底辺ウマ娘が異世界転移したら何気にチート臭かった件 (うひひゃう!@)
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1回 トットーリ開催 1R それでもどっこい生きてやる!

6/24主人公の名前を修正。


「何がよ~しだっ! ぶっ潰す!!」

「ええええ~っ!?」

 

 

 思えばあたしの人生、一番のピークがあの瞬間だったな。

 

 

 後のG1娘相手に僅差の二着。周囲があたしをもてはやし、褒め称える一方でトレーナーだけは冷静にあたしに現実を突きつけてきたっけ。せっかくベスト5に入る名門チーム「エストレージャ」に補欠とはいえ入れたというのに、あたしって奴はその機会を初出走で調子に乗り、挙句無駄にしてしまったんだ。

 

「クイーンベレー、お前にはデビュー戦の時に渾身の仕上げを施して送り出してやる。そこで勝てればお前の将来はある程度見込めるだろう。無論、自分でも分かっているとは思うがG1でどうこういうレベルにはなれる才能はない。だが勝てば準オープン位までは道が開けるだろうが、もし負けた時は、その後の見込みは正直全く無い。ぶっちゃけてしまえばこれは賭けだ。負ければそこでアウトだという事を肝に命じておけ。初戦で無理をしたお前に未勝利を勝ち上がる力さえ残らないだろう。その時は身の振り方を考えておくように」

 

 そう言って才能の無いあたしに親身になって送り出してくれたトレーナーの顔を潰した訳だからあたしが悪いのは自覚している。それに正直、才能が無い事なんてあたし自身が一番分かっていた。それでも、G1は無理でも準オープンまで上り詰めれば賞金だけで自立して食ってはいける。それだけじゃなく、田舎で待ってる年老いたばっちゃの分くらいはかつかつでも稼げる筈だったんだ。

 

 

 

 北海道の鵡川にある片田舎の小さな牧場であたしは生まれた。母親が育児放棄して田舎から出て行ってからあたしはばっちゃに育ててもらった。幸いばっちゃの家は多産で当時はまだばっちゃの子供もあたしと同じ位小さな子がいたから、もののついでとばかりにあたしを二つ返事で家族として受け入れてくれた。その事にはとても言い表せない程に感謝している。

 

 ばっちゃはあたしをトレセン学園に入れる為に朝から晩まで一生懸命に働いてくれた。直前には浦河にあるUTCという施設でトレーニングまでさせてくれたんだ。あそこは一日数百円でトレーニングさせてくれるけど、そこまでの送り迎えやなんかも合わせると一体いくら使ったのか見当もつかない。もっともUTCを保育園代わりにあたしやばっちゃの子供を預けてパートの仕事に出かけていたのだから、収支は黒字だよと言っていたっけ。

 

 

 

 いずれにしても、そんな思いであたしをトレセン学園に送り出してくれたばっちゃの期待を裏切る結果を出してしまった。それは戦績の事だけではなく、

 

「惜しかったね」「次は勝てるわよ」「期待の新人相手に二着なら上等だよ。次は勝てるっ!」

「残念だが次など無い」

 

 慰めてくれる仲間たちであったがトレーナーは冷たい視線であたし諸共彼女らを凍りつかせる台詞を放った。

 

「この馬鹿者が! 余計なダーティーファイトをしなければ僅差とはいえ勝てていたかも知れんのに。お前の敗因は相手を舐めてかかって自分のレースに集中しなかった事だ。汚い勝負を仕掛ける奴などうちには不要! どこへなりと出ていくがいい!」

 

 

 

 こうしてチームを追われたあたしは、その後空に浮いた自身の身柄のせいでレースに出る事すらできなくなってしまった。三か月の浪人生活の末、最終的にクラスメートに土下座までして頼み込んで、リーディングでも下から数えた方が早い底辺チームに移籍させてもらったのだが、そこで待っていた現実は想像を超える非情なものだった。

 

 半ばチームの雑用係。

 

 チームの仲間とはいえ、本来なら引退してなきゃいけないような年齢でまだ学園にしがみ付いてる年増の先輩と、寄る辺の無い底辺の新入生。覆しようの無い格差のある先輩たちからあれこれと頼まれごとをされるからあたし自身はトレーニングする暇さえなく、レースも、他にチームの選手が出ない処で出走手当を狙うか、悪くすればチームメートが勝てる様におぜん立てする事を義務付けられて出走させられる始末。定年間際のトレーナーはマッサージと称してあたしの躰をいやらしい手つきで触りまくる。大事な人にしか許さないと誓った耳まで蹂躙され、モチベーションも下がる一方であたしは走る事が嫌いになっていた。

 

 真名であるクイーンベレーどころか完全に二等兵以下の扱いであった。命と言っていい眼帯(伊逹)もトレーナーに取り上げられ、あたしの躰に飽きたトレーナーから丸坊主を強いられる屈辱まで味わって、こんな精神状況で戦果を残せる筈もなく、移籍以後の成績は、

 

 四着、六着、十二着、八着、九着、これじゃいけないと一人奮起して三着、しかし努力も才能も無いあたしにはそこまでが限界だった。以後、十六着、タイムオーバー、タイムオーバー、タイムオーバー。

 

 結局、あたしが残した成績は11戦全敗。二着一回、三着一回。ウイニングライブに参加できたのはデビュー戦の一回きりだった。

 

 

 

「本日をもってあなた方は退学処分となります」

 

 僅かな猶予期間を経た後、他の未勝利の娘たちと一緒に秘書さんからそう宣告された時、周りの娘たちは泣いているのに、あたしは涙も出なかった。田舎を離れて以来あたしを守ってくれる人は居なかった。

 

 一緒に育った叔母、つまりはばっちゃの実子で母親の妹にあたる娘がこのトレセン学園に残っている。とはいえ同じ歳のウマ娘であるが、彼女を頼る事は出来なかった。田舎を出る時にそう約束したから。彼女は二勝を挙げクラシック戦線では苦戦しているみたいだが、そこそこの成績を残して頑張っているらしい。

 

 むしろばっちゃの負担を減らすという意味でなら、あたしが退学するというのも実は悪い選択ではないのだ。何しろトレセン学園は金喰い虫だ。一月当たり大凡60万程の費用がかかる。叔母の方はギリギリ賞金で自分の分は賄えているらしいが、あたしは最初の半年は何とかなったが最後の半年はばっちゃの仕送り頼りだった。どのみちこれ以上はばっちゃの負担になれない。

 

 荷物になるものは全部府中の町で処分してあたしは身一つで放校処分となった。

 

 

 

 さて、これからどうするか?

 

 最早地方でレースを続ける意欲も無くなってしまった。地方で連勝すればまたトレセン学園に戻ってレースが出来ると言う制度もあるらしいが、そこまでしてこの世界にしがみ付く程のモチベーションがもうあたしの中には無い。

 

 明日からは寮の飯も食えねぇんだな。美浦寮は納豆の出る比率が多い事以外は充実した食生活だった。思い出すなぁ、よだれ鳥の人参包み。それだけが心残りである。

 

 はぁ。

 

 新宿にでも出て円光でもすれば日銭位は稼げるとは思うが。ぶっちゃけ男共には人気の葦毛キャラである。顔にもスタイルにもそこそこ自信はあるし、幸いな事に丸刈りにした髪は半年程のタイムオーバー謹慎の間にライアン先輩位まで伸びたので需要が無い事まではなかろうというのが不幸中の幸いというか何と言うか……

 

 いかん。何とか前向きに行こうとしてもネガティブが襲ってくる。

 

 ばっちゃは田舎に帰って来いと言っていたが、正直いまさら会わせる顔が無いし、そもそもばっちゃもいつ倒れるか分からない程高齢だ。むしろこっちで頑張って、亡くなる前にいずれはばっちゃから仕送りしてもらった分を返したいとは思うが……

 

「当分はネカフェ暮らしだな~」

 

 決意表明としてはいささか深刻味に欠けるゆるい台詞だが、覚悟を完了する為にあえて言葉に出して、府中駅から京王線の改札を潜り抜けた。

 

 残金はICカードの中の3462円と最後に三着だった時の賞金の残りカス、約七万円だけ。入学の時にチャージしていたあたしGJ! 

 

 やがて千歳烏山の駅を過ぎた辺りから電車はノロノロ運転になってきた。おかげで緩い振動と暖かな昼間の陽気に誘われてうつらうつらと眠くなってきてしまった。

 

 今後、こんなに呑気に眠れる日が来るのは次、いつになるかわからない。

 

 寝て、いいよな。

 

 おやすみ~

 

 夢の中ではせめて相良宗助似のいい男に愛されたいな、Zzz……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 どんがらがっしゃぁぁぁぁぁぁぁん!!

 

 

 

 

 何事!?

 

 

 

 凄まじい音と衝撃にあたしはすっかり目が覚めて周りを見渡し、

 

 

 

 そして

 

 

 

 絶句した。

 

 

 

「ここは、一体どこだ?」

 

 青い、東京とは思えない程の青い空と、照りつける太陽。赤茶色い土、いや、砂、か?

 

 見渡す限りの広い空間が砂によって支配されていた。

 

 なに? これ? これじゃ、

 

「これじゃまるで砂漠じゃねぇかあぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

 熱っ!

 

 叫んだ瞬間に熱波が口の中に入りこんできた。

 

 体感で多分五十度以上あるんじゃないだろうか? この暑さはあたしらウマ娘には厳しすぎる。何しろ明治時代にあたしらの祖先がヨーロッパから移民した時に、夏の暑さを避けて北海道まで逃げ出したって話も伝わっている位だからな。

 

 ともかく、冬支度も間も無くという季節柄、防寒と季節先取りを考えて着こんでいたスカジャンとトレーナーを脱ぎキャミ一枚になる。なって直ぐに後悔して改めてトレーナーを着こむ。

 

 熱っちぃ――――っ!!

 

 一瞬で露出した肌が真っ赤に焼けた。あたしら葦毛は皮膚も白くて弱い。強い日差しは敵である。そういや、砂漠では肌を晒したら普通に命取りなんだっけ。

 

 脱いだスカジャンを頭の上に乗っけて影を作る。ようやく一息つけそうである。

 

 荷物、は、幸い直ぐ近くに落ちていた。バッグの中から売店で買っておいたウマ茶を出して口を付ける。一本だけとはいえ買っておいてよかった。

 

 冷静になり考えると疑問が湧いてくる。

 

 ここはどこだ?

 

 何故あたしはこんなところに一人でいる?

 

 あの凄まじい破壊音は何だったんだ?

 

 どうやったら帰れる?

 

「ふっ、帰る、か……」

 

 どこへ帰ると言うんだ、あたしは?

 

 未練たらしいな、我ながら。

 

「ウマ娘15年~♪ 化天の内を比ぶれば 夢幻の ごとくなり。一度生を受け 滅せぬ物のあるべきか~」

 

 あたしは座右の銘でもある敦盛の詩をいつの間にか諳んじていた。

 

「こうなったら、砂漠だろうが歌舞伎町だろうが関係ねぇ! 何が何でも生き抜いてやるっ!!」

 

 この期に及んでも死にたいと思う気持ちにならない自分自身をあたしは少しだけ見直した。

 




UTC:公益財団法人ウマ娘育成調教センター(Umamusume Training Center)は競走興行従事者の資質の向上を図り、安定的なトゥインクルシリーズの発展を通じ、育成調教技術者の養成及び育成調教技術の改善・普及を行うことにより、優秀なウマ娘資源をかん養し、もって競争ウマ娘生産の振興を図ることを目的として設立され、この日高育成総合施設ウマ娘育成調教場の運営・管理及び貸与を行っている公益法人です。

 施設の総面積は1500ha。イギリスのニューマーケット、フランスのシャンティなどに匹敵する広大な草原を利用したグラス馬場や本格的な追い切りが可能な直線1800mに及ぶ芝馬場を中心に、1600mと800mのトラック馬場及び1600mと1200mの直線砂馬場、屋内のコースとして1000mの直線ウッドチップ馬場・600mトラック砂馬場・1000m坂路馬場があり、世界に誇れる施設といえます。


タイムオーバー:一位入線のウマ娘から通常5秒以上遅れて入線した場合その者はタイムオーバーとして失格となります。未勝利の場合はこの規定は特に厳しく、一回目は以後一か月の出場停止。二回目は二か月間、三回目は三か月間の出場停止となり、その間にその年の未勝利戦が終わる為、ほぼ事実上の引退勧告となっています。


地方競バ:まっこと、高知はいい所ぜよ! byハルウララ。


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2R いきなりの戦闘!

 正直に言いましょう。最終回のテンションアゲアゲで突発的に投稿したのが一話でした。はっきり言って今後の展開とか、何も決まっていません。このままなし崩しに続けられるのか? あるいはエタってしまうのか? 本業との両立が出来るかどうか、悩みは尽きず更新もいつできるかわかりません。それでも宜しければ見てやってくださいませ。



 走る、走る、走る。

 

 かれこれ二時間程も走っただろうか?

 

 正直、あたしはダートを走るのは苦手である。

 

 ぶっちゃけラスト三走のタイムオーバーは全てダートを無理して走らされた結果でもある。正直ハロン辺り13秒を切るのが結構しんどいのだ。ましてやこの砂漠の砂はきめ細かく、深い。噂に聞く笠松のダートよりも辛いんじゃないかと思う。

 

 いや、当然レース程早く走っている訳じゃない。当たり前の話だが精々ダク足程度のスピードだ。ましてやこの暑さである。数分走って息が整うまで歩いての繰り返しである。

それでも時間当たり20キロ位は進んでいると思う。

 

 やがて、日がだいぶ傾いてきた。直に日が沈むだろう。そうするともう少しは涼しくなるだろうから、そうしたらその間に距離を稼いで早めにこの砂漠を出たいところだ。

 

 そう、皮算用をしていたところ、あたしはとんでもない物を発見してしまった。と、いうか発見されてしまった、だろうか?

 

「うげ!」

 

 蠍、スコーピオン。中国では唐揚げにして食べる料理もあるらしいが、はっきり言ってあたしは御免被りたい、見た目でもうノーサンキューな生き物である。もっとも、こいつは簡単に料理されるようなタマでもなかろう。何しろこいつを揚げられるような中華鍋など存在するとは思えない。

 

『キシャァァァァァァァァァァァッ!』

 

 思い切り威嚇されている。毒のある尻尾をあたしに向けて大上段から突き刺そうと、すんげー背伸びして。つまりは身長170のあたしの頭上に届く程の高さ。体高でも2m超え、体長は実に4~5mはあるんじゃないか?  

 

「どうしろってんだよ、こんなの」

 

 あたしに向け示威行動をとる巨大蠍は、大きく振りかぶった尻尾の棘をあたしの脳天目がけて振り下ろした。

 

 ぐっ!

 

 間一髪避けることに成功したものの、ぐるんと後方回転するつもりが、手を付いた所が深く埋もれてバランスを崩してしまった。こういう時、ヒシアマ先輩なら「タイマンだーっ!」って嬉々としてバトるんだろうけど、あたしみたいな似非ヤンには絶対的な実戦経験が不足している。いや、ヒシアマ先輩だってこんな化物と闘った事なんて無いだろうけど。

 

 どしん、と尻もちを突いたあたしは、巨大蠍に尻を向けた無防備な状態であったが、蠍の方も振り下ろした尻尾が砂に突き刺さって抜き辛いらしく、幸いな事に第二撃が来るまで僅かながら間が空き、なんとか態勢を立て直せた。

 

 たしか、ヒシアマ先輩は、

 

「タイマンの時は相手の目を睨み付けて目を逸らさなきゃ、大抵は勝てるっ!」

 

 って言ってたっけ。

 

 ……蠍の目って、

 

 あたしは地面すれすれの蠍の目にガンをつけた。

 

 ……本当に効果あるんだろうか?

 

「キシャァァァァァァァァァァァッ!」

 

 ああ、きっと効果ないわ。

 

 その証拠に今度は両方のハサミを振り乱しあたしの足を狙いに来ている。

 

 そして、ぎちぎちと無数の足を鳴らしながら意外と速いスピードでにじり寄って来た。

 

 そして、確信した。あたし、こういう節足動物って苦手だわ。

 

「うっぎゃああああああああああっ!!」

 

 にじり寄るキモさ加減に我を忘れ、再度振り下ろして来た尻尾をむんずと捕まえると

 

「あっちいけぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」

 

 ぐるんぐるん振り回してぶん投げた。

 

「キシャァァァ……」

 

 あれ?

 

 思ったよりずっと遠くまで飛んでいった?

 

 20m程も飛ばしてやっただろうか、ドッスンと墜落した蠍は、流石に自重が重い事もあって、落ちた瞬間に損傷したのだろう。立ち上がった瞬間にぽろっ、とハサミが落ちた。

 

 あ、これ、いけるんじゃね?

 

 重いとはいえ、練習用の「重いコンダラ」よりは全然軽いわ。

 

 ましてや、あたしは足はともかく、腕の力だけは自信がある。ヒシアマ先輩にタイマンを挑まれてアームレスリングで勝ったこともあるんだ。以来一目置いてくれて何かと面倒を見てくれていた。寮の後輩とはいえ、一介の未勝利娘であるあたし相手にだ。あの人の暖かさがあったからあんな環境でもずっと耐えてこられた。きっと、恩人ってああいう人の事をいうのだろうな。

 

「グ、キシャァァァッ!」

 

 あ、戻って来た。

 

 今のぶん投げで結構ダメージがあるようだ。これなら素手でもいけるかも?

 

 またしてもハサミを使って足を捕えようとしてくる。そこを逆に踏んづけてやった。みちっ! と妙な音がしてぶらぶらしている。流石はウマ娘用のレーシングシューズ。底に付けた蹄鉄が十分凶器としていい仕事をしてくれる。

 

 に、しても思ったより脆い? 無理やり解体したら勝てるんじゃね?

 

 次は毒針を突き刺そうとする尻尾をどうにかしよう。胴体に乗っかって逃げられない様にしてから尻尾をつかむ。所謂蛇腹関節になっている尻尾は、それ以上いかない所まで逆関節にむりやり曲げると拍子抜けする位簡単に折れてしまった。

 

 よし、これで直接攻撃の手段は潰した。後はどう仕留めるか、だけだな。

 

「おらぁっ!」

 

 かかと落としの要領で乗っかっていた胴体を踏み抜いてやるとバキッ、と音がして固い甲羅が割れて内臓が見えた。そこに手を突っ込んで内臓を引っ張り出してやる。

 

 ねちょっ、とした気持ち悪い感触がうげぇ! だったが流石にそんな野蛮に対処する方法は無かったらしく、蠍の化け物も遂には倒れてしまった。

 

 うーん、今夜は夢で見そう。

 

 微妙な気分ながら、どうにか退治に成功したな。終わってみれば危ない場面も無かったので良しとしようか。

 

 そんな事を考えていると、死体からプシュー! と黒い煙みたいなものが噴き出した。

 

 まさか爆発するんじゃ?

