私、丸山彩は悩んでいた。
部屋にはまだ誰も来ておらず集合時間には余裕がある。
そして部屋には誰もいない。今なら止める人は誰もいない。
そう…エゴサーチをするかしないかで。だ。
同じグループで長年この世界にいる彼女はあんまりするべきじゃない。とは言うがやっぱり気になってしまう。
「でも…悪いことばっかり書かれてたらどうしよう…。うーん…。」
一番最初の頃は大変で、彼女達は本番でやってはいけないことをしてしまった。ヤラセだ。あれからグループも改善されて今ではあんなヤラセなんてない。今は正真正銘全て本物だ。人気も出てきてテレビにも出てる。最近だったら無人島にサバイバルにまで行った。そのときに見たエゴサーチはアドリブ下手とか書かれてたけど一生懸命だ。って褒めてくれる人も多かった。そして今日は新曲のCD発売日だった。
「…でもやっぱり気になるから…少しだけ‼」
某掲示板にてパスパレ新曲の感想
「テンポ早くてノリやすかった。現在リピートナウ。」
「歌ってる本人たちも楽しそうに歌ってるのが目に見えてくるから好き。」
「これ聞きながらなら無人島生き残れる気がした。」
「↑それはやばいwww」
「でも実際それくらいテンション上がるよな。最初は終わったな。って思ったけど持ち直したし。」
「ほんとそれ。」
「…良かったぁぁ…。」
調べたところ買ってくれた人の評判は良好のようだ。これで安心して今日を眠れる。評判を見ながら少し恥ずかしくなって照れながら下にスクロールしているとおすすめ記事に見逃すわけには行かないものが見えた。
「パスパレの今後の課題…?」
それは掲示板を利用する人達が今後の課題を冗談ではなく真剣に考えて話していたらしい。
「…覗いてみよう…。………‼」
それから数分後パスパレの他のメンバーが集まってきた。
「おはようございます!」
「おっはよー!」
「おはようございます…。」
「おはよう。ってあら?誰もいないのかしら?」
「おかしいですね。彩さんのことだから先に来てると思ってたんですが…。」
「エゴサーチして一人で騒いだり落ち込んだりして大忙しなんだろう。って話してたのにね。」
「…あの…皆さん…。」
「どうしたの?イヴちゃん。」
「あそこで蹲ってるのってアヤさんではないでしょうか…。」
若宮イヴが指を指す方向には部屋の隅で蹲り誰から見ても落ち込んでいる。といった雰囲気を出していた。
「あ、彩ちゃん…?ど、どうしたの?」
「…?あ、皆…おはよー…。」
「彩さん!?どうしたんですか!?何があったんですか!?」
「アヤさん!しっかりしてください!」
丸山彩は彼女達を見ても軽く挨拶だけして落ち込んでいた。普段なら泣きついてくるのが鉄板なのにそれすらない。つまりかなり落ち込んでしまっているということだ。そしてその理由は十中八九。
「彩ちゃん…エゴサーチしたのね?」
「…うん。」
「やーっぱりしてたんだね。それで?そこで何を見たのー?」
「……これ…。」
そう言って彼女達に彩は自分の携帯を渡してきた。そこに書かれていたのは【パスパレの今後の課題】だった。
そこにはメディアへの売り込みとかトーク力だったり、彼女達の演奏技術の向上など建設的な意見が多く見受けられた。中でも特に多かったのは、【丸山彩の歌唱力】に対する意見がほぼ半数を占めていた。当然他のメンバーへの演奏技術だったりの意見もあったがそれ以上に丸山彩の歌唱力への意見が多すぎた。
「で、でもこの掲示板だけ彩さんへの意見が集中した。って可能性だってあるわけですしそんなに落ち込まなくても!」
「…ううん…私も最初そう思って他の掲示板も見たんだよ…それより少なくてもそれでも全体の3分の1は私の歌唱力…だったんだよ…。」
これを見て白鷺千聖は少し考え込む。一長一短で身に付くものではないとはいえ、ここまで多く同じ意見が出てくると精神的に来るところがあるんだろう。彼ならもっと的確な意見を言えるのだろうけどここに彼はいない。自分がなんとかしないといけないとわかっているのに、彼に負担をかけてはいけないとわかっているのに。彼に頼ってしまいそうな問題だった。
「…私、そんなに歌唱力ないのかな…。」
「別にジブンはそんなことないと思いますが…。」
「あ!でもこの中だと千聖ちゃんすごい褒められてるよ?」
氷川日菜が掲示板をスクロールしながら見てたらしくその中では褒められているらしい。
「えっと…『千聖ちゃん女優業もやりながらなのに演奏技術はプロ顔負けレベルまで仕上がりを見せてきている。最近もさらにメキメキと力をつけているのがとてもすごい。それこそ本当にプロがバックで演奏してるんじゃないか。って思えるくらいに。』だそうです!チサトさん凄いです!」
