大ドイツ国召喚 (イブ_ib)
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遭遇

ドイツは流石にクワ・トイネ公国と繋がるような形で転移させました
流石にいきなり島国となるのはドイツが可哀想な気が・・・
ドイツ領土は1939年ポーランド侵攻前夜までの領土です、
東プロイセンは東プロイセン島になるね!


ーーーーー中央暦1639年1月24日午前6時ーーーーーー

 

(西暦1939年8月29日)

クワ・トイネ公国 沿岸

 

この日もある漁師が仕事を始めるために海岸に向かっていたが、どうも様子がおかしい。

 

あの心地よい波の音が聞こえないのだ、それどころか潮の香りもしない。

漁師は不審に思い足を急がせる、そしてふいに漁師は足を止めた。

 

「なっ、なんだぁこりゃあ・・・」

 

目の前に海があったはずの場所に、見渡す限りの青々とした大地がそこにあったのだ・・・

 

◆◇◆◇ほぼ同時刻◇◆◇◆

 

クワ・トイネ公国軍の竜騎士はワイバーンに跨り公国の北東方向の上空の警戒任務についていた、隣国ロウリア王国との緊張状態が続いているため、こうした何もないところからの奇襲に備えて公国軍は多方向に哨戒騎を飛ばしている・・・のだが・・・

 

「これは一体どういうことだ?

今頃ならとっくに海へ出ているはずだが・・・地図でも読み間違えたか?」

 

 

行けども行けども陸地が続き、竜騎士が困り果てていた時向こうから飛んでくる何かを見つけた。

 

 

「・・・! なんだあれは?」

 

もしかしたら味方のワイバーンだろうか?もしかしたら自分は気づかないうちに迷い変な所を飛んでいたのかもしれない、薄暗かったしきっとそうだ、などと勝手に考えていたが、その未確認騎に近づくにつれ只の勝手な思い込みだと認識せざるを得なくなった。

 

「羽ばたいてない・・・」

 

これによりアレは味方のワイバーンではないという事となる。

 

「あーあー 司令部、司令部 聞こえますか、我未確認騎を確認 これより要撃し確認する」

 

未確認騎との距離はみるみるうちに縮まり、遂にすれ違った。

その物体はサイズはワイバーンよりひと回りほど大きいもので、灰色の体をしており頭の部分がクルクルと回っていた。

 

そしてその謎の未確認騎に乗っていた2人(!)の騎兵の顔もしっかり確認した、その顔はとても驚いている顔だった。

 

 

そのままワイバーンは未確認騎を追跡する、 未確認騎は一生懸命逃げようとするが最高速度235kmの速度を出す空の覇者ワイバーン、軽々と追いついた。

 

竜騎兵は魔法による拡声器を使い

警告をする。

 

「警告する!ここはクワ・トイネ公国の領空である!当該機は速やかに退去せよ!繰り返す!ここはクワ・トイネ公国の領空である!当該機は速やかに退去せよ!」

 

警告が聞こえたのだろうか、未確認騎の騎兵は慌てている様子で

何かを話し合っていた。

 

すると急に旋回を始め、元来た方向へ戻っていった。

 

◆◇◆◇◆

 

今のは何であったのだろうか?

あれはどう見てもワイバーンの類でないように思えた、速度もワイバーンに比べ明らかに遅い、もしかしたらこの眼下に広がる見慣れる大地に関係しているのだろうか?、そう思うと竜騎兵はいても立っていられなくなり、基地へ急いで戻った。



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風雲!ロデニウス大陸!
波乱の前触れ


ロウリア外交官の喋り方がおかしいけど気にしないでください


中央暦1639年3月22日午前ー

 

 

ドイツがこの世界に飛ばされて早2ヶ月が経った、当初はどうすれば良いのかわからなかったが何とかうまく事は進み、クワトイネ公国とクイラ王国と無事国交を樹立する事が出来た

 

クワトイネ公国は作物が捨て腐る程の食物が育つため、食料が自国生産だけでは心もとないドイツにとって

助かる存在であった、しかしドイツにとって一番嬉しいのはクイラ王国に眠る鉱物資源と石油などが豊富にあった事である。

 

ドイツは率先してクイラ王国の油田開発に着手した、勿論石油をもらう分ドイツ側はインフラ整備を行った、

もっともこれは効率よくドイツに資源を運ぶためでもあるが。

 

◆◇◆◇◆◇◆

 

ドイツ国

 

首都ベルリン

 

総統官邸

 

「総統閣下、一時期はどうなる事かと思いましたが、これで我が国は安泰です」

 

「うむ、クイラ王国にあれ程の地下資源があって助かった、石油は現代国家の生命線とも言える代物だからな」

 

「全くです、クイラ王国とは仲良くしたいものですな、しかし ロウリア王国と言う国は無礼な国でしたな、

なんでも外交団は門前払いを食らったようで」

 

「我がドイツをそのように扱うとは、愚かここに極まれりと行ったところかな?」

 

「全くもってその通りです」

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

クワトイネ公国

 

首相官邸

 

公国首相カナタはドイツのインフラ整備について書かれた紙を眺めながら秘書と話していた

 

「ドイツからもたらされる技術は

全てが革新的だ、この様子では三大文明圏を超えるぞ」

 

「はっ、しかしドイツがあの様な穏便な国でホッとしています、もしドイツが覇を唱えて攻めて来たらと思うとゾッとします」

 

「今はロウリア王国とも緊張状態が高まっているからな、良好な関係を続けたいものだ」

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

ロウリア王国 

 

王都ジン・ハーク ハーク城 

 

御前会議

 

「ロウリア王、全ての準備が完了しました」

 

白銀の鎧を見にまとった将軍パタジンが王に報告する

 

「うむ、よろしい、・・して、宰相よ、1ヶ月ほど前接触してきたドイツという国について何か情報はあるか?」

 

ドイツは、ロウリア王国にも接触してきたが、事前にクワ・トイネ公国と、クイラ王国と国交を樹立していたため、敵性勢力と判断され、ロウリアには門前払いを受けていた。

 

 「ロデニウス大陸のクワ・トイネ公国のすぐ隣に出来た新興国家です。軍事的に何かしら影響はあると思われますが、奴らは我が部隊のワイバーンを見て、初めて見たと驚いていました。竜騎士の存在しない蛮族の国などさしたる影響はないのでは? 情報はあまりありませんが」

 

「これを期にロデニウス大陸の国全てに宣戦布告し、大陸全土を我がロウリア王国のものにしてしまえばよろしいのではないでしょうか? 農民の国 不毛の地の国、新興国家の蛮族を蹴散らす事は我が軍にとって造作無い事でしょう」

 

 

 

今回の御前会議ではロウリア王国がクワトイネ公国とクイラ王国、そしてドイツ国に宣戦布告を行うという事で決定した

 

 

「フハハハハハ!!!今宵は我が人生で最高の日だ!我がロウリア王国はクワトイネ、クイラ、ドイツに対して戦争を許可する!!!」

 

うぉおおおおおーーー!!!

 

ロウリア王万歳!

 

王国万歳!

 

ロウリア王万歳!

 

王国万歳!

 

城は喧騒に包まれた

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

クイラ王国

 

ドイツ大使館

 

外務省キャリアのウェールターは頭を悩ましていた

 

先程来ていた

クイラ王国外交官メツサルは

この様な事を伝えに来ていた

 

「・・・というわけで、我が国はロウリア王国との戦闘状態に入り挙国一致での戦闘態勢に入りますので、今まで通りに鉱物資源を輸出する事が出来なくなってしまいます」

 

つい先程もクワトイネ公国の外交官が戦争により穀物を輸出する事が出来なくなるという事を言われたばかりである

 

「このままでは国民の生活に大きな影響が出てしまうぞ・・・」

 

クワトイネ・クイラに派遣軍をよこす様に本国に伝えようとしたところ、

誰かが飛び込んで来た

 

「大変です、大使 ロウリア王国の外交官が大使に会いたいと言って来ました!」

 

「なに?!、わかった 連れて来てくれ」

 

 

ロウリア王国 外交官との話し合いが始まった

 

「門前払いをして来た国の大使が何用で来たのでしょうか?」

 

「いや、あの時は申し訳ない事をした、 実はロウリア王の寛大な慈悲が貴国らに与えられたのだ」

 

「ほぅ、つまりそれはどういう事ですかな?」

 

 

「我が国がクワトイネ・クイラの2カ国に攻め込むのは理由がある、それは2カ国に住んでいる亜人を殲滅するためだ、しかし貴国には亜人という物がおらず、我が国と同じ人種のみが文明を築いている、そこで貴国は

我が国の指導下になれば文化の向上、生活の向上を図れるという風な事を王様はお考えなのだ」

 

早い話がドイツには攻め込まないからロウリア王国の属国となればという話である

 

「・・・無茶苦茶な話ですな、いや

話にもならん、そんな話メリットなんてありませんし、我が国が認めるはずもありません。」

 

 

「そうですか、王様の寛大なる慈悲だというのに残念です、それでは力によってわが国の配下に置かれることとなります、後悔してももう後戻りは出来ませんよ」

 

「こちらは構いませんが?」

 

 

「ではこちらが宣戦布告の紙となります、今に貴国はロウリア王国の恐怖に震える事でしょう」

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 



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王都爆撃

中央歴1639年4月12日

 

ロウリア王国東方征伐軍先遣隊による攻撃を受け、クワ・トイネ公国 ギムの町が陥落、ギムの住民は100人を残して全員虐殺される、この事についてドイツでは

「ギムの町事件」と名付け、ロウリア王国を大々的に非難した、国内では「ロウリア許すまじ」という考えが民衆の中に広まり、遂にクワ・トイネ公国に派兵する事が決まった

 

◇◆◇◆◇◆◇◆

4月20日 クワ・トイネ領

 

クワ・トイネ公国 ロウリア王国 国境沿いに作られていたアウトバーンを滑走路とした即席で作られた飛行場から何機ものbf109とHe111が離陸していく

 

数時間前、観戦武官としてやってきたマイハーク防衛騎士団長のイーネはドイツ空軍の指揮官から作戦の内容を聞いていた

 

「作戦はこうです、今頃ギムの町では勝利に浮かれたロウリア兵共が宴を催しているでしょう、その真上を我々空軍が通り、ロウリア王国の首都ジン・ハークへ攻撃するのです。」

 

その事を聞いたイーネは俄かには信じられない顔をする

 

「ロウリア王国の首都であるジン・ハークへ攻撃?その様な事が可能なのか?」

 

王都ジン・ハーク上空には防衛隊のワイバーンがいる、それもかなりの手練れだろう、その様な所にわざわざ行くなんて死にに行く様なものである

 

「大丈夫です、我が軍には一切の被害は出ません、これは断言できます」

 

 

指揮官はそう言い放ったが、イーネが聞いた情報によれば、ドイツ軍の飛竜は

我が軍の飛竜と同等、もしくはそれ以下と言う情報を聞いた事がある、その為イーネは死を覚悟し始めた

 

 

イーネはHe111へ乗り込み、攻撃の様子を観戦する、エンジンが始動し、機内が爆音に包まれる

 

「!?!」

 

イーネは堪らず耳を塞ぐ、その後すぐに僅かな浮遊感を感じ、窓を覗く

 

「・・・なんだ! 凄いなこれは!」

 

飛竜ではありえない勢いで速度と高度を上げていった

 

◇◆◇◆◇◆◇◆

 

それからどのくらい経っただろうか

相変わらず飛竜では簡単に追いつけないであろう高度と速度でジン・ハークへ向かっている、すると同機に乗っていた前線指揮官が話しかけていた

 

「イーネ殿、そろそろギムの町上空辺りでしょう、ご覧になってはどうか?」

 

イーネは窓からギムの町を覗き込む

 

町は破壊されており、未だあちこちから煙が上がっている、恐らくあの憎きロウリア王国軍もあの中にいて、こちらの飛竜を見て目を白黒させているだろうと思うと少しだけ愉快な気持ちになっていた、高度5000mを保ってる為ロウリア王国軍のワイバーンが上がっている様子が見えるが、息も絶え絶えで上がるのが精一杯なのが見て取れる。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

同時刻 ギム

 

上空には不気味な唸り声をあげて悠々と飛ぶ15匹の飛竜、ロウリア兵達はそれを見て目を白黒させていた、東方征伐軍本陣は蜂の巣を叩いた様な騒ぎとなっていた

 

 

「ワイバーンを飛ばせ! あいつらを叩き落とせ!」

 

「ダメです!はるか上を飛んでいて追いつけません!」

 

「くそ!奴ら早すぎる!」

 

悲痛な竜騎兵の叫びにそれを聞いていた

通信兵にも汗が垂れる

 

 

その事は将軍パンドール、副将アデムにも報告される

 

「なに!ワイバーン隊が追いつけない!?」

 

「この戯けが!貴様らはなにをやっている!」

 

手も足も出ない現状に2人の苛立ちが募る

 

すると又通信兵が飛び込んで来た

 

「報告します!国籍不明の飛竜はギムを通過!何もせずにギムを通過しました!」

 

 

「まさか・・・奴らの狙いはビーズルか!」

 

「しかし、飛竜だけでは地上施設には大したダメージは与えらないのでは?」

 

 

「うむ、確かにそうだ・・・しかし、あれ程大きな飛竜であれば、もしかしたら投石が出来る様になっているのかもしれん」

 

「左様でございますか、しかしビーズル程の都市が投石ぐらいでダメージを受けるとも思いませんが・・・」

 

「それが謎なのだ・・・

よし!すぐにビーズルへこの事を伝えよ!迎撃させるのだ!」

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

「そろそろジン・ハークが見えて来る頃だと思います」

 

前線指揮官に言われ、イーネは攻撃はまだかまだかと外を覗いていた

 

 

「見えました、あれがジン・ハークです」

 

 

「ほぅ、あれがか」

 

下の方をよく見るとロウリア王国の飛竜が、こちらに向かって来るがやはり上がるのが精一杯といった感じだ

 

すると、バクゲキキと言われた飛竜の腹から、黒い塊が数個バラバラと落ちて行く、それも周りの機体も一緒に落として行く

 

 

(何だあれは? まさかここで糞をしたわけでもあるまい・・・)

 

と思っていると、下の方から煙が上がる

 

 

ヒューーー・・・ドドドド・・・

 

(まさか、さっきのアレが・・・)

 

しばらくすると又旋回し、爆弾を落とす

 

その様な事を十数分繰り返し帰投した、

 

 

帰りの中イーネは頭の中を整理出来ずにいた、敵のワイバーンを寄せ付けず敵の首都を攻撃する、それも味方の被害はゼロで

 

(この様な事を報告しても、信じてはもらえないだろうな・・・)

 

◇◆◇◆夜◇◆◇◆

ロウリア王国 王都 ジン・ハーク

 

ハーク城で今、緊急会議が行われていた

 

パタジンが険しい顔で口を開く

 

「皆の衆、緊急会議に集まって頂き感謝致す、我が軍は初戦でクワ・トイネ公国の国境の町ギムを占領し、25日には軍船4400隻を経済都市マイハークに差し向ける準備をしていた、その矢先だ」

 

パタジンは息を整えてまた話し出す

 

「今日の夕方頃、クワ・トイネ方面から

国籍不明の飛竜がやって来てこのジン・ハークの居住区を中心とした所を攻撃した、奴らは見たことも無い兵器を使い、

居住区を吹き飛ばし、火の海へと変えた」

 

ドイツ軍の行った爆撃からの焼夷弾の空襲は成功し、居住区は未だ火の海となっていた

 

「それどころか敵の爆裂魔法の所為で三重城壁のうちの内側30m城壁が一部崩壊してしまうという被害が出た・・・」

 

「何という事だ・・・」

 

「・・・そんな事が・・・」

 

聞いていた面々も悲痛な面持ちである

 

「しかし、先程も行った様に軍船4400隻を経済都市マイハークへ向かわせる予定だ、必ずロウリア王国を舐めてかかるとどの様な目に合うか、分からせるつもりだ!」

 

会議はこの様にして締めくくられた

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

クワ・トイネ沖

 

丁度ロウリア王国の王都北の港とマイハーク港との間、其処の海域にモーニングスターの鉄球の様なものが何十個と浮かべられていた




遂にグ帝の戦車がわかりましたね、初期のドイツ戦車なら苦戦ワンちゃんあるかもだけど、3号4号長身砲になれば一方的になるかな?


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機雷原突入

ロウリア王国東方征伐海軍

 

海将 シャークン

 

「いい景色だ。美しい」

 

美しい帆船が、帆いっぱいに風を受けて大海原を進む、海が見えない程の大艦隊だ

 

6年をかけた準備期間、列強パーパルディア皇国からの軍事援助も受け、ようやく完成した大艦隊、この大艦隊を防ぐ手立てはこのロデニウス大陸には無い、、それどころか列強パーパルディアでさえもそれなりに被害を与えられるのでは無いか?

 

(いや、パーパルディア皇国には船ごと破壊出来る[砲艦]と言うものがあるらしいな・・・)

 

彼はすぐに野心の炎を打ち消し、征服すべき東の海を見据える

 

(・・・ん?何だあれは)

 

目の良いシャークンは

一瞬海面に何かが見えた気がした、

流木の類では無い、黒い何かが・・・

シャークンは先日国籍不明騎が王都ジン・ハークを攻撃した事を思い出した、

 

(もしかしてこれも、その類なのか・・・?)

 

シャークンはとても言い表せないとてつもない不安な気持ちに襲われていた

 

「全船、前方に注意せよと伝えておけ」

 

「はっ」

 

シャークンは部下にそう命令した矢先・・・

 

ズガァァン!!!

 

 

二つほど隣にいた帆船の船首から水柱を上げて粉々に砕け散る

 

余りにもいきなりの出来事にシャークン及び部下達が慌てふためく

 

「??!!なっなんだ!何が起こった!」

 

「敵か?!敵の攻撃か!!??」

 

「敵船など影も形もありませんぞ!」

 

ボオォォン!!!

 

すると今度は最前列の帆船に水柱が上がり、木片と肉片が飛び散る

 

「全船攻撃体勢に入れ! 周囲に警戒!」

 

ドオォォォン!!!

 

更に爆発し、左舷に穴を開けられた帆船は浸水してひっくり返り船員が逃げる暇もなく飲み込んで沈んで行く

 

「クソォ!どうなってやがるんだ!!」

 

「たっ、助けてくれぇ!!」

 

水夫達は恐怖のどん底に叩き落される

 

ロウリア王国海軍4400隻はドイツ海軍が仕掛けた機雷原に入ったのだ、

4400隻もあるのだから多少適当に敷設しても馬鹿みたいに当たる、ましてやロウリア海軍には機雷と言う概念すら無いのだ、まさにボーナスステージ 、入れ食い状態である

 

これにより混乱をきたした帆船同士が衝突し沈没したり、爆発により火災を起こした帆船によって引火し被害が拡大していた

 

「我々は海神の怒りを買ったとでも言うのかぁ!!」

 

シャークンは揺れる中マストにしがみ付きながら叫んだ

 

至る所から爆発音が聞こえ

爆発音の数だけ船が沈んでいった

爆発が止んだ時ロウリア海軍の帆船の数は3200隻になっていた

 

「爆発は止んだのか・・・」

 

シャークンはよろよろと甲板から起き上がる

 

「・・・何と言う事だ・・・」

 

シャークンの目の前にはほとんどの船の至る所が破損し、焼けている悲惨な有様な艦隊の姿があった

 

周りにいた部下達の顔は明らかに疲弊していた

 

「これは明らかに人間の仕業ではありません!神の成すことだ!」

 

「神はクワ・トイネに味方をしていると言うのか!!??」

 

部下達も混乱している、その様子を見てシャークンは考える

 

このまま撤退するか?

艦隊の三分の一を失っての大潰走

しかも敵の攻撃によってでは無く

説明のしようのない出来事によってである、こんな事を報告したらシャークンは気が狂ったと言われ牢に放り込まれるのがオチである

 

「・・・我が艦隊はまだ3200隻ある、このままマイハーク港へ向かう」

 

 

決してこのままでは終われない、

必ずやマイハークに攻撃を加えなければ・・・シャークンは苦悶の表情で征服すべき東の海を見据えた




14日頃からロウリア海軍が侵攻する事を想定して、機雷を敷設
26日まででおおよそ2000〜3000個の機雷が敷設され、見事にそこにロウリア海軍が引っかかったという感じで。


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クワ・トイネ沖海戦 〜1〜

時系列的に書いてみましたが、書きにくい、読みづらい、書くのがだるいと、あまり良くはないですね・・・


ついにロウリア王国海軍が4400隻もの大艦隊を出港させたという情報が伝えられ、マイハーク港にはクワ・トイネ公国海軍第二艦隊が集まっていた、各艦は来るべき決戦の用意をしている

その数およそ50隻

 

「壮観な風景だな」

提督パンカーレは艦船がずらりと並ぶ

海を眺めていた

 

「しかし敵は4000隻を超える大艦隊・・・彼らは何人生き残ることが出来るだろうか・・・」

 

パンカーレは圧倒的物量の前にどうしようもない気持ちが込み上げる・・・

 

◇◆◇◆夕刻◇◆◇◆

 

「帆を張れぇ!出航だ!」

 

提督パンカーレの指示でマイハーク港からクワ・トイネ公国海軍50隻が出航する

 

「遂にロウリア海軍との戦いですね」

 

側近であり幹部であるブルーアイは

不安と決意が入り混じった顔でパンカーレに話しかける

 

「あぁ、ロウリアには必ず一泡吹かせてやるさ」

 

パンカーレはそう答えながら、出航前に

海軍本部から届いた伝令を思い出した

 

《本日夕刻、ドイツ国艦隊四隻が援軍としてマイハーク沖にて合流する、誤って攻撃をしないよう注意されたし》

 

 

(たった4隻だと?!やる気があるのか、奴らは・・ ロウリア海軍の4000隻の前には死にに行くようなものでは無いか!)

 

パンカーレはもうじきドイツ軍との合流地点に来る

 

「もうじきドイツ海軍の船と合流する!

全船注意せよ!間違っても攻撃はするな!」

 

魔信に叫ぶと、来るであろうドイツ海軍を見つけるためグッと目を凝らした

 

◆◇◆◇同時刻◇◆◇◆

 

ドイッチュラント級装甲艦と三隻のZ級駆逐艦の艦隊がクワ・トイネ海軍との合流地点に向かっていた。

 

この装甲艦の艦長であるアンゲルスは

双眼鏡を片手に艦橋から海を眺めていた

 

「艦長、初の異世界での戦い 敵の数はおよそ4000隻、正直言って少し緊張してます」

 

1人の士官がアンゲルスに話しかける

 

「なぁに 奴らは大砲も持っていない動く的さ、それにこの装甲艦だってこの世界じゃ右に出る者がいない大戦艦だ、緊張せずにドンと構えてりゃいい」

 

そう言い海を見据えた

 

「そろそろ合流だ!総員気を引き締めてかかれ!」

 

◆◇◆◇クワ・トイネ海軍◆◇◆◇

 

「・・・なんと、」

 

「・・・これ程までに大きな船は見たことが無い・・・」

 

「まるで島では無いか・・・」

 

目の前に現れた自分たちの常識を超えた船の前に、パンカーレもブルーアイも

口をあんぐりと開け、ただ見てるだけだった

 

「ブルーアイよ、お前はあの船がどのような戦いをするか想像出来るか?」

 

「・・・そうですね、まず真っ先に目につくのは前と後ろに付いている・・・あれは魔導砲でしょうか、かなり大きく

砲が三つ連なってますね、それに真ん中の楼閣はあそこからバリスタで遠くの艦船を攻撃出来るようになっているのでしょうか、船自体も大きいので人員も多く搭載できるので白兵戦でも強いでしょう、

魔導砲で遠距離から攻撃し、接近してから楼閣からのバリスタ攻撃、それと同時に白兵戦を行う、まさに浮かぶ城といった感じでしょうか」

 

ブルーアイは独自の考えで装甲艦の戦い方を考えていた

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

「?!なんだあれは!?」

 

「あんな所から翼竜が!?」

 

ドイツ軍の艦尾から一騎の緑色の翼竜が飛び立った

 

「・・しかし一騎だけでは与えられる被害などたかが知れてるだろう」

 

「偵察用なのでは?

逸早く敵を見つければそれだけ自軍が対応を取りやすくなり戦いで有利になります」

 

「・・・しかしあのスペースで飛び立てる翼竜とは・・・ワイバーンロードの様に品種改良を施した物かもしれんな」

 

二人は飛び去って行く翼竜について話していた

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇

ドイッチュラントから飛び立ったアラドAr196は着弾観測を行う為にロウリア海軍艦隊へ向かっていた、

遠くの方で海を覆い隠さんばかりの木船の艦隊が見える

 

「いたいた、しかしどれもこれも博物館級の物ばかりだな・・・よし、[目標発見!緯度●○経度◆◁!敵の規模前情報通り凡そ4000隻!]」

 

パイロットはドイッチュラントに座標を送った

 

◆◇◆ドイッチュラント◆◇◆

 

「観測機から座標が送られました」

 

「うむ、観測結果を元に射撃用意!

これがこの世界に来て初めての砲撃だ!皆!抜かるな!」

 

 

砲兵が慌ただしく動き砲撃の準備をする、観測場所へ着弾する様に調節し

三連装砲全てを撃てるように船の向きを調整する

 

ドイッチュラントはロウリア海軍とT字になる様に移動され、搭載している28㎝三連装砲2基がロウリア海軍に向けられた

 

「全ての準備が完了しました!」

 

「よし・・・」

一呼吸してから・・・

 

「ッ撃ェェェェェェーーー!!!」

 

アンゲルスは伝声管に思い切り叫び

 

28㎝三連装砲2基は一斉に火を噴いた

 

◆◇◆ロウリア海軍◆◇◆

 

いまロウリア艦隊は大変な騒ぎになっている、クワ・トイネ方面から謎の飛竜が

やって来たのだ、

 

「王都を攻撃して来た奴の仲間かも知れん! 通信士!至急司令部に上空支援を要請しろ![敵飛竜と接触、王都を攻撃して来た仲間の可能性大]とな!」

 

◆◇ロウリア王国 王都防衛騎士団 総司令部◆◇

 

「ロウリア王国東方征伐海軍より入電![現在正体不明の飛竜一騎を発見、先日王都を攻撃した飛竜の仲間と思われる、航空支援を要請する!]・・・だそうです」

 

「なっ!なんだと!・・・よし!100騎を差し向けよ!」

 

パタジンは王都防衛用の飛竜150騎を残し、残り全騎を征伐海軍へ向かわせた

 

[飛竜隊へ告ぐ。マイハーク西方沖の征伐軍海軍より入電。敵飛竜を確認!100騎発進、海軍の支援に当たれ!繰り返すーーー]

 

竜騎士達は歓声を上げ、次々と大空へ飛び上がって行く

 

◇◆◇◆クワ・トイネ海軍◇◆◇◆

 

「しかしドイツの船は速いな・・・風神の涙を使っている様には見えんが、魔導エンジンでも積んでいるのだろうか・・・」

 

「提督!ドイツ軍に動きが!」

 

 

「何をするんだ?」

 

ドイツの船は飛竜を飛ばしてしばらくすると急に横に舵を切った

 

「・・4400隻を見つけた報告を聞いて怖気付いたか・・・?」

 

するとブルーアイはドイツ艦の砲が旋回するのが見えた

 

「いま撃つ気か? 敵も見えていないではないか」

 

その時、大砲が閃光と共に轟音を発し、空気を震わせた

 

 

「なっ!?なんだぁ!!」

 

「なんて音だ!耳が痺れる!」

 

◆◇◆ロウリア海軍◆◇◆

 

「もうそろそろワイバーン隊が到着する頃か」

 

ヒュルルルル・・・・・

 

「・・・なんだ?、 ・・・まさか!!」

 

シャークンは瞬間的に背筋がヒュゥと寒くなる

 

その瞬間前方から巨大な水柱が上がった

 

 

「!! 攻撃だ!何処からだ!!」

 

「・・・??? !! 彼処です!」

 

マスト上にいた見張りが水平線に黒煙が上がっているのを見つける

 

「・・・あっあんな遠くから・・・だと?」

 

 

するとまた謎の船から一瞬閃光が見えた

 

「来るぞーーー!!!」

 

誰かが叫び、すぐに6つの水柱が上がる

 

その内の二つが帆船三隻を飲み込んだ

 

 

「やっ!やられた!」

 

「風神の涙を最大限まで使え!」

 

「手前の小型船を狙うんだ!」

 

小型というにはあまりにもデカイ船、

駆逐艦を仕留めようというのだ

 

すると駆逐艦から何かが射出された

 

「?? 前方の敵船から何かが・・・魚影・・・?」

 

水中から何かが向かって来る

 

「こっちに来ます!」

 

「避けろ!避けろ!」

 

 

しかし避けきれずに謎の魚影は一隻に突っ込む

 

バリバリバリ!!

 

 

発射された魚雷は木造船に命中した・・・が、木造な為信管が作動せず

そのまま船を突き破って来た

 

 

「浸水だ!!急げ!沈んじまうぞ!」

 

 

水兵は急いで木槌や布、丸太をもって修復を行う、しかしこの船は運が良い方で、金をかけて対魔弾鉄鋼式装甲を装備した船は中途半端に硬いので信管が反応してしまい、爆散してしまうという現象が起きていた

 

その内、その小型艦からも砲撃が始まる

127㎜の単装砲は確実にロウリア海軍の船を刈り取って行く

 

「まだか!飛竜隊はまだなのか!?!」

 

シャークンは天を仰ぐ

 

 

◆◇◆◇ロウリア王国飛竜隊◆◇◆◇

「もう少しで交戦空域に入る!

周囲警戒を怠るな!」

 

 

(先程まで通信を取っていたのに爆発音と共に通信が途切れた、いったいどうしたというのだ・・・)

 

 

飛竜隊隊長はそんな不安を胸に向かっていた

 

 

・・・・そして・・・・

 

 

(見つけた! ・・・あれはデカイぞ!)

 

[こちら隊長騎、隊長騎 それぞれ四隊に分かれて攻撃に移れ!繰り返すーー]

 

遂に飛竜隊による攻撃が始まった

 

 



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クワ・トイネ沖海戦〜2〜

装甲艦ドイッチュラント

 

[総員配置に付け!!対空戦用意!]

 

 

15㎝単装速射砲8基

 

8.8㎝連装高角砲3基

 

2㎝機関銃10丁

 

全てが迫り来る飛竜隊へ向けられる(1)

 

「来るなら来い・・・叩き落としてやる・・・」

 

アンゲルスは艦橋から双眼鏡を覗きながら呟いた

 

◇◆◇◆◇◆

 

竜騎士団長アグラメウスは、戦慄していた

 

眼下に広がるロウリア王国海軍4400隻の殆どが流木と化していたからだ

 

「ど、どうしたというのだ・・・」

 

部下の士気の為にも動揺しない方がいいのだが、自国の艦隊が一方的に被害を与えられて壊滅状態になっているのを見て

冷静を保てる方がおかしい

 

 

「あれか・・・」

 

 

アグラメウスは敵の姿を見つけ何とか冷静さを取り戻し、100騎は超低速飛行へ切り替え、攻撃体勢に入る。

 

 

すると敵艦から爆発を伴った光がおきる

 

「ここから攻撃する気か?」

 

まだ弓も届かない高度にいる飛竜隊の面々が不思議に思っている時・・・

 

ボンッ! ボンボンッ!

 

いきなり周囲に黒い花の様な雲が現れ

その爆発と飛んで着た破片によって

前方を飛んでいた飛竜隊が落ちて行く

 

「やばい! 総員 散開しろ!急げ!」

 

飛竜隊は3騎ずつの隊を組み、散るが

対空砲はそんなこと御構い無しに飛竜を

落として行く

 

「そんな!そんなバカな!」

 

アグラメウスは恐怖に打ち震えていた

 

 

◆◇◆◇飛竜隊 第2攻撃隊◆◇◆◇

 

四隊に分かれた内の第2攻撃隊は、駆逐艦を攻撃する様に命令されていた

 

『バカなっ!うがっ___ボンッ!』

 

『こちら第3攻撃隊!敵にkoッボンッ!』

 

次々に仲間の魔信が途絶えて行く

第2攻撃隊隊長モルトはまだ攻撃を受けてない事を確認し、駆逐艦への攻撃を行うことを決め、25騎の飛竜は一隻に対し総攻撃をかける事にした。

 

一隻に狙いを定め、飛竜は翼を広げ、首を伸ばし、導力火炎弾の発射準備を行う

。大きく口を開き、口内に火球が形成される、そのまま駆逐艦に向かい降下を始める。

 

駆逐艦を完全に射程に捉えたと思った矢先、バリスタの様な物の先から連続した爆発が見える

 

ダン ダン ダン ダン ダン ダン ダン

 

 

モルトの隣を飛んでいた飛竜の頭が吹き飛び、そのまま竜騎兵は海へと転落する

 

 

「飛竜の頭を!・・・なんて威力だ」

 

 

後方を見ると、先ほどの様な黒い花の様な雲が出来ており、仲間の飛竜が落とされていた

 

 

「・・・くそっ! 」

 

25騎の飛竜は既に4騎に減っていた

 

『おのれ!戦友達のむ』ボンッ!

 

そう言っているうちに、また一騎が

対空砲の直撃弾を喰らい消し飛んだ

 

「『総員!敵艦へ火炎弾発射!!』」

 

モルトは魔信でそう伝え、狙いを定める

敵艦のど真ん中を狙い 火炎弾を発射した

 

モルトは着弾を確認する事もせずに直ぐ離脱しようとしたが、その直後相棒の飛竜の翼の付け根に弾が当たりバランスを崩しそのまま敵艦へ突っ込んで行く

 

「うぉぉぉぉぉ!!!上がれーーーー!!!!!!」

 

モルトは必死に上昇しようとしたが

努力むなしく下がり続ける

遂に敵艦の目の前まで来てしまい

 

奇妙なバリスタを操っている兵士と目が合った

 

そして、敵艦を通り越してフラフラ飛んだ後、力無く落ちていき海に落っこちる

 

彼は相棒の亡骸にしがみ付き敵艦を見る、どうやら3発の内どれかが当たったみたいだが、敵艦は尚も健在であった

 

「ま・・・負けた・・・」

 

モルトはそう言うと意識を手放した

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

「・・・団長、第2攻撃隊、第3攻撃隊

からの通信が途絶えました・・・」

 

今も敵艦からの攻撃から逃げ回り、気付けば10騎程にまで減っていた。

 

「ぬぉぉぉ・・・!!おのれぇぇぇぇ・・・!!」

 

アグラメウスは魔信に叫ぶ!

 

『「第1、第4攻撃隊残存騎は旗艦と思われる巨大艦へ総攻撃だ!決して仲間の死は無駄にはしない!」』

 

そう言うと敵旗艦へ騎を向けた

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

「撃って撃って撃ちまくれーー!!!」

 

「落ちろ!蚊トンボ!」

 

「いたぞぉぉぉいたぞぉぉぉぉ!!」

 

引っ切り無しに飛んで来る飛竜に

機銃座にいる兵士は恐怖を押し殺して

撃ち続ける

 

アンゲルスは険しい顔をしながら

空を眺める

 

「どうやら敵は全ての飛竜で攻勢に出る様だな」

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

アグラメウスは恐怖と戦っていた

 

いつ当たるともわからない敵の攻撃をかいくぐっている、合流した17騎いた仲間は既に亡く、残り4騎となっていた

 

「くっ!、このままでは死なんぞ!!貴様らも道連れだ!!」

 

アグラメウスは限りなく垂直になる様にして敵艦へ向かう、体当たりをして自分諸共敵を葬るつもりなのだ

 

「うぉぉぉぉぉ!!!死ねぇぇぇぇ!!!!」

 

ゴメキュ!!!

 

アグラメウスは敵艦の左舷に激突し、

そのまま永遠に意識を失った

 

 

嗚呼、機関銃の攻撃をかいくぐり、国の為、戦友の為、自らの命を捨て、敵艦へ捨て身の攻撃を行った英雄よ

 

 

神よ、何故貴方はこうも残酷なのか

 

 

装甲艦ドイッチュラントの左舷には

鮮血と多少の凹みは出来たが、ほぼダメージは受けなかった

 

その後引き継ぎロウリア王国艦隊へ砲撃を繰り返し、遂に海将シャークンの船に命中し、シャークンは跡形も無く消し飛んだ

 

司令官を失い、ロウリア王国東方征伐海軍艦隊は各自勝手な判断で逃げ始める

 

そして潰走となったロウリア海軍を

クワ・トイネ海軍が追いかける

最早一方的だった・・・

 

ロウリア海軍30隻が海域から逃げることができたのは幸運と言えよう

 

 

 

中央歴1639年4月25日

 

ロウリア王国東方征伐海軍

 

 

壊滅

 




(1)
対空装備が少ないように思われるが
大戦序盤は大体どの国の船もこんなもんである、まさかちっこい飛行機に国の最新技術を詰め込んだ軍艦が沈められようとは誰も思わないだろう。

レパルス「戦艦が簡単に沈むか!」


因みにこれは竣工当時(1932年)の高雄の対空装備である

45口径12cm単装高角砲4門
40mm単装機銃2挺


そして
こっちが1942年の高雄の対空装備

89式12.7cm連装高角砲4基8門
25mm連装機銃4基
13mm連装機銃2基

大戦後期になるにつれ対空装備は増えていく、航空機による攻撃はそれ程強力なものだったのである

(福島の息吹の勝手な解釈)



◆◇◆◇◆◇◆◇◆

「なんか静かですね。GATEには閲覧者もいないし日本国召喚とはえらい違いだ。」

「ああ。GATEの戦力は軒並み向こうに回してんのかもな。」

「まっそんなのもう関係ないですけどね!」

「上機嫌だな。」

「そりゃそうですよ!、お気に入りは20になったし、@wikiにも紹介されてたし、俺も頑張らないと!」

「ああ。(そうだ。俺たちが今まで積み上げてきたもんは全部無駄じゃなかった。これからも俺たちが立ち止まらないかぎり話は続く)」

「ぐわっ!」

「団長?何やってんだよ?団長!」

「ぐっ!うおぉ~~!」

「うおっ!あっ!」

「はぁはぁはぁ・・・。なんだよ、結構当たんじゃねぇか。ふっ・・・。」

「だ・・・団長・・・。あっ・・・あぁ・・・。」

「なんて声出してやがる・・・ライド。」
ライド:「だって・・・だって・・・。俺は鉄華団団長オルガ・イツカだぞ。こんくれぇなんてこたぁねぇ。」
ライド:「そんな・・・俺なんかのために・・・。」
オルガ:「団員を守んのは俺の仕事だ。」
ライド:「でも!」
オルガ:「いいから行くぞ。皆が待ってんだ。それに・・・。(ミカ、やっと分かったんだ。俺たちにはたどりつく場所なんていらねぇ。ただ進み続けるだけでいい。止まんねぇかぎり、道は続く)」

回想
ミカ:「謝ったら許さない。」
オルガ:「ああ分かってる。」

オルガ:「俺は止まんねぇからよ、お前らが止まんねぇかぎり、その先に俺はいるぞ!だからよ、止まるんじゃねぇぞ・・・。」

ミカ:「オルガ?」


(後半からそのままだって?そうですだるくなりました)


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城塞都市エジェイ

クワトイネ公国って鍬と稲らしいからエジェイもJAからなのかななんて思ってみたり


中央歴1639年4月30日 クワ・トイネ公国 政治部会

 

先日26日、ドイツ国がロウリア海軍を殲滅した時の様子を説明する為パンカーレが呼ばれていた

 

 

「ーー以上がクワ・トイネ沖海戦の戦果報告になります」

 

「・・では何かね、ドイツはたった4隻で4400隻を殲滅し、かつ飛竜100騎を撃墜したと言うのか?それも無傷でか?」

 

「いえ、ドイツ艦2隻が飛竜による攻撃で外装に損傷を受けているので被害はゼロではございません」

 

「しかし、こんなのは被害の内に入らないのではないのかね?」

 

その様なツッコミが入り、パンカーレは困った顔をする

 

「しかし・・・ まぁいい、この戦いによってロウリア王国海軍は壊滅したんだ、あの規模を再建するには20年はかかるだろう、 軍務卿、陸の方はどうなっている?」

 

話が陸の方に移り、パンカーレは胸を撫で下ろす

 

「はい、現在ロウリア側地上部隊はギム周辺に陣地を構築しております、海からの侵攻作戦が失敗した為、ギムの守りを固めてから再度侵攻してくるものと思われます。電撃作戦は無くなったと見ていいでしょう」

 

続いて軍務卿は手元に用意した、諜報部と西部防衛隊からの報告を読みながら答える。

 

「ドイツの動向ですが、城塞都市エジェイに一個師団、数にして1万人の派兵の許可を求めてきております」

 

「1万人か・・ 何にせよ援軍を送ってくれるとは有難い、よし、外務卿今すぐにドイツ軍に来てもらう様にサインしよう」

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

ロウリア王国 王都ジン・ハーク

 

ハーク城

 

ロウリア王国34代大王ハーク・ロウリア34世は、将軍パタジンの戦闘結果報告を聞き、呆然としていた

 

先日のクワ・トイネ沖海戦で謎の巨大艦が現れ、飛竜100騎が全滅、海軍に至っては4400隻全てが沈められ壊滅すると言う信じられない報告だった

 

「この度の海戦、何故我らは負けたのだ?」

 

「はっ、僅かな生き残りからの報告が余りにも荒唐無稽な内容の為、現在原因の再調査と報告の信憑性の確認を急いでいる最中でございます」

 

報告書によれば

 

[飛竜は爆音と共に黒い霧に包まれると身体が裂ける様に落ちていき、敵艦に近づいた者は敵船についてるバリスタの様なもので叩き落された]

 

と書いてあった、

(の様なものってなんだ??)

 

余りにざっくりとした表現にパタジンは困惑する

 

 

・・・・・

 

「いずれにせよ被害は事実だ、今後この様な事があっては困るぞ・・・」

 

「はっ!海戦の敗因が判明するまで

海軍の積極的な進出は控えます、ただ陸上部隊は数が物を言います!現にギムは既に陥落済みでございます、以降の作戦は万全を期しておりますゆえ、陸上部隊だけでも公国を陥落させる事は容易にございましょう、陛下におかれましては戦勝報告を大いにご期待くだされ!」

 

「パタジンよ、此度の戦はそなたにかかっている。期待を裏切ることのない様に頼むぞ」

 

「はっ!ありがたき幸せ!」

 

 

その夜、ロウリア王は想定外の敗戦に苛まれ、眠れない夜を過ごした

 

◇◆◇◆◇ 中央歴1639年5月13日 城塞都市エジェイ◇◆◇◆◇

 

西部方面師団 将軍ノウは援軍で来たドイツ軍の司令官を迎える準備をしていた

 

ドイツ軍の1万人は兵力としてはエジェイに公国軍3万人が駐屯しているため、まぁ悪くはないだろう

(因みに途中で拾ってきた200人の避難民というお荷物まで持ってきていた)

 

(・・・まぁ このエジェイは我が軍だけで押し退ける、ドイツ軍に手伝ってもらうほどでもないわ)

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆

 

コンコン

 

ドアがノックされ、3人ほどが入室する

 

「ドイツ国防軍、歩兵師団団長のシュミットです」

 

ノウが着ている宝石入りの服程ではないが、それなりにしっかりとした身なりだ

 

(こやつがドイツの派遣軍の将軍か、

まぁ新興国としては妥当ななりだな)

 

「これはこれは、よくおいで下さいました、私はクワ・トイネ公国西部方面師団将軍ノウといいます、この度の援軍に感謝いたします」

 

とまぁ社交辞令である

そのままノウは高圧的に続ける

 

「甚だ心外ながら我が国はロウリアに侵略され、彼の国に一矢報いようと国の存亡をかけて立ち向かっております。

我らの誇りにかけてロウリア軍は我らが退けます。

ドイツの方々はどうぞ安心して、

あなた方の基地から出ることなく後方支援をしていただきたい」

 

ノウはドイツのプライドをへし折るつもりがありありと現れていたので、側近たちは外交問題にならないかヒヤヒヤしている、現にドイツ軍の何人かは明らかに不快な顔をしてこちらを眺めてる

 

そんな中シュミットは口を開く

 

「わかりました、我々は後方の陣地で精鋭なる貴軍らの戦いを眺めてる事としましょう、そのとっても素晴らしい戦いを詳細に報告させる為に通信兵をエジェイに入れてもよろしいか?」

 

 

「どうぞどうぞ、御好きにしてください」

 

必要最低限の情報交換と挨拶を交わし、会談が終了した。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

野営地に向かう車の中でシュミットとほか二人が話し合っていた

 

「まったく、蛮族とはいえあそこまで低レベルとは!」

 

「そうカッカするな、奴らの好きにやらせればいい」

 

「しかし、この距離からとなれば榴弾砲での砲撃でしょうかね?」

 

「そうだろうな、まぁ、あの城の規模から

見れば陥ちる事もそうそうあるまい」

 

◇◆◇◆◇◆◇

数日後

 

ノウは焦っていた

ロウリア軍2万がエジェイから5キロの所に布陣している、兵力からすればただの先遣隊なのだが、こちらから攻撃して

ロウリア軍本隊が到着する前に戦力をすり減らすことだけは避けたい、それにロウリアの敵騎兵が300名程やって来ては昼夜問わず城外で怒声を上げるという挑発行為を繰り返している事だ、

この挑発行為に見張りの兵は神経をすり減らし、士気は下がっていった

 

そしてその日の夜もロウリア兵の怒声が

司令室まで聞こえていた

 

「ぬぅ・・・ロウリア兵め、卑怯な真似をしおって。突っ込んでくれれば戦い用があるのいうのに、どうするべきか・・・」

 

ノウは苛立っていた

すると、側近が入って来た

 

「将軍!ドイツ軍のシュミット殿が来ていますが入れますか?!」

 

「・・・こんな時間になんだ・・まぁ良い、入れていいぞ」

 

◇◆◇

 

「やぁノウ殿、こんな夜分遅くに申し訳無い、何せ外が喧しくこっちまで聞こえるもんでね」

 

流石に怒声はドイツ軍の野営地には聞こえないだろう、完全な嫌味であると理解したノウは多少不快感を表しながらも話す

 

「こっちも国の存亡がかかってる戦いでな、安易な考えで行動して被害を出したく無いからな」

 

シュミットはそのまま窓際に手をかけて外を眺める

 

「しかし、こんな状態では兵もまともに休めないのではないのかな?」

 

「フン、アイツらを始末出来るのならとっくの前に始末しとるわい」

 

「こんな時間まで騒いでる悪い子は

お仕置きしなくてはなりませんなぁ、

将軍もそうお思いでしょう?」

 

「そうだな」

(コイツは何をいってるのだ?)

 

「もうそろそろでお仕置きされる筈ですな」

 

そう言うとシュミットは懐中時計をだして時間を確認する

 

「あと数分といったところか・・・

ノウ将軍も空を見ようではありませんか、ほらこんなに綺麗な星空ではないですか」

 

「ハァ、こんな星空など見馴れておるわ」

 

シュミットが何をしたいのか全くわからず困惑するノウであったが・・・

 

ヒュルルルルル

ヒュルルルルル

ヒュルルルルル

 

突如遠くから聞こえる怪音にノウは

混乱する

 

「・・・3・・・2・・・1 」

 

「おっ おい!なんだこの音は!」

 

 

ズドドーーンン!!!

 

 

先程までロウリア騎馬兵がいたと思われる所から土煙が吹き上がり

眼下では兵達が突然の出来事に右往左往している

 

 

「これで今夜はぐっすり眠れるでしょう、兵達もしっかり休みを取らないと体力が持ちませんよ?、では私はこれで」

 

そう言うとシュミットは部屋から出て行ってしまった

 

ノウは何が起きたのか理解出来ず口をあんぐりと開けたまま突っ立っていた

 

◆◇◆◇◆◇

ロウリア王国東部諸候団野営地

 

「何?威嚇に向かった騎兵が時間になっても帰ってこない?」

 

「はい、他にも数名の兵を調査に出させたのですがいずれも帰還していません」

 

「エジェイの兵は見つけ次第攻撃していると言うわけか・・・ 」

 

「しかしだからと言って全員が全滅するとは・・・」

 

「むぅ、 暫くは威嚇を控え 本隊が合流するまで待機していよう」

 

このまま野営地にいるだけでは良い報告義務が提出出来ず、下手をすれば死にやすい突撃隊に配置換えさせられるかもしれない、しかし悪戯に兵を出して消耗するよりはマシだと考えたようだ

 

 

ロウリア王国軍本隊が合流するまでの数日間エジェイ近辺では久しぶりの静寂が訪れたと言う



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ギム奪還作戦

遂に書籍版を全冊購入致しました、取り敢えず最初にあるカラーイラストを眺めましたが、ミリシアルの船なんだあれって感じでした


中央歴1639年5月30日

 

ロウリア王国東方征伐軍本隊

その数4万

飛竜50騎

騎馬兵5000騎

弓兵5000人

歩兵3万

 

 

本隊の隊長を任された副将アデムは

無事先遣隊と合流することが出来た

 

「ジューンフィルア!!貴様ら先遣隊はずっとここに留まっていたのか?威力偵察はどうした?」

 

「いえ、クワトイネ軍の攻撃が予想以上に激しく威嚇、偵察兵を送ったそばから・・・」

 

「ったく・・・臆病風に吹かれおって

まぁ良い、この魔獣さえいればどんな軍もイチコロだからな・・・ 」

 

そう言うとアデムは高台へ登り兵達へ叫ぶ

 

「よぉし!皆!よく聞け!これより我々はクワ・トイネの城塞都市エジェイを陥しに向かう!占領した暁にはギム同様略奪、強姦、殺人なんでも好きにして良い! 絶対に生きて町から出すなよ!」

 

そう叫ぶとアデムはヒッヒッヒッと気味の悪い声で笑った

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

エジェイの高台に設置された聴音機はこちらに向かう飛竜の羽音をキャッチした

 

「飛竜がこちらに接近中!!対空砲用意! 」

 

兵士達は訓練通り、手際よく持ち込まれた機関砲の用意をする

 

連絡を受けたロウリア兵もバリスタを用意するが、ドイツ軍のと比べればまるで小弓であった

 

◆◇

 

「来たぞー!!ロウリアだー!!」

 

望遠鏡で見張っていた公国兵が叫び、鐘を鳴らす、飛竜は空に舞い、兵達は隊列を組み、敵を迎え撃つため持ち場に着く

 

ザッザッザッザッ!!

 

ここからでも聞こえるぐらいの足音が

平野にこだまする

 

 

「なんと言うことだ・・・!この数は防ぎきれるかわからんぞ・・・!」

 

ノウは司令室から望遠鏡で覗き見る

 

すると伝令兵がシュミットからの連絡を持ってきた

 

 

[我々は精鋭な貴軍のとっても素晴らしい戦いを後方から眺めています、どのような戦いになるか楽しみにしてますね]

 

 

「野郎!!こんな時まで嫌味か!」

 

ノウは怒り狂い紙を破り捨てた

 

「もう怒った!ドイツ軍にもロウリア軍に攻撃しても良いと連絡しろ!

そんなに言うならドイツ軍の戦いを見てやる!」

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆

 

前列はジューンフィルアの先遣隊が進む

 

その様子をジューンフィルアは不安な面持ちで眺める

 

 

上空では両軍の飛竜による空戦が始まっているが両軍共50騎である為互角の戦いだ

 

 

「くそ、早く倒してくれ 、じゃないとこっちも危ない・・・」

 

上空に気をつけながら兵を進め、遂に城壁にいる公国兵を弓の射程圏内にとらえる

 

「弓隊!ヨーーイ!!」

 

弓隊が弓を引き、今まさに射らんとするその瞬間

 

 

ダラララララララララ

 

 

城壁の隙間から五つ程の閃光がはしり

先遣隊の兵士をズタズタに引き裂く

 

「なっぬっ?!なんだぁ!?!」

 

「盾を構え!亀甲隊形!急げ!」

 

急いで盾を構えるも、そんなの御構い無しとばかりに、大型三脚に載せ、照準器を装備したMG34が兵士達を薙ぎ払う

 

エジェイ城門

 

 

「あまり撃ちすぎるな、出来る限りエジェイに敵を留めさせるようにと命令が来ている」

 

「なぜ? 我々ならあれぐらいの兵ならすぐにでも殲滅できよう」

 

「どうやら軍は機甲師団を用いてギムを陥とすようです、そのギムにいるロウリア兵を出来る限りこのエジェイの方に気を反らせておくというわけですな」

 

「ふん、我々ならロウリアなど1週間と経たずに滅ぼせると言うのに、怖気付いているのか?」

 

「この新世界、何が起こるかわからないから軍も慎重にならざるを得ないのでしょう」

 

 

 

◆◇◆◇深夜◆◇◆◇

ギムの町から四キロ地点

 

アウトバーンの近くに作られた

基地には、戦闘機に爆撃機

更には、1号戦車、2号戦車 、ハーフトラックに装甲車を有する、エトヴィン少佐率いる機甲師団2万が集結していた

 

そのほかにもクワ・トイネ公国軍2万、

クイラ王国派遣軍3万が集まっていた

 

 

「いや、こう見ると余りにドイツ軍は凄まじいですな」

 

クイラ王国派遣軍将軍のハセルは眼下に広がるドイツ軍の機甲師団についての話に公国軍騎士団団長トーシャも頷きながら答える

 

「この軍勢されいれば、古の魔法帝国軍でさえも打ち破れる気がするな」

 

「まったくその通りですな!」

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆

 

そして遂に

クワ・トイネ公国、クイラ王国、ドイツ国 による連合軍の一大反攻作戦が開始された

 

 

◆◇◆◇明け方 ギム◆◇◆◇

 

「ふぁああ・・・寝みぃ・・・」

 

歩哨の兵が眠そうにしていると、向こうの空から砂の粒のような物がこちらに向かって飛んできた

 

「!!!大変だ!」

 

歩哨は飛ぶ様に駆け出し、通信小屋に駆け込む

 

「もしもし!!敵だ! 敵が攻めていたぞ!もしもし!もしもし!!」

 

そうしている間にも、ごま粒大だったものがしっかり形がわかるぐらいにまで大きくなる

 

 

「はい!こちら司令部!どうした!」

 

「いま 正体不明の飛竜を確・・・

うわぁ!!!こっちに来るぅ!!!

