男子も戦車道に参加できる世界 (カット)
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プロローグ

初めましての方は初めまして。カットといいます。

この度ガルパンの方でも小説を書いていくことにしました。ガルパンを知ったのは1ヶ月ちょっと前で最近ですがハマってしまいました。よろしくお願いします。


ピピピピピピピ

 

 

とある学生寮の一室に目覚ましのアラーム音が鳴り響いている。

 

 

「みほ起きろ〜朝だ〜!」

 

 

今みほという女の子を呼んだのは双子の兄、西住りく。みほはりくの妹だ、この2人には西住まほという姉がいるが今は一緒に暮らしていない。

 

 

「………朝?起きないと!?あっ」

 

 

部屋にいたみほはアラームを止めて寝間着を脱ごうとしたがすぐに手を止めた。

 

 

「そっか……もう家じゃないんだ!」

 

「家じゃないけどもう朝飯できてるから早く着替えて出てこーい」

 

「あ、ごめんお兄ちゃん」

 

 

着替えを済ませたみほはりくと一緒に朝食を済ませる。

 

 

「やっぱりお兄ちゃんの作ったご飯は美味しいな〜」

 

「みほも女の子なんだし少しは自分でできるようにしないとな」

 

「うぅ…頑張ります」

 

 

兄妹で朝食を済ませて使った食器等洗い、2人で転校先の学校である大洗学園に向かい出した。

 

 

「家の方にはないよねサンクス」

 

「たしかにな、こっちにはあるみたいだな。通学路だし寄り道もできる」

 

「向こうにいた時は考えられないね」

 

「だな」

 

 

2人は転校前に住んでいた場所との違いを比べながら歩いている。

 

 

「う〜ん♪焼きたてのパンの匂い!いたっ!?」

 

「そうだな、そして前はちゃんと見ろ」

 

 

通りかかったパン屋から漂ってくる焼きたてのパンの匂いに気を取られたのか、みほは電柱に顔をぶつけた。

 

 

「教えてよ〜」

 

「余所見する方が悪い」

 

「うっ…」

 

 

言い返せないみほであった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「それじゃあ私が呼んだら2人とも入ってきてね」

 

「「はい」」

 

学校に着いた俺たちは職員室に行って担任の先生に挨拶、そして朝のHRの時間になり教師前まで先生と一緒に来た。

 

それにしても……

 

「まさかみほと同じクラスになるとはな」

 

「うん、でも私は助かるかな〜」

 

「正直俺も…」

 

2人とも初対面の人に自分から話しかけていく方ではない。だから同じクラスになったのは嬉しいことだ。

 

「それじゃあ入ってきてください」

 

「おっ、呼ばれたし行くか」

 

「う、うん」

 

先生に呼ばれて教室に入って教壇のところまで行く際にざっと教室を見てみると……

 

(「男子俺だけ?」)

 

このクラスに男子はいなかった。流石に男子がいるクラスにしてくれよ……

 

というか騒がしくなったな、転校生が入ってくるとこんな感じなのか?それとも双子で顔がそっくりだからか?

 

「それではみほさんから挨拶を自己紹介をお願いします」

 

「は、はい!

 

……え、えっと、黒森峰学院から転校してきました西住みほと言います。よろしくお願いします」

 

無難な挨拶をして終わらせると次は俺の番となった。

 

「同じく黒森峰学院から転校してきた西住りくと言います。みほの双子の兄です。このクラスに男子はいなく、いきなり男子が同じクラスになって驚くかもしれませんが、よろしくお願いします」

 

「2人ともありがとう。わからないことだらけだと思うからみんな教えてあげてね。あとりく君、この学校男子は少ないけど我慢してね」

 

「まぁ少し肩身が狭く感じることあるかもしれませんけど……なんとかやっていきますよ」

 

「2人の席は近くにしておいたから」

 

せめてもの配慮かもしれないが有難いな。

 

席に着くとそのまま授業が始まった。普段はHRのあと5分間休みあるみたいだが、挨拶とかがあってその休憩がなかったみたいだ。

 

………なんか申し訳ない。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

昼休み

 

 

「やっと午前中の授業終わったか〜」

 

「お兄ちゃん寝そうだったでしょ?」

 

「っ…寝てはない」

 

退屈すぎてほんと寝そうだった。でも寝てないのは事実だ。

 

すると「あっ」という声がみほから聞こえたから見てみると……

 

「ペン落としただけか」

 

「あはは…」

 

落としたペンを拾うために机の下に潜り込んだ……が

 

「な、なにしてんだ?」

 

みほの体が机に当たり机の上にあった物が全て落ちた……ほんとなにしてんの?

 

「あはは……これでよし」

 

「ヘイか〜のじょ!一緒にお昼食べない?」

 

「「っ!?」」

 

なんだ今のは…ナンパみたいな声のかけ方だが女子が女子に言うセリフか?

 

あ、別に俺がナンパしたことあるってわけじゃないぞ?

 

「へっ?もしかして私?」

 

「今教室に俺たちしかいないしみほだろ?」

 

「いきなりでお2人とも驚いてますよ?」

 

「あはは、ごめんごめん」

 

今声をかけてきた2人はたしか五十鈴華さんと武部沙織さん……だったかな?みほと2人でクラスの人の名前覚えてたしあってるはず…

 

「それでよかったらどうかな?」

 

「私たち2人と話してみたかったんだ〜」

 

よかったなみほ、話してみたいって言われて……ん?2人?

 

「もしかして俺とも?」

 

「他に誰がいるの?」

 

はい、ごもっともです…

 

「せっかく誘ってくれたんだし一緒に食べるか?」

 

「そうだね!お願いします」

 

「「うん(はい)!」」

 

正直食堂の場所とかわからないし助かる。それにしてもまさか俺にも声かけてくれるとはな。

 

「さっきも教室で言ったけど私たち2人と話してみたかったんだ〜あ、私たちはt…」

 

「武部沙織さん、6月22日生まれO型」

 

「五十鈴華さん、12月16日生まれのB型」

 

「凄い!誕生日まで覚えてくれてるんだ!」

 

「しかもお2人とも」

 

ふぅ…事前に覚えておいてよかった。

 

「うん、クラスの名簿見て覚えたの!」

 

「ちょっと時間かかったけどな」

 

「お兄ちゃんの方がね」

 

「うっ…」

 

そこは言わんでいい!

 

「ふふっ、2人とも仲がよろしいのですね」

 

「さすが双子!ねぇねぇ、2人のこと名前で呼んでいい?」

 

「名前で?」

 

「うん!みほ!りく!ってね」

 

まぁ名前で呼ばれ慣れてるからそれは構わないけど…すげぇな武部さん、初対面の人にここまで言えるなんて。

 

「では私も呼ばせて頂きますねみほさん、りく君」

 

「許可する前に呼んだな〜いいんだけど…君付けされるのはちょっと…呼び捨てでいいぞ」

 

「そうですか?ではりくと呼びますので私のことも華と呼び捨てで構いません」

 

「私も私もー!」

 

「了解、みほもいいよな?」

 

「うん!すっごい友達みたい!わっ」

 

「「「わっ!?」」」

 

嬉しくなってくるっと1回転したが躓いてころびそうになった。3人で抑えたから大丈夫だったが…

 

「よかった〜友達できて、私たちこっちに知り合いいないからできて嬉しいんだ〜」

 

「そうなんだ〜でもまぁ人生って色々あるよね〜泥沼の三角関係だったり告白する前に振られたりとか」

 

「え、えっと…」

 

「まさか沙織なそんな経験が?」

 

「ないよ〜」

 

「そもそも告白されたことすらありませんよね?」

 

なんだ、本人が経験したわけじゃないのか。まぁ三角関係の方は経験あったらやばいかもだけど……

 

「となるとご家族に不幸が?骨肉の争いとか遺産相続とか?」

 

これまたやばい発想にいきついたな…

 

「そんなんじゃないって」

 

「ちょっと複雑な事情があって…ごめんね?言いたくないの」

 

「そっか〜なら無理に聞かない」

 

「冷める前に食べちゃいましょうか」

 

言いたくないと言ったら、それ以上は気を使ってくれたのか華も沙織も聞いてこなかった。ありがたいな。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「西住ちゃ〜ん!それにお兄さんの方も、ちょっといいかな?」

 

教室に戻ると3人組の生徒が入ってきた。

 

つーか誰だ!

 

「えっと…」

 

「なぁ、この人たちは?」

 

「生徒会長と副会長、それと広報の人だよ。」

 

なるほど、話しかけて来た人は生徒会長みたいだ。つーか先輩か。

 

「私たちのこと聞いたみたいだしそろそろいいかな?そんなに時間は取らせないから」

 

「「はぁ…」」

 

廊下に連れ出されたけど何の用だ?もしかして職員室だけじゃなくて生徒会にも挨拶しに行かないといけなかったとか?

 

「ごめんね昼休み中に、大事な話があるんだよ〜」

 

この時、俺は大事な話ならあらかじめ先生を通して言っておいて欲しいと思った。

 

だがこの後話されることによって、そんな考えはどうでもよくなった。

 

まさか今話すことが、俺たちのこれからの運命を変えることになるとは思わなかったからだ……

 




プロローグの割に長すぎるような気が…

投稿間隔は不定期になっていくと思いますがこれからよろしくお願いします。


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1、必修選択科目

やっとできた…

文章変な部分あるかもしれませんがどうぞお読みください。


 

 

「必修選択科目だけどさ〜戦車道取ってね」

 

「………は?」

「………え?」

 

食堂で昼飯を食ってきた俺とみほに用があるらしく、生徒会の人たちに廊下に連れ出された。そこでまさか選択必修で戦車道を取るように言われた。

 

いやいや、大洗に戦車道ないはずじゃ……

 

「大洗には戦車道はないんじゃ…」

 

先にみほに言われたか…

 

「今年からまた復活させることになったんだよ。だから2人とも選んでね」

 

「そんな!?私たち大洗には戦車道ないからこっちに来ました。それなのに……」

 

「生徒会長、いきなり戦車道取れって言われて"はい"って言うと思ってるんですか?」

 

「普通は言わないよね〜でも取ってね。それじゃあそういうことで」

 

「おいっ!?」

 

予鈴のチャイムが鳴ったからか、自分たちの言いたいことだけ言って去っていった。ふざけてる…

 

「みほ、無理に取る必要はない。とりあえず教室に……みほ?」

 

「………」

 

ちっ、やっぱこうなるか。俺はともかくみほは戦車道をやりたくないから大洗に来たんだ。それを今更……

 

「みほしっかりしろ!」

 

「ぁっ、お、お兄ちゃん……」

 

「とりあえず教室入るぞ、授業始まる」

 

「う、うん…」

 

教室に入って授業受ける準備したけど……ダメだな。この様子じゃまともに授業は受けられそうもない。保健室で休ませた方がいいかと思ったけど授業が始まってしまった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「みほ……大丈夫か?」

 

「ごめんねお兄ちゃん、迷惑かけちゃって…」

 

今は授業中の時間、だが俺たちは今保健室にいる。みほの様子がおかしかったためか、授業担当の教師が保健室に行くように促し、俺はその付き添いだ。

 

「いいって、こうなった理由も想像つくし」

 

「…………」

 

みほの様子がおかしくなったのは生徒会との話が終わってから……正直今すぐにでも殴りに行きたいくらいだ。

 

「「失礼します…」」

 

ん?この声聞き覚えが……つーか沙織と華!?

 

「どうしたの?」

 

「すみません、私たちも具合が悪くて……」

 

「休ませてください」

 

「今日は具合悪い人多いわね、ベッド空いてるから横になってて。りく君悪いんだけど何かあったら教えてくれる? 職員室行かないといけないから…」

 

「了解です」

 

保健室の先生は何やら用があるみたいで保健室から出て行く。これは都合がいいや。

 

「で?なんで2人まで来たんだ?具合悪いっていうのは嘘だろ?」

 

「みほが心配だったからだよ!」

 

「そうですよ」

 

俺がついてるし大丈夫……って言いたいけど心配して来てくれたんだ。そんなこと言えないな。

 

「りくはみほさんがこうなった理由わかりますか?」

 

「って言っても多分生徒会との会話が関係してるんじゃないかって華とは話したよ」

 

「やっぱそう思うよな。実はさ、俺たちに戦車道を取るように言ってきたんだよ」

 

「戦車道はたしか乙女の嗜みとして行われていること…」

 

「最近では制限付きで男子も参加できるっていうあれのこと?」

 

「そうだ。2人が言ってることで間違いない」

 

戦車道のことはやっぱりやってない人でもどういうものか知ってるんだな。

 

「なんで2人にやるように言ってきたの?」

 

「それは……」

 

これは言うべきか言わないべきか。でもこの状況じゃ言った方がいいのかもな。

 

「私たちの家ってね、代々戦車道が受け継がれてる家系なの。それでっていうわけでもないけど私たち前の学校で戦車道やってたの」

 

「生徒会の人はそれを知ってたんだろうな。だから俺たちに言ってきたんだろ。俺たちの……いや、みほの気持ちを考えずにさ」

 

「お兄ちゃんは違うけど私は戦車道をするの嫌になったから戦車道のない大洗に来たの……」

 

「りくは違うの?」

 

「俺の場合戦車道が嫌になったわけじゃないな。でも考え方の違いから前の学校でやってくのが嫌になった。それでせっかくだしみほと同じ学校に転校したって感じだ」

 

「「なるほど」」

 

簡単に言うとこんな感じかな。何があったかまでは話す気はない。少なくとも今は……

 

「私の家も華道の家元ですしみほさんの気持ちはわかります。りくのような考え方の違いというのは今はよくわかりませんが…」

 

「華の家も…」

 

「私の家は家元とかじゃないからそういうのよくわからない。でもさ、だったら無理にやらなくてもいいんじゃないかな?本来選択必修は自由に選べるんだから」

 

「そうですよ。やりたくないことをやる必要はありません」

 

「2人の言う通りだ。みほがやりたくないって言うなら別の選べばいい。それで生徒会の人が何か言ってきたら俺がガツンと言ってやる!」

 

「カッコいい!りくみたいな人と付き合える人は幸せになりそう」

 

「は?」

 

「お兄ちゃん…華さん…それに最後よくわからないこと言った沙織さん…ありがとう」

 

「いえいえ」

「よくわからないこと!?」

 

ははっ、さりげなくよくわからないことって言ったな。まぁ俺も"は?"とか言ったし人のこと言えないか。

 

 

キーンコーンカーンコーン

 

 

「授業終わりか。それじゃあそろそろ教室戻るか、サボれてラッキーだ」

 

「お兄ちゃん……さっきいいこと言ったのに」

 

「りく…この時間の分のノート誰かに見せてもらわないといけないんですよ?」

 

「………あ」

 

わ、忘れてた…まぁなんとかなる。

 

 

『生徒のみなさんは至急体育館にお集まりください。繰り返します。生徒のみなさんは至急体育館にお集まりください』

 

「なんだ?今日何かあるのか?」

 

「いえ、特に聞いてません」

 

となると急に集まることになったのか…とりあえず移動するか。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「それでは、これから必修選択科目のオリエンテーションを行う」

 

突然集めたと思ったらこれかー!つーか生徒数少なくね?これで全校生徒?

 

って思ってたらスクリーンに戦車道と大きく出てきた。あれ?これ必修選択科目のじゃなくて戦車道の説明になりそうじゃないか?

 

そう思ってると戦車道の紹介PVみたいなものが映された。というかこれ見たことあるし……

 

やっと終わったし次に他の選択科目についての説明か……って思ったんだが

 

「戦車道を取った人で優秀な成績の人にはいくつか特典がある。例えば学食の食券100日分や単位3倍などだ」

 

どんだけ戦車道をやらせたいんだ生徒会は!?

 

あ、でも特典はもらって損がないものだな……

 

「そして最後にもう1つ!会長お願いします」

 

「今見てもらったものでは乙女の嗜み……まぁようするに女子だけって感じだったと思うんだけど…」

 

………たしかにな

 

「男子も一応取れることになってるから希望者は選んで大丈夫だからね〜ただね〜いくつかルールが決められててまず戦車に乗れる男子は学校で1人、隊長や副隊長になれない、隊長と同じ戦車に乗ることはできない……他にも細かい決まりごとはあるけどそれは取った人に教えるから〜」

 

「会長言い方軽……」

 

「ねぇりく、今会長が言ったのは本当?」

 

「まぁな、一応戦車道の中心は女子だからな」

 

言い方は軽い感じだけど伝えるべきことは伝えてるな。まぁ男子1人っていうのは大会の試合の時で普段の練習や練習試合では同乗してもいいことになってるけど……選択する人の人数によるか。

 

「しかし複数男子の希望者がいる場合1人を除いてサポート役……マネージャーみたいなことをしてもらうと言った方がよさそうだな、そういうことをしてもらうことになる」

 

さりげなくえっと……河島先輩……だったか?メガネかけた生徒会の人が補足した。というかこれ俺がやることを前提に言われてないよな?

 

「以上で必修選択科目についてのオリエンテーションを終わりにする!」

 

…………ん?

 

いやいやいや、戦車道についてしか説明してねぇだろ!?

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

コンコンコン

 

 

「どうぞ〜」

 

「失礼します」

 

「おぉ〜西住兄じゃん、どうした〜?」

 

 

必修選択科目のオリエンテーション……と言っても戦車道についてしか説明していなかったが、そのオリエンテーションが終わり放課後になると、りくは生徒会室を訪れていた。

 

 

「どうしても気になることがありまして…」

 

「なんだ」

 

「必修選択科目の選択は自由にできたはずです。なのに生徒会の人たちはみほや俺に戦車道をやるように言いましたし、さっきのオリエンテーションでも戦車道についてしか説明ありませんでした。

何かどうしても俺たちにやって欲しい理由でもあるんですか?」

 

「「っ」」

 

「そんなのないよ〜」

 

「………」

 

 

会長の角谷杏は理由はないと言うがりくは見逃さなかった。他の2人は少し動揺したことに、そして会長の声のトーンがほんの少しだが下がったことに……

 

 

「その割には少し動揺してるみたいですよ?まさかとは思いますけど、学校が無くなるなんてことありませんよね?」

 

「なっ!?貴様どこでそのことを!?」

 

「桃ちゃん!!」

 

「はっ!?」

 

「まさか思った通りとは……」

 

「あはは〜やられたねかーしま〜」

 

 

りくは確信を持って言ったわけではない。ただどうしてもりくやみほに戦車道を取らせたい様子や、先程のオリエンテーションで戦車道の説明しかなかったことからもしかしてと思ってカマをかけただけであった。

 

 

「まっ、そういう理由じゃ俺らに取るように言ってきてもおかしくないな。俺も転校してきた学校が無くなるのも嫌だし…」

 

「じゃあやってもらえるよね〜やるって言ってくれたら干し芋あげるよ〜」

 

「それはいりません。ですが少し質問するので正直に答えてください」

 

「「「質問?」」」

 

「まず1つ目、戦車道やってたことを知ってるから戦車道を取るように言ってきたと思いますけど、去年の大会の決勝で起こったことは知ってますか?」

 

「調べたからね〜」

 

「それじゃあ2つ目、その時どう思ったか正直に言ってください」

 

 

りくが本当に聞きたいことはこの2つ目のこと、りくはこのことについて親と揉め、前の学校…黒森峰で戦車道をやっていくのが嫌になったのだ。

 

 

「そのことについては3人で話し合ってたんだよね、もし大洗でも同じようなことが起こったらどうするべきかって」

 

「じゃあその話し合いの結果を教えてください」

 

「いいよ〜助けに行くことは止めない。というか助けに行くべきだとは思う。でも助けに行く前にその間他の人に指揮権を譲っておく、こんな感じかな。急がないといけなくなるかもしれないけど、指揮する人は決めておかないと去年の二の舞だよ?」

 

「それが話し合った結果で間違いないですよね?後から本当は犠牲にしてでも勝利を目指せとか言いませんか?」

 

「言わない言わない」

 

「………わかりました。それを信じて俺も戦車道やります」

 

「ほんとか!?」

 

「いや〜助かるね〜」

 

「ただみほがやるかは別ですからね、脅したりしないでくださいよ?」

 

「はいは〜い」

 

 

生徒会の言ったことを信じてりくも戦車道をやることに決めた。妹のみほを脅したりして戦車道をやらせないように言って……

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

翌日の朝

 

 

「っ…」

 

「みほ!?」

 

 

必修選択科目オリエンテーションの翌日の朝、みほはベッドに腰掛けて震えている。去年の大会中の出来事を思い出しているのだろう。

 

 

「お兄……ちゃん……私……やっぱり戦車道は……」

 

「いいんだみほ。やりたくないなら無理してやるな!昨日華や沙織は戦車道やりたそうにしてたけどみほがそれに合わせる必要はないんだからさ。みほの代わりにお兄ちゃんがやるから気にするな」

 

「お兄ちゃん……ありがとう……」

 

「気にするな、それと……やっぱりいいや」

 

「お、お兄ちゃん?その言い方気になるんだけど…」

 

「昨日帰る前に俺生徒会室行ったろ?その時に去年の大会みたいなことがあったら、助けに行く前に指揮権他の人に渡しておくようにってことを言おうとしただけ」

 

「そう…なんだ」

 

 

戦車道をやらないなら言う必要はない、そう思って言うのをやめたが、気になるみほに結局言うことになった。

 

その後みほは必修選択科目は香道を選択し、教室について沙織と華に

 

 

「ごめん……朝お兄ちゃんとも話したけどやっぱり戦車道やりたくないの……どうしてもやりたくなくて戦車道のない大洗に来たの……」

 

 

と謝りながら説明した。

 

 

「そっか。みほがそう言うなら私たちは何も言わない」

 

「ええ、それと…」

 

「「えっ」」

 

 

りくとみほが驚いた理由…それは沙織と華が戦車道を選んでいたのを消して、みほと同じ香道にしたからだ。

 

「いいのか?2人とも戦車道やりたかったんじゃ……」

 

「みほと一緒のがやりたいの!だからいいんだよ」

 

「沙織さんの言う通りです。みほさんが自分で戦車道をやらないことを決めたように、私たちも自分でみほさんと同じ科目を選択したのです」

 

「2人とも……ありがとう」

 

「2人ともありがとな」

 

 

みほと沙織と華は香道を、りくが戦車道を選択することで必修選択科目の話は終わり……

 

………となるはずだったが昼休み

 

 

『普通Ⅱ科2年A組 西住みほ!至急生徒会室に来るように!』

 

 

生徒会から呼び出しがかかってしまった。みほと付き添いの沙織、華、りくが生徒会室に入ると

 

 

「なんで戦車道選ばないかな〜」

 

 

とみほは言われた。

 

学校が無くなってしまうという事情を知っているりくは会長がこう言う気持ちもわかる。でも妹がこんな風に言われていい気持ちはしていない。

 

 

「会長昨日言ったじゃないですか!俺はやるとしてもみほがやるか別だって!」

 

「そうだね〜でもやっぱりやってもらわないと困るんだよ」

 

「みほは戦車道をやりません!どの科目を選択するか自由のはずです!」

 

「そうですよ!みほさんがやりたくないことを無理にやらせる必要がどこにあるのですか!」

 

「沙織…華…」

 

「そんなことになったらこの学校にいられなくなるよ?」

 

「「「なっ!?」」」

「っ!?」

 

 

会長の脅迫にも近い発言に4人は驚いている。怒りすらある人もいるくらいだ。

 

 

「脅すつもりですか!」

 

「そんなの横暴です!」

 

「昨日脅したりしないでくださいって言ったじゃないですか!」

 

「約束したわけじゃないからね〜」

 

(「コイツ…」)

 

「はぁ…こんな人信じた俺がバカだったな」

 

「そうだよ!りくは見る目ないね!」

 

「何と言われようとみほさんは戦車道をやりません!」

 

「あの!」

 

 

りく、華、沙織の3人が生徒会の3人に文句を言っていると、突然みほが声を出した。

 

みんなの視線がみほに集まると

 

 

「私…戦車道やります!」

 

 

と答えた。当然

 

 

「「「えぇっ!?」」」

 

 

さっきまで生徒会に文句を言ってた3人は驚いている。

 

 

「いいのかみほ!?お前朝あんなに震えてたのに!?」

 

「正直まだ怖いよ…でも私は1人じゃない、お兄ちゃんがいるし沙織さんや華さんも必死になって私のために言ってくれてる。それなら私もやれるかなって……」

 

「みほ……そっか、みほがそこまで言うなら俺は反対しない。一緒に頑張ろう。沙織と華はどうする?みほのために1回選択科目変更してくれて悪いとは思ってるけど……」

 

「私もやる!華も一緒にやろ!」

 

「えぇ、私もやります」

 

「そっか〜よかったよかった!」

 

 

少し揉めたりしたが、西住兄妹と沙織と華は4人揃って戦車道を取ることになった。

 

生徒会は安心とまでは言わないが、少しホッとしてる様子である。

 

あとは戦車が戦車道希望者の人数分あるかどうかだ。

 

 




次回はアニメ1話の終わり〜2話に入っていくつもりです。

登場人物の口調はちゃんと把握できてない部分もあって違和感があるかもしれません。感想欄などで指摘してもらえたら助かります。オリキャラはこのままの口調です。


次回もお楽しみに。


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2、戦車を探せ!

お久しぶりですカットです。

待ってくれていた人いるかわかりませんが、待っていてくれた方はお待たせしました。やっとできたので投稿します。

誤字等あるかもしれませんがどうぞ!


 

 

「集まったのは20人か…思ったより集まりませんでしたね」

 

「私たち3人を入れて23人、男子の参加者は2人でそのうち1人はサポート役希望です」

 

「まっ、これでやるしかないか」

 

 

いよいよ戦車道の授業初日、戦車道を選択した生徒はグラウンドに集まっている。

 

そこには生徒会や男子を入れて23人集まっていた。

 

 

「今日から大洗学園で戦車道を始める!まず最初に数少ない男子希望者の紹介だ。まずは佐藤から前に出てこい」

 

「はい」

 

 

生徒会広報の河島桃が仕切る中、佐藤と呼ばれた男子生徒が前に出た。それを見てある2人がとても驚いていた。

 

 

「普通Ⅱ科2年C組の佐藤翔太です。戦車に乗る方ではなく、みんなのサポートを希望しています。よろしくお願いします」

 

「「翔太(君)!?」」

 

「ん?えっ!?りく!?それにみっちゃん!?」

 

 

とある2人とはりくとみほ。実はこの2人は初対面じゃなかったのだ。

 

 

「なんでここにいるんだ!?」

 

「いやそれこっちのセリフだから!?2人とも黒森峰だったろ!?」

 

「はいは〜い、悪いんだけどそういうの後にしてね〜」

 

「会長の言う通りだ、それじゃあ次は西住兄!」

 

 

せっかくの再会だったが会長と広報の人によってりくの自己紹介へと進行していった。

 

 

「最近転校してきた西住りくです。サポートではなく戦車に乗っていくことを希望しています。よろしくお願いします」

 

「それじゃあまず今ある戦車見せるね!」

 

 

男子2人の自己紹介が終わると会長が今ある戦車を見せると言ってシャッターを開けた。

 

するとそこにはIV号戦車が1台あるだけだった。しかもかなり汚れている状態で……

 

ほとんどが戦車道初心者、そのためIV号を見てこの戦車で大丈夫か不安になったが…

 

「これなら掃除すれば大丈夫そうだな」

 

「そうだね」

 

 

戦車道をやっていた西住兄妹は近付いて触ってみて大丈夫だと判断。それを聞いたみんなが安心そうにした。

 

 

「さて!西住兄妹から大丈夫だと言ってもらえたしかーしま〜」

 

「はっ!それでは今から戦車を捜索する!」

 

『えっ!?』

 

 

突然広報の河島が戦車を捜索すると言い出した。突然のこと過ぎてみんな声を揃えてしまっている。

 

 

「まぁ冷静に考えてIV号だけじゃみんな乗れないもんな。それで手がかりはありますよね?」

 

「ないよ?」

 

「は?」

 

「だから手がかりはないよ!」

 

「(まっ、廃校を防ぐために動いてただろうし仕方ないか)」

 

 

手がかりはないという会長の言葉に学校の事情に気付いていたりくは仕方ないと思う、でも他のみんなはそうでもない。

 

しかし文句を言っても仕方ないと思ったのか、何人かのグループに分かれてそれぞれ探しに行った。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

戦車を探し始めた戦車道を履修した生徒達、りく、みほ、翔太、華、沙織は5人で探しに移動し始めたが、その後ろに1人の生徒がついてきていた。

 

気付いていたりくとみほは同時に振り向いた。

 

 

「あなたも私たちと一緒に探さない?」

 

「いいんですか!」

 

「俺たちは構わないぞ?というかつけられてるみたいについて来られてもな…」

 

「そ、それは失礼しました!」

 

「ん?秋山さん?」

 

「佐藤君?」

 

 

みほやりくが誘った相手を翔太は知っていた。なぜなら…

 

 

「翔太知ってるのか?」

 

「そりゃあ同じクラスだからな」

 

「あの……私、普通Ⅱ科2年C組の秋山優花里と申します!」

 

 

翔太と今名乗った秋山優花里は同じクラスだからだ。

 

 

「そうだったのか」

 

「あ、私は武部沙織!」

 

「私は五十鈴華と申します」

 

「私は……」

 

「存じ上げています!西住みほ殿とお兄さんの西住りく殿ですよね?」

 

「そ、そうだけど…」

 

「どうして知ってるんだ?」

 

 

沙織と華が自分の名前を名乗りその後にみほとりくが名乗ろうとしたら……

 

なんと秋山優花里は2人のことを知っていた。そのため名前を言われる前に秋山さんの方から名前を言ってしまった。

 

 

「それはまぁ…私戦車道好きですからそれで……」

 

「「な、なるほど」」

 

 

それだけで納得してしまった2人であった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

りく視点

 

「とりあえず戦車探そっか?」

 

「そうですね、そのために歩いてるわけですし」

 

「でも手がかりなしじゃ難しいと思う…」

 

沙織の言葉で再び戦車探しを再開したが、みほの言う通り難しい、当てもなく探すのはな…

 

「たしかに手がかりはありませんが悩んでいても仕方ありません!」

 

「おっ、秋山さんいいこと言うね〜」

 

「では行きましょう!パンツァーフォー!」

 

な、なんか急に秋山さんが仕切り出したぞ!?

 

まぁでも秋山さんの言う通りだし探しに行くか……って思ったら

 

「パンツのアホ!?」

 

と沙織が言って秋山さんがガックシと肩を落とした、まぁ知らない人からしたらそんな勘違いもするか。

 

この後みほが苦笑いしながら"戦車前進って意味だよ"と教えてた。

 

「この道どっちに進む?」

 

少し進むと左右に分かれてる道を発見、どっちに行くか俺がみんなに尋ねると

 

「「右(です)!!」」

 

と翔太と華が同時に答えたけど……

 

なんで?

 

「五十鈴さんももしかして匂いで?」

 

「えぇ、こちらから微かに鉄と油の匂いがします」

 

「「「「…………」」」」

 

え?なにこの2人の嗅覚……

 

「と、とりあえず右行くか?」

 

「そ、そうだね、翔太君と五十鈴さんを信じよう」

 

「そうだね…ほんとにあったらすごいけど…」

 

「了解であります!」

 

2人に従って右へ進む……すると

 

『ほんとにあった!?』

 

「だろ!」

 

「やはりありましたか」

 

戦車が落ちていた。これは……38tか。これだと4人は乗れるか。

 

最初にあったIV号は最大5人乗り…となるとあと13人分乗れる戦車を探さないとだな。まぁ他の人も見つけるだろ。

 

「五十鈴さん凄い!あと翔太君も!五十鈴さんは華道やってるから?」

 

「そうかもしれません。それとみほさん、私のことは華でいいですよ」

 

「私も私も!沙織でいいからね!」

 

あれ?この2人前にも言わなかったっけ?俺の気のせい?

 

「私も優花里で構いません!りく殿もです!」

 

なんか秋山さんまで乗ってきた!?それじゃあ遠慮なく優花里と呼ばせさせてもらうか。

 

「じゃあ俺も翔太でいいぞ!」

 

「もう呼んでるじゃん!?それじゃあ華さん、沙織さん、優花里さんって呼ばせてもらうね!」

 

「「「うん((はい))!!!」」」

 

「あ、ついでに翔太君もね」

 

「俺はついでか!?」

 

「ついでだな」

 

「りく!?」

 

「ついでだよ」

 

「みっちゃんまで!?」

 

『アハハハハハ』

 

みんなで笑いあった後戦車が見つかったことを河島先輩に報告して俺たちは戦車倉庫の前に戻った。

 

どうやら運搬は自動車部がやってくれるみたいだ………そんな部あるのか!?

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

俺たち以外にも各チーム1つずつ戦車を発見して集まっている。

 

「集まった戦車はIV号、38t、Ⅲ突、M3、八九式か」

 

「ま、とりあえず全員乗れそうですね」

 

河島先輩が集まった戦車を見て、翔太が全員乗れそうだと言った。たしかに全員乗れる。あとはどの戦車に乗るかだな。

 

「会長、誰がどの戦車に乗るんですか?」

 

「ん〜見つけた戦車でいいんじゃない?」

 

俺が聞くと会長は見つけた戦車でいいと言う。となると俺たちはIV号に乗った方がいいな。

 

「それじゃあ会長たちは俺たちが見つけた38tに乗ってください。りくたちは5人なのでIV号に乗ってもらいましょう」

 

「そうだね〜西住ちゃんたちもそれでいい?」

 

「わかりました」

 

乗る戦車は決定だな。さてと、それじゃあ掃除しないと。

 

「それじゃあみんな!戦車の洗車にかかれ!」

 

『……………』

 

……………河島先輩、みんな黙っちゃったよ。狙って言ったんじゃないよな?

 

「かぁしま上手いね〜座布団1枚」

 

「そんなつもりで言ったんじゃありません!」

 

さっ、生徒会のコントはほっといて洗車始めっか。

 

みんなも同じ気持ちなのか一斉に洗車を始めたけど……

 

「翔太どうした?」

 

「………」

 

翔太だけある1点を見つめて動かない。その視線の方を向けて見ると……

 

「会長も手伝ってください!」

 

小山先輩が水着で洗っていた。なるほど、それを見ていた………って

 

「小山先輩ばっか見てないでお前も手伝え!」

 

バシッ

 

「いてっ!?なにすんだよ!?」

 

「お前こそ何してるんだ?」

 

「そりゃあもちろん水着姿の小山先輩を見て………あっ」

 

あっさり白状しやがった…てか「あっ」ってなんだよ……

 

「よーし着いてこい翔太」

 

「いててて、どこ行くんだ……ってIV号?」

 

こいつには1番大変な場所をやらせるのがいいよな〜

 

「お兄ちゃん?なんで翔太君を無理矢理連れてきてるの?」

 

「IV号の戦車内は翔太がやってくれるってさ」

 

「ほんとに!?お兄ちゃんもやるの?」

 

「俺は生徒会の方手伝ってくるよ。会長が全然手伝ってないみたいだし大変そうだからな、それにこっち5人いれば大丈夫だろ?」

 

「う、うん…でも翔太君1人に任せるのは…」

 

「たしかに匂いすごいし男子がやってくれるの嬉しいけど……翔太君1人にやらせるのはどうなのかな」

 

おぉ〜みほはわかってたけど沙織も優しいな。やらせるほんとの理由言ったらどうなるかな。

 

「そうですよりく、佐藤君1人にやらせるのはどうかと…」

 

「みなさんの言う通りであります!」

 

華と優花里も反対か〜

 

「いや〜翔太がさ、1人だけ水着でやってる小山先輩のことじっと見つめて動かなかったからさ〜」

 

「「「「…………1人で頑張ってください」」」」

 

「は、はい………」

 

手のひら返し早いな〜まぁ庇うつもりはない、ドンマイ翔太。

 

「そんじゃこっちは頼んだぞ」

 

「任せてお兄ちゃん!」

 

IV号の方はみほたちに任せるとして………会長にも手伝わせるか。

 

「会長も手伝ってくださいよ」

 

「また今度ね〜」

 

「そんなこと言わずに会長もちゃんとやりましょうね、俺も手伝いますから」

 

「りくりく!?」

 

りくりく?会長……それなんすか?まぁ呼び方はいいか。

 

「手伝ってくれるのは嬉しいけどりく君いいの?妹の西住さんたち手伝わなくて……」

 

「そうだ!こっちは私たちだけで充分だ!」

 

「戦車の中今入りたくないですよね?匂いすごいですし、ですから俺が中やるんで会長入れて3人で外の方お願いします」

 

「えっ、私も?」

 

おいこら会長……なに当たり前のこと言ってるんだよ。

 

「当然ですよ。まぁ会長が戦車道やらないなら別ですけどね、それで学校が無くなっても俺は知りません」

 

「いや〜りくりく随分意地悪な言い方するね〜まぁいいや」

 

「いいやじゃなくてやってください!じゃあ俺は中入るんで後お願いしまーす」

 

「はいよ〜」

 

「りく君凄い…私が何を言ってもダメだったのに…」

 

「疲れて倒れられても困りますから。それじゃあまた後で〜」

 

なんとか会長を手伝わせることに成功して、俺も翔太みたく戦車内の洗車を開始した。

 

中で掃除してても外の声聞こえてくるけど……楽しそうにやってるな〜つーか遊んでるような声も聞こえる。ちゃんとやってるんだろうな?

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「みんなご苦労!明日から訓練に入る!」

 

(「小山先輩大丈夫ですか?」)

 

(「大丈夫、ごめんね?肩借りちゃって」)

 

(「いえいえ、気にしないでください」)

 

洗車が終わり最後に集合してるが、俺は小山先輩に肩を貸している。ふらふらしてて危なそうだったからな。

 

念のため言っておくが、決して翔太みたいな下心があるわけじゃない。

 

それより明日から訓練か……

 

「明日だれか講師とか来るんですか?初心者ばかりですしいた方がいいと思うんですけど」

 

「その点は心配しなくていいよりくりく、ちゃんと呼んでるから!」

 

「さすが会長…その辺はちゃんとやってるんですね」

 

洗車はなかなかしなかったみたいだけどこう言うことは早いんだな。

 

「その講師の人イケメンですか?」

 

「さ、沙織?」

 

「重要でしょ!?」

 

そ、そうか?

 

どっちかというとちゃんと指導できる人が必要じゃないか?蝶野さんみたいないい加減な指導の仕方の人より……

 

まぁ蝶野さんって言っても多分みんなわかんないだろうけど。

 

「楽しみにしててね〜」

 

「えへへ」

 

沙織……嬉しそうにしてるけどイケメンって決まったわけじゃないぞ?期待外れならガッカリするパターンだろこれ。

 

「それじゃあ今日は解散!」

 

『お疲れ様でした!』

 

河島先輩の号令で今日の活動は終わった。明日から本格的に始まる。正直楽しみではある。

 

この日の夜、沙織、華、優花里、ついでに翔太の4人が俺とみほの部屋に来ることになって一緒に夜ごはんを食べることとなった。

 

料理をしたのは基本的に沙織と俺だったけど……

 

 

 

俺の作った料理褒めてくれたけど…正直沙織の作ってくれた料理の方が美味かったな。




今回はここで終わりです。誤字やクラスの間違えがあったら指摘お願いします。
呼び方に関してはアニメと変えるかもしれません。

次回いつになるかわかりませんがお楽しみに。


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3、初の模擬戦

今回はちょっと難しかった。


ドンドンッ!

 

 

「みほ起きろー!いつまで寝てるんだー!遅刻すんぞー!」

 

今日は本格的に戦車道の訓練開始の日……なんだがみほが起きない。昨日の夜一緒に戦車を探した翔太たちを部屋に呼んで楽しんでたせいかもしれない……というか絶対そうだな。

 

 

ガチャ

 

 

「入るぞ〜まだ寝てるのか、起きろみほ!」

 

「あれ?お兄ちゃん?…………わっ!?もうこんな時間!?」

 

だから何回も起こしてたんじゃないか……

 

…………って俺がいるのに服脱ぐなよ!?

 

「はっ!?み、見た?」

 

「何をか知らんが早く準備しろ、玄関で待ってるから」

 

「……見たんだねお兄ちゃん」

 

振り向いたらやばそうだからさっさと出ておくか。

 

結局玄関で思い切り腹パンくらったが……

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「うぅ……まだ痛え」

 

「お兄ちゃんが着替え見るから」

 

「みほがいきなり脱ぎ出したんだろうが………ん?」

 

「そうだけど……ってどうした……の?ってあの人フラフラしてる」

 

「危ないな」

 

みほと口論?しながら急いで歩いていると俺たちの前にフラフラしながら歩いてる?人がいた。大洗の制服着てるから同じ学校ってことはわかるが……とりあえず危ないし声かけるか

 

「おーい、大丈夫か?」

 

「辛い……」

 

「「えっ?」」

 

「生きるのが辛い……」

 

「「えぇっ!?」」

 

お、おい、コイツ大丈夫か?

 

「だが私は行く!うぅ……」

 

「どうしようお兄ちゃん…」

 

「……心配だし一緒に行こうか」

 

「そうだね……」

 

誰だかわからないけど1人で行かせるのは危ないし肩を貸して一緒に行くことにした。

 

ただでさえ今日は時間ギリギリに家を出た。その上歩くペースが遅くなった。

 

だから当然…………

 

「あなた達遅刻よ!!特に冷泉さんは連続245日の遅刻よ!!」

 

えぇ…………

 

245日連続って凄いな…………

 

「えっと……西住みほさんとりく君、今度から途中で冷泉さんを見かけても先に登校するように!!」

 

「いつもこんな感じなんですか?」

 

「そうよ!」

 

逆に凄いなそれ……

 

「そど子……」

 

「その名前で呼ばないで!!とにかく早く教室に行きなさい!」

 

そど子って名前なのか?知らないからやりとりを見てることしかできないな。まぁ普段は遅刻しないし関わることないだろ。

 

「すまなかった、今度借りは返す」

 

風紀委員から離れ教室に向かう途中で冷泉さんと呼ばれてた人が謝ってきた。

 

「いつものことなのか?」

 

「まぁな」

 

まぁなって……

 

「私のことは気にするな、今日はありがとな。それじゃあ」

 

「行っちゃった……私たちも急ごっ!」

 

「…………そうだな」

 

俺たちも時間ギリギリ……というか過ぎてるし急いで授業場所に向かった。つーか戦車道じゃん!?

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「2人とも遅いから来ないかと思ったよ〜」

 

「みっちゃんはともかくりくまで遅れるとはな〜」

 

戦車倉庫前に着くとすぐに沙織と翔太に言われたが……みほはともかくってどういうことだ?

 

「ねぇ翔太くん?私はともかくってどういうことか教えてくれるかな?」

 

「っ!?え、えっと……」

 

みほを怒らせるとヤバいからな〜朝俺が悪いわけじゃないのに腹パンくらったくらいだし……

 

ニコッとみほが笑うと……

 

「ぐはっ!?」

 

朝俺にやったような腹パンを翔太にもくらわせた……翔太ドンマイ

 

「それより教官ってどんな人なのかな?」

 

「これをそれよりで済ませるとは……武部殿やりますね」

 

「さぁな〜とある人みたいな適当な指導する人じゃなきゃいいけど…」

 

「適当な人って……「教官が来たぞ!」」

 

沙織が何かを言おうとした時きにちょうど指導してくれる教官が到着したみたいだ。

 

 

ガシャン

 

 

「学園長の車が!?」

 

戦車にパラシュートをつけて降下してきたと思ったら……

 

車1台潰してしまった。しかもそれが学園長の車みたいだ。

 

というかまさか乗ってる人って……

 

「みんな注目!今日来てくださった方は自衛官の蝶野亜美一尉だ!これからも何回か来てもらうつもりだ!失礼の無いように!」

 

『はい!』

 

しっかりしてるな〜これでみほを脅して戦車道をやらせるなんてことなかったらマジで尊敬できたんだろうな〜今のところはだが

 

「みんな初めまして!蝶野亜美です!初めましてじゃない人もいるわね」

 

俺のことか、まぁ男子だし見つけるの楽だよな。

 

「りく君と……あら?あなたも西住流の」

 

「は、はい……」

 

「家元にはよくお世話になっているのよ、お姉さんは元気?」

 

家のことにあまり触れられたくないみほは表情が曇っていった。俺もできれば触れられたくないんだよな。

 

西住流としているわけじゃないんだし……

 

「まっ、姉ちゃんのことだし元気にしてるんじゃないですか?」

 

「教官!西住流ってなんですか?」

 

「西住流って言うのはね〜……」

 

1年生の質問に蝶野さんは答えているけどみほはさっきよりも暗くなってきている。

 

それに気付いた沙織が

 

「教官!やっぱり教官はモテるんですか!?」

 

と聞いてくれた。ナイスだ沙織

 

「う〜ん…モテるかどうかはわからないけど…狙った的はりく君以外外したことないわ!」

 

「おぉ〜」

 

「……って俺狙われてたの!?」

 

「冗談よ!」

 

「はぁ……」

 

思わずため息をついたけど、教官ってこんな人だったな。

 

「それで教官!今日はどのような訓練をするのですか?」

 

「そうね〜じゃあ早速模擬戦をやってもらいましょうか!」

 

『えぇぇえ!?』

 

ちょっ!?嘘だろっ!?

 

「蝶野さん真面目に言ってますか!?」

 

「大真面目よ!習うより慣れろよ!大丈夫、戦車なんてバーッと動かしてドーンッと撃てばいいんだから!」

 

「あ、アバウトすぎ……」

 

「自由だね」

 

流石の会長も苦笑い、だけどみんな何を言っても無駄そうだと判断して各自戦車に乗り込んだ。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

『各自開始場所に着いたみたいね』

 

無線で蝶野さんの声が聞こえてきた。俺たち以外も場所に着いたみたいだな。

 

しかし大変だった。戦車倉庫では前でなく後ろに進んでもう少しで壁にぶつかるところだったし、途中車長が進む方向を肩を蹴って教えると言ったらハンドルにぶつかるくらいの勢いで蹴ったし……

 

1番びっくりしたのは戦車のエンジンを入れた時に優花里が

 

「ヒャッホォォォウ!!最高だぜぇぇぇえ!!」

 

「「パンツァー……ハイ」」

 

「「兄妹息ピッタリ……」」

 

とテンションがめっちゃ上がったことだな。みほと同じこと言ったくらいだし。

 

まぁ色々あったが開始地点に到着できた。

 

『戦車道は礼に始まり礼に終わる、一同!礼!』

 

『よろしくお願いします!』

 

模擬戦開始、さぁて、みんなどう動くかな?

 

「ねぇ!まず最初に生徒会チーム潰そうよ!」

 

『え?』

 

「なんでだ?」

 

沙織の突然の発言がよくわからない、何故最初に倒そうとするんだ?

 

「だって教官のことで騙されたもん!」

 

「そ、それは沙織が勝手に勘違いしたからじゃ……」

 

「車長がどうするか決めていいんでしょ?だったら生徒会チームから潰すよ!」

 

「「…………」」

 

こういう性格のやつに車長は向かないな。今回はくじ引きで決めたけど

 

「じゃあ車長の言う通り生徒会チームから狙うか」

 

「りく!ありがと!」

 

「でも他校との試合で自分勝手な意見は怒るからな?」

 

「うっ……気をつけます」

 

「それじゃあ華、運転頼む」

 

「わかりました」

 

初めての模擬戦だし今回はいっかって感じで沙織の言う通り生徒会チームを狙うことにした。

 

しかし

 

 

ドガァーン!!

 

 

『っ!?』

 

 

砲撃されたらしく、乗っているIV号の近くに着弾した。

 

すぐに周りを見てみると八九式と三突がすぐ近くに来ていることから、この2両に攻撃されたことに気付けた。

 

…………これ砲手だけでも経験者だったらやられてたな。

 

「沙織指示!車長はお前なんだからこういう時は指示出せ!」

 

「っ!?ごめん、まずは前進!一度距離を取って!」

 

「わかりました」

 

一度距離を取るため前進、沙織の指示で動き出しこの場でやられることはなくなった。でも2両に追われてるから危険な状況でもある。相手が経験者ならその分作戦も読みやすいけど、初心者だと何やるか予想できないから逆に読みにくい。

 

どうするか……

 

「っ!?危ない!?」

 

「え!?」

 

この状況をどうするか考えていたら、突然みほから危ないという声が聞こえた。今の慌てようだと近くを砲弾が通過したとかではないだろうが……

 

 

バン!

 

 

っ!?今度はなんだ!?砲弾が当たった時とは違う音がしたが……

 

「大丈夫ですか?……あなた朝の」

 

ん?朝の?

 

「あ、朝会った……たしか冷泉さん……だったよな?」

 

「あれ?麻子じゃん!」

 

「「知り合い?」」

 

「うん、私の幼馴染の麻子だよ」

 

朝会った女子はどうやら沙織の幼馴染みたいだ………ってそんなこと言ってる場合じゃないな

 

「とりあえず今外は危ないから中に入ってくれ」

 

「ん、わかった…」

 

とりあえず冷泉さんを中に入れたはいいが……やっぱり5人乗り戦車に6人はキツイな……

 

「やっぱり6人乗ると狭いね、ごめんね沙織さん、くっついちゃって」

 

「いいのいいの、麻子があんなところで寝てたのが悪いんだから」

 

というか今授業中だよな?まさかサボり?

 

「そのまさかだ」

 

「思考読むなよ!?つーかサボるなよ!?」

 

「気にするな」

 

「…………」

 

これはアレだな、今相手にする必要ないパターンだなこれ。

 

 

ドカーン!!

 

 

「っ!?近くに着弾したな、橋があるけどどうする?」

 

「渡ろう!私が前に出て誘導する、華さんは誘導に従って運転して!」

 

「大丈夫なのみほ!?」

 

「大丈夫、次打ってくるまでに時間があるはずだからその間に進んでおこう」

 

「みほ気を付けろよ!華運転頼むぞ」

 

「わかりました」

 

念のためみほにロープをつけてもらって橋に降りてもらう。

 

みほの誘導に従って華が運転するが、戦車の幅がギリギリなのか、橋のワイヤー部分に当たり切れてしまった。それで橋が揺れたが戦車もみほもなんとか落ちずに済んだ。

 

…………が

 

 

ドカーン!!

