東方喫茶録 (一般的な犬)
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一杯目

初投降です。


 時は現代日本

 

 雑多なビルが並び、人々が忙しなく動き回り、昼夜問わず明るい都会。

 

 そこから少し外れ、入り組んだ路地を抜けた先にひっそりと喫茶店が建っている。

 

 そこは世にも珍しい妖怪が経営する喫茶店

 

 その名も[喫茶:幻夢郷]

 

 仄かに暗い店内のカウンターにて、二人の影がそこにはあった。

 

 「マスター 珈琲をくださいな」

 「ミルクと砂糖はどうするんだい?」

 

 カウンターの座席に座る女性は金色の美しい髪に、中国の道士の様な服装で、およそ浮世離れしたような雰囲気を纏っており、外見は17歳程の少女だった。

 

 マスターと呼ばれたもう一人は大学生ぐらいの男性で、艶のある黒い髪に紫がかった黒い目をしている。そんな彼はいわゆるバーテンダーと呼ばれる服装をしていた。

 

 「あら、私がそんな無粋なモノを使うと思って?珈琲はブラックが一番よ」

 「最初はそういって見栄をはって紫は珈琲を吹き出してしまったよね」

 「………あれは心の準備が足りなかったからよ」

 

 'マスター'はクスリと笑うと、'紫'と呼ばれた少女へと珈琲を差し出す。

 

 紫はそれを半分ほど飲むと、俯いて絞り出すようにマスターへと言葉を投げかけた。

 

 「ねえ……前にも聞いたけど、幻想郷に来る気はない?」

 

 マスターの元に通うこと数十年。何度も問いかけた質問。答えはいつもの決まって否定。

 

 しかし、今日は違った。

 

 「ああ、今なら行ってもいいよ」

 

 紫はハッと顔を上げ、マスターの顔を見つめる。

 

 マスターは優しく微笑みながら続ける。

 

 「もとより大切な友人の頼みだ。それに丁度いいきっかけも出来たしね」

 「きっかけ?」

 

 マスターは少し目を伏せ悲しそうな顔をしたが、すぐにまた微笑み言葉を繋ぐ。

 

 「最後の常連のお客さんがね、先月亡くなってしまったんだ」

 「常連のお客さんって……ああ、あのお爺さん?」

 

 マスターは頷き、さらに続ける。

 

 「彼はね、中学生の時から死ぬ寸前まで月1回は通っていたんだ。最初こそたっぷり砂糖とミルクを入れていたんだけど、就職した位からはずっとブラックだったなぁ。それに彼はまったく変わらない僕の姿をみても何も言わなかったし、彼が30超えた辺りで「実は僕は妖怪なんだ」って告白したら「へー、妖怪なんて本当にいたんだな。あ、マスターいつものをくれ」ってね。本当に変わった人間で、この喫茶店を最も愛してくれた常連さんだったよ。」

 

 マスターの独白を静かに聞いた紫はこう問いかけた。

 

 「貴方はその結果で後悔してる?人間と関わらなければ良かったと思っている?」

 

 はるか昔より異種同士の交流や異種婚姻などが文献や童歌等に残っている。しかし、その結果は散々なものが多い。

 文化の違いなど様々な要因があるが、寿命の違いもそのひとつに入るだろう。

 不老長命など珍しくない妖怪にとって、人間の寿命はあまりにも短い。

 

 「いいや、彼は天寿を全うしただけさ。そこに寂しさはあっても後悔なんてないさ」

 

 紫は無言でカップに残った珈琲を飲み干し、再度マスターに確認する。

 

 

 

 「じゃあマスター…いや、コウ 貴方はこの店をでて、幻想郷へ来てくれるのね?」

 

 かたや幻想郷を愛する妖怪の賢者こと八雲紫

 

 「ああ。僕は幻想に成るよ」

 

 一方その賢者と友人関係にある妖怪、コウ

 

 

 

 不思議なバーテンダーの妖怪の物語は

 

 ここから始まる

 



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二杯目 お引越し

1000文字程度でサクサク行こうぜ(建前)
これ以上書くのつらい ゆるして(本音)


 「そうと決まれば話は早いわ!」

 