 

 慌てて飛び降りて50m程も逃げただろうか? 結局30秒程の間吹きだしていた煙は唐突に止まると、蠍の躰が真っ白になっていた。まるでライン引く石灰のような感触になっている。触るとぼろぼろと崩れ落ちた。きもい。と、いうか、どういう現象なのだろうか? 

 

 そして、あたしがぶち抜いた内臓の部分、その奥が光っていた。

 

「な、なんだ?」

 

 恐る恐る光の元を探るべく、内臓部分に手を突っ込んだ。何かを掴む感触があった。

 

「うわ、綺麗……」

 

 あたしの手が掴んだものは青い発光する石のようなものであった。

 

「これって、魔石って奴じゃないか?」

 

 自ら発光しているその石の不思議な魅力にしばしうっとりと眺めていたが、

 

「大分日も傾いてきたな。一応、これだけ持って行こう。流石にこんな処で野宿とか嫌すぎる。この石は記念にもらっとくか。もしかすると売れるかもしれないしな」

 

 こうして、この世界へ来て最初の戦闘? はあたしの勝利で幕を閉じた。戦利品も得てなんとなくほくほくした気分である。が、あたしはまだ砂漠の恐ろしさを理解しきれていなかったようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 さ、寒い。

 

 

 

 日が落ちてからというもの、あれだけ暑くてたまらなかった気温は、反転して今度は凍える寒さに辟易としている。

 

 寮を出る前に見た今日の最低気温が8度で冷え込みがきつくなるという話だったので厚着をしてきたつもりだったのであるが、感覚的には北海道の冬並の気温なんじゃないか?という位寒い。

 

「びぇっくしょい、ちくしょーめっ!」

 

 鼻が出た。駅前でもらったポケットティッシュでちーん、と鼻をかんだら凍った。恐らくマイナス20度位の世界だろうか。

 

 あ、

 

 さっき手に入れた魔石(仮称)があったかい。熱を持っているのだろうか? ゲームをやった後のスマホみたいに暖かいので、このまま懐に入れて温まろうか。

 

 そして、こんな所で休む位ならこのまま走り続けて行こうと決意した。なんか休む方が寒さ的にも命が危なそうである。

 

 かれこれ、三時間程も走っただろうか? 

 

「町の灯だ」

 

 いくつもの灯りが灯っているのを発見した。

 

 まだ2~3キロあるかと思うが、ここまで来たら慌てず騒がず粛々と近づいていくだけである。そして、近づいて行く度に見える物が増えて来た。

 

「オアシスだ。助かった」

 

 この辺りだけ木々が覆い茂り、池、というには大きな水辺が町の灯を反射していた。




ウマ娘の身体能力:大凡ではありますが、一般人の10人力というのが定説です。
 パンチ力   1350キロ
 キック力   4500キロ
 背筋力    5800キロ
 ベンチプレス 1200キロ

 尚、クイーンベレーのベンチプレスは2500キロで日本のウマ娘としては最強。ただ、無駄な記録であり、特に評価していたのはヒシアマ先輩だけというのがご愛嬌。


重いコンダラ:正確には整地ローラーという。ウマ娘の使用しているそれは全幅4m、重さは2.5tという特注品。これでダートコースを四周すると大体整備が完了するという代物であるとか。


魔石(仮称):実は本当に魔石である。魔力を持ち、光と熱を発している。ガイガーカウンターには反応しない。強力なものほど透明化が進み色も白に近くなる。(最上級はAAA級)ジャイアントスコーピオンの物は限りなくD級に近いC級。


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3R はじめてのスケキヨ!

パソコンが死にましたたたたたたたたたた。


「はぁっ!? 何で入っちゃいけねぇんだよ!」

 

 あたしは目の前に居る兵士らしき男に怒鳴りつけてやった。四角四面であっても、道理の通った話であればあたしも折れようという物であったが、目の前のこのヤローは余りにも酷過ぎた。

 

「だ~か~ら~っ、ヒック! あ~し~た~の、明けの鐘までみゃってろって、言ってんでひょ、ヒック!」

「ほうだ、ほうだ、きょ~はもう、店仕舞いだってんだ。ぎゃはははは!」

「むしろ、姉ちゃんも~こっち来て一緒に飲むかぁ? 一晩中かいぐりしてやるっぺ」

 

 ぷは~、と酒臭い息を吐きながら長い槍をもった担いだ二人の兵士が酒瓶片手に誰一人通る事まかりならぬと通せんぼする。固く閉ざされた門扉は他者の侵入をまかりならぬと拒んでいる。それほど厳重なハードに対して人の面がゆるい事この上ない。この国では酔っ払いに武器を持たせる程モラルが無いのだろうか?

 

 ひとしきりにらみ合いが続く。こうしてお互いが目と目を合わせて睨み合っていると

 

「やがて~それが愛に」

「変わらねーよ!」

 

 ノリだけは良いのがある意味美徳なのかも知れないが、あたしとしては、このくっそ寒い中、一晩町の外で過ごせと言われて正直余裕を無くしている。

 

 いや、むしろこの世界が異世界であるという事実が、ここに来て確定しちまった以上、せめて言葉が通じているという僥倖に安堵したのも事実であるが、だからといって最初に声をかけた相手との間にこれほど意思の疎通が出来ないとなると、果たして言葉が通じる事にどれだけ意味があるというのだろうか?

 

「くそ、こうなったら力ずくでも」

 

「そこのお嬢さん」

 

 最終手段を取ろうかと本気で考え始めたところ、思ってもみなかった所から声をかけられた。

 

「閉門に間に合わなかったようですね。宜しかったらうちのキャラバンのテントで今夜一晩お過ごしになりませんか?」

 

 思わず振り向いたあたしの後ろには人の良さそうな中年男性が立っていた。

 

「ナンパ?」

 

 思わず何かの下心を警戒したところ、

 

「やぁ、マビキひゃん。さっきの差し入れ、おいひく頂戴しておりまひゅよ。ひっく!」

 

 兵士たちとはどうやら旧知らしく、気さくに話しかけられた中年は鷹揚に兵士に答えていた。

 

「いえいえ、明日からまたバザールでお世話になる訳ですから、皆様に御挨拶するのは当然の事ですので。むしろ僅かばかりでお恥ずかしい」

 

 ……つまり、こいつらが既に出来上がってるのはこのおっさんの所為だと?

 

「まぁ、そういう訳でしてね。街門が早じまいしたのも実は私共の所為かと、で、こんな場所で野宿したら風邪をひいてしまいますから、お招きした次第で。あ、テントにはうちの女房や娘もおりますし、女従業員も居ますから、ご安心ください」

 

「……そういう事なら。でもいいのかい? どこのウマの骨とも知れないもんを連れていっても?」

 

 あたしが警戒していると判断したのか、おっさんは兵士に聞こえない様こっそりと真相を教えてくれた。

 

「実の所、明日からのバザールに出店する為、兵士の方々に賄賂を少々差し出しまして。ついでに売り物の酒を一本ずつ付けて差し上げた処、その場で宴会が始まってしまって、その後に到着した人達が門前で足止めされるハメになってしまったので、ご迷惑かけた皆さんには私共で一晩の宿をご提供しているという次第でして」

 

 ああ、何となく原因はわかったが、一つだけ分からない言葉があったな。あたしは中年の招待を取りあえず受けることにして、一旦門の傍を離れる事にした。ついでに分からない事を聞いておこうか?

 

「一つだけいいかい?」

「何なりと」

 

 ばっちゃも聞くは一時の恥だって常々言ってたからな。

 

「わいろって、何?」

 

 

 

 

◆◇◆◇

 

 

 

「わいろって、何?」

 

 どうやら、随分とピュアなお嬢さんのようだ。

 

 今時、貴族の御令嬢だって役人からの優遇を受けるには普通にリベートを渡したりする位の知恵は使うと言うのに。或いはそういう風習が無い位の田舎の出なのかなとも思ったが、それにしては着ている服の縫製が丁寧だし何よりも垢ぬけている。王都に店を構える私ですら見た事の無いタイプの服装であり、何よりも色鮮やかなツートーンの染め物で見るからに暖かそうである。しかも、着ぶくれしている感じが全く無く、彼女の体型をスマートに見せている点が秀逸である。

 

 結論としてはそれなりに良い所のお嬢様? いや、それにしては供も連れず一人きりというのが解せぬ。

 

 一体どういった御人なのであろうか? 耳の形から獣人かとも思ったがどこの氏族かさっぱり分からないし、整った容姿を考えると噂に聞くエルフ? 

 

「ああ、つまりですね、お役人様に対してこれからお世話になりますよ、という時に金品を僅かばかり差し上げますと、お役人様の覚えがめでたくなり、色々と優遇してくださるんですよ。逆にこれを怠れば要らぬ所で妨害を受ける事もありますから、それを防ぐという意味もありましてね。まぁ、生活の知恵というものですな」

 

 うっ!

 

 キラキラと澄んだ目で見つめられると非常に居たたまれない気持ちになりますな。

 割り切ってはいるものの、何とも私自身が汚れてる事を自覚せざるを得ず……

 

「それって、あたしも払った方がいいのかな? どうしよう? 金なんか持って無いし……」

 

 あれ?

 

 何か、齟齬があるような?

 

「ああ、そういうのは商売で来た人間が払えばいいのですよ? 普通の旅人はそんな心配しなくても大丈夫です。むしろ、そういう人の分まで商売人が支払っているのですよ。どのみち、商人と旅人では扱う金額だって桁が一つ二つ違うのですから、お役人様だって一々旅人から集金するよりは取れる処から取る方が効率が良いというものです」

 

 あからさまにほっとした表情になったお嬢さん。そうするとますます出自がわかりませんな。或いは他国から連れ去られて来た奴隷商の商品? いえ、奴隷に着せるようなお召し物でもないですか。

 

「失礼ですが、異国の方ですかな?」

 

 藪蛇かもしれませんが家族を危険に曝す訳にもいきません。

 

「あ? ああ。多分」

 

 多分?

 

「に、しては街道を来た時にはお会いしませんでしたよね? 徒歩の旅であったのであれば私達のキャラバンが途中で追い越している筈ですが?」

 

 何しろ、この町まで来るには王都からただ一本の街道を経由するしか道はない。それ以外は魔物のテリトリーであるトットーリの大砂漠である。まさかそんな所を通って無事に居られる御仁なんて、伝説に聞く勇者様でもあるまいし。

 

「ああ、ずっと砂漠を走ってきたからなぁ」

 

 ! なんですとぉ――――っ!!

 

 

 

◆◇◆◇

 

 

 

「な、なんですとぉ――――っ!!」

 

 おっさん、すんげーエキサイト。ヤバかったか?

 

「このトットーリ大砂漠は高レベルの魔物達が住まうテリトリーです。そんな所をあなたのような娘さんが旅して無事で済む訳がありません!!」

 

「ああ、魔物ねぇ。確かに一回だけかち合ったけど」

「いっ、一回だけぇ――――っ!?」

 

 仰け反ったおっさん。最早一人ジャーマンスープレックスしそうである。

 

「そんなバカな!? あなたの様な麗しいお嬢さんがあんなところを通れば魔物に十重二十重に囲まれて、はっ! もしや貴女様は神殿の聖女様で高レベルの結界魔法を駆使して砂漠を? いや、それでも一回は魔物に遭遇されたと、いえ、どうやって遭遇した魔物から逃げられたのですか?」

 

 なんか一人で色々と考えてるおっさんの姿にあたしの方がドン引きである。にしても寒い。早い所暖かい寝床にありつきたい所だ。出来ればメシも。

 

「いや、逃げてない」

「逃げてないっ!? ならばどうやって無事にここまで? まさか、幽霊?」

「力づくでぶっ潰した」

「!!!」

 

 へんじがない。ただのしかばねのようだ。

 

「そんなまさか? はっ! もしや貴女は大規模レイドの生き残り?」

「だから、最初から一人だってば」

「そ、そうです、遭遇した魔物とは、どんな奴でしたか?」

「でっかい蠍の化け物だ」

「ひっ! ジャイアントスコーピオン!? 一流の冒険者が十人がかりでも負ける相手ですよ? 見た処武器も持たない貴女が一体どうやって?」

「踵で装甲砕いて内臓毟り取った」

「どんな野蛮人ですかっ!?」

 

 あ、やっとツッコんでくれた。

 

「し、信じられません。一体どうやったらそんな芸当ができるというのですか? 盛るにしてもせめてもう少し信じられる話をですね」

 

 ハァハァ言いながらジト目で睨むおっさん。信じてねーな。

 

「あ、そうだ。そいつから出て来たこれ、商人なら買い取ってくれない?」

「!!!! こんな大きな魔石、うちでも年に一度商うかどうかという代物ですよっ!」

 

 またしても一人ジャーマンの態勢に入るおっさん。

 

「無理なら諦めるけど、そうすっと何か他に売れるものあったかな?」

「買いますっ!!!!!!なにがあっても買いますから、どうか引っ込めないで!!」

 

 うわ、おっさん必死! ってか顔、近い近いっ!!

 

「うぎゃぁ~っ!?」

 

 あ、思わず投げっぱなしてしまった。ぽーん、と飛んでったおっさんが頭から地面に突き刺さる。

 

 デジャヴ? どこで? あ!

 

「そういや、スピカの勧誘ポスターで見たな、こういうの」

 

 おっさんが八つ墓村になってしまった。

 

 

 




賄賂:実はクイーンベレー、というかトレセン学園に通うウマ娘は賄賂という言葉を知りません。その理由は、とある国際的な条約に準ずるもので、ある意味現代のウマ娘の存在価値を補完する為と言っても過言ではありません。
 この件についてはいずれ番外編で詳しくやる予定です。


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4R 商談ですっ!

 初のスマホ投稿です。


「「すんませんっしたあ〜っ」」

 

 お互い向き合い座礼。ってか土下座。

 

「わざとじゃないんですッ! パーソナルスペースを侵されると、つい無意識にっ」

「いえ私の方こそ、思わぬ商機につい我を無くして。女房からも良く叱られるんですよ。あんたはもう少し落ち着きなさいって」

 

 そうしてふたたびお互いに礼。

こうしてかれこれ三十分、互いに謝り合っている。流石に埒が開かないのは自覚してるが、異世界第一住民相手にいきなり暴行とか、事件発生はあまりにもヤバい。あ、門番は数に入らないからな。意思の疎通ができない相手はノーカンだ。

 

「何してるの? お父さん」

 

 ふと見ると栗色の髪をおさげに結わえた可愛らしい幼女があたしとおっさんを胡乱な目で見つめていた。

 

「おお、リリッタ! 今、こちらのお嬢さんをキャラバンにご招待しようとな」

「それなのになんで地面に正座してるの? 顔も砂だらけだし?」

 

「「あ!」」 

 

 どうもお互い目的を見失っていたな。そもそもあたしも寒さと空腹、ついでに喉の渇きにまいっていたのに。

 

 ふと見るとおっさんもバツが悪そうな顔で顔面の砂をはたき落としている。

 

「そうそう、ご紹介しましょう。うちの娘のリリッタです。リリッタ、こちらは、? ええと? 失礼、まだお名前伺うのを失念していましたね?」

「ああ、あたしの名はクイーンベレー。しがないウマ娘さ」

 

 そう、自己紹介すると、二人はびっくりした様にまたしても正座して頭を地面にこすりつけた。

 

「じょ、女王様でいらっしゃいましたか!? 知らぬ事とはいえご無礼の段、平にご容赦を〜」

 

 へへ〜、とへりくだる親子に、あたしの方がドびっくりである。

 

「違う、違う! 只の名前っ! 別にあたしは偉くなんてないし、そもそも一介の庶民だってば!」

 

 そうして説明する事更に三十分。ようやく理解してくれたのはいいけど、結果として女王の名を冠するのはおうせいのこの国では罪になる悪い事だと叱られた。

 幼女の方に。

 

 おうせいって何だろう?

 

「ほんと、すいません。リリッタは母親に似てしっかり者なのですが、いかんせん頑固で融通が利かなくて」

 

 こっそりとおっさんが謝っていたが、この国で穏便に過ごすなら、名前は、ベレーとだけ名乗った方がトラブルに会わないからとも忠告してくれた。

 

 まぁ、郷に入っては郷に従えとも言うし、トラブル回避の為と言うならそれも分かる話なので忠告はきちんと覚えておこう。

 

 しかし、真名なのに封印か。悲しぴ。

 

「改めてまして、私は商人のマビキと申します。こっちは娘のリリッタ」

「リリッタ、五歳です」

 

 なるほど。

 

「あたしより二つも年上か。なるほど、しっかりしてる筈だ。よろしく、センパイ!」

 

 あたしはしゃがみ込んでリリッタセンパイに挨拶をした。可愛らしい先輩の頭をかいぐりすると、嬉しそうに、くすぐったそうに、身悶えする。かわいい!

 

「は? リリッタより年下!? その身長で?」

「ああ、確かに三歳十一ヶ月だな」

「その美貌で!?」

「こしょばいがその通りだ」

「その乳で? その尻で? その太ももで!?」

「「おっさんしつこいっ!!」」

 

 図らずもセンパイとハモった。ドリフかっ!?

 

 あと、太ももの事は言うな! 太いのは自覚してるんだ!

 

 

 

「まったく、早く来ないからすっかり冷めちまったじゃないか。お客さんと従業員は先に食べさせたからねっ! 後は勝手に始末しておくれよっ!!」

 

 あたしとおっさん、ついでにセンパイはまたしても土下座して奥さんに謝った。いい加減脱線が過ぎたとは自覚している。

 

 ちなみに年齢の事は種族特性と言う事で納得してもらった。と、いうか暦が違うと認識されたらしい。ま、この件は深く掘り下げる気はないが。

 

「まあ、こうしていても埒が開かないです。まずは食事にしましょう」

 

 そう言っておっさんとセンパイと共にようやく夕食のご相伴に預かる。文句言いつつもしっかりと温ため直された美味しいスープに奥さんの深い愛情を感じた。寮のメシも美味かったが、あれはどうしても身体を作る為の使命みたいな面があるからな。こんなほっこりする食事はいつ以来だろうか?

