異形系個性シン・ゴジラ (⌒*(∴)*⌒ <滅尽滅相なの!)
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ゴジラはつおい

徹夜テンションで書いて酷かったんで直しました。
お気に入りしてくださった方すみません。


此の世界には異形系個性というものがある。

人間とはかけ離れた肉体を持つ、生まれながらの個性。

多くが人間を超えた力を備えた解除不能の個性である。

まぁそれは良い。

前世にはなかったがここは来世、いや今世である。

受け入れよう。

原作は知らないがどこかのアニメ世界だろうし受け入れよう。

例え前世では結局使うことはなかった息子がなくなろうが、文字通り人間離れした顔であろうが受け入れよう。

涙をもって諦めよう。

でもさぁ、でもさぁシン・ゴジラはねぇよ。

 

 

 

 

 

神呉璽羅(かなえごじら)

これが今世の僕の名前である。

もうね、生まれた時に絶望した。

だってゴジラである。

GODZILLAである。

呉璽羅である。

しかも第四形態。

小学生の時分は会った覚えなどない神様を毎日呪っていたくらいだ。

 

流石に個性だからか身長はおおよそ3.5メートル、全長は7メートル程で収まっているがゴツゴツした黒い皮に、身体と比較して小さい手。

血管のように赤い線が罅割れのように身体中をはしっている。

そして顔が恐竜です。

キノコ雲の形をした頭部に焼け爛れたような口許。

身体と比較するとあまりにも細く、不揃いな牙が並び碌に口を閉じることもできない。

さらに下顎には舌がなく、下顎は任意で裂ける。

食べる必要がないからか殆どビーム発射口。

見開かれた極端に小さく、瞼も存在しない目。 

これのお陰で俺は授業中寝ていても全くバレないのである(白目)。

まぁ白目なんてできないのだが。

「これ絶対にラブコメとかできねぇだろ」って顔である。

て言うか友情すらできないのだが。

 

言ってて死にたくなってくるものだ。

死ねないのだが。

そう死ねないのだ。

シン・ゴジラは従来のゴジラと違い死ねないのだ。

シン・ゴジラのヤベェところは多々あるが一番ヤバイのは形態変化能力である。

自己崩壊と自己再生を繰り返すことで世代を経ないまま自身を進化させる能力。 

環境の変化や敵の攻撃に対して急速に対応できる適応能力だ。

この能力でただの海洋生物だったものが深海に投棄された放射性廃棄物を摂取しゴジラとなったのだ。

だからか原作同様体内に原子炉がある。

多分熱核エネルギー変換生体器官と呼ばれてた奴だと思う。

これは体内に取り込んだ物質の元素を細胞膜を通して任意の元素へと変換するものであり、水素や窒素などの陽子数の少ない元素から生存に必要な元素を生成し、更にその際の崩壊熱をもエネルギー源として吸収する生体システムである。

簡単に言えば生成される元素を任意で選べる核融合炉であり、水や空気さえあればどこであっても栄養素とエネルギーを生み出し生存が可能というトンデモ原子炉だ。

勿論そのお陰でビームも撃てる。

極太のビームです。

それならTSしても某魔砲少女の方が良かったと何度思ったことか。

あれ?シン・ゴジラは性別がないからもしかしてTSか?

シン・ゴジラは確か単一生殖ができるからオスもメスもなかった筈だ。

俺は男を辞めたと思っていたが女にもなっただけだったのか(辞めたのは人間です)。

異形系と言っても限度があると僕は思うんです。

 

閑話休題。

人間の8倍もの遺伝子情報を持ち一個体での進化を続けるゴジラ。

そういえば裏設定では第4形態は始まりにすぎずさらなる進化適応を行うとされてたなぁ。

しかも公式発刊の雑誌で。

明言されてたなぁ。

第五形態が映画最後のシーンでちょろっと出た人間大のトカゲ人間みたいな奴で、更に二段階進化があるらしい。

確か第六形態で人類滅亡クラスの無限分裂を行えて、永久機関の獲得、ヤシオリ作戦への免疫、完全なる飛行能力の獲得と大気圏外での生存能力を獲得する筈だ。

ヤバすぎるだろ。

改めて考えてもヤバすぎる。

永久機関は自己でのエネルギー生成、無尽蔵の核融合、水と空気が必須でなくなるとか頭おかしい奴だし、宇宙空間での生存能力もヤバすぎる。

別の惑星などに到達するだけでなく、いずれはそれらの困難極まる環境へも適応していくとかもう某究極生命体もビックリである。

最早人類悪よりたちが悪い。

そして更に絶望を煽るのならば、それでもまだゴジラは進化を残しているのだ。

第七形態は体内に宇宙を宿し、あらゆる物質や元素を合成して作り出し、自分のものにしていく。

事実上無敵である。

もう訳がわからない。

こんなの完全生物とか以前に生物ではないだろう。

Q. 僕はまだ進化を二回残している。この意味がわかるかな?

A. ウルトラの星でも崩壊だ!!

ということだ。

こんなのどうやって倒せるというのだろうか。

第七形態になったらそれこそサイヤ人でも不可能だ。

超天元突破グレンラガンでも連れてこなければ殺せない気がする。

とにかくこの世界ではゴジラを殺すことはできないだろう。

死をも克服した完全生物となってしまったシン・ゴジラを殺すことなどできないのである。

第七形態は勿論第四形態ですら殺しきることは不可能だ。

シン・ゴジラヤベェ(小並感)。

 

 

 

 

 

118.5メートル。

それが本来のシン・ゴジラの身長である。

それなのに今の僕は3.5メートル程しかない。

これが数少ない神様の温情なのかはわからないが不幸中の幸いだろう。

十二歳くらいにはこの大きさで成長が止まってくれて本当に良かった。

まぁ必要性がないからこの大きさなだけで更に進化する可能性は十分あるのだが。

ゴジラだから仕方ないね。

でも3.5メートルでも十分でかいなぁ。

 

国立雄英高等学校の前でそんなことを考える。

今日は待ちに待った受験当日。

数多の学生達がプロヒーローになる為に集まっている。

ヒーロー科狙いも相当いるだろう。

かく言う僕もそうだ。

 

でも正直なところ人を助けたいとかそういうのはあんまりない。

シン・ゴジラは霞を喰って生きていけるので生活の心配はないがビームを撃ちたいのだ。

ストレス発散に思う存分ビームを撃ちたいのだ。

内閣総辞職ビームを撃ちたいのだ。

壁抜きビームとか撃ちたいのだ。

だってカッコいいし。

なりたいとは思わなかったが。

ゴジラは前世でも大好きだった。

なりたいとは思わなかったが。

シン・ゴジラの圧倒的な蹂躙劇も何度見返したかわからない。

なりたいとは思わなかったが。

裏設定も考察も買って読み漁ったものだ。

なりたいとは思わなかったが。

 

閑話休題。

だから必死で勉強したし、尻尾でペンを握るなんて芸当を覚えたのだ。

絶対に合格してやる。

そう意気込んでドッスドス歩いていると緑髪の少年にぶつかる。

 

「あっ、すみま――」

 

表情が固まる。

そりゃそうだ。

集中していて気づかなかったのだろうが他の受験生はまず寄り付かないような顔なのだ。

醜悪に裂けた口許に不気味な頭部。

表情が死んでいて怒っているようにすら見えるかもしれない。

僕だって自分だったら近づかない。

だってそれくれぇ怖いし。

転生して四、五年は鏡見てびくついてたし、今でも夜中だと物凄い驚く。

なんて下らねぇことを考える。

 

「すすす、すみません。わざとじゃないんです!!」

 

「気ニスルナ」

 

「うわぁっ」

 

重ね重ね失礼な少年だ。

喋っただけじゃないか。

確かに美声とは言い難いが発生練習は生まれた時からやっているんだぞ。

泣き声の代わりに鳴き声を発していた僕が漸く喋れるようにようになった時は小躍りして喜んだっていうのに。

その努力を理解できんのか。

 

「失礼ナ奴ダ」

 

「ひっ、すみません、すみません」

 

ぽろっと溢した言葉に少年は過剰に反応する。

よく考えたら理解できるわけなかったよ。

 

脅してしまったか?