 

 

「華!?」

 

「みほ!!華が失神した!!戦車に戻れ!!」

 

「っ!?わかった!!」

 

操縦手である華が、八九式か三突かどちらかわからないが砲撃を受け失神してしまった。

 

「 華は休ませておこう。みほ装填交代、俺が運転する」

 

「わかっ……「その必要はない」えっ?」

 

「えっと……冷泉さん?」

 

俺の代わりにみほに装填してもらおうとしたが、途中で乗り込んだ冷泉さんがその必要はないと言う。

 

どういうこ…………え?普通に動かしてる!?

 

「冷泉さんってもしかして戦車道の経験者?」

 

「運転凄い上手」

 

「今マニュアル見て覚えた」

 

「「…………えぇー!?」」

 

「流石学年主席……」

 

学年主席なのにサボってるのか……まぁいいや、とにかく運転は任せよう。

 

「じゃあ冷泉さん操縦よろしく!みほは指示出してくれ!装填は俺に任せろ!優花里砲撃は任せた!沙織は華のこと頼む!」

 

『了解!』

 

アレ?なんか俺車長みたく指示してねぇか?まぁいっか。

 

「まずは一度下がるぞ、ここだと危険だ」

 

「了解です、お兄ちゃん装填はできてるよね?」

 

「誰に言ってるんだ?できてるし次の装填の準備も完璧だ!」

 

「だと思ったよ、それじゃあ優花里さん、車体が安定したら砲塔を回転させてまずは三突を狙ってください!」

 

「了解であります!……ってりく殿!?左右それぞれ砲弾もってるでありますか!?」

 

「?そうだけど?」

 

「「「…………」」」

 

「クスッ」

 

何かおかしいか?俺が左右1つずつ砲弾持ってるって言っただけでなんでみほ以外黙ったんだ?

 

というかみほは笑ってるし……

 

「ねぇゆかりん……砲弾って男子なら片手で持てるものなの?」

 

「いえ……男子でも難しいはずです……というかゆかりん?」

 

「あ、ごめん…」

 

「いえ、驚いただけなので問題ありません」

 

「関係ない話してる場合じゃないぞ〜」

 

「「そうだった!」」

 

いやいや、そうだったじゃないって……まぁいいや。

 

「それじゃあ冷泉さん、後退してください」

 

「わかった」

 

不安定だった場所から後退し、安定している場所まで下がることに成功。それにしても冷泉さんほんと操縦上手いな。

 

…………戦車道やってくれないかな?

 

そう考えていると三突と八九式から砲撃が飛んできた、でもIV号には当たらなかった。正直当てろよと言いたいが初心者だ、これから特訓あるのみだな。

 

「みほ!」

 

「うん!優花里さん砲塔を回転させて三突に向けてください!」

 

「はい!」

 

三突と八九式が打ってきた、次の発射までに時間があるからそこで決める!火力の高い八九式を先に狙うのはナイス判断だ。

 

「砲塔がこっちに向いてるぜよ!?」

 

三突の車内では突如慌て始めたがそんなこと御構いなしに

 

「撃て!」

 

「はい!」

 

 

ダンッ!!ドカーン!!

 

 

みほが発射の合図を出し優花里が発射。そして見事に命中した。

 

初めてのはずなのにいきなり命中させるとはな、冷泉さんにしろ優花里にしろやるな。

 

ついでに、砲撃する少し前に華が起きていたらしく、今の砲撃に感動したみたいだ。

 

『Cチーム三突、走行不能!!』

 

共通無線から蝶野教官の報告により近くにいたBチーム八九式の他、DチームM3リー、Eチーム38tも状況を知ることとなった。

 

「装填完了!優花里!そのまま八九式に照準合わせろ!みほ!」

 

「了解であります!」

 

「うん!………よし、撃て!」

 

みほの指示で再び優花里が発射すると見事に命中した。

2連続で当てるとは、やるな。

 

 

『Bチーム八九式、走行不能!!』

 

 

再び無線が入り、今度はBチームである八九式が走行不能となったことが知らされた。

 

「まともにスパイクくらったー……」

 

車内ではバレーボールに例えて攻撃をくらったことを言っていた。さすがバレー部……

 

そして教官は翔太と今の出来事について話している。

 

「やるわね、砲手は誰がやっているのかしら?」

 

「さっきみっちゃんがキューポラから顔を出してたので、少なくともみっちゃんではないでしょう。りくの可能性が高いんじゃないですか?」

 

「いえ、りく君は装填をやってるわ。あの装填速度はりく君の装填速度よ。まぁ本気の装填速度よりは遅いけどね」

 

この時翔太は、もし装填がりく以外の人だったらこの教官は驚くんだろうなと思った。

 

 

「優花里やるじゃん!」

 

「そ、それほどでも」

 

「そんなことないよ!ゆかりん初めてで2連続当てるなんて凄いよ!」

 

「私もお兄ちゃんや沙織さんと同感かな」

 

「あ、ありがとうございます。なんか照れちゃいますね」

 

あ、これ言うタイミング間違えたな。まだ2両残ってるんだし気を引き締め直さないとな。

 

「今言ったのは本心だけど照れるのは終わってからな」

 

「はっ!?そうでした!」

 

「ふっふっふ、ここがお前らの死に場所だー!」

 

「……とりあえずついて行こ」

 

おっ、ちょうどお客さんが来たみたいだな。ってこれはまずいな。つーか砲塔の回転間に合わないか。まっ、やるだけやってみるか。

 

「急いで砲塔を回転させろ!橋の向こうに38tが来てる!装填は完了させた!」

 

「了解であります!砲塔を回転させます!」

 

急いで回転させてるけど間に合わないか、38tの砲塔がもうこっちの方向いてるよ。完全に向いてるわけじゃないがこっちより先に照準を合わせられるだろうな。

 

「ふっふっふ、くらえ!」

 

「は?」

 

「お、お兄ちゃん……みんな初心者なんだしそんな反応しないであげよ?」

 

いや、みんな初心者なのはわかるけどあまりにも酷すぎるだろ……全然違う方向に撃ってるし。

 

「優花里…お手本見せてやれ」

 

「お手本ですか!?が、頑張ります」

 

「大丈夫、向こうの砲手より上手いから。じゃあみほ」

 

「うん、………撃て!」

 

「はい!」

 

みほの指示で優花里がまた撃つ。するとまたしても命中した。

 

ほんと上手いな。

 

『Eチーム38t、DチームM3リー走行不能!よってAチームIV号の勝利!』

 

「「え?」」

 

なんで?

 

白旗上がってる位置見る限り38tの後ろにいたみたいだけど……あとで原因聞くか。

 

『走行不能となった戦車はこちらで回収班を向かわせます。みなさんは戦車を置いて戻って来てください。Aチームは乗ってきても置いてきても構いません』

 

「とりあえず戻ろう。冷泉さん、戦車倉庫前まで頼む」

 

「了解だ」

 

俺たちAチームは戦車で、それ以外のチームは歩いて戻ることになった。ちなみに、IV号で6人は狭いから俺は戦車の上に座ることにした。

 

みほには羨ましがられたけどな。

 

 

俺たちが着いてから少し時間が経つと、他のチームの人たちも全員戻ってきた。

 




今回はここで終わらせます。戦車の砲撃音とか着弾音書くの難しいですね。最後の方もう省略しちゃいました……

次回投稿いつになるかわかりませんがお楽しみに


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4、模擬戦後

「みんなお疲れ様!初めてでこれだけの動きができれば上出来よ!グッジョブよ!」

 

模擬戦が終わり、戦車倉庫前に集まった俺を含む戦車道受講者を蝶野さんは褒めている。

 

動きに関してはほんとみんなよく動いてたと思う。なんせこの教官は何も教えなかったからな。

 

「特にAチーム!ほんとによかったわ!まぁりく君は本気の装填速度じゃなかったみたいだけどね」

 

「あ、バレました?」

 

やっぱ俺のこと知ってる人から見たらバレちまうか〜

 

「お兄ちゃんが本気で装填したらもっと早いもんね」

 

「そうなのでありますか!?」

 

「そのうち見せてやるよ、それよりも1つ気になってることあるんですけどいいですか?」

 

「最後のM3リーの走行不能についてかしら?」

 

おぉ、普段適当な感じするのにこういうところはしっかりわかってるんだな。

 

この疑問には車長をやっていた澤さんが答えてくれるみたいだ。

 

「それはその……会長たちが乗ってる戦車が走行不能になった後逃げようとしたんです。でも慌ててたためか泥沼にはまってしまって、そのあと履帯も外れてエンストまで起こして……それで走行不能になりました」

 

「そういうことだったのか、説明ありがとな」

 

「いえ…」

 

う〜ん……やっぱり最初だし逃げて欲しくはなかったけど……初心者だし仕方ないだろうな。これからの訓練次第だな。

 

「それじゃあ今日の訓練はここまで!これからも何回か来るからよろしくね!」

 

「では!蝶野教官に礼!」

 

『ありがとうございました!!』

 

最後蝶野さんにお礼の挨拶をして今日の訓練は終わりとなった。

 

みほは今日同じ戦車に乗ったみんなと温泉に入ってから帰るとのことだったため、俺は1人で帰ることとなった。

 

翔太に今日の訓練の様子を撮ってもらってたからそれを見ることにするか。

 

おっと、その前に……

 

「会長ちょっといいですか?」

 

「なんだいりくりく?」

 

「ちょっと相談あるんですけどその前に1つだけ質問、砲手は誰がやったんですか?」

 

「かぁしまだけどそれが?」

 

河島先輩だったか。

 

「同じ初心者でも三突や八九式の砲手の人と比べて酷すぎだったんですよ、だから練習しっかりさせないとって思っただけです」

 

「ああ〜たしかにそれはね〜それはこれからの練習次第だよ。それより相談したいことって?」

 

「俺の独断でまだ本人と相談してないんですけど……隊長はみほにやってもらった方が良いと思うんです。普段の練習の指示はみほじゃなくてもいいですけど、試合中の指示はやっぱり戦車道をよく知ってる人がいいと思うんですよね」

 

「やっぱりりくりくもそう思う?」

 

「はい、今日途中からみほが指示を出してたんですけど…その方がみんなスムーズに動けてよかったんです。俺はルール上隊長になれないし優花里は好きってだけなので、戦略とかを指示するのは難しいと思うんですよね。場合によっては俺も手伝いますけど隊長はみほにやって欲しいです。それで副隊長を生徒会の誰かにお願いします」

 

「うんうん、やっぱりりくりくがいてくれて助かるよ。私と同じ考えの人がいてくれると嬉しいし。西住ちゃんには明日の訓練が終わったら相談してみるよ」

 

「了解です。俺も一応今日みほに伝えておきますね」

 

「はいよ〜西住ちゃんが隊長になったら私たちの戦車に乗ってね〜」

 

意外とすんなり話がまとまったな。もしかして会長も最初から同じこと思ってたのかな?

 

乗る戦車の考えまで同じだったよ。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「いいぞー」

 

「お邪魔しまーす」

 

みほたちは温泉に入ってから帰るため、先に帰ってきた俺と一緒に翔太も来た。

 

今日の模擬戦の様子を撮ってもらってたからそれを一緒に見るためだ。別に動画データをもらうだけでもよかったが、翔太が部屋に来たいと言ったため一緒に来たのだった。

 

「一応試合開始場所までの移動も撮ってたけど沙織これ大丈夫だった?」

 

映像は沙織の顔が枝に当たるところだった。これは痛そうだったな〜

 

「怪我はないから大丈夫だ、まぁ痛そうだったけどな。でもその後の華の方が痛そうだったけど」

 

「何かあったのか?」

 

「実はさ〜」

 

俺はその後戦車内で起こった出来事を話した。みほが操縦手の肩を蹴って方向を教えてあげると言い、沙織が華の肩を蹴って操縦桿にぶつかるくらいの勢いで蹴ったことを……

 

「アハハハハ!なんだそれ!」

 

「同じ戦車に乗ってたら笑い事じゃないぞ?」

 

あれはマジで痛そうだった。俺もみほも優花里も苦笑いするくらいに……

 

いくら思いっきりって言われてもあそこまでやる必要はなかったな。

 

「試合開始だ、りくたちは最初どのチーム狙ってたんだ?」

 

「会長たちのチームだ。今回車長やってた沙織がそう指示してな。おっ、この動きだとやっぱりBチームとCチームは組んでたな」

 

翔太が撮った動画を見てると、やはりBチームとCチームが手を組んでAチームを狙っていることがよくわかる。そうじゃないなら近くにいるのに撃ち合わないはずがないからな。

 

「これはやっぱり酷すぎ……」

 

「そ、そう言うな、初心者なんだから」

 

試合が進み河島先輩が盛大に砲撃を外した場面までやってきた。いくらなんでも外れすぎだろ。

 

つーかみほと同じこと翔太に言われたな。

 

『AチームIV号の勝利!』

 

「これで終わりか、翔太ありがとな」

 

「これが俺の役目だ、気にすんな」

 

最後まで見終わった。これからやってくことがたくさんだな。まず1番にやるのは操縦訓練に砲撃訓練ってとこか。

 

「ただいま〜」

 

「みっちゃんお帰り〜」

 

「お帰りみほ」

 

ちょうど見終わったところでみほが帰ってきたけど……どっか寄ってきたのかな?

 

「あ、翔太君いたんだね。部屋覗いてないよね?」

 

「見てない見てない。りくと一緒に今日の模擬戦見てただけだ」

 

「やっぱりこれからの訓練次第?」

 

「そうだな、操縦も砲撃も色々やってかないと。他校と練習試合組めたらいいけどまずは基本的な動きは訓練しないとな」

 

「そうだね……あ、そうそう!今日途中で乗った冷泉さんだけど戦車道取ってIV号の操縦手やってくれるって!」

 

「ほんとか!?そりゃあ嬉しいな!」

 

冷泉さんが操縦してくれるのは頼もしい。今日の模擬戦でもやったけど初心者とは思えない動きだったしな。

 

つーかマニュアル見ただけですぐにあんな動かせるのは凄すぎだって……

 

「それで私が車長、華さんが自分で希望して砲手、優花里さんが装填手、それで沙織さんが通信手をやることになったんだけど……」

 

華は希望したのか。まぁたしかに今日も凄い感動してたもんな。それに沙織が通信手なのも向いてる。

 

最後にみほが"けど"って言った理由も想像がつく。

 

「俺の役割のことか?」

 

「うん……今日は緊急だったから6人乗ったけど普段から6人っていうのは流石に……それでお兄ちゃんと相談するってことだったの」

 

「なるほどな、そのことにも関係するけどちょっとみほに相談があるんだけどいいか?」

 

「いいけど…お兄ちゃんが相談って珍しいね」

 

「そうか?あ、まぁ向こうじゃ姉ちゃんと話す方が多かったからな……

 

ってそれは今はいいや。みほ、お前隊長やる気ないか?」

 

「「…………えぇー!?」」

 

俺の相談事は会長と話した隊長の件だ。案の定驚いてるな、おまけで翔太も。

 

「会長とも話したんだよ。それでみほに隊長やってもらえないかなってなった。戦車道が好きって言うなら優花里でもいいけど戦略とかのことも考えるとみほがやった方がいいと思う。それにそうすれば俺が生徒会チームと一緒に乗って酷過ぎた河島先輩をしご……見てやれるしさ」

 

「おいりく……お前今しごけるって言おうとしなかったか?」

 

「まぁ最後のはついでだとして、みほが隊長になるのがいいと思うんだ。嫌なら無理にとは言わないけどさ」

 

「ちょっと考えさせてもらってもいい?そこまで言ってくれるのは嬉しいけどちょっと考えたいの」

 

「もちろんだ!」

 

隊長の件はひとまず保留だな。みほがどんな答えを出すか……楽しみだ。やってくれたら嬉しいけどな。

 

 

翌日の朝

 

 

「おはようお兄ちゃん」

 

「おはようみほ、今日は早いじゃん」

 

朝いつものように朝飯を用意していたらみほが起きてきた。普段はもう少し寝てて準備ができた頃に起きてくるんだけどな。つーか絶対狙って起きてるだろって感じがするけど。

 

「昨日のことだけど……決めたよ私」

 

「隊長の件か、どうするんだ?」

 

「私やる!弱気になっちゃう時もあるかもしれないけど頑張る!」

 

「そっか、じゃあ今日朝一で生徒会室行くか」

 

「うん!」

 

朝飯の準備ができたのでこの話を1度終わりにして食べることにした。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

コンコンコン

 

 

「どうぞー」

 

「「失礼します」」

 

「ん?りくりくに西住ちゃん?こんな朝早くどうしたの?」

 

「2人ともどうした?」

 

生徒会室に来れば会長はいると思ったが、まさか河島先輩までいるとはな。

 

「昨日の模擬戦の後に話した件です」

 

「模擬戦の後?」

 

「あ、河島先輩は知らなかったんですね。あの後会長と話したんですよ。大洗では誰が隊長をやった方がいいかって」

 

「そういうこと〜西住ちゃん連れてきたってことは答え決まったってわけだね?」

 

「はい。隊長の話は昨日の夜お兄ちゃんに聞いて知りましたけど……会長、私隊長やります!」

 

「なんだと!?」

 

みほが隊長をやると言ったら河島先輩が驚いた。どういう意味で驚いたんだ?みほがやらないって言うと思ったのか?それとも自分がやるつもりだったのか?

 

「会長!隊長なら私が!」

 

「かぁしま〜気持ちはわかるけどここは西住ちゃんに任せよ〜」

 

「何故です!!」

 

…………そういうことか。だいたい河島先輩が反論してる理由がわかってきた。

 

ならみほは教室に行かせるか。

 

「みほ、先に教室行っててくれ」

 

「えっ?」

 

「頼む」

 

「わ、わかった。荷物は持っていっておくよ」

 

「サンキュー」

 

「それじゃあ……失礼しますね」

 

みほが出て行き姿が見えなくなってからドアを閉め話を再開させた。

 

「河島先輩…先輩が隊長をやりたがる理由はなんとなくわかりました。優勝しないと廃校になってしまうんですよね?だから戦車道履修はともかく、隊長や副隊長は自分たちがやってって思ってたんですよね?」

 

「そうだ!西住兄妹を入れたのは2人の力が必要だから。だが隊長までやらせて負担を負わせたくない。だから私がと思ったんだ」

 

「河島先輩……気持ちはわかりました。でもだからこそ隊長はみほにしてください!」

 

「なっ!?」

 

やっぱり河島先輩が隊長をやろうとしてた理由は学校のことが絡んでた。まぁ会長は意外と適当そうだし。

 

「まだ数日しか通ってない俺が無くなって欲しくないって思ったんです!だから俺なんかよりもっと無くなって欲しくないって思ってるはずです。だからこそ隊長は戦車道経験者のみほがいいんです!」

 

「……わかった、りくを信じよう」

 

「ありがとうございます!それで……副隊長なんですけど河島先輩、やりませんか?」

 

「っ!?私でいいのか!?」

 

「いいっすよね?会長」

 

「うん、いいぞ〜」

 

軽っ!?さすが会長……

 

「ってことで河島先輩が副隊長よろしくお願いします」

 

「任せろ!」

 

「あ、それとお願いついでにもう一つ。みほは結構弱気になるところがあると思うんです。当然俺もサポートしますけど副隊長、よろしくお願いします!」

 

「っ!?いいだろう!副隊長である私に任せておけ!」

 

これで隊長と副隊長の件は解決だな。

 

今日の戦車道の練習前に隊長はみほ、副隊長は河島先輩とみんなに伝えられた。

 

訓練開始し、操縦訓練では河島先輩が指揮をとった。

 

そして次は砲手の訓練の開始だ。

 




今回はここまで!次回は練習試合まで入ろうと今は思っています。あくまで予定ですので実際はどうなるかどうか……

次回投稿はいつになるか私にもわかりませんが……お楽しみ


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5、練習試合決定

タイトルは思いつかなかったので適当です。


 

「それじゃあ次は砲撃訓練だ!砲手と装填手の人お待たせ!」

 

隊長と副隊長が決まり基本的な動きの練習をしてから砲撃訓練に移る。ここからは俺の指揮の番だな。

 

「それじゃあAチームから順番に3発ずつ撃ってくれ!最初の2発は砲手が自分の判断で撃つように!2発目までに当てられなかった場合は車内で話し合って撃ってくれ!」

 

「もし2発目までに当てられたらどうすればよいのですか?」

 

「当てる気満々だな華、その場合は操縦手の人に頼んで距離を変えてくれ。2発連続で当てた場合だけ3発目で外した場合4発目ありとする!あと距離の計算の仕方は話し合っていいぞ!」

 

『はい!』

 

さっ、みんな3発目までに当てられるかな?

 

「それじゃあ準備できたら始めてくれ!」

 

俺の合図とともにAチームが発射した……って準備できてたんかい!?

 

つーかいきなり当てた!?真ん中より少しズレてたがいきなり命中させるのは凄いな。

 

2発目は修正し真ん中に命中、3発目は少し離れた場所で撃ち命中させた。

 

「AチームOK!続いてBチーム!」

 

AチームのあとB〜Eチーム終了。Aチームと違って1発目で当てたチームはいなかったが2発目はだいぶ的に近づき、3発目には的に命中させた。

 

ある1チームを除いて……

 

「Dチーム以外は各車好きなように続けてくれ!そっちの指揮はみほ任せた!」

 

「わかった!お兄ちゃんたちは?」

 

「俺たちも一緒にやれるとでも?」

 

「ご、ごめんなさい」

 

そう、ある1チームとは俺が乗ってるDチームだ。河島先輩のノーコンぶりは凄い。3発目角度調整のための指示をしても全然違うところに飛んでいったくらいだし……

 

とりあえず他は自由にやらせておこう。

 

「さっ、徹底的にやりましょうか?」

 

「ひぃっ!?」

 

「さぁ始めましょうか?」

 

「た、助けて柚子ちゃぁぁん……」

 

「り、りく君……あ、あんまりイジメないであげてね?」

 

いじめる?なんのこと?というかみほを脅した人たちに言われたくないな。

 

「とりあえず……当たらない原因は自分でなんだと思ってますか?俺にはまだ原因がわからないから自分で思ってることを言ってください」

 

「そ、そうだな……やはり照準器が壊れてるとしか」

 

「本気で言ってます?」

 

「も、もちろん」

 

…………ほんとにそうなら困るけどまずは俺が撃ってみるか。

 

「1度俺が撃つのでそこ代わってください」

 

「わ、わかった」

 

照準器を合わせて撃つと……

 

「「「…………」」」

 

普通に的の真ん中に当たった。何が壊れてるんだろうな?

 

「河島先輩……言いたいことがあればどうぞ」

 

「え、えっと……」

 

「さぁ?どうぞ?」

 

「わ、わかれば苦労しない!」

 

「今はいいんですよ、わからないならわからないで、一緒に原因見つけていきましょう。ただ正直に行ってくださいね」

 

「わ、わかった」

 

全く……わからないならわからないって言ってくれないと困る。

 

「それじゃあこの状態で撃ってください」

 

「このままか?」

 

「このままです」

 

河島先輩が聞いた理由は俺が的に当てた時のまんまだからだろう。普通ならこれで当たるが……

 

「発射!」

 

「外した!?」

 

俺の合図で撃ち見事的に命中…………とはならなかった。原因は少しはわかったけど。

 

「河島先輩力みすぎです。今のでわかりましたけど力みすぎて手が震えて砲塔が少しずつ動いてるんですよ。それと撃つ時両目閉じてどうするんですか……」

 

「そ、そうだったのか。道理で当たらない筈だ……」

 

「すぐに落ち着いてっていうのは無理だと思いますので練習していきましょう」

 

「わかった」

 

原因はわかっても時間かかりそうだな。

 

今のうちにちょっと試してみるか。

 

「次会長お願いします」

 

「私!?」

 

「はい、試しに撃ってみてください」

 

「よくわからないけどわかったよ、かぁしま」

 

「はっ!」

 

さすがの会長も驚いたか?でも会長の腕も知りたいしもしかしたら頼むことになるかもしれない。精度によるが……

 

「装填完了!好きなタイミングで撃て!」

 

「はいよ〜!」

 

会長が撃つと1発で真ん中近くに当てたよ。

 

…………これ会長が砲手やった方がよくね?

 

「私は車長でいいよ、かぁしまが自分でやりたいって言ったんだしそこは尊重したい」

 

「会長〜」

 

「さりげなく考え読むなよ……まぁそういうならいいけどさ、練習しっかりしないとな?」

 

「わかってる!では会長、変わってください!」

 

「慌てない慌てない、りくりくはまだ何か言いたいみたいだよ?多分すっごい大事なことをね」

 

……なんでそこまでわかんの!?怖っ!?

 

まぁたしかに大事なことだけど……

 

「じゃあ単刀直入に言いますけど、大事な場面では会長に砲手やってもらった方が良いと思うんです。今のを見るとどうしてもそう思ってしまいます。河島先輩、砲手は基本的に河島先輩なので先輩の意思を尊重します。自分がどうしたいか決めてください」

 

「たしかにずっと私がやりたいという気持ちもある。だがやはり負けて学校が無くなるのも嫌だ。会長、そしてりく、もしもの場合はお願いします」

 

「はいよ〜」

 

「俺も!?」

 

まさかの俺の名前まで!?

 

「当然だ。先程1発で当てたんだ。お前なら砲弾を撃ち落とすこともできるんだろうな」

 

「も、桃ちゃんそれはいくらなんでも……」

 

「いやまぁやったことあるけどさ」

 

「あるの!?」

 

「あるのか!?」

 

「さすがだね〜りくりく」

 

小山先輩が驚くのはわかる。けどなんで俺ができるって言った本人まで驚くんだ?

 

……つーか38tの火力でできるかは別だ。できて軌道変えるくらいか?

 

「まぁとにかく、河島先輩練習あるのみです!」

 

「雑だね…会長みたい」

 

「小山!?」

 

「あ、ごめんなさい」

 

これは……絶対悪いと思ってないパターンだ。つーか普段の言動のせいだな。

 

「え、私ってそんな酷い?」

 

「適当すぎのことありますね、それよりも練習再開させましょう!河島先輩よろしくお願いしますね」

 

「了解だ」

 

また心読まれたがもう気にせず、練習を再開させることにした。

 

休憩前最後に10発撃って1発当たるまでには成長?できた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「次の土曜日に練習試合を行う!」

 

『練習試合!?』

 

基本的な練習を何日か続けたある日、突然練習試合を行うと河島先輩が言い出した。たしかに試合経験は必要だけど急だな。

 

ついでに……IV号以外は戦車を好きな色に塗装して、三突に関しては戦車に旗をつけて長所である車高の低さを無くしている。

 

優花里はがっかりしていたがみほは戦車をこんな風にする人初めてだと楽しそうに笑ってる。まぁ実際笑ってるのは俺もだけどな。

 

「練習試合はどこですか?」

 

「聖グロリアーナだ!」

 

「グロリアーナ……」

 

対戦校が気になってたみんなの代表としてか、みほが相手を聞くとグロリアーナだった。ダージリンさんのところか……

 

…………試合前の挨拶で見つからないようにしておかないとな。できれば試合後も…………

 

「みぽりんそこ強いの?」

 

「そこは全国大会で準優勝したことがあるんですよ」

 

「準優勝!?」

 

みほが聞かれたのに優花里が答えたがそれは置いておこう。

 

優花里の言う通り準優勝したこともある、はっきり言ってかなり格上だ。まぁ今の段階で格下はいないだろうが……

 

「まっ、相手は強豪校だけど俺たちには試合経験が必要だ。翔太には試合中審判が使うヘリに乗せて試合の様子を撮ってもらうからな」

 

「了解!」

 

「そんじゃ各車両の車長は………生徒会室でいいっすか?」

 

「いいよ〜」

 

「じゃあ生徒会室に移動して作戦会議だ!」

 

「「「「「はい!」」」」」

 

各車両の車長と俺、生徒会のメンバーは生徒会室に集合して作戦会議をするため移動した。

 

どんな案が出るかな〜

 

「それじゃあBチームから何か案があれば言っていってくれ」

 

「根性!」

 

磯部さんそれ作戦じゃない……

 

「……Cチーム」

 

「うむ、速攻を仕掛けるのはどうだろうか?聞いたところによると大洗が戦車道を復活させたことを知っていたみたいだ。だから意表をつけるのではないだろうか?」

 

うん、たしかにそれは意表はつけるな。

 

「Dチーム」

 

「えっと……こそこそ隠れたりしてチャンスを伺う……というのはダメでしょうか?」

 

ふむふむ。

 

「Eチーム」

 

Eチームに聞いたタイミングで

 

 

ピロン

 

 

と誰かの携帯……というかこの音はみほの携帯のメール受信の音だな。その音が鳴った。

 

「あ、ごめんなさい。後で確認します」

 

「全く、せっかくの副隊長の番なんだ。しっかりしろ!そうだな、ここは1チームが囮となりキルゾーンであるここへ誘導!そこで全車砲撃!それしかないだろう!」

 

おい……いつの間にホワイトボードに書いてたんだ?つーか各車両の車長って言ったのになんで河島先輩?

 

「なるほど、そういう手もありますね!根性でやりましょう!」

 

「少し卑怯な気もするがそれもありだな」

 

「囮役になったらできるかな……」

 

みんなそれぞれ賛成の意見を言い出したがその中でみほだけが表情を曇らせている。それに会長も気付いたようだ。

 

「西住ちゃん、何か言いたいことあれば言っていいんだよ?」

 

「い、いえ私は…」

 

「隊長が何を遠慮している!いいから言え!」

 

「ここは河島先輩の言う通りだぞみほ」

 

「え、えっと…それじゃあ」

 

やっぱり遠慮するところもあるんだな。

 

「たしかに囮作戦はありだと思います。ですが強豪校ならそれくらいやってくると読んでくると思います。私たちの学校は戦車道が復活したばかりなので尚更です」

 

「なんだと!?私の作戦に文句はあるのか!?」

 

「いや誰も文句は言ってないだろ!?みほはどんな作戦がいいんだ?」

 

「私は…試合会場が大洗なので地の利を活かした戦術を組みたい…かな」

 

「じゃありくりくの意見は?」

 

ははっ、思った通りのこと言ってくれたな。

 

って俺にも来たか!?

 

「まっ、最初は囮作戦やって失敗したら大洗の地の利を活かした市街戦でいいんじゃね?」

 

「それは出た意見合わせただけだろ!?りくの意見を聞いているんだ!」

 

まぁこう言ってくるよな〜それをわかった上で手は打ってある。

 

「そんじゃみほ、メール読み上げてくれ」

 

「メール?…………あ、さっきのお兄ちゃんだったんだね…………えっ、いつ打ってたの!?」

 

「いいからいいから」

 

「う、うん……えっと読み上げますね

 

『多分出てくる案の中で今の大洗で1番やれそうなのは、キルゾーンの場所にもよるけど囮作戦だ。その場合囮はAチームだな。でも相手はあのダージリンさんがいるグロリアーナだ、それくらい簡単に予想してくる。だから多分囮作戦は失敗する。よほど運が良くない限りな……

だから第2の作戦として市街戦だ。大洗の街はみほや俺よりも詳しいしそっちの方が有利に戦えるはずだ』

 

以上です」

 

『………………』

 

その場にいた全員が固まった。そりゃあそうだろうな。メールの内容はさっき河島先輩が言った通り、出た意見を合わせただけのもの。それを先にメールしていたんだから。

 

「まず磯部さん」

 

「は、はい!!」

 

「根性とかじゃなくて何か意見だそうな?時には必要なこともあるけど作戦じゃないよな?」

 

「す、すみません」

 

「次からはよろしく。次エルヴィンさん……でいいんだよな?」

 

「ああ!もっと言えばさんもいらん」

「あ、それ私もです!」

「私もですりく先輩」

 

磯部さ……磯部と澤まで言ってきた!?まぁ今はおいておこう。

 

「じゃあエルヴィン、速攻を仕掛けるっていうのはたしかにいい案だと思う。エルヴィンの言う通り復活したばかりのことを知っている。だから意表はつける」

 

「そうだろ?なら何故」

 

「速攻を仕掛けられる腕があればな」

 

「あ……」

 

納得してくれたか。

 

「だから今回は見送り。それで次に澤!」

 

「はい!」

 

「澤の案の見送りの理由もエルヴィンと同様だ。多分隠れようとしてる時にやられるか見つかる」

 

「なるほど…もっと上達してからということですね」

 

「そういうこと、で最後に河島先輩の案だけど……」

 

「私のか」

 

「はっきり言って今の大洗でやるならそれが1番だろうな」

 

「じゃありくりく、理由の説明よろしく〜」

 

言うと思ったよ会長……

 

まぁ最初からそのつもりだけどさ。

 

「1チームだけが囮ならメールにも書いた通りAチームだ。他の操縦手に比べて冷泉さんの操縦技術は高い。つーかマニュアル見ただけで覚えたとか凄すぎるが……

ただ冷泉さんの操縦なら、おそらくだがやられずに操縦できると思う。みほもいるしやばそうなら指示出してくれる」

 

『ふむふむ』

 

「キルゾーンまでの誘導は問題ないと思う。だから出てくる案の中でこの案が1番かなって思ってたんだよ」

 

「なるほど〜わかりやすくて助かるよ」

 

つーか会長もしかして理由分かってたんじゃ……

 

「(ニヤニヤ)」

 

ニヤニヤして見てくるし絶対わかってる!?つーかまた読まれた!?

 

「では作戦は囮作戦に決定する!ではりく!他に何か言っておくことあるか?」

 

「そこは隊長のみほだろ……」

 

「西住には試合前とかに任せる!」

 

「さりげなく重要な場面任されてるぞ」

 

「あはは……でも隊長だもん。そこは私がやらないと」

 

おぉ〜ってかさっきちょっと弱気だったよな?弱気ってか遠慮してたっていうか……

 

それどっか行ったな。

 

「まぁ言いたいことは1つあるけど…それは全員に言うことだから今はいいかな」

 

これは言いたいことじゃなくて言っておかないといけないことだ。だから車長だけじゃなく全員に伝える必要がある。

 

作戦会議は終了し自主練を指示しておいたみんなのところへ戻る。すると……

 

「革命ー!」

 

「キャプテンが言うように心にはいつもバレーボール!」

 

1年生チームとバレー部チームは遊んでいてまともに練習していたのはAチームとCチームだけだった。

 

「……………」

 

「わわっ!?お兄ちゃん落ち着いて!?」

 

「まぁまぁ、りくりく落ち着こっか」

 

これが落ち着いていられるか?なんで自主練もしないで遊んでるんだ?

 

「はいそれじゃあ練習試合の作戦を話すよ〜とその前に、負けたら全員であんこう踊りね〜」

 

『っ!?』

 

そういえばさっきの作戦会議の時にも負けたらあんこう踊りって言ってたな。みんなの空気が凍ったけどそんな酷いものなのか?」

 

「会長!?それは西住だけなのでは!?」

 

「そのつもりだったけどこれはね〜真面目に自主練やってた2チームは申し訳ないけど連帯責任ね〜」

 

…………うん、いい言葉だね連帯責任って。

 

「なんで私たちまで!?」

 

「納得いかないぞ!?」

 

「それじゃあ話すよ〜」

 

おい、普通に無視したろ今……まぁ会長がこうなったら無理か。

 

というか会長が作戦伝えるのか。

 

「以上が今回の作戦だよ」

 

「質問ある人はいますか?」

 

『ありません!』

 

「じゃあ最後にお兄ちゃんがみんなに伝えておきたいことがあるみたいだからみんな聞いてね。それじゃあお兄ちゃんよろしく」

 

「はいよ〜それじゃあみんなに1つだけ言っておく。今回は初めての練習試合で緊張してたり不安がたくさんあるかもしれない。それはいい。ただ試合中相手の砲撃でもし怖くなっても絶対戦車の外に出ないように!」

 

「絶対にですか?」

 

「そうだ、履帯が外れた場合も修理するのは周りに戦車がいないことを確認してからにしろ。みんないいな?」

 

『はい!』

 

なんでこんなこと言ったかわかるよな?言わなくてもわかると信じよう。

 

まぁみんな返事したし大丈夫だろ

 

「あ、試合当日は6時集合な〜」

 

この発言で1人脱落しかけた。まぁ無事続けることになったけどな。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

試合当日

 

 

「本日は、急な申し込みなのに関わらず、承諾してもらって本当に感謝している」

 

「構いませんわ」

 

試合会場に到着し、河島先輩とダージリンさんが挨拶をしている。その間に俺は翔太と一緒に、審判が乗るヘリの所に行き、翔太を乗せてもらう手続きをしている。まぁ手続きと行っても事前に済ませてあるから簡単な確認だな。

 

そして戻ると

 

「りく!ちょっと来い!」

 

河島先輩に呼ばれた。先輩の側にはもちろんダージリンさんがいる。

 

「相手の隊長が挨拶したいとのことだ」

 

「了解っす、久しぶりですねダージリンさん」

 

「えぇ、お久しぶりですわ。まさかあなたがここにいるとは思いませんでしたわ。先程審判の方に行くのを見かけて驚きましたわ」

 

見られてたのか!?バレないように行ってたつもりなんだけどな……

 

「まぁとにかく、今日はよろしくお願いします」

 

「えぇ、こちらこそ。緊急の場合はいつも通り共通無線、もしくはお互いの携帯でよろしいですね?」

 

「それでいきましょう。共通無線の方が手っ取り早いですね。使えるのは隊長、副隊長車ということで。悪用するやつがいないと信じたいけど念のため」

 

「よろしいですわ」

 

うん、今のところまともだ。この人隙さえあれば格言言うような人だからな。今のうちに去っておこう。

 

「そんじゃ「あの!!」ん?」

 

「あら?オレンジペコどうしたの?」

 

「もしかして"神の装填手"と呼ばれてる西住りく様ですか!?」

 

「「神の装填手?」」

 

何それ?俺初耳なんだけど……

 

「装填手メンバーでは有名な話です。あまりにも装填速度が速く、神の領域なんじゃないかと」

 

「へ?俺そんな風に思われてたの?」

 

「はい!」

 

へぇ〜って俺そんな凄くねぇぞ!?

 

「今日は楽しみにしています。それでは失礼します」

 

早い!?去っていくの早すぎる!?まぁ試合時間迫ってるしいっか。

 

「それじゃあ俺たちもそろそろ」

 

「そうね、時間も迫ってることですし後ほど」

 

…………ん?後ほど?

 

とりあえず戻るか。

 

「いや〜りくりく随分話してたね〜?」

 

「お兄ちゃん……後でしっかり聞かせてもらうね?」

 

「なんで!?……って、Cチームは旗つけたままやる気か?」

 

「もちろんだ」

 

はい?嘘だろ……

 

せっかく車高が低いのが長所なのにそれ無くしたままやるのかよ……

 

「外せと言っても無駄だぞ」

 

「わかった。じゃあ今回の試合、旗のせいで気付かれてやられた場合はおとなしく旗を外せ。それを守れるなら今回は見逃す」

 

「「「「な、なんだと!?」」」」

 

「それとも今すぐに旗折られたいか?」

 

「「「「…………」」」」

 

さぁ、どっちを選ぶ?

 

って言ってもこれなら絶対前者だろうな。今すぐ折られるのは避けたいはずだ。

 

「わかった」

 

「「「エルヴィン!?」」」

 

「その条件を飲もう。これからも旗のせいでチームに迷惑をかけることになるのは嫌だからな。そこは素直に外そう」

 

「よし、なら今回はこのまま試合していいぞ」

 

まぁ本当はこのままっていうのはやめてほしいんだけどな、条件つきで許可を出すことにした。

 

「さっ、隊長挨拶よろしく!」

 

「うん、今日は私たちの初めての他校との試合です。緊張もしてると思いますし不安もたくさんあると思います。それでも試合経験はこれからの戦車道に必ず活きてきます!

頑張りましょう!」

 

『はい!』

 

うん、いい挨拶だ。もっとオロオロするかと思ったけどこういう時はしっかりしてるな。

 

 

 

『それでは、大洗学園対聖グロリアーナの練習試合を始めます!試合開始!」

 

審判の蝶野さんの合図で試合が始まった。

 




7500…こんなに書いてたとは……

次回は練習試合の話です。1回か2回分で終わらせるつもりです。次回もお楽しみに。

最後に……お気に入り増えてきて嬉しいです。


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6、初の練習試合(前編)

作成中に急遽二回に分けることにしました。あと少し口調迷子気味です……


 

『大洗学園対聖グロリアーナ学院、練習試合開始!』

 

 

今日は大洗学園と聖グロリアーナによる練習試合の日。審判を務める蝶野さんの合図により試合が開始された。

 

 

「それではBCDEチームは作戦ポイントへ走行!私たちは囮となるための場所へ走行します!」

 

「なんか作戦名ないの?」

 

 

大洗の隊長であるみほが指示を出すと、Eチーム38tに乗っている車長の会長が作戦名を求めた。たしかに何かある方が指揮も高まるだろう。

 

 

「それじゃあ"こそこそ作戦"にしましょう。こそこそ作戦開始です!パンツァー・フォー!」

 

 

作戦名が"こそこそ作戦"に決まり、隊長であるみほの合図でそれぞれ作戦ポイントへ移動を開始した。

 

 

「お兄ちゃんそっちの指揮はお願い」

 

「俺でいいのか?河島先輩じゃなくて」

 

「別にルール上問題ないしりく、指揮を頼んだ」

 

「まぁ河島先輩が言うならいいけど……それじゃあAチーム以外速やかにキルゾーンへ移動。そこで陣形を整えるぞ」

 

『了解』

 

 

みほの指示により、仕留め役の4チームの指揮はりくがすることとなった。副隊長にはなれないが代わりに指揮をとることは禁止されていないから問題はない。

Aチームはグロリアーナの戦車の元へ、BCDEチームはキルゾーンのポイントまでそれぞれ移動を開始した。

 

 

「マチルダII4両、チャーチル1両前進中」

 

「さすがグロリアーナ……綺麗な隊列ですね」

 

「うん。あれだけの速度を出しながら隊列を乱さないのは凄いね」

 

 

Aチームは囮役となるため、グロリアーナの戦車を見つけていた。見つけた後はみほと優花里の2人が双眼鏡を使って様子を見ている。グロリアーナの車両は現在隊列を作って前進しているところみたいだ。

 

「こちらの徹甲弾だと正面装甲は抜けませんよ」

 

「そこは戦術と……腕かな」

 

「っ、はい!」

 

 

火力の問題か、正面装甲は抜けないと心配している優花里だったが、みほの言葉で自信を持つ優花里。

そのまま2人はIV号に乗り込みみほは麻子に指示、その通りに動くと今度は華に指示を出した。

 

 

「砲撃準備!」

 

「装填完了!」

 

「えっと…チャーチルの幅は…」

 

「3.25メートル!」

 

「そうなると4シュトリヒだから距離は……800メートルですね」

 

 

装填が完了し華が距離の計算を終わらせる。いよいよ作戦実行の時だ。

 

 

「撃て!」

 

 

ダンッ!

 

 

「すみません」

 

「撃破が目的ではないので構いません。麻子さん、ポイントまで操縦お願いします!」

 

「了解!」

 

 

華が撃った砲撃は外れて華は外したことを謝るが、今回の砲撃は撃破が目的じゃないため特に気にしていない。当たったら当たったで嬉しいことだったが……

今度は麻子に指示を出しその場から撤退し出した。今度は麻子の腕の見せ所だ。キルゾーンに行く前にやられたら意味がない。

 

「仕掛けてきましたね」

 

「そのようね。全車IV号に照準を合わせて……発車」

 

 

グロリアーナの隊長であるダージリンの指示により、グロリアーナの車両は一斉にIV号へ砲撃を始める。

 

しかし

 

 

「麻子さん、なるべくジグザグに走行して当たりにくくしてください」

 

「わかった」

 

 

みほの指示で操縦手の麻子がジグザグに走り、見事に避けている。流石マニュアルを見ただけで操縦方法を覚えたことはある。

 

 

「やるわね、全車速度を上げて追うわよ」

 

 

ダージリンも少しやる気になったのか、全車に速度を上げるように指示を出し、グロリアーナはみな速度を上げて追い続けている。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「かっくめい!」

 

「心にはいつでもバレーボール!」

 

「はぁ……」

 

 

Aチーム以外の4両はキルゾーンとして設定したポイントで待機中……なのだがまた1年生チームは大富豪で遊んでるしバレー部チームはバレーボールをしている。それを見てりくはため息をついてしまった。

 

 

「りく君我慢してあげて」

 

「なんで試合中にこんなことできるのかな……」

 

「あはは……ま、まぁ初めての試合だし今日は許してあげよ?」

 

「まぁ今はいいですけど……」

 

 

小山先輩が言うと渋々許したりく。だが

 

 

「遅い!」

 

「果報は寝て待てだよ〜」

 

「ですが!」

 

「落ち着け河島先輩、この案提案したの河島先輩だろ。だったらちゃんと待て」

 

「うっ…」

 

「りくりくもイラってしてない?いつもはもっと丁寧な言い方してると思うけど」

 

「試合中だとこんなもんっすよ」

 

 

イラッとしているような言い方のりくではあるが、試合中だといつものことらしい。それはさておき、囮作戦を提案した河島はAチームが来るのが遅くてイライラしている。どちらかというとイラッとしてるのは河島の方だ。

 

そんな時

 

 

『こちらAチーム、あと約5分でポイントへ到着します!』

 

 

と、Aチームから通信が入った。

 

 

「みんな聞こえたな?準備しろ!」

 

「えぇ〜せっかく革命したのに〜」

 

「なんか言ったか?」

 

「いいいいえ!?」

 

 

1年は文句を言ったが、それはりくの笑顔によって黙らされた。各員戦車に入り準備をする。

そしてみほが言った5分が経過すると一台の戦車が姿を現した。

 

 

「見えた!撃てー!」

 

「バカ!!」

 

 

副隊長河島の合図でみんな撃ち出した……のだが姿を現したのは味方のIV号だ。思わずりくも"バカ"と言ってしまったくらいだ。

 

 

「味方撃つな!全車砲撃中止!」

 

「味方撃ってどうすんのよ〜」

 

「撃て撃て撃てー!見えるもの全て撃てー!」

 

 

りくやIV号の通信手、沙織の声はみんなに届かない。河島のおかしな指示のせいで……

 

 

「だから撃つのやめろって言ってんだろ!!!」

 

「どんどん撃てー!」

 

「もうダメだこれ……会長、小山先輩、2人ともよく2年間一緒にいましたね」

 

「「あ、あはは……」」

 

 

再度りくが怒っても各車に届かない。呆れたりくが言った言葉に、同乗している小山や会長は苦笑いするしかなかった。

 

 

「みほすまん、バカな奴のせいでみんな撃ちまくってる。なんとか当たらないようにしてくれ」

 

『大丈夫、麻子さん運転上手いから当たってないよ。お兄ちゃん諦めた?」

 

「これ無理」

 

 

りくは完全に止めるのを諦めた。IV号に乗っている5人は揃って苦笑いしたが後ろからグロリアーナの車両が来ているため、止まることなく味方の砲撃の雨の中を進んでいる。そんな中、IV号の後ろからグロリアーナの車両がやってきた。

 

 

「グロリアーナが見えた!みほ達も可能になったら応戦してくれ!」

 

「わかった!」

 

 

グロリアーナの車両が見えると今度はグロリアーナの方へ砲撃が飛んでいった。でもバラバラに狙いすぎて全然当たっていない。

 

 

「バラバラに狙ってもダメです!まずは履帯を狙ってください!」

 

「どんどん撃てー!」

 

「みほ、悪いけどうちの砲手には届いてないぞ。みんなは届いてるかわからないけど……まだ狙える腕はなさそうだ」

 

「わ、わかった…この作戦はダメそうだね」

 

 

りくが乗っているEチームの砲手にはみほの声は届いていない。他の車両には声は届いているようだが、着弾地点から見てりくは難しいと判断した。

 

 

「りくりく、グロリアーナの動きが止まったよ〜」

 

「そろそろ来るか。各車操縦手へ!グロリアーナの反撃が来る可能性が高い!なるべく被弾しないように頼む!」

 

「「「「「了解!」」」」」

 

 

会長からグロリアーナの動きが止まったことの報告を受けると、すぐさま各車操縦手へ指示を出した。

 

 

「こんな安直な囮作戦など通用しませんわ。全車砲撃開始」

 

 

グロリアーナの反撃が始まった。さすがは強豪校、大洗よりはるかに良い精度で砲撃している。そんな中

 

 

「もう嫌ー」

 

「逃げよう!」

 

「そうしよう!」

 

「待って!昨日戦車から出るなって言われたでしょ!みんな待って!」

 

 

グロリアーナの砲撃が怖くなったのか、1年生チームが戦車の外に出てしまった。そのため当然

 

 

「バカ!!外出んな!!」

 

 

りくの怒声が響いた。だが1年生チームは恐怖からか、その声は届いていない。

そんな時、りくが恐れていたことが起こってしまった。

 

 

「きゃぁぁぁあ!!」

 

「澤!?どうした澤!?」

 

「うぅ……」

 

 

1年生チームM3リーの車長の澤から悲鳴が聞こえたと思ったら、その後はうめき声が聞こえてきた。おそらくどこか怪我したのか痛めたかだろう。

 

 

「くそっ!河島先輩砲手交代!」

 

「っ!?わかった!!」

 

「緊急事態発生!両チーム砲撃中止!」

 

「「っ!?全車砲撃中止!!」」

 

 

38tの車内では砲手が入れ替わり、指示されることなく会長は共通無線で砲撃を中止するように言った。しかし

 

 

ダーンッ!

 

 

「なっ!?すみません1発行きました」

 

「1発なら大丈夫だ!」

 

 

1発だけグロリアーナの車両から砲撃が飛んできた。しかも運悪くM3リーの方へ向かっている。まだ澤は隠れられていないため危険だ。だが何故かりくはダージリンからの無線に大丈夫と答えた。

 

 

ドガァーン!

