氷の魔道騎士 (宙の君へ)
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氷と炎 男と女

気分転換に描いてみたやつです


伐刀者(ブレイザー)

 

己の魂を武装ーーー《固有霊装(デバイス)》として顕現させ、魔力を用いて異能の力を操る千人に一人の特異存在。古い時代には『魔法使い』や『魔女』とも呼ばれてきた彼らは、科学では到底測れない力を持っており、最高クラスならば時間の流れを意のままに操り、最低クラスでも身体能力を超人の息に底上げすることが出来る。

 

人でありながら、人を超えた奇跡の力。

 

武道や兵器などでは太刀打ちすることすら叶わない超常の力。今や警察も軍隊もーーーー戦争ですら、伐刀者の力なくては成り立たない。だが大きな力には相応の責任が伴う。その一つが《魔道騎士制度》である。魔道騎士制度とは、国際機関の認可を受けた伐刀者専門の学校を卒業した者にのみ『免許』と『魔道騎士』という社会的立場を与え、能力の使用を認めるというものだ。

そしてここ、日本の東京都に東京ドーム十個分という広大な敷地を持つ『破軍学園』もその免許を取得するための、日本に七校ある『騎士学校』の一つである。ここでは若い伐刀者たちが『学生騎士』として日々己の技を磨き、切磋琢磨している。

 

「なるほど。下着姿を見てしまった事故を、自分も脱ぐ事で相殺しようとしたと・・・・・・・」

 

皮のソファーに座る、煙草をくわえたスーツ姿の麗人、破軍学園理事長・新宮寺黒乃はとある騒ぎの原因と経緯を目の前にいる少年から聞き終えると、これでもかという程の呆れた表情で言い放つ。

 

「アホだろお前」

「フィフティフィフティで紳士的なアイデアだと思ったんですけどね」

「まあ、確かにある意味紳士的ではあるな」

「いや変態紳士という意味ではなく・・・・・・・・」

「今更何を言っても遅いと思うがな。お前からも何か言ってやれ、同じ男としてどうなんだコイツは」

 

黒乃は後ろで壁に寄りかかっている少年に話を振った。淡い青の髪色の少年は閉じていた目をそっと開き、冷めた無表情のまま言った。

 

「・・・・・・・別に。自分には関係ないので言うことは特に」

「はぁ・・・・・・・」

 

黒乃はこめかみを抑える。全くと言っていいほど他人に無関心なこの少年には頭を悩まされる。

 

「・・・・はぁ。ステラさんには留学初日に申し訳ないことしてしまったなぁ。このことで日本を嫌いにならないでくれればいいんだけど」

「なんだ。黒鉄はヴァーミリオンのことを知っているのか」

「ついさっき思い出しました。鉢合わせした時はきが動転していてわすれていましたけど」

 

彼女の名前はステラ・ヴァーミリオン。ヨーロッパの小国ヴァーミリオン皇国の第二皇女である。彼女が日本の破軍学園に入学したことはそこそこ大きなニュースになっていた。『十年に一人の天才騎士!ヴァーミリオン皇国第二皇女ステラ・ヴァーミリオン様(15)破軍学園に歴代最高成績で首席入学!』という見出しの新聞記事は、まだ記憶に新しい。

 

「本物のお姫様で首席なんて、凄いですよねぇ」

「それもぶっちぎりのナンバーワンだぞ。全ての能力が平均値を大幅に上回り、伐刀者にとって一番大切な能力である《総魔力(オーラ)量》に至っては新入生平均の約三十倍。正真正銘のAランク(化け物)だ。」

「・・・・それを言うならあんたもでしょう。理事長」

「私よりも遥かにあっちが化け物だ。同じAランクとはとてもではないが思えんな。・・・・能力低すぎて留年してもう一回一年生やるFランク(誰か)とはえらい違いだな。なあ、そう思うだろう?《落第騎士(ワーストワン)》」

「ほっといてください」

 

むすっとした表情で黒乃の嫌味に抗議しつつ、しかし否定しない。出来るはずがない。何しろ黒鉄一輝の《総魔力量》は平均の十分の一しかないのだから。

 

「しかし困ったことになった。留学には色々な手続きがあるから入学式より早く来日してもらったのだが、初日からこんなハプニングが起こるとはな。まあともかく、この一件、下手をすれば国際問題にもなりかねん」

「たかが下着姿を見られただけで国際問題か。めんどくさい・・・・・」

「あのな深雪(ふぶき)、ヴァーミリオンは国賓だぞ?しかも小国とはいえ一国の皇女だ。ヴァーミリオン皇国の現国王は娘を溺愛していてな、少しの不祥事でもあれば武力衝突も免れん。黒鉄には非はないがーーーーー」

「俺が相手しますよ、ヴァーミリオンの」

「なに・・・・・・・?」

 

黒乃の眉が僅かに上がる。

 

