呪われ編集者と焼死作家の物語 (AugustClown)
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第一話

どうも、作者のAugustClownです。
活動報告?に書いた通り、意見を聞いたら、書いてくれとの意見だったので書いてみました!(計二名!当人達は私がこれで手が回らなくなるのを望んでるとのこと……。まあ、手が回らなくなるのは今に始まったことじゃないんですが……。)


それでは本編どうぞ


 

この時私は何故こんなことをしなければならいのだろうって思っていた。まあ、何故かと言えば仕事だからなのだが。しかしそう思わずにはいられなかった。そう、少し小ぶりな和風な一軒家の前に立つ1人の男性を前にして……。

 

「帰れ。奴以外に俺の原稿をやる気は無い」

「渡して下さい。来る前にも電話しましたが今彼事故って警察で聴取受けてるんですから」

 

これが彼との対面での初めての会話だった。今言った通り彼にはここに来る前に事情を話している。にも関わらずどうにもこの人は聞き分けが悪いらしい。ホント、マジで何故私はこんなことをしなければならないのだろう……。

 

《3時間前》

 

「お〜い、詩葉(うたは)君」

「……編集長、何で自分の席からわざわざ私の前まで来て、お茶の商品名宜しく私の名前を呼ぶんですか?何時も苗字呼びのくせに」

「何か漆山(うるしやま)君が事故ったらしくてね?不知火(しらぬい)先生もとい、焔原(ほむらばら)先生の所に行って原稿貰ってきてくれない?」

「スルーですか……てか今翔真(しょうま)さんが事故起こしたって言いました?捕まりました?有罪ですか!?」

「何で君は上司の人間を嬉嬉として犯罪者にしようとしてるんだい!」

 

なんだ、アイツ今度こそ(社会的に)死んだと思ったのに。そんな事を私、編集者の月宮(つきみや)詩葉(うたは)は考えていた。アイツがまだ無罪と知り、ため息が出た。その様子を見ながら編集長は呆れながら言う。

 

「ガチのため息しないの!取り敢えず、漆山君原稿取りに行く途中だったみたいでさ、誰に行かせたい?って聞いたら選ばれたのは君でした」

「なんなんですか?そのお茶のキャッチコピーで攻めてくるスタイルは?」

「って事で電話連絡宜しくね〜」

「まっt……」

 

少し目を逸らした瞬間、編集長は跡形もなく姿を消していた。あの人なんなんだろう?偶に人とは思えない動きするよな〜。見た目50過ぎのおじさんなのに……。伊賀か甲賀で修行でもしてたのかな?そんな事を考えているとさっきの会話が聞こえたのか周りのモブ共から無駄口が聞こえる。

 

『今度"悪魔の詩葉"に"契約"されるのは焔原先生かぁ〜、かっわいそ〜!』

『止めろよ!ホントの事言ってやるなって!』

 

うん!今日も今日とてモブ共は私の編集者としての才能に嫉妬してるみたいだな!まあ、ぶっちゃけた話私はこの会社では浮いている。何故なら私の担当した先生達は売れるものの、必ず1年以内に何らかの理由で死を遂げていた。そんな事が三度以上も起きているのだ。そんなこんなでみんなは私の事を『悪魔の詩葉』と呼び、私が担当する事を『契約』と呼ぶようになった。この呼び方を決めたやつは14歳だったのかな?

……私誰に話してるんだろう?まあいいや、焔原先生に電話しよう。

 

 

 

 

『もしもし、焔原ですが』

「えっ?」

『えっ?』

 

今私の反応に違和感を感じた方もいただろうが私の反応は間違っていないのだ。(ついに私脳内で独り言を喋るようになったか〜。もう末期な気がする。まあ、いいや。)だって一人暮らしの男性であるはずの焔原先生の自宅の電話から到底男性とは思えない"女の子"の声がしたのだから。

 

「申し訳ないのですが、焔原先生のご自宅の電話で良かったでしょうか?」

『あぁ、お兄ちゃんのお客様でしたか。あれ?でもお兄ちゃんからは編集者さんは男性だって……あっ、声高いんですね!』

「いえ!女性で合ってますよ!?」

『じゃあ何で女性の編集者さんがお電話を?』

「何時も先生の担当をしている漆山が少しトラブルがあったみたいで私がお電話させて頂きました」

『トラブルって?』

「交通事故で……」

『えっ?漆山さん大丈夫なんですか!?』

「いえ、捕まって今カツ丼食わされてるかと」

『……やった側なんですね』

「そんな訳で漆山が取りに行けないので私が取りに行くことになりましたのでお電話さしていただいた次第です。申し遅れました。私、編集者の月宮詩葉と申します。」

『初めまして、妹の焔原萌花(もえか)と申します。』

「焔原先生とは漆山戻るまでではありますが、担当することにもなりましたので重ね重ね宜しくお願いします。」

『こちらこそ、お兄ちゃんを宜しくお願いします。では漆山さんのこと含め、お兄ちゃんに説明してきますね。少々お待ち下さい』

 

 

 

 

そんな会話があってから2、3分後だろうか、外させたままで置かれているだろう受話器からドタドタドタとこっちに向かう足音が聞こえてくる。先生へ説明が終わったのだとばかり思っていた私は虚をつかれた。帰ってきた返事は"男性"の声で一言。

 

『来るな!!』

 

