バカとオーズと七人の女神 (オーズ・ジャニケル3)
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バカとメダルと王の戦士

お試し版です。もう一つがプロットが消え四苦八苦しています。
鎧武を見てからそちらと合体するかも知れません、多分。


文月町『鴻上美術館』。

既に時刻は夜を回って、人々は寝静まっている。そんな中、二つのライトが美術館の絵画を照らす。

この美術館は当に閉まっている筈なのに何故?

答えは簡単であり、彼らは美術館の警備員としてバイトをしているからだ。

世の中は単純なもので、疑う心をあまり持たない文月町では、彼らの正体を知らず雇ってしまった。

ライトが上下左右と辺りを照らしていると、片方の警備員が不安げに声を漏らす。

 

「あ、兄貴、本当にあるんすか?見つかったら俺達」

「馬鹿野郎!見つからない為の警備員だろうが。それに、俺達の目的は此処にあるんだぞ?」

「そ、それはそうすけど……」

 

でもなあ……と低い姿勢でキョロキョロする後輩にため息を漏らす。

アルバイトなど自分が目指す泥棒の柄じゃない。

それでも、彼はそれを堪えてまでも盗みたいものがあった。

――欲望のままに

ライトの灯りを頼りに進んで行く内数分、目的地である扉の前へ無事辿り着いた。

 

「先輩!やりましたね!」

「ま、俺達にかかればこんなもん訳ないさ。それよりマツ、お前は此処で見張ってろ」

「ラジャっす!」

「よし」

 

マツを残して扉を開く泥棒のプロこと『武藤治』。

ゆっくりと開かれた立ち入り禁止部屋に警戒しながら入って行く。

彼の目の前には無数の銀色のメダルが溢れていた。噂に聞いた通りだとニヤリと口の端を上げる治。

その場にしゃがみこみ、銀色のメダルにライトを照らす。

 

「……へへ、これだこれだ。海外で見つかったと言われる埋蔵金。これさえ売り飛ばせば俺達は大金持ちだ」

 

あまり長居をしていても夜が明けられたら困る。

治は持参した大きな鞄にメダルを次々と入れて行く。

 

「ん?何だありゃ」

 

銀色のメダルが溢れている中、奥の方に正方形の宝箱のような古びた箱が置いてある。

中に何かある、いや、もしかしたらもっと凄いものが!

治は鞄を投げ出し、その箱へ向かって行く。

いや、まるで惹かれるように誘われるように、箱へと。

 

『……ぉお、復活……欲望』

 

ズズズと徐々に押し出されて行く蓋。

古風の錆びた音が部屋に響き、中身が現れて行く。

……欲望、欲望。

まるで何かに取り憑かれたようにぶつぶつ呟き、遂には蓋が床に落下し、カラカラと左右に揺れた。

そして、開けてはならない欲望の象徴が姿を現す。

床や治の鞄から無数の『セルメダル』が空中に舞う『コアメダル』へと集中し、人の姿へと変わって行った。

いや、人では無く、その姿は……

 

「あ、あれ?俺は何を」

《礼を言うぞ、褒美を受け取れ》

「あ、あああ、うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!?」

「先輩!?どうし……うぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」

 

二つの血しぶきが天井を真っ赤に染めていく。

この世に解きはなれたのは人よりも恐ろしい存在。

この世に出ることはなかった筈の存在。

 

「ほう、知らない内にこの世界もすっかり変わったものじゃな」

「スガタガチガウ」

「確かに、力不足ですわね……」

「まあいい、とりあえずは復活出来たのだからな」

 

人の形をしていたメダルの塊はその姿を変え、異形となる。

だがその姿も力も不完全。

四人の化物は美術館の壁を破壊し、外へと出ていく。が、其処には既に黒いバイクに跨った男性が銃を構えていた。

銃から弾丸が異形に飛び、火花を散らす。異形は微動だにしない。

男性はトランシーバーのような物で連絡を取る。

 

「予定道理グリード覚醒。次の指示をお願いします」

『殲滅』

「了解」

 

