ジュラシック・ラブライブ! (海神アグル)
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主人公設定

強さ別で恐竜の種類を書いときます。

後これが主人公↓

天青竜司《てんじょう りゅうじ》
モデルは 「サーヴァンプ」のクロです。
左目に眼帯、右目の瞳は赤。
身長175
性格は面倒臭がり屋なのと、桐生戦兎をミックスした感じ。
ついでに佐藤太郎


竜司が持ってる恐竜カードと技カード一覧


恐竜カード

強さ2000

ティラノサウルス・炎属性

サウロファガナクス・炎属性

エオカルカリア・炎属性

スピノサウルス・水属性

トリケラトプス・雷属性

スティラコサウルス・雷属性

パラサウロロフス・草属性

カルノタウルス・風属性

メガラプトル・風属性

デイノニクス・謎属性

パキケファロサウルス・謎属性

テリジノサウルス・謎属性


強さ1800


アマルガサウルス・水属性

ジョバリア・水属性

ティタノサウルス・水属性

ステゴサウルス・土属性

タルキア・土属性

ランベオサウルス・草属性

ユタラプトル・風属性

マジュンガサウルス・風属性


強さ1600


トルヴォサウルス・炎属性

バリオニクス・水属性

トロサウルス・雷属性

シャントゥンゴサウルス・草属性

アナトティタン・草属性

オロロティタン・草属性

ケラトサウルス・風属性

ルゴプス・風属性


強さ1400


ギガノトサウルス・炎属性

スコミムス・水属性

サルタサウルス・水属性

カスモサウルス・雷属性

ウダノケラトプス・雷属性

ケントロサウルス・土属性

アンキロサウルス・土属性

マイアサウラ・草属性

コリトサウルス・草属性

アロサウルス・風属性


強さ1200


タルボサウルス・炎属性

サウロペルタ・土属性

チンタオサウルス・草属性

フクイラプトル・風属性

モノロフォサウルス・風属性

エウストレプトスポンディルス・風属性


強さ1000


アリオラムス・炎属性

ゴルゴサウルス・炎属性

イリテーター・水属性

オピストコエリカウディア・水属性

エイニオサウルス・雷属性

ブラキケラトプス・雷属性

ズニケラトプス・雷属性

ウエロサウルス・土属性

オウラノサウルス・草属性

ゴジラサウルス・風属性

ディロフォサウルス・風属性


技カード


テイルスマッシュ

ストンピングハンマー

ダイビングプレス

カミカゼタックル

デスグラインド

ヘルサンド

ネッククラッシャー

アトミックボム

ダイノスイング


特殊技カード


必殺ふうじ・ヴェロキラプトル

最後の力・ヴェロキラプトル

はんげきかいふく・クリオロフォサウルス

かいふく・クリオロフォサウルス

ベノムファング・ピアトニッキサウルス

百烈ビンタ・セグノサウルス

パウパウパワー・パウパウサウルス

トリプルヘッドバッド・ステゴケラス

スカイダイブ・ケツァルコアトルス

サウラのいやし・ラエリナサウラ

わざふうじ・トロオドン

アンハングエラダイブ・アンハングエラ

タペジャラダイブ・タペジャラ

始祖鳥のまもり・アーケオプテリクス

プロトタックル・プロトケラトプス

ストルティオラッシュ・ストルティオミムス


超技カード


炎属性

ビッグファイアボム

ビッグファイアキャノン

ボルケーノバースト

デスファイア

マグマブラスター

ヒートイラプション

フライトブレイズスピン


水属性

フタバメガキャノン・フタバサウルス

エラスモサーフィン・エラスモサウルス

トラジェディーオブザボール

ショックウェーブ

フラッドストラップ

ウォーターソード

アクアボルテックス

オーシャンパニック・オフタルモサウルス

ハイドロカッター

アクアジャベリン

ポセイドンクラッシャー・サウロポセイドン

ディメノチェーンソー・ディメトロドン


雷属性

ライトニングスラスト

エレクトリックチャージ

ガトリングスパーク

サンダードライバー

ギガライディーン

プラズマアンカー

ライトニングアックス


土属性

ラッシュスパイン

ビッグモールアタック

アースバリア

クエイクセイバー

クリスタルブレイク

サンドトラップ

ギガロックハンマー

ビッグロックローラー


草属性

エッグスリボルバー・オヴィラプトル

ビッグフットアサルト・セイスモサウルス

メタルウィング・プテラノドン

ネイチャーズブレッシング

スーパーインパクト・スーパーサウルス

グリーンインパルス・トゥプクスアラ

ソーンウィップ

エメラルドガーデン


風属性

カマイタチ

トルネードブロー

ニンジャアタック

サイクロン

ハリケーンビート




以上です。

恐竜は以後も増えます。
ただ、ここに書いてるのが全部出るとは限りません。

技カードに関しては、敵も同じのを所持しているので、敵の攻撃として出ることもあります。


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プロローグ

竜司side


俺は天青竜司。

自分で言うのも何だが、天才恐竜学者にして天才科学者だ。

元々頭は良かったが、大学生の姉と共に行ったカナダで謎の石板を発見。

その石板を独自に解読と研究をした結果、絶滅した恐竜達を復活させる技術を確立させた。

結果、ジュラシック・パークというテーマパークが建設され、客が生きてる恐竜と触れあう新たな娯楽が出来た。

このジュラシック・パークは、世界でも数える程しか建設されてない。

更にポケ○○みたいに生きてる恐竜をカードに封印して、他の恐竜と戦わせるジャンルも出来てしまった。

勿論俺もその一人。

更に言うと、俺はこの実験の一番の功労者なので、持ってる恐竜カードも人一倍多い。

そんな俺は今何をしてるかと言うと……。

「ギュオオオオオオオオン!!」

「ギャオン!! ギャオン!!」

闘牛をするように、二体のヴェロキラプトルと戯れていた。

一体はエコーという茶色の体をしたメス。

もう一体はブルーという青のラインを持ち、こちらもメスだ。

この2体は姉妹で、デルタとチャーリーという後2体の姉妹がいるが、その2体は今は休ませている。

竜「エコー、ストップ!ブルーはそのままシットダウン!」

俺の言うことをちゃんと聞いてくれてるのか、ブルーもエコーもその通りの行動をする。

元々ヴェロキラプトルは犬以上に頭の良い恐竜。

故に油断したり、下に見ると、それ相応のしっぺ返しを喰らうが、こうやって互いに敬うような態度で接すれば、そのような事は無い。

竜「よしよし……よく頑張った」

俺は二体の頭を撫でて、餌を与える。

「「グルルル……」」

二体共、血肉にがっつく。

そんな時、檻の外から赤い髪をサイドツインテールにして、白衣を着た、出てる所は出てるスタイル抜群の美女が声をかけてきた。

「相変わらずラプトルの扱いが上手いわね、竜司!」

竜「姉さんか……」

天青環。

俺の唯一の家族にして、恐竜のいろはを教えてくれた人。

俺はラプトルから離れ、檻の外に出て姉さんと話す。

竜「なんかあった?」

姉さんはその場から歩き出したので、俺もそれに続く。

「まぁね。実は恐竜カードを日本に散らばせたバカが出てね?ソイツはもう首にしたけど、肝心の恐竜カードが回収出来てないの。日本にジュラシック・パーク関連の施設はまだ出来てないし。だから竜司。あなたに日本に向かってほしいの」

竜「成る程……」

マジか……。

恐竜カードは7つの属性をそれぞれ持っている。

炎、水、雷、土、草、風、謎。

封印された恐竜を復活させる方法は2つ。

1つはカナダで発見された謎の石板か、その力を持ったレプリカで復活させる。

もう1つは、その属性の恐竜と同じエレメントに浸す方法。

つまり炎属性の恐竜なら、炎に放れば復活できる。

だけどそれは恐竜の本能を強くしてしまう。

石板なら、まだ人の言うことをある程度は聞く。

だが直接同じ属性と合致すると、本能剥き出しで暴れる危険性が出てくる。

特に謎属性は、何れの6つの属性どれでも復活できるから、尚危険性が高まる。

なのでこうやって回収しないといけないのだ。

竜「まぁ理由は分かった。それで?日本の何処に行けばいい?」

「秋葉原の神保町。穂乃果ちゃん達がいる所に、主に集中してるわ…」

竜「………はぁ~」

最悪だ。

なんてこったい。

竜「仕方ない。行くか…」

「ごめんね?」

苦笑する姉さん。

俺はディノホルダーと呼ばれるアイテムと、多くの恐竜カードや技カードの入った小さめの本型ホルダーを持って、日本に飛び立つ準備をする。

竜「別にいいさ…」

そして俺は、アメリカ本部ジュラシック・パークを出た。



ーーーーーーーー



3人の幼馴染がいた。

『いた』という過去形を使っているのは、今はその幼馴染達とは4年間会っていない為である。

4年間会ってないってのは、俺が小6の時、幼馴染達が住んでる神保町からアメリカへ引っ越したからだ。

先程姉さんが言った穂乃果も、俺の幼馴染みの一人。

俺は中ーから高一の終わりまでアメリカにいた。

そして高2の今、日本に帰ってきた。

現在地は姉さんと共に住んでいた昔の家。

その家の前には、「穂むら」という和菓子屋がある。

竜「まぁ……あれだな。最っ高の気分だ」

俺は癖のある銀髪をかいて言う。

そんな時だった。

スマホが震え、姉さんからのメールが来た。

内容は……

『あなたの転入先の高校だけど、1年前から共学になった音ノ木坂学院にしておいたから。あなたの成績ならそんなに問題ないし、何より私の母校でもある!だからそこは心配は要らないわ!それに音ノ木坂の理事長はことりちゃんの母親さんだし、快諾してくれたから全く問題もないわね!』

だった。

とりあえず……









竜「最っ悪だ。俺は今日この日を、一生後悔するだろう……」






その場で踞った。





ディノホルダーは銃形態にも変化します。

本型ホルダーはディケイドのライドブッカーと同じのを想像してください。


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Game#1

何故こんな小説を書こうと思ったのか?

それは昨日ロスト・ワールドを見たからです。


さてさて。

この天才科学者である俺は、今家の中を掃除していた。

と言っても殆んどやる事は無かったよ。

どうにも掃除が行き届いてる。

恐らく姉さんが家政婦雇って、定期的に掃除させてたのかも。

そんな訳で俺は荷物を置くと、家を出て、穂むらに向かう。

ピルルルルルルルルッ!!

と思ったのに、ディノホルダーから警告音が流れる。

竜「やれやれ……タイミングが悪いな」

まぁ早速恐竜回収できるなら、それに越した事は無い。

俺はディノホルダーの画面を地図モードに変えて、恐竜のいる現在地を見る。

成る程……場所はあの公園か。

俺は自分のスマホの画面にある、バイクの絵が描かれたアプリを起動する。

するとスマホはたちまち大型バイクに変わる。

物理法則?

そんなもん知らん。

ビルドと同じ感じだ。

俺はすぐさまバイクで、その場に向かった。




ーーーーーーーーー





竜「おっ、いたいた」

公園に着くと、目的の恐竜がいた。

紫の体色をした鎧竜と呼ばれる種類の恐竜。

あれはサイカニアだな。

サイカニアは尾のハンマーを振り回して、威嚇していた。

「ギュワウワアアアアアアアアア!!」

その目線の先には、2人の中学生くらいの美少女が。

「雪穂~…」

「亜里沙!早く立って!もう!何で恐竜がいるの!?」

金髪セミロングの美少女を、赤茶髪ショートカットの美少女が引っ張っている。

あれ?

あの赤茶髪の美少女……なんか見たことあるような。

まぁ…いっか。

俺はベルトに取り付けた本型ホルダーから、赤い体色をした大型肉食恐竜・ティラノサウルスのカードを取り出し、ディノホルダーのスラッシュ部分にリードする。

《ティラノサウルス》

竜「行け、ティラノ」

そして空中に投げる。

するとスラッシュしたティラノのカードが赤く燃え上がり、サイカニアに向かいながら実体化。

「ゴアアアアアアアアアアアアァァァァン!!」

ティラノサウルスは咆哮して、サイカニアの首に噛みつく。

「また恐竜!? しかも肉食恐竜じゃん!?」

赤茶髪の美少女が驚く。

まぁそれも仕方ないな。

「ギュワウワアアアアアアア!!」

しかしサイカニアの鎧に阻まれ、ティラノは一時的に下がる。

その隙に俺は2人の美少女に駆け寄る。

竜「大丈夫か?お前ら」

赤茶髪の美少女が答える。

「あっ、はい!でも亜里沙が腰を抜かして……」

「うう~…////」

頬を赤くする金髪美少女。

竜「成る程…」

俺は金髪美少女をおんぶする。

「ふえっ!? あ、あの?////」

竜「逃げるぞ。君はいけるな?」

「はい。ん?………あれ?もしかして竜兄?」

竜「あん?」

赤茶髪の少女が俺の顔を見て訊いてくる。

竜兄?

何処かで誰かにそんな風に言われてたような……。

まぁとにかく避難が先だ。

竜「とりあえず公園の外に出るぞ」

「あ、うん!」

俺は金髪少女をおんぶして、赤茶髪少女と共に公園の外に出る。

その間もティラノとサイカニアは激しく争っていた。

サイカニアは尾のハンマーを振り回し、ティラノは様子見しながら、時折噛みつき攻撃をする。

そして2人を公園の外に連れ出すと、金髪美少女をおろして言う。

竜「ここにいろ。いいな?」

「はい!」

「あの、ありがとうございます!////」

竜「ん…」

金髪少女のお礼を軽くあしらい、俺はティラノの様子を見る。

お互い睨み合いに発展していた。

やはり鎧竜は一筋縄じゃいかないな。

竜「やるか」

俺は二枚の技カードを取り出す。

1枚は敵の恐竜を尻尾で叩いているカード。

もう1枚はティラノのような大型肉食恐竜が敵の恐竜の首に噛みついて、爆発を起こしているカードだ。

俺は最初に取り出した技カードを、ディノホルダーにスラッシュする。

《テイルスマッシュ》

女性の声でそうアナウンスされ、俺はディノホルダーを銃形態に変えて、トリガーを押す。

瞬間、オレンジの光球が緑のポインターから出て、ティラノに吸収される。

「ゴアアアアアアアアアアアアァァァァン!!」

ティラノは咆哮して、サイカニアに尾を向ける。

そして三回尾でビンタした。

パシン!パシン!パシン!!

最後の一撃でサイカニアは吹っ飛び、フラフラになる。

竜「ダメ押しだ」

俺は最後の1枚をスラッシュする。

《ビッグファイアボム(大炎爆発)》

再び女性の声でそうアナウンスされ、俺はトリガーを押す。

そして緑のポインターから炎の球が放たれ、ティラノに吸収される。

「ゴアアアアアアアアアアアアァァァァン!!」

ティラノが咆哮すると、炎のオーラが放たれ、ティラノは口に炎を灯す。

そしてジャンプして、サイカニアの首に噛みつく。

瞬間、爆発が起きて、サイカニアはダウン。

カードに戻った。

それを見て、俺はサイカニアのカードを拾い、ティラノもカードに戻す。

その様子を見てたのか、金髪少女も赤茶髪少女も目をキラキラさせていた。

「ハラショー!」

「すごい……!」

俺はティラノサウルスとサイカニアのカードを本型ホルダーに戻しながら、彼女達に近づく。

竜「怪我は無いな?」

「はい!助けてくれてありがとうございます!私、絢瀬亜里沙って言います!」

「私は高坂雪穂です!久しぶり!竜兄!」

2人共、満面の笑顔を向けてくれる。

そこで俺は、赤茶髪少女の言葉に引っ掛かりを覚えた。

竜「ん?……雪穂?……あっ」

高坂雪穂……竜兄…。

俺はこの名前と呼び方に覚えがある。

そしてこの少女の見た目にも。

竜「お前……雪穂か?穂乃果の妹の…」

雪「やっと思い出してくれた!? 竜兄!おかえり♪」

そう言った雪穂は、俺の腰に突撃ダイブしてきた。

が、そこは毎日命がけの仕事をしていた俺。

難なく受け止めた。

竜「よっと……大きくなったな?雪穂。それにまた可愛くなったな?」

雪「えへへ~////」

俺は雪穂の頭を撫でる。

雪穂も嬉しそうに頬を赤くする。

妹がいない俺にとって、雪穂は妹同然の存在。

そして雪穂も、俺の事を兄のように慕ってくれていた。

まぁそれはともかく。

竜「雪穂……そろそろ離れてくれ。お友達が混乱してるぞ?」

俺は金髪少女、亜里沙に視線を向ける。

亜里沙はポカーンとしていた。

雪「え……?あっ……////」

そそくさと俺から離れる雪穂。

その顔は真っ赤だ。

亜「雪穂と竜司さんは知り合いなの?」

亜里沙が小首を傾げて訊いてくる。

雪「う、うん……そうなんだ////」

そして雪穂は、俺と自分の関係を亜里沙に完結に説明した。

亜里沙は「ハラショー!」と言って、何故か感動していた。

竜「それよりそろそろ帰ろうぜ?俺もあのアホに挨拶したいしな……」

雪「竜兄……お姉ちゃんに対して結構辛辣だね?」

竜「気にするな…」

そこは幼馴染み故の馴れた呼び方だよ。

そして俺は亜里沙と別れ、雪穂と共に穂むらに向かった。

その道中、雪穂は俺に先程の事を訊いてきた。

雪「ねぇ竜兄。何で本物の恐竜が彼処にいたの?ああいうのって、海外のジュラシック・パークにしかいないよね?」

やっぱり気になるか。

そりゃそうか。

本物の恐竜ってだけでも驚きもんなのに、さらに俺が本物のティラノサウルスを操ってたんだ。

モヤモヤして疑問に思うのも仕方ないな。

だけど……あえて俺は教えなかった。

竜「気にするな。お前は何も心配せずに、元の学生生活を送っていればいい……」

雪「そんな……」

雪穂は不満げな顔をするが、それ以上俺に追求はしてこなかった。

雪穂は昔と変わらない。

人の言いたくない所には深く踏み込まない。

俺は雪穂のそういう所、気に入ってるぜ?

その後はお互い無言で歩き、穂むらに着いた。





主人公初の恐竜はティラノサウルスでした!


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Game#2






さて現在、俺は穂むらの中にいた。

竜「変わらないな……」

昔と変わらない。

木像建築の独特な匂い、饅頭の甘い匂い。

その全てが懐かしい。

恐竜達に囲まれていた匂いもいいが、この匂いもまた良い。

因みに雪穂は、母親である夏穂さんと、姉の穂乃果を呼びに行っている。

そうこうしてる内に、夏穂さんが出てきた。

「あらあら久しぶり竜司君!おかえりなさい♪」

夏穂さんは満面の笑顔で、そう言った。

まるで俺を実の息子と同じ感じで接するように。

俺はそれが少し、むず痒くて、でも嬉しくて。

竜「ただいま……?」

つい、そう言ってしまった。

夏穂さんはクスリと笑うと、続ける。

「こっちにはどうして?」

竜「所用でしばらく…」

「そ~う…。それにしても大きくなったわねえ。私よりでかく成長しちゃってまあ……。それに……うん!やっぱり良い男になったじゃないの!かっこよくもなったわね!」

竜「はぁ~…?」

そういうものかな?

自分じゃよく分からん。

竜「それを言うなら夏穂さんだって、4年振りに会いますけど、全然見た目変わってないし、ずっと若いままですよ?」

そう事実を言うと……

「やだちょっと~!お世辞も上手くなっちゃってもう!!」

バシーン!!と、俺の背中を叩いて照れる夏穂さん。

地味に結構痛いけど、ラプトルにひっかかれた時よりかはマシか…。

「あ、そうだ。久しぶりに会ったんだから出来立ての饅頭サービスしてあげるわ!」

竜「えっ?あっ…えっと…」

ちょっと迷った。

事実昼飯は食べたし、あんまり腹は減ってないしな~。

とはいえ、夏穂のキラキラした「遠慮するな」という感じの目が痛い。

そう思ってると、二階からドタドタと騒がしい音が聞こえた。

これは穂乃果だな。

そして下りてきたのは、案の定幼馴染のー人、高坂穂乃果だった。

4年も会ってなかったけど、やはりそこには4年前の面影がある。

あの頃と変わらないサイドテール、海のような青い瞳、どことなく無邪気さを感じさせる雰囲気。

体もしっかりと女らしく成長していた穂乃果が、今まさに目の前にいた。




穂「竜……ちゃん……?」



穂乃果が俺の名前を確認する様に、か細い声で訊いてくる。

俺は気軽に片手を上げて挨拶した。

竜「よっ……久しぶり」

すると穂乃果は俯いてしまった。

竜「どうした?穂乃果?」

俺は若干慌てて穂乃果に近づく。

けど、近づかない方がよかった。

その瞬間、俯いたまま震えてた穂乃果がバッと顔を上げると、











穂「竜ちゃああああああああああああん!!」

竜「えっ?がふっ!!」









俺は穂乃果のタックルダイブを受けて、後ろに倒れた。

ゴガン!!と、後頭部直撃だった。

お、ぉぉぉぉおおおおおおお…………ッッ!!

痛い!

チョー痛い!

穂「ホントに竜ちゃんなんだよね!? 間違いないよね!?」

竜「ああ……そうだよ。だからさっさと退け!このアホ!」

俺はお返しの罵倒をする。

穂「ええ!? 酷いよ竜ちゃん!!」

竜「こっちからすりゃ不意討ちタックルしたお前が酷いよ…」

半眼で文句を言う。

俺はいつも元気なこいつが好きだが、こいつのこういう所は嫌いだ。

すると穂乃果は人指し指を顎に当て、何を思ったかこう言った。

穂「えっと……痛いの痛いの飛んでけー!!」

竜「………ブチ殺すぞ?」

穂「わー!ごめんごめん!! 冗談だよ竜ちゃん!」

俺をガキ扱いしてきた穂乃果に、ドスの効いた罵倒を言う。

けど、穂乃果はすぐに微笑んで言う。

穂「竜ちゃん……おかえりなさい♪」

竜「……」

全く。

高坂家の女はみんなこうなのかね~?

竜「ああ……ただいま…」

俺も微笑んで返した。

穂「うん!!」

穂乃果は満足そうに頷くと、俺から離れる。

俺も穂乃果が退いたので、立つ。

穂「竜ちゃん、いつからこっちに帰ってきたの?」

竜「今日だよ。所用でな?しばらくこっちにいるんだ」

穂「へぇ~。じゃあまた昔みたいに四人で遊べるんだね!?」

ぺかーっとした笑顔でそう言ってきた穂乃果。

本当は遊べる暇なんて無いが……それでも俺はこいつの期待に応えたくて、こう言った。

竜「ああ……そうだな」







これが俺と穂乃果との再会だった。





ーーーーーーーーーー





穂乃果との再会を終えた俺は今、何故か2階の穂乃果の部屋に連れられていた。

竜「何で俺はここにいるんだ?というかもう帰りたい」

穂「ええ~!いいじゃんいいじゃん。せっかくなんだからもっと喋ろうよ!」

ああ~…最悪だ。

こいつの我が儘っぷりは健在か。

竜「別に明日でもいいだろ?」

穂「今日帰って来たんだから、今日喋らないとダメなの!もう!分かってないな竜ちゃんは!」

竜「ちょっと何言ってるか分かんない」

何だよそのよく分からん屁理屈。

穂「それに海未ちゃんとことりちゃんも、もうすぐこっちに来るんだよ!? 久しぶりに会ったらいいじゃん」

竜「はぁ~…分かったよ…」

そんな訳で、ここに居座ることに。

穂「うんうん!」

穂乃果は上機嫌に頷く。

すると下からドタドタと騒がしい音がして、襖がガラッと開かれた。

竜「うおっ!?」

俺は驚いて、そちらを振り向くと…

海「穂乃果!! 竜司が帰って来たというのは本当なのですか!?」

こ「穂乃果ちゃん!! 竜くんが帰って来たって本当なの!?」

口調は違えど後2人の幼馴染み、園田海未と南ことりがそこにいた。

というか何でこいつら俺が帰ってきてんの知ってんの?

まぁ穂乃果なんだろうが、それにしてもいつの間に連絡したって話だ。

穂「竜ちゃんならここにいるよ~」

指さす穂乃果の言葉と共に、2人の首がグイッと座っている俺の方に向く。

ちょっとすごい早さだったな。

竜「よっ…」

穂乃果にしたのと同じ挨拶をすると…

こ「竜くん!」

海「竜司!」

竜「へっ?ぐっ!?」

同じタイミングで2人が抱きついてきた。

くそっ……また不意討ちなんて最悪だ。

こ「おかえり!ずっと会いたかったよ!!」

と言いながら、俺の胸に顔をうずめることり。

ことりも女らしく成長してるな。

特に一部分が。

海「おかえりなさい!! おかえりなさい!!」

海未も俺に強く抱きついて、そう言っている。

海未もまた一段と綺麗になったな。

俺は2人の頭を撫でながら言う。

竜「ただいま……」

穂乃果はその様子を見て、うんうん頷いていた。




ーーーーーーーーー




ようやく場が落ち着いてきたから4人でテーブルを囲いながら俺達は雑談をしていた。

穂「そういえば竜ちゃん、向こうでの生活とかどうだったの?楽しかった!?」

穂乃果が食い気味でぐいぐい聞いてくる。

竜「まぁな。謎の石板で恐竜を復活させたり、その恐竜を、カードに自由に封印したり復活させたり。色々と面白い実験が成功したな。その後は復活した恐竜達の面倒を見たり…。新しい恐竜を作ろうとしたバカ共を制裁したり…」

俺がジュラシック・パーク誕生の始めの事を言うと、海未とことりは「ほぇ~…」という感じの顔だったが、穂乃果はキョトンとしている。

あっ、こいつ何も知らないな?

穂「竜ちゃん、どういうこと?」

予想通りの問いだ。

その穂乃果の問いに、海未とことりが反応する。

海「知らないんですか!? 穂乃果!」

こ「穂乃果ちゃんニュース見てた!?」

穂「うっ……全然」

食い気味に顔を近づけられ、おののく穂乃果。

海未は嘆息して、穂乃果に俺の偉業を説明する。

海「全く……。穂乃果、ジュラシック・パークの存在は知ってますね?」

穂「うん…。絶滅した恐竜を復活させて、動物園みたいにした新しいテーマパークでしょ?」

海「はい。その一番の功労者がこの竜司なんです」

こ「竜くん、世間じゃ天才科学者として称賛されてるんだよ?」

穂「ええええええええええええ!!!?」

ここで全てを理解したのか、絶叫する穂乃果。

本当に世間に疎いな、こいつ。

穂「じゃあ竜ちゃん!有名人なの!?」

竜「まぁそうなるな…」

日本ではどうか知らんが。

穂「ほぇ~……そうなんだ」

穂乃果は間抜けな顔になる。

今度は海未が訊いてくる。

海「それで、新しい恐竜を作ろうとしたというのは?」

竜「ん?その名の通りさ。存在しない、全く新しい恐竜を何種類かのDNAの交配で誕生させようとしたのさ。計画名は『インドミナス』。当然、俺はそれを実行しようとしたバカ共を追放した。そんなの危険極まりないからな…」

こ「そっか~…」

海「確かにそれは危険ですね。脱走した時の事を考えると…」

ことりは「ほぇ~…」という感じの顔に、海未は考え込む。

そこで穂乃果はある提案をしてきた。

穂「ねぇねぇ竜ちゃん!恐竜復活の功労者ってことは、カードに封印してる恐竜を今復活させることも出来るの!?」

竜「まぁな。道具もカードも全部持ってきてるから…」

穂「じゃあ見せて!」

海「穂乃果、そんなのいけま「ああ、いいぞ」…竜司!?」

穂乃果の我が儘を止めようとしたら、俺まで乗っかったことに驚く海未。

竜「心配するな。出す恐竜はお前らに任せる」

海「ですが……」

未だに不安そうな海未をほっとき、俺と穂乃果とことりは立つ。

竜「じゃあ外に出るか?」

「「おー!!」」

海「あっ!待ってください3人共~!」





次回はただの恐竜紹介になるかもです。


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Game#3

感想、待ってます。


穂乃果の要望に応える為、俺は3人を連れて人気の無い林の中に来ていた。

竜「ここらでいいか…」

海「あの竜司?本当に大丈夫なんですか?」

海未が上目使いでそう訊いてくる。

恐らく恐竜への恐怖感からなんだろうが……なんかこの表情はS心をくすぐられるな。

ともかく、俺は海未を安心させるように言う。

竜「大丈夫だ。安心しろ海未」

そう言って俺は海未の頭を撫でる。

海未は恥ずかしそうに、だけど嬉しそうに身を捩る。

それを穂乃果とことりが羨ましそうに見ていたが、俺はそれを無視して、恐竜カードが収納されている本型ホルダーを穂乃果に渡す。

竜「とりあえずこの中から適当に選べ。何でもいいぞ?」

俺がそう言うと、早速穂乃果達は恐竜カードを物色する。

穂「ほぇ~……色々いるね~。あっ!私ティラノと、トリケラトプスと、後ステゴサウルス!」

穂乃果はそう言って、ホルダーから三枚抜き取り、俺に渡して来る。

こ「私はこの子と……この子。後この子!」

ことりは「マイアサウラ」、「パラサウロロフス」、「ランベオサウルス」のカードを取る。

海「では私は………この三枚で」

海未は「アマルガサウルス」、「ジョバリア」、「ティタノサウルス」のカードを渡してきた。

なんか3人の好みというか、性格を表してるな。

穂乃果は見た目重視で知名度の高い恐竜、ことりは大人しい恐竜、海未はその青みがかった長い髪と同じ、水属性の恐竜を選んでやがる。

俺は合計9枚を手に取り、ディノホルダーにスラッシュしていく。

《ティラノサウルス》《トリケラトプス》

《ステゴサウルス》《パラサウロロフス》

《ランベオサウルス》《マイアサウラ》

《アマルガサウルス》《ジョバリア》

《ティタノサウルス》

そしてその9枚を投げると、炎属性の恐竜は炎に、雷属性の恐竜は電気に、土属性の恐竜は紫のオーラに、草属性の恐竜は草に、水属性の恐竜は水に包まれ、やがて実体化する。

「ゴアアアアアアアアアアア!!」

「「グオオオオオオオオオン!!」」

「「「キュワァァァアアアアアアン!!」」」

「「「ブモオオオオオオオオオオオオ!!」」」

9体の恐竜はそれぞれ咆哮を上げ、こちらを見下ろす。

穂「ふわあぁぁ~~~!!」

こ「すごい……」

海「本物の恐竜が間近に……!」

穂乃果もことりも顔を輝かせ、海未も先程の不安はどこへやら。

自ら選んだアマルガサウルス、ジョバリア、ティタノサウルスの所に向かう。

アマルガ達はその長い首を海未に向かって下げ、海未は3体の恐竜の頭を撫でる。

ことりもマイアサウラ達の所に行き、その頭を撫でる。

穂乃果はティラノの顔を撫でたり、トリケラトプスの角を触ったり、ステゴサウルスの横腹をつついたり。

とにかく思い思いに楽しんでいた。

ふと、海未が訊いてくる。

海「そういえば竜司。先程この恐竜達に火や水のアイコンが描かれてましたが、どういう意味なんです?」

こ「そういえば技カードとか、超技カードっていうのがあったよね?」

穂「あっ!私も気になる!」

おお~……そこに気づいたか。

仕方ない、ざっくり説明するか。

竜「まぁジュラシック・パーク内限定で、客が恐竜をポケ○○みたく捕まえ、ポケ○○みたく戦わせるイベントがあってな?恐竜達にそれぞれ違う属性がついてるのは、その一環だ。技カードもその為にあるようなもんだ。技カードはどの恐竜でも使えるが、超技カードは属性が合致しないと使えないんだ」

海「だから強さが書かれてたり、キラキラ光っているのもあるんですね…」

海未の言うように、強さ2000の恐竜は金に、1800の恐竜は銀に、1600の恐竜は銅に光っていて、それ以外は普通のカードだ。

穂「ほぇ~……それも竜ちゃんが発明したの?」

竜「まぁな…」

穂「すごいよ竜ちゃん!画期的だよ!!」

穂乃果は俺の手を取って、ブンブン振って言って来る。

なんかそこまで言われると照れるな。

竜「だろ?天才でしょ!? 最っ高でしょ!?」

穂「うんうん!最っ高だよ!!」

流石は穂乃果!

俺に次ぐくらい恐竜に興味のある奴だ。

海未とことりは苦笑しているが。

ここで俺はそろそろ呼び出した恐竜達を戻す。

穂「竜ちゃん、ありがとね?」

こ「すごく楽しかったよ♪」

海「ですね。本物の恐竜に会うには、海外にあるジュラシック・パークに行かないといけませんから。いい機会でした」

3人共喜んでくれて何よりだ。

竜「じゃあそろそろ帰るか?」

「「うん!!」」

海「はい!」

そんな時だった。











《ギガス》








濁声のある男声の機械音が聞こえたと思ったら、俺達の近くに茶色と灰色の体色をしたティラノサウルスが現れた!

「ゴガアアアアアアアア!!」

竜「なんだこいつは!?」

穂「ふえっ!? ティラノサウルス!?」

海「竜司が呼び出したんですか!?」

竜「そんな訳無いだろ!?」

こ「なんかこっちに来るよ!?」

俺達が言い合ってると、ことりが言う通り、黒と灰色のティラノサウルスがこっちに来る。

しかも敵意を持って。

竜「ちっ!最悪だ…」

俺はホルダーからある恐竜カードを取り、ディノホルダーにスラッシュする。

《スピノサウルス》

女性声でアナウンスされ、俺がそのカードを投げると、水に包まれ実体化。

出てきたのは、灰色の体色で背中の方に紫のラインがあり、さらに背中に巨大な帆を備えたワニ顔の恐竜だった。

スピノサウルス。

別名・刺のあるトカゲ。

「ギュワギュワアアアアアア!!」

スピノは咆哮すると、黒と灰色のティラノに向かって行く。

その首に噛みつき、振り回す。

しかしギガスって言ってたっけ?……あのティラノもスピノを振り回し、逆に噛みつく。

そのままスピノを押し倒すが、スピノは蹴ってギガスを倒す。

そして両者ゆっくり立つ。

穂「これが恐竜バトル……」

海「迫力ありますね……」

こ「うん……」

3人は固唾を飲んでいる。

竜「さっさと決めるか……」

俺は水属性の超技カードを二枚出す。

そしてスラッシュしていく。

《フタバメガキャノン(双葉大砲)》

《エラスモサーフィン(板竜波乗)》

女性の声でそうアナウンスされ、俺はディノホルダーを銃形態に変えて、トリガーを2回押す。

瞬間、水の球が緑のポインターから出て、スピノに吸収される。

「ギュワギュワアアアアアアア!!」

スピノが咆哮すると、水のオーラが放たれ、スピノの近くにフタバサウルスが出現。

「プアアアアアアアアン!!」

フタバサウルスは水を口に集め、一気に大砲のように放った。

それはギガスに直撃。

後退させる。

フタバサウルスが消えると、次に青緑の体色をしたエラスモサウルスが出てくる。

「プアアアアアアン!!」

エラスモサウルスは吼える。

スピノはエラスモの背中に乗り、大きな波を立たせ、それに乗るとギガスに突進。

ギガスは大波とエラスモのタックルを受けて、大きく吹き飛ぶ。

「グルルルル……」

小さく唸ると、光になって何処かに消えた。

俺はスピノをカードに戻すが、腑に落ちないことがある。

それはあのギガスと言うティラノのこと。

俺はあんなティラノは知らない。

一体何処の誰が作りやがった?

穂「……ちゃん……竜ちゃん!……竜ちゃん!!」

竜「ん?なんだ穂乃果?」

考えに没頭していたのか、近くに来ていた穂乃果に気づかなかった。

穂乃果は頬を膨らましている。

穂「もうっ!気づいてよ~!!」

竜「悪い悪い。なんだ?」

穂「もう帰ろう?今日は色々あって疲れちゃった…」

穂乃果の言う通り、穂乃果もことりも海未も不安そうな顔をしていた。

竜「そうだな……。帰るか…」

そんな訳で、俺は穂乃果達と共に帰路についた。


竜司sideoff







◎side


竜司達がいなくなった林。

そこでは黒い覆面に、コウモリを象った黄色のサングラスをかけた男がいた。

男は真っ黒なディノホルダーと、ギガスのカードを持っていた。

「精々頑張ってくれよ?天才科学者さんよ……」

男の目的はなんなのか?

それは誰も分からない。


◎sideoff




エラスモサウルスの技カードはオリジナルです。


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Game#4





竜司side


現在俺は、バイクに乗って秋葉原に向かっていた。

というのも今日は休日。

ゆっくりしたいのである。

穂乃果達からなんか誘いの電話が来たが、無視してやった。

100%面倒なことに巻き込まれるからな。

そんなこんなで秋葉原に到着。

バイクのハンドル部分にあるボタンを押して、スマホに戻す。

竜「さてと……色々見て回るか…」

ここに来るのも久しぶりだからな。

ピルルルルルルルルルルッ!!

と思ったら、恐竜反応がディノホルダーから鳴り響く。

竜「……最悪だ…」

俺の平穏な休日が。

まぁ愚痴ってても仕方ない。

さっさと封印回収するか。

そして歩を進めようとしたら、

「あの、少しいいですか?」

なんか大人びた俺と同い年くらいの男に声をかけられた。

竜「何か?」

「私は氷室玄斗と言います。少し道を聞きたくて。構いませんか?」

竜「まぁ、それくらいなら…」

そして道を教えようとした時だった。






「ゴガアアアアアアアアアアアア!!」

「きゃああああああああぁぁ!!!?」

「恐竜だぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」







突如恐竜の咆哮と、人々の悲鳴が上がる。

竜「は?」

俺はそちらを見ると、背中に中くらいの帆がある橙色の大型肉食恐竜が、人々を襲っていた。

あれは……アクロカントサウルスか。

アクロカントサウルスは目の前にいた人々を一人、また一人と食い散らかしていた。

血が辺りに飛び散る。

それがまた悲鳴を呼ぶ。

ふと、アクロカントサウルスはある方向に目を向ける。

そこには、オレンジ色の髪の毛を持つ女の子と、若葉色の髪の毛が特徴な女の子、2人の女の子が腰を抜かしてへたりこんでいた。

アクロカントサウルスはゆっくりとそちらに向かう。

竜「ちっ!」

俺は慌ててそちらに向かう。

俺に道を聞いてきた男…氷室をほっといて。


竜司sideoff





◎side


氷室は竜司を見送ると、ほくそ笑む。

「やはりそういう行動を取るか。天青竜司…」

そう言って氷室は、黒い覆面マスクを被り、コウモリを象った黄色のサングラスを目にかける。

さらに真っ黒なディノホルダーを手に取り、竜司の後を追った。



ーーーーーーーー




オレンジ色の髪の毛が特徴な女の子、星空凛と、若葉色の髪の毛が特徴な女の子、小泉花陽は困惑していた。

さらに恐怖もしていた。

何せ秋葉原を歩いてると、突如絶滅した筈の本物の恐竜が現れ、人々に襲いかかっていたのだ。

困惑もするし、恐怖もするだろう。

当然2人は逃げようとしたが、

花「あうっ!!」

凛「かよちん!」

花陽がこけて、それを凛が起こそうと駆け寄る。

それが不幸を呼び、アクロカントサウルスに目をつけられ、今に至るのだ。

2人は腰が抜けていた。

マズい。ヤバい。

この2つの言葉が凛の頭に真っ先に浮かんだ。

そして花陽はもうダメだと、諦めていた。

花「凛ちゃん…もうダメだよぅ……」

花陽の消え入りそうな声が凛の耳に入ってくる。

もうほとんど震え声で涙も出ているであろう。

けど心境は凛も同じ。

もう為す術はないのか。

助かる事は出来ないのか。

そしてアクロカントサウルスがその大きな口を開けたその時。










《ギガノトサウルス》










「ゴガアアアアアアアアアア!!」










紫の体色をした別の大型肉食恐竜が、アクロカントサウルスに噛みつき、投げ飛ばした。

「「えっ?」」

当然2人は呆気に取られる。

そして再び恐怖に囚われるが、目の前の恐竜が自分達の前に立ち、尚且つその恐竜の元に、銀髪で左目に眼帯をした少年が立ったことで、少し安堵を覚えた。

少年…天青竜司は凛と花陽に訊く。

竜「大丈夫か?」

花「は、はい…」

凛「大丈夫……です」

竜「そうか。なら俺から離れるな」

そう言って竜司は紫の恐竜…ギガノトサウルスに命令する。

竜「行け!ギガノト!」

「ゴガアアアアアアアア!!」

ギガノトサウルスは咆哮すると、アクロカントサウルスにタックル、尻尾の乱打、そしてまたタックルで吹き飛ばす。

竜「強さは同じ。ベストマッチだろ?」

そう竜司は余裕をこいてたが、アクロカントサウルスがその大きな口に炎を集めたことで、その余裕は崩れる。

竜「なっ!? 野性の恐竜は技は使えない筈!ということはこいつ……誰かの差し金か?」

そうこうしてる内にも、アクロカントサウルスは火球を放つ。

『ビッグファイアキャノン(爆炎大砲)』だ。

竜「ちっ!」

竜司は慌てて、ある技カードをディノホルダーにスラッシュする。

《パウパウパワー》

竜司はその技カードを投げると、その技カードは「パウパウサウルス」という恐竜に実体化。

「プゥオオオオオオオオン!!」

代わりにパウパウサウルスが、ビッグファイアキャノンを受ける。

ズボァアアアアアア!!

パウパウサウルスは攻撃を受けきると、カードに戻り、竜司の手に戻る。

竜「ありがとな?パウパウサウルス。んでもって!」

《デスグラインド》

技カードをスラッシュし、ディノホルダーを銃形態に変えて、技エネルギーを撃ち、ギガノトサウルスに吸収させる。

「ゴガアアアアアアアア!!」

ギガノトは吠えると、アクロカントサウルスを押し倒し、そのまま地面に引きずる。

Uターンして引きずり終わると、最後に屁で追撃した。

プゥンンンン……

アクロカントサウルスは屁の匂いを嗅いでしまい、悶絶する。

しかしこれでは戻らないので、竜司は超技を使う。

竜「これで最後だ…」

《ボルケーノバースト(爆炎壁攻)》

再びエネルギーを撃ち、ギガノトに吸収させる。

「ゴガアアアアアアアア!!」

ギガノトサウルスは炎をアクロカントサウルスに吐いて、追撃。

これを受けて、完全にアクロカントサウルスはカードに戻り、竜司はそれを拾う。

竜「ふぅ……戻れギガノト」

ギガノトサウルスをカードに戻しながら、溜め息を吐く竜司。

そんな時、何処からかパチパチと拍手の音が。

竜司と凛と花陽がそちらに目を向けると、そこには黒い覆面マスクにコウモリを象った黄色のサングラスをかけた、不審者がいた。

ご丁寧に焦げ茶色のローブを羽織って。

竜「コウモリ男?」

竜司の第一声がそれだった。

まぁそれも仕方ないだろう。

コウモリ男はそんな竜司の言葉を気にも止めず言う。

「流石だな、天青竜司。そのアクロカントサウルスはくれてやる。此方にはまだまだ手札はあるからな」

男は変声機を使っていた。

そんなコウモリ男は数枚の恐竜カードを竜司に見せる。

その中には、ギガスと呼ばれるティラノサウルスもいた。

竜「お前それ!……お前は一体何者だ?」

「ふん……何れ分かるさ…」

コウモリ男はそう言って、黒いディノホルダーから黒煙を巻いて、消え失せた。

竜「あっ!待て!」

慌てて竜司が追いかけるも、もうそこには誰もいなかった。

竜「……あいつがあの時の…」

竜司は顔を険しくさせていた。

そんな竜司を見て凛は、

凛「あ、あの……」

思わずこちらから声を掛けてしまった。

すると、竜司はその顔をクシャっと笑顔に歪ませ、こう言った。

竜「怪我は無いか?」

凛「あ、はい…」

あまりに普通の言葉に、凛は普通の返しをするという事しか出来なかった。

それに満足した竜司はその場を去ろうとするが、凛が呼び止める。

凛「あの!何かお礼を!」

しかし竜司は手を振る。

竜「要らないよ。見返りを求めて助けるのは、悪とやってることは同じだからな。それに……誰かを助けると、自然と顔がクシャってなるんだ。それが俺は好きでな?まぁ、自己満足だ」

竜司はそう言って断った。

そんな竜司を見て、凛は自分の中の何かが崩れた。

当たり前と思っていたのが崩れた瞬間だった。

良い意味で。

それは花陽も同じだった。

故に、

凛「……ふふっ、あはは!なんか面白い人だにゃー!」

花「くすっ……。そうだねっ」

可笑しくて笑ってしまった。

竜司はそれを見て、特に何か思うこともなく、踵を返すが、また凛に呼び止められた。

凛「あ、あの!!」

凛はどうしても聞きたかった。

竜「ん?」

自分達を助けてくれた、恐竜使いの名前を。

凛「凛は星空凛って言います!! あの、あ、あなたの名前は何ですか!?」

花「わ、私は!小泉花陽と、い、言います……」

こちらの名前を聞くなり、竜司は再び顔をクシャっと歪ませ、口を開いた。

竜「天才科学者にして天才恐竜学者、天青竜司だ。また何処かで会おう。See you」

そう言って、竜司は今度こそ去った。




ーーーーーーーーーー



竜司との邂逅を終えたコウモリ男こと、氷室玄斗は自分の家への帰路についていた。

そこに、妙な人物が現れた。

血のように真っ赤なローブを羽織り、真っ赤なヘルメットを被っていた。

その真っ赤なヘルメットには、翠色のコブラの意匠が凝らされ、管のようなものが沢山ある。

「随分呆気なかったな~?」

男の声だった。

しかも嘲笑する感じ。

氷室は鼻を鳴らして、その人物の名前を言う。

「ふん……何の用だ?南惣助…」

「おいおい……今の俺は南ことりの父である、南惣助じゃない。ブラッドスタークだ。まぁいいさ…。今日はこれを渡しに来た」

そう言って、南惣助…もといブラッドスタークは、正面に黄色のコウモリの意匠が凝らされ、同じく管が沢山ある黒いヘルメットを氷室に投げる。

氷室は上手くキャッチする。

「あの黒い覆面じゃ格好がつかんからな~。じゃあな?チャオ♪」

そう言って、ブラッドスタークは血のように真っ赤なディノホルダーから黒煙を吹いて、姿を消した。




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Game#5

主人公が持ってる恐竜カード一覧って、あった方がいいですか?


竜司side


ピピピッ!!と、朝を知らせる大音量の時計のアラームがなる。

それを少し乱暴に手で止める。

再び襲ってくる眠気に負けそうな体に鞭を打ち、気だるげにゆっくりと起きる。

時刻は朝の7時。

もっと寝たいが、俺だけ事情が事情だし、準備するか……。

そしてベッドから這い出て、洗面所に向かう。

鏡を見ると、やはりというか、一部ピョコンと寝癖が立っている。

ワシャワシャしても直らないので、そのまま放置する。

適当に朝飯を作って食べ、テレビをつけると、昨日のことが流れていた。

絶滅した筈の恐竜が秋葉原で暴れ、尚且つ死傷者を出したことは大きく、どの番組でも同じ内容だった。

さらにその事で、世界中のジュラシック・パーク施設に矛先が向いていた。

理由としては、ジュラシック・パーク施設のある北アメリカ、中国、ロシア、イギリス、南アメリカの五つの何れかが日本へのテロ行為として恐竜を送ってきたのではないかというバカバカしい理由。

終いには恐竜を最初に復活させた俺は「悪魔の科学者」として叩かれていた。

まぁ別に構わんが…。

それより音ノ木坂に急がねば。

なんせ今日は…………音ノ木坂の始業式だから。




ーーーーーーーーーー




桜が舞い散る道をゆっくり俺は歩く。

穂乃果達とは一緒に行かないのかって?

まだ正式な生徒じゃない俺が行っても、周りの生徒が困惑するだけだ。

なのでこうして一人歩いて……あっ。

そうだバイクで行きゃいいんだ!

歩くの面倒だなって思ってたけど、俺には普段はスマホなバイクがある!

ってな訳で早速バイクモードを起動。

俺のスマホは大型バイクに変形し、俺はそれに跨がる。

竜「じゃあ早速音ノ木坂にレッツゴー!」

そう言って、俺はエンジンを吹かして音ノ木坂に向かった。

………のだが、途中でことりのお父さん、南惣助さんに捕まり、減点と補導をされた。

原因はスピードの出しすぎ。

因みに惣助さんは元は俺の姉さんに恐竜のいろはを教えた学者、今は警察官として働いてるらしい。

「全く。久しぶりに会ったと思ったらね~。次からは気をつけてね?」

竜「はい……」

「じゃあもう行っていいよ?チャオ♪」

竜「ども…」

こうして再出発した。


竜司sideoff





◎side


竜司が去った後、南惣助は血のように真っ赤で翠色のコブラの意匠が凝らされたヘルメット・ブラッドスタークメットを頭に被り、真っ赤なローブを羽織り、同じく真っ赤なディノホルダーを取り出し、二枚の恐竜カードを取った。

「ちょっと遊んでやるかな?」

真っ赤なディノホルダー…『ブラッドディノホルダー』にカードをスラッシュする。

《セントロサウルス》

《エウセントロサウルス》

「ほら行け」

ブラッドスタークは、二枚の恐竜カードを空中高くに放った。


◎sideoff





竜司side


なんやかんやで音ノ木坂学院に着いた。

まだ時間に大分余裕があるせいか、俺以外に登校している生徒はいない。

とりあえず校門を超えたけど、確か穂乃果のお婆さんの代から音ノ木はあったらしいけど……その割には校舎とかは今も大分綺麗だな。

普通に立派な学校だわ。

桜の木が続く道を歩いていき、校舎の中に入って、上履きに履き替える。

外履きの靴は適当な所に置いた。

さてさて理事長室はどこかな~………おっ、あったあった。

目の前にあったマップを見て、理事長室に向かう。

右に曲がり、そこから階段を上ったり、廊下を歩いたりして4階に向かう。

そして理事長室と書かれているプレートを目に、ドアをノックをする。

「どうぞ」

テンプレな返事がドアの奥から来る。

それを合図にドアを開ける。

竜「失礼しま~す。この度、音ノ木坂学院に転入してきました。天青竜司です。よろしくお願いします」

「こちらこそよろしくお願いします。待ってましたよ、天青竜司君」

俺にそう返してきたのは、理事長、もといことりの母親の南雛さん。

外見はことりと姉妹と間違えられてもおかしくない若さだ。

なんてことを思っていると、

「さて、今ここには私達2人しかいないんだし、そんなに硬くしなくていいわよ竜司君。久しぶりに会ったんだし、少し話をしない?」

そんな事を言ってくる。

竜「えっ?いいんですか?」

思わず聞き返す。

随分簡単に終わったからな~。

「いいのよ。環ちゃんから転入の連絡が来た時から、どれだけ成長したか楽しみにしていたの」

竜「は、はあ」

微笑みながらこちらに視線を向けて来る。

結構自由だな、この人……。

「ことりとは昨日もう会ったんでしょ?」

竜「……何で知ってるんですか?」

「昨日の夜、ことりが嬉しそうに竜司君の事を話していたからね」

竜「あっ、成る程……」

情報源はことりか。

そりゃ納得。

すると雛さんは真剣な顔になる。

「今朝のニュース見たんだけど、大丈夫?」

竜「俺が悪魔の科学者呼ばわりされていることですか?」

「ええ……」

やっぱり知ってるよな。

「ことり、竜司君のこと心配してたわよ?それに少し怒ってたわ。『竜君を悪魔呼ばわりするなんて許せない!』ってね…」

まぁあの優しいことりだからな…。

竜「まぁなんとかなるっしょ?」

「あなたがそこまで言うならいいけど……何かあったら言ってね?」

この人もこの人で優しいな。

竜「はい…」

そう俺が返事した時だ。

「「グオオオオオオオオオオン!!」」

恐竜2匹分の咆哮が聞こえた。

しかも校門の方から。

「なにっ!?」

雛さんが慌てる中、俺は理事長室の窓から外を見る。

そこには、鼻の上に長い一本角を持つ赤と黄色の2匹の似たような角竜がいた。

竜「……セントロサウルスとエウセントロサウルスか……。雛さん!雛さんはここにいてください!」

俺はそう言って、理事長室を出る。

「あっ!? 竜司君!?」

雛さんの止める声も振り切って。



ーーーーーーーーー




校門の辺りに着いた俺はディノホルダーを取り出し、本型ホルダーからは、二枚の恐竜カードを取り、スラッシュ。

《スティラコサウルス》《トリケラトプス》

女性声でアナウンスされ、二枚の恐竜カードは電気を帯びる。

それを目の前のセントロサウルス達に向かって投げる。

すると実体化する。

一体は代表的な角竜で、胴体は山吹色で、襟飾りの部分は虹色に光り、3本の角を持つ恐竜・トリケラトプス。

もう一体は、黒の胴体に黄色の雷模様が走り、襟飾りには六本の角が生え、鼻には大きな角が一本生えている角竜・スティラコサウルスだ。

「「グオオオオオオオオオオン!!」」

スティラコサウルスとトリケラトプスは吠えると、それぞれトリケラはセントロに、スティラコはエウセントロに向かって行く。

お互いの角を何度かぶつけ、しばらく押し合う。

俺がその状況を見ていると、横から誰かに声をかけられた。

「随分盛り上がってるね~」

竜「……コウモリの次はコブラかよ…」

そこにいたのは、真っ赤なローブに身を包み、翠色のコブラの意匠が凝らされた赤いヘルメットを被っていた不審者だった。

「そう邪険にするなよ~。もっと盛り上げてやるからよ」

そう言ってそいつは、真っ赤なディノホルダーを取り出し、何かの技カードをスラッシュした。

《ダイノスイング》《ヘルサンド》

竜「お前!」

「ふふん♪」

コブラ男は俺を嘲笑い、真っ赤なディノホルダーを銃形態に変えて、技エネルギー弾を撃った。

それらはセントロサウルスとエウセントロサウルスに吸収され、2体は咆哮する。

「「グオオオオオオオオオオン!!」」

そしてセントロはトリケラの尻尾に噛みつき、ぶんぶん振り回す。

一回、2回、三回と。

やがてその回転数は早くなり、セントロはトリケラを投げ飛ばした。

ダイノスイングが決まる。

トリケラトプスは地面を滑る。

「グオオオオオオン……」

ちっ……結構効いてるな。

一方のスティラコサウルスもエウセントロサウルスに横から体当たりされ、音ノ木坂の壁にぶつかった。

音ノ木坂の壁が凹む。

竜「テメー……あれ狙ってやっただろ?」

流石にヘルサンドをここで使ったのには、イラッと来た。

穂乃果達の学校破損させやがって。

が、コブラ男は意に返さない。

「お前なら簡単に直せるだろ?天才科学者さんよ…」

そういう問題じゃねぇよ。

確かに直せるけど……。

俺は特殊な技カードを二枚スラッシュした。

《かいふく》《はんげきかいふく》

その二枚を投げると、それぞれから「クリオロフォサウルス」という恐竜が出てきて、トリケラトプスとスティラコサウルスの周りを旋回。

虹色のオーラで2体を回復し、オマケで校舎の壁も直す。

竜「お返しだ…」

俺は特殊な技カードをスラッシュ。

《プロトタックル》

それを放ると、肌色の体色をした角の無い角竜・プロトケラトプスが3体出現。

エウセントロサウルスに同時にタックルして、スティラコサウルスから距離を取らせる。

竜「これで終わり。勝利の法則は決まった!」

俺は超技カードを二枚スラッシュした。

《エレクトリックチャージ(来雷蓄電)》

《ギガライディーン(激力雷電)》

俺はディノホルダーを銃形態に変えて、雷の弾を撃った。

それらはトリケラトプスとスティラコサウルスにそれぞれ吸収され、スティラコサウルスは鼻角に雷の玉を蓄電。

エウセントロサウルスに雷撃を放って、エウセントロサウルスを感電させる。

エウセントロサウルスはカードに戻る。

一方のトリケラトプスも体中に電気を蓄電。

「グゴオオオオオオオオン!!」

吠えるとそのままセントロサウルスにタックル。

セントロサウルスは吹き飛ばされ、地面に激突して、カードに戻った。

俺は歩いて、その二枚を拾い、本型ホルダーに回収。

周りを見ると、コブラ男はもういなかった。

竜「ちっ……逃げたか」

舌打ちしてると、雛さんが来た。

「竜司君!大丈夫!?」

竜「ええ……それよりさっきのことは他言無用でお願いします」

「……分かったわ。あなたにはこの学校のピンチを救ってもらった恩もあるから。今は何も聞かないわ」

雛さんは難しい顔をしていたが、折れてくれた。

しかし次の瞬間には、小悪魔な笑みを浮かべてこう言った。












「その代わり……この学校には男子生徒は君を含めて2人しかいません。肩身狭いと思うけど、頑張ってね?」








竜「………………最悪だ…」




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Game#6





俺は自分の耳を疑ったが、確かに雛さんはこう言った。







男子生徒は俺を含めて2人……と。







雛さんは落ち着いた様子で、しかし決して明るい表情ではなかった。

「去年から共学になったんだけど、男子生徒が思いの他入ってこなかったのよ…。唯一編入という形で入ってきた子も3年生。来年にはもう男子生徒はあなた一人になるのよ……」

共学になったばかりで男子が少ないのは覚悟していた。

だが、たった2人で、さらには来年には俺1人になるとは思ってもいなかった。

その事実が俺に余裕を無くさせる。

「竜司君にはちょっと苦労させちゃうかもしれないけど、そこはことり達にフォローしてもらうって感じで頑張ってね」

申し訳なさそうな顔をしながら雛さんが言ってくる。

が、次の瞬間には悪戯めいた顔で言う。

「それに、なんだかハーレムみたいな感じで楽しそうじゃない?」

竜「冗談は程々にお願いします…」

俺はハーレムなんてものには興味は無いよ。

それにハーレムは美人の女の子に囲まれるという点だけ見れば良いものかもしれない。

が、現実は甘くない。

女の子の人数が多ければ多いほど、養う金はたくさんいるし、甲斐性もそれだけ求められる。

夜の営みだって体力が求められる。

デメリットが目立つのだ。

そんなのは漫画の中だけで十分だ。

なので俺はハーレムには一切興味は無い。

「でも、今更転校を無しには出来ないわよ?」

竜「分かってますよ…」

だから精一杯気長にやるさ。

俺のペースで。

「それじゃあ、しっかり切り替えて音ノ木での学校生活を謳歌してちょうだい。人生1度きりの高校生活、悔いの無いようにね……。竜司君のために、私達教師陣も『最後まで』全力であなたをサポートしていくわ」

つい先程まであった陰りの表情はなくなっており、大人特有のような温かい笑みで俺を見据える雛さん。

俺は少しだけ笑って言う。

竜「ではお言葉に甘えて。期待してますよ?」

そう言って、背を向けて歩き出した。







「……せっかく転校して来てくれたのに、ごめんね、竜司君……」







雛さんがそんなセリフを零していたのも知らずに。





ーーーーーーーーー




雛さんと別れた俺は屋上に来た。

やりたいことがあった為だ。

俺はディノホルダーを取り出し、モニター部分を起動。

姉さんのスマホにコールを入れる。

数回のコール音の後、モニターに姉さんが映る。

『はーい、どうしたの竜司?』

竜「ちょっと姉さんの顔を見たいのと、ブルー達の様子をね?」

こっちに着いてから録に電話してなかったからな。

『あら、嬉しいわね。私は元気よ?ただ……ブルー達はあなたがいなくなったからか、ちょっとイライラしてるわね…』

そう言うと姉さんはブルー達の様子を見せてくれる。

『プゥワァァァァァァァン!! プゥワァン!!』

『キャオン!! キャオン!!』

確かにいつも以上に鳴きまくってる。

『実はこの状態の時に入った飼育員が襲われて、大怪我を負ったの』

竜「マジで?」

『マジで』

それはえらいこっちゃ。

下手したらブルー達が処分されかねない。

そう考えてると、姉さんがある案を出してきた。

『そこで!ブルー達をデータ化して、あなたの所に送るわ。ブルー達はあなたの言うことは絶対的に聞くからね♪』

竜「そんな事が出来るのか?」

『勿論。ヴェロキラプトルに関係するカードをディノホルダーにスラッシュして?』

俺は姉さんの言うとおり、ホルダーから「最後の力」という特殊技カードを取り出し、ディノホルダーにスラッシュする。

するとスラッシュした技カードが粒子化して消える。

竜「あれ?」

怪訝にディノホルダーのモニターを見ると、姉さんの手にカードがあり、姉さんはそのカードをコピー機みたいな外見の機械に挿入。

掃除機のホースみたいな外見の管をブルー達に向けると、ブルー達ラプトル4姉妹がデータ化して消える。

『よしよし…』

姉さんはコピー機みたいな外見の機械にある、スイッチを押す。

瞬間、俺の手に消えた「最後の力」のカードが戻って来るが、そこに描かれているラプトルは、ブルー達ラプトル4姉妹に変わっていた。

『実験成功!竜司、スラッシュしてみて?』

竜「分かった…」

姉さんの言うとおり、「最後の力」をスラッシュ。

《最後の力》

カードを放ると、ブルー達ヴェロキラプトル4姉妹が現れた。

竜「ブルー……チャーリー、デルタ、エコー…」

俺が名前を言うと、ブルー達はこちらに向く。

そして小さく嘶く。

「キュエッエッエッエッエッエッエッ……」

まるで、「会いたかった」と言わんばかりだ。

ブルーが最初に俺に歩みより、頭を差し出してきた。

俺はブルーの頭を撫でる。

………久しぶりの感覚。

こうして俺は、ブルー達と再会した。




ーーーーーーーー




学校の屋上でやることを終えた後、職員室に向かう。

そして現在、俺の担任と思われる教師と向かい合っているのだが……。

「あたしがあんたの担任の山田博子だ。よろしくな、ぼっち候補の男子君」

竜「………最悪だ」

「何でだよ!?」

竜「初対面でいきなり生徒をディスって来るような人に言われたくない…」

第一声がこれだから、正直気が滅入る。

「いや~…それはちょっとした親睦を深めようと思ってだな?ここはフランクにしようと思ったんだよ」

全く悪びれてない様子の先生。

竜「余計なお世話です。というか体調悪いんで帰っていいですか?あっ、決してあなたのせいでは無いんで」

「なぁ?それ明らかにあたしを責めてるだろ?分かるんだぞ?このヤロー…」

ちっ……勘のいい奴は嫌いだよ。

それにしても、周りはみんな女性だ。

先生達を見ても全員が女性だ。

女子高はやはり教師も全員女性らしい。

俺もだが、3年生の男子も肩身狭い思いしたんだろうな~。

「よし!そろそろ始業式始まるし、生徒もぞくぞくと集まってるし、早く講堂に行くぞ天青」

ってな訳で、講堂に向かった。



ーーーーーーーー




竜「ここが講堂なのか……」

「いいから早く来い。もう始まるぞ」

などと呟いてる俺に対し、先生は急かしながら手招きしてくる。

入ってみると、既に他の生徒は全員座っている様だった。

因みに俺は山田先生の隣に立っている。

理由は察して……。

講堂の中自体は広くもなく、狭い訳でもなく……いや、少し狭いな。

この音ノ木は元々生徒数が少ないようで、3年生が3クラス、2年生が2クラス、1年生が1クラス。

300人と居ないこの学校。

だからこの講堂自体小さくても、この生徒数なら無理なく入る。

竜「本当に少ないな……」

「まぁここは『特別人気のある学校』じゃ無いからな…」

俺の呟きを拾った山田先生が言う。

竜「というと?」

「UTX学院。秋葉原にある今1番人気の女子高だよ」

竜「何で人気があるんで?」

「A-RISEだよ」

そう、あっけらかんと答えた。

「今流行りのスクールアイドル?か何だかのグループで、そのA-RISEってのが1番人気らしくてな。それのせいで年々どんどんこっちに入ってくる生徒が少なくなっていった訳だ」

竜「スクールアイドル……A-RISE……」

う~ん……アメリカにいたから全く分からんな。

「まぁアメリカにいたお前にはピンとこんだろうが……」

ピンポイントで俺の心境当ててきやがった。

まぁそれで生徒を増やすための共学化を計ったが失敗に終わった……という所か?

理不尽だな。

まぁこの世は弱肉強食。

恐竜の世界と同じだな。

そんな事を思ってると、理事長の話が始まる。

しかしそれは予想だにしなかった事だった。







「まだ正式に決まった訳ではないのですが、ここにいる今の生徒をもって、この音ノ木坂学院は廃校になるかもしれません」








竜「……………ウソーン」








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Game#7

衝撃の事実が知らされた始業式が終わって俺は今、職員室にいた。

そのまま教室に直行する訳にもいかないし、何よりその教室がどこにあるか分からないからである。

「あんまり落ち込んでなさそうだな」

教室に行く準備をしてる先生がふと、そんな事を言ってきた。

竜「今日来たばかりのヤツに何を期待してるんです?」

「お前……結構ドライだよな?」

そんな事言われても分からんな。

竜「まぁ、来年後輩が出来ないのはちょっと残念ですね」

まぁ本当にちょっとだけど…。

「……なんかお前なら大丈夫そうな気がするよ」

竜「は?」

「何でもない。そろそろ行くぞ」

そう言って椅子から立つ先生に俺は訊く。

竜「そういう先生こそ、あまり落ち込んでなさそうですけど?」

さっきの講堂では少し落ち込んでいる様に見えた。

だからこそ質問してみる。

「まぁ理事長から事前に教師陣には聞かされていたからな。確かに最初は多少落ち込んだりもした。自分の母校でもあり、大好きな学校が無くなるんだ。そんなの悲しくならない方がおかしいだろ?でもすぐに考えは変わったよ……あたしはこれでも教師だ。そこはもう割り切らないとダメだって事も分かってる。だから、今いる生徒だけでも、あたし達教師が生徒を元気に見送ってやらないとダメだろ?」

竜「……」

この人は全てを分かりきった上で割り切って、今のこの現状を少しでも明るくしようと思ってるんだ。

でも、普通ならそんな事は簡単には出来ない。

それが大切なものなら尚更。

竜「……ちょっと見直しました」

「お前……ちょいちょい失礼な?」

そんなバカな事をやって、教室に向かった。

その間、俺も先生も互いに無言だった。




ーーーーーーー



歩く事数分。

先生が扉の前で立ち止まる。

ここが俺のクラスか。

「じゃあここで少し待ってろ。呼んだら入ってこい」

竜「はい」

そう言って先生はガラガラと扉を開けて入っていく。

「うるさいぞお前らー。早く席に着けー」

中から先生の声が聞こえて来る。

すると、

「先生、廃校ってどういう事ですか!?」

「なくなっちゃうんですかここ!?」

「私達どうなるんですか?」

口々に生徒からの質問が聞こえる。

当然の結果だ。

いきなり廃校と告げられて、そのまま黙ってられるはずがない。

さて、先生の対応をお手並み拝見させてもらおう。

「んなもんあたしが知る訳ないだろ。これより廃校に関する質問は一切受け付けん!」

「「「えええええええええ!!!?」」」

ごり押しかよ……。

ちょっと見損なったぞ。

「それよりだな。よーく聞けお前ら。さっき理事長が廃校の事と一緒に言ってた男子の転校生だが……実はこのクラスに入る事になった」

瞬間、クラスがまた違う意味でざわつき始めた。

「えー!それ本当ですか!?」

「うわ~、どんな男子なんだろ~」

「氷室先輩みたいな人かな~?」

氷室?

その人が男子の先輩か。

にしても何処かで聞いたような……。

「うーし、空気が変わった所でさっそく転校生に『俺、参上!』してもらおうか。おーい、入って来ていいぞ」

中から先生が俺を呼ぶ声がする。

俺は扉を開け、教卓まで進む。

チラリと席を見回すと、目を見開いている海未やことりがいた。

何やら俺を見て驚いてるようだ。

あっ、そういや音ノ木に編入すること言ってなかったな。

で、穂乃果は窓に凭れて寝てるな。

まぁいい。

ビシッと決めよう。

そして俺は自己紹介する。








竜「テェン↑才恐竜学者の天青竜司だ。程々によろしく」











やべっ……『天』の所ちょっと裏返ちゃった。

みんな俺をキョトンと見ている。

さっきまで驚いていた海未やことりまでキョトンとしている。

「声、裏返ったな?」

竜「それ言います?」

ツッコまないで欲しい所にツッコミ入れやがって。

穂「あぁー!! 何で竜ちゃんがここにいるのー!?」

竜「うん。何でお前は今頃になって気付いてるのかな?バカなのかな?」

変な所で入ってくんな!

「何だ高坂、お前こいつと知り合いなのか?」

穂「はいっ!私とことりちゃんと海未ちゃんは竜ちゃんの幼馴染なんです!ていうか何で竜ちゃんがここにいるの!?」

「良かったな。これだけ知り合いがいるなら学校生活も問題なさそうじゃないか。テェン↑才恐竜学者君」

竜「あんたラプトルの餌にするぞ?」

マジでそんな事を考えた。

まぁなんとかクラスメイトに受け入れて貰え、席は穂乃果の後ろになった。

そしてホームルーム終了。

さっさと帰る準備をする。

穂「竜ちゃん帰ろ!色々聞きたい事もあるし!」

そうしてると前から穂乃果が顔を近づけて来る。

いや、近いよバカ。

竜「分かったから離れろ。とりあえず教室の外で待っててくれ」

穂乃果は「うんっ!」と元気よく返事をしてから教室の外へ出ていく。

粗方片付け、席を立つ。

その時、

「ねぇねぇ天青君。質問とかあるんだけどいいかな?」

「あ、私もー!」

「そんなにいっぺんに聞いたら天青君困っちゃうよ?」

女子3人組に声を掛けられた。

おっ、これは転校生によくあるイベントの質問攻めってやつか。

だが今の俺は穂乃果を待たせているので、質問に答えてる暇はない。

竜「悪い。また今度な?穂乃果を待たせてんだ」

「ありゃ、そうなの?それなら仕方ないかー」

「というか質問って質問もないんだけどね。私達も」

竜「ん?じゃあ一体何なんだ?」

質問がないなら俺を呼び止める理由はないはずだけど。

「穂乃果達の幼馴染なら私達も仲良くしたいんだ。穂乃果は大事な友達だからねっ。だから簡単な自己紹介しようって訳」

竜「成る程……」

そういうことか。

そして3人は自己紹介してくれる。

「私は原村ヒデコ。普通にヒデコって呼んでくれていいよ」

「私は平沢フミコ。私もフミコって呼んでくれていいからね」

「私は佐藤ミカだよ。ミカって呼んでね!」

ショートヘアの子がヒデコ、ポニーテールの子がフミコ、おさげで小柄な元気そうな子がミカらしい。

ヒフミトリオだな。

よし、覚えた!

竜「よろしく。じゃあまたな、ヒフミ!」

そして俺は教室を出た。

「あれ?なんか短縮されたような…」

「私も思うよ…」

「それな!」




ーーーーーーーーー





竜「悪い、待たせた」

小走りで下駄箱まで向かうと、穂乃果の他に海未とことりもいた。

穂「もう~、遅いよ竜ちゃんっ」

竜「うるさい。さっさと帰るぞ」

穂「あっ!待ってよ~」

先に進む俺の後を慌てて穂乃果が追いかけて来て、その後を海未とことりがついてくる。

そしてしばらく進んだ時に、穂乃果が訊いてくる。

穂「それで、最初に戻るけど、何で竜ちゃんが音ノ木にいるの?」

海未とことりもそれに興味あるのか、顔をこちらに向けて来る。

まぁ気になるのは当たり前か。

竜「何でも何も、転校してきたからだよ」

穂「それ私達聞いてないんだけど?」

竜「そりゃ言って無いからな?」

「「「…………」」」

3人が無言のジト目を向けてくる。

なんだよその目……。

海未が嘆息して言う。

海「まぁ、昔から竜司は何かと大事な事を言うのを忘れることがありますから。今更なんですよね……」

穂「竜ちゃん抜けてるよね~。流石は自称天才恐竜学者で自称天才科学者!」

竜「……」

あれ?

俺今このアホにバカにされてる?

なんかムカついて来た……。

竜「なぁ穂乃果…」

穂「ん?」

竜「ティラノに喰われるか。トリケラトプスに串刺しにされるか。ラプトルに無残にひっかかれるか。どれがいい?」

穂「それ穂乃果に死ねって言ってるよね!?」

竜「ああ、そうだ」

穂「酷い!!」

自業自得だろ?

こ「まぁまぁ2人共。一旦落ち着こう?ねっ?」

そうしてると、ことりが仲介に入ってくる。

相変わらずの脳トロボイス。

その一言で俺と穂乃果はとりあえずケンカを止める。

そんな時だ。









《リリエンステルヌス》《カンプトサウルス》









何処からかそんな音声が聞こえ、次の瞬間には、俺達の前に緑色の体に、黄色の二枚の小さいトサカを持つ小型の肉食恐竜と、緑色の中型の鳥脚類の恐竜が現れた!

リリエンステルヌスと、カンプトサウルスか。

その後ろには、1本の長い管があり、黄色のコウモリの意匠が凝らされた黒いヘルメットを被ったヤツがいた。

あのコウモリ男!

二体同時投入かよ。

穂「竜ちゃん……っ」

海「竜司…っ」

こ「竜くん…っ」

穂乃果と海未とことりは、揃って俺の後ろに隠れるようにくっつく。

竜「3人共、あの塀に隠れろ……」

穂「う、うん!」

こ「分かった!」

海「気をつけてくださいね?」

そう言って3人は避難する。

俺はディノホルダーと本型ホルダーを取り出し、コウモリ男に訊く。

竜「随分と大胆だな?コウモリ男」

「コウモリ男はやめろ。俺はナイトローグだ……」

ナイトローグ……ね~。

竜「その黒いディノホルダーはどうやって手に入れた?」

「教える義理は無い…」

竜「だろうな……んじゃあ…」

俺は本型ホルダーから恐竜カードを二枚取る。

そして宣戦布告する。









竜「実験を始めようか?」









ディノホルダーに二枚共スラッシュする。

《ゴジラサウルス》《オウラノサウルス》

1枚は突風が吹き、もう1枚は草が芽吹き、俺はその二枚を放って実体化させる。

一体は黒と山吹色で構成された小型の肉食恐竜・ゴジラサウルス。

もう一体は肌色に桃色のラインが走り、背中に大きな帆がある草食恐竜・オウラノサウルスだ。

「クシャアアアアアアアア!!」

「プゥアアアアアアアアン!!」

二体は咆哮する。

そしてオウラノサウルスはカンプトサウルスに、ゴジラサウルスはリリエンステルヌスに向かって行く。

ゴジラサウルスとリリエンステルヌスは互いに噛みついたりする。

ゴジラサウルスが咬めば、リリエンステルヌスはそれを首を激しく横に振って、振り払う。

そしてゴジラサウルスに噛みつく。

「クシャアアアアアアアア!!」

ゴジラサウルスも首を激しく横に振って、リリエンステルヌスを振り払う。

そしてまた噛みつく。

それの応酬。

カンプトサウルスとオウラノサウルスは、互いにタックルしたり、鳴き声で威嚇したりする。

「プゥアアアアアアアア!!」

「プゥアアアアアアアアアア!!」

その隙に、ナイトローグがこちらに銃形態にした黒いディノホルダー……さしづめナイトディノホルダーかな?

それを俺に向けて、光弾を撃ってきた!

バン!バン!バン!バン!バン!

竜「くっ…!」

俺は前転で避け、ディノホルダーを銃形態に変え、同じく光弾を撃つ。

バン!バン!バン!バン!バン!

「ちっ!」

ナイトローグもそれを避ける。

俺はその隙に、超技カードをスラッシュする。

《エッグスリボルバー(朋卵弾丸)》

《ベストマッチ!》

竜「ベストマッチ……来たァァァァァァ!!」

穂「へっ!? なにっ!?」

俺の歓喜の声に穂乃果達が驚く。

説明しよう。

ベストマッチとは、必殺技のことで、その技の威力を最大限上げられる恐竜と技の相性が合致した時のみに発動するモノ。

技カードにはグー、チョキ、パーが記されていて、そのグーチョキパーの何れかが、どの恐竜にも記されているのだが、恐竜カードではそれが隠されているので、ぶっちゃけ延々と試すしか無いのだ。

なのにそれがここで1つ証明された。

これほど嬉しいものはない。

因みにトリケラとスティラコの時もベストマッチは発生した筈なんだが、いかんせん。

どちらもチョキなので上手く発生しなかった。

どうやらオウラノサウルスはグーらしい。

ともかく緑色のエネルギー弾を撃ち、オウラノサウルスに吸収させる。

「プゥアアアアアアアア!!」

オウラノサウルスは、卵泥棒の意味を持つ恐竜・オヴィラプトルを呼ぶ。

3体のオヴィラプトルが何処からかやって来て、卵を口から連射する。

ズバババババババババババババババ!!

大量の卵が当たり、黄身まみれになってフラフラするカンプトサウルスだが、まだ立っている。

「ふん…」

ナイトローグもカードをスラッシュした。

《ビッグフットアサルト(朋巨大圧)》

ちっ!

超技か!

竜「やらせるか!」

俺も相討ち覚悟で超技カードをスラッシュする。

《メタルウィング(朋鋼翼撃)》

俺とナイトローグは同時にエネルギー弾を吸収させる。

「「プゥアアアアアアアア!!」」

瞬間、二体が鳴くのと同時に、オウラノサウルスの後ろにセイスモサウルスが来て、オウラノサウルスはそれを見上げた瞬間、セイスモサウルスの前肢に踏み潰され、カンプトサウルスは3体のプテラノドンの翼カッターを三回受けて、倒れる。

そして同時にカードに戻り、俺は急いでオウラノサウルスのカードとカンプトサウルスのカードを拾う。

そしてゴジラサウルスの方を見ると、リリエンステルヌスと咆哮しあって威嚇していた。

ナイトローグは何かのカードをスラッシュした。

《ストンピングハンマー》

そして技エネルギー弾を撃ち、リリエンステルヌスはそれを吸収。

ゴジラサウルスを尻尾で撃ち据えて倒し、その上に乗って三回踏みつけた。

ドン!ドン!ドン!

ゴジラサウルスは地面に埋まる。

しかし地力で抜け出す。

まだまだ行けるな。

ナイトローグはまたもカードをスラッシュしようとするが、そうはさせない。

《わざふうじ》

俺はスラッシュしたカードをナイトローグに投げる。

するとカードは二体のトロオドンになり、ナイトローグの邪魔をする。

「「キエエエエエエエ!!」」

「ちっ!」

後退するナイトローグ。

その隙に、俺は風の超技カードをスラッシュ。

《ニンジャアタック(分身術攻)》

竜「勝利の法則は決まった!」

超技エネルギー弾を撃ち、ゴジラサウルスはそれを吸収。

「グァアアアアアアアア!!」

咆哮すると、リリエンステルヌスの周りを走って、6体に分身する。

穂「分身した!?」

こ「すごい!!」

フフ~ン…だろ?

そのままゴジラサウルスは6体それぞれリリエンステルヌスに突撃。

ゴジラサウルスは一体に戻り、合計6回の攻撃を受けたリリエンステルヌスはカードに戻った。

それと同時にトロオドンもカードになって、戻って来る。

俺がリリエンステルヌスのカードを回収するのをジッと見ていたナイトローグは俺に背を向けた。

竜「待て。お前らの目的はなんだ?」

そう訊くと、そいつは驚きの回答をした。

「恐竜による戦争さ……」

竜「なんだと!?」

衝撃を受けた俺を他所に、ナイトローグは黒煙を放って姿を消した。

穂「竜ちゃん……」

驚愕に染まっていた俺を穂乃果が心配するが、正直それどころじゃない。

恐竜を戦争の道具にするなんて大問題だ。

だが問題はこれだけじゃないのを、俺は後日知ることになる。





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Game#8


前の話で技名が1つ間違ってたので、直しました。


翌日。

ナイトローグからとんでも内容を聞かされても、俺達は音ノ木に来ていた。

そこで、廊下に貼り出されている1枚の紙を俺と幼馴染3人は見ていた。






「廃校」







そう書かれていた。

穂「嘘……廃校…?」

海「本当になってしまうんですね…」

こ「そんな………」

廃校のプリントを見た三人は驚愕に顔を染める。

まあ、仕方ないか。

俺はともかく、この三人は最初から通ってて、この学校が好きだからな…。

すると、突然穂乃果が後ろに倒れてきた。

竜「うおっ!? おい、どうした穂乃果!?」

たまたま後ろにいた俺が穂乃果を受け止める。

海「穂乃果!?」

こ「穂乃果ちゃん!?」

海未とことりも驚いて穂乃果に心配げに声をかける。

すると穂乃果は、

穂「わ…私の輝かしい高校生活がぁぁぁ~!!」

と言って、気を失った…。

えっ…ちょっと待って?

これどうしたらいいの?

海「気を失ったようですね……。すみませんが竜司。穂乃果を保健室に運んでくれませんか?」

海未がそう頼んできた。

竜「えっ?何で俺?」

わかっていても、つい聞いてしまう。

こ「竜くんが穂乃果ちゃんを丁度支えてるからだよ♪」

最悪だっ!!

予想通りの答えが返ってきた。

竜「つーか、俺まだ保健室の場所知らないから。このまま放置されても困るんだけど?」

こ「あっそっか。じゃあ私が案内するね?」

竜「じゃあ頼むわ」

そう言って俺は穂乃果を抱えて、ことりの後をついていく。

お姫様抱っこで…………。

竜「なぁ……なんか視線を感じるんだけど?」

海「それはそうでしょうね……」

こ「そんなお姫様抱っこで運んだらね~……」

ああ~…………成る程。

竜「………しくじったなぁ~……」

俺は遠い目をして、穂乃果を保健室に送り届けた。




ーーーーーーーーーー



保健室に穂乃果を送り、ベッドに寝かせた後。

俺は教室に戻り、そのまま授業を受け、今は休み時間。

しばらく海未とことりと駄弁ってると、穂乃果が戻ってきた。

しかし何だか落ち込んだ様子だ。

そんなに廃校がショックだったのか?

いや待て……。

あの穂乃果だ。

それもあるが、他にも理由がありそうだ。

こ「あ、穂乃果ちゃん、お帰り。大丈夫……穂乃果ちゃん?」

穂乃果が帰ってきた事に気づいたことりが声をかけるが、そのまま気づいてないのか、はたまた聞こえてないのか知らんが、スルーして自分の席に座る穂乃果。

次の瞬間、顔を手で覆い「学校が無くなる…」とブツブツ言っている。

あぁ…これは。

おおよその察しがついた。

こ「穂乃果ちゃん、そんなにこの学校が好きだったんだ…」

竜「いや、違うな…」

海「竜司の言うとおりです」

こ「ふぇ?」

どうやら海未も俺と同じ考えのようだ。

竜「多分、廃校が夢だと思ってたのに、気がついて教室に戻ろうとしたら、廃校のプリントが大量に貼ってあるのを見てしまい、現実を突きつけれた…。さらに、廃校がすぐだと思い、編入試験の事に頭を悩ませている。ってところだ」

こ「ふぇぇ~。すごいね竜くん」

海「すごいです竜司!! 寸分違わず私と同じ考えです」

竜「こいつほど考えの分かりやすい奴はいない」

天才じゃなくても分かる。

俺がそう海未とことりに自分の考えを披露してると、突然穂乃果は頭を上げ、

穂「どうしよう!? 私、全然勉強してない!!」

と言う。

突然の事に俺達は面食らう。

そして穂乃果は続けざまに言う。

穂「廃校になるって事は、他の高校に行かないといけないんだよね!? そうなったら編入試験とかしないといけないんだよね!? うわぁーん!どうしよぉぉぉう!!」

とまあ、わんわん泣きわめく。

そんな俺の考えが見事に的中した穂乃果に対して俺は、「ほらな…」という目線を向け、ことりは苦笑い、海未は「はぁ~」と呆れに近い溜め息。

海「穂乃果、落ち着き…」

穂「海未ちゃんやことりちゃん、竜ちゃんはいいよ!! 頭いいし、成績もそこそこいいし…。特に竜ちゃんは天才科学者だから試験なんて余裕だろうし…。でも、穂乃果は…穂乃果はぁぁぁぁぁぁ!!」

海未が落ち着かせようとするが、穂乃果は逆にさっきよりもわんわん泣きわめく。

なんか捨てられた仔犬みたいだ。

海「はぁ~……だから落ち着きなさい!!」

海未がそう言って穂乃果に冷静さを戻す。

海「私達が卒業するまで、学校はなくなりません」

そう言って、穂乃果に本当の事を教えた。

穂「へっ?」

それを聞いた穂乃果は目をパチクリさせていたが、すぐに「なぁ~んだ♪」と言って、上機嫌になった。

流石、単純バカ。

扱いやすいヤツだ。

そこでチャイムが鳴り、昼休みになった。

穂「じゃあお弁当食っべよう!♪」

そう言って穂乃果は、昼食であるパンを取り出す。

俺と海未、ことりも弁当を取り出すが、不意にことりが慌てる。

こ「あれ?……あれ!? あれ!?」

穂「どうしたの?ことりちゃん」

こ「お弁当……忘れちゃったみたい……」

「「ええ~!?」」

顔を青ざめさせたことりに、穂乃果と海未は驚きの声を上げた。

これは最悪な展開だな。

そう思ってると、教室のドアが開き、ことりの父親である南惣助さんが入ってきた。

「ことり~。お弁当届けに来たぞ~?」

こ「お父さん!?」

穂「あっ、ことりちゃんのお父さん!」

海「お久しぶりです」

「久しぶり、穂乃果ちゃん、海未ちゃん。竜司も」

竜「どうもです」

俺達が挨拶すると、惣助さんはことりに近づき、弁当を渡す。

「ことりはおっちょこちょいだな~。もう忘れちゃダメだぞ?」

こ「うん!ありがと~、お父さん」

ことりは弁当を受け取り笑顔になる。

穂「よかったね!ことりちゃん!」

こ「うん!」

すると惣助さんは不意に、ことりの耳元で何かをボソボソ言う。

「………それ2つあったが、1つは竜司の為に作った手作りだろ?頑張れよ?」

こ「ぴっ!?////」

瞬間、ことりは顔を赤くさせる。

何を言われたんだ?

海「そういえば入校許可証は取ってるんですか?見た所見当たりませんけど?」

海未の言う通り、惣助さんはそれらしき物をぶら下げていない。

これだと不審者扱いされるぞ。

「取ってないけど?」

「「「ええ~!!!?」」」

竜「何でだよ……」

あっけらかんと堂々と宣言した惣助さん。

ことりが言う。

こ「お母さんに怒られちゃうよ?」

しかし惣助さんはケラケラ笑って言う。

「はっはっはっはっ!雛が怒った所で全然恐くねぇよ!だってあいつ「へぇ~……。私ってそんなに恐くないんだ…」……あっ」

突如響いた第3の声。

それに誰か検討をつけた俺達は肩をすくめ、惣助さんは油の切れたロボットのようにギギギッと、後ろを向く。

そこには予想通り……









雛さんがいた。








こめかみをひくつかせて。

「惣助さん?」

「……はい」

「お話があります。私の部屋まで来てください♪」

笑顔だけど、目が笑ってない雛さんを見た惣助さんは、

「……はい」

ガクリと項垂れ、トボトボと雛さんについていった。

大の大人の男が美女に連行されるという絵面を見た俺達は、互いに頷く。

穂「行こっか?」

竜「ああ…」

こ「そうだね…」

海「ですね」

そして中庭に向かった。




ーーーーーーーーー




昼休み。

それはいつもの休み時間とは違って、生徒にとっての長めの自由時間とも言えよう。

早めに食べて自由時間を長く使う者もいたり、のんびり昼食を食べ、昼休みをまったりと過ごす者もいる中、俺は腐れ縁幼馴染3人と中庭のデカい木の下に座って昼食をとっていた。

因みに俺はことりから貰った弁当を食っている。

だって顔を赤くして、バレンタインチョコを渡す時みたく……

こ「これ!ことりが作ったお弁当なの……。食べてください!////」

なんて言われたら断れないだろ?

というか、渡されて受け取った時、穂乃果と海未がすごい剣幕で俺を見て、反対にことりは嬉しそうにはにかんでいたのが、メッチャ記憶に残ってる。

こ「学校が無くなるにしても、今いる生徒が卒業してからだから、早くても3年後だよ」

穂「良かった~。いやー、今日もパンが美味い!」

ことりの言葉を聞いて再び安堵した穂乃果はパンにかぶりつく。

やはり単純バカだ。

こ「でも、正式に決まったら、次から1年生は入って来なくなって、来年は2年と3年だけ……」

海「今の1年生は、後輩がずっと居ない事になるのですね……」

穂「そっか……」

3人が一斉に暗くなる。

やはりこの学校に愛着があるんだろう。

聞けばこの学校は伝統があって古く、穂乃果の祖母の代から揃ってこの音ノ木に通ってるらしい。

そりゃここで無くなるのは悲しいよな。

けど残念ながら俺にその気持ちが分かるはずもない。

竜「…………」

けど、こいつらの悲しそうな顔を見て、何も思わない程、俺は冷たくはない。

その時、







「ちょっといいかしら?」











と声をかけられた。

そこには、美しい金髪をポニーテールにした、上級生と思われる女生徒がいた。

誰……?

そう思っているのは俺だけじゃないみたいで、穂乃果もそんな顔をしていた。

金髪の人の後ろには、紫髪でお下げっぽいツインテールをした胸の大きい女生徒。

その側に、俺と同じ件の男子生徒がいた。

多分上級生かな?

この人が氷室……っていうか、1度会った事あるな。

竜「あんた……」

俺が氷室先輩と思われる人に声をかけると、その先輩も「やぁ、また会ったね」と返してくれる。

「なに?氷室君、彼の事知ってるの?」

「まぁね…」

金髪の人が氷室先輩に訊く。

当たりか。

金髪の先輩は「ふ~ん…」と言うと、再び此方に向く。

「あなたが昨日から転校してきた男子生徒の天青竜司君ね。私は音ノ木の生徒会長をやっている絢瀬絵里よ」

竜「よろしくです。美人の先輩」

絵「っ!?////」

俺流に挨拶すると、絢瀬先輩は頬を赤く染め、穂乃果達はなんか怖い笑顔で俺を見てくる。

あれ~?

おかしいな~……。

絵「コホン……えっと南さん?」

そんな空気を破るように、絢瀬先輩は咳払い1つすると、ことりに質問する。

絵「南さん。あなた理事長の娘さんよね?何か今日の事で聞いてない?」

こ「い、いえ。私も今日知ったばかりなので」

絵「そう、ならいいわ」

「ほな~」

質問するだけして、絢瀬先輩はその場を去ろうとする。

しかし、穂乃果が呼び止めて、質問する。

穂「あ、あの!その、本当に学校無くなっちゃうんですか?」

絵「…あなた達には関係ないわ」

「「「…………」」」

三人は落ち込んだ。

それもそうか。

自分達もこの学校の生徒なのに、ああ言われたらな…。

絵「それと天青君」

竜「ん?」

なんだ?

俺なんか言われんの?

そう身構えてると、拍子抜けする事を言われた。

絵「ずっと前に妹を助けてくれてありがとね?それじゃあ…」

そう言って今度こそ去ってゆく。

妹?

……ああ、そういや雪穂と一緒に助けた亜里沙って子となんか見た目は似てるな。

でも、性格はかなり厳しい人だな。

一番面倒なタイプだ。

すると、この場に残っていた氷室先輩が近づいてきて、

「気にしないでくれ。絢瀬も気が動転してるんだ」

と言ってきた。

穂「あ、いえ大丈夫です」

「ん、なら良いんだが…」

そう言って、氷室先輩も去っていく。

さて……これからどうするか。

そう思って穂乃果達を見てみると、何故か3人とも黙っていた。

3人共、少し俯いてるせいか表情がよく見えない。

まだ絢瀬先輩に言われたことが響いてるのかなと思いきや……





穂「竜ちゃん、さっき生徒会長の事口説いてたよね……?」

竜「………え?」

こ「竜くん、いつの間に生徒会長さんの妹さんを助けたの……?」

竜「……ん?」

海「竜司ったら、生徒会長を口説いたり、その妹さんと知らぬ間に親交を深めていたり、良い度胸をしていますね……?」

竜「親交は深めていないんだけど………?」

なんか雲行きが怪しい。

そして3人は同時にこう言った。








「「「覚悟はいい(ですね)?♪」」」











竜「………最悪だ」










俺はこの日を、一生後悔した。


竜司sideoff





◎side


竜司と別れた後、氷室は先に行った絵里と希に追い付いた。

絵「遅いわよ、何してたの氷室君?」

「別になにも。それより早く戻ろう…」

希「そうやね…」

絵「ええ。そういえば2人共。この音ノ木に恐竜が出たの知ってる?」

絵里は2人にそう訊く。

希「ううん。知らんけど?何でエリチは知ってるん?」

この事は理事長と竜司だけの秘密。

なのに何故絵里が知ってるのか?

絵里は言う。

絵「匿名で来たのよ。この音ノ木に恐竜が出たのを。まぁ、あんまり信用はしてないけど…」

そう言って絵里は切り上げるが、氷室が興味を持つ。

「ほぉ~。恐竜か。ならその話…」

氷室はそこまで言って、絵里の肩を組んで続けた。

「そこのホテルでその恐竜について朝まで語り明かそうか」

そう言って自然な流れで絵里を連れて行くが……。








絵「………ん?……はぁぁぁぁぁああああ!!!?////」









絵里の大きな叫びにより、失敗に終わった。





単純バカ=筋肉バカ


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Game#9

竜「前回のあらすじ!この天っ才科学者で、天っ才恐竜学者の俺が転校した音ノ木坂は廃校の危機に瀕していた!完!」

穂「終わらないからね!?」


竜司side


さて、あれから色々あって、穂乃果の発案で廃校を阻止するために音ノ木坂のいいところを探しだして、今は教室。

とりあえず、各々でいいところをそれぞれ挙げようという所だ。

穂「じゃあ、穂乃果から!うーんと、歴史がある!」

竜「なるほど」

海「他には?」

穂「他?伝統がある!」

海「それは最初と同じです…」

穂「えー!? じゃあ、ことりちゃん~」

こ「うーん?強いていうなら、古くからあるって事かな~?」

竜「ことり、海未の話、聞いてた?」

ことりの天然スキルボケに俺のツッコミが入る。

こ「あ、でもさっき調べて、部活動では少し良いとこ見つけたよ!」

おっ、それなら部活系ならアピール出来る事もあるかもしれないな。

ことりナイスだぞ~。

こ「といっても、あまり目立つ内容じゃないんだけど~」

そう言って資料を取り出す。

こ「珠算関東大会6位」

穂「失礼かもしれないけど…」

竜「微妙過ぎだろ」

こ「合唱部地区予選奨励賞」

海「もう一声欲しいですね…」

こ「ロボット部、書類審査で失格」

竜「そんな部があったのか~」

ちょっと見てみたいな。

穂「てか、最後ダメじゃん!!」

海「考えてみれば、目立つ所があるなら生徒ももう少し集まっているはずですよね…」

こ「そうだね…」

確かにそうだと言える。

部活関係ならアピールになると思ったが、良い所があるなら最初から生徒はもう少し入ってくるはずだ。

それがないという事は、まぁそういう事なのだろう。

現実は甘くない。

すると穂乃果が俺に言う。

穂「そうだ!竜ちゃんの恐竜を復活させる能力を売りにして~…」

竜「それやったらパニックになって、余計入学希望者が来なくなるぞ?」

穂「うえぇぇ~…」

机に突っ伏す穂乃果。

確かに穂乃果の案はいいかもしれんが、今の日本は恐竜を恐怖の対象として見ている。

そこに恐竜を自由に復活させることができる俺がいれば、入学を恐れる子もいるだろう。

結果、今より酷い結果になるし、何より俺がいなくなったら、また今の音ノ木に戻る事だろう。

だからこの案は使えない。

穂「私…この学校好きなんだけどな…」

こ「ことりも…」

海「私もです…」

そう言って落ち込む三人。

…ったく、仕方ねぇな。

竜「なあ、穂乃果」

穂「ん?」

竜「元気出せよ…。俺に出来ることあるなら、手伝ってやるから。だからな、そんなに落ち込むな。俺も、こっちの方で何か無いか調べてみるから…。海未とことりも元気出せ」

メンドクセェけど、こいつらの笑顔を守れるならやるしかない。

そんな俺の言葉に穂乃果は、

穂「竜ちゃん…。竜ちゃああああああん!!!!」

竜「ウオッ!? おま…急に抱きつくなよ…」

穂「えへへ~ごめぇぇん」

よほど感動したのか抱きついてきた穂乃果。

それを見たことりと海未は、頬を膨らまして、

海「穂乃果ばかりずるいです!」

こ「えへへ~♪竜君♪」

竜「うおっ!? お前らもかよ……」

俺に抱きついてきた。

暑い~…蒸し焼きになる~…。

この後は、いくら学校で考えても仕方ないので、各自家に帰って考える様に、という事になった。




ーーーーーーー



その夜。

ディノホルダーに恐竜反応があった為に、その場所に行くと、5体の恐竜がいた。

スゼチュアノサウルスという小型の肉食恐竜。

ムッタブラサウルス、ブラキロフォサウルスという鳥脚類。

そして鎧竜のタラルルス、ピナコサウルスだ。

5体の恐竜は互いに争っていた。

ここは条件的に草、土、風が揃ってる。

こいつらが自然復活して、本能に忠実になって、暴れてもおかしくは無い。

何であれ、好都合だ。

竜「さぁ……実験を始めようか?」

俺は5枚の恐竜カードを手に取り、順にスラッシュしていく。

《イリテーター》《アンキロサウルス》

《コリトサウルス》《サウロペルタ》

《アロサウルス》

そしてその5枚を投げる。

出てきたのは、翼竜のような赤いトサカを持つワニ顔の肉食恐竜、イリテーター。

茶色で刺無しの鎧を持つ鎧竜、アンキロサウルス。

ヘルメットのようなトサカを持つ草食恐竜、コリトサウルス。

ハンマーは無いが、肩から大きな刺が伸びてる鎧竜、サウロペルタ。

最後に背中は青、腹はグレー、目の上の突起が紫の肉食恐竜、アロサウルス。

計5体の恐竜だ。

アロサウルスはムッタブラサウルスに、サウロペルタはピナコサウルスに、コリトサウルスはブラキロフォサウルスに、アンキロサウルスはタラルルスに、イリテーターはスゼチュアノサウルスにそれぞれ突撃をかました。

「クゥエエエエエエエエエエエエン!!」

「「「プァアアアアアアアアアア!!」」」

「「「「ゴォオオオオ……」」」」

それぞれ咆哮して威嚇したり、ハンマーをぶつけ合ったり、噛みつき合ったりする。

竜「とっと終わらせるぞ…」

そう言って、5枚の技カードを取り、1枚ずつスラッシュして、撃っていく。

《ダイビングプレス》

アナウンスされるとディノホルダーを銃形態に変えて、コリトサウルスに吸収させる。

「プァアアアアアアアア!!」

コリトサウルスはブラキロフォサウルスに後ろ足を使って砂をかけた。

「プァアアアアアアアア!!」

砂で目を潰されたブラキロフォサウルス。

その隙に、コリトサウルスはブラキロフォサウルスの首に噛みつき、ジャンプしてブラキロフォサウルスを地面に叩きつけた。

ブラキロフォサウルスはカードに戻る。

続いて二枚目。

《カミカゼタックル》

スラッシュして、サウロペルタに吸収させる。

「ゴォオオオオ……」

サウロペルタはピナコサウルスを体を使って、空中に放り投げる。

そして猛ダッシュして、落ちてきたピナコサウルスにタックル。

タックルされたピナコサウルスは吹き飛ぶ。

しかし強さが同じな為か、ピナコサウルスは立ち上がる。

竜「ならこれだ…」

俺は元々取っていた5枚とは別に、新しく1枚取り、スラッシュする。

《最後の力》

竜「ブルー、チャーリー、デルタ、エコー。頼むぞ」

そして技カードを投げると、カードは俺自ら育てていた4体のヴェロキラプトル、ブルー達になる。

「プゥアアオオオオオオオオン!!」

ブルーが吠えて、走ると、残り3体もブルーに続いて、ピナコサウルスに追撃の鉤爪を降り下ろす。

「ゴォオオオオ…!」

ピナコサウルスはそれを受けて、カードに戻る。

俺はブラキロフォサウルス、ピナコサウルスのカードを拾い、ブルー達もカードに戻す。

そして三枚目をスラッシュ。

《ポセイドンクラッシャー(海神流槍)》

エネルギーをイリテーターに吸収させる。

「クゥエエエエエエエエエエン!!」

イリテーターが吠えると、スゼチュアノサウルスの後ろに茶色で大きな竜脚類が現れる。

『サウロポセイドン』だ。

因みにサウロポセイドンは、恐竜史上最も背の高い恐竜である。

サウロポセイドンは、スゼチュアノサウルスに口から大量の水を滝のように吐き出す。

それを上から全部浴びたスゼチュアノサウルスは耐えきれず、地面に埋まって、カードに戻る。

そして4枚目。

《クエイクセイバー(土竜聖剣)》

これはアンキロサウルスに吸収させる。

「ゴォオオオオ…!」

アンキロサウルスは吠えると、尻尾のハンマーから紫の巨大な剣を作り出す。

そしてそれを真横に一刀両断。

タラルルスはその一撃で沈んだ。

最後の5枚目。

《ハリケーンビート(暴風乱打)》

《ベストマッチ!》

竜「うほっ!? ベストマッチ来たぁぁぁぁああ!!」

最っ高の気分だ!!

