上里友海は勇者である (水甲)
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01 始まりはいつも突然

何だか急に思いついてしまった。友海と牡丹メインの話になります。



気がつくとそこは真っ暗な場所だった。どうして私はこんな所にいるのだろうか?

あたりを見渡すと幼馴染で大親友の牡丹が倒れていた。私は牡丹の体をゆすり起こした。

 

「牡丹、起きて」

 

「ん、ここは……友海!?私達は一体?」

 

「わからない。私達、何してたんだっけ?」

 

「えっと……確か……」

 

私達は必死に何が起きたのか思い出していた。確かクエストを終わらせて、街に戻ろうとした時に急にフードを被った女の人に声をかけられて……

 

「気がついたらここだったね」

 

「明らかにそのフードの人が怪しいわね」

 

何となく犯人がわかり、どうしたものか考えようとした時、ある場所だけ光が照らされた。そこにはあの時の女の人が立っていた。

 

「目覚めましたね。勇者よ」

 

「爆裂!勇者………」

 

「ちょ、ちょっと待ってください!?」

 

犯人が早速現れたから先手必勝で倒そうとしたのに思いっきり止められた。

 

「友海、待ちなさい。あの私達をこの場所に連れてきたのは貴方ですか?」

 

「え、えぇ、そうよ」

 

「目的は何ですか?」

 

「目的……それはね。あなた達には例外な存在になりうるかどうか知るためよ」

 

「よくわからないんだけど……」

 

私は再度拳に魔力を込めた。師匠の教えの一つ、『よくわからないことを言う人は、一瞬で倒せ』だからね

 

「ちょっと待ってください。話を聞いて下さい」

 

「友海、落ち着いて、敵意はないから大丈夫だよ」

 

「そう?」

 

「ふぅ、すぐに手を出す娘は危ないですね。私は運命と例外を司る邪神ムーマといいます」

 

「邪神って言うことは敵だよね」

 

「だから話を聞いてからにして下さい!!こうみえても昔はれっきとした女神だったんですよ」

 

「えっ?だってアクアさんが言ってたよ。邪神は危険だからあったら即倒しちゃっていいって」

 

「友海、あの人の言葉を鵜呑みにしちゃ駄目だからね。それと話が進まないから、少しじっとしてて」

 

「うん、わかったよ。牡丹」

 

「話が進みますね……今回、あなた方をお呼びしたのは先程も言ったように例外の存在になりうるかを知るためです」

 

「例外ですか?」

 

「……世界はたくさんあるということを知っていますか?」

 

私と牡丹は顔を見合わせた。別世界の牡丹のパパがいる世界や色んな時代の勇者が集まる世界に行ったことがある。

 

「うん、知ってるよ。私達も経験したことがある」

 

「それなら話は早いですね。あなた達には悲しい運命をたどる可能性がある世界へ行っていただき、そこで悲しい運命を変えられる例外になっていただきます」

 

「悲しい運命?」

 

「東郷牡丹さん、貴方の父親である神宮桔梗。彼は別世界では天の神との戦いを終わらせた例外。上里友海さん、貴方の父親である上里海は、異世界にて死ぬ運命だった少女たちの運命を変えた例外。私が言う例外というのはそういう意味です」

 

つまりそれって……運命を変えてくれって言うことなのかな?それだったら……

 

「わかったよ。引き受けるよ」

 

「友海、もう少し話を……」

 

「師匠の教え一つ『困った人がいたら必ず力になる』だよ」

 

「それは……そうだけど……」

 

困った人がいたらそれが人じゃなくっても助けるべきだって師匠が教えてくれたんだから……

 

「引き受けるということですね。それでは早速ある世界に行ってもらいます。因みに約束をして下さい。運命を変えるとは言っても、未来から着たということなどを伝えないように……特に牡丹さん、貴方は名字を名乗るのをやめたほうが良いです。まぁ神宮は大丈夫です」

 

「それって……どういうことですか?もしかして……」

 

「貴方の思っているとおりです」

 

ムーマさんは笑顔を私達に向け、指を鳴らした瞬間、私たちの意識はなくなるのであった。

 

「………先行している彼女のことを伝え忘れたけど、いいか。さてさて上手く行くでしょうか楽しみですね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

また気がつくと見知らぬ場所にいた。何だか神聖な場所みたいだけど……

 

「急に送るのはどうかと思うけど……」

 

「とりあえずここは四国のどこかってことかな?」

 

「何でそんな事分かるの?」

 

「あの人が言っていた言葉を聞いて思ったの。この世界は私達がいた世界と似た世界だけど、全く違う世界で、そこには海お父様もお父様も存在しない世界なんじゃないかって……」

 

「あれ?でもそれだとママたちは?」

 

「あの人が私の名字を名乗らないほうが良いって言ったのは、お母様はいるからだと思うの」

 

パパがいない世界……そんな世界があるんだ……

 

「でもどこに行こう?」

 

「そうね……」

 

「とりあえず讃州中学校を目指すのはいいかもしれないよ~」

 

不意に聞き覚えのある声が聞こえ、振り向くとそこには体中に包帯が巻かれ、ベッドに横たわる女の子。

 

「園子おばちゃん?」

 

「……ここは貴方の部屋でしたか」

 

「うん、そうだよ~それとおばちゃんって言うのはやめてほしいかな?それにしても驚いたよ~急に光がパーっとなって、二人がいるんだもん」

 

「あ、あの、私達は……」

 

「大丈夫だよ~神樹様から神託があってね。別世界から来訪者が現れるってね」

 

すごいな~神樹様にもう話が言ってるんだ。でも神樹様は大丈夫なのかな?枯れたりするんじゃないのかな?

 

「それにね。二人が来る前にもうひとり着てるんだ~」

 

園子おばちゃんがそういった瞬間、部屋の影から一人の女の子が出てきた。私と牡丹はその子を見て驚いた。

 

「どうしてあなた達がいるのかしら」

 

「「赤嶺友奈!?」」




基本的に友海たちは中学二年生という設定です。


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キャラ紹介

上里友海

 

年齢14歳

 

誕生日7月9日

 

身長150センチ

 

好きなもの 爆裂魔法 洋菓子 両親

 

見た目 友奈と同じ赤髪で、髪型は下ろしている。友奈と似たような見た目だが、少し友奈より幼さがある

 

経歴

 

友奈と海の娘。とある事情で爆裂魔法に憧れ、めぐみんのことを師匠と呼び、改修された勇者システムのおかげで爆裂魔法をはなてるようになり、パンチと同時に爆裂魔法を放つことが出来る

 

牡丹とは幼馴染であり、親友でもある。また両親が好きでものすごく甘えたりする。

赤嶺友奈のことを海の浮気相手と思い、若干嫌っているところがある。

 

また師匠の教えを大事にしているためか、度々暴走しがちでもある

 

勇者服

 

桜色の衣装に、両手に鉄甲。

 

 

勇者パンチ

 

勇者キック

 

爆裂魔法

 

爆裂勇者パンチ

 

 

 

東郷牡丹

 

年齢14歳

 

身長155センチ

 

好きなもの 和菓子、両親、犬

 

見た目

 

鷲尾須美と同じ髪型で黒髪、須美に似ている。

 

経歴

 

東郷美森と神宮桔梗の娘。友海とは幼馴染で親友。暴走しがちな友海のブレーキ役である。

友海のことを大事に思っていて、その思いを知ったゆんゆんが師匠を名乗りあげ、以来師弟の関係になった。

両親のことが好きだが、もう少しいちゃついてほしいと思っている。

また甘えたいがそれを伝えるのが恥ずかしく伝えられなかったりする。

 

勇者服

 

青白い衣装 弓矢

 

 

ファイアーボール

ブレード・オブ・ウインド

フリーズガスト

ライトニング

 

インフェルノ

アースシェイカー

トルネード

 

ライトニング・ストライク

 

カースド・ライトニング

 

カースド・クリスタルプリズン

 

エナジー・イグニッション

 

ライト・オブ・セイバー

 

各魔法を矢に乗せて発射することも可能

 

 

 

 

 

 

運命と例外の邪神ムーマ

 

友海と牡丹の二人にある願いをした邪神。他の世界のことについて知っていたりする。

また別世界へと人を転移することも可能。

 

友海、牡丹の二人には例外な存在になってほしいと言うのだが……

 

 

 

 

 

 

赤嶺友奈

 

過去、英雄と呼ばれた勇者。

 

見た目が結城友奈と高嶋友奈に似ている。またある世界で友海と牡丹の二人と戦ったこともある。

 

別世界での海の恋人でも有るが、彼が死んでしまったことに対して、造反神がある方法で蘇らせられると聞き、花結いの章にて敵対することに

 

また友海と同じように爆裂魔法を扱うことができ、爆裂勇者パンチも使用できる。

 

今回、ある事情で友海たちと同じ世界に転移してきた。

 

 

 

 

 

師匠の教え

 

友海が修行中にめぐみんから教えてもらったもの。めぐみん自身は海から聞かされた勇者部五箇条みたいなものを作りたいと思い、作ったものでも有る

 

『よくわからないことを言う人は、一瞬で倒せ』

 

『困った人がいたら必ず力になる』

 

『細かいことは気にしない』

 

『うじうじ悩まず、誰かを頼る』

 

『どんなに失敗を繰り返しても、成功するまであきらめない』

 

 




ということでキャラ紹介でした。


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02 3人目の友奈との再会

私たちの前に現れたの赤嶺友奈。とある世界でパパをたぶらかしていた人だ。私は勇者に変身し、殴りかかるが、赤嶺友奈は私のパンチをいとも簡単に受け止めた。

 

「いきなり殴り掛かるのはどうかと思うわよ」

 

「パパをたぶらかしてるんだからしょうがないでしょ」

 

「友海、落ち着いて……その人は最終的に諦めたはずよ」

 

「だけど……」

 

「あんまりここで暴れないでほしいんだけど~」

 

園子おばちゃんが怒った口調でそういった瞬間、私は変身を解くのであった。おばちゃんから感じた殺気は凄すぎて従うしかなかった。

 

「あかゆ~だっけ?伝わってるよ~英雄だって」

 

「まぁ各時代の勇者たちの逸話よりかなり有名だからね。バーテックスじゃなくって人間相手に戦ったって……」

 

「それで三人がここに着た理由って何かな~」

 

「実は……」

 

牡丹は園子おばちゃんに説明した。邪神と呼ばれる人から悲しい運命を変えるために私達がここに来た事を……

そして私達は別世界から着たということを

 

「なるほどね~別世界か……とりあえず二人の名前は?」

 

「上里友海です」

 

「と……神宮牡丹です」

 

「……神宮。それだけで十分別世界から着たって証明になるね」

 

「あ、あのそれはどういうことですか?」

 

「上里は代々巫女の家系で、大赦では私のお家と同じくらい偉いところだっていうのは知ってるよね」

 

「は、はい」

 

「でもね。神宮って名前の人は大赦にはいないの」

 

園子おばちゃんの言葉を聞いた瞬間、私達は本当に別の世界から来たということを改めて認識した。そしてこの世界にはパパたちがいないということも……

 

「とりあえず三人はこれからどうするの?」

 

どうするって運命を変えるために何かをするんじゃないのかな?あれ?でも、そのためにはどうすればいいんだろう?

 

「まぁとりあえずは住む場所を探さないとね。そこら辺は貴方がどうにかするんだよね」

 

「そうなるよね~幹部の人達にお願いしておくよ~」

 

園子おばちゃんは仮面をかぶった人たちを呼び、しばらくしてから私達は仮面の人たちにある場所に案内されるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

案内された場所は前に私たち家族が一時的に滞在していたマンションの一室だった。もしかしてここが……

 

「上里様、神宮様、赤嶺様。お三方が滞在している間の拠点はこの部屋になります。そして近々お隣に勇者様も引っ越してくる予定です」

 

それってもしかして夏凛おばちゃんのことだよね。やっぱりそこら辺は変わらないんだ……

 

「何か御用がありましたら、連絡をして下さい。それでは」

 

幹部の人はそう言って帰っていくのであった。とりあえず私達は今後について話すのであった。

 

「ママたちと合流すればいいのかな?」

 

「でも、牡丹。私達のことは話せないけど、どうするの?」

 

「あれでも、さっき園子おばちゃんには事情を話したのは……」

 

「あなた、何も聞いてないのかしら?今の彼女は神と似たような感じ。だから世界への影響は受けない感じなのよ。邪神はそこらへんの説明はしなかったのかな?」

 

「はい、されませんでした」

 

う~ん、いまいちルールが良くわからないけど、神様に近い人には私たちの事情は話してもいいってことなのかな?

それにどんなことをしたら運命を変えられるのか……

 

「とりあえず何かが起きるまでの間は大人しくしてましょう」

 

赤嶺はそう言って、床に寝っ転がるのであった。そういえば一緒に暮らすんだよね……

 

「あの赤嶺さん」

 

「何かしら?牡丹」

 

「貴方はどうしてこの世界に?邪神に何を言われて……」

 

「……それなら分かっているはずだよ。あの世界で私は死んだ海くんを蘇らせることが目的だった。それと同じ」

 

「それじゃまたパパを利用して……」

 

またパパのことを利用するなら、私はこの人のことを味方だと思えない。だけど赤嶺は首を横に振った。

 

「そのつもりはないわ。邪神は約束したから私の世界の海くんを復活させるって」

 

それじゃ信用してもいいのかな?でも、私と牡丹からしてみれば彼女と戦ったのは一ヶ月前のことだから、うかつに信じるっていうことはできない

 

「わかりました。一応は貴方のことを信用します」

 

牡丹は信用すると告げるけど、本当に大丈夫なのかな?

 

「まぁお互い頑張りましょう。友海、牡丹」

 

 




短めですみません。

次回くらいには勇者部と合流させるつもりです


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03 合流するのに必要なもの

牡丹SIDE

 

私達がこの世界に来てから一ヶ月が過ぎた。いい加減勇者部の皆さんと合流するべきなのだけど、赤嶺さん曰く戦闘しているときのほうがいいんじゃないのかということで、私達はずっとバーテックスが攻めてくるのを待っていた。

 

「牡丹、日記つけてるの?」

 

「うん、日課だから……」

 

「そっか……いつも日記つけてたもんね」

 

友海はそう言いながら、私の日記を取り上げ読み始めた。あんまり日記を読まれるのは嫌なんだけど……

 

「それにしても……いつになったらママたちと合流できるのかな?」

 

「う~ん、敵の侵略って不規則らしいから……」

 

「それでも早く会いたいな~」

 

友海は友奈おばさまに会いたがっていた。私もお母様に会いたいけど……んん?何かとんでもない事を忘れてない?

 

「ふたりとも~お昼ご飯どうするの~」

 

赤嶺さんがキッチンから出てきた瞬間、私はすべてを思い出した。合流する前にやるべきこと……それは……

 

「まずいです……この姿のままじゃ私達……お母様に会えない!?」

 

「「んん?」」

 

未来の情報を迂闊に話せない。園子さんはまだいいとして、お母様たちには話してはいけないみたい。だからこそ私はこっちの世界では東郷ではなく、神宮と名乗るべきなのだけど……それ以前に私達の見た目が問題だ。

私と友海はふたりとも母親似だと言われている。勘がすごい人には一発で何かしらの関係があるのではないかと気づかれてしまう。

そして赤嶺さんはかなりまずい。ちょっとした違いが有るにしても友奈おばさまにそっくりだ。どうにかしてごまかさないと……

 

私はお昼を食べながら二人にそのことを伝えた。

 

「う~ん、つまり変装すればいいのかな?でも、勇者に変身したら見た目を変えられないよ」

 

「そ、それはそうだけど……」

 

「まぁ二人の場合はちょっとだけ似てるって感じで誤魔化せるんじゃないのかな?」

 

「そうですが……赤嶺さんは……」

 

「大丈夫。私にはある方法があるから……」

 

赤嶺さんが笑みを浮かべていた。一体どんな方法なのか気になるけど、聞かないほうがいいよね……

 

昼食を食べ終わり、片付けをしようとしたその瞬間、突然端末からアラームが鳴り響いた。

 

「これって……」

 

「ようやく合流の時が来たね」

 

「……あれ?」

 

友海だけ何故か不思議そうな顔をしていた。一体どうしたんだろう?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

友海SIDE

 

樹海へと訪れた私達、端末で敵の出現位置を確認してその場所へと向かっていく。だけどどうにも気になることが有る

 

「ん~敵の数が多いわね」

 

「なるべく早く合流しないと……友海?」

 

「ん?大丈夫」

 

今は気にすることじゃないよね。私たちは先へと進んでいくと何十体もの白いバーテックスの群れに、それと戦うママたちの姿を見つけた。

 

「雑魚ばかりだね。どうする?様子を見る?」

 

「赤嶺さん……そんなのだめです。遠距離から数を減らします。その隙に二人は接近してください」

 

「了解~ほら、行くわよ」

 

「う、うん」

 

私と赤嶺は一緒にママたちのところへと向かっていく。ママたちはどうにも苦戦をしているみたいだったけど、私は大きく拳を振り上げた。

 

「必殺!!勇者パンチ!!」

 

一体のバーテックスを殴るとバーテックスの群れは私達に気が付き、向かってきた。赤嶺は迫りくるバーテックスを何体も殴り続けていた。

 

「あっちと変わらないみたいだね」

 

「ちょ、ちょっとあんた達、誰よ!?」

 

風おばさんが私達を見て驚いていた。ごめんなさい。話はあとでするので今はバーテックスたちを退治しないと……

 

「友海、赤嶺さん、それに勇者のみなさん、後ろへ下がってください」

 

牡丹がそう叫んだ瞬間、一本の矢が地面に突き刺さり、巨大な竜巻が起きた。バーテックスの群れは竜巻に飲まれ、上空に集まっていた。

 

「ほら、トドメは譲るわ」

 

「うん、必殺!爆裂!勇者パンチ!!」

 

眩い閃光とともにバーテックスの群れは爆発し、倒されるのであった。それと同時に樹海から私達は元の世界へと戻るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

元の世界に戻るとそこはパパたちの母校である学校の屋上に来ていた。もちろん、ママたちも一緒だ

 

「ふぅ、合流できたわね」

 

「ちょっとあんた達…何者なの?」

 

「それに友奈さんにそっくりな人もいます」

 

樹おばちゃんがそう言いながら、赤嶺を見ていた。そういえばどう説明するのかな?

 

「そうね。いろいろと事情を話さないとね。結城友奈ちゃん」

 

「えっ?はい」

 

「実はね。私は赤嶺友奈…………あなたの生き別れの双子の姉なの」

 

「そうだったの!?」

 

うん、何だかとんでもない誤魔化し方をし始めたよ。

 

「で、でも、お母さんやお父さんからお姉ちゃんがいるって聞いてないよ」

 

「大赦があなたが成長するまで伝えないようにって言われてるのよ。でも事態が事態だからこうして……」

 

「そうだったんだ……」

 

「会いたかったわ。妹よ」

 

「お、お姉ちゃん……」

 

ママは話を信じ込み、抱き合うのであった。本当にママは素直だな……

 

「いや、明らかに嘘よねそれ……」

 

「えっと……すみません。嘘です。赤嶺さん、バレてますよ」

 

「だめだったか……」

 

「嘘だったの!?」

 

「友奈ちゃん……」

 

牡丹のママも呆れた顔をしている中、牡丹が説明を始めた。

 

「えっと、私達は大赦から派遣されたものです。これから先の戦いに向けて戦力増強のために……」

 

「なるほどね……それでそこの彼女と友奈が似ているのは?」

 

「えっと……」

 

「まぁ世の中には自分とそっくりな人がいるっていう感じだよ」

 

「それにしては……そっくりね」

 

牡丹ママは疑いの目を向ける中、赤嶺はある提案をしてきた。

 

「とりあえずいろいろと話しておきたいから、どこか落ち着ける場所に案内してくれないかしら?」

 

 



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04 合流と星の海

友海SIDE

 

私達はママたちと合流し、勇者部にて互いのことを話すことになった。なったのだけど……私はある違和感を感じていた。

 

「とりあえず私達三人はあなた達のことを大赦から聞いてるから、自己紹介は私達だけでいいわね」

 

「なんというか友奈に似てるのは見た目だけなのね」

 

「そういうのは気にしなくていいわ。私はさっき言ったように赤嶺友奈。まぁ結城友奈のそっくりさんってことかな」

 

「うん、さっき、お姉ちゃんって聞いて信じちゃったよ」

 

「あの、それは友奈さんだけじゃ……」

 

まぁ何というかママはそういう所あるから仕方ないけど……

 

「えっと、私はと……神宮牡丹っていいます」

 

「牡丹ちゃん。可愛い名前ね」

 

「あ、ありがとうございます」

 

牡丹ママに名前を可愛いと言われて嬉しそうにしている牡丹。あれでも、牡丹の名前を付けたのって牡丹ママじゃないのかな?