こんなとこでも減点されるかもしれないのが雄英クオリティーだとネットの記事で読んだことがあった僕は直ぐ様発言を撤回する。

 

「別ニ良イ」

 

それだけ言って逃げるように去った僕は悪くない。

 

 

 

 

 

『今日は俺のライブにようこそー!エヴリバディ!』

 

ボイスヒーロー・プレゼントマイクがメチャメチャ大音量で声をかける。

まぁそれに答えるような受験生はいなかったが、それでも気にせずハイテンションで試験の説明を始める。

何かロボットを退治してその合計ポイントを競うらしい。

0ポイントで邪魔者的な巨大ロボットも出るらしいがあまり興味はない。

どうせ内閣総辞職ビームを耐えられるとは思えない。

 

『俺からは以上だ!最後にリスナーへ我が校の校訓をプレゼントしよう。かの英雄ナポレオン・ボナパルトは言った!!「真の英雄とは人生の不幸を乗り越えていく者」と!“Plus Ultra!”それでは皆、良い受難を!』

 

何か決め台詞的な台詞が異常に似合う。

これもヒーローの素質だろうか。

 

『ハイ、スタートー!』

 

ボケっとしてたら試験がスタートする。

 

周囲の受験生が困惑する中、それを一切考慮せずにプレゼント・マイクが叫ぶ。

 

『どうしたぁ!?実戦じゃカウントなんざねえんだよ!走れ走――』

 

「GAAaaaaAAaaaaAAaaaa」

 

プレゼントマイクの激励で他の受験生が一斉に動きだそうとするのを咆哮で押し留めて尻尾に核エネルギーを溜める。

背鰭が紫色に発光して体内の原子炉がエネルギーを収束させる。

 

「GAAAaaaaaaaaaaa」

 

尻尾の先から紫色の放射熱線が放たれ、眼前の建物を爆発、融解させる。

そしてその尻尾をぐるりと横に薙いで眼前のビル群を切断、爆発させる。

スタート地点が比較的広い空間だったのが幸いして倒壊した建物がこちらに倒れ込んでくることこそなかったが、視界全てが炎に包まれる。

地獄絵図だった。

 

「なっ、何だよこれ………」

 

「これは…」

 

やり過ぎちゃった☆

 

 

 

 

 

雄英高校職員会議室は重苦しい沈黙に満たされていた。

 

「これってどうなるんでしょうか……」

 

画面に映し出されるのはあるひとりの受験生。

 

神呉璽羅(かなえごじら)

ヴィランポイント1002、レスキューポイント0、総合ポイント1002。

二位の受験生のポイントが77ポイントであることからもわかる通り桁が違う。

筆記だって合格ラインには到達しているし 間違いなくトップである。

ただ――

 

「仮想敵ロボットをビル群ごとビームで一掃……」

 

「Oh、やっべぇな」

 

「あぁ、序盤に一度このビームを放った後は何をするでもなく座り込んでいるだけだ。まぁあれを何度も撃たれても困るのも事実だが…」

 

「あの会場はスタート地点からきっかり半分全てのビルがなぎ倒されてたそうよ。巨大敵ロボットも胴体を別たれて一撃」 

 

「何でヴィランじゃないのか不思議なくらいの容赦のなさじゃねぇか」

 

「開幕のビームのせいでこの会場の生徒の殆どがポイントを稼げてないんだよねぇ」

 

「だから言ったんだ。これは余りにも非効率的だって」

 

「これってレスキューポイントにマイナスがつくくらい酷いわよ」

 

「しかしこの試験は加点方式だしねぇ」

 

「何を言っているんだ。逆にこいつがヴィランにでもなってみろ一体誰が止められるんだ」

 

「そうね……」

 

「そうだな」

 

こうして神呉璽羅(かなえごじら)は雄英高校に入学した。




主人公はシン・ゴジラを個性として獲得しているため大きさは3.5メートル程。
第四形態の姿をしているが実際は第五に近い。
まぁ多用に進化するから余り関係ない。


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ゴジラはおもい

前話の神呉璽羅君の中学時代のエピソードを削除しました。
すみません。
理由は今話でわかります。


今日は雄英高校の入学初日。

春の日差しが気持ちいい朝だ。

シン・ゴジラこと僕、神呉璽羅はなんとか雄英に入学することができていた。

 

ビームを撃ってビル群を破壊した時に他の受験生がドン引きしてたからビーム一発で他に何もしなかったけど合格できたようだ。

ゴジラの放射熱線は最強なんだ(ドヤァ)。

とかやって落ちてたら洒落にならん。

両親に顔向けできん。

 

まぁそんなことはどうでもいい。

受かったなら問題nothingだ。

 

綺麗な廊下を眺めながら教室に向かう。

歩く度に窓ガラスが震えるけれど廊下が倒壊しないのはいいぞ‼

流石は雄英。

金がかかってるぅ。

小中と僕の体重を支えられる校舎がないとかで学校に通えなかった僕としては嬉しい限りだ。

通信学校では作れなかった友達を作るぞぉ!

大丈夫、大丈夫。

寝なくともよいゴジラの生態を生かして徹夜してまで自己紹介を考えたんだ。

この神君の爆笑鉄板ネタでクラスを沸かせてやるぜ。

 

 

 

 

 

そんな風に思ってた時期が僕にもありました。

目の前には金髪DQN。

 

「うっせぇぞ!この黒蜥蜴!!」

 

何かクラス前で緑髪の試験前に会った少年と金髪DQNがゴチャゴチャやってたので『のいて』と言っただけなのに絡んできたのだ。

 

「…………」

 

「あぁ‼無視してんじゃねぇぞ!」

 

えぇ~雄英ってDQNでも入れんのぉ~?

しかも君何で喧嘩売ってるの~?

 

シン・ゴジラだよ。

今の僕シン・ゴジラだよ。

顔とかヤベェよ?

グロいし、不気味だしで子供とか普通に泣くよ?

てか自分の二倍以上の身長の奴に喧嘩売るとかすげぇよ。

やっぱヒーロー育成学校。

頭が飛んでるぜ。

なーんて金髪少年の勇敢さに恐れ戦いていると――

 

「何をやってるんだ」

 

そう少年を諌めながら寝袋から出てくるボサボサの髪の毛の大人。

多分に胡散臭いが状況的に見て教師だろう。

呆れた顔でこちらを見てくるが僕は悪くないので首を振って否定しておく。

 

僕は一応喋れるが喉が痛くなるのであまり好きではないのだ。

その動作にわかってくれたのか先生はひとつ溜め息を吐くと言う。

 

「さっさと入れ。ホームルームを始めるぞ」

 

そう言うと流石に勇猛果敢なDQN君も緑髪の少年も席に着く。

僕もそれに続いてガッという音と共に止められる。

 

「何してるんだ?」

 

「センセェ、扉ガ小サクテ入レマセン」

 

 

 

 

 

「はい。皆さんが静かになるのに8秒もかかりました。時間は有限、君達は合理性に欠けるね」

 

先生が何か言っていたが僕はまだ廊下である。

だって身長は3.5メートル全長に至っては9.8メートルもあるのだ。

雄英の校舎が僕の体重を支えられるのに狂喜乱舞していたが入れない可能性は十分あった。

それでも悲しいなぁ。

 

「担任の相澤消太だ。よろしくね」

 

そんな状況にあって思うのはやっぱり自分の個性についてだ。

自分で言うのもなんだが僕の個性は相当特殊だ。

転生者の個性だからかシン・ゴジラだしね。

普通異形系個性と言ってもクラスにいる尾白君や蛙吹さんのように亜人系が殆どだ。

少なくとも人型ではないものは少ない。

だからかドアも大きめには作ってあっても僕のようなガチ巨大怪獣みたいな奴が入れるような大きさのものは少ない。

Mt.レディも個性を使わなければ巨大にはならないのだから羨ましい限りだ。

僕なんていつ100メートル超えてもおかしくないというのに。

 

「早速だがこれに着替えてグラウンドに出ろ」

 

――と思考に埋没していたら相澤先生が指示を出している。

億劫な尻尾を引き摺って外に出る。

何か俺の高校生活ヤバくね?