竜「勝利の法則は決まった!」

これはアロサウルスに吸収させる。

「ギィュウエエエエエエエエン!!」

アロサウルスはムッタブラサウルスを空中に放り投げると、自身も翔んで、空中でムッタブラサウルスに連続蹴りを浴びせた。

何度も何度も、それは目に見えないくらい。

そして最後の一蹴りで、ムッタブラサウルスを吹き飛ばす。

これでムッタブラサウルスもカードに戻る。

俺は三枚のカードを拾うと、アロサウルス達もカードに戻す。

そして意気揚々と家に帰った。

竜「いやっほぉ~い!! ベストマッチィィィィ!!」


竜司sideoff





◎side


竜司が帰った後の空き地。

そこにナイトローグが現れた。

ナイトローグはほくそ笑む。

「いいぞ……お前が恐竜を倒せば倒すだけ、その戦闘による経験値が俺の恐竜にも入る…」

そう言って、ナイトローグは三枚の恐竜カードを取る。

そこには、ギガスと書かれたティラノサウルスと、マキシムスと書かれたトリケラトプス、アルマトゥスと書かれたステゴサウルスが描かれていた。


◎sideoff





竜司side


あの後、家に帰った俺は寝ようとしたのだが、そこへ穂乃果からの電話がかかってきた。

竜「あ゛ぁ゛…もしもしぃ…?」

穂「ひっ!?」

不機嫌丸出しで出てしまった。

穂乃果は俺の不機嫌な声を聞いて、小さく悲鳴を上げたが…。

竜「なんだよ…穂乃果?」

穂「あっ…あのね、竜ちゃん、今いい?」

竜「…どうしたんだ?」

穂「うん…あのね…」

穂乃果の用件はこうだ。

穂乃果はあの後、家に帰ったのだが、穂乃果の妹、雪穂が音ノ木ではなく最新の進学校UTXを受けることにショックを受けて、雪穂に音ノ木を受けるように言うが、雪穂曰く「廃校になる学校を受けてもしょうがない」との事。

まあ、そりゃそうだな。

穂乃果の母親である、夏穂さんもそれを認めているとのこと。

しかし夏穂さんもやっぱり自分の通っていた母校が無くなるのはちょっと悲しいみたいで、アルバムを懐かしそうに、でも悲しげに見ていたこと。

それで、穂乃果の廃校を阻止したい気持ちがますます上がったとの事。

で、ここからが本題。

穂「竜ちゃん、明日UTX行ってみない?」

竜「はっ?」

穂「UTXがどうやって生徒を集めているのか、行けば何か分かるかもと思って…」

竜「なるほどな…」

穂乃果の考えはいいと思う。

なので、俺は了解の旨を伝える。

竜「いいぜ…穂乃果。明日行ってみるか?」

穂「竜ちゃん、いいの!?」

竜「ああ」

穂「やったぁぁぁ!! 竜ちゃん、ありがとぉぉぉ!!」

竜「わかったから、耳元で叫ぶな…」

穂「うん!じゃあ、おやすみ竜ちゃん!!」

竜「ああ…」

そう言って穂乃果は電話を切った。

さて……明日はどうなることやら?



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Game#10

竜「前回のあらすじ!廃校をなんとかする為、穂乃果は俺をUTXに誘う!」

穂「必ず見つけてみせる!!」

竜「大丈夫かね~?」

穂「大丈夫だもん!!」


翌日。

海未たちに先に行ってて欲しい旨を伝えて、UTXに来た。

来たはいいが、これは本当に学校なのか…?

見た目はただのでかいビルだ。

さすが、人気の進学校。

金かけてるな……。

しかも、設備も充実している。

中に入るのに学生証を切符みたいに翳して入るみたいだ。

これで部外者は簡単に入れないな…。

その凄さに穂乃果は顔をくっつけ凝視している。

………とりあえず、みっともないので引き離す。

竜「おっ?穂乃果ちょっと来い」

穂「ヘッ?なに?」

竜「あれ……」

俺は穂乃果を手招きして、UTXの入り口についてる大画面のモニターを見るよう促す。

そこには、UTXにようこそ的にアピールしている三人の女の子が移っていた。

この学院が大人気になった大元…スクールアイドルのA-RISEが移っていた。

しかし、穂乃果は「何あれ?」的な感じで俺を見る。

こいつ…なにも知らないのか…?

俺でもそれなりに調べて来たんだか……。

そう思っていると、沢山の人だかりが歓声を上げる。

どうやら、A-RISEが新曲を披露するようだ。

すると、穂乃果の隣に春先とはいえ暑いはずなのに、コートにグラサン、マスクをした小柄なツインテールの女の子が来た。






……ナニコレ?不審者?いや、確実に不審者だ。

正直…怖い。

穂乃果も絶句している。

しかし、そんな不審者少女に穂乃果は

穂「あのぉ~」

と話かけやがった。

……嘘だろ、穂乃果。

話かけられた少女は「何!? 今忙しいんだけど」と不機嫌に返してくる。

それに対し穂乃果は質問する。

穂「あの、質問なんですけど……あの人達芸能人か、何かなんですか?」

すると少女は「はぁ!?」と驚きの声をあげ、穂乃果は思わず「ひぃ!?」と怯えた声をだす。

「アンタそんな事も知らないの!? そのパンフレットに書いてあるわよ!どこ見てんの!?」

穂「す、すみませぇーん!」

「A-RISEよ、A-RISE。スクールアイドル」

穂「アイドル?」

不審者少女の言葉に穂乃果は不思議そうに首を傾げた。

その行動に俺は思わず

竜「穂乃果。お前本当になにも知らないんだな」

と言ってしまった。

それを聞いた穂乃果は「竜ちゃん知ってるの?」と聞いてきた。

仕方ないので、簡単に説明する。

竜「まあ、要するに学生で結成されたアイドル、それがスクールアイドルだ」

そう教えると穂乃果は「へー」と感心の声をあげ、A-RISEのPVを観る。

しばらく観ていると隣でパサッという音がした。

見ると隣の穂乃果がパンフレットを落としたらしい。

その顔が衝撃に彩られていた。

俺は「穂乃果?」と声をかけるが返事が無く、代わりに聞こえてきたのは穂乃果の「これだ」という声…。

次の瞬間、穂乃果は俺に向かって

穂「これだ!! 竜ちゃんこれだよ!?」

と、見惚れる程の満面の笑顔で言ってきた。

この時、俺は悟った…。






ああ…絶対メンドクセェ事に巻き込まれるな、と。







そう思ってたのも、束の間。







《パタゴサウルス》《カマラサウルス》







そんな音声が聞こえたと思ったら、UTXの近くに、一体はグレーの体色、もう一体は背中は黄色で後は薄い水色の体色を持った、2匹の雷竜が現れた。

あっ、雷竜ってのは、ブラキオサウルスみたいな首が長く、体がデカい恐竜の事を指す。

「「ブゥオオオオオオオオオオオオ!!」」

2体は吠えると、進撃を開始した。

当然人々は悲鳴を上げて逃げるし、不審者少女やその隣にいた少女2人も逃げる。

「なんなのよもう!」

「かよちん早く!」

「ふえぇ~…!」

草食恐竜とはいえ、図体がデカいとやっぱ怖いか。

穂乃果が俺の服の袖を掴んで、不安そうに見上げて言う。

穂「竜ちゃん……」

竜「穂乃果。お前は先に逃げろ。いいな?」

穂「うん……」

そう言って、俺はカマラサウルスとパタゴサウルスの元に行く。




ーーーーーーーーー




竜「さあ、実験を始めようか?」

俺は本型ホルダーから二枚の恐竜カードを取り、ディノホルダーにスラッシュしていく。

《カルノタウルス》《サルタサウルス》

そして投げると、黒の体に黄色の線が走り、黄色の角を持つ中型肉食恐竜・カルノタウルスと、緑の体で背中に白い突起がある茶色の装甲を持つ雷竜・サルタサウルスが現れた。

「ギュウァアアアアアアアア!!」

「ブゥオオオオオオオオ!!」

2体は吠えると、それぞれカルノタウルスはカマラサウルスに、サルタサウルスはパタゴサウルスとぶつかり合う。

カルノタウルスはカマラサウルスの首に噛みつき、サルタサウルスはパタゴサウルスとその長い首をぶつけ合う。

それを見てると、またもやあいつが来た。

「よぉ?」

竜「お前……」

以前会ったコブラ野郎だ。

「俺はブラッドスターク。よろしく?」

竜「お前の目的はなんだ?やっぱローグと一緒か?」

確信に迫る問いをすると、ブラッドスタークは笑う。

「はっはっはっはっはっ!! まぁ一緒かな?けどいいのか?俺ばっかりに集中してて…」

竜「何?」

その瞬間、カルノタウルスとサルタサウルスが飛ばされて来た。

見ると、カマラサウルスとパタゴサウルスに遅れを取っていたようだ。

以外と強いな……。

「ほれ…」

スタークはカードを二枚ブラッドディノホルダーにスラッシュする。

《トラジェディーオブザボール(龍河苦玉)》

《ショックウェーブ(激流封印)》

そしてそのエネルギーを撃って、パタゴサウルスとカマラサウルスに吸収させる。

「ブゥオオオオオオオオ!!」

「ブゥオオオオオオオオ!!」

パタゴサウルスは口から大量の水をカルノタウルスに吐いて、その行動を拘束した!

竜「ちっ!」

その隙にカマラサウルスは口から水で出来た玉をサルタサウルスに吐いて、空中で拘束。

そしてタックルをかまして吹き飛ばす。

バシャァァン!!という音と共に、サルタサウルスは倒れる。

竜「ならこっちも!」

俺も技カードを取り、スラッシュしていく。

《必殺ふうじ》

そしてその技カードを投げると、三匹の茶色の羽毛に包まれたヴェロキラプトルが出現。

パタゴサウルスに攻撃を繰り出し、ショックウェーブの効果を消す。

「ブゥオオオオオオオオ!?」

「ほぉ~…やるな」

スタークが唸る。

そして超技カードを二枚取り、スラッシュしていく。

《サイクロン(疾風無敵)》

《ベストマッチ!》

竜「ほぉ~…カルノタウルスはチョキか…」

カルノタウルスがベストマッチした。

《ディメノチェーンソー(水回転鋸)》

竜「こっちは無しか…」

因みにディメノチェーンソーはグーだ。

そしてそのエネルギーを撃って、それぞれに吸収させる。

すると天が赤い雲に覆われ、赤い雷も鳴っている。

そこから竜巻がカルノタウルスに向かって落ちてきて、カルノタウルスは吼える。

「ギュウァアアアアアアアア!!」

そして疾風を纏って、パタゴサウルスに突撃。

パタゴサウルスは吹き飛ぶ。

「グォオオオオ……」

そしてカードに戻る。

まぁカルノタウルスは金レア。

攻撃力で勝つのは仕方ない。

《ウォーターソード(暫流剣)》

ふとそんな音声が聞こえたと思ったら、スタークが技カードをスラッシュしていた。

けどもう遅い!

サルタサウルスの側には、背中に大きな黒い帆を持ち、その体は深緑色で構成されている単弓類という恐竜とは違う生物『ディメトロドン』が来ていて、サルタサウルスが吠えると、ディメトロドンはその黒い帆に大量の水を集めて、回転鋸のように回す。

そして飛び上がり、体を丸め、本当の回転鋸になって、カマラサウルスに向かって行く。

しかし間に合ったのか、カマラサウルスも口から水で出来た剣を吐いて、迎撃。

水の回転鋸と剣がぶつかる。

しばらく続く、鍔迫り合い。

しかしそれにもやがて終わりは来る。

カマラサウルスの水剣が途切れ、ディメトロドンの攻撃が直撃。

「ブゥオオオオオオオオ!?」

カマラサウルスはそれを受けてカードに戻る。

ディメトロドンも着地すると消えて、サルタサウルスもカードになって、俺の手元に戻ってくる。

唯一カルノタウルスは俺の側に来て、スタークを睨む。

対するスタークは拍手をしてやがった。

「はっはっはっはっはっ!! やるねぇ~?んじゃ、第2回戦と…「ゴガアアアアアアアア!!」っ!?」

突如スタークに襲いかかった大型の肉食恐竜。

茶系の黄色の体色を持つソイツは、マプサウルスだ!

「なんだこいつは!?」

ここで初めてスタークが驚きを見せる。

そしてそのマプサウルスの影から、一人の男が出てきた。

年齢的には俺と同じくらいで、その左手首にはリストバンド型のデバイス・ディノガジェットがあった。

あれも恐竜を復活させる事ができるが、まぁその力はレプリカだろうな。

だって本当の石板は俺が持ってるもん。

因みにこのディノホルダーに使ってるのは、本物の石板の一部だ。

「心火を燃やしてぶっ潰す!………これ以上ここで暴れんなら殺すぞ?蛇野郎…」

その男はそう言った。

「ちっ……仕方ない。退却するか」

そう言って、スタークは黒煙を蒔いて消えた。

スタークが消えた後、俺はカマラサウルスとパタゴサウルスのカードを回収。

そして男に訊く。

竜「お前何者だ?」

「覚えてないか?って、まぁ俺とお前は違う部署だもんな。俺の名前は猿渡カズミ。よろしくな?」

竜「お、おう……」

「それより、さっさと学校行った方がいいんじゃね?もう登校時間近いぞ?」

竜「えっ!? マジで!?」

言われてスマホを見ると、確かに時間は既に8時。

これはヤベーイ!!

竜「ヤベッ!おい穂乃果!早く行くぞ!」

穂「えっ!? あっ、待ってよ竜ちゃ~ん!!」

そして俺は穂乃果と共に、学校に急いだ。




ーーーーーーーーーー




さて、何とか音ノ木に着き、今は休み時間。

俺、穂乃果、海未、ことりの4人で集まっているところだ。

こ「それにしても穂乃果ちゃんも竜くんも災難だったね~」

海「ですね…。ホントに怪我はしてないのですね?二人とも」

穂「大丈夫だよ~。海未ちゃんもことりちゃんも心配性だなぁ~。確かに、パタゴサウルスとカマラサウルスが現れた時はびっくりしたけど、竜ちゃんがなんとかしてくれたからね♪」

そう言って、穂乃果は俺に眩しい程の微笑みを向けてきた。

信頼されてるねぇ~、俺。

穂「それよりも、解決策見つけて来たんだよ♪聞いて聞いて!!」








そして穂乃果は披露する。







この学校の未来を照らす希望を。











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Game#11



正直この小説を書くのが、苦しい。

これで新しい感想がなかったら、また消すか……。



UTXでの出来事を終えて、今は音ノ木。

穂乃果が、ジャーン!!とか言いそうな顔で、机の上に広げたのは、登校途中にあるだけ持ってきたスクールアイドルの雑誌やチラシだ。

穂「まずは2人にこれを見てほしい」

海「なんですこれ?」

穂「スクールアイドルだよ!! 最近有名じゃん?」

元気よく言う穂乃果。

海「竜司…もしかして…穂乃果の考えた解決策というのは……?」

竜「Yes!! その通りだ、海未」

海「何でちょっとテンション高いんですか!?」

だって穂乃果は一度決めたら絶対に止まらないし、やめないから。

もう諦めたんだ。

穂「それでね、私達でスクールアイドルをやろう!」

竜「ほらな…」

海「…………」

海未は反応しない。

ただの屍のようだ。

海「誰が屍ですか!? 誰が!?」

おっ、生き返った。

つーか、海未、俺の心読んだよね?

そんな事は気にも止めず穂乃果は喋っている。

穂「こっちは大阪のスクールアイドルで、こっちは福岡のスクールアイドルなんだって!!」

とまあ、しゃべくりまくる。

しかしその隙を突いて、海未は逃亡した。

教室から出て行ったのだ。

まぁ、あいつも穂乃果の言う事が分かってしまったみたいだしな。

あいつなら逃げそうな内容だもんなぁ。

でも、それで穂乃果が見逃す訳もなく、





穂「海未ちゃん!! まだ話終わってないよー!」

海「わ、私はちょっと用事が……」

明らかに逃げるための言い訳だな、ありゃ。

だが諦めろ、海未。

「良い方法思い付いたんだから聞いてよぉー!!」

振り向いた海未は、露骨に嫌な顔をしている。

海「はぁ、『私達でスクールアイドルをやる』とか言い出すつもりでしょう?」

穂 「うわ!? 海未ちゃんエスパー!?」

海 「誰でも想像つきます!!」

だよな…。

穂「だったら話は早いね。今から生徒会に行ってアイドル部を…」

海「お断りします!」

まぁ、そうなるか。

穂「なんで!?」

海「思いつきで始めたところで、状況が変わるわけが無いでしょう!」

あーあ、喧嘩おっ始めやがった…。

穂「だってこんなに可愛くてキラキラしてて楽しそうなんだよ!こんな可愛い服着て、みんなの前で歌うとか普通はできないんだよ!?」

はぁ~…メンドクセェ…。

海「私はそんなことを言ってるんじゃありません!こんな事で本当に生徒が集まると本気で思いますか!」

穂「そ、それは…。人気が出ればだけど……」

海「その雑誌にあるスクールアイドル達もプロと同じ努力をし、真剣にやってきた人たちですよ。穂乃果のように好奇心だけで始めても上手くいくはずがありません!」

穂「うぅぅぅ…」

穂乃果は唸る。

まあ、海未のはかなりの正論だしな…。

そしてとどめの一言を放つ。







海「はっきり言います。アイドルはなしです!!」






ーーーーーーーー







放課後。

海未は弓道部に行った。

穂乃果もことりもどこかに行った。

鞄を教室に置いてる所を見ると、まだ帰ってはいないようだ。

俺はというと、ノーパソを使って新しいデバイスの設計図を作っていた。

炎・水・雷・土・草・風・謎のマークがメーターみたいな所に描かれていて、デバイスのメインカラーは赤、上部に青いスイッチ、下部にコネクターが着いてるデバイスだ。

これは恐竜の属性を限界まで引き上げて強くする代わりに、使う人間に恐竜と同じくらいの凶暴性を植え付ける。

即ち暴走の危険性があるのだ。

名前は『エレメントトリガー』。

まぁ、これは今の所はお蔵入りかな?

それよりも穂乃果の考えたスクールアイドル。

正直、俺はいいと思うが、やっぱりリスクもあるんだよな~。

それに穂乃果は飽き性だし。

それ以前に自分達では歌を作れない。

スクールアイドルをやる以前の問題だった。

いや、一人出来そうなヤツがいるが、あいつツンデレだからな~…。

正直関わるのめんどい。

俺がアメリカ行くと言った時も、「勝手にすれば!」とか言いつつ、涙目だったからな~。

そんな時だった。

こ「竜くぅ~ん」

甘ったるい声が俺を呼ぶ。

それはことりだった。

竜「よぉ、どうした?ことり」

こ「ここにいたんだぁ。探したんだよ?」

竜「それは悪かったな。つか携帯で連絡しろよ」

こ「あ……えへへ、忘れてたぁ~」

………何この可愛い生き物。

持ち帰りたい。

そして色々と実験したい。

竜「で?探してたって事は何か用があったんだろ?」

こ「あ、うんっ。ちょっと一緒に来てぇ~」

何の用かも言わず、手を引かれるがままにことりに連れてかれた。




ーーーーーーー



途中でなんか床に倒れて変に悩んでたり、「ラブアローシュート」言ってた海未を連れて、俺はことりに導かれる。

海「穂乃果のせいです……。全然練習に身が入りません……」

こ「って事は、ちょっとアイドルに興味があるって事?」

海「っ……いえ、それは……」

竜「はぐらかすなよ。興味あんだろ?素直になれよ。さっきまでラブアロー…「それ以上言うとどうなるか、分かりますよね?」……はい」

怖いよ海未さん。

目が笑ってないよ。

手をポキポキ鳴らさないで?

こ「それで、海未ちゃんは結局興味あるの?」

ことりが再度訊く。

海「……やっぱり上手くいくとは思えません」

まぁ、そう思うのは当然か。

俺も思ってたし。

こ「でも、いつもこういう事って、穂乃果ちゃんが言い出してたよね」

海「…………」

沈黙。

そこに蘇るのは昔の記憶。

数々の記憶。

その記憶の中の殆どの出来事は、穂乃果の発言から始まったものである。

こ「私達が尻込みしちゃう所を、いつも引っ張ってくれて」

海「そのせいで散々な目に何度も遭ったじゃないですか…。おまけに竜司は実験と称して一緒になって盛り上げたり…」

竜「その分フォローしてただろ?」

こ「そうだったね…」

海未の苦言にことりも否定できない辺り、苦労したのは言うまでもないのだろう。

海「穂乃果はいつも強引過ぎます!」

こ「でも海未ちゃん……後悔した事ある?」

海「…………」

再びの沈黙。

それは無言の否定だった。

なんだかんだで海未も楽しかったのだ。

ことりに着いて行く知らぬ間に、俺達は生徒の通りが少ない所を歩いていた。

その角を曲がった先には、





穂「ほっ、うぅっ!……はっ、ほ、ふっ、はっ!」





穂乃果が1人、ダンスの練習をしていた。

海「ほ……のか……」

あいつ、ずっと1人でここで練習してたのか?

誰にも何も言わず……。

穂「うぅ、ぅうわぁああっ!!」

ドテンッっと、穂乃果は回る一瞬にバランスを崩し、強く尻を打った。

………何やってんの?

穂「いったぁぁい!……ホントに難しいやぁ。みんなよく出来るなぁ。よし、もう1回!!」










……………成る程。











どうやら今回は本気のようだ。

諦める気も無し。

スクールアイドルはその華やかな見た目とは違い、血の滲むような努力が必要だ。

それをやっても、注目してもらえるかは分からない。

だけども……穂乃果。

お前は最後までやるんだな?

なら俺がやることはただ1つ。










気付けば俺は勝手に歩き出していた。








穂乃果はまた転んで、痛みを我慢している途中だった。

そこに俺は、










竜「穂乃果…………やるぞ」

手を差し伸べる。

それと同時に、

海「1人で練習しても意味がありませんよ。やるなら、3人でやらないと」

海未も隣で手を差し伸べていた。

これで決定だな。

穂「竜ちゃん……海未ちゃん……」

そして、穂乃果は手を取った。








そう、ここから全てが始まる。









さぁ……













実験を始めよう。












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Game#12





4人で改めて決意した。

スクールアイドルで成功すると。

決めたのなら即行動。

という事で、さっそく俺達は生徒会室に部活申請書を出しに行った。

絵「………これは?」

そう言ったのは、この音ノ木坂学院の現生徒会長、絢瀬絵里会長である。

その周りには、東條希副会長と氷室さんもいる。

穂「アイドル部、新設の申請書です!」

対して答えたのは、穂乃果だ。

性格が真逆そうな2人がどうぶつかるか……。

見てて楽しみだ。

絵「それは見れば分かります」

穂「では、認めていただけますね!?」

絵「いいえ、部活は同好会でも、最低5人は必要なの」

成る程。

今の俺達は4人しかいない。

だから認められない訳か。

海「ですが、校内には部員が5人以下の所もたくさんあるって聞いてます!」

海未がすかさず反論するが、それは反論にすらならないだろう。

絵「設立した時には、みんな5人以上いた筈よ」

「裏を返せば、5人揃えれば設立できるな」

希「あと1人やね…」

氷室さんと東條さんが助言をくれる。

穂「あと1人……。分かりました。行こう」

絵「待ちなさい」

去ろうとする俺達を絢瀬会長が呼び止めてくる。

その顔は何か気に食わないような、そんな顔をしていた。

絵「どうしてこの時期にアイドル部を始めるの?あなた達2年生でしょう?」

この時期。

廃校を告げられてから何故、こんな部活を立ち上げようとするのか。

そう聞きたいのだろう。

穂「廃校を何とか阻止したくて、スクールアイドルって今凄い人気があるんですよ!? だから…」

絵「だったら、例え5人集めてきても、認める訳にはいかないわね」

………何?

穂「ど、どうして……!?」

絵「部活は生徒を集めるためにやるものじゃない。思い付きで行動した所で、状況は変えられないわ。変な事考えてないで、残り2年自分のために何をするべきか、よく考えるべきよ」

そう言って絢瀬会長は部活申請書を突き返してくる。

穂「………っ。戻ろう……」

穂乃果も何も言い返せないようだ。

表情から見て取れる。

生徒会室を出て行こうとする穂乃果達に対し、俺はそこから動かないでいた。

穂「竜ちゃん……?」

訝しげにする穂乃果の問いには答えず、代わりに俺は絢瀬会長に言う。

竜「科学が作る未来は破滅か、繁栄か。いつだってそうだった。その2択だったよ…」

絵「何が言いたいの?」

少し眉をひそめる絢瀬会長。

俺は構わず続ける。

竜「スクールアイドルも一緒だよ。失敗して、見向きもされなかったら破滅だ。だが、成功すれば繁栄だよ。これは音ノ木の繁栄をかけた大切な手だ。あんたはそれをみすみす潰すのか?」

絵「そんな不確かな手より…「なら訊くが…」?」

会長がこの手を否定しようとしたが、俺はそれを遮って訊く。

竜「あんたは確実に音ノ木を何とか出来る確実な方法があるのか?」

絵「それは……」

口ごもる会長。

竜「それに今の音ノ木にあれが良くてこれはダメって、自由に選べる余裕があるとでも?答えはNOだ。だったらどんな手でも使える物は使うべきだろう?本当に音ノ木を救いたいと思うなら……」

絵「………」

何も言い返せない会長。

つまりそれは俺の意見に負けたという事。

竜「今の音ノ木は背水の陣。博打だろうとやるしか無いんだよ。あんたの意固地で何とかなるレベルじゃ無いんだ」

海「ちょっと竜司、少し言い過ぎです…」

海未が慌てて俺を止める。

見ると、会長は涙目だった。

絵「……ぐすっ…」

………やり過ぎたか。

東條さんは口を手で覆って笑いを堪え、氷室さんは素知らぬ顔をしている。

竜「はぁ……行くぞ」

穂「えっ!? あっ、竜ちゃん待って!」

居心地が悪くなった俺は、穂乃果達を連れて、生徒会室を出た。


竜司sideoff







◎side


竜司達が出ていった後、希は絵里を慰めていた。

絵「えぐっ……ぐすっ…希ぃ~……」

希「よしよしエリチ……気をしっかり持つんや…」

絵里を抱き締め、その頭を撫でる希。

どうにも竜司の言葉は、深く絵里の心を抉ったようだ。

それを見て溜め息を吐く氷室。

そして席を立つ。

希「ん?どこ行くん?氷室君」

「少し野暮用だ…」

そう言って、氷室は生徒会室を出た。


◎sideoff






竜司side


生徒会室を出た俺達は玄関で靴を履き替え、校舎を出ていた。

しかし3人の足取りは重い。

さっき会長に言われた事が頭から離れないのだろう。

歩いてると、ことりが穂乃果に話しかけた。

こ「ガッカリしないで。穂乃果ちゃんが悪い訳じゃないんだから」

それと同時に全員の足が止まる。

そう、穂乃果は何も悪くない。

ただ廃校をどうにか阻止したいと思っている、学校想いの生徒なだけだ。

海「生徒会長だって、気持ちは分かってくれてるはずです」

竜「どうだろうな……。あの人、なんかスクールアイドルの事を根本から認めてない気がする」

何かに執着しているような気がする。

過去に何かあったのかもな。

海「でも、部活として認められなければ、講堂は借りられないし、部室もありません。何もしようがないです……!」

こ「そうだよね……。これからどうすればいいんだろう……」

穂「どうすれば……」

神妙な面持ちで海未とことりが悩む中、穂乃果だけがずっと黙っていた。

この単純バカはもうやるべき事を分かってるのだろう。

竜「やることは変わらない。ただ1つだけだ」

「「えっ?」」

ポカンとした顔を海未とことりが向けて来るが、俺は関係なしに穂乃果に訊く。

竜「なぁ……穂乃果」

そう訊くと、穂乃果はこちらに活気のある笑みを向けてくる。

穂「うん、そうだよっ。生徒会長に言われた事は仕方ないと思う。でも、それが諦める理由にはならない。だって、ほんの少しでも可能性を感じたんだもん。見つけられたんだもん。だったらそれに向かって進みたいんだ!竜ちゃんの言う通り不確かな手だけど、後悔だけはしたくない!今の私は、何も怖くない!」

竜「……フッ」

顔が自然とクシャッとなった。

そんな時だ。








《アルバートサウルス》

《メトリアカントサウルス》







二体の恐竜が現れる。



竜司sideoff





◎side


生徒会室を出た氷室は、玄関を出た竜司達を見つけると、物陰に隠れ、ナイトディノホルダーを取り出す。

そして画面にナイトローグの姿を映し、決定ボタンを押す。

「……蒸血」

瞬間、ナイトディノホルダーから黒煙が出て、氷室にナイトローグの仮面を装着させ、黒いローブを着せた。

そして二枚の恐竜カードを取り出し、スラッシュする。

《アルバートサウルス》

《メトリアカントサウルス》

二枚のカードは、炎に包まれ、ナイトローグはそれを投げる。

すると1枚は、黒に近い紫と朱色で構成された肉食恐竜・アルバートサウルスに、もう1枚は黄色と黒で構成された肉食恐竜・メトリアカントサウルスになる。

「「ゴガアアアアアアアアアアアア!!」」

二体は実体化すると吠える。

「「「ひっ…!?」」」

それを見たことり、海未は震えて竜司にしがみつき、穂乃果は気丈に睨みながらも、竜司の裾を掴んでいる。

竜司はディノホルダーを構える。

竜「アルバートサウルスと、メトリアカントサウルスか……。悪いが早く終わらせるぞ?」

そう言って、竜司も二枚スラッシュする。

《スコミムス》

《タルボサウルス》

現れたのは、緑色のワニ顔の肉食恐竜・スコミムスと、黄土色に少し赤い模様のある肉食恐竜・タルボサウルスだ。

「ピキュウウウウウウウウウ!!」

「ゴガアアアアアアァァァァァァ!!」

二体も吠えて、互いに尻尾を振り回して攻撃する。

竜「とりあえずこれとこれ……」

そう言って、竜司は二枚の超技カードを取り出す。

そしてスラッシュする。

《フライトブレイズスピン(灼熱大車輪)》

《フラッドストラップ(龍河鞭攻)》

それを撃って、吸収させる竜司。

すると、タルボサウルスはメトリアカントサウルスの首に、炎を灯した顎で噛みつき、そのままブンブン振り回す。

そのまま独楽のように速くなった所で、遠くに放り投げる。

ダメージを受けるメトリアカントサウルス。

スコミムスは口から水のロープを吐き、それをアルバートサウルスに絡ませ、上に持ち上げ、そして地面にぶつける。

メトリアカントサウルスとは違い大ダメージを受けるアルバートサウルス。

属性にも善し悪しがある。

この場合、水の属性は火の属性に強いことが当てはまったのだ。

これで勝ったと思った竜司だが、ナイトローグがスラッシュした特殊技カードにより、崩れる。

《サウラのいやし》

竜「なんだと!?」

何処からか『ラエリナサウラ』がやって来て、二体を回復させる。

立ち上がるメトリアカントサウルスとアルバートサウルス。

さらにナイトローグはスラッシュする。

《アンハングエラ・ダイブ》

《タペジャラ・ダイブ》

という音声で、空からアンハングエラと、タペジャラがやって来る。

タペジャラはタルボサウルスに突撃し、アンハングエラはスコミムスに突撃してダメージを与える。

さらに追撃するナイトローグ。

《百烈ビンタ》

《トリプルヘッドバッド》

『セグノサウルス』と3体の『ステゴケラス』がやって来る。

「グオオオオオオ……」

「「「キュイキュイ!!」」」

そして3体のステゴケラスは、スコミムスに連係で頭突きをそれぞれ三回見舞い、セグノサウルスはその凶悪な鋭い長爪で、タルボサウルスに連続ビンタを浴びせる。

さらに止めに、

《ヒートイラプション(灼熱火砕)》

という音声で、炎のエネルギーがアルバートサウルスに吸収される。

「ゴガアアアアアア!!」

アルバートサウルスが吠えると、何処からか炎に包まれた隕石が到来。

ドガガガガガガガガガガガガガガガッ!!

タルボサウルスとスコミムスに当たり、二体は倒れる。

そしてタルボサウルスはカードに戻る。

スコミムスはフラフラだが、僅かに体力が残っているのか、立っている。

穂「竜ちゃんどうしよう!?」

海「あの恐竜は大丈夫なんですか!?」

こ「竜くぅ~ん…」

穂乃果達は慌てるも、対する竜司は落ち着いて、カードを抜く。

竜「勝利の法則は決まった!」

そう言って、水の超技カードをスラッシュした。

《オーシャンパニック(魚竜強襲)》

《ベストマッチ!》

竜司はディノホルダーを銃形態にして撃ち、水のエネルギーをスコミムスは吸収。

「ピキュウウウウウウウウウウ!!」

スコミムスが吠えると、アルバートサウルスとメトリアカントサウルスの足元が水場になり、二体はその中に沈む。

そこは海になっていて、そこにいた魚竜『オフタルモサウルス』に何度もタックルされる。

海の中なので、まともに呼吸出来ない上に、オフタルモサウルスからの執拗なタックル攻撃。

そして最後に上に打ち上げられた時には、二体共カードに戻っていた。

オーシャンパニックはチョキで、スコミムスもチョキ。

所謂、超必殺超技(ベストマッチ)だったので、2倍の大ダメージがかかったのだ。

とにかく危機は回避した竜司は、アルバートサウルス、メトリアカントサウルス、タルボサウルスのカードを回収。

スコミムスもカードに戻した時、穂乃果とことりと海未が竜司に抱きついた。

竜「うおっ!? どうした?」

こ「竜君…」

海「竜司……」

穂「竜ちゃん……」

そして3人は明るい笑顔で言った。







「「「いつもありがとう(ございます)!」」」








竜「………フッ」





竜司は顔をクシャッと、歪ました。






◎sideoff





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Game#13





竜司side


翌日の朝。

絵「朝から何……?」

生徒会長の疑問の声が聞こえる事から察せると思うが、俺達は登校してすぐに生徒会室に訪れていた。

机に置かれているのは講堂使用許可申請書である。

穂「講堂の使用許可を頂きたいと思いまして!」

海「部活動に関係なく、生徒は自由に講堂を使用できると生徒手帳に書いてありましたので」

希「日にちは、新入生歓迎会の時間やな」

そう。

あの後、4人でいつするか話合い、新入生歓迎会の時にやろうと決めた。

絵「何をするつもり?」

海「それは……」

痛い所を突かれたという感じの顔の海未。

まぁ言い淀むのも仕方ない。

言ったらまた嫌味言われるのは分かってるからな。

穂「ライブをする為です!」

このア穂乃果……。

生徒会長に色々言われるかもしれないから、ライブの事は伏せて許可を求めに行こうって話たのに……。

あっさり暴露しやがった。

こ「まだやるって決まったわけじゃ……」

穂「えぇぇぇ!! やるよぉぉ!!」

ことりが注意するが、それに異を唱える穂乃果。

それを見かねた会長は

絵「そんな状態で大丈夫なの?歓迎会は遊びじゃないのよ?」

と聞いてくる。

ごもっともです、はい。

これについては何も言い返せませんです。

希「4人は講堂の使用許可を取りに来たんやろ?部活でもないのに生徒会が内容までとやかく言う権利はないはずやん?」

絵「そ、それは……」

東條さんが助け舟を出してくれた。

会長がたじろいでるぞ!

いいぞいいぞ!

最っ高だ!

希「それと、3人がスクールアイドルをやるのは分かったけど、天青君は何するつもりなん?」

おっ…急な質問来たな。

竜「俺は3人のマネージャー。この天っ才的な頭脳で3人を一番のスクールアイドルにするのさ!」

俺はドヤ顔で言う。

なんか穂乃果達3人や、会長から痛い人を見るみたいな視線を感じるが、とりあえずスルー。

希「ふふっ、頼りになりそうなマネージャーさんやね。それじゃ、許可はしたからもう帰ってもええよー」

竜「おう、そんじゃ失礼しましたー」

俺の後に、穂乃果達も礼をしてから退室して、教室に戻った。



ーーーーーーーー




休み時間。

中庭に移動し、穂乃果に海未からの説教が始まろうとしていた。

海「ちゃんと話したじゃないですか!アイドルの事は伏せておいて、借りるだけ借りておこうと!竜司も何か言ってやってください!」

竜「おう!穂乃果!パンは旨いか?」

穂「うん!旨い!」

海「そこじゃない!!」

穂乃果がまたパンを食ってたので、俺がそれを訊くと穂乃果は満面の笑みで答え、海未がツッコム。

海未は嘆息すると、穂乃果に訊く。

海「またパンですか?」

穂「うち和菓子屋だから、パンが珍しいの知ってるでしょー?」

海「……お昼前に太りますよ?」

穂「そうだよねー」

と言いながらもかぶりつく。

本当に太るぞ?

そんな時だ。

「お三方ー!!」

不意に声が聞こえた。 見るとそこにはいつもの3人がいた。

竜「来たなヒフミトリオ」

「いい加減纏めるのやめてくれないかな?天才科学者さん?」

ヒデコが睨んでくるが、この方が呼びやすいので、やめる気はさらさら無い。

「今そんな話をしにきた訳じゃないでしょ?」

フミコが苦笑いしながらも宥めてきた。

この子は空気読めるから個人的に好印象だ。

フミコは言う。

「それより、掲示板見たよー」

ん?

掲示板?

何だそれ?

「スクールアイドル始めるんだってぇ?」

「「え?」」

海未と声が重なる。

「海未ちゃんがやるなんて思わなかったぁー」

何を言ってるのかな?

彼女達は?

そして穂乃果は何知ってそうな顔してんだ?

海「掲示板に何か貼ったのですか!?」

穂「うんっ!ライブのお知らせを!」

こいつ……勝手に何しでかしてくれてんの?

まだ何も始めれてない状態で宣伝してどうするのやら……。




ーーーーーーーー




海「勝手すぎます!」

廊下に海未の声が響き渡る。

無理もない。

こうも勝手に動かれると、後々対処がしづらい。

海「あと1か月しかないんですよ?まだ何1つ出来てもいないのに、見通しが甘すぎます!」

竜「そうだぞ穂乃果。何事もまず第一に報告、連絡、相談。報連相は大事だぞ?」

社会に出たら必要なことだからな。

穂「ホウレン草?食べ物のこと?」

竜「おいコラ。さっき言ったよな?ボケるのも大概にしないと何かの実験台にするぞ?」

穂「ご、ごめんなさい……」

マジトーンで言うと、縮こまる穂乃果。

しかし次の瞬間には、ケロッとして穂乃果はぶーたれる。

穂「でも、ことりちゃんは良いって言ってたよぉ?」

なに?

ことりが良いと言っていただと……?

ことりも何考えてんだ?

そんなこんなで教室に到着。

そこでことりは何かを紙に描いていた。

海「ことり……?」

竜「何描いてんだことり?」

こ「……うんっ!こんなもんかなぁっ!見て、ステージ衣装を考えてみたの!」

そう言ってことりは、俺達にも見えるようにイラストをこちらに向けてきた。

穂乃果をモデルに、マゼンタ色のワンピース型の衣装が描かれていた。

穂「おー!! 可愛いー!」

穂乃果が絶賛する中、俺も絶賛する。

竜「うん、これは確かに良いかもな。アイドルの衣装って感じがして」

こ「ホント!? ここのカーブのラインが難しいんだけど、何とか作ってみようかなって」

穂「うんうんうん!」

竜「そういやことりって、服飾関係得意だったよな?」

こ「うん!裁縫は元々好きだったから、挑戦してみるよ!」

これは好都合だ。

スクールアイドルをやる上で絶対に欠かせない衣装を作れるというのは非常にありがたい事だ。

俺はことりの頭を撫でながら、言う。

竜「じゃあことり、頼んだぞ?」

こ「う、うん……////」

何故か顔を赤くすることり。

しかも穂乃果は不満そうに目を細めるし、解せん。

2人のやり取りを見ていると、俺の隣にいた海未が浮かない顔をしていた。

…どうしたんだ?

海「こ、ことり?」

こ「なぁに~?」

海未、歯切れ悪いよ?

海「こ、このスーッと伸びているものは?」

こ「足よ♪」

海「す、素足にこの短さですか?」

こ「だってアイドルだもん♪」

海未の疑問の声に当然と言わんばかりのことり。

海未はしきりに自分の足を見てモジモジしていた。

おいやめろ。

嫌でも視線がお前の綺麗な太ももに移っちゃうだろ。

穂「大丈夫だよ!!」

海「ひゃあ!?」

穂「海未ちゃん足綺麗だし!!」

穂乃果が海未のフォロー的な事を言ってるけど、男である俺の前でそういう事言っちゃいけないような気がする。

海「穂乃果は人の事、言えるのですか!?」

海未がそう言うと、穂乃果は自分の足をムニムニして

穂「よし!! ダイエットしよう!!」

と言う。

それに、ことりは苦笑いしている。

竜「大丈夫だろ?お前ら全員、どこからどう見ても美少女だから。問題無いだろ?」

そう言うと、ことりと海未は顔を赤くし、穂乃果に至っては、気持ち悪いくらいのニヤケ顔で

穂「エヘヘへへ、竜ちゃんに褒められたぁ~///」

と、手を頬にあてて身体をくねらせていた。

竜「?…まあ、そんな事より決めなくちゃいけないこと、あるだろ?」

俺がそう言うと、穂乃果は「え?何だっけ…?」と聞いてくる。

コイツはホントに…………。

こ「ほら、グループ名。決めてないでしょ」

ことりが言い、海未と穂乃果は「あっ?」と気がついた。




ーーーーーーーーー




そんな訳で放課後、俺達はスクールアイドルの名前、つまりグループ名を考えるために図書室まで赴いていた。

のだが……。

穂「うーん……中々思いつかないよねぇ」

こ「何か私達に、特徴があればいいんだけど……」

海「3人共性格はバラバラですし……」

と、こんな風に全然決まらないのである。

竜「まぁお前らを一言で表すと、単純バカ、脳トロ天使、大和撫子だもんな…」

こ「天使……えへへ~////」

海「もう、竜司は口が上手いんですから♪……大和撫子ですか////」

穂「ねぇ竜ちゃん。何で穂乃果だけ罵倒されたの?ねぇ何で?」

竜「煩い。さっさと考えろ単純バカ」

穂「ひどいっ!?」

ことりと海未が顔を赤くしてる中、穂乃果の疑問をバッサリ切る。

時間がおしてんだよ。

穂「じゃあ、話を戻すけど、単純に3人の名前を使って、『ことり!穂乃果!海未!』とか?」

海「漫才師みたいですね……」

竜「いや漫才師そのものじゃねぇか。安直すぎだろ。やっぱ穂乃果は単純バカか…」

穂「一々罵倒しないでよぉ……」

頬を膨らます穂乃果。

穂「う~ん……そうだ!『海未ちゃんの海、ことりちゃんは空、穂乃果は陸。名づけて、陸海空!』」

竜「守れ!市民の平和ってか?」

こ「全然アイドルっぽくないけど……」

穂「じゃあ、竜ちゃんも考えてよう~」

まあ、さっきから却下してばっかりだしな。

そう思い、俺は考えて意見を言う。

竜「………ツナ義ーズとか?」

穂「それはやだ」

こ「なんかちょっと……」

海「何だか無惨にも殺された挙げ句、顔を入れ換えられそうですね……」

以外にも不評。

後、海未。

なんか具体的で怖いぞ?

竜「じゃあDキッズ?」

海「因みにそのDとは?」

竜「ダイナソー(恐竜)のD」

穂「それもちょっと…」

こ「それだと私達の場合、Dガールズだよね?」

穂「どのみちやだよ~」

これもダメか……。




ーーーーーーーーー




穂「これでよし!!」

穂乃果は廊下に置いてある机の上の投票箱を見て頷く。

竜「結局、丸投げか…」

海「ですね…」

あの後、全然決まらず、この形に落ち着いた。

まぁ、これはこれで生徒の興味を引くには丁度良いかもしれない。

穂「こっちの方がみんな興味持ってくれるかもしれないし!」

こ「そうかもね……」

竜「うん、俺もこれは悪くないと思うぞ」

それに考えるのめんどくなったしな。

穂「よぉーし!次は歌と踊りの練習だー!!」

竜「いよいよ本格的な行動に移れるな」

穂「うん!! さぁ、練習出来る場所を探しに行こう!!」

そうして、色んな場所を見て回ったのだった。





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Game#14



竜「テンション上っがるぅっ!へっへっへぇ~!!↑↑」

海「急になんですか?」


次に、練習場所としてグラウンドなどを見てたが、全て埋まってたので、空き教室を借りるため、職員室に来た。

山田先生にその事を伝えると

「空き教室を?なんに使うんだ?」

穂「えっと、スクールアイドルの練習に…………」

少し言いづらそうに穂乃果が説明すると、先生は穂乃果達を見て

「お前等が………アイドル…………?」

と首を傾げたあと「フッ」と鼻で笑った。

穂「あぁ!? 鼻で笑った!?」

竜「ま……そりゃそうか…」

俺も同じ立場だったら笑ったかもな。

「天青、お前もす、スクールアイドルをププッ、やるのか?くくっ……!!」

竜「やるわけないでしょ?俺は手伝いです」

「なんだ残念……」

竜「おい…」

この先公は……。

とりあえず空き教室は借りられないのが分かった為、俺達は職員室を出る。




ーーーーーーーー




次に来たのは屋上。

竜「で……」

海「ここしかないようですねぇ……」

こ「日陰もないし、雨が降ったら使えないけど、贅沢は言ってられないよね……」

穂「うん、でも、ここなら音とか気にしなくてもよさそうだね」

確かに、広さも練習するには申し分ないし、音を気にしなくてもいいのは大きい。

穂「よぉーし!頑張って練習しなくっちゃ!!」

いよいよ練習が始まる。

穂「まずは歌の練習!!」

「「はい!」」

そう言って穂乃果達は横に並びだす。

列を作って歌うって事か。

………何を?

「「「……………………」」」

沈黙が屋上を襲った。

ちょっと待て。

こいつらまさか……。

こ「…………えっと、曲は……?」

海「……私は知りませんが……?」

穂「私も……」

ことりの探る様な質問から流れるように海未と穂乃果も答える。

全く何も考えてないであろう回答をもって。

穂「……竜ちゃんは!? 天才科学者だから勿論あるよね!?」

竜「お前天才科学者だからって、なんでもできると思うなよ?俺にだってできる事と出来ない事があるし、何より俺だってお前らでやってると思ってたから、何もしてねぇよ。ってか何で作ってないの?」

穂「うぐっ…!!」

正論をぶつけると、押し黙る穂乃果。

練習はまた決めるとしても、曲はどうするか、歌詞をどうするかを決めていない。

はぁ~……最悪だ。



竜司sideoff






◎side


花「…………」

小泉花陽は掲示板の前に貼り出されている紙と、ある箱を見ていた。

それは穂乃果達がスクールアイドルを始めたという宣伝と、グループ名の募集箱だった。

花「アイドル……」

ふと声が漏れる。

大のアイドル好きである自分が通っているこの学校でも、とうとうスクールアイドルが出来たという事実が、花陽を高揚感に溢れさせる。

花(音ノ木坂学院でもスクールアイドルが出来たんだ…。凄いなぁ……。私もやってみたいけど、無理だよね……)

スクールアイドルが大好きで、憧れでもある。

でも、あくまで好きと憧れは違う。

好きだからってやれば出来るとは限らない。

自分に自信の無い花陽は、どうしても一歩が踏み出せなかった。

故に憧れ止まりになるのだ。

凛「かーよちーん!」

花「わっ。凛ちゃん」

すると教室から出てきたのは、自分の昔からの親友である、星空凛だった。

凛「どうしたの?」

花「え、あ、や、えと、ううんっ!何でも、ない……」

凛「んん?……さ、かーえろー!」

凛は花陽の顔を怪訝に見ながらも、気にせず促してくる。

いつもこうして自分は言いたい事をはっきりと言えない。

それにいつも自己嫌悪しながらも、変える事が出来ない。

何かを変えるのは、とても難しいのだ。

ふと花陽は思う。

花(あの人なら……天青さんならなんて言うかな…)

花陽は、前に自分と凛を助けてくれた恐竜使いのヒーローを思い出す。

何かあると、花陽は度々竜司を思い出していた。

あの飄々とした態度が、深く脳裏に焼き付いていた。

そこまで思い、もう1度スクールアイドルのチラシを見た時、そこには黒髪ツインテールの背の小さい少女がいた。

「……何?……これ?」

花「さ、さぁ……?」

「……ふんっ」

3年生のリボンを付けた、ツインテールの背の小さい生徒は、それだけ言うと、足早に去って行った。

花(何だったんだろう……?)

凛「かーよちーーん!! 行くよー?」

花「あ、うんっ」

疑問に思いながらも、慌てて凛に追いつく。

凛「ところでかよちん。例の転校してきた男子生徒の人知ってる?」

花「2年生で入って来た人だよね?氷室先輩とは別で」

凛の質問に首を傾げながらも応じる。

凛「凛も聞いただけなんだけど、結構すごい噂があるんだってー」

花「そうなの?例えば?」

花陽もまだ転校してきた男子生徒を見ていない。

もし会ったとして、喋れそうにはないから、どういう感じの人なのかだけを知っておきたいのだ。

凛「えっとー、確かー、初めての自己紹介の時に自分の事を天才恐竜学者だとか言ったり、女の子をお姫様だっこで歩いたりとか……」

花「………んん?」

凛がそこまで言った時、花陽はある人物に思い当たった。

主に天才恐竜学者の部分で。

花(それって……)

凛も思ったのか、口に出す。

凛「まるで天青さんみたいだよね~♪」

花「そうだね…」

そんな訳無いと花陽は思ったが、どう考えても公然と自分の事を天才恐竜学者と言えるのは、竜司しか思い当たらなかった。

凛はほんのり顔を赤くして言う。

凛「また会えたらいいな~…////」

花「凛ちゃん…」

凛もまた、少なからず竜司の事を意識していた。

何処で何をしていて、どこの高校に通っているのか?

最近はよくそんな事を2人は考えていた。

そんな事を話しながらも、2人は玄関に着き、下靴に履き替える。

その途中、ふと校門に視線が行った。

そこには明らかに女子生徒の制服を着ていない、つまりこの学校に2人しかいない男子の制服を着ている生徒の後ろ姿があった。

映ったと言っても一瞬の事で、その男子生徒の後ろ姿はすぐに階段に消えて行った。

再び視線を下駄箱に戻し、履き替える。

そこで何となく考える。

さっきの生徒の後ろ姿。

というか頭。












銀髪ではなかったか?……と。






ーーーーーーーーー





何処かの廃工場。

そこでナイトローグとブラッドスタークは話していた。

「次はどうする?」

「そうだな~……とりあえず街中で仕掛けるか…」

「街中で仕掛けるのか?」

ナイトローグは少なからず忌避感を抱いていたが、スタークの言葉で無惨に散る。

「なぁに言ってんだ?お前も俺の計画に賛同した身だろうが。それに、ここまで来た時点で、もうお前は後戻りなんて出来ないんだよ!」

そう言って、スタークは姿を消した。

残されたローグは、静かに拳を握りしめていた。




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Game#15


ウルトラマンルーブの変身シーンが公開されましたね。

ここでする話じゃないけど…。

それと恐竜の姿を恐竜キングのカードで表示してます。
見るかどうかは自己責任でお願いします。


竜司side


翌日の放課後。

現在、俺は公園にいる。

理由は簡単。

自然復活した恐竜封印の為だ。

今回出てきたのは、シンラプトル、ネオヴェナトル、エドモントサウルス、イグアノドン、ポラカントゥス、ノドサウルスの6体だ。




【挿絵表示】


ここは風通しもいいし、草や土も剥き出し。

この6体が自然復活するのは簡単だが、いくらなんでも6体集合復活はおかしい。

まぁ楽でいいが、恐らくナイトローグかブラッドスターク辺りだろうな。

とにもかくにも、俺はシンラプトルにケラトサウルスを。

ネオヴェナトルにルゴプスを。

エドモントサウルスにシャントゥンゴサウルスを。

イグアノドンにユタラプトルを。

ポラカントゥスにケントロサウルスを。

ノドサウルスにタルキアをぶつけていた。




【挿絵表示】


「「「「「「グオオオオオオオ!!」」」」」」

「「「「「「グオオオオオオオ!!」」」」」」

互いにチームに別れて、吠えている。

と、ここで俺は穂乃果達に呼ばれてるのを思い出した。

遅刻したら煩いからな~……特に海未が。

なのでとっとと決める。

俺は6枚の技カードを取り出す。

そしてディノホルダーにスラッシュしていく。

《アトミックボム》

《ラッシュスパイン(放射棘槍)》

《ビッグモールアタック(土竜突撃)》

《カマイタチ(風刀切刻)》

《トルネードブロー(竜巻投撃)》

《スーパーインパクト(超竜衝撃)》

流れる動作でエネルギーを撃って、吸収させる。

ケラトサウルスにアトミックボムを、ケントロサウルスにラッシュスパインを、タルキアにビッグモールアタックを、ユタラプトルにカマイタチを、ルゴプスにトルネードブローを、シャントゥンゴサウルスにスーパーインパクトを、という風に。

「「「「「「ゴアアアアアアア!!」」」」」」

6体は吠えると、それぞれの行動に移る。

まずユタラプトルは足で竜巻を起こし、尻尾で三回切り払う。

瞬間、三回カマイタチが放たれ、それはイグアノドンを斬る。

属性的にもユタラプトルが有利だったので、イグアノドンはすぐにカードに戻る。

次にケラトサウルスはシンラプトルの横に回り、その体を上に投げて、自身もバク転。

そのままシンラプトルを踏み潰す。

しかしこれでは封印に至らず、シンラプトルは立つ。

次にケントロサウルスは肩や背中、尻尾の棘を紫に光らせ、大量の棘を放射!

それはポラカントゥスに全て刺さり、ポラカントゥスは倒れるが、属性が同じな為か、すぐに立つ。

タルキアは体を丸めて地面に潜る。

そのままノドサウルスに向かっていき、下から飛び出て突き上げた。

ノドサウルスはカードに戻る。

あれか……鎧竜は腹が弱点だからか?

ルゴプスはネオヴェナトルの回りを高速で旋回。

その動きは徐々に速くなり、やがて竜巻を起こす。

竜巻の中心に立たされたネオヴェナトルは、そのまま吹き上げられる。

空高く到達すると、ネオヴェナトルは頭から地面に突き刺さって、カードに戻る。

因みにルゴプスは体から蒸気を上げ、舌から涎を垂らしていた。

最後にシャントゥンゴサウルスだが、吠えた時には既に側にスーパーサウルスが来ていた。

スーパーサウルス……やっぱりでかいな……。

これは普通にバレるかも。

とにもかくにも、スーパーサウルスはその長い首を下げて、シャントゥンゴサウルスを乗せる。

そして空高く放り投げ、シャントゥンゴサウルスは空中で体を回転。

そのままエドモントサウルスに向かっていき、押し潰した。

が、まだエドモントサウルスは立つ。

竜「じゃあこれで。勝利の法則は決まった!」

俺は特殊技カードをスラッシュする。

《ベノムファング》

そしてそのカードを投げると、赤と黒の毒々しい体色をした肉食恐竜『ピアトニッキサウルス』が登場。

「クケェェェェェェン!!」

ピアトニッキサウルスは、残っているエドモントサウルス、ポラカントゥス、シンラプトルにその毒を纏った顎で噛みつく!

瞬間、毒ダメージを受けた3体は倒れ、今度こそカードに戻る。

俺は自身が召喚した恐竜達をカードに戻して、封印した恐竜も拾う。

そして穂乃果の家に向かった。



ーーーーーーーーー




海「あら、竜司じゃありませんか。何をしていたのですか?」

穂むらに向かってる途中、海未がいた。

海未は弓道部に行っていたから、おそらく終わってここに来たのだろう。

竜「いつものやつ」

海「また恐竜が出たのですね?お疲れさまです」

「いつものやつ」というだけで、分かってくれた海未が労ってくれる。

嬉しいね~…。

そのまま海未と共に穂むらに入る。

あっ、そうだ。

あれをやろう。

俺は穂むらの扉を勢いよく開けて、勢いよく滑り込んだ。

竜「どうもー!天青竜司でーすっ!! お邪魔に来ましたフゥーーっ!!」

止めに体をシャフ度に傾けて言った。

海「何やってるんですか!? あなたは!!」

海未のツッコミが冴え渡る。

しかしそんな俺の視界に入ってきたのは、3色団子をつまみ食いをしている夏穂さんだった。

営業中に何やってんのこの人……。

「あふぁぁ(あらぁ)、んくっ……いらっしゃい!」

何事もなく挨拶を返してくる夏穂さん。

なんか………海未には反応されたのに、この人はスルーって、悲しい……。

海「こんばんは、穂乃果は?」

海未もついにはツッコミを放棄した。

「上にいるわよ。……そうだ、お団子食べる?」

海「いえ、結構です。ダイエットしてるので…」

竜「え?海未ダイエットしてんの?」

初耳だ。

海「はい!穂乃果たちもやってますよ」

竜「ふ~ん…。でも、ダイエットするほどじゃないと思うぞ。海未、相変わらず綺麗だし」

そう言うと、海未は熟れたトマトみたいに顔を赤くして、「竜司はずるいです……」と呟き、夏穂さんは「青春ね~」と言っている。

何が…?




ーーーーーーーーー



「「お疲れ様~」」

竜「おい海未、数十秒前のお前のセリフとは全く異なる事をしてるぞ、こいつら」

海「………………………」

そこには、下にいた夏穂さんと同じように、3色団子を美味しそうに頬張っている単純バカと天使がいた。

ダイエットって何だっけ?

海未は二人を睨みながら

海「あなたたち…ダイエットは?」

と聞く。

すると二人は「あぁぁぁ!?」と言う。

完全に忘れてたんだな……。




ーーーーーーーーーー




なんかやかんやで作戦会議中。

竜「それで、曲や歌詞はどうすんの?」

穂「それは音楽室で歌とピアノがすごく上手くてキレイな1年生の子がいたから、明日作曲ができないか聞いてみようと思ってるんだ」

へぇ、1年でそんな凄い子がいるのか。

作曲が出来るなら、その子に協力してもらうしかないな。

竜「穂乃果、俺も明日着いて行ってもいいか?興味が出た」

穂「いいけど……ナンパしちゃダメだよ?」

竜「俺をなんだと思ってる?」

失礼なやつだ。

穂「それで、もし作曲をしてもらえるなら、作詞は何とかなるよねって、さっき話してたの!」

竜「え?」

海「何とか、ですか?」

俺の知り合いには勿論そんな奴いないし、穂乃果達の友達に作詞出来る奴でもいるのか?

穂「うん!ね?」

こ「うん!」

そう言った穂乃果とことりは、何故だか海未の方を見ながら、ゆっくりと詰め寄っている。

「「んふふふ~」」

海「な、何ですか!?」

戸惑う海未とは違って、未だに海未に詰め寄る2人。

穂「海未ちゃんさぁ……中学の時ポエムとか書いた事あったよねぇ~」

海「えぇ……!?」

わお、まさかの黒歴史発掘……。

ていうかマジか。

こ「読ませて貰った事も、あったよねぇ……」

しかも人に読ませるとは……中々のメンタルしてんだな、当時の海未は。

つか黒いよことり。

海「ああ……くっ!」

穂「あ、逃げた!」

凄いスピードで襖開けて逃げたなぁ。

それを追いかける穂乃果も早かったが。

海「やめてください!! 帰ります!!」

穂「いいから~!」

海「よくありません!!」

外で騒いでたが、じきに帰ってきた。




ーーーーーーーーー



穂乃果が海未を部屋に連れ帰ってすぐに海未が

海「お断りします!!」

と拒否。

まぁ気持ちは分からなくはない。

黒歴史を掘り起こされてなお、作詞してくれなんて頼まれちゃ誰だってそうなる。

俺だってそうすると思う。

穂「えー!? 何でなんでー?」

海「ぜっっっっっったい嫌です!! 中学の時のだって恥ずかしすぎて思い出したくもないくらい何ですよ!?」

穂「いいじゃんいいじゃん!アイドルの恥は掻き捨てって言うし」

海「言・い・ま・せ・ん!!!」

俺も初めて聞いた。

海「それなら穂乃果が作詞をすればいいじゃないですか!!」

穂「あー…それはー…」

海未の抵抗に穂乃果は頬をポリポリと掻きながら、余所見をする。

きっとあの時の事を思い出しているのだろう。

俺も鮮明に覚えている。

あれは小学2年生の国語の授業参観の時だった。

先生に当てられ、作文を読み始めた穂乃果。

その第一声が

穂『おまんじゅう、うぐいすだんご、もう飽きた』

あれにはメチャクチャ吹いて、俺は笑い転げた。

あの後、穂乃果は夏穂さんにメチャクチャ怒られ、泣きながら俺の家の部屋に籠城して、挙げ句の果てに

穂『穂乃果はもう竜ちゃんの家の子にな るぅぅぅぅぅ!! 竜ちゃんのお嫁さんになるぅぅぅぅぅぅ!!』

とまあ、天青家と高坂家の両家を巻き込んだ大事件になった。

こ「無理だと…思わない?」

海「………………」

思い出したのか、押し黙る海未。

しかし、めげない海未は今度は俺に振る。

海「では……竜司が…………!!」

竜「俺がやるとプテラ!トリケラ!ティラノ!みたいな感じになるぞ?」

欲望が暴走するぞ?

海「だったら……ことりが……!!」

こ「ごめんね海未ちゃん…。ことりはきっと衣装を作るので精一杯になると思うから…」

海「……………っ」

八方塞がりとはまさにこの事だ。

これで嫌が応にも海未が作詞を担当しなければならなくなった。

穂「おねがいっ!海未ちゃんしか頼れる人がいないんだよ!」

こ「ことりも時間があるときは、手伝うからぁ!!」

竜「俺も、何ができるかは分からんが手伝うからさ…」

海「うぅぅぅぅ…!!」

まだ渋る海未。

しかしここで、ことりが唐突に着ていた制服のブレザーを脱いでから目に涙を貯め、頬は少しだけ赤くなっている。

握られた小さな右手を自分のふくよかな胸元に持っていく…。

まさか……!!

あれを繰り出す気か……!?

そして………その時は来た。










こ「海未ちゃん……おねがぁい……!!」










竜「ぐほっ!!!?」

俺は………吐血した。

穂「ちょっと竜ちゃん大丈夫!?」

竜「問題ない。それより穂乃果、止まるんじゃねぇぞ?」

海「それは死亡フラグです!竜司!」

いやー……いい一撃だった。

竜「それより海未、どうすんだ?」

穂「回復早いね竜ちゃん」

だまらっしゃい。

今は余計な茶々を入れるんじゃありません。

海「……もう、ことりはずるいです…」

海未はやっと頷いた。

これが、ことりの奥義、通称ことりのお願いだ。

受けた者は強制的に何でも言う事を聞く。

それがどんな堅物でも。

海「但し、練習メニューは私が作ります」

そう言った海未は穂乃果たちにノーパソの画面を見せる。

画面にはA-RISEの動画が映っている。

海「見てください。楽しく踊っているようでも、かなりの体力を使うんですよ。穂乃果、ちょっと笑顔で腕立てしてみてください」

そう言われて穂乃果はやるが、次第に笑顔が歪んでくる。

遂に、体勢が崩れ床に顔からダイブ…。

痛そう…。

穂「いったぁーい!? 痛いイタイいたい!? 竜ちゃん痛いよぉ~~」

そう言った穂乃果は俺の服に顔をグリグリ擦りつけてくる。

……いや、何で?

海「これから穂乃果とことりには何曲も笑顔で歌って踊れる体力をつけてもらいます。いいですね!?」

「「は~い……」」

しょげながら返事する2人。

ご愁傷さま。

こうして作戦会議は終了した。


竜司sideoff





◎side


夜の秋葉原。

灯りが一切無い午後0時。

そこでドズゥゥゥゥゥゥン……と、1つのビルが崩れた。

正確には、突然現れた水の渦に飲み込まれたのだ。

そしてその水の渦の前には、紫色の体を持つ雷竜がいて、その側にはスタークがいた。




「さぁ……戦争の始まりだ~」




スタークは両手を上げて、そう高らかに宣言した。

翌日、テレビでこの事は大々的に流され、「新手のテロ行為か!?」と噂されるようになった。




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Game#16






竜司side


翌日の早朝。

俺と幼馴染の3人は神田明神に来ていた。

穂乃果達は体操着で。

何故体操着でなのかと問われれば、もちろん朝練をやるためである。

竜「それにしても、よく起きれたな穂乃果。俺はてっきりギリギリに起きると思ってたわ」

穂「確かに眠かったけど、私だってやろうと思えば出来る子なんだよ!」

そう、いつも寝坊する穂乃果の事だから俺も少しギリギリに穂乃果を迎えに行ったら、既に家の前で穂乃果が待っていたのだ。

いや~、あの時は驚いた。

海「ならいつも寝坊しない様に心がけて下さいよ……」

竜「全くだ」

穂「無理な時もあるんだよっ!」

お前の場合ほとんど無理な時の方が多いじゃねぇか。

海「はぁ、まぁいいです……。じゃあ練習を始めましょう」

「「はい!」」




ーーーーーーーーー



早速男坂と呼ばれる長い階段を往復する3人。

そこで俺はストップウォッチを持ち、測定していたが……。

まあ二人の体力の無さ…。

海未は部活やらなんやらで体力は付いてるが、やっぱり二人はダメだった。

神田明神の無駄に高く長い男坂を走り終えて、穂乃果は地面に大の字で寝転び、

穂「はぁーはぁー…もう、ダメ……」

ことりも尻をつけて

こ「私も………もう……無理…」

と弱音を吐くが、海未は容赦なく

海「何言ってるんですか!? これを朝と放課後にやります!! さらに、ここで歌と踊りの練習の他にも、二人には基礎体力をつけるための特訓をしてもらいます!分かったら、もうワンセットです!!」

穂「はぁ~い」

文句を言う穂乃果とことりに、俺は水筒を渡しながら言う。

竜「まあ、頑張れ」

穂「うぅ~~…竜ちゃんは他人事だと思ってぇ~」

竜「実際、他人事だからな」

穂乃果の言葉を一蹴する。

そこへ、

希「君たち」

副会長・東條さんが話かけてきた。

巫女服を着て…。

何故?

こ「副会長さん?」

穂「その格好は?」

希「ここでバイトさせて貰っとるんよ。神社は色んな気が集まるスピリチュアルな場所やからね。それに、この坂を使わせ貰っとるやきん、お参りぐらいしとかんとね」

成る程。

にしても、現役女子高生の巫女姿なんて、マンガやアニメでしか見られない大変貴重な光景を見れるなんて…。

最っ高の気分だ!

東條さんの言葉を聞き、穂乃果たちはお参りする。

穂(初ライブが成功しますように)

こ・海(しますように)

かなり真剣にお参りしてる。

希「あの3人、本気みたいやな」

竜「そりゃそうでしょ?本気じゃなきゃ朝練なんてしないしな」

参拝してる3人を後ろから眺めながら思う。

穂乃果が本気じゃなきゃ、俺もこんなにやる気になる訳もない。

3人が本気だからこそ、俺も本気で手伝ってやろうと思えた。

希「そういや、天青君はお願いしないん?」

後ろの東條さんに当然の事を言われた。

竜「ん、まぁな」

希「どうして?」

竜「俺は天っ才科学者で、天っ才恐竜学者ですよ?自分の道は、神頼みじゃなくて自分で切り開くのさ。それに、あいつらの事も……出来れば自力で守りたいんですよ…。あいつらは俺にとって家族みたいなもんだから…」

俺はそう、自分の内心を吐露する。

これに対して東條さんは、

希「君、面白い子やね♪」

笑顔でそう言われただけだった。

よく分からん人だな。

そう思ってると、東條さんはいきなりニヤリと笑って言う。

希「それよりも後ろ見てみ?」

竜「はっ?」

後ろ?

希「良かったなぁ~。天青君、3人の事家族みたいな人やから守ってくれるんやって」

そこには、




穂「り、竜ちゃん……その、えっと、お願い、します……?////」

こ「それじゃあ……期待、しちゃおう、かな……?////」

海「竜司になら、ずっと守られてもいい気がします……////」




赤面している幼馴染達がいた。

竜「あ~……」

どうやら俺は地雷を踏んだようだ。

竜「一応言っとくが、勘違いすんなよ?飽くまで家族の範疇だからな?飽くまで!」

ちゃんと言っとなかいと、この3人、変な所で暴走する危険性があるからな。

穂「家族……////」

こ「子供は2人がいいな~////」

海「竜司との結婚生活……////」

あっ、ダメだ。

余計に勘違いしちゃった。

希「流石は天才科学者さんやね♪」

東條さんは面白がってる。

結局、学校に着くまで3人は終始顔が真っ赤だった。




ーーーーーーーーー



休み時間。

俺達は1年の教室に出向いていた。

昨日穂乃果が言っていた歌の上手い子に会うためである。

穂「失礼します!」

穂乃果の声を合図に続いて行く海未とことり。

俺は廊下で待機。

一年は男子がいないし、そん中に入っていく勇気は無い。

まぁ、ここにいたら余計に不自然か。

めっちゃ見られてるし。

「………あの人、なんであんな寝癖が立ってるんだろう?」

……………マジで?

不意に後輩の呟きが聞こえたので、頭を触ってみると、確かに一部ピョコンと立っていた。

クソッ!

なんで穂乃果達も東條さんも言ってくれなかったんだ!?

あれか!?

あえて言わなかったのか!?

そんな優しさ要らねぇよ!!

俺は海未のスマホにトイレに行くとメールを入れ、トイレに向かった。





ーーーーーーーーーーー





寝癖はなんとか直り、トイレから出ると同時に、自分のスマホを確認すると、海未から連絡が入っていた。

どうやら例の1年と一緒に屋上に行ったらしい。

ついでにこんな内容も。

『寝癖。なんとかしておいてくださいね?』

遅いよ!!

とにかく俺も屋上に向かう。

さて、1年の子は協力してくれるだろうか。

してくれないと殆ど、いや、完全に手詰まりになる。




ーーーーーーーーーー



まだ見慣れない屋上に足を進め、ドアの向こうに見知った幼馴染の他に、1年という証拠のリボンを胸に付けている赤い髪の女生徒が1人がいた。

つり目のアメジストの瞳。

毛先はクルッとしている。

あれ………もしかしてアイツ……真姫か?

西木野真姫。

穂乃果達とは別口で知り合った幼馴染み。

昔はかなり可愛かったが、高校生になると綺麗さに磨きがかかっていた。

俺はドアをそろりと開ける。

何故かって?

アイツめんどくさいんだよ!!

真姫はいわゆる、ツンデレちゃんなのだ。

だからめんどくさい。

そんな真姫は毅然とした態度で言う。



真「お断りします!」



………ああいう釣れない所も変わらないな。

俺はとりあえず様子見に徹する。

穂「お願い。あなたに作曲してもらいたいの!」

真「お断りします!」

大分難航してるな。

仕方ない、この天才科学者様がやってやるか。

俺は屋上のドアを開ける。

そして開口一番こう言ってやった。

竜「もしかして歌うだけで、曲は作れないんじゃね?」

真「なっ!? そんな訳……って、竜司!?」

真姫は驚きに目を開く。

まぁ、小さい時にいなくなった幼馴染みが、今この場にいたら驚くか。

竜「よっ…」

俺は手を上げて真姫に近づく。

真「あなた……なんで?アメリカにいる筈じゃ…」

竜「帰ってきたんだよ。用事があってな?そんでここの編入生。OK?」

俺は簡単に真姫に説明する。

すると今度は穂乃果達が訊いてくる。

穂「竜ちゃん。西木野さんと知り合いなの?」

竜「ああ…。お前らと一緒で、幼馴染みだよ。親同士で付き合いがあったから、自然にな?」

すると今度は真姫が元々つり目の目を更につり上げて言う。

真「ちょっと竜司。無断でいつの間にか帰ってきてたのもだけど、この先輩達とはどういう関係なの?」

うわ、怖ぇ…。

竜「お前とは別口で知り合った幼馴染みだよ。ってかなんでそんな目ぇつり上げてんの?」

真「べ、別に!つり上げてなんかいないわよ!!////」

顔を赤くして、そっぽ向く真姫。

こういうやつだから、めんどくさいんだよ…。

ここで海未が話題を戻す。

海「それで。曲作りなんですが…」

それに穂乃果も乗っかる。

穂「そうだよ!お願い西木野さん!」

真「嫌です!」

頑なだな。

竜「真姫、理由を聞かせてくれないか?」

俺がそう言うと、真姫は横を向いて、小さく言った。

真「………やりたくないだけなのよ」

やりたくない……ねぇ。

穂「どうして!? 学校に生徒を集めるためだよ!? その歌で生徒が集まれば…」

真「興味無いです!!」

そう言って真姫は屋上を出る…………前に俺に訊く。

真「ねぇ竜司。あなた、今世間で自分がなんて言われてるか知ってる?」

竜「知ってる。悪魔の科学者だろ?」

真「あなた……それでいいの?」

真姫は悲しそうに目を細める。

それを聞いた穂乃果、ことり、海未も悲しそうに目を伏せる。

まぁ、小さい頃から知ってるやつが悪魔の科学者呼ばわりされてたら、心配にもなるか。

ことりも怒ってた位だからな。

竜「別に。世間がなんて言おうが知ったことかって話だよ」

そうだ。

世間が何言おうと、俺のやることは変わらない。

俺の返事を聞いた真姫は「そう……」と言って、今度こそ去っていった。

「「「………………」」」

辺りに漂う沈黙。

ったく……変に気を使いやがって。

俺は3人の頭にチョップする。

穂「あてっ!?」

こ「ちゅん!?」

海「うっ!?」

3人共頭を押さえて、穂乃果が代表して咎めてくる。

穂「竜ちゃん何するの!?」

竜「何するの!?…じゃねぇよ。変に気を使うな。それよりお前らにはやることがあんだろ?そっちに気を使え。俺は大丈夫だから……」

そう言って、3人の頭を撫でる。

3人共くすぐったそうに目を細めて言う。

穂「ごめん、竜ちゃん…」

海「そうですよね…」

こ「私達にはやることがある。そっちを頑張らないと」

そう言って、3人は笑顔を見せた。

その時、思わぬ来客が屋上に訪れた。

穂「生徒会長?」

竜「……会長」






絵「……ちょっと、いいかしら?」







また、1つの嵐がやってきた。








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Game#17


割りとオリジナル展開です。


授業中。

本来なら、生徒の全てが真面目に先生の話を聞いて勉強するのが当たり前なのだが、その生徒の全てがちゃんと聞いている訳ではない。

眠気に負けて寝る者もいれば、影で喋っている者もいる。

因みに俺はスマホを使ってアメリカのジュラシック・パークの様子を見ていた。

天才の俺は、ここの授業なんて寝てても出来るからな。

よしよし、モササウルスの成長は順調だな。

それに反して前の席にいる穂乃果。

こいつは何か考え事をしていた。

恐らくは、つい先程、屋上での絢瀬会長との会話が原因だろう。

穂「逆効果か……」

ふと漏れた穂乃果の独り言を不覚にも聞いてしまった俺も、さっきの出来事を思い出してみる。



絵『スクールアイドルが今までなかったこの学校で、やってみたけどやっぱりダメでしたとなったら、みんなどう思うかしら?私もこの学校が無くなって欲しくない。本当にそう思っているから、簡単に考えてほしくないの』



それは会話というより、一方的に意見を押し付けているかの様な言い回しでもあった。

何があの人をそうまでさせるんだ?




ーーーーーーー



時間は進み昼休み。

俺達は大きな木の下のベンチに座っていた。

穂「やっぱり、甘かったのかなぁ…」

海「やっと気づいたのですか?」

穂「でも、ふざけてやろうって言った訳じゃないよ?海未ちゃんのメニュー全部こなしてるし、おかげで足は筋肉痛だけど」

海「確かに頑張っているとは思いますが、生徒会長が言ったことはちゃんと受け取らないと」

竜「じゃあここでやめるか?」

穂「えっ?」

竜「訊くが、お前は今の行動が間違ってると言われて、そのまま尻尾巻いて指くわえて逃げるのか?そのまま廃校を見てるのか?スクールアイドルはリスクが高い。だからって、それだけでお前はやめるのか?」

少し意地悪な質問だが、俺は知ってる。

高坂穂乃果という少女の本質を。

いつも元気で、唐突で、考えなしに誰かを巻き込んで、無茶ばかりして、それでも最後にはどうにかやってしまう。

その結果にいつも誰かが魅了される。

それが高坂穂乃果という少女。

そんな穂乃果だからこそ、こう答えるのは目に見えていた。

穂「やめないよ。確かに生徒会長の言うことも分かる。でも私だって廃校をなんとかしたい!だからやめないよ!続ける!」

竜「ふっ……それでいいんだ」

そう言って、俺は立つ。

竜「真姫の方は俺がなんとかしてやる。だからお前らはお前らで出来る事をやってろ。海未、作詞は出来てるか?」

海「一応出来てますが……」

そう言って海未は詞が書いてある紙を取り出す。

俺はそれを取って歩く。

竜「じゃあこっちは任せろ」

そう言って、俺は一年の教室に向かった。


竜司sideoff





◎side


西木野真姫は自分の教室で一人、昼御飯を食べていた。

彼女は友達がいない。

その近づきがたいオーラのせいと、彼女の意地っ張りで、素直じゃない性格が災いして。

だが別にそれを気にした事は無い。

昔から彼女は自称天才の少年が側にいる時以外は一人だったので、それに慣れてしまったのだ。

そして今日も今日とて、静かに弁当を食べていた。

その時。






ガラッ!!






竜「天青竜司でーす!! 西木野真姫ちゃんを誘いに来ましたぁぁ!!」








一年の教室のドアが勢いよく開き、一人の男子生徒がそう叫びながら滑り込んできて、最後に後ろを向いて体をシャフ度に傾けて、真姫を視界に捉えた。

瞬間、一年の教室は絶対零度の空気に包まれた。

先程まで和気あいあいとしていた雰囲気が一気に崩れた。

誰もが口を開けて竜司を見て、その教室にいた小泉花陽と星空凛も一瞬誰だ?と首を傾げ、後に竜司の顔を確認すると目を大きく開き、真姫はアホ面を晒す程だった。

だがそこは幼馴染み。

逸早く我に返り、飛び出し、竜司の手を掴む。

真「ちょっとあんた来なさい!」

竜「うおっ!?」

そしてそのまま教室を出た。


◎sideoff






竜司side


一年の教室で盛大なインパクトを叩き出した俺は、現在真姫に連れられ、階段の踊り場に来ていた。

そして開口一番、

真「あんた何してんのよ!?」

怒鳴られた。

竜「こうすれば真姫が否が応でも来てくれると思って」

真「あんた……最低ね…」

そりゃどうも。

真姫は溜め息を吐くと、訊いてくる。

真「で?何の用?まぁ分かるけど…」

竜「流石は真姫。じゃあ本題に入るけど、作曲頼む」

真「はぁ……やっぱり。竜司なら知ってるでしょ?私の音楽は中学校を卒業したと同時に終わってるの。だから作曲はしない。それに、私アイドルの曲は聞かないのよ。なんかチャラチャラしてるみたいで苦手なの……」

真姫はやはり断ってくるが、俺はめげずに言う。

竜「頼むよ真姫。ほら、鬼~のパンツはいいパンツ~♪的な感じでチャチャっと一回だけでいいからさ~」

真「なんで鬼のパンツなのよ。っていうか、それ私の事軽くバカにしてるでしょ?」

竜「そんな事は無い」

………多分。

真「はぁ~……ねぇ、竜司。なんであなたがそこまで躍起になるの?やっぱり………あの先輩達が私と同じ幼馴染みだから?」

真姫は少し寂しそうな顔で訊いてくる。

竜「そうだな…。確かにそれもある。でも、今俺は実験をしてるんだ」

真「実験?」

首を傾げる真姫。

竜「そう、実験。真姫、お前から見て、あいつらはどう見える?」

真「どうって………普通ね…」

竜「そう、普通なんだ」

真「?」

あいつらは何処にでもいる普通の女の子。

そんなあいつらが無謀な夢を叶えようとしてる。

益々首を傾げる真姫に、俺は言う。

竜「普通なあいつらがスクールアイドルとして成功するかどうか。俺はその実験をしていて、それを成功させたい。つまり、俺には俺の思惑があるのさ。その為にも真姫、お前が必要なんだ」

真「っ!?////」

そう言うと真姫はトマトのように顔を赤くする。

なんだ?

また言い方が悪かったのか?

まぁいいか。

竜「真姫。頼む」

そしてもう一度頭を下げる。

そんな俺を見た真姫は、

真「あーもう!分かったわよ!分かったから頭を上げなさいよ!!」

そう言って、承諾してくれた。

竜「ありがと。真姫…。後、これが詞だ。それと穂乃果達は神田明神で練習してるから、暇なら来いよ」

そう言って、海未が書いた詞を渡す。

真「………言っとくけど、まだ保留ってだけだからね?」

真姫はそれを取って、去っていった。

でもその顔は、無愛想な表情ではなく、ほんの少しだけ頬が緩んだ表情をしていた。




ーーーーーーーーー



教室に戻ると、海未とことりはいたが、穂乃果はいなかった。

こ「あっ、竜君」

海「おかえりなさい。どうでした?」

竜「承諾してくれたよ」

こ「ホント!? すごいよ竜君!」

竜「でしょ!? 最っ高でしょ!? 天っ才でしょ!?」

俺は思いっきり自慢した。

これに対し海未はまたかと呆れの目を向けてきて、ことりは苦笑をしていた。

竜「そういや穂乃果は!?」

海「一人グループ名投票箱のところへ行きましたよ」

成る程。

穂「あったよー!!1枚!!」

そこへ、件の穂乃果が紙をひとつ手に持って帰ってきた。

海「何が書いてあるんですか?」

穂「えっとね~…何これ?ユー…ズ?」

紙にはμ’sと書かれている。

なんて読むの…ホントに?

海「たぶんミューズかと」

竜・穂「ああ…石鹸の?」

海「違います!」

俺と穂乃果の思考がシンクロし、同時に声に出すが、海未に即座に否定される。

海「恐らく、神話の女神からつけたのだと思います」

穂「へぇー………………」

竜「ミューズね……」

こ「良いと思う!私は好きだな!」

穂「よーし、今日から私たちはμ’sだ!!」

こうしてグループ名が決まった。

…………そういや、確かμ'sって9人の筈だが……まさかな。


竜司sideoff





◎side



事は数時間前に登る。

小泉花陽と星空凛は唖然としていた。

突如盛大なインパクトを叩き出しながら、やって来た男子生徒。

それはつい最近編入してきた竜司だった。

2人はまた会えた喜びと、困惑の狭間にいた。

それもその筈。



竜「天青竜司でーす!! 西木野真姫ちゃんを誘いに来ましたぁぁ!!」



こんな事をハイテンションで言われたのだから。

教室が絶対零度の空気に包まれたのを、2人は覚えた。

何が何だか分からない内に、その竜司は真姫によって外に連れ出されたが……。

そしてしばらくの間を開けて、ようやく2人は正気に戻った。

最初に口を開いたのは凛だった。

凛「ねえ、かよちん…」

花「何?……凛ちゃん」

凛「今の……天青さん……だよね?」

花「うん……」

凛「別人……じゃないよね?」

花「多分……」

確かめあう2人。

しかし現実は無情。

先程の男子生徒は紛れもない、以前自分達を助けてくれた少年なのだ。

凛「…………嘘にゃぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああああ!!」

花「凛ちゃん落ち着いてぇぇぇぇぇぇ!!」

頭を抱える凛と、それをショックを少し受けながらも宥める花陽。

竜司の知らない所で、ショックを受けた2名がいた。


◎sideoff







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Game#18


(^U^)


◎side


太陽が沈みかけ、空も景色もオレンジ色に染まった道を歩きながら、真姫は自分の幼馴染みの少年が言っていた事を思いだす。


竜『普通なあいつらがスクールアイドルとして成功するかどうか。俺はその実験をしていて、それを成功させたい。つまり、俺には俺の思惑があるのさ。その為にも真姫、お前が必要なんだ』


竜『それと穂乃果達は神田明神で練習してるから、暇なら来いよ』


最初は無性に腹が立っていた。

自分より穂乃果達の味方をしたことを。

真姫は嫉妬していた。

穂乃果達に対して。

だがすぐに首を振って、その考えを振り払う。

真(って、何考えてんのよ私は!別に竜司が誰といようと私には関係ないじゃない!)

それでも、やはり後から何か気持ちの悪い思いがやって来る。

昔から同年代の誰よりも頭の良い真姫は浮いていた。

故に友達が一人もいなかった。

最初はそれでもいいと思っていたが、やはり心の隅では友を求めていた。

そんな時だ。

竜『なぁ、これ一緒に解かないか?』

病院の託児室で遊んでると、1つ年上と思われる銀髪で左目に眼帯をした少年が声をかけてきた。

少年の手には、大人でも完成させるのに時間のかかりそうな恐竜のパズルがあった。






竜『ちょっと手伝ってよ』





これが竜司との出会いだった。






気づけば真姫は竜司といることが多くなっていた。






その頃から、真姫は自覚なしに竜司に依存していた。

故にこの気持ちがよく分かっていないのだ。

真「ホント……なんなのよ…」

真姫は自分が普段帰ってる道とは逆方向を歩いていた。

理由は2つ。

竜司の言った通り、穂乃果達の練習を見るのと、この気持ちを確かめる為。

真「竜司に言われたからじゃない!私がちょっと気になっただけだから見に行く。ただそれだけ!」

誰に言ってるかは分からないが、そんな言い訳じみた事を言いながら、真姫はその歩みを早めた。




ーーーーーーーーー



竜司の言っていた神田明神へ入るための階段の曲がり角が目に見えた所で、声が聞こえてくる。

恐る恐る曲がり角から階段の上の方へ目を向けると、そこにあったのは、



穂「もぉぉぉぉダメぇぇ~~~……!」

こ「もう……動かない……」

海「ダメです。まだ2往復残っていますよ!」

竜「頑張れ~。迷える子羊ちゃん達」

穂「竜ちゃんも何気に鬼~……」

ぐったり座り込んでいる少女が2人、仁王立ちしている少女が1人、そんな3人を余所に一人パソコンを弄ってる少年が1人という、何ともシュールな光景があった。

真(……え、何あれ?)

と、疑問に疑問が重なる真姫だが、その光景を隠れながら見ている真姫も十分にシュールなのは言うまでもないだろう。

真姫の疑問とは裏腹に、会話は続けられていく。

穂「竜ちゃん何してるの~?」

竜「うん~?恐竜のベストマッチの法則を探してんだ。この簡易システムを使えば、一々恐竜を出して、技発動しなくてもいいからな…」

そう言う竜司が見つめるパソコンの画面には、恐竜カードと超技カードの絵柄が映っており、それを竜司はマウスで動かして、ベストマッチを探していた。

が、なかなか無いのか、ブー!!と、間違い音しか鳴らない。

穂「ふ~ん……」

その事に興味を持ったのか、穂乃果もことりも、遂には海未も画面を覗き込む。

竜司は頭をかいて言う。

竜「おっかしいな~。確かにティラノは俺の計算によると、チョキかグーの筈なんだが……」

真(……本当に何してるの?)

真姫は眉ねを寄せる。

さっきまで練習をしてるかと思えば、すぐに関係の無い事をし始めたのだ。

無理も無い。

穂「ちょっと貸して」

その内穂乃果が手を出してくる。

竜「お前みたいな単純バカじゃ無理だよ」

穂「いいからいいから♪こう言うのは消去法だよ?」

竜「パーはあり得ねぇよ…」

そう竜司が言うも、穂乃果はマウスを動かして、ティラノと炎属性でパーの超技カードを合わせる。

その瞬間…






《ベストマッチ!》

竜「うそーん…!?」

こ「ブラボーだよ!穂乃果ちゃん!」

見事にベストマッチし、それに竜司は目を飛び出させ、ことりは誉めて、穂乃果はドヤ顔をする。

穂「ほら見なよ!これが穂乃果の第・6・感!」

見事にウザさを感じるドヤ顔を浮かべる穂乃果。

それに対して竜司は反論する。

竜「はっ!どうせまぐれだよ!まぐれ!」

穂「何だとー!?」

海「やめなさい2人共!」

すぐに口論になる2人を海未が止める。

真(……本当になんなのよ…)

この光景に、若干真姫は呆れを感じていた。

しかし同時に竜司達のやってる事に興味を持ったのも事実。

少しだけ身を乗り出した。

竜「なら次は海未!お前やってみろ!」

海「私ですか?」

竜司の指名に、渋々ながらマウスを操作する海未。

海「ではスピノサウルスで。技はとりあえずグーで」

竜「俺はチョキだと思う」

しかしまたしても…

《ベストマッチ!》

竜「うそーん…」

竜司の計算は外れた。

そして竜司はサラサラと崩れた。

こ「竜君!? しっかりして!」

穂「うええぇぇ!?」

海「はぁ……全く」

竜司のプライドがボロボロになった瞬間だった。

そして、





竜「うわああああああああああ!! こうなったらヤケだ!! この地に恐竜をたくさん放ってやるぅぅぅ!!」





地面をゴロゴロ転がりながら、そうテロ宣言した。

海「落ち着きなさい!!」

竜「げぼっ!?」

海未のエルボーがヒット。

竜司は沈黙した。

その光景に呆れつつも、真姫は何処か羨ましそうに見ていた。

故に。

真姫は自身の後ろから胸へと迫る手に気が付けずにいた。

ガシッ!!と。











真「きゃああああああああああ!!!?」








竜司達の耳に、少女と思わしき悲鳴が聞こえた。






穂「ん?何だろう?」

竜「さぁな?とりあえず見てくるから、お前らはそこにいろ」

「「「はぁ~い」」」

そう言って、竜司は階段を下りて行った。




ーーーーーーーーーー




竜司の気分は最悪だった。

天才の自分を差し置いて、穂乃果と海未にベストマッチを見つけられたのだ。

正直気が滅入っていたので、その口調は荒くなっていた。

竜「おい!誰だ!?」

しかしその気分はすっ飛ぶ。

竜司の視界に入ってきたのは、巫女(東條希)に胸を掴まれている幼馴染みの女の子(西木野真姫)だった。

希「まだ発展途上ってところやな」

竜「いや、あんた何してんだよ?」

思わずツッコム竜司。

真「ホ…ホントに……何すんのよ!?」

と言って、真姫が自分の胸を抑えながら竜司の後ろに隠れる。

しかし希は軽くスルーして、

希「けど大丈夫。望みは捨てなくてもええ。大きくなる可能性はある」

とか言ってる。

真「なんのことよ!!」

希「恥ずかしいんやったら、こっそりという手もあると思うんよ」

真「だから、なんの……」

希「わかるやろ…」

真姫が再び聞こうとするが、希はそれを遮り諭すように言う。

真姫にとって東條希は、何を考えているか分からない相手、というのが第1印象になった。

そして、希は階段の方へ行く。

真「…………何よ?ホントに……」

竜「さぁ?」

そう呟き考える真姫に適当に相槌を返す竜司。

しかしすぐに別の話題に切り替える。

竜「そういや真姫。あいつらの事、見に来てくれたんだな」

突然の事に、真姫は一瞬言葉を失った。

真「べ…別に、ちょっと気になっただけだから来ただけよ!」

竜「はい、天然のツンデレありがとうございます」

真「ちょっと。今バカにしたでしょ?」

目くじらを立てる真姫。

竜「そんな事は無いさ。それに、来てくれたことには変わり無い」

真「うっ、うぅ……」

竜司の言う事は正解だった。

何だかんだ言いつつも、結局真姫はここに来た。

それが全ての証明になった。

真「で、でも!本気で練習してないと作曲なんかしてやらないんだから!さっきだって、あんたの実験に注意が向いてたわよ!」

竜「それを言われると耳が痛いが、大丈夫だ。あいつらは本気だ。俺が保障する」

真「っ……」

竜司の真剣な目差しで、真姫はそれ以上は言わなかった。

代わりに溜め息を吐く。

真「……はぁ~……まっ、そうよね。本気じゃない人達を手伝う程、あなたはお人好しじゃないもの」

真姫はそう言って、踵を返す。

竜「もう帰るのか?」

真「ええ……」

竜「そっか……じゃあ送っていくよ」

真「えっ?でもあなた…」

竜司は穂乃果達の手伝いの途中だ。

真姫はそれを言おうとしたが、竜司がディノホルダーと1枚のカードを取り出したことで、途中で止まる。

真「それって?」

真姫は首を傾げて、ディノホルダーを指差して訊くが、代わりに竜司は意地悪い笑みを浮かべた。

竜「まぁ見てろ」

そう言って竜司は特殊技カードをスラッシュ。

《ストルティオ・ラッシュ》

その音声の後、そのカードを投げると、カードは『ストルティオミムス』というダチョウに似た恐竜になる。

「クエェェェェッ!!」

真「なっ……!?」

当然真姫は絶句する。

それもそうだ。

妙な機械とカード1枚で本物の恐竜が現れたのだから。

そんな真姫を無視して、竜司はストルティオミムスに言う。

竜「真姫を送ってやれ」

「クエッ」

ストルティオミムスは了解の鳴き声を上げると、真姫の股に体を滑り込ませ、真姫を乗せる。

真「ヴェェエエ!?」

驚く真姫を余所に、ストルティオミムスはダチョウと同じ速度で走った。

つまり、ほぼ風速で。









真「きゃああああああああああああああああああああああああああああ!!!? 竜司ぃぃぃぃぃぃ!! 後で覚えておきなさいよぉおおおおおおおおおおおおおお!!」










その場に、真姫の悲鳴と怒号が轟いた。

余談だが、ストルティオミムスは真姫を送り届けると、カードに戻って、竜司の所に帰ってきた。



ーーーーーーーーー



その夜、秋葉原のとあるビルの前に、ある角竜と人物がいた。

恐竜の方は、トリケラトプスだが、色が黒や茶色で構成された悪役っぽいカラーリングで、そのトリケラトプスを操ってるのは、ナイトローグだ。

ナイトローグは雷の超技カードをスラッシュ。

《サンダードライバー(旋雷杭打)》

そして黒や灰色で構成されたトリケラトプスに吸収させる。

「やれ、マキシムス」

「グゲェェェゴォオオオオオオオオン!!」

マキシムスと呼ばれたトリケラトプスは吠える。

マキシムスは飛び上がり、ビルを越えると、そのビルに向かって雷を纏って回転。

そのままビルを貫き、破壊した。

ドゴオオオオオオオオオオオオン!!