「確かに…千聖さんの演奏技術はドンドンレベルアップしてますよね。何か特訓方法とかあるんですか?」
「確かに…千聖ちゃん!何かレッスンのときに気をつけてる事とか何かあったらおしえて!」
…千聖は一人でここまで上手くなったんじゃない。ここに至るまで彼が話を聞いてくれたからだった。だからこそ悩む彼女を彼に会わせるべきか。彼に会えばおそらく彼女もきっと今よりもっと上手くなれる。そして彼は会ってみたい。とは言ってくれた。でも彼女達が彼を受け入れてくれるかは別問題だった。そして受け入れてくれなければ千聖はきっとこのバンドから脱退してしまう。だから会わせるか悩んでしまっている。
「……私は一人でここまで上手くなったわけじゃないわ。」
「…え?」
「千聖ちゃんどーゆうこと?」
「…私の知り合いに一人とても音楽が得意な人がいるの。その人に教わったのよ。」
「その人ってそんなに音楽が得意なのー?」
「えぇ。音楽だけは、いえ音に関する全ての事で右に出るものを見たことないわ。当然歌も…。」
「…‼…千聖ちゃんその人に…。」
「ダメよ。彼は会えるなら会ってみたいとは言ってくれるけれど、彩ちゃん達が彼を受け入れてくれるとは思えない。」
「もし…私達が受け入れることができなかったら?」
「…私はきっとパスパレを脱退してしまうわ。」
「「「⁉」」」
「それくらい彼のことを大切に思っている。ということよ。」
「ねぇ、千聖ちゃん。」
「?何かしら日菜ちゃん。」
「そんなにあたし達って信用できない?」
「え?」
「千聖ちゃんが大好きなものをあたし達が受け入れられないと思う?」
「だ、大好きだなんて…そんな…。」
「千聖ちゃん?」
「!な、何でもないわ。でも、そうよね。わかったわ。なら行きましょう。」
「え!?確認とか取らないんですか!?」
「必要ないわ。彼なら今日はずっと家にいるわ。彼は一人で出かけることはないから。」
そう言って千聖は部屋を出ていく。その後ろに慌てて他のメンバーもついていく形になっていた。
事務所から10数分歩いた所に彼の住む家がある。玄関に付けば千聖は鞄からおもむろに鍵を取り出し当たり前のようにドアを開け中へ入る。その後ろに続いて他のメンバーも入っていく。
「葵、入るわよ。」
「どーぞー。というかーもう入ってるでしょー?」
「それもそうね。そんなことより話があるの。」
「みたいだねー。いつもより人が多いもんねー。」
部屋の電気もついていない部屋で静かにのんびりとした口調で話す男がいた。この男こそ千聖に様々な技術を教えた張本人だった。
「千聖ー部屋の電気つけたげてー?」
「そうね。今つけるわ。」
「さてさて、よーこそー僕の家にー。君たちははじめましてかなー?」
360度回転する椅子を回しこちらの方に振り返り彼は微笑んだ。
感想が来たら舞います。きっとアンチが来ても舞います。
「どっちにしろ嬉しいんでしょー?」
そのとおり!
「ハイハイさっさと行くよー?」
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プロローグ②
からの難産。大変お待たせして申し訳ないです。
そして最初に一つ…主の国語力はゴミ箱に捨てました。ので皆さんが期待しているような展開になるかは…ぶっちゃけわかりません。と言うか多分なりません。
がそれでもよろしければお願いします。
最後に誤字脱字はきっとある。
黒く綺麗な髪。とても綺麗な白い肌。透き通るようなソプラノ。この3つだけでも街を歩けば殆どの人が一度は振り返るだろう綺麗なな人。だからこそ、それにとても目が行く。
両目を覆うように付けられた白い包帯が彼の視界を奪っている。
「あの!…えっと…。」
代表してイヴが話を切り出そうとしたがなんと言えばいいのかわからずしどろもどろしている。
「んー?あぁ。これのことかなー?」
彼は白い包帯を軽く弄りながら真面目な声色で話しだす。
「目がね。見えないんだよ。もうほんの微かな光すら、もう僕の目には映らないんだよ。」
「……‼」
目が見えない。それは彼女たちにとって想像すらできないことだろう。目を閉じれば光が見える。でも彼はそれすら見ることがない。というのだ。
「…す、すみません…。」
「いやいや、謝らないで?最初は不便だったけど慣れたら見えなくてもできることだらけだからさ。」
そう言って彼は少し困ったように微笑んだ。
「まぁ、確かにお客さん達が来たのに直接顔を見ることなんてもうできないっていうのは寂しいことだけどね。」
「…葵…。」
彼のその言葉に、千聖はとても悲しそうな顔をする。一番共にいるはずの彼女の姿を、彼はもう二度と目にすることができないのだから。
