こんな青春があってもいいんじゃないか? (青木 翼/ペンシルバー)
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1話『2πrの計算式』

何の変哲もない高校の、何の変哲もない教室に、何の変哲もない二人の男子生徒が窓際に座っていた。

彼らの名前は相坂 悠斗・真壁 翔太―――互いの付き合いは小学校の頃から続いており、自他共に認める親友コンビである。

 

そんな二人は今日も昼休憩を共に過ごしていた。

だが、彼らの会話は『何の変哲もない』と表現することができないようなものであった。

「なぁ、悠斗。」

「なんだ?」

「巨乳と貧乳、どっちが好き?」

しかし、こんな翔太の突拍子もない質問も、悠斗にとっては日常茶飯事なのである。

「そうだなぁ……やっぱり巨乳の方が好きだな。」

「そうか……なぁ、巨乳のどんなところが好きなんだ?」

そう聞かれてしまうと、悠斗は言葉に詰まってしまった。

 

自分のオカズ率は巨乳の方が多いということもあるし、直感的に巨乳の方が良いと思っている。だからこそ、自分は巨乳の方が好きなんじゃないかと悠斗は思っていた。

だが、その理由は何なんだ? ……という話になると、確かに難しい話なのである。

 

「いや、まぁ、大きい方が揉み心地やズリ心地が良いからじゃないか?」

苦し紛れの返答に無理があることは悠斗自身が分かっていたことだし、実際、翔太から言われることは、

「お前、揉んだりズリしてもらったことあるのか? ……しかも、貧乳と巨乳の両方ともに。」

残念ながら悠斗は未経験とかそれ以前に、彼女すらできたことなど一度もない。もちろん、翔太の方も一度もない有様である。つまり、比較をすることなど不可能であり、証拠としては不十分なのである。

「そう言う翔太の方こそ、自分の好みの理由について言えるのかよ。」

「よくぞ聞いてくれた。 ふっふっふ、俺の持論を聞いてしまったら、反論なんてできねぇよ。」

「おぉ、そこまで自信があるのか、ぜひ聞かせてもらおうか。」

「まかせろ。」

翔太は椅子の座り方を深くし、腕を組んだ後、神妙な面持ちで語りだした。

 

「人間は、自分に持ってない物が欲しくなる生き物なんだ。」

 

「ほぅ?」

「男に無くて、女にあるモノそれって、な~んだ?。」

「なるほど、それで『おっぱい』………それで『巨乳』………ということなんだな!! 翔太、やっぱりお前はすげぇよ!! 」

「くくくくくく、そう慌てるなよ悠斗。言っておくが俺の持論はまだ終わっちゃいないんだぜ。」

「何!? まだこれ以上に理由があると言うのか!? 」

何となくでしか答えることができなかった悠斗にとって、翔太の答えは完璧に思えた。

だがしかし、翔太はそれでは足りないと言っているのだ。

「今のは、【人間の本能】をベースにした意見だ………これから話すことは、【生物の本能】をベースにした意見。」

「生物の本能?」

「そうだ、ありとあらゆる生物に共通して言われていることがある。それは、種の繁栄。そして、種の繁栄こそが生物の本望であり生物の本能になる。」

「……っは!! 分かったぞ。僕に言わせてくれ。」

「いいぞ。」

「種を反映させるためには子供を産む必要がある。 子供を産むには健康な母親が必要となる。 では、どこを基準にしたら、何を見たら健康なメスであるということが分かるのか………おっぱいを見よ。さすれば道は開かん。」

「いいぞ。悠斗の思考もだんだん真理へと近づいてきているな。」

翔太は満足そうに頷いた。

「よし、悠斗。では、次は逆について考えるのだ。」

「逆? 逆って?」

 

この話は終ったのではなかったのか?

だが、翔太の表情を見る限り、ここで終わりではなさそうだ。

むしろ、ここからが本番であるかのように思えてしまう。

 

足りない思考能力をフルに使って悠斗は考える。

「そもそもの議題は……巨乳と……貧乳!! そうだよ、世の中には貧乳好きだっている。彼らの証明が終わらない限り、僕らは巨乳好きであると断言することができない!! だって、貧乳に対して何の議論もしていないじゃないか!!」

「そうだ……いいぞ悠斗……もっとだ、もっと踏み込んで来い。」

 

この時、翔太は悠斗に期待していた。

この男なら、エロスの境地に立つことができるのではないだろうか?

自分がたどり着けなかった領域へと足を踏み入れることができるのではないか?

