時間遡行者と円環の理に救済を。 (スタンチッカ)
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出会いと始まり
夢と現実の狭間で


世界の終わりのような場所でー

空は赤く染まり、街は見るも無残に壊れ果てていてー

そんな何もかもが終わったような世界に

少女は一人…佇んでいた。

 

少女の視線の先には、見たことも無い怪物が浮かんでいて

その怪物は、空を埋め尽くす程に大きな身体をしていて

甲高い笑い声を響かせていた。

 

回転する身体と共に、辺りのビルをまるでー

紙のように燃やし、倒し続けた。

まるで人間の築いてきたモノ全てを憎むように破壊し続けていた。

 

少女の目線の先には、怪物に比べたら豆程に小さな…一人の少女がいた。

その少女は、黒髪の綺麗な少女だった。

黒と白とグレーの衣装に身を包み

空中で跳ね、飛び退り、時折、急回転して怪物に挑んでいた。

 

やがてその子は、怪物の撒き散らす風圧に木の葉のように

弾き飛ばされてしまった。

その光景を見て、少女は唇を悔しげに噛んでいた。

 

「きゃあああああっ!!」

 

その子を見ていた少女の隣から

あどけない可愛らしい声が聞こえた。

 

少女は一瞬となりを見るが、やがてまた、怪物に

吹き飛ばされた少女を見る。

 

怪物と戦っていたその子の美しい顔は、

苦痛に歪み、身体中は傷だらけで、

全身の力を振り絞ってビルから身体を引き剥がそうとしていた。

 

「どうして……、どうして……?」

 

少女の隣に居る子が涙目で声を荒げる。

 

「どうして、彼女があんな目に遭うのか。君はそう聞きたいんだね?」

 

少女の背後から可愛らしい声が聞こえる。

少女も。隣に居る子も。驚いて振り向くと、

そこには、見たことも無い不思議な生き物がいた。

赤い目がくりくりと人形のように存在し、

耳の中から、うさぎのような長い耳がもう一つ生えていて、

その耳には金色のピアスのようなものがついていた。

 

「あ……あなたは、誰……?」

 

不思議な生き物は、少女の隣に居る子の質問には答えずに囁く。

 

「仕方ないよ。彼女だけでは荷が重すぎた。でも、覚悟の上だろう」

 

その言葉に導かれる様に少女は、また怪物を見やる。

 

「き、きゃあああああああ!

 

隣に居る子がまた悲鳴をあげる。

 

「そんな…、あんまりだよ!こんなのって無いよ!」

 

少女は、隣に居る子を再び見て、頭を撫でた。

だが、撫でられた事には何のリアクションも起こさずに

ひたすら叫び続けていた。

 

「諦めたら、それまでだ」

 

不思議な生き物が言葉を紡ぐ。

 

「でも、君なら運命を変えられる。」

「避けようも無い滅びも、嘆きも、全て君が覆せばいい。そのための力が、君には備わってるんだから」

 

そして、不思議な生き物は、少女を見て、更に言葉を紡ぐ。

 

「そうだろ? "早乙女 有栖"。」

 

"有栖"……そう呼ばれた少女は軽く微笑んで、

それに答える。

 

「えぇ。そうね…、"鹿目 まどか"。貴方なら運命を変える事が出来る」

 

"まどか"と呼ばれた少女は目を見開き

 

「本当なの?私なんかでも本当に何かできるの?こんな結末を変えられるの?」

 

不思議な生き物は赤い目を輝かせて答える。

 

「キミなら全てを変えられる!だから……」

 

「僕と契約して魔法少女になってよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

♢♢♢

「本当に良かったのかい?有栖」

「えぇ。もう、この世界では何も出来ないから」

 

そう言って有栖と不思議な生き物は会話を続ける。

 

「君が本当に二人を救おうとしてるだなんてね」

「バカ言わないで。私が救いたいのは、"暁美 ほむら"。彼女だけよ。インキュベーター」

 

インキュベーターと呼ばれた不思議な生き物は

赤い目をギラギラと輝かせて、有栖を見る。

 

「鹿目まどかはオマケなのかい?」

「暁美ほむらが、鹿目まどかが居ないと悲しむでしょう」

 

これは、暁美ほむらと鹿目まどかを救う為のモノガタリ。

 

 



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まどかと有栖

頑張ります!


まどかside

 

ジリリリリリリリリッッッ!!

 

「ふ…ふわっ!?」

 

そのけたたましい音に、ガバッと身体を起こすと、

そこは自分の部屋でした。

枕元にはお気に入りの熊の人形。

カッパのぬいぐるみもあってー

大好きな花柄のクッションもありました。

ここは、完全に自分の部屋です。

 

ぼんやり顔を横に向けると、

カーテンの向こうから、柔らかな眩い日の光が

注ぎ込んでいました。

 

「はぅぅ……、夢オチ……?」

 

むにむにと手を伸ばして目覚まし時計を止め、

ようやくわたしは、息を吐き出しました。

出窓に近寄って窓を開けると初夏の心地いい風が

わたしの頰を撫でます。

単純なわたしは、それだけで怖い夢が遠ざかっていく感覚になります。

 

真下を見ると小さな家庭菜園にはパパがいました。

いつものエプロン姿に安心したわたしは、

 

「おはよー、パパ」

 

と窓から顔を出して手を振りました。

 

「おはよう。まどか」

 

そう、立ち上がって微笑んでくれたのがわたしのパパ。

"鹿目 知久"です。

 

「ママは?」

 

そう尋ねると、温かい声で静かに喋るパパは

軽く肩を竦めて言いました。

 

「タツヤが行ってる。手伝ってやってくれるかな?」

「はーい」

 

飛び跳ねるように部屋に戻り、わたしが駆け出します。

これは、毎朝の我が家の恒例行事なのです。

部屋から出て、廊下を走り抜け、ママの部屋に着きます。

 

「マ〜マっ!あ〜さ!あ〜さっ!」

 

案の定、ベットにくるまったママの上にまたがった

タツヤがママをポカポカと叩いています。

 

三歳児ぐらいのパンチで起きるママじゃないんだよね。

と、そのまま窓まで駆けて、

カーテンを開けはなちます。

 

「タツヤどいてね?」

 

と弟に微笑み、一気に布団をひっぺ返しました。

そして軽く息を吸い込んで、一言

 

「お・き・ろ〜っ!」

「ひゃあああああ!?」

 

なんかここ最近、楽しみになりつつある朝の行事。

そして、毎回素敵なリアクションで飛び起きてくれるママ…

"鹿目 詢子"はやっぱり素敵でした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

有栖side

ジリリリリリリリリッッッ!!!

けたたましい音に目を覚ました私は

五台ある、目覚まし時計を止めていった。

 

朝は弱いんだ…。そう思い、目をこすりながら

身体を起こす。

 

また、ダメだったか。

 

夢の内容を思い出しながら私は思う。

 

あれは夢であって夢では無い。

いつかありえたかも知れない世界。

 

私は窓のそばまで行き、外を覗く。

今日から通うことになる

私立三滝原中の生徒が歩いているのを見かけた。

 

やはり、寝坊だったか。

 

頭を軽く振りながら、髪の毛を梳かす。

 

前にあの子に綺麗と言ってもらった

自慢の長い紫色の髪の毛を撫でる。

 

今日もいい朝だな。

私はにこりと笑い、用意を進めた。



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