超えれない境界線 (風薫る頃)
しおりを挟む

0話 木の芽?

はじめまして。風薫る頃と申します。
最近、記憶力がやばいので後で見返す自分用に書き始めました。
妄想を晒し上げるのは恥ずかしいですが、記憶がなくなる悲しみには勝てませんでした
読んでてイライラしたり、スナギツネの目になってきたらホームへ。


[オーバーロード]その物語は20世紀と12年過ぎた頃、数あるネットの小説投稿サイトから始まった。

物語は次第にサイトの中で人気になり、遂には書籍化にまで至った。書籍も順調に売り高を増やし続け既刊13巻になり、人気書籍の仲間入りを果たした。更にアニメ化や漫画なども人気の要因となるだろう。

 

………それが、俺にできる[オーバーロード]という物語の紹介の一つで。そして、[オーバーロード]の評価でもある。だが、これはあくまでも物語の評価であって、現実の話であったならちょっと待て、と言う事がいくつもある。まず第一にオーバーロードの主軸はVRMMORPG[ユグドラシル]での話なのだが、ユグドラシルはあくまでゲームでありオーバーロードの現実世界は、完全なるディストピア。生まれる両親を選ばなければ、待っているのは小卒ブラックリーマンなどの使い捨ての社会の歯車だ。ユグドラシルが始まるまで生きていられる訳がない。

そして第二にユグドラシルのデータのまま、別世界に転移するのだがそこでも待っているのはブラックも真っ青なブラックだ。

主人公はユグドラシルでのギルドのNPC共に転移するが、そこでは、敬愛され完璧な存在としての自分になろうとしている。そして世界征服に手を出し始めたもんで、やることが多くて多くて俺ならストレスで、死ぬだろう。

NPCのほうが仕事のし過ぎだという声もあるが、俺は主人公(モモンガ)の方がやり過ぎだろうと思う、本当に小卒?と何回思ったか…。

まだまだ言いたい事はあるが、結論はオーバーロードは人生を歩む上ではハードモード過ぎると、言いたい……むしろ言わせてくれ。

 

 

言わせてくれよ、神さま〜[オギャーーァゥオギャーーゥ]

[あら、204番ちゃん元気ねー]

 

元気じゃねーよ。

 

 

オーケイオーケイ、頭はhotに心はcoolにだ。

まずはこの状態を受け入れよう、俺は…どうやら赤ん坊になっているらしい、…………なにゆえに⁉

まぁまぁ、落ち着けブラザーこれはリアリティのある夢かもしれん。

そうだなブラザーこれは夢、ドリームだろうきっと!

夢か現実かを確認するには幾つかの方法があるが、赤ん坊の状態での確認となると数は限られてくる、最適なのは手の平や手の甲を見つめる方法が一番だろう、手のひらというのは、普通生活の中で一番使う部位であり、冬の限られた時間以外では何も着けず最も日常的に目に付く部位でもある。

さて、俺の手の平には死ぬ気ねぇなこいつと言いたいほど長い生命線が、右手の甲には昔した火傷が獣に引き裂かれた様な跡で残っている。………よし見るぞ、ホントに見るぞホントにホントに見るからな!

 

 

のそーっと、某しっぽで有名なポケ〇ンのような動きで見ると

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

可愛い赤ん坊の手があった。なんでや工藤ぅ。




後半勢いで書いたので、手直しすると思います。
1000文字ってこんなに辛いんですね………


お目汚し失礼しました。


                           風薫る頃。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

プロローグ

これは、作者の妄想の産物です。
noリアリティです。 
以上のことをお分かりの上お読みください。


デザイナーベビー……望まれる才能・外見・資質(体力・知力)を備えた子供が産まれるように受精卵の段階で、遺伝子操作を行った子供の総称である。

それが今世での生まれたばかりの自分らしい。

今俺は保育器(仮)の中にいるんだがこの保育器材質が非常におかしい、これプラスチックじゃないだろ絶対。万華鏡を覗いた時の様な柄が見えたり見えなかったりするし、ガラスみたいに透明になったりするし…ここほんとに日本か?