 

悠斗とは長い付き合いではあるが、何やかんや言ってこういった『下品な議論』というものはあまりしてこなかった。

それは悠斗があまりこの手の話に対していい気ではなさそうだったからである。

 

しかし、今回は食いついてきた。

そして、意外にもその思考は悪くなかった。

 

「翔太、お前は僕に対して『逆について考えろ』と言ったな?」

「あぁ、俺は言った。」

「だからこそ、考えた。 巨乳好きと貧乳好きは表裏一体の関係ではないか、と。」

「お前の意見を続けてくれ。」

「男に無くて、女にあるモノは確かに『おっぱい』だ。 だが、それだけではない。」

 

この時点で、話の流れは翔太の想像とは違っていた。

翔太の想像は『貧乳への否定』。

貧乳を否定することによって、巨乳への肯定力を増やす―――そういう算段だった。

 

だが、悠斗が選んだのは『貧乳への肯定』。

 

「……男は力強い体を手に入れてしまっている。」

 

つまり、ここから先は翔太が想像できなくて、悠斗が想像できた領域。

 

「……だからこそ、男は『最低限の体格』を持ち合わせてはいない。小さいものがほしいんだ。」

「つまり、お前は『最低限の体格=貧乳』だと言うんだな?」

「そうだ。」

「……俺はその意見には反対だ。」

 

そして、意見が違うということは反対の意思が生まれてもおかしくない。

いや、反対の意見をぶつけなければならない。

 

確かに悠斗にはこっち側の素質がある―――それは、この少ないやり取りで充分に分かった。

 

天才は叩いて伸びる。

だからこそ、今回は叩く―――反論する。

 

「反対する意見ではあるが、巨乳好き意見のときにも言ったが、健康の指標になる。貧乳では分からない、むしろマイナスイメージになってしまう……果たして、最低限ってのはどこまでのサイズを言うのかな?」

「ははは、翔太……お前、バカだろ?」

「何だと!?」

 

だが、悠斗はそんなことでは止まらなかった。

 

「もう一度言おう……巨乳は余分過ぎる……最低限なのは貧乳で充分なんだ……だって、人間は胸を見て健康の判断をしない、別のところで健康判断をする。いったい、この世のどこに胸を見て健康を知るバカがいるって言うんだ? ―――つまり、巨乳である必要性なんてどこにもない。だから、貧乳を求めることに対して、生物的本能はまったくの足かせにならない。むしろ、巨乳においても生物的な本能は必要ないんだ。だって、人間は知性があるから!!」

「……!?」

この意見に翔太は何も言うことができなかった。

 

その理論に対しての反撃の言葉が見当たらない。

言った本人である自分自身が胸を見て健康をチェックしてるのかと言われたら、答えは否。

だって、それは悠斗が言ったように、そんなところを見るよりも健康を知ることができるから。

どうして自分はそんな当たり前のことに気づくことができなかったのか。

 

つまり―――悠斗はこの短時間で翔太を負かしたというのだ。

 

「はぁはぁはぁ………どうだ翔太。これが僕の答えだ。」

「……俺の負けだ。確かに、俺の意見では貧乳を否定することはできない……巨乳の負けだよ。」

すると、悠斗は椅子から立ち上がり、翔太に向けてこう言った。

「僕は貧乳を肯定したが、一度も巨乳は否定していない。」

「悠斗?」

「だって、男が自分には持っていない『おっぱい』を要求することだって、別に間違っていることではないだろ?」

 

悠斗は自分を見上げる翔太に手を差し伸べる。

その表情は柔らかなものであり、翔太の心の敗北感などは消え去ってしまっていた。

 

「だからさ、巨乳好きも貧乳好きも、もちろん普通サイズ好きだって―――間違っている人間なんてどこにもいない。」

 

その言葉を聞き、翔太は自身の愚かさに気づく。

そして同時に悠斗の持つ才能にも気づくことができた。

(やはり、この男には才能がある。すべての性癖を受け入れることができた。それは俺ではたどり着くことはできなかっただろう。)

 

翔太は悠斗の手をマジマジと見つめ、少し経ってからその手を取り立ち上がった。

そして、翔太は面と向かい合った悠斗に言う。

「それで、巨乳と貧乳、どっちが好き?」

それはこの一件の始まりの質問。変わらない、まったく同じ質問。

「もちろん、巨乳!!」

悠斗の答えは始まりと変わることはなく、この平和な日常も変わることはない。

 

 

 

((((自分たちは何を見せられていたんだ?))))