 

――始まってしまった。

異変を感じ取り、遠くを眺める少女。

自分がこの地に蘇り分かってはいた。

まさか、まだ集まっていない時に。

少女は小さな拳を握りしめ、決意したように唇を噛みしめた。

 

「アストレ。この世界でも始まるようです。人とグリードの世界が」

 

見つけなくてはならない。

この世界の運命を左右する力を。

少女は赤いメダルを握りしめ、『失われたメダル』を探すべくその場から去って行く。

 

 

 

 

 

鴻上ファウンデーションは文月町の中でもトップクラスの成績を誇る会社であり、裏ではコアメダル、グリードなどを研究している。

その会長である鴻上は、グリードの復活を予期し、そしてコアメダルの謎さえも知っている謎多き人物。

ビルの最上階から聞こえる高らかな声は鴻上のものだ。

秘書である里中はソファーに座ったまま、ノートパソコンをしげしげと眺めてから一言。

 

「ライドベンダー隊は全滅。コアメダル覚醒を阻止することは出来なかったようです」

「そうか、だが、彼らの復活はそう残念なものでも無いようだ」

「と言うと?」

「里中君。この世の全てのものには誕生があるのだよ。素晴らしいいい!!!彼らの誕生もまた、世界にとって大きな影響を与えるだろう!」

 

鴻上は古いレコードを回し、先ほどまで作っていたケーキのデコレーションへとかかかる。

レコードからは誕生日を祝うあの曲が、アルトの声で部屋中に響いている。

里中は鴻上から視線を離すと、何事も無いかのように再びパソコンへと視線が戻る。

 

《HAPPYbirthdaytoyou、、HAPPYbirthdaytoyou、HAPPYbirthday、HAPPYbirthday》

「ラララ~ララ――」

 

流れる曲に合わせ愉快に歌い始める鴻上。

丁寧にホイップクリームを絞り、周りのデコレーションが完成。チョコクリームで真ん中に文字を刻む。

 

《HAPPYbirthdayディア――》

 

「グリーーード」

 

「《HAPPYbirthdaytoyou~~~!!!」

 

祝おうじゃないか。

この素晴らしい日を。

グリードという名の欲望の化身の誕生を。

HAPPYbirthday!!!HAHAHAHA!!素晴らしいいい!!!

 

 

 

吉井明久は文月学園に在学中の二年生Fクラス。

振り分け試験によって区別されたFクラスはAクラスと違って、最低辺のクラス。まさに最下位、馬鹿が集まったクラスとも言える。

吉井明久はFクラスの中でも群を抜くキングオブバカであり、またを観察処分者。

彼は友達の為、そして設備を手に入れ、平穏な暮らしをする為、悪友の坂本雄二と共に打倒Aクラスを目指していた……のだが……。

そのAクラスについ昨日、敗北したばかりである。主に明久、雄二の努力不足でもあるが。

 

「……やっぱり昨日の映画が響いたなあ。……食費が益々減って行くよ」

 

財布を覗けば、目を離したくなる現実に吉井明久はうなだれていた。

これではプレンシュガー所かハードボイルドにコーヒーも飲めない。

明久は財布をしまうと、重い足取りで街を歩く。

 

「……不味いな、バイトを探さないと今日は砂糖を水に溶かして食べないとならないぞ」

 

正しくは飲むだが……、砂糖に水は自爆行為でもあるのでみんな真似しないでね☆

と、まあそんなことを考える程追いつめられている明久はバイトを探して食費を稼ぐべく今日は出掛けた。

 

「探すにしてもなるべく時給が高い場所じゃないと……、今週は話題のPNPから恋愛ゲームも出るしね!」

 

明久の脳内では、ゲーム>食費…、詳しく言えばギャルゲー>食費という残念な頭になっている。

おい、食費はどうした明久。

 

「それにしても……休日だからかな?カップルが多い……」

 