だった。そして雑に電話が切られる。そして今に戻る。そう、彼の真正面に立っている今に……。焔原先生だと思われる男性は険しい目つきのでコチラを睨んでくる。背もそれなりに高いし、黒髪で髪型もサッパリとしていてそんな目をしていなきゃモテそうなのに……。どうしてこうも兄妹で違うのだろう?萌花ちゃんが天使か何かに思えるほどだ。会ったこと無いけど。宛ら彼女の実家に来た彼氏に断固として結婚を許さない頑固親父のようだ。顔は若いのにな〜。てか先生未成年だったのか?知らなかったわ。デビュー作出したの4年くらい前だって聞いたけど中学生の時に書いた作品だったのかなぁ。

 

「なんだ!人の顔をジロジロ見て!」

「いや、先生って未成年だったんだなぁって思いまして……」

「未成年じゃない。これでも24だぞ?」

「えぇっ、嘘だぁ!」

「ホントだ!ただ、体質でこうなってる(・・・・・・)だけだ。」

 

そんな会話をしていると家の奥の方から可愛らしい肩までの黒髪の制服姿の少女が出てきた。こっちを見るなりこれまた可愛い笑顔をコチラに向けてきた。

 

「あなたが電話でお話した月宮詩葉さんですね?」

「はい。あなたは萌花さんですよね?」

「そうです!宜しくお願いします」

「こちらこそ」

「おい、俺はまだお前を担当だと認めてはないぞ!」

「お兄ちゃんは黙ってて!しょうがないでしょ、漆山さん牢屋入るんだから!」

「いえ、まだ決まったわけではないですよ?私はそれを望んでますが……」

「おい、フォローになってないぞ?」

「それはそうですよ、してませんもの」

「「…………」」

 

えっ?何?なんで二人とも見てはいけないものを見たような目で私を見るの?私はただ正直な意見を言っただけなのに……。

 

「……お、面白そうな担当さんだね、お兄ちゃん!」

「お、おう。そうだな我が妹よ」

 

何故でしょう?言葉上では褒め言葉に聞こえるのですが、全くと言っていい程褒められてる気がしません……。心做しか萌花ちゃんの笑顔が引き攣ってる気もします。

 

「お兄ちゃん。取り敢えず、家の前で話すのも近所迷惑に成りかねないし、家の中に入ろっか」

「そう思えばそうだな。お前を担当としての認めるかは別だが、まあ…なんだ……入れ」

「お、お邪魔します」

 

 




少し短かったかもしれんがどうでしたでしょうか?
この作品は前々から作者が恋愛物書いてみたいな〜と思ってたのと、色々な(癖のあるキャラを書いてみたいetc)思惑と、気まぐれや色々な要素によって書くことになった作品です。
時間はかかると思われますが、途中で投げるつもりはないので気長にお待ち頂き、読んで貰えたら嬉しいです!
感想・批判どちらも待ってます。誤字脱字などもあったら知らせて頂けると嬉しいデス!


ではまたノシ


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第二話

どうも、AugustClownです。
いや〜、沖田オルタ実装決まりましたね〜!(唐突)
えっ?小説はどうなってるんだって?この作品を書くにあたり手を込まていていた悪魔二人の思惑通り手が回らなくなってますよ?特にもう1つの方が……。


それでは本編どうぞ


 

「お邪魔します……」

「いらっしゃい、詩葉さん!あっ、お茶用意しますね!」

 

そう言って萌花ちゃんは家の奥へとかけて行った。可愛いなぁ。家の中は見た目ほど小さくはなく、内装も純和風ではなく、それなりに洋風を取り入れられていた。まず、床全部フローリングだし。見える限りでは畳なんて一切見当たらない。まあ、個室が1、2個あるみたいだがそれ以外は基本的に壁というか、気の柱と柱の間を有効活用した収納があるだけだ。それだって柱と柱の間に板を何段か敷いているだけなので、壁とは言えないだろう。なんと言うか、全体的に木面が多く、自然を感じられて落ち着く家だと思った。

 

「どうした?周りをキョロキョロと見回して……そんな珍しいものなど無いだろう?」

「いえ、なんと言うか……落ち着くなと思いまして……」

「お兄ちゃん、詩葉さん、お茶用意出来たのでコッチにどうぞ〜」

「あぁ、今行く」

 

 

 

部屋に向かい、席につくとそこにはお茶を注ぐカップだけではなく、ケーキも用意されていた。……これは何で出来ているのだろうか?チーズケーキにしてはオレンジっぽい色をしている気がする……。

 

「あの、このケーキは……」

「これは私が作った南瓜のケーキです。お口に合えばいいんですけど……」

「萌花が作った物が美味くないわけがないだろ」

「……頂きます。……お、美味しいっ!」

「良かった〜」

 

タルト生地の中に入った南瓜のクリーム?は絶妙な甘さで、生クリームがいらないくらい甘さを感じるのだが、決して諄いあまさではない。私はものの数分で食べ終えてしまっていた。

 

「お口に合ったみたいでよかったです。良かったら残ったの持って帰ります?あっ、南瓜で作ったプリンもありますよ」

「是非!勿論プリンも頂きます!」

「用意しますね〜」

「……おい、お前当初の目的忘れてないか?」

「はっ!…………ソ、ソンナコトナイデスヨー(棒)」

「呆れるを通り越して感心するレベルの棒読みだな!」

「す、すいません……。それで先生、原稿は……?」

「出来てないぞ」

「えっ?」

「だから出来てないって言ったんだ」

「締切は守ってくださいよ!」

「何言ってるんだ!言っとくが締切は今日ではなく来週だからな!それなのに漆山のやつが『先生の事だからもう出来ますよね〜!んじゃ、今から取りに行くんで!』って勝手に言ってきたんだ!確かに9割がたは出来て入るが、詰めってもんがあるだろう!」

 