倒壊するビル。

それを動画に撮って、ナイトローグは消えた。

翌日、またこの事件は大きなニュースとして流された。

しかもマキシムスがビルを壊してる動画付きで。

つまりこれで、ますます人々は恐竜を恐怖の象徴として見るようになったのだ。


◎sideoff





竜司side


翌日。

胸糞悪い恐竜のニュースを見た後、お向かいにある穂乃果の家に行く。

そしていざインターホンを押そうとした時、

穂「行ってきまーす!」

呼ぼうとしてた張本人が出てきた。

穂「あ、竜ちゃんおはよー!」

竜「おう」

最近ではあるが、朝練の甲斐もあってか、穂乃果は朝寝坊をする事が少なくなっていた。

こうして迎えに来た俺とタイミング良く鉢合わせする事も多くなっている。

雪「お姉ちゃーん。あ、竜兄おはよー」

穂「ん?」

竜「おう、おはよう雪穂ー」

2階から手を振って挨拶をしてくる雪穂。

雪「お姉ちゃーん。これお姉ちゃんのー?宛名がないんだぁ。μ'sって書いてあるけどー」

そう言った雪穂の手から見えたのは1つのCDだった。

俺と穂乃果は数秒間顔を見合わせてから、穂乃果が足早に家の中へと駆けて行く。

十中八九、雪穂からCDを受け取るためだ。

穂乃果が戻り、俺も穂乃果の手元にあるCDの封筒を見ると、裏にはμ'sの文字があった。

穂「あっ……これって……!」

竜「ああ、多分、そうだろうな……」

全く……あの可愛いツンデレ姫め。

とにかく、これを確認するには海未とことりとも合流しなければならない。

竜「とりあえず、海未とことりと合流して、学校で聴いてみるぞ」

穂「うん!」



ーーーーーーーーー




穂「じゃあ…かけるよ」

海「はい!」

こ「うん!!」

今は屋上で差出人不明のCDをかけているところだ。

まあ……大体検討はつくが…。

そして聴こえてきたのは、海未の書いた歌詞に合わせて流れてくる曲と歌声だった。

穂「これって………この歌声と歌詞…」

穂乃果も気付いたようだ。

こ「私たちの………」

海「私たちの………曲」

そして穂乃果はますますやる気を出し、勢い良く立ち上がる。

穂「よし、練習しよう!!」

こ・海「うん!!」

頑張れよ…。



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Game#19


第3話です。

それと多分明日は更新する事は無いと思います。


恐らく真姫が作ったと思われる曲を貰った日から数日。

俺たちはいつも通り朝練をしていた。

今は階段ダッシュをしていた。

3人が走り、俺が計測担当をしていた。

その後はダンスの練習を始めていた。

竜「1、2、3、4、5、6、7、8、1、2……」

小さな鏡を地面に置き、少しでも自分の動きを確かめながら踊る。

俺の掛け声をリズムとして受け取り、それに合わせ3人は動く。

竜「ことり、手をちゃんと伸ばせ。穂乃果はペースが少し早い」

こ「わかった!」

穂「うん!」

時折注意もする。

海「穂乃果!」

穂「タッチ!」

今の所見る限りは順調だ。

キレはともかく、動き、タイミングと共に合っている。

海「良い感じです!」

穂「うん!」

結局、好調のままダンス練習は終わった。

これは結構良い感じだな。

このままいけば当日の新入生歓迎会のライブも上手く出来るかもしれない。

あとは……何人が見に来てくれるかだな。

海「では3分休憩します」

それと同時に、建物の日陰の多い場所へと移動する。




ーーーーーーーー



穂「ふうぅ~、終わったぁ……」

一番に穂乃果が壁にもたれこむ。

俺は水筒とタオルを三人に渡す。

竜「お疲れ」

穂「うん。ありがと、竜ちゃん」

海「まだ放課後の練習がありますよ」

こ「でも、随分とできるようになったよね♪」

海「二人がここまで真面目にやるとは思いませんでした」

竜「だよな~。穂乃果は寝坊ばっかりすると思ってたんだが」

穂「大丈夫!! その分授業中ぐっすり寝てるから!!」

穂乃果はそう言って寝転ぶ。

竜「いや、ダメだろ…?」

それじゃ、本末転倒だろ。

そう思ってると、階段のところで真姫がいた。

………何やってんの、あの子?

俺に見られた事に気付いた真姫は慌てて去ろうとするが、それを俺と一緒に気付いていた穂乃果が見逃すはずもなく、

穂「あっ、西木野さーん!まーきちゃーん!!」

思いっきり叫ぶ。

つか、そこフルネームで言う必要あります?

ともかく、穂乃果の声がデカくて恥ずかしいのか、当の真姫は顔を険しくしながら階段を上がってきた。

真「大声で呼ばないで!」

怒る真姫。

それに対し穂乃果は

穂「ん?どうして?」

と聞く。

マジかよ…?

穂乃果さん。

大声で呼ばれちゃ、誰だって恥ずかしいだろうに……。

そんな俺の予想は当たり、

真「恥ずかしいからよ!」

と言う真姫。

穂乃果は華麗にスルーし、

穂「そうだ!! あの曲……」

真「っ!?」

穂「三人で歌ってみたから、聞いて」

イヤホン付きの音楽プレイヤーを取りだす。

それに対し真姫は

真「は~?何で…?」

と聞く。

穂「だって……真姫ちゃんが作ってくれた曲でしょ?」

真「っ!! だからぁ、私じゃないって何度も言ってるでしょ!」

『また』始まったよこのやり取り。

よく飽きないなこいつら。

海「まだ言ってるのですか…」

俺の隣で海未も呆れ気味に呟いている。

そう、休み時間に会うなり2人はこのやり取りを何回もしているのだ。

穂乃果が詰め寄り、真姫が否定する。

このループを会う度にやっている。

すると突然、穂乃果が「クカカカカ…」と言いながら、身体を震わせ、次の瞬間。

穂「ガオーーーッ!!」

と、叫びながら真姫に抱きつく。

真姫の耳元に顔を近づける穂乃果。

そのせいで真姫は恐怖を覚える。

真「はぁ!?…何やってんの!?」

穂「うっひっひっひっひっひっひ……」

悪い笑顔で笑う穂乃果。

真「いっ…いやぁぁぁぁぁぁぁ!!」

叫ぶ真姫だが、次の瞬間、穂乃果にイヤホンを耳につけられ「えっ!?」と呆気にとられる。

今の顔、いいな。

写真に撮ろう。

パシャ!!

真「ちょっと!? 何やってんのよ!?」

真姫が手をこちらに伸ばしてくるが、俺はひらりと避ける。

その瞬間に、穂乃果は言う。

穂「よぉし!作戦成功!!」

その言葉に真姫は止まり、イヤホンに注意を向ける。

真「……?」

穂「結構上手く歌えたと思うんだ。いくよ~~」

海「μ’s…」

こ「ミュージック…」

「「「スタート!!」」」

そう言って、プレイヤーの音楽を再生する穂乃果。

真姫は暫く聞き、音楽が終わった後

真「まだ若干ズレがあるわ…」

と言い残し、立ち去った。

その後は穂乃果達を着替えさせる。

竜「じゃあ俺達も行くぞ」

「「「は~い」」」

各々の返事を聞き流し、穂乃果達が走っていく姿を見てから、俺はその場で佇んでいた。

いわゆる見張りだ。

家でジャージに着替えて練習するには申し分ないが、練習を終えてからの着替えが少し厄介なのである。

ここは神社だ。

一応バイトの人専用の更衣室はあるが、この時間帯では空いてない。

だから穂乃果達は仕方なく、外でも人が来ない場所で着替えている。

海未は最初抵抗していたが、それしか方法がない故に最後は渋々納得した。

見張りの方はブルー達にやらせようと思ったが、それでは騒ぎになるし、何より恐竜が側にいる所で着替えたくは無いと、海未に猛反対された。

なので仕方なく俺が見張りをしている訳。

穂「よぉし、行こー竜ちゃん!」

海「お待たせしました竜司」

こ「待たせてごめんね~竜くん」

そんな事を考えてたら、既に着替えが終わった3人がやって来ていた。

竜「ん…」

ここで俺達はようやく登校した。



ーーーーーーーーー



穂「ふぁぁぁ~~…」

校門を過ぎた所で、急に隣から気の抜けたあくびが聞こえてきた。

海「眠る気満々ですね…」

正直、俺も眠い…。

すると後ろから「ねぇ?あの子たちじゃない?」という声が。

後ろを振り向くと、先輩二人がいて、

「あなたたちって、もしかしてスクールアイドルやってるっていう…」

と、質問をされる。

それにことりが答える。

こ「あっ……はい!μ’sっていうグループです」

「μ’s…?ああ~石け……」

海「違います!」

海未が即座に否定。

反応はぇぇ~~…。

「そうそう。ウチの妹がネットであなたたちの事見かけたって…」

穂「ほんとですか?」

「明日ライブやるんでしょ?」

こ「はい!放課後に」

「どんな風に踊るの?ちょっと、ここで見せてよ!!」

こ「えっ…!? ここでですか…?」

戸惑うことり。

まあ、ここは校門。

生徒も沢山いる。

恥ずかしいだろうに…。

隣を見ると、海未が凄い顔になってる。

しかし、ここで穂乃果が穂むらの看板娘としての実力を遺憾なく発揮する。

グーにした手を頬につけ、若干ムカつく笑みを浮かべて言う。

穂「うふふふふふ……。いいでしょう…。もし来てくれたら、ここで少しだけ見せちゃいますよぉ~~。お客さんだけに特別に~…」

こ「お友達を連れてきてくれたら、さらにもう少し………」

「ホント!?」「行く行く!!」

穂「毎度ありぃ~~!!」

飛び跳ねる穂乃果。

こいつのこういうところ素直に尊敬するよ…。

穂「では、頭のところだけ…」

そう言って踊ろうとする穂乃果とことり。

しかし、ここで先輩が

「あれ?もう一人は?」

と聞く。

見ると、海未がいない。

アイツ……逃げたな…。

穂「ふぇ…?」



ーーーーーーーーー



海「やっぱり無理です……」

放課後の屋上で。

体育座りをしたまま俯いている海未が呟いた。

穂「えぇー!どうしたのー?海未ちゃんならできるよー!」

竜「そうだぜ海未。お前ならできる。ウルトラソウル!♪…だぜ?」

こ「竜くん、ちょっとそれは意味分かんないよ?」

そう?

ゆーめじゃない~あれもこれも~♪な現状だから合うと思ったんだが。

海「……出来ます」

穂「え?」

意外な海未の回答に、穂乃果もことりも疑問符を浮かべた。

海「歌もダンスもこれだけ練習してきましたし……でも、人前で歌うのを想像すると……」

竜「……あー、そゆことね」

こ「緊張、しちゃう?」

海「……」

無言でうなずく海未。

そういやこいつ、大の恥ずかしがり屋だったな……。

今まで気合い入れて練習とか指導してたから、頭からすっかり離れてたわ。

穂「……そうだ!そういう時はお客さんを野菜だと思えって、お母さんが言ってた!」

おい、野菜が何種類あると思ってんだよ?

海「野菜……。っは!私に1人で歌えと!?」

こ「そこ……?」

竜「何を想像した……?」

海未はこういう時たまにアホの子になるから厄介だな。

見てて面白いからいいんだけど。

穂「どうしよう?竜ちゃん…」

竜「どうするって、荒療治してみるか……?」

穂「例えば?」

竜「………公衆の面前でラブーアローシュート…ぐげっ!?」

案を出そうとしたら海未に首根っこ掴まれた。

くるちぃ…。

海「竜司………それ以上は分かってますね?」

竜「……はい」

怖い……笑顔が怖いよ海未さん。

こ「でも…海未ちゃんが辛いんだったら、何か考えないと…」

海「ひっ、人前じゃなければ大丈夫なんです!! 人前じゃなければ……」

頭を抱えて蹲る海未。

竜「人前じゃなければって……人前じゃないと意味無いだろ…?」

海「ですが…!!」

海未が俺に反論しようとすると、穂乃果が海未の手をつかみ立ち上がらせ

穂「色々考えるより、なれちゃった方が早いよ!………じゃあ、行こ!!」




ーーーーーーー



そしてやってきたのは秋葉原。

見渡す限り、人、人、人&そして色々な建物。

穂「じゃーん!ここでライブのチラシを配ろう!」

竜「フウォォォォォォォォウ!! チラシ配りはアキバっしょぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

俺は体をシャフ度に傾けてそう叫んだ。

しかし誰もがスルーする。

海「ひ、人がたくさん……」

穂「当たり前でしょ!そういう所を選んだんだから!ここで配ればライブの宣伝にもなるし、大きな声出してれば、その内慣れてくると思うよ。ね、竜ちゃん!」

竜「そうそう!んじゃ、お前らはチラシ配り頑張れよ~。俺は適当な店で暇潰しておくから~」

さーて、なんか恐竜のグッズはあるかな~?

竜「ぐぎゃぶぇっ!?」

穂「どーこ行くのかな~?竜ちゃ~ん……?」

穂乃果に首根っこを掴まれた。

というかお前も笑顔が怖いよ?

竜「いや、だって俺関係ないし…」

穂「私達が頑張ってチラシ配ろうとしてるのに、竜ちゃんだけ楽しようなんて不公平じゃないかなー?それに竜ちゃんは私達のマネージャーなんだから。手伝うのは当たり前でしょ?」

うわお……ハイライトが消えてる。

この子ヤンデレできるな。

けどな穂乃果。

竜「それ言うんなら、あいつどうにかしろよ」

穂「ほぇ?」

俺は海未を指差す。

そこには、






海「……あっ、レアなの出たみたいです……………」






現実逃避気味にガチャガチャをしている海未がいた。

ことりは苦笑いをしている。

穂「海未ちゃぁぁぁぁん!!」

穂乃果が呼びかけるが、海未は

海「無理です………無理です………無理で す………」

どこぞの自虐ネタ芸人みたく、「無理です」を連呼している。

こ「さすがにハードルが高過ぎたんじゃ……」

穂「はぁ~、そうだね……。ほら、海未ちゃん行くよ」

ことりの意見に穂乃果は納得し、海未を連れて行こうとした時。







ドズウウウウウウウウウウウウウウン……






突如現れた水の渦により、近くのビルが沈んだ。

穂「あれって……最近ある事件と一緒だ……」

穂乃果がそうボソリと呟く。

そしてその水の渦からは、













紫色の雷竜が現れた。

あれは……ディクラエオサウルス!?

「グオォォォォォォン!!」

ディクラエオサウルスは吠えると、こちらに来て、人々を危険に晒す。

叫び、逃げ惑う人々。

そしてそのディクラエオサウルスの側には、









「よっ!ひさびさだな~?」

竜「……スターク…」









ブラッドスタークがいた。







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Game#20






◎side


街中に現れたディクラエオサウルスとスターク。

それに対し竜司は手で穂乃果達を後ろに下がらせ、その意思を汲み取った穂乃果達は安全な場所に隠れる。

そして竜司は真剣な顔で質問をする。

竜「随分と大胆だな?」

だが、スタークはおちゃらけた態度で返す。

「なぁに。そろそろ宣戦布告しようと思ってな?」

竜「宣戦布告?」

「そうだ」

そう言って、スタークは両腕を広げて宣言した。

「俺達はこれより、人類対恐竜の戦争を仕掛ける。これはその手始めだ」

竜「何だと!?」

穂「そんな!!」

こ「酷い…」

海「何故こんな事を!?」

遠くから穂乃果達が咎めるも、スタークは淡々と言う。

「よく考えろ。俺達は恐竜が絶滅したからここまで栄えた。逆に恐竜が世に放たれてみろ。人類はたちまち滅びる」

海「それは………ですがそれと戦争が何の関係になるんですか!?」

海未が問い詰めるも、スタークはのらりくらりとした態度で、そして事実を言った。

「このディノホルダーは、恐竜を所有者の意のままに操り、戦わせる、謂わばモンスターボールみたいなもの。そしてこれを作ったのはそこにいる悪魔の科学者、天青竜司なんだよ。まぁ何が言いたいと言うと………そいつは恐竜と共存したいと思ってこれを作ったが、殆どの奴等は恐竜を戦争の道具にするためにこれを使ってるってことさ。現にアメリカのインジェン社はこのディノホルダーを量産して、戦争の道具として売ろうと、着々と準備を進めてる。天青……お前なんだよ。この状況を生み出したのはな!!」

竜「………そんな……嘘だ」

竜司は激しく動揺し、自分のディノホルダーも落とした。

竜司は人々が憧れを抱いていた恐竜を、恐怖無しに親しみやすくするためにディノホルダーを作った。

なのに戦争の道具として使われてると知れば、こうなるのは目に見えていた。

スタークはそんな竜司を見て鼻を鳴らし、ディクラエオサウルスに竜司を殺すよう、命令した。

「ふん……やれ」

「グオオォォォォォォン!!」

ディクラエオサウルスは遅いながらも、ダッシュする。

このままいけば竜司は踏み殺されるだろう。

海「竜司!しっかりしてください!」

こ「竜くん逃げてぇぇぇぇ!!」

現にことりと海未も泣き叫んでいる。

だが、そんな中。

一人だけ動いた人物がいた。
















穂「竜ちゃん借りるよ!!」









穂乃果だった。

竜「はっ?」

穂乃果は呆然とする竜司を無視して、ディノホルダーを拾い、竜司が腰に携帯している本型ホルダーから適当にカードを1枚取って、スラッシュした。

《トロサウルス》

それはトロサウルスという角竜だった。

電撃を纏ったトロサウルスのカードを、穂乃果は投げて、召喚した。

「グゴオォォォォォォン!!」

顕現し、吠えたトロサウルスはディクラエオサウルスの突進を受け止める。

その行動にスタークは「ほぉ~」と感心する。

そのまま穂乃果はディクラエオサウルスを吹き飛ばすよう、トロサウルスにディノホルダーを通して脳内命令するが、トロサウルスは受け止めたまま微動だにしない。

穂「っ!? 何で…!?」

穂乃果はディノホルダーを振り回すも、状況は変わらず、微動だにしない。

スタークが言う。

「無駄だ。ディノホルダーってのは、その1つ1つに所有者…つまりプレイヤーの識別信号がインプットされてて、それは取っ手から認識される。それは天青のディノホルダーだ。お前じゃ無理なんだよ。むしろ逆に…」

そう言って、スタークがブラッドディノホルダーを振るうと、ディクラエオサウルスはトロサウルスを吹き飛ばす。

瞬間、穂乃果も吹き飛ぶ。

穂「あうっ!!」

「こうなる。つまりフィードバックが起こるのさ…」

「「「穂乃果(ちゃん)!!」」」

竜司、ことり、海未が駆け寄る。

竜「大丈夫か!? 穂乃果!!」

海「しっかりしてください穂乃果!!」

竜司が穂乃果を抱え起こす。

その瞬間、穂乃果は竜司の手を取って言う。

穂「戦って竜ちゃん!確かに……今の世の中になったのは竜ちゃんのせいかもしれない。でも!その責任を取る為に戦ってるんでしょ?私達を守る為に戦ってるんでしょ?そんなことが出来るのは、天才科学者で天才恐竜学者の天青竜司でも、悪魔の科学者の天青竜司でもない。私達の幼馴染みとしての天青竜司でしょ!? だから………立ち上がって!!」

芯のある思いをぶちまける穂乃果。

それを聞いた竜司は1度下を向き、また穂乃果の顔を見る。

竜「……はぁ~」

竜司は溜め息を吐くと、穂乃果からディノホルダーを受け取る。

竜「最っ悪だ……。単純バカにこんな事を言われる日が来るなんて……」

そうは言うものの、竜司の顔は笑っていた。

そして立ち上がり、宣言した。









竜「さぁ……実験を始めようか?」







それに呼応するようにトロサウルスも立つ。

「フッハッハッハッハッハッ!! だからこそお前達は面白い!」

そう言って、スタークはテロに使った技カードをスラッシュ。

《アクアボルテックス(龍渦旋乱)》

《ミストマッチ…》

ブラッドディノホルダーから、恐らくベストマッチと同じ意味を持つ音声が流れる。

それと同時に竜司も超技カードをスラッシュした。

《ライトニングアックス(雷光斬斧)》

《ベストマッチ!》

竜「勝利の法則は決まった!」

そして2人同時に撃って、吸収させる。

「「グオオォォォォォォン!!」」

2体は吠える。

先ずはディクラエオサウルスが動く。

トロサウルスの足元に水の渦を出現させて、そのままトロサウルスを洗濯機のように回す。

回り始めるトロサウルス。

後はそのまま打ち上げられて、トロサウルスは属性が有利とは言え、確実に普通より大きなダメージを受けるだけ。

そしてその時が来た。

回転が速くなると、トロサウルスは打ち上げられるが、そのまま自分で縦に1回転。

角には、雷で出来た斧があった。

「何だと!?」

これには驚くスターク。

そしてトロサウルスはそのまま、ライトニングアックスをディクラエオサウルスにぶつける。

「グオオォォォォォォン!?」

感電のダメージを受けたディクラエオサウルスは地面にひれ伏し、そのままカードに戻った。

「ちっ……」

スタークは舌打ちすると、行方を眩ました。

竜司はディクラエオサウルスのカードを拾う。

そこに穂乃果が声をかける。

穂「竜ちゃん……」

竜「ありがとな?穂乃果…」

穂「っ!? えへへ~♪」

振り向いた竜司に礼を言われ、穂乃果は照れ笑いをする。

その光景に海未とことりは、安堵と少し羨ましさの混じった複雑な顔を向けていた。

こ(私も穂乃果ちゃんみたいに竜くんの…)

海(私も穂乃果みたいに竜司の…)

((力になれたら……))

そんな思いが2人の心に渦巻いていた。


◎sideoff






竜司side


アキバでの一戦を終えた俺達は、途中で惣助さんに出会い、スクールアイドルのライブに来るよう誘ってから、音ノ木に戻った。

ここなら海未もやり易い筈だ。

竜「ここなら平気だろ」

海「まぁ、ここなら……」

穂「じゃあ、始めるよ!μ'sファーストライブやりまーす!」

穂乃果はそう言ってチラシ配りをし始めた。

ことりも穂乃果に続いて行動に出ている。

竜「ほれ、お前も頑張ってこい」

海「あ、竜司……」

海未の背中をパンッと叩いて歩き出す。

竜「俺は近くで見守っとくから、ちゃんとやれよー」

俺を呼び止める海未の声を無視し、一旦離れる。

適当な場所で海未を見守る。

海「あ、あ……」

穂乃果とことりは結構順調そうに出来ているが、やはり海未はまだオロオロしている。

声を掛けようとはしているが、1歩踏み出せずにいる。

頑張れ海未。

海「お、お願いします……!」

おっ、とうとう海未も声を掛けたか。

よく頑張ったな。

しかし肝心の相手が見えない。

小さいのか?

海「あ……」

出来るだけ目を凝らしてみると、海未の手に持っていたチラシは海未から離れないまま、止まっていた生徒の足が動き出した。

……失敗、か。

穂「ダメだよそんなんじゃー!」

海「穂乃果はお店の手伝いで慣れてるかもしれませんが、私は……」

海未の失敗を見た穂乃果が海未に駆け寄るが、まぁ、穂乃果は確かに店の手伝いで他人に接する事も昔からよくやっていた。

だから慣れがあり、そこには海未とのどうしても埋めない経験差があるのは致し方ない。

しかし、海未は重度の恥ずかしがり屋であり、臆してしまうのも無理はない。

穂「ことりちゃんだってちゃんとやってるよ?」

その言葉でことりへと視線を変える。

こ「お願いしまーす!μ'sファーストライブでーす!」

元気ハツラツとした笑顔でチラシを配ることりがいる。

なんか馴れてる感じだな。

穂「ほら、海未ちゃんも。それ配り終えるまで止めちゃダメだからねー!」

穂乃果も中々キツイ事を言うなぁ。

あの量を海未1人でどうにか出来るのか?

海「えぇ!? 無理です!!」

穂「海未ちゃん、私が階段5往復出来ないって言った時、何て言ったっけ?」

ああ……穂乃果も海未への数少ない仕返しをしようとしてるのね。

穂乃果の海未を見る目がいかにも挑発しているかのような目で、それはまぁ煽る煽る。

海「うぅ………………分かりました!やりましょう!」

でもそれが良い薬になったのか、海未もようやくやる気になったようだった。

海「よろしくお願いしまーす!μ'sファーストライブやりまーす!」

声にも覇気が出てきた。

そんな時、

花「あ、あの……」

穂乃果に声を掛けた人物がいた。

それはよく見知った人物だった。

確か……小泉花陽だっけ?

ここの一年なのか……。

穂「あなたはこの前の!」

花「は、はい……」

穂乃果も彼女の事を知っているようだった。

俺も挨拶する。

竜「よっ、迷える子羊ちゃん」

花「天青さん!?」

なんかかなり驚かれてる。

穂「竜ちゃん知ってるの?」

竜「前に恐竜が現れた時に助けた子」

穂「成る程…」

竜「穂乃果は?何で知ってる?」

穂「前に校舎の中で応援貰ったの♪」

それは俺の知らない所だな。

穂「で、どうしたの小泉さん?」

花「え?……あ、あの……ら、ライブ、見に、行きます……!」

それは彼女の見た目通り、弱々しい声ではあったが、それと同時に、その声は俺達を元気づけてくれるような声でもあった。

穂「ほんとぉ!?」

こ「来てくれるのぉ!」

竜「うおっ、聞き付けるの早いなお前ら」

ことりと海未も、いつの間にやら俺の横にいた。

海「では1枚2枚と言わず、これを全部……」

穂「海未ちゃーん……」

おい、さっきのやる気は何だったんだよ?

海「分かってます……」

珍しく穂乃果に睨まれて萎縮して、か細い声で沈み込む海未。

竜「ライブ、来てくれるんだな?小泉」

花「は、はい。出来れば凛ちゃんも一緒に来れれば……」

竜「凛?ああ……あの迷える子羊ちゃん2号ね。でもあの子は陸上部とか行きそうだな」

花「凛ちゃんも陸上部に行くつもりらしいです……」

竜「あ、やっぱり?」

彼女は何ていうか、思いっきり運動出来る部活に入りそうだしな。

後バカっぽい。

穂「それでも1人来てくれる人が確認出来たんだから嬉しいよ!ありがと!」

花「い、いえ……あの、ライブ、頑張ってください……!」

穂「うん!ありがとね!」

こ「やる気出てきたかもっ」

海「やはり見られるのですね……」

なんか1人だけネガティブになってるよ。

花「あの、で、では……」

竜「ああ、またな小泉。ライブ、楽しみにしててくれ」

花「っ……。は、はい……!あっ、それと天青さん。前はなんか体調悪かったんですか?」

竜「体調?」

何のことだ?

花「はい。西木野さんを誘いに来た時です……」

ああ……あの時ね。

海「何のことです?」

海未が訊くと、小泉はその時の事を言う。

瞬間、穂乃果と海未はジト目で見てきて、ことりは苦笑していた。

君たち、なにかなその顔は?

俺はあくまで和やかに入ってきたのに、解せない……。





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Game#21



しばらく恐竜自体は出ないかもです。


時間は少し経って、ここは穂乃果の家。

俺と穂乃果、海未の3人は今、穂乃果の部屋でパソコンを開いている。

ランキングチェックと他のスクールアイドルの動画を見るためだ。

と言っても、大体A-RISEの動画ばっか見てんだけどね。

穂「う~ん…やっぱり動きのキレが違うよねぇ~…」

そう言って穂乃果は立ち上がり

穂「こう?……こう?……こう!?」

とか言いながら、色々ポーズを取る…。

なんか…バカみたいだな。

するとパソコンの画面に変化が現れた。

穂乃果はそれに気付き

穂「あっ!?」

海「どうしました!?」

穂「ランクが上がってる!!」

竜「あっ……ホントだ…」

穂「きっとチラシで見た人が投票してくれたんだね♪」

海「嬉しいものですね!!」

こ「お待たせ~」

ことりが衣装の入った袋を持って入ってくる。

穂「あっ!? ことりちゃん見て見て!!」

こ「わっ!凄い!!」

竜「それ、衣装か?」

こ「うん♪さっきお店で最後の仕上げをしてもらったの」

そう言いながら、ことりは袋から衣装を出す。

穂乃果はワクワク言いながら、海未はゴクリと喉を鳴らす。

こ「じゃーん♪」

穂「わぁ~」

海「なっ…」

竜「ほぉ~」

その衣装は十分アイドルとして可愛らしい桃地のミニスカートの衣装だ。

穂「可愛い!! 本物のアイドルみたい!!」

竜「相変わらず手先器用だなぁ~」

こ「ありがと~」

穂「凄い、凄いよ!! ことりちゃん!!」

穂乃果は手を振って喜んでいるが、海未はなんか口が開きっぱだ。

竜「どうした海未?」

俺が聞くと、海未はことりに対し

海「ことり」

こ「ん?」

海「そのスカート丈は?」

こ「ん?……あっ…」

あっ…成る程…大体分かった。

あれは衣装を決める時だ。

海『いいですか!? スカート丈は最低でも膝下でなければ、履きませんよ!! いいですね!?』

こ『はっ…はいぃぃぃぃぃぃ!!』

ことりの肩を掴み、鬼気迫る顔を近づけていた。

そして、それは今も

海「言いましたよね……!? 最低でもスカート丈は膝下でなければ履かないと!!」

こ「ひぃぃぃぃ……」

デジャブっていた…。

穂「だ、だってしょうがないよ…。アイドルだもん!」

だもんって、何だよ……。

可愛いからいいけど。

海「アイドルだからといって、スカートが短いといけない決まりはないはずです!」

穂「それはそうだけど……」

海未の言う通り、アイドルとはいえ、絶対にスカートを短く履かなければならないという決まりはない。

別にちゃんと歌って踊れば、ズボンでも構わないのだ。

まぁ、アイドルは短めなスカートが印象的なのは否めないが。

海未の言う事も筋は通っている。

しかし、

穂「それはそうだけど…」

こ「でも、今から直すのは、さすがに…」

穂「うん!!」

そう、ことりはもう衣装を完成させてしまっている。

それ即ち、時間的に考えても今から直しても当日までには間に合わないだろう。

これは意図的かもな。

海「そういう手に出るのは卑怯です!」

海未もそう感じ取ったのか、珍しく少しご立腹な様子であった。

海「ならば、私は1人だけ制服で歌います!」

竜「それはそれで恥ずかしいだろ…」

滅茶苦茶、浮くぞ……。

こ「えぇ!!」

穂「そんな!?」

海「そもそも3人が悪いんですよ!私に黙って結託するなんて!」

ちょっと?

何さりげなく俺も犯人扱いされてんの?

俺何も知らなかったよ?

竜「海未、俺は何も知らな―」

穂「だって、絶対成功させたいんだもん」

竜「おい聞けや…」

スルーしやがって。

穂「歌を作って、ステップを覚えて、衣装も揃えて、自称天才でめんどくさがりの竜ちゃんも手伝ってくれて、ここまでずっと頑張ってきたんだもん…」

竜「なあ…俺、今軽くDISられたよな?」

そろそろ暴れるぞ?

穂「3人でやって良かったって、頑張ってきて良かったって、そう思いたいの!」

それは紛れもない本音だった。

穂乃果の正直で、ド直球な程真っ直ぐで、嘘偽りのない本音だった。

穂乃果は何を思ったのか、部屋の窓を開けて叫ぶ。

穂「思いたいのぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」

竜「穂乃果、近所迷惑」

海「何をしているのですか!?」

こ「それは私も同じかな……」

俺と海未の言葉を流すかのように、ことりから呟きが聞こえてきた。

海「え……」

こ「私も、3人でライブを成功させたい!」

海「ことり……」

ことりも、本音を言った。

衣装を作ったのだから、一緒に着たいのは当たり前の考えだろう。

今の所、自分の意見を言った穂乃果とことり2人、何も言ってない俺と海未が2人、引き分けている現状である。

だからか、穂乃果は真剣な目で、ことりは優しく微笑んで、海未は戸惑いを感じさせながら俺をジッと見ていた。

俺の考えを言えと目線で言っているのだろう。

竜「俺も穂乃果とことりと同じだ。確かにライブは成功させたいな。お前達はここまで頑張って来た。その結果を見てみたい。何より、3人のファーストライブは絶対見たい」

海「竜司まで……はぁ~、いつもいつもズルいです。……分かりました」

少し嘆息してから、海未は穂乃果に向き合って、口に出した。

肯定の意味での言葉を。

穂「海未ちゃん……!だぁーいすきぃ!!」

海「うわあっ!? ちょっと穂乃果!!」

海未に抱き付く穂乃果。

こうして2人を見てると分かる。

そこにはもう、何もわだかまりはなかった。

明るい笑顔が、その場を包んでいた。

穂「あ、そうだ!せっかくだし、今から神社まで祈願しに行こうよ!」

急に穂乃果がそんな話題を振ってきた。

竜「つってももう夜だぞ?」

穂「そこは竜ちゃんがいるから私達のボディーガードって事で!」

竜「……やれやれ。仕方ないな。ならこの天才な俺が守ってやろうではないか、姫様達……」

海「それでは時間も時間ですし、早めに向かいましょうか」

海未の言葉を皮切りに、俺達は暗くなった外へと、神社まで足を進めた。



ーーーーーーー



夜の神田明神に着いた俺達。

辺りを見回しても、人の姿は見えない。

流石に東條さんも帰ってるだろうし、夜にわざわざ参拝しに来る人もいないのか、この神社にいるのは俺達だけだった。

竜「それじゃ、とっととお祈りでもしてこい」

すると穂乃果がポカンとしながら口を開いた。

穂「何言ってるの?竜ちゃんも一緒に祈願するんだよ?」

……はっ?

竜「え、何で?」

今度は俺がポカンとする順番だった。

穂「竜ちゃんも言ったじゃん。私達のファーストライブは絶対に見たいって!」

まぁ言ったけど……。

仕方なく3人の隣に並び、財布を出し、5円玉を取り出す。

穂「じゃあいくよ。せーのっ!」

穂乃果の掛け声で一斉に賽銭を賽銭箱に放り投げる。

穂「どうか、ライブが成功しますように!いや、大成功しますように!」

海「緊張しませんように……」

こ「みんなが楽しんでくれますように!」

それぞれ口に出して願う。

穂「よろしくお願いしまーす!!」

それぞれが手を合わせ、思いを、願いを、祈りを込めて届ける。

それは決して届くのかは誰にも分からない。

もしかしたら届かないのかもしれない。

それでも人は祈る。

明日の地球を投げ出せないから。

本当にいるのかも分からない神様という不可思議な存在に。

まぁ俺は祈らないけどね?

だって俺は天才科学者なんだぜ?

穂「そういえば竜ちゃんは何も言ってないけど、何をお願いしたの?」

俺が祈願中何も言わなかったのが気になったのか、穂乃果が聞いてきた。

海未もことりも同じくこちらを見ていた。

竜「そんなの決まってるだろ?」

穂「何々!?」

どんだけ気になるんだよ……。

まぁいっか。

こいつらになら、言ってやってもいいかな?





竜「世界がラブ&ピースで満たされるように?」






今の世の中は恐竜の恐怖に苛まれている。

故に平和というのは何よりも大事なこと。

それが、俺にとっても、穂乃果達にとっても、大事な願い。

穂「………くすっ♪竜ちゃんらしいね」

海「確かに♪」

こ「ありがとう。竜くん♪」

3人に笑顔で礼を言われる。

ふと、穂乃果は満点の夜空を見上げる。

穂「明日か……」

穂乃果が静かに呟いた。

明日。

いよいよμ'sのファーストライブが行われる。

そこが運命の分岐点となるだろう。

そこから、誰も口を開く事はないのに、静かに3人がお互いの手を取り始めた。

俺はそれを後ろで眺める。

穂「頑張ろうね、ライブ」

穂乃果が口を開いた。

その声音はとても澄んでいて、とても強い意志で紡がれていた。

こ「うん……」

海「はい……」

ことりも海未も、簡単な返事だけを返した。



ーーーーーーーー




神田明神から家に帰ると、1つの銀色のアタッシュケースがあった。

中には一個のディノガジェットがあった。

その上には手紙があった。

姉さんからのだ。

『久しぶり竜司。件のブツは送ったからね?』

たった一言。

でもそれでいい。

これはある人物に渡す為の物。

俺がいない時に襲われる可能性もあるからな。

なので事前に姉さんに頼んでおいたのだ。

竜「さてと……」

これを渡すのは明日でいいだろう。

そう思い、俺は寝床に着いた。



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Game#22


ファーストライブはもうちょい引っ張ります。


さて、時が経つというのは早く感じる時もあり、遅く感じる時もある。

その違いは人によって様々である。

楽しい時は早く感じたり、つまらない時は遅く感じるように。

そして学校へ通う大半の生徒は授業をつまらないと感じ、また時間が経つのも遅いと感じているのが多いだろう。

かくゆう俺もその内の一人。

正直高校の授業とか、アメリカで終わらせたから暇過ぎる。

なので大体は寝ていた。

それを海未に注意されたが、天才だからという便利な言葉ですり抜けた。

ちなみに穂乃果も寝ていて、ことりに「めっ!だよ!」って言われてた。

正直羨ましい。

そんななんやかんやがあって、俺達は今、俺達というか全校生徒が今講堂に集められ、理事長…もとい雛さんの話を聞き、生徒会長の長ったらしい話を軽く聞き流している。

いやホント長い。

校長先生にありがちな、くそ長いどうでもいい話を聞かされている気分。

いや本当、正直早く終わってほしい。

絵「これで、新入生歓迎会を終わります。各部活とも、体験入部を行っているので、興味があったらどんどん覗いてみてください」

っと、やっとこさ生徒会長さんの話が終わったみたいだ。

いやー…疲れた疲れた。

俺は首をポキポキ回す。

生徒達は話も終わった事もあり、次第にバラけていった。

それに便乗するように穂乃果もサッと立ち上がる。

穂「さぁ、それじゃ私達も行こう!」

竜「はいはい…」

俺達も穂乃果の後に続いた。




ーーーーーーーー



一旦教室に戻り、諸々の準備を終え、また外に出てみると、この学校での結構な人数の生徒がいた。

穂「やっぱりどこの部活もみんな必死だね」

竜「そりゃそうだろ。ただでさえ少ない人数で部活を継続させるために部員募集をしなくちゃならないんだからな」

中庭にもチラシ配りなど、声をかけるなどして部員募集に励む生徒がたくさんいた。

どこの部活も必死なのだ。

新入生が少ないぶん、入部してくる生徒も少なくなる。

それが他の部活に取られでもしたら余計に入部希望者が減ってくる。

全部活員が考えているのはたった1つ。

少しでも多くの新入生を勧誘し、自分の部活へ興味を生み出させ、入部させる事だ。

しかも元々部員の少ない部活は、部員の多いであろう運動部員よりも血気盛んに熱を帯びながら勧誘しようとするだろう。

部活として認められてない、同好会以下の俺達の方が不利なのだ。

だから今、こうしてチラシを持って中庭に馳せ参じたのである。

少しでも来てくれる生徒が多くなるように。

竜「という訳で~…」

俺はあるものを取り出す。

それは拡声器だ。

穂「竜ちゃんそれは?」

首を傾げて聞いてくる穂乃果。

可愛いな…。

竜「見りゃ分かるだろおバカ。拡声器だよ拡声器。こうするのさ……すぅ~…」

そして俺は叫んだ……拡声器越しに。






竜『この後、午後4時から初ライブやりまーす!是非来てくださーい!μ'sのファーストライブでーす!来ないと全員実験に使っちゃうぞ~☆』

キィィィィィィィィィィィィィン!!








俺に出来るだけの宣伝をした。

後半アレな言動があったが、まぁいい。

しかし、

穂「うう~……竜ちゃんのバカぁ~…」

こ「それはダメだよ竜くん~…」

海「バカと天才は紙一重と言いますが……何やってるんですか!!!?」

耳を抑えてる幼馴染み3人に注意された。

見ると、他の生徒も耳を抑えていた。

あれぇ~?

竜「おっかしいな~?声の張り合いでは負けない筈なんだが……あっ、そうか!もっと大きく叫べばいいのか!?」

『んな訳あるかぁぁぁぁぁぁ!!!?』

ナイスアイデアだと思ったのに、この場にいた全生徒からバッシングを受けた。




ーーーーーーーーー



現在、俺はチラシ配りから外され、講堂で器械の調整をしていた。

ラプトル…ブルー達にポジショニングの設定を手伝って貰い、そこにライトを当てて位置を決めていた。

その後、音響の設定。

尚、チラシ配りのバトンタッチの際は、ヒデコとミカにジト目で見られ、フミコは苦笑していた。

後、氷室さんに拡声器没収されました。

天才的なアイデアだと思ったのに~。

竜「よし、これでいいな…」

粗方調整は終わった。

ブルー達も回収。

そこにヒフミトリオが来た。

「やっほー、やらかし天才くん」

「準備はどう?」

ヒデコとフミコが言う。

竜「ご覧の通り。全部出来たよ。後、やらかし天才くん言うな。世紀の天才と呼べ」

するとミカが苦笑する。

「ホント、こういうのには強いのに、何でああいう事したんだろう……」

竜「一般人には理解されない。それが天才の性さ…」

悲劇的に言うと、3人から溜め息が出た。

何か不満そうだな。

ヒデコが言う。

「まぁ、いいや。穂乃果達は先に更衣室に行ってるから、見に行ってあげて?その間に私達も確認しとくからさ?」

竜「うっそ!? いいの!? テンション上っがるゥゥ~!! へっへっへぇ~!! 覗けるぅ~!!」

そうテンション上げて、更衣室に向かった。

竜「ホ゛ト゛ル゛ゥゥ~~!!」

「………何か天青くんってさ…」

「うん……」

「たまにキャラ崩壊してるよね?」

「うん……後さっき何か犯罪紛いの事言ってなかった?」

「それは無いでしょ~?だって普段から天才天才言ってる天青くんだよ?大丈夫だよ~♪」

「そうだよね?」




ーーーーーーーーーー



さて、早速着いた控え室。

中から声はするけど、果たしてもう着替えているのかどうかすら怪しい。

海「いやぁぁぁあああ~!!////」

ドアの向こうで海未の悲鳴が聞こえるが、会話を聞くにスカートの下にジャージでも履いていたのだろう。

それを穂乃果かことりに、いや、ことりはそんな事はしないはずだから穂乃果に無理矢理脱がされた所だな。

とりあえずここに居てもアレだし、突入するか。

軽くトントンッ、とドアをノックしてから声をかける。

竜「俺だ。もう着替えは済んだか?」

穂「あ、竜ちゃんだ。もう入っていいよー!」

穂乃果の返事をちゃんと待ってからドアを開ける。

途中、

海「え、竜司が!? だ、ダメです!////」

とか聞こえたがもう気にしない。

返事を聞き終えてから開けてるのだ。

咎められる筋は無い。

竜「おう、ちゃんと着替えたようだ……な……」

部屋に入って穂乃果達を見て、思わず言葉と動きが止まる。

穂「へっへーん!どう、竜ちゃん!私似合ってるかな?」

穂乃果の言葉を聞いてハッと、すぐに意識を切り替える。

これは……少し予想以上だったな。

竜「……ああ。とてもよく似合ってる。可愛いぜ、穂乃果」

俺は柄にもなく、素直な誉め言葉が出た。

それくらい、今の穂乃果は可愛いかった。

穂「っ……そ、そうでしょー!やっぱりことりちゃんの作った衣装は凄いや!////」

聞いてきた当人が顔を赤くしてる。

可愛いな…。

こ「竜くん、私はどうかな……?」

竜「ベストマッチ並によく似合ってる。天使みたいだ」

こ「えへへへへへへへへへへへ~~~///。竜くんに誉められたぁぁ~。えへへへへへ~//////」

頬に手を当てて、体をくねらせることり。

最っ高だな。

こ「それと、あとは海未ちゃんなんだけどぉ……」

穂「あ、そうだ!竜ちゃん竜ちゃん!海未ちゃんも似合ってるよね!?」

海「ひゃあっ!?」

穂乃果の言葉の後に、可愛い悲鳴が聞こえたからその方向へ顔を向けると、

竜「…………………」

海「は、恥ずかしい……です……っ////」

何これ?

可愛いな…。

これがギャップ萌えか?

海「せめて、な、何か言ってください……////」

竜「え、あ、最っ高だよ」

危ない危ない、危うくギャップ萌えの理論に思考が行ってしまいそうになった。

穂「ほらね!言ったでしょ海未ちゃん!」

こ「海未ちゃん、可愛いよ!」

海「……え?」

正直に言って驚いた。

普段のこいつらは幼馴染というのを差し引いても十二分に可愛いと断言できるレベルだった。

それが衣装一つで、こんなにも化けるものなのかと。

物凄い化学変化だ。

穂乃果は海未を鏡の前に連れていき、

穂「ほらほら!! 海未ちゃんが一番似合ってるんじゃない?」

海「うぇぇ?」

さらに穂乃果は海未の隣に立ち、

穂「どう?こうやって並んで立っちゃえば、恥ずかしくないでしょ?」

海「……はい。確かにこうしていると……」

穂「じゃ、最後にもう一度練習しよう!!」

こ「そうね♪」

そう言って、穂乃果とことりはステージへ走る。

海未も行こうとするが、鏡の前で立ち止まり

海「やっぱり恥ずかしいです……」

と呟く。

それを見かねた俺は、海未の手を取り

竜「大丈夫だ。自信持て海未。お前は最っ高に可愛いぞ」

と言う。

それを聞いた海未は

海「………何だか竜司に言われると安心します///。ありがとうございます竜司!…では、行ってきます!!」

竜「おう。いってこい…」

俺は手を振り、見送った。

ライブ開始まで、あと15分。


竜司sideoff





◎side


生徒会室。

そこには、絵里、希、氷室の3人がいた。

窓から外を見ていた絵里に希が声をかける。

希「気になる?……ウチは帰ろうかな…」

「俺も帰ろう…」

そう言って、席を立つ2人。

氷室はともかく、最近の希は思考が読めなくなっている、というのが絵里の正直な感想だった。

元々分かりにくい所も多々あったのだが、最近ではそれがどんどん大きくなっていく。

意味深な事を言ったと思ったら、すぐにケロッとしたり。

絵里は希のことが分からなくなっていた。

そして氷室のことも。

彼も今までは生徒会の仕事をちゃんとこなしていた。

それは今も変わらないが、何処か自分達と距離を置いてる所があった。

最後に天青竜司。

この学校で2人目の男子生徒であり、μ’sの活動を手伝っているという、自称天才科学者で天才恐竜学者な少年。

最初、絵里は竜司に自分と似た所を重ねていた。

理詰めで考え、冷静にメリットデメリットを判断する少年。

だがそれはあの時の口論で脆くも崩れた。

彼は自分と似てて違う存在だと。

そしてその口論で、絵里は何も言い返せなかった。

そんな苦い思い出を思いだし、絵里は目を伏せる。

故に、

絵「……最後のライブになるかもしれないしね」

絵里は講堂へと足を動かしだす。

あんな事を言ったって、現実を叩きつけてやればどうせ黙るに決まってる。

挫折を味わい、自分達には何も出来なかったのだと思い知らせるために。

絢瀬絵里は動く。


◎sideoff






竜司side


控え室を出た俺は、チラシ配り等をヒフミトリオに任せ、ある場所に向かっていた。

そこは音楽室。

そこにいる人物に会う為に。

竜「えーと……あっ、いたいた」

音楽室の窓から見ると、目的の人物はいた。

優雅にピアノを弾いていた。

まるでそこだけ別世界かのように。

だけど俺は、

竜「オーイ、ピーチ真姫ちゃん!迎えに来たよ~?」

容赦なくぶち壊す。

真「ヴェエエエ!?」

案の定、真姫は変な声で驚く。

そしてあからさまに不機嫌になる。

真「何なのよ!? それとそのピーチ真姫ってのやめてよ!!」

竜「えー…いいじゃん。いい名前と思わない?ピーチ・マキ」

真「名前の字が変わってんじゃない!!」

プリプリ怒る真姫。

竜「まぁいいや。ちょっと講堂に来てよ」

真「嫌よ。何で私が…」

プイッと、そっぽ向くが、俺の次の言葉でコロッと変わる。

竜「トマトたくさん奢るよ?」

真「………行くわよ」

チョロい。



ーーーーーーーー



真姫を連れて、廊下を歩く。

そして曲がり角の所で、

竜「おうっ…」

「いたっ!?」

誰かとぶつかった。

見ると黒髪ツインテールで、背は小さく、どうやら先輩らしき少女だった。

「いったいわね~……気をつけなさいよ!!」

ロリツインテール少女先輩がそう言う。

竜「すいません、ロリツインテール少女先輩……あっ」

やべっ……つい心の声が出ちまった。

「ちょっと!! 何なのよその侮辱感満載のアダ名は!?」

竜「だって俺あなたの名前知りませんし。なので暫定でロリツインテール少女先輩を命名しました」

「すんな!!」

プリプリ怒るロリツインテール少女先輩。

面白いな~。

すると先輩は名乗る。

「はぁ~…ニコよ。矢澤ニコ。ニコでいいわよ」

竜「ニコ先輩?変わった名前ですね?」

ニ「よく言われるわ。それじゃあね…。天青竜司」

そう言って、ニコ先輩は帰ろうとするが、俺は止める。

気になったことがあったからだ。

竜「何で俺の名前を?」

そう、俺は一度も名乗ってない。

なのに何故この人は俺の名前を知ってるのか?

それが気になった。

ニコ先輩は振り向いて言う。

ニ「あんた有名なのよ。普段から天才天才言ってる頭のおかしい後輩がいるって。じゃあね…」

そう言って、今度こそニコ先輩は去って行く。

竜「………頭のおかしい?」

えっ?

俺ってそんな風に見られてたの?

竜「真姫。お前から見た俺ってどんな感じ?」

真「そうね……まぁ、バカと天才が一緒に同居してる感じね。そういう意味では頭のおかしい人ね」

竜「うそーん……」

俺はショックを受けて膝から崩れた。

真「ほら、さっさと行くわよ」

真姫はそう言って、俺の襟を掴んで引きずっていった。




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Game#23





◎side


竜司が真姫を迎えに行ってる間のこと。

『スクールアイドル、μ'sのファーストライブ、まもなくでーす!ご覧になられる方は、お急ぎくださーい!』

そんなヒデコの放送案内が全講堂内へと響く。

それは勿論、たった今ステージ上に立っている穂乃果達にもよく聞こえていた。

前にある1枚のカーテンが開かれれば、そこにはもう生徒という客がいるのだ。

その事が、3人に緊張と高揚感となって襲ってくる。

穂「いよいよだね……!」

1番に切り出したのは穂乃果だった。

それぞれが本番前という事もあり、さすがに緊張している中、こうやって1番に切り出せるのは、やはり彼女が天賦のカリスマ性を持っているからかもしれない。

こ「うん……!」

穂乃果に続いて返事をしたのはことり。

軽く足が震えてるあたり、彼女も彼女で緊張している様子だった。

海「……っ……ぁぁ……っ」

海未は、何も発さなかった。

というより何も発せなかった。

緊張のし過ぎで小刻みに体全身が震え、まともに言葉も出てこない。

それほどまでの重圧。

しかし、そんな固まった海未を優しく溶かしてくれるかのように、海未の左手が優しく包まれた。

穂「大丈夫。私達が付いてるから!」

穂乃果だった。

海「穂乃果……」

ことりも穂乃果と一緒に、柔らかい笑みでこちらを見ていた。

控え室でやった事と同じだ。

こうして3人で並べば、自然と怖くなくなってくる。

いつもの自然体でいられる。

それがどれほど救われるかを、海未は今まさに感じていた。

こ「でもこういう時、何て言えばいいのかなぁ?」

今以上に、海未の緊張をほぐすために、ことりが違う話題を出してきた。

穂「μ's!ファイッオー!」

海「それでは運動部みたいですよ…」

穂「だよねー!」

次いで、穂乃果も声を上げる。

こ「勝利の法則は決まった!とか?」

海「それ竜司の口癖じゃないですか……」

ことりの案にツッコム海未。

残念ながらこの台詞は今この場には合わないだろう。

すると、穂乃果がハッとしたように口を開いた。

穂「あ、思い出した!番号を言うんだよ、みんなで」

こ「面白そう!」

ことりは穂乃果の案に否定はしなかった。

海未もこれには否定の気持ちはなかった。

穂「じゃあいっくよー!」

3人で一気に空気を吸い込む。

そして。

穂「1!」

こ「2!」

海「3!」

穂乃果、ことり、海未の順番に声を出す。

大きな声を出す事によって、一緒に不安という気持ちも吐き出す。

だから、

「「「ふふ、はははははは!あはははははははは!あははははは!」」」

さっきのような緊張感もなく、笑っていられる。

数秒笑ったところで、3人が同時に黙る。

その空間は少しの間、静寂に包まれていた。

しかし、さっきと明確に違うのは、強張っていた3人の顔が今は笑顔である事だろう。

もうそこに、迷いはなかった。

穂「μ'sのファーストライブ、最高のライブにしよう!」

こ「うん!」

海「もちろんです!」

ブゥゥゥゥゥン、と。

開始のブザー音が鳴る。

3人は黙ってそっと繋いでいた手をゆっくりと離す。

目を瞑っていると、ゆっくりとカーテンが開いていく音が聞こえる。

目を瞑っているせいか、その時間が長くも感じられた。

そこで穂乃果は思っていた。

穂(やっと。やっとなんだ……!やっとここまでやってこれた。ことりちゃんも、海未ちゃんも、ヒデコもフミコもミカも、そして竜ちゃんのおかげでファーストライブが出来るところまでこれた。みんなのおかげで……だから、だから今ここで精一杯頑張ってきた私達を見てもらって、竜ちゃん達に1つ恩返しをするんだ!)

誰よりもその思いが強かった。

手伝ってくれた少年達のためにここで1つの結果を残そうと。

しかし無情にも













現実は牙を向く。












穂「…………………………え?」









思わず、素っ頓狂な声が出てしまう。

むしろまだよく声を出せた方だと思う。

ことりや海未は、目の前の光景を見て文字通り言葉を失っていた。

ただただ、穂乃果達からしたら広いと思える講堂内。

喋り声も一切聞こえないほどの静寂。

そして、誰もが見て分かる通り、人っ子一人いない、空席だけのイス達。

もう呆然と立っている事しか出来なかった3人の元に、聞きなれた声が耳に入った。

「ごめん……頑張ったんだけど……」

フミコのとてつもなく弱々しい、そんな声。

こ「……ほの、か、ちゃん……」

海「……穂乃果……」

ことりと海未がようやく絞り出した声も、とても声なんて立派に呼べるようなものではなく、今にも消え入りそうな、か弱い音のようなものだった。

そこへ、









ガチャリと、扉が開かれる。








竜「アチャ~……やっぱこうなったか…」

真「ちょっと……何よこれ……」






自身を天才と称し、いつもなんだかんだ手伝ってくれた少年と、曲を提供してくれたツンデレ少女。

天青竜司と、西木野真姫だった。

竜司は寝癖が一部ピョコンと出てる頭を掻き、真姫は空席だらけの現状に唖然としていた。

穂「……竜……ちゃん……っ」

穂乃果の微かな声が響く。

こんな小さな声も聞こえてしまうほど、今の講堂内は沈黙に包まれていた。

竜司は穂乃果の瞳を真っ直ぐ見る。

穂乃果はずっと竜司の顔を見たまま、何かを言おうとし、唇を強く噛む。

表情を、押し殺すかのように。

穂「……そりゃそうだ…!世の中そんなに甘く…ない……っ!」

竜司から見ても、誰が見ても、今の穂乃果の言葉は強がりにしか聞こえなかった。

そんな穂乃果を見て、竜司はこれまでの間で1つの結果を予想していて、それを思い出していた。

それは客の入り数。

竜(まぁ……予想通りっちゃ、予想通りか。つい最近出来たひよっこアイドルを見に来るやつなんて、たかが知れてる…)

そう思い、竜司は瞑目する。

穂「……っ、ごめ、んね……竜、ちゃん……っ。いつも、私達を、励ましてくれたり…手伝ってくれたり、守ってくれたり……した……のにぃっ……」

不意に穂乃果がそんな事を言った。

見ると、必死に涙を堪えながら、でも強がりの笑顔は既に消えてしまっていて。

穂「……ごめん、なさい……っ。ごめんなさい……っ」

流れそうになる涙を何度も何度も必死に腕で拭き取りながら、謝っていた。

次第に、ことりも海未も、穂乃果と同じように涙を堪えながら、ただただ、竜司に謝っていた。

それを見て、竜司はふと思う。

竜(いや……まだ実験は終わってない!)

竜司は講堂の階段を降りながら言う。

竜「……なあ、穂乃果。歌ってくれないか?」

穂「……………へっ?」

真「竜司?」

竜司の言葉に疑問を浮かべる、穂乃果と真姫。

海未やことり、ヒフミトリオの三人もだ。

竜「確かに客は一人も来なかった…。それは変えようのない事実だ。だったら俺が………最初の客になる。だから、俺の為に歌ってくれないか?」

穂「竜ちゃん…………」

穂乃果は驚きの顔になる。

だが、徐々に涙に濡れた瞳に光が挿す。

海未とことりにも言う。

竜「海未。最初はみんなこんなもんさ。でもここから諦めず、最後まで足掻き続けた者だけが最っ高の結果を掴み取れる。実験と同じさ。ことりもだ。何度でも立て!倒れそうになったら俺が救いとってやる!この自意識過剰のヒーローがな!」

そこまで言って、竜司は顔をクシャッとさせる。

海「竜司……」

こ「竜くん……」

海未とことりの瞳にも光が挿す。

そして、トドメに講堂の入口が勢いよく開く。

花「はぁ、はぁ………」

穂「花陽ちゃん……」

花「あ、あれ?ライブはぁ~~!? あれ~?あれぇ~!?」

息を切らし、入って来たのは花陽だった。

竜「さぁ穂乃果……










実験を始めよう」










その一言で、完全に光を取り戻した穂乃果は言う。

穂「っ!!…やろう!!」

こ「へっ?」

穂「歌おう!! 全力で!!」

海「穂乃果……」

穂「だって、そのために今日まで頑張って来たんだから!! 竜ちゃんだって、一生懸命手伝ってくれたんだから!!」

「「…はっ!!」」

穂「歌おう!!」

こ「穂乃果ちゃん……。海未ちゃん!」

海「……ええ!」

そして三人は歌い、踊る。

僅かな客の為に、全力で。



(♪:START:DASH!!)









花「ふぁ~……!!」

それぞれが配置に着いてメロディが流れた時、花陽は階段の中段辺りでステージを見ていた。

やっと見に来れた。

幼馴染で親友の少女に振り回され、陸上部に連れて行かれたが、何とかこうしてライブを見に来る事ができた。

何故まだライブが始まっていなかったのかは、周りを見れば大体予想はついてしまった。

0に近い客数。

だからライブを始める事すらできなかったのだろう。

でも、彼女達にはあの天才少年が付いている。

現に花陽が来てからも、竜司は彼女達に何かを言っていた。

それで彼女達の顔に明るさが完全に戻った。

花(やっぱり凄いなぁ……)

と、花陽は思う。

花陽が竜司を見る目は、尊敬ともう1つ、花陽自身も初めて持った感情だった。

曲がサビ前に到達した時、決して多くはない人数がやってくる。

星空凛は花陽を追いかけるために講堂までやってきた。

笑顔で花陽の顔を見るも、花陽の視界に自分は映っていなくて、ステージ上にいる少女達に向けられていた。

自然と凛の視線もステージ上へ向けられる。

他にもコソコソと、このライブを見に来ている者が数人いた。

1人は楽しむ必要がないと言わんばかりに音響スタジオに。

1人は入り口付近でまるで計画通りというような澄ました顔で。

1人はついで感覚に見て。

1人は他の入り口から入り批評する気満々で。

そしてその他の入り口からは、氷室とことりの父、南惣助が来ていた。

「ほぉ~……これはこれは」

惣助は顔が綻んだ。

どうやら少なからず感動を覚えたようだ。

そして竜司は、目を瞑って静かに耳を傾けていた。

竜(第1実験は失敗か……。まぁこれから立て直していけばいいか……)

竜司はこれからの事を考えていた。

そして曲が終わり、パチパチと少ないが、今の講堂にはよく響く拍手が鳴る。

穂乃果たちは肩で息をしているが、満ち足りた表情だ。

拍手が鳴りやんだ後、絵里が降りてくる。

穂「生徒会長…」

絵「どうするつもり?」

穂「続けます!」

絵「何故?これ以上やっても意味なんて無いと思うけど……?」

穂「やりたいからです!」

絵「っ!?」

速答だった。

穂「私、もっと歌いたい!もっと踊りたい!そう思ってます!こんな気持ち初めてなんです!! きっと、ことりちゃんも、海未ちゃんも……。やってよかったって、本気で思ってるんです!!」

穂乃果の純粋で無垢な気持ち。

それを絵里にぶつける。

穂「だから今はこの気持ちをそのまま真っ直ぐに信じてみたいんです!確かにこのまま見向きもされないかもしれない、誰からも理解されないかもしれない。……でも!一生懸命頑張って、私たちがとにかく頑張って、この想いを届けたい!! 今、私たちが届けたい……この想いを!!!」

それに共感した者は少なからずいただろう。

穂「いつか……いつか私達、必ずここを満員にしてみせます!!」

そう穂乃果は断言した。

絵「………そう、なら勝手にしなさい」

そう言って、絵里は踵を返す。

それを竜司は黙って見ていた。

何も言わず、ただジッと。

こうして、μ'sのファーストライブは決して成功とは言えないが、ある意味成功した。





ーーーーーーーーーー




竜「とりあえずお疲れさん」

竜司はライブを終えた穂乃果達3人にそれぞれ飲み物を渡していた。

穂「ありがと~」

こ「竜くんありがとう♪」

海「ありがとうございます」

それを飲む穂乃果達。

竜「あっ、そうだ」

穂「ん?」

竜司は何かを思い出したのか、自分の鞄を漁り、穂乃果はそれに首を傾げる。

海未とことりも同様に。

そんな3人をほっといて、竜司はある物を取りだし、穂乃果に渡す。

竜「穂乃果、これをお前に渡しとく」

穂「ん~?竜ちゃんこれは?」

竜司が穂乃果に渡した物。

それは……。






竜「ディノガジェット。俺のディノホルダーと同じ、恐竜を復活させるデバイスだ」







ディノガジェット。

ブレスレット型のデバイスで、腕を曲げると内側になる側面にスラッシュ部分があり、前面のボタンを押すと、恐竜カードが自動で出てくる最新のデバイス。

ただしディノホルダーと比べると、武器としては何の意味も無いため、そこではディノホルダーには劣る。

穂「どうしてこれを私に?」

竜「護身用だ。俺がいない時に襲われたら大変だからな」

穂「そっか……ありがとう、竜ちゃん」

にっこり笑う穂乃果。

その様子を海未とことりは羨ましげに見ていた。

そしてそれを見逃す竜司ではなかった。

竜「なんだなんだ~?海未とことりも欲しいのか?」

「「へっ?」」

すっとんきょうな声を上げる2人。

そんな2人をほっといて、竜司は自己陶酔した感じで言う。

竜「まぁ俺のすごくて最高で天才な発明に興味が湧くのは当然と言えるか。仕方ないな~。2人の為にもこの天っ才科学者の俺が特別に作ってやろう。ありがたく思え」

ドヤ顔をする竜司。

そんな竜司に海未はジト目を向け、ことりは苦笑する。

なお、穂乃果は自分専用のディノガジェットをじっくり見ていた。

海未とことりの内心は、竜司の力になれる穂乃果が羨ましかったのだが、何を誤解したか、竜司は自分の発明品に興味を持った2人の為にディノガジェットを作ると言ったのだ。

とはいえ、結果オーライなことに2人は礼を言う。

海「その~…えーと…ありがとうございます?」

こ「ありがとう、竜くん」

竜「ふふ~ん♪。楽しみに待ってろ」




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Game#24


竜「ファーストライブをものの見事に失敗した穂乃果達。しかし、てぇ~んさっい科学者の俺の叱咤激励により奮い立ち、僅かな客の為に踊りきる!」

穂「叱咤激励って言うほどじゃないでしょ?」

竜「茶々入れんなよ。ではどうぞ」


竜司side


気付けば既に翌日になっていた。

昨日は真姫にありったけのトマト料理を約束通り奢り、それを見た穂乃果達にも奢る羽目になった。

とはいえ、俺は既にてぇ~んさっい科学者としてジュラシック・パークで働いていた為、貯金は80億もあるので、四人分など痛くも痒くも無い!

しかし!

その後、穂乃果達は俺をつれ回してゲーセンにも行きやがった!

最っ悪だ……。

っと、話が逸れたな。

さて、俺が何故今こんな事を考えているかと言うと、その理由は目の前の状況にある。






こ「ふぅぁぁぁ~……ふぇぇ~……」

モッサモッサと草を食っている謎の動物に見惚れていることりがいるのだ。

穂「ことりちゃん最近毎日来るよねぇ。飽きないのかなぁ」

海「急にハマったみたいです」

そう、ことりは最近毎日ここに来てはこのアルパカと戯れている。

何故飼っているのがアルパカなんだ?

そして何故アルパカに夢中なんだ!?

ことり!

俺の幼馴染みなら、そこは草食恐竜にはまってくれよ~。

穂「ねぇチラシ配りに行くよぉ」

こ「あとちょっとぉ~」

穂「もぉ……」

頑なに動かないな、ことりのやつ。

竜「なぁことり。何でアルパカなんだ?そこはトリケラトプスみたいな草食恐竜にはまってくれよ。トリケラトプスが嫌ならパラサウロロフスとかみたいな鳥脚類でもいいからさ~」

こ「だって恐竜は肌がゴツゴツしてるから……。モフモフじゃないから……」

ちっ!

やっぱり時代はモフモフなのか!?

海「5人にして部として認めてもらわなくては、ちゃんとした部活はできないのですよ?」

こ「そうだよねぇ~」

海「はぁ……竜司も何か言ってあげてください。竜司ならことりも動くかもしれませんし」

竜「さっき言ったぞ?」

海「いえ恐竜云々じゃなくて……」

俺にとってはそっちが大事なのに。

まぁ仕方ないな~。

竜「ほらことり。そろそろ行くぞ?」

こ「うーん……」

そこまで言うと、ことりが少し唸り出した。

お、これは効いてるか?

穂乃果も海未も期待の顔をしている。

天才の俺にかかればこんなもんよ!

すごいでしょ?最高でしょ?天才でしょ?

こ「じゃあ竜くんも一緒に見よっ♪」

竜「羽毛の恐竜なら……」

こ「………」

不満そうな顔をすることり。

だってアルパカとか、いつでも見れんじゃ~ん!

モフモフは見飽きたんだよ~!!

穂「うーん、可愛い……かなぁ?」

言いながら穂乃果も海未も奥の方にいる茶色いアルパカを見ていた。

すると、



「ブルルルルーーッ!!」



穂「わぁ!?」

思いっきり威嚇されてやんの。

そりゃ動物なんだし怒る事くらいはあるよな~。

こ「えぇ~、可愛いと思うけどなぁ。首の辺りとかフサフサしてるしぃ♪お目目もクリクリしてるしぃ♪」

竜「ことりの方が可愛いぞ?」

こ「ふぇっ!?//// あ、ありがと……////」

顔を赤くすることり。

熱か?

見ると穂乃果と海未はジト目を向けてくる。

なんだよ……その目は?

その時。

こ「うひゃあ!?」

アルパカに舐められたのか、尻餅をつくことり。

穂「ことりちゃん!!」

言わんこっちゃない。

恐竜なら安易に舐めたりはしないぞ?

海「ああ……!どうすれば……!はっ、こうなったらここはひとつ弓で!!」

穂「ダメだよ!!」

竜「落ち着けバカ」

パニックになったらホントに何しでかすか分からないな、こいつは……。

「ブルルルルーーッ!!」

海「きゃあ!?」

穂「うわぁ!? 変な事言うから怒っちゃったじゃん!!」

海「そ、そんな事言われましても……!」

ことりは舐められた所を拭いてるし、穂乃果も海未もパニック状態になっている。

今冷静なのは俺だけな訳だ。

だったら取る行動は1つ。

竜「はぁ、全く仕方ないなーお前らは」

穂「竜ちゃん?」

竜「ここは天才恐竜学者の俺に任せろ」

こっちは恐竜相手に仕事してたんだ。

モフモフ相手に遅れは取らん。

竜「よーしよしよしよし!! いい子だな~」

ム○○ロウ並に顔を似せて近づく。

瞬間、








カーッペッ!! ベチャッ!








アルパカに唾をかけられた……頬に。

穂「あっ……」

海「確かアルパカは身を守るために強烈な匂いを放つ唾を吐くと聞いた事があります……」

竜「……………ふーん」

ディノホルダー!

ティラノサウルス!

竜「さぁ……実験を始めよう」

海「ほ、穂乃果っ!! 竜司を止めるのです!ティラノサウルスでアルパカ達を殺そうとしてます!!」

穂「竜ちゃんダメェェェェェェ!!」

竜「離せェェェェェェ!! 恐竜が絶滅したからこそ繁栄出来た畜生に恐怖を刻んでやるうううう!!」

穂「竜ちゃんそれブーメラン!!」

2人が俺の体にしがみついてくるがそんなのは知らん!!

殺してやるゥゥゥゥゥゥ!!

花「よ~しよし、大丈夫大丈夫」

竜「あん?」

そんな時、女の子の声が聞こえて、俺は冷静になった。

見ると知ってる子だった。

竜「あっ、迷える子羊ちゃん…」

それは小泉花陽だった。

小泉は茶色のアルパカを優しく宥めている。

穂「大丈夫?ことりちゃん」

こ「うん…。嫌われちゃったかな?」

花「平気です。ただ、楽しく遊んでただけだから」

そう言ってアルパカの水を替えている。

穂「アルパカ使いだね~」

花「あっ、私飼育委員なんで…」

穂「ふーん…。ん?あー!? ライブに来てくれた花陽ちゃんじゃない!!」

竜「今気付いたのかよ?」

この単純バカは。

花「ふぇ?あの、その……」

こ「駆けつけてくれた一年生の!」

ことり…お前もかい……。

花「ふぇ、あっ、はい…」

しかし、この子…声小さいな…。

すると、穂乃果が彼女の肩を掴み

穂「ねぇ!」

花「は、はい!」

穂「アイドルやりませんか?」

こ「穂乃果ちゃん、いきなりすぎ……」

勧誘した。

小泉は怯えてる。

穂「君は光ってる、大丈夫!悪いようにはしないから!」

竜「悪いことするヤツの言葉だよ…」

穂乃果が悪い顔を近づけながら勧誘している。

穂「でも、少し位強引に行かないと…」

花「あ、あの西木野さんが……」

すると小泉が口を開く。

けど、一番近くにいた穂乃果ですら聞こえなかったみたいで、

穂「ごめんね。もう一回いい?」

聞き返してる。

花「に、西木野さんが、いいと思います。すごく、歌、上手なんです」

穂「そうなんだよね!私も大好きなんだ!あの娘の歌声!」

竜「けどあいつ、絶対嫌って言うぞ?お断りします!って感じでwwww「ベチャ!!」……」

………何故かトマトが飛んできた。

しかも顔に当たった。

こ「トマトだ……」

ことりが言ってるのを他所に、俺は飛んできた方向を見る。

方角は校舎の2回で、そこに真姫がいて、ゴミを見るような目で見下ろして来ていた。

ああ~………あいつが投げたのか。

穂「西木野さん……運動神経いいんだ…」

いや、ただ単に私怨で投げたからだと思う。

真姫はプイッと顔を背けると、去っていった。

「「「「「………………」」」」」

小泉も含めて唖然としていると……。




凛「かーよちーん!! 早くしないと体育遅れちゃうよー!!」




遠くから聞き覚えのある声が聞こえた。

小泉の友達である星空だった。

次が体育だから小泉も体操着だったのか。

成る程。

ってことは真姫もか。

あいつ大丈夫かな~。

花「あ……し、失礼します……」

そう言うと、そそくさと小泉は星空の方へと駆けて行く。

凛「あ、天青先輩だ!にゃっほほーい!」

星空さんや?

普通にそこからでも俺の事すぐに分かりますよね?

やっぱりあの子もバカなんだな。

とりあえず軽く手を振って応答してやる。

それから小泉と星空は、俺達に一礼してから走っていった。

海「もう時間もないですし、私達も早く戻りましょう」

穂「そうだね」

こ「うん……」

こうして俺達も午後の授業に向かった。

海「あっ、竜司はちゃんと顔を洗ってから来てくださいね?」

竜「分かってるよこんちくしょう!!」


竜司sideoff







◎side


何処かの廃工場。

中は一見ガランとしてるが、計器やパソコン等、多くの機械が並んでいた。

その中心に、南惣助はいた。

「遂に出来たぞ!フッハハハハハハハハハハハハ!!」

右手を掲げて高笑いしている惣助。

そんな惣助の右手にはブラッドディノホルダーがあり、その画面にはブラッドスタークの姿が映っていた。

ただし、いつものヘルメットにローブではなく、ちゃんと全身装甲スーツだった。

つまりブラッドスタークとしての姿が完成したのだ。

「ほら。お前の分だ…」

惣助は後ろにいた人物に、側にあったナイトディノホルダーを放る。

ナイトディノホルダーを受け取ったのは、氷室だった。

「お前のナイトローグも全身装甲スーツに変えた。戦闘も難なくやれる筈だ」

「ああ……」

氷室は短く返すと、背を向けて去っていった。

惣助は氷室を見送ると、ある物を手に取る。

「後はこれを竜司に渡すだけ…」

それはエレメントトリガーだった。

何故惣助がエレメントトリガーを持っているのか?

その理由は簡単。

惣助が竜司のパソコンにハッキングをし、エレメントトリガーの設計図を盗み、独自に開発したからだ。

「全く……あいつもこんないいものを放置するなんてな……」

惣助はそう呟き、エレメントトリガーを手の中で玩んだ。


◎sideoff



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Game#25

◎side


花「色々あるんだなぁ、みんな」

帰宅途中の坂道で、花陽は1人何気なく呟いた。

彼女は悩んでいた。

今日あった事を色々と思い出してみる。

飼育係だからアルパカの世話をしに行ったら、そこには憧れのスクールアイドルの人達がいて、そしてやはりそこにはその彼女達を手伝っている天才少年もいた。

何故か妙な機械を振り回して憤慨してた挙げ句、真姫にトマトをぶつけられていたが。

つい先日ライブがあって、お世辞にも成功とは思えない結果になりながらも、彼女らはそれを乗り越え、そして今も活動している。

それを目の当たりにして、花陽は悩んでいた。

やはり憧れていたから、捨てきれなかったから、竜司に相談しようかしまいか考えていた。

けれどそれも出来なかった。

どうしても後一歩が踏み出せない。

全て物怖じして、諦めてしまう。

そんな弱虫の自分。

教室では、親友である星空凛にも言ってみた。

自分がスクールアイドルをやると言ったら、一緒にやってくれるかと。

これは花陽の精一杯の我が儘だった。

何気なく言ったつもりでも、精一杯の我が儘であり、お願いでもあった。

簡単に言ってしまえば道連れ。

凛が可愛い女の子だと知っている花陽だからこその。

しかし、彼女はそれで首を縦には振らなかった。

過去に苦い経験を……男子にスカート姿をからかわれた事で。

『あー!スカートだぁ!』

『いつもズボンなのにー!』

『スカート持ってたんだー!』

その男子達にすれば、特に悪意のないただの何気ない感想だった。

だけど、そんな何気ない一言でも、凛が傷付くには十分すぎる感想だった。

だから凛は、その日からスカートを私服で履くのをやめたのだ。

西木野真姫という同級生の家にも行った。

ある紙を持ち去った所で彼女の生徒手帳が落ちていたから。

それを届けるために、凛と別れてから彼女の家に向かった。

シンプルに表すのなら、彼女の家は豪邸だった。

彼女の母の言葉を聞けば、病院を経営していると言っていた。

『西木野総合病院』

頭の中にそれが1番に出てきて、同時に納得がいった。

言うまでもなく、彼女の名字は西木野だったのだから。

それさえ分かってしまえば疑問は一気になくなる。

リビングには数々のトロフィーがあった。

それもおそらく彼女が今まで獲得してきたものだろう。

竜司と一緒に写ってる幼い頃の写真もあった。

真姫の母曰く、幼馴染みとの事。

花陽は心の隅でそれを羨ましいと思った。

真姫と会ってから、スクールアイドルを勧めてみた。

いつも放課後に彼女の歌を聴いて、彼女がどれほど演奏が上手いのかも知っている。

だけど真姫は………それを断った。

既に、真姫の未来は決められていた。

病院を経営しているから、その跡継ぎとして勉強に時間を費やさなければならない。

真「…だから、私の音楽はもう終わってるってわけ…」

真姫はそう言う。

それを聞いていた花陽は、それなら何故そんな事を寂しげな顔で言うのだろうと疑問に思っていた。

そんな思考を進めようとさせないように、今度は真姫から話を振られた。

真「それより、あなた……アイドル、やりたいんでしょ?」

μ'sのファーストライブに竜司に連れてこられたらしい。

真姫はこう言う。

真「あなた、やりたいんならやればいいじゃない。そしたら、少しは応援……してあげるから…」

花「……うん、ありがとう」

それに花陽は一応笑顔でお礼を言った。

まだ入るなどと決めていないし、むしろ足を引っ張ると思っているから。



ーーーーーーー



そして冒頭に戻る。

花「……お母さんにお土産買っていこうかな」

真姫の家を出て、歩いてると『穂むら』という和菓子屋が見えてきた。

ここは気分を変えて和菓子でも買っていこう。

そう思った花陽は、いかにも和風と感じさせる看板の下にある引き戸をガラガラッと開ける。

中に入ると、ほんのりと和菓子特有の甘い香りが漂ってくる。

そんな匂いに気を取られながらも奥へ進むと、そこにいたのは、





穂「いらっしゃいませー!ってあれ?」

花「あっ、先輩……」

今日会って勧誘してきたスクールアイドルμ'sの高坂穂乃果が割烹着を着ていた。

その時、





チン!!





花「ぴゃあっ!?」

穂「わっ!? なにっ!?」

大きな電子レンジのような音が聞こえたきた。

その大きさに思わず花陽は可愛らしい叫び声を上げ、穂乃果は回りをキョロキョロ見渡す。

そして店の奥から、元凶が出てくる。

竜「いやっほぉ~~~い!! 新しい超技カード、完・成☆」

猿のようにはしゃぐ竜司だった。

竜司は新しく出来たと思われる超技カードを掲げ、恍惚の表情を浮かべていた。

穂「もう!竜ちゃん何してるの!?」

当然穂乃果は怒るが、竜司はそんな穂乃果を無視して、花陽に視線を向ける。

竜「あれ?小泉?」

花「どうもです……先輩…」



ーーーーーーーー



どういうわけか、今花陽は穂乃果に連れられ、家の中専用の出入り口に立っている。

花「お邪魔します…」

穂「私、店番があるから、上でちょっと待ってて♪」

そう言って、穂乃果は上にある自分の部屋を指す。

花「あっ、はい」

そう言って上がったはいいものの、花陽は穂乃果の部屋を知らない。

花「えっと……」

迷った挙げ句、一番近い部屋の入口を開ける。

そこには、











雪「ふっにににににに!! こ、これくらいになれれば……」






裸の上にバスタオル一枚の雪穂がいた。

………顔にパックを付けて、胸をよせながら……。




花「…………はっ!?」

しばらく呆然としていた花陽だが、あわてて入口を閉める。

?「ララララ~♪」

すると、今度は隣から誰かの歌声が。

花陽は、そっと開ける。

そこには












海「ラララララ~ン♪……ジャーン!! ありがと~~♪」








姿見の前で歌い、アイドルの決めポーズまでしていた海未がいた。





花陽はバッと閉める。

花「ど………どうしよう……?」

あまりの光景にパンク寸前の花陽。

その時、部屋の扉が勢いよく開き、中から海未が出てきた。

隣の部屋からは雪穂が、出てくる。

花「ヒィィィィィィィ!?」

そして、二人揃って

「「見ました?」」

と聞いてきた。

花陽は腰を抜かし、座り込む。

花「あわわわわわわわ……」

二人揃って、ゆらゆら揺れながら迫りくる光景は、かなりのホラーだ。

そこへ、文字通り天の助けが来る。




竜「二人とも何やってんだよ?」

天青竜司がやって来た。

「「あっ……////」」

二人は我に返り、そそくさと部屋の中へ戻る。



ーーーーーーーーー



花「ご…ごめんなさい…」

穂「ううん、いいの、こっちこそごめん…」

竜司が来たことで、穂乃果も戻り、今花陽を含めた4人は穂乃果の部屋にいる。

穂「でも、海未ちゃんがポーズの練習していたなんてね~♪」

海「ほ、穂乃果が店番でいなくなるのが悪いんです!」

竜「いや、穂乃果のせいにしちゃダメだろ…」

海未の文句に正論を言う竜司。

花「あっ、あの…!?」

こ「お邪魔しま~す♪」

花陽が何か聞こうとした時、そこへことりが入って来る。

花「あっ、お邪魔してます!」

こ「えっ!? もしかして本当にアイドルに!?」

ことりが花陽のことを見つけ、花陽が軽く頭を下げるとキラキラした表情で詰めよってくる。

それを竜司が止める。

竜「落ち着けことり…」

穂「たまたまお店に来てくれたから、ご馳走しようと思って……。穂むら名物の穂むら饅頭、略して「穂むまん」。美味しいよ?」

穂乃果が穂むまんを差し出す。

こ「あっ、穂乃果ちゃん、パソコン持ってきたよ」

穂「ありがとう!肝心な時に壊れちゃうんだ~」

ことりがパソコンを出そうとすると、花陽はテーブルの上の煎餅を退ける。

こ「あっ、ごめん…」

花「いえ……」

海「それでありましたか?動画は?」

こ「まだ確かめてないけど、多分ここに…」

穂「あった!」

竜「おっ…ホントだ」

海「どこですか!?」

5人はパソコンの画面を覗きこむ。

そこには、ファーストライブの動画が上がっていた。

穂「おぉ~」

こ「誰が撮ってくれたんだろうね?竜くん?」

竜「俺はカメラなんて持ってなかったの知ってるだろ?」

海「それにしても、凄い再生数ですね」

穂「こんなに見てもらったんだ~!」

再生数のところを見ると、これが中々の数で、初投稿の割に、これは上出来なくらいの再生数だった。

生徒会長はこのままやっても何も変わらないと言っていた。

しかし、この再生数を見ればみんな分かる。

好調。

そんな2文字が全員の頭の中に浮かんだ。

穂「あ、ここのところ、綺麗にいったよねぇ!」

こ「何度も練習してたとこだったから、決まった瞬間ガッツポーズしそうになっちゃった!」

穂乃果たちはファーストライブの動画を見て、感想を言う。

それを他所に花陽は夢中で観ている。

それに気付いた穂乃果が

穂「あっ、ごめん花陽ちゃん。そこじゃ見辛くない?」

声をかけるが、花陽には聞こえてない。

その様子に4人は顔を見合わせ、

海「小泉さん」

花「は、はいぃっ!?」

海未が声をかけ、花陽の意識はパソコンから現実に引き戻される。

穂「スクールアイドル、本気でやってみない?」

穂乃果が花陽にアイドル活動の誘いをかける。

しかし、引っ込み思案な花陽はやんわり断る。

花「嬉しいですけど、私アイドルに向いてないし…」

海「それをいうなら私は人前に立つことが苦手です。とてもアイドルに向いているとは思いません」

こ「ことりも歌忘れちゃうところもあるし、運動も苦手だし…」

穂「穂乃果もすごくおっちょこちょいだよ!」

竜「穂乃果は何で自慢気味なんだ?」

それぞれフォローを入れる中、穂乃果の言葉にツッコム竜司。

しかし「まぁでも…」と竜司は前置きして、

竜「もしこいつらがプロのアイドルなら、きっと失格の烙印を押されてるだろうな。でも、スクールアイドルなら自分がやりたいという気持ちがあれば、誰だってやることができる。それがスクールアイドルってやつなんじゃね?」

そう言った。

花「あっ……」

竜司にとっては何気ない言葉かもしれない。

だがその言葉に、少なからず花陽は救われた気分になった。

穂「だから、ほんの少しでもやりたいっていう気持ちがあるならやってみようよ!」

穂乃果がもう一度誘う。

海「もっとも、練習は厳しいですが…」

穂「もぉ…。海未ちゃん…」

海「おや、失礼」

自分には向いてない。

それは彼女達も思っていた事だった。

それでも尚、彼女達はあのライブをやり遂げた。

やりたいという気持ちが強かったから。

花陽と同じくらい、やりたいという気持ちが凄く強かったから。

穂「今はまだ言わなくてもいいよ。ゆっくり考えて、答えを聞かせてね!」

こ「私達はいつでも待ってるから!」

まだ猶予はある。

改めて考える時間をくれた。

であれば、もう少し考えてみようと、花陽は笑顔で返す。

「はい……!」

小泉花陽の心には、確かな変化があった。


◎sideoff





竜司side



あの日から翌日。

時間は早いもので、あっという間に放課後になった。

俺はというと、中庭の大きな木に登り、寝ていた。

なぜかって?

自然の力を感じるためさ。

穂乃果達の練習?

暇なのでふけてきた。

そうしてると、誰かが来た。

バレないように見下ろすと、小泉だった。

花「はぁ~…」

なんか溜め息吐いてるな。

よし!

ここはこの天才恐竜学者の俺が励ましてやろう。

そう思った時、

真「何してるの?」

花「西木野さん……」

真姫が来た。

ちっ、間の悪い娘だ。

まぁとりあえず様子見するか。

真「あなた、声は綺麗なんだから、あとはちゃんと大きな声を出す練習すればいいだけでしょ?」

花「でも……」

真姫は元気づけるために軽くアドバイスしたつもりだったが、小泉にはそれは通じず、むしろ逆効果と思わせるくらいに表情は優れなかった。

すると真姫は次に意外な行動に出た。

真「あーあーあーあーあ~」

それは、よく発声練習として用いられている練習方法の1つだった。

真「はいっ」

言ったあとで、小泉にもそれを行えという意味で手を向ける。

少し強引だが、いいかもな。

花「え?」

真「やって!」

少し強めに言うと、小泉は最初こそ戸惑ってはいたが、次第に覚悟を決めたのか、その口が開いていく。

花「……ぁーぁーぁーぁーぁー」

真「もっと大きく!はい!」

花「は、はいっ」

まだ小さい。

真「あーあーあーあーあー」

花「ぁ、あーあーあーあーあー」

真姫が最初に発声する事によって、小泉が感じる羞恥を緩和させる。

そのおかげか、小泉もいつも以上の声を出せるようになっていた。

そして真姫が合図をだす。

真「一緒に!」

「「あーあーあーあーあー」」

2人の声が重なる。

それだけなのに、それはとても綺麗なメロディーが奏でられているようだった。

花「ふぁ……!」

真「ね、気持ちいいでしょ?」

花「…………うん、楽しいっ……!」

真「……っ」

その顔に、嘘はなかった。

とても素直で、とても純粋な笑顔がそこにはあった。

故に真姫は恥ずかしがってそっぽ向く。

可愛いな~2人とも。

そこに、小泉を呼ぶ声が聞こえた。

それは星空だった。

凛「かーよちーん!…西木野さん?どうしてここに…?」

花「励まして貰ってたんだ」

真「わ、私は別に…」

腕を組んで、そう言う真姫。

凛「それより、今日こそ先輩たちのところに行って、アイドルになりますって言わなきゃ!!」

そう言って、小泉の右腕を引っ張る星空。

花「う…うん」

真「そんな急かさない方がいいわ、もう少し自信をつけてからでも…」

真姫が止めるが、星空は

凛「何で西木野さんが、凛とかよちんの話に入って来るの!?」

敵意剥き出しで言う。

この子、余り親しく無いヤツには、無意識に壁を作るタイプだな。

真姫は一瞬驚くが、すぐに言い返す。

真「っ!?…別に、歌うならそっちの方がいいってだけ!!」

凛「かよちんはいつも迷ってばかりだから、パーッと決めてあげた方がいいの!!」

ヤバイ……見てて楽しい。

真「そう?昨日話した感じじゃ、そうは思えなかったけど?」

凛「むっ…!!」

花「あの…喧嘩は…」

間に挟まれた小泉が、止めるが

凛「むーっ!!」

真「んーっ!!」

花「ああぁぁぁ……」

無意味に終わる。

頑張れ小泉ちゃん。

俺はここで応援してるぞ。

凛「かよちん行こう!先輩たち帰っちゃうよ!!」

星空が小泉を引っ張る。

花「えっ…でも…」

真「待って!」

が、真姫が止める。

反対の手を引っ張って。

真「どうしても行くってんなら、私が連れて行くわ!音楽に関しては、私の方がアドバイス出来るし、μ’sの曲は私が作ったんだから!!」

花「えっ!? そうなの?」

真「んぇ!!……いや…。えっと………」

ぷふー!

墓穴掘ってやがる。

真「…っ!!…とにかく、行くわよ!!」

そう言って、小泉の左手を掴んで行く。

星空は右手を引っ張る。

凛「待って!連れてくなら凛が!」

真「私が!」

凛「凛が!」

こいつら、自分が連れてく言い合いしているが、肝心な小泉の意思はどうした?

小泉はズルズル引っ張られて行く。

花「……だ、だ、誰か助けて~!!」

またしても、か弱い少女のその声は、儚くも空へと消えていった。

……………俺も行くか。





穂乃果が使う恐竜は、ペンタケラトプスと、カルカロドントサウルス。

どちらがいいでしょうか?

どちらか一票にください。


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Game#26


まきりんぱな最終回!


◎side


屋上に行くまで少しいざこざがあった。

軽い言い合いが屋上まで続いたというだけだったのだが、言い合いで立ち止まったりしている内に、気付けば夕空へと変化していた。

こ「つまり、メンバーになるっていう事?」

ことりが呟いた。

屋上に着いたらμ'sの面々と竜司がシートに座っていた。

もう練習は終わったという事なのだろう。

丁度タイミングが良いという事で、真姫と凛はごちゃごちゃになりながらも説明をし、花陽がメンバーに入りたいという事を伝えた。

もちろん、それまでの間は花陽は2人に腕を組まれ、まるで捕まった宇宙人のように項垂れていた。

凛「はい!かよちんはずっとずっと前からアイドルをやってみたいと思ってたんです!」

真「そんな事はどうでも良くて!この子は結構歌唱力あるんです!それと竜司もちゃんと聞いて!」

竜「え~…」

自由に寝転んでいた竜司は不満そうな声を漏らす。

因みに竜司はここに来る時、ケツァルコアトルスのカードを使って来たのだ。

その結果、

特殊技カードスラッシュ。

《スカイダイブ》

カードを投げると、ケツァルコアトルスが顕現。

ケツァルコアトルスの背中に乗って、屋上に急行。

海「何やってるんですか!?」と海未にどつかれ、しばらく気絶。

こんな結果になった。

凛「ちょっと!どうでもいいってどういう事ぉ!? それと天青先輩に対してその言葉遣いは失礼だよ!」

真「言葉通りの意味よ!それに私と竜司は幼馴染みだからいいのよ!」

相変わらず口喧嘩をする真姫と凛。

ここで花陽がようやっと口を開いた。

花「わ、私は、まだ、何て言うか……」

凛「もう!いつまで迷ってるの!? 絶対やった方がいいの!!」

真「それには賛成。やってみたい気持ちがあるならやってみた方がいいわ!」

気付けば、2人の息は合っていた。

それに気付いたのは、薄くニヤリと笑みを浮かべている竜司くらいだった。

花「で、でも…」

真「さっきも言ったでしょ!? 声に出すなんて簡単なことだって!あなたならできるわ!」

凛「凛、知ってるよ!かよちんはずーっと、ずーっと昔からアイドルになりたいって思っていたこと!」

花「凛ちゃん、西木野さん…」

2人は理解している。

花陽がどこまでもアイドルに憧れていて、アイドルになりたいと思っている事を。

だから凛は自分の女の子らしさを、真姫は自分の未練を、この少女に預けようと決めた。

そして応援しよう、と。

凛「頑張って。凛がずっと付いててあげるから!」

真「私も少しは応援してあげるって言ったでしょ」

そんな光景を、竜司も含めた穂乃果達も、温かい目で見ていた。

そして、そんな2人にそこまで言われた少女は、とうとう決意する。

花「えと、私……小泉……」

そこまで言った時だった。








不意に背中に2つの感触があって押された。

振り向けば、すぐに理解できた。







背中を押された。








言葉のないエールは花陽の決意をより強固なものとした。

花「……っ!私!小泉花陽と言います!1年生で背も低くて声も小さくて人見知りで得意なものも何も無くて…。でも!アイドルへの想いは誰にも負けないつもりです!! だから、私を…μ'sのメンバーに入れてください!!!!」

想いの言葉を言い切った。

もう戻れない。

もう引き返せない。

けれど自分の気持ちを素直に吐きだせた。

あとは返答を待つだけ。

かくしてそれは、すぐに返ってきた。

穂「こちらこそ!」

顔を上げれば、そこには温かい笑顔で手を差し伸べてくれる穂乃果と、それを見守る海未、ことり、そして竜司の顔があった。

穂「よろしく!」

花「……っ…………はいっ」

もうそこには、臆病で何も決められなかったか弱い少女はいなかった。

そこには、スクールアイドルのメンバーであるμ'sの1人、小泉花陽の姿があった。

竜(さてと……)

竜司は花陽の行く末を見届けると、ことりにアイコンタクト。

真姫と凛を見る。

ことりもそれに頷く。

凛「かよちん……偉いよぉ……」

真「何泣いてるのよ……」

凛「だってぇ……って、西木野さんも泣いてる?」

真「だ、誰が、泣いてなんかないわよ!!」

ことりが何やらほっこりしている2人に声をかける。

こ「それで、2人は?2人はどうするの?」

「「え?どうするって?えぇ!?」」

不意の質問に、一瞬思考が止まる。

海「まだまだメンバーは募集中ですよ!!」

ことりに乗っかるように、海未もことりと共に2人に手を差し伸べる。

竜司は2人の後ろに回り、言う。

竜「やりたいならやればいい。それは2人にも言えるんだぞ?躓きそうになったら、この天才恐竜学者の俺が支えてやるからさ…」

そして竜司は











真姫と凛の背中を押した。










二人が数歩、歩いたところに花陽が来て

花「凛ちゃん、西木野さん。一緒にスクールアイドル、しよ?」

微笑んだ。

「「………うん」」

凛と真姫はとても優しい笑顔で頷いた。

そんな時。












《マキシムス》











その音声と共に、音ノ木の屋上に、黒と茶色のトリケラトプス、マキシムスが現れた。

「グオオオオオオオン!!」

その後ろには、ナイトローグも。

「天青……」

ナイトローグは呟く。

竜「ナイトローグか……でもなんか全身装甲スーツに変わってる?」

竜司はナイトローグの様相の変化に首をかしげる。

一方、

凛「恐竜……!?」

花「ぴっ!?」

真「なんでこんな時に!」

凛と花陽は怯え、真姫は間の悪さに毒づく。

その間も、マキシムスはゆっくり近づく。

その重さに屋上の床は凹み、狭いのか、柵も曲がりつつある。

そこで穂乃果が動いた。

その左手首にディノガジェットを着けて。

竜「穂乃果……やるのか?」

この戦いは穂乃果にとって初陣。

それでも……

穂「うん!やるよ!寧ろやらせて!」

穂乃果は怯まなかった。

それに竜司は溜め息を吐き、ディノホルダーを上に向ける。

竜「なら場所変更な?」

そう言った竜司がディノホルダーのトリガーを弾くと、ポインターから黄金の光が出て、空で閃光を放つ。

瞬間、回りの空間が歪み、場所は音ノ木屋上からシダ等の絶滅した植物が生い茂り、空は紫とオレンジの空模様の空間に変わる。

穂「これは?」

穂乃果は驚いて回りを見渡す。

これには海未もことりも、真姫も凛も花陽も、ナイトローグも驚いて回りを見渡す。

竜司は説明する。

竜「俺が新たに発明した新機能さ……。恐竜バトルになった際に場所を異次元に変えて、被害を考えることなく暴れることのできる場所。さぁ穂乃果……存分に暴れろ」

それにμ'sメンバーは驚き、ナイトローグは舌打ちする。

だが、穂乃果は満面の笑顔で頷く。

穂「うん!分かった!」

そして穂乃果はディノガジェットの前面ボタンを押して、恐竜カードを射出。

出てきたのは3本の角に、頬に目立つ突起があり、大きな襟飾りを持つ茶色の角竜だった。

ペンタケラトプス。

名前の意味は、5本の角を持つ顔。

穂乃果はペンタケラトプスのカードを側面の部分にスラッシュする。

《ペンタケラトプス》

女性声でアナウンスされ、雷を纏ったカードを穂乃果は投げる。

すると、ペンタケラトプスが顕現。

「グオオオオオオオオオオン!!」

それを見たナイトローグは言う。

「お前程度が俺に勝てるとでも?」

だが、穂乃果は気にせず宣言する。









穂「今の私は…………負ける気がしないよ!!」







マキシムス対ペンタケラトプス、穂乃果対ナイトローグの戦いが始まる。




ーーーーーーーーー





穂乃果はペンタケラトプスを操り、ナイトローグはマキシムスを操って互いに激突させる。

「「グオオオオオオオン!!」」

お互いの凶悪な鋭い角が当たり、襟飾りは体への直撃を防ぐ。

何度も何度もぶつかり、どちらも譲らない。

海「穂乃果が対等に戦えてる?」

こ「すごい…」

穂乃果の意外な善戦に驚く海未とことり。

竜司が自慢気に言う。

竜「そりゃそうさ。ペンタケラトプスは強さ2000。最高クラスの恐竜だからな♪そんじょそこらの恐竜には負けんさ。だけど……」

竜司は目を細めてマキシムスを見る。

問題はそのペンタケラトプスと互角にやりあえてるマキシムスだ。

竜「もしかしてあのトリケラトプス……」

竜司の頭には、マキシムスも同じ強さなのでは?という考えが浮かぶ。

そんな竜司を余所に、ナイトローグは遂に技カードを使う。

《ネッククラッシャー》

スラッシュして、そのエネルギー弾を撃って、マキシムスに吸収させる。

「グオオオオオオオン!!」

マキシムスは吠えると、ペンタケラトプスを掬い上げ、空中高く放る。

そして回転しながら動き、落ちてくるペンタケラトプスの首を尻尾で打ち抜く。

ズドォォォン!!

ペンタケラトプスはその衝撃で吹き飛び、木にぶつかる。

凛「ああっ!?」

真「ペンタケラトプスが……っ!?」

確かなダメージを負ったペンタケラトプスを心配する凛と真姫。

しかしふらつきながらも、ペンタケラトプスは立つ。

それでも穂乃果は動揺し、その様子にナイトローグは失笑する。

穂「あわわわ!? ど、どうしよう竜ちゃん!?」

竜「落ち着け。もう一度前面ボタンを押せ」

穂「う、うん!」

竜司に言われた通り、穂乃果はもう一度ディノガジェットの前面ボタンを押す。

すると雷の超技カードが射出される。

それを穂乃果は取り、スラッシュする。

《ガトリングスパーク(瞬雷千烈)》

《ベストマッチ!》

穂「嘘ッ!? ベストマッチ!?」

竜「いやっほ~い!! さっすが俺!」

ベストマッチな事に驚く穂乃果と、猿のようにはしゃぐ竜司。

瞬間、ディノガジェットから雷のエネルギー弾が放たれ、それをペンタケラトプスは吸収。

「グオオオオオオオン!!」

吠えると、マキシムスの上半身を起こし、無防備になった腹に、雷を纏った角で何度も何度も突きまくる。

それこそ攻撃の隙を与えない程に。

ズドドドドドドドドドドドドドドドドドドドッ!!

