やはり俺の怪異症候群はまちがっている。 (オルタナティブ)
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プロローグ:怪異を殺す少年

懲りずに馬鹿な作者が妄想を拗らせた代物です。「こんなの○○じゃない!」と思われるかもしれませんが、ご了承ください。


prrrrrr!prrrrrr!

 

「……はい、はい。了解しました。人を向かわせますので、急いで身の回りの安全を確保してください」

 

とある部屋。1人の女性がかかってきた電話を取り、電話の向こうの相手と話す。

 

「……怪異案件です。どうしますか?今は巡査と私たちしかいませんが……」

 

女性が上司と思われる男性に問う。男性は数瞬考え込むと……

 

「……彼に依頼するしかあるまい。氷室君は別件でいないのでな」

 

「……”彼”、ですか。わかりました。ですが夜遅くですよ?出るかどうかわかりませんが」

 

「なあに、出なければ彼の家に直接出向くのみよ。彼自身、その境遇上頼めば受けるだろう」

 

「……人の環境盾にとって恥ずかしくないんですか?」

 

「私たちは人を傷つけさせない仕事だ。そのためなら誰の手だろうと借りるさ」

 

「……では、呼んでみます」

 

女性はそう言いながら流れるように8桁の番号を固定電話に打ち込む。

 

prrrrrr…prrrrrr…prrrrrr…

 

 

 

<ソウトウエキサーイエキサーイターカーナールーエキサーイエキサーイコーコーローガー

 

場所は変わってきとある家の二階。寝室にて眠りかけていた少年の意識は唐突に鳴り響いた自身のスマホの着信音にて叩き起こされる。

 

「……誰だ、こんな非常識な時間に電話かけてくる奴は」

 

そう悪態をつきながらスマホのディスプレイを見る。

 

『特務課』

 

「……俺は何も見なかった」

 

そう呟きながらスマホの電源を落とそうとすると、メールの内容がホーム画面に映るように改造されているスマホがメールの文面を映す。

 

『怪異案件だ。すでに人が死んでいるらしい』

 

「……ったく、明日も学校なんだが」

 

あんのタヌキジジイめ。そう心の中で呟くと少年は起き上がりリビングに降り、壁に取り付けてあるフックから灰色のフードが付いたコートと鞘にしまわれたナイフを取り出し身につける。そして玄関から出ようとすると、ふと思い出したかのようにリビングに戻りある写真に手を合わせる。

 

「……親父、お袋、小町。必ずここに帰ってくるから、あの世で見守っててくれ」

 

少年はアホ毛をピョコピョコと動かしながら濁っている目を数倍濁らせながら玄関前のバイクに乗ると……

 

「怪異殺戮者、比企谷八幡……。さて、仕事だぞ。俺」

 

スマホを起動し送られてきた住所を確認すると、バイクのエンジンを吹かし走り出していった。

彼の名は比企谷八幡。怪異案件において警察の協力者でありぼっち。そして、怪異を殺す者である。




比企谷八幡
17歳 身長175cm 体重68kg
異名「怪異殺戮者」「解き明かす者」
今作の主人公。過去に怪異によって両親と妹を喪ったことにより、天涯孤独となっている。戸籍上は怪異を主に担当する警部補「氷室等」の養子となっていて、仕事で家を空けることが多い氷室が家で休めるようにと家事関連はそこらの主婦を凌駕する。尚、簡単な四則演算こそ暗算で出来るがやっぱり原作通り数学は苦手である。座右の銘は「力に善悪はない。使う人が善悪のどちらかなのだ」


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Case:1 ひとりかくれんぼ
第1話:殺戮怪異


第1章、ひとりかくれんぼ編スタートです。


「……ここか」

 

書かれていた住所に到着する。建物に入ろうと足を進めるが、2,3歩歩くとすぐに足を止める。なぜなら……

 

「うわぁ……」

 

目の前にこの家の方だと思われる女性の死体がある。死体の損傷の仕方や死体の位置、血の飛び散り具合から考えて2階ベランダからの飛び降りのようだな。怪異によって錯乱しての転落死か逃走での飛び降りか。どちらかはわからんが……ご冥福をお祈りします。

 

「……気を取り直して、行くか」

 

扉を開けて中に入る。するとすぐさま扉が閉まり、俺と外を隔絶した。2,3回扉を開けようと力を入れるがビクともしない。……今のところ物音は聞こえないが、怪異がいる時に感じる感覚なら強く感じる。

 

「……いや、強すぎるな」

 

確かにそれなりに大きな屋敷だが、中と外からして築年数はそこまで古くないように見える。ここまで強いオーラだと、相当年数が経った呪具を使わないとならん。偶然入手したか、ここに移住して来たか。そのどちらかだろうな。まあ、俺はあくまで”いる”かどうかがわかるだけでどこにいるかはわからないんだが。と、そこに

 

「きゃああああああ!!!」

 

悲鳴が響く。聞こえた方向からして……2階か!階段を1段飛ばしに駆け上がる。いくつか部屋があるが……一番近いドアを開けてみる。……開かないか。隣の部屋のドアノブに手を掛け、一気に開け放つ!

 

「……そこで何をしている?」

 

「……助、けて、ください」

 

これが、俺と姫野美琴のファーストコンタクトだった。

 

 

 

私の親友である”神代由佳”が血塗れで倒れている。しかも私の悲鳴を聞いたのか、目の……なんというか、特徴的な人が部屋に入ってくる。恐怖と理解不能な状況で私が口に出した言葉は……

 

「……助、けて、ください」

 

明らかに怪しい人に助けを求めるという、後から考えたらとても間の抜けたものだった。

 

 

 

「これはお前がやったのか?」

 

怪異があるだけで、怪異の力を利用した行動か怪異自体が一人歩きしたものかは判別出来んからな。とりあえず部屋にいた少女に問いかける。

 

「違います!私と由佳は親友で、殺すわけ……殺すわけ……!」

 

若干錯乱してるな。仕方あるまい、怪異に巻き込まれることなんてまずないからな。俺たちみたいにこちらから飛び込まない限りは。

 

「……落ち着け。まずは深呼吸だ」

 

「はーっ……はーっ……」

 

少女を落ち着かせながら血塗れの方の少女の様子を見る。血こそ大量に出てるが……傷自体は致命傷じゃないな。まだ息もある。急いでこの怪異にケリつけて病院に運ぶか。

 

「……落ち着いたか?」

 

「……すみません、ありがとうございます」

 

よし、落ち着いたみたいだ。

 

「……まず、お前さんのオトモダチはまだ生きてる。さっさとこの家抜け出して病院運べば間に合うぞ」

 

「本当ですか!じゃあ今すぐ……!」

 

急いで運ぼうとするのを手で制する。ま、怪異を何も知らないし仕方ないんだが。

 

「落ち着け。ここから出るにはある条件がある」

 

「……条件、ですか?それはなんですか?」

 

これを言ったら頭がいかれてると思われるだろうが……

 

「……お前が犯人ではないなら、お前さんのオトモダチをヤった奴は他にいる。そいつをぶち殺さないと出られないだろうな」

 

「殺す……って、犯罪じゃないんですか!?」

 

「安心しろ。法律に抵触はしない。なぜなら犯人は法に縛られず、誰も知らないという噂話みたいな存在だからな」

 

「そんなのが……いるんですか?」

 

「ああ。俺は……いや、俺たちはそういう存在をまとめてこう呼称している」

 

 

”怪異”。道理では説明のつかない異様な存在だ、と。

 

 

「……ふざけないでください!怪異?そんなのあるわけないじゃないですか!きっと由佳だってあなたがやったんじゃ……」

 

少女が俺に対して大声を出す。だが、その時俺と少女ははっきりと聞いた。聞いてしまった。

 

 

 

……まあだだよ。

 

 

 

「っ!?」

 

少女は今の声に反応するが、俺は扉を開きあたりを確認する。……誰もいないな。扉を閉め、少女と向かい合う。

 

「……自己紹介がまだだったな。俺は比企谷八幡……こういうヘンテコ状況の専門家みたいなもんだ」

 

「……姫野。姫野美琴です」

 

「……よし、姫野。まずはこの状況を整理するぞ」

 

「は、はい!」

 

 

現在わかっていること

 

・この家には”ナニカ”がいる

・ナニカは姫野美琴の友人一家を惨殺し姫野美琴の友人にも重傷を負わせた

・ナニカは怪異である

・ナニカを退治しなければ脱出は不可能である

 

「こんなとこだな」

 

「……そのナニカって一体なんなんですか?」

 

「知らん。予想はついてるが、確証がない情報で混乱はさせたくないのでな」

 

「……わかりました」

 

納得したのを確認すると、箪笥や机の引き出しを躊躇いなく開け放つ。

 

「ちょ、何してるんですか!?窃盗ですよ!?」

 

姫野が慌てて止めにかかる。いや、何って……

 

「使えるもんはなんでも使え、だ。生き残るためにな。それに、家主は十中八九くたばってるからな」

 

現在生存が確認されてるのは姫野とかろうじてだが神代由佳。後生死不明が神代由佳の家族だな。

 

「お前も手伝え。死にたいなら手伝わなくてもいいが」

 

「……手伝います」

 

そうして2人がかりで部屋を探索し始める。しばらくすると

 

「……何か、あります」

 

その姫野の声に反応して振り向くと、姫野はどうやらベッドの下に何かあるのを見つけたらしい。

 

「届くか?」

 

「届か……ないです」

 

なんか長い棒みたいなの探さないとな……神代由佳の外傷からして怪異のエネルギーでの破壊ではなく刃物での損傷だろうから気をつけるべきはいつどのタイミングでソレが出てくるかだ。下手に歩き回るのは勘弁しておきたい。

 

「……今の所はこれで全部か」

 

一通り探し終わる。何かがベッドの下にあるぐらいで、他にめぼしいものは何もない。隣の部屋に移るか。

 

「……ハルちゃんはどこへ行ったのかしら」

 

「……ハルちゃん?」

 

誰だそいつ。ハルという名前からおそらく女性、年上なら”ちゃん”とは呼ばないだろうし神代由佳の妹あたりだろう。そして棚をどかしたり棚の中を漁ったりしていると、あるものを見つける。

 

「……鍵か。とりあえず回収しておこう」

 

その後はしばらく探しても何も見つからなかった。部屋を出て、大広間に向かうと……

 

「……おじさん!」

 

大広間中央で禿げたおっさんがくたばっていた。……出血の量や傷の深さから見ても手遅れだな。

 

「ど……どうなってるの……」

 

「……理解したか?これが怪異だ。人間のルールなんて御構い無し、ただ気の赴くままに動き、暴れ、殺し回る。そういう存在だ」

 

「そ、そんな……」

 

そしてまた、ソレは存在を示した。

 

 

ふふふ……。

 

 

「……っ!」

 

笑い声か……薄気味悪い。さっさと終わらせるか。

 

「きゃ……!」

 

そんなことを考えていると、姫野の悲鳴が聞こえたので姫野がいる方を見る。すると、血のついた襖にドン、ドンと何かがぶつかる音が辺りに響か、少しずつペースが速くなっていく。誰が太鼓の達人やれと言った。

 

「姫野、襖から目をそらさずにゆっくりとこちらに歩いてこい」

 

ソレは、間違いなく襖の向こうにいる。そして……

 

ガラッ

 

 

 

……わたし、鬼ごっこがしたい

 

 

 

”鬼”が、現れた。




え、八幡が噛んでない?仕事モードだからね。日常では普通に噛む。言って仕舞えば自己暗示をかけて自身が視点のゲームの台詞を読み上げているような感じです。


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第2話:呪いの人形

一応時系列的には

高校2年1学期始業式→美琴がひとりかくれんぼに巻き込まれる→八幡乱入→俺ガイル原作1巻

という感じにするつもりです。要は、怪異症候群の方優先で俺ガイル側のイベントを途中抜けしたりする可能性があります。ご了承ください。怪異症候群さえ終われば俺ガイルストーリーに怪異絡めやすいんですけどね。そして怪異症候群調べ直してたら八幡より美琴の方が年上やん……どうしよ……まぁどうにかなるか。現時点で八幡は美琴が年上って気付いてないし。


その鬼は、熊のぬいぐるみだった。刃物持ってるけど。

 

「俺たちはしたくない!」

 

姫野に駆け寄り抱き上げて部屋の外へと走り出す!正直俺なんかにお姫様抱っこされてるわけだけど文句は後で受け付ける!