「いくら黒鉄に非がないとはいえ、責任を取るのは尤もだ。しかし、Aランクの奴にFランの黒鉄が勝てるとは思えない。もし負けでもすればいい恥晒しだ。黒鉄にもプライドというものがあるだろうし」

「そんな、僕は・・・・・・・・!」

「まぁ尤も、話し合いで済む相手ならいいがーーーー」

 

その時だ。

 

「・・・・・・失礼します」

 

理事長室のドアが開き、件の少女、ステラ・ヴァーミリオンが入室してきた。

シックな色合いの趣味のいいブレザー。破軍学園の制服姿だ。主張しない色合いが、炎のような髪を際立たせてとても良く似合っている。特に目が引くのは胸元だ。制服の上からでもわかる大きな膨らみがリボンを押し上げ、強い存在感を放っている。その存在感に一輝は思わず、息を飲み込む。

泣いていたのだろうか。恨みがましい視線を投げてくる目元は赤く腫れている。

 

「ごめん」

 

だから、その言葉は自然と口から出た。男は女の子を泣かせるものじゃない。たとえ自分に非がなくとも、彼女があの瞬間感じたであろう恐怖は本物なのだから。

 

「あれは不幸な事故で、僕も別にステラさんの着替えを覗こうと思ったわけじゃない。ただ、見てしまったものは見てしまったわけだから、男としてケジメはつける。ステラさんの気が済むまで煮るなり焼くなり好きにしてくれ」

「・・・・・潔いのね。これがサムライの心意気なのかしら」

「口下手なだけだって」

 

気着心地のよい済んだステラの声に、一輝は苦笑いする。するとステラも・・・・・強ばった表情を和らげて、薄く微笑んだ。

 

「ふふ・・・・・・正直なところ、ええ、もう来日していきなり痴漢に遭うなんて、なんて最低な国なのかしらと心底この国が嫌いになりかけたし、国際問題にでもしてやろうかとかも思ったけど、貴方のおかげで少し気が変わったわ。貴方がそれほどの心意気を見せたからには、アタシも皇族として寛大な精神で応じなければならないわね」

(なんだ、ちゃんと話せば分かってくれるじゃないか)

「イッキ。貴方の潔さに免じてこの一件、ーーーーハラキリで許してあげるわ」

 

前言撤回。

 

「ちょっと待って。なに?大負けに負けてハラキリなの!?」

「それはまあ、姫であるアタシにあんな粗相をしでかしたわけだし死刑は当然でしょ?本来なら丸太に縛り付けて国民全員で一発ずつ石打ちするところを、本当に特別なんだからね」

「それもう死刑というよりただユッケ作ってるだけだよね」

「名誉死にしてあげるだけでも出血大サービスよ」

「出血するの僕なんですけど!てかハラキリっていつの時代の話かわかってないよね!?今平成ですよー!」

「ははは。黒鉄。なかなか上手いことをいうな」

「いや笑ってないで理事長も教育者なら、この校内殺人止めようよっ!?」

「黒鉄。お前の命一つで日本とヴァーミリオン皇国の恒久的な平和が買えるんだ。安い買い物だとは思わないか?」

「人の命は安くなんかないよっ!」

 

一輝からしてみればこれほどのぼったくりはない。

 

「あ、あのさぁステラさん。もう少し他の解決策はないのかな?」

「む、何が不服なのよ。日本男子にとってハラキリは名誉なんでしょう?」

「だから今は平成だってのっ!」

「なによ!さっきからヘーセーヘーセーって!それにさっき煮るなり焼くなり好きにしろって言ったじゃない!男なら自分で言った言葉には責任持ちなさいよッ!」

「い、いや、あれは日本語独特の言い回しというか、ホントに煮て焼かれる予定だったなんて思わなかったし!」

「言い訳も言い逃れもしまくりだな黒鉄。男としてケジメとは何だったのか」

「うるさいですッ!」

 

そんな事より目先の命だ。

 

「・・・・・と、ともかくたかが下着姿見たくらいで命までは支払えないよ!」

「たっ、たかがですって!?し、しししし信じられない!信じられないわこの変態ッ!!」

「へ、変態ッ!?」

「婿入り前の姫の肌を汚しておいてなんて言い草なのッ!?お父様にも見せたことないのに!!」

 

一輝の不用意な言葉にステラの瞳に怒りの炎が灯る。いや、燃えているのは・・・・・瞳だけではない。

ステラの周りの空気がひりつくような熱を帯びて、燐光を散らし始めていた。

 

(そういえば新聞に書いてあった彼女の能力はーーーー)

「もう許せない!アンタみたいな変態・痴漢・無礼者のスリーアウト平民はこのアタシが直々に消し炭にしてやるわ!!傅きなさい!《妃竜の罪剣(レーヴァテイン)》!」

 

瞬間、理事長室を熱を帯びた極光が照らし、ステラの両手に炎を纏う大剣が顕現した。それは伐刀者の魂を具現化させた固有霊装。

『聖剣』『魔弓』『呪具』『宝具』ーーーー

様々な形態をとって伝説や伝承で語られる『魔法の杖』だ。伐刀者はこの媒体を用いることで、己の異能ーーー伐刀絶技(ノウブルアーツ)を行使する。そして、《紅蓮の皇女》の能力は、全てを焼き尽くす灼熱の炎ーーーー!