 

 

M3に砲弾が命中……とはならなかった。38tからの砲撃が相手のマチルダIIの砲撃を撃ち落としたからだ。りくには砲弾を撃ち落とす技術がある。

 

 

「ダージリン様!おそらくピンチになったから止めたのだと思われるので砲撃を続行します」

 

「やめなさいルクリリ!砲手の方は撃ってはダメ!」

 

「撃て!」

 

「(ちっ)仕方ねぇな……やるか」

 

 

ルクリリと言われた車長が、同乗している砲手に撃つように指示し、砲手はそれに従い撃っている。おそらく砲手の人もピンチだから中止と言っているのだと思っている。そこでりくはあることを決意した。

 

 

「まずい…」

 

「まさかりく殿は!?」

 

「うん……そのまさかだよ優花里さん。

 

ダージリンさんすぐ砲撃をやめさせてください!早くしないと砲手の人が大変なことになります!」

 

「まさかりくさん!?早く砲撃を中止しなさい!」

 

 

みほとダージリンは何かに気が付いて慌てている。砲撃を中止するように指示をしても1両だけ止めてくれない。何度も撃っているが、その度にりくによって撃ち落とされている。やがて

 

 

「そ、そんな……私の砲撃が……全て……」

 

 

戦意が喪失したのか撃つのをやめてしまった。

 

 

「やっと止まった……会長説明しておいてください!俺は急いで澤のところに行ってきます」

 

「わかった!全車聞いて!うちの生徒が1人負傷した!今は砲撃をしないでその場で止まってて欲しい!」

 

「「わかりました」」

 

 

りくが救急箱を持ってキューポラから外へ出て澤の元へ走る。その間に会長が緊急事態について説明をした。それを聞いて全車動かずその場に待機することとなった。

 

 

「ダージリン様、あちらの隊長が言っていた大変なこととは一体……」

 

「ペコ、あなたは私のりくさんのことを"神の装填手"と言ったわよね?」

 

「え、えぇ…」

 

 

待機中オレンジペコが"大変なこと"についてダージリンに聞いている。さらっと言った私のりくさんという言葉に突っ込まず……

 

 

「ですが私が知っているのは別の呼ばれ方……おそらく装填手の間では神の装填手と呼ばれていても、他の方はこう呼んでいるでしょう」

 

「まさか…あの西住りく?」

 

「そのまさかよアッサム、彼はこう呼ばれている。"悪魔の砲撃をする者"とね」

 

「悪魔の砲撃……?」

 

 

ダージリンやアッサム、ついでに優花里が知っている呼ばれ方は"悪魔の砲撃をする者"である。

 

 

「由来は先程のを見てもらえればわかると思うけど、戦車に当たりそうな砲撃を次々と撃ち落とす。そして相手砲手の戦意を喪失させてしまう。これが悪魔と呼ばれている理由よ」

 

「たしかに……先程のは凄かったです」

 

 

先程悉く砲撃を撃ち落としていたりく、それにより戦意を失ってしまった砲手の1人。悪魔と呼ばれているりくの被害者が増えた。復活するかどうかはその人次第だ。

 

 

一方で

 

 

「澤!」

 

「り、りく……先……輩」

 

 

りくは澤の元に到着した。澤はものすごく辛そうにしている。ここにいるのは澤だけであり、他のみんなの姿が見えない。

 

 

「大丈夫か!?他のみんなは!?」

 

「みんなは……気付かない……で行ったのかも……」

 

「(あいつら……)そうか、痛めてるのは左足だけか?」

 

「た、多分……」

 

「右少し力入れて触るけど痛かったら言え」

 

「はい」

 

 

そう言ってりくは少し力を入れながら様子を見るために触っていく。念のため言っておくが怪我ないか確かめるために簡単に確かめるためだ。

 

 

「大丈夫そうだな」

 

「はい//」

 

 

簡単な確認だけしてみると右足には大きな異常はなさそうだった。そして澤本人は足を触られている恥ずかしさからか、顔を赤くしている。

 

 

「それじゃあ運ぶぞ」

 

「ふぇ////」

 

 

りくがお姫様だっこで運ぶと先程よりも赤くした。まぁいきなりそんなことされたら恥ずかしくもなるだろうが……

りくは御構い無しに戦車内に運び込み応急処置を始めた。

 

 

「とりあえずこれで良し、試合は見たいと思うから終わったらでいい。絶対病院に行くこと!いいな!」

 

「は、はい…約束を破ってすみませんでした」

 

「その説教は後でだ。とりあえずこの車両は走行不能扱いとして回収してもらう。お前は絶対中にいろ!」

 

「はい……」

 

「でも……この程度で済んでよかったよ」

 

 

最後にそう言うとキューポラから出て行き38tへと戻っていった。

戦車に戻るとすぐに共通無線を入れた。

 

 

「試合止めてすみませんでした。公式戦ならしませんが練習試合ということで今回は止めさせてもらいました。幸い……本当に幸いですが大きな怪我というわけではありませんでした。今はM3リーの車内で待機させています。ですが他に乗員はいませんので走行不能扱いとします。できればグロリアーナの選手はM3やその付近は撃たないでもらえると助かります」

 

『了解。聞きました通りM3及びその付近は砲撃しないように!した場合は悪魔の餌食になります』

 

「(悪魔って……まぁいっか)それと大洗はM3に隠れて砲撃を逃れようとしないように!もしした場合隊長車の餌食になってもらいます」

 

『その役目引き受けます。大洗チームは今言った通りにしてください!』

 

「両チームありがとうございます。回収班はM3の回収をお願いします。ちゃんとした謝罪は後ほどします。本当にすみませんでした。再開の合図は審判にお願いします」

 

『グロリアーナは準備できています』

 

『大洗も大丈夫です』

 

『両チーム確認!それでは試合再開!』

 

 

共通無線も終わりにし、審判の合図で試合が再開された。再開と同時に砲撃の撃ち合いが始まるが、無線の通りM3やその付近には撃ち込まれていない。そして隠れようともしていない。無線の通りにしてくれて、りくはホッとしているだろう。

 

だが大洗の戦況が不利なのに変わりない。

 

 

「あれ!?あれれ!?」

 

「あ〜外れちゃったね〜履帯」

 

「38tは外れやすいから仕方ない。砲撃が止んで安全が確認できるまで残ってたら直そう」

 

「なっ!?その間にやられたらどうするんだ!?」

 

「怪我するよりマシだろ」

 

「うっ…」

 

 

不利な状況に陥った上に、生徒会チーム+りくが乗る戦車の履帯が外れてしまった。これでは動かすことはできない。

 

 

「沙織さん各車状況確認お願いします!」

 

「わかった!Bチーム!」

 

「問題ありません!」

 

「Cチーム!」

 

「こちらも問題ない。状況はまずいが動けるぞ」

 

「Dチーム……は無理だからEチーム!」

 

「こっちは無理だ!履帯外れた!みほ、次の作戦プランに移れ!」

 

「わかってる!動けるBチームとCチームはついてきてください!」

 

「「了解!!」」

 

 

ピンチに陥った大洗学園はこの場で攻撃することを諦め、ABCチームは撤退した。Eチームはグロリアーナ全車が通り過ぎていった後で履帯を直すようだ。

 

………それまでにやられなければ。

 

 

「それではこれより"もっとこそこそ作戦"を開始します!みなさん、大洗の地を活かして各自で行動してください!」

 

「了解だ!」

 

「大洗は庭です!」

 

 

大洗学園第二の作戦プラン、"もっとこそこそ作戦"を開始された。先に市街地へ到着した大洗チームは各自分散し、追ってきたグロリアーナの視界から消えることに正解した。

 

ここから第2ラウンドの開始だ。

 

 

ちなみに…………

 

 

「グロリアーナは俺たちを攻撃しないで行ったな。後で後悔させてやるか」

 

「そだね〜じゃあ履帯直そっか」

 

 

Eチームの38tは相手から砲撃されず、履帯の修理を開始していた。

 




前回出た"神の装填手"、そして今回出た"悪魔の砲撃をする者"、これがりくの設定となっています。プロフィール等はそのうち載せますね。

何かあれば感想欄にお願いします。仕事疲れでなかなか返せない可能性もあるますが……

それでは次回もお楽しみに


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7、初の練習試合(後編)

できたので投稿しちゃいます。


 

 

「"もっとこそこそ作戦"です!」

 

 

今は大洗学園と聖グロリアーナ女学院の練習試合中。当初大洗は囮作戦を最初の作戦とすることなっていた。囮役のIV号はポイントまでの誘導は成功したが、その後の砲撃では撃破失敗した。その上M3に乗っている澤が怪我をした。幸い大怪我ではなかったが……

 

試合再開後も不利な状況が続き、履帯が外れてしまったEチーム以外は市街地へと移動し、"もっとこそこそ作戦"が始まった。

 

 

「グロリアーナ各車へ通達。大洗は市街地に入って別々に動いていると思われるわ。私たちも分かれて捜索します。遭遇した場合は各自撃破するように!」

 

『了解!』

 

 

グロリアーナも市街地に入り、別々に大洗チーム捜索を始めた。大洗は今現在3両しか市街地に入っていないため、数でも戦力でも不利だ。ここからどう戦うのか……

 

 

「お、いい場所を見つけたぞ!」

 

「おぉ〜これはいい場所だ」

 

 

Cチームは街を走行中、旗が立っている場所を見つけた。しかも戦車が入れる道もある。そこへ隠れてグロリアーナの車両が来るのを待つことにした。

 

 

「エンジン音が聴こえてきた。そろそろだ」

 

「そのようだ。外すなよ?」

 

「わかっている」

 

 

Cチームが隠れているところにグロリアーナの車両が近付いてきたみたいだ。隠れていることに気が付いていない。やがて三突の砲塔の前にマチルダIIがやってきた。

 

 

「撃て!」

 

 

ドガァーン!

 

 

「Cチーム1両撃破!」

 

「了解です!」

 

「すみません!やられました!」

 

「なっ!?」

 

 

ガシャン!

 

 

Cチームは上手く撃破したみたいだ。ダージリンは味方がやられたことに驚き、持っていたティーカップを落として割ってしまった。

 

 

「おやりになるわね」

 

「すみません!こちらも被弾しました!」

 

「なんですって!?」

 

「Bチームも1両撃破しました!」

 

 

すぐにダージリンはもう1両被弾したという報告を受けた。攻撃を与えたのは大洗のBチームのようだ。立体駐車場を利用したようだが撃破判定は出ていない。大洗Bチームは撃破したと勘違いしている。被弾した際の煙で撃破したと思っているのだろう。

 

 

「みほ、Bチームに撃破判定出るまで油断するなって伝えておけ!」

 

「お兄ちゃん!?」

 

「履帯直して向かってる。ただどのくらいに行けるかわからない、俺たちのことは戦力に考えずに作戦を立ててくれ。頃合いを見て俺たちも攻撃する!それと俺たちが向かってることは他のチームに内緒だ。どれくらい動けるか知りたい」

 

「わかった。Bチーム!撃破判定出るまで油断しないで……」

 

「すみません!Bチームやられました!それと撃破失敗していました!」

 

「っ!?遅かった……」

 

「Bチーム!こっちにも聞こえてた、撃破したかしてないかは作戦立てるのに違いが出てくる!しっかり報告するようにしろ!」

 

『すみません!』

 

「すみません!Cチームも撃破されました!」

 

 

りくが無線でみほに指示している時、Bチームは撃破された。砲撃を当てることは成功したがやはり火力不足だったのだろう、無事だった相手に攻撃され撃破されてしまった。その後Cチームからも無線が入り、撃破判定されたことを聞かされた。入り組んだ道で撃破されていたことから、原因はやはり旗だろう。

 

 

「残りは私たちとお兄ちゃんたちだけ……」

 

「しかも今ここにいるのは私たちだけです。りく殿たちが到着するまでに持ち堪えられるかどうか……」

 

「今はそれを考えても仕方ありません!」

 

「みぽりん前!」

 

「っ!?まずはジグザグに後退!チャンスがあれば反撃します!麻子さんお願いします」

 

「わかった」

 

 

麻子の操縦でマチルダの攻撃をなんとか躱している。しかしそれは相手が1両だけだからであり、他の車両が合流したらどうなるかわからない。このまま逃げてチャンスを得られるかと思っていたが……

 

 

「次左折してください!」

 

「わかった」

 

「あれ?みぽりん待ってその道は!?」

 

「えっ!?」

 

 

Aチームが最後に曲がった道は工事のためか、通行不可能だった。元来た道に戻ろうとしたがそこへマチルダがやってきて、そのすぐ後グロリアーナの残り全車両がみほたちAチームの前に到着してしまった。そしてキューポラから隊長であるダージリンが顔を出してきた。

 

 

「こんな格言を知ってる?イギリス人は恋愛と戦争では……手段を選ばない!」

 

「手段を選ばないのは何もイギリス人だけじゃないぜ!」

 

「お兄ちゃんここで!?」

 

 

IV号がグロリアーナ車両に砲撃されそうになったその時、履帯を直した38tが戻ってきた。絶対タイミング見て飛び出してきただろうというタイミングでだ。

 

 

「撃て!」

 

「くらえ!」

 

 

完全に相手の隙をついた攻撃だったが……外してしまった。

 

 

「桃ちゃんここで外す?」

 

「桃ちゃんと言うな!」

 

「そんなの後にしろ!装填完了したから照準合わせてもう1発!撃破できなくても履帯外すだけになってもいい!IV号に時間与えろ!」

 

「わ、わかった……合わせたぞ」

 

「よし、撃て!」

 

 

ダンッ!

 

ダンッ!

 

 

……シュポ、シュポ

 

 

「みほ今だ!」

 

「突破してください!」

 

 

38tが2度目の砲撃でマチルダIIを1両撃破することができた。しかし相手の全車からの攻撃で38tもやられてしまうが、IV号の離脱には成功した。これで残りは大洗1vsグロリアーナ3だ。

 

 

「これが神の装填手……普通あのタイミングで2発目は無理です」

 

「そうね、神の装填手……いいものを見せてもらいました。でも試合は別、IV号を追いますわよ!」

 

 

38tを撃破したグロリアーナ3両はこの場を離れたIV号を追い出した。追っている途中、IV号が上手く動き3両のうちマチルダ2両を倒すことに成功した。

 

 

「チャーチルも来たぞ。一旦路地に入るか?」

 

「いや、ここで決着を付けます!」

 

「わかった」

 

「装填は完了しています五十鈴殿!」

 

「ではいつでも撃てますね」

 

 

マチルダを倒した後、そのマチルダを押し退けて隊長であるダージリンが乗るチャーチルがやってきた。麻子は一度路地に入るか聞いたが、みほはここで決着をつけるらしい。装填はすでに完了していているため砲撃はいつでもできる。この練習試合の決着はここでつく。

 

 

「1度フェイントを入れて回り込んでください」

 

「了解」

 

「撃て!」

 

「撃て!」

 

ドガァーン!!

 

シュポ!

 

 

麻子の操縦で回り込もうとしたIV号。チャーチルも旋回してお互いほぼ同時に砲撃する。白旗が上がった音はしたが煙でどちらから出ているかわからない。煙が晴れて白旗が上がっているのは

 

 

『大洗学園全車両走行不能!聖グロリアーナ女学院の勝利!』

 

 

IV号の方だった。これにより大洗学園の敗北が決まった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「あなたが隊長ですか?」

 

「は、はい…」

 

「お名前は?りくさんそっくりですね、それに随分とまほさんとは違う戦い方をするのですね」

 

「西住みほです、お兄ちゃんとは双子なんです。戦い方は……そうかもしれませんね」

 

 

試合が終わり隊長同士の挨拶のためか、グロリアーナの隊長のダージリンがみほの元へとやってきていた。

 

 

「それよりも、今日は試合途中にご迷惑をおかけしてしまい本当にすみませんでした」

 

「そうね、迷惑をかける以前にかなり危険な行動ね。今回はそこまで大きい怪我じゃないみたいですが気を付けてもらわないと」

 

「そこは俺がしっかり叱っておきますよ」

 

「あらりくさん、あなたから来てくださるなんて」

 

「(あれ?俺来ない方がよかった?)」

 

「どうしました?」

 

「い、いや、なんでも……」

 

 

2人が話しているところにりくがやってきた。試合途中で戦車の外に出て怪我したことについて話している。その時に試合を一時中断させて迷惑をかけたことについて謝っている。

 

だがダージリンはりくが来てくれたことが嬉しそうだ。

 

 

「公式戦…楽しみにしていますわ。その時は今日みたいな危険な行動はしないでくださいね」

 

「「はい」」

 

 

さすがに今日みたいな危険な真似はみほもりくもさせないだろう。特にりくのことだ。次やったらもう戦車に乗らせないと考える可能性もある。

 

 

「あの……すみません」

 

「澤…それにみんな来たか。ダージリンさんちょっと時間いいですか?」

 

「もちろん、澤さん…と言ったかしら?足の具合はどう?」

 

「大丈夫……とは言えませんが自分でなんとか歩けるくらいの痛みです」

 

「そうですか」

 

「あの……今日は本当にすみませんでした」

 

「「「「「すみませんでした!」」」」」

 

 

今日の試合で途中で飛び出したメンバーたちが謝りに来た。もちろんりく謝るように言ったのではなく、自分たちで謝りに来ている。さすがに病院に行くようにとは言ったが……

 

 

「そうね、今回は練習試合だったから私たちも止めましたが、公式戦ではおそらく止めてくれないわ。今日のようなケースで止まるとすれば、すぐに病院に運ばないといけない時…気をつけなさい。そうじゃないわね、二度としないこと!いいわね?」

 

『はい!』

 

「そう。それならもういいわ。なら早く病院に行きなさい」

 

「はい、本当にすみませんでした。失礼します」

 

 

ダージリンは許してくれたがりくはちゃんと許したわけじゃないはずだ。ただ、病院に行かないといけないために今はこれだけにしているのだろう。

 

「りくさん!」

 

「君はたしか……オレンジペコさんだったよな?」

 

「はい!覚えてくれて嬉しいです。それに装填も見せてもらいました。あれが神の装填なんてすね!同じ戦車内で見てみたいほどでした」

 

「お、おう……」

 

「どうやったらあの装填速度でできるのですか?」

 

「ペコ、さすがに教えてくれるわけないでしょ?」

 

「そうだな、ダージリンさんの言う通りあの装填速度の秘密は教えられないな」

 

「そうですよね……」

 

 

りくがやってきて大洗の1年生チームが来て、今度はグロリアーナからオレンジペコがやってきた。りくに用があるようだ。りくの装填速度にどのようにすれば辿り着けるか知りたいみたいだが、りくは教えることはしない。相手の戦力を上げるからという理由ではなく、もっと他の理由でだ。

 

 

「神の装填手って言われることはちょっと嬉しいけどさ、あれはそう何度もやらないようにしてるんだよ。重要な場面の時だけやるようにしてるんだ」

 

「理由があるからですか?普通に装填しても大丈夫な場面という以外に」

 

「ある。だから俺の真似はして欲しくない」

 

「わかりました…それなら仕方ないですね」

 

「教えられない代わりに1つだけ、自分がやりやすい装填の仕方を見つけろ。そうすれば装填が早くなる。見つからなければ今まで通りにやればいいさ」

 

「自分がやりやすい方法……たしかに、その方が装填もスムーズになりますよね!」

 

「そういうこと!」

 

 

装填手同士で意見の交換……というよりはりくが一方的にアドバイスをしているだけのようだ。それを見て

 

 

「いいのかしら?敵にそんなことを教えてしまって?」

 

 

ダージリンが一方的に教えてもらっていいものか疑問に思った。

 

 

「普段なら言わないけど今日は迷惑かけたからな、特別だ」

 

「そう…後悔しても知りませんよ?」

 

「そん時はそん時さ!」

 

 

今回は迷惑かけたから教えたと言うが本当にそうだろうか?もしかしたらそんなことなくとも教えていたかもしれない。真実はわからないが……

 

 

「今日はありがとうございました。公式戦では負けませんよ」

 

「私ももっと良い隊長になって、今度は勝たせてもらいます!」

 

「楽しみにしてるわ」

 

「………今度は勝たないとな」

 

「うん」

 

「それじゃあ俺は澤に付き添って一緒に病院行ってくるな」

 

「わかった。歩くペース合わせてあげてよ?」

 

「わかってるって」

 

 

ダージリンやオレンジペコに挨拶をして別れると、りくは澤に付き添って病院に行くこととなった。みほはと言うと……

 

 

「それじゃあ約束通りあんこう踊りやってもらうぞ」

 

「まぁまぁ、こういうのは連帯責任だから」

 

「「えっ!?」」

 

 

負けた時の約束としてあんこう踊りをすることとなったが、会長の一言で大洗みんながすることとなった。そのことは病院に向かっている澤と付き添いのりくが知るのは学園艦に戻ってからだった。

 

それと澤だが大きな怪我ではなく、2.3日安静にしていれば問題ないとのことだった。

 

まぁ……

 

 

「砲撃が飛んでる中外に出た!?何考えてるの!?」

 

 

と怒られたが……そこはりくが厳しく注意をしておくということで長い説教とはならなかった。

 




今回はここで終わりです。次回はオリジナル要素を最初に入れる予定です。その要素は多分多くないと思います…………多分


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8、反省会

アニメ要素の方が少なくなりました〜今回は試合の振り返りみたいな感じです。


 

 

「よーし!みんな集まったな!」

 

 

練習試合をやった数日後、大洗の戦車道受講者はビデオカメラを繋げることができる部屋に来ている。練習試合の反省をするためだ。

 

 

「今日集まってもらったのは、グロリアーナとの練習試合の反省会をするためだ。翔太に撮ってもらった映像を見ながら順番にやっていくぞ」

 

『はい!』

 

「それじゃあ翔太頼む」

 

「はいよ〜」

 

「会長みたいな返事はいいから……」

 

「りくりく〜私そんな風にしてる?」

 

『してます!』

 

「あ、あれ?」

 

 

ちょっとした弄りもあったが、映像を流し始めた。というより会長はみんなに揃って言われるとは思っていなかっただろう。

 

 

「まずは囮役として注意を引くシーンだな」

 

「ここで1両倒せていたらもう少し楽になっていたんでしょうね……」

 

「そう落ち込むな華。たしかに倒せてたら少し楽になったとは思う。でもな、目的は撃破じゃないんだ。だから気にするな!気にするくらいならもっと上達すればいい」

 

「…そうですね、練習あるのみです!」

 

 

囮役となったIV号の砲手は華、目的は撃破ではないのだが、撃破できなかったことに少し落ち込んでいるようだ。だがそこはりくが上手くフォローした。

 

 

「グロリアーナの砲撃が始まったけどよく避け切ったな麻子」

 

「これくらいなら問題ない」

 

「頼もしいな。ん?これ見る限りだとみほ、途中でほんの少しだけ中に入ってないか?」

 

 

次はグロリアーナの砲撃を避けながらキルゾーンへの誘導の場面。この砲撃をよく避け切ったと麻子に褒めたりくだが、麻子にとってはこれくらい問題ないらしい。初心者のはずなのに頼もしすぎる。その後は、キューポラから顔を出していたみほが少し中に入ったことについて気になったみたいだ。

 

 

「これ?これは沙織さんに危ないから入ってって言われたからだよ、お言葉に甘えて少しだけ入ったよ」

 

「ぜ、全然入ってないじゃん……」

 

「そうなんだよ〜みぽりんってば全然入らないんだよ」

 

「まっ、その方が状況を把握しやすいから止めないけどさ、本当に危なかったらさすがに入るよな?」

 

「た、多分」

 

『多分なんだ!?』

 

 

事情を把握したりくだが最後の質問に対してみほは多分と答えた。そのためみんな同じことを思った。さすがにりくもこの時は入って欲しいと思った。口にはしなかったが。

 

 

『見えたぞ!撃てー!』

 

 

映像はキルゾーンで砲撃したところだった。だが敵ではなく味方を攻撃している。

 

 

「最初の問題点はここだな。河島先輩何か言いたいことあります?」

 

「うっ……そ、その……すまなかった!あれは私の指示のせいだ……」

 

「自分のミスってことわかってるならいいです。ちなみにこの時俺が砲撃やめろって言ってたの聞こえてた人は?正直に手あげてくれ」

 

『………』

 

「誰もいない?あ、会長と小山先輩は一緒に乗ってたのであげなくていいです。他はBCDチームでいないのか?」

 

『………』

 

 

りくの質問に手をあげる人は会長と小山しかいない。他の人は手を挙げたら怒られると思っているのか、それとも本当に聞こえなかったのか……

 

 

「みんな本当に聞こえなかったんですか?お兄ちゃん結構怒鳴るように言ってたと思うけど……」

 

「「「「たしかに……」」」」

 

「ってAチームは言ってるけど……最後にもう一回聞く。聞こえてた人は?」

 

『………』

 

 

Aチームは怒鳴るように言ってたと言っているため、本当は聞こえてそうだ。それなのに誰も手を挙げなかった。

 

 

「仕方ない。それじゃあみほ、普段から無線でもでかい声で指示しよっか。それで耳がおかしくなっても知らん」

 

「そうだね」

 

『すみません聞こえてました!』

 

「おい!! 」

 

「みなさん正直にお願いします。反省会を開いて良い所は伸ばし、悪い所は改善していくためなんですから」

 

『すみません!』

 

「(揃って言うなよ……)じゃあちゃんと砲撃止めろよな?隊長や副隊長やあとは車長か、その人以外の指示を聞いたらいけないなんてことはないんだからさ」

 

『はい!』

 

「それじゃあついでに次の場面だけど、翔太」

 

「はいよ」

 

 

実際はやはり聞こえていたらしい。反省会なのに嘘をつかれると困るみほが正直に言うようにと頼み、りくは試合中の指示についてを言った。

この場面の話を終わりにし、次の場面の話に移る。次の場面はバラバラに撃たず履帯を狙うようにという指示のところだ。

 

 

「まず最初にみほの指示聞こえた人は?」

 

『はい!』

 

「…………」

 

「今度は1人除いて全員か、Bチームから順番に狙ってたこどうか言ってくれ」

 

「狙ってはいました」

 

「我々も同じく」

 

「私たちも狙いはしました」

 

「すまん……必死になって撃っていて聞こえていなかった」

 

「そうだよな、同じ戦車に乗ってる俺の声も聞こえないくらいだし」

 

「うっ……」

 

「狙ってたのはこれを見てもだいたいわかる。ただこれは練習してもっと狙い通りに撃てるようにするしかないな。普段の練習もしっかりやるように!」

 

『はい!』

 

「それと河島先輩は指示ちゃんと聞くようにお願いします」

 

「わ、わかった…」

 

「この話はこれからもっと練習するってことで終わりだ。そして次は今回の試合で1番問題のところだ」

 

 

みほの履帯を狙うようにという指示については河島以外みんな聞こえていたらしい。みんなも狙っていたからここは練習して上手くなるしかないということで終わりとなった。そして次は1番問題となった場面だ。

 

 

「俺が言いたいことはわかるよな?まず何か言いたいことある人は?」

 

「はい……」

 

「じゃあ澤!」

 

「グロリアーナとの試合では約束を破って怪我をして、本当にみなさんに迷惑をかけてしまいすみませんでした。もう二度とあんなことしません」

 

「私たちもです。もう二度とあんなことはしません!すみませんでした……」

 

『すみませんでした……』

 

「俺は二度としないっていうのを信じてもう許してるしみんなもう許してると思う、それでも今回みたいなことは絶対にあっちゃいけない!練習試合だったから今回は止めてもらえたけど公式戦は多分止めてくれない。実際去年は止めてくれなかったし」

 

「お、お兄ちゃんそれは……」

 

「内容まで言わないさ、知ってる人何人かいるけど……とにかく!今回みたいな危険な真似は絶対しないこと!」

 

『はい!』

 

 

1番問題となった場面は澤の怪我の場面。怖くても絶対に戦車から出ないように前日に言ってあったし、さすがにりくはこの時かなり怒っていた。今はもう許しているが……

 

 

「りく先輩、あの時はありがとうございました。怪我の応急処置してくれたことや砲弾を撃ち落としてくれて……約束を破った私が悪いのに助けてくれてありがとうございます」

 

「助けるのは当然だ。それに相手の隊長のダージリンさんが砲撃中止を言ってるのに撃ちまくってたからな。精神的に痛い目に合わせたかっただけ」

 

「まさか練習試合で悪魔が出るとは思わなかったよ……私も慌ててダージリンさんに止めるように言ったもん……」

 

「悪い悪い」

 

『悪魔?』

 

「あっ、みんな知らないよな」

 

「私は知ってるよ〜」

 

「さすが会長。簡単に言うとな、俺の砲撃は悪魔って言われてるんだよ。見たほうが早いかもな」

 

「じゃあそこまで早送りするぞ」

 

 

澤は助けてもらったことに対しお礼を言っている。危ない所を助けるのは当然だということでりくは特に気にしていない。というよりりくも少し頭にきていたらしい。砲撃中止を言われてるのに撃ってくる相手に……だから練習試合でも悪魔の砲撃を出したのだろう。だがみほが悪魔と言ってもみほと会長以外首を傾げている。見た方が早いとのことで実際にその悪魔の砲撃を見ることとなった。

 

 

『おぉー!』

 

 

実際に見ると初めて見た人はみんな一斉に「おぉー」と声をあげた。それほど凄い砲撃なのだ。撃ってきた分全てを撃ち落としていたあの砲撃は……

 

 

「今みたいに砲撃撃ち落としまくってたらそう言われるようになったってとこかな」

 

「りく殿1つ言い忘れています!重要な場面で悉く撃ち落として相手砲手の戦意を喪失させるということを!」

 

「やっぱ優花里知ってたか」

 

「はい!」

 

「まぁこれは緊急時やよっぽど重要な場面でしかやらないさ。普段は装填手やるよ。ってことでこの話は終わり。とりあえず囮作戦の反省点としてはだが、大きく分けてまずは味方を撃たないこと!それと砲撃の精度をもっと上げることの2点だ!」

 

『はい!』

 

 

悪魔の砲撃を見終わった後に前半の囮作戦についての大きな反省点をあげた。この後は後半についてだ。

 

 

「そんじゃ市街地戦についての反省会に入るぞ。まずはバレー部チームのところからにするか。立体駐車場を上手く使って相手に砲撃を当てたのは良い作戦だとは思う」

 

「「「「ほんとですか!?」」」」

 

「息揃えるなよ……じゃあ自分たちがやられた理由はなんだと思う?」

 

「「「「…………」」」」

 

「黙るなよ……」

 

「火力不足としか……」

 

 

後半戦の最初の場面はバレー部チームの場面だった。立体駐車場を上手く利用して攻撃したのはよかったが倒せず、逆にやられてしまった。やられた理由をりくは聞いたが誰も答えられず、黙るなという言葉で磯部が火力不足と答えた。

 

 

「たしかに火力不足はあったかもしれない。でも1番の問題は砲撃を当てただけで撃破したと思い込んだことだ」

 

「「「「っ!?」」」」

 

「試合中にも言ったが撃破報告とかそういった情報は正確に伝えろ!撃破報告はもちろん、偵察に行ってもらうこともある。それを元に細かい作戦の修正をしたりする。間違ってたら味方全体がピンチになる。これはBチームだけじゃない、全チーム一緒だ!」

 

『はい!』

 

「次はCチーム」

 

「……我々か」

 

 

Bチームの分の反省は終わりだ。立体駐車場を使った作戦はたしかに面白い、だが撃破判定出ていないのに油断したのは失敗だった。情報の伝達は正確に……Bチームだけではなく全員に言い聞かせた。

 

そして次はCチームだ。

 

 

「まずは1両撃破はよくやった!元からあった旗を利用したのは上手かった。だけどそのあと……」

 

「言いたいことはわかってる、みんなもいいな?」

 

「「「もちろん」」」

 

「そうか、わかってるならいいが改めて映像を見るとわかるように、旗のせいで居場所がバレバレだ。それで壁越しにやられた」

 

「これからは旗をつけない」

 

「ならよし」

 

 

Cチームは市街地に入ってから大洗にあった旗を上手く利用して1両撃破した。でもその後は旗のせいで居場所がバレバレとなり撃破されてしまった。本当にもったいない。次からは旗をつけないこととなった。

 

 

「そんじゃEチーム」

 

「ふっ、我々がピンチとなったAチームを助けた場面だな!」

 

「いやまぁ結果的にはそうなったけどさ……」

 

 

市街地でのEチームがやったことといえば、Aチームがグロリアーナ4両に囲まれた時に飛び出し、マチルダ1両と相討ちになっただけだ。その後Aチームは脱出できたから結果的にはたしかに助けたことになる。結果的には……

 

 

「あれ?でもこれ見る限り最初の1発でも倒せてたらもっとAチームは楽になったんじゃないですか?」

 

「なんだと!?」

 

「磯部容赦ないな……」

 

「それに1両と相討ちに持ち込めたのもりく先輩の装填速度のおかげじゃ……」

 

「澤まで!?」

 

「澤……お前も言うのか……河島先輩ドンマイ」

 

 

だけど録画した映像を見て、Bチーム車長の磯部とDチーム車長の澤の2人が自分の思ったことを正直に言った。正直すぎるが……

 

 

「2人とも言い過ぎだよ?私たちだってまさか1両撃破するなんて思わなかったんだよ?撃破したんだからそこは褒めてあげないと」

 

「思ってなかったのか!?」

 

「あ、小山先輩の方が酷いや……まぁたしかに2人の言うことにも一理ある。それは事実だ。でもみほたちはどう思った?1両でも倒せた河島先輩に対してさ」

 

「たしかにみんなの言うこともわかります。でも4vs1になってたら、最後ダージリンさんとの1vs1に持ち込めたかわかりません。ですから本当に助かりました。ありがとうございます」

 

「西住……」

 

「ってことだ。だから河島先輩もそんなに落ち込まなくてもいいっすよ。まぁ磯部や澤の言い分も分からなくはないし、もっと練習な」

 

「……任せろ!」

 

 

磯部や澤に続いて小山も発言をし出した。まぁ正直2人より酷い気もするがそこは見逃そう。市街地戦でEチームが動いたのはその1回だけ、ここで終わりだと思ったが……

 

 

「りく先輩の装填速度異常じゃないですか?」

 

「別に特別なことはしてないぞ?」

 

「模擬戦の時に見せてもらいましたが、りく殿は装填の時は……」

 

「優花里それは言うな!!」

 

『っ!?』

 

「悪いびっくりさせたな、俺の装填方法は真似して欲しくないから教えない。ちゃんとした理由があるからな。みほは聞いてたと思うけどオレンジペコさんにも俺の装填のこと聞かれたんだよ」

 

「そうだね、私は事情知ってるけどあれは1試合に何回もやるわけにはいかないの。だからお兄ちゃんの装填方法は教えないことにしてるの。だから知ろうとするのはいいけど知った人は実際にやらないでね?」

 

「うむ……隊長がそこまで言うのなら詮索はしない……」

 

「助かる。それと優花里、絶対真似しようとしないでくれ」

 

「了解であります!」

 

「それと装填速度アップについてだけど、それはコツを練習の時に教える」

 

 

Eチームについては終わりだと思った時にりくの装填の話になった。その時に優花里はりくの装填方法について言おうとしたがりくはそれを止めた。オレンジペコにも言ったことだが1試合に何回もやれない事情がある。だからそれを知っても真似しないようにと、妹のみほがお願いすることになった。

 

 

「それでもお兄ちゃん神の装填手って言われてるみたいだね」

 

『神の装填手!?』

 

「みたいだな。ペコさんに聞いて初めて知ったけど……ってそれは今はいいや。じゃあ最後にAチームについてだ」

 

 

神の装填手についての話題になりそうになったが、りくはそうならないようにAチームの方の話題にした。みんなも映像で確認している。

 

 

「今回の試合Aチームには負担かけすぎたな。囮役から最後1vs3まで……それでもよく戦い抜いてくれた」

 

「りく殿から褒められました〜」

 

「囮役はともかく最後の1vs3は仕方ないよ。それに河島先輩が1両倒せてなかったらもっと苦しかったくらいだもん」

 

「西住さんの言う通りだ。それに囮役の時はまだ相手が本気になる前だったし問題なかった。それにりくの装填のおかげで4両から3両にしてくれた。気にするな」

 

「たしかに負担は少し減りましたが、私としてはもう少し倒す感覚を味わいたかったですね」

 

 

りくはAチームに、グロリアーナ戦の時はものすごく負担をかけたと思っている。だがAチームのみんなはそんなこと思っていないようだ。それより助けられたとしか思っていない。

 

 

「まぁ敢えて反省点を言うならだけど、工事現場で通行止めになってる道に行ったことだな」

 

「ごめんなさい……」

 

「みぽりんのせいじゃないって!みぽりんもりくも大洗に来てからそんなに経ってないし仕方ないよ」

 

「仕方ないじゃ済まないよ…これが大会だったらとんでもないことになるよ」

 

「そうだな。これは俺も反省点だけど、会場が大洗だし事前にそういうのはチェックできたな」

 

「西住ちゃんやりくりくだけのせいじゃないよ〜大洗が試合場所ってわかってからその辺の作戦も立てられたと思う。大会でこういうことはないけど、地形の把握をしっかりするってところかな」

 

「そうですね、事前にわかればしっかり把握するようにしよう!」

 

『はい!』

 

「それじゃあ反省会はここまでにしよう」

 

 

Aチームに対して言った反省点は通行止めの場所に行ってしまったことについて。大洗で試合なら事前に把握できたとのことであげたが、そこは会長の一言でみんなの責任ということになり、事前にわかれば試合会場の状況を把握するということで反省会は終わった。

 

 

「そういえばみぽりん、グロリアーナから送られたティーカップと一緒に入ってた手紙に公式戦楽しみにしてるってことが書いてあったけど公式戦って?」

 

「簡単に言えば戦車道の大会です」

 

「なるほど〜」

 

「みんなには言ってなかったけど今回の練習試合は経験を積んでもらうってことと、課題を見つけて大会までに直していく目的があったんだよ〜」

 

「会長言い方軽っ……ウチには翔太がいて試合を録画してもらえた。だからこそできたことだな。ってわけでみほ、最後よろしく!」

 

「ここで!?」

 

 

沙織が公式戦のことを聞いてきたからか、今回の練習試合の目的について会長が話し出した。目的は経験を積むこと、そして課題を見つけその課題について取り組むことが目的だった。

 

そして最後、りくは隊長のみほに何か言うように促した。突然すぎるが……

 

 

「えっと…今回の練習試合とこの反省会で各自課題を見つけたと思います。公式戦まで普段の練習に取り組みつつ、課題にも取り組みレベルアップできるように頑張りましょう!」

 

『はい!』

 

 

突然すぎるりくの無茶振りに対し、普通に応えたみほ。翌日から公式戦に向けての練習が始まった。

 

そして抽選日を迎え

 

 

『大洗学園8番!』

 

 

大洗の初戦は、強豪校の1つでもあるサンダース大学付属高校に決まった。

 

 

 




今回はここで終わりです。次回はアニメに沿った話になる………はずです。
それでは次回もお楽しみにー


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9、再会と約束

「ごめんね……いきなり強豪校と当たっちゃって……」

 

 

抽選会が終わり、Aチーム+りくは近くにあるルクレールという店に来ている。そんな中みほはいきなり強豪校と当たったことについて申し訳なく思っている。

 

 

「サンダースってそんなに強いの?」

 

「戦車の保有数は日本一です!」

 

「ひぇ〜」

 

「でも1回戦のレギュレーションでは10両までとなっています」

 

「それでも2倍の戦力だよ〜」

 

「ごめんね……」

 

 

沙織がサンダースについて聞くと優花里が軽く説明した。

みほはまだ落ち込んでいる。

 

 

「いつまで落ち込んでるんだみほ」

 

「だって……私の酷いクジ運のせいでいきなり強豪校と……」

 

「トーナメントで勝ち進めば結局は強豪校と当たるんだ。それに戦車の保有数が凄いサンダースと初戦で当たるならむしろラッキーだろ。全然クジ運悪くねぇよ!」

 

「りくの言う通りですよみほさん」

 

「りくもたまには良いこと言うな」

 

「おい麻子!?たまにはってどういうことだ!?」

 

「冗談だ」

 

「おい!?」

 

「クスクス」

 

「みほも笑うな!!」

 

 

トーナメントでは勝ち進めば進むほど戦車の使用可能な台数が増えていく。だから戦車の保有数が凄いサンダースと初戦で当たるのはむしろラッキーだとりくは考えている。そのことを言うと麻子が冗談を言い周りを笑わせ、みほも一緒に笑っている。

 

そこへ……

 

 

「………副隊長?あぁ元でしたね。それにりくも」

 

「エリカ……」

 

「お姉ちゃん……」

 

 

黒森峰の隊長と副隊長である西住まほと逸見エリカがやってきた。

 

 

「まだ戦車道をやっていたとはな」

 

「なんか文句あるか?」

 

「……別にいいさ、続けるも続けないもお前たちの自由だ」

 

「隊長!?ですが!?」

 

「お言葉ですが去年の西住殿たちの行動は間違っていないと思います!りく殿は少し危険でしたが…」

 

「部外者が口を挟まないで!」

 

「す、すみません…」

 

「まぁりくの行動が危険ってところは私も隊長も同意見だけど……」

 

「それは言うな……俺もわかってるから」

 

 

今優花里が言った"去年の行動"というのは全国大会決勝での行動のことだ。去年は黒森峰だったみほは、崖から落ちてしまった戦車の乗員を助けるため、命綱無しで駆け下りて助けにいった。りくはというと命綱はしたが飛び降りるように助けに行ったのだ。優花里はりくの行動は少し危険と言ったが、実際は少しではないだろう。みほもりくも……

 

 

「大体、なんで貴方たちのような無名校が出てきてるのよ!?元副隊長やりくは知ってるでしょ!?この大会は戦車道の評判を落とさないように、無名校は出場しないのが暗黙のルールだってこと!それなのになんで!?」

 

「エリカが知る必要はない。暗黙のルールだろうが大会ルールに記されてるわけでもない。つーか俺たちは勝ち進むし問題ないさ」

 

「エリカもう行くぞ、これ以上は店の迷惑になりかねない」

 

「わかりました」

 

「あとりくは来い。聞きたいことがある」

 

「ケーキ食ってからでいいだろ?」

 

「問題ない。もう食べた」

 

「えっ……麻子いつの間に!?別の意味で問題だろ!?はぁ……まぁいいや」

 

 

店の中でエリカと口論になったが、すぐさままほがそれを止めて外に出るように促した。りくに聞きたいことがあると言い、注文したケーキ食べてからと思ったら、エリカと口論してる間に麻子に食べられていたらしい。そのためすぐに外へ出ることになった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「まったく……2人とも店の中であんな風にして……迷惑だろ」

 

「悪かったよ姉ちゃん」

 

「すみません隊長」

 

「わかればいい…りく」

 

「うわっ!?どうした姉ちゃん!?」

 

「なっ!?」

 

 

店の外に出ると先程の口論についてまほは怒った。店の迷惑になるという理由で。

その後、いきなりりくのことを抱きしめたためりくとエリカは驚いている。

 

 

「よく続けてくれた。りくもみほも完全に戦車道を辞めてしまうんじゃないかと思っていたぞ。だから続けてくれていて本当に嬉しく思う」

 

「聞きたいことってのはやっぱり嘘か。つーか大袈裟だよ姉ちゃん…」

 

「何処が大袈裟なのよ!?私も隊長もどれだけ心配したかわかってるの!?」

 

「それは……悪かったよ。でも俺は西住流の考えではもうできない。家を出る前、母さんと話した時にそう思った。姉ちゃんはその場にいたから俺の考えは聞いてたと思うけどさ」

 

「私は貴方たちともっとやりたかった!去年のことだって助けに行ったのを怒ったわけじゃないでしょ!危険な助け方をしたからみんな怒ったんじゃない!それなのになんで2人とも転校しちゃったのよ!しかも復活したとはいえ、戦車道がない高校に転校するのよ!?」

 

「俺はともかくみほはもう戦車道をやりたくないくらい嫌いになってた。俺は正直どっちでもよくなってたしさ。まぁ結局今はやってるけどな」

 

「エリカ、私たちはよくても上の人はそういうわけにいかないんだ。私たちが普通の学校ならともかく、10連覇がかかっていた試合だったから尚更な」

 

「それでも!」

 

「エリカ、本当に悪かったな。いきなりいなくなって……でも俺は黒森峰にいたくなくなった。まぁ母さんと話した結果そうなったんだけどさ。それにみほも……」

 

 

エリカもりくも、まほがいきなりりくを抱きしめたことに驚いたが、すぐさまエリカは自分の思ってることをりくに言った。りくもりくで自分の思ってることを言っている。お互いに本音だ。

 

 

「いきなりいなくなったことは本当に悪かった。でもエリカ、それに姉ちゃん、この大会に優勝して、俺たちの戦車道を見つけるって約束するよ。それを2人に……いや、黒森峰や母さんにも見せる。約束だ」

 

「りく……約束守りなさいよ!」

 

「りく、それにエリカも何を言っている。これではりくは約束を守れないぞ」

 

「なんで?」

 

「りく、私たちに勝つつもりか?」

 

「はっ!?そうよ!私たちに勝つつもりなの!?」

 

「当然!」

 

「いい度胸だ」

 

「なら決勝まで勝ち進んで来なさい!」

 

「言われるまでもねぇよ!つーかすぐに気付かなかったエリカに言われたくねぇな。というかさっきみほにあんな風に言う必要なかったんじゃないか?」

 

「っ!?そ、それは……」

 

「そう言うなりく、エリカが素直じゃないのは知ってるだろ」

 

「隊長!?」

 

「知ってるって、わざとだ」

 

「りくまで!?」

 

「「何か間違ったこと言ったか?」」

 

「…………」

 

 

りくは大会に優勝して……つまり黒森峰にも勝つつもりでいる。そこにすぐさま気付いたまほが指摘したが、りくは動じない。大洗で優勝したいという気持ちが強いからだ。

ついでに姉弟で少しエリカをからかった。

 

 

「なら私たちはそろそろ行くとしよう。りく、まずは決勝まで上がってこい!そこで私たちが倒す。約束しろ」

 

「決勝まで上がるってところは約束する。でも勝つのは俺たちだ」

 

「途中で負けるんじゃないわよ?」

 

「お前らもな。俺たちは勝ち進む」

 

 

最後にお互い決勝で戦うことを約束すると、まほとエリカの2人はすぐに去っていった。だから

 

 

「負けられない理由もあるしな」

 

 

とりくが呟いたことを知ることはなかった。

 

 

ちなみに……

 

 

「お兄ちゃん大丈夫?何もされなかった?」

 

「問題ない」

 

「じゃあ帰るぞ」

 

「…………えっ」

 

 

りくが席に戻るとすぐに待っていたみほたちも帰ることもなったため、りくは店で何も食べることができずに帰ることとなった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「ゆかりん今日どうしたのかな?」

 

「連絡なしだと心配だな」

 

 

今日の練習に優花里は参加していなかった。連絡があればまだよかったが、優花里から特に連絡は入っていないため心配している。

 

 

「寝すぎて来ないとかか?」

 

「それ麻子だろ?」

 

「私でもちゃんと学校には行くぞ」

 

「冗談だ」

 

「お兄ちゃんも麻子さんもこんな時にふざけないでよ」

 

「悪い悪い」

 

「みほさんにも連絡入ってないんですよね?」

 

「うん…」

 

 

麻子とりくは冗談を言い合っているがそこはみほに怒られた。りくだけでなくみほ、それに他のみんなにも連絡は入っていない。

 

そこで

 

 

「じゃあ今からゆかりんの家行ってみない?」

 

「家の場所わかるのか?」

 

「わかるよ!」

 

「なら行くか」

 

 

みほ、華、麻子、沙織、りくの5人は優花里の家に行くこととなった。少しすると"秋山理髪店"に到着した。

 

 

「ゆかりんの家って床屋さんだったんだ」

 

「それは知らなかったんか、とりあえず入るか」

 

「そうだね」

 

 

カランカラン

 

 

「いらっしゃ〜い」

 

「あの…優花里さんいますか?」

 

「君たちは?」

 

 

店に入るとおそらく夫婦だろう。2人で入ってきたりくたちを出迎えた。おそらくお客さんだと思ったのだろう。ただりくが優花里がいるかどうか尋ねると客じゃないことに気が付いたみたいだ。

 

 

「俺たちは優花里さんの友達です」

 

「ととと友達!?優花里に家に連れてくる友達が!?」

 

「あなた落ち着いて、ごめんなさいね。優花里が家に友達を連れてくるだなんて初めてだったから。それと優花里朝早く学校に行ってからまだ帰ってないのよ。もしよかったら部屋で待つ?」

 

「それじゃあお言葉に甘えてそうさせてもらいます。みんなもいいよな?」

 

「「「「もちろん!」」」」

 

 

みんなは優花里の母親に部屋で待たせてもらうこととなった。少しの間待ってると……

 

 

ガラガラ

 

 

「あれ?みなさんお揃いでどうしたんですか?」

 

 

優花里が窓から部屋に入ってきた。何故かコンビニの制服を着て。

 

 

「いやゆかりんこそ……何その格好……それになんで窓から」

 

「この格好で玄関から入ったら親に心配されますから」

 

「そ、それはそうかも……」

 

「へぇ〜じゃあ俺たちには何も連絡しないで心配させてもいいってわけか〜」

 

「ひっ!?り、りく殿顔が怖いです……」

 

「お兄ちゃんの言う通りだよ優花里さん。連絡なくてみんな心配したんだから……」

 

「す、すみませんでした…」

 

「ま、まぁまぁ、ゆかりん無事なんだから2人ともそれくらいにしてあげて」

 

「ほんと沙織は優しいな」

 

「やだも〜そんなこと言っても何も出ないんだからね」

 

「いや……特に期待してないが」

 

 

何も連絡なかったためか、りくが怒りみほも心配していたことを伝えるが、沙織が気にしないような発言をしたためか、2人がこれ以上責めるように言うことはなくなった。

 

 

「それよりもこれを見てください!」

 

「「それよりも?」」

 

「はっ!?心配させてしまい申し訳ありません。これを見てください」

 

 

優花里が見てくれと言って差し出したのはUSBメモリーのようだ。それを見てりくは

 

 

「まさか優花里……サンダースに……」

 

 

と偵察に行ったと察した。

 

 

「その通りであります!」

 

「まじかよ……まぁとりあえず見てみよう」

 

「待ってりく!偵察なんてしていいの?」

 

「ルール上は認められてるから問題ない」

 

「でも実際にする人見たの初めて」

 

 

見てみようとしたら沙織が大丈夫なのかどうか心配した。偵察行為はルール上でも認められているため問題はない。ただみほの言う通り実際にする人は聞いたことはない。

 

 

「まっ、ルール上は問題ないんだ。見ようぜ」

 

 

そう言いみんなで偵察の様子を見始めた。映像を見る限り優花里がサンダースの生徒じゃないということは最初はばれなかった。むしろ何故制服を持っているのかが気になるくらいだ。だが戦車道受講者のミーティングでバレた。情報を得るためだったのだろうが質問しすぎて、隊長の隣にいた人にバレたのだ。挙げ句の果てに名前を聞かれた時に

 

 

「オッドボール三等軍曹であります!」

 

 

とバレバレの名前を使ってサンダースの戦車道受講者に追いかけ回されることとなった。ここにいるということはなんとか逃げ切ったみたいだ。

 

 

「バレてんじゃねぇか!?」

 

「ごめんなさい……」

 

「お兄ちゃん落ち着いて」

 

 

偵察中にバレたことにやはりりくは怒った。妹のみほがなんとか落ち着かせようとしている……

 

 

「なんという無茶を……」

 

「無事でなによりです」

 

「本当に無事だったんだろうな?」

 

「だからここにいるであります!」

 

 

prrrrr

 

 

「誰だ?…………」

 

「な、なんでありますか?」

 

 

話しているとりくの携帯に着信が入る。携帯に表示されている名前を見て、りくは優花里の方を睨むように見た。

 

 

「もしもし?」

 

「ハローりっくー!久しぶりー!オッドボールはちゃんと無事に帰れてる?」

 

「お久しぶりっすねケイさん、よく俺が大洗にいるってわかりましたね」

 

「ダージリンに教えてもらったのよ〜」

 

「あの口軽女……まぁいいや、ちゃんとオッドボールは帰れてますよ。というか今一緒です」

 

「それならよかったわ!それと作戦だけどオッドボールが聞いたのと変わらないからよろしく!」

 

「まじかよ……まぁケイさんがそう言うならそうなんだろうな。じゃあ存分に対策立てさせてもらうわ」

 

「ふふっ、楽しみにしてるわ!正々堂々といい試合にしましょう!」

 

「もちろんだ!」

 

 

電話の相手はサンダースの隊長であるケイだった。オッドボールこと優花里が無事帰れたか心配したらしい。それと作戦も優花里が聞いた内容と変わらない。ケイの性格を知っているりくだからこそケイの言ったことを信じた。

 

 

「相手の隊長の番号入ってるのか?」

 

「まぁな、黒森峰にいた頃色々あってな。それはともかくケイさん優花里がちゃんと帰れたか心配してたぞ」

 

「そうなんですか?」

 

「あぁ、それと作戦もお前が聞いたのと同じだってさ。存分に作戦立ててやろうぜ」

 

「ケイさんが……なら信用できるね。優花里さんありがとね。頑張って作戦考えてみる」

 

「西住殿にありがとうって言ってもらえました!」

 

「「大袈裟すぎ……」」

 

 

黒森峰にいた頃にあった出来事の名残でケイの番号を知っていたりく。電話の内容を一緒にいるみんなに伝えたら、みほが優花里にお礼を言った。するとそれだけで優花里がものすごく喜んだ。

 

翌日から基本練習に加え、サンダース戦に向けての練習を開始し、それぞれ練度を上げていった。

 

そしてサンダースの当日を迎えた。

 




今回はここで終わります。次回はサンダース戦に入るつもりです。

お気に入り増えてきました。感想や評価などもいつでもお待ちしております。


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10、1回戦開始!