 

「私の名前、お父様が付けてくれて……」

 

「そうなんだ。いいお父さんだね」

 

「はい」

 

そっか、牡丹パパが名前をつけてくれてたんだ

 

「私は上里友海です」

 

「ありゃ?上里?どっかで聞いた名前ね」

 

「風先輩、もしかしたら彼女じゃないかしら?」

 

「あっ、そっか、あの子だね」

 

「確か今迎えに行ってるんですよね」

 

何故かみんなが『上里』の名前に反応していた。おかしい……パパの話じゃパパ以外、ママたちは関わりないって話なのに……

すると部室の扉が突然開くとそこには黒く長い髪の女の子と見覚えのある女の子が入ってきた。

 

「ただいま、戻ってきました」

 

「ここがそうなのね」

 

「おかえり、星海ちゃん。それにえっと……」

 

「その子があんたが迎えに行っていた子かしら」

 

「はい、彼女は三好夏凛さんです」

 

「あんたらが勇者ね……どう見てもトーシローの……なんかそこの三人だけは違うわね」

 

夏凛おばちゃんが私達を見てそう言うけど、私達はそっちよりも星海と呼ばれる子のことが気になっていた。

 

「部長さん、彼女たちは?」

 

「ありゃ、あんたは聞いてないの?この子達、大赦から派遣された勇者だって」

 

「私以外に派遣された子がいるなんて聞いてないんだけど……」

 

まずい、赤嶺がついた嘘が微妙にバレそうになってきている。星海さんは私達のことを笑顔を向けた。

 

「あぁ、間に合ったんですね。彼女たちは秘密裏に開発していた勇者システムの使用者です」

 

「秘密裏って……」

 

「大赦は隠し事が多いわね」

 

牡丹ママがそう言うと、星海さんは申し訳なさそうにしていた。

 

「すみません。なるべくみんなには明かしておきたいけど、大赦のモットーは秘密主義みたいなものなので……私も話せることに制限がついていますし」

 

「気にしなくても大丈夫だよ。星海ちゃん」

 

「ありがとうね。友奈ちゃん」

 

「あぁ、そうだった。星海、私達がいつものバーテックスを倒したあとに出てきた白い奴らってなんなの?あれもバーテックスでいいの?まぁあっちの三人が手伝ってくれて、なんとかなったけど……」

 

「白い奴ら……もしかしたらそうですね。とはいえ、今回は彼女たちのおかげですね」

 

白い奴ら……それに私達が来る前に戦ったいつものバーテックス……やっぱり私が感じた違和感って……

 

「とりあえず友海、牡丹、赤嶺、夏凛、勇者部にようこそ。歓迎するわ」

 

「ちょっと待ちなさいよ。いつのまに私が入ることになってるのよ」

 

「まぁまぁ、三好夏凛ちゃん、一緒に行動していたほうがいろいろと都合がいいでしょ」

 

「うぅ……わかったわよ」

 

赤嶺に言われて、納得する夏凛おばちゃん。こうして私達はママたちと合流+勇者部に入部するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

家に帰り、私は二人に私が感じた違和感を話した。

 

「実は……ちょっと時間の流れがおかしいの」

 

「おかしいって……特に私は感じなかったけど……」

 

「もしかして、今日の出来事が少し変だったって言うこと?」

 

「うん、パパから聞いた話だと今日が夏凛おばちゃんと合流する日だったんだけど、私達がママたちと合流する前にバーテックスを一体倒しちゃってるし……」

 

「そのかわりにあの白いバーテックス。星屑がうじゃうじゃと攻めてきたって言うことね」

 

「確かに聞いていた話とはぜんぜん違う感じはしていたけど……」

 

牡丹も同じことを感じていた。もしかして私達が来てから世界の流れが変わっているのか?それとも上里星海という存在がいるからなのか……どっちなんだろう?

 

「まぁ、私達の目的は悲しい運命にならないように……運命を変える例外になることよね。今回の件としてはいいことじゃないかな?」

 

赤嶺の言うとおりかもしれない。いちいち気にしていたらキリがないよね。

 

「師匠の教え一つ『細かいことは気にしない』だもんね」

 

「友海、少しは細かいこと気にしないとだめだよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こんばんわ、乃木ちゃん」

 

「やっほ~せいちゃん」

 

「全く話を聞いてたけど、こんなすぐに会えるとは思ってなかったよ」

 

「あの三人のこと?ごめんね~」

 

「でも、なんとか誤魔化しておいたよ。特に友海ちゃんのことは私の親戚って言うことにして」

 

「そっか……」

 

「ただ気になることが一つ……神樹様からの神託にあった邪神ってなんなんだろうね?」

 

「それは私にもわからない。ただ、みんなが大変なことにならなければいいな~」

 

「そうだね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とある世界にて

 

 

「さぁ、カズマ、行きますよ」

 

「なぁめぐみん、いい歳なんだから日課の爆裂魔法はやめないか?」

 

「どうしてですか!?」

 

「十分爆裂魔法を極めているんだから大丈夫だろ」

 

「だめです。まだ極めていません。ユミにものすごく期待されているので……」

 

「期待って……あいつはどれだけお前のことが大好きなんだよ」

 

「カズマさん、めぐみん、出かけるの?」

 

「ウミ、はい、そうですが……」

 

「お前も出かけるのか?」

 

「いや、そういうわけじゃないけど……友海の姿が見えなくってな」

 

「お前はどんだけ心配性なんだよ」

 

「ユウナはあんまり心配してませんよ」

 

「いや、だって……いろいろとあったから……」

 

「俺たちは特に聞いてないけど、クエストに出かけてるんじゃないのか?」

 

「そうだといいけど……」

 

「それにウミはユウナのことを気にかけてください。二人目がいるんですよね」

 

「そうだけど……ほら、大切な娘だから悪い虫がついたら……」

 

「お前……どんだけ親バカなんだよ……そういえば二人目の名前は決まってるのか?」

 

「ん、まぁ女の子らしいから……星海かな」

 

 

 




今回は合流回+新キャラの登場でした。

次回は友海に悪い虫が……


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05 友海と赤嶺①

炎の海が広がる世界、そこに犬の姿をした白い生物が太陽の前にいた。

 

「天の神様。お聞きしたいのですが、人というのは一体どういった存在なのですか?」

 

問いかけるが太陽は何も答えなかった。僕は知りたい。人というものは一体何なんなのか……

 

「僕は人を知るために彼らの世界に行きます」

 

僕は数十体の星屑を引き連れ、神樹のもとへと向かうのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

友海SIDE

 

私達がママたちと合流してから一週間が過ぎた。その間特に敵が襲ってくることはなく、私達は勇者部の活動に精を出していた。

 

「友海ちゃん、こっちだよ~」

 

「はい、マ………友奈ちゃん」

 

私はママたちと一緒に海岸のゴミ拾いをする中、風おばさんの話が聞こえてきた。

 

「何というか新入部員が一気に4人も増えるなんて……思っても見なかったわね」

 

「私はあくまで監視よ監視」

 

「とか言って、この間の誕生日会すごく楽しんでたじゃない」

 

「あ、あれは……まぁ子どもたちの前だったし……あんなふうに誕生日を祝われることなかったし……」

 

ちょっと前に夏凛おばさんの誕生日会を幼稚園でやろうと話になったのだけど、私はパパに聞かされた話を思い出し、集合場所を間違えた夏凛おばさんを迎えに行った。

世界の流れとか違う気がするけど、それでもみんな仲良くできてる。

とはいえ……私は未だにあの人にはなれなかった。

 

 

 

 

 

 

牡丹SIDE

 

「赤嶺さん、サボらないでください」

 

「別にサボっていたわけじゃないよ。ちょっと連絡待ちかな」

 

「連絡待ちって……」

 

「あの、赤嶺さんと友奈さん似ているのに……」

 

「全然違うって?確かにね」

 

「友奈ちゃんと赤嶺ちゃんは似ているけど、考え方とかいろいろと違うから仕方ないわ」

 

樹おばさま、星海さん、お母様がそんな事言っていた。あまり皆さんに別世界から来たということはバレたくないから仕方ないことだけど……

星海さんはどこまで事情を聞いてるのか気になる

 

「それで赤嶺ちゃん、誰からの連絡待ちしてるのかしら?」

 

「う~ん、知り合いかな。でも忙しいから中々連絡が来ないみたいなの」

 

「忙しい?大赦の関係者なの?」

 

「それは秘密」

 

赤嶺さんは笑顔でそう言うけど、私はあることが気になっていた。赤嶺さんが持っている端末、あれって海おじさまが持っていたものと似ている気が……

 

「あの、赤嶺さん、お聞きしたいことが?」

 

「何?」

 

「その端末……」

 

私が聞こうとした瞬間、突然アラームが鳴り響いた。これは敵の襲来!?

 

「みんな、一旦作業中断よ」

 

風おばさまの指示を聞き、私達は樹海へと向かうのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

友海SIDE

 

樹海へと訪れる私達から離れた場所に沢山の白いバーテックス、通称星屑が暴れていた。

 

「あれが前に聞いたバーテックスね。弱そうだけど数が多いわね」

 

「でもでも、大きいやつはいないみたいだよ」

 

「それだったら、さっさと片付けてゴミ拾いに戻るわよ」

 

夏凛おばさん、ママ、風おばさんが星屑に向かっていき、私と赤嶺も一緒に前に行こうとした瞬間、物凄い速さで何かが私達の間を通り抜けていった。

 

「今のは!?」

 

「大型……十二体のバーテックスじゃないみたいね。一瞬確認できた限りだと……中型かしら?」

 

私達二人の間を走り回るバーテックス。何とか倒そうとするけど動きが早くて捉えきれない

 

「パパだったらワイヤーで縛り上げたりするのに……」

 

「いつまでも親を見習うのはやめときなさい。こういうときは……」

 

赤嶺が目を閉じ、バーテックスが赤嶺の横を通り過ぎようとした瞬間、赤嶺はバーテックスを思いっきり殴った。

 

「気配を読む。これぐらいできないとだめよ」

 

「……すごい」

 

「というかあっちでは師匠みたいに大火力でぶっ放すことしか考えてないのかな?」

 

「違うもん。今度は私が……」

 

私は赤嶺が殴ったバーテックスを見た。そのバーテックスは全身真っ白で姿が犬みたいだった。

犬バーテックスは私に襲いかかってきたけど、さっきとは違って動きが遅くなった。それだったら……

 

「勇者ハイキック!!」

 

回し蹴りが直撃させることができた。バーテックスは苦しそうにしながらも起き上がり、直ぐ様どこかへ去っていった。

 

「待って!?」

 

「追いかけないの。罠かもしれないわよ」

 

追いかけようとしたけど、赤嶺がそれを止めた。確かに罠かもしれないけど……

 

「……わかった。ありがとうね」

 

「本当に無茶ばかりするね。あの人と同じ……」

 

「あの人って……」

 

私があることを聞こうとした瞬間、樹海化が解け始めた。もしかしてさっきのバーテックスは撤退したのかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

樹海へと戻ると学校の屋上に来ていた。

 

「あんまり手応えなかったわね」

 

「夏凛ちゃん、油断は禁物よ。もし大型のバーテックスと同時に出現したら大変だったかもしれないわ」

 

「そうね。それは面倒ね」

 

「そこら辺の対策をしておかないとね」

 

みんながそんな話をする中、私は赤嶺のことを見つめるのであった。一緒に戦うのだからこれからは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ、何とか潜入できたな。けどいてて……」

 

僕はお腹を抑えた。流石に強いな。勇者というのは……

 

「気付かれないようにしないといけないから、早いところ要件を済ませないと……」

 

僕は歩き出そうとした瞬間、お腹の痛みにうずくまった。これは回復を待ったほうがいいかもしれないな。

 

「やっぱり無茶な潜入だったかな……」

 

「あの……大丈夫ですか?」

 

突然誰かに声をかけられ、顔をあげるとそこにはさっき蹴りを喰らわした勇者が目の前にいた。

 

「き、君は……」

 

「お腹痛いんですか?すぐに見せてください」

 

「い、いや、大丈夫だ」

 

「でも……そうだ。秘密にしてくれるのでしたら……」

 

勇者は僕のお腹にそっと触れた瞬間、急に痛みが消えた。今のは……

 

「一応覚えておいてよかった。治療スキル……」

 

おかしい勇者にこんな能力があるなんて聞いてないぞ

 

「それじゃ私、行きますね」

 

「ま、待って……君は……」

 

「上里友海です。それじゃまた」

 

友海はそう言って去っていった。それに何だこの心が苦しくなるのは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とある世界

 

「……何だ?」

 

「どうかしたの?海くん」

 

「いや、なんか急に怒りが芽生えたと言うか……」

 

「もしかしてなにかしちゃった?私?」

 

「そんなことはないって、ほら、足元気をつけろ」

 

「あ、ありがとう……それにしてもふたりともどこに行ったんだろうね?」

 

「どっかのクエストに出かけてるんじゃないのか?」

 

「そうだと言いけど……もしかして桔梗くんたちの世界に行ってたりして」

 

「あっちの世界か……こっちの桔梗とあっちの桔梗は少し違うからな。もう一度会いたいな」

 

「今度、天ちゃんに頼んで行ってみようよ」

 

「……エリスさんに怒られそうだけど……」

 

 



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06 友海と赤嶺②

友海SIDE

 

勇者部部室で、私はあることを考えていた。

それは赤嶺と仲良くなるために、一体どうしたものか考える私。だけど思った以上に答えが出てこなかった。

 

「仲良くなるってどうすればいいのかな?」

 

「誰と仲良くなるの?」

 

そう呟いた瞬間、突然声が聞こえ振り向くとそこにはママがいた。いつの間にいたのだろうか?

 

「え、えっと……マ……友奈ちゃん、いつの間に?」

 

「ついさっきだよ。それで誰と仲良くなりたいの?」

 

「えっと…」

 

こういう時、相談したほうがいいよね。勇者部五箇条の一つにあるし、それに師匠の教えの一つ『うじうじ悩まず、誰かを頼る』というのもあるし……

 

「えっとね。実は赤嶺……さんと仲良くなりたいって思って?」

 

「仲良くって?仲悪かったの?」

 

「う、うん、ちょっと色々とあって……ここに来る前はて……喧嘩してたんだけど……今はこうして一緒に頑張ることになって……」

 

「う~ん、喧嘩してた頃を引きずってて、ちょっと遠慮しちゃってるんだね」

 

「はい」

 

「それだったら、気にしないで話しかけてみたら?そしたらほら、仲良くなれるよ」

 

ママらしい答えだ。気にしないで話しかけてみたらか……よし、頑張ってみよう

 

「ありがとう。ママ」

 

「ママ!?」

 

うっかりママのことをママって呼んでしまった。ど、どうしよう……とりあえずごまかさないと……

 

「えっと、友奈ちゃん、私のお母さんに似てるからつい……」

 

「そ、そっか、ママか……何だか嬉しいな。友海ちゃんみたいな子供がいたら、私すごく可愛がるかもしれない」

 

「あ、あはは……」

 

うん、本当にいっぱい愛してくれてるよ。ママ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

赤嶺SIDE

 

勇者部のみんなが授業に出ている間、私、牡丹、友海の三人はある程度の依頼をこなすことになり、私は依頼を終わらせ、部室に入ろうとした時、ドア越しで二人の話が聞こえてきた。

 

「仲良くか……」

 

「赤嶺さん、入らないんですか?」

 

どうしたものか考えているとそこに東郷がやってきた。彼女は何だか心配そうに私のことを見ていた。

 

「ちょっとね。そういえば結城は先に来てるみたいだけど、あなたはどうしてちょっと遅れて来たのかしら?」

 

「ちょっと用事があって、友奈ちゃんに先に行っていていいって言ったんですよ」

 

あの世界での彼女は普通に歩いていたけど、今の彼女は車椅子に座っている。前に海くんに聞いていたとおりだ。

 

「それでどうかしたんですか?」

 

「少しね。色々と考えることがあってね」

 

「考えること?」

 

「友海のことよ。彼女とは少しだけ壁があってね」

 

「確かに何故か貴方のことだけ、呼び捨てですね。喧嘩しているんですか?」

 

「ちょっと前に喧嘩していた仲で、今は仲良く一緒に戦うことになったけどね……」

 

「何だか辛いですね」

 

辛い……そうかもしれない。どうしたらいいのかわからないのだから……

 

「私が力になることがあったら言ってください」

 

「えぇ、その時が来たらね。さて、部室に入りましょう」

 

 

 

 

 

 

 

友海SIDE

 

「こんにちわ」

 

「友奈ちゃん、おまたせ。友海ちゃん、お疲れ様」

 

「東郷さん、赤嶺ちゃん、こんにちわ。ほら、友海ちゃん……」

 

「えっと、東郷さん、あ、赤嶺……ちゃん。おかえり」

 

「……ただいま。友海」

 

赤嶺ちゃんは何だか恥ずかしそうにしていた。それに返事もちゃんと返してくれて、ちょっと嬉しい。

 

「な、何よ」

 

「ううん、なんでもないよ~」

 

恥ずかしそうにしていた赤嶺ちゃんを見つめていて、赤嶺ちゃんは怒っていた。これから頑張って歩み寄らないといけないよね

 

「今、戻りました……何かあったんですか?」

 

すると牡丹が依頼から戻ってきて、私と赤嶺ちゃんを見てそんなことを聞いてきた。私は笑顔でこう答えるのであった。

 

「ちょっと頑張ってみただけだよ」

 

「……そっか、頑張ったんだね」

 

牡丹は私の言葉を聞いて、すぐに何があったのか理解してくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とある世界にて

 

中学三年のある日の春。世界は二人の女神に祝福されてから数ヶ月が経った。僕ら勇者部は樹部長の元、頑張っていたのだったが……

 

「桔梗くん~」

 

「何だよ。美森?」

 

「呼んでみただけだよ~」

 

「そっか……」

 

何故か美森が僕に後ろから抱きついていた。僕は特に気にすることなく、依頼されていた絵を書き続けていた。

続けていたのだが……

 

「ねぇ、何なの?」

 

「何って?」

 

夏凛が呆れた顔をしながら聞いてきた。一体何が気になってるんだ?

