誰かの為、拳士は己が拳を振るう。 (文才零之助)
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【女子中等部】の2-Aに転入です。

まず最初に警告しておきますと、作者には文才も文章力もありません。
大変見苦しい文になっているかとは思いますが、よろしくお願いいたします。
この小説は、「ぼくがかんがえたつよくてかっこいいしゅじんこう」をネギまにぶちこんだ作品となっています。
それを不快に感じる方は読むことをオススメしません。
残酷な描写、R-15の警告タグをつけていますが、これはのちにある戦闘シーンの為です。
正直、そこまで残酷な描写をするつもりはありませんが一応つけておきました。
今回の話ではまだネギは麻帆良に来ていません。三学期開始前、冬休みの少し前ごろの話です。


夜。

暇だし散歩に、と男子寮から出て数十分。

俺は散歩に行こうなどと考えた自分をぶん殴ってやりたいくらいに後悔していた。

「ククク…どうした? 恐れをなして足が竦んだか」

目の前には、黒いマントを羽織った金髪ロリ。

このロリ、目の前に現れたかと思えば私は吸血鬼だーとかなんとか叫んできたのだ。

こんな災難にぶち当たるくらいならば、散歩なぞしなけりゃよかった。

俺、現在大後悔。

「あの、痛々しいからそういうのは妄想の中だけにしような?」

哀れみの感情たっぷりに見つめて言うと、金髪ロリは顔を真っ赤に染め上げた。

「貴様、馬鹿にしているだろう!?」

おお、怒ってる。

キレやすい若者が増えているというのは本当だったんだな。

まあ目の前のコイツは若者かどうか怪しいが。

「ごめん、俺そういう妄想に付き合える趣味は持ち合わせてないから…」

「待て貴様! 逃げようとするな!!」

スタスタとその場から去ろうとする。

しかし、一歩足を踏み出したその時。

俺の身体は動いてくれなくなった。

嘘だろ、おい。

ちょっと力を入れたくらいではビクともしない。

よく目を凝らすと…見えた。

俺の身体を拘束しているのは、魔力糸だ。

「何しやがる金髪ロリ!」

俺は焦って動こうとする、フリをして。

ぽいっと、【ある物】を投げた。

それは金髪ロリが立つ場所から1m程度のところに落ちた。

俺が投げた物は、きっと上手い事俺の手助けをしてくれることだろう。

「誰が金髪ロリだ! ……貴様と話していると調子が狂う。さっさと血を吸わせてもらうぞ」

「いやちょっとそういうプレイは好きじゃないんで」

「がああ、もう黙っていろ!!!」

軽口を叩き、相手の頭に血をのぼらせる。

怒りは、一時的に勢いや力などを上げる感情の一つだ。

しかし欠点もある。

それは、注意が薄くなること。

特に、目の前の金髪ロリは話している感じからして怒ると周りの事をしっかり見渡せなくなるタイプだと見た。

今のうちに、逃げる為の準備である。

「プ…クテ……ビギ…ル」

ボソボソと、初級魔法の詠唱。

よしよし、気付かれてないな。

「クソ、無駄に腹立たせおって…! 血は多めにいただくぞ!」

金髪ロリが鋭くその牙を俺の首筋に突き立てようとしたその時。

光よ!(ルークス)

俺がその言葉を口にした瞬間、強い光が辺りを覆い尽くした。

足裏に魔力を込めて弾丸のように駆け出す。

その勢いで魔力糸を勢い任せに引きちぎる。

「ク、ククククク…アイツ、魔法使いか…!」

そんな言葉など、耳にしないまま俺はその場から走り去った。

しばらく離れて、建物の影、暗がりに入り込んで俺は深く息を吐く。

「痛っ」

体の至る所が痛む。

暗い中でよく見えない…目を凝らすと、痛む箇所それぞれにスパッと切り傷が入っていた。

そうか、あの時魔力糸を強引に引きちぎったから…。

これ、血痕で居場所がバレるんじゃなかろうか。

それに朝、血痕があったら誰かしら怪しむだろう。

そう考えるとだんだんヤバイ気がしてきた。

俺は急いで男子寮にある自室に戻り、切り傷に対して適当に応急処置。

雑巾を握りしめてまた部屋から飛び出す。

自室滞在期間、なんとたったの1分半である。

自分の動きの速さに少し感動しつつも、自分が逃げてきた道をせっせと雑巾で拭く。

随分と長い時間、血痕拭きに勤しんでいると、金髪ロリと出くわした場所までようやくたどり着く。

おお、良かった! あの金髪ロリは帰ったみたいだ。

…かなり時間が経ってるのに、まだこの場に居たら正直怖いが。

俺は血痕を拭き終わった事に謎の達成感と大きな疲労を同時に感じて、血に汚れた雑巾を持って自室に戻った。

後に俺は、何故もっと周りを警戒しなかったのかと、とても後悔する事となる。

 

 

 

 

「男子中等部、2-D所属の守桜 千宏(すおう ちひろ)君。昨夜、君はエヴァンジェリンと会った。間違いないかの?」

「……ハイ」

最悪の状況である。

昨日、金髪ロリ吸血鬼に襲われ色々と疲れていた俺。

幸いにも今日は日曜日。

ゆっくり疲れを癒せると思い、二度寝しようとしたその時。

アナウンスで俺をご指名の後に学園長室へのお呼び出し。

ふざけないでほしい。

「エヴァンジェリンから聞いた話じゃと…昨夜、君は魔法を使ったそうじゃな」

「ええ、まあ」

もうここまで来たら嘘は吐けん。

「ワシらが知りたいのは、何故魔法を使える事をワシらに隠していたのか。そして、ワシらと敵対するに当たるのかどうかじゃ」

「まず最初に言わせてもらいますと、俺はあなた方と敵対するつもりはこれっぽっちもありません。そうでなければ、もうとっくにこのかを人質にしています」

これは本当だ。

俺はこいつらと敵対するつもりは全くない。

むしろ、味方していると言える。

「確かにそうじゃな。…では、もう一つの質問にも答えてくれんか?」

「魔法を使える事を隠していた理由、ですね。それは……もう、疲れてしまったからです。魔法を使えるという大きな力を持った所為で戦いばかりに生きる人生に。ただ、一人の学生として学園生活を楽しみたかった。これが、理由です」

これは嘘。

今の言葉に真実は一つもない。

「そうじゃったのか………うむ。では、千宏君には―――女子中等部2-Aに、転入してもらうとするかのう」

ん?

何を言ったんだ、今?

「わんもあぷりいず!」

「女子中等部2-Aに転入してもらうとするかのう」

「はあ!?」

「フォッフォッフォッ」

フォッフォッフォッじゃねえぞこんのクソじじい…!

「待ってくださいクソじじい! 俺は男ですよ!?」

「言葉使いが修正しきれてないぞい。…そう言われてものう。君も気付いているとは思うが、2-Aはワケあり生徒が集められている。そこに転入してもらった方が、こちらとしては都合が良いんじゃよ。言い方は悪いが、監視にも最適だしのう」

女子中等部に男子が転入というのは明らかにおかしい。

ただ、そこに目を瞑り転入させる理由だけ聞けば…悔しいが筋は通っている。

魔法を使えるという事を、今まで隠していた人間を監視もなし罰もなしには出来ないのだろう。

だからこその、この処分なのだ。

「ぐ、いやでも―――ちょ、ちょっと待てクソじじい。その書類をどうする気だ」

しかし、だ。

いくらなんでも女子中等部に転入と言うのはマズイ。

そう思って反論しようとしたその矢先。

学園長が俺に関する書類を机の引き出しから取り出す。

そして、クソじじいが筆を取る。

『守桜千宏 男子中等部2-D所属』

書類のそう書かれている部分を、手に持った筆でバツを描いて消す。

その横に小さく、無駄に達筆な字で

『守桜千宏 女子中等部2-A所属』

と書き込んだ。

「これで、君は女子中等部2-Aの生徒じゃ」

こうなったらもう、どうにも出来ない。

俺は大きく溜息を吐いた。

「ああ、もう、分かりましたよ…」

それだけ口にして、学園長室をあとにした。

 

 

 

 

「緊張しているかい?」

月曜日。

学園長のクソじじいが無駄に頑張って手続きと書類を書き終えてくれやがったおかげで、俺は早速2-Aに転入出来るらしい。

俺の隣に立ち、そう質問するは高畑先生。

「いえ、別に。顔見知りばかりですし」

「はは。確かにそうだね。…じゃあ、呼んだら入って来てくれるかな」

「ハァ……はい、分かりました」

何が楽しいのか、高畑先生は笑って2-Aの教室へと入っていく。

「はいはい、皆静かにね。唐突だけど、騒がないように。今日からこのクラスで生活する、転入生を紹介するよ」

騒がないように、と言われているのに2-Aはざわざわがやがや。

まあ、2-Aに静かにしろと言っても無駄なのは分かりきっているしな。

「では、入って来てください」

ああ、入りたくねえ。

もう最高に帰りたい。

しかしここまで来たら帰る事など当たり前だが出来るはずもなく。

心を決めて、教室の扉を開く。

もはや、生徒たちのほうなど見向きもせず教壇に上がる。

そして前を向くと…それはもう見事にあっけにとられた顔をした2-Aの生徒たち。

「ほぼ初めましてじゃない人ばかりだけど初めまして。守桜千宏だ。学園長の陰謀によって転入してきました。文句は学園長へどうぞ。以上!」

勢いよく言いきってやった。

「「なんで(どうして)アンタ(アナタ)が女子中等部に来んのよ(来るんですの)!?」」

ガタン、と二人は席を立つ。

その二人とは、俺とは幼馴染に当たる【神楽坂 明日菜】に【雪広あやか】である。

だから文句は学園長に言えと。

アスナとあやかが同時に同じような言葉を叫びハモらせる。

「ちーくんと同じクラスになれて嬉しいわ~」

のほほんとした言葉を述べるはこのか。

「ああ、野蛮な二人と比べてこのかは優しいな」

「「なんですってぇ!?」」

野蛮な二人はどん、と机を叩いていきり立つ。

「まあ納得いかないだろうが納得しろ。学園長が決めたことだから仕方がない」

俺がそういうと、二人は明らかに納得していない顔のままだが大人しく席に座る。

二人共、獣みたいな眼をしていて怖いんだが。

俺が席に着くと、隣には金髪ロリ。

「貴様。いったいコレはどういう事なんだ」

文句ありげな顔で、金髪ロリが問いかけてくる。

「俺に言うな訊くな怒るな。すべてはあのクソじじい(学園長)が勝手に決めた事だって言ってんだろ」

頬杖をついて、投げやりに答えてやる。

「あ、あのクソじじい…」

金髪ロリの怒りが学園長に向いたらしい。

うんうん、そのまま一昨日の事は忘れてくれるとありがたいな。

そんなこんなで、女子中等部2-Aでの生活が始まった。

―――だ、大丈夫かな、俺。




ここまで目を通してくださりありがとうございます。
ネギまは熟読しているつもりですが、キャラの口調や行動がおかしいと感じたらご指摘ください。
感想、ご意見、誤字脱字等の報告などなどお待ちしております。


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女子寮へお引越し。

何故、第一話と合体させて投稿しなかったのか自分でも疑問なお話。
ネギが学園へやってくるまでの繋ぎとして作った一話です。
文字数は約3000と少なめなので短いです、申し訳ありません。


俺が、麻帆良学園女子中等部2-Aに転入したその日。

放課後にまたも学園長室へのお呼び出し。

嫌々、学園長室に入室するのだった。

「重要な事を言い忘れておったんじゃ」

「え、なんですかその重要な事って」

嫌な予感しかしないのは、何故だろうね?

