白き鋼 ー Fog Fleet YAMATO ー (Arcelf)
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大和ノ目覚

当作品は作者のこんなのあったら面白そうだなーという内容で作られております

他、主人公は異常戦力などの表現が含まれております。

それでも問題ないという方は、どうぞ生暖かい目で見てやってください。


*改修済


目覚メノ時

 

頬を撫でる風が心地よい誘われて目を開けると青空が広がっている・・・。

 

 

 

(あれ?おかしい、部屋でソファーで寛いでたはず・・とりあえず状況整理しよう)

 

 

 

起き上がるとそこには水平線が広がっている、どうやら船に乗っているようだ。

 

そこまでは良い・・いや良くない、乗ってる船が普通ではないことだ青白い船体に何より目を引くのは

 

光が反射して金色に輝く3本の円形状の柱、所謂艦砲と言うものか・・それが2基。

 

 

(これは・・戦闘艦か、大きさからして戦艦クラスでは?しかしこの船は・・)

 

 

 

 

 

「    ヤマト     」

 

 

 

 

―― ゾクッ ――

 

 

 

突然浮かぶ船・・いや戦艦の名前。

 

何故か自然と口にした。

 

理解のできない事に悪寒の様な感覚が走った。

 

(私は答えた――なぜこの船の名を知ってる・・?)

 

 

 

 

 

(アレ?私の名前は「 」私は・・私は・・・)

 

 

 

 

 

 

 

「   ―― ヤマト ――  」

 

 

 

 

 

 

───違う・・違う!?こんな名前ではなかったはずだ!?私は今まで何を───

 

 

(家に帰って音楽聴きながらソファーで寛いでたら此処にいた...その前は仕事が終わり車で帰って..

仕事では...新たにビジネス持ち出してきた会社が挨拶しに来て..名刺を..名刺の名が..真っ白・・)

 

 

─── ッ..?! ───

 

 

理解出来ない得体の知れない衝撃に自身の顔を手で覆った。

 

 

─── 私の名前が分からない? ── いや認めたくないだけ ───

 

 

ふと顔に当てた手に違和感を感じた。手袋などしていなかったはずだし全体的に小さくなってる・・?、

それには違和感があった少し前の記憶には男らしい線の太い手があったはず、そしてつられるように身体を見下ろした

 

 

 

胸があり純白のドレスを着ている、女性のようだ。

 

 

 

(・・・もう異常しかない、このまま考えていても埒が明かないし)

 

当たりを見渡しても戦艦と海しか見えない。

 

(行動するか..とりあえずこの砲塔・・から降りなければ)

 

今乗っている物が何だったかと思うと直ぐに出る回答に違和感を感じながら、砲塔の端まで行き下を覗いた。

 

(随分と大きいな・・3階位の高さか?・・・しまッ!?)

 

 

 

 

 

― ゴッ ―

 

 

 

 

 

(さて降りることには成功した・・足を滑らせ顔から甲板に着艦したが)

 

砲塔から足を滑らせてそのまま落ちたのである。

その様な事をしておきながら身体の何処にも異常は無い。

 

(この体は非常に丈夫なようだな・・前の体で同じ事やるとしたらゾッとする。でも、すこし痛かった・・)

 

 

その異常の中、体の丈夫さに感謝しつつ体を起こした。

 

そして、ふと目に入ったそこには青白く染め上げた艦橋が所々光を反射しながら聳え立っていた。

 

 

 

「白い・・」

 

 

 

自然と言葉が漏れた。

 

 

 

(艦橋・・艦橋に行くか、誰かしらいるだろう)

 

 

── 居ない ──

 

 

(知っている・・この船には誰も居ない。船・・いや戦艦の事が手に取るように分かる、まるで戦艦が手のひらの様な感覚だ・・)

 

 

何故か分かる、戦艦の事が。手に取るように分かる。

しかし考え込んでも分からないので行動を開始する。

 

 

(とりあえず移動するか)

 

 

船体の事が手に取るように分かるので、迷うことなく搭乗口を見つけそのまま艦橋へ上がった。

 

そこには窓から水平線が広がっているのが見えるよく見えていた。

 

空には微かに残る雲と青空が見える。

 

時間は昼時なのか太陽が真上にあり、太陽の光が船体を反射して眩しく輝いている。

 

 

―― 美しい ――

 

 

見た瞬間に思った一言だ。

 

 

(白の船体と金の砲身のコントラスト良いなコレ、それとあの模様は・・)

 

 

 

 

──― イデア・クレスト ―──

 

 

 

 

(知っているこの模様、過去の記憶が知っている・・・だってこれ・・・)

 

 

 

 

――― 霧の超戦艦 ヤマト ―――

 

 

 

 

理解した。

 

この戦艦は霧の戦艦ヤマトであること。

 

私が自身がヤマトであること。

 

それと同時に過去の自分が見たアニメの内容を思い出していること。

 

人類と霧の戦争。

 

そして行き着く回答。

 

 

 

(これは転生なのか?目を閉じて開けたら砲塔の上に居た・・ふむ分からん)

 

目を閉じて開いたら砲塔の上に居て、体がヤマトになっている。

どう考えても理解が及ばないことを理解した。

 

(私が霧であることは理解した、ならアドミラリティ・コードは・・)

 

 

──ロスト──

 

 

(存在しない・・?まぁ良い・・霧という事は人類と敵対まっしぐらね・・うん)

 

異常しか無い現状は多少の事程度では気にならなくなっていた。

それよりも自身が霧と言う存在であるなら人という存在が敵であったはず。

ならば何も知らない間に攻撃される事だけは避けなければと船体及び武装の確認をするのであった。

 

 

 

(取り敢えずの目標は船体と武装の確認と)

 

 

デルタコア ハイパータスクモデル「ヤマトの中」

 

船体モデル「大和型一番艦」

 

 

― 縮退炉720基 超高機動ユニット5基 ―

 

― タナトニウム生成装置 ―

 

― ナノマテリアル生成装置 ―

 

 

― 超重力砲 三十二基 超出力収束モード(旗艦装備) 可 ―

 

― 46cm三連装反物質砲 三基 実体弾モード 可  ―

 

― 15.5cm3連装荷電粒子砲 二基 ―

 

― 12.7cm連装高角荷電粒子砲 一二基 ―

 

― 25mm3連装陽電子射出装置 五二基 ―

 

― 25mm単装陽電子射出装置 六基 ―

 

― 13mm連装陽電子射出装置 二基 ―

 

― 艦首魚雷発射管 八門 二基 侵食魚雷 通常魚雷 可 ―

 

― 後部垂直発射装置128門 侵食ミサイル 通常ミサイル 可 ―

 

― 強制波動装甲 クラインフィールド 可 ―

 

― ミラーリングシステム 八基 ワープ(旗艦装備)可 ―

 

 

{ システム・オンライン }

 

 

(ふむ、改めて思うと人類の絶望具合がよく分かるな)

 

一周回って落ち着いた。

冷静に見ると異常なまでの装備に人類勝ち目無くね?と思っていた。

 

(レーダーに反応は無しと探知距離5万kmって静止軌道・・作中に衛星が壊されていたのも納得だ)

 

静止衛星軌道は大体3万6000kmである。

ヤマトのレーダーは霧の総旗艦として最高性能を誇っていた。

 

水平線は100kmが限界と・・流石に水平線ぶち抜いて5万km索敵できたらミサイルだけで人類終わるね?笑えるー・・いかん若干現実逃避に走ってしまった。)

 

あまりの異常性能に若干の現実逃避をしていると戦艦が反応を示した。

 

 

───ソナーに反応あり───

 

 

(何か動き回ってる・・大きさ的にイルカか?少しソナー飛ばしてみるか)

 

 

──ピィイイイン──

 

 

ソナー特有の音が響いた。

 

(生き物っぽいし放って置いて良いか、それにしても魚も捉えられるのか・・)

 

ソナーの異常な性能にまた若干の現実逃避を始めようとしていた。

 

 

 

/ / /

 

 

「見ちゃった・・見ちゃったでち!?どうしようどうしようっ!?」

 

「イクも見ちゃったのねっ・・すごく、おおきいのねっ」

 

「帰還しましょう、はっちゃん疲れて幻が見えてきたようです」

 

「幻じゃないでち!ごーやもみたでちぃいいっ」

 

「まずは帰還したほうがイイのね、てーとくに報告なのね」

 

「でちね・・帰還す──ピィイイイン──「ッ!?」」

 

 

探信音が響いてきた。

 

 

「「・・・」」

 

 

驚くと同時にジェスチャーのみで即座に意思疎通し、離脱することを提案し帰還することになった。

 

もはや忍びのプロである。

 

 

/ / /




続くとは言っていない。
艦娘の言葉遣い難しいですね、wikiでセリフ漁りました。

実は執筆ちょろいだろと思って書いたんですがチョロくなかったです、自身の頭のチョロさを理解しました。

それと一つEdgeで投稿するのは私的におすすめしないです。
おっと手が画面に(スライド=もどる)消えました。




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艦娘ト接触

ブルースクリーンにクリティカルダメージもらいました。

メモ帳投げ捨て自動バックアップ機能付きのソフト探してたらインストしているソフトでVisualStudio2017Proにテキスト機能があり発狂しました。
自動保存の間隔を2分に設定しました。ご馳走様です。

──もう何も怖くない──

*改修済


(一通り船体動かしたけど、戦艦ドリフトできる・・機動性どうなってるのか・・霧だし今更か)

 

ヤマトは武装を確認した後に船体を確認していた。

超高機動ユニットから来る異常な速力に、サイドキックとサイドスラスターによる進行方向と船体の向きが違うドリフト。

その気になればクラインフィールドを使用した飛行に潜水が可能である。

 

(さて一通り装備の確認したとして・・何処かの島か霧にぶち抜かれた港があると良いのだけど──近くの島はあちらか──)

 

 

移動を開始したヤマトは薄暗い艦橋に嫌気を差しながら数十分の時間が流た。

 

 

 

───りふぉーむ中───

 

 

 

そこには薄暗い艦橋は無く白く明るい艦橋があった、霧なのに計器類置いてても邪魔なだけとすべて消されたのである。

薄暗かった艦橋には照明が増設され、真っ白の壁に金の縁取りされた窓、床も真っ白に自身のイデアクレストを青く入れて中央に大きなソファが一つ置かれた。

 

 

(イイ!すごくイイ!!ナノマテリアル様様ですご馳走様です。これは・・船体全体リフォームするしか ─―レーダーに反応あり── 後にしましょう・・)

 

船全体をリフォームする勢いであったがレーダーに反応があり中断した。

 

(随分と小さい・・ゴミ?しかし動き回ってる・・ふむ、分からんっ。目視距離まで近づいてみるかな)

 

 

 

 

 

 

/ / /

 

 

「阿武隈そっちに重巡いったっぽいぃい」

 

「ひぇ、やだ私? い、いけるけどぉ」

 

「にゃっ!?こ、この程度ならまだっ」

 

「うびゃあ!卯月が援護するぴょん!!後退するぴょん!」

 

「にゃっしぃいっ」

 

「夕立、敵ひきつけるっぽ・・ぃ」

 

「ガラ空き・・・・・」

 

見えてしまった白い戦艦が深海棲艦の向こう側に、それは青白い船体に金のコントラストで美しく見えた。

ほんの少し前まで戦闘していたとは思えない様な、白昼夢を見ているような感覚に陥った。

 

「大和・・」

 

誰が言ったのか豆粒の様な大きさに感じる距離だが艦娘の視力を持ってすればその姿、艦としての記憶が間違える筈もない。

沈んだはずの大戦艦が目の前にある、そして深海棲艦が虫のように湧いてくるこの海で船舶どころか戦艦でさえまともに抗航できないのだから、

仮に見間違えたとしても船舶が海上に浮いている時点で早速以て異常である。

 

「っ!?主砲こっちに向いてるんですけどぉお!?」

 

「ヤバイ・・?すごくやばいっぽい!?ぽいー!」

 

微妙に側面を見せていたヤマトの砲塔が1基旋回していた。

 

 

 

───大戦艦の主砲が火を噴いた───

 

 

 

青白い光跡を残しながら艦娘元前方へ深海棲艦が存在したであろう位置で弾着し水柱が上がった。

 

巨大な水柱が。

 

深海棲艦であった物を空高く上げていた。

 

 

「ぽいぃいいっ!?」

 

「きゃっ!前髪崩れっぁ!!」

 

「ぽい!ぽいっぽいぽいぽーい!?」(意訳:そんな事言っている場合じゃない(ぽい));

 

そして離脱中の二人も異常に気づいた。

振り返るとそこには高く上がった水柱、艦娘の力でも到底不可能であろう規模の水柱が上がり。

霧状へと変化しつつある状態へ。

 

「夕立っ!阿武隈っ!?」

 

「ぴょん!ぴょおぉおッ!?」(意訳:みんなは!?何が起きた(ぴょん))

 

「ぽい!ぽい!離れるっぽいーっ」

 

「 ムリ、ムリ! あたし的には、ウルトラスーパーヤバイですっ!」

 

水柱の影から立ち上がる二人を見て安心すると同時に視界に大戦艦が入ってしまった。

 

「・・何・・・アレ」

 

「やまと・・ぴょん」

 

大戦艦の出現で二人は夕立と阿武隈の存在を若干忘れたのである。

それでも語尾を忘れない彼女はブレないのであった。

 

 

 

/ / /

 

 

 

その大戦艦の艦橋では若干の動揺を見せるヤマトが居た。

 

 

レーダーに反応のあった地点へ行き、水平線から動き回っている小さな粒を確認できる位置まで来ていた。

遠くて小さく望遠鏡でも作るか考えながら目を凝らして見ていたら、メンタルモデルとしてのスペックが望遠鏡要らずとも見えることに気づいた。

 

その手には作りかけの望遠鏡が。

 

そして水上で戦う艦娘と深海棲艦の姿を確認し、少しの間混乱するヤマトがいた。

 

 

(え・・艦娘・・・?戦っているの?。あっちは深海棲艦・・?)

 

おかしいと思っていた。

記憶にある海を霧に支配された世界と思ったが違う事に。

しかし現状私は霧で、目の前に艦娘と深海棲艦が居る。

 

 

(私はメンタルモデルで艦娘は別で・・・どうして?)

 

 

若干混乱している間に巡航速度250knotの戦艦は既に艦娘近く数キロの位置まで進んでいた。

此処まで近づけば艦娘でなくても何もない水平線でこの巨体、気づかない者は居ないだろう。

案の定艦娘の2名は此方に気づき行動を止めてしまった、他に離れていく2名はどうやら気づいていないようだ。

 

 

(見られたっ・・ってこの巨体気づかないほうが可笑しいか、しかしこの世界は一体・・っとマズイかな深海棲艦に気づいていない)

 

 

メンタルモデルの持つ演算能力の影響か、思考に随分と余裕がある事で気づいた。

 

 

――第一砲塔

 

──砲塔旋回

 

──第一門 MODE 実体弾

 

──照準

 

(砲身がこれ以上さがらない・・霧の戦艦なのだ少しぐらい傾きなさい)

 

──照準完了

 

──発射

 

 

 

 

───空間を揺らす爆音が響いた───

 

 

 

 

第一砲塔の一門から青白く発光した砲弾が微かな光跡を残しながら深海棲艦が集まっている中心付近に着弾し水柱が上がった。

 

(へぇ、実弾なのに青白く発光した砲弾って気にしても仕方が無いか・・・だんちゃーく・・・・・・え、威力・・えぇっ!?、思いっきり巻き込まれてない!?)

 

 

数キロ先であるにも関わらず目測でみても100m以上上がっているであろう水柱に、軽い気持ちで主砲を放っておきながら艦娘の安否をするヤマトであった。

 

(レーダー反応・・ノイズが酷い・・水柱水柱の影響だな、離れた2人も気づいて何か叫んでる・・。うんゴメンね?位置的に多分大丈夫だと思うけど・・アレだほら、一発だけなら誤射かもしれないってよく言うじゃん?)

 

 

予想外の威力に現実逃避を始めるヤマト。

そして霧状に変化した頃合いで水柱から離れていく2人を確認し、無事?を安心するヤマトであった。

 

(ほうぅ生きてた良かった!一安心・・と改めて確認すると夕立、阿武隈、睦月、卯月と軽巡1に駆逐3とは遠征部隊か・・?しかしどうしたものか艦娘に深海棲艦と来たら

この世界は艦これも知っているとは言えあまり詳しくないのよね、どちにしろ霧になった時点で右も左もさっぱりだしハハハハ)

 

 

水柱による霧が薄くなった頃には艦娘たちも若干の整理が付きつつあった。

 

 

 

/ / /

 

 

 

「全員無事っぽいっぽい!?」

 

「 阿武隈はぁ、大丈夫ですぅ!」

 

「如月ちゃん、私ね...楽しかったよ如月ちゃんと睦月の・・・ ──スパーン!── 」

 

睦月が現実逃避に走ると同時に夕立が睦月の頭を叩き軽快な音が周囲に響いた。

 

「しっかりするっぽいっ!」

 

「うぅ..夕立ちゃん..だって大和が..大和がぁ」

 

「卯月にも..みえてるぴょん..しろい大和」

 

状況整理をしている夕立を横目に大和から動きがあった、第一砲塔は元からで更に第二第三砲塔が此方を向いた。

先程の砲撃は深海棲艦を攻撃したようであったが、深海棲艦が消し飛び周りには何もない水平線、自分たちしか居ない状況では確実に狙いは決まっているだろう。

 

「「ビクッ」」

 

「ひぇ、やだ わ、私達しかいないよ・・ね・・しれーかん・・お弁当の感想まだ聞いてないよぉ」

 

「にゃっしぃ・・」

 

──ザバーン──

 

阿武隈は手を当てて天に祈りを捧げはじめ、睦月はキャパシティの限界を超えてダウンした。

 

「ぽい!?うごいたらヤバイっぽい??助けるっぽい!?ぽいいぃ」

 

「ぴょんぴょぉおおん!?睦月引き上げるぴょょんっ!」

 

唯一無事な夕立と卯月は艤装だけで浮いている睦月を引き揚げるのであった。

 

「引き揚げたけどどうするぴょん・・?」

 

「ぽい、ぽいぽい、ぽーいぃぽい」(意訳:顔向けたままゆっくりさがる?(ぽい?))

 

「相手は球磨じゃないぴょん・・」

 

「詰みぽいぃい~」

 

 

 

/ / /

 

 

 

────レーダーに反応────

 

 

(ふむ、レーダー反応はこの4人だけと・・。来て早速艦娘と接触してしまったけど・・・どうしたものか?)

 

1不慮の事故

2攫う

3対話

4そのまま去る

 

(うむ、1は・・バレなければどうということは無い、しかし艦娘を・・嫌だな。

2はお話(強制)で艦内に詰めて置けば・・アリだな。

3は人類の使いっ走り&実験体コース・・艦これの世界だと濃厚な気がするなぁ。

4は報告されたら総動員で探してくる気がする・・うん、私なら絶対探すね、深海棲艦沈めたし・・)

 

 

────ソナーに反応あり────

 

 

(うん・・?・・・なんだぁ深海棲艦の残骸か精度良すぎるのも考え・・・最初にあった反応スク水隊では..?大きさ的にもありえる。

 

そう、最初にあったソナー反応の正体がスク水隊の可能性が出てきた。

仮にスク水隊であった場合はほぼ確実にヤマトの存在が知れ渡ると判断できる。

 

(すると4は報告されると考えて狙われるのは不可避と、3は記憶から実験体コースまっしぐらなイメージしか無いと・・・。よし攫おう!戦艦に詰めよう、情報収集にももってこいだねっ!)

 

 

一通り考えたヤマトは目を開けると4人固まって居て、祈りを捧げていたりコントやら怯えてたりと、情緒不安定な艦娘が写っていた。

 

(・・随分楽しそうな子達ね・・って、あぁそうか不慮の事故とか考えていたら自然と第二第三砲塔向けていたのね、まぁ一発であの威力だし全砲塔向いたら怖いわぁ)

 

 

 

 

そしてヤマトは

 

 

 

 

『 ――マイク音量大丈夫?チェック、ワン、ツー・・ワンツー・・よし。 警告する・・そこの艦娘4人組武装解除せよ、・・・武装解除せよ―― 』

 

 

 

 

艦娘に接触出来ると、少しノッていた。




艦娘たちの会話が難しいです。

企画書書いてるイメージで書いてたら執筆速度上がった。

執筆がまだ手探り状態で不安定ですが楽しんでいただけたらいいなと思います。

今後共よろしくおねがいします。


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大和ト艦娘ノ話

投稿するたびに文字数が増えて行きますね

書きながら内容考えてるので非常に執筆が遅いです。

何か企画プロット作って書くべきでしょうかね。

あまり変なことに手を出して執筆が止まるという事はやりたくないですね。


 

──・・・警告する・・そこの艦娘4人組武装解除せよ、・・・武装解除せよ。──

 

何処かの武闘派戦艦のような前置きは聞かなかったことにして、そこの艦娘4人に対して完全に自分たちと確定し慌てる一行である。

 

「ぽいっぽい装備解除するっぽい」

 

「ぴょんっぴょんっぴょおおんっ」

 

「阿武隈っ帰ってくるっぽい!───スパーン───装備捨てるっぽいっ!」

 

「睦月起きないぴょん!そのまま装備剥ぎ取るぴょんっぴょん!」

 

夕立と卯月は軽快なリズムを刻みながら武装を投棄していき、夕立は阿武隈の頭を叩きながら、卯月は起きない睦月の装備を外していくのであった。

 

「武装全部外したっぽいぃ」

 

「ぴょん・・」

 

「てーとく、今度合う時には航空駆逐艦より料理上手になってみせます!」

 

「・・・」

 

かくして4人は1分足らずで武装解除して、相手の出方を伺う状態だけとなった。

 

 

 

/ / /

 

 

 

(さてどう出るか・・え、あ、ちょ武装解除じゃなくて投棄しちゃったよ・・・欲しかったのにぃ。まぁ良いかそのうちチャンスがあるでしょー)

 

武装入手し詳しく調べたいと言う思いがあったが、予想外の武装投棄で若干落ち込む大和。

 

(全員装備投棄したね・・一人大丈夫かな?未だに祈り捧げてるけど...どうやら夕立が旗艦なのか..君は忠犬じゃぁなかったかな?先程から頭叩いてるけどツッコミ犬にジョブチェンジしたのかな?)

 

愉快な艦娘を見て思考が遊び始めたヤマトである。

武装解除し終わったのを確認し、ヤマトで接近しては波を起こしてしまうと妙に気を使うことを考えていた。

 

 

「あー→あー↑けほん・・そこの艦娘4人ヤマトの右舷艦橋下まで来なさい」

 

 

艦外放送に従い3人と1人が動き始めた、1人は気絶しているため夕立と睦月に両肩で支えられてる状態だ。

阿武隈は夕立に頭を何度か叩かれ我に返っていた。

 

(うーむ見た感じ睦月中破と卯月小破かあとの2人は..うんびっしょりだね、あんな近くで近くないけど巨大な水柱立てちゃったもんね滝の下潜るような感じかな?

しかし怪我を負っている睦月と卯月はどうしたものか..艦娘といえば入渠だよねー、ヤマトにそんなの積んでないよ?自然と治らないかな?来てから考えよう)

 

思考に耽っている間に近くまで来ており、ついに回収(拉致)しご対面することに。

 

(真横まで来たようだ、いや違うどうやって甲板に載せようか..─!─そういやアドミラルハッピーな霧の戦艦が潜水してたよね..甲板付近まで船体沈められるか..いける.....ほぉーいっ!)

 

過去に見た記憶だよりに霧の戦艦は潜水できるんだよという、現実的に考えるとありえない事をやってのけたのだ。

そして甲板付近まで船体を海中に沈め、艦娘を招き入れるのであった。

 

(うむ、唖然としてる艦娘達見てて愉快..じゃなくて、このまま艦橋に入れてしまおうかな。自身でぷちクラインフィールド展開できるし、手のひらから荷電粒子放てるっぽいし..よし艦橋に入れちゃおう)

 

 

「そのまま手すりを越え乗艦しなさい、そのあとは開く扉を進みなさい。」

 

 

乗艦指示しあとは扉開けて誘導するだけと謎の事で満足したヤマトは、ソファーが足りないことに気づき艦橋をまたリフォームするのであった。

 

(よし、ソファー増やして間にテーブルっと..床のイデア・クレストがソファーとテーブルに隠れた..何だこの感じは非常に不愉快...コレは霧としての感情?どうにかせねば

床がだめなら天井だぁ!)

 

かくして艦娘が艦内を移動している間にリフォームは終わったのである。ナノマテリアル様様である。

 

~内装~

白い横長のテーブルを白い横長のソファーで挟みテーブルの中央には蒼い光を放つイデア・クレストが、天井には照明がイデア・クレストの形状をしている。

純白の内装に窓は金の縁取りをされたガラスが張られており、壁にはヤマトの外観を思わせる青白く発光する模様が刻まれていた。

 

(あー素晴らしい..何処か無人島にでも付いたらじっくりリフォームしよう..ナノマテリアル万歳!そろそろエレベータにご案内っと...ナノマテリアルでティーセットは作れるけど...

有機質でも情報が有れば作れると..いや再現か、味が再現できないかそれ以前にナノマテリアル飲んだら不味くないか?ナノマテリアルの味..)

 

過去の記憶が無駄なおもてなしをしようと無駄に考えるが、無駄に終わり飲み物欲しがったら水を海水ろ過で出してやろうと考えていた。

そして無駄なことを考えている間に艦娘一行がエレベータに乗り艦橋に到着し、鐘が鳴った。

 

 

───チリーン───

 

 

「やぁ、いらっしゃい───霧の超戦艦ヤマトへ───」

 

 

 

/ / /

 

 

 

───あー→あー↑けほん・・そこの艦娘4人ヤマトの右舷艦橋下まで来なさい───

 

 

「・・・いくっぽい」

 

「大和って言ったぴょん」

 

「あたし的には、とっても帰りたいです..」

 

「帰してくれくれるように見えるっぽい?ぽい?」

 

「装備捨てちゃったぴょん、その時点で帰る選択肢無いぴょん..」

 

仮に帰して貰えたとしても、装備を投棄してしまったがために深海棲艦への対抗手段が無くなりヤマトに頼らざるを得ない状態となった。

 

「覚悟決めていくっぽいっ」

 

「うぅ~」

 

「軽巡なんだからしっかりするぴょん!」

 

「だってぇー」

 

「みなさん...ありがとぅ...ございましたぁ」

 

何だかんだと言いながらヤマトの右舷まで来ていた愉快な一行、睦月は未だに気絶中である。

 

「大きいっぽい..コレが大和..」

 

「不思議な模様ぴょん..」

 

「ふぇぇ~、てーとく、悪い夢ですぅ、起こしてくださいぃ」

 

「・・・」

 

 

睦月は相変わらずである。

そして目の前では大和が甲板付近まで船体を海中に沈める光景に、艦娘たちの思考がパンクしていた。

 

「「・・・・」」

 

 

───そのまま手すりを越え乗艦しなさい、そのあとは開く扉を進みなさい。───

 

「逝くっぽい..」

 

「夕立、字が違う」

 

「卯月、語尾消えてるよ」

 

「夕立こそ...」

 

「阿武隈、ご期待に応えます!」

 

「「阿武隈先頭「っぽい」「ぴょん」」」

 

「っえ?」

 

突然復活した阿武隈は夕立と旗艦を交代するのであった。

そして甲板に上がり、辺りを見回してると眼の前の水密扉が開いた。

 

 

──ガッコンッ──

 

 

「開いたっぽい..誰も居ないのに開いたっぽい...」

 

「どう見ても手動扉ぴょん..」

 

「み..みなぁさん...いきますよー..」

 

扉を一つ潜ると、更に奥の扉が開き、誘導されていく。過ぎた扉は独りでに閉まっていき。

 

──ガッコンッ──ガッコンッ──

 

「ふぇぇ~、あたし的には、とってもとっても幽霊船だと思うんですけどぉ~」

 

「すごく綺麗な幽霊船っぽい..」

 

「違うと思うぴょん、幽霊船はもっと小汚いイメージぴょん」

 

 

「ウゥ~」

 

 

「「ひぃっ!?」」

 

「睦月っぽい..」

 

「ふぇぇ~、驚かさないでよぉ」

 

 

───チリン───

 

 

「エレベーターっぽい」

 

「 全自動にも限度があるぴょん..」

 

「さぁ、 皆さん、逝きましょう」

 

「阿武隈、開き直っても遅いっぽい」

 

「字が違うぴょん」

 

一行はエレベーターに乗り艦橋までの微かな時間に、睦月はこのままで良いのか考えていたのである。

 

 

───チリン───

 

 

扉が開き眼の前には別世界が広がっていた眼の前にはテーブルがそしてソファーが挟むようにして設置されている、過去の記憶にある薄暗い艦橋のイメージがすべて否定された空間がそこにはあった。

 

 

───やぁ、いらっしゃい───霧の超戦艦ヤマトへ───

 

 

 

/ / /

 

 

 

「あら、まだ寝てるのねその子」

 

「─ッ!起こすっぽいぽいっ」

 

「起こさなくていいわよ、ふむソファーがもう一つ欲しいわね」

 

睦月を起こす気になれなかったヤマトは更にソファーを作り上げた。

少し気を利かせて地面からソファーがせり上がってくるように見せ、テーブルを挟むようにしてコの字にソファーが配置された。

 

「ぽ・・い?」

 

「ふぇぇ~、やっぱりぃ幽──むぐぅ──」

夕立に顔を捕まれ阿武隈は強制的に口を塞がれた。

 

「ふふふっ、下で話していた幽霊船の話は気にしてないわよ?」

 

「聞いてた..ぴょ..ですか」

 

「この船体は私の本体でもあるのよ?それと卯月ちゃん普段の喋り方でいいわよ」

 

卯月は反応に困っている、まるで私を知っているような口ぶりに。

 

「とりあえず立ってないで座りなさい?艤装はソファーの横にでも置いておきなさい」

 

「了解ぽい」

 

「「・・・」」

 

「あの..」

 

「濡れてるのは気にしなくて良いわ、睦月ちゃんは奥のソファーに寝かせて起きなさい」

 

睦月から艤装が外され奥のソファーに寝かされる、そして他の3人も艤装を外しヤマトの向かい側に3人並んで座りヤマトからの会話を待った。

 

(ふーむ、艤装外した状態だとどう見てもただの少女です、ご馳走様です。っと睦月が痛々しい結構雑に扱われて起きないのも疲労が溜まってるのか...さて情報収取っと)

 

「改めてようこそ──霧の超戦艦ヤマトへ──艦娘たちよ」

 

「ヤマト・・」

 

「キリノ?」

 

「・・・」

 

(おや、反応がイマイチね霧については知らないかな?そして阿武隈くん..君目を開けたまま気絶してないかい?微動だにしないね..まぁいいや、直球で聞きましょうか)

 

「あら、ご存知ない?霧の艦隊」

 

「知らないっぽい」

 

「知らないぴょん」

 

「・・・」

 

阿武隈が反応しない事に違和感を覚えた2人は阿武隈を見てとっさに叩き起こそうとしてヤマトに止められた。

 

「起こさなくて良いわ、ところで君たちは何処の所属かな?」

 

「パラオ泊地っぽい」

 

「ここから2時間くらいぴょん」

 

(パラオ泊地..するとソナーに引っかかったのはオチョクル戦隊確実かと見て良いか...島あるなと向かっていたのは鎮守府だったか、もう情報これだけでご馳走様ですですわー)

 

「パラオねぇ..最前線は今の所何処かかしら?

 

「?・・パラオ泊地っぽい」

 

「ぴょん」

 

「ふーん、君たちは最前線の所属なのねぇ..?」

 

(反応がイマイチね何か言いにくいことでもあるのか、まぁ鵜呑にするつもりは無いので良いか...先程から睦月からうめき声が...中破じゃなくて大破何じゃないかと思えてきた)

 

「ねぇ..先程からうめき声上げてる睦月は大丈夫なの?」

 

「中破状態っぽい、できれば早く入渠させたいっぽい」

 

「ぴょん」

 

ヤマトは迷っていた、過去の私なのか今の私なのか艦娘Love勢としての記憶が今の睦月をほって置けなかった。

 

(拉致してそのままお持ち帰りとか考えてたけど、今の睦月見ちゃうとねぇ...もういっそ開き直って鎮守府に堂々と突入するかな、うん、そうしよう。武力に出てきたら霧の力で殴り合ってやんよ..よし決まればパラオ泊地へ突入決定!)

 

「良いわ、パラオ泊地まで送り届けてあげる」

 

「!ほんとっぽい!?ありがとうっぽい!」

 

「うぅ~ちゃん~っありがとぴょん!」

 

会話をしていて駆逐艦の2名はヤマトが悪そうな人には思えず、パラオ泊地まで送り届けてくれる発言で良い人と認識されたのだ。

 

(ヤメテ!眩しい笑顔が私の黒い部分に突き刺さっるっ!。・・・良かったのよね・・さてこの編成で2時間か巡航速度で20分程で到着するわね)

 

「ねぇねぇ、あなたはヤマトっぽい?」

 

「そうよ」

(唐突にどうした夕立よ)

 

「前に見たことあるヤマトと全然ちがうっぽい」

 

夕立は過去に見たヤマトと、目の前にいるヤマトに疑問を持った..ぽい。

 

「・・・そうね、妖精と精霊の違いかしら?あなたが前に見たヤマトと私は全く別の存在よ」

(その気になれば艤装っぽいの作れそうだし、横の機銃のデータから小型ビーム砲(艤装ver)が作れそうね..)

 

「??よくわからないっぽい~」

 

「???」

 

横に居た卯月も理解していないようだ、かく言う説明した本人も特に考えず半分適当に話しているようだが。

 

「あなたが過去に見たヤマトと私は別人よ、あまり気にしないほうが良いわ」

 

「よくわからないけど、わかったっぽいー!」

 

(考えたら負けよ、艦これに当てはめると私は深海棲艦側だし..そろそろ移動しましょうか──浮上──回頭──パラオ泊地方面──

...ゆっくり加速しましょうか..ソファーから転げ落ちてしまう..──加速250knot固定)

 

「動き出したっぽい!」

 

「早いぴょん!」

 

「ぽーーーい」

 

動き出してはしゃいでいた駆逐艦2人組だったが次第に異常に気づいてきた、未だに加速し続ける戦艦に。

 

「・・・」

 

「まだ加速し続けるっぽい?

 

「ぴょおん」

 

恐る恐る窓際に近づいていく駆逐艦2名ご案内、窓から外を見た夕立と卯月の髪の毛が逆立った。

ヤマトは悪戯成功したような顔をしてクスクスと笑っている。

 

「ぽぉおおいぃぃい!?」

 

「ぴょぉうおおおうん!!」

 

「クスクス   」

 

「船が出してイイ速度じゃないっぽい!?」

 

「おかしいぴょん..おかしいぴょん..」

 

すでに固定速度250knotまで加速したヤマトは時速に換算すると460km程と新幹線より早い速度で海上を爆走していることになる。無論最高速度ではない。

 

「クスクス ..気にしたら負けよ」

 

「どれ位出してるっぽい..?」

 

「今の速度は..250knotね」

 

「ぽい!?」

 

「船の速度じゃないぴょん..瑞雲と同じくらいぴょん..」

 

「ヤマトは普通じゃないっぽい..」

 

「あと数分でパラオ泊地よ」

 

「早すぎるっぽい..」

 

「ぴょん」

 

「しかし阿武隈は器用ね、目を開けたまま寝るなんて」

 

目を開けたまま微動だにしない阿武隈に若干の恐怖を覚えるヤマトであった。

 

「寝てるんじゃなくて、気絶したっぽい..」

 

「ヤマトと居ると変な耐性が出来そうで怖いぴょん..」

 

「あら耐性付けたいなら私と一緒に来る?」

 

「え..遠慮しておくぴょん」

 

「あら、パラオ泊地見えてきたわよ」

 

(そろそろ減速して..どうしましょうパラオ泊地に突入して..とりあえず陸地にダイレクトアタックかましちゃいましょう!)

 

 

そこには青く綺麗な海、建物が夕日に染まり美しく見えた...が艦載機が飛び回ってる、警戒されているようだ。




ふふふ、ブルースクリーンいつでも来なさいとか考えてると来ないんですよね、まぁそんな頻繁にあったらノパソ投げそうですけど。


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大和ニ常識ハ無イ

執筆が少しなれてきました。

お気に入り数が増えてテンションが上がる私が居ます。

ありがとうございます。



パラオ泊地目視距離までやって来て30knotまで減速した超戦艦ヤマト、そのままの速度で突っ込んだら上陸して干からびるのが確実である。

艦橋ではヤマトと艦娘の一行、上空には艦娘の艦載機が飛び回っており非常に警戒されている雰囲気です。

重要拠点が深海棲艦や深海の艦載機を警戒してるのは当り前ですね。ヤマトの様な巨体です直ぐに気づかれました。

 

 

(上空の艦載機が凄く目障り、レーダーにちょこまかとぉ、ひじょーに不愉快ねぇ、しかしどうしましょう..この巨体で泊地に突入したら周辺一帯の建物に浸水か最悪倒壊するわね...)

 

「いや~な雰囲気っぽい?攻撃されるっぽい??」

 

「引き返したほうがいいぴょん..?」

 

「大丈夫よ、艦載機で爆撃されてもヤマトは傷つかないわ」

 

(クラインフィールドは自動っぽいし抜けても強制波動装甲があるわ・・しかし艦娘の攻撃受けてないので絶対とは言い切れないか..まぁ現状侵食系の攻撃でなければこのヤマトにダメージは入らないわね)

 

「もうヤマトめちゃくちゃっぽいぃ~」

 

「戦艦大和ってこんなにデタラメだったぴょん?」

 

(安心しなさいふたりとも..霧だけよ..たぶん)

 

口には出さないがココロの中で突っ込むヤマト、そしてヤマトは行動することに決定した。

 

「よし...突入」

 

「ぽい!?」

 

「落ち着くぴょん!」

 

「落ち着いてるわ」

 

(とりあえず湾内にはいって..どうしましょう?・・・港湾にドリフト接舷しましょう!そうと決まれば──前部サイドキック──正常──後部スラスター及びサイドスラスター──正常──よし..速力40knotまで加速)

 

 

攻撃されるんじゃないかと取り乱している艦娘2人と、周りの事など気にしない我が道を行くヤマトであった。

 

 

 

 

 

───パラオ泊地提督執務室───

 

 

(まったくタウイタウイの提督は潜水艦娘を酷使しすぎだ...青白い大型戦艦を見たぁ?電文を見たときには「はぁ?」と間抜けな声を出してしまった、持ってきた大淀にも見せたがあり得ないという事で一致した。しかし艦娘3名同じ報告をするというではないか流石に不可解だな、一応泊地周辺警備を増やすか..)

 

「大淀、警備の数を増やす。軽空3人追加して現状より広い範囲で泊地周辺上空及び周辺海域を常に監視する体制を整えてくれ」

 

「タウイタウイからの報告ですか?」

 

「それと、非番の艦娘にも直ぐに行動に移せるよう伝えておいてくれ」

 

「了解しました。では現在非番の龍驤、祥鳳、隼鷹をしますね」

 

「隼鷹・・飲んだくれてない・・・?、あいつの非番で酒瓶を持ってない日を見たことがないぞ」

 

「しかし他に現在いませんね、瑞鳳は現在間宮で夕食の準備をしていて、千歳、千代田、飛鷹は現在鎮守府外に出ています」

 

「・・・仕方ない隼鷹には警備が終わったら..この前贈答された日本酒あったなアレくれてやれ..龍驤と祥鳳には間宮券を..2人も酒の方がいいか..?2人は欲しがってる方で」

 

「了解しました」

 

「頼んだ」

 

 

大淀が退室し1人になった所で提督は今回の報告を整理していた。

 

(ふぅ、数日中に何も無ければタウイタウイの提督に艦娘を酷使してると抗議入れるか。しかし3名同じ報告をしてると...)

 

電文には潜水艦、イ-58、イ-19、イ-8が同じ報告をしており、超大型であり大型三連装砲が三基に大量の対空兵装、艦橋が中央に位置し煙突が一基船全体が青白く発光し砲身や電探等所々金色をしていると、そしてあまりにも異常な為帰還を選択し帰還途中に戦艦方向より探信音が響いてきたと。

 

(艦橋が中央にあり煙突が一基..大型の戦艦で煙突一基など大和型ぐらいだったはずだ..そして三連装砲三基..大和型以外心当たりねぇよ!・・うん明日抗議入れようそうしよう、いや視察に行くか。・・しかし青白く発光してるとか幽霊船だったりしてな)

 

 

 

 

───鎮守府───

 

「なんやぁーしょうしゅうって」

 

「タウイタウイから何かあったらしいですよ」

 

「なぁ~?この酒ぇ意外とイケるぞ~。りゅ~じょ~もどうよ~?」

 

「召集掛かってるんだから程々にしときぃ?」

 

「硬いこと言うなよぉ~」

 

「隼鷹さん非番でも酒は程々にと..」

 

 

 

 

 

───会議室───

 

「皆さん来ましたね、では会議を始めます。」

 

大淀は龍驤、祥鳳、隼鷹の到着を確認して早々と今回の事を説明するのである。

 

「今回タウイタウイの提督から海上に戦艦らしき大型船舶を目撃したと報告がありました。」

 

「ちょっとまてぇいや、戦艦なんて今どきどの国にもあらへんはずや」

 

「そうですね戦艦はどの国にもありません。それで提督はあり得ないと仰言っていたのですが一応との事で鎮守府周辺の警備を一時的に広げることに決定しました。」

 

「しっかし、戦艦かぁ」

 

「か~っ、幽霊船じゃねぇの?!目撃した子に話聞きたいねぇ~。」

 

「目撃したのはタウイタウイの艦娘で3名居ます、そして3名共同じ報告をしています」

 

「そらおかしいわぁな、3人共同じこといっとんけぇ?」

 

「はい、戦艦の情報は船体が青白く発光し砲身や電探等一部が金色をしているとあります」

 

「青白く発光した船体..金の装飾..随分とお洒落ですね」

 

「いや祥鳳..気になるとこそこじゃあらへんて」

 

祥鳳は静かに聞いていたと思ったら随分と違う事を考えていた、そこにすかさず龍驤が突っ込むいつもどおりの光景である。

 

「いいねぇ~いいねぇ~幽霊船探し!」

 

「それで提督から今回は召集掛かった3名には提督から日本酒か間宮券が提供されます」

 

「ちょっと待った!!どちらかということかい?」

 

「はい」

 

「 よーし!隼鷹さん出撃しちゃうよー!抜錨!」

 

「待ちなさい」

 

早速出ていこうとする隼鷹は大淀に止められた、説明してないのに何処に行こうというのか。

 

「では警備編成について説明します、編成は此処の3人で..簡単な資料を用意しました、こちらを」

 

 

{  泊地付近警備   泊地南側   泊地正面   泊地東側    20時終了  }

 

 

「このように泊地正面全体をカバーするので皆さん何処を警備するか決めてください」

 

「あったししょうめん~!」

 

「ほな、うちは南いこうかね」

 

「では、東を」

 

 

 

「編成完了しました、では只今より警備を開始してください」

 

緊急警備部隊の編成が滞り無く完了し、警備に入る軽空3人である。

もっとも、隼鷹は未だに酒瓶を持っており心配ではあるが。

 

 

 

 

 

 

 

───緊急警備隊───

 

 

─ 此方、龍驤異常なしやで~ ─

 

─ 此方、祥鳳異常なしです ─

 

 

 

 

 

─ 隼鷹応答せぇや ─

 

 

─ 隼鷹さん? ─

 

反応の無い隼鷹を訝しがる龍驤と祥鳳、すると連絡が帰ってきた。

 

 

─ うひゃあ!やっべー!幽霊船がこっちに向かってくる!全機発艦しちゃってー! ─

 

隼鷹の艦載機にはパラオ泊地へ一直線に向かっている戦艦が映っていた、そして異常な速度である。

 

─ ちょっ、隼鷹攻撃したらあかんで!さきに司令官に報告や!祥鳳司令官に報告しぃや! ─

 

─ 了解 ─

 

─ うちもそっちいくんけ、隼鷹!司令官から指示があるまで攻撃したらあかんで! ─

 

龍驤は祥鳳に司令官から指示を仰ぐように、そして自ら疑い半分で艦載機を発艦発艦させながら隼鷹の元に向かったのである。

 

そして艦載機を通して見たものは...。

 

 

 

 

 

 

 

「うせやろ・・・・これ大和やんけ・・・光りすぎや・・」

 

 

眼の前の異常を見ても突っ込みを忘れない龍驤。

艦載機を通して見えるそれは、速度を落として泊地に向かっている大和であった。

少し日が傾いており、大和の放つ発光がより鮮明に映るのである。

 

 

「祥鳳!司令に戦艦大和が泊地に向かってると報告や!」

 

 

 

─ 龍驤 ─ 今確認できる情報の報告を ─

 

「司令!現在、戦艦大和が泊地に一直線で向かっておる、どう見ても目的地が此処やでっ」

 

─ そうか ─ その大和は青白く光ってないか? ─

 

「青く光っておるっ、情報通りやでっ」

 

─ ああ ─ タウイタウイからの報告通りか ─ それとして攻撃は無しだ ─

 

「司令、様子見でいいんけ?」

 

─ 今の所はな ─ 此方から無線を入れるから応答次第だな ─

 

「アレ、応答するんかいな・・?どえらい光っとるでぇ」

 

─ あぁ ─ あと隼鷹に攻撃しないよう言っておいてくれ ─ 祥鳳は此方に居るから問題ない ─

 

「了解や」

 

 

提督と連絡を取り終えた龍驤はなんとも言えない気持ちになっていた、それは艦載機を通して見える光景にある。

夜間敵に狙ってくださいと言わんばかりに発光してるこの戦艦にある、更には船体が白く非常に高い視認性を誇っていた。

そして何故今までにこんなに目立つものが見つからなかったのかと。

 

 

「隼鷹?聞いとるけ?司令官から攻撃せず現状待機と命令や」

 

「 ひゃっはー!幽霊だー!」

 

─ 隼鷹さん、命令無視したら提督に禁酒を要求しますよ ─

 

「祥鳳様すんませんしたー!!」

 

「・・・ほな、隼鷹は祥鳳に任せるでぇ・・」

 

それでも絶賛戦艦のまわりを艦載機がぐるぐると回っている。

そしてここで戦艦に動きがあった..急に加速したのだ。

すでに龍驤の目には戦艦の出せる限界速度で航行してるように見えたが違ったのである。

 

「うそぉん!?このままじゃ止まれずに突っ込むんちゃうか!?」

 

咄嗟に司令官の元に居る祥鳳に連絡を入れた。

 

「祥鳳!戦艦が加速しおった!このままじゃ泊地に突っ込むでぇ!」

 

 

 

 

─── 執務室 ───

 

「提督っ!」

 

「どうした」

 

(祥鳳が珍しく慌てている..凄く嫌な予感しないなぁ)

 

そう普段落ち着いている祥鳳が慌ただしく執務室に入ってきて衝撃の一言を放った。

 

「隼鷹が幽霊船を発見したようです」

 

 

提督は頭を抱えた、あの真面目な祥鳳が幽霊船と言ったのだ。

それと同時にタウイタウイの提督から報告のあった戦艦を思い出した。

 

────しかし青白く発光してるとか幽霊船だったりしてな────

 

 

「まさか・・な、祥鳳通信機を貸してくれ」

 

「はい」

 

「じゅ(─祥鳳!司令に戦艦大和が泊地に向かってると報告や!)」

 

隼鷹に連絡を入れようとした所、重なるようにして龍驤から報告が来た。

 

(龍驤は戦艦大和と・・とりあえず情報だ)

 

「龍驤、今確認できる情報の報告を」

 

─ 司令!現在、戦艦大和が泊地に一直線で向かっておる、どう見ても目的地が此処やでっ ─

 

「ッ!・・そうか、その大和は青白く光ってないか?」

 

─ 青く光っておるっ ─ 情報通りやでっ ─

 

「ああ、タウイタウイからの報告通りか、それとして攻撃は無しだ」

 

(青白く光る戦艦とか普通じゃねぇよ!?そんなんに先制攻撃して何かありましたぁあ!なんて話にならない..)

 

─ 司令 ─ 様子見でいいんけ? ─

 

「今の所はな、此方から無線を入れるから応答次第だな」

(無線通じるのか・・?えぇい!ものは試しだ!)

 

─ アレ ー 応答するんかいな? ─ どえらい光っとるでぇ ─

(え?何どんだけ光ってるの?)

 

「あぁ、あと隼鷹に攻撃しないよう言っておいてくれ、祥鳳は此方に居るから問題ない」

 

─ 了解や ─

 

 

 

「「「・・・」」」

一瞬の沈黙が流れた。

 

 

「大淀、泊地全体に緊急戦闘配備の放送と警報入れてくれ」

 

「了解」

 

大淀は執務室を駆けて出ていった。

 

「祥鳳はこのまま待機」

 

「了解です」

 

─ 隼鷹?聞いとるけ?司令官から攻撃せず現状待機と命令や ─

 

─  ひゃっはー!幽霊だー! ─

 

「・・・・」

提督は頭を抱えた。

 

 

「・・・隼鷹さん、命令無視したら提督に禁酒を要求しますよ」

 

─ 祥鳳様すんませんしたー!! ─

 

─ ほな、隼鷹は祥鳳に任せるでぇ ─

 

(どうやら龍驤は諦めたようだ・・、さて不可思議な戦艦に無線を入れなくては...言葉通じるのか?光る船になんて入れれば良いんだ?本日はお日柄も..いや違うだろ、高圧的に出るべきか?そこの戦艦...反感買わない?ダイジョブ??てか今どのあたりに居るんだ・・?)

 

提督は謎の戦艦に対してどう声を掛けるべきか迷っていた、発光する戦艦に常識が通じるのかわからず頭を悩ませている。

そしてここで、祥鳳の無線から龍驤の通信が入った。

 

─ 祥鳳!戦艦が加速しおった!このままじゃ泊地に突っ込むでぇ! ─

 

「え”っ」

 

発光してる戦艦に常識は通じないのであった。



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泊地ニ突入スル大和

時系列メモ取りながら書いてるのですが、結局一話前のを読みながら内容合わせてるのよねと、どうでも良い事を悩みました。


「ぽい!?加速は良くないっぽい!?陸に突っ込んじゃうっぽーい!」

 

「大丈夫よ、問題ないわ」

 

「凄く嫌な予感しかしないぴょん!!」

 

(湾内まで1kmないかな40秒程と..その前に睦月と阿武隈をクラインフィールドで..艤装も囲っておいて、そこの走り回ってる2人はいいか..よし、湾内に障害物なし

─湾内突入─この船体が接舷できそうな場所は...そこ!右回頭最大っ─左舷サイドキック─右舷サイドスラスター起動出力20%─「ぽー!!「びょ!?」」・・ん?・・ダイナミック☆接舷!)