言葉が理解できるってことは日本だよなぁ。自動翻訳なんてスキル貰ってないよね?

俺ドジっ子属性あるからなぁ。ヤバい不安になってきたぞ、どうしよう心の中のブラザーに頼るか?………1回落ち着こう、深呼吸しよう。吸ってー吐いて・吸ってー吐いて…。

とにかく、言語の問題は置いとこう、情報が入ってくることはいいことだしな。とりあえず俺が赤ん坊の身体になり、保育器(仮)内にいると理解してから体感で約3時間程経っていると思う。生前、時間感覚はいい方だったと記憶しているからこの点については大丈夫だろう。そして約3時間で周囲から聞こえてきた会話によると、ここは病院で俺がいる部屋はデザイナーベビー専用の部屋らしい、ちなみに大部屋だ。

何故か赤ん坊の泣き声は聞こえないのに、たまに来る恐らく看護師であろう人達の会話は聞こえてくるのはこの保育器(仮)の性能なのだろう、無駄に高性能だなこいつ。話がそれたが、どうやらデザイナーベビーというのは、富裕層の中でも限られた者たちしか出来ないらしい。ということは、今世での両親はファビュラスってことだよな!勝ち組キタコレ、いや待てよ確か生前デザイナーベビーってのは倫理がどうやら、道徳的な問題がとか言われていたはずだよな、それに看護師達もデザイナーベビーについて話す時声色がおかしかったし……。

そもそも俺は両親の何番目の子供なんだ?これが、3番目4番目となると俺の推測だが兄弟の予備として誕生したのだろう。最悪なのは、仮に俺以外の兄弟がデザイナーベビーとして生まれたんじゃなく、母親が通常の方法つまりお腹を痛めて生んだかどうかによる。どうやら俺は母親のお腹の中に居たには居たらしいんだが、途中から培養槽?の中に移ったらしい、実にファンタジーチックである。

何故こんなに俺が家庭環境の心配をしているかと言うと、この世界がディストピアであるからだ。

 ディストピアとは簡単に言うとユートピア(理想郷)の反対だ。それだけでも嫌なのにこの世界の職務時間が平均で12時間以上と言う、夢と希望の魔法少女でも直ぐに穢れが貯まるレベルのヤバさである。更に環境汚染も世紀末レベルにチャイニーズらしく、ペストマスク(偽)を着けないと肺どころかそのまま三途の川らしい。そんな、絶望しかないこの世界だが生前読んでいたある1つの作品にほんのちょびっとだけ、似ているのだか結論を出すのはまたにしよう。認めるのが怖いとかじゃないからね!授乳の時間なだけなんだからね!勘違いすんなよ。

 

「はーい、204号ちゃんご飯だよー」

キターーー!初授乳! 赤ん坊になった唯一の楽しみ!

お乳をくれるのはどなたですか?マザーですか?白衣のエンジェルですかな?

 

 

 

 

 

 

「はい、ゆっくり飲んでね~」

 

 

 

 

 

 

哺乳瓶かい

 




あるあるですね。何がとは言わない……
お目汚し失礼しました。
                     風薫る頃。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

1話 欲しかったモノ

この話から独自解釈、オリ設定が入ります。


哺乳瓶事件から約三年が過ぎ俺は三才になった。色々飛びすぎだろうと思うが、成人男性がしらふで赤ちゃんプレイ(健全)を二十四時間していると思ってくれ記憶や意識も飛ぶだろう。まぁ辛かったとだけ言っておく。

 

神原晶(かんばらあきら) それが今世での俺の名前だ。心配していた家族構成は、両親に自分という当初の理想通りのものとなった。

神原家は俺が思った以上に高い社会的地位にいるらしい。

 

