上手く行くとフェイトが将来魔性の女になりそうでちょっと怖くなってきた。

 

「魔性の女なんかならないよ!?」

 

「いや多分フェイトが考えてるのは腹黒系の女だろ?そっちじゃなくて天然系の魔性の女になりそうだと思ってな」

 

「「うん、うん」」

 

「君たちまで!?」

 

やはり分かるか…なんて言うかバッグとかを買う時に腹黒系の女は強請ってきて買わせようとするけどフェイトだとこっちから買いたくなっちゃうような感じになる。

 

「さて、冗談はコレくらいにしてさっさと他のハチマキ取りいくぞ」

 

「うぅ…納得いかない……」

 

 

side咲

 

「フェイトちゃん、ロクトくんも頑張れー!!」

 

「コラァー!男子達!すずかの事を落としたりしたら承知しないわよー!!」

 

「碌斗さん…カッコいい……/////」

 

「フェイトー!そこだー!!いっけー!!」

 

なのは、アリサ、時雨、アリシアが思い思いに応援している。いや時雨はちょっと違うかも知れないわね…。

 

「少し意外だよね、碌斗があんなに声を出しているのって」

 

「やっぱり吹雪君もそう思う?」

 

普段のロクト君は私達と会話したり授業で当てられたりする以外では余り喋らず、基本的いつも一人でいる。昼食の時なんかは私達が一緒に食べないかと誘っても「別にいい」と言ってどこかに行ってしまうのよ。今は吹雪君と時雨がいるので偶に私達と一緒に屋上で食べるようになったけどね。

だから意外なのよ、彼があんなに張り切る…ってわけじゃないけど一生懸命なのを見るのは。

私達転生者は前世の記憶があるから大抵の勉強は受けなくても覚えている。だから授業が退屈になるのは分かる。行事だってそうだ、同じ事を2回繰り返しているのだから。だからてっきりロクト君はこういう行事も嫌いだと思っていたのだ。

 

「やっぱり、彼も前世の時に何かあったのかしらね……」

 

「僕みたいに友達が1人もいなかったのかな?」

 

「吹雪君…サラッと悲しくなることを言わないでちょうだい…」

 

ロクト君もそうだけど…吹雪君も前世で一体何があったのかしら……。

 

「《そう言えば吹雪君。貴方写輪眼持ってるって言ってたけど本当なの?》」

 

昼休憩の時に話していた事を聞く。写輪眼と言えば『NARUTO』に出てくるうちは一族の血塊限界で最強能力の一つだ。

 

「《うん。神様から貰うレアスキルをコレにしたんだ》」

 

「《特典もナルト関係なのかしら?》」

 

「《それは今度の管理局の入局試験を受ける時までのお楽しみだよ。君の特典やレアスキルの事は碌斗から聞いてるしちゃんとその時に教えるよ》」

 

「《……まぁ近々教えてくれるって約束するのなら良いわ。じゃあロクト君の特典について聞きたいんだけど》」

 

「《あぁそれなら僕も詳しくは知らないよ。僕が聞いたのは碌斗の前世の事と『マギ』に出てきた武器と能力、魔法とかが使えるってのだけ教えて貰ったからね》」

 

「《何?ロクト君は貴方にも全部は話してないの?》」

 

自分の特典の内容をバラしたくない理由でもあるのかしら?

 

「《うん。と言ってもいつか話すって言ってたからね。付き合いは短いけど碌斗が人を陥れる嘘はつかないって分かってるからその時が来るまで僕は気長に待つつもりだよ》」

 

「《ふぅん…》随分信頼してるのね、ロクト君の事」

 

「まあね。僕の初めての友達、いやい…親友だからね」

 

そう言ってグラウンドにいるロクト君へ目を向ける吹雪君。

 

「…あ、すずかのハチマキが取られたね」

 

「え?あら本当ね」

 

コレで赤組の騎馬はフェイト達の騎馬だけとなった。他の組はもう殆ど残っておらず、神崎と聖の白組の騎馬が2組。青組と黄組の騎馬はもう全員ハチマキを取られている。

 

「2対1ね…コレはちょっと厳しいわね」

 

私はそう呟いてロクト君達を見つめた。



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終わり!へーてー!