「千宏くんには、女子寮に住んでもらう」

「……はあ?」

何を言っているんだ、このクソじじいは。

「昨日言った、君を2-Aに転入させる理由と同じ理由じゃ。言い方は悪いが、女子寮と男子寮に比べれば当然ながら女子寮の方が警備は強化されておる。そちらの方が君を監視しやすいし、動向にも注意が払える。しかも、女子中等部に通うには、男子寮からでは遠いのもまた理由の一つじゃ」

またも筋が通った言葉に反論が出ない。

と、いうか反論したところで昨日のように書類を強制的に書き換えられて終了だろう。

「不本意ながら、従いますよ…」

―――と、こんな会話を学園長としたのが、つい先ほどの事である。

俺が住む事となった部屋の鍵を受け取り、溜息を吐きつつ廊下を歩く。

今日中に引っ越ししろとか鬼畜すぎるわ。

とりあえず、教室に鞄を置きっぱなしなので教室へと足を運ぶ。

教室の扉を開けると、このかとアスナが談笑していた。

「ようやく戻ってきたわね」

「あ、ちーくんや~。ウチら、ちーくんのこと待っとったんよ」

はて、何か約束をしていたっけ?

記憶を掘り起こしてみるが、約束をしていた記憶などない。

「え、何で?」

「何でも何も、アンタ女子寮に住むんでしょ?」

「待て待て待て、なんでお前がそれを知ってるんだ」

「昼休みにな、おじいちゃんからメールもらったんよ~」

「アンタが今日中に女子寮に越さなきゃならないから、手伝ってくれって」

クソじじい、少しだけ見直したぞ。

「それでわざわざ待っててくれたのか、悪いなあこのか」

俺はわざとらしく、このかにだけお礼を言う。

「ええよええよ、おじいちゃんに言われんでもちーくんが大変そうなら手伝っとったし」

「このか…お前が男なら俺惚れて―――へぶらっ!?」

「毎度毎度、凄い音やねぇ」

このか、少しは心配をしてくれ。

俺の頭に突き刺さった鋭く、速くそれでいて重い一撃。

これは…幼少の頃より受け続けている拳だ。

そう、それはもちろんアスナのゲンコツ。

「ア、ン、タ、ねえ~っ! 私だって待ってたのにこのかにだけお礼を言うのはなんなのよ!?」

「あー、ハイハイありがとうございますアスナ様ぁー」

「ねえ、千宏。アンタ…殺されたいの?」

握り締めた拳からめきめきと音がしている。

そんなアスナはとってもいい笑顔。

「すみませんでした」

俺は何かを考えるよりもまず、土下座をした。

迷いも何もなく土下座した。

「はあ、もういいわよ。バカな事やってないで、さっさと引っ越しに取りかからないと終わんないわよ?」

「そうだな。とりあえず、男子寮から新しい部屋に持ってく荷物を運ばないと」

「ほんなら、男子寮へれっつご~!やな」

楽しそうな笑顔で右手を突き上げて歩き出すこのか。

俺もこのかに続いてスタスタと歩き出す。

「アスナ、モタモタしてると置いてくぞー」

「ちょ、待ちなさいよ!」

慌ててアスナも俺とこのかに続いて。

俺たち三人は校舎から出て、男子寮への道を歩く。

「そういえば千宏。アンタ、どうして2-Aに来たのよ? 男子が中等部に転入なんてどう考えてもおかしいとしか思えないんだけど」

「あ、それはウチも気になるなぁ」

これはどう答えりゃいいんだ?

えーっと、えーっと……。

「が、学園長と賭けをしたんだ。俺がテストで全教科百点を取れば、今から高校に合格させてもらえるが、取れなければ麻帆良学園共学化へのテスターとさせるっていうな」

少々無理やりな感じがするが、そこまで嘘っぽくない話だと思う。

「アンタ…その賭け、ノリノリで乗ったんでしょ」

「随分と失礼な決めつけだね、アスナ」

人をなんだと思っているんだ、アスナは。

「へえ~おじいちゃん、麻帆良学園を共学にしよーとしとるん?」

「いや、まだ考慮中らしいぞ。共学化するかどうかを判断する為に、俺がテスターになったってワケ」

「そーなんかぁ…何にせよ、ウチはちーくんと同じクラスになれて嬉しいわぁ」

ほっこりとした愛らしい笑顔を浮かべているこのか。

そんなこのかを見ていると、このかは癒しだなぁ、と思う。

「このか、これから毎日話そうな」

「うんっ、ちーくんといっぱいお喋りするで~」

「千宏」

アスナが俺の名前を呼ぶ。

その声のトーンは低く、正直恐ろしい声だった。

「アスナ様、毎日楽しく話しましょうね!」

グッとサムズアップに満面の笑みを浮かべた俺。

冷や汗が流れているのは気にしないでほしい。

「よろしい」

アスナの一言で、俺は安堵の息を吐く。

マジでアスナ怖すぎるだろ…。

 

 

 

男子寮前。

「ウチ、男子寮見るん初めてやわぁ」

「私は千宏の忘れ物届けに来たり遊びに来たりで、結構来てるわね」

「そうだなぁ、アスナは何回も来てるな。……じゃ、俺の部屋行くか」

「ちーくんの部屋見るんも初めてやし、ウチ楽しみやわ~」

このか、俺の部屋にはなんもないぞ。

俺はこのかの期待に恐々としながら二人を先導する。

そして、歩くこと数分。

「こ、ここが俺の部屋だ」

部屋の扉を開いて、二人を先に中に入れてやる。

「ほえ~…ここがちーくんの部屋なんやねえ…」

「私が前に来た時とまったく変わってないんだけど、千宏アンタここで生活してるのよね?」

「当たり前だろうが。ここ以外に住むとこなんかねぇよ。ちょ、このかそこは開けるな!」

アスナは部屋をうろうろ。

このかはうろうろ、ガサガサ。

クロゼットを開けようとするこのかを止めて、二人をとりあえず座らせる。

「荷物を詰めてくるから、少し待っててくれ」

俺は二人にそう告げて超特急で荷物を詰める。

わざわざ引っ越し作業を手伝ってくれるという二人を、待たせるわけにはいかない。

わずか3分程度で俺は現段階で必要な荷物を大きなバッグ三つに分けて詰めた。

ベテランの主婦並みの早さである。

「つ、詰めてきたぞ…」

「早っ!?」

「おっきいバッグ三つ分も、ようこんな短い時間で詰めたなぁ」

今この瞬間、俺の女子力が二人の女子力を一瞬だけ越えた気がした。

…気がしただけだが。

「この荷物を新しい部屋に置いたら、次は最低限の家具だな」

「了解よ。とりあえず、荷物を置きに行かなきゃね」

「重そうやけど、ウチ頑張るで~」

「本当にすまんな、アスナ、このか」

一人一つバッグを持ち、女子寮へ。

往復すると結構な距離があるが、二人は文句も言わず手伝ってくれている。

こりゃ、ちゃんとお礼をしなきゃな。

談笑しつつ荷物を運び、新しい部屋に荷物を置く。

そうしてはさっさと女子寮をあとにして男子寮へ向かう俺たち。

「次は家具だったわよね」

「ああ、そうだ。家具を運ぶ為に、台車を借りてあるから楽だと思うぞ」

「用意がいいんやね~」

アスナと俺の働く速度はかなりのもので、引っ越しはスムーズに出来ている。

それでも、結構な時間がかかったが。

このかも、アスナほどの速度じゃないにしろきっちり手伝ってくれた。

二人には本当に感謝ばかりだ。

 

 

 

「よ、ようやく終わったー!」

「流石に疲れてもーたわ…」

俺の新部屋に大の字に寝転がるアスナに、ぺたっと座り込むこのか。

「本当にありがとな。おかげで今日中に引っ越せたよ」

俺はパパっと作ったパスタをテーブルに乗せながら感謝の言葉を述べる。

「好きなだけ食べろ、多めに作ったからな」

「えへへ、ウチ、ちーくんの手料理好きなんよ」

「いつ食べても美味しいわよね、アンタの料理」

三人で飯を食べるには、少しテーブルが小さかったが。

俺たちはそんなこと気にもせず、楽しく夕食を食べた。

「じゃあ、また明日な~」

女子寮の廊下で、このかが俺に手を振る。

俺は小さく手を振りかえして、アスナを手招きしてこちらに呼ぶ。

「どうしたのよ?」

「あー、えっと…今日はありがとな。ホント、助かったよ」

「気にしなくていいわよ、このくらい。なんかあれば言いなさいよ?いつでも手伝うからさ。……じゃ、また明日ね、千宏」

俺の言葉を聞いたアスナは微笑む。

アスナもまた、このかのように俺に向かって手を振りながら部屋へと帰っていく。

アスナとこのかの姿が見えなくなって、ちょっとさびしいような気なんかして。

でも、少しだけ。

2-Aへ転入したのも、そう悪くないのかもな、なんて思った。

 