 

「とりあえず走る……舌噛むなよ」

 

「え、ちょっと……」

 

「文句は後だ!」

 

部屋の外に繋がる襖を蹴り壊し部屋の外へ出る。隠れる場所を見つけてない以上、撃退するしかない!後ろを見ると、やはりぬいぐるみなのか移動速度はそこまで速くない。神代由佳の部屋に入り、ぬいぐるみが入ってくるのを確認する。

 

「……下がってろ」

 

「は、はい……!」

 

勉強机のそばにある椅子を取り構えると、ぬいぐるみが徐々に近付いてくる。3メートル……2メートル……1メートル……

 

「そぉらよっと!」

 

ぬいぐるみを椅子で殴り飛ばす。吹っ飛んだぬいぐるみが壁にぶつかるのを確認すると姫野の手を取って走りだす。大広間に入り、ぬいぐるみが追ってこないことを確認する。

 

「……撒いたか」

 

「はぁ、はぁ……なんなんですかあれ」

 

「あれが怪異だ。細かい説明は生きて帰れたらしてやるよ」

 

「……はい」

 

ぬいぐるみが吹っ飛んだ時に赤い糸で縫った跡があった。ぬいぐるみ、赤い糸、「まあだだよ」という言葉……

 

「……一応、この怪異がどんなものかはわかった」

 

「本当ですか!?」

 

「ああ。この怪異は、ある呪術によって引き起こされた代物だ。その名も……」

 

 

ひとりかくれんぼ

 

 

「ひとりかくれんぼ……ですか?」

 

「ああ。ひとりかくれんぼとは降霊術の一種だ。コックリさんは知ってるか?元は関西地方や四国地方でコックリさんと共によく知られる遊びであったといわれるが、ある大学のサークルが都市伝説の広まりかたを研究するため、意図的にこうした話を世に流布したとする説もある。なお、コックリさんと同様に、自分自身を呪うと言う説もあるな」

 

「どうやって終わらせるんですか?」

 

「……」

 

「……比企谷さん?」

 

「……忘れた」

 

いやマジで。大雑把には覚えてんだよ。ただ細かい手順がわからないんだよ。覚えてるのは3回「私の勝ち」と言うこととぬいぐるみを燃やすことだけだし。

 

「……ダメじゃないですか。調べるしかないですね」

 

「一先ず、お前は襖を調べてくれ。俺はこの死体を調べる」

 

「…………………………………………わかりました」

 

めっちゃくちゃ葛藤してたなこいつ。仕方ないか。自分を襲ってきた相手のいた場所を調べたくはないだろうし。……さて、調べるか。

 

 

 

「……鍵、見つけました」

 

お、何か見つけたみたいだな。俺?見つからなかったよ。それにしてもこのおっさんの頭焼け野原だな。

 

「その鍵に何か書いてたりするか?」

 

「えっと……『西部屋』とだけ書いてあります」

 

西部屋か……2階には部屋こそあったが。

 

「そこがどの部屋かとかはわかるか?わからんなら地道に……2択だけど」

 

「多分……1階です」

 

1階か。よしわかった。蹴破った襖から顔を出し、近くにぬいぐるみがいないか確認する。……いないな。

 

「よし、行くぞ」

 

「あ、はい」

 

「そういえば、姫野ってこの家の外は見たか?」

 

「いえ……見てませんけど。それがどうかしたんですか?」

 

「いや……見てないならそれでいい」

 

さすがに女の子にそう何度も死体を見せたくはないからな。

 

「……そうですか。あ、多分そこです」

 

話しているといつの間にか部屋の前まで来ていた。ドアの鍵穴に鍵を突っ込む……開いたな。ドアを開けて中に入る。

 

「……目ぼしいものはないな」

 

「部屋に入って第一声がそれですか……」

 

まあいい、色々探ってみるか。

 

 

「あ、メモ見つけました!」

 

「good job!なんて書いてある?」

 

「えっと……『春子がいつも物置の鍵を持ち出すので少しの間、大広間の時計の裏に隠すことにした。あそこには高価な壺があるからな。壊されちゃたまらん』……です」

 

「ナイスだ。とりあえず、この部屋と隣の部屋を調べたら大広間に行くか」

 

俺がそう思いながら箪笥を漁っていると……

 

「きゃっ!」

 

姫野の驚いた声に俺はそちらを向く。パソコンが点いているな。パスワードは……知ってたらまずいだろうに。

 

「もう……びっくりした。休止モードだったのね」

 

なんだ、スリープしてただけか。驚かすなよ。

 

「……比企谷さん、見てください。ひとりかくれんぼについてのサイトです」

 

「でかした姫野。どれどれ……」

 

姫野の後ろから画面を覗き込む。

 

ひとりかくれんぼとは

 

別名『ひとり鬼ごっこ』とも呼ばれるものです。本来は降霊術や呪術などの、儀式みたいなものに使われるようです。浮遊霊など成仏できない霊は実体を欲しがっているので、呼び寄せて人形に乗り移らせるということです。そうすることで、霊とコンタクトを取ったり呪術師としての質を高めることが目的です。ただし、霊感のある人、霊媒体質の人はひとりかくれんぼをすることはおすすめできません。もしも、ひとりかくれんぼをするのであれば自己責任でお願いします。何があっても当管理人は責任を負えません。

 

「……そのひとりかくれんぼが……私たちの置かれている状況……」

 

「ようやく理解できたか。まあ仕方あるまい、超常に巻き込まれる人間など滅多にないからな」

 

重要なのは終わらせ方だが……きっとこのサイトに書いてあるだろう。マウスを操作して画面のスクロールを始める。

 

「あった……!『ひとりかくれんぼの終わり方』……!」

 

それを読もうとした瞬間

 

鬼は、再び現れた。

 

 

 

もういいかい……?

 

 

 

よくねえよ畜生!バリケード……素材がない!さっきみたいに何か叩きつけるしかないか!そんなことを考えていると、ドアが開け放たれ鬼が入ってくる。

 

 

ふふふ……みいつけた

 

 

慌てて傘で殴り飛ばす。が、しかし

 

 

あはは……!

 

 

「効いてねえよ畜生が!」

 

姫野の手を引き走り1階大広間に入ると、高そうな壺が目に入る。

 

「勿体無いが……これでも喰らえ」

 

壺を叩きつけると、今度こそ動きが止まる。

 

「……撒いたようだな」

 

「……ふぅ」

 

すぐに部屋を出て撒いたのを確認すると、姫野は疲れたのか廊下に座り込む。

 

「……疲れました」

 

「俺もだ……とりあえず、パソコンで終わり方を見るか。疲れたなら肩を貸すが……」

 

「……大丈夫です。少し楽になりましたし」

 

それならいいが……。

 

「無理はするなよ?」

 

「……はい」

 

と、そこに

 

ピーポーピーポーピーポーピーポー

 

救急車のサイレンが聞こえてくる。いつも思うんだけど救急車のサイレン聞いて気が抜けるのって俺だけ?もうちょっと低い音がいいと思うけど。

 

「助け……!」

 

「……ありゃダメだわ。怪異に科学とかは効かない。いたずらに犠牲者を増やすのはアウトだ」

 

「そう……ですよね」

 

歩き出し、西部屋の前にその隣の部屋に入る。

 

「救急箱か……使えるかもな」

 

鬼が来たらぶん投げればいいし、中の包帯使えば神代由佳の応急処置ぐらいなら出来るかもしれん。

 

「鍵見つけました!」

 

見せられた鍵は、玄関の鍵とは違い、いわゆる昔のタイプのやつだった。

 

「これは玄関のものじゃないな……古いものの鍵か。この家で仏壇みたいなのを見たことはあるか?」

 

「えっと……1階大広間です」

 

ウヘァ……エンカウントしたくねえな。

 

「……西部屋行ってから行くか」

 

「賛成です」

 

西部屋に入り、電源を点けようとするが……点かない。よく見ると電源ケーブルが引き千切られている。誰だよライダーカッティングした戦いの神(笑)は。

 

「予備の電源ケーブルを探すしかありませんね……」

 

「なら丁度いい。先に大広間で時計の裏と仏壇を調べるか」

 

ふと見ると、椅子の上に鍵が落ちていた。……鬼が落としたものだろうか?

 

大広間にて時計を外し裏を見てみると、そこには鍵が貼り付けてあった。メモが正しければ物置部屋の鍵だろう。姫野を見ると仏壇を開けているが……特に目ぼしいものはないみたいだ。

 

「特にありませんでした……お供え物とかマッチがあるぐらいで」

 

「そうか……こっちはビンゴだ。物置部屋の鍵を見つけた」

 

物置部屋が誰かわからない以上、手当たり次第になる。まずは仏壇側の扉を出てすぐの扉に行って見る。

 

「……鍵がかかってますね」

 

物置部屋の鍵を突っ込んでみる。……入らないな。

 

「あ、比企谷さん。もしかしたらこれで……」

 

姫野が見せて来たのは西部屋に落ちていた鍵だった。……試してみるか。

 

カチャ

 

「……開いたな。何があるのかわからん、俺が先に入るがいいか?」

 

「は、はい……」

 

なんだか知らんが、俺の直感が警鐘を鳴らしまくっている。「この子に見せてはいけない」ってな。扉を開けると、そこは洗面所……つーか風呂場だった。俺が奥の浴室に入って目にしたものは

 

「……チッ、こいつは酷いな。姫野!こっちを見ずに洗面所に戻れ!」

 

 

 

上半身と下半身が切り離された、大学生ぐらいの男性の死体だった。




ひとりかくれんぼ三大名物が一つ

ぶった切り兄貴


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第3話:戦う理由

「何があったんですか!?」

 

「外見年齢から推測するに神代由佳の兄!そいつが上半身と下半身を切り離されてくたばってんだよ!絶対想像するなよ、SAN値直葬されたらかなわん!」

 

「は、はい!」

 

俺はゆっくりと上半身の死体に近付く。そして死体に触れようとした瞬間

 

「ガアアアア!!!」

 

「何ッ!?」

 

死体が襲いかかってきた!爪を立てて俺を引き裂こうとしてくるが……

 

「離れ、ろ!」

 

思い切り顔面を殴り飛ばしてしまった。その衝撃で頭蓋骨がひしゃげ、脳漿を撒き散らしながら死体は倒れこむ。……やっちまった。反射的に妖気を使ってしまった。俺の脳裏に2年前の出来事と5年前の出来事が浮かび上がる。

 

 

 

『人間は悪だから、羨むからこそ人であれるんだ』

 

『……その在り方、見せてもらいましょうか』

 

 

 

『……約束したんだ。幸せになるって』

 

『だから、お前は死ね』

 

 

 

「……胸糞悪いな」

 

