ありふれたケルトの子孫 (石山 翔流)
しおりを挟む

プロローグ

初めての二次創作なので、文がおかしいところがございましたら誤字報告の方へお願いします。
また、自分の気分次第で投稿したりしなかったりするので、気長にお待ちいただけると幸いです。


 

 

「オラオラァ!そんなんじゃすぐさま死んじまうぜ?脇を締めろ!目は相手を捉えて絶対に死角に潜り込まれることが無いようにしろ!そうすれば敵の攻撃に対してすぐに反応できる!」

 

 

そんな注意とともに紅い魔槍が唸りをあげて突き出されてくる。

おそらく手加減されているのだろうが、こちらからすれば目にも止まらぬ速さの速度だ。

それを今まで習った槍の技と、当てずっぽうの様なカンで捌き続ける。

そんな常人離れしたことをしているのはとある一部分を除けば他人と何ら変わることがないはずの、

 

平凡な高校生、(そら)楓凜(かえり)

 

 

 

彼はとある事件に巻き込まれることさえなければ友人に囲まれ、ある程度は幸せ、ある程度は不幸な、そんな人生を送っていただろう。

特別に楓凜だけが幸福、不幸とかではない、人が見れば平凡と評するような人生を。

そんな彼が一般人から逸般人へと変わってしまうきっかけとなったのは、まるでラノベみたいな現象に巻き込まれたからだ。

まるでラノベのような現象(・・・・・・・・・)とは・・・別世界の干渉による集団転移だった。

少し、いやもうかなり前の出来事だが、思い返してみるとしよう……。

 

 

 

 

☆★☆

 

 

 

 

楓凜が朝登校してきたのはSHR(ショートホームルーム)が始めるおよそ30分前。

部活動がある生徒はとっくに来て朝練に取り組んでいるような時間。

楓凜は、己の仕事(クラスの係の仕事である)の掃除を黙々とやっていた。

掃除を始めて10分くらいするとチラホラと朝練を終えた生徒や登校してきた生徒が教室に入ってきた。

彼らは授業の準備をしたり、友人とのおしゃべりを楽しみはじめた。

更に10分くらい経過し、SHRが始まる10分前くらいに楓凜は掃除を終え、授業の準備を始める。

 

 

「おはよう。いつもありがとう、お疲れ様楓凜君」

 

 

そんな声が聴こえ、振り向くとそこには美男美少女達の姿が。

声を掛けてきたのは白崎香織(しらさきかおり)という、学校で二大女神と言われている黒髪で垂れ目のほんわかした美少女だ。

その後ろには二大女神のもう一人である八重樫雫(やえがししずく)やその幼馴染である天之河光輝(あまのかわこうき)坂上龍太郎(さかがみりゅうたろう)、いつも一緒に居る谷口鈴(たにぐちすず)中村恵里(なかむらえり)の5人の姿もある。

※雫はポニーテールにした黒髪で、切れ長の眼をした美人系の顔立ちをしている。剣道部に所属しており、実家が剣術道場をしていることもあって、全国に行くのは当たり前といった腕前を持っている。

光輝は容姿端麗、頭脳明晰の上、運動も出来ると言う完璧超人だ。安定のモテ男である。ただ、思いこみが激しいというのが唯一の欠点か。

龍太郎は190cmという日本人離れした体格の持ち主で、空手部に所属している熱血漢だ。また、脳筋でもある。

鈴はいつも笑顔を浮かべており、騒がしい。そのちっこい体のどこにあるのかというほどの元気で騒ぐ、クラスのムードメーカーだ。

恵里はいつも騒ぎすぎる鈴のフォローに回る優しげな雰囲気を湛えている眼鏡っ娘だ。なお、図書委員である。

ちなみに、楓凜も祖先に北欧の人が居たらしく、身長は180cmを超え、顔は少し彫が深いイケメンである。

また、それなりにラノベ等を嗜んでおり、オタクと言われる人種との会話でも難なくこなせる。

 

「ああ、おはよう白崎さん、八重樫さんたちもおはよう」

「「「「おはよう」」」」

 

 

挨拶を返す楓凜に対し、にっこりと微笑む6人。

 

 

「しっかし、南雲も楓凜のようにもう少し早く学校に来てくれればいいのだが。そんなのだから皆から評判は良くないと言うのに……」

 

 

そんなことを言いつつ眉をひそめるのは天之河だ。

南雲というのは楓凜の親友で、白崎が恋をしている相手である。(下の名前はハジメだ。)

それゆえ白崎はハジメによく構うのだが、光輝はそれに気づいていない為、白崎がハジメを気に掛けることを余りよく思っていない。(まぁ、白崎がハジメのことを好きということはありえないと思い込んでいるのも一因だが。)

いつも始業のチャイムが鳴るギリギリ前になってから登校してくる、気の弱そうな男の子だ。サブカルが大好きなオタクでもある。また、ハジメも例にもれず夜遅くまでアニメやゲームをしたりしており、睡眠をあまり取っていないため、授業中に机に突っ伏している姿をよく見る。そのため、教師からの評判は良くない。(それでも平均的な成績はとっている)また、白崎が良く構うため、何故こんな奴を、と思うクラスメイトが多くクラスでの評判もあまり良くない。