ここまで目を通してくださりありがとうございました。
今回の話は短いので、もう一話連投致します。
次話でネギが学園にやって来ます。
毎日一話は必ず更新したいと思っていますので、よろしくお願いいたします。
感想、ご意見、誤字脱字等の報告お待ちしております。


9件のお気に入り、ありがとうございます!
とても小説を書く励みになります。
本当にありがとうございます。


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子供先生がやって来たり、アスナに魔法バレしたり。

今回の話でネギが登場。
というわけで原作開始となります!
しかしやはりキャラの口調が不安で仕方がありません…。
もっとネギまを読み込んでおきます。


俺が麻帆良学園女子中等部2-Aに転入してから一ヶ月と少し。

冬休みが終わり、今日は始業式。

2-Aに転入してからは、アスナとこのかと一緒に毎朝登校していたのだが、何か知らんが用事があるそうで。

俺は一足先に2-Aの教室に居た。

「ふあ…」

万年寝不足の俺は今日も今日とて大あくび。

「千宏君、大丈夫…?」

クラスメイトの大河内アキラが、心配そうな顔で声をかけてくれた。

「んー、全然大丈夫だから心配には及ばんぞ」

そう答えると安心したように微笑む大河内。

「大丈夫なら、良かった」

「悪いな、心配させて」

大河内はにこっと笑って席へ戻っていく。

戻っていく大河内に一言、言葉をかけた。

それから数分。

席に座ってぼうっとしていると、なんか怒ってるっぽいアスナが教室に入って来た。

どうしたんだ、アイツ?

そんなふうに思いながらも時計を見ると、もうそろそろ先生が来るであろう時間。

そろそろか…。

――コンコン。

教室の扉を叩く音。

「失礼しま…」

鳴滝姉妹辺りが設置したのであろう、黒板消しトラップ。

それが、非情にも頭に直撃するかというその時。

ぴたり。

新任の先生と言うにはあまりに若い少年の頭上数センチにして、黒板消しの動きが止まった。

魔法障壁か! 学校に来るときくらい解除しとけってんだ馬鹿野郎が…!

俺はポケットから自作の魔法石、障壁破壊(バリアー・ブレイク)の力を付与した小石を取り出す。

金髪ロリに襲われたあの日から、俺は魔法使い対策の物を持ち歩くようになったのである。

それが思わぬところで役に立つときが来た。

赤毛の少年を覆っているであろう障壁に向けて、俺は親指で小石を弾く。

小石が赤毛の少年を掠めて障壁を破壊。

障壁が壊れたのだから、もちろん頭上の黒板消しは落下する。

「ゲホゲホゴホ、ひ、ひっかかっちゃったなあゲホゴホ」

赤毛の少年は、さらにトラップがあるとも知らずに足を進める。

仕掛けられたロープに少年の足が引っかかり、転んだ矢先に頭上からバケツが。

その衝撃で一回転、でんぐり返しをするような形ですっ転ぶ。

すっ転んだと思えば、何処からかおもちゃの矢が飛び出し、少年に三つほど張り付く。

最終的に少年は教卓に激突して止まった。

何が何だか分からない、といった様子で少年は涙目になりながら頭をさすっている。

2-Aの皆は大笑いしていたが、まさかトラップに引っかかったのが少年だとは思っていなかったようで。

何人かが少年に駆け寄り、大丈夫かと声をかける。

最初からそんな大がかりなトラップなんぞ仕掛けなきゃいいだろうに…。

なんでこいつらはこういう事ばかりに力を注ぎまくるのか。

少年の付き添いらしき、しずな先生がパンパンと手を叩く。

「いいえ、その子があなたたちの新しい先生よ。さ、自己紹介してもらいましょうか」

このクラス、男子が転入してきたり明らかに若すぎる子供が担任になったりとおかしくないか…?

大丈夫かこのクラス。

不安になってきたぞ、俺は。

少年が緊張した面持ちで教壇へ上がり、一生懸命自己紹介をしようとしている。

ええと…とか、あの…とか言って、中々言葉を出せずにいる少年。

頑張れ、少年。

あまりに緊張しているもんだから、ついつい内心応援してしまった。

「今日からこの学校でまほ…英語を教える事になりました、ネギ・スプリングフィールドです。3学期の間だけですけど、よろしくお願いします」

まほ…? この少年、魔法と言いかけたのではなかろうか。

俺は顔を青くしていることだろう。

もう不安で腹が痛むレベル。

少年…ネギ先生をもみくちゃにし抱きしめたり撫でまわしたりきゃーきゃー騒ぐクラスメイトたち。

そんな中、アスナがネギ先生を片手で持ち上げ教卓に座らせる。

アスナの右手はネギ先生の胸倉を力強く掴んでいる。

いくら子供相手とはいえ、片手で持ち上げるって…。

俺はアスナを怒らせたらいかに危険かを再確認した。

「ねえアンタ、さっき黒板消しに何かしなかった? なんかおかしくない? アンタ

「え…」

やばいバレてる。

「キッチリ説明しなさいよ~!」

ぐいぐいと胸倉を引っ張るアスナ。

当のネギ先生はあうあう言うだけで答えない。

唐突に、バン、と机を叩く音。

「いいかげんになさい!!」

その声の主は、2-Aクラス委員長の雪広あやか。

「皆さん席へ戻って、先生がお困りになっているでしょう」

「ショタコン…」

おっとマズイ、思った事をつい呟いてしまった。

しかし幸いな事にあやかは俺の呟きに気付かなかったようだ。

「アスナさんも、その手を離したらどう? …もっとも、あなたにみたいな凶暴なおサルさんにはそのポーズがお似合いでしょうけど」

「何ですって?」

あー…こりゃまたアスナとあやかの喧嘩が始まるな…。

俺は席を立ち、二人の喧嘩を止める為にスタンバイ。

俺がスタンバイしている間にも二人の口論はヒートアップしていて。

「何がいい子よ! このショタコン」

「なっ」

ついに二人は取っ組み合い、ぎゃーぎゃーと言いあいをしている。

俺は二人の間に無理やり割り込み、

「あやか。アスナを落ち着かせて話を先に進める為に席を立ったのに、お前が喧嘩をしだしてどうする。そしてアスナ。お前も言いたい事があるんだろうが、授業を始めなきゃ色々な先生に迷惑がかかる。もちろん高畑先生にもな。―――とりあえず、二人共落ち着いて席着け」

ハッキリとそう口にする。

このまま喧嘩させていたら殴り合いまでしだしそうだったからな。

それに、昔からこの二人の喧嘩を止めていたのは俺だったし。

「そうでしたわね。すみませんでした皆さん、千宏さん」

「確かにアンタの言う通りね…」

俺の言葉に納得してくれたようで、二人は席に着いた。

この二人を納得させるのは骨が折れる…今回は一発で納得させられて良かった…。

二人が席に着いたのを確認して、俺も自分の席に戻る。

そうして、ようやく授業がスタート。

俺はぼうっとしていて授業をあまり聞いていなかった。

というかむしろまったく聞いていなかった。

「あいたっ」

ネギ先生が、授業の説明とはまったく関係ない声をあげる。

なんだ? あいたっ、って言ったよな、今。

俺はぼうっとしていたが、ネギ先生の方へと視線を向けてみる。

ネギ先生はきょろきょろと周りを見て、また黒板の方を向く。

ネギ先生が黒板の方を向いたその時、アスナがゴムを使って消しゴムを飛ばす。

アスナ何してんだよ。

消しゴムが当たるたびに、ネギ先生は「いたっ」「あいたっ」と声をあげて。

そんなネギ先生の様子をおかしく思ったのだろうか、あやかが声をかける。

ヒソヒソとあやかは、あることないことアスナの事を吹き込んでいる。

ヒソヒソ話をしているつもりだろうが、丸聞こえだ。

耐えきれなくなったアスナが筆箱を投げつけ、その筆箱はあやかを直撃。

またも取っ組み合いの喧嘩が始まった。

しかもその直後にチャイムが鳴り、授業はほぼ何もせず終了してしまうのだった。

 

 

 

 