 

「覚悟しないこの変態・・・・・・!この世から塵一つ残さず蒸発させてやるわ・・・・・ッ!」

「ほ、本気かッ!?」

「問答無用ッ!!」

「はぁ・・・・深雪」

 

振り下ろされる炎剣。それは一輝に直撃するーーーーはずだった。

 

「なッ・・・・・・・!?」

 

炎剣は振り下ろされることなく目の前に突如として現れた氷の盾で防がれていた。

 

「この学園では私情での霊装展開は禁止されている」

「これ、アンタがやったの・・・・・!?」

「ああ」

「だったらアンタも同罪ね!この学園にいるくせに校則すら知らなーーーーッ!?」

 

ステラは驚愕した。何故ならその少年は固有霊装を展開していなかった。ただ右手を前に出していただけだったのだ。

 

「何でッ!?ただの能力だけでアタシの伐刀絶技(ノウブルアーツ)を防げる分けないわッ!?」

「実際に防いだだろう。悪いようにはしない、今すぐ固有霊装をしまえ」

「えっらそうに・・・・・!こんな氷、燃やし溶かしてやるッ!!」

「・・・・・・・・・・そうか、なら少し頭を冷やさせる必要があるか」

 

刹那、彼を起点にさっきまで灼熱地獄のように暑かった室内温度が急激に氷点下近くまで下がり始める。

髪からは霜のような燐光が散り始め、身体中から冷気を発し始めた。

 

「な、なに、これ・・・・・・・」

「深雪くん、君は・・・・・・」

(まずい・・・・・・!)

 

ステラは辺りを見渡した。部屋の壁、床、窓ガラス、様々な物にピキピキと氷の膜が張っていく。

 

刹那の(トランジェント)ーーーー」

「そこまでだ!深雪!」

「・・・・・・・・・」

 

黒乃の凛とした声が響いた同時に室内の温度が急激に平温へと戻る。一輝は何が起こったか分からないでいたが、確かな事はただ一つ分かった。目の前にいるこの少年は、間違いなく強い。ただそれだけだった。

 

「ったく・・・・・・・お前は私たちを殺すつもりか?」

「・・・・・いえ。自分は帰ります、もうヴァーミリオンも落ち着いたようなので」

「あ、おい・・・・!深雪・・・・!」

 

黒乃の静止も聞かず、少年は理事長室を後にした。残された一輝とステラは先程までの現象に脳の整理が追いついていないようだ。それもそうだ。いきなり部屋中が氷漬けに近い状態になったのだから。

 

「り、理事長!な、なんなんですか!?アイツ!」

 

我に返ったステラはソファに深く座る黒乃に食い入るように詰め寄った。

 

「ーーーー伐刀者だ」

「そんなの見てわかります!」

「名前は深雪凍夜(ふぶきとうや)。能力はヴァーミリオンと真逆の、全てを凍て尽くす極寒の氷ーーーー」

 

黒乃は煙草をくわえ、一息ついてから口を開いた。

 

「暫定ランクはA」

「A!?アタシと同じって事!?」

「世界中にいる氷雪系能力者の中でも深雪を越す者はいない。故に奴はこう言われている。《世界最強の氷雪系伐刀者》とな」

「世界最強の・・・・・・」

「氷雪系伐刀者・・・・・・」

「二つ名が無いからそう言われているだけだが、実力は間違いなく世界トップレベルの域にある。固有霊装を一度も使用したことがないことも由来しているのかもしれん」

「理事長は戦ったことがあるんですか・・・・・?彼と・・・・・・」

「ーーーーーーーああ」

 

黒乃はゆっくり瞳を閉じて、思い出すように言った。

 

「完敗だった。試合時間はたったの十秒。私の人生の中で唯一手も足も出さずに負けた」

「たったの十秒ってーーーーー」

「初めてだった。あそこまで手も足も出なかったのは。全盛期の私ならもう少し戦えていたかも知れんがな」

 

自嘲気味に喋る黒乃は煙草の煙を吐き出した。まるで苦い思い出を吐き出すかのようにーーーーー

 

 

続くかも・・・・・・・?




二つ名とステラと王馬並のクソ長い一撃必殺の技募集中!

考えるのめんどくさかったとか口が裂けても言えない


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プロフィール

これだけはしておきたかった。

ほぼ関係ないですけどね・・・


キャラクター紹介

 

文責・日下部加々美

 

深雪 凍夜

TOUYA FUBUKI

 

所属:破軍学園二年一組

 

伐刀者ランク:暫定A

 

伐刀絶技:???

 

二つ名:???

 

人物概要:世界最強の氷雪系伐刀者

 

攻撃力:???

 

防御力:???

