艦隊喰種 (神の死者)
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1話

真っ黒な雲の、空の下、一人の人間と一匹の喰種が戦った。勝ったのは人間だった。



空腹で胸から腹部にかけ巨大なクインケで切られ死を免れないほどの致命傷を負った一匹の喰種は雨にその身を打たれながら、死にかけ血を流しながら言った。

もう一度…幸せになりたかった…と。


俺は気がつくと真っ白なベットの上で横たわっていた。何故自分はこんなところに?と俺は疑問に思ったがここで目覚めたことのそれ以前のことが全く思い出せない、いや覚えていないと言った方が正しいか。

 

だが一つだけ覚えていることがあった。それは自分が人間ではなく“  ”だということ。

 

半身を起こして部屋を見回してみる。薬やらベットやら医療用の用具などがおかれ配置されていて見るからに医務室、保健室と言った感じだ。

 

瞬間強い痛みが何かの音、いや人の声と共に頭へと、脳へと流こんでくる。

 

『俺はあんたを…許さないッ!』

 

痛みは一瞬だった。そして声も一瞬だったがそれは俺自信の声と認識できた。その声からは強烈な憎しみや怒りを感じた。並大抵の事ではないこんな風に言葉は出ないだろう。

 

「俺は…なんなんだ…?」

 

俺は自分の両手を見つめる。自分は人間ではない、“  ”だ。“  ”ついてわかることはまず人より体は頑丈に、その他優れてできていると言うこと、赫子という捕食器官が存在すること、そして…“人間”しか食べれないこと。

 

「…それが俺…なのか…?………ッ!?」

 

再び激しい痛みが俺の頭を襲う。その頭が割れるような痛みはまるでハンマーで思い切り殴られたような痛みだった。再び声が流れ込んでくる。

 

『なぁにおこってんだ?安心しろよ、今すぐてめェもママンやパピーそして大事な妹のとこにおくってやっからよーッ!』

 

低い男の声だ。その声からは自分の声のような怒りの感情はない、ただその状況を楽しんでいると、言ったそんな感情。俺は片手で頭を押さえ痛みに耐えながら男の正体が気になった俺は濃い霧が掛かったような記憶を探る。

 

だがやはり思い出せなかった。

 

「捜査官…?」

 

ふとそんな言葉が口からでた。言おうと思ってでた言葉じゃない、それはまるで体が覚えていたかのような、そんな感覚で出た言葉だった。

 

と捜査官と言ったと同時に唐突に部屋のドアが開いた。俺は警戒しながら開く扉に顔を向ける。部屋に入ってきたのは整た顔立ちの、黒髪でツインテールのちょっと背の高い女の子だった。胸には鉄の板のような甲冑?を着けており下の服は完全に弓道着なるものだった。彼女は起きてたの?とこちらに歩いてる。だが彼女が部屋に入ってきた瞬間、その彼女に俺は違和感を感じた。

 

その違和感の正体はすぐにわかった。彼女から漂う香りは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。そのせいか彼女が部屋に入ってきても全く襲って食べようとは思わなかった。とはいっても今のところそもそも()()()()()()()()()()のだが。

 

彼女は俺が警戒していることに気づいたのか別になにもしないわよと言ってベットの隣にあった丸いパイプ椅子によっこいしょと座る。少し年老り臭いと思ったが悪寒を感じたので実際に口にするのは控え思うだけでとどめた。

 

俺は彼女に質問する。

 

「ここは何処なんですか?」

 

彼女は答える。

 

「ここは横須賀鎮守府、でこの部屋は医務室ね」

 

横須賀鎮守府。場所は横須賀だが鎮守府となるとここは海軍の基地かなにかなのだろうか?自分はなんでそんなところにと俺は思考する。と

 

「でえーっと…」

 

彼女の言葉が詰まる。恐らく俺の名前を聞きたいのだろうが生憎自分の名前を覚えていない俺は素直に分からないと伝えた。

 

彼女は分からない?と首を傾げながら

 

「まさか自分の名前が分からないとか?」

 

俺はコクリと頷くと

 

「…あぁ、名前どころか全くなにも覚えてないんだ、自分が何者で何をやっていたのか、ここにくる前のことも、それ以上の事も…なにも…ごめん」

 

暫くの沈黙が続く。

 

それを破ったのは彼女だった。彼女は思い出したように

 

「あ、そうだった!あなた怪我の具合はどう?」

 

怪我?と俺は首をかしげた。別に痛みを感じるところはないがと思ったがふと胸から腹にかけてなにか巻かれている感触に気付き着ていた白いシャツを脱ぐ。

 