 珈琲のお代わりをカップに注いでいると、紫はカウンターを叩いて勢い良く立ち上がった。

 

 「はい、どうぞ」

 「あ、ありがとう」

 

 カップを差し出すと礼を言いながら座ってしまった。

 

 「で 話を戻すけど、思い立ったが吉日、早速お引越しをしましょう」

 「急だね……まあ遅いよりかいいかな?」

 「そうよ…そういえば向こうでも喫茶店は開くの?」

 「そりゃあね でも幻想郷って茶葉はともかく珈琲豆は手に入るのかい?」

 

 以前、紫に幻想郷の暮らしについて聞いた時、色々調べてみたのだが文明は明治手前だとも、大航海時代のレベルだとも取れて、なんだかチグハグな印象を受ける。

 

 「珈琲豆や必要な物は私が融通するわよ」

 「そりゃあありがたな。でも賢者ともあろうお方がしがない雑魚妖怪に肩入れして良いのかい?」

 

 そんな自分を卑下する言葉を聞いて、紫は静かに微笑みながら答えた。

 

 「私は今ここにコウの友人として来ているのよ?それに貴方は私よりもずっと強いでしょうに」

 

 コウは苦笑する。

 

 「アハハ、僕は能力と種族に恵まれたラッキーな妖怪なだけだよ。うん…友人がせっかく僕の為に動いてくれるなら僕はその好意に甘えさせて貰おうかな」

 

 

 

 

 ◇──◇──◇

 

 

 

 「向こうに持って行きたいものはこれだけ?」

 

 そこにはボストンバッグが二つ分、中には珈琲用の道具にバーテンダーの制服等の着替え、他には細々とした日用品が入っていた。

 

 「家具やら他の日用品は向こうで揃えるよ」

 「そう?じゃあ取り敢えず荷物はマヨヒガに置いて、その後博麗神社へ行きましょう」

 

 そう言うとコウは不思議そうに首を傾げる。

 

 「神社?どうして?」

 「博麗神社は博麗の巫女と呼ばれる幻想郷の博麗大結界を管理し、妖怪を退治し、異変を解決する。いわば幻想郷のキーマンが住む神社よ。たしか今代で13代目だったかしら?」

 「ようするに挨拶と顔合わせを兼ねてるのか」

 

 そういうことね、と珈琲を飲みながら答える。

 

 「じゃあ早速マヨヒガに行きましょうか」

 

 珈琲を飲み終わった紫は"スキマ"と呼ばれる不思議空間をマヨヒガに繋げる。

 

 「たしかこの時間は藍も橙もマヨヒガに居るはずよ」

 「藍と橙ちゃんか。橙ちゃんは一度会ったきり何十年とあってないから覚えてないだろうし、藍が最後に来たのは数年前だったかな?」

 「橙はともかく藍は会いたがってたからちゃんと挨拶しておきなさいね」

 

 そう言いつつスキマをくぐる紫。

 荷物を持ち、後をついて行くコウ。

 

 

 

 スキマを潜った先に見えたのは、押し入れから溢れ出す生活用品(ゴミ)と、それに押し潰される九尾の狐だった。



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三杯目 八雲一家との会合

さくさくせんもじ


「まったく紫様は何度言えば分かるんですか!いつもいつも部屋の片付けをしなさいと口を酸っぱくして言っていますが貴女にとって片付けというのは押し入れに全部ぶち込むことですか?!ただでさえ結界の管理やら屋敷の家事やらを片付けるにも大変なのにその上で紫様の身の回りの世話ですよ?!橙ですら自分のことは自分で出来るのに紫様は子供ですか?!「い、いやそれぐらいは私でも」では最初から部屋の掃除をなさってください!面倒くさがってやらないのはやれないのと大して変わりませんよ?!そもそも紫様ばっかりコウの所へ行くのはズルいです!事前に行くとさえ伝えて頂ければ無理矢理にでも時間を作るのになんで不定期で誰にも言わずに行くんですか?!私が最後に行ったのは3年前ですよ!挙句の果てに紫様は───」

 

 

 

 そこに広がる光景を見て、

 

 橙は「あぁ、ゆかりさまがまた怒られてるなー」と。

 

 コウは「僕は何を見せられているのだらろうか」と。

 

 