どうやらこの世界を世界を支配しているのは一つの企業らしい、しかし前世を知っている俺からしたら企業というよりも連合や政党とかに近いと感じる。

ざっくり説明すると大本となる巨大な親会社があり、そこから大・中・小の会社に分かれていくのだが、まず事業範囲がとてつもなく広い。第一次産業から第三次産業は全て手掛けており、果ては学校などの教育事業に戸籍の管理や宇宙産業など世界の全てを手に収めていると言っても過言ではないだろう。

 

何より恐ろしいのは、この世界に企業は一つだけしかないのだ。

人間が他の動物との何よりの違いは、自らに線引きを付けることだろうと俺は思っている。線引きとは法律であり、道徳や倫理に社会常識でもある。これらのことを学び守って初めて人間として権利が生まれ、尊重されるのだろう。

線引きの中には、『仕事をする。』も入っており、それを企業という仕事を与えるモノが一つしかなかったら世界支配など簡単にできるだろう。

実際この世界では、働かない=自殺と一緒らしい。外は汚染された猛毒の空気や水、汚染土だけらしいしな。

 

ここでは居住区も限られた区間しかなく、貧民区などは水などは飲めるらしいが空気は汚染が残っているらしく、ペストマスク(偽)が必要らしい。

俺が住んでいる神原の家は上級特区にあり、水や空気に土も綺麗だが、動植物がどこにもないのだけが寂しく感じる。

神原家の生業は人や家畜などが住める、居住区等の運営管理だそうだ。めちゃくちゃ地位が高いじゃないかと、初め盗み聞きしたときはびっくりした。

だからデザイナーベビーなんてお金がかかるだろう事できたんだな。

 

今世初めての親子対面は具合が悪そうな母親にそれを心配する父親という、色々と察した親子対面だった。

両親は俺に気づくと、嬉しそうに愛しそうに微笑みかけてくれた。その瞬間俺は自分でも分からないがなんでか、「生きよう」という思いが湧いてきた。前世での自分は、早く消えたいとか早く終わりたいなどを常に考えていて、ただ時間を無為にしていた。

今世の両親に会い、もう時間を無駄にしたくないと思ってしまったんだ。もうそろそろ人生を歩む覚悟を決めようと思う。

 

この人達は俺が欲しい言葉をくれる人達だから。

 

「生まれて来てくれてありがとう、おめでとう晶。」

 

 




お目汚し失礼しました。
誤字報告ありがとうございます。
                 風薫る頃。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

2話 帰らぬモノ

俺もあと少しで五歳になるころ、やっと歩けるようになった。

俺としてはようやくかと、いう思いの方が強く感動は湧かなかったが両親の喜びようがすごかった、引くくらい喜んでくれた。

家で家族団らんのお祝いをする予定だったが、せっかく歩けるようになったからと急遽母方の実家に行くことになった。その代わり五歳の誕生日は家族三人だけだ。

 

母親の生家は『高柳家』という、こちらも勿論上流階級の家だ。生業としては主に農業関係の運営管理らしい、特に花や樹木などに力を注いでいて。俺の誕生日には毎年、植木鉢で花を贈ってくれている。(それ+高級品っぽいモノも沢山くれるが…)

この世界では、花は希少なため手に入れにくい。俺は前世から植物、主に樹木や花が好きなので高柳家から贈られてくる花を毎年楽しみにしていた。

そういう事もあり、俺の中で高柳家は好感度マックス状態だ。母親から聞いた話だと、高柳家には庭園もあるらしいしな、行くのが今から楽しみだ。

 

高柳家でのお祝いが決まり、両親から訪問までに簡単な食事マナーを教えるから覚えるよう言われた。

簡単ってどの程度だ?前世と一緒の食事マナーなら、ある程度はできるが…。まぁ練習するけどね。幼児が初めから完璧に出来たらちょっと引くだろうし、大人の体と勝手が違うだろうしな。

よくよく考えて見たら自分の顔や身体見たことないな、歩けるようになったし見てみるか。鏡はどこだ?おっ、あったあった。

 