 

 

「あんまり人の友人の悪口を言わないでくれるか、天之河。ハジメはいつも遅刻ギリギリで来たり、授業中に寝てしまうことも多いけど、根は良い奴だ。成績も平均くらいはとっているし、皆に迷惑を掛けている訳ではないし」

「・・・そうだな、気をつけよう」

「そういえば光輝、あなたアレは大丈夫なの?」

「ああ、大丈夫だアレは―――――」

 

 

少し場の雰囲気が悪くなってしまったが、そのことを敏感に感じ取った八重樫がさりげない話題転換で払拭に動く。

その後、テレビで報道されているニュースなどの他愛もない話をしているうちにSHRの時間が来て、6人は各々の机に戻って行った。

 

☆★☆

 

SHRは担任の畑山愛子(はたやまあいこ)先生が連絡事項を伝え、特に何事もなく終わり、畑山先生は教室から一旦出て行った。

そして始業のチャイムが鳴る5分くらい前に教室の後方のドアが開き、ハジメが登校してきた。

その瞬間クラス中の視線がハジメへと向く。

敵意を向ける奴もいれば舌打ちをする奴、無関心な奴もいれば侮蔑の表情で見ている奴もいる。

 

 

「(はぁ、何故ここまでハジメが敵視されねばならないのだろうか……)」

 

 

雰囲気を変えるために動きだそうとしたが、楓凜が動く前に動いた奴等がいた。

 

 

「よぉ、キモオタ!また、徹夜でゲームか?どうせエロゲでもしてたんだろ?」

「うわっ、キモ~。エロゲで徹夜とかマジキモイじゃん~」

 

 

そういってゲラゲラ笑いだす男子生徒4人。

一番最初にハジメへ声を掛けたのは檜山大介(ひやまだいすけ)だ。日課のように毎日ハジメに絡んでいるクソ野郎だ。後の3人は斎藤良樹(さいとうよしき)近藤礼一(こんどうれいいち)中野信治(なかのしんじ)

ハジメはこの4人に頻繁に絡まれる。

しかし、ハジメはキモオタと罵られるほど見た目や言動は見苦しくないし、コミュ障ではないので受け答えも明瞭だ。髪なども短めに切り揃えられており、不潔な印象は全く受けない。

それなのに何故こうも絡まれるのか、その答えは白崎が原因だ。

ハジメが檜山達の絡みを曖昧な笑みを浮かべつつ、乗りきり、自分の机に座った時、彼女がやってきた。

 

 

「南雲くん、おはよう!今日も遅刻ギリギリだね。もっと早く来ようよ」

「あ、ああ、おはよう白崎さん」

 

 

ニコニコと微笑みながらハジメに挨拶をする白崎。

遠目に見てもハッキリと分かるほど頬が引き攣っているが、なんとか挨拶を返すハジメ。

挨拶を返され、嬉しげな表情を浮かべる白崎。その瞬間、またもハジメを襲う視線の集中砲火。

ハジメのライフはもうゼロに近い!

冷や汗を流しながら耐えていると、八重樫、天之河、坂上の3人がハジメのそばへ行った。

それを見て、出るタイミングを失った楓凜もハジメのそばへ向かう。

 

 

「南雲君。おはよう。毎日大変ね」

「香織、また世話を焼いているのか?全く、本当に香織は優しいな」

「全くだぜ、そんなやる気ないヤツにゃあ何を言っても無駄と思うけどなぁ」

 

 

3人の中で挨拶をしたのは八重樫のみ。

天之河は香織が優しいから構っているだけと思っているし、坂上は努力大好き人間だからやる気がなさそうに見えるハジメのことを嫌っている。

 

 

「おはよう、八重樫さん、天之河くん、坂上くん。はは、まぁ、自業自得とも言えるから仕方ないよ」

 

 

 雫達に挨拶を返し、苦笑いするハジメ。「てめぇ、何勝手に八重樫さんと話してんだ? アァ!?」という言葉より明瞭な視線がグサグサ刺さる。雫も香織に負けないくらい人気が高い。流石は二大女神と言うべきか。

 

 

「それが分かっているなら直すべきじゃないか? 何時までも香織の優しさに甘えるのはどうかと思うよ。香織だって君に構ってばかりはいられないんだから」

 

 

 光輝がハジメに忠告する。光輝の目にもやはり、ハジメは香織の厚意を無碍にする不真面目な生徒として映っているようだ。

 

 

「い、いや~あは「天之河、ハジメだって皆とは違う方向性の努力をしている。人には人のやり方や想いがあるんだ。すべてを否定するのはおかしいだろう?逆に聞くが、天之河だったらハジメのように実家の仕事の手伝いが出来るのか?出来ないだろう。だったらそういうものでもあると認識してそれを尊重してやってくれないか」」

「……そうだな」

 

 

ハジメの曖昧な返事に割り込んで自分なりの思いを伝えるとバツの悪そうな顔をして自分の席へ戻っていく天之河と坂上。

 

 

「……ごめんなさいね? 二人共悪気はないのだけど……」

 