遅くなってしまいすみません。最近忙しくてやっとできました……試合要素少なくなってしまっています。


 

 

「いよいよだねお兄ちゃん」

 

「ああ」

 

 

今日は戦車道全国大会で大洗の初戦の日。会場に到着した大洗学園のみんなは準備をしているところだ。

そこへ

 

 

「ハーイりっくー!」

 

「ケイさん?」

 

 

サンダースの隊長であるケイと副隊長のナオミが大洗のところへやってきた。やってきたと思ったら突然ケイはりくのところへ走り出した。

 

 

「会いたかったわりっくー!…………あれ?な?で避けるのよー!」

 

「久しぶりに会えたのは嬉しいですけどね、抱きつこうとしないでくださいね」

 

「りっくーのケチ〜まぁいいわ!あとでにしておくとして……」

 

「いや、後ででもしなくていいからな」

 

「今日はよろしくね!」

 

「はい!負けませんけどね、って俺が挨拶しちゃってもな〜」

 

「ってなわけで、会長の私が来たよ」

 

「タイミング良すぎ!?会長楽しんで見てたな!?」

 

 

りくは何度も抱きつこうとしたケイのことを避け続けていると、一度諦めたのか抱きつこうとするのをやめ、試合前の挨拶をし出した。そこにタイミングよく会長がやってきた。良すぎるくらいに……

 

 

「生徒会長の角谷杏だ、今日はよろしく頼む」

 

「アンジーね!よろしく」

 

「角谷杏だからアンジー?」

 

「馴れ馴れしすぎる!」

 

「まぁまぁ、ケイさんはこんな性格だからいちいち気にすんな」

 

 

会長とケイで挨拶をしているが、あまりにも馴れ馴れしすぎる呼び方に河島が少し怒っているが、ケイの性格を知っているりくが落ち着かせた。

 

「そうか、ところで何しに来た!」

 

「それはもちろんりっくーに会いに来たのよ!」

 

「そっか、じゃあ帰れ!」

 

「りっくーそれは酷いってば〜」

 

「隊長……ふざけるのもそれくらいに……試合前の親睦を兼ねて大洗を招待しに来たのよ」

 

「おっ、いいね〜」

 

「そういうことよりっくー!」

 

「最初からそう言えばいいのに……(まっ、ケイさんは招待しに来たのかわからんが……)」

 

「それじゃあ……っと、その前に、オッドボール三等軍曹!」

 

「っ!?見つかったであります!?」

 

 

サンダースのケイとナオミが大洗の所にやってきた理由は、試合前の親睦を兼ねた交流として招待しに来ていた。もっとも、ケイは本当にそれが目的では来ていないだろうが……

 

サンダースのブースに行こうとした時、優花里のことを見つけたケイが声をかけた。

 

 

「怒られるのかな?」

 

「大丈夫、ケイさんはそんな人じゃないさ。ケイさんはな」

 

「り、りく殿……その言い方は怖いであります……」

 

「この間は大丈夫だった?」

 

「は、はい。りく殿に電話がかかって来た時一緒にいました」

 

「それならよかったわ、また遊びに来てね!歓迎するから!」

 

「は、はい!ありがとうございます!」

 

「それと私のりっくーもね!」

 

「いや、ケイさんのじゃねぇから……」

 

 

サンダースの隊長であるケイは優花里の行動について怒っていない。ルール上認められていることだから特に怒らなかったのだろう。まぁ性格の問題もあると思うが。

 

招待を受けた大洗はサンダースの待機場所まで行くと、サンダースが金持ち高校ということを実感することとなった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

『大洗学園VSサンダース大付属高校 試合開始!』

 

「作戦通りアヒルさんチームとウサギさんチームは偵察をお願いします」

 

「「了解です!」」

 

 

審判の合図で大洗学園の初戦が始まった。大洗は最初に決めていたように偵察を2両出して相手を探っている。

 

一方サンダースは……

 

「こちらウサギチーム!シャーマン6両が向かってきます!退避します!」

 

 

なんと10両中6両をいきなり森に投入している。半数以上をいきなり投入とは大胆な行動だ。

 

 

「6両!?多すぎだろ!?」

 

「急いで離脱してください!アヒルさんチームとあんこうチームで増援にいきます!」

 

 

みほの指示でウサギチームがなんとか逃げている。あんこうチームとアヒルチームがウサギチームと合流はできた。しかし……

 

 

『正面から3両来ました!』

 

「はぁぁあ!?いくらなんでも大胆すぎるだろ!?」

 

 

合流し森から出ようとしたあんこう、ウサギ、アヒルの3チームの前に、先回りしてきたサンダースの戦車が3両回り込んできた。さすがのりくも予想できなかったみたいだ。というよりおかしいと思い始めている。

 

 

「このまま突っ切ります!あんこうが先行するのでついて来てください!」

 

「マジですか!?」

 

「了解です!」

 

 

みほの判断で、前方からやってきた3両の間を通って脱出を試みた。先行していたあんこうチームが抜けると、その後ろを走っていたウサギとアヒルチームも後に続いて脱出に成功した。

 

 

「3チームとも無事か!?」

 

「あんこうチームは無事です!」

 

「こちらウサギチーム、私たちも無事です!」

 

「アヒルチームも無事です!」

 

「3チームとも無事でよかった!とりあえず一旦身を隠してくれ!いきなり10両中9両を森に投入してくる大胆さだ。作戦を立て直さないとまずい」

 

「「「了解!」」」

 

 

無事に窮地を脱出した3チームは、りくの指示で一度身を隠すことにした。

 

その頃観客席では…………

 

 

「いきなり10両中9両って……すげぇことするな。やられない自信があるからか?…………ん?なんだあれ?まさかサンダースが不正?………あそこにいるのもしかして………」

 

 

普段はサポート役をしている翔太が空に浮かんでいる白い気球のようなものを見つけていた。ただ翔太にはそれがなんなのかわからない。誰かに聞こうと周りを見渡すと、とある人を見つけていた。

 

 

「隊長……サンダースが打ち上げているあれはやはり……」

 

「あぁ…エリカが思っている通りだろうな」

 

「やっぱりまほ姉だ!」

 

「「ん?」」

 

 

翔太が見つけたところにいたのは、黒森峰の隊長と副隊長であるまほとエリカだ。翔太はまほとは初対面ではない。だからまほのところに駆け寄っていったのだろう。エリカとは初対面だが。

 

 

「まさか……翔太か?」

 

「当たり!久しぶり!」

 

「ほんと久しぶりだな」

 

「隊長……この方は?見たところ大洗の生徒のようですが」

 

「翔太は昔よく一緒に遊んでたんだ。みほも一緒だったか」

 

「そうだな……ってそうじゃなくてまほ姉に聞きたいことがあってきたんだよ!」

 

 

久しぶりに再会した翔太とまほだったが、今は再会の喜びよりも大事なことがあってやってきている。そのためまほにすぐ聞きたいことを聞き始めた。初対面のエリカとまともに挨拶もせずに……

 

 

「あの浮かんでる白いのってなんだ?まさかサンダースが不正なことを……」

 

「それはない。褒められた事ではないがルールで禁止されているわけではない」

 

「褒められた事じゃないっていったい……」

 

「無線傍受機だ」

 

「…………えっ」

 

 

浮かんでいるものが無線傍受機だと聞いた翔太は、驚きのあまり目を丸くした。ルールでは禁止されていないとはいえ、こんなことをしてくるのかと……

 

 

「禁止されていなければルール違反にはならない。褒められたことではないが抗議してもおそらく審判団は聞いてくれないだろう」

 

「そんな……いくらルールで禁止されてないって言ったってこんなこと……」

 

「そうね、たしかにこんなことよくないと私も思うわ。それでもみほやりくなら乗り越えてくるでしょ。あなたはそう信じてないの?」

 

「………そうですね、りくやみっちゃん、みんなを信じます。あっ、俺佐藤翔太っていいます。2年です」

 

「そう、同い年ね。私も2年よ、黒森峰で副隊長をやってる逸見エリカ。よろしく」

 

「よろしく逸見さん」

 

 

ルール違反でないなら抗議しても無駄だと聞いた翔太は少しの間ショックを受けていた。だがエリカの言葉でみんなを信じることができた。みんなならなんとかできると、その流れでお互いに自己紹介を済ませた。

 

 

『全車ジャンクションに集合してください!立て直します!』

 

「どうやら気付いたようだな。集合と言いつつ集まっていない」

 

「ってことはみっちゃん気が付いたのか。となると連絡手段はやっぱり……」

 

『1両撃破した!だがもう1両には逃げられた!』

 

「よしっ!」

 

 

大洗がサンダースの車両を1両撃破したようだ。先に1両倒したのが大洗ということにエリカは驚いていた。まほは表情を変えずに見ていて、一緒にいた翔太は喜んでいる。

 

大洗が先にサンダースの車両を撃破したことにより、サンダースの隊長であるケイを本気にさせたようだ。




今回はここで終わりにします。次回でサンダース戦は終わらせるつもりです。ただし投稿はいつになるか未定です……
電車の移動時間だけで作っていたので、投稿まで時間かかってしまいました。それに構成も雑かもしれません。

次回は少しでも良くなるように頑張りますね。それでは次回もお楽しみに。


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11、白熱する1回戦

今回で1回戦終わります。


………………砲撃音とか書くのやっぱり難しい


翔太がまほと再会している頃

 

 

「アレは………ケイさんどうして………」

 

「りくりく?どうして無線切ったの?」

 

「無線傍受機が打ち上げられてる……ケイさんなんでだよ……」

 

「なんだと!?」

 

 

38tにいるりくは他の人より早く無線傍受機に気が付き、自分が乗っている戦車の無線を一度切った。そしてみほにメールで傍受機のことを伝えた。

 

 

「審判に抗議だ!!」

 

「かぁしま〜落ち着け」

 

「落ち着いてなのいられませんよ!」

 

「ルールで禁止とは書かれていないんだからさ〜抗議してもおそらく無駄だよ」

 

「というか無線傍受機を使うことなんて運営も想定してないだろうな」

 

 

河島が抗議すると言い出したが会長がそれを止めた。抗議してもルールで禁止されていないから無駄だと思っているからだ。そもそも大会の運営者もまさか無線傍受機を使う人がいるだなんて考えがまずない。

 

 

「ケイさんがこんなことする人じゃないし認める人じゃない……となるとやっぱり別の人が独断で……」

 

「りくりくはおケイのこと信じてるんだね」

 

「最初はショックを受けましたけど……でもあの人はフェアプレーに戦いたい人。だからケイさんじゃないって信じたいだけです」

 

「りく君相手の隊長のことよく知ってるんだね」

 

「よくでもないですけどね。それじゃあ対策を…………もしかしたら沙織なら」

 

 

ケイじゃないと信じたりくだが、対策として1つの案を思いついた。それを確認するために隊長をやっている妹のみほと同乗者の沙織宛にメールを打っている。

 

 

『みほ、沙織!無線傍受機が打ち上げられてる、無線で嘘の情報を流してメールで本当の作戦を伝え合うようにしたい。沙織、翔太以外全員分のメアド分かるか?』

 

 

速攻で文字を打ち2人に送信した。その頃IV号の方でも……

 

 

「たしかにルールには禁止と指定されていませんね」

 

「いくらお金があるからって酷い!」

 

「抗議しましょう!」

 

 

一度身を隠したIV号のキューポラから、IV号の乗員であるみほ、優花里、華、沙織、麻子の5人は顔を出しルールブックを確認している。そこにはたしかに無線傍受機を使ってはいけないとは書かれていない。

 

 

「抗議するよりここは相手の策を利用します。無線で嘘の情報つつ、メールで本当の作戦を伝えたいですが全員分のメールアドレス知ってる人いますか?翔太君は参加していないのでその他で構いません」

 

「あ、みぽりん!私知ってるよ!」

 

「それでは全員にそのことを通達……」

 

 

ピロリン

 

 

「メール?」

 

「私もだ」

 

「同時にか、となるとりくじゃないか?無線傍受機に気付いたりくが西住さんと沙織にメールを送ったってところだろう」

 

「麻子さん凄い……」

 

「しかも作戦もみぽりんと同じ……」

 

 

全員分のメアドを知っている人いるか確認したところ、沙織が名乗り出た。しかもタイミングよくりくから送られたメールの内容は、先程みほが考えた作戦と同じ。そして沙織なら全員分のメアドを知っていると思い、みほだけでなく沙織にも送ったのだろう。

 

 

「私がお兄ちゃんに返信………いえ、沙織さんが一斉に送信してもらっていいかな?そうすればお兄ちゃんにも伝わるから」

 

「もちろん!」

 

「おっ、みほか沙織どっちかから返信かな?」

 

「私にも来たぞ」

 

「私のところにも来ました」

 

「私のところもだよ〜」

 

「3人も?となると一斉メールの可能性が高い……つーかもしかして同じこと考えてた?」

 

 

38tに乗っているりくの携帯が鳴ったと思ったら他の3人の携帯も鳴った。メールのタイミングや早さ、一斉メールが送られたことから同じことを考えた可能性が高いと即座に考えついた。実際にそのメールには

 

 

『あんこうチームの武部沙織です。この試合これからはみぽりんが無線で嘘の情報を流して私が本当の作戦をメールで伝えていきます。携帯を確認できるようにしていてください。メール読みましたら各車長返信お願いします』

 

 

と書かれていた。

 

 

「さっきりくりくがメールで送った内容だね〜返信するよ〜」

 

 

沙織から送られたメールの内容はりくがみほと沙織に送った内容と同じ。だからすぐに返信できた。そのすぐ後に他の車長からも返信が入り準備が整った。

 

 

『全車ジャンクションに集まってください!一度立て直します!』

 

 

大洗の無線で指示が入るとサンダースも動きだした。傍受してる人が隊長のケイに指示を出したからだ。

 

だがそれはみほの嘘の指示である。

 

 

『見つかった!退却してください!』

 

 

見つかったから退却……傍受してる人は実際にそう思ったのだろう。でも実際にそこにいたのはアヒルさんチームだけ、木や枝で作った箒を使い土煙を立てて全車で逃げているように見せている。

 

追いかけようとしたサンダース2両の近くに待ち伏せていた三突が砲塔を向けている。

 

 

「ジーザス!?」

 

「撃てー!」

 

 

ダーンッ………シュパ

 

 

「1両撃破!だがもう1両には逃げられた!」

 

『了解です。深追いはしないでください』

 

 

見事に1両倒すことができ、大洗が先に倒す形となった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

『1両撃破されました!』

 

「WHY!?やるわね!」

 

「そ、そんな馬鹿な!?くっ、いい気にならないでよ」

 

 

サンダースの方では1両やられたことに驚いている。その中でも通信を傍受していた生徒……アリサは特に驚いている。自分が聞いた内容と違ったからだ。それでも懲りずに通信傍受を続けている。やめればいいものを……

 

 

『全車128高地に集合してください!フラッグ戦とはいえファイアフライがいる限り私たちに勝ち目は薄いです!危険ですがまずはファイアフライを叩きましょう!』

 

「ふっふっふ、あーはっはっは、勝負に出たわね!丘に上がったらいい的にしかならないわ!128高地に進んでください!敵の全車両が集結します!」

 

「どういうこと?なんでそんなことがわかるの?」

 

「女の勘です!そして私の情報は正確です」

 

「アッハハ!了解!フラッグ車以外全車128高地集まるよ!ここで決めるよ!」

 

 

サンダースはアリサからの情報を元にしてケイが指示を出す。しかしサンダースが向かっている場所は大洗が嘘の情報を流した場所、つまりそこに到着しても見つけることはできない。

 

 

「何もないよー!!」

 

「何ですって!?」

 

 

128高地に到着したケイたちだが、嘘の情報だったので当然そこには大洗はいない。それなら大洗の車両はどこにとアリサが思い始めたその時

 

 

「「あっ……」」

 

 

サンダースのフラッグ車のところに、大洗のアヒルチームが偶然やってきた。

そしてほんの数秒静寂が訪れた………

 

 

「右に転換!急げ!」

 

「追いなさい!」

 

 

キューポラから顔を出しているアヒルチームの車長の磯部が指示を出してその場を離れると、サンダースフラッグ車も追い出した。

 

 

「報告しなくていいんですか?」

 

「するまでもないわ!」

 

「敵フラッグ車0765地点で発見しました!でもこちらも見つかりました!」

 

「0765地点ですね?それでは逃げ回って引きつけてください!全車0615地点に移動!武部さんメールお願いします!」

 

 

サンダースフラッグ車は、見つかったことを隊長のケイに報告しないでアヒルチームを追っている。逆にアヒルチームは報告をして0615地点に引きつけるため走っている。

 

 

「フラッグ車見つけたみたいだね〜」

 

「みたいっすね、ここはアヒルチームが上手く逃げられることを信じて0615地点に向かいましょうか」

 

「そうしたら私の手で……」

 

「桃ちゃん落ち着いて。私たちはフラッグ車だから前に出過ぎないようにするからね」

 

「なんだと!?」

 

「いやなんだとじゃねぇよ……」

 

 

沙織からのメールを見た大洗のみんなは0615地点に向かい出した。アヒルチームは発煙筒を使ったりして相手の視界を奪いながら逃げている。そしてサンダースフラッグ車の視界を奪っていた煙幕が晴れると、開けた場所に出ることとなった。そこには大洗の戦車が砲塔を向けている。

 

 

「はっ!?ストップストップ!?」

 

「撃て!!」

 

 

ダーンッ!!

 

 

フラッグ車に向けて撃たれた砲撃は当たらなかった。煙幕が晴れた一瞬で周りの状況を見たアリサが慌てて止まるように指示を出したため、ギリギリで避けることができた。だが今度はサンダースのフラッグ車は大洗の戦車に追われることとなった。

 

 

「撤退!急いで撤退しなさい!」

 

「全車追ってください!ただしカバさんチームとウサギさんチームは、フラッグ車であるカメさんチームを守りながらお願いします!」

 

「こちらウサギチーム、了解しました!」

 

「こちらも了解だ」

 

「サンダースの応援が戻って来る前に決められたらベストだな。今のうちに決めるぞ!」

 

 

大洗のフラッグ車であるカメチームはウサギとカバチームに守られながら走っている。ここでようやくサンダースフラッグ車車長のアリサは、隊長であるケイに通信を入れた。

 

 

「大洗全車はこちらを追っています!」

 

「ちょっとどういうこと?」

 

「はい……お、おそらく通信傍受機を逆手に取られて……」

 

「ばっかもーん!戦いはいつもフェアプレーでって言ってるでしょ!」

 

「す、すみません!?」

 

「いいから早く逃げなさい!ハリーアップ!」

 

「イエスマム!」

 

「う〜ん……無線傍受しておいて全車両で反撃っていうのもアンフェアね〜ここは同数で行こうか、3両だけついてきて!ナオミ、お願いできる?」

 

「了解」

 

 

ケイに報告したアリサは、案の定通信傍受機を使っていたことについて怒られたら。ただ今は試合中。必要最低限の説教だけをして試合に戻った。全車で行くのもありかと思ったが、ケイの性格上同数でいきたかったのか、3両だけを引き連れてアリサや大洗がいる場所へと向かい出した。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「こんな展開になるとは……ある意味予想外です」

 

「……」

 

「戦車道ってこんな展開あんまないのか?」

 

「そうね、蝶野さんなら新鮮でいいとか言ってるんじゃないかしら?」

 

「えぇ……」

 

「アッハッハ!新鮮でいいわ!」

 

黒森峰の2人と未だに一緒にいる戦車道にそこまで詳しくない翔太は、今の追いかけっこのような状況について聞いている。そして戦車に座って試合を見ている蝶野さんは、エリカの予想通り笑っている。

 

しばらくその状況が続いていると

 

 

ドゴォォォーン!!

 

 

と大きな音が聞こえた。サンダースの戦車4両が追いかけっこをしている場所へと到着し、ファイアフライ17ポンド砲が撃った音だ。

 

 

「今のは……」

 

「ファイアフライ17ポンド砲ですね」

 

「来たー!」

 

 

砲撃音が鳴って数秒後、みほと優花里はキューポラから顔を出してサンダースの増援の姿を見つけた。今の距離は5000m、ファイアフライの有効射程は3000mのためまだ大丈夫と呟いた。でも油断はできない。一方サンダースのフラッグ車内では喜んでハイタッチをしている。勝った気になっているのだろう。

 

 

「距離はまだ少しだけ余裕ある。でもそのうちその余裕もなくなるぞ」

 

「わかってる!アヒルさんとウサギさんはカメさんの後方をお願いします」

 

「河島先輩、装填お願いできますか?」

 

「わかった、砲手は頼んだぞ」

 

「了解!」

 

 

走りながらアヒルチームとウサギチームはフラッグ車であるカメチームの後ろへと回り護衛に、フラッグ車内ではりくが砲手に、河島が装填手と役割を変更していた。

 

 

ドカーン!

 

…………シュポ

 

 

その数秒後、大きな音とともにアヒルチームがやられてしまい火が出てしまった。

 

 

「アヒルさんチーム怪我人は!?」

 

「大丈夫です!」

 

「すみません!戦闘不能です!」

 

 

どうやら怪我人はいないらしい。ただ行動不能になり、火が出ているため消化作業を行なっている。そしてそのすぐ後に……

 

 

「すみません!鼻が長いのにやられました!」

 

 

ウサギチームまでやられてしまった。そして飛んでくる砲撃のうち1つが、大洗フラッグ車に向かって飛んでいる。カメチームでそれに気付いているのは会長とりくだけ。でも2人とも全く動じていない。

 

 

「よし捉えた!」

 

「おそらくまだよ」

 

「隊長?どういう……」

 

 

ダーンッ!

 

 

「……えっ」

 

「出たわね〜悪魔の砲撃」

 

「そんな……」

 

 

りくがグロリアーナ戦で見せた砲撃の撃ち落とし……悪魔の砲撃と呼ばれている砲撃をしてフラッグ車に当たるのを防ぐことに成功した。念のため砲手を交代しておいたのがよかった。

 

 

「河島先輩装填急いで!」

 

「もう無理だー」

 

「河島先輩!!」

 

「かぁしま!」

 

「桃ちゃん!」

 

 

まだ試合中だと言うのに、河島はもう諦め始めてしまった。フラッグ車にいる河島だけじゃない。前を走っているカバチームも辞世の句を詠み始めたし、隊長であるみほも諦めかけている。

 

 

「ちっ、会長頼む!」

 

「重っ……持ち上げるのに一苦労だね」

 

「俺の左の手の平に当ててくれればいい。俺が掴んでそのまま装填する……はっ、左に転換!」

 

「「わかった!」」

 

「ひっ!?」

 

 

途中から装填手をやることとなった河島は諦めているためか、同じ戦車に乗っている3人の声が届いていない。そのため会長に装填を手伝ってもらっている。その最中照準器から相手を見ていたりくが指示を出し、フラッグ車が狙われた砲撃は戦車を掠めただけとなった。

 

 

「なぁみ……いや隊長、さっきから隊長の指示が聞こえないけどもう諦めたとか言わないよな?」

 

「お兄ちゃん……」

 

「まだ俺たちは負けてねぇぞ!なのにまさか諦めたとか言わないよな?」

 

「そう………だよね、ごめん。諦めかけてた。でも諦めたらそこで終わりだよね、当てさえすれば……フラッグ車を倒すだけで勝てるんです!最後まで全力でやりましょう!」

 

「諦めたらそこで終わり……その通りだな」

 

「そうぜよ。諦めるのは早いぜよ」

 

「全く……」

 

「いやもう無理だよ柚子ちゃぁぁん」

 

「諦めんな!何のために砲手交代したと思ってるんだよ!諦めるつもりなら交代しねぇよ!だから河島先輩装填しっかり頼みます!」

 

「りく……わかった」

 

「この状況で相手フラッグ車を倒せるのはIV号だけだろうし、俺たちは援護するぞ!会長はIV号の動きを見てくれ!サンダースの車両は照準器から見る!」

 

「了解、任せて!」

 

「小山先輩、さっきみたく急な指示が多くなるかもしれない。難しいかもしれないけど反応して動いてくれ」

 

「了解です」

 

 

諦めかけてた大洗のみんなだが、りくの言葉でみんなに闘志が戻った。それでもフラッグ車である38tの後ろを守る戦車はいないからピンチなことには変わりない。そこはりくの悪魔の砲撃と照準器を覗きながらの操縦指示に頼るしかない。

 

 

「麻子さん、坂を上ってもらえますか?上から狙います」

 

「わかった」

 

「稜線射撃は危険ではあるけど有利ではある。それでいこう」

 

「あんこうチームは上から狙うみたいだよ?」

 

「マジか、となると援護は厳しいな…………みほ聞こえるか?」

 

『聞こえてるよ』

 

「会長から聞いたけど上から狙うんだろ?」

 

『うん』

 

「さすがに下からだと俺の砲撃でも撃ち落とすのは無理だ。だからみほがしっかり指示出せよ」

 

『わかってる。こっちは任せて!お兄ちゃんもやられないでね?』

 

「おう!」

 

 

隊長車であるIV号が上から狙うためなのか坂を上っていった。それを見た会長がりくに伝えると、すぐさま無線を送って通信していた。さすがのりくでも下から砲撃を撃ち落とすことはできない、つまり援護できない状況になったからやられないようにとみほに伝えるためだ。

 

見ていたのはサンダースの隊長であるケイも同じ、フラッグ車車長であるアリサに上から狙うことを伝えると、今度はファイアフライの砲手であるナオミにIV号をお願いした。

 

 

「はっ!?停止!!」

 

 

ダーンッ!!

 

 

「ちっ」

 

 

ファイアフライからの砲撃は、みほの停止という指示のおかげでギリギリIV号には当たらなかった。停止していなかったら危なかっただろうが……

思わず舌打ちをしたナオミだがすぐさま次の砲撃の準備をしている。IV号がフラッグ車を仕留めるのが先か、ファイアフライがIV号を仕留めるのが先かの勝負となった。

 

 

「華さんお願い」

 

「花をいける時のように集中して……」

 

「くっ」

 

 

ダーンッ!ダーンッ!

 

 

2つの砲撃音が鳴り響く。IV号とファイアフライの砲撃だ。この砲撃音のすぐ後に

 

 

ドカーン!ドカーン!

 

 

…………シュポ、シュポ

 

 

2両の戦車に当たりどちらも撃破判定が出た。2両のうちの1両は大洗学園のIV号。主力戦車がやられてしまったが……

 

 

「サンダース大付属高校フラッグ車、行動不能!!よって、大洗学園の勝利!!」

 

 

最後に放った華の一撃がサンダースのフラッグ車を撃破した。

 

これにより大洗学園の勝利が決まった。




今回はここで終わりです。試合後については次回に回します。

何かあれば感想等いつでもどうぞ。評価もしてくれるとやる気が上がります。投稿間隔があいてしまうとしても……

それでは次回もお楽しみに


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12、1回戦後

大変お待たせいたしました。やっとできたので投稿します。終わらせ方ちょっと雑かも……


『サンダース大付属高校フラッグ車行動不能!!よって、大洗学園の勝利!!』

 

 

試合会場に審判のコールが鳴り響く。1回戦の大洗学園vsサンダース大付属高校の試合が行われていたが、たった今決着がついた。大方の予想はサンダースの圧勝、こんなところだっただろう。だが試合に勝ったのは大洗学園だ。

 

 

「みぽりんやったね!」

 

「やりましたよ西住殿〜!」

 

「なんとか勝てたな」

 

「華さんが当ててくれたおかげだよ」

 

「いえ、諦めかけてたところにりくとみほさんの言葉で気力を取り戻したんです。お2人のおかげです」

 

「ううん、私も正直諦めかけてたよ。お兄ちゃんのおかげだよ」

 

『おーい!』

 

 

試合に勝ったのは大洗学園だが、途中大洗のほとんどのメンバーは諦めかけていた。一瞬諦めた人もいたかもしれない。でもりくの言葉でやる気を取り戻し、なんとか勝利まで持っていくことができた。

勝利のコールが鳴り響いた少しした後、大洗のメンバーがあんこうチームであるIV号のところに寄ってきた。

 

 

「華!よくやったな!」

 

「いえいえ、それほどでも」

 

「一撃で仕留めておいてよく言うよ」

 

「お兄ちゃん、試合中ありがとう!お兄ちゃんの言葉がなかったら私諦めてたよ」

 

「いや〜かぁしまも途中諦めて装填しなかったから危なかったよ〜」

 

「会長!?それは言わないでください!?」

 

「いやまぁ事実だし……あれ小山先輩が避けなかったらやられてたからな?」

 

「うっ……」

 

「ハーイりっくー!」

 

「おっと、ケイさんか」

 

 

IV号に集まったみんなが話していると、そこにサンダース隊長のケイがやってきた。勢いよくりくに抱きつこうとしていたが普通に避けた。ケイさんは一瞬残念そうにしたが、すぐに元のテンションに戻り近くにいたみほに声をかけた。

 

 

「あなたが隊長ね?それに私のりっくーにそっくりね!」

 

「前にダージリンさんにも言われましよ。私たち双子なんですけど……私の?」

 

「そうよ?……いたっ!?」

 

「だからケイさんのじゃねぇって!」

 

「なんだ冗談か……よかった」

 

 

隊長同士の挨拶のためか、みほと話しているケイ。そこでりくにそっくりと言われ双子ということを説明していたが、ケイの言った"私の"という言葉に引っかかったみほがどういうことか聞こうとした。そのタイミングでりくがケイの頭にチョップをして冗談だということをみほは理解した。

 

最後の"よかった"という言葉は気になるが……

 

 

「エキサイティーング!今日はありがとね!こんないい試合ができるなんて思わなかったわ!」

 

「わっ!?」

 

「よっと」

 

「りっくー避けなくていいじゃない!ケチね〜」

 

「避けるわ!それよりこちらこそありがとな!まさか1回戦からあの砲撃をさせられるとは思わなかったぞ」

 

「悪魔の砲撃ね?それがなければ撃破できたかもね!」

 

 

相変わらず抱きつこうとしたサンダース隊長のケイ。みほは避けきれなかったがりくはなんとか避けた。

それは置いておいて、試合後の挨拶に移ったようだ。

 

 

「簡単にやらせるかって!」

 

「さすが私のりっくーね!それと今日は悪かったわね、無線傍受なんかして……」

 

「気にすんなよ。あれはケイさんの指示じゃない。ケイさんがあんなこと指示するはずないし、ましてや許可するわけない。ちゃんとわかってるから」

 

「りっくー……」

 

「あ、でも無線傍受機使った人と話はさせてくれないか?」

 

「いいわよ!アリサー!」

 

「なんでしょうか隊長」

 

「あの子よ」

 

「そっか、サンキュー」

 

「お兄ちゃんのことだから文句を言うことはないはずなのでそこは安心してください」

 

「of course!わかってるわ」

 

 

試合後の挨拶をしているとケイが無線傍受機のことを謝っている。だけどりくは特に気にしていない。だけど使った人と話がしたいみたいでケイに教えてもらい、無線傍受機を使って指示をしていたアリサの元へ向かった。文句を言いにいったわけではないとみほは言ったが、そこはケイもわかっているみたいだ。

 

 

「君がアリサさん……でいいんだよな?」

 

「そ、そうだけど私に何か……って無線傍受のことよね……」

 

「そうだ」

 

「そうよね、責められて当然のことしたもんね」

 

「私からも謝るからできるだけ怒らないでやってくれ」

 

「へ?」

 

 

アリサの元へやってきたりく。アリサは無線傍受のことを言われるとわかっていたみたいだ。一緒にいたナオミも謝っているが、2人とも勘違いをしている。りくは怒りに来たわけではない。

 

 

「いやいやいや、一応禁止されてることをやったわけじゃないんだし怒りに来たとか、責めに来たわけじゃねぇよ!」

 

「「えっ」」

 

「俺たちに無線傍受機使ったのもケイさんを勝たせたかったためなんだろ?」

 

「そ、それはもちろん…」

 

「そんな奴を怒ったりしないさ。たださ、そういうことをやって勝ってもケイさんが喜ぶと思うか?」

 

「……た、隊長はフェアプレーでやりたい人」

 

「だろ?ケイさんを勝たせたいっていう気持ちで行動するのは悪くないと思う。それでも方法は考えような?今度からは勝たせたい相手……今で言うとケイさんだけど、ケイさんが知って喜ぶ方法を考えて行動しろ。俺が言いたいのはそんだけだ」

 

「は、はい!今日はすみませんでした!」

 

「まっ、怒られるのはケイさんにたっぷり怒られておけ!あ、あと無線傍受は相手にバレたら利用すんの簡単だからやめた方がいいぞ。じゃあな!」

 

 

言いたいことを言ったりくはケイとみほの元へと戻っていた。戻っている途中でケイもりくの方へ寄ってくる、どうやら話は終わったようだ。すれ違う時に

 

 

「ケイさん、あんま怒りすぎないでやってくれ。今回のこと褒められたことじゃないけどケイさんたちを勝たせたくてやったことだからさ」

 

「それでも方法は選んでもらうわ。その気持ちは嬉しいけどね。まぁりっくーに免じて最小限だけ怒ることにするわ。それともう1つ、次はサンダースは負けないから!」

 

「次も勝つのは大洗です!」

 

 

と軽く話をしてそれぞれの学校の方へ戻っていった。

 

 

「ケイさん…凄い人だったね。お兄ちゃんがアリサさんと話してる時に聞いたの。なんで4両しか来なかったのかって。そうしたらね、戦車道は戦争じゃない、道を外れたら戦車が泣くって言ってたの。それと無線を傍受したことも謝ってたよ」

 

「へぇ〜良いこと言うじゃん。ケイさんはフェアプレーに戦いたい人だからな、そりゃあ謝ってくるさ。サンダースの分も…試合して勝ったチームの分まで頑張らないとな」

 

「うん!」

 

「お〜い!みぽりんとりく早く〜みんな帰る準備してるよー」

 

「帰るか」

 

「うん!」

 

 

りくはアリサと、みほは隊長同士ケイとの話を終えて大洗のみんながいるところへ話しながら戻っている。歩くペースが遅いのか、待ちくたびれた沙織が声をかけた。みほとりくが合流し帰りの準備ができると

 

 

「あれ?麻子携帯鳴ってるよ?」

 

「知らない番号だ、もしもし…………えっ」

 

 

沙織が麻子の携帯が鳴っていることに気が付いた。麻子は知らない番号だったが電話に出ると何やら驚いている。

 

 

「はい……わかりました……」

 

「麻子?どうした?」

 

「なんでもない……」

 

「なんでもないわけないよ!そんなに様子おかしいのに!携帯だって落としてるよ!」

 

「おばあが……倒れて病院に……」

 

『えっ!?』

 

 

電話を切った後、様子がおかしい麻子にりくが尋ねるが何でもないと答える。だけど麻子の様子からそれが嘘だとみんなわかっていた。それに携帯も落とす始末、沙織が少し強めに聞くと麻子のおばあさんが倒れて病院に運ばれたという連絡だった。

 

 

「大変です!早く行かないと!?」

 

「でも一度大洗に戻らないと!?」

 

「くっ!」

 

「麻子何してんの!?」

 

「泳いでいく!」

 

「無茶ですよ冷泉殿!それにりく殿もいるんですから脱いではダメです!」

 

「りくになら見られても構わんから離せ!」

 

「くそっ、どうすれば……そうだ!」

 

 

普段冷静な麻子でもおばあさんが倒れたと聞いて冷静さを失っている。今いる場所から泳いでいけるわけもないのに……

どうするか困っていると、りくが何か思いついたのか携帯を取り出して誰かに電話をかけ出した。

 

 

「頼む出てくれ姉ちゃん」

 

「電話の必要はない、聞こえていた!」

 

「「(お)姉ちゃん!?」」

 

 

りくが電話をかけていたのは姉であるまほ。電話で何かを頼むつもりだったのだろうが、ちょうど近くまでやってきていたようだ。副隊長であるエリカも一緒に。

 

 

「聞こえてたんなら説明の手間が省ける。頼む、姉ちゃんたちが乗ってきたヘリで麻子を院まで連れていってくれ!」

 

「そのつもりできた」

 

「隊長!?なんでこの子たちに……」

 

「エリカ頼む!協力してくれ!」

 

「エリカ、これも戦車道だ」

 

「っ、わかりました」

 

 

りくがまほに電話をかけた理由はヘリで運んでもらうため。黒森峰の隊長と副隊長ならヘリで会場に来ていたと思っていたのだろう。そしてまほもそのつもりでりくたちの近くまで来ていた。エリカは否定的なことを言っていたが、隊長であるまほの説得もあり了承してもらうことに成功した。

 

 

「さっ、早く」

 

「済まない」

 

「私も一緒にいく!」

 

「頼んだぞ沙織」

 

「任せて」

 

「エリカ頼むぞ」

 

「はい…」

 

「悪いなエリカ、あと頼む。安全且つできるだけ早く連れていってやってくれ」

 

「ちゃんと借りは返しなさいよ!」

 

 

麻子と付き添いの沙織がヘリに乗り込むと、まほが声をかけ、りくは謝ると同時にできるだけ早く病院に連れていってもらえるように頼んだ。

ヘリが飛び立って病院の方に向かっていくのを見送ると

 

 

「あ、ありがとう…」

 

「ありがとな姉ちゃん」

 

 

みほとりくは2人でお礼を言った。まほはそれを特に気にしていない様子で離れようとしているが……

 

 

「あれ?そういえば……姉ちゃんちょっと待ってくれ!みんなは先に帰る準備をしててくれ!」

 

「お兄ちゃん!?」

 

「りく殿!?」

 

「りくはどうしたのでしょうか?」

 

 

りくたちの側から離れていくまほだったが、らくが何かに気が付いてまほを追いかけた。そんかに離れていなかったためすぐに追いつけた。

 

 

「どうしたりく?みんなと帰らないのか?」

 

「あっ、いや帰るんだけど……姉ちゃんはどうするんだ?頼んでおいて言うのもなんだけど帰りの足は……」

 

「……私もそこを考えていなかった」

 

「す、すまん……」

 

 

ヘリを使わせてあげたまほだったが、帰りの足が無くなってしまっていた。まほもりくも、早く麻子を病院に行かせたいと思っての行動だったのだが、完全に帰りのことを考えるのを忘れていた。そこでりくはとあることを提案することにした。

 

 

「病院の場所はわかってるし姉ちゃんも大洗まで来ないか?エリカには病院で待ってもらってさ。まぁ街の案内は無理だけど……」

 

「いいのか?早く帰って休みたいんじゃないのか?」

 

「それくらい平気だよ。姉ちゃんたちには助けてもらったしさ」

 

「そうか、ではお言葉に甘えて一緒に行かせてもらおう」

 

 

帰りの足が無くなったまほに対して、りくは一緒に来るように提案をした。表情はあまり変えていないが、困っていたまほはそれに賛同することにした。りくは念のため会長に許可をもらいに行き、その許可はすんなり降り、会長もまほに直接お礼を言うこととなった。

 

その後、りくは病院まで案内してエリカと合流し、まほとエリカの2人は無事帰っていくことができた。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「それにしてもほんと命に別状なくてよかったな」

 

「うん」

 

「そうですね」

 

「ほんとですよ」

 

 

サンダース戦が終わった次の日、あんこうチームのメンバーはとある病院に来ている。今いる病院には麻子のおばあさんが入院していてそのお見舞いである。沙織は麻子に付き添っているため今一緒にはいない。

 

 

コンコンッ

 

 

「「「「っ!?」」」」

 

 

病室に到着してノックをするとみんなは驚いた。部屋の中から怒鳴り声が聞こえたからだ。まぁ怒鳴ることができるほど元気になったというふうに捉えるべきだろう。

 

 

「あっ、みんな!」

 

「なんだい?お前たち」

 

「私と戦車道を受講してて同じチームのみんな」

 

「戦車道?アンタがかい?」

 

「そう」

 

「西住みほです」

 

「西住りくです」

 

「五十鈴華です」

 

「秋山優花里です」

 

 

戦車道と聞いて麻子のおばあさんは怪訝そうな顔をしたが、とりあえずみんな自己紹介することにした。と言っても名前だけだが……

 

 

「おばあのこと心配して来てくれた」

 

「私じゃなくアンタのこと心配して来てくれたんだろう!」

 

「わかってる」

 

「だったらちゃんとお礼言いな!」

 

「ありがと」

 

「もっと愛想よく言いな!」

 

「ありがとう/」

 

「さっきと変わってないよ!」

 

「だから怒鳴ったらまた血圧上がるって」

 

 

麻子と麻子のおばあさんのやり取りに、病室に入ってきたりく達4人は驚いていたがすぐに安心した様子でそのやり取りを見守っている。誰も口を挟もうとしていない。

 

 

「ほら、アンタ達もさっさと帰りな!こんな所で油売ってないで戦車に油指しな!」

 

「(上手いこと言うな〜)」

 

 

麻子のおばあさんが大丈夫そうだとわかり、麻子や沙織を含めた6人は病室を出ようとしたが

 

 

「アンタはちょっと待ちな」

 

「俺?」

 

「そうだよ」

 

 

りくだけ何故か呼び止められた。他のみんなには病室のロビーで待ってもらうこととし、りくだけ部屋に残ることになった。

 

 

「アンタまさかあの子の彼氏だったりするのかい?」

 

「いえ、そういう関係ではありませんよ。友達です」

 

「そうかい、でもまっ、もしそういう関係になったとしても私は止めたりしない。あの子のことを大切に想ってくれるならね」

 

「そんなこと言われるまでもありませんよ。麻子に……いえ、麻子さんにしたって他の誰かとそういう関係になったとしても、その人のことを大切に想う。当然じゃないですか」

 

「そうだね。それじゃあアンタも帰りな。あの子はあんな感じだけど仲良くしてやってくれ」

 

「もちろんですよ!それじゃあ失礼します、お大事に」

 

 

さっきまで麻子に怒鳴っていたおばあさんだが、それも麻子を心配してのことだったのだろう。麻子と仲良くしてやって欲しいことを伝えるともちろんりくは了承した。そのまま病室を出て待っていたみんなと合流した。

 

 

「麻子さん寝ちゃいましたね」

 

「ずっと起きてたからね」

 

「それだけ心配だったってことだろ」

 

 

帰りの電車の中、席に座れたと思ったら麻子はすぐに寝てしまった。何故かりくの膝の上でだが……だけど仕方ないことだろう。沙織が言ったようにおばあさんについてずっと起きていたのだから。りくは寝ている麻子の頭を優しく撫でながら自分の思ったことを言った。

 

 

「麻子ね、みぽりんとりくのこと心配してたよ」

 

「「え?」」

 

「自分の気持ちをちゃんと伝えられてないんじゃないかって。突然言えなくなる可能性もあるし麻子もそうだったから……」

 

「麻子も?」

 

「麻子の両親ね、事故に遭って亡くなっちゃってるの。だから親に言いたいことを言えてないんじゃないかって2人のこと心配してたよ」

 

「そういうことか…」

 

「そうだったんだ……そうだね……私はお兄ちゃんと違って逃げただけ、何も言えなかった」

 

「みほ…」

 

「お兄ちゃんはちゃんと言ったのにね……」

 

 

去年の戦車道の大会での出来事について、試合の後りくとみほは西住流家元でもある母親に呼び出されていた。その場にはまほもいたがその時のまほは言葉を発することはなかった。みほも言おうとしたことはあったが結局何も言えていない。りくだけが自分の思ったことを伝えたのだ。

 

 

「たしかに言える時に言っておかないと本当に言いたいことが言えなくなっちまう。でもみほも今すぐに母さんと話すのは難しいだろ?」

 

「うん……」

 

「だったらこの大会に優勝してさ、それでみほの戦車道を見つけるんだ。それで母さんに自分の見つけた戦車道について話せばいいんじゃないか?」

 

「そうだよみぽりん!」

 

「私たちも優勝するための協力はしますよ」

 

「五十鈴殿の言う通りです」

 

「お兄ちゃん…みんな……うん!この大会で私の戦車道を見つけてそれでお母さんに本音でぶつかってみるよ!」

 

「(これはますます負けられないな、それに俺も自分の戦車道を見つけないとか)」

 

 

もともと負けられないという気持ちで今回の大会に臨んでいたりくであったが、今回の麻子のおばあさんの騒動もあって、ますます負けられないという気持ちになった。みほに自分の戦車道を見つけてと言ったが、それはりくも同じである。りくもまた自分の戦車道を見つけるつもりだ。

 

 

大会の日程も進んでいき、1回戦が全て終了した。黒森峰やプラウダ高校と行った強豪校は順調に勝ち進んでいき、大洗の次の対戦相手はアンツィオ高校に決定した。

 




投稿するまでに時間かかってしまって申し訳ない。仕事が忙しいというのと体調を崩したというのが重なってここまで遅くなってしまいました。あと復帰したアプリのイベントも……

次回は2回戦に入らないつもりです。投稿がいつになるかわかりませんがそれまで待っていてくれると嬉しいです。


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13、2回戦に向けて

どうもお久しぶりです。
11月に投稿してから投稿できてませんでした……申し訳ない。




「2回戦はアンツィオ高校に決まった」

 

 

各戦車の車長とあんこうチーム、りく、生徒会の3人は今生徒会室にいる。2回戦の対戦相手がアンツィオ高校に決まったのでその作戦会議のためだ。あんこうチームと言っても1人いないが…

 

 

「アンツィオ高校ってどんな高校なんですか?」

 

「ノリと勢いだけはある高校だね」

 

「ノリと勢いだけって……」

 

 

沙織がアンツィオ高校がどんな高校か気になったのか質問したら、会長はノリと勢いだけはある高校という言い方をした。雑すぎる

 

 

「アンツィオ高校はたしかイタリアをモチーフにした学校だったはずだ。戦車もたしかイタリア関連の戦車だったはずだぞ」

 

「へぇ〜」

 

「小山先輩何か情報ありますか?何か資料持ってるようですけど」

 

「先に言われちゃったけどりく君の言う通りアンツィオ高校はイタリア風の学校です。1回戦で使われた主力はカルロ・ベローチェ、セモヴェンテ、それと最近秘密兵器を購入したみたいだけど1回戦で使われていないので情報はありません」

 

「………会長まさかそれで」

 

「おっ、りくりく察しがいいね〜上手くいけば秘密兵器の情報はもうすぐ手に入ると思うよ」

 

「それってどういう意味……」

 

 

バンッ!!