彼女がかおを真っ赤にしてなにか騒いでいるがそんなこと気に求めなかった俺は自分の体をマジマジと見つめた。すると包帯が何十にも巻かれた自分の体が瞳に写った。包帯越しでも分かるが自分の体は鍛え上げられたように引き締まっていて肉に無駄がないと言った感じで、特に問題は見られない。だが俺はその先が気になり包帯の端に手を掛ける。

 

と包帯は少し力をいれて引っ張るとスルスルとほどけていった。

 

さらに彼女が騒ぎだすが俺はそっちのけで自分の体を見つめていた。彼女の言葉に嘘はない、実際包帯のほとんどが真っ赤に染まっておりそれは確実に自分が怪我を負ったことを示しているのだから。だが自分の体に()()()()()()()()()()()()()()

 

無論それは恐らくそれは自分が“  ”だからだろう。基本お腹を空かせていない  はその治癒、再生能力も優れているため何れだけの致命傷を負っても食事直後、あるいは満腹であれば数時間足らずで復活できる。今は不思議と満腹感もある。俺は普通の事だとでも言うように「怪我は治ったみたいだ」

 

すると彼女は俺の言葉に耳を傾けたのか騒ぐのをやめるとじっと包帯が解かれた俺の体を見つめる。

 

「嘘…だってあなた胸からお腹にかけて大きな、そう、まるで鎌にでも切り裂かれたような大きな切り傷があったはずよ!?それがたったの1日で治るなんて…」

 

彼女は困惑したように、驚いたようにそう言って、俺は助けてもらった彼女に嘘は良くないと思いそのまま()()()()()()()()。それに嘘なんてついてもすぐにばれてしまう。どれだけ“  ”自分を人間と偽っても“  ”は“  ”。所詮嘘なんて意味のない行為なのだ。

 

「だって俺人間じゃないから、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

喰種だから。」



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2話

その日は突然やってきた。

 

いつも通り深海凄艦から補給艦を護衛する任務にあったっていた時だった。突如現れた戦艦五隻の襲撃を受けて周りの味方が困惑、驚愕、恐怖する中、自分がとても慕っていた姉、翔鶴が私をかばい戦艦の直撃を食らって帰らぬ人となった。

 

その後提督の指示を受け私とその他艦娘達は護衛艦に乗っていた人たちを連れ急いでその場を後にし、轟沈を免れた。

 

それからか色鮮やかで幸せだった私の日常は一瞬で灰色の世界へと色あせていった。提督はお前のせいじゃないと言ってくれた、今でも思い出す度に後悔して思う。もしあの時、私が慌てず迅速に指示を出していたら?もしあの時敵艦を沈ませていたら?…()()()()()()()()()()()()()()()と。

 

それから一か月ほどたち私は少しでも元気になって提督や周りの艦娘達に迷惑をかけないよう息抜きに鎮守府の近場にある浜辺で海を眺めていた時だった。

 

「人…?」

 

少し遠くのほうに誰かが寝そべっているのが見えた。季節はちょうど夏の7月の中旬、そんなクソ暑い中太陽の日差しによってアツアツに焼けた砂浜で寝そべるような人間がいるだろうか?答えは否。私は急いで立ち上がるとその誰かのところへと駆けて行った。

 

「なによ…これ…」

 

酷い。この一言しか出なかった。寝そべっていたのは16、17歳辺りの少年。黒いパーカーにコーン色のジーパン、フードはしていなかったため少しぼさついた白い髪が見える。うつ伏せの状態なので顔は見れないがこのままでは太陽に焼かれたことで熱したフライパンのような温度の砂が彼の顔を焼いてしまうため私はひっくり返すために寝そべる彼の肩に触れた。こんな暑い中で厚着のパーカやジーパンなんて来ているから熱中症にでもなって倒れたのだろうと最初、私は思っていた。

 

私は彼をひっくり返すと同時になにか違和感を感じたのだ。肩に触れていた手から生暖かい、そう、何か液体のようでどこかぬるっとした感触がしたのだ。肩に触れていた手を見てみるするとそこには赤い液体が付着していた。違和感の正体恐らくこれだろう。私は一瞬心臓が止まった気がした。彼を見てみる。

 

ひっくり返され見えるようになったその顔はどこか幼さを残しつつも凛とした整った顔立ちの恐らく日本人、しかしその表情は苦痛で歪んでいた。奇跡的に砂に焼かれることはなっかたようだが問題は体にあった。なんと少年の胴体は胸からお腹にかけてまるで大きな刃物で切り裂かれた傷があったのだ。傷口はぱっくりと切れ目から割れていて今もなお体内から外へと流血している。気付くと彼が寝そべっていたところは赤一色に染まりきっており血の海と化していた。苦痛で表情が歪んでいたのはこれが原因だろう。

 

瞬間翔鶴()の声とその姿が私の頭にフラッシュバックした。

 

『生きて…瑞鶴…』

 