 

 ばっちゃの手料理を思い出して、知らず涙を流しながら食べていたあたしの頭を撫でてくれた奥さんの手が暖かかった。

 

 

 

「さて、それでは先程の魔石の買い取りの話ですが」

 

 奥さんとセンパイからの無言の非難にもめげず、空気を読まずにおっさんが商談に入ろうと食後に甘いお茶を用意して待ち構えていた。まぁ、約束してたしな。

 

「とはいえ、あたしは相場とか知らないしな」

 

 ずずず、とお茶をいただくと、覚えの無い甘味成分に脳がとろける。何とか言うサボテンの汁らしく滋養にいいとか。

 

「ならわたしが旦那の魔手からあんたを守ってやるよ」

 

 そう言って奥さんがあたしの味方に付いてくれた。いいのか?

 そしてカンカンガクガクやり合う夫婦。あたし必要ないんじゃね?

 

「どうせ王都に戻ってからオークションに出す気だろ? 最低落札価格でも十万ディナールは下らない筈さね。こんな初心な娘出し抜いて儲けても商人としての格が下がるだけだよ!」

 

「無論、そんな事は考えてないとも。だが、ここから王都に戻るのにも経費がかかる。護衛だって行きよりも増やす必要があるし」

 

「それなら最適な人材が此処に居るじゃないか。なぁベレーちゃん」

 

 すっかり傍観していたあたしだったが、いきなり話を振られて

 

「はひっ!?」

 

 と間抜けな声が出てしまった。

 

「つまりだね、この際ベレーちゃんには冒険者登録してもらってわたし等の帰路の護衛を正式に受注してもらおうと言う寸法だよ」

「なるほど! ジャイアントスコーピオンをも倒す腕利きが護衛するなら道中の安全は保証されたも同然か。流石はパレッタ! 抜け目が無い!」

 

「え? え?」

 

 狼狽えるあたしに奥さんのパレッタさんが噛み砕いて説明してくれたのは、寄る辺の無いあたしがとりあえず身元を保証する為の方法である。

 

「もっとも、アンタは今まで戦いとは無縁の暮らしだったんだろ? だったら登録だけして無理に仕事受けなければいいさね。ただ、わたし等に付いて王都に入るには一番手っ取り早い方法だしね。どの道、オークションに参加するなら王都に入る必要があるし、王都でも十万ディナールもあれば店構えるなり、家買うなり、好きにできるさ」

 

 でも、悪い男にだけは捕まるんじゃないよ? とからから笑うパレッタさん。既に舟を漕いでいたセンパイを抱き寝室へと連れていった。

 

「まあ、女房が言った話が恐らくは一番手っ取り早く利益を最大にする方法ですな。後はベレーさん次第です。私共は明日から10日間の予定でバザールに出店しますからその間は必要なら私共のテントで泊まるといいですよ」

 

 そして今夜は遅いからと、用意してもらった寝床で休ませてもらった。ちなみに、案内されたテントには先客が一人いた。地元民でこの町に家がある人らしい。

 

 ふあ、流石に今日は疲れたし眠い。何気に濃い一日だった。

 

 

 

 明けて翌朝。遅い朝食を御馳走になったあたしは、夕べの相談の通り、冒険者ギルドに登録して身分証明をもらうことにした。

 

 既に同室の人は居なかった。早朝、門が開くと同時に町中に戻ったそうな。それに気づかず爆睡していたあたしって。

 

 なお、おっさんとパレッタさんは朝からバザールの準備中だ。

 

「だからと言う訳じゃないけどうちの子が案内するよ。リリッタ、これは大切な手紙だからね、必ず直接受付のお姉さんに渡すんだよ」

「は〜い!」

 

 そうして送り出されたあたしらは、遂に町中へと進出した。

 

「へぇ〜! 思ったよりは発展してるんだなぁ!」

 

 町並みは黄色い砂の色だが、落ち着いた色合いの平屋建てが主流で、魔法で固めたコンクリートみたいな質感の建物が多く、驚いた事にガラス窓まであった。

 

「あそこが冒険者ギルドなのです!」

 

 普段最年少なので、いつも上から目線で面倒を見られているリリッタセンパイだったが、今回はあたしという後輩に頼られ嬉しいらしい。ドヤ顔フンスと無い胸を張る姿が微笑ましい。

 

 カランコロン!

 

 ドアベルが鳴り扉を開けて中に入ると、ギョッ! とした顔の十名程の男たちがいたが、直ぐに嬉しそうにニヤけた顔でこちらを見やる。無視して中をカウンターまで進む。

 

「おはようございますっ!」

 

 リリッタセンパイが元気に挨拶するとカウンター内で仕事をしていた何か見た目のまるっとした男が

 

「あら、いらっしゃいな。ネアルコ商会のリリッタちゃん。本日はお帰りの時の護衛依頼かしら?」

 

 ざわっ!

 

 うわ! 雰囲気が殺気立った。

 

「ん〜とね、このひとのぼうけんしゃとうろくと、それと、こっちのおてがみが、このひとへのしめいいらいのもうしこみなのです!」

 

 何か今までのセンパイの喋りと違う。ビミョーに媚びているというか、幼女っぽいたどたどしい話し方である。

 

「此処はてきちなのでビジネストークなのです」

 

 と、小声で教えてくれたセンパイ。どうやらそういう物らしい。いや、それよりも背後で膨れ上がる殺気の方が今は重要事項かと。

 

「おい! 姉ちゃんよ!!」

 

 うひーっ!!

 

 気持ち悪いマッシブなモヒカン男に後ろから声かけられて肩を掴まれたっ!?

 




三歳十一ヶ月: 彼女が放校処分になったのが十一月一日。スーパー未勝利戦終了と同時に纏めて退学となった。馬齢は誕生日に関わらず元日を起点にする為この様な計算になる。尚、ベレーは偶然だが一月産まれ。

ドリフかっ!?: 恐らく出処はマルゼンママだろうと思われる。

魔石: 通常流通に乗って取引される魔石はFからEが主流でDだと持ってるだけでステータスとなるレベル。曲がりなりにもCならば戦略的価値が出てくる為、各地の領主か騎士団が求めるレベル。B以上ともなれば国宝として献上されるのが普通。過去最大級のAAA級は、この世界最強レベルのネームドドラゴンを一万人規模のレイドで討伐した際に採取された破損の大きな魔石であったとか。

ディナール: この世界の共通通貨の単位。正確には「協同流通ディナール」勇者の主催した協同組合が発行する国際通貨。金一ポンド(地球のそれとは違い約47g)辺り一ディナールに換算する。金貨の枚数で数えるのが普通。尚、金貨以下の補助通貨については各国で独自に決められている。


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5R (自称)ライバルとのパーティー!?

 長いです。どの位かというと障害オープンくらい?

 嘘です。結果的に中山大障害並に…… 


「うっぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

 ぱかっ!!

 

 哀れ、あたしの背後に立ったバカは物の見事に吹っ飛んだ。カランコロン、と音が鳴ったので、多分ドアを蹴破って外まで飛んでっただろう。だが、あたしにはアホな野郎の顛末を斟酌する程の余裕がない。

 

 バクバクバクバクバクバクバクバク

 

 心臓が早鐘の様に脈打つ。

 

「あ、あああああああたしの背後に立つなっ!!」

 

 ウマ娘の背後から無理矢理捕まえるのは駄目! 絶対!

 

「おおおおっ」ちぱちぱ

 

 センパイが可愛らしく手をたたいて

 

「はじめて見たのです。ぼるぼさいとうなのです!」

 

 ……そこはせめてゴルゴ13と、ってか何故その名を知ってる!?

 

「っ、てっめえ! このアマ! まだ何もしてねえ相手に何しやがる!?」

「アニキの仇! 死にさらせぇっ!」

 

 なんか、エキサイトした奴らがあたしに向かって来そうだ。人相手に闘うのはカンベンして欲しいんだけど。

 

「そこのセニョール達! アチシのシマで殺人事件でも侵そうってのかしら」

 

 ピタッ、あたしに向かっていた連中が止まった。

 

「あーっ! グレッコのお姉さん!」

 

 センパイは声の主を知ってるらしい。だが、お姉さん? 明らかにぶっといこの声はお兄

 

「セニョリータっ! アチシは身も心もお、と、めっ! 乙女っ! なのよっ!!」

「は、はひっ!!」

 

 何故分かったし? そして何故二回言ったし?

 

 振り返るとそこには深紅のコートを着たサイケな色合いの髪型な細マッチョが立っていた。

 

 ま、あたしはこの手のオネェな人に耐性あるし、むしろ嫌いじゃないんだよな。デビュー前、世話になったレガシーワールドセンパイのファンがこういう人ばっかでさ、トレーニングパートナーを努めてたあたしにも差し入れ分けてくれたりしたっけ。

 

「お言葉を返すようですが姉さん、俺たちはただこのクソアマに礼儀ってもんを教えてやろうとしただけで」

「そうだそうだ! 別に殺そうだなんてしてねぇっての!」

 

 男達が必死に弁解しようとするのを遮り

 

「バカね。殺されるのはアンタらの方よ! その娘とアンタらじゃステータスの格差が拭い切れない程あるのよ。それこそ、十人がかりでも覆す事ができないくらい、ね」

 

 それに、と続けてあたしに

ハグっとしてきたオカマの姉さん。なんか、いやらしいさを全く感じさせないその行動が、なんとなくマルゼンセンパイを思い出しちまった。本人にはとても言えないが。

 

「可哀想に、こんなに怯えて。あんたらのとこのモブ連1号がやった事はタブー中のタブーよ! 獣人の娘を後ろから押さえつけるのって痴漢行為より重い罪になるの。種族によっては死刑になるくらいのね。お解り? モブ連2号、3号!」

「誰がモブ連1号だっ!!」

 

 カランコロンと音がして、あたしが吹っ飛ばした男が戻って来た。筋骨隆々としたモヒカン男は鼻血を垂れつつもあたしを睨みつけると

 

「ソイツの登録するってなら、当然戦闘試験が必要だよなぁ! 俺様が直々に試験官やってやるよ。文句ねぇよな、グレッコ!!」

 

 げ! 流石にこんな失礼な野郎はノーサンキューだし、そもそもこんな与太者の言い分が通る訳ないだろうと思っていたが、何を思ったのか、オネェの人は

 

「OKよ。ただし、何があってもアチシは途中で止めさせられないから覚悟だけはしておきなさいね?」

「……それは俺様に言ったのか?」

「当たり前でしょう。中途半端な与太者風情が相手になるほど甘い娘じゃないわよ」

 

 いや、どこをどう見たらそういう結論になるんだ? 初対面どころかまだ禄に会話もしてない相手にする期待じゃねー!

 

「くっ! おいてめぇ! さっさと裏の修練場まで来い!!」

 

 いきり立つモヒカン男に仕方なく付いて行こうとすると、

 

「お待ちなさいな」

「なんだよ! まだ文句あるのか!?」

「登録書類の作成が先よ!」

 

 あ、そりゃそうだ。

 

「ルモッソ! 書類の準備は出来てるかしら?」

「オネェ様、既に準備万端でしてよ!」

 

 最初にセンパイが声をかけた受付のオネェが書類の準備をしてくれたので、早速書こうとして、書けない事に気が付いた。

 

「よ、読めんし、書けん!」

 

 当たり前だが日本語じゃなかった。

 

「じゃ、アタシが記入するから質問に答えてねん」

 

 無言で頷くと直ぐに受付のオネェが記入してくれたのは助かった。

 

「お名前は?」

「く、ベレーで」

「志望動機は?」

「えーと?」

「うちのしめいいらいをうけるためなのです」

 

 センパイが助け舟を出してくれた。

 

「じゃそれで」

 

「最後に、冒険者は何があっても自己責任よ。万が一死ぬ事があっても当局は一切責任を負わないと言う事に同意しますか?」

 

 ゴクリ、とツバを飲み込む。

 

「はい!」

 

 あたしはこうして冒険者に登録した。

 

「じゃあ、悪いけどこっちに来て。早速修練場で戦闘試験を行うわ。結果が全てじゃないけど、アチシが認めたら最低のFランクからじゃなく、飛び級も認めてあげるわ」

「おい! お前!」

 

 それまで黙って見ていたモヒカンが

 

「てめぇが負けたらネアルコ商会の指名依頼を断ってこの町から出ていけ! 元々この依頼は今回俺様達が受ける順番だったんだからな! あそこは金払いのいい上客だし、これまで何ヶ月も順番待ちだったんだ。折角順番が回って来たのにそれを横から掻っ攫われて黙ってられるかっ!!」

 

 ああ、それでいきり立ってたのか。

 

「ベレーさんはうちのだいじなお客様なのです。いっしょに王都にきてもらうひつようがあるからこそどうこうしてもらうようおねがいしたのですからこんかいごえいはそもそもいらないのですよ? じかいにチャレンジなのです!」

 

 センパイが無情にもモヒカンに最初から護衛の仕事を出すつもりが無い旨を告げる。

 

「だ、そうよ。完全にアンタの一人芝居だわね。やーだ! 恥ずかしい! もう、モブ連1号じゃなくてイサミ足1号に改名したら?」

 

 オネェの、ええとグレッコさんだっけ? がモヒカンを煽る。

 

「うっせえ! 俺様の名は『山嵐』のトンキッチンだっ!! 幼なじみのくせにワザと間違えるなっ!!」

「イヤだわ! アチシは永遠の17歳よ。アンタみたいな中年ヤンキーと一緒にしないで」

 

 おいおい!

 

 最早あたし関係ない娘じゃんか。勝手に恨まれて、勝手にダシに使われてって、なんかすっげー損した気分。

 

「それじゃ、外に出る前に壁に掛けてある木剣を選んでね。長さは、そうね、この位でどうかしら?」

 

 あたしは木の剣をオネェから受け取る。木剣の長さなんてあたしには分からないからなぁ。

 

 思ったよりは重い木剣に戦慄する。これ、当てたら洒落にならない大惨事じゃね?

 

「遠慮しないで当てていいからね。責任はコイツが取るから」

 

 いや、そう言われても……

 

「あれ? ギルマス? その子新人?」

 

 修練場には既に人が居た。歳の頃は16〜7の三人組、一人が幼い顔の男、後が女二人、この暑さの中、大汗をかきながら実戦形式の訓練をしていたのか女子二人は地に這いつくばり疲弊しているのに、可愛らしい顔の男の子は平然とかなり大きな剣を自在に振り回している。

 

「あ〜ら、アスラきゅんったら、かわいい顔して絶倫なんだからっ♥ 悪いけどちょ〜っと場所貸してねん♥ 今からこの娘の戦闘試験するから♥」

 

 うわ! オカマがハート飛ばしてる!? いや、それよりも

 

「ギルマス!?」

「何か不穏な単語が聞こえた気がしたけど、言ってなかったかしら? そうよ、アチシこそがこの町のギルドマスターにして『聖女』のギフトを神様より賜った『美しき』グレッコ=エールよん♥」

 

 ちゅぱっ♥ と投げキッスをすると同時にモヒカンと無言で付いて来ていた子分共がオエッとえづいた。

 

「気味の悪いもの見せやがって! まあいい、さっさと始めるぞ!」

 

 モヒカンがいち早く修練場の真ん中に陣取ると、あたしに向かって手招きする。子分と、蹲っていた女の娘達はまだ気持ち悪いみたいだ。幼なじみだけに耐性があるのだろうか?

 

「構わないから思い切りイッちゃいなさい! それだけでアイツ黙ると思うから」

 

 オネ、ギルマスがあたしに向かってそう囁いた。一方、最初から居た男の子は何やらモヒカンに囁いて怒鳴りつけられている。

 

「それじゃ戦闘試験はっじま〜るわよ〜! 位置に付いてぇ、よ〜い、ドン!!」

 

 10メートル程離れていた間合いをあたしは一気に詰めて思い切り木剣を振り下ろす。

 

「くっ!!」

 

 全く反応出来てないせいで一歩も動けないモヒカンだったが、それでも何とか木剣を構えてガードする。良かった、これでなんとか殺さずに

 

 パーン!!

 

 乾いた破裂音と共にあたしの木剣とガードしたモヒカンの木剣が爆発したように粉々に粉砕された。

 

「は?」

「え?」

「「はあああああ!?」」

「「「ええええええっ!!」」」

 

 あたしもモヒカンも目が点である。脳みそは雲丹だろう。

 

 無論、周囲の人々も驚愕である。驚いてないのはウンウン頷くギルマスと、ドヤ顔フンスとイキってるリリッタセンパイ位である。

 

 いや、流石にこんな身体能力が未勝利ウマ娘のあたしにある訳が無い。何かの間違いか、あ、木剣が不良品だったとか?

 

「木剣はネアルコ商会から買付けた黒檀の一流の品よ。ゴブリン位は簡単に屠れるし、新人冒険者に与えたら下手すると一生買い換えないで現役引退する子が居るレベルのね♥」

 

 マジか!? 弁償必要か? やっべー!!

 

「すんませんっしたぁーっ!!」

 

 思わず足元を見るとモヒカンが土下座して涙と鼻水垂れ流してた。え? なにこれ??

 

「自分、調子に乗ってました! 世の中には自分みたいな凡夫が逆立ちしたって勝てないお人が居るって、グレッコの事で身に染みて分かってた筈なのに、初対面のアンタ様を見くびって、大変な失礼をっ! 自分はどうなっても構いませんから、どうか、どうか、子分達だけは、赦してつかぁーさいっ!!」

 

 え? 何この手のひらクルン感?

 

「イヤ、あたしは別に特に何も」

「すごい! すごいよ君! ねぇ、僕らと一緒に冒険しないっ!?」

 

 あたしの手を握りしめ、アスラとかいう男の子がちょー興奮した面持ちで顔を近づけてきた。

 

 あれ? 夕べのおっさんの時やモヒカンと違って忌避感が、ない? っ、でも顔があっつい!

 

「あ、あたしは、べっ、べつにアンタみたいなハーレム野郎となんてっ!」

「「「ハーレム違う!!」」」

 

 男の子だけでなく、背後でいつの間にか復活してた女子二人までハモって否定した。

 

「僕達はお互いを高め合い」

「自分の可能性を模索して」

「新しい自分を創造する為」

 

 ここであたしから手を離したアスラとかいう男が一歩下がって二人の女子と共に見栄を切る。と、トキメいてなんかいないんだからなっ!