 

「その東郷よ!?キャラが変わってるし!?何があったのよ」

 

「何って……何にもないけど……」

 

「あるから!?見てるこっちが恥ずかしくなると言うか……居づらいのよ!?」

 

「友奈は気にしてないぞ」

 

「桔梗くんと東郷さん、仲いいな~」

 

「だめだ。突っ込んでも空振りしてる気がする……」

 

「みなさん、こんにち……あの、何があったんですか?」

 

樹が部室に入るやいなやそんなことを言い出してきた。全く何って、何がだよ

 

「あの、桔梗さん、部室でいちゃつくのは止めるように言ったのですが……」

 

「あぁ、わかってるつもりだけど……」

 

「「分かってない(じゃないですか)!!」」

 

もしかしてこの美森のことを言ってるのか?これは……

 

「樹部長、悪い。これは僕が悪いわけじゃない。たまにごくたまに美森が壊れることがあるんだ」

 

「壊れるって……」

 

「美森曰くものすごく甘えたくなることがあるらしく……そのときは理性崩壊を起こしてこんな風にくっついてくることがあるんだよ。まぁ元に戻ったらものすごく恥ずかしくなったりするけど……」

 

とはいえ、今回はくっついてくるだけか。前は家にいた時に押し倒されたことがあったからな……

 

「……何でまたそんなことに……」

 

「前に東郷さんから聞いたんだけどね。どうにも牡丹ちゃんにもっとイチャイチャしてほしいって言われたんだって」

 

「あの子は何って言う置き土産を……」

 

牡丹……呪いに苦しんでいた友奈を救うために別の世界の未来から来た勇者であり、僕と美森の子供……

牡丹は今頃元気にしてるのかな?

 

「牡丹ちゃん、友海ちゃん……元気にしてますかね?」

 

「きっと頑張ってるんじゃないのか?」

 

「そうだったらいいわね」

 

僕らはあの時手助けしてくれた仲間のことを思い出すのであった。あいつらは平和な世界の中を過ごしているのだろうか

 

 

 

 



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07 謎の少年と友海

おまたせしました。

本編よりおまけがものすごく思いついてしまい、中々かけませんでした。

おまけはちょっと注意です


???SIDE

 

僕が神樹が守る世界に来てから数日がたった。人間たちは特に主様を怒らせるようなことをする様子はなかった。

 

「今はこうして平穏な日々を生きている人間が、あの時みたいに禁忌に触れるのか……」

 

人間は神の領域に近付こうとしたからこそ、主様は怒り、滅ぼそうとした。それでも神々の中には人間を信じて守ろうとし、力を与えたやつらがいる。それが神樹。

 

「今もまた僕らと戦い続けてる。今のうち……」

 

「あれ?君は……」

 

突然声をかけられ、振り向くとそこにはこの間蹴りを喰らわし、僕を治療してくれた少女、確か名前は……

 

「上里友海だっけ?」

 

「あっ、覚えてくれたんだ。あの後怪我大丈夫?」

 

「あ、うん……君は不思議な力を持っているんだね」

 

「あ、あはは、ちょっとした機会でね……でも他の人には内緒だよ」

 

「……わかった」

 

彼女の力はどう考えても神の領域に近い。勇者なのだろうけどそれでも異質……

 

「そういえば名前は何ていうの?」

 

「僕?僕は……」

 

本来の名称を名乗ったらすぐに倒されてしまう。それだったら何かしらの偽名を考えないと……

 

「乾蒼だよ」

 

ぱっと思い浮かんだ名前を告げると友海は不思議そうな顔をしていた。明らかに偽名だと思われたか?

 

「蒼……かっこいい名前だね」

 

「そ、そうかい?」

 

なんだろう?彼女が笑顔でそういった瞬間、顔がものすごく熱くなった。それに胸がものすごく苦しい……なんなんだ?

 

「どうかしたの?」

 

「い、いや……」

 

彼女が僕に顔を近づけてきて、僕はものすごい勢いで逃げ出すのであった。なんなんだこれは……

 

 

 

 

 

 

 

友海SIDE

 

蒼くんが物凄い速さで走り去ってしまった。どうかしたのかな?

 

「友海、何してるの?」

 

「あ、牡丹。ちょっとね」

 

「ほら、まだ買い出し中だよ。早く戻らないと風お……さんに怒られちゃうよ」

 

「うん」

 

私は牡丹の荷物を受け取り、一緒に学校へと戻ろうとしていた。そんな時、牡丹がある事をいい始めた。

 

「ねぇ、友海」

 

「何?」

 

「やっぱりこの世界の流れって……変わってるんだよね」

 

「うん、夏凛おばちゃんが合流するときとか、あとは樹海化になる頻度……」

 

パパに聞いているかぎりじゃ、星屑だけが攻めてくるようなことはなかったらしい。だけどここ数日、星屑ばかりと戦っている。

 

「これって、私達がこの世界に来たことが原因で……」

 

「そうだけど、私達は例外的な存在になるために必要なことだから……」

 

「そうだとしても……あれ以来ムーマさんは何も言ってこないから……」

 

牡丹はきっと不安でしょうがないのだろう。今のままが正解なのか……それとも間違っているのか誰も教えてくれない。

私はそっと牡丹の手を握った。

 

「大丈夫だよ。勇者部五箇条にあるでしょ。『なせば大抵なんとかなる』って、きっと間違っていても何とかしよう。なにせ師匠の教えで……」

 

「わかったよ。そうだもんね。友海が一番好きな言葉だもんね」

 

牡丹は笑顔でそういった。私が好きな言葉、それは師匠の教えの一つで、これは師匠やゆんゆんさんが二人で考えてものだから、牡丹も好きな言葉だから……

 

「ほら、早く戻ろう」

 

「うん」

 

私達がそう言って歩こうとした瞬間、端末からアラームが鳴り響いた。これは……

 

「パパの話じゃ時期的に……」

 

「うん、かなりきつい戦いになるね」

 

私と牡丹は荷物を地面に置き、互いの拳を合わせた。

 

「頑張ろうね。牡丹」

 

「えぇ、友海」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

蒼SIDE

 

世界が樹海に変わり、僕は勇者たちを見つめていた。

 

「戦いになるのか。僕もやるべきだよね」

 

僕は狼の姿に変えた。

 

「残念だよ。友海。こうなった以上は戦うしか……」

 

僕は駆け出そうとした瞬間、何かの視線を感じ振り向いた。だけど振り向いた先には誰もいなかった。

 

「……どうにもここ最近何かが監視している気が……」

 

 

 

 

 

 

『さて最初の難関の始まりだよ。どうするのかしら?彼女たちは』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とある世界にて

 

 

「ねぇ、あんたらって喧嘩することあるの?」

 

今日は夏凛と二人で依頼をこなしている中、いきなりそんなことを聞いてきた。

 

「喧嘩?」

 

「そう喧嘩。あんたと東郷って馬鹿みたいにイチャイチャしてるけど、喧嘩とかしないのかなって?」

 

「まぁ普通に喧嘩することはあるけど……」

 

「……一応喧嘩はするのね」

 

おい、夏凛、一応ってなんだよ。一応って……

 

「ちなみに仲直りするときってどんな風にしてるの?」

 

なんか色々と聞いてくるな……仲直りするときか……

 

「まぁ何日か経って互いに謝るくらいだな」

 

「それなら喧嘩したときとかはいちゃついたりしなさそうだし、活動も集中して……」

 

夏凛が小声で何か呟いていた。本当になんなんだ?

 

「まぁそれでもうまく行かなかったときとかあるけど、大体そういう時は僕はキスして口をふさいだりするけど……」

 

感情的になったりするときとかあるから、そういう時は口をふさいだりしてるし、正直嫌いとかそういう言葉を聞きたくないからな。

 

気がつくと夏凛が机に突っ伏していた。どうしたんだ?すると遅れてやってきた樹が部室に入ってきた。

 

「遅くなりました。あの夏凛さん、どうかしたんですか?」

 

「樹……悪いんだけどある異世界に行ってきていいかしら?」

 

「異世界ですか!?」

 

「このバカップルに対して人の目とかそういうのを気にするように、あっちの世界の海を連れてきて突っ込ませないとだめよ」

 

「一体何をしたんですか?」

 

「いや、何もしてないんだけど……」

 

 



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08 決戦

友海SIDE

 

樹海へと訪れた私達の目の前には今まで以上の星屑の群れと大型バーテックスが7体いた。

 

「残り七体。全部来てるんじゃないの? これ」

 

「敵ながら圧巻ですね」

 

「逆に言うとさ、こいつら殲滅すればもう戦いは終ったようなもんでしょ」

 

「殲滅ね!」

 

「皆、ここは、あれいっときましょ」

 

私達は円陣を組み、気合を入れ始めた

 

「あんた達、勝ったら好きなもの奢って上げるから、絶対死ぬんじゃないわよ!」

 

「よーし、美味しいものいっぱい食べようと!肉ぶっかけうどんとか!」

 

「言われなくても殲滅してやるわ!」

 

「わ、私も叶えたい夢があるから」

 

「頑張って皆を、国を守りましょ」

 

「あんな数。私と赤嶺ちゃんの拳で一発だよ」

 

「やれやれ、期待に答えますか」

 

「私達の道を塞ぐ存在は全て撃ち抜いてみせます」

 

「よーし!勇者部ファイト!!」

 

私達は掛け声とともにそれぞれの持場についた。

 

「それじゃ早速星屑から殲滅を……」

 

「友海!!爆裂魔法はまだ早いよ」

 

「牡丹、どうして?」

 

開戦の合図としていいものかと思ったのに……牡丹としてはなにか考えがあるのかな?

 

「爆裂魔法は最後の最後、見せ場に見せないと……めぐみんさんも言ってたでしょ」

 

「そうだったね。忘れてたよ」

 

「……気合い入れ過ぎじゃない?もしかしてこの戦いが分岐点の一つだったりするのかしら?」

 

分岐点って言うのはよく分からないけど、赤嶺ちゃんはこういいたいんだ。私達がここに来た目的の一つ、悲しい運命を変える機会だって言うことだよね

 

「とりあえず私達は星屑の数を……友海!?」

 

牡丹が叫んだ瞬間、私は右腕を何か引っ張られ、どこかへ運ばれるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何かに運ばれ、思いっきり地面に叩きつけられた。

 

(うくっ、腕が……それにさっきので……結構ダメージが……)

 

私はここまで運んできた存在を見つめた。それはバーテックスのような……

 

「犬?」

 

『………オレハ犬ジャナイ』

 

人語をしゃべるバーテックス。こんな存在、初めて見た。牡丹が言うように私達が来たことで何かが変わったのかな?

 

『オレハ……』

 

「犬型だろうとなんだろうと……戦うって言うなら容赦しないよ!!」

 

私はバーテックスに向かって思いっきり蹴りを放つ。だがバーテックスは当たる寸前で避けた。

 

『オレハ狼ダ!!』

 

「狼も犬も一緒だよね」

 

『違ウ!!』

 

違うの?一緒だよね。よく分からなくなってきた。だったら……

 

「師匠の教え一つ!!『細かいことは気にしない』」

 

『細クナイ!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

牡丹SIDE

 

友海が連れさらわれてしまった。今すぐにでも追いかけないといけないけど……

 

「待ちなさい。貴方まで言ったら私達の目的が達成できなくなるわよ」

 

「そうですけど……でも」

 

「友海は貴方の親友。だったら親友を信じなさい。あなたの親友はそう簡単に負ける子かしら?」

 

「そんなこと……ないです」

 

「それじゃ……私達は私達のやるべきことを」

 

赤嶺さんは迫りくる星屑を全て殴り倒していき、アリエスバーテックスまで星屑を踏んで向かうのであった。

 

「まずは一体!!」

 

アリエスバーテックスの頭を思いっきり殴った瞬間、風おばさまたちが封印の儀を始め、バーテックスの核となる御霊を出現させた。

 

「ライトニング・ストライク・アロー!!」

 

雷撃を纏わせた矢で私は御霊を打ち抜くが、まだ破壊できない。すると私が射抜いた箇所に向かって、友奈おばさまが思いっきり殴った。

 

「まずは一体!!牡丹ちゃん、すごいよ」

 

「あ、ありがとうございます」

 

「このまま一気に……」

 

夏凛おばさまが駆け出そうとするが、突然何かの音が響き渡り私達の動きを止めた。

みるとタウロスバーテックスが頭の鐘を鳴らして私達の動きを止めていた。

 

「音はみんなを幸せにするもの。こんな音……こんな音!」

 

樹おばさまがワイヤーで鐘を縛り上げ、タウロスバーテックスの音を止めた。このままうまく行けば……

 

「そう簡単じゃないみたいよ」

 

赤嶺さんがそう告げた瞬間、周りにいたバーテックスが見る見る内に集まっていき、一体のバーテックスへと変わった。

 

「レオ・スタークラスター……厄介なやつが出てきたわね」

 

「赤嶺さん……知ってるんですか?」

 

「一応ね。あっちで色々と教えてもらったけど、結構厄介だというのは覚えてるわ」

 

レオ・スタークラスターから無数の炎の弾丸が放たれていき、私達は避けていくのであった。

 

「こういう時………どうすれば……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とある世界にて

 

「ウミさん」

 

昔から続けていた日課の最中、ゆんゆんが訪ねてきた。牡丹が弟子入りしてからこうして朝に会うことはなかったのに、今日は珍しいな

 

「ゆんゆん、どうしたんだ?」

 

「あのボタンちゃんが来ないんですけど……私、なにかしたのでしょうか?」

 

来ないということで落ち込んでいるゆんゆん。もしかして嫌われてしまったのかと思ってるのか?

 

「あいつらならクエストに出かけて戻ってきてないぞ」

 

「クエスト?いえ、そんな話は……」

 

「どういうことだ?」

 

あいつらはクエストに出かけているものばかりかと思っていたんだけど……

 

「ここに来る前にギルドに行って聞いたんです。そしたらクエストを受けに来ていないらしく……」

 

「じゃああいつらどこに……他の街に行くなら一言言うだろうし……」

 

「もしかして……」

 

いや、考えたくないな。だけど……もしかして……

 

「何かトラブ……「家出か!?」

 

僕は知らない内に友海を傷つけてしまい、家出してしまったのか?牡丹はその付添で……

 

「あ、あの……ウミさん?」

 

「まさか……誘拐!?だとしたら犯人を探し出して、誘拐したことを後悔させないと」

 

「……何というか本当に変わりましたね。ウミさん……」

 

 

 



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09 間に合わなかったとしても

友海SIDE

 

わんこバーテックスと戦うことになった私。長い時間をかけて戦っていられない。急がないとママたちが満開して大変なことになる。

 

だけどわんこバーテックスの動きが早すぎて、パンチを繰り出しても避けられてしまう。

 

『俺ノ速サニツイテコレナイダロ!!』

 

すれ違いざまに爪で私の体を傷つけていく。こういう時どうしたものか……

 

(思い出さないと……戦いの基本……)

 

私は目を閉じ、パパやママに教えてもらったことを思い出していた。こういう相手に対してはどうするべきか……

 

(爆裂魔法を放てば楽だけど、今後のことを考えるととっておきたい。勘で攻撃を当てるのは私にはまだ無理……)

 

どうにかしないと考え込んでいると、カズマおじちゃんのある言葉を思い出した。

 

『素早い相手に対して攻撃を当てる方法?まぁ色々とあるけど、一番いいのは……』

 

私はそっと右腕を掲げた瞬間、わんこバーテックスが噛み付いてきた。

 

『馬鹿ガ!!自分デ腕ヲ伸バシテ……噛ミツケト言ッテイルモノダゾ!!』

 

「その通りだよ!!」

 

カズマおじちゃんが教えてくれたこと、それはわざと攻撃を食らって、反撃をすること。私は左手を思いっきり握りしめ、わんこバーテックスを思いっきり殴り飛ばした。

 

『がふっ!?』

 

「いたた、この世界のママみたいに絶対防御とかじゃないから無茶できないな……」

 

噛まれた箇所を押さえながら、そう言うと倒れたわんこバーテックスは起き上がった。

 

『自分ノ腕ヲ犠牲ニスルナンテ……回復デキルカラカ?』

 

「悪いけど、回復はしないよ。魔力はのこしておか……何で私が回復できるって知ってるの?」

 

『サァテナ。今回ハ退イテヤル』

 

わんこバーテックスはそう言って、その場から逃げ出すのであった。どうしてあのわんこバーテックスは私が回復できるって知ってるのかな?

 

「そうだ。今はママたちのところに……」

 

急いで戻ろうとしたが、まばゆい光があっちの方で見えていた。

 

「そんな……」

 

この戦いでママたちを満開させないようにしようとしていたのに……間に合わなかった?

ううん、まだ間に合うはず。聞いていた話だったら……まだママと夏凛おばちゃんは満開していないはずだから

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私はママたちのところに駆け寄ると、すでに巨大なバーテックスの封印の儀を行っているところだった。

 

「牡丹、赤嶺ちゃん」

 

「友海……ごめん」

 

「ちょっと厄介すぎてね……悪かったわね」

 

「大丈夫。今は?」

 

「レオ・スタークラスターの御霊を出したけど、出た場所が……」

 

赤嶺ちゃんが指を指した方向を見ると、空だった。もしかして宇宙に出てきたって言わないよね

 

「友海ちゃん、すごい怪我!?」

 

「大丈夫なの?」

 

ママと牡丹ママが心配そうに駆けつけてきた。私はただ頷くとママはあることを告げた

 

「御霊を破壊すればこの戦いは終わる……友海ちゃんたちは休んでて、私と東郷さんで……」

 

「友奈ちゃん、私も行くよ」

 

「友海!?」

 

牡丹は止めようとするが、赤嶺ちゃんが牡丹の肩を掴んだ。

 

「大丈夫なの?」

 

「うん、まだ使ってないから……」

 

「それなら……行ってきなさい」

 

「うん、行ってきます」

 

私とママは牡丹ママの満開に乗り、宇宙へと上がっていくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

御霊の近くまで行くと御霊から激しい攻撃の嵐が襲ってきた。

 

「友奈ちゃん、友海ちゃん、道は私が……」

 

満開の砲撃で御霊からの攻撃を相殺していき、道が見えた。

 

「友海ちゃん!ここは私が……」

 

「ううん、私がやる……必殺!!爆裂勇者パンチ!!」

 

爆裂勇者パンチを御霊に直撃させるが、巨大すぎて少しクレーターができたくらいだった。

 

「わんことの戦いのダメージが……このままじゃ……」

 

できればママだけでも……ママだけでも苦しい思いはしてほしくない。ママが満開するなら……

 

「満開システムがないから仕方ないけど……あったら使ったのに……」

 

「友海ちゃん、ありがとうね。満開!!」

 

私はママの満開を見届けながら、牡丹ママの満開の上に落ちるのであった。

 

「友海ちゃん、大丈夫?」

 

「ママ……ごめんなさい」

 

「えっ?」

 

私が最後に見た光景はママが満開で御霊を破壊する姿だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『シナリオ通りね。まぁこの戦いを変える方法は神様の力がなければね……』

 

なにもない空間で一人つぶやく邪神。

 

『これからがどう変わるか……楽しみだわ。そのために女神共には邪魔はさせないわ』

 



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10 失敗とこれから

今回はおまけありです


牡丹SIDE

 

あの大規模侵攻にて夏凛おばさま以外全員満開を使用し、後遺症が現れていた。戦いに勝利はしたものの、私達の目的は……

 

「まぁ気にする必要はないんじゃないの?」

 

「ですが……」

 

いち早く退院できた私、赤嶺さんは部室で、みんなを助けられなかったこと話していた。

 

「あの邪神が言うには私達は悲しい運命を変えるためにここに来てる。だけど今回の戦いが私達がやるべきこととつながっているのかしら」

 

「それは……」

 

「お二人ともここにいましたか」

 

部室の扉の前に星海さんがいた。彼女は椅子に座りあることを告げた。

 

「あなた方は今回の戦いについて気にしているみたいですね」

 