 

 

『っ!?』

 

 

りくと小山がアンツィオ高校の情報を伝え、秘密兵器があるということになるとりくが何かを察した。会長の秘密兵器の情報はもうすぐ手に入ると言うと生徒会室のドアが勢いよく開けられた。もっと静かに開ければいいものを……

 

 

「優花里さん……また?」

 

「みほ、正解だと思うぞ」

 

「はい、潜入してきました!」

 

「「やっぱり……」」

 

 

優花里が入ってきた格好を見て、みほは思ったことを言ってみたら正解だった。りくとみほが思った通り優花里はアンツィオ高校に偵察に行っていた。生徒会室に着いた優花里はすぐさま録画してきた様子を流し出し、それを生徒会室にいるみんなで見始めた。

 

 

「アンツィオって楽しそうな高校だね、よく屋台出すだなんて」

 

「鉄板ナポリタン美味しかったでありますよ!」

 

「それは食べてみたいね」

 

「沙織、太るぞ」

 

「もぅ〜麻子はなんでそういうこと言うの!!たくさんは食べないってば〜」

 

「はいはい、そんなことは後にして作戦とか考えるぞ」

 

「そ、そんなことで一蹴された!?」

 

「いや、ほんとそんなことだし…」

 

 

1度話が脱線しかけ……というか少ししていたが、りくがそれを元の話に戻し、作戦会議を始めることとなった。

 

 

「とりあえず優花里の偵察で秘密兵器がP40ってことがわかったな。他の戦車も今までの情報通りだ」

 

「となると後はP40の情報についてだね〜西住ちゃんとりくりく何か知ってる?」

 

「私は特に…」

 

「俺も…」

 

「P40のがあるかわからないが、イタリアの戦車の資料なら家にあるぞ」

 

「ほんとかエルヴィン!?」

 

「よかったら家に来て見てみるか?」

 

「いいのか?」

 

「わ、私もいいかな?」

 

「もちろん」

 

 

その日の会議はこれで終了。続きはP40の資料を見てからということとなり、この日は戦車の整備をして終わりとなった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「ここみたいだな」

 

「表札もソウルネームなんだね」

 

 

りくとみほは今エルヴィンの……いや、カバざチームが一緒に暮らしている家の前まで来ている。そこの表札を見てみると、普段呼ばれているのと同様にソウルネームとなっていた。

 

 

「ごめんくださ〜い」

 

『……』

 

「あれ?留守なのかな?」

 

「いや、多分カエサルだと思うけど装填の練習をしてる音がするし留守ではないかな。他の3人はわからんが」

 

 

みほが呼びかけても家の中からの返事はなし、だが装填の練習音が聞こえるから留守ではないみたいだ。

もう一度呼びかけるとカエサル以外の3人が揃って出迎えにきた。

 

 

「P40の資料があるかわからないけど……イタリア関係の資料で家にあるのだとこれくらいかな」

 

「これくらいって……意外とあるな」

 

「お兄ちゃん読める?」

 

「……無理」

 

「お兄ちゃんでも無理なんだね」

 

「……私は読めるぞ?」

 

『えぇ!?』

 

 

資料は用意できてもその資料はイタリア語、読めなければ理解することができない。みほはりくに読めるか確認したが無理、これは無理かと思ったらカエサルが読めるそうだ。その場にいるみんなは驚いたがもっと驚いたのが

 

 

「イタリア語とラテン語は基本だろ?」

 

 

と言ったことだ。別に基本ではない。

 

 

「その基本は置いておいて、それじゃあ重要な部分を書き出してくれないか?」

 

「了解だ」

 

 

資料を読み重要な部分を書き出していくカエサル。それが終わり、りくはそこから次の練習の日までにP40の特徴を頭に入れていった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「ふむふむ、P40の性能はなんとなくわかったよ。西住ちゃん。うちでP40に近いのはどれかな?」

 

「大洗だとIV号が近いです。それと三突なら相手の有効範囲外から撃ち抜くことができます」

 

「それじゃあIV号を仮想ピヨピヨとしてやってみよっか」

 

「ピヨピヨって……」

 

「それでアヒルさんがカルロ・ベローチェってところだね」

 

「それでは、IV号と89式を仮想敵として模擬戦をやってみましょう」

 

 

アンツィオの戦力であるカルロ・ベローチェをアヒルさんチームの89式、そして新戦力のP40をIV号を適役として模擬戦を開始した。

 

したのだが……

 

 

「よくもやったな!反撃してやる!」

 

「いやそういうのいいから!?」

 

「勝手なことしていいの?」

 

「いいからやれー!」

 

「いやいや!?やれじゃねぇよ!?って小山先輩もこんなことに付き合わなくていいから!?」

 

「こうなった桃ちゃんを止めるのは無理……」

 

「……」

 

 

練習を始めたのだが八九式の攻撃に反撃しようと川嶋が練習内容と違うことを言い始めた。その暴走のせいで八九式と38tは勝手に攻撃し合うこととなった。

 

 

「まぁまぁ、りくりく落ち着いて干し芋食べてようか?」

 

「おいこら……はぁ……あんこうチーム聞こえるか?」

 

『こちらあんこうチーム!りくどうしたの?』

 

「いや〜こっちのチーム1人のバカのせいで本来の内容での訓練ができそうもないんだよ。だからさ、そっちで上手くやってれ」

 

『河島先輩が……わかった、みぽりんに伝えておくね』

 

「頼んだ!……いや〜名前言わなくてもわかったみたいだな」

 

「みたいだね、りくりく悪いけど装填お願いね〜」

 

「はぁ…………」

 

 

名前を言わなくとも誰のことか理解をした沙織、カメさんチームとアヒルさんチームはみんなの訓練とは違う動きをしていた。もちろん河島の砲撃は1発も当たっていない。

 

他のチームは予定通りに……とはいかなかった。なぜなら…

 

 

「ここどこだろ?」

 

 

M3リーに乗っているウサギさんチームが迷子になってしまっていたからだ。今まともな訓練をしているのはあんこうチームとカバさんチームのみだ。

 

 

『もしもしりく?』

 

「翔太?どうした?」

 

『いやさ、ウサギチームが迷子になったっぽくてさ、上からじゃ細かい道が見えないからさ、地図あれば俺の携帯に写メで送ってくれ。あとウサギチームの誰かの携帯の番号も』

 

「番号はともかく……会長地図ある?1年が迷ったみたいで翔太に指示出してもらうために必要でさ」

 

「了解、ちょっと待ってね〜今りくりくの携帯に送るね〜」

 

「了解。その間にっと……ウサギチーム聞こえる?」

 

『りく先輩?』

 

「翔太から迷子になってるって聞いた。翔太に指示出してもらうから梓の番号教えていいか?」

 

『大丈夫です、ご迷惑をおかけします』

 

「翔太?今から送るからあとは任せたぞ」

 

『了解!』

 

 

上から見ていた翔太に地図とウサギチームの梓の番号を教えて指示を出してもらい、無事あんこうチームと合流できた。まぁ突然出てきてあんこうチームのメンバーは驚いていたが……

 

 

「あっ、みほたちに言っておくの忘れてた」

 

「あっ、みっちゃんたちに言うの忘れてた」

 

 

りくと翔太は2人とも言い忘れていたせいでもあったが、無事合流はできたため訓練に戻れた。ウサギチームはあんこうチームと一緒に訓練を始めた。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「今日の訓練は終わりにします!みなさんお疲れ様でした!」

 

『お疲れ様でした!』

 

「各車長は今日の反省会もやるからまた生徒会室に集合な!あ、生徒会は3人ともお願いします」

 

 

それぞれの車長と生徒会の3人は反省会のため生徒会室に集合した。他にも自主参加で集まったメンバーもいる。

 

 

「そんじゃさっさと始めるか、みんなお疲れ様。まずはあんこうチームとカバさんチーム、仮想相手の有効範囲外からの攻撃の感覚は掴めたか?」

 

「だいたいは掴めた。だけどまだ練習は必要だけどかな」

 

「私も撃ちましたけどまだ練習は必要ですね」

 

「その割には1発で当ててたような……」

 

 

カバさんチームの砲手左衛門佐とあんこうチームの砲手華は、2人ともある程度は掴んでいるみたいだがまだ練習は必要だという自己評価。上から見ていた翔太は華が1発で当てたのを見ていた。

 

 

「了解。それじゃあ次にウサギチームにすっか。あんこうチームとやってみてどうだった?」

 

「私たちの砲撃は1度も当たりませんでした。原因としては動きながら撃っていたからじゃないかって考えました。あっているかわかりませんけど……」

 

「そこのところはみほ、翔太、どうだった?」

 

「私は途中キューポラから顔を出してなかったから全部はわからないけど、顔を出してる間は全部動きながらだったかな」

 

「上から見てたけど止まって撃つことはなかったな」

 

「おそらく原因としては梓の考えた通りだと思う。慣れないうちは止まって撃った方が狙いはつけやすい。ただ止まって撃つ時は周りの状況を確認して、自分が狙ってる相手以外がいないことを確認してだな。他にいるのに止まってたら撃つ前に撃たれる」

 

「はい」

 

「あと迷子になるのはやめてな」

 

「は、はい……すみません」

 

 

ウサギチームは自分たちの砲撃が当たらない理由をちゃんと考えられていた。相手をしていたみほや上から見ていた翔太に聞いてみても考えている通りだと思われた。

 

 

「最後にカメチーム……つーか河島先輩言いたいことは?」

 

「私の砲撃を避け切るとは、バレー部やるな!」

 

「会長〜これ殴っていいですかね〜」

 

「いやぁ〜気持ちはわかるけどそれはちょっと…」

 

「まぁそれは冗談だとして、今回の訓練の目的から外れすぎなんだよ河島先輩」

 

「なっ!?」

 

「ちゃんとその訓練の目的に沿って練習しろっ!」

 

「うっ…」

 

「ついでに砲撃もっと練習しろ。

 

さて、今日はこれくらいでいいだろ。そんじゃみほ」

 

「うん。2回戦に向けての練習は今日が初めてです。今日出た反省点を活かしてこれからの練習をやっていきましょう!」

 

『はい!』

 

 

2回戦の対相手はアンツィオ高校、その対策としての練習が今日から始まった。それぞれの反省点を出していき、翌日からそれを活かせるように練習をしていったり、この先のことを考えて新たな戦車を探したりした。

 

そして日が経ち、アンツィオ戦当日を迎えたのだった。

 

 




楽しみにしていた方、お待たせしてしまい申し訳ございません。色々忙しくてやっと投稿できました。

今までの話を忘れてしまった方は時間がある時にお読みください。次回できるだけ早く投稿したいと考えていますが……

次の投稿までお楽しみに。


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14、2回戦アンツィオ戦

今回は1ヶ月ちょっとでできた。

2回戦は今回1話でまとめちゃいました。それと少しアニメと違っている部分もあるというのと、描写していない部分があります。

それではどうぞ


第63回戦車道全国高校生大会、この大会に参加している大洗学園は本日2回戦を迎える。対戦相手はアンツィオ高校だ。

 

 

「みんな準備はできてるか?」

 

『もちろん!』

 

「だってさ、そんじゃみほ後よろしく〜」

 

「えぇ!?そ、それじゃあ……「たのもー!」…えっ?」

 

 

試合準備を終えた大洗のメンバーたちに対して、みほがりくの無茶振りに応えようとした時に突然アンツィオ高校の生徒がやってきた。

 

 

「やぁチョビ子〜」

 

「チョビ子言うな!?アンチョビだ!?」

 

「よぉ安斎さん、久しぶりですね」

 

「だからアンチョビ……ってりくか!?」

 

 

やってきたのはアンツィオ高校のドゥーチェこと安斎千代美、それともう1人……

 

 

「あ、たかちゃん!」

 

「ん?ひなちゃん!」

 

 

カエサルの友達であるアンツィオ高校の副隊長が来ていた。

そのため2組が再会を果たすこととなったが、たかちゃんと呼ばれたカエサルがいつもと違う様子を見て、2人の話が終わった後からかわれていた。

 

 

「それにしてもりくと会えるとはな!」

 

「あ、安斎さんは知らなかったんだ……」

 

「アンチョビ!……というか私は?」

 

「いやぁ〜サンダースのケイさんは知ってたからさ」

 

 

どうやらアンチョビはりくが大洗にいることは知らなかったらしい。そこでアンチョビはなんでサンダースのケイは知ってる?という当然の疑問を持った。これには……

 

 

「グロリアーナの口軽女が話したみたい」

 

 

と答えた。勝手に教えられたのを根に持っているらしい。

 

 

「口軽女?話しそうなのは……ダージリン?」

 

「正解、さすが安斎さん」

 

「だからアンチョビだ!」

 

「はははっ」

 

「楽しんでるだろ!?」

 

 

りくが言った口軽女が誰なのか言い当てたアンチョビ、それに対しさすが安斎さんとわざとアンチョビと言わずにりくは楽しんでいた。

 

 

「りくりく〜いつまでイチャついてるのかな〜?」

 

「「イチャついてねぇ(ない)!!」」

 

「というよりりくと話に来たわけじゃない!話せたのは嬉しいけど…今は試合前の挨拶に来たんだ!隊長は誰だ?」

 

「おい、西住!」

 

「私です」

 

「りく!?あ、違う、そっくりなだけか」

 

「ちょい安斎さん?俺はみほほど可愛くないぞ?」

 

「可愛いだなんて…」

 

 

周りは……というより会長の角谷はわざと2人がいちゃついてるとからかい、2人は同じタイミングで反応をしている。仲の良いことだ。

 

からかわれたところでアンチョビは本来の目的を思い出して挨拶をしようとした……が、りくとそっくりだったためか一瞬りくとみほを間違えてしまった。

 

 

「今日はよろしく頼むぞ!正々堂々戦おう!」

 

「は、はい!こちらこそよろしくお願いします!」

 

 

試合前の挨拶も終わりアンチョビは自分たちの学校の方へと戻っていき、お互いに試合開始を待つ形となった。

 

そしてついに2回戦が開始された。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「パンツァー・フォー!」

 

「Avanti!」

 

 

試合開始され大洗学園、アンツィオ高校ともに作戦のため動き出した。大洗学園はウサギさんチームとアヒルさんチームを偵察へと送り出している。

 

偵察へ向かった2チームが見つけたのは……

 

 

「こちらウサギチーム、カルロ・ベローチェ四両、セモヴェンテ二両発見!」

 

「こちらアヒルチーム、セモヴェンテ二両、カルロ・ベローチェ三両発見!」

 

 

カルロ・ベローチェとセモヴェンテを合計11両見つけていた。P40がいないしこれでは10両までというレギュレーションを違反している。

 

 

「全部で11両いますね。2回戦は10両だったはずですが…」

 

「ズルしてるってこと?」

 

「う〜ん……お兄ちゃんどう思う?」

 

 

報告を受けたみんなは戸惑っている。10両までしか出せないレギュレーションで11両いるのだ。戸惑っても仕方ない。

 

「ズルしてるってわけではないはずだ。試合前に整列した時も10両しかいなかったのはちゃんと確認している。それにP40も……そうか!みほ機銃を使わせろ!周りの警戒はこっちでしておく!」

 

「機銃?……あ、そういうことか!ウサギさんチームとアヒルさんチーム、退路を確保しつつ機銃で撃ってください!」

 

「「了解しました!」」

 

 

りくが何かに気がつき、"機銃を使わせろ"というりくの言葉でみほもある可能性に気が付いた。

 

撃ってみると……

 

 

「「デコイだ!?」」」

 

 

アンツィオ高校が用意したデコイだった。

デコイということに気が付かなければおそらくピンチになっていただろう。

 

 

「ふっふっふ、今頃大洗はデコイにビビって動けなくなっているだろう」

 

「上手くいっていればですね」

 

「そこはみんなを信じるしかないが……万が一のためすぐ動けるようにしておけ」

 

「はい」

 

 

十字路にデコイを置き、その後方から攻めていこうと考えているアンツィオ高校。作戦で動いている部隊とは別に2両待機している。そこには隊長のアンチョビもいる。作戦が上手くいっていることを信じているが、いざという時動けるようにも準備をしている。

 

だが、アンチョビの願いは叶わず、大洗はデコイに気が付いていた。

 

 

「面白いことするな〜でもこれが作戦ならおそらく、足止めしている間に後方からくるだろうな」

 

「そうだね、だから私たちも動いて相手を見つければ動揺させることができるかもしれない。

 

アヒルさんチームとウサギさんチームは引き続き偵察、他のチームも周りを警戒してください。後方が1番来る可能性が高いと思われますが左右や前方の警戒を怠らないようにお願いします」

 

『了解!』

 

 

アンツィオ高校のデコイを置く作戦を見抜いた大洗は、偵察の2両は引き続き偵察を、他のチームも警戒する形で動くこととなった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「おい、マカロニ作戦はどうなっている」

 

「すみません、今手が離せないので後にしてもらえますか?」

 

「ん?何故だ?」

 

「敵と交戦中です」

 

 

いつまで待っても味方から連絡が入ってこないアンチョビは状況確認のために無線を入れた。すると敵と交戦しているという状況を今知ることとなり、かなり驚いている。

 

 

「ちゃんと十字路にデコイ置いたんだろうな?」

 

「置きましたよ?全部」

 

「はぁ!?全部!?」

 

「はい!」

 

 

無線を受けたアンツィオ生はちゃんとデコイを置いたことを報告した……が、用意していたデコイを全部置いてしまったようだ。全部置いたら数が合わないからバレてしまう。そのことをわかっていたアンチョビは2枚を予備と伝えていたが、それを忘れてしまっていたらしい。

 

 

「2枚は予備だってあれほど言ったのに…私たちもいくぞ!」

 

「はい!」

 

 

デコイを置く作戦……マカロニ作戦が失敗したことにより、隊長であるアンチョビも動き出すこととなった。

 

大洗学園のアヒルさんチームは今敵3両と交戦中、何度も砲撃を当ててはいるが白旗上がらず焦りが出ている。

 

 

「また出てきた!?」

 

「豆戦車が不死身でキリがありません!どうすればいいですか!?」

 

「落ち着け!別に不死身ってわけじゃない!車体が軽いのを活かして衝撃を軽減してるんだ!そのあと白旗が出なければ立て直してまた乗ってるだけだ!」

 

「なるほど!でもそれがわかったとしてもどうすれば…」

 

「どうすればいいと思う?少し考えてみろ!やられそうな状況なら別だけどな」

 

「根性ー!

 

って言ってる場合じゃないか、えっと……衝撃を軽減……白旗が出なければ……弱点部位を撃てばいいんだ!」

 

「正解だ」

 

「弱点部位はエンジン冷却部!もう一度最初からだ!」

 

「「「はい!」」」

 

 

何度当てても倒せないために焦りが出てきていたアヒルさんチームだったが、無線で決して不死身じゃないことを聞いて倒す方法を見つけた。

 

そしてもう一度最初から当て出し無事3両倒した。それにしても砲手は良い腕をしている。あの小さい車体を1発も外すことなく当てているのだから。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「全然当たらないよ〜」

 

 

アヒルさんチームとは違い、ウサギさんチームの方では砲撃も1発も当たっていないためこちらも焦りが出ている。

 

 

「周りは大丈夫、やっぱり私たちじゃまだ動きながらじゃ無理、止まって撃とう」

 

「あい!」

 

「あや、1回撃ってみて」

 

「わかった!」

 

 

先程まで動きながら撃っていたウサギさんチーム、しかし全く当たらないため、周りに敵がいないか確認した後停止して撃った。着弾した場所から計算して、車長の梓の指示により砲塔を動かして撃ったところ、無事に当てて1両撃破することができた。

 

 

「梓西住隊長みたい」

 

「そう?えへへ〜

 

あ、報告しておかないと。こちらウサギチーム、1両撃破しました!でももう1両には逃げられてしまいました。」

 

「了解しました。深追いしすぎないようにその1両を追ってください」

 

 

アンツィオ高校の車両を撃破したことを隊長のみほに報告をし、ウサギチームは引き続き逃した1両を追うことになった。

 

一方、味方戦車が撃破されたことを知ったアンツィオ高校の隊長のアンチョビはというと……

 

 

「なんだと!?おい!今行っている作戦は中止!フラッグ車の元に集まれ!分度器作戦を開始する!」

 

 

次の作戦を行うために味方戦車を集めるべく呼びかけた。呼びかけに応じてアンツィオの戦車が集結していくが、その中にはどんな内容の作戦か忘れている人もいたのだった。

 

ちなみに……無線で指示を出している間にアンツィオ高校フラッグ車の護衛はやられてしまった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「フラッグ車の護衛がいなくなった今がチャンスです!カメさんチーム、ここで決めに行くので協力してください!」

 

「はいよ〜西住ちゃん、どうすりゃいいの〜?」

 

「わざと敵フラッグ車に見つかってください。その後指定するポイントまでやられずに来てください!」

 

「はいよ〜」

 

 

フラッグ車の護衛を倒しチャンスとなった大洗学園。ここで決めようとみほは次の作戦の指示を出した。作戦内容はカメさんチームが囮役となるものだった。

 

 

「なるほどな、河島先輩は俺と装填手交代、会長は指示出し、小山先輩少し大変かもしれませんがやられないように操縦お願いします。周りは会長が見てくれますし俺も準備しておきます」

 

「「「了解」」」

 

 

囮役になるためやられるリスクが高くなったカメさんチーム、ここで砲手を悪魔の砲撃ができるりくに交代した。これでやられるリスクが少しは低くなる。

 

 

「みほ、こっからは俺が砲手をやる」

 

「了解。お兄ちゃん、指定のポイントまで来たら上に向けて撃ってもらうんだけどその状態で履帯狙える?」

 

「すげぇこと言うな!?狙ってみるけど外しても文句言うなよ〜」

 

「言わないよ!?」

 

 

囮役となったカメさんチームは作戦通りアンツィオ高校のフラッグ車に見つかった。その場から離脱するように見せかけ敵を引きつけている。しばらく走っても大洗フラッグ車のIV号がいなかったため

 

 

「IV号がいない…てっきり来ると思ったが考えすぎか…」

 

 

と思い始めた。だがIV号は既に指定のポイントで待機している。カメさんチームとフラッグ車のP40もそこに到着した。

 

 

「小山先輩落ち着いて、砲身をよく見ながら前後に動いて、合図したらその方向に動いてくれ」

 

「わかった」

 

「今だ!前!」

 

「くっ、外した!?」

 

 

P40が撃ってくるまで前後に動いていた38t、りくの合図で前に移動して砲撃を避けた。そして予定通り上に向けて砲撃を撃った。

 

 

「……まずい!?上にIV号が!?全速後退!!うわっ!?」

 

 

IV号に気付いたアンチョビが後退の指示を出したが、上に撃った38tの砲弾が落ちてきてP40に当たり、みほの指示通り履帯を外すことに成功した。これにはりく自身も少し驚いているが……

 

 

「撃て!」

 

 

ドォーン!!

 

………シュパッ

 

 

『アンツィオ高校フラッグ車、行動不能!!大洗学園の勝利!!』

 

 

IV号の砲手、華が撃った砲撃は一撃でアンツィオ高校のフラッグ車を撃破し、大洗学園の勝利が決まった。

 

この試合で大洗で白旗が上がったのは、セモヴェンテと相討ちとなった三突のみだった。

 



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15、宴会だー!!

平成最後の投稿になります。

今回ちょっと遊びました。


『大洗学園の勝利!!一同、礼!!』

 

『ありがとうございました!!』

 

 

戦車道大会2回戦、大洗学園とアンツィオ高校の試合が行われ、大洗学園が見事勝利した。

挨拶後、アンツィオ高校の隊長のアンチョビが大洗の元に来ている。

 

 

「今日はありがとな〜」

 

「こちらこそ、十字路にデコイを置く作戦はびっくりしました。お兄ちゃんが気付いてくれましたけど」

 

「くっ、さすがりく」

 

「いやいやいや、数を間違えてなければわかりませんでしたよ!?」

 

 

今回の試合でりくがデコイに気が付いた理由……それは数を間違えていたから。十字路にいたという報告を受けた時、機動力のあるアンツィオ高校ならありえると一瞬思った。しかし数が違うことから偽物だと気付くことができたのだ。

 

 

「あっちゃ〜やっぱり1つのミスから負けに繋がったのか〜」

 

「そういうことです」

 

「これは今後の課題だな…それにしてもりく…」

 

「?」

 

「最後の38tの砲撃はお前だろ?」

 

「そう……ですね、よく当たったなって自分でも思いますよ〜」

 

「これが悪魔の腕か」

 

 

最後の履帯を狙った一撃、あれはりく自身驚いている。さすがのりくも何度もできるとは思っていないが……

 

 

「まぁ試合のことはこれくらいにしておいて、みんなー!準備はいいかー?」

 

『おぉー!』

 

「「??」」

 

「あの……安斎さん?何が……」

 

「ん?決まってるだろ?お互いの健闘を称えて宴会だー!」

 

「「これがアンツィオ高校の戦車道」」

 

 

アンツィオ高校の生徒が次々と何かを運んでいるのを見て疑問に思ったりくとみほの2人、どうやら宴会をするらしい。

するとあっという間に宴会の準備が完了した。

 

 

「「は、早い」」

 

「さぁみんなー!楽しむ準備はいいなー!」

 

『おぉー!』

 

「それじゃあみんな、せーの!」

 

『いただきます!』

 

 

あっという間に準備が完了し、両校交えての宴会が始まった。敵味方関係なく楽しんでいるが、その中で人一倍食べている人がいた。

 

 

「いい食べっぷりですね〜」

 

「こんなに美味しいんですから、食べないともったいないです」

 

「華……あいつ男の俺や翔太より食ってんじゃね?」

 

「すごい食べるな〜そういえばりく、隣にいる男子も戦車道メンバーか?」

 

「そうですよ?まぁサポートメインですけど」

 

「佐藤翔太です。今日の試合もバッチリ撮らせてもらいましたよ」

 

「そうかそうか、私たちので参考になるなら参考にしてくれ」

 

「りく、今回のアヒルチームすごかったけど見るか?」

 

「後でな〜」

 

「私も見たいぞ」

 

「えっと……アンチョビさん見たいみたいだしいいか?」

 

「そうだな」

 

 

宴会中のため後で見ようと思ったりくだったが、アンチョビが見たがっているため、今一緒に見ることとなった。その映像には1度も外すことなく砲撃を当てているのが映っていた。

 

 

「すげぇ…」

 

「りくが教えたのか?」

 

「いや?考えさせた。とは言っても弱点を的確に連続で当てるのは凄すぎるぞ、経験あるなら別だけどうちの経験者はみほと俺の2人だけだしな」

 

「なるほど」

 

 

その後も翔太が撮ってくれていた映像を見ながら2人で盛り上がっていた。せっかくの宴会なのだから……

 

 

別のところでは

 

 

「たかちゃんも装填手だったんだ」

 

「うん」

 

「でもやっぱり装填の速さで決まったね」

 

「そうだね」

 

 

カエサルとカルパッチョ、2人は友達同士、カルパッチョはカエサルが三突に乗っていることに気が付いたが、カエサルは気が付いていなかった。

この2人の勝負は互角と言っても良いものだった。何度も撃ち合っては外しと、最後は相討ちとなった……

 

 

「ふふっ」

 

「ひなちゃんどうしたの?」

 

「お友達が心配してるわよ?」

 

「「「わわわっ!?」」」

 

「みんな!?」

 

 

2人が話しているところの近くで、他のカバさんチームの3人が物陰から見ていた……が、押しすぎていたのか前に倒れてしまった。

 

 

「いたた、話し中すまない。各車長に召集がかかったが代わりに行こうか?」

 

「今行くよー!」

 

「またやろうねたかちゃん!」

 

「たかちゃんじゃないよ。……私はカエサルだ!」

 

「ふふっ、それじゃあ私は……カルパッチョよ!」

 

 

カエサルとカルパッチョは2人での話を終えて、それぞれの高校の方へと戻っていった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「イェーイ!大洗の諸君も楽しんでいるかー!」

 

『イェーイ!』

 

「アンツィオ高校の諸君ももちろん楽しんでるなー!」

 

『イェーイ!』

 

 

宴会を楽しんでいるところに突然アンチョビが高いところから呼びかけてた。何か始まるのか?

 

 

「それじゃあせっかくだ男子もいることだ!これより大食い大会を開催だー!」

 

『おぉー!』

 

「参加者は大洗学園から西住りくと佐藤翔太!」

 

「「っ!?」」

 

「アンツィオ高校からはペパロニとドゥーチェである私アンチョビだー!」

 

「姉さんいきなりすぎっすよ!やりますけど!」

 

『(やるんかい!?)』

 

 

何故か突如大食い大会が開催されることとなった。ルールは個人戦、各高校から2人は強制参加らしい。しかも事前に相談なしに……

 

 

「他に参加したい人はいるかー!」

 

「私も参加させていただきます!」

 

「華来たか!!」

 

「アンツィオからは私も参戦します」

 

「カルパッチョか!?」

 

「あの神の装填手と勝負できるなんて」

 

「いや……これ装填関係ないぞ」

 

「ん?りく、神の装填手ってなんだ?」

 

「あぁ〜なんか装填手の間ではそう呼ばれているみたいだ」

 

「悪魔と神両方言われてるのか〜」

 

 

他に参加者を集ったところ、大洗からは予想通り華が参戦、アンツィオ高校からはカルパッチョが参戦することとなった。どうやら神の装填手と勝負したいみたいだが……装填はまったく関係ない。

ちなみに、アンチョビはりくのことは悪魔の砲撃のことしか知らず、神の装填手と言われていることは知らなかった。まぁりく自身、グロリアーナのオレンジペコに言われるまで知らなかったが……

 

 

「他にはいないな。ルールは簡単!宴会のために用意したパスタがまだ残っている!それを誰が1番多く食べられるかだ!開始の合図は大洗学園隊長の西住みほにやってもらう!」

 

「ええー!?」

 

「安斎さん……とうとうみほまで巻き込みやがった」

 

「え、えっと……それじゃあ6名は準備してください」

 

 

いきなり言われたみほだったが……なんだかんだ役目を果たそうとしている。

 

 

「準備はいいですね、それでは……

 

パンツァー・フォー!」

 

『(それ戦車前進でしょ!?)』

 

 

みほの合図で大食い大会がスタートした。開始の合図を聞いてみんながそれ違うでしょ!?と思ったがあえて誰も何も言わない。

 

 

「うまっ!?」

 

「りくの言う通り美味すぎ!?」

 

「お2人の言う通りです。いくらでも食べられる気がします」

 

 

3人のペースは早い。りくと翔太は男子、華はよく食べるからおかしくはな……いや、華の食欲は少しおかしいと言えるか。

 

 

「やるなー!ペパロニ!カルパッチョ!私たちも頑張るぞ!」

 

「「はい!!」」

 

 

アンツィオ高校の3人も頑張って追いつこうとするが、さすがに男子2人と華のペースについて行くのは難しい。どんどん差が開いてきている。

 

アンツィオ高校の3人+大洗学園の翔太のペースが落ちていっているに対し、りくと華のペースがどんどん上がっている。

 

 

「お兄ちゃんってそんなに食べられたんだ」

 

「美味すぎてどんどん食いたくなるんだよ。だよな華?」

 

「そうですね。もっと食べたくなっています」

 

 

2人のペースはどんどんペースが上がっていく。そして最初にカルパッチョ、それからペパロニ→翔太→アンチョビの順番で脱落していった。そしてアンツィオ高校で用意されたパスタが全てなくなった。

 

 

「そこまで!アンツィオ高校で用意されていたパスタが無くなりました。勝ったのは大洗学園の華さんです」

 

「負けたか〜」

 

「ご馳走さまでした。美味しかったです」

 

「くっ、やるな大洗諸君!今度やる時は試合もこっちも負けない!じゃなかった、勝つ!」

 

「俺たちも負けねえ!だろ?みほ」

 

「うん!私たちも負けません!」

 

「それじゃあ準決勝、それに勝って決勝まで行って優勝してくれ!」

 

「「はい!」」

 

 

試合後の宴会も終わり、アンツィオ高校と別れて大洗も自分たちの学校へと戻っていった。楽しかった時間はあっという間に終わり、次の日から準決勝の対策を始めることとなる。

 

 

他の試合も順当に進み、大洗の準決勝の相手はプラウダ高校となった。

 




今回で平成最後の投稿です。

令和になってからもよろしくお願いします。


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16、休息

令和初投稿になります。




 

 

「さて〜いよいよ準決勝だね〜」

 

「まさか本当にここまで来れるとは……」

 

「これも西住ちゃんやりくりくが来てくれたおかげだね〜」

 

「いえいえ、そんなことないですよ」

 

 

とある日の昼休み、りくは会長に呼ばれて生徒会室に来ている。呼ばれたのはりくだけであり河島や小山は今は生徒会室にはいない。

 

 

「ところで……なんで俺を呼んだんですか?そろそろ訳を……」

 

「2人きりになりたかった……って言ったら迷惑?」

 

「……本当の理由は?」

 

「もぅ〜そこは動揺したりしてよ〜」

 

「すみませんね〜で?目的は?」

 

「2回戦の前に見つけた戦車2両あるでしょ?」

 

「ありますね、沙織たちが迷子になったりも……」

 

「あはは……」

 

 

どうやら2回戦の前に見つけた戦車についての話らしい。2回戦の前にみんなは戦車を探していた。その時に見つけた戦車が2両あったが、整備が間に合わないため2回戦で使えなかった。

 

 

「2両のうち1両…ルノーの方は次の試合で使えるようになるんだけど風紀委員の3人に乗ってもらうことになる。それで車長をやる人も呼んでるから顔合わせってところかな」

 

「みほじゃなくて俺なのは?」

 

「実は2人きりで少し話したかったっていうのも嘘ではないんだよね……」

 

「そうなのか?」

 

「ずっと謝りたくてね、りくりくや西住ちゃんを戦車道に参加させた時って少し無理矢理だったじゃない?」

 

「…………少し?」

 

「……かなりだね、あの時は本当にごめん。

謝って許してもらえるとは思ってないけど」

 

「(なるほどな、ずっとそのことを引きずってたのに表情に出さないようにしてたのか)」

 

 

会長はずっと謝りたかった。りくとみほの2人を戦車道に参加させた時、お願いしたことを約束してないと言って無理矢理参加させたことをずっと引きずっていて、今頭を下げている。

 

 

「頭上げてくださいよ会長。そりゃあ最初はぶん殴りそうになりましたけど……今は感謝してるんです。俺はともかく、みほは戦車道をもうやりたくないって気持ちで転校してきたんですよ?それでも今はまた楽しくやれてるんです。それは大洗みんなのおかげですよ」

 

「りくりく……」

 

「大丈夫、最初は恨みましたけど…今はもう感謝の気持ちしかありませんよ」

 

「ありがとう……りくりくー!」

 

「うわっ!?」

 

 

大洗で始めた当初はたしかに恨んでいた、自分がやるからみほには脅したりしないように言っていたのに、承諾したように見せてそれを裏切ったからだ。でも今はもう感謝の気持ちしかない。それを聞いた会長が涙を浮かべながら抱きついてきたため驚いている。急すぎて避けられなかったくらいに……

 

 

「びっくりした……」

 

 

ガチャ

 

 

「失礼します、風紀委員の……ちょっとあなたたち!?何してるの!?」

 

 

バタン!

 

 

りくに抱きついたところで会長に呼ばれた風紀委員の園みどり子が生徒会室に入ってきた。しかしちょうど抱きついたところに入ってきたため誤解が発生してしまった。

 

ドアはちゃんと閉めている……

 

 

「学校で……しかも生徒会室で男女が抱き合って……何してるのよ!?」

 

「誤解だ誤解!?」

 

「そうだよそど子〜まぁ誤解させちゃったのは悪いけど私たちは何もないよ」

 

「ほ、本当ですか?」

 

「私がとある事情で嬉しくなって抱きついちゃっただけだからさ〜」

 

「会長がっていうのがどうにも信じられないけど……何もないならいいわ。それより呼んだ理由を教えてちょうだい」

 

 

どうやら信じてもらえたようだ。これは会長の人柄もあるだろうが……それよりも自分が呼ばれた理由を知りたいみたいだ。

 

 

「戦車道だけど次のプラウダ戦から前に見つけた戦車が使える状態になったんだよ〜それでそのことを伝えたかっただけ〜」

 

「じゃありくさんがいるのは?あ、悪いけど私他の人のことはさん付けで呼んでるから男子でもさん付けでも大丈夫?」

 

「俺は構いませんよ」

 

「りくりくがいるのは私の個人的な理由で呼んだだけ〜ついでに顔合わせって感じかな」

 

「個人的な理由……やっぱり」

 

「なんでその発想にいくんすか!?」

 

「まぁまぁ〜誤解されても仕方ないでしょ〜」

 

「されるようなことしたの会長でしょ……」

 

 

微妙にりくはツッコミ疲れているが、会長がちゃんと説明をしたため、そど子の誤解は解かれた。風紀委員の3人と戦車道受講メンバーの合流は今日のうちに行われることとなった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「はいみんな集合〜」

 

「なんだろ?お兄ちゃん何か聞いてる?」

 

「う〜ん、ルノーに乗る3人が今日から合流するからそれでじゃないか?」

 

「そうなの!?」

 

「あ、そういや言ってなかったか」

 

「りくりくの言う通りルノーに乗る乗員を伝えるよ〜」

 

 

午後の戦車道練習前、突然会長が集合をかけた。何も聞かされていないみほがりくに聞くと、りくは昼休みに会長から聞いていたため驚くことはなかった。というより伝え忘れていた。

 

 

「風紀委員の園みどり子です。よろしくお願いします」

 

「そど子って呼んでやってくれ〜」

 

「会長!人の名前を勝手に略さないでください!」

 

「それじゃあ操縦は冷泉ちゃんに教えてもらって〜」

 

「ちょっと!?」

 

 

ルノーに乗るのは風紀委員の3人。会長がそど子と勝手に略してそれに対して文句を言っているが、会長はそれを無視して話を進めた。

 

 

「私が教えるのか」

 

「冷泉さんに教わるの!?」

 

「じゃあ自分でマニュアル見て覚えるんだな」

 

「なっ!?なんて無責任なこと言うのよ!?ちゃんと丁寧に教えなさいよ!」

 

「いやそれ教えてもらう態度じゃないだろ……麻子もそんな雑にならないで教えてやれって」

 

「りくが言うなら仕方ない」

 

 

一瞬麻子が雑に教え……というよりマニュアル見て自分で覚えてもらおうとしていたが、そんなことですぐ操縦ができるのは麻子くらいだろう。りくが声をかけてなんとか雑にならずに済んだ。

 

「さて、砲手は誰がやるつもりだ?」

 

「あ、決めてなかったわね……そうね、砲手はパゾ美、操縦手はゴモヨ、お願いできる?車長と通信手は私が兼任するわ」

 

「「大丈夫です」」

 

「ルノーに5人で乗り込むのは狭いし……いいや、まずは麻子に操縦を教わってもらってその後俺が砲撃を教える、いいか?みほ」

 

「うん、とりあえずお兄ちゃんはIV号に入って麻子さんの代わりに操縦、麻子さんが教え終わったら交代してもらうね。カメさんチームは申し訳ないですけどお兄ちゃん抜きで練習していてください」

 

「はいよ〜」

 

「それじゃあ今日の訓練を開始します。パンツァー・フォー!」

 

『おぉー!』

 

 

新しく入ってもらった3人はまず基本的なことから覚え始めた。風紀委員チームはカモさんチームと呼ばれることとなったが、そど子が少し文句を言っていたがそれは気にしなかった。

 

麻子も意外とちゃんと教えていたのか、操縦手を任されたゴモヨは思っていたより早くまともに動かせるようになった。

 

麻子とりくを交代して今度は砲撃について教えていたが、飲み込みが早いのか、的に当て始めるのが早かった。まだ真ん中の方には当たらないがそこは練習していくしかない。

 

…………河島より命中率が高いとりくは思ったのは内緒。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「今日の訓練はここまでとする!」

 

『ありがとうございました!』

 

 

河島の号令で、今日の練習はここまでとなった。今日から参加している風紀委員たちもいい感じにできていた。みんな帰り支度を始め出し、みほとりくも支度しようとした時に

 

 

「西住ちゃんとりくりくはこの後生徒会室来て、大事な話があるから」

 

「「大事な話?」」

 

 

会長から声をかけられた。理由はよくわからないが重要な話らしいということで2人は生徒会室に向かった。

 

 

「いや〜悪いね〜」

 

「いえ、それより話って」

 

「まぁまぁ〜まずはあんこう鍋を食べてよ〜」

 

「会長のあんこう鍋は美味いぞ」

 

「いやそういう問題じゃねぇって……まぁとりあえず食べるか」

 

「食べるんだ!?お兄ちゃんお腹空いてるとか?」

 

「それもある(このタイミングで話だと多分廃校問題のことか?)」

 

『あるんだ……』

 

 

呼ばれた2人は話をされる前に会長が作ったあんこう鍋を食べることとなった。どうやら会長が作るあんこう鍋は評判が良いらしい。りくはお腹が空いているという理由で誤魔化したが、話が廃校のことについてだと予想している。

 

 

「うん、たしかに美味い!」

 

「ほんと美味しい!」

 

「そりゃよかったよ〜」

 

「そんで?話って?」

 

「まぁまぁ〜まずは食べてからってことで」

 

「「(また誤魔化した)」」

 

 

時々話の内容を聞こうとしたりくとみほだったが、ことごとく誤魔化せられたため聞けなかった。そして作ってもらったあんこう鍋を食べ終わった後はアルバムを見せられている。

 

 

「これが夏の水かけ祭りでこっちが泥んこプロレス大会の時だよ〜」

 

「楽しそうですね」

 

「俺たちが来る前はこんなことやってたんですね」

 

「うん。楽しかったよ」

 

「ああ、この時は本当に」

 

「(やっぱり話は廃校の件か?)」

 

「……いや〜2人ともごめんね?2人が来る前にここがどれくらい楽しいことやってたか伝えたかったんだよ〜」

 

「そう……でしたか」

 

「なるほどな〜(嘘か)」

 

 

あんこう鍋を食べた後は、アルバムを見せながら2人が転校して来る前に学園でやっていたことを教えている。まるで自分たちが思い出を振り返っているように……

 

 

「わざわざ残ってもらって悪かったね〜気を付けて帰ってね〜」

 

「(言わないんですね)」

 

「(やっぱりバレてたか……うん、言わないことにするよ)」

 

「(そうですか…じゃあみほにも黙っておきます」」

 

「(助かるよ〜)」

 

「あ、そうだ」

 

『?』

 

 

りくとみほの2人を残したのは学校の廃校の件を伝えるためだったが……結局言わないことにした。りくと会長は2人で目だけで話していた様子だが、お互いの思っていることは伝わっているみたいだ。

 

帰る直前急にりくが何かを思い出したようだが……

 

 

「次のプラウダ戦……その時が来るかわからないけど相手の優れた砲手……ノンナさんが38tの方に来たら俺に相手させてくれないか?あの人と撃ち合いたい」

 

「私じゃ勝てないと言うのか?」

 

「それは100%、俺でも撃ち勝てるかどうか……砲撃を撃ち落とすのはできても倒せるかどうかって感じかな」

 

「珍しいね、お兄ちゃんからやりたいって言うの」

 

「まぁな」

 

 

りくのお願いはプラウダ戦で、もしノンナと遭遇した際は、自分が砲手をやりたいということだった。普段は装填もしくは悪魔の砲撃を出すだけのりくがこのようなことを言うのは珍しい。

 

 

「そんじゃそん時はりくりくに任せるよ」

 

「操縦はいつも通り任せて」

 

「仕方ない。それなら私が装填をしてやろう」

 

「それじゃあその時は車内で話して交代してください。余裕があれば無線で連絡もお願いします」

 

「サンキューみほ。会長、柚子さん、桃さん」

 

『!?』

 

 

りくのお願い通り、その時が来たら砲手をやらせてもらえることとなった。

 

お礼を言った時に生徒会メンバーのことを苗字+先輩ではなく、名前+さん付けで呼んだことに4人は驚いた。急だったから驚くのはわかる。

 

 

「ん?」

 

「私たちのことを名前で呼ぶなんて……りく君どうしたの?」

 

「どうしたんだろうな、自分でもわかんないっすね」

 

「私だけ呼ばれないのはショックだな〜」

 

「ふふっ、杏さんもそういう風に思うんですね。頑張りましょう」

 

「まぁね〜」

 

「それじゃあ今度こそ、気を付けて帰ってね〜」

 

「「はい」」

 

 

遅くならないうちに2人は帰り出し、片付けは生徒会メンバーだけでやることとなった。みほは帰り道、本当に楽しかったことを伝えたいだけだったのかと思ったが、りくはそうなんじゃないかと誤魔化しておいた。そのうち自分たちから話してくれると信じて。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

プラウダの学園艦では……

 

 

「準決勝惜しかったですね」

 

「去年カチューシャたちが勝ったところに負けるなんてね」

 

「勝負は時の運というでしょ?」

 

 

グロリアーナのダージリンが遊びに来ていた。グロリアーナは準決勝で黒森峰と当たったが負けてしまっている。

 

 

「それよりまだ試合があるのに練習しなくていいのかしら?」

 

「あんな無名相手に練習だなんて、燃料がもったいないわ」

 

「でも相手は西住流よ?」

 

「なっ!?なんでそれを言わないの!?」

 

「何度も言いました」

 

「西住流と言っても妹の方だけどね」

 

「なんだ、それなら問題ないわね」

 

 

大洗のことは眼中にないカチューシャ。ダージリンから西住流と聞いたが、その後妹の方と聞いて安心した。

 

だがこの後のノンナの言うことで顔色が変わることになる。

 

 

「ですがカチューシャ、妹だけならまだしも、あのりくさんもいますよ?」

 

「そうなの!?」

 

「はい、試合の映像を見ましたが、サンダース戦ではあの悪魔の砲撃をしている戦車がありました。しかも偶然ではなく明らかに狙ってやった様子でした。おそらく普段は悪魔ではなく神の方だと思われますが、重要な時は砲手をやっていると思われます。アンツィオ戦でも最後おそらく砲手を……」

 

「ノンナがそこまで言うなんて珍しいわね。でもあの悪魔がいるのはさすがに厄介ね……ところで神ってなんのこと?」

 

「私もそれはペコから聞いて初めて知ったことですわ」

 

「りくさんは悪魔の砲撃と言う呼ばれ方で有名なのはカチューシャも知っての通り、ですが、普段は装填手をしています。装填速度が他の方よりかなり早いため、装填手の間では神の装填手とも呼ばれているのです」

 

「あら?詳しいのね?ノンナさん」

 

「調べましたから」

 

 

カチューシャもりくが神の装填手と呼ばれていることは知らなかったみたいだ。装填手の間で呼ばれている呼ばれ方も知っているノンナを見て、ダージリンは少し驚いている。

 

 

「でもまっ、問題ないわ。西住りくが乗っている戦車は?」

 

「38tです」

 

「なら重要な場面では近付けさせなければ問題ないわ」

 

「そうですね。

 

……カチューシャ、お願いがあるのですがよろしいですか?」

 

「お願い?珍しいわね」

 

 

さすがは強豪校の隊長と言うべきか、すぐさま対策を思いついたカチューシャ。ノンナもその作戦に賛成みたいだが、何やらお願いがあるみたいだ。

 

 

「もしその機会が訪れたらで構いません。りくさんと一騎討ち……やらせていただけませんか?」

 

「ノンナがそういうことを言うの珍しいわね。いいわ、その代わり、負けるんじゃないわよ?」

 

「もちろんです。ありがとうございます」

 

「あらあら、ですが、私も砲手なら同じことをさせてもらっていたかもしれませんわね」

 

 

ノンナのお願いは、りくと1対1の勝負がしたいということだった。カチューシャも許可を出し、ダージリンもその気持ちがわかるらしい。1対1の勝負がしたい、それほどの相手ということだろう。

 

大洗ではりくが、プラウダではノンナが、お互いに1対1の勝負を望んでいる。実現してほしいものだ。

 




次回投稿までは時間がかかると思います。別の作品の投稿を再開させるつもりなので……

それまでお楽しみに


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17、準決勝 〜プラウダの罠〜

 

「さっむい!?ほんとさっむい!?」

 

「沙織大丈夫か?できるだけ暖かい格好しとけ?」

 

「う、うん…やっぱり男の子だね〜」

 

 

大洗学園は今日、戦車道大会の準決勝の日だ。試合の準備をしているが、沙織は寒そうにしている。りくも気にかけてはいるが……

 

ちなみに他のチームはというと……

 

ウサギさんチームは雪合戦、カバさんチームは像を作っている。

 

その中でりくはある1チームが目に止まった。

 

 

「そど子さん、大丈夫ですか?」

 

「だだだ、大丈夫よ!?」

 

「いやどう見ても大丈夫じゃないだろ……まぁでも、いきなり試合だからな、緊張するなっていう方が無理あるか」

 

「だだだ、誰が緊張なんか!?」

 

「すみません、入って間もないのに試合になってしまって…」

 

「みほ」

 

 

カモさんチームこと風紀委員のメンバーが緊張しているようだ。それに気付いたりくが声をかけにいき、そこに隊長であるみほもやってきた。

 

 

「に、西住さんが謝ることじゃないわ!悪いのは会長よ!」

 

「まぁもっと早く言ってくれれば練習に参加させてもっと精度を上げることもできたからな〜そこはそど子さんに同意」

 

「あ、たしかに…」

 

「そうね……ってそど子って呼ばないで!?」

 

「ははっ、やっといつもの状態になったな。頑張りましょう!」

 

「もちろん!」

 

「さすがお兄ちゃん!私たちも頑張らないとね!」

 

 

そど子と話した後他の2人にも声をかけて、カモさんチームの緊張を見事に解くことができた。

 

ちょうどその時プラウダから2人の生徒がやってきた。

 

 

「誰あれ?」

 

「プラウダ高校の隊長と副隊長だよ」

 

「隊長地吹雪のカチューシャさんに、副隊長ブリザードのノンナさんだな」

 

 

隊長のカチューシャと副隊長のノンナがやってきたのだ。おそらく挨拶だろうが……

 

 

「ぷっ、あっはっは!このカチューシャを笑わせるためにこんな戦車を用意したの?」

 

「やぁカチューシャ、今日はよろしく〜」

 

「むぅ〜ノンナ!」

 

「はい」

 

 

笑ったカチューシャを無視するように会長が握手を求めると、いきなりノンナを呼び肩車をし始めた。

 

 

「貴方たちは全てにおいてこのカチューシャより下なのよ。実力も身長もね!」

 

「肩車してるじゃないか……」

 

「よくもカチューシャを侮辱したわね!」

 

「(いやいや、桃さんは珍しく事実を言っただけで侮辱したのはそっちじゃん)」

 

「行くわよノンナ!あら?あなたたち西住流の……去年はありがと。今年もよろしくね…………えっ、ちょっとノンナ!?なんで降ろすのよ!?」

 

「ん?」

 

 

事実を言われて逆に怒り出したカチューシャ、自分たちの方へ戻るように指示をして、りくやみほを煽るように言ってそのまま戻ると思ったら、いきなりノンナがカチューシャを降ろしてりくの前まできた。

 

 

「りくさん、私は貴方と勝負できるのを楽しみにしていました」

 

「へぇ〜ノンナさんにそう言ってもらえるのは光栄ですよ。でもね、楽しみにしてたのは俺も同じなんですよ」

 

「神…いえ、この場合は悪魔と言った方がよろしいですね。そのりくさんにそう言ってもらえるとこちらも光栄です。是非撃ち合いたいですね」

 

「俺もですよ、その時はよろしくお願いします」

 

「えぇ、こちらこそ」

 

 

優れた砲手同士の挨拶が終わると、カチューシャとノンナは自分たちの高校の方へ戻っていった。

 

カチューシャが不機嫌になっていたのは置いておこう。

 

 

「それでは事前の作戦通りゆっくりと慎重に……」

 

「慎重もいいが、ここは速攻で攻めるのはどうだろうか?」

 

「先手必勝というわけだな」

 

「(カバさんチーム何言い出すんだ!?)」

 

「賛成です!」

 

「それいいと思います!」

 

「勢いも大事ですもんね」

 

「(柚子さんまで!?)」

 

 

プラウダの2人が戻った後、作戦の確認をしている大洗学園、みほは当初の予定通り慎重に行こうとしていた。だがカバさんチームが速攻で行きたいと言い出すと、他のみんなもそこに同意して言ってきている。

 

 

「それでは作戦をへ…「ちょっと待った!」……え?」

 

『!?』

 

 

当然そこは、みほの言うことを遮ってでもりくが待つように声を出した。

 

 

「みんなのやる気は充分伝わったよ。たしかに柚子さんが言うように勢いも大事だ。でもさ、俺たちは今回のような雪原のフィールドでは練習がまったくできていない。逆にプラウダは得意としているフィールドだ。それでも速攻で行きたいか?最終的な判断は隊長に従うけど、俺は反対だ」

 

『…………』

 

りくの意見にみんな黙ってしまっていた。たしかにみんなの言う通り勢いも大事だろう。だが、雪源を練習もしたことない大洗と違い、得意とするプラウダと比べたら明らかに不利、そう思いりくは反対したのだ。

 

 

「そうだよね、隊長ならちゃんと言わないとダメだね」

 

「意見踏まえてな、それでどうする?」

 

「みんなごめん。やっぱり慎重にいきましょう」

 

『はい!』

 

 

反対する人はいないみたいだ。これで大洗は当初の予定通りの作戦となった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

試合が始まり大洗学園は、みんなで順調に進んでいた。だが、途中でカモさんチームのルノーにトラブルが発生した。前に進もうとしても下がってしまっている。

 

 

「あれ…あれれ?」

 

「どうしたのゴモヨ!?前に進むのよ!?