 そう思ったとか思わなかったとか。

 

 

 

 

 ◇──◇──◇

 

 

 

 「あっそうだ。コウさま、お久しぶりです」

 「ああ、もう何十年も前なのに覚えていてくれたのか」

 

 従者に叱られる主人を放置し、居間に移動した橙とコウは雑談を初める。

 

 「はい!でもコウさまって尻尾とか生えてませんでしたっけ?」

 「うん、妖術で隠してるんだ。向こうで出してると変な目で見られるしね」

 

 そう言いつつ妖術を解除するコウ。

 すると頭からは犬のような耳が、腰の辺りからはスボンをすり抜けて触り心地が良さそうな尻尾が出てくる。

 ついでに目の色が黒から暗い赤色になる。

 

 「わぁ!コウさま、尻尾触ってもいいですか!?」

 「いいよー ほら」

 「うわぁーらんさまと違ってすべすべしてるー」

 

 藍の尻尾は極上の羽毛のクッションみたいな柔らかい物だが、コウの尻尾はサラサラと手ぐしを入れても毛が抵抗なくするりと通る、言うなればシルクの様な感覚だろうか。

 

 「うぅ……藍は私の従者なのに…」

 

 説教が終わったのか、居間へとスキマで移動してきた紫。若干涙目になっているが、説教程度で懲りるならああはなってないだろう。

 

 「ならもっと主人らしくしてください」

 

 居間の入口にはお盆に湯呑とお茶菓子を乗せて来た藍。こちらはまだ怒りが燻っているようだ。

 

 「久しぶりだね、藍」

 「久しぶりだな、コウ」

 

 藍が湯呑を配り終え、全員が一息着いた頃を見計らってコウと藍は雑談に入る。

 

……尚、会えなかった間─どんなことがあったか─という無難な話題で始まったのだが、その会話に紫と橙の入る隙間は無かったとか。

 

 




地震のせいでストレスが地味に来る


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四杯目 博麗神社にて

せんもじざむらい


「ふへへ〜コウ〜コウ〜」

 

「あらあら、藍がこんなに酔うなんて珍しいわね」

 

「こんな藍は初めて見たわ…魔理沙は?」

 

「私もだぜ…コウって一体何者なんだ?」

 

「うんにゃ、鬼子母神様がなんか言ってたような?」

 

「しがない妖獣だよ…藍、少し落ち着こう?」

 

 そこに広がる光景は場合によっては非常に艶かしく見えるだろう。

 酒に呑まれ、頬を上気させ、男性であるコウにのしかかって胸に頬擦りをする九尾の狐こと藍。尻尾は嬉しそうに揺れ、頭の狐耳はピクピクと動いている。

 

 コウも満更でもない様だ。その証拠に無理に押しのけようともしないし、なんなら無意識にか片手で藍の頭を撫でている。ついでに尻尾もゆらゆらと揺れている。

 見方によっては迫ってくる女性とそれを受け入れる男にも見える。

 そのせいか、数名の女性にこのような光景を見られている事は少々気恥ずかしく、コウとしてはせめて時と場所をわきまえて欲しいものである。

 

(どうしてこうなった)

 

 コウは今日の朝の事を振り返り始めた──

 

 

 

 

 ◇──◇──◇

 

 

 

 

 

 あのあとマヨヒガにて一晩お世話になったコウは、昼頃まで紫から幻想郷の地理について話を聞いていた。

 

「人里、魔法の森、霧の湖と紅魔館、冥界の白玉楼、妖怪の山、迷いの竹林、無縁塚と三途の川、地底界の旧都或いは旧地獄、天界………うーん 妖怪(ファンタジー)な僕がいうのもアレだけど、外での常識に慣れた身としてはまさ幻想の郷(ファンタジー)って感じだなぁ」

 

 地図を眺めながら店を立てる為のいい立地が無いかと模索するコウ。

 

「実際に回ってから考えてみたら?現地に行って分かることもあるのだし」

「ん、まあそうだね」

 

 地図を紫に返し、ふと気になったことを訊ねる。

 

「そういえば藍は?」

「…………藍なら橙と一緒にお仕事よ………そろそろいい時間だし博麗神社へ行きましょうか?」

 