「は、はい……特に……」

 

私はこの場にいない友海のことが気になっていた。こういう時人一倍気にしてしまうタイプだ。

後悔し続けていなければいいけど……

 

「まぁ友海のことは牡丹がどうにかするとして、星海。あなたは今回の戦いについてどう思う?」

 

「……はっきり言うとあなた方のやるべきことの一つだったかもしれません。もしかすると誰も満開しなければ、あなた達の目的である悲しい運命に向かうことはなかったかもしれませんね」

 

「そ、それは……そうかもしれませんけど……」

 

「ですが牡丹さん、貴方はこれから起きることを分かっているのでしょう。でしたら悔やんでいる場合じゃありませんね」

 

そうだ。私と友海にはこれから起きることが分かっている。いや分かっていると言うよりかは聞かされている。

お母様がやるかもしれないこと……友奈おばさまが背負うこと……

 

「それだったらいいじゃないですか。まだあなた達にはチャンスが有るのですから」

 

「はい」

 

「まぁなるようにしかならないから、仕方ないわね。とりあえず今は……」

 

「はい、私、友海のところに行ってきます」

 

私は急いで部室から出ていくのであった。

 

「手がかかる子ね」

 

「そんな貴方は彼女たちのことを一番心配してますもんね」

 

「……そ、それはどうかしらね」

 

「隠さなくてもいいですよ。分かっていますから」

 

「全く……上里家特有なのかしら。そういうことがわかるのは……」

 

「さぁて、それはどうでしょうね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は家に戻り、友海の部屋をノックし続けた。

 

「友海!?落ち込んでるところゴメンね。ただ、これだけは言わせて……私達は確かに失敗したけど、まだチャンスは有るから……」

 

必死に呼びかけるけど、返事はない。私は更に続けた

 

「助けられなかった。助けられなかったけど………思い出して、師匠の教えを……」

 

「「師匠の教え一つ、どんなに失敗を繰り返しても、成功するまであきらめない!!」」

 

めぐみんさんとゆんゆん先生が一緒に考えた教えを言ったけど、何故か私の後ろから重なって聞こえた。振り向くとそこには友海が苦笑いを浮かべていた。

 

「え、えっと……おかえり。牡丹」

 

「ゆ、友海……いつから……」

 

「おトイレ行ってたんだけど……えっと、あと全部聞こえてたよ」

 

「うぅ……」

 

まさか部屋の外にいるなんて……思いっきり恥ずかしくなった。

 

「だ、大丈夫だよ。嬉しかったからね。牡丹が心配してくれたこと」

 

「でも……」

 

「それにまだ私達は頑張れるチャンスがあるんだよね」

 

「う、うん……まだある。知ってるよね。これからのこと」

 

「私達なら変えられるはずだから……だって私達は」

 

「うん、大親友だもんね」

 

私達はハイタッチをするのであった。

 

良かった。友海は落ち込んでいなかった。強くなったね。友海

ただ私はあることが気になっていた。悲しい運命というのは一体どのことなのだろうかを……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とある世界

 

彼の帰りが遅い。何かあったのだろうか?もしかして何かしらの事故に巻き込まれたのか?

それだったら迎えに行ったほうがいいのか……

 

「ただいま。千景さん」

 

「おかえり……遅かったけどなにかあったの?」

 

「遅い?いえ、いつもどおりの時間ですけど……」

 

私は彼の言葉を遮るように抱きついた。

 

「どうしたんですか?千景さんから抱きつくなんて」

 

「何だかすごく甘えたくなって……だからかな?あなたが帰ってくるのがすごく待ち遠しかったの」

 

「そうですか。すごく嬉しいです」

 

私は目を閉じると彼は私にキスをしてくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「……………」」」

 

「って書いてあったよ~」

 

「桔梗くんのご先祖様、すごい幸せだったんだね」

 

「というかあっちの世界から持ち帰り忘れたものを何で園子が持ってるんだよ」

 

あの世界で天の神が送った日記が今になって届いたのはいいけど、どうして園子のところに持ってきたんだよ

 

「天ちゃん曰くカイちゃんと私の家は天ちゃんが着やすい場所なんだって」

 

「何だかすごい日記を見て、この人達に申し訳ないけど……桔梗くん、負けないくらい愛してね」

 

「あぁ、わかってるよ」

 

「「「いや、おかしい(です)」」」

 

風先輩、夏凛、樹の三人が同時にツッコミを入れていた。一体何がおかしいんだ?

 

「あの二人のいちゃいちゃはご先祖様が関係してるのね」

 

「というか、どんだけよ。どんだけ受け継いでるのよ!?」

 

「何だか桔梗さんをどうにかするよりも、過去に行ってこの人たちにいちゃつかないようにって行ったほうがいいのでは?」

 

「そうね。天の神に頼んで過去に行けるようにしてもらいましょう」

 

一体この三人はどうしたんだ?

 

 




本当に本編を書くよりもおまけのほうが楽しくかけている自分がいて、不安でしょうがないです


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11 平穏と合宿と……

友海SIDE

 

今日はみんなで海に来ていた。どうして海に来ているかはこの間の戦いで一応、バーテックスを倒したことにより、大赦がご褒美として勇者部の合宿先を用意してくれた。

 

「海だぁ~」

 

「牡丹、転ぶよ」

 

「全く海でよくそんな風にはしゃげるわね」

 

「あちらの世界には行く機会がなかったので……」

 

「確かにそうだけど……」

 

「あんたら、温度差激しいわね」

 

風おばちゃんが準備体操をしながらそう言っていた。すると夏凛おばちゃんがこっちに向かって走ってきた。

 

「風!こっちは十分に身体を温めてきたわ!さぁ、勝負よ」

 

「夏凛ちゃん、風先輩と勝負するんだね」

 

「優れた選手は水の中もいけるってことをまたまた見せてあげるわ!」

 

「ねぇ、こんな格好で女子力振りまいたらナンパとかされないかしら?」

 

「何を心配してるのよ」

 

夏凛おばちゃんが呆れている隙に風おばちゃんが先にスタートするのであった。

 

「ちょ、ずるいわよ!?」

 

「みんな、良かった……」

 

「友海ちゃん、元気になったね」

 

ママが笑顔でそう言うのであった。もしかして元気なさそうに見えてたかな?

 

「何だか友海ちゃん、私達のこと心配してくれてたみたいだから……」

 

「えっと……その……」

 

「心配してくれてありがとう。大赦の人も調査してくれているからきっとなんとかなるよ」

 

「えぇ、友奈ちゃんの言うとおりよ。牡丹ちゃんも気にしないようにね」

 

「えっ、は、はい」

 

牡丹も内心心配してたんだね。

 

「それじゃ、いっぱい遊ぼっか。友海ちゃん」

 

「うん、友奈ちゃん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

赤嶺SIDE

 

「ふぅ、本当にこういう時は年相応の顔をするわね」

 

私はパラソルの下でみんなのことを見つめていた。すると私の隣に星海がそっと座ってきた。

 

「遊ばないんですか?」

 

「貴方こそ、水着に着替えてないじゃない」

 

「私は……その……」

 

「もしかして泳げないとか?」

 

「うぅ、言わないでください。海という名前がついているのに泳げないってどう思います?」

 

「ふふ、気にしないほうが良いんじゃないのかな?」

 

「そうでしょうか?」

 

「赤嶺さんはどうなんですか?」

 

「私は………」

 

過酷な日々、死んだ後あの世界に行ったときは楽しい日々があったけど、彼が死んでからはつらい日々が待っていた。こうして遊んだりするのは久しぶりすぎて忘れている。私はどんな風に遊んでいたんだっけ?

 

「色々とありすぎてね。今更ね」

 

「赤嶺さん……」

 

「心配ありがとうね。星海」

 

「いえ、巫女として勇者様のメンタルをサポートしないと……」

 

「そこは巫女としてじゃなく、友達としてでいいんじゃないの?」

 

「あっ!?」

 

星海と私は一緒に笑い合うのであった。それにしてもこんな時に考えるべきじゃないけど、あの邪神は私の願いを叶えてくれるのかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

友海SIDE

 

みんなで海でいっぱい遊んでいたせいか気がついたらもう夜になっていた。私は一人夜の海を眺めていると

 

「こんなところで何してるんだ?友海」

 

「あれ?蒼くん」

 

声をかけてきたのは蒼くんだ。なんでこんなところにいるんだろう?ここは一般の人はあまりいないのに……

 

「どうしてここに?」

 

「んん?まぁ、散歩かな。友海は?」

 

「私は友達と一緒に合宿に来てるの。今はちょっと夜風に当たって……」

 

「……そうか」

 

蒼くんは何故か私の頭をなでた。なんでいきなりこんなことを!?

 

「蒼くん?」

 

「わ、悪い。ちょっと元気が無い気がして……」

 

何だか急に頭を撫でられてものすごく顔が熱いし、ものすごくドキドキしている

 

「あ、ありがとう。でも女の子の頭を急に撫でるのはよくないよ」

 

「それじゃこれから許可をもらうよ」

 

「それもだめだと思うけど……」

 

蒼くんって何だか色々と抜けている気がするな……

 

「それで何で元気がなかったんだ?」

 

「えっと……ちょっとホームシックかな」

 

「ホームシック?」

 

「うん、色々とあって今はパパとママと離れて暮らしてるの。それも突然のことだったからかな。牡丹や赤嶺ちゃんや友奈ちゃんたちがいるから寂しいってことはなかったんだけど、やっぱりちょっとね」

 

「……僕にはよく分からないけど、今の寂しい分、会えた時の喜びとかはすごく良いものになるんじゃないのか?」

 

「そうかな?」

 

「そうだよ。僕なんて……いや言う必要はないか」

 

蒼くんはどこかへ行こうとしていた。

 

「あんまり元気が無いところ見せるなよ。お前は元気な方が僕は好きだよ」

 

蒼くんはそう言い残して去っていった。好きって……どういうことかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

旅館の部屋に戻ると牡丹が心配そうな顔をしていた。

 

「どうしたの?顔が赤いけど……風邪?」

 

「えっ!?風邪じゃないけど……ただちょっと……」

 

「ほほう、友海、もしかして誰かにナンパされたとか?」

 

「えっ!?」

 

「あら、秋と冬を通り越して春がきたのかな」

 

赤嶺ちゃんがニヤニヤしながらそういうのであった。べ、別にそういうことじゃ……

 

「ちょっとこれは詳しく聞かないとね」

 

その後、私は風おばちゃんと赤嶺ちゃんにいろいろと聞かせるようにとせめられるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とある世界

 

「カズマ、やはりユミとボタンはギルドでも見ていないらしい」

 

「あの二人どこに行ってるんだ?王都とかか?」

 

「先ほどゆんゆんと一緒にアイリスに聞きに行きましたが、来ていないそうです」

 

「ふたりともどうしたんだろう?書き置きとかないよね」

 

友奈たちが心配する中、僕は持っている武器を全部取り出し、手入れをしていた。

 

「アクアはなにか聞いてないのか?」

 

「なんにも聞いてないわよ。ただどうにも妙なのよね。ウミ、悪いんだけどエリスを呼び出してもらっていいかな?」

 

「ちょっとまっていてくれ。すぐに手入れを終わらせて犯人を探しに行くから……帰ってきてからに……」

 

カズマさんが無言で僕の肩を掴んだ瞬間、一気に体力を奪われた。

 

「ユウナ、こいつ、暴走してるぞ」

 

「ごめんなさい。友海ちゃんのことになると暴走しちゃって、でもそれくらい海くんは愛してくれてるから」

 

「あぁうん、お前ら家族を含めてな。惚気は良いからな」

 

カズマさんがため息をつく中、銀が戻ってきた。

 

「今戻ったけど……何があったんだ?」

 

「実はな」

 

カズマさんは事情を話すと銀はあることを言い出した。

 

「あの二人が!?だから海のやつがぶっ倒れてるのか」

 

「ギン、理解が早くて助かります」

 

「とりあえずウミ、エリス様を呼んでくれ」

 

「……わかった……」

 

僕はエリス様を呼び出すと何故かエリス様は難しい顔をしていた。

 

「皆さん、ちょうどよかった。話があったので……」

 

「話?」

 

「はい、実はと言うとユミさんとボタンさんの魂が感じられないんです」

 

「どういうことだ?死んだのか?」

 

「カズマ、言葉を選んでやれ。ウミが絶望してるぞ」

 

「あの、ウミさん。死んだというわけではないので安心してください」

 

「本当?」

 

「はい、ただ二人の魂が感じられなかったのと同時に……どうにも妙な力を感じるのです。この感じは私とアクア様と同じ女神……いえ、禍々しい力を感じます」

 

「やっぱりエリスも感じたのね。どうにも禍々しいもの感じてたのよ」

 

「だとしたら神クラスのやつが関わってるのか?」

 

「はい、その調査のために彼女に調べてもらっています。ウミさん、もしかしたら……」

 

「あぁわかった」

 

どうにも厄介事に巻き込まれたって言うことか。

 

 

 



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12 気づかれた真実

今回、話が少し飛びます。

そしておまけは……本編がこんな状況なのにという突っ込みを入れるのはOKです


東郷SIDE

 

合宿が終わり、私は自分の部屋であることを調べていた。それは友海ちゃん、牡丹ちゃん、赤嶺さんのことだ。

 

あの三人は大赦から派遣された勇者と説明されたけど、何かしら隠している気がする。私は300年前から今まで起きたことを調べているとあることが判明した。

 

それは赤嶺家が大きく関わった事件。人類とバーテックスとの戦いではなく、人類と人類同士の戦いの記録。そこで大きく関わった人物の名前を見て、私は驚きを隠せないでいた。

 

「赤嶺友奈……この記録に書かれている彼女と同じ人なの?」

 

友奈ちゃんにそっくりであり、大昔の記録に同じ名前……まさか彼女は……

 

「……そんなSFみたいなことじゃないわよね」

 

そう自分に言い聞かせるように否定するが、自分のこの考えが正しいと思えてしまっている。

 

「そして上里友海……あの時、彼女が言った言葉は……」

 

宇宙に上がって御霊を破壊した時、友海ちゃんが言った『ママ』という言葉。最初は誰に向かっていった言葉なのか分からないでいたけど、いろいろと考えていくと彼女の言う『ママ』は友奈ちゃんに向かっていったのではないかと思えてきた。

 

「友海ちゃんは未来の友奈ちゃんの娘?」

 

本当にSFだ。もしそうだとしたら牡丹ちゃんは誰の娘に……

 

「考えすぎよね」

 

私は自分にそう言い聞かせるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして数日後、大赦から敵の残存勢力が確認され、私達はもう一度勇者として戦うことになった。

敵は友奈ちゃんが撃退したけど、また満開ゲージが溜まってしまう。それを見て、友海ちゃんと牡丹ちゃんは悲しそうな顔をしていた。やはり何かを隠している?

 

 

 

 

 

 

 

 

樹海から戻ると私と友奈ちゃんの二人だけ、大橋の近くに飛ばされてしまい、奥へと進むとそこにはベッドに横たわる一人の少女がいた。

 

「……やっと会えた~わっしー」

 

「!?」

 

「わ、わっし~?」

 

「本当だったらもっと早く会いたかったんだけどね。中々会わせてくれなかったから、呼んじゃった」

 

「え、あ、わ、私は東郷美森です」

 

「………美森ちゃんか。そっちの子は?」

 

「結城友奈です。えっと……貴方は」

 

「私は乃木園子。二人より前に勇者になった。言うなれば先代勇者かな」

 

「先代……」

 

「二人は満開……あのパッーとなってガッーって強くなったんだよね」

 

「は、はい」

 

「私も、友奈ちゃんも……」

 

「でも体の機能をどこか失った。満開は花が咲き誇ること、咲き誇った花は、そのあとどうなると思う?満開のあとに散華という、隠された機能があるんだよ」

 

「散…華?『華が散る』の散華?もしかして私達の体の機能が失ったのは」

 

「それって……」

 

彼女は頷き、静かに語っていく。

 

「それが散華。神の力を振るった満開の代償。花1つ咲けば、1つ散る。花2つ咲けば、2つ散る。そのかわり、決して勇者は死ぬことはないんだよ」

 

「死なない?」

 

「でっ、でも…しっ、死なないなら、いいことなんじゃないのかな?ねっ?」

 

「そして、戦い続けて今みたいになっちゃったんだ。元からぼ~っとするのが特技でよかったかなって。全然動けないのはきついからね」

 

「い…痛むんですか?」

 

「痛みはないよ。敵にやられたものじゃないから。満開して、戦い続けて、こうなっちゃっただけ。敵はちゃんと撃退したよ」

 

「満開して、戦い続けた」

 

「じゃあ、その体は代償で…」

 

私の頭にある考えがよぎった。私のこの両足も、記憶ももしかして……

 

「で、でも、どうして私達が……」

 

「いつの時代だって、神様に見初められて供物となったのは、無垢な少女だから。汚れなき身だからこそ、大いなる力を宿せる。その力の代償として、体の一部を神樹様に供物として捧げていく。それが勇者システム」

 

「私たちが、供物?」

 

「大人たちは神樹様の力を宿すことができないから、私たちがやるしかないとはいえ、ひどい話だよね」

 

「それじゃあ、私たちはこれから、体の機能を失い続けて…」

 

「でも、12体のバーテックスは倒したんだから、もう戦わなくっていんだよね。大丈夫だよね、東郷さん」

 

「友奈ちゃん」

 

「倒したのはすごいよね。私たちのときは追い返すのが精一杯だったから」 

 

「そうなんですよ!もう戦わなくていいはずなんです」

 

「…そうだといいね」

 

「そ…それで、失った部分は、ずっとこのままなんですか?みんなは、治らないんですか? 」

 

「治りたいよね…。私も治りたいよ。歩いて、友達を抱き締めに行きたいよ」

 

彼女の頬を伝う涙。彼女もずっと苦しんでいたんだ……

 

「悲しませてごめんね。大赦の人たちも、このシステムを隠すのは、一つの思いやりではあると思うんだよ。でも…私はそういうの、ちゃんと、言ってほしかったから、うぅ…分かってたら、友達と…もっともっと、たくさん遊んで…。だから…伝えておきたくて」

 

私はそっと彼女の涙を拭った。すると彼女は私が持つリボンに気が付き、微笑んだ。

 

「そのリボン、似合ってるね」

 

「このリボンは…とても大事なものなの。それだけは覚えてる。けど…ごめんなさい、私、思い出せなくて」

 

「しかたがないよ」

 

「教えて、貴方は知っているはず……上里友海ちゃんたちが何者かって……」

 

「えっ?友海ちゃんたちがどうかしたの?」

 

「友奈ちゃん、私なりに彼女たちのことを調べたの。そしたらある考えに至った。赤嶺さんは過去の勇者。友海ちゃんと牡丹ちゃんは未来の勇者……ありえないかもしれないけど……」

 

「………すごいね。8割当たってるよ」

 

「8割……」

 

「それじゃ本当に過去と未来から?」

 

「二人は知ってる?私達がいるこの世界とは似てるけどぜんぜん違う世界のこと……」

 

「似てるけど……違う世界?」

 

「友奈ちゃん、例えばバーテックスもいない世界とか……そういうありえたかもしれない世界のことを平行世界っていうの」

 

「そう、その平行世界から彼女たちは来た。赤嶺友奈ちゃんは過去の別世界から、友海ちゃんと牡丹ちゃんは未来の別世界から……とある神様に言われて連れてこられた存在なんだよ」

 

やっぱり私の考えはあっていた。本当に彼女たちは……

 

「で、でも、どうして三人は神様に?」

 

「話を聞く限りじゃ例外的な存在になってほしいんだって、悲しい運命も辛い運命も変えられるような……そんな勇者になってほしいからだって」

 