 

QWAAAAAAAA!!!!!!

 

バガァァァアアンン!!!

 

 

「・・・おい!どうした!?応答せよ!応答せよ! ・・・まずい!」

 

 

「敵襲だ!! 起きろ! 敵襲だ!!」

 

寝ている兵を叩き起こしにかかる

 

 

「パンドール様!起きてください!敵襲です!」

 

「何ッ!? エジェイはどうしたのだ?!」

 

 

「ハッ! 確認したところ、敵はエジェイに篭りっきりで膠着状態になっているとのことです!」

 

「では何故ここが攻撃されてるのだ?!」

 

「街道から外れた森林地帯から侵攻してきたものと思われます、まったくの予想外でした!」

 

「兵力は! クワ・トイネは防衛に当てるのが精一杯ではないか?!」

 

「どうやらクワトイネ公国はクイラ王国とドイツ国と連合を組んで攻め込んできたようです」

 

「なんて事だ! えぇい! 返り討ちにしてくれる!すぐに反撃にうつれ!」

 

「はっ!」

 

 

◇◆◇宿舎◇◆◇

 

「ほら!ボヤボヤするな!敵が来るぞ!」

 

寝ぼけナマコの兵を叩き起こしていると

 

「飛竜が来るぞー!!」

 

凄まじい速さで数騎の灰色の飛竜が飛んでくる

 

バリバリバリバリバリバリ!!!

 

翼から発射された光弾は準備をしていた飛竜小屋に吸い込まれ、空の戦士は空を飛ぶ事なく生き絶える

◇◆◇◆◇◆

 

「奇襲成功!戦車隊前進せよ!」

 

混乱をきたした陣地に機甲師団が突入する、それに続いて公国、王国の兵達が続く。

 

「ダメです!飛竜もやられ、兵も混乱から回復できていません!」

 

「なんという事だ!」

 

向こうからは着実に連合軍が迫って来ている、混乱から立ち直った者は迎撃にあたるがバリスタでは戦車どころか装甲車にさえ傷一つ与えられない、

 

「突撃ーー!!仇討ちだ!」

 

「いけっー!皆殺しにしたれー!!!」

 

 

クワ・トイネ軍はロウリア兵がいれば降伏しようがしまいが関係なく殺していた、まぁギムの町事件があるから仕方ない

 

 

◆◇◆◇◆◇

敵兵の怒号がここまで聞こえる、ギムは

もうじき陥ちるだろう

 

 

「将軍!ギムはもうダメです!もはや撤退の他ありません・・・!」

 

 

「・・・撤退・・か、わかった、 動ける兵は全て本土へ撤退!ギムは放棄する!

全ての将兵に伝えろ!」

 

「ハッ!」

 

 

「では将軍、こちらへ!」

 

「うむ」

 

パンドールが馬に乗ろうとした瞬間

 

 

ヒュルルルル・・・

 

ズバーン!!

 

すぐ近くで榴弾が落ちた様だ

 

爆音でパンドールの乗っていた馬は混乱し、そのままパンドールを振り落とす、

パンドールは落馬した衝撃で気を失ってしまった

 

◇◆◇◆◇◆◇◆

 

連合軍はギムの奪還に成功し、幸運な事に将軍であるパンドールを捕まえる事が出来た

 

パンドールは手首足首を縄で縛られ、

目の前ではドイツとクワ・トイネ、クイラの将軍が、パンドールの処置をどうするか話し合っていた

 

「ロウリアの将軍など即刻処刑すべきだ!」

 

「いや、しかしまず国の指示でやったか、将軍個人で行ったかそれを調べてからでないと」

 

「私は炭鉱の最下層で働かせれば良いと思っている」

 

どちらにせよパンドールのその後はロクでもない無い物と言うことは決まっていた

 

「おい、貴様 このギムの虐殺を命じた奴は誰だ?」

 

「・・私は命令していないしされてもいない、ギムを攻めたのはアデムが率いた先遣隊だ、恐らく奴が指示したのだろう

奴は苛烈な性格だからな、それに亜人に対し人一倍嫌っていた」

 

「ケッ! それでアデムとやらはどこにいる」

 

「アイツは今エジェイを攻めている、

もっとも今は苦戦しているようだがな」

 

 

「・・そうか、まぁ貴様の命をどうするかはまたそのうち考えてやる」

 

そういうとトーシャは部下に

 

「おい、こいつをマイハークに連れて行って丸太に縛り付けて群衆の前にだして見世物にしろ、最終的な処罰を決めるのは戦争が終わってからだ、それまで殺すのだけはやめろ、わかったな」

 

「はぁ!」

 

「御二方も異論ないですな?!」

 

「「構いません」」

 

 

◆◇◆◇◆◇◆

 

 

遂にギムを陥とした連合軍、クワ・トイネ公国軍、クイラ派遣軍の2カ国は

エジェイを攻めてるアデムを処刑すべく

進撃を開始する、一方ドイツではロウリア王国の本格的な侵攻作戦を考えていた

 

 




一大反攻作戦って言葉の響きいいですよね、

一大反攻作戦

オデッサ

っ! 頭が!


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この世の掟

中央歴1639年6月2日

 

◆◇◆◇城塞都市エジェイ◇◆◇◆

 

アデムは考えていた、先遣隊をエジェイへ向かわせても門から謎の攻撃によって

被害を受け、攻撃することができない

 

一度先遣隊による大規模な突撃を敢行したものの、結局は城門からの攻撃と、謎の爆発魔法によって先遣隊は全滅してしまった

 

「くそ、忌々しい亜人どもめ・・」

 

すると通信兵がアデムのいる天幕に転がり込んで来た

 

「大変です!アデム様!」

 

「何だ貴様! 無礼だぞ!」

 

 

 

「そんな事言っている場合ではありません!」

 

「なぁに?!」

 

「ギムが・・ギムの本陣が・・・」

 

「ギムがどうした?」

 

「ギムの本陣がクワ・トイネ、クイラ、ドイツの連合軍によって陥とされました!!」

 

「なっ、なにぃぃ??!!」

 

「いま、クイラ、クワ・トイネ連合軍がこちらに向かっているとの報告がありました!」

 

「ガァア!!後方部隊に対処させろ!」

 

「はっ!」

 

 

アデムは焦り始めた

もし、エジェイの兵が攻勢を始めたら、

後ろから来る連合軍と挟み撃ちにある

そうなれば4万の兵といえど無事では済まないだろう

 

「前方に展開している兵以外は陣へ集まるように伝令を出せ!」

 

「は、はっ!」

 

(エジェイに張り付いてる兵には囮になってもおうか)

 

◆◇◆◇◆ドイツ陣地◆◇◆◇◆

 

「ギムを陥した連合軍がこちらへ向かっているようです」

 

「では我々の仕事は終わったな」

 

シュミットはマイクを手に取り告げる

 

「榴弾砲部隊、ロウリア国陣地に向け砲撃開始」

 

 

ドガン!!

 

ドガン!!

 

ドガン!!

 

ドガン!!

 

ドガン!!

 

ロウリア軍征伐軍全滅のファンファーレが鳴り響く

 

 

陣地内の150ミリ重砲から次々と

撃ち出される榴弾は無慈悲にもロウリア軍の陣地へ降り注いだ

 

 

◆◇◆◇◆◇◆

 

「これから我々が行うのは愚かにも我々に向かって来る亜人どもの軍勢を迎え撃ちにする事である!自らがどれ誰愚かな事をしているのか思い知らせてやれ!」

 

「「「オオォー」」」

 

 

(このままでは最悪負ける、その前にタイミングを見計らってパーパルディアに亡命するか・・・)

 

アデムはそんな事を考えている時・・・

 

ヒュルルルル

 

ヒュルルルル ヒュルルルル

ヒュルルルル

ヒュルルルル

 

「なっなんだ!?」

 

「おい!何か来るぞ!」

 

「逃げろ 逃げろ!」

 

バッガッーーーン!!!

 

 

陣地のど真ん中で突如爆発が起こる

 

「何が起こった?!!まさかエジェイからここまで攻撃したと言うのか!!」

 

「アデム様!まだ来ます!!」

 

「なにぃぃ!!!」

 

陣地の至る方向から爆発する

その衝撃は連合軍からも確認できたと言う

 

ズガァァン!

 

「うっうぉーーー!!!」

 

 

アデムの至近距離に榴弾が落ち、アデムは吹き飛ばされた

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

「生き残っている奴も殺せ!皆殺せ!」

 

連合軍がロウリア軍陣地に着いた時には殆ど壊滅状態であった

 

連合軍兵はアデムの遺体を見せしめにする為血眼になって探していた

 

 

「おっおい!こいつじゃねぇのか!?」

 

 

「どれ、 おっ!間違いねぇ!コイツだ!」

 

「いたぞーー!!アデムだ!!」

 

 

兵達が騒いでいる視線の先には

 

右腕がもげ、左足の付け根が皮一枚で繋がってるほぼ死にかけのアデムであった

 

「うっわ!エッグ!」

「へへっ!こいつぁいい気味だぜ!」

 

「おいっ!将軍に知らせろ!」

 

◇◆◇◆◇◆

 

「こんな姿を晒すとはな、心も体も醜い奴よ」

 

トーシャは軽蔑と憎悪と怒りの目で睨みつける

 

 

「うー!ううう、うう」

 

もはやアデムはなにを言ってるのかすらわからない

 

「こいつは生きるに値しない命だ!

直ちに切り捨てる!!」

 

 

トーシャはロングソードを鞘から抜き

アデムに突き立てる

 

 

「イヤぁああああ!!!」

 

 

「うっ!ふぅ!うううーー!!」

 

ザグッ!!

 

 

アデムの胸にロングソードが貫通して突き刺さった

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

アデムだった屍は街道の木に吊るされ見世物にされていた

 

 

この世は弱肉強食、力無きものは只の肉として食され、敗れたものは無残に朽ち果てる、その様な世の掟をアデムは身をもって教えられたのだった

 




帝政ドイツバージョンもその内投稿したいですね。


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ビーズル降下作戦

◇◆◇◆ドイツ軍 作戦本部◆◇◆◇

 

「では作戦を説明します」

 

1人の将校がロウリア王国の地図を壁に広げ説明する

 

「次の目標はロウリア王国の工業都市ビーズルです、 これが偵察機が撮ってきた

写真ですがご覧の通り戦力が集結しています、 どうやらロウリア側はこの戦いが今戦争の天王山と捉えている様です」

 

 

「成る程な、航空戦力はどのくらいある?」

 

「確認できた数は20騎程、序盤の戦いで数をすり減らしているのでしょう、先程戦力を集結していると言いましたが兵士数もパッとみ3万、4万と 天王山の戦いにしてはいささか数が少な目ではあります」

 

今度は空軍将校が説明に移る

 

「今作戦では我々空軍が予め爆撃を行います、その後降下猟兵による空挺降下で

敵中心部を始末、それから陸さんの方の部隊で残り部隊を殲滅するという作戦です」

 

「この戦いでロウリア王国軍が壊滅すれば、政府はロウリア王国に対して条件を付けた降伏勧告を行います、降伏してくれれば良いのですが しなかった場合は完全に滅ぼすまで戦う事になるでしょう」

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

グラ・バルガス帝国 諜報員 モルダ

 

ある日突然この世界へ転移した帝国は

各地へ諜報員を派遣して情報を集めていた、そしてこのロデニウス大陸における文明圏外の戦いにも諜報員を派遣して情報収集に当たっていた。

 

「ここ最近ビーズルでもロウリア兵の動きが活発になって来てるな・・・」

 

噂では列強パーパルディアの支援を受け

兵力を増強したと言われている、情報局の分析ではロウリア王国の圧勝で戦いは終わると思っていたが・・・

 

「どうもここまで押されているとは思わなんだ・・・」

 

とある空き家から外を覗いていると

空から異音が聞こえていた

 

ブオオオオ・・

 

 

「! この音は・・・ まさか!クワ・トイネにあるはずが・・・!」

 

まだ姿は見えないがモルダにとって聞き覚えのある音であった

 

「ひっ!飛行機!戦闘機だ!」

 

モルダは直ぐにカメラを構える

 

ビーズルの基地から次々と飛竜が上がっているが、戦闘機は容赦無く叩き落とす、その様はまるでレイフォルの飛竜とアンタレス型戦闘機の戦いの再現である

 

 

「ノーズが細い・・・液冷エンジンか・・?」

 

 

ビーズルの住民が恐怖で逃げ惑う中モルダは冷静に分析を行う

 

「今度は・・・エンジンが三つ付いてる・・・ 爆撃機か?!」

 

モルダは咄嗟に用水路の中に飛び込む

水が流れていなかったのが幸いだった

 

 

 

ヒュルルルルルルルル!!!

 

(くる!!)

 

モルダは用水路の中で必死にうずくまる

 

ズガァ!

 

爆発の衝撃はモルダの体を何度も揺さぶられ、まるで生きた心地がしない

 

ドンッ!

 

(こんな物がクワ・トイネとクイラに作れるはずがない・・・!)

 

バァン!

 

(となると・・・まさか・・ドイツ・・? 噂には聞いていたが、話によるとどうも我が帝国と同じ転移国家らしいが、全体像は不明だが先程の戦闘機を見る限り我が軍の戦闘機とあまり変わらない様に見える)

 

ボガァ!

 

(ドイツ・・・下手をしたら我が帝国よりも技術が進んでいるのか・・・いや、それは無いか、発動機を3発積むのは

発動機の信頼性が低い証拠、少なくとも航空分野においては我が帝国が上だ・・・)

 

そう考えている間にも爆弾は落ち、飛んできた細かい破片がモルダに降りかかった

やがて爆発が止む

 

(・・・終わったか・・・?)

 

モルダが体にかかった瓦礫屑を払いながら外に出る

 

外には飛竜一騎 飛行機一機いない

 

(早いとこ ここから離れなければ・・・

下手すりゃ侵攻部隊がやってくる)

 

 

するとまた数機の飛行機が飛んでくる、先程爆撃してきた物と同じやつだ

 

 

「ちっ!またか!」

 

モルダは用水路に入ろうとしたが、航空機を見たままぽかんと突っ立ってしまった

 

 

その航空機から次々と人が飛び降りているのだ

 

 

「落下傘兵!!」

 

次々と空に真っ白い薔薇の花模様を咲かす、モルダは慌ててカメラでその様子を撮った

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

ビーズル守備隊 隊長コンルソー

 

「被害状況はどうなっている!」

 

「兵士は混乱を起こしています!」

 

「飛竜隊がッ!全滅ッ! 圧倒的不利ッ!」

 

 

「くそ!これはロウリア王国の存亡をかけた戦いなんだ!簡単に負けれるか!」

 

先程の爆撃で被害を受けていた軍を混乱から立て直している真っ最中であった

 

すると

「団長!!何ですかあれは!!」

 

望遠鏡で見張っていた兵が叫ぶ

 

「俺が知るか! それを貸せ!」

 

見張りから望遠鏡を奪い取り覗く

 

「?!!なっなんだ!人が飛び降りてるぞ!」

 

 

すると飛び降りた人の背中から白い何かが出てきて 落ちていくスピードがゆっくりになる

 

「空から軍を送り込んできやがった!」

 

「奴ら南部草原に降りていきます!」

 

 

「よし! 第三守備隊は敵兵を迎え打て!

あの様子ではろくな武器は持てまい!」

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

「うぉー!!落ちる!!」

 

1人の降下猟兵がそう言いながら若干乱暴ではあるが着地する

 

 

「全員いるか!」

 

「「「はい隊長!」」」

 

「我々第1隊はコンテナを回収後速やかに敵司令部に突入し、敵司令官を倒す!その後は増援が来るまで防衛に徹する!以上!」

 

「「「応!!」」」

 

そう言うと隊長はピストルを出して弾を込める

 

 

「・・・コンテナは・・あそこか」

 

前方数百メートル離れたところに

武器を積んだコンテナが転がっている

 

「行くぞ!」

 

隊長の掛け声とともに

それぞれピストルを構えて走る

 

 

「前方に敵兵!」

 

「構わん!撃ち殺せ!」

 

 

パンパンパン!!

 

ぐわっ!

 

ロウリア兵が倒れるが

しかしまだまだ湧いて出て来る、それにご丁寧に城門にも弓兵らしき兵がいる

 

「コンテナ回収しました!」

 

「でかした!」

 

 

 

すると誰かが叫ぶ

 

「伏せろ!!」

 

「わっ!」

 

コンテナを持っていた兵を蹴り飛ばす

 

「何しやがる!イテェじゃねぇか!」

 

「馬鹿野郎!こんなのが当たったら痛いじゃすまねぇぞ!」

 

そう言って弓矢を拾い上げる

 

「mg34を用意!」

 

隊長が叫び、コンテナからmg34が取り出される

 

他にもそれぞれMP38を取り出したり

k98kを取り出す

 

 

その間にも弓矢は飛んでくる

 

「背を低くしろ!」

 

 

「クルツ!城壁にいる奴を狙えるか!」

 

「任せてください!」

 

スコープ付きのk98kを構え狙いを付ける

 

バン!

 

城門の兵士1人に命中し倒れる

 

「よぉし!良くやった!」

 

 

 

「mg34準備完了!」

 

「よぉし!薙ぎ払え!」

 

 

バァバァバァバァバァバァバァバァ!!

 

 

mg34から撃ち出された弾は次々とロウリア兵に当たり弾け飛ぶ

 

 

「ハハハハ!いいぞ!いいぞ!」

 

「よし!このまま突入だ!行くぞ!」

 

◆◇◆◇◆◇◆

 

外は第2隊に任せ、そのまま敵司令部へ突入する

 

「撃て!撃て! 邪魔する者は皆蹴散らせ!」

 

 

剣しか持ってないロウリア兵は鉄砲を前になすすべなく倒れて行く

 

◆◇◆◇◆◇

 

「何!敵が侵入してきただぁ!?」

 

「はい、守備隊が迎撃に当たっていますが敵は強力で未だに倒せていません」

 

「敵は何人だ!」

 

「4人です!」

 

「4人!?嘘だろ?!」

 

 

ビーズル防衛団司令部は建物中にバリケードを築き、これ以上敵兵を進ませまいと見張っていた

 

 

「あそこです、椅子とタンスで出来たバリケードと兵士が三人見張りについてます」

 

「よし、手榴弾を投げろ」

 

降下猟兵はピンを外した柄付手榴弾をバリケードに向かって放り投げる

 

 

カツン コロコロ

 

「?・・なんだこりゃ」

 

ロウリア兵が足元に転がってきた手榴弾を拾い上げようとしたその時

 

チュドーーン!!

 

 

手榴弾が爆発し、バリケードも見張りの兵も全てが吹き飛んだ。

 

「突撃!突撃!」

 

 

シュタタタタタタタタン!

 

MP38の連射でロウリア兵が剣を抜く前に倒して行くが次第に敵の数も増えていく

 

「敵の中心は近い!気を引きしめろ!」

 

「「「オォ!!」」」

 

◇◆◇◆◇◆

 

「状況を報告しろ!」

 

「はっ!敵は未だ勢いを止めぬままこちらへ向かってきています」

 

コンルソーも側近も青ざめている

 

「やばい、やばいぞ・・・」

 

コンルソーは何かを考えながら司令室を回る

 

ズガン!!

 

爆音と共に部屋が揺れ動く

 

「なっ?! なんだ今のは!」

 

「爆発です! 敵に魔導師でもいるんでしょうか?!」

 

 

すると

 

 

扉が蹴破られ

 

 

4人の風変わりな格好をした男が4人

出てきた

 

 

「なんだ貴様r・・」

 

タン!タン!タン!タン!

 

一番手前の兵士のワルサーp38により

コンルソーはあの世へ送られた

 

 

「うわぁ、 あああああ!!!」

 

側近はヤケになり剣を取り出し切りかかって来たが

 

タン!タン!

 

「イギェ」

 

同じくワルサーp38でコンルソーの後を追った

 

 

◆◇◆◇◆モルダ

 

「ここまで来れば直ぐに隠れられる」

 

モルダは町からある程度離れた丘の廃屋に身を隠していた

 

すると

 

ポン! ヒュルルルル・・・

 

ビーズルの一番大きい建物、守備隊司令部から信号弾が撃たれた

 

「信号弾・・さっきの落下傘兵が制圧したのか・・? !! あれは!」

 

 

信号弾が上がってから直ぐに向こうの丘からまたもモルダが見慣れたアレがやって来た

 

「戦車か!ドイツは戦車を開発しているのか!」

 

車体に先程の戦闘機とよく似た十字が描かれていたためドイツの物だと断定する

 

一方ロウリア側は司令部が制圧されまともに指示も得られず、連携も取れず

兵力はありながら瓦解状態になっていた

その様子をモルダは克明にカメラで記録し続ける。

 

 

それから数時間と経たないうちにビーズル守備隊は壊滅、ドイツの手に陥ちたのであった。

 

 




アデムの経歴思ったよりも重い感じで草も生えん


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降伏

◆◇◆ロウリア王国 王都

ジン・ハーク 緊急御前会議◇◆◇

 

会議室の中はまるでお通夜の様に静かで皆悲痛な面持ちであった

 

ギムを陥としてからもいうもの連戦連敗が続き、あろうことか序盤にして敵の王都の空の侵入、攻撃を許してしまう

4400隻用意した海軍も全滅、エジェイ攻勢に出した本隊も壊滅、王国軍残存部隊全てを集結させた最後の砦であったビーズルでさえも敵の手に陥ちた

 

最早ロウリア王国に出せる兵力はない

 

パタジンはパーパルディアの使者に非常に言いずらそうにこう告げた

 

「・・・パーパルディア皇国の使者殿、第三文明圏唯一の列強国、貴国の援軍があれば助かるのだが、どうだろうか。再度援軍を送ってもらうわけにはいくまいか・・・?」

 

パタジンはすがる様な気持ちでローブの男に頼み込んだ

 

しかしローブの男は気持ちの悪い笑みを浮かべ、パタジンだけでなくロウリア王国までもを突き放す様に言い放つ

 

「ロデニウス大陸を統一する為に十分な支援は行ったはずだ、飛竜を、兵をいくつ貸した?これで破れる様な無能な友好国は、我が国には必要ない」

 

国の重鎮が集まる会議であまりに無礼な発言であるが、パーパルディア皇国という存在に、たかが使者に対して言い返せる者はいなかった

 

すると会議場に誰かが飛び込んで来た

飛び込んできた者に対しパタジンは怒鳴りつける

 

「誰だ!今は御前会議を行なっている!」

 

「はっ!申し訳ございません・・ しっしかし大変であります!」

 

「一体どうしたのだ!」

 

「・・外交省に来たドイツ外交官からこの様なものを渡されてきました!」

 

「なんだと・・見せてみろ・・・」

 

「・・・なんだ!これは!」

 

その紙に書いてあったのは・・・

 

◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎

 

始めに、ドイツ国総統、クワ・トイネ公国首相、クイラ王国国王は、我々の国民を代表し協議の上、ロウリアに対し戦争を終結する機会を与えることで一致した。

 

1.3ヶ国の軍隊は増強を受け、ロウリアに最後の打撃を加える用意を既に整えた。この軍事力は、ロウリアの抵抗が止まるまで、同国に対する戦争を遂行する一切の連合国の決意により支持され且つ鼓舞される。

 

2.我々の条件は以下の条文で示すとおりであり、これについては譲歩せず、我々がここから外れることも又ない。執行の遅れは認めない

 

3.ロウリアは「ドイツ国の利益のため」国土の3分の2に当たる北側の領土をドイツの占領に委ねる。以南の地域は一部を除いてロウリアによる統治を行う

 

4.アルタラス海峡とパーパルディア皇国に向いた港のすべてをドイツ海軍に引き渡す

 

5.ロウリアの商船は当分出港を禁止する

 

6.ロウリアは、ドイツ軍およびクワ・トイネ軍、クイラ軍の占領経費を負担しなければならない

 

7.我々はロウリアが全ロウリア軍の即時無条件降伏を宣言し、またその行動についてロウリアが十分に保障することを求める。これ以外の選択肢は迅速且つ完全なる壊滅があるのみである。

 

8.ロウリア王国国民が自由に表明した意志による責任ある政府の樹立を求める・・・などなど・・・etc

 

◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎

 

ロウリア王国に対してドイツはこの様な声明を出した

 

 

「なっ、なんだと・・・」

 

 

「そんな条件呑めるかっ!!」

 

 

「・・・しかし、王様については処罰などの事が書いてないことが唯一の救いか・・・」

 

 

「大王様!ご英断を!」

 

ハーク・ロウリアは周りから意見を求められる

 

 

・・・

6年もの歳月をかけ、列強の支援と服従と言っていいほどの屈辱的なまでの条件を飲み、ようやく実現したロデニウス大陸を統一するための軍隊、錬度も列強式の訓練により上げてきた。

 資材も国力のギリギリまで投じ、数十年先まで借金をしてようやく作った軍、念には念を入れ、石橋を叩いて渡るかのごとく軍事力に差をつけた。

 圧倒的勝利で勝つはずだった。

 

しかし 、結果は陸軍海軍ともに壊滅

このままではロウリア王国は滅びてしまうだろう

 

 

苦悩に満ちた面持ちでハーク・ロウリア34世はこう告げた

 

 

「・・わかった、条件を呑むと外交官に伝えてくれ・・、このままでは国は滅ぶ、皆辛いだろうが耐えてくれ・・・」

 

 

ロウリア王国は戦争に負けた

 

この事実に将校達はただ俯いてじっとしている者や、膝を落とし涙を流す者まで現れた

 

◆◇◆中央歴1639年5月13日 ◆◇◆

 

ロウリア王国はクワ・トイネ公国、クイラ王国、ドイツ国に対し無条件降伏した・・・

 

 

(風雲!ロデニウス大陸!編. 完)

 




次回、動乱!フィルアデス大陸!


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間章
間章-世界の動き


中央歴1639年5月14日

 

この日よりドイツ軍は旧ロウリア領へ進駐を開始した

 

元々ロウリア王国だった領土は凡そ6分の1に減らされ、兵士数も制限をかけられ、貿易まで制限をかけられた

ロデニウス大陸1の大国は瞬く間にクイラ王国よりも下の最貧国になってしまった・・・

 

【挿絵表示】

 

 

◇◆◇旧王都ジン・ハーク◇◆◇

 

かつてロウリア王の居城だったハーク城に今はドイツ軍の統治機関であるロウリア総督府が入っていた、そんな街の一角にある酒場『竜の酒』があった、この店は爆撃から逃れたが、自国が降伏した為流通が滞り店を閉めるかどうかという瀬戸際まで追い詰められたが、客のドイツ兵を優遇する事でなんとか生き残りの道を得ていた。

 

冬に収穫した氷で冷やしたうまい酒、肉に香辛料を惜しみなく使ったうまい飯が出るこの酒場では様々な国の商人や旅人が情報交換を行なっていた、今日もまた

何人かの商人が話し合っている、話題は勿論ドイツの事だ。

 

「しかし・・・ドイツか、噂じゃ転移国家だって聞くがどう思う?」

 

「転移国家だなんて・・・それこそ御伽噺だよ、ドイツが古の魔法帝国だってのか?」

 

「だよなぁ、あり得ん話だ・・・」

 

「・・そうだ、俺はムーの機械式の腕時計を売れると思って仕入れたんだ、明日にでもドイツ本国へ売りに行こうと思うんだが売れると思うか?」

 

そう言い懐中時計が腕に乗っかった様なデカイ時計を取り出す

 

「いや、そいつは無理だな、ドイツの入国審査はすごく厳しい事で有名なんだ、俺も今日行ったんだがほぼ門前払いだったよ」

 

「ああ、そうだドイツへ入るには国交を結んだ国から発行された身分証明書が無いとダメなんだ、しかも日にちまでに来るように決まってる入国許可証も必要だから1日でも遅れるとパァだ」

 

「厳しすぎるだろ、参ったな身分証明書なんて持ってないぞ・・・」

 

「一応クワ・トイネ公国でも発行してくれるみたいだ、運が良ければ入国できるかもな」

 

 

◇◆◇グラ・バルカス帝国◇◆◇

通称『第八帝国』情報局

 

並べられた電気式受信機に電子音が連続して鳴り響く、現代の者が聞けばモールス信号だと思うだろう、

 

「閣下、ロデニウス大陸の情報について現地から報告が届きました」

 

「概要は?」

 

「はっ!ロウリア王国によるクワ・トイネ公国、クイラ王国、ドイツ国への侵攻軍はドイツ軍によって撃退された模様、それどころか三ヶ国連合軍に逆侵攻を受けロウリア王国は降伏、ロウリア王国の殆どの領土がドイツの占領下に置かれることとなったそうです。」

 

「何!?」

 

 

閣下と呼ばれた男は話の内容に驚き身を乗り出す

 

 

「我々の分析ではロウリア王国が圧勝し、ロデニウス全土がロウリア王国の物になるという結果だったが・・・」

 

 

「それでドイツの事について、ビーズルに派遣した諜報員が持ち帰ってきた写真

がこちらです」

 

「どれ、 っ! これは!」

 

閣下が受け取った写真に写っていたのはモルダが撮った戦闘機の写真であった

 

 

「はい、ドイツはどうやら元々この世界の国では無く我々と同じ転移国家だと思われます、しかも同等の技術を持つ。」

 

「確かに・・・周辺国の技術とレベルが離れすぎている・・・転移国家でなければ説明がつかん」

 

閣下がI号戦車の写真を部下に見せる

 

「・・・しかし、この戦車は我が帝国の戦車に比べて武装がかなり貧弱だ、最早装甲車と言っても良いレベルだ、前の世界ではこの程度の戦車でも事足りる様な平和な世界に住んでいた様だな」

 

「・・閣下、こちらはロウリア降伏後にそのドイツ海軍がロウリア海軍港湾へ入港した時の写真です」

 

その写真にはドイッチュラント級装甲艦が写っていた

 

「こっちは我が軍の重巡から軽巡クラスと同じくらいか、ドイツという国・・・ますます分からんな・・・陸上戦力は兎も角 、海軍の数はまだ不明だが油断しない方が良いな。

やはりこの国も我が国と同じ転移国家なのだろう、ドイツ・・決して侮ってはならん国だな、このまま放っておけば我が帝国の世界制覇に支障が出るかも知れん」

 

情報局ではドイツを最重要監視項目へ入れた、それは神聖ミリシアル帝国とほぼ同レベルの位置付けであった

 

因みにドイツの国家保安部第六局(国外諜報)も、U-ボートを用いて近くはパーパルディア、ムー、ミリシアル、果てはレイフォルへ諜報員を送り込んでいた

 

◇◆◇ドイツ ベルリン◇◆◇

 

ベルリンの街中をとある国の外交団を乗せた車が走っていた

 

「この国の国力には目を見張るものがあります」

 

搭乗していたのはアルタラス王国 王女であり外交官であるルミエスだ、

アルタラス王国とは転移してから割と早い時期に接触していたがロウリアとの戦争で一時期距離を置いていたのだ。

 

彼女の護衛を任された上級騎士リルセイドも彼女の言葉に頷く

 

「全くです、この国はもしかしたらパーパルディアよりも強いかもしれません」

 

「そうかもしれません、それと先程閲兵式で見たドイツ軍の装備は凄かったです」

 

ルミエスは先程見た閲兵式を思い出した、あの様な武器があればパーパルディアにも対抗出来るだろう

 

「えぇ、これを期にドイツに兵器の売買を交渉したらどうでしょう」

 

 

その後彼女らは総統官邸でヒトラーと会談を行った、その事は翌日新聞で大々的に取り上げたという。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 




書籍版四巻おおかた読んだ感想

アデムの経歴割とエグい


第八帝国「前の世界ではこの程度の戦車でも事足りる様な平和な世界に住んでいた様だな」

史実ではこれから馬鹿みたいに進化するんだよなぁ


ムーの腕時計

書籍版で籠手みたいな腕時計とあったからピップボーイみたいなやつなんですかね?


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間章−世界の動き②

中央暦1639年9月◇日

 

国家保安本部第六局 某部

 

タイプライターの音が鳴り響く中

ひとりの親衛隊の制服を着た男が、中佐の階級章を付けた男に話しかける

 

「中佐、レイフォルを調査していた西部諜報員から報告が入りました。」

 

「読め」

 

「諜報員によると、第二文明圏列強のレイフォル艦隊はグラ・バルカス帝国戦艦と交戦し壊滅、その後首都レイフォリアはグラ・バルカス帝国戦艦の艦砲射撃により崩壊、その時にレイフォル皇帝は死亡、レイフォル軍部は無条件降伏をした模様、その後グラ・バルカス帝国はレイフォルを植民地化したようです」

 

「ふむ、成る程な 、前に送られた情報を見るにレイフォルは前世界の18世紀程度の戦列艦が主流だと聞いたな、レイフォル艦隊と我が軍が戦争になった時も似た様な結果になると分析されてるがどうだ?」

 

「はっ、仰る通り我がドイツ艦隊とレイフォル海軍が交戦したとして、結果は

我が軍の艦砲により長距離から一方的に殲滅出来ると分析されてます」

 

コンコン

 

「入れ」

 

「お話中申し訳ありません、たった今諜報員が持ち帰って来たフィルムの現像が終わりました」

 

 

「解った、そこに置いておけ」

 

「はッ!ハイルヒトラー!」

 

「ハイルヒトラー」

 

 

 

「どれ、諜報員が持ち帰った写真とやらを見てみようか」

 

レイフォルから撮られた沖に浮かぶGAが写っていた

 

「・・これは、なかなかでかい戦艦ですね・・」

 

「ほぅ・・こいつ、シャルンホルスト級よりでかくないか?砲も我が軍のよりもでかい」

 

「幅は40メートル、全長は260メートル程であったとの報告です」

 

「それは・・・これが敵対するとしたらとてつもない脅威だな」

 

 

「次は・・これは戦闘機ですね」

 

今度はアンタレス型艦上戦闘機が写った写真を取り出す

 

「これはレイフォルが降伏した後グラ・バルカス帝国飛行場で撮ったものだそうです」

 

 

「こうしてみると戦艦と言い、戦闘機と言い我が国の技術と近いな、グラ・バルカスも我が国と同じ転移国家である可能性が限りなく近くなったな」

 

「残念ながら陸軍戦力は未だ不明ですが、決して油断出来る相手では無いのは確かです」

 

 

その後、グラ・バルカス帝国の情報が効いたのかどうか定かでは無いが、

凍結されたZ計画が再始動され、建造途中で放置されていたH級(1939年型)戦艦のHとJの建造が再開され、同時にK、M、の2隻の戦艦も建造が開始された、他にもパーパルディアやムー、ミリシアルの空母を見て、グラーフ・ツェペリンの同型艦ペーター・シュトラッサーの建造、H級戦艦のNを空母として建造する事となった

 

◇◆◇◆数日後◆◇◆◇

 

コンコンコン!

 

「やかましい! 入れ!」

 

「失礼します!」

 

「なんだ、うるさいぞ」

 

「申し訳ありません中佐、実はミリシアルにいる諜報員からこれからの戦略に関わる大事な情報を手に入れたんです」

 

「ほぅ、読んでみろ」

 

「はっ、どうやらこの世界には魚雷や潜水艦という概念が存在しない様なのです」

 

 

「成る程、確かにそれはかなり重大な情報だな、我が軍のこれからの戦略にも大いに関係するだろう」

 

 

 

この世界に魚雷や潜水艦という概念が存在しない、その報告を受けた上層部は

カールデーニッツが進言した潜水艦300隻計画を実行に向けて動き出した、現在資材の大半を戦艦と空母に費やしているが、この2年間の間に150隻の潜水艦を竣工させる計画だという。

 

 

◇◆◇◆◇◆

中央暦1639年9月△日

 

アルタラス王国経由で国交を結んだ島国のフェン王国から使者がやって来た、

どうやら彼の国では5年に1度『軍祭』というものを開催するらしく、ロウリア王国を降し、実質ロデニウス大陸の覇者となったドイツを招待しに来たのだ、それを聞いたドイツも周辺国との顔合わせや海軍の威力を見せる為参加する旨を伝えた

 

◆◇◆◇◆◇

中央暦1639年9月(´∀`)日

 

パーパルディア皇国 第3外務局窓口

 

そこでドイツ外交団は能面ヅラで立っていた

(若干般若顔の人もいる)

 

「我々はあとどのくらい待てばよろしいのか?それを教えていただきたい」

 

「しばらくお待ちください、順番に手続きを行っているので・・・、しかし、貴方達の要求内容はかなり無謀な・・・非常に失礼な事が記載されてますので・・・」

 

「どこが無謀で失礼な事なんでしょうか?」

 

 

「貴方がたは・・・もしもパーパルディアの民が、あなた方の国の中で罪を犯したとして治外法権は認めないと言ってらっしゃるので・・・」

 

 

「それが?当たり前の事ではありませんか」

 

「我が国は列強ですよ?」

 

「は?それが何か?」

 

 

「貴方の国は出来たばかりですか?文明圏以外の国とはいえ、国際常識を知らないにも程がある」

 

窓口勤務員の話は続く

 

「いいですか?今、世界において治外法権を認めないことを我々が了承している国は、4カ国のみです、つまり列強国のみなのです、列強国でない まして文明圏にも属してない、国際常識すら理解してない貴方の国が治外法権は認めない列強と同等に扱えなど言っている・・・

課長はあと2週間くらいに空きますので

あと2週間待ってください・・ただ私としてはこれはかなり不遜と言わざるを得ません」

 

パーパルディアの物言いは外交団をイラつかせるには十分過ぎるものであった、

外交団は帰国後第六局に報告し、パーパルディア皇国の所に

『文明未成熟国家』と判子が押された。

 

 



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動乱!フィルアデス大陸!
軍祭


新章突入でございます


中央暦1639年9月25日

 

フェン王国 首都アマノキ 軍祭

 

ドイツ海軍は戦艦グナイゼナウを派遣、

船員によるフェンシングの試合を披露していた

 

「ほう、これは変わった武技ですな」

 

「しかし、あのドイツの船も城のようにデカイ・・」

 

参加国の誰もがドイツの戦艦の圧倒的な大きさに目を奪われる

 

「剣王様、そろそろ我が国の廃船に対してドイツの攻撃を始めてもらいます」

 

これから本日の目玉であるドイツ艦の廃船への砲撃が始まる、グナイゼナウから更に沖合5キロの辺りに標的艦が4隻浮かんでいた、ドイツ海軍はロウリア海軍を殲滅させたことで有名になっていた為、各国武官は海辺に殺到した。

 

その様子を剣王シハンは望遠鏡で眺める

 

「あの距離から攻撃するのか? 『剣神』の魔導砲でもあの距離は届かないぞ?」

 

「あの距離は・・一旦接近してから攻撃するのかもしれませんね」

 

そんな会話を交わしていると・・

 

標的艦に向けられた主砲から爆煙が噴き出る、僅かな差で音がやってくる

 

 

ーードォォオオオオン・・・ーー

 

4隻のうち2隻が木っ端微塵に砕け散り、

もう1隻の近くにも巨大な水柱があがる

 

それを眺めていた観客達は歓声をあげる

ーードォォオオオオン・・・ーー

 

それからすぐに2発目が発射され

残り2隻が同様に木っ端微塵に砕け散る

 

 

「これは・・・あまりにも・・凄まじいな・・」

 

シハンは耳を塞ぎながら唖然とする

剣王以下フェン王国中枢も同様に唖然としていた

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

その頃、パーパルディア皇国観察軍東洋艦隊所属のワイバーンロード20騎は、フェン王国に懲罰的攻撃を加える為、首都アマノキに来ていた、軍祭には文明圏外各国の武官がいる、彼等の目の前で皇国に逆らった愚かな国の末路がどうなるかをしらしめる為に、あえてこの日に合わせて攻撃の日が決定されていた。

 

20騎のワイバーンロード(以後飛竜)は

ガハラ神国の風竜から距離を取りつつ

攻撃体制に移る、

 

「・・ガハラの民には構うな、フェン王城と・・・そうだな、あの一番デカイ船を攻撃せよ!!」

 

◇◆グナイゼナウ◆◇

見張りの2人はこちらに近づいてくる

飛竜を発見する

 

 

「・・おい、あの飛竜こっちに来てないか?」

 

「曲芸飛行でもするつもりか?」

 

 

すると向こうの方で二手に分かれた飛竜の片割れがフェン王城に向けて火炎弾を発射し、木製の城が勢いよく燃える

 

 

「お、おい!」

 

「なんだアイツら!こっちに来るぞ!!」

 

もう片割れの10騎もグナイゼナウに向かって急降下を始め、口内に火球を形成する

 

「ひいい!!」

 

「逃げろ逃げろ!」

 

艦上のドイツ兵は慌てふためき艦内へ逃げ込む

 

 

その後10発の火炎弾がグナイゼナウに命中し、甲板に火が移ってしまう

 

 

「あちっ!あちち!」

 

「消火器をよこせ!」

 

「早く火を消せッーー!!!」

 

艦内は軽くパニックを起こしていたが・・・

 

「何ィッ!あれだけ食らって無傷だとッ!?」

 

外から見てみればあれだけ火炎弾を食らって尚、傷一つなく何事も無く浮かんでいる船を見て飛竜の騎兵は戦慄していた

 

 

 

グナイゼナウ艦長のハラルトは声を張り上げる

 

「これくらいなんだ!直ちに対空戦闘用意! 蜥蜴を撃ち落とせ!」

 

兵達は直ちに対空機関砲の用意をする

 

 

そして・・・艦上の37ミリと20ミリの計13基の連装機関砲が一隻に火を噴いた、そして上空にいた20騎の飛竜が

瞬く間に殲滅された

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

軍祭が行われていた港にグナイゼナウが戻って来ると、港全体が拍手喝采に包まれる

 

通常文明圏外の国が飛竜(ワイバーンロード)を倒すのはほぼ不可能に近い、もし落とせたとしたら国として世界に誇れるレベルだ、しかしドイツはその飛竜をあたかもハエを叩き落とすかのように飛竜20騎を叩き落とした。

 

(ドイツと国交を結んで良かった!)

 

剣王シハンは心の底から安堵しながら笑いながら燃え盛る自分の城を眺めていた

 




そういえばムッソリーニはフェンシングが強かったらしいですね


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フェン王国沖海戦

フェン王国には魔法が無い、それ故に

魔力通信が使えない、その為的確な指示が素早く適切に伝えられない為連携に支障が生じる、 フェン王国がドイツと国交を結んで真っ先に輸入したのは無線機であった、本当であれば全艦に積みたいのだが金銭的な問題で主力艦数隻と通信用に決められた一隻に積まれただけであった

 

中央暦1639年9月25日 昼頃

 

フェン王国水軍基地 通信室

 

「・・未だ西側艦隊からの定時連絡が来ていません」

 

 

「先程パーパルディアの飛竜が飛んで来たのも西側からだったな・・・まさか」

 

通信室は言い知れぬ恐怖に包まれる

 

 

「これは想像、あくまで想像だが、

パーパルディアの艦隊が我が国に向かって来ているという事も考えられないか?」

 

「想像じゃねぇ!完全にパーパルディアだろ、早く上に知らせろ!」

 

◆◇◆フェン王国 アマノキ◇◆◇

 

「どうしたのかな?」

 

何やらアマノキのフェン王国兵が騒がしい、するとフェン王国の将校がグナイゼナウにやって来た、なんでもパーパルディア監察軍が攻めて来た為避難してほしいとの事だそうだ

 

「成る程、そのパーパルディア監察軍とやらは西側から攻めて来ているんですな」

 

「はい、ただ今各国武官に直ちにアマノキから離れるよう呼びかけております、貴方方も早くお逃げください」

 

「念の為お聞きしますが、先程我が艦を攻撃した飛竜も、そのパーパルディア監察軍所属のものなんですね?」

 

「ええ、その通りです」

 

「そうですか ありがとうございます、

・・・よし、総員撤収の準備をしろと報告してくれ」

 

 

アマノキの港から出て行くグナイゼナウを剣王シハンは眺めていた

 

従者はシハンに問いかける

 

「ドイツ軍の方々に支援を頼めばよろしかったのではないのですか?」

 

「戯け、ドイツとは国交こそ結んでいるが安全保障条約を結んでおらんのだ、パーパルディアと戦ってくださいなんて言える訳なかろう」

 

今回の軍祭で安全保障条約を結ぼうと思っていたシハンは溜息まじりに叱った。

 

◇◆◇◆◇◆

夕方 フェン王国 西側海域

 

そこにはグナイゼナウがパーパルディア監察軍を待ち構えているかのように佇んでいた

 

「さて、今回の騒動に全く関係のない我が国を巻き込んだ代償を払って貰おうか」

 

「しかし・・・中佐、そんな事をすればパーパルディアとの関係が危なくなるのでは・・?」

 

「何を言っている、敵艦隊を殲滅すれば報告も出来ぬだろう」

 

「は、はぁ・・」

(いや、まぁそりゃそうだけど・・)

 

 

なんとこのハラルト中佐は先の戦いでドイッチュラント級がロウリア海軍を壊滅させたのを真似しようというのだ

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

フェン王国水軍を打ち破った提督ポクトアールは、フェン王国から西に約100キロメートルの海上で東の水平線を睨んでいた

 

「?!」

 

水平線から何かが見え、彼は望遠鏡を構える、同時に見張り員が声を上げる

 

「艦影と思われるもの発見‼︎・・・不明艦発砲!?」

 

こちらに対し横向きになっている不明艦がいきなり発砲して来た

 

ーードォォオオンン・・・ーー

 

ポクトアールが乗っている戦列艦から直ぐ隣の50門級戦列艦『パオス』が突如大きな水飛沫と共に瓦礫や人肉を撒き散らして沈んで行く

 

「?!・・戦列艦『パオス』沈んでいきます!!」

 

「!?一体何処の船だ!!・・総員!戦闘配備!」

 

 

ポクトアールは急いで魔信に叫ぶが

その間にも不明艦から熾烈な砲撃がお見舞いされる

 

80門級戦列艦に被弾し、中の魔導弾に誘爆し木っ端微塵に弾け飛ぶ

 

「戦列艦『ガリアス』消滅!!」

 

見張り員が泣きそうな声で報告する

 

「あの船は一体何なのだ! フェン王国の物か?!いや、そんな訳ない・・・」

 

ふとポクトアールはアマノキを攻撃すると報告を受けてから連絡が無い飛竜隊を思い出した、情報によれば軍祭にはドイツがいるらしい、そしてそのドイツはロウリアとの戦いにおいてロウリア海軍を壊滅に追い込んだと言う、最初それを聞いた時、蛮族の戦いに一切興味を持たなかったが、もし今攻撃しているのがそのドイツだとしたら・・・

 

「嫌な予感がする・・・通信兵!この事を本国に連絡しろ!敵は恐らくドイツだと!至急・・・」

 

しかし不幸な事に通信をされることはなかった、ポクトアールの乗っていた旗艦の戦列艦が被弾し、数分と経たないうちに海の底に消えた

 

「旗艦が・・・!!」

 

「作戦は中止だ!!逃げろ!」

 

残された戦列艦は急いで引き返して行く

しかしハラルトはそれを許さなかった

 

「逃げるつもりか!まだ代償は払い切ってもらってないぞ!」

 

旋回して船の横っ腹が丸見えの『マミズ』に砲弾が叩き込まれ爆発を起こす

 

ロウリア海軍は4400隻に対し、パーパルディア監察軍はたったの22隻だ、

パーパルディア監察軍はわずか十数分で文字通り消滅した。

 

 

◇◆◇◆◇

中央暦1639年9月28日

パーパルディア皇国 第3外務局

 

局長カイオスは懲罰的攻撃を行う為フェンに向かった監察軍艦隊が突如消息を絶ったという報告を聞いて頭を悩ませていた、フェン王国水軍を一方的に撃破したという連絡を最後にそれっきりなのだ

 

「あそこの海域は当時天気は荒れていなかったし海流も穏やかだった筈だが・・・調査船を派遣するか・・・」

 

第3外務局は何が起こったのか情報収集を開始する

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

「申し訳ございませんが、本日は課長と会う事は出来ません」

 

ドイツ外交官は、約束したパーパルディア外務局課長との会議の為出向いたが、

窓口で再度足止めを受けていた

 

「何故です?約束したではないですか?」

 

(蛮族は約束も守れないのか)と腹を立てながら外交官は問う

 

「ちょっと込み入った事情が発生いたしまして、文明圏外の新興国と会議している状況ではないのです、予定は未定です。また一ヶ月以上後に連絡をください」

 

結局外交官は帰っていった

 

◇◆◇◆◇◆

 

中央暦1639年10月凸日

 

トーパ王国首都ベルンゲン 近くの港

 

そこでドイツから購入した軽榴弾砲の積み下ろしが行われていた、その軽榴弾砲の金額が書いてある紙を見ながら国王ラドスは頭を抱えて溜息をつく

 

「いくら魔王軍に備えるといえど、この様な高いものをいくつも買い付けるのは・・・」

 

ラドスはそう言いながらもいつ復活するかもわからない魔王の為にドイツから軍事顧問を頼む様に指示した

 

◆◇◆◇◆◇◆

 

第3外務局が大騒ぎしていた頃、同じく第1外務局も混乱の極みにあった

 

第二文明圏に二つ存在する列強国の一つであるレイフォルが、正体不明の国グラ・バルカス帝国に攻め滅ぼされた事にある

 

国力ではパーパルディアの方が上だが

海軍では皇国と匹敵しているレイフォルがあっという間に全滅したという報告は信じられなかった

 

しかもグラ・バルカス帝国の『グレード・アトラスター』という巨大戦艦に飛竜の波状攻撃を防がれ、艦隊を殲滅され、さらに首都レイフォリアを灰燼に帰されたという。

 

その話を聞いた直後、第1外務局局長エルトの脳裏を嫌な予感がよぎった、第3外務局所属の監察軍がフェン王国に懲罰的攻撃に向かっていた途中で消息を絶った話を聞いている

 

もし消息を絶った理由が事故などではなく、グラ・バスカル帝国と交戦した結果だとしたら・・・

 

エルトは身震いし、外務局職員に叫ぶ様な声で指示する

 

「グラ・バルカス帝国についてとにかく情報を集めなさい‼︎ 外務局だけでなく、情報局、国家戦略局、軍、全ての機関の垣根を越えて調査に当たるのです‼︎」

 




なんか外交シーンは書く気が湧かないなぁ、早くグラ・バスカル帝都に爆撃して 攻防戦を展開したい

アハトアハトやマルダー2でグ帝戦車をブチ抜きたい


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パーパルディアの使者

この前ガンプラ一番くじでコアファイターがでました、コップが欲しかったなぁと思いました。


◇◆◇◆◇

ドイツ占領地 ジン・ハーク

ロウリア総督府

 

 

あのハーク城も今ではドイツ国旗の垂れ幕が掲げられており、ドイツ兵が街を睨んでいた、その中を一台の馬車が総督府に向けて走ってくる。

 

乗っていたのはパーパルディア皇国の使者のカルカだ、彼は皇帝ルディアスの命令通り、ロウリアに代わりロデニウス大陸の実質的な覇者になったドイツに対して、いつもの如く領土を献上し、代わりに技術供与をし、パーパルディア同盟国という箔がつくという素晴らしい提案を持ってきていた。

 

文明圏外国の占領地と聞き、カルカは旧クーズ王国の荒れ具合を想像しながら入国したが、どうも様子がおかしい。

 

街は四角い壁の様な建物が並び、

ムーで見た大型の自動車が街を行き交っていた、その中を避ける様に走る馬車は、余りにも時代遅れの様に見えただろう。

 

◇◆◇◆◇◆

ロウリア総督府

総督シューリッヒ

 

「これはこれは、世界の中でも指折りの列強国であるパーパルディアがわざわざこんな所まで、ご苦労様です」

 

シューリッヒはそう言い労うが、どうもその顔には余裕が見える、普通なら列強のパーパルディア皇国が来たのなら顔は緊張で固まるはずだろう。

しかもパーパルディアと『皇国』を抜かされた為、カルカは顔を濁らす。

 

「・・それでは本題に移るが、我々の皇帝ルディアス様は貴国に大いなる興味を示した、これは大いに光栄な事なのだぞ、それでルディアス様は貴国の領土、

北西部の森林地帯を割譲する代わりに、

我が皇国の文明を文明圏外国の貴国に分け与えてくれるという考えをなさっているわけだ」

 

そのことを聞いたシューリッヒは眉を少し動かしながら、悩む様なそぶりを見せた後、カルカに向かいこう言った。

 

「残念ながらその提案は了承出来ないですね、第1それを行なったとして我が国に何のメリットがあるというのですか?」

 

「・・・なんと、貴国が譲渡すれば我が国の文明が入るだけでなく、パーパルディア皇国の同盟国という箔もつくのだ、

その様なこともわからんのか?」

 

カルカは上から目線で物事を言うが、シューリッヒの答えは変わらなかった。

 

「成る程、確かにそれを聞けば魅力的な提案なのでしょう、しかし我が国の考えは変わりません、貴国の提案は了承出来ませんね」

 

一貫して反発する姿勢をとるドイツに

カルカは若干苛立ちを隠せないでいた。

 

「愚かな・・・、ルディアス様のありがたい考えを理解出来ぬとはな・・・」

 

カルカはそう言うがシューリッヒは気にも留めない様子で、カルカに話しかける。

 

「我々の様な総督府ではなく、直接本国へ向かわれては?本国ならまた別な回答が返ってくるかもしれませんよ」

 

「ふん、文明圏外国の首都など程度が知れとるわ、私はこの事をルディアス様に報告するが、貴国はルディアス様がまだ慈悲深い事を祈っておくのだな!」

 

そう言うとカルカは勢いよく席を立ち、出て言ってしまった。

 

「やれやれ、使者とはいえ列強とはこんなものか・・・、どちらが上なのか判断できないとはね・・」

 

◆◇◆◇◆

 

 

ジン・ハークの街は変わっていた、

周りを取り囲っていた壁は、今まさに工兵たちによって爆破解体がなされている真っ最中である、その現場をカルカは偶然馬車の中から見ていた。

 

「しかしカルカ様、ジン・ハークの街はかなり変わりましたね」

 

「そうか、お前は何回かロウリアに来ていたのであったな」

 

「はい、前来た時よりも建物が新しくなってますね、それもデザインが全然違いますね、前よりも洗練されている気がします。」

 

ジン・ハークは今、建築家であるアルベルト・シュペーアのデザインによる都市改造が行われていた。

 

「カルカ様、城壁で何かしてますね」

 

「なんだ? 壁を壊すのか、あの大きさだとかなりの時間がかかるだろうな」

 

その時

 

 

ドゴゴゴゴゴ!!!