 目を逸らしながら話も逸らす紫に、コウは(また仕事押し付けたな)と勘づいたが、追求はしなかった。

 

 

 

 

 ◇──◇──◇

 

 

 

 

「ここが博麗神社よ。ちょっと霊夢を読んでくるから此処で待っててね?」

 

 スキマを潜ると、目の前には大きな鳥居とthe神社という感じの建物が見えた。しかし、辺りに参拝客のような物はいない。

 

「まあ取り敢えずお賽銭だけでも入れておくか」

 

 此処でちょっとした問題が起きる。紫に幻想郷の通貨と自分の資金を交換して貰ったコウにはイマイチ理解出来ていなかったのである。

 

「とりあえず五円でいいか…」

 

 あろうことか一円札を五枚、現代の価値に換算すると五万円から十万円程のお賽銭である。

 

鈴尾を引っ張り鈴を鳴らし、二礼二拍手一礼と一般的なお参りをしていると、本殿のほうかドタドタと足音が聞こえてきた。

 

「お賽銭!?」

 

そこに現れたのは独特な紅白の巫女服を着た黒髪の少女だった。




此処で切らずに最後まで書こうか悩んだけどまあいっかって思考放棄した


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五杯目 博麗神社にて 其の二

この小説は

駄文 10kg
ガバ構成 8kg
妄想 1t
砂糖 お好みで

でお送り致します


「……なんだ、冷やかしか」

 

 こちらを絶対零度の視線で睨んでくる黒髪巫女服の少女は賽銭箱の裏へ周り、中身を確認する。すると

 

「ふえぇぇぇぇ!?!?」

 

 突如奇声を上げると後ろへ倒れ、気絶した。

 

 

「えっ…えっ?」

 

 

 コウはというと混乱していた。

 

 

 

 

 

 ◇──◇──◇

 

 

 

 

 

「冷やかしなんて言ってごめんなさい!貴方様は我が神社の救世主様です!」

 

「……コウ?あんまり霊夢を甘やかさないでね?」

 

 先程と一転してニコニコとご機嫌にこちらをみる巫女さん 名前を博麗霊夢といい、今代で13代目になるそうだ。

 そしてその霊夢を拾って育てた(母親)からは甘やかさないでコール。

 

 なぜか妻と娘に板挟みにされるお父さんのようなポジションにいたコウは、居間に上げられていた。

 

「まさかこんなに入れてくれるなんて!今夜は久しぶりにお肉を使っちゃうわよー!」

 

「霊夢〜?そのお金は必要な時まで私が預かっておきますからね?」

 

「えぇっ!?そんにの横暴よ!ケチ!バカ!実年齢○○歳!」

 

「うふふふふふ……貴女は今言ってはいけない事を言ってしまったわね……久しぶりに遊んであげるわ、表へ出なさい?」

 

「上等よ!私が勝ったら慰謝料ふんだくってやるから覚悟しなさい!」

 

 トントン拍子で進む会話。コウには幻想郷の重要人物2人ではなく、母娘2人がじゃれあっているかのような光景に見えた。

 

 

 といっても、実際は弾幕ごっこと呼ばれる───妖力や霊力や能力を活用し、弾を撃ち合い総合的な強さや美しさを競い合う───結構危険な戦いである。

 

 

 その後数時間に渡って弾幕ごっこが続いていたが、その間に藍や普通の魔法使いこと霧雨魔理沙、チビ鬼の伊吹萃香が博麗神社に集まり夕方過ぎぐらいに紫の試合放棄により霊夢の不戦勝で終わった。

 

 

 

 

 ◇──◇──◇

 

 

 

 

「歓迎会をしましょう(しよう)!」と紫&萃香が提案。

 

 これに宴会好きの魔理沙と懐が暖かい霊夢は賛成。藍はコウさえよければということで歓迎会という名の酒盛りが始まった。

 

 しかし考えて欲しい。この酒盛りに参加するのは人間が2人、妖獣(ただし大妖怪クラス)が2人(2匹?)鬼とスキマが1人だ。

 

 この中で妖獣組の酒の飲み方は「ちびちびと味わう」なのだ。そんな飲み方をこの鬼が許容するはずもなく。

 

「ほらー!私の酒が飲めないのかー!」

 