 

魔力量:暫定A

 

魔力制御:???

 

身体能力:???

 

運:???

 

かがみんチェック!

 

こちらが今作の主人公、深雪凍夜くん!見ての通り、魔力量以外なーんにもわかんないのが現状!だって彼、公式戦はおろか自分の固有霊装とか伐刀絶技も使わずに相手をコテンパン、もしくは半殺しに出来るほどの強力な能力を持ってるからしょーがないっちゃしょーがないよね!二つ名がないのも珍しいよね!でもでも、あの理事長を倒したってほどだから相当ってか絶対強いのは間違いないと思うな!実はここだけの話、彼の伐刀絶技は禁技指定されているらしいよ!一体どんな伐刀絶技なんだろうねぇ。もしかして分子とか原子とか、あまつさえ時間さえも凍結させてしまう最早チート級の伐刀絶技だったりして!?いやー、妄想が止まりませんなー!

変態淑女ことステラさんも、少し彼が気になる様子!実は時折見せる笑顔が子供っぽくて可愛いみたい!ここまで規格外に強いとホントは人間じゃなくて魔人じゃないの?って思っちゃうけどホントのところはどうなんだろう?謎が多い人物の一人だね!

 

こんな彼だけど、実は弱点があるの。能力の特性上暑いところは苦手みたい。夏とかはホントにダメ見たいで魔力の消費を抑えるために常に全身に冷えピタ貼ってるって噂!それを聞くと、なんか可愛く見えるね!好きな食べ物はアイス!これまた可愛くて、特にイチゴ味のアイスが大好物!餌付けしたら懐いてくれるかなー、なんてっ。だから炎を使うステラさんとは相性が合わないの。あ、性格とかじゃないからね?能力の相性がってこと!

特徴としては能力発動時、身体中から冷気を出すところ!体壊さないといいね。性格は他人に全く無関心!目の前に美女がいてもへのへのカッパ!色仕掛けなんて無意味!イケメンなのになんか残念だよねー。でも私は諦めない!絶対振り向かせてみせるよ!

やっぱり既成事実をつくるしか・・・・・(ボソッ)

 

 

おっと、ほとんど関係ない話になったけど今日のところはここまで!続きはいつかまた書くよ!

まだまだ二つ名とクソ長い伐刀絶技募集中だよ!返信は忙しくて出来ないけど、作者はちゃんと見てるみたい!みんな才能あり過ぎてスゴい!厨二病こじらせてない?そろそろ現実見た方がいいんじゃない??

 

それじゃ、またねー!




まだまだ募集中です!


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零度の頂点

最大の必殺技と奥の手の必殺技は現在考え中


「あの《世界時計(ワールドクロック)》が、たかが学生騎士に負けたっていうの!?」

「あれでたかがと言えるお前の度胸が羨ましい」

「彼は一体どんな騎士なんですか?」

「さっきも言ったがただの氷雪系伐刀者だ」

「そのただの氷雪系伐刀者にアタシが負けるって言いたいんですか!」

 

ステラは食らいつくように黒乃に迫った。

 

「お前達も本能的に感じただろう、アイツの規格外なまでの“暴力”を。近づくだけで相手を凍らせる極寒の氷。もはやただそこに『在る』だけで他者を圧倒する脅威。大した能力だ。あそこまで攻撃的な能力を有し、なおかつ使いこなしている者はそうはいない」

 

二人は固唾を飲み、黒乃の話を聞いていた。ただそこに『在る』だけで他者を圧倒する脅威ーーーーー

 

「だが、お前たちが《七星剣王》を目指すのであれば何れ越えて行かねばならない壁だ。何処までも高く見果てぬ壁だがなーーーー」

「それってつまり・・・・・・・」

「今年の七星剣武祭には深雪も出す」

 

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理事長室を出た凍夜を待っていたのは、彼も苦手としているあの男だった。

 

「やぁ、深雪くん」

「・・・・・・・桐原」

 

桐原静矢。対人戦最強と謳われる能力と《狩人》の二つ名を持つ、狡猾かつ尊大な態度が目立つ凍夜の同級生だ。

 

「君も七星剣武祭に出るんだ?」

「盗み聞きとは趣味が悪いな」

「たまたまだよ、たまたま。でも驚いたなぁ、君が《七星剣王》に興味があるなんてね」

「《七星剣王》?・・・・・ああ、優勝した際に与えられる称号か。そんなものに興味ない」

「あっはは!そう言うと思ったよ!そうだ、君はそういう人間だったね」

 

桐原は額を抑えなが高笑いした。

 

(本当に騒がしい・・・・・・)

「そろそろ校内選抜予選も始まる。もし当たったらお互い、いい試合をしようじゃないか」

試合(・・)になればいいけど」

「え?それってどういう・・・・」

「話はそれだけか?俺は帰る」

 

踵を返し、長い廊下を歩いていく。その姿を薄ら笑いを浮かべながら見ていた。

 