 

いきなり壁が爆発を起こし、土壁の様に崩れていく。

 

「お、おお、お?! 爆破解体か?!」

 

「爆破解体なんて、ムーかミリシアルぐらいしか実用化されてないですよ・・・」

 

爆破解体という、高度な技術を用いた解体方法は、未だパーパルディアには難しいものであったのだ。

 

 

カルカは冷や汗をかいていた、うすうす来た時から気付いていたが、皇国のプライドもあり、それを認めなかった。

しかし、高度な爆破解体や建築、そして街を走っている自動車を見て、ドイツの技術力はミリシアルよりは下でも、ムーと同等のレベルに達しているのではないかと、考えていた。

 

 

 



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ムーとの接触

基本的にドイツとか兵器とか本やウィキで調べますが、組織との対立や、人物の性格とか詳しい事はあまり詳しく書けないのでそこら辺の理解お願いします。


中央暦1639年10月1○日

 

ドイツ国 ベルリン

 

総統官邸

 

「・・・という事があったそうです」

 

この前、パーパルディアの使者が来たことについてを総統に報告していた。

 

「ロウリアに続きパーパルディアもか・・・、この世界の国は皆こうなのか?」

 

「・・・しかし一概には言え無いようです、先日アルタラス王国経由でムーという国とコンタクトを取りましたが、相手は比較的温和な雰囲気だった様です」

 

「そうか、一安心といった所だな・・・、それと 、もし我が国とパーパルディアが戦争になったらどうなるか、国家保安部から報告はあるか?」

 

「はい、第六局によれば、我が艦隊とパーパルディア艦隊が交戦するとなれば、

我が艦の砲で一方的に殲滅出来るとの情報が入っております」

 

「まぁ当然だろうな」

 

「そして、パーパルディアの首都である、皇都エストシラントは海沿いにありますので艦砲射撃によって壊滅させる事も可能ですが、首都壊滅による混乱を考えますと、空軍の支援を受け、上陸からの占領が一番だと考えております」

 

「国防については問題なし・・・か、グラ・バルガス帝国とかいう国についてはどうなっている?」

 

「総統閣下、レイフォルへ向かわせた諜報員が持ち帰った資料によれば、グラ・バルカス帝国は第八帝国と名乗っており、現在は先ほど行ったムーを含む第二文明圏全体に対して、宣戦布告しているとのことです。」

 

「第八帝国・・か、面白いじゃないか、

現在は艦船の増産を行なっているが、

彼の国と戦争になったとして勝てる見込みはあるのか?」

 

「ハッ、第六局によりますとグレード・アトラスターといわれる巨大戦艦、そして多数の空母を保有しているため、現在の状態では厳しいですが、Z計画が完遂すればグ帝の艦隊は物の数ではないでしょう。

陸上戦の方も先日諜報員が撮ってきたグ帝兵士の銃器や、戦車を見るに我が軍の方が優勢であるという分析になりました」

 

「うむ、よろしい、そのグラ・バルカスとかいう国には目を離すな、いいな!」

 

 

「ハッ!ハイルヒトラーッ!!」

 

◇◆◇◆◇◆◇

中央暦1639年10月6日

ムー 港湾都市マイカル

 

晴天

雲はまばらに浮かんでいるだけで、視界は極めて良好。

 

ドイツ外交官を乗せた船は艦尾につけたハーケンクロイツの旗をはためかせ、悠々と進んでいる、ムーとはアルタラス王国経由で連絡を取っていたので、途中からムー海軍が護衛に加わってきた。

 

「ほぅ、あれがムーの軍艦か」

 

「かなり古い型の様ですな、まるで欧州大戦の軍艦みたいだ」

 

外交官達はのんびりとムーの軍艦を眺めていた。

 

◇◆◇◆◇

(護衛という形でムーの軍艦を見せる事で、列強であるムーの隔絶した技術の差を痛感するだろう)

 

港湾都市マイカルでドイツ船を待っていたマイラスは、そのように考えていた、

すると、遠くから軍艦に護衛されながら入港する船が見えた。

 

「あれか・・・」

 

どうやらドイツも機械による動力船を持っているようだ、その間もドイツ船はタグボートに曳かれて接岸し、ドイツ外交官達が降りてくる。

 

「初めまして。会議までの1週間、ムーをご紹介させていただきます、マイラスと申します」

 

「ドイツ国外務省のロータルです、今回ムー国をご紹介頂けるとの事で、大変嬉しく思います。こちらは補佐のラウスです」

 

文明圏外の国と聞いていたが、落ち着いた態度であったので、マイラスは少しだけ安堵する。

 

「それでは、長旅でお疲れでしょうから、本格的に案内をするのは明日からとします。本日はこのマイカル港を案内した後、首都内のホテルへご案内致します」

 

マイラスはマイカル港に停泊中のムー海軍の新型戦艦「ラ・カサミ」の所へ使者を連れて行く。

 

列強1、2位を争う軍事力を誇るムーの勇姿を、ドイツに見せつけなければならない・・・。

 

しかしマイラスはロウリア王国で魔写された、ドイツの戦艦(実は重巡のドイッチュラント級、ポケット[戦艦]なので、ある意味間違ってはいない)を思い出す。

 

「ラ・カサミ」よりも巨大な船体に、

主砲に30㎝口径相当の3連装が2基、計6門、まともに撃ち合えば、こちらが被害を被るだろう。

 

少々の不安を抱えながらも、2人を「ラ・カサミ」の前に案内する。

 

「これが我がムーの誇る最新艦の「ラ・カサミ」です」

 

目の前に浮かぶ3、40年前程度の戦艦に

外交官は言葉に詰まる。

 

(これはまるで、欧州大戦の戦艦そのものではないか・・・)

 

(列強1、2を争う国の戦艦がこの程度とは・・・、我が国の脅威にもならんな・・)

 

「貴国も中々立派な戦艦をお持ちなようで」

 

「いやぁ、さすが列強ムー国といった所でしょうか」

 

2人は笑うが、マイラスはどうも嘘臭く感じていた、実際そうだった。

 

その後2人はムーの用意した自動車に乗り、ホテルへ向かったのであった。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆翌日

 

 

ムー歴史資料館で、ムーは別次元の可能性は高いが同じ地球から転移してきたという衝撃の事実が判明した後、マイラスは2人を連れて、アイナンク空港へ向かった。

 

◇◆◇◆◇

アイナンク空港

 

ここの格納庫には、全体が白く、青いストライプの模様が入った固定脚の複葉機が用意されていた。

 

「おぉ、いい飛行機だな、素晴らしい」

 

(複葉機か・・・)

ロータルは飛行機マニアな為、目の前の複葉機のスポーティな配色に些か興奮気味であったが、補佐のラウスは明らかに旧式の飛行機にムーの技術は大したことないと判断していた。

 

その後の話によると、ドイツはムーよりも強力なエンジン、武装を積んだ航空機を保有していることが判明する、プライドをズタズタにされたマイラスは、なんとしてもドイツの技術を得ようと決意する。

 

その後はグラ・バルカス帝国の脅威が存在する状況下に友好的で進んだ技術を保有するドイツを拒否する理由もなく、その後国交樹立を果たしたという。

 



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激震!アルタラス対パーパルディア

アルタラス王国

王都ル・ブリアス

アテノール城

 

「これは・・・正気か?」

 

アルタラス王国国王のターラ14世はパーパルディアから送られてきた要請文を読んで頭を抱えていた。

 

内容は

 

○アルタラス王国は魔石採掘場・シルウ トラス鉱山を皇国に献上せよ。

 

○アルタラス王国王女ルミエスを、奴隷

として皇国へ差し出せ。

 

という、とんでもないことが書かれていた。

 

シルウトラス鉱山は、王国最大の魔石採掘場であり、王女の奴隷化は王国を怒らせる為だけに記述されているとしか思えない、これでは戦争しましょうと言っている様なものだ。

 

(何故だ・・・今まで表面上は友好的に接していたはずなのに・・やはり皇帝は野心を抱いていたという事か・・)

 

ターラ14世は、外交官と共にパーパルディア皇国第3外務局管轄である、アルタラス出張所に出向き、真意を確かめる事にした。

 

◆◇◆◇◆◇◆

 

アルタラス出張所は、王国の建物とは異なり、優雅かつ繊細なこだわった建物だ。

 

「待っていたぞ!ターラ14世!」

 

大使室の扉を開けると、第3外務局所属のアルタラス担当大使カストが、そのぶくぶくに太った体を椅子に埋め、短い足を得意げに組んでいた。

 

一方の王は立ったままであり、椅子の1つもない、というより事前に撤去された様だ。

 

(なんと無礼な・・・)

 

外交官は、無礼には無礼をと、挨拶抜きに話を始める。

 

「あの文書の真意を伺いに参りました」

 

「内容の通りだが?」

 

と、カストはわざとらしく両手を上げ挑発する。

 

その後、鉱山や娘のことを聞いてもろくな答えが返って来ず、娘の事については、

 

「ルミエスは中々の上玉だろう?俺が味見する為だ、飽きたら淫所に売り払うがな」

 

といった有様だ、これにはターラ14世は大激怒、「国交を断絶する」といった趣旨の紙をカストに渡し、皇国に突っ返した。

 

◆◇◆◇◆◇

中央暦1639年11月18日

 

パーパルディア皇国はアルタラス王国に宣戦布告をした。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆

この事はアルタラス王国にあるドイツ大使館から本国へ伝わった、ドイツはアルタラス国内にいるドイツ国民を保護する名目でドイツ軍を向かわせた。

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

アルタラス王国

北側沿岸地域

 

上空ではワイバーンロードが、上空を悠々と飛び回っている。

 

念入りに草木を覆い被せ、偽装した火点にいる王国兵が、それを見て忌々しそうに呟く。

 

「畜生・・・いい気になりやがって・・」

 

海軍からの定期連絡は来ない、戦列艦数隻にはドイツから輸入した大砲を装備しており、最後に来た魔信によれば2隻を撃沈、3隻を大破、1隻を小破にしたという。

 

しかし勢いは止まらず、既に水平線いっぱいに揚陸艦が見えている、そして既に小型のボート凡そ100艘が、橋頭堡を作るべく向かっている。

 

「まだだ・・・まだ撃つなよ・・・」

 

隊長は兵士が勝手に撃たないように落ち着かせる。

 

皇国兵は機関銃に狙われているとも知らずに、まるで湖畔でボートを漕いでいるかの様に呑気に上陸して来た。

 

「・・・まるでピクニックだな」

 

 

そして皇国兵の揚陸部隊の大半が上陸し、警戒もせず荷物を降ろしている、

その後、皇国兵は散開し前進を始める。

 

隊長は上空に向けて信号弾を放つ。

 

ヒュ〜〜 シュ! ボゥ・・・

 

空に閃光を放つ弾が上げられた。

 

「・・撃てェ!!

 

 

「待ってましたァ!」

 

「かかったなァ!アホがァ!」

 

合図と同時に王国兵士は、機関銃で皇国兵に向かって撃ちまくる、今まで見たこともない弾の嵐に、油断していた皇国兵は成すすべなくやられていく。

 

「げぇ?!」

 

「ぶっ!?」

 

「る"っ!?」

 

 

余りに突然の出来事に、最期の言葉もまともに喋れず死んでゆく。

 

「あそこだ!撃て!撃てー!!」

 

丘の一部が光っているのを見て、皇国側の兵士はマスケット銃で応戦するが、

まともな勝負になる訳がない。

 

「テェーー!」

 

岸壁をくりぬいた砲台から放たれた砲弾は、遠くで待機しているリントヴルムや小型魔導砲、陸軍兵士を積んだ揚陸艦に命中する。

 

「う、うわぁぁ」

 

「助けて! 神様!あ、ぁぁぁぁ」

 

「ぎゃあああああ!!」

 

リントヴルムの耳を塞ぎたくなるほどの叫び声と共に全てが海中へ引きずりこまれていく。

 

その後も王国軍は手を緩めること無く、皇国兵士に攻撃を続けた。

 

◇◆◇◆◇◆

夕方

 

夕陽の色なのか、兵士の血の色なのかわからないほど真っ赤になった海にあったのは、穴だらけになったボートと力無く浮く沢山の皇国兵の亡骸だった。

 

上陸して来たパーパルディア皇国兵約1000人全てが全滅したのであった。

 

 




ルディアスとレミールって挿絵見ると肌クッソ白いよね。

??「美白っていうレベルじゃねぇぞ」


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第二次アルタラス王国上陸作戦

「なに!?上陸部隊が全滅だと?!」

 

報告を受けたパーパルディア皇国アルタラス侵攻軍の将軍シウスは、驚きの声を上げる。

 

 

「・・・はい、後方で待機していたリントヴルムを積んだ揚陸艦も数隻程撃沈されました様です・・」

 

報告しに来た将校も、信じられないという顔だった。

 

 

「・・よし、わかった、こうなれば反抗する奴らを根絶やしにするまでだ。

明朝、我が皇国艦隊による艦砲射撃の後に、再度部隊を上陸させろ、奴らも我が艦隊の砲撃を食らっては無事では済まないだろう。」

 

 

「はっ!」

 

 

◆◇◆◇◆◇◆

翌朝

 

ドーーーン!!

 

ドーーーーン!!

 

ドーーーン!!

 

 

王国兵士は塹壕の中に身を潜めていた。

 

早朝からいきなり艦砲射撃ときたものだ、どうやら皇国軍は意地でもここから上陸したいらしい。

 

 

もうかれこれ30分は経っただろうか?

 

皇国軍はまたボートを出してこちらに向かって来た、しかしまだ皇国艦隊は砲撃を続けている、砲撃の中に向かってくるとは見上げた根性である。

 

しかし、こちらもやられっぱなしでは寝覚めが悪い、ドイツに頼んで作ってもらった我々沿岸防衛隊の虎の子であるコンクリート製のトーチカの15㎝砲を艦砲射撃を行なっている100門戦列艦に向けて撃った。

 

 

◆◇◆◇◆◇

アルタラス侵攻艦隊の砲艦の内、50隻が艦砲射撃を行なっている。

 

「そろそろアルタラスの奴らが死に絶えた頃かな?」

 

100門戦列艦「クスモズ」艦長ムパス

は、望遠鏡を覗きながら呟いた。

 

「沿岸から発砲!!」

 

「大丈夫だ、ただの虚仮威しだ。」

 

見張りは叫ぶが、沿岸から2キロも離れており、ムパスと幹部連中は特に慌てる様子もなかった。

 

しかし・・・

 

ギュルルルルル!!!

 

ドォーーーン!!!

 

凄まじい揺れがクスモグを襲い、直後に内部から爆発が起こる、ムパスはなにが起こったのか理解する暇も無く消し飛んだ。

 

クスモグの轟沈に、他の船員は慌てる。

 

「馬鹿な!2キロも離れているのだぞ!」

 

「奴らがそんな高性能な砲を持っているわけが・・・!」

 

皇国の戦列艦の射程は2キロ先に「届く」というだけで、しっかり当たるわけではない、あくまで「届く」のだ。

しかし、先程放った15㎝砲の最大射程は22,000mである、これでは最初から勝負にならない。

 

 

15㎝砲は着実に戦列艦を屠っていくが、皇国兵の幾らかは上陸して来ている、王国軍側も艦砲射撃で少なくない被害を受けており、いくつもの火点が撃破されていた、そこを突いていくつかの皇国部隊は防衛線を突破した。

 

◇◆◇◆◇◆

 

「これ以上奴らに祖国の土を踏ますな!」

 

王国兵はドイツから供与されたgew98を構えて、木の陰や蛸壷壕に潜り、皇国兵

と激しい銃撃戦を繰り広げていた。

 

見てくれは激しかったが、

完全に皇国側が不利だった、

皇国側はマスケット銃で1発撃つごとにいちいち前から弾を込めなくてはならないし、ライフリングが無く、何より集団で撃つものなので命中率が悪い。

 

射程も装填速度も桁違い、そもそもgew98とマスケットでは300年もの技術格差があるのだ、勝てるわけがないのである。

 

弾を込めている間にもバカスカ撃ってくる王国兵に、皇国兵の士気はみるみるうちに下がって行く、後退しようにも

アルタラス王国沿岸防衛隊が、侵入して来た穴を塞いでしまった。

 

そもそも無理して進んだ時点で詰んでいたのだ。

 

暫くは何とか抵抗していたが、上陸した皇国部隊は全滅した。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

その日の戦いはパーパルディア皇国軍上陸軍2400人 砲艦26隻 が海中に消え、

アルタラス王国軍も、300名が犠牲となった。

 

しかしパーパルディア皇国皇帝のルディアスは、この結果に怒り狂い、何としてでもアルタラス王国を滅ぼせと殲滅戦を宣言した。



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夜襲

短編が続くタイプ


シウスは司令室で頭を抱えていた。

 

 

当初の予定であれば、被害無しで上陸後、ルバイル平野でリントヴルムを使い、アルタラス王国軍を殲滅、予定では3日乃至4日でアルタラス王国を陥とす事が出来ると言われていた。

 

しかし蓋を開けたら如何であろうか。

 

陸戦隊は3400人が犠牲になり、砲艦も26隻が沈められた。パーパルディア皇国軍が文明圏外国に、ここまでこっ酷くやられるとは誰が思おうか。

 

その時、

 

「シウス司令、本国より通信が入りました」

 

「そうか、直ぐ代わる」

 

 

◇◆◇◆◇

 

「もしもし、こちらアルタラス侵攻軍司令のシウスだ。」

 

「私だ、」

 

通信機からの声に、シウスは硬直する。

 

「!・・・、我が栄えあるパーパルディア皇国軍の最高司令官にあらせられるアルデ最高司令官・・・」

 

 

「御託はいい、いつになったらアルタラスは陥せる?皇帝陛下がお待ちになっておるのだぞ」

 

 

「はい・・・必ずや・・・、必ず5日、いや、3日後には・・・」

 

 

「また通信を入れる、努力しなさい」

 

 

「はい・・最高司令官・・・」

 

 

通信を切った後、あまりのストレスに

胸を押さえて倒れこむ。

 

「大変だ!シウス司令が!」

 

 

シウスは幸い一命をとりとめたが、この事により、シウスは手段を選ばなくなって行く。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

アルタラス王国 アテノール城

 

アルタラス国王のターラ14世は、パーパルディア軍との戦闘の報告書を見ていた。

 

「まさか、列強の攻撃を二度も水際で防ぐとは・・」

 

 

ターラ14世はにわかに信じられない気持ちに囚われていた、確かに1度目は完全に油断してただろう、しかし2度目は完全に本気だった、それさえも撃退したのだ。

 

当初、ドイツの武器を輸入したくとも金が足らず、ドイツとの約束で代わりに魔石鉱山の情報や、小規模でいいので鉱山の一部を渡して欲しいという要求がなされた。

 

勿論この事には反発の声が上がったが、

 

「亡国の危機だ、やむを得ん」

 

この王の一言で決まったのであった。

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

ドイツ陸軍兵器局

 

そこでは先日制定された、「新世界供給技術法」で定められた、

[ドイツの脅威にはならないが、その他の文明圏外国や、パーパルディアレベルの国には脅威となる兵器を供給する]

 

という物であり、クワ・トイネ公国に向け、鋼鉄製の戦列艦や、溶接で作ったA7Vの様な戦車などが作られていた。

 

◆◇◆◇◆◇◆

 

アルタラス王国 北側海岸

 

日も暮れた頃、複雑に入り組んだ入江から、一隻の小型艦が現れる、このSボートもドイツから購入したものだ。

 

「この船は素晴らしいな」

 

Sボートの船長であるサクジョーは

40ノットで爆走する船上で呟く。

 

「船長、そろそろ敵艦がいる海域に突入します」

 

「よし、速度そのまま、敵艦隊に突っ込むぞ」

 

Sボートは、パーパルディア艦隊へ向かっていった。

 

 

◆◇◆◇◆◇

パーパルディア艦隊

 

竜母を戦列艦が守る形で、沖の方で待機している。

夜ということや流石にここまで攻撃してくる敵はいないだろうと、見張りも緩んでいる。

 

そんな中、1人の見張りが目を凝らす。

 

「・・・なんか 、聞こえる・・・なんだ?」

 

すると、いきなり暗闇から連続した爆音が鳴り響く。

 

突如、木製の船体がズタズタになり、

見張りの上半身が吹き飛ぶ。

 

 

「なんだ!何が起こった?!」

 

他の見張りがなんだなんだと騒ぎ始める。

 

船の下の方で何かが高速で進んでいるが、

どうすることもできず見るだけしか出来ない。

 

 

「船長!奴ら棒立ちでみてるだけです!」

 

 

「よし!そのまま竜母へ接近して魚雷を発射!」

 

 

3.5㎝機関砲は、揚陸艦や、小型の戦列艦をズタズタに引き裂き、沈めるが、

対魔弾鉄鋼式装甲を装備している戦列艦などは、弾かれることもあった。

 

しかし目標は竜母だ、暗闇で視界も悪い中、船を操り、竜母の所まで向かう。

 

「敵 竜母発見!」

 

「よし!魚雷 発射!!」

 

発射された二本の魚雷は目の前にいる、

[ミール]にまっすぐ向かっていった。

 

 

「魚雷、装填!」

 

その後も予備魚雷を、竜母に向けて発射した。

 

そして、Sボートは未だ混乱の中にあるパーパルディア艦隊から、全速力で闇に隠れる様に逃げた。

 

 



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第三次アルタラス王国上陸作戦

外ではミールだった物の瓦礫が浮かんでおり、昨夜の夜襲で兵達も疲弊していた。

 

「監察軍から援軍を!?」

 

シウスの突飛な提案に参謀は裏返った声を出す。

 

監察軍は、シウス等の所よりも装備の質も物量も違う、その為監察軍は普通の軍よりも格下な存在なのだ。

 

しかし、その格下に援軍を頼もうとしている。

 

「あぁ、しかしただ援軍を頼もうというわけではない、 監察軍がこの北側海岸を攻めている間に、我々は北西海岸から上陸する」

 

「囮というわけですか」

 

「奴らも皇軍から直々に頼まれた事に文句も言うまいて。」

 

「しかし北西海岸ですか、そこはたしかアルタラス王国軍の基地があったはずでは?」

 

「あそこまで激しい陣地を築いてるのは、おそらく北側海岸だけだと思うのだ」

 

「成る程、しかしその予想が当たりますか・・・」

 

「分からん、しかしやって見なければ分からないのも確かだ。

この作戦が失敗したなら、私は責任を取るしかないな」

 

そう言い、シウスは深く考える様に目を閉じた。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆

 

アルタラス王国 北部 沖

 

パーパルディア皇国監察軍が、アルタラス王国に向け、戦列艦25隻と陸戦隊を率いて進んでいた。

 

 

「しかし、皇軍が我々監察軍に援軍を要請するとは・・・何か裏があるのでは・・」

 

監察軍の提督チタは、腕を組み考える。

 

 

「提督、考え過ぎなのでは?ルディアス様はようやく、我々監察軍が皇軍と一緒に戦える技量をもった軍だと認めてくれたのではないでしょうか?」

 

補佐はそういうが、その皇軍というのは一向に姿を現さない。

 

「・・・ウダウダ言っていても仕方ないか・・、よし!あとアルタラスの海岸までどれくらいか」

 

「あと20分であります」

 

「よし、総員は戦闘に備えておけ」

 

「はっ!」

 

◆◇◆◇◆◇

アルタラス王国北側海岸

 

監視は沖に犇めく戦列艦を発見する

 

「また来やがった」

 

迅速に迎え撃つ準備が始まる

 

猛烈な砲撃を塹壕の中で耐え、

海からは皇国兵がボートに乗ってやって来る。

 

「テッ!」

 

戦闘と言う名の一方的な殺戮が始まった

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

アルタラス王国北西海岸

 

そこには皇国軍艦隊砲艦180隻、竜母8隻と揚陸艦60隻が、西海岸から上陸するため船を進めていた。

 

(果たしてうまくいくだろうか・・・)

 

シウスは先日はああ言ったものの、やはり不安の方が優っていた。

 

 

そして・・・

 

ドーーン!!

ドーーン!!

 

 

ドドーーーン!!!

 

 

壮絶な艦砲射撃を行なったのちに上陸を行う、皇国兵も幾らか学習したようで、

出来る限り頭を下げ、這うように進む。

 

しかしそこに王国兵はおらず、皇国兵は拍子抜けしたが、その後海岸堡を確保し、野営陣地を築いた。

 

◆◇◆◇◆◇

その頃

ーーアルタラス中部の小規模魔鉱石鉱山がある都市ダーリンエンーー

 

魔鉱石調査の為に、数十名のドイツ調査団がこのダーリンエンに派遣されていたが、アルタラスとパーパルディアの戦争が始まった為、保護という事でドイツ軍が南西の港まで避難する準備をしていた。

 

◇◆◇◆◇◆

 

装甲車が数台並んで止まっている中で、兵士は煙草を吹かしながら休んでいた。

 

「そろそろ交代か・・」

 

今度は自分が見張りの番になるので、煙草の火を消そうとしたその時、彼は空に釘付けとなった。

 

 

「・・・トカゲ? 」

 

空を飛ぶトカゲの様なものを見て、一瞬思考回路がストップしたが、飛竜につけてあった旗がパーパルディアの旗だった

ため、兵士は慌てて仲間に報告しに行った。

 

 

◆◇◆◇◆◇

ドイツ人技術者をトラックに乗せて避難し、敵の事を王国側に報告して、ドイツ軍自身も迎撃の準備にあたる。

 

「急げ!急げ!」

 

兵士たちは急いでMG35を用意する。

 

空を見上げれば、数騎の飛竜がこちらに向かって来ている。

 

「対空射撃!!」

 

 

ドイツ兵は上空の飛竜に向かって射撃を始める。

 

 

「避けろ! 攻撃だ!」

 

 

飛竜騎士は回避行動に移すが、数騎が腹を撃ち抜かれ落ちて行く。

 

 

「今はとにかく港に向かうことが先だ!行くぞ!」

 

 

ドイツ軍は急いで港へ向かう、皇国軍は直ぐ目前まで迫っていた。



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ムカネシ平野の大火

「パーパルディアの奴らが来る」

 

そう呟いた王国第1騎士団のライアルは、先程来たドイツからの報告を受け、ルバイル平野とは反対側のムカネシ平野に早急に準備を進めていた。

 

「本当にこれをお使いになるのですか?」

 

従卒は陣地に配置された巨大なバリスタ、風神の矢を見て問う。

 

もともと風神の矢は敵艦を攻撃する為に開発されたものであった為、それを陸上に配備してあるのを疑問に思ったのだ。

 

 

◇◆◇◆

 

パーパルディア皇国軍は、首都ル・ブリアスを目指して進軍していたが、途中の平野でアルタラス王国軍が待ち構えているとの報告があった為、抵抗を排除すべくリントヴルムを先頭に前進していた。

 

後方には、作戦参謀と陸戦隊長バフラムが四輪馬車に乗り、話し合っていた。

 

 

「間も無く接敵します、アルタラス王国軍は約2万、主力部隊と思われます。」

 

「2万か・・我が軍に勝算はあるのか?」

 

皇国の二回に渡る上陸作戦もアルタラス王国軍は軽々と跳ね返した、その王国軍の主力部隊と接敵しようとしているのだ。

 

バフラムはこの戦いは楽なものでは無いと考えていた。

 

 

「はっ、そこは問題ないでしょう、上陸時は銃兵隊の用意も儘なりませんでしたし、何よりリントヴルムを用意出来ませんでした。 しかし今は銃兵隊、リントヴルム共に万全の態勢です。負ける事はありません。」

 

 

作戦参謀は自信満々に言い放つが、バフラムは心の底にある不安を拭いきれなかった。

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

アルタラス王国軍本陣

 

国王ターラ14世は、目の前に並ぶ大型弩弓に装填してある風神の矢を見ていた。

 

「成る程、風神の矢を敵兵に向けて放つのか、確かに木造艦を破壊する程の威力なら兵士に対しても脅威だろうな」

 

何故そんな簡単な事を思いつかなかったのだろうか、というような目線を軍人達に向ける。

 

(元々小型の大砲を持ってない為、制圧射撃という考えが浮かばなかったのも仕方ない話だ、 因みにこのような使用方法を思い付けたのも、ドイツから得た戦術書によるものであった。)

 

 

ライアルはバツの悪そうな顔をしながらも、魔信に向かって指示を出す。

 

 

「目標、皇国侵攻軍!『風神の矢』、発射用意!放てぇ!!」

 

放たれた50発の風神の矢は、風神の涙の力を得て回転しながら2㎞先の皇国軍へまっすぐ飛んで行った。

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

バフラムは、作戦参謀と戦闘馬車の中で地図を開いて作戦を練っていると・・

 

 

ーーーシュオオオオン・・・・

 

 

突如として怪音が響き渡る、それはまるで怪物が咽び泣く様を連想させた。

 

「なんだこの音は?」

 

その、物淋しげな音にバフラムは不思議に思い、馬車から顔を出した。

 

(リントヴルムの鳴き声にしては変だな・・)

 

そう思った瞬間

 

 

ズドドドドドドーーーン!!

 

 

前方を進んでいたリントヴルムと歩兵達が凄まじい爆炎と共に木っ端微塵に吹き飛ばされる。

 

爆発の衝撃で馬車もグラグラと揺れた。

 

「おい!これは一体なんだ?!」

 

バフラムは近くにいた兵士を取っ捕まえて問いかける。

 

「わ、わかりません!アルタラスの陣地から矢のようなものが放たれたと思ったら、白い線を描くようにしてこちらに飛んできました!!」

 

 

「作戦参謀!何かこの攻撃で知っていることはないか!?」

 

 

「この攻撃は恐らく、先の海戦で王国軍が使用した兵器と見ていいでしょう、

皇国主力艦隊旗艦に10発ほど当たった様ですが無傷だったようです」

 

 

「船に当たったらどうなるとかは聞いていない! 歩兵やリントヴルムは壊滅的な被害に遭っているではないかぁ!!」

 

 

バフラムは怒鳴り散らすが、作戦参謀はこの状況から軍を回復させる為に頭を回す。

 

 

「取り敢えず生き残りのリントヴルム8体を盾にして部隊を下がらせて再編しましょう、それから・・・」

 

 

作戦参謀がこれからの予定を話していると、外が急に騒がしくなった。

 

 

「バフラム隊長!!アルタラス王国軍が突撃を開始しました!」

 

「くそっ!残りのリントヴルムを前面に押し出し、すぐ後方に銃兵隊を配置しろ! 急げ急げ!!」

 

皇国軍は混乱を極めていた。

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

「進め進めーー!! 今や皇国など我が国の敵ではない!」

 

ターラ14世は王家に伝わる宝剣を抜き放ち、前方を指し示して吼える。

 

 

ドイツから供給された装甲車(新世界供給技術法で作られた装甲車であり、旧式の乗用車のフレームに装甲板を貼り付けた代物で、武装は機銃一丁か火炎放射器一丁だけである。)は、草一本生えていないムカネシ平野を全速力で走る。

 

後ろからは騎兵隊が続き、全速力で進む。

 

 

「来るぞ!来るぞ!リントヴルム!火炎弾を放てぇ!!」

 

皇国のリントヴルム使いは慌てて指示を出すが、リントヴルムの動きよりも速く動く装甲車に狙いが定まらない。

 

 

すると、装甲車の上部に付けられている火炎放射器が火を噴く。

 

 

ドドドゥ!!

 

 

勢いよく噴き出した炎はリントヴルムと周辺の兵を呑み込む。

 

 

「あああああ!!!ああ!!」

 

「ギャアアアア!!熱いぃああ!助けて!!」

 

「ヒィギァアアアア!!!」

 

 

皇国兵は火達磨となり隣の兵へ引火していく、まさにこの世の地獄となっていた。

 

装甲車は火炎放射器を左右上下に動かして火炎を振り撒く。

 

「ギャアアアア!!!こっちにくるぅ!!」

 

「撃て撃て撃て!!!!」

 

すっかり瓦解した皇国軍の中でも勇敢にもマスケットで装甲車に銃撃する猛者もいたが、虚しく弾かれるだけだ。

 

装甲車の運転も慣れてない為か、猛スピードで皇国兵の群れに突っ込む。

 

人から人へ延焼し、文字通りの火の海となっていた。

 

「装甲騎兵隊は直ちに後退! 炎に呑まれるぞ!」

 

逆に攻め立てた王国軍も火に呑まれないために必死に逃げる始末である。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

アルタラス王国軍本陣

 

ここからでも燃え盛る皇国軍の様子が見えた。

 

「・・・こ、これは、何と酷い・・・」

 

ターラ14世は思わず侵略者であるはずの皇国兵に同情してしまう。

森林火災でも起きた様な上昇気流が起き、飛竜が飛ぶには困難を極めており、上空から確認したくとも出来ず、同時にそれは皇国軍のワイバーンロードの投入を阻止していた。

 

 

「王様!皇国軍は撤退を開始した様です、追撃に移りますか?!」

 

 

「いや、もういいだろう、周辺の部隊は状況整理! あの火災を鎮火しろ」

 

 

「はっ!」

 

 

 

ターラ14世は、焦げた様に真っ黒になった空を見上げる、

その顔は亡国の危機が、遠ざかり安堵している様にも見えた。



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砲艦外交

ニコ動に上がる動画を作っていて遅れてしまいました。手減裵露


「貴様らは一体なにをやっている!!!」

 

ルディアスの怒りを込めた叫びが、王の間に響く。

 

3度にわたって行われたアルタラス島上陸作戦、そしてその全ての作戦が失敗し、おまけに監察軍までもが全滅に近い被害を受けた。

 

派遣部隊が壊滅し、アルタラスに再度軍を送るために、本国の軍や、監察軍、属領の統治機構の兵士までもを引っ張り出して再編している。

 

 

「アルタラスに再侵攻出来るまでどれくらいかかるか?!」

 

苛立ちを込めた声でルディアスは、アルデに尋ねる。

 

「・・はっ、 かなり短く見積もっても2ヶ月はかかるかと・・・」

 

 

「・・良いか!必ずアルタラスを占領し 、我が皇国の顔に泥をつけた事を後悔させてやれ!わかったな?!」

 

 

「ははぁっ!」

 

 

ーーすると、1人の職員が王の間に転がり込んできた。

 

「たっ!大変でございます!!」

 

 

「騒がしいぞ!無礼な!」

 

 

「それが・・・たった今、アルタラスから講和の締結を持ちかける魔信が入ってきました!」

 

 

「何ィ・・・、文明圏外国ごときが講和など大それた事をぬかしおって!!」

 

 

「・・・いや、これは案外使えるかもしれんぞ・・・」

 

 

ルディアスは気味悪く笑いながら職員の方を見た。

 

 

「外務省に講和或いは休戦を結んで良いと伝えろ、どうせ一時的なものだからな」

 

 

どうやらルディアスは戦争を一旦中断させた後、再度軍を編成しアルタラスに攻め込もうとしているらしい。

 

 

その後、紆余曲折あってアルタラスとパーパルディア間で休戦協定が結ばれた。

 

 

◇◆◇◆◇

アルタラス王国

アテノール城

 

「あ、ありえん・・・パーパルディアが

・・自分で言うのも何だが文明圏外国と休戦協定を結ぶなど・・・」

 

ターラ14世は執務室で呟いていた。

それを聞き、大臣などの重鎮は口を揃えて喋る。

 

「しかし、奴らは直ぐに軍備を整えてまた攻めてくるでしょう」

 

「奴らは再び王国に攻めるために、休戦しただけに過ぎません、我等も早急に軍備の増強を・・・」

 

「解っておる、その為ドイツにも兵器を供与してくれぬか打診しているところだ。」

 

アルタラス王国は再び訪れるであろう脅威に備えて、奔走の日々を過ごす事となる。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆

 

パーパルディア

皇都エストシラント

 

 

第三文明圏1の国力を誇り、列強に名を列ねる国の首都は、今大混乱の真っ只中にあった。

 

沖に今まで見たこともない巨大な戦艦がやって来たのだから。

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

ドイツは、パーパルディアに対してこれまで通りの対話での解決ではなく、力での解決にシフトチェンジした。

 

詰まる所砲艦外交だ。

 

◇◆◇◆◇

 

「グ!グラ・バルカスだ!あいつらがここまで来やがったんだ!!」

 

香辛料を売りに来ていた男性はとてつもない大声を上げると、そのまま気絶してしまう。

 

人々は恐れおののき、その騒ぎに驚いたのか馬や牛が暴れ負傷者が出る。

 

この事は早急に第一外務局局長のエルト

に伝えられた。

 

「そ・・そんな・・グラ・バルカスが・・?!」

 

国力はともかく、質においては同等であったレイフォルを単艦で滅ぼしたあのグラ・バルカスがやって来るとは・・・

 

「し、しかしなぜ第三文明圏に?!彼らは第二文明圏のレイフォルを陥したら、次に当たるのは中央世界のはず・・・!」

 

 

すると、また役員から報告が上がる。

 

「大変です!ドイツです!!あ、あの戦艦は・・ドイツのものです ぅ〜〜!!!!」

 

「なっ!なんですってぇ!!」

 

エルトは飛び上がらんばかりに驚く。

 

「ドイツといえば外3(第3外務局)が対応していた筈です!」

 

 

エルトは急いで外3に向かう、ドイツはロデニウス大陸のほぼ全土を掌握した国として外1でもある程度認知されていた、しかしそこはパーパルディア、

文明圏外の話だった為、大した武器は持ってないと思っていたのだ。

 

◇◆◇◆◇

 

第3外務局

そこでは皆蜂の巣を引っ叩いた様な騒ぎを起こしていた。

 

エルトは近くにいた職員を捕まえる。

 

「カイオスは今どこにいますか!」

 

「エッ!エルト様! 局長は執務室におります!」

 

 

エルトは執務室に入る。

 

そこには魔信の対応で必死になっているカイオスがいた。

 

「エルト様!どうなされました!?」

 

「どうもこうもありますか!!ドイツは貴方の所が対応していた筈ですよ!」

 

「い、いえそれが・・・」

 

「それがなんです?!」

 

「それが・・課長が出張でして・・・その、予定が合いませんで・・えっと、そのなんといいますか・・・」

 

「はっきり言いなさい!!」

 

「窓口側の認識が・・文明圏外の国でしたので・・その、 門前払いに・・・」

 

近くでライタという職員がぐったりと倒れていた。

(髪は真っ白に染まっている)

 

「・・そ、そんな!」

 

エルトは絶句する。

 

もしドイツが門前払いにされた事で怒り、皇都を焼きはらおうとしていたら・・・そう想像するだけでも背筋が凍る。

 

「そしてドイツはなんと言っているのですか・・・」

 

 

「いえ、ドイツはこれまで通り国交の樹立と・・、フェン軍祭時においての皇国軍による攻撃で受けた被害の損害賠償と、アルタラス戦時のドイツ人保護の際に受けた被害の損害賠償を求めております」

 

「・・そうですか」

 

「エルト様、いくらなんでもこの件は第3外務局には重すぎます、第1外務局で対応すべき案件かと」

 

「そうですね、それに早急に皇帝陛下に伝えなければなりません」

 

 

・・そして、この事は即座に皇帝に報告されてドイツに対しての外交権は第1外務局へ譲渡された。

 

◇◆◇◆◇

 

「して、ドイツというのはそんなにすごい国なのか?所詮文明圏外の国なのだろう?」

 

第1外務局に出向したパーパルディア皇国皇族の皇女レミールはドイツとの外交を担当する事となったが、未だにレミールはドイツを文明圏外の蛮国という認識だった。

 

エルトは早急にドイツに対しての認識を改めてもらう様に必死で話す。

 

 

「お言葉ですがレミール様、ドイツはレイフォルを滅ぼしたグラ・バルカス帝国と同等の国力を持っていると思われる国です・・」

 

「ふん、第1外務局の局長でもあろうお前がそこまで引け腰とはな、所詮は蛮族だ大した事はない。」

 

そのままレミールは、ドイツの外交官がいる部屋へ入る。

 

◇◆◇◆

 

(・・・まだなのか?)

 

外交官のティルは腕時計をこっそり見ながら思う、部屋に通されて既に30分は経っているだろう。

 

すると、扉が開き全く悪びれた様子も無く、寧ろ堂々とした様子で1人の若い女性が入って来た、そしてその後ろからは

数人のお偉方と思われる数人が若干青ざめた顔で付いてきた。

 

ティルの目の前に置かれた長椅子に全員が座ると、若い女性の隣の四十路半ばと思われる女性が話を切り出して来た。

 

「では自己紹介を・・」

 

「・・・はぁ、分かりました」

 

 

ティルは立ち上がり自己紹介をする

 

「ドイツ国外務省職員のティルと申します。以後お見知り置きを」

 

「どうぞかけてください」

 

 

その後皇国側の自己紹介が終わると、いきなり真ん中のレミールが話を切り出す。

 

「お前がドイツ国の使者か、お前の国は最近有名のようだがな。 ・・・私は長話は好きじゃないのでな、お前は我が皇国に対してどんな用事で来た?」

 

 

「は、先程申した通り我が国と貴国間の国交樹立、そしてフェン軍祭時においての皇国軍による攻撃で受けた被害の損害賠償と、アルタラス戦時のドイツ人保護の際に受けた被害の損害賠償を貴国に求めます」

 

 

それを聞いたレミールは立ち上がり、怒りを隠す様子も無く喋る。

 

「なにぃ! 監察軍を攻撃しておいて自分達は被害者面するというのか?!」

 

 

「何の通達も無しに攻撃して来たのはそちらでしょう、我々は火の粉を振り払っただけです」

 

 

「・・・!! キサマ!監察軍を火の粉呼ばわりするとは・・・!」

 

 

「レミール様、ここは私が・・」

 

怒りに震えるレミールを落ち着かせながら、エルトが話し始める。

 

「成る程、 ・・・しかし私はもちろんのこと、パーパルディア皇国で貴方の国の事をよく知りません、まずは貴方の国が

どの様な国なのか教えていただきたい。」

 

出来る限り冷静を装いながらエルトは続ける。

 

 

「簡単な資料を用意しました、写真付きです、きちんと大陸共通語ですのでご安心を」

 

(・・蛮族だが変な所できちんとしてるな)

 

レミールは資料に目を通す。

 

(・・・)

 

紙にはカラーで撮られた色とりどりの写真が貼られていた。

その写真には 量産されズラリと並ぶ自動車 、山間部に一直線に伸びるアウトバーン、そしてベルリンの官庁街。

 

その写真に写るどれもが、皇国よりも超越した技術をもっていることを物語る。

 

しかしレミールはこの写真を見るなり、

鼻で笑い。

 

「はっ、なんだと思えばどれもこれも

ムーの写真ではないか、貴様らには恥というのはないのか?ん?」

 

レミールがそう言い放ったのを見てエルトは心臓が跳ね上がるほど驚いた。

 

確かに車や街の様子はムーのそれと似ているだろう、しかし実際のムーの写真と見比べれば車のデザインや建物の様式が異なっている事がわかる。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

ドイツ側の外交官もまさかの反応に驚きを隠せないようだ。

 

「・・・は、 え、は?」

 

「だからこの写真はムーを写した写真であろう、貴様の国はムーの写真を恰も自国の事の様に言いふらしているのか?

