アラガミのアカデミヤ (暇な旅人)
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一喰目
「なぁ、俺いっつも思うんだ」
「いきなり何だい?」
どこかの教室座っていた俺が隣にいるダチにそう言うと、そいつは半目になりながら俺の方を見て、そう聞いてきた。
「きっとこの世の中に本当の意味での平等なんて無いって」
「唐突だね。君はいつも唐突に変わった事を言うけど今回はいつもとは違うね。……っで、どういてそんな考えが出てきたんだい?お姉さんに話してみなよ」
「お姉さんっていうかおばあちゃんって行っても過言じゃ無いと思うって冗談だからその拳を下ろして下さいって。冗談が通じねぇんだから。んで、そう思ったのはな、所詮それを決めるのはその場の人間なんだからそいつらが決めた平等ってのはそいつらにとっての平等なんだから他の奴らからしたらそれは平等じゃ無いかもしれない。そう思うとな、この世には本当の意味での平等は無いんじゃ無いのかなぁって思ってね」
「なるほどね、そう言うと確かに平等なんて無いと思えるね。けど、それを聞いてもらって君はどうして欲しいの?その通りだねって同意して欲しいの?それとも批判して欲しいの?」
彼女はそう言いながら教卓の上に座ると頬杖を付きながら俺を見ていた。
「別に俺は同意して欲しいわけでも否定して欲しいわけでも無いよ。ただそう思ったから言っただけ。……そろそろ行くよ」
「言う事言って帰るなんて酷い男だね。僕は君の愚痴袋じゃ無いんだぞ」
俺がそろそろ行こうと立ち上がると彼女はワザとらしく泣き真似をしながら俺をチラ見してくる。
「オメェが聞かせろって言ったから聞かせたんだろうが。それにそんな事でオメェが傷つくわけねぇだろ白々しい。そういうてめぇもタマには外に出ろよ」
「ははは、確かにそうだね。考えとくよ」
俺が呆れながらそう言うと彼女はカラカラ笑いながら嘘泣きを止めた。相変わらずそういう事が得意なこって。
そして俺はそのまま彼女を残して教室を出た。
~~~~★★★★~~~~
「あ~ダル。んでこんな暑い日に学校行かなきゃならんのだ」
そうぼやきながら隻眼の少年こと俺、不動 響(ふどう ひびき)は猫背になりながら通学路を歩いていた。
「激しく同意」
「同じく」
俺のぼやきにそう同意してきたのは俺がよくつるんでる三人の内二人、紐田 健介(ひもた けんすけ)と火村 太郎(ひむら たろう)だ。二人も暑そうに汗をかきながら歩いていた。
「そうかな?」
っと全然平気そうな女子の声が俺の隣から聞こえてきた。
「そりゃお前は平気だろうよ、ショート」
隣に目を向けてみるとそこには髪が紅白の色で左目の周りに火傷の痕があるクール系美人に分類されるであろう少女が不思議そうに首を傾げていた。体つきもメリハリの付いたモデル体型なので他の男子からはモテている。あと、何故か女子にもモテる。
名前は轟焦 凍 (とどろき しょうと)。ショートはこいつのアダ名だ。俺達しか呼んでないけど。
「お前の氷の個性はこういう時に便利だしなぁ~」
太郎が頷きながらそう言うと健介も同意するように頷いた。
「まぁ、俺達が暑がっているのはコイツのせいだけどな」
そう言って俺は後ろを振り返る。それにつられて三人も後ろを見る。……そこにはボコボコにされ、ロープで雁字搦めに縛り付けられた男の姿があった。
「やれやれ、こんな真昼間から襲ってくるヴィランがいるとはねぇ」
「しかも、理由が女子と一緒に歩いているからって」
「「「しょうもねぇ~」」」
ショートを除いた俺たち三人は男を冷めた目で見ながらそう言った。ショートも口には出さなかったが男を冷たい目で見ていた。
「にしても、お前の体術は相変わらずスゲェな」
唐突に太郎がそう言ってきた。
「そうかぁ~?」
ぶっちゃけて言うと俺は自分の体術がどれ位なのかよく分からん。
「当たり前だろ!どこの世界に個性じゃなくて体術で空中を飛べるんだよ!?」
今度は健介がそうツッこんできた。
「できたからできた。あと飛んでるんじゃなくて跳んでるんだ」
「「知・る・かあああああ!!!?」」
「響、そこじゃ無い」
野郎二人は叫び、ショートは静かに指摘してきた。
「解せぬ」
俺達はそんな馬鹿な会話をしながら俺達の学校に向かった。
この後、近くを通りかかったヒーローに捕まったヴィランはこう話したという。
「隻眼のガキが跳ねたかと思ったら何時の間にか地面に倒れていた。個性を使う隙もなかった」