 

 

 

周りの艦載機を気にせず加速し40knotで湾内に突入し右側に見えた港湾に接舷することに決定。

間髪置かず右回頭で急激に船体が揺れたためかクラインフィールドで固定されてない夕立と卯月は浮き上がり、

前部左舷サイドキックと後部右舷サイドスラスターで急減速し斜めに航行しは始めたヤマト付いて行けず左側の窓に張り付いたのだった。

 

 

(よし、うまく行った最ッ高!ふふん~♪)

 

 

 

───ザァァアアア!!───

 

 

「あら、すごい水しぶきね」

 

「ぽ・・い」

 

「・・・」

 

港湾にぴったしとヤマトが高速で接舷したのだ、ヤマトと港湾で圧縮された水は開いてる空間である上部に勢い良く出たのだ。

ヤマトの船体よりも遥かに高く上がった水しぶき、それまた数キロ離れてても認識できるのでは無いかと言う状態である。

それと勢いよく窓に張り付いた2人だが卯月がついにダウンした。

 

「・・・艦載機が結構な数落ちたわね・・後で何か言われるかしら?」

 

「もう・・気にしないっぽい・・」

 

水しぶきで艦載機が落ちたらしい、それと夕立に耐性が付いたようだ。

 

(錨をおろして...どうしましょう? 提督が何処かに居るはず..何か行動を起こすでしょう、それまで待機ですね。・・・卯月床は硬いよ?)

 

「夕立、卯月を此方のソファーに寝かせなさい」

 

「了解っぽい・・」

 

「夕立も疲れてるなら寝なさい?」

 

「うんしょっ・・・違うっぽい精神的に疲れたっぽいぃ」

 

夕立はヤマトの座っているソファーに卯月を寝かせ、向かいのソファーである阿武隈の横に座った。

その光景はどこか疲れた人がすべての力を脱力してどっしりと座る光景であった。

 

(おや・・卯月が此方側に倒れてきた・・コレは少し横に..横に・・・膝枕キタコレ!)

 

ヤマトは倒れてきた卯月を膝枕し楽しんでいるのであった、一方夕立は死んだ目で天井をジーっと見ている。

艦橋では静かな空間が流れるのであった。

 

 

 

 

 

───執務室───

 

 

「祥鳳付いてこい!」

 

泊地に戦艦が突っ込むと聞いて提督は執務室から飛び出し大淀の元へ向かった

 

 

 

───通信室───

 

─バンッ─

 

「提督!?」

 

「大淀そのマイクよこせ!!」

 

提督は大淀からマイクを奪い取り息を大きく吸った。

そして大声で伝えるのである。

 

 

 

 

──泊地全体に告げる!直ちに高台へ避難しろ!──

 

 

──泊地全体に告げる!直ちに高台へ避難しろ!──

 

 

──これは訓練ではない!!──

 

 

──これは訓練ではない!!──

 

 

 

「はぁ..はぁ、位置的に此処は大丈夫か..」

 

「あの..どうされたのですか?」

 

大淀は戦艦突進の無線を聞いていないので理解が追いつけずにいた。

 

「ああ、戦艦がここに突撃してくるようだ」

 

「え・・」

 

大淀は非現実的な事を聞き若干思考がフリーズした。

此方を攻撃するつもりなら既に砲撃してるはずだが、しかし此処に用があるなら何故突撃を?と。

 

「突撃ですか..?」

 

「ああ、龍驤から戦艦が加速したと報告があった」

 

 

 

 

 

───食事処間宮───

 

「瑞鳳さんそちら元栓全部止めてください!」

 

「間宮さん完了です、鳳翔さんっ」

 

「大丈夫です」

 

食堂では慌ただしく避難をしていた。

 

「皆さん付いてきてくださいっ!瑞鳳さんと鳳翔さんはサポートお願いしますっ」

 

「了解ですっ」

 

鳳翔は頷くだけで返事をした、口数の少ない彼女だが真剣になると更に少なくなる。

そして非番でやることがなく早くから食堂に来ていた艦娘達と避難を開始しようと建物から出たときであった。

遠くで巨大な水柱が上がった100mは軽く超えているだろう水柱が空に上っている。

 

「え・・・何アレ」

 

「「・・・」」

 

他の艦娘も気づいたが言葉にならないようである。

まさに白昼夢である、明らかに規模の可笑しい水量が空に上ってるのだから。

 

 

 

 

───通信室───

 

 

「ッ!ここの窓から湾内が見えたよな!」

 

「はい!」

 

提督は内窓を開け木でできた外扉を勢いよく押し開けた、その先には現実離れした光景が広がっていた。

光り輝く戦艦が明らかに可笑しい速度で湾内に侵入する所であった。

 

「アレは何を考えている!?湾内で座礁するきか!」

 

「大和・・」

 

祥鳳は目を閉じている、この異常事態にお前は落ち着きすぎだと心の中で思う提督である。

そして戦艦はあり得ない機動性を見せるのである。

 

「なっ・・」

 

「・・・・」

 

光る戦艦は物理法則無視したようなありえない機動でドリフト接舷したのであった。

その際に一瞬だけ艦橋から見える顔が光る幽霊船を際立たせていた。

 

「提督?あれは幽霊船ですよね??」

 

「いや幽霊船はあんな接舷するか?」

 

「しかし、接舷した一瞬だけ顔を見せしたよ、しかも2人の」

 

「・・しかし幽霊船にしてはロマンチックだな、光輝いてるしご丁寧に虹まで作ったぞ」

 

「提督・・」

 

どうやら理解の限界を超えると一周りして落ち着くようだ。

2人の眼の前には規模の可笑しい水柱による大きな虹が広がっていた。ロマンチックである。

そこですかさず祥鳳が突っ込みを入れる。

 

「提督、現実逃避は程々にしてください」

 

「・・ああ」

 

(どうすんのあれ、非常識な接舷決めやがったぞ・・すんげぇ行きたくないんですけど。はぁ・・膠着してても仕方がない)

 

「大淀、直ぐに武装できる者を集めて、あの戦艦を包囲してくれ」

 

「かしこまりました」

 

(さて幽霊船と接触だぁ..その前に執務室で武器を回収しないと)

 

 

 

 

 

───工廠───

 

 

「キャーっなんでこんな所に津波がぁあああ」

 

「データがぁああデータがぁあああ!?」

 

機材が濡れて発狂してる工作系艦娘2人である、そこへ大淀が突入してきた。

 

「現在動かせる艤装は!?」

 

「お”お”よ”どーおぉお」

 

「データ・・データ・・ふふふ・・・ふふふふ」

 

「そんなことはどうでも良いです!今すぐ動かせる艤装はありますか!?」

 

「うぅ~ありますけどぉ」

 

「今すぐトラックに積み込んでください」

 

大淀は動かせる艤装だけをトラックに積み込んで艤装の合う艦娘を拾っていこうと考えていたのだ。

数分も掛からず艤装を積み終わり艦娘が居るであろう場所に適当に走り回っていたのである。

 

「なんですか・・あれ」

 

「わかりません、予想では幽霊船かと」

 

「幽霊船・・?」

 

「どう見ても戦艦大和にしか見えないんですけどぉ」

 

「戦艦はドリフトできますか・・?」

 

「え?」

 

「あの戦艦は高速で湾内に侵入しドリフトしながら港湾に接舷しました」

 

「へ・・あの?えっと色々と意味がわからないんですけど」

 

「つまり・・戦艦が侵入した上にありえない機動で接舷したので私の機材が濡れたと・・」

 

「!?」

 

「大体そのとおりです」

 

「「ふふふ・・・どう落とし前付けてくれようか」」

 

明石と夕張は不吉な事を考えるのであった。

 

 

 

 

 

───ヤマト戦艦左舷付近───

 

 

(さて、イカれた方法で接舷してから何も動きが無いわけだけど、これ無人何じゃねぇの?人気全然ねぇー、マジ幽霊船じゃないよね?)

 

「さて、タラップ掛けてくれ..乗り込むぞ」

 

「はい」

 

(銃ぐらい持ってても良いよね?だってここ僕の鎮守府だし..?勝手に乗り込んできたんだからいいよね?)

 

妙なことを自問自答してると、祥鳳がすでにタラップを掛け終えていた。

 

「提督、どうぞ」

 

「え、僕が先に行くの?この状況って護衛が先に行くもんじゃない?」

 

「提督はそんなに見たいのですか?」

 

祥鳳はスカートを手でヒラヒラさせながら言った、それを見た提督は無駄に高い位置にある甲板をみてバツが悪そうな顔をした。

 

(なんてこった・・なんでスカートなんだよ・・って艦娘でスカートじゃないのって潜水艦ぐらいじゃねぇの?)

 

「うん・・先行くよ・・」

 

かくして、提督はなんと言えない気持ちでタラップを登るのであった。

 

 

 

 

───ヤマト甲板───

 

 

(ビクビクしながら甲板覗きながら登ったんだけど、何もなくてよかった、嫌よくない・・何これどうなってんの?なんで光ってんの?もう帰りたい・・)

 

「よし..行くか」

 

「・・・」

 

(・・・なんか祥鳳の視線が妙に気になり始めたぞ?スカートの辺りから・・祥鳳さんその半開きのめがすごい気になるんですけど、なんで半開きなのか教えてくれないかなぁ??)

 

 

──ガッコンッ──

 

 

「ッ! 」─カチッ─

 

「・・・」

 

水密扉が開き反射的に銃を構えた提督だが、祥鳳は無反応である。

 

「誰も居ない?」

 

「人の気配はしませんでした」

 

「勝手に開く扉・・本当に幽霊船だったりしてな・・」

 

(入れってかぁああ!?独りでに開かないで!?やめて!!扉の形状がどう見ても手動でしか操作できなさそうな扉なんだけどぉ!?・・っは!?祥鳳よ何故僕をじーっと見るんだい?周り警戒しよ?)

 

「行くか・・」

 

「はい」

 

 

──ガッコンッ──ガッコンッ──

 

(めちゃくちゃ誘導されてます!これやっぱり幽霊船!?いやいやいや水密扉..どう見ても独りでに動く形状してないよね・・)

 

「これ幽霊船だと思わない?」

 

「思いません」

 

「・・・・」

 

 

 

───チリン───

 

(エレベーターが目の前で開きました、乗れってか、此処まで来たら行くしかないよねー・・)

 

「行こうか」

 

「はい」

 

 

 

───チリン───

 

 

 

 

 

 

 

────ようこそ────霧の超戦艦ヤマトへ────

 

 

 



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大和ト提督ノ会話

メインPCのOS用SSDが逝きました。
SSDは故障の予兆が無いので怖いですね。


執筆にはノートパソコン使用してたのでデータは大丈夫です。


PCの復旧が終わるまで更新頻度が下がると思います。


(ふふ・・ふふふふ・・・卯月ちゃん凄くお持ち帰りしたいわぁ!)

 

ヤマトは卯月を膝枕してからずっと頭を撫でていた、メンタルモデルの影響か動きにくい表情が幸いしていた。きっとこの体でなければニヤけていたであろう。

一方先程まで天井を見つめていた夕立は、ジーっとヤマトの顔を見つめていた。ヤマトのから慈愛の様な雰囲気が伝わって来たからだ。

・・ヤマトは言葉に出しては憚られる様な事を考えてるとは知らずに。

 

 

「あら、どうしたの?」

 

「!・・なんでもないっぽい」

 

夕立はヤマトから視線を逸してしまった、それから夕立は何処と無くソワソワしていた。

 

「そう・・」

 

(あら、妙なこと考えてるのバレたかしら・・)

 

それでもヤマトは卯月をナデナデしていた。

 

 

 

 

───提督乗艦───

 

 

(!..タラップが接触したわ..──ふふっ挙動不審な提督..笑えるわ..このまま艦橋まで案内しちゃいましょう)

 

心の中で笑っているヤマトも流石に表情に変化が出たのか、微かに笑顔見せていた。

そして夕立は表情の変化に気づいて自然と逸した視線をヤマトへ戻していた。

 

「夕立・・?」

 

「!・・ぽぃぃ」

 

(顔に何か付いてるかしら・・?出てきなさい鏡っ──・・何も異常は無いわね...今更になって自身の顔を見たわ・・うんヤマトね)

 

夕立は顔を赤くして俯いてしまった。

ヤマトは手鏡を作り出して自分の顔を見ていた、問題ないことを確認すると手鏡を消滅させ卯月を撫で始めるのであった。

 

(提督っ面白いわっ!扉開けるたびにビクビクしてっ..くくくっ...エレベーター開けてっと・・。夕立?そんなにチラチラ見てきたら凄く気になるのだけどぉ?教えてくれなさそうねぇ)

 

 

 

 

────ヤマト艦橋────

 

 

──チリン──

 

 

「ようこそ、霧の超戦艦ヤマトへ」

 

提督と祥鳳が艦橋へやってきた、提督は銃を構えているがヤマトは全く気にしていない。

艦橋に入った提督が最初に目に映ったのは睦月である。

 

「!睦月ッ」

 

「大丈夫よ、寝ているだけだわ」

 

「!?お前は・・」

 

提督はヤマトに銃を向けるが彼女は全く気にしていない。

それもそのはず船体が無くても戦艦の主砲を受け止める自信があるのだから。

 

「ヤマトよ?..貴方はパラオ泊地の提督でいいかな?」

 

「そうだ・・・君はこの戦艦の艦長か?」

 

「んー、半分正解・・この戦艦そのものと言って良いわ・・・だからヤマトよ?」

 

「は・・?」

 

 

提督は理解していなかった、この戦艦そのものと言う発言で本当に幽霊船では?と思い始めていた。

 

「うーん..そうねぇ?艦娘風に言うなら..この戦艦本体は私の艤装よ」

 

「!?・・」

 

「さて、立っていないで座ったらどうかしら?」

 

ヤマトの衝撃発言に目を見開いた提督、そんなの気にしないヤマトは提督の目の前にソファーを作り出した。無論地面からせり上がってくるように見せた。

こうして艦橋内はテーブルがソファーに囲まれる配置となった。

 

「ッ!!」

 

「・・」

 

ソファーの出現に流石の祥鳳も目を見開いた。

 

「さぁ、座ってはいかがかしら?。それと、そんな玩具では私に何も出来ないからしまいなさい」

 

「君は・・幽霊なのか・・?」

 

「クスクス..皆まで私の事幽霊扱いするのね?君たちからしたら精霊か妖精と言ったとこじゃないかしら?」

 

「妖精・・」

 

 

「 ─とりあえず、座りなさい?─ 」

 

 

艦橋に入ってから突っ立っていた2人も、突然の雰囲気の変化に大人しくソファーに座るのである。

祥鳳は普通に座ったのだが、提督はソファーをチラチラ見ながらゆっくりと座っていた。

 

「さてと何から話そうかしら?」

 

「君の何の目的で此処に来た?」

 

「ヤマトよ、そうねぇ海上でこの子達拾ったから、ここに連れてきたの。ほら睦月ちゃん怪我しちゃってるし?」

 

「そうだ睦月ッ!」

 

「落ち着きなさい、夕立?阿武隈起こして..祥鳳と阿武隈で睦月を連れていきなさい」

 

立ち上がろうとする提督をヤマトは止め、寝てる阿武隈を起こし祥鳳と連れて行くように指示した。

そしてヤマトは未だに卯月をナデナデしていた、そんな提督は卯月を見て複雑な気持ちになっていた。

 

「阿武隈起きるっぽい!ぽいっ!」

 

「うぅ...ん?・・ひぇ、やだっ幽霊!?─スパーン─」

 

「幽霊じゃないっぽいっ!」

 

「うぅ~、夕立ちゃんっ」

 

夕立に起こされた阿武隈は目の前のヤマト見て幽霊と言い夕立に頭を叩かれたのである。

ヤマトはその光景みて一番キレが良かったのでは?と妙なことを思っていた。

 

「阿武隈と祥鳳?そこで寝てる睦月を入渠へ連れていきなさい」

 

「提督・・?」

 

「構わない、連れて行ってくれ」

 

祥鳳は提督に確認し提督は許可を出す。

阿武隈と祥鳳により連れて行かれるのであった、これまたエレベーターに水密扉と外まで全自動である。

そしてしばしの沈黙が艦橋に流れていたが、提督が口を開いた。

 

「卯月は寝ているのか?」

 

「そうね、疲れてたみたいよ?」

 

「そうか・・」

 

提督は夕立に卯月を連れて行かせるか考えたが、自身1人になるのを避けるためにあえて何も言わなかった。

夕立は誰かの荒い操船のお蔭で窓に頭ぶつけて気絶したんです、と言いたかった。

 

「君の目的はこの子達を此処に届けるためだけか?」

 

「ヤマトよ覚えなさい。・・そうねぇ、この子達届けるのとぉー・・他には何も考えてないわ」

 

「そうか、感謝する。それと君は一体何者だ?」

 

「ヤマトよ」

 

「そうじゃない、君は一体なんなのか」

 

「私の名前はヤマトよ」

 

「ヤマトは一体何者なんだ?」

 

名前を覚えない提督に答えるつもりの無いヤマト。

 

「うーん・・妖精?」

 

「曖昧だな」

 

「そうねぇ...精霊?」

 

「答える気は無いと・・?」

 

「私自身よく分からないもの」

 

やっと答えてくれたことに、艦娘のドロップの様なものかな?と考える提督である。

 

 

 

 

───ヤマト戦艦左舷付近───

 

 

タラップから降りてきた睦月の両肩を支える阿武隈と祥鳳、目の前には長門や時雨、皐月が駆けて来た。

 

「睦月ちゃん大丈夫!?」

 

「ふわっ、わっ、わっ、どうしよぉ~」

 

「これは一体どういうことだ」

 

三人駆け寄ってきた時雨が一番心配してるようだ、皐月は何しに来たのか。

祥鳳は運良く来てくれた戦艦である長門に睦月を連れてってもらうことに決めたのだ。

 

「長門さんそれより睦月ちゃん担いでくれませんか?」

 

「う..うむ、違う!これは一体どういう状況だということだ!」

 

「戦艦大和が鎮守府に突撃してきました。なので睦月ちゃんを入渠に連れてってください。」

 

「いや、そうではなくて・・」

 

「入渠へ連れてってください・・は・や・く」

 

「あ・・あぁ・・」

 

祥鳳は有無を言わさず長門に睦月を入渠へ連れてくよう指示した。

長門は睦月を担いで走っていった、そして阿武隈も行くように指示される。

 

「阿武隈さん、貴方も入渠へ行ってください濡れたままでは良くないです」

 

「阿武隈、了解です!」

 

「皐月さんは睦月の付き添いで行ってください。あと長門の監視を」

 

「了解だよ!」

 

「僕も睦月ちゃんの所に行くよ・・」

 

阿武隈は怖かったのか敬礼し、後を追うように皐月と時雨も走っていった。時雨は長門の何かを知っているようであった。

そこへ大淀がトラックでやってきた明石と夕張も居るようだ、他の艦娘は見つからなかったようである。

 

「祥鳳さん!現状報告をっ」

 

「はい、現在艦橋には提督、夕立、卯月が残っています。そしてこの戦艦の主で名は「ヤマト」と言うようです。他は阿武隈と睦月が入渠に向かいました。」

 

「ヤマトですか・・?この戦艦もヤマトですよね?」

 

「はい、本人によるとこの戦艦は艤装の様なものと言っておりました」

 

「えぇぇえぇえええ!?この戦艦が艤装ですかあああ!!?これは調べがいがアリそうデすネェェ!!」

 

「ふっ・・ふふふゥう・・・データを・・ぜひ!データヲァ!欲しイですねェ!!」

 

大淀は信じられないことを聞いたと固まっていたが、左右から明石と夕張の発狂で我に返るのであった。

マッドサイエンティストじみた2人はヤマトへ勢い良く走っていった。

 

 

 

──ゴッ──

 

 

「「ブッッ」」

 

マッドサイエンティスト拗らせた2人は光の壁に衝突した。クラインフィールドである。

張ったのは誰でもないヤマトである、彼女は船外にも目を向けており目を血走らせた2人が猛スピードで走ってくるのだ、若干の恐怖を覚えクラインフィールドを張ったのだ。

そして2人は何もない空間で壁にぶつかる様な衝撃など想定もするはず無く、クリティカルヒットでダウンしたのだった。

 

「「・・・」」

 

 

 

「これは・・結界ですか?」

 

「そのようですね、私が乗り込んだ際には何もなかったのですが」

 

「え・・提督大丈夫なんでしょうか・・?」

 

「恐らく大丈夫でしょう、悪意を持った方には見えませんでしたので」

 

「そ..それだけで判断するのは如何かと・・」

 

「大丈夫でしょう」

 

祥鳳は卯月を膝枕し撫でている彼女を見て思ったのである、悪意など持っていれば膝枕や近くに置くことなどしないと。

だがヤマトの心の中を覗けば真っ黒である、外見はピカイチなのだがヤマトを知るものが見たら言うだろう外見で人は騙せると。

 

「では現在提督とヤマトが交渉中と言った所ですか・・ヤマトの目的は?」

 

「聞いた限りでは海上で遠征隊を拾ったので此処へ連れてきたそうです」

 

「はぁ・・随分と親切なんですね・・それだけですか?」

 

「えぇ、他は分かりません」

 

「わかりました、では私は行きますね」

 

 

大淀は情報を得るためにヤマトへ乗り込むのであった。

光の壁へ近づき、手を当てて本当に壁があるようだと思いどうやって入ろうかと考える大淀。

横にはマッドサイエンティストの2人が転がっている。

 

「祥鳳さんこれどうやって入ればいいですかね」

 

「素直に、入れてください、とでも言えば良いんじゃないでしょうか?」

 

すると眼の前にある光の壁が一部消えた、その通りであるらしい。

 

「・・・」

 

「どうやら合っていました」

 

「・・・・私は行きますね、祥鳳さん周りの人達に周知をお願いします」

 

「はい」

 

無事にクラインフィールド内に入れた、大淀はなんか不理屈だと心の中で突っ込むのであった。

 

 

 

 

 

───ヤマト艦橋───

 

 

先程から卯月を撫でてる様子を見るに、敵対的ではないようだ。

ドロップと一緒なら行く宛が無いはずと考えた提督はヤマトに提案した。

明らか異常ではあるがこれが戦力になるならと打算も入っていた、色々と挙動付番であったりするがこれで提督である。

 

「ふむ・・なら「断るわ」・・・まだ話してないのだが?」

 

「私がほしいのでしょ?」

 

「・・・」

 

早速一歩目で挫いた提督。

提督は目を閉じてどうにかしなければと思案に耽っていた。

そして、結構穏健な感じなので少し強めに出てみるかと考えていたのである。

 

「どう見ても君の戦艦は異常だ、この国いや世界中が欲しがるだろう」

 

「そうね、それとヤマトよ」

 

「今の世界では海上を航行するには艦娘一個小隊は組まなければ安全に移動できない」

 

「そうなの?」

 

ヤマトは予想通りの言葉が出てきた事に特に何も考えていなかった。

 

「そのなか君は艦娘を船内に入れて此処までやってきた、あの速度に機動性それに武装も飾りではなのだろ?」

 

「 ─ヤマトよいい加減覚えなさい、次に君と呼んだら叩き出すわ─ 」

 

「あ・・あぁ」

 

「そうね、私の武装は深海棲艦にも有効よ」

 

「!」

 

「でもね?これだけは絶対よ、私は誰にも従わないわ。力をもって従わせようとするなら力をもってお返しするわ」

 

それにヤマトは目的がある、艦娘を見てから目的が出来たのだ。

艦娘が欲しいと、ならば自身が提督になればと考えたが誰かの下に付くと思うと虫唾が走るのであった。

 

「そうなれば・・世界中からお尋ね者に・・」

 

「なると思うかしら?ふふふっ」

 

「・・・」

 

「もう一つ教えてあげるわ」

 

 

 

─私、核の爆発でも耐えるわよ?─

 

 

 

提督は何も聞きたくない思いであった、核の爆発であれば深海棲艦にもある程度ダメージが与えられるのである。

現に護衛なしでこの鎮守府まで来た様子から、本当に耐えるのではと思い始めている提督。

 

「武装も特別よ?特に主砲とか」

 

「・・・」

 

言葉を破棄した提督であった。

超重力砲の事であるのだが夕立がビクッと反応した、勘違いも仕方がない通常大和の主砲は46cm三連装砲なのだから。

提督は夕立の反応が気になり声を掛けた。

 

「どうした夕立?」

 

「!・・ぽ・・ぽぃ」

 

「夕立は見たものね」

 

「もう..見たくないっぽいぃ..」

 

「一体何を見たんだ・・」

 

「簡単な事よ、深海棲艦に向けて撃っただけよ」

 

 

夕立がガタガタと震えだしてしまった。

 




ヤマトと提督の会話時の視点を全体にしてみたのですがどうでしょう。


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大和ハ上陸スル

メインPCは他も殺られてました。過電流でも流れたのですかね?

そんなこんなで、投稿に時間かかりました。




 

大淀は1人で来たことを後悔していた、ヤマト艦内では自動で開く水密扉にエレベーターと本当に幽霊船なのでは?と考えていた。

通信室の窓から2人の顔が一瞬見えたが幽霊は双子?と要らぬことを考え始めSAN値直葬である。

 

 

───チリン───

 

大淀は目の前に広がる別世界に一瞬固まったのだ、白すぎる..と。

室内を見渡し提督が居ることに安心しつつ1人知らない人が居る、大和では?当たりをつけた。

ヤマトはというと未だに卯月を撫でている、卯月は心なしか安心しているように見える。

 

「!」

 

「いらっしゃい、大淀」

 

「貴方が大和ですか?」

 

「そうよ、もう伝わってるのね」

 

「夕立は震えてますが何かあったのですか?」

 

「濡れて冷えちゃったのよねー?」

(私が水かけましたそれはもうたくさん、ところで大淀?そのスカートどうなってるんだい?風通し良さそうね)

 

「ぽいぃ」

 

夕立が怯えてる理由は別であるのだが、ヤマトは気づいているようだ。

艦橋へ入ってきた大淀の腰の辺りから見える肌が気になっていた。

 

「大淀も来たし入渠へ行ってきなさい」

 

「了解っぽい~」

 

「なら卯月も連れて行ってくれ」

 

「ぽい~」

 

「あら、残念ね」

 

提督は若干悩んでいた夕立がヤマトに従うと、艦娘は基本的提督の素質を持つものにしか従わないのではなかったか?と。

大淀が居れば安心だし、卯月もこのまま出してしまおうと。

卯月を撫でているヤマトは残念がっている、そしてヤマトの発言を誰も理解していなかった。

 

「ほーら、卯月起きなさい」

(・・これは起こすためにと卯月を弄るチャンスでは!?・・・チッ..残念皆こっち見てるわね)

 

「卯月起きるっぽいー」

 

「うぅ・・ん、・・ぴょ!?何処ぴょん?ここっ」

 

「ついたっぽい・・」

 

それでもヤマトは卯月の頬を摘んで起こしていた、一方夕立は卯月を揺さぶっている。

卯月は最後の記憶を思い出し慌てて飛び起きた。

 

「無事・・ぴょん?・・司令ぴょん!」

 

「ああ、卯月無事で何よりだ」

 

「ふたりとも入渠してきなさい?」

 

「了解ぴょん!」

 

「行くっぽい・・」

 

夕立は疲れているのか元気が無いように見える、一方卯月は寝ていたのか元気であった。

 

 

───チリン───

 

 

「!」

 

やはり全自動である。提督は慣れないのか先程からビクビクしてるのであった。

夕立と卯月は既に慣れていた、そしてそのまま退室していく。

 

「さてと、他の者は居なくなったわよ?」

 

「・・この後は何を?」

 

「今の所無いわねー、しばらく此処に居ようかしら?」

 

「それは・・」

 

提督には不都合だらけだ上になんと報告したら良いか、黙っている訳にも行かない..こんなに目立つ戦艦バレるに決まっていると。

ヤマトは艦娘とただ戯れたかっただけである。

そしてここで、若干現実逃避をしていた大淀が口を開いた。

 

「貴方は今まで何処で何をしていたのですか?」

 

「そうね、目が冷めたら海上に居たわ」

 

「!・・貴方は・・艦娘なのですか?」

 

「私は・・・霧よ艦娘ではないわ」

 

大淀はまさか艦娘かと思っていた、世界で初めて確認された艦娘は

{ 気づいたら海上にいた }と記録に残っていたからだ。

しかしヤマトは違う自身の身体が霧であるのは確認済みであり、

ヤマトの船体がある。

 

「そうですか・・行く宛が無いのでしたら「提督に言ってあるわ」・・・そうですか」

 

「そうねぇ、今日は此処までにしましょう。周りに艦娘たちが集まってきてるわ..説明しないといけないのではなくて?」

 

 

 

───チリン───

 

(くくくっ・・提督っ愉快だわ、あなたぁ?いじりがいがありそうねぇ?)

 

ヤマトはビクビク震える提督に何か良からぬことを思いつくのであった。

 

 

 

 

 

───港湾ヤマト前―――

 

 

そこには食事処に居た艦娘たちが集まっていた。

 

「これは一体・・?」

 

それは誰が言ったのか、彼女たちは目の前の存在に圧倒されていた。

日が傾いて夕焼けが綺麗になり始めた今は周りは暗くなっており、眼の前に停泊してるヤマトが物凄く発光して見えるのだ。

 

「あら、あらあら。大和じゃないの]

 

「姉さま、私..また大和に会うことが出来ました・・」

 

「大和じゃ!筑摩よ大和がおるぞっ!」

 

「ええ、しかし何故大和が此処に?」

 

大和と一緒に編成された事のある者は何処かズレた認識をしているようであった。

 

「すっげー!大和超イケてるじゃん!」

 

鈴谷に至ってはスマホで写真を撮りまくっていた。

そしてそのまま何処かに走り去ってしまった。

 

「皆さん良い所に。現在提督がヤマトに接触しています、なので現状は待機となります」

 

「えっと・・アレに提督が乗り込んでるのですか?」

 

「はい」

 

「そう・・ですか、大丈夫なのでしょうか・・」

 

「大丈夫でしょう」

 

祥鳳は丁度良い所にいると駆けてきて現状を伝えるのである。

鳳翔は提督があの光ってるヤマトに乗り込んでる事に驚きをと不安があった。

 

「しかし、ヤマトですか・・何の目的で来たのでしょうか・・」

 

「提督ぅ、大丈夫かなぁ~」

 

「遠征隊を海上で拾ったのでここに送り届けたそうです」

 

「遠征隊ですか、今出てるのは・・」

 

「第三隊の夕立、阿武隈、睦月、卯月ですね、提督と私が乗り込んだ時には全員居ました。」

 

「全員無事なのですか・・?」

 

「えぇ、睦月が中破していたのですが、先程入渠へ連れていきました」

 

「おべんと、作ったほうが良いかな~?」

 

「!・・そうでした、皆さんの食事を作らないといけませんね。私達は戻ります瑞鳳さん、鳳翔さん」

 

「は~い」

 

「そうですね、遅くなってしまいます早く作りましょう」

 

異常事態にすっかり食事処の事を忘れていたが、一応の問題は無いと分かると3人は食事を作りに戻るのであった。

 

「君たちも聞いていまし・・・」

 

祥鳳は固まってしまった。

 

「あら、あらあら!長門にも見せてあげないと~」

 

「山城よっ、我輩とヤマトを一緒に撮ってくれ」

 

「良いですよ、・・はい、ちーず」

 

「ちくまー、筑摩も一緒に入るのじゃ」

 

「もぉ、利根姉さんったら」

 

「姉さま・・不幸だわなんで此処には居ないの・・」

 

「山城よ、早く撮るのじゃー」

 

「姉さま早く来てください・・・・・はい、ちーず」

 

皆話を聞いていないどころか、スマホを持って写真を撮っていた。

どうやらこの鎮守府では皆スマホを使えるようである。

 

「・・・」

 

祥鳳は諦めた。

そこへヤマトからタラップを伝って夕立と卯月が降りてきた。

 

「!・・夕立さん卯月さんっ」

 

「疲れたっぽい~」

 

「すごかったぴょん!速かったぴょん!」

 

「2人とも話を聞きたいところですが・・・入渠して来た方が良いですね」

 

「行ってくるぴょん!」

 

「ぽい~」

 

夕立は非常に疲れた様子であり、対象的に卯月は非常に元気であった。

 

 

 

 

―――ヤマト艦橋―――

 

 

「では、僕たちは戻ります・・」

 

「えぇ」

 

 

 

──チリン──

 

 

「・・・」

 

 

「・・・・」

 

「あの・・」

 

「何?」

 

「ヤマトさんは・・?」

 

「私も行くわ」

 

「・・・」

 

提督はヤマトの行動に頭を悩ませるのである、ヤマトはというと艦外に見えてる艦娘と戯れたいと言う一心だけであった。

 

 

 

 

 

───港湾ヤマト前―――

 

 

そこには提督と大淀、そしてヤマトがタラップを伝って降りてきた。

 

「提督に・・ヤマトさんもご一緒ですか?」

 

「・・ああ」

 

「えっと・・ヤマトさんは・・」

 

「応接間に案内してくれ・・」

 

「・・案内お願いします」

 

祥鳳は提督がヤマトを止めることは不可能だと判断し、大淀に目を配せたが大淀も無理なのかと思ったのである。

 

「ではヤマトさん・・・」

 

居ない。周りを見ると陸奥達の方に居た。

 

 

「んー、陸奥に山城と利根筑摩ね!」

 

「あらあら?。貴方が・・ヤマト?」

 

「そうよ」

 

「ヤマト・・?前にあった大和とぜんぜん違うのじゃ!」

 

「あの・・本当にヤマトさんですか・・?」

 

「・・・」

 

前にヤマトと会ったことのある者はヤマトの見た目と雰囲気が全く違う事に困惑している。

それ以前に光る戦艦のヤマトである。

 

「私は霧のヤマトよ、あなた達の知ってる艦娘の大和と別よ」

 

「あらあらあらー?艦娘ではないの?」

 

「そうね。『人と艦娘』の違いと同じよ『艦娘と霧』その様なものよ」

 

「ほえー、霧とはどういう存在なのじゃ?」

 

「感覚的には妖精と精霊の違いみたいなものだと思うけど、私も良くわからないわ」

 

大和には過去の記憶があり艦娘と言う存在と霧という存在をある程度知っているのだが、厳密的に言うとどうなんだ?と考えて居た。

記憶からすると艦娘はファンタジーに足突っ込んでる存在で、霧は超科学が生んだ存在だと思っている。

 

「あのー・・ヤマトさん?・・応接間に案内するので来て頂けません?」

 

「あら、残念ね。また後でお話しましょ?」

 

「了解なのじゃ」

 

「あらあら、またね」

 

祥鳳がやってきて応接間に案内されるのであった、終始無言だった山城は最後も無言で会釈するだけで終わった。

ヤマトは陸奥を心の中で「あらあら教」と呼ぶことに決めた、一方のじゃロリに足突っ込んでる利根はロックオンされるのであった。

 

 

 

 

―――応接間―――

 

 

ヤマトの前には紅茶が出されているが、これは飲んで平気なのか?と考えていた。

 

「・・・」

(この体って食事って出来たかしら?・・・できるのね・・)

 

「ヤマト・・済まないがあの光どうにかならないか?」

 

提督はそう言い窓の外を見る、もう日が暮れて太陽が沈みかけている。

そしてそこには光り輝く戦艦ヤマトが鎮座していた。

 

「そうねぇ」

(あれってどう光ってるの・・?・・・あら・・・固有色?変えられるのねぇ)

 

「・・・」

 

すると窓から見えるヤマトの青白い発光が、赤に変わった。物凄い威圧感である。

反応を楽しもうとしたヤマトだが提督は無反応であった。

 

「言い方が悪かったようだ・・あの光消せないか?」

 

「嫌よ」

 

「嫌って・・、あの・・・ちょっと・・目立ちすぎるかなーと思うんですよ」

 

「アレは私のアイデンティティよ、消すなんてもっての外だわ」

 

「えっ・・えっと、あのーね?ほら艦娘たちも気が散ったりし「わかったわ」・・えっ」

 

明らかに考えながら話していたようである苦し紛れの説得?が成功して安心する提督であった。

それと同時にヤマトは艦娘に弱いらしいと理解した。

そしてヤマトの発光は消えたのである、艦首のイデア・クレストを除いて。

 

「アレだけは消さないわ、絶対に」

 

「うん・・助かるよ」

 

「紅茶・・良いわね」

(食事が必要無いから味覚も無いのかと思ったけど、普通にあるわね・・・美味しい)

 

「えっと・・とりあえず、君  ―ゴッ―  ンゴォォッ  」

 

「提督!?」

 

提督はソファー諸共後ろに倒れた、顔にクラインフィールドが飛んできたのだ。

無言を貫いてきた大淀がついに口を開いた。

 

「 ─大淀?提督に名前を覚えるように伝えておきなさい─ 」

 

「は・・はい、必ず・・・伝えます」

 

大淀は全く違う雰囲気のヤマトに恐怖していた。

全く名前を覚えない提督にヤマトは流石に若干キレていた、そしてそのまま退出していった。




「あらあら書いてたらゲシュタルト崩壊してきました」
あら、あらあら

それと、艦娘の登場にすんごい悩みました。


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大和ハ泊地ヲ散歩

キャラが増えてくると全体的な鎮守府の動きを予測するのが大変ですね。

時系列メモが荒ぶって来ました。


―――ヤマト周辺―――

 

「 パーッと落ちたな~。パーッとな!ひゃっはっはっは」

 

「うぅ・・何やねんアレ・・ふざけた接舷決めた上に水しぶきで艦載機落としてきょおた・・」

 

緊急警備隊でヤマト周辺に艦載機を飛ばしていた龍驤と隼鷹は、水しぶきで泊地内に落ちた艦載機を回収していた。

外洋で落ちた艦載機は回収不可能なので、破棄するのだが鎮守府内に落ちた艦載機はどうにも繋がりが消えないらしく回収しなくてはならないのだった。

 

「責任者にあったら言ってやるでぇ」

 

「うわぁ、やっべー!まじやっべー」

 

「隼鷹っ、どないしたぁ!」

 

「酒切れた」

 

「・・・」

 

心配して振り向く龍驤、そこには酒瓶をひっくり返して空になった事を主張する隼鷹。

龍驤は呆れると同時に発艦準備整を整えている、それに気づいた隼鷹。

 

「!?っすっませんしたー!真面目にやるであります!」

 

「後で絶対文句言ってやるでぇ・・」

 

龍驤はヤマトに文句言うことに決めたのだった。

 

 

 

 

―――パラオ泊地正面海域―――

 

 

「おう、頑張れもう目の前だぞ」

 

「レディーはこのぐらい全然余裕・・」

 

「 ふあーーっ!?」

 

「これは・・異常だね」

 

「おう、どうしたお前えら?」

 

天龍は後ろを見ていて気づいていないが、第六駆逐4人の目には赤く光る戦艦が映っていた。

 

「フフフッ、どうした?オレに見惚れて」

 

「ハラショー、と言いたい所だど前を見よう」

 

「・・・フッ、どうやらオレも疲れているようだ。お前たちも報告したら飯食って風呂入ったらさっさと寝ろよ!」

 

「そうと決まれば、司令官に報告よ!」

 

「はわわ!どう見ても光ってるのです!?」

 

「ハラショー、現実逃避には無理があるよ」

 

「・・・」

 

どうやら目の前の異常に付いてこれるのは響と電だけのようだ、レディーに至っては心此処にあらずといった感じのようだ。

そうこうしていると眼の前の戦艦から光が消えた、まだ一部は光っているようだが先程までの威圧感が消えたのである。

 

「光が消えたようだよ?」

 

「「・・・」」

 

「お前ら・・まずは提督に報告だ、行くぞ!」

 

 

 

 

―――港湾ヤマト前―――

 

 

「うぅ・・一体・・?ってこれは!?・・シールドですかー!?おぉぉおおお!!夕張さん!起きてくださいっ」

 

「んっ・・此処は?」

 

「コレ見てください!これコレ!凄いですよ!」

 

「そうだ!艤装は!?っておぉぉおおおお!」

 

起きてからも発狂するマッドサイエンティストの2人であった。

 

「これですよ!シールドのようですよ!!どうなってるんでしょうか!?」

 

「おぉおおおっ!凄いですね!しかしこれでは近づけませんね!」

 

「あっ・・あー!これじゃ近づけないじゃないですかぁあ!」

 

発狂してる2人は近づけないことに走り回るのだった。

しかし走り回っても走り回っても2人を拒むかのようにクラインフィールドが出現してくるのである。

 

「あぁああ!これでは戦艦艤装に近づけないじゃないですかぁああ!」

 

「これじゃデータが取れませんね!どうしましょうか・・」

 

 

 

 ― マジパネー!熊野にも見せてやんないとっ ―

 

マッドサイエンティストの2人は大和の甲板を見上げると鈴谷がスマホを持って撮影していた。

いつの間に甲板に上がったのやら、しかし2人にとっては其れ処ではなかった。

 

「鈴谷さん!?」

 

「すずやさーんっ!」

 

 ―あれ、やっほー!2人共なにしてんのー?―

 

「鈴谷さーん!どうやって入ったんですー?」

 

 ―入るー?何いってんのー?―

 

「このシールドが出てきて入れないんですよー」

 

そう言いながらクラインフィールドに手を触れると光が一層濃くなり拒んでいる様に見える。

 

 ―何それー超うける―!―

 

「鈴谷さんはどうやって入ったんですかー?」

 

 ―あたしー?何も出てこなかったよー?―

 

「何でですかああぁああ!!」

 

「データが・・データが取れない!?」

 

この2人はヤマトに全力で拒絶されていた、あの2人を乗せたら何をされるか分からない絶対碌な事が起きないと考えていた。

一方鈴谷は普通に乗ることが出来て、甲板上を走り回っていた。

 

 

 

 

―――応接間―――

 

「提督、起きてください。提督」

 

「・・・此処は?」

(妙に顔が痛い・・)

 

「応接間です、提督」

 

(応接間で寝ていたのか・・何してたんだっけ・・光?)

「ヤマトは何処に行ったんだ?」

 

提督は寝ぼけているようだ、倒れてから数分程だが。

 

「そのヤマトさんから伝言があります」

 

「伝言?」

 

「はい。名前を覚えるように伝えておきなさい、と言っておりました」

 

(名前?・・―いい加減名前を覚えなさい・・・― あー、えっ大丈夫なの?もしかしてめちゃくちゃ怒ってる?やばくない?)

「僕は何をされたんだ?」

 

そして提督は学習したヤマトは名前を呼ばないと機嫌が悪くなると。

 

「突然出現した光が提督の顔に直撃しそのまま倒れました、そしてヤマトさんは退室し何処かに行きました」

 

(光って・・何ヤマトって光操れる系?なんか船体も光ってたし・・てか部屋出て行っちゃったの?止めてよ)

「えー止めてよ」

 

「無理です。提督が止めてくださいよ」

 

(いやいやいや無理でしょ。機嫌悪いかもしれないヤマト止めるとか、僕まだ死にたくないよ?)

「・・・」

 

大淀には光なのか退室なのかどちらもよかった、あんなの止めるの無理と。

提督はこの後の事で頭を悩ませるのであった。

 

「提督、そろそろ第二遠征隊が帰ってきます」

 

(ヤマト何処行ったんだよ・・)

「執務室に戻るか・・」

 

 

 

 

―――執務室―――

 

 

「さてと、遠征隊がそろそろだな」

 

 

――バタンッ――

 

「おい、提督!アレは何だ!」

 

「凄く光ってたのよ!」

 

「赤く光ってたのです!」

 

「レディーは幽霊なんて怖くないわ・・」

 

「暁、アレは幽霊じゃないと思うよ」

 

扉を荒く開けて入ってきた遠征隊は提督に詰め寄り問いただした。

 

(うん見たのね君たち。しかも赤いときに見たのか・・ついてないね、いや・・変わらないか)

「アレはヤマトらしい、本人が言ってたよ」

 

「大和?いや、光るなんて可笑しいだろ!」

 

天龍の剣幕に第六駆逐は少し怯えてしまったようだ。

 

「天龍、落ち着け・・私にも良くわからない」

(天龍・・分かるよ?その気持・・でもね私もさっぱりだよ。ほんとね光るのがアイデンティティみたいなこと言ってたけど・・)

 

「おいっ!わかんねぇのに停めてんのかよ!」

 

「あぁ、乗り込んできた、其れはもうダイナミックに・・」

(ダイナミック停泊・・周囲は水浸し・・うぅ・・頭痛が・・)

 

「はぁ?何言ってんだよ?」

 

ドリフト接舷による津波での周囲の被害、そして上層部への報告。

提督は今後の事を考えると頭痛がしてくるのであった。

 

「あの船突然やってきた。ダイナミック停泊した。船に第三遠征隊が乗ってた。」

 

提督の知能指数が著しく低下したようだ。

 

「もうヤダ・・」

 

「お・・おい大丈夫か?」

 

「大丈夫よ!司令官、私がついているわ!」

 

提督はもう投げ出したい気持ちでいっぱいであった、泊地に所属してくれるなら少しは楽になるかと考えていたりするがアレは絶対に無いなと。

 

「とりあえずだ、あの戦艦はヤマトで戦艦の主もヤマトだ。今は泊地のどっかに居る、見かけたら仲良くしてくれ・・」

 

「お・・おう、了解したぜ」

 

「わかったわ!」

 

「了解なのです!」

 

「レディーは幽霊でも仲良く慣れるわ!」

 

「ハラショー、どんな方なんだい?」

 

 

「・・・優しい人だよ・・・たぶん」

 

提督のメンタルは着実に削れていくのであった。

 

 

 

 

―――入渠―――

 

 

「にゃっしぃ」

 

「ぽいぽい」

 

「ぴょん~」

 

「に~ゃっしぃ」

 

「ぽいぽいぽ~い」

 

「あたし的には、皆さん何言ってるかわからないですぅ~」

 

不思議言語で会話している3人に阿武隈はついていけなかった。

当人にしてみれば外国語同士で会話してるようなもであるようだ。

 

「みんな何があったの」

 

「ヤマトさんが此処まで連れてきてくれたっぽい」

 

「良い人だったぴょん!」

 

「ヤマトさんってあの戦艦の?」

 

「睦月ちゃんが怪我してるの見て此処まで送ってくれたっぽい」

 

「こんな感じぴょん」

 

「え、えぇ!?あたし的には全然わかりませんっ」

もはや意思疎通レベルである、尚この言語提督には分かるらしい。

 

「・・・全員無事で良かったっぽい」

 

「良い人で良かった~後でお礼言うにゃ」

 

「常識は無いぴょん・・」

 

「にゃ?」

 

「皆さんでぇお礼言いに逝きましょう!」

 

ヤマトは常識のない良い人と言う謎認定されていた。

阿武隈に至っては未だに幽霊と思っているようだ。

 

「・・・卯月はずっと撫でられてたっぽい」

 

夕立が特大の爆弾を投下した、複雑な感情が込められているようだ。

 

「ぴょん!?」

 

「およよ!睦月の知らない間に何が!?」

 

「卯月窓に頭打ってから起きるまで撫でられてたっぽい・・」

 

夕立はジト目で卯月を見ている。

阿武隈は後ろで耳を塞いでしまったようだ。

 

 

 

 

―――入渠前―――

 

 

「見つけたわ!」

(さぁ突入よ、皆が待っているわ!ふんふんふん~♪)

 

 

 ―  ごっはんーごっはんー♪ ―

 

 ― 夕立待つにゃ~ ―

 

 ― ぷっぷくぷぅ~ ―

 

 

―― ガラガラ ――

 

ヤマトの目の前で入渠施設の扉が開いた、それを見たヤマトは絶望と同時に膝から崩れ落ちた。

 

「もぉぉぅ、待ってくださいよぉ~」

 

「あれヤマトっぽい?」

 

「ぴょん・・」

 

「ヤマトさん!あ・・あの・・ありがとうございましたっ」

 

膝から崩れ落ちていたが夕立が気づく瞬間に復活していた、メンタルモデルのスペックを無駄遣いするのだった。

 

(あれぇ?卯月ちゃん?なんで私の顔見るなり夕立の後ろに隠れたのかな・・?。まさか!?良からぬこと考えてるのバレた?!)

「うん・・?あぁ良いわよ別に」

 

「あの~ヤマトさんは幽霊さんなんですかぁ?」

 

(あなた直球でくるのねぇ?悪戯しちゃうよ?)

「・・阿武隈の中では何処までが幽霊なの?」

 

「ふぇっ?えーっとぉ亡霊?」

 

(それ・・自分たちのことを指してないかな?)

「・・艦娘も当てはまるわよ?」

 

ヤマトの持っている記憶が正しければ艦娘は艦の魂が具現化したものである、そして自身は超科学から兵器として生まれた存在と認識している。

どちらが幽霊に近いかと言われれば艦娘と答えるだろう。

 

「ふぇぇ~!?えっと・・えっとぉ?壁すり抜けたり・・?」

 

(やけくそに感じるのはきのせいかな~?もう悪戯しちゃうよ?)

「・・・できるわよ」

 

「「えっ!?」」

 

驚いたのは阿武隈と睦月だけであった、どうやら夕立と卯月はすでに耐性が付いていた。

そして周りの様子お構いなしにヤマトは入渠施設の扉に向かい手を当てた。

 

(うーん・・行けるわね。―ナノマテリアル侵食開始─デルタコアの通る領域だけ確保してー?―扉の修復復元―)

 

ヤマトは自身が通る扉だけナノマテリアルで侵食しすり抜けコアが通る部分だけ物理的に穴を開けナノマテリアルで修復した。

分子レベルで見たら水の中を移動するだけの様な感じだが傍から見たら扉をすり抜けているように見えるのである。

 

 

―― ガラガラ ――

 

出るときは普通に扉を開けて出てきた。

 

(結構うまくいったわね、しかし分子レベルで演算ができるって・・)

「どうかしら?」

 

「「・・・」」

 

「あら、2人共立ったまま気絶するなんて器用ね」

 

「もう慣れたっぽい」

 

「ぴょん」

 

「ヤマトは入渠しに来たっぽい?」

 

(あら、阿武隈からかうので忘れてたわ・・皆出てきちゃってるじゃないの・・・いやきっと他の子が・・)

「そうね・・入渠しにきたの」

 

入渠以外に此処に何しに来たとか聞かれると、答えに困ると判断したヤマトは入渠することに決定した。

そして、4人は出てきてしまったが他の子が居ないか期待するのであった。

 

「了解っぽい!」

 

「ぴょん・・」

 

卯月は夕立の後ろに隠れている。

どうにもヤマトと顔を合わせられないようだ。

 

(卯月?わたしを避けてない?)

「卯月は・・どうしたの?」

 

「頭撫でられたの気にしてるっぽい・・」

 

(嫌がられてる方かな・・?反応がイマイチでよくわからないわ)

「嫌だったかしら・・?勝手に触られると嫌よね・・ごめんね?」

 

「ちが!違うぴょんっ・・その、恥ずかしいぴょん・・」

 

(あら・・これはフラグというものでは無くて?此処は引くべきか・・?しかし・・フラグは掴み取ってみせよう!)

「あらあら・・気にすること無いわ。ほら、いらっしゃい」

 

ヤマトは両手を軽く広げて卯月を誘うが夕立の後ろから出てこない。

これは大ピンチと思ってると夕立が飛び込んできた。

 

(おや・・まさか夕立にもフラグがっ!?ご馳走様です!ふふふっ・・・)

「夕立?・・どうしたの?」

 

「ずるいっぽい・・」

 

(フラグ確定しましたっ!・・これはナデナデ行けるか・・ええいままよ!)