ペテンもいいところだな」

 

 

「・・・・」

 

ドイツの外交官は鳩が豆鉄砲を食ったような顔をした後、何か考え込む様な仕草をした。

 

「わかりました・・・その様でしたら、

我が国から使節団を派遣したいのですが宜しいでしょうか」

 

 

それを聞いたレミールはドイツはムーの写真を使っている事を認めたという勘違いをした。

 

「良いだろう、使節団の派遣を許可する。我が皇国の強大さを身をもって体感すると良い」

 

 

レミールは自信たっぷりにそう言い放つと、高らかに笑いながら部屋から出て行った。

 

◇◆◇◆◇◆

 

シャルンホルストで十分なインパクトを与えたと思っていた首脳部は、レミールの反応にただただ驚かされた。

 

ドイツは皇国に使節団を派遣する事となったのであった

 

 



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映像

旧ロウリア王国領飛行場

 

飛行場といっても翼竜が飛べる程度の荒地だが、そこに皇国に向かう使節団が集まっていた。

 

「まだあったんだ・・」

 

 

ティルは目の前にある巨大な物体、

飛行船を見ての一言だった。

 

そこにあったのはグラーフツェッペリン号、聞くところによればこの飛行を最後に解体されるそうで、最後の国への奉仕というわけだ。

 

使節団を乗せたグラーフツェペリン号は悠々とパーパルディア皇国に向かう。

◇◆◇◆◇

 

パーパルディア皇国はドイツ使節団が空からやって来るということを聞き、

着陸場所を皇都陸軍基地に指定した、

軍事力の差を目の前で見せてやろうという魂胆なのだろう。

 

 

竜騎士達も皆、「外交官がワイバーンに乗って来るのか、なんて現場主義な国なんだ(笑)」と思っていたに違いない。

 

 

そしてワイバーンロード三騎が、お出迎えと言う名の圧力をかける為にドイツが来るという方向で待っていた。

 

 

「ドイツの使節団はまだですかね?」

 

 

「さぁな、もしかしたら飛竜が力尽きて海に落ちたかもしれんぞ」

 

 

笑いながら飛んでいると、遠くから何かが飛んでくるのが見えた。

 

「・・・隊長、あれじゃないですか?」

 

「・・・なんだあれは・・」

 

 

謎の飛行物体は徐々にでかくなっていく、どうやら飛竜よりもかなり速度は遅いようだ(大凡100キロ前後)

しかしサイズが凄まじい、ざっと見て250メートルはあるだろう。

 

まさに空飛ぶ鯨、圧巻の一言に尽きる。

 

 

その飛行物体の後ろには、ドイツの国旗が描いてあった。

 

「これがドイツの物だというのかぁ?!!?」

 

あまりの大きさに竜騎士の隊長は度肝を抜かれた。

 

◇◆◇◆◇◆

 

またも皇都エストシラントは、大混乱に陥っていた、なにせ見たこともない巨大な物体が空から迫ってきているのだから。

それこそ巨大な船がやってきたとかのレベルとは違う、まさに街はこの世の終わりの様な騒ぎっぷりであった。

 

 

そしてその様子はレミールの屋敷からもバッチリ見えていた。

 

「・・なんなんだ、アレは・・・」

 

てっきりワイバーン数騎でくるものと思っていた為、レミールは完全に肝を潰した。

 

勿論レミールは飛行船を知っていた、

神聖ミリシアル帝国やムーが保有しているからだ、しかしその形は黎明期のソレであり日本人から見たら鉛筆の様に思えるだろう。

 

その二カ国を余裕で上回る巨大な飛行船は陸軍基地へ着陸した。

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

・・・ピピピッ・・・ピピピッ・・・

 

そんな時、レミールのブレスレットが鳴った為、近くの魔信を使い連絡を取る。

 

「レ、レミールだ、どうした?」

 

「・・レミール様、ドイツ使節団が先程到着した様です・・」

 

(・・・ありえない・・)

 

 

この世とかけ離れた様な乗り物でやってきた事に驚きを隠せないレミールは、

若干震える足取りで馬車に乗り込み陸軍基地へと向かう。

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

使節団が飛行場で待っていると、馬車が数台やって来た。

 

「・・やぁ、ドイツ使節団の諸君 よく来たな」

そう言いながらレミールが、馬車から出て来た。

 

その後使節団は馬車に乗せられ、皇都の様々な場所に連れていかれた。

 

 

◇◆◇◆◇

 

その日の夜 指定されたホテルにて

 

「どうでしょう、パーパルディアという国は。」

 

「まぁ、外見は悪くないですな。

しかしレミールという女のプライドがやたらと高いな。」

 

「私もそう思いました、しかし最初に出迎えた時に少しだけ飛行船を見て怯んでました、うまくいけば・・・」

 

「そう、うまく飛行船の中に招いて[アレ]を見てもらわなければ。

ドイツとの国力差を知ってもらわないと話にならん。」

 

使節団の話は続く。

 

◆◇◆◇◆

 

「なに?私がこれに乗れと?」

 

レミールは飛行船を見ながら驚きの声を上げる。

 

「何故だ?」

 

 

「レミール様は前回我々の資料を疑っておりましたよね、ですので改めて持ってきた資料をお見せしようと思っているのです。」

 

 

「ほぉ・・・今度はしっかり持ってきたんだな、しかし何故わざわざ中に入れようとする?ここに持って来れば良いではないか?」

 

「それですと、こちら側が都合の良い資料だけ持ってきたと捉えられかねないのでありのままの情報を見ていただきたいのです。」

 

「・・・・」

 

エルトは不安げな表情でこちらを見てくる。

 

 

「ふん、良いだろう 案内しろ」

 

 

そう言い、レミールは飛行船へ乗船した。

 

◆◇◆◇◆◇

 

そしてレミールはドイツが用意したフィルムを見た。

 

そこには写真と同じベルリンの街、

そしてアウトバーン、he111の生産工場からのロウリア王国へ爆撃をしている時の映像を挟んだ映像を見せた。

 

「・・・・」

 

 

その間レミールは黙り込んでいる。

 

 

その間も映写機はムーとの会談の様子を写し、ムーの飛行機よりも洗練されたデザインの飛行機、ムーよりも巨大な戦艦の映像が写される。

 

果ては第一次世界大戦の塹壕戦、ドイツ以外の旧世界の各国の大都市がこれでもかというほどに写された。

 

◇◆◇◆◇◆

 

自分が想像していたよりもドイツの国力はでかい、もしかしたらムー以上の国力を持っているかもしれない。

 

レミールは信じたくなかった、文明圏外に自国よりも進んだ文明を持っている国が存在する事を、そして恐れたこの国が皇国に向けて牙を剥くことを。

 

 

レミールは自分の手が震えている事に気付きテーブルの下にそっと隠す。

 

 

「・・・・、我が国についての紹介はこれで終了となります。 レミール殿如何でしたでしょうか?」

 

ティルは笑みを崩さずにレミールの方を見る。

 

 

当のレミールは顔が幾らか青ざめ、直ぐに言葉が出てこないようであったが、

なんとか喉から声を絞り出す。

 

 

「成る程・・・わかった、アルタラスとフェンの軍祭の事は賠償しよう、国交の件も皇帝陛下に伝えておこう・・」

 

 

◆◇◆◇◆

 

使節団は予想通りの答えを引き出せた様で、皆笑みを浮かべていた。

 

 

隣で様子を見ていたエルトも、何とかレミールがドイツについて理解してくれた様で胸をなでおろしていた。

 

 

レミール本人はというと、皇帝陛下にどの様にこの事を伝えれば良いか悩んでいた・・・




前回はあれだけバカだったレミールが、今回はやたらと聡明になっている不思議。


魔王編も書かないといけないし。


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決着①

長文かけぬ




皇都エストシラントは混乱に陥っていた。

 

ドイツの飛行船を魔帝の乗り物という商人や、所詮ドイツは文明圏外無敵皇軍恐るるに足らずと発言する貴族。

レイフォルのことを聞き、ここも攻撃されるのではないかと荷物をまとめて地方に避難をする市民で皇都は混乱を極めていた・・・・。

 

◆◇◆◇◆

 

 

「・・・レミールよ、今回のドイツの件だが・・これはどういうことだ?」

 

 

「・・・はっ、それは・・」

 

パーパルディア皇帝ルディアスは、会談時の議事録を見てレミールに問い掛ける。

 

 

「いつものお前なら、文明圏外の国相手にきちんと教育する筈なのにこれではまるで平伏外交では無いか?」

 

 

「・・・」

 

レミールは何と言おうか言葉に詰まっていた。

 

 

勿論ルディアスも何も知らないわけでは無かった、ドイツの飛行船が飛んでいてる所もしっかりと見ていたし、外交団から渡された資料も目を通していた。

 

「・・・まぁ良い、レミールが決めたのであれば私はこれ以上は詮索しない。

ただし向こう側が舐めてかかって来たら

何方が上なのかはっきりさせてやれ、わかったな?」

 

 

「はっ・・・・」

 

話が終わり、レミールが部屋から出て行くとルディアスは目を閉じて考える。

 

(栄える者はいつか必ず衰える・・・か、皇国に限ってそんな事はあり得ないと思っていたが・・歴史は繰り返されるのか・・・・)

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

その日もドイツとの会談が行われていた。

 

「という事で、資料に書いてある国とドイツは安全保障条約を結んでおります。」

 

 

「そうか・・・ 、っ!」

 

レミールが資料をパラパラとめくっていると、その国名の中にアルタラスとフェンの名前があった。

 

「現在アルタラス王国、フェン王国、トーパ王国に兵器等を輸出及び軍事顧問を派遣しております」

 

(・・なるほど、道理で我が軍の攻撃をはねのけることができたのか・・・・・

ドイツの兵器は大変魅力的で我が国も欲しいのだが・・・)

 

 

そんな様子のレミールを見て外交官は思う。

 

(レミールは見た感じ、我が国の武器を欲しがってるな・・・しかしあんたらの国を見るにそうもいかんのだよ・・・)

 

これまで散々周辺諸国に対して威圧的な外交を行い、戦争になれば負かした相手国の王族やその親族縁者を皆殺しにする。

 

そんな野蛮な国がドイツの兵器を手に入れたらどうなるだろうか。

 

ドイツとしてもパーパルディアには兵器類は輸出しないと決めていたのである。

 

 

 

◆◇◆◇◆

アルタラス王国

 

王都ル・ブリアス

 

アテノール城

 

「 諜報員の報告によると、工業都市デュロにおける兵器工場の動きが止まっているとの情報が入ってきました。」

 

 

「どうやらドイツと接触してから、皇国軍の動きが沈静化している模様です」

 

 

「ターラ王、ここはひとつ大きく出てもよろしいのではないでしょうか?」

 

 

「うーーむ・・・」

 

会議で大臣達が、いろいろ話し合う中ターラ14世は唸りながら首をひねる。

 

「これはチャンスです、このまま皇国と講和しましょう、ドイツの後ろ盾があればうまくいくはずです」

 

 

「そうだな・・・そうだ!」

 

 

いきなりターラ14世は叫び、従者にある書類を持ってくるように命じた。

 

 

「王様、どうなされましたか?」

 

 

「いや、この戦争の他にもう一個けりをつけなければいけない相手がおってな」

 

 

そう言ってターラ14世は従者の持って来た紙を見せた。

 

そこには・・・

 

 

『○アルタラス王国は魔石採掘場・シルウ トラス鉱山を皇国に献上せよ。

 

○アルタラス王国王女ルミエスを、奴隷

として皇国へ差し出せ。』

 



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決着②

やぁ、今日はエイプリルフール、四月馬鹿ですね。


イヤァァフウウウウウウ
⬆︎(ごちうさのエイプリルフールでこころぴょんぴょんしてる奴)





カスト邸

 

「何なのだコレはぁ!!!」

 

 

カストは叫びながら一枚の紙をビリビリに引きちぎる。

 

 

アルタラスから送られたその紙には、カストがアルタラス王国の王女であるルミエスに対して、奴隷として差し出す様に要求し、尚且つ味見をすると言い放ち、終いには淫所に売り払うと発言したことから、不敬罪及び大逆罪の罪で裁く為、出頭する様にとの旨が書かれていた。

 

 

「何故、このワシが蛮族の法律で裁かれにゃあならんのじゃああ!!!!」

 

 

引き千切った紙をさらにビリビリに細切れにして部屋に撒き散らす。

 

 

「こうなったら陛下に蛮族共を皆殺しにする為に軍を送ってもらう様、直訴してやる!」

 

肩で息をしながら従者に馬車を用意する様に怒鳴る。

 

 

すると、従者が焦った様子でカストに側に駆け寄る。

 

 

「カスト様、それが先程・・パラディス城へ出頭せよと皇帝陛下の命令がございました」

 

「何、皇帝陛下が直接?!まぁ良い、どんな用事かは知らんが、その時に蛮族をことを話せば良い」

 

皇帝陛下の命令という事で、直ちにカストは馬車に乗り込み城へと向かった。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

パラディス城

謁見の間

 

皇帝の他にも、第1から第3までの外務局

のお偉いさんまで集まっていた。

 

「皇帝陛下! 只今 このカストが参上しました。」

 

カストは深々と礼をし、敬意を表する。

 

 

「うむ、よく来たな。 して、カストよ、聞きたいことがある。」

 

「はぁ」

 

ルディアスが合図を出すと、従者が封筒を持ち出してカストに渡した。

 

「読んでみろ」

 

カストは言われるがままに、封筒から書類を出し読み始める。

 

「・・・なっ、コレは!」

 

その紙は、カストがターラ14世と会話した内容が一文一句そのままに書かれていた。

 

「コレは何なのですか?!!」

 

「それはな、数日前にアルタラスから送られたものだ。」

 

それを聞き、カストは頭を金槌で叩かれる様なショックを受ける。

 

 

「パーパルディアの皇帝であろうお方が

文明圏外の蛮族の言うことを信じると言うのですか?!」

 

「・・・あの時近くにいたお前の部下にもきちんと話を聞いたが、その通り話していたと言ったぞ。」

 

 

「な、な・・・」

 

 

カストは酸欠金魚の様に口をパクパクさせた。

 

(どの奴が吐いた?アイツか?アイツは前からそんな口が軽そうだったからな、間違いない)

 

心の中で勝手に考えていると、ルディアスはまたしても従者に新たな紙を2枚持ってくる様に命令する。

 

 

「ではコレをみろ。」

 

 

「これは・・・、あ・・」

 

その紙は、ターラ14世に向けて送ったルミエスを奴隷として差し出せと言うことが書いてある要請文であった。

 

 

「これはどう言うことだ?」

 

徐々にルディアスは怒気を含んだ口調に変わっていく。

 

 

「いや、・・それは・・・その・・・」

 

 

「余は貴様に、シルウトラス鉱山を献上させる様に指示を出したはずだぞ!しかしこれには何だ!一体どう言うことだ!」

 

要請文とは別のもう一枚は、第3外務局からカスト宛に送られた命令書であり、そこにはシルウトラス鉱山を献上させる様に、との事だけが書かれていた。

 

 

「問題はそれだけではない、貴様が勝手に追加した内容の書いてある書類に余が認めた皇国の印を押し、あたかも余がこの事を命令したように見せたと言う事だ!この事は余は元より皇国に対する侮蔑だ!」

 

この時点でカストの顔は既に真っ青になっている。

 

「余はとても残念だ。

貴様の家系は先代の皇帝から付き合いだったから信頼していたのだが・・・」

 

そう言うと、ルディアスはカストに対して言い放つ。

 

「カスト、貴様は只今を以って爵位を剥奪する!そして、国家に対する侮蔑を行った罪で永久追放とし、アルタラスへ引き渡す!」

 

その宣告は実質死刑宣告であった。

 

「アルタラスの使いが来るまで地下牢に入れておけ!」

 

ルディアスが叫ぶと近衛兵がカストを拘束する。

 

 

「お待ち下さい陛下!これは蛮族共の謀略です!目を!目を覚ましてください陛下ァァァア!!!」

 

「黙れ!」

 

カストは近衛兵に銃床で頭を殴られ気を失った。

 

 

カストが引きずられ、謁見の間は静かになった。

 

そんな中でルディアスはカイオス、パーラスに向かって言う。

 

「これは一旦、支配地の統治機構の職員や、大使について一度綿密な調査をしたほうがいいな」

 

パーラスは今まで、統治機構の横暴な行動に目を瞑っていたが、皇帝の命令が下った以上、もう目を瞑る事も出来まいと腹を括った。

 

カイオスも属領の腐敗した統治に

皇国の未来を憂いえていたが、今回のルディアスの発言に希望を見出していた。

 

 

◇◆◇◆◇◆

デュロ海軍基地

 

「何だと?!その話は本当か?!」

 

パーパルディア皇国海軍東部方面隊に所属する戦列艦艦長のボルネオは叫んだ。

 

「あ、ああ、2日後にアルタラスの船が

皇都に来て大使を連れて行くんだそうだ」

 

 

「何故文明圏外の国に対して皇国がここまで弱腰になれる?!皇帝陛下はどうなされたのだ?!」

 

ボルネオは興奮した様子で喋りたてる。

 

「変な気は起こすなよ・・・」

 

同じ艦隊の仲間は彼を宥めてはいたのだが・・・

 

◆◇◆◇◆◇

 

ボルネオはその後同調者を募って、あろうことか命令も無しに戦列艦3隻を港から出航させた。

 



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決着③

デュロ海軍基地

 

基地は早朝から大騒ぎであった、なんでも命令も無しに三隻の戦列艦が出航したのだから。

 

 

◆◇◆

予想だにしない事態に港湾内や付近の海域は大混乱となっており、水先案内人や水兵が事故が起こらないように奔走していた。

 

 

「貴官らは何をしておるのか!直ちに停船せよ!繰り返す、直ちに停船せよ!」

 

通信兵が出港していく戦列艦に警告するが、

 

「列強の誇りを忘れた軟弱者に答えはしない。」

 

とだけしか言わなかった。

 

「生意気なアルタラスの船を我々皇軍の圧倒的な力で沈めれば、皇帝陛下も考えを改めるだろう」

 

ボルネオは本気でこのように考えていた。

 

◆◇◆

 

「ルトス司令が通るぞ!道を開けろ!」

 

 

慌てていた水兵は司令が通ると聞くや、

サッと道を開ける。

 

 

「いったいどうなっているのですか?!」

 

ルトスは落ち着いて、しかし怒りを込めた声で将校達に尋ねる。

 

「ハッ、無断で出港した「ムサラ」のボルネオ艦長はどうやら、国賊カストが文明圏国のアルタラスに引き渡されるのが気に入らないと言う話を少し前に同僚に話していたとのことです。」

 

 

「それで他2隻の艦長を言いくるめて

アルタラスを攻撃する為に向かったと言うのですか?まったくバカバカしいことですね。」

 

「いえ、恐らく引き渡しに来るアルタラスの船を狙ってのものと思われます」

 

「どちらにしろバカという他ありません、何にせよ彼らを何とか説得しなければなりませんね」

 

◆◇◆◇

 

アルタラス海軍

新型装甲艦 タス1世

 

創世王の名が付けられた装甲艦はドイツがアルタラス用に建造し、購入したものだ。

 

「この船があれば王国海軍が壊滅することも、ボルド司令が戦死なされることも無かったというのに。」

 

タス1世の艦長であるシャラザムは艦橋に並ぶ26㎝ライフル砲を見る。

 

 

「しかし、今回はあくまでも罪人カストの引き渡しの為に皇国へ向かうのです。

仇討ちをしようとは思わないように」

 

 

副官のクエスは感情が無いんじゃないか、と思えるほど抑揚の無い声で話しかけてきた。

 

「わかってるさ、それで皇国まであとどれくらいかな?」

 

「後、1時間で港が見えてきます」

 

「そうか」

 

◆◇◆◇◆◇

 

パーパルディア皇国

皇都エストシラント沖

 

後もう少しという所でレーダー員から報告が上がる。

 

「魔信レーダーに感あり!」

 

「何だと?」

 

「数は三隻、距離は北東!」

 

「戦列艦が三隻、パーパルディア皇国海軍旗を掲げている!」

 

監視兵が双眼鏡で確認して叫ぶ。

 

 

◇◆◇◆◇

 

「生意気にも黒煙なんぞ吐きおって、風神の涙最大限に解放しろ!」

 

ボルネオは全艦に向け、右舷をタス1世の方に回頭するように指示を出す。

 

◇◆◇◆

 

一方でタス1世の方は軽くパニックになっていた。

 

 

「おい、アイツらこっちに砲を向けてきてないか?」

 

「そろそろ向こうの射程圏内にはいるぞ?!」

 

「警告しろ!警告!」

 

「それが何度しても反応が無いんです!」

 

「無視してんのかあいつらぁ!」

 

 

怒鳴りが行き交い、水兵たちは戦列艦の動向を伺いつつ、いつでも撃てるように

配置についた。

 

 

ズドドーーン!!

 

パーパルディアの戦列艦が発砲し、タス1世のすぐ近くで水飛沫が上がり、甲板を濡らす。

 

 

「直ちにあの戦列艦を攻撃せよ!これは正当防衛である!総員準備!!」

 

 

艦内に配置されているスピーカーから

の命令に、砲兵はライフル砲に弾を込める。

 

 

◆◇◆◇◆

 

パーパルディア皇国

皇都エストシラント

 

皇都の沖に面する港に臣民達が集まり、沖の方を眺めていた。

 

 

その様子を見ていた一人の男が、群衆の一人を捕まえ何の騒ぎか尋ねる。

 

 

「これは一体何の騒ぎなんです?」

 

 

「え、いや、なんでも今朝方からドイツの支援を受けたアルタラスの船が来るというから見にきてたんですよ」

 

「ほう」

 

「したらね、皇国の戦列艦も三隻やって来たもんだからどうしたんだと思ったら、戦列艦がやって来たアルタラスの船に向けて撃ったんだよ!」

 

と、男は興奮した様子でまくしたてるように話した。

 

「へぇ・・・そりゃ物騒なこって・・・」

 

そう呟いた瞬間沖から轟音が聞こえた。

 

 

ーードオォォーーーン・・・

 

「うぉ!!」

 

「うわぁ!スゲェ!」

 

「なんてこった!」

 

 

アルタラスの装甲艦が撃った砲弾が戦列艦の一つに命中し、それから誘爆して派手に爆発した。

 

◆◇◆◇

 

「戦列艦トワキ轟沈!」

 

「なんだあのデタラメな命中精度は!次弾射撃急げ!」

 

 

「よしっ!撃てっーー!」

 

 

ドドドドバーーーン!!!

 

 

右舷の魔導砲から沢山の白煙が噴き出す。

 

 

 

「敵艦発砲ォー!」

 

タス1世の周辺に巨大な水柱が立ち、その直後にタス1世が被弾し、巨大な揺れが襲いシャラザムが甲板に尻餅をついてしまう。

 

「流石ドイツの船だな、砲弾に当たったというのにビクともしない」

 

 

「艦長、感心して座っている暇はありませんよ、直ちに反撃しましょう」

 

クエスはシャラザムを引っ張り起こしながら言う。

 

 

「よし、回避運動を取りながらの砲撃を始めろ! 」

 

【挿絵表示】

 

魔信にシャラザムは叫ぶ。

 

 

「臆するな!奴らの弾はさしたる脅威ではない!」

 

「装填完了!」

 

「テッーー!!」

 

 

タス1世の砲弾は戦列艦の船首の喫水線ギリギリの所に命中し、そのまま水を飲む様に沈んでいく。

 

 

これで残ったのは「ムサラ」だけとなった。

 

◇◆◇◆◇◆

 

「蛮族の船に皇国の戦列艦が2隻も沈められるとは・・・!ギギギ・・・」

 

ボルネオは掌から血が滴り落ちんばかりに握り締めていた。

 

「これより我が艦は敵艦に対し、衝角による攻撃の後、敵艦に切り込み隊を突入させる!」

 

 

ボルネオはそう叫ぶと魔信に向かい、

敵艦に向けて全速前進する様に命令した。

 

 

◆◇◆◇◆

 

《敵戦列艦 こちらに向かって来ています!》

 

「奴らめ!ぶつける気だな?!」

 

 

ムサラとタス1世の距離はみるみるうちに縮まって行く、砲撃も焦りによるものなのか段々と精度に欠け始める、もはやムサラがぶつかるのも時間の問題だ。

 

「来るぞー!!!」

 

「総員衝撃に備えろ!!」

 

◆◇◆◇

 

「衝角攻撃の後、直ぐにマスケット 隊による制圧射撃の後に切り込み隊を突入させるぞ!」

 

「艦長!ショックに備えて下さい!」

 

《総員 ショックに備え!》

 

メシャリ!!!

 

両艦共に凄まじい衝撃が襲う。

 

 

 

そして・・・

 

 

「大変です!艦首底が大破、浸水しています」

 

「敵艦に被害が見られません!あっ!?」

 

ムサラはタス1世に衝角攻撃を行うが、金属製のタス1世にはビクともしなかった。

それどころか衝角の衝撃で艦首が大破し浸水し始め、そのムサラの艦首がタス1世の右舷に引っかかり、艦首が嫌な音を立てて引きちぎられる様に持っていかれた。

 

 

船内に一気に水が入り、ムサラはものの数分で海中に沈んでいった。

 

 

◇◆◇◆◇

 

皇都の目と鼻の先で行われたこの海戦は、これまで第三文明圏の頂点に君臨していた皇国の絶対的支配が揺らぎ始める発端となった海戦として、歴史に語り継がれることとなる。




前回のコメントなどで。「他作品ではドイツよりも技術を持っていながらパ皇に舐められたまま戦争に突入したが、今作は力の差を認識させた」という様なのがありましたが、他作品様のは平和的に解決させようとするんですよね、勿論砲艦外交などもってのほかと考えてる国々だから当然のことです。

レミールも三巻で「日本が力を見せていたらまた結果も変わっていたかもしれない」みたいな事を言ってましたしね。


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大英断

「なんて事を!」

 

 

戦列艦暴走の報告を受けたレミールは顔面蒼白となって飛び上がった。

 

現在皇国はアルタラスと休戦条約を結んでいる、もし文明圏外と戦いになっても

本来であれば何の苦労もなく殲滅出来たであろう、しかしアルタラスのバックにはあのドイツが付いている、そして実際にアルタラスの船がいとも簡単に三隻の戦列艦を葬った。

 

(このまま戦争が再開すればまた我が軍にかなりの被害が出てしまう)

 

自室をぐるぐる回りながら考えていると、緊急の帝前会議が行われるとの連絡が入った為、急いでパラディス城へ向かった。

 

◇◆◇◆◇

パラディス城

 

国の重鎮たちが平伏す大広間は、現在とてつもない緊張感に包まれていた。

 

皇帝ルディアスが出席している事は勿論、収集された事態が事態である、緊張しないものはいない。

 

「それでは帝前会議を始めます」

 

始まるや否や、ルディアスが口火を切る。

 

「此度の件、一体どうなっているのか?」

 

ルディアスはアルデに問う。

 

喋る人物がアルデからバルスに変わり、そして東部方面司令のルトスへと変わる。

 

 

「・・という事で、ボルネオは他2隻の艦長を唆して勝手に出撃してしまったのです。」

 

ルトスの報告が終わり、大広間は静寂に包まれる。

 

 

(まずドイツと正面から戦って勝てる見込みは0、アルタラス単体で戦っても相当の被害を受ける事になるだろう、三度に渡るアルタラス攻勢においてもほぼ全滅と言っていい被害が出ており、属領統治軍を引き抜いて再編する始末だ、このまま継戦した所で無駄に兵士を殺すだけだろう)

 

 

アルデは冷静になって考えていた。

 

その時であった、第三のカイオスが挙手し、起立して話し始める。

 

「レミール殿もご存知でありましょうが、アルタラスには現在ドイツによる兵器支援が行われております」

 

ドイツの名が出て、僅かに会議場がピリつく。

 

「現在の所、アルタラスは防戦一方で攻勢には出ていません。しかし休戦協定を結んでいる最中に攻撃を受けた今、アルタラスからしてみれば協定を破棄されたも同義、ドイツと手を組んで攻めて来られる事も十分考えられます、そこでアルデ殿にお尋ねする」

 

「何だ」

 

「もしアルタラス単体が攻めて来たとして、ここ皇都を防衛する事は可能か?」

 

「それは問題ない、あの装甲艦については能力は高いが文明圏外の国が持てる数はたかが知れている、完全に沈める事は出来ないにしても無力化する事は出来る」

 

「では、ドイツと一緒に攻めて来た場合はどうか?」

 

「・・・それは」

 

アルデは一瞬、灰燼と化したレイフォリアの魔写が脳裏をよぎる。

 

「・・・認めたくないがドイツは格が違い過ぎる、もし勝てたとしても辛勝だろう、受ける被害が大き過ぎる」

 

「成る程」

 

カイオスが頷くと、エルトも挙手をする。

 

「私も質問をして良いでしょうか、此度のアルタラスとの戦争は第3によって引き起こされたものです、カイオス殿はこの戦争をどの様に収束させるおつもりか?」

 

「国家の意思として殲滅戦を表明しているわけですから、おいそれと意思を変える事は出来ないでしょう、しかも相手は文明圏外国です、「悪かった」なんて頭を下げようものならそれこそ他国や属領に示しがつきません」

 

「では、このまま継戦を?」

 

 

(・・継戦するにしても、アルタラスがドイツから更に強い兵器を給与される可能性もあるから・・・どうしたものか・・・)

 

 

カイオスが言葉に詰まっていると、意外な人物が口を開いた。

 

 

「許そう」

 

 

突如皇帝ルディアスがそう呟いたのだ。

 

「へ、陛下、今なんと?」

 

レミールが素っ頓狂な声でルディアスに問う。

 

 

「我が皇国に逆らうという愚行を行ったアルタラスを、予は最大の慈悲を持って許そうと言っておるのだ」

 

 

「へ・・・陛下が愚者に対してその様な寛大な心をお持ちでいようとは・・!レミール、感動でございます!!」

 

 

レミールは感涙で泣いていたが、カイオスは。

 

(物は言いようだな)

 

と若干苦笑い気味で考えていたが、ルディアスがそれなり冷静に判断を下せる事に安堵していた。

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇

その後・・・

 

パーパルディア皇国はアルタラス王国に逆賊カストを引き渡し、両国間との国交を再開させ、アルタラス王女のルミエスにカスト家による個人的な謝罪金という程でカスト家の全資産がルミエスに渡された。

 

その後、ドイツに対してもフェン王国軍祭時とアルタラス侵攻作戦時に受けた被害金を支払った後、国交を樹立するに至った。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

因みにこの時のルディアスの判断は、発表した当時は皇帝は弱腰になっただの、政府は無能だの批判が相次いだが。

 

後の歴史学者からは、パーパルディア皇国史でもこれ以上ない程の大英断であったと記されている。

 

もしそのまま戦争を続けていたら、ドイツの参戦により滅亡してもおかしくなかったとも言われているそうだ。

 

 




若干短めですが、これにてアルタラスvs.パーパルディアの戦いに終止符が打たれました。


それと最近の別の作者さんの日本国召喚の二次創作で、パーパルディア皇国が艦砲射撃で皇都が吹き飛んだり、2時間で滅ぼされたりと
踏んだり蹴ったりで若干ゃ草バイエルン。


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魔王復活編
魔王の復活


魔王編に突入します。
どうやってルーデルやロンメルをトーパ王国に連れて行こうか手段に悩む、戦車は輸送艦で連れていくとして飛行機の輸送って空母は無いし輸送艦に積む?そのまま飛ばす?


辺境の魔王

 

ドイツから西にあるフィルアデス大陸。

そこの北東部にトーパ王国という島国がある。

更に北東部にはグラメウス大陸と呼ばれる地に繋がっている。

 

その大陸には国家は存在せず、俗に「魔物」と呼ばれている知能らしい知能を持たない生物だけがいる。

 

トーパ王国の北東部には城塞都市トルメスがある、トルメスには「世界の壁」と呼ばれる巨大な壁があり、永きに渡りフィルアデス大陸への魔獣の侵入を防いできた。

 

トーパの民は人類の守護者として誇りを持っており、フィルアデス大陸でやれパーパルディアだなんだと言えるのは、我々トーパ王国が魔獣の侵入を防いでいるからだと思っていた。

 

◆◇◆◇◆

 

その日もいつもと同じように、穏やかな朝だった。

 

世界の扉には新たにドイツから買った7.5cm山砲が朝露に濡れていた。

 

 

「はぁ 、眠いなぁ 寝とくか・・・」

 

非常勤として雇われた傭兵ガイは、

監視室の窓からグラメウス大陸方面を眺めながら呟いた。

 

監視室からの景色は真っ平らな平原であり、見通しが良い。

 

しかも今の季節は雪が降り積もっており、見渡す限りの大雪原となっている。

 

今日も幼馴染で、共に働いている騎士モアに小言を言われながら時が過ぎて行く。

 

 

すると・・・

 

コォォォォ・・・

 

コォォォォォ・・・・

 

悍ましい何かが聞こえる。

 

ガイは異音に気付き、雪原に目を凝らす。

 

「何だありゃあ!!!」

 

真っ白な雪原が少しずつ黒くなっていく。

 

「大地が黒くなって・・・!!」

 

モアが望遠鏡をのぞいて見る。

 

「あれはゴブリンだ!!」

 

 

しかも奥にはオークが100体、伝説の魔獣ブルーオーガにレッドオーガ、そして

赤竜に乗った伝説の魔王ノスグーラも見えた。

 

 

「砲兵ェェェェーーー!!!」

 

「目標、前方の魔物群!!!」

 

「撃てェェェェーーー!!!」

 

 

5門の7.5cm山砲に榴弾が装填され、魔物の群れに向けて発射される。

 

 

トーパ王国という辺境の王国にとって5門の大砲は、ドイツにとって第一次大戦時の旧式といえど王国にとって大き過ぎる買い物である、その虎の子全部を世界の扉に配備してあるのである、何が何でも死守せねばならない。

 

 

 

望遠鏡を構えた隊長は、榴弾によって吹き飛ぶゴブリン達を見て歓喜の声を上げる。

 

「全弾命中! 装填急げ!」

 

砲兵は覚束ないながらも教えられた手順通りに弾を込めていく。

 

 

◆◇◆◇◆◇◆

その日の夜

 

 

魔王軍 野営地

 

「・・・」

 

レッドオーガ、ブルーオーガそして魔王が焚火を囲いながら座っている。

 

何処と無く彼等の顔色が悪い、ブルーオーガは更に青く、レッドオーガは紫色だ。

 

「・・・またしても太陽の使者が現れ今度は我々を待ち構えた・・・」

 

レッドオーガが眉を八の字に傾け、震えていた。

 

三人の魔物達は前回の太陽の使者との戦いで魂にこびり付いた恐怖が、今日の戦いでの爆裂魔法によってぶり返した。

 

その余りの恐怖によって魔王は撤退の命令を下してしまった。

 

「・・・我々は魔帝様が復活した際の世界制覇の足掛かりになれるように尽力するだけだ、今更あの様なモノに臆する様ではダメだ」

 

魔王ノスグーラは人間の腿肉を食べながら言う。

 

魔王軍の食料の備蓄も心許無く、早い所纏まった数の人間が欲しかった。

 

 

その夜、魔王は世界の扉を突破する為に

いろんな策を考えていた・・・

 



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霧状噴射

うわぁ〜、おれ 虫歯になっちゃったよう(デビルマソ)

歯磨けよ!(加藤茶)


◆◇◆◇

ドイツ国外務省

ドイツの外交官はトーパ王国の大使からの援軍要請に対応していた。

 

「・・・成る程、我が国からも魔王軍討伐の為の援軍を送って欲しいと?」

 

 

「ええ、ゴブリン等の雑兵なら我々の騎士団でも対応出来ますが、魔王やオーガなどは我々の手に余ります。」

 

 

「分かりました、上の方に報告しておきます。」

 

「よろしくお願いします」

 

 

◆◇◆◇◆◇

その後トーパ王国の魔王討伐の為、派兵する事が決定した。

 

トーパ王国へ向かうこととなった装甲師団の師団長には、ベルリンで暇を持て余していたロンメルが就任した。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

中央暦1639年12月2●月

駆逐艦と軽巡に守られた数十隻の輸送船団がトーパ王国へと向かう。

 

その中の一隻、航空機を運んでいる船の甲板上で一人の男が海を眺めていた。

 

「ロウリアではあまり活躍出来なかったが、今回の戦いでは絶対に活躍してやる」

 

 

そう言って彼は分解して積んであったスツーカを眺める。

 

彼はロウリア戦役の時は遠距離偵察員だったが少し前に急降下爆撃航空団大隊に転属となった、彼はまだ未熟だが今回の魔王軍とかいう化け物退治は練習には丁度いいと判断され為、討伐軍としてトーパ王国に向かっていた。

 

そう、彼こそ空の魔王で、後にグ帝臣民の最大の敵と呼ばれる事となるハンス・ウルリッヒ・ルーデル

其の人であった。

 

 

◇◆◇◆◇

城塞都市トルメス

南門

 

モアとガイは騎士団の命で、間も無く到着するドイツ軍の案内の為、待っていた。

 

「なぁ、ドイツ軍ってどんな奴らなんだ?師団規模も来るってんだからスゲェんだろ?」

 

「あぁ、大規模な援軍らしいが指揮権が異なるらしいからな・・・噂通りなら凄いことになるぞ」

 

「噂?」

 

ガイは傭兵だが、「世界の扉」に張り付きっぱなしだった為、新しい情報を仕入れてなかった。

 

 

「ロデニウス大陸で、ロウリア王国の王都を飛行機械で爆裂魔法を投射したり、

パーパルディアの竜騎士20騎を撃ち落とした、という話だ、しかも被害は僅かな軽症者だけで死者は無しなんだとさ」

 

 

「うーん、そりゃ嘘だろ、幾ら何でも戦争で死人が1人も出ないなんてウソだ、

情報操作でもしてんじゃねぇか?」

 

などと話をしていると、遠くから何かが唸るような音が迫って来た。

 

「モア様、見えました。ドイツ軍の方が来られたようです」

 

衛兵からの報告を聞き、モアは望遠鏡を覗き込む。

 

少しずつ大きくなる音と、先導する王国騎士団の後ろには黒い影。

 

ーギャリギャリギャリギャリギャリー

 

何百もの数の濃い灰色の鉄竜の様な何かが近づいて来ていた。

 

2人の前で一団が停車した、先導していた王国の騎士も疲れ切った顔をしていた。

 

「こちらがドイツ軍の方々だ。あとの案内を頼む」

 

「・・・は、はい!」

 

屋根の無い馬車の様なものから数人が降りてきた、服の色は皆灰色だが胸にはいくつかの勲章が輝いていた。

 

「ドイツ国防軍、トーパ王国魔王討伐師団団長のエルヴィン・ロンメルです。

ご案内感謝いたします、よろしくお願いします。」

 

ピッとロンメルはモア達に向けて敬礼をする。

 

その後街中を通ってトルメス城へ向かったが、戦車の発する轟音に市民は家から飛び出し物珍しく眺めて始めたので、凱旋パレードの様な騒ぎになっていた。

 

◇◆◇◆◇◆

トルメス城

 

ロンメル達は、トーパ王国騎士団長のアジズを中心として円卓を囲んで、状況の確認を始めた。

 

 

とにかく魔王は世界の扉に攻撃を仕掛けてはいるが、ドイツ製の大砲の攻撃により、幾度の攻撃を防げているとの事だ。

 

「成る程、オーガというのは生半可な攻撃では魔法で回復してしまうと・・・」

 

ロンメル達は如何に自分達の戦車隊を使うかを考えていた。

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

その頃・・・

船から降ろされ、組み立てられた中隊規模のbf109が王都上空を試験的に飛んでいた。

 

 

 

同じ頃、魔王の側近であるマラストラスがアジズを討ち取るために上空からトルメス城へ向かっていた。

 

「・・人類の将を討ち取るために、我が直接出向かなければならぬとはな・・・

む、あれは・・・?」

 

十数騎の翼竜のような何かが空を飛んでいた。

 

「・・寒い土地でも活動出来るワイバーン? 人間もなかなか進化したようだな・・ホッホッホ・・・」

 

そう笑うと空を飛ぶbf109に手を向け

 

「ーヘルファイア」

 

黒い炎がbf109の中隊に襲いかかった

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

「危ない!」

 

誰かからの無線から聞こえた言葉を合図に、bf109は蜘蛛の子を散らす様に黒い炎を回避する。

 

 

「何だありゃ!」

 

「バケモノか!」

 

 

「各機、三機ずつに分かれ奴を攻撃しろ!」

 

 

隊長の指示により三機ずつに分かれたbf109は、4隊に分かれマラストラスの周りを距離を取って旋回する。

 

 

「なかなかすばしっこいな!」

 

 

マラストラスは再度敵に向かって黒い炎を放つが、避けられてしまう。

 

すると、四つの群れの一つがこちらに向かってくるので、黒い炎を放とうとすると・・・

 

 

ズガガガガガ!!!!

 

飛竜の首元と翼から謎の閃光が放たれる

 

 

「グオォォッ?!!」

 

想像よりも早い弾速に避けきれず、

マラストラスの右肩から先が吹き飛ぶ。

 

 

「お、おのれぇぇえ!」

 

 

マラストラスは頭に血がのぼりながらも、傷口に魔法をかけて出血を止める、

しかし腕そのものは復活しないため戦力は大幅に落ちるだろう。

 

 

「っ! ここは一旦引いて魔王様に報告しなければ!!」

 

 

寒いトーパ王国に変温動物の飛竜はいない、勿論トーパよりも寒い所から来た魔王軍にもいない、その為空を飛べるマラストラスは魔王軍の中でも貴重な航空戦力であった。

 

しかしそのマラストラスの攻撃をかわし、それどころか腕一本持っていく様な飛竜がいるのでは魔王軍の侵攻プランを根本的に見直さなければならない。

 

 

マラストラスは持てる力を使って逃げるも・・・

 

「あぁ!追いつくのか?!!」

 

先ほどの三機がこっちに向かってくるのを見てマラストラスの顔は絶望に染まる。

 

ズガガガガガ!!

 

1回目の攻撃は何とか避けられたが、腕一本失い、最大の速度で飛んで体力を消耗しているマラストラスにとってそれが限界だった。

 

ズガガガガガ!

 

ドガガガガガ!!!

 

 

「アガァ!!」

 

 

マラストラスは20ミリと7.92ミリを全身に受け即死、インクの様なドス黒い血を霧状に撒き散らしながら落ちていった。

 

 

 




アジズ「お前らは女や子供たちをぉ、殺したんだ。我々の住民を食い殺した。そのお前らが我々を……下等種と呼ぶぅ!! だが今は、迫害された者たちの手に敵に反撃する強力な武器が与えられた! よく聞け、魔王よ。トーパ王国全域から全ての軍隊を撤退させろ、即刻ぅう!! そしてえぇい遠にどぅああ!!」


ロンメル「下手したら俺たちよりもヤベー武器持ってんじゃねぇかコイツ」


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魔王

「一体何が起きた?」

 

ロンメルは外で騒ぎが起きていた為、

部下に確認するように命じる。

 

「は、先程上空を試験飛行していた戦闘機中隊が詳細不明の飛行生物と交戦したと、先程無線で報告がありました。」

 

 

「この世界の生物なら、貴方方の方が詳しい者がいるのでは無いでしょうか?

出来る事なら一緒に来てもらって確認してもらいたいのですが」

 

「それなら私が行きましょう」

 

 

ロンメルはモアと一緒に飛行生物が落ちた場所に向かった。

 

◆◇◆◇

 

マラストラスの死体は機関銃で穴だらけになった上に、落ちて骨が砕けた為最早原型を留めていなかった。

 

「こいつは・・・」

 

モアは目の前に転がっている真っ黒い肉塊にたじろぐ。

 

「コイツが何かわかりますか?」

 

「コイツは・・・恐らく・・マラストラスでしょうか・・・」

 

木の棒で背中の根本に僅かながらに残っていた真っ黒い烏のような羽を突きながらそう言った。

 

「マラストラス?」

 

 

「ええ、マラストラスは魔王の側近で空を飛んで強大な魔法で攻撃してくる魔物です。コイツのせいで死んだ騎士は100人は超えるでしょう」

 

ドイツ軍将兵は驚いた様にお互いの顔を見た、まさかそこまでの大物を狩っていたとは思わなかったからだ。

 

◆◇◆◇◆◇◆

 

《Panzer vor!》

 

ロンメルが無線に向けてそう言うと、

偵察によって得られた魔王軍の本陣があるであろう場所に向けて装甲師団が進軍を始めた。

 

 

◆◇◆◇◆

 

「魔王様、マラストラスが討ち取られ遂に奴等はこちらに向けて攻めて来ています!」

 

レッドオーガは悲鳴に近い声でノスグーラに報告する。

 

「なっ! 下種どもめぇ!!!」

 

ノスグーラは怒りに震えながらもレッドオーガと、ブルーオーガに命令する。

 

 

「ブルーオーガ、レッドオーガは両端から奴らを挟むようにして応戦しろ、我はカイザーゴーレムを召喚する」

 

 

「「はっ!」」

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

《前方11時と3時の方向より魔物を確認!》

 

「来たか」

 

 

ロンメルは双眼鏡にてその姿を確認する。それぞれ青い魔物と赤い魔物に率いられながら300のオークに2000のゴブリンがこちらに向かって走ってくる。

 

《各車 射撃開始!》

 

 

そう叫ぶと二号戦車の20ミリ機関砲や38tの37ミリ砲が火を噴く。

 

雨霰のように飛んでくる砲弾にゴブリン、オークは為すすべなく吹き飛ばされてしまう。

 

 

「くそっ!!クソ!! 人間ごときがぁ!!!」

 

レッドオーガは巨大な得物を振りかざし

突っ込むが、37㎜砲が胴体に直撃しそのまま体が千切れた、こうなってしまってはいくら回復魔法をかけようと助からない。

 

 

「チクショオ・・・貴様ら人間ごときにぃいいいい!!!」

 

 

レッドオーガは怒りに身体が震えるが動く事もままならず、迫ってくる履帯の前に叫ぶことしかできなかった。

 

 

 

ゴリゴリゴリ・・・

 

 

 

生き物が履帯に踏み潰される音を聞いてII号戦車の乗員は良い気分はしなかった。

 

車長は覗き窓から外の様子を伺う。

 

「しかし、奴らいつになったら突撃を止めるんだ」

 

オーク、ゴブリンは一向に止まることなく突撃を行なっている、半分は倒したから一旦引いても良さそうなモノなのに。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

〈生と死の傍らで、誓いの詞を示す。

黙すなかれ、狂気に嗤え。胎動せよ、主を殺す者。万物の理はすでに暴かれた〉

 

「出でよ、カイザーゴーレム」

 

 

ーゴゴゴゴ・・・

 

雪原が割れ、その隙間の土が盛り上がり、岩の塊が首となる。

土はみるみるうちに人の形となり、ゆっくりと動き出した。

 

 

「な、なんだアレはぁ!!」

 

17メートルもある巨人兵にドイツ軍一同は肝を潰す。

ロンメルも驚愕し、双眼鏡を覗きながら叫ぶ。

 

 

「撃て撃て!!」

 

 

「頭だ!頭を狙え!!」

 

 

戦車は巨人に向かって撃ちまくるも、射撃手はパニックになり核には当たらず、手足に当たったとしても膨大な魔力で空いた穴が修復されてしまう。

 

 

《敵強力!後退する!》

 

遂には巨人を前に後退し始めた。

 

◇◆◇◆

 

「巨人がごっち"にぎでばずぅ!!!」

 

操縦手が泣きながら車長に叫ぶ。

 

「撃て撃て撃て撃て撃て!!!」

 

 

射撃手は機関砲を撃ち込むも二号戦車の機関砲などではゴーレムはビクともしない。

 

 

「いいぞカイザーゴーレム、このまま下種供を踏み潰せ」

 

ノスグーラは高らかに笑いながら命令する。

 

 

「うわっ!踏んで来た!」

 

 

先程の二号戦車がゴーレムに追いつかれ踏んで来た。

 

 

「ほぁあああ!!!」

 

車長もパニックの余り、奇声を発する。

 

車体が歪み、履帯がぶっ壊れる。

 

戦車兵達は最早これまで・・・と、覚悟を決めたその時であった。

 

◆◇◆◇◆◇

 

ゴーレムが暴れている時、上空ではスツーカ五機ほどが飛んでいた。

 

そしてそのスツーカには凶悪な37mm

機関砲を両翼に備えてあった。

 

「魔獣供め、なんか凄いものを出しおったか」

 

ルーデルがそう呟くとゆっくりとゴーレムに向くように操縦桿を操った。

 




作中ではゴーレムを「お台場のアイツ」と呼んでいましたね。

そう言えば最近事件で「お台場のアイツ」の事が話題になってましたね。
これだから連邦はだめだ。〔by ジオニスト〕


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魔王戦

「よーし、こいつを喰らえ」

 

ルーデルは戦場のど真ん中で、突っ立っているカイザーゴーレムに狙いをつけて引き金を引いた。

 

 

ズガァーーン!!

ズガァーーン!!

ズガァーーン!!

 

 

飛行機からの攻撃とは思えないような音と共に、37ミリ弾はカイザーゴーレムの上半身へ吸い込まれていく。

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

「フハハハハ!!良いぞ!カイザーゴーレム!そのまま下種共を踏み潰してしまえ!」

 

魔王は高らかに笑いながらドイツ軍が逃げ惑う様を見ていた。

 

 

すると、上空からワイバーンの様な物が

数騎程こちらに向かっていた。

 

「あいつらがマラストラスを倒した奴らか、カイザーゴーレム!あの飛竜共を叩き落とせ!!」

 

ーーグゴゴ・・・

 

カイザーゴーレムがスツーカに顔を向けたしその時・・・

 

ズガァーーン!!

ズガァーーン!!

ズガァーーン!!

 

飛竜の翼から何かが爆発した。

 

 

そして、カイザーゴーレムの顔が木っ端微塵に砕け散る。

 

 

「!!?」

 

魔王は想定外の出来事に動揺を隠せない。

 

頭部を失ったカイザーゴーレムは、ゆっくりと後方に倒れていく。

踏まれていた戦車も足が離れた為、周りの兵士が扉を無理くり開けて戦車兵を救助しすぐさま逃げる。

 

 

◆◇◆◇

 

「カイザーゴーレム!すぐに奴らを潰せ!!」

 

魔王はカイザーゴーレムに治癒魔法をかけると、砕けた頭部のあたりに土が集まっていく。

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

「む? 頭が復活していくぞ?」

 

ルーデルは頭が治っていく様子を眺めていた。

 

そして胸部には何やら土とは別の石の様なものが埋め込まれていた。

 

(・・・弱点はあそこかな?)

 

 

ルーデルは再度ゴーレムに向かっていく。

 

 

◇◆◇◆◇

 

「さぁ!カイザーゴーレム!お前の実力を見せてみろ!!」

 

カイザーゴーレムも再度立ち上がろうとするが、その時ルーデル機がゴーレムに向けて、37ミリ弾を胴体に向けて撃つ。

 

ズガァーーン!!

ズガァーーン!!

ズガァーーン!!

 

今度は胴体に命中し、胸のコアが粉々に打ち砕かれる。

 

「なっ、バカな!!!」

 

コアを打ち砕かれたカイザーゴーレムは、土塊となり崩壊する。

 

 

「うわっ!!」

 

「ひい!!」

 

「ぺっ!ぺっ!」

 

ゴーレムが一気に崩壊した為、土埃が巻き起こりドイツ軍を包む。

 

 

◆◇◆◇◆◇◆

 

ゴーレムを屠ったスツーカ隊は残ったオークやゴブリン等の雑魚敵に向かって攻撃していた。

 

ドムドムドム!!!!

 

「ギャアアア!!逃げろー!!!」

 

降りかかる37ミリ弾に、ゴブリンやオークは隊列などそっちのけで蜘蛛の子を散らすようになって逃げる。

 

「貴様ら逃げるな!」

 

魔王は必死になって魔物達に叫ぶが、それも無駄と言わんばかりに魔物が散るように逃げる。

 

 

そうしているうちにも、魔王に向けて弾が降り注ぐ。

 

「アガッ!!」

 

止め処なく降り注ぐ37ミリ弾の威力に、防御魔法が追い付かず、魔王の体に数発程の被弾を許していた。

 

 

「・・・おのれぇェ!!!」

 

 

このままではジリ貧でやられてしまう。

 

赤竜がいればこの程度の攻撃でもなんともなかったのだが、人如きに使うまでも無いと侮ったのが痛かった、太陽の使いのあの海からの攻撃にも耐えられたのだからこの攻撃ぐらいなんとも無いだろう。

 

 

「侮っていたな・・・、しかしこの攻撃に耐えられるか?」

 

 

砲撃による砂塵で攻撃が一瞬だけ止んだ所を狙って、魔王は50メートル程まで跳躍した。

 

 

「おい!飛んだぞ!」

 

周りや兵士達が騒めく。

 

 

〈詩を紡ぎ静寂を迎えよ。汝福音をもたらすとき・・・・〉

 

 

漆黒の手から出たドス黒い炎が、蛇のように魔王の周りを飛び回ったかと思うと、大きな炎の球体となり頭上で渦巻いた。

 

「高射砲だ!高射砲を撃て!」

 

将校の叫び声の後に、飛竜がおらず暇を持て余していた8.8センチ高射砲が浮遊する魔王に狙いを合わせる。

 

 

ドン!!

 

動かず空中に留まっただけの魔王の目の前で弾が炸裂した。

 

 

「ーー我が使者。空のk ギャ!!」

 

浮力を失った魔王はそのまま地面に叩きつけられる。

 

 

「なんて威力だ・・!このままでは!」

 

 

魔王がまた体勢を立て直そうとしているのを見て、ロンメルは命令を出す。

 

「直接だ!8.8センチを直接奴に撃て!」

 

砲手は手持ちの対空弾の時限信管を目一杯にして魔王に向かい撃つ。

 

「Tschüss〈チュース〉!!」

 

「来るか!」

 

魔王は防御魔法を展開するも8.8センチの弾はそれを破壊し、魔王の体内にめり込むとその衝撃で爆発し、魔王は爆散した。

 

「っしゃ!!」

 

 

静寂が訪れた。

 

魔王という未知の敵がどうなったのか、

王国、ドイツ兵共に静止している。

 

 

するとドイツ軍の目の前に魔王の首が転がって来たので、兵士達は小銃を構えて様子を見る。

 

 

「お・・・の・・・れぇぇぇ・・・!!」

 

 

「「「うわぁああああ!!」」」

 

 

魔王が喋り出し警戒していた兵士は腰を抜かす。

 

 

「おのれぇぇぇぇぇ、太陽神の使いめぇぇぇぇ!!!1度ならず、2度までも我の野望を打ち砕きおってぇぇぇ!!!

 良く聞け!!下種どもよ!!!

 近いうちに魔帝様の国が復活なさる!!!おまえら下種の世界も間もなく終わるぞ!!!圧倒的な魔帝国軍によって、お前らは奴隷と化すだろう。はーっはっは・・・・」

 

 

怨嗟の声は次第に弱くなり、遂に魔王の頭は石化して崩れ落ちた。

 

◇◆◇◆◇◆◇◆

 

「しかしまだ我々の仕事は残っている」

 

 

ロンメルは総統閣下から伝えられた指令を思い出す。

「グラメウスを我がドイツのものにせよ」

 

グラメウス大陸を占有する、その為にも魔獣達を完全に殲滅しなければならないだろう、仕事は未だ終わらない。




予定ではもう少し続く予定でしたが、上手くいかずこれで魔王編は終了となります。


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間章&閑話
狂騒!第三文明圏!


新章突入です、今回は割と短めに終わらせる予定。


神聖ミリシアル帝国

 

港町カルトアルパス

とある酒場

 

酒を持った男たちが、酒場においてあるテレビジョンに注目している。

 

この世界広しなれども、こうして一般の店にテレビを常時放送できるのはムーと、ここ神聖ミリシアル帝国ぐらいなものだろう。

(パーパルディアは皇都内で試験運用、ドイツも同様にベルリン内での試験運用に留まっている)

 

◇◆◇◆

 

 

『こんにちは、世界のニュースの時間です。今日は重大ニュースを発表いたします。

 

最初のニュースは、アルタラス王国に対し、殲滅戦を宣言し三度の攻勢をかけていた列強パーパルディア皇国が、先日アルタラス王国に対し、「皇国の寛大なる慈悲によって王国を寛恕する」と宣言いたしました』

 

これを聞いていた客がそれぞれ呟き始める。

 

「パーパルディアが一歩引いた形か・・」

 

「しかしあれだろ、アルタラスは文明圏外だろ?それにパーパルディアが諦めるなんて、なんかあったのか?」

 

 

『続いてのニュースです、パーパルディア皇国はロデニウス大陸にある文明圏外国のドイツ国と国交を結びました。

その国交樹立の際パーパルディア皇国は、治外法権を認めない事を了承したとの事です」

 

つまりは列強が、ぽっと出の文明圏外の新興国に対し、対等の国として扱うと発表したのだ。

 

これは酒場の人々にかなりの衝撃を与えた。

 

「まじか、パーパルディアはどうなっちまったんだ?」

 

the・プライドの塊であったパーパルディア皇国が、二つの文明圏外国に対してこの様な対応を取っている事に客らは信じられなかった。

 

この日の酒場は、大きく変動するかも知れない第三文明圏の話題で持ちきりであった。

 

◇◆◇◆◇◆◇

その渦中のパーパルディア皇国

パラディス城

 

「なんなんだ・・これは」

 

机に山積みになった資料を見ながら、

皇帝ルディアスは頭を抱えていた。

 

その資料とはカイオスやパーラスによって調べ上げられた属領の統治機構による不正や暴行についてが書いてあった。

 

その中に、アルタラス統治機構の長官に配属される予定であったシュサクについても、前に配属されていた属領でもその土地の女性を適当な理由を付けて連れて行き辱めて殺したと、密告した内容が書かれていた。

 

 

これにはルディアスも激怒し、

 

「ふざけるな! 栄えある皇国の恥晒しどもめ・・・!!!」

 

ルディアスは即座に、持ってきた資料にあった者達に対し即座に拘束する様に通達した。

 

 

その後、シュサクの他、戦争時に、命令を無視して略奪行為に走ったベルトラン等、多数の統治機構役員や将校らが粛清されたという。

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

リーム王国

王都ヒキルガ

セルコ城

 

王の間では今、王バンクスとリバルが話をしていた。

 

「ー成る程、パーパルディアに攻め込むのであれば今が最善であるというのだな?」

 

「はい、現在パーパルディアは文明圏外国に対し二度も譲歩の姿勢を取っています、これは皇国の力に翳りが現れた事に他なりません。

それに属領支配によって支配されてる民を扇動すれば皇国軍を混乱させることも容易です」

 

しかも今は大規模な粛清で穴が空いてる地域が存在する、そこから侵攻すれば容易いと考えていた。

 

「成る程な、しかし皇国のマスケットや地竜に対して対抗出来るのか?」

 

王の不安材料といえば、皇国をここまで強大にした要因である2つの兵器だった。

 

しかしリバルは問題ないといった顔で、

 

「陛下。心配ありません、我々はこの時の為に十分に訓練して来ましたし、何より秘密兵器が御座います。

必ずやリーム王国に勝利をもたらし、

列強の座に導いて差し上げましょう」

 

この日、リーム王国国王バンクスの名において、パーパルディア皇国に対して戦争を行う事を宣言した。

 

◆◇◆◇◆◇

〜数ヶ月前〜

 

リーム王国 クボモリ港

 

草木も眠る丑三つ時・・・

 

リーム王国最大の港の一角に、一隻のガレオン船が寄港した。

 

しかし、その船には接岸できる最低限の光しか点っておらず、国旗の類も掲げられていなかった。

 

その船に向かって、これまた黒いマントを見にまとった男達が荷車を引いてやってきた。

 

 

すると、船内から出て来た男は集団に向かってこう話しかけた。

 

「4808」

 

「モンブラン」

 

「よろしい、これが例のブツだ。」

 

 

そういうと、中から沢山の木箱が運び出されてくる。

 

地面に置かれた木箱をマントの男達は、我慢出来ないとばかりにフタを開ける。

 

 

なんと木箱の中にはミニエー銃が入っていた。

 

 

「おお・・これが・・・」

 

「俺にも見せろ!」

 

「まてまて、あまり騒ぐな」

 

マント集団の中でリーダーと思われる男が制すと、船の男に向かって話す。

 

 

「我々の協力に感謝する。代金は荷車に積んである。」

 

「解った」

 

船員達は金貨の入った木箱を次々と船へ詰め込むと、再び船は暗闇の中に消えていった。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

中央暦1640年

8月9日

 

パーパルディア皇国

属領グーズ

 

属領統治軍の兵士が何時もの通り見回りをしていたその時であった。

 

 

バン!!