 

この場で最も人間関係や各人の心情を把握している雫が、こっそりハジメに謝罪する。俺とハジメは「仕方ない」と肩を竦めて苦笑いするのだった。

 

そうこうしている内に始業のチャイムが鳴り教師が教室に入ってきた。

そして、何時ものようにハジメが夢の世界に旅立ち、当然のように授業が開始された。

そんなハジメを見て香織が微笑み、俺と雫はある意味大物だ(ね)と苦笑いし、男子達は舌打ちを、女子は軽蔑の視線を向けるのだった。

 

 

 

☆★☆

 

 

 

ソレが起きたのは昼休み。皆友人と思い思いに弁当を広げ、お喋りを楽しんでいた。

なんてことはない日常の一コマのような風景。(なお、白崎とハジメによるちょっとした一幕があった。)

そんな風景をブチ壊したのは、謎の光と幾何学模様に、円環。

それは光輝の足元に純白に光り輝く円環と幾何学模様が現れ、その異常事態には直ぐに周りの生徒達も気がついた。全員が金縛りにでもあったかのように輝く紋様、俗に言う魔法陣らしきものを注視する。

 

その魔法陣を見ていると嫌な予感がした。これはまるでラノベではないか、異世界へ召喚魔法陣のようだと。

 

その魔法陣は徐々に輝きを増していき、一気に教室全体を満たすほどの大きさに拡大した。自分の足元まで異常が迫って来たことに漸く硬直が解け悲鳴を上げる生徒達。未だ教室にいた愛子先生が咄嗟に「皆! 教室から出て!」と叫んだのと、魔法陣の輝きが爆発したようにカッと光ったのは同時だった。

 

 

「ふむ、なかなか面白い奴が居るではないか」

 

 

若い女の声。しかし、どこか老練な声。そんな声が聴こえたと思った瞬間、楓凜は意識を失った。

 

数秒か、数分か、光によって真っ白に塗りつぶされた教室が再び色を取り戻す頃、そこには既に誰もいなかった。蹴倒された椅子に、食べかけのまま開かれた弁当、散乱する箸やペットボトル、教室の備品はそのままにそこにいた人間だけが姿を消していた。

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

異世界召喚

「……お…おき…起きて!楓凜君!起きて!」

 

 

何やら切羽詰まった声が聴こえて、俺は目を開いた。

 

 

「……ここは?」

「あぁ、よかった。目を覚ましたんだね。僕にもよく分からないよ……気付いたら皆ここに居たんだ」

 

 

目を開いた時、一番最初に目に入ってきたのはハジメの顔だ。

眩しい光が収まったと思ったら俺が倒れており、心配になって声を掛けたらしい。

どうやら激しすぎる光が原因で意識を失ってしまったらしい。

上体を起こし周りの様子を見てみる。

 

まず目に飛び込んできたのは巨大な壁画だった。縦横十メートルはありそうなその壁画には、後光を背負い長い金髪を靡かせうっすらと微笑む中性的な顔立ちの人物が描かれていた。背景には草原や湖、山々が描かれ、それらを包み込むかのように、その人物は両手を広げている。壮大で荘厳な壁画だ。

しかし、何故か嫌な予感がしたのですぐに目を逸らした。

 

よくよく周囲を見てみると、どうやら自分達は巨大な広間にいるらしいということが分かった。素材は大理石だろうか? 美しい光沢を放つ滑らかな白い石作りの建築物のようで、これまた美しい彫刻が掘られた巨大な柱に支えられ、天井はドーム状になっている。大聖堂という言葉が自然と湧き上がるような荘厳な雰囲気の広間である。

俺達はその最奥にある台座のような場所の上にいるようだった。周囲より位置が高い。周りには俺達と同じように呆然と周囲を見渡すクラスメイト達がいた。どうやら、あの時、教室にいた生徒は全員この状況に巻き込まれてしまったようである。

ざっと見て、クラス全員が居ることを確認する。

 

 

「なぁ、ハジメ。おそらく俺達は転移したんだろう。ラノベのような感じでな。こういう時は何が一番重要か分かっているよな?」

「……うん、正直信じられないけど、転移したんだろうねきっと。一番大切なのは冷静になること。パニックになったら大変だもんね」

「そうだ。まずは冷静に状況を判断していかないとな。まずは皆を落ち着かせるのが先か」

「そうだね」

 

天之河もそう思ったのか、声をあげて皆の注意を引いていた。

3人がかりで数分掛けてなんとか皆を落ち着かせる事に成功する。

そして、アイツ等から話を聞こうとする。

 

アイツ等とは、おそらくこの状況を説明できるであろう台座の周囲を取り囲む者達のことだ。

少なくとも三十人近い人々が、俺達の乗っている台座の前にいたのだ。まるで祈りを捧げるように跪き、両手を胸の前で組んだ格好で。

彼等は一様に白地に金の刺繍がなされた法衣のようなものを纏い、傍らに錫杖のような物を置いている。その錫杖は先端が扇状に広がっており、円環の代わりに円盤が数枚吊り下げられていた。