周りを見渡せば、いちゃいちゃしているカップルがちらほら見られる。

明久は現在恋人が居ない(モテる癖に鈍感だから)。昨日の姫路達との映画も彼の中では食費減少のイベントだと思ってるだろう。ついでにお婿さんに行けなくなったが。

「やっぱり僕らの年代って恋愛が多いのかな。そりゃ、僕だって……恋人欲しいけどさ」

 

言ってて悲しくなって来た明久はさっさとその場から去る。

大体バイトを探しに今日は来た訳で、カップルに無駄な嫉妬を抱いた所で虚しくなるだけだ。

噴水を外れ、角が見える。

確か、この奥におすすめのバイト場所があると秀吉から聞いたのだ。実際、同じクラスの親友、木下秀吉も働いているらしく、明久は紹介して貰っている。

だが、自分に合うかは分からない。

 

「ま、一応候補の一つなんだし……それに秀吉が働いているなら行くしか無いじゃないかー!ん?……!」

「きゃ!?」

「ぶっ!?」

 

先ほどまでの暗いテンションは何処へやら。

明久はスキップをしながら角を曲がろうとすると、何かにぶつかった衝撃で後ろに倒れた。

 

「痛たた……あ!大丈夫?」

「……っ」

 

頭を押さえながらぶつかった相手に手を差し出す明久。

目じりに涙を溜めている赤い瞳とぶつかった。

……女の子。

見た目からして同年代……。

しかも、かなりの美少女だ。

 

「…………」

「……何じろじろ見ているんです?」

「あっ、えと……いや、これは別にやましいとかぶげら!?」

「近づかないで下さい」

 

会って一分も経たない内に明久は相手から鳩尾にパンチを喰らった。ある意味で凄い事だが、色々と理不尽だ。

美少女は肩にかかった金色の髪を払い、くるりと背を向ける。

 

「ち、ちょっと待ってよ!」

「……私とあなたにまだ接点があるとでも?」

「え、接点?いや、僕はただ、ぶつかってしまったし……怪我は無いかなって」

「お人好しですね。馬鹿ですか?」

「ついに初めて出会った人からも馬鹿って言われたああああ!?」

 

ガクリと膝を付く明久。

shockと言う単語が明久の頭に落下し、頭を抱え込む。

身内からも馬鹿って言われてるのか……、少女は、はあと小さくため息をつくと明久に近寄り、手のひらに飴を置いた。

 

「強く生きるんですよ?」

「絶対馬鹿にしてるだろぉおお!?」

「まさか」

「……顔が笑ってますよ?」

「うるさい!」

「ごふ!?」

 

アッパーカットが綺麗に決まり、明久はノックダウンするように地面へ倒れた。

ふん、鼻を鳴らしながら再び背を向ける少女。

涙を流している明久を置いて、そのまま街中へと消えて行った。

 

「うう、……なして~……」

 

出会って五分も経たない内に見知らぬ相手を怒らせる。

ある意味で明久は凄かった。悪い意味で。

悪気なんて無いのにと呟き、トボトボ歩き出す。

と、何かにコツンとぶつかり、ふと、足元を見ると、小銭のように音を立てながら転がって行く。

 

「もしかしてさっきの娘が落としたのかな?とにかく、追いかけないと!」

 

……案の定、明久の読み通り、明久が落とし物を追いかけているとは知らず、持ち物が無くなっていた事に気づいた少女は慌てていた。

 

「うう、あの時落としたんだわ…、あ……もしかしたらあの男が!」

 

踵を返し、少女は街中から再び彼と接触した場所へと走って行く。

しかし、その場所には既に明久は居ないのだが……。

落とし物を追いかける明久を追いかける少女。追う側と追われる側……。明久は見事に中間に属している。

 

「……あの男、……どうしてくれましょう」

 

正し、明久は命の危機を表している。

少女から燃やしてやろうと言いたいが如く光が真っ赤な瞳から発していた。

が、すぐに首を振り、少女は自分のミスに大きくため息を吐いた。

すこし重い足取りは明久の方へと向かう。

 

 

 

「う、何か悪寒が」

 