2年前と5年前に俺はある怪異を封印した。両親と小町を殺した怪異が俺に乗りうつろうとした時に取り込んだ5年前。中学の修学旅行で犯罪者のみを殺し続ける怪異と契約した2年前。5年前の奴は今どうしてるかは知らんが、2年前の奴は今頃俺のナカで意地の悪い微笑み浮かべながら俺を観察してるんだろうな。

 

「……何もない、か」

 

俺が風呂場から出ると、姫野がついてくる。

 

「……大丈夫、ですか?」

 

「……大丈夫だ。もっとえげつない死体を見たことがあるからな」

 

それでもあの衝撃は強かったんだが。

 

「……そんなことはどうでもいい。予備の電源ケーブルを探そう」

 

「は、はい……」

 

しばらく歩き回っていると、1階の扉の先に地下があるのを見つけた。その地下には2つの扉がある。おそらく書庫と物置部屋だろう。

 

「……どっちから行くか」

 

「……左でお願いします。勘ですけど」

 

「わかった」

 

鍵を当てはめてみると、物置部屋の鍵が合うことがわかった。扉を開けて中に入ると、そこにはいくつもの棚がある。その棚を漁り始めて数分後、俺と姫野はあるものを見つけた。

 

「……孫の手か」

 

「電源ケーブルです!これで終わり方が……」

 

「こっちは孫の手だ。これを使えば神代由佳の部屋のベッド下のものを取れるんじゃないか?」

 

「そうですね。どっちから先に行きます?」

 

「……パソコンだろうな」

 

「ですよね……」

 

西部屋に向かい電源ケーブルをセットし、パソコンを再起動する。

 

「さっきのサイトは……あった。『ひとりかくれんぼの終わり方』」

 

その1 コップに塩水を入れ、半分口に含む。準備が出来たら、ぬいぐるみを探す。

その2 ぬいぐるみを見つけたら、口の中の塩水とコップの残りの塩水を吹きかける。

その3 ぬいぐるみに向かって『私の勝ち』と3回言う。

 

これで『ひとりかくれんぼ』は終了です。その後、必ずぬいぐるみは燃やしてください。

 

「……よし覚えた。必要なものは火と塩水。後はぬいぐるみを捕まえるトラップと燃やす場所か」

 

「確か……2階の座敷に暖炉があったはずです」

 

「よし、となると後は火と塩水、トラップだな」

 

塩水を手に入れるために台所に向かう。そこで塩と水道水を拝借して塩水は確保できた。しかし

 

「……燃やし続けるとなると、火だけじゃ足りなくないですか?」

 

「ふむ……それもそうだ。だがどうする?」

 

「……油ならどうでしょう?何か燃やす媒体と油を使えば燃やす時間を引き伸ばせると思います」

 

「名案だ。油も拝借しておこう」

 

そういうことで油も確保した。後は燃やす媒体とトラップだ。

 

「ですけど、燃やすものは何を使うんですか?」

 

「書庫があるだろ。古い本なら乾燥しててよく燃えるだろうな」

 

「……」

 

「……生き残るためだから仕方ないだろ。悪かったからその冷たい目をやめてくれ」

 

姫野の視線にたじろぎながら書庫に向かい、適当に湿気が少ないものを5,6冊ほど確保する。

 

「これで後は火とトラップだ」

 

「火、ですか……あ、そういえば!」

 

何かを思い出したのか姫野が走り出し、俺はそれを追って大広間へと向かう。見ると姫野は仏壇から何かを取り出しており、それをよく見ると……

 

「マッチです。これならどうでしょう」

 

「グッド!後はトラップだけだが……一旦ベッド下を探るか」

 

「はい。由佳……」

 

2階に上がると、後ろから物音が聞こえる。反射的に振り向くとそこには……

 

「……嘘……」

 

首だけがない身体が歩き回っていた。ソレはこちらに気付くと襲いかかってきた!

 

「チィッ!」

 

慌てて等さん仕込みの格闘術で受け流す。そしてすぐさまナイフを取り出してーーーーー

 

「死人は死人だ、あまり動き回ってんじゃねえ」

 

両手足の腱を切り裂く。そして身動きの取れなくなった身体を階段から落としておく。

 

「……容赦ない」

 

容赦してたら生きていけないんで。ええ。

 

「……そういえば、一つ聞きたいんですけど」

 

「どうした?」

 

「……比企谷さんは、なんで戦ってるんですか?」

 

……。

 

「……俺は、実の家族を怪異のせいで亡くしてる」

 

「ッ!?」

 

「そん時に俺が養子として引き取られたのが怪異の専門家でさ。必然的に怪異のせいで家族を亡くした人とかの話を聞くんだよ。……俺はすでに失ってるから。だから、怪異が人を殺さないように抑え込む。それが……誰も知らない怪異を知ってる俺が、唯一出来ることだから」

 

「……比企谷さん」

 

「……ま、俺が出来るのは解決だけだ。これでも怪異関連者の界隈では俺って結構有名なんだぜ?解き明かすことしか出来ないが。……誰も死なせないんじゃなく、極力死なせないことしか出来ないから、戦う」

 

「悲しみを知ってる。苦しみを知ってる。憐れまれることへの怒りを、憎しみを知ってる。そんなもん知ってんのは俺ぐらいでいいよ」

 

「……」

 

「……それに、誰かと約束したからな。誰かは忘れたが」

 

「……え?」

 

「……暗くなっちまったな。さーて、さっさと行くぞー」

 

神代由佳の部屋に入りベッド下に孫の手を突っ込む。ついでに神代由佳の応急処置ぐらいはしとくか。消毒と包帯巻くぐらいしか出来ないが。

 

「鍵か。多分2階西部屋……ここの隣の部屋だな」

 

「はい。由佳のお兄さんの部屋です」

 

部屋を出て鍵がはまることを確認すると扉を開く。探索開始っと。

 

本棚は教科書ばかりだし……勉強机の引き出しを開けて見るか。

 

ガラッ

 

『巨乳天国』

 

バァン!!!!!

 

引き出しを閉める。何やってんだこいつ。

 

「……どうかしたんですか?」

 

「いや……なんでもない。本当になんでもない」

 

「……?まあ、いいです。こっちは粘着テープを見つけました!ぬいぐるみを捕まえるのに使えると思います」

 

「そうだな。確か1階大広間のそばに狭い通路があったはずだ。そこにトラップを仕掛けよう」

 

先に暖炉の準備だ。2階座敷に向かい暖炉に本と油をぶち込む。そして火を付ければ……

 

 

熱くなれよぉ!

 

 

なんだ今の。炎の精霊がいた気がする。

 

「さて、後はトラップだけだな」

 

「はい、早く出たいです」

 

「……そうだな」

 

まだ解き明かされてない謎がいくつもある。それがわからないうちは、完全に抜け出したとは言えないだろう。だけど……

 

「……ふふふ」

 

希望を見出している姫野にそれを伝えるのは、残酷だろうな。

 

「……これでトラップも準備完了。後は奴を連れてくるだけだ」

 

この怪異での最後の戦い……失敗は許されない。ぬいぐるみを探し始めて数分、台所に、ソレはいた。

 

 

ふふふ……みいつけた

 

 

「……今度は、俺たちが捕まえる番だ」




ひとりかくれんぼ三大名物が一つ

引き出しの中のエロ本


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第4話:怪異焼却

お久しぶりです。今回はひとりかくれんぼ編最終話となります。これが終われば俺ガイル側ですね。なお、俺ガイルは1話しかなくすぐにくねくねの模様。


飛びかかってくるぬいぐるみが振るう包丁をナイフで受け止める!同業者に貰った業物だ、そんじょそこらの包丁で壊れると思うな!……と思ってたら。

 

「……あり?」

 

確かにぬいぐるみの振るう包丁は確かに力こそあるが、その体が軽すぎた。衝撃を片腕で受け止めても作用反作用の法則でぬいぐるみが吹っ飛ぶ。やばいこいつ雑魚い。いや、殺傷力に関しては普通に人殺せるけど……反撃に対しての防御力がめっちゃくちゃ雑魚だ!考えてみればぬいぐるみが動き出して襲いかかってくるとか普通の人なら恐怖で反撃どころじゃねえわな。俺は『狂戦士の魂(バーサーカーソウル)』を使った時の遊戯のごとく連続攻撃を仕掛ける。2、3回打ち合っていると、かすかに物音が。反射的に振り向くと……

 

「ガアアアア!!!!!」

 

「チッ、怪異も本気ってことか!」

 

後ろから神代由佳の父親が襲いかかってくる。つーか両手足の腱切ったから動けないはずなんだが。なんで動いてんのさ。しかもその後ろには腕だけで這い寄ってくる神代由佳の兄。なんか昔の大晦日ガキ使で似たようなの見たことある。なんだっけ、エクソシスト。とりあえず今度こそ動かないように両手足を切り落として残骸をぬいぐるみにシュゥゥゥゥ!超!エキサイティン!バトルドーム!ツクダオリジナルから!とはならん。あっさり包丁で叩き落とされてるし。ぶん投げにくい身体の部分はとりあえず台所から拝借した包丁を突き刺し地面に縫い付けておく。骨に当たると力いるからとりあえず骨のない部分を突き刺しとこうか。

 

「じゃ、誘い込むか」

 

神代由佳の父親が開け放った扉から部屋の外に。そしてそのまますぐそこの大広間に入り込んで嫌がらせに()()()()()()()()。え、異常?大丈夫大丈夫、遠心力をかけてるから俺自身への負担はそんなにない。せいぜい襖が吹き飛んで壁にでかい穴があくぐらい。そしてすぐさま粘着テープのトラップを仕掛けた通路に駆け込み……

 

「……!?」

 

俺の後を追ってきたぬいぐるみが粘着テープの罠に引っかかりその場に転倒する。正直馬鹿笑いしたいけど呪われたら困るので押しとどめておく。

 

「……物凄い音がしたんですけど。何かやらかしたんですか?」

 

「……俺が何かやらかした前提で話進めるのやめて?」

 

「実際なにしたんですか?」

 

「長机ぶん投げて壁にでかい穴空いた」

 

「……」

 

そんなことはどうでもいい。さっさと終わらせなければ。笑い声をあげるぬいぐるみに塩水を吹きかけて

 

「僕の勝ちだ!」

 

「比企谷さんって一人称僕でしたっけ」

 

デスノネタわかんないか。なら仕方ない。とっととこいつを燃やす。ぬいぐるみを引っ掴むと二階暖炉へと走り出す……体が重い!消滅を恐れての最後の抵抗って訳か!だがな……

 

「これで……終わりだ!」

 

暖炉にぬいぐるみを叩き込む!ふと後ろを見ると追いかけて来た姫野がこちらを見て……

 

「……終わったん、ですか?」

 

「…………(明確には終わりじゃない。この事件がどんなもので、どうやって引き起こされどんな事象が起きたのかが正確にわからない以上完全に終わった訳じゃない。だが……)ああ、終わったよ」

 

ぬいぐるみが徐々に燃え尽きて行くのを眺めながら、俺はスマホから救急車を呼んでから特務課に連絡を行う。

 

「……もしもし」

 

『はい、こちら特務課です』

 

「比企谷です。なんとか怪異にケリつきました」

 

『了解しました。伝えておきます』

 

一通りの連絡が終わり、ふと姫野の方を見ると

 

「……………………」

 

「……眠ってんのか。ま、仕方ないか」

 

こんなとんでも事件初体験だったんだ。精神への疲労も大きいだろうな。

俺は眠っている姫野に俺の着ているコートを掛けてから神代家を出てそろそろ来るであろう救急車の誘導を行うことにした。ついでに神代由佳の傷の状態も見ておくか。

 