焔原先生の言ってることはご最もだ。だから彼は不機嫌だったのだろう。何でこうもあの馬鹿は無能なのだろう……。アレにそれなりの位が付いているというのが尚のことムカつく点である。

 

「先生の言う通りです。急に押しかけてすいません。……何かもう、アイツ有罪でいいんじゃないんですかね?」

「同意したいのは山々なのだが先程も話したが奴以外俺の担当ができるとは思えないのでな……。それに先程もだが、奴はお前の上司だろう?良いのか?そんな事を言っても?」

「構いませんよ。アイツはそん位の扱いでいいんです。それにここに来る前にも編集長にも似たような事言いましたし」

「へ、編集長に言ったのか……。お前もお前でチャレンジャーだな……」

「会社じゃ『悪魔』なんて言われて浮いてますしね私。まあ、ただの同僚の僻みだって割り切ってますけど。……それと、お前って言うのやめていただけませんか?」

「まず名前を知らん」

「先程萌花ちゃんが言ってましたよね?」

「右から入って左へスルーだ」

「はぁ……改めて、月宮詩葉と申します。苗字でも名前でもどちらでも」

「いや、家族や大切な人以外は名前では呼ばないと決めているのでな、月宮と呼ばせてもらう。それで?目的の原稿は出来てない訳だがこれから()はどうするんだ?」

「っ!」

 

不覚にも少しドキッとしてしまった。今までこちらに対して懐疑的な目線を送ってきていた人が不意に笑顔になられるとちょっとビックリするし、一回嫌だと言えば理解してくれる。現に呼び方が『お前』から『君』に変わっているわけで……。

 

「どうした?少し顔が赤い気がするが……」

「だ、大丈夫です!原稿は一週間後に取りに来ます。勿論、先に出来たならお電話頂ければ取りに伺うので……。あっ、これ私の携帯の番号です」

 

いつも持ち歩いているメモ帳に自分の番号を書き、先生へと差し出す。何を緊張しているのだろう自分は……!

 

「あぁ、分かった」

「あっ、あの、それで私は先生の担当と認めてもらえたということで良いんでしょうか?」

「いいも何も、認めてなかったら番号を受け取って無いだろう?」

「た、確かに……」

「それに君は何か漆山と通ずる部分があると見た」

「止めてください、吐き気がする……!」

「いや……今の表現は悪かったな。まあ、簡単に言えば信用出来そうだって事だ。あのクズが戻るまでだが宜しく頼む、月宮。今日は久しぶりに家族と漆山以外と会話出来て楽しかった」

 

 

 

 

 

 

 

「はい、これ!南瓜のケーキとプリンです」

「有難う萌花ちゃん。今度は私が作る……のは無理だから何か買ってくるね」

「はい、楽しみにしますね!」

 

あの後少し萌花ちゃんとお話して仲良くなれたのだ。心の中ではちゃん付で呼んでいたのだが、職務上ちゃん付けは失礼に当たるとさん付けで呼んでいたのだが、堅苦しいからと公式に呼ぶのを許可された。他にも今年高一になった事や、近所の私立女子高に通ってる事、まだ好きな人はいない事なども教えてくれた。まあ、出来たら出来たであの頑固兄貴が全力で立ちはだかって来ることだろう。まだ見ぬ萌花ちゃんの彼氏に同情を禁じ得ない。

 

「今日はお兄ちゃんといっぱいお話してくれてありがとうございます!お兄ちゃん人間不信なんで今日初めて会ってあそこまでお兄ちゃんが楽しそうに話すのは漆山さん以来誰もいなかったので、つい私も嬉しくなっちゃいました」

 

なるほど、先生が先程言っていた漆山と通ずる云々はそういう意味だったのか……。でも先生さんや、私と話すまで漆山ぐらいしか外部の人と喋れなかったってのはどうなのよ?

 

「詩葉さん、お兄ちゃんのこと宜しくお願いします」

「はい、あのクズが戻って来るまでですが、こちらこそ宜しくお願いします」

 

帰る道中萌花ちゃんはこちらが見えなくなるまで手を振っていた。萌花ちゃん、ええ子や……。因みにこちも萌花ちゃんの手作りだと言う南瓜プリンを帰ってから食べたが絶品だった。何なのだろうあの女子力の塊の少女は……。私は萌花ちゃんの事を心の中で萌花師匠と呼ぶと決めた。そして私も偶には家事をしようと決めた。

 

 

 




どうでしたでしょうか?
次回は焔原先生の秘密が明らかになります!
まあ、なるべく早くに上げることを心掛けようかと……。
感想・批判どちらも待ってます。誤字脱字などもあったら知らせて頂けると嬉しいデス!


ではまたノシ


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第三話

お久しぶりです作者のAugustClownです!
相変わらずの不定期更新ですいません!
魔人さんはウチのカルデアには来てくれなかったよ……。


それでは本編どうぞ


 

 

「1週間振りか……思ったより長く感じたな〜」

 

あれから1週間が過ぎ、私は今焔原先生の家に原稿を取りに来たのだ。萌花ちゃんは元気だろうか……?なんて考えながら明らかに古き良き日本の家には似つかわしくない最新式のインターホンを鳴らす。ピーンポーンと言う音が鳴り終える前に音が途切れ、返事が返ってくる。

 

『はい、どちら様?』

「あっ、焔原先生ですか?月宮です、原稿を取りに来ました」

『あぁ、君か。中に入ってきて来れ、今玄関の鍵を開ける』

 

門には鍵はかかってなかったらしく、手で押しながら中に入ると着物姿の先生の姿が見えた。なんと言うか、とても絵になるなと思ってしまった。無意識ながらも見つめてしまった為か、先生は怪訝な顔をしながらこちらに話しかけてきた。