 

「「「ここに集いしライバル達のスーパーチーム、その名は、VSインパクト!!」」」

 

 ちゅどーん! と爆発、を見たような気がした。

 

「僕らは君とならより良いライバル関係を築く事が出来る! 是非とも君に僕らのパーティーに参加して欲しい!」

 

 後ろで二人の女子もウンウン頷く。ああ、納得いった。この自分たちが主人公って感じ、つまりコイツらその手の連中なんだ。

 

 トレセン学園においてC組に該当するエリート達。指定産能ウマ娘として産まれた時から期待と共に将来の栄光を約束されたキラキラ光るスーパースター! 別に劣等感を持ってる訳じゃない。彼らの生き方だけが正しいと思ってる訳でもない。それでもあたしが欲しかった物を彼らと奪い合う人生。それは正直もうゴメンだった。

 

「……あぁ、あたしはそういうの、もういいんで……」

 

 彼らの輝きに目を焼かれながら、その一方で一気に冷めていく彼らへの憧憬。あたしは彼らの申し出をそう断るのが精一杯だった。

 

「そ、そんな! 君程の人が一体どうして?」

 

 疑問を投げかけてくるアスラ少年に対し、背を向けるしか抵抗の仕方を知らない。そんな自分自身、イヤな感じだと思う。

 

「アスラきゅんの志はアチシが良く知ってるわ♥ でも彼女の心も深く、深く傷付いているの。今はまだ彼女には時間が必要なのよ♥ 貴方の言い分も分かるけど、そこは彼女を尊重してあげて頂戴な♥」

 

 そう、語ってあたしをアスラから遠ざけるオネ、グレッコさん。今はこの心遣いがとてもありがたい。だが、状況がそれを赦してくれない。そんな現実も確かに存在する訳で。 

 

「緊急! 緊急!」

 

 受付に残っていたもう一人のまるっとしたオネェの人がグレッコさんの方に駆けて来た。

 

「どうしたって言うのかしらセニョリータ? 世の中にはそうそう慌てる必要がある事態なんて」

「これはその例外ですわオネェ様っ!! 今、街門の衛視から緊急応援の依頼がっ! ゴブリンキングを筆頭とするゴブリンの軍勢が町に迫って!」「な、なんですってぇぇぇぇっ!!」

 

 あれ? おっさん達、バザールやるからって門の外のオアシス前で店開いてたよな?

 

「これってマズいッスかね?」

「マズいなんてもんじゃ無いわよぉ! 敵は六千の大軍団! 二千人しか居ないこんな町イチコロよおぉぉぉぉぉぉっ!!」

 

 やっべー!!

 

「ギルドより緊急依頼っ! 全冒険者は直ちに街門前に集合! 速やかに敵ゴブリンを撃退するわよ! アチシも行くわっ! それと」

 

 グレッコさんはあたしに向かって申し訳なさそうに

 

「悪いけどベレーちゃん、貴女も手続きが終わっちゃったから既に正式な冒険者なのよ。申し訳ないけどこのクエストには拒否権が無いの。後でいくら恨んでもいいから今はアチシらに力を貸して頂戴!」

 

 最早嫌も応も無い! あたしはコクリと頷くと、センパイを受付の人に預け、門の外へと向かおうとして一旦足を止める。

 

 あ、後一つ、

 

「誰か武器貸してっ!!」

 

 流石に丸腰では何も出来ずに終わってしまう。 

 

「とはいえ、黒檀の木剣を粉砕する力の持ち主に使える武器なんて、鉄はおろか、鋼だって役不足よね〜 そんなものこの田舎町に……」

「あるわ!」

 

 アスラのとこの女子の一人、ちっちゃなくせに巨大なトンカチ持った水色髪の娘が

 

「わたしが抽出したアダマンタイトの延べ棒があるわ。これなら魔法で圧をかけた鍛造品だから、折れない、曲がらない、砕けない。刃こそ無いけど打撃武器としては一級品だから殺傷能力はパない筈」

「サンキュー、恩にきる! アンタ名前は?」

「え、エリーゼ……」

 

 基本、無口なのだろうか? あたしと違って赤面してモジモジする姿が可愛らしい女の子だが、あたしに預ける棒の話の時はガンガン前に出ようとする圧が凄かった。

 

 あたしは全長1m直径10cm程の角材を受け取ると、真っ先に駆け出して街門の所まで先行した。残されたみんなが「すごっ!」と呆れている雰囲気は、まあ、見なかった事にして。

 

 

 

「おお、ベレーさん!」

「おっさん! パレッタさんも、無事で良かった」

「リリッタは?」

「ギルドに預けて安全な所に避難してる」

 

 門の中まで避難してたおっさん達、商会の人達は全員無事だった。それだけでも救われた気分だったが、キャンプ地はそのままらしく、商品なども置き去りらしい。

 

「まあ、命あっての物だねですからね。それにお預かりしてる魔石だけは持って来ました。最悪商品全部駄目になったとしても再起は可能ですから」

 

「まあ、なるだけ被害が無い様にはしてみるよ」

「おお、と、言う事は」

 

 あたしは角材を肩に背負い不敵に振り返った。

 

「ああ、あたしの冒険者初仕事はゴブリン退治だ!」

 

 

 

「ハァハァ、速いわよ! ベレーちゃんアンタとんでもない猪武者ね。一人だけ先行すると孤立して単独で立ち往生するわよ! アスラきゅん♥ 悪いけどこの子が一人で先に行かない様に手綱握ってて頂戴♥」

「分かりましたギルマス。ベレーさん、申し訳ないけど今だけは僕らとパーティー組んで貰いますよ。さもないと初陣の貴女が何も出来ずに死んでしまいます!」

 

 確かに後先考えず一人で先行するのはマズかったと思う。此処は言う事を聞いた方がいいだろう。少なくともセンパイ方の言う事を聞くメリットはある。

 

「はい、ごめんなさい。どうかあたしに戦いの仕方を教えてください」

 

 そう言って頭を下げる。アスラは驚いた顔で

 

「やっぱり僕らの仲間になりませんか? 貴女のような謙虚な人ならきっと上手くやって行けると思うのですが」

「済まないけどそれはカンベンして欲しい。あたしにも考えもあるし、何よりアンタらはあたしには眩し過ぎて荷が重いんだ」

 

 ただ、今だけは彼らから学んで戦い方を盗んでやろう。そう決意した。

 

「ゴブリン共が来た! 一時の方角、デザートゴブリン約二千! 上位種コマンダー、アドミラル、多数! キングは未だ確認出来ず!」

 

 門の見張り台から兵士の声が轟く。いよいよ本番らしい。あたしは気を引き締めてアスラの指示を待つ。

 

「僕らが先ずは魔法で先制します。奴らが浮足立ったらその後に僕と歩調を合わせて突入です」

 

 魔法! 散々テンションの下がる話をしてたのに魔法と聞いてアガるあたし、全く現金な話だと思う。

 

「シルビア、お願い!」

「おーけー! ファイヤーストーム!」

 

 エリーゼじゃない方の金髪女子が細い剣を天に掲げると剣先を中心に炎の竜巻が巻き起こる。

 

「ゴー!!」

 

 命令を与えると炎の竜巻がゆっくりと動き出し先頭集団のゴブリンを巻き込み更に加速していく。直撃した奴らは黒焦げの消し炭になり、少しばかり離れた者も火ぶくれの大火傷を負い、逃げ出そうとした奴も肺に熱せられた空気を吸い込むや、のたうち回って転げ回りやがて活動を止める。結局ゴブリンの戦列の中をたっぷりと蹂躙して回った魔法のおかげで、小柄なゴブリンはその数を一気に減らしてしまった。

 

「ふにゃあ、流石に魔力がきっついわ〜 後はよろしく〜」

 

 何かキツかった目付きまで一気に緩んだ金髪女子、シルビアだっけ? なんと一人で一気に半数近くのゴブリンを退治してしまった。しかしその代償だろうか? 腰が抜けた様にぺたんと座り込んでしまった。

 

「シルビアちゃん、ありがと! じゃ、アチシも追い打ちかけるわよ〜 喰らいなさい! ホーリーブラスト!」

 

 オネ、グレッコさんが唱えると、全身が光輝き、グレッコさんの身長程のぶっといビームが一直線に迸る。右往左往しているゴブリン達が光に飲み込まれると、ビームの通った後には何も残るものは無く、地面すら半円形の逆カマボコ型に抉り取られていた。

 

「それじゃあ、冒険者の皆さぁ〜ん♥ 出番よーん♥ 一気に殲滅しちゃって頂戴な〜♥」

「行くぜ! オルテガ、マッシュ!!」

「「ハイな! アニキッ!!」」

 

 あ、さっきのモヒカン達、居たんだ? 奴らは一直線に並んで突入すると、意外にも巧みな連携で確実に一体一体ゴブリンを退治していく。奴らの他にも多数の冒険者と思わしき人達が思い思いの武器を持ってゴブリンを屠る様は圧巻である。

 

「なあ、あたしら出遅れてないか?」

 

 あたしはアスラにそう聞いたのだが、

 

「僕らの出番は最終局面、彼らの手に余る上位種が必ず出てくるから、ソイツらは多分僕らか君、後はギルマス位しか退治出来ないからね」

 

 Bwooooooooooooon!!

 

 そう言っていた側から聞いた事の無い程の雄叫びが轟いた。

 

「来たよ! ゴブリンキングだ! 従者は、ジェネラルがニ体か。行くよ! エリーゼ、ベレーさん!!」

 

 促されたあたしもまた、アスラとエリーゼを追って駆け出した。目的はただ一つ、あの咆哮の出処、ゴブリンキング!

 

「なあ、どうしてアイツを倒すのにアンタらかあたししか行かないのはどうしてだ?」

 

 大勢で取り囲んでボコった方が楽だと思うのですが?

 

 ? って雰囲気を露骨に出したアスラとエリーゼが、特にエリーゼが信じられない物を見るような目であたしを見るが、知らんもんは知らんからな。

 

「それは位階が違い過ぎるからですよ」

「いかい???」

「あなた、ホントに大丈夫?」

 

 エリーゼから胡乱な目で見られるが、やば! この世界では常識なのだろうか?

 

「あぁ、この町にくる前の記憶が曖昧で……」

「全然大丈夫じゃないじゃない!!」

 

 棒の話の時以上に圧の強いエリーゼの絶叫にあたしタジタジだが、助けを求める視線を察したのか、アスラが説明してくれたのは助かった。

 

「位階と言うのは言わば魂の格を数値化した物です。この数値が一つでも違えばどんなに頑張っても単独で勝つ事はほぼ不可能と言われています」

 

 それって、未勝利のウマ娘がG1ウマ娘に勝つ事は不可能って事だろうか?

 

 アスラの言葉を継いでエリーゼが実際を例に説明する。

 

「あそこでゴブリン相手に戦う冒険者の大半は第一位階、精々武器を持ってる程度のゴブリンなら相手に出来るけど、位階の違うホブゴブリンとなると五、六人でようやく一匹倒せる程度。それも、人的被害を前提にして。あの中では貴女が圧勝したトンキッチンだけが第二位階の称号持ち冒険者」

 

 マジすか!? あれで優秀な方の冒険者だったんだ!

 

「今から向かうゴブリンキングは位階で言えば恐らくは五。僕ら同位階の者しか対処できません。しかも従者として第四位階のジェネラルが二匹、彼らでは近づくだけで死の危険があります」

「無駄死にを避けるなら彼らはわたし達のいる戦場に近づくべきではない。本当は貴女も連れて行きたくは無かった」

 

 あたしも?

 

「ギルマスが貴女の実力を買っていたと言う事は貴女は多分第四位階。ジェネラルならともかく、キングとやり合うには格が足りない!」

 

「どうやら、お出ましのようだよ!」

 

 アスラが指差した方には今まで走りながら屠って来たゴブリンと全く大きさが違う、パースが狂いそうなサイズのゴブリンが三匹居た。

 

「先ずはジェネラルを殺る! 僕が一匹受け持つから二人はもう一匹のジェネラルを!」

 

「「了解!」」

 

 あたしは角材を、エリーゼがハンマーを構えてジェネラルに向かう。奴らからしたら背丈も小さな女の子二人。舐めてかかってお釣りが来ると思っているだろうが、どっこいそうはイカキンよ!

 

「イヤあぁぁぁぁ!!」

 

 エリーゼがハンマーを豪快に振り下ろす。肩口で受け止め余裕振りたかったのだろうジェネラルは、最初黄色かった顔色が赤くなったと思ったら、直ぐに真っ青になり、悶絶しながら手に持った巨大な剣を取り落とした。チャ〜ンス!

 

 あたしは角材を横一線に

 

「どっせぇぇぇぇぇぇい!!」

 

 大きく振りかぶった。

 

 キン!!

 

 高校球児のホームラン宜しく軽快な金属音と共にジェネラルはぶっ飛びゴロゴロと転がり

 

「センター前ヒットって所か」

 

 あたしはガッカリと独り言ちると、落ちた先に居たエリーゼが

 

「……死になさい!」

 

 そうつぶやき無表情にハンマーを振り下ろした。

 

 

 

「流石に速いね! 圧勝だったじゃない」

 

 そう言うアスラはジェネラル相手に一刀両断、十秒もかからなかった。エリーゼが脳天潰したのと、アスラが真っ二つにしたニ頭のジェネラルが石灰化してぼろぼろと崩れる様をそれでもキングはニヤニヤしながら眺めるのみ。逆に不気味さが増した気がする。

 

「ゴ、ゴブリンダイバーだぁっ!!」

 

 

◆◇◆◇

 

 

 振り返ると、オアシスの水辺から這い出て来る遠目に貞子の群れの様なロン毛なゴブリン。キショい!

 

 流石に背後から襲いかかるゴブリンダイバーに冒険者達も総崩れだ。

 

「シルビアちゃん! アチシ達も応援に行くわよ!」

 

 ギルマスが私に下さったMPポーションのおかげで何とか持ち直したが、正直魔力がまだ足りない。それでもゴブリンならどうにでもなるけど、あれがダイバーだとしたら、第二位階のホブゴブリン並の強度です。負けるとも思いませんが勝ちきるには一般の冒険者達が足手まといとなりますね。

 

「それにしても、まさかゴブリンが、戦術を使うなんて……早く戻って来てください、アスラ!」

 

 

◆◇◆◇

 

 

「あっちは、おっさんのテントがある方角! ヤバイ! コイツさっさと片付けるぞ、アスラ!」

 

 焦っていたのだろう。アスラから戦う方法を学ぶという目的をあっさり忘れたあたしは、後ろが気になり仕方なかった。

 

「駄目だ、ベレーさん! 前を向いて!!」

 

 アスラの忠告に振り返るが遅かった。

 

 Gwwoooooow!!

 

 ドカッ!!

 

 あたしはキングに吹っ飛ばされ気を失ったらしい。

 

 

 

 そこは、トレセン学園の授業風景。所謂一般人に非公開の「秘匿」の授業中。

 

「つまり、ブルース=ロウ氏が変遷したファミリーナンバーに基づくと、貴女方全てのウマ娘に血統が悪いから競走成績が振るわない、という理屈は成りたたなくなります。クイーンベレーさん! 貴女のファミリーナンバーは?」

 

「ハイ! 1号族小系統sの1‐sになります」

 

「そうですね。この大系統1号族は別名『王者のファミリー』と呼ばれており、クラシックレースにおいて最も成績を残している系統でもあります」

 

 どよどよとざわめきが起こる。よもや、あたしの血統書の中にまさか王者と呼ばれる要素が存在しているとか、考えた事も無かったっけ。

 

「特に、小系統lに続くと言われる程に小系統sは多くのクラシックウイナーを排出しています。但し、ここからが重要です。小系統sの欠点が大きく二つ、第一に闘争心に溢れる事、これは決して諦めない勝負根性にも繋がりますが、一方闘争心を制御出来ずに勝負根性を無駄使いしてしまうリスクもあります。どうですクイーンベレーさん? 思い当たる事はありませんか?」

 

 うっ!

 

「はい、あります。あたしは他の娘みたいに『ムリー』って言った事は無いです。でも、それ以上にレースにおいて無駄に力を放出してる為に最後の最後まで闘争心が持たない事も自覚しています」 

 

「自覚している事は素晴らしいですね。そしてもう一つの欠点が、身体能力が非常に高い事と、それに付随して高い身体能力に体が耐えられず致命的負傷を負うリスクが常にある事です」

 

 それって、つまり?

 

「すなわち、クイーンベレーさん、貴女は他の方をねじ伏せる力を持つけども、心身共に十分なケアが出来なければその才能も単に宝の持ち腐れになる。むしろ大怪我の原因になる危険が常にあるのが貴女の系統です。夢ゆめ忘れる事の無い様に!」

 

「ハイ!」

 

 そうだ! あたしの中には王者の力がある。でも、今まで、今までずっとその力を無駄にして、体のケアなんて一度もした事無かったし、ちょっとした怪我なんか、大した事無いってそのままほっといて、知らん顔していた。

 

 元々答えはあたしの中にあったのに、あたしはバカだから自分の心に問いかける手間もかけなかった。ましてや駄目なセンパイ達の口車に乗って自分が勝てない事を他人や制度のせいにして……

 

 醜い! 醜い自分が許せない!

 

 嗚呼、きっとあたしはもう駄目なんだ。だから人生の最期にこんな後悔ばかりしてるんだ。

 

 悔しい!

 

 悔しいよぅ!

 

 もっと、もっと、生きたかったな……

 

 生きて、頑張れば良かったな……

 

 そうすれば、きっとママもあたしを捨てなかったかもしれないのに……

 

 嗚呼、光がみえる……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「駄目よ、ベレーちゃん!! 目を開けなさい!!」

 

 

 

 

 最期に聞いた福音が、よりによってオカマの声とか、それどんな罰ゲーム!?




ウマ娘の背後から〜 : 良い子のみんなも悪い子のみんなも絶対やらない様に。視角の外から掴まれるのは草食動物がマジギレする一番嫌がる行為。死にます!!

指定産能ウマ娘 : 彼女達が産まれる前から生産者によって次世代の良き手本として、または次世代の母として求められる事を前提に産まれ、育てられる極一握りのウマ娘。無論、競走成績としても一流のそれを義務付けられる為、中にはドロップアウトする者も居るが、一方でウンスカや覇王の様に後から指定される例外も事例としては多数あり。

オルテガ、マッシュ : そこはチンペイとカンタだろう! と総ツッコミ。


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たーふとぴっくす 人物紹介

クイーンベレー

F 1-s 第三位階 

身長170cm 体重51kg

 

 覚えていますか? そう、デビュー戦にてスペを威嚇したあのウマ娘です。あの後紆余曲折があり、結局未勝利で現役生活を終了した挙げ句、某組織のテロに巻き込まれあっさりと死亡。異世界へと転生した不幸体質そのものの人。当人がその事に気づいていないのが幸運と言えば幸運なのか? 転生した世界では位階が全ての下剋上ムリーな世界だが、そもウマ娘の身体能力が人の十倍なので、位階で言うとニ位階分下駄を履かされた状態。結果、ジャイアントキリングやり放題のチート状態にある。この僥倖に気が付いてくれるのはいつの日になるのか?