ちなみに、その隻眼の少年は遅刻しかけた事によって先生に説教をされていたとか。
~~~~★★★★~~~~
「あ~ちくしょう。セン公め、あんなに長く起こんなくてもいいじゃ無ぇか」
「仕方ねぇよ。それがあの先生の趣味みたいなものだし」
俺達は昼休みに屋上に集まり、俺はセン公の事を愚痴ってた。
「そういやお前ら。お前らは進路先、決めたのか?」
唐突に健介が俺達にそう聞いてきた。まぁ、俺達ももう中三だし、そろそろ進路を決めないといけない。健介はその事が気になったのだろう。
「俺と太郎は士傑を目指すがお前達はどうだ?」
健介と太郎は西の士傑と名高い士傑高校を目指すらしい。にしても、進路か……。
「……俺は雄英だ」
「はっ?」
「マジで?」
唐突にショートの言った名前を聞いて健介と太郎は驚きの余りに顎が外れんばかりに口を開けながらそう呟いた。にしても雄英か……
「……推薦受けた」
「「あぁ~」」
そのあと呟いたショートの言葉に二人は納得の表情で気の抜けた声を上げた。
「まぁ、お前は嫌がるかもしれんがお前の親父、あのエンデヴァーだもんな」
燃焼系ヒーロー:エンデヴァー。ショートの父親でNo.2ヒーロー。ショートの家に行った時に度々会うけど何故か俺の名前を聞いた時から何かヨソヨソしくなったというか悲しげな顔をするんだよねぇ~。ショートは有り得ないって言っているけど何でだろうなぁ~。
「……き……びき……おい響!」
「んお?」
「どうしたんだよ。いきなり黙り込んで」
「いやぁ~悪い。そんで何だ?」
どうやら思ったよりボーとしていたようで太郎が俺の事を呼んでいて、ショートが心配そうに見ていた。
「何だってお前はどうすんだ?進路……」
「ああ、俺も雄英にするぞ?」
「「「はっ?」」」
俺が雄英の名をさらりと口にすると今度はショートを含めた三人が疑問の声を上げた。
「えっ?冗談?」
「冗談じゃねぇよ。ガチだガチ」
俺が本気で受ける気だということを伝えると三人は一転、真剣な表情に変わった。
「響、どうして雄英を受けようと思った?」
「どうしてっと言うと?」
ショート……いや、焦凍が静かに真剣な表情で聞いてきた。普通ならヒーローになりたい等の理由だと思うだろうがこいつらは俺がそうじゃ無い事を知っているから聞いてきたのだ。
「だって響、ヒーローに興味が無いだろ?」
「ああ、ヒーローには興味は無ぇよ?」
そう、俺はヒーローに興味は無い。嫌ってこそいないが好きでも無い。理由としては簡単にヒーローになれる事実を余り好んでいない。ヒーローってのは周りがどんなに無理だ不可能だって事を成し遂げてこそヒーローだと思っているからだ。
例えばオールマイト。彼こそは真のヒーローだと思っている。彼こそはヒーローと称えられても可笑しくは無い。
それなのに、他の大人達は、たいした偉業を為してないのにヒーローを名乗れる事を可笑しく感じる。Mt.レディとかがそうだ。壊す事が多いのに何でヒーローやってんだ?
ヒーロー自体を否定する気も無い。彼らのお陰で救われた命は数多くいる。だがヒーローとしては言えない気がする。
何より……
「ヒーローってのは自分で名乗るもんじゃなくて大衆に認められた奴がヒーローだろうが」(ボソッ)
「何か言った?」
「いんや、何でも」
俺の呟きに焦凍は反応したが俺ははぐらかす事で誤魔化した。
「そんで、理由だっけか?」
俺が三人にそう聞くと三人共、真剣な顔で頷いた。
「俺が雄英を選んだのは……」
俺はそこで一度ためる。
「「選んだのは?」」
健介と太郎は復唱するように聞いて、焦凍は俺の事をじっと見ている。
「ショートが雄英に行ってボッチになるんじゃねぇかって心配だし俺も別んとこ行ったらショートが寂しがるんじゃねぇかと思ってな!」
「「ああ、確かに」」
俺がへらへら笑いながらそう言うと太郎と健介は納得と頷いた。ショートは不満げな顔になりながら半目になって俺を不満げに睨んでくる。その時にはさっきまでのシリアスな空気は無くなっており、何時ものだらけた空気に戻っていた。
(まぁ、それ以外にも目的はあんだけどね……)
俺は表面上は笑いながら俺の目的の事を頭の中で思い浮かべていた。
(……俺の目的は今のヒーロー社会がどうなっていくのかを間近で見届ける事。今のヒーロー社会がこのまま変わらずにただただ続いていくのか、それとも……)
果たして、今後はどういう風に転ぶかねぇ……
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