それに自己紹介ぃ。

 

 

 

 

 

「個性把握テストをやるぞ」

 

グラウンドに出たクラスメイトに衝撃がはしる。

まぁ僕は高校生活の不安でそれどころではなかったが。

 

「入学式は!?ガイダンスは!?」

 

「ヒーローになるならそんな悠長な行事に出る時間はないよ。雄英は『自由』な校風が売り文句。そしてそれは先生側もまた然り」

 

なんという暴論!さすがだぜ雄英高校!僕たちにできない事を平然とやってのけるッ!そこにしびれる!憧れるゥ!

 

――という冗談は抜きにして、まぁテストがあるらしい。

そうして相澤先生は実演を交えながらテストの説明を始める。

簡単に纏めると個性を使って体力測定をするようだ。

 

「先ずは己の最大限を知る。それがヒーローの素地を作る合理的手段だ」

 

個性使用の体力測定。

それに触発されたのか誰かが興奮混じりに呟く。

 

「なんだこれ、すげぇ面白そう!!」 

 

「個性思いっきり使えるんだ!流石はヒーロー科!」

 

「面白そう………か。ヒーローになる三年間。そんな腹積もりで過ごす気でいるのか?」

 

ポツリと呟くように洩らした言葉に皆が一瞬で静かになる。

何?何?なんか空気が重いんだけど。

 

「よし。トータル成績最下位の者は見込みなしと判断し除籍処分とするとしよう」

 

は?

何言ってんのこいつ?

 

「これが雄英高校ヒーロー科だ」

 

皆が皆その衝撃的な発言に固まる最中、相澤先生が言い放つ。

 

 

 

 

 

体力測定。

50メートル走、握力、反復横跳び、ソフトボール投げ、持久走 、20メートルシャトルラン 、上体起こし、長座体前屈、立ち幅跳びの九個の種目からなるテストだ。

 

まず50メートル走。

ビリ。

だってゴジラは重いし、俊敏性なんて皆無だから。

でも思いっきり走ると地面が揺れて、他の生徒が転んだり、踏ん張ったりと録に記録にならないのでひとりで走ることになった。

解せぬ。

 

握力。

飾りみたいに小さい手だけど流石はゴジラ。

全力で握ったところ測定器が弾けとんだ。

皆が驚愕と恐怖でドン引きしていたような気がしたがそんなことはなかったぜ。

1位だよ。

 

反復横跳び。

勿論ビリ。

説明不要。

横移動なんてゴジラには無理。

六回が限度です。

 

ソフトボール投げ。

ビリ。

まず直径2メートルの円がゴジラには狭すぎる。

そして手は投げることなんてできないので、必然的に尻尾を使う。

でもゴジラの尻尾で球体を投げるとか無理ゲー。

尻尾から滑り落ちて0.4メートル。

記録なし。

 

持久走。

それなり。

別に速くはないが体力には自信があります。

中には核融合炉があるからね。

 

20メートルシャトルラン。

ビリ。

俊敏性はありません。

 

上体起こし。

ビリ。

身体が重い。

八回。

 

長座体前屈。

無理。

手が台を押せない。

記録なし。

 

…………ヤバい。

多分トータル成績最下位の者って俺だわ。

入学初日に退学処分とか終わってるわ。

もうこうなったらマリアナ海溝とかに住もうかな。

それで太平洋、大西洋、インド洋とかを巡って生きよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

相澤消太は非常に悩んでいた。

それは入学試験で仮想敵ロボットをビームで一掃した生徒、神呉璽羅のことだ。

 

彼は余りにもアンバランス過ぎる個性を有していた。

大き過ぎる身体に比較して小さ過ぎる腕。

ビル群を一瞬で融解させるまでの火力を有しながらもボールすら投げられない。

彼の口は物を食べられるような造形ではないし、彼の両親に確認したところ食事は必要としないし、味覚も存在しないらしい。

個性としては勿論、生物としても余りにも歪過ぎる。

相澤が知る中でもあそこまで異常過ぎる個性を持つ者は見たことがない。

まるで兵器だ。

固く、食事を必要とせず、桁外れの火力を有する。

自走砲のようだ。

パラメーターが防御と火力に振り切れている。

 

彼が立ち幅跳びの用意をしているのを見ながら考える。

彼は本当にヒーローになれるのか。

そもそもヒーローになりたいのか。

何故ヒーローになりたいのだろうか。

そんなことをとりとめもなく考える。

 

「じゃあ次は神さん。いいよ」

 

「アリガト」

 

神が勢いをつけて跳ぶ。

胃が揺さぶられるような震動の後に一瞬の静寂、その後に爆音と共に地面が爆ぜる。

緩衝用の砂が散弾のように周囲にばら蒔かれ吹っ飛ぶ。

思考が真っ白になるが、すぐに頬を叩く砂粒がそこから引き戻す。

 

「……な、なんて…威力………」

 

八百万が掠れたような声を溢す。

 

「神、今のはお前の個性か?」

 

「イエ、タダノ体重デス。ゴ迷惑オカケシマシタ」

 

そう淡々と言葉を紡ぐ。

一切感情の感じられない謝罪だ。

 

訳がわからない。

只の体重?

今の爆発が?

 

「どういうことだ?」

 

「アッ、俺ハ体重2713tモアルンデス」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕が自分の体重を喋ると皆が一歩引く。

や、やめろ、その技は俺に効く。

静まり返る皆の視線が痛い。

 

しょうがないじゃん!!

シン・ゴジラなんだから!

2700tって体重がそんなに珍しいのかよぉ!?

まぁ珍しいっていうかあり得ないんだけど。

2700tって潜水艦とか運輸フェリーの重さだからね。

因みに最近事務所を立ち上げた巨大化ヒーローMtレディの巨大化後の体重を平均体重より計算したが、それでも僕よりも軽い。

多分1tもいかない。

そんな僕の体重が両足の裏という狭い面積に集まったが故の爆発なのだ。

 

死・に・た・い。

ゴジラ細胞が重いのが悪い!!