その内の一人、法衣集団の中でも特に豪奢で煌びやかな衣装を纏い、高さ三十センチ位ありそうなこれまた細かい意匠の凝らされた烏帽子えぼしのような物を被っている七十代くらいの老人が進み出てきた。もっとも、老人と表現するには纏う覇気が強すぎる。顔に刻まれた皺や老熟した目がなければ五十代と言っても通るかもしれない。

そんな彼はこちらが落ち着いたのが分かったのか、手に持った錫杖をシャラシャラと鳴らしながら、外見によく合う深みのある落ち着いた声音でハジメ達に話しかけた。

 

 

「ようこそ、トータスへ。勇者様、そしてご同胞の皆様。歓迎致しますぞ。私は、聖教教会にて教皇の地位に就いておりますイシュタル・ランゴバルドと申す者。以後、宜しくお願い致しますぞ」

 

 

そう言って、イシュタルと名乗った老人は、好々爺然とした微笑を見せたが、俺には黒く、寒気が走るような冷笑を浮かべているようにしか見えなかった。

 

 

 

☆★☆

 

 

 

 

教皇が説明するからと移動を促し、案内のメイド(オバサンのメイドではなく、美女・美少女のメイドだ。)についていくこと数分後、俺達は大きなテーブルが複数置かれた大広間の様な場所に居た。

上座に近い方から畑山先生や天之河達が座って行く。

俺は教皇のことが信用できないから、とハジメに言って一番離れた場所に座った。

俺とハジメが座ったことを確認して、教皇は話し出した。

 

 

 

「さて、あなた方においてはさぞ混乱していることでしょう。一から説明させて頂きますのでな、まずは私の話を最後までお聞き下され」

 

 

その内容はラノベ等の例にもれないありきたりなものだった。

教皇たち人間族は、敵対している魔人族によって滅びの危機を迎えている。

その原因は魔人族が魔物を使役しだしたということらしい。

魔人族は人間族と比べて身体能力、魔力といった基礎能力が優れており、人間族はそれに数で対抗していたが、魔物を使役することでその利点を潰されたらしい。

 

 

「あなた方を召喚したのは“エヒト様”です。我々人間族が崇める守護神、聖教教会の唯一神にして、この世界を創られた至上の神。おそらく、エヒト様は悟られたのでしょう。このままでは人間族は滅ぶと。それを回避するためにあなた方を喚ばれた。あなた方の世界はこの世界より上位にあり、例外なく強力な力を持っています。召喚が実行される少し前に、エヒト様から神託があったのですよ。あなた方という“救い”を送ると。あなた方には是非その力を発揮し、“エヒト様”の御意志の下、魔人族を打倒し我ら人間族を救って頂きたい」

 

 

そんなことを聴きながら思ったことは一つ。

どこまでが本当で、どこまでが嘘なのかというものだ。

ラノベでよくある展開の一つに、実は人間族が有利なのを隠して魔人族を悪者にすることで強大な力を持つ(転移者や転生者は大抵強大な力を持つ)者の力を借りて目障りな滅ぼすようなものもある。

また、召喚したものを奴隷にするというものもあるが、そういった感情はこの広間に居る人物すべてから感じられないので、おそらく大丈夫だろうが。

自分達がこの世界のことを知らない以上、迂闊なことは出来まい。まずは情報収集が先決だ。

 

ここは一旦時間をもらおうと考え、それを告げようとしたがそれより先に抗議した人物がいた。

 

 

 

「ふざけないで下さい! 結局、この子達に戦争させようってことでしょ! そんなの許しません! ええ、先生は絶対に許しませんよ! 私達を早く帰して下さい! きっと、ご家族も心配しているはずです! あなた達のしていることは唯の誘拐ですよ!」

 

 

畑山先生だ。

出鼻を挫かれた形となった楓凜は、一先ず様子を見ることにした。

教皇の返答は、

 

 

「お気持ちはお察しします。しかし……あなた方の帰還は現状では不可能です」

 

 

というものだった。

 

 

「(こうなることも想定していたが、こうまでハッキリと告げられると少し辛いものがあるな……)」

 

 

想定していたことが実現となり、嫌な予感は大きくなるばかりである。

それ以上に楓凜にとって心配だったのは、傍にいるクラスメイトである。

 

 

「うそだろ? 帰れないってなんだよ!」

「いやよ! 何でもいいから帰してよ!」

「戦争なんて冗談じゃねぇ! ふざけんなよ!」

「なんで、なんで、なんで……」

 

 

案の定、クラスメイトはパニックとなっていた。

 

 

「(まずい、パニックになってしまった!下手をすると暴動を起こす奴が現れかねん!そうすると最悪の場合は……)」

 

 

楓凜がどのような対処をするか考えている最中、天之河が立ち上がりテーブルをバンッと叩いた。その音にビクッとなり注目する生徒達。天之河は全員の注目が集まったのを確認するとおもむろに話し始めた。

楓凜は対処法を考えるので一杯なので、制止できそうにない。正義感にあふれた天之河のことだ、余計な事を言わなければいいが、と思うばかりである。

 

 