 

「なんだ?そんな人の顔をジロジロと見て……。何か俺の顔に付いてるのか?」

「い、いえ!いや、ただ着物似合うな〜って思ってただけなので気にしないで下さい。よく和服着られるんですか?前回会った時も甚平でしたが……」

「あぁ、そうだな。家では基本的に和服でいることが多いな。別に洋服を持ってないという訳ではないのだが、和服のほうが落ち着く。洋服を着るのは外出の時くらいなものだな」

「そうなんですか。でも、和服良いと思います。先生和服似合いますし、なんか…こう…ザ・小説家って感じですし!」

「……それは褒めてるのか?」

「えっ?あっ、はい。一様そうですけど……お気に障りました?」

「いや、そういう訳ではないのだが……彼処まで漆山を罵倒していた人物から褒め言葉が出るとは思わなんだものでね……」

 

この人の中で私のイメージはどうなっているのだろうか……。まあ、間違いなく良いイメージでは無いことは確かだろう。……そう言えば今日はまだ萌花ちゃんの姿を見ていない……。

 

「話は変わりますが今日は萌花ちゃんは学校ですか?」

「いや、ただ来てないだけだが?」

「来てない?ここに住んでるんじゃないんですか?」

「そんな事一度も言ってないだろ。萌花は偶にウチに来て家事をしてくれてるんだ。断じてこの家には住んでいない」

「そうだったんですか……。勝手に萌花ちゃんは先生のお宅に住んでるものかと……」

「まあいい、無駄話はこれくらいにして家に入れ。前回と同じ所で待っててくれ。原稿を持っていく。」

「はい、分かりました」

 

言われた通り部屋で待っていると原稿が入っているでだろう封筒と洋服(・・)姿の先生が現れた。黒のスキニーに中心に少し文字が入った白Tシャツに明るいグレーのカーディガンを着た先生の姿は先程の和服の時とは違い、紛うことなき街中に居そうな若者そのものだった。

 

「待たせたな。ところで月宮、君はこの後は予定はあるか?」

「ヘェ!?い、いや…ないですが……って言うか先生!その格好どうしたんですか!」

「見ての通り洋服だが、変だろうか?」

「へ、変じゃありませんが…先程外出時以外は着ないって……」

「だからこれから外出するんだ。君に予定を聞いたのもその為だしな。その前に二三質問をしてもいいだろうか?」

「えっ!?……ええ、いいですよ。それで質問とは?」

 

なんか怒涛の勢いで何かが進行してる気がするが、まあいいだろう。もう今更だし……と言うかちょっと待って!?先生が外出するのはいい。でもその為に私の予定を聞くって事は私も同伴するってこと?……何故に!?そんな考えが頭をグルグル回っているウチに先生から質問が飛んできた。

 

「まず一つ目だ。君は幽霊やら、妖怪やら精霊などの存在を信じるか?」

「はいっ!?」

 

一発目からどんだけドギツイ質問ぶち込んで来るんだこの人は!意外と頭の中はお花畑なのか?

 

「す、すいません、取り乱しちゃって。そ、そうですね……信じるか、信じないかで言えば信じませんが、いたらいいなとは思ったことはありますよ(幼い頃ですが……)」

「そうか、では次の質問だ。君は自分の見た物を信じるか?」

「えっ?」

 

なんかフッツーの質問来た……。一つ目の質問との落差激しすぎませんかね……。まあ、いいや。

 

「基本的に自分の目で見た物しか信用しないようにはしてますね」

「そうか、では最後の質問だ。これを見て、君は起こったことを信じられるか?」

 

そう言って先生は庭へと続くガラス張りの窓を開け、その開けた窓の方へ向けて手を突き出した。その瞬間、先生の手から掌くらいの大きさの火柱(・・)を出した。

 

「……っ!?えっ!?今火が!」

「ああ、出たな。君は見間違えはしていない。もう一度聞く、今のを見て君は信じられるか?」

「そりゃ、見ましたから信じますが……あの火はどういう事ですか!?それよりも先生大丈夫なんですか!?」

「まあ、熱いか熱くないかで言えば熱いな」

「何呑気にしれっと言ってるんですか!危ないじゃないですか!」

 

そう言うと先生は不思議なものを見るような目をして、次の瞬間フフッと笑った。

 

「なっ、何笑ってるんですか!人が心配してるのに!」

「いや、君は怖がらないんだな。普通の人なら化け物だ何だというのだが……所か君は俺の心配した。予想外だったよ。笑ったのが気に障ったなら謝ろう」

「い、いえ別に……それよりもさっきのはどう言う事なんですか?」

「1回目の質問で妖怪やら精霊の事を聞いただろう?あれが関係している。多くの人には知らされていないが、ごく稀にそう言った類の特徴を持った人間が生まれるらしい。と言うか、そう言う人間たちがそのモデルらしい。そして俺はそんな人間の一人という事だ」

「で、でも何故それを私に?」

「前回ココで君は自分が会社で浮いているという話をしただろう?」

「え、ええ……しましたね」

「もしかしたら君もそうなんじゃないかと思ってね。いや、別に何でもかんでもそうだと決めつけてるわけじゃないんだが……なんと言うか、そんな感じがしてね」

「そうだったんですか……それでそれがどう外出と繋がるんですか?」

「いや、そういう人を専門としてる医者がいてね。安心して貰っていい。俺も通ってる所だし、医師も信用に足る人物だ」

「だから、一緒に来て欲しい……と?」

 

そう言うと先生は真剣な表情で頷いた。嘘はなさそうだ……。

 

「分かりました、行きましょう。違ったら違ったでそれまでの事ですし」

「自分で提案しといてなんだがこんな胡散臭い話に乗ってくれて礼を言う」

「胡散臭いって……先生も秘密見してくれましたし、それに信じるに値すると私は思ったので行くだけですよ。さあ先生案内して下さい」

「ああ、じゃあ行こうか」

 

こうして私達は先生が言う病院へと行くことになったのだった。

 




という事で、先生が人より特異な能力を持っていると分かった訳ですが、なんの能力か分かりますかね?感想欄辺りに書いて頂けると有難いです!
次回、新キャラ登場です!(そりゃそうや)
感想・批判どちらも待ってます。誤字脱字などもあったら知らせて頂けると嬉しいデス!