 

「わかってるけど……」

 

 

みんなで坂を登っていると、この試合から入っているカモさんチームが登れなくて苦労しているのだ。

 

 

「ちょっと行ってくるから桃さん、装填も兼任してくれ」

 

「了解だ、できるだけ早くな」

 

「おう」

 

『お兄ちゃん!麻子さんが行ってくれるから大丈夫!』

 

「ん?そうか?なら任せる」

 

 

苦労しているのを見てりくがカモさんチームのところまで行こうとしたら、みほから通信が入り、麻子が行くということが伝えられた。りくは無線を飛ばしていなかったのに、みほはりくが行こうとしていることがわかっていた。それで無線を入れたのだろう。

 

麻子が操縦を一時交代し、無事にカモさんチームはみんなと進み始めることができた。

 

 

『カチューシャ隊長、大洗の戦車はまっすぐ向かっていますけどゆっくり進んでいます』

 

「そう、あれだけ煽れば速攻仕掛けてくると思ったけど慎重に来たのね」

 

「相手にはりくさんがいますからね、そのような意見が出ても止めたのでしょう」

 

「そうね、でもこちらに向かっているから当初の予定通りに行くわよ!」

 

 

大洗の戦車が隊列を組んで進んでいるところを、プラウダの偵察部隊がそれを見て報告している。カチューシャは速攻を仕掛けてくると思っていたが、相手にはりくがいることから驚きは大きくなかった。

 

 

「敵車両発見!」

 

「カバさんチーム撃ってください!」

 

 

プラウダの偵察部隊が大洗の戦車を見つけた後、大洗はそのまま進んでいっていった。そしてプラウダの戦車を3両発見し、カバさんチームに撃つように指示を出した。見事に1両行動不能にし、もう1両はあんこうチームが攻撃して行動不能にした。

 

 

「みぽりんやったね!」

 

「西住殿?」

 

「上手くいきすぎてる……」

 

 

しかし、あまりにも上手くいきすぎているためか、みほの表情は険しかった。そしてそれは別の戦車に乗っているりくも、同じような表情をしていた。

 

 

「とにかく今は残りの1両を追いましょう!深追いしすぎないようにお願いします!」

 

『了解!』

 

 

上手くいきすぎて心配しているみほとりくだが、今は残りの1両を追うことにした。そしてプラウダのフラッグ車を見つけたが、これが良くなかったかもしれない。

 

なぜなら

 

 

「フラッグ車発見!」

 

「今がチャンスだ!」

 

「よし!一気にいくぞ!」

 

 

フラッグ車を見つけた途端あんこうチーム以外がみほの指示を聞かずに前進してしまったのだ。罠かもしれないのに……

 

 

「みんな待ってください!?」

 

「みんなちょっと待て!?柚子さんも止まってくれ!?」

 

 

みほやりくが必死にとめるが、みんなはそれを聞かずに倒しに行こうとしていた。

 

だがやはりそれはプラウダの罠、みんなが撃ってる間に周りを囲い始めた。

 

 

「全車急いで東に移動してください!!」

 

「えっ!?なに!?」

 

「今は急げ!!っ!?東はもうダメだみほ!!」

 

「っ!?南南西に……そっちも!?」

 

「ダメだ囲まれてる!」

 

 

プラウダが囲い始めているのを見て急いで指示を出したみほだったがもう遅かった。移動しようとしたが既に囲まれているため、その場から逃げられなくなってしまった。

 

なんとか近くの建物に逃げ込んだがやられるのは時間の問題、そう思って覚悟を決めたと思ったら、突然砲撃が止んだ。

 

外に出るとプラウダの生徒が2人やってきていた。

 

 

「カチューシャ様より伝言です。降伏しなさい。土下座するなら許してあげるとのことです」

 

「土下座だと!?」

 

「全員自分より低くしたいんだ!」

 

 

カチューシャの伝言にはさすがのりくも怒りをあらわにした。河島は自分より低くしたいと言ったがそれが正解なのかどうかはどうでもいい……

 

 

「カチューシャ様は寛大な方、3時間は待つとのことです。それでは3時間後にまた来ます」

 

 

そう言って2人は戻っていった。みんなはどうするか集まって話しているが、りくだけはその話し合いに参加していない。1人で故障した箇所の修理に取り掛かっているためだ。

 

 

「みぽりんどうする?」

 

「諦めたくはないけど…このまま続けたら怪我人も出るかも…」

 

「私はみほさんに従います」

 

「私も土下座くらい構いません!」

 

「準決勝まで来ただけで上出来だ、無理をするな」

 

 

みほは諦めたくないという気持ちはある。だが怪我をする可能性があることを考え、続けることに迷いが出ている。あんこうチームはここで負けを認めても仕方ないという雰囲気を出し、他のみんなも同じような雰囲気となっている。ある3人と話し合いに参加していないりくを除いて。

 

 

「降伏はダメだ!徹底抗戦だ!」

 

「なんでですか?勝ち負けより大事なこともあると思います」

 

「勝ち負けより大事なものがあるものか!」

 

「私は…戦車道が嫌いになってお兄ちゃんと一緒に大洗に転校してきました。でも大洗のみんなと戦車道をしていくうちに、戦車道を楽しいって思えたんです。それはお兄ちゃんも一緒だも思います。だから私はこの気持ちを大事にしたまま大会を終わりたいんです」

 

 

みんながここで降伏を決めようとしているところに、河島が反対意見を出した。建前では勝ち負けより大事なことがあるのかと言うが、実際反対の理由はそうではない。

 

理由は……

 

 

「何を言ってるんだ…負けたら大洗学園は廃校になるんだぞ!!」

 

「……えっ」

 

 

大会に負けたら学園が廃校になるからだった。そのことを言ったら、みんなが驚いて固まってしまった……

 




誤字あったらすみません。
次回もいつになるかわかりませんがお楽しみに…



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18、激突!〜悪魔VSブリザード〜

タイトルでわかる通りあの2人が対決します。


 

「帰りましょう。これ以上ここにいても意味はないわ」

 

「まだ試合は終わっていません。私は終わるまでいます」

 

 

観客席では、みほとりくの母と姉であるしほとまほが大洗学園とプラウダ高校の試合を観戦していた。だが2人は応援に来ているわけではない。まほは内心応援しているかもしれないが、しほは2人に勘当をすることを伝えるために、今日のこの試合を見ている。

 

 

「まほ…」

 

「たしかに戦況的には誰がどう見てもプラウダ優勢……いえ、プラウダが勝つと思うでしょう。ですが試合が終わるまで何が起きるかわかりません」

 

「そこまで言うならいいでしょう」

 

「(みほ……りく……どうする?)」

 

 

母親のしほは、状況的に決着がついたと判断し帰ろうとした。だがまほはまだ試合が終わっていないということで残るつもりだった。しほも帰らずに見ていくこととなった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「負けたら大洗学園は廃校になってしまうんだぞ!?」

 

「……えっ」

 

『……ええー!?』

 

 

河島は、負けたら廃校になるということをついに言った。みんなは驚いたのと同時に、まだ信じられない様子だ。

 

 

「っ!!」

 

「みぽりん!?どこいくの!?」

 

「お兄ちゃんを呼んでくる!多分IV号にいるはずだから!……あれ?いない?」

 

 

みほは、廃校になるということをりくにも伝えようと急いでIV号に向かった。だが、キューポラを開けてもりくの姿はなかった。

 

 

「みほ?もう作戦決まったのか?」

 

「そっちにいたの!?それより大変なの!?負けたら大洗は廃校になるって河島先輩が!?」

 

「あぁ〜そのことなら知ってる」

 

「えっ!?」

 

「だから今必要な箇所の修理をして時間になったら動けるようにしてるんだよ。それじゃあ次八九式の方行くから、悪いけど作戦の方は頼んだぞ」

 

「わ、わかった」

 

 

りくが廃校のことを知っていることに驚いたみほ、みんなも知っていることについて驚いている様子だ。

 

 

「りくりくは最初勧誘してる時に気付かれちゃったんだよね、それで黙ってるようにお願いしてたんだよ」

 

「そうだったんですか……脅しの間違いだった気もしますけど……」

 

「うっ…まぁそれは今はおいておいて、かぁしまが言ったことはホントのことだ。優勝しない限り、大洗学園は廃校になる」

 

「残念だけどほんとなの……」

 

「……作戦を考えましょう。大洗学園を無くさないために」

 

「西住ちゃん、うん」

 

 

1度は試合を諦めそうになった大洗学園ではあるが、負けたら廃校になってしまうということを聞いて、再びやる気になった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「お待たせ、とりあえず全車両の必要な部分の修理は終わった」

 

「ありがとうお兄ちゃん、今優花里さんとエルヴィンさん、麻子さんとそど子さんがそれぞれペアで偵察に出でもらったから少し休んでて」

 

「わかった、38tの中にいるから戻ってきたら教えてくれ、ってか寝てるかもだからその場合は起こしてくれ」

 

「わかった」

 

 

修理が終わったりくは一旦休むこととなった。偵察に行ったメンバーが戻ってきたら作戦会議に加わると思うが、それまでは休んでるそうだ。

 

時間が経つと優花里とエルヴィンが先に戻り、その少し後に麻子とそど子も戻ってきた。りくを呼び、4人の偵察の報告を受けて、紙にプラウダの戦車配置を書いていった。

 

 

「ここだけ包囲網が薄い……これは間違いなく罠」

 

「わざとここから突破させた後に囲うのが無効の作戦だろうな」

 

「うん…でもだからと言って他に隙があるわけじゃないし…」

 

「なら……」

 

 

プラウダの包囲網は一箇所だけ薄くしてわざとそこを抜けさせようとする作戦。だがそれは明らかな罠であるとわかっている。でも他に隙がなくて困ってるみほに対し、りくは1つの提案をすることとした。

 

 

「あえて包囲網が1番厚い部分から突破しないか?さすがのカチューシャさんもそこは想定しないだろうし」

 

「リスクはある……でも包囲網の薄い部分は明らかな罠で他に隙もない……それならお兄ちゃんの言う通りそこがいいかも。でもこれだと囮が必要になっちゃう……」

 

「それなら私たちがなくなるよ!」

 

「会長!?」

 

 

りくの考えた作戦だと囮役が必要だと判断したみほ、そこに会長がやってきて自分たちがその囮役になると言ってきた。

 

 

「りくりく、いいよね?」

 

「ふっ、みほ、これ言っても聞かないだろうし俺たちで囮になる」

 

「お兄ちゃん……会長……わかりました、みなさん!1度集まってください!作戦を伝えます!」

 

 

みほとりくで考えた作戦をみんなに伝えると、また時間まで体を休めることとなった。

 

なったのだが……寒さからみんなの士気が下がってきている。これでは時間になってからも影響が出る。

 

 

「西住なんとかしろ!隊長だろ!」

 

「えぇ!?」

 

 

ここで河島の悪いところが出てしまった。たしかにみほは隊長だが、なんとかしろというのは無責任すぎる。

 

少し悩んだみほだったが、突然あんこう踊りを踊り出した。

 

「みぽりん!?」

 

「あの恥ずかしがり屋のみほさんが!?」

 

「ところどころ間違えてはいるな」

 

「みほ!?」

 

「みんなは歌ってください!私が踊りますから!」

 

 

踊り出したのはみんなを鼓舞するためだろう。自分が踊るからと言ってみんなには歌ってもらうだけのつもりだったが……

 

「私も踊る!みぽりん1人に踊らせない!」

 

「私も踊ります!私も西住殿1人に踊らせません!」

 

 

沙織と優花里、麻子と華のあんこうチームが一緒に踊り出すと、他のみんなも一緒に踊り出した。りくも含めて……

 

 

「あの!!」

 

『っ!?』

 

 

プラウダ高校の生徒がやってきた。返答を聞きにきたのだろう。

 

 

「3時間経ちました。降伏しますか?」

 

「降伏はしません!最後まで戦います!」

 

「そうですか」

 

 

プラウダ高校の生徒が戻っていくと、みんなも準備をし始めた。

 

 

「会長…」

 

「西住ちゃんは気にしないで勝つために動いて」

 

「はい」

 

「杏さんと桃さん、砲手を杏さんにお願いしたいんですけどいいですか?」

 

「そんなことか。私もここは会長にやって欲しいと思ってるし大丈夫だよ」

 

「といかこっちでもう話してたんだよね〜」

 

「はやっ!?まぁいいや……杏さん、俺の本気の装填速度覚えてますよね?」

 

「もちろん……ってまさか」

 

「本気で行きます」

 

「了解」

 

 

みほがIV号の方に戻った後、りくは会長に砲手をお願いしたいと伝えたら、もう既に話し合っていたみたいだ。これにはりくも驚いていた。

 

本気でいくことを伝えたためか、会長は笑みを浮かべたのだった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「わざと包囲網の一部を薄くしたわ!そこから抜けてきてもらうような罠ね!もしフラッグ車を狙いに来ても後ろに待機してる車両に叩いてもらうから問題ない!完璧だわ!」

 

 

プラウダ高校の隊長のカチューシャは、包囲網の一部をわざと緩くしている。フラッグ車を狙ってきても大丈夫なように後ろに待機もさせている。

 

完璧に見えるが、この後カチューシャは驚くことになるだろう。大洗の作戦に……

 

 

「やっぱりそっちから……えっ、こっち?」

 

「まさかこちらに来るとは…」

 

 

1度包囲網の薄いところに行こうとした大洗だったが、その後方向を変え、包囲網の厚い部分に進行方向を変えたのだ。それにはカチューシャだけじゃなくノンナも驚いていた。

 

 

「やっぱり驚いてるみたいだな。みほ!こっちはもう任せろ!」

 

「わかった、お兄ちゃんたちお願い!ではこれより、ところてん作戦を開始します!」

 

 

大洗は囮役となった38t以外は別のところへと走っていった。残った38tは砲手を会長に変えて敵車両に向かっていった。

 

 

「37mmでも0距離なら……ここだ!」

 

 

シュパッ

 

 

「よしっ!」

 

「いいぞ杏さん!次だ!」

 

「オッケー!」

 

 

会長に変わった途端に、38tの砲撃が当たり出した。まぁ河島にセンスがないと言ってしまったらそれでおしまいだが……

 

 

「次は……ここだ!……しまっ!?」

 

「大丈夫だ、落ち着いてもう1発!」

 

「……ここだ!……よしっ!」

 

 

次に狙った車両の砲塔が38tに向けられかけている時に、会長の放った砲撃は履帯離脱させたのみとなってしまった。だがそこはりくの装填でカバーして撃破に成功した。

 

 

「りくりく助かったよ〜でも外さなければもう1両いけたね」

 

「いえいえ……っ!?右展開急げ!?」

 

「っ!?」

 

 

ダーンッ

 

 

「うわっ!?」

 

「杏さん!?」

 

「「会長!?」」

 

 

2両倒した直後、38tの近くに着弾した。本来なら当たっていただろうが、りくがギリギリで気付いて指示を出し、間一髪かわすことができた。

 

だが着弾の衝撃から、38tは半回転するように動き、会長はバランスを崩して頭をぶつけそうになってしまった。それはなんとかりくが肩を抱き寄せて回避できたが……

 

 

「た、助かったよ……ありがと//」

 

「いえいえ、ちょっとこのまま動かないでくまさいね…………ここだな!」

 

 

ダーンッ!

 

 

「くっ!?」

 

 

安定しない中で撃ったりくの砲撃は見事に狙ってきた車両に命中させた。

 

 

「T34で的確な砲撃……ってことは砲手は……」

 

「今の状態から的確に当ててくる、37mmじゃなくもっと強力ならおそらく走行不能に。さすがですね……」

 

「ノンナさん(りくさん)!!」

 

 

今の砲撃が、お互いがお互いの砲手を把握している。そしてものすごく嬉しそうな顔をしている。そんな中、ずっとりくに肩を抱き続けられている会長の顔は真っ赤になっていて新鮮だ。

 

 

「り、りくりく//そろそろ離してくれないかな//」

 

「へ?……あ、すみません!?謝りついでに杏さんは車長、桃さんは装填手お願いします。俺は一旦外出ます」

 

「「「えっ!?」」」

 

 

会長を離した後に車長会長、装填手河島、砲手りくとなった後、突然りくが外に出た。これには当然3人は驚いた。

 

気になって外を見てみるとT34の方からノンナさんが歩いてきていた。そこに向かってりくも歩き出した。

 

 

「りくさん。私と勝負してくれませんか?」

 

「そのつもりです。こっから……いえ、ノンナさんとの撃ち合いでは俺が砲手をやります」

 

「いい勝負にしましょう」

 

「はい。お互いが戦車内に戻ってから5秒後にスタートとしましょう」

 

「わかりました」

 

 

りくとノンナはキューポラに入る前に互いに礼をし、中に入った。そして5秒が経過して

 

 

ダーンッ

ダーンッ

 

ドカーンッ

 

 

2つの砲撃音が響いた。その後その2つの砲弾がぶつかる音が鳴り響いた。5秒経った途端にノンナは挨拶代わりと言わんばかりの砲撃を放ち、りくの方はわざと遅らせて撃ち、ノンナの砲撃を撃ち落とした。挨拶代わりの悪魔の砲撃だ。

 

そこから戦車も走り始めた。

 

「柚子さん左!」

 

「はい!」

 

 

「左!」

 

「はい!」

 

 

お互いが左に移動しお互いが撃った。お互いに車両を掠めだけで有効打にはなっていない。次にお互い当時に半回転して撃ったが、りくは微妙にタイミングを遅らせて撃ち落とすことにした。距離的に倒せないと判断したからだろう。

 

 

「やるなノンナさん、燃えてきたぜ」

 

「さすがりくさん、負けません」

 

 

2人とも熱くなっている、それでいて楽しそうだ。

 

 

「柚子さん、次指示したら右にお願いします。それまでは前進!」

 

「はい!」

 

「前進してきた?……発射」

 

「今だ!」

 

 

ダーンッ!

 

 

「っ!?全速前進!!」

 

 

ダーンッ!

 

 

「ちっ、掠っただけか」

 

 

りくの指示で砲撃を避けることに成功してりくも撃った。だけどギリギリでノンナが全速前進の指示を出してなんとか掠めるだけで済ませていた。

 

 

「このままではやられてしまう…でも相手は37mm、どこかで必ず近付いてくるはず、一か八かそこで勝負に出るしか……」

 

「やっぱり38tじゃ遠距離は無理、かといって静止して撃つのもノンナさん相手だと難しい……賭けるか。

 

柚子さん後退してください。それで俺が合図出したら全速で前進してください」

 

「了解です」

 

「桃さん、後退してる時に撃ってきたら撃ち落とします。俺が撃ったらできるだけ早めに装填してください」

 

「任せろ」

 

「りくりく、任せたよ!」

 

「はい!それじゃあ全速後退!」

 

 

搭載されてる砲撃だとノンナが乗っている戦車の方が有利、だがりくが砲手をやっているためか、りくの方が優勢に見える。しかし、それでも38tの威力ではなかなか倒せなくて苦労している。

 

そこでりくは、一旦距離を取り全速で近付いてその勢いを利用しようとしている。ノンナは近付いてくるであろう38tを待っている状態。お互いに賭けに出ている。

 

38tが下がり出した。

 

 

「下がった?1度撃って様子を見ますか」

 

 

ダーンッ

 

ダーンッ

 

 

「これが狙い!?急いで装填してください!」

 

「今だ柚子さん!全速前進!」

 

 

ノンナが様子見のために撃った砲撃を撃ち落としたと同時に、一気にT34に向かって走り出した。ノンナも狙いに気付いたがギリギリだ。

 

 

「「発射!!」」

 

 

ダーンッ!ダーンッ!

 

シュパッ シュパッ

 

 

りくとノンナ、お互いがほぼ同時に砲撃した。煙が晴れて視界が良くなり確認できるようになると、どちらの戦車からも白旗が上がっていた。

 

同時に行動不能だ。

 

 

『大洗学園38t、プラウダ高校T34行動不能!』

 

「「っ!?」」

 

 

審判のコールが鳴り響き、当然両隊長にも聞こえていた。

 

 

「みほ悪い、行動不能になっちまった」

 

「ううん、ありがとうお兄ちゃん。会長たちもありがとうございます」

 

「後は頼んだよ西住ちゃん」

 

「任せたぞ」

 

「お願いね?」

 

「みほ、精一杯やってこい!」

 

「うん!」

 

「申し訳ありませんカチューシャ、引き分けに持ち込むのがやっとでした」

 

「っ、よくやったわノンナ!ノンナが行動不能になるのは痛いけどあの悪魔を倒したのは大きいわ!あとは任せなさい!」

 

「はい」

 

 

隊長との通信を終わりにすると、りくとノンナが外に出た。周りには他の戦車はいないから安全ではある。

 

 

「さすがノンナさんですね。賭けに出る必要になりましたからね」

 

「りくさんでも賭けに出たのですね。私もです。近付いてくるとほ思っていましたがあそこで一度下がるとは……距離を稼ぎましたね?」

 

「そういうこと、少しでも離れてから全速で近付きたかったので、まぁ引き分けになっちゃいましたけど」

 

「私からしたらなんとか引き分けに持ち込めたというところですね」

 

「そうでしたか、まぁ俺も引き分けじゃなくて勝ちたかったですけど…それはまたの機会にさせてもらいますね」

 

「それはこちらのセリフです」

 

 

りくとノンナの2人は、回収班が来るまでずっと2人で話していた。2人はこの対決をとても楽しんでいた。りくもノンナもここまで楽しめるとは思っていなかっただろう。

 

叶うことならば、2人ともまたやりたいと思っているし、観客たちもまた見たいと思っている。実現して欲しいものだ。

 

2人の好勝負とは別に、みほとカチューシャもそれぞれ勝利のために動いていた。

 




アニメと変わってしまいましたが、ノンナさんはこの試合はここで退場です。

次回でプラウダ戦は決着となります。


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19、プラウダ戦決着

やっとできた……


 

『大洗学園38t、プラウダ高校T34走行不能!』

 

 

戦車道大会準決勝、大洗学園とプラウダ高校の試合の中、りくとノンナが相対し、2人の勝負は引き分けとなっていた。

 

 

「後は任せなさいノンナ!」

 

「はい」

 

「カメさんチームの皆さん、皆さんの頑張りは無駄にしません」

 

「頼んだぞみほ!」

 

「任せてお兄ちゃん」

 

 

みほとカチューシャの2人は、それぞれに労いを終わりにした。みほはこの場を脱出しようと、カチューシャは逆にここで決めようとしている。

 

りくたちが数両倒したおかげで脱出しやすくなっている。

 

 

「今が抜け出すチャンスです!全車10時方向に進んでください!」

 

「フェイント入って難易度高くなります!なんとかついてきてください!」

 

「「「「了解!」」」」

 

 

チャンスと見たか、みほは一気に抜け出すように指示を出し、見事に脱出した。

 

 

「くっ、この包囲網を抜け出せるなんて……悪魔を倒せたとはいえ、やっぱりノンナがやられたのは痛いわね」

 

 

追い込んでいたプラウダのカチューシャは、当然悔しがっている。

 

 

「カモさんチーム、後ろから追ってきている車両の中にフラッグ車はいますか?」

 

「いません!」

 

「わかりました。カバさんチーム、あんこうと一緒にあの坂を超えたらやり過ごしてください。ウサギさんとカモさんはフラッグ車のアヒルさんの護衛お願いします」

 

「「「了解!」」」

 

「それと優花里さん、やり過ごしたあとまた偵察に出てもらえますか?」

 

「了解であります!」

 

 

包囲網を突破した大洗学園、それを追っているプラウダ高校。追っている車両の中にフラッグ車がいないことを確認すると、みほは次の作戦の指示を出した。IV号と三突で決めるつもりだ。

 

 

「とおっ!!」

 

「お願いね」

 

「任せてください!……どこか高い所に」

 

 

予定通りにIV号と三突は敵車両をやり過ごして走ってきた道を戻り出した。少し進んだところで優花里は戦車から飛び降りて、高い所を目指し出した。上から見るためだ。

 

 

「西住殿!見つけました!」

 

「ありがとう優花里さん!そのまま報告お願い!」

 

「わかりました!」

 

「カバさんチームのみなさん!主力がいないうちに一気に倒しに行きます!」

 

「了解!」

 

 

大洗は一気に決めるつもりだ。それはプラウダも同じだ。だけどカチューシャは、追ってる最中にあることに気が付いた。

 

 

「2両いなくなってる……気付くの遅かったわね。フラッグ車聞こえる?」

 

『なんでしょうか?』

 

「IV号と三突がそっちに向かった可能性があるわ。逃げまくって時間を稼ぎなさい!私たちが大洗のフラッグ車を倒すまでよ!」

 

『了解しました!』

 

 

カチューシャはIV号と三突がいないことに気が付いて指示を出した。気が付くのが遅れたため、戻ることはせず、フラッグ車に逃げるように指示を出して…

 

 

「1秒でも早く倒すわよ!撃て!」

 

 

ダーンッ!……シュパッ!

 

 

『大洗学園M3リー行動不能!』

 

 

プラウダ高校が撃った砲撃は、見事に大洗のM3リーに命中して行動不能にした。主力部隊側から見えているのは残り2両。フラッグ車がやられる前に倒せるかが勝負だ。

 

 

「すみませんやられてしまいました!カモさんチーム後はお願いします!」

 

「了解しました!」

 

 

ウサギさんチームがやられ、残る護衛はカモさんチームだけとなった。しかし、その少し後にカモさんチームもやられてしまった……

 

 

「あと1両!フラッグ車を倒して勝つわよ!」

 

 

「こちらも急ぎましょう!」

 

「ですが相手は逃げることだけを考えているようです……」

 

「……ここはさっきも通った場所、カバさんチーム至急やってもらいたいことがあります!」

 

「……了解!」

 

「アヒルさんチームはなんとか逃げ切ってください!」

 

「了解しました!」

 

 

大洗のフラッグ車護衛はやられてしまい八十九式のみ、カチューシャは早く倒そうとしている。

 

一方みほも、ウサギさんチームとカモさんチームがやられたことを聞き、急いで倒そうとしている。そのうち何度も同じ場所を通っていることに気が付いて、カバさんチームにあることをお願いした。

 

 

ダーンッ!ダーンッ!

 

 

「うぅ……」

 

「泣くな!涙はバレー部が復活した時のために取っておけ!」

 

「キャプテン!そうですね」

 

「ここが私たちにとっての東京体育館、または代々木体育館!」

 

『そーれそれそれそれー!』

 

 

プラウダからの激しい砲撃で弱気になりかけていた。だがキャプテンの磯辺の言葉で立ち直れた。まだ砲弾が当たることはなく走れている。

 

 

ダーンッ!

 

 

「っ!?」

 

 

避け切っていたアヒルさんチームであったが、ここで砲撃が当たってしまった。煙のせいで撃破されたかどうかわからない。

 

 

 

一方プラウダのフラッグ車を狙っているIV号と三突も動きを変えた。

 

 

「こちらカバチーム、準備できた」

 

「了解しました。優花里さんは上から見て指示をお願いします!」

 

「了解であります!」

 

 

みほが指示をした内容の準備が完了したということを聞き、みほも最後の作戦に出た。

 

 

「華さん、機銃で右の道に誘い込んでください」

 

「わかりました。やってみます」

 

 

みほの指示で機銃を使い、見事指示通りに右の道に誘い込むことに成功した。あとはカバさんチームのところに行くのを待つだけだ。

 

 

「目標まで残り50メートル!」

 

「カバさんチームのタイミングで撃ってください!」

 

「了解!」

 

 

ダーンッ!

 

 

カバさんチームが最後に撃った砲撃は、プラウダ高校のフラッグ車に命中した。

 

それは、大洗フラッグ車の八十九式が当たったのとほぼ同じタイミングだった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「どっちだ……」

 

 

ガタガタガタガタ

 

……シュパッ

 

 

煙が晴れ、状況が明らかになった。

 

大洗のフラッグ車の八十九式はまだ動いている。かたやプラウダ高校のフラッグ車は白旗が上がり撃破判定が出ている。

 

 

『プラウダ高校フラッグ車、行動不能!大洗学園の勝利!』

 

 

「そん……な……ひぐっ」

 

「……どうぞ」

 

「泣いてなんかないわよ!!」

 

 

審判のコールが鳴り響くと、カチューシャは涙を見せた。そこにノンナがやってきて自分のハンカチを渡した。

 

 

「やりましたね西住殿!」

 

「みんなが頑張ってくれたからだよ。優花里さんも偵察ありがとね」

 

「西住殿にありがとうって言われましたー!」

 

「大げさだよ〜」

 

「みんなのところに戻ろっか」

 

 

優花里はIV号に戻るとみほにお礼を言われて喜んでいた。大げさに……

優花里と合流し、みんなのもとに戻り出した。

 

みほたちより一足先にりくはフラッグ車をしていたアヒルさんチームと合流していた。

 

 

「磯辺!」

 

「りく!」

 

「よくやったな!」

 

「私1人じゃなかったから!みんながいたから!」

 

「ああ!みんなよくやったな!」

 

『えへへ』

 

 

合流したりくはフラッグ車をやっていたアヒルチームを褒めていた。それだけの活躍だったが、それはりくも同じだ。みんなそのことについて触れていないが……

 

 

「おっ、みほたち帰ってきたな」

 

「みんな集まってたんだね。磯辺さん、ありがとう」

 

「ふふっ、兄妹揃ってお礼言わなくても」

 

「え?そうなの?」

 

「まぁな」

 

「まぁ〜それだけ兄妹の考えが似てるってことでしょ〜」

 

「あっ」

 

「ん?あっ、カチューシャさん」

 

 

みほたちがみんなと合流して話していると、カチューシャがノンナに肩車されてやってきた。そのまま話すと思ったら、なんとカチューシャはノンナから降りて話し出した。

 

 

「まさかあの包囲網を突破できるとはね」

 

「私もです、まさか突破できるとは……でもあそこで全車両で来られてたら負けてたかも……」

 

「どうかしらね、あなたたちなかなかやるしそれに……そっちにはあの悪魔もいるんだから」

 

「いくらお兄ちゃんでも全車両でこられたら……でもありがとうございます」

 

「決勝戦……観に行くから絶対優勝しなさいよ?」

 

「はい!」

 

 

みほとカチューシャ、隊長同士で話しているすぐ側で、りくとノンナもまた2人で話していた。

 

 

「学校としては大洗が勝ちましたけど、俺たちの勝負は引き分けでしたね」

 

「えぇ、さすがりくさんですね。私と1vs1で私に負けなかった人はそんなにいませんよ」

 

「そりゃあノンナさんは優秀な砲手だからな」

 

「人のこと言えますか……私を38tで倒しに来るとは思いませんよ……」

 

「あはは……」

 

「というよりもっと火力のある戦車に乗っていたら私はあっさり負けていました」

 

「そこはまぁ……仕方ないです」

 

 

ノンナの言う通り、りくがもっと強力な火力のある戦車に乗っていたら、おそらくりくの勝ちだった。最初の一撃を与えた時点で……だがそこは学校の事情があるから仕方ない。

 

すると突然

 

 

ギュッ

 

 

「ノンナさん!?(や、柔らか)」

 

 

ノンナがりくに抱きついてきた。突然すぎてりくも反応できないくらいだ。りくはりくで、驚いたと同時に何か別のことを思った様子だ。

 

ちなみに……周りで見ている人は、面白そうだと思ってみたり、歯ぎしりをしながら見ている人など色々だった……

 

 

「決勝戦勝ってください。応援していますから」

 

「そ、それはありがとうございます。でも抱きつく必要は……」

 

「あなたを私のモノにしようかと」

 

「はっきり言い切った!?しかも当然のごとく!?」

 

「ちょっとノンナ!?それはダメよ!?」

 

「カチューシャさん助かります」

 

「いくらカチューシャとは言え、それは聞けません」

 

「りくは私のモノになるんだからね!」

 

『えぇー!?』

 

「なんでそうなんだよ!?」

 

「いくらカチューシャでも、それは譲れません!」

 

「いくらノンナでも、それは譲れないわよ!」

 

「(え、なんで俺の取り合いになるの!?)」

 

『(この2人は……)』

 

 

砲弾の軌道や撃つタイミングを読むことができるりくでも、人の心は読めないようだ。

 

 

「とにかくノンナさんはそろそろ離れてください。それと2人とも、言い争うなら2人のこと嫌いになっちゃいますよ」

 

 

バッ

 

 

「それは困るわ!」

「困りますね」

 

 

「とにかく、決勝戦応援に行くから!負けるんじゃないわよミホーシャ!リクーシャ!」

 

「「はい!!」」

 

 

りくに嫌われたくないのか、ノンナはすぐに離れ、2人の言い争いは終わった。

決勝戦を観に行くと告げて自分たちの学校の方へ戻っていった。

 

「(ん?あれは?)」

 

 

りくは何かを見つけたようだ……

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「大洗が勝ったのは相手が油断したからよ」

 

「いえ、実力があります」

 

「実力?」

 

「はい。みほの指示に応えようとみんなで力を合わせています」

 

「あんなものは邪道。決勝戦では王者の戦いを見せ付けなさい」

 

「はい」

 

「実力があるって言ってくれんのは嬉しいけどさ、母さんの言う通り相手の油断もあったと思うぜ」

 

「「りく」」

 

 

りくが見つけたのは、観客席から見ていた母のしほと姉のまほだった。みんなから離れて2人のところにやってきていた。

 

 

「相手が油断していたっていう自覚はあるのね」

 

「あれが油断じゃないっていうんならなんて言うんだよ……3時間待たずに……というか降伏宣言させようとしないで普通に試合してたら間違いなくプラウダは勝っていた。それは事実だ」

 

「そう、わかっているのね。相手が油断したことも、あなたたちの戦車道が邪道ってことも」

 

「邪道?それは母さんから見てだろ。いくら家元でも他校の戦車道に口出しする権利はないだろ」

 

「口ではなんとでも言えるわ。決勝戦では黒森峰が王者の戦いを見せ付けるからそのつもりでいなさい」

 

「(長引くのか?)」

 

 

試合を見ていた人が帰っている中、りくたちのいるところだけ険悪な雰囲気になっている。まぁ事実言い争ってるわけだし無理もないが……

 

いつまでこれが続くのか、まほがそう思ったその時、1人声をかけてきた人がいた。

 

 

「おーいりくー!俺たちも帰るってさー!」

 

 

呼んだ人物は翔太。翔太はりくを呼びに来ていたのだ。

 

 

「はいよー!

 

まっ、母さんがどう思うが関係ねぇや。俺たちは戦い方や考え方を変える気はないしな。

 

それと姉ちゃん」

 

「なんだ?」

 

「俺たちは負けない。俺たちの戦車道で黒森峰にも勝つ」

 

「そうか。だが我々も負けるつもりはない。お母様の言った王者の戦い方を見せ付けるというのは私も同意だ。私たちは負けない」

 

「そっか、そんじゃ試合でな!」

 

 

呼びに来た翔太に気付き、まほと少し話した後にりくは戻り出した。

 

 

「そういや翔太、母さんや姉ちゃんと話さなくてよかったのか?会うの久しぶりだろ?」

 

「去年の決勝戦の後のことはりくから聞いてたからな。それがなければちょっとだけ話してたかもな。あ、でもまほ姉とは前に少し話したかな」

 

「そっか……そうなの!?」

 

「まぁな、でもそれは置いておいて、決勝戦も勝てよ!」

 

「ああ!」

 

 

翔太が母さんやまほと久しぶりに会ったのに話さなくてよかったのかと聞いたら、よかったみたいだ。それに翔太は1度まほと会っている。それを知らないりくは驚いていた。そのことは気にせずに、次の試合も勝てと檄を飛ばした。

 

ちなみに……

 

 

「お兄ちゃん遅いよ!」

 

「悪い悪い」

 

 

戻った時に文句を言われたことに関しては予想通りだった。

 

 




終わらせ方ちょっと雑になったかな……オリキャラの翔太出番少ないから出さないと忘れそうなので出しました

次回いつになるかわかりませんがお楽しみに


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20、残すは決勝戦

タイトルが思い浮かばない……

途中オリジナル要素も加えてあります。オリキャラいるしいいよね?ダメと言われても困りますが……


「決勝戦……今の戦力で勝てそうか?」

 

「勝てるかどうかじゃない…勝つしか道はない、そうでしょ桃さん」

 

「それはわかっているが」

 

 

生徒会の3人、それとみほやりくが生徒会室に集まって決勝戦のことについて話している。ここまでなんとか勝ち上がってきた大洗。残すは決勝の黒森峰戦だけだ。

 

 

「まぁできたら戦力を増強はしたいけど……」

 

「それができればとっくにやってるんだよね〜」

 

「ですよね…」

 

 

戦力を強化したいという気持ちはりくも同じ。だけど会長の言う通りできていたら既にやっている。だから今の戦力でなんとかするしかない。

 

 

「戦力のことは仕方ない。決勝は何両で来るんだ?」

 

「決勝戦は20両までとされています。ですので20両で来ると考えた方がいいでしょう。だから内訳はティーガー、パンター、ヤークトティーガー、エレファント……これらは出てくると思います」

 

「あとは偵察用にIII号がいてもおかしくない……それに黒森峰は俺たちと当たるよりプラウダと当たることを想定していた可能性が高い」

 

「となると他の重戦車……マウス」

 

「いてもおかしくないな」

 

「いや〜それは厄介だね〜」

 

 

黒森峰から転校してきたみほとりくの2人は、どのような内訳で来るか予想はできている。もっとも、黒森峰のまほもそれくらいは想定しているだろうが……

 

 

「とりあえず義援金も出してくれてるしそれで改造キットとか買ってできる限り戦力強化しよう」

 

「あとは何か情報を聞いてもらって、決勝に間に合うのがあればそれも採用ってところですね」

 

「そうだね〜それじゃあ早速動こっか」

 

「「「「はい!」」」」

 

 

5人での話し合いを終わりにして、戦力強化、そして戦車整備のために動き出すこととなった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「それじゃあ今日は戦車の整備にあたってくれ!」

 

『はい!』

 

 

今日は練習はなしとして、戦車の整備をすることとなった。それと同時に戦力アップをできる限りすることになっている。

 

 

「とりあえずこのヘッツァー改造型キットを38tにつけよっか」

 

「かなり強引になりますよ」

 

「じゃあ言い出した杏さんはしっかり見ておいてくださいね」

 

「はいよ〜探せる範囲で捜索よろしく〜」

 

「了解です。翔太〜」

 

「はいよ〜って俺もか!?まぁいいけど」

 

改造型キットの取り付けは生徒会に任せて、りくとついでに翔太は戦車の捜索に向かった。かなりダメ元でだが……

 

りくたちが出て行った少し後に

 

 

「あの西住さん」

 

「猫田さん?」

 

 

みほのクラスメートの猫田が倉庫にやってきた。

 

 

「今からでも戦車道取れないかな……?」

 

「気持ちは嬉しいけど今他に戦車がなくて……」

 

「あの戦車は使えないの?」

 

「あの戦車?」

 

「うん、駐車場にあるんだけど」

 

「うそっ!?」

 

 

どうやら駐車場に戦車があるみたいだ。何故そんなところにあるのかわからないが……

 

 

「会長、実は……」

 

「ごめんちょっと待ってね〜それで駐車場にあるんだね?」

 

『そうです。こんなところにあるとは思いませんでしたけどね』

 

「そりゃあね〜それじゃあ自動車部に回収してもらうからそれまでそこいて〜」

 

『了解です』

 

「ごめんね西住ちゃん、それで何かあったの?」

 

「いえ、駐車場に戦車あるみたいですけどお兄ちゃんが見つけたみたいですね。あとクラスメートの猫田さんが戦車道取りたいみたいです」

 

「そいうこと〜戦車があるなら大歓迎だよ」

 

「ふふ、そういうと思いました」

 

 

みほが会長に戦車があることを伝えようとしたらりくと電話をしていて、駐車場に戦車があると言うことを伝えていた。これで猫田が乗る戦車は見つかった。猫田によると、どうやらもう既に仲間を呼んであるらしい。

 

 

「戻ったぞ〜」

 

「りくりくおつかれ〜改造キットの取り付けは終わって整備中だよ〜」

 

「了解です」

 

「あれ?なんで麻子が一緒なの?」

 

 

見つかった戦車は三式中戦車。回収のために来てくれた自動車部と一緒に、りくと翔太が戦車倉庫に帰ってきた。だが一緒にいなかった麻子が何故か一緒にいたことに沙織が疑問を持った。当然のことだが。

 

 

「途中で見かけたから拾った」

 

「拾われた」

 

「そもそもなんでこんなに遅かったの?」

 

「おばあのところに行ってた」

 

「退院したのか?」

 

「うん」

 

「よかったな」

 

「っ、うん//」

 

「ああ!?麻子ズルイ!?」

 

 

どうやら戻る最中に麻子を見つけたため、戻るついでに拾ったらしい。麻子のおばあちゃんが退院したため、麻子はそっちに行っていた。もらったおはぎを手に持って。

 

りくが麻子の頭を撫でながら言うと、珍しく麻子が赤くなり、沙織がズルイと言った。羨ましいのだろうか?