花「早い……」

真「こんな事が出来るなんて…」

普通の恐竜では出来ない芸当に唖然とする花陽と真姫。

そして最後の一突きをペンタケラトプスはする。

そして吹っ飛ばされたマキシムスはカードに戻り、その瞬間、空間は歪み、音ノ木屋上に戻る。

それと同時にペンタケラトプスもカードに戻る。

「ちっ…」

ナイトローグは舌打ちすると、マキシムスのカードを拾い、黒煙を放って消えた。

穂「勝った……勝ったよ竜ちゃぁ~~ん!!」

とりあえずの危機が去ったのと、初陣で勝ったのが合わさり、穂乃果は竜司に跳び跳ねながら抱きつく。

竜「はいはいよく頑張ったね~」

そんな穂乃果を、竜司はとりあえず誉めた。

今回で収穫出来たことは2つ。

1つは穂乃果が戦力になること。

もう1つは…………メンバーが6人になった事だ。







穂乃果、万丈化。

そしてfree&piecemakerさん。

高評価10ありがとうございます!!


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Game#27



竜「てぇ~んさっい恐竜学者にして、てぇ~んさっい科学者の俺、天青竜司がマネージャーになったμ'sは真姫達が入ったことにより、6人になった。さらに穂乃果も恐竜と共に戦う力を得てしまった!」

真「真姫です!」

凛「凛です!」

花「花陽です!」

「「「3人合わせてWe are まきりん、ぱーな♪よろしくねっ♪」」」

竜「音程合ってない上に人様のパクっちゃダメでしょ?」



竜司side


メンバーが、6人になってしばらくたった日。

境内の中で、ことりが準備体操をしていた。

俺はその隣でパソコンと、色んな工具を使って新しい武器を作って、ディノホルダーに取り付けていた。

何の為にって?

そりゃ俺が信じる正義のためさ。

しばらくキーボードを叩いて一段落する。

竜「ふぅ~」

こ「んっ!…んっ!…んしょ……」

ふと、ことりを視界に入れた。

頑張って準備体操してる。

感心感心♪。

穂乃果と海未はまだ来てない。

というよりは海未は弓道の練習で来れず、穂乃果は寝坊だ。

竜「頑張るね…ことり」

こ「うん、だってメンバーが増えて、これからだもん!頑張らなくちゃ♪」

竜「そう…」

俺は微笑む。

そんな時、ことりが後ろを見る。

いぶかしげに。

竜「どうした?ことり」

こ「なんか視線を感じたんだけど…」

竜「視線?…………………なにもいないけど…」

こ「う~ん…?」

俺はことりが向いていた方を見るが、そこには誰もいない。

そこへ穂乃果が来る。

穂「ことりちゃ~ん、竜ちゃ~ん!ごめんごめん、お待たせ~!!」

こ「ううん、私たちも今来たばかりだから。海未ちゃんは弓道の朝練があるんだって♪」

穂「あは~、そっかぁ~」

さて、穂乃果も来たことだし、こっちに集中するか…。

え~と、ここをこうして…。

穂「ことりちゃん?」

こ「穂乃果ちゃん、さっき後ろに誰か居なかった?」

穂「後ろ?」

あれ……ここか?

穂「ささっ!…ささっ!…さささっ!」

あっ、ここか。

穂「あれ~?」

で、ここをくっ付けて、回転するようにして……。

穂「あわわ!? あわわわわ……!?」

ブレードは難しいな。

穂「ぐぐ……ッ!! いったーーーい!!!?」

………さっきから煩いな……。

何なんだよ?

集中できやしないよ。

俺は穂乃果に文句を言うため立ち、振り返ると、





穂「ふがっ!ふああぁぁぁぁぁぁ………」

こ「穂乃果ちゃん!!」





そこには、デコピンされたのか、アヘ顔晒してる穂乃果と、そんなアホを抱えることり。

そしてその目の前に不審者がいた。

その不審者少女はことりに指差して言う。

「あんたたち…」

こ「は…はい!」

「とっとと解散しなさい!!」

そう言って、そこから去っていった。

こ「えっ……。……今の、誰?」

竜「さぁ…?」




ーーーーーーーーーー





時は淡々と進み放課後になった。

授業中の記憶はあまりない。

退屈過ぎて寝てたから。

そして今は、俺は制服でμ'sのメンバーは練習着に着替え、廊下に立っている。

穂「それでは!新しくメンバーを加えた新生スクールアイドル。μ'sの練習を始めたいと思います!」

海「……いつまで言ってるんですか?それはもう2週間も前ですよ?」

穂「だって嬉しいんだもん!」

確かに、この2週間ずっと穂乃果は飽きもせずに練習のある日は絶対にこれを言っている。

さすがにしつこい。

ちなみにこの後の流れは……

穂「なので恒例の!1」

こ「2!」

海「3!」

真「4!」

凛「5!」

花「6!」

ってなる。

因みにファーストライブの時にもこれをやって、緊張をほぐしていたらしい。

さすがに6人ともなると番号もそれなりに聞こえる。

悪くない。

穂「くぅぅ~!6人だよ6人!アイドルグループみたいだよねぇ!」

竜「いや、一応スクールアイドルなんだからアイドルはアイドルだろ…………って、何だよ?何でそんな顔で見てくんの?」

笑顔になったと思ったら、今度はムス~っとした顔でこちらを見てくる穂乃果。

表情豊かなやつ。

穂「なぁんで竜ちゃんは番号言ってくれないの!?」

ああ、そういう事ね。

竜「お前バカか?いやバカだったな。番号を言うのはスクールアイドルであるお前達だ。その手伝いでしかない俺は関係ないから、番号を言う必要性がないの」

穂「むぅ~……何でぇ!! いいじゃんいいじゃん!竜ちゃんも私達の大事なメンバーなんだよ?だったら番号くらい言ったって…あたっ!?」

このまま放っておいたら永遠に言われるので、とりあえずチョップしておいた。

気持ちは嬉しいんだがな。

竜「いいか穂乃果?俺は手伝いでしかないんだ。それ以上でもないしそれ以下でもない。だから気持ちだけ受け取っておくよ」

頭に手を置いて撫でる。

そもそも俺は恐竜回収の為にこの地に戻って来たのだ。

本来こいつらとここまで仲良くする気はなかった。

穂「むぅ~~……」

穂乃果は納得したような、してないような顔になる。

竜「とにかく、俺のことはいいから練習に励め」

穂「……うん、分かった。それにしても、いつかこの6人が『神6』だとか『仏6』だとか言われるのかなぁー!」

ちょっと穂乃果さん?

話が飛躍しすぎじゃない?

花「仏だと死んじゃってるみたいだけど…」

花陽がツッコム。

因みに、花陽と凛のことは名前で呼ぶことにした。

本人達の希望である。

凛「毎日同じ事で感動できるなんて、羨ましいにゃ~」

凛がそこはかとなく穂乃果をバカにする。

穂「えへへ~まあね~!」

いや、褒められてないんだぞ穂乃果さんや?

遠回しにバカにされてるんだぞ?

穂乃果は指を数えながら言う。

穂「私、賑やかなのが大好きでしょ?それに、沢山いれば歌が下手でも目立たないでしょ?後、ダンスを失敗しても……」

海「穂乃果…」

穂乃果の途中からさぼろうとする言葉に、海未がツッコミを入れる。

穂「じょ、冗談、冗談…」

こ「そうだよ!ちゃんとやらないと…。今朝言われたみたいに怒られちゃうよ」

穂「ああ……」

ことりの言葉に穂乃果は今朝の事を思い出す。

海「確か『解散しなさい』って言われたんでしたっけ?」

そう、今朝の朝練で穂乃果が倒れていた理由。

それは、ことりが俺にも言っていたように、ストレッチ中に誰かの視線を感じ、それを穂乃果に伝えたところ、穂乃果はことりの言う視線の感じる場所を覗きに行った。

その先でデコピンされたらしいのだ。

そしてその際に言われたのが、俺も聞いた『解散しろ』だ。

にしてもあの姿……何処かで。

凛「でもそれだけ有名になった、って事だよね!」

凛が言う。

まぁそれもあるかもな…。

真「それより練習……どんどん時間なくなるわよ」

凛「おー?真姫ちゃん、やる気満々!!」

真「べ、別に!私はただとっととやって、早く帰りたいの!」

凛「またまた~、お昼休み見たよ~?1人でこっそり練習してるの」

真姫はどこまで行ってもツンデレか。

真「あ、あれはただ!この前やったステップが格好悪かったから、変えようとしてたのよ!あまりにも酷すぎるから」

あ、真姫のやつ地雷踏んだ……。

海「そうですか……。あのステップ、私が考えたのですが……」

髪を弄くりながら、どよーんとした雰囲気で真姫に問いかけてた。

真「ヴェェッ!?」

ヤベーイ……凄くいじけてるよ。

後輩にあんな事言われるの初めてだから、凄くいじけてるよ。

竜「まぁ、真姫も本心で言った訳じゃないと思うし、だから元気だそうぜ。な?」

海「うぅ……竜司~……っ」

俺のところに来たから俺が慰めるしかなかった。

頭を撫でてあやす。

竜「よしよし……」

あっ、ちょっと笑顔になってる。

しかも服の裾掴んで、俯きながらとかあざと可愛い。

海「~♪」

穂・こ「……」

なんか穂乃果とことりが羨ましそうに見てくる。

後、真姫も。

凛「まあ気にする事ないにゃー!真姫ちゃんは照れ臭いだけだよねー!」

凛もフォローする。

そんな時、ザーザーという音が聞こえる。

見ると、

竜「………雨か」

どしゃ降りの雨だった。

こ「梅雨入りしたって言ってたもんね」

穂「それにしても降りすぎだよ、降水確率60%って言ってたのに~」

竜「……その確率だったら降ってもおかしくねぇよ…」

穂「でも、昨日も一昨日も、降水確率60%だったけど、雨降らなかったよ~?」

竜「だからって、今日も降らないとは限らないだろ…」

こ「あ、すこし雨、弱くなったかも」

ことりの呟きに、穂乃果は屋上のドアを開けながら……

穂「やっぱり確立だよ~、よかったー」

凛「このくらいなら練習できるよ~」

海「ですが、床が濡れていて滑りやすいですし、それに、またいつ降り出すか……」

海未の説得も聞かず、穂乃果と凛は「大丈夫、大丈夫!」と言いながら、外に飛び出して行った。

成る程……凛も何処か穂乃果に似てるな~と思ってたが、これで確信した。

凛もバカだ。

凛「うー、テンション上がるにゃ~!」

おー…凛のやつアクロバットしてるよ…。

そして凛がポーズを決めた瞬間。












ザザーッ!!











また降ってきた。









やっぱりこいつらバカだ。








真「はぁ……私帰る」

そんな真姫の一言から、それは次々と続いていった。

花「わ、私も今日は……」

花陽も同じ事を言って、

こ「そうだね、また明日にしよっか」

ことりもまたそれに賛同する。

さて帰ろうとしたところで、外から誰かが駆けて来る足音がした。

言わずもがな、おバカ2人だ。

穂「えぇー!! 帰っちゃうのー!?」

凛「それじゃ凛達バカみたいじゃん!!」

海・竜「バカなんです(だよ)」

俺と海未がツッコミを入れる。

海「ですが、これからずっと雨が続くとなると、練習場所をなんとかしないといけませんね…」

花「体育館とかダメなんですか?」

海「講堂も体育館も他の部活が使っているので…」

ホント…練習場所をどうするか…。




ーーーーーーーーーー




某ハンバーガー店にて。

俺の隣で穂乃果が不満気な顔でポテトを食べている。

それを海未に注意される。

海「穂乃果…ストレスを食欲にぶつけると、大変な事になりますよ?」

穂「雨…なんで止まないの!?」

海「私に言われても……」

まあ、そうだな…。

ふと横を見ると、席と席を分ける壁の上にピンクのウ〇〇があった。

…………いや、みたいなのか…?

どちらにせよ何だあれ……?

耳を傾けると、『今日は、ちょっと派手すぎたかしら?』という台詞が聞こえた。

………どんな服装なのか見てみたいな、逆に。

しかも、近くに来たガキに『ウ〇〇、ウ〇〇』って言われてるし…。

「うるさい!!」

穂「ん~?」

穂乃果も気になって、隣の席を見る。

すると丁度、ことりと花陽が戻って来た。

こ「穂乃果ちゃんー。さっき予報を見たら、明日も雨だって」

穂「えー!」

穂乃果は、ことりの言葉に落ち込む。

………おい、隣の客、今穂乃果のポテト取ったぞ。

穂「はぁ~」

しかし、穂乃果は気づかずに残念そうにポテトを食べる。

穂「あれ?無くなった……。海未ちゃん食べたでしょ!!」

ポテトが全部無くなってから、気づく穂乃果。

しかも、海未のせいにしてる。

海「自分で食べた分も覚えてないんですか!?…って、穂乃果こそ!」

隣の客、今度は海未のポテトを取る。

いい加減注意した方がいいか?

穂「わ、私は食べてないよ!」

竜「ほら、落ち着け穂乃果。俺のやるから。海未も」

穂「えへへ♪ありがと、竜ちゃん!」

海「すみません、竜司」

俺は自分のポテトを穂乃果と海未にやる。

……隣でやいのやいの騒がれるよりかはマシだからな…。

真「そんな事より練習場所でしょ?教室とか借りれないの?」

真姫が疑問の声をあげる。

すると、ことりが

こ「うん、前に先生に頼んだんだけど、ちゃんとした部活じゃないと、許可できないって」

そう言う。

あれ?

この部活……7人もいるのにダメなの?

竜「なぁ穂乃果。この部活7人もいるからいけるんじゃね?」

そう言うと、

穂「あ!忘れてた!部活申請すればいいんじゃん!」

「忘れてたんかーい!」

……なんか隣から声が聞こえた。

真「それより忘れてたって、どういう事?」

穂「いや~。メンバー集まったら安心しちゃって」

真「はぁ~…竜司以外ダメかも……」

真姫は、そう言いながら頬杖をついた。

穂「よぉし!早速明日に部活申請しよう!そしたら部室が貰えるよ~。はぁ、ホッとしたらお腹空いてきちゃった~、さぁて……?」

穂乃果のハンバーガーを取ろうとした隣の客が、みんなに目撃される。

はい、現行犯。

そして何事もなかったように去ろうとする。

穂乃果は追いかけ、その客を捕まえる。

穂「ちょっと!!」

「か、解散しろって言ったでしょ!?」

花「解散!?」

花陽が驚く。

穂「そんな事より食べたポテト返して!!」

竜・花「そこぉぉ!?」

俺と花陽のツッコミがハモる。

お前にとってはポテトが大事なのかよ…。

穂乃果のポテトを食べた女は「あーー」っと口を開けて見せる。

その服装は……………見たいと思ってたが、前言撤回。

やはり見たくなかった。

穂乃果は女の頬を引っ張って

穂「買って返して!!」

と言う。

まだポテト食べたいのかよ…。

「あんたたち歌もダンスも全然なってない!プロ意識が足りないわ!!」

スクールアイドルにプロ意識って必要なのか…?

穂「へ?」

変な服装の女は、穂乃果の手を払いのけ

「いい!? あんたたちがやってるのはアイドルへの冒涜…恥よ!! とっとと辞める事ね!!」

そう言い残し、その場から逃げ去った。

あの変な格好で……。





今回の話で恐竜が出るかは不明です。


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Game#28





翌日の放課後、例にもよって雨の中、俺と幼馴染ズ3人はまたしても生徒会室に来ていた。

とは言っても、会長と話してるのは穂乃果達。

俺は氷室さんと話している。

何でも氷室さん個人からのお願いらしく、隅の方でコソコソ話している。

竜「氷室さんが氷室大臣の息子?」

「ああ。君はあまり知らないと思うが、現在の日本の総理大臣は俺の父でね?親父も今の恐竜騒ぎに頭を抱えてる。俺個人も今の状況を何とかしたくてね。そこでだ。君にお願いがある。と言っても、今君がやってる事と変わりない。今のまま恐竜達の封印と回収をしてほしい。勿論、出来うる限りのサポートはする」

竜「俺のことは調べてるみたいですね…」

「これでも総理大臣の息子だからな。ある程度は調べられる。で、頼めるか?」

竜「まぁ、その為に帰って来たようなもんですし……その代わり情報の操作はお願いします」

「分かった。じゃあ頼むぞ?」

そう言うと、氷室さんは話を切り上げる。

それと同時に穂乃果達の方も終わったようだ。

竜「どうだった?」

穂「アイドル研究部って言うのがあって、そこにいる人と話をつけてこいって」

海「部員は一人だけのようです」

成る程な。

ただでさえ少ない生徒数にそんなに多くない部活。

それに生徒が少ない分、1つ1つの部活の予算も限られてくるだろう。

それなのに、むやみやたらに部活を増やしてしまうと、少ない部費が余計に少なくなってしまう。

そんなのはあの会長が認めないだろう。

恐らくそれでこの話を終わらせようとしたが、東條さんがこの案を出して穂乃果達をフォローした感じか。

現に会長は東條さんを睨んでるし。

穂「竜ちゃんは氷室先輩と何話してたの?」

竜「他愛のない話だ」

そう言って、生徒会室を出る。

穂「あっ、待ってよ竜ちゃん!」



ーーーーーーーーーー




そして件のアイドル研究部部室に真姫達一年も連れて向かったのだが、そこにいる人物に驚いた。

いつか見たあの時の赤い2つのリボン。

同じ学校という意味を嫌でも分からせるための制服。

ブレザーの中に着ている特徴的なピンクのカーディガン。

高校3年生としては珍しいツインテールの髪型。

そして、周りの同い年の女の子と比べると、はっきりと小さい部類に入るであろうと自信を持って言える身長。

その全てに、見覚えがあった。

竜「あっ…」

「なっ!?」

お互いの第一声は、言葉としてはあまりにも不明瞭なものだった。

竜「あんた……ニコさん?」

最初に発したのは俺だった。

ニ「あんた…!!」

次にニコさんが呻く感じで言う。

真「この人……」

真姫も思い出したようで、目を見開く。

穂「じゃあ、あなたがアイドル研究部の部長!?」

穂乃果の驚きにも似た声が響く。

うん、俺も実際結構驚いてる。

まさかこの人とは………そういえば、昨日のファーストフード店での不審者も、よくよく考えればニコさんと特徴が合致する。

昨日のウ○○女……ニコさんだったんだ。

ニ「んにゃああああああああああああ!!」

するといきなり、ニコさんが猫みたいな声を出しながら拳を勢いよく縦に振り回し、近づけないように俺達を威嚇しながら扉の中へと逃げるように入って行った。

ガチャ!!

って、ありゃ?

何か中からガチャって音がしたんだけど?

穂「ああ!部長さん、開けてください!」

竜「ちょっとニコさん、何で俺の事無視してんの!? 知らない仲じゃないじゃん!」

穂乃果に続いて俺もドアを一緒に叩いて抗議する。

確かに俺を見て何かに気付いたはずなのだ。

だったらニコさんが俺を忘れてる可能性は限りなく低い。

海「竜司、何故部長さんと既に知らない仲になっているのか、少しO☆HA☆NA☆SHI☆しましょうか……?」

ヤベーイ……海未がハイライトの消えた目で見てきてる。

竜「待て、海未。それは後で話そう。今はこっち優先しよう」

穂「竜ちゃん開かないよう!」

ちっ、ちょっとは助けてくれてもいいんじゃないかな?

穂乃果さんよ~。

竜「ちょっと退いてろ」

俺はディノホルダーと、1枚の恐竜カードを出して、穂乃果を退かす。

そしてスラッシュする。

《ブラキケラトプス》

カードを放ると、大体大型バイク程のサイズの角竜、ブラキケラトプスが現れる。

「グオオオオオオオン!!」

ブラキケラトプスは吠えると、そのまま突進。

バコン!!

ドアを破壊した。

竜「ナイス、ブラキケラトプス」

俺はブラキケラトプスを回収する。

その瞬間、

海「何やってるんかですかアナタは!?」

真「バカじゃないの!?」

ニ「あんたなにしてんのよ!?」

穂「竜ちゃん……器物破損だよ?」

雷が落ちてきた。

しかも窓から出ようとしたニコさんにまで。

竜「煩いな~……直せばいいんだろ?直せば…」

俺は不貞腐れながら、『かいふく』のカードをスラッシュ。

《かいふく》

クリオロフォサウルスに直させて、即回収。

真「何でもありね……」

凛「竜司先輩すごいにゃ~」

ニ「なんなの?あんた…」

真姫とニコさんからは呆れられ、凛からは尊敬された。

ともかく、これでニコさんと話し合うことは出来た。




ーーーーーーーーー



現在。

ニコさんは上座に座り、不満そうな顔で頬杖をついていた。

で、俺たちはそれぞれ部室の中をキョロキョロ見回している。

どこもかしこも、スクールアイドルのグッズだらけだ。

凛「A-RISEのポスター!」

真「あっちは福岡のスクールアイドルね」

海「校内にこんなところがあったなんて…」

竜「これは……すげえな……」

素直な感想がすぐに出てきた。

さすがアイドル研究部という名前の事はある。

ニ「……勝手に見ないでくれる?」

ニコさんが呟くように声を発するが、すぐに他の声によって反応する事を遮られる。

花「こ、これは……!」

竜「……花陽?」

わなわなと震えている花陽が心配になり、声をかけようとした時だった。

花「伝説のアイドル伝説DVD全巻BOX!! 持ってる人に初めて会いました……!!」

ニ「そ、そう……?」

花「凄いです!!」

ニ「ま、まあね……!」

ああ、そういや大のアイドル好きですもんね花陽さん……。

さっきまで不機嫌でしかなかったニコさんが狼狽えてるくらいだし。

穂「へぇ~そんなに凄いんだ~」

穂乃果が能天気に言う。

すると花陽が穂乃果に詰めより

花「知らないんですか!?」

と聞く。

穂乃果は、詰め寄られて驚いている。

花陽はパソコンの前に座り、キーボードを叩きながら

花「伝説のアイドル伝説とは、各プロダクションや事務所、学校等が限定生産を条件に歩みより、古今東西の素晴らしいと思われるアイドルを集めたDVDボックスで、その稀少性から伝説の伝説の伝説、略して伝伝伝と呼ばれる、アイドル好きなら誰もが知ってるDVDボックスです!!!!」

そう早口で説明してくる。

穂「は……花陽ちゃん…キャラ変わってない?」

うん、変わりすぎだね。

まぁオタクという人間はみんなあんな感じさ。

冷静なオタクもいるけど。

花「通販でドンと盛り瞬殺だったのに2セットも持ってるなんて……尊・敬……!」

ニ「家に、もう1セットあるけどねえ」

花「ホントですか!?」

うん、この人もこの人だったわ。

合計3セットとかどんだけ?

観賞用、保存用、布教用ってやつか?

末恐ろしいよ。

穂「じゃあ、皆で見ようよ」

穂乃果がそう言うが

ニ「ダメよ!それは保存用」

花「がーん……!」

ニコさんが一蹴し、花陽がテーブルに突っ伏す。

花「で……伝伝伝……グス……」

花陽は本気で落ち込んでいた。

凛「かよちんがいつになく落ち込んでいるーー」

竜「そんなに見たかったのかよ……」

これがオタクの力です。

ふと、ことりの方を見ると上の方に顔を向けている。

ニ「ああ…気づいた?」

こ「あっ……ふっ…!!」

……何か様子がおかしい。

ニ「秋葉のカリスマメイド・ミナリンスキーさんのサインよ」

竜「何?ことり知ってんの?」

こ「あ……いや……」

ニ「まあ、ネットで手にいれた物だから、本人の姿は見たこと無いけどね…」

カリスマメイドね~。

メイドにカリスマも糞も無いでしょ?

こ「と……とにかく、この人凄い…!」

ニ「それで……何しに来たの?」

その言葉で全員席に着く。

ニコさんから見て、右に穂乃果、海未、ことり。

左に、花陽、凛、真姫の順に座っている。

俺はニコさんのお向かい。

穂乃果が切り出す。

穂「アイドル研究部さん」

ニ「ニコよ」

穂「ニコ先輩!実は私達、スクールアイドルをやっておりまして…」

ニ「知ってる、どうせ希に部にしたいなら話つけてこいとか言われたんでしょ?」

穂「おお!話が早い!」

ニ「ま、いずれこうなるんじゃないかって思ってたからね」

穂「なら……」

ニ「お断りよ」

穂「えっ?」

ニ「お断りって、言ってるの」

それを言うニコさんの目はとても冷たかった。

あの生徒会長にも似たような、そんな冷たい目をしていた。

穂「いや…あの……」

海「私たちはμ’sとして活動できる場所が必要なだけなんです…。 なので、ここを廃部にしてほしい訳では無く……」

ニ「お断りって言ってるの!!」

にべもなく、断り続けるニコさん。

ニ「言ったでしょ。あんたたちはアイドルを汚してるの!」

穂「でも、ずっと練習してきたから、歌もダンスも………」

ニ「そういう事じゃない」

ニコさんの言葉に全員が首を傾げる。

すると、ニコさんは









ニ「あんた達、ちゃんとキャラ作りしてるの?」








そう聞いてきた。

…………は?

キャラ…?

ニ「そう!お客さんがアイドルに求めるものは楽しい夢のような時間でしょ!だったら、それに相応しいキャラっていうものがあるの!! いい?例えば……」

言うと、ニコさんは俺達に背を向けた。

何かをするつもりなのだろう。

いや、もう嫌な予感しかしないんだけどね。

すると、さっきまでニコさんの纏ってた雰囲気がギスギスしたものから一気にフワフワした感じになったような気がした。

それと同時に、












ニ「にっこにっこにー♪あなたのハートににこにこに~♪笑顔届ける矢澤にこにこ~♪にこに~って、覚えてラブにこっ♪♪」











……。

ニ「……どお?」

穂「うっ……」

海「これは……」

こ「キャラというか……」

真「私無理」

凛「ちょっと寒くないかにゃー?」

花「ふむふむ……!」

……………………。

ニ「……そこのアンタ、今寒いって言ったでしょ……」

凛「い、いや、すっごい可愛かったです!最っ高です!」

こ「あ、でもこういうのいいかもぉ!」

海「そ、そうですね!お客様を楽しませる努力は大事です!」

……………これは。

花「素晴らしい!さすがニコ先輩!」

穂「よぉし!そのくらい私だって!」

ニ「出てって」

穂「え?」

ニ「いいから出てって!」

…………………………最っ高だ。

竜「最っ高だ…」

「「「「「「「え……?」」」」」」」

おっと、思わず声にも出してしまっていた。

というか、見事にハモったな、お前ら。

竜「だから、ニコさんの今の紹介、最高なんだよ。というかμ'sにほしい…」

ニ「なっ……!?」

竜「よくよく考えればニコさんみたいなハッチャケたやついないし。後々ニコさんみたいな人は必要不可欠になるかもしれないし…。というわけで…」

俺は席から立ち、ニコさんに近づくと、その両肩に手を乗せて、優しい顔で言う。

竜「とりあえず、ニコさんがそうなった経緯の全てを聞かしてくれ」

ニ「はぁー!? なんでよ!?」

竜「いいからいいから…。全部だよ?」

ニ「っ……はぁー。分かったわよ」

渋々だが納得してくれたニコさんは話してくれる。








ニ「私が産まれたのは、神保町のとある産婦人科だったわ。3200グラムの元気な赤ん坊で……「誰が生い立ちから話せつったよ!!」…っ!?」

ニコさんの回想を思いっきりぶったぎる。

矢澤ニコの第1章……完!

ニ「何すんのよ!? 全部話せって言ったのそっちでしょ!?」

竜「話の流れから分かるだろ!?」

この人バカだろ。

ニ「あーもういい!全員出てって!!」

そう言ったニコさんにより、全員追い出された。

穂「あ~ニコ先輩~」

穂乃果がすがるように言うが、返事はこない。

そこへ東條さんがきた。

希「やっぱり追い出されたみたいやね」

真「追い出されたのは別の理由だけどね…」

希「はっ?」

穂「竜ちゃんがニコ先輩の回想シーンをぶったぎりました」

希「………ごめん、意味分からんわ…」

東條さんはひきつった顔を見せた。




ーーーーーーーー




穂「スクールアイドル?」

海「ニコ先輩が?」

希「一年生の時やったかな…。同じ学年の子と結成してたんよ。今は、もうやってないんやけどね…」

俺たちは、東條さんの話を聞いていた。

ニコさんの過去を。

こ「辞めちゃったんですか?」

希「ニコっち意外の子がね…。アイドルとしての目標が高すぎたんやろうね…。ついていけないって、一人辞め…二人辞めて……。だから、あなたたちが羨ましかったんとちゃうんかな?歌にダメ出ししたり、ダンスにケチつけたりできるって事は、それだけ興味があって、見てるって事やろ?」

東條さんはそう言って、戻っていった。

俺と穂乃果、海未とことりの4人は傘をさして帰る途中、話し合っていた。

こ「なかなか難しそうだね、ニコ先輩」

海「先輩の理想は高いですから……。私たちのパフォーマンスじゃ、納得してくれそうにありませんし…。説得に耳を貸してくれそうにありませんし…」

竜「まぁ俺から言わせりゃ、突っ走ったニコさんもニコさんだが、ついていけないって理由で止めたその人達も悪いよ」

アイドルなら理想は高い方がいいのに、それを否定するのはバカだと思う。

その結果、あの人は本当の意味での笑うことはしなくなったと思う。

そんな中、穂乃果が言う。

穂「そうかな~?ニコ先輩はアイドルが好きなんでしょ?」

竜「そうだな…」

穂「それでアイドルに憧れてて……。私たちにもちょっと興味があるんだよね?」

こ「うん……」

穂「それって、ほんのちょっと何かあれば、上手く行きそうなんだけど…」

海「具体性に乏しいですね…」

穂「それはそうだけど…………ん?」

竜「どうした?」

穂「竜ちゃん、あれ…」

そこには、階段のところに見慣れたツインテールが急いで、その場を去る光景が…。

こ「今の…多分」

海「もしかすると…」

穂「……………」

こ「声かけると、また逃げちゃいそうだし…」

穂「うーん……あっ。ねえ、竜ちゃん」

竜「何だ?」

穂乃果が何やら意味深な笑みを浮かべながら問うてきた。

……この顔、何かを考えついたな。

こういう時の穂乃果の勘は冴えわたる。

だから期待して答えを待つ。

穂「今は何を言ってもニコ先輩は逃げちゃう。私達のパフォーマンスも納得してもらえてない。耳も貸してもらえない。だったら……」

そこで穂乃果は一泊を置いてから、ニコさんにとってベストマッチな答えを言う。

穂「強硬手段しかないよね」

穂乃果に続いて、俺もニッと怪しげな笑みを浮かべながら穂乃果の案に答える。





竜「………パーフェクト」






さぁ……実験を始めようか?






新たに高評価10をくれたマサルさん、ありがとうございます!


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Game#29



家の金魚達が丸々太ってきて可愛いです。


◎side


まだ雨は降り続ける翌日だった。

放課後、矢澤ニコは1人で帰り支度をしていた。

つい最近μ'sとやらのスクールアイドルに同じ部活として合併してほしいと案を持ちかけられたが、当然断った。

あんなのをスクールアイドルとして認められるはずがない。

アイドルの何たるかをすら分かっていないような輩共に、アイドル研究部を合併してたまるものかと、ニコの頭の中はそれでいっぱいだった。

それ以外は、何も変わらなかった。

一人で支度をして、一人で鍵を貰いに行き、一人で部活を始める。

全部一人だった。

でもそれにももう慣れた。

…………慣れた筈なのに、昨日の騒がしさを懐かしく感じ、また、あの少年から必要不可欠になると言われたことが未だに心に残っていた。

例え嘘でも必要不可欠と言われたことが、ニコにとって嬉しかったのだ。

でももう遅い。

そのチャンスはニコ自身の手で潰してしまった。

あれでもし、彼女達の心が折れてしまっていたら、所詮はそんなものだったんだろうと嘲笑う事もできる。

でも、ニコは見てきた。

ずっと練習していた彼女達の事を。

だから分かる。

辛いからやっているんじゃない。

学校を守るために仕方ないからやってるんじゃない。

全員が全員、心の底からやりたいと思っているからやっている。

それが伝わってくる。

そんな笑顔が、練習している彼女達にはあった。

それは過去のニコが求めた理想。

けどその結末がこれだ。

孤独。

今のニコの現状。

ニ(本当、笑えるわね……)

けどなってしまったものは仕方ない。

そんな終わった事を、今もくよくよ考える訳にはいかない。

とりあえず部室で資料でも読んでいれば、いつもの調子に戻るだろう。

そう考え、ドアノブに手を掛けて部室に入った時の事だった。











まだ何も触れていないのに、部室の電気が点いた。

それと同時に、いくつかの声が重なって聞こえた。






「「「「「「「お疲れ様でーす!!(夜は焼肉っしょーー!!!?)」」」」」」







前言撤回。

なんか一人違うのがいた。

真「あんたはもう黙ってなさい!!」

竜「ぐばっ!?」

その件の人物は真姫の膝蹴りで沈黙した。

とにかく、そこには穂乃果達μ'sのメンバーがいた。

急な展開についていけないニコ。

穂「お茶です。部長!」

ニ「部長!?」

こ「今年の予算表になります、部長」

ニ「なっ!?」

凛「部長ー、ここに置いてあったグッズ、邪魔だったんで棚に移動しておきましたー」

ニ「あ、こら!勝手に……」

真「さ、参考にちょっと貸して。部長のおすすめの曲」

花「な、なら迷わずこれを!!」

そう言って、伝伝伝のボックスを見せる花陽。

ニ「あー!? だからそれは……!!」

目を剥いて、身を乗り出すニコ。

そして穂乃果は、そんなニコの肩に手を乗せて言う。

穂「ところで次の曲の相談をしたいのですが、部長!」

海「やはり次は、さらにアイドルを意識した方がいいかと思いまして…」

こ「それと~、振り付けも何かいいのがあったら…」

穂「歌のパート分けもよろしくお願いします!!」

ニコはしばらく口を開け、呆気にとられていたが、とりあえず今の状況を理解したのか

ニ「こんなことで押し切れると思ってるの?」

きっと、彼女達は強引に押し切る事で合併を成功させようとしている。

ニコはそう思っていた。

昨日追い出して、もうダメかもしれないならいっその事強引にいってやろう。

そう思ってこんな事をしているに違いない。

こんな強引な手を使ってくる彼女達なんかに、このアイドル研究部を渡してたまるか。

そうしてしまったら、今度はニコがこの部室から追い出されるかもしれない。

そんな悪く、ネガティブな考えばかりが頭の中を巡る。

そんな矢澤ニコの思いは、次に発せられた穂乃果の発言で杞憂として終わる事になる。

穂「押し切る?私はただ相談しているだけです。音ノ木坂アイドル研究部所属の、μ'sの7人で歌う、次の曲を!」

一瞬で頭の中の思考が真っ白になった。

あまりにも予想外で、虚を突かれたような錯覚に陥る。

今、この少女は何と言った?

7人?

今いるμ'sは6 人のはずなのに。

ニ「7、人……?」

どうしても確認せずにはいられなかった。

聞き間違いなのではないのかと思って。

見渡せば、μ'sのメンバー全員がニコの方を見ていた。

まるで新しく入った仲間を快く迎え入れるような笑顔で。

ここで復活した竜司が言う。

竜「そう。もうμ'sは6人じゃなくて7人だ。アンタを入れてな?」

今度はちゃんと聞いた。

2度も聞き間違えるはずもなかった。

そして改めて理解する。

その意味を。

だが先に、疑問がやってきた。

ニ「な、んで……」

上手く言葉が出てこない。

あれだけの事を昨日言ったのに。

竜「言ったろ?あんたが必要不可欠だって。これは正直な事だし、何より穂乃果達もあんたを必要としてる。だからニコさん…」

そこで区切って、竜司はニコを迎える一言を言う。









竜「Be the One。1つになりましょう」








ニ「っ…!」

ニコは泣きそうになった。

油断すれば一滴でも零れそうな程に。

それでもそれをグッと堪え、穂乃果達を見る。

穂「ニコ先輩!」

穂乃果が誘うように声を漏らす。

だからこそ、その前にどうしても言っておかなければならない事がある。

ニ「……………厳しいわよ」

穂「わかってます!アイドルへの道が厳しいことぐらい!」

ニ「わかってない!あんたも甘々、あんたも、あんたも、あんた達も!」

そう言って、穂乃果たちを指差す。

ニ「いい?アイドルっていうのは笑顔を見せる仕事じゃない。笑顔にさせる仕事なの!それをよーく自覚しなさい!」

それを聞いて、竜司や穂乃果達は微笑んだ。

さっきまでとは違う、矢澤ニコの表情が今まで見た事もない活気に満ち溢れていた。

竜司がニコを見ていると、隣の穂乃果が小さく声をかけてきた。

穂「やっぱりこの手段でいって正解だったね、竜ちゃん」

竜「……でしょ?実験成功♪」

強硬手段といっても、何も悪い事だけではない。

誰かのためにやる強硬手段もあるというだけ。

竜「……さあ、ニコさんも入った事だ。みんな外を見てみろ。……練習するぞ!」

黒髪ツインテール少女の心が晴れたと同じように、いつの間にか、外は明るくなっていた。





ーーーーーーーーーーー




生徒会室。

アイドル部が1つになった紙を見て、渋い顔をする絵里。

そんな絵里に希は

希「エリチ…………………見てみ」

天気を見ながら言う。

希「雨……止んでる♪」

そう言った希は、絵里に微笑む。

そして氷室は、そんな2人にバレない所でナイトディノホルダーを弄っていた。



ーーーーーーー




ニコを加えたμ'sは現在、屋上にいる。

穂乃果たちはとある特訓中。

竜司は柵に寄りかかり、景色の方を見ていた。

側にディノホルダーを入れた電子レンジのようなものを置いて。

ニコは穂乃果たちに指を差す。

ニ「いい!? やると決めた以上、ちゃんと魂込めてアイドルになりきって貰うわよ!分かった!?」

「「「「「「はい!」」」」」」

ニ「声が小さい!!」

「「「「「「はい!!!!」」」」」」

活気が戻った今の彼女は、どのスクールアイドルよりも目標が高い少女と言えるだろう。

そんな彼女は今、とても活き活きとしていた。

ニ「はいやって!」

「「「「「「にっこにっこにー!」」」」」」

ニ「全然ダメもう一回!」

「「「「「「にっこにっこにー!!」」」」」」

何故か彼女の得意芸を、ニコはメンバーに教えていた。

ニ「つり目のあんた!気合入れて!!」

真「真姫よ!!」

ニ「はい、ラスト一回!」

「「「「「「にっこにっこにー!!」」」」」」

ニ「っ…」

いつか見た懐かしい騒がしさ。

それにニコは泣きそうになり、後ろを向いて、涙を拭う。

ニ「全然ダメ!あと30回!」

凛「ええ~!」

穂「何言ってんの!まだまだこれからだよ!ニコ先輩、お願いします!」

主に凛が駄々をこねる中、穂乃果が喝を入れるように大きな声を出す。

穂「よおし、頭からいっくよー!!」

そんなメンバーにニコは微笑み、思い出したように竜司の元に近づく。

今回のお礼を言うためだ。

ニ「……あー…////」

とは言え、いざ言うとなると恥ずかしい。

しかしニコはその気持ちを抑え込み、竜司に言う。

ニ「あのさ……ありがとうね。あんたのお陰でまたこうやってアイドル活動が出来てる。感謝……してるわ////」

竜「……」

しかし当の竜司は何の反応もしない。

ニ「?」

不審に思ったニコが覗き込むと、

竜「……ぐー…」

竜司は立ったまま寝ていた。

ニ「って寝てんのかい!!」

ニコは思いっきりツッコム。

瞬間、




チン!!



という大きな音が鳴り、その音にメンバー全員「うひゃあああ!?」と驚き、ニコは竜司に抱きついてしまう。

竜「出来た!?」

その音に竜司は喜んで目覚め、ニコを自分から離して、電子レンジのようなものに近づく。

扉を開けると、ディノホルダーの先端にブレードのようなものが付いていた。

竜司はそれを手に取り、思いっきり喜ぶ。

竜「流石は俺!どうよお前ら!凄いでしょ?最高でしょ?天才でしょ!?」

穂「竜ちゃん……」

こ「あははは……」

海「またですか?」

真「相変わらずね……」

ニ「って言うかニコの扱い雑じゃないの!?」

花「え~と……」

凛「竜司先輩空気読むにゃ~」

全員、微妙な反応だった。




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Game#30


竜「前回のジュラシック・ラブライブ!アイドル研究部の部長、ニコさんを見事に仲間に引き入れ、見事に部活として認めて貰ったμ's」

希「次に入るのは誰だ!?」

竜「なんであんたが来てんだよ。というか少し間が入るからな?それとかなりカットします。ではどうぞ!」


竜司side


ニ「リーダーに誰が相応しいか、大体私が部長についた時点で一度考え直すべきだったのよ」

放課後の部室。

ようやく手に入れたアイドル研究部という部室で、最初に口を開いたのはニコさんだった。

竜「リーダーね~…」

こ「私は、穂乃果ちゃんがいいと思うけど……」

穂「ダメよ。今回の取材ではっきりしたでしょ。この子はまるでリーダーに向いてないの」

さて、一体何の話か分かってない読者のみんなにも分かるよう、このてぇ~んさっい科学者でてぇ~んさっい恐竜学者の俺が説明しよう!

生徒会で部活動を紹介するビデオを作る事になり、μ'sへ取材が来たのだ。

しかも取材しに来たのが、まさかの副会長である東條さんだった。

これはμ'sを覚えてもらって認知度を広げるためでもあり、しかも取材に応えるとカメラを貸してくれるらしい。

これは願ってもない事だった。

これならPVを撮れるし、活動の幅がぐんと広がる。

間抜けな話だが、μ'sの動画はまだ3人の頃のしかなかった。

それにあの動画を誰が撮ってくれたのかすら分かっていない現状。

7人もいるんだから、そろそろ新しい曲をやった方がいいと思っていた所に、好都合すぎる申し出だった。

で、その過程で単純バカ(穂乃果)の授業中に寝てる、ありの~ままの~♪すぎる姿が撮られて~たり~♪してた。

あと海未が部活中に隙を見て鏡にアイドルっぽい笑顔をしてたとこもあった。

ことりも何やら怪しい動きをしてたし、ニコさんがキャラを作ったり、髪のリボンを解いてまたまたキャラを作って話してたりもした。

因みにニコさんのストレートは好みです。

そのあとは中庭で取材があった。

花陽が真面目に答えようとした時に穂乃果が変顔したり、ことりもひょっとこのお面被ってたり、意外にも真姫がμ'sの事を思っていてくれてたり、でもやっぱりこれだけを見てると、遊んでいるようにしか見えてなかったり。

だからμ'sの、スクールアイドルの活動の本番である練習を見てもらう事になって、やはり穂乃果達の本領発揮はこの練習になる訳で、練習ではみんな大変ながらも楽しく真剣に頑張っていた。

そこから何故かリーダーがどうのこうのって話になり、とりあえず穂乃果の家に数人で集まった。

で、更に進むと何故穂乃果がリーダーなのか?という結論に至り、今の現状という訳だ。

真「それは、そうね…」

ことりは穂乃果を推すが、ニコさんと真姫が却下する。

ニ「この際、はっきり決めましょ、PVの撮影だってあるし」

海「PV?」

海未が何の事なのかという意味を込めて、ニコさんに視線を向けた。

すると、ニコさんはいかにも深い意味を匂わすような言い方で返した。

ニ「リーダーが変われば、必然的にセンターも変わるでしょ?次のPVは新リーダーがセンター…。竜司!」

竜「はいはい…」

ニコさんの指示に、俺は渋々立ち上がり、ホワイトボードに手をかける。

そこには俺が事前に書いた『リーダーとは?』について書かれたリーダー論が。

そして、ニコさんは語り出した。

ニ「リーダーとは!まず第一に、誰よりも熱い情熱を持って、みんなを引っ張っていけること!次に!精神的支柱になるだけの懐の大きさをもった人間であること!そしてなにより!メンバーに、尊敬される存在であること!この全ての条件を兼ね備えたメンバーとなると!」

なんか自分しかいないみたいな感じで言ったぞ。

しかし凛が

凛「海未先輩かにゃ?」

竜「ブハッ!!」

ニ「なんでやねーん!!」

海未を推し、ニコさんがそれにツッコミを入れる。

そのコントみたいなやり取りに思わず吹いてしまった。

海「わ、私ですか!?」

穂「そうだよ海未ちゃん。向いてるかも、リーダー!」

驚いている海未に対して、凛の言った事に乗り気になっている穂乃果。

おい、それでいいのか発起人よ。

海「それでいいのですか?」

穂「えっ、なんで?」

海「リーダーの座を奪われようとしているのですよ?」

穂「ふぇ?それが?」

海「…何も感じないのですか?」

穂「だって、みんなでμ'sをやっていく事には一緒でしょ?」

あっけらかんと言う穂乃果。

花「でも!センターじゃなくなるかもですよ!?」

花陽はそう言うが、穂乃果は

穂「おー、そうか。ま、いっか!」

即答した。

「「「「「「えええぇぇぇ!!」」」」」」

海「そんな事でいいのですか!?」

穂「じゃあリーダーは海未ちゃんという事にしてー」

海「ま、待ってください……。無理ですぅ……恥ずかしい……」

あー、まあ、海未にはちょっと厳しいかなあ?

練習でよく指導してはいるが、いざ自分がリーダーという立場になってそういう風景を想像でもしたのだろう。

顔を赤くして項垂れた。

真「面倒な人」

花「じゃあ、ことり先輩?」

こ「え?私?」

竜「ことりはどっちかって言うと、副リーダーだろ?」

ことりは熱血と言うより、おっとりとしている娘だ。

ことりの脳トロボイスで『みんな~♪気合い入れて行こ~♪』なんて言われたら気合いなんて入らない。

むしろ力が抜けていく。

凛「じゃあ、竜司先輩?」

凛が俺にふってくる。

竜「あのな~、マネージャーがリーダーって、おかしいだろ?」

歌いもしない、踊らない。

そんなヤツがリーダーって有り得ない。

どっかのドルオタが「心火を燃やしてぶっ潰す!」とか言いながら苦情してくるレベルだ。

花「でも…一年生がするって訳にもいかないし……」

ニ「仕方ないわね~」

こ「やっぱり、穂乃果ちゃんがいいんじゃない?」

ニ「仕方ないわね~」

真「私は海未先輩を説得した方が早いと思うけど?」

ニ「仕方ないわね~」

花「と、投票がいいんじゃないかな……」

ニ「し~か~た~な~い~わ~ね~!」

竜「ニコさん、うっさい…」

ニ「なっ…!?」

遂に拡声器使い始めたニコさんを叱る。

やっぱり彼女は必要だったよ。

バラドルとして!

凛「で、どうするにゃ?」

穂「どうしよう?」

この状況でもニコさんをスルーですか、このバカ2人は。

竜「仕方ない。ここはこの、てぇ~んさっい科学者で、てぇ~んさっい恐竜学者の俺にいい案がある」

穂「案?何か良い手があるの竜ちゃん?」

最早天才のトーンにツッコミもしない穂乃果が訊いてくる。

竜「……そんなに誰がふさわしいのかを決めたいのなら、無理矢理分からせる方法をとればいい。アイドルらしくな。つまり………」

俺はここで区切って、最高の案を言い放つ。












竜「歌と躍りで着けよう」












ーーーーーーーーー





ニ「という訳で、竜司の言う通り歌とダンスで決着を付けようじゃない!」

マイクを持って高々と声を張り上げるのはニコさん。

俺達は今カラオケルームに来ている。

至極単純でシンプルに分かりやすい方法だ。

これなら誰も文句も言わないだろうし、実力でなら納得するしかない。

こ「決着…?」

凛「みんなで得点を競うってことかにゃ?」

ことりと凛の疑問に、ニコさんは言う。

ニ「そのとおり!一番、歌とダンスがうまい者がセンター。どう?これなら文句ないでしょ?」

ニコさんはマイクを手にし、歌う気満々である。

一方、海未と真姫は

海「でも私、カラオケは……」

真「私は特に歌う気はしないわ」

乗り気ではない。

そんな二人にニコさんは

ニ「なら、歌わなくて結構。リーダーの権利が消失するだけだから」

そう言った後、ニコさんは後ろに向いて、しゃがみこみ、

ニ「……クックックッ…こんなこともあろうかと、高得点が出やすい曲は既にピックアップ済み。これでリーダーの座は確実に……」

聞こえてるんだが……。

ニ「さあ、始めるわよ」

しかし他のヤツらは、「カラオケに来るのは久しぶりだよね~」とか、「なに歌おうかな~」とか話していた。

ニ「あんたら緊張感無さ過ぎ!!」

ニコさんの声がマイクを通して室内に響き渡った。





ーーーーーーーー




そして、全員歌い終わる。

俺は得点を記録していて、その結果を言う。

因みに歌った曲は、こうだ。

穂乃果は「キミにささげるあいのマホウ」。

穂「君を包む~小~さな~桜の夢~♪」

海未は「私達は未来の花」。

海「そし~て~♪わ~た~し~た~ち~は~巡り~会う~♪」

ことりは「アップルミント」。

こ「かじぃってみ~たら~♪ほんのり苦いけど~♪」

真姫は「Daring!!」。

真「Don't worry Don't worry♪」

凛は「KISS!KISS!KISS!」。

凛「パッ~とひら~く、青い傘~♪」

花陽は「just be friend」。

花「声をか~ら~して叫んだ♪」

ニコさんは「夏色Frigting」だ。

ニ「夏色Frigting♪Frigting♪その先へ~♪」

閑話休題。

竜「全員90点以上だ」

穂「おおー、凄い!!」

こ「みんな毎日レッスンしてるものね♪」

花「ま、真姫ちゃんが、ちゃんと苦手なところアドバイスしてくれるし…」

凛「気づいてなかったけど、みんな上手くなってるんだね!」

みんなが楽しそうにしてる中、ニコさんは

ニ「こいつら……バケモノか…!?」

口をひきつらせ、戦慄していた。

そう言うあんたも90点台だよ?

竜「じゃあ、次行くか?」




ーーーーーーーーーー




次にやってきたのはゲーセン。

いわゆるダンスゲームでダンスの得点を競うというものだ。

ニ「次はダンス対決よ!!」

ニコさんはそう言うが、穂乃果達は普通にクレーンゲームで遊んでいた。

ニ「あんたたち、聞きなさいよ!!」

凛「凛、運動は得意だけどダンスは苦手だからなぁ~…」

こ「これ、どうやるんだろう?」

各々がどこか不安を感じながらおそるおそるプレイしていく。

因みに全員曲は「Be the One」。

ニ「プレイ経験ゼロの素人が挑んで高得点なんて取れるわけがないわ。くっくっく…。カラオケの時は焦ったけど、これは貰ったわね…」

また黒にこ先輩が出てきたよ…。

凛「なんか出来ちゃった~」

ニ「なっ!?」

凛が何気なくやると、最高ランクのAAAの1つ下のAAを叩き出していた。

いや、これはマジですげぇ…。

凛「竜司先輩、凛できたよ~!!」

竜「ああ、よく頑張ったな?」

そう言って、寄ってきた凛の頭を撫でてやる。

凛「にゃふふ~♪」

結局、ダンスゲームも全員同じような点数になり無効。




ーーーーーーーーー




そしてニコさんが出した最後の案が、チラシ配りだった。

アイドルに必要なのは何も絶対的な歌唱力やダンスじゃない。

そんなに歌が上手くなくても、ダンスが上手くなくても、それなのに何故か人を惹き付ける者。

つまりはオーラ。

それを測るためのチラシ配りだった。

これもニコさんは自信満々だったが、結果は意外にもことりが1番に配り終えた。

聞けば気付いたら無くなってたらしい。

ニ「おかしい……時代が変わったの……!?」

いや、そんなに変わってないし聞こえてるってば。

自分の声の制御できないのかアンタは。

そんなこんなで、一旦部室に戻ることに。



ーーーーーーーーーー



さて、戻ったはいいが、俺は何故か理事長室に呼ばれた。

どうにも俺目当ての客らしい。

とりあえず行ってみて、扉をノックする。

コンコン……。

「どうぞ~」

雛さんの声がした為、扉を開けると、俺は驚愕した。

なんせ雛さんの前に立っていた金髪の女性。

この人は見覚えのある女性だったから。

「来てくれてありがとう、竜司君。早速だけど、この方とお話してあげてほしいの」

雛さんがそう言う。

俺はその女性を少し睨む。

竜「……クレア…」

「久しぶり、竜司♪元気にしてた?」






クレア・ディアリング







俺と同じ高校生にして、アメリカ本部のジュラシック・パークの恐竜を誕生させる部『クリエーション・ラボ』の科学者の一人で、『インドミナス計画』の考案者である女性。








そいつがここにやって来た。






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Game#31

今回は短いです。


◎side


竜司は理事長室のソファーに座り、隣に南雛を座らせ、その前にクレアを座らせていた。

そして一番に切り出す。

竜「何の用だ?まさか連れ戻しに来たのか?」

竜司はアメリカ本部のジュラシック・パークでは優秀な科学者で、優秀な恐竜ブリーダーだった。

本人がいつも言ってるように、そこではまさに天才だった。

竜司はそれを懸念したが、クレアは首を振る。

「まさか…。あなたが何の為にここに居るかは知ってるから。そんなことはしないわ。ただ忠告に来たの」

竜「忠告?」

「そう、面と向かって言わないといけない程のね……」

クレアの言葉に竜司は眉ねを寄せる。

そしてクレアは切り出す。

「インドミナス・レックスが何者かによって誕生させられたみたいなの…」

竜「なっ…!?」

竜司に激震が走る。

インドミナス・レックス

別名、キメラ恐竜。

その名の通り、ティラノサウルスをベースに、マジュンガサウルス、ギガノトサウルス、カルノタウルス、アベリサウルス、テリジノサウルス、ラプトルの遺伝子を混ぜた怪物。

他にも、現世生物としてコウイカやアマガエルの遺伝子が組み込まれてる存在。

竜司は初めてこれを聞いた時、「生命へのレイプ」と感じた。

何よりジュラシック・パークで恐竜を誕生させる際、実際にいた恐竜だけを復活させるのがルールなのに、インドミナスの存在はそのルールを壊すものだった。

だからこそ実力行使で排除したのだ。

インドミナス・レックスに関するデータも、それを実行しようとした連中も。

尚、クレアも考案者として参加していたが、環の脅しで離脱。

共に他の実行しようとした科学者を追い出した。

そして彼女自身もインドミナスの事は考えないようにしていた。

なのに、インドミナス・レックスが誕生したことに、竜司は驚きを隠せなかった。

クレアは続ける。

「言っとくけど、私は関与してないわよ?してたら態々あなたにこんな事は報告しないし、それに何より……インドミナス・レックスは恐竜カードにされてて、誰かに操られてる。恐らく研究データが誰かに盗まれたのかも。現にロシアと中国のジュラシック施設が襲われて、一時封鎖されてるわ」

「そんな……!?」

これには雛も驚きを隠せない。

この事はロシアとオーストラリアではニュースになっていたが、日本では報道されてなかった。

だからこそ雛は驚いたのだ。

「ホスキンスがこの事についてあなたに会いたいって言ってたけど、あなた彼の事嫌いでしょ?」

竜「当たり前だ。あいつは恐竜を軍事兵器に使うことにしか脳の無いやつだ。誰が好き好んであんなやつと…」

竜司は苛ついたように吐き捨てる。

「でしょうね♪私からはこれだけ。それじゃあね?」

クレアは小さく笑うと席を立つ。

竜「もう行くのか?」

「ええ…」

竜「そうか……」

それだけ交わすと、クレアはそのまま理事長室を出ていった。

「「……………」」

彼女がいなくなった後、しばらく沈黙が流れていたが、先に雛が口を開く。

「………竜司君……その……インドミナス・レックスって言うのは?」

雛は気づいていた。

インドミナス・レックスの名前を聞いた竜司が忌々しい顔をしたのを。

雛は竜司が何よりも恐竜を愛し、恐竜を家族のように思っているのを知っている。

その竜司が、仮にも恐竜であるインドミナスに憎悪を抱いたのだ。

知っている者からすれば違和感だらけだ。

竜司は口を開く。

竜「インドミナス・レックスはキメラ恐竜です。良く言えばハイブリッド種。悪く言えば怪物。名前の意味は『獰猛な制御不能の王』。人間のエゴから生まれそうになった存在です。その成長スピードは異常で、成熟したらティラノサウルスをも越え、狡猾さも有り、人を騙す事もできる。それがインドミナスのデータです。だからこそ俺は、インドミナスに関するデータも、それを実行しようとした連中も消しました」

「消した……?」

竜司から物騒な言葉が聞こえたのを、雛は聞き逃さなかった。

だけど、竜司は席を立ち、理事長室を出ようとする。

竜「消したと言っても、首にしただけです。話は以上です」

勝手に出ていこうとする竜司を、雛は止められなかった。


◎sideoff






竜司side


俺は理事長室を出ると、目を瞑る。

まさかインドミナス・レックスが誕生していたとはな……。

しかも恐竜カードとしても進化している…。

操ってるのはスターク辺りだろう。

属性が謎ではない事を祈るしか無いな。

そこまで考えて、目を開けると、側にことりがいた。

竜「ことり?」

こいついつの間に。

見るとことりは、不安そうな顔をしていた。

こ「竜くん……」

まさか……。

竜「聞いてたのか?」

こ「うん……」

竜「そうか…」

やっぱりな…。

竜「何処から聞いてた?」

こ「竜くんがお母さんにインドミナス・レックスって言う恐竜が、どんな恐竜かを話してた所から……」

厄介にもそこからか……。

俺はことりの頭を撫でてやる。

竜「心配すんな。俺がなんとかする」

こ「でも……!」

竜「それよりなんか用があるんだろ?」

俺は無理矢理話題転換する。

ことりもそれを汲んだのか、しばらく沈黙していたが、やがて話してくれる。

こ「……リーダーの話なんだけど……穂乃果ちゃんの意見でみんながセンターって事になったの」

竜「そうか……穂乃果らしいな」

まぁ、本当はみんな穂乃果がリーダーって事を認めてるんだろうが……。

竜「それで穂乃果達は?」

こ「みんな屋上だよ?」

竜「分かった。じゃあ行くか」

こ「うん……」

そう言って、俺はまだ不安そうな顔をしたことりを連れて、屋上に向かった。

因みにこの日から数日に曲とPVは完成した。

曲は、「これからのSomeday」。


竜司sideoff





◎side


その夜。

とある大通りでグチュグチュと、何かを咀嚼する音が響いていた。

咀嚼していたのは、大型の肉食恐竜だった。

長い前肢、灰色に近い石灰色の肌、頭にはたくさんの突起や羽毛らしきものがあった。

件のハイブリッド恐竜、インドミナス・レックスだった。

そしてインドミナス・レックスが食べていたのは、人間の男性だった。

しかも辺りには他にも食い散らかされた人間がたくさん落ちていた。

男女問わず。

インドミナスは咀嚼していた男性を放ると、高らかに吼えた。

「ギニャアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」




ーーーーーーーーーー




これからのSomedayのPVから数日後。

夏が近づいてきている事により、夏服に変わった音ノ木坂学院のアイドル研究部の部室内に、竜司達はいた。

そこへ、勢いよくドアがバァンッ!と開けられた。

竜「……花陽?」

竜司がドアを開けた本人に問いかけ、他の皆も何事かと思うかのように花陽に視線を向ける。

いつも大人しめの彼女の様子が明らかにおかしいのだ。

日常ではない異常感が感じられた。

そして花陽から放たれた言葉は、










花「……た、助けて…」








穂「ど、どうしたの?」

竜「は?」

花「じゃなくて!大変です!」







また、波乱がやってくる。





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Game#32







竜司side






花「助けて……!じゃなくて……大変ですう!」





そう言って息切れしながらも確かな言葉を放つ花陽。

助けてじゃなかったのね。

何だ良かった良かった……じゃねえよ紛らわしいわ。

さて、ここにいる全員は当然気になってるんだろうが、普通に考えてあの花陽がこんなにも慌てて、且つ珍しく声が大きいのだ。

只事ではない事だけは確かだと言える。

竜「花陽、大変な事って何なんだ?」

俺が聞くと花陽は俯いてから、少しずつ息を整えて、やっとの思いで言い放った。




花「ラブライブです!ラブライブが開催される事になりました!!」






それに対し、穂乃果は驚くが

穂「ッ!!!? ラブライブ!?……って何?」

やはり分からないようだった。

竜「お前……何で意味深な驚き方したんだよ…?」

俺は呆れながらツッコミを入れる。

そんな穂乃果のために花陽はパソコンの前で説明する。

花「スクールアイドルの甲子園。それがラブライブです!エントリーしたグループの中から、このランキング上位20組までがライブに出場。ナンバーワンを決める大会ですっ。噂には聞いてましたけど、ついに始まるなんて……!」

穂「へぇ~」

海「スクールアイドルは全国的にも有名ですし…」

凛「盛り上がる事、間違いなしにゃ~!」

穂乃果たちは、それぞれの反応を示す。

花「今のアイドルランキングから上位20組となると、1位のA-RISEは当然出場するとして……2位3位は…。ま、正に夢のイベント…!チケット発売は何時でしょうか!? 初日特典は…」

等と行く気満々の花陽。

そんな花陽に穂乃果が質問する。

穂「って、花陽ちゃん見に行くつもり?」

その瞬間、花陽の目付きが変わる。

カッ!!という擬音がつくくらい。

勢いよく椅子から立ち上がった花陽は

花「当たり前です!! これはアイドル史に残る一大イベントですよ!?……見逃せません!!」

穂乃果に顔を近づけながら言う。

真「アイドルの事になると、キャラ変わるわよね…」

凛「凛は、こっちのかよちんも好きだよ!」

真姫は頬杖をつきながら言い、凛はいつもの事みたいで慣れた感じだ。

穂「なぁんだ…。 私てっきり出場目指して頑張ろうって言うのかと思ってた…」

花「えええぇぇぇぇぇ!? そ、そ、そそ、そんな私たちが出場だなんて、恐れ多いですー!!!!」

穂乃果の言葉に、花陽は部室の隅に、瞬時に移動して慌てて否定する。

真「キャラ変わりすぎ…」

凛「凛は、こっちのかよちんも好きにゃ!」

お前花陽なら何でも好きだろ?

こ「でも!スクールアイドルやってるんだし、目指してみるのもいいかも!」

穂「っていうか、目指さなきゃだめでしょ!」

真「そうは言っても、現実は厳しいわよ」

海「ですね……」

真姫や海未が言っているのはきっと順位の事だろう。

出場できるのは上位20組。

そこにμ'sが入るのが前提条件なのだ。

しかし、μ'sのランキングはこの前見た時は大会に出られるような順位ではなかった。

………この前なら。

海「確か、先週見た時はとてもそんな大会に出られるような順位では……」

竜「フッフッフッ……。甘いな海未。その情報は古いぜ?」

俺は背を壁に預けて言う。

海「何故でしょう……。何故か異様にムカつきます」

真「奇遇ね海未。私もそれは思ってたわ…」

海未と真姫がジト目を向けてくるが、俺はそれをスルーしてパソコンを操作。

そこに書かれてる事を見せる。

竜「これを見ろ」

そこにはμ'sが急上昇ピックアップスクールアイドルとして評価されてる事が書かれていた。

穂「あっ!凄い!」

こ「順位が上がってる!!」

順位が上がってる事に驚く2人。

それは真姫も一緒みたいだ。

真「ウソ!?」

凛「どれどれ…?」

そう言い、真姫も凛も覗く。

花陽もだ。

花「あっ……!」

こ「急上昇のピックアップスクールアイドルにも選ばれてるよ!!」

穂「ホントだ!! ほらコメントも!『新しい曲格好よかったです。』『7人に増えたんですね。』『いつも一緒懸命さが伝わってきて大好きです!』」

穂乃果がコメントを読み上げる。

凛「うわあ~、もしかして凛たち人気者!?」

竜「その通り!凄いでしょ!? 最高でしょ!? 天才でしょ!?」

海「何故あなたが威張るんですか?」

海未が呆れた目を向けてくるがスルー。

そんな中、真姫が言う。

真「そのせいね…」

凛「えっ?」

真「最近、帰ってると…」

そう言って真姫は話す。




ーーーーーーーー



こ「出待ち!?」

穂「ウソ!?」

場所は一旦屋上に変わり、そこで真姫は部室で言おうとした事を話した。

その事にことりは驚き、穂乃果はショックを受ける。

そう、なんと真姫が出待ちされていたらしい。

こいつは新発見だ。

何よりあの真姫が写真を許すとは……成長したね~。

真「何故かしら。今竜司に物凄くバカにされた気がするわ…」

こいつ中々に鋭いな。

穂「私、全然ない…」

花「そういう事もあります!アイドルというのは残酷な格差社会でもありますから」

花陽が穂乃果にフォローのようで、フォローになってない言葉をかける。

すると、屋上のドアが勢いよく開けられ、そこから出てきたのはピンクのカーディガンを着たニコさんだった。

……そういやニコさんいないの忘れてた。

ニ「みんな!聞きなさい、重大ニュースよ!」

穂「あっ、ニコ先輩…」

あっ、デジャブ。

ニ「ふっふっふ……聞いて驚くんじゃないわよ。今年の夏、ついに開かれる事になったのよ。スクールアイドルの祭典!」

こ「ラブライブですか?」

ニ「あー……知ってんの……」

ことりにラブライブの事を言われ、テンションが下がるニコさんだった。



ーーーーーーーーー




ところ変わってここは生徒会室の前。

練習はどうしたかって言うと、一旦中止。

やっぱ『ラブライブ!』に出るんなら先に許可取っといた方がいいんじゃね?という事で生徒会室に来ているのだ。

穂「……………」

真「どう考えても答えは見えてるわよ」

穂乃果がノックしようすると、真姫がそう言う。

確かに、あの生徒会長は首を縦にふらないだろうな。

凛「学校の許可ぁ?認められないわぁ」

穂「だよね~…」

竜「何気に似てるぞ、凛」

凛「えへへへ~♪」

ただ本人が見たらどう思うだろうな…。

穂「でも、今度は間違いなく生徒を集められると思うんだけど…」

穂乃果がそう言うと、後ろの空き教室のドアが開き、ニコさんが顔を出す。

ニ「そんなの…あの生徒会長には関係無いでしょ。私らの事、目の敵にしてるんだから」

花「ど、どうして私たちばかり……」

竜「だな……」

東條さんは穂乃果達の活動にこっそり協力してくれてはいるが、肝心の生徒会長に関してはこれっぽっちも協力の気配がない。

まるでサイボーグのような冷たさ、特別穂乃果達を敵視しているようにも見える。

真「もう、許可なんて取らずに勝手にエントリーしてもいいんじゃない?」

竜「それはダメだ。エントリーの条件には学校からの許可を得る事は必要なんだ。そうだろ?花陽」

花「は、はい」

アイドルとは言ってもスクールアイドル。

ちゃんと学校の許可がいるのは当たり前という事だ。

その大会のせいで成績に関わるような事があれば問題だしな。

なので……。

竜「理事長に直接頼もう」

穂「えっ!? そんな事、出来るの?」

竜「出来るぞ」

海「確かに、部の要望は原則生徒会を通じて、と書いてありますが、理事長のところに直接行くことが禁止されているという訳では……」

海未が説明してくれる。

真「親族もいることだし、竜司の意見が一番いいわね。……ホント、いつもこんな感じに冷静沈着でいてくれたらいいのに…」

真姫がことりを見て、黒い事を言いながら余計な一言を言う。

「「「「「「激しく同意」」」」」」

竜「おい」

何他の6人もサラッと同意してんだよ!




ーーーーーーーーーー




結局、俺達は生徒会室をスルーして、理事長室へとやってきた。

穂「さらに入りにくい緊張感が……!」

竜「そうか?」

穂「竜ちゃんは2回も入ったからそう感じるんでしょ!」

おお、それもそうだな。

真「そんな事言ってる場合……?」

竜「とりあえず今は理事長に言って、許可貰えるかどうかを聞くのが先決だ。俺達だけでいくから、真姫達はそこで待っててくれ」

俺の言葉を合図に穂乃果がドアをノックしようとした瞬間、ガチャッと音がして、そこからチラリと紫の髪色が出てきた。

希「あっ、お揃いでどうしたん?」

竜「東條さん?という事は……」

穂「うわっ、生徒会長……」

予想通り、副会長である東條さんがいるという事は、生徒会長……サイボーグ絢瀬もいるという事になる。

氷室さんはいなかった。

ニ「タイミング悪っ」

後ろで、ニコさんが呟く。

絵「何の用ですか?」

真「理事長に話があってきました」

真姫が前に出て、絢瀬会長に強気な発言をする。

絵「各部の理事長への申請は、生徒会を通す決まりよ」

しかし通用しなかった。

目を見ても何ら変わりない表情であり、射抜くような鋭い目。

こちらの言い分なんて何も聞かないような雰囲気すら感じさせる。

まさにサイボーグ……サイボーグ絢瀬。

絵「……ねぇ、あなた今失礼な事を考えなかった?」

竜「さて、何の事でしょう?」

この人も中々に鋭いな。

真「申請とは言ってないわ!ただ、話があるの!」

竜「真姫。気持ちは分かるけど、相手は上級生だ」

真「うぅ…」

真姫がタメ口を聞いたのを、肩に手を置き宥める。

そこに

コンコン

「どうしたの?」

理事長が微笑みながら立っていた。

こ「お母さん…」




ーーーーーーーー



真姫達1年生だけを外に残し、ニコさんを後ろに待機させ、俺達2年をメインに理事長に案を申す事にした。

「へぇ~。ラブライブね~」

理事長は、映像を観て驚いた表情だった。

海「はい、ネットで全国的に中継されることになっています」

こ「もし、出場できたらみんなに学校の名前を知ってもらえる事になると思うの!」

海未とことりが理事長にアピールする。

すると、案の定…

絵「私は反対です」

生徒会長が反対してくる。

絵「理事長は学校のために、学校生活を犠牲にするようなことはすべきではないとおっしゃいました。であれば」

理事長は遮るように言う。

「そうねぇ~、でもいいんじゃないかしら?エントリーするくらいなら」

穂「本当ですか!?」

「えぇ」

それに喜ぶ穂乃果たち。

やけにあっさりだな?

絵「ちょっと待って下さい!どうして彼女達の肩を持つんです!?」

「別に、そんなつもりはないけど?」

絵「なら、生徒会も学校を存続させるために活動させてください!」

何だ?

何故か今の会長からは違和感を感じる。

何処かその態度に、その言葉に、義務感を感じる。

「ん~…それはダメ」

絵「意味が分かりません!!」

「そう?簡単な事よ?」

この様子だと理事長は気づいてるな。

絵「……………」

希「エリチ…」

悔しそうに、それでも出来るだけその感情を出さないようにしながら生徒会長は部屋を退室していった。

何がアンタをそこまで焦らせるんだ?

ニ「ふんっ、ざまあみろってのよ」

ニコさん、ここを理事長室って事をお忘れないようにね。

「ただし、条件があります」

振り返れば、理事長が今までとは違う真剣な表情で口を開いた。

「勉強が疎かになってはいけません。今度の期末試験で、1人でも赤点を取るような事があったら、『ラブライブ』へのエントリーを認めませんよ。いいですね?」

なるほど、それは正論だ。

いくらスクールアイドルと言っても生徒は生徒だ。

成績の問題もある。

もしスクールアイドルをやってたせいで成績が落ちたなんて事があったら、学校の存続以上にスクールアイドル自体に問題があると世間は思ってしまう。

理事長がそれを条件に言ったのはそのための対策だろう。

まぁ天才の俺は赤点なんざ取らない。

問題は、

こ「ま、まぁ!流石に赤点はないから、大丈夫かと~……。あれ~…?」

ことりが呟いた瞬間

ズーン

穂乃果、凛、ニコさんが床に突っ伏していた。

一年、二年、三年それぞれから見事に、バカが排出された。




ーーーーーーー




穂「申し訳ありません!」

凛「ません!」

現在、部室の机に三つ指をついて、謝る穂乃果と凛のバカ二人。

海「小学校の頃から知ってはいましたが……穂乃果…」

穂「数学だけだよ!ほら、小学校の頃、算数苦手だったでしょ?」

竜「自慢気に言うな…」

花「4×7?」

穂「……26?」

穂乃果の答えに全員、(≡‐≡)←こんな顔になる。

壊滅的だな。

花「凛ちゃんは?」

凛「英語!凛はどうしても英語だけは肌に合わなくて~」

竜「肌に合わないってなんだ、肌に合わないって…。化粧品じゃねぇんだぞ…」

花「た、確かに難しいよね」

花陽、同意するな。

凛「そうだよ!だいたい凛達は日本人なのにどうして外国の言葉を勉強しなくちゃいけないの!」

凛が訴えている。

それに真姫がイライラしながら、机を叩いて立つ。

真「屁理屈はいいの!」

凛「にゃ~。真姫ちゃん怖いにゃ~……」

そんな凛にはこの言葉を。

世界共通語だから。

真「これで、テストの点数が悪くてエントリー出来なかったら、恥ずかしすぎるわよ」

凛「そうだよね~…」

確かにな~…。

真「やっと、生徒会長を突破したって言うのに!!」

ニ「ま、全くその通りよ~」

ニコさんの方に、全員顔を向けるが、すぐにその目は全員ジト目になる。

なんせ、持ってる教科書を逆に持っているからだ。

ニ「あ、赤点なんか絶対取っちゃダメよ!」

竜「ニコさーん、教科書逆に見てまーす」

ニ「うぅ……」

これで3バカトリオ確定だな。

竜「仕方ない。穂乃果は海未とことりが、凛は真姫と花陽。ニコさんは俺が見るよ」

海「ん?竜司は3年生の勉強が出来るんですか?」

竜「向こうで高校3年生の勉強は全部終わらせたからな…」

こ「中学生なのに?」

竜「おう…」

穂「竜ちゃん天才過ぎっ!!」

真「こういう所で否が応でも認識させられるのよね~……」

フフン……やっと認めたか。

竜「という訳でやるぞー」

と思ってたら、

希「ニコっちはウチが担当するわ」

ニ「希……」

東條さんが来た。

希「ニコっちはふざける時があるからね。だから竜司君は総合的に3人を見てあげて?」

成る程……そういう事なら納得できる。

ニ「に、ニコは別に竜司でも大丈…」

希「それにウチがわしわしでお仕置き役としてもいいやろうしね!」

言うなり東條さんはニコさんの慎ましすぎる胸を鷲掴みにした。

ニ「ひっ…!?//// 竜司!助けて…!!////」

竜「よし!早速始めよう」

ニ「薄情者ーー!!」




ーーーーーーーーーー




穂「竜ちゃん……ことりちゃん……」

竜「何だ」

こ「なあに?あと1問よ。頑張って!」

穂「お休み……」

竜「よし、穂乃果の恥ずかしい過去を校内放送で流してやる」

穂「鬼ぃぃぃぃぃぃ!!」

睡眠モードだった穂乃果が一瞬で目が覚めた。

脅しってすげえや!

竜「晒されたくなければ素直に勉強する事だな」

穂「うう……竜ちゃんのいけず……」

竜「何とでも言え。あっ、凛そこ違うぞ。ニコさんも」

「「ギクッ!!」」

3人には、こんな序盤で弱音を吐いてもらっちゃ困る。

まだまだ勉強は始まったばかりなんだ。

赤点回避しないと俺達の目的は果たせないも同然なのに、それを分かってるのかな、この娘達は?

海「竜司、ことり、あとはお願いします。私はそろそろ弓道部の方へ行かなければならないので」

竜「ああ、そうだな。ひと通りやらせたら今日は解散にするから、海未も弓道部が終わったら適当に帰ってくれていいから」

海「はい、分かりました。では、よろしくお願いします」

そう言って海未は去ろうとするが、ドアの手前で止まり、部室内を見回した。

海「……これで身に付いているのでしょうか……」

竜「言うな……」

俺の応答に海未はさりげなく溜息だけ吐き、部屋を後にした。

俺も室内を見回すが、東條さんにわしわしされそうなニコさん。

花陽と真姫の注意を逸らそうとするが、花陽だけしか騙せてない凛。

挙句の果てに寝ようとする穂乃果。

……ホント大丈夫かこれ?


竜司sideoff







海未side


弓道を終えた私は今、生徒会長と公園のベンチに座ってました。

事の発端は帰ろうとした時、校門に会長の妹さんが私達μ'sのPVを見てて、私に気づいた彼女が話しかけて来た瞬間、会長が来て、そのまま公園に場所を変えました。

ベンチに座ると、生徒会長は妹の亜里沙ちゃんにお金を渡して自販機に向かわせました。

亜「お待たせしました!」

3人分の缶を抱えながら走ってくる。

亜里沙ちゃんから缶を受け取り礼を言う。

海「ありがとうございます」

そして缶を見てみると私は驚いた。

海「おでん?」

何故これを選んだんでしょう……?

絵「ごめんなさい、向こうの暮らしが長かったから、まだ日本に慣れてない部分があって」

海「向こう?」

絵「えぇ、祖母がロシア人なの。亜里沙、それは飲み物じゃないの」

亜「えっ?…ハラショー」

これまで見せた事のないような顔つきで、自分の妹を諭していました。

それは、普段の生徒会長ではなく、1人の姉としての優しさに溢れた顔でした。

しばらくしてから生徒会長から口を開きました。

絵「それにしても、あなたに見つかってしまうなんてね」

私も疑問に思ったことがあったので尋ねる。

海「前から穂乃果達と話していたんです。誰が撮影して、ネットにアップしてくれたんだろうって。でも、生徒会長だったなんて……。 あれがなければ、私たちは今こうしていなかったと思います。あの動画があったから、見てくれた人も増えたし、だから…」

感謝しようと思った瞬間

絵「やめて」

海「……え?」

絵「別にあなた達の為にやった訳じゃないから。むしろ逆。あなた達のダンスや歌が、いかに人を惹きつけられないか、活動を続けても意味がないか、知ってもらおうと思って。だから、今のこの状況は想定外。なくなるどころか、人数が増えるなんて」

その言葉に、私は胸が痛くなります。

絵「とても人に見せられるようなものになっているとは思えない。そんな状態で学校の名前を背負って欲しくないの。だからこれ以上邪魔しないで。話はそれだけ」

私は何も言う事ができなかった。

何故そこまで言われなきゃならないのだと…。

そんな事も気にせず、鞄を手にかけ、ベンチから立ち上がり、生徒会長が去ろうとした次の瞬間……












亜「お姉ちゃん!! 海未さん!! 逃げて!!」











亜里沙ちゃんが恐怖にひきつった顔で叫んで来ました。

「「?」」

私も会長も一瞬訳が分かりませんでしたが、自分の影を覆う巨大な影を見た時、嫌な予測が立ちました。

そしてゆっくり後ろを振り返ると、そこには、












「グルルルルル……ギュウアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」














凶悪な鋭い歯がたくさんある顎を開いて咆哮する、石灰色の肌を持つ大きな肉食恐竜がいました。









海「っ!?」

絵「恐竜っ!? 何で!?」

会長の言うことも分かります。

この恐竜は音も無く私達の後ろにいました。

普通これだけ大きければ、それなりの音もすれば、気配もします。

なのに、そんなものは微塵も感じさせませんでした。

例えるなら、突然前触れも無く現れた。

それが一番合います。

そしてこの恐竜はとてつもない速さで、私と会長に食らい付いて来ました。

このままなら、私も会長も即肉塊。

亜里沙ちゃんも殺されてしまいます。

でも………私には何も出来ない。

力もない。

誰も守れない。

私は自分の死を覚悟しました。

脳裏に今日までの事が再生されます。

アイドルを始めた事…。

穂乃果たちに出会った事…。

なにより…また竜司に出会えた事…。

これが走馬灯なのでしょうか?

そして遂に死ぬ………







ブオオオオオオン!!

「ギュウアアアアアアア!?」






と思ったその瞬間、大型のバイクが飛んできて、目の前の恐竜を吹き飛ばしました。

そのバイクは私と会長の前で着地すると、ヘルメットを脱ぎました。

その人物は、

海「竜司!」

亜「竜司さん!」

絵「あなた……」







竜「お待たせ♪」






私にとって初恋で、私がもっとも頼りにしていた人物、竜司でした。





竜「さぁ……実験を始めようか?」






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Game#33

竜「禁断の恐竜・インドミナス・レックスに襲われそうになった海未とサイボーグ絢瀬を見事助けた、このてぇ~んさっい科学者、天青竜司は…「ちょっと待ちなさい!!」…何だよ?」

絵「誰がサイボーグよ!?」

竜「えっ?違うの?」

絵「あなたが勝手に呼んでるだけでしょ!?」

海「そんな事よりジュラシック・ラブライブ!第35話どうぞ!」


◎side


海未の危機に駆けつけた竜司は、海未達を自分の背に隠す。

海「竜司、どうしてここに?」

竜「ディノホルダーに反応があったのよ。あっ、それと亜里沙、久しぶり」

亜「はい!久しぶりです!」

亜里沙はキラキラした目で、竜司を見る。

絵「天青君……あなた…」

竜「話は後だ」

そう言って、竜司は本型ホルダーから恐竜カードを取り、ディノホルダーにスラッシュする。

《ティラノサウルス》

竜「暴れろティラノ」

そう言って、炎を纏ったカードを放ると、カードは赤い体に黄色の線が走る大型の肉食恐竜・ティラノサウルスに変わる。

「ゴガアアアアアアアアアア!!」

ティラノは吠えると、インドミナス・レックスの首に噛みつく。

「ギュウアアアアアアアアア!!」

痛みに吠えるインドミナス。

そのまま首を大きく振ってティラノを振りほどき、逆に噛みつく。

そして地面に押し倒す。

「ゴガアアアアアアアアアア!!」

押し倒されたティラノはインドミナスを蹴りあげる。

そして起き上がり、隙だらけのインドミナスの首に再び噛みつく。

「ギュウアアアアアアアアア!?」

竜「丁度いい」

竜司は超技カードをスラッシュする。

《フライトブレイズスピン(灼熱大車輪)》

《ベストマッチ!》

竜「勝利の法則は決まった!」

竜司がエネルギーを撃って、それをティラノが吸収すると、ティラノは噛みついたまま炎を吐き散らし、そのまま回転。

独楽のように速くなった所でインドミナスを放り投げる。

インドミナスは地面を勢いよく滑った。

これでインドミナスは倒された………と思いきや、

「グルルルルル……」

すぐに立った。

竜「はぁ!? 何で!?」

これには竜司も驚く。

肉食恐竜が属する属性は、炎、水、風のみ。

ティラノのような大型の肉食恐竜は炎。

スピノサウルスのようなワニ顔の肉食恐竜は水。

カルノタウルスやラプトル系の肉食恐竜は風、となっている。

この法則で行くと、インドミナス・レックスは炎、或いは風なのだが、もし風なら即カード、もし炎なら多少は立てるかもしれんないが、ティラノサウルスと『フライトブレイズスピン』はベストマッチ。

すぐには立てないのに、インドミナスは平然と立った。

それはつまり。

竜「こいつ……謎属性か?」

謎属性。

別名・シークレット恐竜。

それは他の属性の攻撃を無に帰し、実質謎属性の恐竜を倒せるのは謎属性の恐竜のみとなっている。

もしこの考えが合っているのなら、ティラノサウルスはインドミナス・レックスには勝てない。

そしてその考えを肯定するように、

「その通りだ」

第3者の声がした。

そこには、胸にも翠のコブラの意匠を凝らした赤い装甲スーツにグレードアップした、ブラッドスタークがいた。

竜「スターク!お前か!? インドミナス・レックスを誕生させたのは!!」

海「竜司?」

竜司のいつにない怒声に、海未は疑問を抱く。

しかしスタークは笑ってそれを流す。

「フフン♪……その通りだ。クレア・ディアリングのパソコンをハッキングして、造り出したのさ。しかも謎属性になったよ。まぁテリジノサウルスの遺伝子があるからなってもおかしくは無いな。と言っても、専用技カードは1枚しか出来なかったよ。ほら、こんな感じに…」

そう言って、スタークはカードをスラッシュする。

《デストロイファング(殺戮壊牙)》

《ミストマッチ》

そしてそれを撃って、吸収させる。

「ギュウアアアアアアアアア!!」

インドミナス・レックスは吠えると、その牙に虹色のオーラを纏わせる。

竜「やばっ…」

そのままインドミナス・レックスは、ティラノの首に噛みつく。

瞬間、虹色の閃光が辺りに輝き、ティラノサウルスは即カードになった。

海「そんな!? ティラノサウルスが……!!」

「「ハラショー…」」

海未は驚愕、絢瀬姉妹も驚いていた。

竜司はティラノのカードを拾い、本型ホルダーに仕舞う。

竜「…………」

竜司は黙ってインドミナスを睨む。

しかしスタークはインドミナスをその場で待機させ、竜司にある物を放って渡す。

「おい!」

竜「ん?うおっ!?」

竜司はそれを難なく受け取るが、それを見た瞬間、スタークに怒鳴る。

竜「お前……何でお前が『エレメントトリガー』を!?」

これもスタークは笑って流す。

「そんな怒んなよ。大体、お前らは自分のデータに関してザル過ぎるんだ」

暗にハッキングして、盗んだ事を言うスターク。

そして竜司を挑発する。

「それを使え。じゃないとインドミナスには勝てんぞ?」

エレメントトリガーは強力な力を得る代わりに、暴走の危険性を孕む。

それを平気で薦めるスターク。

しかし竜司は首を振る。

竜「使わない…」

「………何?」

不機嫌そうに聞き返すスターク。

そんなスタークに、竜司はある恐竜カードを見せる。

竜「これで倒すさ…」

「お前!?」

それはインドミナス・レックスと同じ、謎属性の恐竜だった。

竜「さぁ……実験を始めよう」

そしてその恐竜カードをスラッシュする。

《パキケファロサウルス》

瞬間、そのカードは虹色に光り、それを放ると、茶色の体にヘルメットのような頭を持つ恐竜、石頭恐竜の代表格・パキケファロサウルスになった。

しかも竜司の持つディノホルダーの画面には、グーチョキパーのアイコンが三角に並び、その回りをバーコードが囲んでいる物が映る。

「お前も持っていたのかぁぁぁぁぁぁぁ!!」

スタークは予想外の事に怒鳴る。

竜司はそれを聞き流し、黙ってパーのアイコンをタッチする。

《クエイクヒート(地割頭突)》

それが女性声でアナウンスされると、パキケファロサウルスの頭に虹色の光が集まる。

そのままパキケファロサウルスは空中高く飛び、地面に頭から突き刺さる。

すると地面から次々と光が漏れて、そのままインドミナスに向かっていき、到達するとインドミナスに虹色の光の柱が直撃。

インドミナスは吹き飛ぶ。

しかしまだ立つ。

竜司は続いてグーのアイコンをタッチする。

《ヘッドダイバー(鋼頭昇竜)》

パキケファロサウルスはそれを受信すると、インドミナスの腹に体を滑り込ませ、空中高く放り投げる。

そして石頭に虹色のエネルギーを集め、そのまま高速回転しながら飛び上がり、インドミナスに頭突き。

インドミナスは落ちて、ダメージを喰らう。

しかしまだ立つ。

「ちっ…」

スタークも技カードをスラッシュする。

《デストロイファング(殺戮壊牙)》

《ミストマッチ》

竜「勝利の法則は決まった!」

竜司も最後にチョキのアイコンをタッチする。

《ダイナミックレイ(閃光鋼頭)》

《ベストマッチ!》

それを受信したパキケファロサウルス。

パキケファロサウルスの石頭に虹色のエネルギーが集まる。

それに対し、インドミナス・レックスは先程と同様にその牙に虹色のオーラを纏わせる。

そして噛みつこうとするが、それより先にパキケファロサウルスは石頭から虹色の光線を発射。

インドミナス・レックスはそれをまともに食らい、今度こそカードに戻った。

スタークはそれを拾う。

「いやー、参った参った。まさかお前も謎属性の恐竜カードを持っていたとはな……」

そうは言うが、心なしか嬉しそうなスターク。

そしてブラッドディノホルダーから黒煙を放つ。

「じゃあな?チャオ♪」

竜「待てっ!!」

すぐに竜司が駆け寄るが、すでにスタークは消えてしまった。

竜「………クソッ!!」

毒づく竜司。

そんな竜司に、海未はおそるおそる声をかける。

海「あの、竜司……?」

竜「……」

竜司はパキケファロサウルスを回収してから、海未の方に振り向く。

竜「悪い海未。せめて護衛を付けるから、今は何も聞くな……」

海「えっ?あっ、はい……」

それを聞いて、海未は悲しそうに顔を伏せる。

亜里沙と絵里も声をかけようとしたが、やはり竜司の雰囲気に当てられ、かける事が出来なかった。

そのまま竜司はカードを二枚スラッシュ。

《ディロフォサウルス》

《モノロフォサウルス》

「「ギュウアアアアアアア!!」」

頭に1枚のトサカを持つ茶色の肉食恐竜・モノロフォサウルスと、頭に緑と黄色で構成された二枚のトサカを持つ地味色の肉食恐竜・ディロフォサウルスを出す。

「「ハラショー……」」

再びその一連の動作に感動する絢瀬姉妹。

そしてモノロフォサウルスは海未を、ディロフォサウルスは絵里と亜里沙を乗せて、走っていった。

余談だが、海未は希に会いに寄り道した。

勿論、モノロフォサウルスをちゃんと隠れさせて。


◎sideoff





竜司side


あれから翌日。

とりあえずエレメントトリガーの事は頭の隅に追いやり、穂乃果達の事に集中する事に。

なのに……。

竜「おかしい……」

太陽がカンカン照りの真夏日。

俺は、現在部室にいる。

竜「何故、来ないんだ?……そう思わないか?ことり」

こ「あはは……」

俺の問いに、ことりは苦笑いを返す。

部室には、俺とことり、真姫と花陽がいる。

昼休みの間に、勉強が出来ない3バカに勉強を教えようと思っているのだが、一向に来ない…。

海未と東條さんも来てないが、まあ…あの二人はなんか用事があるとして……。

竜「逃げたな……。あいつら…」

真姫に至っては、イライラしてる雰囲気が、まあこっちにもよく伝わる。

花陽はそれに怯えてる。

すると、部室のドアが開き、そこから穂乃果たちが現れる。

竜「何やってんだ!! 穂乃………果………?」

俺は、言葉に詰まる。

ドアを開けて入ったきた穂乃果、凛、ニコさんの3人が何やら疲れきった様子でやってきた。

真姫も花陽もことりも、その様子に唖然としている。

後から、海未と東條さんが入ったきたが、なんか東條さんの肌がツヤツヤしてる。

………これは、聞かない方がいいな。



ーーーーーーー



希「今日のノルマはこれね♪」

そう言って、東條さんは机にドスン!!という音がするほどの大量の課題を出してきた。

………多すぎだろ…?

穂・凛・ニ「………鬼」

それを見た、穂乃果と凛とニコさんがジト目で東條さんを見る。

東條さんは手をワシワシと動かしながら

希「あれ?まだワシワシが足りてない子がおる?」

そう穂乃果たちに聞いてきた。

穂乃果たちは

「「「まっさか~…♪」」」

と、同時に言う。

ホントに何があった…?

その時、海未が立ち上がり

海「ことり、竜司…。穂乃果の勉強をお願いします…」

こ「ヘ……?……うん…」

竜「あ……ああ…」

そう言って、部室を出る。

あの時なんかあったのか…?

やけに思い詰めてたが……?

真「海未先輩、どうしたんですか?」

真姫が聞いてくる。

こ「さあ…?」

竜「まあ…。俺たちは俺たちのやるべき事をやろう。ほら穂乃果。やるぞ…」

穂「は~い…」

俺は穂乃果の勉強を見る。

真姫たちもそれぞれのやるべき事にとりかかる。

ふと、周りを見ると、東條さんがいない。

…………どこ行った?




ーーーーーー



しばらくすると、部室のドアが勢いよく開き、そこから海未がきた。

なんか吹っ切れた顔で穂乃果を呼ぶ。

海「穂乃果!!」

穂「……海未ちゃん…?」

さっきより疲れきった様子で海未に答える穂乃果。

まあ、さっきまで俺がペース配分考えずに穂乃果に勉強を叩き込んだからな。

ことりが止めるのも聞かずに…。

ニコさんと凛にも同様に叩き込んだ。

さっきより、疲れ果てている。

そんな事にも構わず海未は、穂乃果に指さし

海「今日から、穂乃果の家に……泊まり込みます!!」

そう宣言した。

それを聞いた穂乃果は驚く。

穂「えっ!?」

海「勉強です!!」

穂「鬼ぃ~…」

涙目になりながら、指をツンツンする穂乃果。

なんか分からんが…取り敢えず穂乃果を応援しよう。

竜「穂乃果、ファイトだぜ!」

穂「えええぇぇぇ!? 竜ちゃん、助けてよ!! っていうか、それ私のセリフ!!」

竜「知るか…」

こうして、海未による地獄の猛特訓が始まった。




ーーーーーー




それから数日。

今日で、すべての試験結果が帰ってくる。

結果は、穂乃果以外は今のところセーフ。

後は穂乃果だけだ。

そう思ってると、穂乃果が俺たち全員が集まっている部室にくる。

真「どうだった?」

海「今日で、全教科帰ってきましたよね?」

花「…………!」

こ「穂乃果ちゃん!!」

海未たちが、それぞれの言葉を穂乃果にかける。

凛「凛はセーフだったよ!」

そう言いながら、凛はピースする。

ニコさんは席から立ち上がり

ニ「あんた!私たちの努力を水の泡にするんじゃないでしょうね!?」

穂乃果に食い付き気味に言う。

最後に全員で

「「「「「「どうなの!?」」」」」」

と聞く。

穂乃果は鞄から試験用紙を出しながら

穂「う……うん…。もうちょっといい点だとよかったんだけど…。じゃーーん!!」

ピースしながら、笑う。

その点数は53点。

赤点ギリギリセーフだった。

それを見た全員は喜び、俺は

竜「ゴミみたいだ……」

心の声が、ついつい出てしまった。

穂「酷いよ!竜ちゃん!!」

竜「あっ…わりぃ…。そういう意味じゃないんだ」

語呂合わせ的にな…。

それはともかく、穂乃果たちは練習着に着替える。

その瞬間、俺は外に出る。

女子が着替えてる中で、平気でいれる程、俺は肝が座ってない。

というか居たら海未と真姫に殴られる。

穂「よ~し、今日から練習だー!!」

花「ラ……ラブライブ!」

真「まだ早いわよ。目指せるって決まっただけよ」

竜「それだけでも前進だ。十分だよ」

花「は、はい!」

これで堂々と『ラブライブ!』を目指せる。

穂「ランランラーン♪……あれ?」

竜「どうした?」

赤点回避の報告のため、理事長室を訪れた。

しかし、

穂「中から生徒会長の声がして……」

竜「生徒会長の……?」

穂乃果がこっそりドアを開け、俺もそれに続いて中を覗くと、次の瞬間、衝撃の言葉が聞こえてしまった。

絵「そんな!? 説明してください!!」

「ごめんなさい、でもこれは決定事項なの」











「音乃木坂学院は来年度より生徒募集をやめ、廃校とします」










what?







負の連鎖というものは、いつだって唐突に訪れる。








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Game#34






「ごめんなさい。でもこれは決定事項なの。音ノ木坂学院は、来年より生徒募集を止め、廃校とします」

それはあまりにも理解するには時間が必要で、納得できない言葉でもあった。

頭が混乱する中、誰よりも早く動いたのは穂乃果だった。

穂「今の話、本当ですか!?」

絵「っ、あなた!」

穂「本当に廃校になっちゃうんですか!?」

穂乃果のおかげでとりあえず冷静さを取り戻し、俺達も理事長室に入る。

多分だけど、何かしら理由がある筈だ。

それを聞かないと。

「本当よ」

こ「お母さん!そんな事全然聞いてないよ!」

いや待てよ……この雛さんの事だ。

赤点回避の条件出しといて、廃校ですは無い筈だ。

となると……。

穂「お願いです!もうちょっとだけ待って下さい!あと一週間、いや、あと2日で何とかしますからっ!!」

竜「落ち着け穂乃果。おそらくだが、そうすぐに廃校っていう訳では無い筈だ。そうでしょう?」

雛さんにそう訊くと、

「さすが竜司君ね。察しが早いわ」

竜「まあ、俺はてぇ~んさっい科学者なんで、ちょっと考えればすぐに分かりましたよ」

「ふふっ、そうね。あのね、廃校にするというのは、オープンキャンパスの結果が悪かったらという話なの」

穂「お、オープンキャンパス?」

こ「一般の人に見学に来てもらうって事?」

あれ、穂乃果さんまさかオープンキャンパスの意味を分かってらっしゃらないようで?

去年もやったんじゃないの?

まぁこの単純バカなら普通に忘れてそうだけど。

竜「要するにあれだ…。見学に来てもらった近隣の中学生にアンケートを取ってもらって、結果が芳しくなかったら廃校にするって事だろ?」

「そういうことよ」

俺が言ったことに異を唱えず、理事長は肯定する。

穂「なぁんだ、よかったぁ……」

絵「安心している場合じゃないわよ?オープンキャンパスは2週間後の日曜日。そこで結果が悪ければ本決まりなのよ?」

成る程…そこで結果を残せなかったら、本当の意味での終わり…。

穂乃果たちはどうしようと慌てている。

穂「竜ちゃん!! 何か、いい考えない!? 天才科学者でしょ!?」

竜「君ね~、俺が天才科学者だからって、ドラ○○んと同じと考えてない?」

そこまで万能じゃないよ?