だとしたら今、私達の状況は……

気がつくと大赦の仮面をかぶった人たちが集まっていた。

 

「彼女たちを帰してあげて、これは私が勝手にやったこと……もし彼女たちを傷つけたら………許さないから」

 

彼女の言葉を聞き、周りの人達は後ろへ下がっていった。私達はそのまま大赦の車に乗り、家まで送られるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とある世界

 

「桔梗くん~」

 

今日は部室に僕と美森の二人っきりだった。そのためか美森はものすごく甘えてきた。

 

「どうしたんだ?」

 

「なんだか静かでね……」

 

美森はそっと目を閉じた。全くこういうときに夏凛か樹が帰ってこないか心配だけど、僕は気にせず顔を寄せた。

 

「じ~」ポリポリ

 

何故か視線とお菓子を食べる音が聞こえ、振り向くとそこには天の神がくつろぎながら、僕らの事を見ていた。

僕と美森は咄嗟に離れ、僕は天の神の頭を掴んだ。

 

「何しに来た」

 

「あぁ、気にしないで。ちょっとした映画気分で見てるから」

 

「いや、だから……」

 

「ひと目を気にせずいちゃついてるんだから、良いじゃない。あぁ、激しいうん……」

 

うん、いい加減殴りたくなってきた。というか天の神がこうして遊びに来ていて怒られないのかよ

 

「あぁ、私がやることは見守ることだからね。世界の守護やら二人の女神に任せてるから」

 

要するに暇なんだな。全く世界が生まれ変わったっていうのに……

 

「それで何か用でもあるのか?そのために来たんだろ?それともただの暇つぶしか?」

 

「あぁ、そうだった。あっちのエリスに頼まれたことがあってね。この世界に牡丹はきてないか?」

 

「牡丹?」

 

「牡丹ちゃんって、海くんの世界のですか?来てませんけど……」

 

「だとしたらやっぱり……もう少し調べてから話すが、もしかすると手伝ってもらうことになるぞ。境界の勇者」

 

「……わかった」

 

 

 

 

 




フラグが段々立ってきていますが、あと一人、まだフラグが立っていない勇者が一人います



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13 止められないもの

東郷SIDE

 

私と友奈ちゃんは乃木園子から聞かされたことを風先輩に伝えた。

 

「何よそれ……私達の体は……それに友海や牡丹、赤嶺が別世界から来ていて……事情を知っていたっていうの?何よそれ……ただの」

 

「作り話じゃありません。ありえないことかもしれませんが、本当のことです」

 

風先輩は戸惑っていた。誰だってこんなことを聞かされれば戸惑うに決まっている。

 

「あの夏凛ちゃんや樹ちゃんには……」

 

「……あの二人にはまだ話さないでおくわ。星海は……」

 

「私の方で聞いてみました。彼女もまた散華については知らされていなかったみたいです」

 

「そう……あの子のことだから知っていたら止めようとするわね。友奈、悪いんだけど友海、牡丹、赤嶺と改めて話をしてもらっていいかしら?」

 

「私がですか?」

 

「あんたなら……きっと大丈夫だから」

 

先輩はそう言って、その場から去っていった。残った私達は……

 

「東郷さん……」

 

「友奈ちゃん、私はまだ調べることがあるから……三人とお話して……」

 

「う、うん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

友海SIDE

 

夜、ママが私達の家に訪ねてきた。一体何の用かと思っていると、ママは私達のこと、満開のこと、散華のことを園子おばちゃんから教えてもらったことを話すのであった。

 

「………」

 

「……」

 

「………信じられないけど、彼女が言ったことは本当のことよ。結城友奈」

 

「それじゃやっぱり赤嶺ちゃんは過去から来て……友海ちゃんたちは未来……それも別世界から……」

 

「マ……友奈ちゃん、ごめんなさい。騙すつもりは……」

 

「私達をこの世界に連れてきた邪神に言われたんです。未来のこととか私達のことを話すなって……でも……知っていて黙っていたんですから……これはただの言いわけですよね」

 

牡丹は俯きながらそう言うと、赤嶺ちゃんはママにあることを聞いてきた。

 

「例えば貴方が全てを聞かされていたとしたら……バーテックスと戦うことをやめていたかしら」

 

「それは………私は全部知っていてもきっと勇者をやっていた。勇者になれたからこそみんなと出会えた」

 

「それが例え体の機能を失うことでも?」

 

「それでも、みんなのためだって思えたら戦っていられる。それが勇者だから」

 

ママは決意を秘めた表情でそう告げた。やっぱりママはどんな世界でも優しくって、強い人だよ

 

「全く貴方は……彼女とよく似ているわね」

 

「彼女?もしかして友海ちゃんと?確か友海ちゃんと?」

 

「友海のことじゃなわよ。私が言っているのは……いやこれはいつか話すわ。とりあえず私達のことを、私達の口からみんなに話しましょう」

 

「うん、そうだね」

 

「どんなに罵られても……受け止めます」

 

「赤嶺ちゃん、友海ちゃん、牡丹ちゃん……大丈夫だよ。みんな、責めたりしないから」

 

きっと大丈夫。それにこれで運命が悲しい方へと行くことは………

 

「因みに、友海は貴方の。牡丹は東郷の娘よ」

 

「そうだったの!?」

 

「赤嶺ちゃん、それ言っちゃう?」

 

「全部話すんだからこのことも知っておいてもらわないとね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さぁて、それはどうかしらね。ここまでは予想通りだけど、これは私にとってはまだ始まりに過ぎない。楽しみね。例外共の足掻きがね」

 

笑みを浮かべながらそうつぶやくと、何かが叩く音が響いた。やれやれ、またか

 

「邪魔はさせないわ。とはいえ、彼女たちのおかげであんたには破られるようにしてあるわ」

 

指を鳴らした瞬間、何かを叩く音が消えるのであった。

 

「別世界の天の神、女神。あんたらじゃもう無理よ。そういう風にしてあるからね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私達は改めて部室でみんなに事情を話すことになったのだけど、牡丹ママだけが来ていなかった。

牡丹は後々自分から事情を話すといい、私達はすべてを話した。

 

「……悲しい運命を変えるために……」

 

「うん、でもごめんなさい。私達が頑張っていれば……風さんたちが散華にならなかったのに……」

 

「……………」

 

風おばちゃんはずっと黙り込んでいた。やっぱり怒ってるよね」

 

『で、でも友海ちゃんたちが言うように私達の散華は治るんだよね』

 

「それは本当です。ただどれくらい時間がかかるか……」

 

「で、でも、希望が見えてきたから大丈夫だよね」

 

「あんたら……」

 

風おばちゃんが私達の方へとゆっくり近づき、両腕を上げた。私と牡丹は叩かれると思った。

だけど風おばちゃんは私達のことをギュッと抱きしめた。

 

「悪かったわね。その邪神とかそういうのに言わないように言われていたから、私達の本当のことを言えなかったんだよね。つらい思いをさせてゴメンね」

 

「風……さん」

 

「そ、そんな……謝るのは……」

 

「これからは何かあったらすぐに言いなさい。あんたらは勇者部なんだから。五箇条を守ってもらうわよ」

 

「「はい」」

 

「やれやれ、これで一段落……って言うわけにはいかなそうね」

 

赤嶺ちゃんがそう告げた瞬間、端末からアラームが鳴り響いた。これって……

 

「これって……」

 

「一体何が……」

 

もしかしてパパが前に言っていた牡丹ママの暴走なの?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とある世界

 

「………ねぇ、ヒメノ様」

 

『はい、蕾』

 

猫みたいなぬいぐるみ、サンチョを依り代にしている守り神ヒメノ。私達は戦いを終えてから一ヶ月がたった。

平穏な日々が続く中、私はある疑問を問いかけた。

 

「あんまり覚えてないんだけど、私って別世界に言ったことがあるんだよね」

 

『はい、そこで境界の勇者と女神の勇者と呼ばれる人たちと戦ってました。もちろん私とも』

 

「そうだったんだ……でも、私がこれから質問すること答えてもらっていいかな?」

 

『えぇ、いいですよ』

 

「この子………誰?」

 

家でのんびりと夕食を作っているとリビングの天井を突き破り、一人の女の子が落ちてきた。

 

『彼女は天の神ですよ』

 

「天の神って女の子だったの?」

 

『えっと、はっきり言うと別世界のですね』

 

「ふぅ、やれやれ、中々手強いな。おっと、済まなかったね。天井を破って」

 

少女は指を鳴らした瞬間、壊れた天井が元に戻った。

 

「これでいいかな?」

 

「は、はい」

 

『天の神……貴方はどうしてこの世界に?あまり別世界に干渉するのは……』

 

「わかってるさ。ただ少し妙な奴が動いていてね……」

 

『妙なやつ?』

 

「あぁ、今の貴方みたいに妙なやつがね」

 

『この姿は妙ではありません!!』

 

「誰が見ても妙よ」

 

『いい度胸ですね。守り神の力を……』

 

「ヒメノ様、落ち着いて、それでえっと、天の神様。その妙なやつって?」

 

「あぁ、女神が勝手に呼んでいる奴らみたいなものじゃなく、本物の邪神の気配をね。いや、そもそもの発端が、ある二人が姿を消したことから始まったんだ」

 

『ある二人……彼らですか?』

 

「いいや、彼らの子供。あなた達も会ったことがあるでしょ」

 

『彼女たちね。それと邪神の気配が……いや、絡んでいるっていうの?』

 

「えぇ、そして奴が潜む場所に行ったけど、結界に弾かれてね」

 

『……それは厄介ね』

 

「まぁここに飛ばされてきたのは運が良かったかも。もしかしたら手伝ってもらうわよ。守り神の勇者」

 

「あ、あの私は守り神の勇者じゃなくって、守護の勇者です」

 

『神を守りし勇者に蕾はなったのよ。天の神』

 

「それは頼もしいわね。それじゃ一旦女神の勇者のところに行くわ」

 



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14 蒼の真実

友海SIDE

 

樹海へと訪れると四国の壁を埋め尽くすほどの星屑がいた。星屑が出てきている場所……やっぱりパパたちから聞いていたとおりだ。

 

「何よ。あの数……」

 

「友海、あんたたち、なにか知ってるの?」

 

「はい、お母様のお話が本当なら……四国の外は滅んだ世界ではなく、炎の海に包まれた世界が広がっていて……そこには無数のバーテックスがいるんです」

 

「何よそれ……というかこれを起こしてるのが東郷だっていうのか!?あのバカ!!」

 

「東郷さん……どうして……」

 

「ママ、牡丹ママを責めないであげて、ママたちを救うために……終わりなき役目を終わらせるために、世界を壊そうとしてるんだよ。やり方は間違ってるかもしれないけど……」

 

『東郷先輩……』

 

「まぁ勇者部はこんなことを受け入れる気ないわよね」

 

「赤嶺、当たり前じゃない」

 

夏凛おばちゃんが刀を取り出し、構えた。

 

「友奈、風、樹、友海、牡丹、赤嶺、道は切り開くわ!!そのために……満開!!」

 

夏凛おばちゃんが満開をし、無数の星屑に飛び込んでいった。本来なら止めるべきことなんだろうけど……

 

「ママ、行こう」

 

「うん」

 

私達は牡丹ママがいる場所へと駆け出そうとした瞬間、私は何かに腕を捕まれ、どこかへ連れて行かれるのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気がつくと私の周りに誰もいなかった。端末でみんなの居場所を確認するとそこまで離れた場所に連れてこられてはいないみたいだ。

 

「早く戻らないと……」

 

『イヤ、君ニハココデ待ッテモラオウ』

 

突然私の目の前にこの間戦ったワンコ・バーテックスが私の前に立ちはだかっていた。私は拳を構えた。

 

「待つ訳にはいかないよ!だって、これ以上はみんなに悲しい思いはさせないたくないから……」

 

『………ヤハリ、止マルツモリハナイカ。仕方ナイ』

 

ワンコバーテックスがまばゆい光に包まれ、みるみるうちに人の姿になっていった。光が消え、私の前に現れたのは……

 

「あお……くん?」

 

「いいや、僕はバーテックス。君の敵だよ」

 

「どうして……どうして蒼くんが……」

 

「本当は人について知ろうと思っていた。だから色々と調べていたんだけど、君に出会った」

 

蒼くんはゆっくり私に近寄り、私の肩を掴んだ

 

「友海、君は優しい子だ。だからこそ、もうここで戦うのをやめたほうが良い。聞いたんだ。天の神と神樹と同じような存在が……」

 

蒼くんが何かを言いかけるが、私は掴んでいる手を振りほどき、拳を構えた。

 

「蒼くんがなにか伝えようとしているのはわかったけど、でも私はそれを聞いてきっと悩むんだろうけど……それだったら自分自身で真実を知って、悩みたい」

 

「……そうか……君はそういう人間だったね。僕の目的は君を止めて、やつの思い通りにさせないつもりだ。だからこそ……本気でやる」

 

蒼くんがまた光だし、十二星座型のバーテックスと同じような大きさに変わり、3つの首が生えたバーテックスに姿を変えた。

 

『俺は天の神に作られた変異種のバーテックス。君を連れ去った狼の姿と人の姿。そしてこれが俺が本気で戦うときの姿……名前はケルベロス・バーテックスだ』

 

「……本気で戦うなら、私も本気で答えるから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

牡丹SIDE

 

「あとは……任せたわよ……」

 

夏凛おばさまが満開が解けると同時にそのまま地面に落ちていく。私が追いかけようとすると赤嶺さんがそれを止めた。

 

「あの子は私に任せておいて、牡丹は牡丹のやるべきに集中しなさい」

 

「私のやるべきこと……」

 

「赤嶺……私も行くわ」

 

『私も行きます』

 

「風、樹……仕方ないわね。いいよ。それと……友奈ちゃん」

 

「赤嶺ちゃん?」

 

「牡丹のことサポートしてあげてね。一応私はこの子達のお姉さんだから、心配でしょうがないのよ。だから……」

 

「うん、任せて」

 

赤嶺さん、風おばさま、樹おばさまは落ちた夏凛おばさまを助けに向かい、私と友奈おばさまはお母様のところへ向かった。

 

お母様がいる壁の外へ行くとやっぱり聞いていたとおり、炎に包まれた世界が広がっていて、そこにはお母様が待ち構えていた。

 

「……友奈ちゃん、牡丹ちゃん」

 

「東郷さん……どうしてこんなことを……」

 

「これも全部、みんなを救うためよ」

 

「……東郷さん、このまま戦い続ければ、いずれ園子さんと同じようになるから……そのためにこんなことを始めたんですよね」

 

私がそう告げた瞬間、お母様は驚いた顔をしていた。

 

「そう、未来から来ているからこそ、全部知ってるのね」

 

「はい……だからこそ止めさせてもらいます」

 

「牡丹ちゃん……」

 

「わかったわ。来なさい」

 

私は弓を構え、お母様は二丁の銃と4つの遠隔誘導攻撃端末を私に向けるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とある世界にて

 

「…………」

 

「なぁ、ウミ、いい加減落ち着けって」

 

「そうですよ。今のウミはまるで昔ダクネスが帰ってこなくって、落ち着かないカズマみたいですよ」

 

「あんな感じだったのか。あの時は本当に済まなかったな」

 

「いや、ダクネスさん、昔のことだから気にしなくていいですよ。というか友奈、どうにかして落ち着かせてくれよ」

 

「えっ、私?ん~」

 

僕は調査しているエリスさんが戻ってくるのをウロウロしながら待っていた。早くどうにかして見つけないと……

すると友奈が僕の前に立つとそっとキスをした。

 

「ん、落ち着いた?」

 

「う、うん」

 

「なぁ、落ち着かせろって言ったのに……いちゃつくなよ」

 

「とはいえ、ウミが落ち着いたのでこれで良しでしょう」

 

「ウミ、素直にエリス様が戻ってくるのを待ってろ。何かいい報告が出てくるかもしれないぞ」

 

ダクネスさんにそう言われ、僕は椅子に座るのであった。そうだよな。素直に待たないと……

 

「なぁ、ウミ、もし戦いで負けそうになっていても、あの二人の勇者システムにアレがつけられてるんだろ?使用後は物凄い筋肉痛になる」

 

「あぁ、つけるつもりはなかったけど、もしものときのためにって頼んでおいたけど……発動するきっかけに気がつけば良いんだけど……」

 

あの二人はまだそのきっかけが分かっていないからな。

 



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15 きっかけ

牡丹SIDE

 

「ハッ!!」

 

矢を射るが、お母様の銃弾に相殺されてしまう。攻撃が届かない。お母様は二丁の銃の他に遠隔操作で狙撃が可能な自動端末を持っているため、隙を突いて攻撃することができない。

 

「未来から来ていても……私を止めることはできないわよ。牡丹ちゃん」

 

「そんなの……分かってます」

 

炎を纏わせ、矢を放つ。だけどそれでもお母様に撃ち落とされてしまった。このままだといつか私に命中し、負けてしまう。

 

(思い出すんだ。先生との訓練を……お母様の指導を……)

 

お母様は遠く離れた場所で戦況を把握し、すぐに援護ができるように動けるようにすることを教えてもらった。

先生からはどんな状況でも諦めないことを教えてもらった。

 

「ライトオブセイバー・アロー!!」

 

矢を放つと同時にお母様の自動端末を光の刃で全て破壊した。私は距離を詰め……

 

「これで……」

 

「………満開!!」

 

その言葉を聞いた瞬間、目の前が真っ白になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

友海SIDE

 

三首のワンコバーテックスの攻撃を避けていく、私。炎とか吐いてくるかと思ったけど、踏み潰すくらいのことしかやってこない。これぐらいだったら……

 

「ハアアアアア!!」

 

横腹を思いっきり殴った。だけどワンコバーテックスは気にもとめずに、大きな尻尾で私を地面に叩きつけた。

 

「かはっ……!?」

 

『悪いがお前では今の俺には勝てない。お前の攻撃の威力はたしかに強いけど、それでも今の俺には通じない』

 

巨大な足で倒れ込んだ私を踏みつけた。痛い、痛い、泣き叫びたい……

 

『動けなくしてしまえば……もうあの存在の目的は達成できなくなる』

 

何とか抜け出し……爆裂勇者パンチを放とうとするけど、体中に痛みが走り、膝をついてしまった。

 

『もうやめろ。何故そこまで戦うんだ』

 

「わた……しは……諦めない」

 

 

 

 

 

 

牡丹SIDE

 

お母様は巨大な戦艦に乗り、巨大な銃口を私に向けていた。直撃を喰らい、体中が痛くて泣きたくなってきた。

 

「牡丹ちゃん!?」

 

「友奈……さん……大丈夫です……」

 

私は立ち上がり、弓を構えた。こんなところで諦める訳にはいかない……

 

「……どうして立ち上がるの?そこまでして私達を救いたいの?」

 

「そう……教えてもらったから……」

 

私は悲しそうな顔をするお母様に笑顔を見せた。

 

「どんなときでも……勇者は……」

 

 

友海SIDE

 

「諦めない……」

 

『もう勝ち目が無いんだ。諦めろ。お前では救うことは……』

 

「なるべく諦めない……ママから教えてもらった勇者部五箇条……」

 

 

牡丹SIDE

 

「私達も勇者だからこそ……勇者部五箇条を信じている……」

 

体中が熱い。これは何なのかわからないけど……力が溢れてきている

 

「そして私は……お母様から大切な……」

 

 

友海SIDE

 

「ママから大切な人たちを守るために頑張れる勇者になれるように応援してるって言われた。私の大切な人は……ママ、牡丹……カズマおじちゃん達……そしてパパ……出会った人たちがみんな大切な人だからこそ……守っていくために……」

 

桜色の光が鉄甲から放たれていた。これは……わかるよ

 

「力を……」

 

牡丹SIDE

 

「みんなを……お母様を救うための力を……今!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「満開!!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

牡丹SIDE

 

まばゆい光とともに、私の両手には二丁の銃が握られ、衣装も神秘的なものに変わっていた。

これがお母様たちが言っていた満開……

 

「今………助けます」

 

「くっ」

 

巨大な砲台から砲撃が放たれていくが、私は避け、二丁の銃から光の銃弾が放たれ、砲台を破壊した。

 

「友奈さん、道は私が切り開きます。だから!!」

 

「うん!!」

 

お母様が攻撃を放ち続けるが、私は全てを撃ち落としていく。そして道を切り開き、友奈おばさまがたどり着き、思いっきりお母様を殴るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

友海SIDE

 

まばゆい光とともに、私の両手には巨大な鉄甲が装備され、更には額には角みたいな額当てがつけられていた。

これって高嶋おばちゃんの……

 

「そういえばおばちゃんが言ってたな。自分の切り札を誰かに受け継いでほしいって……」

 

『姿が変わっても!!』

 

巨大な足でもう一度私を踏み潰そうとするが、私は拳を構え、思いっきり巨大な足を殴った。

バーテックスは殴られた勢いで吹き飛び、地面に倒れ込んだ。

 

『ぐううう、まだだ』

 

「これで終わり!!」

 

トドメの一撃を与えようとした私だったけど、寸前のところで止めるのであった。

 

『とどめを刺さないのか?』

 

「蒼くん……大切な人を守るって決めたからこそ……蒼くんを倒すことなんてできないよ」

 

『敵同士だぞ』

 

「違うよ。もう友達だよ。喧嘩はやめよう」

 

私は微笑むとバーテックスの姿から蒼くんの姿に戻った。

 

「はは、友達か……手を取り合えると思ってるのか?お前ら人類と僕らバーテックスが……」

 

「知ってるから……手を取り合った未来を……」

 

「ふふ、負けたよ。お前には……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とある世界にて

 

「それじゃ天ちゃんは色々と調査をしてるんだね~」

 

「あぁ、もしかしたら手伝うことになるかもな」

 

僕は端末を取り出した。せっかく世界が変わったっていうのに……

 

「きょうくんは境界の勇者だから大変だね」

 

「桔梗くん、手伝えることがあったら言ってね」

 

「ありがとう。美森」

 

さて、今回の戦い……またあいつと一緒になりそうだな。でも不安が一つだけ……天神刀がないけど大丈夫か?