 

バンバン!!!

 

 

突如、何処からともなく発砲音が響く。

 

「ウワッ!」

 

そのまま兵士は倒れ、付近の坑夫達は混乱して逃げ回る。

 

 

「なんなんだ!今の音は・・・『バン!』ギャ!」

 

 

騒ぎを聞きつけた兵士が向かうも、何者かに撃たれて絶命する。

 

「て!敵襲!敵襲!」

 

皇国兵士は叫びながら大慌てで統治機構庁舎へ走って行く。

 

 

「いいぞ!今こそ我等が皇国を打ち破り

クーズ王国を取り戻すのだ!」

 

その様子を遠目で見ていたハキは興奮した様子で周りの仲間を鼓舞する様に叫んだ。

 

 

 



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七転八起

遂に今日ウェブ版が投稿されましたが、リーム王国はどの様に滅びるんでしょうかね。

どの様な結末を辿ろうと、国王が国王・・・それも仕方ねェか・・!!
リーム王国は所詮・・・最初から敗北者じゃけェ・・・!!!


「クーズ、マルタ、アルークの三つの属領が同時に反乱を始めた」

 

この報告だけならまだ、属領が反乱したところ統治軍によって返り討ちにあうだけだと、一笑に付していただろう。

 

「尚三つの地域、いずれも劣勢」

 

この報告を聞いて其々が驚きを交えて眉をひそめる。

 

 

「一体どうなっているんですか?!」

 

エルトが狼狽えた様子でパーラスに問う。

3つの属領が一斉に反旗を翻した事は、時を待たずして皇帝の耳に届くだろう、その時の説明の為に必死に情報を集めなければならない。

 

「未だ確実な情報は掴めておりません、

しかし噂によれば反乱軍は命中率の良いマスケットを持っているとの事です」

 

 

(マスケット・・さては・・ドイツか?)

 

エルトが現状で考え得る最悪のシナリオを頭に思い浮かべる。

 

ドイツによる属領に対しての武装援助。

しかしあそこまで強力な兵器を持っているドイツがそんな回りくどいことをするだろうか?

 

もし、皇国を陥したいのであれば戦艦できた時に皇都を吹き飛ばせば済む話である。

 

エルトが悩んでいるその時、汗塗れで一人の職員が飛び込んで来た。

 

「大変です!属領クーズにリーム王国が突如侵攻!クーズが陥落しました!」

 

 

「なっ!?」

 

◇◆◇◆◇◆

数時間前

 

属領クーズ

 

 

「やあああぁぁぁ!!!」

 

反乱軍が剣を構えて統治軍へと突っ込む。

 

「来るぞ!着剣!」

 

「うりゃああぁぉ!!」

 

統治軍もマスケットを構えて突撃する。

 

大通りは敵味方入り乱れて戦う地獄と化した。

 

 

◆◇◆◇

 

クーズ王国再建軍

司令部テント

 

遠くから聞こえる砲撃と鬨の声が薄汚いテントを揺らす、そのテントの中には

必死にとある場所に連絡を取ろうとしている通信兵と苦々しい顔でクーズ市街地の地図を眺めているハキとイキアの姿があった。

 

 

「おい、まだリーム王国と連絡がつかないのか?!」

 

ハキが焦った様子で通信兵に尋ねる。

 

「それが、何回繋げ直しても何も反応しないんです!」

 

通信兵は焦った様子で魔信をいじる。

 

すると、イキアは机を叩き捻り出す様に呟く。

 

「・・・嵌められたんだ、俺たちはリーム王国に嵌められたんだよ!」

 

イキアはハキの胸ぐらを掴んで叫ぶ。

 

「馬鹿な!現にリームは兵器を支援してくれたじゃないか!繋がらないのもきっと向こうがちょっと忙しいだけさ!すぐに繋がる!」

 

ハキは尚もリーム王国を擁護するが、イキアは更に語気を荒げる。

 

 

「元はと言えばハキがリーム王国の言葉にホイホイ乗ったのが悪いんだ!俺は前々から思ってたんだ!お前は思慮が無さすぎる!」

 

「いい加減にしろイキア!お前が冷静さを失ってどうする!」

 

 

イキアとハキが取っ組み合いの喧嘩をしていると、遠くから砲弾が落ちて来る音が聞こえて来る。

 

「っ!不味い、みんな伏se」

 

統治軍の砲弾がテントのすぐ近くに着弾し、テントが吹き飛ばされてしまった。

 

これによりクーズ王国再建軍のリーダであるハキと、副長のイキアが戦死。

 

クーズ王国再建軍は崩壊していくこととなる。

 

◇◆◇◆

 

属領クーズ

 

街は戦闘により廃墟と化しており、兵士達が残党狩りを行なっていた。

 

「そろそろ今日は残党狩りは終えてもいいだろう、あとは夜中の見張りを強化してまた明日だ」

 

隊長が兵士達に話していたその時であった、通信兵が焦った様子で隊長に報告してきた。

 

「隊長大変です、クーズ・リーム間の国境警備隊からの魔信でリーム王国軍が侵攻、戦闘状態に入っていると連絡が入りました。」

 

「なんだと?!」

 

その後、統治軍は直ちに戦闘準備を行い迎え撃ったが、先ほどのクーズ王国再建軍との戦闘により消耗した事や、統治軍と入念に準備された侵攻軍との練度の差は如何ともし難く、すぐに蹴散らされクーズはリーム王国の手によって占領されてしまったのであった。

 

◆◇◆◇◆

パーパルディア皇国

パラディス城

大会議室

 

今此処では、侵攻してきたリーム王国に対しての会議を行なっていた。

 

「リーム王国め・・・何という卑怯な・・・」

 

アルデは恨めしそうに呟く。

そこをルディアスは怒気をはらみながら問い掛ける。

 

「アルデ!!卑劣なリームはクーズから叩き出せるのだろうな!?」

 

「は!問題ありません。

現在リーム王国はクーズに留まっており、再侵攻の兆候は見られません。

我が軍も再編が終了している為現在クーズに向けて兵を移動中です。」

 

「わかった、あまり捕虜は取らなくても良いぞ。」

 

「・・・はっ!」

 

 

「それと・・リームの兵装は大体皇国の物に似ているのであったか?」

 

 

「? え・ええ、確かにリーム王国の兵装は皇国の兵装に準ずるものでありましたが・・・」

 

アルデは困惑した様子で答える。

 

皇帝はしばし考え込む。

 

 

「・・・ドイツに援軍を要請するというのはどうだ?」

 

 

その言葉を発した瞬間、会場にいた者達は雷に打たれた様なショックに襲われる。

 

「陛下!ご自分が何をおっしゃってるのかわかってらっしゃるのですか!?」

 

「そうです陛下!いくら何でもドイツに借りを作るとは!」

 

「列強でもあろう皇国が舐められてしまうかもしれないのですぞ?!」

 

 

周りからは再考を促す様に声を張り上げているが、勿論ルディアスも考え無しに発言したわけではなかった。

 

 

「ドイツに舐められてはいけない、そんな事は分かっている。

しかし貴様らも見ただろう、あのドイツの飛行船を、戦艦を、このままではいずれドイツの言い成りになってしまう。

そうならぬ為に我々がするべき事は敵を、ドイツの戦いを知る事、それに尽きる」

 

 

「・・・つまりドイツを皇国と兵装が似ているリームと戦わせて、皇国の兵装の弱点を洗い出すという事でありますか?!」

 

「そうだ」

 

 

(まさかその様な事を考えていたとは・・・)

 

エルトもこの様なことまで考えてなかった。

 

 

「ではエルトよ、ドイツに対して援軍を送ってくるよう要請してくれ、頼んだぞ」

 

 

「はっ、ははっーー!!」

 

 

こうして御前会議は終了した。

 

 

 

 



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喉元に短刀

ドイツ国

ベルリン

総統官邸

 

「ーという訳で総統閣下、パーパルディアは我が国に派兵を要求してきました」

 

 

「そうか、こちらから兵を出してやろうと思ったが向こうから来たのなら手間が省けるな。

コンドル軍団を送れ、指揮はフーゴに一任する」

 

ドイツはパーパルディア皇国に援軍として、爆撃機を主体としたコンドル軍団を派兵する事となった。

 

◇◆◇◆◇

 

第二文明圏

ムー

アイナンク空港

 

「さて、技術士官マイラス、戦術士官ラッサンの2名は本日付けで、観戦武官としてパーパルディア皇国へ派遣を命じる。」

 

「は、了解致しました」

 

マイラスはこう答えるも、些か腑に落ちない点があった。

 

「しかし何故、パーパルディアの戦争で技術士官の私が行く事になったのですか?」

 

マイラスは、技術士官である自分がわざわざ自国より技術の劣る第三文明圏の戦いに観戦武官として赴くのに疑問があった。

 

「ああ それはだな、あのドイツがパーパルディアに援軍を送ったらしい」

 

「本当ですか?!」

 

「本当だ、そこで2人には主にドイツの兵器や戦術を見てもらいたい。」

 

自国よりも遥かに巨大な戦艦を保有するドイツの戦いが己の目で見れると思うと気持ちが逸るが、それをなんとか抑えて

マイラス達は『ラ・カオス』へと乗り込み、ドイツに向けて飛び立った。

 

◇◆◇◆◇

パーパルディア〜クーズ間国境沿い

 

パーパルディア皇国

リーム討伐軍

司令部テント

 

 

討伐軍の司令官であるヴァロワは、援軍であるドイツ軍の動きについて説明を受けていた。

 

「・・・なるほど、ドイツの飛行機の攻撃の後に、我が軍が進撃すると・・・」

 

 

ヴァロワはドイツが先に攻撃する事に気に入らなかったが、ドイツが持って来た15センチ榴弾砲のサイズに度肝を抜かれていた為、怒る気力も湧かなかった。

 

◇◆◇◆◇

リーム王国軍

クーズ進駐部隊

元統治軍庁舎

 

「現在国境沿いで皇国軍の動きが活発になっているようです」

 

進駐部隊の隊長であるマルガはその報告を頷きながら聞いていた。

 

「皇国の奴らめ、とられたクーズを取り返すつもりだろうが、我々にはこの新兵器がある。負ける事はありえんよ」

 

ガハハと笑いながらミニエー銃を手に取る。

 

 

◇◆◇◆◇◆

リーム王国

飛竜偵察隊

竜騎士ペズン

 

「・・・ワイバーンロードに勝てるかねぇ、なぁ、お前はどうだ?」

 

ペズンは自信無さげに相棒のワイバーンに話しかける。

 

すると遥か向こうからとんでもない数のゴマ粒ほどの飛翔体が飛んでくるのが見えた。

 

「!!来た!」

 

ペズンは興奮した様子で魔信を手に取り

マイクに向けて叫ぶ。

 

「こちら03偵察隊ペズン!

皇国軍と思われるワイバーンを・・・早い!?」

 

ワイバーンよりも遥かに早く、高く飛べるhe111が9機程、クーズへ向かって飛んできた。

 

「かなりの高度を飛んでいる!とてもじゃないが追い付けない!」

 

ペズンは悲鳴のような声で報告を続ける。

 

そのペズンの事はまるで眼中にないとばかりに、爆撃機隊は悠々とクーズへ向かっていく。

 

◆◇◆◇◆◇◆

クーズ進駐軍

 

「こちらに敵が向かって来ている?ワイバーンはどうした?」

 

マルガはペズンの報告に対し、疑問を持つが、そうこうしているうちに何処からか低く唸るような音が聞こえてくる。

 

兵達は何かを叫びながらバリスタを用意し、坑夫達やその家族は怯えるようにして着の身着のままで逃げて行く。

 

只ならぬ事態にマルガは窓から空を見上げる。すると。

 

「な!何だあれは!」

 

ワイバーンよりも遥かにでかい怪物の様な何かが迫って来ている。

マルガが未知の敵に震えてると、9騎の怪物の底部から数個の物体が落とされた。

 

どんどんおおきくなってくる風切り音、

マルガはそこで己の死を悟る。

 

クーズの街は無差別的に爆撃され統治軍庁舎は瓦礫の山と化し、進駐軍もほぼ壊滅、市街地も灰塵と化した。

 

◆◇◆◇◆◇

 

「撃てェーー!!!」

 

5台の15センチ榴弾砲から耳を劈くような爆音と共に弾が撃ち出される。

 

 

目標は生き残ったリーム王国兵。

幾度と砲撃を繰り返す様を見て皇国軍砲兵は、自分達の使ってる大砲とは遥かに超越した大砲に恐怖を覚える。

 

 

「よし、進撃開始!」

 

太鼓の音と共に皇国軍は進軍を始めるも、既に砲撃と爆撃によって兵は逃げ出しており、戦闘らしい戦闘は怒らずスンナリとクーズを取り返すことが出来た。

 

◇◆◇◆◇◆

リーム王国

王都ヒキルガ

セルコ城

王の間

 

「リバル!貴様これは一体どういうことだ!?」

 

バンクスはクーズが皇国軍に取り返された事について激怒していた。

 

「・・は、申し訳ございません、現在迎撃の為に部隊を編成しておりますゆえ、今しばらくお待ちを!」

 

「もし我々が負けたら、どうなるのか知っておるのだろう?!」

 

「は!それは勿論、必ず皇国軍を叩き出します!」

 

◇◆

 

王との会話が終わった後、リバルの部下が報告にやって来た。

 

「リバル様、ミニエー銃の弾薬が足りなくなって来ていると前線から報告がございましたが、大丈夫でしょうか」

 

「?、その事ならフェルダスに一任しているはずだが?」

 

「はい、それがフェルダス様に何度確認してもすぐに来るから心配するなの一点張りで・・・」

 

「ふぅむ、しかし球は来ていないと・・」

 

「はい」

 

・・・一方その頃

 

 

「くそくそくそ!」

 

フェルダスは魔信の前で歯がぶっ壊れるほど口をくいしばり、何度も机を叩く。

 

(ドイツの野郎嵌めやがったな!!)

 

実はリーム王国にミニエー銃などの兵器を渡していたのはドイツだったのだ。

 

接触して来たドイツ人のいう事には、リームがドイツの武器を使ってパ皇を倒し、皇国をドイツとリームで上下半分こにしようと言われ、フェルダスはその案にホイホイと乗ったのであったが、ドイツの本心はリーム王国を占領すれば北にリーム、南にアルタラス王国と、パーパルディアが何か行動を起こしたら直ぐに攻撃出来るよう兵を配置できるようになるようにしたかったのである。

 

結局ドイツはパーパルディアを生かしておいて影で操り、列強という地位を上手く利用したいのであり、元より不満だらけの属領ひっくるめた皇国の領土なんて鼻から興味が無かったのである。

(領土的な問題はロデニウス大陸で間に合っている)

 

◇◆◇◆◇◆

 

その後リーム王国はドイツ軍の爆撃、そして皇国軍の総攻撃により想定よりも早く陥ちた。

 

これにより王族、政府関係者は軒並み死亡した事は想像に難くない。

 

◆◇◆◇◆◇

パーパルディア皇国

 

先進兵器開発研究所

 

「これが今回の戦闘によって得たデータです」

 

通称『兵研』と呼ばれている所に、リーム王国兵の被害の受け方を纏めた資料が運ばれてくる。

 

それにより兵研が出した結果は、砲弾の破片や爆発で飛んで来た瓦礫に頭をぶつけて死んだ兵士の殆どが皇国軍と同様の皮や布製の帽子をつけていた事、鎧兜を着用していた兵士は僅かながらに生存率が上がっていた事などを踏まえて、兵士にはヘルメットを身につける方が良い事や、服装は現在の紺や赤の軍服から、茶色を基調としたシンプルな物へ改めるようにと報告書を出し、その報告書を元に軍の兵装改革が行われるのであった。

 

◇◆◇◆◇◆

ドイツ領

リーム総督府

 

結局の所、パーパルディアが占領したリーム王国であったが、最終的な統治はドイツが行うものとなった、これにはアルタラス戦における戦力の消耗が一番の原因であった。

 

アルタラス戦により消耗した兵力を、統治軍によって補った所、属領の兵力に穴が空き、そこをリーム王国に攻め込まれた為、再度属領の防衛の為の兵を配置した所、残念な事にリームにまで兵を回す余裕がなくなっていたのである。

 

 

◆◇◆◇◆

パーパルディア皇国

第1外務局

 

エルトは、神聖ミリシアル帝国からやって来た外交官のフィアームと会議を行っていた。

 

「では、パーパルディア皇国は来年の先進11カ国会議にパンドーラ大魔法公国ではなく、「東方国家群」の長としてドイツ国を固定参加させたいという事ですね?」

 

「はい、その通りです」

 

「わかりました、ではそのように伝えておきます」

 

「あと少し宜しいですか?」

 

「どうぞ」

 

「前回の参加国であったレイフォルはグラ・バルカスという国家に滅ぼされてしまった様ですが、その抜けた席はどの様にする予定なのでしょうか?」

 

 

「その事ですね・・・レイフォルが抜けた席にはグラ・バルカスを入れるという話もありますが、野心的な面もあり、あまり好意的には考えられていないのが現状です。それに開催1年前にしてはあまりに切迫しているので最終的にどの様になるのかわかりません」

 

 

「成る程そうですか、わかりました。

ありがとうございます」

 

 

 

◆◇◆◇

後日、神聖ミリシアル帝国は先進11カ国会議において、ドイツ国とグラ・バルカス帝国を出席させる事を決定した。

 




これで狂騒!第三文明圏!は終了となります。
次回からいよいよ第三帝国と第八帝国が顔を合わせます。


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特別編◇世界情勢

現在の世界状況

 

ードイツー

 

我らがドイツは現在、ロデニウス大陸の大半を占める領土を所有しており、アルタラス王国には在ドイツ空軍基地があり、パーパルディアが何かやらかした際には直ぐに爆撃機を飛ばして皇都を灰燼に帰す為に待機中である。リーム総督府もほぼ同じ理由で軍が駐留している。

他国民が入国する場合は、クワ・トイネ、クイラ王国側から入国するようになっている。

防衛、衛生の問題からドイツの港からの入国は禁止されている。

グラメウス大陸は魔王を倒した後もドイツ軍による制圧作戦が進んでおり、エスペラント王国との接触も時間の問題である。

因みにリーム総督府が出来たあたりから宣伝省あたりが、国名をドイツ第三帝国と呼ぶ様になって来ている。

 

クワ・トイネ公国

 

ドイツの食料庫

 

クイラ王国

 

石油等でウハウハ

 

ロウリア王国

 

国民の大体は飢えてる

 

ロウリア総督府

 

旧ロウリア王国領。

伊達にロデニウス最大の国だったわけではなく、パーパルディアの船を入港出来るレベルの港を持っていた為、ロデニウス大陸の入口となっている。

 

 

フェン王国

 

ほぼ空気

 

リーム王国

 

パーパルディア皇国がドイツの力を理解して譲歩したのを皇国の力が弱まったと勘違いして攻め込み、返り討ちにあって攻め滅ぼされたバカ。(ドイツが絡んだ事もあるが)

 

リーム総督府

 

ロウリアとは違い、資源的には何の旨味もない土地。

いざという時のために空軍基地が置いてあるぐらい。

 

 

アルタラス王国

 

ドイツの兵器援助によって、三度に渡る皇国の侵攻軍を打ち破る。

 

パーパルディア皇国

 

幸運にもドイツとの戦闘を回避し、未だ列強の座についている。

 

ドイツによる砲艦外交により、その脅威を身に染みた皇帝ルディアスはドイツの兵器を研究し軍備改革を行う。

 

領地、属領についても、アルタラス王国のカストによる問題行動が露見してからは統治軍や大使の調査を行い、問題有りの人物は処刑を行なっているがその処刑される人が余りにも多く、アルタラス戦時に受けた被害の埋め合わせなどで属領などの防衛に穴が空いている状態である。その他には属領に任せっきりであった一次産業においても、出来る限り旧パールネウス共和国圏内でも賄えるように、ドイツから芋類の栽培方法の指南を受けている。

 

現在は実質ドイツの言いなり状態であり、ドイツから先進11カ国会議にドイツを固定で出す様にと、命令を受け神聖ミリシアル帝国にその様に頼んでいる。

 

 

神聖ミリシアル帝国

 

現在、使節団をドイツに向かわせている途中。

 

ムー

 

国交を樹立済み

 

 

レイフォル

グ帝に喧嘩ふっかけて返り討ち。そのまま滅亡。

 

グラ・バルカス

レイフォルを植民地化済み。

世界制覇を目論んでおり、技術水準が近い神聖ミリシアル帝国とドイツを警戒している。

 

パガンダ王国

 

大体こいつのせい

 

イルネティア王国

 

滅亡まで秒読み段階

 

◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 



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閑話  雀は空を制する夢を見るか?

ちと短めです。


1943年5月22日

その日Me262に試乗したアドルフ・ガーランドはこのような言葉を残した。

 

「天使が後押ししているようだ」

 

現在ドイツ空軍ではBf109の後続機としてFw109の配備を始めており、此方は順調に進んでいる。

 

しかしMe262は、わがままヒトラー君が雷撃型を作れと駄々を捏ね、戦闘機型の量産が未だ出来ずにいた。

 

◆◇◆◇

 

そもそも異世界転移してからの敵対勢力の航空戦力は、ワイバーンというBf109でも十分対処出来るものでありジェット機開発は当分不要論が叫ばれて来た。

 

が、その不要論が吹き飛ぶある出来事が起こる。

それはラヴァーナル帝国・・では無く、ミリシアル帝国のアルペジオ3の情報を諜報員から得た事だった。

 

何故アルペジオ3?只の鴨じゃないか。

と思われているだろうが、それは神視点だから言える事。

 

実際何も知らない状態であの複葉機やら世界の大半がワイバーンが主力の世界の中で、あれだけ洗練された機体を見れば誰でも危機感を覚えるという物だ。

 

が、その心配はすぐに吹き飛んだ。

フォーク海峡戦が起こったのだ。

 

ドイツと同程度の技術力を持つグラ・バルカス帝国の戦闘機に、蚊蜻蛉の如く叩き落とされるのを見て心配するほどでもないと胸を撫で下ろ・・・す所か更に研究を急がされることになった。

 

勿論グラ・バルカス帝国に備えてだ。

フォーク海峡での戦いでグ帝の技術がドイツ同等かそれ以上と判断され、ジェット機も開発されている恐れありと判断した為研究を急いだ。

 

実際にはジェット戦闘機は構想段階で実験にすら至っていない訳だが。

 

因みにラヴァーナル帝国については、生物兵器を運用し誘導可能なロケット、そして超強力な爆弾を保有しているという認識であり、その超強力な爆弾は街一つを消し飛ばすと言われてもいまいちピンと来ず、数で押せば問題なしと考えている幹部もいる。

 

◆◇◆◇

 

ロウリア総督府

兵器実験場

 

 

周辺に人家が無いとある基地の上空で、爆装のMe262が飛んでいた。

 

Me262は地上の目標に爆弾を落とすが、全く検討外れの場所に落ちた。

 

その後Me262が降り、パイロットに研究者が駆け寄ってくる。

 

「ルーデルさん如何でした?」

 

そう呼ばれた男は苦い顔をして降りて来るなり

 

「何だこれは?こんな機体で爆撃しろというのか?」

 

「仕方ありません、総統閣下の命令なのですから」

 

「こんなもんに乗って戦場に出るくらいならグライダーに乗ったほうがまだ敵に爆弾が当たる。いいか、俺が望む性能はな・・・・」

 

爆撃の鬼がジェット爆撃機にアドバイスを出し始めた。

後にこの機体が魔帝戦まで猛威を奮うことになるとはまだ誰も分からなかった。

 

 

 

 

 




ちょっとルーデルの時系列がおかしい事になってますが、まぁ些細な問題です。


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閑話 大国の援助

神聖ミリシアル帝国

帝都ルーンポリス

アルビオン城

 

皇帝ミリシアル8世の提案に、ベルーノは驚きの声を上げる。

 

「?!!、帝国の技術の一部をパーパルディアに提示するというのでございますか?!」

 

「うむ、現在パーパルディアはドイツの技術を吸収して軍備を増強しておる。このままではいずれパーパルディアはドイツの衛星国の様になってしまう事だろう。それだけは避けたい。そこで予は旧式のマーキュリー級魔導戦艦・グラファイト魔導巡洋艦の輸出及び技術提供を行いたいと思っている。」

 

「マーキュリー級ですか・・、確かに老朽化しておりますし問題ありませんが、それでもムーのラ・カサミを上回る性能ですので下手をすれば列強の順位が

変わってしまう恐れが・・・」

 

「しかし今のうちに手を打たなければ後々厄介な事になる。」

 

「・・分かりました。では段階的に技術を提示する事にいたします。」

 

神聖ミリシアル帝国はパーパルディア皇国に、魔導戦艦に魔導巡洋艦、完全な状態のイクシオン対空魔光砲に基本的な魔導エンジンの設計図等の基礎的な技術を提示する事を決定した。

 

◆◇◆◇◆◇

ムー大陸出兵前

 

パーパルディア皇国

デュロ工廠

 

そこでは、バルチスタ海戦によって実用性を証明した対空ガトリングの量産が始まっており、他には試作型の魔導エンジンを積んだトラックが試験を行っている。

 

そんなデュロのとある研究棟で数人の男達が会議を行なっていた。

 

「第5回 新型鉄兜 開発会議」

 

現在の皇国軍の装備は、18世紀のイギリスの戦列歩兵を思わせる三角帽子とコートである。

 

この様な装備では砲弾の破片が頭に当たっただけで御陀仏となってしまう。

 

当初はドイツ軍のヘルメットを使用する事を考えていたのだが、皇国のプライドからそれは見送られてしまった。

 

ならば1から作るしかないという事で、

兜をイメージしたヘルメットの作成に取り掛かることとなった。

 

そして試行錯誤の結果、ブロディヘルメットに酷似した皿型のヘルメットを採用する事となった。

 

 

◆◇◆◇◆◇

時はムー国出兵へと戻る。

 

皇都エストシラント

パラディス城

 

「壮観だな」

 

「そうですな」

 

皇帝ルディアスは、ルパーサと共にエストシラント沖に集結するムー外征艦隊を眺める。

 

艦隊の中には戦列艦の姿は無く、兵を輸送する客船の周りには外輪式の蒸気フリゲート艦に、魔導エンジンの外輪フリゲート艦、ドイツ製の装甲艦、グラファイト魔導巡洋艦、そしてミリシアルから輸入したマーキュリー型戦艦を旗艦にしたムー外征艦隊がエストシラント沖にいた。

 

「これ程の大戦力ならば、あのグラ・バルカスなど敵ではないだろう。我が皇国軍が敵を蹴散らしムーの救世主となるのだ。」

 

ルディアスはどうやらムーを救い、列強順位を出し抜く気でいるらしい。

 

 

「グラ・バルカスとの戦いで世界は変わる、いずれパーパルディアはムー、ミリシアルさえも超えてこの世界に平和と秩序をもたらす存在となるだろう。」

 

「・・・陛下」

 

「勿論、ドイツさえも超えてな」

 

エストシラント港は臣民達が割れんばかりの拍手喝采で見送っており、花吹雪が舞っていた。

 

◆◇◆◇◆

 

場所は変わってデュロ工廠。

 

ここで魔導エンジンの他にも魔導蒸気エンジンを使っての火砲牽引車の製作をしていた。

 

目指すは完全国産の名の下に、ボイラーからネジに至るまで全て国産で作り上げた。

 

研究員がボイラーにある魔法陣に並べられた魔石に火炎魔法を唱え、火は勢い良く燃え上がる。

 

「よし、火炎魔法の発動を確認。

しばらくしたらボイラーが動くだろ。」

 

 

待つ事数分。

 

ボイラーから煙が上がり、ギアを入れるとゆっくりとだが走り出した。

 

 

「おお、成功した。」

 

「後は魔導砲をしっかり引っ張れるかだな」

 

他の研究員が話している間も、操縦係は四苦八苦しながら動かしていた。

 

「何だこれ、舵の利きがクソ悪いぞ。」

 

「そろそろ曲がらないと壁にぶつかるぞ」

 

「わかってるよ」

 

「おい!危なくないか?ブレーキをかけろ!」

 

「かけてるのにブレーキの力が全然ない!」

 

既に壁は目と鼻の先にある。

 

「危ない!逃げろ!」

 

操縦係の必死の操縦も虚しく、牽引車は大通りの壁に激突してしまった。

幸いなのは速度が4キロしか出ておらず、死傷者がいなかったと言うことか。

 

 

翌日、ドイツの新聞の朝刊にこの事故が一面を飾っていた。

 

見出しは

 

「人は過ちを繰り返す」

 

 



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ハチとサン
世界会議①


そして一年が経った。

 

ドイツはミリシアル帝と国交を結び

 

イルネティアは滅び

 

ついにこの日を迎えた

 

中央暦1642年4月22日

 

◇◆◇◆◇

 

「第1文明圏トルキア王国軍、到着しました!戦列艦7、使節船1、計8隻!」

 

『了解、第1文明圏エリアへ誘導せよ』

 

港に着いた船を、港湾作業員が適切に誘導していく。

 

 

「トルキア王国・・アガルタ法国・・

ここら辺は代わり映えせんな・・・」

 

この港の責任者であるブロントは、管理局の窓から港湾を眺めながら呟く。

 

 

「第3文明圏 列強 パーパルディア皇国軍が到着しました! 戦艦3、戦列艦5!」

 

列強であるパーパルディア皇国が近くの文明圏外であるドイツの言いなり状態であるのは公然の秘密であった。

 

そんな話題の渦中である皇国の戦艦を見てブロントは驚いた。

 

なんとムーに匹敵する戦艦があるではないか!。

 

 

「やっとこの戦艦パールネウスの航海も板についてきたな。」

 

「はい、全く慣れぬ仕様でしたが他2隻の戦艦の航海も問題ないレベルになりました。」

 

艦橋ではレミールとエルトが話していた。

 

 

聖都の名を冠したこの艦は、ドイツ海軍が保有していたが旧式な為、練習艦に回された後に皇国に売り出されたシュレスヴィヒ・ホルシュタインだった。

 

その他はドイツが製造した前弩級戦艦レベルの回転砲塔の戦艦を2隻、(イギリスのデヴァステーション級に類似)

これは皇国に限らず第三文明圏の国々に売り出している。(もちろん馬鹿高い)

 

その他の戦列艦は元々皇国が保有しているものだ。

 

(パーパルディアがあんな戦艦を持ってるなんてな・・・、こりゃムーも焦るだろう・・・)

 

なんて考えていた時であった。

 

 

『な!なんだあの船は!』

 

『あれは船なのか・・・?』

 

『グラ・バルカス帝国国旗を掲げた巨大な船が一隻、そちらに向かっています!』

 

しばらくすると、余りにも巨大な城のような船が港内に入って来た、これには魔導戦艦を見慣れたブロントでさえ絶句した。

 

『グラ・バルカス帝国到着、戦艦・・一隻・・・のみ・・』

 

グラ・バルカス帝国軍の誇る全世界史上最大の戦艦『グレードアトラスター』

 

全長263.4m

 全幅38.9m

 満載排水量72800t

 出力 150000馬力

 

 

これには、ホルシュタインに乗っていたレミールもただひたすら口を開けて驚愕するだけであった。

 

◇◆◇◆◇◆

「・・・長!ブロント局長!!」

 

部下が凄まじい勢いでブロントを揺り動かす。

 

「やめろやめろ!なんだ一体!」

 

「ドイツです!ドイツ国が到着しました!凄まじいですよあれは!!」

 

ブロントは沖合の方に向けて双眼鏡を覗いた。

 

 

 

刮目せよ。

 

これが我がドイツ艦隊である。

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

『ド!ドイツ国到着!戦艦3隻!重巡1隻!』

 

監視員が震える声で報告する。

 

戦艦ビスマルク

 

戦艦シャルンホルスト

 

戦艦グナイゼナウ

 

重巡洋艦プリンツ・オイゲン

 

まさに、これでもかと言わんばかりの戦艦達だ、しかもその艦の全てが他国の戦列艦を圧倒している。

4隻の軍艦が列を成して入港していく様は圧巻としか言いようが無かった。

 

「グラ・バルカスとドイツ・・一体この世界はどうなっていくのだろう・・・」

 

ブロントの呟きは、ドイツ艦隊を一目見ようとする人々の騒めきに消されていった。

 

◆◇◆◇◆

 

「これより、先進11ヵ国会議を開催します。」

 

 帝国文化会館国際会議場で、会議の開始を始めるアナウンスが流れる。

 

 先進11ヵ国会議は世界の行く末を決める会議として、ほとんどの国が注目する会議である。

 

1週間の間行われるこの会議は参加しただけで、大変な誉であり、常時参加国は、

 

○神聖ミリシアル帝国(中央世界)

○エモール王国(中央世界)

○ムー(第2文明圏)

○パーパルディア皇国(第3文明圏)

 

 

である。

 

そして今回からパーパルディア皇国の要請でドイツ国を常時参加国にすると、今回の会議で認められる予定である。

 

 

◆◇◆◇

 

ドイツ外交官のクラウスとゲオルクは、末席に座り会議を高い位置から見渡すと、エルフや獣人、鬼の様な生き物もいる事から、つくづく異世界に来たと痛感する。

 

すると中心近くに座っている青白い肌をし、頭に角が生えており、そして身長は2メートルという大男が挙手した。

 

「エモール王国のモーリアルである。今回は何よりも先んじて、皆に伝えなければならないことがある。火急の件につき、心して聞いてもらいたい」

 

多種族に対し、差別的な体質である竜人族のエモール王国の代表が、殊勝な態度を取った。

 

「・・・先日、我が国は〈空間の占い〉を行った」

 

 

「・・・占い?」

 

「占いなんて事を大真面目に話すかね?」

 

ドイツ外交官にとっては占いとはオカルト的なもので、こんな場でそんなことを話したら普通は笑い者になる、そんな認識であった。

 

しかしこの世界において竜人族の秘儀『空間の占い』は、的中率98%以上の実質未来予知である為、各国の代表は息を飲んで聞き入る。

 

「結果、古の魔法帝国 ・・忌まわしきラヴァーナル帝国が近いうちに復活すると判明した」

 

その言葉を聞いた各国の代表は、段々と顔を青くし、次第に空気が凍りつく。

 

クラウス達はイマイチその意味がわからなかったが。

 

会場がざわつく中、モーリアウスは構わず続ける。

 

「空間の位相に歪みが生じており、いつ何処に出現するか正確には分からなかった、しかし4年ないし25年後までの間に出現すると考えている。今後、我らは不必要な争いを避け、軍事力の強化を行い、世界で協力してラヴァーナル帝国に備えるべきである」

 

クラウス達は占いという自らの常識では不確定な物で会議が動いてる事に困惑し、レミール含め各国の代表達は真剣な顔でお互い頷いていたが、ただ1人だけ様子が違った。

 

 

 

「くっ、くっくっ・・・ッハァーーーハッハッハッ!!!」

 

「どうした?」

 

「気でも触れたのかな?」

 

突如哄笑を始めた女性にクラウス達は辛辣なことを言う。

 

いきなりの事に会場内の視線が彼女に集まる、その視線は例外無く非難の色に満ちていた。

 

「ああ、いやいや失礼、私はグラ・バルカス帝国外務省、東部方面異界担当課長のシエリアという。魔帝だかラヴァーナルだか知らんが、過去の遺物を恐れるとは、その現地人のレベルに唖然としている所だ。そもそも、占いなぞ、そんなものを国際会議で発言する神経が私には理解が出来ないよ。」

 

 

いきなりとんでも無いことを言う女である、モーリアウスは勿論エルトやレミールでさえ豆鉄砲を食らった鳩の様な顔をしている。

 

ただ、クラウス達に至っては占いについては心の中で同意していた。

 

 

「誰かと思えば第二文明圏の文明圏外のグラ・バルカス帝国か。同じ新参者のドイツの様におとなしく聞かずに下品な笑い声といい、第二文明圏を好き放題に侵略するといい、下品極まる感性だな」

 

レミールがそう発言したが、後者については完全におまいう案件である。

 

「おや、パーパルディアとかいう国は

ドイツの言いなり状態になっていると噂で聞いたのだが。

未だ列強とかいう所にいるのか?調べた所我々が滅ぼしたレイフォルと似たような文明だったらしいが、片や滅亡、片や操り人形、そんな国が列強として崇め奉られているとは・・・世界会議、底が知れるな」

 

 

「なんだと!!」

 

レミールは真っ赤になってシエリアに怒声を浴びせる。

 

 

「レミール様、一旦落ち着きになられて!」

 

エルトの必死の制止の最中にもシエリアは挑発を行う。

 

「このような場で大声で怒鳴り散らすとは、やはりこの世界の列強言えどもモラルはこんなものか」

 

 

何を!?貴様のような蛮族にはわからないだろうが、エモールの空間の占いがどの様なのか分からないような奴が知った様な口を聞くな!!」

 

レミールとシエリアの壮絶な口喧嘩に、エルトはオロオロする。

 

 

「なんとまぁ、凄い会議だな」

 

「ええ、正に乱世といった所でしょうね」

 

暫くしてからエルトや議長、進行役の活躍もあって事態は収束した。

 

その時、ムーの外交官が手を挙げ、発言権を得る。

 

 

「我が国はこの場において、グラ・バルカス帝国に対する非難声明を提示します、同国への懲罰的処置として、2年以上の交易制限を発議します。理由は第二文明圏イルネティア王国への大規模侵攻です、ここ最近彼等はやり過ぎだ。」

 

そこに神聖ミリシアル帝国の大使も手を挙げる。

 

「確かにグラ・バルカス帝国は現状でも情勢を悪化させ過ぎている。このままでは世界秩序を崩壊させる恐れがある。

我が国はグラ・バルカス帝国にムー大陸全土からの即時撤退を求める、でなければ軍事介入せざるを得ないだろう」

 

すると、レミールもバスに乗り遅れるなと言わんばかりに挙手をした。

 

「我が皇国も非常識極まりなく、世界秩序を崩壊させる危険性のあるグラ・バルカスを放っていくことは出来ない。皇国としても有事の際には皇国軍本軍を派兵する事も厭わない」

 

 

どんどん列強国からの非難声明が出て来るが、当のシエリアは悠然と構えていた。

 

「1つ。勘違いしているようだから伝えておこう。我が帝国がこの会議に参加したのは国際協調などという生温い馴れ合いをするためでは無い!近隣地域の有力国の代表者が一堂に会するこの機会に通告しに来たのだ!」

 

シエリアは机を殴りつけると、高らかに宣言した。

 

 

「グラ・バルカス帝国帝王グラルークスの名において、貴様らに宣言する。

 

我らに従え。

 

我が国に忠誠を誓った者には、永遠の繁栄が約束されるだろう。ただし、従わぬ者には、我らは容赦せぬ。

沈黙は反抗とみなす!まずは尋ねよう。今、この場で我が国に忠誠を誓う国はあるか?」

 

 

ほとんどの国が絶句する。

 

 

「あの女、正気かね?」

 

「信じられませんね、世界を敵に回すなんて」

 

クラウス達も呆れた様子だ。

 

 

「いきなり何を言いだしたと思えば!

全世界に対して宣戦布告だと?!

新参者の蛮族が身の程を弁えろ!!!」

 

またしてもレミールがブチ切れる。

 

「やはり今すぐ従属を誓う国はいないか、まぁ当然だろうな、しかし帝王様は寛大だ。我が国の力を知った後でも構わない。その時はレイフォルの出張所まで来るがよい。

まあ、かなり自国が被害を受けた後になりそうだがな。

 

では、現地人ども、確かに伝えたぞ!!」

 

グラ・バルカス帝国の外交団は会議途中で退室し、カルトアルパス港から去って行った。

 

 

その日の先進11ヶ国会議は波乱のままに終了した。

 

 

開催日数、残り6日。




レミールVSシエリアの舌論!これが書きたかった!
これを書きたいがためにパーパルディア皇国を生存させ、もっというならばこの二時小説を書き始めたようなもんです!

満足!


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フォーク海峡戦①

中央暦1642年4月24日

神聖ミリシアル帝国

港町カルトアルパス

帝国文化館

 

「では、これよりドイツ国を列強に加えるか審議を行います。」

 

本日の審議内容はドイツを列強入りさせるか否かというものであった。

 

レイフォルがグラ・バルカスに滅ぼされた為、空いた席をどうするかという話になり、当初はいっそのことドイツとグラ・バルカスを列強に加えてしまえという意見もあったが、グラ・バルカスを列強にするには些か野蛮である為神聖ミリシアル帝国側は渋っていた。

そんな時にこのシエリアの騒動でグラ・バルカス列強入りは御蔵入りとなり、ドイツ列強入りがほぼ決まったのであった。

◇◆◇◆◇◆

 

ムー大使が挙手をして意見を述べる。

 

「我が国にとしては賛成だ、同じ機械文明を持ち、あの様な巨大な戦艦を持ち尚且つあの様なグラ・バルカスとは違い理性的だ。」

 

「我が神聖ミリシアル帝国もムーと概ね同意見だ。我々はドイツの列強入りを大いに歓迎しよう。」

 

神聖ミリシアル帝国の大使も同意見。

 

「・・パーパルディア皇国もドイツの列強参加を歓迎しよう、ドイツの様な国が加われば我らとしても心強い」

 

レミールも些か不服そうだが、ドイツの列強入りを認めた。

 

その後もエモール王国も列強入りを認めた。

 

4列強が認めた事により、それに反対する国はいない、その後は参加国全てがドイツの列強入りを認めた。

 

 

「皆さま、我々新参者であるドイツを列強に入れて下さり誠にありがとうございます、我が国は国際の秩序を守るべく邁進していく所存ですので何卒宜しくお願いします」

 

クラウスが議会に向けて当たり障りのない挨拶をした後、昼休憩となった。

 

◆◇◆◇◆

 

「これより、先進11ヶ国会議実務者協議を再開します」

 

朝から席を空けていたリアージュが戻っていた。議長席に立つ彼の顔色はかなり悪く憔悴している様だ。

 

「本日は朝から欠席しており、ご迷惑をおかけしました。議長国の神聖ミリシアル帝国から皆さまへ連絡がございます。先日、現在グラ・バルカス帝国の艦隊が我が国の西のマグドラ群島に奇襲攻撃を行い、地方隊が被害を受けました。」

第零式魔導艦隊が壊滅した事は伏せ、「地方艦隊が奇襲された」という体制を取った。バレたら国家の威信に関わる嘘なのでリアージュも冷や汗ものである。

 

「テロ対策として、本港カルトアルパスには、魔導巡洋艦8隻が警備についておりますし、空港基地から空軍がエアカバーを行いますので問題はありませんが、グラ・バルカス帝国が万が一、我が国本土に攻撃を加えた場合の事も考慮し、万全を期するために、本日の夕方までにカルトアルパスから全艦隊を引き上げていただき、開催地を東のカン・ブリットに移したいと思います。

事前に通告していた場所とは異なりますが、ご理解いただきたい。」

 

一瞬の沈黙の後、モーリアウスが起立した。

 

「あの無礼な新参者が攻撃してきたからといって、世界の強国会議ともいえる国々が尻尾を巻いて逃げるというのか?堂々と会議をすればよい。

我が国は陸路だが、ここに来ている者たちは、何処もそれなりの規模の艦隊を連れてきているのだろう?そのための、外務大臣級護衛艦隊だろう?魔力数値の低い人族のみで構成された、しかも文明圏にすら属していない国を相手に、強国が多数、戦わずして逃げるのは、情けないと思うぞ。我々は控えの風竜22騎を投入しようぞ。」

 

 

「「「おお・・・!」」」

 

その後、列強のエモール王国が迎え撃つと意思表明した事を皮切りに、トルキア王国、マギカライヒ共同体も参戦を表明した為、カン・ブリッドへの移動は取りやめになったも同然の空気となった。

 

 

◆◇◆◇◆

「どうでした?」

 

ゲオルグは、本国に連絡していたクラウスが席に戻って来たのでどうなったか尋ねた。

 

 

「どうやら外務省からは全艦にて迎え撃つ、そして出来る限り列強国数隻を保護してカルトアルパスから脱出しろとの事だ。 恩を売りたいんだろうな」

 

「とにかく我々は列車で避難する事になりました。艦隊にはその様に伝えておきます」

 

その後、グラ・バルカス艦隊が目前まで迫っており、最早各国艦隊が避難する事が出来なくなった為、議長国権限で〈臨時連合軍を組織して迎撃する〉案を採択した。

 

◆◇◆◇◆

 

カルトアルパス港

 

上空には神聖ミリシアル帝国の戦闘型天の浮舟ジグラント2が何機もの編隊を組み南の空へ向かう。

 

「マギカライヒ共同体機甲戦列艦隊、出港!」

 

「アガルタ法国魔法船団、出港!」

 

「ニグラート連合竜母艦隊、出港!」

 

中央世界、第二文明圏各国の艦隊が次々と出港して行く。

 

 

「パーパルディア皇国第1艦隊、出港!」

 

第三文明圏の列強パーパルディア皇国の戦艦艦隊が出撃する、今まで戦列艦だった為非常に新鮮な光景だ。

 

 

「ムー機動部隊、出港!」

 

戦艦2隻、装甲巡洋艦4隻、巡洋艦8隻、空母2隻が出港する。

 

「ドイツ国艦隊、出港!」

 

戦艦3隻、重巡1隻が出港する。

ブロントら港湾で働く者達、海軍の作業員達は胸を躍らせつつ、強国の艦隊を見送った。

 

◆◇◆◇◆◇

 

グラ・バルカス帝国

 

戦艦グレード・アトラスター

 

艦長であるラクスタルはこの作戦において今までに無い不安が生じていた。

 

なんといっても1番の不安はドイツ艦隊の存在である。

 

これまでの情報局の話によると、ムーの戦艦は我が帝国の数十年ほど前の技術であり、脅威ではないという話であった。

 

ドイツの方も、得ていた情報がドイッチュラント級装甲艦だった為、そこまで脅威ではないという結果であった。

 

しかし実際はどうだろうか。GAと技術的に同等の戦艦が、3隻もいるではないか。最初にそれを見た時は艦長、副長とも大いに焦った。いくら航空機の支援があるとはいえ、個々の艦は明らかにGAより劣るとはいえ、1度に3隻もの戦艦を相手にするのはGAといえど相当厳しい。

 

この事を直ぐにシエリアに報告、シエリアも馬鹿ではないのでゲスタに直ぐに連絡して作戦を変更する様に進言したが、

既に東部方面艦隊が出撃していた事、

何よりゲスタが帝国やGAを盲信していた為に作戦の変更は叶わなかった。

 

◇◆◇◆◇

 

「外交屋は何もわかっていない、割りを食うのはこちらなのだぞ!」

 

ラクスタルはこの世界に来てから連戦連勝で浮かれている祖国に危惧の念を抱く。

 

 

 

上空には東部方面艦隊の攻撃隊が編隊を組んでカルトアルパスへ向かっていた。

 

◇◆◇◆◇

 

どうやらミリシアルの航空隊は全滅したらしい。

 

ビスマルクのリンデマン艦長は、上空の警戒を厳とするとように指示を出す。

 

 

「しかし弾の数が心許ないな、これで何処まで戦えるか」

 

まさか戦闘に巻き込まれるだなんて予想していなかったので、弾は必要最低限しか持っていなかった、艦長の心配はそこであった。

 

(因みにロウリア戦時に、敵ワイバーンの体当たりを許した事により、対空機銃の増設が行われている)

 

 

すると、南西の空から微かな点が多数見えてきた。

 

「敵機確認!対空戦闘用意!」

 

けたたましいサイレンの音と共に兵士達が配置に着く。

 

 

遂にドイツ艦隊はグラ・バルカス航空隊と刃を交える事となる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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フォーク海峡戦②

グラ・バルカス帝国空母機動部隊から飛び立った航空機約200機は、ミリシアルの戦闘機を難なく撃墜し、カルトアルパスへ向かっていた。

 

 

その中の航空隊第3中隊の中隊長スバウルは、眼下の艦船の姿を確認する。

 

 

「帆船か・・笑えるな・・む・・あれか!」

 

スバウルは帆船が大半の艦隊の中で異彩を放つドイツ艦隊を確認した。

 

「眼下の敵に対し、攻撃を開始せよ!」

 

「攻撃開始!我に続け!」

 

 

スバウルの第3中隊のシリウス艦上爆撃機はドイツ艦隊に向かい急降下を開始した。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

「回避運動を取れ!」

 

リンデマン艦長は指示を出す。

 

ビスマルクに向かい、2機のシリウス艦上爆撃機が急降下してくる。

 

 

「来たぞーーーー!!!」

 

「対空射撃始めェェ!」

「撃てェーー!!!」

 

10.5㎝連装高角砲

3.7㎝連装機関砲

2㎝四連装機関砲

 

ビスマルクに備えてある対空火器が火を吹きはじめた。

 

スバウル機他僚機は光の帯の中に突っ込んでいく。

 

「うっ!来た!」

 

ケイン神国戦以来対空砲火にさらされる事が無かったため、スバウルの操縦桿を握る力が強くなる。

 

 

バン!!

 

 

スバウルの直ぐ近くで砲弾が炸裂する。

すると隣を飛んでいた僚機が内側から血に染まり、そのままバランスを崩して錐揉み状態となり、海面に叩きつけられた。

 

「あっ!!・・クソ!!」

 

 

スバウルは機銃掃射を行いながら近付くも、被弾を恐れて少し高めのところで爆弾を投下し離脱を開始する。

 

 

◇◆◇◆◇

 

「1機撃墜!!2機依然降下中!!」

 

「撃ち続けろ!!」

 

シリウスから放たれる銃弾を対空砲の装甲板が弾く。

 

 

「敵機!投下!!!」

 

投下された爆弾は風切り音を響かせながらビスマルク目掛けて落ちていく。

 

「来るぞ!」

 

幸い爆弾は海中に落ちた為被害はなかったが、噴き上がる水が甲板の上を滝の様に落ちてくる。

 

 

◇◆◇◆◇◆

パーパルディア皇国

戦列艦

エンドラ

 

この戦列艦にもシリウス艦上爆撃機が2機迫ってきていた。

 

「わああああ!来た!!!」

 

皇国兵は取り付けられたブルーノ機関銃を降下してくる爆撃機に向けて撃ちまくるも全く当たらない。

 

 

そしてシリウスから放たれる銃弾が、木製のエンドラの船体を穴だらけにするも、撃沈するには至らない。

 

「流石に機銃だけでは沈まないか。それっ!」

 

 

爆弾が投下され、エンドラは回避運動を取るも命中してしまい爆散する。

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

「ムーの戦闘機、消耗率50%!」

 

「ニグラート連合竜騎士団全滅!生存者無し!」

 

「敵の一部はカルトアルパスに到達、爆撃を敢行している模様!」

 

引っ切り無しに伝えられる情報は明らかにこちら側の劣勢を伝えるものばかりだ。

 

「クソ、何とかならんのか!」

 

シャルンホルストのホフマン艦長は焦った様子で叫ぶ。

 

 

すると、

 

「艦影確認!ケイル島南側から超巨大戦艦出現!艦数1!グラ・バルカス帝国の戦艦です!」

 

 

「何だと!!」

 

前方のビスマルクであまり見えないが、巨大な艦影が確認できる。

 

「ついに来たか!」

 

ホフマンは手を握りしめる。

 

 

◆◇◆◇◆◇ビスマルク

 

「前方グレードアトラスター!距離15㎞!!」

 

「主砲角度修正完了!発射準備完了!」

 

「撃てェーー!!!」

 

ビスマルクの前方2つの38㎝連装砲の砲弾は、真っ直ぐにグレードアトラスターへ吸い込まれるように向かっていく。

 

 

「4・3・2・1・・弾着〜〜今!」

 

 

今!の言葉と同時に砲弾はGAの周辺に着弾し、盛大な水柱を上げる。

初弾にしてはかなり距離が近い。

精巧な測距儀はドイツ光学技術の賜物である。

 

◇◆◇◆GA◆◇◆◇

 

マギカライヒの機甲戦列艦7隻を相手にしていたGAは、ドイツ戦艦に対して気付くのが少しだけ遅れてしまった。

 

その少しの遅れがアダとなった。

 

 

「ドイツ戦艦発砲!!」

 

 

「ーしまった!」

 

 

 

GAの周辺で水柱が上がり、GAが大きく震える。

 

艦橋にいたラクスタルもバランスを崩してよろける。

 

「被害は!?」

 

「被害は確認できません!敵弾は全て海に落ちました!」

 

 

「しかし高い命中率だ、向こうもレーダーを使っているのか? 一旦神聖ミリシアルへの攻撃を抑えてドイツへ攻撃を集中させろ」

 

「はっ!」

 

◇◆◇◆◇◆

パーパルディア皇国

戦艦パールネウス

 

艦長のボジロノは歯をくいしばる。

ここまで彼の艦が航空機やGAの被害に遭っていないのは、神聖ミリシアルの艦艇や戦列艦が被害を吸ってくれているからであった。

 

「前方には神聖ミリシアル帝国南方地方隊巡洋魔導艦隊、その後にはムー艦隊!