 

 

「おっ、気が付いたな」

 

私は目覚めるとどこかの部屋のベッドで眠っていた。上半身を起こして部屋にいた男の人の方を見る。

 

「……ここは?」

 

確か比企谷さんがあのぬいぐるみを燃やしたのを見ると急に視界が暗くなって……多分、安心して寝ちゃったんだ。

 

「ここか?ここは菊川警察署だ。君の友人から通報があってね。駆けつけたら、そこに置いてあるコートが掛けられた君と応急処置のされた女の子が倒れていたからここまで連れて来たんだ」

 

よかった。男の人が来た時にはまだ由佳は生きていたんだ。男の人が指差した方を見ると、椅子の背もたれに被せてある灰色のコートがあった。一晩というわずかな時間だけど、そのコートは見覚えがあった。そのコートを着ていた人は私を見つけ出して、私を守って、私を助けてくれたから。

 

「ったく、八幡も最後までついてやればよかったのに」

 

「……比企谷さんを知ってるんですか?」

 

比企谷さんを下の名で呼んでいる。ある程度親しいとはわかるけど……

 

「ああ。おそらく今生きている人間の中で、八幡に関して一番詳しいのは間違いなく俺だろうな」

 

え?それってどういう……

 

「……自己紹介をしておく。俺は菊川警察署の警部補、氷室(ひむろ) (ひとし)。そして、八幡の父親だ」

 

「……あれ?でも比企谷さんは、家族を亡くしてるって……」

 

「ああ、俺は戸籍上の……義理の父だからな。怪異で家族を失った後俺が引き取った」

 

義理の……父。というか怪異について知ってるんですか……。

 

「ああ、この事件について完全な被害者である君にとっては思い出したくないかもしれないが、差し支えがなければ今回の事件について話してもらいたいんだが……」

 

それに関しては別に構わない。構わないけど……

 

「……比企谷さんからはまだ聞いてないんですか?」

 

「……ああ、八幡なら『学校あるから報告書とかは放課後書く』とか言ってすぐに帰ったよ。まったく……」

 

……意外と一般人っぽい。奇妙な状況を何事もなく、まるで日常のように動いていたから比企谷さん自身も超人なのかと思っていたからなおさら驚いた。

 

「君に聞きたいのは君が怪異に巻き込まれてから、何があったのかだ。由佳君から聞いたよ。『ひとりかくれんぼ』を遊び半分でやったらとんでもないことになった、とな」

 

「……ゆ、由佳が……『ひとりかくれんぼ』を……」

 

由佳が、『ひとりかくれんぼ』を……あの惨劇を引き起こした?

 

「君が巻き込まれたのは彼女の責任だ。……だが、許してやってくれ。彼女は今回の事件を一生後悔することになる。その時、君まで彼女を見離してしまったら……わかるね?」

 

「はい……」

 

由佳はこんなことになると分かった上でやったわけじゃない。それを後悔するなら……私は友人として、由佳を責めることも見離すこともしない。

 

その後もいくつかの質問に答えた。氷室さんは私を疑うような素ぶりを一切行わず、記憶を整理する余裕もくれた。

 

「さて、これで聞きたいことは一通り終わった。俺の仕事は証人者と事件の確認だけだ。……もうお家に帰っていいよ。あとはこっちで全て処理する」

 

「……えっ?」

 

処理って……?

 

「こんなこと、世間に公表できるわけがないだろ?報道規制も然り。警察署内は大慌てだ。こう言っちゃ悪いが……君が襲われた人形も、現実離れ過ぎて誰も納得しない。上辺だけ見れば、君が大量殺人犯の容疑者なんだ」

 

もちろん八幡や俺たちは信じるがね、と氷室さんは付け加える。

 

「そ……そんな……」

 

だけど氷室さんの言葉で、あの時比企谷さんが言った言葉を思い出す。

 

 

『怪異が人を殺さないように抑え込む。それが……誰も知らない怪異を知ってる俺が、唯一出来ることだから』

 

 

……考えてみれば、比企谷さんに怪異のことを説明された時も私は信じなかった。社会に伝えても、ホラ話と一笑に付されるのがオチだろう。

 

「無茶を言ってるのはわかる。だが、君は今まで通りの学生生活に戻るんだ。こうして俺が一人で来たのも、コトを穏便に済ませる為。大人数で君を囲んで尋問したり監視したりもしない……というか、そんなことをしても意味がないししたら八幡に殺されかねない

 

……?今最後に何か言ったような。そして氷室さんの顔色が少し悪い。

 

「こういった怪異事件はね。静かにゆっくり時間をかけて世間に忘れさせるのが一番なんだ。……なに、心配はいらない。こういう事例は稀だが、君が初めてじゃないよ」

 

「私以外にも……あるんですか?」

 

「……まぁね。でもここまでの死者を出したのは俺の知る限り初めてかな?」

 

こういうことを何でもないように言うのが怖い……あ、でも比企谷さんもこんな感じに言いそう。

 

「とは言っても、暫くは監視の目がつくかもしれない。警察内部には頭の固い連中がいるからな……八幡を外部協力者として引き入れた時も反対が多かったし。……ああ、俺は信用してくれて構わないよ」

 

また何か小声で呟いている。そうしていると、氷室さんが数字の書かれた紙を渡してくる。

 

「……念のため八幡の連絡先を渡しておく。何かあったらここに掛けてくれ。俺みたいな公務員は行動に制限がかかりやすいからな、ある程度自由に行動出来る八幡の方がいいだろう。それに、今初めて会った俺よりも信用しやすいだろうからな」

 

「……ありがとうございます……」

 

貰った紙を服のポケットに入れておく。落とさないように気をつけておこう。

 

「……もしかしたら近い内、君を呼ぶことがあるかもしれない。怪異事件に敏感な男がいてね。詳しい話はそいつにしてやってくれ」

 

そう言って氷室さんは部屋を出て行った。

 

 

 

「……よう!」

 

俺は部屋を出て特務課に戻ろうとすると、扉のそばに立っていた男に呼び止められる。

 

「……おっと、そうだったな。怪異に敏感な男はもう一人いたっけか」

 

俺が若干呆れているが、そんなことは露ほども知らず男は話しかけてくる。

 

「……はぁ?いきなり何言ってんだよ。まぁ、そんなことより例のお嬢ちゃんの様子はどうだい?」

 

「相変わらず情報が早いな……剛。目立った外傷はない……というか、怪我などは一切と言ってもいいほどなかったよ。明日には普通の生活に戻るだろうさ」

 

こいつは加賀(かが) (つよし)。新聞記者でオカルト関連のジャーナリストだ。時々怪異の被害者にしつこく質問をするせいで八幡に2,3メートルほどぶん投げられている。こいつ自身丈夫な上重傷にならないよう八幡自身手加減しているからそれによって病院行きになったことは一度もないがな。……前に八幡が『そろそろ気絶させるぐらいはやるかな』と呟いていたことは俺の記憶には存在しない。存在しないったら存在しない。

 

「……やっぱり怪異か。ちょうどいい!なら俺っちもその女の子にちょっくら話でも聞かせてもらおうとするかね!」

 

本当にこいつは懲りないな。

 

「……軽率だぞ。いくら取材とはいえ、怪異に巻き込まれた女の子だ。暫くそっとしといてやれ。それに、名目上は今回の怪異の担当は八幡だ。今度こそ病院送りにされかねんぞ」

 

「……今日はやめとくか」

 

それが賢明だ。そのまま立ち去ろうとすると、剛が再度呼び止める。

 

「……今日の『おはイチ』見たか?あの司会者、『加賀はオカルト路線に走りすぎて世間を困惑させている』……だとよう!」

 

いや見てないが。実際何も知らん側からすれば頭のイカれた発言だろうに。

 

「お前も知ってんだろ……俺っちが未解決事件の真相をいくつも事件にしていることくらいよぉ!」

 

あのな……

 

「その記事が書けるのは誰のおかげだ?ま、お前の働きは認めてるが……今回ばかりは事件が大きすぎる。それに彼女はこれから心のケアが必要になるかもしれない。暫くそっとしといてやれ」

 

「……しゃあねぇなぁ……」

 

そんな話をしていると、美琴くんが部屋から出てくる。タイミングが悪いな……

 

「……もう平気なのか?」

 

「……はい」

 

すると、剛がすぐ騒ぎ出した。

 

「……おおっ!君が今回の怪異に巻き込まれたお嬢ちゃんかい!?こりゃあ……中々のべっぴんさんd」

 

ゾワッ!!!!!

 

「……いや、なんでもない」

 

十中八九八幡の仕業だな……あいつは自分が受け持った相手がちゃんと立ち直り進み出すまでサポートする。それに絡んだり邪魔したりすると軽い呪いをかけたりすることがある。昔……八幡が特務課の外部協力者として参加し始めて最初の案件はあるジャーナリストがしつこく巻き込まれた人を追いかけ回した時は八幡が呪っていたからな。ちなみにそのジャーナリストは次の週に交通事故で左足複雑骨折の重体の上癌が発覚し、しかも今までにしつこく絡んだ相手に精神的苦痛を受けたと訴えられ癌こそ完治したものの今でも左足を引きずりながら借金返済に追われているらしい。さすがにそこまで酷い呪いはかけないように言い聞かせておいたが……今では男性には生え際が3cm後退する呪い、女性には高速道路に入ると車のエアコンがぶっ壊れる呪いをかけているらしい。

 

「あの……氷室さん。私に会わせたい人って、もしかして……」

 

断じて違う(即答)。

 

「いや、こいつじゃないよ。……すまないな、美琴くん。気を悪くしないでくれ」

 

「は……はぁ」

 

「新聞記者の加賀 剛だ。よろしくな!」

 

「……美琴くん。ご存知の通りこんな物騒な世の中だ。よかったら最寄の駅まで送ってあげるが……」

 

そう言うと、剛が若干声を荒げる。

 

「おいおい、物騒ってのは俺のことかぁ?冗談きついぜ」

 

他に誰がいるんだ。

 

「あ……いえ、大丈夫です。一人で帰れます……」

 

そう言って美琴くんは去っていった。

 

「……お前のせいだぞ、剛」

 

「……すまねぇ」

 

 

 

一方その頃、比企谷八幡は

 

「頼まれた以上力になるわ。あなたの問題を解決してあげる。感謝なさい」

 

「アホくさ(なんだこの上から目線。全身の内臓引きずり出してぶち殺してやろうか)」

 

よくわからない奴(八幡主観)に絡まれていた。




同業者…一体何儀さんなんだ。

誤字脱字などあれば報告お願いします


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第5話:逆鱗

今回、強いアンチ傾向があります。ご注意ください。


青春とは嘘であり、悪である。

青春を謳歌せし者たちは常に自己と周囲を欺き、自らを取り巻く環境全てを肯定的に捉える。

彼らは青春の二文字の前にはどんな一般的な解釈も社会通念も捻じ曲げてみせる。

彼らにかかれば、嘘や秘密も、罪咎や失敗、現在進行形で外敵から攻められているこの現状さえも青春におけるスパイスでしかないのだ。

全ては彼らのご都合主義でしかない。

結論を言おう。

青春を謳歌せし者よ。

 

 

砕け散れ

 

P.S.高校生活を振り返ってというのなら普通3年の2学期ぐらいにやりません?なんで2年の1学期にやってるんですか?平塚先生

 

 

 

「お前を先に砕いてやろうか、比企谷」

 

「生徒呼び出しといて第一声それですか」

 