ではまたノシ


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第四話

お久しぶりです。作品のAugustClownです。
ものすっごい久しぶりに書きましたが書けないもんですねぇ。
至らない部分があるかもしれないですが……それはほら、久しぶりという事で大目に見てやってください。


ではどうぞ〜


 

 

 

先生に連れられ着いた先は街中にある何の変哲もないビルだった。とても病院があるようには見えないが……まぁ嘘をつくメリットもないし此処で間違いないのだろう。

 

「ここの3階にある。エレベーターはないから階段であがるぞ」

「あっ、はい」

 

 

 

黙々と階段を上がり扉を開けると確かにそこは病院と言って差し支えない体相をしていた。正方形の形をしてるであろう部屋の左側には3人がけのソファが2つ横に並び、逆には受付員が居ない受付台が形ながら存在しており、奥の方には診察室と書かれた掛札が垂れ下がった扉が見て取れた。

 

「行くぞ」

 

先生はそう短く言うとお構い無しに進み掛札 のあった扉を三回ノックして返事も聞かずに扉を開ける。先生の遠慮の無さに驚きつつ私は後ろについて行った。そして扉の先には白衣を着た綺麗な女性(・・)が椅子に座っていた。

 

「あら〜あすくんじゃない♡お久しぶり、元気にしてた?……ってあら〜なになにあすくんが女の子連れてくるなんて珍しいじゃない♡︎彼女〜?」

「そんな訳ないだろ。っていうかあすくんと呼ぶなと何度も言っているだろ!彼女は俺の新しい編集者で"宿主"かもしれない女性だ」

「あ〜なるほど」

 

……先生、萌花ちゃんと翔真さん以外に喋れる人いたんだ!いや、そうじゃないなんか気になるワードが出た気がしたけどまずは挨拶だよね。

 

「初めまして月宮詩葉です。特異体質専門の方と伺っていたので綺麗な女性の方で驚きました」

「あらヤダ、あすくん聞いた〜?綺麗ですって!」

「突っ込むとこそこじゃないだろ!月宮、コイツは男だ」

「ふぁっ!?」

「驚かせてゴメンねぇ」

 

正直今頭の中が整理出来てない。見た目は髪も長く、声も高い。だが、男だ。顔も綺麗だし仕草も女性らしい。だが、男だ。……ヤバい私の中で男性という物がゲシュタルト崩壊しそうだ。私が頭を抱え唸っているのを見て焔原先生は腕を組み一つため息をつき、女性医者(偽)は手元に手を当てクスクスと笑っている。

 

「落ち着け月宮。まだ互いの自己紹介すら終わってないのにそんなんでどうする」

「焔原先生!先生は男性ですか!」

「馬鹿な事をほざくな!俺は男だ!そしてそこに座ってるのも男だ!」

「嘘だァァァ!」

「アハハハハハ!何そのやり取り!ヤバいお腹痛い!」

 

私と先生のやり取りがツボったのか先程口元にあった手とは逆の手をお腹に添え、大笑いする女性医者(偽)。少し経つと落ち着いたのか目尻の笑い泣きにより出来た涙を指で払い此方に顔を向ける。

 

「は〜面白かった!取り敢えず自己紹介ね。特異体質専門の医者をやってます、本名は名乗らない主義なのでDr.ナオと呼んでね♪性別は生物学上あすくんの言う通り男で合ってるわ」

「嘘だァ……」

「いい加減認めろ。本人がいってるんだから」

「うぅ……」

「私身体何も弄ってないからアレだって付いてるわよ?」

「何を言ってるんだお前は……」

「なに〜?あすくんは何を想像したのかな〜?」

 

そう言うとDr.ナオはニヤニヤと先生を見る。……そう言えば。

 

「あの、Dr.ナオはなんで先生を『あすくん』って呼ぶんです?」

「ああ、ただの渾名よ。飛鳥だからあすくん。ね?安直でしょ?」

「先生下の名前飛鳥って言うんですね」

「あら、知らなかったの?」

「ええ、私達知り合ってまだ一週間ですし……」

「別に下の名前なんて知ってなくても問題ないだろ」

「今度から先生のこと飛鳥先生って呼びますね♪」

「やめろ。それより早く本題に入れ」

 

しびれを切らしたあすくんこと焔原先生は無理矢理話を変える。いや、元々はこっちが本筋だったんだけど……。

 

「そう…ね。じゃあ詩葉ちゃん、椅子に座って楽にしてくれるかしら」

「は、はい……」

 

さっきまでのおちゃらけた雰囲気から急に真面目な表情に変わった為面をくらってしまった。椅子に座るとDr.ナオがじっとこちらを見つめる。何かな?仲間にして欲しいのかな?Dr.ナオが仲間にしてほしそうにこちらを見ている…的な。そんな馬鹿なことを考えているとDr.ナオの眼の変化に気が付く。さっきまでは日本人らしい茶色の眼をしていたのだがいつの間にかライトグリーンに色が変化していた。