「皆、ここでイシュタルさんに文句を言っても意味がない。彼にだってどうしようもないんだ。……俺は、俺は戦おうと思う。この世界の人達が滅亡の危機にあるのは事実なんだ。それを知って、放って置くなんて俺にはできない。それに、人間を救うために召喚されたのなら、救済さえ終われば帰してくれるかもしれない。……イシュタルさん? どうですか?」

 

 

そして、天之河が言ったことはその余計なことだった。

慌てて制止しようとするも、教皇が返事をしてしまった。

 

 

「そうですな。エヒト様も救世主の願いを無碍にはしますまい」

「俺達には大きな力があるんですよね? ここに来てから妙に力が漲っている感じがします」

「ええ、そうです。ざっと、この世界の者と比べると数倍から数十倍の力を持っていると考えていいでしょうな」

「うん、なら大丈夫。俺は戦う。人々を救い、皆が家に帰れるように。俺が世界も皆も救ってみせる!!」

 

 

ギュッと握り拳を作りそう宣言する天之河。そして、彼のカリスマは効果を発揮した。

発揮してしまったのだ。それによってクラスメイトの雰囲気が変わる。

これでは反対すると最悪、楓凜がクラスメイトの手によって潰されかねないので、反対することが出来ない。

しかし、苦虫をかみつぶしたような表情になってしまうのは避けられなかった。

そんな楓凜を教皇は黒い笑みを湛えて見ていた……。

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ステータスプレート

お待たせしました!最近忙しいもので、なかなか小説を書く時間が取れず遅くなってしまいました(汗)

2018/07/24 座学を受ける時間についての情報を追加


天之河のバカが勝手に戦争への参加を宣言し、ほとんどのクラスメイトが賛成してしまうと言う事態になってしまった以上、必要なのは生き抜いていけるだけの強さと知識だ。召喚による力の付与があることで潜在能力は高いとしても、今までは世界の中でも有数の平和主義国に居た日本の学生である。

戦う術や心構え、色々なモノが不足しているということで、教会と密接な関係を築いている【ハイリヒ王国】というところで訓練するらしい。

 

「では、こちらへ」

 

教皇の声に従って今まで居た場所(聖教教会本山というらしい)から出て、荘厳な門の下を通って太陽の光を反射してキラキラと煌めく雲海と透き通るような青空という雄大な景色に皆目を奪われた。

どうやら【神山】と呼ばれるかなり標高がある山の頂上に聖教教会は築かれていたらしい。

自慢げな様子を浮かべている。

教皇に促されるまま、回廊を進むとやがて円形の台座が見えてくる。

 

「この台座に乗ってください。乗ってない人はここに置いていくことになってしまいます」

 

教皇の声に慌てて台座に乗り始める。

皆が乗り終わったと確認した教皇が何やら呟き始めた。

 

「彼の者へと至る道、信仰と共に開かれん、“天道”」

 

教皇が言い終えると同時に、台座が輝き、動き出す。

台座には複雑な文様が刻まれており、先程の教皇の独り言に反応している感じからして、おそらく魔法陣なのだろう。魔法陣が反応するということは、先程の独り言が詠唱になるのだろう。

非科学的な現象に、クラスメイトは皆魔法だ、魔法だと騒ぎだす。

まぁ、初めて魔法らしき現象を見たのだから仕方がないことか。

 

台座はそのままゆっくりと斜め下に下っていく。

やがて、雲海を抜け地上が見えてきた。眼下には大きな町、いや国が見える。山肌からせり出すように建築された巨大な城と放射状に広がる城下町。ハイリヒ王国の王都だ。台座は、王宮と空中回廊で繋がっている高い塔の屋上に続いているようだ。

 

しばらくして塔の屋上につくとメイドがおり、”お待ちしておりました。皆さまには国王にお会いになっていただきます。では、こちらへ”と言ってさっさと歩き始める。

教皇もさっさと歩きだすが、いきなりの国のトップとの会合である。

生徒達は尻込みをしているが、そんなことは知らぬ存ぜぬといった感じで教皇とメイドはさっさと歩いて行く。

仕方なしに、皆緊張した面持ちで教皇たちの後をついて行く。

 

その後数分くらい本にしか出てこなさそうな煌びやかな廊下を歩いたのだが、騎士やメイドとすれ違うたびに皆立ち止まり、皆一様に期待に満ちた、あるいは畏敬の念に満ちた眼差しを向けて来る。楓凜達が何者か、ある程度知っているようだ。

 

長い廊下を歩き続け更に数分経ってようやく大きな扉の前に辿り着く。

扉の前には二人の騎士が居り、彼らは”教皇とその一行がお着きになりました”と大声で告げると扉を開け放った。

扉を潜り、部屋の奥を見た楓凜は少し気圧された。

 

玉座と思しき椅子の前で覇気と威厳を纏った初老の男が立ち上がって待っている。

その隣には王妃と思われる女性、その更に隣には十歳前後の金髪碧眼の美少年、十四、五歳の同じく金髪碧眼の美少女が控えていた。更に、レッドカーペットの両サイドには左側に甲冑や軍服らしき衣装を纏った者達が、右側には文官らしき者達がざっと三十人以上並んで佇んでいる。