さっさと帰って菊川警察署で報告書書かないといけないんだが。つーか俺を砕くならRPG持ってこい。ゲームジャンルでもセカ○ワでもない方の。ロケランと対戦車ライフルがあって俺を砕く確率が2%ぐらいだから。……妖力無しだとガトリングでもあれば砕けるけどね。

 

「……比企谷。私が授業で出した課題はなんだったかな」

 

悪霊のおいしい料理法 〜霊魂をそえて〜

 

 

 

 

いやふざけました。

 

「はぁ……追伸に書いた通り、高校生活を振り返ってというテーマの作文でしたが」

 

「それでなんで君はこんなナメた作文を書き上げているんだ……なんだこれ?どうしてこうなった」

 

うっせ。こちとら心霊スポットに肝試し感覚で訪れて悪霊とか怪異の怒り買った奴を気絶とかさせて記憶消す程度にぶちのめしたりその後怪異の処理とかがあるせいでいわゆる”リア充”は大嫌いなんだ。無駄に仕事を増やすからな。

 

「……たく、君の目は、死んだ魚のような目だな」

 

妖力を全力解放したら死んだ目じゃなくなるんですけどね。ある怪異研究者によると、俺の目の濁りは人体が通常持ち得ない妖力を内包しているがために歪んだ「在り方」を映し出したものらしいですし。それゆえ妖力を全力解放……擬似怪異となると歪みが消えて濁りがなくなるらしいです。んなこと言っても「アホか」の一言で一蹴されるでしょうからいいませんけど。

 

「そんなDHA豊富そうですか?賢そうですね」

 

「真面目に聞け……!」

 

平塚先生が凄む。正直初めて単独で怪異と戦った時の方が怖かった。わからない人はI○のペニ○ワイズと貞子と伽倻子を同時に相手してるようなもんとでも思っといてくれ。

 

……誰に説明してんだ?

 

「いや、俺はちゃんと高校生活を振り返ってますよ?ただ振り返るような思い出がないだけで」

 

「いや、体育祭とかあっただろう……」

 

「存在を認識されず出場競技がなかったのでそもそも登校してません」

 

「……文化祭は」

 

「風邪引いて休んでました」

 

ごめんこれは嘘。体育祭は事実だけど文化祭の方は怪異研究の協力でサボってた。

 

「……悲しい1年間だな。ともかく小僧、屁理屈を言うな」

 

「屁理屈らしい屁理屈を言った覚えはないんですが……だいたい小僧って。確かに先生の年齢からしたら俺は小僧ですがーーー」

 

ブォン!!!

 

平塚先生の拳が顔のすぐそばを通る。避けなかったのかって?さすがに他の教師がいるなか唐突に教師が生徒ぶん殴ったらやばいって常識はあるんだろ。殴るという事象に関しては手遅れだけど。

 

「女性に年齢の話をするなと教わらなかったのか?」

 

「……教わる前に家族死にましたからね。中学の教師も突如家族が変死した中で唯一生き残った奴を構いたくはないでしょう」

 

「そ、そうか……すまなかったな、心の傷を抉ってしまって」

 

「いいえ、気にしてませんよ」

 

実際クラスメイトなんか誰も俺に近付かなかったし、家族の死を一瞬でも忘れたくて怪異狩りに精を出して出席日数とかは割と死んでたからな。本はよく読んでたから文系は問題なかったし、心情読解に関しては生きた……いや生きてねえな。死んだ人間相手と話し合ったことも何度かある。複雑な事例ばかりだったが。理数系は……うん、まあギリギリレベルだったがここに受かる程度にはあった。

 

「じゃあ、これは書き直しーーー」

 

「いや、待て。君には奉仕活動を命じる。ちょっと、ついてきたまえ」

 

そう言って平塚先生は何処かへと歩いていく。とりあえずあいつに連絡しとかねえとな。俺はスマホを取り出してある人物にメッセージを送っておく。

 

『すまん。ちょっと遅れる』

 

それだけ打って送信するとスマホをポケットにしまって平塚先生を追っていく。

 

「……比企谷。お前に友人はいるのか?」

 

「一人だけですが」

 

厨二病でクッソつまんない小説書く奴が。あいつある一点に関しては特務課全員が一目置いてんのに、厨二病とつまんない小説のせいで台無しになってんだよ。

 

「……彼女は?」

 

「いませんよ。それがどうかしたんですか」

 

なんかだんだんムカついてきた。なんで俺の身辺知らねばならんのだ。

そうしてしばらく歩いて平塚先生はある空き部屋に止まる。その扉を開けるとーーー

 

「……ッ」

 

未だ見たことのないほどの美少女がいた。

 

 

ごめん嘘。姫野の方が美人だわ。姫野には口が裂けても言えんが。だが俺が驚いた理由はそこじゃない。

 

 

雪ノ下雪乃。その空き部屋に唯一いた少女であり、去年の入学式に俺を轢いたリムジンに乗っていた中の一人である。……何故覚えているかって?怪異狩りやってると忘れちゃいけないのが多くて自然と見たものは忘れなくなってんの。まあ轢かれたことに関しては俺が飛び出したのもあるし治療費も、飛び出した俺が悪いのに慰謝料まで払ってくれたから別に文句はない。……9割ぐらいの確率で俺の隣にいるアラサーが仕組んだものだということに察して驚いたのだ。

 

「……平塚先生。入る時はノックをお願いしたはずですが」

 

そう言えばノックしてねえなこのアラサー。人の部屋に入る時はノックするって常識だろうに。昔礼儀正しい怪異と会った時に礼儀間違えて殺されかけたから人付き合い(ほぼ生者とは使わない)のために覚えてる。つーか()の中悲しすぎるだろ。

 

「ノックをしても君は返事をした試しがないじゃないか」

 

「返事をする間も無く先生が入ってくるんですよ。……それで、そのぬぼーっとした人は?」

 

ぬぼーっと、て。他に言い方あるだろ。いや、初対面の剛さんに「おい、怪異が迷い込んでるぞ」って言われたのと比べたらマシなんだが。

 

「彼は入部希望者だ」

 

「……2年F組、比企谷八幡です。……って、入部ってなんだよ」

 

「君には、舐め腐ったレポートの罰としてここでの部活動を命じる。異論反論質問抗議口答えは一切認めない」

 

横暴だ。まあいい、逃げればいい。妖力使えばウサインボルトでもない限り追いつけないし。

 

「というわけで見ればわかると思うが、彼はこの腐った目と同様根性も腐っている。そのせいでいつも孤独な憐れむべき奴だ」

 

「憐れまれる筋合いはないんですけど。これでも今の生活に満足してますし」

 

「友人が一人しかおらず月に一回謎の欠席を行う生活で満足出来るか」

 

出来るわ馬鹿にすんな。

 

「この部で彼の捻くれた孤独体質を更正する。これが私の依頼だ」

 

……依頼?つまりこの謎の部活動は基本的な行動はなく、あくまで第三者からの介入によって初めて行動が出来るということか。ずいぶんと歪な部活動だ。後雪ノ下雪乃、断ってくれ。こんなとこ入れられたら怪異狩りが万全に出来ん。

 

「……お断りします。そこの男の下心に満ちた下卑た目を見ていると身の危険を感じます」

 

俺は初対面の相手を罵倒するような奴に欲情するほど歪んだ性癖は持ち合わせていないんだが。

 

「安心したまえ。この男のリスクリターンの計算と自己保身に関してだけは、なかなかのものだ、刑事罰に問われるようなことは決してしない。彼の小悪党ぶりは信用していい」

 

絶対褒めてない。このアラサーに婚期が10年ほど伸びる呪いをかけてやる。

後誰が小悪党だ。こちとら人知れず人助けしてるんだからどちらかというとヒーローだろうが。……俺みたいなヒーローいたら世界終わるな。じゃあ仮面ライダーエターナルみたいなダークヒーローでいいや。

 

「いや常識的な判断が出来ると言って欲しいんですが……」

 

「小悪党……なるほど」

 

聞いてない上に納得しやがった。

 

「まあ、先生からの依頼ならば無下には出来ませんし。承りました」

 

「そうか、なら頼んだぞ。雪ノ下」

 

そう言って平塚先生はこの部屋を立ち去っていった。……ドアのそばでガン待ちしてるじゃねえか。こりゃドアから逃げるのは骨が折れるな。疲労的な意味と物理的な意味で。後者で折れるのは俺じゃなくて平塚先生だけど。とりあえず俺は教室後ろに積まれてある椅子を取り床に置くとそこに座り込む。

 

「……座っていいと言った覚えはないのだけれど」

 

「座ってはいけないと言われた覚えもないがな」

 

こうなったらこの状況を脱することに全力を費やしてやる。俺は意識を仕事モードに切り替えて状況を確認する。

 

……ドアの横約1.2mに平塚先生、俺から概算距離で約3m離れたところに雪ノ下雪乃。窓はカーテンが揺れていることから開いているのは確定。教室のサイズ的に窓までは4mから5m。俺の身体能力が正確にはわからんが、1秒〜1.5秒で窓からは飛び出せる。そっからはフリーランニングの要領で壁を走ればいいか。こんだけしかわからんな。情報集めだ。

 

「……そもそも、ここは何部なんだ?何も聞いてなくてな」

 

「……当ててみたら?」

 

そう来たか。ならば……特別な機材を必要とせず、単独でもさほど問題のない文芸部か?いや違う。文芸部ならば依頼などは存在しない。あるかもしれんが人の更正などの依頼は間違いなくありえない。意識を研ぎ澄ませろ。あらゆる情報から「それ」を推察するんだ……

 

『君には奉仕活動を命じる。ちょっと、ついてきたまえ』

 

『この部で彼の捻くれた孤独体質を更正する。これが私の依頼だ』

 

依頼でありながら報酬と思われるものは存在しない。ならば報酬というもの自体が存在しないんだ。それはつまりボランティア……奉仕活動に他ならない。ならば答えはーーーーー

 

「ボランティア部、もしくは奉仕部と言ったところか」

 

「……驚いたわ。まさか当たるとは」

 

当たってたか。

 

「……比企谷君。女の子と最後に話したのはいつ?」

 

姫野とが最後だな。

 

「……昨日の夜。というか今日の朝7時ぐらいだな」

 

いやー、今日の授業9割爆睡してたわ。

 

「家族は含めないわよ?」

 

家族自体くたばってるからねぇ。

 

「家族じゃねえよ」

 

「そう、その人に同情するわ」

 

神経逆撫ですることばっか言いやがるな。こいつ呪ってやろうか。

 

「持つ者が持たざる者に慈悲の心を持ってこれを与える。人はそれをボランティアと呼ぶの。困っている人に救いの手を差し伸べる。それがこの部の活動よ」

 

「ようこそ奉仕部へ。歓迎するわ。頼まれた以上力になるわ。あなたの問題を解決してあげる。感謝なさい」

 

「アホくさ」

 

なんだこの上から目線。全身の内臓引きずり出してぶち殺してやろうか。

 

「……どういう意味かしら?」

 

「そりゃ自己満足だ。持つ者が持たざる者に慈悲の心を持ってこれを与える。いい話だ。THE・美談だな。だが……お前はそれが出来ない」

 

「……出来るわ」

 

「出来ねえよ。なぜならお前は”救いの手を差し伸べる”と言った。それは絶対的な上の立場から行うということを理解していない限りそんな言葉は出ない」

 

「それがどうかしたのかしら?事実私は上の立場だもの」

 

「それが矛盾なんだよ。奉仕……ボランティアとは、一切の私意無く単純で純粋な善意で行われるものだ。お前のその言動ならば、それはボランティアではなくただの自分が満たされるためだけに人々を利用するだけの異常だよ」

 

実際、純粋な善意で人助けをするような輩は見たことないがな。

 

「……貴方、性格最悪ね。親の顔が見てみたいわ」

 

「あいにく生まれつきだ。親の顔ならあの世にでも行けばみられると思うぞ」

 

「……どういうことかしら?」

 

「死んでるよ。5年ほど前にな。両親も妹も。残ったのは俺だけだ」

 

その言葉に対し

 

「そう。初対面の美少女をここまで散々に罵倒出来るような貴方の家族なのだから、どうせーーーーー」

 

奴は。雪ノ下雪乃は

 

 

 

 

 

「ーーーーーろくな死に方をしなかったのでしょうね。因果応報だわ」

 

逆鱗に触れた。

 

 

 

私は適当に比企谷と雪ノ下を言い争わせて、頃合いを見て部室に入るはずだった。だが数分後

 

グワッシャァァァン!!!!!