脳が考えるより体が動いた。艦娘は成人男性の倍以上の力がありこのくらいの少年を担ぐのにわけなかった。ので艦娘である私は人目も気にせず全力疾走で言葉通り彼を担いだまま鎮守府へと帰投した。近場に病院はなくあったとしてもこれだけの大けがを治すほどの技術や設備はないそのため鎮守府で彼を治すことにしたのだ。それに付け加え今日は提督と艦娘の定期検診ということで凄腕の医者も来ているため彼が助かる可能性はより高くなるわけだ。

 

 

 

 

彼が鎮守府の手術室に運ばれてからもう何時間たっただろうか。恐らくもう2時間以上は経っているだろう。私は防波堤で海を眺めていた。

 

一か月前の悪夢を思い出す。姉が沈んだあの日、私は何もできずにいた。無力だった。味方の半分以上がパニック状態に陥り部隊は動けずにいた。無理もない、私や翔鶴姉以外の彼女たちは演習という訓練を終えたばかりのいわば初心者だ、戦艦五隻を目の前に突然現れたらパニックにもなる。だが姉である翔鶴がとっさの判断で私をかばいそして沈んだことにより自分たちはこうはなりたくないと生存本能が働いたのか仲間の艦娘達はおとなしくいうことを聞いてくれた。

 

あの場において彼女()を救えたのは私だけだったというのに。なぜ何もしなかった、なぜ何もできなかったんだ、私は…。

 

もう何回この自問自答は繰り返されただろう。この一か月間この自問自答が私の中で永遠と繰り返されている。きっとこれは私が死ぬまで永遠と続くことだろう。

 

「ひゃ!?」

 

唐突に冷たい何かがほほに押し当てられ私は驚いて悲鳴染みた声を上げた。

 

「よう。隣、いいか?」

 

犯人は提督で頬に充てられていたのは缶のコーラだった。提督はやるよと缶コーラを私に手渡すと提督は提督で反対の手に持っていた缶コーヒーを一口飲むと私の隣に腰掛ける。提督は笑いながら

 

「にしても驚いたぜ?いきなり執務室に入ってきたと思ったら血だらけで、しかも致命傷レベルの大けが負った男を抱えてんだもんよ、驚くしかねぇよ」

 

「重なって見えたのよ、私をかばって沈んでった翔鶴姉にさ…。私、きっとあの日の事まだ悔やんでるんだ。あの時あの場で何かできたのは自分だけだったはずなのに、なのになにもできなくて…」

 

「なぁ瑞鶴。もう何度も言ってると思うがあれの責任をお前が感じてたってお前を助けて沈んでった翔鶴は浮かばれないし喜ばない。無理に元気を出せともいわねぇし忘れろともいわねぇ、第一戦場にも出たことのない俺がお前ら艦娘にどうこう言えるわけないしな。せいぜいできることっていたら話を聞くぐらいだし」

 

次に私が提督と言った瞬間だった。白衣を着た医者が終わりましたとこちらに来るとともにそう言った。提督は手術は成功したか?と医者に聞く。医者は提督の問いにコクリと頷くと今は眠っていますと伝えではと去っていった。

 

「じゃあ行くか」

 

「……うん…」

 

私はただ、頷いた。

 

 

 

 

翌日。私は自室で壁に立てかけてあった一枚の写真眺めていた。写真には銀色の長い髪をした一人の女性と私が写っている。私は写真立てを元の棚の上に戻すと様子見に行こうかなと言って部屋を後にした。

 

彼が眠っている医務室に着いた私はノックもせずにそのまま扉を開けて部屋に入っていった。

 

彼はもう起きていた。彼は半身を起こしその吸い込まれそうな黒い瞳で私を見つめている。だがその瞳からはどこか敵意のようなものを感じた私は両手を上げて

 

「別に何もしないわよ」

 

と微笑みながら自分は敵じゃないと伝えるように彼にそう言った。それでもやはり信用しきれないのか少し警戒していた。少年はここがどこだと私に聞く。私は横須賀鎮守府とここの名前とこの部屋の名称、医務室と答えた。少年は考える体制にでも入ったのか腕を組んで俯く。

 

「でえーっと…」

 

私は少年の名前を呼ぼうとしたがあって間もない少年の名前など知るはずもない。そのため言葉が詰まってしまった。と少年が分からないんだ、と呟いた。え?と言葉が出た。私は首をかしげながら

 

「まさか自分の名前が分からない…とか?」

 

少年は私の問いに幼い子供のようにコクリと頷くと

 

「…あぁ、名前どころか全くなにも覚えてないんだ、自分が何者で何をやっていたのか、ここにくる前のことも、それ以上の事も…なにも…ごめん」

 

とここで私は彼の傷の様子を見に来たことを思い出した。

 

「あ、そうだった!あなた怪我の具合はどう?」

 