ちなみに、彼らの会話はクラス中に丸聞こえだった。

 

――― END ―――

 

 




【※注意※】
この作品は年齢制限を付けていません。
もし、制限すべきと思いましたら、感想の方に書いてくださればありがたいです。


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2話『リアルシュミレーションゲーム』

「なぁ、悠斗。」

「なんだ?」

今日の空は、心も晴れるような気がするほどの快晴。

しかしながら、天気がどうであろうが、今日の昼休みもこの二人は教室の端っこで話をする。

 

「俺はなぁ……彼女が欲しいんだ。」

「奇遇だな。僕もほしい。」

どうやら、今話において翔太が提示する議題は『彼女を作ること』であるらs…「悠斗、俺の彼女になってくれ!!」………いや、『彼女になってほしい』らしい。

 

ってコイツはアホか!!

 

「おい翔太。お前、ついに最後の頭のネジ一本が取れてしまったのか?」

「ん? 悠斗、勘違いしてないか?」

「いや、だってあのセリフで勘違いのしようなんてないんじゃないか? 僕に性転換して彼女になってくれってことだろ?」

「違う違う!! 予行練習として彼女役をやってくれってことだよ。」

なるほど、そういうことか。

ややこしい言い方はしてほしくないなぁ。

「悠斗よぉ、そもそも彼女もできn …… いないのに、彼女のシュミレーションっておかしくないか?」

「それは言ったらダメなことなんだぞ。あと、今さっき彼女できないって言いかけただろ。あとで覚えておけよ。」

「できない発言はどうでもいいとして、どうしてダメなんだ?」

「ここだけの話なんだが、作者が話の展開を考えられなくて、字数稼ぎが欲しいんだってよ。」

「そういうメタ発言の方が言ったらダメなことなんじゃないか!?」

 

ちなみに、メタ発言を多用して笑いを取ろうとすると、ネットの方で叩かれるので、書き手は注意しようね★

 

 

「まぁ、そういう事情なら仕方ない。 ……分かった、僕が彼女役をするよ。」

「ありがとう。じゃあ、俺は彼女のペットの犬の役するわ。」

「分かった……って、え?」

今さっき、犬の役するって言ってなかったか?

 

「ワンワンワン!! バウゥ、グルルルル……ワン!!」

「ポチ~、おいで~。」

「ワンワンワン!!」

「よ~しよし。良い子だぁ。」

そして、悠斗は足にすりよってくる翔太の頭をナデナデした。

「よしよしよし……ってアホか!!」

しかし、悠斗はナデナデをやめて、今度は頭を叩いた。

「キャイン!! くぅ~ん……。」

「いいから、犬の真似はいいから。戻ってこい。」

「なんだよ、せっかく役の方に入り込めていたのによぉ。」

「うん、そうだね、役には入り込んでいたね。似ていたよね。」

「そうだろ?」

「でも、犬だよね?」

「犬だよ?」

「何で犬だよ。」

彼氏と彼女の関係をやりたかったんじゃないのかよ。

 

「……あ、そういうことか。ごめんごめん。今度は真面目にするから、な?」

「真面目にしろよ?」

 

まったく、こいつは少しでも気を許したらすぐにふざけてしまうからな。

しっかりと僕が見張っておかn……「ごろにゃ~ん。みー、にゃ~にゃ~。」……ほら、言った側からふざけてくる。

「ふぅ…………どうして猫なんだよ!! 猫派だから犬はダメって意味じゃねぇよ!!」

「溜息するとは、だいぶ疲れているようだな!! そんな状態でも、きちんとツッコミを入れてくれる……さすが悠斗だ。」

この発言にもツッコミを入れると僕の体力が保たないから、ここはスルーして話を強引に持っていこうか。

 

「たぶん、このまま行ってしまうと、本題入らずに出だしのボケだけで一話が完結しちゃうから、シミュレーションの設定を作るぞ。」

「了解!!」

 

「まず、僕が彼女でお前が彼氏。……いいな?」

「了解!!」

 

「デートの待ち合わせ。彼女は遅刻。……いいな?」

「了解!!」

 

「読者には伝わらないから、その変顔はやめろ。……いいな?」

「了解!!」

 

 

すると、悠斗は少し後ろに下がり、女の子走りで翔太に近づく。

「翔太く~ん。ごめ~ん、待った?」

「いいや、俺も今さっき来たところさ。」

 

(おぉ、やればできるじゃないか!!)