絵「理事長!! オープンキャンパスのイベントの内容は、生徒会で決めさせて貰います!」

俺たちがそんな事を言っている間に、会長が理事長の真っ正面に立ち、目を見つめながら言った。

会長も廃校から守ろうと必死なのだが、どうも俺からすれば、その行動が本心からの行動には思えない。

「……止めても聞きそうにないわね」

理事長が折れ、会長に許可を出した。

絵「失礼します」

それだけを言って、会長は出て行った。

何か一波乱ありそうな気がしてならない。

何か本格的に、あの生徒会長と激突しそうな、そんな感じがした。

穂「何とかしなくっちゃ!」

竜「とりあえず、それだけの気持ちがあればどれだけ練習がキツかろうが耐えられそうだな。出るぞ。花陽達に知らせてとっとと練習だ」

穂「え、でも理事長に報告が……」

竜「しなくても雛さんの事だから分かってるだろ。わざわざ練習着で来たんだ。それだけで証明になる」

ここにはもう知り合いしかいないから、普通に雛さんと呼ばせてもらった。

「ええ、もう分かってるわ。全員クリアしたようね。いいわ、もう練習してきていいわよ」

穂「……はい!じゃあ花陽ちゃん達に説明してから、練習を始めよう!」

ほんと、次から次へと問題が出てくるな……。




ーーーーーーーーー



花「そんなぁ……」

凛「じゃあ、凛達やっぱり下級生がいない高校生活ー!?」

ニ「そうなるわね」

真「ま、私はそっちの方が気楽でいいけど」

竜「なぁ~に言ってんの?そうならないために今までも活動してきたのに、頑張らねえと今までがやり損になっちゃうでしょうが」

とりあえず、俺達は今廊下で花陽達に理事長室であった事を説明している。

花陽と凛はこの状況に危機感を抱いてるのに、真姫ときたらこの反応だ。

全く………このツンデレお嬢様は。

穂「とにかく、オープンキャンパスでライブをやろう!それで、入学希望者を少しでも増やすしかないよ!」

竜「そうだな…。それしか、今のところ方法が無いしな…」

かくして、やれる事に俺達は没頭する。


竜司sideoff






◎side


絵(何故?)

何故生徒会のメンバーまでもがμ'sの事を推してくるのかと、絢瀬絵里は思っていた。

生徒会室で何か提案はないかと問えば、堅苦しさより楽しさをアピールする。

それも学校のためだし一理あると思ってはいたが、いざ話が進めば彼女達は今巷で大流行しているスクールアイドルの話になり、結局はμ'sに頼もうという話になる。

絵(どうして……?)

アピールに良いものを知っているからという理由で外まで来てみれば、アルパカという動物を見せられたはいいが、何かの癇に障ったのか唾をかけられ、追い打ちとばかりにそこへμ'sメンバーである1年が来て、他の生徒会メンバーはタイミングいいとばかりに頼み込もうとする。

当初自分が思っていた事と違う展開が多すぎて、絵里は困惑していた。

どうしてμ'sの知名度や人気が上がってきている?

あんな未完成すぎるダンスやブレのある歌声では何も響かない、見るに堪えない。

なのに、ああも徐々にメンバーが集まったりして人気も上がっているのか?

自分の過去の『出来事』を思い返しても、蘇るのは負の感情。

それを基に考えて、μ'sの活動を認めない自分がいる。

何があっても認める訳にはいかない。

マイナスになってしまう可能性の方が多いんだから。

それで学校が本当に廃校になってしまうのかもしれないんだから。

それで、彼女達が挫折してしまうのかもしれないんだから。

そんな彼女達を見るのは堪えられない。

だから………。

絵(認める訳には……いかないの……)


◎sideoff






竜司side


今、穂乃果たちはオープンキャンパスに向け、練習をしている。

海未が手でリズムをとり、穂乃果が声を出してダンスの練習をしているところだ。

一方、俺は姉さんにある事を頼んでいて、それに関する答えとなっている資料をスマホで見ている。

内容は、ブラッドスタークとナイトローグについて。

穂「1、2、3、4、5、6、7、8……よし!」

その間にもラストの決めポーズが決まり、ガッツポーズをする穂乃果。

穂「おー!! みんな完璧ー!!」

こ「よかった!これならオープンキャンパスに間に合いそうだね♪」

真「……でも、ライブなんてホントに出来るの?」

真姫が手で汗を拭きながら聞く。

真「生徒会長に止められるんじゃない?」

こ「それは大丈夫。部活紹介の時間は必ずあるはずだから」

真姫の質問に、ことりが答える。

こ「そこで、歌を疲労すれば……」

海「まだです…」

しかし、海未が遮る。

竜「海未……?」

暗い顔して、一体どうしたんだ?

そのまま誰を見る事もなく、ただ前だけを見て言った。

海「まだタイミングがズレています」

穂「海未ちゃん……。分かった、もう1回やろう!」

竜「…………」

穂乃果は頷き、もう一度やる。

穂「完璧!!」

真「そうね」

ニ「やっとニコのレベルにみんな追い付いたわね!」

真姫が頷き、ニコさんがはしゃぐが、海未がさっきと同じ表情だった。

海「……ダメです、これじゃ」

海未の口から告げられたのは、またしてもダメ出しだった。

「「「「「「えっ!?」」」」」」

凛「うぅ、これ以上上手くやれる気がしないにゃあ……」

あまり弱音を吐かない凛が思わず弱音を吐いてしまった。

海「ダメです……。それでは全然…」

それに対して真姫が海未の所に歩み寄った。

真「何が気に入らないのよ!? ハッキリ言いなさいよ!!」

竜「真姫……」

真「でも!」

俺は真姫の肩に手を置き、諌める。

竜「いいから……何がそんなにダメなんだ?教えてくれ…海未」

俺は海未に理由を訊く。

すると海未は言う。

海「……感動できないんです」

真「えっ……」

海「今のままでは……」

穂「海未ちゃん……」

感動、できない、か……。

ファーストライブの時から思っていたが、穂乃果達の歌や踊りは決して上手いと言えるほどではなかった。

でも、何か魅せられるものがあった。

だけど、それじゃダメだっていうのか?

竜「ならお前はどうしたい?」

海「竜司……?」

竜「何で急にそこまで拘るようになったのか、あの日何があったのか、説明してもらわないと、こっちも痼が残るんだ。だから言ってくれ」

海「そう、ですね……。オープンキャンパスまでの日数も日数ですし、私から一つ提案もあるので、言っておいた方がいいですね」

提案か。

すると穂乃果が俺に訊いてくる。

穂「そういえば、竜ちゃんさっきから何見てたの?」

こいつ俺の行動見てたのか……。

穂乃果の一言で、他のメンバーも俺に注目する。

仕方ない……間接的にだが関係あるし、言っとくか。

竜「ブラッドスタークとナイトローグの事だよ」

海「あの人達がどうかしたんですか?」

途端、海未と穂乃果とことりは顔を険しくさせる。

まぁ、危害を加えてきた奴らだしな。

反対にニコさんと一年3人は首を傾げてる。

竜「あれは本来暴れる恐竜を鎮圧する為のスーツなんだが、完成する事は無い筈のものらしい」

穂「どうして?」

竜「ジュラシック・パークはエンターテイナー性を追求したからだ。ブラッドスターク達のスーツはどちらかというと軍事兵器に近いからな。んで……その考案者なんだが……ことり」

こ「ほぇ?」

俺が名前を呼ぶと可愛らしく首を傾げることりだったが、次の瞬間には驚きに顔を染めた。

竜「お前の父親の…………南惣助なんだよ…」

こ「……そんな……」

愕然とすることり。

穂乃果と海未も驚きに目を開き、真姫達も何となく分かったのか、少なからず驚いてる。

竜「でもこれは必要無いと判断された上に、その判断が下された瞬間、惣助さんは恐竜学者を止めている。だからもしかすると…「やめて!」……ことり」

俺の推測を途中で止めることり。

ことりは声を震わせて言う。

こ「お父さんがスタークだって言うの?そんな事無いもん!! 竜くんだって知ってるでしょ?お父さんがすごく優しい人だって!何より……竜くんの口からそんな事を聞きたくない!!」

竜「……」

穂「ことりちゃん……」

海「ことり……」

これは言い過ぎたな……。

竜「……悪かったよことり。今言った事はなかった事にしてくれ…」

結果、この後は解散になった。



ーーーーーーーー



その夜、俺達はラインの電話機能を使い、話していた。

そして、海未は生徒会長が昔バレエをしていた事を語る。

そのダンスが、いかに凄かったかを…。

それを聞いた穂乃果の意見に

「「「「えええ!? 生徒会長に!?」」」」

一年生組とニコさんが驚く。

穂乃果は続ける。

穂「うん。生徒会長にダンスを教わろうと思うの!海未ちゃんも同じ意見でしょ?」

海「はい…」

ニ「話があるって、そんな事?」

花「でも、生徒会長…私たちの事……」

凛「嫌ってるよね~、絶対!」

ニ「っていうか…嫉妬してるのよ、嫉妬!」

花陽、凛、ニコさんの口から出るのはどれも生徒会長への苦手意識や嫌悪感のようなものがある。

確かにあれだけ目の敵にされたり、頑なに認められなかったりしたんだ。

そう思うのも無理はないだろう。

しかし、

海「私もそう思ってました。……でも、あんなに踊れる人が私達を見たら、素人みたいなものだって言う気持ちも分かるのです」

穂「そんなに凄いんだ」

生徒会長のダンスを実際に見て、いつも穂乃果達のダンスを見てきた海未がそう言うほどなのだから、きっとそれだけの実力が生徒会長にはあるのだろう。

それなら練習中に海未があれだけいつもよりダンスを突き詰めようとした気持ちも理解できる。

真「私は反対」

不意に聞こえたのは真姫の異議の声だった。

竜「真姫、理由は?」

真「簡単よ。潰されかねないわ」

シンプルな答えで何より。

穂「うん……」

ニ「そうね、3年生はニコがいれば十分だし」

竜「ええ~……」

ニ「何っ!? なんか文句あるの!?」

竜「いえ…」

ニコさん、それは1番の上級生は自分だけがいいとかいう理由ではないですよね?

花「生徒会長、ちょっと怖い……」

凛「凛も楽しいのがいいなー!」

花陽と凛からは弱気な声が聞こえる。

それも仕方ない。

ただでさえ大人くて臆病でもある花陽だ。

色々と突っかかってくる生徒会長が苦手じゃないはずがない。

凛にしたっても同じ。

誰だって辛いだけの練習より、疲れてもみんなで楽しく練習できる方がいいに決まっている。

海「そうですよね……」

海未も多少困っているようだった。

さて、ここで1つ考えてみよう。

今の話し合いの中で、ほとんどの者が生徒会長にダンスを教わる事への提案に反対した。

しかし、それはダンスを教わる事自体が問題ではなく、生徒会長への苦手意識があるからだ。

なら、言い方や捉え方を変えて、μ'sのレベルアップとして、もう一度考えてみる事にする。

答えは……教えを乞うだ。

竜「俺は賛成だ」

「「「「ええぇぇぇぇぇぇ!!!?」」」」

海「竜司?」

一年3人とニコさんは驚き、海未は俺が賛同したのが余程意外と感じたのか、間抜けな声を漏らす。

竜「考えてもみろ。こいつはまたとないチャンスだぞ?つべこべ文句言わずに、利用できるものは利用しようぜ?」

真「利用って……」

ニ「あんたどうなるか分かってんの!?」

真姫とニコさんは不服なようだ。

すると、

穂「私もいいと思うけどな……」

「「「「えぇっ!?」」」」

ニ「あんたも何言ってんのよ!?」

穂乃果の賛同的な発言に1年生組とニコさんは驚いた。

竜「どうしてだ?」

俺は楽しそうな声音を抑えて、出来るだけ冷静な声音で問う。

穂乃果は至って普通に言い放つ。

穂「だって、ダンスが上手い人が近くにいて、もっと上手くなりたいから教わりたいって話でしょ?」

竜「そうだな…」

穂乃果の確認の質問に肯定する。

穂「だったら私は賛成!」

こ「穂乃果ちゃん…」

穂「頼むだけ頼んでみようよ!!」

穂乃果が海未の提案を飲んだ。

ニ「ちょっ!待ちなさいよっ!!」

こ「でも絵里先輩のダンス、ちょっと見てみたいかも……」

花「あっ、それは私も!」

ニコさんが異を唱えようとするが、ことりと花陽が穂乃果の意見に賛同した。

穂「よし!じゃ、さっそく明日聞いてみよう!」

ニ「どうなっても知らないわよ…」

竜「んじゃあ、明日生徒会長に頼みに行く。メインは俺と穂乃果達で行くが、一応着いて来てくれ。そんだけだ。それじゃあ、See you」

それぞれの挨拶を確認してから通話を切…

海「竜司…」

こ「竜くん……」

ろうとしたら、海未とことりに話しかけられた。

竜「なんだよ?」

こ「あっ、えっと……」

海「ことりからどうぞ」

こ「あっ、それじゃあ、竜くん。放課後はごめんね?」

ああ……スタークの事ね。

竜「別にいいよ、海未は?」

海「私はただのお礼です。先程はありがとうございました♪」

竜「気にすんな。じゃあな?」

海「はい!」

こ「うん♪」

こうして2人からの通話も切れ、俺は就寝した。



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Game#35


氷「天才科学者の天青竜司はμ'sのダンスレベルを向上させる為、生徒会長の絢瀬絵里にダンスの教鞭を頼む事にした」

竜「なんで氷室さんがあらすじ紹介してんの?」

氷「出番が無いからだ…」

竜「あっ………すいません」


翌日。

穂「お願いします!」

穂乃果の声が廊下に響く。

絵「私にダンスを……?」

穂「はい!教えていただけないでしょうか!」

決めた通り、俺達は生徒会長にダンスを教えてもらえないかというお願いをしに来た真っ最中だった。

穂「私達、上手くなりたいんです!」

穂乃果の言葉を聞いて、生徒会長は一度後ろの海未の方へ一瞬だけ目線をやる。

何でこんなお願いをしてきたのか察しがついたのだろう。

絵「……分かったわ」

一度目を瞑り、何秒か考えたあとの答えがそれだった。

穂「本当ですか!?」

絵「あなた達の活動は理解できないけど、人気があるのは間違いないようだし、引き受けましょう」

穂乃果の顔が明るくなる。

相変わらず毒を入れてくるあたり、そんなにも穂乃果達を認めたくないのか。

絵「でも、やるからには私が許せる水準まで頑張ってもらうわよ。いい?」

穂「……はい!ありがとうございます!!」

生徒会長が許せる水準。

それはきっと穂乃果達が思ってる以上にキツイだろう。

全然まだまだだと言うくらいの実力の持ち主なのだから。

でも、何処までも真っ直ぐな穂乃果の意志を、俺は信じてる。


竜司sideoff






絵里side


私は今、屋上で彼女たちμ’sのダンスを見ているところなのだけど……。

凛「にゃっ!? うわわわわっ!?」

竜「凛、大丈夫か?立てるか?」

凛「痛いにゃ~…」

ダンスを教えている上に当たって、どのくらい踊れるのか見る必要があったので、踊ってもらっている途中で1年生の星空さんって言ったかしら…、オレンジ色のショートカットの子が転んでしまい、そこに天青君が歩み寄り、星空さんを引き上げる。

何よこれ…、全く基礎ができてないじゃない。

絵「全然ダメじゃない……!よくここまで来れたわね!!」

凛「昨日はできてたのにー!」

昨日はできたのに今日はできない。

そんなものは勝負の世界では通用しない。

絵「基礎ができてないからムラが出るのよ。足を開いてみて?」

凛「こう?」

星空さんが座って開脚の姿勢をとったのを確認した私は、星空さんの背中を押した。

凛「うぎっ!? 痛いにゃー!!!!」

星空さんは恐ろしいくらい身体が固かった。

絵「これで?少なくともお腹が床につくくらいじゃないと話にならないわよ」

凛「えぇー!?」

絵「ダンスは一旦中断。みんなの柔軟性を見せて!!」

それぞれがダンスを中断し、屋上の床に座って柔軟体操を始めた。

みんな比較的に身体が固い。

合格ラインを上回っているのは…、

こ「ほっ」

穂「ことりちゃんすごーい!!」

こ「えへへ…。家で毎日お風呂上がりにやってるんだ~」

照れくさそうに笑っている南さんくらいね。

高坂さんは南さんを見て、感心していたがそんな場合ではない。

絵「感心してる場合じゃないわよ。ダンスで人を惹き付けたいのでしょう?」

人によっては意地悪を言ってるように聞こえるかもしれない。

でも、学校を救うということを知るためにはこのくらいでないと伝わらない。

絵「残り10分!!」

筋力トレーニングを挟み、片足平行立ちをやらせる。

最初こそよかったものの今はみんなが苦しそうな表情を浮かべていて、みんなの足が笑っている。

花「あっ!?」

すると1年生の一人、小泉さんがバランスを崩し、倒れた。

凛「かよちん!!」

竜「花陽っ!……怪我は……無いな…」

小泉さんに、天青君と星空さんが駆け寄る。

……もうこれで分かったはずよ。

絵「もういいわ。……今日はここまでよ」

「「「「「えっ!?」」」」」

あなたたちでは人を惹き付けることはできない。

音ノ木坂は救えない。

ニ「ちょっと!」

真「いくら何でも、そんな言い方は無いんじゃない!?」

絵「私は冷静に判断しただけよ」

西木野さん、矢澤さんが文句を言ってくるが、一言だけ言い私は戻ろうとする。

時間の無駄みたいだったわね。

穂「待ってください!!」

ドアに手をかけたところで高坂さんが私を呼び止める。

恨み言を言われるのかと思い、後ろを振り返るとアイドル研究部のメンバーが前に並んでいて…

穂「ありがとうございました!! 明日もよろしくお願いします!!」

「「「「「「よろしくお願いします!」」」」」」

私に向かって一礼をした。

だけど、私にはメンバーの人に何の言葉も言えなかった。




ーーーーーーーーー



私は今日も屋上へ行く。

でもなかなかドアを開ける事が出来なかった…。

何故だか分からないが、日が経つにつれてこのドアを開けるのに躊躇いを感じてしまう。

真「覗き見ですか?」

後ろから西木野さんがやって来た。

絵「あっ……いえ……」

凛「あぁーー!!」

私が躊躇っていると、星空さんたちにも見つかってしまった。

凛「そんなところにいないで早く行っくにゃー!!」

星空さんが有無を言わさずに私の背中を押した。

凛「にゃんにゃにゃんにゃにゃーん♪」

絵「あっ!? ちょっと!!」

押し込まれるように入った屋上では、メンバーが歓談しながらウォーミングアップをしていた。

竜「あ…生徒会長…」

穂「おはようございます!」

こ「まずは柔軟ですよね?」

天青君が私に気づき、高坂さんが私に挨拶をし、南さんが練習内容の確認を取ろうと私に聞いてきた。

絵「……辛くないの?」

「「「「「「えっ?」」」」」」」

私が溢した呟きに全員が反応した。

絵「昨日あんなにやって、今日もまた同じ事をするのよ…。第一、上手くなるかどうかも分からないのに…。天青君もよ。どうしてあなたは戦うの?誰に頼まれた訳でもない。誰かに感謝される訳でもない。なのにどうして?」

穂「やりたいからです!!」

私の問いに、先ず高坂さんが間髪を入れず、答えた。

絵「…………っ」

答えた彼女の目は一点の曇りもなく、澄んでいた。

穂「確かに練習は凄くキツいです。竜ちゃんがマッサージしてくれても身体中痛いです!! でも廃校を阻止したい、音ノ木坂学院を救いたいという思いは生徒会長にも負けません!! だから、今日もよろしくお願いします!!」

「「「「「「お願いします!!」」」」」」

高坂さんが言うと、他のメンバーも私に頼んでくる…。

亜『私ね、μ'sのライブを見てると胸がカーッて熱くなるの!一生懸命で、目一杯楽しそうで!』

亜『そりゃ…お姉ちゃんに比べると、そうだけど……でも、すごく元気がもらえるんだ!!』

いつか亜里沙が言っていた。

その意味がやっと分かった。

何故彼女たちがここまで人気があるのか…。

そして天青君も言う。

竜「確かにそうかもな。でも、誰かを助けると、自然と顔がクシャってなるんだ。それが俺は心地よくて……。会長、見返りを求めたら、それは善人じゃなくなるぞ?」

そんな天青君に高坂さん達は安心するような、呆れるような笑顔を向ける。

その真っ直ぐな気持ちに、私は何も言えず、屋上を黙って出た。



ーーーーーーーーー



屋上を後にした私は早歩きで廊下を歩いていた。

何故こんなにも早歩きなのか自分でも分からない。

いや、分かってはいても分からないフリをしているのかもしれない。

とにかく、先程の高坂さんや天青君の言葉を聞いてから胸がずっとざわついている。

まるで私の心の中の本音が抉られたかのように、1番脆い部分をゆっくりと、何かが侵食していた。

そんな時、後ろから声をかけられた。

希「ウチな……」

絵「っ、希……」

それは親友である希だった。

どうしてここに?

希「エリチと友達になって生徒会やってきて、ずーっと思ってた事があるんや。エリチは、本当は何がしたいんやろって」

絵「え…………」

希はそのまま語る。

希「ずっと一緒にいると、分かるんよ。エリチが頑張るのは、いつも誰かのためばっかりで、だから……いつも何かを我慢してるようで……全然自分の事は考えてなくて……!」

絵「……っ!!」

ダメ……これ以上は聞きたくない。

私は希を置いて去る。

それでも希はトドメを刺すように、叫んできた。

希「学校を存続させようってのも、生徒会長としての義務感やろ!! だから理事長は、エリチの事、認めなかったんと違う!?」

………分かってた。

本当は分かってた。

義務感で動いてるのも、自分の気持ちに蓋をしていた事も。

でもね……希。






絵「何よ……何とかしなくちゃいけないんだからしょうがないじゃない!!」






もう遅いのよ。

絵「私だって、好きな事だけやって、それだけで何とかなるんだったらそうしたいわよ!!」

私はいつの間にか、涙を流していた。

悔しさと、後悔と、自分の力の無さに。

ああ……1度吐いたらもう止まらない。

希が呆然としてるのも無視して言う。

絵「自分が不器用なのは分かってる……!でも!……今更アイドルを始めようなんて、私が言えると思う……?」

これが私の本音。

それを聞いた希はフッと笑って、こんな事を言った。

希「ならやればええやん…」

絵「無理よ!」

彼女達はきっと許してくれない。

それを聞いた希は、余裕のある顔で言ってきた。

希「あのなエリチ。エリチがアイドル研究部に入らんのは勝手や。けどその場合、誰の負担が増えると思う?」

絵「何を……言って?」

私は最初訳が分からなかったが、希は衝撃の一言を落とした。









希「μ’sの皆や」










…………え?

どうしてあの子達が?

希「あの娘たちは、廃校の危機を救えるのに一番近い立ち位置やから皆から期待されとる。けど、そんな期待とは関係ないところで頑張って来た娘たちやから、その期待のせいで逆に潰れてしまうかもしれん。そうなったら学校の皆はよってたかってμ’sを責める。エリチが今助けてあげるしかないんよ!」

絵「……っ」

希のその言葉で、私は脳内がパンクしそうなり、逃げ出した。


絵里sideoff






◎side


希「やっちゃった……」

希は息を吐き、後悔する。

先程の絵里の悲痛な顔と本音。

それは親友である希にとっては最も見たくなかった顔だった。

助けたかった。

自分の手で、大切な親友を、救いたかった。

手を差し伸べてあげたかった。

なのに、自分自身の手で、親友を泣かせてしまった。

その真実が、親友を追いかけようとする足を動けなくしてしまっていた。

このまま終わらせる訳にはいかない。

ここで終わってしまえば、2度と親友を救う事ができないかもしれない。

そう思っていても、頭の中で痛いほど理解していても、初めての親友を、大切な親友を失うかもしれないという恐怖が、少女を硬直させていた。

もう、どうする事もできないのか。

それを考えた瞬間、俯いていた少女から落ちたのは、涙だった。

そして、その少女の涙に呼応するかのように。

背後からゆっくりと……












自意識過剰なヒーローはやって来る。










(BGM:Be the One)

竜「東條さん」

希「……ごめんな、みっともないとこ、見せちゃったんっ……」

俯いたまま、体を震わせながら、声も震わせながら、振り返らずに言う。

希「ウチじゃ……あかんかったみたい……。ずっと一緒におったウチが、エリチを救いたかったんやけどな……っ」

独り言のように話す少女。

その声は笑っているかにも聞こえるが、ずっと震えていた。

必死に泣くのを堪えているかのように。

そんな少女に竜司は、

竜「いやいや……あなたはよく頑張ったほうですよ」

健闘を讃えた言葉を送る。

竜「後は俺がやってもいいですか?」

希は黙って頷く。

そして懇願するように、希望を乗せるように言う。

希「お願い……っ」

竜司は希の頭に手をポンと乗せて、宣言する。








竜「さぁ……実験を始めようか?」









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Game#36





◎side


その少女…絢瀬絵里は、とある教室の席に座っていた。

そこは絵里のクラスで、絵里の席でもあった。

まだ朝の早い時間帯故か、登校してくる生徒はどこにもいなかった。

朝の日差しを微かに感じながら、絵里は机で頬杖をつく。

絵里の顔は悲哀に満ちていた。

先程の出来事を思い出してみる。

親友に言われた事がずっと頭の中でグルグルと回っていた。

希は絵里の本心を知って尚、それでも自分の口から本心を言うのを待っていた。

そのために強めに言ってしまったところも、絵里の力が必要な事をほのめかした所もあったのだろう。

ここしかないと思って。

しかし、それは悪手となってしまった。

それが余計な焦りと戸惑いを絵里に与えてしまった。

考えて、考えて、考えて。

だけど、出てきたのは結局自分への否定だった。

それで親友をも突き放してしまった。

今更本音を言っても意味がないから。

だからもう、誰も自分に手を差し伸べてくれる事はない。

これで絢瀬絵里は本当の意味での孤独。

それでも。

絵「………嫌だ」

まだ絢瀬絵里は助けを求めていた。

孤独から抜けたいと思っていた。

自分で親友の手を払ったというのに、まだすがっていた。

まだ救いを求めていた。

そんな事ある訳無いのに。

どれだけ自分がそれらを否定してきても、その気持ちはずっと心の奥底で願っていた事だった。

それはもうできない事だとも理解していた。

あれだけ否定した。

なのにまだ自分に手を差し伸べようとする者がいれば、そいつは本当に天性のバカなのだと思う。

絵「……けて……っ」

少女の声が静かな教室内に響く。

絵「助けてよぉ……っ」

そして、そんな絵里の助けをまるで受けたかのようなタイミングで、教室のドアが開かれた。







竜「ここにいたんだ…」









どうしようも無いバカな天才で、自意識過剰なヒーロー。

そんな彼は、問答無用にズカズカと絵里の心に踏み込む。

絵「ぁ……っ、な、何で、あなたが……」

よりにもよってあの少年…竜司が来た事により、絢瀬絵里は咄嗟に自分の涙を拭う。

そうしてまた、本音を隠し、嘘を飾る。

しかし、そんな事は急にはできない。

それが表情となり、焦りとなり、顔に出る。

竜司は顔をクシャっと歪ませながら、絵里に近寄る。

竜「探しましたよ?ちょっと話しません?」

絵「話?私は話すことは無いわ」

明らかに歓迎されているような感じではない事も分かっている。

そんなのは絵里の目を見れば分かる。

竜司を見るその目は、いまだにどこか敵対心があった。

だがそれもすぐに崩れる。

竜「よく言うよ。本当はスクールアイドルやりたい癖に♪」

絵「なっ…!?////」

竜司のおちょくった発言に、絵里は顔を赤くする。

あの会話を聞かれていたのだ。

自分の本心を。

竜司はそんな絵里をほっといて言う。

竜「なぁ会長。義務感でやっても何も楽しくないし、何も良くならないよ?」

絵「……あなたに何が分かるの!? 天才のあなたに!挫折の経験も無いあなたに!」

絵里は席を強く立ち、竜司の胸ぐらを掴む。

自分の事を分かったように言われるのが凄く腹が立った。

自分より能力のある竜司が言うと、上から目線で言われてるみたいで腹が立った。

それでも、竜司はそれを意に返さない。

むしろ怒鳴り付けた。

竜「悔しかったらいい加減本音で話せよ!! いつまで嘘で塗り固めるつもりだ!? だからあんたは不器用なんだよ!!」

絵「出来るなら私だってそうしたいわよ!! けどもう遅いのよ!!」

絵里も怒鳴り返す。

竜「関係ねえよ!!」

絵「……え?」

けれど、そんな絵里の心情なんて竜司にはどうでもよかった。

竜司ははっきりと言う。

竜「今まで貴方が穂乃果達にしてきた事くらい、俺も側にいたんだから分かる。でも、そんなもの俺にもあいつらにも関係無いんだよ。貴方が穂乃果達にしてきた事、言ってきた事、立ちはだかってきた事、邪魔にも似たような事もしてきたのも知っている。それでも、前までの貴方と今の貴方の気持ちが変わってる事くらい、その涙の跡を見りゃ分かるんだよ。なぁ…今の貴方の本当にやりたい事はなんだ?……言えよ、絢瀬絵里!!」

言われてハッとする。

それでも、少女の口から出た言葉は、

絵「……ダメよ……。もしここで私が入りたいって言って入ったとしても、彼女達は私の事を快く思わない。そこまでの事をしてきたんだもの……」

絢瀬絵里という少女は高校3年生としてはしっかりしている。

しかし、しっかりしているからこそ、真面目だからこそ、過去の事をそう簡単には清算できないという事も知っている。

だが竜司はそれを真っ向からへし折る。

竜「あんたバカだろ?」

絵「なっ!?」

絵里は驚愕に目を開く。

竜司はそんな絵里をほっといて言う。

竜「あいつらは、そんなに心は狭くない。勝手に人の器を決めつけるな。あいつらがそんな奴等なら、俺はとっくにあいつらから離れてる」

絵「それは……そうかもしれない。でも!もし彼女達がオープンキャンパスで失敗して、挫折したら、きっと彼女達は立ち直れない…」

竜「だからぁ~、勝手に人の器を決めつけるな。あいつらはそんなに弱くない。貴方の教えについてきたくらいだからな。それに貴方こそ、いつまで挫折に拘る気だ?挫折ってのはな、逃げるものじゃない。乗り越えて、明日の自分の肥やしにするものだ」

絵「肥やし……?」

絵里は竜司の言葉にキョトンとする。

まるで初めて聞いたような、挫折の意味をまるっきり覆されたような気分だった。

竜「そうだ。だからほら……」

そう言って、竜司は教室の入口を指さす。

そこには、穂乃果達μ’sのメンバーと希がいて、此方に入ってきた。

竜「さぁ絢瀬絵里………過去を乗り越えろ」

竜司は絵里の背中を押す言葉を送る。

それに感化された絵里は、竜司から手を離し、震える声で問う。

絵「……ぃ、の……?本当、に……?」

竜「ああ」

俯いて小さく呟く絵里の微かな声にも、竜司はちゃんと反応する。

頑固で弱くて挫折から逃げていた少女が変わる瞬間を、過去を乗り越える瞬間を、見届けるために。

絵「……り、たい……っ。わた、しも……μ'sに、入りたい……っ!!」

乗り越えた。

変わった。

前に進む事ができた。

心からの本心を素直に曝け出す事がようやくできた。

そして、そんな少女を彼女達は迎える。

穂乃果が絵里に手を差し出す。

穂「絵里先輩、是非μ'sに入ってください!私達には絵里先輩が必要なんです!一緒にμ'sで歌ってほしいです!スクールアイドルとして!」

希「特に理由なんて無い。やりたいからやる。大体そんなもんやん?」

希の言葉が教室内に響く。

それは、さっきとは違って、絵里の心へすんなりと入っていった。

手は、握られた。

穂「絵里先輩……!」

こ「これで8人……!」

竜「いや、まだだ」

ことりが8人と呟いた瞬間、竜司がそれを遮った。

まるで他にもまだμ'sに入る者がいるかのように。

竜「あと1人、μ'sに入るべき人がいる。そうだろ?東條さん」

希「ふふっ、やっぱり天青君はさすがやね」

竜司と希が見つめ合う中、他のメンバーは少し驚いていた。

穂「ええ!そうなんですか!?」

希「占いで出てたんや。このグループは9人になった時、未来が開けるって。だから付けたん。9人の歌の女神、μ'sって」

穂「じゃ、じゃあ、あの名前付けてくれたのって、希先輩だったんですか!?」

竜「そうゆう事」

希「そういう天青君も何となく察し付けてたんやろ?」

竜「まぁあ?てぇ~んさっい科学者ですから♪」

真「はぁー、台無し…」

竜「なんだとこのツンデレお嬢様!!」

真「ちょっと!変なアダ名付けないでよ!!」

『ぷふ……あははははははははははは!!』

竜司と真姫の軽い口喧嘩に吹き出す8人。

絵「はぁ……希。まったく貴方には呆れるわ……」

笑いに一息吐いた絵里はそう言うと、歩き出す。

海「どこへ?」

海未の問いかけに、絵里はただ一言だけ言った。





絵「……決まってるでしょ。練習よ!」






もうここに、笑顔じゃない者はいなかった。

それを見た竜司は小さく呟く。

竜「実験成功」



ーーーーーーーーーー




その大団円な様子を、氷室玄斗は見ていた。

その結末に、氷室は口元を笑ませ、ナイトディノホルダーを取り出す。

そしていざ恐竜カードをスラッシュして、召喚しようとした瞬間、







「はいストップ」








何者かに止められた。

それは南惣助だった。

「貴様……」

氷室は惣助を睨む。

何故邪魔をする?と言わんばかりに。

惣助はヘラヘラ笑って言う。

「今回はいいだろ?特別にプレゼントってことで。それでもやるなら……」

惣助はそう言って、ブラッドディノホルダーを取り出す。

「俺が相手になるぞ?」

惣助はブラッドディノホルダーの画面に映っているブラッドスタークの姿をタッチする。

《コブラ!》

瞬間、

♪~~♪

地味に癖になって覚えてしまうようなメロディが流れる。

惣助は唱える。

「蒸血」

《ミストマッチ》

そしてブラッドディノホルダーのトリガーを弾くと、黒煙が撒き散らされ、惣助はブラッドスタークに変わる。

《コッ・コブラ……コブラ……ファイヤー》

変わった後、後ろに花火が散る。

それを見た氷室も自身のナイトディノホルダーの画面に映っているナイトローグの姿をタッチする。

《バット!》

「………もっとお前とは早くにケリを着けるべきだったよ…」

♪~~♪

ナイトディノホルダーからも同じメロディが流れる。

「蒸血」

《ミストマッチ》

氷室も唱え、トリガーを弾くと、黒煙が撒き散らされ、氷室はナイトローグに変わる。

《バッ・バット……バット……ファイヤー》

そして後ろに花火が散る。

惣助は変声器で声を渋めに変えて言う。

「お前が俺に勝てるとでも思ってるのか?」

「俺のナイトローグも、お前のブラッドスタークも、強さは同じ。つまり――」

それ以降は隔離空間に行ってしまい、聞き取る事は出来なかった。


◎sideoff






竜司side


極端な事を言ってしまうと、やはり絢瀬会長がμ'sに入ってくれたのは物凄く大きかった。

理由は、これまでの基礎訓練やダンスレッスンでの効率が大幅に良くなっていた。

そんなこんなでオープンキャンパスの日。

他の部活も『部活発表』というのがあるために、学校内は賑やかだったが、そんな中でも意外と静かなグラウンドに俺達はいた。

言うなればステージ裏。

そこでは絶賛円陣みたいな事をしていた。

俺以外が。

穂「もお~、いい加減竜ちゃんも入ればいいのに~!!」

俺以外の全員がピースの形を造り、それを9人が同時に生成し、それぞれの右手をくっ付けている。

これがこの数日間で穂乃果達が考えた自分達なりの『μ's』の円陣らしい。

だから『マネージャー』である俺が入る訳にはいかないのだ。

竜「バカ言うんじゃありません。俺はお前達のダンスを動画に撮らなきゃいけない仕事があるの。お分かりかな?ア穂乃果ちゃん」

穂「でもそれ今からやる事じゃないよね?後『ア』は余計だよ!!」

竜「黙らっしゃい。準備が色々あるの」

穂「ぶーぶー!!」

穂乃果がブー垂れるが知らん。

すると会長が言う。

絵「でも他の部活はマネージャーも円陣の中に入ってたわよ?」

穂「ほら見なよ!!」

竜「家は家!他所は他所!」

真「出たわね……竜司の謎のお母さん節…」

真姫が呆れた目で見てくる。

竜「うるさい。とにかく、しっかりな?」

そう一言残して、俺は客席に行く。




ーーーーーーーー



客席に着き、ビテオカメラの準備をしてると、雪穂と亜里沙が来る。

雪「竜兄、こんにちはっ!」

亜「竜司さん!こんにちはですっ!」

2人して笑顔を俺に向けて挨拶をしてくれる。

妹セラピーだな。

竜「おっす。夜は?」

亜「焼肉っしょーーー!!」

亜里沙が可愛く右腕を上げて言ってくれる。

こういうノリのいい子好きだよ。

雪「竜兄……いつの間に亜里沙にこんな事教えたの?」

竜「さぁてね…」

雪穂のジト目をスルーする。

そんなこんなで穂乃果達が出てきて、亜里沙達の視線はそちらに向く。

すごいキラキラした目で見てる。

穂「皆さんこんにちわ!私達は、音ノ木坂学院スクールアイドル、μ'sです!私達は、この音ノ木坂学院が大好きです!この学校だから、このメンバーと出会い、この9人が揃ったんだと思います。これからやる曲は、私達が9人になって初めてできた曲です。私達の、スタートの曲です!!」

本当の意味での、スタート。

9人として揃った、完成した、μ'sのスタート。

そのライブが今、始まる。

「「「「「「「「「聴いて下さい。『僕らのLIVE 君とのLIFE』!!」」」」」」」」」


(♪:僕らのLIVE 君とのLIFE)




赤を基調とした衣装で舞い踊る9人。




さて、結論から言うと、結果は言うまでもなかった。





オープンキャンパスは、無事成功に終わった。







『真のμ's』に相応しい結果として。







竜「さぁ……第2フェーズだ…」









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Game#37


竜「天っ才科学者で天才恐竜学者の天青竜司は、9人になった女神を守るヒーローである!」

絵「自分でヒーローって言ってて痛くないかしら?」

竜「うるさいな~。そう言うこの人は堅物泣き虫生徒会長、絢瀬絵里」

絵「私は堅物でも泣き虫でも無い!」

竜「こうしてワンワン泣いてすがるものだから、心優しい俺が諭してあげたのだ。どうなる第39話!」

絵「泣いてすがってないし!!」


◎side


アメリカ本部ジュラシック・パーク。

無人島を人工的に作り出し、そこから橋をアメリカ大陸にかけたここは、入り口は入り口らしく、たくさんの恐竜グッズや大勢の客で賑わい、そこから真っ直ぐ行くと草食恐竜のコーナーに着く。

大人しいとは言え、恐竜。

安全の為、ガラス張りの球体型乗り物『ジャイロスフィア』に乗って見物する。

アメリカのジュラシック・パークにいる草食恐竜は以下の通り。

トリケラトプス。

スティラコサウルス。

パラサウロロフス。

パキケファロサウルス。

テリジノサウルス。

ブラキオサウルス。

ステゴサウルス。

ランベオサウルス。

コリトサウルス。

アンキロサウルス。

アパトサウルス。

草食恐竜のコーナーは島の大半を占めてる。

そこからもう半分は肉食恐竜コーナー。

ここはジャイロスフィアでは行かず、島の外周に作ってあるモノレールで見物する。

肉食恐竜は以下の通り。

ティラノサウルス。

スピノサウルス。

カルノタウルス。

ケラトサウルス。

ギガノトサウルス。

ディロフォサウルス。

ヴェロキラプトル。

以上。

補足すると、草食恐竜側は森林が多いが、肉食恐竜側は森林が少ない。

これはもしもの時の予防線の1つである。

尚、草食恐竜と肉食恐竜が棲息している場所の間には、乗り越えようとすると強力な火炎が放射される鉄柵が建てられている。

最後に、島の中央には翼竜園と人工プールがある。

翼竜園にはプテラノドンがいて、人工プールにはモササウルスが飼育されている。

また、恐竜を造り出すラボは島から少し離れて、同じく人工的に作られた島に建てられている。

さて、話は戻して肉食恐竜コーナー。

そこの分厚い鉄柵に囲まれている1つの人工巣。

そこに、彼女はいた。

ティラノサウルス・レックスのレクシィ。

彼女はこのアメリカ本部ジュラシック・パークの一番の古株であり、一番の目玉である。

そんなレクシィは、体を地面に着けて休んでいた。

そこに一人の女性が近寄る。

竜司の姉の環だ。

「レクシィ。気分はどう?」

環はレクシィの鼻を撫でる。

レクシィは1度目を開いて環を見ると、鼻を鳴らして目を閉じる。

「竜司じゃないのが残念な感じね♪」

環は可笑しそうに笑う。

レクシィは肉食恐竜の中でも、一番竜司になついていて、一番人間に馴れている。

そんなレクシィと言えどティラノサウルス・レックス。

人間が近寄ればたちまち食い殺す。

それでも環を殺さないのは、少なからず環を信頼しているからだ。

「もう少し……待ってあげて?」

環はレクシィの鼻を撫でて、そう言う。

レクシィはまた目を開いて環を見ると、静かに閉じる。

それに微笑む環。

そんな時、環の無線機に連絡が入る。

「はい、こちら環。………えっ!? ラプトルとティラノサウルスの遺伝子情報が盗まれた!? 誰に!? 分からない!? 早急に調べなさい!!」

あまりの怒声にレクシィが頭を起こしかけるが、環が撫でて宥めた事で、再び眠りにつく。

環は無線機を切る。

パーク管理長、天青環は自分の仕事を全うする。


◎sideoff






竜司side


翌日の放課後だった。

退屈な授業が終わり、今日はμ'sの練習があるからそのまま部室へ行こうとした時、

穂「竜ちゃーん!!」

竜「うわっと。何だよ、どうした?」

後ろから穂乃果が飛びついてきた。

暑いし、重いし、後柔らかいのが2つ当たってちょっとテンション上っがるぅ~!!

穂「まあまあ!海未ちゃんとことりちゃんとも合流して、部室に行ってからのお楽しみだよー!」

竜「………部室が広くなったことか?」

穂「何で知ってるの!?」

当たってたか……。

竜「何でだと思う…?」

実を言うと、オープンキャンパスも無事に終わったその翌日、掲示板に『廃校延期のお知らせ』と書かれていた。

その事で理事長に訊いた時に、この事を聞いたのだ。

穂「う~ん……分かんない。でもつまんないの~。驚かそうと思ったのに……」

穂乃果は俺に抱きついたまま、不貞腐れる。

ってかその前に早く離れてくれませんかね~?

回りの目線が痛いのよ。

穂「あっ!2人共いたっ!ことりちゃ~ん!海未ちゃ~ん!」

2人を見つけたのか、やっと離れてくれた穂乃果。

そのまま2人の元に行き、俺も彼女についていく。



ーーーーーーーーー



花「オープンキャンパスのアンケートの結果、廃校の決定はもう少し様子を見てからとなったそうです!」

部室に花陽の明るい声が響き渡る。

凛「それって……!」

こ「見に来てくれた子達が興味を持ってくれたって事だよね!」

穂「うん!……でも、それだけじゃないんだよ~!」

そう言って、穂乃果がニマニマしながら部室の奥の方の扉へ歩いて行く。

穂「じゃじゃーん!部室が広くなりましたー!!」

「「おおー!」」

竜「へえ、意外と広いんだな」

確かにこの部室を使ってはいても、奥の扉が何のかはずっと謎のままだった。

気になってたけど、こうなってたのか。

割と広いな。

実験も出来るし、小型の恐竜くらいなら出せるな。

穂「いや~、良かった良かったー!」

絵「安心するのは早いわよ」

穂「絵里先輩」

部室が広くなってテンションが上がっている穂乃果に、絢瀬会長が声をかける。

いつの間に来てたんだこの人。

絵「生徒がたくさん入ってこない限り、廃校の可能性はまだあるんだから。頑張らないと」

確かにオープンキャンパスは成功したが、それはあくまで及第点。

まだ完全ではないので、油断は出来ない。

そう思っていると、突然海未が泣き始めた。

一体、どうした?

海「……ひっく。ぐすっ」

竜「海未~?」

体調不良か?

すると、海未は会長に顔を近づけながら言う。

海「嬉しいです!やっと、まともな事を言ってくれる人が入ってくれました!!」

絵「えぇ!?」

凛「それじゃ凛達まともじゃないみたいだけどー」

どんだけ感動してんだよ。

まあ会長が入ってくれた事は確かに大きい。

生徒会長という事もあり、みんなをまとめる力も持っている。

それに関しては海未の助けになるだろう。

だけど、

竜「いや、俺は?」

そこだけ納得出来ない。

だって俺も結構まともな事言ってるよ?

だって天才だから。

海「確かに竜司もまともな事を言ってますが、あなたちょくちょくぶっ飛んだ事してますよ?」

「「「「「「「うんうん」」」」」」」

………なんか全員で頷かれた。

穂乃果や凛、ニコさんにまで頷かれたのがまた腹立つ。

希「ほな、練習始めよか」

竜「いたんだ。東條さん」

希「今さっき来たとこやけど、普通に失礼やな天青君」

だって事実だし。

こ「あ、ごめんなさい。私ちょっとこれから用事が……。今日はこれで!」

ことりはそれだけ言うと帰ってしまった。

穂「どうしたんだろ?ことりちゃん、最近早く帰るよねー?」

海「ええ、オープンキャンパスも終わって、今までずっと練習ばかりしていましたから。何か用事が溜まっていたりしてたのかもしれませんね」

穂乃果と海未が言う。

確かに海未の言うことも一理ある。

だけどもしそれが違ってたら?

例えば……。














竜「ことりに男が出来たとか!?」

『うん、それは絶対にない』

8人全員に速攻否定された。

息合いすぎじゃない?

竜「なぁんでさ!? 可能性としては多いにあるだろ!? 無きにしも有らずじゃん!!」

ニ「普通の女の子なら有り得る事かもね」

意外にも俺の意見に賛同したのはニコさんだった。

竜「どゆこと?」

全く意味が分からん。

ことりだって普通の女の子のはずだ。

ニ「いい?アイドルに恋愛はご法度なの!だから普通じゃないスクールアイドルのあの子に恋愛は有り得ないわ」

成る程……それは一理ある。

ニ「……でも、あの子も人間。どうしても割りきれない想いもあるって事は理解してるわ。だから『もう1つ』の理由を軽く説明してあげる」

もう1つの理由?

そんなのがあるのか?

ニ「まず、()()()な事から竜司の考えは間違ってるのよ。『普通の女の子』ならそういう浮いた話も納得できるけど、あの子は『ちょっと』違うからね。前提条件からして合ってないの」

竜「………ん?」

益々分からん。

ニ「とにかく、そういう心配は要らないって事。……それに……()()にいる全員もね」

………あっダメだ。

もう全然分からん。

ここにいる全員もって、そりゃ見たら分かる通りみんな女の子だし。

ニコさんの言っている意味を通訳してもらおうと周りを見たら見事に全員に目を逸らされた。

………まさか。

竜「君達も好きな人いるの?」

『…………』

答えは沈黙で返された。

まだ目を合わそうとしない。

うそーん……。

みんな青春してんだな~……。

竜「そっか~……。まぁ、いいんじゃない?頑張りなよ……」

こいつらが幸せになるなら、俺はそれで満足かな?

俺はこれまで同様、恐竜とだけ戯れてればいい。

言っててちょっと悲しくなってきたけど……。

そう思ってると、穂乃果に抱きつかれた。

穂「大丈夫だよ。私も、海未ちゃんも、みんなも。竜ちゃんを一人にしないから…」

何故だか、無償に優しい声で言われた。

ちょっと待って?

なんか涙腺に来るんだけど?

竜「えっと…あっ…サンキュー?」

とりあえずお礼を言っとく。

穂「うん!さあて、じゃあ着替えて屋上でμ'sのランキングチェックから始めよー!!」

そう明るく言った穂乃果の言葉で、俺は部室から出ていき、屋上に向かった。



ーーーーーーーー




穂「ふわぁ~あ、50位!? なにこれ!? 凄い!!」

屋上での練習の休憩中、穂乃果がノーパソの画面を見ながら、興奮したように叫ぶ。

どうやらランクが上がっていたようだ。

花「夢みたいです!!」

穂「20位に大分近づきました!!」

穂乃果は会長に報告する。

絵「凄いわね」

海「絵里先輩が加わったことで、女性ファンもついたみたいです!」

海未がそう言う。

絵「えっ?」

穂「確かに…」

穂乃果は絢瀬先輩の頭から、つま先まで見ながら

穂「背も高いし、足も長いし、美人だし、何より大人っぽい!流石、三年生!!」

絵「やめてよ…///」

穂乃果に褒められ、照れる会長。

まあ会長くらいの容姿なら、男子だけじゃなく女子のファンもつくか。

世に言う同性からも憧れの的として見られる理想的な女の子なのだろう。

しかし、次に俺と穂乃果の視線はニコさんに向く。

………ニコさんは、まあ…なんと言うか…。

ニ「ん?………何?」

穂「ああ……いえ…何でも」

ニ「フン!!」

コメントしづらいわな…。

希「でも、おっちょこちょいな所もあるんよ♪この前なんて、玩具のチョコレートを本物と思って食べそうになったり…」

東條さんが暴露する。

何それ、その瞬間チョー見たい…。

絵「希!」

穂「でも、ホントに綺麗!よし、ダイエットだ!!」

凛「聞き飽きたにゃ~」

穂乃果のダイエット宣言に凛がげんなりしながら言う。

確かに、何かと言ってるからな。

俺も正直うんざりだ。

一時期、ダイエットに協力してやった時があったが、物の見事にすぐに辞めたからな…。

あれには、流石にキレそうになった。

そこへ校舎の中からヒフミトリオが話かけてくる。

「オーイ、穂乃果ー!」

穂「ん?」

穂乃果と凛と海未が、何事かと思い、柵越しに見る。

「頑張ってね~!」

「ファイト~!」

「応援してるからね~!」

ヒフミトリオが応援の言葉をかけてくる。

そういやあの三人…見るの久し振りだな…。

穂乃果は手を振りながら「ありがとー!!」と返す。

絵「知り合い?」

穂「はい!! ファーストライブの時から、応援してくれてるんです」

会長の質問に答える穂乃果。

真「でも、ここからが大変よ」

真姫が突然、そんな事を言うので、全員真姫の方に向く。

真「上に行けば行くほど、ファンも沢山いる」

穂「………そうだよね…」

真姫の言葉に穂乃果は肯定する。

穂「20位か~…」

竜「それなら、何か思いきった方法を取るのが一番だな…」

俺が案を出すと、

ニ「その前にしなきゃいけない事があるんじゃない…?」

「「「「「「ん?」」」」」」

ニコさんの言葉に全員首を傾げる。

しなきゃいけない事…?

ニ「とりあえず、学校から移動するわよ」

この後、俺はともかく、穂乃果達は後悔することになった。




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Game#38





穂「あの~……凄く暑いんですが……」

秋葉原に移動してきて、穂乃果の発した第一声がそれだった。

それもそのはず。

俺以外の全員が何故かサングラスにマスク、しかもこの季節には確実に似合わない、暑いであろうコートを着ているのだから。

ニ「我慢しなさい。これがアイドルに生きる者の道よ」

たった1人だけ、この暑さでも余裕を持っているニコさんが言う。

マジかよ、そんな暑苦しい拷問みたいなのがアイドルの生きる道とか、アイドルどんだけ過酷なんだよ。

とりあえず不審者にしか見えないので、やめさせよう。

手を叩き、穂乃果たちを向かせる。

竜「はい、注目!ニコさんの考えた変装が『暑い』『逆に目立つ』『バカバカしい』の一つでも思った人は遠慮無く脱いでいいからな!」

俺の言葉で、ニコさん以外全員すぐに脱いだ。

ニ「ちょっと!? 何で脱ぐのよ!?」

ニコさんが抗議するが、俺が近づいて言う。

竜「いいですかニコさん。この変装では一般人に紛れる所か、逆に目立つ。最悪…不審者として警察に通報されても可笑しくないレベルですよ」

ニ「ぐっ…!」

俺の説明に詰まるニコさん。

竜「それに変装するなら、髪型を変えるとか、ウィッグを被るとか、そういうちょっとの小細工で意外とバレないもんなんですよ?」

ニ「…………」

俺の懇切丁寧なアドバイスで、ニコさんも不審者コーデを辞める。

そんな時

凛「凄いにゃぁぁ!!」

凛の叫び声がした。

何事かと思い、その場所へ行くと、そこは最近出来たスクールアイドル専門のショップだった。

凛と花陽はそこのあるコーナーにいた。

花「うわああぁぁぁぁぁぁ!!…うわあああふわぁぁぁぁ!!………」

花陽があまりの喜びように、凄い声を出している。

凛「かよちん!これA-RISEの!?」

そこはA-RISEのコーナーだった。

成る程…。

そういうことだったのか…。

穂「何ここ?」

そういうことに疎い穂乃果が疑問を発すると、ニコさんが食い付き気味に

ニ「近くに住んでるのに知らないの!? 最近オープンしたスクールアイドルの専門ショップよ!」

説明する。

絵「こんなお店があるなんてね…」

希「ラブライブが開催されるくらいやしね」

竜「確かにそうとも言えるな」

スクールアイドルの甲子園とも呼ばれるラブライブがあるくらいなのだから、こういう専門の店があるのも十分に考えられる。

ニ「とは言え、まだ秋葉に数軒あるくらいだけどね…」

竜「ラブライブ開催されるって知ったのもまだ最近だし、それでも専門ショップがもう数件あるって早いな」

ニ「それだけスクールアイドルが世間に浸透してきてるって事よ。主にA-RISEのおかげでね」

竜「A-RISEね……」

実際のところを言えばそうなのだろう。

テレビでスクールアイドルが特集されれば絶対に名前を見るのがA-RISEなのだから。

スクールアイドル=A-RISEというのが今の世間での一般常識になっている。

グッズを見回せば嫌でも分かるが、そこらへんのスクールアイドルよりも断然にA-RISEのグッズが倍多い。

全国にどれだけのスクールアイドルがいるのかは分からないが、俺が予想しているよりも遥かに多いのだろう。

そんな時、凛が

凛「ねぇ、みてみて!この缶バッジの子、可愛いよ!! まるでかよちん!そっくりだにゃ~!」

そう言って、ある缶バッジを見せてくる。

そこには、ある人物がプリントされていた。

竜「つーか…それ……花陽だよ…」

俺は指を指しながら言う。

凛「ええぇ!?」

凛が驚く。

いや、君幼馴染みなんだろ?

何故気づかない…?

で、そのコーナーを見ると

竜「ここμ’sのコーナーみたいだな…」

俺がそう言うと、全員「ええぇぇぇ!?」と驚く。

穂「嘘っ!? う、ううう海未ちゃん!こ、ここここれ私たちだよ!!」

海「お、おおお落ち着きなさい!!」

竜「まず海未が落ち着いて…」

穂「ミュ、ミュミュミュμ’sって書いてあるよ!! 石鹸売ってるのかな!?」

竜「何でアイドルショップで石鹸売らなきゃならない…」

コラボ商品としては有りかもしれんが…。

俺と穂乃果と海未がそんな会話をしていると、ニコさんが

ニ「退きなさーーい!!」

と言いながら、俺たちを掻き分けて、前に出る。

ニ「あれ!? 私のグッズがない!! どういうこと!?」

そう言いながら、グッズを掻き分けて漁るニコさん。

竜「落ち着けニコさん。ほら、ここにあるぞ」

ニ「あ、あった!!」

俺が落ち着かせながら、ニコさんに自分のグッズを指差す。

ニ「ほら竜司見てみなさい!私の、ニコのグッズがあったわよ……!!」

そう言うニコさんの目には、うっすらと、涙が滲んでいた。

必死に流さないように。

けれど、どうにも抑えきれない思いがあったから。

そうだよな……。

この人はずっとスクールアイドルになりたくて、憧れて、諦めきれなくて、1人になっても部室を守り続けて、やっと同じ思いで立てる仲間と出会えて、ここまできたんだもんな。

俺には計り知れない感動がニコさんにはあるんだろう。

なら、素直に祝福しよう。

竜「おめでとうございます…」

ニ「ええ…!」

若干顔が赤くなりながらも、にっこりと、確かな笑顔が俺に向けられた。

穂「ん?………ことりちゃんの写真?」

竜「どうした穂乃果?」

穂「竜ちゃん、これ……」

そう言いながら、穂乃果はある写真を指差す。

俺がそれを見ると、そこに写っているのは、ことりだった。

メイド姿で。

瞬間、ピョコンと、一部寝癖が立った。

竜「何だ…これ?」

一瞬可愛いくてテンション上がったけど、よくよく考えるとおかしいので、すぐに寝癖が治まった。

これは明日ことりに問い詰めないとな。

海「こうやって注目されていると勇気付けられますよね!!」

絵「ええ…」

花「うぅ……嬉しいねぇ」

凛「かよちん、また泣いてる!泣き虫だにゃ~」

花陽は泣きながら感動している。

アイドルやってる身からすれば、確かに嬉しいな。

そんな時、












こ「すみません!!」








その甘ったるい、周波数が高い声で、店内にいるメンバー全員の視線が外へと向く。

外で商品の整理をしている店員に、たった今写真で見たばかりのメイド……ことりが話し掛けている。

こ「ここに写真が、わたしの生写真があるって聞いて。あれは駄目なんです。今すぐ無くしてください!」

穂「ことりちゃん?」

こ「ひゃっ!?」

ことりは奇声に似た短い悲鳴をあげて硬直した。

海「ことり………何してるんですか………?」

海未が戸惑い気味に尋ねるも、ことりはこちらに背を向けて硬直したまま。

やっと振り返ったと思えば、ことりは両目にガシャポンのカプセルを当てて笑顔を取り繕っている。

こ「コトリ? ホワッツ?ドナタディスカ?」

いや、バレバレだから。

凛「うわ……外国人?」

凛の驚く声が聞こえる。

どうやらこの猫バカは、ことりが外国人に見えたようだ。

穂乃果はことりに歩み寄る。

穂「ことりちゃんだよね?」

こ「チガイマース」

ことりは目にカプセルを当てたまま、ぎこちなく歩き出す。

こ「ソレデハ、ゴキゲンヨウ。ヨキニハカラエ………さらば!」

ことりはスカートを掴んで走り出した。

穂「あっ!逃げた!!」

穂乃果と海未が後を追いかける。

だが穂乃果はすぐに立ち止まり、振り返る。

穂「竜ちゃんも追いかけて!!」

竜「ええ~……めんどくさいな~」

そんな時、ディノホルダーに恐竜出現の通知が入った。

竜「悪い。用事が出来た」

穂「あっ!竜ちゃん!!」

俺は穂乃果達とは別の方向に走った。


竜司sideoff





◎side


ことりは裏路地をジグザグに進みながら逃げていた。

こ「はぁ…はぁ……脱出ルート決めておいてよかった…」

ことりは後ろを振り返りながら言う。

そして、ことりは裏路地の出口で立ち止まり、一息ついた。

こ「ふぅ~…ここまで来れば安心♪」

ことりは額の汗を拭うが、ふと視界の隅に倒れてる人間を捉えた。

血まみれの男性だった。

こ「っ!? 大丈夫ですか!?」

ことりはすぐさま駆け寄ろうとしたが、その瞬間













ヒュパッ!!と、その男性は壁の向こうに消えた。











不自然に、まるで引っ張られたように。

こ「………え?」

ことりは驚きと恐怖に目を見開く。

そしてその後に聞こえたのは、ゴキッ!! メキャ!!という、鈍い音。

さらには「グルルル……」という唸り声。

こ「っ!?」

ことりは息を詰まらせ、一歩一歩後ずさる。

本能が警鐘を鳴らしたのだ。

ここはヤバイと。

だが、そんなことりは何かに背中からぶつかった。

こ「?」

振り向くと……













「フシュルルル……プアオオオオン!!」









頭に羽毛の名残と思われる刺を生やした、グレーのヴェロキラプトルがいた。










こ「ひっ!?」

ことりは尻餅を着き、後ずさる。

グレーのラプトルは、ゆっくり、鉤爪をトントン鳴らして近づいて来る。

「フシュルルルルルルル…」

しかも男性が引っ込んだ場所からは、

「プアオオオオン!! プアオオオオン!!」

別のラプトルが出てきた。

こ「ぴっ!?」

ことりは慌てて立ち、別の方向に走った。

が、その前にトスッと、これまた別のラプトルが出てきた。

「プアオオオオン!!」

こ「ぴっ!?」

合計3体。

ことりは囲まれた。

こ「嫌……死にたくないよ~……竜く~ん…」

途端、尻餅をついて泣き始めることり。

しばらくラプトル達はことりを観察していたが、遂に飛びかかる。

「キェエエエエエエエエン!!」

次の瞬間、ことりは無惨に殺され…









《メガラプトル》








事はなかった。

疾風を纏った、緑の体に2本の黄色の線が走り、頭には白と紫で構成された羽毛のトサカを持つ巨大なラプトル系恐竜・メガラプトルが、ラプトル3体を吹き飛ばしたのだ。

「「「ギャン!?」」」

「フシュアアアアアア!!」

メガラプトルは威嚇する。

そこに、

竜「ことり!」

こ「竜くん!」

バイクで来た竜司も到着する。

竜司がバイクをスマホに戻したのと同時に、ことりは竜司に抱きつく。

こ「怖かった…怖かったよぉ~…ぐすっ…」

竜「ことり…」

自分の胸で泣くことりの頭を、竜司は撫でる。

一方、3体のヴェロキラプトルはメガラプトルに威嚇する。

「プアオオオオン!!」

「キェエエエエエエエエン!!」

しかしメガラプトルは、ラプトル系では珍しく体がカルノタウルス並に大きい恐竜。

全く怯まない。

竜司はディノホルダーに、ある特殊技カードをスラッシュする。

《スカイダイブ》

スラッシュすると、竜司はそのカードを投げる。

すると『ケツァルコアトルス』が現れ、一体のヴェロキラプトルをその足で掴み、飛行。

電柱にぶつけ、また違う電柱にぶつけ、最後に回転しながら、壁にぶつける。

そのラプトルは威力でゆっくり回転した後、気絶した。

残り二体は僅かに後ずさる。

竜「メガ、ことりの護衛をしろ」

「グオオン……」

メガラプトルはことりに近づくと、背を向けてその前に立つ。

そして竜司は新たに恐竜カードをスラッシュ。

《ウエロサウルス》

投げると、背中の板は楕円で、黄色と赤で構成された剣竜・ウエロサウルスが現れた。

「ゴオオオ……!!」

ウエロサウルスは威嚇する。

しかしラプトル2体は餌が出てきたと思い、にじりよる。

その隙に竜司は二枚の土の超技カードを出して、二枚共スラッシュする。

《クリスタルブレイク(結晶衝波)》

《サンドトラップ(砂漠流砂)》

そのエネルギーを2発撃って、吸収させる。

瞬間、ウエロサウルスは周りに紫の巨大な結晶を4本作り出し、そのまま突進。

4本の結晶をぶつけ、ラプトル一体を吹き飛ばす。

続けざまに、グレーのラプトルの足元に流砂を作り出し、吸い込む。

「プアオオオオン!! プアオオオオン!!」

助けを求める鳴き声もむなしく、グレーのラプトルはゆっくり流砂に吸い込まれた。

その直後、岩に打ち出され、ラプトルは出てくるも、気絶した。

竜「終わったな…」

竜司はそう言うと、ウエロサウルスとメガラプトルを回収。

ディノホルダーのワープ機能を使って、3体のラプトルをアメリカのジュラシック・パークに送り届けた。

竜「あのラプトル達……何でここにいるんだ?」

竜司は疑問に思ったが、ことりの事を思い出し、ことりに近づくと言う。

竜「大丈夫か?」

こ「うん……竜くん、ありがとう」

ことりは微笑むも、竜司の次の言葉で固まる。

竜「別にいいさ。その代わり、ちょっと詳しくメイドの事で聞きたいんだけど?」

こ「あ、あはははは………はい」

渇いた笑いを浮かべていたことりだが、すぐに観念した。



ーーーーーーーー



その様子をスタークは見ていた。

「やっぱ成長速度を早めたラプトルでは無理だったか。しかも録に命令を聞かず、ことりを襲うとはな……。今回ばかりは礼を言うぞ?竜司…」

ラプトルの遺伝子情報を盗んだのはスタークだったのだ。

恐らくティラノサウルスの遺伝子情報も。

そしてスタークは何処かに消えた。


◎sideoff






竜司side


俺はスマホをバイク変形させて、それに乗ってことりを連行していた。

メンバーには、とあるメイド喫茶に来るよう場所指定しているので、今はそこに向かっている。

向かっている間、ことりが訊いてくる。

こ「竜くん、スマホをバイクに変形させるなんてすごいね…。免許証は持ってるの?」

竜「持ってるよ」

そんな事を話しながら、件のメイド喫茶に到着する。

バイクをスマホに戻し、ことりを連行。

先に店内にいたメンバーの前で、ことりから事情聴取していた。

ことりはメイドカフェでバイトしていることを白状して、店で使っている源氏名を明かすと、メンバー達が「えー!」と驚愕する。

花「こ、ことり先輩が……この秋葉で伝説のメイド、ミナリンスキーさんだったんですか………?」

花陽が興奮気味に問うと、「そうです…」とことりは対照的に沈んだ口調で返した。

メンバー達の反応が怖いのか、俯いた顔を上げようとしない。

穂「ひどいよことりちゃん!そういう事なら教えてよ!」

こ「うぅ~……ごめんなさいぃ……」

穂乃果がそう言うと、ことりは顔を更に俯かせる。

穂「言ってくれれば遊びに来て、ジュースとかご馳走になったのに!」

竜「お前はそこかよ……」

たかるつもりだったのか。

穂乃果の能天気さは、これ以上突き詰めないことにしよう。

すると、コルクボードに貼られている写真を見ている会長が

絵「じゃあ、この写真は?」

と尋ねる。

こ「店内のイベントで歌わされて………。撮影…禁止だったのに………」

肩を落とすことりの隣に穂乃果が座る。

穂「なんだ。じゃあ、アイドルってわけじゃないんだね?」

こ「うん、それは勿論」

海「でも何故です?」

海未が尋ねる。

ことりは、所在なさげに答える。

こ「丁度4人でμ’sを始めたばかりの頃…」

『そんな私…アルバイトなんて…』

『うわあ!! 可愛い!!』

『いらっしゃいませ♪』

断るつもりが、メイド服の可愛さに負け、働くうちに伝説にまでなっていた。

竜「チョロすぎだろ…」

こ「うう~……」

ことりは俺の視線に耐えきれず、目を下に背ける。

こ「自分を変えたいなと思って。わたし、穂乃果ちゃんや海未ちゃん、竜くんたちと違って何もないから………」

穂「何もない?」

穂乃果が訊く。

こ「穂乃果ちゃんみたいにみんなを引っ張っていく事もできないし、海未ちゃんみたいに、しっかりもしてない……。それに、竜くんみたいに天才でもないから…」

自分には何もない。

それは言ってみれば無個性であり、地味であり、目立たない。

アイドルとして必要なオーラもない。

そう言っているようにも見えた。

穂「そんなことないよ。歌もダンスもことりちゃん上手だよ」

海「衣装だって、ことりが作ってくれているじゃないですか」

竜「ことりがいるから、衣装も何とかなってんだぞ?」

真「少なくとも、2年の中では1番まともね」

穂乃果、海未、俺、真姫のフォローが入るが、それでも、ことりの表情はまだ暗いままだった。

というか……

竜「おい真姫。俺は結構まともだろ?なんたって、天っ才科学者なんだからな!」

真「そう言うすぐ自画自賛する所がまともじゃないって言ってんの!!」

抗議すると、そう言われた。

解せぬ。

こ「ううん、私はただ、3人に着いて行ってるだけだよ……」

そのまま、ことりは何も話さなかった。



ーーーーーーー



あれからことりは休憩が終わり、いつも通りバイトに戻って行った。

俺達も長々と店に居座るわけにもいかなかったから、ある程度だけ注文して、帰る事になった。

みんなが談笑する中、俺だけは何も喋らずに。

穂「またねー!」

こ「あっ、この事は、お母さんには内緒だから!学校では、しーっ!!」

穂「うん、分かった!!」

しーっ!のポーズ可愛すぎっしょーー!!





今回出てきたラプトルはジュラシック・パーク3のラプトルと同じです。


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Game#39


竜「前回のジュラシック・ラブライブ!9人になったμ'sだが、最近ことりが練習を早退することが多くなった。その原因はなんと!ことりが伝説のカリスマメイドだったからである!」

穂「そういえば竜ちゃん。ディノホルダーってどうやって作ったの?」

竜「そりゃギュインギュインのズドドドドドドドだよ」

穂「説明下手だね!?」

竜「一言で語れないのが天才なの」


あの日から翌日。

ある空き教室で、ことりが奇妙な事を言いながら、机に向かっている。

こ「チョコレートパフェ。……おいしい」

………ん?

こ「生地がパリパリのクレープ。………食べたい。……ハチワレの猫。………可愛い。………五本指ソックス。……気持ちいい。竜くんの瞳…」

う~ん……意味が分からん。

こ「ふえぇぇん~」

あ、壊れた…。

こ「思いつかないよ~!」

そう言って、机に突っ伏すことり。

いやまあそうだろうね。

ほとんどただのことりの願望だもんね。

というか最後明らかに俺の名前出たよね。

おかしいよね。

さて、何故こうなっているのか説明しよう!

それは昼休みの事だ。



ーーーーーーーーー



絵「秋葉でライブよ!」

絢瀬会長の一言から始まった。

穂「えっ…それって…」

こ「路上ライブ?」

絵「ええ…」

穂乃果とことりの問いに肯定する。

ニ「秋葉と言えば、A-RISEのお膝元よ!?」

希「それだけに面白い!」

真「でも、随分大胆ね…」

絵「秋葉はアイドルファンの聖地。だからこそ、あそこで認められるパフォーマンスが出来れば、大きなアピールになる!」

成る程…。

確かに、それもそうだな…。

この提案に勿論、穂乃果とことりは賛成する。

穂「良いと思います!!」

こ「楽しそう!!」

穂乃果とことりは顔を見合わせて笑うが

海「しかし、凄い人では…」

海未が乗り気じゃない。

ニ「人がいなかったら、やる意味ないでしょ?」

竜「そうだよ、海未。尻込みしてちゃダメだよ?」

海「うう…」

ニコさんと俺の言葉に唸る海未。

凛「凛も賛成!!」

花「じゃあ私も!」

凛と花陽も賛同する。

絵「決まりね!!」

絢瀬会長が締める。

穂「じゃあ、早速日程を…」

絵「その前に」

穂乃果が日程を決めようとしたら、会長が遮る。

なんか、あるのか…?

絵「今回の作詞はいつもと違って、秋葉の事をよく知ってる人に書いてもらうべきだと思うの」

そう言って、ことりの方を向く。

絵「ことりさん…どう?」

こ「えっ!? 私?」

絵「ええ」

そう言って、会長はことりに作詞ノートを渡す。

ことりは戸惑いながら受けとる。

絵「あの街で、ずっとアルバイトしてたんでしょ?きっと、あそこで歌うのに相応しい歌詞を書けると思うの」

穂「それいい!! 凄くいいよ!!」

こ「穂乃果ちゃん…」

ことりの作詞に賛同の穂乃果。

他のメンバーも

海「やった方がいいです。ことりなら秋葉に相応しい良い歌詞が書けますよ…」

凛「凛もことり先輩の、甘々な歌詞で歌いたいにゃ~!」

こ「そ…そう?」

ニ「ちゃんと良い歌詞作りなさいよ」

真「期待してるわ」

希「頑張ってね♪」

ことりの作詞に賛同し、応援までしている。

こ「う…うん!」

ことりは不安そうだが、俺が

竜「ことり。一人でダメだったら、俺も手伝ってやるからさ」

こ「うん!分かった!!」

手伝いを申し出たことで、完全に引き受ける。



ーーーーーー



そして、現在。

こ「ふ~わふ~わし~たも~のか~わい~な、ハイ!あとはマ~カロンた~くさ~ん並べたら~、カラ~フル~で、し~あ~わ~せ!……ル~ル~る………。やっぱり無理だよー!」

大いに苦戦中。

海「なかなか苦戦してますね…」

穂「うん…」

竜「まあ、今までやったことの無い分野だからな…」

俺と穂乃果と海未はドアの陰で見ていた。

こ「うう……ひっく……ぐすっ……。竜く~ん、穂乃果ちゃ~ん…」

余りの苦戦さに泣きながら、穂乃果と俺の名前を呼ぶことり。

その後も、歌詞の事を考えていることりだが、それが授業中にも出てしまい、担任の先生に注意される始末だった。

そして、放課後になって、また考えていることり。

竜「はぁ~…」

仕方ない。

この天っ才が助け船を出してあげましょう。

竜「ことり」

こ「うう……ぐす……竜くん…?」

竜「言っただろ?困ったら手伝ってやるからって。忘れたのか?」

俺はことりの前に来て言う。

穂乃果もことりの所に来て、

穂「そうだよ、ことりちゃん!! 一緒に考えよう!とっておきの方法で!!」

共に作詞を考えることを提案してきた。

ん?

とっておきの方法?




ーーーーーーーー



ここはとある店の中だった。

そこにはほんのちらほらとだけだが、客もいた。

まだ完全には見慣れていないが、2回目だというのと、前に来た日と日数がそんなに経っていないのが幸いして、変な新鮮さはない。

店内の状況を見ても、今は確実に暇な状況だという事は分かった。

そこに、俺、穂乃果、ことり、海未が練習をするかのように声を出していた。

こ「お帰りなさいませっ♪ご主人様っ♪」

穂「ぅお帰りなさいませ!ご主人様!!」

海「お…、お帰りなさいませ…。ご主人様…」

竜「お帰りなさいませ☆ご主人様☆」

俺達はメイド服に着替えて、並んで接客文句を言っている。

『俺』も含めてメイド。

………………。






竜「って、何でだァァァああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!!!?」

そのまま俺は持っていたメニュー表を床に叩きつける。

穂「大丈夫!すごく可愛いよ!竜ちゃん!」

こ「竜くん肌が白いからすごくメイクの乗りがいいんだよね~♪」

海「竜司……とても綺麗です////」

竜「うん、ありがとう!でもそうじゃねえ!! 何で俺もメイド服着てんの!? 何で俺も一緒に働く事になってんの!? 別に俺必要じゃないよね?3人だけでも十分だよね!? 何か流れでここまでやっちゃったけどおかしいよね!? こんなの絶対おかしいよ!!」

普通やっても執事服でしょ!?

何でメイド!?

しかも無駄に綺麗に女装メイクさせられたよ!!

穂「でもご丁寧に変声機で女声にしてるじゃん」

竜「流石にこの格好してて男声だとキモいし、何よりそう言う趣味だと思われたくない…」

そう、現在俺はチョーカー型の変声機で、声を女声にしてるのだ。

イメージ的には、なのは。

髪は銀髪ウィッグでポニーテールにしてる。

ここまでは変声機以外、ことりに無理矢理やらされた。

まぁいい加減気分を変えよう。

とりあえず、それぞれのメイド服を着ている穂乃果たちの様子を紹介しよう。

まずはことり。

メイド喫茶でアルバイトをしているだけあって、様になっている。

『メイド服』という史上最強の装備の1つを身に付けていると言うこともあって、可愛さがかなり増している。

無言で写メりたい。

続いて穂乃果。

何だか江戸っ子みたいな居酒屋の店員さんみたいなしゃべり方だ。

まあ、こっちの方が穂乃果らしいし、俺も嫌いじゃないし、むしろ好きかな。

そして最後は海未。

恥ずかしがりやな海未が、精一杯振り絞った『お帰りなさいませ』。

今もメイド服の裾をギュッと握り締め、恥ずかしさのなかにある、どこかそそられる危険なギャップ…。

俺は黙って海未の頭を撫で、海未もされるがままになっている。

海「~っ♪////」

後、なんか嬉しそう。

その光景を見た穂乃果とことりは、自分にもしてほしい的な目を俺に向けてくる。

竜「………はぁ~」

仕方ないので、撫でてやると、

「「えへへ~♪」」

これまた嬉しそうにする。

海「む~~っ」

その間、海未は頬を膨らましていた。

何故?

つーか、なんか百合の花が咲いてる気がする。

こ「でも良かったね。店長も快く3人を歓迎するって言ってたし!特に竜くんは気に入られてたね!即戦力だ!って♪」

竜「そのまま時々手伝ってくれとかいうベタな展開だけは絶対に回避してやる」

なのは声でそう決めた。

因みに店長は女。

そこへ、凛たちがやって来る。

凛「にゃ~!遊びに来たよー!! ……っ!?」

凛は俺の姿を見るとギョッとする。

その後、他のメンバーも来る。

絵「秋葉で歌う曲なら、秋葉で考えるってことね。…っ!?」

メイド服を着た俺達を見て、絢瀬会長が納得したように言うが、その後、俺の姿を見ると凛と同じくギョッとする。

うん分かるけど、そう言う反応分かるけど!

真「竜司……あなた………無駄に綺麗ね…」

真姫はなんとも言えない顔をしてる。

竜「無駄にって言うな、無駄にって」

こっちだってやりたくてやってる訳じゃないんだ。

東條さんは面白そうに俺たちにビデオカメラを向けてくる。

希「ではではー、早速取材を」

海「やめてください」

顔を赤くした海未がレンズに手をかざす。

海「何故みんな……」

穂「わたしが呼んだの」

穂乃果が言うと、海未の文句は穂乃果へと移る。

希「にしても天青君、その恰好似合ってるで~」

竜「だから撮ろうとするなっての……勘弁してください」

希「ああっ、もう、天青君のいけず~……!」

咄嗟に東條さんからビデオカメラを没収する。

そうしないと隙を見て絶対撮ってくるからなこの人。

すると、席で頬杖をつくニコさんが憮然と言った。

ニ「それよりも早く接客してちょうだい!ほら竜司!」

竜「何で個人指名してくるんです……?」

ここはホストでもキャバクラでもないんですが。

こ「じゃあ竜くんはニコ先輩をお願いね。私はこっちでするから」

竜「はあ……分かったよ」

とりあえずことりを観察しよう。

こ「いらっしゃいませ。お客様、2名様でよろしいでしょうか?」

凛「は、はいにゃ!」

こ「それではご案内いたします♪」

本物のメイドがどうなのかは分からないが、こういう店でのメイドとしてのことりは完璧だと思う。

まるで絵に描いたようなメイドの接客だ。

超可愛い。

こ「こちらのお席へどうぞっ」

花「は、はい……」

こ「こちら、メニューになります♪」

ことりが完璧すぎて凛も花陽もどぎまぎしている。

こ「ただいま、お冷をお持ちいたしますっ。失礼いたしました」

花「さ、さすが伝説のメイド……!」

凛「ミナリンスキー……!」

竜「サイン貰おう……」

ニ「いやアンタはこっちの接客しなさいよ」

竜「あっ…」

いかんいかん。

俺とした事がついことりに目が行ってたぜ。

とりあえずそれらしくやってみるか。

竜「お嬢様☆ご注文は何ですか?☆」

きゃぴきゃぴした、なのは声で言う。

ニ「あんた……さっきから思ってたけど、何そのきゃぴきゃぴ声…。何で無駄に女声なの?」

竜「仕様です☆」

ニ「どんな仕様!?」

竜「うるさいな~☆踏んじゃうぞ?☆」

ニ「笑顔で何口走ってんのよ!?」

やっぱりニコさんは面白い!



ーーーーーーーー



さて、ニコさんの相手をしてると店は混んできたのだが、慌てることなく仕事をこなすことりは、楽しそうだ。

ことりが客に向ける作ってない笑顔がそれを証明している。

因みに海未はキッチンに引っ込んだ。

それと割と俺が2番目に引っ張りだこだった。

主に「写真撮らせて」とか、「萌え萌えエネルギーください!」とか、「頭を踏んでください!」とか。

………最後おかしくね?

あっ、勿論一番はことりね?

店長曰く、眼帯メイドもそれなりに需要があるらしい。

そして夕方。

竜「ことり、ここにいると楽しそうだな」

こ「え?」

俺がことりに言う。

近くで接客していた穂乃果も会話に加わってくる。

穂「うん、生き生きしてるよ」

少しだけ驚いた顔の後、ことりは

こ「うん」

と穏やかな笑みを浮かべる。

こ「何かね、この服を着ていると、できるっていうか…。この街に来ると、不思議と勇気が貰えるの。もし思い切って自分を変えようとしても、この街ならきっと受け入れてくれる気がする。そんな気持ちにさせてくれるんだ。だから好き」

ことりの楽しんでいる様子が嬉しいのか、穂乃果も楽しそうに笑う。

すると、すぐにハッとした穂乃果が言う。

穂「ことりちゃん、今のだよ!」

こ「え?」

穂「今ことりちゃんが言ったことを、そのまま歌にすれば良いんだよ。この街を見て、友達を見て、色んなものを見て、ことりちゃんが感じたこと、思ったこと。ただそれをそのまま歌に乗せるだけで良いんだよ!」

穂乃果は、ことりにそう言う。

こ「そのまま、歌に……」

竜「そうだよ、ことり」

俺も話に入る。

こ「竜くん?」

竜「ことりからすれば灯台下暗しだけど、ことりは最初から持っていたんだよ。歌詞を書くのに必要なものを。それが当たり前だと思っていたから、ことり自身が気付けなかっただけなんだ。でもそれを穂乃果や俺達が言って気付かせてやる事ができた」

答えは最初から用意されていた。

あとは気付くのが早いか遅いかの問題でしかなかった。

少し時間はかかってしまったけれど、ちゃんと答えを見つける事ができた。

竜「ことり……もう大丈夫だよな?」

それを聞いたことりは

こ「っ!! うん!」

と元気よく頷く。

……なんとか歌詞の問題はなんとかなりそうだな…。



ーーーーーーー



海「ほ、本当にやるんですか……?」

明るい街の喧騒の中、不安げな海未の声が小さく呟かれる。

絵「もちろん。次の日曜日、この場所で!」

対して張り切った声で返したのは絢瀬会長。

そう、今週の日曜日、ライブをする事が決まったのだ。

海「ですが、ここでは人がたくさん…」

こ「面白そう!」

海未の言葉を遮るように声を張ったことり。

どうやらもう悩みは昨日の件があったおかげで大丈夫のようだ。

竜「人が多いからこそやるんだろ。そうじゃないと思い切った手とは呼べないんだ」

海「うう……分かってます、分かってはいるのですが……」

まあ、今までのように学校内でやっていたライブとは違い、本当の意味で知らない人達の前でライブをするのは今回が初めてだ。

初見も初見。

そりゃ海未が不安がるのも仕方ない事だ。

それでもやるしかない。

そうじゃないと意味がない。

穂「よーし、やろう!!」

穂乃果の声と共に、他のメンバーの声も上がる。

海未も諦めたようだ。



ーーーーーーーーー



絵「この衣装で秋葉に!?」

花「うん!ことりちゃんのお店の人に言って、貸してもらったんだ!」

翌日の屋上。

教室で作詞をしていることり以外のメンバーは全員メイド服を着ていた。

花陽の言った通り、メイド服という衣装でライブをするのだ。

竜「ことりの店で思いついた事なんだ。ことりが秋葉で、働いている店で思った事や感じた事を歌詞に乗せる。だったら衣装もそれに関連したものが合っているんじゃないかと思ってな。そういうわけでのメイド服だ。すごいでしょ?最高でしょ?天才でしょ?」

穂「うんうん!みんな似合ってるよー!!」

穂乃果の言う通り、元の素材が良いからか、メイド服を着た彼女達はとても可愛い。

ニ「にっこにっこにー!! どう、似合ってる?」

竜「おー、ニコさん。いつものそのキャラがよりメイド服にベストマッチしてますよ。似合ってる似合ってる!」

ニ「でしょー?ふふん、竜司もちゃーんと分かるとこもあるじゃない」

でしょ?

……ってあれ、それ褒められてんの?

穂「おー……!!」

絵「そ、そんなに見ないでちょうだい……」

穂乃果の感嘆とした声と、絢瀬会長の照れた声に俺はそちらに振り向く。

そこにいたのは、金髪超絶美少女がメイド服を着て恥じらっていた姿だった。

絵「て、天青君……どうかしら?////」

竜「最高です」

そう言って、俺は会長のメイド姿をスマホに収める。

穂「竜ちゃん!私のメイド姿も撮ってよ!」

竜「後でな?」



ーーーーーーーーーー



そして当日の日曜日がやってきた。

夕焼けの中で、秋葉原でのゲリラライブ当日、俺はビデオカメラでライブの様子を撮影しつつ、遠目から離れてライブを見守っていた。

そしてセンターを務めることりが歌い始める。

(♪:Wonder Zone)










作詞した、ことりならではの可愛らしくも元気が貰える曲に仕上がった。

普段は海未が作詞をしているが、ことりのような可愛らしい詞も嫌いではない。

曲名だが、みんなで話し合っても、なかなか決まらなかったのだが、俺がふと漏らした言葉にみんな賛成し、この曲名に決まった。

『Wonder Zone』……不思議な場所……と。

そしてパチパチと拍手が鳴る。

これは大成功だ。

そんな時だ。






「ブラボー!! 流石ことり。我が娘ながら可愛いな♪」








声をかけてきたのは惣助さんだ。

ただし、その手に『ブラッドディノホルダー』を持って。

竜「惣助さん?」

こ「お父さん?」

俺は客席から、ことり達はステージ側から惣助さんを見て、首を傾げてる。

何で惣助さんがブラッドディノホルダーを持ってるんだ?

その視線に気づいたのか、惣助さんはブラッドディノホルダーを持ち上げて言う。

「これか?これはな……こうやって使うのさ…」

そして惣助さんはブラッドディノホルダーの画面をタッチした。

《コブラ!》

瞬間、

♪~~♪

地味に癖になって覚えてしまうようなメロディが流れる。

惣助さんは唱える。

「蒸血」

《ミストマッチ》

そしてブラッドディノホルダーのトリガーを弾くと、黒煙が撒き散らされ、惣助さんは赤い稲光に包まれ……。

《コッ・コブラ……コブラ……ファイヤー》

背後に花火を散らせながら、惣助さんはブラッドスタークに変わった。

竜「なっ!?」

こ「嘘……」

俺は驚き、ことりは驚愕に目を見開く。

まさか本当に惣助さんがスタークだったとは。

スタークはすぐさま色んな所に照準を向け、ブラッドディノホルダーからエネルギー弾を撃ちまくる。

ズガン!ズガン!ズガン!ズガン!ズガン!

瞬間、客は悲鳴を上げながら逃げ惑う。

たちまち、そこには俺とμ'sの9人だけになった。

そんな中、惣助さん…スタークは言う。

惣助さんの声で。









「俺がブラッドスタークなんだよ。竜司…ことり…」








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Game#40






◎side


最高の瞬間の時こそ、絶望は深い。

まさに今がその時だった。

対立する竜司とスターク…否、南惣助。

竜司はディノホルダーを手に持ち、言う。

竜「何となく……あんたかもしれないって思ってた。だけど、ことりがあんたの事を信じていたから、俺もその可能性は捨ててたよ…」

「おっ、そうか」

平然と返すスターク。

ことりが叫ぶ。

こ「どうして!? どうしてお父さんがこんな事してるの!?」

その言葉には、悲しみ、疑問、怒りが混じっていた。

それを示すように、夕方の空は曇り始め、やがて雨がポツポツと降り始める。

終いにはどしゃ降りになった。

全員ずぶ濡れになる。

絵里が海未に訊く。

絵「どういう事なの?」

海「ブラッドスタークは、竜司の邪魔をしている人です。他にもナイトローグという人がいますが、この2人は竜司が人と恐竜を守るために恐竜を使役してるのに対し、戦争を起こすために恐竜を使役してるんです……」

自分が分かってる範疇で簡単に説明する海未。

凛「そんな……!」

花「酷い…」

ニ「戦争を起こすですって!?」

真「恐竜は使いようによっては確かに世界を混沌とさせる事も出来るから、戦争を起こすのも簡単って訳ね…」

希「そんな事したらジュラシック・パークは……」

「バッシングを受けて間違いなく閉鎖する。全ての原因としてな?」

希の疑問に答えるスターク。

その平然とした様子に、メンバーは苦渋に満ちた険しい顔をする。

何故そんな事を平気で出来るのか?……と。

竜「あんたは何がしたい?戦争を起こしてその後はどうする?」

「どうも。ただ、最近の人間は恐竜の恐怖を忘れつつある。戦争を起こすのはその手始めに過ぎん。ああ、それと。1ついい事を教えてやる。氷室玄斗には気をつけろ。奴がナイトローグだ」

『なっ!?』

これまた衝撃の発言に驚く一同。

自分達にとって身近な存在がもう一人の敵だったのだ。

それも仕方ない。

「んじゃあ雨も降ってるし、そろそろ始めるか?」

そう言ってスタークは恐竜カードをスラッシュ。

《ゴンドワナティタン》

出てきたのは、深緑の体に迷彩模様が入ってる雷竜・ゴンドワナティタンだった。

「ブゥオオオオオオオオン!!」

ゴンドワナティタンはその長い首を上に上げて吠える。

竜司はそれに対し、この恐竜を呼び出した。

《オロロティタン》

カードを投げると、黒い体に白のギザギザラインが走り、頭には黄色と赤で構成されたトサカを持つカモノハシ竜・オロロティタンだった。

「プゥアアアアアアアアアア!!」

オロロティタンは甲高い鳴き声を上げる。

それと同時に、ゴンドワナティタンとオロロティタンはぶつかり合う。

互いの体をぶつけ合い、尻尾同士を叩きつける。

「プゥアアアアアアアア!!」

「ブゥオオオオオオオオン!!」

そして竜司も、ディノホルダーのスラッシュ部分近くにあるボタンを押す。

《ブレード・オン》

瞬間、ディノホルダーの先端から鋭いブレードが生成され、竜司はそれを構えて走る。

竜「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

スタークはそれに対し、ブラッドディノホルダーからエネルギー弾を撃ちまくる。

竜司はそれをブレードで弾きながら近づき、一太刀浴びせる。

「ぐっ!?」

火花を散らして後退するスターク。

元々ブラッドスタークのスーツは、肉食恐竜の牙すら容易には通さないように出来てる。

だから精々火花が散る程度に止まる。

竜「ふん!」

竜司は続けざまにブレードを降り下ろすが、スタークの左腕に止められ、右パンチを喰らう。

竜「ぐあっ!?」

大きく吹き飛ぶ竜司。

穂「竜ちゃん!」

海「竜司!」

こ「竜くん!」

穂乃果達が駆け寄る。

竜「ぐっ……!」

スタークのスーツは恐竜を押さえつける為のものなので、その力はかなり強い。

強い痛みに悶絶する竜司。

しかし竜司は何とか超技カードを出し、スラッシュする。

《ネイチャーズブレッシング(深緑恵癒)》

それをオロロティタンに撃ち、吸収したオロロティタンは吠える。

「プゥアアアアアアアア!!」

そして口に草のエネルギーを貯めて、竜司に放つ。

瞬間、竜司の体から痛みは消える。

「ほう、そういう使い方をしたか」

スタークは感心するように言う。

その間にも、竜司は超技カードをスラッシュする。

《ソーンウィップ(緑振棘鞭)》

《ベストマッチ!》

竜「……こんな時にベストマッチ発見するなんてな……」

竜司は皮肉を言いながらそれを撃ち、オロロティタンに吸収させる。

「プゥアアアアアアアア!!」

瞬間、巨大な蔦が地面を割って出現。

蔦はぶんぶん振り回され、その遠心力でぶつかり、ゴンドワナティタンを吹き飛ばす。

しかし、ゴンドワナティタンはムクリと立った。

穂「何で!? ベストマッチだったのに!!」

穂乃果は当然の疑問を声に出す。

それに答えるはスターク。

「そりゃ雨が降ってるからだよ。雷竜は水属性。雨が降り続けてたり、水が溜まってる限り、ベストマッチの攻撃もあまり効かない。……まぁ、相手が雷属性なら話は別だが……」

最後はボソッと言うスターク。

竜「ちっ!」

それでも竜司はオロロティタンを戻すことなく、超技カードをスラッシュした。

《エメラルドガーデン(緑輝庭園)》

《ベストマッチ!》

再びベストマッチが来るも、竜司は喜ばなかった。

それを撃ち、オロロティタンに吸収させる。

オロロティタンは口に草のエネルギーを貯めて、それをゴンドワナティタンに向かって放つ。

瞬間、ゴンドワナティタンの足元から大量の草や蔦が生え、ゴンドワナティタンから体力を奪う。

少しふらつくゴンドワナティタン。

「ほ~う、いくらフィールドが有利でも、ベストマッチを2度も受けると、ここまで弱るか」

スタークは考察するように言う。

そこに…

《ペンタケラトプス》

「ガァアアアアアア!!」

ペンタケラトプスが現れ、ゴンドワナティタンにその鋭い角を突き刺した。

「ブゥオオオオオオオオン!!」

ゴンドワナティタンはそれが致命傷になり、カードに戻る。

そしてそのカードを拾ったのは、穂乃果だった。

絵「穂乃果……」

真「穂乃果先輩まで恐竜を使えるの……?」

ペンタケラトプスは穂乃果の恐竜。

それを知らない絵里達3年や、真姫達一年は、少なからず驚く。

「ほう、穂乃果ちゃんもなかなかやるじゃないか♪」

嬉しそうに言うスタークに、穂乃果は言う。

穂「ことりちゃんのお父さん!今からでももう止めてください!こんな事したって誰も喜びません!」

穂乃果にしてみれば、精一杯のお願いだった。

しかし、スタークは……








「やだよ~☆じゃあ今日はこの辺で。チャオ♪」

軽く一蹴する。

そして黒煙を巻いて消えた。

穂「あっ……」

穂乃果が手を伸ばすも、その手を掴むことはなかった。

その場に残されたのは、雨に叩かれるメンバーと竜司だけ。

竜「……」

こ「っ……竜くん……ごめんなさい……ぐすっ…ごめんなさいっ…」

海「ことり……」

竜司は意気消沈し、ことりは涙ながらに自分の父親がやってきたことに対し、竜司に謝罪。

他のメンバーは、誰も何も言えなかった。

みんな混乱しているのだ。

メンバーの一人の父親が敵で、もう一人の男子生徒も実は敵だった。

こんな事をさっさと理解して処理しろという方が難しい。

彼女達の進む道は、確実に茨となっていた。



ーーーーーーーー



あの後、後味悪く解散し、竜司達2年生は神田明神にいた。

穂「ことりちゃん、もう大丈夫?」

こ「うん……大丈夫…」

穂乃果の心配に、幾分か落ち着いたことりは笑って返す。

しかしその笑顔は、誰がどう見ても心苦しいものだった。

そんな中、竜司はノートパソコンで今日手に入れたゴンドワナティタンのベストマッチを調べてたり、他の恐竜のベストマッチを調べていた。

しかしその背中は、何処か悲しそうだった。

竜司は喜色に満ちた声で言う。

竜「ゴンドワナティタン、パー」

《ベストマッチ!》

竜「ベストマッチ!フゥー!」

否、わざと喜色に満たしているのだ。

それに気づいてる穂乃果、ことり、海未は何とも言えない悲しそうな顔を浮かべていた。

竜「パラサウロロフス、グー」

《ベストマッチ!》

竜「ベストマッチ!ふはは♪」

海「……」

竜「エオカルカリア、チョキ」

《ベストマッチ!》

竜「ベストマァァァァッチ!ふはは♪」

海「……うるさいですよ?」

やんわりと言う海未。

竜司は海未に顔を向けずに言う。

竜「いやいやいや、今日はベストマッチが2回も続いてんだよ?今だって三回も続いてるし。こんだけついてんだからテンション上がるでしょ?」

そう言うと、竜司は髪の一部をピョコンと立たせる。

竜「サウロファガナクス、チョキ、んー……」

《ベストマッチ!》

竜「ベストマァァッチ♪」

穂「……」

竜「ランベオサウルス、チョキ」

竜司はこの2つを選択し、決定ボタンに指を徐々にかける。

竜「おっ、おっ、あっ…あっ…」

何故か恍惚とした顔になってる。

そしてボタンを押す。

《ベストマッチ!》

竜「あふぅ……ベストマッチ……」

こ「……」

竜「サイカニア、パー。ベストマッチがぁぁ……」

《ベストマッチ!》

竜「来たぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

右腕でガッツポーズする竜司。

穂「……無理に明るくしなくていいから…」

穂乃果の慈愛に満ちた声音に、竜司は穂乃果の方を振り向く。

そして髪の一部を引っ込ませる。

竜司も本当は悲しかった。

だけどそれを悟られまいと明るく振る舞っていたが、やはり幼馴染みの感覚は騙せなかった。

ことりが言う。

こ「このままじゃあ、私達……あまりいつまでもいられないかも……」

今回に関しては一番ことりが悲しい筈だ。

自分の父親が想い人の敵。

恋する乙女にとって、これほど心に来るものは無い。

なのに他人の事を心配するのは、ことりの天性の優しさなのだろう。

しかし穂乃果が、この湿った空気を吹き飛ばすように元気良く言う。

穂「大丈夫だよ!何があっても、ずーっと、一緒だよ。だって私、これからもずっとずっと、ことりちゃんや海未ちゃん、竜ちゃんと一緒にいたいって思ってるもん!大好きなんだもん!」

そう言って、竜司と海未とことりの肩を掴んで、抱き締める。

こ「……穂乃果ちゃん」

海「穂乃果……」

竜「穂乃果…」

穂「例え何があっても、何が来ても、これからもずーっと一緒だよっ!!」

こ「……うんっ!」

海「はいっ!」

何の根拠も無い言葉。

それでも、今のことり達には救いの言葉になった。

だが彼女達は後に思い知る。





その考えが甘い事を。





そして崩壊の危機は確実に来ている事を。




◎sideoff






ちょっと雑でしたかね?


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Game#41






竜司side


それは、とてもとても暑い夏の日の事。

ニ「暑ぅい……」

穂「そうだね~……」

放課後になり、いざこれから練習が始まろうと屋上に行った時、2人の少女がそんな事を言った。

いやホント、この2人の気持ちもすごく分かるのよ。

それくらい暑いのよ。

絵「ことり達がいつもの調子に戻ってくれたのは嬉しいけど、まさか氷室君が敵だったなんてね……」

唐突に会長が数日前の事を思い出すように言う。

スタークから聞かされた衝撃の新事実。

それは氷室さんも敵だった事。

それを裏付けるように、氷室さんは忽然と居なくなり、またスターク…惣助さんもいなくなった事を、雛さんから聞いた。

ニ「過ぎた事は仕方ないわよ。それより……バカじゃないの!? この暑さの中で練習とか!!」

おお、話題転換しつつ、よく言ったぞニコさん。

俺もそれを思っていたとこだ。

考えてもみろ。

みんなはまだ練習という名の必死になる役割があって、それで一応は暑さよりも練習に身を集中させなければならない。

でも俺はどうだ?

みんなが練習している中、1人だけじっとしたまま太陽の攻撃を受け続けるんだよ?