 

 



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16 宣戦布告

牡丹SIDE

 

友奈おばさまは倒れたお母様を抱き上げた。

 

「………戦いは終らない…私達の生き地獄は終らないの…たとえ、他の人が勇者になったとしても……私達の地獄は終わらない」

 

「地獄じゃないよ。だって東郷さんと一緒だもん!」

 

「お母様、大丈夫です。地獄を終わらせてくれる人がいますから……」

 

「牡丹ちゃんの言うとおりだよ。それにどんなにか辛くても東郷さんは私が守る」

 

「……大切な気持ちや思いを忘れてしまうんだよ!大丈夫な訳ないよ!皆の事だって忘れてしまう…それを仕方がないなんて割り切れない!!一番大切なものを無くしてしまうくらいなら…」

 

「忘れないよ」

 

「どうしてそう言えるの?」

 

「私がそう思っているから!メッチャクチャ強く思っているから」

 

そう思いが強ければ、何にも負けたりしない。私は先生やおじさまたちからそう教わってきた。

 

「私達も…きっと…そう思ってた……今は…ただ…悲しかったという事しか覚えてない…自分の涙の意味がわからないの……」

 

お母様は泣きながらそういう中、友奈おばさまは強く抱きしめた。

 

「嫌だよ!!怖いよ!!きっと友奈ちゃんも私の事忘れてしまう!!だから!!」

 

「忘れない」

 

「嘘…」

 

「嘘じゃない!」

 

「うそ…」

 

「嘘じゃない!!」

 

「ほんと?」

 

「うん。私はずっと一緒にいる。そうすれば忘れない。」

 

「信じてください。どんな事があっても……たとえ忘れてしまっても……私達は思い出しますから……」

 

「牡丹ちゃん」

 

私も友奈おばさまと一緒にお母様を抱きしめるのであった。つらい思いをしながらもお母様は私のことを大切にしてくれた。だからこうして助けることもできたんだ。

 

これで一件落着かと思った瞬間、私達の目の前に巨大な炎の塊が現れた。あれは……

 

「バーテックス……」

 

「牡丹ちゃん、まだ動ける?」

 

「はい、アレを止めないと……」

 

私達三人は急いで炎の塊を追っていくが、友奈おばさまは力尽きてしまった。助けに行きたいけど今行ったら……

 

「きっと戻ってきます。信じましょう!!お母様」

 

「うん」

 

私達は太陽の前に出て、進行を食い止めるが私達の力じゃ……

そんな時3つの花びらが現れた。

 

「ごめん!大事な時に!!」

 

「風先輩…私…」

 

「お帰り…東郷。行くよ!!押し返す!!」

 

「感動している場合じゃないわよ!!気合い入れなさい!」

 

「分かってるわよ!赤嶺!」

 

風おばさま、樹おばさま、赤嶺さんが駆けつけてくれた。だけどまだ止めきれていない……どうすれば……

 

「そこかーー!」

 

「夏凜!!」

 

遅れてやってきた夏凛おばさまも助けに来てくれた。だけど見る限り身体機能が失っていて、もう戦うのは……

 

「全く無茶する子ね……勇者部全員!!ファイトォォォォォォォ―――――!!」

 

風おばさまの掛け声とともに太陽の動きが止まった。

 

「うおおおおおおおお!!」

 

下の方から友奈おばさまの声が聞こえてきた。もしかして突っ込む気なの?でも……

 

「絶好のタイミングで登場!!爆裂!!勇者パァァァァァンチ!!満開!!バージョン!!」

 

友海の声が聞こえた瞬間、まばゆい閃光が樹海を包み込むのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

友海SIDE

 

気がつくとママと二人で灰色の世界に来ていた。

 

「ここは……」

 

「友海ちゃん、気がついたの?」

 

「ママ……」

 

「私達、どこに飛ばされたんだろうね……」

 

「これって……」

 

もしかして前にパパに聞かされた世界。あの世界のママはこの世界で一人ぼっちだったらしい。

私達の世界ではママはあの世界に飛ばされて、パパと再会したらしいけど……

 

「私達、元の場所に戻れないのかな?」

 

「そんな事ないよ……きっと戻れるはずだから……ママのことを大好きな人たちが待ってる限り……」

 

そうだよね。きっと来てくれるはずだよね。

 

私は静かに祈った瞬間、どこからともなく声が聞こえてきた。この声は……

 

「東郷さん?」

 

「牡丹……」

 

そして私達の前に青いカラスが現れ、声が聞こえてくるところまで案内してくれた。

 

「あのカラス……まさかね?」

 

雰囲気が若葉おばちゃんににている気がしたけど、気のせいかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん?おはよう……牡丹」

 

目を覚まし、最初に目に入った牡丹にそういった瞬間、牡丹は私に抱きついてきた。

 

「良かった……友海が目を覚ましてくれて……」

 

「全く、心配かけて……あなた達二人の満開はあの子達より軽いものだと思ったのに……」

 

そうなの?赤嶺ちゃんいわく、後遺症はちょっとつらい筋肉痛になるだけらしいけど、私だけは眠ったままになってしまったらしい。これってやっぱり……

 

「さぁて、私はみんなに行ってくるわ。あの子も目が覚めただろうしね」

 

「友海、大丈夫?何か変なところない?」

 

「大丈夫だよ。ただ……」

 

あの世界に行ったことは言わない方がいいよね。今は心配かけたくないし……

 

「ただいま。牡丹」

 

「おかえり、友海」

 

こうして私達の戦いは終わりを告げるのであった。ただあと数カ月後に待っているあの出来事を忘れたままだったけど……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『彼女は例外になったわね。そして大赦の人間も大半が私に従うようになった……あとは始めるだけね』

 

邪神は邪悪な笑みを浮かべていた。すると上の方から激しい音が鳴り響いた。

 

『また来たみたいね。だけど……』

 

邪神は上へと向かうと一枚の障壁の向こうに、見覚えのある人物たちが立っていた。

 

『お前が邪神か……この結界をどうにかしてもらえないかな?』

 

『ふふ、無理ね。ありとあらゆる世界の天の神よりも力が上がっている貴方でも、そこにいる魔王の力を使う彼女でもね』

 

「この人が……邪神……」

 

『えぇそうよ。そしてあなた達はもう間に合わない。なぜなら……私の計画は最終段階に入るわ』

 

『それはどうでしょうね?』

 

銀髪の少女……女神エリスが邪神をにらみながらそう告げると、邪神は呆れた顔をしていた。

 

『無理よ。あなたが信じる女神の勇者も、天の神が信じる境界の勇者も、この結界を破ることはできない。あなた達、天の神、女神二人には破られないように作っているからね』

 

『ほう……』

 

『指を加えて見ていなさい。この世界を私のものにしたら、あなた達を滅ぼしてあげるわ』

 

『宣戦布告とやらか。ならば言わせてもらう。お前が言う例外の力を舐めるなよ!!!』

 

『楽しみにしているわ。あんたらの足掻きというものをね』

 




次回から勇者の章に突入します。


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17 新たな日々

あの戦いから数ヶ月がたった。私達は未だに元の世界に帰れないでいた。いつになったら帰れるのか思っていたけど、きっといつか帰れるだろうと思っていた。

 

「讃州中学勇者部は、勇んで世の為になる事をするクラブです。なるべく諦めない、成せば大抵何とかなる、などの精神で頑張っています」

 

「友奈~、タウン誌で勇者部の活動を紹介してもらうんだから、良いキャッチコピーを考えてよね」

 

「お姉ちゃん!幼稚園からお礼のメールが沢山来てる!」

 

「ふむ!この間のはバカウケだったからねぇ~!」

 

ママたちがパソコンでメールを見ている中、私と牡丹はというと……

 

「風おばちゃん。頼まれていた衣装の修復終わりました」

 

「こちらもシナリオの方、訂正終わりました」

 

「うんうん、ありがとうね。二人共……でも友海、その呼び方はやめてくれないかしら?まだ私はピチピチの中3なのよ!」

 

「あっ、ごめんなさい」

 

「友海ちゃんたちからしてみれば、それくらい年が離れてるんだよね」

 

「はい、癖みたいなもので……」

 

「癖なら仕方ないけど……気をつけなさいよ。特に人前で友奈のことをママって呼ぶのは駄目よ」

 

「は~い」

 

怒られたけど、未だになれないな~あっちではすぐに名前呼びできたのに……

 

「ごめんごめん~もう始まってるー?掃除当番の途中で寝てしまったんよ~」

 

「器用に寝れるなんてある意味すごいわね」

 

そんな事を話していると掃除当番から戻ってきた園子おばちゃんと依頼から戻ってきた赤嶺ちゃんが部室に入ってきた。

園子おばちゃんはあの戦いの後、動けるようになり、讃州中学に転入してきた。

 

「園子…そんな時に寝る事が出来るのはあなたくらいよね……」

 

「わぁ!褒められたー!」

 

「良かったね!夏凜ちゃんはなかなか人を褒めないんだよ」

 

園子おばちゃんとママがハイタッチするけど、明らかに褒めていない気がするのは気のせいかな?

 

戦いが終わり、今は平穏な日々が続いていた。だけどその日々を過ごしているのはママたちだけだった。

部活も終わり、私、牡丹、赤嶺ちゃんの三人である人を探していた。

 

「やっぱりいないね……」

 

「友奈さんたちは気がついていないみたいですけど……」

 

「そこら辺、海くんからは聞いてないの?」

 

「う~ん、あんまりパパからは……」

 

「よく聞いておくべきだったね」

 

「まぁいいわ。とりあえずは私達だけでなんとかしよう」

 

「「はい」」

 

勇者部にもうひとりいた。牡丹のママは一体どこに行ってしまったのだろうか?

 

「……今回の件とは別に……二人は邪神と連絡は取れているかな?」

 

「いえ、全然……」

 

「私達がこっちに来てから連絡とか無いよね」

 

「そう……」

 

赤嶺ちゃんは何か考え込んでいた。邪神の言う悲しい運命って数ヶ月前に起きたあの戦いのことじゃなかったのかな?もしかしてこれから起きるあの……

 

「大丈夫だよね。私達なら……変えられるよね」

 

あの時は沢山の人達に助けられながら、運命を変えることができた。だけど今回は私達が頑張らないと……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

星海SIDE

 

大赦本部

 

ある一室で私は幹部たちから渡された書類を見ていた。そこに書かれていた内容は……

 

「神樹様の加護を捨て、新たに邪神の加護を得るですか……」

 

「はい、大多数の人間が邪神を崇拝しています。一体邪神とは……」

 

私の前にいる神官がそう答えた。私は以前彼女たちから聞かされた事を話した。

 

「……女神から邪神だと言われてしまった元女神だと……私はそう聞かされています」

 

「何ですか?それ?」

 

「そういうことがあるみたいなの。本当かどうかわからないけど……」

 

「はぁ……」

 

「邪神崇拝している人々の動きに注意してください。もしかしたら何かしらの行動を起こしているはずです」

 

「わかりました」

 

神官がそう言って部屋から出ていった。

本当に厄介なことが起こり始めている。いや、もしかしたら……

 

「知らないところでもう始まっているのかもしれない……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とある世界

 

エリスさんがようやく帰ってきて、僕たちに調べたことをすべて話した。

 

「邪神って……アクア、またお前……」

 

「ちょっと待ちなさいよ。今回は私は関係ないからね。そのムーアとかって奴は知らないわよ」

 

「カズマさん、先輩が言っていることは本当です。ムーアは正真正銘の邪神……奴の目的は全ての平行世界を支配するつもりです」

 

「だが何故その邪神とやらがユミたちを連れ去ったんだ?」

 

ダクネスさんの疑問は当然だ。神クラスなら友海たちは必要ないはず………

 

「ムーアは例外的な存在を使い、力を上げるのかもしれません」

 

「「「「「例外?」」」」」

 

僕、カズマさん、アクアさん、ダクネスさん、めぐみんの五人が口を揃えた。何だか聞き慣れない言葉なんだけど……

 

「例外的な存在……それは平行世界にて限りなく低い可能性で存在するものです。そのものはどんな運命すら変えることが出来る力を持っています。現状確認できているのは別世界のキキョウさんとウミさん、貴方です」

 

「僕が?」

 

「はい、貴方は運命を変え、ユウナさんたちを助けました。貴方は例外的な存在です」

 

「………エリスさん、僕は……違うと思いますよ」

 

「どうしてですか?」

 

「いや、どう考えても……」

 

僕はある人物の方を見るのであった

 



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18 歪なもの

友海SIDE

 

ママたちが牡丹ママのことを忘れてしまっている。私と牡丹はこの原因については聞かされていたけど、赤嶺ちゃん曰く何かしらの変化があるかもしれないということで、みんなに話さず、私達三人で牡丹ママのことを探していた。

 

「やっぱりいないね」

 

「うん、でもこれでわかった。やっぱりお母様は……」

 

「壁の外にいるって言うことね。話に聞いていたけど責任を感じすぎよ。東郷ちゃんは……」

 

思い当たる場所を探し続けたけど、やっぱりどこにも牡丹ママはいない。だとしたらやっぱり……

 

「壁の外に……」

 

「私達だけでやるしかないのだろうけど……ここは……」

 

「そうね。あの子達もそろそろ今の日常が歪だって言うことに気がついているはず」

 

だとしたら私達が伝えるよりも、ママたちが自分たちで気が付き、答えにたどり着くしか無い。

 

「それだったら入り口で待っていよう」

 

私がそう提案し、二人は頷いてくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

壁の上にたどり着き、私達はママたちが来るのを待っていた。ここにいればきっとママたちが来てくれるはず。

そう思っていると壁の外から一匹の犬が現れた。

 

「ユミ、まだいたんだね」

 

犬はみるみるうちに姿を変え、蒼くんに変わった。あの戦い以来だけど元気そうでよかった。

 

「あら、友海にぞっこんなワンコじゃない」

 

「犬呼ばわりするな。お前たちは何をしているんだ?」

 

「蒼くん、私達は待ってるんだよ。ママたちが来るのを……」

 

「ということは異変に気がついているのか」

 

「異変ですか?」

 

異変って、やっぱり壁の外の炎が強まっていることだよね。それを弱めるために牡丹ママは生贄に……

 

「壁の外の炎が突然強まったことに気がついてるんだろ?天の神に聞いたら、どうにも何かしらが力を加えたみたいなんだ」

 

「「んん?」」

 

「聞いた話と違うわね」

 

「聞いた話?」

 

私と牡丹は蒼くんに壁の外の炎が強まった理由を話した。牡丹ママがあの戦いで壁に穴を空けたことが原因で強まったということを……でも蒼くんは不思議そうな顔をしていた。

 

「いや、そういうわけじゃない。確かに穴を空けたのはまずいことだろうけど……天の神はそんなこと言っていない」

 

だとしたら原因は蒼くんが言っていた何かしらの力が関わっているということになる。だとしてもその何かしらって?

 

「今回の炎の件もそうだし、壁の外にできた黒い穴……こっちだとブラックホールって言うんだっけ?あれも突然あらわれるし……訳がわからないことだらけだね」

 

一体何が起きているんだろうか?聞いていた話と大きく違っている。

 

気がつくとこっちに近づいてくる5つの影を見つけた。影がこっちにたどり着くとママたちだった。

 

「友海ちゃん、牡丹ちゃん、赤嶺ちゃん」

 

「あんたら異変に気がついてたのね」

 

「はい、ごめんなさい。早めに伝えておくべきだったんですが……」

 

「何かしらの変化が起きてると思ってね。伝えないでおいたのよ」

 

「未来の情報だからって言うことね。まぁ仕方ないわ」

 

「あの、そちらの方は?」

 

樹おばちゃんは蒼くんのことが気になっていた。正直に話すべきかどうか悩んでいると、蒼くんは……

 

「僕はバーテックスだよ。今は君たちの協力者って言うこと」

 

『バーテックス!!?』

 

園子おばちゃん以外が驚いていた。驚かなかった園子おばちゃんはというと

 

「う~んと、協力って言うと、今回はバーテックスが関わってないの~」

 

「一応ね。でもかなり厄介なことになっている。みんな、壁の外に」

 

私達は蒼くんに言われるまま、壁の外に出るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

壁の外は聞いていたとおり炎に包まれた世界だった。私達はあたりを見渡すと黒い穴が大きくあいていた。あれがブラックホール……

 

「東郷さんの反応……あそこから……」

 

「久しぶりにあった友人がブラックホールになってたなんて初めてだわ……」

 

「お姉ちゃん……」

 

「あんたがいるから敵が攻めてこないからまだ安心できるわね」

 

夏凛おばちゃんがそう告げた。何だかそれフラグっぽいけど大丈夫かな?