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魔導騎士が国家の戦力としての側面を持つ以上、当然戦闘技能が求められる。国家間の戦争はもちろん、伐刀者としての力を悪用する《解放軍》をはじめとするテロ組織やら犯罪結社に対抗するためにもこれらは必須だ。

 

『あの子がヴァーミリオンの《紅蓮の皇女》かー』

『すっげぇ美人じゃん』

『髪の毛が綺麗・・・・・・・燃えているみたいで素敵・・・・・・・・』

『まあ、それでもうちの深雪には勝てねぇよ』

『そうだよな!やっちまえ深雪!皇女サマに怖気付くんじゃねぇぞ!』

 

第三訓練場の中心に深雪凍夜とステラ・ヴァーミリオンの姿があった。レフェリー(黒乃)を挟み、二十メートルほどの間を空けて対峙する両者。

 

「アンタ。ホントに噂ほどの強さがあるのかしら」

「周りの野次にいちいち耳を貸す必要はない」

「わかってるの?アンタ、負けたらあのイッキとか言う奴が退学になんのよ?」

「なら勝てばいいだけの話」

「・・・・・・・・あくまでアタシに勝つつもりなのね」

「・・・・・・・・・・・・」

 

さも勝ったも当然、とでも言っているかのような余裕な態度が更にステラを苛立たせた。

 

(その鼻っ柱、へし折ってやるわ!)

 

「それではこれより模擬戦を始める。双方、固有霊装(デバイス)を《幻想形態》で展開しろ」

「傅きなさい。《妃竜の罪剣(レーヴァテイン)》!」

 

ステラは魂の具現である剣を《幻想形態》ーーーー人間に対してのみ、物理的なダメージを与えず、体力を直接削り取る形態で召喚し、目の前の男に突き立てた。

 

「ーーーーーーー起きろ、《氷闇の絶剣(アルマス)》」

 

虚空から現れたのは氷の刃と揶揄されても過言ではない程美しい直剣。刃の先端に行くにつれて赤みを帯びるそれは、まるで返り血のようにも見える。

 

「よし。・・・・・・・・・では、試合開始!」

 

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「ハァァァァアァ!」

 

開幕と同時にステラは一気に距離を詰め、炎纏う一刀を振り下ろす。力任せに叩きつける一撃は、一見粗暴に見えながらも恐ろしく鋭い。しかし大振りは大振り。避けるまでもない。凍夜はそれを片手で受け止めた(・・・・・・・・)

 

「ッ!?」

(アタシの一撃を受け止めた!?しかも片手で!?)

 

凄まじい轟音が鳴り響き、凍夜の後方は衝撃波で訓練場の地面に亀裂が走る。

 

(しかもアタシの渾身の一撃の衝撃を体を通して地面に逃がした・・・・?)

 

ステラは凍夜から距離をとり、構え直す。

 

(なんなのよコイツ・・・・・・・本気の「ほ」の字すら出してないじゃない・・・・・・!)

 

間違いなく遊ばれてるのは自分だ。

 

「こんの・・・・・ッ!」

 

轟、と風を鳴らし先ほどより数倍の速度で距離を詰めた。上段からの斬りおろし、それもまた片手で受け止められる。

 

(ヴァーミリオンの剣撃は一撃で大地に激震を奔らせる問答無用で相手を押し潰す一撃だ。本来なら彼女の一撃を受け止めること自体不可能・・・・・・・・)

 

『おおお・・・・・・・・・・・・・っ!!』

 

上がる歓声。彼らが見つめるのは、《妃竜の罪剣》。その焔が描く軌跡だ。それは研ぎ澄まされた剣技の軌跡。

 

「『皇室剣技(インペリアルアーツ)』か。西洋の棒振り(・・・)にも術理はあったか」

(動きが全部読まれてる・・・・・・・!?)

 

(何故深雪は魔力を使わない。しかも、人前では滅多に見せない霊装まで使って・・・・・・・・っ!まさか、深雪、まさかもうあの伐刀絶技(ノウブルアーツ)を使っているのか!?)

 

ステラの剣戟をいなしながら凍夜の口角が釣り上がる。

 

「そろそろ時間だ」

「はぁ!?何がよ!」

「最初のあの一撃。中々効いた、こちらもお返しをしなくてはな」

 

「《白鳥の湖(スワンレイク)再演(リターンズ)》。受け取れ、お前の力を(・・・・・)

「え・・・・・・・?」

 

スっーーー、と《妃竜の罪剣》の上に《氷闇の絶剣》の刃を軽く乗せた瞬間、ステラの総身が軋みを上げながら地面にクレーターを形成した。

 

「あぁぁぁぁあぁぁああぁぁ!!??」

 

(《白鳥の湖(スワンレイク)》。発動したら一定時間魔力の行使が出来ない。一見デメリットしかない伐刀絶技だが、恐ろしいのは《白鳥の湖》発動中に受けたダメージを数十から数百倍の威力で相手に返す《白鳥の湖(スワンレイク)再演(リターンズ)》。ただでさえヴァーミリオンの最初の一撃は並の相手では両腕を粉砕される威力がある。だがそれを数十倍から数百倍の威力で倍返しされたら、ヴァーミリオンの両腕はもはや木っ端微塵で済まされない・・・・・・・・!ここはもう・・・・・・・・ッ!)