死ぬわ。

太陽に殺されるわ。

絵「そんな事言ってないで、早くレッスンするわよ」

はい、まあそうですよね。

花「は、はい……!ごめんなさぃ……」

そんな絢瀬会長の言葉に謝ったのは、ニコさんではなく花陽だった。

花陽は悪くないから謝らなくていいんだが……。

絵「っ、花陽、これからは先輩も後輩もないんだから、ね?」

花「……はい」

ふむ、やはり花陽はいまだに絢瀬会長の事を怖がってるな。

まあ前まであんなだったし、花陽の性格を考えれば無理はないかもしれんが、怯える花陽を見て少しショックを受けてる絢瀬会長も不憫だな。

穂「そうだ!! 合宿行こうよ!!」

ニ「はあ?何急に言い出すのよ」

突然の提案だった。

いきなり何なの?

穂「あ~何でこんな良い事早く思いつかなかったんだろ~!」

まず思いつかんだろ。

凛「合宿かあ、面白そうにゃー!」

希「そうやね。こう連日炎天下の練習だと体もキツイし」

花「でも、どこに?」

意外と賛同意見が多いな。

穂「海だよ海~!夏だもの!」

まぁ妥当かな?

とはいえ、こういうのは色々準備がいる。

竜「と言ってもだな穂乃果。合宿に行くための費用はどうするんだよ?場所は?細かい日時は?もし行くとなったら、ちゃんと考えないといけない事だぞこれは」

穂「うっ……それは……」

やっぱり何も考えてなかったか、この単純バカは。

すると、穂乃果はことりの手を引っ張って小声で話しかけた。

穂「……ことりちゃん、バイト代は次いつ入るの?」

こ「え、ええ~……」

竜「ことりにたかってんじゃねぇよ……。大体バイト代じゃ、合宿は無理だろ」

ことりのお金を当てにする発言をするが、却下する。

穂「そうだっ!真姫ちゃん家なら別荘とかあるんじゃない!?」

竜「確かに……お前いくつか持ってるよな?」

真「ヴェェェェェ!?」

俺と穂乃果に、矛先を向けられた真姫は特徴的な驚きの声を出す。

穂「おおー!ホント!? 真姫ちゃんお願~い!」

真「ちょっと待って、何でそうなるの!?」

がめつい、がめついぞ穂乃果。

どんだけ合宿行きたいんだよ。

まあ真姫の家の別荘なら金も安く済むけどさ。

絵「そうよ、いきなり押しかけるわけにはいかないわ」

よく言ったぞ絢瀬会長。

すると、穂乃果もそれに気付いたのか、途端に目をウルウルさせながら言った。

穂「そ、そう、だよね……あ、あはは……」

出たぁぁぁぁ!!

元から犬みたいな穂乃果だからこそ出来る、諦めたように見せて遠回しに懇願する犬真似!

これはことりのお願い並に効くぞ!

そしてよく周りを見たら、他のみんなも何気に期待している目をしてるぞ。

何だかんだ絢瀬会長まで少し気が引けるけどお願いできないかしら的な視線を送っている。

こいつら行く気満々だぞ。

これにどう出るツンデレお嬢様!

真「うぅ~………仕方ないわね…。聞いてみるわ」

折れたぁぁぁぁ!!

ツンデレお嬢様敗れたり~!!

穂・凛「やったぁ(にゃ~)!!」

内心めちゃくちゃ期待してたなお前ら。

絵「フフ♪あっ、そうだ。……この機会にやった方がいいわね♪」

その言葉を聞いた全員が、会長の方に向く。

会長は、ただ「フフ♪」と微笑むだけだった。

まぁでも、合宿に行くと決まったのなら俺も言っておかなければならない事がある。

竜「んじゃ、みんなは合宿頑張ってこいよ。戻って来たらちゃんと出迎えてやるから」

穂「……え?」

穂乃果のキョトンとした声が聞こえたあと、すぐに静寂がその場を支配した。

まだ呆けている穂乃果に聞こえるように、もう一度言う。

竜「だから、みんなは合宿頑張ってこいよって。俺は行かねえから」

『えー!?』

9人同時に叫んだので、すごくうるさい。

穂「何で竜ちゃん行かないの!? みんなで合宿だよ!? 竜ちゃんもいないと話にならないよ!」

竜「いやね?考えてもみろよ穂乃果。合宿ってあれだろ?さっきも言ってたけど海に行こうと思ってんだろ?」

真「当たり前でしょ!!」

真姫が肯定する。

竜「なら尚更だよ。女の子達が一つ屋根の下に9人で行くのに、そこにたった1人の男である俺が行けば肩身狭いだけだし、そんなのお前らだって嫌だろ?特に花陽とか、俺に水着姿を見られたくないんじゃないかとか思ってな。それに俺は散らばっている恐竜を回収しないといけないし」

俺の本来の役目を言うと、

穂「そ、そっか……そうだよね……ごめんね竜ちゃん」

穂乃果は目をウルウルさせ、

こ「竜くん……どうしてもダメなの?」

ことりも目をウルウルさせ、

海「竜司!お願いします!一緒についてきてください!」

海未には頭を下げられた。

ええ~……何その必死さ。

止めに、

花「あの、私、竜司先輩なら大丈夫なので…」

凛「竜司先輩もいくにゃ!」

真「断ったら刻むわよ?」

絵「お願い出来ないかしら?」

ニ「あんたマネージャーでしょ!?」

希「それにウチらの方で恐竜が出たらどうするの?」

残り6人にもこう言われた。

ってか真姫、それ軽く脅し。

竜「はぁ~……分かったよ…」

『やったぁぁ!!』

こうして、不本意ながらも俺も合宿に着いて行く事になってしまった。



ーーーーーーー



旧い時代を感じさせる赤煉瓦造りの東京駅丸の内駅舎は、中に足を踏み入れれば雰囲気が外装とは様変わりする。

自動券売機や自動改札機といった日々進歩していく技術が詰め込まれ、古めかしさは一切感じない。

そんな奇妙なドームの中で、俺たちは集まっていた。

穂「えぇぇぇぇ!? 先輩禁止!?」

穂乃果がそう叫ぶ。

原因は会長の

絵「前からちょっと気になっていたの。先輩後輩は勿論大事だけど、踊っているときにそういうことを気にしちゃ駄目だから」

この言葉だ。

海「そうですね、私も3年生に合わせてしまうところがありますし」

言われてみれば確かにそうだ。

先輩後輩という関係は主に中学から部活などの関係で大事になってくる。

いわゆる上下関係だ。

それは後々重要な事になってくる。

しかしそれはスクールアイドルには少し障害でもある。

歌って踊っている最中にもそれを意識してしまえば、先輩に当たらないようにとか、そういう変な気遣いのせいで集中力が乱れる場合もある。

特に1年は3年に気を遣ってしまうだろう。

真姫や凛はともかく花陽は特に。

おそらくそれを気にしている絢瀬会長がこのアイデアを採用したのだろう。

俺もそれについては特に反対はない。

ニ「そんな気遣いまったく感じないんだけど……」

凛「それはニコ先輩が上級生って感じがしないからにゃ~」

1年にそこまで言われるニコさん。

当然その言葉はニコさんの癇に障る。

ニ「上級生じゃなきゃ何なのよ?」

「んー」と考えた後に凛は答える。

凛「後輩?」

穂「ていうか、子供?」

と穂乃果が。

希「マスコットかと思ってたけど」

と東條さんが。

ニ「どういう扱いよ!!」

3人共容赦ねえな。

絵「じゃあ早速、今から始めるわよ。…穂乃果」

絢瀬会長が呼ぶと、当の穂乃果は少し恥ずかしそうに「はい」と返事をする。

穂「良いと思います。え………、絵里ちゃん!」

そう言った穂乃果は、おそるおそる目を絢瀬会長に向ける。

「うん」と会長は満足そうに笑った。

穂「ほぉ…。何か緊張……」

穂乃果は胸を撫で下ろす。

竜「穂乃果でも緊張するんだな…。初めて知った」

穂「失礼だよ!? 竜ちゃん!!」

だって初めてなんだもん…。

言い方、気持ち悪いな…。

自分でやってなんだけど……。

凛「じゃあ凛も!」

挙手した凛は深呼吸する。

凛「ことり……ちゃん?」

こ「はい、よろしくね。凛ちゃん。……真姫ちゃんも」

ことりが言うと、メンバー全員の視線が真姫へと集中する。

真姫は気恥ずかしそうに顔を紅くしながら腕を組む。

真「べ、別に、わざわざ呼んだりするもんじゃないでしょ?」

強気な口調が苦し紛れに聞こえる。

相変わらずのツンデレのようで。

絵「それに、あなたもよ。竜司」

竜「…………はい?」

不意に絢瀬会長に呼び捨てで呼ばれたからか、返事が少し遅れてしまった。

絵「この合宿では、みんな先輩後輩の関係を壊していくって決めたでしょ。だからあなたも私達を呼び捨てにする事」

竜「いや、でもこれはμ'sの合宿でしょ?俺はまずμ'sじゃ無いですし、絢瀬会長とかにはそのままでもいいんじゃ…」

絵「それが嫌なのっ」

これまた不意に、絢瀬会長に俺の唇が人差し指で開かないように触れられた。

絵「ニコの事はさん付けでも、まだ名前で呼んでるのに、私や希は名字で、しかも私に限っては会長って呼ばれてるの、少しだけ距離を感じて、何か嫌なの……」

竜「別にそういう訳じゃあ…。大体、そういうのが俺な訳ですし……」

えー何これ?

めんどくさっ!!

チラリと周りを見ると、

穂「竜ちゃんはもっと女の子の気持ちを理解するべきだね。恐竜だけじゃなくて」

こ「そういう竜くんも、私はアリだよ♪」

海「頑張ってください!竜司!」

真「どうでもいいわ」

凛「恒例行事か何かかにゃ?」

花「これはさすがに……です……」

ニ「全く……この自称天才科学者は……」

希「エリチ、ファイトやで……!」

何かもう言われ放題だった。

竜「……はぁ……分かったよ!俺も呼び捨てにすりゃいいんでしょ!? だから微妙に寂しそうな顔しないでくださいよ。あなたは一応年上なんですから…」

絵「……絵里」

竜「え?」

俺の服の裾を掴んで俯きながら言う金髪年上クォーター少女。

あまりにも小さい声に思わず聞き返してしまった。

絵「あなたじゃなくて、私には絵里っていう名前があるんだから、ちゃんと絵里って呼んで……」

……やばい。

何がやばいって、年上だけどそんなの関係なしに幼く感じてしまう。

竜「………はぁ~…絵里?」

すると俺の口から名前が聞けて満足したのか、俯いていたはずの『絵里』の顔が満面の笑みで俺を見てきた。

絵「うん、よろしいっ!」

竜「……さいですか」

この生徒会長さんは……。

希「良かったな~エリチ!……で、竜司君、次はウチとニコっちの番やと思うんだけどな~」

竜「えー?何で…?」

ニ「うるっさいわね。さっさと呼べばいいだけの話でしょ。私もずっとニコさんじゃ何だかもどかしいのよ。ほら、早く言いなさい、竜司」

ニコさんはともかく、東條さんは何気にもう俺の事を名前で気兼ねなく呼んでやがる。

だが俺とて絵里のことで、既に吹っ切れている。

竜「まぁ改めてよろしくです。…希……ニコ…」

ニ「やれば出来るじゃない」

希「はい、竜司君よくできました~。ウチらもそうやけど、花陽ちゃん達も竜司君の事先輩とか付けんで気軽に呼んでええからな~」

希……それ俺の台詞。

と言うかなんだろ……なんかニコに誉められると腹が立つ。

あれか、上から目線な感じがするからか?

凛「う、うん、よろしくね。竜司君!!」

花「よろしくお願いします……竜司くん……」

竜「え?あっ…うん…」

やっぱりなんかむず痒い。

絵「では改めて、これより合宿に出発します!」

区切りが良いと判断したのか、絵里がいよいよ出発の言葉を口に出す。

絵「部長の矢澤さんから一言」

絵里に振られたニコは、

ニ「えっ!? ニコ!?」

戸惑いながら自分を指差す。

俺はそんなニコの背中を押す。

竜「ほら、ニコ…」

ニコは、とぼとぼと中心に歩いてきた後

ニ「しゅ、しゅっぱーつ!!」

それだけ言って、後は黙る。

穂「……それだけ?」

ニ「考えてなかったのよ!」

だろうな…。

こんな感じで電車に乗り込んだ。


竜司sideoff





◎side


竜司達がいた駅。

そこに氷室玄斗はいた。

彼はスタークとの戦いに負けた後、音ノ木坂を自主退学。

その後は行方を眩ましていたが、今この場にいた。

そんな玄斗は今何をしているかと言うと、天青竜司達を監視していた。
















黄色の小学生帽子を被り、下には「威風堂々」と書かれた白いシャツを着て、その上にベストチョッキを着ていて、ズボンは半ズボンという、そんなセンスの無い格好で。







しかも左頬には青い絆創膏が貼ってある。

「待ってろ……天青…」

氷室はそう言って、そのダサさ全開の格好で、威風堂々と歩き出した。









周りの人間がドン引きするのにも関わらず。







キャアアアアアアアアアア!!






◎sideoff





しばらくは更新無いかもです。


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Game#42

竜「君に、勝利の法則を教えよう!」

穂「何も恐れない気持ちだよ!」

ニ「立ち向かう勇気も……でしょ?」

竜「後は…!」

「「「元気をフルチャージだ!!」」」

♪ら~ら~ら~♪

竜「行こうぜ!! ビタミンC!」

穂「ビタミンB!」

ニ「着色料保存料0」

竜「勝利の法則は決まった!」

「「「元気ハツラツ!アクアミンC」」」

真「…………何これ?」


竜司side


『おお~!!』

綺麗な晴れ空の下。

セミがミンミンと暑苦しく鳴いていて、余計それが暑い夏を感じさせる。

竜「うん。相変わらずのすごさだね」

ものすごく大きい。

しかも前にあるビーチはプライベートビーチと来た。

ブルジョワ幼馴染みここに極まれりだな。

穂「すごいよ真姫ちゃん!」

凛「さすがお金持ちだにゃー!」

真「そう?普通でしょ?」

真姫は穂乃果と凛の賞賛を何でもないと言わんばかりに返す。

何でもなくはないだろ…。

そろそろ金銭感覚矯正させるか……。



ーーーーーーーーー



「「「わぁ~!!」」」

次に来たのは寝室。

まあ、穂乃果と凛と海未の声で分かると思うが、そんな声が出てしまうほどベッドが大きい。

何でもかんでも大きくすればいいってものじゃないでしょ!

穂「こことーった!!」

そう言ってベッドに勢い良く飛び込む穂乃果。

凛「凛はこっち~!」

竜「お前ら……」

穂「ふっかふか~!それにひろーい!」

楽しそうで何よりです。

何で男の俺よりこんなにもはしゃいでんだこいつら。

凛「海未先輩と竜司先輩も早くとった方が……あっ」

海「……やり直しですね」

竜「まあ、まだ慣れない方が当たり前か。まあ気にせず、どんどん普通に呼んでくれ」

絵里がいきなり言った事だ。

急に先輩禁止と言われても中々慣れないのが普通だ。

特に1年はな。

凛「……うんっ!海未ちゃん、竜司君、穂乃果ちゃん」

しかし、1年でもフラットな方の凛ならば、慣れるのに時間はそうかからないだろう。

凛らしい良い笑顔だ。

凛「って、寝てるっ!?」

竜「はぁ~…」




ーーーーーーーー



さっそく海未に軽く説教されている穂乃果を放置して、俺は1階に戻って来ていた。

凛は海未の隣で穂乃果を見守っているのだろう。

俺はもう少し別荘の中の構造を見ておきたい。

キッチン、風呂、トイレ。

特に風呂は露天風呂があった。

真姫ってつくづくすげぇ…。

俺も貯金的には金持ちだが、感覚は庶民なので驚くばかりだ。

そんな時。




ニ「りょ、料理人!?」

ニコの声がキッチンの方から聞こえた。

料理人って単語が聞こえるって事はまさか……。

真「そんなに驚く事?」

穂「驚くよ~。そんな人が家にいるなんて……凄いよね!」

竜「一般家庭に料理人がいる事自体が普通におかしいんだよ……」

こ「あっ、竜くん!」

駆け付けてみれば案の定だった。

真姫の家には料理人とかがいるらしい。

つくづくブルジョワ~…。

ニ「……へ、へえ~、真姫ちゃん家もそうだったんだ~!ニコん家も専属の料理人、いるのよねえ~!だからニコぉ、ぜ~んぜん料理なんかやった事なくて~」

竜「……………ふ~ん」

ニ「何よ!? その疑った目は!?」

残念ながらニコからは真姫特有のお嬢様オーラが感じられない。

よって嘘かもしれない。

こ「へえ~!ニコ先輩もそうだったなんて~!」

ニ「にこにーでしょ」

こ「え?」

ニ「ニコ先輩じゃなくて、にこにー!」

こ「あ……うん!!」




ーーーーーーーーー



海「これが!合宿での練習メニューになります!」

竜「おー」

絵「凄い、こんなにびっしり……」

全員が練習着に着替え、外に集合したところで練習メニューを考えてきた海未の説明が始まった。

練習メニューには遠泳10kmにランニング10km、精神統一や腕立て腹筋20セットと書かれていた。

ナニコレ……トライアスロンの選手の練習メニューか?

遠泳10kmって何だよ…。

穂乃果と凛とニコはそれぞれ水着に着替えていて、既に海で遊ぶ気満々。

まさかこれから練習するなんて思っても見なかった3人の表情は実に不服そうだ。

穂「って海は!?」

海「……私ですが?」

穂乃果の言葉に海未がキョトンとした顔で返す。

誰もそんな事を聞いてる訳じゃない。

穂「そうじゃなくて!海だよ!海水浴だよ!!」

珍しく穂乃果が海未をツッコんでいるな。

海未はいつの間にか練習大好きッ子になっている。

海「それでしたらここに」

海未は満面の笑みで遠泳10kmと書かれているところを指差した。

穂「え、遠泳10キロ……!?」

ニ「そのあとランニング10キロ……!?」

それを見た穂乃果とニコは10kmという数字と、その後に書いてあるランニング10kmに顔を引きつらせていた。

そりゃそうなるよな。

俺だって、絶対やだ。

海「最近、基礎体力をつける練習が減っています……。せっかくの合宿ですし、ここでみっちりやっといた方がいいかと!」

竜「それ……みんなの体力は持つの?」

俺が聞くと

海「大丈夫です!熱いハートがあれば!!」

竜「お前はどこの超熱血テニスプレイヤーだ」

何?練習中誰かがへばっていたらその人そっくりに応援するの?

いくら大和撫子の海未でも、暑苦しいこと極まりない。

正直そんな事をされたら、イラッとくる。

ニ「やる気スイッチが痛い方向に入ってるわよ……何とかしなさいよ竜司!」

竜「何で俺に振るんです?」

ニ「幼馴染なんだから扱いには長けてるんでしょ?今の海未をどうにかできるのはアンタしかいないのよ。というかこういう時のための手伝いでしょうが!」

ここで俺に振るとか鬼かこのツインテール。

仕方ない……やるだけやるか。

竜「海未、とりあえずそれは一旦置いとかない?」

海「そういう思いこそがダメなのです!マネージャーだからといって竜司も弛んでいますよ!これは竜司も一緒に練習する必要がありますね。一緒に頑張りましょう!!」

竜「そんな事する訳無いだろぉぉぉぉぉぉ!!」

俺は両手をボトルを振るみたいに大きく振って叫ぶ。

何で好き好んでこんな鬼練習に付き合わなきゃいけない!?

絶対嫌だ!!

ニ「使えない天才科学者ね~。しょうがない……穂乃果、どうにかしなさい」

穂「う、うん……。凛ちゃん!」

凛「分かったにゃ!」

穂乃果は凛とアイコンタクトだけで意思を疎通し、凛が海未の手を引っ張り海の方へと駆けだした。

凛「海未ちゃん!あそこー!」

海「ええ!何ですか!?」

凛が海未を引っ張って視線を逸らした瞬間の事だった。

俺、絵里、真姫、希を除いたメンバーが海方面へと駆けていく。

何と古典的な方法だよ。

でもその古典的な方法に負けた俺とは一体……。

穂「今だー!」

凛「行っけー!」

海「ああ!あなた達ちょっとー!!」

ちなみに普通なら遠慮して行かないはずの花陽は凛に見事に引っ張られていった。

ことりはことりで何故か「うわーおっ!」とか叫びながら走っていった。

ノリノリだなオイ。

絵「仕方ないわね……」

海「えぇ……?良いんですか?絵里先ぱ………あ」

絵「……禁止って言ったでしょ?」

海「すみません……」

絵里先輩と呼びそうになった海未に禁止と言って、海未は口元を押さえて謝った。

絵「μ'sはこれまで部活の側面も強かったから、こうして遊んで先輩と後輩の垣根を取る事も重要な事よ?」

海「……あっ」

花「おーい!海未ちゃ~ん!絵里ちゃ~ん!」

向こうから花陽の声が聞こえる。

そこにはもう、先輩という垣根を感じさせるような戸惑いはどこにもなかった。

竜「まあ、いいんじゃね?絵里の言う通りそうした方が今よりもっと仲良くなれるだろうし、それで練習中の雰囲気も良くなったら万々歳じゃん?」

海「それは、まあ……そうかもしれません……」

絵「さあ海未、行きましょう!!」

ほんの少しだけ迷っていた海未の手は、恐る恐る絵里の伸ばされた手へと吸い込まれるように伸びて行った。

それと同時に俺以外の残りのメンバーが海辺へと走って行く。

あれ?

あのまま走って行ってるって事は、全員下に水着着てるって事だよな?

……何だよ、海未は遠泳するつもりだったから分かるけど、絵里とか真姫も何だかんだ遊ぶつもりだったんだな。

となると、この中で唯一水着に着替えてないのは俺だけだな。

なんだろう……この置いてけぼり感は……。

まぁ、俺も水着に着替えるか……。



ーーーーーーーーー



青い海。

白い雲。

澄みわたるように青い空。

そんな綺麗な景色をバックに、目に入れても痛くない美少女達がキャッキャッウフフと遊んでいる。

穂「こっちこっち~!」

こ「ほらほら~!!」

海ではしゃぐ穂乃果達を、俺はせっせとパラソルを組み立てながら見ていた。

別に先に遊んでて羨ましいとかは感じてたりしてない。

ホントだよ?

真「他所見してないで早く組み立てなさいよ、竜司」

竜「お前の為にやってるのに何で上から目線なの?君は?」

ここでほっぽり出してやろうか?

そう、俺は水着に着替えた後、運悪く真姫の目に止まり、パラソルを組み立てるよう頼まれたのだ。

何でも読書がしたいらしい。

竜「海に来てまで読書とかバカなの?」

真「うるさい。私の勝手でしょ?」

バッサリ切られた。

穂「竜ちゃ~ん!早くおいでよー!!」

竜「今はPV撮影中でもあるんだから俺はまだ行けないの!お前達はお前達で楽しくキャッキャッウフフと自由に遊んでろ!」

穂「ぶーぶー!竜ちゃんも遊んだ方が楽しいのに~!!」

人の気も知らないで。

俺だって冷たい海でゆったりしたいってーの。

えっと……ここをこうして、こうか?

竜「よし。出来たぞツンデレお嬢様」

真「何でそんな皮肉めいてんのよ。後そのアダ名やめてって言ってるでしょ?まぁ、いいわ」

むっ……真姫のやつ、お礼の1つもないとは何だ。

これだからお嬢様ってのは……。

他人に何かしてもらうのが当たり前だと思っているブルジョワジーなのか!?

真「竜司」

竜「ん?何……?」

暑いのにまだ何か用があんの?

真「パラソル……組み立ててくれて、ありがと……////」

竜「……え?あ、うん」

何だよ何だよ?

不意打ちのお礼なんてどこで教わったこのお嬢様。

顔も赤くしちゃって~♪

可愛いやつめ♪

竜「というか、お前はあいつらと一緒に遊ばねえのか?」

真「何もずっと遊んでるところを撮ってればいいわけでもないでしょ?こうやってパラソルの日陰の下で読書をするのも乙ってものよ?」

はは~ん……分かったぞ。

竜「お前~、ただみんなと上手く遊べるか分からないから読書に逃げてるだけなんじゃねえの?」

真「なっ……!ち、違うわよ!私はただ読書がしたいだけで!」

図星か。

竜「はいはい、そういう事にしといてやるよマッキー」

背後からムキーッ!みたいな声が聞こえるが気にしない。

早く海でプカプカしよう、プカプカ。

…………このプカプカってなんか怖いよね?

そんな時。

穂「あっ!竜ちゃん終わったなら一緒に遊ぼうよー!!」

今度は穂乃果に見つかった。

だが今から俺はふわふわタイムを満喫するんだ!

誰にも邪魔はさせん!!

という訳で~。

竜「代わりにこいつらと遊ばせてやるよ」

そう言って、俺はディノホルダーと、数枚の恐竜カードを取り出す。

海「まさか……」

海未がひきつった笑みを浮かべる。

そのまさかだよ。

俺は順にスラッシュしていく。

《オピストコエリカウディア》

《エイニオサウルス》

《アリオラムス》

《ゴルゴサウルス》

《チンタオサウルス》

《フクイラプトル》

そしてそれらを投げると、合計6体の恐竜が出てきた。

先ずは、深緑と赤茶色で構成された雷竜・オピストコエリカウディア。

因みにオピストコエリカウディアは鼻が頭の上にあるので、シルエット的にはブラキオサウルスの小型版である。

次は、背中は紺色で腹は黄白色で構成され、鼻の角が下に曲がっている角竜・エイニオサウルス。

鼻の辺りは黄色で、白と黒がバラバラに配置された肉食恐竜・アリオラムス。

鼻先と腹はオレンジで、後は藍色で構成された肉食恐竜・ゴルゴサウルス。

黄白色の体に抹茶色の線が何本も走り、頭に角のような管があるカモノハシ恐竜・チンタオサウルス。

黄色の体に茶色の線が縦に何本も走る小型肉食恐竜・フクイラプトル。

この6体の恐竜は出てくると、それぞれ吠える。

「モオ゛オ゛オ゛オ゛ン…」

「グッゴォォ……!!」

「フギュアアアアアア!!」

「ギュアアアアアアアア!!」

「パオ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛ン!!」

「クアアアアアアン!!」

絵「ハラショー…」

希「前はこれ以上に驚きな事があったけど、改めて見るとすごいな……」

花「草食恐竜の子もいるんだ…」

凛「でも肉食恐竜もいるからちょっと怖いにゃ…」

海「竜司!あなたという人は何やってるんですか!?」

真「さっさとしまいなさいよ!! 騒ぎになるでしょ!?」

穂「そうだよ竜ちゃん!! 出すならもっと可愛い子出してよ!!」

ニ「そこじゃないでしょ!?」

こ「私は小さい子がいいな♪」

ニ「ことりも!?」

なんか受けが悪いな。

竜「プチ・ジュラシック・パークだぞ?楽しめよ」

「「「楽しめるか!!」」」

真姫と海未とニコに同時に言われた。

仕方ない、新しい機能を試すか。

俺は出した6体の恐竜をカードに戻し、ディノホルダーのボタンを押す。

《ぷちぐる・オン》

機能を変えたのを確認すると、ティラノとトリケラのカードをスラッシュ。

するとカードは二枚共、ティラノとトリケラをそれぞれデフォルメしたような小さく、女の子受けしそうな姿に変わった。

それを裏付けるように、

こ「可愛い~♪」

穂「すごいよ竜ちゃん!!」

海「まぁ、これなら…」

絵「ハラショー♪」

希「こ、これやで!! 読者が地味に望んでたのは!!」

凛「にゃ~♪」

花「可愛い~♪おいでおいで~♪」

ニ「なかなかね…」

真「ふ~ん…」

全員興味津々だった。

竜「この状態のティラノはそのままティラノだが、トリケラトプスはガブって言うんだ」

穂「ガブちゃんか~。よろしくね?」

穂乃果が手を出すと、ガブは穂乃果の手の匂いを嗅いでから、

「ガブ!!」

穂「いったぁぁぁぁぁぁぁ!!!?」

その手を噛んだ。

竜「ガブ!! 止めろ!!」

俺が怒鳴ると、ガブはすぐさま穂乃果の手を離した。

竜「大丈夫か?穂乃果?」

俺は穂乃果の手を撫でたり触ったりする。

跡になるような傷は無いな。

穂「う、うん……ありがとう竜ちゃん…////」

なんか顔を赤くして言う穂乃果。

こ「私も噛まれたら心配してくれるかな~……」

海「穂乃果が羨ましいです……」

竜「ん?なんか言ったか?」

「「いえ何でも!!」」

同時に首と手を振る海未とことり。

竜「じゃあガブ、ティラノ。穂乃果達と遊んでやってくれ…」

「ガブッ!!」

「ギャウ!!」

ガブとティラノは頷く。

穂「えー!? 竜ちゃんは遊ばないの!?」

竜「俺は疲れた。少し寝る」

そう言ってパラソルの方に向かう。










「ギャウッ!!」

ニ「いったぁぁぁぁぁぁぁ!!!?」

希「ニコっち!?」











ニコがティラノに頭を噛まれるのを背にして。











しばらくは更新しないかもとか言いましたが、予想以上に早く用事が終わったので投稿しました。

後、説明だけじゃ分からない恐竜がいたら言ってください。
出来る限り挿絵貼りますので。



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Game#43





穂「竜ちゃ~ん、起きてぇ~」

竜「ん~……?」

何だよ……折角人がパラソルの下で気持ちよく寝てたのに……。

渋々目を開けると、穂乃果の顔がドアップに映っていた。

そして後頭部にはふにっと、まるで枕よりも断然に柔らかいであろう何かが触れている。

……ふにっ?

竜「……な~穂乃果?今俺の後頭部に触れているものは一体何だ?」

穂「ん?私の太ももだよ?てへっ☆」

舌を出してウインクしながら、なーにを平然と答えてんだこの天然娘は。

可愛いじゃねぇか。

じゃなくて、お前今水着でしょうが。

それはつまり、今俺は穂乃果の生の太ももで膝枕をしてもらっているという……。

竜「お前……何で俺に膝枕してんの?」

穂「ん~……何となく?」

頬に指を当ててそう答える穂乃果。

竜「……一々可愛いな……」

穂「ふえっ!?////」

やべ……声に出てたか。

そこに絵里達も来る。

絵「あら?やっと起きた?」

こ「竜くん爆睡だったね~」

竜「爆睡?」

海「そうですよ?」

希「ガブちゃんやティラノちゃんが噛んでも蹴っても起きなかったんやで?竜司君」

真「というか……寝癖酷いわよ?何で一部だけ跳ねてんのよ……」

希の言う通り、俺の側でティラノとガブが疲れたのか、うたた寝していた。

後、真姫。

俺の寝癖はいつもの事だ。

竜「そっか……悪いことしたな…」

そう言って起き上がろうとするも…

竜「あっ…」

絵「えっ?」

穂「竜ちゃん!?」

寝起きだからか、足が滑り、そのまま前にいた絵里に倒れこんでしまった。

その瞬間もにゅっ、と。

そんな擬音が似合うかのような、何だか物凄く柔らかいモノが俺の右手にあるような感触がした。

あれ、これって……。

もう一度指に力を込めても、またもにゅっとした感触がした。

おそるおそる目を前に向けると……





おっかなびっくりな表情をしながら、徐々に顔を真っ赤にしていく絵里と。





絵里のたわわな左のおっぱいをガッシリと掴んでいる俺の右手があった。





これは…………マジでヤベーイ…。

海「竜司……あなたという人は……ッ!!」

周りからの視線が突き刺さるように痛い。

海未から殺意の波動を感じる。

とりあえず謝ろう。

竜「絵里……ごめんなさい」

絵「その前に………まず最初に掴んでる手を放しなさァァァあああああああああああああいッ!!」

竜「ボルテックフィニッシュ!?」

突如。

バチコーンッ!!!!という強烈な音とともに、絵里の振りかぶった掌から吹っ飛んだ。

俺が。

薄れゆく意識の中、最後に見たのは、ガブとティラノの呆れた目だった。




ーーーーーーーーーー




竜「………俺は神だぁああああああああああ!!」

ニ「わひゃっ!? び、びっくりした~。何だ、竜司起きたの」

竜「お、あ……ニコか」

目を覚ますと、そこは別荘の中にある寝室だった。

ニコが私服になっているという事は、もうみんな遊びは終わってここに帰って来たのだろう。

俺も着替えないとな。

竜「あ、そういや絵里はどうなりました?」

ニ「絵里なら今他のみんなとリビングにいるわよ。まあアンタと会うと多分平常じゃなくなると思うけど」

竜「やっぱそうですよね……」

不可抗力とはいえ、絵里には大変申し訳ない事をした。

俺は役得だったけど。

竜「ん?そういや何でニコがここにいるんです?」

ニ「えっ!? えっと……何となくよ!何となく!」

あんたも穂乃果と同じ理由かよ……。

竜「とりあえず看病ありがとうございます、ニコ。もう大丈夫なんで。あとは着替えるから部屋から出てもらえると助かります」

ニ「はいはい、分かったわよ~」

時間帯を考えると、そろそろ夕飯の準備でもする頃か。

これでも絶賛一人暮らし中なので、料理はある程度作れる。

ニ「ねえ」

着替えるためにバッグを漁っていると、まだ部屋から出てなかったニコが入り口付近から振り返ってこちらを見ていた。

竜「何です?」

ニ「あんた……何で私達に対して名前は呼び捨てだけど語尾は敬語なの?まさか、変な壁作ってんじゃ無いでしょうね?」

ニコの目が鋭くなる。

竜「……まさか。それは無いですよ」

ニ「そう………ならいいけど。さっさとその敬語取ってよね?メンバーで決めたでしょ?」

そう言って、今度こそニコは出ていった。




ーーーーーーーーー



着替えてから1階へ向かうと声が聞こえた。

穂「買い出し?」

希「何か、スーパーが結構遠いらしくて」

穂「じゃあ行く行く!」

話を聞く限り、食材を買いに行かないと晩御飯を作る事はできないらしい。

そりゃそうか。

すると、真姫が会話に入ってきた。

真「別に私1人で行ってくるからいいわよ」

希「え?真姫ちゃんが?」

真「私以外、お店の場所分からないでしょ?」

確かに買いに行くとしても、肝心のスーパーの場所が分からなければ意味がない。

希「じゃあウチもお供するっ」

真「え?」

真姫の意見に希がもう決めつけたような事を言い放つ。

竜「んじゃあ俺も一緒に行くよ」

真「り、竜司も?」

急に真姫の隣にやってきた俺にびっくりしながら聞いてくる。

そりゃお前、俺の仕事と言ったらこういう事でしょうが。

……あ、絵里に目を逸らされた。

もう少し時間置いとくか。

希「たまにはいいやろ?こういう組み合わせもっ」

竜「俺は一応荷物持ちとしてな?んじゃあ行くか」

そう言って、俺は出口付近まで来ると、体をシャフ度に傾けて叫んだ。














竜「夜は焼肉ッしょーーー!? ふっへっへっへっへっへっへっへっへっ!!」








そして威風堂々と出ていく。

穂「竜ちゃん………また壊れちゃった」

希「疲れてるんかな~?」

海「大丈夫です。大体あれが竜司の素なんで…」

真「ホント……なんとかならないのかしら?」

なんか失礼な事が聞こえた。




ーーーーーーーー




そんなこんなで夕日と海をバックに俺と真姫と希でスーパーへ行っている最中である。

希「おお~、綺麗な夕日やね~!」

竜「夜は焼肉だよな?」

希「竜司君空気読んで」

失敬な!

これでも空気は読める方だぞ?

真「どういうつもり?」

俺と希の何気ないやり取りを見ていた真姫がようやく口を開いた。

希「別に?真姫ちゃんは面倒なタイプだなーって」

真姫の探るような質問に、希は嘘を付かずに直球でそれを言った。

希「ホントはみんなと仲良くしたいのに、中々素直になれない」

真「……私は普通にしているだけで」

希「そうそう、そうやって素直になれないのよね」

気付けば、希はいつもの似非関西弁じゃなくなっていた。

という事はつまり、これはおふざけな話ではない。

希の話す雰囲気からそれは察せるし、真姫もそれに何となく気付いてはいるようだった。

真「ていうか、どうして私に絡むの!?」

ここで真姫が一気に確信を突く。

いつまでも重要な事を言わない希に痺れを切らしたのかもしれない。

その問いに希は「ん~」と少し考える仕草をしてから、こう返した。

希「ほっとけないのよ。知ってるから、あなたに似たタイプ」

真「……何それ」

真姫はあまりピンと来ていないようだったが、俺には十分にその意味が分かった。

いたのだ。

そういう人が。

今の真姫のように、本当はやりたかったはずなのに、中々素直になれず、そうやって色々ぶつかってきた人が。

その人はいつも俺達に突っかかってきて、何度も何度も対立してきた。

どこまでも不器用で、どこまでも面倒な人。

希はその人を助けられなかった。

だからこそ真姫がほっとけないのだろう。

希「ま、たまには無茶してみるのも良いと思うよ!合宿やし!」

それだけ言うと希は1人前を歩いて行った。

道知ってるのは真姫のはずじゃ……。

真「何なのよ、もう……」

希の言葉にイマイチ真意が掴めないと言わんばかりの声音で真姫がぼそりと呟く。

分かってはいるけど、それを認めるのが何だか自分らしくないと真姫は思っているんだろう。

だからいつも自分の素直な気持ちとは、裏の事を言ってしまう。

俺は真姫の頭を撫でる。

竜「まぁ…真姫は真姫のペースで変わっていけばいい。俺達はいつでも待ってるからな?」

そう言って、俺も希の後を追う。

真「ホント……たまにかっこよくなるんだから♪」

後ろから聞こえた真姫の声音には、何処か嬉しさがあった。



ーーーーーーー




スーパーから帰ってきて現在。

結局献立はカレーライスになった。

作ったのはニコ。

最初はことりだったのだが、もたついてたのでニコが急遽代わりに作った。

結構手際よかったよ?

普段作らないとか何とか抜かしてたのに。

ただ、花陽だけはカレーとご飯が別々で装っていた。

絵「何で花陽だけお茶碗にご飯なの?」

花「気にしないでください」

竜「いや、気にするだろ…」

花陽の気にしない発言にツッコム。

穂「それじゃあ!みんな手を合わせてー!!」

穂乃果が号令を出すようで、みんなは穂乃果に従って手を合わせる。

『いただきまーす!!!』

全員で礼儀正しく声をそろえた後、みんな目の前のカレーを口にした。

穂「美味しい!」

竜「うん、確かに…」

穂「ニコちゃん料理上手だよね~!作る時の手際が凄かったもん!何かこう、パッパッてすぐ作っちゃってたし!」

ニ「ふっふーん!」

すると、「あれ?」とニコが料理する姿を思い出したことりが言う。

こ「でも、昼に料理なんてしたことないって言ってなかった?」

ニコの笑顔が引きつる。

真「言ってたわよ」

真姫がことりの証言を補足する。

真「いつも料理人が作ってくれるって」

これは……自分もお金持ちなんですぅ~は嘘だな。

嘘が確定したな。

すると、ニコが急にスプーンを持ち出した。

ニ「やあん、ニコ、こんなに重い物持てな~い!」

竜「何言ってんだアンタ」

俺を含めたメンバー全員がニコに呆れたような困ったような視線を送っている。

俺の言葉が癇に触ったのか、目つきを鋭くして立ち上がる。

顔の横には、重いとかほざいていたスプーンが片手で掲げられている。

ニ「五月蝿いわね!! これからのアイドルは料理のひとつやふたつ作れないと生き残れないのよ!」

穂「開き直った!」

と穂乃果が言う。

そんなこんなで食事が終わり、すぐに穂乃果はソファに横になる。

それを見た海未が

海「太りますよ」

と言う。

穂乃果は

穂「お母さんみたいな事を言わないでよ~」

文句を垂れる。

凛「よーし」

すると凛が立ち上がる。

凛「じゃあ花火をするにゃー!」

花「その前に、ご飯の後片付けしなきゃ駄目だよ」

花陽がそう言うと、ことりが控え目に挙手をする。

こ「それならわたしやっとくから、行ってきていいよ」

ことりはそう言うが、花陽と俺と絵里は納得出来ない。

花「え、でも………」

竜「そういうのはダメだ」

絵「そうよ。そういう不公平は良くないわ。皆も自分の食器は自分で片付けて」

海「それに、花火よりも練習です」

海未の言葉に

ニ「うえ……。これから?」

ニコが眉を潜め、凛が口をとがらせる。

海「当たり前です。昼間あんなに遊んでしまったのですから」

こ「でも………そんな空気じゃないっていうか………。特に穂乃果ちゃんはもう………」

おそるおそる意見したことりが目配せした先で、ソファに座る穂乃果が寝返りを打つ。

穂「竜ちゃーん、お茶まだー?」

竜「自分で淹れろよ。めんどくさい」

何で俺が淹れなきゃならん……。

寝言かもしれないが…。

海「家ですか!?」

海未がツッコム。

真姫は自分の食器を持って立ち上がる。

真「じゃあ、これ片付けたらわたしは寝るわね」

凛「え?真姫ちゃんも一緒にやろうよ花火」

海「いえ。練習があります」

ニ「本気?」

ニコが呟き、凛がそれに同意する。

凛「そうにゃ。今日は皆で花火やろう?」

海「そういうわけにはいきません」

凛「かよちんはどう思う?」

この討論に花陽を参加させるのは酷だろう。

花陽は気まずそうに主張する。

花「わ、わたしは……お風呂に」

ニ「第三の意見出してどうするのよ」

ニコが指摘する。

この意見のぶつかり合い、いつ終わるんだ?

穂「竜ちゃーん、お茶ー」

竜「あー、分かった分かった…」

穂乃果は本当に寝ているのだろうか。

俺がそう思っていると、希が第四の意見を投じる。

希「じゃあ、もう今日は皆寝ようか。皆疲れてるでしょ?練習は明日の早朝。それで、花火は明日の夜することにして」

凛「そっか」

と凛は納得した顔をする。

ニコは安心したのか胸を撫で下ろした。

凛「それでもいいにゃ」

海「確かに、練習もそちらのほうが効率が良いかもしれませんね」

ようやく海未も納得したようだ。

あのストイックな海未を説得できるのは、この人くらいだろう…。

穂「お茶ー」

竜「うるせえぞ!いい加減にしないと不味いコーヒー飲ますぞ!!」

俺の怒鳴り声に全員苦笑いする。

場を総括した希は言った。

希「じゃあ決定やね」

穂「やったー!みんなでお風呂だー!!」

竜「復活早いな単純バカ」

穂「単純バカ言わないで!!」

とりあえずそれぞれが移動を始める。

その間、俺は全員の食器を片付ける。

そんな時。




穂「あ、竜ちゃん!覗いちゃダメだからね!!」

竜「そんな暇ねぇよバカ」

何てことを言いやがる。



ーーーーーーー



あれだけ騒がしかった食卓も、みんないなくなれば静かなもんだな。

全員の食器を洗いながらそう思う。

……………あれ?






そういやガブとティラノは?






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Game#44

現在俺は、別荘の中をさ迷っていた。

穂乃果達が風呂に入ってから既に10分。

先ずはキッチンの戸棚の中や、各部屋の物陰。

果ては別荘の回りを歩いていた。

こんな事をしてるのには訳がある。

ガブとティラノ。

この二体がいないのだ。

最後に見たのは絵里にビンタされた時の一瞬。

そこから先は見てない。

なので早く回収しようと探しているのだが、なかなかいない。

残るは風呂場。

だが探そうにも穂乃果達が今入ってるので、それは無理。

今行けば、もれなく9人のビンタを食らい、変態のレッテルを貼られてしまう。

そんなのはごめん被る。

しかしよくよく聞くと、風呂場から「可愛いね~」とか、「竜ちゃんってやっぱりすごいよね~」とか、聞こえる。

…………確定。

ガブとティラノは風呂場にいる。

とりあえず待つか。




ーーーーーーーーー




穂「ふぁ~、良いお湯だった~!あ、竜ちゃん、何してるのー?」

竜「……見りゃ分かるだろ。寝転んでたの」

ソファでのんびりしてると、風呂から上がってきたのか、全員がリビングへ戻ってきた。

そして予想通り、真姫の腕の中にティラノが、穂乃果の腕の中にガブがいた。

穂「はい竜ちゃん。ガブちゃん達を届けに来たよ?」

真「入ったらビックリしたわよ。先客と言わんばかりに湯船に浸かってたのよ?」

希「まぁそのお陰でええ思い出来たしな♪」

絵「すごく楽しかったわ。ありがとう竜司」

竜「そうなのか……」

こいつら……自由だな。

とりあえずディノホルダーのボタンを押して、ガブとティラノをカードに戻す。

絵「私達はもう終わったし、竜司もお風呂入ってきたら?色々疲れたでしょ?それと昼間はごめんね?」

絵里が頭を下げてくる。

竜「いいですよ別に。俺もすみませんでした」

絵「ありがとう♪」

どうやら普通に話せるまでには回復したようだ。

竜「……じゃあ、俺も入ってくるわ」

こ「うんっ、竜くんもゆっくり疲れを癒してね!」

ことりに「おう」と軽く手を上げながら風呂場へとゆっくり向かう。

竜「………ことり。あれだったら背中流してくれるか?」

ふと、冗談で言ってみた。

「「「「「「「「は?」」」」」」」」

こ「え?……ええええええええ!!!?////」

するとことり以外の8人は唖然とし、ことりは顔を赤くしてあわてふためく。

こ「えっと…あの…竜くんがしてほしいなら…」

竜「冗談だよ」

こ「え?あ、そうなんだ……」

ん?

なんか心なしか割と残念がってるな、ことり。

そして心なしか8人の視線が痛い。

なのでそそくさと風呂場に向かった。



ーーーーーーーー




竜「断る」

穂「何でなの竜ちゃん!?」

ムスーッと頬を膨らませながら俺を睨んでくる穂乃果と、それをものともせずに睨み返す俺。

風呂から上がり、買い出しの時に買っておいたコーラをシュワッと飲みながらリビングへ行った時の事だった。

リビングに戻った俺の目の前に映ったのは、フローリングの上に敷かれたたくさんの布団だった。

どうやらせっかくの合宿なんだから、ここでみんな一緒に寝よう!という事らしいのだが……当然俺はそれに参加するわけにはいかないと思っていたところに穂乃果が猛反発してきたのだ。

穂「竜ちゃんも昔みたいに一緒に寝ようよ!」

竜「いつの話してんの?それは小学生の時だろ。もう高校生だし、1番に幼馴染のお前以外に他のみんなもいる事を忘れるな」

お互い思春期もいいとこなのに、何でこう普通に一緒に寝ようなどと簡単に言えるんだ。

天然か?

真「というか、どうして全員同じ部屋じゃなくちゃいけないの?」

絵「合宿だからね」

真姫がクッションを抱きながら疑問をぶつけ、それに髪を下ろした絵里が答える。

何気にみんなの寝間着を見てる俺ってすごくね?

希「まあ、こういうのも楽しいんよっ」

絵「じゃあ、寝る場所を決めましょ」

穂「私ここー!」

切り替え早いなア穂乃果。

凛「凛はかよちんのとーなりっ!」

花「そんなに引っ張らなくても大丈夫だよ凛ちゃ~ん!」

希「真姫ちゃんはどうする?」

真「……どこでもいいわ」

あれま、つれないねえこのツンデレお嬢様は。

わざわざ希が聞いてくれたってのに。

竜「じゃあ俺と一緒に寝るか?」

真「ヴェエエエ!?////」

再び冗談で聞くと、真姫は顔を赤くしてあわてふためく。

真「な、何言ってんのよ!?////」

竜「冗談だよ」

真「……っ」

竜「ちょ、やめろ!無言で殴ってくんな!」

ポカポカ可愛く殴って来る真姫だが、地味に痛い。

そしてまた8人の視線が痛い。

竜「まぁとにかく、俺は上に行くわ」

そう言うと、

穂「ええ~!! 竜ちゃんも一緒に寝ようよ~!何なら私の隣でも良いからさ~!!」

穂乃果がまたも止めてくる。

竜「うるさい。俺は俺でやることがたくさん残ってるの。って言うか、一緒に寝てなんかあっても知らんぞ?」

穂「なんかって?」

こいつ危機管理能力大丈夫か?

竜「勢い余ってセクハラな事するかもだぞ?」

そう言うと、

穂「大丈夫!竜ちゃんはそんな事しないって信じてるから!!」

笑顔でそう返された。

他の8人も妙に優しい笑顔だった。

………はぁ~、調子狂うな。

竜「気が向いたらな?」

穂「あっ、竜ちゃん待ってよ~!」

尚も呼び止めて来る穂乃果を無視して、俺は部屋に戻る。



ーーーーーーーー




部屋に戻った俺は早速専用の器具を取り出し、液体やらブランク状態のカードをビーカーのようなカプセルに容れる。

要は実験の為に離脱したのだ。

さてと……。

竜「さぁ……実験を始めようか?」

そうして、新たな超技カードの開発に取りかかった。

作り方はこう。

本物の石板の欠片とブランク状態のカードを一緒にビーカーカプセルにいれて、それに情報を入力。

たったこれだけだが、結構作るのに時間がかかる。

さて、作り始めてから10分。



『あはははははははは!!』

『きゃー!あっはは!!』

『にゃー!! いっくにゃー!!』

下から何やら笑い声が響いてくる。

合宿なんだし何か女の子同士で楽しく話してるんだろ。

せっかくだから親交を深めるためにも悪い事ではない。

この調子で明日にはもっと練習にも馴染めるだろ。

再び俺は実験に没頭……



『まだまだーッ!!』

『こんなんじゃやられないわよ!!』

『穂乃果ちゃんいっけぇ~!』




……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………。




ムクリと席を立ち、ドアを開けて1階へと向かう。

静かに歩いてるからか、誰も俺が来た事に気付く気配はなかった。

それは今の俺にとっては好都合だった。

1階へ行き、何事かと思って来てみれば、俺の目の前で繰り広げられていたのは、枕投げをしているμ'sメンバー(海未は寝てる)だった。

ただ楽しく話しているだけならまだ許せた。

だけど……。







竜「うるさいいいいいいいいいいいいい!! 黙れええええええええええええええええ!!」

「「「「「「「「っ!?」」」」」」」」

海未以外が驚愕の表情で俺を見た。

竜「うるっせえんだよ!! お前らの声が俺のとこまで聞こえてんだよ!普通に談笑してるならまだしも、ガタガタゴットンズッタンズッタンデカい音するから何かと思って来てみれば枕投げ?寝る気あんのかお前らはあ!? 明日練習あんだからさっさと寝ろ!海未を見習え!こいつが目を覚まして地獄絵図にならないうちに布団に戻れバカども!!」

穂「そ、そういや海未ちゃんって寝てる時に起こされると凄く機嫌が悪くなるんだった……!」

そう、俺がわざわざここまで怒りに来たのは、こいつらがうるさくて実験に集中出来ないのもあるが、それ以上にそのうるささで海未が起きてしまった後の地獄絵図を回避させるためだ。

こいつを寝てる途中で起こしてしまって、無傷でいられた奴はいない。

竜「分かったなら早く寝ろ!」

こ「というか、竜くん……」

2階へ戻ろうと、体を後ろに向けて歩き出そうとしたところで、ことりから声がかかる。

何故かその声は震えていた。

竜「ん?何?……あ」

海「……何やら騒がしいと思って目が覚めたら……皆さん、楽しそうな事をしていますねえ……?それに……何故か竜司もいますし……」

竜「………あら~」

海未が起きちゃった。

この現状はあまりよろしくない。

海未の発言をちゃんと聞けば分かると思うが、セリフの最後に俺の名前が出てきている。

それ即ち、ターゲットの中に俺も入っているということ。

そんな俺に残された選択肢といえば…………。

竜「………See you!!」

穂「あっ!竜ちゃん逃げた!!」

逃げる一択だ。

幸い俺だけ寝る場所が違うから、最悪寝室に逃げてしまえば俺の勝ちである。

勝利の法則は決まった!




ーーーーーーー




脱兎の如く寝室へ逃げてきた。

ここまで海未が追ってこないって事は、穂乃果達の誰かが何とかしてくれたのかもしれない。

にしても走ったらあれだ。

眠くなってきた。

とりあえず実験は中止。

俺も眠ることにした。

ふかふかのベッドに入ると、すぐに眠気はやって来た。

竜「オヤスミ~」



ーーーーーーーー




竜「……ふぁ~、くぁ……っ」

珍しく目覚ましが鳴る前に目が覚めた。

というより、よくある二度寝をする前の目覚めみたいなものだ。

と言っても、二度寝する気は無いが。

俺はふかふかベッドから出て、ベランダに出る。

素ん晴らしい風だ。

そんな風が吹いてる。

竜「……ん?」

ふと、浜辺の方に視線をやってみれば、砂浜にいる希のとこへ真姫が向かっていた。

何してんだあいつら。

俺も行ってみるか。




ーーーーーーー




希「あ、竜司君も来たやん。早起きは三文の徳、お日様からたーっぷりパワー貰おうかっ」

竜「何言ってんのアンタ?」

希「……竜司君、ちょいちょいウチの言うことバッサリ切るよな……?」

そうかな?

真「で、どういうつもり……?」

希「んー?何が~?」

ここで話を無理矢理切り替えんばかりに、真姫が希に話しかけた。

真「ッ、しらばっくれな…」

希「別に真姫ちゃんのためじゃないんよ」

おそらく、ここからは希と真姫の話になるだろう。

とりあえず俺はこのまま黙っていく。

希「海はいいよね~。見てるだけで大きいと思っていた悩み事が小さく見えてきたりする」

この言葉の意味が何を指しているのか。

それは多分、真姫が1番分かっている事かもしれない。

希は人の感情を読み取るのが優れている。

しかも真姫なんかは昔から結構顔に出やすいタイプだから尚更の事。

真姫がもし悩んでいるのだとしたら、それは周りの事。

つまり他のメンバーとの接し方に悩んでいる。

希「ねえ真姫ちゃん。ウチな、μ'sのメンバーの事が大好きなん。ウチはμ'sの誰にも欠けてほしくないの」

最後に聞こえたのは、希の本音だった。

希「確かにμ'sを作ったのは穂乃果ちゃん達だけど、ウチはずっと見てきた……。何かある事にアドバイスもしてきたつもり。それだけ、思い入れがある……」

そうだ。

μ'sを支えてきたのは俺だけじゃない。

μ'sに入る前にも、μ'sが作られる前にも、希は俺達と関わって、いつもアドバイスをくれた。

講堂が上手く使用できたのも希が上手く言ってくれたから。

希がいたから、『μ's』という名前にもなった。

それだけ、希はμ'sが大好きで、思い入れがある。

当然の事だった。

希「……ちょっと話し過ぎちゃったかも。みんなには秘密ねっ」

真「……めんどくさい人ね、希」

それに対する真姫の反応はそれだった。

だけども、真姫は希を、先輩を呼び捨てにした。

柔らかい笑顔で。

真姫は成長したのだ。

希「あ、言われちゃったッ」

希もそれを言われて笑みを零す。

希「それで、竜司君は何も言う事ないんかな?」

竜「急に何です?」

希「せっかく来たんやし、言おうとしてた事を言うだけでええんよ~」

何でそんな良い笑顔で言うかね~?

真「な、何……?竜司も私に何か言おうとしてたわけ?」

真姫が少しジト目で見てくる。

やめろ、そんな目で見るな。

竜「じゃあ一言だけ。真姫、お前は今のお前でいい。例え誰も本当のお前を分かってやれなくても、俺だけは分かってるつもりだから。それだけ…」

真「あなた……変な所でかっこよくなるわよね…」

そう言った真姫はどうしようも無いくらい、可愛い笑顔だった。

ってか一言余計だよ。

穂「真姫ちゃーん!希ちゃーん!竜ちゃーん!おーい!!」

すると、別荘の方から穂乃果の声が聞こえた。

振り返ったら、俺達以外のメンバーが全員起きていて、こっちに向かってきていた。

穂「3人とも早起きだね!」

竜「まぁな」

希「それよりみんな見てみ。朝日が昇るよ」

それに釣られ、みんなの視線が海の方へと向いた。

確かに、地平線の彼方から、優しく世界を照り付けるような光が昇ってきた。

まるで、9人の女神にスポットライトを当てるかのように、その光は神々しく、優しく、その大きな包容力で世界を包み込むように、女神を照らしていく。

それをするのに言葉はいらなかった。

何も言わずに、9人の手が次々と繋がれていく。

何の打ち合わせも、予備動作もなく、自然と9人は1つになった。

俺はそれを数歩後ろから見守る。

真「ねえ、絵里」

絵「ん?」

真姫が絵里に声をかける。

少し気恥ずかしくなりながらも、真姫は希へ視線を向け、希はそれに笑みで返す。

真「ありがとっ……」

後ろにいるから俺には真姫の表情が見えない。

けれど、声音からでもちゃんと分かる。

真姫は、 笑っていた。

絵「……ハラショー!」

……返答がそれって大丈夫なんですかね絵里さんや。

穂「よーし!ラブライブに向けて、頑張るぞー!!」

「「「「「「「「おおー!!」」」」」」」」

穂乃果の宣誓で1つになった時だ。










《アルマトゥス》










濁声のあるアナウンスと共に、黒とグレーの体色で背中の板が黄色の、ステゴサウルスが現れた。

その側には……










「久しぶりだな……天青」








竜「氷室……玄斗……」

絵「氷室君……」








もう一人の敵がいた。










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Game#45


合宿編最終回。


◎side


竜「氷室……玄斗……」

竜司は目の前にいる氷室を睨む。

対する氷室は、足元まである黒のロングコートを着ている。

「天青……石板を渡せ…」

そう言って、氷室はナイトディノホルダーの画面をタッチする。

《バット》

瞬間、

♪~~♪

地味に癖になって覚えてしまうようなメロディが流れる。

絵里が訊く。

絵「氷室君!どうしてあなたまで!?」

その声音は、とにかく疑問と怒りにまみれていた。

絵里の心にも、かつてスタークが惣助だった事を知ったことりと同じ気持ちが沸いてきた。

氷室は胸に手を当てて言う。

「かつて俺に流れていた血は……俺の燃え盛るような熱い野心によって蒸発した。それだけだ。もう昔の俺はいない」

氷室は唱える。

「蒸血」

《ミストマッチ》

そしてナイトディノホルダーのトリガーを弾くと、黒煙が撒き散らされ、氷室は青の稲光に包まれ……。

《バッ・バット……バット……ファイヤー》

背後に花火を散らせながら、氷室はナイトローグに変わった。

竜「やっぱりアンタだったのか……」

落胆するように言う竜司。

氷室は変声機を使わずに、自分の声で喋る。

「俺は俺の為に戦う。天青……石板を渡せ」

竜「石板を何の為に使う?あれには星1つ滅ぼせる力があるんだぞ?」

『えっ!?』

竜司の言ったことにギョッとするメンバー。

そう、カナダで発見され、今や恐竜復活の為に使われてる石板のオリジナルは、その使いようによっては星1つ滅ぼせる力が眠っているのだ。

そして石板によって呼び出された恐竜は、核爆弾にも耐え、その影響を全く受けないとされている。

「答える義理は無い!」

そう言って駆け出して来たナイトローグ。

ナイトディノホルダーから、エネルギー弾を連続発射してくる。

対する竜司も、ディノホルダーをガンモードにして、ポインターからエネルギー弾を連続発射して対抗。

その間に、竜司はディノホルダーのボタンを押す。

するとポインターから赤と青の光の弾が発射され、赤と青のストライプの光のゲートになり、竜司がそれを潜ると、竜司の体が赤と青の淡い光に包まれる。

そのまま0距離になると、互いに殴りあう。

竜「ふんっ!はっ!ふっ!はっ!」

「ぐっ!はっ!ふっ!なっ!?」

なんと竜司がナイトローグの力と渡り合えていた。

これにはローグも穂乃果達も驚く。

「何故だ!? 何故渡り合える!?」

穂「竜ちゃんすごい……」

絵「いつの間にあんな機能を……」

竜「スタークにやられてから開発したのさ。今の俺は……生身で恐竜を抑え込める力を持っている!」

竜司はナイトローグと殴りあいながら、穂乃果に言う。

竜「穂乃果!アルマトゥスを!」

穂「分かった!」

穂乃果はそう言って、ディノガジェットのボタンを押して、恐竜カードを射出。

それを手に取ると、スラッシュする。

穂「ディノ~~~~スラッシュ!!」

カードが雷を帯びる。

穂「轟け!ペンタケラトプス!」

そう叫んで穂乃果はペンタケラトプスのカードを投げ、ペンタケラトプスを出現させる。

「ゴオオオオオオ!!」

ペンタケラトプスは吠えながら、アルマトゥスと激突。

ペンタケラトプスは角と襟飾りを使って攻撃したり防いだり、アルマトゥスはステゴサウルス特有の尻尾の刺を使って攻撃する。

穂「今の私は……負ける気がしないよ!!」

そう言って、もう一度ボタンを押して、技カードを射出。

それを手に取ると、スラッシュする。

《ガトリングスパーク(瞬雷千烈)》

《ベストマッチ!》

瞬間、ディノガジェットから雷のエネルギー弾が放たれ、それをペンタケラトプスは吸収。

「グオオオオオオオン!!」

吠えると、アルマトゥスの上半身を起こし、無防備になった腹に、雷を纏った角で何度も何度も突きまくる。

それこそ攻撃の隙を与えない程に。

ズドドドドドドドドドドドドドドドドドドドッ!!

絵「ハラショー……」

希「何で恐竜があんな事出来るん……?」

ニ「これも石板のお陰って訳?」

まだ恐竜バトルを見たことの無い3年生組はそれぞれの反応をする。

そして最後の一突きをペンタケラトプスはする。

アルマトゥスは吹っ飛ばされるが、すぐに何とも無いという風に立った。

穂「えっ!? 何で!?」

海「前は勝てたのに!?」

驚く穂乃果と海未。

それは穂乃果の初陣の結果を知ってることりや、1年生組も一緒だ。

一度竜司から距離を取ったナイトローグが言う。

「恐竜にも属性の良し悪しがあるんだよ。この場合、雷のペンタケラトプスは、土のアルマトゥスに大打撃は与えられない」

そう言って、ローグは超技カードをスラッシュする。

《ギガロックハンマー(砕土硬槌)》

そのエネルギー弾を撃ち、アルマトゥスに吸収させる。

「ゴオオオオオオ!!」

吸収したアルマトゥスは尻尾の先に紫のクリスタルを寄せ集めた巨大な塊を生成。

それをペンタケラトプスにぶつけた。

「ゴオオオオオオ!!」

ガッシャーン!!という破砕音と共に、ペンタケラトプスは吹き飛び、倒れ伏す。

その体には、紫のオーラがまとわりついていた。

「ギガス、マキシムス、アルマトゥスの3体の攻撃には極希に、相手を毒状態にする事が出来る」

ナイトローグはそう説明する。

穂「そんな……っ!?」

それを聞いて穂乃果はかなり狼狽える。

竜「ちっ!」

竜司は舌打ちして、ある特殊技カードをスラッシュ。

《始祖鳥のまもり》

そしてそのカードを投げると、骨格部分の羽毛は茶色、羽部分は青・紫・黄色で構成された最初の鳥、始祖鳥こと『アーケオプテリクス』が現れる。

「キュエエエエエエ!!」

アーケオプテリクスはペンタケラトプスの周りを旋回しながら虹色のオーラを送る。

するとペンタケラトプスの毒が消えた。

それと共に、ペンタケラトプスはカードに戻り、それを拾った穂乃果は謝る。

穂「ごめんね……ペンタ…」

相棒に無理をさせた事を悔いる。

そして竜司は穂乃果達を守るように、ナイトローグの前に立つ。




その右手に……エレメントトリガーを持って。





「貴様!?」

ナイトローグがここで初めて驚きを見せる。

竜「さぁ……実験を始めようか?」

竜司はエレメントトリガーのガラス蓋を開け、青いスイッチを押す。

《エレメント・オン》

♪~~♪

危険な装置とは縁遠いメロディが流れる。

そしてディノホルダーのスラッシュ部分の上側面にある窪みに、コネクタを挿し込む。

《トンテンカーン、トーンテンカーン♪》

待機音声が流れ、竜司は恐竜カードをスラッシュする。

《スーパーティラノサウルス》

ティラノサウルスのカードをスラッシュしたのに、通常とは違う音声が流れる。

竜司は気にせずカードを投げると、そこから現れたのは、全身赤と黒と黄色で構成されたティラノサウルスだった。

「ガアアアアアアアアア!!」

《アンコントロールスイッチ!エレメントハザード!ヤベーイ!》

スーパーティラノサウルス。

エレメントトリガーによって、炎の属性を限界まで引き上げられた為に、この色になったティラノサウルス。

そして竜司もまた、砂浜からせりあがるように出てきた分厚い鉄板に挟まれ、それが離れながら消えると、竜司は黒と紫のオーラを纏っていた。

さらに右顔半分は、紫のヒビのような模様が走っていた。

「ちっ!」

ナイトローグはナイトディノホルダーからエネルギー弾を連続発射する。

しかしそれは竜司に何のダメージも与えなかった。

竜司は無視して走り、ナイトローグに近づくと強烈なヤクザキックを放つ。

ドズンッ!!

「ぐあああああああああっ!!!?」

瞬間、ナイトローグは吹き飛び、変身が解除される。

希「嘘……」

ニ「一撃?」

真「強すぎでしょ……」

凛「でも……」

花「何だか今の竜司君……怖い…」

穂「竜ちゃん……?」

竜司のその豹変ぶりに、穂乃果達は言い知れぬ危機感を感じていた。

「がっ……ぐっ…!?」

呻く氷室を無視して、竜司はアルマトゥスを見る。

そこでは、無惨とも言えるほどに、ボロボロにされたアルマトゥスがいた。

血にまみれ、背中の板は何枚か折れていて、倒れ付していた。

そしてそんなアルマトゥスを、スーパーティラノサウルスは容赦なく、何度も踏みつけていた。

「ガアアアアアアアアア!!」

絵「こっちもこっちね……」

こ「ティラノちゃん……怖い…」

海「まるで野生に帰ったみたいですね……」

竜司は無言で超技カードをスラッシュする。

《マグマブラスター(猛炎奔流)》

《オーバーフロー!ガタガタゴットン!ズッタンズッタン!ガタガタゴットン!ズッタンズッタン!》

竜司はディノホルダーから炎エネルギー弾を撃ち、スーパーティラノサウルスに吸収させる。

「ガアアアアアアアアア!!」

吸収したティラノは吠えると、アルマトゥスを蹴り飛ばし、遠くに捨てる。

そしてその大きな口に莫大な量の炎を貯めて、一気に放った!

ズボアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!

マグマブラスターはアルマトゥスに直撃し、数歩程あとずらせた後、完全に吹き飛ばし、カードに戻した。

「ベストマッチじゃないのにこの威力か……。やっぱりお前は悪魔の科学者だよ……天青!」

氷室はそう吐き捨てると、アルマトゥスのカードを何とか回収して、黒煙と共に、消え去った。

竜「…………」

竜司は特に何かを思うこともなく、エレメントトリガーを外す。

当然、エレメントトリガーの効果は消えたので、竜司もティラノも通常の状態に戻る。

穂「竜ちゃん……」

こ「竜くん……」

海「竜司……?」

おそるおそる近づく穂乃果達。

振り向いた竜司は、柔らかな笑顔を浮かべていた。

竜「大丈夫か?」

『っ~~』

その言葉に、メンバー9人は笑顔を浮かべる。

当面の危機は去り、合宿は終わった。

色々あったが、何とか全員集中できていた事もあって、特に問題もなく練習も進み滞りなく終わる事ができた。

尚、この際1つ曲が完成し、PVも竜司が完成させて、ネットに投稿した。

曲名は……







「夏色えがおで1、2、Jump!」









次回はコラボ回になります。

相手はたーぼさんです。


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コラボ回:交わるバカと天才


予告通り、たーぼさんの「ラブライブ!~奇跡と軌跡の物語~」とのコラボ回です。

実はたーぼさんとのコラボは、これで3度目だったりします。

ではどうぞ。


◎side


平行世界というのは、ご存知だろうか?

もしもの数、世界はifの数だけあるというアレ。

いわゆるパラレルワールドだ。

そこではいる筈の人がいなかったり、逆に本来いない筈の人がいたりする。

そしてある世界では、その平行世界を行き来する事が出来る装置を作った人物もいたり、また宇宙人もいたりする。

そしてここにも、そんな装置を作った……作ってしまったバカ(天才)がいた。

竜「さっすが俺!すごいでしょ?最高でしょ?天才でしょ!?」

天青竜司は夏合宿から帰ってきた後、ふと何を思ったのか、パラレルワールドを自由に行き来出来る装置を作った。

その装置とは、グローブのようなものだった。

黒地で甲の部分にXのエンブレムが刻印されたグローブ。

竜「手袋型異世界転移装置X(イクス)グローブ。通称・エニグマ!」

竜司は嬉々としてエニグマを両手にはめる。

竜「じゃあ早速始めよう!レッツゴー!」

《了解しました、ボス》

女性声のアナウンスでエニグマは起動。

竜司が両手をアルファベットのOを形作るように構えると、空間に歪みが生じ、竜司はその中に吸い込まれた。




ーーーーーーーーー




無限にある平行世界の1つ。

そこに平凡な少年はいた。

いや……本当に彼は平凡だろうか?

茶髪ツンツン頭の少年『岡崎拓哉』は、毎度の如くナンパされていたか弱い女子を不良から助け、毎度の如く殴りかかってきた不良を逆に殴り倒し、毎度の如く説教していた。

その様子は何処ぞの幻想殺しの少年さながら。

そんな事を平気で、何の見返りも求めず、何の躊躇もなく出来る人間を平凡とは言わない。

そして拓哉は、いい笑顔で道を歩いていた。

拓「いや~…やっぱり誰かを助けるって言うのは気分がいいってもんよ!今の拓哉さんは気分爽快の事ですのよ?」

そもそも岡崎拓哉という少年は、小さい頃からヒーローに憧れ、その憧れのヒーローになるために困っている人を片っ端から助けていた。

どんなに疲れていても、どんなに日常にいようとも。

たった1つの声でいとも簡単に非日常へと足を向かわせる事が出来る。

それが岡崎拓哉という少年。

その行動は、少年の3人の幼馴染みの少女達にも向けられ、またその周りの6人の少女達にも向けられ、結果として、彼は意図せず好意を向けられ、半ばハーレムを構築していた。

しかしその事に対し、当の本人は無自覚。

しかも自分はモテないと自負してる程。

正直その神経を疑いたくなるレベルだが、それも含めて岡崎拓哉という少年なのだろう。

拓「ただいま~」

拓哉は我が家の玄関を開ける。

そこに……

「お帰り、お兄ちゃん♪」

茶髪の、確実に美少女に当てはまる少女、岡崎拓哉の妹『岡崎唯』がやって来た。

拓「おお~唯。我が可愛い妹よ!これをあげよう」

そう言って、拓哉は唯に少女マンガを渡す。

家を出る際に頼まれたものだ。

唯「ありがとう。お兄ちゃん。お兄ちゃんも読む?」

拓「いや遠慮するよ。俺は少女マンガはあまり読まないからさ…」

唯「残念」

唯の薦めを丁重に断る拓哉。

あからさまにションボリする唯の頭を撫でて、慰める。

拓「そんなガッカリすんなよ」

可愛い妹がションボリするのを見て、少し心を痛める拓哉。

そこに……

穂「たくちゃん、何してるの~?」

海「拓哉君、お邪魔してます」

こ「たっくんヤッホー♪」

拓哉の3人の幼馴染みの少女、この世界の穂乃果達が二階から声をかけてきた。

拓「……何で君達がいるのでせう?」

拓哉は心底疑問を浮かべて訊く。

穂「暇だったから皆で遊びに来たの!」

拓「帰れ」

穂「即答!?」

コンマ数秒もかからなかった。

拓「疲れてんだよ……お願いだから9人仲良く帰って?拓哉さんを安らかに眠らせて?」

唯「お兄ちゃん、それ死んでるよ?」

拓哉の言葉の綾にツッコム唯。

しかしそれで諦めないのが高坂穂乃果。

穂「むぐぐぐ……ことりちゃん!やっちゃって!」

こ「うんっ、分かったっ」

穂乃果はことりに謎の指示を出す。

するとことりは、胸に手を当てて、瞳を潤ませる。

拓「……えっ?あの、ことりさん?もしやアレをやる気でせうか!?」

途端に慌てる拓哉だが、もう遅い。

それは当然の如く放たれた。














こ「たっくん……おねがぁいっ!」










拓「オラァ!一丁遊んでやろうじゃねぇかー!行くぞ者共ーー!!」

穂「にししし♪やった!」

海「相変わらずですね……」

唯「お兄ちゃん、私も入っていい?」

拓「あたぼうよ!!」

こうして拓哉は、穂乃果、海未、ことり、唯と共に、自分の部屋に入っていった。




ーーーーーーーーーー




絵「久しぶり拓哉」

希「邪魔しとるよ~」

ニ「遅いわよ!!」

真「早くしなさいよね?」

凛「たくや君早く早く~!!」

花「お邪魔してます……っ」

部屋に入ると、現在大学一年となっている絵里、希、ニコがベッドに座っていて、オトノキ二年となっている真姫、凛、花陽がカーペットの上に座っていた。

全員私服だ。

因みに、拓哉と穂乃果達幼馴染みトリオはオトノキ三年、唯はオトノキ一年となっている。

拓「絵里達はともかく、ニコと真姫はもうちょい言葉使い何とかならない?仮にもここ俺の家だよ?」

「「どうでもいいじゃない」」

拓「……泣いていいかな?唯…」

唯「私の胸を貸すよ♪」

笑顔で両腕を広げた唯に抱きつき、拓哉は情けなくすすり泣く。

どんなに鍛えても、心はガラスな少年、岡崎拓哉だった。

絵「はいはい、茶番はそこまで」

絵里が手を叩き、全員の注目を浴びる。

絵「拓哉、今回皆でここに集まったのは話があるからなの」

拓「話?」

拓哉は穂乃果達と共に、床に座る。

絵「そうなの。実は…」

絵里が用件を言おうとした時。









ズバァン!!








突如空間の一部が歪み、穴ができた。

絵「何っ!?」

希「またスピリチュアルなことが起こるん!?」

花「ひぃっ!?」

真「なんなのよもう!!」

穂「たくちゃん……」

拓「全員俺の後ろに隠れろ!!」

拓哉の指示で全員、拓哉の後ろに隠れる。

ここで躊躇なく彼女達を守ろうとするのも、やはり岡崎拓哉だからこそ出来る事なのだろう。

拓哉は穴を睨む。

そこから何が来るのか、予想がつかない。

だからこそ最大限に警戒する。

何が来ても対処出来るように。

その考えとは別に、拓哉の頭の中には2人の少年の姿がちらついていた。

一人は自分と同じくハーレムを構築した割りと……いやかなり変態な少年。

もう一人は、初代ウルトラマンに変身して、自分達の世界を救ってくれた銀髪眼帯の少年。

拓哉はそのどちらかの少年であってほしいと期待していた。

しかし現実がそう甘くないことも知っている。

だからこそ、その考えは早々に捨てる。

が、そんな拓哉を嘲笑うかのように……












竜「よっと……実験成功!パラレルワールドの1つに到着♪」












拓「竜司!?」

穂「竜司君!?」

絵「どうして天青君が!?」

出てきたのは、拓哉の知っている銀髪眼帯の少年、天青竜司だった。

しかし当の竜司は、

竜「ん?誰君?何で俺の事知ってんの?」

拓「は?………お前、なに言って?」

拓哉の事を知らない様子。

竜「穂乃果達まで………この世界には穂乃果達もいるのか……」

拓「いやいやいや……いやいやいや!! お前何言ってんだよ!? あれか!? まさか記憶喪失でせうか!? そうなんだろ!? そうだと言えよ!!」

拓哉は竜司の両肩を掴んで叫ぶ。

まるで認めたくない現実を否定するかのように。

竜「ちょっ!? 何なんだよ!? 離しなさいよ!!」

対する竜司はそんな拓哉の気持ちも知らず、乱暴に振りほどく。

拓「どういう事なんだよ……」

拓哉は呆然と呟く。

何故1度拓哉達と会った事のある竜司が、拓哉達の事を知らないのか?

その答えはただ1つ。

この竜司が、全く別の世界から来た竜司だからである。

竜「って言うか、何でこの世界の穂乃果達も俺の事知ってんの?この世界にも俺がいるの?」

絵「それは違うの………。実は、今のあなたと同じく、全く別の世界から来た天青君がいたの。姿も名前も全く同じ天青君。私達はそんな天青君と1度ならず2度も会ってるからなの」

竜「ふ~ん……ん?」

絵里の説明に、何かを感じた竜司。

それを竜司は口に出す。

竜「ちょっと待って?それって……さらっと言ってるけど、他にもパラレルワールドがあるって事だよ!? めちゃくちゃすごいじゃん!!」

『そこぉ!?』

拓哉を含めた11人がツッコム。

確かにこの竜司にとってみればすごい事なのだろう。

竜「まぁとりあえず、俺は君達の知っている天青竜司じゃない。だから一応自己紹介しとくぜ?天っ才科学者で、天っ才恐竜学者の天青竜司だ。以後お見知りおきを…」

ドヤ顔で言う竜司。

穂「天才……科学者?」

唯「天才恐竜学者?」

ニ「普通自分で天才って言うかしら……?」

穂乃果と唯が首をかしげ、ニコが呆れる。

竜「そっ。で、そこのバカそうなツンツン頭の君は?」

拓「バカそうなって言うな!バカそうなって!……ったく、何で天青竜司って奴は、何処の世界でもこうも一言余計なのかね~?」

拓哉は後頭部をガシガシ掻いて、息を吐く。

拓「拓哉だ。岡崎拓哉。こっちは妹の唯だ…」

唯「岡崎唯です!初めまして……って言うのはおかしいけど、初めまして!天青さん!」

竜「よろしく。拓哉、唯」

拓「いきなり下の名前を呼び捨てかよ」

竜「嫌か?」

拓「いや……むしろその方がやりやすい」

そう言って、拓哉はニヤリと笑う。

竜「…………お前の笑顔……気持ち悪いな…」

拓「んだとゴラァァァァ!! 表に出ろォォォォォォ!!」

一瞬黙ったと思ったらこれだ。

真顔で言った竜司の胸ぐらを掴む拓哉。

唯「お兄ちゃん抑えてー!」

慌てて唯が拓哉を取り押さえる。

拓「離せ唯ーー!! こいつは「ねぇ!!」…ぶべらっ!?」

怒り狂った拓哉を押し退け、穂乃果が竜司の前に出る。

穂「そっちの竜司君の世界の話を聞かせて!?」

こ「あっ、私も気になるかも♪」

凛「凛も聞きたいにゃ!」

竜「いいよ?ならとくと聞くがいい………このてぇ~んさっい恐竜学者で、てぇ~んさっい科学者の俺の話を!」

真「この人ホントに天才なのかしら?」

両腕を大きく広げる竜司にジト目を向ける真姫。

そして竜司は語り出す。

自分のいる世界がどういう世界で、自分が何者なのかを。




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コラボ回:語る者共






この世界に来た天青竜司の話を聞こうと、拓哉達はテーブルを囲むように座っているのだが、当の竜司は……

竜「へぇ~……お前マンガやラノベが好きなのか…。オタクというやつか?」

拓「ちげぇよ!! マンガ&ラノベ大好き=オタクって言う方程式は捨てろ!って言うか早くお前の話を聞かせろよ」

竜「エロ本は何処かな~?」

拓「人の話聞きやがれぇぇぇぇぇ!!」

あちこち歩き回って、なかなか話さなかった。

拓哉の部屋の本棚を物色したり、ベッドの下を見たり。

竜「にしてもお前の好み、バラバラだろ?『ドラ○○ボール』みたいな典型的なヒーロー物から、『僕○友達○少ない』みたいな日常物だったり、統一しろよ」

拓「人の趣味にケチつけんなや!! 何様なんだよ!?」

拓哉が集めたマンガを読みながらそう言う竜司。

穂「すごいマイペース……」

絵「ウルトラマンだった天青君もだけど、この天青君は別の意味で厄介ね……」

ニ「落ち着き無さすぎでしょ……」

穂乃果達ですら、困惑してる始末。

竜「まぁいいや…」

ここでようやく竜司はマンガを閉じ、本棚に戻すと拓哉達の輪に入る。

竜「えっと……何処から話そうか?」

海「とりあえず、天青君。あなたが何者で、そちらの世界の私達とはどういう関係か、そこからお願いします」

竜「わかった」

海未の簡潔な質問に頷く竜司。

竜司は目を閉じて、1つ1つ丁寧に話し出した。

竜「先ず俺はさっきも言った通り、てぇ~んさっい科学者で、てぇ~んさっい恐竜学者だ。穂乃果、海未、ことりの3人とは幼馴染みで、真姫共幼馴染みだな」

拓「真姫とも?」

竜「そっ…」

真「私は拓哉とは幼馴染みじゃないけどね……」

真姫が髪をクルクルしながら言う。

竜「そりゃ平行世界ならあり得るだろ?逆に、この世界とは別に、拓哉が真姫と幼馴染みだったり、絵里と幼馴染みだったりする世界もある。平行世界ってのは無限の可能性に満ちてるんだ」

妙に達観した様子で語る竜司に、拓哉達は思わず竜司を自分達より年上なのでは?と錯覚するほどに。

実際はこの世界では真姫達と同年代になるわけだが。

竜「続きを言うぞ?俺は小6の時に穂乃果達と別れ、アメリカに姉さんと共に渡って、そこで恐竜を復活させる事が出来る石板を発見。そこから完璧に保存されていた恐竜達のDNAを取り出し、恐竜達を復活。尚且つカードに封印出来る技術を作った。ここが俺が天才と言われる由縁だな♪」

竜司はドヤ顔で言うが、拓哉達はそれどころではなかった。

竜司が今言った中に、聞き捨てならない言葉があったからだ。

拓「なぁ……お前今、恐竜を復活させる事が出来るって言ったよな?」

竜「うん言ったよ?これがこの石板」

そう言って、竜司は懐から石板を取り出す。

石板は中心がぽっかり空いた円形で、その周りを炎、水、雷、土、草、風のマークがあしらわれた物で固められていた。

しかもそれぞれ分離出来るようなヒビも入ってる。

穂「これで恐竜を復活させる事が出来るの?」

竜「yes!」

希「中心がぽっかり空いてるのは?」

竜「その1つを俺が使ってるから」

そう言って、竜司はディノホルダーを出して、内部構造を見せる。

中には、円形で、?が虹色に描かれた石板があった。

花「これで恐竜を復活させてるの?」

竜「そう。このカードになった恐竜と、石板を使ってな?実際やって見せようか?」

『結構です!!』

11人の声がハモった。

やはり本物の恐竜を見るのは怖いのだろう。

唯「まさかジュラシック・パークみたいな世界があるなんて……」

竜「ん?何で唯がジュラシック・パークを知ってんの?まさかこの世界にも本物の恐竜を復活させる事が出来る石板があって、そういう施設があんの?」

拓「んな訳あるか!これだよこれ!」

唯の言葉に疑問を持った竜司の検討違いな疑問を切り捨てる拓哉。

拓哉はスマホを見せる。

そこにはジュラシック・パークとは?というページが開かれていて、この世界のジュラシック・パークは空想の産物である事が書かれていた。

竜「成る程……まぁ、こういう可能性もあるか…」

竜司は一人納得する。

拓「つーか、何でジュラシック・パークに反応したの?そういや『そういう施設があんの?』って言ってたな。お前の世界には本物のジュラシック・パークがあんの?」

竜「あるよ」

『うそーん……』

全員が衝撃を受けた。

太古の昔に絶滅した恐竜を復活させる事が出来る石板があって、更にはジュラシック・パークすらもあると言う。

殆どの者が考えるのを止めようとしていた。

そんな中、絵里が「コホン」と咳払いをして、

絵「穂乃果達幼馴染み組とは違う、私達とはどういう関係なの?」

竜司に次の質問をする。

竜「俺は廃校になりかけてる音ノ木坂の試験生で、穂乃果達がやってるスクールアイドル、μ'sのマネージャーもやってるんですよ。絵里、希、ニコ、花陽、凛、真姫、海未、ことり、穂乃果の9人で構成されてて、その縁ですね」

穂「じゃあ竜司君も!? もしかして他にもマネージャーさんはいるの!?」

竜「ん?いやマネージャーは俺一人だけど……というか急にどうした?」

穂乃果の要領を得ない確信に首をかしげる竜司。

拓哉が補足する。

拓「これこれ穂乃果さんや。それじゃあ分からんでしょ?あのな竜司。俺もこの世界じゃ音ノ木坂の試験生で、お前と同じくμ'sの手伝いをしてたんだ。と言っても1年も前の事だがな…」

竜「そうなのか?でも何で手伝い?普通マネージャーって言うんじゃね?」

拓「そんな大それたもんじゃないからだよ」

拓哉はそう謙遜するが、この世界の穂乃果達は知っている。

もうマネージャーと言っても差し支えないくらい、たくさん支えて貰ってきた事を。

竜「ふ~ん……」

竜司はそう短く納得して、あることについて考える。

竜(1年も前の事……やっぱりパラレルワールドだから、時間の流れも違うのか……?)

平行世界はifの数だけある。

それだけあれば時間の流れが違うのも仕方ない。

拓哉は考え込む竜司を見て、首をかしげるが、ふと竜司のディノホルダーに目が行き、興味を惹かれた。

拓「その機械はどうやって作ったんだ?」

竜「そりゃギュインギュインのズドドドドドドドだよ」

『説明下手か!?』

全員からツッコまれる竜司。

拓「なんだよギュインギュインのズドドドドドドドって!? 擬音ばっかで訳が分かりませんのことよ!?」

竜「一言で語れないのが天才なの」

真「語りなさいよ!! 一言で無理でもそれとなく分かり易く説明しなさいよ!!」

竜「黙れぬるま湯に浸かってきたお嬢様が!!」

真「はぁー!?」

穂「逆ギレした!?」

凛「本当に天才なのかにゃ?」

竜「黙れ単純バカと猫バカ!」

「「バカは余計だよ(にゃ)!!」」

罵倒を罵倒で返す醜い争いが勃発した。

語るに落ちるとはこの事を言うのかもしれない。

そんな時だ。

突如竜司のディノホルダーから、ピリリリリと、煩い音が響く。

希「なんなんこの音!?」

ニ「うるさっ!!」

唯「防犯ブザーみたい」

拓「おい誰だよ!? さっさと止めろ!!」

拓哉達が耳を押さえる中、竜司は音を止めて、ディノホルダーの画面を見る。

そこには恐竜反応があった。

竜「バカな!? この世界に恐竜はいない筈!」

拓「んあ?どうしでせう?」

竜司の驚愕している顔に疑問を持った拓哉が訊く。

穂乃果達も同様にポカンとした顔をしている。

竜司は言う。

竜「恐竜が現れたんだよ!しかも秋葉方面に」

『ええぇぇぇぇ!!!?』

11人の声がこれまたハモった。

竜「ちょっと行ってくるから、ここでお前らは待ってろ!」

竜司はそう言って部屋を出ようとするが、

拓「待ってくれ!俺も行く」

竜「はっ?」

拓哉の言葉で立ち止まる。

竜「お前何言ってんの?本物の恐竜に会いに行くんだぞ?遊園地気分で言ってんなら死ぬことになるぞ?」

竜司の声音は冷静だが、妙に迫力があった。

それを受けて尚、拓哉は怯まなかった。

拓「分かってるさ。今からお前が何をするのか、それがどういう事なのか。恐竜が人間にとってどういう存在なのかは、ジュラシック・パークで嫌というほど知識で知ってる。それでも!こうやって知った以上は見過ごせないし、知らんぷりも出来ない。俺はヒーローとして、自分の手が届く距離で、自分が出来る範囲で、恐竜の驚異に脅かされている人を助けたい!そんな事すら出来ないのはただの臆病者で、玉無し野郎だ!何より、避難を促す人間だって必要だろ?」

拓哉は自分の気持ちを全て嘘偽りなく吐き出した。

それを見ていた穂乃果、海未、ことり、凛、花陽、希、唯はやっぱりという当たり前の光景に対する笑みを浮かべ、絵里、真姫、ニコは呆れの笑みを浮かべた。

それを聞いた竜司は「はぁ~…」と息を吐くと、拓哉にあるものを投げる。

拓「うおっ!? なんだこれ?」

拓哉がなんとかキャッチしたものは、オレンジ色の拳骨型をしたアイテムだった。

竜「クローズマグマナックル。本当は違うやつに渡すつもりだったが、今回だけ貸してやる。それは大型の恐竜でも一匹なら殴り飛ばせる。それがお前の力だ」

拓「竜司………ありがとな?」

竜「はいはい…」

竜司は拓哉の礼を適当にあしらうと、スマホを取り出し、バイクのアイコンをタッチする。

するとスマホがオレンジ色の大型バイクに変わった。

拓「うおっ!? なんだこれ!? すげぇ!!」

唯「スマホがバイクに!?」

穂「何これ!?」

真「完全に物理法則無視じゃない…」

絵「ハラショー♪」

希「スピリチュアルやね……」

各々驚きの声を上げる。

出してない者も口を大きく開けていた。

そのことに竜司はフフンと鼻を鳴らして、「すごいでしょ?最高でしょ?天才でしょ!?」と言う。

そして、

竜「んじゃあ、一丁秋葉にレッツ「ゴー…しないでくださいね?ここ……私達の家なんで」…はい」

意気揚々と繰り出そうとした瞬間、唯に黒い笑顔で止められ、断念する竜司。

結局徒歩になり、何故か穂乃果達もついていくと言い出し、拓哉が必ず守るという決意の元、許可した。

そして竜司達は、秋葉に向かう。




ーーーーーーーーー




彼女は秋葉にあるビルの1つの屋上にいた。

彼女は黒い髪を長く伸ばし、左目は隠れていた。

紫の着物のような衣装を身に纏い、頭には黄色のリボンを着け、その肌は血色が無いくらい青かった。

彼女の後ろには、肌が赤く、体格のデカイ男性と、逆立った青い髪を持つ男性がいた。

そして3人には共通して、コウモリのような翼があった。

「そろそろ始める……かもね」

「暴れてやる…なんだな」

「俺たちの力見せてやる!だったりなんかりしちゃったりして!」

女性、肌が赤い男性、逆立った青い髪を持つ男性の順に言う。

そして彼らは、それぞれある恐竜カードを、それぞれが身に付けてるアクセサリーにタッチする。

《ギガス》《マキシムス》《アルマトゥス》

「ガアアアアアアアアア!!」

「グオオオオォォォォン!!」

「ゴオオオ…ッ!!」

現れたのは、灰色と茶色の体色をしたティラノサウルス、茶色と黒の体色をしたトリケラトプス、灰色と黒の体色をしたステゴサウルスだった。

そして3体は、秋葉の街で暴れまわる。





今回の敵は翼竜伝説をある程度見てたら分かる存在です。


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コラボ回:戦う意義





走ったり、休んだりして、なんとか秋葉までやって来た竜司達一行。

そこで竜司は驚くべき光景を見た。

人が大分避難している事もあって、見透しやすくなっているのが幸いと言えるのか、そこでは3体の恐竜が暴れていた。

竜司にとって悪い意味で見覚えるのある恐竜だった。

竜「ギガス、マキシムス、アルマトゥス。なんであいつらが……まさかローグが来てるのか?」

竜司はあちこち見回す。

一方、拓哉達は本物の恐竜がいることに驚きと興奮を覚えていた。

拓「マジかよ……ホントに本物の恐竜じゃねぇか!! ティラノサウルスにトリケラトプス、ステゴサウルスまで!!」

唯「お兄ちゃん、喜んでる場合じゃないでしょ?」

ジト目でツッコム唯。

他のメンバーもジト目を向けている。

穂「すごい……本物の恐竜だよ!海未ちゃん!ことりちゃん!」

海「あなたもですか!?」

訂正。

もう一人バカがいた。

竜「喜んでじゃねぇよ、単純バカと筋肉バカ」

竜司も呆れてツッコム。

穂「バカは余計だよ!!」

拓「ちょっと待て!筋肉バカって俺の事か!? 訂正しろ!俺はこの穂乃バカよりかは頭いいぞ!!」

穂「たくちゃん酷いっ!!」

拓「お黙りっ!!」

3体の恐竜を目の前にして普通に口喧嘩してる3人。

竜「じゃあお前。カリウムと酸性水を混ぜたらどうなるか分かるか?」

拓「それは………ってかそんなの分かるか!!」

竜「ほらやっぱりお前もバカじゃん」

拓「この野郎……っ!!」

怒り心頭な拓哉だが、ここで竜司を殴っても意味が無いし、むしろ殴ったら殴ったで筋肉バカと認定されるのは確実なので、歯軋りするしか無いのであった。

そこに、

「あれあれ~?ま~だ人がいるじゃん!だったりして!」

この場にいる誰の者でも無い声がした。

拓「あ゛あ゛ん!?」

拓哉は前を向くが、誰もいない。

こ「たっくん!あそこ!」

ことりが上を指差したことで、拓哉も竜司も、穂乃果達も上を向く。

そこには翼を生やした3人がいた。

一人は女性で、長く黒い髪を持ち、左目を隠し、黄色のリボンを頭に着けていた。

二人目は男性で逆立った青い髪を持ち、バンダナみたいなのを着けていた。

3人目はこれまた男性で、肌が赤くモヒカン、かなりゴツい。

竜「お前らか?ギガス達を暴れさせてるのは?」

「そうなんだな!」

肌が赤く、モヒカンでゴツい男性が答える。

拓「なんでこんな事をやってる!?」

「それは君には関係ないかもね!」

女性が答える。

竜「じゃあ最後に。お前ら何でそんな変な口癖なの?よく誤解されない?¨かもね¨って何?ハッキリしろよ」

最後と言うには、あまりにも下らない質問だった。

拓「いや竜司さんや。普通はここで名前を訊くもんじゃ無いでせうか?」

竜「別にいいよ。どうせ倒すし」

「いや名前くらい訊けよ!だったりして!」

「君、割りと失礼かもね!」

竜「だからその¨かもね¨ってやめろって。俺が失礼なのかそうじゃ無いのか分かんないから。後、そこの赤いの!」

「俺なんだな?」

竜司が肌が赤い男性に指を突きつけると、男性は自分に指を指して聞き返す。

竜「そう、そこのお前。なんだなって何?どこの裸の大将ですか~?」

割りとバカにしたような感じで質問する竜司。

「裸の大将って何なんだな?」

竜「テメーの存在が何なんだなだよ!!」

何故かキレる竜司。

そして逆立った青い髪をした男性にも指を突きつける。

竜「次!そこの青いお前!」

「俺は青いじゃなくて、ザッパー!だったりして!」

ここで初めて彼が最初に名乗るが、竜司はそれを聞き流して言う。

竜「そう!その¨だったりして¨だよ!お前もあやふやなんだよ!ハッキリしろよ!!」

「これが俺の個性なのさ!だったりして!」

竜「ほらまた¨だったりして¨言いやがった!どっちなんだよ!? 個性なの!? 個性じゃないの!?」

割りとどうでもいい、言い争いが勃発した。

最初はどうでもいいとさえ思ってた拓哉達ですら、次第に感化されたのか、

拓「確かに……分かりにくいな…」

絵「¨なんだな¨はともかく、¨だったりして¨と¨かもね¨は、分かりにくいわね…」

花「何で疑問系なんだろ……?」

真「口癖って分かってても、割り切れないわよね……」

コソコソ相談する始末。

「そこ!コソコソ話さない!かもね!」

希「かもねって……実際コソコソ話してるんやけど…」

ニ「ホント分かりにくいわね……」

凛「あっ!そうだ!凛いいこと考えたにゃ!」

凛はそう言うと、ザッパー達を指差して言う。

凛「あの人は『かも姉』!あの人は『スケベオヤジ』!あの人は『チョイワルオヤジ』にゃ!」

なんと黄色のリボンの女性、肌が赤い男性、ザッパーにそれぞれアダ名をつけた。

穂「凛ちゃんナイスアダ名!」

凛「えへへ~♪」

しかも穂乃果は同意する始末。

「私はミハサ!かも姉なんて言う変なアダ名つけないでほしいかもね!」

「俺はグーネンコ!なんだな!断じてスケベオヤジじゃないんだな!!」

「だから俺はザッパーだって言ってる!だったりして!後、チョイワルは認めるが決してオヤジじゃない!だったりして!」

当然ミハサ達は否定するが、語尾のせいでいまいち分からない。

拓「まぁ、怒るわな…」

竜「もうお前らその名前に変えたら?」

拓「お前も大概酷いな…」

竜司にジト目を向ける拓哉。

「ムッカー!! もう怒ったかもね!容赦しないかもね!」

そう言って、ミハサはマキシムスを、グーネンコはギガスを、ザッパーはアルマトゥスをこちらに向かわせて来た。

竜「だから¨かもね¨は止めろっての。どっちか分かんないから」

そう言って、竜司はディノホルダーに三枚恐竜カードをスラッシュした。

《サウロファガナクス》

《アナトティタン》

《サイカニア》

出てきたのは、アロサウルスに似ているが、アロサウルスよりも大きく、赤と黒で構成され、目の上の突起が黄色になっている大型肉食黄色・サウロファガナクス。

カモノハシみたいな口が黄色で、緑の体に白のドット模様があるカモノハシ竜・アナトティタン。

紫の鎧に黄色の鋭い刺が羅列している鎧竜・サイカニア。

計3体の恐竜が出て、サウロファガナクスはギガスと、マキシムスはサイカニアと、アルマトゥスはアナトティタンとぶつかり合う。

拓「すげぇ……ホントに召喚できるんだ…」

竜「えっ何?信じてなかったの?」

少しショックを受ける竜司。

「ゴガアアアアアアアア!!」

「ガアアアアアアアアア!!」

吠えあい、噛みついてダメージを与えあうサウロファガナクスとギガス。

アルマトゥスは尻尾の刺を振って威嚇、アナトティタンも吠えて威嚇する。

「キュアアアアアアアアアン!!」

マキシムスはトリケラトプス特有の角を突き出し、サイカニアは尻尾のハンマーで対抗する。

唯「本物の恐竜バトルだ♪」

穂「行けぇ!! そこだぁー!!」

凛「頑張るにゃー!!」

穂乃果と凛はテンション上がって応援していた。

竜「さぁ……実験を始めよう」

竜司はディノホルダーに超技カードをスラッシュしていく。

《ヒートイラプション(灼熱火砕)》

《ビッグロックローラー(大岩転球)》

《グリーンインパルス(緑翼編隊)》

竜「……ベストマッチは無しか」

そう言って、竜司はディノホルダーのトリガーを弾いて、吸収させる。

「ゴガアアアアアア!!」

「キュアアアアアアアアアン!!」

「ギュウワウアアアア!!」

瞬間、何処からか無数の火山の噴石が飛んできて、ギガスに直撃。

ギガスは倒れる。

そして8匹のトゥプクスアラがやって来て、それと同時にアナトティタンはアルマトゥスを空高く掬い上げ、そのアルマトゥスに向かって下から飛行してきたトゥプクスアラ達がタックル。

土のアルマトゥスは大ダメージを受けた。

そしてサイカニアは目の前に大きな岩を作り、それを転がす。

それをマキシムスにぶつけて押し潰した。

雷属性のマキシムスは大ダメージを受けた。

が、3体共すぐに立つ。

竜「やるな…」

「そっちこそなんだな!」

拓「ちょっ!? 今のなんだよ!? なんか恐竜キングみたいな事したぞ!?」

ニ「恐竜じゃ出来ない事でしょ!?」

穂「なんか火山の噴石も飛んできたんだけど!?」

明らかに普通の状況じゃない出来事に、拓哉達はよってたかって竜司に訊く。

竜「後で説明する!!」

竜司が叫んだのと同時に、ミハサ、グーネンコ、ザッパーがこちらに急降下してくる。

竜「おい来たぞ!出番だ拓哉!」

拓「ちょっ!いきなり!?」

竜司に前に押し出され、慌てる拓哉。

しかしすぐに順応し、クローズマグマナックルを右手に装備し、グーネンコと殴りあう。

拓「おりゃああ!!」

クローズマグマナックルがグーネンコの顔面に入る。

「ぐうっ!? 結構効くんだな!!」

拓「なんだよ、意外と使えるじゃねぇか!!」

拓哉はそのまま右手のみで戦う。

しかしグーネンコが両手のゴツい拳なのに対し、拓哉は右手のみ。

すぐに苦戦し始める。

拓「ぐっ!このっ!野郎っ!」

「オラオラオラオラオラオラァァァァ!! もう終わりなんだな!」

拓「勝手に終わらせんな!!」

(クソッ!! 右手のみだから意外とやりづれぇ!! 左で殴っても効かねぇし!!……ったく、何処の上条さんですか!?)