side碌斗

 

はぁ…全く、面倒な奴らが残ったな。

 

「おい聖、お前みたいな踏み台が出しゃばるんじゃねぇよ」

 

「ふっ…流石踏み台神崎は考える事が違うな。オリ主の俺が貴様みたいな踏み台なわけないであろう?」

 

目の前で騎馬の先頭で口喧嘩をしているアホ2人。どうにかしてどちらかの騎馬の後ろに回り込みたいのだが2人の騎馬の間隔が絶妙で、下手に動くと逆にフェイトのハチマキが取られる事になる。

 

「ろ、ロクト…どうするの?」

 

「そうだな…これ以上は後ろに下がれないし…どうす「おいテメェ!!モブのクセしてフェイトに話しかけてんじゃねぇよ!!俺のフェイトが困ってんだろぉが!!」はぁ?」

 

「はっ!誰が貴様のフェイトだ。フェイトは我の嫁に決まっておろう!そしてそこの雑種!我の嫁に話しかけるな!!フェイトが汚れてしまうだろう!」

 

取り敢えずあいつらの妄言は無視してフェイトと男子達に小声で作戦を伝える。

 

「フェイト、今から俺達が前進してアイツらに張り付く。だから騎馬同士がくっついたらアイツらの騎馬に乗り移ってハチマキを取れ」

 

「それって危なくない?」

 

「テスタロッサさんが怪我するかもしれないぜ?」

 

「なのはなら兎も角フェイトなら大丈夫だろ。それに万が一落ちたりでもしたら俺らの誰かが支えればいい。あおは神崎と聖(バカ2人)が暴れないように俺が押さえつけておく」

 

「え!?でもそれだとロクトが危ないんよ!」

 

「たかが小学校の運動会に危ないもクソもねぇよ。さ、俺の合図に合わせて行くぞ」

 

「「わかった!」」

 

「ちょ、ちょっとロクト!」

 

慌てるフェイトの事をスルーしてタイミングを図る。アイツらが4歩近づいてきたら動く。

1歩…2歩…3歩…………4歩!

 

「今だ!」

 

「「おっけー!!」」

 

「「何!?」」

 

2つの騎馬との距離を一気に詰める。そして神崎と聖の服をがっしりとつかむ。

 

「フェイト!」

 

「う、うん!」

 

フェイトが神崎の騎馬に飛び乗り女子からハチマキを奪いにかかる。

 

「ちっ!離せクソモブがぁ!!モブの分際でオリ主の俺に触ってんじゃねぇよ!!」

 

「雑種ごときが我に触れるでない!!それに加え我が嫁に命令するとは何事だ!!身の程を知れ!!」

 

「ぐっ!?がっ!?」

 

こ、こいつら…殴ってきやがった!しかも魔力強化した拳で。よく片腕で支えられるなと思ったら魔力で身体強化してるから当然か。

 

「ロクト!?」

 

「気にするな!さっさとハチマキを取れ!」

 

「テメェ…モブのくせにフェイトに話しかけんじゃねー!!」

 

「がはっ!?」

 

神崎の蹴りが脇腹に決まる。ミシッ、と嫌な音が聞こえた。

 

「我が嫁を困らせるとは…雑種の分際でぇ…いきがるな!!」

 

「いぎっ!?」

 

今度は聖の蹴りが右膝に決まる。こちらもメキッ、と嫌な音が聞こえた。

 

「ちょ、ちょっと神崎君。流石にやりすぎじゃないかな?」

 

「聖くん、そんな思いっきりけっちゃダメだよ!」

 

騎馬の上にいる女子達が神崎と聖に話しかける。

 

「大丈夫だよ、ちゃんと加減してやってるからな」ニコッ

 

「安心しろ、調節はしてある。それよりお前はフェイトに鉢巻を取られないようにしろ」

 

「あ、そ、そうなの?なら分かったよ///」

 

「は、はい!分かりました聖様!///」

 

いや…顔赤くして納得すんなよ……。

くっそ思い切り蹴りやがってアイツらぁ……激痛だぜ。

 

「くっ、このぉ!」

 

「キャッ!?」

 