すると少年はなんと事もあろうことか私の前で包帯で覆われた体を隠していた半袖のTシャツを脱ぎ始めたのだ。私の顔は耳まで真っ赤に、燃え上がるように染まっていく。

 

「ちょ、ちょっと待ってあんたなんで脱いでるのよ!?」

 

少年は私の言葉に目もくれずそのまま服を脱ぎ捨てた。だがそれだけではただの包帯の巻かれた胴体。それでも彼の体つきはくっきりと見えていた。両手で自分のほほに触れてみる。顔の温度が上昇していくのがよく分かる。

 

しかし彼はそれだけではとどまらなかった。なんと巻かれていた包帯を解いてしまったのだ。巻かれていた半分ほどの包帯は血で赤く染まり無論あの大きな切り傷も…。嘘…と口から言葉が漏れた。私の瞳に写ったのは無駄のない筋肉に鍛え上げられたように引き締まった腕に四つに割れた腹筋。()()()()()()()()()()()()()()

 

「だってあなた胸からお腹にかけて大きな、そう、まるで鎌にでも切り裂かれたような大きな切り傷があったはずよ!?それがたったの1日で治るなんて…」

 

目を疑った。あの傷は致命傷、それも下手をすれば死んでもおかしくないようなものだったはず。それが一日や二日で治るはずがない。そもそもな話、あんな重傷を負っていたのにもかかわらずなぜ生きていたのか?普通の人間なら死んでいる。今更になってこんな疑問が頭の中を駆けまわる。

 

と彼はそんな私の疑問に答えるように、私に言い放った。

 

「だって俺人間じゃないから…『喰種』だから。」

 

少年はそう言って

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

笑った。



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3話

食物連鎖を知っているだろうか?。
例えば、太陽や雨で育った雑草を食べて育つ生き物がいるとしよう。その雑草を食べた生き物は雑草を食べたことで大きく成長するが別の自分より力のある生き物に食べらる。

食物連鎖とはそういうものだ。

人間とはそんな食物連鎖の頂点に君臨する生き物だ。人間の育てた野菜を牛や豚などの動物が食べ大きく育ち、その育った動物を人間が食べる。

しかしそんな食物連鎖の頂点とされる人間を喰らう生き物がいる。

人間はそんな彼らを“喰種”と呼んだ。


瑞鶴はそれが初めて聞いた単語なのか分からないと言った風に子供のように首かしげる。少年は頷くと

 

「知らない?喰種ってのは人間を食べるんだ。いや、正確には人間しか、かな」

 

瑞鶴はそんな彼の言葉に疑いそして困惑した。当たり前である。大怪我で助けた少年が起きていて話しかけてみたらいきなり私は人間じゃない、人を食べる怪物ですとかいうんだもの。寧ろ困惑、疑わないほうがしないほうがおかしい。

 

「えっと、まさかだけどその話を私に信じろと?」

 

少年はそうだね、実際に見せたほうが早いか、そう言うと一瞬、瞼を閉じた。

 

瑞鶴はそんな彼の行動に首をかしげた。これから少年は何をするつもりなんだろうと。まさか油断させて自分本当にを喰らうつもりなのだろうかと思考する。自分は艦娘という生き物で人間ではないが確実にその姿形は人間そのもの、体の構造も人間と変わらないのか肌を切られれば血は出るし殴られれば痣が出来る、ぶっちゃけ身体能力と艤装を装備出来ること以外人間と大差ない。

 

瞬間、彼はその瞼を開いた。

 

だが瑞鶴の瞳に写ったのは黒い瞳ではなかった。黒かったはずの彼の瞳はその色を赤く変色させており、まさに自分たち艦娘や人間に流れる“血”のようだった。しかし変わっていたのは瞳だけではなくその白かった網膜はなんと黒へと姿を変えていたのである。そのせいか黒くなったことで目の中に張り巡らされた赤い血管は見えやすくなっており彼の変色した眼球からは不気味さが一層を増していた。

 

「なに、その目…」

 

恐怖を覚えた。これだけで、彼は人間ではないと確信できた。瞬間、喰われる恐怖、殺される恐怖、痛みを感じる恐怖、様々な恐怖の感情が瑞鶴を襲う。そのほったんである彼はなんてことのないように淡々と言葉を口にする。

 

「怖いか?面白いな。さっき自分のことを怖くないと警戒する俺を説得したのに赫眼しただけでそこまで恐怖したのか。じゃあさっきの言葉を返えそう。」

 

 

彼は彼女に、怯える子供に優しく話しかけるように

 

「別に何もしないよ」

 