 

 

「そういうなら沙織も撫でてもらうといい…」

 

「えっ……ズルイってそのこと?」

 

「ふぇ!?そ、そんなことないよ!?//ほら麻子、整備手伝って」

 

「引っ張るな」

 

「…………行っちゃった。まぁいいや、翔太、三式の方手伝ってくれ」

 

「掃除くらいしかできないぞ?」

 

「わかってる、それをやってくれってことだ」

 

「はいよ〜」

 

「杏さんみたいだぞお前……」

 

「それはちょっと嫌だな」

 

「どういう意味かな〜」

 

「さぁやりますか!」

 

「「逃げた」」

 

 

麻子は沙織が引っ張り、翔太は会長から逃げるように三式の方へ向かった。りくは38tの方を手伝わず、三式の整備を手伝うことにした。翔太に外を掃除をしてもらっている間に、中の方を整備していると自動車部も手伝いにきてくれて、一気に作業スピードが上がった。

 

ちなみに、この自動車部も決勝では参加することとなっていて、ポルシェティーガーに乗ることになっている。そちらの整備も終わって手伝いに来てくれている。本当に頼もしい。

 

無事に三式は動かせるようになり、決勝戦では三式中戦車とポルシェティーガーが加わることとなった。残りわずかな期間だが練習をしていき、基本的な動きはできるようになった。

 

 

そして決勝戦前日

 

 

「よし!練習はここまで!あとは明日の決勝戦に備えてゆっくり休んでくれ!」

 

『はい!』

 

 

決勝戦前日の練習も終わった。あとはもう明日の決勝戦を迎えるだけ、やれることは全部やった。

 

 

「それじゃあ西住ちゃん、隊長として何かよろしく〜」

 

「えぇ!?」

 

「ほんと急に言い出すこと多いな…」

 

 

練習が終わって集合をしていると、会長が突然みほに隊長として何か言うように促した。りくの言う通り本当に急だ。

 

 

「明日当たる黒森峰学院は……私とお兄ちゃんがいた学校です。でも、今の私たちの母校はこの大洗学園です。決勝戦、私も頑張りますのでみなさんの力を貸してください。決勝戦も頑張りましょう!」

 

『はい!』

 

 

会長からの無茶振りにもちゃんと答え、今日は解散となった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「みぽりん、りく、今日みんなでご飯食べたいんだけど家行ってもいいかな?」

 

「大丈夫だよ、いいよね?」

 

「もちろん、何作るつもりだ?」

 

「やっぱりカツかな〜」

 

「じゃあみほ、先5人で行っててくれ」

 

「お兄ちゃんは?」

 

「今家にカツ作れる食材あると思うか?」

 

「なるほど、わかった」

 

 

りくはみんなと別れて買い物に、みほたち5人は先に家に行ってもらう……はずだったのだが

 

 

「り〜く!」

 

「うわっ!?沙織!?どうしたんだ!?」

 

 

沙織だけがりくの方に走ってきて、いきなり腕に抱きついた。

 

 

「私も一緒に行くよ。作るの私もりくでしょ?」

 

「まぁそうなるけど…」

 

「それに荷物持つの大変かもだから……ね?」

 

「それじゃあお願いするけど……なんで腕に抱きついてるんだ?」

 

「やってみたかった!」

 

「なんだその理由!?(でも柔らかくて気持ちいいな……口にはしないけど)」

 

 

沙織はりくと一緒に買い物に行くためについてきたのだ。腕に抱きつく必要はないとは思うが、りくは男ならではのことを考えているようだ。沙織は気付いていないが……

 

買い出しを終えて家に着くと、2人ですぐに料理に取り掛かった。もちろん他のメンバーも少しは手伝っているが、基本的には沙織とりくの2人で作っていた。

 

「できたぞ〜みほ、机借りるぞ」

 

「わかった。うわ〜美味しそう」

 

「ほんとですね!」

 

「さすが沙織さんとりくですね」

 

「沙織とりくの料理は美味しいからな、楽しみだ」

 

「もぅ〜」

 

 

みんなで作った料理を食べ始めてからしばらくすると、突然沙織から重大な発表があると告げられた。なんだろうと思いみんなの視線が沙織に集まると

 

 

「実は私、アマチュア通信手2級に合格しました!」

 

「すごいです!」

 

「2級は結構難しいのにすげぇな!?」

 

「えへへ〜麻子に教えてもらいながら頑張ったよ」

 

「教える方が大変だった」

 

「(それって麻子も取れるってことじゃねぇか?)」

 

 

試験の勉強は麻子に教えてもらったみたいだがそれでもすごい。みほやりくがいた黒森峰でも持っている人は多くない。

 

 

「沙織さん凄い、婚約はないと思ってたけど」

 

「ああ〜みぽりんひど〜い!」

 

「ご、ごめんなさい!?」

 

「じゃあ黒森峰に勝ったら婚約してみせる!」

 

「「どうしてそうなった!?」」

 

「だって私にはりくがいるし」

 

「なんでそうなる!?」

 

 

みほの婚約はないと思った発言からよくわからない展開になってきている。最終的にはりくがいるという発言になった。何故そうなった……

 

 

「いいでしょりく?」

 

「ちょっ!?なんで寄ってくる!?つーか落ち着け沙織!?」

 

「そんなに魅力ない?」

 

「ちょっ!?お前こんな力あったか!?あと魅力ないなんてことはないぞ!?」

 

『うわぁ//』

 

 

突然の展開にみんなは驚いて固まったままだ。そしてなんと沙織はりくを押し倒してしまった。そんな力があるのかとりくは驚き、他のみんなは赤くなって見てるだけだ。

 

 

「だったら私と……」

 

「たしかに魅力がないってことはないけどさ、そういう関係になりたいとは思ってないんだよ。というか特定の誰かが好きってわけでもないしさ。だから今はそんな約束はできない」

 

「じゃあ頑張ってりくを振り向かせる!」

 

「えっと……俺こういう時なんて言えばいいんだ?」

 

『さぁ?』

 

 

とりあえずこの件については解決?した……が、まだ沙織は押し倒したままのことに気が付いていない。

 

 

「とりあえずさ、1回どいてもらえるか?そろそろ起き上がりたい」

 

「え?………………やだも〜私ったら///」

 

 

今の状況に気が付いたのか、沙織は慌てて起き上がってどいた。りくもやっと起き上がれた。恥ずかしいのか赤くなっていたが、そこはまぁ自分が悪いし、みんなで少しの間からかうこととなった。

 

 

「沙織が言ってるような意味じゃないけどさ、みんなありがとな」

 

『え?』

 

「俺もみほもさ、転校してきてからこんな風に過ごせるとは思わなかったし、また戦車道をやることになるなんて思ってもいなかったんだよ。しかも黒森峰にいた時より戦車道が好きになってる。みんなと一緒だったからだと思う。だからありがとう」

 

「お兄ちゃんってば私が言いたかったことを……私もお兄ちゃんと同じだよ。みんなのおかげでまた戦車道をやれたし好きになれた。本当にありがとね。みんな大好きだよ」

 

『……』

 

「「あ、あれ?」」

 

 

みんな急に静かになった。まぁ突然りくとみほがお礼を言い出したから……と言った2人は思ったのだが

 

 

「西住殿に告られました〜」

 

「嬉しいけどみぽりん、そういうのはちょっと違うよ〜」

 

「えぇー!?」

 

「いやむしろお前らの考えがおかしいと思うんだが……俺ら普通に友達として言っただけなんだけど?」

 

「「そうなの(ですか)!?」」

 

「普通わかるだろ」

 

「麻子さんの言う通りですね」

 

「「えぇー!?」」

 

「「あはは……」」

 

 

静かになった理由はみほに告白されたからだと思ったらしい。特に優花里と沙織は……

華と麻子は普通に気が付いていたが、2人の反応が面白くて黙っていたらしい。

 

この後も時間が許す限りこの時間を楽しんで、決勝戦を迎えることとなった。

 

 




今回はここで終わりにします。決勝戦開始のところまで書こうと思っていましたがやめました。次回から決勝戦に入ります。

もうすぐアニメ編は終わります。あと2話か3話で終わらせるつもりです。この小説はその後劇場版編まで書いたら終わりとします。オリジナルの話入れる可能性もありますが……

最終章はこの小説では書きません。書く時はこの作品の続きにはなりますがタイトルを変えて投稿するつもりです。

それでは次回もお楽しみに。


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21、決勝戦開始直前

お待たせしました。できたので投稿します。



 

「ここで試合できるなんて感激です!」

 

「そんなに?」

 

「ここは戦車道の聖地なんですよ!」

 

「やっぱり優花里はこうなると思ったよ。さっ、試合の準備をしちゃおうぜ」

 

決勝戦当日。大洗のメンバーは試合会場に到着した。戦車道の聖地と呼ばれる場所だけあって、優花里のテンションは上がっている。それはりくも予想していたが、試合の準備を開始させた。

 

 

「これで終わりだな、あとは各自休息を取り試合に備えてくれ」

 

『はい!』

 

 

河島の号令と共にみんなそれぞれバラバラとなった。

少しするとみほとりくがいるところに聖グロのダージリンとオレンジペコがやってきた。

 

 

「ごきげんようみほさん、りくさん」

 

「こんにちは」

 

「こんにちは」

 

「どうも、来てくれたんですね」

 

「もちろんですわ。大洗の、そして私のりくさんの試合ですからね」

 

「いや、俺は別にダージリンさんのじゃないですから」

 

「そうですよダージリン様。私だって狙って……なんでもありません。今日の試合頑張ってください」

 

「(今狙ってって言わなかったか?)ありがとうございます」

 

「頑張ります」

 

「ハーイみほ!りっくー!」

 

 

ダージリンやオレンジペコと話していると、今度は1回戦で対戦したサンダースのケイ、ナオミ、アリサの3人がやってきた。

 

 

「2人とも今日の試合頑張ってね!応援してるわ!」

 

「「はい!!」」

 

「それじゃあね!グッドラック!」

 

「(いなくなるの早っ!?)」

 

「ミホーシャ!リクーシャ!」

 

 

やってきたと思ったら一言声をかけてすぐにいなくなった。これにはさすがのりくも驚きだ。すると今度は準決勝で対戦したプラウダ高校のカチューシャとノンナがやってきた。いつも通りカチューシャは肩車をされた状態で。

 

 

「このカチューシャが見に来てあげたんだから勝ちなさいよ?」

 

「頑張ります」

 

「苦戦はすると思いますけど勝ちにいきますよ。まぁ負けるつもりでやる人はいませんけどね」

 

「さすがですねりくさん。それでこそ私の……」

 

「ノンナでも渡さないわよ!」

 

「お二人とも、りくさんは私のですよ」

 

「だから違うって……」

 

「すみませんりくさん。こうなったダージリン様を止めるのは難しくて……」

 

「大丈夫だペコ。とりあえず試合前に疲れさせないでほしいですね〜せっかくコンディション万全な状態でいるんですから」

 

「「「あっ……」」」

 

「簡単に止まった……」

 

「さすがお兄ちゃん……」

 

「コホン、とにかく頑張りなさいよ!それじゃあピロシキ〜」

 

「ダスビダーニャ」

 

 

軽く言い争いになりそうだったが、そこはりくが上手くおさめた。エールをしてもらいカチューシャとノンナはその場を離れていった。

 

 

「あなたたちは不思議な人、戦った相手が応援に駆けつけてきてくれる。素敵なことだわ。みんなみほさんやわ……コホン、りくさんに惹かれたのね」

 

「そう言ってくれると嬉しいですね(絶対私のって言おうとした)」

 

「そうですね(絶対今私のって言おうとしたな)」

 

「それでは私たちもそろそろ……その前にあなたたちにイギリスの諺を送るわ。

4本足の馬でさえ躓く。お2人とも頑張って」

 

「では失礼します」

 

「「ありがとうございます」」

 

 

カチューシャたちが離れたすぐ後にダージリンとオレンジペコもその場を離れていった。1つ諺を言った後に……

 

 

「いろんな人が来てくれたな」

 

「うん。お兄ちゃん人気だね」

 

「俺何かしたかな…なんか沙織にも狙われてる気がするし…」

 

「あはは……」

 

「でもみほにも惹かれたんだろうな。じゃないとわざわざ声をかけに来ないって」

 

「そうかな…そうだと嬉しい」

 

「きっとそうだって。なんたって俺の妹なんだからさ」

 

「えへへ、うん!」

 

「さっ、そろそろ戻るか」

 

「そうだね……お兄ちゃん」

 

「ん?」

 

「勝ちたいね」

 

「当然だろ。姉ちゃんや母さんにも俺たちの戦車道を見せてやろうぜ」

 

「うん!」

 

 

ダージリンやオレンジペコが離れた後、少しその場で話してからみんなの元に戻っていった。集合場所に戻ると2人以外は揃っていた。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「両チーム!隊長副隊長前へ!」

 

「行ってこい!」

 

「うん」

 

 

ついに決勝戦開始時刻となり、大洗学園、そして黒森峰女学院のメンバーが整列している。審判の進行通り隊長と副隊長が前へ出た。

 

 

「お久しぶり。弱小校だとあなたでも隊長になれるのね」

 

「……」

 

「今日の試合審判を務める長野亜美です、よろしくお願いします。それでは両チーム挨拶!」

 

「……」

 

「よろしくお願いします!」

 

『よろしくお願いします!』

 

 

それぞれ隊長と副隊長が前に出ると、早速エリカがみほを煽りだし、みほは無言だった。まほは何も言わなかった。

 

 

「行くぞ」

 

「はい」

 

「っ……」

 

「待ってみほさん!」

 

「っ!?」

 

「あの時はありがとう」

 

「あいつ…わりぃ、ちょっと行ってくる」

 

「はいよ〜」

 

 

挨拶が終わり、自分たちの方へ戻ろうとしたら黒森峰の生徒から呼び止められた。振り返って誰か見てみると、去年みほとりくが助けた赤星小梅だった。それを見たりくはすぐに駆け出した。

 

 

「あの後みほさんとりく君が転校しちゃってずっと心配だったんだよ。でもみほさんもりく君も、戦車道をやめないでいてよかった」

 

「私はやめないよ、戦車道」

 

「やめそうにはなったけどな」

 

「あ!りく君!」

 

「お兄ちゃんそれは内緒!!」

 

 

みほと赤星が話しているところに、突然りくも会話に加わった。

 

 

「でもみほの言う通り俺たちはもうやめない。大洗のみんなのおかげかな」

 

「うん。私大洗に来てよかったんだと思う。お兄ちゃんの言う通りみんなのおかげだよ」

 

「2人ともよかった。私もやめない。それとりく君……試合前に言うことじゃないかもだけどいいかな?」

 

「ん?別にいいが」

 

「(もしかして赤星さんも?)」

 

 

3人で話していると赤星がりくに何か言いたいみたいだ。みほはなんとなく予想しているが、りくは予想できていない。

 

 

「りく君のことは黒森峰で一緒にいる時からずっと見てました。それで助けてもらってからこの想いはその時以上に大きくなっていって、転校しちゃってから会えなくてすごく辛かった。

 

りく君、私はりく君のことが好きです//私の彼氏になってください//」

 

「(やっぱり)」

 

「…………えっ」

 

「迷惑だよね?試合前に…でも伝えたくてつい…」

 

 

みほが思った通り赤星がりくに言いたかったことは告白だった。りくも試合前に言われるとは思っていなかったのか驚いている。沙織に迫られた時以上に……

 

 

「そんな風に言ってくれるのは嬉しいけどさ、俺今誰ともそういう関係になろうと思ってなくてさ、だから今は小梅の気持ちに応えることはできない」

 

「今はってことはりく君を振り向かせることができたら……」

 

「その時は俺からまたちゃんと言うさ」

 

「よかった…まだチャンスはある」

 

 

驚いたりくだったが赤星が真剣な気持ちで伝えていたためか、ちゃんと返事をしてあげていた。

赤星はチャンスがあるとわかると小さくガッツポーズをしていた。

 

 

「つーかほんと試合前に言うことじゃないだろ!?」

 

「あはは、ごめんなさい…」

 

「それにもし俺がそういう関係になりたい人がいたらどうするつもりだったんだ?沈んだ気持ちで試合する可能性もあったんだぞ?」

 

「どうしても伝えたくて……その後のこと考えてなかった」

 

「小梅さん?逆にお兄ちゃんがOKしたら浮かれた気持ちで試合することになってたんじゃない?」

 

「……あ、たしかに。そうなるとよくないね……」

 

「おいおい……まぁいいや、全力で来いよ」

 

「もちろん」

 

「おーい2人とも〜そろそろ戻って〜」

 

「「あっ」」

 

「小梅も早く戻りなさい!」

 

「ごめんエリカさん」

 

「そんじゃ」

 

「うん。また話せてよかった」

 

「それは私もお兄ちゃんも一緒だよ」

 

 

楽しく話しすぎていたせいか、みほとりくは沙織に、赤星はエリカに呼ばれるまで話しすぎていたことに気付いていなかった。

 

呼ばれたため3人は急いで自分たちの方へ戻っていった。

 




今回はここで終わりにして決勝戦には次回入ります。
ちょくちょくオリジナル要素としてりくを取り合うような描写をしてますが、誰とくっつけるかまったく考えていません。

アニメ編はあと2話か3話にします。まだどちらにするかは考え中…

最後に……高評価を入れてくれた雨西さん、ありがとうございます。まさか評価が入るとは思っていませんでしたのでとても嬉しく思います。


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22、決勝戦開始!〜蘇るトラウマ〜

ここから決勝戦の話になります。


 

『黒森峰女学院vs大洗学園、決勝戦開始!』

 

 

審判の合図でついに第63回戦車道高校生大会決勝が開始された。

 

 

「ところでりくりく〜さっきの子途中赤くなってたけど何話してたの〜?」

 

「別にたいしたことは……ただ去年のことでお礼を言われただけっすよ」

 

「え〜告白とかされたりして〜」

 

「まさか盗聴器をしかけて……」

 

「しかけてないよ!?でも当たりみたいだね〜」

 

「……あっ」

 

 

試合が開始され目的地点へ移動している中、会長がりくに赤星と話してたことについて聞かれていた。そして話していた内容を当てられた。

 

みほもIV号の中で聞かれていて、それを聞いた沙織がライバル出現と言ったらしい。だが試合に集中し始め通信をしている。

 

 

「以上で交信終わります」

 

「あれ?喋り方変わりましたね」

 

「どう?プロっぽい?」

 

「全然」

 

「もぅ〜なんでそんなこと言うの〜」

 

「だってアマチュアだしな」

 

「「「あはははは」」」

 

 

ドカーン!

 

 

『っ!?』

 

 

通信を終えた後IV号の中では笑いが響いている。だがその直後もっと響く音が聞こえた。黒森峰からの砲撃だ。予想以上の接敵の早さに大洗のメンバーは全員驚いている。

 

 

「マジかよ、みほ!森を突っ切ってきてる!」

 

「っ!?全車射線に入らないように動いてください!!」

 

「杏さん桃さん役割交代!」

 

「「了解!!」」

 

 

森を突っ切ってきていることに気が付いたりくはみほにそのことを伝え、ヘッツァー内では役割の交換が行われていた。

 

 

「ギアが入らない……」

 

「ゲームだと簡単に入るのに…」

 

『アリクイチームどうした!?』

 

「すみません、ギアが入らなくて…」

 

「入った!」

 

 

途中で動きの止まった三式に乗っているアリクイチームを心配してか、りくが通信を飛ばした。どうやら故障ではないようだが、こればかりは経験不足としか言いようがない……

少しするとギアが入ったみたいだが、戦車は下がりだしてしまった。

 

 

「フラッグ車に照準合わせました」

 

「こちらもです」

 

「ちっ、2両で狙ってやがる……エリカのやつ俺が撃ち落とすことを考えてるな」

 

「りくりく、アリクイチームが下がってきてる」

 

「っ!?意図的ではないだろうがここは仕方ない」

 

「1発で仕留めてあげるわ……撃て!」

 

 

ダーンッ!

ダーンッ!

ダーンッ!

 

 

エリカの合図で黒森峰から2両がフラッグ車のIV号を目掛けて、2両のうち1両を撃ち落とすため、タイミングを見計らってりくも打ち出した。

 

 

『大洗三式中戦車行動不能!』

 

 

1両はりくが撃ち落とし、もう1両は下がってしまったアリクイチームの三式中戦車に当たり行動不能となった。アリクイチームの方は決して意図的ではないだろうが、結果的にチームを救うこととなった。

 

 

「西住さんごめんなさい。もうゲームオーバーになっちゃった」

 

「それは大丈夫、怪我はありませんか?」

 

「私たちは全員大丈夫です、あとはお願いします」

 

「うん」

 

「やっぱりりくは撃ち落としてきたわね。三式には守られたけど1両撃破よ」

 

 

もともとりくに撃ち落とされることを計算して撃っていたためか、プラウダのノンナを他のチームとは違い動揺はしていない。

 

 

「みほ!急いでここを脱出しないと厳しいぞ!」

 

「そうだね、全車モクモク作戦用意!」

 

 

「モクモク準備完了!」

 

「では!モクモク作戦開始!」

 

 

この状況は不利、急いで脱出する必要があると考えりくからみほに通信が飛ばされた。そしてみほがモクモク作戦の用意と言うとそれを前にいる車両から後ろに流していった。

 

最後尾の車両の準備が完了すると各チーム煙幕を張り、相手の視界から逃れることに成功した。

 

 

「視界を…全車撃ち方用意」

 

「全車撃ち方やめ!」

 

「何故です隊長!?」

 

「無駄弾を使わせるつもりの可能性もある。相手の作戦を把握してからも遅くはない。撃つなら機銃にしろ」

 

「くっ」

 

 

視界が見えなくなり、エリカは撃とうとしたが、それを隊長のまほが止めた。

 

 

「あの先は丘になっている。大洗にはポルシェティーガーがいるから登るのに時間がかかるはずだ」

 

 

大洗が向かっている先に丘があることを把握しているまほ。登るのに時間がかかると思っているが、他の車両でロープをつなぎ引っ張っている。そのため想定よりはるかに早く登れている。

 

そして離れたところに隠れている戦車が1両……

 

 

「よし、今だ杏さん」

 

「ほいきた!」

 

 

ダーンッ!

 

 

「当たったぞ河島〜」

 

「わかっています」

 

「もう1両くらいはいけるな」

 

 

ダーンッ!

 

 

隠れていた車両はヘッツァー、少し離れた位置から見事に2両の履帯を外すことに成功した。

 

 

「あの豆戦車!!」

 

「2両が限界か〜」

 

「みほ〜とりあえず2両の履帯は外しておいたぞ。そっちも次の作戦言ってくれ」

 

「了解。パラリラ作戦開始!」

 

 

2両の履帯を外したヘッツァーはそのまま後退してまた隠れることとした。そしてみほたちの方ではまた煙幕を張った。そして今度はジグザグに動きながら煙幕を張っているため、広範囲に煙幕が広がっている。

 

そして大洗は頂上を取ることに成功。その少し下の方に黒森峰の戦車が並んでいる。

 

 

「想定より早く陣地を築いたな」

 

「全車砲撃用意……撃て!」

 

 

大洗と黒森峰の撃ち合いが始まった。撃ち合いの始めの方は位置的優位もあったのか、大洗が優勢だった。

 

しかし……

 

 

「ヤークトティーガー、前へ!」

 

 

黒森峰側はまほの指示で重量戦車のヤークトティーガーが盾として前に出てきた。ヤークトに当たりはするが、装甲が硬く倒すことができないでいた。

 

 

「15vs7……これだけ削れれば……これよりこの場から撤退します!」

 

「でもこの状況からどうやって脱出するのみぽりん?」

 

「そこは大丈夫、お兄ちゃん!」

 

「了解、アレの番だな!」

 

「り、りくりく悪い顔してる…」

 

 

この場所から撤退することを決めたみほ。周囲を囲まれた状態だが、そこは作戦を考えてある。りくが再び砲手に代わりとある作戦をやろうとしていた。

 

 

「おっ、あれはさっき履帯外したやつだな」

 

「やっと直せた……っ!?後ろにヘッツァーがいるぞ!?」

 

 

ダーンッ!

 

 

黒森峰で履帯を外され、直したばかりの車両をりくは見つけた。それをりくは撃ち、再び履帯を外させた。

 

 

「ああー!?直したばかりなのに!?ウチの履帯重いんだぞ!?悪魔か!?」

 

 

カパッ

 

 

「呼んだか?」

 

「あ、悪魔でした」

 

 

履帯を外された車長は悪魔かと文句を言ったが、キューポラから顔を出したりくを見て悪魔だったと納得してしまった。

 

作戦のついでで履帯を外したヘッツァーは、大洗と黒森峰が集まっているところに到着した。

 

 

「突撃ー!」

 

「あんなに大勢の戦車の中に突っ込むなんて……」

 

「大丈夫柚子さん、柚子さんの操縦テクニックは高いです。それにこの場合だと突っ込んで戦車と戦車の間に入った方が安全なんですよ。ついでにいざとなれば悪魔の砲撃がありますから信じてください」

 

「うん。りく君に言われると安心できちゃう。行きます!」

 

「ほ、ほんとに大丈夫なのか?」

 

「大丈夫ですよ桃さん。だから装填お願いしますね」

 

「わ、わかった」

 

「みほ!準備オッケーだ!」

 

「了解。では、おちょくり作戦開始です!」

 

 

到着したヘッツァーは黒森峰の戦車の間に入り出した。小山や河島はちょっと不安になったが、そこはりくが声をかけて不安を取り除いた。

 

 

「11号車12号車!間にヘッツァーがいるぞ!?」

 

「ほんとだ!?押しつぶしてやる!」

 

 

戦車と戦車の間にヘッツァーがいることに気が付いた黒森峰は押しつぶそうとしたが、すぐさまヘッツァーは前進した。その後は予想できないような動きや、時々悪魔の砲撃をしながら動き回っていた。そのせいで黒森峰の隊列はバラバラとなっている。

 

 

「はっはっは!やっぱりまだこういうトリッキーな動きには弱いままか!」

 

「りくりく楽しみすぎ!」

 

「真面目にやってるのか!?」

 

「大真面目に楽しんでますよ!?失礼な!?」

 

「そ、それって真面目なのかな…」

 

 

ヘッツァー内ではりくがものすごく楽しんでいる。本人曰く、大真面目に楽しんでいるそうだ。

観客席の方でも、こんな黒森峰を見たことがないなど言ってる人もいる。

 

 

「そろそろいいんじゃね?」

 

「右側がぐちゃぐちゃだよ!」

 

「全車右側を全速前進!最後尾は煙幕もお願いします!」

 

 

隊列に隙ができたため、大洗全車は右側を降りていった。最後尾の車両が煙幕を張り、その中でヘッツァーはまた別行動をした。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「結構離せたね、ここからどうする?」

 

「この川を渡ります。上流にはレオポンチーム、下流にはアヒルさんチームがいてください」

 

「なるほど、軽い戦車が流されないようにするためですね!」

 

「はい!それでは渡ります。全車歩調を合わせて渡ってください」

 

 

ヘッツァー以外の残っている全車で川を渡り出した。最初はスムーズに行っているため問題なく渡れると思ったが……

 

 

「あれ!?あれれ!?エンジンがかからない!?」

 

「ウサギさんチームがエンスト!?」

 

「全然かからないよ!?」

 

「私たちのことはいいので先に行ってください!」

 

「後から必ず追いつきます!」

 

 

ウサギチームがエンスト起こしてしまった。このままではみんなをピンチにしてしまうと思った車長の澤は、自分たちを置いて先に行って欲しいと伝えた。

 

だがM3は今にも横転しそうになっていて、置いていくのは危険すぎる状態になっている。

 

 

「何してるんだみほ!!」

 

「お兄……ちゃん」

 

「あの時のことを思い出すのはわかる!だけど助けに行け!ウサギチームに何かあってもいいのか!!」

 

「っ……」

 

「行ってあげて」

 

「え?」

 

「その間は私たちで見るから」

 

「……優花里さん!ワイヤーにロープを!」

 

「はい!」

 

「全車両少し待ってください!」

 

 

川で横転しようになったウサギチームを見て、去年のことを思い出してしまったみほ。だがりくや沙織の説得もあり、助けに行くことを決意した。

 

そしてみほはキューポラから出ると戦車から戦車へと跳んでいき、ウサギチームのM3リーに到達した。

 

 

「西住隊長!」

 

「みんなで引っ張ろう」

 

『はい!』

 

「みんな!みほたちの援護は頼んだぞ!」

 

『了解!』

 

 

みほたちの援護をするため、三突を除く他の車両は砲塔を回転させ、追ってきている黒森峰に向かって撃っている。その間にロープを引っ掛け終わった。

 

 

「西住隊長、ありがとうございました!」

 

「ご迷惑をおかけしました!」

 

 

無事にロープを引っ掛け終わり、全車両でM3を引っ張るように渡っている。途中でM3のエンジンもかかり、ギリギリだったが黒森峰から距離を取ることができた。

 

 

「どこへ向かうつもり?」

 

「おそらく市街地」

 

 

川を渡りどんどん離れていく大洗を見て、エリカはどこに向かうつもりか疑問に思ったが、まほは市街地へ向かうと予想していた。

 

黒森峰も市街地の方へと向かっていき、次の戦い場所は市街地となった。

 




今回はここで終わりです。
アニメ編は残り2話になる予定、次の投稿は明日になります。


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23、超重量戦車マウスを乗り越えろ!

「なんとか距離は取れたね」

 

「でも黒森峰の戦車は俺らより強力だ。ここからはどうする?」

 

「できれば1vs1の状況に持ち込みたいかな」

 

「みぽりん!前方にIII号がいるよ!Jかな?Hかな?ってか一目で型がわかるのって…」

 

「III号なら突破できます!主力が来る前に倒しましょう!」

 

 

黒森峰の主力部隊より先に市街地に到着した大洗。走っていると前方にIII号がいることに気が付いた。突破しようと追いかけて路地に入ると……

 

 

「ん?なに?壁?……戦車!?」

 

「来ちゃった…マウス」

 

「史上最大の……超重量戦車……」

 

「すごい…動いているところ初めてみました」

 

 

III号を狙える……そう思った時、黒森峰の重戦車のマウスが現れた。優花里は動いているところを見て感動しているが、そんな場合ではない。

 

 

「全車後退!」

 

「な、なによ!でかいからいい気になって!こうしてやるんだから!」

 

「バカ下がれ!」

 

 

ダーンッ!

 

…………シュパッ

 

 

 

マウスを見て慌てて後退の指示を出したみほ。だがカモさんチームだけは動けずにいて、単独でマウスに攻撃した。しかし装甲を抜くことはできず、あっさりやられてしまった。

 

 

「カモチームけが人は!?」

 

「大丈夫です!」

 

「それはよかった…けど何も考えなしでマウスを抜けるわけないだろ!」

 

「ご、ごめんなさい…」

 

「まぁ怪我がないのはよかった、後は俺たちに任せろ」

 

「あとはお願いね。冷泉さん頼んだわよ!約束は守るから!」

 

「おお!」

 

「くっ、カモチームのかたき!」

 

 

ダーンッ!

 

カーン

 

ダーンッ!

 

……シュパッ

 

 

「えっと……カバチーム……今の通信聞いてなかった?」

 

「す、すまんぜよ…」

 

「一度全車両後退してください!お兄ちゃんの言う通り無策で勝てる相手ではありません!」

 

 

カモチームに続いてカバチームもやられてしまった。これで大洗の残り車両は5両となってしまった。

 

ちなみに……マウスの後ろにいたIII号に砲撃が当たり撃破している。

 

 

「マウスすごいですよね、あれなら戦車の上に戦車が乗っかりそうですよ」

 

「戦車の上に……っ!?ありがとう優花里さん!!」

 

「……え?」

 

「みなさん聞いてください!マウスを倒す作戦を思いつきました!」

 

「マジかみほ!?」

 

「うん、カメさんチームにはかなり無理をしてもらうことになりますけど大丈夫ですか!」

 

「なんでもいい!言ってくれ!」

 

 

優花里の戦車の上に戦車が乗っかりそうという言葉で、みほはマウスを倒す方法を思いついた。思いついたがどうやらカメチームには負担をかけてしまうみたいだ。

 

 

「では説明します。まずカメさんチームはマウスの下に出来る限り潜り込んでください」

 

「…………え?」

 

「そのあとにウサギさんチーム、機銃でいいので横から当ててマウスの砲塔を回転させてください」

 

「はい!」

 

「そしてアヒルさんチーム、砲塔が旋回して空いたスペースに乗ってマウスの砲塔を旋回できないようにしてください」

 

「根性でやります!」

 

「最後にIV号でマウスを撃破します。お願いできますか?」

 

「………ぷっ、あははははは」

 

「ちょっとりく君!?」

 

「西住ちゃん!りくりくが壊れて笑い出した」

 

「えぇ!?」

 

 

みほが作戦を話し終えた少しあと、突然りくが笑いだした。それをみて会長も小山も壊れたのではと心配している。

 

 

「いや〜すまんすまん、戦車の上に戦車で乗っかるとか普通そんな発想でないって!でも面白そうだ、ノった!」

 

「面白いというか……他に思いつかなくて」

 

「ただマウスの砲撃を撃ち落とすのは難しいから、俺はマウスの砲撃タイミングだけに集中する。だから他の警戒は頼んでいいか?」

 

「それはもちろん」

 

「よし、じゃあ主力部隊が来る前にやっちまうか!」

 

「うん!」

 

 

マウスを倒す作戦が決まった。そして作戦を実行するための場所に移動した。

 

 

「柚子さん、大丈夫ですか?」

 

「大丈夫って何が?」

 

「いくら特殊カーボンで守られてるって言っても戦車の下に…しかもマウスだから無事かわからない。怖くないんですか?」

 

「1人なら怖いけど3人が一緒だから大丈夫」

 

「小山言うね〜」

 

「ほ、ほんとに大丈夫なのか?」

 

「大丈夫だよ桃ちゃん」

 

「強いな柚子さん。今回の桃さんの反応はおかしくないのにさ、つーか面白い作戦だけど俺は怖いぞ」

 

「ふふ、大丈夫だよ」

 

「マウスも来たみたいだしやろっか。りくり指示よろしく〜」

 

「ふふっ、任せろ!」

 

 

マウスほどの重量戦車の下に潜り込む作戦など聞いたことがない。特殊カーボンに守られていても無事で済むかわからない。りくは小山が怖くならないか心配になったが、大丈夫そうだった。

 

マウスが現れついに大洗vsマウスの勝負が始まる。

 

 

「行きます!パンツァー・フォー!」

 

 

全車一斉に前進した。マウスの砲塔はフラッグ車であるIV号に向いている。

 

 

「今だ!右!真ん中IV号もだ!」

 

「「了解」」

 

 

ダーンッ!

 

 

マウスが撃ってきたが、りくの指示でIV号もヘッツァーも躱すことに成功した。

 

 

「柚子さん行け!」

 

「はい!」

 

 

マウスの攻撃をかわした後は全速力でマウスに突っ込んでいき、作戦通りマウスに潜り込むように入ることに成功した。

 

当然これを見てるケイやダージリンは

 

 

「ワーオ!」

 

「まぁ」

 

 

と驚いている。りくも笑ってしまうくらいの作戦だから当然といえば当然だ。

 

 

「よし!梓頼む!」

 

「はい!機銃撃て!」

 

「……よし、砲塔が旋回した。典子!」

 

「行くぞ!そーれ!」

 

 

みほの作戦は上手く進行していき、M3の機銃攻撃で砲塔を旋回していき、八九式はマウスの上に乗り旋回できなくした。

 

 

「おい!そこの軽戦車どけ!」

 

「嫌です。それに八九式は軽戦車じゃないです」

 

「中戦車だし〜」

 

「この〜振り落としてやる!」

 

「させるかー!」

 

「根性で押せー!」

 

「いや意味ないから」

 

 

マウスの上に乗っている八九式を振り落そうと、マウスは強引に旋回しようとしている。それを落とされないように耐えている。

 

ちなみに……中からも押しているがそれはまったくもって無意味だ。

 

 

「やっぱり特殊カーボンでもきついか、3人ともなるべく頭は守っておいてください」

 

「りく君もね」

 

「わかってますよ、みほ!頼む!」

 

「任せて!華さん!後ろのスリットを狙ってください!」

 

「はい!花を生ける時のように集中して……ここです!」

 

 

ダーンッ!

 

 

……シュパッ

 

 

華の砲撃は見事一撃でマウスを撃破することに成功した。観客も大盛り上がりだ。

撃破した後八九式は慎重に降り、ヘッツァーも後ろに下がった。

 

 

「この音……どうやら俺たちはここまでっぽいな」

 

「「「えっ」」」

 

「みほ、後頼んだ」

 

「えっ?どういう……」

 

 

……シュパッ

 

 

マウスを倒したすぐ後、ヘッツァーからも白旗が上がってしまった。やはりこの戦法は無理があった。でもこの代償に見合う活躍はできた。

 

 

「すみません」

 

「謝るな西住隊長」

 

「そうだよ西住さん。西住さんがいなかったらここまで来れなかったんだから」

 

「そうそう。だからあとは頼んだよ」

 

「……はい!」

 

「みほ!」

 

「お兄ちゃん?」

 

「姉ちゃんや母さんにももちろんだけど、黒森峰にも見せてやれ!今のみほの戦車道をな!」

 

「お兄ちゃん……うん!」

 

 

みほは自分の無茶な作戦のせいでヘッツァーが行動不能になったと思い謝った。実際にこの作戦の影響ではあるが謝る必要はない。カメチームも全員怒っていない、むしろ感謝しているからだ。

 

強力なマウスを倒すことはできた。勝利のため残っている車両は動きだした。

 

 

「マウスが!?」

 

 

黒森峰の方ではマウスを撃破されたことに驚いている。

一方大洗の方では、勝利のため最後の作戦が開始されようとしていた。

 




今回はここで終わりです。
次回アニメ編最終話となります。お楽しみに


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24、決着!これが私たちの戦車道!

なんとか7月中に仕上がった。


黒森峰の超重量戦車マウスを倒した大洗。今は最後の作戦の指示をしている。

 

 

「私たちは相手フラッグ車との1vs1を挑みます。できる限り敵戦力を分断してください。みなさんの協力、特にレオポンチームの協力は必要不可欠です!」

 

「了解しました!」

 

「沙織さん、情報を密にしながら通信お願いします」

 

「まかせてみぽりん!」

 

「それでは最後の作戦……ふらふら作戦を開始します!」

 

 

大洗は最後の作戦を開始した。沙織が地図を見ながら各車両に曲がる方向を通信で指示、戦力の分散に努めていった。

 

 

「最後尾発見!西住隊長、最後尾は任せてください!」

 

「お願いします!」

 

 

ウサギチームは最後尾を走っていたエレファントを見つけIV号が通り過ぎた後にエレファントの前に出て自分たちを狙わせるように仕向けた。見事狙い通り、エレファントはM3を狙いだした。

 

 

「桂利奈ちゃん、その路地右折ね」

 

「あい!」

 

「その次の次の次の路地も右折ね!」

 

「あいあいあーい!」

 

「行くよ!昨日徹夜で研究した作戦」

 

『戦略大作戦!』

 

 

ウサギチームは路地を上手く利用して、エレファントの後ろを取ることに成功した。狭い路地のせいでエレファントは砲塔を旋回できない、M3は0距離で攻撃をすることができた。

 

……だが

 

 

「硬すぎる……」

 

「0距離でも抜けないなんて……」

 

 

エレファントの装甲が硬すぎるせいか、装甲を抜くことができない。どうするか悩んでいたその時

 

 

「薬莢……捨てるとこ」

 

「そうか!」

 

 

丸山の言葉で薬莢を捨てる部分を撃ち、撃破することに成功した。

 

 

「すみません。エレファントM3にやられました」

 

「何やってるの!?」

 

「フラッグ車のみ狙え!」

 

 

まさかエレファントがM3にやられると思っていなかったのか、撃破された報告を受けるとエリカは怒っていた。だがまほは冷静でフラッグ車のみ狙うように無線を飛ばしていた。

 

 

「このー!八九式のくせに!」

 

 

別の場所では八九式が黒森峰の戦車と戦車の間に入り込んでいた。2両の戦車で潰そうと寄った瞬間に後退し、スロープ部分を上手く利用し前に出ることができた。

 

一方でフラッグ車のIV号は複数の車両に追われている。だがまほの乗るティーガーだけ他の車両より前に出て走っている。

 

 

「隊長待ってください!後ろと間隔が空いています!」

 

「レオポンチームあとどのくらいで着きますか?」

 

「HS地点到着したよ!」

 

「では至急0017地点に向かってください!」

 

「了解!」

 

 

エリカはまほに間隔が空いていることを伝えるが走る速度は落ちない。みほはレオポンチームに来てもらいたいポイントを指示。その場所をみほのIV号とまほのティーガーが通り過ぎるとレオポンチームがその場所を塞いだ。

 

 

「そこどきなさい失敗兵器!」

 

「嫌でーす」

 

「上手く行ったみたいだな」

 

「そうみたいだね〜」

 

 

「西住流に後退はない、ここで決着をつけるぞ」

 

「……受けて立ちます」

 

 

レオポンチームが入り口を塞いだ様子を見ているカメチーム。その中ではIV号とティーガーの1vs1の対戦が始まるところだった。ついに最後の一騎討ちが始まる。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

みほとまほの1vs1が始まる時、別の場所ではアヒルチームとレオポンチームは集中砲火を受けて行動不能となっていた。そしてウサギチームはヤークトティーガーと対面、くっついて撃たせないようにしている。

 

 

「ヤークト、西住隊長のところに行かせたらダメ。ここで倒そう!」

 

「でもどうやって!」

 

「合図で左に曲がって……今!」

 

 

ダーンッ!

 

シュパッ………シュパッ

 

 

梓の合図で左折したところをヤークトティーガーに撃たれて行動不能に、だがヤークトティーガーも土手に落ちて砲塔が折れ、行動不能となった。

 

 

「3チームとも怪我はないか!?」

 

「レオポンチーム無事です」

 

「アヒルチームも無事です」

 

「ウサギチームも大丈夫です」

 

「ならよかった。みんなよくやった。後はみほたちを信じよう」

 

 

先に行動不能になっていたりくは3チームの無事を確認していた。どうやら全員無事のようだ。

 

 

「回収班急いで!」

 

「ゆっくりでいいよ〜」

 

 

アヒルチームとウサギチームが倒された場所は問題ないが、レオポンチームの倒された場所は西住姉妹が入った唯一の入り口。レオポンを倒したエリカたちは入れずにいた。

 

 

「りく先輩!」

 

「おっと、お疲れ様梓」

 

「澤ちゃんこんなところで抱きつくなんて大胆だね〜」

 

「はっ!?すみません//」

 

「ふふ、でもよくエレファントとヤークトティーガー倒したな」

 

「エレファントの時は紗希が薬莢捨てるとこって言ってくれたから倒せました。ヤークトは一か八かでしたけど」

 

「それでも紛れもなくお前たちの実力だ、よくやった。後はみほたちを信じて待とう」

 

『はい!』

 

 

最初に戻ってきたウサギチームを労った後、みほたちを信じるようにモニターを見た。ちょうど動き始めたところみたいだ。

 

動き始めたIV号とティーガーは学校エリア内をぐるぐると回っている。お互い砲撃をするが当たらない。するとティーガーは榴弾でIV号が進むであろう道の方に撃った。

 

 

「停止してください!後退…」

 

 

ティーガーから撃たれた榴弾は、学校の一部を崩して通れなくした。それを見たみほは後退の指示、エンジン音が聞こえたため

 

 

「全速後退!」

 

 

と指示を出した。ティーガーが現れると砲撃したが、IV号が全速で下がったため当たることはなかった。みほの良い判断がなければ撃破されていただろう。

 

その後はまたぐるぐると回り最終的にまた開けた場所へと戻ってきた。

 

 

「西住隊長〜黒森峰が1台そっちに向かおうとしてるから気を付けてね〜っていうかあんたたち強引すぎだってば〜」

 

 

開けた場所に戻った時、レオポンチームから通信が入った。どうやら黒森峰から1台、みほたちの方に向かっているという報告だ。黒森峰やレオポンチームの上を走るように通過している。

 

 

「バカエリカ!?頭危ねえ!?」

 

 

モニターでそれを見ていたりくは思わず叫んだ。天井とエリカの頭がスレスレの状態になっているからだ。りくは心配したが無事にそこは通ることはできていた。

 

一方でみほは最後の賭けに出ようとしていた。

 

 

「やっぱり一撃を躱して回り込むしか……優花里さん、装填時間の短縮はできる?お兄ちゃんの真似はしなくていいけど」

 

「任せてください!」

 

「行進間射撃でも可能ですが0.5秒でいいので停止して射撃の猶予をください。一撃で仕留めてみせます」

 

「麻子さんやれる?」

 

「履帯切れるぞ」

 

「大丈夫、ここで決めます」

 

「わかった。任せろ」

 

 

みほが考えた最後の賭けは決まれば勝ち、失敗すれば確実に負けるような考え、まさしく最後の賭けである。

 

 

「前進」

 

 

ティーガーが止まっている中、IV号が先に動き出した。先に攻撃したのもIV号、それを躱してティーガーが撃ち返してきた。それを躱して一気に前進し回り込むためドリフトを開始した。

麻子の言う通り履帯が切れたが回り込むことに成功したが、お互いに砲塔が向いている。

 

 

ダーンッ

ダーンッ

 

……シュパッ

 

 

2つの砲撃音が聞こえたが白旗が出た音は一両分のみ、IV号かティーガーどちらかは行動不能になっているということである。

 

煙が晴れ、状況を確認することができ審判のコールが鳴り響いた。

 

 

『黒森峰女学院フラッグ車行動不能!大洗学園の勝利!』

 

 

白旗判定が出ていたのは黒森峰側の戦車。これにより大洗学園の優勝が決まった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「杏さん?」

 

「ごめん、今はこのままで」

 

「もちろん、いくらでもどうぞ」

 

 

大洗の優勝が決まったことをモニターで見ていたあんこうチーム以外のメンバーたち、優勝が決まると会長はりくの胸に顔を埋めた。どうやら泣いているみたいだ。りくはそれをそっと抱きしめ、あんこうチームが戻ってくるまで続けていた。

 

 

「西住隊長!」

 

 

あんこうチームが戻ってきたことを梓がいち早く気付き、みんな寄っていった。さっきまで泣いていた会長はしれっとなかったように見せている。

 

 

「あれ?力が入らない」

 

「しっかりしろ隊長」

 

「まったくだ。手貸そうか?」

 

「大丈夫だよお兄ちゃん」

 

 

みんなの元に到着したあんこうチームはみんな外に出た。だがみほは力が入らないのか、外に出るのに時間がかかっていた。

 

 

「わっ!?」

 

 

やっと降りたと思ったら今度は前に倒れそうになった。ギリギリ倒れることはなかったが……

それだけ安心したのだろう。

 

 

「西住ちゃーん!」

 

「わっ!?会長!?」

 

「俺たちより前からずっと廃校阻止のために動いてたんだ。嬉しくなって当然だろ?他の2人もさ」

 

「西住、本当にありがとう」

 

「ありがとね西住さん」

 

「私だけの力じゃありません。みんながいたからですよ」

 

「そういうこと。それに3人が役人に素直に従わず反論したから、みほも俺も戦車道を楽しいって思えたんだ。だからありがとうございました」

 

「それはよかった。それじゃあ帰って宴会だー!」

 

『おおー!』

 

「それじゃあ先に帰る準備しててください。みほも行くだろ?」

 

「うん」

 

 

戦車から降りてきたみほに、会長は抱きついていった。みほは驚いていたが、この行動は優勝の喜びもあるが、廃校を救えた喜びからだろう。

 

程なくして帰って宴会をしようと言い出したがみほとりくの2人はみんなから離れて黒森峰の方に行った。

 

 

「お姉ちゃん」

 

「姉ちゃん」

 

「みほ、りくもいたか」

 

「いるわ!?」

 

 

2人が会いに行ったのは2人の姉であるまほのところだった。

 

 

「完敗だな。お前たちらしい戦車道だった。西住流とは全然違うがな」

 

「そりゃそうさ。俺たちは西住流の戦車道をしたんじゃない。俺たちの戦車道をしただけなんだからさ」

 

「お兄ちゃんの言う通りだよ。私たちは私たちが見つけた戦車道をしただけ。やっと見つけたよ。私たちの戦車道!」

 

「ああ」

 

 

去年の大会のことでわだかまりもあった3人だが、今はみんな笑顔で話し合っている。みほが自分たちの戦車道を見つけたと言うと、まほは嬉しそうにした。

 

 

「次は負けないわよ!りく!それに…みほ!」

 

「っ!うん!私たちも負けないよエリカさん!」

 

「みほの言う通り、俺たちも負けるつもりはない!」

 

「そうこなくっちゃリベンジしようがないわ!」

 

「そういえばエリカ、お前頭ぶつけたりしてないか?」

 

 

3人で話していたら突然エリカが話しかけてきた。近くにいたみたいだ。エリカとも話していると、突然りくは頭をぶつけてないか心配していた。モニターで見ていたし心配するのは当然だ。

 

 

「ええ、大丈夫よ。スレスレではあったけどね」

 

「ったく、あんま危ねえことすんなよな」

 

「ちょっと!?りくには言われたくないわよ!?」

 

「たしかに、りくが言えることじゃないな」

 

「そうだね」

 

「いやみほには言われたくないな…」

 

「「たしかに…」」

 

「ええー!?」

 

 

心配していたりくだったが、どうやら心配無用だったようだ。危ないことをするなとりくは言ったが、人のことは言えないりくだった。

 

 

「それと小梅から試合前のこと聞いたわ」

 

「あ〜あれは驚いたわ」

 

「小梅に負けるつもりないから覚悟しなさい」

 

「…………へ?」

 

「りくにそのつもりなくても私も小梅も貴方のことを想っている。それはいいわよね?」

 

「お前もかーい!まぁそこを止めるつもりはないさ」

 

「ふ、りくは人気者だな。たしか他の隊長たちもお前のことを…」

 

「まぁそれは置いておいて、また試合するの楽しみにしてるからな」

 

「ええ」

 

「じゃあ私たちそろそろ行くね」

 

「じゃあな〜」

 

 

どうやら小梅だけでなくエリカもりくのことが好きみたいだ。まぁ今はりくにその気はないみたいだが……

 

4人で話し込んでいたが、そろそろみほとりくの2人は自分たちの学校の方へ戻ることになった。遠くの方では母親のしほが笑顔になって拍手をしていたが、みほたちは気付くことはなかった。

 

 

「帰ってきた〜」

 

「西住ちゃん、何か一言」

 

「ええ!?

 

えっと……うーん……パンツァー・フォー!」

 

『おー!』

 

 

大洗の街に帰ってきた戦車道受講者のみんな。会長の無茶振りに、みほは"パンツァー・フォー!"としか言えなかった。

 

全員戦車に乗り、優勝記念のパレードに参加することとなった。

 

「帰ったら何しよっか」

 

「お風呂入って〜」

 

「アイス食べて〜」

 

「それから…」

 

「戦車乗ろっか!」

 

「うん!」

 




これでアニメ編は終わりです。次回投稿から劇場版編に入ります。それまでお楽しみにしていてくれると嬉しいです。


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25、エキシビションマッチ<前編>

日が空いてしまいましたね。
今回は短いですが劇場版編スタートです。


 

「茶柱が立ったわ。イギリスのこんな諺を知ってる?茶柱が立つと素敵な訪問者が現れる」

 

「お言葉ですがダージリン様、もう現れています。素敵かどうかさておき……」

 

 

聖グロリアーナ側の戦車、チャーチルの中でダージリンが紅茶を飲んでいた。その飲んでいる紅茶に茶柱が立ち、イギリスの諺を言ったが、訪問者が現れるの部分でペコがもう現れていると言った。ペコの言っている訪問者は、今年の戦車道大会優勝校の大洗学園、そして同じチームで戦っている知波単学園だ。

 

 

「反撃しこないね〜」

 

「どうせまた紅茶でも飲んでるんじゃないですか〜」

 

「ではこちらは緑茶にしますか?」

 

「ミルクセーキがいい!」

 

「卵もミルクもクーラーボックスに入れてるので作れますよ」

 

「おおー!」

 

「それよりみぽりんどうする?」

 

 

反撃して来ないグロリアーナを見てどうせ紅茶を飲んでるのではないかという予想、それに対抗して華が緑茶でもというと麻子がミルクセーキがいいと言い出した。試合中に何を言っているのやら……

 

 

「今のうちに包囲の範囲を狭めます。守備隊の状況はどうですか?」

 

「じわじわと来てるよ〜」

 

「もって5分ってところかな」

 

「5分だって!どのみちそんなに長くは保たないよ?」

 

「了解しました。それでは前進します。パンツァー・フォー!」

 

 

守備隊の状況を確認しつつ、みほは包囲の範囲を狭めるように指示、大洗学園の戦車が前進しているに対し、知波単学園の戦車は止まった

ままだ。それには理由がある……

 

 

「あの……西さん?」

 

「すみません西住さん……ぱんつぁーふぉーって……」

 

「あっ、戦車前進って意味です」

 

「なるほど!勉強になります!」

 

 

知波単が動かなかった理由は単純に、みほが言ったパンツァー・フォーの意味がわからなかっただけだった。

 

 

「大丈夫か知波単は…」

 

「ま、まぁ……ふざけてるわけじゃないしいいだろ」

 

「戦車前進!」

 

「それでは改めて、パンツァー・フォー!」

 

 

パンツァー・フォーの意味がわかった知波単隊長の西は、味方に戦車前進の指示を出し、改めてみほは号令をかけ、大洗知波単連合は包囲を狭めるため前進した。

 

 

「停止!」

 

 

みほの号令で全車停止、そしてそのまま

 

 

「砲撃開始!」

 

 

合図で砲撃を開始した。この砲撃でマチルダを2両倒すことができた。しかしここで知波単学園がみほの指示を聞かずに前進し始めてしまった。

 

 

「勝手にスコーンが割れたわね」

 

「あとは美味しくいただくだけですか」

 

 

ここまでまとまっていた大洗知波単連合であるが、知波単学園がいきなり突撃を開始してしまったために分かれてしまった。そこをグロリアーナが見逃すはずなく、次々と知波単学園の戦車を倒していった。

 

 

「ったく、勝手に突撃しやがって……守備隊はどうなってる!?」

 

「こちらまもなく突破されそうです」

 

「そっか……みほ」

 

「うん、一度撤退します!市街地を目指してください!そして各自戦力の分散に努めてください!」

 

『了解!』

 

 

守備隊も突破されそうということもあり、みほは撤退することに決めた。この指示に知波単学園の西と福田は文句を言うが、西は自分から、福田は大洗の戦車に無理矢理押される形で撤退していった。守備隊が離れるとすぐ、グロリアーナ側のもう一つのチーム、プラウダ高校がやってきた。守備隊が相手をしていたのはプラウダ高校だった。

 

 

「待たせたわね!」

 

「待ちくたびれて紅茶が冷めてしまいましたわ」

 

「思ったより手強かったのよ!!」

 

「迂回すればよかったのです」

 

『このゴルフ場で決着をつけるつもりですか?』

 

『ええ、上手くいくと良いのですが』

 

「ノンナ!クラーラ!日本語で話しなさい!」

 

『はい?』

 

 

プラウダの隊長であるカチューシャは、撤退した守備隊を追いながら無線を飛ばしている。そんな中、ノンナとロシアから来ているクラーラがロシア語で話していた。その内容のわからないカチューシャは、日本語で話すように言うが意味はなかった。

 

 




次回でエキシビションマッチは終わりにします。
本当はエキシビションマッチを1回で終わらせようと思ったけどさらに日が空きそうなのでやめました。


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26、エキシビションマッチ<後編>

また投稿間隔空いて申し訳ない。色々ありまして遅れました。それではエキシビションマッチ後編スタートです。

…………拙い文章ですが


あ、ロシア語の部分は『』で表示してあります。


大洗知波単連合vs聖グロリアーナプラウダ連合のエキシビションマッチ。ゴルフ場でグロリアーナプラウダ連合のフラッグ車を包囲していた。しかし、護衛車両を倒したところでチャンスと見たのか、知波単学園が隊長であるみほの指示を聞かずに勝手に突撃をしてしまった。連携が乱れたのを見逃さずに反撃をし、不利だったグロリアーナ&プラウダは逆に有利な立場となった。このままではやられると思ったみほは、相手戦力を分散しながら市街地に場所を移すため移動を開始し始めた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「誘いに乗ってきませんね〜」

 

「うん……」

 

「黒森峰ならともかく、私たちはその手に乗りませんわ」

 

「みほどうだ?敵戦力の分散できてるか?」

 

「ううん、分散させようとしてるけど追ってきてるグロリアーナは乗ってこないよ」

 

「っ、さすがダージリンさんだな」

 

「速い、回り込まれるぞ」

 

 

市街地に向けて移動しながら相手の戦力を分散させようとしている。しかし、黒森峰には通じた戦法でもグロリアーナには通用していなかった。ダージリンは毎試合大洗の試合を見に来ていたからこの戦法を知っている、ということもあるだろうが、フラッグ車のみ狙うということを守れているせいもあるだろう。

無線でみほとりくが話しているうちに、グロリアーナのクルセイダー部隊がフラッグ車であるIV号の前に回り込んできていた。

 

 

「カモさん先行してください、加速して一気に突っ切って!重量差があるから大丈夫!カバさんも続いてください!」

 

 

クルセイダーに回り込まれたが、ここは重量差があるためか、カモチームのルノーとカバチームの三突は簡単に突破できた。そしてIV号は2チームとは別行動をとった。

 

 

「挑発に乗っちゃダメ!フラッグ車だけ狙いなさい!」

 

 

2チームと別行動をしたIV号だが、今度はグロリアーナの後ろにいたプラウダに狙われることとなり、突破されたクルセイダーもIV号を追い出した。

 

 

「分断作戦に乗ってきませんね」

 

「もう一度フラッグ車とタイマンはりますか?」

 

「周りが多いから無理だと思う、麻子さん、逃げてるけど逃げきれない感じで走ってください」

 

「わかった」

 

 

分断作戦に乗ってこないグロリアーナ&プラウダ、タイマンを張ろうにも他が多いためすぐやられてしまうことからタイマン勝負を仕掛けるのは無理。そこでみほは麻子に指示を出し相手を引きつけることにした。

途中でウサギチームが最後尾を止めようとしたが、そこはノンナにあっけなくやられてしまった。

 

 

「これからOYヒトフタ地点を通過します!」

 

 

みほが無線で言った位置では三突とポルシェティーガー、その近くには他の味方戦車も揃っていた。IV号が通り過ぎたすぐ後に相手チームもやってきて、そこで撃ち合いが始まった。

 

撃ち合いをしている時ノンナとクラーラは

 

 

『IV号、今のうちに回り込んでチャーチルの背後を突くということはありませんか?』

 

『みほさんならありえますね、クラーラ』

 

 

とロシア語で喋っていた。そこにカチューシャからは日本語で話すように言われそして

 

 

「ノンナ!先方!」

 

「はい

 

『フラッグ車の護衛よろしく』

 

『了解!』

 

 

ノンナは前に行き、クラーラはフラッグ車の護衛へと向かった。

 

 

「また来た……」

 

 

IV号の前に再びクルセイダーがやってきて、やられはしていないが複数両に追われることとなった。

 

 

「先頭車何をやっていますの!?ダージリン様のお紅茶が冷めてしまいますわよ!?」

 

 

IV号を追っていたクルセイダーだが、IV号が少し開けた場所でUターンすると、先頭にいたクルセイダーを撃破した。その後回り込んで来たクルセイダーも見事に撃破していた。

 

その頃OYヒトフタ地点では

 

 

「そろそろ撤収するよ〜」

 

「調子悪いな〜すみません聞き取りにくかったのですが」

 

「後退します!こ・う・た・い!」

 

「と・つ・げ・き…かしこまりました!」

 

 

一度撤収をするためにナカジマが無線を飛ばしたが、無線の調子の悪いせいか、聞き取れなかった知波単の西が何の指示か聞いたらアヒルチームからは後退するということを伝えたられた。だがしかし、どう聞き間違えたかわからないが突撃と勘違いをして1人前に出てしまった。

 

 

「ちょっ!?西さん何やってるんだ!?戻ってこい!?」

 

 

慌ててりくは無線を飛ばすが、西にはその無線は聞こえていなかった。

 

 

「あの突撃馬鹿……西さんはやられると思うからやられた瞬間後退!」

 

『了解!』

 

 

策もなく突っ込んでいく西を見て無線を飛ばしたりく、だが聞こえていないことがわかるとすぐに諦め、ここから離れるタイミングをみんなに伝えた。案の定西がやられたが、すぐさま全員離れていった。

OY防衛戦はここで終わりとなった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「聖グロ1の俊足からは逃げられませんわよ!……撃て!」

 

「停止!」

 

 

クルセイダー2両に追われていたIV号は挟み撃ちで狙われていた。しかしタイミングよく停車をし、クルセイダーにお互いを撃たせるように仕向け、1両を撃破させた。もう1両に砲塔を向けると、残ったクルセイダーは逃げていった。そのクルセイダーを追い出して少しすると、プラウダの部隊がやってきたため、また不利な状況に戻ってしまった。

 

 

「そろそろお終いにしてあげる!」

 

 

プラウダの部隊に追われているIV号だが、麻子の操縦のおかげでまだ撃破されていない。OY防衛戦をしていた味方チームの方はカバチームがやられてしまったが、アヒルチームと知波単の福田が協力したり、アリクイとカモとカメチームが協力して相手戦車を撃破していた。

 

 

「フラッグ車見つけたよ〜呑気にお茶飲んでた」

 

 

今フラッグ車のIV号を狙っているのはカチューシャとノンナのみ、その2人から逃げているとカメチームからフラッグ車を見つけたと報告が入り、IV号は他のみんなと合流をするために報告があった方へ向かった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

フラッグ車を見つけたと報告を受けたIV号はみんなと合流し、一緒にフラッグ車を追っている。すると海の方からKV2が現れた。

 

 

「大丈夫、砲身よく見て!」

 

「来るぞ!」

 

 

みほの砲身を見るようにという指示、それとりくが砲撃のタイミングで無線を飛ばし、みんな無事避けることができた。すぐさま八九式で攻撃したが、さすがに火力不足で倒すことができない。しかし、岩の上で砲塔を回転させたKV2が倒れて勝手に自滅をした。

 

 

「KV2あの角度で砲塔を回転させたら倒れますよね」

 

「伏せて!」

 

 

倒れたKV2をキューポラから顔を出して見ていた華と優花里、だがそこに砲撃が飛んできたため急いで伏せるようにみほは指示を出した。自分は伏せてないのに……

 

グロリアーナ&プラウダ側からも砲撃が飛んできていて、アリクイチームはこの砲撃で撃破されてしまった。

 

 

「初撃破…初撃破」

 

 

アリクイチームがやられた一方で、チャーチルを狙っている桃は初撃破できそうと興奮状態になっていた。そして照準を合わせて(いるつもりで)撃った。

 

 

「真打ち登場ですわ!」

 

 

……シュパッ

 

 

桃の撃った砲撃はチャーチルとは全然違う方向に飛んでいき、偶然そこから飛び出してきたローズヒップが車長のクルセイダーに命中、そのクルセイダーは撃破判定が出た。

 

……初撃破には変わりない。

 

フラッグ車のチャーチルは塀を乗り越えた。そしてチャーチルが塀を乗り越えたところを追うように登ろうとしたカモチームがやられてしまった。そこにはプラウダ高校の戦車も集まっていた。

 

 

「っ!?みほ!?」

 

 

どうするかと悩んでいたら、IV号が突然塀を乗り越えていった。さすがのりくも驚いているが、IV号はチャーチルにぴったりとくっついているため、プラウダの部隊も撃つに撃てないでいる。

 

 

「ったく、無茶しやがって…柚子さん行けるか?援護したい」

 

「試してみるね」

 

 

IV号が登った少し後に、ヘッツァーも上に上がっていった。砲手をりくに代わり、次々と近くにいるプラウダの履帯を切るように撃っていった。だがグロリアーナとプラウダそれぞれの隊長の戦車は見つけられていない。辺りを見るとIV号とチャーチルがどんどん高いところに上がっていき、T34もグロリアーナと一緒に上がっているのが見えた。

 

 

「まずい!?柚子さん全力で追ってくれ!?」

 

「わかった!」

 

「装填はしておいた。いつでも撃てるぞ」

 

「サンキュー桃さん」

 

「こっちを狙ってる戦車はないから行くなら今だね。小山〜」

 

「はい!」

 

 

ヘッツァーは急いでIV号を追いかける。その間にIV号とチャーチル、T34はアクアワールドの入り口までやってきていて、ヘッツァーが追いついたのはIV号が相手戦車を1両倒したところだった。

 

 

「っ!?次!?」

 

 

ダーンッ!