こんなの友達作れる筈ねぇじゃねーか。

 

 

 

 

 

「トータルは単純に各合計種目の評点を合計した数だ。口頭で説明するのは無駄だから一括開示する」

 

その後粛々と残りのメンバーの立ち幅跳びが終わり、体力測定が完了する。

 

トータル成績最下位の者は完全に俺だ。

握力こそ1位をとれたが持久走と立ち幅跳びがそこそこで他の六個の種目がビリ。

うん。

確実に俺だわ。

 

母さん、父さん。

親不孝な僕をお許しください。

僕は退学後は海で暮らすつもりなので探さないでください。

たまには美味しい海の幸を送るので末永くお幸せにお過ごしください。

 

「因みに除籍は嘘な。君らの実力を最大限に引き出す為の合理的虚偽」

 

「エッ」

 

そう言いながら発表する相澤先生は妙に疲れていたように見えた。




・神呉璽羅

転生後の悩みはスマホを自分で弄れないこと。
変なところでポジティブ。
ゴジラの強さを盲目的に信仰している。
なりなくはなかったが。

・緑の髪の少年

実は呉璽羅君に言うことがあったけどタイミングを逃した。

・金髪DQN

何で倍率がおかしい公立の雄英にあの素行で入れたのか謎な人。
忘れがちだけど入学試験はNo.2

・相澤センセェ

胃が痛い。


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ゴジラはふべん

僕こと神呉璽羅(かなえごじら)は感激に身を震わせていた。

クラスにいる、授業を受ける。

そんな当たり前だけど僕にとっては難しすぎたことが今叶っていたのだから。

先日までは教室にさえ入れず授業を廊下で受けるとかいう鬼畜の扱いを受けていたが、今日やっとこさ入り口が改修されクラスに入ることが可能になったのだ。

 

流石だぜ雄英お金持ちだぜ!

さすゆう!!

 

だから僕はめちゃめちゃ機嫌が良かった。

こんな気分は入学試験でビル群を一斉爆破した時以来だ。

えがったなー、ちょうえがったなー。

そんな気分で授業を楽しんでいるとヒーロー基礎学の授業が始まる。

ヒーロー基礎学は初授業だ。

 

「わーたーしーがー普通にドアから来た!」

 

先生らしきオールマイトがその言葉通り普通にドアから入室してくる。

オールマイトは筋骨隆々の金髪偉丈夫だ。

確かナンバーワンヒーローだかなんだかでいっちゃん有名なヒーローらしい。

まぁテレビとか見る機会自体数える程しかない僕はそこまで詳しくないのだ。

基本僕は家の庭にテント張って暮らしてたしね。

父さんの安月給で僕の体重を支えられる家に改築してくれなんて言えないしね。

 

「ヒーロー基礎学‼ヒーローの素地を作る為に様々な訓練を行う科目だ!!単位数も最も多いぞ‼」

 

皆がざわざわと色めき立つ中でオールマイトがカードを取り出す。

 

「早速だが今日はコレ!!」

 

そこには『BATTLE』という簡潔な文字。

 

「戦闘訓練!!」

 

『うぉおおおぉぉお』と皆が歓声をあげる。

 

「そしてそいつに伴ってぇ、こちら」

 

オールマイトが何かのボタンを押す。

すると教室の壁が何やらカッコよく、壁が開き、たくさんのトランクが収納された棚が出てきた。

 

「入学前に送ってもらった個性届と要望に沿ってあつらえた…戦闘服」

 

「「「おおぉぉおぉぉぉおおおお!!!」」」

 

ヒーローコスチュームである。

初めはコスチュームとかゴジラには不要だろうと耐熱性のズボンを申請しただけだったがもっと色々言えばよかったかもしれない………放射線防護服とか。

 

まぁ必要なのは周りかもしんないけど………。

 

「着替えたら順次、グラウンドβに集まるんだ!!」

 

 

 

 

 

「始めようか有精卵共!!戦闘訓練のお時間だ!」

 

「ここは入試の演習場ですが、また市街地演習を行うのでしょうか」

 

真面目そうな眼鏡が質問する。

 

「いいや、もう二歩先に踏み込む。屋内での対人戦闘訓練さ!敵退治は主に屋外で見られるが、統計で言えば屋内のほうが凶悪敵出現率は高いんだ。監禁、軟禁、裏商売。このヒーロー飽和社会、真に賢しい敵は屋内にひそむ!!」

 

おく……ない…?

屋内?

 

「君らにはこれから『敵組』と『ヒーロー組』に分かれて、2対2の屋内戦を行ってもらう!」

 

えっ?

待って。

屋内ってことは俺無理じゃね?

雄英じゃなければ普通ゴジラの体重を支えられないよ?

2713tだよ?

2713tって人どころか船の重さだからね?

 

「いいかい?状況設定は敵がアジトで核兵器を隠していてヒーローはそれを処理しようとしている。ヒーローは制限時間内に敵を捕まえるか核兵器を回収する事。敵は制限時間まで核兵器を守るかヒーローを捕まえる事」

 

僕の混乱を他所にオールマイトは説明を続ける。

 

怪獣映画では大体効かない核攻撃だとかくだらないこと考えるくらいには混乱している僕をおいてオールマイトは締めくくる。

 

「コンビ及び対戦相手はくじだ」

 

 

 

 

「さて、これで皆のペアは――」

 

「センセェ。オレノ名前ガ無インデスケド」

 

「神少年………。その、あの、すまない。君の体重を支えられる演習屋内施設がないんだ」

 

知ってた‼

凄い申し訳なさそうなオールマイト先生に言われんでも予想出来てた‼

だって2713tだから‼

2713tだから‼

皆大好き陽炎型駆逐艦の基準排水量(重量)で2000tだもん‼

それよりも713tも重いんだもん‼

知ってた‼

超知ってた‼

軍 艦 よ り 重 い も ん !!!

 

「ソレデドウスレバ?」

 

「あっ、あぁ、神少年はヴィラン役をやってくれないか?それなら二階に上がらなければ演習を行えると思うんだ……本当にすまない…」

 

「良イデスヨ。ソレクライ。ソレデ、相手ハ如何シマスカ?」

 

「う~ん、よしっ、神少年は入学試験も文句なしのトップ合格だったしこの演習で一番成果を上げた二名を君の対戦相手にしよう」

 

「ペアハ如何スレバ?」

 

「えっと、そうだな………大丈夫だ‼君なら一人でもできるさ‼あっ、ビームは禁止だ。あれは殺傷力が高過ぎるからね」

 

 

 

 

 

そうして始まったヒーロー基礎学。

皆色々と工夫を練って戦っている。

すげぇなぁ~。

個性って便利だな~。

そんな皆の個性の汎用性の高さと、ゴジラデメリットを比べて落ち込んでいるといよいよ僕の出番がくる。

 

「え~轟少年と八百万少女は神少年と戦ってくれ」

 

うわぇ~い。

何か手から氷出すイケメンと何か色んな物ポンポン出す美女だぁ~。

美系の男女と大怪獣!!

これは凶悪ヴィランとヒーローですわ~。

ゴジラとか基本人類悪だからね。

子供と美女に弱くてもゴジラだからね。

てかシン・ゴジラは完全に人類の敵だったわ。

シン・ゴジラわぁ人類の存続を脅かす脅威そのものでありぃ、人類に無限の物理的な可能性を示唆する福音であるのさぁ♪

そんなくっだらねぇことを胸の中で歌い上げながら位置につくと先生の声が響く。

 

「それでは演習開始!!」

 

 

 

 

 

あ~あ、始まってしまったなあ~。

ゴジラがヴィランとかしっくりくるけど、それ以上にゴジラが核守ってるとか違和感しかない。

ゴジラって基本原子炉目指して進撃!進撃!だからなぁ~。

てかゴジラが核持ってるとか、そんな状況詰んでるわ。

だって爆発しても死ぬのヒーローだけやし。

核を食ってパワーアップするだろうし。

ふと思ったが僕の中のゴジラ原子炉のが核爆弾よりヤヴァくね?

だって僕やろうと思えば放射能垂れ流せるよ?