わーお。整ってるぅー。両親が美男美女だからもしかしたらと思ったが、やっぱりそうだよね。

待てよ、俺デザイナーベビーだったわ。顔面を整えるように遺伝子操作されてるのかな?ヤバい気になる。でも聞きづらいよな、「どんな感じにしたくて遺伝子操作たのんだの?」なんて。

まぁいいか愛されてるし。顔面偏差値が高くて悪いことなんか無いだろう。そんな悩むことでもないな。

しかし自分の顔ながら整ってるなぁ~。その辺の女の子よりも綺麗とか可愛いって言葉が似合うんじゃないか?。その辺の女の子なんて今世で見たことないけど…。

 

………俺ちゃんと()だよな。()じゃないよな!不安になってきたぞ。久々の心の中のブラザー登場か⁉それともシスターにするか⁉

落ち着け自分。焦っても仕方がない、もう確認(・・)するしかない。腹を決めるんだ!

 

 

ばっ!

 

 

………ない…内?名井?無い⁉

 

 

嘘だろ。前世からの相棒がいないとか。ショックなんだが、何よりも何故気付かなかった自分!

自分のドジっ子属性はわかっていたがここまでとは…

 

ふて寝でもするか、はぁ…。




お目汚し失礼しました。
              風薫る頃。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

3話 出逢い

 今世の性別に動揺したが『生まれちゃったもんは仕方がない』と腹をくくることにした。今は高柳家でのお祝いに向けマナーを学ぶことが何より大事だ。

俺がこんなに気合いを入れている訳は、理由がある。それは、高柳の祖父母に気に入られる為だ。今世で初、祖父母に会うというわけで…せっかくだし可愛いがられたいのだ。前世では、叶わなかったことだしな。

そしてあわよくば、高柳家にあるという庭園に行きたい!。

この世界で大変貴重な植物が庭という狭い規模だが、集結しているのだから是非とも見たい。前世の自然を知っている者からしたら、この世界はどうも機械的で落ち着かないのだ。前世で生まれた場所が都会じゃなかったというのも、大きいかも知れないが。

 

 

遂にやってきたお祝いの日。

移動手段は車っぽい、宙にういているがな。どうやら仕組みは磁気らしい、すべての道路と車に反発しあう磁石が内蔵されているため宙に浮くとのこと。運転は自動で空気の力で動くらしい。

個人での所有は、上流階級しか許されてないらしく中流層・貧民層は電車タイプしか乗れないそう。こんな所にも貧富の差があるとはな…。

外から今世の自宅を初めて見たが、なかなかの豪邸だな。俺は建物に詳しくないんだが、お寺っぽいな。確か、和様建築っていうんだっけ?まぁとにかく立派だ。外はお寺っぽいが内装は全然違う、旅館みたいな感じだ。

ん?どうやら着いたらしい。前世の車よりも快適だったので、つい物思いにふけってしまった。

高柳家は神原家とは反対に洋風の豪邸らしい。これぞ上流階級といった感じの家だな、絵本に出てきそうな感じだ。

 

俺は今高柳家のゲストルーム的な場所にいる。もうすぐで、祖父母に会う。ヤバい緊張してきた……ジャガイモだと思えばいいんだ、頑張れ自分!

少し離れたところから、足音がしてきた。

扉が開いて入ってきたのは、the上品な感じのムッシュとマダムだった。

 

「来てくれてありがとうね、疲れなかった?。直ぐお茶を用意するわね。」

「こら少し君は落ち着きなさい、みんなよく来てくれたね。ありがとう。」

[[お父様、お母様(お義父さん、お義母さん) お久しぶりです。]]

少し慌てたようにマダムが言い、それをムッシュがなだめるように言った。この二人が俺の祖父母らしい。あわてんぼうの祖母にしっかり者の祖父という組み合わせだな。

 