皆が玉座の前に来ると国王らしき人物が話し出した。

 

「ようこそ、ハイリヒ王国へ。私の名はエリヒド・S・B・ハイリヒ。こっちに居るのは妻のルルアリア。そして息子のランデル、娘のリリアーナだ」

 

自己紹介を終えると、教会で聞かされた話(人間族と魔人族の戦争である)をもう一度され、助力を請われた。

予想していた通りに列から天之河が一歩出ると、”お任せください!”と返事をする。

その言葉を聞き、国王はニッコリと微笑むと、騎士団長や宰相等、高い地位にある者の紹介が行われた。

また、衣食住が保障されている旨と訓練における教官達の紹介もなされた。

 

その後、晩餐会が開かれ皆思い思いに飲み、食べ寛いだ。

楓凜は今後役に立つかもしれないということで、貴族や国王の様子を窺いつつ、この食べ物はどこで採れたものなのか、産地はどう言った気候や風土について聞きまくった。

 

晩餐会が終わった後、各自に一室ずつ与えられた部屋に案内された。

天蓋付きのベットに少し驚きつつ、今日あったことを思い返し、聞いた情報を整理。整理し終わると楓凜は眠りに就いた。

 

 

 

 

 

☆★☆

 

 

 

 

 

次の日から訓練や座学が始まった。

朝食を終えてからの訓練なので、開始は9時頃。

訓練を行うのは闘技場(イタリアのコロッセオのようなもの)で行われ、座学は大学の授業に使われるような部屋だ。

訓練は騎士団長のメルド・ロギンスが行い、座学は魔法師団長のイルナ・パルシェが行う。

メルドは豪放磊落な性格で、非常に親しみやすい。楓凜を除くクラスメイトたちはすぐに馴染んだ。

一方、イルナは生真面目な女教師のような人物と言えば分かりやすいだろうか。

何事にも真剣に取り組むべし、と座学の合間に繰り返し言ってくる。また、そうすることで自分だけでなく、仲間を守ることにもつながるとも。

まずは訓練の内容でも見てみよう。

 

マラソンや筋トレといった基礎を重点的に強化しながら、それぞれの”天職”にあった武器の練習をする。これだけだ。

基礎強化で大体2時間かけ、武器の練習で3時間の合計5時間が一日の訓練時間だ。

(なお、昼食は訓練の合間にそれぞれで食べるような感じである)

なんだ意外と簡単そうじゃないかと思えるかもしれないが、この世界は地球と違って危険がいっぱいだ。しくじれば即、死なんてこともある。それを避けるために人(戦う系の天職の人は)は極限まで自らを鍛え抜くのだ。

ゆえに、徐々に訓練は厳しさを増していく。クラスメイトもブツクサ文句を言いながらも、仕方なしについて行く。

しかし、メルドの人柄もあってか、割と楽しげな雰囲気になっているのは僥倖だろう。

正直、座学の方がツライかもしれない。

座学は訓練終了後の2時間後に開始される。その間にある程度の疲れを取れということなのだろうが、かなりキツイ訓練の疲れなど早々に取れるはずがない。昼寝をしたり、各々に一人付いているメイドにマッサージをしてもらったりと、疲れを取ろうとするのだがそんな程度では疲れが取れないのが厄介だ。

そんな状態で座学を受けるのだが、眠くならない方がおかしいだろう。

しかも授業するのはイルナ。性格ゆえの生真面目なあまり面白いと言えない授業をするため、クラスメイトからは不評だ。だが、これもまたキチンとしておかなければ自分の命に直結する話なので、楓凜ととある理由からハジメも真面目に受けている。

 

そのとある理由とは、訓練の最初で配られたステータスプレートとそこに表示されたハジメのステータスが原因であった。

 

☆★☆

 

 

闘技場に集まった生徒達に十二センチ×七センチ位の銀色のプレートが配られた。

不思議そうにプレートを見る生徒達にメルドは説明を始める。

 

「よし、全員に配り終わったな? このプレートは、ステータスプレートと呼ばれている。文字通り、自分の客観的なステータスを数値化して示してくれるものだ。最も信頼のある身分証明書でもある。これがあれば迷子になっても平気だからな、失くすなよ?プレートの一面に魔法陣が刻まれているだろう。そこに、一緒に渡した針で指に傷を作って魔法陣に血を一滴垂らしてくれ。それで所持者が登録される。 “ステータスオープン”と言えば表に自分のステータスが表示されるはずだ。ああ、原理とか聞くなよ? そんなもん知らないからな。神代のアーティファクトの類だ」

 

アーティファクト。ラノベでは魔道具やら神器(レガリア)等と言われているやつの様なものか、と楓凜は考える。

 

「アーティファクトって言うのはな、現代じゃ再現できない強力な力を持った魔法の道具のことだ。まだ神やその眷属達が地上にいた神代に創られたと言われている。そのステータスプレートもその一つでな、複製するアーティファクトと一緒に、昔からこの世界に普及しているものとしては唯一のアーティファクトだ。普通は、アーティファクトと言えば国宝になるもんなんだが、これは一般市民にも流通している。身分証に便利だからな」

 