まぁ僕の放射能ビームは原作ゴジラ君の約20日で半減し、2~3年で完全に無害化する奴を腹の中で更に改造した特別製なので基本被爆とかはしないんだけどね。

でも意識して制御しなきゃ普通に被爆すると思う。

だから僕が本気出せば首都圏壊滅とかできるよ?

多分だけど。

 

そんな感じのことを考えながら、核兵器のレプリカを尻尾でひょいと持ち上げる。

落としたり握り潰したりしないように慎重に尻尾を巻き付ける。

 

暇ぁ~。

 

ゴジラなんだからヒーロー役の彼らが来るまで待っていようとだらだら考え事をしていると急激に付近の気温が下がっていくのが感じられる。

背鰭の通称ゴジラレーダーは上空の戦闘機も探知できるくらい高性能なので事前察知など楽勝である。

冷気が肌というか皮を撫で、一瞬で身体の半分以上を氷に閉ざす。

ざっとレーダーで調べた限りではビルごと凍りついているみたいなのでやべぇくらいの本気である。

が、冷気でこのシン・ゴジラを無効化なんて片腹大激痛!!!

冬眠するような温いゴジラとは違うのだよ。

 

 

 

 

 

その日を私は絶対に忘れないだろう。

いや、忘れられないだろう。

 

推薦組でのトップツー。

それは私の誇りであり自信であった。

優秀である証。

私も轟さんも同年代では優秀であると思っていた。

事実それは間違ってはいなかったのだろう。

個性による広範囲凍結。

それは並みのヴィランではひとたまりもない正に必殺技とでも呼ぶべきものであった。

神さんをビルごと氷で閉じ込めた時は、やり過ぎだと見当違いの心配をしていた。

有り体に言って、勝利を確信していたと言っても良い。

 

神さんは見た目通りの異形系個性。

あの体重と体格から放たれる攻撃が、破格の破壊力を持つことも知っていたし油断ならない相手だとも思っていた。

中遠距離であれば、二人がかりであれば、倒すことはできなくとも一時的な確保くらいはできると思っていた。

入試に使ったというビームも禁止されていたし十分勝ち目はあると信じていた。

 

でもそれは余りにも楽観的過ぎたのだとすぐにわかった。

 

地面を震わせ、建物を揺らしながら放たれる大音量の雄叫び。

 

聞くものに根元的な恐怖と畏怖を与える声。

 

獣のような理性なき咆哮にも怒れる神の神託にも感じられる圧倒的生命の鼓動。

 

本能的に恐れた。

殺される、と。

人類は為す術もなく駆逐されると。

一片の慈悲もなく天災のように潰されると。

人類は食物連鎖の頂点から転がり落ちたのだと。

 

そんな思いが波のように私の思考を拐っていた。

 

雄叫びが止み、地面の揺れが収まっても私の震えも冷や汗も止まらなかった。

 

そして何も出来ず茫然とする私の前でビルが燃えた。

 

天を焦がすような焔がビルの窓を叩き割り瞬く間に火の手を広げる。

何メートルも離れた私の顔を熱した空気が叩く。

一階から上がった炎はまるでビル自らが燃えるようにその身を焦がす。

黒煙が青空を汚し焼け焦げたコンクリートが音を立てて崩れ落ちる。

余りの熱量にゆらゆらと陽炎が揺れる。

 

まるで映画や小説のような光景。

現実感なんてまるでなくて思考が纏まらない。

 

そしてその中を神さんが当然のように歩いてきた。

 

鬼よりも恐ろしい形相でこの破壊を当然のように。

赤熱化した表皮で大気を熱し、地面を歩む。

丸太のような尻尾が天を貫くようにそびえている。

 

がらがらと崩れるビルが私の棺桶か何かのように見える。

 

神さんはそこで私を見つけてこちらを向く。

 

あぁ、死ぬんだ。

なんて感想がすっと出てきた。

恐怖はなかった。

ただ諦観が私の心を覆っていた。

 

神はこちらを向くと獲物を喰らう蛇のように顎門を広げる。

そして――

 

 

 

 

 

端的に言って僕は負けた。

完膚なきまでに。

一切の同情の余地なく。

完敗した。

ゴジラの力を持ってしても?と疑問に思う方もいるかな?

ばっか!!そのせいだよ!

使いこなせねぇよ!

放射線流使わなくてもゴジラの口からファイヤーは戦略兵器なんだよ!!

世界水準軽く超えちゃってるから!

扱いきれねぇよ!

方向定めて撃つだけ?

炎は一直線に飛ばないし残留するんだぜ?

無理!

スペックだよりのゴリ押ししかできないもん。

 

つまり核兵器が燃えた。

正確には核兵器のハリボテだけど燃えた。

うん。

ゴジラの能力は炎を吐くことであって炎を操ることじゃないからね。

燃えた。

氷には炎だ!とかいうポケモン及びドラクエ脳が悪いね。

いやぁ、火炎放射は強敵でしたね。

負けたし。

 

「大切な訓練なのにごめん。自爆しちゃった」

って言ったら轟くんも八百万さんも呆れてたし。

いや、怒ってたのかもしれない。

口聞いてくれなかったし。

本当に二人には悪いことをしてしまった。

すみません。

何でもするので許してください。

 

とりま個性制御の練習だ!

思えば僕は雄英入る前は極力個性使わなかったもんなぁ。

ビームも炎も初めてだったし。

放射能汚染恐れて鍛錬をしなかったツケだな……。

鍛錬するか!!!




・神呉璽羅

グラウンドの隅っこに炎を吐いて個性制御の練習中。

・轟少年

氷で攻めたらビルを燃やして出てきた神くんに思考が追いつかなかった。

・八百万少女

この胸のドキドキ……まさか恋!!?
心なしか腕や足も震えますし授業中も目で追ってしまいます!
緊張のあまり上手く話せませんし……

・オールマイト

あいつ私より強くね?


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ゴジラはふじみ

多分油断していたのだろう。

驕っていたし慢心していた。

自分ならできると。

 

 

 

 

 

「「「わぁああぁあ」」」

 

という歓声が生徒間で巻き起こる。

ここはウソの災害と事故ルーム縮めてUSJ。

 

朝のHRで語られた人命救助訓練をするためにバスで移動したのだという。

 

俺?俺は徒歩だ!!

何しろゴジラ!

体力だったら十分あるのさ!!

 

そして只今合流したところ、宇宙服を着込んだ先生を紹介される。

彼(宇宙服を着込んでいるので正確にはわからないけれど多分男だと思う)は十三号という名前のヒーローなのだという。

スペースヒーローの名前で災害救助を中心に活動しているらしい。

 

そんな高校生らしく騒ぐ彼等が少し眩しいぜ。

俺は前世もあって高校生らしくはしゃげる気がしないし。

何よりゴジラだし。

 

さぁ授業を始めようと相澤先生が彼等を注意しようとしたその時、ゴジラレーダーが異常を読み取る。

前方二十メートルくらいのところに何かがある。

黒い靄のようなものとそこに繋がるどこか。

それが空間の歪み、ワープゲートだと思い至った時にはそこから一人の男が出てきてからだった。

 

不健康そうな顔に枯れ木のような腕を持つ不気味な男。

しかしそんなものが目に入らない程異常なファッションをしている。

身体中に何個も手を付けているのだ。

手首だけ切り取られたような複数の手を身に着けている。

お前はどこの爆弾魔だとツッコみたくなるイカれたファッションである。

 

そしてそれに続くように現れる複数の人間。

チンピラみてぇな服装をして、大手を振って反社会的ですよと喧伝しているかのような奴らだ。

それがざっと四、五十人。

ゴジラレーダで調べたところUSJ中にいるみたいだった。

 

「何だアリャ?また入試ん時みたいなもう始まってんぞパターン?」

 

硬化するという個性を持つ切島君の言葉になるほどと納得しているとそれをぶち壊すように相澤先生が一喝する。

 

「あれは(ヴィラン)だ!!」

 

なんてこったい!!