「す、萃香殿!流石に鬼殺しをそんなに一気にはダメです!死んでしまいm…ケホッケホッ……」

 

 と酒豪の鬼ですら酔ってしまう鬼殺しを無理矢理飲まされたりしてた。

(ちなみにコウは萃香が満足するまでお酌に務めて回避していた)

 

 

 

 で前回の冒頭へと戻るのだが、

 

「コウのみみはやわらかいな〜」

 

「頼むからどうにかしてくれ」

 

「あらぁ?酔った女性をエスコートするもの頼れる殿方の務めではなくて?」

 

「にゃはははは!!お堅い九尾が酔うとこんなになるなんて思いもよらなかった〜!」

 

 既に人間組は脱落し、鬼とスキマはこれを肴に楽しんでいたのであった。

 

 

 




イクゾッ!!(なろうサーフィン)


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六杯目 朝チュン?

甘みマシマシ

6/30追記 深夜テンションで書いた。反省はしていないが後悔はしている。あのときはピリ辛あたりめを食べていたので甘味に飢えていたのだろう。(冷静な自己分析)

(好評なら作者が恥ずか死する。不評なら作者のメンタルがしぬ)


 夢を見た。とても懐かしい夢だ。

 

 私の尻尾がまだ三本だった頃の話。

 

 あの頃の私は日に日に強くなる自分は子供のように慢心し、調子に乗っていた。

 

 

 そんなある日のこと、食料を求め妖怪のの巣穴へと潜り込んだ。

 

 所詮雑魚妖怪が集まっただけの巣穴

 

 そうやって油断していた それがいけなかった

 

 予想以上の数と、明らかに大妖怪クラスの男。

 

 結果は火を見るよりも明らかで、あっという間に捕まり、牢らしき場所に入れられてしまった。

 

 

 こうなってしまった女の末路などしれていた。

 (自分で言うのもなんだが)私の容姿は整っていて、男の獣欲を誘うには充分だったことだろう。

 

 そんな暗い思考をしている時、ふと気が付いた。

 巣穴がやけに静かだった事に。

 

 

 

 そこで目が覚めた。

 

 

 

 ◇──◇──◇

 

 

 

 

チュンチュン…

 

「ん、うぅ…」

 

 

 目が覚めたら誰かに抱きついていた。

 反射的に大声を上げそうになり、咄嗟に抑える。

 

 なぜか。

 それは抱きついていた男性がコウだったからだ。

 

 

 

 なぜこのような状況に至ったのか、冷静になって昨日の事を思いだ出す。

 

 

(えーと、たしか萃香殿に無理矢理鬼殺し飲まされて、コウを押し倒して………〜〜〜っ!!)

 

 思い出せば恥ずかしい記憶ばかり掘り出され、羞恥で身悶えする。すぐに記憶の掘り起こしを中止し、

 

(と、取り敢えずコウが起きる前に抜け出そう)

 

 そう思い、そっと布団から抜け出そうと……そこで気が付いた。むしろ他の事に思考を向ける余裕が出来て気がついてしまったと言うべきか。

 

 頭の下にはコウの片腕が回され、もう片腕で体がと引き寄せられている。かと言う私の足はコウの足に絡められていた。

 

 恥ずかしさと嬉しさにも似た感情が溢れる。

 

「〜〜〜っ!!」

 

「んー……おはよ、藍」

 

 

 思わず声が出て、慌てて堪えるが少し漏れてしまった。そのせいだろうか、コウが目が覚めてしまった。

 

「コ、コウ!?あー…おはよう?」

 

「………離した方がいいか?」

 

「えぇっ!?……もう少しだけ…ダメか?」

 

 コウは頷くと優しく微笑んで、私を抱き締められている方の手で頭を撫でられた。

 

 それがちょっと懐かしくて、心地よくて、すぐに睡魔が襲ってきた。

 

 

 

 

 ◇──◇──◇

 

 

 

 コウは藍の頭を撫でる。

 

 懐かしい思い出を思い出しながら。

 

「あれ?子供…妖狐ってやつか」

 

「だ、誰?……あいつらの仲間?」

 

 牢の中に入ったのは狐の耳に三本の尻尾を持つ10代後半程の少女。

 