 

突如部室内から聞こえた尋常ではない物音に驚き、反射的に部室に飛び込む。そこで見たものはーーーーー

 

全ての窓ガラスが粉微塵に砕け散った部室と、立ち竦んで動けない雪ノ下。そして、文字通り”殺意”を振り撒き雪ノ下を睨みつける……いや、いつでも雪ノ下を殺せるように身構えた比企谷がいた。

 

 

 

奴は俺の、決して触れてはいけないものに触れた。妖力が噴出、部屋中に充満しその勢いに耐えられず窓ガラスが粉微塵に砕け散る。すると平塚先生が入ってきてこの状況に驚くが

 

「何があった!比企谷、説明しろ!」

 

「……そこの醜女が俺の今は亡き家族を罵倒した。俺がそいつを殺す理由はそれで充分だ」

 

そう言いながら俺は雪ノ下雪乃……いや、名前を呼ぶだけで虫唾が走る。”ソレ”に近寄り首を握りつぶそうとした瞬間

 

<アラシノヨウナミーラーイモーハタカラミーリャターダーノクロニクルー

 

「……」

 

スマホが鳴り出す。スマホを取り出し画面を見ると、いくつかの数字が映し出されている。……電話か。090や080ではないから携帯電話からではないな。廊下に出てから通話ボタンを押す。

 

「……もしもし」

 

『比企谷さん!私です……姫野 美琴です!』

 

「姫野?……なんで俺の電話番号知ってんだ」

 

『氷室さんから”いざという時はここにかけろ”って言われて……』

 

等さんの仕業か……仕方ないか。

 

「……で、どうかしたのか?」

 

『あの……私……道に迷ったみたいなんです!』

 

道に迷った?それだけ?……いや、「いざという時」にかけるって常識ぐらいはあるだろう。ならば……

 

『それも……ただ迷ったんじゃなくて……同じところをずっとぐるぐると……』

 

「……何?」

 

空間を捻じ曲げるほどの力を持つ怪異などそうそういない。となると大至急向かわねばならんかもしれんな。

 

『それだけじゃないんです!白い……何か白いモノに追いかけられました!』

 

白いモノ……くそっ、まだ特定できるほどの情報がない!

 

『途中までお爺さんと一緒にいたんですが……お爺さんがそれをみた途端、急におかしくなっちゃって……』

 

白いモノ……視認すればアウト……まさか

 

「姫野!それを見たら全速力で逃げろ!何故お前がそれを見て平気でいられるのかはわからんが、俺が来るまで耐えていてくれ!大至急向かう!場所は!?」

 

『えっと、菊川警察署からーー駅への直線の道を曲がったところにある民家に……きゃあっ!?』

 

まずい!俺は教室に戻ると鞄を拾いあげて

 

「すみませんが先生、俺はこの部に入るつもりはありません。俺は用事があるので、ここで失礼します」

 

そう言って走り出し、階段を一気に飛び降りて靴箱にて靴を履き替える。そのまま学校から50mほど離れたところにある駐輪場に停めてあるバイクに乗るとエンジンを全力で蒸し姫野が言った場所へと突き進む。ええい赤信号が邪魔だ!あいつは俺の担当だ……絶対に、死なせはしない!

 

 

to be continued



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Case:2 くねくね
第6話:視認


お久しぶりd

ズドゴォン!

八幡「おう、お前最後にこの作品投稿したのいつだよ」

3週間前じゃねえかな

八幡「10ヶ月前だ馬鹿野郎。さて、サボりにサボった奴には処刑のプレゼントだ」

メガミラクルフォースとかメアリスケルターとか面白いゲームばかり出すコンパイルハ○トが悪い

八幡「プレイしてるお前が100%悪いわ」

ちょ、ちょっと待ってください!一応書いてはいたんですよ、ほら!(下書きを見せる)

八幡「……じゃあなんで今の今まで更新されなかったんだ?」

後々見直したらつまんなかったのでボツにしました

八幡「では処刑します」

嫌だぁぁぁぁぁ!!!!!






八幡「そういえばこの作品のもう一つの原作、怪異症候群の3がついに出たな。良ければプレイして見てくれ」


「はぁ、はぁ、はぁ……」

 

私、姫野美琴はまた白いナニカに追いかけられている。幸運にもソレは私より足が速いわけではなかったから追いつかれてはいないけど、このままじゃ力尽きて捕まってしまう。田んぼを通り抜けたりコンビニを通ったりして何度か撒いてはいるけど、段々撒く手段がなくなってきている。

 

「……きゃっ!?」

 

道路を走り逃げていると、ついに足がもつれて転んでしまう。振り向くと徐々にソレが近付いてきて、私に手を伸ばしてくる。その手が私に触れようとした瞬間……

 

グオン!

 

「……!?」

 

バイクのエンジンのような音が響いた。よく漫画とかだと「ブオン」と擬音がついてるけど、そんなんじゃなくてまさに「グオン」とお腹の底すらも響くような音が鳴り響いた。

 

グオォォォオォォン!!!!!

 

続いて更に長い音が鳴り響いて、それに驚いたのか白いナニカが霞のように消え去っていく。バイクのエンジン音に似てるけど、大きすぎてまるでチェーンソーの駆動音のようにも思えた。

 

「……行ったか。大丈夫か?」

 

そう言って私に手を伸ばしたのは、白いナニカじゃない……十数時間前に私を助けてくれた、比企谷さんだった。

 

 

 

なんとか間に合ったな。

あれはほぼ確定でくねくねだ。ただ、何か違和感があった。なんというか、見た目だけ整えたような……表現しにくいが、まるで紛い物のようだった。なんつーか、ガワだけ借りてるみたいな感じだ。え、くねくねは認識したら発狂するだろって?一応対策はあるぞ。あくまで発狂の条件が「認識する」だからな。寄り目とかでぼやけて見れば頭がガンガンするぐらいで済む。俺の中にいるやつのおかげで耐性が出来てるってのもあるがな。え、さっきの音は何かって?ちょっと改造した俺のバイクの排気音だよ。怪異は音に弱いやつが多いからな。細かくは音に驚いてどっか行くだけだが。さて、この状況は極めてまずい。何がまずいって、学校から直で来たせいでひとりかくれんぼの時に持ち合わせていたナイフを家に置いて来たことがまずい。俺の友人みたいに怪異をぶっ殺すとか出来ねえぞこれじゃ。

 

「……行ったか。大丈夫か?」

 

それにしても、ちょっとばかしやばいな。何がやばいって俺がここに来る間にしたことが。別に法律違反はしてないんだけど、くねくねが狙いをつけた対象を逃さないように隔離空間を構築していたっぽくて俺がそれをぶち破っちまった。流石にバイクでドーンはまずかったか。どうせすぐに再構築されるだろうがな。……とりあえず、バイクはそこのコンビニにでも停めておこう。

 

「は、はい……ありがとうございます」

 

「ギリギリ間に合ったってとこだな。いやーよかったよかった」

 

バイクをコンビニの駐車場に停めておく。え、バイク置き場あるだろって?どうせ人は軒並み死んでるんだから気にしない気にしない。

 

「……とりあえず、一回落ち着ける場所に行くか」

 

「え、あ、はい!」

 

そう言って俺はコンビニに入る。唐突なんだが、俺はあまりコンビニが好きじゃない。まず売っているのが食べ物と雑誌のみなのでいざという時使えるのが唐揚げ棒とかアメリカンドッグの串ぐらいしかない。んでもってその食べ物もほとんどスナック菓子だったりで栄養バランスも悪い。ほんと惣菜じゃないとやばいレベルだったりしないと入らない。つまりコンビニに入るのはコーラとかの飲み物買ったりこういう怪異絡みの時。

 

ボリボリ……グシャグシャ……

 

「…姫野。俺の気のせいじゃなけりゃ、何か聞こえるよな」

 

「はい……何か、食べてる音でしょうか?」

 

商品棚に隠れながら音が聞こえる方を覗き込むと、赤い服のおばさんがなんかボリボリポテチ食ってた。いや何やってんのあの人。

 

「どうすればいいと思う?

 

1.黙って撤退

2.話しかける

3.背後から奇襲をかけて仕留める」

 

「3だけは絶対にやめてください」

 

のちに姫野は「この人妙に抜けてるなぁ」と思ったそうな。

 

「……じゃあ4.真っ正面から突撃かけてぶちのめす」

 

「その武力で制圧しようとする思考は何なんですか」

 

「癖?」

 

黙り込む姫野。おい、何とか言ってくれ。

 

「……仕方ない。話しかけてみるか」

 

少しずつ近付いて行く。そして俺の背中にぴったりついて行く姫野。これで姫野がアゾット剣持ってたら言峰と時臣ごっこ出来るな。というか俺をガードベントにするのか。

 

「「「………………」」」

 

「……あの……?」

 

静寂に耐えきれず姫野が話しかける。なお、無言の模様。……ん?

 

「あの……私たち……道に迷ったんです……」

 

えっ、俺も巻き込むのん?まあここで口出ししたら面倒なことになるしいいか。

 

「知ったこっちゃないね」

 

すげぇ。取りつく島もねえ。ここまで凄いの初めて見た。

 

「クク……アンタら……実はもう気付いてんだろ?この地区一帯の人間が、どっかに消えてることぐらいさ」

 

「……え?」

 

まあおそらく怪異に呑まれたんだろうな。ちなみに言うと怪異に呑まれた人間は助からない。助かるなら今頃俺は天涯孤独してねえよ。

 

「もしかしたら、私らが消えた側なのかもね。アッハッハッハ!」

 

「……いや、違うな」

 

「……何?」

 

「向こうが消えた。実際、俺はこの空間に外部から介入したからな」

 

そう。この空間は怪異によって歪められたものだが、絶対に最初は民間人がいたはずなんだ。別世界という可能性はあるが、もしそうなら俺は介入できない。俺が介入出来た=この空間は元の世界にある。ならば消えたのはどうやってか。そもそも移動する先が存在しないんだ。なら……まあ、怪異が喰ったしかない。

 

「……行きましょう、比企谷さん」

 

「ん」

 

姫野が俺の手を引き外へと連れ出す。……これ以上は何か聞き出せたりは無理そうだな。

 

「……何なんでしょうね、あの人」

 

「……線」

 

「え?」

 

「線が、同じだった」

 

「……比企谷さん?」

 

「……あ、いや。何でもない」

 

今感じたことは言わない方がいいな。とりあえず、援護のために等さんを呼んでおこう。メールで

 

『悪いが応援頼む』

 

でいいか。後はこっちの状況を追記してっと。改造済みで怪異の影響を受けない特別仕様のスマホだ。

 

「送信、と」

 

「さて、探索に行きましょう!」

 

お前、ちょっと慣れてきたな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらく歩き回っていると神社を見つけた。バイクはまだコンビニに置いてあるよ。……なんかいる。見た目は普通の爺さんが。

 

「……あの」

 

今度は俺が話しかける。

 

「そこの嬢ちゃん……呪われておるな。そんでお主も……いや、お主は憑かれていると言った方が近いか」

 

……っ!この爺さん、間違いなく一般人じゃねえ!少なくともある程度の経験と知識がある!