 

「《時間凍結(クロックロック)》!」

 

パンっ、と乾いた発砲音が響き、ステラは時間が止まったかのように悶えた姿で一向に動かない。その両腕は最早原型を留めていたなかった。

 

「誰でもいい!早くストレッチャーを!」

『見ろよ、ヴァーミリオンの両腕がひしゃげてるぞ・・・・・・・・!』

『何が起こったんだよ・・・・・・・・』

『やっぱり深雪はつえぇよ』

 

「・・・・・・・・・・・・・」

 

冷めた目でステラを見やると《氷闇の絶剣》を虚空へと化し、踵を返した。

 

「深雪」

「・・・・・・・・・・」

「いや、なんでもない」

 

そのまま訓練場を後にする。

 

(凍結能力を使わなかっただけ幸い、か・・・・・・・)

 

彼の名は深雪 凍夜。

世界最強の氷雪系伐刀者。

 

後に、《零度の頂点(ゼロ・ワン)》と呼ばれる者である。



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選抜前夜

次回から選抜戦です!




「・・・・・・・ん、っ」

 

じんわりと、白い光が視界に滲み、ステラの覚醒を促した。

目を開けると、映るのは低い天井と、

 

「目が覚めたか。ヴァーミリオン」

 

ステラが横たわるベッドの横に座り、煙草をふかしているスーツ姿の黒乃だ。

 

「理事長先生・・・・・・・・・・・ここは?」

「君の部屋だ。数時間前にiPS再生槽(カプセル)での治療が終わってな。ここに運んだ」

 

ふぅ、と黒乃の紅をさした唇から煙草の煙が吐き出される。

 

(ここ、禁煙のはずじゃ・・・・・・・)

「・・・・・・・・てことは、私は負けたのね」

「ああ。両腕粉砕だけでよかったな」

 

ステラは自分の両腕を見ると、先の模擬戦で原型を留めていなかった両腕はすっかり元に戻っていた。

 

「・・・・・はぁ。久しく忘れていたわ。負けるって・・・・・・・・こういう気分なのね」

「まぁ、あまり気に病むことはない。相手が相手だからな。現時点でお前が勝てる男ではない」

「元世界ランキング三位に勝ったって、ホントだったのね」

 

化け物にも程がある。

いや、初めて会った時から薄々は気づいていた。あの男は、修羅や鬼とは違うーーーー正真正銘の化け物だと。

 

「理事長先生」

「なんだ?」

「フブキ・・・・・・センパイは、何者なんですか?あれ程の力を持っていながらなぜ学生騎士なんて枠に・・・・・・・」

「お前の疑問は最もだ。・・・・・・・・・・・・アイツは既に、人間の外側に(・・・)いる」

「外側・・・・・・?」

 

それ以上黒乃は口を開くことはなく、一服した後ステラの部屋を出て行った。

 

 

✦‧✧̣̥̇‧✲゚✧✽*✼✼✽*

 

 

まだまだ肌寒い四月の早朝。

巨大な敷地を有する破軍学園の前に、二つの影があった。

 

「・・・・・・・・・ステラ・ヴァーミリオン」

「なんですか?センパイ」

「何故付きまとう」

「何となく」

「・・・・・・・・・・」

 

先程からこの会話の繰り返し。

寮から学園までの道をステラは凍夜の後ろを付いて離れないのだ。

 

「・・・・・・・・腕は大丈夫か」

「え?あ、うん。お陰様で」

「そう」

(あれ?この人、案外優しいのかしら・・・・・・・)

「おやおや、誰かと思えば深雪くんじゃないか」

 

前方に視線を投げれば、声の主が大仰に手を広げながら近づいて来た。

 

「・・・・・・・何の用だ、桐原」

「おいおい、そんな怖い顔で睨まないでくれ。同級生に挨拶しただけじゃないか」

 

桐原と呼ぶ少年は、凍夜の後ろにいる少女に目線を向けた。

 

「おや?君は、確か深雪くんに負けた留学生の皇女殿下じゃありませんか」

「ーーーだったら何よ」

「これは失礼、あまりにも美しいのでつい・・・・・」

(うげぇ・・・・・・・)

 

ステラの顔が引き攣るのと同時に、桐原はそのまま学園の方に帰って行った。

どうやら、本当に挨拶しに来ただけらしい。

 

「・・・・・・何なのよアイツ、気色悪い」

 

ボソッ、と呟いたステラを置いて凍夜は学園内に足を入れる。

その後を続くようにステラも追った。

 

- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

 

「はーい☆新入生のみなさんっ!入学おめでとーーーーーーーッ!♡」

 