ダーンッ!

ダーンッ!

 

……シュパッ

 

 

IV号が倒したのはフラッグ車のチャーチルではなく、盾になったT34だった。それを見たみほは慌てて指示を出し、その直後3つの砲撃音が鳴り響いた。IV号とチャーチル、そしてチャーチルの砲撃を撃ち落とそうと撃ったヘッツァーだった。

 

しかし……

 

 

『大洗、知波単フラッグ車走行不能!よってグロリアーナ、プラウダの勝利!』

 

 

さすがにタイミングが悪すぎた。りくの撃った砲撃はチャーチルの砲撃の軌道をずらすことはできても、撃ち落とすことまではできなかった。フラッグ車のIV号が撃破されてしまい、このエキシビションマッチはグロリアーナ&プラウダ連合の勝ちとなった。



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27、破られた約束

最初の方はちょっとふざけました。



 

『大洗、知波単フラッグ車走行不能!よって、グロリアーナ、プラウダの勝利!』

 

 

今日は大洗&知波単vsグロリアーナ&プラウダのエキシビションマッチが行われていた。そしてその試合はグロリアーナ&プラウダ高校が勝利した。決着後、IV号とヘッツァーからみほとりく、チャーチルとT34からダージリンとカチューシャが降りて来ている。

 

 

「あのタイミングでギリギリとは…さすがですねりくさん」

 

「撃ち落とせれば勝てる可能性あったんだけどな、残念っすね」

 

「いくら悪魔の砲撃とはいえ、普通あの速度で出てきてあんな精度で撃てないわよ!さすがリクーシャね!」

 

「どんな速度で出てきたんだろ……」

 

 

位置的に最後の攻防が見えていたダージリンとカチューシャは、褒めると同時に驚いている。一方みほは自分の斜め後ろから撃たれていたため見ることができていない。

 

 

「どんな速度って言われても……チャーチルの後ろにT34がくっついていったのが見えて柚子さんに飛ばしてもらって……IV号が曲がった方から俺らも曲がってすぐに照準合わせて撃っただけだぞ?」

 

「「「(なに平然と言ってるのこの人)」」」

 

 

りくの言葉を聞いた3人はみんな同じことを思った。妹のみほでさえ……

 

 

「まぁりくりくの砲撃の腕がすごすぎるってことは置いておいて、どうだい?私らと一緒に温泉に入って疲れを取るっていうのは?」

 

「いいですわね」

 

「カチューシャも賛成よ!」

 

「私も大丈夫です」

 

「もしかしてりくさんと混浴できるのでしょうか?」

 

「…………へっ?」

 

「りくと混浴!?入る入る!?」

 

「沙織まで!?」

 

「いいアイディアね!」

 

「そのようですね」

 

「カチューシャさん!?それにノンナさんいつの間に!?」

 

 

4人で話していると会長が温泉に入らないかと誘ってきた。ダージリンもカチューシャもみほも、断る理由はなかったので受け入れた。だがダージリンの言葉で一気に騒がしくなった。カチューシャ、そしていきなり入ってきた沙織やノンナも賛成してきていた。

 

 

「みんなさえ良ければそれでもいいんじゃない?」

 

「いや杏さん、俺が何されるかわからないし怖いからやめとくわ」

 

「「「「そんな……」」」」

 

「(私は家で一緒に入ることできるね)」

 

「みほ、家でも一緒にとかないからな?」

 

「バレた!?」

 

 

この場にいる女性陣が良くても、りくは良くないということでりくは別となった。普通なら一緒になると男のりくの方が警戒されるだろうが、今回は逆でりくが何されるかわからないため見送りとなり、みほの思考も読んでいた。

 

結局女性陣のみで温泉に入ることとなったが、その途中で会長が急に呼び出しを受けることとなった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「何よこれ!?誰がこんなことしたのよ!?」

 

「どういうことだ……柚子さんと桃さん何か聞いてますか?」

 

「私は聞いてない、桃ちゃんは?」

 

「私も知らないぞ」

 

「もしかして杏さんなら何か……」

 

 

大洗のメンバーは学校に戻ると、立ち入り禁止状態となっているところに直面した。風紀委員も生徒会も、どちらも何も聞いていない。りくはここで会長なら何かを知っているのではと考えた。おそらく呼び出された時に何か言われたのかと……

 

 

「君たち」

 

『っ!?』

 

 

すると突然、メガネをかけたスーツを着た男性が声をかけてきた。

 

 

「勝手に入られると困るよ」

 

「俺たちはこの学校の生徒ですよ?」

 

「君たちはもうこの学校の生徒じゃない、君から説明しておきたまえ」

 

「おい待て!」

 

「りくりく!!」

 

「っ!?」

 

 

こうなった理由を会長に話させることとして、スーツを着た男性は去っていった。それを追いかけようとしたりくだが、それは会長によって止められた。

 

 

「今の人は文科省の人。大洗学園は8月31日をもって廃校が決定した」

 

「……は?」

 

『……っ!?』

 

 

会長から告げられた言葉……それは大洗学園の廃校が決定したということだった。優勝したら廃校が救えると信じていたみんなは、何を言っているのかすぐには理解できなかった。

 

 

「どういうことだよ…優勝したら廃校は撤回されるって…」

 

「それに廃校にしても3月だったはずでは…」

 

「あれは確約ではなかったらしい。廃校にしても3月では遅いらしい」

 

「なんで繰り上がるんですか……」

 

 

どうやら廃校撤回の約束も確約ではなかったらしい。そして、廃校も3月から8月に繰り上がっての廃校だった。

 

 

「さっきの人はまだ近くにいるよな!?」

 

「……何するつもり?下手したら転校できなくなってどこの高校にも通えなくなるよ」

 

「知るかそんなこと……ちょっ!?離せよ!?」

 

「お兄ちゃんそれはダメ!!」

 

「それなら学校に立て籠もって……」

 

 

さっきの文科省の人に何かしようと思ったのか、りくが駆け出そうとすると、みほと河島と小山の3人で抑え込んだ。

抑えながら河島が呟くと、

 

 

「本当に廃校なんだ!!残念だけど本当に学校は無くなるんだ…」

 

「会長は本当にそれでいいんですか……」

 

「……もう離していいぞ。何もしないから」

 

 

会長が本当に無くなることを告げた。河島を始めみんな納得できない中、会長の表情を見たりくや小山は冷静になった。

 

 

「みんな聞いたよね?寮の人はそれぞれ荷物の準備を…実家の人も家族と引越しの準備を進めてください」

 

 

小山がそう言うと、みんなはそれぞれ自分たちの家に戻っていった。会長とすれ違う時にりくは、

 

 

「杏さん、力になれることあれば言ってくださいよ」

 

 

と伝えてみほと一緒に寮に戻っていった。

 

 




書き終わってから思ったけど短っ!?
次回とりあえず他の作品の方を投稿してからの予定です。


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28、学園艦との別れ

やっとできた……


 

「俺の方は終わったけどみほどうだ?」

 

「こっちも……これで全部」

 

「そっか」

 

 

りくとみほの2人は今、荷物の整理を行っている。学園艦から出て行くことになってしまったからだ。他の人たちも準備をしているところだ。

 

 

「それじゃあ行くか!」

 

「行く?………あ、そうだね」

 

 

荷物をまとめた2人はとある場所へと向かった。向かった場所は学校だった。そこに到着すると、あんこうチームとカメチーム以外は揃っていて、2人が到着したすぐ後にあんこうチームもやってきた。

 

 

「2人ともやっぱりここにいたー!」

 

「もう家を出た後だったのですね」

 

「みんなここに来ると思ってたからな……って麻子?」

 

「なんだ?」

 

「麻子さん……ここで寝るつもりなの?」

 

「もうこれで最後かもしれないから……」

 

 

麻子は学校に枕を持ってきていた。これで最後かもしれないと思ったからだ。あんこうチームがやってきた少し後に、大洗学園の校庭に大きな飛行機が降りてきた。サンダースのC-5Mスーパーギャラクシーだ。そして生徒会の3人も一緒に現れてきた。

 

 

「サンダースで戦車を預かってくれることになった」

 

「いいんですか?」

 

「紛失したという書類を作りました」

 

「な、なんて作戦……でもこれなら戦車を守れる」

 

「お待たせー!」

 

「まったく、手間をかけさせるわね」

 

「さぁみんな!ハリアップ!」

 

 

サンダースがやってきた理由は、大洗学園の戦車を預かるためだった。本来はいけないことだもは思うが、柚子が戦車を紛失したという書類を作ったため、なんの気兼ねもなく戦車を預けることができる。みんなで協力し戦車を全て乗せることができた。

 

 

「ケイさん」

 

「りっくー!………あれ?なんでいつもみたいに避けないの?んん!?なんで抱きしめてくるの!?///」

 

 

ケイの元に向かったりく。いつものようにケイは抱き着こうとしてきたが、りくは避けなかった。しかもりくからも抱きしめている。さすがのケイも驚いているようだ。

 

 

「本当にありがとうございますケイさん。こ!なら戦車だけでも守ることができる。この学校での戦車道はかけがえのないものだから……戦車まで手放したくなかった。だからありがとうございます」

 

「ど、どういたしまして///」

 

「そろそろ離してやってくれないかりく?ケイが赤くなりすぎてる」

 

「へ?……あ、すみません!?」

 

「い、いいのよ///もっとしてても…///」

 

 

ケイにお礼を言ってしばらく抱きしめあったままの状態でいたらナオミに声をかけられた。そこでケイの顔が赤くなっていることに気付き慌てて離れた。スーパーギャラクシーも飛び立つ準備ができケイも乗り込んでいった。

 

 

「場所が決まったら連絡して!」

 

「届けてあげるわ」

 

 

無線で話した後、スーパーギャラクシーは飛び去っていった。そして次の日、大洗学園は学園艦とお別れをし、全員の転校手続きが完了するまで山の上で過ごすこととなった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

キィィィン

 

 

「あれって!」

 

 

学園艦から降り、大洗学園の生徒はそれぞれ別々のところで過ごしていて、戦車道を受講している生徒は山の上にまとまっていた。

それぞれチーム毎に過ごしていると大きな音が聞こえてきた。その音の正体はサンダースのスーパーギャラクシーであり、預けていた戦車を運んできてくれた。

 

 

「ちゃんと届けたわよー!」

 

「ありがとうございます!!」

 

「この借りは高くつくわよ!」

 

「え?」

 

「来年の大会で私たちが大洗を倒すんだからね!続けなさいよ!」

 

「はい!」

 

「俺らも負けねえよ!」

 

 

帰り際に無線で話し、サンダースは去っていった。大洗の方は戦車を見て安心しているようだ。

 

そして次の日も、戦車道受講者はチーム毎に行動をしていた。その中であんこうチーム+りくはコンビニへ買い物に行っていた。戦車で……

 

 

「まさか戦車でコンビニに行くことになるなんて思わなかったよ〜」

 

「戦車の免許が役に立ったな」

 

「それよりりくは上で大丈夫なの?無理矢理になっても中に入れるよ?」

 

「大丈夫大丈夫、子どもの頃はよく姉ちゃんが操縦する戦車の上に座ってたから。な?みほ」

 

「そうだね。お兄ちゃんのその様子を見ると懐かしく思うよ。それに麻子さんの運転なら大丈夫」

 

「そっか!それより写真くらいもっとちゃんとしなよ〜私のはお見合いでも使えるんだから!って思ってたけどりくがいるからその必要はないね」

 

「無駄に気合い入ってますね」

 

「もうりく殿と一緒になる気でいるのは気になりますが……あっ」

 

「どうした優花里?」

 

 

話をしている途中で優花里が何かを思い出したかのような反応をした。その内容とは……

 

 

「コンビニからバスが出ていたので時間を調べておかないと」

 

「何かあるのか?」

 

「1度実家に戻るんです。転校手続きの書類にサインしてもらうために」

 

「あ……」

 

「りく殿?まさか忘れてたなんてことは……」

 

「ないぞ」

 

「……本当ですか?」

 

「ないぞ」

 

「ではそういうことにしておきます」

 

 

転校手続きの書類にサインをしてもらうために実家に戻る必要がある。それは優花里だけでなく他のみんなも同じだ。りくは忘れていた反応を示したが、忘れてたわけではない。実家のことを言うとみほが暗くなるから話に出さないようにしていたのだ。だから今回のは忘れてた反応ではなく、しまったという反応だった。

 

 

「みぽりん大丈夫?」

 

「私も一緒にいきましょうか?」

 

「大丈夫、お兄ちゃんも一緒だから」

 

「そうですか……」

 

「また今度遊びに来てね」

 

「はい!」

 

「優花里だけじゃなくて他のみんなもな」

 

「うん!挨拶考えておかないと」

「その必要はないだろう。だが私も西住さんたちの家は気になる」

「是非行かせていただきます」

 

「あ、止まって!」

 

 

みんなもみほのことを心配していて優花里は一緒に行こうかと言っているいるが、兄のりくがいるから大丈夫だも断った。その時にがっかりした様子だったためか、今度遊びに来て欲しいと伝えておいた。もちろん優花里だけじゃなくて他のみんなも。沙織のは置いておこう……

 

突然みほが止まるように指示を出して戦車を後退させた。何かの看板を見つけたようだが……看板のところまで戻りみほが見つけたものを見たりくは慌て出した。

 

 

「俺先コンビニ行って……ぐぇっ!?」

 

「わぁ!コンビニは後にしてここに行こう!麻子さんお願いします!」

 

「お、おう…」

 

「そ、それよりみぽりん!?りくのこと離してあげて!?」

 

 

みほが見つけたのはボコミュージアムの看板。ボコのことになると他が見えなくなるくらい好きなことを知っているりくは、戦車から降りてコンビニに行こうとしたが、みほに襟元を掴まれて降りられなかった。そしてそれはボコミュージアムに到着するまでその状態だったため、りくは気絶寸前だった。

 

 

「わあぁ!こんなところがあるなんて!」

 

「今までで1番テンション高い…」

 

「みほはボコのことになるとこうなる…」

 

「そうなんだ…というか復活したんだねりく」

 

「なんとか……(もう1人こうなるやつがいることは黙っておくか)」

 

「おう!よく来たなお前ら!」

 

「生ボコだぁ!」

 

「おい!何をする!やめろー!」

 

「何もしてないよ!?」

 

 

ボコミュージアムに到着したみほたち、みほのテンションはかなり高くなっていて、それにりく以外は驚いている。みんなも気付いているが、見た目はボロボロで他に客はいないようだった。

中に入ったあんこうチームは色々なアトラクションを周り、今はショーを見ている。

 

 

「みんな〜オイラに力を〜」

 

「頑張れボコ……」

 

「もっとだ〜」

 

「ボコ頑張れ…」

 

「もっとだ〜」

 

「頑張れボコー!!頑張れー!!」

 

「(愛里寿!?)」

 

 

ショーの途中、ボコが力をくれるようにお願いしてきた。ショーの定番といえば定番だろうが、みほは恥ずかしいのか最初はあまり声が出ていなかった。だがボコがもっとと求める度に大きくなっていき、大声を出そうとしたその時隣の椅子に座っていた少女が立ち上がって応援をし始め、負けないと言わんばかりにみほも大声で応援し始めた。

 

……その立ち上がった少女のことをりくは知っているみたいだ。

 

 

「よーし!みんなのおかげで力がわいてきたー!」

 

 

みんなの声援で立ち上がったボコは再び挑みに行ったが、あっさりやられてしまった。

 

 

「何これ?結局やられてるじゃん…」

 

「それがボコだから」

 

 

みほのお決まりのセリフと同時に幕が閉じた。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「凄く頑張ってたねボコ!」

 

「そう?」

 

「楽しめたみたいだなみほ」

 

「うん!あ、残り1つだって!」

 

「そういう手だから…」

 

「でも可愛いし……あっ」

 

 

ショーが終わりショップに来ていたあんこうチーム+りく。残り1つの商品を見つけたみほがそれに手を伸ばすともう1つ手が伸びてきた。先程ショーにいた少女だ。

 

 

「私はまた来るから、はいっ」

 

「……//」

 

 

その少女はみほに譲ってもらったが赤くなって走り去ってしまった。

 

 

「愛里寿」

 

「えっ……あ、り、りくお兄ちゃん!?」

 

 

だが出入り口付近にいたりくがその少女、愛里寿を呼び止めた。愛里寿はりくがいることに驚き、みんなは愛里寿がりくのことをお兄ちゃんと言ったことに関して驚いている。

 

 

「恥ずかしいのはわかるけどちゃんとお礼を言わないとな」

 

「う、うん…あの…さっきはごめんなさい。ありがとう//」

 

「ううん、気にしないで?大事にしてね」

 

「うん//」

 

 

ちゃんとお礼を言った愛里寿はそのままショップを出て行った。みほたち……いや、みほも買い物を済ませるとボコミュージアムを出て、当初の目当てだったコンビニに向かった。

 

そして次の日、みほとりくの2人は転校手続きの者類にサインをもらうため、熊本にある実家に帰っていった。

 

 

 




今回はここで終わりです。この調子だと年内はあと1話、多くて2話になりそうです。


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29、廃校阻止のために

今回はほぼオリジナル要素です。みほが実家に戻るところをベースに書きました。


 

「変わらないな…って1年も経ってないし当然か」

 

「……そうだね」

 

「着いたぞ」

 

「……うん」

 

 

りくとみほの2人は熊本にある実家の前にいる。転校手続きの書類に親のサインが必要なため戻ってきているのだ。

 

 

「みほ、りく」

 

「「(お)姉ちゃん」」

 

「おかえり」

 

「「ただいま」」

 

 

実家に到着すると、丁度まほが犬の散歩から帰ってきたところだった。そのため一緒に家に入り庭の方を歩いていった。すると

 

 

「まほ」

 

「はい」

 

「お客様?」

 

 

部屋の方からまほに声がかかった。声をかけたのは3人の母親であるしほだ。誰かいることはわかったがその誰かまではわかっていなかった。お客様かと聞かれるとみほの表情は暗くなったが、そのみほの手を握り、りくは大丈夫だと言わんばかりに微笑んでみせた。

 

 

「学校の友人です」

 

「……そう」

 

「いやいや、いつから俺たちは学校の友達になったんだ?つーか母さん、気付いてるんだろ?」

 

「りく!?」

 

「そうね、それで何の用かしら?貴方たちは西住流の戦車道に合わないわ。それでも何かあるのかしら?」

 

「自分の実家に帰ってきただけで戦車道の話をしにきたわけじゃないさ。俺もみほも戦車道のことじゃなくて家族として帰ってきただけさ」

 

「そ、そうだよお母さん……たしかにお母さんから見たら私たちの戦車道をよく思ってないかもしれないよ。でも今は家族として帰ってきたの……」

 

「(2人とも強く、いや、りくは家を出る前にもちゃんと言ってたか。強くなったなみほ)」

 

「2人とも、特にみほ、強くなったわね。おかえりなさい」

 

「「ただいま、(お)母さん」」

 

 

2人がそう言うとしほは襖を開けて笑顔で出迎えてきた。りくとみほはそれぞれ自分の部屋に行き、前と変わっていないことを実感してしほとまほがいる居間に向かった。

 

 

「実はまほから聞いていたのよ。2人が帰ってくることをね」

 

「え!?私言ってない……まさかお兄ちゃん?」

 

「姉ちゃんには言っておいたけど母さんには伝えてないぞ?」

 

「私が伝えたからな」

 

「まぁみほもちゃんと話せてるしいいや。それより母さん、大事な話があるんだ」

 

「私も」

 

 

しほはまほから2人が帰ってくることを聞いていたらしい。みほは言ってないし、りくもまほにのみ言っていたので驚いていた。だがすぐに重要な話をすることにした。

 

 

「母さん、姉ちゃん、俺たちが通ってる大洗学園が廃校することになった。それで今俺たちは全員の転校手続きが完了するまで山の上で過ごしてる」

 

「っ!?」

 

「ちょっと待て!?優勝したのにか!?」

 

「うん、会長は戦車道大会で優勝したら廃校を撤回してくれるって話してたみたいだけど、文科省の人は確約じゃないって言ってたの。それで私たちは今日転校手続きの書類にサインをして欲しくて来たの」

 

「……そう。なら文科省に文句を言いに行きましょうか。私はプロリーグ設置委員会の委員長をやっているから話を聞かないなんてことはないでしょうし」

 

「それは……まだ待って欲しい」

 

「何故?」

 

「とりあえず先にサインをして欲しい。無駄になる可能性もあるけど」

 

「え、えぇ…それじゃあ2人とも書類を」

 

「「はい」」

 

 

りくとみほの2人は今の大洗の現状、それと今日ここに来た目的を話した。大洗の廃校のことを話すと、文科省の人に話をしに行くと言ったがそれを待ったをかけ、先に書類にサインをしてもらった。

 

 

「それで?どうして待つように言ったんだ?委員長のお母様に言ってもらえれば文科省の人も少しは考えてくれるのでは?」

 

「それなんだけどさ、俺たちが大洗に転校する前にもう廃校の話は出てたみたいなんだよ。それを会長の角谷杏さんが撤回させるために話を通したんだよ。まぁどうせ口約束は約束じゃないとかふざけたこと言ってるんじゃないか?その杏さんが簡単に諦めない。今も絶対動てるって信じてる。多分ここにも来ることになるだろうからその時に協力して欲しい」

 

「そう…来なかったら?」

 

「絶対来る!!」

 

「「「っ!?」」」

 

「文科省が決めたことを簡単には変えられない。多分蝶野さんや戦車道連盟の理事長にも相談しても難しいと思う。そこでプロリーグの設置について聞かされてここに来ると思うんだよ。だからその時に協力してく欲しい」

 

「そう……来るって信じてるのね。わかったわ」

 

「ありがとう母さん」

 

「お母さんありがとう」

 

 

りくがしほに待ったをかけた理由としては、会長がこっちにも来ると考えて……いや、信じている。だからその時に協力して欲しいとのことだった。しほもそれに了承することとなった。

 

 

「私はみほとりくの2人を駅まで送ってきます」

 

「ええ、2人とも、また来なさい。そしてその時はゆっくりしなさい」

 

「そうする」

 

「その時は友達もいいかな?」

 

「もちろんよ」

 

「やった!ありがとうお母さん」

 

「それじゃあ元気でな」

 

「2人もね」

 

 

小さい頃のようにまほが操縦し、みほがキューポラから顔を出し、りくは戦車の上に座って駅まで向かっていった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「ん?あのヘリ……」

 

「お兄ちゃん?」

 

 

昔と変わらない道を戦車で走っていると、りくは上にヘリが飛んでいるのを見つけた。それを見たりくは携帯を取り出して電話をかけ出した。その相手は

 

 

「もしもーし、りくりくどうしたの〜?」

 

 

会長だった。

 

 

「そのヘリに乗ってるのか?」

 

「へ?な、なんのことかな?」

 

「今下からヘリ見上げてるんだけど乗ってるのかな〜って」

 

「下から?…………戦車の上にいるのりくりくか〜」

 

「やっぱり乗ってるか、蝶野さんも一緒ってところか」

 

「……あ、バレた」

 

 

りくの思った通り、会長は上に飛んでいるヘリに乗っているようだ。

 

 

「杏さん…あとは頼みます」

 

「……わかった。任せて」

 

 

りくは会長にあとのことは頼むように言って電話を切った。会長も何のことを言っているかわかっているため、はぐらかさずに了承した。その電話を切る頃にはヘリは西住家の上空へと到着していた。そしてヘリを降りた会長と一緒にいた蝶野は客間に通された。

 

 

「初めまして。大洗学園で生徒会長をやっています角谷杏と申します」

 

「そう、あなたが…みほとりくの母の西住しほです。2人がお世話になっています」

 

「いえいえ、むしろこちらが助けられてばかりで……その……すぐに本題に入らせていただけますか?」

 

「ええ」

 

「実は大洗学園は廃校になることになりました。ですが、私たちは戦車道大会で優勝したら廃校撤回という言葉を信じていました。そして優勝したら口約束は約束ではないと言われました……信じていたものが最初からなかったなど納得できません。ここはプロリーグ設置委員会の委員長を務める西住流家元にも協力してもらいたく私も同行させていただきました。どうか、私たちに力を貸していただけないでしょう。お願いします!」

 

「家元、私からもお願いします。彼女たちは文科省の役人が言ったことを信じていました。その言葉を信じて戦った彼女たちの努力を無駄にしたくありません。お願いします」

 

 

挨拶もそこそこに本題に入り、会長がしほにも協力してほしいと頭を下げると、蝶野も一緒に頭を下げた。

 

 

「2人とも、頭を上げてください」

 

「「……」」

 

「いいでしょう。私も協力します。というより角谷さん、貴方が来て頭を下げてお願いをした時点で協力しようと決めました」

 

「……えっ」

 

「あの……家元、どうして?」

 

 

しほは会長がお願いした時点で協力しようと思ったらしい。頼んだ2人からしたらあっさり行きすぎて驚いている。

 

 

「2人が来る少し前にりくとみほが来たのよ。その時にりくに頼まれたのよ。きっと角谷さん、貴方も一緒にここに来ると思うから協力して欲しいと頼まれたわ。最初は私から協力しないかと言ったのですが貴方が来るからその時にと、だから貴方が来てお願いをしたら協力しようと思っていました」

 

「りくりくってば……」

 

「それだけ信頼されてるのね。親としても息子や娘に信頼できる人がいてくれて嬉しく思うのよ。本当にありがとう」

 

「私は……そんな風に言われる資格なんてないですよ……私はいくら廃校を回避するためだったとしてもりくりくと……いえ、りく君やみほさんに無理矢理戦車道を取らせたんです。だからそんな風に言ってもらう資格なんて……」

 

「それは2人が今でも怒ってると思って言っているのかしら?」

 

「……えっ?」

 

「たしかに最初は恨んだでしょうね。特にみほはもう戦車道をやりたくないと思って戦車道のなかった大洗学園に転校したのだから」

 

「……」

 

「でも2人が戦車道で笑顔になることはだんだんなくなっていっていたのよ。それを取り戻したのは貴方たち大洗学園のおかげ。最初は恨んだとしても今は感謝しているのではないかしら?」

 

「そう……でしょうか……」

 

「このことは私から口出しはしないことにします。ですが、貴方は望んでないとしても親として言わせていただきます。私の息子と娘に笑顔を取り戻してくれて本当にありがとう。大洗の廃校撤回のため、私も協力させていただくわよ」

 

「っ……ありがとう……ございます」

 

 

しほが会長がお願いしたら協力しようと思っていたのはりくに頼まれていたからである。りくが信頼している会長が来ればすぐにでも協力しようと思っていたに違いない。会長はしほに自分は信頼されるような人ではないと思っているが、そんなことはないということをしほは告げ、そして廃校撤回の協力をするということを伝えた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「着いたぞ」

 

「ありがとうお姉ちゃん」

 

「ありがとな姉ちゃん」

 

 

実家での話を終えたりく達は姉のまほに駅まで戦車で送ってもらっていた。駅に着くと見慣れた2人が待っていた。

 

 

「お疲れ様です隊長」

 

「こんにちは隊長、みほさん、りく君」

 

「エリカ!?」

 

「小梅さんも!?」

 

「私がお前たちが戻ってくると声をかけておいた」

 

 

駅で待っていた2人はエリカと小梅だった。どうやらまほが声をかけていたらしい。それを聞いた2人はりく達に会いたいのか駅まで来ていたのだ。

 

 

「もう帰るのね?」

 

「ああ、今回は転校手続きの書類にサインしてもらうために来ただけだったからな」

 

「「えっ!?」」

 

「今度はゆっくりできる時に来るよ。私たちの友達も連れてね」

 

「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!転校手続きってどういうことよ!?」

 

「みほさんたちまた転校を!?」

 

「「……あっ」」

 

 

2人はりくとみほが来ていることを聞いていても目的までは聞いていなかった。そのためか、転校手続きということを聞いて驚いている。

 

 

「廃校の噂は聞いてたけど優勝したらその話は無くなるんじゃないの!?」

 

「どっからその噂を……俺らもそう信じてたんだけどな……」

 

「会長から聞いた話だとそれは確約じゃなかったんだって…」

 

「そんな…」

 

「酷い…」

 

「でもまだ決まってないさ。うちの会長が動いてる。一応書類のサインはもらったけど無駄になるかもな」

 

「そう……」

 

「りく君、みほさん、私たちに協力できることがあったら何でも言ってくださいね」

 

「小梅さん……ありがとう」

 

「あんた達を倒すのは私たちなんだから、無くなられても困るのよ」

 

「それに好きな人のために動きたいっていうのもあるよ」

 

「そうね…」

 

 

エリカたちも大洗が廃校になる可能性については知っていたようだ。どこから噂が広まったか知らないが……それでも優勝したら廃校の話ら無くなると思っていたらしい。だがりくは書類は無駄になるかもと思っている。それでも何があるかわからない、エリカも小梅も何かあれば協力してくれるらしい。

 

ちなみに……好きな人のために動きたいという小梅の言葉にエリカも同意すると

 

 

「「「「エリカ(さん)が素直!?」」」」

 

「どういう意味よ!?」

 

 

他の4人は驚いていた。その後少しの間エリカたちと話した後りくとみほは大洗の戦車道受講者が今過ごしている場所へと戻っていった。

 

会長はしほや蝶野、そして戦車道連盟の理事長と一緒に文科省の役人の元へ向かっていたのだった。

 

 

 

 




次回できれば試合前までは書きたいですね。


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30、大学選抜戦〜集いしライバル〜

 

「ここまで考え方が違うとなれば、プロリーグ設置委員会の委員長を私が務めるのは難しくなります」

 

「しかしですね……今年中にプロリーグを設置しないといけないことは貴方もご存知でしょう」

 

「優勝した高校をみすみす廃校にしてもまでですか?」

 

「まぐれで優勝した高校など……」

 

 

文科省に今、西住流家元の西住しほ、戦車道連盟の理事長、教官の蝶野亜美、そして大洗学園生徒会長の角谷杏が、大洗学園の廃校問題について話している。まぐれで優勝という言葉に反応してか、しほは湯呑みをテーブルに叩きつけた。

 

 

「戦車道にまぐれなし!あるのは実力のみ!どうすれば認めていただけますか……?」

 

「まぁ……大学選抜チームに勝つことができれば……」

 

「わかりました!では大学選抜に勝てたら廃校を撤回してくれますね?噂では口約束は約束ではないということなので今ここで誓約書にサインをお願いします!」

 

 

大学選抜に勝てば廃校を撤回してもらえることとなった。口約束は約束ではないと言わせないために、今度はちゃんと誓約書にサインをしてもらうことも忘れずに……大学選抜の責任者のサインも必要になるため、家元であるしほだけが向かい、会長は自分たちの学校のところに送ってもらうこととなった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「家元就任おめでとうございます」

 

「ありがとうございます。そして先程話した件ですが、大学選抜強化責任者である島田流家元にもご協力をお願いしたい…」

 

「いいでしょう。ですが、やるからには全力でやらせていただきます」

 

「それはもちろん」

 

 

しほは今、西住流家元として島田流家元である島田千代の元を訪ねている。用件は大洗の廃校問題として大学選抜との試合の件である。島田流家元である千代は受けて立つとのことだった。

 

 

「もしこの試合の結果で大洗が廃校になったとして、その場合娘さんや息子さんはどうするのかしら?」

 

「そうなることはありません。みほやりくたちは負けませんから」

 

「万が一そうなったらお2人を飛び級させてうちがもらいたいですけどね」

 

「その場合はまた黒森峰に戻ってもらうか……他の高校に転校してもらいます。廃校になった後自分たちだけ……という性格ではないですからね。りくの性格は貴方も知っているでしょ?みほも同じような性格ですよ」

 

「それは残念です。しかし仕方ないことですが、試合は全力でやらせていただきます」

 

「もちろん。手加減をしろとなど言いません」

 

 

大洗が大学選抜の試合の手筈を整えるための話し合いは終わり、試合が行われることが決定した。試合が決定した後、会長の角谷は誓約書のコピーを手に戻っていった。

 

 

「うわぁぁ!?」

 

「ったく、1人で無茶しすぎじゃないか?桃さん?」

 

「りく!?戻ったのか!?転校手続きは無事できたか?」

 

「俺もみほもばっちりだよ」

 

 

りくとみほは戻った時、りくは河島が1人で大量の荷物を運んでいたのを見つけた。みほはあんこうチームの方に行ったが、りくは手伝いに来ていた。

 

 

「それと、戻ったのはもう1人いるみたいだぜ?」

 

「もう1人?…………か、会長!!」

 

「ただいま」

 

「会長ーーー!!」

 

 

戻ってきた会長を見つけた河島は一目散に走っていった。りくもゆっくりとそちらに向かった。

 

 

「おかえり杏さん」

 

「ただいまりくりく、かぁしま、みんなを体育館に集めてー」

 

「お任せください!」

 

 

河島はみんなを集めるために建物内に戻り、小山が放送で招集をかけた。その際、河島の泣き声がずっと聞こえていた……

 

 

「やっぱり肝心な時は動いてくれますね。ありがとうございます杏さん」

 

「そりゃあね、りくりくもありがとね、信じてくれて。最初最悪な印象だったはずなのに…」

 

「またその話か?最初はたしかに最悪だったけど今では信頼してるよ、だから母さんにもちゃんと話すことできたんだよ」

 

「そう言われると照れちゃうって〜//」

 

「レアっすね」

 

 

2人が体育館に着くと風紀委員以外のメンバーが揃っていた。それを麻子が連れてきて全員が揃った。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「大学選抜との試合が決まった」

 

 

みんなが体育館に集まると、ステージ上で会長が話し出した。内容は大学選抜との試合についてである。これに勝てば今度こそ大洗の廃校は撤回になるということ、そして今回は誓約書もちゃんと書いてもらっていることを話した。

 

 

「お母さん……やっぱり協力してくれたんだ」

 

「厳しいし怖いけどちゃんと頼めば動いてくれるからな。あらかじめ頼んでおいたしな」

 

「これに勝てば今度こそ廃校を阻止できるんですよね?」

 

「そうだ!」

 

「他にもう隠してることはないのだな?」

 

「ない!

 

……厳しい戦いになると思う。でもみんなで力を合わせて乗り越えよう!」

 

『おおー!』

 

 

大学選抜との試合のことを話し、みんなの指揮を上げた。その後は別室で各車長と生徒会、そしてりくが集まって試合のことについて話している。

 

 

「社会人を破ったチームだと!?」

 

「大学選抜の隊長どこかで……」

 

「ボコミュージアムで会っただろ?島田愛里寿、島田流だよ」

 

「そうだ!そこで会ったんだ!なんでお兄ちゃんって言ってたのかまではわからないけど…」

 

『お兄ちゃん!?』

 

 

対戦相手のことを話していると大学選抜の隊長の話になった。その隊長の島田愛里寿はあんこうチームとりくがつい最近ボコミュージアムで会った相手だった。みほが愛里寿がりくのことをお兄ちゃんと呼んでいたことを話すとみんな驚いていた。

 

 

「そのことは後で聞き出すとして…」

 

「え、聞き出されるの?」

 

「この戦いは西住流vs島田流ってことにもなるね」

 

「そんなの関係ねぇよ、流派の戦いじゃない。大洗を守るための戦い方だ!だからみほ、気にしないでお前の戦車道でやればいいんだからな!」

 

「うん、わかってるよお兄ちゃん」

 

 

この戦いは大洗学園を守るためだけでなく、西住流vs島田流の戦いでもあることを会長は言ったが、りくはそんなこと気にしていなかった。流派よりも大洗学園の方が大事だからだ。

 

 

「それで相手は何両出してくるんだ?」

 

「……30両」

 

「なんだと!?」

 

『っ!?』

 

 

みほが相手の車両数を言うとみんな驚いていた。当然といえば当然だが……それでも勝つしかないのがこの戦いだ。

 

 

「無理だ!お前たちからも無理だと言ってくれ!」

 

「桃さん、たしかにこの戦いは今までより厳しい」

 

「そうだろ!」

 

「でも、この試合を取り付けるのも難しかったはずです。会長が必死に交渉して色んな人を動かしました。それでやっとこの試合を取り付けたんです。厳しい戦いなのは私もお兄ちゃんもわかっています。でも戦車に通れない道はありません!戦車は火砕流の中だって通るんです!」

 

「みほ……よく言った!」

 

「だから最後まで諦めずにやりましょう!」

 

 

相手の車両数を30両と聞き、河島をほとんどが不安になった。だが、りくやみほは不安な様子を見せていなかった。他に方法がないのもそうだが、会長が戦車道連盟など色々な人が動いてくれていることを知っているから簡単に諦めるわけにはいかないからだ。

 

もう一つ、フラッグ戦だと思っていたというのもある。しかし……

 

 

「殲滅戦だと!?」

 

「ちょっと待ってください!30両相手に対してこちらは8両……その上殲滅戦だなんて……」

 

 

その日のうちに役人がやってきて、試合のルールは殲滅戦だということを伝えられた。さすがのみほとりくも動揺している。

 

 

「もうプロリーグは殲滅戦ルールで進めてるんだって…」

 

「辞退するなら早めにお願いします。それともう一つ、プロリーグでは男性も隊長車に乗ることができるようになりそれに合わせるため、今回の試合から隊長車に同乗できることになりました。ですので、隊長車に乗れば少しはまともな試合になるのではないですか?」

 

「なんだと!?」

 

「ではそういうことで…」

 

 

役人は殲滅戦になるということ、そして男性も隊長車に乗れることを告げて帰っていった。この話を聞いたりくは反応したが、それは自分も隊長車に乗れるということではなく、怒りから反応したのだった。

 

 

「たしかにりく殿の方が装填は早いです…」

 

「それに砲撃も私より精度があります…」

 

「2人とも何を言っているの!!あんこうチームにお兄ちゃんの席はないよ!!」

 

「みぽりん!?」

 

「言い方は置いておいて西住さんの言う通りだと思う」

 

「そりゃあそうだろ、うちには麻子以上の操縦手や沙織以上の通信手はいない。それに優花里や華だってたしかに俺よりは劣るけど、俺が入る必要ないくらいにあんこうチームの大事な戦力だからな。俺の居場所はねぇよ」

 

「りく殿……」

 

「そこまで私たちのことを……」

 

「だから自信を持て!あんなこと言ってきた役人をぎゃふんと言わせてやれ!」

 

「「はい!」」

 

「お兄ちゃんってば……私が言いたかったのに……」

 

「す、すまん……」

 

 

りくもみほも、華や優花里のことを信頼している。もちろん沙織や麻子も。だから自分が入る必要がないということで怒っていた。それをみほが言いたかったらしく、りくは責められた。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「苦労かけるね」

 

「いえ…」

 

「あれ?りくりくは?」

 

「お兄ちゃんなら1人で考えるって向こうに……」

 

 

殲滅戦が告げられた夜、みほとりくりくは別々に作戦を考えていた。そのみほのところに会長はやってきた。

 

 

「どうする?辞退するっていう手も……」

 

「それはありません!最後まで戦い抜きます!」

 

「西住ちゃん…ありがとね。できることがあれば協力するから」

 

「会長はもうたくさん動いてくれたじゃないですか!次は私たちの番です!あ、ただ砲手は最初から会長かお兄ちゃんでお願いしますね」

 

「了解だよ。じゃありくりくのところにも行くね」

 

「………やっぱこれしかないか」

 

「りくりく〜」

 

「杏さん!?」

 

 

みほと話した後、会長はりくの方に向かった。りくはいきなり声をかけられて少し驚いているようだった。

 

 

「苦労かけるね」

 

「何言ってるんですか、杏さんだってこの試合を取りつけるために苦労してたじゃないですか。だから今度は俺たちの番だ。ただ砲手は杏さん、最初からお願いしますよ。俺もいつでもできるように準備しておきますから」

 

「兄妹で同じこと言うね〜了解だよ」

 

「それよりも試合のことでちょっと相談が……」

 

「相談?」

 

 

りくは次の試合のことで会長に相談をした。おそらく作戦というよりは別のことだろうが……

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

試合当日

 

 

ついに大学選抜との試合を迎えた。整列してもわかる通り、人数に差がありすぎる。さすがのみほも今回ばかりは厳しいと感じている。

 

 

「みほ、相手に弱気になってる姿は見せるなよ」

 

「う、うん……」

 

『両チーム!隊長前へ!』

 

 

心配の合図で両チームの隊長、みほと愛里寿が前へ歩いていった。弱気を見せるなとりくに言われたみほだが、さすがに顔に出てしまっている。

 

 

『これより!大洗学園vs大学選抜の試合を始めます!一同!れ……『待ったー!』?』

 

『!?』

 

「間に合ってくれたか……」

 

 

審判の合図で挨拶を……と思ったその時、待ったをかけた者がいた。りくにはそれが誰なのかわかっていた。

 

 

「大洗学園西住まほ」

「同じく逸見エリカ」

 

「以下18名参加する!短期転校手続き及び戦車道連盟の許可は得ている」

 

「お姉ちゃん…」

 

「サンダースもいるわよ!」

 

「今から仲間だ」

 

「黒森峰にサンダースも来てくれるなんて!」

 

「鬼に金棒で」

 

「虎に翼」

 

 

待ったをかけたのは黒森峰の隊長でりくとみほの姉のまほだった。大洗に短期転校の手続きを承認してもらった書類と戦車道連盟の許可の書類を見せている。その後にサンダースも到着したが、まだ増員メンバーは来ている。

 

 

「ちょっと!1番乗り逃したじゃない!」

 

「お寝坊したのは誰ですか?」

 

「う、うるさいわね!」

 

「やっぱり、試合にはいつものタンクジャケットで臨みましょうか」

 

「じゃあなんで制服揃えたんですか?」

 

「みんな着てみたかったんですって」

 

 

黒森峰やサンダースに続いてプラウダやグロリアーナが到着。さらに

 

 

「ノリとパスタの国からドゥーチェ参上だー!」

 

「カバさんチームのたかちゃ〜ん!来たわよ〜」

 

「ひなちゃん!っ!?カエサルだ//」

 

「みなさんこんにちは、継続高校から転校してきました。よろしくお願いします」

 

「やっぱり協力するんじゃない」

 

「違う、風に運ばれてきたのさ」

 

「昨日の敵は今日の友!知波単学園より22両到着しました!」

 

「増員は全部で22両と伝えたはずです。貴方たちは6両です」

 

「それは心得違いしていました!16両は待機!」

 

 

アンツィオ高校と継続高校と知波単学園の3校が到着した。まぁ……知波単に関しては来すぎだが……それでも大学選抜と同じ30両に数を揃えることができた。

 

 

「みんな来てくれて本当にありがとうございます」

 

「前に言ったはずだ。協力できることがあればすると」

 

「助かるよ姉ちゃん、それに他のみんなも」

 

「お兄ちゃん」

 

「みほ?」

 

「改めて作戦会議の時間もらえたから1度戻ってきたよ」

 

「そっか、それじゃあ各高校の隊長は集まってくれ!副隊長までなら参加していい、テントで作戦会議だ!」

 

 

増員が来たことで作戦会議の時間をもらってきたみほ、みほが戻ると大洗からはみほとりくと生徒会、黒森峰とプラウダからは隊長と副隊長、その他の学校は隊長が集合し作戦を立てることとなった。

 




お久しぶりですカットです。
別の作品をやってから今回この作品を……と思ってたんですけど間に合いそうもなかったのでこちらを投稿しました。
今回でこの作品の今年の投稿を終わりとします。来年もまたよろしくお願いします。

間に合えば他の作品も今年中に投稿します。


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