明久は一度身震いをしてから、さっき拾ったメダルを透かすように眺める。

真っ赤なメダルには鷹の絵が彫られている。

奇麗かつ謎の魅力が伝わってくる。

そう、惹かれる何かが。

 

「見たことの無いコインだな、外国のお金かな?」

 

だとしたら早く届けなくちゃ、あの性格だ。

明久はメダルを握りしめ、もと来た道へと戻っていく。

わずかに汗が額に滲み、焦りが募る。

 

「早く返さなきゃ殺される!!」

「どういう思考回路しているんです」

「でたああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!?ぐぺ!?」

「どういう意味です!?」

「うう、は、腹が」

 

ナイススクリューパンチを腹部に受け、明久はよろよろと膝を付く。

あ、やばい。これは本当に殺される。

こういう場合は、美波との恒例イベントで得た方法で。

 

「楽にお願いします」

「……はあ」

「溜息つかれた!?何で!?」

「本当に馬鹿ですね。あなた」

「やめて!!これ以上苦しめないでえええ!」

 

体をくねくねしながら悶える明久。

少女の口端が自然と上がった。

面白い人……。

 

「うう、そうだ。はい」

「あ」

 

明久は少女にメダルを渡し、ニッコリとほほ笑んだ。

元々これを返してもらう予定が、彼の馬鹿さについ所要を忘れかけていた。

明久もこれを返す予定だったのだが、勝手に自爆。

が、お互いに悪人じゃないのは確かのようで、互いに警戒心を解く。

 

「僕は吉井明久」

「シエルです」

「そっか、よろしくねシエルちゃん」

「あのちゃ、ちゃん付けはちょっと」

「うーん、じゃあ馴れ馴れしいけどシエルで」

「馴れ馴れしいですね。殴りますよ?」

「ごめんなさい」

 

即座に土下座の姿勢をとる明久。

おい、お前にはプライド無いんかい。

シエルはクスリと微笑み、明久の鼓動が跳ねた。

 

「冗談です。吉井さん」

「……」

「吉井さん?」

「あ、いや、えと、シエルって「伏せて!!」むぐ!?」

 

シエルの叫び声と同時に明久は地面に倒れていた。

困惑する中分かることは一つ。

明久の顔に乗っかっている二つの禁断の果実がマシュマロのように柔らかいことだ。

 

「ふぐ!?」

「大丈夫ですか吉井さん?」

「ぷはっ、うん、色々と大丈夫じゃないかな」

「?、……それよりも」

「え?……!!」

 

絶句するしかない。

きっと何かのショーじゃないと思ってしまいそうだ。

だが、現に、現に、そこにいる。

そう、あれはまさに

 

「変態だあああああああ!?黄緑のコスプレっぽい変態がいるうううう」

「馬鹿!逃げて!!」

『誰が』

「ゑ?うわああああ!!」

『誰が変態だああああ!!』

 

黄緑の怪物は明久に目掛け腕の鎌から斬光を飛ばし、明久はギリギリ横へ避ける。

先ほど立っていたアスファルトの地面が一瞬にして真っ二つに裂けていた。

呆然と立ちつくす明久に、怪物〔カマキリヤミー〕が飛び掛っていく。

 

「何だよ、これ」

「危ない!!」

『ぬうう!?』 

「……シエル!?」

 

目の前まで迫っていたカマキリヤミーが赤い火の弾丸に弾き飛ばされ、我に返った明久。

後ろを振り返ると、右腕が鳥の翼が生えた赤いに変わっていたシエルが苦しそうに顔を歪めていた。煙が出ている、漕げすら見え、痛々しい。

 

「シエル?」

「逃げてください!」

「そんな!?君はどうするんだよ!」

「……私は見ての通りです。大丈夫、使命を果たすまでは、うう」

「その怪我じゃ無理だよ……」

 

明久にも分かる。

彼女に不思議な力があっても、負傷した腕じゃ、いずれ。

こんなの、認めるか。

拳を強く握り締め、明久は近くに転がっていた折れたパイプを掴み、シエルの前に立つ。

 