「ふふ、大丈夫ですわお母様。今日は私達の可愛い我が子のお祝いですものまだまだ元気ですわ、ね。あなた?」

「そうだね。疲れるには少し早いさ」

両親がにこやかに返す所を見ると、祖母と祖父はいつもこうなのだろう。

 

「うふふ、ごめんなさいね、心配し過ぎだったわね。」

「気にしないでください、お義母さん。

 おいで、晶。

 お祖父様、お祖母様にご挨拶は?」

っごく、父親に呼ばれた。さっきまでの緊張はどこにもない。なぜだろうか。

「はじめまして。お祖父様、お祖母様。神原晶といいます。今日はお招きいただきありがとうございます。」

「はじめまして。まずは、少し早いけど五歳の誕生日おめでとう。あなたが花を好きだと聞いてね、今朝取れたばかりの季節の花束よ。喜んでくれるといいけど…。」

心配そうに祖母が手渡してくれたのは、七色どころか何十もの色の花束だった。

「っあ、ありがとうございます。僕、毎年楽しみお二人から贈られてくる花を楽しみにしてるんです。だから、その凄く嬉しいですっ。」

そう言うと。祖母は嬉しそうに微笑んでくれた。

「贈り物はそれだけじゃないのよ。ね、あなた。」

「ああ。これは君が生まれて来てくれたことを、祝して贈ろう。水晶で作った花とブローチだよ。ブローチを着けてもいいかな?」

ああ、なんだろうこの感情は。

「は…はい。お願いします…」

「ん、了解した。………よし、似合っているよ、晶」

「ええ、とっても可愛いわよ晶ちゃん。」

祖父母が褒めてくれた。俺、何もしてないのに。

「あ、ありがとうございます。」

[[どういたしまして。 晶、生まれて来てくれてありがとう。そしておめでとう]]

きっと今酷い顔をしてるだろうな。幸せだな俺、祖父母にちゃんと伝えようありがとう。と。

「あ、ありがとう。おじいちゃん、おばあちゃん。すっごく嬉しい。」

 

 

 

 




お目汚し失礼しました。
            風薫る頃。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

4話 天秤

あんなに緊張した祖父母との対面は和やかなものとなった。お金持ちのお祝いも庶民とそんなに変わらないんだなぁなどと考えていたら現実はそんなに甘くなかった。

「そうだ、晶。お祝いの前におじいちゃん、おばあちゃんと一緒いついてきてほしい所があるんだ。いいかい?」

「?うん。大丈夫だよ。どこに行くの?」

そう聞くと祖父は申し訳なさそうな顔をして黙った。

「ちょっとお父様なんですの?晶をどこに連れていくかハッキリ言ってくださいな。」

お母様!さすがです。

お母様に感動してたら祖父が爆弾を落とした。

「…嫌な、晶に贈った水晶の花を頼んだ部下が晶のお祝いを自分達もさせてくれと聞かなくてな。晶、ほんの少しでいいんだ顔を出してやってくれないか?」

「お父様どういうことですの?話が違いますわ!」

えぇ…まじか。本音を言えば絶対出たくないが……おじいちゃん孝行の一つと思って頑張るしかないよな。もう準備万端っぽいし……今更断れないよじいちゃん……

「お母様大丈夫です。ほんの少しでいいんですから、ね?おじい様。」

「あ、ああ。ほんの少しで構わない。済まないな晶。」

「構いません、その代わりお願いが一つあるんです。」

「ん?私に出来る事なら何でも叶えてやるぞ。」

キターーーーー

「僕、庭園に行ってみたいんです。だめですか?」

「そうか、晶は花好きだったなあ。構わないよ。」

「ありがとうございます。おじい様!」

よし!ナイスだぞ自分。

「はぁ……お父様、晶に感謝してくださいよ。

 晶、ごめんなさいね。お父様に付き合わせて。」

「気にしないでお母様。」

「ありがとう、晶。私達はお祝いの準備をしてるから、楽しみにしていて」

そう言うとお母様は抱きしめてくれた。微かに果物と薔薇の香りがする。……この香りが今世の母の匂いか……前世はどんなだっただろうか、もう思い出せないが。

 