そう心の中で毒づく拓哉。

そう思ってると隙が出来たのか、グーネンコに顔面を殴られる。

「隙ありなんだな!」

拓「ぐあっ!?」

吹き飛ぶ拓哉。

口の中を切ったのか、血も出てくる。

穂「たくちゃん!!」

こ「たっくん!!」

唯「お兄ちゃん!!」

「「「「「「「拓哉(君)!!」」」」」」」

慌てて心配した穂乃果達が駆け寄ろうとしたが、

拓「来るな!!」

『っ!?』

拓哉の一言で足を止める。

穂乃果達が来ても何も出来ないし、何より怪我をしかねない。

ヒーローであり、彼女達を守ると決めていた岡崎拓哉が、そんなのを望む訳も無い。

故に多少彼女達が傷付くような言葉でも、強引に止めるしかなかったのだ。

チラリと周りを見ると、恐竜達は本能に忠実な戦いになり、竜司はディノホルダーから出したブレードで、ザッパーとミハサの2人を相手取っていた。

穂乃果達は心配そうに見ている。

(……ったく……そんな顔すんなよ…)

拓哉はフラフラと立ち上がりながら竜司に訊く。

拓「おい竜司!なんか技ねぇか!?」

竜「ナックルを叩け!!」

拓「はぁ!? こうか……?」

拓哉はクローズマグマナックルに自分の掌を叩きつける。

《ダイノブレェイクッ!!》

拓「おいなんか若本ボイスが響いたけどなんで!?」

竜「それは気にするな!!」

竜司はミハサの腹を蹴り、吹き飛ばす。

「あぐっ!?」

更にはザッパーにディノホルダーのブレードの斬撃を見舞う。

竜「ふっ!」

「いでぇ!?」

ザッパーも吹き飛ぶ。

そして拓哉も、向かって来たグーネンコとタイミングを合わせ、

拓「おりゃああああああ!!」

「ぶばらっ!!」

カウンターで殴り飛ばした。

穂「やった!!」

海「流石拓哉君です!」

こ「たっくん……良かった」

この結果に、穂乃果達は安堵したり、喜んだり、それぞれの反応を示す。

しかしそれを嘲笑うように、グーネンコ達はむくりと起き上がる。

「むぅ……ここまでとは…」

「なかなかやるかもね…」

「ここは本気を出しちゃったりして!」

そしてグーネンコ達はそれぞれ、1度召喚した筈のギガス達の絵が描かれたモノクロのカードを、胸の中心や首輪、バンダナにタッチした。

瞬間、ギガス、マキシムス、アルマトゥスは紫の光に包まれ、それが弾けた時には、紫の禍々しいアーマーを身に纏っていた。



ジャークアーマー。



これがギガス、マキシムス、アルマトゥスの本来の姿とも言うべき姿。

当然、これを知らない竜司はミハサ達に問う。

竜「なんだよそれ!?」

「それは教えられないな……ジャークスティンガー!だったりして!」

「行くんだな!ジャークランサー!」

「終わりかもね!ジャークバニッシュ!」

3人が技名を叫ぶと、ギガスは背中に生えてる一番目立つ4本の鋭い大きなスパイクを伸ばし、更に大きくする。

そしてそのままサウロファガナクスに突進。

ズグシャ!!

それを受けたサウロファガナクスは、吹き飛び、たったそれだけでカードに戻った。

マキシムスは、アナトティタンを上空に投げ、角を覆うアーマーからビームを放つ。

それを受けたアナトティタンもカードに戻った。

最後にアルマトゥス。

胴体のアーマーのスパイクを発射して、サイカニアを貫き爆発させる。

やはりサイカニアもそれだけでカードに戻った。

竜司は三枚の恐竜カードを拾い、ミハサ達を見据える。

拓哉も竜司の隣に並び、構える。

「どうするんだな」

「どうするかもね!」

「まぁ、どうする事も出来ない、だったりして!」

ザッパー達がそう嘲笑う。

絵「たった一撃で……」

拓「どうすんだよ竜司!」

穂「竜司君…」

竜「………」

それに対し、竜司はゆっくりと、1枚のカードを出した。

そしてスラッシュした。






《デイノニクス》






虹色に光るカードを竜司は投げる。

その瞬間、黄色の体に黒の斑点が浮かび、白い羽毛も生えていて、頭には白と紫で出来た羽毛によるトサカを持つラプトル系の恐竜が現れた。

「キシャアアアアアン!!」








シークレット恐竜・デイノニクスが降臨した。







更にはディノホルダーの画面には、グーチョキパーが三すくみで表示される。

竜司はグーのアイコンをタッチする。

《ダイナギャラクシー(銀河群龍)》

デイノニクスが「グエッゴ!」と鳴く。

瞬間、空から虹色のオーラを纏った他のデイノニクス達が隕石のように落ちてきて、それは全てギガスに直撃。

ギガスは倒れ伏すが、まだ息があるのか、カードには戻らない。

が、立つ事も出来なかった。

竜司は続いてチョキのアイコンをタッチする。

《クロスカッター(十字架撃)》

デイノニクスは再び「グエッゴ!」と鳴く。

すると羽毛のトサカを持ってない2匹のデイノニクスが何処からか虹色のオーラを纏いながら走ってきて、そのまま×字にマキシムスに突撃。

すれ違い様のクロス攻撃を受けたマキシムスは、ギガスと同じ状態になる。

竜司は最後にパーのアイコンをタッチした。

《ローリングアタック(超転龍襲)》

《ベストマッチ!》

竜「勝利の法則は決まった!」

拓「なにその決め台詞……かっこよすぎじゃねぇか!!」

デイノニクスは再び「グエッゴ!」と鳴く。

すると羽毛トサカを持ってない三匹のデイノニクスが何処からか登場。

リーダーであるトサカを持ったデイノニクスが再び「グエッゴ!」と鳴くと、三匹は虹色のオーラを纏いながら回転。

そのまま回転鋸のようにアルマトゥスを何度も切りつけ、ダメージを与えた。

アルマトゥスも地に伏す。

拓「すげぇ……なんだよあの恐竜……」

唯「ほぼ無敵なんじゃ……」

デイノニクスの強さに舌を巻く拓哉達。

しかし竜司は眉を潜めていた。

(デイノニクスはシークレット恐竜。普通ならギガス達は即カードなんだが……あのアーマーが邪魔してるのか……)

ギガス達はそれぞれ能力面では強化された恐竜とは言え、『炎・水・雷・土・草・風』という6つの属性の追いかけ追うすくみの中に入るため、シークレット恐竜の攻撃を受けたら即カードになるのだが、ジャークアーマーを纏っている為か、まだ顕現出来るほどに体力が残っていた。

改めてジャークアーマーの驚異を再認識した竜司。

「ギガス!……クソッ!! ダメなんだな!」

「マキシムスもダメかもね……」

「アルマトゥスもだ……だったりして!」

ミハサ達は落胆すると、竜司を睨み付ける。

「今日はここまでにしといてあげるかもね!」

「次会ったら容赦無しなんだな!」

「覚えておくんだったりして!」

そう言い残して、ミハサ達はマキシムス達を回収して、空間に謎の穴を開け、何処かに消えた。

それと同時に竜司もデイノニクスを回収した。

拓「えっと……勝ったのか?」

拓哉がおそるおそる訊くと、竜司は「ああ…」と頷き、それを確認した拓哉は黙ってガッツポーズを握り、穂乃果達も声を上げて喜んだ。

こうして、この世界での恐竜バトルは終わった。




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コラボ回:別れ


コラボ最終回です。

結構短めになります。


ミハサ達ザンジャーク(暫定)を退けた竜司は、拓哉の家の前で、拓哉達と向き合っていた。

拓「もう行くのか?」

竜「ああ。俺こう見えて結構忙しいからね。ジュラシック・パークの恐竜ラボの監督したり、穂乃果達の面倒見たりな?」

拓「お前色々やってるな……」

竜「まぁ?てぇ~んさっい科学者ですから♪」

拓「またそれかよ……」

竜司の調子に乗った発言にげんなりする拓哉。

穂乃果達も苦笑か、ジト目を向ける者で分かれている。

竜「そもそもここには旅行気分で来たようなもんだしな…」

拓「旅行気分で普通に平行世界来るお前って何?」

世界一周旅行よりも大規模な行動に、拓哉は旅行とは何かという哲学的概念に陥る。

竜「すごいでしょ?最高でしょ?天才でしょ!?」

拓「それはもういいから!!」

拓哉がツッコミを入れるが、絶賛自己陶酔中の竜司には聞こえていない。

穂「ホント……この竜司君は変わってるよね…」

海「ウルトラマンの天青君は物凄くめんどくさがり屋なのに、こちらは物凄く自意識過剰ですね……」

こ「あははは……」

真「こういうのをバカと天才は紙一重って言うんでしょうね…」

凛「成る程!」

花「あははは…」

最早言いたい放題言われてる竜司。

竜「そこが凡人と天才の違いさ…」

ニ「あれ?もしかしてニコ達遠回しにバカにされてる?」

希「もしかしなくてもそうやろ…」

絵「なんか腹立つわね……」

額に青筋を浮かべる絵里達に、拓哉は冷や汗を流す。

拓(ひいいいいいいい!!!? 絵里達お姉様方がオコのことですのよ!!)

ふと唯が訊く。

唯「竜司さんはどれくらい天才なんですか?」

これは拓哉達も気になっていた事だ。

これだけ天才天才言うのだ。

さぞかし頭が良いのだろう。

竜「分かりやすく言えば、今俺高校二年だけど、中学の時に飛び級で既に大学出てジュラシック・パークで働いてるレベルで天才だよ。英語もペラペラ」

『分かりやすっ!!』

11人が同時に驚く。

予想以上の天才であった。

その顔を見た竜司は満足そうに頷くと、拓哉に訊く。

竜「なぁ拓哉。何でお前はあの時自分も戦うって言ったんだ?」

拓「はっ?」

竜「俺に任せりゃいいのに何でだ?」

竜司はずっと疑問に思っていたのだ。

恐竜と戦えるのは自分のみ。

その自分に任せればいいのに、何故拓哉自身も戦うと言い出したのか?

そこがずっと竜司は気になっていた。

だが拓哉は当然のように、何でもないという感じに言った。



拓「それは俺がヒーローに憧れてるからだ。誰かの為に動いて、助けを求める人がいたら必ずそこに行く、そんなヒーローに。それに………ここは俺達の世界だ。ならその住人である俺が動くのは当たり前だろ?」



竜(ああ……)

これを聞いた竜司は確信した。

彼も自分と同じ性格なんだと。

竜司は苦笑すると、最高の笑顔で言った。

竜「お前……最っ高だよ!」

拓「はっ……だろ?」

拓哉も最高の笑顔で返す。

それを穂乃果達は微笑ましそうに見ていた。

拓哉はふと思い出しように、クローズマグマナックルを竜司に渡す。

拓「ありがとな?お前のお陰で今回は本当に助かった」

竜司はクローズマグマナックルを受け取りながら言う。

竜「礼なんていらねぇよ。ヒーロー」

拓「はっ……よく言うぜ。自意識過剰ヒーロー!」

そう言い合って、2人はハイタッチした。

唯「なんか良いな~、ああいうの…」

こ「男同士の友情って感じだね♪」

穂「だね♪」

楽しそうに言う穂乃果とことりと唯。

竜「さて……そろそろ帰るよ」

そう言って、竜司はエニグマを両手にはめる。

拓「そうか……………ん?」

だがそれは拓哉にとって見覚えのある物だった。

その形状、手の甲のエンブレム、その全てが拓哉にとって見覚えのある物だった。

主にマンガの中で。




拓「おいコラ竜司ぃぃ!! お前それXグローブじゃねぇか!! 思いっきりパクってんじゃねぇか!!!?」





拓哉は竜司の胸ぐらを掴んで叫んだ。

竜「はぁ!? 君は何言ってるのかな?僕よく分かんな~い」

拓「嘘つけ!! 思いっきり知ってんだろ!?」

竜「何の事~?零地点突破」

《了解シマシタ、ボス》

拓「ほら見ろォォォォォォ!! やっぱりパクってんじゃねぇかぁぁぁぁ!! 思いっきり技名言ってんぞ!! お前は何処のマフィアの10代目だ!? お前は天才科学者だろォォォォ!!!?」

竜「死ぬ気で逃げる!!」

そう言って、竜司は拓哉の腕を振りほどき、本気で逃げる。

しかもスマホバイクに乗って。

拓「あっ!! 待ちやがれ!! この拓哉さんが直々に訴えてやる!!」

竜「やれるもんならやってみろォォ!!」

そう言い残して、竜司は目の前に異次元の穴を開け、そこに入り、自分の世界に帰っていった。

拓「待てコラぁぁぁぁぁぁ!! あんのアイディアパクリ野郎ォォォォォォ!!」

拓哉の慟哭が、その場に轟いた。








こうして、天才科学者にして天才恐竜学者の自意識過剰ヒーローと、普通でありながらヒーローとして輝いた少年の邂逅は幕を閉じた。






この世界らしい、ドタバタ劇で。








たーぼさん。

コラボありがとうございました!

この後は本編に戻るか、真姫と海未に関係するSIDを挟むか、悩んでいます。

是非ご意見ご感想お待ちしてます。


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Game#46


シリアスぶちこんでやる!!


竜司side


平行世界から帰って来た次の日。

朝起きると、穂乃果が部屋に入ってきて

穂「見てよ竜ちゃん!! これ!!」

そう言って、スマホの画面を見せてくる。

竜「あー?何々?……19位?……なにこれ?」

穂「スクールアイドルのランキングだよ!! 20位以上になったんだよ!? ラブライブだよ!?」

顔を近づけながら言ってくる。

竜「ふーん…」

穂「ふーん…って。何かあまり感動してないね…」

竜「寝起きだからな…」

穂「それ関係あるの?後寝癖出来てる」

竜「またか……」

穂乃果と朝から、そんな会話をしつつ、寝癖を直して朝飯食って登校。

海未やことりたちと合流し、学校に向かう。

当然、穂乃果はランキングのことを海未たちにも言う。

海「凄いじゃないですか!?」

こ「うん!!」

穂「でしょでしょ!? なのに竜ちゃんったら、「ふーん」だよ!? 反応薄すぎでしょ!?」

こ「アハハ…」

海「まあ、竜司は昔から興味の無い事に関する反応が鈍いですから」

穂乃果の言い分に、ことりは苦笑い、海未はフォローっぽい事を言った。



ーーーーーーー



「やったじゃーん!」

「クラスで今凄い話題になってるよ!」

そんなこんなで音ノ木坂学院の廊下。

俺達が登校して教室に向かっていたら、いつも穂乃果達のライブの準備を手伝ってくれるヒデコ、フミコ、ミカの3人が穂乃果を見つけたと同時に駆け寄ってきて、こんな状況になっている。

何でも既にクラス内でμ'sの事が話題になっているらしい。

穂「くぅ~ん♪」

「よしよし、よく頑張った~!」

まるで犬が褒めて褒めてと尻尾をフリフリ振っているのが幻覚で見えてしまいそうなほどに、穂乃果は犬っぽくなっていた。

ミカはそれを気にせず、平然と穂乃果の顎あたりを犬を撫でるかのように撫でている。

何アレ?

すごい平然とやってんだけど?

「穂乃果の事だからすぐ飽きちゃうかと思ってたんだけどねえ」

穂「てへへ!」

それ褒められてるようであんまり褒められてないぞ穂乃果。

遠回しにお前はいつも飽き性だって言われてるぞ。

「でもさあ、私達ってラブライブに出るμ'sの初ライブ見た事になるんだよね~!」

「感慨深いね!」

言われればそうなのかな?

そこに、声をかけられた。

絵「穂乃果、竜司、おはよ!」

穂「あ、絵里ちゃんおはよう!」

竜「あっ、絵里」

軽く絵里と挨拶を交わし、手を振りながら去って行く絵里を見送る。

するとヒフミトリオがいきなり騒ぎ出した。

「穂乃果、竜司君!先輩だよ!?」

穂「ああ、大丈夫大丈夫!先輩後輩なしにしようって話したんだ~!」

「凄い、芸能人みたい!……あれ、でも竜司君はマネージャーなのに、敬語じゃなくてもいいの?」

竜「一応敬語はまだ使ってる。名前だけ呼び捨てだよ」

穂「竜ちゃんの癖みたいで、どうしても年上には敬語が出ちゃうみたい」

「ふ~ん……」

納得するヒデコ。

「あっ、そうだ。でねでね!」

突然何かを思い出したフミコに、俺達は颯爽と教室の方へ連れて行かれた。



ーーーーーーーー



穂「えっ?サイン?」

ミ「これから有名になるんだから、記念に一枚書いてよ♪………さっき園田さんにも書いて貰ったんだけど……」

俺まで引っ張られるから何事かと思ったけど、俺関係ないじゃん。

スクールアイドルの穂乃果なら分かるけど、俺全然関係ないじゃん。

穂「………どこに?」

穂乃果はサイン色紙を見渡す。

俺も気になり、横から見渡す。

見ると隅っこの方に、小さく書かれていた。

「「うわ!?…ちっちゃ!?」」

俺と穂乃果のツッコミがシンクロする。

竜「……おい、そこの小心者大和撫子」

海「し、仕方ないでしょう!そ、そういうのにまだ慣れてないのです!……恥ずかしいですし」

最後のが本音だろ。

左下の隅っこに小さくサイン書くやつがあるか。

「でしょ…?恥ずかしいから、これが限界だって。だから、穂乃果は大きく書いて!」

穂「えっ、じゃあ…」

そう言って、穂乃果は色紙いっぱいに書いた。

穂「ごめん…入りきらなかった~」

頭をかきながら言う穂乃果。

「ホント、あんたたち極端よね…」

ヒデコが呆れる。

「さっき矢澤先輩にも頼んだんだけど……」

竜「お前らって結構行動派だよな」

ヒフミトリオの行動力がパない。

いち早く誰よりもサイン貰おうと行動している。

ずる賢いと言うべきか素直と言うべきか……。

「『すいません、今プライベートなんで』って言われちゃってさ」

穂「私達、芸能人ってわけじゃないし……」

徹底しすぎでしょ……あの自称エリートアイドル。

穂「あれ?そういやことりちゃんは?」

ニコのアイドル像に呆れていると、穂乃果が思い出したように呟いた。

そういえば、確かにことりがいない。

竜「トイレじゃね?」

穂「竜ちゃんデリカシーって知ってる?」

竜「当たり前だろ?俺を誰だと思ってる?」

そう言うと、穂乃果も海未もヒフミトリオも呆れた目を向けてきた。

解せぬ。




ーーーーーーーー




ランキングの事は当然他のメンバーも知っていた。

穂「うわあぁぁ~!! 出場したら、ここで歌えるんだ~」

凛「凄いにゃ~」

部室の床に寝そべり、頬杖をついたポジティブ組二人が、うっとりしている。

それにニコが

ニ「何うっとりしてるのよ!」

そう言うが、ニコも次第にウルルってくる。

ニ「ら…ラブライブ出場くらいで……うぐぐ」

そう言って後ろに向く。

ニ「ぐすっ……やったわね!……ぐすっ……ニコ!」

竜「あんたもかよ…」

まあ、ニコがそんな気持ちになるのも無理はない。

何せメンバーの中で1番ニコがラブライブ出場を目標にしていたのだから。

ニ「まだ喜ぶのは早いわ」

竜「いや喜んでたのはニコ…「ああん?」…何でもないです」

なんかめっちゃ睨まれた。

怖かったよママァー!!

ニ「ラブライブに出るのが決定したわけじゃないんだから、気合い入れていくわよー!!」

絵「その通りよ」

ニコの言葉に同調したのは、今来たばかりの絵里。

絵「みんな、ちょっとこれを見てくれるかしら?」

絵里が両手でノートパソコンを操作し、全員に見えるようノートパソコンのディスプレイを見せる。

写されていたのはUTX高校のトップページ。

そこにデカデカと書かれていたのは…、

穂「『7日間連続ライブ』!?」

凛「そんなに!?」

竜「ストイックだな」

A-RISEの公式ページには、ラブライブ出場に向けた最後の大詰めとしての活動が詳しく記載されていた。

希「ラブライブ出場チームは2週間後の時点で20位以内に入ったグループ。どのスクールアイドルも最後の追い込みに必死なん」

絵「20位以下に落ちたところだって、まだ諦めていないだろうし……今から追い上げてなんとか出場を勝ち取ろうとしているスクールアイドルもたくさんいる」

真「つまり、これからが本番って訳ね…」

絵「ストレートに言えば、そういう事……喜んでいる暇は無いわ」

絵里は立ち上がって言う。

穂「ぃよぉっしっ!もっと頑張らないと!!」

絵「とは言え、特別な事を今からやっても仕方ないわ。まずは、目の前にある学園祭で精一杯いいステージを見せること。それが目標よ」

そう…。

学園祭の日にライブをやることになっているのだ。

そこで、いいライブを見せようという訳だ。

ニ「よし!そうと決まったなら、早速この部長に仕事を頂戴!!」

絵「じゃあ、ニコ。うってつけの仕事があるわよ」

ニ「…………?…えっ、何?」

絵里さんの言葉に?を浮かべるニコだった。




ーーーーーーーー




「居合道部!! 午後2時から1時間の講堂の使用を許可します!」

「「やったぁー!!!」」

居合道部の代表と思われる女の子は、2人で手を握り合って喜びを分かち合っていた。

竜「……何これ?」

そんな風景に軽く引きながら、絵里に聞く。

絵「昔から伝統らしくて……」

絵里曰く、来る音ノ木坂学院の学園祭での講堂の使用権は毎年くじ引きで決めているらしい。

そして講堂を使用するには、くじ引きで金のボールを引き当てないといけないらしくて、それ以外の色はハズレで講堂が使えないんだとか……。

さっき金のボール出たんだけど?

連続して出るのか?

そんでアイドル研究部の代表は、部長のニコだ。

絵里の言っていた仕事とは、この事らしい。

穂「ニコちゃん!がんばって!」

絵「講堂が使えるかどうかで、ライブのアピール度は大きく変わるわ!!」

穂乃果と絵里に激励され、ニコはズンズンとくじ引きのところへと歩み寄る。

「それではアイドル研究部!どうぞ!!」

ニ「見てなさい……」

そして、ガラガラを回すニコ。

その変な遅さが余計に周りの緊張感を増やしているような感覚に襲われる。

そんな時、凛がおもむろに呟いた。

凛「でも逆にニコちゃんなら当てちゃいそうな気もするけどにゃー」

竜「凛……フラグ立てたな…」

凛「にゃ?どういう事…「ああ……」…にゃ?」

凛の声を遮るように、後ろからニコと穂乃果の微かな声が聞こえた。

小さな声だったのに、何故かそれが鮮明に聞こえるくらいには、今のニコ達の声は印象強かった。

希望に満ち溢れた声とは真逆の、絶望しか感じられない声だったから。

そちらを見ると予想通り、







「残念!アイドル研究部、学園祭で講堂は使用できません!!」






真っ白な玉があり、9人の女神は崩れ落ちていた。




ーーーーーーーー




現在、屋上。

穂「どーーしよー!!!!!!」

穂乃果が頭を抱え、屋上で叫ぶ。

ニ「だ、だってしょうがないじゃない!くじ引きで決まるなんて知らなかったんだから!」

ニコが言い訳染みたことを言いながら、開き直る。

凛「あー!開き直ったにゃぁっ!!」

ニ「うるさーい!」

凛に開き直ったことをつっこまれ、ニコはさらに開き直る。

花「ううっ……!なんで……!? なんで外れちゃったのぉっ!?」

花陽はフェンスを掴みながら涙を流していて…、

真「まぁ、予想されたオチね」

希「ニコっち…ウチ、信じてたんよ……?」

真姫は髪の毛先をクルクル回しながら素っ気なく返し、希も珍しく両膝を抱えていた。

ニ「うるさいうるさいうるさ〜いっ!!!! 悪かったわよーっ!!」

ニコが引いた玉の色は金ではなく白。

つまりそれは学園祭では講堂は使えないということを意味していた。

そして穂乃果達は屋上で悲愴感に明け暮れる結果になっていた。

絵「気持ちを切り替えましょう。使用できないのにいつまでも悲観してもしょうがないでしょ?」

絵里が手を叩いて、沈んだ気持ちに手を差し伸べる。

さすが生徒会長、こういう場面では人をまとめるための能力が良い感じに発揮される。

海「それでどうするんです?グラウンドも体育館も運動部が使用すると思いますし……」

絵里以外のメンバーの中でも、気持ちの切り替えが早かった海未が方針を訊く。

それに対しニコが言う。

ニ「……部室とか…?」

部室の中で、踊るニコが『いっくよー!!』と言う、情景を想像する。

竜「狭いでしょ…」

ニ「むぐぐぐ……」

俺が却下すると、今度は穂乃果が案を出す。

穂「あっ!じゃあ、廊下は?」

廊下でブラスバンドみたいなことをする穂乃果たちを想像する。

穂『μ's…ミュージックスタート!!』

竜「バカ丸出しだな」

俺が却下する。

ニ「そうね」

ニコが俺の意見に同意すると、穂乃果が文句を言う。

穂「ニコちゃんがクジ外すから、必死に考えてるのに!?」

やれやれ……ここは1つ俺が案を出してやろう。

竜「全く、仕方ないな。ならばこのてぇ~んさっい科学者である俺が言い案を出してやろう♪」

穂「何かあるの?竜ちゃん…」

全員、俺の方を見る。

俺は人指し指を下に向けて言う。

竜「ここでやればいいのさ…。ここは9人が十分に踊れて、客もたくさん呼べて、それなりに広い場所。ここに簡易ステージを作れば、ある程度はクリア出来る。つまり野外ライブだ」

『…………成る程!!』

その言葉に全員しばらく沈黙していたが、やがて納得したように声を上げた。

穂「竜ちゃんすごい!! 流石は天才恐竜学者で天才科学者だね♪」

竜「フフン♪」

希「屋外ステージって事?」

こ「確かに人はたくさん入るけど……でもぉ…」

ことりが渋る。

竜「安心しろことり。客の入り様なら心配は要らない。拡声器と音響器具を駆使して、迷惑にならないレベルで学校中に響かせる」

穂「竜ちゃんがこう言ってるんだし、大丈夫だよ!何よりここは、私たちにとってすごく大事な場所!ライブをやるのに相応しいと思うんだ!」

穂乃果が俺に同意する。

希「確かにそれが一番μ'sらしいライブやね」

凛「よーし!凛も大声で歌うにゃ~!」

絵「それじゃあ、各自歌いたい曲の候補を出してくる事。それじゃあ練習始めるわよ!」

他のメンバーも賛同する。

客を呼ぶのには苦労するだろうが、そこは俺が頑張ればいい話だ。

こうして学園祭のライブの場所は屋上でやる事になった。



ーーーーーーーーーー




絵「え、曲を?」

翌日の部室での打ち合わせの席で、穂乃果からの提案を絵里が反芻する。

穂乃果は「うん」と応え、続ける。

穂「昨日真姫ちゃんの新曲聴いたら、やっぱり良くって。これ、1番最初にやったら盛り上がるんじゃないかなって」

絵「まあね。でも振付も歌もこれからよ。間に合うかしら?」

穂「頑張れば何とかなると思う」

絵里の問いに穂乃果は迷うことなく答える。

それに対し、絵里は苦笑を浮かべる。

海「でも」

海未が口を挟む。

海「他の曲のおさらいもありますし」

花「わたし、自信ないな……」

花陽が続く。

それでも穂乃果の勢いは止まらないようで。

穂「μ’sの集大成のライブにしなきゃ。ラブライブの出場が懸かってるんだよ」

希「まあ確かに、それは一理あるね」

希が言う。

穂「でしょ?」

穂乃果は嬉しそうに言葉を受け取る。

やる気満々だな。

穂「ラブライブは今のわたし達の目標だよ。そのためにここまで来たんだもん」

花「ラブライブ…」

アイドルへの情熱が強い花陽が呟く。

穂「このまま順位を落とさなければ、本当に出場できるんだよ。たくさんのお客さんの前で歌えるんだよ」

穂乃果は立ち上がり、メンバー達を見渡して続ける。

穂「わたし、頑張りたい。そのためにやれることは全部やりたい。駄目かな?……ねぇ、竜ちゃん」

穂乃果は俺に聞いてくる。

竜「お前の心からの言葉か?」

穂「うん!!」

竜「なら、好きにしろ。他に反対のやつは?」

俺は穂乃果の意見に賛同し、メンバー達に尋ねる。

誰も異を唱える者はいない。

竜「だってよ」

俺は穂乃果を見上げる。

穂「皆……ありがとう」

メンバー達は少し呆れたような、でも嬉しそうに笑みを零している。

これでこそμ'sだな。

そんな雰囲気が部室を満たしている。

それでも言っとくべき事は言っとかないとな。

竜「ただし、練習は厳しくなるぞ。特に穂乃果。お前はセンターボーカルなんだから、皆の倍はきつくなる。覚悟しろよ?」

と念を押す。

穂「うん」

穂乃果は強く答える。

穂「全力で頑張る!」

竜「頑張りすぎて、体を壊すなよ」

穂「分かってるよ!!」

ホントかよ…。


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Game#47





学園祭のライブで歌う曲を決めてから、穂乃果の頑張りようが目覚ましい。

暑苦しいくらい張り切っていて、授業中は眠そうなくらいだ。

海未にちゃんと寝てるのかどうか、聞かれるくらいに。

それに比例して、段々ことりの元気が無くなってるような気がする。

そして学園祭前日の練習の時。

竜「じゃあ、一旦みんな、休憩取れ」

穂「ダメだよ!もう1回やろう!」

竜「はぁ!?」

俺の休めの言葉に、異を唱える穂乃果。

ニ「ふわぁぁぁぁぁ…!もう足が動かないよ~」

穂「まだダメだよ!! さあ、もう一回!!」

ニ「ええぇぇ!? まだやるの!?」

穂「いいから、やるのー!!」

ニコは柵にしがみつき、穂乃果がニコを立たせようとする。

いつもと逆だ。

見かねた俺が

竜「おい、穂乃果。いいから休め」

ニコから引き離し言う。

穂「大丈夫!私燃えてるから!」

竜「そう言う問題じゃない。周りを見ろ。みんな疲れてる」

周りを穂乃果に見させる。

海未達も肩が上下していた。

1年の中で体力がある凛ですら、座り込んでしまっている。

穂「…………」

それを見た穂乃果は、少し冷静になる。

竜「分かったなら、休め…」

穂「うん…」

それを確認したメンバーも、休憩に入る。

竜「なあ、穂乃果」

穂「竜ちゃん、どうしたの?」

竜「ことりの様子が最近おかしくないか?」

俺でも分かるくらい最近のことりの様子が変だ。

海未も分からないと言うし、穂乃果なら気づくはずだが……。

穂「大丈夫じゃないかなー?きっとライブに向けて気持ちが高ぶってるだけだよ!」

海「なら良いのですが……」

海未も入ってきてそう言う。

竜「それである事を願うしかないな。本番は明日なんだし、忙しいのも直に終わる。その時に聞きだせばい…「ヘクシュッ!」…」

おい、くしゃみで俺の言葉を遮るな。

きたねぇな……。

にしても……。

竜「……何もなければいいんだけどな」

僅かな違和感と、振りだした雨から感じる微かな不安が変に入り混じっていた。




ーーーーーーーー




竜「……最悪だ。何が悲しくて文化祭本番で雨の中屋上でステージ設営してんだ俺は?」

「そりゃライブするからに決まってんでしょうに。ほら、文句言わないでさっさと手を進める!私達も手伝ってるんだから!」

いよいよ文化祭当日。

天気は生憎の雨模様である。

そんな中、俺は穂乃果達よりも早く登校してステージ設営をしている最中なのである。

……雨の中な。

なのに文句も言わず手伝ってくれるこのヒフミトリオは何なのだろうか。

「よし、まあこんなもんでいいでしょ!幸い雨は降ってても風は強くないから、ステージが崩れる心配もなさそうだね」

竜「だな。本当なら雨も止んでほしいところではあるが、さすがにこれじゃ見込めそうもないか」

「仕方ないもんは仕方ないっ!ほら、行くよ!設営が終わっても私達にはまだやる事があるんだから、ボサッとしない!! 穂乃果達もそろそろ登校してくるんだから!!」

竜「ああ」

さすがに本番という事もあってか、ヒデコ達も気合いが入っている。

本番までもうすぐ。

俺も最高のステージにしてやるために頑張りますか。




ーーーーーーーー



部室に入ると、全員衣装に着替え終わったみたいで、それぞれ談笑している。

竜「絵里、調子はどうだ?」

絵「ええ、大丈夫よ!」

それは何より。

希「竜司君は何しにきたん?」

竜「ライブに使えそうなもん探しに。でもやっぱり無いもんだな……」

希「そりゃそうやろ」

ニ「どういう意味よ希!?」

真「雨……全然弱くならないわねえ」

真姫が俺たちのコントを無視して言う。

ニ「ていうかさっきより強くなってない!?」

こ「これじゃたとえお客さんが来てくれたとしても……」

穂「やろう!」

そんな時、奥の方から穂乃果の声が聞こえた。

どうやら穂乃果は今着替え終えたらしい。

竜「穂乃果……」

穂「ファーストライブの時もそうだった。あそこで諦めずにやってきたから、今のμ'sがあると思うの。そうだよね、竜ちゃん」

なんかこいつ……声が……。

竜「そうだな。いつだって最後に立ち上がる決心をしたのはお前達だった。だからやり遂げられた」

穂「うん……うん!行こう、みんな!!」

今の穂乃果の顔にはファーストライブの時のような不安感は一切感じられなかった。

それほどに自信があるのだろう。

そうだ、やはり穂乃果はそうでなくちゃいけない。

花「そうだよね……そのためにずっと頑張ってきたんだもん!」

凛「後悔だけはしたくないにゃー!」

真「泣いても笑っても、ライブが終わったあとには結果が出る」

希「なら思いっきりやるしかないやん!」

絵「進化した私達を見せるわよ!」

ニ「やってやるわあ!!」

それぞれがやる気を見せる。

海未とことりは何か話してるようだが、どうやら心配はいらないらしい。

ことりの様子がおかしい事も解決したのだろうか。

まぁ、それよりも……。

竜「穂乃果」

穂「ほぇ?」

俺は穂乃果を呼び、ディノホルダーにカードを1枚スラッシュした。

《始祖鳥のまもり》

そしてそのカードを投げると、始祖鳥が出てきて、穂乃果に虹のオーラを飛ばす。

海「竜司?」

絵「一体何を?」

絵里と海未が疑問を投げかけて来るが、それは穂乃果の反応が答えとなる。

穂「あれ?……喉が?」

穂乃果は喉を押さえて「あーあー」と言う。

竜「お前喉痛めてただろ?」

俺は始祖鳥をカードに戻して言う。

穂「何で分かったの!?」

竜「俺はお前の幼馴染みだぞ?舐めんな」

それくらい気づく。

海「よく気づきましたね竜司」

希「観察眼があるんかもね…」

関心したように海未達が問いかけてくる。

それよりも……。

竜「そろそろ時間だ。しっかりやれよ。μ's!!」

手を叩いて部室を出る瞬間、俺の言葉に9人の女神は元気な声で反応した。

「「「「「「「「「はい!!」」」」」」」」」





ーーーーーー





雨は止まない。

だけど時間はいつだって、誰にだって、平等に流れてゆく。

本番がきた。

最後の仕上げに全てのチラシも無事に配り終えて屋上に行くと、雨の中なのにライブを見に来てくれている客は結構いた。

それだけ注目度や期待度が上がっている証拠だろう。

既に穂乃果達はステージ上に立っている。

雪「竜兄!」

亜「竜司さん!! こんにちはっ!!」

奥の方でカメラをセットしていると、文化祭を見に来ていた雪穂達が俺に気付いたらしい。

竜「おう、揃いも揃ってよく見に来てくれたなシスターズ」

雪「ものすごく簡略化したね」

竜「気にするな」

雪穂がジトッとした目を向けて来るが、スルーする。

亜「あっ、始まるよ!!」

おっと、危ない危ない。

亜里沙の声で意識をステー ジの方へ集中させる。

穂乃果が少し目を瞑る。

色々な事を考えているのだろう。

これまでの事を。

俺もヒフミトリオも出来るだけ最高の設備を考えた。

あとはお前達がそこで最高のパフォーマンスをするだけだ。

さあ、見せてやれ。

μ'sの今の姿を。


(♪:No brand girls)




旗の中心に大きく『μ's』と書かれた大きな旗が風で揺れ動き、その旗の下には9人の女神たちが観客に向けて背を向けている。

そして、ギターの前奏と共にライブは始まった。

『No brand girls』

力強さをコンセプトにし、立ちはだかる大きな壁に立ち向かっていくアップテンポな曲。

メンバーのダンスからも力強さを感じ、観客のハートを鷲掴みにしていた。

そんな時だ。

突如ディノホルダーに恐竜反応が出た。

竜「こんな時に……」

俺は愚痴ると、静かに屋上を抜けた。



ーーーーーーーー



オトノキから少し離れた場所にヤツはいた。

氷室玄斗……もといナイトローグ。

その隣には……

「フシュルルルルルルルルルルルル……」

石灰色の大型肉食恐竜がいた。

竜「インドミナス・レックス……」

忌まわしきハイブリット恐竜だった。

ナイトローグは言う。

「そろそろ決着を着けるぞ……」

竜「ああ……さぁ、実験を始めようか」

俺はエレメントトリガーを出して、起動する。

《エレメント・オン》

♪~~♪

そしてディノホルダーにエレメントトリガーを装着する。

《トンテンカーン、トーンテンカーン♪》

「お前がそれを使うとはな……」

竜「さっさと決着を着けるためだ…」

そう言って、俺は恐竜カードをスラッシュした。

《スーパーエオカルカリア》

出てきたのは、体色が黒と紫のみで構成された大型肉食恐竜・スーパーエオカルカリアだ。

「グアアアアアアアン!!」

本来のエオカルカリアは、朱色と黒と白の体色だが、スーパー恐竜になると、こうなる。

《アンコントロールスイッチ!エレメントハザード!ヤベーイ!》

そして俺も、黒い分厚い鉄板に挟まれ、右顔半分は紫のヒビのような模様が走り、体が紫のオーラに包まれる。

竜「行くぞ……」

「ふん……」

その言葉と共に、俺はスーパーエオカルカリアをインドミナス・レックスにぶつけ、俺自身はナイトローグと戦うことになった。

俺はディノホルダーからブレードを出して、ナイトローグに走って近づく。

ナイトローグはエネルギー弾を撃ってくるが、俺はそれを全て弾き、接近戦に持ち込む。

そのまま殴り合い。

ナイトローグの腹に俺が3発パンチを決め込むと、ナイトローグは俺に左ヤクザキック、右回し蹴りをしてくる。

俺はそれを受けながらも、すぐに連続パンチでダメージを与える。

俺たちのすぐそばでは、エオカルカリアとインドミナスが噛みつき合いをしていた。

お互い喉に噛みつこうとするが、すぐに引っ込めたり、空ぶったりしている。

ここでナイトローグが俺から距離を取り、ナイトディノホルダーの画面をタッチした。

「もう1つ完成させた技を見せてやる」

《デストロイクロー(殺戮壊爪)》

するとインドミナス・レックスの両手の鋭く長い爪が虹色に光り、長く伸びる。

そしてそれを上から叩きつけるように、スーパーエオカルカリアに降り下ろした!

ズバァァァァァァァァ!!

それを受けたスーパーエオカルカリアは吹っ飛び、倒れ伏す。

が、なんとか立ち上がる。

エレメントトリガーは属性の有利不利をなんとか克服するもの。

例えば炎属性の恐竜なら、水属性の恐竜に弱いが、エレメントトリガーによって、属性が最大値まで引き上げられると、それに対する免疫が付く。

要するに水属性の恐竜とも戦えるという事。

それは謎属性の恐竜にも有効だ。

だが同時に、暴走の危険性もある。

長く使い続けると尚更。

まぁ何が言いたいと言うと………









竜「ぐっ!? うっ……あっ……アアアアアアアアアアアアアアアア!!!?」











俺はもうすぐ暴走してしまうという事。

こうやって今俺の体に紫の電流が走ってるのがいい証拠だ。

竜「やべ……」

俺はなんとかディノホルダーからエレメントトリガーを外そうと手をかけた所で、






竜「…………」






意識を手放した。







竜司sideoff




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Game#48


竜「てぇ~んさっい恐竜学者にして、てぇ~んさっい科学者の天青竜司は、学園祭でライブをする穂乃果達を守る為、現れたナイトローグとインドミナス・レックスを迎え撃つ!しかし禁断のエレメントトリガーを使ってしまい、徐々に……意識が……無くなって……」

穂「暴走状態に入るからそれどころじゃないって?なら代わりに穂乃果が!どうなる第54話!?」


◎side


「なんだ……?」

氷室玄斗は首を傾げた。

突然竜司の体に紫の電流が走ったと思ったら、苦しみ、そして今は棒立ちだった。

ナイトローグの装甲に身を包んでる彼は、ゆっくり警戒しながら歩み寄る。

その瞬間。

シュパッ!!

「っ!?」

竜司が音も無く消えた。

文字通り消えたのだ。

「何処だ!?」

ナイトローグは辺りを見回した。

すると、

「ギュアアアアアアアン!!」

インドミナス・レックスが何かに殴られたかのように吹っ飛んだ。

「なっ!? ぐふっ!?」

それに驚いてると、今度はナイトローグが吹っ飛んだ。

見ると自分の目の前にいたのは竜司だった。

暴走している竜司は常人では出せない力とスピードを出せる。

それを使って、竜司はインドミナスとローグを蹴り飛ばしたのだ。

竜司はスタッと着地すると、ディノホルダーに炎の超技カードをスラッシュした。

《デスファイア(地獄死炎)》

《スーパー!ベストマッチ!ガタガタゴットン!ズッタンズッタン!ガタガタゴットン!ズッタンズッタン!》

それを聞いたナイトローグは竜司に叫ぶ。

「お前!それをここで使う気か!? ここら一帯が更地になるぞ!?」

しかし竜司は聞かずにトリガーを弾いて、スーパーエオカルカリアに吸収させた。

「グゥアアアアアアアアアア!!」

瞬間、スーパーエオカルカリアは口にあまりの高温で黒い部分が出来た大きな炎の塊を作る。

しかもそれは尚も肥大化しつつある。

デスファイアは炎の超技の中で最も強く、最も危険な技。

その威力は、触れた物全てを焼き尽くす。

しかもベストマッチだった。

その威力は計り知れない。

今やオトノキを越える程に大きくなり、そして……。










ドガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!









全てを焼き尽くし、焦土に変えた。








ーーーーーーーーーー




「No brand girls」を歌い終えた穂乃果達はここまで迫ってくる炎に恐れを抱いていた。

ニ「ちょっと何あれ!?」

真「そんなの分かんないわよ!!」

黒い部分がある巨大な炎の塊。

それは否が応でも、生物の本能による恐怖を呼び起こした。

穂「竜ちゃん……」

ふと、穂乃果はここにはいない幼馴染みに想いを馳せる。

もしかしたら竜司が彼処で戦っているのでは?

そういう考えがよぎる。

実際、穂乃果の考えは当たっていた。

絵「とにかくこのままじゃ危ないわ。皆さん逃げてください!!」

絵里の警告で、見に来ていた客は全て、悲鳴を上げながら校舎の中に逃げ去る。

希「ウチらも行くで!!」

希がそう促して逃げようとした時。

ドガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!

大爆発が起きた。

その爆風が穂乃果達を叩く。

『きゃああああああああああああああ!!!?』

9人は咄嗟に、地面に伏せて爆風を凌ぐ。

花「ひぃいいいいいいいいいい!!」

凛「かよちん頑張って!!」

こ「うっ……ぐぅ…」

なんとか歯を食い芝って凌ぐ9人。

ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ………。

やがて爆発による閃光が止み、9人は起き上がって周りを見渡す。

海「なんですか………これ?」

穂「何で……こんなことに?」

熱気が漂う中、穂乃果達は絶句する。

幸い、音ノ木坂は無事だった。

だがその前にある階段。

そこを含めた一帯が焦土と化していた。

その中心には何も無い。

草木一本も。

そこにいる筈の竜司も、エオカルカリアも、インドミナスとローグすら、いなかった。

絵「一体何が?」

絵里が困惑する中、新たにズシャ!!と、物音がした。

9人はビクリとすると、そちらを向く。

そこには、ナイトローグが倒れていた。

「うっ……ぐぅ…」

呻くナイトローグ。

絵「氷室君……?」

怪訝そうにする絵里。

希「何で玄斗君が……?」

真「知らないわよ……」

こ「まさか……竜君に?」

海「可能性とすればそれですけど……」

それぞれが考えを言うなか、上空から新たに誰かが現れる。

スタッと着地したのは、竜司だった。

ただし未だに暴走しているが。

その手にはエオカルカリアのカードが。

竜「………」

竜司はエオカルカリアのカードをホルダーに仕舞うと、穂乃果達の方に向く。

穂「竜ちゃん……?」

穂乃果が手を伸ばして近づこうとした瞬間。

ガッ!!

穂「うぐぅ!?」

目に見えないくらいのスピードで穂乃果に近づき、竜司は穂乃果の首を掴んで持ち上げた。

片手で。

穂「あ……ぐぅ……!?」

足をバタバタさせて苦しむ穂乃果。

海「竜司!? 何を!?」

こ「竜君止めて!!」

海未とことりが慌てて竜司に近づくも、竜司は蹴りを2人に喰らわす。

海「ぐっ!?」

こ「あうっ!!」

ドシャ!!と、地面に倒れてずぶ濡れになる2人。

希「海未ちゃん!?」

花「ことりちゃん!?」

慌てて希が海未に、花陽がことりに近づき、介抱する。

絵「竜司止めなさい!!」

ニ「あんた何やってんのよ!?」

今度は絵里とニコが慌てて竜司に近づくも、やはり蹴り飛ばされる。

「「きゃああああ!?」」

希「エリチ!?」

「「ニコちゃん!?」

希は絵里に、真姫と凛がニコに近づき介抱する。

希「大丈夫!?」

絵「ええ……でも、何で?」

絵里は信じられない顔で竜司を見る。

真「もしかして暴走?」

真姫は何となく、そう思った。

だがそれはまた後で。

今は穂乃果だ。

このままでは穂乃果が絞殺される。

現に穂乃果は泡を吹き始めてる。

穂「がっ……ぼっ……!?」

だが真姫達は竜司の恐ろしさに足がすくんで動けない。

そんな時だ。







「はいそこまで」






渋い声が響き、竜司の手から穂乃果が開放される。

穂「げほっ!! ごほっ!! げほっ!!」

咳き込む穂乃果はゆっくり地面に降ろされる。

こ「穂乃果ちゃん!!」

海「穂乃果!!」

慌てて海未とことりが駆け寄り、穂乃果の状態を確認する。

穂「はぁー、はぁー、はぁー。助かった……」

涙目だが、幸い大事にはなっていない。

そのことに安堵した8人は穂乃果を助けた人物を見る。

絵「あなたは!?」

「よっ♪」

それはスタークだった。

こ「お父さん!? 何で……?」

ことりは疑問の声を上げる。

本来敵である筈のブラッドスタークが穂乃果を助けたのが分からなかったからだ。

「なぁに。ただの気紛れさ」

そう言うと、スタークは竜司に殴りかかる。

「ふん!」

顔面を殴った後、竜司の左手を殴り、ディノホルダーを落とさせる。

しかし竜司もすぐに殴り返す。

スタークの顔面を殴った後、左手で首を掴み、何度も腹に右パンチを叩き込む。

更に蹴りあげ、3発蹴りを叩き込む。

最後に蹴り飛ばした。

ドガアアアアアアン!!

スタークは鉄柵にぶつかる。

「ってぇ~な~……これがエレメントトリガーの暴走か……」

スタークは鉄柵を支えに立つ。

真「どういう事?やっぱり竜司は暴走してるの?」

「ああ、そうだ。エレメントトリガーは強大な力を得る代わりに長く使うと暴走する。暴走すれば自我は無くなり、死ぬまで敵味方見境なく殺し尽くす。それを止めるにはディノホルダーからエレメントトリガーを抜くしか無い…」

こ「そんな……」

穂「っ!!」

スタークの説明を聞いた穂乃果は、すぐに飛び出し、竜司のディノホルダーを掴む。

そしてエレメントトリガーを引き抜いた。

その瞬間、

竜「がっ……あっ…ぐぅ!?」

竜司は苦しみ、黒いオーラが消える。

竜「はぁ…はぁ…はぁ……穂乃果?」

竜司は無事意識を取り戻した。

穂「竜ちゃん……竜ちゃん!!」

穂乃果は嬉しさのあまり、竜司に抱きつく。

竜「ぐぅ!?」

こ「竜君!!」

海「竜司!」

ことりと海未も、竜司が戻ってきた嬉しさ故に、竜司に抱きつく。

竜「ちょっ!? お前ら!?」

慌てふためく竜司。

それを残り6人はホッとしたように見る。

「なんとか戻ったか……」

スタークはそう言うと、ローグに近づく。

「戻るぞ。ギガス達が奴等に奪われ、インジェン社が同じく奴等に潰された今、俺たちにもやる事はたくさん出来た」

「その1つが天青をエレメントトリガーに慣れさせることか?」

「そうだ」

「全く………損な役回りだ……」

そう言い合うと、スタークとローグは黒煙を巻いて消える。

一方、竜司は穂乃果に謝る。

竜「穂乃果……済まなかった……。多分俺は……お前を殺そうとしていた……」

穂「大丈夫だよ!もう謝らないで?竜ちゃんがこうやって無事に戻って来てくれただけでも、穂乃果はすごく嬉しいから!」

海「そうですよ」

こ「竜君おかえり♪」

絵「調子はどう?」

真「全く……面倒な事してくれるわよね♪」

海未達もあんな恐怖を味わったというのに、竜司を許し、迎え入れた。

そんな彼女達の懐の深さに感謝しつつ、竜司は周りを見渡す。

その瞬間……竜司は思考が停止した。

竜司の目に映っているのは、焦土と化していた街。

煙は未だに上がり、大きなクレーターが出来ている。

竜「俺が………やったのか……?」

呆然と呟く竜司。

こ「あ……竜君違うの!あれは……」

ことりがそう言うも、竜司はフラフラと立ち上がり、屋上を出ていく。

穂「竜ちゃん!?」

凛「何処に行くにゃ!?」

穂乃果と凛がそう叫ぶも、竜司は何も答えなかった。

そしてそのまま……彼は行方不明になった。





恐らくここからは大分原作をはしょることになるかもしれません。


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Game#49


ス「突然襲ってきたインドミナスとナイトローグに対して、竜司はエレメントトリガーを使うも暴走し、穂乃果の首を絞めて殺しかけただけではなく、街をデスファイアで半壊させた為、戦意を喪失してことり達の前から消えてしまった!」

こ「何でお父さんがあらすじ紹介してるの?」

ス「いい声してんだろ?声の仕事は得意なんだ♪」

穂「声の仕事とか言っちゃダメです!!」


学園祭から数日が過ぎた。

竜司が行方不明になってからというもの、μ'sメンバーはどこか心無しといったような感じだった。

部活はやるものの、何処かやる気が出ない。

なんとか絵里や海未がまとめ役になってるものの、やはり竜司が今までやってた機材確認やダンスの指摘がままならない。

そして休憩中。

ふと、花陽が呟く。

花「これから私達……どうすればいいの?」

希「ラブライブは辞退したけど、そもそもうちらの目標は学校の廃校阻止やん?これからもそれ目指してやるだけやん?」

そう、穂乃果達はラブライブを辞退したのだ。

理由は竜司の行方。

それが全員気になり、練習に集中出来ないので、ラブライブを辞退したのだ。

真「でも、肝心の竜司には連絡取れないし、家にもいないし……。こんな状態で今まで通りにできると思う?」

絵「はっきり言うけど……おそらく無理ね」

行方を眩ました竜司、ラブライブの辞退。

それらが重なり、μ'sメンバーは気持ちがごちゃごちゃになって、どうすればいいか分からなくなっていた。

穂「……私のせいなのかな?」

穂乃果はそう小さく呟いた。

竜司が暴走したことを負い目に感じていた。

実際はそんな事は無いというのに。

こ「えっ?」

ことりが穂乃果の呟きを聞き咎めるが、穂乃果は作り笑いで「何でもない」と言った。

穂「今日は帰ろうか……?」

穂乃果のその一言に全員頷き、解散になった。



ーーーーーーー



そして次の日。

穂乃果達が屋上にいると、真姫と凛、花陽が息を切らしながら屋上にやってくる。

穂「ど、ど、どうしたの!?」

凛「た………」

真「た………」

花「タスケテ………」

に「はぁ?」




ーーーーーーーー




校舎内の掲示板。

そこの掲示板には、『来年度入学者受付のお知らせ』と書かれた紙が貼られていた。

「「「「これって!?」」」」

花「中学生の希望校アンケートの結果が出たんだけど……」

真「去年より志願する人がずっと多いらしくて」

花陽と真姫が説明する。

穂「って事は……」

海「学校は……」

希「存続するって事やん!?」

希も困惑している。

真「再来年はわからないけどね」

凛「後輩ができるの?」

凛が興奮気味に言う。

廃校決定で後輩ができないことを残念がっていた凛は「やったー!」と万歳する。

そんな時、穂乃果の視線にことりの姿が入り込む。

メンバーで唯一この場にいなかったことりが、こちらに気付いていない様子で廊下の奥からゆっくりと歩いてくる。

穂「こっとりちゃーん!」

名前を呼んで穂乃果はことりに抱きつく。

こ「え、え?」

状況を飲み込めていないことりに、海未が「これ」と掲示板を指差す。

ことりは目を見開いて掲示板に視線を固定させた。

穂「やった……。やったよ。学校続くんだって。私達、やったんだよ」

目を潤ませながら言う穂乃果に「嘘……」とことりは漏らす。

確かに嘘のようだ。

でも、はじめは実体を持たない知らせは文字に起こされ、こうして自分達の目の前に提示されている。

こ「じゃ、ないんだ………」




ーーーーーーーー




この気持ちをどう整理すれば良いんだろう。

夕暮れ時の道を歩きながら、ことりは問いを続ける。

学校が存続するのは嬉しい。

そのためにμ'sは始まったわけだし、無事に結成目的を果たした。

もうやり残したことはないはず。

なのに、胸の奥に詰まったモヤモヤは消える気配がない。

原因は分かっている。

分かっているのに、打ち明ける勇気が出ない。

しばらく歩いて、待ち合わせの場所に立つ海未が重苦しい顔でことりを見つめてくる。

海未も弓道部の練習で学校にいたのだが、学校では話せない。

穂乃果がいるから。

海「遅らせれば遅らせるほど、辛いだけですよ」

公園のベンチに腰掛けると、海未はそう言った。

ことりは「うん……」と力なく返す。

分かり切っていることだ。

現に遅らせている今、海未の言う通りとても辛い。

海「もう決めたのでしょう?」

こ「うん。でも、決める前に竜君や穂乃果ちゃんに相談できてたら、何て言ってくれたのかなって、それを思うと、上手く言えなくて………」

ことりは俯く。

海未に打ち明けたとき、彼女はことりの意思を尊重してくれた。

きっと穂乃果も同じだと思う。

怖気づくことりの背中を押してくれるはずだ。

でも、今はその確証が持てない。

こ「竜君だったら、何て言ってくれたのかな………?」

そうは言うものの、もうそれは叶わぬ願い。

海「分かりません……」

海未も唇を固く結んで言う。

竜司の存在は、限り無く彼女達に希望を持たせ、無くなれば限り無く闇を落としていた。




ーーーーーーーー




ニ「では取り敢えず、にっこにっこにー!」

簡単な飾り付けをした部室に、いつもの音頭を取ったニコの声が響き渡る。

ニ「皆グラスは持ったかなー?学校存続が決まったということで、部長のニコニーから一言、挨拶させていただきたいと思いまーす」

「「「おー!」」」

床に敷いたビニールシートに腰掛ける凛、花陽、穂乃果が拍手する。

呆れた視線を向けた真姫も、控え目ながら拍手した。

パイプ椅子に座る希と絵里は互いに笑みを交わし、窓際のベンチに座ることりと海未は床に視線を落としている。

ニ「思えばこのμ'sが結成され、私が部長に選ばれたときから、どのくらいの月日が流れたのであろうか。たった一人のアイドル研究部で耐えに耐え抜き、今こうしてメンバーの前で想いをかた「かんぱーい!」…ちょっと待ちなさーい!」

ニコの音頭を最後まで待たず、メンバー達はジュースが注がれた紙コップを掲げる。

文句を言いながらニコも紙コップを掲げた。

テーブルの上に並べられた料理はその量を瞬く間に減らしていく。

主に食べているのは凛と穂乃果で、花陽も炊きたての白米を頬張っている。

呆れながらも残り僅かのサンドイッチをニコが手に取る。

希「ほっとした様子やね、エリちも」

希のその言葉で、絵里は自分が安堵のため息をついたことに気付く。

μ'sに加入してから少しは気持ちが楽になったものの、生徒会長としての役目を忘れたわけではない。

学校を存続させたいという願いが叶った。

その時が来たら両手を挙げて喜ぶものと思っていたが、現実はとても淡泊だ。

でも、やはり嬉しいことに偽りはない。

現に亜里沙も、音ノ木坂学院を卒業した祖母も喜んでくれた。

絵「まあね。肩の荷が下りたっていうか………」

希「μ's、やって良かったでしょ?」

絵「どうかしらね。正直私が入らなくても、同じ結果だった気もするけど………」

希「そんなことないよ」

希がはっきりと言う。

希「μ'sは9人。それ以上でも以下でも駄目やって、カードも言うてるよ」

絵「………そうかな」

希の言葉で、絵里は救われた気がした。

生徒会長なのに、自分のやりたいことをやって良いのか。

それが気掛かりだった。

だけどあの天才少年は、その悩みを容易く壊してくれた。

それからだろう。

絵里が竜司に惹かれ始めていたのは。

でももう竜司はいない。

絵(ここに竜司もいたら……)

絵里は叶わぬ願いを思う。

それが分かった希が言う。

希「竜司君の事考えてたやろ?」

絵「えっ?」

何故分かった?という顔をする絵里。

希「分かるんよ。ウチも竜司君の事考えてたから。ここに彼がいたらもっと楽しくなるのにって……」

そう言った希は、悲しいものを思い出すような、遠い目をする。

そんな時、海未が立ち上がる。

険しい彼女の表情から、只事ではないと絵里は悟る。

海「ごめんなさい。皆にちょっと話があるんです」

食事をしていたメンバー達の手と口が止まり、皆の視線が海未に集中する。

希「聞いてる?」

絵「ううん」

確認しあう希と絵里を他所に、海未は言う。

海「実は、突然ですがことりが留学することになりました。2週間後に日本を発ちます」

淡々と海未は告げた。

ことりは俯いた顔を上げない。

メンバー達の視線が海未からことりへと移る。

真「何?」

花「え、嘘………」

ニ「ちょ……どういうこと?」

海未の言葉を咀嚼したメンバー達から困惑の声が挙がってくる。

俯いたまま、ことりは言う。

こ「前から服飾の勉強したいって思ってて。そしたら、お母さんの知り合いの学校の人が来てみないかって………」

そんな話を絵里は聞いていない。

しかも2週間後に日本を発つなんてかなり急だ。

留学の話は随分と前から持ち上がっていたはず。

こ「ごめんね。もっと早く話そうって思っていたんだけど………」

続きを海未が引き継ぐ。

海「学園祭のライブでまとまっている時に言うのは良くないと、ことりは気を遣っていたんです」

希「それで最近………」

留学といっても期間は様々だ。

数週間か数ヶ月の間かもしれない。

でも、打ち明けるのを躊躇するとなると。

絵「行ったきり、戻ってこないのね」

絵里が言うと、ことりは首肯する。

こ「高校を卒業するまでは、多分………」

もう音ノ木坂学院には戻ってこない。

もうμ'sとして活動していくことはできない。

ここで皆とはお別れ。

即ちそういうことなのだ。

穂「どうして言ってくれなかったの?」

部室に漂う沈黙を破ったのは穂乃果だ。

彼女の険のこもった声を聞くのは初めてで、絵里は制止するのを躊躇してしまう。

穂乃果は立ち上がり、ことりへと歩いていく。

海「だから、学園祭があったから………」

穂「海未ちゃんは知ってたんだ」

海「それは……」

海未は言葉を詰まらせる。

穂乃果は身を屈めて、ことりの手に自分の両手を被せる。

まるで逃がすまいと捕まえているように見える。

穂「どうして言ってくれなかったの?ライブがあったからっていうのは分かるよ。でも、私と海未ちゃんとことりちゃんと……竜ちゃんはずっと――」

絵「穂乃果」

絵里は止めようと試みる。

声色から次第に興奮しているのが分かった。

続けて希も。

希「ことりちゃんの気持ちも分かってあげな…「分からないよ!」……」

穂乃果は叫んだ。

穂「だっていなくなっちゃうんだよ!ずっと一緒だったのに、離れ離れになっちゃうんだよ!なのに……!」

誰も穂乃果を止めようとしない。

止められる状態じゃない。

ことりは弱々しく言う。

こ「何度も言おうとしたよ。でも、穂乃果ちゃんライブやるのに夢中で……ラブライブに夢中で………。だからライブが終わったらすぐ言おうと思ってた。竜君にも……。相談に乗ってもらおうと思ってた。でも、竜君がいなくなってそれどころじゃなくなって………」

ことりの目から涙が零れた。

端を切ったように流れは止まらない。

こ「聞いてほしかったよ。穂乃果ちゃんには1番に相談したかった。だって穂乃果ちゃんと竜君は初めてできた友達だよ!? 竜君とは少し離れてた時もあったけど、ずっと側にいた友達だよ!? そんなの………そんなの当たり前だよ!」

堪えかねたのか、ことりは穂乃果の手を振り払った。

走って部室を出ていくことりを、目を赤くした穂乃果は追おうとするも立ち止まる。

苦虫を噛み潰したように海未は告げる。

多分、こうなることを予想していたのだと思う。

海「ずっと、行くかどうか迷っていたみたいです。いえ、むしろ行きたがってなかったようにも見えました。ずっと穂乃果と竜司を気にしてて……。穂乃果に相談したら、竜司に相談したら何て言うかってそればかり。………黙っているつもりはなかったんです。本当にライブが終わったらすぐ相談するつもりでいたんです。分かってあげてください」

海未の言葉が耳に入っていないのか、穂乃果は何も言わない。

黙って目を見開いたまま、ことりが出ていった部室の入口を見ている。

かける言葉を絵里は見つけることができなかった。

代わりに脳裏に浮かんだのは、あの天才少年だった。

竜司なら何て言うだろう。

穂乃果に何て言えば良いんだろう。

絵里はどこにいるか分からない竜司に尋ねる。

絵(ねぇ竜司、μ'sはこれからどうすればいいの?)

当然、答えは返ってこなかった。




ーーーーーーー




μ'sがそんなことになってる中、件の竜司は人通りの少ない路地裏で座り込んでいた。

ずっとこの数日、彼はこんな風だった。

一応、家には帰ってるものの、夜の遅い時間。

その間は穂乃果達と会わないように、家を出て外をふらついていた。

学校にも行ってない。

自分の犯した過ちから逃げるように、スマホも切っていた。

竜司は空を見上げて思う。

自分がここに帰ってこなければ、穂乃果達に会わなければ、こんな事にはならなかったのではと。

でもそんなのは後の祭り。

気付けばここまで来ていて、いつの間にかμ'sはラブライブを辞退していた。

竜「俺はどうすれば……?」

その自問自答に答える者はいない。

そう思ってたら、








「決まってるだろ?お前はお前の道を歩み続けるんだ」







声が聞こえた。

渋めの男性の声。

そちらを見ると、ブラッドスタークがいた。

竜「………なんだよ?俺はもう戦わないからな?」

竜司は気だるそうに答える。

「安心しろ。俺も今回は戦う気は無い」

そう言ったスタークに訝しげな目を向ける竜司。

ならなんだと言うのか?

スタークは言う。

「μ'sがラブライブを辞退したのは知ってるな?」

竜「ああ……」

「ことりの留学の件は知ってたか?2週間後だ」

竜「そうか……また急だな」

「?……気にならないのか?何故留学するのか」

竜「別に………知っても俺に止める権利は無いし……」

「……っ」

竜司のどうでも良さげな、生返事にスタークは苛つく。

「エレメントトリガーの事を悔いてるのか?確かにあれは今のお前では現状暴走はするが、使い続けていけば必ず克服できる。こうやって立ち止まる方が無駄な事なんだぞ?」

竜「……」

黙りこくる竜司。

「何を迷う必要がある!? このままで良いとお前は思ってるのか!? ことりと穂乃果ちゃん達がケンカ別れしたまま、永遠に離れるんだぞ!? お前はそれでいいのか!? 竜司!!」

スタークは憤りの感情を込めて竜司を叱咤するが、竜司は何の反応も示さない。

ここで遂に、我慢の限界が来たスタークが竜司の胸ぐらを掴み、顔面を思いっきり殴った!

ドシャ!!

竜司は路地に倒れる。

竜司はブラッドスタークを思いっきり睨むも、何も言わなかった。

そんな竜司を見下ろしてスタークは言う。

「いい加減にしろ!!

お前は誰かを守る為に戦うんじゃなかったのか!?

自分の信じる正義の為に戦うんじゃなかったのか!?

それとも全部嘘だったのか!?」

自分の気持ちを言葉にして、思いっきり叫ぶスターク。

それを聞いた竜司は顔を悔しそうに歪めた。

「それにこうも思わないのか?お前が今ここで戦いを放棄するのも、エレメントトリガーを使う事を放棄するのも、お前の勝手だ。だがそうなれば誰が代わりに俺たちの相手をすると思う?」

そこで区切ってスタークは衝撃的な事を言う。












「高坂穂乃果だ」











竜「っ!?」








ビクッと反応した竜司を見て、スタークは続ける。

「あいつはお前と同じ音ノ木坂で唯一恐竜を使える者だ。しかもお前がエレメントトリガーを使って暴走したのを、あいつは負い目に感じてる。お前がこのまま戦うしか無いんだよ!!」

それに聞いて、竜司は唇を固く結ぶ。

「よく考えろ……ちゃんとな?」

そう言ってスタークは消えた。

残された竜司はしばらく俯せのままだったが、やがて決心したような顔をすると、ゆっくり立ち上がる。

そして静かに、意思の籠った言葉を吐く。









竜「さぁ………実験を始めようか?」









自意識過剰ヒーローは復活した。










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Game#50


結構オリジナルで短めになります。


ことりの留学が皆に伝わってから数日。

ことりは留学の準備で忙しいのか、学校に来ていない。

穂乃果と海未は、あの日からお互いを避けているような感じで話していない。

そうして過ぎていく時間の中、絵里は朝のホームルームが終わった後、メンバーを屋上に呼んだ。

穂「ライブ?」

絵「そう、みんなで話したの。ことりがいなくなる前に、全員でライブをやろうって」

これは海未を中心に話した事だ。

希が言う。

希「ことりちゃんにも言うつもりや♪」

凛「思いっきり賑やかなのにして、門出を祝うにゃ!!」

ニ「はしゃぎすぎないの!」

凛の頭にチョップするニコ。

凛「ニコちゃん何するのー!」

ニ「手加減してやったわよー」

凛やニコが騒ぎ、それをみんなが微笑みながら見守る中、穂乃果は俯いたまま、ずっと黙っている。

海「まだ落ち込んでいるんですか……?」

その言葉に全員が反応する。

その時、全員が全員嫌な予感がした。

穂「……私がもう少し周りを見ていれば、こんな事にはならなかった」

聞いてはいけない事を聞いてしまった。

嫌な予感が的中しかけている。

花「そ、そんなに自分を責めなくても……!」

穂「自分が何もしなければ、こんな事にはならなかった!!」

花陽が宥めようとして、失敗する。

ニ「アンタねえ……!!」

絵「そうやって、全部自分のせいにするのは傲慢よ」

穂「でも!」

絵「それをここで言って何になるの?何も始まらないし、誰も良い思いをしない」

絵里の言っている事は、きっと正しい。

言うだけ言って、結局はそれで終わり。

何も変わりはしない。

ここの空気が悪くなるだけ。

だけど、分かっていても、抑えられないものもある。

真「ラブライブだって、まだ次があるわ」

ニ「そっ!次こそは出場するんだから!落ち込んでる暇なんてないわよ!」

珍しく真姫も励ますように笑顔で言う。

ニコもそれに便乗し、自身のやる気を出していく。

しかし。









穂「出場してどうするの?」











穂乃果は口に出してはいけない言葉を口にした。











「「「「「「「……え?」」」」」」」

穂「もう学校は存続できたんだから、出たってしょうがないよ」

自嘲するように言う穂乃果。

穂「それに無理だよ。A-RISEみたいになんて、いくら練習したってなれっこない」

全員一瞬呆気に取られたが、逸早くニコが聞き返す。

ニ「アンタ……それ本気で言ってる……?本気だったら許さないわよ……」

誰よりもアイドルが大好きで、誰よりもアイドルを目指していて、誰よりもアイドルの高みに立ちたくて、誰よりもアイドルへの思いが強い少女。

故に、穂乃果の言葉を聞いて黙っていられるはずがない。

ニ「許さないって言ってるでしょッ!!」

真「ダメぇ!!」

ニ「離しなさいよ!!」

穂乃果に掴みかかろうとするニコを、寸前で抑える真姫。

ニ「ニコはね!アンタが本気だと思ったから、本気でアイドルやりたいんだって思ったからμ'sに入ったのよッ!! ここに賭けようって思ったのよ!! それを、こんな事くらいで諦めるの!? こんな事くらいでやる気をなくすのッ!?」

穂乃果は何も答えなかった。

目の前でニコが叫んでいるのにも関わらず、それを視界にも入れようとはしない。

他のメンバーも、それを黙って見ているしかできなかった。

何て言葉をかければいいのか分からない。

そんな風にさえ思う。

絵「じゃあ穂乃果はどうすればいいと思うの?……どうしたいの?………答えて」

絵里の問いに穂乃果は決定的な一言を落とす。
















穂「辞めます。……私、スクールアイドル辞めます」















「「「「「「「「えっ!?」」」」」」」

全員が凍りついた。

ただ一人を除いて。

そう言ったきり、穂乃果は屋上を出る。

穂乃果がドアノブに手を掛けようとした瞬間










パンッッッ!!!!










海未が穂乃果の頬を叩いた。

海「………あなたがそんな人だとは思いませんでした。……………最低です。あなたは最低です!!」

海未の瞳は潤んでいた。

対する穂乃果は叩かれた頬を抑え、呆然としていた。

そして海未は屋上を出ていく。

穂乃果もしばらく俯いていたが、やがてゆっくりと屋上を出ていった。

残されたメンバーはしばらくその後をジッと見ていたが、やがて絵里が最初に切り出した。

絵「ねぇ皆。この後の事なんだけど……」

それは衝撃的な事だった。

ニ「嘘でしょ?……活動を休止するなんて……」

この日を以て、μ'sは完全に活動を休止した。




ーーーーーーー




その日の1日、穂乃果はずっと針のむしろな気分だった。

海未からずっと冷たい目線を向けられていたから。

穂「早く帰ろう……」

そう言って、穂乃果は教室を出る。

階段を降りて玄関に向かう。

その間、ずっと朝の事を考えていた。

何故海未に殴られたのか?

いや、分かってはいる。

幼馴染みの海未だ。

穂乃果が自分の気持ちに嘘をついてる事など、お見通しだろう。

穂乃果自身も分かってはいた。

自分の気持ちに嘘をついてる事など。

でもこうするしかなかった。

竜司も、ことりもいない今、考えて言って、その結果があれだ。

穂「はは……ホント……笑えるな~……」

力なく笑う穂乃果。

そして玄関先に来た時だ。

「ほーのか!」

突然ヒデコに声をかけられた。

その横にはフミコ、ミカ。

そして…………竜司がいた。

穂「竜……ちゃん?」

穂乃果は目を見開いていた。

まるで幽霊に会ったかのような驚き方だった。

実際そうだろう。

今までこの少年は音信不通の行方不明者だったのだから。

対する竜司は「よっ」と気軽に声をかけてきた。

ヒデコが言う。

「丁度ここに来てね?なんか穂乃果と話したいんだってさ♪」

やれやれと言わんばかりの顔をするヒデコ。

穂乃果は声を絞り出して訊く。

穂「何で……?どうしていなくなったの?ずっと心配してたんだよ?私………ずっと自分のせいだって思ってた!竜ちゃんが暴走したのは……私に力が無かったから!だから……!」

そこまで言って、穂乃果は竜司に唇を指で閉ざされる。

竜「ごめんな?穂乃果。でも今は何も言わず、俺についてきてくれないか?」

そう言った竜司に、穂乃果はコクリと頷く。

竜「んじゃ行くか。ヒフミ、穂乃果借りるぞ?」

「あいよ。ってか略すな!」

ヒデコの了解を得て、竜司は穂乃果を連れていく。




ーーーーーーーーー





2人が来たのは、公園だった。

そこのベンチに座って竜司は切り出す。

竜「簡単でいいから、今までの事を教えてくれないか?」

穂「………」

穂乃果はしばらく黙っていたが、やがてゆっくりと話し出した。

ラブライブのエントリーを辞退したこと。

学校が存続すること。

ことりが留学してしまうこと。

そのことにショックを受けた自分が、スクールアイドルを辞めると言い出したこと。

その事で海未にひっぱたかれたこと。

全て話した。

それに対して、竜司は1つ1つ答えていく。

竜「そっか。辞退したのか……」

穂「うん……」

竜「廃校阻止も出来たか。ことりの事は知ってる。辛かったよな?」

穂「うん……ねぇ竜ちゃん」

竜「んー?」

穂「私……どうすれば良かったの?」

穂乃果は涙を流しながら訊く。

穂「穂乃果がことりちゃんの様子に気が付いていれば、こんなことにはならなかったの?こんなに苦しまなくて済んだの?ねぇ、教えてよ!? 竜ちゃん!!」

後半で感情が昂ったのか、声をあらげる穂乃果。

どうしようもない感情で満たされ、悲しみの渦に彼女はいた。

竜司は目を細めると逆に聞き返す。

竜「それを含めてお前に聞きたい。穂乃果は本当はどうしたい?」

穂「えっ……?」

意味が分からなかった穂乃果はポカンとする。

竜「これからの事。お前の本当の気持ち。ことりにどうしてほしいか。それを全て嘘で塗り固めずに聞かせてくれ」

竜司も気づいていた。

穂乃果が自分の気持ちに嘘をついてる事を。

故に優しい笑顔で訊いた。

それを見た穂乃果は何かが決壊しそうな気分に見舞われた。

いや、既に決壊していたのだが、今のが止めになって完全に決壊した。

穂「……ぃ」

少ししてから、涙声の穂乃果の口が小さく動いた。

竜「何?よく聞こえない」

穂「見ていたい……!! ことりちゃんやみんなと一緒に!歌いたい!踊りたい!みんなと一緒の夢を見ていたいよ!!!!」

穂乃果は泣き顔を俯け、両手の平で隠しながら、嘘や偽りのない本心を叫ぶ。

それは、多分他のメンバーの根底にある気持ちと同じ答えだ。

穂「でも!ことりちゃんは、もうすぐ海外へ行っちゃうんだよ?…ぐすっ……穂乃果、遅すぎたんだよ……。……ぐすっ……この気持ちに気付いたことも……ことりちゃんが海外へ行ってしまうって知ったことも……。ぐすっ……」

穂乃果は嗚咽を漏らしながら言う。

そんな穂乃果の頭を撫でて、竜司は言う。

竜「穂乃果、ごめんな?俺は自分の罪から逃げてた。それが結果としてお前達に要らぬ重みを背負わせてしまったな……」

穂「そんな事無い!竜ちゃんは穂乃果達の為に頑張ってくれた!だけど、それに穂乃果が応えられ無かったから……」

最早どっちが悪いの口論になりかけていた。

それに気づいた竜司は早々に話題をことりの方にチェンジする。

竜「まぁこれは後々に。とりあえず穂乃果。お前はことりや皆ともう1度、踊りたいんだな?」

穂「うん……」

竜「なら大丈夫だ。俺がお前とことりと海未を仲直りさせてやる」

穂「えっ……?」

竜司の言葉にキョトンとする穂乃果。

竜「いいか?よく聞け。これはお前にしか出来ない事だ」

そして、竜司は穂乃果がやらなければならないことを全て伝えた。

竜「……これで全部だ」

穂「分かったけど、もし失敗しちゃったらどうするの……?」

竜「失敗は考えるな…。必ず成功させろ」

これは失敗なんて許されない。

失敗したら彼女達の絆が跡形もなく粉々に壊れてしまうのは確実だ。

それでも竜司はそれを提案した。

竜「乗るか、反るかだ……。どうだ?」

穂「……やるよ。何もやらないで後悔するよりやって後悔したい!」

竜「フッ……。それでこそ穂乃果だ」

穂「えへへ♪」

もう既に穂乃果は笑顔を取り戻していた。

そんな時、竜司のスマホに匿名でことりの旅立ちが明後日になったことが来た。

それを見て竜司は穂乃果に言う。

竜「穂乃果。作戦は明後日だ」

穂「分かった!!」





勝利の確率………0.01%。






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Game#51

穂乃果side


二日後、私はお昼休みにファーストライブをやった講堂のステージの真ん中に一人で立っている。

竜ちゃんと別れた後、部屋のクローゼットから練習着を引っ張り出して楽しかった日々を思い出した。

もう迷わない。

私はことりちゃんと一緒に歌いたい…。

スクールアイドル続けていたいんだって、ちゃんと自分の口から伝えたい。

でも、その前にもう1人自分の口からこの気持ちを伝えないとね…。








ガチャッ







1つしかない講堂のドアが開いた。

私が呼び出した人は、コツコツと靴音を鳴らして階段を降りる。

そして私が見える位置で止まった。

穂「ごめんね?海未ちゃん。急に呼び出しちゃって……」

海「……いえ」

まず急に呼び出したことを謝る。

心臓が高鳴り、呼吸が浅くなる。

穂「……ことりちゃんは?」

海「午後5時30分のフライトで日本を発つそうです」

まだ時間はあるなんて悠長なことは言ってられない。

ここからは時間との戦いだ。

ことりちゃんが日本を発つフライトに間に合わなければ、竜ちゃんの考えてくれた作戦は全て水の泡だ。

穂「私……μ'sを抜けてから誰も悲しまない事をやりたいって考えてたの。自分勝手にならずに済んで、でも楽しくて、沢山の人を笑顔にして、頑張ることができて……。でも、そんな方法あるわけがなくて……」

海「穂乃果……?」

穂「でも、本当の気持ちに気付いて、ここに立ってみて思い出したんだよ……。ことりちゃんと海未ちゃんと、もっと歌いたいって、スクールアイドルやっていたいって!!」

海「……」

穂「学校のためとかラブライブの為とかじゃなく、私は好きなの!歌うのが!踊ることが!仲間と一緒にスクールアイドルやることが!! これからもきっと迷惑をかけるかもしれないし、夢中になり過ぎて誰かが悩んでいるのに気づかない時もあると思う!入れ込み過ぎて空回りする時もきっとあると思う!! でも!追いかけていたい!! だから、あの時辞めるなんて言ってごめんなさい!だから、私をもう一度μ'sの仲間に入れてください!」

私は海未ちゃんに頭を下げる。

きっと許してはくれないと思うけど、言いたいことは全て言えた。

竜ちゃんから、海未ちゃんからどんな事を言われても、それを受け入れられる準備はしろって言われて、出来ている。

けど、海未ちゃんは……

海「……くすっ。ふふっ……あはははははは!!」

何故かお腹を抱えて笑い出した。

何で!?

穂「う、海未ちゃん!?」

海「あはは……ご、ごめんなさい」

笑った拍子に出てきた涙を拭いながら、私に近づいてきた。

海「でもね、はっきり言いますが……穂乃果にはずっと前から迷惑をかけるかけられっぱなしですよ?」

穂「えっ?」

久々に笑顔になった海未ちゃんの言葉を頼りに記憶を遡っていくが、心当たりがない。

海「ことりとよく話していました。穂乃果と一緒にいると、いっつも大変な事になる……と。今はいない竜司もきっと………」

海未ちゃんの表情はとても嬉しそうだ。

だけど竜ちゃんの所で少し顔を暗くした。

大丈夫だよ海未ちゃん。

もうすぐ竜ちゃんは帰ってくるから。

海「どんなに止めても夢中になったら何にも聞こえてなくて。大体スクールアイドルだってそうです。私は本気で嫌だったんですよ?」

穂「海未ちゃん……」

海「どうにかして辞めようと思っていました。穂乃果の事、恨んだりもしましたよ?」

穂「ご、ごめん……」

海「ですが、穂乃果は連れていってくれるんです」

穂「ど……どこに?」

海「私やことりでは勇気が無くて、竜司はめんどくさがって行けないような、すごいところに!」

海未ちゃんは私の隣に立ち、まっすぐ私の事を見つめる。

海「私が穂乃果を叩いたのは、穂乃果がことりの気持ちに気付かなかったからじゃなく、穂乃果が自分の気持ちに嘘をついているのが分かったからなんです。穂乃果に振り回されるのはもう慣れっこなんです♪」

そうだったんだ……。

海「だからその代わりに連れていってください!私たちの知らない世界に!!」

穂「海未ちゃん……」

思わず涙がこぼれそうになり、ゴシゴシと目を拭う。

海「…だって~可能性感じたんだー…そうだ~ススメー…」

突然海未ちゃんが歌いだす。

私もその後を歌う。

穂「後悔したくない、目の前に~…」

こ「僕らの、道がある~」

ことりちゃんも歌ったような気がした。

(BGM:Be The One)

海「さぁ!ことりを迎えに行ってあげてください!!」

穂「……!うんっ!!」

校門を飛び出すと、そこには竜ちゃんがいた。

竜「よっ」

穂「竜ちゃん!? 何でここに?」

竜「何でって、お前の送り迎えだよ」

そう言って竜ちゃんはスマホを操作して投げる。

するとスマホがバイクになった!!

穂「すごっ!? これどうやったの!?」

私が驚いてると、竜ちゃんはバイクに跨がりながら言う。

竜「そんな事はいいだろ?ほら、乗れよ」

穂「でも………」

竜「っ……乗れよ!」

竜ちゃんは後部座席をパンパン叩きながら言ってきた。

穂「う、うん!!」

そして私がヘルメットを被って座ったのを確認したら、竜ちゃんもヘルメットを被ってバイクを発進させた。

すごい……速い。

2ケツだけど、仕方ないよね?

そう思ってると、竜ちゃんが言ってくる。

竜「そういや穂乃果。お前スカートのチャック開いてるぞ?」

穂「へっ?」

そう言われてスカートの横のチャックを見ると、









確かに開いていた。








イェーイ!!

穂「っ!? 何で言ってくれなかったの!?////」

私が恥ずかしさで顔を赤くしながら言うと、

竜「どのタイミングで言えって言うんだよ?自分で気づけよバカ」

そう言ってきた。

穂「もう!竜ちゃんのエッチ!変態!セクハラ!」

竜「ふざけんな!下ろすぞコラ!!」

私達はそう言い合いながら空港に向かった。

穂「そう言えばいつバイクの免許取ったの?竜ちゃん」

竜「アメリカにいた時に」


穂乃果sideoff






◎side


先程から何回も繰り返して見ていた腕時計をまた見る。

自分が乗る飛行機の便までもうすぐだった。

そろそろ移動しなくてはならない。

何か諦めたかのように溜め息を吐いて席を立つ。

その時だった。

穂「ことりちゃん!!」

自然と足が止まった。

小さい頃からずっと一緒にいた幼馴染の声。

本来なら、今ここにいるはずがないのに、聞き間違いのしようがなかった。

ゆっくりと、振り向く。

視覚に認識する。

自分の幼馴染、高坂穂乃果。

と……。

こ「…………え?」

その隣にいるのは、銀髪に左目に眼帯をした1人の少年だった。

竜「よっ」

こ「ぇ……その……な、何で……?」

頭が混乱した。

海未に聞いたが、今のμ'sは危険な状態にあるはずだ。

竜司が行方不明になってからというもの、穂乃果も辞めて、活動休止になるほどだったのに、絶対に来ないと思っていた2人がいる。

その事にことりの脳内が危うくショートしそうになる。

竜「まぁ俺の事は後でな?先ずは穂乃果から話があるぞ」

そう言って竜司は穂乃果を前に押しやる。

そして。

穂「ことりちゃん、ごめん!」

こ「穂乃果、ちゃん……?」

穂「私、スクールアイドルやりたいの!ことりちゃんと一緒にやりたいの!! いつか、別の夢に向かう時が来るとしても……!!」

こ「……!!」

穂「行かないで、ことりちゃん!!」

ヒドイ我が儘だった。

でも悪い気はしなかった。

なぜならことりもそれを望んでいたから。

こ「……私の方こそ、ごめん。私、自分の気持ち……分かってたのに……!穂乃果ちゃんや海未ちゃんや竜くんやみんなと、離れたくなかったのに……自分の気持ちにずっと嘘ついてた……」

声が震える。

穂乃果の目にもうっすらと涙が浮かんでいたが、ことりの目にも涙は溢れてきた。

こ「一緒にいたい……離れたくなんかない……またみんなと隣同士で笑い合いたい……あの場所に……μ'sに帰りたいよ……!!」

それだけ聞けば、もはや十分だった。

竜「へへ……っ」

竜司は顔をクシャっと歪めた。

そこに雛が近づいてくる。

「竜司君」

竜「雛さん……」

「ありがとう。ことりの事」

竜「いえ、礼を言われるような事じゃありません。俺はことりから夢を奪った……」

「それでも、あの子も、高坂さんも、あなたに救われた」

竜「だったらいいんですけどね……」

そう言って、竜司は目を細めて抱き合うことりと穂乃果を見ていた。

だがそんな感動的な光景を無意味にする事が起きた。

「きゃあああああああああ!!」

「助けたくれーーー!!」

「ギュアアアアアアアアアアア!!」

突然響いた叫び声の後に、こちらに逃げてくる人々。

その後ろからは、インドミナス・レックスが走って来ていた。

目の前にいる人々を踏み潰し、長い指で掴んで投げ、噛み殺し、凄惨な血で染める。

穂「あれは……!」

こ「恐竜?」

穂乃果とことりは怯えを見せる。

「竜司君あれは!?」

雛の問いに竜司は答える。

竜「前に教えましたよね?ハイブリット恐竜の事。あれがそのハイブリット恐竜、インドミナス・レックスです」

「あれが!?」

雛は前に教えられた、いくつかの肉食恐竜や原生生物の遺伝子を掛け合わせた怪物のような恐竜の事を思い出す。

近くでそれを聞いていた穂乃果とことりも、震え上がる。

こ「あれが……竜くんの嫌っていたハイブリット恐竜……」

そしてそのインドミナスの近くには、やはり氷室玄斗がいた。

「天青……」

竜「またあんたか……ここであんたには終わってもらう」

「来い……最早俺は昔の俺ではない」

そう言って、氷室はワニの上顎を模したクリアパープルのパーツのスイッチを押して、起動させる。

《デンジャー》

「ドゥドゥドゥン……ドゥドゥドゥン……♪」という危険で不気味さを醸し出す一定のリズムが鳴る。

氷室はそのパーツをナイトディノホルダーの先端辺りに装着する。

《クロコダイル!!》

瞬間、氷室は紫の液体が詰まった巨大なビーカーに囲まれ、インドミナスは紫の光に包まれる。

更に氷室が入ってるビーカーを、ワニの顎を模した装置が挟み込む。

《割れる!喰われる!砕け散る!》

それらが消えると、氷室は紫の尖った鎧に、白いヒビが入った黒いスーツを着用。

更に黒のマスクに、紫のワニの顎が装着されて白いヒビが入り、そこから水色の複眼が完成される。

《クロコダイルジャークアーマーインローグ!! オォォラァァァ!!》

ついでに後頭部には割れ物注意のシールが貼ってある。

《キャアアァァァァァァ!!》

そしてインドミナス・レックスは、頭から尻尾にかけて紫の突起状の鎧に身を包み、背中には前方に伸びるスパイクを着けていた。

そのアーマーは竜司にとって見覚えのあるものだったが、それより氷室の方が気になった。

竜「それは?」

「俺の新しい力……これより俺はローグと名乗る」

氷室はそう言った。

竜「成る程……ならこちらも新しい力を使うか。穂乃果!!」

そう言った竜司は、穂乃果に黒のグリップが付いたオレンジの拳骨型のアイテムを渡す。

穂「うわっ!? これは?」

竜「お前の武器だ。もし俺が暴走したら、それで俺を殺せ」

暗にエレメントトリガーを使うことを言う竜司。

こ「何言ってるの竜くん!? 死ぬなんてダメだよ!! そんなの「竜ちゃん……」……穂乃果ちゃん?」

それにことりが反対するも、穂乃果がそれを遮って、竜司の横に並ぶ。

そして言う。

穂「私がこれを使うのは、竜ちゃんを殺すんじゃなく、止める為に使うから。だって私の相棒は……パートナーは、天青竜司ただ一人だけだから!」

そう言って、穂乃果はディノガジェットを左手首に着ける。

竜「勝手にしろ…」

竜司も笑ってそう言うと、ディノホルダーとエレメントトリガーを出す。

穂「ディノスラッシュ!! 轟け!ペンタケラトプス!」

穂乃果はカードをスラッシュして、ペンタケラトプスを呼び出す。

「ギュガアアアアアアアア!!」

穂「今の私は……負ける気がしないよ!!」

竜「さぁ……実験を始めようか?」

《エレメント・オン》

竜司はエレメントトリガーを起動、ディノホルダーに着けて、ある恐竜カードをスラッシュした。

《スーパーテリジノサウルス》

そして出てきたのは、うっすらとした虹色の体色をして、アリクイのような長い爪と首を持つ恐竜だった。

シークレット恐竜・テリジノサウルス。

そのスーパー恐竜版である。

「グオオオオオオオ……」

《アンコントロールスイッチ!エレメントハザード!ヤベーイ!》

竜司も黒のオーラに包まれる。

そして今………両者は激突する。





新たに高評価を入れてくれたラブダイバーさん、ありがとうございます!


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Game#52

穂乃果がパワーアップします。


「グオオオオオオオ…」

「ギュガアアアアアア!!」

「ギュアアアアアアアアアアアアア!!」

人が閑散とした空港内。

ローグ操るジャークアーマーを着けたインドミナス・レックスと、竜司操るスーパーテリジノサウルスと、穂乃果操るペンタケラトプスは2対1でぶつかっていた。

テリジノが爪を振るうも、インドミナスのジャークアーマーには傷ひとつつかない。

何度振るっても、意味を成さず、逆に尻尾を首に叩きつけられ、吹っ飛ぶ。

ペンタケラトプスの角による刺突もまた同様。

アーマーはペンタケラトプスの角を通さず、インドミナスは固まっているペンタケラトプスの首に噛みつき、投げ飛ばす。

「見せてやる……」

そう言ってローグはナイトディノホルダーに着けたパーツ『ローグテクター』のスイッチをもう1度押す。

《ジャークスクラップ(邪悪粉砕)!!》

瞬間、インドミナスの背中にある前方に伸びる4本のスパイクが光り、その尖端からインドミナスの顎に向かって紫の光が送られる。

そしてインドミナスが顎を開くと、巨大な紫のエネルギーで出来た顎ができる。

竜「なんだよそれ……」

穂「嘘……」

こ「大きすぎる……」

呆気に取られる竜司達。

そんな彼らをほっとき、インドミナスはその大きすぎる顎を使って、ペンタケラトプスに噛みつく。

瞬間、大爆発が起きた。


ドガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!


竜「ぐっ!?」

「「「きゃああああああああああ!!!?」」」

爆風に晒される四人。

何とか耐え抜き、彼女達がそこを見ると、巨大なクレーターが出来ていて、そこにはカードになっているペンタケラトプスがいた。

穂「ペンタ!? このぉ!!」

こ「穂乃果ちゃん!?」

竜「穂乃果待て!!」

竜司が止めるのも虚しく、穂乃果はクローズマグマナックルを右手に持って、ローグに突進。

その胸を殴った。

穂「やぁぁぁぁ!!」

ガァン!!

クローズマグマナックルは的確にローグを捉えた。

が、何の反応も示さない。

穂「………ん?」

「………?」

2人して殴り殴られた箇所を見て、顔を見合わせ、また殴り殴られた箇所を見る。

穂「ん~~?」

そう唸って穂乃果はローグを見る。

どうやら不発のようだ。

それに気づいたローグは穂乃果を蹴り飛ばす。

「ふん!!」

穂「あぐっ!?」

飛ばされ、ゴロゴロ転がって竜司の元に戻ってくる穂乃果。

穂「いった~……」

こ「穂乃果ちゃん大丈夫!?」

ことりが穂乃果を抱き起こす。

竜「ちっ!」

竜司はディノホルダーの画面にある、パーのアイコンをタッチする。

《デンジャラスクロウ(脅威爪刺)》

するとスーパーテリジノサウルスはインドミナスを爪を使って投げ飛ばし、背中から落ちてきたインドミナスに対し、片方の爪から虹色の爪を伸ばして串刺しにした。

そして放り捨てる。

しかしインドミナスは普通に立った。

元々インドミナスも謎属性で効果が薄い上に、ジャークアーマーで防御力もアップしてる。

見込みは薄いだろう。

竜司は続いてチョキのアイコンをタッチする。

《ジャイロスラッシャー(超回転爪撃)》

するとスーパーテリジノサウルスは独楽のように高速回転して、インドミナスをすれ違い様に切り刻み、また戻ってくる際に切り刻む。

しかしやはりインドミナスは平気な様子。

竜司は最後にグーのアイコンをタッチする。

《ネイルブレード(切裂巨爪)》

《ベストマッチ!》

竜「勝利の法則は決まった!」

スーパーテリジノサウルスは両手の爪から虹色のエネルギー爪を伸ばして、右手、左手の順に振るってインドミナスを切り裂く。

インドミナスは倒れるも、やはり立った。

しかし多少ふらついてるので、気持ち的に効果はあった。

竜「これでもダメか……」

竜司は悔しそうにする。

「お前もこれで終わりだ……」

再びローグはジャークスクラップを発動した。

《ジャークスクラップ(邪悪粉砕)!!》

再び4本のスパイクから顎にエネルギーが集まり、インドミナスはスーパーテリジノサウルスに噛みつく。

ガブリ!!

ドガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!

大爆発が起きると、なんとスーパーテリジノサウルスはカードに戻った!

竜「なっ!? 嘘だろ!?」

これは本来あり得ない事だが、それだけ大きな威力があるという事である。

竜「クソッ!! こうなったら……ぐっ!?」

ここで竜司に紫の電流が走る。

暴走の時間が近いのである。

竜「ぐっ……あっ……」

こ「竜くん!!」

「竜司君!?」

ことりと雛が竜司に呼びかけるも、竜司は呻くだけで返事が出来ない。

竜「ぐっ…あっ……まだだ……まだやれる……!!」

そんな竜司を見て、穂乃果は思う。

穂(また……また同じ事を繰り返すの?そんなの……そんなの嫌だ!!)