 

てっきり、『車の数を数えながら待ってたよ……あ、今トラック通った。』とかそんな感じのボケをかましてくると思っていた。だから、悠斗はいつでもツッコミが出せるように身構えていたのだ。

 

どうやら今度は真面目にやってくれそうで安心したよ。

 

「まぁ、『さっき来た』と言っても、俺の『さっき』ってのは二時間前だけどね。」

「やっぱり!! やっぱりこいつはボケてくるよ!! そして、二時間前って彼女もっと本気で謝れよ!!」

「いや、俺が約束時間より二時間早く来ていただけだから。」

「まさかの彼女遅刻していないパターン!! というか、二時間も何して待っていたんだよ!!」

「交通量調査員のバイトをしながら待ってた……あっ、今トラック通った。」

「まさか、ここでそのボケを出してくるとは!! しかも、そのバイトまだ続いているのかよ!! 交通量調査をしながらデートするって前代未聞だよ!!」

 

ちなみに、この時、悠斗は明らかに自分のキャラが1話のときと違っていることを自覚していたが、翔太がボケに回ってしまうため、必然的に自分がツッコミになってしまい、そのことを追及する余裕はなかった。

 

「彼女の遅刻は10分。……いいな?」

「了解!!」

 

 

「ごめ~ん。待った?」

「俺も今さっき来たところさ。どこ行く?」

「えぇ~っとね。最近、美味しい喫茶店ができたみたいなの。」

「はっはっはっは、悠子は甘い物が大好きだからな。よし、今日のお昼はその喫茶店だ。」

「わ~い。」

「ん?悠子、待ってくれ。」

「どうしたの?」

「髪切ったのか、似合っているぞ。」

「も~、翔太ったらお世辞が上手いんだから。」

「はっはっはっは。」

「うふふふふ、それじゃ、行きましょ。………って、ボケてくれよ!!」

悠斗は堪らず叫んでしまった。

 

「おいおい、真面目にしろって言ったのは悠斗の方だろ?」

「そうなんだけど……待ってたんだよ?ボケが来るのを待っていたんだよ? もうすぐ来るだろうなぁ…ボケないのか……次は…来ない……おぉ、これは…うーん、ボケないのか………こんな感じでボケを待っていたんだよ。 ツッコミしたくてムズムズしていたんだよ? ツッコミの膀胱炎だよ!!」

「はっはっはっは、『ツッコミの膀胱炎』ってお前、ボケの才能もあるじゃないか。」

「そんな才能は僕にはいらないよ!! そもそも、そのセリフはボケじゃないからな!! 例えツッコミってやつだからな!!」

 

今回の一件で思ったのだが、ツッコミ役ってのはマゾの一種じゃないか?

受けで反応して喜ぶタイプ。

 

「それに、ここは教室だよ!! 彼氏と彼女のシュミレーションを真面目にやったら恥ずかしいじゃないか!! 僕たち注目を受けてる……って、注目されてるのは僕が叫んでるからか!!」

「自分のセリフに自分でツッコむ……悠斗、この一話だけでツッコミとしてかなり成長したな。」

「そんな僕自身はかなり疲れて来たよ。」

「そうか、それなら俺がツッコミをするから、次は悠斗がボケる番な?」

「いいよ……って、本題は『彼女と彼氏』じゃなかったのかよ!! いつから『ボケとツッコミ』のネタになってんだよ!!」

しかも、結局は僕がツッコミを入れちゃってるし。

 

 

今度は翔太の方が女走りをして近づいてきた。

「ごめ~ん、待った?」

「何だよ、結局『彼氏と彼女』の方を入れ替えて行うのかよ……いや、今来たところだよ。」

 

すると、翔太は急に悠斗の頭を叩いて、こう言った。

「どうして嘘つくんだよ!! 待ってたんだろ!!」

 

「俺はまだボケていなかったよね!? お前はツッコミ下手くそか!!」

「おいおい、悠斗、そこはツッコミどころが違うだろ。 ここは本来なら『どうして待ってたって彼女が分かってんだよ!!』ってツッコむべきじゃなかったのか?」

「ツッコミが追いつかないだけだよ!!」

実際、悠斗の方はツッコミの体力が限界近くまで来てしまっていたのだ。

おそらく、次のツッコミを行えば、悠斗はもう何も喋らなくなってしまうだろう。

(ツッコミどころを熟考するんだ。次のツッコミでこの話を終わらせてやる。)

 

しかし、翔太の方はここで予想外の展開を切り出す。

 

「ふふふふ、あははははは。」

(何!? 急に笑いだしたぞ……さぁ、どうボケてくるんだ?)