誰かがアーティファクトについて聞く前に、メルドは説明を始める。

理解した生徒達は嫌そうな顔をしながら針を刺し、血をプレートの魔法陣に擦りつける。

すると魔法陣が淡く光り、何も表示されていないプレートに文字が現れた。

 

 

===========================

空楓凜 17歳 男 レベル:1

天職:召喚士

筋力:90

体力:90

耐性:90

敏捷:90

魔力:500

魔耐:90

技能:召喚・召還・血の記憶・言語理解

===========================

 

レベルは1。ゲームの様に魔物を倒した、みたいな何らかの経験をしたわけでもないし当然だろう。

天職は召喚士。ゲームで考えるならば何らかの魔物や武器などを呼びだして攻撃したりする、そんな感じだろうか。それらは魔力を多く使って呼びだすのだろうと推測し、だから筋力といったステータスより圧倒的に大きい魔力についても納得することが出来た。

そして、一番気になっていた技能欄にある血の記憶というものについて思考し始めた。

天職が召喚士ということから、呼び出す、返すという意味の召喚と召還は技能にあるのは理解できる。言語理解の方も異世界転移した時に言葉が通じないと不便だから付与されたというのも分かる。

しかし、血の記憶だけは理解できない。聞いては見たいが、それによって不利な場面になるのは嫌だ。

とりあえず、メルド達のことを信用できるまで黙っておくことにした。

メルドの方を見ると、説明の続きを始めようとするところだった。

 

「全員見れたか? 説明するぞ? まず、最初に“レベル”があるだろう? それは各ステータスの上昇と共に上がる。上限は100でそれがその人間の限界を示す。つまりレベルは、その人間が到達できる領域の現在値を示していると思ってくれ。レベル100ということは、人間としての潜在能力を全て発揮した極地ということだからな。そんな奴はそうそういない」

 

「(人間族の上限は100。俺のステータスはほとんどが90で魔力にいたっては5倍の500だ。このステータスなら追放といったことにはならないだろう。まぁ、よかったと考えておくか……)」

 

そのあとにあったステータス、天職についての説明を簡潔なモノにすると、

〇ステータスはレベルが上がったら必ず上がる訳ではない。鍛練を積めば自分の限界まで伸ばすことが出来る。魔力の値が高いものは他のステータスも高くなる傾向にあるらしい。

〇天職はその名の通り自分に合った職業である。その天職に合った攻撃方法を行うことで威力の上昇などが望める。また、ステータスの伸び幅も大きく異なってくるらしい。

となる。

 

「後は……各ステータスは見たままだ。大体レベル1の平均は10くらいだな。まぁ、お前達ならその数倍から数十倍は高いだろうがな! 全く羨ましい限りだ! あ、ステータスプレートの内容は報告してくれ。訓練内容の参考にしなきゃならんからな」

 

事が起こったのはこの後のことだ。

ハジメは何やら青い顔をしてカタカタ震えはじめたのだ。震えと言っても、すぐそばにいる楓凜くらいしか気付かないような小さな震えだが。

他のクラスメイトたちにはそんな様子のやつは誰も居なかったので、気になり訊いてしまった。

 

「どうしたんだ?」

「い、いやぁ、えっと、その、これ……」

 

ハジメが見せてきたステータスはこうだ。

 

===============================

南雲ハジメ 17歳 男 レベル:1

天職:錬成師

筋力:10

体力:10

耐性:10

敏捷:10

魔力:10

魔耐:10

技能:錬成・言語理解

===============================

 

どうやら、ステータスの値が一般人と同じだったことが原因のようだ。

力が付与され一般人とは隔絶した力を持っているはずなのに、一般人と同じステータス。

それに加えて天職の練成師は所謂鍛冶師みたいなもので、結構な人数がいる、珍しくもないありふれた職業なのだ。

絶対に何か言われるだろう。もしくは追放、なんてことになるかもしれない。

それを想像してしまったのだろう。

ネット小説なんかではありふれたものだし。

オタクであるハジメの方がそんな内容のモノについては詳しいだろうし。

 

「……これはまずいかもしれない」

「そう……だよね……」

「ハジメ、落ちつけ。利用価値があると分かれば簡単に切り捨てることが出来なくなるだろう。まずは自分の天職についてより深く知ることだな。どこまでが出来ること、どこからが出来ないことを知ることで無茶をせずにすむだろう。それによって命を失う事態は回避できるはずだ」

「うん。後はやっぱり知識だね。おそらくダンジョンや迷宮みたいなものもあるだろうし、地形や気候についてキチンと調べないとね。後は魔物の特徴とかかな」

 

俺のフォローで多少なりとも落ち着いたのだろう、少し顔色は良くなっていた。

メルドがステータスプレートの確認をするからと生徒達に列を作って並べといい、一人一人確認を始める。

一番最初にステータスを見せたのは天之河だ。

 

============================

天之河光輝 17歳 男 レベル:1

天職:勇者

筋力:100

体力:100

耐性:100

敏捷:100

魔力:100

魔耐:100

技能:全属性適性・全属性耐性・物理耐性・複合魔法・剣術・剛力・縮地・先読・高速魔力回復・気配感知・魔力感知・限界突破・言語理解

==============================

THE・勇者のような感じのステータスである(楓凜も似たようなものというか魔力は大きく突き放しているが)。

最初から人間族の限界値の100である。技能の数もかなり多い。だが、楓凜の【血の記憶】の様な意味が分からないものはない。

 