授業終了後のこと。

俺は落ち込むネギ先生を追っかけていた。

魔法関連で、話したいことがあったからだ。

ネギ先生は、ダヴィデ像が置かれた広場の階段に座っていた。

「ネギ先生ー」

「あ、あなたはうちのクラスの…」

「守桜千宏だ」

まだクラス全員の名前は覚えられていないようなので、俺は自分の名を名乗りながらネギ先生の隣に腰を掛けた。

「千宏さん、ですね! すいません、まだ名前をキチンと覚えられてなくて」

「気にするな。まだ来たばかりなんだ」

「ううっ…ありがとうございます!」

何やら感動したように涙目でお礼を言われた。

「あー、えっと、ネギ先生。俺、ネギ先生に伝えたい事があって来たんですよ」

「何ですか?」

「驚かないでくださいね? ――俺も、ネギ先生と同じ魔法使いなんです」

「ええええええーーーっ!?」

驚くな、といったのに、盛大に驚くネギ先生。

「静かに! 驚かないでくださいって言ったでしょうが!」

「あっ、す、スミマセン…」

「言いたい事は、それだけです。伝えておいた方が、良いかと思いまして」

「えへへ、僕とは同じ仲間が出来たみたいで嬉しいですよー! あ、そうだ。千宏さん、敬語じゃなくていいですよ? ボクの方が年下ですし」

もじもじとして、嬉しそうに言うネギせん…ネギ。

俺にそっちの気はないぞ。

「そうか、じゃあネギって呼ぶけどいいか?」

「ハイ! 全然構いませんよ!」

今ここに、魔法使い同士・男同士の友情が芽生えるのだった。

俺は、なんとなしに上を見上げる。

同じクラスの宮崎のどかが、大量の本を持ってふらふらとしながら階段を降りている。

「危なくないか、アレ」

「危ないですよね」

俺たちがそう口にした直後、宮崎は足を踏み外す。

俺は駆け出し、ネギは杖を掴む。

「ネギ、頼んだ!」

ネギが発動させた魔法により、宮崎の体はふわりと浮く。

俺は全速力で駆け、宮崎を受け止める為に両手を伸ばした状態でスライディング。

ズザザザー、と摩擦音。

「痛ってて…宮崎、大丈夫か?」

思い切りスライディングした所為で、俺の制服は摩擦によって破けていた。

しかも結構大きな擦り傷も出来ている。

擦り傷特有のじわじわした痛み。

「あ…」

あ? ネギの声だ。

俺は声がした方を見る。

そこには…アスナが居た。

「あ、アスナ、これはだな…その…」

魔法を使ったところを見られたっぽい。

魔法を使ったのはネギだが、宮崎を受け止めたのは俺だ。

俺も、共犯と見られること間違いなしだろう。

「う…」

宮崎が身じろぎし、目を開ける。

良かった、無事みたいだな。

いや全然今の状況は良くないが。

アスナはネギの杖を握り、ネギを持ち上げる。

さらには俺の腕を引っ掴んで走る。

み、宮崎放置しちゃう事になるけど大丈夫かな。

小さな林のようなところまで連れてこられた俺とネギ。

どんっとネギは木に叩きつけられ、俺はネギの隣に。

「あああ、アンタやっぱり超能力者だったのねーー!! 千宏も!? 千宏もなの!?」

「いや違うんだけど…」

「白状なさい! 超能力者なのね!?」

「ボクと千宏さんは魔法使いで…」

「どっちだって同じよ!!」

全然違うだろ。

ああ、面倒な事になったぞ…。

まさかここまで来てアスナに魔法バレするとは思わなかった。

いくら宮崎を助ける為とはいえ、迂闊だった。

俺が色々考えこんでいる間にアスナとネギの話は進んでいて。

「消えろーーーーっ」

…消えろ? 俺が考え込んでいるどういう話になったんだよコレ。

我に返った俺は、ネギとアスナの方へと目を移す。

そこには何故か半裸のアスナが。

「なんで半裸?」

「きゃあああああっ!! 見るんじゃないわよバカーーーッ!!!」

顔面に突き刺さる…鋭いパンチ…や、やるじゃないか、アス、ナ…。

 

 

 

 

「半裸の鬼があああっ!!」

はあ、はあ…ゆ、夢か。

って、あれ? なんだこれ。

「ち、千宏。悪かったわね…その、思い切り殴っちゃって」

俺はアスナにおぶられていた。

アスナの隣を歩いてるのはネギ。

えっ、俺かっこ悪っ。

「アスナ、気にしてないから別にいいぞ。と、いうか降ろしてくれていいぞ」

「あ、そうね。じゃあ降ろすわよ」

アスナにおぶられていた状態から降りる。

アスナが2-Aの教室の扉を開く。

「ネギ、荷物取って来るからちょっと待ってなさい!」

パンパンパーン! アスナが扉を開いた矢先、クラッカーの音が鳴り響いた。

「ようこそ、ネギ先生ーッ」

「あ、そうだった…今日はアンタの歓迎会するんだった、忘れてた!」

なんでそんな重要な事を忘れてたんだよ。

とりあえず俺は飲み物をもらい、丁度腹も減っていたので何か食べる事にした。

肉まんをもらって、適当に座る。

いつ食べても美味いな、この肉まん。

ネギを取り巻く生徒たちからは少し離れているので、落ち着いて肉まんが食べられるぜ。

そんなふうに思いながら肉まんを食べ、三つ目の肉まんを食べ始めた時。

「あ、あのー…」

宮崎が遠慮がちに話しかけてきた。

「さっきはそのー…危ない所を助けていただいてー…」

「ああ、気にするな。怪我、なくて良かったな」

「ありがとうございます…あの、これお礼に…図書券を…」

そういえば、宮崎って男性恐怖症じゃなかったか?

俺と話しているが、大丈夫なんだろうか。

無理してわざわざお礼を言いに来てくれたのか?

「お礼何ていいのに。でも、ありがとな。大切に使わせてもらうよ。…ところで、宮崎って男性恐怖症じゃなかったっけ?」

「あ、はいー…その、男の人は苦手で…。で、でも、守桜さんは何故か大丈夫っていうか…」

「そうか、無理してお礼しにきたんじゃないんだな、良かった。あ、そうそう。俺の事は千宏で良いぞ? 宮崎も、嫌じゃなけりゃのどかって呼ぶからさ」

「あう…その、えっと……」

「のどかなら名前呼びされても気にしないから、のどかって呼んであげてね~、千宏くん!」

急に現れたのは、早乙女ハルナ。

「へ!? え、ハ、ハルナ!?」

「のどか、別に千宏くんに名前呼びされるの嫌じゃないでしょ?」

「それは、そうだけど…」

なんかよく分からんが、引っ込み思案で自分の思いを中々口に出来ないのどかの代わりに、早乙女がのどかの考えを代弁してくれた…といったところか。

「じゃあのどかって呼ばせてもらうわ。よろしくな、のどか」

「は、はいー…。よろしくお願いしますー」

俺は早乙女とのどかと話しながら肉まんをぱくぱく食べていた。

ふと、アスナとネギが居ない事に気付く。

「あれ……? 悪い、ちょっと行って来る」

二人にはそう告げて、2-Aの教室を出る。

2-Aの教室を出てすぐ近くの階段付近に、何故かあやか、朝倉など何人かの生徒が。

「何やってんだよお前ら」

俺がそう口にしながらそちらに近付き、あやかたちが凝視している方を見る。

いったい何があるん――――え゛っ。

俺たちの視線の先には、抱き合うネギとアスナ。

アスナはオジコンじゃなかったのか…?

「あ、あー…えっと。アスナ、お前がそんな趣味のヤツとは思わなんだ。見なかったことにしといてやるから、安心してくれ」

俺はそれだけ言って教室へ戻ろうとスタスタ歩く。

「ちょ、違うのよ千宏――ッ! 違うんだってばぁー!!」

そんな叫びを背に俺は教室へ戻った。

のちに、アスナが必死の形相であれは違うとか誤解よとか弁解をしに来た。

あまりに必死なので、俺は耐えきれなくなり大爆笑したらぶん殴られました。

 




ここまで目を通してくださりありがとうございます。
感想、ご意見、誤字脱字等の報告おまちしております。
出来るだけ毎日一話は必ず更新できるよう努力してまいりますので、どうかよろしくお願いいたします。


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高等部女子とドッジボール対決!

原作第一巻もこれで終わりとなります。
次話で期末テストの話を終わらせ、その次に桜通りの吸血鬼編となります。


俺は、とある用事があって二日間学校を休んでいた。

今日は二日ぶりに登校してきたワケで。

なんだかアスナやこのかに心配されたりあやかにはツンデレされたりと朝から大変だった。

俺はただ、やる事があったから休んでいただけなんだが。

しかしそのやる事、というのが魔法関連だった為に俺は風邪だと嘘をついて休んだ。

心配されたのはその所為だろう。

なんだかちょっと罪悪感。

まあいいだろう、たまにはあいつらの優しさをもらっても。

嘘だけど。

で、今は。

ネギに職員室へ呼び出されたので職員室へ。

俺は職員室の扉を開けて職員室の中へ入る。

ネギが座っている机まで行き、

「ネギ先生、いったい何用で?」

場所が場所なので、先生と付けて話しかける。

「あ、わざわざ来てもらっちゃってスミマセン。えっと、二日間のプリントを…」

「おお、ありがとうネギ先生」

呼び出しとかめんどくせえ、なんて思ってごめんなさい。

ネギは俺の分のプリントをしっかり取っておいてくれたようだ。

差し出された、少し多めな二日分のプリントを受け取る。

「うわあああ~ん、センセー!!」

「ネギ先生~~っ」

プリントを受け取ったその直後。

和泉亜子、佐々木まき絵の大きな声が響き、職員室の扉が勢いよく開いた。

当然、入って来たのは和泉亜子と佐々木まき絵。

「こ、校内で暴行が…!」

「見てくださいこの傷! 助けてネギ先生っ」

そう言う二人には擦り傷が幾つか。

二人が嘘を言ってる様子はないので、本当に誰かにやられたものなんだろう。

「ネギ、行くぞ。和泉、佐々木、案内を」

俺とネギは、和泉と佐々木に案内してもらって現場へ急行するのだった。

 

 

 

 