気が付くと少年の瞳は元の優しい黒へと戻っていた、しかし瑞鶴は動揺する心を表に出さないよう彼に振る舞う。幾ら襲わないと言われてもそんなこといわば、狩人が獲物に襲わないから逃げるなと言っているようなものである。無論そんな狩人の言葉を獲物が信用できるだろうか?答えは否に決まっている。だからこそ瑞鶴はなにごとも無いかのように振る舞った。

 

と彼は思い出したように

 

「そう言えば君の名前、聞いてなかったね。なんていうの?」

 

そう名前を聞いた。

 

「瑞鶴よ」

 

少年は瑞鶴とオウム返しのように何度も呟くとうん、覚えたと言ってベットから降りる。瑞鶴は本当に人間じゃないのよね?と少年に問いかける。うんとまるで何事もない、なんの変哲もないことのように答えた。

 

すると次に少年は瑞鶴にとある事を聞いた。「ここには戦いってあるの?」と。

 

瑞鶴は答える。

 

「あるわよ。と言うかどの場所にも戦いなんてあるでしょ?偉い人の権力争いとか紛争とか………ま、私は艦娘だし戦いなんてもはや日常よ」

 

艦娘。

それは少年と同じく人間と同じ姿形をしていながら人ならざる生き物、いや『兵器』の事である。艦娘とは喰種おどの身体能力はないが並の人間よりはかなり高くその気になれば簡単に人間など殺せるだろう。艦娘は基本、建造という技術を使って作られるのだが彼女たち艦娘には戦線に実在した軍艦の魂、記憶が宿っている。そのため名前もその軍艦の名前となっている。

 

「艦娘?」と少年は疑問に満ちた声色で瑞鶴に聞いた。

 

瑞鶴は「あー記憶ないんだったわね。」と思い出したように呟くとその概要を語る。

 

「最近じゃ結構有名な単語よ。この際だから一様私たち艦娘やその敵、深海凄艦のこと、教えてあげるわ。十数年前、ある日現れた深海凄艦っていう生物が人類を侵略しようと攻めてきたのよ。人類はそれに対抗した、けど残念ながらその時代にあった現代兵器は全部通用しなかった。対抗する手の無くなった人類はなすすべもなくどんどん制海権を奪われていったわ。でも深海凄艦のようにある日、妖精と言われる存在が現れて人類に艦娘という兵器を作る技術を提供したのよ。艦娘と言われるその兵器と技術を手にいれた人類はすぐさま深海凄艦に対抗していき、そして現在に至る。と言ったところね」

 

「なるほど…」

 

少年は瑞鶴の説明で納得したのか顎をさすりながらそう言うと頷きながら窓のカーテンを開けた。その透明な窓の向こうには真っ青な青い海。同時に少年の瞳にその青い海が映し出され、その青い海の光景が脳に焼かれていく。少年は記憶を失っているからなのか、はたまた海を見たことがなくそれを初めて見たのか「これが…海か」と感情深くそう口から言葉がでた。

 

瑞鶴は少年の隣に来ると

 

「綺麗でしょ?…でもこれが私たち艦娘と敵さんの戦場だったりするのよねぇ。だから幾らそれが綺麗に見えてもそこで何人もの仲間たちが沈んで逝ったってことを思うと綺麗なところ、なんて到底思えないわ」

 

瑞鶴は姉が沈んだその光景を思い出し唇をかみしめた。少年は何もない顔で、ただ無表情でそんな彼女の姿を見つめそうなんだ、と言葉を口にした。

 

と突然少年は崩れそうなジェンガのようにグラつくとそのままバランスを崩し横に倒れた。

 

「きゃッ!?」

 

無論、横に倒れたということは隣にいた瑞鶴の方に倒れるわけで、唐突なことに反応できなかった瑞鶴はそのまま一緒になって床に倒れてしまった。少年は一瞬意識が飛んだだけで意識自体はあるわけでつまり何が言いたいかと言うとこうだ。

 

シリアスなシーンから一転、少年が瑞鶴を床に押し倒すとか言う勘違いギャグ&サービスシーンと化したのだ。

 

刹那、瑞鶴はアニメや漫画の知識が勘として働き今自分がどういう状況下に置かれているのかを瞬時に判断出来ていた…いやしてしまったほうが正しいだろう。故にこのあと大体どうなるのかも予測できる瑞鶴は…

 

「やっばッ!?」

 

「おーい起きた…」

 

とある低い男の声と共に部屋の扉が開いた。当然この鎮守府にはとある人物を抜いてここにいるのは皆女性なわけで低い男の声となると…

 

「て、提督さん…」

 

入ってきたのは身長170センチほどの男。見たから判断して20代前半くらいか、顔立ちは整っていて髪や瞳は日本人特有の黒でそれと反転していて服の色は白。見た目からしてその男の服は軍服で間違いないだろう。恐らくこの男がこの鎮守府と言われる場所の最高責任者、最高位の人間だと少年は瑞鶴を床ドンしながら思った。