 

「Dr.ナオ、その眼……」

「あら、驚かせちゃったかしら。この眼は妖精眼って言って、目に見えないちっちゃな妖精や、あすくんみたいな宿主の中にいる妖精の本来の姿を見る事が出来るのよ」

「それで、月宮は宿主だったのか?」

「ええ、間違いないわ。詩葉ちゃんの中にいるのはリャナンシーと呼ばれる妖精ね」

「リャナン…シー……?」

 

なんだその妖精は……私の中の妖精のイメージってちっちゃくて羽生えてるティン〇ーベルみたいなイメージしかないんだが……。なんか先生がうんうん頷いてるけど納得してないで教えてもらえませんかねぇ……。その目線を感じたのか若干面倒くさそうに先生が口を開く。

 

「リャナン・シー又はラウナン・シー、別名『妖精の恋人』……主にアイルランドで知られる女性の姿をした妖精で、彼女らの愛を受けいれた者達は詩や歌の才能を与えられるという。その代わり毎日精気もしくは血を吸われることからバンパイアやサキュバスの仲間と言われている」

「説明ありがとうございます。と言うか流石言葉の専門家私達は途中点入れませんでしたけど先生はちゃんと点入った言い方してましたね」

「当たり前だろ、俺が何で飯を食ってると思ってるんだ。それにしてもリャナン・シーか…月宮の呪いの正体が解明したな……いや、悪気があった訳じゃない」

「気にしてないんで大丈夫です。呪いです…か……まぁ間違いじゃないですよ。現に三人の作家が亡くなってる訳ですから呪いと呼ばれてもしょうがないです」

 

務めて明るく振舞ったつもりだが矢張り内容が内容だけに暗い空気になるのは仕方ない事だろう。私が原因であの先生達は亡くなったのかと思うと罪悪感が胸に込み上げてくる。リャナンシー…『妖精の恋人』……そんな物が私の中にいなければあの人達は今も生きられていたのだろう。

 

「別に月宮が悪いわけじゃない。気にするなとは言わないが気負い過ぎると良くないぞ?」

「気にしますよ…だって私が殺したようなものじゃないですか……」

「寧ろ俺からしたら良かったと思うがな」

「……っ!どうしてそんな事がいえるんですか!」

「何故ならそいつ等は"月宮詩葉"にその作品を愛されたんだ。人数がどうであれ、その読者がどんな境遇であれ、作家にとって作品を愛される事は何より嬉しく誇らしい事だ。それを無下にする作家など俺は作家と認めない!」

 

そう先生は何時もよりも何倍も強い口調で言いきった。だけど私には理解出来ない。だって…どんなに良い作品を残したとしても……。

 

「それでも死んだら意味無いじゃないですか……」

「いい作品が生み出されたという結果が大事なんだ。それに作家は基本半屍状態がデフォルトの生き物だろうに……。やれ締切だなんだと……」

「でも先生は締切破ったことないじゃないですか」

「締切一週間前に取り立てて来る阿呆がいるもんでね」

「あぁ、居ましたねそんな馬鹿も……」

「やっと何時もの顔に戻ったか」

「へぇっ!?」

「お前にそんな顔をされては俺が困るんだ」

 

不意打ちが過ぎませんかねぇ…この先生は……。ヤバい顔が熱いよ……。何故かお互いに顔を赤くして照れているとDr.ナオの方からわざとらしい咳が聞こえる。あっ、完全にドクターのこと忘れてた……。

 

「取り敢えず詩葉ちゃんの担当があすくんから変わらない限りは問題無さそうね。というかホントに会って一週間なの?会話の内容が付き合って半年のカップルみたいだったんだけど?」

「付き合ってません!というかなんで焔原先生は大丈夫なんですか?」

「それは俺がフェニックスの宿主だからだよ」

「そう、だからどんなに二人がイチャラブしようと詩葉ちゃんがあすくんに文才をあげようとフェニックスの特性で打ち消しちゃうってわけ」

 

ダメだこの医師…私達の事を完全に遊び道具として見てやがる……。

 

「前半部分は全く理解出来ないですが後半は理解出来ました」

「まぁそういうことだから漆山が自慢する程の手腕をぜひ発揮してくれたまえ」

「えっ?アイツそんなことしてたんですか?」

 

これは初耳である。漆山は基本愚痴は言うが褒めるという事は少ない。こと仕事において奴が褒めている所など一度も見たことがないくらいだ。マジか〜私アイツに褒められてたのか〜。

 

「あぁ、君が入った頃から話は聞いていたよ『いい後輩が入った。お前に合うかもしれないから一度あってみてくれ』と言われていたほどだ。まぁその時は会う気などサラサラなかったけどな」

「まぁ丸く収まりそうだし良かったわ。さ〜て午後の診察もあるしそろそろ良いかしら?」

「えっ?今営業時間じゃなかったんですか?」

「ランチタイムよ?診察ストップしてるに決まってるじゃない」

「これまたご迷惑を……」

「良いのよ。それにあすくんがあんなに表情を出すの久しぶりに見たしね♪」

「余計な事は言わなくていい。邪魔したな」

 

そう言うと先生は診察室の扉を開け、足早に出口へと向かっていった。

 

「わわっ!すいませんお世話になりました。失礼します」

「い〜え、お大事にね〜♪」

 

一礼しながら診察室を出て先生の背中を追う。小走りで行くと先に出ていた先生が壁によっかかって待っていた。

 