「ふふふ・・」

 

飛び込んできた夕立に予想外のヤマトであったが、結果的に良かったようだ。

そして夕立をナデナデしながら、固まってる卯月を誘ってみようと思っていた。

 

「卯月もいらっしゃい?」

 

「ぅゅ~」

 

(来ないわね・・ここで引くと今後避けられる気がするわね・・・ならばっ)

「来ないなら・・えいっ」

 

動かない卯月にヤマトは抱きついた、夕立が張り付いたままで動きにくそうであったが無事に卯月を回収。

ヤマトでなければ憲兵よろしく事案である。

 

(ふふっ・・ふふふふ・・お持ち帰りぃぃい・・おっと思考が其れてしまった)

「大丈夫よ、卯月」

 

「ぴょん」

 

「夕立もね?」

 

「ぽい~」

 

(ん?誰か覗いてる・・あの電探は長門ね・・・ここまでのようね)

「さてと、ふたりともごはんでしょ?またあとでね」

 

「了解ぽい!」

 

「ぴょんっ」

 

ヤマトの記憶が正しければ長門はロリコンだったはずだ、駆逐艦と戯れていたら絡まれるに決まっていると。

そして入渠にそそくさ入っていくのであった。




入渠=不思議温泉だと作者は思っています。


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大和ト妖精

作者は風邪をひいたようです。
巨大化してナナテスカトリに関節技決めると言う謎の夢を見ました。

最近は寒暖差が激しいです、体調には注意しましょう。


気合で書いたのですが少し短めです。


―――入渠―――

 

そこではヤマト1人崩れ落ちていた。

 

(誰も居ないじゃないの・・なんてこと・・・。仕方ないですね、せっかく来たので湯?に入りましょう)

 

入渠まで来たが誰も居ないことに落ち込むヤマト、淡い希望をもって入ってみたが誰も居なかったでのある。

眼の前には無人の浴槽、規模的には銭湯並だ。

 

(見た目銭湯そのままね、無駄に広いのではなくて・・?湯が緑色・・私入って大丈夫なのかしら?)

 

眼の前に広がっている湯船はすべて緑色をしている。

そして湯船の一つに手を突っ込んで成分を調べようとしたところ、入渠タイマーが動いたのである。

 

 

―512時間―

 

(あら、私でも反応するのね。半月以上入渠する必要があるの?怪我してないと思うのだけど・・?)

 

どうやらヤマトでも使用可能のようである、入渠時間に関しては先程消費したナノマテリアルなのだが其れに気づくのはまだ先である。

 

(鉄・・?アルミナ・・なにこれ微量に資材が含まれてるわね・・うん?・・情報に無い物質・・これが大本ね)

 

マテリアルを操作し手のひらに謎の物質を集めると濃い緑色になっていき、そのまま手で掬った。

 

(なんかヌメヌメしてる・・キモいわね。これが艦娘の入渠に必要なものね?お持ち帰りしましょう!)

 

ヤマトは自身のナノマテリアルで金属容器を作り出し、謎物質を詰めたのだった。

これは妖精が作り出す謎の物質なのだが操作できるようである。

 

 

「しかし・・せっかく来たのです、入ってみましょう!。・・成分は問題なし、突入!」

 

 

―ザバンッ―

 

 

(・・・・お湯ね・・この体・・疲労が無いのか疲れを癒やす感覚が無いのねぇ~、湯が楽しめないわ・・。誰か来ないかしら?・・先程夕立はごはんごはん言ってたし他の子も来そうにないわねぇ~・・・暇ね)

 

ヤマトはナノマテリアルボディなので疲労と言ったものが無く、人間と同じ様にお湯や疲れを癒やす感覚が無いのである。

そして誰も来ない入渠に飽きていた、誰かしら居るかと期待していたがいざ入ってみると物静かで水が流れる音だけが響いていた。

 

 

(・・・来ないわね。・・それにしてもこの体・・ヤマトよね、過去の記憶?体?では男性であったはず・・もっと取り乱しても良いと思ったのだけど・・感情の起伏が少ないのはこの体の影響かね)

 

 

ヤマトは自身の体を確認して記憶を整理していた、しかし過去の記憶を整理した所で男性であり自分のがどの様な性格をしたのか思い出せないでいた。

メンタルモデルの身体という事は記憶や感情はデルタコア内であり、引き出せないということは完全に欠落していると考えている。

 

(思い出せないものは仕方ないわね。・・それにしても・・・大きいわね、愛宕並みかしら?・・ふふふ・・愛宕・・良いわね)

 

元の性格はこんな性格をしていたかと思うと否である、過去の記憶とヤマトの記憶がフュージョンした結果この様な危ない性格になってしまったと言えよう。

そしてどちらの性格でもない真新しい人格として形成されたのである。

 

 

(誰も来ないわ・・・・・こうなったら食堂に突入ね!・・決まればさっさと行動・・・よ?)

 

ヤマトは目の前に妖精が居ることに気づく。

妖精は此方をジーっと見ている。

茶毛の髪を耳元でツインテールに纏め白いベレーの様な物をしておりセーラー服を着ている。

俗に言うエラー娘と呼ばれる妖精が目の前に居る。

 

 

― ジー ―

 

(この子は・・たしかエラー娘ね・・凄く見られてるわ、何かあるのかしら?)

 

 

― この異常は貴方でしたか ―

 

(!?・・随分と流暢にしゃべるのね。それと異常ねぇ・・この表示されてる入渠時間かしら)

「異常ってこの入渠時間のこと?」

 

 

― そうです、故障かと思ったのですが違ったようです ―

 

「あら、ごめんなさいね?。初めて入渠に入ったものだからよくわからなかったわ」

 

 

― !貴方は私の言葉がかるのですね ―

 

「言葉?分かるわよ?。・・もしかして他の人達には分からないの?」

 

 

― そうです、声を掛けても誰も反応しません。独り言だったのですが貴方が反応しました、初めてです ―

 

(へぇ・・誰とも会話できないなんて随分と寂しいじゃないの・・・妖精もお持ち帰りしたいわねぇ)

「そうなの。随分と寂しいわね、私ならいつでも相手してあげるわよ?」

 

 

世間一般的に妖精はジェスチャーのみで意思疎通をする、会話できない存在として認識されている。

親和性の高い艦娘でも意思疎通がしやすくなる程度である。

 

そこへ初めて会話出来たヤマトである。

 

 

― 初めてです 初めてです それはそうと 756時間も入っているつもりですか? ─

 

振り向いて壁に設置してるタイマー見ると756時間に増えていた。

ヤマトは今までの行動を振り返り時間が増える原因を理解した。

 

(あら・・・もしかしてナノマテリアルかしら?軽く何か作ってみようかしら)

 

そう思いヤマトは黄色いアヒルを作った、バレーボールサイズと特大である。

すると時間が1024時間に増えたのである。

どうやらナノマテリアルを消費すると時間が増えるようだ。

 

 

(・・・増え過ぎじゃないの?これ・・下手にナノマテリアル使わない方が良いかしら?。本体の生産量早めに確認した方が良いわね・・)

 

 

― 凄いです! 私達の作り方とはぜんぜん違うです! どうやったのです? ―

 

「そうねぇ、体の一部を切り取ってる感じかしら?」

 

ヤマトの発言は体内に保管してるナノマテリアルを使用してるのであながち間違いではないと思っている。

それより妖精は切り取ると言う発言が気になっている。

 

 

― 痛くないです? ―

 

「痛くないわよ、それより妖精の作り方が気になるわ?」

 

 

― 私達はね力を込めると出ます こう ふ~んっ って 今は資材が無いので出来ませんが この入渠のお湯もそうなんですよ? ―

 

どうやら妖精は気合を入れると資材と引き換えに何かを作れるらしい。

気合で物を作る不思議な存在であった。

そしてヤマトはこのお湯もといった時点で、先程集めた謎物質は妖精のナニかであると判断した。

 

(このお湯の成分で謎なのって妖精が作ったのね、・・妖精汁・・っ!いかん変なことを考えてしまった・・気にしないでおきましょう)

「そ、そうなのね。所でこれが・・そうなの?」

 

そう言い先程金属の容器に入った妖精汁を取り出した。

すると妖精は目を見開いた。

 

 

― これは高速修復材の原液です、資材と溶かし込んで高速修復材を作れるのです。これ一本で2杯は作れるです ―

 

ヤマトは凄く良いことを聞いた。この妖精汁は入渠に使う素材であり高速修復材の原料だったのだ。

あとはこの原料を作れれば艦内で運用出来ると。

 

(良いわねこれ・・凄く良いわね、これがアレばお持ち帰りしてもやっていけそうね・・ふふふ・・ふふふふっ)

 

 

― 此処までの純度は見たことないです。何処で手に入れたです? ―

 

「集めたのよ、この様に」

 

 

ヤマトは手を湯から手を上げ妖精汁をだけを掬って見せた、手を上げるときに周囲の妖精汁だけをかき集めたようだ。

すくい上げた妖精汁が指の隙間から滴り落ちている、粘度が高いのか糸を引いて垂れている。

 

それを見たヤマトは閃きが浮かび目を見開いた。

 

 

(ふふっ・・ふふふふっ!?なんてことなの!入渠っ・・恐ろしい場所ね・・)

 

 

― すごいです!どうやったです?? ―

 

 

「ふ..ふふ....ふふっ」

 

 

― のぼせたです? ―

 

「! ・・そうね・・出ようかしら」

 

 

ヤマトは良からぬ事を考えていたようである。 

それを見た妖精はのぼせてると勘違いしたようだ。

 

「さて・・・妖精?・・何と呼べば良いのかしら?」

 

― 妖精は妖精です ふとした時に現れてふとした時に消えるです 名前があったらたいへんです ―

 

「そうなのぉ?でも不便ねぇ・・貴方はエラー・・エラーちゃんね。うん、そうしましょう」

 

 

 

 

――カッ――

 

 

光で辺り一面白くなった。

妖精が・・大きくなった。

みかんサイズの頭がハンドボールサイズになった。

胴体も相応に大きくなったようだ。

 

「・・・・」

 

ー ヤマトさんと繋がりました! ―

 

(あら・・・何かマズイ事したかしら?)

「大きくなったわね?」

 

 

― はい! これからヤマトさんの専属になります! よろしくお願いするですっ ―

 

(何も分からないわ・・)

「繋がりとは何かしら?」

 

― 私達妖精は基本的に土地に繋がっています。土地から存在する力を得ています。なので土地によって妖精の特色が変わります ―

 

(察したわ・・凄く・・・適当に名付けるのはやめましょうか・・)

「・・・・」

 

― そして私はヤマトさんから名付けていただきました。そしたらヤマトさんと繋がりました! ―

 

(妖精を一体?テイクアウトしました・・適当に名付けるのはやめよう・・)

 

 

どうやら随分と大きい妖精が仲間になったようだ。

ペットボトルにハンドボールをぶっ刺した様なサイズ感である。

非常に大きい。

 

「そうなの・・貴方は何が出来るの?」

 

 

― うーん・・う~ん・・他の妖精が出来ること全般的に出来るようになったようです! ―

 

(・・・妖精汁解決しましたっ。ありがとうございますぅっ)

「素晴らしいわ・・ふふふっ・・」

 

ヤマトは口に出してしまったが小さいつぶやきのようであり妖精にはよく聞こえなかった。

 

― どうしました? ―

 

「けほん・・そうね。他には何か出来るようになっているの?」

 

― 他・・う~ん 出来ないようです・・ ―

 

妖精は妖精が出来ること以外は出来ないようで少し落ち込んでしまった。

しかしヤマトには十分すぎる収穫であった。

 

 

「気にすることは無いわ・・素晴らしいわ・・非常に・・素晴らしい・・」

 

― ありがとうございますです! ―

 

 

ヤマトには妖精の笑顔が眩しかった。

笑顔を見る度に心の穢を自覚していた。

それでもヤマトはブレない。

 

「さて、行きましょうか」

 

 

こうしてヤマトと妖精は出会った。

ヤマトはこのビッグサイズ妖精をどう持っていくべきか悩み、抱きかかえて持っていくことに決めた。

 




妖精は流暢に喋ります。
小文字カナで書いたら作者が発狂しました。
なので普通に書きます。

―ここは譲りません―


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大和ハ知ル

時系列メモで一話作れるんじゃないかと思えてきました。


―――食事処―――

 

 

そこには艦娘が集まっていた

 

ヤマトに乗艦した者は他の子に囲まれて質問攻めにされている。

 

「夕立。おかえり、あの戦艦に乗ってたんだって?無事で良かったよ」

 

「ぽいぽ~ぽい~。疲れたっぽい~」

 

夕立は疲れてるのか時雨への返事が適当になっている。

 

「夕立が最後まで起きていたそうだな?」

 

「何が聞きたいっぽい~」

 

「ヤマトが此処に来た目的だ、祥鳳の奴は突然乗り込んできたとしか言わなくてな」

 

その時騒がしかった食堂が静かになった。

皆聞き耳を立てているようだ。

 

「それは睦月ちゃんが怪我してたから送ってくれたっぽい~」

 

「其れのために此処に来たのか・・?」

 

「そうや!今ヤマトは何処におるんや!」

 

「入渠に行ったっぽい~」

 

龍驤は提督から酒を頂いてご機嫌のままヤマトに文句言うことを忘れていたが長門の発言で思い出したようだ。

 

「入渠やて?ヤマトは艦娘かいな?」

 

「あっちの大和とは違うっぽい~、ヤマトは妖精か精霊っぽい~」

 

夕立はヤマトと提督の話を聞いており、ヤマト自身が言っていた妖精か精霊の信じていいた。

騒がしくなり始めた食堂はまた静かになった。

 

「ふぇぇ~、幽霊じゃなくて・・?」

 

「本人が言ってたっぽい。阿武隈何時まで引きずるっぽい?」

 

「だ、だってぇ。さっき扉すり抜けたしぃ」

 

「阿武隈は何を言っているんだ・・・?」

 

未だに引きずっている阿武隈に長門は何を言っているのかついて行けなかった。

 

「阿武隈は何処かに頭打ったんけぇな?」

 

「ふぇぇ~っ。違うです!入渠の扉すり抜けてぇ・・」

 

「すり抜け・・すり抜け・・・夢にゃしぃ・・」

 

「一体何があったんや?」

 

阿武隈の発言に睦月も思い出したようだ、睦月は夢だと思っていたようである。

龍驤も幽霊と言い取り乱してる阿武隈と、釣られるようにして頭を抱え俯いた睦月を見て流石に普通じゃないと思い始めてきた。

 

「幽霊じゃないっぽい。気にするだけ無駄っぽい」

 

「そのうち慣れるぴょん」

 

夕立と卯月は取り乱している2人を気にしないことに決めたようだ。

そこへ時雨と皐月がやってきた

 

「夕立?時雨にも聞かせてほしいな。あの戦艦の話」

 

「ボクも聞きたいなっ」

 

「ぽい~。う~ん」

 

夕立が話しだそうとしてるのを見て回りで騒がしかった第六駆逐隊の面々も静かに聞きだした。

 

「帰還の途中に敵と遭ったっぽい。戦ってたらヤマトが現れたっぽい」

 

夕立が喋りだすと、食堂は微かな会話すら無くなっていた。

皆話に聞き逃しまいとしているようだ。

 

「現れて深海棲艦に向けて撃ったっぽい・・」

 

夕立は目の前で敵が水柱と共に消し飛んだ光景を思い出していた。

微かに震えており、近くで聞いていた者は様子が可笑しいことに気づく。

 

「夕立。大丈夫?」

 

「大丈夫っぽぃ~」

 

「無理しなくて良いよ?」

 

時雨は姉として夕立の様子が気になっていた。

 

「この程度気にしていたらやっていけないっぽい・・」

 

「夕立・・?」

 

「ぽいぽい、ヤマトが撃ったら敵が全部消えたっぽいぽい」

 

気を取り直したかと思われたがやはり挙動不審である。

そんな夕立を見て卯月が割り込んできた。

 

「巨大な水柱が上がってたぴょん、上がったと思ったら敵が消えてたぴょん」

 

「ふむ・・つまり深海棲艦に攻撃が効くのだな?」

 

「効くぴょん・・それから武装解除するように言われてヤマトに乗ったぴょん」

 

「武装解除?何故だ」

 

「しらないぴょん。ヤマトに聞くぴょん」

 

「そうか・・後で聞くとしよう」

 

長門は深海棲艦に攻撃が効くということに思うところがあるようだ。

 

「それから艦橋に案内されてお話したぴょん。そしたら此処まで送ってくれたぴょん」

 

卯月は色々と非常識な部分を省いて話しているようだ。

あり得ない事言って混乱を避けるためか。

話すのが面倒くさいのか。

どちらかと言うと後者である。

 

「ふむ・・態々送ってくれるのか?。随分と親切なのだな」

 

艦娘と言う武力を持った存在を態々送ってくれると言うことに長門は疑問に思っている。

護衛として船舶の安全を確保したり海上の安全圏を確保する艦娘が、戦艦であるがそれに乗せて送ってくることに。

 

「優しい人だったぴょん。常識無いけど・・」

 

最後のつぶやきは誰にも聞き取れなかった。

 

 

 

 

そこへ外出組が帰ってきた。

 

 

「皆さん集まって何をお話されてるのですか?」

 

千歳はやたら密集して集まってる事が気になり声を掛け、近づいていった。

 

「千歳先にご飯食べよ~」

 

千代田は食欲の方が勝っているようだ。

一方一緒に入ってきた飛鷹は真っ先に隼鷹の元に向かってしまった。

 

「ああ、千歳達か。知らないのか今ここに戦艦大和が停泊しているのを」

 

「大和さんが来ているんですか、後で挨拶に行かないとですね」

 

「違う、戦艦の大和が停泊している」

 

何処と無く噛み合っていない千歳と長門の会話に千代田がふざけて言った。

 

「まさか大戦艦の大和が蘇って停泊してますーとか?」

 

「そうだ、後で見に行くと良い」

 

長門は至って真面目な表情で返した。

その事に千歳はまさか本当に停泊しているのではと思い、千代田を連れて出ていってしまった。

 

「え・・冗談でしょ?」

 

「千代田行くよっ!」

 

「えぇっ、ご飯食べようよ~」

 

「そんなことより確認よ!」

 

静かになった食堂に間宮は2人は当分帰って来ないと思い、食事をどうするのか悩むのであった。

 

 

 

 

 

―――執務室―――

 

 

遠征隊が出ていった後の執務室には執務机で頭を抱えている提督と横で突っ立っている大淀が居る。

 

 

「大淀・・上への報告しなくて良いよね?」

 

提督は定期報告にヤマトを入れないで報告しようとしていた。

光る戦艦大和がパラオ泊地に停泊しています、なんて報告出来ないと提督は考えている。

仮に報告したとしても頭がおかしくなったと解任されるのではないかと。

 

 

「露見して責任問題になると不利ですよ?」

 

(知ってるよ!それぐらいっ。でもねでもね?戦艦の大和がウチに停泊していますって頭おかしいって思われるよ!?)

「ヤマトの事どう報告したものか・・。大淀何かいい案ない??」

 

投げ出したい気持ちの提督は大淀に期待して話を振ってみた。

 

 

「素直にありのまま送れば良いと思いますが」

 

(それね?考えたよ?でもねでもね??あそこの提督替えた方が良いんじゃない?とかヤマト手に入れろとか無理難題が返ってくるよ?絶対)

「大淀は・・そんな報告来たらあそこの提督は頭がおかしくなったと思わない?」

 

「思います」

 

「否定してよ!?」

 

 

秘書である大淀は考えるのを破棄したようだ。

 

 

(マジどうすんのこれ?仮にヤマトと武力衝突したらどうなるの?なんか光ってるし、あのダイナミック停泊見ると機動性が可笑しいし・・主砲からビームとか出てきそう・・金ピカだし・・てかどうやって作ったのアレ・・・)

 

「ヤマトと武力衝突したら勝てるかな?」

 

「無理じゃないですか?内湾に入ってくる時の速度は明らかに駆逐艦以上でしたし、それにアレが普通の武装に見えません」

 

「やっぱり?」

 

「それと提督は知らないと思いますが、周囲に結界の様な物を張れるようですよ?」

 

 

提督は大淀の言葉を一瞬疑ったが、アレが普通じゃないと気を取り直し何かの聞き間違いかと問い直した。

 

「えっ、何だって?」

 

「私が向かった時にですね結界があって入れなかったんですよ、それで祥鳳さんが入れてくださいと言い入ることが出来ました」

 

(もしかして、凄くヤバかった?えっ、てか結界って何?入れないの?もしかして選択肢間違えてたら僕死んでた・・?いや考えないでおこう・・)

「・・・結界って何?」

 

「わかりません。ただ光の様な壁が出来ていました、触れることも出来たので物理的な物なのは確かですね」

 

(光って何?触れるの?そういえば光が僕に直撃したって言ってたよね?)

「ヤマトって光を操れるの?」

 

「本人に聞いてください」

 

「・・・」

 

 

 

 

――バタンッ――

 

 

そこへ噂のヤマトがノックも無しに突入してきた。

 

「提督、良い所に居るわね」

 

(良い所も何もないよ!此処は執務室だよ!?僕が基本的にいる場所だよっ!?)

「や・・ヤマトか・・」

 

提督はヤマトが抱えている人形が気になった、そんなリアルな妖精人形を何処から持ってきたんだと。

 

「食堂の場所を聞きたいのよ」

 

(えっ、食堂?・・!?)

 

ヤマトもお腹を空かせているのかと考えていると妖精人形が動き出した。

 

 

― 食堂の場所なら知ってるです ―

 

「あら、エラーちゃん知ってたの?先に聞けば良かったわ・・」

 

提督や大淀からしたらヤマトが独り言を言っている様に見える、動き出した人形にまさか妖精ではと思い始めている。

そして入って1分も経たず出ていこうとするヤマトに問うのである。

 

「その、でっかい人形は妖精か・・?」

 

「そうよ。エラーちゃんって言うの」

 

ヤマトに抱えられた妖精は提督に向かって右手を上げた。

どうやら挨拶のようだ。

 

「エラーちゃん・・?」

 

「そう、エラーちゃんよ」

 

提督は凄く反応に困っていた。

こんなに大きい妖精見たことないと。

絶対普通じゃないでしょ、と。

 

「そ、そうか。ヤマトと一緒に来たのか・・?」

 

「違うわ、此処に居た妖精よ?」

 

「え”っ」

 

提督は大淀に振り向いたが、大淀は首を横に振る。

どうやら大淀は知らないようだと提督は確認した。

 

「あら。知らないのも当り前よ?」

 

「そ・・、それは?」

 

「そうね、私の力に当てられて大きくなったのよね~」

 

ヤマトと繋がった際に本体からエネルギー供給されているので、あながち間違いではないのである。

あえて間違ってもいない言い回しをするのは提督をオチョクルためである。

そして提督はヤマトが言っていた妖精や精霊という言葉を思い出していた。

 

「ヤマトは妖精なのか・・?」

 

「・・・兵器よ」

 

先程までふわふわしていた雰囲気が突然変わり、真面目トーンで言った。

変化に戸惑う提督と大淀。

 

「冗談よ・・私は霧という存在」

 

「そ、そうか・・。霧というのはどういう存在なんだ?」

 

「私の・・ナニが知りたいの・・?」

 

「何の目的で此処にいる・・?」

 

もう此処までたら聞いてしまおうと思った提督である。

 

「艦娘を見に来たのよ、どんな娘が居るか・・ね」

 

「・・・艦娘をみてどうするつもりだ?」

 

「どうしようかしら?ふふふっ」

 

打って変わってまた雰囲気が変化したヤマトに提督は考えるのをやめた。

 

 

「敵なのか・・?」

 

「それは、あなた達の対応次第じゃないかしら?」

 

「・・・」

 

「貴方がどう動こうと他は違うわ」

 

「・・・」

 

「人間なんてそんなものでしょ?」

 

人間としての記憶を持つヤマトは人がどの様なものか理解していた。

眼の前の提督がどの様に動こうと他は違うと。

 

 

「随分と人に詳しいんだね・・」

 

「伊達に人形を取っていないわ」

 

冗談のつもりなのだが提督には分からなかったようだ。

 

「そ、そうか・・。僕たちに味方してくれるこ「ないわ」・・・」

 

 

 

「そうね・・艦娘なら味方するわ」

 

特に取り繕うことをしないヤマトである。

エラーちゃんが仲間になったヤマトは既に本体が移動鎮守府と言って良いだろう。

そんなヤマトは何処かの鎮守府や港など欲しかったりする。

 

「それと・・艦娘にひどいことしてたら主砲を撃ち込むわ」

 

「えっ」

 

ヤマトはジーっと提督の顔を見た後に大淀の顔をジーっと見ていた。

数秒であるが提督と大淀は異様に長く感じられたようだ。

そしてヤマトは妖精に問いかけた。

 

「エラーちゃん、どうなの?」

 

― ここはひどいことする人はいないです ―

 

「そうなの?良かったわ」

 

 

いや良くないと提督は考えている。

少なからず居ると言う報告がこの前来ていたのを思い出していた。

今の状況で問われて嘘言ったらヤバイんじゃないかと、どうにかして話を逸らさなければと考えていた。

 

「そ・・そうなのか、・・所で妖精と会話してるように見えるけど会話出来るのか・・?」

 

「出来るわよ?」

 

適当に話を振った提督だが、普通に凄いことを聞いてしまったと思った。

妖精との会話が確認されてない中ヤマトが会話しているのだ。

 

「他の妖精とも会話出来たりするのか・・?」

 

「どうなのかしらね?」

 

ヤマトはニコニコしている。

どうやら答える気は無いようだ。

 

「それと・・・居るのね?」

 

突然わからないことを言い出したヤマトに何をだと考えて回答にたどり着いた途端、悪寒に襲われた。

どうにかして話を逸らせないか考えていると、ヤマトから追撃が飛んできた。

 

「何処かしら・・?」

 

「・・・」

 

「教えてくれないの?」

 

どうやら逃がす気は無いようである。

 

「教えたら・・どうするつもりだ・・?」

 

「そうねぇ・・主砲を撃ち込むわ」

 

「・・・」

 

「冗談よ・・主砲は撃ち込まないわよ。それと黙りでは分からないわ?」

 

主砲は撃ち込まないと言っているが提督は冗談に聞こえなかった。

そして、黙り決めて不興を買ってしまうと判断し答えてしまう。

 

 

「・・・少なからず居ると言う報告が来ているが何処かは報告されてない」

 

「へぇ・・中途半端な報告が来るものね?不思議ねぇ?」

 

確認されているのに場所の報告が無い事にヤマトは大凡の当たりを付けていた。

上は見て見ぬふりをするのか、無視できない場所か存在なのかその辺だろうと。

提督も同様の予想をしていた。

 

「まぁそうねぇ~?。数日は此処に居る予定よ?その間は大人しくしているわ。たぶんね」

 

「そうか・・」

 

「さてぇ、そろそろ食堂に行かないと艦娘たちが居なくなってしまうわ」

 

「ああ・・」

 

提督の前では取り繕うのをやめたヤマトだった。

 

 

――バタンッ――

 

 

執務室の扉など静かに閉めるのが当り前であるがヤマトには関係無いようである。

そして提督は考えるのをやめた。

 

「大淀・・報告はありのままで・・・もう嫌だぁ」

 

「・・よろしいのですか?」

 

「ああ・・今の会話は無しで・・」

 




ヤマトは目標を決めたようです。


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大和ハ食堂ニ突入 上

体調の都合で少し短めです




―――港湾ヤマト前―――

 

「なんですかぁあああ!これ、これじゃ近づけませんよ!!」

 

「しかし凄いですね!光のシールドとはどうやって出来てるんでしょうね!」

 

ヤマトの前で未だにマッドサイエンティスト拗らせた2人は粘っていた。

クラインフィールド内に入れず本体に近づくことが出来ない。

そこへタラップを伝って鈴谷が降りてきた、どうやら満足したようである。

 

「あれ?まだ粘ってるのぉ?受けるーっ!」

 

鈴谷は笑いながら言い普通に出てきた。

クラインフィールドが鈴谷だけを避けてたのだ。

 

「・・・ちょっと鈴谷さん!?何で貴方普通に通れるのですか!!」

 

「どうやって出てきたんですか!?教えてくださいっ!」

 

「ちょっとっ顔近いッ!鈴谷しらないよぉーっ」

 

何故か普通に出てこれる鈴谷に何かあるのかと詰め寄る2人。

このままでは2人が離してくれないと判断した鈴谷は再度クラインフィールド内に入る。

それを見届ける2人は目が血走って限界まで見開かれていた。

 

「ほらぁ~。入れるじゃん?」

 

――ゴッ――

 

「ひぃっ!?」

 

2人がクラインフィールドに直撃した。

鈴谷にタックルするコースだったのか、鈴谷は振り返ると眼の前で2人がクラインフィールドに張り付いていた。

そう2人は鈴谷が通る時に一時的に消えたと判るやいなや空いた部分に勢いよく走ったのである。

 

「ふ・・ふたりとも?」

 

「・・・つまり鈴谷さんは普通に入れるんですね?」

 

「・・・それは鈴谷さんを捕まえたままなら入れる可能性があるわけですね?」

 

「それだァあ!!」

 

どうやら2人は鈴谷を捕まえることに決めたようである。

それを聞いていた鈴谷は自身に危機が迫っていることを理解した。

 

「と・・とりあえずご飯食べようよぉ。もう遅いしさ・・」

 

「何言っているんですか!戻ってきて居なくなっていたらどうするんですか!!」

 

「そうですよ!鈴谷さんっ。これは未知のデータがとれるかもしれないんですよ!?」

 

2人はそう言って目を血走らせている。

そして2人は腰を低くし両手を広げた、全力で逃がす気が無いようである。

 

はたから見るとカバディをしている様に見える。

 

それを見た鈴谷はこのままでは何をされるか分からない全力で逃げようと思ったのである。

どうにか逃げられないか2人の様子を窺うのであった。

 

「ねぇ・・?ふたりとも頭冷やしさない・・?」

 

「何言っているんですかっ!そんな事言ってぇ逃しませんよ!!?」

 

「鈴谷さん・・ご協力ください。ちょっとだけで良いので・・ほら、ちょーっとだけだから」

 

明石は諦めないようである、そして夕張は非常に危ない人の発言をしている。

それを聞いた鈴谷はこのままでは何時まで立っても動かないと、在り来りな手を打って出る。

 

「あー!あんな所にヤマトさんがっ!!」

 

そして2人が指を差した方を向いた瞬間全力で走り出した。

 

「なんですって!?」

 

「そんなっ手には引っかかりませんよぉぉお!」

 

明石は引っかかったが、夕張は予想していた様だ。

夕張は一瞬だけ視線を逸し鈴谷を誘ったのだ。

 

そして鈴谷の服を掴んだ、が服が異様に軽いことに気づき、まさかと目を見開いた。

 

そう、鈴谷は2人が一瞬目を離した隙に上着を脱ぎ前方に投げ囮にしたのである。

 

「ヤマトさんは何処ですかぁああ?!」

 

「ああっぁああっ、鈴谷さん待ってください!?」

 

鈴谷は逃げることに必死なのか無言である。

 

こうして鈴谷は上着を犠牲にしながらも無事に逃げ出すことが出来た。

 

 

 

 

―――食事処―――

 

 

長門と龍驤それに混じって天龍はヤマトを探しに入渠へ向かい質問攻めに遭っていた面々は一息ついていた。

それと入れ替えの様に陸奥に山城、利根、筑摩がやってきた、

どうやら今までヤマトを撮っていたようである。

 

「お・・終わったっぽい」

 

「ぴょん・・」

 

阿武隈と睦月は耳を塞いでいる。

 

「ねぇねぇ、ヤマトさんってどんな人なの?」

 

つかの間の一息で遭ったようだ、雷がやってきた。

 

「普通じゃないっぽい」

 

夕立は机に頭を突っ伏したまま答えた。

起き上がる気力が無いようだ。

 

「それじゃ、分からないわよっ」

 

「はわわわ、夕立ちゃん疲れてるのですっ。そっとしておくのです!」

 

「そ、そうね・・・・」

 

夕立には電が天使に思えてきた。

そして雷は卯月に視線が行った、ロックオンされたようだ。

 

「ぴょ・・ん・・?」

 

「卯月ちゃん!ヤマトの事教えて欲しいわっ!」

 

「教えてほしいのです!」

 

卯月は周りに視線を向けたが、阿武隈と睦月は耳を塞いで居る。

どうやら自分だけだと思うと、観念したようだ。

 

「・・何が聞きたいぴょん?」

 

「ヤマトさんよっ。どんな人だったの!」

 

「普通じゃないぴょん」

 

「夕立と一緒じゃないのっ。何か他には無いの?」

 

「・・優しいぴょん」

 

卯月は頬を赤く染めて俯いてしまった。

入居前で遭ったことを思い出していたのだ。

 

「なによ、卯月まで疲れているの?」

 

「たぶん、ちがうのです・・」

 

「卯月、何があったんだい?」

 

様子が可笑しい卯月に気づいたのは電と響だけのようだ。

一方、暁は阿武隈と睦月一緒に仲良く耳を塞いでいる。

どうやら阿武隈の言った幽霊の話を聞いてしまったようだ。

 

「一体何があったのよ」

 

「な、何もなかったぴょん」

 

「そっとしておくのです・・」

 

「もう何よっ、全然わからないじゃないのよ!」

 

「雷、気にしてることを掘り下げてはいけないよ」

 

卯月には電と響が天使に見えたようだ。

そして卯月も机に突っ伏した。

 

そこへ利根が筑摩引き連れてやってきた。

陸奥と山城は隼鷹等と一緒に食事をしている。

どうやら一足先に食事を終えたらしい。

 

「何じゃ、ヤマトの話か?」

 

「そうなのよっ、2人とも疲れてるみたいで聞けないのよっ!」

 

「そちらで耳を塞いでいる3人は何があったのじゃ?」

 

「それは幽霊とか意味のわかんない事言ってたわ」

 

「幽霊?何の話じゃ?」

 

未だに幽霊話で耳をふさいでいる様だ。

そこへ食事処に鈴谷が駆けて入ってきた。

 

 

 

「だーっ、はぁはぁ。もう此処まで来れば大丈夫だよねっ・・」

 

 

「鈴谷か、どうしたのじゃ」

 

「麦茶、どうぞ」

 

筑摩はちょうど持ってきた利根の麦茶を鈴谷に差し出した。

 

「ありがとっ・・んっ・・」

 

「あれ、それ我輩のじゃ・・?」

 

「また持ってきますよ」

 

利根を甘やかす筑摩であった。

 

「助かるのじゃ」

 

「ふぅ・・って、ちょっと、聞いてよっ!」

 

「なんじゃ、スマホでも落としたか?」

 

利根は鈴谷がスマホ落とす度にこの様な状態になるので何時も通りの返事を返した。

 

「違うよっ、改造バカ2人がヤマトに近づけないからって私を捕まえようとしたの!」

 

そう鈴谷は此処まで走って逃げてきたのだ。

いつもと違うことに興味が湧いたようだ。

 

「物々しいのぉ、何があったのじゃ?」

 

「ヤマトから降りたら!私だけヤマトに近づけるからって私使ってヤマトに入ろうとしたの!」

 

「それは災難じゃのぉ、して今まさに逃げてきたと」

 

「もう最悪よ~」

 

「しかし近づけないとはどういう事なのじゃ」

 

利根は近づけないと言う意味がよく分かっていなかった。

 

「知らないよぉ~、なんか光の壁が現れて!あの改造バカ2人だけ遮ってたのよっ」

 

「光と壁とな・・興味深いのぉ」

 

利根は光の壁がどんなものか興味を持っていた。

 

「・・・見てきたらいーんじゃない?」

 

「・・・あのバカ2人もいるんじゃろ?」

 

鈴谷の妙な間を利根は理解した。

ちょっと犠牲になって来てよと言う意味が込められてることに。

 

「あの様子なら居るでしょ・・」

 

「そんなにか」

 

「ねぇ!ねぇ!ヤマトに乗ったの!?」

 

そこへ会話するタイミングを見失っていた雷が来た。

 

「そうだよ~?甲板だけどね~」

 

「大丈夫だったの!?」

 

「うん?あー改造バカ2人のこと?」

 

妙に会話が噛み合っていない2人である。

 

「違うわよ!ヤマトよっ、光ってたじゃない!」

 

「あー、あれね。綺麗だったよね―っ」

 

「えっ」

 

「うん?」

 

鈴谷からすれば青白く輝いていた状態の事を言っているのだが。

遠征から返ってきた面々は赤く光っていたヤマトしか見ておらず、悪魔の類か何かかと思っているのである。

雷は固まっていると響が声を掛けた。

 

「そうだねと言いたいけど、アレは無理があるよ」

 

「真っ赤に光ってて怖かったのです」

 

響と電の言葉で鈴谷は理解した。

 

「あー、あのときに見たのかー。ツイてないねぇ~」

 

「何の話なのよっ!」

 

雷が復活した。

 

「ヤマトが赤く光る前は青白く光ってて綺麗だったんだよ~?。あ、そうだ見る見る?」

 

そう言って鈴谷はスマホで撮った写真を雷達に見せた。

そこには青白く光り砲身や電探などが夕日に照らされ所々金色に輝くヤマトが写されていた。

 

「綺麗」

 

「なのです」

 

「ハラショー」

 

「あげよっか~?」

 

「いるわ!」

 

「ほしいのです!」

 

「スパスィーバ、頂くよ」

 

こうしてヤマトの写真は拡散されるのであった。




カバディ・ザ・ウォーシップ

クラスには

DESTROYER CLASS
CRUISER  CLASS
BATTLE  CLASS

が存在する。尚人間は参加出来ない模様。


嘘です。


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大和ハ食堂ニ突入 下

前話のカバディが頭から離れません。なんてこった。


―――食事処前―――

 

 

― ここです ―

 

「そう、ありがとう」

 

(ふふふっ・・私来ました!さてさて、誰が居るのでしょうか・・)

 

エラーちゃんの案内で食事処までやってきたヤマトは躊躇いも無くそのまま入っていった。

 

周囲に目を向けると結構な艦娘が居るようだ。

しかし会話していたりして此方に気づいていないようである。

 

(ふーむ、駆逐に・・陸奥の所は酒盛りしてるわね。それよりこの体・・・食事出来るようですね)

 

食堂に来てから食事が出来るのか確認したヤマト、そしてそのまま誰にも気づかれずカウンターへ向かった。

 

一方、カウンターから覗く間宮はヤマトに困惑している。

初めて見る人が居ると、そして何故人形を抱えているのか。

 

 

(ふむ・・食欲が存在しないと全くそそらないわね・・)

 

 

ヤマトの眼の前にはメニューがあり何か何を食べようかと考えたが、食欲というものが無いとこれが食いたいと言った感情が無いのである。

 

(ボーキって空母系の好物だったわね・・美味しいのかしら?)

「この、本日のボーキ定食いただけるかしら?」

 

 

「あの・・こちら艦娘用の食事になりますが・・」

 

間宮は更に困惑した、艦娘用の食事を注文することに。

艦娘同士では相手が艦娘なのか感覚的判るのだが、目の前の人は何も感じないのである。

人間なのではと間宮は思っていた。

 

 

(あら、人間だと思われてるのね)

「大丈夫よ・・たぶん」

 

「たぶん!?・・えぇっと・・人が摂取すると健康に悪く・・」

 

「大丈夫よ」

 

(間宮の困惑している表情・・意外と・・ふふふっ・・)

 

 

「まみやさ~ん。どうしたんですか~?」

 

困惑している間宮を横目に瑞鳳がやってきた。

 

(航空駆逐艦来ました!もうお腹いっぱいですっ!瑞鳳ちゃん・・・思ったよりヤバイですねぇ・・・なんて破壊力なの!?)

 

ヤマトは瑞鳳の破壊力に戦慄していた、なんて可愛さなのと。

 

「瑞鳳さん・・此方の方がボーキ定食をと・・」

 

「ぼーき定食ですかぁ~?いいじゃないですかぁ~」

 

間宮は出して良いのか悩んでおり、瑞鳳は特に何も考えていないようである。

 

(ふふふっ・・良いわ・・凄く・・駆逐の服を着せ替えさせたいわ!)

 

ヤマトはいつも以上に良い笑顔である、そして瑞鳳にロックオンした。

 

「良いわね・・凄く」

 

思わず口に出していた、それを間宮は妙に勘違いして受け取っていた。

 

「えっ・・あの・・分かりました」

 

 

 

こうしてヤマトの目の前には本日のボーキ定食が出てきた。

 

(本日のボーキ定食・・・これどう見ても和食よね?何処にボーキ要素があるのかしら・・?)

 

ヤマトが出てきたボーキ定食を見ていると、間宮が声を掛けてきた。

 

「あの・・どうかされました?」

 

「あら、・・何でもないわ」

 

ボーキが何処にあるのか、普通に考えたら鉱石そのまま出すわけ無いかと気を取り直した。

 

(食べれば判るわね・・)

 

 

ボーキ定食を持ちヤマトは何処で食べようかと辺りを見回した。

左手端に酒盛りしている隼鷹達、右手には駆逐達と別れているようだ。

 

(駆逐ね・・待ったなしだわ!)

 

 

 

ヤマトは迷わず駆逐の集まっている方に向かった。

第六駆逐達と時雨に皐月と鈴谷は駆逐に囲まれており、利根姉妹も混じっている。

利根に至っては駆逐艦とあまり大差ない身長のようだ。

 

それを眺めながら机に突っ伏している卯月の隣に座り、その隣の椅子にエラーちゃんを座らせた。

すると誰だこの人という雰囲気になり周囲の時間が一瞬止まった。

 

「ぴょん・・?・・・・・ぴょょぉん!?」

 

そして卯月の驚きで周囲の艦娘が全員此方に向いた。

酒盛りしてる面々は気づいていないようである。

 

「先ほどぶりね?」

 

「どうして此処にいるぴょん?!」

 

(もちろん君たちと戯れに来たのよ)

「私も食事しに来たのよ?」

 

「えっと、こちらの方は?」

 

「ヤマトよ」

 

時雨の呟きにヤマトが答えた。

その瞬間鈴谷を囲んでいた面々は鈴谷からヤマトに移った。

 

(艦娘に囲まれました!もう最高です!お腹いっぱいですっ)

「あら利根姉妹も先程ぶりね」

 

「先ほどぶりじゃな、お主も食事か?」

 

「そう・・食事ね」

 

ヤマトとして生まれて初めての食事で少し複雑な気分である。

 

「ねぇねぇ、ヤマトは何しに来たの?」

 

「あら、雷は聞いていないのね?」

 

「まだ聞いていないのよ!」

 

雷はヤマトがどんな人なのか聞いていたが、何しに来たのかまでは聞いていなかった。

 

「そうね、睦月ちゃんが怪我してたから送ってきたのよ?」

 

「そうなの!お礼を言うわ!」

 

「なのです!」

 

「スパスィーバ」

 

(雷に電と響ね・・暁は・・何故頭を抱えているの・・?)

 

横で頭を抱えている暁にヤマトは疑問に思った。

 

 

「所でヤマトは食事じゃろ?あまり邪魔するのはいかんぞ」

 

(利根?その気遣いは嬉しいような嬉しくないような)

 

「そうねっ!邪魔するのは良くないわね!」

 

(とりあえず、食べ?ましょう・・)

 

眼の前にはどう見ても普通の和食がある。

 

(焼鮭に卵焼きサラダと漬物・・白米と味噌汁・・分からん・・しかし頂くならまず卵焼きです!)

 

判るのだ厨房に瑞鳳が居るということは卵焼き担当であると・・たべりゅ焼き・・

見た目どう見てもだし巻き卵である、それを一口食べたヤマト。

周りの艦娘達はヤマトを見ている、何か気になるのか。

 

(うん・・美味しい、食事楽しめるのは良かったわ・・・アルミナ検出しました。ありがとうございます。)

 

ヤマトは食事が楽しめることにホッとしていた、湯が楽しめず食事も楽しめなかったらどうしようかと思っていたのである。

そして、だし巻き卵からアルミナが検出されたようである。

流石にボーキサイトのままでは不純物が多く混ざってしまうだろうと予測ができた。

 

 

(焼鮭・・これもね・・、普通にアルミナ出てきました。どうなってるんでしょうか・・?)

 

 

こうしてヤマトは食事を終えて思ったのである。

 

 

(全てからアルミナ出てきましたね。どの様に作っているのでしょうか・・・しかし)

「・・・良いわね」

 

 

食事が普通に取れる事に安心していた。

艦娘の作る料理が食べれなかったらどうしようと思っていたのである。

しかしそれでもヤマトは味が分からなくても無理やり口に入れていたであろう。

 

 

そしてヤマトの様子が気になったのか利根はヤマトに聞いた。

 

「どうしたのじゃ?、神妙な顔をしおって」

 

利根はヤマトの雰囲気的に言っただけなのである。

 

(あら・・顔に出てたのかしら?)

「・・初めて食事をしたのよ」

 

「なんと!?今までどうしおったのじゃ!」

 

(ナノマテリアルの補給って食事になるのかしら・・?)

「私ね、食事が必要ないの」

 

「食事が必要ないとは普段どうしとるのじゃ!?」

 

(今日ヤマトとして生まれたばりなので食事なんて食べたことありません、なんて言ってみるのもアリかしら・・)

「どうもしないわよ?」

 

ヤマトは生まれてからまだ半日しか立っていないのよ、と言って見ようかと思っている。

仮に話したとして何か不都合があるのかと思うと何も無いのでは?と。

それに今より艦娘に構ってもらえるんじゃないかと予想ができる。

 

(生まれたてです!・・って今言っても混乱するだけね)

 

「ねぇ!ヤマトはここに来る前は何してたのっ?」

 

(雷ちゃんいきなり攻めてくるねぇ?)

「ずっと海の上に居たわ」

 

目が覚めて此処に来るまで海上に居たので嘘ではないとヤマトは思っている。

 

「さみしくないの?」

 

(・・雷ちゃん・・私の心抉りたいの・・?)

「そうね、考えた事なかったわ」

 

皆静かになった。

どうやら気まずい空気になったようだ。

何か話を逸らさなければとヤマトは思い、鈴谷に話を振った。

 

「そういえば鈴谷はお疲れ様ね、見てて面白かったわ」

 

 

「えっ、わたし?・・・あっ!もしかして私だけ通れたのって・・」

 

ヤマトは鈴谷を見てニコニコしている、それを見た鈴谷は察したようだ。

 

「ちょっと、見てたならたすけてよっ!あの2人から逃げるの大変だったんだから!」

 

鈴谷はマッドサイエンティストの2人から逃げるのがどれだけ大変だったか、見てたなら助けてくれてもいいじゃないと思っていた。

ヤマトはただあの2人を近づけたくなかっただけである、それと半分見ていて楽しかったのが大きいようだ。

 

「無理ね、私もあの2人通したくなかったのよ?」

 

鈴谷も分かっている、マッドサイエンティストの2人を通したくない気持ち。

 

「ぶーっ」

 

(しかし改二前の鈴谷ですかね・・?上着の下は白いシャツとな・・凄くイイですね!)

 

「ふふふっ・・」

 

 

「ねぇねぇ?このお人形よく出来ているね!ボクほしいよっ」

 

皐月は椅子に乗せたエラーちゃんが人形だと思っているようだ。

椅子に乗せてから微動だにしないエラーちゃん、何故か人形のフリをしている様だ。

そして皐月の言葉で思い出したのか、第六駆逐達はエラーちゃんの元に移動した。

 

(あら・・暁がいつの間にか復活しているわね?先程まで耳を塞いでたようだけど何が・・・この2人ねぇ?要らぬ事を話したのは・・)

 

 

「よく出来ているわね!」

 

「妖精さんそっくりなのですっ」

 

「そうだね、本物に見えるよ」

 

「暁はもう一人前のレディーよ」

 

(暁ちゃんお決まりのセリフありがとうございますっ。)

 

「ふふふっ、この子はエラーちゃんって言うのよ」

 

「エラー・・変わった名前ぴょん・・」

 

卯月はヤマトは持ってきた妖精人形が凄く気になっていた。

あの非常識なヤマトが普通の人形を持ってくるはずないと、それと人形を食堂に持ってくる意味が良くわからないと。

絶対に何かあると思っていた。

 

「抱えてみる?」

 

「遠慮するぴょん・・」

 

「ふふふっ」

 

抱えたら何か起こる気がしてならない卯月である。非常に鋭い様だ。

一方ヤマトは終始笑顔である。

 

「ボク!ボクっ抱っこしていい??」

 

「良いわよ」

 

そうして皐月はエラーちゃんの脇を両手で支え持ち上げた。

 

「わぁー、ボクほしいよっ!」

 

(エラーちゃん表情一つ変えないわね?感覚とか無いのかしら?)

 

ヤマトは表情一つ変えないエラーちゃんに感覚は有るのか無いのか、感覚があったらとんだ役者だと思っていた。

そうして抱きかかえられたエラーちゃんを駆逐達は観察するようにじっくり見てる。

 

「本当によく出来てるわね!本物の妖精でも驚かないわっ」

 

「なのです・・?」

 

「これは・・」

 

「・・・」

 

どうやらじっくり観察していた三人は薄々本物の妖精なのじゃないかと思い始めている。

しかし後ろでチラチラ見ていた暁は気づいていないようである。

 

「ね・・ねぇ。この妖精さん・・」

 

「ふふふっ」

 

流石に抱っこしている皐月は気づいたようだ、それにヤマトは笑顔で返した。

 

「ふふふっ、よ~く目を見てご覧なさい?」

 

「「・・・」」

 

じっくり観察していた皐月と第六駆逐の三人は気づいた、そして先程から無言の卯月も気づいたらしい。

 

「皐月ちゃん?エラーちゃんを机の上に置いていただける?」

 

「う・・うん」

 

机の上にエラーちゃんを置くと倒れず自立した。

 

「へぇ~、よく出来てるじゃん?」

 

「よく出来た人形じゃな」

 

「僕。人形には見えないよ・・」

 

「ふふふっ、エラーちゃん?そろそろ挨拶をしてくれる?」

 

するとエラーちゃんは辺りを見渡し右手を上げた。挨拶のようだ。

皆目を見開いており、近くで見ていた4人は納得したような表情をした。

 

 

― こんにちは! ―

 

 

「へぇ!?妖精じゃん―!」

 

「こんなに大きい妖精が居たのじゃな」

 

「やっぱり本物なんだね・・」

 

エラーちゃんは挨拶で言葉を喋っているがヤマト以外聞こえていない、大きくなっても聞こえない事に変わりはないらしい。

時雨は夕立の横にずっと座っており少し離れているはずだが気づいた様だ。

そしてヤマトは誰が一番驚いているか辺りを見回し探したが、これといって驚いている子がいなかった。

 

(あら流石に引っ張りすぎたかしら?)

 

「凄いね!こんなに大きい妖精初めて見たよっ!」

 

「ハラショー、初めて見たよ」

 

どうやら2人は耐性が有るようだ。

 

「びっくりしたわ!」

 

「凄いのですっ」

 

エラーちゃんはまた囲まれてしまった、駆逐に人気のようである。

そして先程から暁が微動だにしない事にヤマトは疑問に思った。

 

「暁ちゃん?・・」

 

どうやら暁には刺激が強かったようである。

 

(いけないわっ)

 

倒れそうになるのをクラインフィールドで支え、そのまま引き寄せ迷いなく膝の上に乗せた。

 

(暁ちゃんゲットです。このままヤマト本体にお持ち帰りしたいですね・・ふふふふっ)

「エラーちゃんに驚いたようね、意地悪が過ぎましたわねぇ・・」

 

「この程度で驚くなんて情けないわねっ!」

 

「はわわわ、暁ちゃん大丈夫なのです!?」

 

「気絶しているだけだと思うよ」

 

(雷は色々と強いわね・・流石ダメ提督製造機・・侮れないわっ)

 

 

「・・このままでは良くないわね」

 

膝枕ではなく膝に乗せて座らせられており、首の支えが無いので首が痛そうである。

椅子の形状的にも寝かせたら痛そうでヤマトはどうしたものか考えていた。

 

(何処か・・・!?・・ふふふっ・・ふふふふっ。お部屋まで連れて行ってあげれば良いじゃなの!決まりねっ!!)