 

「……あ、すいません。部屋間違えました」

 

提督とよばれた男はそういって扉をそっとじしていった。

 

「ちょ、ちょっとまってよおおおおおおおおおおーッ!」

 

 

 

 

場所は医務室とは打って変わり執務室。

 

「いやーなんだ。そういうことだったのか…」

 

提督は腕組をしながら納得したようにうんうんと頷いていた。あれからすぐ瑞鶴が自分を押し倒す少年をふっとばして提督を亀甲縛りで動きを封じ説得し今に至る。なお亀甲縛りは瑞鶴が自身で説いたため提督は腕組が可能となっている。ただその時少年がその縄どっから出したんだ?と考えていたのは完全に余談である。

 

瑞鶴はそんな提督の反応にどこか納得できないのか何故か眉を寄せていた。

 

「あの場合って普通助けに入るべきだったわよね?提督?なんで合意の上で行為にお呼んでいたと思ったわけ?なんでお楽しみ中だとか思ったわけ?」

 

瑞鶴は言いながら怒りのボルテージが上がったのか眉を寄せる程度の怒りがいつの間にか青筋が浮かぶレベルにシフトしていた、しかし提督はそんな瑞鶴の静かな怒りなど知らないかの如く

 

「え、いやだってお前の顔まんざらでもない顔だったk」

 

「うふふその口がもう開かないように爆撃してあげるわよ?」

 

どこからか弓と刃が付いていない矢を取り出すと瞬時に構えを取り提督にその切っ先を向けた。

 

少年はそんなカオスな状況に一人の取り残され考える。

 

(その弓と矢どこから出したんだろう?)

 

瑞鶴は何のためらいもなく弓を引く、しかし提督は真剣な顔でそれをスルーするとその視線を少年の黒い瞳へと移した。

 

「ところで少年、あの胸から腹にかけた傷は既に治っているようだったが、あの大怪我は致命傷だったはずだ、それも治療したのは昨日だ。一日であの切り傷が治るとは到底思えない。」

 

少年の無垢な瞳が提督を見つめ、提督の刃物のような鋭い瞳が少年を見定めてる。

 

「その異常な治癒力は普通の人間ではありえない。」

 

提督は一呼吸置くと

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「問おう。君は…“人間”か?」



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4話

提督と呼ばれる一人の男の鋭い視線が、その切っ先が人間ではない一人の少年に向けられた。彼、少年は人間ではない。喰種だ。その身体能力や五感は一般的な人間を遥かに、それも桁違いで凌駕する。無論それは治癒力も含まれる。もっとも喰種の場合はもはや治癒ではなく再生の領域であるが。

 

それを記憶をなくしたはずの一人の喰種は理解していた。記憶はなくしても喰種についての知識はあった。故に喰種が人間に対して自らの正体を明かした場合どうなるかも知っていた。

 

提督と呼ばれる男は少年に問う。

 

――お前は人間か?

 

だが少年はそれが分かっていたとしてもその名を、その言葉を口にした。

 

――俺は()()だ。

 

今の少年には何もなかった。記憶がないため自分がどこの誰で何者か、何をやっていたのか、なんて自分が人間しか喰らう事のできない化け物と言うこと以外全く分からないし知らない。記憶がない、そのつまりは自分が今まで歩んできた人生をいわばリセットしてしまったようなもの。自分の家族や自分の友人の名前や数さえも覚えていないのだ。妹はいたのか?弟はいたのか?姉はいたのか?兄はいたのか?母はいたのか?父はいたのか?友達はいたのか?親しいと呼べる人はいたのか?自分を大事に思っていた人はいたのか?この人ならざる少年はそんなことすらも覚えていないのだ。目覚めたとき周りに自分を知る者がいたならば話は違ったかもしれないが少年に立ちふさがる実際(現実)は非情であった。少年が目覚めたときにいた場所は海軍の基地、鎮守府。目覚めたときはじめて会ったのは自分を全く知らない人物。故に少年は自分には生きる理由もなにもなかった。

 

少年はただ無表情に、自分には何もない、だから殺されてもいい、そう思った。

 

 

 

 

「なるほど、人間を喰らう化け物…喰種か」

 

少年は現在持ちゆる喰種の知識、そのすべてを提督に話した。もちろん自分がこれからどうなるかを理解した上で話している。

 

提督は少し考えるような仕草をすると

 

「少年、君はどうしたいんだ?」

 

少年は答える。しかしその問いに答えなどなかった。いや、考えられなかったのだ。

 

「分からない。俺には記憶がないから、家族がいたのか、友達がいたのか、自分を待っている人がいるのか、そんなことすらわからない。それでこれからどうするんだ、なんて聞かれても分かるわけがないだろう?」

 