 

「……喉が渇いた……」

 

「は?」

 

この爺さん脈絡理解してるか?

 

「……喉が渇いた……」

 

ドラクエの村人かな?しゃーない。そこらでなんか買ってくるか……。

 

数分後

 

「ほい」

 

とりあえず緑茶でいいよな。

 

「……御主が引き寄せたのか」

 

爺さんは姫野を見てそう呟く。引き寄せた、か。

 

「え……?」

 

「お主ら2人と、奴の狂気が怪異を呼び寄せた。夜までにどうにかせんと、命はないぞ」

 

……そんなところだろうな。人が消えれば消えるほど、ああいう手合いは力を増す。どれだけ消えたかはわからんが。

 

「北に寂れた工場がある。アレの正体を知りたくば、そこへ行くがいい」

 

 

 

 

 

 

「神に嫌われてるのかねぇ……」

 

中に2体も飼ってたら仕方ないっちゃ仕方ないかもだけど。

 

「で、アンタら……こんなところにまで何しに来たの?」

 

「……お前に関係あるか?」

 

「言っとくけど、この先には何もないよ。無駄足だったね……ま、おばさんに会えただけでもよかったんじゃないの。クックック」

 

全然良くねえよクソババア。

 

「……あんたは、これからどうするんだ」

 

「どうするって……? さあ?それはこっちの台詞だね。ま、私も死ぬまで鬼ごっことか嫌だからさ……とりあえず安全な場所にでも隠れるよ」

 

……やっぱり、こいつ……アレと合ってやがるな。

 

 

 

 

 

「……そうか。……会ったか、あの女に」

 

「あん?」

 

知り合いか?

 

「……奴には気をつけろ」

 

「御忠告どうも。……アレと合っているのは気のせいでも偶然でもなかったか」

 

「……」

 

 

 

 

「さっきからなんだい、アンタらは……?私の前に……チョロチョロ現れてさ!それで、私の何が気になるっていうの!?」

 

その後色々歩き回っていたらまた出くわした。運命の人がこんなのとか嫌だ。これなら同じクラスの男の娘が運命の人な方が1億と2千倍マシです。というか俺たちの行く先々にあんたがいるんだよ。

 

「落ち着け。テメェが俺たちの行く先々にいるだけだ」

 

「アンタら……最初に会ったときからそうよね……。始めっから私に目をつけてさ」

 

目が腐りそう。あ、もう腐ってるか(てへっ)

 

「何者なんだいアンタたちは!?なんでアンタたちだけこの町に残ってんの!?どうして私の前に何度も現れんの!?」

 

「じゃあなんでお前も残ってんのかって話になるんだが」

 

「うっさい!黙りな!」

 

えぇ……?

 

 

 

 

「……どうやら私の勘違いだったみたいだよ。すまないね、取り乱して」

 

妖力を脳味噌に流し込んだ甲斐がありました(疲労)

まあ多少の思考誘導ぐらいしか出来ないけどさ。

 

「……とは言っても、もうダメよね?もうおばさんのこと……頭のおかしい人にしか見えないわよねぇ?」

 

えっ違うの?

 

「ククッ……いいわ、教えてあげる……。私ね……あの化け物の正体、知ってんのよ」

 

……何?

 

「こーんな動きして……一部では都市伝説か何なのか知らないけど、そんなんじゃないのよ」

 

奇妙な身振り手振りをしながらこちらに話しかける。その動きはまるで、あの白い存在のようだった。

 

「少なくとも、おばさんには解ってるわ。……あの化け物の正体」

 

「な、何なんですか……一体」

 

「頭の悪い子ねぇ……ほんっと、出来が悪いんだから……ほんっと……馬鹿なんだから……ヒヒッ……ダメよねぇ……ブツブツ……ヒヒヒ……ヒヒ……」

 

そう呟きながらあの女はどこかへと去っていった。……すげぇな。本物のサイコだ。……あ、メールだ。とりあえず、ある程度安全な狂ったらしい爺さんの家で見るか。

 

『君が体験しているのはおそらくくねくねだ。知っているだろうが、一応おさらいしておこう。

 

くねくねとは、一種の妖怪のようなものだ。おそらく元凶はそれだろうな。

2003年初期に世間に広まり、最初期は自然現象による幻覚症状と認識されていた。

 

1978年ごろにはとある村で20人近くの集団失踪が発生した。いや、集団発狂と言うべきか。結局誰1人元には戻らなかったがね。

目撃者や発狂者の証言によると、どうやら白い形をした”ヒトガタ”を視認した事が村人たちの発狂の原因だと特定された。

ざっとこんなところだ。君の送ってくれた情報と非常に類似しているから、ほぼ間違いないと言ってもいいだろう。

 

くねくねの対処法はたった一つ。絶対に近づいてはいけない。君のように怪異を宿しているならある程度の抵抗力は持ち合わせているだろうが、まず触れられたらアウトだと思っておいてくれ』

 

……俺の知っている情報とある程度合致するな。だが、一つ訂正しておこう。

 

『アレはくねくねじゃない。くねくねのような何かだ』

 

そう。アレは間違いなくくねくねじゃない。……正体は、90%ほど暴けた。後は最後のピースだけだ。と、そこで唐突に部屋のテレビが動き出した。

 

最初は放送する番組がない時の、放送終了後の映像になっていた。ほら、ピーッて鳴りながら色々な太線?が画面覆ってるやつ。数秒後、画面が赤く染まり揺れ動く。やべぇバグったか?そして、画面が切り替わる。

 

それは、いわゆる田舎にある棚田の風景だった。夕焼けが棚田を照らしている。

 

 

 

 

 

本日の犠牲者

 

伊藤 奈美 (17) 浅田 健太郎(36)

香川 聡 (32) 小川 正敏 (14)

遠藤 昭二 (55) 藤森 良太 (46)

田中 恵美 (23) 安藤 正文 (11)

江上 正人 (15) 加藤 賢 (62)

平田 佐織 (41) 江島 香 ( 8 )

中村 紀子 (88) 石橋 宗助 (53)

厚地 祐輔 (91) 岩井 恵理子( 1 )

松永 雅樹 (22) 日野 由希 (44)

藤田 祐樹 (13) 野田 慶子 (67)

原野 紀子 (59) 石川 英訓 (34)

山下 亮 (44) 黒岩 貴恵 (30)

池田 由美 (12) 志岐 千代子(90)

山崎 浩二 (19) 柳 悦子 (68)

重松 奉弘 (45) 鍛治 光博 ( 2 )

清水 正英 (20) 美山 茂代 (35)

秋山 恵 (10) 松葉 洋介 (73)

楠原 いぶき(29) 佐藤 淳二 (67)

江頭 大地 (38) 関 愛子 ( 7 )

吉野 伊代 (26) 石井 敦 (22)

寺崎 優 (41) 高崎 夏輝 ( 9 )

権藤 加奈子(68) 棚町 高弘 (53)

中上 康平 (35) 杉野 洋太郎( 2 )

姫野 美琴 (18) 富房 美津子(37)

向井 奈々 (13) 師岡 真美 (16)

比企谷 八幡(16) 永田 昭彦 (68)

大隈 怜香 (23) 大場 耕一 (39)

西野 ゆり (14) 保坂 里美 (48)

村川 健太郎(36) 青木 鷹也 ( 6 )

後藤 慶太 (15) 葦戸 珠美 (39)

谷口 和樹 (78) 井手 尚子 (45)

 

ご冥福をお祈り申し上げます

 

 

 

 

「……姫野って高3?大1?」

 

「あれ見て第一声がそれですかっ!?他にありましたよね!?自分の名前があったこととか!」

 

いや知らなかったんだもん。ごめんね、年上なのにタメ口で。

 

「気にしないでいいですよ……助けてもらったんですし。後私はまだ高校生です」

 

「……姫野がそう言うなら」

 

いやー、今日一番焦った。

 

 

 

 

その後、1回襲われたりもしたが適当に巻いた後、神社へと戻ってきた。

 

「お爺さん……私、これからどうすればいいのでしょうか」

 

現在俺は神社の手水場にそこらに落ちていた木の枝を漬け込んでいる真っ最中だ。こういう神聖な場所の手水場みてーなとこに漬け込んでたらペーパーナイフでも怪異には猛毒になるから結構いいんだよねぇ。

 

「……もうすぐ日が暮れる。そうすれば、奴らは人の目を欺き、あちら側へと引き摺るであろう」

 

タイムリミットが直ぐそばに来てやがる。

謎は解けた。後は白日のもとに晒すのみ。

 

 

 

 

 

 

さあて、今回のラストゲームを始めようか。




ここの八幡を色んなラノベとか漫画の世界に突っ込んだらどんなことになるんだろう。まず戦いが基本的に殺害禁止の世界は手加減が出来ないから無理。これでヒロアカは却下。

インフィニット・ストラトス→IS纏わずに国家代表候補生と大立ち回り。最悪(相手が)死ぬ

ハイスクールD×D→一応テロリストとかいるし殺しても問題ない相手がいるけど2巻は貴族の三男坊殺しちゃうし4巻も主人公のライバル殺しかねないからやべぇ。

デアラ→アイクが死ぬ。あれ?これで主人公楽になることこの上なくね?

ゆゆゆ→そもそも樹海に入れない。なお、樹海にさえ入れば無双。

アスタリスク→だから相手を殺しちゃうんだって。

シンフォギア→体力1縛りと考えればノイズ行けるしやりようによってはネフィリムだってアダムだってワンパン可能

このすば→流石にあのギャグ世界に能力がシリアス一辺倒の八幡は無理。最悪拒絶反応起こしそう。

転スラ→意外といけるんじゃね?

問題児→数少ない常識人として暴れる。





次回予告

謎を全て暴いた八幡。美琴と共に奴を解き明かす!
そしてまたも現れるおばさん、保坂 里美。
怪異と彼女に何の関係があるのか!