 

家族と一旦別れ、祖父と共に来たのは一つの部屋の前だった。

え?小さくない?ちょっとしたパーティー部屋を想像してたんだがな。扉が開かれると見えたのは、広いっちゃ広いがパーティー会場というよりも会議室のような部屋だった。そして十数人の大人達が全員立って祖父(・・)を待っていた。

その瞬間俺は察した、祖父が微妙な顔をした訳も。これは俺のお祝いという名のプレゼンテーションなのだろう。実際はじめこそお祝いの言葉を掛けてくれたが、直ぐに俺より祖父に注目したしな。

…これ、俺いらなくね?そのうち寝るぞ。そんなことを考えていると、祖父からメモを渡された。書いてあったのは庭園の場所への案内だった。イケメンすぎかよ。

「ありがとう。おじい様。」

小さい声で言うと祖父は驚いた様な顔をしたが、何も言わず微笑んだ。

プレゼンに夢中の大人達に気づかれずに部屋でてメモの案内通りに行くと、そこにあったのは懐かしいが小さくなった世界だった。

 

 

今世は恵まれた家庭環境で生まれた俺は幸福なんだろう。前世を知らなければ。

前世の自分は中の上程度の家庭で生まれた。両親は共働きで一人っ子だった自分は、寂しくても最初は忙しい両親からの愛情で満足していたのだが、足りないものを埋めるように外に求めだした。次第に世界が両親と自分だけでは無くなり。学校では先生に、職場では上司に認められたくて、見てもらいたくて頑張っていたのだが途中で気づいてしまったのだ。自分が求めているものは、選んでほしいことなのだと。何よりも優先して、一番に考えてもらいたかったのだと。所詮学校の先生も上司も仕事だから見ているのであって、そんなものは一番でも何もない。そして自分が真に選んで欲しかった時は過ぎていて、もうどうにもならないという事に。

気づいた瞬間、何もかもどうでも良くなり仕事もやめ家に籠っていたのだが、今までナニカに尽くしてきた人生。身体を動かしてないと落ち着かなく結局、ブラック企業に就職して同期や部下の仕事を減らしながら自分の仕事をこなす毎日を過ごしていた。そんな毎日に身体が耐えられなかったらしく、十数年後には死んでいた。

 

いかん、久しぶりの自然に触れたら変なスイッチ入った。切り替えよう、久しぶりの自然だぞもったいない。

それにしても見事な庭園だな、ほどほどに整備されてない箇所は自然そのままな様な感じだしきっちりされてるところは一種の芸術のようだ。

よく見ると銅像なんかも置いてあるしなぁ、どれも本物みたいだ。あの子供の像とか今にも動きだそうだし……あれ本物じゃね?

まじで?それになんか泣いてない?庭園に入れる人は基本高柳家の人間だ、その中に子供は聞いた中では俺一人だけそうすると迷子か。とりあえず声かけないとな。

「っぐす…………っひく。。…………おとう………さぁん…っひく」

「ねえ、君。迷子?」

「うわぁ!…君…誰?」

「僕は神原晶、君の名前は?よかったら教えてほしいなっ。」

「ぼ、僕の名前鈴木悟って言います。…お父さんとはぐれちゃったの…。」

 

……………。…マジで!?