新入生のクラスの教壇で『パーン』とクラッカーを鳴らし、教壇に立つ若い女性教師は満面の笑顔を浮かべる。たった一人を除いて。

 

「わたしが一年一組のみなさんの担任をさせていただく、折木有里です。担任を持つのは初めての新米教師だから、みんなも気兼ねなく友達感覚で『ユリちゃん☆』って呼んでくれたら先生超うれしーな♪そして、こちらは皆の一つ上の先輩!二年三組の深雪凍夜くんだよーーーーーーっ!」

 

折木から自己紹介されると真顔で『パーン』と手に持っていたクラッカーを鳴らした。

 

(え、今鳴らすの?それ)

 

タイミングが絶妙におかしい。

・・・・・・・・これから始まる七星剣武祭出場枠を賭けた戦いの日々の幕開けにしては、えらく軽いノリだった。

 

「・・・・・・なんか疲れる先生ね」

 

縁があるのか、隣の席になったステラが、折木の独走気味のテンションにぼやく。

 

「深雪くん、捕まっちゃったんだね。折木先生に・・・・・・・・・」

「イッキは知り合いなの?」

「前にちょっとねーーーーー」

「えー、今日は初日なので授業はありません!でもでも、先生から一つだけみんなに『七星剣武祭代表選抜戦』について連絡があります。深雪くん、フリップあるかな?」

「はい」

 

予め用意していたのか教壇の教卓から大きめのボードを取り出した。

その内容とはーーーー

 

「んと。まずはこの学園は去年までは『能力値』で選手をある程度選抜していました」

 

ボードを指さし棒で指しながら折木は続ける。

 

「でも今年から『能力値』は廃止!『全校生徒参加の実戦選抜』に制度が変わりましたっ!」

 

折木が『イエーイ!』とパチパチパチ拍手すると、一拍遅れて深雪もパチパチと拍手する。真顔で。

ノリがわからない。

 

「全校生徒が選抜戦を戦って成績上位者『六名』を選手として選抜するの!わーおバイオレンスッッ!そしてその試合の日程は生徒手帳に『選抜戦実行委員会』からメールで送られてきます!便利だよね!ナウでヤングだよッ!」

 

深雪が取り出した生徒手帳を指差しながら解説する。

破軍学園の学生証は、身分証明から財布、携帯電話、インターネット端末と何にでも使える優れものである。

 

「だから、ちゃんと確認して指定の日時に指定の場所に来てね。来ないと不戦敗ってことになっちゃうか注意すべし♡」

「先生」

 

ふと、ステラが手を上げる。

 

「ノンノン。ユリちゃん☆って呼んでくれないと返事してあげないゾ?」

「・・・・・・ゆ、ユリちゃん」

「はい、なーにステラちゃん」

「選抜戦って何試合くらいするんですか?」

「詳しくは言えないけど、一人十試合以上は軽くかかるかなー。選抜戦が始まったら、三日に一回は必ず試合があると思ってくれていいよ♪」

 

教室のあちらこちらから不満の声が上がる。

まあ、無理もない。誰も彼もが七星剣武祭に興味がある訳では無い。なんたって自分もその一人なのだから。

七星剣武祭は《幻想形態》ではなく《実像形態》を用いた真剣勝負。負傷はもちろん、場合によって命の危険すら伴う戦いになる。

そんな危険を犯してでも自分を高めたいなどというストイックな人間が果たして、この世の中にどれ程いるだろうか。

誰もが思っているだろう。平穏に卒業して、魔導騎士としての資格を得て、高給で安定した仕事に就き、幸せな家庭を築く。

そんな平坦な道を望んでいる生徒もいるはずだ。

 

「これ、棄権したり、負けたら罰則とかあるんですか?」

 

そんな生徒の一人が、折木に尋ねる。

 

「ううん。罰則なんてないよ♪当然成績のマイナスもありません。勝てばちょっとボーナスは付くけどね☆もちろん不参加も可。だから『七星剣武祭に興味なんてねーやー』って人はそのメールを送ってきた『実行委員会』に不参加の意志を書いて返信してください。自動的に抽選から弾かれるようになります」

 

『でもね・・・・・』と一拍置いて、折木は続ける。

 

「確かに大変だと思う。だけど、誰にでも平等にチャンスがあるという一事だけでもこの制度は素晴らしいものだと、先生は思うな。ここにいる誰もに、七星剣武祭の優勝者『七星剣王』になるチャンスがあるって事なんだから。だからできればみんな参加して、目指して欲しい。その経験はきっとかけがえのないものになると思うから」

 

そこまで話終えると、また満面の笑みを浮かべた。

 

- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

 

日はすっかり落ち、黒の帳を一筋の月明かりが照らすのを寮の自室から眺めていると突如として端末に着信が入る。

 

「はい」

『深雪。お前に仕事が入った』

 

声の主は理事長の黒乃。『仕事』と言うワードが出てくるという事は《解放軍(リベリオン)》が現れたのだろう。

 