「悠斗、俺は分かってしまった。」

「お、おう。何が分かったんだ?」

「こんな彼女シュミレーションなんて行う必要なんてなかったんだ。」

「どういうことだ……?」

「いやなに、もし彼女が出来たらと思ってシュミレーションしておこうと思っていたんだが、そんなことしなくても彼女と楽しめるじゃないか!!」

 

このとき、悠斗は『作者の都合で始めたんじゃなかったのかよ』とツッコミを入れたい気持ちでいっぱいだったが、なんとか抑え込んだ。

それは、彼の直感が告げていたから―――ここを耐えたら、ビッグウェーブがやってくる。それはこの話を終わらせることができるボケである。

 

最後のツッコミはこの波に叩き込んでやる。

 

「翔太、もう少し詳しく教えてくれ。」

「だって、そうだろ? 今の時間が楽しいってことは、今の時間みたいなデートを行えばいいだけの話。」

すると、翔太は悠斗に向かい合って、衝撃の一言を発する。

 

 

「だから、悠斗……性転換して彼女になってくれ!!」

 

 

「最初の会話は、これのフラグだったのかよぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

その叫びのツッコミは、教室だけに留まらず、学校全体に響き渡ったそうです。

 

――― END ―――

 

 

 




【※注意※】
こんな終わり方をしてしまいましたが、この作品がBL系、TS系になるなんてことはないです。
そっち方向になりかけたら、この物語を強制的に終了させます。

それぐらいの気持ちでこの作品を作っております。


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3話『詐欺 ダメ ゼッタイ』

例に倣って昼休憩の教室の窓際の席、例の二人が話をしていた

「昨日、俺のお婆ちゃんの家にオレオレ詐欺の電話が来たらしい。」

「え? それで、金を払ったのか?」

「いや、不審に思ったらしく、俺の家に確認の電話が来てさ……いや~、お婆ちゃんがボケていなくてよかったよ。」

翔太はそう言うと、机の上に突っ伏した。

「悠斗はさぁ、老人になっても詐欺に引っかからない自信はある?」

「引っかからない気はするけど、こればっかりは体験しないと分からないからなぁ。」

「そうだよな、俺も同じ意見だわ。」

 

しばらく無言の時間が続いたが、翔太は何か思いついたように急に立ち上がった。

「そうだ!! おい、悠斗、やろうぜ。」

「ん~? 何を?」

「シミュレーションだよ。オレオレ詐欺シミュレーション!!」

「え~~~。」

悠斗は顔を上げ、嫌だとでも言わんばかりに眉を寄せる。

それもそのはず、前回の話でもシミュレーションを行っており、それはとてもカオスなことになってしまった。

しかも、あの日以来、 【ツッコミの悠斗】 なんて二つ名が付けられてしまい、同級生だけならまだしも、下級生上級生、あげくの果てには先生にすらも知られてしまっている。

余談ではあるが、作者自身も会話文過多の作品はあまり得意ではない。

 

そういうこともあり、作者と悠斗の二人としてはあまり乗り気ではないのである。

 

「まぁ、そんな嫌な顔するなって。今日の帰りにハー○ンダッツを奢ってやるから。」

「よし、それならやろう。 僕が詐欺師するから、お前は被害者やれよ。」

悠斗という男を誘い出すには、美味しい食べ物を提示すればよい。

そのことを理解している翔太は、さすが親友なのであろう。

 

 

 

そんなこんなで、筆箱を受話器に見立ててシミュレーションは始まった。

「ぷるるるるる、ぷるるるる」

「ガチャ、はいもしもし、真壁ですけど。」

「あぁ、お爺ちゃん?」

「いえ、俺はお婆ちゃんですけど。」

 

「ややこしいわ!!」

ぺちこ~ん!!

 

相変わらず悠斗のツッコミ頭叩きの音は素晴らしく、クラスの皆は目を閉じて叫びと叩き音に興じる。

 

「いいか、これはお前の予行演習だからな!! お前は男だからお爺ちゃん。お前のお爺ちゃんの練習じゃないからな!!」

「ずっと言えなかったことがあるんだ。俺、実は女性でな……。」

まさかの衝撃の告白であったが、悠斗の方はまったく動じず、

「二話の最後で作者が注意書きとして書いてるから、その手のネタはやめとけ。」

タグ変更はしたくない心情です。

 

 

 

「ぷるるるるる、ぷるるるる」

「ガチャ、はいもしもし、真壁ですけど。」

「あぁ、お爺ちゃん?俺、俺だよ俺。」

「あんた……まさか……オレオレ詐欺だね?」

「いやいや、俺だよ俺!! 忘れたの?」

「俺は引っかからないよ。あんた、詐欺してそうな人相だからねぇ。」

 

「なぜ分かったし!!」

ぺちこ~ん!!