『何だ貴様』

「こいよ、僕が相手だ」

「駄目!!生身の人間が適う相手じゃ」

「そんなのやってみないと分からないだろ!!うおおおおおお」

 

カマキリヤミーへ向かって走り出す明久。

飛んでくる斬光の動きを読み取ってステップを踏みつつ、カマキリヤミーの懐へと入る。

驚くカマキリヤミーをよそに明久はパイプを思い切り振り下ろす。

パキャッ。

パイプだけが二つに折れ、体が宙を舞っていた。

 

「ぐわ!!」

『雑魚が邪魔をするな。シエル、メダルを渡せ』

「まだまだああ!!」

『うざい』

「がふ!?」

 

ハイキックを受け止め、回転を掛けながら明久を投げ飛ばし、フェンスへ体を打ちつける。

シエルが慌てて駆け寄ると、明久は尚も立ち向かおうとしている。

何故?

何故そこまでするの?

 

「まだまだ……」

「吉井さん、どうして其処まで……だってあなたには」

「関係あるよ」

「え?」

「だって、シエルは今日であった長い付き合いだし」

 

ニッと微笑む明久。

……そうか、彼は馬鹿じゃなくて。

どうしようもない。

反論のしようがない大馬鹿なんだ。

彼になら……いやか彼にしか。

 

「吉井さん。助かる方法がひとつだけあります」

「ホント!?」

「ただし、多少のr「それなら早く言ってよ!」人の話を、言ったって無駄か」

 

シエルは明久に正方形状の石を腰の部位に当て、一瞬にしてベルトへと変わる。

三つの穴。青い色をしたそれに驚き慌てて立ち上がる明久に追いかけてきたカマキリヤミーが驚く。

「封印の」とか「ただでは」など言っているがガン無視。

 

「その三つの穴にこのメダルを填めてください。力が手にはいります」

「タカ、トラにバッタか」

「へ?ま、待ってください!順番が違います!」

「え?じゃあ、こう?」

「違います!!どうしてバッタが一番右何です?」

 

バッタ、タカ、トラ……確かに填めろと言われたが、これは色んな意味で不味い。

いや、力すら手に入らない、うん。

タカ、バッタ、トラと填めた明久にパンチをかまし、ため息をつく。

 

「明久さんレベルに合わせない私が馬鹿でした。右からタカ、トラ、バッタです」

「さりげなく罵倒してない!?……まあいいや、はあ、どうして僕は巻き込まれるんだろうね」

 

ニヤリと笑い、高くメダルを弾く。

その間に、トラ、バッタを填め、落下してきたタカをキャッチすると、勢いのまま穴へ填め、三つの穴が埋まった。

シエルはベルトの腰の右側に付いていた円状のスキャナーを取り外し、明久に手渡す。

 

「これでメダルをスキャンしてください」

「……よし」

『やめろ!!』

 

言われるままにスキャナーで読み込む。

そしてお決まりの――

 

          「変身」

 

<タカ!トラ!バッタ!>

<タ・ト・バ!タトバ!タ・ト・バ!>

 

明久の周りを回っていたメダルから頭、体、足とベルトに填めたメダルの紋章が現れる。

それらは重なり合い、一つのサークルになり明久の体に刻まれる。

奇妙な歌が流れ終えた時には、明久の姿は黒いつなぎに先ほどのサークルが胸に、赤い頭部、爪のある腕、緑のラインが入った足。

三つのメダルから異なる姿に変わる戦士、仮面ライダーへ変身していた。

 

「うわ!?なんだこれ、タカ、トラ、バッタって」

「歌は気にしないでね☆こほん、それはオーズ。どれほどのものかは……」

『キエエエ!!』

「戦ってみれば分かります」

「ちょ!?っ」

 

両腕をクロスし、カマキリヤミーの鎌を防ぐ。

オーズはカマキリヤミーの鎌を押し返し、右腕で顔面を殴りつけ、怯んだ所へ左で殴る。

カマキリヤミーは唸りながら下がり、オーズは右腕のクローを展開し、鋭利な爪が真下からカマキリヤミーを切り裂き、吹き飛ばす。

 

「すごい!体の中に力が溜まってくるーー!!」

 

溢れんばかりの力に驚きながらも、オーズは自分のマスクや体をペタペタと触る。

この姿、このパワー……最高だ!