フェイトが神崎が支えてる騎馬の女子からハチマキを取った。だがそれを見て聖側の騎馬の女子がフェイトのハチマキを取ろうと手を伸ばす。

そして聖が俺に向かってまた蹴りを入れてこようとする。

 

「そう何度も…喰らってたまるかぁ!」

 

「な!のわっ!?」

 

「きゃあ!?」

 

俺は聖が蹴ろうとしてきた足の反対側、つまり支えとなっていた逆側の足首を掬うようにして蹴る。すると予想通り聖達の騎馬はバランスを崩して倒れた。

 

「フェイト、今のうちに!」

 

「うん!」

 

フェイトが崩れた騎馬の少女からハチマキを奪いこちらの騎馬へ戻ってくる。

 

『終〜了!!最後は小鳥遊君が華麗な足技を見せて騎馬を崩し、その隙を付いてテスタロッサさんがハチマキを奪い取りました〜!』

 

放送の声の後にピストルの音が続けて鳴る。結果は赤組の勝ちだ。

 

 

sideフェイト

 

「ロクト!!大丈夫!?」

 

騎馬戦が終わって赤組の応援席に戻る時にロクトに声をかけた。

さっきの騎馬戦で神崎や聖に魔力で身体強化した蹴りを受けていたから心配だ。

 

「大丈夫だ、問題ない」

 

「嘘おっしゃい」

 

「ぎがっ!?」

 

ロクトが本当に大丈夫そうな顔をして答えてきたが、咲がロクトの蹴られたところをつつくとおかしな声を上げて仰け反る。

 

「ほらやっぱり…あのねぇ、魔力で強化されたパンチや蹴りを喰らって大丈夫なわけないでしょう?全く…時雨を抑えるの大変だったんだからね」

 

「ぐ、お、おお、それは悪かったな」

 

ヨロヨロと体を屈めながら咲にお礼を言うロクト。

 

「そう言えばその時雨はどうしたの?」

 

「ん」

 

咲が指を指した方を見るとそこにはすずかとはやてに抑えられた時雨がいた。

時雨はロクトと目が合うと直ぐに2人の拘束を外して走ってきた。

 

「碌斗さん!!」

 

「おう時雨。どうした?そんな涙目になって」

 

「何言ってるのさ!好きな人があんな事をされてたら誰でもこうなるよ!!ホントに…あの男達、何度殺してやろうかと………」

 

し、時雨が黒くなってる!

そんな時雨を見てロクトは呆れながらデコピンをしました。

 

「あうっ」

 

「女の子がそういう事を言うもんじゃねぇよ。ま……心配してくれたのは嬉しいけどな」

 

「ロクトさん……」

 

「はいはい、話はそれくらいにしてさっさと治療しに行くわよ。はやて、シャマルに連絡よろしく」

 

「分かったわ。ロクトくん、見られないようにするから着いてきてな」

 

はやてが手招きをしてロクトを連れていきます。目を瞑った辺り、恐らくシャマルに念話をしているのだろう。

 

「でもフェイトもロクトも頑張ってくれたわね。そのおかげで赤組の優勝が決まったわよ」

 

「すずかとはやても頑張ったからねー。今はやていないけどさ」

 

アリサと姉さんがそれぞれ褒めてくれる。何だか照れくさいな……。

 

「あとは結果発表とかして終わりだっけ?」

 

「うん。優勝の組の代表を表彰して解散だよ」

 

私が聞くとなのはが答えてくれた。そう言えば今年もやるのかな?

 

「ねぇなのは、今年も去年みたいに翠屋に集まるの?」

 

「うん!お父さん達が皆のお父さんお母さん達を誘ってたしそうだと思うよ。フェイトちゃんも来るでしょ?」

 

「うん、勿論!」

 

「良かった!さっき吹雪くんと時雨はちゃんも誘ったら来てくれる見たいだからロクトくんも誘おうと思うの!」

 

「じゃあロクト達が戻ってきたら聞いてみよう」

 

「うん!」

 

それから少し経つとロクトとはやてが戻って来た。ロクトに翠屋に来ないか聞いてみたらシュテル達も一緒でいいなら、と言うことで来てくれることになった。

ふふ…今年は去年より大人数だから楽しみだな。



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