穂乃果は立ち上がると、竜司に向かって走る。

穂「うおおおおおおおおおおおおお!!」

こ「穂乃果ちゃん!? ダメェェェェ!!」

ことりの制止を振り切って、穂乃果は竜司に近づくと、ディノホルダーからエレメントトリガーを抜いた。

それにより黒いオーラが抜けて、竜司は元に戻る。

竜「はぁ…はぁ…はぁ…穂乃果?」

膝をついて見上げる竜司を、穂乃果は優しい微笑みで見下ろす。

穂「竜ちゃんは少し休んでて?私がケリを着けるよ……」

そう言った穂乃果は顔を引き締め、ペンタケラトプスのカードを拾う。

「お前が俺に勝てる訳無いだろう?」

氷室がそう言うが、穂乃果は無視して、ペンタケラトプスのカードをクローズマグマナックルの手の甲部分にある細い溝に装填する。

それは本能的なもので、直感的なものだった。

だが、それは正解だった。

《ダイノバァーーン!!》

その音声の後、カードが勝手に飛び出し、穂乃果はそれを手に取る。

そこに描かれていた恐竜はペンタケラトプスではなかった。

代わりに、紫と白で構成された小型の肉食恐竜が描かれていた。

属性は謎。

その恐竜の名は、エオラプトル。

それを見た竜司は穂乃果に言う。

竜「穂乃果!それを召喚しろ!」

言われた通り、穂乃果はスラッシュする。

《エオラプトル》

スラッシュしたカードは虹色に光り、穂乃果はそれを地面に落とす。

するとエオラプトルが穂乃果の足元に顕現する。

「クゥエエエエエエエエ!!」

「ふん……そんな小さい恐竜で……」

ローグは嘲笑うが、次の瞬間には顔を驚きに染める。

なんと穂乃果の後ろに、ナックルに形状が似た壺が現れ、それが傾くと、中に入っていたマグマが穂乃果とエオラプトルを飲み込む。

そのマグマが黒い溶岩となって冷えて固まると、後ろの壺がナックル部分を見せて、後ろから穂乃果を殴り付けて、溶岩を砕く。

そしてそこから出てきたのは、オレンジのミニスカートとオレンジのスポーツブラを身に付けて、額からオレンジの龍の角を生やして、オレンジのオーラを身に纏う穂乃果だった。




【挿絵表示】


その前にいる恐竜は、サウロファガナクスに似たシルエットだが、白と紫で構成された大型肉食恐竜だった。

この恐竜こそが、戦闘に特化したエオラプトルの姿である。

《極熱恐竜ゥ!! クローズマグマ!!》

《アぁァチャチャチャチャチャチャチャッアチャァァァ!!!》

こ「穂乃果ちゃん……可愛い♪」

「えっ?」

確かに多少のセクシーさはあるが、それでもとても可愛いと言える格好じゃない穂乃果を可愛いと断言することりに軽く引く雛。

竜「穂乃果クローズ……」

何となくそう呟いた竜司。

穂「力が漲る……魂が燃える……私のマグマが迸る!!」

そう言って走る穂乃果。

そんな穂乃果にローグはナイトディノホルダーからエネルギー弾を撃つが、穂乃果クローズには効果無しだった。

そして穂乃果クローズはローグに近づくとワンパン。

ドガン!!

「ぐおおおおおおおお!!!?」

それだけでローグは吹っ飛ぶ。

穂「もう誰にも……止められないよ!!」

そう言って、穂乃果クローズはクローズマグマナックルの拳骨部分を掌で叩く。

《ボルケニックラプトル!!》

「ゴガァァアアアアアアアア!!」

信号を受け取ったエオラプトル・ファイヤーモードは、口に炎エネルギーを貯めて発射。

それは大きな奔流となって、インドミナス・レックス・ジャークアーマーに激突。

「ギュアアアアアアアアアアア!!」

ジャークアーマーを溶かし、インドミナスすらカードに戻した。

「バカな!? ジャークアーマー恐竜が負けるなど……」

驚愕しているローグだが、穂乃果に睨まれ、ここは不利だと悟り、黒煙を巻いて逃げた。

こ「………勝ったの?」

竜「ああ…」

ことりは竜司を抱き起こして訊く。

その問いに竜司が即答すると、ことりは嬉しそうに笑った。

一方、穂乃果はインドミナス・レックスのカードを拾う。

それを持って、竜司に近づく。

穂「はい、竜ちゃん…」

竜「穂乃果………よく頑張った」

穂「えへへ♪」

カードを受け取った竜司に誉められ、穂乃果ははにかむ。

と、その時。

穂「ん?……あちっ!! あちゃちゃちゃちゃちゃ!!!?」

突然穂乃果の体が燃え出した。

こ「穂乃果ちゃん!? あつっ!!」

ことりも何とかしようと手を出すが、あまりの熱さに手を引っ込める。

そうこうしてると、やっと炎は治まり、穂乃果は元の姿に戻った。

それと同時に、エオラプトル・ファイヤーモードもカードに戻り、穂乃果の元に戻ってくる。

穂「これって一体?」

竜「さぁ?」

穂「竜ちゃんが作ったのに何で疑問系!?」

色々と文句が沸いた穂乃果だが、雛の言葉で現実に戻された。

「それより……あなた達これからどうするの?」

竜「あっそうだ!2人とも!早くオトノキに戻るぞ!」

穂「どうして?」

竜「いいから行くぞ!」

竜司は2枚の恐竜カードを出して、スラッシュした。

《マジュンガサウルス》

《エウストレプトスポンディルス》

出てきたのは、茶色の体に黒で縁取られた白い模様が走る肉食恐竜・マジュンガサウルスと、紫の体に水色のラインが横に走る肉食恐竜・エウストレプトスポンディルスだった。

竜「乗れ2人とも!」

穂「う、うん!!」

こ「わかった!!」

エウストレプトスポンディルスは穂乃果とことりを背に乗せ、竜司はマジュンガサウルスの背に乗った。

そして二匹の恐竜はオトノキに向かって走っていく。

その様子を雛は感慨深げに見ていた。

「………恐竜って、身近な存在になったわね~」




ーーーーーーー




エウストレプトスポンディルスの背に乗っている穂乃果が竜司に訊く。

穂「竜ちゃん、オトノキに何があるの?」

竜「ヒフミに頼んで復活ライブを講堂でやるように手配して貰ってる!海未達ももう揃ってる筈だ!」

こ「竜くんいつの間に……」

穂乃果にことりを引き留める計画を伝えた竜司は、密かにヒフミトリオに伝えていたのだ。

竜「穂乃果、ことり!多分聞く必要も無いと思うが、一応聞いておく。Are you Ready!?」

穂乃果とことりは顔を見合わせ、笑顔で答えた。

「「大丈夫!!」」

彼女達は再スタートを切ろうとしていた。




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Game#53

1期ラストです。

因みにみーたんポジは誰がいいでしょうか?

そしてこの後の話は、真姫に関する話か、第2期にそのまま入るか。

少しでも多くの感想を待ってます。


既に講堂内には人がたくさん集まっていた。

花「うぅ~、緊張する~……!」

凛「それより凛達制服のままだよ~!?」

真「スクールアイドルらしく良いんじゃない?」

その舞台裏では、ニコや花陽、凛の他にも、μ'sメンバーが揃っていた。

ニ「それより穂乃果とことりは間に合うのー?」

海「絶対来ます。必ず。ヒデコ達も言ってたでしょ?竜司が帰ってきたと。そしてこれを企画したのは他でもない竜司です。必ず連れてきます」

ニコが少し焦ったように言うが、それを海未が諭す。

ニ「それはそうなんだけど、私達にここまでさせておいて間に合わなかったらタダじゃおかないんだから」

海「そうですね。竜司に限ってそんな事はないと思いますが、もしそうなれば私もニコに加勢しますよ」

先程と言っている事が矛盾しているようにも聞こえるが、それはただの冗談としか思えないような軽い口調だった。

だから海未はただし、と最後に付け加えて言った。

海「万が一にもそのような事にはなりません。だってあの人は……天才科学者なんですから」

ニ「何だか幼馴染だから分かるような物言いね……」

実際そうなのだが、それ以上海未は何も言わなかった。

そこで希が間に入るような形で口を開く。

希「言ってる間にそろそろ時間やけど……」

絵「……そうね、お客さんを待たせるわけにはいかないわ。海未」

海「……来ます。竜司達は必ず……」

もう待てない。

絵里がそう思った瞬間だった。

舞台裏側にあるドアが勢いよく開かれた。

竜「お届け物でーす」

穂「ま、間に合った……!?」

こ「穂乃果ちゃん!」

絵「ことり!」

海「まったく……本当にギリギリなんですから」

竜「ヒーローは遅れてやってくるって言うだろ?」

手をチョキにして、手の甲部分を見せながら言う竜司。

全員が待ちに待っていた人物達がやってきた。

天青竜司、高坂穂乃果、南ことり。

これで揃うべきピースが全て揃った。

凛「ハラハラしたにゃ~!」

真「もっと余裕をもって来なさいよ竜司」

竜「これでも急いで来たんだぞ?恐竜で」

真「あんた本当に反省してるの?」

世間が恐竜に敏感になってるのに平気で恐竜を町中に走らせる竜司の神経にジト目になる真姫。

希「それじゃ全員揃ったところで、部長、一言」

ニ「ええ!?……なーんてね、ここは考えてあるわ」

いきなりの希の無茶振りを予期していたからか、ニコの顔には余裕の表情があった。

しかし、「その前に」とニコは口に出してから竜司の方へと振り向いた。

ニ「部長が言う前に、まずはμ'sのマネージャーで天才科学者でもある竜司に何か言ってもらおうじゃないの!」

竜「……えっ、俺?」

ニ「当たり前でしょ。穂乃果とことりを連れて来るだけで役割が終わったと思ったら大間違いなんだから。ほら、早く言う」

完全に後は見守り役として脇に移動していた竜司が驚愕の顔を浮かべる。

でもすぐにニコの意図を察した。

後ではなく今言えと。

全員がいるこの場所で、全員が笑顔で歌うために、僅かに残っているわだかまりをここで消滅させろと言わんばかりに。

竜「………みんな悪かった。俺は怖かった。また暴走して、街を破壊して、今度はお前達を殺すことになるんじゃないかって、逃げてた。だけどもう逃げない。文句は後で受け止める。だからもう1度俺をマネージャーにしてほしい」

竜司は頭を下げる。

もう決めた事だ。

ニ「これが竜司の言い分よ。みんな、何か言う事はある?」

ニコがメンバーに問いかける。

竜司のμ'sのマネージャー復帰についてを。

しかし、賛成も反対も、誰も一言すら発さなかった。

頭を下げている竜司にはちょっとした生殺しが続いていたが、やがてニコが言う。

ニ「これが答えよ、竜司。顔を上げなさい」

沈黙。

それはつまり反対という事ではないのか?と思いながらもゆっくりと竜司は顔を上げていく。

視界に広がったのは、笑顔で竜司を見つめる少女達だった。

ニ「何も言葉だけが全てじゃない。ちゃんと顔を見れば分かるでしょ?誰も反対なんていう顔してないもの。……そもそも、最初から誰もアンタが辞めてるだなんて思ってないんだから」

また、胸の辺りが温かくなるのを感じた。

戻って良いんだと、言われている気がした。

竜「へへ……」

竜司は嬉しさで顔をクシャッと歪めた。

その時、ステージのライトが急に薄暗くなった。

ライブ開演直前の合図だった。

そして、誰も何も言う事なく、自然に9人が片方の手を差し出し輪を作る。

バラバラだった9つのピースが、1つの形として原型を取り戻す。

ニ「今日みんなを、1番の笑顔にするわよ!!」

部長のニコの一言で全員の気が引き締まるのを確認してから、リーダーの穂乃果から順番に言っていく。

穂「1!」

こ「2!」

海「3!」

凛「4!」

花「5!」

真「6!」

ニ「7!」

希「8!」

絵「9!」

穂「さあ、行こう!!」

本当の意味で、9人の女神がステージに再臨する。


(♪:START:DASH)










いつの間にか竜司も客席の方へと移動していた。

竜「……すげえ」

素直に感嘆していた。

以前、初めて幼馴染の3人がここでファーストライブした時の事を思い出す。

その時は客席に客は全然と言っていいほどいなかった。

今思えば、μ'sメンバーとヒデコ達以外誰もいなかったかもしれない。

それが今となっては。






竜「満員じゃねえか……」






席が人、人、人で埋め尽くされていた。

客の1人1人がペンライトを持っていて、その光がまるでμ'sのメンバーを意識しているような色ばかりだった。

音ノ木坂の生徒だけじゃない。

一般開放されている事を知ってやってきた生徒の家族、見学しに来た中学生、その誰もがμ'sを見て心奪われていた。

誰もいなかった前とは違う。

満員にまでなって、仕方なく立ち見で見ている者でさえライブに熱中している。

確実にμ'sは成長していて、だから応援してくれる人達も自然と増えて、今となっては見違えるほどに進化を見せた。

中央には山田先生のカメラがセットされていて、生中継でμ'sのライブがネット配信されている。

その反応を見てみると評価は上々だった。

START:DASH。

この曲は、きっとずっとμ'sの象徴として残っていく。

何故だか竜司はそんな気がした。

時間は平等に進む。

故に、自然と楽しかったライブも終わりを迎えた。

盛大な拍手が9人を包む中、穂乃果を中心に並んでいく。

穂「皆さん、今日は本当にありがとうございました!!」

穂乃果が言うと、たちまち拍手と声援が大きくなる。

それが若干静かになるまで待って、完全な沈黙となると同時に穂乃果は語り出す。

穂「私達のファーストライブは、この講堂でした」

ほとんど誰もいなかったあの時のライブ。

穂「その時、私は思ったんです。いつか、ここを満員にしてみせるって!一生懸命頑張って、今、私達がここにいる。この思いを、いつかみんなに届けるって!その夢が今日、叶いました!! だから、私達はまた駆け出します!新しい夢に向かって!!」

穂乃果の夢は叶えられ、また違う新しい夢へと進む。

そのための断言。

見事に満員にしてみせたμ'sならば、新しい夢も叶えてくれるのではないか。

そう思った人々が、段々と歓声を上げていく。

そして、最後に穂乃果は言った。

穂「ここに来るまで私達はずっと色んな人に支えられてきました。でも、私達を1番導いてくれたのは、一人の天才がいてくれたからです!ねっ、竜ちゃん!!」






………………………。






生配信されているカメラが、山田博子によって竜司の方へ向けられていた。

竜「……ん?」

主役であるはずのμ'sに注がれていた視線が、一気に悪魔の科学者と呼ばれた少年へと注がれる。

竜「……ちょっと!? お前バカじゃないの!? 俺結構嫌われてんだよ!? 生配信なんだよこれ!?」

穂「それでも言いたかったの!! μ'sが少し活動休止になっていた間、色んな事がありましたが、こうしてまたμ'sとして歌えたのも、みんなと踊れたのも、μ'sのマネージャーをしてくれる天青竜司君がいてくれたからなんです!! だから彼を悪魔の科学者なんて呼ばないであげてください!そして恐竜達を………嫌わないであげてください!」

竜「穂乃果……」

穂乃果は生配信を利用して、世間が竜司と恐竜に持つマイナスイメージを払拭したのだ。

竜「……はあ」

思わず溜め息を零す。

してやられたと竜司は思う。

だが、不思議と悪い気持ちではなかった。

だから竜司もこの状況を利用する。

穂乃果達の気持ちを固める為に。

竜「じゃあ俺からも1つ。いいか……?」

穂「分かってる!」

お互いニヤリと笑い、海未やことり達も同時に言う。






『さぁ……実験を始めようか?』






後にこの台詞は、スクールアイドルの世に名言として残るのであった。

最後に、穂乃果を含めμ's全員が再び客へと振り向く。

穂「それじゃ、来てくれた皆さん、配信を見てくれた皆さんも一緒にお願いします!!」

そしてまたもや、今度は講堂の人々一体となって言う。

穂「せーの!!」











「「「「「「「「「μ's!ミュージック、スタート!!」」」」」」」」」







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EX:発生



番外編です。

時間軸は合宿から後の話です。

後、穂乃果クローズマグマの挿絵も貼ってあるので、そちらもどうぞ。


竜司side


何てことのない、夏によくある快晴の放課後。

相も変わらず俺は午前の授業も午後の授業も寝てすごし、自堕落に過ごしてた。

そして今のμ'sの練習も寝転んで見ていた。

練習とはいえストレッチで、俺を含めて7人しかいない。

絵里と希は生徒会で遅れるらしいが、後一人遅れてる真姫からはなにも聞いてない。

竜「なぁ、真姫はどうしたんだ?絵里と希は生徒会があるから少し遅れるって聞いたけど」

真姫はいつもなら凛達と一緒に来るから、遅刻はしないはずなんだが……。

凛「ああ、真姫ちゃんは今日日直だから少し遅れてくるんだったにゃー」

竜「……」

それを早く教えろや。

何今思い出しちゃったてへぺろっ、みたいな顔してやがる。

ニ「っていうか、あんた毎回毎回そうやって寝転ぶの止めなさいよ」

竜「だって眠いし、怠いし、疲れるし、バイト代欲しいし、っていうか欲しいし」

花「最後2つは関係ないような……」

花陽が苦笑しながら言ってくるがスルー。

海「竜司、あなたがそうやって寝転ぶから、穂乃果や凛が休む時寝転ぶんですよ?」

竜「そんなの知るかよ……」

こっちは夏とか冬とか嫌いなんだよ。

なんだよ、なんでそんなに極端な季節があるの?

夏とか冬とか消えちまえ!!

2度と来るな!!

こ「竜くん……たまに子供っぽい所があるから……」

穂「変にテンション上がる時あるよね……」

凛「テンション上っがるぅぅ~~!! うっへっへっ~~!! みたいな?」

穂「凛ちゃん地味に似てるよ」

なんか穂乃果達が言ってるが、暑さでだれてる俺にはあまり聞こえない。

まぁこんな事やってても意味無いし、さっさとやるか。

俺は上半身を上げると、手を叩く。

竜「じゃあストレッチも各々したし、先に踊りの練習するぞ。みんなそれぞれの位置につけー」

「はーい」という返事を合図に音楽を流し始める。

絵里達3人がいなくても、まるで空いているそのポジションに3人がいると思わせるかのような、6人の絶妙なポジショニング、違和感を与えない踊り。

やはりここにきて穂乃果達は格段に成長している。

夏の合宿のおかげもあるかもしれない。

あの厳しい暑さの中で集中して練習したおかげか、以前よりも遥かに踊っている時の集中力が高くなっている。

曲も終盤に差し掛かった時だった。

屋上のドアがガチャンッと開けられる音がした。

真姫だ。

穂乃果がそれに気づき、早く列に入るように視線を促すが、真姫はそれを大きく首を横に振って、すぐ傍の壁へもたれ込み、そのまま座った。

……いや、その座り方されると男の子である俺的に視線が送りにくいんですが……主にスカートで。

因みにパンツは赤でした。

俺は真姫に近づいて訊く。

竜「どうした真姫?なんで着替えてない?」

普段μ'sのメンバーは部室で練習着に着替えてから屋上へ来る事になっている。

更衣室がない分、部室で着替えるしかないからだ。

なのに真姫は着替えてなかった。

これはおかしい。

着替えてないし、浮かない顔で座っている。

もしかして風邪か何かか?

なら早めに帰らせないといけない。

音楽が終わると、穂乃果が駆け寄ってくる。

穂「真姫ちゃんどうしちゃったの?制服のままだし……もしかして体調悪い?」

こ「ひょっとして、熱中症かな?もう夏だし、湿度も高いこの時期は油断して水分不足になりやすいから、軽い脱水を起こしても気付きにくいって……」

そう言ってことりは真姫の額に手を当てる。

表情から察するに、風邪でも熱中症でもないみたいだ。

なら……。

竜「真姫、何か悩んでる事でもあるんじゃないのか?もし相談があるなら、俺に……」

最後まで俺の言葉が続く事はなかった。

真姫がバッ!と立ち、正面の穂乃果の顔を見据えた。

その表情は……何かに苦しんでいるかのような表情にも見えた。

そして、確かな一言を放った。











真「……私、今日でμ'sやめるから」














竜「……………………………………は?」








思わずそんな間抜けな声が出た。

穂「……え?真姫ちゃん、今、何て……それって、どういう……」

穂乃果や他のメンバーの驚きの表情を見て、真姫の言葉が聞き間違いではないのだと思い知らされる。

穂「真姫ちゃん、何で……何か嫌な事でもあったの……?気に入らない事とか、不満があったとか……」

穂乃果が真姫の両腕を掴んで食い下がる。

その顔は、とてもいつもの元気のある穂乃果の顔ではなかった。

何かに縋るような、現実を受け入れられないような表情。

真「べ、別にそんなんじゃないけど……」

ここで俺はある1つの答えに行き着く。

竜「まさかあの人か?」

俺が真姫の父親の事を暗に言うと、真姫は黙りこくった。

やっぱり………真姫の母親は寛容だが、父親のあの人はこういうのに寛容じゃないからな……。

真「……この前の合宿の時に私の家の別荘を使ったでしょ。それで、お母さんがうっかりお父さんにμ'sの事を話しちゃって、それで……」

いつもの真姫の声ではなかった。

いつもの強気で、自分に自信のある真姫の声ではなかった。

顔を俯かせ、震えているその声は、今にも泣きそうな女の子だった。

ああ……昔の真姫もよくこんな風に泣いてたな……。

真「私……もう、μ'sを続けられなく、なっちゃった……!ごめん……皆……竜司……!」

それが限界だったんだろう。

自分がもうμ'sを続けられないという事実に、真姫のタガが外れ、絶対に見せる事のなかった真姫の泣き声が屋上に響いた。





ーーーーーーーー




少し時間が経ち、真姫は何度も「ごめん、ごめんなさい」と呟きながら、目元の涙を必死に腕で取ろうとしていた。

それを俺達は黙って見ている事しかできなかった。

穂「真姫ちゃ…「明日……ちゃんと退部届持ってくるから……」…っ!?」

穂乃果が何か言う前に、真姫はそれだけを言い残し、屋上を去って行った。

真姫が泣いている間、メンバーはそれぞれ真姫に言っていたが、俺は……俺だけは、ずっと黙って見ているだけだった。

穂「……竜ちゃん、どうして、ずっと黙ってたの?」

そんな俺を、穂乃果が少し非難したような目で見ていた。

竜「今の真姫に何言っても無駄だよ無駄。じゃあ俺は帰るな?」

穂「待ってよ竜ちゃん!!」

俺は穂乃果の言葉を無視して家に帰った。




ーーーーーーーーー





その次の日。

昨日の俺に失望したのか、穂乃果は俺に近づいて来ることはなかった。

登校中も別々、ランチタイムも別々。

そして放課後の音ノ木坂学院の屋上。

いつもそこで練習をしているμ'sの面々と俺は通常通り、揃っていた。

しかし、そこにはいつものようなワイワイとした陽気な空気は流れていなかった。

あるのは、沈黙、不安、動揺、疑心、険悪、それらだった。

真「持ってきたわ……退部届……」

沈黙を破ったのは真姫。

ポケットから白い封筒が出てくる。

そこに書かれていたのは、文字通りの『退部届』。

『ッ……』

それを見た俺以外の全員が動揺の声をあげる。

どうしようもない、認めたくない事実が、目の前にあるのだから。

真姫がそれを差し出したのは、ニコだった。

真「……ニコちゃんが、部長だから……」

ニ「……っ」

最もな事を言われ、ニコはそれを手に取る。

それを受理してしまった瞬間に、真姫の退部は成立する。

してしまう。

穂乃果はそれを黙って見ていた後、視線を俺の方へ向けてくる。

なんだよ……俺に何か出来るとでも?

無茶言うなっての……。

何も言わない俺に微かながら苛立ちを覚えたのか、穂乃果は顔を歪めた。

………ああもう、しゃあなしだな。

真「……じゃあ、これで、私は行くわ。活動、頑張ってね……」

普段なら頑張ってなんて言わない少女が、言った。

その顔はとても辛く、悲しく、悔しい気持ちが溢れていた。

真姫が屋上のドアに手を掛けた瞬間。

竜「まぁ待てよ」

俺は待ったをかける。

真「……何よ」

真姫がビクッとなりながらも、足を止め、微かに俺の方へ視線を向ける。

竜「結局お前は本当はどうしたい?」

真「……は?」

俺の言葉に、一瞬理解が追いつかなくなる真姫だが、それでも真姫は言葉に鋭さを付けて返す。

真「何言ってるのよ……言ったでしょ……。私はμ'sを辞めるって、聞いてなかったの!?」

竜「聞いた」

真「だったら何で……」

竜「それはお前自身の気持ちじゃないからだ」

そこで真姫の言葉が詰まる。

俺は畳み掛ける。

竜「お前が昨日言った事は、お前が父親に言われて言った事だ。辞めろと言われたから辞める。そんなのはお前の気持ちじゃない。違うか?」

真「だ、だけど!しょうがないじゃない!! だって言われたんだから……お父さんに辞めなさいって言われたんだから!!」

竜「それでお前は納得できたのか?お前にとってμ'sってのは易い存在なんだな」

真「違うっ!! そんな事無い!!」

普段絶対大声を上げない真姫の声が、屋上に響く。

真「竜司だって知ってるでしょ?私にとってμ'sは自分の大好きな音楽を奏でられる大切な場所なの!! それを……簡単に捨てれるはずないでしょッ!!」

真姫の目には、確かな敵意があった。

大切な場所を貶された怒り、それを今俺へとぶつけて来る。

真「でも仕方ないじゃない!! 辞めたくなくても、いくらμ'sが大好きでも、お父さんに言われたらもう逆らう事なんてできないんだから!! 私の音楽はもう終わってしまったんだからっ!!」

泣きながら発した真姫の本音。

それが今ようやく俺や穂乃果達に伝わった。

普段本音を言わない真姫の、紛れもない本当の気持ち。

それを聞いた俺は目を瞑り、真姫の頭に手を乗せる。

真「……えっ?」

突然の感触に驚く真姫に俺は言う。

竜「なら助けてやるよ。お前の明日の音楽を作る為に」

真「……無理よ。いくら幼馴染みのあなたの言葉でも、お父さんは耳を貸してくれる事は無いわ……」

真姫は絶望の色を見せるが、俺はそれを振り払うように声をかける。

竜「例え勝利の確率が0.01%でも、それでも明日を作る為に俺は戦ってきた。自分の信じる正義の為にお前達を守ってきた。今回も同じだ。真姫のやりたい事を守ることが、俺の信じる正義の為だと思うから。それに……お前は俺にとって妹みたいな存在だからな…」

真「竜司……」

そう言って、俺は真姫の頭をポンポン叩く。

竜「さてと……」

そうと決まれば善は急げだ。

俺は屋上のドアノブに手をかける。

穂「竜ちゃん何処に!?」

竜「真姫の家。お前らは来なくていいぞ」

1対1の方がやり易いし、何より穂乃果達が来たら邪魔だからな。

穂「待って!穂乃果達も行くよ!」

と思った矢先にこれだよ。

竜「穂乃果ちゃん?君は何を聞いてたのかな?来なくていいって言ったよね?」

穂「それでも行きたいの!! 真姫ちゃんは大事な仲間だから!!」

真「穂乃果………」

そう言った穂乃果の目は真剣だった。

やるったらやる!

それが穂乃果の座右の銘。

こいつも昔と変わらない。

真っ直ぐな……純粋で綺麗な瞳。

こうなったらこいつも聞かないんだよな~。

何気に海未達も行く気満々だし……。

竜「勝手にしろ……」

穂「竜ちゃん……!」

仕方なく許可すると、穂乃果は嬉しそうに顔を輝かせる。

竜「あっ、でも真姫はしばらく経ってから来い」

真「ヴェェェェ!? なんでよ!?」

竜「いいから」

真「むう~……」

頬を膨らます真姫をほっといて、俺は……俺達は屋上を出る。






竜「さぁ……実験を始めようか?」








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EX:対峙



真姫編ラストです。


◎side


真姫の家を訪れた天青竜司率いる真姫を除いたμ's一行。

穂「これからどうするの?竜ちゃん」

竜「とりあえず説得。ダメなら最悪脅しかな?」

ニ「あんた……発想がえげつないわね……」

恐竜を真姫の父親にけしかけ脅す。

恐竜を復活させた第1人者である竜司だからこそ出来る芸当である。

絵「そうならないよう、私達が止めないとね…」

海「ですね……」

絵里と海未は頷き合う。

希「にしても……やっぱり大きいな~……」

希は真姫の家を見上げて言う。

西木野家は有数のセレブ。

ここの家の主は大病院の経営者なのだ。

ここまで豪邸なのは仕方ないだろう。

竜「これだからお金持ちは嫌いなんだよ…」

そう言いながら竜司はインターホンを押す。

インターホンの向こうからプツッと音が聞こえると、その数秒後に玄関の方から足音がした。

どうやら画面で竜司達を確認して、直接出てくるつもりなのだろう。

だとしたら、恐らく出てくるのは真姫の母親だろう。

ガチャンと軽快な音が聞こえると同時に、1人の女性が顔を出す。

とてつもなく綺麗な女性。

一瞬、花陽と竜司以外のメンバーが口を小さく開くが、竜司が気軽にその女性に声をかけたことで、更に口を大きく開くことになる。

竜「久しぶりです、美姫さん。相も変わらずお綺麗で何よりです」

「あらあら♪久しぶり竜司君♪すっかり大きくなって……」

「「「「「「「ええええええええええ!!!?」」」」」」」

大きな声を出す花陽以外のメンバー。

竜「おい、うるさいだろ?」

穂「いやいやいやいや竜ちゃん!その人が真姫ちゃんのお母さんなの!? 若すぎでしょ!?」

竜「って言われても本当の事だし……ですよね?」

竜司が確認すると、美姫は「ええ♪」と微笑んで自己紹介してきた。

「初めましてμ'sの皆さん♪真姫の母の西木野美姫ですっ♪」

「「「「「「「うそーん……」」」」」」」

絶句する7人。

外の暑さを気にして気遣ったのか、微笑みながら美姫は話しかけた。

「そこにいても暑いでしょ?家に上がって……というより、何か話があるんでしょ?」

竜「……ありがとうございます」

美姫の言葉で、全員の雰囲気が変わる。

やはりと言えばやはり、この母親は知っている。

父親にバレたのは、この母がうっかり合宿の事を言ったのが原因だが、それも悪意ではないから何とも言う事ができない。

「真姫の事で……来たのよね……」

竜「はい」

それに竜司は即答した。

どうせ知られているなら変に誤魔化す必要もない。

竜司の返答を聞いて、美姫は苦い表情をする事はなく、むしろ少し嬉しそうにはにかんだ。

「そう……良かった」

竜「え?」

美姫の思わぬ言葉に、即答した竜司でさえ理解が遅れた。

「真姫がああなっちゃったのは私のせいだし、でも私じゃ何もできないから……竜司君なら何とか出来るかもと思っててね……。不甲斐ないわよね……子供の君に頼ってしまうなんて……」

自分のせいで娘の好きな事を辞めさせてしまう原因になってしまった。

その事に負い目を感じていた。

だけど自分じゃ夫を説得するのは到底不可能だという事も分かっていた。

だから頼るしかなかった。

娘に初めて出来た友達にして、娘が最も頼りにしている天才に。

少し愚痴も混じりつつ、けれどどこか楽しそうに学校の事や、久しぶりに会えた少年の事を話す娘の顔を毎日見ていたから、目の前の天才少年に頼る以外に手段はなかった。

何とかして連絡を取れないかと思っていた矢先に、件の少年達が来た事に、美姫は安堵したのだ。

竜司達は真姫が辞めるのを止めようとしていると。

美姫が何も言わずとも、ここまで少年達はやってきた。

だったら、もう後は何を言えばいいか分かる。

自分の代わりに話すつもりであろう竜司達に、美姫は言う。

「だから、お願い。真姫の大好きな音楽を続けられるように、あの人を説得してほしいの」

聞いて、少女達は微笑む。

それだけで返答は必要なかった。

そして、竜司は1人思う。

これはある意味では真姫の自業自得だ。

いくらバレる事を恐れていても、父親にスクールアイドルの事を黙っていた真姫にだって非はある。

見方が違えば、これは単なる当然の結果に過ぎないと吐き捨てる人だっているだろう。

それでも……竜司は真姫を見捨てなかった。

何故なら彼は……真姫の本音を知ったから。

故に彼は、宣言と返答の意味も含めて美姫に言う。





竜「勝利の法則は決まった!」







ーーーーーーーーー




美姫の案内でリビングへと誘導される。

玄関には真姫の靴が無かったので、まだ何処かで時間を潰してるのだろう。

そうこう考えてる内に、リビングに着き、1人用の白いソファに、その男性は座っていた。

「こんにちは。久しぶりだね、竜司君。左目の調子はどうだい?……そちらは真姫のお友達かな」

竜「……どうもお久しぶりです。左目は相も変わらず少し疼いてます」

短い挨拶だけを済まし、竜司達は男性の対面にある複数人用のソファに腰を下ろす。

いくらあまり病院に通う習慣がない穂乃果達でも名前くらいは聞いた事があった。

西木野賢治。

西木野総合病院の社長。

世界でもトップクラスの技術力を有し、その経営も担っている。

まさに『スーパーエリート』の文字が似合う人物。

西木野家の大黒柱であり、紛れもない真姫の父親。

しかし、この親が真姫を辞めさせた事実には変わらない。

「で、対面に座るという事は、僕に何か用なのかな?」

分かっているくせに、と竜司は内心で嘲笑する。

この状況で真姫の知り合いが全員で家に来た時点で理由は明白なのだ。

それをわざわざ気付いてないフリをして聞いてくるなんて、この父親に限ってあり得ない。

だから竜司も遠慮なく言うつもりだった。

竜「単刀直入に言わせてもら――「どうか私達を、真姫ちゃんと一緒に活動させてください!!」……」

穂乃果が割って入ってきた。

それに少なからず竜司はイラッと来た。

竜(人が話そうとしたらこれだよ……)

穂乃果なら必ずどこかしらで入ってくると思っていたが、まさかいきなりとは思っていなかったのだ。

穂「私達μ'sには、絶対絶対真姫ちゃんが必要なんです!」

そして、穂乃果が声を上げてしまえば、当然ここぞとばかりに声を上げる少女達がいる。

凛「真姫ちゃんはずっと一緒にやってきた仲間なのにゃ!」

こ「真姫ちゃんがいなかったら、私達、オリジナル曲なんて絶対無理だったと思うんです……」

ニ「真姫は可愛いから絶対アイドルに向いてると思うの!!」

竜「はぁ~……」

溜め息を吐く竜司。

それは海未も絵里も同じなようで、やはりこの人数では迷惑になって、かえって逆効果になっているのではと思っている。

「……何故、君達はそこまで真姫に執着するのかな?」

だが、西木野賢治は表情を崩す事なく質問をぶつけてきた。

それに答えようとしたのは、竜司にアイコンタクトをとった絵里だった。

絵「私は音ノ木坂学院生徒会長をしている3年の絢瀬絵里といいます。現在、このメンバーと一緒にμ'sというスクールアイドル活動をしています。音ノ木坂学院の廃校の危機を救うため、と言ったら大人の方には滑稽に聞こえるかもしれません。でも、私達は本気なんです」

学校の生徒会長だから、説得力はあると思っての発言だった。

実際絵里が最初から本気で廃校を止めようとしていたのは竜司達全員が知っている。

でも、西木野賢治は知らない。

真姫がそれにどれだけ貢献しているかも。

故に。

「その話は言った時に真姫から聞いたよ。でも、特にうちの真姫がそんな活動をする必要はないように思えるけどね。真姫は将来医学部に進まねばならない身だから、しっかり勉強してもらわないといけない」

凛「そんな活動って酷いにゃ!」

ニ「真姫だって、何だかんだ言いつついつも楽しそうにしてたのに!!」

真姫の父親である賢治のあまりにも無慈悲な言葉。

それに凛とニコは抗議する。

真姫の気持ちも聞かず、自分の娘の将来を勝手に決めて押し付けて、それ以外はどうでもいいように聞こえるその発言に、当然黙っていられる者はいない。

だからこそ竜司もここで打って出た。

竜「なぁ賢治さん。あんた……最近真姫の笑顔を見たことあるか?」

「………何が言いたいのかな?」

賢治は眉をひそめる。

穂乃果達もちんぷんかんぷんな感じを顔に出している。

それでも竜司は続ける。

竜「この家で今の真姫が心の底から笑ってるのを見たことあるかって聞いてるんですよ」

「………」

賢治は即答出来なかった。

思い当たる節があるから。

それを見て竜司は嘲笑する。

竜「ほらな?あんたは真姫の本心を聞いてない。いや、聞こうとしないだけかな?思えばあんたの発言って、ただ自分の理想を真姫に押し付けてるだけなんだよ」

「違う……そんな事は無い。医学の道を進み、僕の後を継ぐことが真姫の幸せなんだ……」

ここで初めて西木野賢治が動揺した。

賢治はスーパーエリートだが、竜司はその上を行く天才。

しかも方や真姫の本心を知り、方や真姫の本心を知らない。

そこにこの舌戦の勝機はあった。

竜「だからそれが理想の押し付けなんだよ。そうやって言い聞かせてきたんだろ。父親である自分の言う事が正しいから、言われた通りにしろって。そうしていれば真姫の人生は必ず輝くものだと嘯いて、そうやって騙してきたんでしょ?」

「違う、僕は真姫を騙してなんかいない。実際僕の言う事は正しいんだ。だから――「真姫の気持ちすら無視したのか?」……」

言葉が、詰まる。

そんな賢治に竜司は憐れみの目を向ける。

竜「やれやれ……結局あんたは何も分かっちゃいないんだよ。そんな事しなくても、真姫は最初からあんたの病院を継ぐ気でいたんだよ。あんたが言い聞かせなくても、真姫は大好きなあんたのために病院を継ごうと頑張ってんだよ。ほんとに健気だよ……あのファザコンちゃんは……」

「な、にを」

竜「小さい頃、真姫から聞いたことがある。あの子は本当に父親である貴方を尊敬していて、大好きなんだって。誇れる父親で、それが目標だから、それに恥じないように自分も勉強を頑張って病院を継ぐって言ってたよ」

賢治の口が動かない。

動かせないでいた。

今この少年は何を言っている?

いくら幼馴染みだからって、娘の何を知ってそんな事を言っている?

竜「分かんないかな?俺の言ってる事。結局貴方はその程度なのさ。医者としては優秀でも、父親としては最低限の事もしてやれない能無し。親の癖に、貴方は実の娘の我が儘すら叶えてやれてないんだよ!!」

穂乃果は驚いてた。

普段冷静な竜司がここまで激情を表にすることに。

幼馴染みだからこそ、驚いていた。

それは他のメンバーも、いつの間にか帰って来てて、入り口の陰で聞いてた真姫も。

竜「真姫は本当に小さい頃から貴方が大好きなんだよ。多分それは今でも変わらない。だからこそ、小さいながらに真姫は分かってしまった。貴方にそう育てられてきたからこそ、真姫はそこに行きついてしまった。貴方が望んでいる事は、最初から真姫が医者になる事だけなんだってな。多分その辺りからだよ。まだまだ小さい真姫が、不自然に大人びてきたのは……。全部貴方のせいだよ……。貴方は父親の癖に、真姫から……実の娘から笑顔を奪ってたんだよ……」

「ッ……」

賢治は固く唇を引き結ぶ。

悔しいのだ。

自分は真姫の父親なのに、何も言い返せない事が。

真姫の幼馴染みの方がよっぽど真姫の事を分かってることに。

竜司は立ち上がって、リビングを見渡して言う。

竜「真姫は小さい頃からピアノが好きで、よく俺に弾いて聞かせてくれましたよ。ピアノコンクールにも何回か参加して、そして賞をもらった。あいつは嬉しそうに自慢してきて、俺はそんな真姫を褒めた。だが貴方はどうだ?それを褒めた事はあるのか?ピアノなんかよりも勉学の方が大事だと言って、真姫のピアノ自慢すら聞かなかったんじゃないですか?」

「分かったような口を聞くんじゃない」

竜「真姫の気持ちなら貴方よりかは分かってる自信がありますよ。こっちは人間の言葉を喋らない恐竜を相手にしてきたんだ。真姫一人の本心なんて簡単に知れる。賢治さん……」

ここで一拍置いて、竜司は決定的な一言を落とした。









竜「貴方………随分落ちぶれましたね…」









「っ!?」






賢治はギリッと歯を食い縛り、竜司を睨みつける。

対する竜司は嘲笑するように見下ろす。

決定的な勝敗が着き始めていた。

竜司は止めを刺しにかかる。

竜「真姫……泣いてましたよ?」

「っ……え?」

賢治は睨んでいた目を見開き、呆気に取られた。

「真姫が、泣いて、いた……だって……?」

竜「ええ、真姫は音楽が大好きだ。小さい頃から今もそれは変わらない。だからμ'sにも入って活動していたんだ。まぁ俺が誘ったのもありますけど、一番は自分の大好きな音楽が奏でられるからでしょうね……」

竜司の言葉に、賢治は真姫が小さい頃の事を思いだす。

ピアノコンクールで2位を獲ったと笑顔で近づいてきた娘の姿を。

竜「でもそれを貴方に黙っていたのは、怖かったからなんでしょうね。大好きな父親の貴方に否定されて、大好きな音楽がまたできなくなってしまうのが」

満面の笑みでトロフィーを見せてきた真姫に対して、自分は何と言った?

よく頑張ったと褒めたか?

1位が獲れなくて残念だったなと慰めたか?

竜「真姫は小さい頃から心はもう貴方よりも……俺よりも大人になっていた。そういう風にしたのは貴方だ!だから貴方に黙ってμ'sで大好きな音楽を奏でる事にした」

違う。

あの時、自分が言ったのは、せっかく満面の笑みで見せてきた真姫に言ったのは、

『何だ、1位じゃないのかい。でも勉学なら真姫は1位なんだし、ピアノなんかよりも凄い事だ。これからも医者になるために頑張りなさい』

だった。

称賛でも、慰めでもない。

音楽とは無関係の勉学の事しか言っていなかったではないか。

その時の真姫の顔が思い出される。

あの笑顔は、小さい子がしていいような笑顔ではなかった。

大好きな父親のために、大好きな音楽を捨てようと決めるしかなかった女の子の笑顔でしかなかった。

竜「ああ……可哀想な真姫。本当に可哀想だ……」

竜司は賢治を責めるように、彼の耳元で囁く。

心を砕くように、心を抉るように。

絵里は感じた。

絵(何となくだけど今ので確信したわ……竜司は言葉で人を攻撃するのが得意なんだわ……)

自分の時も、真姫の時も、そして今も。

絵里は戦慄した。

舌戦で竜司に勝つのは不可能だと。

真姫も震えていた。

自分の為に父親を説き伏せてる竜司に対して、感謝による嬉しさと、恐怖に。

賢治は首をがくりと下ろす。

最早彼に反論の気持ちは残ってなかった。

父親としての責務を果たせていない不甲斐なさと、真姫を自分の手で泣かせてしまっていた事の後悔、そして竜司からの責苦で、彼の心はボロボロだった。

なのに、竜司はまだ止めない。

竜「それにこの左目。これは貴方のせいで完全に見えなくなった。この責任も取ってほしいですね」

ビクリと賢治の肩が震える。

穂乃果が訊く。

穂「どういう事なの?竜ちゃん」

竜「そういや穂乃果達も知らなかったか。この左目は元々見えなかったんだが、辛うじて見える部分もあった。それをこの人は治そうとしてくれたが手術は失敗。完全に左目は見えなくなったんだ…」

穂「そんな事が……」

初めて知った竜司の左目の真相に、穂乃果達は何とも言えない顔をする。

竜司は賢治に顔を近づけて言う。

竜「あの時は治そうとしてくれた恩もあったので失敗を揉み消しましたが、今になって告発すればどうなるんでしょうね?」

最早それは脅しだった。

そんな時。






真「もうやめて!!」








真姫が入ってきた。

「真、姫……?」

今までいなかったはずの当事者の介入。

それにより場は暫しの間、凍り付いていた。

竜「はぁ~……」

これにより頭が冷えたのか、竜司はソファに座る。

真「お父さん、お願い!私、やっぱりどうしてもμ'sをやりたい!お願いします……絶対に勉強だってちゃんとする。医学部だって絶対に受かってみせる!それに必要な事なら何でも言う事聞くから……私にμ'sを続けさせて……!やっぱり私……諦められないの……」

(真姫……)

今まで真姫がこんな事を言ってくる事は一度たりともなかった。

それも泣きながら。

友人であろう少年達が近くにいるのに、どうしようもないほどに涙を流し、自分のやりたい事をこうして自分に言ってきた。

(これが……娘のお願い、我が儘、というところなのか……)

もちろん真姫がこんな我が儘を言うのは初めての事だった。

やはりそれだけ音楽が大好きで、今のこのμ'sというグループが大切な居場所なんだろう。

それを娘によって痛いほど分からされた。

「あなた……」

また1人、リビングに入ってくる者がいた。

西木野美姫。

妻である女性が、微笑んでこちらと真姫を見ている。

それだけで、もう答えは決まった。

「娘の我が儘くらい、父親なら叶えてやれ、か……」

真「お父、さん……?」

まだほろりと涙を流している娘を見て、軽く微笑む。

いつ以来だろうか。

自分が真姫に向かって父親らしい笑みを浮かべたのは。

認めよう、幼馴染みの少年の言い分を。

応援してやろう、娘のやりたい事を。







「μ's、だったかな。真姫、これからも、その活動を頑張りなさい」






ようやく天才である少年と、エリートである父親の対決は決着した。






竜「実験は成功」






ーーーーーーーーーー





「いつ振りかな……。真姫のあんな嬉しそうな笑顔を見たのは」

ソファに座っている西木野賢治は、先程の娘の笑顔を思い出して思わず微笑んでいた。

真「も、もう……それはもういいでしょ……!」

それに可愛らしく反抗したのは娘である西木野 真姫。

竜司は涼しい顔で、穂乃果達は喜ぶだけ喜んで帰って行った。

「凄いな、竜司君は……」

真「どうして?」

賢治は美姫が入れたコーヒーを啜りながら、思い出す。

「だってそうだろ?今はもう威張るつもりはないけど、仮にも僕は病院を経営している社長だよ。それを相手に、彼は全然臆す事はなかった。むしろ脅しにかかってきた。流石はジュラシック・パークの創始者だ。彼が悪魔の科学者と呼ばれるのが分かるよ」

それを聞いて真姫は顔をしかめる。

真「やめてお父さん。竜司はそんなんじゃない。そんなの世間が勝手にそう呼んでるだけよ。竜司は昔から何も変わってない。困ってる人がいたら見返りを求めずに助けるようなお人好し。だから…「分かってる」…えっ?」

賢治の見解を正そうとした真姫だが、簡単にその考えを捨てられ、呆気に取られた。

「天才というのは、いつの世もそんなものさ。常人では及ばない考えや結果を出すからこそ、忌み嫌われる。おそらく彼もその類だろう。小学生でありながら、高校の数学を解き、カナダで発見された謎の石板の意味すら解き明かした。そんな彼を怖れる人々の気持ちも分かる。だからこそ真姫、彼には君のような人が必要なんだ。これからも彼を支えてあげなさい」

真「お父さん………うん、そんなの当たり前よ。必ず竜司を支えて見せる。そしていつか……竜司の左目は私が治すわ♪」

真姫がそう言うと、2人してほくそ笑む。

そして真姫の心にはもう1つの意思が灯っていた。

真(竜司……あんたの左目は私が治すけど、それと同時に私の事を妹みたいじゃなく、一人の女性としても見てもらうわ!)

そんな事を思っていたからか、

「真姫」

真「何?」

「いつかは彼と結婚するんだろう?」

真「ブフゥッ!?」

賢治のこの一言で真姫はコーヒーを吹き出し、思いっきりむせた。

真「も、もう!何言ってるのよお父さんは!?」

「ははっ、大病院の院長の娘が口からコーヒーを出すなんて、やはりまだまだ子供だね」

珍しく、西木野家では微笑ましい光景が流れていたのであった。




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Game#54


今日から第2期ですね。

やっぱり目次的なもの作った方がいいですかね~?
後みーたんポジは色々考えた結果、ことりにします。


竜司side


現在、講堂。

季節は秋……。

それにしても秋になるのが早い。

夏服から冬服になり、さっきまで暑かったのに文句を言いたくなる。

「音ノ木坂学院は入学希望者が予想を上回る結果となった為、来年度も生徒を募集する事になりました」

講堂で理事長が告げる。

新学期に入ったから、始業式をやっている最中だ。

次は新生徒会長の挨拶だ。

『理事長、ありがとうございました。続いて生徒会長、挨拶』

μ's結成当初からサポートをしてくれている『ヒフミトリオ』の一人、ヒデコのアナウンスが場内に流れる。

それを受けて静かに立ち上がる生徒が一人。

その生徒とは、音ノ木坂学院の『元』生徒会長である絢瀬絵里さん。

絵里はみんなの注目の的になるが、絵里は構わず一人拍手を贈る。

静かな講堂に響き渡る拍手を受け、2年生の証とも言える赤基調のリボンを首元に身に付けた一人の少女が壇上に姿を現した。

「皆さん、こんにちは!」

そして自己紹介を始めた。

その瞬間、全校生徒から黄色い悲鳴が上がる。
(女子のみ)

「この度、新生徒会長になりました!スクールアイドルでおなじみ……ハッ!!」

そして、マイクスタンドからマイクを取ったかと思うと高く真上に放り投げる。

ゆっくり回転しながら落ちてきたマイクをキャッチしてから…、

穂「高坂穂乃果と申します!」

そう言った。

新生徒会長は、穂乃果だ。

何故なんだろう…?

(♪:これまでのラブライブ!)












現在、生徒会室にて。

穂「ぐわぁ~…、疲れたー」

こ「穂乃果ちゃん、お疲れ様♪」

戻って机にぐてーっとなる穂乃果。

それを労う、ことり。

穂「生徒会長挨拶ってライブとは全然違うね……。緊張しっぱなしだったよ~」

こ「でも穂乃果ちゃんらしくて良かったと思うよ?」

穂乃果の左隣の席に座って、穂乃果とことりの会話を聞きながら、黙々と書類を整理していると

海「どこが良かったんですか!」

海未が呆れ気味に言った。

海「せっかく4人で挨拶文を考えたのに!最終的に竜司に任せてしまったではないですか!」

実は挨拶の後の台詞を忘れやがったア穂乃果が固まってしまい急遽、俺が代わりにやったという訳。

その一部シーンがこちら。

竜「どうも皆さん、天青竜司です。それじゃあ行きますよ~?夜はー!?」

『焼肉っしょーー!?』

全校生徒に大体俺の迷言が浸透していた結果だった。

何故てぇ~んさっい科学者で、天才恐竜学者の俺がやったかと言うと、俺も生徒会の一員だからだ。

この幼馴染み3人に、無理矢理入れられたのだ。

全く……こっちは色々忙しいというのに。

最初は断固拒否してたのに、この3人、目元に影を落として言ってくるんだよ?

ヤンデレみたいで怖いよ。

穂「竜ちゃん、ゴメンね……?」

竜「別にいいよ……。何となくこうなる事察せれたから」

海「とにかく!」

海未は大量の書類を穂乃果の前に置く。

うわぁ……多いな……。

海「今日はこれを全て処理して帰ってください!」

穂「えぇー!こんなにー!?」

海「それにこれも!」

海未は一枚の紙を取り出し、穂乃果に突きつける。

穂「………?」

紙を受け取り、穂乃果は内容を読み上げる。

穂「……『学食のカレーがマズイ』、『アルパカが私に懐かない』、『文化祭に有名人を』、『ギュインギュインのズドドドドドな新アイテムを作りたいので、1つ大きな部屋をください』………なにこれ?」

海「一般生徒からの要望です」

穂「無茶振りすぎるの多くない……?ていうか最後のって絶対竜ちゃんでしょ?」

竜「何でそうだと言える?」

穂「ギュインギュインのズドドドドドなんて竜ちゃんしか言わないよ」

この幼馴染み分かっていらっしゃる。

竜「なら話は早い。早速どこでもいいから俺専用の大きな教室を寄越せ」

穂「絶対やだ。っていうか自分の家で作りなよ」

竜「そうしたいけど苦情が来たの」

一応新アイテムを作るのは地下室でやってるけど、それでも大きな音が響いて苦情が来るのだ。

穂乃果の家からは来ないと言うのに。

穂「というか海未ちゃんも少しくらいは手伝ってくれてもいいんじゃない!? 海未ちゃん副会長なんだしー!」

ぶぅーぶぅーと抗議しながら、海未に訴えるア穂乃果。

海「もちろん、私はもう目を通してあります!」

穂「じゃあやってよー!」

手をじたばたさせ、半泣きになりながら駄々っ子になる穂乃果。

海「仕事はそれだけじゃないんです!あっちでは校内に溜まりに溜まった忘れ傘の放置、各クラブの活動記録もほったらかし!そこのロッカーの中にも3年生からの引継ぎのファイルが丸ごと残っています!」

竜「うわぁ……」

思わず声に出してしまった。

本当に多いな……。

今からでも抜けようかな……。

海「竜司。抜けたら許しませんよ……?」

心を読まれた…。

穂「ぐふ……」

あ、穂乃果がダウンした。

海「生徒会長である以上、学校の事は誰よりも詳しくないといけません」

こ「でも手分けしてやればー……」

海「ことりは穂乃果に甘過ぎます!」

こ「えへへ……」

ことりは昔から穂乃果に甘いところがあるからな…。

まあ、俺も最終的に穂乃果には甘くなってしまうが…。

穂「生徒会長って大変なんだね……」

竜「今更何言ってんの?分かってた事じゃん」

そんな時

絵「分かってくれた?」

穂「絵里ちゃん!」

希「頑張ってるかね?君達?」

こ「希ちゃんも!」

絵里と希がやって来た。

絵「大丈夫?挨拶、かなり拙い感じだったわよ?」

穂「えへへ~、ごめんなさい……それで今日は?」

絵「特に用事はないけど、どうしてるかなって。自分が推薦した手前もあるし、心配で。竜司は頑なに拒否してきたけどね」

竜「当たり前でしょ?生徒会とか面倒くさいにもほどがある。なのに、この幼馴染み3人と来たら……」

希「脅された?」

竜「うん……」

希が同情の目を向けてくる。

だってハイライトの消えた目でこう言ってきたんだよ?

穂『竜ちゃんは~、私達のマネージャーだもんね?』

海『竜司は私達と一緒にいる事を宿命付けられているのです』

こ『竜くんはいつも私達と一緒だよ。幼馴染だもんね♪』

怖いよ、頷くしかないよ。

絵里が誘ってきた時はまだ断れたけど、この子達のは無理だったよ。

絵「まぁ何はともあれ、明日からまたみっちりダンスレッスンもあるしね」

昨日まで生徒会の引継ぎやらで穂乃果達2年と絵里と希と俺で色々とやっていたせいか、部活の練習は少な目だったのだ。

だから一応今日でひと段落着いた事だし、明日から本格的に部活に集中できるだろう。

希「カードによれば、穂乃果ちゃん生徒会長として相当苦労するみたいよ~。あと竜司君も苦労するみたいやから頑張ってね~」

穂「えー!?」

竜「はぁ~……最悪だ」

これ以上苦労は背負いたくないぞ?

希「だから2人とも、フォローしたってね」

穂「気にかけてくれてありがとうっ」

絵「いえいえ、困った事があったらいつでも言って。何でも手伝うから」

竜「じゃあ俺もそろそろ開発に戻るから、後は3人で頑張れ」

そう言って席を立った途端、こう言われた。

こ「竜くんはずっと私達と一緒だもんね~……♪」

竜「うん、そうだね……」

ちょっとやだ何この子。

笑ってるのに笑ってない。

ヤンデレってこういう事を言うんだよ?

最近穂乃果達9人からこういう言葉をよく聞くが、一体どういう事なのだろうか。

あの一件以来、特に穂乃果、海未、ことりの視線がよく俺に集中している時が多いと思う、多分。

かなり長い時間、物理的にも精神的にも離れていたからか、それを埋めようと穂乃果達がやけに俺と一緒にいようとしている節がある。

何ならこいつら俺の家に迎えに来るまである。

暇なの?

俺のせいでもあるから一概に拒否するわけにもいかない辺り、中々言いづらい。

いや、可愛い女の子達が一緒にいてくれるのは健全男子でもある俺としても嬉しいけど、周りの視線がどうしても気になってしまうのだ。

一応こいつらは学校を代表するスクールアイドル。

そして俺はμ's復活ライブの時に生配信で存在を晒されてから顔も知れ渡ってしまったし、そんなスクールアイドルとそのマネージャーをしている男子が仲良く一緒にいて、くっついていたらそりゃ視線も釘付けになるわで……。

正直気が滅入る。

「「「♪」」」

幼馴染3人が笑顔で俺を見ている。

……まあ、嫌われるよりかは全然マシだし良いか。

ただ顔の目元を曇らすのはやめような?





ーーーーーーーーーー




竜「風が心地良い季節になってきたな」

俺は中庭でパソコンのキーボードをカタカタ叩いて、新しいアイテムを作っていた。

パソコンに繋いだ配線、その先に着いてるのは肉食恐竜の上顎を模したクリアパーツがあった。

俺はそのパーツに色んな情報を入力していく。

これを作る決め手になったのは、空港でのローグとの対決。

あのジャークアーマーってのを纏った恐竜は、防御力や攻撃力が段違いに上がっていた。

エレメントトリガーでも対抗出来なかった。

だからこそ、エレメントトリガーを制御でき、尚且つジャークアーマーを越える程のアイテムを作っていた。

そして………。

竜「これで終わり!」

エンターキーを押すと、クリアパーツが虹色に染め上がる。

竜「っはぁ~!! 最っ高だ!」

俺は興奮した為、髪の一部がはねて、その頭をかきむしる。

その時、さっき見た顔が笑顔でこっちに近寄ってきた。

竜「作業は終わったのか、穂乃果」

穂「まだだよ~。座って作業してたら落ち着かなくて、慣れてる教室でやってたんだけど、どうしても体動かしたくて。屋上に行って軽く運動してたらお腹空いたから、パン持ってきたっ」

竜「何も終わってないって事だけは分かった。後お前はやはり高坂穂乃果なんだなと再確認した」

穂「どゆこと?」

竜「バカだなと」

穂「えー!!」

完全にテスト勉強してたら集中切れて、息抜きに休憩しようとしてそのまま本来の作業から遠のいていくバカあるある行動してんじゃねえか。

穂「それよりそれは?」

穂乃果が俺が作った新しいアイテムを指差してくる。

竜「フフ~ン♪聞いて驚け。これはあのジャークアーマーとやらに対抗出来る最っ高のパワーアップアイテム!その名も『ディノテクター』!これさえあればもうジャークアーマーなんざ怖くない!! すごいでしょ?最高でしょ?天才でしょ!?」

穂「う~ん……よく分かんないけど、とりあえずマジヤバイ!ってことだけはわかった!」

竜「バカっぽく言えばそうなる」

穂「ムッカー!!」

俺の言葉に穂乃果はムカついたのか、その場で足踏みする。

その時。

ニ「いたー!!」

穂「?」

竜「何だ?」

呆れながら穂乃果を見ていると、後ろの方から声がした。

そちらに目をやると、ニコと1年組が走ってこっちに向かってきた。

ニ「少しはじっとしてなさいよ……」

竜「そんなにヘトヘトになりながらどうしたんだよ?」

真「ああ……竜司……」

花「探したんだよ~?」

竜「とりあえず何があった?」

俺がそう聞くと、ニコが答える。




ニ「穂乃果……もう一度、あるわよ……!!」






ニコは疲れながらも穂乃果の肩に力強く手を置いた。

もう一度ある?

まさか……。





ーーーーーーーーー





その後、その場にいた俺達含め、μ'sの全員に部室へ緊急招集がかけられた。

竜「で、ニコよ。単刀直入に聞くが何があるんだ?まさかとは思うけど」

ニ「そう、そのまさかよ竜司」

やはりな……。

あのニコさんが息を切らし、尚且つメンバー全員を集める事態等あれしか無い。

ニ「みんな、心して聞きなさい」

そして彼女は言った。

新たな幕開けの言葉を。













ニ「もう一度、ラブライブ!が開催されるわ!!」










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Game#55


竜「ついに始まった第2期!新たに生徒会長になったのは、なんとあの単純バカの穂乃果!しかも一方でなんと第2回ラブライブが開催されることに!これからどうなることやら……」

穂「ちょっと竜ちゃん!? バカって言わないでよ!!」

竜「単純なのは否定しないのか?そんな事より今話どうぞ!」



花「そう!A-RISEの優勝と大会の成功をもって終わった第1回のラブライブ!それがなんと、その第2回の大会が行われる事が早くも決定したのです!!」

花陽の興奮した声が部室内に響き渡る。

そのまま花陽はパソコンの方へと移動し、みんなにも分かるようにそのサイトページを開く。

花「今回は前回を上回る大会規模で、会場の広さも数倍。ネット配信の他、ライブビューイングも計画されています!」

竜「凄いな。たった1回の大会でそこまで注目されるようになったのか。そこら辺の大会より結果残してんだな」

花「凄いってもんじゃないです!」

熱いよ花陽。

いつものオドオド小鹿キャラはどうした?

花「そしてここからがとっても重要……!大会規模が大きい今度のラブライブは、ランキング形式ではなく各地で予選が行われ、各地区の代表になったチームが本戦に進む形式になりました!」

海「つまり人気投票による今までのランキングは関係ないという事ですか?」

花「その通り!これはまさにアイドル下剋上!! ランキング下位の者でも、予選のパフォーマンス次第で本大会に出場できるんです!!」

竜「なるほど、じゃあ今の穂乃果達にはもってこいな条件ってわけか……」

これなら一気にランキングを上げるという超面倒くさい事を考えなくても済む。

予選でのパフォーマンスをどうするかという一点に集中できる。

凛「すごいにゃー!」

海「またとないチャンスです!」

真「やらない手はないわね」

ニ「そうこなっくちゃ!」

希「いいやん!面白そうやん!」

おいおいニコさんや、いつの間に真姫とそんな抱き付く仲になってたんですかね?

こ「よーし!じゃあラブライブ出場に向けて……」

絵「待って!」

ことりの声を絵里が遮った。

やる気になっていることり達とは違って1人深刻そうな顔をして。

絵「地区予選があるって事は……私達、A-RISEとぶつかるって事じゃない……?」

「「「「「「「あ」」」」」」」

……あれ、何で普通真っ先に思い付く事なのに、今まさに気付きました的な声出してんのこの子達?

それを聞いて何秒か沈黙が続いたあと、最初に花陽が崩れ落ちた。

花「お、終わりました……」

こ「A-RISEに勝たなきゃならないなんて……」

真「それは、いくらなんでも……」

ニ「無理よ!」

花「は、はは……」

オーイ、花陽ちゃん大丈夫か?

泣きながら笑ってるんだけど?

凛「いっその事全員で転校しよう!」

真「できる訳ないでしょう」

竜「どんだけ落ち込んでんだよお前ら……」

一気に部室内が暗い感じになったんだけど。

A-RISEにビビりすぎ。

あと穂乃果、さっきからお茶啜ってほんわかしてんだけど、話聞いてんのかあいつ。

そう思って穂乃果に話しかけようとした瞬間、不意に横から近づいてくる影があった。

ニ「というか竜司は何でそんな平然としてるのよ!こんな絶望的状況に陥ってるのに!!」

はぁ~……全く。

竜「で?それでラブライブ出場を諦めるのか?」

ニ「えっ?」

ニコや他のメンバーの顔が唖然となる。

竜「A-RISEがいるから。だからラブライブ出場を諦めるのか?お前らのラブライブに対する執念ってそんなもんかよ。呆れるな……」

ニ「なっ!? あんたねぇ~!!」

ニコが俺の襟首を掴む。

ニ「A-RISEがどんなにすごいスクールアイドルか、あんただって知ってるでしょ!?」

竜「A-RISEを盾にするな!!」

「「「「「「「「っ!?」」」」」」」」

俺の怒鳴り声にびくつく8人。

竜「A-RISEは確かにすごいユニットだ。だけどお前達だってそのA-RISEに手が届く程になってる。A-RISEを盾にして、言い訳にするのはただの逃げだ。『逃げるは恥だが役に立つ』とはよく言うが、この行動は今のお前らには必要無い。そうだろう?」

実際、どうかは分からない。

だけど以前よりも今の方が全然大丈夫だという事は分かる。

海「そうです!確かにA-RISEとぶつかるのは厳しいですが、だからといって諦めるのは早いと思います!」

海未も俺と同じような事を思っていたのか、みんなの背中を押すように言った。

そのおかげで、流れが変わった。

花「そ、そうだよね。大変だけどやってみようよ!」

絵「決まりね!」

絵里の言葉でメンバーの表情に明るさが戻る。

こういうところはやはり元生徒会長なのだろう。

竜「その前にリーダーにちゃんと確認しないといけないわけなんだが」

絵「え?……穂乃果……?」

誰もが一斉に視線をうつした。

ただ1人、呑気に座ってお茶を啜っているリーダーへと。

そして、その人物はゆっくり息を吐いたあと、言った。

穂「出なくてもいいんじゃない?」

「「「「「「「「「……え?」」」」」」」」」

思わず俺まで声を出してしまった。

穂乃果の口からあり得ない言葉を聞いたような気がしてならなかった。

今こいつ、何と言った……?

穂「ラブライブ、出なくてもいいと思う」

全員が驚きを隠せない中、高坂穂乃果は満面の笑みで、何の躊躇もなくそう答えた。





ーーーーーーーーー




ニ「ほーのーかー!!!!」

ニコが穂乃果を部室の隣の部屋に連行し、穂乃果を座らせ、目の前に全身が写る鏡を持ってきた。

海「穂乃果、自分の顔が見えますか?」

穂「見え、ます……」

海「では鏡のなかの自分は何と言ってますか?」

穂「何それ……?」

こういうのって心理学の1つだったかな…?

絵「だって穂乃果……」

希「ラブライブに出ないって……」

ニ「ありえないんだけど!スクールアイドルの憧れよ!あんた真っ先に出ようって言いそうなもんじゃない!」

ニコが詰め寄る。

まあ……確かにそうだな…。

ラブライブ、スクールアイドルの甲子園とまで言われ、それはどのスクールアイドルの憧れでもある。

いつもの穂乃果ならいの1番に出ると言って騒ぎそうってのがみんなのイメージだが、それは大きく覆されてしまった。

穂「そ、そう?」

俺も気になったので聞いてみる。

竜「何故、出なくていいと思うんだ?」

穂「私は歌って踊って、みんなが幸せならそれで……」

竜「…………そうか…」

まだ気にしてるのか…?

ニ「今までラブライブを目標にやってきたじゃない!違うの!?」

穂「い、いやぁ……」

凛「穂乃果ちゃんらしくないよ!」

花「挑戦してみてもいいんじゃないかな?」

穂「あははは……」

凛、花陽の問いかけにも答えず苦笑いするだけ。

ったく……めんどくせぇな…。

竜「お前ら、今日はもういいだろ…?」

穂「え?竜ちゃん……?」

俺の意外な言葉に、他のメンバーはともかく、穂乃果ですら驚いていた。

竜「穂乃果には、穂乃果の考えがあるみたいだしな…」

海「ですが…竜司」

竜「まぁまぁ……その話はまた明日ということで?」

そう言って、海未の肩を叩く。

その時、穂乃果の腹が「ぐぅ~」と鳴る。

竜「ほら、穂乃果もこんなんだし、今日は何処かで遊ぼう。明日から練習も大変になるしな」

穂「竜ちゃんナイス!じゃあ、どこか寄り道しようか?行こう!竜ちゃん!」

竜「ん…」

その後は、みんなで遊んだ。

穂乃果は凛と絵里と一緒にプリクラを取ったり、〇〇タッキーでみんなでハンバーガーやシェイクを食べたり飲んだりしていた。

ふと穂乃果は秋葉原の街並みにある一際大きな建物、UTX高校を見ている。

そのパブリックビューイングって言うやつに、A-RISEのプロモーションビデオが流れている。

俺は、穂乃果の隣に行き言う。

竜「穂乃果」

穂「竜ちゃん…。さっきはありがとう…」

竜「別に……。なあ、穂乃果。1つだけ言っておくぞ」

穂「えっ、何?」

竜「お前が何に悩んでいるかは察しがつく。だが、今度のラブライブ開催日。いつか知ってるか?」

穂「えっ……?」

竜「来年の3月。もう分かるだろ…?」

穂「………」

俺はそれだけ言って、その場を去る。

後はお前次第だぜ。

穂乃果……。



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Game#56

竜「前回のジュラシック・ラブライブ!第2回ラブライブが開催されたのにも関わらず、穂乃果はラブライブに出ない宣言をした!これにはメンバーみんなビックリ!」

穂「ねぇ……最近私の影薄くない?」

竜「お前は何を持ってそう言ってるのかな?まぁ個人的にはお前の影は薄い方がいいかな?」

穂「なんでさ!? こんなにも一気に父さんな穂乃果なんだよ!?」

竜「ん~?一騎当千って言いたいのかな~?」



◎side


翌日、生徒会長としてファイルや資料を運んでいる途中だった。

竜「何でこんな事してんの俺?」

穂「竜ちゃんが近くにいたからで~す」

竜「ふざけんな!こっちはものすごい発明をしてたのに、その休憩中に取っ捕まえてくれたのはお前だろ!? しかもこのファイル重いし!なんなんだよ!!」

穂「だから私も少ないなりに持ってるじゃん!それとも何?私が全部持とうか?」

竜「ふざけんな。そんな事したら俺のヒーローとしての地位が下がる」

分かってて言ってるあたり、穂乃果も小悪魔というか、こんなところでも竜司のバカなお人好しは絶好調である。

文句は言いつつも何だかんだ手伝ってくれる竜司に微笑みながらも、ちゃんと内心で感謝しておく穂乃果。

穂「……」

正直、こうでもしないと個人的に空気を重く感じてしまうと穂乃果は思っていた。

昨日竜司に言われた『来年の3月』について考えてしまいそうだったから。

竜「ん?どうした?思い詰めた顔して」

穂「わひゃあ!?」

急に竜司の顔が目の前に現れた。

思ったより顔が近すぎて素直に驚いてしまう。

竜「さすがにそこまで驚かれると地味に傷つくんだけど?」

穂「ご、ごめん!いきなり竜ちゃんの顔が出てきたからびっくりしちゃって……」

驚いて落としそうになるファイルや資料を何とかバランスを取りつつ安定した位置に戻す。

竜「一応こっちは何回か名前呼んだんだぞ。生徒会長として何か考えてるのかは知らないけど、ちゃんと前見て歩けよ」

穂「うん……」

竜司の言葉に生返事する穂乃果。

「へー、またラブライブあるんだね!」

ふと、そんな声が前方から聞こえた。

2人はその声の方へと歩いていく。

「楽しみだね~!」

友人と楽しそうに話しながら去っていく生徒を横目に、貼られているポスターを見る。

そこには『第二回ラブライブ!開催』と書かれていた。

穂「……」

何を思っているのか。

それは高坂穂乃果にしか分からない。

いくら天才でも、そこまで竜司は考えが及ばない。

人の気持ちは、その人にしか分からないのだから。

するとそこへ介入者が現れた。

ニ「穂乃果!」

穂「ニコちゃん?」

今の現状にもっとも不満を抱いている少女が、険しい表情をしながら穂乃果に詰め寄ってきた。

穂「どうしたの?」

ニ「……勝負よ」

穂「……え?」

いきなりの宣戦布告だった。




ーーーーーーーー




放課後。

場所は変わって神田明神の階段下。

そこに2人の少女が指定のジャージ姿で立っていた。

その1人のニコが階段上を指差しながら口を開く。

ニ「いい?これから2人でこの石段をダッシュで競争よ!」

穂「何で競争……?」

もう1人のジャージ姿をしている穂乃果が流されたまま疑問を独り言のように口にしていた。

こ「穂乃果ちゃんをやる気にさせたいみたいだけど……」

海「強引ですね……」

一方、上では他のメンバーとマネージャーの竜司が下の様子を窺っていた。

ことりと海未を始め、絵里達も何だか不安そうな顔をしているが、竜司だけがいつもと変わらない調子で、

竜「むしろこの現状を見てみればニコの判断は正解だよ」

そう言った。

絵「どういう事?」

絵里が訊くと、竜司は答える。

竜「いつまでたっても、うやむやな状態のこの現状を打破するには、ゆっくりと時間をかけて紐解いていくよりも、ニコのように1発勝負で切り抜ける方が手っ取り早いって事だ」

その結果がこの競争。

ニコと穂乃果。

どちらかが勝てば全てが決まる。

とてもシンプルで分かりやすい方法だからこそ、懸ける想いの強さが溢れ出ている。

穂「また今度にしようよ。今日からダンスレッスンだよ~?」

ニ「ラブライブよ!私は出たいの!! だからここで勝負よ!! 私が勝ったらラブライブに出る!穂乃果が勝ったら出ない!」

勝つか負けるかの勝負。

それによってもたらされる結果は大きい。

穂乃果自身、それは分かっていた。

あのニコが、ラブライブに出たいと強く思っているニコが、負けたら出ないというリスクの大きい賭けにまで出ているのだ。

必ずどちらかが勝って、どちらかが負ける。

シンプル故に、その代償はとても大きかった。

だからこそ……。

穂「……分かった」

穂乃果は向き合う。

そこからは暫しの沈黙のまま、2人は位置に着く。

そしてニコがスタートの口上を言うが

ニ「よいドン!!」

そう言って、すぐに登る。

穂乃果は、思ってたのと違ったのか「ニコちゃんズルい!!」と言いながら、遅れて登る。

ニ「ふん!! 悔しかったら追い抜いてごらんなさい!!」

穂「……ッ!!」

言われて、余計に足に力が入るのを感じた。

今からでも間に合わないわけじゃない。

抜こうと思えば追い抜く事ができるかもしれない。

走っている最中、昨日の竜司の言葉が頭に蘇ってきた。

『来年の3月……もう分かるだろ?』

雪穂にも同じ事を言われた。

視線の先に、ニコの背中、そしてそのもっと先に、こちらを心配そうな目で見ている絵里と希がいた。

その誰もが、3年生……。

その時だった。

ニ「はっはっはっ……!はっあッ……ぁ!?」

真ん中辺りを過ぎたところでニコが階段に足を引っ掛けてしまい転んでしまった。

竜「あっ!? 全く……」

竜司は階段をかけ下りる。

そしてラエリナサウラを呼び出す。

《サウラのいやし》

「キュエエエエエエエ!!」

ラエリナサウラがニコに虹色のオーラを浴びせ、怪我を治す。

ニ「ありがと……竜司…」

竜「気にするな」

慌てて穂乃果もニコの元へと駆け寄る。

穂「ニコちゃんっ、大丈夫?」

ニ「平気……。竜司とこの子が治してくれたから……」

そう言ってニコは、ラエリナサウラの頭を撫でる。

何処か嬉しそうに身を捩るラエリナサウラ。

上にいるメンバーも何とかなったのを見てホッとしている。

少し落ち着いたところで穂乃果はニコに少し咎めるように言う。

穂「もぉ~ズルするからだよ~……」

ニ「……うるさいわね。ズルでも何でもいいのよ!ラブライブに出られれば……!」

穂「ニコちゃん……」

ニコの気持ちは分かる。

そんなの、穂乃果でなくとも他のメンバーや竜司でさえ当たり前のように分かっている。

この少女のラブライブに対する思いや情熱を。

だから、どんな手段を使ってでもいい。

この勝負に勝ちさえすれば出られるのだから。

その結果がこれだ。

竜司がいたからいいものの、いなければ怪我はすぐには治らなかっただろう。

竜「ん?………雨…」

こんな時に雨が降ってきた。

まるで、お互い頭を冷やせと言われているかのような勢いで。

竜「ちょうどいい。勝負はお預けだ。2人とも雨が酷くならないうちに境内に上がるぞ…」







ーーーーーー








絵「そうよ」

周りを雨音という雑音が支配する中に、絵里の声が混じる。

穂乃果とニコが着替えを済ませ、竜司とμ'sの9人は急遽雨宿りができる場所へと移動していた。

彼女達の顔はどこか浮かないでいた。

絵「3月になったら私達3人は卒業。こうしてみんなと一緒にいられるのも、あと半年……」

竜司が言っていたのはこういう事だったのだ。

3年生の卒業。

これに至ってはもう、何をどうしても抗えられない。

抗ってはいけない。

学生の日々を過ごしていれば卒業がくるのは当たり前の事で、当たり前のように訪れるものである。

それつまり、来年の春には絵里、ニコ、希の3年がμ'sからいなくなるという事実が明らかだった。

希「……それに、スクールアイドルでいられるのも在学中だけ」

穂「そんな……」

『スクールアイドル』というのは高校生だからできる特権のようなものでもある。

絵「別にすぐ卒業しちゃうわけじゃないわ。でも、ラブライブに出られるのは、今回がラストチャンス」

希「これを逃したら、もう……」

絵「ほんとはずっと続けたいと思う……。実際卒業してからも、プロを目指して続ける人もいる。……でも、この9人で出られるのは今回しかないの」

穂「やっぱり、みんな……」

そう。

卒業してもアイドルを続ける者はいる。

ただしそれはもう『スクールアイドル』ではなく、『アイドル』としてだ。

絵里が拘りたいのはもっと個人的な思いだった。

花「私たちもそう。たとえ予選で落ちちゃったとしても、このメンバーで頑張った足跡を残したい!」

凛「凛もそう思うにゃ」

真「やってみても、良いんじゃない?」

花陽、凛、真姫の1年生トリオも穂乃果を説得する。

穂「……ことりちゃんは?」

それを受けた穂乃果は、ことりに意見を求めた。

こ「私は穂乃果ちゃんが選んだ道なら、どこへでもっ!」

穂乃果はことりの答えの裏に隠された真意に気付いたようで、目を丸くする。

海「また、自分のせいで皆に迷惑を掛けてしまうのでは、と心配しているのでしょう?ラブライブに夢中になり過ぎて、前回みたいに周りが見えなくなって、生徒会長として学校のみんなに迷惑を掛けるような事があってはいけないと……」

海未が穂乃果の心を代弁する。

穂「……全部バレバレだね」

かつて大きな失敗を犯した少女は、苦笑いを浮かべながら語る。

穂「始めたばかりの時は何も考えないで出来たのに、今は何をやるべきか分からなくなる時がある……。でも、一度夢見た舞台だもん!やっぱり私だって出たい!生徒会長をやりながらだから迷惑掛けるかもだけど、本当はものすごく出たいよ!!」

結局、高坂穂乃果という少女も一緒だった。

個人的な思いで、どこまでも真っ直ぐだからこそ悩んで、自分の気持ちを自制して、だけど、根の部分では他のメンバーと何も変わらない。

嘘偽りのない本音を聞いて、ようやっと今まで介入してこなかった少年が静かに呟く。

竜「ったく、単純バカが小難しい事考えやがって……それでいいんだよ……お前は」

穂乃果の後ろで壁にもたれている少年は笑みを作り、穂乃果の前にはいつの間にかメンバー全員が整列していた。

穂「えっ、みんな……?どうしたの?」

海「穂乃果、忘れたのですか?」

みんな一斉に息を吸い込み始め……

「「「「だって可能性感じたんだ~♪そうだ~ススメ~♪」」」」

まず絵里、希、ニコ、海未が歌い始める。

「「「「後悔したくない目の前に~♪」」」」

続いてことり、凛、花陽、真姫が続きを繋ぐ。

穂「僕らの、道がある……!」

最後の1フレーズを穂乃果が力強く歌い切った。

「「「「やろう!」」」」

「「「「やろう!!」」」」

竜司以外のメンバーがそう言うと、穂乃果はニッと笑う。

穂「よーし!やろう!ラブライブに出よう!!」

すると穂乃果は雨が降りしきる境内に出た。

海「ほ、穂乃果!?」

突然の行動に驚く真姫と、それを止めようとする海未を気にすることなく大きく息を吸い込み……









穂「雨、止めー!!!!!」








あまりにも大きすぎる声に、山がないのに山彦が聞こえた。

そして……

ニ「嘘でしょ……?」

竜「っはぁ~!! 最っ高だっ!! 面白すぎる!!」

先程まで雨を降らせていた雲に晴れ間が差し、青空が顔を出す。

これにはニコも唖然となり、竜司は髪の毛をかきむしって喜ぶ。

真「竜司、寝癖何とかしなさい」

呆れる真姫。

穂「本当に止んだ!人間その気になれば何だって出来るよ!ラブライブに出るだけじゃもったいない!この9人で残せる最高の結果……優勝を目指そう!」

「「「「「「「優勝!?」」」」」」」

ニ「大きく出たわね!!」

希「面白そうやん!」

穂「どう、竜ちゃん。ラブライブ優勝」

ウインク付きのスマイルで拓哉を見る穂乃果。

それに対し、竜司はニッと笑うと言う。

竜「さぁ……実験を始めようか?」

それは遠回しの賛成だった。

今ここに、9人の意志が揃った。

そんな時。







「俺も混ぜてもらおう……」









男の声がした。

『っ!?』

10人は目を見開き、警戒しながら声がした方を向く。

そこには黒いローブを来た氷室玄斗がいた。

竜「氷室玄斗……」

絵「氷室君……」

穂「氷室先輩………どうして…」

絵里達が驚く中、氷室は言う。

「天青……俺とお前の勝負はまだついてない…」

そう言うと、氷室はナイトディノホルダーにカードをスラッシュした。

《デイノスクス!!》

氷室がそのカードを投げると、現存しているどのワニよりも巨大で、恐竜すら襲ったと言われるワニ、『デイノスクス』が現れた。

「シュガアアァァァァァァ!!」

デイノスクスは吠える。

更に氷室はローグテクターを起動、装着する。

《デンジャー!!》

《クロコダイル!!》

瞬間、氷室は紫の液体が詰まった巨大なビーカーに囲まれ、デイノスクスは紫の光に包まれる。

更に氷室が入ってるビーカーを、ワニの顎を模した装置が挟み込む。

《割れる!喰われる!砕け散る!》

それらが消えると、氷室は紫の尖った鎧に、白いヒビが入った黒いスーツを着用。

更に黒のマスクに、紫のワニの顎が装着されて赤いヒビが入り白くなり、そこから水色の複眼が完成される。

《クロコダイルジャークアーマーインローグ!! オォォラァァァ!!》

《キャアアァァァァァァ!!》

デイノスクスは紫の禍々しい尖ったアーマーが頭から尻尾まで羅列している。

更に氷室はカードをスラッシュした。

《アフロヴェナトル》

「ギュアアアアアァァ!!」

出てきたのは、茶色に白のラインが走る肉食恐竜・アフロヴェナトルだった。

これを見て、穂乃果はディノガジェットとクローズマグマナックルを持つ。

穂「行くよ竜ちゃん!」

しかし竜司はそんな穂乃果の腕を掴み、こう言った。








竜「お前はもう戦うな……」








穂「……………えっ?」










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Game#57


竜「何だかんだで海未達の説得で穂乃果はラブライブに出ることを決意。しかし当然のようにローグが現れた!こうなったらギュインギュインのズドドドドドな、アイテムを使うしかない」

絵「何よそのギュインギュインのズドドドドドって!?」

希「擬音ばっかりでさっぱり分からんよ!!」

竜「一言で語れないのが天才なもので♪さぁ、どうなる!?」


意気揚々と出ようとした穂乃果を止めた竜司。

そのことに穂乃果は疑問に思い、食ってかかる。

穂「なんでさ!? 相手は二匹なんだよ!? こっちも2人の方がいいじゃん!!」

竜「俺は二匹以上も恐竜を持ってる。お前の協力は要らない。だから黙って見てろ」

穂「なにそれ?もしかして私の力に嫉妬してんの!?」

穂乃果は苛立ったように叫ぶが、海未達は分かってた。

本来この戦いに穂乃果は無関係の筈だった。

それを無理矢理巻き込んだのは竜司だ。

だからこそ竜司はもう穂乃果を戦いに投入したくはなかったのだ。

竜「お前は……お前らの戦いはラブライブだ。これは俺の戦いだ。それに……」

そこで区切ると竜司はこう言った。










竜「お前が出張ってくると俺のヒーローとしての存在が薄れるでしょ?」











「「「「「「「「………は?」」」」」」」」

あまりにもどうでもいい発言に、ことり以外のメンバーが呆気に取られた。

ことり以外というのは、ことりは竜司の本当の気持ちに気がついてたからだ。

照れ隠しで穂乃果の身を案じている竜司の気持ちに。

こ(本当………他人の幸せばかり優先して、自分の事は後回し……バカでどうしようもない人間だよ……竜くんは……)

ことりは内心そう思った。

一方でこれを聞いた穂乃果は竜司に背を向ける。

穂「勝手にしなよ……!」

竜司はそんな穂乃果を見ると、ローグに目を向ける。

竜「待たせたな……」

そしてディノホルダーにカードをスラッシュした。

《トリケラトプス》

《バリオニクス》

出てきたのはトリケラトプスと、オレンジと茶色の体色をしたワニ顔の恐竜・バリオニクスだった。

「グゴオオオオオオオオオン!!」

「ギュアウワアアァァァァァァァァ!!」

そしてバリオニクスはアフロヴェナトルに、トリケラトプスはデイノスクスに向かっていく。

デイノスクスは顎を広げて吠え、それにトリケラトプスは角によるヒット&アウェイを試みる。

バリオニクスとアフロヴェナトルは吠えて威嚇しあう。

「ギュアウワアアァァァァァァ!!」

「ギュアアアアアアア!!」

そしてローグは走り、竜司に殴りかかるが、それを竜司はある技カードをスラッシュして防御した。

《アースバリア(大地土盾)》

そのエネルギーを足元に撃つと、竜司の目の前に六角形の紫の盾が出てきて、ローグのパンチを防ぐ。

「ちっ……」

ローグは竜司から距離を取る。

更に竜司はカードをスラッシュする。

《ハイドロカッター(水刃斬波)》

《ライトニングスラスト(雷槍角刺)》

それを撃ち、吸収させる。

するとバリオニクスは目の前に水で出来た鮫の背ビレのような形のカッターを作り、それをアフロヴェナトルにぶつける。

アフロヴェナトルは吹き飛び、カードに戻る。

そしてトリケラトプスはデイノスクスを角で空中に放り投げ、仰向けになったデイノスクスに電撃で出来た巨大な角を突き刺す。

背中から貫かれたデイノスクスは感電し、トリケラトプスはデイノスクスを放る。

しかしジャークアーマーを纏っている為、本来の属性による有利が働かない。

デイノスクスは平気な様子で起き上がる。

竜「くっ…」

竜司は続けて超技カードをスラッシュする。

《アクアジャベリン(噴龍水槍)》

《ベストマッチ!!》

《プラズマアンカー(雷錨牽引)》

そして撃って、吸収させる。

「グゴオオオオオオオオオン!!」

「ギュアウワアアァァァァ!!」

バリオニクスは足元に4本の渦を巻く水で出来た槍を作り、それをデイノスクスに突き刺す。

続けてトリケラトプスが3本の角から雷で出来たアンカーを作り、デイノスクスに突き刺す。

そして空中に浮かせ、放り投げる。

超技の連撃。

しかしデイノスクスは平気な様子だった。

「無駄だ……エレメントトリガーを使ってないお前の恐竜等、恐れる事は無い…。そしてデイノスクスのステータスは強さ2000の水属性だが、ジャークアーマーで更に強化してある。俺が負ける事は無い」

絵「そんな……!!」

真「竜司!意地張ってないで穂乃果にも戦わせなさいよ!!」

ローグの説明を聞いた真姫がそう言うが、竜司は首を横に振る。

穂乃果はそれを見て、歯をギリッと噛みしめる。

「なら終わりだ……」

ローグはローグテクターのスイッチを押す。

《ジャークスクラップ(邪悪粉砕)!!》

瞬間、デイノスクスについてるジャークアーマーが尻尾から頭にかけて光り、デイノスクスは巨大な紫に光る顎を作り、それを使って纏めてバリオニクスとトリケラトプスを噛んで挟む。

そして爆発。

ドガアアアアアアアアアアアアアアアアン!!

トリケラトプスとバリオニクスはカードに戻る。

竜「っ……」

竜司は慌ててトリケラトプスとバリオニクス、そしてアフロヴェナトルのカードを回収する。

こ「竜くん!! 危ない!!」

その時ことりが叫んだ。

竜司がそちらを見ると、デイノスクスが顎を広げて向かって来ていた。

このままでは竜司が咬み殺される。

まさにその時!







穂「おりゃああああああああ!!」








「ギャン!!」

クローズマグマナックルを構えた穂乃果に殴られ、デイノスクスは吹き飛び、竜司は何とか助かった。

竜「穂乃果……お前……」

穂「悪いけど竜ちゃん……ヒーローの座は頂くね?」

呆然としてる竜司に穂乃果は笑いながらそう言った。

結局、穂乃果は竜司を放っておくことが出来なかった。

竜司が穂乃果を争いに巻き込みたく無いのと同じように、穂乃果も竜司の事を大切に思っているのだ。

竜司は溜め息を吐いて、穂乃果の横に立つ。

竜「最悪だ……まさかお前に助けられる日が来るなんてな……。行くぞ穂乃果」

穂「竜ちゃん……うん!!」

穂乃果はディノガジェットから恐竜カードを取り、クローズマグマナックルに装填する。

《ダイノバァーーン!!》

その音声の後、カードが勝手に飛び出し、穂乃果はそれを手に取る。

そしてディノガジェットにスラッシュする。

《エオラプトル》

スラッシュしたカードは虹色に光り、穂乃果はそれを地面に落とす。

するとエオラプトルが穂乃果の足元に顕現する。

「クゥエエエエエエエエ!!」

海「穂乃果……使う恐竜が変わったんですね……」

真「でもあんな小さいので大丈夫なの?」

穂乃果の恐竜がペンタケラトプスからエオラプトルに変わったことに驚く海未達。

真姫が訊くと、ことりが頷く。

こ「大丈~夫!すごく可愛くて強くなるから♪」

絵「それ本当に大丈夫なの?」

絵里が訊いた時だ。

希「見て!」

希が声を上げ、そちらに全員振り向く。

「「「「「「っ!?」」」」」」

その光景に、ことり以外のメンバーは息を呑んだ。

穂乃果の後ろにマグマを蓄えた拳骨型の壺が現れたからだ。

そしてそれが傾くと、中に入っていたマグマが穂乃果とエオラプトルを飲み込む。

そのマグマが黒い溶岩となって冷えて固まると、後ろの壺がナックル部分を見せて、後ろから穂乃果を殴り付けて、溶岩を砕く。

出てきたのは、オレンジのミニスカートとスポーツブラを身に付けて、額からオレンジの龍の角を生やして、オレンジのオーラを身に纏う穂乃果、穂乃果クローズマグマだった。

そしてエオラプトルも、戦闘形態のファイヤーモードに変わる。

《極熱恐竜ゥ!! クローズマグマ!!》

《アぁァチャチャチャチャチャチャチャッアチャァァァ!!!》

「「「「「「「姿が変わったぁぁ!!!?」」」」」」」

声を揃えて驚くメンバー7人。

海「なんですかあの格好は!?」

こ「ねっ?可愛いでしょ?」

海「いえ、誰もそういう事を聴いてる訳では無いのですが……」

ことりのホンワカぶりに頬をひくつかせる海未。

そんな会話を無視して穂乃果は宣言する。

穂「力が漲る……魂が燃える……私のマグマが迸る!! もう誰にも……止められないよ!!」

凛「最早別人だにゃ~……」

そして穂乃果はローグに向かって走り、ナックルを基本に殴りあう。

穂「おりゃああ!! らぁっ!! らぁっ!! らぁっ!! らぁっ!!」

「ぐっ!くっ!ふん!」

エオラプトル・ファイヤーも、デイノスクスの頭を踏んだり、威嚇する。

「グガァアアアアアアアア!!」

そして竜司も新たな力を使う。

竜「俺は俺のやり方で……昔の俺を越える!!」

「ふん!………そう言いながらエレメントトリガーを使うのか?」

ローグは穂乃果の攻撃をあしらいながら、竜司に言う。

そう、確かに竜司はエレメントトリガーを持っていた。

だが竜司はそれを無視してエレメントトリガーを起動。

《エレメント・オン》

ディノホルダーに着ける。

《トンテンカーン、トーンテンカーン♪》

その後、すぐにカードをスラッシュする事は無く、また別のアイテム『ディノテクター』をディノホルダーの先端から伸ばした透明な細長いパーツに装着した。

《ディノテクト・オン》

そしてティラノサウルスのカードをスラッシュした。

《ティラノサウルス・ディノテクター》

するとティラノのカードは炎に包まれ、竜司がそれを投げるとティラノサウルスが現れるが、そのティラノは赤い燃え盛るようなアーマーを纏っていた。

「ゴガアアアアアアン!!」

更に竜司も分厚く、黒い鉄板に挟まれて黒と紫のオーラを纏うが、すぐに側に現れた、白いバネを仕込んだ赤い鎧を跳び跳ねながら装着する。

両腕両足に。

《炎のファイアーアーマー!ファイアーディノテクター!ヤベーイ!アツーイ!!》

それを見た絵里と希が言う。

絵「ギュインギュインの……」

希「ズドドドドドドド……」

真「何言ってんの2人共?」

ごもっともである。

穂「竜ちゃんそれ……」

穂乃果は呆然とするが、竜司の叫びですぐに動いた。

竜「穂乃果退け!!」

穂「っ!!」

穂乃果が側転した瞬間、竜司の右腕の装甲が伸びてローグの顔面を殴打する。

「ぐおっ!?」

更に脅威的ジャンプ力で飛び上がり、足の装甲を伸ばす。

「っ!?」

ローグは両腕で防ごうとするが、いつまで経っても来ない。

見ると、炎を纏った右足は寸前で止まっていて、ローグはそれを殴ろうとする。

瞬間、竜司そのものがやって来て、その勢いが右足に乗り、ローグは吹っ飛ばされる。

「ぐおおオオオオオオオオオっ!? なんだ……なんだこの力は!?」

ローグが叫びながら訊くと、竜司は言う。

竜「これはディノテクター。エレメントトリガーの脅威的な力を得ながらも暴走の危険性を取り除いたアイテム。簡単に言うと、制御装置さ」

そして竜司はディノテクターのスイッチを押す。

《アルティメットファイアー(究極炎撃)》

「ゴガアアアアアアアアアア!!」

ティラノは吠えると、体中に炎を纏い、走り出す。

そのままデイノスクスに体当たり。

「シュガアアアアアアアア!!」

デイノスクスは火傷を負いながら、吹っ飛び、ジャークアーマーは解除され、カードに戻った。

『やったぁぁぁぁ!!』

これを見て9人の女神は喜び、ローグはデイノスクスのカードを拾うと、黒煙で消え去った。

こうして、竜司達は好調な道を歩みだした。




ーーーーーーーーー





秋葉原のとあるショップ。

そこに天青竜司は1人で来ていた。

あの後せっかくだから本屋に寄ると、穂乃果達と別れて来たのだ。

因みにことりはバイトに行った。

竜司の目的はただ1つ。

恐竜に関するゲームを買うため。

竜司は何処まで行っても竜司だった。

竜(相変わらずここはアニメとかマンガとか何でも揃ってんな。さすが秋葉原)

アニメショップが主なのだが、ここはゲームカセットもジャンルを問わず何でもあるので、竜司はこの店にちょくちょく訪れている。

手早くゲームを買って雨がまた降らないうちに帰ろうと思い、ゲームコーナーに向かおうとした時だった。

視界にある光景が入った。

とあるCDコーナーのところで高い場所にあるCDを必死に取ろうと背伸びまでしているが、中々取れずに体が背伸びのせいでピクピクと小刻みに震えている残念少女がいた。

竜「…………」

竜司はしばらく見ていたが、やがて溜め息を吐いて、その少女に近寄る。

そして彼女が取ろうとしていたCDを取り、彼女に渡す。

竜「ほら、これだろ?」

「あ、ありがとう……」

竜「っ!?」

少女が礼を言うが、竜司は少女の格好のおかしさにびくつく。

まだそんなに寒くはないのにニット帽、でかいサングラス、マスクまでしているというオマケ付きだ。

ぶっちゃけ超怪しいし、竜司が驚くのも無理は無い。

竜(成る程……この格好で誰も近寄らなかったのか……)

何となくこの少女の周りがガランとしていたのに納得する竜司。

そんな時だ。

「あら、そういえばあなたって……」

怪しい格好をした少女が声を発し、尚且つ竜司の手を取った。

「やっぱり!行きましょっ」

竜「え?」

今度は竜司が呆ける番だった。

何かを言う前に手を引っ張られる。

自分の目当てのゲームコーナーが遠ざかっていくのを死んだ目で見ながら、彼は連れ出された。




ーーーーーーーーーー





店の外へ出た。

竜「……おい」

「心配しないで、取ってもらったCDは取りやすいとこに隠しておいたから」

竜「うん、用意周到だね。じゃなくて……。誰だアンタ?」

若干イライラしながら訊く竜司。

「あら、気付かない?私もまだまだ頑張らないとって事かしら」

竜「気付くも何も、そこまで素顔見せないとか有名人か何かか?それなら余計そんな知り合いはいないぞ」

「そんなあなたは天青竜司君、よね?」

竜「……何で知ってる?」

思わず身構える竜司。

「あなたもそれなりに知名度が上がってるから、かしら」

心当たりは、1つしか思い浮かばなかった。

竜「この前のμ'sの映像か……」

「正解♪」

少女は手を叩いて指をこちらに向けて言った。

それなら納得はできる。

あれで竜司も曲がりなりにも顔を知られてしまい、微かだがスクールアイドルファンに知られてしまっているかもしれない。

だが、まずその前に決着をつけないといけない話がある。

竜「それより、だからアンタは誰なんだ?μ'sのファンでもないだろ。ただのファンなら顔を隠す必要はないからな」

「あくまで学校の方針だから私はそんなに気にしてないんだけど、まああなたなら良いかなと思ってるの」

どこか引っかかるような言い方に竜司はさらに眉をひそめる。

そして、その少女は竜司にだけ聞こえるボリュームで言った。









「どうも、天青竜司君。A-RISEの綺羅ツバサです」










竜「………そっくりさんの?」

ツ「がくっ…」

思わずずっこけるツバサ。

ツ「違うわよ!! 本物のツバサよ!!」

竜「ああ……なりきりか?最近流行ってるらしいからな」

ツ「いやだから!」

竜「そういうのいいけど、程々にな?本人から苦情来るよ?」

妙に優しい顔で言う竜司に、少女は体をぷるぷる震わせる。

そして。

竜「うおっ!?」

いつまでたっても信じない少年をサングラスの奥から少し睨むように見上げながら、顔をグッと近づける。

竜「何だよ?」

ツ「よーく見てなさい。これが私よ」

言って、サングラスを外し、自分のチャームポイントを一緒に見せるために、深く被っていたニット帽を浅く被り直す。

すると、あまりにも有名人の顔が少年の瞳に写っていた。








つまりは、本物の綺羅ツバサだった。









竜「………うそーん」

あまりにも間抜けな顔をする竜司。

ツ「フフーン♪やっと信じたわね!」

無い胸を張るツバサ。

そこから2人は人の少ない裏路地まで移動した。

ツ「驚いた?」

竜「まさかあのA-RISEのリーダーがこんなにも小さいとはな」

ツ「そこは関係ないでしょっ!」

竜司も落ち着きを取り戻したらしい。

すぐに順応している。

ツ「私もまさかここであの『悪魔の科学者』と呼ばれた天青君と会えるとは思ってなかったもの。でも丁度良かったわ。これなら私も時間がないから手短に話す事がきる」

竜「その呼び方は止めろ。で、話