「いやーん、私たちが先なのにーー!」

俺たちが現場に着いた時、高等部の女子にうちのクラスの明石が引きずられていた。

「明石から手を離せ」

「ボクのクラスの生徒をいじめたら怒りますよっ」

俺とネギが、高等部の女子たちにそう告げる。

どうも、ネギの言葉には迫力がなかったが。

「キャーーーッ、かわいい~~!!」

一斉に女子たちがネギへと群がる。

俺はその間に、明石の方へ近付いて、明石に手を差し伸べた。

「明石、大丈夫か?」

明石は俺の手を取って立ち上がり、尻をパンパンと叩いて土やほこりを払う。

「うん、ちょっと擦りむいただけ。助けに来てくれてありがとね」

見ると、明石は手を少し擦りむいていた。

「どういたしまして」

俺はそう口にしながら、明石の擦り傷に絆創膏をペタリと貼る。

俺が明石の手当てをしてる間にも、ネギは高等部の女子たちにもみくちゃにされていて。

「いい加減におよしなさい、おばサマ方!!」

「そうだぞババア共。ババアが盛ってても見苦しいからやめろー」

どさくさに紛れて俺も文句を言ってやる。

「な、なんだとコラァ!」

「ここはいつも2-Aの乙女が使っている場所です。高等部の年増の方々はお引き取り願えます?」

「ぶふっ、と、年増…ぐふっ」

俺はあやかの言葉が面白くて吹き出してしまう。

その所為で、高等部のババアに睨まれてしまったが。

「だいたい! 私のネギ先生にですねえ――うぷっ」

あやかがどうでもいいことを言おうとしたその時、アスナがあやかを押しのけた。

「とにかく帰ってください! センパイだからって力で追い出すなんてちょっとひどいじゃないですか!?」

「…ふん。言うじゃないミルクくさい子供のくせに」

「そのミルクくさい子供より小さな子供を可愛い可愛いともみくちゃにしてたババアがよく言うよ」

「なんですってえ!?」

俺の言葉に怒る年増ババア。

俺は内心笑いをこらえきれずにいた。

ぎりぎり表情には出していないが、面白くてたまらない。

こいつら簡単に怒るからからかいやすくていいわあ…。

「知ってるわよ、神楽坂明日菜と雪広あやかに守桜千宏ね。中等部のくせに色々でしゃばって

有名らしいけど…。センパイの言う事には大人しく従うことね。子供は子供らしく隅で遊んでなさい、神楽坂明日菜」

「俺はすぐ力にモノを言わせる方が子供だと思うけどね」

「守桜千宏…さっきからうるさいわね…!!」

「正論を言われれば反論せず怒るだけ、と。子供なのはどっちなんだかなあ」

ニタッと悪い笑みを浮かべる俺。

いじりがいがある相手をおちょくるのは最高に楽しい。

ただ、やはりクラスメイトをこうも馬鹿にされたら腹が立つ。

だからこそ俺は今、馬鹿にしまくってるわけで。

「ぐ……こ、こんのガキィーー!!」

女子高等部の女子、そのリーダー格らしき女子がその手を振り上げる。

俺がこの拳を受ければ…ククク、こいつらが悪い事になるだろう。

いいぞ、殴れ。

避けようとすらしないのだから、当然のことながらリーダー格の拳は俺の頬へ。

「…痛ってえな」

「私のクラスメイトに何するんですこのババアッ!!」

「あんたら、いくらなんでも殴る事ないじゃないのよ!!」

「ち、千宏さんっ! 大丈夫ですか!?」

俺が拳を受けた事で、事態はさらに大きく。

女子高等部の女たちとアスナ、あやかは取っ組み合いの喧嘩に。

ネギは俺の所へ駆け寄ってきてくれた。

いや、でもちょっとこれはマズイかも。

ヒートアップしすぎる前に喧嘩を止めないと…焚き付けておいてなんだけど。

「相変わらず元気だな、二人共」

高畑先生が、取っ組み合いの喧嘩を仲裁し止めに入る。

お互いが悪かった、ということをきちんと伝えて場をおさまらせる高畑先生。

この辺は流石と言える。

高畑先生のおかげで、この場はおさまり女子高等部も中等部もお互いに解散した。

俺、殴られ損じゃないか?

 

 

 

 

体育は屋上でバレーボール。

…なのだが。

俺は女子たちと一緒に着替えられるわけもなく、俺は女子たちが着替え終わった後に体育着に着替えなければならない。

必然的に、俺は体育の授業に遅刻することとなるわけだ。

一人さびしく着替え終えた俺は、一人屋上へ向かうのだった。

屋上への扉の前まで来て、なんだか屋上が異常に騒がしい事に気付く。

屋上の扉を開けると…なんと、女子高等部の女子と2-A女子がドッジボールをしていた。

「あっ、千宏良いところに!」

「千宏さん、早く線の中にお入りなさいな!」

「えっ、おっ、おう」

なんだかよくわからないが、俺もドッジボールに参加しろという事だろう。

俺はとりあえず、線の中に入る。

「数が増えても変わらないわよ…。よし、次はあんたよ!」

女子高等部の女たち、そのリーダー格の女がのどかを指差して宣言。

次に当てる相手を言っちゃうとか、馬鹿なのかこの女は。

のどかの近くにはアスナが居る。

アスナがボールを取るだろうから、俺はまだ待機だな。

「それっ!!」

「きゃあっ」

バシィッ、とボールをキャッチする音。

思ったとおり、アスナがのどかの体育着を引っ張り引き寄せ、ボールをキャッチしていた。

流石アスナ。

キャッチしたボールを、アスナは大きく振りかぶり全力投球。

「…マジかよ」

まさか、アスナの全力投球が止められるとは思わなかった。

リーダー格、中々やるようだ。

俺は次に来る攻撃に備えて自分の位置を微調整。

ボールから目を離さず集中。

「ビビ! しぃ! トライアングルアタックよ!」

「ぶふっ」

せっかく集中していたのに、相手が面白い事を言うから吹き出してしまった。

笑かすなよ。

「ネギ先生、気をつけて! 私が受けて立ちますわ!」

なんかあやかがかっこつけて色々言ってるが、あやかはあっけなくトライアングルアタックに惑わされてアウトに。

あやか、お前はやっぱりバカなんだな。

「残ったのはほとんどチビとトロそうなのばっかり。次の標的は神楽坂明日菜ね」

またも次に狙うのは誰かを宣言する辺り、こいつも本当にアホなんだな。

アスナだから大丈夫だろう。

宣言されているし、アスナならサポートしなくても問題ない。

俺はそう思っていた。

しかし。

「必殺――太陽拳!!」

「しまった…太陽を背に!?」

バシィッ、と、アスナは当てられてしまったのだ。

「もう一撃!」

リーダー格は、もう一度アスナにボールを当てようと腕を振りかぶる。

俺はアスナの目の前に立ち、アスナを庇う。

俺の右腕を、ボールが思い切りぶつかって叩く。

右腕に擦り傷が出来るほど思い切り、この女はアスナに二撃目を食らわせようとしたのか。

「ち、千宏!? 大丈夫!?」

アスナは心配そうに問いかける。

お前、自分もさっき思い切りボールが脇腹にぶつかってたんだから自分の身の心配をしろよ…。

「俺は大丈夫だ。んな事より、お前こそ大丈夫かよ」

「私も大丈夫。大したことないわよ」

俺もアスナもアウトになってしまい、残ったメンバーの空気はどんよりとしている。

「頑張れ、お前ら。しっかりボールを見れば取れるぞ! 後ろさえ向かなければ、かならずボールは視界に入るんだからな」

「そ、そうですよ! 前さえ向いていれば、きっとボールも取れます! がんばりましょうっ!!」

俺は皆を鼓舞する言葉をかけ、外野へ。

俺の言葉にネギも賛同してくれて、さらにネギも皆へと言葉をかけていた。

俺、結局アスナを庇って終わったなあ…。

皆には申し訳ないが、頑張ってもらうしかない。

どうやら、俺とネギの言葉は幸いにも皆をちゃんと鼓舞出来たようで、皆からの溢れんばかりのやる気が見て取れた。

やる気になった2-Aは、すごい力を発揮するはず。

俺にはそんな根拠のない自信があった。

俺の自信は大当たり。

皆、それぞれ持ち前の特技や個性を生かしてどんどん相手の人数を減らしていた。

そして、なんと…2-Aは、10対3で、勝った。

「よっしゃあ!」

俺は小さくガッツポーズし、皆が勝ち取った勝利に喜ぶのだった。

「まだ…ロスタイムよっ!!」

しかし、リーダー格の声に俺の喜びは遮断された。

見るとあの女、アスナを後ろから狙ってボールを放とうとしていた。

アスナはまだ気付いていないよう。

俺はアスナの方へとダッシュ。

この距離なら間に合う、受け止められる…っ!

アスナへ迫るボールを、俺はなんとか右手で受け止めることに成功。

「千宏…!」

今回の行動には流石に堪忍袋の緒が切れた。

許さねえぞババアァ……!

「汚ねえ真似ばっかしてんじゃねえ!」

俺が投げたボールは、リーダー格を掠めて壁に激突。

ボールは、壁にめり込んでいた。

何故ボールが割れないのかは知らん。

「ひいっ…」

俺はリーダー格へと近付き、耳元で

「あんまり度が過ぎると………分かるな?」

「ひいいいいっ! すいませんでしたあああああっ!!!」

そう叫んで逃げていくリーダー格。

それに続いて高等部の女どもは皆逃げ帰って行く。

「ったく…」

「やったーーっ」

「高等部に勝ったーっ!!」

2-Aの皆が歓声をあげ、騒ぎ出す。

ネギを胴上げしたりして騒ぎまくっている中、誰かにちょんちょんと肩を叩かれた。

「ん? ああ、アスナか」

「あの、ありがとね、さっきは」

「どーいたしまして。まあ怪我も大した事ねーから気にすんな」

「ううん、それでも…助けてくれて、庇ってくれて…ありがと」

アスナが笑顔で礼を告げる。

久しぶりにアスナのこんな顔も見れたし、多少の怪我くらい良いか。

俺とアスナは、お互いに笑い合うのだった。

 

 

 

 

「そういや、あやか何の役にも立ってなかったな」

「なにかございまして!?」

「トライアングルアタックにやられてたじゃねえか」

「…それは言わないでください」

 




ここまで目を通してくださりありがとうございます。
何話か書き溜めしてあるので、今回も連投しようと思います。

非ログイン状態からでも感想を書けるように設定してあるので、感想いただけると嬉しいです。
感想、ご意見、誤字脱字等の報告お待ちしております。

お気に入り件数10件突破、17件のお気に入りありがとうございます!
やる気がうなぎのぼりしております、頑張ります!!


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期末テスト~消えたバカレンジャー~

今回の話はとても短く、1000文字とちょっとしかありません…申し訳ないです。
ですが、ネギが3-Aの担任になるということが決まる話なので一応必要かと思いまして。
この次の話、桜通りの吸血鬼編は二話に分ける予定です。


いつもの朝。

来週の月曜から期末テストだというのに、このクラスはまったく勉強する素振りをみせていない。

まあハナッからこのクラスがまともに勉強するようなクラスだとは思っちゃいないが。

でもこのクラス、確か毎回学年最下位だったよなぁ…。

そんなんで大丈夫なのか、このクラス。

「なあ、金髪ロリ」

ネギが来るまで暇だし、隣の席の金髪ロリに話しかけてみることにした。

「誰が金髪ロリだ!? お前このクラスに転入してきたから随分経つのにまだ私の名前を覚えていないのか!」

「いや覚えてるけど呼ばないだけでーす」

「きいいっさまあああ…!」

うんうん、こういう風に簡単に乗せられる子は俺好きだぞ。

おちょくるのは楽しいなあ。

「マスター落ち着いて。ここは教室ですよ」

「茶々丸の言う通りだぞ、落ち着けよ金髪ロリ」

「だからその呼び方をやめろと言っている!」

「てへ☆」

「殺す! 殺してやるうう!!」

「マスター、おやめ下さい!」

俺はとても充実した朝を過ごした。

いやー、これからも金髪ロリのことはじゃんじゃんいじってこう。

俺はそう心に決めるのだった。

 

 

 

 

「今日のホームルームは、大・勉強会にしたいと思います! 次の期末テストはもうすぐそこまで迫ってきています!」

おお、ネギよそれは正しい判断だ。

ぶっちゃけ、アスナがひっくい点を取ったらそれをネタに色々言えるのでそれも良いのだが。

「はーいっ、提案提案!」

椎名桜子が手をあげて提案だというが…正直、あの笑顔を見ると不安にしかならん。

変な事を言うんじゃなかろうかと、俺は一人不安に胃を痛める。

「では! お題は英単語野球拳が良いと思いまーーすっ!!」

ほら見ろ。

どうせそんなような事を言うだろうと思ったよ。

でもまあ、そんなおかしなことをネギは許可しないだろ。

「分かりました、じゃあそれで行きましょう」

「ネギ!? 俺の信頼を返せバカやろおおお!」

ネギが許可するわけがないなんて思っていた俺が馬鹿でした。

「ちょっとネギあんた野球拳って何か知ってんの!?」

ネギは考え事でもしているのか、アスナの言葉も俺の言葉も無視。

あの野郎…こんな状況にしておいて…!