 

 

「お部屋まで連れて行ってあげましょう、案内していただけるかしら?」

 

 

ヤマトはいつも以上にニコニコしている、きっと夕立が起きていたら気づいていたであろう。

 

「連れて行っていただけるのっ?助かるわ!」

 

「良いのですか?」

 

「スパスィーバ、助かるよ」

 

(いい子だね君たち・・私の黒い部分が悲鳴を上げてるよ・・)

「良いのよ、驚かせてしまったしね?」

 

するとエラーちゃんが落ち込んでしまった、それにヤマトがフォローを入れた。

 

「エラーちゃんが気にする事ないわ」

 

― 申し訳ないです ―

 

「いいのよ・・むしろ・・うぅん、大丈夫よエラーちゃん」

 

本音が漏れているヤマト、本音だけで話したら皆どんな反応をするのか少し気になるのであった。

 

 

 

「では、案内してくれるかしら?」

 

 

 

ヤマトは暁を優しく抱き上げ、部屋まで連れて行くのであった。

 

 




全体の動きを予測するのって大変ですね。


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大和ハ寮ニ突入

夏風邪は長いですね。大変です。


―――駆逐寮―――

 

艦娘寮にやってきたヤマト。

食事処を出るまで酒盛りしている艦娘には気づかれなかったヤマト、そのまま案内されて艦娘寮にやってきた。

寮舎は複数建っており、その一つを駆逐専用寮として使用しているようだ。

その駆逐寮へやってきたヤマトは、これから何かが起きないかと胸を躍らせていた。

 

「ここよ!今開けるわっ」

 

「なのですっ」

 

「スパスィーバ、助かるよ」

 

(部屋の前までやって参りました。この扉の向こうに・・ふふふふっ・・・気分が高揚しますっ)

 

開かれた扉に明かりは点いていない、しかしヤマトは無駄に有り余っている性能から微弱な光があれば見ることが出来た。

その視界には目に付く丸い絨毯にのった丸いちゃぶ台にその奥は窓がありその壁に横長の机が窓際全面に張り付いたような状態で設置されている。

そして雷は入っていき明かりを点け、ヤマトを部屋に入れる。

 

 

「点けたわ!こっちよっ」

 

(ふふふっ・・いざ、突入しますっ!)

 

「あっ、靴を脱いでほしいなのです」

 

部屋に一歩踏み出した所で電は思い出したように言った。

部屋の前にあった箱は下駄箱であったようだ。

 

「あら、失礼したわね」

 

ヤマトは部屋に入りたい一心ですっかり忘れていた様だ。

そして、ナノマテリアルで出来たブーツは溶けて消えるようにして消滅した。

 

「なの・・です?」

 

「それは・・どうなっているんだい?」

 

(早く入りたいですわっ、しかし駆逐の子を無視するなんて持っての外ですわっ!)

「そうねぇ・・私物を自由に作れるのよ?この服もそうよ」

 

「凄いのです!」

 

「ハラショー、びっくりだよ」

 

電と響は驚いている様である、それもそのはず眼の前で不可解な現象が起きて驚かない方が珍しい。

部屋に先に入った雷は気づいていないようだ。

 

「さぁ、暁を寝かせましょ?」

 

そう言ってヤマトは部屋に入ると左右に二段ベッドがあり、ベッドの横にはタンスがみえる。

窓際の机は勉強机の様だ、定規やペンに海図が乗っている。そして何よりも目を引くのが『!ですのな』と描かれた紙である、どうやらクレヨンで描いた様である。

そうして見たところ部屋は8畳程で正方形の様だ。

 

「こっちのベッドよ!上だわっ!」

 

二段ベッドの上の段である、ハシゴが垂直で抱えたまま上がるのは無理そうだ。

 

「あのっ、下で大丈夫なのですっ」

 

「ハラショー」

 

どうやら気を使ってくれているようだ、しかしヤマトにはお構いなしである。

クラインフィールドで足場を作り上に上がった。

 

「凄いわ!どうなっているの?」

 

「不思議なのです!」

 

「非常に興味深いよ」

 

「あら、服を掴まれているわね・・・」

 

そしてベッドに暁を寝かせ離れようとして気づく、服を掴んでいるようだ。

 

「仕方ないわねっ!」

 

そう言いながら雷はハシゴを上ってきた。どうやらヤマトの服を掴んでいる手を離そうとしている様だ。

しかしヤマトは妙なことを思いつき、雷を止めた。

 

「大丈夫よ」

(これはぁああ!一緒に寝れるチャンスでは!?何か口実を考えなくてはっ!!ええいっままよ!)

「うふふふっ・・一緒に寝ちゃおうかしら?」

 

直球のヤマトである。暴走して空回りした思考で良い口実が浮かばなかったのである。

 

「そんなの悪いわっ」

 

「迷惑は掛けられなのです!」

 

「此処まで連れてきてくれた、それだけで十分だよ」

 

(そんな些細なことこのヤマトは気にしなくてよっ!反応からするに、ひと押ししたら行けそうね!!)

 

「ふふふっ、大丈夫よ?」

 

 

 

 

――― ウー ――― ウー ―――

 

 

ここでサイレンが鳴った、泊地全体に響き渡る音量である。

ヤマトは何のサイレンか困惑していると、暁が目を覚ましそうになる。

 

 

「これは襲撃よっ!行かなきゃ!」

 

「あかつきおこすのです!」

 

「ハラショー」

 

(しまっ!?何でこんなときにサイレンが!?て敵!?暁が目を覚ましてしまうじゃないの!起こさないわ!)

 

「う・・・ん・・?・・・えっと・・ヤマトさん?」

 

(ノォー!!なんて事なの!?誰よ!こんな時に鳴らしたの!)

「あら・・おはよう」

 

暁は若干寝ぼけているようだ、そして次第にサイレンに気づき始めた。

 

「あ!敵襲!?」

 

「起きたわね!行くわよっ」

 

「なのです!」

 

「ハラショー、送ってくれたのに悪いね」

 

そうして第六駆逐艦は走って出ていってしまった。

部屋に残されたヤマトはひとり膝を付いて崩れ落ちている。

横で妖精が励ましてくれている。

 

 

「なんて事なの・・誰よ・・・私の邪魔したの・・・・」

 

暁と添い寝出来るチャンスを警報に邪魔されたヤマトである。

 

「フフフッ・・ユルサナイ・・・ユルサナイワ!」

 

そして、邪魔された怒りをぶつけに行くヤマトであった。

 

 

 

 

(塵も残さず消してくれるぅ!!)

 

 

 

 

 

―――執務室―――

 

 

提督は未だに執務室に居た。

食事も取らず、あれから書類に追われていたのである。

 

(やだ・・もう、報告はありのまま送って・・・・てか大淀くん?)

「大淀?この妖精の親玉ヤマトってなんだい?」

 

「此方ですか?先程の話は無しと言ったのですが、妖精と会話出来る存在には大本営も慎重にはならざる得ないと判断出来ます。」

 

妖精と会話出来る存在が今までに確認されておらず、会話出来るというのは非常に希少であること。

深海棲艦相手に艦娘と妖精頼りの現状で、妖精と会話出来る存在を敵に回すと言うアホな事をやってのけないだろうと。

その様な存在を敵に回すということは、妖精全体を敵に回す可能性があると判断でき慎重な対応をするはずだと。

 

「大淀くん?これは流石に送れないなぁ」

 

「そうですか・・?」

 

「うん・・大淀くん。アホと言うのは何処にでも居るんだよ・・」

 

しばらく大本営に居た提督は色々知っている、大本営の半分が頭の固い連中とアホの塊で出来ていると。

その様な報告をしては、妖精と会話出来る希少な存在を大本営に寄越せ!と言われる未来が見えていた。

最悪艦隊送ってくる気がしてならないのであった。

 

(うん・・これ送れないなぁ・・あ・・でもヤマトは予想してたみたいだしアリか?・・・態々衝突させるような報告はマズイよなぁ)

「大淀これシュレッダー」

 

「分かりました」

 

(とりあえずはヤマトが出現した報告で時間稼ぎして・・さっさと帰ってもらおう・・)

 

提督はその報告だけしてさっさと帰ってくれれば、此方の預かり知らぬ事です。とやり過ごそうか考えていた。

そこへ大淀の無線に連絡が入った。

 

― 大淀っ!大淀さんっ敵です! ―

 

「敵ですか?」

 

― 一個艦隊だ! 目標は此処へ一直線で向かってるよっ! ―

 

大淀の無線から川内の声が聞こえた。

一個艦隊という事は最低でも10隻以上である。

その報告に慌てた提督は大淀に言った。

 

「大淀無線を貸せ!」

 

そう言いながら大淀から無線奪い取る提督、そして川内に詳細を報告させる。

 

「川内!敵の詳細を教えろっ!」

 

この時点で提督は嫌な予感しかしなかった。川内が今までに慌てた様子を見たことが無いからだ。

 

― 提督!?敵だよ!敵っ。ル級が6とタ級が2だよっそれ以上は分からないよ! ―

 

報告を聞いた提督は頭を抱えた、それ以前に何故その様な敵艦隊が此方に向かってきているのか。

まさかヤマトが連れてきたのでは?さえ思えてきている。

そして直ぐ川内と大淀に命令を下した。

 

「川内は離脱出来る位置で監視!大淀は警報を鳴らせ!赤だ!!」

 

川内には敵艦隊の監視を続行させ、大淀には警報を鳴らすよう命令した。

赤警報は敵襲で撤退視野の警戒態勢である。

 

― 了解だよ! ―

 

「了解ですっ」

 

そして大淀は駆け足で執務室を出ていった。

 

「川内、ルとタ級以外見えないんだな!?」

 

― そうだよ!  ・・あっ!全部フラグシップだよ!オーラが見えたんだよ! ―

 

川内は外にも微かに確認出来ていたが焦るあまり夜間にル級とタ級だけフラグシップのオーラでよく見える事を報告し忘れていた。

一方提督は戦艦だけの部隊なのか聞きたかっただけであった。

 

「えっ・・・川内!今すぐ撤退だ!!」

 

そして提督は執務室を出ていき大淀の後を走った。

 

 

 

 

―――通信室―――

 

提督は通信室の扉を荒く開け入ってきた。

そして第一声が大淀を驚かせる。

 

「大淀!全員武装が完了次第此処を破棄する!!」

 

「提督!?」

 

大淀は信じられないようなことを聞いた表情である。

此処パラオ泊地は最前線であり、早々破棄なんて出来ないからである。

戦線を下げるという事は同時に敵に力を与えてしまう、それだけで防衛が不利になる。

 

「それはっ!?、今からタウイタウイに応援を入れた方が」

 

「川内から報告でフラグシップ戦艦8だ!まともにぶつかれば勝てない!」

 

提督はパラオ泊地の破棄を決定した。

戦艦のフラグシップが8隻、川内の報告が来ておりフラグシップ以外にも居る可能性があると判断できる。

昼間であれば軽空母全員並べて先制攻撃を入れ時間稼ぎをしタウイタウイの応援を待つことが出来たが、夜間の今空母は無力である。

仮に相手をするにしてもフラグシップ一隻に戦艦2隻当てないとまともに倒すことが出来ない、現在の主力戦艦は長門、陸奥、山城であり圧倒的に数が足りないのである。

故に提督はさっさと逃げることに決めたのだ。

 

「フラグシップ!?」

 

そして提督はマイクを持ち泊地全体に通達するのである。

 

 

―― パラオ泊地 ― 全体に ― 告げる ――

 

 

―― パラオ泊地 ― 全体に ― 告げる ――

 

 

 

―― 全員 ― 直ちに集合 ― 第一倉庫 ――

 

 

―― 全員 ― 直ちに集合 ― 第一倉庫 ――

 

 

提督はパラオ泊地全体に集合命令をだした。

 

「大淀も行くぞっ」

 

「はいっ」

 

そして建物内には誰も居なくなった。



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大和ノ暴走

悪化しました。

頑張りました。




――― 第一倉庫 ―――

 

 

此処はパラオ泊地で最も大きく、赤く美しい倉庫である。

泊地の中心にあり港湾の近くとアクセスが良く朝礼などでも頻繁に使われる倉庫である。

しかし今は無残な姿を晒している、ヤマト接舷被害により倉庫の扉に壁が一部がに歪んでいる。

 

今倉庫には放送を聞いた艦娘が集まっている。

警備に出ている艦娘以外、泊地に居た全艦娘が集まっており、そこへ提督がやってきた。

倉庫へ入った提督は朝礼台に上がり辺りを見回している。

そしてマイクを持ち伝える。

 

 

― 全員揃ってるな?・・戦艦フラグシップが8隻以上の艦隊が此処に向かっている ―

 

 

辺りが騒がしくなるかと思われたが誰も口を開かない。

提督の話を聞き逃しまいとしているようだ。

 

 

― 現在の戦力では到底対応出来ないことから、此処を破棄撤退する ―

 

 

集まった中にはマッドサイエンティストの2人ですら静かに聞いている。

 

 

― では、直ち・・ヤマト・・・ ―

 

 

そこへヤマトがやってきた、その後ろには大きな妖精両腕を組んでいる。

フラフラと千鳥足である、皆何かあったのかと一様に思う。

 

ヤマトを知らぬ者も提督の発言でヤマトだと理解した。

 

 

『 ふふふっ・・だれかしら?・・私の邪魔をするのは・・・・ 』

 

 

大きくない声なのに全員はっきりと聞き取ることが出来た。

 

 

『 誰かしら・・?ねぇ?・・ねぇ??教えてくれる? 』

 

 

やはり、小さなヤマトの声は不気味なほどにはっきりと聞き取ることが出来る。

そして次第にヤマトの純白のドレスに刻まれているイデア・クレストが光を放ち始めた。

 

 

― ヤマトか・・ ― 

 

 

『 だれなの?ねぇ? 』

 

 

― 戦艦エリート8隻を含む艦隊が此処に向かっている・・ ―

 

 

答えないとヤバイと提督は思った。

 

 

『 ・・・たったそれだけ・・それだけの為に邪魔されたの・・?私・・・・ふふっふふふふっ 』

 

 

そしてあまりにも不気味であった、ヤマトから発せられる雰囲気が、存在感が、すべてが。

 

 

『 初めてよ・・?この気持・・・邪魔するものは全部消さないとね・・  」

 

 

すると倉庫にヤマトの艦首が刺さった、いや刺さっていない。ヤマトに触れた部分が消滅している。

其処にいる者は皆はおかしいと思った、此処はヤマトが停泊している場所から100m以上離れている。

その間はトラックやらコンテナやらを置いたりする陸地のはずだと。

 

なのにヤマトの艦首が見える。

 

そう、ヤマトは此処まで移動してきたのだ港湾をナノマテリアルにより削りながら、倉庫までやってきたのである。

ヤマト自身クラインフィールドによる移動が出来るためその気になれば空も自由に飛べるのである。

 

そしてヤマトは倉庫の一部を削りながら停止した。

 

 

― うそだろ・・ ― 

 

 

呆然と見上げていると今度は、ヤマトの足下から光の階段がヤマトの船体まで伸びた。

あまりにも現実離れした光景である。

ヤマトはその階段をゆっくりと上がっていく。

 

 

― ヤマト!・・・連れて行ってくれ・・・ ―

 

 

連れて行ってくれと言った。

好奇心が勝ったのかそれとも別の物か分からなかった。

それでも提督は言った、見なくては行けない気がしたからだ。

 

 

すると艦娘達も釣られるようにして言った。

 

 

「「私も、私達も連れて行って!」」

 

 

誰が言ったのか良くわからない、それはどうでも良かった。

暴走しているヤマトだが、艦娘を乗せるのは全然OKだと。

むしろ乗ってください! と。

 

 

『・・・良いわよ・・・』

 

 

すると2人並程んで登れる程の大きさであった光の階段が、数人横に並んでも余裕が出来る大きさにまでなった。

そして一人ひとりと階段に足をつけ慎重に上がってきた、不気味なほどに明るく光っているヤマトに。

 

 

 

 

 

 

―――ヤマト艦橋―――

 

(艦橋に来ました。艦娘が大勢乗っています!ご馳走様ですっ!!それにしても・・・)

 

『 狭い・・ 』

 

ヤマトが言った。

そう全員艦橋内に居たのである。

計器などの機材が撤去されていても流石にヤマトと提督に艦娘29人は狭かった。

皆艦橋内に慣れないのかキョロキョロと辺りを見回している。

夕立と卯月は慣れたのか二人だけがソファーに座って寛いでいるようだ。

 

『 仕方ないわね 』

 

そう言いながらヤマトはエレベータを消した。

その分の空間が広くなり、艦橋に余裕が出来た。

 

「「・・・」」

 

皆反応について行けないようだ。

マッドサイエンティストの2人ですら静かであった。

 

そしてヤマトは動き出す、突き進んだ港湾をそのまま下がっていった。

 

 

『 敵は・・どこかしら?提督? 』

 

「・・東だ」

 

『 そう・・ 』

 

ヤマトは内湾を出て東へ進路へとった、パラオ泊地から北太平洋の方向である。

そして徐々に加速していき、気が高ぶっているのか300knotまで速度を上げていた。

もはや艦首が上がりモーターボートの様な状態である。

 

皆窓に張り付いて外を見ている、外は暗いが月明かりである程度見えるのである。

皆一様に思った流れる光景がおかしいと。

 

そして提督はヤマトに聞いた。

 

「どれ位出しているんだ・・?」

 

(あら・・思ったより速度出したてわね・・)

『 ・・・300knotよ 』

 

ヤマトのつぶやきは小さくても聞こえた。

提督は聞かなければ良かったと思った、聞かれたヤマトは速度を聞かれて300knot出していることにやっと気づいた。

 

 

それから数分もせずヤマトの電探に反応があった。

 

(反応・・1人?・・何かしら?)

 

ヤマトは主砲を右舷反応のあった方向へ向けた。

すると海上に人影が一つ見えてきた、月明かりで微かだがヤマトにははっきりと見える。

 

『 川内・・? 』

 

川内は一直線にパラオ泊地へ向かっていたのか海上でヤマトに発見されてしまった。

そしてヤマトは川内のいる方向へと進路を変えた。

 

(野良なら・・回収ね!)

 

「何・・?」

 

― 提督っ! なんか光ってる戦艦がこっちに向かってきているんだけどっ! ―

 

(提督の所のですか・・残念ね・・)

 

ヤマトは残念がっている。

野良の艦娘であるならお持ち帰り出来るのでは無いかと思ったのである。

 

「川内・・大丈夫だ・・・」

 

― いやいやいや大丈夫じゃないよ!?めちゃめちゃ光ってるよ!!? ―

 

「済まない・・回収頼めるか・・?」

 

夜、月明かりより明るく発光し、高速で接近してくるのである。

ヤマトを初めて見る川内に混乱も無理ない。

 

『良いわ・・』

 

「川内、そのまま待機だ」

 

(あら、エレベータ消してたわね・・・艦橋横の出入り口から入れてしまいましょう)

 

ヤマトは川内の近くまで来ると船体を艦橋付近まで沈め、艦橋横にある展望エリアの出入り口から入れるのであった。

それから艦橋に入ってくるまで終始無言の川内である。

 

『いらっしゃい、川内』

 

「えっ・・なんでみんないるの・・?」

 

「これはだな・・後で説明する、皆にも説明しなくてはならないからな」

 

どうやら提督は混乱を避けるために後に纏めて説明するようである。

提督自身も若干めんどくさがっている雰囲気がある。

 

 

川内を回収してから数分も掛からずレーダーに反応があったようだ。

 

 

 

『 見つけた 』

 

 

ヤマトが言った。

 

 

まだ目視では怪しい距離だがヤマトにははっきりと分かっていた。

 

(あれ・・超重力砲って周辺に放電しなかったかしら?・・・事前に試験しておくべきだったわ・・・)

 

ヤマトは超重力砲による放電等で艦内への影響を把握していなかったのである。

艦橋に居る艦娘に万が一あっては行けないと超重力砲の使用が出来なかったのである。

提督だけであったなら撃っていたであろう。

 

そして元主砲である46cm三連装砲が右を向いた。

もう既に照準しているのか、主砲の向いている方向には何も見えない。

 

すると前方で深海棲艦の艦隊が見えた、月明かりでしか見えないが十数隻程居るようだ。

 

それを確認したヤマトは取舵をとった、ゆっくりとである。恐らく誰も乗っていなければ全力で向きを変えていただろう。

 

そして46cm三連装砲3基9門が一斉に光を噴いた、青白い光が一直線に深海棲艦の元に飛んでいった。

 

否照射された。

 

飛んでいった光は深海棲艦を飲み込みそのまま真っすぐ進んでいき見えなくなり。

それを第二、第三射と立て続けに繰り返し砲撃した後には、深海棲艦が存在したであろう位置には何も無くなった。

 

 

『 呆気なさすぎる・・分かってはいたのだけど・・弱すぎるわ 』

 

 

心の声が漏れているヤマトである。

皆呆然としていた、あまりにも非現実的な光景を見せられたからだ。

主砲から青白いレーザーが出るなんて普通に考えてありえないからだ。

 

 

『 あら 』

 

 

ヤマトの右側側面で水柱が上がった、どうやら敵潜水艦からの魚雷である。

しかし魚雷の直撃を受けたはずのヤマトは全く揺れない、クラインフィールドがすべてのエネルギーを船外に弾いたのだ。

 

 

『 ふふふっ・・潜水艦ね?・・・消えなさい 』

 

 

後部垂直発射装置が火を噴いた。ミサイルが1本2本と飛んでいき64本発射した辺りで止まった。

一度上がったミサイルは降下しそのまま海中に潜っていった。

 

そして辺り一帯ヤマトを囲うようにして水柱が上がる、浅い位置で爆発した物も有るのか所々巨大な水柱を上げている。

 

 

『 んーっ・・終わったかしら・・?・・・反応は・・無いわね・・・ 』 

 

 

皆言葉を放つことが出来ない。こんな非常識な光景を見せられて理解が追いつかない。

ヤマトは一体何者なのか何処から来たのか、ただ判ることは未来的な技術であることだけ。

 

『あら・・突然の反応・・?生き残りかしら・・』

 

意外としぶといのかと思ったヤマトは主砲を旋回させながら反応のあった方向を見た。

ヤマトの目に映ったのは深海棲艦ではなく艦娘であった。

 

(んっ!?・・あの子は大鯨だったはず・・・ふふふっ・・誰にもあげないわ・・・ふふふふっ)

『ふふふっ』

 

大鯨は此方を見て怯えているようである。

恐らく発光しているヤマトを見て怯えているのだろう。

 

(しかし戦闘後に艦娘ですか・・ドロップでしょうか?。超重力砲の扱いには注意が必要ですかね・・)

 

ヤマトは船体を大鯨に近づけ、川内と同じ様に艦橋まで船体を沈め大鯨を入れるのであった。

 

『いらっしゃい、大鯨。歓迎するわ』

 

「大鯨なのか・・?」

 

提督は大鯨の姿を知らなかったからだ。

今までに確認したという情報が無くこの艦娘が本当に大鯨であれば初の発見だからだ。

そして本物だとしたら何故ヤマトが知っているのか、提督には分からなかった。

 

「 あ・・あのっ・・潜水母艦大鯨です。よろしくお願いします・・」

 

完全に怯えているようだ。

その様子を見て少し興奮しているヤマトである。

 

(ふふふっ・・良いわ・・凄く・・)

『ふふふっ、よろしくね』

 

「ああ、よろしく頼むよ」

 

その一瞬ヤマトの纏う空気が変わった。

 

『提督?貴方はよろしくしないわよ?』

 

「えっ・・えっと・・何を?」

 

『大鯨ちゃんは私の所に所属するのよ。文句があるならその辺に沈めるわよ』

 

「!?ッ。イ、イエス!マムッ!!」

 

提督は突然の発言に理解できずにいる、そしてヤマトは大鯨を譲る気がないようだ。

 

 

 

こうしてヤマトの八つ当たりは終わったのである。

 




書いてて頭がふわふわしてました。ミスしてたら修正されます。
修正されました。


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大和ト大鯨

武蔵が出なくて大型連打したら胃が大破しました。
紅茶姉妹いっぱい来ました。


それと短めです


―――執務室―――

 

あの後ヤマトはパラオ泊地へ一直線に、途中敵に遭うことも無く何事もなく帰還した。

 

そして提督は執務室で頭を抱えていた。

 

上への報告に艦娘たちへの説明、今後の対応に提督は悲鳴をあげていたのである。

更には大鯨の初発見である、未確認艦娘の初発見だけで大騒動が起きるのだ。

報告には発見した艦娘の能力と写真をとらなくては行けないのだ、場合によっていは大本営に送る事もある。

 

(どうすんのぉ!?報告できないよっ!てか何でヤマトは大鯨の事を知っているんだよ!?ほんと何者なんだよっ!)

「大淀ぉ~、大鯨の報告しなくて良いよね?」

 

「未確認艦娘の秘匿は重罪ですよ」

 

(知ってるよ?それぐらい。・・大鯨の情報どうしよ・・ヤマトに頼まないといけないよねぇ)

「ねぇ?。ちょっと大鯨の記録取って来てよ?ヤマトにお願いしてさ」

 

「・・・」

 

大淀は無言で顔を逸した。

 

「・・・大淀くん?こっち見よう?何で目をそらすのかな?言いたいことあるなら言って良いよ?」

 

「大鯨・・諦めましょう」

 

(言い切ったよ・・早いよ!秘匿は~とか言いながら言い切ったよ・・)

「しかしヤマト・・何者なんだよ・・本人も異常だし本体は更に異常と来た」

 

「未来から来たとか言われても不思議ではないですね」

 

(主砲からビーム出たしねぇ?ミサイルも積んでいるみたいだよねぇ?)

「報告どうすんのぉ・・そのまま書いたら頭おかしいって思われるよ・・」

 

そこへ大淀が待ってましたとばかりに資料を差し出してきた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

高機動高速戦艦ヤマト

 

航行速度 300knot

旋回性能 ドリフト可能

陸路航行 可能

 

武装

 

レーザー砲      3基9門

ミサイル発射管    50門以上

 

15.5cm砲らしきもの 2基6門

対空機銃らしきもの  多数

 

特殊

 

シールド及び結界の類 任意展開

光操作?       足場生成

 

 

ヤマト本人備考

 

お付き巨大妖精「エラー」

 

光操作 攻撃可能

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

大淀が差し出した資料にはその様に書かれていた。

恐らく大淀が確認できた情報だけだろう。

それを見た提督は頭を抱えた。

 

(何・・この僕の考えた最強のキャラみたいな性能は頭おかしいんじゃないの?)

「確認できた情報だけでこれか・・実際の性能はどんなもんかね・・・」

 

提督はヤマトが現代では異常な技術で出来ていることを認識していたが。

書面にして見るとどれ程異常なのかよく分かる。

そして上への報告が最も問題である、あれ程までの異常火力に異常な機動力報告するわけにもいかない。

かと言って報告したとして頭がおかしくなったと思われるのが落ちである。

 

「・・直接聞いてはいかがですか?」

 

(直接聞いて平気なの?あれ・・)

「ちょっと大淀聞いてきてくれない?」

 

「無理です」

 

即答した大淀である。

 

「君っ秘書官だよね!?ちょっとヤマトにお話聞くだけだから時間掛からないでしょ?」

 

提督はヤマトに聞いて不快を買ったら海に沈められるんじゃないかと思っていた。

大鯨の時のやり取りが若干トラウマになっているようだ。

あの様子を見るにヤマトは何処に逆鱗が有るのか分からない、分かることは艦娘に対して何かが有るということだけだ。

 

「提督が聞いては如何ですか?。報告書は私が纏めて置きますよ」

 

(・・分かるよ?行きたくないの・・僕も行きたくないんだよ?まだ死にたくないからね?)

「大淀くん・・じゃあさスペックとかだけで良いからさ聞いてきてよ。ほらヤマトさ艦娘には甘いみたいだしさ・・」

 

ヤマトに聞きに行きたくない提督と秘書の大淀である。

 

「それ・・スペックも何も変わりませんよ」

 

(なんかもう空飛んでも驚かないぞ―?)

「ほらもう此処まで見せてくれたしさ・・多分教えてくれるんじゃないの?」

 

「提督が聞いてきては如何ですか?」

 

(そんなに行きたくないか・・仕方ない・・)

「じゃあ・・間宮券・・5枚」

 

「提督聞いていますか?」

 

(くそっ・・懐のも出すか・・)

「10枚・・・」

 

それでも動かない大淀。

そして提督に提案をする。

 

「最近経費削減で嗜好品の搬入数の枠が最近減ってきているんですよね」

 

(こ・・こいつ!?何故ここでその話を持ち出す?!最近不満が来ていたのは知ってるけどそれは・・・)

「分かった・・1割だ・・」

 

「・・・」

 

大淀は無言で手を使って数字を示してきた、手のひらを広げている。

どうやら5を意味するらしい。

 

(5割増しとかマジで無理だからね?最近キツくて経費削減してたんだからね?ずっと秘書だった大淀は分かってるよね!?)

「3割・・」

 

「分かりました」

 

「間宮券はやらないからな!」

 

 

こうして大淀は提督の胃にダメージを与えていた。

 

 

 

 

―――ヤマト艦橋―――

 

 

先程まで艦娘が詰めていた艦橋内は綺麗さっぱりしエレベーターも元に戻っている。

今その艦橋ではヤマトと大鯨が顔を突き合わせていた。

 

(大鯨ちゃんが仲間になりました。生活スペースに食材・・必要よね?)

「さて、大鯨ちゃん?どうしよっか」

 

「えっ・・えぇっと、あの・・お聞きしたいのですけど・・ていとく・・ですか?」

 

大鯨が若干の怯えと困惑を感じられる雰囲気で言った。

 

(うーん・・提督は組織的な扱いよね・・?こちらでも一緒なのかしら?)

「違うわよ?それと、畏まらなくても良いわ」

 

「その・・先程の方は・・」

 

(一応あれ本物の提督よねぇ?)

「此処の提督よ」

 

「えぇ・・・あのぉ・・貴方は・・?」

 

大鯨は目の前のヤマトがどういった立ち位置の人か分からなかった。

パラオ泊地に到着し、退艦する際に指揮していたのが此処の提督であった。

しかし、大鯨は2人を初めて見た時にヤマトの言葉が優先されたこと。

実際はヤマトが押し掛けているだけなのだが、大鯨がまだ何も知らないと言う事が原因であった。

 

「ヤマトよ、この戦艦の主と言ったところかしら?」

 

「私は・・どうしたら・・?」

 

大鯨は自分がどの様な扱いをされるのか困惑していた。

そして大鯨の困惑に気づいたヤマトは目を見開いた。

 

(!?・・・・マズイ・・マズイわっ)

「そうねぇ・・秘書艦お願いしようかしら?」

 

「秘書艦ですか・・?」

 

(・・・ありのまま言ってみましょうか?)

「そうよ。私ね1人だからサポートしてくれる子が欲しいのよ」

 

ヤマトは大鯨が嫌がったらどうしたものかと悩んでいた。

 

「ひとり・・ですか?」

 

「そうよ?仲間と言えるのはエラーちゃんだけね」

 

そう言いながらヤマトは横に座っている巨大妖精の頭を撫でた。

 

「あのっ・・私で良ければ・・お手伝いします」

 

「!良かったわ・・大鯨・・よろしくお願いね」

 

こうして大鯨はヤマトの仲間になった。

そして本格的に艦娘が乗艦することになると、食料や部屋が問題になってくる。

部屋はナノマテリアルで艦内にある程度自由に作れるが、食料はどうしようもない。

ナノマテリアルで食料が再現できるがナノマテリアルである。

味の保証ができない上に艦娘が摂取して大丈夫なのか疑問である。

 

そして、食材をどうにかしなければと思ったヤマトは大鯨を連れて提督の所に突入するのであった。

 

 




気合で書きました。頭がふわふわします。ミスしてたら修正されます。


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大和ト提督ノ会話二

 

―――休憩室―――

 

此処は鎮守府内最大の休憩室である、ホテルの待合室をイメージしたような作りになっている。

休憩室とは名ばかりにちょっとした調理場があり間宮や鳳翔が良く利用し軽食や甘味等を出している場所である。

ここでは暇を持て余した艦娘達や、甘味を食べに来る等よく利用される場所である。

 

今、其処ではヤマトから帰ってきた艦娘が集まっていた。

 

 

 

「あー‥これより会議を開始する」

 

「会議ってなんや?ヤマトの事はわかるんよ?でもアレ考えるだけ無駄な気がするでぇ?」

 

「いや・・しかし何も対応しないのは不味いだろう。なので今分かる情報を共有しようと思う」

 

「せやな、今分かる事だけでも纏めるのは賛成やぁ。対応は・・提督に投げたらええわぁ」

 

「・・・そうだな」

 

休憩室に集まって早々にヤマトの今後の対応に切り出した長門に、何処と無く投げやりな龍驤である。

龍驤はヤマトに艦載機撃墜のお礼をするつもりであったが、これ文句言ったらヤバイんじゃないかと思い言い出せずに悩んだ挙げ句不貞腐れていたのだ。

 

「この中で最初に接触したのは夕立旗艦の第三遠征隊であったな?」

 

「「・・・」」

 

 

反応が無い。

 

第三遠征隊の皆は突っ伏していた。

ヤマトに搭乗し非常識な一日を送って疲れているのであろう。

 

「夕立・・?。寝るなら部屋に行こう?」

 

「ぽい~‥」

 

「起きて夕立行くよ。」

 

「ぽい~」

 

「ごめんね長門。夕立に聞くなら明日にしてね?」

 

「あ・・あぁ」

 

時雨は突っ伏している夕立を見かねたのか、部屋に連れて行くようだ。

長門は有無を言わせない謎の威圧感に戸惑っていると、時雨は夕立ちを連れて出ていってしまった。

 

「仕方ない・・他は・・」

 

やはり反応が無い。

 

「こりゃ、解散した方がええでぇ」

 

反応の無い面々を見て龍驤は後日にした方が良いと判断した。

 

「いや・・うーむ・・そうだな」

 

「話聞けそうにないし、遠征隊抜きで今分かることだけ纏めよか」

 

「卯月、睦月と阿武隈を誰か部屋に連れてってくれないか」

 

「ボクが連れてくよっ!」

 

「仕方ないわね!私も手伝ってあげるわ!」

 

「なのですっ」

 

「一人前のレディーに任せなさい!」

 

騒がしい4人が連れて行ってくれるようだ。

駆逐達は大体寝ている時間なので丁度良いと言った感じである。

そして1人無反応の子が居るのに疑問に思う長門。

 

「響は一緒に行かないのか?」

 

「そうだね、少し話を聞きたいね」

 

「そうか」

 

「いや、気が変わったよ。一緒に連れて行くよ」

 

「そうか・・頼む」

 

「ハラショー」

 

長門は響の考えていることが分からなかった。

普段から不思議な行動をしているが、一体何を考えているのか全く理解出来なかった。

いつもの事なのである。

そうして響含め駆逐達は皆休憩室から出ていった。

 

「・・・改めて、泊地で最初に接触したものは誰だ?」

 

「たぶん、隼鷹やでぇ。まぁ話は聞けへんと思うけど・・」

 

龍驤はそう言い隼鷹のいる方向へ顔を向けた、それに釣られ長門も視線の先を追うと、窓際のソファーで酒瓶抱えてだらしない姿勢で寝ていた。

 

「・・・・知ってる者は誰か居ないのか?」

 

「ウチは接舷するとこ見たでぇ?」

 

「ほう・・?」

 

「アホな速度で泊地に突入してドリフトしながら接舷決めよった」

 

「なに・・?」

 

「・・・そしてな?水しぶき上げてな?ウチの艦載機落としよったわ」

 

「水しぶき?」

 

「艦載機あっちこっちに落ちてな回収大変でなぁ?」

 

「そ、そうか、ご苦労だな・・龍驤も疲れているなら寝ると良い」

 

「倉庫の屋根に落ちた艦載機とかなぁ?」

 

「そうだな!皆も疲れてるようだし今日は解散しようか!」

 

龍驤から負のオーラのような物が見え始めた長門はこのままでは何かが起こると思い解散を提案するのであった。

そして同意を求めるような視線を周りに向けたが誰も居ない、先程までキャーキャー騒いでた鈴谷達に放心状態で固まっていた明石達まで居なくなっていた。爆睡している隼鷹を残して。

皆、龍驤の異変を察知して逃げたのか部屋に帰っていったのか長門には分からなかった、ただ分かるのは龍驤から逃れられない事だけだった。

 

 

長門は遅くまで龍驤の愚痴に付き合わされるのであった。

 

 

 

 

 

―――執務室―――

 

大淀が執務室でヤマトに関する情報を纏めているところへヤマトがやってきた。

 

 

――バンッ――

 

勢いよく扉が破壊され内側に倒れてきた。

開閉の勢いがあったようだ開き切ると同時に蝶番がへし折れた。

 

扉が破壊されると同時に大淀が構えた。

 

「随分と貧弱な扉ね」

 

「あの・・破壊は良くないと思います・・」

 

「破壊じゃないわ、壊れたのよ」

 

「どちらも変わらない気がします・・」

 

ヤマトに大鯨に妖精が入ってきた。

会話から察するにヤマトが扉を破壊したらい。

そんな扉の状況を見て提督は長門が勢い良く開けても壊れなかった扉が壊れた事に長門より力があるのか?と考えていた。

 

「扉の事は置いておくとして提督よ、食料を頂きたい。他に紅茶等嗜好品も欲しいわね」

 

扉を壊しておきながら突然の要求に失礼極まりないヤマトであった。

そんなヤマトを見て提督はどうした物かと考え、取り敢えず何時までも固まっていそうな大淀に声を掛けた。

 

「大淀は下がってくれ。取り敢えずヤマト君?そちらのソファーで落ち着いて話しません?」

 

提督はその様に言いソファーのある方に向いた。

其処には妙にアンティークなテーブルとソファーが置いてある。白を基調としていて何処かの紅茶姉妹が居座っていそうな雰囲気がある。

そんな一角を見てヤマトは紅茶姉妹が居るんじゃないか?と思っていた。

 

「金剛・・居るのかしら?」

 

「金剛?」

 

「あら?金剛型の金剛よ。あの子紅茶好きでね」

 

そんなヤマトの発言を聞いて提督の悩み事がまた増えた。

高速戦艦と呼ばれた金剛型の事は知っている、艦艇の知識は艦娘を運用する上で必要不可欠であるからだ。

それに金剛が紅茶好きと言う発言が問題であった、ヤマトの口ぶりからするに金剛を知っている様である一体何処でどの様に知ったのか。

 

ヤマトは戦艦本体に妖精と会話出来る事、大鯨の事と言い艦娘を何処まで知っているのか悩み事が増える一方であった。

 

そんなヤマトはソファーへと移動していき遠慮など微塵もなくどっしりと腰を下ろした、その横には大鯨が借りてきた猫のの様な状態で縮こまっている。

そこに巨大妖精は2人を挟んで真ん中に両腕を組みドヤ顔に見えるような顔で堂々と座っていた。

 

提督はそんなヤマトを見て気にするだけ無駄かと気を取り直しヤマトの対面に座った、大淀は執務机に付いてメモを取る様だ。

 

「さて、改めて言うわ。食料に茶葉などの嗜好品が欲しいわ」

 

ヤマトの一言目がそれであった。

 

「直球だねヤマト君・・。食料を提供と、出来るけどそんなに量は出せないよ?此処も結構キツくてね」

 

ヤマトとの今迄の会話で回りくどい話しをすると面倒くさい事が起きると理解した提督は同様に直球で返すことにした。

 

「そうねぇ?タダで寄越せとは言わない、それなりの見返りを出すわ」

 

「なら・・・霧の事が知りたい」

 

提督はヤマトという存在が気になっていた、自分と霧をそう言っていた。

本体のあの異様な武装、ビームにミサイルと現代では到底不可能な技術で出来ている事だけは理解できる。

今迄の会話からするにヤマトは気づいたら海上に居たという事からドロップ的な存在というのが分かる。

しかしドロップという存在にしては不可解な点が多すぎる、自身を霧と理解し何か目的がある様な行動を取っている事。

また妖精との会話に、艦娘の為に行動しているような様子。

 

艦娘の守護者か何かかと思い始めていた提督。

 

「あら、霧について知りたいの?。とても・・高く付くわよ?」

 

素直に教えてくれなさそうなヤマトにちょっとした期待は打ち砕かれたのである。

 

「・・ヤマトは何を提供出来る?」

 

「そうねぇ、これなんかどうかしら?」

 

そう言いヤマトは拳銃を一丁ナノマテリアルで作り上げた。

黒く艶消しのような光を反射しない色で、グリップを箱に組み込んだような四角い角ばったデザインだ。

 

「・・・拳銃?」

 

何もない所から物を作り出すヤマトに慣れてきた提督であった。

 

「荷電粒子射出装置よ」

 

「家電・・何だって?」

 

「荷電粒子射出装置。分りやすく言うならビームが出る銃ね」

 

「ビーム?・・え、これ・・ビームが出るの?」

 

提督は若干自分の耳を疑いつつもテーブルに置かれた銃をまじまじと見た、ヤマトを知らなければビームが出る銃なんて一蹴していたであろうそれを。

 

「そうね」

 

「参考までに性能は・・?」

 

「計算が正しければ射程は数キロに十センチ程の鋼鉄なら貫通する・・おらくね。実際撃ってみないと分からないわね」

 

「おそらく?いやそれ以前にオーバーテクノロジー過ぎる・・すまないが、これ以外に」

 

現在の価値として見たら幾らになることやら、それに世間に露見した場合に程面倒事の嵐が襲ってくるのは深く考えなくても理解出来る。

仮に受け取っても扱いに困るし、解析した所で何もわからない気がする。

 

ヤマトの常識はどうなっているんだと思っていた提督は艦娘に詳しい事を思い出し艦娘の情報を得られないか情報収集に変更した。。

 

「そうだな・・艦娘について教えてくれ」 

 

「あら・・要らないの?」

 

「扱いに困る・・」

 

「そうねぇ?艦娘は艦娘運用しているあなた達が詳しくなくて?」

 

「金剛が紅茶好きな話をしていたな・・?その金剛は未だに確認されていないんだ」

 

「あら?・・理解したわ。少し質問よ、今確認されている艦娘は?」

 

「・・・・艦種で71だ」

 

「少ない・・三割近くは此処に居るのね?」

 

提督はヤマトの発言で艦娘の情報を此方以上に把握していると理解できた。

今以上の情報が得られるのであれば、食料や嗜好品の提供が安いものであり艦娘の情報を得る事にした。

 

「そういう事だ、艦娘の情報と引き換えでどうだ?」

 

「安くないわよ?」

 

「それで良い」

 

「そうね・・艦娘について何処まで知っているの?掻い摘んで教えてくれる?」

 

「深海棲艦が出現してから1年過ぎた辺りに海上で確認された、妖精も同時期だ。海上を自由に走り回り艤装という武装をすることで深海棲艦と渡り合える、また資材等を補給し艤装や身体を治すことが出来る。時折現れる妖精が工廠で資材と引き換えに艦娘を生み出すことがあり、また稀に海上で見かける事があるドロップと呼ばれている。個々によって能力が変わり艦娘の元となった艦種に依存していると思われる。また艦娘を指揮するには特別な素質が無いと艦娘は従わない」

 

「大雑把にだがこんな所だ」

 

ヤマトは現在の艦娘への理解度が分かり非常に満足していたと同時に、自身の記憶と照らし合わせると妙に噛み合わない部分が存在する。

妖精が時折艦娘を生み出す事に妖精と意思疎通が出来ないからか、なにか一定の周期が有るのか。それ以前に一体どうやって生み出しているのか気になっていた。

他に提督の素質だが現状の大鯨を見るにヤマトに素質が有ると理解出来た。

 

そしてヤマトの持つ知識が如何に有用か。

 

「そうねぇ、艦娘は200以上居るわね」

 

「そんなに・・見つかっているのは半分以下なのか」

 

「工廠の妖精が生み出すのは十分な備蓄と・・妖精のご機嫌取ると良いわ」

 

「えっ、妖精ってご機嫌取れるの?」

 

「艦娘と一緒よ」

 

「それは・・?」

 

「ふふふっ」

 

ニコニコしており質問に答えてくれない、それぐらい自分で探せという意味だろう。

実際ヤマトは知識の一部に妖精はお菓子好きと言う妙に曖昧な記憶が残っていた。

 

「それと・・」

 

ヤマトの雰囲気が変わり、提督は何を言い出すのかと無意味に姿勢を正していた。

 

「艦娘は有る一定の経験を積むと大幅な能力の向上や能力の変化、また新たなる力を手に入れたりするわ・・・まぁ言ってしまえば進化の様なものね」

 

「進化・・?。具体的には?」

 

「やはり知らないのねぇ・・。大まかに数倍~十数倍程は強くなるかしら?それと殆どの子は姿が変わるわね、艤装が変わったり成長したり?と色々ね」

 

「見た目変化に能力の上昇・・そこまで強くなるのか。それと変化するのは突然なのか・・?」

 

「それは妖精の気分しだいかしら?」

 

「妖精の気分?妖精が艦娘を生み出すこともあるが・・妖精とは一体何なのだ?」

 

「うーん・・、土地神や九十九神かしら?。どうなの?エラーちゃん」

 

―― 私にも良くわからないです。大体そんなもので良いと思うです ――

 

「そう、曖昧なのねぇ」

 

―― 艦娘もそんなものです ――

 

「へぇ・・」

 

入渠の時に会話していた内容に妖精は土地から力を得ていると言っていた事から、妖精は土地神や九十九神的な存在かと思いエラーに確認したがあまり詳しくは知らないようだ。

妖精に会話を振っているだろう様子をみてやはり何も聞こえないと思った提督。

 

「曖昧・・?」

 

「そうねぇ、九十九神に近い存在らしいわよ?」

 

「やはりそうか・・・・妖精の機嫌の取り方教えてくれない?」

 

「ふふふっ」

 

やはりヤマトはやはり教えてくれないようだ。

 

ヤマトの会話が真実であれば妖精の機嫌一つで鎮守府の戦力が大幅に上がることになる。

それと同時にこの情報の有用性に危険性と、これまた非常に扱いに困るものであった。

 

「妖精の機嫌は頑張りなさい。それと理解したかしら?進化のこと・・知ったら艦娘虐め抜いて無理やりにでも経験積ませようとする者が出てくるわね」

 

ヤマトはじっと提督を見ている。

提督もヤマトが何を意味しているか理解していた。

この情報が公開されれば確実に出てくるだろう。

しかし同時に任務に出る艦娘の危険性が減ることとなり、今以上に活動範囲が広がるだろう。

 

「まぁ、こんな所でどうかしら?あなた達にとって有益な情報だと思うわ?」

 

「仮にその様な者が出てきたら。ヤマトは「消す」・・」

 

「・・消すわ・・それに。あまりにも酷い様なら、私は霧として行動するわ」

 

情報を公開し強制的に経験を無理に積ませようものなら消すと言っている。

そしてこのタイミングで霧と言う発言がどうにも引っかかる提督は、つい口に出してしまった。

 

「霧・・」

 

聞こえてしまったと思った提督は既に遅かった。

顔が笑っているが目が笑っていないと言う表現が妥当だろうか、笑顔でジッと提督を見ている。

 

そんなヤマトに何か恐ろしいことを言い出すのでは無いかと鼓動が早くなっていた。

 

 

 

 

 

 

「 ―人類の駆逐― 」

 

 

 

 

 

 

聞きたくないことが聞こえてしまった。

 

「ッ!?・・・まさか深海せ「違うわ」・・・」

 

会話に被せてきたヤマトである。

 

「あんな生物と一緒にしないで頂戴。虫酸が走るわ」

 

深海棲艦と同類に思われるのが嫌いな様だ。

 

「人類の駆逐・・敵なのか?敵であるならヤマトは何故私達に味方する?」

 

「敵でも味方でも無いし人類なんてどうでも良いわ、その辺の蟻程度の感覚かしら?。それと艦娘は仲間よ」

 

何処と無くズレた発言に少し安心した提督である。

敵でも味方でも無いということからヤマトにとって有用であれば敵になることは無いということだ。

注意するべきは霧の目的が不明な以上迂闊な行動は出来ないことである。

 

「霧は目的があるのか・・?」

 

「ふふふっ・・何でしょうねぇ?」

 

先ほどとは打って変わって何時も通りのヤマトに戻っていた。

 

今の会話から提督は先程の事はしばらく公開しないことに決めた、そもそも実証してからでなければ公開出来ないのである。

仮に公開したとして艦娘を実験的に扱った場合、ほぼ確実にヤマトはその者を消しにくだろう。

 

そして霧の目的である人類駆逐が嘘であって欲しいと願っていた。

 

 

 

「あら・・大鯨は御眠かしら?」

 

ヤマトは横で微睡んでいる大鯨を見て今日の所はお開きにすることに決めた。

 

「そうねぇ?時間的にも遅いし細かい話は昼間にでもしましょう」

 

「たいげいは・・だいじょうぶです・・よ?」

 

「そうだな、大鯨は来たばかりだゆっくり休むと良い、ゆっくりな」

 

時間を稼ぎたい提督はゆっくりを妙に強調していた。

ヤマトの発言で纏める資料が更に増えてしまったからである。

あまりにも有益な情報の為後回しに出来ないのだ。

 

そして半分寝ながら言っている大鯨に説得力が無いと思った。

 

「また後日と言いたい所なのだけど・・そこで盗み聞きしているの出てきなさい」

 

ヤマトは壊れた扉の方向に話しかけた。

破壊して閉じることが出来ない扉に盗み聞きも何も無いのではと、そして聞かれていたら口止めしないと何が起こることやらと提督の苦労がまた増えたのであった。

 

「バレちゃってたか―、私一人だからバレない自信あったんだけどなー。気づいた理由聞いてもイイ?」

 

川内が頭をかきながら入ってきた。

 

「そうね、私には気配を消した所で関係ないわ。その空間に存在しているだけで把握できるの、私から隠れたいなら亜空間や余剰次元に隠れなさい」

 

「無理だよ!?」

 

無理難題に突っ込む川内であった。

そんな川内に提督は口止めどうしよう?と頭を抱えていた。

 

「あとは提督任せるわねぇ?。大鯨?いきましょ」

 

「はい~」

 

まだ寝ぼけているのかふわふわした雰囲気の大鯨が物凄くありだとヤマトのテンションは上がっていた。

 

「これは持って帰ってくれ、置いてかれても扱いに困る」

 

そう言って提督はテーブルの上に置いてある銃を指さした。

 

「あら・・どうしましょう?・・・大鯨?これあげるわ」

 

 

作ったが使い道の無かった銃を横でふわふわしている大鯨にあげることを決めた。

それに提督は耳を疑った、そんな物騒な物簡単にあげちゃうの?と。

 

「わ~。ありがとうございます~」

 

普通に受け取っていた。

 

手にしている物を理解しているのか、大鯨は受け取った銃を両手で胸元に抱えてニコニコしている。

 

喜んでいるようだ。

 

傍から見るとお菓子を貰い喜んでいる子に見えるが間違えても軽々しく受け取って喜ぶ物ではない。

 

それを見た提督は思った、まさか兵器として理解して受け取ったのではないかと、もし理解して受け取っているとすると大鯨と言う艦娘が非常に恐ろしく見えてくる。きっとヤマトの影響だと思いたいと。

 

「昼間都合空けておくようにね?」

 

ヤマトは妖精を抱きかかえ後ろ手に振りながら出て行き、それに続いて大鯨は振り向いて一礼するだけでヤマトの後を追っていった。

 

 

ヤマトが礼儀も何も無いのは気にしないとして、大鯨が無言で出ていった事に提督はヤマト以下と認識されているらしい。

そして2人と1匹?が出て行くと床に倒れていた扉がひとりでに浮かび上がりあるべき場所へと戻っていった。

 

 

直していったらしい。

 

ヤマトが出て行き静かになった執務室で提督はソファーに体重を預けリラックスしていた。

 

「提督、ヤマトって何者・・?」

 

「僕にも分からないよ・・それと川内は正面に座ってくれ」

 

ソファーに座るよう指示した。

 

「ヤマトとの会話、何処から聞いていた?」

 

「扉破壊するとこから」

 

「最初じゃないかっ!」

 

「いやー、建物内に入ってくヤマト見かけてこっそり尾行してたつもりなんだけどね?最初からバレてたみたいだね!」

 

笑いながら頭を掻いている川内に反省の文字は無かった。

 

「まぁ・・丁度良い、ヤマトの話聞いてどう思った?」

 

「う~ん・・良く分からないけど敵にはならないでしょ?」

 

「何故そう思う?」

 

「だって提督でしょ?ヤマトの話が本当なら提督は大丈夫だと思うよ?」

 

「そうか・・それと今聞いた話は他言無用だ、いいな?」

 

「えー?面白いネタなのにぃ」

 

「夜の戦闘減らすのと、昼間の戦闘増やすのどっちが良い?」

 

「・・・やっぱり提督はヤマトに襲われるんじゃないですか?」

 

「そうか、そんなに夜戦無しが良いのか」

 

「・・・」

 

「・・・」

 

ジト目で提督を睨み続ける川内に無言を貫く提督。

 

「仕方ないなー。でもヤマト隠すつもり無さそうだよ?」

 

「それは仕方ない」

 

「ぶーっ、分かりましたよーっ今回は何も聞きませんでしたー。それでいいよね?」

 

「くれぐれも口を滑らさないようにな」

 

「分かってるわかってる、それじゃー私は戻るよ」

 

「ああ、今日はもう休め」

 

川内は立ち上がりそのまま扉の方に向かっていく。

やけにあっさりと引く川内に何か違和感を感じ取った提督。

 

そのまま出て行かず扉を少し開けて止まった。

その様子に感じた違和感の正体を理解してしまった。

 

「それと、長門がヤマトに突撃しそうだよ?あの様子だとしつこく根掘り葉掘り問い詰める勢いで行きそうだよ~」

 

「えっ、ちょっと待って ―バタン― ・・・」

 

明らかに待ってと言う言葉が聞こえているはずだがそのまま川内は出ていった。

 

 

さらに悩みが増えるのであった。

 

「逝くなよ・・長門・・」

 

「お疲れ様です。提督」

 

「ねぇ大淀?・・長門止めてきて」

 

「分かりました」

 

「えっ」

 

「何か?」

 

「いや・・なんでもない」

 

あっさりと引き受けてくれる大淀に何か裏があるのでは無いかと不安がまた増えたのである。

 

こうして提督の苦悩は続く。

 

 

 

 

 




誤字あったらそのうち修正されます


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大和ト大鯨ノ夜

ブルースクリーンに勝ちました。
自動保存機能万歳です。




―――ヤマト第二艦橋―――

 

 

此処は大和艦橋の下に配置されている第二艦橋、又は夜戦艦橋と呼ばれている場所である。

 

今そこにヤマトと大鯨が来ていた。

 

内装は第一艦橋と同じく計器類が取り払われており、スペースを広く確保していた。

壁一面白を基調にしていて、第一艦橋と同じく青白い模様が入れられている。

窓は金の縁取りがされていて、その手前には紺色のカーテンが設置されている。

 

その第二艦橋の中央にキングサイズのベッドが置かれている、白のピローに濃紺色のベッドカバーが掛けられ中央に白色のイデアクレストが入れられていた。

光の反射具合からシルク質の素材だということが分かるが、ヤマトがナノマテリアルで再現した物なのでシルクらしき物だ。

 

 

そんな第二艦橋は落ち着いた雰囲気がある。

 

もはや艦橋の面影すら無くなっていた、唯一あるとすれば窓から覗く風景に船体が見える事だけだ。

 

 

(来ました・・ついに来ましたともっ!。大鯨ちゃん・・逃しませんよ!?一度は深海の生物に邪魔されたけど今回は邪魔される要素なんてありません!・・エラーちゃんは艦内見て回っているので大丈夫と・・クラインフィールドよし。この時間は絶対邪魔させない)

 

「あの・・ヤマトさん?」

 

「何かしら」

 

「ここは・・?」

 

「寝室ね。もう深夜よ?寝ると良いわ」

 

「ここ・・ヤマトさんの部屋ですよね?」

 

「そうね、でも寝室がここしか無いのよ?」

 

 

困った風を装って言った。

 

この部屋は大鯨と寝るためだけに作られた部屋である、執務室からでて此処に来るまでの間にヤマトの思い付きで作られたのだ。

その気になれば甲板より上の5階層処にでも部屋を作れたのだが、大鯨と寝るために一部屋しかも艦橋という見晴らしの良い場所を用意した。

 

その用意された部屋は高級ホテルの様でもあった。

 

「私、最初に入った部屋のソファーで大丈夫なので・・」

 

「良くないわ、風邪を引いてしまうでしょ?」

 

「その・・服が・・」

 

「あら・・寝間着を考えていなかったわね・・」

 

どうした物かと考えたヤマトは唐突に閃きが浮かびネグリジェを作り出した。

白基調で胸元にクジラが青く描かれていて大鯨をイメージしたネグリジェとなっている。

シルク質に肩紐で支えるワンピースタイプだ。

そして丈がどう見ても膝辺りまでしか無くベビードール―に片足突っ込んでる物であった。

 

(普通のパジャマは作りません!ええ作りませんとも。露出度が低いしその素肌を・・・おっとイケないわ)

 

不埒な事を考えながら、ネグリジェの肩紐を摘んで大鯨に見せる。

 

「これでどうかしら?」

 

「あの、それは・・?」

 

「ネグリジェという寝巻きよ」

 

「寝間着ですか・・凄くお高そうなんですけど・・」

 

「幾らでも作れるのよ?。気にしなくて良いわ」

 

「作れるのですか・・」

 

「そうね、私は物を自由に作れるのよ。妖精みたいな感じかしら?」

 

そう言いながらヤマトはナノマテリアルで熊のぬいぐるみを作り上げた。

ピンク色で額と腹に白色のハートマークが入っている、エラーちゃん程のサイズで抱きかかえるのに丁度良さそうだ。

 

(霧熊・・ふふっ。一度ぬいぐるみで行動してみようかしら・・?)