我々も後に続きフォーク海峡から脱出する!」

 

艦長はこれからの行動を伝えると、副長が不安一色といった様子で尋ねてきた。

 

「本当にうまくいくのですか?!」

 

 

既に戦列艦は攻撃機によって全滅、装甲艦も一隻撃沈されており、残りはパールネウスともう1つの装甲艦の2隻だけだ。

 

(最悪 ミリシアルとムーには囮になってもらうしかないな)

 

ボジロノは、到底グラ・バルカスには敵わないと判断し、ここから脱出する事だけを考えていた。

 

 

◇◆◇GA◆◇◆

GAとビスマルク、双方とも向かい合って進んでいるため距離がどんどんと詰まっていく。

 

 

「距離10キロ!角度修正、主砲発射準備完了!」

 

「テェーー!!!」

 

GAの主砲46㎝砲前方2基6門が火を噴く。

 

 

その様子をビスマルクは確認する。

 

 

「敵艦発砲!!」

 

「回避行動!面舵いっぱい!急げ!」

 

風切り音が聞こえた後、とてつもない水柱が上がり船体を濡らす。

幸いにも初弾だった為か命中弾は無かった。

 

「当たってたらやばかったな」

リンデマンが呟いた後、マイクを手に取る。

 

 

「これより我が艦隊は正面敵戦艦の右側に突入し、攻撃を行いながらフォーク海峡を脱出する!」

 

そう叫ぶと他のマイクに向けてこう言った。

 

「それと、向こう側のミリシアル、ムー、アガルタ法国、パーパルディア皇国の船に、我々が引きつけておくので無理せず脱出するように伝えておいてくれ」

 

 

リンデマンはマイクをしまうと、正面を向いて叫ぶ。

 

 

「さぁ、ここからが正念場だ!!」

 

 

 

 

 




次回はアガルタ法国の魔法もうまく使いたいですね。

あの魔法をGAに当てたとして被害はいかほどになるのか?


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フォーク海峡戦③

夜勤とかマジ勘弁。

頭まわんない。


「ドイツ艦隊全艦左舷側に向かって接近中!!」

 

監視係が悲鳴のような声を上げて報告する。

 

既にシエリアとラクスタルは堅牢な司令塔に移っている。

 

「前後3つの主砲を左舷側のドイツ艦隊に!残りの副砲は右舷側にいる余りを攻撃しろ!」

 

ラクスタルは巡洋艦や旧式戦艦であれば副砲でも対処可能と判断した。

 

「艦長、本当に大丈夫なのか?!」

 

シエリアが不安そうに尋ねる。いくら語彙を強めていようとやはり恐怖の為か年相応の少女の顔となっていた。

 

「大丈夫です。グレードアトラスターは絶対に沈みません。」

 

そして自分を鼓舞するかの様に独り言を呟く。

 

「この戦いは帝国の威信をかけた戦いなのだ・・・」

 

◆◇◆ビスマルク◆◇◆

 

 

「突入するぞ!総員気を引き締めろ!

砲撃準備用意!」

 

 

「砲撃準備用意!!距離7キロ!角度修正完了!」

 

「撃てェーー!!!」

 

 

超近距離から撃たれた4発のうち2発の砲弾は迷わずGAのバイタルパートと左舷側の対空砲が設置してある所に命中する。

 

 

「隙を与えるな!間髪入れずに攻撃するんだ!奴に隙を・・・!!」

 

ビスマルクから命令が発せられた瞬間、GAから閃光が放たれる。

 

「くるぞ!!」

 

艦橋の誰かが叫んだ瞬間、ビスマルクが途轍もない揺れに襲われる。

 

2基の46㎝砲から放たれた6つの砲弾のうち1つがビスマルクの重要区画にブチ当たった。

 

「グァッ!!!」

 

リンデマンは衝撃で転び手を打ってしまうも、痛がる暇もない為すぐに立ち上がり状況確認を行う。

 

「状況は!?」

 

「重要区画が撃たれましたが火災は起こってません!応急修復を行います!」

 

リンデマンは舌打ちをするとマイクを持って叫ぶ。

 

 

「魚雷だ!全艦魚雷を敵戦艦に向け発射!」

 

 

ドイツ艦隊からそれぞれタイミングをずらしながら計6本の魚雷がGA目掛けて進んでいく。

 

◆◇◆◇◆

パーパルディア皇国

戦艦パールネウス

 

ついさっきまた、前方のミリシアルの魔導巡洋艦が一隻撃沈された。

 

既にGAとは目と鼻の先である。

 

前方のラ・カサミもGAに砲撃を加えようとしている。

 

「どうしますか艦長?!我々も攻撃した方が宜しいのでは?!」

 

「どうせ当たったところであの化け物には被害は与えられんよ!返り討ちにあうだけだ!」

 

そう叫んだ途端、GAのドイツ艦隊側の方から数本ものどデカイ水柱が上がった。

 

◆◇◆GA◆◇◆

 

 

「重要区画、左舷第二高角砲に被弾、火災は確認されてません。高角砲が使い物にならなくなりましたが、それ以外は被害らしい被害は確認できません」

 

「うむそうか、やはり不沈艦・・・」

 

そう言いかけたとき、またも悲鳴の様な監視の報告が届く。

 

「11時の方向より雷跡を6つ!距離500!!接近!」

 

「戦艦が魚雷だと?!馬鹿な!」

 

魚雷を持っているのは後方の重巡のみだと勝手に判断してしまっていたラクスタルは大いに焦る。

 

「面舵いっぱい!!!」

 

 

必死にGAは舵を切るが、船体左舷中部と後部に魚雷が命中してしまう。

 

それと同時に司令塔にも尋常じゃないレベルの轟音と揺れが襲う。

 

「きゃあああ!!!」

 

シエリアの悲鳴が木霊する。

 

 

「報告します!!重要区画にて火災発生!怪我人の総数は未だ不明、消火活動を行なっています!」

 

「3番砲塔ターレットに不調を確認、射撃すると歪みが発生する恐れあり!」

 

「左舷に浸水を確認!!右舷水タンクに注水を開始します!」

 

次々と流れ込む被害状況にラクスタルは冷や汗を流す。

 

「前方主砲は継続して左舷ドイツ艦隊を攻撃、他副砲は右舷側の敵艦を撃て!」

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

「魚雷命中!!火災を確認!」

 

 

リンデマンはこのまま逃げ切れると確信する。

 

「よし、攻撃はそのままに速度を上げてここから離脱する!」

 

が、そんなに甘くは無いようだ。

 

「上空に爆撃機を確認!!こちらにやって来ます!」

 

 

「第2波か!全艦対空戦闘用意!」

 

◇◆◇◆◇◆

戦艦パールネウス

 

「既にミリシアルの巡洋艦は3隻、ムーも破損!しかし敵の攻撃はドイツに向いている、このまま離脱できる!」

 

ボジロノが希望を見出したその瞬間だった。

 

 

目の前を進んでいたラ・カサミの中央部から爆煙が当たり、徐々に陸地に向けて

速度を下げずに進んでいく。

 

「おっ?!おいおいどうした?!」

 

ボジロノは困惑した様子でラ・カサミを見る。

 

そして岩礁に乗り上げたのを見た後、GAを見る、副砲がこちらに向けて旋回していた。

 

 

「・・総員敵戦艦に向けて砲撃開始!!!急げーーー!!!」

 

パールネウスは生き延びる為攻撃を開始する。

 

 

◆◇◆◇◆

パーパルディア皇国

ボナンザ3世

 

ボナンザ3世とは、前々から言っていたドイツ製の量産型装甲艦で前後の主砲は30.5㎝の前装式である。

 

そんな旧式もいいところの船もパールネウスが砲撃を始めた為、続く様に砲撃を開始する。

 

艦長のガバナスもこの装甲艦が何処まで

あの化け物に対抗できるか、気が気ではなかった。

 

艦長はマイクを手に取ると砲術長に繋げる。

 

「砲術長! あの化け物の前の上のちっこい砲を狙えるか?!」

 

「こっち狙ってるやつですかい?!」

 

「ああ、そうだ!」

 

「あんなの狙えませんよ!」

 

「無理じゃ無い!当てろ!最後の1発と思って当てろ!」

 

「そんな無茶な!」

 

砲術長はブーブー言っていたが、ガバナスは魔信をそのまま切る。

 

「砲術長、頼むぞ!!」

 

◆◇◆◇◆

ボナンザ3世

 

「全く冗談じゃ無い!!」

 

砲術長は悪態をつきながらも、副砲に当てることだけを考えて測距儀を覗く。

 

幸いにも敵砲塔はパールネウスの方を向いており、心理的な負担は少ない。

 

 

・・・そして。

 

「角度修正!右に12度、仰角良し!

主砲発射準備完了!」

 

「ッ テェェーー!!」

 

ボナンザ3世より放たれた2発の砲弾は、

1発目は第2主砲に当たり跳弾、2発目は・・・見事に副砲に命中、煙が上がり動きを止めた。

 

「やりました!副砲に命中!沈黙を確認!!

 

この報告を聞いた艦橋は歓喜に沸いた。

 

 

◆◇◆シャルンホルスト◇◆◇

 

「敵雷撃機!こちらに向かって接近中!!」

 

リゲル雷撃機はドイツ艦隊にむかっていた。

 

しかし対空砲等の弾幕で1つ、また1つと雷撃機は落とされていく。

 

投下された魚雷は真っ直ぐにドイツ艦隊に向かうも回避運動でなんとか避ける。

 

が、非常に運の悪い事にシャルンホルストのスクリューに魚雷が命中してしまう。

 

最悪な事は続くもので、速度が急速に遅くなったシャルンホルストはGAに目をつけられ、放たれた46㎝砲弾が多数命中、爆煙を上げて沈んでいく。

もはや轟沈といって良かった。

 

これによりホフマン艦長は戦死、残った水兵達が海に脱出した。

 

◇◆◇GA◆◇◆

 

「くそッ!ここまでやられるとは・・・」

 

ラクスタルはついさっき副砲が潰された報告を受け悔しそうに机を叩く。

 

結局ドイツ艦隊にこっ酷くやられ、なんとか一隻沈めたものの、航空機の支援が無ければ今頃こちらがフォーク海峡の海底にいたかもしれない。そう思うとラクスタルは身震いした。

 

◆◇◆◇

 

そしてシエリアはというと、絶え間なく続いた砲撃による衝撃に怯え震えていた。

 

いくら重装甲の司令塔といえど、砲撃によって重く腹の底に響く様な振動が彼女の神経をすり減らしていった。

 

◇◆◇◆◇

 

グレードアトラスター第一艦橋

 

「大方終わったな・・・」

 

「ええ、」

 

ラクスタルと副長が疲れた顔で外を眺める。

 

「敵艦の姿はもうない、残っている雑魚も粗方片付けた、大体安全だろうから

お嬢様をお連れしても大丈夫だろう。」

 

 

そういうと、副長がシエリアを連れて来た。

 

シエリアはかなりのストレスの為か、お腹に手を当てぐったりした様子であった。

 

ラクスタルはシエリアに双眼鏡を渡すが、シエリアは手に持つだけでなかなか覗こうとはしない。

 

(・・・まぁ、あんな殆ど戦場に出た事がない人間があんな攻撃に晒されればな・・・)

 

ラクスタルはシエリアに同情する。

 

そんな時、シエリアが双眼鏡をある方向に熱心に向ける。

 

その方向を見ると、僅かながらにうごめく人影を発見する。動きから見るに生存者の様だ。

 

「艦長、まだ時間がある様なら出来る限り駆逐艦で救助してほしいのだが、可能か?国を守る為に戦った彼らに罪は無い。」

 

 

「ほう・・・」

 

ラクスタルはシエリアの考えに感心する。

 

その後駆逐艦により各国の兵士は救助され、グラ・バルカスの捕虜となる事になった。その時捕虜は丁重に扱うと伝えたが・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 



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返還交渉

フジロックから1週間、あの興奮冷めぬあのヒラサワのライブから1週間。 そして帰りに眠たくてそのまま山壁に擦った事故から1週間。





グラ・バルカス帝国

帝都ラグナ

外務省

 

「以上、神聖ミリシアル帝国での先進11カ国会議と、それに伴う戦況の報告になります。」

 

シエリアは上司であるゲスタに報告書を渡した。

 

親は何を思って名前を名付けたのかは知らんがゲスタという名前の通り、吊り上がった目にシワでたるんだ顔と、いかにも性格の悪そうな姿の男は報告書を一瞥すると、直ぐにシエリアの方を向く。

 

「ところで捕虜は全部で92人にも上るようだが、何か情報は話したか?」

 

「協力的な者は一部いますが、何も話さない者が多数です。 ドイツの軍人などは殆どが話しません、優秀な軍人を育成している様です」

 

 

「そうか、情報が引き出せない捕虜は利用価値がないな。

そうだシエリア、恐怖を引き立たせる為に公開処刑を行え。

全世界に向けて見せるのだ、我が国に歯向かう者どもの末路をな。」

 

それを聞いたシエリアは顔をひきつらせる。

 

「そ、それは捕虜を人道的に扱うというのが帝国の方針のはずです。

それに捕虜については軍部の方針で外務省が口出しできる案件では・・・」

 

「早期にこの世界に盤石な基盤を築く。

その為には蛮族共に少しぐらい合わせても問題ない。それにこれは皇帝陛下のお言葉だ。私が言えば軍部も動くよ」

 

 

「しかし!グラ・バルカスが蛮族と同じ次元に立つ事になるのは!」

 

「わかっていないな、皇帝陛下は最も確実な方法で敵国を降し、反抗する気さえ失わせようとお考えなのだ。

しばらくしたら我が帝国はこの世界の超技術大国であるムーを攻めるだろう。

『ムーなら大丈夫』『神聖ミリシアル帝国は最強』などの認識を改めさせねばならぬ、敵性国家はどの様な目にあうかということをな。」

 

 

「今後捕虜が発生した場合、いちいち取り調べるのは非効率だ。

「情報が引き出せないと判明したらすぐに殺される、しかし協力的にすれば生き延びられる」

その様な認識にしなければならない。

だから今回は見せしめも兼ねて処刑する、早期決着の手段のためなら蛮行すらも認める、という皇帝陛下の意思の表れだ。これは全ての帝国臣民の未来だ。」

 

 

ゲスタは、万が一にも自国が負けた場合、今までやってきた事の全てが自国、自国民に全て跳ね返ってくる事など考えもせずスラスラと言葉をたて並べる。

 

「シエリア、お前は若い。自らの正義に反すると思っているのだろう。だがお前は帝国の将来を左右する外務省の課長だ。仕事に私情を挟むな。これは決定事項だ。現時点で協力しない捕虜を公開処刑しろ」

 

「はい・・・わかりました」

 

シエリアは力なく答え退室する。

 

 

 

「フン。これだから女は御しやすい」

 

 

この判断で無関係の国民が血を流す事になるとも知らずに。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

中央歴1642年6月15日

 

ドイツ

ベルリン

総統官邸

 

「外交官はグラ・バルカスに向かったか。」

 

「はい、総統閣下。例の部隊も既に海域についている事でしょう」

 

「ふふふ、奴らの慌てる顔が眼に浮かぶ様だ。」

 

ヒトラーは少し口角を上げて笑った。

 

◇◆◇◆◇◆◇◆

 

グラ・バルカス帝国

レイフォル地区

レイフォリア

 

ここレイフォリア地区の外交窓口にクラウスがやって来た。

 

今回グラ・バルカス帝国外務省窓口には、ドイツの他4カ国。

 

◯神聖ミリシアル帝国 外務省西部担当

外交部部長 シワルフ

 

◯ムー 外交官 ヌーカウル

 

◯パーパルディア皇国 第1外務局長

エルト

 

◯アガルタ法国 外務卿 リピン

 

5カ国の大使は合流後、魔信で連絡して入国する。

 

◆◇◆◇◆

 

レイフォルの街は未だに荒れ果てており、住民の目は死んでいる。

 

(ドイツと戦っていれば皇国のこの様になっていたかもしれない・・・)

 

エルトはこの光景を眼に焼き付ける。

 

「これじゃあ復興が進まんわけだ」

 

住民を見たクラウスは呟く。

 

現地行政府に着き10分ほど待たされた後、ノックもなしに扉が開き眠そうな半眼、平坦のっぺり顔男が現れた。

 

全身に不吉な空気を漂わせている為、クラウスは顔を顰めて、どうすればこの様な醜悪な生き物を産み落とせるのかと考えていた。

 

「これは世界の強国の皆さん、雁首揃えて良く来られた。どういったご用件だ?」

 

外交官・・・いや、社会人・・・人間としてとして非礼極まりない発言にシワルフ達の顔が強張る。

 

そんな中クラウスは使えることはさっさと伝えるべく口を開く。

 

「大ドイツ国外務省のクラウスだ、我がドイツ国政府は貴国の行った武力攻撃に対し発生した捕虜の返還、賠償を要求する」

 

 

するとダラスは瞼を僅かに見開きぐいと詰め寄る。

 

「ほう、あなたが我々と同じ転移国家のドイツ国か。

貴国は戦艦を3艦持ちながら我らの戦艦1隻の前に敵前逃亡したと聞いている。同じ転移国家といえど兵士の士気にここまで差があるとは、弱腰な軍を持つ国の外交官などやってられんだろう。」

 

ダラスは下から覗く様に、口の端を小さく歪めて挑発する。

 

それに対し、クラウスは憐れむような冷たい目でダラスを見下ろす。

 

「貴国は先進11カ国会議で宣戦布告と取れる発言をしたが、世界を敵に回して勝てるつもりなのか?」

 

「 クラウスといったか?君はカルトアルパス戦の交戦記録を読まなかったのか?弱腰、弱小国家が集まったところで所詮烏合の衆。弱者は弱者のままだ。」

 

双方睨み合いが続いていたところ、後ろの扉が開き、1人の女性が入って来た。

 

「シエリア様・・・」

 

「ダラス、ここからは私が責任を持って交渉を行う。」

 

「しかし、この場合の担当は」

 

「命令だ、相手はこの世界の連合といっても差し支えない。お前の手には余る」

 

「・・・はっ、わかりました」

 

 

◆◇◆◇◆

 

ダラスの座っていた席にシエリアが座る。

 

 

「話は裏で聞いていた、帝国の考えは先日の会議で説明した通りだ。変更は無い」

 

 

クラウスはシエリアの凛とした態度に幾らか安心感を覚える。

 

そして懐からある用紙を取り出す。

 

「そうですか、実は政府からこのような物を預かっております。」

 

クラウスはその用紙を広げると、声高らかに読み上げる。

 

 

「本日 中央歴1642年6月15日。

大ドイツ国は、グラ・バルカス帝国のだまし討ちとも取れる卑劣きわまる攻撃をして来た貴国に対し我が国は正々堂々と今ここに宣戦布告する事を言い渡す。

 

本日11時30分を以って戦闘状態に突入する。」

 

我々(読者)(ポーランド )(ソ連)からしてみれば。

 

「正々堂々とかお前らが言えるかよ、フザケンナよテメー」

 

と言いたくなるが、いまドイツは正義は我にありと言わんばかりだ。

 

これを聞いたシエリアは眉を寄せてダラスは激昂する。

 

「なっ、卑劣きわまるだと?!貴様ッ!」

 

 

「ダラス、落ち着け」

 

シエリアは制するがダラスの怒りは収まらない。

 

「しかし、貴様を見ているとグラ・バルカスという国は外交官になれるハードルは低いようですな。貴方のように他人を詰り、煽り、侮蔑する様な事が喋れば宜しいのですから。そうなれば外務大臣は猿ですかな?」

 

これを聞いたシエリアは眉をキッと上げて怒りを表し、ダラスなんかは顔が真っ赤だ。

 

 

「まぁ、我々の要件はこれで以上。

してシエリアさん捕虜の人権は・・・認められるんでしょうな?」

 

「なっ、それは・・」

 

シエリアは言葉に詰まる

 

「聞こえなかったのですかな?」

 

シエリアも顔を幾らか赤くしながらも答える。

 

「その事は我が国が決める!お前たちに答える義務は無い!」

 

 

「そうですか」

 

あまりに素っ気ない返事に苛立ちが募る。

 

そんな時エルトが口を挟む。

 

 

「捕虜の件はわかりました。

グラ・バルカス帝国は何を望むのですか?」

 

シエリアは息を整えて答える。

 

「ふぅ・・・それは我が軍門に下る事、当然国家の主権は認めん」

 

「植民地ということですな」

 

「早い話がそうだ」

 

「しかしその通告を世界が呑むとでも?」

 

 

「勿論今は要求を呑むとは思っていないよ。幾度と無く戦火を交え、敗退を重ね我が帝国の実力を知った時、我が国の提案を飲まざるを得ないだろう。どんな事になろうともこの窓口は開けておく、国民のためを思うのならば早めに決断するのだな」

 

こうして捕虜返還交渉会議は決裂し、お互い部屋を出て行く。

 

すると最後にダラスがこちらに振り返り

口を開く。

 

「この交渉はお前たちにとっては非公式らしいが、我が方にとってみれば実質的に公式な国と国の会議だ。個人的なお前たちの感想を少し述べさせて貰おうか。

烏合の衆がいくら集まっても、我が帝国には勝てない。帝国は、今後すべての国々をその配下に治める事となろう。貴様らもこの世界の列強・・・ああ、すまない。元・列強としてプライドはあるだろうが、帝国に降るか、弱者連合で、国亡ぶまで戦うか……本気で考えた方が良い。

 まあ、お前ら蛮族に考える頭があるとは思えないがな。」

 

 

ダラスは殺意に満ちた獣のような顔で

外交官達に喋る。

 

それを聞いたエルトが口を開く。

 

「そうですか、ご忠告感謝します。

では私からも一言、貴国は現実が見えていない。知性の欠片も無い蛮族のような言動、国際会議への非常識な武力介入、そして碌な調査もせず全世界に宣戦布告をする。ルディアス様は聡明なお方だったが・・・、果たして貴国の皇帝は潮時を見極める事が出来ますかな?」

 

 

エルトに国家、皇帝陛下を侮辱された

ダラスは顔を真っ赤にする。

 

「きっ!貴様!皇帝陛下を侮辱する気か?!」

 

「いえ、物事をしっかりと見極めなければ重大な間違いを犯し、最悪国が滅びる事になりかねないという事を言ったまでですよ」

 

エルトはクラウスをチラと見て言った。

 

4カ国の大使とグラ・バルカス帝国の会議はこうして幕を閉じた。

 




パーパルディアを前面に押し出すスタイル。

ここでもレミールを出したかったが、流石に皇族をここまで引っ張り出すのは如何なものと思い出しませんでした。


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終わりの始まり。

今日は調子が大変よろしい


中央歴1642年6月15日

11時28分

レイフォル沖

海中

 

 

ひっそりとUボートが3隻潜航しながら進んでいる。

 

船員の見る潜望鏡にはグラ・バルカス国籍の輸送船団が見えている、どうやら駆逐艦一隻が守っているらしいが、まさか敵がここまで来るとは思っていないようで、形だけの護衛のようだ。

 

「何が起こったか分からないうちに死ぬ。輸送船の乗員には申し訳無いが此処で死んでもらう。」

 

潜水艦の艦長は腕時計を見る。

既に発射管に注水し、あとは発射指示を出すだけだ。

 

 

・・・56

・・・57

・・・58

・・・59

 

11時30分

 

「魚雷発射ッ!」

 

バシューーー・・・・

 

魚雷は吸い込まれるように護衛の駆逐艦に向かって行く。

 

◇◆◇◆◇◆◇

グラ・バルカス帝国海軍

駆逐艦

 

レイフォルで加工した缶詰や食料を本土に運ぶ輸送船団を護衛する駆逐艦の甲板上で2人の船員が話していた。

 

「いやぁ、いやになる程何も起こらないね」

 

「あぁ、全くだ」

 

「海魔ってのがいるって聞いたんだがね、現れないもんだ」

 

「あんな物が現れてたまるかい」

 

1人の兵士は笑いながらタバコに火をつける。

 

「俺はこう・・・化け烏賊に向けて銛をこうバシュッ!・・・・と・・・?」

 

「どうした?」

 

急に銛を投げる格好で言葉が途切れ途切れになった兵士を不思議に思っていると、ポカンとした様子で海面を指差した。

 

 

「あれ」

 

「ん?」

 

海面には二本の線が真っ直ぐこちらに向かっていた。

 

咥えていたタバコを落とす。

 

「え」

 

「あ」

 

声を出す間も無く魚雷は駆逐艦に命中、

油断しきっていた駆逐艦は修理する暇もなく轟沈する。

 

「駆逐艦轟沈!」

 

「よし!全艦浮上、甲板砲で輸送艦を砲撃!」

 

【挿絵表示】

 

 

3隻は浮上し、甲板についてる88ミリ砲で非武装の輸送艦に向けて撃ちまくる。

 

輸送艦隊はバラバラになって逃げるが、ものの数十分で全艦沈められてしまう。

 

「全艦沈没を確認」

 

「よし、戦利品を回収後本国に帰還だ!」

 

この攻撃はグラ・バルカスに対して攻撃がここまで届くというデモンストレーションの意味合いが強く、攻撃後は直ぐにドイツに帰還する事になっていた。

 

船員は笑顔で沈んだ輸送船から浮かんで来た酒や缶詰の入った木箱を回収すると、即座にムー近辺の島に作った補給基地を経由し、ドイツへ帰っていった。

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

ドイツ

ベルリン

総統官邸

 

総統執務室ではテレビが運び込まれ、

ヒトラーと大臣、党幹部はグラ・バルカスの放送を待っていた。

 

確実に方式が違うであろう電波通信を、

ドイツで見れるように繋いだテレビ技師には賞賛の声を贈りたい。

 

閑話休題

 

ともかく「重大な通達事項がある」とグ帝から伝えられているため、少なくともテレビの設置されている都市では皆テレビを食い入るように見ているだろう。

 

 

◆◇

 

シエリアは本来国に返すべき捕虜の処刑を宣言する役割を与えられた。

 

本国からの処刑を全世界に発信せよという、心無い残酷な命令に心を痛める。

 

 

(こんな事をする為に外交官になった訳では無い・・・!これでは暴虐な帝国の道化だよ!)

 

シエリアは祖国である帝国に微かな怒りを覚える、しかしそれでもやらなければならない。

 

 

「・・・捕虜たちよ、今からお前達の処刑を行う。何か話したければ申し出るが良い」

 

 

すると数人が手を挙げる。

 

端から話を聞き、最後の1人であるドイツ兵になった。

 

 

「最後だ、話してみろ」

 

ドイツ兵は息を荒くしながら話し始める。

 

「お、俺には家族がいるんだ、子供もいる。妻のお腹に2人目の子もいるんだ!」

 

「・・・」

 

シエリアの心がチクリと痛む。

 

「あんたら言ったじゃないか!人道的に扱うって言ったじゃないか!何だこれは!?見せしめ?!見せしめの処刑か?嘘つき!お前らは嘘つきだ!いいか?俺たちをこんな形で殺しても、決してドイツはお前たちに屈したりしないよ。

むしろお前達の街が焦土と化すまで戦うだろう。」

 

「・・・終わりか?」

 

「・・最後に家族に愛していると言いたい。」

 

「・・・ッ」

 

◇◆◇◆

 

「帝国に敵対する意思を持つ、全てのものに告げる!捕虜になりながら帝国に従わなかった者達の処刑をこれより行う!

この者どもの末路を目に焼き付けよ!

そして我が国を恐れるのならば降れ!

我が軍門に降れば永遠の繁栄を約束しよう!・・・降らなければ彼らが未来のお前達だ!!」

 

言いながらシエリアの表情は悲痛なものに変わっていく。

 

(殺したくない・・・私は殺したくなんかないんだ!)

思わず目尻に涙を流していた。

 

「構えッ!」

 

処刑人が銃を構える。

(ーー神様、ごめんなさい。ーー)

 

「撃てっーー!!」

 

 

発砲音の後、捕虜達の体が血しぶきを上げ崩れ落ちる。

 

「・・・覚えておくがいい。帝国に逆らう者達は皆こうなるのだ。

お前達が賢明な判断をしてくれると信じている」

 

 

こうしてグラ・バルカスの放送は終了した。

 

執務室では幹部達がグ帝のやり方に怒っているなかただ1人、ヒトラーだけが

口角を上げて笑っていた。

 

 

◆◇◆◇◆◇◆

 

街には多数の看板が掲げてある。その内容は魔女の様に醜い顔になっているシエリアがナイフでドイツの領土をズタズタに引き裂いており、上には(野蛮なシエリアに好きにさせるな!)と書いてある、いうものだ。

 

テレビでシエリアが処刑宣言をしていた為、ドイツからプロパカンダの格好の的となっていた。

 

(劣等人種を殲滅せよ!)

 

(滅せよ!グラ・バルカス!団結せよ!ドイツ民族!)

 

(悪党シエリアに聖なる鉄槌を!)

 

(民衆よ!武器を取れ!)

 

数々の標語が書いてある段幕掲げた民衆が松明を持って行進していた。

 

更にラジオからはヒトラーの演説が流れてくる。

 

「奴ら 、グラ・バルカスは我が国の勇敢なる兵士を最も残虐なる方法で殺害した。

そしてグラ・バルカスはドイツ国民が勝利への信念を失ってしまったと主張する。しかし奴らは分かっていない、この愚かな行為が我々ドイツ民族を一致団結させ、結果的に自分達が窮地に追い込まれるということを。

この戦いはこの世界における世界秩序を守る戦い!そしてゲルマン民族の共同体を守る為の戦いである!

愚かなるグラ・バルカスを攻撃せよ!殲滅せよ!撲滅せよ!神は我々に味方している!決してゲルマン民族は負けない!

偉大なるドイツの為!誇り高き輝く未来の為!共に戦おうではないか!!」

 

 

「「「「「「Sieg Heil」」」」」」

「「「「「「Sieg Heil」」」」」」

「「「「「「Sieg Heil」」」」」」

「「「「「「Sieg Heil」」」」」」

「「「「「「Sieg Heil」」」」」」

 

ドイツはグラ・バルカスへの憎しみを増やしていき戦争に突入していく。

 

◆◇◆◇◆

所変わってパーパルディア皇国

 

パーパルディアでも魔導通信機によって、処刑の様子が放送されていた。

勿論処刑された捕虜の中には皇国兵も混じっていた。

 

 

「〜〜〜〜!!」

 

レミールは皇国兵が処刑されるのを見てショックを受ける。

 

「〜〜なんだあの女はぁ!!!!!!」

 

顔を真っ赤にして怒鳴り散らす。

 

「絶対に絶対に絶対に!!!ゆるざん!!!アイツだけは絶対にゆ゛る゛さ゛ん゛!!!」

 

激怒の余り暴走しているレミールを他所に、ルディアスは立ち上がり宣言した。

 

「度重なる暴虐を重ねる彼奴らを生かしては置けぬ!あの様な輩は根絶やしにしてしかるべし! 今ここに、パーパルディア皇帝ルディアスの名において、グラ・バルカスに対する宣戦布告、及び殲滅戦を許可する!」

 

王の間は歓声に沸く。

 

しかしこれを聞いたアルデは、

 

(おいおいおいルディアス様は本気か?!未だ皇国の装備じゃ太刀打ちできないぞ!)

 

基本的にグ帝の兵器をドイツの兵器と同一のものと仮定して考えている為、未だ殆どがマスケットにワイバーンロード、地竜のパーパルディアに勝ち目は無いと軍は考えている。

 

アルデはエルトを連れて人のいない会議室に向かう。

 

「エルトはグラ・バルカスに勝てると思っているか?」

 

「いえ、しかし今は兵研にリーム王国で鹵獲した新型中の解析を行っていますし、ドイツにもいくつかの地竜に代わる兵器の購入を打診していますが、それでも即座に戦えはしませんね」

 

「兎にも角にも敵は遠くだから今すぐここに攻めてくるという事は無いにしても、急がねばならんな・・・」

 

軍備についてお互いに頭を悩ます事となる。

 




この作中でドイツやパーパルディアの言う事成す事の全てが自分達に跳ね返ってくるという現実。

挿絵のMMDモデルはTansoku102cm-沼地人氏のモデルです。


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死闘!バルチスタ大海戦!!
バルチスタ海戦 ⓪


パーパルディア皇国

工業都市デュロ

 

現在皇国では数カ所に集中している基地を分散化させている為、軍用馬車が引っ切り無しに行き来している。

 

そんななか1人の男が、工業地区へ向かう。

 

先進兵器開発研究所(兵研)の職員であるソレノイドは、陸軍の新兵器開発研究部に赴いた。

 

「やぁソレノイドさん、お待ちしておりました、例のモノはこちらにあります」

 

出迎えてくれた職員の案内の元、研究部の中でも特に守秘義務の強いところへ通される。

 

 

「現在、神聖ミリシアル帝国から持って来た対空魔導砲を解析しているのですが、回路が複雑でなかなか難儀していましてね。ドイツの対空兵器も研究に回されたのですが、どうも魔法を使ってないみたいで恥ずかしい事に、機械系は我々魔導系にはどうもサッパリでしてね」

 

そうしているうちに例の兵器がある場所に来た。

 

砲身にしては巨大すぎる筒の先に小さい筒がくっついており、その上には対空サイト、銃床はなく引き金も自分達の見知った物ではなく、まるで扉の取っ手の様だ。

 

そうMG08である。

 

「しかし、これは凄い兵器です。

なんでもこれは弾を装填して引き金を引くだけで途轍もない勢いで弾が発射されるのですから」

 

職員が機関銃の如く話しているのを尻目にソレノイドはドイツの対空兵器を見る。

 

対空魔光砲は撃つのにやたら時間がかかり魔法陣が展開する為目立つ、そして魔導エンジンが未熟な皇国では撃てる時間も短い。

 

それに比べて此方は魔法は使わず、弾の装填も対して時間がかからない、どうやらこの砲身が焼けつかない様に水タンクの水を交換する必要があるらしいが、魔光砲の前には些細な事だ。

 

「ふーむ、コイツから魔法を使っている気配はかんじないな」

 

少し見るだけで精巧な部品をたくさん使っていることが分かる。

 

(コイツは皇国の技術で再現出来るか厳しいぞ・・・)

 

一応皇国にも旋盤などの工作機械はある。

 

しかしその殆どはミシンの様に足で回したり、後ろにあるデカイ車輪を弟子が回して旋盤を回すタイプのものが殆どだ。

 

(これは工作機械もドイツから買わないとダメだな)

 

一応兵研でミニエー銃を解析した際や、リーム王国戦でドイツ軍の金属薬莢を回収したのを参考に、ガトリングガンが試作されていたが、当分皇国が作れる技術ではそれが一番連射のきく銃になるだろうと、ソレノイドは考えた。

 

(今出来るのは、出来る限りドイツの技術を得てコピーして学ぶ事、やる事は沢山あるぞ)

 

より詳しく調べる為、馬車にMG08を載せてソレノイドは兵研に戻っていった。

 

◆◇◆◇◆

ドイツ兵器局

 

現在此処では、グ帝戦における戦力増強のためにパーパルディア皇国に輸出する型落ち兵器の設計を行っていた。

 

目標としては、

 

[ドイツよりは劣るが、皇国で生産できて、それなりに使えるやつ]

 

となんとも大雑把なやつであった。

 

そんな条件の中、兵器局が拵えたのは

AE98(Abhängig属領、Einfach簡素 )

という単発ボルトアクションライフルだ。

 

銃床は向こうでも作れるだろうし、

銃身のライフリングもミニエー銃を調べているだろうから作れるはず。

薬室等は頑張って貰うとして、兎に角そこら辺の町工場でも作れる事を考えて設計された。

 

そんなヤケクソ仕様の銃でも悲しいかな、皇国軍が使っているマスケットに比べたら遥かに高性能なのであった。

 

◆◇◆◇

皇都エストシラント

郊外

国営農場

 

新しく作られた此処では、奴隷やホームレスなどを連れて来て芋類の栽培を行っていた。

 

奴隷もホームレスもみんな蛸部屋みたいな所に押し込まれるが、休憩三食あって寝る所もある分、3K鉱山で働くよかマシだろう。

 

「しかしルディアス様が皇都の近くにこんな物を作る農場を作るなんてなぁ」

 

芋を洗いながら奴隷とホームレスが話し合っていた。

 

「こんな石みたいなのが野菜とか信じられねぇよ」

 

と言いながらジャガイモを手にとってまじまじと見る。

 

「しかし蒸して食うと美味いんだから不思議ですよねぇ」

 

因みに皇都の住民達も最初はその石みたいな見た目に忌憚していたが、農務局のキャンペーンによって徐々に受け入れられて来ている。

 

◇◆◇◆◇

デュロ海軍基地

 

折角だからとソレノイドは、新型艦のヨング・ミラーとテチ・タを見に来た。

 

どちらもドイツの助言によって建造された防空艦と呼ばれる新ジャンル艦だ。

 

船体は量産型装甲艦だが、船体の至る所に四連装MG08、主砲がある所には2㎝Flak38が、そして試験的に魔導モーターを搭載した対空ガトリングが搭載されている。

 

 

「うーむ、コレはまるでハリネズミだな」

 

出来る事ならこの中に対空魔光砲も搭載したいが、それは今はまだ叶わない。

 

 

◇◆◇◆◇

パラディス城

執務室

 

ここでは今、アルデ、エルト、バルス等々皇国の重鎮が集まっていた。

 

「ルディアス様、先日神聖ミリシアル帝国より『中央世界と第二文明圏で連合艦隊を作り、レイフォル沖に居座るグラ・バルカスを駆逐したい。尚、パーパルディア皇国は第三文明圏であり地理的にも遠い為、この作戦で出なかったからといって不利益を被ることは無い』との事です」

 

「ふむ、そうか」

 

ルディアスは短く答える。

 

 

「確かに皇国は戦場からはかなりの距離がある。ミリシアルの配慮は有難い。

しかし、先進11カ国会議での狼藉はとても許されるものではない。

我が皇国も列強として指を咥えて見ているだけは駄目だろう。 アルデ!」

 

「ハッ!」

 

「ヴェロニア竜母艦隊を投入する事は可能か?!」

 

「ヴェロニアで御座いますか!?」

 

「可能かと聞いておる!」

 

「ハッ!問題ございません!」

 

 

「よろしい、竜母打撃群を編成し連合艦隊と共に戦列に加われ。指揮はバルス、

貴様に命じる」

 

「はっ!このバルス全身全霊を賭けてグラ・バルカスを殲滅して見せましょう!」

 

バルスは感嘆の声を漏らしながら跪いた。

 

◇◆◇◆◇◆

その後・・・

 

「バルス、お前も分かるだろうが此度の戦いは決して楽なものではないだろう」

 

「は、それは存じております」

 

「ミリシアルやムー、ドイツが出るから恐らく我が国は後方に配置されると思うが・・・必ず生きて戻って来い」

 

 

アルデは、バルスの事もそうだが、ワイバーンオーバーロードを搭載した皇国最新鋭のヴェロニアが沈まないか不安でしょうがなかった。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

ドイツ

ベルリン

総統官邸

 

「総統閣下、先日神聖ミリシアル帝国から書簡が届きました。内容は『中央世界と第二文明圏で連合艦隊を作り、レイフォル沖に居座るグラ・バルカスを駆逐したい。各国との調整がある為、具体的に戦闘に入るのは6ヶ月後。ついてはドイツ国も参戦可能か?』との事です。」

 

「本格的に行動を起こす気か、グラーフ・ツェッペリンの慣熟訓練も終わった所だし、肩慣らしにはいい頃合いなのではないかな?」

 

 

ヒトラーの言葉に、ゲーリングとレーダーは苦い顔になる。

 

いくらフォーク海峡の仇を取ろうと思っていても、ドイツ海軍は圧倒的な戦力不足なのだ。

 

「ミリシアル帝国は、そのレイフォル沖の戦闘では、世界連合の他に別働隊としてドイツ艦隊はミリシアル艦隊と作戦を共にしたい。とも書いてあります」

 

「成る程世界連合は囮か、これなら勝機は見出せるな。

レーダー、シャルンホルストの仇を取るぞ。ドイツ艦隊はレイフォル沖に向かい、グラ・バルカスを撃滅する!」

 

ヒトラーは意気揚々と宣言した。

 

そしてその日からドイツ海軍はレイフォル沖に向けて、準備を進めることとなる。

 

 



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バルチスタ海戦 0.5

時は遡って中央歴1640年2月、ナチスの調査隊はある場所の調査の為へ派遣された。

 

クワ・トイネ公国

リーン・ノウの森

 

深く、そして潤いのある森。地上には柔らかい木漏れ日が届く、澄んだ川が流れて小鳥のさえずりが聞こえる。

しかし木々が入り組んだこの森は、地元住民の案内が無ければ永遠に彷徨ってしまうだろう。

まさに信ずる者は寛容に受け入れ、しかしその聖域を犯そうとするのなら容赦無く襲いかかる、そのような感じであった。

 

 

調査隊はこの森に住むエルフ達の案内で聖地『神森』まで進む。

 

 

そして一行は、草がドーム状に生い茂った奇妙な半球の前に着いた。

 

「この中には、この神森を魔王軍から守った太陽神の使者の空飛ぶ神の船がいくつか置いてあります。私達の祖先は今では失われた時空遅延式魔法を使いこの先に保管しました」

 

ミーナというエルフが説明しながら、半球に手をかざし封印を解いている。

 

半球の中は明るく、トンネルが奥が見えなくなるほど続いている。

 

「着きました。ご覧ください。これこそエルフが現代まで守って来た神器、『神の船』です!」

 

ドイツの調査隊はそれを見て仰天した。

なんと目の前に数機の零戦が転がっていたのだから。

 

「航空機だと?!」

 

「この国籍マークは日本でしょうか?」

 

「機体番号が漢字だ。じゃあこれは日本の・・・」

 

「見た事無いな、この機体は」

 

因みに零戦が実戦投入されたのは1940年から。それ以前の1939年に転移したドイツには分からなくても無理はなかった。

 

「奥の方にはその神の船よりも大きなものがあります。見てみたらいかがでしょう」

 

そう言われ、ミーナの後をついて行くと、其処にはJu88にソックリな双発機が置いてあった。

 

「ミーナさん、こいつはなんですか?」

 

「この神の船は、太陽神の使者達が海に潜る海魔を攻撃する時に使われた物だと伝わっております」

 

(潜水艦を攻撃するのか?・・・)

 

この機体は対潜水艦攻撃を考えて作られた『Q1W 東海』であった。

 

 

◇◆◇◆◇

 

そんな事があったのがおよそ2年前。

その間数機を神森から拝借して、修理を行い飛行可能な段階にまで進んでいたが、この零戦の解析を突如として急ぐ事となった。

 

そう、グラ・バルカス帝国との戦いである。

 

グ帝の戦闘機の報告を見てみると、この日本の戦闘機の特徴と酷似していた為、性能も似たような物と推測したドイツ空軍は、これを用いて模擬空戦を行う事となる。

 

 

 

因みに東海の方も解析され、ブローム・ウント・フォス BV 138にKMX(日本海軍が開発した航空機用磁気探知機)の複製品が搭載された。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

中央暦1642年10月3日

 

ドイツ近海

 

海中の目標を検知した機械はブザーを鳴らして検流計の針を揺らす。

 

「着色信号弾、自動投下確認」

 

落とされた信号弾は海面を真っ赤に染める。

 

哨戒機は信号弾を確認すると、反転し再度目標を感知し信号弾を落とす。

 

信号弾の位置で自動で動く目標に向けて対潜爆弾を投下する位置を割り出す。

 

 

「それ!投下!」

 

海中に沈んでいった爆弾は数秒後に大きな水飛沫となった。

 

 

その後、目標に仕込んでいた緑の塗料が浮き上がってくる。

 

「目標、撃沈しました」

 

「今回は順調だな・・・。実戦では編隊を組んで行動した方が良いかもな」

 

そんな時、哨戒機に連絡が入った。

 

◇◆◇◆◇

グラ・バルカス帝国第二潜水艦隊所属、シータス級潜水艦『ミラ』は、見つけたドイツ駆逐艦に魚雷を発射し、沈んでいくのを確認した後、帰路についている途中であった。

 

「この攻撃によって我が帝国の矢がこのドイツにまで届くという事が明らかになった。我が帝国は圧倒的に強い!近い将来、世界は我々に跪く事になるだろう!」

 

艦長の演説に帝国兵の士気は最高潮だ。

 

 

そして各帝国兵の手にはブランデーが注がれたグラスが握られており、ソナー員でさえ酒を持っていた。

 

「この酒は我が帝国の勝利の前祝いだ!グラ・バルカス帝国万歳!」

 

「「「グラ・バルカス帝国万歳!」」」

 

そう言った瞬間哨戒機の放った対潜爆弾が直撃し、船体が砕け海水が流れ込み、艦長乗員諸共水圧で潰れ、爆圧は逃げ道を求めて海上に向かって駆け上る。

 

 

 

 

「・・・! 敵潜水艦の撃沈を確認!」

 

観測係が海上から大きな水柱が上がり、油膜や、潜水艦と思われる部品が浮いてくるのを確認した。

 

この戦闘によって、この機体は評価されドイツ近海の哨戒に使われる事となり、

後にグラ・バルカスの潜水艦はドイツでの行動が大幅に制限される事となる。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

中央暦1642年12月28日

カルトアルパス

 

『トルキア王国、戦列艦21隻到着!』

 

『パーパルディア皇国竜母打撃群10隻到着!』

 

『アガルタ法国魔法船団17隻到着!』

 

「んん〜ん」

 

「すごい光景ですね・・・」

 

「凄いよなぁ」

 

若手社員の呟きに、ブロントが頷く。

 

「奴等に神罰を下す時が来たのですね。

中央世界、第二文明圏、第三文明圏それぞれの列強があつまって。

それこそグラ・バルカスも鎧袖一触、相手にならんでしょう」

 

 

「ああ、それにこの世界連合の他に別働隊として西部方面隊が随伴する。

主力艦隊のうち3艦隊もグ帝討伐に加わるらしいぞ。 それと!あのドイツもその別働隊に加わるそうだ!」

 

別働隊の情報が1職員に知られているというのは防諜面で不安になるが、これも世界1であるが故の慢心なのだろうか。

 

「なんと!皇帝陛下が本気になられたのですね!」

 

「ああ、それにしてもこのような大艦隊はラヴァーナル帝国戦でしか結成されないものと思っていたが。

相手はグラ・バルカス一国とはいえ西方の国々を配下に収めていると聞くし、言うなれば『世界大戦』だな」

 

 

軍属であれば、グ帝の強さを見に染みて理解しているが、市井の人々は、

 

「此度の敗北はグラ・バルカスの奇襲戦術によるものなのでは?」

 

と認識しており、このブロントもその1人であった。

 

 

 

カルトアルパス港には尚も第二文明圏の軍艦が入港していた。

 



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バルチスタ海戦①

パーパルディアびいき感ある


中央暦1643年1月14日

第二文明圏 ムー 商業都市マイカル

 

海岸に、海軍主力艦隊を一目見ようとする人々で賑わっていた。

 

軍人の家族らは心配そうな顔で彼らを送り出す。

中には不安で泣き出してしまう者もいた。

 

戦艦4隻

空母5隻

装甲巡洋艦8隻

巡洋艦12隻

軽巡16隻

補給艦5隻

 

という大艦隊がマイカルを出港していった。

 

◇◆◇◆◇◆

バルチスタ海域

 

200隻を超える大艦隊が、レイフォル沖から南へ向かっていた。

 

グラ・バルカス帝国海軍連合艦隊である。

 

西の新たなる覇者

 

異界の無法者

 

絶対なる独裁者

 

海を渡る暴力

 

彼らを表現する言葉は数あれど、賞賛の意を含むものは皆無だ。

 

 

◆◇◆◇

一方で、ニグラート連合西側の海を北上している大艦隊があった。

 

神聖ミリシアル帝国を主とした世界連合艦隊だ。

 

色んな文明の国々が集まった艦隊は、さながら船の博物館といった様相だ。

 

しかしその中にミリシアルの魔導戦艦は無い、

あるのは地方隊の巡洋艦8隻のみ。

 

進行速度を合わせると作戦が遅れるというのがミリシアルの主張であったが、聡い者ならミリシアルの意図に薄々気付いていた。

 

「ミリシアルめ・・、所詮は第三文明圏だとでも言いたいのか・・・」

 

 

ヴェロニアの甲板上で、バルスとマータルが連合艦隊を眺めていた。

 

パーパルディア艦隊は連合艦隊の中でも割と後方に位置している為、全体を見渡すことができる。

 

「カルトアルパス戦の資料を読みましたが、あの戦闘報告が正しければ、例え150門戦列艦であってもグラ・バルカスにとっては良いマトでしょう。

しかしミリシアルも酷な事を考えるものです。」

 

(まぁ、戦力外を囮に使うというのも悪くはありませんが)

 

皇国の頭脳とまで言われるマータルは、カルトアルパス戦の資料、グラ・バルカスの飛行機械の兵器、威力などを調べ、戦術を研究していた。

 

マータルとしては、対空兵器として風神の矢を沢山並べて弾幕を作るのが効果的としたが、肝心の風神の矢の制作についての技術はアルタラスが保有しており、アルタラスはついこの間まで戦争をしていた国に技術をあげるわけもなく、対空兵器の開発は現在、パーパルディアが独自に進めているが難航していた。

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

「しかし、神聖ミリシアル帝国と、第二文明圏のワイバーンを掻き集めた『第二文明圏連合騎士団』500騎が一斉にかかれば・・いかにグラ・バルカスといえど、タダでは済まぬだろう」

 

「いえ、恐らく連合騎士団は全滅するでしょう」

 

 

「むっ、どうしてそう思うのかね?」

 

 

「リームとドイツとの戦いでは、約100騎のワイバーンとドイツの飛行機械50機が戦い、ワイバーンは全滅、ドイツの被害はありませんでした。」

 

 

「うむ、その様な計算ならば敵は250機程必要になるが?」

 

「ムーの空母のマリン搭載数が30機、それが5隻で150機、フォーク海峡戦をみるに敵の飛行機械の性能はマリンを凌駕しているのでもしかしたらその数でも足りるのでは無いのでしょうか」

 

マータルは冷静に敵の戦力について考えていた。

 

◆◇◆◇◆◇

そんな時、連絡係がバルスに報告に来た。

 

「ムー艦隊より入電、『偵察機が来る』とのことです」

 

「そうか、どうやらムー艦隊が迎撃に向かった様だな」

 

望遠鏡を覗きながらバルスが言う、望遠鏡には次々と発艦していくマリンの姿があった。

 

 

が、マリンによる偵察機迎撃は失敗してしまう。

 

◇◆◇◆◇

 

「ムー迎撃隊、敵偵察機の迎撃に失敗した模様」

 

連絡係の報告にバルスは命令を出す。

 

「ムーともあろうものが不甲斐ないな、

ワイバーンオーバーロードを発艦させよ!敵偵察機を叩き落とすのだ!」

 

 

◇◆◇◆

 

「出撃!」

 

竜母の甲板上を1体のワイバーンオーバーロードが走り始める。それと同時に甲板にある離陸補助術式の魔法陣の文様が浮かび上がり、空気が変わり合成風が吹き、強力な上昇気流が発生する。

 

ドタドタと走るオーバーロードは風を掴んだ瞬間、とても優雅に舞い上がる。

 

竜騎士デニスは前傾姿勢で鞍にしがみつく。

 

 

「くっ、速いな!」

 

ワイバーン、ワイバーンロードを乗り継いで来たデニスにとっても手に余る程の性能、導力火炎弾も今までのよりも桁違いだ。

 

オーバーロードは既に編隊を組み、偵察機が来るであろう方向に向かっている。

 

 

『敵は見えたか?!』

 

デニスは望遠ゴーグルで索敵している同僚のジオに問う。

 

 

『ちょっと待て・・・! 、いた!!』

 

 

遠くの方に1つの粒が確認できる、そしてその粒はみるみるうちに大きくなる。

 

 

「来たか!『総員配置につけ!火炎弾発射用意!』

 

オーバーロードが扇状に隊列を組む、

偵察機の方は、先程ムーの戦闘機が手も足も出なかったこともあり、只のワイバーンだと思っているのか、同じ調子で飛び続けている。

 

 

『発射!!』

 

デニスが魔信で叫ぶ。

扇型に広がったオーバーロードは、外側から先に火炎弾を発射し、その後に内側のオーバーロードが火炎弾を放つ。

 

火炎弾は偵察機を覆い被さるように進む。

 

炎の壁が迫って来るのを見た偵察機は慌てて反転する。

 

『それ今だ!撃て!』

 

隊列の上で待機していたmg15を搭載したオーバーロードが、偵察機に向け連射しながら急降下する。

 

撃ち出された弾のいくつかが偵察機に命中する。

 

『各自火炎弾を発射!!』

 

動きの鈍った偵察機に次々と容赦なく火炎弾が浴びせられる。

 

遂にその中の1つが偵察機に命中する。

粘性のある火炎弾は瞬く間に偵察機を炎に包み、火達磨となって落ちていく。

 

 

『や!やりました!グラ・バルカスの飛行機械を撃墜しました!!』

 

『やった!ザマァみろ!』

 

『パーパルディア皇国万歳!!』

 

自国よりも進んだムーが落とせなかった飛行機を落とした、その事実が皇国艦隊を歓喜の渦に巻き込んだ。

 

「偵察機を落としただけでこの喜びようか・・・こりゃ本格的な戦闘になったら大変だぞ・・・」

 

バルスでさえ笑顔になっている中、マータルは深刻な顔で悩んでいた。

 




次回あたりにはドイツとグ帝の航空戦が書けるかも。


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バルチスタ海戦②

あああぁ、お盆休みが終わる・・・・。


ウゥゥゥゥ〜〜!!!