「俺が聞いてんのはそういうことじゃねぇよ。記憶とか、自分が人間食べる化け物とかそういうの抜きで今この時この世界でなにをどうしたいのかを聞いてんだ。記憶を取り戻してぇんだったら手伝ってやるし、知りたいことなら俺やここの馬鹿どもが知ってる限りのことなら何でも教えてやる。ここに居たいならいくらでも居させてやる。お前が今やりたいこと何でもとは行かねぇが出来る限りのことをしてやる。その上で答えろ」

 

少年は提督の言葉が理解できなかった。目の前にいるこの男は間違いなく人間だ。匂いで分かる。喰種は確かに満腹になったらなったで無理に人を襲って喰おうとは余り思わないが時間が立ち“飢え”が来れば話は別だ。喰種の飢えは人間の飢えより辛く苦しいもので最悪理性を失い暴走してそこら中の人間を喰い殺すことになる。無論先ほどの説明で提督はそれを理解しているその上で言っているのだろう。

 

少年の頭にそんな提督のおかしな問いによって疑問が生まれる。正直、提督から放たれたそれは正気とは思えない言葉、発言、提案だ。

 

少年は口を開く。

 

「正気か?さっきの俺の説明、ちゃんと聞いてたのか?」

 

「ああ。空腹や飢えは人間とは比べ物にならないくらい辛くて苦しいもんで下手したら理性とか自制心がぶっ飛んで人間を食い殺す、だろ?だからなんだってんだ。ここの馬鹿どもは言っちゃ悪いが人間じゃねぇ、艦娘つういわば鉄だ、お前に喰われる心配はねぇよ。つか何度も言わせんな、俺はそういうもん抜きにして聞いてんだ、これからお前はどうしたいんだ?ってことをよ。」

 

本当に訳が分からない。この提督と言う男はよく分からない。額から汗が噴き出る、何かが、なにかが頭の中で木霊する。

 

『悠翔…生き…て…』

 

木霊したのは女性の声。その声は弱弱しく、すぐにも消えてしまいそうな、そんな弱い声。恐らくこの声の主はもうじき死ぬのだろうと分かった。少年はなぜかそんな弱弱しくも死にそうな、そんな声から懐かしさを感じていた。だがそれとは別にその女性が言った、悠翔、と言う名前のような単語、これはなぜだか、“これは自分の名前だ”と確信していた。本当になぜだかわからないが。

 

ふと少年の脳裏に先ほどの提督の言葉が過った。

 

『記憶を取り戻してぇんだったら手伝ってやる』

 

少年は考える。恐らくこの男は自分を殺すつもりなどは一切ない、むしろ保護しようとしている。それだけじゃあ来たらず自分が失った記憶を取り戻す手伝いをしようともしているのだ。狂かれてると思った嘘じゃないのかとも思った、がしかし少年は考えた。

 

「見つけたよ。これから俺がどうしたいのかってのを」

 

提督は少年の言葉に目を細めた。

 

「失った記憶を…取り戻したい」

 

少年は興味が沸いたのだ。その記憶に。

 

 

 

 

「よかったのですか?」

 

一人の女性がソファーでだらける一人の男に、まるで子を心配する母親のような声でそう言った。だがその声の感情にはどこか安心感が捉えられる。

 

黒く伸びた美しい髪は馬の尻尾のように結ばれ顔は整っておりその所々どこか日本の和を思わせる服を着た、提督に語り掛けた女性は大和撫子を彷彿とさせる雰囲気、美しさを纏っていた。

 

と提督は女性が部屋に居たことに気付かなかったのか提督はうわぁああと悲鳴を上げてソファーから転がり落ちた。

 

「“大和”、いたのか…いつからだ?」

 

「いや真面目な顔して真面目なトーンで言われてもその体制で言われてもシリアスの欠片もありませんよ?というか寧ろシュールです」

 

提督はそんな女性、大和の厳しい?ことを言われると貼り付けていた真剣な顔を剥がしていつものどこか抜けた顔になりながら痛ててと腰を抑えながら立ち上がった。その姿はまるで60を超えたおじいちゃんのようにも見える。

 

それはさておき大和は本当にどうするきなんですかとぼやきながら

 

「ほぉ今日はピンc」

 

自分のスカートをめくろうと手を伸ばす提督を全力で蹴り上げた。しかし提督は何もなかったかのように鼻血を垂らしながら

 

「あのな、あの少年が人間を喰らうばけもんだろうがただの人間だろうが、子供って事実は変わらねぇだろ?大の大人が行く当てのない、ましてや記憶をなくしちまってる、そんなガキを追い出せってほうが酷な話じゃないか?」

 

「確かにそうですけど……」

 

大和は提督の言葉に納得できないのかため息を吐くと本当に大丈夫なんですか?と提督に聞いた。提督は首をかしげながら話聞いてなかったのか?とジト目で大和を見つめる。

 