 

そして作ったぬいぐるみを片手に持ちながらヤマトは言った。

 

「こんな感じかしら?」

 

「凄いです・・」

 

「欲しいものがあれば何でも言いなさい?作ってあげるわ」

 

「いえ・・欲しいものは特に」

 

「別に思いついたときで良いわ。・・それより、もう遅いのよ?」

 

そう言いながらヤマトはネグリジェを大鯨に渡した。

 

「あの・・これ下着とかは・・?」

 

(要らないわ!そんな物っ、触り心地がっ!?)

「・・気になるなら着けても良いわ」

 

遠回しに着けないように言うヤマトであった。

人によって好みが変わるのであながち間違いでもない。ヤマトの好みではあるが。

 

それを聞いた大鯨はヤマトから少し離れ着替え始めた。

 

腰の結び目を解きエプロンを脱ぎ、セーラー服を脱いだ。

その様子にヤマトは固まっていた。

 

(私の前でも気にしないのね・・それよりRECよ!。ふふふっ)

 

ヤマトは視界で見ている物を映像として記録出来るのである。

能力の使い方が正しいかはさておき、録画の為にと目を見開いてはいないがジッと見ているヤマトに大鯨は気になり始めた。

 

「あの・・どうかされました?」

 

「・・気にしなくて良いわ」

 

「気になりますぅ・・」

 

「ふふふっ」

 

ヤマトはニコニコしている。

誤魔化しているつもりであるが、諦めようかとも思っていたりする。

 

大鯨は視線が気になりながらも着替えを再開した。

腰のチャックを下げスカートを脱いだがそのまま床に落とさず手で支えている。

気遣いなのか分からないがその仕草にヤマトは興奮していた。

 

(良い・・凄く良いわ・・それに黒いタイツの下も黒なのね?上も黒なんて誘ってるのかしら?誘ってるのよね?)

 

妙な事を考え記憶している間に大鯨の着替えは終わっていた。

 

 

着替えを終えた大鯨は白いネグリジェにシルク質が光を反射していた。

髪留めを外し髪を下ろしている、一部を除いてクセ毛があまり無くまた違った雰囲気があった。

そして何よりも目立つのはクジラだ。

胸元で押し上げられ丁度良い位置にあるクジラが非常に、非常によく見える。

 

 

 

とても大きいのである。

 

 

 

そんな大鯨はセーラー服にスカート、エプロンを手に抱えて言った。

 

「服は・・どうしたら・・?」

 

(下は脱がないのね・・残念)

「・・・」

 

「あのぉ・・ヤマトさん?」

 

「そう・・そうね・・・考えていなかったわ」

 

そう言いながらヤマトはベッド左側のスペースにタンスとバスケットを作り出した。

タンスは小柄で4段のシンプルな物だ、全体が白く中央に青いクジラが入っている。

バスケットも一緒で白基調に青のクジラが入っている、どう見ても大鯨専用にしか見えない物であった。

 

「今日の所はそこの籠に入れておくと良いわ」

 

「何度見ても凄いです・・」

 

「ふふふっ、私に不可能は特に無いのよ?」

 

ヤマトは作ったタンスの元へ行き熊のぬいぐるみを座らせるように置いた。

白いタンスの上の置かれたピンクの熊は、青と白で彩られた部屋に妙な具合でマッチしていた。

 

その後タンスの1段目を引き何も入っていない中を見て何か用意しなくてはと思っていた。

 

「服も何着か用意する必要・・」

(服・・そうよ!私が作れば色々着せられるじゃない!?取り敢えず・・取り敢えず・・金剛!金剛型の服・・良いわね!タンスに詰めておきましょう)

 

大鯨から見るとタンスの中を見てニコニコしていて不思議な光景である。

そのヤマトはタンスの中に一着の改巫女服(金剛型)をナノマテリアルで作り上げ、タンスを閉じた。

 

(よし・・見せるのは起きてからにしましょう!)

「さぁ・・寝ましょう?」

 

いざベッドに突入しようと思い、自身の服がドレスであるのに気づいた。

 

(忘れていたわ)

 

どうしたものか迷ったヤマトは大鯨と同じネグリジェに決めた。

 

その瞬間ドレスは消え去りネグリジェに変わった。

少し違いがあり、白基調で有るが胸元にはクジラの模様は無くヘソの辺りにイデアクレストの模様が入っている。

 

 

そしてドレスから着替えたヤマトはそのまま何事もなくベッドに潜り込んでいった。

 

「突っ立っていないでいらっしゃい?」

 

「はい・・」

 

大鯨はベッドに手を触れ感触を確かめて、恐る恐るとした様子で入ってきた。

その様子を見て唐突に閃きが浮かんだ。

 

(チャンス・・チャンスよ!?自然にお肌と触れ合うスキンシップが出来るわっ!)

「もうっ、気にしなくて良いのよ!」

 

「きゃっ」

 

ヤマトは大鯨を抱き寄せそのまま倒れた。

勢い良く倒れたのでヤマトは下であり、大鯨は両手をベッドに突いている。

 

傍から見ると大鯨が押し倒している様に見える光景だ。

 

勢いに任せたが為にヤマトも少し予想外であった。

 

「あ・・あのっ、ごめんなさいっ」

 

そのまま離れようとする大鯨を抱き止めた。

 

「!っ・・え・・」

 

(いけないわ、つい抱きしめてしまったわ!何か良い言葉を・・)

「気にしなくて良いのよ?」

(違うっ)

 

「いえ・・・」

 

 

「一々気にしていたら私も気疲れしてしまうわ?」

 

「ごめんなさい・・」

 

 

「いいのよ大鯨。貴方は私の艦娘なのですからもっと堂々と振る舞っていれば良いの」

 

「その・・迷惑では・・」

 

「そんな事ないわ。何か困った事があれば私を頼りなさい?」

 

「・・・」

 

「私は貴方の提督なんですもの」

 

「提督・・」

 

(よし・・少し無理くり感あるけどこんなものかしら・・?)

「支えるのは当り前でしょ?」

 

最後にヤマトは微笑んだ。自然と出てきた笑みである。

そして間近にある大鯨をよく見ると目が潤んでいる。

 

(えぇっ!?何か良くないこと言ったかしら?!)

 

「ていとく・・ていとくっ・・・」

 

少し掠れた声で言いながらヤマトに抱きついた。

 

(おっと。素晴らしい!素肌が触れ合うこの感触・・・・違うわ!!)

「えぇっと、何っ!?。何か気に障る事言ったかしら?」

 

「ちがい・・ます」

 

(違うの・・えっ?なにっ!?・・)

 

「その・・提督が怖い人に見えて・・・」

 

(こわ・・・心当たりが多いわね、一番の原因は拾った時のかしら・・?いや人類駆逐も・・?)

「あら・・怖がらせてしまったのね・・?謝るわ」

 

大体予想通りである、大鯨が自己紹介して間もなく提督らしき人に向かって、その辺に沈めると言ったのだ。

その発言をしたのが光る戦艦の主であるヤマトだ、普通に考えて怖がるのは当り前である。

その後も大鯨の前で物騒な発言が飛び交っており非常に怖い人と思われていた。

 

「いえっ!その・・提督が怖い人と勝手に思い込んでて・・ごめんなさい・・・」

 

(そんなに怖かったのかしら・・?。同じようなことがあれば注意する必要があるわね・・)

「そう・・ならもう怖くないかしら?」

 

「はいっ」

 

返事をした大鯨はそのまま横に倒れた、手を伸ばさなくても触れ合える距離だ。

 

「あの・・このままいてもいいですか?」

 

「ふふっ、良いわ」

 

それを聞いた大鯨は安心して目を閉じた。

 

その様子の大鯨を見て襲う勢いであったヤマトはやるせない気持ちとなっていた。

 

(・・・もう・・ね。そんな顔するなんてズルいじゃないの・・ねぇ大鯨?)

 

「ねぇ、大鯨?」

 

「・・・」

 

反応が無い。

 

(あら、早い・・もう寝てしまったの?。無理して起きてたのねぇ)

 

大鯨は数分もせず寝てしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その寝顔を眺めて30分。

 

 

(寝れないわ・・)

 

 

眠気が全く来ないヤマトである。

 

(寝れない事は薄々分かっていたから良いとして、この体・・疲れも無ければ眠気も無いのね、しかし味覚があり感情があると。まぁ霧として考えたら納得ね)

 

メンタルモデルとしての体は非常に頑丈であり病気や怪我とは縁のない物となっている。

異常や欠損があればナノマテリアルで即座に交換、修復することが出来る。

その上、人外の身体能力に通信妨害、電子的に制御されたあらゆる物の操作。

更にはクラインフィールドの生成にナノマテリアルを使用したあらゆる物の生成、その気になれば素手で陽電子ビームを放つことも出来る。

 

そして、感覚があり味覚あり、そして感情がある。

 

兵器として見ると何処か歪であるが、生物として見れば完璧に近いのでは?

 

霧は一体何を目指していたのか?

 

(それにしても・・私は元々・・誰?。ヤマトの記憶は殆ど無く、別の記憶も自分が誰だったのか。・・何も分からないわね)

 

着実に2つの記憶が融合していくヤマトである。

 

(一体何の目的で此処に居るのか・・)

 

自問自答の様な事を考えはキリが無く別のことを考えようと、ふと横を見ると大鯨の寝顔がある。

 

 

 

安心している様な寝顔。

 

 

 

その顔を見るとヤマトは思案で染まった思考に安らぎが戻る。

 

 

 

(そうね・・私はヤマトよ、誰でもない・・それに今があるわ)

 

「ふふっ、サラサラね」

 

 

大鯨の顔を見ながら頭を撫で、小声で言った。

 

今後の事を思うと今のままでは良くないと考え始めていた。

 

(・・・・だめね・・私)

 

大鯨の寝顔、顔、姿を何時までも見ていたいと思ったヤマトに別の不安が襲ってきた。

 

 

人。

 

人という存在のあり方。

 

人とは排他的で不安要素を排除するだろう。

 

人がその力を手にしたならば他者を降すだろう。

 

人がその力手に入れたならその力を巡って争うだろう。

 

人とは自分より、より優れている、より強い存在に、潜在的な敵意を抱く事に。

 

それは過去の歴史が幾度となく物語っていた。

 

 

 

その事に、完全に融合していない、もう一つの記憶。

 

私が私に強い警告を送っている。

 

今の状態では駄目だと。

 

 

(ッ・・・・・不愉快ね)

 

考えてしまった。

もし大鯨に何かあったのならと。

 

(そうね、今出来る事は・・船体の武装かしら?。チェックしましょう)

 

 

― 超重力砲 三十二基(共用) 超出力収束モード 可 ―

 

― 46cm三連装反物質砲 三基 実体弾モード 可  ―

 

― 15.5cm3連装荷電粒子砲 二基 ―

 

― 12.7cm連装高角荷電粒子砲 一二基 ―

 

― 25mm3連装陽電子射出装置 五二基 ―

 

― 25mm単装陽電子射出装置 六基 ―

 

― 13mm連装陽電子射出装置 二基 ―

 

― 艦首魚雷発射管 八門 二基 侵食魚雷 通常魚雷 可 ―

 

― 後部垂直発射装置128門 侵食ミサイル 通常ミサイル 可 ―

 

― 強制波動装甲 クラインフィールド 可 ―

 

― ミラーリングシステム 三十二基(共用) ワープ(旗艦装備)可 ―

 

{ システム・オールグリーン }

 

(これ以上必要なのかしら・・?いや良くないわ!いざ艦娘に何かあって困ったら大変よっ)

 

艦娘の為になら何処までもするヤマトである。

 

(しかし・・どうしましょう?何か変えられるかしら?記録には・・有るわね)

 

近接火器システム

 

630M Duet

 

PHALANX

 

MILLENNIUM

 

(これは・・機関砲の位置に設置できるサイズね?。火力だけで見るならDuetかしら・・・これで良いわ)

 

 

「ッ・・・」

 

 

そしていざ武装を作り変えようとした、その瞬間不快な感覚が襲った。

 

(・・・何?この感覚・・凄く・・凄く不快ね)

 

自身の武装を作り変えることに、拒絶している感覚がする。

 

(関係ない・・この程度、艦娘の為なら容易いわ!)

 

 

 

― 12.7cm連装高角荷電粒子砲 一二基 ―

 

― 25mm3連装陽電子射出装置 五二基 ―

 

― 25mm単装陽電子射出装置 六基 ―

 

― 13mm連装陽電子射出装置 二基 ―

 

 

― 30mm6連装2重陽電子射出装置 七十二基 ―

 

 

(うぅ、気分最悪ね・・・代わりに武装はスッキリ。他には15.5cmかしら・・?これは良い案が浮かばないから放っておきましょう)

 

細かくて妙にややこしい武装を1種類に統括してしまった。

30mm2重バルカン砲である。

6連装バルカンの砲身が2つ縦に並んでおり、如何にも連射しますといったデザインだ。

某国が生産したが弾をゴミの様に捨てる勢いで撃つために費用対効果が期待されず、あまり採用されなかった兵器である。

 

しかしヤマトにとっては関係無い。

陽電子射出装置、所謂ビームバルカンと言った所であり、ほぼ無限にエネルギーを生成する機関が内蔵されている為に弾の消費を気にしなくて良いのだ。

結論として数撃った者勝ちでしょ?と至ったのである。

 

(後・・46cm砲ね、これは記録にある51cm砲で良いわね・・他・・他はー)

 

 

 

 

そうこう考えている間に5時間経ち武装の作り変えが終わった。

 

 

 

 

 

― 超重力砲 三十二基 超出力収束モード 可 ―

 

― 51cm三連装反物質砲 三基 実体弾モード 可  ―

 

― 20.3cm連装反物質砲 二基 ―

 

― 30mm2重6連装陽電子射出装置 七十二基 ―

 

― 艦首魚雷発射管 八門 四基 侵食魚雷 通常魚雷 可 ―

 

― 垂直発射装置 艦首128門 艦尾128門 侵食ミサイル 通常ミサイル 可 ―

 

― 強制波動装甲 クラインフィールド 可 ―

 

― ミラーリングシステム 八基 ワープ(旗艦装備)可 ―

 

{ システム・オールグリーン }

 

 

青白の砲塔に金の砲身へと色が統合され外観を損なわないでいた。

そしてすべての武装が近代的な物、及びそれに合わせた見た目へと変えられている。

 

こうして改装されたヤマトは、今迄より白さを増していた。

 

 

 

 

 

(うぅっ、弄り過ぎて気分最悪よ・・メンタルモデルのくせに・・)

 

武装を作り変えて船体がスッキリしたと同時に気分が悪くなるヤマトであった。

それでもナノマテリアルで船体を自由に弄れるのを良いことにやりたい放題である。

 

(残りは超重力砲・・これは一度も使用してないし下手に弄れないわ・・射撃データを取ってからね)

 

流石のヤマトも一度も使用してないうえに、超重力砲にもなると何が起こるか分からなく弄れなかった。

 

 

 

(武装以外では機関と物質生成装置ね?機関は・・複製可能と、しかし積める場所が無いと・・それ以前にこれ以上必要無いわね)

 

機関砲及び小口径砲を2重6連装バルカンに変更した所で、全力戦闘でも有り余るエネルギー生成量であった。

現在積んでいる機関は既にオーバースペックなものであった。

 

 

 

(物質生成装置はタナトニウムとナノマテリアルだけども記憶に記録が無い・・周りへの影響が分からない状態では使用は控えたほうが良いと・・主砲同様何処かでテストする必要があるわね)

 

一日消費しっぱなしのナノマテリアルは、早急にでも作り生産量の確認をしたいが、周囲への影響が分からない為に断念した。

そしてナノマテリアルの消費は船体の武装改装が主であり、それ以外の消費は1%以下となっている。

 

(残量はタナトニウム100%にナノマテリアル75%ね。意外と消費しているわ・・)

 

 

その思案に染まりつつあるヤマトは横を向き大鯨を見た。

 

ただそれだけで心に余裕が出来る。

 

ただそれだけ。

 

しかし提督を見たときには何も感じなかった。

 

恐らく他の提督、いや人を見ても同じだろう。

 

けど、それでも良い。

 

ただ艦娘が居る。

 

それだけで良かった。

 

 

 

(ふふっ・・守ってあげるわ・・ずっと・・ずっと・・・)

 

 

 

「もう、朝・・一日過ぎても・・・私は・・わたしのまま・・ね」

 

(それでも良い・・)

 

 

カーテンの隙間から朝日が差し込んでいた。

 

 




やりました。後悔も反省もしていません。
自重?そんな物海に沈めてしまいなさい。

念のためにR-15タグつけました。



それと最近思ったのです。
ムサシなら更に暴走してても良くね?と。


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大和ト大鯨ノ服

4000/7000/7000/2000の資材で何故 ㋴ が出来るのか。
そのボディの何処に資材が詰まっているんでしょうか。
不思議です。

ルビ機能使ってみたのですが盛大にバグりました。



―――ヤマト第二艦橋―――

 

ヤマトは窓際まで行きカーテンを広げた。

 

(7時・・時間合っているのかしら?この地と時間の同期が必要ね・・・あら・・無線通信網有るじゃないの・・)

 

今更ながらネットワークが飛んでいる事に気づいた。

そうと分かれば霧お得意の通信制御もといハッキングするのであった。

 

霧のヤマトからすると人類のセキュリティは卵の殻を割る程度の感覚であり、セキュリティが皆無に等しい。

 

腐っても貧弱な物ではない。

人類の最後の防壁である場所であり使用されるセキュリティも最高レベルのものであった。

 

 

ヤマトによって呆気なく破れたが。

それ以前に霧と比較するのは無理があった。

 

 

(・・・時間は合っているのね)

 

ハッキングし真っ先に調べたのは時間であった。ブレない。

それからパラオ泊地の情報、周囲の鎮守府、現在の状勢と調べていった。

 

お世辞にも良いとは言えない回線にヤマトの情報収集は時間が掛かっていた。

辺境まで高速回線を引く理由がない上に、現在では船舶の航行も出来ず海底ケーブルを引くことが出来ない。

 

 

(へぇ?人類ピンチじゃないの。それより此処の艦娘は全員携帯端末持っているのね?大鯨に作って上げなくちゃっ)

 

 

大鯨だけ持っていないのは困るとヤマトは携帯端末もといスマホを作るのだった。

 

人類のピンチは大鯨のスマホ以下である。

 

そして作られた霧式スマホ。

 

5インチ程で厚さ5ミリ程の透明のガラス板で、厚さ1ミリ程の金の枠で囲まれている。

金の枠で囲まれて無ければ、どう見てもただのガラス板だ。

 

いやガラス板である。

 

その作り上げた霧式スマホを立ち上げた。

青白いイデアクレストが浮かび、システムが立ち上がった。非常に早い。

ホームには幾つかのアイコンが浮かび上がっており、アイコン以外の場所は反対側が透けて見えており。

持っている手が、床が見えていて非常に高い浸透率という事が分かる。

 

 

(良い出来ね・・此方のOSに操作を合わせたのだけど・・使い方は・・?そうよ!手取り足取り教えてあげれば良いのよっ!!)

 

「ふふふっ」

 

満足したヤマトは作った霧式スマホをタンスの上に置いた、ぬいぐるみの横に。

 

そして両手でぬいぐるみを持ち上げ、霧熊の事を思い出していた。

 

(霧熊で行動するのも良いけど・・・コアを移すのは嫌ね。概念伝達での遠隔操作が無難かしら?)

 

ぬいぐるみを弄りながら霧熊で行動しようか無駄な事を考えていると横で動く気配を感じ取った。

 

「ていとく・・?」

 

大鯨が起き上がり辺りを見回している。

 

「おはよう、大鯨」

 

「おはようございますっ」

 

(・・・ネグリジェにして正解ね!凄くイイわっ)

 

起き上がった大鯨はネグリジェがはだけていて、その姿に興奮していた。

左の肩紐が二の腕の位置まで下がっている、それ以上にネグリジェの裾が捲れ太ももが殆ど見えているが下着までは見えず絶対領域化していてた。

 

 

その事はあえて言わない。

 

その瞳に焼き付ける為に。

 

「ていとく?」

 

「・・何かしら?」

 

「ぬいぐるみを持ってどうしたんですか?」

 

一瞬不埒な視線を大鯨に気づかれたかとドッキリていた。心臓は無いが。

それでもバレたらバレたで開き直るつもりでもある。

 

「これね?」

 

聞かれたヤマトはぬいぐるみを大鯨に向かって投げた。

 

投げられたぬいぐるみは大鯨の手前に落ち、足から華麗に着地した。

そのまま倒れずに大鯨の元まで歩いていった。

 

眼の前まで来ると右手を上げた。

 

ぬいぐるみ式挨拶らしい。

 

「可愛いっ」

 

ヤマトの予想とは全然違う反応をした。

驚く事を期待していたが、驚かずにそのまま頭を撫でている。

 

「この子、名前あるんですか?」

 

ヤマトの異常に順応していた。

 

「霧熊よ」

 

「きりくまですか?」

 

「そう、ミストの霧に、熊はあの熊よ」

 

「霧くまですね~。凄いですね、どうなっているんですか?」

 

『私の分身よ』

 

霧熊が喋った。

その事に流石の大鯨も驚いている。

ヤマトと霧熊を交互に見て3往復した辺りで反応した。

 

「ふぇ?」

 

「ふふふっ」

 

「これが・・提督ですか?」

 

『そうね』

 

「へぇ~」

 

霧熊は興味津々の大鯨に捕まり弄られていた。

驚いたのは一瞬だけであった。

 

「それと、コレをあげるわ」

 

そう言いヤマトは霧式スマホを投げ、霧熊が受け取り大鯨に差し出した。

 

「これは、なんですか?」

 

何も知らない大鯨には金の枠にガラス板が塡められた物にしか見えない。

 

「携帯端末・・スマホね」

 

「スマホですか・・何をする物なんですか?」

 

「遠隔との通話や情報のやり取りが出来るわ」

 

「ええっ、コレでですか?」

 

聞いた大鯨は両手で持って裏表と何度も回しながら見ている。

 

「そうね、後で使い方を教えてあげるわ」

 

「こんなもの、頂いて良いのでしょうか・・?」

 

「気にしなくて良いわ、ここの艦娘は皆持っているのよ?」

 

「そうなんですか~」

 

皆持っているとの発言で大鯨は気にしなくなった。

言った通りではあるが、流石に超技術で作られたスマホまでは誰も持っていない。

 

「そうねぇ~、使い方は後にして登録を済ませてしまいましょう」

 

「登録ですか?」

 

「そう。それを片手で持って親指を何処でも良いから押し付けて」

 

言われた通り霧式スマホを手のひらに乗せ親指を端っこの方に押し付けた。

 

「そう、それで良いわ。それをもう片方の手でやって頂戴」

 

大鯨の指紋登録が完了した。

 

「こう・・ですか?」

 

「大丈夫よ、それで貴方だけの物になったわ」

 

「ありがとうございますっ!」

 

霧式スマホを見ながらおもちゃを貰った子供の様に目がキラキラさせている。

その様子を見て簡単な操作だけ教えようと思ったヤマトである。

 

「そうねぇ、簡単な使い方だけ今教えるわ」

 

「はいっ」

 

「登録と同じ様に片手で持って親指を何処かに触れて」

 

大鯨は言われた通りに親指で触れると登録時とは違い、触れた部分から青白い回路の様な模様が広がり消えていった。

無駄な演出である。

そして霧式スマホが起動し、ホーム画面が表示された。

 

「それが起動よ。操作は殆ど音声操作ね、何かやりたい事や調べたい事をソレに向かって話すと良いわ」

 

「分かりました~。えーっと・・え~~っと?」

 

いざ使い方説明されても意外と分からないのである。

 

「・・・ソレに向かって料理でも言ってみなさい」

 

「う~ん・・」

 

(そこ悩む所かしら・・?)

 

「鯖の味噌煮?」

 

何故か疑問系であり、鯖の味噌煮が疑問系で検索された。

 

検索欄には[ 鯖の味噌煮? ]と入っていて機能は正常。

その下には検索された結果が表示されている。

基本色が白地であり、挿し画像が入っていて分かりやすい。

 

某Googl(ry)の様な見た目である。

 

「表示されたわね?そしたら気になるものに指で触れると良いわ」

 

「わぁ、すごいです!レシピが出てきましたっ」

 

 

― ぐ~ ―

 

 

大鯨のお腹が鳴った。

 

「鯖の味噌煮・・有ると良いわね?」

 

「はい・・」

 

大鯨は顔を赤くし俯いてしまった。

 

「行く前に・・着替えましょう」

 

そう言ってヤマトはタンスから改巫女服を取り出して、差し出した。

 

「着替えですか、昨日のは?」

 

「まだ洗っていないわ」

 

「分かりました」

 

受け取った大鯨はベッドから降り、重ねてある一番上の服を服を広げた。

広げた服は羽織だ構造的に一体どの様に着るのだろうと思った大鯨である。

 

「あの、これは?」

 

「羽織ね」

 

「分からないです・・着方が・・」

 

「教えてあげるわ」

(手取り足取り・・ふふふっ)

 

「ありがとうございます」

 

「良いのよ、私が用意したのだから」

 

そして大鯨はヤマトの前でネグリジェを脱いだ。

昨日と違い目の前で手を伸ばせば届く距離にいて、色白の肌と上下黒の下着がヤマトを刺激している。

 

(お・・お、押し倒して・・良い?かしら・・・)

 

「ていとく?」

 

固まっているのに疑問を感じて声を掛けた。

そのヤマトは思考が飛んでいて、声を掛けられた事にビクッと反応していた。

そして直ぐに気を持ち直した。

 

「まず、この襦袢ね。羽織ったら左が上に来るように重ねて・・」

 

紅い襦袢を大鯨の正面から着付けてあげるヤマトである。

正面からが重要である。

 

よく見える。

 

「首が苦しくない程の位置で腰紐巻いて、次は白衣ね。これも同じ様に羽織って・・」

 

襦袢は袖の無いものも有るが、上から着る白衣に袖が無いのに違和感を感じていた。

 

「あの、袖は・・?」

 

「この後よ。で帯を巻いたら緋袴・・らしき物ね」

 

「らしき物!?・・この服は・・・?」

 

「金剛型一番艦金剛の服よ」

 

緋袴らしき物と呼んだのは、緋袴が紅ではなく黒く、あまりにも短かったからだ。

さらに内側には少し出る程度にフリルがあしらっており、緋袴の原型が殆ど無いものである。

所謂ミニスカートと呼ばれるものだ。

 

「金剛・・さんの服ですか・・着るの大変ですね」

 

「そうねぇ、緋袴をヘソの辺りまで上げたら一体になっている帯を・・」

 

大鯨の正面から帯を後ろにと腕を回し、体にペタペタと触れるヤマトであった。

 

「よし。最後に羽織らしき物を・・」

 

「らしき物・・」

 

少し気になったがぐっと飲み込んだ様だ。

そんな大鯨を気にせずヤマトは大鯨が最初に触れた羽織を持ち出し、首に掛けた。

首から後ろは背中全体を覆う一枚の布状で膝下まであり、首から前は2枚の布に別れ膝辺りまでの長さがある。

その胸元には金の紐が垂れ下がっている。

 

「よし、帯巻いて・・最後に分離袖ね」

 

最後に残っていた布は分離袖であった。

 

「腕を横に伸ばしてくれる?」

 

「こう・・ですか?」

 

「そうそう」

 

大鯨は両腕を真横、水平に伸ばした。

その腕に分離袖を二の腕まで通し、袖括りを絞って留めた。

 

袖括りとは基本的に手首の袖を絞って動きやすくする紐だが、この場合は二の腕に分離袖を固定するのに使用する。

 

右腕に左腕と分離袖を通していき、されるがままの大鯨はくすぐったいのか色めかしい声が口から漏れていた。

 

「んっ・・」

 

(・・眼の前でそんな声出されると襲いたくなるじゃないの?)

 

そんな大鯨が気になりながらも両腕の分離袖を着せ終えた。

 

「よし、出来上がりっ!」

 

 

金剛型の服を着せられた大鯨であった。

 

 

「あの、足がスースーしますぅ~」

 

「・・・・・」

 

うぅ・・っと声を漏らしなが緋袴もといスカートを抑えながら少し内股になっている。

その非常に唆る姿にヤマトの短い自制心が遂に限界を迎えようとしていた。

 

 

(すこ・・少しぐらい・・ね?大丈夫よね?)

「ねぇ・・大鯨?」

 

近づき右手で頬に優しく触れた。

 

「?・・なん・・ですか?」

 

気づいた。

 

ヤマトの様子がおかしいのに。

先程とは様子が違い、そのうえ顔が近い。

 

雰囲気がころころ変わるのは少し接して慣れた。

 

でも、これは可笑しい。

 

 

「あの・・ていとく?」

 

「ふふふっ・・可愛い」

 

 

顔を更に近づけて口を。

 

空いた手を腰に回して逃しまいと。

 

下がるならそのまま押し倒そうと。

 

 

 

 

 

 

―――チリン―――

 

 

 

 

 

エラーがエレベーターでやってきた。

 

頭に銃を乗せ両腕を組んで仁王立ちしている。

 

 

(・・・・・エレベーター止めておくべきだったわ)

「あら・・おはよう?エラーちゃん」

 

―おはようです!―

 

何も知らないエラーは元気よく右手を上げて挨拶してきた。

 

「さて、行きましょ?」

 

気がそれてしまったヤマトは雰囲気が一変していた、まるで少し前までの事が無かったように。

 

「?。はい・・」

 

「もーっ可愛いんだから!」

 

「ひゃっ」

 

抱きしめた。

性的な意味合いは無くただのスキンシップと言った雰囲気だ。

 

(・・・純粋な巫女装束もありね。着てくれるかしら?)

「ふふふっ」

 

「ていとく・・?」

 

「あら・・?ブーツを忘れていたわね」

 

素足のままである。

大鯨の足に自らの足を絡ませようと、何も履いていない足に目ざとく気づいた。

 

少し離れ素足の大鯨をジーッと見ている。

 

足を眺め、ほんの数秒が過ぎた辺りでヤマトの手に粒子が集まり、ブーツが形成された。

 

金剛が履いているサイハイブーツである。

黒と茶で落ち着いた色合いで、膝上10センチ程まである長さだ。

 

「はい。サイズはコレくらいかしら?」

 

「ブーツですか?随分と長いですね・・」

 

「そうね。それ履いたら行きましょ」

 

サイハイブーツを渡した。

履かせようかとも思ったが、ブーツ履くのに手こずるのを見たかったのである。

 

しかし、予想は裏切られた。

 

何事も無く履き終えたのである。

 

 

(履き慣れてるのかしら・・?)

「・・・」

 

「えっと。履けました」

 

「ふふふっ・・・似合っているわ・・凄く・・」

 

「ありがとう・・ございます」

 

 

―これお返しするです―

 

 

そして会話のタイミングを伺っていたのかエレベーターでやってきてから静かだった妖精が銃を差し出してきた。

 

その事に妖精の存在を忘れていた2人であった。

 

「銃の事忘れていたわ・・」

 

そう言いながら大鯨を見みては何処に装備させようかと迷っていた。

金剛型の服を着た大鯨、装備出来る所が少ない。

 

「あの・・ここでは必要ないと思うのですけど・・」

 

「だめよ・・用心は常に必要よ」

 

ヤマトはガンホルスターを作り上げた。

腰に巻くベルトと太ももで固定するホルスターをセットである。

 

所謂レッグホルスターと呼ばれ、腰のベルトから吊り下げ太ももに固定する物だ。

 

「はい。これを付けて頂戴」

 

「これ・・付け方がわからないです」

 

(キマシタ!分かっていたともーっ・・・ふふふっ)

「そうね、付けてあげるわ。動かないでねー」

 

そう言いながらホルスターのベルト部分を持ち大鯨の目の前でしゃがみ込み。

 

 

スカートに手を突っ込んだ。

 

 

「きゃ!?何をっ」

 

咄嗟にスカートを手で抑えた。

 

しかし既に手を突っ込んでいるので意味があまりない。

 

「このベルト腰に巻くのよ」

 

「腰に・・?」

 

「ほら、出来たわ」

 

大鯨は若干赤面している。

下着で居るのはあまり気にしないらしいがスカートに手を突っ込まれるのはダメなようだ。

 

 

当り前である。

 

 

そんな事関係なしとヤマトは腰のベルトに太もものベルトを固定し終わっていた。

銃も既に装着されている。

 

「うぅ・・やるならひとこと言ってくださいっ!」

 

(ひとこと言えば大丈夫なのね・・)

「ふふっ、ごめんなさい?」

 

「う~・・」

 

 

― ぐ~っ ―

 

 

抗議的な目を向けていたが、お腹が鳴り俯いてしまった。

 

顔を赤らめている。

 

 

「ふふふっ。ご飯・・行きましょ?」

 

「はい・・」

 

 

こうして金剛型の服を着た大鯨である。

金剛型との違いは頭の電探と太ももの荷電粒子射出装置である。

太もものホルスターは隠す気が更々無く、スカートとサイハイブーツの間にあり丸見えであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの・・」

 

「何かしら?」

 

「その格好で行くんですか・・?」

 

「あら・・忘れていたわ」

 

ネグリジェのままである。

艦娘の事になると周りが見えなくなるヤマトであった。

 

 




霧式スマホほしいです。

それと分離袖は1人ではどうやって着けているんでしょうか・・実は中にマジッk ―ゴッ―

作者が退場しました。


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提督ノ受難

熱中症でくたばりかけてそのままモチベ下がっていました。
怖いですね熱中症。


―――食事処―――

 

其処には艦娘が1人もおらず静かな食堂が広がっていた。

静かな食堂で有るがキッチンでは何か作業してるのか物音が響いていた。

そんな食堂に2人と1匹?はやってきた。

 

「あのぉ・・今やっているんでしょうか・・」

 

「誰も誰も居ないわね・・」

 

辺りを見回しても人ひとり居ない。

 

「困ったわ・・・あら?」

 

カウンターにタイミングよく間宮がやってきた。

ちょうどよいタイミングである。

 

「あ、ヤマトさ・・・ん?えっと・・お食事ですか?」

 

ヤマトの姿に困惑した。

 

今迄に寝巻きで来る子が居ないことはなかったが、流石にネグリジェで来るのは予想外であった。

 

大鯨に指摘されて裸足だったことに気づいたヤマトはストラップサンダルを作り出したのである。

衣服ではなく純白のストラップサンダルをである。

 

そして今、ネグリジェとストラップサンダルだけというラフにも限度がある格好だった。

 

「そうね。此処は何時からやってるのかしら?」

 

「此処は朝5時から夜9時迄ですね。それ以降は開いていないので酒保で保存食など買っていただいています」

 

「へぇ、酒保なんて有るのね?」

 

「はい、大淀さんが主導で色々と仕入れていますね。何か欲しいもの等は大淀さんに報告という形になっています」

 

「そうなの・・大淀ね」

 

後に大淀は狙われるのであった。

 

「それと、食事・・頼めるかしら?」

 

「大丈夫ですよ、何にしますか?」

 

カウンターの横にはメニュー表があり、その日毎に内容が変わっている様だ。

内容は日替わりオススメと、日替わりランチが3種を扱っている。

軍の食堂として見れば非常に充実している。

 

「日替わりオススメ・・頼めるかしら?」

 

「オススメですねー、そちらは何にしますか?」

 

大鯨に話を振られた。

 

「え、えっと・・この鯖定食は・・?」

 

「コレですね、分かりにくいですよね」

鯖定食。

受付する人が分かりにくいと言ってよいのだろうか。

書き直したら?と少し悩んでしまった大鯨である。

 

「鯖定食、鯖の味噌煮定食ですね。鳳翔さんが作る絶品の料理なんですよ、普段夜なんですけど時折昼間に出してますね」

 

「それで・・お願いします」

 

「ふふふっ」

 

ニコニコしているヤマトに何処と無く抗議的な目を送っている大鯨であった。

まだヤマト艦橋であったことを気にしているようだ。

 

「それと、エラーちゃんは何か食べたり出来るの?」

 

―う~ん・・分からないです?・・食べ物食べた事無いです―

 

(妖精って甘味が好きだったような・・)

「そうねぇ、何か甘味・・有るかしら?」

 

どうやらエラーは今迄食事をしたことが無い様である。

その事にヤマトは甘味が好きであるという記憶頼りに何か注文してみようと思った。

 

「色々ありますが・・今日は水羊羹ですね。良い小豆が入って作ってみたんですよ如何ですか?」

 

「それ、お願いするわ」

 

「本日のオススメに鯖の味噌煮ランチ、水羊羹ですね」

 

そう言って間宮は注文入りまーすと言いながら奥に入っていった。

 

「良かったわね・・鯖の味噌煮」

 

「う~、いじわるぅ」

 

「ふふふっ」

 

「エラーちゃんは甘味で良かったわね・・?気に入るはずよ」

 

―良いものなんですか?―

 

「そうね、甘くて良いわよ。食べてみてのお楽しみかしら?」

 

―わかったです!―

 

そんな他愛もない会話が続いて数分、間宮が料理をお盆に乗せてやってきた。

本日のすすめはアジの開きがメインの様だ、そして鯖の味噌煮定食と水羊羹。

 

「は~い。おまたせ~」

 

(間宮さん・・欲しいわ・・凄く。ウチに欲しいわ・・・)

「・・・ありがとう」

 

「ふふっ、ごゆっくりどうぞ~」

 

(提督から間宮引き抜きを提案してみようかしら?・・まだ早いわね・・)

 

 

 

「・・・まっててね」

 

小声で間宮には聞こえなかった。

 

間宮には。

 

 

 

そしてお盆を持ち辺りを見回した。

 

誰もいない。

 

静かな空間が広がっている。

 

此処まで静かであれば場所を探す必要も無くすぐ近くの席で取ることにした。

 

「此処にしましょう」

 

「はいっ」

 

―です!―

 

大鯨が目の前で妖精が正面左にいる。

 

「さて、頂きましょう」

 

「いただきますっ」

 

(あら・・・ふふふっ)

 

お腹が空いていたのか、真っ先に食べ始めた。

そんな大鯨を微笑ましく眺めながらどう食べようか迷っていた。

 

(・・・これ・・・大丈夫よね)

 

 

――バリッ――

 

 

「えっ」

 

 

予想外の行動を目にした大鯨は思わず声が出た。

アジの開きの頭部丸ごと喰い齧ったのである。

 

「・・・不思議な食感ね」

 

「あの・・違います・・」

 

不思議な食感と言う感想、歯型状に切断されたアジの開きの頭部。

ヤマトと交互に見て困惑した。

そして指摘しないと骨含めて丸々食べてしまうんじゃないかと。

 

「知っているわ」

 

「えーっ」

 

「・・身を剥がすのが面倒なだけよ」

 

本音である。

食べても分解するだけなので骨が追加される程度大丈夫と思っていたヤマト。

 

(それに夕立は骨ごと食べそうだし・・?)