そんなことを尻目に彼は先程までの真面目な雰囲気を消し飛ばし、ふにゃりと笑いながら話し出す。
「さてさて〜、そろそろ自己紹介しながら〜ここに来た目的を聞こーかな〜。」
その声は先程までよりもずっと楽しそうで、ずっとゆったりとしていた。
「僕の名前は桜木葵だよ〜。うちの千聖がお世話になってます〜。」
よろしくね〜。とのびのびと話しながら手を伸ばす。握手を求めてるんだと気づいた丸山彩は手を伸ばす。
「ま、丸山彩です…。」
その手に触れた直後、葵はその手を握り引き込む。当然力なんて入れていない彼女は彼にもたれかかってしまう。
「あ、彩さん!?」
「アヤさん!大丈夫ですか!?」
「えっえぇ!?」
周りの外野の言葉を無視し、彼はそのままジタバタともがく彼女を抱き寄せる。
それは彼にとって大事なことであり、どういう人なのか。どういう子なのかを知るのにピッタリだった。
「…うん。ありがと〜。」
そう言って彼は彼女を解放する。
何が起こったのかわからない丸山彩はまだ頭に少し疑問符を浮かべている。
「ただのスキンシップだよー。話すだけじゃなくてその人に直に触れたほうがわかることはたくさんあるからねー。驚かせてゴメンねー?」
そう言って彼はまたクスリと笑いながら宣言する。
「できれば残りの人もやっておきたいなー?目で見ることはできないから何事も直に感じるしかなくてねー。」
「葵、その辺にしなさい?」
「…うん、もう満足〜。」
全員と自己紹介と共に軽く触れ合った後、彼はそう言いだす。
「さてさて、遊ぶのはこの辺にしよっか〜。それで〜?きょーはどうしたのかな〜?」
「葵、貴方にお願いがあるの。」
「…へぇ〜?めずらしーねー?」
実際、千聖が葵に頼みをするのは両手で数えれる程度であり、更に彼女の親友以外の友人も連れてくるなんてことが今までになかったから驚きなのだ。
「彩ちゃんの歌を聞いてあげてほしいの。」
「……ほぇ?」
「え?」
「いや〜少し驚いちゃった〜。そんなのでいいのー?」
本当にどうしたのだろうかと葵は考える。目の前にいるであろう千聖は自分がより高みに歩む為に自分を利用する。その彼女が誰かの為に動いたのが驚きだった。ここで彼女を育てたらこの先いつか敵になった時、それは大きな壁になるかも知れないのに。
「えぇ。だめかしら?」
「…変わったね。千聖。」
「葵?何か言った?」
「いーやー?うん、そのくらいで良いなら全然引き受けるよー。」
「えぇ。ありがとう。今日は楽器とか持ってきてないから動画のやつでもいいかしら?今日の練習終わりに撮ったやつだけど。」
「全然いーよー。それじゃ聞かせてー?」
千聖は携帯の動画を見せながら葵はそれを楽しそうに聞いている。それを見ながら周りの彼女たちは神妙な顔付きで見つめていた。
「…うん。なるほどねー。えーっと丸山さん?」
「あ、彩でいいですよ!」
「そう?それじゃ彩〜。これを言うのは残酷かもしれないけど…。」
そう前置きをおいて彼は一言一句聞き逃すことがないようにゆっくりと話し出す。
「今の彩に、これからの彩のアイドル活動の、いや、このバンドの未来はない。」
「え…?」
「いや、言い方を変えよう。そのままだと君は、自分が、アイドルの丸山彩が嫌いになる。」
「な、なんで……。」
「理由?もう知ってるはずだよ?そのためにここに来たんだろうけど。それは私がどうこうする問題じゃない。彩は、自分を見失ってるだけだよ。」
そう言って感想を述べた後千聖に携帯を返し微笑んだ。
「別にすぐ手を打たないといけないわけじゃないからさ〜彩は自分を一度見直して見るといいよ〜。そしたらまたおいで〜?」
きょーはもーおそいから帰りなー。と彼は帰宅を進め彼女達は玄関へと歩いていく。
「千聖。」
「葵?」
「彼女を支えてあげて?これはきっと、千聖が一番知ってるから。」
「……?わかったわ。それじゃまた明日。」
「はーい。」
誰もいなくなった部屋で彼は小さくポツリと呟く。
「彩、君は一番大切なものを見失ってるんだよ。それなしで観客を楽しませることなんてできないんだよ。」
誰に向けたわけでもない言葉は虚空へと消えていった。
ふと気がついた。前より少ないですね。さぁプロローグは終わりだ。さぁ、後一つバンドをだそう。というか出さないとどうしても説明ができないんだ。
感想等ぜひともお待ちしております(^q^)
あ、次の展開予想とかも皆様お暇でしたら是非是非。葵が何を思ってそう言ったのか。とか考えて見るとわかるかもしれません。が、きっとそれを作中で出すのはきっと後。イベントを走らないとダメなんです(^q^)
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