タカアイでカマキリヤミーの動きを読み、鎌を受け止め、回し蹴りを脇腹に打ち、のぞけった所へ、拳を下から振り上げアッパーが決まる。

 

『く、調子にぐあ!!』

「は!っしゃああ! 」

 

オーズの蹴りの攻撃の猛襲に悶えるカマキリヤミー。

ベルトから緑のラインドライブが足に吸収され、オーズはバッタのように瞬発的に跳びながら、連続でカマキリヤミーを痛撃。

カマキリヤミーの体から、セルメダルが零れ落ちた。

 

「よっと。うわあ、すごいやこれ!」

『メダルを渡せええええ』

「わ、ぐ!がっ…… 」

 

カマキリヤミーは鎌で斬り掛り、横に避けたオーズの腹部を蹴り込み、怯んだ瞬間に鎌を何回も振り回し、ダメージを負ったオーズは火花を散らしながら吹き飛ぶ。

地面を転がり、倒れたオーズの体にバリバリと雷が走り、トラメダルが地面へと落ちた。

 

「な、なんだ?」

「相性が悪いですね……吉井さん真ん中をこれに変えてください!」

『!!、シエル、メダルを「邪魔」ぐお!」

「えっと、確か」

 

カマキリヤミーカマキリヤミーを蹴飛ばし、シエルから投げ渡されたメダルを真中に填める。

ベルトを傾け、スキャナーで読み込むと、体の部位が緑色のカマキリアームに変化する。

 

<タカ!カマキリ!バッタ!>

「わ、これってソード?」

『メダルを』

「よし、行くぞ!!」

 

カマキリアームから形成された二つのソードを構え走り出す。

FFF団や鉄人との死をかけた戦争に幾度となく勝ち残ったバトルセンスと磨かれた身体能力も含め、オーズは飛んでくる斬光を次々と弾き、かわし、ヤミーの懐へ入り、高速でソードを切りつけ、火花が散っていく。

反撃の隙を与えないスピードにシエルもポカーンとしている。

 

「りゃあああ!」

『ぬぐあ、うう』

「これで、どうだ!」

『ぐああああああああ!!』

 

オーズの振り下ろした一撃にカマキリヤミーは耐え切れずに吹き飛ばされる。

オーズはすぐに距離を詰め、カマキリアームに力を溜め、高く跳びあがった。

 

「だっしゃああああ!!」

『ぬ、ああああああああ!?』

 

ゆっくり立ち上がるカマキリヤミーの目の前に現れたオーズ。

カマキリアームでクロスするように切り裂き、カマキリヤミーは悲鳴を上げながら爆散し、大量のセルメダルが飛び散った。

着地した明久に散ったメダルが霰のように落ちる。

――認めないと言いたいよに。

 

「いたたたた!?ちょ、なんで!?」

「なに馬鹿やってるんです?更に馬鹿になりますよ?」

「それって既に馬鹿ってことだよね!?」

「……自覚なかったんですか?」

「ちくしょーー!!」

 

オーズの姿でorzのポーズを取る明久。

シエルはクスリと笑っていると脳裏に自分を庇うように立ったあの姿が蘇る。

ボッと頬が染まり、悟られないように後ろを向く。

 

(……そんな筈ありません、あんな馬鹿な人を気にするなんて)

「ねえ、シエル」

「はひ!?」

「これってどうやって戻るの?」   

「……(やはり、ありえませんね)」

 

 

 

*カウントザメダルズ*

 

タカ

トラ

カマキリ

バッタ

 




鎧武がかっこよく思えてきた今日この頃。
主題歌はかっこいいですね。


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