 

 




お目汚し失礼しました。
朝日が染みます…
               風薫る頃。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

5話 分岐

お久しぶりです、風薫る頃。です。
まずはじめに、投稿が遅くなってごめんなさい。
理由は色々あるんですが、夏のせいにしておきます。
ぜひクーラーをガンガンにかけてお読みください。



鈴木悟……何の変哲もないありふれた名前だろう、前世では。……今世では鈴木悟という名前は大きな意味を持つ。

俺はこの世界に生まれてすぐ、転生したことに気が付いた。そして直ぐにどのような世界軸なのか判断しようとした、それはこの世界に原作があるのか・ないのかの判断だ。

 

下らない、原作があるかないか何て関係無い、人生というものを汚している。と思われるかも知れないが原作の有無の確認は、転生者にとっては何よりもすべき大切なことだ。

第一に原作ありの世界は生きていくことが厳しかったり難しいものが多いと個人的に思う。それは単純に自然環境だったり世界的な戦争や、裏の裏を読まないといけない人間関係など様々。主な原作は漫画か小説になるのだがそういったものには必ず夢や希望そして絶望などの、道筋がある。その道筋の確認をすれば身の置き方がほぼ決まる…オーバーロードでの身の置き方が………。

 

そう考えると鈴木悟は特殊な原作の人物になる。なぜならこの世界はオーバーロードの世界ではないからだ、今の世界に魔法も異形種も存在しない、現実なのだ。だから鈴木悟という、いずれはモモンガになり。そしてアインズ・ウール・ゴウンになる人物と関わっても親しい間柄にならなければ大丈夫。

 

「そう思っていたんだけどなぁ…はぁ。」

「ん?どうしたんだ晶、ため息なんてついて…珍しいな。」

そう言って心配そうに顔を覗かせるのは活発そうだが利発的でもありそうな少年がいた。

「いや…何でもないよ()。」

 

 

悟と出会ったのは高柳家での庭園だ。父親に連れてこられたが肝心の父親は祖父に俺への贈り物(プレゼン)に夢中で悟の事は客間的な部屋に放置していた。部屋には幼い子供のおもちゃなどなく、どうしていいか分からなくなった悟は父親に会いに行こうとして迷子になったらしい。

使用人を呼んで悟の事を任せて関わるのはこれっきりにしよう。そう思っていると。

 

「わぁ…すっごく綺麗だね!。」

「え?」

いきなりのことでびっくりしていると悟は目をキラキラさせて言ってきた。

「服に付いてる透明なお花のことだよ。僕こんな綺麗なもの初めて見たよ。」

「あ、ああ。これはブローチっていうんだ。透明なのは水晶だからだよ。」

どうやらブローチに反応したらしい。確かに子供は好きかもしれないな。

「このブローチ光に当てるとたくさんの色が見えるんだ、良かったらみる?」

「ほんと!見る見る!。」

ブローチを渡すと悟はさっきまで泣いていたのが嘘のように笑顔になった

「わぁーほんとだぁ…すっごく綺麗だ……。」

「ありがとう。そのブローチ祖父から今日貰ったんだ。祖父も喜ぶよ。」

「?……今日貰ったってことは誕生日なの?。」

「うん。」

「ほんとに?!、すっげぇ、おめでとう!。」

「ど、どうも。」

テンションのあがりかたにびっくりしていると。

「僕、誰かの誕生日をお祝いしたの初めてだ。なんか嬉しいなぁ。

 ブローチ見せてくれてありがとうね、すっごく綺麗だった。」

「どういたしまして。」

ブローチを付けたら、じぃーっと悟が見てくる。

「なにか付いてる?。」

「ううん、そのブローチだけでも綺麗だけど、やっぱり君が付けてる時の方が綺麗だ。」

「………。」

あぁ、もうどうしよう。なんだこの気持ちは!

「ど、どうかした?。」

「ねぇ、お願いがあるんだ。聞いてくれる?。」

「いいよ。僕に出来る事ならどんなことでも。」

「もう一回おめでとうって、言って欲しいんだ。」

「そんなこと?別にいいけど…。」

「ありがとう。でも、おめでとうの前に名前を呼んでほしいなぁ。

 …鈴木悟くん、僕の名前は神原晶って言います。出来たらもう少しだけ一緒に居たいと思ってる、けどだめかな?。」

 

 

 

 

 

 

 

 




お目汚し失礼しました。
                 風薫る頃。


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。