次回「真実」


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第7話:真実

続き待ちが意外と多くて嬉しい反面プレッシャーに潰れそうな作者です。

今回はくねくね編終了と八幡の一端の現れですね。え、短いって?ひとりかくれんぼが一晩なのに対しこれ夕方の一幕みたいな時間だもん。ひとりかくれんぼが基本的に午前3時から始めるのが通例だから美琴が神代家に着くのを推定3時半、その直後に八幡が神代家に到着と仮定したら長くても4時間経ってるのにくねくねなんて八幡が介入したの放課後だからね。仮に授業終了が3時だと仮定したら平塚や雪ノ下とのいざこざで30分取られたとしても3時半、その後バイクで突撃したとして早くてくねくねの現場に4時到着ぐらいかな?
そこから終わるのが夕焼けごろだから……八幡が介入した後、美琴ちゃんだけでも2時間ぐらいでケリついてるんだから専門家がその場にいれば……どうなるかわかりますよね。つまりそういうことです。


「姫野」

 

俺は大聖剣えくすかりばー()を軽く振りながら姫野を呼ぶ。まあ大聖剣つってもただの木の棒なんだけどね。

 

「……どうしました?」

 

「そろそろ行くぞ」

 

「……何処にですか?」

 

「決まってんだろ?元凶がいるところだよ」

 

あのアマのいた場所や言動、怪異の行動から推測するに鍵はあそこだろう。というかえくすかりばー()振りながら探知したからあそこで確定なんだけどね。

 

 

 

 

 

俺たちは再度工場へ向かった。工場であのアマと出くわした場所に着くと、ワイヤーカッターかペンチか、とりあえず何かで鉄柵が切られているのがわかる。俺の背よりは少し小さいが、姫野やあのアマなら問題なく通れるほどのサイズに切られていた。

 

「……行くか」

 

俺は乱雑に鉄柵を掴むと、力任せに捻じ曲げる。あ、これジョジョ3部序盤で留置所の鉄檻捻じ曲げるスタープラチナごっこ出来るやん。

ちなみに後に聞いたところスタープラチナごっこのこと考えていた俺を見た姫野は「またこの人変なこと考えてるなぁ」って思ってたらしい。そんな変なことばっか考えてねぇよ。

しばらく歩くと、強烈な力が漂うのを感じた。感じた先を見ると、枯れた井戸があるのを見つけた。覗き込んでみると、水は1滴もないが…うん。いるな。やべぇのが。とりあえず見なかったことにしておこう。後、姫野には絶対に見せないようにしないとな。戻ろうとすると、あのクソアマがいた。いつの間に来ていたんだ?しかもそこ墓地じゃねぇか。俺とか氷室さんならともかくなんで平然としてられるんだ。めっちゃ怨念とか渦巻いてんぞ。

 

「………………あんた……あそこの井戸、見ただろ?」

 

「……ドギツイのがいたな」

 

「ああ。あそこは枯れ井戸に見えるけど………未だに枯れてないのが残ってんのよ」

 

「残っている、か。……怨念とかなら未だにえげつねぇ残り方してっけど、それじゃあねーんだろ?」

 

「ああ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………人間の骨だよ」

 

……そりゃ渦巻いてるわけだ。なんせその怨念の基点がそこに存在するわけだからな。

 

「この際だから特別に教えちゃうわ。おばさん……実はね」

 

「人を殺したことがある……だろ?」

 

ババアの言うことを遮り、その先を引き継ぐ。

 

「……あら、わかっちゃうかしら?」

 

「人殺したことあるやつ独特の雰囲気と……もう一つは波長だよ」

 

「波長……ですか?」

 

姫野の質問に対し、俺はこう答える。

 

「そ。どうも人間の波長ってのは固有のものがあってな。だが、親子・兄弟関係にある2人を合わせると、波長が合うんだよ」

 

今までドラマとかで見た超能力とかそう言う系で例えると、あれだ。視覚探偵。あれで松坂○李さん演じる主人公が親子に対して言及してたやつに似てる。あんな感じ。

 

「それで今まで俺たち2人が見てきた存在の中で、唯一その波長が合うやつがいる。……姫野。誰だと思う?」

 

「……神社のおじいさん、ですか?」

 

「ノー」

 

「……じゃあ、発狂したおじいさん?」

 

「ノー」

 

「……他には、いないと思うんですけど」

 

いんや。たった1人……1体だけ、いるんだよ。

 

「そう……あの怪異だよ」

 

「そ。……他でもない我が子をね」

 

「……っ!?」

 

こいつは超えちゃいけない一線を超えた。……最悪、ぶちのめすしかないか。

 

「あの頃は、過労とストレスでどうにかしててね。気付いた時には、もう手を掛けてたよ」

 

今でもどうにかしてるだろ。

 

「病院に連れて行く気力も湧かなかった。……何を思ったのか、死んだ子供を抱えてこの場所にまで来ててね」

 

「それで……どうしたんですか!?」

 

「井戸に投げちまったよ……。勢いに任せてね」

 

殺人に死体遺棄……重罪も重罪だ。執行猶予抜きは確定だな。

 

「……たまにね、あの枯れ井戸の所に行くのよ。なんか呼ばれてる気がしてね……」

 

ガキだろうと感情はある。なかったら水子なんて生まれねーよ。

 

「そしてね……下を覗き込むと、必ずと言っていいほどあいつが見てくるんだ」

 

「白い……あいつが」

 

「それが……くねくね……」

 

「くねくねなんてものはただの都市伝説さ。あれは……ただの怨霊だよ……」

 

「……八幡さん?」

 

「色々端折って説明すると、鎧のようなもんだ。

 

確かに怨念ってのはそれなりに強い代物だ。だが、1人1人の怨念は結局のところ一山いくら程度しかない。恨み辛みを抱えた霊ってのは、その一山いくらを凌駕したとんでもない恨みを抱えた代物だが……そんなもんがゴロゴロ転がってたらとっくに人類は滅亡してるね。だから数は少ないわけだ。まだガキの霊だとなおさらだ。

 

だがそんな弱っちい霊でも、実体を持ち、現実に干渉し、力を得る……そんな方法がないわけじゃあない。

簡単だ。概念を得るんだ。言っちまえば、存在を固定するための依り代っつーか楔って感じだな。

人間が幼少期に殺害される事例として、生贄・人柱が挙げられる。

その形として、縄で首を締め上げそれを木や案山子に吊るす……苦しくて悶える様、それがくねくねの動きに酷似していた。その共通点を繋がりとして、『くねくねという概念を依代とすることで形を得た』。そしてくねくねの要素があるが故に、人々を狂わせそれを餌に成長した……その果てに、あの大量の被害者が生まれたってわけだ」

 

「……?????」

 

うーん、分かりづらかったかな?後で紙に書いて図解するか。

 

「今まではずっと見てくるだけだったのにね。今日になって枯れ井戸から出やがった……」

 

我慢の限界ってだけだろ。

 

「………………お前が出したの?お前があいつを井戸から出したの!?」

 

どうやって出すんだよ。バカジャネーノ?

 

「だとしたら筋が通るってもんよ!お前たちだけがこの町に残ってることも!!私があの化け物に襲われることも!!」

 

日頃の行いである。ババアは俺たちに向けて1歩踏み出す。

 

「来るな。それ以上近付くと……」

 

「どうして逃げるの……?……やっぱりそうよ。やましいことがあるからだわ!」

 

濡れ衣も甚だしいわボケェ。……不味いな。怪異が近付いてくる。このままじゃ共倒れだ。

 

「姫野ッ!」

 

すぐさま姫野の腕を掴み駆け出す。

 

「待ちな!全部吐かせてもらうよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……観念するんだね!」

 

「話を……話を聞いてください!」

 

「……今更、何を言っているんだい!」

 

「そうだぞ。こんなサイコパスキチガイクソババアと話すことは何もない」

 

俺の発言に舌打ちをするクソババア。そしてビビる姫野。……あっ。

 

「志村、後ろー!」

 

「こんな時までふざけないでください!?」

 

だってふざけねーとやってらんねーもん。

 

「何を言って……い、嫌ぁぁあぁああああぁぁぁあぁぁ!!!!!」

 

草ァ!

 

いやそんなこと言ってる場合じゃなかったな。姫野を抱き上げると、妖力を足に凝縮し跳び上がる。そのまま横のフェンスを飛び越え、神社へと走り出す。

 

「喋んじゃねぇぞ!舌噛むからなァ!」

 

自販機を蹴り倒し、台車を投げつけ、力任せに引き抜いた木々をぶん投げて接近を妨害する。

 

(この人のこの力どこから出てくるんだろう……?)

 

なんだろう。失礼なこと思われてる気がする。まあいいや。

 

「……姫野。下がってろ」

 

神社に到着したので、手水場に漬け込んでいた木の枝『大聖剣えくすかりばー()』を取り出し構える。……『──』。

 

『久し振りに呼んだわね……何かしら?』

 

眼、頼んだ。

 

『了解よ』

 

次の瞬間、眼前に『死』が広がる。

 

……一太刀でいい。他の余分な動きは必要ない。ただこの一撃を持って、外敵を抹殺する。

 

「直死────────」

 

……くねくねが視界に入り込む。頭に呪詛が響いてくるが、無理矢理に頭から追い出す。

 

徐々に近付いてくる。3メートル……2メートル……1メートル……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺流・久遠ノ太刀」

 

空を切り、超速で振るわれる斬撃……それは的確に怪異の死を穿ち、その身体の6割を霧散させる。

 

「ギィ……アァァァァァ……」

 

しぶといな。ってか即死技なのに何で生きてんの?……ああ、これ怨念の集合体だからか。そりゃまだ生きてるのもあるわな。死んでるのに生きてるとはこれいかにだが確実に仕留めておくか。

 

「2発目行くぜーい。いいなー?」

 

「イィ……アァ……イィ……ヤ……」

 

「答えは聞いてない」

 

死を齎す刃が、振り下ろされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「姫野ー、そこの自販機で適当に水取ってきたわ。飲む?」

 

怪異を解決。ひと段落したので一休み。

 

「あ、頂きます。……あれ?」

 

「ん?」

 

「えーと、取ってきたって……『買ってきた』じゃないんですか?」

 

「うん。さっきぶん投げた自販機が衝撃でぶっ壊れちゃってたのか、あちこちの機能がイかれちゃったみたいで。際限なく小銭とジュースを垂れ流してた」

 

小銭は全部俺の持ってきた鞄の中に詰め込んだ(クズ)。

とりあえず俺は氷室さんたちが来るのを待つか。誘導とかもしなきゃなんないし。姫野はお爺さんに今回の一件の説明を受けてた。

 

……結論を言うと、だ。

 

今回の事件の起点は間違いなく姫野の体質だろう。だが、それもあの怨念が……親のために子を殺す、『子殺し』という風習があり、それが積み重ね続けられたが故にこの事件が生まれた。

 

犯人はもういない。なぜなら全て死んでしまったのだから。

 

 

っと。今回の事件のレポートはこんな感じでいいだろ。後は細かい過程を書けばいいか。

 

「八幡!」

 

そうこうしているうちに来たな。

 

「よ、氷室さん」

 

「姫野君は……無事なのか?怪異はどうなった?」

 

「無事だよ。今は神社で休んでる。怪異も俺がぶっ殺したから安心しな」

 

「そうか……よくやった」

 

「そりゃどーも」

 

……はぁ。憂鬱だ。明日にはまたあいつらに絡まれるのか。

最悪ぶっ殺すかなぁ……死体処理ぐらいなら証拠が残らないように出来るし。

 

「じゃ、氷室さんは姫野連れて警察署に戻っておいてくれ。俺は先に戻って報告書書くから」

 

「姫野君を後ろに乗せればいいだろう?」

 

「テメー免許とって1年も経ってない俺に2ケツしろと言うか」

 

ちなみに、原付は2人乗り全面禁止。運転者がオートバイの運転免許証(大型二輪免許、普通二輪免許、普通二輪免許(小型限定)のうちいずれかの免許)を受けていた期間が通算して1年に満たない場合には、道路交通法71条の4第5項・第6項により二人乗りが全面的に禁止されている。

 

「ははは、しっかりと覚えているようでよかったよ」

 

「……今度晩飯を氷室さんの嫌いなものだらけにしてやる(ボソッ)」

 

「オーケー俺が悪かった」

 

俺はバイクに乗ると、警察署へと向かっていった……。




俺流・久遠ノ太刀

八幡の『武器を使った』対怪異用の技。
内容は至ってシンプルで、『ぶった斬る』。それだけ。というか八幡の技は大概シンプル。『ぶった斬る』『ぶん殴る』など。
それだけと侮るなかれ。妖力で強化されているので下手な怪異ならワンパンで沈む。しかも今回は神社の水に漬け込んだ木の枝を使ったので破壊力倍増どころの話ではない。


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