「待つくらいなら一緒に出ればよかったのに……」

「あんな所にいたら何話されるか分かったもんじゃないんでな。ほら帰るぞ」

 

そう言ってまた先生は足早に階段を降りていく。その背中を私は見失わないようについて行くのだった。帰り道、仕事の話をしながら帰っていると先生の家に向かっている下校の萌花ちゃんとあい、途中にあったケーキ屋さんでケーキを何個か見繕って(先生の奢り)先生の家へと戻ったのであった。

 

 

 

 

 




最後らへんやっつけになってる感は否めないですよねぇ……ええわかってます。分かってますとも。なのでもしかしたらこの後五話考えながら最後らへんを変えていくかもしれません……。
感想・批判どちらも待ってます。誤字脱字などもあったら知らせて頂けると嬉しいデス。

ではまたノシ


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第五話

お久しぶりです。作者のAugustClownです。
前回よりは早い投稿です!(そりゃそうだ)
ということで今回は奴がついに登場です。


ではどうぞ〜


 

 

 

 

「という訳で、事情聴取&謹慎から戻った漆山君が今日から復帰しま〜す」

「皆さんおひさっす〜。ちょっと今回はヤバかったけど何とかなったんで帰ってきた漆山翔真でっす」

「チッ」

 

はぁ…ついにこの時が来てしまった。なんで復帰するんだよ〜。折角平穏が保たれていたというのに…あぁ萌花ちゃん会いたい……なんだろう最近萌花ちゃんに会うのが心の癒しになってきてる気がする……。

 

「コラコラ月宮そんな聞こえる音で舌打ちするなよ〜」

「なんで戻って来たんですか先輩?豚箱ENDじゃなかったんですか?」

「なわけないじゃん。だってあっちの不注意で起きた事故だしね〜」

「じゃあせめて社会的死亡ENDになって下さいよ」

「俺何したっての?」

「……性犯罪者?」

「冤罪?冤罪を認めろと?性犯罪の『せ』の字もしてないのに?」

 

あっ、噂をすれば萌花ちゃんから連絡来てる。なになに?これから先生の家に行くから来ないか?勿論行くとも!なんせ萌花ちゃんからのお誘いだしね!

 

「おい、先輩の話は一応でもいいから頭に入れとけって言っただろ?」

「翔真さんの戯言より萌花ちゃんへの返信のほうが優先度高いにきまってるじゃないですか。それに今の会話頭に入れて何の得になるって言うんです?」

「萌花ちゃん?あぁ、焔原先生の所の妹さんか。先生の家行くなら俺も一緒に行く」

「止めてください、萌花ちゃんに悪影響を及ぼす可能性があります。というか萌花ちゃんが穢れる」

「萌花ちゃんモンペガチ勢かよ。つか穢れるって何よ?俺は一体何なのさ!」

「…………ヘドロ?」

「酷い!」

 

 

 

 

そんなこんなで先生の家に一緒に向かうことになったのだが……何で事故った車に乗らなければならいのか…やだなぁ……事故物件ならぬ事故車体じゃん。そんなことを思いながら後部座に座りシートベルトをつけると車が発進する。しかし車は先生の家とは違う方向を進む。

 

「先輩焔原先生の家こっちじゃないですよ?遂に記憶力までイカれましたか?」

「んな訳ねぇだろ。すまんが先に俺の担当作家に挨拶してくる。迷惑かけたんでな」

「あぁ、なるほど……でも早くしてくださいね?その分萌花ちゃんとの時間減るんですから」

「お前俺がいない間に何があったんだよ?変わり過ぎじゃない?」

「先輩は萌花ちゃんの可愛さがわからないんですか!?人生十割損してますよ?」

「いや、俺ここ数年萌花ちゃん遠くでしか見た事ないし……」

「……?なんでですか?」

「フツーに考えろシスコンモンペがいるからだよ」

 

あ〜焔原先生か…賢明な判断だ。こんな人と関わったら萌花ちゃんに悪影響が出るに違いない。ただでさえおちゃらけていて軽いチャラ男なんだ純新無垢な萌花ちゃんに何をしでかすか分かったもんじゃないし。

 

「というか、飛鳥のやつよくお前を認めたな」

「初めは酷かったですよ……ていうかなんで先輩先生の事下の名前で呼んでるんですか?さっきまで違ったのに」

「なんでも何もアイツと俺は同じ高校だったんだよ」

「へぇ、そうだったんですか…だからさっきここ数年って…じゃあ『体質』のことも知ってるんですか?」

「……『体質』?なんの事だ?」

 

えっ?知らないのか?これは意外だった…てっきり先輩も知ってるものだと思って油断した…。これあんまり知られたくないことだろうな……なんとかフォローしないと。

 

「あっ、あれですよ!家の時は和服じゃないと落ち着かないって……」

「そりゃ体質って言うよりこだわりだろ。あいつそういうの結構気にするからな」

「そうなんですか…いやまぁこだわり強そうではありますけど」

「んだよ萌花ちゃんとは仲良くなったけど肝心の飛鳥とは打ち解けてないとかってパターンか?」

「ま、まぁそんな感じですかねぇ……」

「なんだよ含みのある言い方しやがって……ほら着いたから少し待ってろ軽く挨拶してくる」

「了解です」

 

あ、危なかった…危うくバレる所だったよ。取り敢えず萌花ちゃんに翔真さんも一緒に行くこと連絡しとこ。そんなことをしていると翔真さんが挨拶から帰って来た。

 