 

 

 

マビキ=ネアルコ

一般人 第一位階

32歳

 

クイーンベレーが異世界で初めてまともな会話をした相手。王都に本店を構えるネアルコ商会の若旦那。金も女房も子供も持ってる勝ち組。

 

 

リリッタ=ネアルコ

一般人の皮を被ったびじねすえりーと 第二位階 五歳

 

マビキの娘。この世界では何気に知識チートできるレベルの知性を持ち、大人相手でも物怖じしない剛毅さを併せ持つ。ベレーからセンパイと呼ばれるようになり有頂天!

 

 

パレッタ=ネアルコ

一般人 第一位階 34歳

 

マビキの妻で姉さん女房。料理は達人級でベレーも郷愁に涙するほど。更には商売にも明るく時としてマビキもやり込められる程。実はネアルコ商会は彼女の祖父が創始者。つまりマビキは婿養子。

 

 

『山嵐』のトンキッチン

第二位階 30歳

 

いきなりベレーを背中から捕まえようとして反撃されたベテラン冒険者。ギルマス、グレッコの幼なじみで一時はパーティーを組んでいた。グレッコに位階を離された事がコンプレックス。実は後輩思いの面倒見が良いタイプでベレーに絡んだのも、子分が理不尽な形で仕事を取られたと思ったから。もう少し思慮深ければおっさん無双系の主人公にもなれたかも?

 

 

『美しき』グレッコ=エール

第四位階 永遠の17歳

 

歌舞いた格好がトレードマークのトットーリ冒険者ギルドのギルドマスター。実は十六人兄弟の次男にして、女系家族の肉食系姉共の被害者。(長男はノンケ)冒険者として肉体を鍛える事と憎き姉共を超える女子力を鍛える事に人生を捧げた結果、神の意により『聖女』のギフトを賜った奇跡の人。

 

 

ルモッソ=エール

一般人 第一位階

 

グレッコの実の弟。父親に守られていた長男以外は当然の様に姉共におもちゃにされていた為彼も切ない半生であった。それを不憫に思ったグレッコに家と縁を切る事を諭され働く場所を与えられ、グレッコを神格化したらオネェが移っていた。

 

オルテガ、マッシュ

共に第一位階

 

トンキッチンの子分。別名モブ連2号、3号

 

 

アスラ=ウィンザー

勇者 第五位階 17歳

 

前国王アスラ=ウィンザー=シニアの養子にして現ウィンザー王国国王。ベレーにパーティーへの参加を勧誘するも素気無く断られた。冒険者としてのみならず、政治家としての才能もある。実は転生者であるが、その事実は誰にも告げる気は無く真実は墓場まで持っていくつもりである。

 

 

シルビア=ウィンザー

賢者 第五位階 16歳

 

前国王アスラ=ウィンザー=シニアの実子で養子であるアスラの婚約者。弟のガゼールを国王として押す旧貴族の勢力から命を狙われ止むなくアスラと婚約した。結果、冒険者として活動する事を余儀なくされた彼女は位階を上げる事に成功し、暗殺の危機を回避する。その中でアスラと恋仲になったものの、生来のツン体質が災いしてまだ乙女のまま。更には自らアスラはライバルであると公言してしまうというとほほな青春である。結論。ツンデレも大概にしなさい!

 

エリーゼ=ロワール

鍛冶師 第五位階 18歳

 

ドワーフの国、大棟梁の末娘。実質独裁国家であるドワーフ国の内乱に際し、当時鍛冶師を必要としていたアスラとシルビアが介入し、半ば誘拐同然に連れ去った。シルビアの時と同様に位階を上げた結果、暗殺の危機は去ったものの、大棟梁スティール=ロワールに気に入られたアスラは結果としてエリーゼを妾として娶る事を余儀なくされる。シルビアとの協定により、直接的行為は不可能となったものの心はアスラに捧げたエリーゼは今日もアスラの純潔を狙っている。



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Lunchtime 残された者たち

執筆スピードがブーストしますた。


 三日間の忌引休み明け、あの子がもう、この世に居ないという事実がじわじわとあたしの精神を浸食してきました。

 

 はじめまして、神様。

 あたしの名はレッドデセーオ。亡くなったクイーンベレーちゃんの叔母にあたります。とは言っても同い歳ですけど。

 

 今日はあの子が神様の御元で困る事がないように、少しばかりお線香とお供えを用意してきました。だからあの子の事を少しでも好きになってくれます様にちょっとだけ、あの子のお話にお付き合いいただければ幸いです。

 

 あの子があたしの家にやって来たのは、当歳の秋、今のあの中二病全開な眼帯軍服ファッションからは想像もつかない事ですけど、家に来た当初はすっごくビクビクしていた記憶があります。

 

 あの子の母親で、あたしの二番目のお姉ちゃんでもあるピッツァクウカイ姉は、あたしが産まれた頃には既に引退していたし、そもそも家にも寄り付かなくなって久しく、初めて会ったのもベレーちゃんの手を引いて突然我が家に現れたこの時が最初で最後でした。

 

「今日からここがお前の家になる。あっちにいるのがお前の祖母にあたるレミニセントリー老だ。ま、ばっちゃ、とでも呼んで可愛がってもらえ!」

 

 あたし達家族への挨拶もそこそこに、幼いベレーちゃんに上から目線でそう諭す様は、親子の情というよりも、まるで得体の知れない異物でも見るような、そこから逃れようと必死な様な、何とも余裕がない様に見え、何とも言えない違和感が湧き上がるのを感じました。これがあの、ピッツァクウカイ? あたしん家で一番優秀でダービーや有馬記念にも出たと母さんが自慢していた? 

 

「クウカイ! ちょっと待ちなさい!!」

 

 ベレーちゃんを置き去りにしてさっさと出ていこうとする姉さんを追いかけて、母さんが家の外へと飛び出しました。それを追いかけたすぐ上のサンライズシュート姉さんと一緒にあたしも外へと飛び出します。今にして思えば、これが失敗だったんだと分かりますが、当時のあたしや一つ上の姉にそれを求められるのもムリと言うものです。

 

 ベレーちゃんは、初めて来た知らない家の中にただ一人取り残されてしまった訳ですから。

 

「あんな小さな子をほっといてどこへ行こうってんだい!? アンタには親子の情ってもんが無いのかい!?」

 

 アメリカ生まれの母は、大柄な金髪美人です。当時17歳でお腹の中にはまだ妹がいたので姉はそれを心配して追いかけたのですが、その大きなお腹がクウカイ姉のカンに触ったようで、

 

「うるせぇ! オレがそんなもん感じる訳ないのはアンタだって知ってるだろ! オレは、廃用手続きまで済ませて、やっと、やっとあの忌まわしい世界から自由になれたってのに、それをあのクソ野郎共がぁっ!!」

 

「だからって、あの子が何をしたって訳じゃないだろう!? 可哀想に、あんな怯えた表情の子、あたしゃ見た事ないよ!」

「だったら、アンタが笑顔にしてやれよ! 簡単な事だろう? 今まで大勢産んで、育てて来たアンタなら!」

 

 最早売り言葉に買い言葉。二人の罵り合いは留まる事を知りません。

 

「それこそおまえの義務ってもんさね! ウマ娘に産まれて、ウマ娘を産み、育てる。それこそあたし達ウマ娘の挟持ってもんだろう!?」

「! それをアンタが言うのかっ? 何処の誰とも知れない男共にホイホイとシッポ振って尾いて行き、何人ものクソ野郎とギシあんしまくった挙げ句、毎度毎度孕まされて認知もされない子供を大量生産して、国から貰う補助金で辛うじて食って行ってる、ウマ娘製造マシンのアンタがっ!」 

 

 ぱしっ!

 

 母さんがクウカイ姉の頬をひっぱたきました。目には涙が溜まっています。

 

「アンタの本心は良く分かった。あたしを蔑みたいなら、それはいい。でも、あの子がそんなに憎いのかい? アンタの妹達も、それに、アンタ自身も」「ああ、憎いさ! 決まってるっ!!」

 

 吐き捨てるように絶叫を振り絞ったクウカイ姉。その姿は今の今まで悪態をついてた姉ではなく、何となく捨てられた仔犬のように見えました。

 

「生まれた時からあった違和感を抑え付けながら、辛うじて生きて来たオレだ。心は男の筈なのに何故か女の躰、自分自身の姿を鏡で見るのさえヘドが出そうな程だってのに、周りを見ればオレとそっくりな女の顔が年代別にいくつも並んでる。そんなの悪夢に決まってるだろう?」

 

 後から知った事ですが、クウカイ姉は性同一性障害というヤツだったそうです。男の心を持ちながら女の子しか存在しないウマ娘に生まれたというのは悲劇と言っても過言ではありません。

 

「町中を歩けば男がエロい目でオレを見る。纏わりつく視線から逃れようと女社会に引き籠ろうとすれば、そこは孕まされるの上等のマタニティ生産業の歯車扱い。ましてや、そこから逃れようと廃用手続きまでしたってのに、手続きの間隙を衝かれてオレに色目を使ってたキモイ野郎の罠に嵌って無理矢理ドラッグレイプされて孕まされる。挙げ句にオレが前後不覚になった間にヤク中で逮捕拘禁? そんで刑務所ん中であのガキを産むハメになって、気がつけばあの異物を躰の中から出しちまったんだぞ! これで誰を恨むなって言うんだよ!? オレはもう、いつアイツを殺しちまうか分からない程追いつめられてるってのに!」

 

 母親が子供を殺す!? こんな田舎町で育ったあたしにはとても想像できないほど恐ろしい言霊に

 

「う、うわ〜ん!!」

 

 あたしの感情が爆発するのを止められ無かったのでした。

 

「デセーオ!? 大丈夫だからね! シュート、デセーオ連れて向こうに行ってなさい!」

 

 母さんに言われたシュート姉があたしを家まで連れて戻りました。さめざめと泣くあたしが家に入るのを、たった一人大人しく座って待っている無表情なベレーちゃんの姿が迎えてくれました。クウカイ姉のあの話を聞いた後だと何か恐ろしいクリーチャーのように感じてしまったのですが、実際そんな訳はなく、結局あたしの家に一緒に住むようになったベレーちゃんは普通の女の子のように健やかに育てられ、やがて表情を取り戻したのでした。

 

 これはかなり後になって、シュート姉から聞いた話ですが、あの後母さんの説得に応じてクウカイ姉は、ベレーちゃんのジェネラルスタッドブックへの登録だけはしてくれたそうです。もっとも、それ以降母さんがベレーちゃんを育てる条件で。

 

 クウカイ姉はその後、二度と実家に寄り付く事も無く、風の噂では何処か外国で性転換手術を受けたそうです。とてもベレーちゃんには言う事はできません。あなたのお母さんはお父さんになりましたなんて……

 

 しかし、おかげであたしとベレーちゃんは揃ってUTCでトレーニングを積む事が出来るようになったのです。その事に、ベレーちゃんと出会えた事にクウカイ姉には感謝しますが、それでも母さんにあんな酷い事を言ったクウカイ姉を許せそうもありません。

 

 それはさておき、当初、ベレーちゃんの能力はあたしはおろか、その頃走ってた同年代の娘達の中で頭一つ抜けた存在でした。あたしがハロン18秒で走ってた時、既に15―15まで進んでいて、スタッフさんからも、

 

「将来ダービー間違いなし!」

 

 と太鼓判を押されてた位でした。この頃から、自分自身に自信を持てるようになったベレーちゃんは、トレセン学園に入ったシュート姉の置き土産のラノベにハマり、中でもフルメタが大のお気に入りで、

 

「かなめ、いいなあ。あたしにも、あんな素敵なカレシ欲しいよなあ?」

 

 こんな風に普通の女の子みたいな会話を交わせるようになったのは良い事だと思いますが、アレをカレシに望むのは、ビミョーにハードルが高いと思います。

 

 そんな、普通の幸せに慣れたころ、好事魔多しというか、UTCでのトレーニング中、ある事故が起こりました。坂路であたしと併せていた時の事です。

 

「! ちょっと待って!」

 

 途中で止まったベレーちゃんはその場で蹲り、スタッフさん達もそれを見て慌てて駆け寄ります。すわ、骨折か? と緊張が走りましたが、ベレーちゃんはその後自力で立ち上がり、

 

「やっぱ、大丈夫みたいです。御心配おかけしました!」

 

 と、アピールしてその場は何とか収まったのですが、その日からあたしには、ベレーちゃんの動きに違和感を感じるようになったのでした。

 

「やっぱお医者さんに診てもらった方がいいよ! このままだと、どんどん悪くなっちゃうよ!」

 

 そう、諭すあたしに、ベレーちゃんは

 

「頼むから、ばっちゃが心配するような事は報告しないで、お願い! あたしは大丈夫だから!」

 

 そう言って頑なに医者に罹るのを拒んでいました。

 

 実際、普段のトレーニングには支障が無く、あたしよりも速いラップはこれまで通り刻んでいるので、やがてスタッフの皆さんもベレーちゃんの違和感を気にしないようになりました。

 

 でも、あたしはやっぱお医者さんに罹って欲しかったです。早いうちにきちんと治療していれば、ベレーちゃんがあたしですら勝ち上がれた未勝利を勝てない事なんて無かった筈なのに……それだけが今となっては最大の後悔です。

 

 

 

 そして、退学にさえなっていなければ、あんな酷い最期を迎える必要なんて無かった筈なのに……

 

 

 

 あの日、数年振りにあの忌まわしい組織が犯行声明を出しました。

 

 UKK団、正式名称は忘れましたが、口の悪いセンパイ達は

「ウマ娘の敵、このやろ、このやろ団」

 

 と、嘲り笑っていましたが、実際、身内がその被害者となってしまってはとても笑える話ではありません。

 

 奴らの主張はこうです。

 

『この世界から、ありとあらゆる兵器を根絶し、真の世界平和を実現する為に何を犠牲にしても全ての兵器を廃棄処分する』

 

 字面にすると、何か良い事をしている団体みたいですが、では何故奴らがあたし達ウマ娘を目の敵にしているのかというと、曰く

 

『ウマ娘は過去の大戦において最も大勢の人を殺した兵器であったからだ! その驚異的破壊力は、銃弾をも避け続けて接近し、強大なパワーで近代兵器すら素手で破壊する、正に神が創りし悪魔の兵器。ウマ娘がただ一人でも存在し続ける限り、我々人類に安息の日は訪れる事は無いのだっ!!』

 

 と、言う時代錯誤な主張を繰り返しては、時折表舞台に出て来ては破壊工作を繰り返し、やがて当局に取り締まられて壊滅状態になる。なのにそこから何度も復活しては、また破壊活動を繰り返す、そんな迷惑な組織なのです。

 

 今回のテロは、大勢のウマ娘が退学する11月1日を狙いトレセン学園を出ていくウマ娘を襲撃し、一網打尽にするという迷惑な事件でした。しかも、この時使われたのは、奴ら曰く

 

『彼奴等をこの世界から痕跡すら遺さず排除する画期的新型時空爆弾だ! これさえあれば全てのウマ娘と称する破壊兵器の群れを根絶出来る。我等が宿願が遂に叶う時が来たのだ!!』

 

 ……阿呆か!

 兵器の根絶を掲げる組織が新型の兵器に頼るとか、矛盾にも程がある! おかげでベレーちゃんの死体も遺さず消滅したとかで、お墓にも入れる物が無い。せめて遺品だけでもと思って母さんとトレセン学園に残ってる姉達と総がかりで元部屋を探したが、綺麗さっぱり片付いていた為、何も得る事が出来無かったのです。

 

 無論、白昼の電車を狙ったテロ、被害者はベレーちゃんだけではなく総勢132人が亡くなった大惨事で、他にも放校されたウマ娘が二人と一般の人が129人。どんだけ効率が悪いんだよとぐうの音も出なくなるまで問い詰めてやりたいものです。

 

 

 

 やっと、放課後になりました。

 久しぶりだと授業が長く感じて仕方なく、暇にあかせて神様と交信してしまいましたが、お耳汚しでしたでしょうか? 願わくば、せめてベレーちゃんに幸せな来世がありますように。

 

「おい、そこの後輩! おまえベレーの身内だったよな!?」

 

 ふと呼ばれて振り返るとそこに立っていた人達は……

 

「ああああっ!! 貴女達は」

「そうだ! アタシらは」

「カミノフシラビ!」

「レッドディザイア!」

「ユーワファルコン!!」

 

「じ、地獄三姉妹っ!!」

 

「「「誰が地獄三姉妹だっ!!」」」

 

 揃ってツッコまれました。




お線香とお供え︰何か色々違う気がするがデセーオちゃんは気にしない。

中二病全開な眼帯軍服ファッション︰転生当初のファッションは京王線での移動に際し自重した模様。

二番目の姉︰他にもアメリカ時代に三姉妹を産んでいます。

ピッツァクウカイ︰当初実名で出す予定でしたが、書き進めるうちに境遇が余りにアレな事になった為、敢えて名前を変更させて頂きました。

 尚、筆者に特定の個人、団体、サラブレッドを貶めるつもりはございません。優しい世界が出来るには、優しくなるだけの理由がある、と言う事の表現のため、敢えて不幸な者も出さざるを得ないと言う事、文学的表現の必然性と御理解賜われば幸いです。

廃用手続︰引退したウマ娘がその後母親になってもその子供がトゥインクルシリーズに出場しない場合、これを届け出ると廃用手当として約二百万円が国から支給される制度。通常は競走成績の振るわなかった者の遺伝子を排除する為に自主的に辞退する事が多いが、今回のクウカイのように精神面の安定の為と考えると結構必然性のある制度ではあるのでは?

性同一性障害︰この世界ではウマ娘の中に発症する確率が非常に多いとか。但し、トップクラスに行く程その確率は下るらしい。

UKK団︰正式にはユニバーサルキリンググッズノックアウト。第一次大戦時より存在する殺人兵器根絶を掲げる歴史的犯罪組織。第二次大戦時、ドイツではナチスを利用し、アウシュビッツに数万のウマ娘を集め大量虐殺を行うなど、全ウマ娘の天敵と言っていい非道の輩である。太平洋戦争では日米両国のウマ娘が共同戦線を張り、かの組織に壊滅的打撃を与えたと言う事もあったとか。

レッドディザイア︰多分皆様が想像しているのとは別人です。


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6R 天高く底辺ウマ娘の名が轟く時!

 一部男性自身にとっては残酷な描写があります。お覚悟を決めてから御覧下さい。


 アチシは今、猛烈に後悔しているわ。

 

 正直、アチシは人を見る目だけは自信があると自負しているの。その根拠は、アチシの奉じる神様『キュア』より賜わりし『聖女』としての神秘の力。その名も『神威鑑定』かの女神様の権能のほとんどは戦う為の力だけど、この権能だけはアチシも普段使いで重宝しているの。

 

 おかげでアスラきゅん♥という逸材を発掘出来たのは僥倖だったわ。まさか後に国王様にまでなっちゃうとは流石に思っても見なかったけど。

 

 それはともかく、今日もアチシはギルドに入ってくる人を『神威鑑定』で覗きまくってたの。趣味のマンウオッチングを兼ねた『神威鑑定』のレベリングね。そうしたら、アチシが以前近所の子供達と一緒に「迷宮体験ツアー」に連れて行ったネアルコ商会のリリッタたんが、お初のお嬢さんを連れて来たの。

 

 『神威鑑定』で彼女をいつも通り覗いたの。

 

 アチシ、噴いたわっ!! 