「気にしなくて良いわよ?」

 

「はい・・」

 

目の前で骨ごと食べているヤマトが気になりながらも、食事を進めていくうちに気にならなくなっていた。

 

ふと輝いている粒子が目に入り大鯨の横、エラーを見ると。

 

キラキラと輝いていた。

 

「水羊羹、良かったら?」

 

― 良いですっ 不思議な感じです! 止まらないです! ―

 

「気に入ったのね、良かったわ」

 

― 食べきってしまいました、残念ですっ ―

 

「そうねぇ?、食べ過ぎは良くないわ。夕食にでもまた頼みましょ?」

 

― 楽しみにするです! ―

 

「ふふふっ・・次は違うものを頼んでみましょう」

 

大鯨の横でキラキラ輝いているエラー、真横で輝いていれば気づくのではと横を見れば。

 

「んーっ」

 

食事に夢中で気づいていない。

 

ご機嫌である。

 

そんな変わった一行の食事が食堂では見られた。

 

 

 

 

 

 

―――執務室―――

 

「編成完了しました。第三遠征隊を休みにして、代わりに第二遠征隊、旗艦天龍、第六駆逐隊に長門さんを編成して周辺海域の対潜哨戒に出しました」

 

「長門を対潜哨戒・・?まぁヤマトにアタックされるよりマシか・・」

 

「あと千歳、千代田、飛鷹、瑞鳳で周辺海域全体の警戒に、他は待機となります」

 

「妥当かなぁ~。陸奥、山城、利根筑摩、鈴谷は泊地内待機であとの子は自由で良いよ」

 

「では遅いですが一〇〇〇に連絡を入れますね」

 

「頼むよ」

 

執務室では大淀の報告が行われていた。

主に長門の厄介払いであるが。

 

 

 

――バンッ――

 

 

 

勢い良く扉が開かれた、扉は無事である。

ヤマトによって修復された蝶番、霧式蝶番は非常に丈夫なようだ。

 

 

「来たわ!」

 

ヤマトに大鯨、続いて輝いている妖精が入ってきた。

 

 

「来た・・か」

 

大鯨の太ももに装備されている荷電粒子射出装置を目ざとく発見した。

執務室に武装したまま入ってきやがったと、しかしヤマト絡みなら仕方ないと気を取り直してほかを見ると。

 

妖精が光の粒子を放ちながら輝いている。

 

「ん?・・・」

 

目をこすって改めて見たが妖精は相変わらず輝いている。

 

もう異常しかない。

 

「妖精・・エラーだったか?光っているが大丈夫なのか・・?」

 

「機嫌が良いのよ」

 

「妖精は機嫌が良くなると光るのか」

 

「そうよ」

 

肯定しているがすべての妖精が輝くかはヤマトにも分からなかった。

 

「それより提督?茶葉が欲しいわ」

 

「その前に立ったままだと退屈だろう。ソファーで話をしないか?」

 

「そうね」

 

ヤマト自身は立ちっぱなしでも問題無かったが大鯨にエラーが居るので座ったほうが落ち着けると判断した。

そしてソファーに座った。ヤマトが中央に左が大鯨で右にエラーが座った。

 

 

「改めて、まみ・・茶葉が欲しいのよ」

 

間宮と言いかけたヤマト。

まだ一日しか立っておらずちょっとした会話しかしていない状態では間宮を困らせてしまうとあらためた。

 

そんなヤマトに無理難題が飛んでくるのでは?と身構えた提督は安心した。

 

「・・何が欲しいんだ?」

 

「あるもの一通りよ」

 

「結構種類あるが・・どれ程欲しいんだ?」

 

「大量には要らないわよ」

 

そう言ってはナノマテリアルで茶筒を作り出した。

250mlサイズの茶筒で、白色をメインに金色でヤマトのイデアクレストが側面と天辺に入っている。

大きさ的には自販機で売っているドリンク缶サイズといったとこか。

 

適当に作ったが、無駄に高級感が出た物となった。

 

「これに入る量で良いわ」

 

「それなら直ぐに用意出来るな・・・茶葉何種類扱っている?」

 

提督は執務机の斜め後ろ大淀の方向に向いて聞いた。

 

「6種類ですね。緑茶、玄米茶、焙茶、セイロン、ダージリン、アールグレイですね」

 

「それで良いわ、あと5つね」

 

霧式茶筒を5個作り出した。

 

「これで足りるわね?」

 

大淀の方に向いて言い、執務机の上に茶筒を積んだ。

 

「はい」

 

「ねぇ?本当に金剛は居ないのよね?」

 

ヤマトは妙に揃えられたソファーにテーブル、そして紅茶の種類にどうしても気になっていた。

 

「居ない・・居たら何か問題があるのか・・?」

 

「居たら?」

 

ヤマトの雰囲気が変わった。

見た目ニコニコしてて変わっていないが纏う空気が重くなるような威圧を感じる。

 

 

「提督・・消すわ」

 

 

「「!?」」

 

鼓動が高鳴った。

 

「何が問題だ・・・?」

 

「そうね・・金剛の性格が問題でねぇ?」

 

提督LOVE勢の金剛が仮に居たとして目の前で提督とイチャイチャしてたら消し飛ばす自信があった。

 

当の提督は金剛が問題で自分にとばっちりが来るのか、と同時に見かけたら丁重に扱おうと心に刻んだ。

 

「それと、この辺りで消えても問題ない島・・あるかしら?」

 

「「えっ」」

 

物騒な発言が止まらないヤマト。

 

「消えても・・と言うのは?」

 

「そのままよ。地図から消えても問題ない島よ」

 

「何をするんだ・・?」

 

「変な事はしないわよ。主砲を使っていなくてね?・・試験したいのよ」

 

提督は頭を抱えた。

島が消えるなんて変なことだよ!?と内心突っ込んでいた。

それ以前に主砲で島が消える物なのか?と疑ってもいた。

 

「主砲・・46センチ砲だったか?昨夜放っていなかったか?」

 

「あれは副砲よ、それと46センチじゃないわ51センチ砲よ」

 

「えっ」

 

大和型の主砲は46センチと思っていたが違ったようだ。

それ以前に主砲だと思っていたのが副砲だったことに驚きである。

 

現に今朝改装されたので昨夜はまだ46センチと提督の発言もあながち間違いでも無かった。

 

「あれが副砲・・主砲は一体・・」

 

「あら・・見たい・・?」

 

「もし・・だが装備を教えてもらうことは出来るか?」

 

「対策かしら?」

 

「・・・」

 

「別に良いわよ?・・代わりに島を一つね?」

 

「う・・うぅん・・」

武装の代わりに島と来た、代わりになるのか?予想外だ、と。提督は片手で白い手袋越しに目尻を抑えた。

考えるとヤマトの情報代わりに島一つと、安いのでは?と思える、しかしこの周辺の島は制圧し管理下に置かれている。

そのような島が一つとは言え消えてしまえば本部に何と言うべきかと。

 

 

ふと提督は昨日の戦闘が頭に過った。

敵地の島なら一緒に深海棲艦も駆逐してくれるんじゃないか?と。

 

「少し離れているがチョーク諸島に有るどれかの島と言うのは・・?」

 

提案したチョーク諸島は深海棲艦の吹き溜まりの様な場所で近づくことが出来ない場所だ。

艦娘の航続距離的にどうしても大艦隊以上を編成しないと制圧が無理な場所であり、

仮に大艦隊を編成しても敵戦力が未知数な以上制圧出来るか怪しく、迂闊に手を出せない場所である。

 

其処に島一つ犠牲で有るがヤマト突っ込めば制圧してくれるのでは?と淡い期待を込めて言った。

それに昨日の戦闘を思い出すと無傷で帰ってくる光景しか浮かばない。

 

 

「チョーク諸島?軽く2000km有るじゃないの・・往復したら夜になってしまうわ?」

 

「夜には往復してこれるのか・・飛行機かよ・・」

 

提督は変な事を想像していたら内心思ったことを口に出してしまった。

気づいた時には遅く、聞こえてしまったかとヤマトを見れば、変わらずニコニコしている。

 

「超戦艦よ」

 

聞こえていた。

他思は無いが自然と鼓動が早くなっていた。

 

「そ・・そうか」

 

ふと気づく物騒な発言が出まくっているが、ヤマトは何か機嫌が良いような?ならば言ってしまおうと。

 

「それとだが・・チョーク諸島はまだ制圧してなく深海棲艦が多くいると思うが・・構わないか?」

 

「あらぁ?深海棲艦狩ってこいと言ってるのかしら?」

 

「・・・」

 

「ふふふっ。別に構わないわ、装備の試験には丁度良いし」

 

「丁度良い・・のか?」

 

「そうね、武装一通り変えたのよ。それの試験にわね?」

 

「・・・そうか。それと武装の情報だが・・」

 

「あら?それは別でなくて?」

 

甘くなかった。

 

「深海棲艦と島でしょ?」

 

「そうだな・・」

 

「決めてるわ」

 

「なんだ・・?」

 

「今日中に帰ってこれるか分からないから、大鯨の欲しいものと部屋の手配ね」

 

凄く安心した一同である。

突拍子もない発言が止まらないヤマトがまた何か言い出すのかと皆ヒヤヒヤしていた。

しかし出てきた言葉があまりにも普通な為何か裏があるのではと思ってまう。

 

「それだけか?」

 

「それだけよ?」

 

何か裏があるのか気が気でない提督。

 

「それと大鯨?」

 

「はい?」

 

「少しお留守番お願いね?」

 

「わかりました~」

 

「エラーちゃんもね?」

 

― 了解なのですっ ―

 

ふわふわしている大鯨であった。

ふとヤマトは思う、どのタイミングでふわふわしているのかと、掴み所が分からないでいた。

 

「あと欲しいものは提督に要求するようにね?」

 

「は~い」

 

提督に要求するようにと、明らか提督がいる場での発言ではないが誰も気にしなかった。

 

 

「さて行くわ。白紙あるかしら?」

 

そう言ってヤマトは立ち上がり、出ていこうとしていた。

聞くと同時に提督の後ろに控えていた大淀が白紙を差し出してきた。

 

「此方で宜しいでしょうか?」

 

「構わないわ」

 

白紙を受け取り材質を確かめてから、ナノマテリアルで紙の上に貼り付けた。

分子構造を変えるだけで黒く見える為手間が掛からずに終わった。

 

紙の上に貼り付けもとい書き終えたが、改めて紙にしてみると一体何と戦争するんだ?と自分で思ってしまったヤマトである。

しかし過去の記憶にある満心王の如く満心して艦娘に被害が及んではいけないと気を取り直した。

 

「これで良いわね?」

 

書き込んだ紙を提督に差し出した。

 

「・・・ああ」

 

一体何時書き込んだのか、手にとっただけにしか見えない。

最初から書かれていた?グルでは?と大淀を見れば凄い勢いで左右に顔を振っている。

 

違うようだ。

 

ヤマトの異常に慣れようと思っているが、次々出てくる非常識な事々について行けないとため息が出た。

 

 

 

気を取り直して顔を上げるとヤマトが居ない。

 

 

「あれ、ヤマトは?」

 

「出ていきました~」

 

大鯨が答えた。

当のヤマトは用が済み、さっさと出ていってしまった。

早く装備の試験を終わらせて大鯨と戯れるために。

 

出ていったものは仕方ないと受け取った紙に目を落とした。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

機関 ― 縮退炉 ―

『永久機関』

 

装甲 ― 強制波動装甲 ―

『人類に破壊不可能』

 

武装

 

― 超重力砲 三十二基 ―

『破壊できないものは特に無い』

 

― 51cm三連装反物質砲 三基 ―

『質量が大きいほど破壊力を増す』

 

― 20.3cm連装反物質砲 二基 ―

『質量が大きいほど破壊力を増す』

 

― 30mm2重6連装陽電子射出装置 七十二基 ―

『大抵の物は蒸発する』

 

― 艦首魚雷発射管 八門 四基 ―

『すごく早い魚雷がでる』

 

― 垂直発射装置 艦首128門 艦尾128門 ―

『よく飛ぶミサイルがでる』

 

特装

 

― 重力子超収束砲 ―

『超すごい』

 

― クラインフィールド ―

『超すごいバリア。核にも耐える』

 

― ワープ ―

『ワープできる。広域空間に異常が起きる』

 

― 重力制御 ―

『重力を制御出来る』

 

― 次元空間曲率変位 ―

『次元に穴を開けてゴミを異次元に捨てる』

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

結構適当なヤマトであった。

 

「ん”ん”っ」

 

紙をテーブルに投げ出した。

 

両膝に両肘を乗せ本格的に頭を抱えた。

 

訳が分からないと。

 

書かれている文字だけ見るとSFに出てくる宇宙船に思えてくる。

説明が適当だが所々可笑しいのが混じっている。

ヤマトの事だから回りくどい真似はせずそのまま書いたのだろうと分かる。

 

釣られて大淀に大鯨も紙を覗いた。

 

「ヤマトさん51センチ砲だったんですね~」

 

ふわふわしてる大鯨にそれは違う!それに少し前に言っていたじゃないか!と内心突っ込んだ提督である。

 

「永久機関とは・・それに反物質・・陽電子??」

 

大淀はさっぱり理解出来ずスマホを取り出して調べ始めた。

そして調べて数分も経たずして手が震えだした。

 

理解したようだ。

 

「理解したか・・?」

 

「こ・・これ地球上で使うものじゃないですよ!?」

 

「そんなに凄いんですか~?」

 

「凄いってもんじゃないですよ!理論ですら確立していない物、反物質を!しかも兵器として保有してるんですよ!?そして縮退炉!これはマイクロブラックホールによる物質の圧壊でエネルギーを生成する機関なんですよ!つまり纏めると遥かに進んだ技術を持っている事になるの!」

 

大淀の熱弁に若干引いている大鯨である。

その光景に何処か事ある毎に熱弁してくる工作艦の顔が浮かんだ。

 

そして様子を伺っていた提督は、大鯨を怖がらせたら後が怖いと止に入ることにした。

 

「まぁ、大淀其処までにして・・大鯨が引いてるよ」

 

「はっ・・すみません、熱くなりました」

 

「そうだな・・大鯨は何か必要な物はあるか?」

 

「え?・・えっと、何も浮かばないですぅ」

 

「まぁ急ぎでは無いから、ゆっくり決めると良い。そうだな連絡用にスマホを渡しておくよ」

 

そう言って提督は自ら執務机に戻り引き出しからスマホを取り出した。

そして戻ってきてはテーブルの上に置いた。

黒く標準的なスマホである。

 

「これだな。使い方は後で誰かに・・」

 

「あのぉ・・スマホ?持ってます」

 

そう言って霧式スマホを取り出した。

何も知らない人が見ればただのガラス板だ。

金の縁取りがされていて高級感がある。

 

「スマホ・・?硝子板にしか見えないが・・妙に豪華だな・・」

 

机の上にスマホと並べられた霧式スマホをじっくりと見た。

 

「今朝ヤマトさんに貰いました」

 

そう言って大鯨は霧式スマホを持ち起動させた。

触れた部分から青白い回路模様が広がり問題なく起動しホームアイコンが表示された。

 

「使い方も少し教わりました~」

 

普通ではあり得ない光景にまじまじと霧式スマホを見てる提督と大淀。

 

「システムは標準的だな・・」

 

「其処じゃないですよ!どうしてガラスに映像が出てるんですか!?」

 

「ヤマトの事だし、気にするだけ無駄だ」

 

ヤマトが持ち出した物が普通なワケがないと慣れてきた提督である。

それに動じなかった自分を褒めても良いのではと思った。

 

アイコンを見ているとあるアプリケーションが目に入った、何故それが有るのか?と。

 

「その緑色のLi-Neってアプリを開いてくれ」

 

軍用の通信アプリである。

海軍だけでなく陸軍でも使われており高い秘匿性に信頼性があるアプリケーションである。

秘匿性の高さから私的に使用している者が多くいる。

 

主に艦娘である。

 

そして開かれたLi-Neにはくじらのアイコンがあり、横には[ たいげい ]と書かれている。

既にアカウントが設定されていた。

 

その下には見覚えのあるイデアクレストのアイコンで横には[ ヤマト ]と書かれた連絡先が入っている。

 

ヤマトに抜かりは無かった。

 

「ヤマトの連絡先は・・まぁ置いておくとして上の検索欄に[T-******]と入れてくれ」

 

「えっと・・上の検索欄に[T-******]って入れてくださいっ」

 

「いや、言うんじゃなくて・・・・」

 

入力されていた。

ヤマトは大鯨を困らせないためにと、ありとあらゆる操作に音声入力を対応させていた。

 

「・・・まぁいいか。で・・でたそれをリストに追加してくれ」

 

一軒だけヒットしていた。

 

「これを追加してくださいっ」

 

追加された。

 

そんな大雑把でもイイのかよと心の内で突っ込んでいた。

 

「リストに追加されたな。そのアイコンに触れれば僕と連絡が取れる。少し試すか・・」

 

提督は自分のスマホを開いて追加された大鯨に[ テスト ]と送った。

 

すると大鯨の霧式スマホにポップアップで[ テスト ]と送られてきた。

 

「わぁ。何か出ましたっ」

 

「送られているな?そしたら、そっちからも送ってみてくれ」

 

「えぇっと・・?テストと送ってください」

 

すると提督のスマホに[ てすと ]と送られてきた。

 

正常である。

 

「・・・問題ないな」

 

もう突っ込まない・・突っ込まないぞ!?と心が乱れている提督。

 

「何か用があるならそれに連絡してくれれば対応する。後は他の子にも連絡先を教えてもらえばその子と連絡が取れるな」

 

「わー、便利なんですねぇ。ありがとうございます~」

 

「そうだな大淀も登録しておくと良い。何か僕に聞きにくい事があれば大淀に聞いてくれ」

 

妙に気の利いたことが言えた事に自分を褒めた。

それが普段の提督であるのだが、何故かヤマトが来てから狂いまくっている。

 

「分かりましたぁ。えっと、大淀さんを追加してくださいっ」

 

それは全国の大淀に飛ぶんじゃないか?と無駄なことを考えた。

そして大淀のスマホに反応があった。

 

正常に追加されたようだ。

 

もう何でもありなのかと提督は思考を破棄した。

 

「うん・・大丈夫だね?それじゃ大淀、泊地を案内してきてくれるかな?」

 

「あの、しょ・・それでは提督後はお願いします。大鯨さんにエラーさん行きましょう」

 

「?・・ああ、後は任せた・・・」

 

何か言い淀んだ大淀にハッと執務机を見れば山積みの書類があった。

 

―バタン―

 

「逃げやがった・・」

 

1人執務室で項垂れていた。

取り敢えず仕事を減らすためにも執務机に戻ろうと、机に投げ出したヤマトの情報を見てしまった。

 

「よし、寝よう」

 

仕事を破棄して寝ることに決めた提督であった。

 




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大和ト武装

二期始まりましたね。
高解像度化良いですね。
特に図鑑・・イイですね凄く。


 

───港湾ヤマト前―――

 

ヤマトは船体前で足を止めていた。

 

「何かしら・・?」

 

「ヤマトさん!遂に見つけましたよ!?」

 

「是非!戦艦を!戦艦を隅々まで調べさせてくださぁい!!」

 

張り込みをしていた明石と夕張に見つかってしまった。

船体の正面に置いてあるダンボール箱の中から出てきた。

昨日要求した物資かと思っていたが違った、待ち伏せ用のダンボール箱だったようだ。

 

いざ考えてみると軍の物資は基本的に木箱である。

 

(隅々までは嫌よ・・・)

「嫌よ・・それに艦橋以外基本的に入れないわ?」

 

「えー、良いじゃないですかっ!少し!少しだけでも!!」

 

「是非!チョーっとだけでイイので!」

 

 

(この様子・・逃げるのも良いけど・・丁度良いわ)

「そうね・・面白い物を見せてあげるわ・・見せるだけよ?」

 

「やりました!夕張!記録の準備は出来てますか!?」

 

「明石さん!大丈夫ですよ!さあヤマトさん早く!!」

 

目の前で騒がしさ前回の明石と夕張であった。

それ以前にヤマトに許可取らずに記録する気であった、ヤマト自身あまり気にしてないがせめて一言聞くべきでは?とは思っていた。

 

「そう・・ね、船体見なさい?」

 

 

 

――ゴゥゥンッ――

 

 

 

低い金属音が辺り一帯に響いた。

 

 

目の前ではヤマトの船体が上下にゆっくりと別れている。

 

船体上部が上がるに連れて円形のユニットが片舷20基、両舷で40基見えてきた。

 

中央に左右4基、艦首と艦尾に左右2基ずつ配置され計8基の次元空間曲率変位ユニット。その間には左右32基の重力子ユニット並んでいる。

次元空間曲率変位ユニットは中央が赤く若干大きく、重力子ユニットは中央が青い色をしている。

 

更にはヤマトの旗艦装備である、重力子収束ユニットが艦首と艦尾にに迫り上がってきた。

円形で他のユニットに似ていなくもないが、色が金色をしていて中央が空洞になっている。

一見しただけで全く別物と判断出来る。

 

(金色・・これが重力子収束ユニットね?記憶にあるヤマト・・私?は旗艦装備無しで戦っていたのねぇ)

「こんな所かしら?」

 

何故ココまで簡単に見せたかというとヤマト自身主砲展開時の状態を見たかっただけである。

 

「ここコォ・・コレハアアアァア!?」

 

「船体が上下ニイィィィイイ!!」

 

「主砲よ・・」

 

「なんとぉおお!!主砲が内部ニィイイ!それに不思議な形状ですね!?」

 

「形状からエネルギー系・・電磁投射砲の類でしょうか!!」

 

(騒がしい・・逃げましょうか・・)

 

何時までも食い下がってきそうな勢いなので逃げることに決めたヤマトは、艦首の次元空間曲率変位ユニットの1基を展開・移動させた。

 

ミラーリングシステムを起動させなくても自由に動くユニットは空中を移動しヤマトの真横まで来た。

軽くトラックサイズはあり浮遊している姿は何処と無くUFOに見えなくもない。

 

「おぉおおぉおぉおおお!??!」

 

「どの様に浮いているんでしょうか!!是非データを!!」

 

二人は目の前に来たユニットにすかさず近付こうしてクラインフィールドに張り付いた。

 

「これにもシールドがぁあ!!」

 

「近くにぃい!?もっと近くにぃいいいい!!」

 

そんな騒がしい二人を横目に次元空間曲率変位ユニットへ飛び乗った。

 

「見せるまでよ?」

 

どちらかと自分で見たかっただけである。

 

「急ぎなの・・またね?」

 

そう言ったヤマトはユニットで浮かび上がり船体の方に行ってしまった。

間違えても次元に穴を空けられる物を乗り物にするべきでは無いのだが気にしない。

 

「あああっ!?ヤマトさ・・ん・・」

 

「・・・履いてないですね」

 

 

履いてなかった。

 

ユニットの中央付近ではなく端に近い位置に飛び乗った為に真下に居る二人にはよく見えていた。

 

 

 

 

───ヤマト艦橋―――

 

 

(海図認識完了・・・天体認識完了・・・距離1,905km・・・・システム・オール・オンライン)

 

ヤマトの船体が光り輝いた。

 

(こちらの方が落ち着くわね・・・さて?限界まで機関回してみましょうか・・)

 

ゆっくりと港湾を離れ外海に出た、全力で出ていかないのは未だにヤマト前でクラインフィールドに張り付いている二人を水を掛けない為である。

そうして外海に出るのに2分程掛かっていた。

 

それでも異常な速度である。

 

(さて行きましょうか。縮退炉・機関出力異常なし・・・・全速前進・・!?)

 

 

――ゴッ――

 

 

エレベーターに直撃した。

 

艦橋で仁王立ちしていたヤマトは加速について行けず後方のエレベーターに直撃した。

徐々に加速する航行しか行っていない為に加速力という物を忘れていたのである。

 

(凄い加速ね・・・速力は・・)

 

何事も無かったかのように立ち上がり、速力に意識を向けた。

 

 

―120knot―

 

―200knot―

―270knot―

―330knot―

―380knot―

―410knot―

―420knot―

 

 

5秒起きに刻まれていく速度計が人類には異常な数値を出していた。

 

(400knot付近で頭打ちかしら?それにしても艦尾しか海に触れてないわね・・浮いてたりして?)

 

現状のヤマトは艦尾の超高機動ユニット付近のみ海に触れている状態である。

その様な状態でも船体は安定している、艦尾にある巨大な翼状の舵が高速航行を補助しているのだ。

 

(440knotで限界ね、時速で815km・・目的地まで二時間半と夕方には戻れそうね。・・・それにしても)

 

艦橋の窓から外を見た。

背景の流れる速度。海に触れていない艦首。艦尾が撒き散らす海水。

どれをとっても大型船舶が出すものではなかった。

 

 

(超高速戦艦にでも名を変えようかしら?)

「・・・あー→あー↑けほん・・。超高速戦艦ヤマト・・・。高速戦艦超ヤマト・・・・語呂悪いわね」

 

退屈な時間にヤマトは思考が遊んでいた。

そして名に超だけは外したくなかった。

 

 

「超戦艦ヤマト・・」

 

結論、色々ひっくるめて超戦艦で落ち着いた。

 

(暇ね・・リフォームしましょう!。そうと決まれば入渠、厨房・・・寝室の見栄えね!)

 

取り敢えずにと入渠と厨房を艦橋内に作ることを決めた。

 

(さて・・まずは厨房かしら?入渠は後ね)

 

泊地の入渠でまだ誰とも入っていないヤマトは皆と入渠で戯れるまで入り浸るつもりである。

 

(まず第一艦橋の下、確か休憩室だったかしら?其処を ――レーダーに反応あり―― ・・キリの良いタイミングで来てほしいのだけどねぇ?・・・作業開始してないだけマシね)

 

自己完結した。

それに相手が来るのではなく、時速800km以上で航行しているので自らエンカウントしに行っている様な物である。

 

 

それから数分反応のを示した物が見えてきた。

 

(6体・・あら、艦載機ね?CIWSの試験に丁度良いわ・・・)

 

水平線から目視距離に入った。

深海棲艦は電探を持っていないのか、慌てて発艦している様子が見て取れる。

仮に電探で捉えたとしても1分で13km近く移動する戦艦に対策のしようもない。

 

(金ピカのルとヲ級・・あと何だったかしら?取り巻き4匹で良いわね・・・それにしても・・止まれない)

 

 

 

「戦艦直ぐに止まれないわ!」

 

 

深海棲艦を轢いた。

 

 

Flagshipのル級とヲ級は避けられたが、その他の取り巻きが戦艦に轢かれてしまった。

轢く気は無かったと思っている。しかし反応のある方向に一直線、超高速で移動していたらある意味故意だ。

 

 

 

(・・・・まぁ、こんな事もあるわね)

 

 

轢いてしまったが生き残りが居てラッキーと、駆逐のためゆっくりと左に減速旋回した。

 

(改めて・・CIWS起動・・)

 

 

――CIWS MODE AUTO

 

――目標認識

 

──射撃開始

 

 

 

―――   ゴォオオオオオオオ   ―――

 

 

爆音が響いた。

 

断続的な音では無くただの爆音が。

目の前で巨大な滝が流れ落ちているような、ソレが爆音に変わった様な音だ。

 

目の前には輝く青一色、海や空の色ではなくCIWSから放たれた陽電子の色だ。

若干白く夜空に浮かぶ星々が飛んでいくような、幻想的な光景が広がっている。

 

間違えても見惚れるような光景ではない。

 

 

 

それに深海棲艦と艦載機は巻き込まれ姿を消した。

 

艦載機はそのまま姿を消し、生き残っていた深海棲艦は水蒸気爆発に巻き込まれて判断出来ない。

陽電子エネルギーによる膨大な熱量で瞬時に蒸発・爆発したのである。

 

そして辺りには水蒸気爆発によって発生した霧が立ち込めている。

非常に視界が悪い。

 

 

何かと行動を起こす度に霧が発生するヤマトである。

 

(レーダー・ソナー反応なしと。・・・しかし煩いわね。艦橋全体防音にしましょう)

 

深海棲艦の駆逐より艦橋の防音の方が優先である。

 

(! 突然のレーダー反応キマシタ!誰でしょうっ!?)

 

 

 

 

それから直ぐに晴れた。

海上では風がある程度吹いており数分も掛からずして霧が消え去った。

 

 

レーダーの反応がある位置には一人の艦娘。

 

 

凄い勢いで手を振っている。

 

 

「キマシタ!」

 

(それにしても、あの子は・・・清霜・・。朝霜?・・アホっぽい感じは清霜かしら?)

 

 

凄い勢いで手を振ってヤマトに向かって走ってきている。

 

 

滑らずに海上を走っている。

 

 

近くまで来たのを確認したヤマトは艦橋の外へ迎えに出た。

左舷甲板に出たヤマト。ふと違和感を感じ手すりから顔を出し海上を覗き込むと、其処には艦娘が艦橋下の船体にペタペタ触れて頬ずりしていた。

 

その様子に確信した。

 

(清霜確定ね・・)

 

確信を得たヤマトは船体を甲板付近まで徐々に沈めて清霜を迎えた。

 

「いらっし「大和!大和ぉ!」・・・落ち着きなさい?」

 

「戦艦よーっ落ち着けないの!」

 

清霜は艦首の方向に走って行ってしまった。

 

「・・・仕方ないわね」

 

続いて艦首の方に歩いていった。

この時ヤマトは始めて艦娘に振り回される気がした。

 

 

(居ないわ・・・艦尾ね)

 

艦首まで来たが甲板を走り回っている。清霜を追い回す気にもなれず落ち着くまで待つことにした。

 

見晴らしの良い位置まで来たヤマトはビーチパラソルとビーチチェアを作り出して寝っ転がった。

霧に焼くと言う概念は無いが何となく気分的にである。

 

(よしコレで待ちましょう。それと微速前進・・)

 

待つと同時に船体を微速前進させた。

我慢してあまりにも遅い30knotであるが。

 

100knot程出したかったが暴風で清霜が物理的に飛んでいきそうである。

 

(・・・水着にしましょう)

 

30knot甲板では風速15mの普通に強い風が流れている。

そんな場所でスカート状のネグリジェ。風上に向かって寝っ転がれば捲れるのは必然的である。

それだけなら気にしないだろうがネグリジェがヒラヒラとして非常に鬱陶しかった。

 

そしてヤマトは立ち上がり水着に作り変えた。

上が普通の三角ビキニで下が、タイサイドで左右を紐で止めるタイプだ。

生地は上下真っ白で紐が水色と、左胸に水色のイデアクレストが入れられていた。

 

(よし・・)

 

改めてビーチチェアに寝っ転がった。

 

 

 

それから20分程が経ち息を切らした清霜が横にやってきた。

息が落ち着くと頭を下げた。きっちり90度である。

 

「ごめんなさい!そのぉ~興奮しまして・・」

 

「落ち着いたかしら?」

 

「はい」

 

「それで貴方は清霜よね?」

 

「はいっ!夕雲型の最終艦、清霜です!。それで・・えぇっと司令官ですよね?」

 

「・・どうして司令官と?」

 

「何となくです!」

 

曖昧な事をハッキリと伝えてきた清霜。

その事に提督との会話で艦娘は特別な素質が無いと従わないと言っていた事を思い出した。

 

(特別な素質ね・・艦娘には何か第六感的な物を持ってるのかしら?)

「少し聞きたいのだけど。私が司令官と言ったら貴方は従うかしら?」

 

「はい!」

 

間髪入れずに答えた。

 

「そう・・。まず自己紹介すると、私はヤマトよ」

 

「やまと・・?ってこの戦艦ですよね?」

 

「そうね、この戦艦は私の体よ、だからヤマト」

 

清霜が硬直した。

 

 

「凄い凄いすごい!大和が司令官で司令官が大和で!!つまりつまり司令官は大和で大和の艦長?」

 

何か興奮しながら妙に複雑な解釈をしている清霜であった。

 

「大体合っているわ。私自身がこの戦艦そのものなの。それで司令官でもあるのよ」

 

「えぇっと・・?」

 

「・・・そうね、清霜?腰にある艤装は自由に動かせるかしら?」

 

「え~っと、はい!」

 

腰に装備されてる艤装の動作を確かめハキハキと答えた。

 

「清霜は腰に艤装があるでしょ?私はこの戦艦が艤装なの」

 

「艤装・・?この戦艦が?この・・「清霜」・・ふぇ?」

 

何かを考えながら呟いている清霜に、先の暴走を感じ取ったヤマトは言葉を被せて止めた。

もし被せないで見ていたなら暴走していたであろう。

 

「艦橋に行きましょう?見晴らしが良いわよ」

 

「行きます!」

 

 

 

 

そうして二人は艦橋にやってきた。

 

「わーっ!よく見えるー!」

 

「ふふっ、そうね。それより此方に座りなさい?面白い体験が出来るわ」

 

そう言いヤマトはテーブルの4隅、エレベータ方向に設置されているソファーを手でポンポンと叩いた。

 

ここに座れと言う意味だ。

 

「?・・はい!・・あ、艤装」

 

「あら・・ソファーの横の籠に入れておくと良いわ」

 

「あれ・・?」

 

清霜がヤマトに向いている間にひっそりと作っていた。

ナノマテリアルで作り出している所を見せたら余計騒がしくなると想出来たからだ。

ソファーの横に小さめで艤装を入れるのに丁度良さそうな白色の籠だ。

 

清霜は艤装を外し籠に入れた。

それからヤマトの横に移動してソファーに座った。

 

「そう、ソファーに深く座って・・大丈夫ね」

 

「?」

 

「・・全速前進」

 

その瞬間二人はソファーに押し付けられた。

 

「おっおぉお??」

 

「ふふふっ」

 

二人の体には1.2の加速度G掛かっていた。

軽くF1並の加速である。

 

 

そして清霜の反応を楽しんでいた大和は唐突に閃いた。

 

膝の上に乗せれば良いと。

 

(しくじったッ!!膝の上に乗せれば清霜とソファーに挟まれて私は!?)

 

ヤマトはブレない。

 

それから20秒程経ち加速が緩やかになり立ち上がっても問題なくなっていた。

 

「・・・立ち上がっても大丈夫よ」

 

「凄いすごい!楽しいっ!」

 

騒ぎながら窓際に走っていって外を眺めている。

 

「・・速い」

 

艦橋から流れる光景に見惚れていた。

 

「わたし・・私も、大和さんみたいになりたい!」

 

真直ぐ大和を見て言った。

 

「・・・無理ね」

 

「えっ・・」

 

「私はね、霧と呼ばれる存在で清霜、貴方は艦娘と呼ばれる存在なの。私達は全く別なの」

 

「・・・?」

 

固まった数秒、頭をかしげた。

理解してない様だ。

 

「そうねぇ・・清霜は生き物?」

 

「?・・うん」

 

「私はね生き物ではないのよ。例えば・・」

 

ヤマトは右手を指先から手首までゆっくりと砂状に変えていった

その光景に清霜は目を見開いた。

 

「ゆ・・幽霊?」

 

「幽霊とは違うわ、幽霊なら貴方の方が幽霊に近いわよ?」

 

「えっ・・」

 

「近いだけよ?貴方は生きているの。幽霊じゃないわ?」

 

「そう・・ですか」

 

何かホッとしているような落ち込んでいるような不思議な雰囲気を醸し出していた。

 

(落ち込んでいる?・・何か、何かフォローをっ)

「霧としての戦艦にはなれないけど、艦娘として戦艦にはなれるかもね?」

 

霧になるには物理的に死んでしまう気がしてならないが、艦娘として戦艦なら霧の超技術で艤装を改造すればよくね?という結論がでた。

 

「!・・ほんとぉっ!?」

 

一瞬で復活した。

目がキラキラしている様な錯覚を覚える程に謎のオーラを発している。

 

「そうね、多分大丈夫よ?」

 

「わぁーっ。大和さん大好きっ!」

 

ソファーに座っているヤマトに抱きついてきた。

 

(これは!?なんと至福なっ)

 

胸に顔を埋めている清霜。

ヤマトの目の前には清霜の頭が頬ずり出来る位置に、そんな様子に我慢なんて出来なかった。

 

(ふふっ・・至福っ・・・)

 

ヤマトは頬ずりしていた。

清霜も清霜でヤマトの胸に埋もれてすりすりしている。

 

 

 

 

それから数十分、他愛の無い会話をして目的地。

チョーク諸島に到着した。

 

 

 

 

 

 

 

―――チョーク諸島南東付近―――

 

 

(・・・キモいわね)

 

「や・・大和さん?やばくないですかぁ~?」

 

目の前の光景に清霜が怯えている。

 

二人の目には48隻と4個大艦隊程の深海棲艦が見えていた。

金色に輝くFlagshipが20隻程に残りが殆ど赤く光っているEliteである。

 

目の前で既にこれ程居るが、他の島や島の影に恐らくだが居るだろう事が分かる。

 

 

「ふふふっ、大丈夫よ」

 

 

――CIWS MODE ・・・

 

(丁度良いわね・・)

「ちょっとごめんね?」

 

清霜をクラインフィールドで囲った、上下左右立方体で大きく艦橋ギリギリのサイズだ。

そして明らかに普段より密度が高いのか濃い青色をしている。

同時に艦橋全体にも展開した。

 

(思ったのだけどクラインフィールド内に居れば安全じゃないの・・大鯨連れてくれば良かったわ・・)

 

「何!なに!なにこれ!」

 

「クラインフィールドよ、あらゆる害意を寄せ付けないわ」

 

「へぇ~っ」

 

清霜は目がキラキラしている。

ペタペタとクラインフィールドに触れている。

 

そしてヤマトは船体に意識を向け、主砲を展開した。

船体が上下に分かれ、中央に並ぶ円形のユニットが現れた。

 

そして艦首と艦尾に装備されている旗艦装備。

黄金のリングがせり上がり、発射準備が整った。

 

 

 

 

 

『 ― 私の全力魅せてあげる ― 』

 

 

 

 

――重力子超収束砲 起動

 

 

――重力子ユニット オール・オンライン

 

――収束ユニット オール・オンライン

 

 

――照準 艦隊中央

 

 

――重力子圧縮率 05%

 

10%

 

15%

 

20%

 

 

(・・・最高出力の発射はマズい気がするわね)

 

現在重力子ユニットに重力子エネルギーを圧縮中であるのだが、船体外では中央に並んでいる重力子ユニットから真っ黒のエネルギーを放出している。

真っ黒のエネルギーが曲線を描くようにして海に落ちて切り裂いている。まるで太陽で発生するプロミネンスの様に細長く磁気線に引っ張られるように綺麗な曲線を描いている。

 

プラズマボールの様にも見えなくもない、不規則に発生しては海に向かって線を引いて海面を切り裂いている光景だ。

 

 

(これ・・すごくヤバイと思うの・・・清霜も居るし)

 

――重力子圧縮率 30%

 

(発射しちゃいましょうっ)

 

全力という文字は何処かに行ってしまった。

 

 

 

 

――  重力子超収束砲 発射  ――

 

 

 

 

視界が暗くなった。

 

真っ黒で極太のエネルギー波が目の前を染めた。

 

真っ黒のビームが周りを白い輪郭の雷を帯電しながら突き進んでいった。

 

船体の十数倍はあるであろう太さのビームが射線上の物をすべて飲み込んだ。

 

それだけに留まらず、ビーム自体が強力な重力を持っているのか周囲の物を吸い寄せている。

 

周りの深海棲艦が、艦載機が、木々が、岩が、島が。

 

そして大気が、嵐が可愛く見える程の暴風が、ビームに吸い寄せられている。

 

そして光まで吸い込んでるのか周囲が暗くなっている。

 

 

まるでブラックホールの様に。

 

 

 

 

そして数十秒程が過ぎて、重力子超収束砲の照射が終了した。

 

 

 

そこにはヤマトから正面辺り一面砂の道が広がっていた。

射線上周囲数百メートルに渡り海が消滅している。

 

ヤマト自身がフィールドで海水を割けていた訳ではなく、重力子超収束砲によるビームが周囲の海水そのものを消し飛ばした。

 

正面には水平線まで続く道が出来ている、その周りには海水が元に戻ろうと押し寄せている。

 

あまりにも非現実的な光景が広がっていた。

 

 

作り出した本人も若干困惑している。

 

 

 

「三割でこれねぇ・・予想外」

 

 

 

突然周囲が明るくなった。

 

オーロラが発生したのだ昼間でもハッキリと見えるほど強く。

 

あまりにも低い位置に。

 

 

そして計器が異常を検知した。

 

 

――周囲重力波異常 波源率 規定値超過 ――

 

――周囲空間曲率異常 曲率 規定値超過 ――

 

 

(変異空間障壁・・周囲クラインフィールド出力異常なし。重力子超収束砲熱量・・−175℃、重力子ユニット熱量−120℃ 問題なし・・各部接続解除、格納開始)

 

熱量がマイナスなら問題ないとヤマトは展開していた武装を格納、元の形状に戻した。

 

 

――システム・・・オール・グリーン

 

 

(清霜は・・)

 

「わーぁっ。きれい・・」

 

気になって横を見ればクラインフィールドに張り付いて外を見ていた。

純粋な子は現実離れした現象に強いのである。

 

(大丈夫ね・・。それにしても綺麗・・ね?これ、空間異常が引き起こしているのよ?)

 

周囲のオーロラが空間・重力異常によって引き起こされているのは直ぐに判断できた。

斑の様に此処彼処で存在する異次元に清霜が影響しないか心配しつつも、変異空間障壁を正確に把握し全く影響の無い船体に安心していた。

それは11次元に干渉出来る超戦艦だからこそだ、大戦艦以下では何かしらの影響を受けていたであろう。

 

(艦内は異常無し・・と)

 

そして艦内への影響が無いと判断でき、清霜の周りを覆っていたクラインフィールドを解いた。

解くと同時に清霜は艦橋の窓に張り付いて周りを見回していた。

 

「すごいっ。何、何っ、なにこれ!」

 

「空間と重力異常が引き起こしてるのかしらね?」

 

「大和!もっと近くで見たい!」

 

「真っ只中よ?」

 

「へぇーっ」

 

それから数分空間異常が回復するまで見ていた。

変異空間障壁の中で清霜を乗せたまま移動する気になれないからだ。

居なければ気にせず動き回っていたであろう。

 

(それにしても、地上で撃つ物では無いわね・・・島3つと半分ね。まぁ良いわ)

 

回復してきたレーダーによって周囲の状況が把握出来てきた。

それによると射線上の島が消え去り、一部の島が削れていたり、面積が半分以下になっていたりと色々と滅茶苦茶であった。

 

共通なのは射線上周辺の島々は木々が禿げ大地しか残っていなかった事だ。

 

それからまた数分空間異常が引き起こしていたオーロラが消え去り、元の空間へと戻っていた。

 

(異常は・・無し。帰りたいけど・・・周辺の記録だけ撮って帰りましょう)

 

ミサイルを打ち上げた、艦尾から一本煙を吐きながら空に上っていった。

それは正面、側面と幾つもカメラが付けられた簡易UAVモドキである、UAVにしては些か早すぎるが霧のヤマトには問題ない。

 

周辺上空を旋回させ映像を記憶させた。

記録するにつれてヤマトが引き起こした惨状がより顕になってきた。

 

チョーク諸島は環礁に囲まれた島々だが、環礁の端から端、島々を含めて一直線に削り取られていた。

ビームが通った後だ。海底が削られ深くなっており、その場所だけ海の色が濃くなっている。

上空から見ると異常性がよく分かる。

 

それからビームが通過した方向にミサイル型UAVを飛ばして30km程先、射線上の海で一人漂っている艦娘を見つけた。

同時に艦娘も此方を見ている。ミサイル型UAVを警戒している様だ。

 

(迎えに行くわ!)

 

位置を把握したヤマトは艦娘の居る方向へと向かい・・・それから5分程で見えてきた、驚かせないよう減速した。

 

目の前まで近づくと其処には、若干口を開け呆けていた。清霜とは反応が大違いである。

その清霜は艦橋から見える艦娘に首をかしげていた。

 

「あれ・・?」

 

「清霜?迎えに行きましょうか」

 

「りょーかいですっ!」

 

 

二人は甲板に出た。

 

艦娘は未だに心ここにあらずと言った感じなので戦艦左横を目の前まで移動させ、甲板近くまで船体を沈めて目の前に見える位置まで来た。

そして手を差し出し声を掛けた。

 

 

 

―― いらっしゃい、大和 ――

 

 

 




やりました。

自重?そんな物知らないですね。


なぜチュークやトラックではないかと言うとこの為です。
それっぽ~い諸島です。ココ重要



*誤字修正されました。
報告ありがとうございます。


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大鯨ノ日常ト提督ノ#%$&!

武蔵が出ない。紅茶姉妹いっぱい。うぅっ・・資材が。


 

 

―――駆逐寮―――

 

艦娘寮にやってきた大淀と大鯨。

あの後執務室を出て行き「一応必要かわかりませんが、先に部屋を案内しますね」と此処に案内された。

途中エラーが何処かに走っていってしまったが、妖精は基本的に自由気ままなので放っておくことにした。

 

 

「部屋は此方になります。一応直ぐに入れるよう寝具は一通り揃っています。何か必要なものがあれば私か酒保の方で聞いてください」

 

「分かりました~」

 

「明かりを点けるには部屋の中央にある紐を引いてください」

 

大淀は部屋の扉を開けて、大鯨に簡単な説明をした。

二人共サイハイ系ブーツなので部屋には入らず簡単な説明だけで終わった。

脱ぐのが面倒くさかったのである。

 

「部屋はご自由にお使いください。鍵は此方になります」

 

扉を閉めて鍵を渡した。

 

「ありがとうございます~」

 

「では他の場所も案内しますね」

 

「は~い」

 

 

 

 

 

―――食事処―――

 

「此処が食堂になります、朝5時から夜9時までやっています」

 

「間宮さんに聞きました~」

 

「では次に行きましょう」

 

 

 

 

 

―――入渠―――

 

「此処が入渠になります、一日中開いているので好きな時間にお使いください」

 

「わぁ~後で入りたいです~」

 

「タオルは部屋のタンスに入っています。入るのでしたら案内の後にお願いします」

 

「は~い」

 

昨日から風呂に入っていない大鯨は入りたくて仕方がなかった。

 

 

 

 

 

―――酒保―――

 

「此処が酒保になります、夜11時までやっています」

 

「こんな近くにあったんですね~」

 

食事処が入っている建物の隣にあった。

 

「そうですね、買い物する際はその鍵に付いているエンブレムを見せてください。それで会計出来ますので」

 

「この鍵便利なんですね、わかりました~」

 

「どの様な物が売っているか軽く見ていきましょうか」

 

「は~い」

 

二人は酒保に入っていった。

入ってすぐ右には会計するカウンターがあり一人の艦娘がスマホをいじっていた。

 

「あれ、大淀じゃん珍しー」

 

「鈴谷さん?今は夕張さんのはずでは?」

 

「そ~なんだけどね~。なんかどうしても用事があるから変わって―って、何処かに走って行っちゃったよ~」

 

「そうですか・・」

 

「代わりにお菓子いっぱい頂いちゃったーっ。って大鯨じゃん」

 

「えっと・・?鈴谷さん?」

 

「はじめまして―だね。昨日は色々あって挨拶出来なかったけど、一応乗っていたんだよ?覚えてる?」

 

「えーっと・・覚えていないですぅ」

 

「まー、あの状況じゃ仕方ないよね~。所で買い物?あスマホ持ってる?持ってたら連絡先交換しようよ~」

 

「持ってますよ~「あっ」」

 

「ん?どうしたの?」

 

大鯨のスマホが異常なものだと思い出し、大淀は声を上げてしまった。

 

「いえ・・大丈夫です」

 

何れバレてしまうと思うと、もう良いかと諦めた。

大鯨は反応の意味も分からず既にスマホを取り出していた。

 

「おっ・・おお?」

 

取り出したスマホに困惑している。

その反応に妙に慣れてきたのか困惑している鈴谷を気にせず起動させた。

 

「おぉ・・ナニコレナニコレ。めっちゃイケてるじゃん!!」

 

「ヤマトさんに貰いました~」

 

「すっげー!マジどうなってんの?私もほしーっ!」

 

「・・ヤマトさんに聞いては?」

 

「聞くきく!大淀変わって!」

 

「ダメです、今大鯨さんを案内しているんですから。それに今ヤマトさんは此処にいません」

 

「えーっ、いないの―?う~ん・・」

 

鈴谷はヤマトが帰ってきたら貰えないか聞きに行くことを決めた。

それと同時に夕張が酒保へ帰ってきた。

 

「鈴谷~おつかれさま~もういいよ~、って大淀と大鯨じゃない。なに、案内?」

 

「そうですね。ヤマトさんが今日帰ってくるか分からないので此処の案内をしていました」

 

「えっ!今日ヤマトさん帰ってこないんですか!?」

 

「分かりませんよ」

 

「そんな~、もっと見せて欲しかったのに~」

 

「何か見せてもらえましたか?」

 

「そう!それ!!船体が上下に分かれたの!中には円形の何かが艦首から艦尾まで並んでて!恐らくエネルギー系の装備だと思うんだけど!あれが一つの装備だとすると軽く二百メートルはありますよ!二百メートルですよ!やはり電磁投射砲は無駄がありすぎますから・・レーザー・・違う・・・あああぁああ気になるうううぅう」

 

「分かれる・・ですか・・」

 

「そうそう!あっ!写真ある!見ますか!?見てくださいよ!」

 

そう声を荒げている夕張はスマホを取り出して写真を見せた。いつの間に撮ったのか。

写真には超戦艦ヤマトが上下に分かれ間には円形のユニットが片面20個並んでいる、さらに艦首と艦尾に金色のリングが光の反射で輝いている姿が写っていた。

 

「これが・・」

 

「ナニコレ!マジパナイんだけどー!」

 

「凄いでしょ!?反対側にも同じ様に並んでいるのよ!青いのが両方で32個に紅いのが8個で金が2個!」

 

「32?・・これが・・・」

 

ハッと気づいたときには時が遅く夕張がジッと大淀を見ていた。

 

「大淀さん?何か知っているんですか!?」

 

顔が近い。

 

「い・・いえ、何も知りません」

 

「大淀さん?私の目をみて話しません?」

 

「・・・」

 

「やっぱり知っていますよね!?」

 

「・・ヤマトさんに少し聞いただけです。三十二基・・超重力砲らしいですよ?私も名前までしか分かりません、それに合っているかどうかも分かりませんよ」

 

大淀は観念した様だ。

ややこしくなりそうなので、ヤマトが差し出した資料の事は話さず聞いたということにした。

 

「やっぱり知っていますね!!他に!他には何か聞いていませんか!?」

 

「私だって詳しく聞いていませんよ、知りたいなら本人に聞いてください」

 

目を合わせて話した。

そして嘘は言っていない。

ヤマトには資料で差し出されたので、直接聞いては、はいない。

 

「そんなぁー」

 

「ねぇねぇっ、その写真頂戴!」

 

夕張が大淀に噛み付いていて会話のタイミングがなかった鈴谷が出てきた。

ヤマトが変形した時の写真を欲しがっている様だ。

 

「仕方ないですねー、いいですよ」

 

「やった!」

 

「それじゃLi-Neで直接送りますよー」

 

「さんきゅー、お返しにコレあげるー」

 

お返しにと鈴谷からは、艦首付近から二基の主砲に艦橋を正面から見上げるよう撮られた写真が送られてきた。

夕焼けで青白い船体が若干赤みを帯び、青く発光する模様と合わさり幻想的に写っている。

 

「そういえば鈴谷さんはなんでヤマトに近づけるんですか?」

 

「し、知らないよー。本人に聞けばイイじゃん」

 

「む~、納得行かないですねぇ・・」

 

「そ、それじゃ、私達行くからー。いこいこ?」

 

「鈴谷さんもですか・・良いですけど。大鯨さんも良いですか?」

 

「はい」

 

大鯨はカウンターの上に置かれた霧式スマホを回収した。

 

「気になっていたんですが、それはなんですか?」

 

「「・・・」」

 

夕張の疑問に皆の心が一つになった。

 

「なんでもないですよ?」

 

大鯨、まさかの逃げに入った。

鈴谷や周りの反応からコレを教えたら面倒くさくなる気がしたからだ。

 

「ささっ、いこいこーっ」

 

「次は休憩室ですね」

 

「はいっ」

 

そう言って鈴谷は夕張と交代しそのまま大淀と共に店を出ていった。

 

「いやーごめんねー?夕張も悪気があるわけじゃないんだけどねー。あの性格相手にすると大変だよねー」

 

「えっと、あの・・」

 

「あはははー、答えにくいよね。まぁ夕張も悪気が有るわけじゃないから嫌いにならないでほしいな~って」

 

「はいっ!」 

 

鈴谷は夕張をフォローしていた。先程逃げてきたが嫌いなわけではなく装備や技術関連で絡まれると長い時間拘束されたりするからだ。

それに大鯨があの夕張を見て嫌気を差してないか少し心配になった。

そんな大鯨は全く気にした様子ではない、既にヤマトと言うぶっ飛んだ個性を見ていたからだ。

 

 

 

 

 

 

―――休憩室―――

 

「此処が休憩室だよっ」

 

大淀が言おうとした所を鈴谷に持ってかれた。

色々と話を進めていきそうなので足りない部分だけ補足を入れようと決めた。

 

「大体暇してるとココに来るね~。あ、そうそう。たま~に鳳翔さんや間宮さんが甘味を奥で作ってくれたりするんだよ~?」

 

「甘味ですか~」

 

「後はちょっとしたご飯とかね~、ってか今鳳翔さんいるじゃん~っ。何か頼もっか!」

 

三人は休憩室に入っていき鈴谷が説明していた。其処で厨房の方を見ると【鳳翔】の立て札がカウンターの横に立っていた。

立て札は基本的に厨房に入っている艦娘名前が書かれている、二人入っていれば二人分の立て札が。

そして今日は鳳翔の立て札が立っていて厨房をやっている事が分かる。

 

「やっほーっ鳳翔さ~ん」

 

「あら、鈴谷さん。大淀さんに・・大鯨さんも一緒ですか」

 

「そーだよ~。今此処の案内してるのーっ。二人共甘味とか食べていくよね~?」

 

「はいっ」

 

大鯨は嬉しそうに答えた。

 

「そうですね」

 

「よっし決まり~。何かオススメ有る~?」

 

「先程試しに作ったスイーツがありますよ」

 

「なにそれ、変なのじゃないよねー?」

 

「ふふっ、大丈夫ですよ。美味しかったです」

 

「決まり!それにしよ!」

 

「かしこまりました、お飲み物何にしますか?」

 

「スイーツみてからっ!」

 

「はい、少しお待ち下さいね~」

 

確認した鳳翔は厨房に入っていった。

其処まで広くない厨房なのでカウンターから中の様子が見えている。

 

鳳翔は奥にある大型の冷蔵庫から取り出して切り分けている。

結構量があるようで、3枚に切り分けて個々のお皿に分け、残った部分はまた冷蔵庫にしまっている。

 

 

「は~い、おまたせしました」

 

ロールケーキが3人分、お盆に載せられてきた。

生地は抹茶を混ぜ込んでいるのか少し深めの緑色をしていて、巻かれているクリームの真ん中辺りには小豆が散りばめられている。

そして粉砂糖で軽く化粧されていた。

 

「わぁーっ」

 

「いいじゃん、いいじゃん」

 

「お飲み物何にしますか?」

 

「アイスティーお願いします」

 

「ウチ、レモンティーアイスでっ」

 

「えぇっと・・」

 

「なんでも言いなよ~、だいたい出てくるからさ」

 

「お品書きありますよ」

 

鳳翔がカウンターの横にあるメニュー表を取り出して、大鯨に差し出した。

お品書きを見たがメニューが多く余計迷ってしまった。

 

「えっとぉ・・アイスティーお願いしますぅ」

 

「ふふっ、かしこまりました。少しお待ち下さいね~」

 

それから数分立ち、ドリンクが出てきた。

奥では茶葉から本格的に淹れていたために時間が掛かっていたようだ。

 

「はい、おまたせ」

 

「きたきたーっ、窓際行こ窓際っ見晴らし良いからっ」

 

「ふふっ、ごゆっくり~」

 

 

鈴谷が先頭に窓際の席に移動し空いている場所に座った。

大鯨の正面に鈴谷で横に大淀がいる。

 

窓から外は港湾が一望出来き見晴らしの良い場所であった。

きっとヤマトが止まっていたら、凄く良い光景になるだろう。

 

 

「ん~っ」

 

窓の外を見ていた大鯨は周りを確認すると既に鈴谷は食べていた。

 

「早い・・」

 

「美味しいよーっ」

 

「・・・」

 

無言の大淀を見ると、鈴谷と同じく既に頂いていた。

二人共既に頂いていたので大鯨も続いて、ロールケーキをフォークで切り分け一口。

 

「んーっ、美味しいですぅ」

 

「でしょ~」

 

「はいっ!」

 

「今日は鳳翔さんだけど間宮さんもたま~に来ててね、その時に作るアイスが絶品なのよーっ」

 

「へぇ~、アイスも食べたいですぅ」

 

「だよねだよねっ。間宮さんがアイス作っている時は皆此処に居るから直ぐにわかると思うよー」

 

「う~ん」

 

「普段から来ないと分からないよね~」

 

 

――ドォォオン――

 

 

甘味を楽しんでいると、建物全体が揺れている地震が発生した。

徐々に強くなるのではなく直下型のように急激に来る地震だ。

窓が揺れガタガタと音を鳴らしている。

震度4程でそこそこの強さだ。

 

「お~地震だね~」

 

「揺れていますねぇ~」

 

「此処で地震は珍しいですね」

 

「珍しいんですか~?」

 

「あまり地震が発生しない地域なんですよ」

 

「そうなんですか~」

 

ふと大淀の脳裏を執務室でヤマトが言っていた言葉を思い出した。

 

― この辺りで消えても問題ない島 ―

 

 

「・・・まさかね」

 

小さい呟きは誰にも聞こえなかった。

するとスマホが鳴り響いた

 

 