 

「電話してて相手の人相分かるってなんでだよ!! ……確かに僕の人相悪いけど。」

 

今まで登場人物の容姿についてはまったく触れなかったし、ツッコミ役で、さらには一人称を『僕』としているため、読んでいる皆の悠斗の印象は良いイメージであると思う。(実際、作者もこのネタ作るまでは好青年のイメージで書いていた。)

しかしながら、意外や意外――悠斗はコワモテ男子だったのだ。

 

「悠斗……普通は顔分かるんだよなぁ。」

「電話で顔分かるやつは普通じゃないよ。もはや超能力者だよ。」

「だって、テレビ電話だぜ?」

「テレビ電話!? オレオレ詐欺でテレビ電話!? テレビ電話で詐欺するなんて聞いたことないよ!!」

「え~、でも、俺のお婆ちゃんが受けたオレオレ詐欺はテレビ電話って言ってたぜ。」

「それなら確認せずとも、顔見たら息子ではないことぐらい分かるだろ!! ……とにかく、テレビ電話もなし。」

 

 

 

「ぷるるるるる、ぷるるるる」

「ガチャ、はいもしもし、真壁ですけど。」

「あぁ、お爺ちゃん?俺、俺だよ俺。」

「もしかして……孫の悠斗かい!?」

「そうそう、孫の悠斗だよ。」

「某K大学医学部卒業して、その後世界を歩き回り、最終的にはノーベル平和賞を受賞した……あの悠斗かい!?」

 

「あんたの孫は天才だな!!」

ぺちこ~ん!!

 

「ちなみに、今言ったのは、俺の目標だからな。」

「うん、諦めた方が良いね。」

 

ちなみに、翔太の学力はハッキリ言って酷いです。

 

 

 

「ぷるるるるる、ぷるるるる」

「ガチャ、はいもしもし、真壁ですけど。」

「あぁ、お爺ちゃん? 俺、俺だよ俺。」

「あんたもしかして、孫の悠斗かい?」

「そうそう、孫の悠斗だよ。ちょっとドジしてしまって、金が必要になったんだよ。10万ぽっちだからさ。俺の口座に振り込んでくれない?」

「そうかい? でもねぇ、払えないんだよ。」

「え…?」

「俺もこの歳でねぇ、深刻な病気にかかってしまったんだよ。」

「お爺ちゃん…?」

「だけど、治療費として50万円ぐらいかかってしまって………死ぬしかないのかねぇ。」

「(俺はこんな男性からお金を奪おうとしてたのか……)分かったよ……50万だね? お爺ちゃんの口座に振り込んでおくよ。」

「悠斗、すまないねぇ。ありがとよ……ガチャ……ふっふっふっふ~、50万円ゲットだぜ。」

 

「なんであんたが詐欺してるんだよ!!」

ぺちこ~ん!!

 

「しかも、50万円って……お前、詐欺師よりも金額高いじゃねぇか!!」

「そりゃそうだろ、やられたらやり返す。倍返しだ。」

「倍返しどころか、5倍返し……そもそもまだ騙されてない段階だから、10倍だろうが1000倍だろうが、全部0じゃねぇか!!」

「甘いな。こういうのは仕掛けて来た時点で戦争だ。」

「だとしても詐欺はいけないよ。」

「バレなければ犯罪ではないし、人生楽しんだら勝ち組だ!!」

クズの理論に達してしまった翔太、正直言って同じ空間にいたくないなぁ。

「悠斗!! 俺は詐欺師になるぞ!! はーはっはっはっは!!」

明らかに最初の目的と変わってしまった親友を……僕は無視することに決めた。

 

 

この後、彼は生活指導の中村先生にこっぴどく怒られました。

 

――― END ―――

 

 

 




【※呼びかけ※】

『シミュレーション』――『シュミレーション』

ネットで調べたら両方の意見があって困ってます。
まぁ、英語を無理やり日本語読みにしてるだけだから、どっちでも正解なのかもしれないのですが……。

そうなると、『どっちが正解』よりも『どっちが読みやすいのか』って方が気になりますね。
感想欄に書いてくださればうれしいです。


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