 

なるほどなんて言ってた自分が馬鹿みたいだぜ!

 

このゴジラくんアイをもってしても見抜けぬとは!!

 

シンのゴジラ、一生の不覚!!

 

――と自分の脳カラ具合に戦慄しているとワープゲートの個性らしき男(?)が喋りだす。

 

「13号に、イレイザーヘッドですか………先日頂いた教師側のカリキュラムでは、オールマイトがここにいるはずなのですが…………」

 

何かカリキュラムとか知ってるキメェ。 

 

「どこだよ………せっかくこんなに大衆引き連れてきたのにさ……オールマイト…平和の象徴がいないなんて…子供を殺せば来るのかな?」

 

手が付いたヴィランが何かサイコなこと言ってるキメェ。

 

 

 

 

 

「13号生徒を!!早く!」

 

ゴーグルを装着し、戦闘準備を整えた相澤先生がチンピラの列に飛び込んでいく。

ばったばったとまるで無双ゲーのように敵を倒す相澤先生はプロヒーローの面目躍如と言ったところだろうか。

 

「皆さん、逃げますよ!」

 

十三号先生が僕らを急かすのでまぁとりあえず従って避難する。

戦って負けることはありえないけど先生の言葉には従うべきだろうしね。

てかあのペースで無双してる相澤先生を見てると案外あっさり勝ってしまうかもしれない。

 

そんなこんなで殿を務めつつ避難!

 

全速前進DA!と進んでいると前方に歪みを発見!

あのワープゲートヴィランが回り込んできたみたいだ。

 

とりあえず熱線ブッパしようかと背鰭を光らせておくと出てきたヴィランに即突っ込んでいく生徒がいた。

 

金髪DQNこと爆豪くんと硬化する個性持ちの切島くんだ!!

 

ゲートを視認すると同時に突っ込んでいくその反応速度と勇気には◎をあげたいが熱線を撃つには邪魔すぎる。

 

この現代社会、『一発だけなら誤射だよね』が通用しない可能性は大なのでそこは自重。

――と発射を躊躇ったその隙に黒いワープする霧がこちらに殺到してた。

 

 

 

 

 

黒い霧に包まれたと思ったら空に投げ出された。

一瞬の浮遊感と着水する独特の感覚。

幸いカエルという自分の個性からか水は得意だ。

皆を助けなきゃと、周囲を確認しようとして――

 

 

 

 

 

皆は物理を知っているかな?

ゴジラくんからの問題だぜ。

なに、難しい話じゃないさ。

数学を捨てたバリバリの文系でも、思春期真っ只中の中学生でもわかる話さ。

小難しい計算もNewton の法則も重力加速度もなーんにも考慮しないものとしよう。

ただフィーリングで答えて欲しい。

約一メートルくらい上空から着水した2713tの僕。

質量×高さ=位置エネルギーなんて中学生で習うよね?

はい、計算しなくともヤバさはわかるよね?

 

 

 

 

 

――轟音と衝撃が耳朶を打つ。

カエルという個性上水中での行動は得意だったが、そんなものを考慮する余地のないくらいの激流が私達を襲う。

何が起こったかなんて確認できる筈がない。

ぐるぐると私の身体を彼方へと押し流す大波。

私は抵抗もできずに意識を手放した。

 

 

 

 

 

僕が水の中に落とされ鏡のように凪いでいた水面が濁流となって暴れ回った後。

水面から顔を出すとぷかぷかと水面に浮かぶ生徒とヴィラン。

仲良く気絶している。

あっ、僕ナニカやっちゃいました!?

 

結果オーライでいいよね(震え声)?

 

ごめん。マジでごめん。

 

水面に浮かぶクラスメイトを陸に上げ、起床を待つこと十数分。

 

十数分の内に襲いかかってきたヴィランもいたけど尻尾で薙ぎ払い、ホームラン☆

水の中に叩き込んでやりましたとも!

 

そんなボール投げをしていると、カエルっぽい女の子である蛙吹梅雨さんが目を覚ます。

 

「ケロぉ!!?」

 

おぅ↓そんなにビビるなよ。

確かにシンゴジヘッドが覗き込んでたら目覚めも悪いけどさぁ。

 

「落チ着イテ。ヴィランハ倒シタカラ」

 

「えっ、えぇ……えと、神ちゃん、で良いかしら?」

 

「イイヨ」

 

「皆は――

 

――無事」

 

尻尾で緑谷くんを指す。

 

「水面に浮かんでるヴィランは――

 

――倒シタ」

 

胸を反らしてドヤ顔。

 

「あの濁流は――

 

――ゴメンネ」

 

尻尾を地面に、頭を下げる。

 

「……………と、とりあえず移動しましょうか」

 

「了解」

 

 

 

 

 

途中、起きた峰田くんと緑谷くんをパーティーに加え、ヒーローの卵御一行様として出口を目指す。

急いで、されど見つからないように出口を目指す。

ここはヒーロー育成学校。

沢山のプロヒーローが常在しているのだから助けを呼べれば勝ち確だぜ☆

なーんて甘い考えだってことはすぐにわかった。

 

僕ことゴジラ君の体重は2000tを超え、身長だって3メートル超え。

 

見つかっちったぜ☆

 

まぁヴィラン如きにゴジラが負けるわけないので音を頼りに寄ってきた馬鹿を尻尾で薙ぎ払うだけなんだけどね☆

 

ゴジラは最強なんだぜぇ〜

お前ら如きが敵う相手じゃね〜ンだぜ〜

 

強靭!!無敵!!最強!!

 

不死身!不老不死!核パワー!

 

そうやって脱出改め正面突破で出口を目指していたからだろうか。

 

相澤先生を押さえつける脳丸出しのキモい奴。

精神的安定を欠き黒霧とか言うヴィランを詰る手を沢山付けたキモい奴。

 

それと相対してしまった。

 

「やれ、脳無」

 

――という簡潔な命令に脳丸出しの黒マッチョが緑谷くんに襲いかかる。

 

速いが、ゴジラボディは巨大なのだから身体をずらしてボディで受けることくらいはできた。

 

脳無と呼ばれたヴィランの拳が俺を叩く。

 

痛くない。

 

二発目はおおきく振りかぶっての一撃。

 

小揺るぎもしない。

 

三発目、四発目、五発目とラッシュが始まる。

 

腹を。胸を。腕を。顎を。

 

何度も何度も殴られる。

 

ノーダメージ。

 

「は???」

 

呆けた声の主は誰だろうか。

 

神呉璽羅の規格外さを知らないヴィラン達だろうか。

 

散々苦しめられた相澤先生だろうか。

 

平然と庇われたクラスメイトだろうか。

 

しかしこんなものは神呉璽羅にとっては当然だった。

 

『してしまった』なんて表現を使ってはみたが、俺はゴジラである。

負ける筈がない。

 

慢心?