 

 噴いた挙げ句に飲んでたドリンクが変なとこ入って、咽せたわっ!!

 

 昨年アスラきゅん♥とトットーリの砂漠で戦った砂の大精霊とのバトル以来、本当に死ぬかと思ったわよっ!!

 

 ギルドのバーカウンターはテーブル席のパーテーションに阻まれて、正面から入ってくる人の視線に入りづらいのが奏功したわね。おかげでアチシがのたうち回る無様な姿を見ていたのはバーテンダーだけで済んだのよ。

 

 最も、アチシが死の淵を彷徨ってる間にアホのトンキッチンがゴロ巻きに行ったのには閉口したけど。

 

 ま、おかげであの子の実力を確認出来たし、アスラきゅん♥との顔合わせも出来たのは僥倖だったわね。

 

 でも、アチシはあの子、ベレーちゃんと名乗った彼女をいきなり戦力として計算しなきゃいけない事態に落とし入れてしまった。

 

 ゴブリンの大軍襲来!

 

 確かに数年に一度はある事態だし、備えも怠って無かったけど、悪い事にキングまでが確認されていた。不幸中の幸いな事にアスラきゅん♥ がこの町に居たのでキングを相手にアチシが出張る事態は免れてラッキーだった。単独でアチシが戦ったら勝つ可能性は三割切っていた筈だし。

 

 ところがいざ、準備を整えて出撃しようとしたら、ベレーちゃんったら、エリーゼちゃんから武器もらったら、一人で突っ走ってさっさと街門まで行っちゃった。その行動を見てベレーちゃんの危うい部分が露呈したわ。

 

 あの子、戦闘とか、冒険者としての心得だとか、ズブの素人もいい所じゃない!? 位階が位階だけに、流石に一度や二度の討伐経験位あると思ってたわよ! これには流石に早まったと反省したわ。

 

 それでも、アチシは町を預かる身としては彼女の力を当てにしなきゃいけない。後衛のアチシが前線で出しゃばるよりは確実に戦力になるから。それにあの子の素質ならアスラきゅん♥ と連携すれば危なげなくキングに勝てるんじゃないかと、期待しちゃったの。しかし、それが甘い目論見だったと思い知らせる事になるなんて……

 

 

 

「ゴ、ゴブリンダイバーだぁ

っ!」

 

 叫ぶ冒険者の悲鳴にオアシスの岸辺へと視線を動かすと長髪を濡らした不気味なゴブリンダイバーが次々と上陸していたわ。

 

「まさか、別働隊? ゴブリンが戦術を使うなんて!?」

 

 衝撃を受けるシルビア姫を叱咤して、アチシ達も岸辺へと向かう。

 

「トンキッチン!」

「グレッコか。済まねえ! 俺様と子分だけじゃ支えきれねぇ!」

 

 アチシは周りの冒険者達にも聞こえる様に、戯けた声で精一杯虚勢を張ったわ。

 

「だからアチシとシルビア姫が来たのよっ! みんな〜! 今からアチシらが先制かけるから、アチシとシルビアたんの姫プレイに乗りなさい〜っ!!」

 

 うおおおおおおっ!!

 

 歓声がアチシの演説に応えてくれた。60人程しかいない、それもほとんどが第一位階の冒険者達が、今程頼もしいと思った事ないわね。

 

「じゃあシルビアちゃん、さっきの手はず通りにね」 

「了解! お願いするわね!」

 

 アチシはオアシスの中から上陸してくる青白いゴブリン共が完全に上陸してくる前に足止めの為、上空から水面へと一気に大気を叩きつける。見えざる大いなる神の御手『ゴッドフィスト』の魔法だ。

 

 ドッゴオオオオオオオオン!!

 

 と水面諸共押し潰されたゴブリンダイバー、その数約800!

 

 だが、それだけでは致命傷ではない。でも、それを与えるのはアチシの役目じゃない。

 

「フィニッシュ頼むわ!」

「了解!『ファイアーブラスト』!!」

 

 水煙の舞うオアシスの上空で圧縮された焔の塊が水蒸気を最悪の凶器へと変える。

 

「ブレイク!!」

 

 パチン! シルビアちゃんが指を鳴らしたと同時に

 

 ヴオオオオオオオオン!!

 

 水蒸気爆発が連鎖して起る。ほぼ上陸成功していたゴブリンダイバーは、何に自分自身が殺られたかを理解する間も無く炎と爆発で死亡する。まだ、水面に顔を出してないダイバーもまた、変わらぬ運命である。何故なら、水面から下、半径200mの範囲に残った水も全て沸騰していたから。

 

 当然ながら沸騰した熱湯の中で生き延びる事の出来る生き物なぞほぼ居ない。あわれ、対面からはるばるオアシスを渡って挟撃しようとした小汚いゴブリンの別働隊はあっさりと煮沸消毒されてしまったの巻。

 

「大勢は決したわね。じゃ、後は残敵掃討するだけの簡単なお仕事よ〜ん!!」

 

 アチシも最初の陸戦部隊の残り、アドミラルが二、三残ってるけど、第三位階の下位なら、アチシらとトンキッチン達で対処できる。後はキングだけね、と、高を括ってたわ。

 

 Doooooooon!!

 

ものすごいスピードでベレーちゃんが200メルトもの距離を吹っ飛んで来たのは、正にアチシらの緊張感が切れたその一瞬だったわ。

 

「い、嫌ぁーーーーっ!!」

「べ、ベレーちゃん!?」

 

 そこには、腹部を真っ赤に染め上げ、内臓のはみ出たベレーちゃんが余りにも無残な姿を晒していたの。

 

「待ってて! 今、助けるからっ!!」

 

 アチシは既に枯渇寸前の魔力を振り絞ると、はみ出た腸を無理矢理押し込めつつ、

 

「リバイタル!!」

 

 対重症患者用の止血魔法を唱えたの。

 

「シルビアちゃん! アチシの鞄からMP回復薬出して! 全部っ!!」

「は、はいっ!!」

 

 出してもらった回復薬を片っ端から飲み干しつつ圧死した組織の回復を試みる。気絶していた事が不幸中の幸いだったわ。意識が残ってたら痛みと出血のショックで即死してたかも。

 

「ベレーさんは!?」

「アスラきゅん! 丁度良かった! 時空魔法でベレーちゃんの時を止めてっ! 直ぐ!!」

 

 言い終わる前に時空魔法を行使してくれたおかげで時間を稼ぐ事が出来るわ。後はMPポーションを連続でガブ飲みすると、アチシは最後の魔法を行使する。

 

 げぷっ! 対象の体組織を在るべき姿に戻す究極の回復魔法。但し、極度の破損や著しい劣化は事前に回復させておかなければならない。しかも、どんな状態でもまず生きてなければそもそも使えない、但し生きてさえいれば本人の生命力次第だが、それまでにあった躰の破損を一切合切無かった事にしてくれる、神『キュア』の使徒が使える究極魔法!

 

「『リヴァース』」

 

 アスラきゅんはアチシが魔法を行使したのを見届けるとキングと戦ってるエリーゼちゃんの所へと戻って行った。アスラきゅんの判断の速さに助けられたけど、彼を送り出してくれたエリーゼちゃんのタンクっぷりも凄まじいわ。

 

 かなり長時間の追い詠唱が必要な『リヴァース』だけど、幸いトンキッチン達がアチシの護衛を買って出てくれた所為で、安心して行使出来る。後はベレーちゃんの生きていたいという意思次第だけど、大丈夫、きっと。

 

「時が回復しますっ! 3、2、1」

「まだっ! 駄目よ、ベレーちゃん!! 目を開けなさいっ!!」

 

 嗚呼、『キュア』様っ!!

 

 アチシはどうなっても構いません! どうか、どうか、

 

 この無垢なる魂を御元にお迎えなさいますなアアアアアアアアっ!!

 

「べ、ベレーさん!」

「……ベレー!」

「死んじゃらめぇっ!!」

 

「くっ! あのアマ! 勝ち逃げするんじゃねー!」

「「クソアマぁぁぁぁっ!!」」

 

「! お、お姉ちゃん!!」

「リリッタちゃん、大丈夫、大丈夫よ!」

 

「ベレーさん……」

「ベレーちゃん! 気をしっかり!」

 

 

 嗚呼、みんなの想いが流れ込んでくる! お願いっ! みんなの想いに応えて! ベレーちゃんっ!!

 

 

 

 

〈その時、奇跡が起こった!〉

 

 

 

 グレッコ=エールの位階が上昇

 発動中の『リヴァース』が第四位階から第五位階へと進化

 

 発動中の『リヴァース』第五位階がアスラ=ウインザーの時空魔法『ポーズ』と融合、複合魔法『リヴァースコンヒーロ』に進化

 

 発動 クイーンベレーの内臓破裂を破裂前の状態に

    クイーンベレーの腹部裂傷を裂傷前の状態に

    クイーンベレーの肋骨骨折を骨折前の状態に

    クイーンベレーの右膝内側靭帯損傷を損傷前の状態に

    クイーンベレーの左足亀裂骨折を骨折前の状態に

 

 クイーンベレーの全損傷部分完治を確認、再損傷予防の為永続バフ効果『強靭』を発動

 

 クイーンベレーの所持ステータス値を自動で『リビルト』

 

 最適化に成功

 

 

 

 

 封印称号『王者の魂』を解放

 

 

 

 

◆◇◆◇

 

 

 

 あ、光が……

 

 光を追いかけて走ってきた。

 

 追いかけて、追いかけて、

 

 それでもとうとう最期まで、

 

 追いつく事ができなくて、

 

 ……嗚呼、もう、いい!

 

 ……いい、のか?

 

 ……あたしはこれで、いいのか!?

 

 

 

 イヤだ!

 

 イヤだ!!

 

 イヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだ!!

 

 まだあたしは何も出来てないっ!!

 

 そうだ! この世界で最初に誓ったじゃないか!! 

 

「こうなったら、歌舞伎町だろうが砂漠だろうが関係ねえ、何が何でも生き抜いてやる!!」

 

『いつか、最高の舞台で!』

 

 そうだ! デセーオちゃんとUTCで誓ったあの日、その約束はもう果たせないかも知れないけど、あたしがこの世界で頑張れば、いつかはあたしの名がこの世界で轟くかも知れない。

 

 いや、何が何でも生き抜いてやる!

 

 どっこいそれでも生きてやるっ!!

 

 

 

 

 

 びゅんっ! と、腹筋の力だけでジャンプし、空中反転する。昔、地元の山の中でデセーオちゃんと共に練習した成果だ!

 

 シュタッ! と降り立つと不敵にあたしは言い放つ!

 

「あたし、再び、参上!!」

 

「「ええええええっ!?」」

 

 あ、ギルマスとシルビアが目を剥いて驚いてる。

 

 ってか、周囲の冒険者達が死人を見るような顔であたしを見ている。あ、あの失礼なオヤジも涙流してあたしを見ている。

 

 だが、何よりも驚愕してるのは、遠くで顎カックンしてやがるゴブリンキング!

 

 良く覚えてねぇが、確か余所見してるスキにアイツに吹っ飛ばされたんじゃ?

 

 に、しては身体が軽い。痛い所が何処にもない!

 

 もしかして? もしかしたら? アイツに吹っ飛ばされた時に古傷の膝の骨が、元の位置にピッタリ嵌ったとか!?

 

 なら、ちゃ〜んす!! 絶対アイツは、

 

 心華を燃やして〜っ!

 

「ブッ潰すっ!!」

 

 あ、ゴブリンキングがドン引いた。

 

 

 

 無論、ドン引きしたくらいで許せる訳がない。ハロン程もある距離をあたしは一気に駆け抜ける!?

 

 速っ!? 砂地とはいえ、町の人達が使う為に整備した広場だ。トレセン学園のダートコースよりは走りやすい。でも、そんなレベルの話じゃない! 

 

 これは、あたしの競走能力が、爆上げしてる!?

 

 ハロン十秒どころぢゃねー!

 体感五秒、ってか止まらん!

 ヤバイヤバイ! どうやって止まる!? ! アイツを利用してやれ!

 

 あたしはアスラやエリーゼに

 

「退けぇーーっ!!」

 

 退避勧告をしてそのまま走り抜けると、そのままゴブリンキングに突っ込む!

 

 かなり高い所にあるキングの喉元にジャンプしつつ右腕を引っ掛けてやる。確かプロレス技のラリアート、って言ったっけ?

 

 Gyaow!!

 

 短く吠えたキングの喉元にバチンと入った! で、でも勢いを殺しきれずに右腕を支点にあたしは一回転しそうな勢いである。

 このままだとあたしがスケキヨになっちゃう!?

 

 Ugwaaaaaaaaaaw!!

 

 あたしの勢いにキングの方が耐えられずあたしの身体が90度程持ち上がった所でもんどり打ってドッゴオオオオンと転倒する。 

喉元の打撃よりも転倒した方がダメージは多かったみたいで、後頭部を押さえて悶絶してる。

 

「ラ、ランニングネックブリーカードロップ!? 三度世界を征した伝説の必殺技!? ベレーさん、君はもしかして……」

 

 へ? アスラがなんか変な事言い出してフリーズしてるけど、そんな暇は無い筈だ。

 

「アスラっ! さっさとトドメを刺してぇぇぇぇっ!!」

 

 ハッ! としたアスラが慌てて駆け寄りあたしが吹っ飛ばされた際落とした角材をあたしに差し出す。

 

「いや、トドメは君が刺してくれ。脳天を砕けば簡単だろう。僕らじゃコイツを倒しても位階は上がらないが、君なら……」

 

 そう言いながらキングが立ち上がれないように首の動脈を剣で斬り裂く。びゅうびゅうと血が凄い勢いで吹き出すが、まだ致命傷と言う訳じゃないようだ。

 

 まあ、ブッ潰す! と宣言した手前、情けを掛けるのも違うし、地元でも、クマとか出た時は遠慮なく解体して、売り飛ばしていたあたしが言えた話でも無い。

 

「じゃあ、お言葉に甘えて」

 

 スイカ割り宜しくキングの脳天に思い切り一撃! ゴキャッ! と頭蓋骨が砕け脳味噌が飛び散る。念の為眼球から脳味噌に貫通する様に角材を突き刺すと、完全にキングは沈黙した。

 

 第四位階に上がりました。

 第五位階に上がりました。

 

 あれ?

 

 どこからか、優しげな、それでいて無機質な声が聞こえる? あれは一体?

 

 うおおおおおおおおっ!!

 

 別のゴブリン共を倒していた冒険者達も、キングの死を察して喜びの歓声を上げる。アスラも肩を叩いて労ってくれた。エリーゼも涙ぐんでいる。遠くでは、ギルマスとシルビアが、ダンスを踊ってた。

 

 ほぼ九割方の討伐を果たした上に、士気も未だ高い。後はあたしが出張る必要も、? 何? 何か違和感が……

 

 

 

 ひょっこり!

 

 オアシスの岸辺に生えたサテツ? のおっきい大木? その木の陰からのっぺりした顔のちょっと大き目のゴブリンが顔だけ出してこちらを伺っている。

 

 なんだ!? アイツ、キングよりもヤバイ感じがする。

 

「ヒャッハー! 残党狩りだー!」

「踊れ、踊れ!」

 

「バカ野郎! 調子に乗るな!」

「平気ッスよ? アニキ!」

「オレらも位階が第二に上がりましたから、あんなホブゴブリンくらい訳ねーですって!」

 

「待ちなさいっ! ソイツはマジでヤバイのよっ!!」

 

 ギルマスが慌てて子分共、確かモブ連2号、3号だっけ? を止めようとするが、時既に遅く、

 

 バキッ!!

 

 たった一発のパンチでぶっ飛ばされて気絶した。

 

「マズイです、ベレーさん! アイツは多分僕らより位階が高い」

 

 アスラの言を肯定する様にギルマスが大声で周囲の冒険者達に警告する。

 

「ソイツは称号持ちのネームドエネミーよ! 名称は、ボブ=ゴブリン! 称号は『紐育の帝王』! 位階は……」

 

「位階は幾つだ!?」

 

 モブ連1号が子分を回収しつつ尋ねるが、ギルマスの答えは

 

「アンノーンよっ!! 文字化けしてて読めないのっ!! みんなっ! 逃げて! チョー逃げてっ!!」

 

 だが、その忠告は一足遅かった。

 

 ボブ=ゴブリンがファイティングポーズを取り冒険者達を威嚇する。

 

「「「ぐわあっ!!」」」

「「「ぎゃああっ!!」」」

「「「スケキヨっ!!」」」

 

 ! 指一本も触れてないのに冒険者達がぶっ飛ばされていく。流石にアスラ達やギルマスは踏みとどまったが、トンチキとやらは気絶していた手下諸共ぶっ飛ばされた。

 

 指一本触れてないのに全滅!?

 

「ヨワイ! ヨワスギルゾ サルノデキソコナイドモ!! コレナラ姑息ニモヘイタイヲ使ッテ退却戦ヲエン出スル必要スラナカッタ」

 

「その割には別働隊? はアッサリ全滅したみたいだけど?」

 

 ゴブリンが喋る事に驚愕するあたしを置いてアスラが件のボブゴブに挑発する様に語りかける。

 

「バカメ! アンナチリアクタヤカイライノ王ナドイクライヨウトモ物ノ数デハナイワ! ワレコソガ神デアリ、ワレコソガ国家デアル!!」

 

 なんか、言ってる台詞の傲慢さとのっぺりした顔のギャップがパねえんだが…… 

 

「ともあれ、これ以上の侵攻は看過できない! お前はここで討ち取る!!」 

 

「シレモノガ! 思イシレ!!」

 

 アスラとボブ=ゴブリンの戦いが幕を開けた。アスラの大剣が力任せに振り降ろされるが、ボブは短い手足の割に意外にも機敏なステップでこれを回避する。

 

「アタラナケレバドウトイウコトハナイ!」

「なら、これならどうだ!!」

 

 アスラが更なる追撃で力任せの一撃を放つ。『バッシュ』が空をきり、地面を刳るも外れると

 

「何度ヤッテモ同ジダ!? ナ!ソラヲトンダ!?」

 

 地面に刺さった大剣を支点に空中へとジャンプしつつ捻りを加えて回転し、有り得ない角度からのキックを放つ!