「お待たせ〜」

「案外早かったですね。先生何か言ってました?」

「なんでだろうな、お前と似たような反応をされたよ……俺嫌われてんのかな?」

「そりゃ締切一週間前に原稿催促なんてしてたら嫌われますよ」

「そりゃ飛鳥だけだよ。他の先生は早くて5日前だ」

「五十歩百歩ですよ。そんなんで良く出世出来ましたね」

「俺も不思議でなんねぇんだわ」

「どうです?一回まっさらになって平からやり直すってのは?」

「やだわ」

「チッ、なら早く車出してくださいよ。あっ、あと途中寄り道するんで」

「なんの為に?」

「萌花ちゃんにお土産をば……」

「まじでどうしたんだお前……」

 

 

 

 

先生方への挨拶が終わり、途中萌花ちゃんへのお土産を買って(勿論翔真さんの奢り)焔原先生の家へと向かう。もう少しで着くという時に翔真さんが口を開く。

 

「あっ、そう言えばこれからの飛鳥の担当お前になったから」

「えっ?そうなんです?」

「あぁ、なんせ先生(あいつ)直々のご指名だからな」

「へぇっ!?」

「しょ〜じき驚いたよ、お前とは合うんじゃねぇかとは思ってはいたがあの人間不信がここまで気を許すとはな」

 

まぁあらかた(リャナンシー)の件がデカいのだろうが先生に指名されることなんてまず無いことなので編集者としては喜ばしい事である。

 

「それにお前も顔付きが大分良くなったしな」

「えっ?そんな悪かったですか?」

「酷いもんだったぞ?寄らば斬るみたいなオーラダダ漏らしして仕事してたしな。そら、着いたぞ降りろ〜」

「は、はい」

 

 

 

 

何度も訪れている為かもう何も疑問に思わなくなっている最新式のインターホンを鳴らすと元気の良い萌花ちゃんの声が聞こえた。

 

『はい、焔原です。どちら様ですか?』

「萌花ちゃん、私だよ」

『あっ、詩葉さんですか?どうぞ入ってください。今玄関の鍵開けますね』

「は〜い」

 

門を通り玄関の前に着くとガチャという音がして扉が開かれる。そしてそこには笑顔の眩しい萌花ちゃんがいた。美少女ってのはこういう子の事を言うんだろうなぁ…。肩にかからないくらいの黒髪はダメージなんてものはないくらいツヤツヤだし……。あぁ萌花ちゃん可愛いなぁ……。そう思いながら私は無意識に萌花ちゃんを抱き締めていた。

 

「おい月宮、お前は人の妹に何をしてるんだ」

「はっ!しまった無意識に!ごめんね萌花ちゃん」

「大丈夫ですよ〜私詩葉さん大好きですもん!」

「萌花ちゃん!」

 

我慢出来ず再度萌花ちゃんを抱き締める。あぁええ子や……。養子にしたい……。私もうこの子抜きじゃ生きていけないかも知れない。そんな様子を若干引き気味で見ている男性二人の片方が口を開く。

 

「よ、よう飛鳥お久しぶり。月宮ってここ来る時何時もこんな感じなのか?俺こんなに月宮初めて見たんだが……」

「いつもと言う訳じゃないが今日は一段とスキンシップが激しいな。それで久し振りのシャバの空気はどうだ?」

「いや、俺懲役終えて出てきたわけじゃないからね?」

「そうなのか、今俺の妹に抱き着いて形容しがたい顔をしている編集者からは有罪確実と聞いていたんだが……」

「あっちからなんでな無罪さね…………そろそろ月宮を萌花ちゃんから剥がすか」

「……そうだな」

 

止めろ!私から萌花ちゃんを奪わないでくれ!そう伝えると先生から萌花ちゃん接触禁止令を出すと脅された為、泣く泣く離れる事にした。そして翔真さんに買わせたお土産を萌花ちゃんに渡し、何時もの部屋へと向かう。そして部屋に着き座ると翔真さんが口を開く。

 

「そういや、さっきはちょっと色々と衝撃的過ぎて触れられなかったけど萌花ちゃん大きくなったな」

「まぁなもう萌花も高校一年生だしな」

「へぇ〜萌花ちゃんもついに花のJKって訳だ。そりゃ大きくなってる訳だ」

「お前が最後に近くで萌花を見たのって何年前だ?」

「小6って言ってたから四年前かな?なんせどっかのシスコンモンペが会わせてくれなかったしな」

 

そう言いながら翔真さんはジト目で焔原先生の方を見るが当事者であるところの先生は我関せずと言った感じで気にした様子を見せずに口を開く。

 

「会わせる理由がないんでな。それにお前と一緒にいさせると悪影響を及ぼしそうなのでな」

「お前もか……」

「"も"ということは月宮、君も同じようなことを思っていたか」

「ええ、なんか萌花ちゃんが穢れてしまう気がして……」

「おーい、そろそろ泣くぞ〜」

 

そんな軽口を言い合いながら仕事関係の話をしていると先程買ってきたお土産とお茶をお盆に乗せて萌花ちゃんが戻ってきた。わたしと萌花ちゃんはお土産に舌鼓を打ち、先生と翔真さんは取り調べはどんなだったとか色々発展して修学旅行で翔真さんが帰りの新幹線に乗りそびれて置いてかれた話などをしてた。かく言う私は萌花ちゃんとお喋りしながらあぁ、幸せってこういう時間の事を言うんだろうなぁなんてことを考えていた。

 

 

 

 




ということで漆山翔真君の登場回です。
こういう奴って小説とかゲームによくいますよね〜
とても弄りやすくて好きなキャラです!www
感想・批判どちらも待ってます。誤字脱字などもあったら知らせて頂けると嬉しいデス。

ではまたノシ


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