 

私の心配どおりこっちに何十体ものバーテックスが攻めてきた。私達が戦おうとすると蒼くんが前に出た。

 

「待て!!彼女たちは敵じゃない!!」

 

蒼くんは戦いを回避するために襲ってくるバーテックスを説得してくれた。確かに聞いてもらえば戦いを回避することが……

 

だけど牡丹と樹おばちゃんはあることに気がついた。

 

「バーテックスの色……」

 

「前のと違う?蒼さん?」

 

確かに前は白だったのが真っ黒だった。蒼くんもそれに気が付き、直ぐ様人の姿から三首のワンコに姿を変えた。

 

『こいつら!?何かしらの力に支配されてる!?』

 

真っ黒なバーテックスは私達に襲いかかってきた。本当に何が起きてるの?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とある世界にて

 

天の神が部室にやってきて、調査していたことを話した。というかいつの間に灯華に協力させていたんだよ

 

「つまり邪神っていうのが関わっていて、おまけに天の神の力も女神の力も通じない結界が張られていると……」

 

「そう。魔王の力なら何とか出来るかと思ったけど……」

 

「ごめんなさい。私でも無理でした」

 

神や魔王の力が通じないか……かなり厄介なことになっているな

 

「とはいえ、打ち破る術はある。私は協力を仰ぎに行ってくる。帰ってきた時、覚悟しておくのだな」

 

「あぁ、分かってる。だけど邪神がいう例外って?」

 

「それはだな。お前みたいなことを言うのだよ」

 

天の神はそう言い残して姿を消すのであった。僕みたいなことってどういうことだ?灯華の方を見ると灯華もわからないみたいで、首を横に振っていた。

 

すると美森と友奈の二人が部室に入ってきた。僕は二人に事情を話すと……

 

「例外……もしかして運命を変える人のことじゃないかな?」

 

「運命を?」

 

「あぁ、前に海くんが言ってたよね。私達の世界と海くんの世界じゃ全然違う感じになってるって、天の世界の住人達と和解してなかったりとか……」

 

「友奈ちゃんの言うとおり、桔梗くんが和解の道を作ってくれたから運命は変わったの。逆に海くんの世界はまだ四国しかないけど、バーテックスの脅威はなくなってきているらしいって……たった一人の動きで歴史……運命が変わる。多分それが例外なんじゃないかな?」

 

「なるほどな……」

 

僕もその例外だとしたら海もまた例外か……その邪神とやらは一体例外を使って何をするつもりだ?

 

 

 



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19 刻まれたもの

友海SIDE

 

黒いバーテックスとの戦う私達。バーテックスの強さは普通のと比べて変わらない様子だけど……

 

「数が多い!!」

 

「このままじゃ東郷さんの所に行けない!?」

 

「それだったら……満開!!」

 

園子おばちゃんがそう叫んだ瞬間、眩い光が照らされ、巨大な船が現れた。あれが園子おばちゃんの満開……

 

「ちょっと乃木、いきなり満開なんて……精霊の加護を受けられなくなるのよ」

 

「昔はバリアなしで戦ったから大丈夫だよ~ほら、みんな乗って、わっしー行の船に」

 

『俺はここで足止めをしている!!』

 

蒼くんが雄叫びを上げながら、バーテックスを蹴散らしていく。

 

「蒼くん、頼んだよ~」

 

私達は船に乗り込み、ブラックホールへと目指すのであった。

 

「かっこいい船です」

 

「でしょ~」

 

「なんか東郷とあんた二人の満開ずるくない?」

 

「ちょっと一番かっこいいのは私のよ」

 

「私たちの満開もかっこいいよ!!ねぇ牡丹」

 

「え、えっと……」

 

「いいわね~私は昔のままだからそういうのはないのよね~」

 

何だかものすごくのほほんとしてしまった。気がつくとブラックホールの近くまで来ていた。

近くは物凄い暴風で迂闊に近づけない

 

「友奈!ここは私達に任せて、あんたは行きなさい」

 

「で、でも……」

 

「風さん、私も行きます」

 

「友海……わかったわ」

 

私とママは二人でブラックホールへと飛び込んでいくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ブラックホールを抜けていくとそこは見たことのない景色が広がっていた。それに私達の体も何だか半透明の体になってるし……

 

「ここは……うっ」

 

「何……なの?」

 

敵の攻撃が降り注ぎ、当たった場所がなにか侵食してきた。この姿で攻撃を喰らい続けたら……

 

「先へ行こう。ママ」

 

「うん」

 

先へと進んでいくとシャボン玉が降ってきた。私達はそれに触れるとある記憶が流れ込んできた。

 

牡丹ママの所に大赦の使いが現れた。牡丹ママが壁を破壊した影響で、崩壊した世界の炎の勢いが強くなった。いずれ炎は四国を飲み込むであろうということらしい。

大赦と天の世界の民は炎の勢いを止めるため、奉火祭を執り行うしかないという話になった。。普通なら生贄には巫女が必要だが、美森には勇者の素質と巫女の素質を兼ね備えているため、牡丹ママでも生贄になれるらしい。

 

だけど私はあることが気になった。大赦の使いの中に邪神の姿があった。

 

「今の……」

 

「東郷さん……それにあの女の人は……」

 

「あの人は……」

 

私達をこの世界に連れてきた存在だということを言うべきか迷っていると、灰色の世界にたどり着いた。

 

その中心部には炎に包まれた牡丹ママの姿があった。

 

「東郷さん……今助けるから……」

 

今ここで、ママが牡丹ママを助けることは出来る。だけどそのせいでママは辛い目に合うっていうことは知っている。それだったら私は……

 

一緒にママと牡丹ママを引っ張る中、体に侵食が始まってきた。私は咄嗟にママを突き飛ばした。

 

「友海ちゃん?」

 

「ここは私が頑張るから……」

 

私は笑顔でそう告げるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして私達は無事に牡丹ママを助けることが出来た。だけど牡丹は……

 

「友奈おばさまのこと気をつけないとね」

 

「………そうだね」

 

牡丹はこれから先起こることを告げる中、私はそっと自分の胸に触れた。私の胸に刻まれた烙印……

私が変わりに引き受けたからこそ、ママはつらい思いをすることはない。これで良かったんだよね。

 

「…………」

 

だけど赤嶺ちゃんは私の様子がおかしいことに気がついていたことは、私は知りもしなかった。

 



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20 孤独と苦痛

友海SIDE

 

牡丹ママを救うことが出来、勇者部に再び日常が戻ってきた。ママも苦し思いもすること無く、みんなと笑顔で過ごしていた。

 

ただ……私は……

 

「……友海?聞いてるの?」

 

「えっ?何?牡丹?」

 

「友奈おばさまのことよ。ここしばらく様子を見てたけど、聞いていたような感じじゃないねって」

 

「う、うん……」

 

牡丹、それは仕方ないよ。ママは呪いを受けていない。呪いを受けたのは私なんだから……

それにこの事は言えないよ。言ったらきっと牡丹にも迷惑かけるし……

 

「もう少し様子を見てみよう。もしかしたら私達にもなにか出来ることがあるから」

 

「そうね……」

 

ごめんね。牡丹。嘘ついて……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は皆が帰った部室で一人で呪いの痛みから耐え抜いていた。胸に刻まれた烙印は時間が経てば経つほど広がっていく。

それに誰かに話したりしたらその人にも影響が出てしまう。ママはその苦しみからも耐えてきたんだ。娘である私も耐えないと……

 

「一人ぼっち……大丈夫だよね」

 

私は自分にそう言い聞かせていた。きっとそのうち呪いを解く方法があるはずだから……それまでは……

 

「……友海」

 

不意に声が聞こえ、振り向くとそこには赤嶺ちゃんが心配そうに私を見つめていた。

 

「赤嶺ちゃん……」

 

「あなた、何か隠してるでしょう?東郷を助けた後くらいからずっと……」

 

「か、隠し事なんてしてないよ……」

 

「その割には元気が無いわよ」

 

「そう?私はいつもどおりだよ」

 

「………私はこれから起きることを話でしか聞いてない。だからどんな未来が起きるか分からないけど……」

 

赤嶺ちゃんは私の手を握り、見つめていた。

 

「あんた、未来を変えるために何をしたの?」

 

「何も……してないよ」

 

「そう……」

 

赤嶺ちゃんは私の手を離し、部室から出ていこうとしていた。私は呼び止めようとするけど、呼び止めても話すことが出来ない

 

「まだ話せないってことで納得しておくけど、辛くなったら話して……」

 

赤嶺ちゃんはそう言い残して、出ていくのであった。辛くなったら話せか……

 

「ごめん。ごめんなさい……」

 

私は一人、泣くのであった。辛いよ……助けてほしいよ……

 

「助けてあげましょうか?」

 

私の心の声が聞こえていたのかのように、突然聞き覚えのある声が聞こえた。私の後ろにはいつの間にか邪神ムーマが立っていた。

 

「ムーマさん……」

 

「邪神とはいえ私は神。呪いなんてものは効かないわ」

 

「……ムーマさん……」

 

「貴方を蝕む呪いから……苦しみから救ってあげられるわ」

 

ムーマさんはゆっくりと私に手を差し伸べるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

牡丹SIDE

 

私は一人、友奈おばさまに呼び出され、近くの海岸に来ていた。そこには友奈おばさまの他に風おばさま、樹おばさま、夏凛おばさま、園子おばさま、星海さん、そしてお母様が来ていた。

 

「牡丹ちゃん、友海ちゃんのことだけど……」

 

「友海がどうかしたんですか?」

 

「やはり知らないみたいですね」

 

星海さんの言葉を聞いて、私は理解した。友海が何かを隠しているの?

 

「私達も友奈からあとになって聞かされたんだけど……あの子、東郷を助けるために一人で助けたみたいなのよね」

 

「友海ちゃんからなにか聞いてない?」

 

そんな……本来ならお母様を助ける時に、友奈おばさまとお父様が呪いを代わりに引き受けたって聞いていたのに……だとしたら今、呪いは……

 

「それにね~ちょっと気になることがあるの。今大赦では神樹様派と邪神派に別れてるらしいんだ~」

 

「邪神派………まさか!?」

 

そんなわけない。あの人は私達がこの世界を救う例外になってほしいからって言っていた。でも、どうして……

 

「邪神派の人が言うには、人々を絶望から救う事ができるって神託を降し続けているみたい」

 

「それって……」

 

「神樹様からの神託では、邪神の言葉を聞き、世界は暗く絶望しか無いものに変わってしまうって……」

 

星海さんの話を聞き、私はすぐに気がついた。私達は騙されていたの……

 

「その邪神とかよく分からないけど、どうにかする方法があるのよね」

 

夏凛おばさまがそう聞くが、星海さんは首を横に振った。

 

「現時点ではどうすることも……ただ鍵を握っているのは友海さんだけみたいなんです」

 

友海が鍵を握ってる?もしかして前に言っていた『例外』と関係が……

 

「とりあえず明日、友海に無理矢理にでも話を聞くわよ」

 

風おばさまの言葉を聞き、全員が頷くのであった。

友海……まさか一人で背負い込んでる?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とある世界にて

 

「というわけで頼める?」

 

家に来た天の神に頼まれごとをされた私。するとヒメノ様は……

 

『なるほど。邪神とやらは間抜けね。確かに天の神と女神を封じれば邪魔されることはないだろうけど……』

 

「でも、私達はちょっとだけ関わっただけだから……知らないのはしょうがないと思いますよ」

 

「いいえ、邪神は間抜けよ。それに結界を破壊して、彼らが知ったらどんな風に怒るのやら……」

 

『確実に魂ごと消滅されるわね』

 

「何だかすごい人達なんですね。でもその人達にこれを返せますね」

 

私は紅い刀と水色と白の短刀を天の神に見せた。あの時、私の力になってくれたもの……ちゃんと返さないとね

 

「それじゃ準備ができたらいいなさい。女神の間に連れて行くから」

 

 

 

 

 



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21 絶望と悲しみの邪神

友海SIDE

 

私は風おばちゃんに部室に呼び出され、部室に入るとそこにはみんなが集まっていた。

 

「友海……あなた……」

 

「牡丹……」

 

「友海、あんた、私達になにか隠してるでしょ。話しなさい」

 

みんなの表情を見れば分かっている。そっか、もう知ってるんだね。でも知っていたとしても話すことは出来ない

 

「ごめんなさい。私……話すことは出来ないんです」

 

「ゆうちゃん、私達は知ってるんだよ。天の神の呪いを受けてることとかそれを話したりしたら私達に呪いの影響が出るって、たんちゃんから全部聞いてる」

 

「友海、みんなはそれを知った上で貴方の話を聞きたいって思ってる。それに助ける方法を一緒に見つけてくれるって……だから」

 

みんなの気持ちはすごく嬉しい。だけどごめんね。私は……

 

「大丈夫だよ。私は……」

 

「友海ちゃん、一人で背負い込まなくっていいんだよ。こういう時は悩んだら相談して……」

 

「ママ……」

 

「友海さん、大丈夫です。牡丹ちゃんから聞いてます。同じような事があったけど、それでも何とかなったって」

 

樹おばさんが私の手を握りながらそう言う中、私は首を横に振った。その瞬間、赤嶺ちゃんが私の頬ひっぱたいた。

 

「あんた、いい加減背負い込むの止めなさい。このままだとあんたは死ぬかもしれないのよ!」

 

「…………」

 

「あなたはあの人が愛しる娘なのよ。だからあの人を悲しませるようなことをしないで……」

 

みんなが私のことを思って言ってくれている。すごく嬉しいけど……だけど……

 

「ありがとうね。みんな、でも私……もう助ける道を見つけてるの……」

 

「助かる道……?」

 

「牡丹、昨日邪神さんが教えてくれたの。私が助かって、この世界が悲しい運命にならない方法を……それは…………」

 

私が言いかけた瞬間、突然窓から蒼くんが飛び込んできた。蒼くんは私のことを睨みつけた。

 

「友海、お前、邪神と何を契約した?」

 

「えっ?私は……勇者の力を邪神にあげることで呪いもなんとかなるって……」

 

「………まだあげていないんだな」

 

「うん……」

 

「だとしたら……」

 

「邪魔はしないでもらいたいわね。使いごときが!!」

 

聞き覚えのある声が聞こえた瞬間、私以外の全員が吹き飛ばされ、窓の外には邪神がいた。

 

「ムーマさん?」

 

「あいつが牡丹達が言ってた邪神ね」

 

「はじめましてでいいかな。勇者の皆様、私はムーマ」

 

赤嶺ちゃんと夏凛おばちゃんはすぐに飛びかかり、邪神に攻撃を仕掛けようとするが、邪神の前にある障壁に弾かれた。

 

「あんた、力を隠してたのね」

 

「ふふ、隠していたのはそれだけじゃない。私は運命と例外を司る邪神と言ったけど、本当は絶望と悲しみを司る邪神ムーマ」

 

「絶望……」

 

「友海、こっちに来なさい」

 

邪神が手を伸ばした瞬間、私は黒い何かに包まれてしまった。脱出しようとしても全然できそうにない。

 

「友海を離せ!!」

 

牡丹が矢を放つが、邪神の障壁によって弾かれた。

 

「さぁ、始めましょう。私が支配する世界を作るための儀式をね!!」

 

「くっ!?」

 

蒼くんが三首のバーテックスに変身し、皆を連れてどこかへ逃げるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とある世界にて

 

「さぁて、行きましょうか。境界の勇者」

 

天の神が部室に現れ、僕にそう告げた。天の神曰くすべての準備を終えたらしく、別世界にいる牡丹たちを助けに行くことが出来るらしい

 

「久しぶりの戦いだな。美森、行ってくるよ」

 

「うん、気をつけてね」

 

美森はそっと僕にキスをし、僕は天の神と共にどこかへ向かうのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ウミさん、準備は整いました」

 

「エリスさん、ありがとうございます」

 

「ウミ、気をつけろよ。今回は俺たちは行くことができないけど……」

 

「大丈夫ですよ。カズマさん、絶対に邪神のやつをぶっ飛ばします」

 

「いい、ウミ。ギタギタにするのよ」

 

「帰ってきた時のためにごちそうを用意しておくから、必ず戻ってこい」

 

アクアさん、ダクネスさんの二人の激励を受け取る中、めぐみん、ゆんゆんは……

 

「めぐみん……」

 

「分かっています。ウミ、お願いがあります。どうか私達も連れて行ってください。弟子の危機を助けるのは師匠である私たちの役目なのですから……」

 

「めぐみん……」

 

「ウミさん、私もお願いします」

 

めぐみんとゆんゆんの頼みを僕は………

 

「ウミさん、扉を開きます。それと天の神から一時的ですが全盛期の頃に戻すとのことです」

 

「わかりました。それじゃ行ってきます」

 



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22 滅びゆくもの

牡丹SIDE

 

蒼くんに連れてこられた場所は、英霊碑がある場所だった。蒼くんは人間体に戻ると、膝を付いていた。

 

「かはっ、邪神め……」

 

「蒼くん、大丈夫?」

 

「何とかな……」

 

蒼くんは痛みに耐える中、私達の所に星海さんが駆けつけてきた。

 

「みなさん!?」

 

「星海、あんたどうしてここに……」

 

「蒼くんにここに避難するように言われて……皆さんの様子を見る限り、やっぱり邪神が」

 

「あの邪神は何なのよ。友海を使って何をするつもりなの?」

 

夏凛おばさまがそう言う中、星海さんは目をつむり、あることを語りだした。

 

「邪神は例外の力を使い、自身の力を強くしようとしています」

 

「力を強く……強くしてどうするつもりかしら?」

 

「神樹様は邪神はこの世界だけではなく、全ての平行世界を支配するつもりです。そのために自身の司る悲しみと絶望をかき集めています。そしてより大きな絶望を食らうために……」

 

「友海ちゃんを利用したの?」

 

「そんなのひどいです……」

 

「私達はまんまと騙されたみたいね」

 

みんなが怒っている中、持っている端末から今までよりも大きな警報が鳴り響いた。

 

「これって……」

 

「邪神の目的を阻止するために天の神が動き出した」

 

蒼くんがそういった瞬間、壁の外から巨大な何かが現れた。あれは天の神が作り出したシステム?ううん、こっちの世界だとあれが天の神……

 

そしてその先には黒い何かがいた。あれは邪神と友海?すると邪神の声が響き渡った。

 

『天の神か。私を排除するみたいね』

 

天の神からまばゆい光が放たれた瞬間、邪神を包み込んでいった。そうだ、同じ神でも天の神ならきっと邪神を……

 

「やったのか?」

 

『ふふ、その程度の攻撃……前の私なら一撃でやられただろうけど……私を崇拝するものたちの絶望を……そしてこの子の絶望を食らった私には効かないわよ』

 

邪神は無傷だった。そして手を上に掲げた瞬間、黒い閃光が天の神を撃ち抜いた。

 

「天の神が……倒された……」

 

『天の神、吸収させてもらうわよ』

 

邪神の中に天の神が吸い込まれていき、邪神はみるみるうちに禍々しい姿に変わり、胸の中心には友海が飲み込まれそうになった。

 

「友海!?」

 

『あははは、あとは神樹。あなたを食らうだけでこの世界は私のものよ』

 

邪神の声が響き渡る中、私達は………

 

「あんなの……倒せるの?」

 

風おばさまがつぶやく中、友奈おばさまは勇者の姿に変わった。

 

「なるべく諦めない!!友海ちゃんを助け出して、みんなで力を合わせればきっとなんとかなる」

 

こんな時でもおばさまは……

私は立ち上がり、勇者に変わった。

 

「そうです。私たちは勇者部五箇条が今でも心の支えになっています。きっとなんとかなる。なせば大抵なんとかなる」

 

私と友奈おばさまが顔を見合わせ、笑顔になるのであった。

 

「あんた達……まったくさっきまで絶望していた私が馬鹿だったわ」

 

「意外ね。風がそんな風になるなんてね」

 

「でもまだ世界を救う方法があります」

 

「きっとなんとかなるはず」

 

「私達はいつだって諦めなかったよね~ミノさん、見ててね。世界を救ってみせるから」

 

「あの子を救って、この世界を救う……やってみせる」

 

みんなが決意をする中、星海さんと蒼くんは……

 