 

「反転『コークスクリューソバット』! どうだ! これが人間の長い歴史が磨き上げた力だ!!」

「……アスラ一人じゃない事を忘れないで! 『ハンマーフォーフィフティ』!!」

 宣言通りの450°回転したエリーゼがその遠心力を利用して巨大なハンマーでボブをぶっ叩く! 

 

「こっちも喰らいなさい! 『ホーミングレーザー』!!」

 

 シルビアが指先から集中した魔力の光を放つ。が、余裕を持って回避されてしまった筈のレーザービームが、直前に分裂した!?

 

 ドガガガガガガガーーン!!

 

 ビームの大半は外れた様で砂煙を巻き上げた、が、その中を突っ切ってアスラが駆け込むと砂煙の中、ボブのシルエットを脳天から一刀両断に斬り裂く。

 

「や、やったか!?」

 

 ヤバイ! それはフラグだ!

 

「残像ダ」 

 

 砂煙が晴れるとアスラの後ろを取ったボブがアスラをバックから抱え上げる。

 

「な、なにをする!?」

「我ガ妙技ヲ味ワエ!」

 

 両足を抱え込まれたアスラがそのままボブに勢いづけて落とされる。待っていたのは折り曲げられたボブの膝!

 

「ぐ、ぎゃああああっ!!」

 

 哀れ、アスラは尾てい骨をボブに割られてしまった。

 

「アスラっ!」

「アスラあっ!?」

 

 エリーゼとシルビアが慌てて駆け寄りアスラを守ろうとボブの前に立つ!

 

「ホウ、人間ノメスニシテハナカナカ度胸ト器量ガイイナ。キサマラハ我ガ国家ノ国母トシテヤスム間モナク孕マセツヅケテクレヨウ!!」

 

 カチン!

 

 あたしは黙っていられず、アスラ達の前に立つ。

 

「ナンダ? キサマモ我ガハーレムニイレテホシイノカ?」

「ざっけんなっ! このすっとこどっこいがぁっ!!」

 

「「すっとこ?」」

 

 エリーゼとシルビアが疑問符を投げ掛けるがそんな事は知らん! 後でお父さんかお母さんに聞け!!

 

「ばっちゃがあたしに言っていた。女たるもの、女としての挟持に生きろと」

「挟持ダト? タカガメスイヌフゼイガカ?」

 

 ツーアウト。

 

「女たるもの、本気で人を愛して惚れて、惚れた相手に最大限の愛情を捧げろ、と。そして、その捧げた愛情の集大成こそが二人の間に出来た子供だと」

 

 エリーゼとシルビアがアスラを見つめてぽっ、と頬を染める。やっぱあいつらデキてるんじゃないか? ちくそー! 爆発しろー!

 

 もとい。

 

「だが、貴様は女を見て只、子供を孕む為の道具扱いした。その傲慢さは全ての『女』を敵に回す行為だ! 天が地が、人が許しても、あたしが許さん!!」

 

スリーアウト、でいいよな。

 

「オノレコシャクナ小娘ガッ! 貴様ハ一体ナンナンダ!?」

「通りすがりのウマ娘だ! 覚えておかなくていい。さっさと死ねーっ!!」

 

 あたしはボブに向かって突進すると、角材を袈裟斬りに叩きつける。

 

「「「ウマ娘って、なに?」」」

 

 アスラ達が疑問符を投げ掛けるのを尻目に猛攻を繰り広げるが、ボブに当たらない。

 

「コシャクナ! 喰ラエ! 『バックランドストレート』!!」

 

 不可視の攻撃があたしに迫る。どうやらさっき冒険者達を纏めて倒した技らしいな。だが、

 

「二度も同じ手が通用するかっ!!」

 

 不可視の何かを纒い伸びてくるのはタダのパンチである。あたしはそれを紙一重で躱して伸びきった肘を角材で打ちつける。

 

「僕ですら見るだけで精一杯の攻撃を見切って反撃したっ!?」

 

「ギャ! イタイ! ジミニイタイ!!」

「お前が安易に女に向かって言った『孕ます』って台詞の方が何倍もイタイ上にどれだけの女を傷つけてるか? 思い知れ! このゴキ野郎っ!!」

 

 あたしは次に奴の膝裏に角材を叩きつける。足が速いなら、足を潰せば何も出来なくなる。

 

 あの暴虐無尽なユーワファルコン先輩だって、年に一度のレース直後の再骨折した時には何も出来ない大人しい時期がある。

 

 その時悟ったのだ。

 

 相手の得意分野を潰してしまえば、ソイツはもう何も出来ないデクの棒だと!

 

 つまり、

 

「足が自慢なら、足を潰す!」

「グギャッ! アギャ! ロ、ローハヤメテ!!」

 

 嫌がるボブの足を次々に攻撃する。

 

「皿」

「ギャ!」

「弁慶」

「ギュ!?」

「内腿」

「ギョエー!!」

 

 グラリと転倒しそうなボブに片手を引きつつ両足をあたしの腕で薙ぎ払うと面白い位簡単にグルンと1回転した。

 

「あれは、三船十段の秘技『玉車』!?」

 

 いや、知らんて! ともかく、あたしは転倒したままのボブを逃がさぬ様鳩尾に膝を押し付け顔面を殴る殴る!

 

「こ、今度はニーオンブレス? 天才佐山サトルが開発したアルティメットボクシングまで!?」

 

 誰だよ、ソイツ!? ともあれ、

 

「さて、最初は自慢のパンチを打ち砕き、次にフットワーク自慢の足を潰してやった。で、大きな口を叩く悪癖もあるから顔面ごと唇を潰してやった訳だが」

 

 ニヤリ! あたしはここで過去のトラウマの解消次いでに奴を追い込んでやろうと画策する。

 

「んで、てめえにはもう一つ自慢があるみたいだなぁ。そうだよ、それだ! その股間に生えてる小汚いち○こだぁ!!」

 

 ここであたしは膝を支点に180度回転し、腰蓑を毟り取り、露出したイチモツをキンタマごと殴打しまくる!!

 

「ウギャ! メギャ! アヘ! モ、モウ、ユルシテ!!」

「馬鹿野郎! 許す訳がねえだろうが!?」

 

「「「あ、悪魔だああああっ!!」」」

 

 いつの間にか取り囲んだ冒険者達が口々にあたしを非難する。あんたらさっきコイツに殺られてたよな?

 

「批判は一切受け付けん! 今はあたしら女のターンだ!! 大体お前ら男は勝手過ぎだ! 女と見ればヤレるかヤレないか、どっちかしか無い! しかも、ヤレればビッチ扱いし、ヤレなければブス! と、手の平を返す! ましてや、イケメン士ね! とか、リア充爆発しろ! とか、てめえを顧みず言いたい放題!」

 

 ぐっ! と黙り込む男冒険者達。

 

「そうして妥協したとしてもお前ら男は自分に魅力があるからだと勘違い! 気がつけばお前らは女を自分のアクセサリーか何かと勘違いしている!」

 

 そうして周りを見渡せば、俯く男共と、うわっ!? エリーゼとシルビアがぼろぼろと涙を流していた!?

 

「そうよ! 私は親戚の筈の公爵から息子の嫁にと求められ、婚約も決まってないのに子供を何人も産む事を義務付けられて、足りない様なら自分も私を種付けしてやるとか言われて、そうしたら弟が王になった後でも殺さず生かして置いてやると脅されていたわ。嫁いで行く自分の未来にずっと絶望していたの!!」

 

 シルビア、重い重い!!

 

「……わたしも同じ様な物。評議会議員の中年から自分の嫁に来る様に命令されていて、それも、お父様が怖いからとわたしからお父様に嫁ぎ先に推薦する様にと。そんな情けない男に自分の安全を握られて、毎日が地獄だった。あの時アスラ達と出逢わなかったらと考えたら……」

 

 エリーゼお前もかっ!?

 

「……どうやらこの世界、男共ってのはどうしようもないクズばっからしいな?」

 

 あたしの言葉に数少ない女冒険者達もウンウンと頷く。男共の方はアスラも含め居心地が悪いのだろう。ビミョーな空気感が場を支配する。今更言えないな。ちっちゃい頃ママの愚痴や恨み言を覚えてて適当にパクっただけの話がここまで重い雰囲気にしてしまうとは。

 

「ともあれ、ここは一罰百戒! 今からコイツの公開処刑を行い、以って全ての罪咎を清算させるとしよう」

 

 やいのやいのと騒ぐ傍聴人の群れを無視してあたしは我ながらドン引きそうな凶悪な笑みを浮かべて宣言する。

 

「判決、死刑!!」

 

 その間もジタジタと逃げ出す機会を伺うボブの手足はアスラとギルマスが腱を切り動かす事も最早叶わない。

 

「じゃあ、早速執行しようか?」

 

 あたしの宣言にヒッ! と白目を剥くボブと既にお通夜の雰囲気な男冒険者達。あたしは徐ろに、

ボブのち○こを直に握り絞めた。

 

「「「「ぎゃああああああああああああああああっ!!」」」」

 

 男共の悲鳴をBGMにあたしはボブのち○こをグルングルンと振り回しボブの身体をびたーん! びたーん! と地面に叩きつける。既に白目どころか完全に昇天してしまったボブは叩きつけられるごとに菩薩の様な穏やかな顔になっていく。一方顔色が悪くなる一方の冒険者達はというと、

 

「恐ろしい。俺様はなんて恐ろしい相手に喧嘩を吹っかけてしまったのだろうか?」

「アチシは今まであの姉達を心の中で恐れていたわ。でも、姉達なんてまだまだ甘い! 結局あれは唯の貴族のお嬢様の遊びに過ぎなかったのね」

 

 青い顔でガタガタ震えつつ虚な表情でそれぞれ神に祈る男共。やがて終末の刻が来た。

 

「あ」

 

 ぷちん! とち○こが千切れてボブが遠くへ飛んで行った。

 

 

 

 その後の事は多くは語るまい。

 唯、有志の男冒険者によりち○こを亡くしたボブは、その名誉を尊重し、安楽死処分となったと聞く。

 

 そして、世界は少しだけ優しくなり、女性達は笑顔を取り戻し、男性達はいつも優しさに満ち溢れる様になった。

 

 そしてあたしは、恐怖の象徴として、『白き魔王』の二つ名を戴いた。ガッデム!!

 




その時、奇跡が起こった︰過去に数多の英雄の危機を救った正に奇跡としか言い様の無いミラクル。具体例、
 仮面ライダーブラックが太陽の力を得てRXに進化した。
 劇場版で守られるべき妖精が神秘の力を得てプリキュアに変身。
 スペが『調子にのるな!』の力を得てブロワイエに完勝、等。

『王者の魂』︰故ジャイアント馬場さんの入場テーマ曲。

三度世界を〜︰その馬場さんが三度に渡りNWA世界ヘビー級王者を奪取した時のフィニッシュ技。

心華を燃やして︰メイクデビューではこれを言いたかったらしい。予想外にスペが怯えたせいで歴史を変え損ねたとか。珠理奈様と、宮脇の確執に通ずる悲劇かも。

白き魔王︰最早語るまでも無い、一部の人にとっては既に伝説となった称号である。


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7R 約束!

 カランコロン

 

 扉に付けられた木製のドアベルが、今日も心地よい音を奏でつつ俺様を迎える。いつもの間抜けな取り巻き共は、その間抜けぶりが祟って二人共治療院のお世話になっている。

 

 久方ぶりの一人の時間だ。とはいえ急に空いた時間の潰し方なんて洒落た物に俺様は覚えが無い。

 

 結局いつも通りのいつもの場所へと向かうしか、俺様には選択肢が残ってなかった訳だが。

 

 ギルドに入っていつもの癖通りに中をぐるりと眺め、目の合った顔見知りのギルド員達をひと睨みすると、俺様はいつもの依頼掲示板ではなく、サボテンの植え込みに隠れてるバーカウンターの方へと足を向ける。

 

 実は表から来た奴等から完全に死角になっているこの場所は、このギルドでも使う者が限定される死に地なのだが、何故かフルタイムで働くバーテンダーが常勤している。

 

 そして今、その場所には俺様以外の唯一の常連、ギルドマスターのグレッコが完全に潰れていた。

 

「ったく、ギルドの最高責任者が何故朝っぱらからこんな所でクダ巻いてやがる!?」

 

 徹夜明けという訳でも無さそうだが、さりとて、どうやらマトモな精神状態でも無さそうだ。バーテンの心遣いだろう、トマトとオランジェの絞りたてジュースに手も付けず、強いスピリットのグラスが空のままいくつか放置されていた。

 

 そしてその空のグラスを無駄に積み上げた主は、

 

「あ!?」

 

 オカマが出してはいけない声音で俺様を威嚇した。

 

「あによぅ? アチシにだって飲まなきゃやってられない時もあるってのよゔ!」

 

 俺様はバーテンにいつものコールドペールエールを頼む。こんな砂漠のど真ん中で奴のように蒸留酒を頼む程、俺様は命知らずじゃない。

 

「ったく、飛ぶ鳥を落とす勢いの法衣男爵様ともあろうお方が、何をそんなに落ち込んでいやがる!?」

「うっさいわね! 女爵様とお呼び!」

 

 良く言いやがる! 王都の屋敷に帰れば女房子供が待ってるなんちゃってオカマの癖しやがって! もっとも、コイツのオカマ道は両親と姉妹に対する当て付けだったのが、今やアイコンと化して止めるに止められなくなったせいでもある。それでもコイツの爵位は、親からもらった物じゃなく、実力で手に入れたモノだ。だからこそ俺様もコイツに一目置いているのだ。ちなみにこの国に女爵という爵位は無い。

 

「お前が落ち込んでるのは、どうせあのクソアマの事だろうが!?」

「あら、あれだけ完膚なきまでにやられておいて、まだそんな悪態つけるの?」

「う、うるせぇ! 俺様がアイツの邪魔をしたのは」

「あの子が分不相応な依頼に手を出してあの子自身と依頼人が危険に晒されない様に、でしょ?」

「け! 分かってるならそれでいい! それよりもお前の事だ! 大方アイツが大怪我したのは自分のせいだとか考えて落ち込んでるんだろが!」

 

 グレッコはらしくもないしかめっ面でボトルをバーテンからひったくると、グラスに注ぐのももどかしくラッパ飲みで一口煽る。

 

「そうね。その通りだわ! あの子の最初の依頼をこんな形で汚してしまった。あれ程の才能の持ち主が、この仕事を嫌いになる様なら、それはとっても不幸な事じゃなくって?」

 

 俺様は冷えたエールを一口飲み、ちょっと考えてからこう言った。

 

「ソイツは考え過ぎじゃないか? 怪我したくらいでこの仕事を嫌いになる様な奴が、復活した直後にあんな恐ろしい真似が出来るとでも?」

 

「それも、アチシには不安の種ではあるのよ。だってあの子、どう考えても行動パターンが幼な過ぎだと思わない? 正直、グレッコブートキャンプに来た幼女と感覚が被ってるのよね」

「……確かに。幼女と考えれば理解出来なくも無いな。ウンコとか、ち○ことか、結構スキだもんな、幼女」

 

「最近はリリッタちゃんとか、比較的大人びた子ばかり相手してきたから、余計ギャップを感じるのよね。それに比べるとあの子は完全に真逆」

「見た目以上に行動が幼く危ういか。だが、そんな奴、この世界には掃いて捨てる程居るだろうが」

 

 つまみに塩の効いたナッツを頼んで残りを飲み干し、お代わりも次いでに注いでもらう。

 

「あんた、アチシのステータス値覚えてる?」

「細かくは覚えてねぇが、確かトータル800ポンドだったか?」

 

 人間、というか、生き物には生命に価値がある。ポンドってのは位階第一の人間の持つ魔石の重さと同じ重さの金の価値に相当する単位である。

 例えばこの値が倍あると、ほぼ戦っても勝ち目が無くなると一般的には言われている。

 では、位階が上がるとどうなるか? ぶっちゃけ上がる前の十倍程になる。とはいえ重さが十倍になるって意味じゃない。純度と魔力の保持量が上がり価値が上がるって意味だ。無論個人差という物もあるから一概には言えないが。とどのつまり、第四位階のグレッコの800ってのは平均よりもやや少ないとなる。もっとも、一般人からしたらどちらにせよ化物で逆さにひっくり返しても勝ち目はないのであるが。

 

「あの子のステータス値、ね。12万だったのよ。それも、アチシが見た時点で第三位階」

 

「じゅ、12万!?」

 

 アスラ王陛下が一万なんぼで第五位階の平均よりも上である。第三位階の時点でその十倍以上かよ! あの時点でケンカを売った俺様にはどう考えても元々勝ち目が無い、無理である。

 

「想像してみて? 幼女そのもののメンタリティーの子がステータス上とはいえアスラきゅんの十倍以上強いのよ? こんな危うい女の子が碌に物を知らない状態で、例えば保険尚書に存在を捕捉されたら……」

「テレスコステレン卿か……」

 

 保険省はアスラ王が鳴り物入りで新設したばかりの新しい省である。現尚書のアジヤパー=ダフンダ=テレスコステレン侯爵は、初代尚書スットンスキーの兄で病弱な弟に代わって暫定的に就任したとされている。だが、実態は新ポストに金の匂いを感じた侯爵が弟のポストを牛耳る為に、弟を誅殺し乗っ取ったと言われている。奴らは血縁以前に元々国の福祉事業に携わって国庫からの助成金をパクっていた一族であり、むしろ清廉な所為で分前を期待出来ない弟よりも、金に汚い兄が元々のポストに戻った事を歓迎する門閥貴族も少なくは無い。しかし、問題は国王不在の間隙を突いてこの人事強奪が行われたという事である。

 

 そも、アスラ王の戴冠については未だに納得していない門閥貴族も多く、その為にこうして地方行脚を続けて理解を求めているという事情もある訳であるが、この件については王都にいるべき王の不在が全く裏目に出てしまった。

 

 よもや鳴り物入りの新ポスト欲しさに、身内が背中から襲いかかるとは流石のアスラ王も思わなかっただろうし、ましてやそれを希貨に門閥貴族の一致団結を図る等と言う暴挙に出るとは、神ならぬ身には想像すら出来ない事である。

 

「で、賢人エール卿としては、次の展開をどう持って行く?」

「イヤミかしら? イヤミなのね!?」

 

 結構本気でムカついてるグレッコだが、今正に俺様の前で晒してる醜態はどうやらノーカンらしい。

 

「そうね。現状アスラきゅんに必要な味方は量よりも質が問われる段階だし、ぶっちゃけ位階が高い味方はあんたでもいいから欲しい所ね」

 

 ったく、正直に言ってくれる。だが、奴の言う事もわからないではない。門閥貴族の門閥貴族たる所以は長年続く名家がその名家を維持するのに必要なノウハウを独占している事だ。その中には効率よく位階を上げる方法も含まれる。そも、一般庶民が何故何世代にも渡って成り上がる事が少ないのか? 早い話、位階が上がる程の冒険が出来ないから。マグレで第二位階に上がる事はあっても、そんな修羅場を潜り続ける事は事実上出来ない。ましてや、何代も続けて位階を上げ続けた貴族は庶民と比較して位階が上がり易い血脈を長年に渡り作り続けてきたという事情もある。

 

 アスラ王の力を増すには、既存の貴族を味方に付け続けるか、一から庶民をパワーレベリングし続ける、そんな無理なゲームを一からやり直すという事なのだ。

 

 他人事ながら前途多難だ!