英単語野球拳なんてすれば、当然の事…アスナ含むバカレンジャーの五人は脱ぎまくりなわけで。

五人はもう、ほぼ何も着ていないような状態。

もうダメだこのクラス…。

そんな風に思いながら半裸五人とその周りの取り巻きを見ていると。

アスナと目が合った。

目が合った瞬間、アスナは顔を真っ赤にして――

「何見てんのよアンタはああああああああっ!!」

プロ顔負けなアッパーが俺の顎を正確に打ち抜くのだった。

「り、理不尽すぎるだ…ろ…」

その日、俺は顎の痛みに耐えながら授業を受ける事となった。

ネギ、てめえ許さねえぞ。

のちに、しずな先生から聞いた話で。

今回、学年最下位から脱出出来なければネギはクビになるらしい。

でも許さねえぞ。

 

 

 

 

―――今回の期末テスト。

バカレンジャーとその他クラスメイト数人、そしてネギが行方不明になったりしたが無事テストを受けられたようで。

何故だかは知らんが、2-Aが学年トップを取り、ネギはそのまま3-Aになっても担任という事になって期末テスト騒動は幕を閉じるのだった。

 




読み返すと本当に短い…。
申し訳ありません。
次話は4000文字をこえていますのでご安心を。
感想、ご意見、誤字脱字等の報告おまちしております。


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桜通りの金髪ロリ事件【前編】

今回は、「桜通りの吸血鬼事件」のお話となります。
前編・後編に分けております。
後編は明日投稿致します、よろしくお願いします。
今回のお話、主人公がネギにお説教(?)のようなものをする場面がありますので、そういったものが苦手な方はお気を付けください。
ようやく今回のお話でオリ呪文が登場します。
翻訳サイト様に頼って作った似非呪文です、ごめんなさい。
何故だか、ネギの呪文がルビ振っても振れていないのでラテン語なしの日本語だけとなっています。
お許しください。


「3年A組! ネギ先生ーっ!!」

新学期。

2-Aから3-Aとなり、俺たちは進級した。

3年になっても、相変わらずこのクラスは騒がしい。

まあ、いきなりおとなしくなられたら怖いがな。

「ん、そうだ。…金髪ロリ、今日って身体測定だったよな?」

今日は身体測定の日、だった気がしたので俺は金髪ロリに声をかけた。

もちろん、わざと名前をちゃんと呼ばずに。

「貴様は何度言えば分かるんだ!? その呼び方をやめろと言っている!!」

「質問に答えたら呼び方を改めてやろうじゃないか」

「言ったな! 今日は身体測定の日だ!」

「あ、やっぱりか。ありがとな金髪ロリ」

「貴様呼び方を改めるんじゃなかったのか!?」

「嘘に決まってんだろ」

「殺す! 貴様だけは殺してやるうう!!」

胸倉を掴まれ、ガクガクと揺さぶられるが俺は無視を決め込んでやる。

無視している間もギャーギャー騒いでいるが俺は耳にも入れなかった。

「で、では皆さん、身体測定なので……えと、あのっ今すぐ脱いで準備してください!」

俺はどっかの誰かさんに理不尽な事を言われ殴られる前に退散、退散っと。

ささっと3-Aの教室から退散。

「ネギ先生のエッチ~~~ッ」

すぐに退散して正解だったな、と心から思う俺であった。

ネギが涙目になりながらこちらにやってきた。

どうやら、俺とネギの男子組は廊下で待機のようだ。

「ネギ、災難だったな」

「ううっ…千宏さぁん…」

涙目でこちらを見つめるネギは、ショタコンが見たら鼻血を吹き出しそうな顔をしている。

しかし残念ながら俺はショタコンじゃないしホモでもない。

かわいそうだとは思うがきゅんとくる事はないのだ、残念だったな!

「せ、先生――っ、大変やー! まき絵が、まき絵が―――」

こちらへ走ってきながら叫ぶ和泉。

どうやら、佐々木に何かがあったらしい。

「何!? まき絵がどーしたの!?」

そんな和泉の声を聞いて、3-Aの皆が扉を開けて叫ぶ。

まあ、つまり。

半裸の女子たちがこちらを見ているというわけで。

「お、お前らなあ! 佐々木がどうこう以前にそんなかっこうで出てくん―――ぐへえあ!?」

「乙女の肌をまじまじと見るなんて許せませんわ、この不埒者ーっ!!」

俺は下着姿の女子たちを指差して、そんなかっこうで出てくるなと言おうとした。

しかし、言い終わる前にあやかのビンタが。

いったいいつ、俺がまじまじと見たと言うんだろうか。

毎回毎回理不尽すぎるだろ。

その後、俺はネギと一緒に保健室へ行き、佐々木の様子を見に行った。

その時、魔力の残滓を佐々木の体から確認。

俺はネギと一緒に、夜に見回りをすることとなった。

ああ、寝不足が加速する…。

 

 

 

 

「やっぱり、夜になるとちょっと怖いです…」

「俺はアスナの拳の方が怖いね」

「あ、あはは…」

夜。

俺とネギは見回りをしている最中。

ネギとくだらない世間話をしつつ、見回りをしている。

俺たちが現在見て回っているのは、噂になっている【桜通り】である。

普通に談笑しながら歩いていると、すぐ近くから魔力反応。

「ネギ、俺は先に行く!」

俺はネギに口早に一言告げて走り出す。

「レ・ヴァン・フォルテス・ヴァルテルディス! 空中踏歩!(アーリス・アンブラーテ)

小さくジャンプしたその時に、オリジナルの魔法詠唱。

俺は空中を踏み、大きく前進。

名前の通り、この魔法発動中は空中を踏むことが出来るようになる。

しかも、この魔法を使うと自動的に足に魔力が付与される為に走るよりも早い移動手段となるのだ。

魔力反応がした方へと進んでいくと、金髪ロリらしき人物がのどかを襲おうとしているところで。

「キャアアアアアアッ」

迫る金髪ロリに悲鳴をあげるのどか。

「やっぱりお前か金髪ロリ!!」

のどかの前に着地しながら黒マントの金髪ロリを睨みつける。

「貴様…!」

睨みつける俺を睨み返す金髪ロリ。

「ボクの生徒に何をするんですかーっ!」

と、杖に乗ったネギが叫びながらこちらへと。

「風の精霊11人、縛鎖となりて敵を捕まえろ 魔法の射手・戒めの風矢!!」

ネギが放つ魔法の捕縛矢。

それに対し金髪ロリは魔法薬の入った小さな瓶を投げて。

氷盾(レフレクシオー)

魔法薬を触媒に、捕縛矢を防ぐ防御魔法を発動。

ネギの捕縛矢が弾かれた勢いで強い風が巻き起こる。

「千宏さん、宮崎さんを寮へ連れて行ってあげてください!」

「気をつけろよ、ネギ!」

ネギに言われた通り、俺はのどかを背負って寮へと向かう。

ううん、こりゃまた面倒な事になりそうだな…。

 

 

 

 

金髪ロリに襲われたのどかを助けてから、二日後。

昨日は特に何の問題も起きず平和であった…ネギはまた3-Aの皆に何かされたらしいが。

俺は知らん。

今日も今日とてアスナ、このか、ネギと登校。

「だったらネギのパンツだっていいじゃないのよ」

はたから見たらアスナがおかしい事を言っている痴女にしか見えないが、どうやらネギのペットがアスナとこのかの下着を布団として使っていたそうで。

朝からアスナはご立腹である。

下手な事言わないようにしよ…。

ふと、ネギの方を見ると何故だかキョロキョロとしている。

「どうしたんだ、ネギ」

ついにネギまでおかしくなってしまったのか、と俺は一抹の恐怖を抱えながら声をかけてみる。

「千宏さん…そ、その…実はうちのクラスに問題児が……」

「ほぼ全員が問題児のような気がするんだけど」

ネギの言葉にそう答えた直後、金髪ロリと茶々丸が現れた。

「おはようネギ先生」

「おはようございます、千宏さん。ネギ先生」

俺は無視か、金髪ロリ。

茶々丸は礼儀正しいお辞儀と共に挨拶をしてくれた。

流石、どこぞの厨二病金髪ドチビ吸血ロリとは違うな。

こりゃもっとおちょくってちゃんと挨拶しないとダメだということを分からせなくちゃなぁ、金髪ロリには。

「今日もまったりサボらせてもらうよ」

「サボる前にすることがあるんじゃないかなぁ?」

無視する金髪ロリに俺はニタニタと微笑みながら問いかけてみる。

「…フフ、ネギ先生が担任になってからいろいろ楽になった」

まだ無視をするか、金髪ロリめ。

「……ニンニク」

小さな声で、しかしわざとらしく金髪ロリには聞こえるように呟く。

「っ、そ、それにしても今日は絶好のサボリびよ―――」

「ニンニクとネギのフルコースか、分かったよ」

「あ、ああクラスメイトの千宏くんじゃないかおはよう!」

ついに金髪ロリが折れた。

じわじわと圧力をかけた俺の勝ちである。

「おはよう、金髪ロリ。爽やかな朝だね」

「貴様は殺されたいのか!?」

「いや、金髪ロリにニンニクとネギをたっくさん食わせてやりたい」

「うっ」

ちょっと目がうるんでるよ、金髪ロリ。

ククク、吸血鬼とか言ってるが大したことねえなぁ。

ネギ、アスナは俺と金髪ロリの会話を見てぽかーんとしている。

「あっ、そうだ茶々丸。ネコたちは最近どうだ?」

実は、俺と茶々丸は子猫たちの世話をしていたりする。

しかし最近色々と忙しく、中々子猫たちのところに行けていなかった。

俺が行けなかった間、茶々丸が子猫たちの世話を一人でしてくれていたのだ。

「いつも通り元気ですよ」

「最近中々行けなくて悪いな」

「いえ、千宏さんがお忙しい事は分かっていますから気にしないでください」

「ちょっと待て貴様! 茶々丸と知り合いだったのか!?」

話に割り込んでくる金髪ロリ。

俺はそんなロリを見てニターっと笑ってやる。

「俺がこっちに転入してくる前から知り合いですけどぉー?」

「何勝ち誇った顔をしているんだ貴様は!」

「悔しいよなあ…自分の相棒が自分の天敵と前々から知り合いだったんだから」

「今日こそ貴様を殺してくれるわああああ!!」

「ここは学校ですマスター、おやめください!」

この後、数十分間もこんなやり取りが続いた。

いつの間にかネギもアスナも居なくなっていて、しかもなんとアスナとネギが仮契約をしたらしい。

まあでも、金髪ロリをおちょくりまくって満足したし良いか。

 