「違いますよ。私が聞いてるのは場所とか寝泊りとかじゃないです」

 

「じゃなんだよ?」

 

「食料ですよ。彼の話が、喰種とかいうあの話が本当なら彼が飲み食い出来るのは珈琲と水と、“人間”なんですよ?それ以外は全部嘔吐してしまうと言っていたじゃないですか。あて、あるんですか?」

 

彼女の言う通り、喰種は水と人間しか摂取できないのだ。何故か珈琲も摂取できるがそれだけだ、喰種は人間と舌の作りも違う、その為、人間が摂取できる食べ物は基本全てが嘔吐するほど不味く感じ文字通り嘔吐してしまう。もっとも、無理やり胃袋にねじ込めば別だが。無論、そこから栄養が吸収される訳がないため消化されず出できてしまうためそのまま出てくるし体調も崩す。いわば毒である。

 

「大本営に言うのさ。」

 

「!?…それはなぜですか?」

 

「あの少年の言う通りなら喰種ってのはお前ら艦娘よりもばけもんだ。だからこそさ、大本営に少年が深海凄艦を絶滅させる最強の武器になるとでも言えばいい。最近はブラック鎮守府ってのが増えてそこの提督が死刑囚になってるんだとさ」

 

そう笑いながら提督は言った。大和はそんな、まるで自己中心的な提督な発言に一瞬怒りを覚えたがそんな感情はすぐに消えうせた。思い出したのだ前に提督が自分に話した、提督の昔の話を。

 

提督は何かを思い出しながら言葉を紡ぐ。

 

「昔の俺にそっくりなんだよあの少年は。周りを取り巻く環境も状況も心や感情も。」

 

似ていた。提督の話した提督自身の昔の話、出来事と。

 

孤独。

 

そんな言葉の似合う話だった。

 

提督、笠原明弘という少年は生まれた。しかし彼を産んだ親は彼が誕生したことを喜ばなかった。それはなぜか?彼の両親が欲しかったのは女の子だった。医者には最初女の子が生まれると聞かされていたが出産当日になって医者がそれはマッ違った情報だと気づいたのだ。だが時は遅く医者がそれに気づいたのは出産当日だったため彼の両親はそのお腹に宿る命を下すことも出来ず笠原明弘という男は誕生した、いやしてしまった。彼の両親は大手企業の社長を経営するトップの人間、気も高くプライドもあった。明弘が十才の頃だった。ある日の事、父親が明弘の頭を思い切り殴りつけたのだ。そのせいで明弘の脳にある記憶をつかさどる部分が誤差を起こし記憶がすべて消えてしまったのだ。なんと両親はそれを利用してもう潮時だと思ったのか一度子を作り夜に眠静まった明弘を公園に捨てたのだ。明弘の両親は裏の世界や警察などに繋がりがあるのか笠原明弘、という子供が生まれた、そこで生活していた、二人に育てられたという情報はその両親の手によって全てもみ消された。その後笠原家には無事女の子が誕生したそうだ。とそれとは別に捨てられた明弘はとある男に拾われた。男は元海軍の軍人でかなり上位のくらいに立つ人間だった、もっともその時はただのサラリーマンなのだが。しかし明弘の両親のように気が高くプライドも高い、なんていう事はなかった。男の性格はまるで少年漫画の主人公のような性格であった。男は公園で明弘を拾うとこの幼い子供を自分の手で育てていこうと決意した。幸い男には妻もおり高校生の娘もいて、軍人時代に稼いだ金が有り余っていたため男の子一人育てるのに何不自由なかった。笠原明弘、と言う名前は変わり篠原正弘となった。しかし問題はここからだった。男に拾われたは記憶を失ってしまったからか、なんと記憶と共に“感情”も失っていた。男の元に来て一週間ほどが経ったが正弘はその一切の喜び、怒り、悲しみ、楽しい、と言った喜怒哀楽をしなかった。ある日のこと、男の妻が正弘を泣きながら抱きしめた。正弘は男の妻に聞いた、なんで抱きしめるの?なんで泣いているの?と。妻は答えた。初めて笑ってくれたから、と。彼は無自覚に少しであるが笑っていた。全く興味のなかったと言うのが彼の感情が凍り付いていた原因だった。だがこれを境に彼は篠原という家族に興味を持ち始め、徐々にその失った“感情()”を取り戻していった。と言うのが提督と言う一人の男の昔話だ。

 

起きたら記憶がなく、目覚めたら見も知らずの人間に助けられ、感情を感じさせない少年のその様はまさに幼いころの提督そのままだった。

 

提督は寂しそうに、悲しそうに、昔のことを思い出しなら言った。

 

「だからさ助けてやりたいんだ、昔の俺そっくりな

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの少年をさ」



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