 

ウゥゥゥゥ〜〜!!!

 

ムーのモーターサイレンが鳴り響く中、

ムーの空母5隻からマリンが、ニグラート連合の竜母4隻、パーパルディア皇国の通常竜母2隻から特殊なワイバーンが次々と発艦していく。

 

各国の艦隊も対空戦闘の用意を始める。

 

◇◆◇◆◇

パーパルディア竜母打撃群

 

【挿絵表示】

 

対空艦ヨング・ミラー

 

 

「対空戦闘用意完了!」

 

「いよいよこいつの実力がわかるな」

 

「あぁ、ワイバーン相手なら成績は良かったんだが、飛行機械は未知数だな」

 

そう言いながら兵士は対空ガトリング砲を見た。

 

◇◆◇◆◇

15騎の空色のワイバーンロードが

急降下を開始していた。

 

「憎き帝国め!目にものを見せてくれる!」

 

ニグラート連合竜騎士団団長モレノールは、高度4200mから急降下を行い、高度3000mにいる20機程の敵戦闘機に向けて導力火炎弾を放つ。

 

が、その全てが避けられてしまい、巴戦にもつれ込み全滅してしまう。

 

◇◆◇◆◇

グラ・バルカス帝国東部方面艦隊第1次攻撃隊、アンタレス艦上戦闘機のパイロット、サルバンは先程の空色のワイバーンとの戦いが終わり、再度敵艦隊へ向かっていた。

 

彼はこの世界に来てから、ワイバーンをいくつも撃墜しており、最早ワイバーンは脅威でも何でもなく只のマトと思っている。彼の機体にはワイバーンを撃墜した事を示すキルマークがビッシリ書き込まれていた。(といっても殆どのパイロットが似た様な事になっているが)

 

『下方からスコアがくるぞ』

 

下から緑色で小ぶりのワイバーンが昇ってくる。

 

『火炎弾がくるぞ!』

 

『りょーかい』

 

ワイバーンの火炎弾を避け、先程の様に巴戦に突入する。

 

サルバンはいつも通り何の苦もなく機体のマークを増やす、そう思っていた。

 

 

そして一騎のワイバーンの背後を取り、撃とうと引き金に指を掛けた瞬間だった。

 

目の前から忽然とワイバーンが消えた。

 

「?!?!」

 

『おい!背後だ!』

 

サルバンは僚機の叫び声で咄嗟に背後を向く、視線の先には、目前に迫る火炎弾があった。

 

 

「ぎゃっ!?!あっ!あ!!火!火が!か!母さん!!」

 

火炎弾は機体を包み込んで、燃料に引火し大爆発を起こす。

 

「そんなバカな?!」

 

僚機のアーレスドはその様子を見て驚愕するが、そんな暇は無い。

 

自身の目の前にもそのワイバーンが迫って来ている。

 

(ぶつかる!)

 

正面から撃つには近過ぎるため、離れようとしたその時であった。

 

ズダン!!

 

 

ワイバーンの騎兵が何かデカイ銃を撃ったのが見えた。

 

アーレスドはあれは何かと考える前に、腹部に引き裂かれる様な痛みが襲う。

 

「・・・ガハッ!」

 

風防前方が穴だらけになっており、エンジン上部にも数発の穴が開いていた。

 

自身の足、腹部にも数発当たっているのを見てアーレスドは理解する。

 

 

「・・さ、散弾をすれ違いざまに撃ち込んだのか・・化け物め・・・」

 

アーレスドはそのまま絶命し、機体は海に飲み込まれていった。

 

◇◆◇◆◇◆

 

この戦闘で使われたワイバーンは、パーパルディア皇国が新たに開発した新型ワイバーンアクロンである。

 

このワイバーンは、これまでのワイバーンよりも小回りが利き、機首反転などの動きが出来る様になっている。

 

因みにアーレスドを撃った銃は、狩猟用に作られた鳥撃ち銃だ。(あまりに威力が強く、鳥を絶滅させてしまうほどの勢いで獲れるため、近々規制がかけられるのだとか)

 

 

◆◇◆◇

 

(不味い!完全に相手のペースに乗せられている!)

 

攻撃隊隊長のアモデスはまた僚機が煙を吐きながら高度を下げていく様子を見て大いに焦る。

 

(ワイバーンだからといって慢心していた!)

 

 

『総員ドッグファイトをやめ、振り切ってから一撃離脱で敵を仕留めろ!』

 

アンタレスは速度を上げワイバーンアクロスを振り切る。

十分振り切った後、一撃離脱で仕留めていく。

ワイバーンは何とか逃げようとしたが、全滅してしまった。それでも4機ものアンタレス艦上戦闘機を撃墜出来た事はかなりの戦果であった。

 

◇◆◇◆◇

 

「アクロス隊全滅」

 

「最後の魔信で、敵戦闘機を少なくとも3機程撃墜したようです」

 

「おお!」

 

「凄い!流石皇国!」

 

(でも全滅しているではないか)

 

マータルは歓喜など何処吹く風、これから来るであろう敵攻撃機に戦々恐々としていた。

 

ーーーブオォォォン・・・ーー

 

迫り来る敵機の重低音に各乗員は気を引き締める。

 

◇◆◇◆◇

防空艦テチ・タ

 

「魔導モーター、魔力装填」

 

「銃弾装填完了」

 

テチ・タの2㎝Flak38が上空を向く。

 

『絶対に竜母に傷1つつけさせるな!』

 

モーターサイレンが鳴り響く中、竜母に防空艦が追従する。

 

「来た!」

 

敵は既に前方の艦隊に攻撃を開始している、こちらに来るのも時間の問題だ。

 

◇◆◇◆◇

『目標確認!』

 

『進路そのまま!降下!』

 

シリウス爆撃機は一際目立つ竜母を目標にして急降下を開始する。

 

ーーグワァァァアン!!ーー

 

 

 

 

「爆撃機が来るぞ!撃て!」

 

迫り来る敵爆撃機に向けてヨング・ミラーの機銃の全てが火を噴く。

 

これまでの比ではない弾幕に一機のシリウス爆撃機が避ける間も無く蜂の巣となり、火達磨となって海に落ちる。

 

「一機撃墜!」

 

「油断するな!撃て撃て!!」

 

ガトリングが絶え間なく回り続け、敵機を迎え撃つ。

 

 

その時、隣にいた戦列艦から大きな爆発が起こり、木っ端微塵にされてしまう。

 

「魔導戦列艦、カミオ轟沈!!」

 

「クソ!!」

 

 

ヴェロニア甲板上でも備え付けられた機関銃と葡萄弾を撃つが、機銃掃射で甲板がズタズタにされ、竜母としては使い物にならなくなってしまった。

 

 

監視員が海面スレスレを飛ぶ雷撃機を確認する。

 

「低空に敵機、機数3、10時の方向!」

 

「総員、低空飛行をする奴を叩け!」

 

 

パールネウス、装甲艦の主砲から対空砲弾が撃ち出され、海面にいくつもの飛沫をあげ、戦列艦の魔導砲も葡萄弾を使い対空砲撃を行う。

 

「おらぁ!くたばれ!!」

 

どの艦の弾かわからないがそのうちのいくつかが命中し、一機の雷撃機がズタズタにされて海面に落ちる。

 

 

「敵機、海中に何かを投下!2機とも上昇します!」

 

 

「泳ぐ爆弾がくるぞぉ!」

 

『装甲艦[フルヘ]へ!左舷を警戒せよ!敵の攻撃が来る!』

 

『左舷海表面に航跡らしきもの確認!』

 

「取舵一杯!!!」

 

『ダメだ!避けきれない!』

 

魔信から悲鳴が上がり、その直後に爆音が鳴り響く。

 

ドカン!

 

ドカン!

 

[フルヘ]に2発の魚雷が連続で命中し、急速に傾き始める。

 

『応急修理不可能!総員退艦!』

 

 

装甲艦や戦列艦からボートが出て救助に当たるも、沈むフルヘの水流が渦を巻いて兵を飲み込みながら沈んでいき、救助出来たのは2割にも満たなかった。

 

 

第1次攻撃隊が帰投し、しばらくした後に第二文明圏連合騎士団が到着した。

 

既に敵もおらず、上空をフラフラ飛んでいるだけのワイバーンを見て、救助に当たっていた皇国兵は。

 

「遅すぎる・・・」

 

と、苛立ちを隠せずに言った。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆

バルチスタ海域北部

 

魔導連合艦隊と同行するように、ドイツ艦隊がいた。

 

グラーフ・ツェッペリンの艦長、フォン・ヘルシングは自国の艦隊と、ミリシアルの艦隊を眺める。

 

「どうやら世界連合軍はこっ酷くやられた様だな」

 

艦隊司令のヘルマン・クランケは次々と届く報告を聞きながら艦長に話しかけた。

 

「ええ、しかしあれは実質囮です。

実質的に主力は我々なのですから」

 

 

すると、通信員が報告に来た。

 

「神聖ミリシアル帝国より入電!

11時方向に敵艦隊発見、戦艦10、空母9、巡洋艦40、小型艦多数」

 

「コイツはまた・・・」

 

「ちと多いですな」

 

司令、艦長共に顔を渋める。

 

「まぁ、良い。航空隊発艦!」

 

グラーフ・ツェッペリンからbf109Tとju87がカタパルトを使い空を舞い、ミリシアルと共にグラ・バルカス艦隊へ攻撃に向かった。

 

◆◇◆◇◆◇◆

 

「速いな・・」

 

天の浮舟部隊長カノンは、自機よりも上を飛ぶbf109を見て思わず声を漏らす。

 

ムーのマリンと比べ、スマートな機首、研ぎ澄まされた機体。

最初に見た時、思わず美しいと思ってしまった。

 

「いかんいかん、作戦に集中しなくては・・・」

 

カノンは気を引き締め周囲を警戒する。

 

「ん?」

 

カノンは目を細めて太陽の方を見る、そこには機影が見えた。

 

「敵だ!」

 

カノンの上空から下へ敵が通過する・・・がその内の何機かが、煙を上げてそのまま海面に突っ込んでいく。

 

 

◆◇◆◇◆

会敵前

迎撃隊のアンタレス艦上戦闘機が100機がレーダーで捉えた敵攻撃隊に向かっていた。

 

「今度は航空機か?ワイバーンばかりで手応えがないよ」

 

戦闘機パイロットのグレイシャーは不満を漏らす。

 

ワイバーンとの立て続けの戦闘は、戦闘機同士の空戦の勘を鈍らせる。

 

(暫くしたら内地で空戦の訓練かなぁ)

 

そうボンヤリ考えていると、下に敵、この世界の最強国家とかいう国の航空機が見えた。

 

(これなら上から先制出来る!)

 

 

そう思っていた時であった。

 

『前方に敵機!』

 

 

「何だって?!」

 

下の敵機にすっかり気を取られていた迎撃隊はドイツ戦闘機に上を取られてしまった。

 

◆◇◆◇◆

ドイツ海軍航空隊

 

bf109tパイロットのディルクは、すっかり下に気を取られていると敵機の様子を見て口角を上げる。

 

 

隊長機からのハンドサインで攻撃開始の合図が出た。

 

各自フルスロットルでbf109はアンタレスに襲いかかっていく。

 

「死ね」

 

両翼と、モーターカノンの20ミリ機関砲、機首の13ミリ機関銃が一斉に火を噴く。

 

アンタレスに機銃の雨が襲いかかり、一気に4機が撃墜される。

 

『そのまま速度を上げ、再度一撃離脱だ!絶対に奴とはドッグファイトはするな!』

 

神森で得た零戦の知識がここで生きる。

 

 

「っ!速い!追い付けない!」

 

bf109は最高速度が約620㎞/hに対し、アンタレスは約550㎞/hで、70㎞/hも差があるのだ。

 

アンタレスのパイロットはこの世界、もしかしたら前世界ユグドでも経験がなかった初めての出来事に驚きを隠せない。

 

「嘘だろ?!アンタレスが追い付けない!」

 

『敵機旋回!』

 

「また来る!」

 

 

重力を味方につけ加速して飛んで来る

bf109にまたアンタレスは撃ち落とされる、bf109は数機被弾したのみで未だ撃墜されていない。

 

あまりに久し振りの同格との戦いで、腕が鈍っていたアンタレスパイロットは翻弄されっぱなしであった。

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

アンタレスがbf109に気を取られているの見てこれを好機とカノンは捉えた。

 

『今だ!我々は敵艦隊に攻撃に向かうぞ!』

 

カノンは魔信に向けて叫ぶと再度隊列を組み、ドイツ雷撃機と共にグラ・バルカス艦隊へ向かっていった。

 

◇◆◇◆◇◆◇



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鈍速雷撃隊

ヘルクレス級戦艦

コルネフォロス

 

ラス・アルゲティの姉妹艦であるこの艦にカイザルが乗り、采配を振るっていた。

 

因みにグレードアトラスターはフォーク海峡戦で被害を受けた為現在大規模な修理が行われており、ラクスタルと一緒にお留守番となっている。

 

「艦隊より5時の方向、距離140km!

敵は迎撃隊をすり抜けてこちらに向かっている模様!」

 

「何だと」

 

「やはり敵もただやられているようでは我慢ならないようですわね」

 

そう言いながら金髪碧眼の女性が艦長席から立ち上がった。

 

「シオメル嬢、ここは私がやります。

貴女はお席にお座り下さい」

 

「何を仰ります!私とて栄光あるグラ・バルカスの軍人!お飾りとして座っているわけでは無くってよ!」

 

 

カイザルは思わず目を瞑る。

 

(やれやれ貴族の御令嬢は面倒臭いから苦手なんだ・・・)

 

「敵が来たからと言って棒立ちでただ待っている訳では無いのでしょう?!空母から直掩機を出して迎撃なさい・・・」

 

「シオメル嬢、シオメル嬢!」

 

「なんですの!」

 

 

「司令は、私です。私が全艦隊に指示を出します。お願いです。静かにしてください。」

 

まるで子供に言い聞かせる様に、ゆっくりと区切りながらカイザルは話しかける。

 

「あ、あらあら。ごめん遊ばせ」

 

彼女は恥ずかしそうに艦長席に収まる。

それを見たカイザルはため息を漏らした。

 

「第1、第2砲塔に対空主砲弾を装填し砲撃しろ。

甲板上にいる者は直ちに退避!」

 

◆◇◆◇◆

 

天の浮舟部隊は5機づつの編隊を組み、散開してグ帝艦隊へ向かっている。

 

 

カノンの部隊は端の方を飛んでいた。

 

「ーー!?」

 

『隊長!何か見えます!』

 

 

空中に黒い点が6つ見えた。

 

(・・・攻撃?!)

 

 

カノンの背筋がスッと寒くなった瞬間、

飛んでいた部隊の中心で盛大な花火が咲く。

 

「ウワァ!」

 

眩い閃光に目が昏みそうになるがそれを耐え部隊の真ん中を見る。

 

 

「ああっ!ジグラントが!」

 

中心の部隊の3つ程が壊滅的被害を被り、爆発地から少し離れた部隊も、半数の機体が被害を受けていた。

 

『総員、各部隊ごとの間隔を開けよ!』

 

攻撃隊は着実に距離を詰めて行く。

 

◆◇◆◇◆◇

 

レーダー室

 

「3つの敵部隊の消失を確認、敵機90機依然として接近中」

 

「敵機、先程より間隔を離し始めました」

 

レーダー員の報告にカイザルは渋い顔をする。

 

「数が多い、直掩機をだそう。それと対空戦闘の用意もしておこう」

 

「了解、直掩機を出撃させます。」

 

 

「それと別働隊はどうなっている?」

 

「は、第3機動部隊は後方にて待機しております」

 

 

実は今作戦においてグ帝軍はGAを叩きのめしたドイツ軍に脅威を覚え、東方艦隊と第1打撃群の他に第2航空艦隊を用意していた。

 

「現在敵艦隊は此方に気を取られているだろう、まぁレーダーがあるかも知れないが、直ぐに対応出来るかと言えばそうでもなかろう。

よし、2航艦隊に出撃命令を出せ!」

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

カシオペア級空母『ゲルシー』

 

この空母は、前世界ユグドの時から最前線で戦ってきた歴戦の猛将である。

 

グ帝が複葉機の時代、2段空母の時代から幾度の戦いに赴き、改修をいくつも繰り返して戦ってきたGAと並ぶグ帝海軍の顔であった。

 

パイロット待機室にはブザーがけたゝましく鳴り響き、パイロット達は甲板へ走る。

 

『攻撃隊出撃用意。繰り返す

攻撃隊出撃用意』

 

 

攻撃機にパイロット達が手際良く乗り込む。

 

 

『第1攻撃隊、用意完了!』

 

 

アンタレスパイロットのオルバは、席から身を乗り出して前を確認して前に進む。

 

『発艦!』

 

スピードを上げアンタレスは大空に舞い上がる。

 

◇◆◇◆◇◆

ドイツ艦隊雷撃隊 隊長

エリウス・ユンガー

 

(我々の機体だけやけに古臭く見えるな)

 

 

苦笑しながらミリシアルのエルペシオや、ジグラントを見て思う。

 

彼の乗っているFi167とは、まず複葉機であり、脚は着艦する時にスパッツ(脚のカバー)ごと動くという、無駄に凝った仕様になっているし、風防は全風防、

エンジンはDB601Bで機首もスマート。

 

なのに複葉機。

 

しかし制作元はあのfi156を作ったフィーゼラー社という事もあり、風向き次第では垂直に近い離着艦も可能という、驚異の性能を持っている。

 

 

しかも大戦末期に、P51を道連れに撃墜しているが、武装は機首に7.92ミリ機銃が一丁だけである。(あと後方に一丁)

 

 

閑話休題◇◆◇◆◇◆

グラ・バルカス艦隊

 

「来るぞ!」

 

ある駆逐艦の対空砲部隊長が叫ぶ。

 

直掩機が出ているが、あくまで空母を守る為、駆逐艦は自分で身を守るしかない。

 

 

直掩機が撃ち漏らした攻撃機が段々と粒状からしっかりとした機影となる。

 

レシプロエンジンとはまた違う魔光エンジンの甲高い音が兵士の恐怖心を煽る。

 

「うてぇーーー」

 

「うぉぉぉぉおおおおおおおお!!!」

 

部隊長が叫ぶと同時に二連装機関銃の弾がばら撒かれる。

 

いくらミリシアルの航空機が弱かろうと、それはアンタレスや特殊信管があればの話。数が多すぎて只の時限信管しか渡されない様な駆逐艦や小型艦には脅威でしか無い。

 

 

どれくらい機銃を撃ち、対空砲の撃つ音を聞き、落ちていく飛行機を見たか。

 

数えきれぬ敵機の内、一機の爆弾がこちらに向かって落ちてくる。

 

黒い点が急速に拡大して来てでかい衝撃が来たと思った瞬間、兵士達の意識は永遠に途絶えた。

 

 

◆◇◆◇◆

 

『小型艦に爆弾命中!炎上を確認!』

 

ジグラント3のパイロット、ゼルは興奮した様子で魔信に叫ぶ。

 

『油断するな!後方に気を付けろ!』

 

 

あちこちの駆逐艦や軽巡から煙や火の手が上がっている。しかし戦艦や空母の被害はゼロに等しい。

流石特殊信管とアンタレスが守ってくれているだけの事はある。

 

 ◆◇◆◇

コルネフォロス

 

 「四時方向から約20機の敵機が低空から侵入!」

 

 

「旗艦を狙うとは愚かな奴らめ!

特殊信管を使用して迎え撃て!」

 

レーダー員の報告を受けたカイザルは的確に指示を出す。

 

◇◆◇

エリウスは無線で隊員を鼓舞する。

 

『全隊員に告ぐ!これが初陣だが、これまでの訓練通りやれば問題ない!鼻が伸びきった奴らの度肝を抜いてやるぞ!」 』

 

 

300キロしか速度の出ない鈍速雷撃隊が、向かっていた。

 




コルネフォロス艦長
シオメル・カルタス

20代半ばの女性艦長。かなり有名な貴族の出で能力は悪く無いのだが熱くなりがち。

シエリアとは同じ大学の同期。

GAは今戦いではお休みとなります。


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バルチスタ海戦③

コルネフォロス

 

『敵機、低空より接近!』

 

 

『特殊砲弾による砲撃、初め!』

 

 

カイザルの号令と共に、高射砲から特殊砲弾が発射される。

 

 

◇◆◇◆

ドイツ雷撃隊

 

『このまま低空を維持!訓練通りにやれば良い!』

 

低空を維持して敵戦艦に突入している時、向こうの高射砲が撃ってくるのを確認する。

 

(しかし!この距離ならまだ大丈夫!)

 

エリウスはニヤケながら構える・・・が!

 

 

ドカァン!!!

 

 

すぐ隣を飛んでいた僚機の目の前で爆発し、僚機はバラバラになって海中に落ちる。

 

 

(!!?爆発が近い!)

 

 

エリウスは驚きを隠せない。

 

そうこうしているうちに、また1機、2機、3機と撃ち落とされていく。

 

「なんだ、アイツ!バケモンかよ!」

 

そう叫びながらエリウスは海面スレスレ、それこそ今にも脚が海面に着きそうなぐらいの高度まで下がる。

 

「っ!当たるなよ!頼む!」

 

 

◆◇◆◇

コルネフォロス

 

「おほほほほ!!!無様なモノね!!

ざまぁ見なさい!」

 

 

シオメルは扇子を振り回し踊りながら、落ちていく雷撃機を見て笑っている。

 

「この様子であれば、全機撃墜できるでしょう」

 

副長はそう告げるが、敵雷撃隊の中でも一際低空を飛んでいる機がいた。

 

「敵にも中々根性のあるお方がいらっしゃるのね!」

 

◆◇◆

 

「うおおおお!!!」

 

当たるな当たるな当たるな当たるな当たるなぁぁぁ!!!!

 

エリウスは祈りながら永遠に続くとも思える瞬間を飛んでいた。

 

かなりの低高度で飛んでいる為、近接信管の発信機の電波が海面に反射し起爆してしまう。

 

「落ち着け・・・落ち着け・・・落ち着け・・・!!」

 

順調に距離を詰め・・・、魚雷投下距離に達すると、すぐさま魚雷を投下して離脱する。

 

他の僚機は、兎に角当たるまいとはるか手前に魚雷を投下して離脱を図る。

 

(危なかった!)

 

「生き残ったのは俺含めて9機かよ・・・」

 

エリウスは背筋が凍る思いで、空母へ帰還した。・・・筈だった。

 

 

「・・・!!!」

 

グラーフツェッペリンがあったところから朦々と黒煙が立ち込めていたのだ。

 

◆◇◆◇◆

時は少し前に遡る。

カシオペア級空母『ゲルシー』から飛び立った機体は一路魔導連合艦隊に向かっていた。

 

シリウスパイロットのナントは、目を凝らし。

 

「いた!」

 

遠くの数十隻の艦隊を捕らえる。

 

「我々の部隊の目標はドイツ艦隊!

あの空母を狙うぞ!」

 

シリウス、リゲルが一直線にグラーフツェッペリンへと向かう。

 

◆◇◆◇◆◇◆

「10時方向よりおよそ100機がこちらに向かって来ています!」

 

レーダー員からの報告にクランケは舌打ちをした。

 

「くそ、もう1艦隊いたのか。直掩機を出せ!全艦艇にも対空戦用意!」

 

対空砲は迫る敵機の方へ向き、直掩機はカタパルトから次々と発艦していく。

 

 

「直掩機、敵戦闘機と会敵します!」

 

今度の戦いは空母を守る為であり、Bf109Tはシリウスとリゲルに攻撃を集中せねばならず、得意とする一撃離脱を封じられた。

 

そこに機動性の良いアンタレスが襲い掛かる。

 

『やられた!脱出する!!』

 

 

『追い付かれr・・』

 

『こちら3番機!撃墜しました!』

 

『助けてくれ!!いやだ!』

 

『こちら3番機!敵攻撃機撃墜!』

 

『またまた3番機!!敵雷撃機撃墜!』

 

なんかやたらと活躍しているのがいるが、それでも尚敵の勢いは衰えない。

 

 

『敵雷撃機!突入してきます!!』

 

リゲルが対空砲火を掻い潜り突入してくる。

 

2機のリゲルが魚雷を投下した。

 

『魚雷投下ーーー!!!』

 

「回避行動だ!急げ!」

 

後方ではグナイゼナウに爆弾が命中した様で、濃い煙を噴き上げている。

 

『魚雷1発目!!回避!』

 

1発目はギリギリの所を回避する。

 

『2発目!!間に合いません!!』

 

「総員衝撃に備えろ!!」

 

ズバァーーン!!!

 

凄まじい爆音と揺れが艦橋を襲う。

 

「左舷をやられました、現在被害を確認中。」

 

「火災は確認出来ず、修復に入ります!」

 

「甲板も異常なし、離発艦問題ありません!」

 

 

「よろしい。

全機グラーフツェッペリンに帰還するように伝えろ、全戦闘機を防空に充てる」

 

クランケは安堵していた。

 

海底に脅威が迫っているとも知らずに・・・

 

◆◇◆◇◆◇

 

古代兵器

空中戦艦『パル・キマイラ』

 

「意外と海軍も奮戦しているようだね」

 

魔導電磁レーダーで戦況を確認しながら

古代兵器戦術運用対策部運用課所属のパル・キマイラ艦長のメテオスは呟く。

 

「苦戦すると思っていたけどなかなかやるね。しかし一回ぐらいは戦闘を経験しておきたい。」

 

そういうと、メテオスはミリシアル主力艦隊に通信を入れるように命じた。

 

◆◇◆◇◆

 

『ンッフッフッフッフッフッ。

ではこれから上空を行くので攻撃しないでくれたまえよ・・・、陛下の大事な剣なのでな』

 

パル・キマイラはミリシアル艦隊に向けて報告した後、グラ・バルカス艦隊へ向かい、圧倒的な蹂躙をして壊滅させた後、ジビルという核に似た爆弾を用いて旗艦を沈めた。

 

 

 

◆◇◆数時間後

 

パーパルディア皇国

竜母打撃群

 

「第二文明圏連合竜騎士団、通信断絶。

全滅したものと思われます。」

 

第二文明竜騎士団500騎は、グ帝艦隊へ攻撃に向かってから僅か2時間で全滅した。

 

「やはりワイバーンロード如きに鉄船は沈めることは出来ませんね」

 

マータルはさも当然というような様子で言い放つ。

 

因みにヴェロニアは先程の攻撃で甲板が機銃掃射でズタズタになっており、貫通した銃弾がワイバーンオーバーロードにも被害を与えていた。

 

現在応急修理を急いでいるが、修理を終えて前線に向かったとして、オーバーロードでも格闘戦では大した戦果はあげられないだろう。

 

通常竜母のセイレーンやアビスなどは、残ったワイバーンロードがいるので直掩騎として出撃させる予定だ。

 

他の船は対空戦に備えて弾を補給していた。

 

◇◆◇1時間後◇◆◇

 

「またやられた!」

 

「クソが!撃て!」

 

既に展開していたオーバーロードは全騎撃墜された。

 

「砲撃!撃てェ!」

 

ロタティオンが全砲門を使い砲撃を行い、接近していた重雷装艦の魚雷に誘爆して大爆発を起こす。

 

✔️の字になって沈む敵艦を見て歓声を上げる間も無く、接近して来た別の軽巡が主砲をぶちかまし、ロタティオンの上部構造物を吹き飛ばす。

 

「ワイバーン隊は全滅、オーバーロードも離陸できる状況では無い。そして敵艦隊に押されている!」

 

現在バルスとマータルはヴェロニア艦内の1番装甲の厚い司令室にいた。

 

一向に好転しない戦況にヤキモチしていた所に、通信員が報告を行う。

 

 

「報告!神聖ミリシアル帝国旗艦『ベガルタ』より緊急魔信が入ります!」

 

そういうと、ヘッドホンから司令室スピーカーへと繋ぎかえる。

 

『神聖ミリシアル帝国旗艦『ベガルタ』より通達。これより我が帝国は古代兵器。古の魔法帝国の発掘兵器を使用する。各艦空中戦艦に対し、決して攻撃せぬよう周知徹底されたし。 以上』

 

 

その魔信を聞いた兵達はポカンとする。

 

 

「ま、まさか・・・、本当に空中戦艦が存在するというのか・・・」

 

「知っているのかマータル!?」

 

汗をかきながら震えるマータルを見て、バルスは只ならぬなにかを感じる。

 

 

「『空中戦艦』それは彼のラヴァーナル帝国が使用していた兵器の事です。」

 

 

「!、ラヴァーナルだと!?」

 

この世界の純粋なる住人であるパーパルディア皇国人は、この世界の魔導文明のNo.2の座にいる為、学校では必ずと言っていいほど古の魔法帝国について教育されている。

 

神聖ミリシアル帝国が古の魔法帝国の兵器を発掘して解析、そして開発して自国の発展につなげて来たと言うのは信じられており、ルディアスが勅令を出してフィルアデス大陸から魔法帝国の遺跡を見つける事に躍起になっている。

 

『南方より巨大飛行物体接近!』

 

見張りからの報告に、バルス達は甲板へ出て接近してくる方を望遠鏡で覗き込む。

 

ーーゴ、ゴゴゴ・・・

 

 

「バケモノだ・・・」

 

「流石、ミリシアルとしか言いようがありませんね・・・。」

 

まだまだ皇国と帝国の間には隔絶した技術差がある事を痛感する。

 

グ帝の航空機は空中戦艦を目標にしたらしく、一斉に襲い掛かる。

 

 

一瞬

 

 

 

僅か一瞬で、ある機体は火に包まれ矢のように落ちていき、ある機体は羽根が吹き飛ばされひらひらと落ちていく。

 

「流石ミリシアル帝国だ、あのバケモノではドイツであろうとも歯が立つまい。」

 

 

パル・キマイラ2号機は、グ帝の航空機を空中に浮かぶシャボン玉を叩き潰すが如く撃墜していき、いままで苦戦していたグ帝艦船も、川に浮かぶ笹舟を沈めるが如く撃沈していく。

 

 

そして。

 

 

空中戦艦が向かった先の空が、明るく光る。

それはまるで日が開けたような明かりであった。

 

 

空には見事なキノコの雲が浮かんでいた。

 

それを見たマータルは思わず祈りを捧げた。

 

 

「おぉ・・神よ」

 

 



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バルチスタ海戦④

今年中に投稿したかったので限りの良い所で投稿します。


「世界連合艦隊に向かっていた第8打撃群42隻、通信途絶・・・」

 

まるでお通夜のような雰囲気の『コルネフォロス』艦橋。

 

今まで連戦連勝を誇ってきたグラ・バルカス帝国海軍であったが、初めて受ける甚大な被害に誰もが言葉を失う。

 

「レーダーに感あり。敵空中戦艦と思しき艦影2隻、南北からこちらに向けて進行中、偵察機によると北部敵艦隊本隊も増速しこちらに向かってきているとの事です。」

 

「そうか。第3潜水艦隊に対し、敵艦隊本隊を迎撃する様に下命。連合艦隊から発艦可能な機体を全て出して空中戦艦を迎撃せよ」

 

「了解!!!」

 

シオメルは扇子を開け閉めしながら何やら考えている様であった。

 

◆◇◆◇◆◇

 

「カレドヴルフより入電!『たった今『パル・キマイラ』より敵艦隊の座標が提供された。これより敵艦隊に突入し艦隊決戦に移る。ついてこられたし』だそうです!」

 

「ついてこい、か。」

 

「如何なさいましょう、一応グラーフツェッペリンはまだ甲板が使えますが、これから艦隊決戦になると安心は出来ません。」

 

「・・よし!グラーフツェッペリンは後方で防空任務に努め、ビスマルク、グナイゼナウを前方に押し立てる」

 

「はっ!」

 

ドイツ艦隊はフォーク海峡戦の仇を取るべく、ビスマルクとグナイゼナウが力強く前に出た。

 

◆◇◆◇◆

 

パーパルディア竜母打撃群

 

「マータルよ、このまま進撃して敵を撃滅する事は可能か?」

 

「無理です、逆に我々が完膚無きまでに叩き潰されるでしょう。」

 

想像通りとは言え、容赦ない物言いにバルスはムッとする。

 

「ヴェロニアは甲板が破損、戦列艦、装甲艦がそれぞれ1隻ずつ撃沈されていますし、その他全ての竜母、戦闘艦が被害を被っています。負傷兵の対応で手一杯であり、とても戦闘を継続出来る状態ではありませんよ」

 

「そうか、そうだな。では・・・」

 

バルスが言いかけた時、通信士がやって来た。

 

「『ベガルタ』より通達。世界連合艦隊は本時刻を以って作戦終了、ニグラート連合に協力を要請し寄港されたし。

寄港後は各国の判断で各国に帰投されたし。との事です。」

 

「ミリシアルから直々に指示が来たか。

全艦に通達、現時点を以って皇国竜母打撃群はニグラート連合ギゼル共和国ゴドウィンへ寄港し、その後本国へ帰投する」

 

「了解しました」

 

◆◇

 

現時刻を以って世界連合艦隊は作戦終了となった。

 

しかしドイツの戦いはまだ続く。

 

レーベレヒト・マースのソナー員は敵潜水艦がいないかどうか全神経を集中させていた。

 

「!!」

 

ソナー員は大規模の騒音を捕らえる、第3潜水艦隊を発見したのだ。

 

「1時方向に大規模潜水艦隊の反応あり!」

 

「爆雷発射装置用意!!」

 

乗員は着々と爆雷の準備を始めた。

 

◆◇◆◇◆

グラ・バルカス帝国

第3潜水艦隊

シータス級ディフダ

 

艦長は潜望鏡を覗きながら、敵艦隊に1キロ未満まで接近する様に命じた。

 

「ここまで接近して気付かないとは・・」

 

艦長は薄ら笑いながらミリシアル艦を見る。

 

「よし、魚雷発射!」

 

魚雷は発射され、迷いなくミリシアル艦に命中する。

 

沈んでゆくミリシアル艦を見て、艦長は次の獲物を選ぶ。

 

「・・・ん、あの旗は・・。確かドイツの旗だったな」

 

しかしどのみち沈めるのだから何処の国でも関係ない事だと魚雷発射用意をする様に命令するその時であった。

 

 

ボン!

 

ドイツの駆逐艦と思われる船から何かが発射されたのだ。

 

(なんだあれは?!まさか爆雷?!)

 

対潜攻撃は駆逐艦からの爆雷投下のみであったグラ・バルカスにおいて、爆雷が飛んで来るのは想定外であった。

 

 

ドォワ!!

 

船内が激しく揺られる。

が、どうやら沈没は免れた様だ。

 

「まずい!急速潜航!!」

 

 

急いで艦長は指示を出すも・・

 

ドォォワ!

 

今度の爆雷は時限信管がうまくいった様で、ディフダの真上で爆発した。

 

高圧を受けたディフダは鉄が砕け、内部を水が覆いつくし、一瞬にしてディフダは圧壊した。

 

魚雷による爆圧は圧力の弱い上に向かって逃げ場を求めて駆け上がる。

やがて、海上に大きな水柱を噴出させた。

 

◆◇◆◇◆

 

が、何十隻もの潜水艦に襲われている今、流暢に沈んだか海面を眺めているわけにもいかない。

 

「ゲオルク・ティーレ被弾!!」

 

「グナイゼナウ被弾!応急修理急げ!」

 

此方にも少なくない被害が生じたが、敵は魚雷が切れたのか段々と攻撃頻度が少なくなり、そして止んだ。

 

 

「状況確認!」

 

「戦艦一隻、駆逐艦三隻被弾!そのうちマックス・シュルツが航行不能との事です。」

 

「うむ、仕方ない。乗員を全て収容した後、雷撃処分するしかないか」

 

クランケは苦々しい顔で指示を出した。

 

◆◇◆◇◆

グラ・バルカス軍

 

「敵空中戦艦2機、目視距離に入りました!」

 

遥か遠くに空中戦艦が見える。

 

「・・・考える余地は無しか。第一次攻撃隊発進せよ!艦爆を主体とし高高度より爆撃!距離1000m以内に近づくことを禁ず!」

 

カイザルの指示が空母に伝えられ、80機もの航空機が発艦した。

 

が。

 

『カーセル航空隊全滅!敵対空砲の命中率絶大!』

 

『また落とされた!』

 

『下にも対空砲がついてる!!』

 

『ああっ 翼が吹っ飛んだ!』

 

『操縦不能!!脱出する!』

 

 

「北方に向かっていた第一次攻撃隊が・・レーダーから消失しました・・・。」

 

 

「こんなの嘘でしょ!何故なんですか!」

 

レーダー員の悲痛な報告に将校達は凍りつく。

 

 

参謀・将校達は頭をフル回転させ、あの化け物に対して何か打開策はないか議論する。

 

 

既に敵は細部まで確認できる距離まで迫って来ている。

 

そんな時に無線員が一つの電波をキャッチする。

 

「カイザル司令!敵艦から入電‼︎」

 

「繋げ!!」

 

 

『グラ・バルカス帝国の諸君・・・お初にお目にかかる。私は神聖ミリシアル帝国古代兵器、空中戦艦パル・キマイラ2号機艦長、メテオスという』

 

 およそ戦場に似つかわしくない言葉使いで話しかけて来る敵、カイザルは片眉を吊り上げた。

 

『君達に警告しよう・・・今すぐに尻尾を巻いて逃げ出し、レイフォルからもすべて退却したまえ・・・。

我々との戦力差は君達ほどの文明であれば理解出来るだろう?

私はね……相手がたとえ蛮族であったとしても、弱き者を一方的に虐殺するほど性格は曲がっていないのだよ。』

 

グラ・バルカス帝国を侮辱するような言葉に艦橋は静まり返る。

 

『力の差は分かっただろう?私からのせめてもの慈悲・・・

 

「笑止」

 

突然メテオスの言葉を遮る様に大声が艦橋に響く。

 

 

『・・・なんだと?』

 

「私達は一歩も退くつもりはございません事よ!」

 

「シ!シオメル嬢!!!」

 

「貴方はお黙りなさい!」

 

「おだっ!黙っ!?」

 

カイザルは驚き泣き掛けでシオメルを見る。

 

『ほぅ、貴方の様なお嬢さんが艦長とはね、初めてだよ。

そうだね、お嬢さんに忠告しよう。

これまでの戦いで我々との戦力差は歴然としている。

それなのにまだ立ち向かうのは勇気ではなく無謀というモノなのだよ。

分かったならば直ぐに引き返したまえ。私とて女性に手をあげたくはないのでね。』

 

「貴方は臆病者ですわね。」

 

『・・なんだとぉ・・』

 

「私でしたらこれ程戦力差があるならば、忠告などせずに攻撃を行います!

しかし貴方は攻撃したくないから逃げ帰れと仰った。

詰まり貴方は戦いたくない臆病者と言うことに違いありませんわ!」

 

そういうと、扇子で口を隠して煽る様に笑った。

 

 

『・・・調子に乗るんじゃないよ!』

 

メテオスは激怒しながら無線を切った。





ヨヨヨのヨはヨイお年をのヨだ。

ヨ!


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バルチスタ海戦⑤

「グラ・バルカス帝国め……バカの次は臆病者だとぉ・・この帝国魔導大学校出身の私をバカにするとは・・・許さないよ、ゴミどもめぇ・・・」

 

パル・キマイラ艦橋に浮かび上がるディスプレイには、外の様子がリアルタイムで映し出され、艦内は稼働状況の報告が飛び交う。

 

「魔力充電100%、充電作業完了」

 

「目標、2号機最寄りの中型艦。計算完了、誤差修正・・・」

 

「射撃航行状態に移行」

 

「全システム異常無し。いつでも攻撃出来ます」

 

 

淡々と流れる報告の後に、攻撃準備完了の報告が入る。

 

「攻撃したまえ」

 

ワールマンが気怠そうに指示した。

 

◆◇◆◇◆

 

その後2号機艦長のメテオスとの攻撃の方向性の違いにより口論となり、頭に血が上ったワールマンは、パル・キマイラを多少のリスクを払っててもコロネフォロスにジビルをぶつけるという手段を取った。

 

◆◇◆◇◆

 

「ん?!」

 

カイザルは敵空中戦艦の変化に気づく。

 

2機のうち1機が進路を変え此方に向かってくる。

 

距離が縮まるにつれ対空砲火も激しくなるのだが、空中戦艦手前で近接信管が反応し破片が飛ぶも、謎のバリアーで塞がれてしまう。

 

「アイツ! 旗艦を攻撃するつもりか!!」

 

カイザルは冷や汗を流す。

するとシオメルはカイザルに話しかける。

 

「カイザル司令。申し訳ありませんが、

命をかける覚悟は出来ておりますか?」

 

 

「シオメル嬢・・・ええ、軍に入った時から覚悟は出来ております」

 

「失礼いたしました。」

 

そう言うと、シオメルの顔が引き締まる。

 

「とーりかーじいっぱーい!」

 

『とーりかーじいっぱーい!』

 

操舵員の復唱とともにコロネフォロスは旋回し、パル・キマイラの進路に対して垂直となる。

 

 

「右から迫って来る敵空中戦艦に対し、主砲による一斉射撃を行う!主砲は時限信管付対空主砲弾!」

 

『近接信管ではないのですか!?』

 

砲術長は驚いた様子で聞く。

 

「敵は手前で爆発した対空弾の破片をバリアのような物で防いでいます。

ならば時限信管でバリア内で爆発するようにするのです!  時限信管付対空主砲弾用意!復唱!!」

 

『はっ!時限信管付対空主砲弾用意!』

 

「各自判断で射撃を開始!数で圧倒するのです!」

 

そう言うとパル・キマイラのいる方向に向けて扇子を指した。

 

「射撃開始!!!」

 

 

◆◇◆◇◆

パル・キマイラ2号機

 

「・・・?」

 

ワールマンは先程とは何かが違う事を感じ取った。

 

「先よりも正確さに欠けますね」

 

部下の言葉によりその何かを理解する。

 

先程までは全ての弾が手前で炸裂していたのに対し、今はそれよりも手前、またはパル・キマイラを通り過ぎてから炸裂するなど、炸裂のタイミングがめちゃくちゃになっていた。

 

「大方向こうが慌てていて、信管の調整もせぬまま出鱈目に撃っているんだろうさ。」

 

ワールマンは吐き捨てるように言う。

 

すると先程まで起こらなかった僅かな揺れが艦橋を襲う。

 

「おおお・・・」

 

「艦長、念の為アトラタテス砲に振り分けている魔力を装甲強化に分けた方が宜しいと思うのですが。」

 

「そんな事したって杞憂に終わるさ。それよりも敵旗艦上空に着くまであとどれくらいだ?」

 

「ええ、あと5分もかかりません」

 

「そうか、そろそろジビルを投下装置にセットする準備をしたまえ。」

 

「はっ!」

 

◆◇◆◇◆

 

それは正に偶然であった。

コロネフォロスの4基のうちの1門の砲から放たれた1つの時限信管付対空主砲弾が、寸分の狂いも無く吸い込まれる様にパル・キマイラに向かって行く。

 

ワールマンは点のまま迫って来る砲弾を見て生きた心地がしなかったであろう。

 

その砲弾はパル・キマイラのスポーク部分を通り抜けた瞬間に炸裂した。

 

バリアの中で炸裂し、破片はなんの抵抗も受けずにパル・キマイラに襲い掛かる。

 

「うおおぉぉぉ?!!??」

 

今までには無い揺れがパル・キマイラ艦橋を襲う。

 

「何が起こった!!」

 

 

ワールマンが顔面蒼白で職員に確認する。その職員も同じく顔面蒼白だ。

 

「大変だ・・・第3アトラタテス砲、第5魔導砲破損!船体装甲板も損傷を確認!!」

 

「くぁwせdrftgyふじこlp」

 

突如としてワールマンが目を見開き、顎が外れんばかりに口を開け叫ぶ様子を見て、職員らはおかしくなったと思い眺めていたが、ワールマンはいきなり操縦士に飛びつき。

 

「戻れ戻れ戻れ!!!!早く戻れ!!!」

 

恐怖に駆られた操縦士は、床の傾きなど知らぬとばかりに機体が50度になるまで傾けた。

 

「「「ぎゃあああああ!!!」」」

 

ワールマンともその他職員ともつかない悲鳴が艦橋に木霊する。

 

◆◇◆◇

 

「おおおおおお!!ワールマン・・・

恥晒しが!愚か者が!どのようにして皇帝陛下に説明できようか!!」

 

メテオスは一通り罵倒すると、落ち着きを取り戻し、皇帝陛下の言葉を思い出す。

 

ーもし1隻でも損傷、撃墜される様なことがあれば直ぐに撤退せよ。

 

 

「撤退だ!撤退せよ!右90度、機関全速!」

 

メテオスも逃げる様にバルチスタ海域を後にした。

 

◆◇◆◇◆◇

 

「空中戦艦反転!離脱していきます!」

 

 

「「「うおぉおぉぉぉ!!!」」」

 

「「「万歳!万歳!」」」

 

グラ・バルカス帝国連合艦隊各艦すばての兵士が歓声を上げていた。

 

「かなり危険な賭けでしたが、上手くいって何よりでした。」

 

「シオメル嬢、お見事でした」

 

「よしてくださいまし、全て部下のお陰ですわ。・・・けれど」

 

「あの化け物がまた現れたらかなり厄介な事になりますな」

 

「戦略についてはお上の考える事、私達は只戦うだけ。次にやる事がすぐあります」

 

「敵艦隊ですな。潜水艦隊で相当な被害を与えましたし、空母はほとんど大破させたらしいので残ったのは戦闘艦だけでしょう。敵のやる気満々ですから艦隊決戦で決着をつけましょう。」

 

◆◇◆◇◆◇

ドイツ海軍

戦艦ビスマルク

 

「もうすぐ日が暮れますね」

 

「夜戦か・・・不安だな」

 

リンデマンはほとんど経験のない夜戦に不安を隠せないでいた。

 

「! 対艦レーダーに反応あり!駆逐艦

三隻と思われる艦影が接近中!」

 

「上空に敵機!!」

 

 

報告が上がった突如、上空が真昼間の様に明るくなる!

 

「照明弾だ!戦闘準備!!」

 

「3時方向より雷跡!!」

 

その瞬間プリンツ・オイゲンより2本の水柱が上がった。

 

 

のちの歴史書に「バルチスタ沖夜戦」と描かれることとなる戦いが始まった。

 

 



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バルチスタ沖 血に染めて

日本国召喚界隈は馬骨が多いのかな?ハルディンホテルとか賢者のプロペラとか。


「プリンツ・オイゲンに魚雷が命中!」

 

見張りの報告にヘルマン・クランケは歯軋りをする。

 

「やはり海戦は向こうのほうが何枚も上手か!」

 

すると一瞬、艦橋を光が支配した。

 

「野郎! 余裕綽綽で探照灯を照らしてきやがる!」

 

目がチカチカするなかクランケは悪態をつく。

 

月明かり以外何も無い夜の海で探照灯を焚くというのは、自分の位置を曝け出すのと何の代わりもない。  

 

それでも敵陣に突っ込んでこの様なことをするのは彼らが我々を侮っているのか、それともそれ相応の自信があるのか?しかし今はどうでもいい、探照灯を照らしている艦を集中砲撃すれば良いだけの話だ。

 

「探照灯を照らしているやつを撃て!殺せぇ!殺せぇーー!!!」

 

自ずとドイツ艦隊の砲弾は探照灯を照らしている艦に集中し、ものの数十分で爆発炎上するのが確認出来た。

 

しかしもう2隻が突撃してくる。

 

すると煙を吐いてダメコンを行なっているプリンツ・オイゲンから幾つもの強力な光の帯が敵駆逐艦に直撃する。

 

恐らく目眩しの効果もあったのだろう、ろくに反撃出来ずに敵駆逐艦2隻は総攻撃を受け轟沈した。

 

「他敵艦影は確認出来ず、襲撃を乗り越えました。プリンツ・オイゲンもあと数十分程で修理が完了するそうです。」

 

「そうか、それは何よりだ」

 

ひとまず危機は去り、クランケは安堵の息をついた。

 

◆◇◆◇◆◇

 

数時間後

ビスマルク

 

「敵戦艦火災を確認!」

 

「砲撃用意!距離修正!」

 

「テェ!!」

 

現在ドイツ艦隊は、ミ帝主力とグ帝主力の戦闘のど真ん中にいた。

 

ビスマルクの後ろで一隻の駆逐艦が爆散する。

 

「レーベレヒト・マース!轟沈!」

 

「ちっ!!」

 

リンデマンは舌打ちしながら報告を聞く。

 

「敵艦火災を確認!速力の低下を確認!」

 

「いいぞ!そのまま吹き飛ばしてしまえ!」

 

「敵艦の爆発を確認!沈んでいきます!」

 

「ヨーーシ!ヨーーシ!ヤッタっ!!

あはははは!!」

 

すっかりテンションが上がってしまったリンデマンを他所に、副長がやって来た。

 

「艦長、どうやら砲弾が少なくなってきている様です。これ以上の戦闘は危険と判断します。」

 

 

「なんだとぉ!もっと弾を持ってくるんだった・・、悔しいが潮時か。

全艦に伝えろ、現時刻をもって作戦を終了。直ちにニグラート連合の港に帰港する。」

 

リンデマンが艦橋から外を見ると、未だミリシアルとグ帝の方から幾つかの閃光が見えるが、徐々にお互い別々の方向へ離れていく。

 

4時間にも及ぶ激戦であった。

 

◆◇◆◇◆◇

ドイツ国

ベルリン

総統官邸

 

レーダー提督はヒトラーに報告を行なっていた。

ヒトラー自身も老眼鏡をかけて資料を読んでいる。

 

「バルチスタ派遣艦隊より入電が入りました。」

 

「うむ、読め」

 

「グラ・バルカス艦 駆逐艦4隻、軽巡洋艦3隻、重巡1隻を撃沈。 戦艦1隻を大破。 他駆逐艦5隻を小破させました。」

 

撃沈した戦果の中にはミリシアル艦との共同戦果みたいなところもあるが、ここはドイツ単独の戦果として報告した。

 

「そうか、なかなかの戦果ではないか。」

 

ヒトラーも上機嫌だ。

 

が、途端にレーダー提督の顔が曇る。

 

「・・・総統閣下。

・・実は、我が軍の損害が・・」

 

「ん?なんだどうした?」

 

「プリンツ・オイゲン大破、グラーフ・ツェッペリン中破、グナイゼナウ小破、レーベレヒト・マース・・・轟沈」

 

「なっ!?」

 

「その他グラーフ・ツェッペリンの雷撃隊が全滅。戦闘機隊も壊滅的被害を被りました・・・」

 

「な、なんという事・・なんという」

 

ヒトラーの手はブルブル震え、老眼鏡を取る。

 

「・・以下のものは残れ。レーダー、ゲーリング、カイテル・・」

 

数人を残して他の面々が出て行った後、ヒトラーは渾身の叫びを上げた。

 

「何だこれは!言っただろうが!愚帝に我々の力を見せつけてやれと!しかし何だこの結果は! 何故全滅する?!攻撃隊の奴らは意気地無しだ!クソッタレだ!」

 

「何てことを!兵士達は貴方と国家の為に血を流し・・・」

 

「知らねーよ!結果を出さなければ何もしてないのと同じだバーーーカ!!」」

 

「いくら総統でも言い方ってもんがあるでしょう!」

 

「うるせぇ!!俺は総統だぞ!口答えする気か!粛清するぞバーーーカ!!」

 

「冗談じゃない!そうなる前に亡命してやる!これでもジョギングをしてるんですよ!」

 

「やめろぉ!こんな男に心酔した私が馬鹿だった!とっととオーストリアに帰れ!」

 

「なんだとぉ!!」

 

「何だとは何だ!!」

 

「何だとは何だとは何だ!」

 

「もういい!ドイツはグ帝に降伏します!」

 

「お前が決めるなぁ!!」

 

「まぁまぁまぁまぁ、とにかくグラーフ・ツェッペリンが沈まなくて良かったじゃないですか」

 

「何言ってるんだ!お前もお前だゲーリング!!航空隊も愚帝の奴らにやられやがってぇ!!