「ほお~、流石勇者様だな。レベル1で既に三桁か……技能も普通は二つ三つなんだがな……規格外な奴め! 頼もしい限りだ!」

 

メルドの称賛を皮切りに天之河を称賛する声が上がり始める。

それに照れる天之河。正直キモい。

男の照れる様を見て喜ぶ男は居るのだろうか普通。

 

ちなみにメルドのステータスは300前後。流石王国最強に騎士団長。人間族の限界である値の3倍はある。

さすきしである。

 

その後も他の生徒を見て行くメルド。案の定他の生徒もかなりのものでメルドはホクホク顔だ。

そして遂にハジメの番が来た。

ス、と黙ったままプレートを渡すハジメ。

渡されたプレートを見て固まるメルド。

3秒ほど固まった後、プレートをコツコツ叩いたりしている。安心しろメルド、プレートは壊れていないぞ。

しばらくプレートを見た後、遠慮がちにハジメに告げるメルド。

 

「ああ、その、何だ。錬成師というのは、まぁ、言ってみれば鍛治職のことだ。鍛冶するときに便利だとか……」

 

それを聞いて目を輝かせ始めるのはハジメを目の敵にしている檜山達4人衆だ。

楓凜が予想した通りに絡みはじめる。

 

「おいおい、南雲。もしかしてお前、非戦系か? 鍛治職でどうやって戦うんだよ? メルドさん、その錬成師って珍しいんっすか?」

「……いや、鍛治職の十人に一人は持っている。国お抱えの職人は全員持っているな」

「おいおい、南雲~。お前、そんなんで戦えるわけ?」

 

周りの生徒もニヤニヤと嗤っている。

キモい。

はぁ、と溜息をつきながら前に出る楓凜。

 

「で?檜山何がしたいんだ?ハジメを晒し者にして楽しいか?周りのお前らもそれを聞いて楽しいか?楽しいならお前らはクズだ。人間のクズだ」

 

無表情を心がけていたが顔には怒りが滲んでいたらしい。

うっ、と顔に汗を滲ませる檜山。他の奴もバツが悪そうな表情で顔を背けた。

しかし、先程のステータスの数値を思い出したのだろう。へっ、と鼻で笑って矛先をこちらに向けてきた。

 

「なんだぁ?もしかしてお前もハジメと同じようなステータスなのかぁ?そうか、だから庇うんだな?雑魚は引っ込んでろよぉ!てめぇが出しゃばるのもいい加減ウゼェんだよ!潰すぞコラァ!」

「言いたいことはそれだけか?なら逆にてめぇを潰す」

 

勝手に勘違いでイキッて絡んできたものの表情が全く変わらない俺の様子を見て何処かヤバいと感じたのだろう。

檜山は俺にステータスを開示するように迫ってきた。

 

「……ならステータスを見せても問題ないよなぁ?早く見せろよ!」

「はぁ、失礼だが俺はまだ信用し切れてないから見せるつもりはなかったんだが、こうなっては仕方ない。メルドさん」

 

そう言いつつプレートを渡す。

 

「こ、これは……」

 

メルドの驚いた様子を見て悟ったのだろう。顔色を悪くする檜山。

 

「技能数は光輝に負けてはいるが、ステータスはほとんど変わらない。それどころか魔力は光輝の5倍だ!」

 

その声でざわつく皆。

 

「じゃあ、歯を食いしばれよ檜山。ダチを嘲弄する奴は許さねぇ」

「待ってくれ。檜山もそこまでしようと思ってなかったかもしれないだろう?落ち着いてくれないか楓凜」

 

間に入ってくるのは正義(笑)を掲げる天之河だ。

 

「俺は常々言っていたはずだが?ダチを傷つける奴は許さないと。それでも檜山は破った。ケジメはつけねぇとな?」

 

その言葉に天之河の後ろにいる坂上はウンウンと頷いている。ハジメのことは嫌いでも、檜山の陰湿なやり方は嫌っていたようで、ダチを守ろうとする俺の行動はどこか琴線に触れるものがあったらしい。

その様子を見ていた檜山も覚悟を決めたのだろうか、何やら決意した感じでこちらを見ている。

このまま殴り合いが始まるかと思われたタイミングでメルドが間に入る。

 

「バカ野郎!ケンカするな!お前らは元の世界にいたころと比べて力を持っているんだぞ!大怪我をしたらどうするんだ!檜山、アレはお前が悪いと俺も思うぞ」

 

その言葉に舌打ちをして闘技場から去っていき、俺も張りつめていた雰囲気を和らげたことでその場は落ち着いたのだった。

 

そんなこんなで楓凜とハジメは生きていくために知識を身につけようと踏ん張ることになったのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




サブタイはしばらく原作と同じような感じになるかもしれません。
進むにつれてサブタイは原作と異なるものになっていきますのでご容赦ください。


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。