「生徒会長と副会長に要請は」

『いい。この時間だ、既に夢の中だろう。代わりに寧音をそっちに寄越す。無理矢理にでもいい。あの堕落した臨時講師をこき使ってやれ』

「分かりました。場所は」

『すぐ近くのショッピングモールだ。人数は数十人程度。お前と寧音なら三分も掛からんだろう?なるべく捕縛を最優先、無理なら最悪殺しても構わん。後の詳しい話は現場の警察に聞いてくれ。頼んだぞ』

「了解」

 

そこで通話を切り、軽く上着を羽織り冷凍庫からアイスキャンディーを数本取り出し、その内の一本を咥える。

ルームメイトを起こさないように部屋のドアを開けるとそこには、着物を着崩した黒髪の小柄の少女が立っていた。

 

「よっ、ふー坊」

「お久しぶりです、西京先生。これ」

「おー!これこれ!ふー坊は気が利くねぇ」

 

西京と呼ばれた少女は差し出されたアイスキャンディーを嬉々としながら袋を切り、口に咥えた。

彼女の名前は西京 寧音。《夜叉姫》と畏れられ、KOK・A級リーグ現世界ランク三位。日本が世界に誇る、超がつくほどの一流騎士である。

 

「くーちゃんなんて?」

「出来れば捕縛、無理なら殺せだそうです」

「ふーん。あ、そーいやふー坊と一緒に『仕事』すんのいつぶりさね」

「さぁ・・・・・・・忘れてしまいました」

「そんな事より、ふー坊・・・・・・あんた、本当に人間辞めちまったんだねぇ(・・・・・・・・・・・・)?」

「・・・・・・・それはあなたもでしょう(・・・・・・・・・・・)

 

寧音を見下ろす凍夜の瞳が、怪しく光り出す。

それを見上げる寧音の口角は次第に上がり出す。

 

「いい目するようになったねぇ・・・・・・・怪物同士、よしなにやろうぜ?」

「はい」

 

そんな話をしていると、目的のショッピングモールに着いた。既に何台かのパトカーも待機している。

大まかな説明を聞き、二人はショッピングモールの中へと入っていく。

そして宣言通り、三分も掛からずモール内にいた《解放軍》を制圧してみせた。

 

「骨のねぇヤツらだねぇ、相変わらずさ〜」

「理事長、制圧完了です」

『ご苦労』

 

報告も終わり、寧音の元へと向かう。

 

「そんじゃ、事後処理は任せたぜ〜」

「分かりました!」

 

凍夜はまたアイスキャンディーを取り出し口に咥える。

 

「物足りない・・・・・って顔してんぜ、ふー坊」

「・・・・・・・・そうですか?」

 

にやにやしながらこちらを見てるくる寧音を横目で捉える。

 

「どちらかと言うと、自分より西京先生の方がそう見えます・・・・・・・・・そのやる気満々な目で見ないでくれますか」

「本気のふー坊と戦ってみたくてさ〜・・・・・・・」

 

寧音の瞳が爛々と輝く。闘争を剥き出しにした獣の顔に凍夜は目を細める。

 

「西京先生の能力でここら一帯、更地になりかねないので嫌です。理事長に知られたら殺されますよ」

 

西京 寧音は重力を操る自然干渉系能力者である。黒乃とは昔からのライバルと聞いたことがある。噂によるとかの《闘神》の弟子らしい。凍夜にとっては大して興味のないことのため曖昧としか覚えていない。

この人のチートはこれだけではない。重力を操作できる時点で勝ち組のような気がするが、気が触れたのか。挙句の果てには宇宙からスペースデブリを引き寄せ、第二宇宙速度で地表に落とす『てめぇ正気か?』な伐刀絶技、《覇道天星》というものを編み出したのである。もちろんこんな危険極まりない伐刀絶技は、連盟の許可無しに使用する事を禁止する『禁呪指定』を受けている。やったぜ。

 

「選抜戦、頑張れよ〜」

「あまり乗り気はしませんが」

「くーちゃんからの命令なんだろ?」

「まぁ・・・・・・」

「そんじゃ、お姉さんが一肌脱ごうかね」

「結構です」

「え、即答」

「捕まりたくないので」

「どゆこと?」

「まぁ、特殊な性癖の人には刺さると思いますよ」

「ねぇ、何の話してるの?」

 

明日から始まる選抜戦に向け、そそくさと帰路を歩く。

寧音が先程からなにか喋っているが無視しておいた。

 

 

✦‧✧̣̥̇‧✲゚✧✽*✼✼✽*

 

 

「ねぇくーちゃん」

「なんだ」

「あたいがせっかくふー坊の練習相手になるために一肌脱ごうとしたのにことわったんだぜ?酷くね?」

「合法ロリはさっさと寝ろ」

「合法ロリ・・・・・・?」

「私は寝る」

「合法ロリ・・・・・・合法ロリ・・・・・・あたい、褒められてる?」

 

黒乃も無視を貫いた。

 



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