「みなさん、信じています。この世界を救うって、みんなが笑顔で戻ってくるって」

 

「お前たち……僕も最後まで諦める訳にはいかないよな」

 

蒼くんも立ち上がり、私達の隣に並び立った。

 

「それじゃ勇者部全員出撃よ!!」

 

『おぉーーーーーーーーーーーー!!』

 

みんなが決意を秘め、樹海へと入るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

女神の間

 

「それじゃ頼んだわよ。境界の勇者、女神の勇者、そして守護の勇者」

 

天の神が僕らに向かってそう告げた。

 

「さぁ、邪神とかいうのをぶっ潰すぞ」

 

「いや、二度と復活できないくらいにボコボコにしてやる」

 

「あ、あの、ノリについて来れないんだけど……」

 

『頑張ってください。蕾。それにしても海』

 

「何だよ?」

 

『貴方は……いいえ、きっと必要なのね』

 

サンチョ……ヒメノさんはあるものをみて何かをいいかけるのであった。そりゃ必要だからな。何せ……

 



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23 思いを込めた一撃

世界が樹海へ変わると私達の前に邪神が立ちはだかっていた。その胸には友海が囚われている。

 

『神樹も最後の力を振り絞って樹海を作り出したみたいね』

 

「私達を利用して、友海まで利用して……あなたは存在すら残さずに滅ぼされる覚悟できてるかな?」

 

赤嶺さんが拳を構えるが、邪神は不気味な笑みを浮かべていた。

 

『あなた達みたいな例外のなり損ないが、私を倒せると思ってるのかしら?』

 

「やってみなきゃわからない!!勇者!」

 

「ダブル!」

 

「「パンチ!!」」

 

赤嶺さんと友奈おばさまが同時にパンチを繰り出すが、邪神は背中から生えた触手で攻撃を防ぎ、二人を思いっきり触手で叩きつけた。

 

『無駄なことをしないほうがいいわ。あなた達は黙って私に悲しみと絶望を捧げなさい』

 

「そんなこと!」

 

「するもんか!」

 

夏凛おばさまと風おばさまが背後から攻撃を加えようとするが、邪神の触手の先が獣の口みたいに開き、二人を捕獲し、地面に叩きつける。

だけどその隙に園子おばさまと樹おばさまが攻撃を繰り出そうとするが、

 

『だから無駄よ』

 

悪魔みたいな翼を広げ、二人を吹き飛ばしていく。私とお母様で砲撃を行おうとするが、邪神の翼から無数のエネルギー弾が発射され、私達も吹き飛ばしていく

 

『アハハハハハハハハ!!弱い、弱すぎるわ!あんたら人間が神に勝つなんて無理なのよ!!絶望しなさい!!』

 

邪神の高笑いが響き渡る中、私達は諦めずに立ち上がった。

 

「諦めない……勇者は諦めたりしないって……おじさまから教えられた!!」

 

「そうね……あの人ならそういうね……だから……」

 

『そう……だったら……』

 

邪神は赤嶺さんを触手で縛り上げ、赤嶺さんの頭に触れた。

 

『絶望の淵に苦しみ続けなさい』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

赤嶺SIDE

 

気がつくと元の世界だった。これは邪神が見せている幻覚だとすぐさま気が付き、私は抜け出そうとするが、

 

「友奈?何してるんだ?」

 

「海くん……これも幻ね……」

 

「幻?何を言ってるんだ?僕は幻なわけ……」

 

海くんが何かを言いかけた瞬間、突然海くんの首が切り落とされた。

 

「……海くんの死を見せ続けて私を絶望に落とすつもり?そんなの……」

 

言葉ではそう言えるが、私は永遠に海くんの死を見せ続けられていく。耐えるんだ。耐えないと駄目なんだ……

 

「どうして……何も言ってくれないんだ?友奈……」

 

「やめて……あの人の声でそんな事を言わないで……」

 

私が絶望するまで見せ続けるの?この悪夢を……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とある世界にて

 

「たどり着いたわ。邪神の世界」

 

「友海たちはここに……」

 

「だけど簡単に入れそうにないな……」

 

桔梗さんが手を伸ばすが、弾かれてしまった。これが結界っていうものか……

 

「奴は私や女神の力では壊せないように作ったみたいだけど……」

 

『本当に考えなしですね。しっかり調べないと……蕾。力を貸してください』

 

「はい」

 

サンチョ・ヒメノさんと蕾さんがまばゆい光に包まれると、蕾さんの姿が前に会ったヒメノさんと同じ姿に変わった。

 

「それじゃ行きますよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

牡丹SIDE

 

『どうかしら?私が作り出した悪夢は……』

 

全身から汗を流し、膝をつく赤嶺さんに対して邪神は笑みを浮かべていた。

 

「最低ね……否定し続けても……永遠に終わらない……」

 

『それじゃ終わらせてあげるわ。愛しい人の所に行きなさい』

 

邪神が黒く巨大なエネルギー弾を作り出し、私達に向かって放とうとしていた。だけど赤嶺さんは立ち上がり、右の拳に魔力をため始めた。

 

「そんなもの……相殺してみせる!!」

 

『出来るの?人間風情が……』

 

邪神がエネルギー弾を放った瞬間、赤嶺さんが拳を大きく振った。その瞬間、私と友奈おばさまは赤嶺さんのサインに気がついた。

 

「爆裂!勇者パンチ!!」

 

爆裂勇者パンチと邪神の攻撃がぶつかり合い、邪神の攻撃は消えたが、赤嶺さんは地面に倒れ込んでいた。

 

『ふふ、なかなかの威力だけど……私を倒すまでには行かないみたいね』

 

「それはどうかな」

 

「友海ちゃん!?」

 

二人の攻撃がぶつかりあう瞬間、私と友奈おばさまの二人で友海を引き剥がすことに成功した。友海は解放されると同時にすぐさま勇者に変身した。

 

「牡丹……ママ……ありがとう」

 

「ううん、お礼は後だよ」

 

「友海、今は邪神を倒そう」

 

「わかった!!」

 

友海は満開し、両拳に魔力を溜め込んだ。

 

『それは……それを喰らったら……させるか!!』

 

邪神が無数のエネルギー弾を放つが、三首のバーテックス姿になった蒼くんが盾になり、友海を救った。

 

『終わらせろ!!』

 

「うん、師匠とママ直伝+私の……みんなの思いを込めた!!爆裂!ツイン!勇者パンチ!!」

 

『う、こ、こんな……』

 

友海の一撃が邪神に届く

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はずだった。

 

『なんてね』

 

「かはっ!?」

 

友海のお腹に触手の一撃が当たっていた。友海はそのまま地面に落ち、倒れ込んでいた。

 

『ふふふ、惜しかったわね。もう少しで私を倒せそうだったのに……だけどより良く勇者たちの絶望を食らうためにはこういうのが良いと思ってね。さぁこれで終わりよ』

 

邪神は笑みを浮かべながら、いくつもの触手を生やし、先の方を鋭く尖らせた。

 

『死ね!!』

 

「ゆみぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃーーーーーーーーーーーー!!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

友海SIDE

 

邪神の攻撃がいつまでも届いてこなかった。私はそっと目を開けると、邪神の触手が焼き切られていた。そして邪神の触手を切り落とした男の子をみて、牡丹は涙を流していた。

 

「間に合ったみたいだな」

 

『貴様は!?だけど貴様一人なら!!』

 

邪神は大きく翼を広げて、無数のエネルギー弾を放ってきた。だけど巨大な鏡で邪神の攻撃を反射する一人の女の子がいた。

 

『がああああああ!!なんだこれは』

 

『調査不足だね』

 

「なんというか神でもここまで頭が回らない人がいるんですね」

 

「そう言ってやるなよ。ただでさえ、怒らせたらいけないやつを怒らせたんだから」

 

二人がそういう中、邪神の後ろからママたちと若葉おばちゃんたちの武器が邪神に向かって、放たれていった。

 

『があっ!?これは……』

 

「勇者乱舞終式!!」

 

その人は地面に降り立ち、倒れ込んだ私をそっと起こした。

 

「怪我は……してるけど大丈夫みたいだな」

 

「あ、あぁ……」

 

私は涙を流していた。そうだよね。いつだって私の危機を救ってくれたよね

 

「桔梗さん、蕾さん。お決まりなセリフを言ってもいいですか?」

 

「あぁ、言ってやれ」

 

「言ってやってください」

 

その人は二人の言葉を聞き、笑みを浮かべ、邪神を睨みつけた。

 

「うちの娘をイジメた奴はお前か?クソ野郎!!」

 

「パパ!」

 

 



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24 例外というもの

友海SIDE

 

私の危機に颯爽と現れたのはパパ、牡丹パパ、そしてあの人はある世界で一緒に戦った人……

 

「パパ……どうして……それに若返ってるよ」

 

「天の神の力でな。この頃が一番全盛期だったらしい」

 

「そっか……パパ。助けに来てくれてありがとう」

 

私はぎゅっとパパに抱きつくと、邪神は狼狽えていた。

 

『な、何故例外がここに!?お前らは来れないように結界を張ったのに!?』

 

「調査不足ですよ。邪神。例外は彼らだけじゃないです」

 

『そうそう、というか貴方みたいな間抜けな神は見たことありません』

 

「さ、サンチョが喋ってる!?」

 

園子おばちゃんがぬいぐるみを見て驚いていた。いや、園子おばちゃんだけじゃない。みんなもだ

 

『私はヒメノ。今はこのぬいぐるみを依り代にしているのです』

 

「因みにヒメノ様は守り神で、私はその勇者……守護の勇者です」

 

「よく分からないけど、あんた達に任せてもいいってことよね」

 

風おばちゃんがそう聞くと三人はただ頷くのであった。

 

『例外風情が……勝った気でいるな!!』

 

邪神は翼を大きく広げ、無数の触手を生やしていくが、パパと牡丹パパが切り裂いていった。

 

「神を名乗るくらいだから強いだろうと思ってたけど……」

 

「言ってやるなよ。海。怒りで我を忘れてるかもしれないぞ」

 

『ぐぬぬぬぬぬ!!ならばこれでどうだ!!』

 

邪神は巨大なエネルギー弾を作り出し、パパたちに向かって放つ。だけど守護の勇者が前に立ち、巨大な鏡でエネルギー弾を弾いた。

 

『があああああああ!?』

 

弾かれたエネルギー弾を喰らう邪神。その隙にパパたちは後ろに回り込み、

 

「全てを焼き払え!天神刀!!」

 

「切り裂け!祝水神刀!!」

 

「全てを浄化せよ!!姫葉刀!!」

 

三人の斬撃が邪神を吹き飛ばした。邪神は地面に落ちた。

 

「友海!牡丹!」

 

「とどめを刺せ!!」

 

「牡丹……行くよ」

 

「うん」

 

私達は邪神目掛け、自分たちが出せる最大の攻撃を放った。

 

「爆裂!勇者パンチ!!」

 

「ライトオブセイバー・アロー!!」

 

私達の攻撃が邪神に当たり、周辺が煙に包まれた。今のは手応えがあった。

 

「勝った?」

 

「これで……終わったの?」

 

私達が警戒する中、煙が晴れていくとボロボロの姿だけど邪神は立ち上がっていた。

 

『例外……流石は運命を変える力を持ったものたち……このままだと倒されてしまう。だけど!!』

 

邪神は力を開放した瞬間、巨大な怪物へと姿を変え、邪神の周りには黒いバーテックスが集まっていた。

 

「どうする海?あの時と同じ姿に変わるか?」

 

「私もヒメノ様と融合すれば……」

 

「……………」

 

『無駄だ!今の私にはお前たち例外であろうとも私はこの場から逃げ出してやる!!そしていつかお前たちに復讐してやる!!』

 

邪神が叫びを上げながら、私達を睨みつけていた。するとパパは……

 

「はぁ」

 

何故かため息を付いていた。

 

「邪神とやら……例外、例外言うけどな……お前、間違ってるぞ」

 

『何が間違ってる!?貴様らがここに来るであろうということ考えていなかったことか?』

 

「いいえ、僕の事を例外って呼んでることだよ」

 

『お前は確かに例外だ!!その手で運命を変えたではないか!!』

 

「海くん、邪神の言うとおりよ。私がいた世界では海くんはみんなを救ったけど、海くんはその命を落とした……でも貴方は自分の運命を変えた……」

 

「赤嶺。そう思うのはしょうがないけど、僕はそうじゃないって思ってる。何せ、一人じゃ誰かを救うことはできないから……僕は仲間と手を取り合って、初めて運命を変えた」

 

『だとしたら誰が例外だというのだ!!』

 

パパはまたため息をつく中、こっちにゆっくりと向かってくる足音が聞こえた。

 

「お前、僕のことを見ていたなら分かるんじゃないのか?僕が初めてバーテックスと戦った時、とどめを刺した奴を。国一つ滅ぼしかねない兵器を破壊した奴を。魔王より強い悪魔を倒したやつを。太陽の姿に変わったバーテックスの動きを止めたやつを。絶望という名のバーテックスを倒したやつを!天の神が作り出したシステムに大ダメージを与えたやつを!」

 

急に誰かに頭を撫でられ、顔をあげた瞬間、私は涙が溢れてきた。ママたちはその二人を見て、誰だか分からないでいた。赤嶺ちゃんは驚きを隠せないでいた。私と牡丹は涙を流していた。牡丹パパと守護の勇者さんはその二人をただじっと見つめていた。

 

「とはいえ、そいつは例外って呼ばれるのはイヤみたいだ。呼ぶなら………」

 

「史上最強のアークウィザードと呼んで欲しいところですね」

 

「ウミさん。ここからは私達が」

 

「頼んだぜ。めぐみん、ゆんゆん」

 



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最終話 上里友海は勇者である

少しさかのぼり……

 

「お願いします。ウミ、どうか私達を……」

 

「お願いします」

 

めぐみんとゆんゆんの二人が友海と牡丹の二人を助けに行くのに一緒に行かせてほしいと頼み込んでいた。二人からしてみれば弟子の危機を僕らよりも助けたいと思っているに違いない。でも……

 

「お前ら……何言ってるんだ?わざわざ頼まなくっても僕は来てくれるって思ってたんだけど……」

 

「「えっ?」」

 

僕はてっきり何も言わずについてきてくれるって思ってたんだけど……

 

「今回の件、二人がいないと駄目だと思ってたんだけど……特にめぐみん、お前が来てくれないと……」

 

「ウミ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

友海SIDE

 

めぐみん師匠とゆんゆんさんが私達の前に立ち、邪神を睨みつけていた。

 

『き、貴様らは……』

 

「では終わらせましょう。ゆんゆん、サポートお願いしますね」

 

「任せて、めぐみん」

 

師匠は詠唱を始めると、邪神は慌てて止めに入ってきた。

 

『さ、させるかぁぁぁぁぁぁぁ!!』

 

邪神は大漁の星屑を生み出し、師匠に向けて放ってきた。だけど師匠は焦るわけでもなく、笑みを浮かべていた。

 

「ライトオブセイバー!!」

 

ゆんゆんさんが放った魔法で、星屑をすべて撃破され、邪神は更に焦り始めていた。

 

『ぐ、ぐうう、お前みたいなネタ種族でネタ魔法を使うやつにこの私が……』

 

「甘く見ないほうが良いぞ。めぐみんは今は本当に最強のアークウィザードだからな。爆裂魔法を食らったら、一瞬で終わらせられるくらいにな」

 

『ぐううう!?わ、私が悪かったな。もうこんな事は止める……天の神も神樹から奪った力もすべて返す。だから殺すのは……』

 

必死に命乞いをする邪神だけど、師匠は詠唱を止めない。

 

『こうなったら……』

 

邪神は逃げ出そうとするが、パパが樹おばちゃんの武器で邪神を縛り上げた。

 

「逃がすわけ無いだろ」

 

『ぐううううう!?』

 

「邪神とやら、あなたは私の大切な弟子を騙し、挙句の果てには弟子を利用し……殺そうとしました。許す許さないの問題ではありません………」

 

師匠はとびっきりの笑顔で邪神に向かって……

 

「魂すら残すつもりはありません」

 

『うぐうううううう!?私はこんなところで……』

 

「エクスプロージョン!!!」

 

師匠の爆裂魔法が放たれ、邪神を包み込み、世界は光りに包まれるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これで今回の件は終わりですね」

 

『よくとまぁ暴れまくったみたいだけど……この世界はどうなるのかしらね?』

 

「邪神が食らった天の神は生き返り、神樹も力を回復したみたいね。まぁ私がおまけに世界をもとに戻しておいたわ。これからは外敵が来ても対応できるように手を組むみたいね」

 

「本当に良かったですね」

 

『とはいえ、あちらの世界の彼女たちは友海たちがいたという記憶はなくなったみたいですね。まぁ邪神に利用されたこともありしょうがないとしか言いようがないですね』

 

「それでは天の神、守り神、私達は私達の世界へと戻りましょう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

赤嶺SIDE

 

気がつくとあの世界に戻されていた。

 

「全部終わって、戻ってきたっていうことね」

 

彼女たちと一緒に戦うっていうのは悪くなかった。だけど……

 

「望み……叶えてもらえなかったか……」

 

最初から嘘だと分かっていたけど、やっぱり魂ごと消された彼を生き返させることなんて無理よね。

一人屋敷に帰ろうとした瞬間、誰かが後ろから抱きついてきた。

 

「友奈……」

 

「……その声……幻とかじゃないよね」

 

「あぁ、気がついたらここに戻ってたんだ。そしてお前を見つけた」

 

「全く……どの神の仕業かしら……」

 

願い叶えてもらえたんだ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

友海SIDE

 

「ここは……」

 

「戻ってきたんだね」

 

私と牡丹は元の世界に戻ってきた。何だかんだパパたちに助けてもらちゃったな……

 

「私達、まだまだだね」

 

「うん、でも目標が決まったよ」

 

「何?友海?」

 

また似たようなことが起こるかもしれないし、もしかしたらこの世界が滅亡する危機を迎えるかもしれない。だからそのときは……

 

「今度こそ、私達で世界を救ってみせようね。牡丹」

 

「もう……そうね。一緒に救いましょう。友海」

 

「だって私達は………」

 

「「勇者だから!!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やれやれ、気がついたらここの来ていたけど……」

 

蒼は友海と牡丹の二人を見つめながら、彼女たちの決意を聞いていた。

 

「二人が言うようなことがあったら、手伝ってやるか。勇者たちの従者としてね」

 

「それは別にいいけど……」

 

声が聞こえ、振り向くとそこには海、めぐみん、ゆんゆんの三人がいた。海は蒼に近寄り……

 

「娘と付き合うなら、僕を倒してからにしろよ」

 

「その後は私が相手します」

 

「あ、あのウミさん、めぐみん、素直に祝福してあげようよ……」

 

「駄目だ!?友海にふさわしい相手をだな」

 

「そうです。悪い男に騙されたら嫌ですから」

 

「何だかごめんね。二人ともユミちゃんのこと大好きだから……」

 

「分かってるよ。これからよろしくおねがいします」




というわけで無事に完結しました。さて次回作ですが……タイトル未定 主人公 別世界の海 ヒロイン……園子のいちゃいちゃものを書く予定です。予告として……























「ほら、海、彼女が君の婚約者だよ」

「上里海くんだよね~私は乃木園子。よろしく~」




「戦うの辛くないのか?」

「辛いけど……勇者だから……世界を、みんなを、わっしーとミノさんと一緒に守らないとね」

「……僕も一緒に戦いたいよ」






「そのっち、好きだよ」

「私も大好きだよ。カイくん」





スタートは未定です。とはいえ戦いもなくただひたすら二人がイチャイチャになる展開です。


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