―ピーピーピーピーピーピー

 

 

「?・・何の音でしょうか?」

 

「あー、スマホだねー。呼び出しの音とか。私じゃないよ?」

 

「・・・私ですね」

 

スイーツを楽しんでいた大淀は鈴谷の私じゃない発言で自分のスマホを確認して呼び出されていると理解した。

 

「はい」

 

― 大淀さん!今すぐ工廠に来てください!! ―

 

皆がハッキリ聞き取れる程の大音量が大淀のスマホから聞こえてきた。

大淀は反射的に耳からスマホを離した。

 

「機材の故障は後で纏めて報告してください」

 

「違う!違うのぉお!妖精が、妖精がぁああ!!今すぐ来てくださぁい!!」

 

「大きな妖精が輝いていましたか?」

 

「そう!それもあるけどぉ!?別なんですよ!」

 

大淀と大鯨はエラー絡みだと判断できた。

 

「分かりました、そちらに向かいます。少し待っていてください」

 

「急ぎで!」

 

明石の方から通話を切ったようだ。

 

大淀は切られたスマホを確認して、ため息を付いた。

そして少し残っていたロールケーキとアイスティーをそそくさと飲み込んで立ち上がった。

 

「すみませんが失礼しますね・・」

 

「いってらっしゃ~い」

 

「鈴谷さん、後の案内お願いします」

 

「大鯨さん、すみませんが、後分からない事は鈴谷さんに聞いてください」

 

「は~い」

 

大淀は立ち上がり休憩室を出ていった。

 

 

「・・大変だねぇ大淀も」

 

「スマホ・・便利なんですねぇ」

 

「そーだよおぉお?あっ、そーだよ、Li-Ne登録してないじゃん!」

 

「?・・あ~、忘れていました~」

 

思い出した大鯨は霧式スマホを取り出した。

 

「それじゃーアカウントおしえてーっ」

 

「アカウント?」

 

「そこからねぇ、そうだよねぇ~使い方どれだけ教わったのぉ?」

 

「えっと・・簡単な調べ方とLi-Ne?の使い方だけです」

 

「ふむふむ、THE初心者だねぇ~。この後時間空いてる?」

 

「大丈夫だと思います~」

 

「よしっ。ならば、この鈴谷がマスター出来るまで教えてあげよう」

 

「良いんですか~?」

 

「いいよいいよ~っ。代わりにだけどぉ、鈴谷も同じスマホが欲しいの!口添えお願いっ!」

 

鈴谷は大鯨に向かって手のひらを頭の正面で合わせ願った。

 

「良いですよ~」

 

「ありがとーっ!」

 

こうして鈴谷のスマホ教室が始まった。

 

 

 

 

 

―――執務室―――

 

 

「提督起きてください」

 

昼過ぎの執務室、提督は寝ていた。

そこへ報告にきた大淀が見つけた。

 

 

「・・・何時だ?」

 

「昼過ぎた辺りですよ。それより工廠の方で妖精が艦娘を生み出したのですが・・その、色々と問題がありまして・・・実は・・」

 

明石に呼ばれて工廠に行った大淀は異様な物を目にした。

コンテナを横に向け中央に大きな扉を付けたような機械が置かれていて、その中央の扉が輝いている。

その扉の正面では妖精たちが通せん坊していて、その中央にはエラーが両腕を組みドヤ顔で構えていたと。

 

一体何をしているのかと聞くために中央、明らかに親分的なエラーに何か聞けないかしゃがみ込むと ―チンッ― という軽快な音が響いた、と。

その音を引き金に周りの妖精達が散り散りに去っていき、何事かと思っているとエラーが振り向き扉を開けた。

すると白い煙と共に一人の艦娘がそこには居た、と。

 

「ソレ・・ウチ所属で良いの?・・エラーが関わっているんだよね?・・」

 

「一応連れてきたのですが・・その子が・・その・・」

 

「え、何か問題でもあるの?取り敢えず待たせてるんでしょ?入ってもらったら?」

 

「・・分かりました」

 

大淀は提督に従い、扉の外で待っている艦娘に声を掛けて執務室に招き入れた。

その間に提督はソファーから執務机に移動し新たな艦娘を待ち受ける。

 

入ってきた艦娘は何処か見覚えのある姿をしていた。

 

堂々と執務机の前まで来ると、ジーッと提督の顔を見て数秒、何か納得したのか大きく息を吸い自己紹介した。

 

 

 

「英国で産まれた帰国子女の金剛デース!ヨロシクオネガイシマース!」

 

 

 

提督は吐血した。

 

 

「提督!?」

「Oh!テートクゥ!?」

 

 

 

 

 

 

―――医務室―――

 

 

此処は休憩室の真下にある治療施設である。

艦娘は基本的に体調を崩さない上に、怪我した所で入渠に入れば済む為ほぼ使われない場所だ。

 

其処に提督は運び込まれた。

 

 

「此処は・・」

 

 

目が覚めると見覚えの無い天井に、夕暮れ時なのかオレンジ色明かりが差し込んでいた。

静かな時間が流れていると思うと横から声が掛かった。

 

 

「医務室デース。突然倒れたからオーヨドと運びまシタ」

 

「・・そうか、礼を言う」

 

「・・・私、何かイケナイ事しましたカー?」

 

金剛がベッド横の椅子に座っていた。

自己紹介をした直後に吐血した提督が心配で見守っていた。

 

「いや・・最近疲れていただけだ」

 

「無理はイケマセンヨー?」

 

「ところで君は金剛・・だよね?」

 

「YES!金剛型高速戦艦、金剛デース!」

 

「そ・・そうか」

 

ふと提督は見覚えのある服装を思い出した。

今朝大鯨が同じ様な服装を着ていたことを、細部が所々違うが殆ど変わりない服に。

唯一全く違うのが太ももに銃を装備していない事だけだった。

 

「HEY・・ソンナに見てどうしたネー?キニナル―?」

 

「あ・・いや。そうではなくてだな」

 

「ダイジョーブ、デスヨ―?・・ココなら、触ってもイイヨー?」

 

提督の目をジッと見ていた金剛は提督の視線が何処を向いていたかハッキリと理解していた。

そんな提督に時と場所が丁度良く人気の無い医務室で二人っきり。

 

金剛は提督の寝ているベッドに右膝を乗せてグイッと近づいた。

 

両手で体を支えて更に近づく。

 

「触ってもイイデスヨ―」

 

そんな金剛の艶めかしい仕草にドキッとしていた、同時にヤマトの発言を思い出した。

 

 

― 金剛の性格が問題でねぇ ―

 

― 提督消すわ ―

 

 

凄くマズイ状況なのを理解した。

このままでは手を出さなくてもヤマトに消される気がする、そう思うと体が震えてきた。

取り敢えず現状を落ち着かせないとマズイ、どうにかして現状打破しなければと考えてると金剛から追撃が入ってきた。

 

「ドーシタネ?そんなに震えテ・・」

 

更に顔を近づけてきた。

後数センチでキスが出来る近さだ。

 

このままでは超マズイと思い深呼吸して心を気合で落ち着かせた。

 

 

落ち着いた。

 

 

「少し離れてくれないか?」

 

「えっ」

 

提督は金剛の両肩を掴み押し返して、元座っていた椅子に座らせた。

そしてベッドに腰を掛けて金剛と向かい合った。

 

「まず・・私は君の提督ではない」

 

「・・ヨ・・用済みデスカ?」

 

「いや、用済みではなくだな・・」

 

「用済ミ・・ヨーズミ・・ヨーズミ・・・カイタイ?」

 

金剛は妙な解釈をしたと思うと、何かつぶやき始め更に謎の解釈をし始めた。

頭を抱えていた金剛バッと顔を上げると、目尻には涙を溜めていた。

 

その様子に凄くヤバイ今すぐに訂正しなければと思った提督。

 

「ちがっ「私!何でもするデースッ!だから!だから・・」聞いてくれ!」

 

慌てて間違いを正そうとしたが金剛は聞く耳を持たなかった。

どうにかして誤解を解こうと、金剛の両肩を強く掴み向き合った。

 

「金剛!わ・・・・・・・・」

 

「テートク?」

 

提督は口を開けて固まった。

その視線は金剛ではなく、その後ろに向けられていた。

 

「お・・お早いご帰還で・・・」

 

 

 

 

 

ヤマトが凄く宜しくない顔をしながら仁王立ちしている。

 

 

 

 

 

 

 




空いている時間に気合で執筆しているので誤字あるかも。
見かけたら修正します。


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大和ト金剛

あっちこっち飛び回って久々に帰ってきたぞ―とベッドにダイブしたら布団の下にタブレットがありました。

メキョっと軽快な音が鳴りました。


スマホやタブレットは布団の下に置かない方がイイと思います!



誤字報告、色々な方に頂きました。有難う御座います。
自分で見直しても意外と気づかないものですね。


 

―― いらっしゃい、大和 ――

 

 

 

(・・・いらっしゃいとは言ったものの・・この子、大和よね?・・こんな服だったかしら?)

 

ヤマトの目の前に居る艦娘が記憶とはあまりにも異質だった。

 

まず袖に腕を通さず羽織るように着ている真っ白なコートが目に入る、膝まであり重量がありそうな物で所々に金の装飾がされている。その時点で記憶にある大和とは違いどの艦娘にも当てはまらなかった。

コートの左右胸元には菊花紋章のデザインをした金色のアクセサリがあり、そのアクセサリから同じく金色の飾り紐が一本背中を回すように繋がっている。

 

更には羽織っているコートの隙間から見える服も違う、提督服のように見えなくもない純白に服に紅色の装飾と縁取りがされスカートも同じく純白に紅色の縁取りがされている。

 

唯一記憶と一緒なのは、肩から先が分離袖になっているのと左右で長さの違う非理法権天ニーソだけであった。

 

 

 

服も違うが、何よりも目立つのは艤装だ。右に2基、左に1基の3連装砲が装備されておりアンバランスに見える。代わりにと言うべきか左の砲塔が一つ減っている部分に艦首側面をイメージしたのかシールドの様な物が装備されている。

盾にも鈍器にもなりそうな代物である。

 

そして艤装があまりにも大きい。幅で3メートルは軽くあるのではないかと言う大きさだ。

 

 

(服装が色々違うけど・・あの顔つきにポニーテール・・・大和よね?)

 

「・・・」

 

「やまとーっ!」

 

甲板に出て大和らしき艦娘と対面したは良いが、あまりにも見た目が違うためどの様に対応しようかと迷っていると、清霜が甲板から飛び出して大和らしき艦娘に抱きついた。

 

大和と確定した。

 

何となく分かるらしい艦娘同士の繋がりで清霜は大和と言ったのだろう。

そんな大和は飛び出した清霜に驚きながらも受け止めた。

 

「清霜?」

 

「んふふふー」

 

大和の胸に顔を埋もれてすりすりしている清霜に羨ましいと思いながら、すりすりする度に形を変えている胸を見ていて、ふと思い出した。

九一式徹甲乳装備していなかったかと。

清霜が埋もれているのを改めて見ても形を変えて柔らかそうだと。

 

装備していないようだ。

 

(羨ましいわ・・・取り敢えず上げてしまいましょう)

 

「ふたり共上がっていらっしゃい」

 

「はーいっ」

 

(それにしても艤装無しで水上に立てるのね)

 

艦娘は艤装無しで水上に立つことが出来ると新たなる発見をした。

 

 

「この戦艦は・・」

 

甲板に上がってくるまで清霜の足を見ていると大和から声が掛かった。

ヤマトの船体が気になるようだ。

 

当たり前である。自分自身が目の前に居て疑問に思わない方が可笑しい。

それに艦娘になる前の戦艦が目の前に存在しているだけでなく、白く染め上げられている上に不思議な模様が入っている、更には模様自体が発光している。

そして砲身や電探など所々金色でとてもラグジュアリーな感じである。

 

「中で話すわ、付いてきてくれるかしら?」

 

「・・はい」

 

大和は大人しく付いて行った。

こんな戦艦を目の前で見せられて非常に混乱していた、取り敢えず主らしき人に付いていくことにした。

 

「あの・・艤装は何処に置いたら・・」

 

「そうね・・」

 

振り向くと艦橋下出入り口で大和が詰まっている、どう見ても艤装が大きくて入れない状態だ。

ヤマトも置き場に悩み少し思案してから甲板下格納を作ることにした。

ナノマテリアルを操作するだけで何でも出来てしまうため手間など掛からずに出来た。

 

そして入り口真横の甲板がせり上がってきた。長方形で乗用車が軽く入れそうな広さがあり地下格納と言った感じだ。

 

「・・・」

 

「わーっ」

 

「艤装は其処に置いておきなさい」

 

大和はその光景に固まり、清霜は何かとテンションが上っている。

その光景に挙動付番になりながらも艤装を内部に置くと甲板下にゆっくりと下がっていき元の状態に戻った。

 

問題なく艤装の格納が完了した。

 

 

 

 

そのまま3人は環境に移動した。大和とソファーで向かい合うように座り、清霜は歩き回っている。

 

「さて、自己紹介ね?・・私はヤマトよ」

 

「ヤマト・・・」

 

「そうよ。貴方も大和よね?」

 

「はい・・。 あの、この戦艦は・・」

 

この戦艦は何なのか、気になっていた大和は勇気を振り絞るかのように言った。

 

「ヤマトよ、超戦艦ヤマト」

 

「超戦艦・・?」

 

「そうよ。色々端折るけど大和・武蔵の後に生まれた大和型戦艦と言うと分かりやすいかしら?」

 

「その、妹は武蔵しか記憶に・・」

 

「それより遥か後に生まれたの、まぁ見た目が大和なだけで中身は全く別物よ?・・・そうね、お姉ちゃん・・いえ、姉さんかしら?」

 

物凄く端折っているが大体合っているので良いと思ったヤマトである。

それと大和より後に生まれてるから大和はお姉ちゃんに入るのではと思いノリでお姉ちゃんと呼んでみたヤマト。

 

「お姉ちゃん・・お姉ちゃん・・・」

 

(満更でもないのね・・)

 

小声で呟いていた大和だが、霧であるヤマトは微かな声でもハッキリと聞き取れていた。

そして俯きげに呟いていた大和は顔をあげるとニコニコしているヤマトがいた。

 

「! な、なんでもないの・・」

 

「ふふふっ・・それで一応確認すると、貴方は大和型一番艦大和で良いのよね?」

 

艦橋内をうろちょろしていた清霜がいつの間にか大和の横に座っていた。

 

「はい。改大和型戦艦、一番艦、大和・・です」

 

「そう、わかったわ」

 

やはり大和であったが何か違うようだ。

記憶とは全く違う服装をしており、本人も若干大人びて見える事、艤装がどの艦娘にも当てはまらない事。

 

 

そして改大和型戦艦と言った事。

 

清霜の反応から大和なのは分かっていたが、知っている大和とは違う、と言う確信が得られた。

 

 

(改大和型戦艦大和・・清霜は大和と認識している・・・改大和型は計画だけだったはず、それに改大和型で大和って・・改装かしら?。時代の流れが記憶とは違う?・・いえ艦娘がいる時点で違うわね・・・泊地の通信網で色々調べる必要があるわね)

 

改大和型戦艦についてさっぱり知らないヤマトはどうした物かと悩んでいると、何処と無くソワソワしている大和に気づいた。

 

「あら、気になる事があるなら質問して頂戴?」

 

「・・あの・・この戦艦はヤマトで貴方もヤマト・・さん・・ですか?」

 

「そうね。この戦艦は私の体で、本体でもあるの。・・艦娘的に言うなら艤装ね」

 

「艤装・・戦艦型・・」

 

「言っておくけど、艤装のようなもので全く別物よ?」

 

「はい・・」

 

理解出来ない事を質問したつもりであったが、色々と理解しがたい内容が返ってきて余計混乱した大和。

そんな状態に追い打ちを掛けるかのごとくヤマトが言った。

 

「それと、大和は私の所の所属で良いかしら?」

 

「やはり提督ですか・・?」

 

「そうね、提督でもあるらしいわね?」

 

「らしい・・ですか。鎮守府は何方に?」

 

「今の所はパラオね」

 

「?・・今の所ですか・・」

 

「そうよ、それで貴方は私の所の所属で良いわね?」

 

「・・・はい」

 

「決まりっ!ふふふっ。さてパラオに戻りましょう」

 

元々逃すつもりの無いヤマトだが、一応確認という事で話を聞いていた。

その会話をしている間に先程飛ばしたミサイル型UAVで辺り一帯の探索を終えてキリが良いと帰還することにした。

 

そして、ここで清霜の好感度を上げるためにもう一度やることにした。

 

「さて、大和?此方に座りなさい。清霜もおいで」

 

「わぁ!またやるの?!」

 

「そうよ、立っていると危ないわ」

 

清霜は目をキラキラさせてヤマトの横に移動してきた。

ソファーは3人並んで座っても余裕があるサイズだ。清霜の奥には大和が座り、ヤマト、清霜、大和と二人のやまとに囲まれた不思議な状態が出来上がった。

 

(ソファーもう少し小さくしておくべきだったわ・・)

「そう、ふたり共深く座って・・」

 

「はーいっ」

 

「あの・・何を?」

 

「全速前進」

 

目を輝かせて今か今かと待ち遠しさを隠さない清霜に一体何をするのかと困惑している大和。

聞いてみると返事の代わりに全速前進と言う言葉が返って来て、同時にソファーへ押し付けられた。

 

―120knot―

 

―200knot―

 

―270knot―

 

何時も通り異常な加速をしていた。

 

「わーっ!」

 

「!!」

 

清霜は喜んでいた。両手を上げてはしゃいでいる。

その横では無言で周りをキョロキョロ見ている大和。

 

「そろそろ立ち上がっても大丈夫よ?」

 

「はぁ~いっ」

 

清霜は若干加速し続ける中立ち上がり艦橋内を走り回った。

大和も後を追うように立ち上がり窓へ向かった。

 

そして窓の外を流れる光景に言葉を失っていた。

 

「早い・・」

 

「今は・・437knotね」

 

「よんひゃ・・!?」

 

信じられない事を聞いてしまったと驚きの声を上げ反射的にソファーに座っているヤマトに振り向いた。

ヤマトは何をするわけでも無くニコニコしながら、ふふふっと笑っている。大和の反応が面白い様だ。

 

何かの聞き間違えかと改めて窓の外を見たが、先ほどとは変わらず異様な速度で流れる風景。

 

「早いでしょ?」

 

「早すぎでは・・」

 

「そうかしら?機関壊す勢いでエネルギー供給したらもっと速力出そうね」

 

現在推進機関が出せる推力100%の状態で航行しているが、安全値である100%を超えた推力を出す事が可能で、よりエネルギー供給をしたらどうなるのか少し気になった。

 

「やめてください・・」

 

「そうね、あなた達が乗っている間はやらないわ」

 

「乗ってる間は、ですか・・」

 

「そうよ?」

 

艦娘LOVEのヤマトは艦娘が乗っている間は極力危険な事はしないつもりである。

 

「そうですか・・危険なことはやめて頂きたいのですが・・」

 

「無理よ・・・お姉ちゃんがどうしても~、と言うなら考えるわ?」

 

「おね・・い、いえ。その提督なのですから・・」

 

「提督と言っても私はヤマトよ?そんなの些細な事、それに・・・」

 

大和の好感度が上がるならお姉ちゃん呼びも厭わないヤマトである。

 

大和の顔をジッとみた。

ただジッと見ているだけだが妙な雰囲気を纏っている様な感覚を覚える。

 

「私、体が消し飛んだ所で死なないわ?」

 

「消し・・」

 

「簡単に言うと体が必要無い・・かしら?」

 

「ヤマト凄いの!体が砂で出来ているのっ!」

 

今迄艦橋内をうろちょろしていた清霜がいつの間にか近く来ていた。話を聞いて寄ってきたようだ。

そして、どことなく目を輝かせている、何か期待しているのか。

 

「そうねぇ・・?」

 

ヤマトは期待に答えてあげることにした。

 

座った状態のまま全身を構築しているナノマテリアルの結合を解いた。

その瞬間、ヤマトの身体から色彩が消え白金色の砂状に変わりソファーへ崩れ落ちた。

 

ボロボロ崩れ落ちるのではなく水の入った風船が破れるように突然砂に変化して、ソファーから床に掛けて流れ落ちたような状態の白金の砂山が出来た。

 

 

 

そして艦橋には2人を残してヤマトは消えていった。

 

「!!?・・・」

 

「わぁー!凄いすごいっ!!」

 

大和は目を見開いて硬直した。

目の前にはテンションの上がっている清霜。

清霜はヤマトの座っていたソファーに近づきくるくると回っては砂山とソファーを確認している。

 

そして恐る恐ると言った様子で砂上のナノマテリアルを指で突付いて何もないと分かると両手で掬った清霜。

 

非常に勇気がある。

 

「凄い!凄い!ほんとに砂になっちゃったっ!」

 

指の隙間から流れ落ちるナノマテリアルを見てハイテンションの清霜であった。

 

 

「ふふふっ、喜んでもらえたかしら?」

 

大和の後ろから声が聞こえてきた。

 

「!!っ」

 

「わっ!」

 

驚いた大和は咄嗟に飛び退いて距離を取ってしまった。

 

 

「凄いすごい!どーやったの!?」

 

「ふふふっ、体を作り直しただけよ?」

 

「作り直す・・」

 

「・・どうかしら大和?今の私に対応出来なければ私をどうすることも出来ないわ?」

 

「ヤマトは一体・・」

 

「兵器よ?ただ生まれる時代が違っただけ・・そんなに心配することないわ」

 

兵器として生まれた二人、時代どころか世界すら違うが言う気にはなれいないヤマトに。

そんな非常識な光景を見せられ言われては何を返していいか言葉に出来ない大和であった。

 

「あら?丁度良いわ・・私の戦い見せてあげる」

 

そんな会話をしていると大和のレーダーに反応があった。

艦娘で有る可能性も無くはないが、大和を乗せて十数分で100km弱しか移動してない近場で超収束砲の射撃と反対方向、ほぼ確実に深海棲艦であろう。

 

それから少しして海上に浮かぶ物体が見えてきた。深海棲艦だ。

 

(51cm砲のテストがまだね・・ほんと色々と丁度良いわ・・)

 

46cm砲を51cm砲に改装してからまだ試験しておらず、丁度良い目標がいると的にされるのであった。

 

「大和?ほらアレ」

 

ヤマトは艦橋から見える深海棲艦を指差した。

轢かないように減速しており右舷に見やすいよう進路を目標左に取っていた。

 

そして第一砲塔がゆっくり旋回し目標を向いた。

 

「深海・・」

 

大和は生まれて始めて深海棲艦を見た。

それ以前に色々と常識を引っ括められて言葉足らずになっていた。

 

(リ、リ、ホ、ロが3匹と・・哨戒部隊?どちらにしろ的に変わりないわね)

「よく見なさい?」

 

 

――第一砲塔

 

──第一門 MODE 非実体弾

 

──照準完了

 

――発射

 

 

───主砲の一門から極太のビームが放たれた―――

 

 

「ひゃぁっ!」

 

 

たった一門から放たれた蒼白のビームは海面を割きながら直進しすべての深海棲艦を6匹纏めて蒸発させた。

極太のビームが通った射線上には膨大な熱量により発生した水蒸気で視界が一時的に悪くなっていた。

 

それと同時にヤマトは声を上げていた。

 

極太のビームが右舷甲板から側面に掛けて船体表面を溶解させていたからだ。

船体も身体の一部である為に船体が受けたダメージもそのままヤマトにフィードバックしてきたのである。

 

(うぅ・・ヒリヒリするぅ・・・)

 

ビームが極太になってしまったのは51cm砲に改装すると同時に出力を大きく向上させたからである。

ただ51cm砲に改装するだけなら今迄の46cm砲で連射速度上げれば良いという結論が出てしまうので、より高エネルギーのビームを放てるように設計そのものを変えたからだ。

より高威力に・より高密度に・より照射時間を長くしたため。

通常であれば主砲から放ったビームは微かに膨らむ程度に収まるはずが、想定以上の出力を出したために大気との対消滅反応が必要以上に行われ、砲身から出た直後にビームが太くなり船体に被害が出てしまったのである。

 

 

「すっごーい!」

 

「ヤ・・マト・・?」

 

突然声を上げたヤマトと主砲からビームが出るという非常識な光景と艦首付近が溶解している様子に混乱しかない大和と、目を輝かせてビームが通った跡を見ている清霜。

 

「何でもないわ・・大丈夫よ・・」

 

船体が一部溶解しているがヤマトからすれば熱い物を一瞬触れたのに近い感覚を感じていた、そんな感覚を残しておく事も無いので即座に船体を修復して元の状態に戻した。

そんな様子に大和は心配そうな目を向けている。

 

「ヤマト!もう一回!もう一回見せてっ!!」

 

どうしたものかと考えていると清霜からアンコールが掛かってきた。

現在のヤマトからしたら悪魔のコールである。

 

「ちょ・・ちょっと・・まってね・・」

 

期待の目をヤマトに向けている清霜。

 

そんな期待に答えようとヤマトは記憶と記録を総動員して主砲を更に改装した。

 

結果、砲身が更に肉厚で太くなり口径が45から70口径と1.5倍の長さになった。51cm砲のままであるが重厚感が増してより威圧的になった。そして長砲身になり金色がより目立つようになった。

 

改装する度に金色率が増えるのであった。

 

そして計算上の効果としては反物質収束率を上げ大気との対消滅反応を減らす為に砲身が肉厚に、船体より外側に砲身が出れば極太のビームを放っても大丈夫だろう、という脳筋的理論で長砲身になった。

長砲身化と肉厚化だけなので大したナノマテリアルを使わずに改装することが出来たと同時に、ナノマテリアルの生成装置を動かしていない事を思い出していた。

 

(よし・・これで大丈夫よね・・?。ナノマテリアル残量71%と。生成装置は明日ね・・)

「清霜・・敵も居ないし空に向けて撃ってみましょうか?」

 

何方かと言うと真横に撃って船体を焼きたくないだけである。

 

「うん!うん!」

 

「あのぉ・・無駄撃ちものでは・・補給も高そうですし・・・」

 

「大丈夫よ?無限に撃てるもの」

 

「へ?」

 

「この戦艦は縮退炉・・簡単に言うと永久機関ね、それからエネルギーを持ってきてるの」

 

「永久機関・・ですか?」

 

「そうよ、ほぼ永久的にエネルギーを作り出せるの。だから私の積んでいる武装はすべて弾薬に制限が無いのよ」

 

「そんな出鱈目な・・」

 

異常的な技術力で出来ているヤマトに理解が追いついていなかった。

 

大和は過去に運用コストの高さから、補給物資もまともに送られず港に停泊してばかりで出撃に出されなかった記憶がある。

そのために大和型で尚且、高速航行を行い主砲から光線を放つという常識外のパワーを持つヤマトは恐ろしく運用コストのが掛かるのでは?と思っていた。

そして返ってきた言葉は弾薬制限が無い、つまり無限に撃てると言うことだ。大和にとって心置きなく撃てると解釈できる事を言っているヤマトに羨ましいなと少し思っていた。

 

「早く!はやくっ!」

 

「そうね、見てなさい?」

 

そう言いながらサラッと船体をクラインフィールドで覆い。

 

発射した。

 

 

───主砲の一門から白く発光したビームが放たれた―――

 

 

 

砲身の倍程度に膨らむビームは蒼白から藍色に変化している、光を吸い込むような純粋な青色とも言える色に、そしてビームの周りを輝く粒子が纏わり付いていた。

白色に輝く光の粒子が何処からともなく発生し、藍色のビームへ吸い込まれるように、共に流れるようにして目標である空へ上がっていった。

 

更に、その粒子は砲身の前方で白い輝きを放つ光のリングを作り出している。

砲身から出た反物質が大気との対消滅で発生したエネルギー場だ、それが重力を持ち周囲の粒子を引き寄せながらビームを囲うように渦を形成していた。

言ってしまえば大気との対消滅が開始した地点であり合図である。

 

 

ただ純粋なエネルギーが、その場で圧倒的な力と輝きを持ち存在していた。

 

 

(・・・粒子は・・余剰エネルギーね?原因は密度の上げ過ぎ・・・2割程のエネルギーロスと・・)

 

ヤマトは発射と同時に情報収集しており既に特定していた。

そして圧倒的な演算能力で瞬時に導き出された解決法。

 

(安定出力は収束密度を90%ってとこかしら・・?)

 

 

「わーっ!私もおんなじの撃ちたい!」

 

「綺麗ですね・・」

 

 

清霜は感動と同時に主砲のビームに憧れたようだ。

それと破壊の権化に近い反物質を綺麗と言うのはどうなのかと思ってしまったヤマト。

そして原因解決はは2人の反応を聞いた直後に不要な物へとなってしまった。

 

好感度上がってるの?ならソレで良いや、と。

 

 

 

「同じのは・・無理ね?流石に危ないわ」

 

「そっかー」

 

「・・同じ様な事なら出来るわね」

 

「同じ様な?」

 

若干落ち込んでいた清霜は顔を上げると同時に首をかしげた。

 

「光線がでて敵を消し飛ばせば良いのよね?」

 

「出来るの!?」

 

「出来るわ・・・・細かいことは泊地に戻ってからにしましょう」

 

「うん!」

 

ヤマトは大鯨と同じ拳銃型荷電粒子射出装置を渡そうとか考えたが、清霜に小型の装備は危険な気がしてならないので大型のライフル型か艤装に取り付けて安易に振り回せない物に決めた。

 

清霜とそんな話をしていると、横で大和がそわそわしていた。

 

 

 

「私も出来ますか・・?」

 

 

何事かと聞くと清霜と同様にビームを撃ちたいらしい。

 

 

ヤマトの異常に慣れてきたようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして51cm砲のデータを処理していたヤマトは、思いついた。

 

 

(侵食砲弾・・アリよね・・)

 

 

思いついてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───港湾ヤマト前―――

 

 

若干赤みを帯びてきた夕日が泊地を照らしていて、夕方近い時間だと教えてくれる。

 

港湾に大和は停泊して、3人降りて来た。

行きは1人帰ると3人と明らかに2人増えているのが分かる。

 

「ヤマトさぁぁああああん!!」

 

そこへ待っていたかの如く明石がヤマト正面の倉庫から出てきた。

倉庫はヤマトによるプチ津波被害が最も大きく無残な姿をしていた。

 

「って2人は大和さんと・・清霜さんですか?何処かに迎えに行ったんですか?」

 

「拾ったのよ」

 

「2人もですか・・。って、そうですよっ!大きな妖精はヤマトさんのですよね!?」

 

「エラーのことかしら?」

 

「たぶんそうです!その子が生み出したんですよ!艦娘を!艦娘を!」

 

「生み出し・・建造かしら?」

 

「多分それです!大きな妖精が居たと思ったら妖精達集めて大きな機械を作ったんですっ!そしたら機械が光りはじめて中から艦娘がッ!?」

 

「落ち着きなさい・・そうね、エラーは何処に居るかしら?」

 

「艦娘が生まれた後すぐ何処かに行ってしまったので分かりません」

 

「そう、艦娘の名前は・・いえ、今何処に居るのかしら?」

 

「艦娘でしたら大淀と執務室に行きましたけど・・それと名前でしたら金剛らしいですよ?」

 

「!!・・2人共執務室に急ぐわよ・・」

 

そう言ったヤマトは2人の返事を待たずしてそそくさと歩きだしてしまった。

 

 

 

 

 

―――執務室―――

 

 

――バンッ――

 

勢い良く扉が開かれた、扉は無事である。

相変わらず、静かに開けることをしないヤマトである。

 

「提督!」

 

そして執務室に入ると同時に声を上げたヤマト、突然の行動に駆け足で付いてきた3人はビクッとしていた。

明石も付いてきていた。

 

「や・・ヤマトさん、お戻りですか・・後ろの2人は・・?」

 

執務室には大淀が一人執務机で書類と向き合っていた。

 

「そんな事はイイの、金剛何処に居るのかしら?」

 

「ぇ?・・。金剛さんでしたら医務室に居ますが・・」

 

「何故医務室に?」

 

「その・・提督が倒れてしまったので一緒に医務室へ連れて行って、そのまま看病するとのヒィッ・・」

 

執務机の前まで来ていたヤマトは看病と聞いた直後、上半身を執務机を乗り出して大淀に詰め寄った。

 

ヤマトは真顔で顔が凄く近い。

 

「医務室は何処かしら?」

 

「休憩室のすぐ下・・食堂の隣ですっ・・」

 

「医務室で提督と二人っきりなんてことは無いでしょうね・・?」

 

「ヒィっ・・そ・・その・・ふた・・ふ・・・」

 

大淀はヤマトの圧力に耐えきれず意識を失ってしまった。

そのまま椅子にぐったりと背もたれを預けて、横に倒れることは無かった。

 

 

「疲れているようね・・大淀の面倒見てくれるわね?」

 

「・・はい」

 

大和だけ返事をして清霜と明石は首を高速で縦に振っている。

明らかに疲れが原因じゃないと思ったが何も言えなかった。

 

「任せたわ」

 

ヤマトは早々に執務室を出ていった。

 

「・・怖かった・・大和~」

 

「ほら、大丈夫ですよ・・・」

 

「何ですかアレ、物理的な威圧って・・」

 

怖かった清霜は大和に抱きついていた。

大淀を除いて3人が残された執務室にはなんとも言えない空気が漂っていた。

 

 

 

 

 

 

 

―――医務室―――

 

 

医務室の目の前まで来たヤマトだが扉が開かない。

 

扉を開けようと引き戸に手を掛けたがガチャガチャと音がなるだけで扉は開かない。

 

内側から鍵が掛けられている様だ。

 

それを確認したヤマトは嫌な予感がより一層増した。

鍵が鍵がかかっているなら開けてしまえば良いと、鍵穴に人差し指を当てナノマテリアルを流し込み形状を把握した。

 

 

―ガチャ―

 

 

1秒も掛からず解錠した。

 

霧には造作のないことである。

 

 

そして医務室に入ると直ぐに金剛の声が聞こえてきた。 ―私!何でもするデースッ!だから!だから―  と嫌な予感が確信に変わりつつ声のする方向に行くと。

両肩を掴み金剛と向かい合っている提督が居た。

 

ヤマトには非常に面白くない光景である。

 

「金剛!・・・・・・・・」

 

「テートク?」

 

提督は口を開けて医務室に入ってきたヤマト見ている。

 

「お・・お早いご帰還で・・・」

 

とりあえず声を掛けないとマズイ思った提督。

 

「・・ナニをしてるのかしら?」

 

「鍵はちゃんと掛けたはずデース?」

 

鍵は掛けたとほぼ自供している金剛、誰が入ってきたのかと振り向きヤマトを見て固まった。

同時にヤマトも金剛の姿をみて固まっている。

金剛に何も無ければそのまま提督に詰め寄っていくところだが金剛が少しおかしい。

 

姿形は金剛なのだが、髪が白金色で赤い瞳をしている。

そう、ドレスに変え髪を下ろせばそのままコンゴウと言える容姿をしていた。

 

「・・ソーキカンデース?」

 

「・・・どうしてそれを?」

 

「何となくデース!」

 

「・・・」

 

コンゴウっぽい金剛に総旗艦と言う発言まで飛び出した。

姿形に言葉の語尾は艦娘なのだが髪と瞳が霧のコンゴウと色々おかしい、仮に霧のコンゴウだとすると姿を完全に金剛にする事が可能なはずで中途半端にする理由が分からない、それとデースと言う発言が想像出来ない。他に艦娘の金剛であれば何故に金髪なのか、そして瞳の色をどの様に変えたのかと色々謎だらけだ。

 

物凄く困惑したヤマトである。

 

「貴方・・艦娘?」

 

判断に困ったヤマトは直球で聞いた。

 

「UMM、分からないデース」

 

「自分が何かわからないの・・?」

 

ふとヤマトは霧であるなら概念伝達が使えるのでは?と試してみることにした。

 

《 聞こえるかしら? 》

 

「聞こえてますヨー?」

 

通じてしまった。

概念伝達が聞こえた金剛は概念伝達で返事をせず普通に返事を返してきた。

恐らく知らないのであろう。

 

そしてヤマトの中で霧という事が確定してしまった。

 

それにしても可笑しい事だらけである。

霧のコンゴウなら総旗艦であるヤマトに何かしら伝えてくるはずで隠し事はしないだろう。それに何故艦娘の姿をしているのかと、取り敢えず一言では何か偶然かもしれないと続けて概念伝達で会話してみることにした。

 

《 貴方は・・誰なの? 》

 

「?・・・Oh,自己紹介デスネー?英国で産まれた帰国子女の金剛デース!」

 

艦娘なのか霧なのか良く分からない金剛に直球で聞いてみると、艦娘式の挨拶で返ってきた事に余計困惑した。

その後ろでは何をされるかと震えていた提督は、金剛が独り言を話しはじめた事にヤバイ奴なのかと思い始めていた。

 

《 金剛・・ね。艤装はあるの? 》

 

「工廠に置いてありまス、必要デスカー?」

 

《 艤装あるのね・・今必要ないわ、それより私が口を開いてないのは気づいてるかしら? 》

 

「腹話術デース?」

 

《 違うわ・・ 》

 

「?」

 

《 頭の中で・・いえ、後にしましょう 》

 

艤装を持っている事と概念伝達が普通に通じる金剛、しかし今悩んでも仕方ないと判断して一旦保留することにした。

そして、金剛の後ろにいる提督の方を向いた。

 

「提督?・・この子はどうするの?」

 

「どう・・とは?」

 

「この子・・たぶん・・霧よ?」

 

「金剛が霧・・?」

 

「そうねぇ・・少なくとも霧の能力は使えるみたいだし?霧で良いんじゃないかしら?」

 

金剛が概念伝達を受信出来る事、他にも霧と同じことが出来る可能性がある。

 

「金剛が霧・・霧・・能力・・・それに」

 

聞くべきか迷った提督は少しの間を置いて言葉を発した。

 

「総旗艦とは・・?・・ !ッ」

 

直後ヤマトの笑みが張り付いた様な作られた笑みに変わった。

あまりにも不気味な笑みに提督は得体の知れない恐怖に襲われた。

 

「そうねぇ?回りくどい話は無しにして・・・・霧の司令塔よ」

 

「霧の司令塔・・指揮官なのか?」

 

「そうね、指揮官・・最高指揮官と言った所かしら?。だから私が右を向けば皆右を向くわ」

 

とんでもない事を聞いてしまった。

霧の最高指揮官。つまりはヤマトが決めた事は絶対と言う事で、ヤマトの気分次第で戦力が動かせる事になる。

既に異常な戦闘力を持つヤマトに、新たなる仲間の存在など悪夢でしか無い。

 

そして気づいた。

 

「やはり霧は他にも・・」

 

今の発言を鵜呑みにするならヤマト以外の霧が存在すると言うことだ。

 

「目の前に金剛がいるじゃないの・・まぁこの子は・・霧と艦娘のハーフかしら?」

 

「ハーフ・・」

 

「所で金剛?貴方・・何方に所属したいの?」

 

「HMMM・・提督が2人デース・・・」

 

無理強いはしないヤマトに畝る金剛。

金剛にとって重要なのは提督が2人居ることであった。

そんな金剛を横目にヤマトはふと思い出して、提督の前まで移動した。

 

「提督?忘れていたわ」

 

「何をだ?」

 

「金剛にナニをしていたのかしら?私、今ね・・・凄く不機嫌なのよ」

 

ヤマトは仏頂面のままに言った。

霧の事で頭が一杯であった提督は何の事かと思い出して反射的に目をそらしてしまった。

 

「どうして目を逸らすのかしら?」

 

目をそらしてしまった提督、このままでは非常にマズイと思いコレまでの経緯を包み隠さず話した。

 

事は大淀が明石に呼ばれて工廠に行くことから始まり。

工廠ではエラーを含めた妖精達が何かをしていて、それから金剛が生まれたと。

 

その後に提督は執務室で艦娘の報告を受けたら金剛が来て、日頃の疲れが溜まっていたのか倒れていしまい。

気づくと医務室にいて金剛とこれからの話しをしていたら誤解されて、其処にヤマトが来たと。

 

「つまり金剛に私の所に所属だと説明しようとしたが、誤解して話を聞いてくれなかったと・・・」

 

「はい・・」

 

「そう・・なら金剛は私の所で良いわね?・・それ以前に霧っぽいし人類に渡せないわ」

 

「はい・・・」

 

「それにしても、予想外ね・・」

 

ヤマトの誤解は事細かく吐き出した提督によりあっさりと解けた。

 

そして艦娘と霧、両方の性質を併せ持つ可能性がある金剛が此処の工廠で生まれたこと。

それに金剛の話をしていたが都合よく生まれるものなのか、と。

とりあえずエラーが何かしていたようなので、エラーを見かけたら話を聞くことに決めた。

 

「金剛も良いわね?」

 

「イエース!何となくデスガー、ヤマトの方がテートク力ヲ感じマース!」

 

提督力という意味不明な単語が飛び出した金剛、それ以前にヤマトは自分の名前を名乗っていない事に。

 

「提督力?・・それと私名乗ってないわよね?」

 

「ヤマトはヤマトデース?何となく分かりマース。テートク力も何となくテートクに相応しい感じデース!」

 

何となく発言が連打されたヤマトは艦娘と同じ物かと結論付けて気にしないことにした。

 

「・・一応言っておくわ。私はヤマトよ、呼び方は自由で構わないわ」

 

「了解デース!Umm.. テートク・・ソーキカン・・・ヤマト?」

 

「いえ、ヤマトはややこしくなるわね・・」

 

呟いている金剛を見ていたら思い出した、途中で大和を拾ったのを。

ヤマト呼びでは艦娘の大和と被ってしまう事に。

 

「ヤヤこしいイ、デスカー?」

 

「私以外にも大和がいるのよ」

 

「ヤマトが2人デース??」

 

金剛はきっと何を言っているか全く理解してないだろう、その横では提督がハッと顔を上げた。

 

「もしかして・・艦娘の大和か?」

 

「そうよ?途中で拾ったの」

 

「・・・」

 

半信半疑で聞くと何当たり前な事聞いているの?的な顔をしながら肯定された。

しかも途中で拾ったと、つまりドロップして今、此処の泊地に居るということだ。

 

普通海に出たからと言ってそんなに艦娘に会えるわけではなく、あっても報告事例が時折来る程度である。

そんな常識を軽々と飛び越えてくヤマトに吹っ切れそうな提督であった。

 

「ヤマトとヤマトデース?」

 

「そう、2人居るのよ」

 

「Hmmm...」

 

 

一方金剛はヤマトが2人居ると言われて横で唸っている、ヤマトの呼び方が問題の様だ。

 

「まぁ良いわ、それより大鯨に皆を紹介しないと! 金剛、行くわよっ」

 

「了解デース!」

 

横で悩ませている金剛に長くなりそうだと、先に紹介することに決めた。その金剛もまだ提督意外と挨拶をしておらず、皆と顔合わせしなければと賛成した。

そして善は急げといった雰囲気で2人は医務室から出ていってしまった。

 

 

「大和か・・後で挨拶しておくべきか・・・ヤマトに文句言われるかな?」

 

色々と話しが飛躍しすぎていて頭が回っていない提督。

 

「・・・あぁ、行かないと」

 

そして倒れた提督の代わりに大淀が仕事を引き継いでいるだろうと思い執務室に向かうのであった。

 




・・・ヤマトが大和して大和ヤマトしたかったのですが・・変換が荒ぶりました。反省しません。やりました。



それと艦砲の口径が分かりにくいと思うので一応書いておきます。
口径は主砲の内径x1で大和砲の長さは46cm砲x45口径で20.7mになります。
20.7メートル、46cm砲の砲身は電車1両とほぼ同じ長さです。凄いですね。


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大和ト改大和ノ秘密

気合で復活しました



―――執務室―――

 

 

―カチャッ

 

ノックされる事なく執務室の扉が静かに開かれた。

扉が開く音と共にヤマトが何事もなく普通に入ってきた。乱暴に開けず静かに扉を開閉して。

 

「戻ったわ!」

 

「お帰り?」

 

清霜だけが返事をした、若干の疑問形を含みながら。

残りの二人は執務室である場所でお帰りと言うべきか悩んでいる。

 

入ってきたヤマトが執務室を見渡すと皆ソファーの方に移動して寛いでいた。

横長ソファーには3人が詰めて座りテーブルを挟んだ正面のソファーに大淀が一人で寝ている。

 

「金剛、入っていらっしゃい」

 

「失礼するデスヨー?」

 

執務室の扉の前で入るべきか悩んでいた金剛に声を掛けた。

 

「ああ、気にしなくて良いぞ。ヤマトがアレだからな・・」

 

金剛の背後から提督の声が掛かった。

 

「Oh,来たのデスネ?Feel Sick(病人)なら寝ていないとダメデスヨー?」

 

移動中の金剛はヤマトを質問攻めにしていた為、ついてきた提督に全く気づいて居なかった。

 

「来なきゃいけない気がしたんだ・・・」

 

「What?」

 

「来なくて良いのに・・」

 

そんなヤマトの呟きは全員聞き取る事が出来たが誰も反応を示さない。

 

「それより紹介するわっ、金剛よ!」

 

「Yes! 金剛型一番艦、金剛デース! どーぞヨロシクオネガイシマース!」

 

「こんご―うっ!」

 

執務室に入るなりジッと金剛の顔を伺っていた清霜は自己紹介を聞くと同時に飛び出して抱き付いた。

先程の改大和と同様に胸に顔を埋めてスリスリとしている。

その様子に確信した。

 

戦艦なら誰にでも抱き着くと。

 

「Wow!清霜・・デスカ?」

 

「んふふーっ」

 

そんな清霜に対して困惑した表情を見せる金剛だがヤマトは忙しい。

清霜と金剛の絡みを記録するために。少しでも長く拝むために犠牲になってもらう。

 

「落ち着くまでそのままにしておくと良いわ」

 

そんな会話の中、この泊地の提督は執務室に入ってからずっと大和を見ていた。

 

「君が・・大和なのか?」

 

過去に会った事のある大和と姿の違いに違和感を持っていたから。

 

知っている大和は肩を露出させたシャツと丈の異様に短いスカートで非常に個性的な見た目だった。

しかし目の前に存在している大和は金の装飾が散りばめられた白いコートと赤い縁取りのされた白い提督服をのような物を身に纏っており、全体的に白尽くめな印象を受ける。

 

もし彼女が別の艦娘だと言えば納得してしまう程に記憶にある大和と雰囲気が隔絶していた。

 

「はい、改大和型戦艦一番艦、大和です」

 

「ああ、よろし・・く?・・・改大和型??大和型と違うのか・・?」

 

「あら、知らないの?」

 

不意に背後から声を掛けられ恐々と振り向き、問い返した。つい先程金剛で痛い目を見たばかりで“霧”に対して若干のトラウマとなりつつあるが、艦娘において“最強”の名を持つ大和型の前では知りたいという気持ちが勝った。

 

「・・・彼女も霧なのか?」

 

「さあ?艦娘なのは確かよ?」

 

「艦娘?・・いや、前に会った事のある大和とは・・・全く別の方に見えるが・・まさか、金剛と同じ霧と艦娘のハーフだったり・・」

 

「純粋な艦娘じゃないかしら?」

 

「純粋な・・まさか、ヤマトも知らないのか?」

 

「そうね」

 

「・・・」

 

要領を得ない返事であっけからんとするヤマトに、どう反応して良いか分からなかった。

大和型なら兎も角、改大和型など聞いたことがないしヤマトが知らない艦娘など更にぶっ飛んだ子じゃないだろうな、と。

無意識の内に警戒を強めていた。

 

「で、そちら子が清霜・・・」

 

金剛に張り付いたままの清霜を見据え、確認しようとした所で言い淀んでしまった。

今の執務室には艦娘や霧、艦娘と霧のハーフや艦娘だかよく分からない艦娘と多種多様に入り乱れていて、普通に対応して良いのかと。

 

「うん!」

 

胸に埋もれてご機嫌の清霜は初対面の提督に対して礼儀もクソも無かった。

只々あるのはその豊満な胸の感触と心地良さだけ。

 

ヤマトはその様子をただジッと見ている。霧と艦娘のハーフでも艦娘と認識される事に、羨ましいと。何時しか艦娘になりたいと思うほどに目の前の光景が羨ましかった。

 

(確か、清霜は戦艦に対して強い憧れを抱いている子・・艦娘でもハーフでも戦艦が同様に見えているなら・・なら私は?私に対しては・・霧、戦艦よりも提督として認識している様子・・・そうよ!私を戦艦だと認識させれば良いのよ!戦艦と認識されたら・・ふふっ・・・ふふふっ)

 

「よ、よろしく頼むよ・・・」

 

妄想に浸るヤマトとは裏腹に提督は頭を悩ませていた。

一度の出撃で艦娘っぽい子を二人も拾って来る事対してどう対応したものかと。

中でも改大和が凄く気になって仕方がない。白いコートと提督服を纏い、凛とした雰囲気と相まって“なんか凄く強そう”と。

 

「さて、自己紹介も済んだわねっ!大鯨を紹介するわ!」

 

まだ自己紹介も何も顔を合わせただけだよ!とヤマトと寝ている大淀を除いて皆の心が一つになった。

 

「ところで大鯨は何処に居るの?」

 

皆の注目がヤマトへ向いている中、当人は提督に振り向きながら聞いた。

 

「大淀が把握していると思うが、何故寝ているんだ・・?」

 

何故か寝ている大淀に話を振ってみるも反応は無い。普段の執務では一度たりと居眠りを見せなかった事から気になった。しかもソファーを一つ独占して寝ている姿は想像も付かない。

尚、一部始終を見ていた3人はヤマトが原因だと思ったが誰も口を開かなかった。

 

「・・仕方ないわね」

 

 

 

―――休憩室―――

 

 

「よーし。使い方は大体オッケーだね〜」

 

ふい~、と鈴谷が無い汗を拭き取るような仕草を見せた所で、目覚ましのような音が『ピピッピピッ』と規則的に鳴り響いた。

 

「わっわわ!?・・・うん?」

 

音源は大鯨の手元にある霧式スマホ。

 

「おぉ?着信だねぇ、ってヤマトじゃん!」

 

「えっ、と?・・確か着信の場合は・・緑のボタンですよね?」

 

「そーだよっ!」

 

緑のアイコンをタップした大鯨は画面の変化に気づきはしたが何をどうして良いのか分からず首をかしげた。

画面の中央には通話中と表示され通話時間を示す数値がカウントされていく。

 

「これで電話出来ているのでしょうか?」

 

《問題ないわ》

 

「わわっ!?」

 

突然聞こえてきた声に驚き手元から落としてしまった。

テーブルに落下した霧式スマホを二人して覗き込んだが相変わらず首をかしげる大鯨。

 

「これで良いのでしょうか?」

 

「おっけ~だよぉ~」

 

《大丈夫よ、通話できているわ》

 

「わぁ~本当に電話出来てます~」

 

「・・・やっぱりどう見てもガラスだよね?」

 

《あら、他の子と一緒なのかしら?》

 

「鈴谷さんにスマホ?の使い方教わっていました〜」

 

《そう、鈴谷さんにねぇ?ところで紹介したい子が居るの。執務室まで来てくれるかしら?》

 

「は〜い〜」

 

《鈴谷も一緒に来てくれると嬉しいわ》

 

「え、マジで!イイの?!」

 

《ええ、鈴谷にも馴染みのある子だろうしね・・》

 

そう、ヤマトの記録が正しければ過去にミッドウェー開戦時に大和と一緒に編成されていた。という記録が残っており、改大和型らしき大和と会わせて反応を伺いたかったのである。