人が小石を恐れるのは、精神疾患と呼ぶのだよ。

 

思考している間もボディを叩く黒マッチョ。

 

いい加減うっとおしいので尻尾で殴打を決めると、脳無の巨体は地面に沈む。

 

「「は?」」

 

さぁ次だと踏み出そうとする足を掴む脳無。

 

タフだぜと思いながらもその体に片足を載せる。

2713tの重量で脳無の身体を押しつぶすが、バタバタと藻掻くだけで全く堪えた様子がない。

物理無効ですか?と流石に俺も驚く。

 

なので着火。

 

背鰭を光らしエネルギーを放射。

 

熱核エネルギーを使った放射能火炎流は、脳無の手足を焼き焦がす。

 

動き、悶え、暴れる気もなくなるくらいまで悉く焼き尽くす。

 

楽勝だった。

戦闘どころか駆除とも呼べる程に一方的な暴力。

絶対的上下関係。

圧倒的な力の隔絶がそこにはあった。

 

だから正直油断していた。

考えなしだった。

そう。

端的に言って愚かだった。

 

どうせ射線には味方がいないし熱線放射ぁ!!!と撃ったのは愚行としか言いようがなかった。

 

ゴジラの皮膚を貫ける攻撃は極僅かだ。

だが存在する。

ゴジラを傷つけ殺せる力は存在するのだ。

 

脳無というヴィラン連合の切り札をいとも容易く屠ったゴジラは考えなしに放射熱線を放った。

 

シン・ゴジラの切り札。

正に神の怒りとも呼べる一撃はヴィランに当たることはなかった。

 

黒霧のワープゲート。

空間を歪めあらゆる攻撃を反射する個性は、熱線を跳ね返し神をも殺す。

 

軽率な行動の報いを我が身で受けることとなった神呉璽羅は頭部を喪失し、生命活動を停止していた。




・神呉璽羅

馬鹿やって死んだ馬鹿

・脳無

噛ませ犬にされた。衝撃吸収のせいで燃やされた。キャンプファイヤーになっちゃった。死んではないよ☆

・カエル少女

初めて溺れたいい子。

・緑谷くん

神くんは色々と凄いよ。イロイロと。

・峰田少年

神はヤバい奴

・死柄木

あれが生徒……????

・黒霧

MVP


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ゴジラはでかい

神呉璽羅の肉体が持ち主の意識を失い、地に臥せる。

大質量を宿した巨体が崩折れた振動が地を揺らし、否応なく彼が死んだ事実を周囲に実感させる。

焦げるような匂いに、焼き切れた傷口から白い煙が漂う。

頭を失い自らの血で大地を濡らす神呉璽羅。

大量の血と肉が死臭を醸す。

 

それを見ても雄英の生徒達は信じらないという思いで一杯だった。

 

彼等は知っていた。

 

神呉璽羅の他の追随を許さない隔絶した個性を。

いっそ異常とすら言えるクラスメイトの力を。

 

無敵だと思っていた。

 

相手を圧倒的なパワーで一方的に蹂躙した攻撃力。

何十という攻撃を受けながらそれを意に介すこともない防御力。

プロヒーローであってもこれだけ破壊という分野に特化した人物はいないと断言できる戦闘力。

 

入学試験や個性把握テスト。

戦闘訓練といった舞台を経て、神呉璽羅の力にある種の畏怖や信頼を抱いていたのだ。

破壊の化身や暴力の象徴とも言える幻想を彼に重ねていたのだ。

彼等はヒーローの卵とは言っても十五、六歳の少年少女。

 

彼等は“人は死ぬという現実”を知らなかった。

どんなに強い個性を持っていたとしても人間である限りある日あっさりと死んでしまうという事実を知らなかった。

 

 

 

 

 

「ははは、これは傑作だ。あの脳無を殺ったガキだからどんな怪物かと思ったが、自分で自分を撃ち殺すなんてな……」

 

乾いた笑いが響く。

 

「なぁ先生、どういう気持ちだよ。大事に大事に守ってきた生徒が自分のせいで死ぬ。ヒーローなのに守れなかったんだ……なぁ!今どういう気持ちだよ!!」

 

自身の不甲斐なさに歯噛みする。

自分が守るべき生徒を守れなかった。

その事実に対して腸が煮えくり返る思いだ。

あいつにはその報いを受けさせたいと思わずにはいられない。

それでも相澤はそれを堪え、考えを巡らせる。

自分はヒーローで教師だ。

脳無が倒れたとは言え黒霧と死柄木は健在だ。

腕を折られ全身負傷した自分だけでは生徒全員を守りきれるかは相当怪しい。

今生きている生徒を第一に考えなければ全滅する。

自分の中の冷静な部分がそう警報を鳴らす。

 

「ははははははははははははは、は………さて、黒霧。今回はゲームオーバーだ。脳無は使い物にはならなかったし、教師も直に着く…生徒ひとりだけしか殺せなかったとはいえ十分だ。……今回は引こう…」

 

ひと通り哄笑すると彼等はあっさりと撤退の決断を下す。

 

命をスコアに。

殺しをゲーム感覚に語る彼等を止める術は相澤にはない。

 

そんな時だった。

 

地面が震え、赤き燐光が宙を満たした。

 

 

 

 

 

あぁ、いてぇ頭が割れそうだ。

暗いし熱いし痛い。

うるさいなぁ。

好き勝手に喋るなよ。

頭に響くんだよ。

ズキズキと走るような痛みが身体中を襲っている。

じくじくと身体中が痛む。

身体が熱い。

いてぇ。 気持ち悪い。

自分の中からなにかが出てきそうだ。

死ぬんだろうか。

こんなところで。

こんな奴に。

あぁ恥ずかしい。

世界中を敵に回し人類存亡を賭けて戦ったシン・ゴジラがこのザマか。

ミサイルでも核攻撃でも死なないと高を括って“個性”という未知を侮った愚か者。

俺はゴジラなのに。

キングギドラでもモスラでもないあんなヴィラン如きに殺されるのか。

あぁ恥ずかしい。

胸が痛む。

顔が熱くなる。

あれ? おかしいな。

痛い。

顔?

うぅ、身体中が熱い。

痛い。

顔は……あれ?

なんで……俺は……。

痛い。 痛い。痛い。痛いよ。

うるさいなぁ、今は考え事をしてるんだから黙っててよ。

俺は。

ゴジラは。

呉爾羅は。

あぁ、痛みがひどくて考えがまとまらない。

そういえば熱いし眩しいな。

お迎えかな。

痛すぎて身体の感覚ないし。

血も出てるかもしれない。

痛い。

熱い。

死ぬ。

死んでしまう。

だめだ。

ここで死ぬのはだめだ。

俺が死ぬのは仕方無い。

馬鹿やった報いだ。

借り物の力で驕り高ぶり、相澤先生の言葉を無視した俺に相応しい末路だ。

でもゴジラが、シン・ゴジラが死ぬのはだめだ。

シン・ゴジラがたった一人の悪党に殺されるなんて嫌だ。

こんなのは納得できない。

ありえない。

俺の愛したゴジラがこんな低脳ヴィランに殺されるなんて許せる訳がない。

あぁ、うん、わかった。

好き勝手に言っていた言葉がやっと聞き取れた。

生きろ、生きろと俺を急かす俺の側面。

よし、俺はゴジラになる。

数多の怪獣の頂たる怪獣王に。

繁栄の果てに産み出された最強の災厄に。

 

 

 

 

 

まずは揺れ。

次に光と音。

 

僕ら生徒は勿論、先生や襲撃しに来た筈のヴィランまでもが一様にその異様から目を離せなかった。

ヴィランが五メートルもない距離にいるのだから本来なら絶対にしなかったはずだ。

 

だがそんな常識が浮かぶ余地すらないほどにそれは異常な雰囲気を漂わせていた。

 

そこに存在するはひとりの生徒の遺体。

その筈だ。

 

だけどおかしい。

あの威圧を伴う巨体は頭を失い転がっていた筈だ。

頭を文字通り破壊されて死んでいた筈だ。

立ち上がってなどいなかった筈だ。

尾を天に掲げてはいなかった筈だ。

 

決して、あの爬虫類染みた瞳で僕らを睥睨してはいなかった筈だ。

 