 傷やアザがあることからあいつらと交戦して負けたのだろうか。

 

 妖狐とは尻尾の数によっておおよその実力が分かるが、三本もあれば雑魚では束になってもどうにも出来ない。

 

 しかし、四本以上の妖狐は滅多にいない。なぜなら様々な理由で大概は三本で死に絶えるから。

 

 大方この少女もあの大妖怪に打ちのめされたのだろうか。

 

 こちらを気丈に睨んではいるが体は震え、目元には雫が溜まっている。

 

 牢の鍵をこじ開け、頭を撫で、落ち着かせる。

 

「大丈夫…大丈夫…」

 

 少女は泣きだし、こちらへ抱き着いて来る。

 刺激しないようにそっと抱き締め、撫でる。

 

 

 そんな事を思い出しながら、コウは藍の頭を撫で続けた。




文法おかしいかもね


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七杯目 紅い空

気まぐれ更新1000文字
久しぶりなので作風変わってるかも


さて、件の宴会から1ヶ月。

 

幻想郷は紅い霧に包まれていた。

 

「紅いんだぜ」

「紅いわね」

「紅いね」

 

上から順に、魔法使い 巫女 バーテンダーである。

 

「これはきっと異変なんだぜ!ほら、行くんだぜ霊夢!」

「いやよ、めんどくさい」

「僕は暇だし行ってみようかな」

 

幻想郷に来て早ひと月。

 

今だに自宅兼喫茶店を建てる目処がつかない。

最初は人里に建てようかと思い人里の守護者こと上白沢慧音氏に相談してみたが、思ったよりもしがらみが多く断念してしまった。

 

僕は自由気ままに暮らしたいのである。

 

まあ人里しか行ってないのでまだまだ候補地はあるのだ。

 

「なあーコウもなんとか言ってくれよー」

 

と、思考が逸れていた所で魔法使いこと魔理沙が霊夢の説得を手伝えと話を降ってくる。

 

「そうだな⋯⋯きっと人里の人達は困ってるだろうな。この異変を解決したのが博麗の巫女と知れ渡ったらお賽銭が増えるかも「行ってくるわ」⋯⋯ね」

 

即決した霊夢は自室へと道具を取りに行き、魔理沙は「ありがとな、コウ。私は一足先に行ってくるんだぜ」 と意気揚々と箒に乗って飛んでいってしまった。

 

「さて、僕も行くか「ストップよ、コウ」⋯⋯どうしたの、紫?」

 

声がした方に顔を向けるとスキマが地面と平行ににゅっと開いており、そこに紫が腰掛けていた。

 

「今回の異変は人間⋯⋯もっと言えば博麗の巫女が解決しなければならないのよ」

 

話を聞くと、今回の異変は13代目博麗の巫女が考案したスペルカードルール⋯⋯言わば弾幕ごっこの宣伝のようなもので、紫は異変の主犯と取引してこの異変を起こさせたらしい。

 

「まあ彼女たちもヤル気みたいだったしちょうど良かったわ。人間陣営はスペルカードルールが浸透できて、妖怪陣営はルールさえ守れば妖怪の本質である畏れを貰えてうぃんうぃんよ」

「それで僕が行くのは不味いって訳か⋯⋯見学なら大丈夫?」

「それくらいなら大丈夫よー じゃあ私は仕事に戻るからねー」

 

と、語尾を間延びさせながらスキマに戻っていく紫。

というか仕事ちゃんとやってるの?

 

「失礼ね やる分はやってるわよ」

 

今度はスキマが床と垂直に開き、紫が身を乗り出してくる。

 

「思考を読まないで。どうせ藍に押し付けてるんでしょ?」

 

そういうと目を逸らす紫。

今度藍の仕事を手伝ってやろうかな?

 

「そ、そんなことより、今回の異変の主犯は紅魔館の吸血鬼の姉よ! 霧の湖の畔にあるから行けばすぐ分かると思うわ!」

 

と早口でまくし立て改めてスキマに潜ってしまった。

 

霧の湖に紅魔館。

 

どちらも人里の人は近づかないらしいので店舗候補としては微妙だろうか?

 

そんなことを考えながら飛び立つのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 




次回は何時になるぞや


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