 

 

 

放課後。

俺は久しぶりに子猫たちの様子を見に行くことにした。

今日、茶々丸に聞いた話だと子猫たちは元気らしいがやはり気になるもので。

幸いなことに、今日の放課後は何の予定もないしな。

まずはコンビニに行って、猫缶を三つほど購入。

そのついでに、自分用のデザートを買う事にしたのだが選ぶのに少々時間を使ってしまった。

もう日が沈みかけている。

俺は子猫たちの居る、いつもの場所へとダッシュで向かった。

「……何してんだ、あいつら」

いつもの場所へ行くと、茶々丸とネギ、そしてアスナが対峙していた。

何やら神妙な顔つきで話していると思ったら、アスナが茶々丸との距離を詰めて攻撃を仕掛けだした。

アスナの動きは、ネギの魔力によって身体能力が上げられている為にいつもの何倍も速かった。

ネギの戦法をオーソドックスなもので、従者に前衛を任せ自身は魔法の詠唱に努めるというもので――――おい、ちょっと待て。

ネギのヤツ、魔力を込めすぎじゃないか!?

あれだけの魔力を込めた魔法の射手(サギタ・マギカ)なら、魔法障壁を持たない人など簡単に殺せちまうぞ!

「すいませんマスター、千宏さん…もし、私が動かなくなったらネコのエサを……」

「や、やっぱりダメーッ! 戻れ!!」

ネギの判断は、遅かった。

放たれた11矢は、戻る事なく茶々丸を貫かんと迫る。

だが、しかし。

俺の空中踏歩(アーリス・アンブラーテ)なら間に合うっ!!

茶々丸に光の矢が被弾するまであとわずかのところで、俺が間に入る。

「あ…」

俺が間に入った事に気付いた茶々丸が小さく声をあげるが今は構ってられん。

なんとかギリギリ間に合った…!

俺はわざと魔法障壁等の防御魔法を発動せず、その身に光の11矢を受けるのだった。

舞い上がり視界を遮る砂埃の中、俺は痛みに歯を食いしばっていた。

なんてバカ魔力。

このままではネギはいつか、人を殺しかねんぞ。

「ちっ…千宏!?」

「ち、千宏さん…!?」

アスナとネギが驚きの声をあげる。

ネギに至っては、俺の怪我を見て顔を真っ青にしていた。

アスナもネギほどじゃないが顔を青くしている。

「…ネギ。お前、自分の力が容易く人を殺せるものだと理解しているのか? まさか、あんな大きな魔力を込めた魔法を、魔法障壁も発動できない相手に放つとはな。それも、自分の生徒に。先生としての自覚はあるのか? なあ、ネギ。お前は魔法という大きな力を持っている。その力は、簡単に人を傷つけ殺せるものだと、しっかり自覚しろ。―――ああ、あと…余計な事ばかり吹き込むオコジョ。お前、次また余計な事を吹き込んだら…殺すぞ」

そこまで言い切ったところで、茶々丸が俺に駆け寄って、

「ち、千宏さんっ早く手当てをしなければ…!」

そう言いながら茶々丸は俺をお姫様抱っこし、ジェットを使って飛んだ。

俺かっこ悪っ。

女の子にお姫様抱っこされる男子ってどうよ。

「千宏さん、何故…私を?」

「そりゃ、茶々丸が怪我したら嫌だし居なくなったら嫌だからに決まってんだろうよ」

何を当たり前の事を。

「でも、私は機械ですよ?」

「機械とか関係ねえよ。俺は、俺の友達の茶々丸が大切なんだよ。だから、そういうこと言うな」

「…はい。ありがとう、ございます」

そう言う茶々丸は、少し笑っているような気がした。

その後、俺は茶々丸に手当てをしてもらった。

なんでも、茶々丸の話だとしばらく包帯を巻いてなきゃならないらしい。

…クソ、俺はどこぞの金髪ロリと違って厨二病じゃねえんだぞ。

 




ここまで目を通してくださりありがとうございます。
次話は桜通りの金髪ロリ事件、後編となります。
感想、ご意見、誤字脱字等の報告お待ちしております!

お気に入り件数30件突破いたしました。
皆様、本当にありがとうございます。


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桜通りの金髪ロリ事件【後編】

今回の話で桜通りの吸血鬼編は終了となります。
次に一話はさんで、修学旅行編へと突入していきますよ!
いやしかし修学旅行編、登場キャラ多くて大変ですね。
頑張ります。

ルビの内容が多すぎると入りきらないのか、長い呪文のルビはだいたい振られませんでした。
短い呪文のみルビが振られており、長い呪文はラテン語なしとなっております。
お許しください。
金髪ロリの呪文、闇の吹雪のルビも振れませんでした。


未だ包帯は取れていない。

まだ取るな、と言われてしまったのだ。

俺は泣く泣く包帯を巻いて、さあ学校へ――行こうとしたのだが。

茶々丸から電話があった。

簡単に言うと、金髪ロリが風邪をひいたから金髪ロリの家まで来て看病を手伝ってくれとの事。

茶々丸の頼みなら仕方がない。

俺は学校に適当な理由で休むと電話を入れて金髪ロリの家に向かっていた。

茶々丸から説明された通りの場所までやって来ると、目の前には二人で住むには大きめな木造の家。

「ここか、金髪ロリの家は。…それにしても、でかいなこの家」

俺はノックも何もせず、迷いなくガチャリと家の扉を開けて中に入った。

金髪ロリの家だし別に良いだろ。

「千宏さん、おはようございます…。すみません、お怪我をしているのに呼び出してしまって」

メイド服を着た茶々丸が階段を降りて、ぺこりとお辞儀。

「いや、気にすんなよ。茶々丸の頼みなら余裕余裕」

「ありがとうございます。あの、私これから大学病院で薬をもらって来ますので、その間マスターを見ていてもらってもよろしいでしょうか…?」

遠慮がちに、申し訳なさそうに茶々丸が言う。

ううむ、そんなに気にしなくていいのになぁ。

「おう、任せとけ」

「すみません、千宏さん。…では」

最後の最後まで申し訳なさそうにしていた茶々丸は、薬をもらいに出かけた。

俺は二階に上がって、金髪ロリの様子を見る事に。

ベッドで眠る金髪ロリは、とても弱弱しく辛そうな表情。

流石にちょっと心配。

「う、の、喉が…」

喉が渇いたらしい。

あまり気は進まないが、少し俺の血でも飲ませてやるか…。

吸血鬼だし、水より血のが良いだろ。

「ほれ、飲め。……少ししかやらねえからな」

少し血を飲ませ、俺は金髪ロリの口から指を離す。

「うう…暑い…」

「はいはい、カーテン閉めとくぞ」

次は暑いというので、俺は窓から差し込む光を遮断するためにカーテンを閉める。

「ハァハァ…さむい…」

「暑いとか寒いとか、どっちなんだよ…。あー、汗でパジャマがびちょびちょじゃねえか」

俺は目を瞑ったまま、金髪ロリを着替えさせてやる。

そうすると、ようやく金髪ロリは落ち着いたようで先ほどよりは楽そうな表情へと変わった。

「誰か居ませんかー」

下から、ネギの声が聞こえてきた。

俺は下へ降りてネギを出迎える。

「あっ、千宏さん…」

俺を見るなり、申し訳なさそうな顔をするネギ。

「お前の中で答えは出せてるみたいだし文句は言わん。気にしなくていいぞ。…ところで、金髪ロリの看病に来たのか?」

「あっ、いえ。この果たし状を…」

「ま、まあいいや。とりあえず二階に来てくれ」

俺はネギを連れて再び二階へと上がる。

寝込む金髪ロリを見てネギは驚いた表情をしている。

なんで驚いてるんだよ。

「えっ、ほっ、ホントに風邪なんですか!?」

「見りゃ分かるわ」

ネギは金髪ロリが眠るベッドへ駆け寄り、俺もまたそれに続いてベッドへと近寄った。

「う…やめ、ろ…サウザンドマスター…待て、やめろ……」

辛そうな表情で、寝言を呟く金髪ロリ。

それを見たネギは、ハッと何かを思いついたようにして杖を握る。

そして、ネギは俺に見て何かを懇願するような視線をぶつけてくるが俺は無視。

「やだよ、一人でやれ」

俺はバッサリとネギの頼みを切る。

だってやだもん、金髪ロリの夢を覗き見るなんて。

『ラス・テル・マ・スキル・マギステル 夢の妖精 女王メイヴよ 扉を開けて 夢へといざなえ…』

ネギは、人の夢を覗き見る魔法を唱えて金髪ロリの夢の中へ。

「暇になっちまったな」

金髪ロリが夢から覚めるまでの間、本棚にあった本を適当に読んでいた。

だって暇だし。

その中でも、大爆笑ものの本があった。

「身長を伸ばす10の方法…こ、こいつこんなん読んでんのか…ぶふふっ」

笑いが止まらん。

成長が止まってるんだから何しても伸びないに決まってんだろ。

難しげな魔法書とかが置いてあるのかと思えば…。

これは今度から金髪ロリをおちょくるネタに決定だな。

「うわあああああああッ」

「うおおっ、ビックリした」

金髪ロリが叫びをあげながら目覚めた。

「なっ、何故貴様がここに!?」

「茶々丸に頼まれて看病しに来たんだよ」

「ふん、余計なお世話だ」

感謝の言葉一つもねえのかよ、こいつは。

「はっ、しまった、寝てた…!?」

続けてネギも目を覚ました。

「私の風邪はもう治ったから、二人ともさっさと帰れ」

「はいはい、じゃあな」

金髪ロリに言われたとおり俺はさっさと帰ろうと歩き出す。

ネギもまた、金髪ロリに一言二言、言葉をかけて帰ろうとする、が。

「おい、貴様…何故寝ながら杖を握っていたんだ?」

バレたな、こりゃ。

「まさか…私の夢を……?」

ぷるぷると体を震わせている金髪ロリ。

「守桜千宏、貴様もかあああーーッ!!」

「はあ!?」

俺は見てねえよ!