傷口からは絶えず白い煙が立ち昇り、みしみしと怪音を響かせながら身体全体が膨張している。

3メートルあった巨体は4メートル5メートルと加速度的に巨大化していく。

隆起した背鰭は血のように鮮やかな燐光を発し辺りを照らす。

 

まさか、でも、やっぱりと様々な憶測が脳を駆け巡る。

 

彼は死んだ筈だ。

でも彼は立ち上がっている。

 

自らの攻撃で頭を砕いてしまった筈だ。

でも既に傷口は見当たらない。

 

でも、でも、でもと理解を拒んだ脳が繰り返す。

 

“死んだと思っていたクラスメイトが生きていた”という本来なら喜ばしい筈の情報なのに、僕には恐怖しか湧かなかった。

 

頭を失っても生きているなんて人間どころか生物ですらないんじゃないだろうか。

そう考えてしまう。

彼はクラスメイトなのに。

僕を庇ってくれたというのに。

そう、考えてしまった。

 

呉璽羅が咆哮する。

自分こそが絶対者であると高らかに宣言するかのように。

厳かな死刑宣告のように。

僕らの本能を揺さぶり支配する。

ヴィランとは比べようもない恐怖が場を満たし、意識が諦観と畏怖に塗りつぶされる。

 

この世のなによりも強大であり苛烈。

神聖ささえ感じるほどに恐ろしき力。

暴虐なる神罰。

冷徹なる神威。

 

絶望の象徴がそこにいた。

 

「…やっぱり……やっぱり神さんは生きています!死ぬわけなかったんです!彼が死ぬ筈ありませんもの!」

 

八百万さんの声が呆気に取られていた僕らの意識を一気に引き戻す。

 

「は??お前死んでたよな?黒霧にあの光線を跳ね返されて死んでたよな?黒霧が殺したんだからよぉ……何で…何で生きてんだよ!?何で立ち上がってんだよ!?死ねよ…死ねよォ!!」

 

言葉と同時に走り出す。

 

つい先程まで冷静に撤退を決めていたヴィランはそこにはない。

まるで予想外の事態に苛立ち、癇癪を起こした子供のような姿。

アレを見た後だと矮小にすら感じられる姿。

 

死柄木は、純粋な殺意を喚きながらアレを再び殺さんと腕を伸ばす――

 

 

 

 

 

死柄木の個性、崩壊は強力なものだ。

五指で捉えた物質を材質や強度に関わらず文字通り崩壊させる。

もし人体に触れればゴジラ細胞だろうが容易く崩壊させる恐ろしき『個性』。

 

それは十全に機能した。

 

神呉璽羅の細胞を崩し、壊した。

 

だが、それでもゴジラには届かない。

 

うじゅうじゅと崩壊したそばから増殖、再生、再構築する傷。

そしてそれすらも上回る速度で巨大化する肉体。

 

個性を十全に使いこなし、完璧なタイミングで使っても、ゴジラを殺すには至らない。

ゴジラの喉元には届き得ない。

 

それは単純にして覆しようもない理由。

 

最早10メートルを超えた巨体に対して、死柄木の個性が作用する範囲が小さすぎる。

 

圧倒的なサイズ差。

このただ一言に尽きるだろう。

 

そして一度に殺しきれないのならゴジラは再生を始める。

壊しても崩しても殺しても意味をなさない。

 

「GuGḡggÀAaaaaaaaaaaaaaa」

 

ゴジラの咆哮が再度地面を揺する。

怒りのままに吠え立てる。

 

今まで神呉璽羅にとって防御という概念はなかった。

自衛隊の機関砲や榴弾砲、誘導弾を物の数ともしない硬度を誇る皮膚を信じていたからだ。

これを貫けるモノなどない。

ましてや核攻撃でも死なないシン・ゴジラを殺すモノなど存在しないと信仰していたからだ。

強者による傲慢だろう。

でも、それは彼にとって当たり前だった。

モスラやギドラなどの怪獣が存在しない世界で、ゴジラたる僕に相対するものは国や国連などといった人類の叡智を結集したモノだと信じていたからだ。

たかが一個人。

たかが数十人に害されるなどと疑いもしていなかった。

彼がこの世に生を受けての十数年、彼を脅かす者など存在してはいなかったのだから当然だ。

 

緑谷を超える筋力に轟を超える制圧力に爆豪を超える火力に青山を超える貫通力に切島を超える防御力。

己が身に宿す怪物が、この超人世紀ですら許容できない異質だとわかっていた。

 

ゴジラという人類には重過ぎる力を背負い生きていた彼にとって敵とはそういうものだったのだ。

 

それが瓦解した。

 

『個性』という武器は自身を害し、時にはこの身を砕き得ると学習した。

 

だから進化した。

 

外敵から己が身を守る為に。

 

 

 

 

 

「死柄木、危ない!!」

 

その声と同時に、死柄木は空間を歪曲させられ放り出される。

間一髪、命を助けられ視線を上げると、そこにいるのは全身を赤く変質した光に覆われた神。

そして彼を彩るように抉れ、蒸発し、煙を上げるコンクリート。

まるで力ずくで線を引いたように彼とそれ以外を隔てる力。

 

「バリア?」

 

生徒が呟く。

もうヒーローだとかヴィランだとかは考えていられなかった。

 

今の防護は、完全に殺す気で放たれたものだ。

黒霧が咄嗟に引き戻さなかったら、アレに巻き込まれ蒸発することなど疑いようがない。

そう。

 

端的に言って、彼は正気を失っていた。

判断がつかないのか、意識がないのかはわからなくともその事実が彼等の選択肢を奪う。

 

もしかしたら今の彼には、敵味方の区別がついていないかもしれない。

もしかしたら、彼は狂ってしまったのかもしれない。

もしかしたら、彼はもう死んでしまったのかもしれない。

 

現実感のない光景が彼等に行動を許さない。

 

いつ暴発してもおかしくない兵器を前に動くことができない。

 

ずしん、と神が一歩を踏み出す。

どこを見て、何を考えているかもわからない瞳で歩き出す。

15メートル程に巨大化した身体を揺すり、尻尾を天に掲げながら歩みだす。

 

「お、おい!?神!?神呉璽羅!?」

 

聞いているのかいないのか、相澤の言葉を無視しながら呉璽羅は歩みを止めない。

木をへし折り、コンクリートを砕き、USJの壁を打ち壊し、街を目指そうとしたところに彼は現れた。

 

「あぁ、もう大丈夫――

 

ネクタイを緩め、巌のような身体で拳を固める。

 

――何故かって?」

 

見るものを安心させる余裕を見せて、正面から相対する。

 

「私が来た」

 

平和の象徴は、怪獣王の前に姿を現した。




・神呉璽羅

個性『シン・ゴジラ』→ゴジラ
生まれた時から溜め込んだエネルギーを放出した御陰か身体が軽い。もう何も怖くない。

・緑谷

クラスメイトが頭を砕かれたと思ったら巨大化していた
な…何を言っているのかわからねーと思うが僕も何をしてたのか わからなかった…頭がどうにかなりそうだった…
超再生だとか衝撃吸収だとかそんなチャチなもんじゃあ 断じてねえ
もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ…

・八百万百

『圧倒的力』に対する信頼→『圧倒的力』に対する信仰

・相澤先生

俺の生徒は人間なのか………

・死柄木

話が違うぞ先生!!!

・黒霧

ちょとsyレならんしょこれは

・他生徒

頭砕かれてピンピンしてるとかこっわ!近寄らんとこ……

・モブヴィラン①

ホームランされて死にそう

・モブヴィラン②

もうヴィラン辞める!!


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