大鯨と一緒に居たのは偶然であり非常に都合が良かった。

 

「うぉしぃ、ラッキーッ」

 

《?・・まぁ良いわ、執務室で待っているからきて頂戴》

 

 

 

―――執務室―――

 

 

 

――コンコンと執務室の扉をノックする音が響き渡る。

 

「入っていらっしゃい」

 

ヤマトの声が静かな廊下に木霊した。

 

「ねぇ・・・今、扉から声が聞こえなかった・・・?」

 

「は〜い」

 

 

扉からである。扉の奥から響いて来た声では無く目の前の扉から直接聞こえてくる様な声だった。

その違和感の中、大鯨は気にする素振りを見せず扉に手を掛けて開け放った。

 

「いらっしゃい」

 

執務室へ入るなり真っ先に声を掛けたのはヤマトだった。通常は部屋の主人か秘書が掛けるべきだがヤマトには関係ない。

 

「失礼しますね〜」

 

「ちーっす・・・って、お?大和?・・大和だよね?」

 

執務室に「やまと」と呼ばれるのは二人居るが鈴谷の反応からして指しているのは艦娘の大和の事だろう。しかし、同じくして入ってきた大鯨は全く違った反応を見せた。

 

「え・・・大和さん・・ですか?」

 

「はい、大和ですが・・えーっと・・」

 

少々自信なさ気な二人。

改大和と名乗っている時点で普通の大和と違うことはハッキリしているが、鈴谷の疑心暗鬼な発言と大鯨の不信感を顕にした反応で確信に至った。

現に霧のヤマトと艦娘の改大和、そして霧と艦娘のハーフであろう金剛が居る時点で記憶上の常識や知識は投げ捨てた方が良い。

 

「うーん・・やっぱ大和だよね?なんか変わってない?あ、服変えたの?めっちゃイケてるじゃん。メイクもしてるの?・・てか成長してない?」

 

鈴谷の疑問が尽きなかった。

 

「あの・・えぇっと・-・」

 

「彼女は改大和よ。おそらく鈴谷の知っている子とは別の子ね。あと、大鯨は吟味しているのかしら?そんなに見られたら大和も困るわよ?」

 

「別?改大和??何それ、なにそれ!?」

 

「え? あっ!近っ、すみません!」

 

鈴谷は何事か理解していない様子で大鯨に至っては間近でまじまじと見入っていた。

恐らく大鯨の記憶にある大和と目の前の改大和が結びつかなかったのだろう。

 

「そうね、立ち話も退屈でしょうから二人とも座ると良いわ」

 

改めてソファーに目を向ければ皆窮屈そうに座っていた。

まず目に付くのは横長のソファーに座る全身真っ白な改大和と大淀を膝枕しているヤマトの二人。

改大和の膝には清霜が、左右には金剛と明石が挟むように座っており。テーブルを挟んだ正面には寝ている大淀を膝枕しながら頭を撫でているヤマト。

 

そして何方でもない離れた位置にある一人掛けのソファーに提督が一人。

 

呼び出された二人は座れる場所が無いことに困惑していると、ヤマトは何を思ったのか寝ている大淀を抱き上げ膝の上に座らせた。左右に倒れない様に両腕で支えている。

何処と無く手付きがイヤらしく見えるのは恐らく気の所為だろう。

 

その様子を更に困惑した目で見ていたらソファーの空いたスペースを手でポンポン叩いた。

 

ここに座れと言う意味合いだろう。

 

「あの・・」

 

大鯨は大淀の首が痛そうだと言いたかった。

 

「いえ、失礼します・・」

 

しかし誰も気にした素振りを見せないことから空気に流されてしまう。

そして鈴谷も同じくヤマトを挟んだ反対側に鈴谷も座った。

 

「さて、紹介するわ!潜水母艦、大鯨よ!仲良くする様に!」

 

「潜水母艦大鯨です、よろしくお願い致します」

 

「清霜だよ、よろしくっ!ねぇ?ねぇねぇ、大鯨は戦艦なの?戦艦なの?」

 

「ねぇ・・・やっぱり大和だよね?」

 

三者三様の反応を示している。鈴谷は過去に会ったことがあるためか薄々と何かを感じている様子。清霜は幾度も金剛と大鯨の衣服を見比べ、大鯨はやはり改大和の顔をまじまじと見ていた。

 

「そうね、私も気になっていたの。教えてくれるかしら?」

 

「あの・・えっと・・?」

 

「あら、ごめんなさい?言葉足らずだったわ。そうね・・・まず、改・・改大和と呼ぶからには改装か改造されたのよね?」

 

「はい、改造ですね。元は大和型一番艦、大和でした。事の発端は坊ノ岬沖での戦いで対空防衛の薄さからまともに戦闘することなく大破してしまい撤退を余儀なくされた事から、マル七計画で予定されていた改大和型戦艦の仕様を元に改修改造され、新たに改大和型一番艦大和となりました」

 

執務室に静寂が広がった。微かに息を飲む音が聞こえる程に。

 

「マル七計画ねぇ?記録共に無いわね・・幾つか聞きたいことがあるのだけど、マル七計画改大和型級のデータ、教えてくれるかしら?」

 

「データ・・内容ですか?詳しく分かりませんが・・技術者たちの話では主砲の低い火力と命中率の改善及び対空砲化。対して当たらない対空機銃の撤去及び新型対空火器への換装。更なる超巨体化に対応する新型主機関及び推進器の換装。水流制御機構及び防御機構の新設。水鏡型電算機の搭載及び各兵装の電算制御化・・・以上かと」

 

「水鏡式電算機?それに、兵装の電算制御化って自動化?・・そうね、とりあえず改造後の大まかな変更点で良いから教えて頂戴」

 

「はい。全長三五五メートル・全幅四四メートル・喫水一三メートル・排水量十万トン。機関ディーゼル・エレクトリック式、三七万五千馬力。速力五五ノット・最大航続距離7万海里。兵装は主砲、六十口径五一サンチ三連高角砲三基・六五口径二百五ミリ連装広角砲四基・六五口径十サンチ高角砲二十基・噴進弾垂直発射機三二門。防御兵装は対魚雷防御用爆雷投射砲二十基、電波欺瞞金属片発射機四基、熱線放射欺瞞弾発射機四基。水上偵察機一七機ですね」

 

一通り説明し終わった大和は一言も噛まずに話せたことに安心して大きく息を吐いた。

 

「あの…これで宜しいでしょうか…?」

 

「・・・貴方大和よね?」

 

その発言に皆衝撃を受けた。

非常識の化身であり多少の事なら何でも受け入れてしまいそうなヤマトが、まだ常識の範疇と言えそうな改大和を疑った事に。

 

「え?・・えっと、改大和ですけど・・」

 

「そう大和・・改・・大和、改大和型・・・全長に排水量増えすぎよ・・別の戦艦と言われたほうが納得出来るわね。それに五一センチ高角砲って何よ・・・爆風で艦橋弾け飛ばないの?何撃ち落とすのよ・・それに噴進弾の垂直発射なんてミサイルじゃないの・・」

 

若干の本音が漏れた独り言を呟いてから目を閉じて十数秒、間を置き言葉を紡ぐ。

 

「・・・貴方が改造されたのは何年かしら?」

 

「えぇっと、改造は一九四二年に開始して、翌年の一九四三年に完了しました」

 

「もう一つ、戦争はどうなったの?」

 

確信に至る質問をした。

 

ヤマトの記憶と記録では大和型戦艦をより巨大な戦艦に改造(作り変える)する余裕は無かった。

また、同時に大和型についての情報を同時に収集し照らし合わせていたが、改大和と一切合わない大和の情報のみで。更には、この世界の同年代の技術水準と比べた場合、数十年以上先の技術を取り入れていることになる。

 

その事から改大和はこの世界ではなく、パラレル的な世界から来たと仮説が立てられる。

 

現に自身、霧のヤマトが存在して艦娘が存在する、更には霧と艦娘のハーフである金剛まで居ることに記憶・記録上の常識を当てにしてはいけない。

 

 

 

 

 

「戦争ですか・・?勝利を納めましたが・・」

 

 

 

 

 

今の妙な間は、何当たり前な常識を質問しているの?といった意味合いだろうか、改大和に若干困惑を含んだ目を向けられた。

 

「なんだと・・・?」

 

「やはりねぇ?提督は黙っていなさい」

 

「・・・」

 

「あの・・?」

 

「大和・・貴女は、並行世界の存在とか信じているかしら?」

 

「並行世界とは・・何でしょうか?」

 

「並行世界・・言ってしまえば別の世界ね。並行世界は幾万とありその一つ一つが別々の歴史を辿っているの。此処(この世界)と似た様な歴史の世界があれば全く別の歴史を辿っている世界があったり、ただ歴史だけでなく全く別・・未知の歩み方をしている世界があったりと・・・色々引っ括めて並行世界よ。他にも異世界やパラレルワールドと言った呼び方もあるわね」

 

「・・・」

 

ヤマトの説明に誰も反応を示さない。恐らくは耳を傾けている、続けてくれといった雰囲気だ。

 

「つまり大和はこの世界ではなく別世界の大和ね」

 

「別世界・・並行世界の大和・・」

 

「別に世界が違うからって気にする必要無いわ・・私が原因だろうし・・」

 

「え?」

 

話の内容が全く理解できていない改大和の返事。

 

「恐らく、大和が生まれる直前に多次元へ干渉してしまった事が原因かしらね?」

 

理解の範疇を大きく逸脱した回答が返ってきた。

 

「多次元に干渉・・?」

 

「そうね、大和と合う少し前の事なのだけど…力加減を間違えて地上にマイクロブラックホールを形成しちゃったの、本物ではなく疑似的によ?次元因果律の演算も行わずに出来てしまったものだから余剰次元だけでなく高異次元にまで次元の歪み発生したの。恐らくその歪み・・と言うよりは穴ね、穴に落ちて此方に来たのが貴女、改大和よ」

 

「次元が・・え?・・えっと?つまりヤマトさんが次元に穴?を開けたから・・私がここに?」

 

ヤマトから理解の範疇を超えた話が色々と飛び出して中々理解が追いつかない。

ただ分かることは、ヤマトが此処に連れてきた事だけ。

 

「そうよ」

 

妙にドヤ顔のヤマト。

 

「そ、そうですか・・あの、私はどうしたら?」

 

「元の世界に戻るにしても偶然出来てしまったものだから次元座標は分からないし、戻ったとしても向こうに艦娘が生まれているかも分からない・・仮に艦娘が居ない世界で戻ったとしたら・・良くて神と崇められるか、悪くて検体・・実験体・・ヤマト、落ち着くのよヤマト、考えてはダメよ・・」

 

途中から声が妙に小さくなりブツブツと何かを話しているようだが全く聞こえない。

 

「そうね、既に・・いえ、大和は私が責任を持って面倒を見るわ!」

 

「それは・・」

 

提督は困る、と言いたかった。

現在、艦娘の中で最も強いとされている大和型の艦娘など知られたら誰も放って置かない事は考えずとも分かる。

それだけでなく、現在確認されている情報として艦娘は世界大戦時代の艦艇の能力を受け継いでいると言われている。なら先程語った改大和の能力は、この世界の現代と同等の技術力に戦闘能力を持っている事になる。

 

そして艦娘となった彼女、改大和はその小さな身体に現代兵器と同等の能力を内包している事になる。

 

 

つまり数十年先の戦闘能力を持った艦娘。

 

 

もし、そんな力を持った艦娘の存在を大本営が知ったなら、力づくでも手に入れようとするだろう。深海棲艦の驚異に晒されている今、人類には別世界の艦娘だろうが化け物だろうが利用できるものは何でも利用する。

そんな時代に深海棲艦を容易く打倒出来る可能性があるなら、手に入れる為に形振り構わない事は想像に難くない。

その艦娘が大本営の制御下にないヤマトの元にあるなら、まず交渉してから圧力を、それでも駄目なら武力で支配しようとする。更にはヤマト自身の力も欲するだろう。

 

そんな事態になってしまったなら最後、大本営、いや国が滅ぶかもしれない。

 

「あら、何?文句あるのかしら?・・人間には渡さないわよ?」

 

提督の思考を詠んだのか、雰囲気がガラリと変わった。

 

「そうそう、色々と調べたわ?この国・・いえ世界での艦娘の立ち位置を。艦娘が人ではなく兵器として扱われている事を、兵器として扱われるからには杜撰な扱いをしようと裁かれることは無く裁く法律もないと・・・やりたい放題ね?」

 

何時の間に調べたのかと思ったが、今朝大鯨が持っていたスマホを思い出して考えをやめた。

それよりも今の状況が非常に不味い。

 

「ねぇ、考えたこと無いかしら?艦娘の元となった艦艇が・・戦争の道具として作られて、戦って、沈んで・・新たに艦娘として生を受け、人間と同じ感情を持ったのに・・また兵器として扱われ、戦わなければいけないのか?」

 

皆も話が変わり過ぎだと思わなかった。

無言で聞き入れてしまった。

 

提督を除いて此処に居るのは艦娘だから。自分達のこれからに関わる話かもしれないから。どの様な立場で、どの様に扱われるのか、気にならない者など居ない。

 

 

 

其れが命懸けの戦場だから尚更。

 

 

 

「ねぇ、生まれ変わって心、感情、自由に動ける身体を持ったなら・・それは人間と一緒ではなくて?人間よりも遥かに超えた力を持っているから兵器なの?兵器だから人に管理されなければいけないの?・・・そんなの、おかしいと思わないかしら?」

 

皆の顔を一人ひとり、ゆっくりと確認しながら。

 

「それに艦娘が居なければ今頃人類は滅んでいても不思議ではなかったのよ?人間の作る兵器は深海棲艦に対して効果を発揮しない事に。長距離誘導兵器の一切は目標へ到達する直前に何故か操作不能となる、ならと艦艇を出して直接攻撃したところで一切の打撃が認められず一方的に狩られるだけだった。唯一効果が認められた兵器は核、核による爆発を直撃させた場合のみ対象の消滅を確認した。しかし核の使用は周辺に深刻な汚染を広げてしまう。そんな物を世界中で出現する深海棲艦に使おうものなら地球が汚染され自滅を導いてしまう」

 

最後に提督の顔をジッと見据えて。

 

「ねぇ、提督?貴方は・・どの様に考えているの?」

 

十数秒の沈黙。

緊張が張り詰めた空気により体感時間が普段よりも遥かに永く感じられた。

 

 

「兵器は・・・使われる為にある。だが、艦娘は・・艦娘は人だ。幾ら人ならざる力を持っていようと、彼女達は笑って泣いて、感情を共有する。例えそれが、人の姿で無くても・・・感情を持つ者は杜撰に扱ってはいけない・・ッ!」

 

ピリピリとした雰囲気のヤマトを刺激しない様に一言、一言と言葉を慎重に選びながら紡ぎ絞り出す。

 

「そう・・」

 

その一言に警戒していたが既に遅かった。

ヤマトは戦艦に乗らずとも圧倒的な力を駆使する事が出来ると理解させられた。

 

「良かったわ?提督、貴方が艦娘を兵器だと認めていたら・・今この場で・・・分かるわね?」

 

軽いとも受け取れるヤマトの言葉には、逃さないという意思が込めれている事を理解した。

 

周囲の床、テーブル、ソファー、天井とあらゆる物という物から白銀の刃が突き生え、

その切先の全ては艦娘を避け提督へと向けられていたから。

微かにでも動けば皮膚を切り裂くだろう程に薄く太く長く。

 

そう、ヤマトは執務室の天井壁床と全体にナノマテリアルを薄く散布して完全な檻へと作り変えていた。

 

もし、艦娘を兵器だと言い切ったのなら突き進めていただろう。

 

「ふふふっ、艦娘に手を出したら・・ダメよ?」

 

「艦娘は人類と同等に扱わなければならない、と・・・反対されたら・・・その国を更地にしようかしら?ふふふっ。そうそう、今だから一つ伝えておくけど・・私一人でこの星の文明を破壊し尽くす事が出来るの。 だから、 あまり、 怒らせるような真似は・・しないでね?」

 

ヤマトの続け様にして発する言葉に誰も口を挟めなかった。

 

余りにも恐ろしかったから。

 

今の彼女に口出ししてはならないと。

そして、言葉を繋ぐ彼女の内には一つの回答が生まれかけていた。

「艦娘への愛情を持つ一つの魂」と「大切なものを失う悲しみを知った魂」の二つが一つとなりつつある今、ヤマトにとって艦娘は何よりもかけがえのない存在へ変わろうとしていた。

 

そのヤマトの表情は普段の性格から全く予想の出来ないもの。

 

とても哀しそうな、触れて仕舞えば容易く崩れ落ちてしまいそうだった。

 

 

 

 

 

 

ただ、そんな表情も大淀のうめき声で台無しにされていた。

一体どれ程の力で抱きしめられているのか、衣服に喰い込む腕に、苦しそうな表情を。

それでも起きない大淀。

 

 

 

 

 

 

そして時を巻き戻すかの如くして白銀の刃が引いて行く。後に残るものは何も無く、元に戻ったソファーやテーブルだけ。

 

「所で提督?艦娘は心と自由に動かせる体を持ち得た所謂人間と一緒なの。艦娘となる前は人間同士の争いの為に作られた兵器・・・ねぇ、何時から艦娘が味方で深海棲艦は敵だと認識していたのかしら?言葉が通じるから?友好的だから?攻撃してこないから?」

 

「は?・・・いや、まさか・・・」

 

「ふふふっ、艦娘だって人と同じく心を持つのよ?幾ら我慢強くても限度があるのではなくて?私が手を下す前に、怒りを買わないようにしなさい?」

 

「ヤマトは何故・・・艦娘にそこまで・・」

 

 

"詳しい"と聞けなかった。

 

気づいてしまった。

 

出会ってから所々辻褄の合わないヤマトの話に。気づいたら海上に居たと話していたが、艦娘に対する並々ならない知識に平行世界に干渉する力。

 

ただそんな思考も阻害される。淡く光輝き始める清霜。

 

「は・・?」

 

目を擦り改めて見たが変わらず光輝いている。

今朝の妖精と同じような既視感だが、今度は艦娘である。

 

対面に座っているヤマトなら直ぐに気づくかと思ったが何やら大淀に夢中で気づいていない。背後から抱きしめて寝顔を見つめている。

一体何をしているのか気になるが、それより艦娘の清霜が光っている異常。膝に座らせている改大和も困惑の表情を見せている。

 

「あの、提督?」

 

「何かしら?」

 

改大和に呼ばれて顔を上げたことで気づく。

 

「・・あら?あらあら・・些か早いわね?」

 

じっくり眺めること十数秒。

生まれて間もない清霜が何故改造可能なのか気付いた。途中で拾った清霜を連れたままチョーク諸島へ向かい、島を占領していた深海棲艦を島諸共一掃したこと。それから記憶より艦娘の成長方法を当て嵌めた結果、経験が流れ込んだ、ただの成長だと理解した。

 

確定ではないが、現在納得出来る唯一の解答。

 

 

「やはり、改造ね。提督は・・当てにならないとして、明石は今の清霜と同じ状態の子、見たことあるかしら?」

 

「えっ、私ですか?」

 

唐突に話を振られた明石。よく分からず提督に助けの視線を送ったが反応は無い。

 

「えー・・いえ、光るなんて話は聞いたことないですね。お役に立てずすみません・・」

 

「そう、別に気にする必要ないわ?そうね、提督、用事が出来たわ。また後でね?」

 

「ああ・・また後で・・・?」

 

「さて、清霜?エラーちゃんを探して改造するわよ」

 

「改造?」

 

「そう、改造。艤装が強くなったり、身体能力が上がったりね?心配する事無いわ。私とエラーちゃんで直々に改造してあげるから戦艦並みの火力を約束してあげるわ!」

 

「戦艦!?ほんとに?ほんとに!?」

 

「ええ、一先ずエラーちゃんの協力も必要だから、探しに行くわよ?」

 

「うん!はやくっ!はやくっ!!」

 

「ふふふっ、行きましょうか」

 

予定は決まったとばかりに立ち上がるヤマトに酷く安心してソファーに深く座り込んだ。

 

次から次へと浮上してくる問題に気苦労は断えない。

ヤマトへの対応と大本営への対応、今後の方針を如何したら良いのかと。元としてヤマトへの対応が最優先なのは変わらない。変わらないというよりは優先せざる得ない。大本営へ下手に報告してヤマトに手出ししようものなら壊滅するのは目に見えているから。

 

ふと、後ろ姿が目に留まった。

 

大淀を抱き上げてそのまま連れて行こうとするヤマトの後ろ姿を。

所謂姫様抱っこと呼ばれる抱き方だろうか、抱っこしたまま執務室を出ていこうとしていた。

 

連れて行くつもりだ。

 

「・・・大淀は勝手に連れて行かないでくれ」

 

「・・・仕方ないわね」

 

提督の言葉に少しの間を開けたヤマト。一体何を考えていたのか、提督の知る所ではない。

 

そして霧式スマホをせがむ算段で来た鈴谷は切り出すことが出来ず取り残された。

 




 《大和型一番艦・大和》→《改大和型一番艦・大和》 


要目

排水量
64,000トン → 100,000トン

全長
263m → 355m

水線長
256.0m → 343.0m

38.9m → 44.0m

吃水
10.4m → 13.0m

機関
ロ号艦本式缶12缶 → ディーゼル・エレクトリック式発動機4基

主機
艦本式タービン4基4軸 → 水流噴射推進器8基

出力
153,553馬力 → 375,000馬力

最大速力
27.46ノット → 55.55ノット

航続距離
7,200海里 → 70,000海里


兵装

45口径46cm3連装砲塔3基 → 60口径51cm3連装高角砲塔3基

60口径15.5cm3連装砲塔4基 → 65口径20.5cm連装高角砲塔4基

40口径12.7cm連装高角砲6基 → 65口径10cm高角砲20基

25mm3連装機銃8基 → ――

13mm連装機銃2基 → ――

―― → 噴進弾垂直発射機32門

―― → 電波欺瞞金属片発射機4基

―― → 熱線放射欺瞞弾発射機4基

―― → 対魚雷防御用爆雷投射砲20基


装甲

舷側
410mmVH鋼板 → 510mm複合傾斜装甲

甲板
200mm → 250mm

主砲防盾
650mm → 750mm

艦橋
500mm → 700mm

搭載機
7機(カタパルト2基) → 搭載機 17機(カタパルト2基)


電算機構

―― → 水鏡式電算機


とある並行世界(・・・・)、艦爆がトラウマ&嫌過ぎた技術者が集まり過ぎて()改造されちゃった戦艦、大和

~技術者達の迷走~


「畜生め!畜生め!!何が艦爆だ!!!何が三式弾だ!当たらねぇじゃないか!!!チクショウメェエエ!!」

「大体何が機銃で撃ち落とせるだッ、取り付かれても全然落ちねぇじゃねぇかあああ!!」

阿鼻叫喚の広がる室内で一人の技術者に天啓が降りた。

「散弾銃・・散弾銃だ!!三式弾じゃない・・砲撃した直後に広がる散弾があれば全部落ちるじゃないか・・鳥撃ちだってライフルが当たらないから散弾が開発されたじゃないか・・!!主砲真上に向けて放てば・・っ!!」

「「ソレだ!!!」」

この時味方にも甚大な被害が出ることを予期していなかった。
~~~
「主砲真上に向けたら爆風で艦橋が・・」
「爆風でも割れない程厚くするしか・・」
~~
「散弾範囲が広がり・・」
「主砲伸ばすしか・・」
~~
「散弾数増やし・・」
「より大口径に・・」
~~
「砲弾重すぎて・・」
「自動装填・・」
~~~~~~~~~~~~~~~
ててててってて~
51センチ60口径三連高角砲(火力+95 対空+70 命中+20 回避+50)

技術者の執念と猛烈な殺意と脳筋理論が生み出した最強(狂気)の艦砲。



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清霜ノ改造ト金剛

―――執務室―――

 

ヤマトが立ち去った後の執務室。

 

「だぁ~疲れたぁ~っ」

 

「鈴谷は何もしていないだろ・・・」

 

「え~?提督だってぇ話聞いてただけじゃん~。だよね明石~?」

 

「えっ、いえ私は・・」

 

「にしても明石は随分と大人しかったじゃない?いつもならギャーギャー噛み付くかと思ってたけど~?」

 

人の悪い笑みを浮かべて揶揄うような口調の鈴谷に不満そうな口調で返す。

 

「私だってまだ死にたくありませんよー。大体なんですかヤマトさんって・・未来から来たんですかね?それにこのソファー、刃が突き出してたと思うんですが疵痕も無く綺麗サッパリですよ・・。しかし提督?ヤマトさんにその気が無くて良かったですねぇ?アレ・・殺意マシマシでしたよ?」

 

「あー!分かるぅ、深海棲艦前にした時のどろ~っとした感じだよねー・・てか全く見えなかったんだけど・・向けられたら私達でも避けられないよね」

 

「そこまでなのか・・?殺意とか感覚的に分からなくもないが・・ヤマトは本気だったと思うか?」

 

「あれ本気だったよ~これマジマジ。提督は分らないかもだけど私達は毎日毎日出撃して些細なミスが命取りの戦場で死闘してるんだよ~?だからヤマトさんが向けた殺意も一瞬で分ったよ。全く反応出来なかったけど・・・」

 

「そうか・・そうだ明石、幾つか聞きたいことがあるが、今良いか?」

 

「改めちゃって、なんですかー?」

 

「ヤマトは何者だと思う?」

 

 

「いきなり聞いちゃいますか―・・そうですね。まず大鯨さんを見る限り提督の技能を持つのは確実で、先程見せた物質を操る様な力といい・・何なんですかね?ただヤマトさんはこの星の文明と話していましたよね?地球をこの星(・・・)なんて呼び方普通します?どちらかと地球の文明の方がしっくりきません?だから地球外の星から来た宇宙人とかどうです?ほら、ヤマトさん見てると随分と文明の遅れた星だな~とか思ってそうじゃないですか?」

 

「何故か妙にしっくり来るが・・なら、ヤマトの能力・・明石が見聞きして思ったことを教えてくれ、出来るだけ事細かく」

 

「ふむ・・まずヤマトさんは時間や空間を跳躍出来ると思いますね。次元因果律の演算に次元座標と話していましたよね?つまり時空連続体を観測して干渉・変質させることが出来るんじゃないかと。例えば、ほんの少しの因果律に縺れを発生させるだけで何も無い上空に高層ビルを突き出して、物理法則を無視した固定が出来たり―

 

 

 

 

―提督の腕は両手で二本ですよね?その腕を3本に・・それこそ肩ではなく胸や頭に生やしたり、生やすと言うより別次元の腕を持ってくる感じですかね?まぁそんな事したら意思に関係なく一人でに動きますかね?分かりませんけど・・更には、今座っているソファー・・そのソファーの時空連続体を操作して別の時空連続体と重ねた場合、因果律に大きな縺れが発生して身体が異次元に飲み込まれますね。永遠に異次元を漂う事になり・・もし身体の一部だけ飲み込まれたなら飲み込まれた部分だけが異次元を漂い、飲み込まれていない部分は・・切り取られたかのような状態で・・何故か生きているなんてことも」

 

「ッ!?」

 

その話を聞いた直後、鈴谷と提督がソファーから飛び跳ねた。

 

「二人とも驚かせないでくださいよー。例えばの話ですよ?つまり言いたいことの一つが、次元因果律を操作出来る可能性がある、って事ですよ」

 

「こ、こっちこそ驚かさないでよ!もーっ!」

 

「まぁヤマトさんの話が嘘じゃなければ、ほぼ可能だと思って良いと思いますよ?今朝見せてもらった戦艦の内部・・いえ半分に別れた船体、あの中身は明らかに異質でしたし、上半分は空間か重力を操作して持ち上げていますね。それに宙を浮いていた円形の物体・・シールドに阻まれて近づけませんでしたが、浮かび上がる瞬間のふわっとした感覚・・あれは空間に何かしらの作用が働いているのは確実とみて・・・恐らくあの戦艦は空を飛べますよ?」

 

両腕を組み無い胸を主張している明石。

 

「あ、重力かも・・マイクロブラックホールを作ったって・・もしかしてあの地震は・・うん、そうかも・・」

 

「何か分ったのか?先程から不穏な単語しか聞こえないのだが・・」

 

「力加減を間違えてマイクロブラックホールを作ったと話していましたよね?この場合どの次元に向けて間違えたかによって影響力がわかります。超重力理論における超対称性を破る事が出来る前提の場合、ホーキング輻射により物質の輻射性が変質して自壊性を帯びる可能性も・・ん?んーーーああぁああーーーもう意味わからないですよ!意味不明ですよ!地球の理論に真向から喧嘩売ってますよ!もぉーーーっ」

 

突如明石が頭を抱えて悩みだした。

 

「やはり明石もお手上げか・・」

 

「お手上げですよ~。もっと、こう・・一般的に説明出来そうな情報でもあれば良いのですが~」

 

「そんなもの・・あ、あるかも」

 

「え?」

 

そう言いながら提督は執務机に向かい、引出しから一枚の紙を引っ張り出した。

 

「これなんかどうだ?」

 

差し出されたそれは、今朝方ヤマトが書き出した情報だった。

 


機関 ― 縮退炉 ―

 

『永久機関』

 

装甲 ― 強制波動装甲 ―

 

『人類に破壊不可能』

 

武装

 

― 超重力砲 三十二基 ―

 

『破壊できないものは特に無い』

 

― 51cm三連装反物質砲 三基 ―

 

『質量が大きいほど破壊力を増す』

 

― 20.3cm連装反物質砲 二基 ―

 

『質量が大きいほど破壊力を増す』

 

― 30mm2重6連装陽電子射出装置 七十二基 ―

 

『大抵の物は蒸発する』

 

― 艦首魚雷発射管 八門 四基 ―

 

『すごく早い魚雷がでる』

 

― 垂直発射装置 艦首128門 艦尾128門 ―

 

『よく飛ぶミサイルがでる』

 

特装

 

― 重力子超収束砲 ―

 

『超すごい』

 

― クラインフィールド ―

 

『超すごいバリア。核にも耐える』

 

― ワープ ―

 

『ワープできる。広域空間に異常が起きる』

 

― 重力制御 ―

 

『重力を制御出来る』

 

― 次元空間曲率変位 ―

 

『次元に穴を開けてゴミを異次元に捨てる』


 

 

「うわー・・・解答用紙じゃないですかぁ・・・あるなら最初から見せてくださいよー」

 

「今思い出したんだ。で、それを見て分ったことは・・そうだな、出来ればこっちの用紙にまとめて欲しいのだが」

 

白紙とペンを差し出す。

 

「まぁ良いですよー、警告の意味も含めてですけど」

 

そう話して明石は30秒程で書き出した。その様子を横から除く鈴谷と提督。

 


ヤマト

能力確定

・次元操作

・重力操作

・11次元以上の次元観測

・物質操作

・空間操作

能力推定

・因果律操作

・時間操作


 

「よし、こんなものでしょうか。派生技能的なの書いても想像の域でしか無いので割合します!」

 

「どれどれ・・」

 

明石から用紙を受け取り、内容を読んだがさっぱり分からない。

 

「理解できないって顔してますねー?そうですねー私の予想が合っていればヤマトさんは―

 

―小一時間で地球を含めた太陽系を消滅させることが出来ると思いますね」

 

訝しげな表情をしてしまった。

 

「凄くわかりやすく説明してあげたのに、信じてないって顔してますねー」

 

「い、いや・・スケールと言うか、太陽系消滅させるって普通に考えても無いともわないか?」

 

「いえいえ、普通に可能ですよ?先程の資料に書いてあった縮退炉とヤマトさんの話していた疑似ブラックホールの話で分かるじゃないですか~。良いですか?まず縮退炉とは一種のブラックホール生成装置なんですよ。装置内部にブラックホールを生成して、燃料となる質量物質を投下する、すると投下された質量物質はブラックホールの重力により圧壊・蒸発して膨大なエネルギーに変換・放出されます。その発生エネルギーを使える状態に変換するのが縮退炉の原理です。更には凄まじいエネルギー効率だけでなく燃料となる質量物質は何でも良いんですよ、それこそ今私が手にしているボールペンでも良いわけです・・もしこのボールペンを燃料にしたら国のエネルギーを数百年は補えるんじゃないですかね?ですから縮退炉のエネルギーを生成・維持する能力と疑似ブラックホールを疑似として認識出来る観測能力、そこまでの能力か技術力があるなら―

 

 

―地球上に疑似ではない本物のブラックホールを作り出して地球を消滅させる(・・・・・・・・)なんて容易いと思いますよ?無論自分は別次元に逃げ込んでやり過ごすなんてこともね?」

 

「そ、そうか・・しかし、やけに詳しいな?因果律やら時空・・重力体とやらに」

 

「そりゃ、私も技術者の端くれですからね、常識ですよー。とは言っても単語や大雑把な内容でしか覚えていませんけど・・どちらにしろヤマトさんの会話や資料の内容は理論上でしか説明されていない(・・・・・・・・・・・・・・)ので正確に合っているか分かりませんけどね?それか解明されてない全く未知の理論や法則だとしたら完全にお手上げです」

 

「未知の理論・・はぁ、一体何が目的で此処に来たのか・・・そうだ、さっきの資料を明石なりの解釈で良いからメモ程度に書いてくれないか?」

 

「そうですね~・・・」

 


機関 ― 縮退炉 ―

『永久機関。物質の縮退を利用したエネルギー生成装置。質量の大きい物質程大きなエネルギーを生成する』

 

装甲 ― 強制波動装甲 ―

『人類に破壊不可能。波動と呼ぶからには波長や振動、歪みや周期等だと思いますが。例えば特定の物質を超振動させ相転移させることで超強固な物になり、それを装甲として使用する場合、決められた位置に連続で相転移させ更には転移熱を発生させず発散させる必要があります。つまりラムダ転移を利用した装甲だと思います。恐らく』

 

 

武装

 

― 超重力砲 三十二基 ―

『超すごい。超重力による物体の圧壊兵器かでしょうか。恐らく』

 

― 51cm三連装反物質砲 三基 ―

 

『質量が大きいほど破壊力を増す。反物質、つまり物質の対消滅を利用した兵器ですね、あらゆる物質を対消滅させるので防ぐ手立てはありません。また対消滅時のエネルギーは驚異的で1グラムの反物質が原子爆弾以上のエネルギーを発生させます』

 

― 20.3cm連装反物質砲 二基 ―

 

『上記同様』

 

― 30mm2重6連装陽電子射出装置 七十二基 ―

『大抵の物は蒸発する。陽電子、所謂反物質の一種ですかね。上記と分けている時点で別の粒子系の可能性があります。兵器として成り立つ程のエネルギーを持つ陽電子が対消滅した場合、膨大なガンマ線が放出され周辺に居るだけで致死性の被爆を引き起こします。あ、艦娘は被爆しない体質なので大丈夫ですよ?』

 

― 艦首魚雷発射管 八門 四基 ―

『すごく早い魚雷がでる。たぶんそのままじゃないですか?弾頭に何が詰まってるか分かりませんが、普通じゃないと思いますね』

 

― 垂直発射装置 艦首128門 艦尾128門 ―

『よく飛ぶミサイルがでる。上記同様』

 

特装

 

― 重力子超収束砲 ―

『超すごい。重力子エネルギー、あらゆる物質に相互作用すると言われていますが、理論上で観測されていない物質またはエネルギーですね。もし物質の相互作用を強制的に無くす事が出来る兵器だとしたら、あらゆる物質は崩壊消滅しますね。或は重力子の収束を利用してブラックホール生成し、発生するホーキング輻射を収束して照射する兵器でしょうか。よく分かりませんが、ヤマトさんが超すごい(・・・・)と記載したのですよね?凄くヤバそうな気がしますね』

 

― クラインフィールド ―

『超すごいバリア。核にも耐える。クラインの壺に因んだものでしょうか?もし

そうならクラインフィールドは受けたエネルギーを任意の方向に転換出来るんじゃないでしょうか。例えば飛んできた砲弾を垂直に反らしたり跳ね返したりとか』

 

― ワープ ―

『ワープできる。広域空間に異常が起きる。そのままじゃないですか?空間に穴開けて移動するなら空間に異常が発生するのは当たり前です』

 

― 重力制御 ―

『重力を制御出来る。そのままじゃないですか?もし任意の空間の重力制御できるなら空を飛んだり、圧殺したり出来るんじゃないでしょうか』

 

― 次元空間曲率変位 ―

『次元に穴を開けてゴミを異次元に捨てる。空間に穴を開けるだけじゃないと思います。曲率変位とはエネルギーベクトルを湾曲させるのではないでしょうか。よく分かりません!』


 

「出来ました!代わりに間宮アイス一つです!」

 

「うわー・・よく分かんないけど、この反物質砲ってメチャクチャヤバくない?」

 

執務机に書き起こした資料を置くと鈴谷が覗いて呟いた。提督はただジッと見ているだけ。

待つこと数十秒、執務机に両肘を乗せ、組んだ手の上に頭を乗せた。

 

提督が思案するときの姿勢だ。

 

「ありがとう・・二人とも退室してくれ、鈴谷にも上げるから今見たことは他言しないように。良いね?」

 

執務机から間宮券を二人に差し出す。

普段ならラッキーと喜びの声を上げる所だが、何時にもなく真面目な提督に息を呑んでしまった。

 

「あーうん、分ったよ提督ぅ。じゃーねー」

 

「私も艤装の点検に戻りますかね~」

 

そう言いながら二人は食い下がること無く執務室から出ていった。

閉じた扉を確認して大きくため息をついた。

 

 

 

 

 

 

 

―――工廠―――

 

「え?エラーちゃん・・金剛の建造にあの・・入渠のアヒルを使ったの?」

 

―― はいです、鋼材の代わりに使えると直感が囁いてたから、使ってみたです ――

 

「そうなの・・アヒル、アヒルねぇ?ところでエラーちゃんは此処で何してたのかしら?」

 

―― あ、そうでした!頭にビビッと来たですよ、今なら凄い物が開発出来そうな予感がしたです!だから来たです! ――

 

「そ、そうなの。終わった後で良いから清霜の改造手伝って欲しいのよ。良いかしら?」

 

―― 改造です?清霜?清霜の・・・お?おおぉぉおお!キてる、キてるです!凄くビビッとキてるです!! ――

 

清霜を見て一瞬硬直しかけたエラーはヤマトにしか聞こえない声を発しながら走っていき、清霜を中心に周囲をくるくると駆け回っている。

 

 

そしてエラーに捕まり何処かに連れて行かれた。

 

 

 

―――改造資材

 

金剛型の衣服(改装設計図) 大鯨の衣服

荷電粒子射出装置2丁(新型砲熕兵装資材) 大鯨の玩具

30mm2重6連装陽電子射出装置2基(弾薬) ミニチュア

キリクマのぬいぐるみ(鋼材) 50個

大きなアヒル(開発資材) 20個

 

 

「えー・・エラーちゃん?本当にこれで・・良いの?」

 

清霜は金剛が建造された機械に押し込められていた。

 

その様子に改造だと理解したヤマトはエラーを引き止めて清霜の希望を伝えた。すると、少し悩んだ末に先の改造資材を要求してきた。

そして、清霜の希望通りに改造出来ると理解したヤマトは上々な気分でエラーの要求するものを全てナノマテリアル(・・・・・・・)で用意した。

 

―― 素晴らしいです!これなら凄いの出来ちゃうです! ――

 

ハイテンションになり周りの妖精達に指示してはアヒルやぬいぐるみ(キリクマ)を機械の中に詰めていく。

流石の清霜も改造に何故ぬいぐるみが必要なのか違和感を持っているのか不安と期待の入り混じったような何とも言えない表情をしていた。

 

「あ、あの~しれ・・」

 

―ガコン

と、エラーが資材を入れ終わったと言わんばかりに容赦なく機械の扉を閉じた。

何かしらの言葉を伝えかけていたが今となっては何も聞こえない。

 

「・・・え、エラーちゃん?何度も訊くようで悪いのだけど・・本当に大丈夫なのよね?」

 

―― ダイジョーブ・ダイジョーブ・ダイジョーブ・デス! ――

 

「不安しか無いのだけれど・・お願いするわ・・」

 

要求を伝えて資材を渡しただけで、ほぼ何もしていないと思っているヤマト。しかし提供した資材の基礎技術や資材の質、其れ等を妖精の力で艦娘に最適な形へと作り変える。

 

つまり、最高の道具(基礎技術)最高の素材(資材)を得た最高の職人(エラー)

 

其れ等が揃った時、生み出されるものは総ての最高峰。

 

 

―― 3分程掛かるです! しばらく待つです! ――

 

「あら、3分で終わるの?なら此処で待っているわ」

 

―― 分ったです! ――

 

「さて、待たせたわね?3分で終わるそうだから、此処でゆっくり待ちましょう」

 

背後の三人にエラーの言葉を伝えながらテーブルとチェアを作り出した。

 

「あら、どうしたの?」

 

大和と金剛は呆けた顔をしていて、大鯨は何事もなく席に着く。

 

二人はヤマトが次々に作り出していく大量のくまのぬいぐるみ(霧熊)やバスケットボール大のアヒルのおもちゃに理解が追いついていなかった。一体どの様にして作り出しているのか、全力で否定される常識。

そして決めつけは地面から這い上がるようにして現れる純白のテーブルとチェア。夢なのかと思ってしまう程の怪奇現象。

 

 

 

 

―――3分後

 

「じゃじゃーん!どお?清霜かっこいい?強い?」

 

濃色のドレスを身に纏った清霜が立っていた。

 

腰には艦首を模した艤装が身体の両側を挟み込むように突き出している。片側2基の砲が両側に設置され計4基8問となり、砲の後ろ側には630M Duet(超戦艦ヤマトの対空砲)が同じく両側に1基づつ配置されている。

 

既に異様な見た目だが、極めつけは艤装に張り巡らされた模様(・・)が淡い紫色の光(・・・・)を帯びている事だ。

 

 

霧特有の模様だ。

 

 

その姿は衣服と艤装はコンゴウで身体は清霜のまま、と異質なものだった。

尚、身体は成長していない様子。

 

―― 改造完了したです!KONGOの建造データを元にしたです!名付けて、大戦艦清霜です! ――

 

「金剛のデータを元に・・?」

 

―― はいです!でも幾つか装備の再現出来ませんでした・・ ――

 

「そう、別に気にしなくて良いわ?」

 

何が再現出来なかったのか聞きたかったが、それより清霜が小走りで目の前に来た。

 

「ねぇねぇ!どぉ?かっこいい?かっこいい?!」

 

目の前でくるくる回りながら意見を求めてくる清霜。

 

その光景、知らない人が見たならきっと奇怪なものに見えるだろう。

艤装に張り巡らされた幾何学な模様が淡い紫色の光を放ち、それを身に纏って謎の踊りをする光景を。

 

「ええ、可愛いわ・・ねぇ、清霜?顔をよく見せて頂戴?」

 

「?・・うんっ」

 

目の前だったが更に近づく清霜。

途中、艤装とテーブルが接触して何故か火花を散らしたのは見なかったことにする。

 

「あっ」

 

「気にしなくて良いわ・・それより顔を・・・」

 

手で触れられる位置にまで来た清霜の頬を両手で包み込んだ。そして、顔をよく見る為に向きを変えあらゆる角度から見ては、前髪をかきあげ額を確認しては、

 

変わった模様が無いか探した。

 

智の紋章(イデア・クレスト)、メンタルモデルを持つ霧が船体(艤装)を制御する際に現れる模様。基本的に顔の何処かと、操作している船体(艤装)の何処かに同様の模様が現れる。

 

「司令官・・?」

 

「清霜?艤装の・・そうね、主砲の向きを、適当に変えてくれる?」

 

肯定いた清霜は主砲4基の砲身の角度を少し上に向けた。

明らかに意思で艤装を操作しているが、それでも額に現れない智の紋章(イデア・クレスト)

 

「・・司令官・・どうしたの?きよしも、なにか、やっちゃった?」

 

不安のこもった表情に声。霧特有の模様が張り巡らしてある艤装に、まさか艦娘から霧に変わってしまったのかと色々確認したが霧とは違う様子。

それより清霜の不安を誘ってしまった。

 

「いえ、何も、してないわ・・・そうね、清霜?見せてあげるわ、私の探していたものを」

 

ヤマトは髪をかきあげ、船体(本体)との接続を強化した。

 

すると額に青く浮かび上がる智の紋章(イデア・クレスト)

 

それに反応することなくジッと伺う清霜、同じ視線の高さ、何を思ったのか手を伸ばして触れてしまった。

 

「あら、どうしたの?気になるなら・・舐めても良いのよ?・・ふふふっ」

 

見惚れているのか分からないが、指揮官の頭をペタペタと触り始める部下、絵面的に物凄く不味いがヤマトは気にしない。

それよりチャンスに見えてしまった。

 

欲望の言葉を伝え、椅子に座ったまま前かがみになり額を差し出す。

期待を込めて。

 

「あ、」

 

「どうしたの?」

 

「あわわわっ」

 

突然驚いた清霜は後ろに下がり躓いた。そのまま倒れ込むと思いきや、

 

 

 

 

 

そのまま浮かび上がった。

 

 

 

 

 

腰で繋がっている艤装を軸に足をプラプラさせながら。

 

ふらふらと浮遊している。

 

「え?」

 

「わぁ~」

 

その様子に驚きの表情を見せたのは大和だけで大鯨は相変わらずニコニコしている。ヤマトはより輝きを増した艤装をジッと見ている。

そして金剛は、

 

No, no, not like that,(違う違う、そうじゃなくてー)落ち着くデース、キヨシモ?慌てずに、コノ場に留まりたいと思うデスヨー、Legs(足が)浮くのは当たり前と思うデース!」

 

アドバイスをしていた。その様子に今度はヤマトが驚く。

 

「あら・・金剛も空を飛べるの?」

 

「Yes!私も艤装を装備したら飛べるデスヨー?持ってきますカ?」

 

「・・・そうね、飛び方が分かるなら、清霜に教えてあげて欲しいわ・・」

 

そう伝えながら何処か遠い線をしながら清霜を見た。

 

ふらふらと宙に浮きながら彼方此方ぶつけては引きずったりと酷い有様だったから。

 

 

 

 

―――金剛教室

 

両手を取り合いながら宙を浮く金剛と清霜。それでも艤装が大きく接触しそうになるが金剛は上手く避けている。

 

その様子が羨ましいヤマト。しかし介入はしない。

 

(一緒に飛びたいわ・・・この距離なら本体のバックアップで空を飛べるけど・・・チラチラ見える金剛のパンツ・・・ふふふっ、録画よ録画!)

 

欲望と羨望に揺れていたが一緒に空を飛ぶことは何時でも出来る。しかし、金剛は分からない。今は無警戒で色々と見えてしまっているが、何れ気づいて警戒されたら、その自然な姿が見れなくなってしまう。

 

なら、答えは一つ。

 

金剛の盗撮(観察)が優先!

 

 

 

 

 

そしてヤマトは気付いていなかった。

 

 

 

横で大鯨に観察されていると

 

 

 

 

「それにしても・・金剛は智の紋章(イデア・クレスト)持ってるのね?」

 

金剛の額の智の紋章(イデア・クレスト)を見ながら話しかけた。

 

―― う~ん、たぶん鳥居が原因です? ――

 

「鳥居?」

 

―― KONGOの時?機械の中に光る鳥居が現れたです でも良く分からないから、そのままやっちゃったです! ――

 

「光る鳥居・・鳥居ねぇ・・・こんな見た目をしていなかったかしら?」

 

掌に時空展開デバイス(旗艦装備)を模したミニチュアの模型を作り出した。

 

―― それです! すごくそっくりです!! どうしてしってるです? ――

 

「これはコンゴウ(金剛)が元々持っていたものなの・・・そう、清霜には現れなかったのよね?」

 

― 出ませんでした!そうでした!清霜は超重力砲の再現出来なかったです それも原因です? ―

 

「恐らくね・・・」

 

金剛が超重力砲を装備している事が判明してしまった。それ以前に、機械の内部に謎の鳥居(光る)が現れたなら中断しろと言ってやりたかった。過ぎたことに文句を言っても仕方がない上にエラーは明らかに普通じゃない妖精、常識の通じない妖精に兎や角言っても仕方がない。

 

それより金剛の建造を行った機械が問題だ。建造時に現れたと言う光る鳥居(・・・・)、それは時空展開デバイス《旗艦装備》に近い能力を持つ可能性がある。もし同様の能力があるなら金剛よりコンゴウが建造されてもおかしくない。しかし実際には性格と衣服は艦娘の金剛(コンゴウ)で身体と艤装は霧のコンゴウ(金剛)とハーフな感じの子が生まれている。

その事から考察するに、時空展開デバイス(旗艦装備)とは別で霧の船体(身体)情報のみを転送したと考えられる。

 

「ねぇ、エラーちゃん?あの機械は、エラーちゃん以外動かせるの?」

 

―― う~ん 無理です? ――

 

「そう、良かったわ・・もし、この機械で建造した子が居たら、真っ先に私に伝えて頂戴」

 

―― わかったです! ――

 

そんな独白に見える会話も、

―ガタリ

と、突然立ち上がり椅子を倒した大和によって中断される。

 

 

 

 

―――チョーク諸島南東付近―――

 

「何よこれ・・嵐?嵐にしてもこれ程の木々が薙ぎ倒されるなんて・・なんて酷い・・それに向こうの島も・・・え?」

 

夕暮れの冷えつく風が吹き付ける海上、彼女の視線の先にあるのは島。

 

木々が薙ぎ倒され、大地は剥き出しとなっている。

一定方向に向け倒れている事から嵐と推察していたが、付近にある別の島を見渡して否定された。

手前の島の木々が倒れている方向と真逆(・・)に倒れていたから。

かなりの距離はあるものの艦娘の視力なら木の葉の形までくっきりと見える。

 

 

だからこその異常。

 

 

木々をなぎ倒す程の強さを持つ嵐なら、想像もつかない大きなものになるだろう。なら、薙ぎ倒された木々の先にある島の木々も同じ方向に向けて倒されているはず。しかし、実際には反対の方向に向けて倒されている。

 

つまり、数キロも無い距離にある島は正反対の方向から暴風が吹き付けた事になる。

 

「どうして・・・嵐じゃないの?此方の島は何もないし・・そうね、向こうの島にも行ってみましょう」

 

ふとした興味本位から視線の先にある島へ向かってみる。妙に釈然としないまま移動すること数分、新たに一つの島を見つけてしまった。

 

 

「なに・・これ・・・」

 

 

 

人知では想像もつかない程の異常を。

 

 

 

中腹から円形に刳り貫かれている(・・・・・・・・・・・)島を。

 

 

 

元は一つだっただろう島が二つに割けている光景を。

もし綺麗な円形なら隧道(トンネル)と呼べたが、上部は崩れ落ちたのか繋がっている部分は一切無く、中央には(水路)が走っている。

 

 

 

あまりにも異様な光景。

 

 

 

「どうしよ・・・大和・・雪風・・・・此処は・・何処なのよ・・」

 

静かにため息をつき、空を仰いだ。

 

「仕方ありません、露見する恐れありますが救難信号送りますか」

 

腰から通信機を取り出し、電信を送った。

 

 

 

同じ水鏡型電算機(・・・・・・)を積んでいる艦艇(艦娘)なら電波の放たれた方角も分かるだろうと。期待を込めて。

 

 




KIYOSHIMO (Combined;KONGO)


―Stock Equipment―

― 356 mm/400 mm 2 Barreled Composite Active Turret ―

― 30mm 2x6 Charged Particle Beam Launcher ―

― 533mm Torpedo tubes x30 ―

― Wave Motion Compulsory Conversion Device Armor ―


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