「貴様はいつもいつも私をおちょくって…挙句に夢まで…!! 殺す! 今日こそ殺してくれる!!」

「待て待て! なんでネギじゃなくて俺に怒るんだよおかしいだろ!!」

「殺すーーーッ!」

「もう二度と看病なんてしてやるかあ!!」

結局、いつものように騒いで終わった。

元気じゃねえかよ、金髪ロリめ。

俺の看病はいったいなんだったんだよ…。

 

 

 

 

看病と金髪ロリの夢覗き見騒動の次の日。

今日は年に2回ある大停電の日。

ほぼすべての電力供給を切り、メンテナンスを行う日である。

俺はクソじじい(学園長)に、停電中の見回りを頼まれてしまった為に懐中電灯を握って、寮の外を適当に見回っていた。

はー、めんどくさ。

なんで俺がこんな事をせにゃならんのだ。

もうすぐ八時。

八時から、大停電が始まるのだ。

「12時まで見回りなんて…この時間がもったいない…」

俺がそう呟いた瞬間、時計の長針が12をさして。

学園中の電気が消え、ついに大停電が始まるのだった。

「始まったか――――え゛っ」

学園中の電力供給が止まった瞬間、膨大な魔力反応を感知。

こんなでかい魔力、ネギ以外で感じたことないぞ!?

「また問題発生かよ!? めんどくせえなあもう!!」

それでも見過ごすわけにはいかない。

非常にめんどくさいが、行かなければならない。

『レ・ヴァン・フォルテス・ヴァルテルディス! 空中踏歩ッ!(アーリス・アンブラーテ)

俺は寮の屋根を見下ろせるほどまで上昇し、魔力反応がした方へと走り出す。

空中を走る姿を誰かに見られても、CGで済ませられるからこの学園は恐ろしい。

どうでもいい話だが。

学園都市の端、そこにある大きな橋。

そこから大きな魔力反応が二つ。

一つはネギのものだ。

もう一つは誰のだか分からない。

少し離れた空中から、俺は橋の様子をうかがう。

こおる大地!!(クリュスタリザティオー・テルストリス)

氷魔法を発動するちっこい黒マントの少女が、ネギを追っかけていた。

んん? あれ、もしかして…。

き、金髪ロリ?

あのバカでかい魔力は金髪ロリのものだった事が判明した。

マジかよ、あいつもしかして強い?

真祖っつっても魔力少ないから弱いのかと。

もしかして金髪ロリって強いんじゃないか、と思いかけたその時。

金髪ロリは、ネギが仕掛けたらしき捕縛結界にはまっていた。

うん、やっぱりそうでもなさそうだわ。

魔法使いなのに、仕掛けられた捕縛結界くらい見抜けないでどうするんだよ。

――と、思いきや。

なんと金髪ロリ、捕縛結界を破壊してみせたのだ。

あ、やっぱすごいのかもしれねえ。

そんな事を考えながら見ていると、アスナが走って来ていた。

対応しようとする茶々丸に向かってクソオコジョがマグネシウムリボンに火をつけ、目くらまし。

茶々丸を抜いて、アスナは金髪ロリへ真っ直ぐに向かっていく。

金髪ロリは、魔法障壁があるからと余裕の表情だが…。

「ところがどっこい、アスナの攻撃に魔法障壁なんて無意味なんだよなあ」

俺の言葉通り、アスナの飛び蹴りは金髪ロリの魔法障壁を突破して金髪ロリに直撃。

金髪ロリはその衝撃ですっ飛んでいく。

その隙にアスナとネギは陰に隠れ、仮契約を行った。

あれ、この間仮契約したって聞いたけど…あれはなんだったんだ?

いやまあいいか。

陰から出てきたアスナとネギは、金髪ロリと茶々丸と再び対峙。

『契約執行 90秒間! ネギの従者 神楽坂明日菜!!』

ネギの魔力による身体能力上昇を施されたアスナ。

茶々丸が先に仕掛け、アスナは防戦。

身体能力を引き上げてるとはいえ、やはりアスナの動きは素人とはほど遠い。

俺はいつもあんなヤツの拳を受けているのかと思うと、少し怖くなってきた。

ネギと金髪ロリは魔法の打ち合い合戦中。

お互いに魔法の射手(サギタ・マギカ)を放ち合い、互いに魔法の矢を打ち落としあっている。

俺はそろそろいいかな、と思い橋に降り立った。

「よう、アスナ。茶々丸」

「千宏!? アンタどうしてここに…」

「いや、あんだけでかい魔力同士がぶつかり合ってたら普通様子を見に来るだろ」

「え、そ、そうなの?」

「マスターもネギ先生も、比較的強大な魔力を持っていますので…」

「まあそういうこった」

俺はそこで言葉を切り、ネギと金髪ロリに視線を移す。

魔法の矢の打ち落とし合いばかりで中々決着がつかない事にしびれを切らしたのか否か、ネギが上位魔法の詠唱に入る。

『ラス・テル・マ・スキル・マギステル 来たれ雷精 風の精!!』

すると、金髪ロリはまたも打ち合いをするつもりらしく同種の魔法を詠唱しだす。

『リク・ラク・ラ・ラック・ライラック 来たれ氷精 闇の精!!』

二人はほぼ同速度で詠唱を進めていく。

この打ち合い、どうなるか分からん。

『雷を纏いて 吹きすさべ 南洋の風!』

『闇を従え 吹雪け 常夜の氷雪!』

雷の暴風!!!(ヨウィス・テンペスタース・フルグリエンス)

『闇の吹雪!!!』

二人の魔法の打ち合いは、金髪ロリの方が打ち勝っておりネギは負けている。

ネギの持つ小さな練習用の魔法杖にヒビが入り、ネギが負ける…そう思った。

しかし。

「は、ハックシュン!!」

ネギのくしゃみにより、ネギから魔力の奔流が放たれる。

どうもネギは魔力制御がなってないようで、くしゃみをするとその勢いで魔力が漏れ出てしまうよう。

み、未熟すぎるだろネギ…。

魔法使いが自身の魔力くらい制御出来ないでどうするんだよ…。

ネギが放った魔力の奔流と金髪ロリの魔力がぶつかり合い爆発。

爆発光が炸裂し、視界が遮られる。

数秒後、爆発光がおさまったので金髪ロリの方を見ると。

服が脱げていた。

「やりおったな小僧…」

「あ、あわっ、脱げ…っ!?」

まさかネギも脱げるとは思っていなかったようで戸惑っている。

「ぐっ…! だがぼうや、まだ決着はついていないぞ!」

金髪ロリがそう口にして構えた。

「いけない、マスター! 戻って!!」

茶々丸が中々見せない焦った表情で叫ぶ。

「予定より7分27秒も停電の復旧が早い! マスター!!」

大停電が終了しているらしく、学園中の電気がつき始める。

電流のようなものが金髪ロリを打つ。

「ど、どうしたの!?」

「停電の復旧でマスターへの封印が復活したのです。 魔力が無くなればマスターはただの子供、このままでは湖へ…」

雷に打たれ、金髪ロリは湖へ真っ逆さま。

俺はその瞬間、地を蹴り飛び出していた。

金髪ロリを追って下へと飛び降りた俺は、空中踏歩(アーリス・アンブラーテ)の効果で空中を強く蹴り加速。

「千宏ーーッ!!」

「千宏さんっ!!」

ネギとアスナの叫びを背に、俺はさらに空中を踏みしめて加速!

金髪ロリが湖へ激突するまで残りあとわずかで、俺は金髪ロリの手を引っ掴む事に成功。

そのままお姫様抱っこのかたちで抱えてそのままジャンプし上昇。

ある程度の高さまで上昇したところで、上昇をやめ空中を踏みしめて空中に立つ。

「……何故、助けた?」

「あー…そりゃ、お前が俺の大切な友達だからだよ、エヴァ(・・)

「―――だれが、友達だ…バカが」

 

 

 

 

「まあ安心しろよ。俺が呪いの事調べてそのうち解いてやるから」

「それまで何年待たなきゃならないと思ってるんだ貴様!!」

「じゃあ解いてやんねえ」

「なっ…きっ、貴様ーーっ!!」

「なんなんだよお前はめんどくせえな!」

「解け! 今すぐ解け!!」

「呪いの事調べたら解いてやるっつってんだろうがボケ!!」

「名簿のとこに僕が勝ったって書いとこっと」

「ねえ、茶々丸さん…エヴァンジェリンさんっていつもこうなの?」

「いえ、こんなに楽しそうなマスターは千宏さんが来てからで…千宏さんと話しているときはとても楽しそうなんですよ」

「こんなヤツと話していても何も楽しくないわ!!」

「身長を伸ばす10の方法」

「なっ、何故貴様がそれを…!! こっ、殺すーーっ!! 殺してやるーーーっ!!!」




身長が伸びる10の方法は金髪ロリに屈辱を与えられるお手軽な魔法の呪文です。

ここまで目を通してくださり、ありがとうございます。
いや~、金髪ロリと主人公の絡みを書くのが楽しくて楽しくて。
楽しみながら書けたお話でした。
感想、ご意見、誤字脱字等の報告お待ちしております。

お気に入り件数が60に…!
皆様に感謝致します、ありがとうございます!


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