 

「決めたわ!」

「何を?」

「ベレーちゃんを促成栽培して、アスラきゅんのお嫁さんにするのっ!!」

 

 あ〜あ。

 俺様はあのクソアマが泣きながら礼儀作法を教わる姿を一瞬幻視した。それはそれで溜飲の下がるざまぁな光景だが、一方で奴が大人しく後宮に収まる姿も想像出来ん。

 

「そう、上手くいくかねぇ?」

 

 俺様は結構本気で分の悪い賭けだと思ってしまった。

 

 

 

◆◇◆◇

 

 

 

 早いもので、あれから一週間が経ちました。

 

 あたし、クイーンベレーは毎日充実した日々を送っています。

 

 今日も午前中はトットーリの町中をメッセンジャーガールとして行き来して、ほぼ町中の地理に関しては完璧に覚えました。

 

「こんちわー! カーレさん」

「お! 今日も早くからご苦労さまだね!」

 

 今、挨拶したのは、雑貨屋さんのカーレさん。ここに来て最初の夜、同室で寝ていた人だと言う事だ。何でも王都に仕入れに行った帰りに遅くなり閉め出されたのだとか。

 

「ま、あの後門番の連中には、ぽぎゃん! と一発入れておいたからね。これに懲りたらせめて定時までは我慢する事を覚えて欲しいものさ」

 

 そう嘯くカーレさんはおっきな胸をぷるんと震わせてガハハと笑った。ちくそー! うらやま!

 

 大体午前の仕事は、彼女の店から小物の配達がてら行った先での御用聞きをして、その注文をまたカーレさんに伝えるという感じである。

 

 そして午後はというと、

 

「さあ、それじゃ次はおダンスの特訓よ〜」

 

 今、あたしは何故かグレッコさんに宮中儀礼の特訓というのを受けている。

 

 そして何故かエリーゼとシルビアもあたしに付きあって毎日一緒に居る事が多くなった。更に更に、

 

「お姉様、軸がズレています。あと1.5度修正してください」

 

「お姉さま! そこはもっと柔らかくステップを踏んでください」

 

 更に更に、何故かあたしは二人のお姉様と呼ばれる様になっていた。トレセン学園にもこういうノリの人達はいたが、お姉様と持ち上げられている割にあたしの身分は何故か低いようだ。

 

 そうそう、身分と言えば、アスラがこの国の王様だと判明したのにはびっくりした。ゴブ退治の後、論功行賞というのがあったのだが、そこでグレッコさんと共に壇上に上がり中央の偉そうな椅子に腰掛けたアスラから大量の金貨の入ったご褒美を貰った。無論、あたしだけでなく、全ての冒険者が袋を貰ったのだが、最後に冒険者を代表して、トンチキとかいうあのおっさんが御礼の口上を話したのだが、アスラの事を国王陛下と呼んだ時は、マジで「ふえっ!?」と変な声が出た。

 

 そして論功行賞の後で居残りになったあたしはグレッコさんにこってりと絞られた。曰く

 

「あんなばっちい物触っちゃ駄目でしょう? ましてやむしり取るとか、乙女に在るまじき暴挙よっ!」

 

 とか、大怪我した件も含めて小一時間のお説教を正座で受けるハメになった挙げ句、毎日夕刻から、冒険者としての心得と何故かグレッコさんに女子力養成講座を受けさせて貰う事になった。解せぬ?

 

 

 

 それはともかく、世の男達と同様、アスラが王様だとはいえ、彼もシルビアとエリーゼには頭が上がらない立場であるらしく、その二人共があたしを持ち上げるので、現状ヒエラルキー的にはあたしが上位らしい。

 

 そして、現在この町における最上位者とは、すなわち

 

「お姉ちゃんの妹というなら、リリッタの妹でもあるのですよ!」

 

 と、言う訳でリリッタセンパイが君臨する事になった。

 

 これには流石のおっさんやパレッタさんも半笑いで眺めるしかなく、日々リリッタセンパイを先頭にあたしとエリーゼ、シルビア、アスラがその日の最後に夕食がてらバザールを探検するのが日課になってしまった。

 

 そうそう、バザールであたしは掘り出し物のイケてる軍服を買った! 濃紺の女性士官用で、白いミニとストッキングの絶対領域が眩しい逸品だ。六十年程前の隣国で採用されていた品だとか。丈も丁度良く、胸も動きを阻害しない(すなわちやや緩い)。更には繊維に魔法が掛けられており、防御力が極めて高い。どの位高いかと言うと、キングにやられた時着ていれば、無傷だったのにとエリーゼが何故か悔しがっていた程らしい。

 

「に、してもその軍服の国って、六十年前に滅んでるのよ? 縁起悪くない? なんか憑いてそうだし!?」

 

 うっさいシルビア! そういうのも含めて浪漫と言う物なのだ! だから憑いてるとか言うな!

 

 憑いて、ないよな!?

 

 ともあれ、あたしはこれを金貨60枚で買った。おかげでアスラから貰った金貨は一枚残してカラッ欠だが後悔はしてない。胸の部分はパレッタさんが、こっそりパッドをサービスしてくださいました。ちくそー! 

 

 残念ながらベレー帽は見つからなかったのが片手落ちだが、良さげな眼帯はあったので買おうとしたら、パレッタさんから「目が悪くなるから止めなさい!」と叱られた。ちぇっ!

 

 

 

 そんなこんなで一週間があっと言う間に過ぎたある日、アスラから

 

「ベレーさんと二人きりで大事な話があります! シルビア達にも席を外して貰うので今晩僕の部屋まで来てくれませんか?」

 

 と、誘いを受けた。

 

「んまっ! 来たのね? 遂にこの時が、来たのねっ!?」

 

 と、何故かグレッコさんが無性にエキサイトしていた。いくらオネェの人だからって、流石にセクハラじゃなかろうか?

 

 ってか、やっぱそういう意味なんだろうか? あたし、求められてるんだろうか? 

 

 確かにあたしと一緒に放校になった奴らの大半はあの後、母親になるんだろうし、あたしの歳ならそういう事があっても不思議じゃないんだよな。

 

 アスラはいい男だと思うけど、あたしのタイプから言うとちょっと線が細い。それに一人称は、自分、か俺、だよなぁ。どうしても、僕って一人称だと弟って印象しかない。まあ、弟、出来ないんださけど。

 

 ただ孕む、まで考えなければ初体験の相手としてはありなのか? 最初は痛いって言うし、ウマ娘の痛覚耐性を考えると、ああいう優しいタイプは、うん、ありだな。あ、この世界ってゴムあるのか? まさかいきなり生とか……

 

 ぷしゅ〜!

 

「あの? ベレーさん?」

「ふ、ふぃやいっ!?」

 

 変な声出たぁ〜っ! 

 

「わわわわかった! とにかく夜だなっ!?」

「すいません。こんなお願いいきなりして。でも、とても大切な話なんです。ご足労おかけしますが宜しくお願いします」

 

 うわ、やっぱそういう事だよな。これであたしも王様の現地妻か。いや、ここは意地でも大人の余裕って物を見せつけなければ!

 

「お、おう! 任せとけ!」

 

 あ、あたしのバカ〜っ! せめてもう少し色気って物をだな〜!!

 

 

 

◆◇◆◇

 

 

 

 コンコン!

 

 あたしはギルド内にあるゲストルームに来ている。今は午後七時頃だろうか? 早い夕食を取った後、エリーゼとシルビアに捕まりギルドの風呂で磨き上げられた。それはもうペカペカになるまで。

 

「か、勘違いしないでよ? 相手がお姉様だから先を譲るけど、あくまでも正妻は私なのは間違いないんだからねっ!?」

「業腹ではあるけど、初めては譲る。だから後で感想をお姉さまの口から微に入り細に入り聞かせて欲しいの」 

 

 そうして、シルビアのドレスとやらを無理矢理着せられて送り出された。ちなみに一張羅の軍服は「変な性癖に目覚められても困る」との理由で全力で却下された。

 

 カチャリ、鍵が外され中からアスラが現れた。

 

「ありがとうございます、ベレーさん。わざわざお越し頂き感謝いたします」

 

 そう言いつつあたしの肩を抱き部屋へと誘うアスラ。ちくそー! 随分と小慣れてやがるじゃないか?

 完全にあたしの気分はドナドナである。寄る辺も味方もいないこの身ならば、いっそ王様の保護下にいるのも悪くない選択だとは、頭では理解しているのだが。

 

「防音結界を張りました。これでこの中で何を話しても外部に漏れる事はありません。では早速ですが」

 

 ひぃ〜っ! まだ心の準備がぁ〜!

 

「ベレーさん、貴女は日本人ですね?」

「……はい?」

 

 あれ? 話って、本当にお話の話? いやまて! これも行為前の寝物語って奴か?

 

 正式な話をすると、厳密にはウマ娘は日本の国籍を持っていない。ジェネラルスタッドブックを管理する大英帝国連邦のウェザビー国際ウマ娘健全育成委員会が各国ごとにその年に誕生したウマ娘を登録して管理している。ただ、普通の日本人でその点をしっかり理解している人というのも少数派であるから、普通は住んでる国の住民であると発言する事が多い。

 

「ああ、つい最近まで府中のトレセン学園に住んでいた」

「は? トレセン? って茨城県の美浦にあるんじゃ?」

 

 ? チバラギ?

 

 流石にそんな田舎に住んでウマ娘が務まる訳が無い。ライブやらレースもそうだが集客が見込める場所に会場とトレセンが来るのは常識である。

 

「やっぱり君は東京競馬場の関係者かなんかだったのか?」

「関係者っていうか、普通に走ってたけど?」

「は?」

 

 え? 何故驚く? あたしを何だと思ってるのだろうか? そう考えてると、アスラが遂に核心に踏み込んだ。

 

「あの〜 つかぬ事をお聞きしますが、貴女のその耳と尻尾、やはりこの世界に転移した時に何らかの権能を神様に頂いたのですか?」

 

 は? コイツは何を言ってるんだ?

 

「バカ言ってるんじゃねー! 自前に決まってんじゃねーか!?」

 

「あ、す、すいません。しかし、僕が住んでいた日本では貴女のような獣人は存在しなかったのですが?」

 

「へ? 住んでいたって、あんたも日本人?」

 

 だがアスラは金髪碧眼のイケメンだ。外国から来たウマ娘じゃあるまいし、この容姿で日本人と言われてもなぁ? いや、それは置いておこう。もっと聞き捨てならない事を言ってるし。

 

「つまり、あんたはウマ娘が居ない日本から来たって事か?」

「ウマ娘、って、馬の獣人の事ですか? やっぱりそういう意味なんですね? 僕の世界では競馬場では馬という動物に人が乗って競争する競技だったのですが」

 

 何? ウマって何?

 あたしは自分のアイデンティティーがガラガラと崩れる音を聴いた、気がした。

 

「僕は生粋の日本人でした。こちらの世界には28歳の時に転移して、何故か八歳の体になっていました」

 

 そう、自分語りを始めたアスラの話はなかなか強烈だった。

 

 曰く、彼が転移して来たのが正にこの辺りで、当時は国の食料生産を担う穀倉地帯や、国内各所へと国道で繋ぐ国の最重要地帯だったと言う。ある日突然広大な土地が暗闇に包まれた。暗闇に閉ざされた土地を調査する為、前国王が子飼いの冒険者を伴い暗闇の中に突入したのが異変発生から二日後であったと言う。暗闇の中に侵入して分かった事は、砂漠化した土地とかつて無い強さの魔物の存在であった。

 

「前国王は三日三晩の間調査を続けるも、生存者を見つける事ができませんでしたが、その中にほぼ一直線上だけ存在する安全地帯を見つけたそうです。何ら手掛かりの無い生存者救助を打ち切り、その目的を安全地帯の確保に変更した彼らは、ほんの小さな町程度の安全地帯と、その中央で眠っていた僕を見つけたそうです」

 

 その辺の記憶が無い為、アスラが知ってる知識は後で前国王から教えられた物だとか。その時一緒に行動していた冒険者の中にグレッコさんやあのトンチキとか言う奴らも居たらしい。

 

「そもそもこの程度の事件で国王が出てこざるを得ないのは、王都に近い王国直轄領内であることと、所謂貴族が必ずしも王家の味方とは限らない、むしろ我こそは王家に成り代わろうという野心を常に持って居る事を隠そうともしていない、室町時代みたいな情勢だからです。同じ理由で正規の兵士も迂闊に動かす事が出来ない。だから、冒険者を金で雇い、あわよくば優秀な人材を子飼いとしてスカウトする為に前国王は自ら乗り出したという事です」

 

「ちょ、ちょっと待って! あ、あたしに政治の話を振られても無理! 無理だからっ!」

 

 と、言うか現代のウマ娘に政治の話って、タブーなんだからっ!

 

 あたしらウマ娘が学園で唯一教われる政治関連の話、それは第二次世界大戦後にフランスで決められた国際条約、所謂「ブロワイエ国際条約」すなわち、ウマ娘をいかなる国も政治、軍事、宗教の目的で利用してはいけない、という全世界規模の条約である。当時は敗戦国に対して批准していた条約が、今では153ヶ国の国連加盟国全てが相互監視しつつ実現したある意味現在の世界平和の礎となった条約である。

 

 その一方で、ウマ娘には参政権と言う物が存在しない。無論、多くのウマ娘が参政権を得る歳まで生きられないという事情もあるのだが、一方、先にも話した通り国籍が無く、登録国の差はあれど基本国際機関の所属となっているウマ娘は言わば世界の「おみそ」と言っても過言ではない。人に非ざる存在。だからこそ、ウマ娘と言う存在はあらゆる国に置いて優遇されているとも言える。何も無くても国から補助金が貰えて、万一怪我でもすれば、その程度によっては一年で数百万円の見舞金が出る。そうして生活を保証されているからこそ、レースとライブと言う手段でアピールして社会に御礼を返すのである。

 

 何よりも、その手段しかウマ娘には残されて居ないのだから。

 

「あんたの居た日本がどうかは知らないけど、あたしらウマ娘は政治、軍事に関わるのはご法度なんだよ!」

「え?」

「特に、見目麗しいウマ娘が選挙なんかに関わるとそれだけで票の流れが代わるから、絶対に誰々を応援するとか言っちゃいけない程警戒されてたんだ! だから悪いけど、あたしに政治的な立ち位置を求められても応えられない!」

 

 しばらく黙って考えていたアスラは、意を決して白状した。

 

「実は、グレッコさんに貴女を妃として迎える様に言われていたんです。貴女のたぐい稀な才覚は必ず王家の力になるからと。ですが、貴女に日本の事を確認したかったのも事実です。こちらに来て八年、思い出す事も減ってきた昨今ですが、やはり一人くらいは思い出を共有出来る相手が欲しかったのも事実です」

 

 ですが、と、アスラは続けるとこう言った。

 

「どうやら僕の来た日本と貴女の日本とは違う世界らしいですね。貴女の様な人の居た日本も見てみたかったですが、まあ、それは無理そうですね」

 

 そう言って寂しそうに笑うアスラは歳に似合わない哀愁を感じさせてちょっとキュンとしたが、改めて考えると、やはりあたしには彼の相手は無理であると結論付けられた。

 

「スマン! あんたが真摯にあたしなんかを口説いてくれたのは分かったが、あたしには政治的立ち位置を求められるあんたの伴侶にはなれない! これは、あたしの我儘かも知れんが、そこを無視してあんたの加護を受けるのは、ウマ娘としての挟持が許さないんだ!」

 

 アスラはそれを聞いてがっくりと肩を落としたが、表情自体はむしろ納得していたような気がする。

 

「なんとなく貴女はそう言われる気がしていました。女としての挟持。そしてウマ娘としての挟持。貴女は誇り高い女性なのですね。心から尊敬します」

「いや、そんな大したもんじゃないんだが」

 

 てれてれと頭を掻く辺りがあたしの女子力の無さであるが、そんなあたしに微笑むとアスラは

 

「ですが、せめて友人としては付き合って頂けませんか? 僕は基本、日本人であった事を公表する気は無いんです。多分、この世界ではあの国の知識は過ぎた毒になる事の方が多いでしょう。だから、この世界の人には話出来ません。でも、貴女になら偶に懐かしがって話をするくらいは許して貰えないでしょうか?」

 

 あたしは悟ってしまった。コイツも孤独なんだと。

 

「ああ、その位でいいなら喜んで! あんたの日本とあたしの日本、違いを語り合うのも面白いかもな」

「本当ですか? 約束ですよ!?」

 

 あたしとアスラは小指を繋いで指切りをした。結局、この日アスラとはこの指切り以外に何も触れる機会は無かったが、それでもあたしとアスラとは絆を繋いだのだ。

 

 友情と言う絆を……




法衣男爵︰領地を持たず王都で文官としての職に就いている男爵。基本、貴族の三男以下の者が叙爵する場合最初に就く地位。
 尚、グレッコは現在王都から出向中の身。現在の肩書はトットーリ災害復興担当長官兼トットーリ仮設街区総括ギルドマスター。冒険者、商業、工芸、農林と四つのギルドマスターを兼任し、事実上町長としての役も担っている。

半笑いで〜︰無論、大店の店主であるおっさん達は流石にアスラやシルビアの顔は知っています。ですが、この国はやたらと王家が庶民に寄り添う立場を取る事が多く、お高く止まっている門閥貴族に対し、前国王から続く庶民贔屓の王家という立ち位置を保持しています。ましてや、アスラにとってはリリッタは同じ師匠に習った後輩。可愛くない訳が無いのです。

憑いて、ないよな?︰憑いてません。新古品の横流し品なので。

ブロワイエ条約︰フランスはブロワイエ地方のモンジュー城で1945年九月に行われた終戦協定成立後最初の国際会議、その席で締結されたウマ娘やユダヤ人に対する人権侵害を糾弾し、保証を決めると共にその後の国際的な立ち位置を決した条約。この条約を期に世界はウマ娘に優しい世界を作り上げ、世界平和の礎となった条約。


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