 

畜生めぇええええ!!!」

 

 

そう叫ぶと手に持っていたペンを机に叩きつける。

 

「そもそも何だ!この命中率の高い対空射撃は!こんな物を使っているやつは卑怯者だ!クズだ!」

 

 

一頻り叫んだ後、ヒトラーは疲れたのか、座席に座りぐったりとうなだれる。

 

 

「報復だ・・・」

 

「は?今何と?」

 

「報復攻撃だ!現在試作しているジェット機に魚雷を積んで攻撃させろ!あの速さであれば弾は当たるまい!!!これは総統閣下命令だ!!!拒否は許さん!!これを作らなければ制空型の量産も許さん!!!!『音速雷撃隊』だ!!!今こそ奴らにドイツの凄さを見せ付けてやれ!!」

 

そう叫ぶとそのまま自室へとこもってしまった。

 

 



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海戦の果てに。

パーパルディア皇国

エストシラント

パラディス城

 

「貴様が無事戻って来る事が出来て、余はとても嬉しいぞ」

 

「はっ!その御言葉、身に余る光栄であります!」

 

バルチスタ海域から帰還したバルスが、

ルディアスに戦闘結果の報告を伝えに来た。

 

「それでは報告致します!」

 

「うむ、」

 

報告によれば、自国の被害は装甲艦1隻、戦列艦1隻が撃沈。装甲艦1隻が大破。戦列艦が中破。他、竜母も全てが甲板をやられるなどして小破となっていた。

 

因みに皇国の戦果は、敵戦闘機6機と敵巡洋艦1隻と余りに控えめな結果だが、

まわりの国と比べれば巡洋艦1隻沈めただけで手放しで喜べるレベルである。

 

ルディアスは、報告を聞くと満足そうに頷いた。

 

「そうかそうか、此度の戦い実に御苦労であった。今日は体を労わると良い。」

 

そう言い、バルスは下がっていった。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

皇都内情報局

 

情報局とは、ドイツの宣伝省に影響され新たに創設された局である。

 

その局長のダレスは、今回の海戦結果を見て、何処を積極的に宣伝するかを決め、魔画通信機に流す映像を作る。

 

◇◆◇◆

 

市街のあちこちに魔画通信機が設置され、此度の海戦の発表を行うと事前に聞いた皇国臣民は、画面を注視する。

 

徐々に画面に明るくなり、映像が映る。

 

『2月5日 バルチスタ海域にて、この世界を手中に収めんとする極悪非道なるグラ・バルカス帝国と我らパーパルディア皇国、神聖ミリシアル帝国、ムー、ドイツなる世界連合が相対した。』

 

その間々に、光弾の中を飛び交うアンタレスやワイバーンオーバーロードが映し出される。

 

『この戦いにおいて、我が皇軍精鋭の竜母打撃群は、神聖ミリシアル帝国の空の浮舟に匹敵する敵航空機を20機撃墜した。』

 

画面には、此方に突っ込んでいき火達磨になるアンタレスの映像が流れている。

戦果は当然の如く水増ししているが、それを疑う者はいない。

 

それどころか、皆「やはり皇国軍最強」と口々にしている。

 

『次いで、敵戦闘艦を3隻を轟沈せしめた。列強パーパルディアここにあり!と異世界の蛮族に思い知らしめたのだ。』

 

次はグ帝軽巡が魚雷で誘爆する様子が流される。大爆発で迫力満点な為、民衆の興奮も最高潮だ。

 

「パーパルディア万歳!」

 

誰かが叫んだ。

サクラなのかそれとも本当に心からの声なのかは分からない。

 

しかしその声は次第に広がり、声は皇都を包み込んだ。

 

 

「パーパルディア皇国万歳!」

 

「「パーパルディア皇国万歳!」」

 

「「「パーパルディア皇国万歳!」」」

 

◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

ドイツ海軍は補給艦として輸送艦を連れていったが、慣れぬ海上補給に苦労した。

それに全体的な航行性能不足でかなり苦労したという。

 

今後、ドイツ海軍は哨戒と潜水艦によるグ帝輸送艦攻撃に重点を置くようになる。

 

 

◆◇◆◇◆

 

ムー国 国境の町アルー

 

国境沿いという事もあり、いつレイフォルが侵攻しても迎え討てるように砲兵陣地や、飛行場があった。

 

その砲兵陣地で、2人の兵が話をしていた。

 

「なあ、聞いたか?グラ・バルカス帝国とムーが衝突した場合、このアルーが最前線になるらしいぜ」

 

 同僚の発するこの言葉に、砲兵アーツ・セイは身震いする。

 

本当だったら戦争にならないでほしいが、グ帝の暴れっぷりから戦争になる

のは時間の問題となるだろう。

 

「・・・確かにそうなるだろう。

あの神聖ミリシアル帝国の古の魔法帝国の超兵器を退ける程の兵器を持つとはいえ同じ人間。

当たれば必ず死ぬし、陸上で砲が通じぬ兵器があるはずない!」

 

アーツは自国の兵器を信じながらも、敵が来ないことを祈った。

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

ムー国の国境の町、アルー西側約30kmに位置するグラ・バルカス帝国陸軍の最前線基地、バルクルスで帝国陸軍の砲兵部隊が整然と並ぶ。

 

その様子を、帝国陸軍第二砲兵師団長の

コーリーは眺めていた。

 

彼は先程ガオグゲルに言われた事を思い出していた。

 

(兵の精神衛生は、強さに直結するのだよ。少し考えを改めたまえ。

今回のムー侵攻作戦では、多数のムー国民の難民が出るだろう。

 君たちが敵国人をどう扱おうが、私は全くとがめるつもりはない)

 

 

国際条約の無視、略奪を認める言動。

 

栄光あるグラ・バルカス帝国の将兵にあるまじき思考。

 

皇帝陛下の面汚し。

 

 

あの顔を思い出すだけで吐き気がする。

 

「・・・キチガイめ」

 

コーリーは忌々しく呟く。

 

「少将、作戦開始お時間です」

 

 

「解った・・・、と、その前に我が砲兵隊に厳命する。」

 

「はっ」

 

「作戦終了後、敵国人の捕虜、難民が発生しても決して手を出さぬように。旧世界の国際条約と同様に扱う様に」

 

「承知致しました」

 

コーリーはマイクを取り、叫ぶ。

 

 

「砲撃ッ!始めッッッ!!!」

 

 

 




次からムー侵攻作戦が始まります。

我が皇国の勝利である(大本営発表)


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落陽
ムー国侵攻


毎日ネタ切れだもん!


グラ・バルカス帝国の15センチ榴弾砲は次々と火を噴き、その巨弾がアルーの街に降り注ぎ、破壊の限りを尽くす。

 

 

コーリーが双眼鏡を覗けば、敵塹壕に突撃する戦車隊、それを勇敢にも大砲で迎え討とうとするムー国兵士が見えた。

 

しかし結果は帝国軍による圧倒的な蹂躙であった。

 

第二砲兵師団の歩兵達は、トラックに乗り込みアルーの街に乗り込む。

 

既にアルーの敵は第四師団で殲滅されており、後は速やかに制圧するだけであった。

 

◇◆◇◆◇

 

「他にいるのはこれだけか?!」

 

第2砲兵師団の1部隊の隊長が、ある住宅に隠れていた一家を外に連れ出した。

 

「お・・・お願いします・・命だけは」

 

一家の父親が酷く震えた声で喋る。

 

 

「そちらが何もしなければこちらも何もしない。他の奴らは知らんが、我らの部隊は国際条約をきちんと守るから心配するな」

 

そう言いながら、武器を持ってないのを確認すると、トラックに詰め込む。

第四師団の奴らに見つかったら何をされるか分からない。

 

その後第2砲兵師団は、捕虜や民間人を危害を加えぬよう収容所へ入れた。

 

◇◆◇◆◇

 

しかしムーが手に入れた情報は、第四師団の方であった。

 

 

ムー国

首都オタハイト

国会

 

「それでは此度のグラ・バルカス帝国による侵攻について。

会議を開始いたします」

 

「攻めてきたグラ・バルカスは想定通りアルーの街へ攻め込みました。

この戦闘によりアルー守備隊は全滅し、

アルーの街は敵の手に陥ちました。」

 

その発言の後に、陸軍省大臣が声を荒げる。

 

「話によれば奴等は我が臣民を殺戮し、捕虜も処刑したらしいではないか!」

 

使用している兵器等の文明に合わぬ野蛮な行為に、ムー国各要人が憤慨する。

 

「それで、陸さんは勝てる見込みがあるのかい?」

 

海軍大臣は、陸軍総司令官に問う。

 

「分からん、が、防衛線は既に構築している。」

 

ムーは、グラ・バルカスがレイフォルを滅ぼした時からもしもに備えて防衛線を敷いていた。

 

1、アルーの街 想定・レイフォル侵攻

 

2、キールセキの街

想定・神聖ミリシアル帝国侵攻

 

3、コラ・カーコ要塞 想定・魔帝侵攻

 

 

という風に、攻めてくる敵の具合に合わせて装備を変えている。

 

 

「捨て石、ですか。」

 

「流石にアルーの街まで最新兵器はまわせんよ。」

 

「兎に角、アルーが陥ちた今、キールセキで敵を食い止めなければなりません。」

 

「やはり戦車隊を連れて行くのか。」

 

「ええ、出し惜しみは無しです。それにミリシアルとドイツに援軍を要請したほうがよろしいでしょう。」

 

「ううむ、そうか。わかった」

首脳部は、侵略者を叩き出す為奔走する。

 

 

◆◇◆◇◆

ムー国

西部航空隊

リュウセイ基地

 

最前線に近いこの基地で、マイラスはとある機体を説明する為来ていた。

 

 

目の前にあるこの機体の特徴は、なんといっても滑らかな液冷エンジンであろう。機体は見慣れたマリンであるから違和感が凄いことになっているが。

 

リュウセイ基地の兵達に向け、マイラスが解説する。

 

「このマリン改ですが、我が国の星型エンジンから、ドイツの戦闘機に使われている液冷エンジンに換装したものです」

 

「ドイツのエンジンを?」

 

「整備性はいいのか?」

 

パイロットや整備兵から質問が投げ掛けてくる。

 

 

「整備性においては悪くなったと言わざるを得ません。しかし、換装した機体の最高時速は520キロを記録しました」

 

それを聞き、パイロット達に衝撃が走る。

 

今までのマリンは380キロが限界であった。それが140キロもアップしたのだ、驚かない訳がない。

 

「そして翼に追加でドイツの7.92㎜機関銃をつけ、攻撃力が増加しました。」

 

これによりマリンは、多少ではあるがアンタレスに対抗し得る戦闘機になった。

 

その日のうちから慣れる為の慣熟訓練が行われたのであった。

 

◆◇◆◇◆◇◆

中央暦1643年2月10日

ロウリア総督府

竜の酒

 

そこで今日もまた酔っ払いが話をしていた。

 

「おいおい、聞いたか?グラ・バルカスが列強のムーに攻め込んだって話!」

 

「ああ、知ってるさ。陸と海からの同時侵攻とはね」

 

「お陰でマイカルは甚大なダメージを負ったそうじゃないか。それに首都も爆撃を受けたって!」

 

「これはもうムーは陥ちたな」

 

「それはまだ早いんじゃないか?風の噂ではミリシアルが出兵するんだとか」

 

「それなら何とかなるか?」

 

 

「ま!此処は1番戦場から遠いんだ。

戦闘に巻き込まれる事はねぇだろ!」

 

「なんだってドイツがいるからな!」

 

「そうそう!ドイツ様々よ!」

 

笑いながら酔っ払い達はドイツ製ビールを飲んだ。



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各国の対応 

ムー

首都オタハイト

 

先日のイシュタムの空襲により今尚街の至る所から煙が上がっているが、幸い火そのものは消火が終わったようだ。

 

しかし列強でも2番目のムーが、一方的にグラ・バルカスの攻撃にあったという事実は、国民にとって途轍も無いショックのようだ。

 

 

王城

 

侍従長バスティアは、今にも倒れそうな顔で国王ラ・ムーに先日の戦闘の報告を行う。

 

「首都防衛艦隊は敵艦隊との交戦により、全滅。

マイカルは敵別働隊の艦砲射撃によって港湾施設の殆どが破壊されました。

乾ドックで修理中のラ・カサミは何とか

攻撃を免れる事が出来ました」

 

残念ながらマリン改は、まだ首都防空隊には配備されていなかった。

 

 

「・・・そうか、亡くなった兵、負傷兵、そしてその家族には手厚い保護を頼む」

 

「・・・はっ」

 

 

「・・・で、ミリシアルに援軍を頼む事は確定したのか?」

 

 

「は、本日神聖ミリシアル帝国大使館において、援軍を要請し、無事派兵が決定したとの事です」

 

「そうか、ドイツはどうなった?」

 

「ドイツに対しても本日大使館に援軍要請を送ったようですが、良い返事が聞けるかどうか・・・」

 

「ほう・・・、まぁ第三文明圏の端だ。

距離的に無理もあるまい」

 

 

「その代わりですが、先程パーパルディア皇国から外征軍を派遣するとの連絡がありました。」

 

「パーパルディアかぁ・・・」

 

「パーパルディアで御座います」

 

正直言ってラ・ムーは、パーパルディアに期待していなかった。

 

何せ覚えてる限りでは、グラ・バルカスに滅ぼされたレイフォルとほぼ同じ装備だからだ。

 

 

「まぁ良いだろう。勿論他国に頼ってばかりではあるまいな?」

 

「勿論で御座います。現在キールセキに主力を集め、グラ・バルカスを迎え撃つ準備をしている所で御座います」

 

 

「そうか、この作戦は絶対に漏らすな。ミリシアルの様になってはいかん。」

 

 

「はっ!」

 

◆◇◆◇◆◇

パーパルディア皇国

パラディス城

 

「此度のグラ・バルカスのムー侵攻における暴挙! 列強として!この世界の秩序を守る者として決して許される事ではない!」

 

ルディアスの演説が終わるとアルデが口を開く。

 

「それで今回の派兵と言うわけですね」

 

「そうだ。我が皇国は海戦に次いで陸戦も強いという事を奴等に理解させねばならん」

 

「では、ムー国に皇国外征軍2個軍団を派兵する事に致します」

 

「うむ、やはり海路で行くのか?」

 

 

「はい、しかし潜水艦という物が脅威になりますので、中央世界上部の方へ遠回りする形でムーへと向かいます。」

 

 

「ムーへは無傷で兵達を届けたい。頼んだぞ」

 

「ははっ!」

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

ドイツ

ベルリン

総統官邸

 

「と言うわけで総統閣下。

ムーより援軍の要請が来ておりますが」

 

「そうか、海軍としてはどうなんだ?兵を長距離間を運べるのか?」

 

「その問題については心配ありません。現在民間船を徴用し遠征部隊の準備を進めています。それに現在レイフォル沖にて潜水艦部隊による通商破壊を行っておりグラ・バルカスを現在レイフォル沖に留めさせておりますので、敵艦隊との接敵の可能性は無いものと思われます。」

 

「陸軍は現在Ⅲ号戦車Ⅳ号戦車の編成を完了しております。」

 

「空軍も既にスツーカ爆撃機に新型戦闘機フォッケウルフfw190を中心とした部隊の編成を終えています。」

 

 

「つまりはいつでも彼らにゲルマン民族の正義の鉄槌を下せると言うわけだな?」

 

「その通りであります。」

 

それを聞くとヒトラーは満足そうに肯くと命令を出した。

 

「ドイツ第三帝国総統アドルフ・ヒトラーは陸海空軍に対し、ムー大陸に遠征し愚かな敵を叩き潰す事をここに命じる!」

 

 

「「「ハイルヒトラーッッ!!」」」

 

 

◆◇◆◇◆

 



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侮るなかれ

グラ・バルカス帝国 

最前線基地 バルクルス 

 

ユグドではどうだか知らないが、地球ではすっかり時代遅れとなった星形要塞であり外側には飛行場がある。

 

同基地の総司令である第8軍団長ガオグゲルは執務室から外を眺めていた。

現在この基地には、ムー国のアルーを落とした第4機甲師団が整備の為帰還しており、歩兵を主とする第3師団と交代していた。

 

 圧倒的兵力、この世界には我々に抗するほどの力を持つ者はいないであろう。

 

 

そんなバルクルス基地で幹部会議が行われようとしていた。

 

 

「アルーの街は敵国の駐留軍主力を全滅させ、占領しました。ゲリラ的な反抗はあるでしょうが、さしたる影響はありませんまた、敵ムー国の航空機性能は、海軍からの資料のとおりの性能であり、帝国航空兵の敵ではありません。敵最新鋭戦闘機の速度は時速にして約380km程度であり、爆撃機であっても高度と最高速度を維持すれば、振り切れるでしょう」

 

陸軍幹部の説明に、各幹部の顔が多少の安堵に包まれる。

 

どうやらドイツのエンジンを積んだマリン改の存在は掴めていないようだ。

 

「アルーの街から東へ約200kmの位置に、ムー国人がホーウキと呼んでいる航空基地があります。アルーへ出撃されたらやっかいなので、このホーウキの爆撃をアルー侵攻と時を同じくして行いました。攻撃は成功し、敵飛行隊は全滅。此方のアンタレスが敵対空砲により被害を受けましたが、軽傷であり修理を行い3日もすれば復帰できるでしょう」

 

続いて、第4機甲師団長ボーグが発言を開始した。

 

「次の陸上作戦について説明します。

 アルーの街の東側に空洞山脈と呼ばれる区域があります。

 空洞山脈の空洞は戦車でも通行可能との報告を受けておりますので、そこを突破しさらに東側にある街を制圧します。

 この空洞山脈東に位置する街は人口22万人です。ムー国陸軍及び増援軍との武力衝突が予想されます。

 この街は、ムーの大動脈とも言える南北を結ぶ鉄道のうち、西周りの鉄道拠点でもあります。

 ここを制圧することで、ムーへの打撃は相当なものとなるでしょう。」

 

「うむ、これ程の大戦力があれば、ムーだろうがミリシアルだろうが蹴散らす事が出来るだろう」

 

ガオグゲルが自信たっぷりに言い放った。

 

◆◇◆◇◆

ムー

空洞山脈

 

まるでスポンジの様になった岩石が上を覆い尽くし、地面は砂地だ。

 

そんな特殊な場所で数人の人影が。

上の方で蠢いていたのはムーの工兵だ。

 

「・・・これで良し・・・」

 

人影の1人が上方の岩柱に爆弾を設置し、敵が通ると思われる通路にピアノ線を張る。

 

「これで奴等が通るとドカンと言うわけだ」

 

男は薄気味悪い笑みを浮かべ、次の爆弾の設置に取り掛かる。

 

 

◆◇◆◇◆◇◆

ムー国陸軍 

西部方面隊主力 

キールセキ陸軍駐屯地 

 

 

「ヤコペッティ軽戦車大隊到着致しました!」

 

「カンブレイ戦車装甲連隊配置に着きました!」

 

エンジンと砲座の向きが逆向きの機関銃だけを装備した装甲車の様な戦車や、菱形の車体に、砲塔が生えたような戦車が次々と汽車でキールセキに運ばれて来る。

 

「ホクゴウ司令、先程空洞山脈の仕掛けを完了したと報告がありました」

 

「うむ、宜しい」

 

「マリン改の調子もすこぶる良い模様、

戦車隊も問題なく稼働しています。

グラ・バルカスなど敵ではありますまい」

 

(そうだといいんだがな・・・)

 

部下の言葉に、ホクゴウは無表情で頷いた。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

空洞山脈・・・

 

現在第4機甲師団は空洞山脈を通過している。

 

薄暗い山脈内には、想定していた敵軍は見えず、思わず拍子抜けした模様。

 

そんな第4師団の指揮車に乗るボーグは、部下と会話していた。

 

「あと8時間程で空洞山脈を抜けます。」

 

「そうか・・・。すでに事前の空爆は終わっているだろうな、もしかすると敵の陸軍基地も併せて全滅しているかもしれん。せめて出番があれば良いが・・・」

 

第4師団の兵士は皆トラックに乗っており、前方に何か罠が仕掛けられていないか誰も注意しようともしない。

パガンダ、レイフォルと圧勝し続けたが故に慢心していた。

 

 

「第4師団は、帝国の中でも・・・」

 

 

1番先頭を進む戦車の車長は前方で何か光る糸のようなものに気付く。

 

「前世界においても・・・」

 

しかしさして気にする事もなく、

そのまま千切れるだろうと前進する。

 

「今世界においても・・・」

 

戦車にピアノ線が接触する。 

 

 

「無敵だ!!」

 

 

・・・ドォォオオン

 

 

 

上方の石柱に仕掛けてある爆弾が爆発し、下を進む第4師団目掛けて大量の岩石が降り注いだ。

 




ムー国戦車の元ネタは、鈍色の攻防のユーロディアールの戦車から取りました。


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キールセキ防空戦

崩落した空洞山脈の岩石は、見事なまでに第4師団を押し潰した。

 

それでも幾つかの車両は、他の車両の隙間で無事ではあったが。

 

 

「がぁ・・・いたい・・・」

 

鉄屑と化したトラックの1つから、怪我の無い兵士達がフラフラとした足取りで降りて来る。

 

 

「ちっ!一体どうなってんだ!」

 

「状況確認、隊の者は集まれ」

 

「おい、起きろ!」

 

「彼はもう死んでます!」

 

「クソ!」

 

這い出た兵士の中でも隊長と思われる男は、頭の打ち所が悪かったのか目立った外傷も無い兵士の亡骸をトラックの荷台に寝かせると、生き残りの隊員を数える。

 

「たったのこれだけか!?」

 

余りの少なさに驚いてしまう。

 

「取り敢えず我々は生き残りと合流しながら後方へ下がる。」

 

師団が実質壊滅し指示も仰げない以上、

各自判断で行動するしか無い。

 

兵士達は装備を纏めて後退しようとしたときであった。

 

パン!

 

近くにいた兵の頭が爆ぜる。

 

 

「スナイパー!!」

 

誰かが叫ぶと同時に皆がトラックの影に隠れる。

 

網目の如く岩が張り巡らしている空洞山脈だ、敵が潜んでいてもおかしくは無い。

それに敵の規模はどれくらいなのかも見当が付かない。

 

今までは一方的だっただけに急に攻守が逆転し、他の兵士達もパニックに陥っている。

 

「ここで易々と死ねるか!反撃だ!」

 

空洞山脈の至る所で残存部隊とムー兵士との撃ち合いが始まった。

 

◆◇◆◇

 

ドン!!

 

生き残っていた戦車がムー兵士に向け、榴弾と機銃を撃ち込み、数人のムー兵が吹き飛ぶ。

 

「なんとか持ち堪える事が・・・なんだあれは?!」

 

 

安堵したのも束の間、急に真っ白い煙幕が戦闘域を覆尽くす。

 

 

「なぁっ!?煙幕!?ーー!

 

驚いたと同時に、叫び声が木霊する。

 

 

「突撃ィィィ!!!!」

 

 

「「「ィィィイイヤアァァ!!!!」」」

 

 

濃い煙幕の中にサーベルを持った兵士と、着剣した兵士の影が数人の見えたと思った瞬間、隊長にムー兵士が体当たりをして銃剣をぶっ刺して来た。

 

「○%×$☆♭#▲!※!!!!」

 

奇声に近い叫びを上げながら、隊長の胸部を執拗に突き刺した。

 

その背後では戦車に接近し、覗き窓の隙間からピストルで執拗に撃ち込み、這い出た所を滅多刺しにした。

 

グ帝残存兵は総崩れとなり、バルクルス基地へ一目散に逃げていった。

 

 

◆◇◆◇◆

少し前

 

ボーグは指揮車の中で目を覚ました。

後方にいた事と、他の車に比べて装甲が厚かったのが幸いしたのだろう。

 

「・・いてて、おい!起きろ!生きているだろう?!」

 

ボーグが近くにいた搭乗員を叩き起こす。

 

「あ・・・ああ、痛い・・・一体何がどうなったのですか??」

 

「どうやら蛮族共が空洞山脈を吹っ飛ばしたようだ。無茶をしやがる」

 

その時であった。

 

ドン!!

 

遠くから戦車の砲撃音が響く。

 

「な!何が起きた!」

 

すると、天井の装甲ハッチが乱暴に開けられる。

そこには自軍の兵士の姿があった。

 

 

「ボーグ閣下!ご無事でしたか!たった今ムーが奇襲を仕掛けて来ました!今すぐお逃げ下さい!!」

 

そう言うと、兵士は些か乱暴にボーグを引っ張り上げる。

 

「いだだだだぁだだだ!!!!!」

 

無理に引っ張り上げられたボーグは足を抑えた。

 

ボーグの足は岩石が落下した衝撃で足が椅子に挟まれ、歪な方向に曲がっていた。

 

「閣下!足が・・・!なんてこった!」

 

 

「ぼやぼやしている暇は無い!無理やりでも引っ張り上げるぞ!!!」

 

そこら辺にあった工具で無理にこじって椅子の隙間を開け足を引っ張りだすと、ボーグを担いで元来た方に一目散に駆けて行った。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

空洞山脈 グラ・バルカス側

 

つい先程爆音が鳴り響いたと同時に、侵攻部隊からの通信が途絶えた。

 

第2砲兵師団は、第4師団が空洞山脈を

抜けて制圧してから山脈に突入しようと、入り口で待機していた所であった。

 

 

「一体何があったのか?」

 

コーリーはテントの下で紅茶を飲みながら部下に問いかけた。

 

「どうやらムーが空洞山脈の内部を爆破して第4師団を生き埋めにした様ですな」

 

すると、通信兵が飛び込んできた。

 

「何事か」

 

「ボーグ少将が負傷し、指揮が不可能になった事により、1番近いコーリー少将に指揮権が移されました!」

 

「なんと!」

 

「第4師団は現在此方に向かっているとのことです」

 

「うーむ、わかった。入り口に歩兵とトラックを用意し、第4師団が到着次第載せてバルクルス基地へ帰還する。砲兵隊は使えないから基地へ帰還するように伝えてくれ」

 

「了解致しました」

 

 

「少しばかり舐めてかかりすぎた様だな。この作戦は失敗だ」

 

 

何とか逃げ切れた第4師団の生き残りはトラックに載せられ、速やかに基地へ帰還しボーグはレイフォルに置いた病院へと移された。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

時間は少し前に遡る。

 

グラ・バルカス帝国 

キールセキ第1次攻撃隊

 

 大山脈の上空を、85機にも及ぶキールセキ第1次攻撃隊が悠々と飛んでいた。機体の発する重厚な音は、付近に響き渡り、不気味な雰囲気を醸し出す。

 

○アンタレス型戦闘機19機

○シリウス型爆撃機41機

○ベガ型双発爆撃機25機

 

の大編隊で構成された爆撃隊は、順調にキールセキに向け進路をとっていた。

 眼下には空洞山脈に引っかかった雲が、雲海を形成していた。

 

 アンタレス型戦闘機、小隊長のスペースは、周囲を監視する。

 相手は世界第2位の列強だの、文明圏だの言っているが、はっきり言って弱い。

その為軍全体がこの世界に対して舐めており、この作戦でも前世界では考えられないぐらい低高度で飛んでいる。

 

 が、おそらくは問題なく爆撃し、問題なく基地に帰還する事が出来るだろう。

 

敵戦闘機は脅威ではない為、下の対空砲火に注意を向けていた。

 

「む?!」

 

キールセキの飛行場から来たと思われる複葉機が見えて来る。

 

(前に交戦したのよりも速い!?陸軍機?まさかムーの新型か?!)

 

 

徐々に機影がハッキリしてくる。

 

「来るぞ!」

 

 

520キロの全速力で飛んで来たマリン改は、アンタレスとの正面を切っての撃ち合いが始まり、すぐに巴戦となる。

 

単翼機のアンタレスより、複葉機のマリン改の方が旋回性能は高く、機銃を増加したのもあり、互角以上に戦えていた。

 

「くそ!思ったより速いな!」

 

『つ!付かれた!助けてくr・・・』

 

『敵戦闘機が爆撃機の方に向かって行くぞ!』

 

『させるか!』

 

マリン改の数機がベガに向かって行く。

アンタレスはそちらに行こうとするが、残っているマリン改が邪魔をしてくる。

 

◆◇◆◇

 

「ちくしょう!アンタレスは何してるんだ!」

 

ベガの機銃主であるオリトは、アンタレス隊に悪態をつきながら機銃を構える。

 

「上、3時方向に敵機!」

 

「うらぁぁぁぁぁ喰らえ!!!!」

 

 

上方から迫るマリン改に機銃を叩き込むが、何も当たらず隣の僚機に機銃が叩き込まれる。

 

落ちはしなかったが、エンジンからは白い煙が吐いている。

 

『編隊を崩すな!そのまま機体を上げろ!!』

 

隊長の無線が聞こえる中、シリウスがエンジンから火を吹きながら落ちて行く。

 

 

「上昇!上昇!」

 

機長が焦りながら操縦桿を引く。

 

隣で飛んでいた僚機が再度攻撃を受け、エンジンから火を吹き出しながら落ちて行くのを横目に高度を上げて行く。

 

この攻撃で残った爆撃機はシリウス35機、ベガ18機と大損害を被ったが、此処まで来ておめおめと引き下がるわけには行かなかった。

 

◆◇◆◇◆◇

 

キールセキ駐屯地

 

ウゥゥ〜〜

 

ウゥゥ〜〜

 

街中や、駐屯地内にはサイレンが鳴り響き、市民達は山をくり抜いた防空壕へと避難を開始していた。

 

駐屯地内では、基地に5つある装甲飛行船用の対空砲を空に向け、迫り来る敵機に備えていた。

 

砲座には下士官が座り照準から空を睨む。

その時、誰かが「敵機!」と叫ぶのが聞こえた。

まるで黒いインクでスプレーしたかのように無数の黒点が覆い尽くしている 。

それは下士官がこれまで見たこともないほどの、凄まじい数の航空機集団だった。

 

 

ーーードン!

 

照準に入ったベガに向けて対空砲は火を噴くも、時限式でも無いただの徹甲弾は虚しく空を切る。

 

「榴弾にして再装填!」

 

尾栓部の兵が榴弾を込める。

その間にも航空機用の対空砲が次々と空で黒い花を咲かせている。

 

ーードン!

 

下士官の撃った榴弾はベガを通り抜け、また空を飛んで行った。

 

「畜生!再装填!」

 

すると、空を飛ぶ敵機の1つが別の飛行船用の対空砲に当たったらしく爆散した。

 

 

◆◇◆◇◆

 

『3番機がやられた!』

 

目の前でくるくると舞う様に落ちて行く僚機の残骸を見ながら操縦士のアレンは、進路がずれぬ様に操縦桿を握りしめていた。

 

「進路そのまま!よーそろ!ようそろ・・・投下!」

 

爆撃手はスイッチを押し爆弾を投下した。

 

爆弾は住宅地に落とされ、防空壕に向かっていた住民を木っ端微塵に吹き飛ばす。

 

「爆弾は落とした!あとは帰るだけだ!!」

 

アレンはそう叫ぶと、操縦桿を思い切り引き上げた。

 

◆◇◆◇

 

アレン達は何とかバルクルス基地へ帰路に着くことが出来た。

 

アレンは隣で一緒に飛んでいる僚機を見て無線で語りかける。

 

『お互い何とか生き延びる事ができた様だな』

 

『ああ、全くだ。』

 

『帰ったら酒でも・・・おい!あれ何だ!?』

 

ベガの上空から1つの機影が現れた。

 

『まさか!ムーの新型か!!』

 

突如上空から現れたのは、今まで見たムーのマリンとは違い、全金属製の単翼機で、機首もスラリとした液冷エンジンであった。

 

それはマリンでは到底できない様な急降下を行い、僚機に向け両翼から20ミリ機関砲を叩き込んだ。

 

エンジン部をやられた僚機はたちまち煙を吹きながら落ちて行く。

 

何個か落下傘が見えたが、搭乗人数分の数は見られなかった。

 

「やばい!クソ!」

 

アレンは大焦りで速度を上げ逃げる。

・・が、何故か新型機は僚機を撃墜すると急に速度を落として戻って行ってしまった。

 

「危なかった・・・、エンジンでも壊れたのか・・?」

 

アレンはどっと疲れが押し寄せ椅子にもたれた。

 

◆◇◆◇◆◇

 

「くそ、エンジンがイカれやがった」

 

パイロットが悪態をつきながら基地へ帰還する機体はhe100。

 

この機体は本来はドイツ空軍に向けてハインケル社が作ったものだが、採用が見送られてしまう。

それでも試作機を12機程製作していたハインケル社は、クワ・トイネ、パーパルディア等の技術後進国ではなく、ムーという機械文明国と国交を結んだと聞き、

早速売り込みをかけた。

 

この機体はbf109と比べ、生産性・整備性が悪くそれで採用が見送られたが、ムーからしてみたら化け物性能を持つこの機体を買わない手は無く、技術を調べる為五機程購入した。

 

そして空洞山脈で巧妙に偽装された飛行場で運用試験をしていたhe100は、キールセキから帰るグラ・バルカスの爆撃機を発見し攻撃を行ったのだが、1機は落とし2機目を攻撃しようとしたところでエンジンに異常が発生してしまい、帰還せざるを得なくなってしまったのだった。

 

◆◇◆◇◆

 

キールセキを巡って行われた攻防戦。

しかしこの戦いも、第二文明圏全土を戦火に包む戦いのほんの序章に過ぎなかった。

 




ムー兵の煙幕は手の魔法陣から出したものです。
ロウリア王国のランドが出してた魔法ですね。
ムーも魔法が全く無いわけでは無いから使える人もいると思うんです。


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空の死神と骸骨部隊

キールセキ駐屯地

ホウゴウ司令に部下が報告をしていた。

 

「被害報告!」

 

「うむ」

 

「今回の攻撃で滑走路に穴が空き、修理に1日要するとの事です。そして格納庫は7%が破壊されました。その他は皆住宅地に攻撃を行ったそうです。」

 

「非戦闘員への攻撃か・・・卑劣な奴等だ。」

 

「そして撃墜した爆撃機の残骸を手に入れる事が出来たのでこれは技研に渡しました。その他山脈内で無傷で残っていた敵戦車を鹵獲しました。後は残りの捕虜の処遇ですが・・・如何致しますか?」

 

「我が国は文明国だぞ?処刑などという蛮族紛いな事などせん!収容所へ送れ!」

 

「了解致しました」

 

◆◇◆◇◆

グラ・バルカス帝国

バルクルス基地

 

現在、基地で会議が行われていた。

 

この会議の主な内容はこれだ。

 

○どうやって空洞山脈を攻略するか

 

 

「諸君の考え、聞かせてもらいたい」

 

ガオグゲルは神妙な顔で話す。

 

「毒ガスを流せばよろしいのでは?!」

 

「そうしても罠は無くならないし、第1ガスが溜まってしまっては歩兵にも危険が及ぶだろう。」

 

「防毒面をつければよろしいのでは?」

 

「お前は8時間以上あの息苦しいお面を着け続ける事ができるのか?」

 

いつ敵が襲ってくるか警戒し、かつ罠にも気を配り、残留したガスを吸わぬ為に息苦しい防毒面を着けて8時間以上行軍する。

これ以上の地獄が何処にあろうか。

 

「では、火炎放射器で焼き払いながら進むというのは?兵も交代でトラックに載せながら進めばよろしいですし、何より防毒面を付けなくて済みます。」

 

「確かに悪くは無いが、酸欠が怖いな」

 

 

すると第三師団の参謀ロジェが発言した。

 

 

「恐らくですが、ムーの兵器の発展具合から未だ空中挺進という戦術が発明されていない可能性があります。」

 

「なるほど、空挺降下で直接キールセキを占領しようというのだね。それは良い案だ」

 

「この任務にはア・プチ空挺団がよろしいでしょう。彼らの練度はユグドでも目を見張る物がありましたから」

 

ロジェは、心の中で「彼らの素行の悪さも目を見張るものだけどな・・・」と付け加えた。ア・プチの悪名はイシュタムと並ぶほどであった。

 

◇◆◇◆◇◆

 

ムー国

マイカル港

 

現在マイカル港にドイツ軍が上陸を果たしていた。 やってきたのは第三SS装甲師団(通称髑髏師団)他に国防軍とロウリア方面軍を中心とした派遣軍が堂々とした様子で

マイカルの街を行進した。

 

マイカルの人々は彼らを旗を振って歓迎する。勿論旗はハーケンクロイツだ。  

戦後連合諸国が見たら卒倒しそうな光景だろうが、ムー国民から見れば希望の友軍に違いなかった。

 

◇◆◇◆◇◆

中央暦1643年七月一日 午前10時

 

キールセキ上空

 

輸送機アルデバランが20機、200人の空挺兵を載せキールセキへ向かう。

 

空挺団団長のバルべはマイクを使い兵士達に向かって話しかける。

 

「皆さん!今作戦は我々空挺団の働きにかかっています!なので!!一番戦果を上げた隊にガオグゲル指令から極上のムー女が送られます!!皆さんのご健闘を祈ってますよぉ!  投下開始ぃ!!」

 

 

兵士達は順序良く、しかし手柄を上げるため我先にと機体から飛び降りていった。

 




イシュタム陸戦隊をア・プチ空挺団に変更しました。


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キールセキの戦い

中央歴1643年七月一日 午前10時

 

 キールセキ駐屯地

 

現在駐屯地は聴音機部隊からの敵機襲来の報を受け、マリン改の出撃準備と対空砲の用意を始めていた。

 

「敵爆撃機20!敵戦闘機30!第4観測地点を通過しました!」

 

 

「大部隊だな。奴さんキールセキを更地にするつもりか」 

 

 

ホクゴウ指令は軍帽を被り直し指示を飛ばす。

 

「航空隊は旧式も一緒に34機全機飛ばせ。」

 

 

「はっ!」

 

 

◆◇◆◇  

 

「前方から敵機、おおよそ30機。」 

「何れも複葉機だ、後方機銃で何とかなるんじゃないか?」

「前に辛酸舐めさせられたのを忘れたのか?生意気な蛮族は皆殺しにするんだよ」

 

急速に接敵後、すれ違いざまに射撃を行いドックファイトが始まる。

 

数は同数だが旧式とマリン改がそれぞれ半々なため、次々と落とされていく。

その中の数機がアルデバランに向かって突撃していく。  

 

「戦闘機隊!敵を撃ち漏らしてんぞ!」

アルデバランの機銃手は苛立ちながら射撃を開始するが、突撃してきたマリンは機体を引き上げる事無くアルデバランへ突っ込んでいく。

 

「キ・・キチガイめ!!」

 

そのままマリンはアルデバランに激突し諸共墜落した。

しかし僅か一機落としたところで戦局に変わりはない。

 

「降下地点上空に到達!降下開始!」 

 

「皆さん!今作戦は我々空挺団の働きにかかっています!なので!!一番戦果を上げた隊にガオグゲル指令から極上のムー女が送られます!!皆さんのご健闘を祈ってますよぉ!  投下開始ぃ!!」

 

兵士達は順序良く、しかし手柄を上げるため我先にと機体から飛び降りていった。

 

 

◇◆◇◆◇◆ 

 

「指令ぇ!!何か降ってきてます!!」

「パラシュートだ!」

  

指令室にいる士官達は次々と窓の外を覗き込む。

 

「すわ!落下傘で兵士を落としたのか!陸戦部隊に出撃準備だ!急げ!!」

 

トラックの荷台に乗った兵士達が基地内を駆け回り配置につき、ホッチキス Mle1914重機関銃に酷似した機関銃を設置し、野砲の準備が進む。

 

 

敵のパラシュートはできる限り基地に近くに落ちてきている。

 

「装甲車大隊は兵士を載せて投下予定位置に急行しろ!」  

 

パラシュートで落とせる武器などたかが知れている、精々別々に投下した小銃ぐらいだろう。

 

 

◆◇◆◇◆

 

◆◇◆◇◆  

ア・プチの兵士は順調に降下し、着地後速やかに別途投下した小銃と機関銃を回収し侵攻を開始する。 

 

すると前方にムーの装甲車が歩兵を伴ってやって来た。

 

「前方に装甲車!」

 

そう言うや兵士は八九式重擲弾筒の様な物を取り出し弾を発射し装甲車に命中、装甲車自体には被害はないが周辺の歩兵がなぎ倒される。  

 

 

◆◇◆

 

「ぐっ!曲射砲か!?奴ら落下傘でそんな物を落としてきたのか!?撃て!!撃て撃て!!!」 

 

グ帝兵の隠れているであろう茂みに向け機関銃を撃っていると茂みから麻袋が放り投げられた。

 

「いかんっ!後t・・・!」

指示を出す直前に大爆発が起こり装甲車を吹き飛ばした。

 

◆◇◆

 

既に37㎜砲も組み立てを完了し、キールセキ近郊の畑まで迫って来ていた。   

 

ムーも戦車を展開したが、練度の差が桁違いのため37㎜砲に撃破される。  

頼みの綱である機関銃部隊ですらグ帝機関銃の性能の違いから撃ち負けてしまう。

 

遂に市街地に突入した。

ムー兵は路面電車を盾にしたり入り組んだ路地での強襲を行うが、対戦車ライフルや短機関銃が猛威を振るった。 

 

 

◆◇◆

 

キールセキ駐屯地

 

「もはやこれまでか・・・」

 

 

既に戦闘機隊との通信は切れ、地上部隊の報告は絶望的なものばかり。

鹵獲戦車も投入したが大した戦果も得られぬまま撃破された。

 

「降伏旗を上げよ」

 

「しかし!グ帝は捕虜を見せしめに処刑する奴らです!降伏など嬲り殺されに行くような物です!!」

 

「このまま戦い続ければ無駄に兵を死なせるだけだ。ならば降伏し僅かでも生き残る道を見出すのだ」

 

 

◆◇◆  

 

駐屯地に掲げられた降伏旗を眺めながらバルべは呟く。

 

「やっと降伏しましたか。さっさと降伏していれば良かったものを」

 

 

駐屯地の飛行場にホウゴウを始めとした将兵が集められており、それを勝ち誇った様に見ながらバルべは口を開いた。  

 

「貴方達は負けました、しかしご安心を・・・この町の住人は我々が面倒を見て上げますよ・・フフフ・・」

 

「その言葉に偽りはないな、彼らは非戦闘員だ。」

 

「勿論です・・非戦闘員には手を出しませんよ・・非戦闘員にはね・・・」

 

 

「そして、我々はどうするのかな?やはり処刑かね?」

 

ホウゴウは挑発気味に問う。

 

「まさか!皇帝陛下の軍がそんな事をするとでも?必死に戦った貴方達は敬意を表して自由の身にしてあげますよ・・」

 

◆◇◆ 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キールセキで身ぐるみ剥がされ我々は現在、徒歩でオロセンガまで撤退していた。

 

一日中アンタレスが死体に群がる蠅の様に我々を狙ってくる。

ホウゴウ指令は一昨日の機銃掃射で戦死した、オロセンガまでまだ遠い。

 

ここは地獄だ・・・。

 

 

 

◆◇◆◇◆

キールセキ

 

「さて蛮族は行きましたね・・・では・・・・」

 

バルべは並んだ兵士に演説を行う。

 

「此度の戦いで我が隊にも戦死者が出ました・・・彼らを殺した奴らの中には非戦闘員に紛れた卑劣なレジスタンスがいます・・・」

 

演説中、兵士達はこの後の出来事を想像しニヤついている。

 

「これよりレジスタンス狩りを開始する!!どんな手段をとっても構いません、レジスタンスを根絶やしにしなさい!!」

 

その言葉を皮切りに兵士たちは己の欲を曝け出し住民達を襲い始めた・・・

 

 

 

 

 

 

 



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五列強同盟

神聖ミリシアル帝国 

ルーンポリス

外務省

 

既に会議室には列強国の外交官が集まっていた。

ミリシアルはリアージュ。

ドイツからはリッペンドロップ。

ムーは列強担当部長のカラミス。

パーパルディアからはエルトの副官であるハンス。

エモールからはモーリアウル。  

 

今回の集まりの大きな目的は、今大戦における一致団結を図る列強同盟締結及び戦時条約の締結。

そして現時点でグ帝に勝利した場合、グ帝に何を求めるかという情報の共有である。

 

◆◇◆◆◇◆

「本日皆様に集まって頂いたのは他でもなくグラ・バルカス帝国についてであります。グラ・バルカス帝国に対しての要求を各国、まとめていますお手元の資料をどうぞ」 

 

ドイツ

〇グラ・バルカス本土を列強による分割統治

〇皇族の退位 

〇戦争指導者の処罰  

〇戦争犯罪人の処罰

〇陸海空軍の解体

〇賠償金は最低無利子1000億ライヒスマルク払う事  

 

神聖ミリシアル帝国

〇グラ・バルカス本土を列強による分割統治

〇皇族の退位 

〇戦争指導者の処罰  

〇戦争犯罪人の処罰

〇陸海空軍の大規模軍縮

〇陸海空軍の技術の開示

 

パーパルディア皇国

〇グラ・バルカス皇帝は皇帝ルディアスが兼任するものとする

〇グ帝皇帝、指導者層及び外交官の公開処刑

〇陸海空軍の兵器の引き渡し及び技術の開示

〇毎年指定数の奴隷を献上すること

〇賠償金として3千パソ支払う事

 

ムー

〇賠償金5千マンダを支払う事

〇グラ・バルカス帝国軍の軍縮

〇皇族を政治から離し象徴のみとする

〇戦争指導者の処罰

 

エモール王国

〇グラ・バルカス帝国軍は、ラヴァーナル帝国戦時に列強国の求めに応じ 

軍事力の必要数を指定個所に投入しなければならない

 

◆◇◆◆◇◆

「成程、まぁこれぐらいは妥当ですな」

「少なくとも皇帝の座から引きずり落とす事が最低ラインだな」

「兎に角今は粗削りですし追々細かく決めましょう。」

 

今度は戦時条約についてだが、こちらはかなり揉めた。

この世界においても第2文明圏と第3文明圏とでは降伏方法が違うのだ、一纏めにしろと言って簡単にできるものではない。

これのついてはドイツがハーグ陸戦条約とジュネーブ条約を基にした戦時条約を提案した。

◆◇◆◆◇◆

遂に最後の目玉である列強同盟の締結となった。

    

   「五列強同盟」

 

軍事的相互支援が盛り込まれた同盟だが、技術レベルが滅茶苦茶な同盟がきちんと機能するのか神のみぞ知る所である。

◆◇◆◆◇◆

「・・と、戦時条約を決めましたがグラ・バルカスもこれに同意しなくては意味がない」

「我々の方から伝えるのも癪ですな」

「向こうの方から連絡を寄こさないものか。」

 

するとリッペンドロップは発言する。

「それなら我々に考えがあります。少々手荒な方法になりますがね。」

そう言い彼は不気味に笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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閣下の憂鬱

帝都ラグナ

帝都周辺の工業地帯から頻繁に出入りする機関車やトラック、軍港から流れてくる煙で空を黒く染め上げていた。

既に帝都内でも僅かながら公害による健康被害が見え始めていたが、多くの人々はこの空を「機械文明、豊かさの象徴」として誇ってしまっており、公害の被害者を「科学の時代に適応できない軟弱者」等と心にもない言葉を浴びせていた。

 

そんな帝都の中央にそびえる官邸の一室で二人の男が話していた。

「ナルガ戦線における戦闘は順調に進んでいる様だな。第4機甲師団が潰されたときはどうなると思ったが。」

「ええ、陸軍は開戦から負けなし。どうやら杞憂の様だった様ですな」

 

上座に座っているのはグラ・バルカス帝国宰相のコハマ。もう一人が陸軍大臣のシーダンであった。

皇帝が絶対的権力を持ち、帝国の三将と言う発言力の強い海軍軍人が三人中二人いるグラ・バルカスにとってコハマ内閣はお飾りでしかなく、フリッグデイに「ボタ山内閣」*1と書かれる始末である。 

 

「しかし海軍は酷いものだな、パガンダから本土に送る航路がドイツの潜水艦に荒らされているそうじゃないか。も少し海軍も頑張ってほしいね。」

「まったくマリクスのような過激派は少し身の程を弁えればいいのですよ」

「今後は配給制になるかもしれん、小麦も石炭もだ。軍はほんと金食い虫だな、燃料も飯も全てかっさらっていく」

◆◇◆◆◇◆

翌日

「では閣下、行ってらっしゃいませ」 

 

コハマは車に乗り込み工業地帯へ向かう道中、世界統一を掲げるポスターや標語が街中に貼られていた。

(最近はめっきり個人所有の車を見なくなったな・・)

大通りでも走っているのは路面電車かバス、トラックぐらいのもので、しかもそのバスでさえ木炭車だ。

そうしているうちに車は工場へ到着した。

 ガコン!!ガコン!!!

 

工場内は騒音をたててハウンド戦車が作られていた。

「機械の調子はどうかね」

「はっ!機械の調子はすこぶる快調であります!閣下!」

「テティス重戦車の方は?」

「重戦車はハウンドに比べると数は少ないですが、こちらです。」

向かう先には九五式重戦車に酷似した重戦車が並んでいた。

「まさに陸上戦艦だな。立派だ」

軍は金喰い虫と言っておきながら、テティスに見惚れてしまう。

「ドイツはとんでもない巨大戦車を作ってくれた。しかしこいつがあれば・・」

そう言いコハマは写真を取り出し見たのは、諜報部が撮って来たNbFzの写真だった。

◇◆◇◆

高級料亭 ミルトコウモ

「オルダイカ様、アンタレス戦闘機の後継機のコンペティションの件・・なにとそ宜しくお願い致します」

「心配するでないエルチルゴ、お前のお菓子の味は格別だ。確実にカルスラインを選んでやろう」

「はっ、ありがとうございます。これはお礼では無いのですが、オルダイカ様の大好きなお菓子でございます。お納め下さい」

盆にのせられ、紙がかけられたものがオルダイカにの前に出る。

盆に乗せられた紙をめくると、グラ・バルカス帝国で流通している最高通貨の札束が重ねられていた。

「ゲールズが何やら高性能機を開発していると聞きますが、まだまだアンタレス神話が続かなければ困りますからな」

 

アヴィオール双発機やシリウス型を作っているゲールズ社が革新的な新型機を開発している中、カルスラインはアンタレスを少し改良しただけの物を採用させようというのだ。

「どんな高性能機を作ろうと、コストも安く信頼性・汎用性が高いアンタレスの方が良いと言えば良いのだからな。」

「たくさん落とされれば落ちた分作って儲けられますからな。性能は少々落とすぐらいが良いのです。」

「成程……ほっほっほ……しかしエルチルゴや、中々にお主も悪よのう」

「オルダイカ様ほどではございません」

『ハッハッハッハッハ』

 

憂国のコハマと獅子身中の虫のオルダイカ。それぞれの思惑を胸に戦争は行われていった。

 

 

 

 

 

 

 

*1
山で採掘された鉱石のうち、資源として使えず廃棄する岩石などの部分を捨石ないしは廃石、俗称でズリという。石炭鉱山のズリ山はボタ山と呼ばれた。




コハマ内閣
モデルは小磯内閣です。お飾りならこれぐらいがちょうどいいかなという感じで。

テティス重戦車
漫画『シェイファー・ハウンド』の作画・かたやままこと氏の作品の『戦海のテティス』から。
テティスはギリシア神話に登場する海の女神であり、陸上“戦艦”という事で無理やり付けました。

NbFz 
コハマさん見事に騙されました。予備役の陸軍大将のコハマが計画を後押ししたという事にしてます。


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Blitzkrieg
Blitzkrieg


中央歴1643年七月五日 

事実上壊滅した第四機甲師団に変わり、第2砲兵師団装甲大隊に編入されたモント・セラト軍曹が数台の友軍と共に進軍していた。

「いいかしっかり警戒しろよ、ムーはこいつをぶち抜ける砲を持ってるんだからな」

モントは通信機を使い注意を促す。

「そうはいっても重カノン砲でしょう?隠せるとしても精々1,2台、展開するのも大変ですから杞憂なんじゃないですかね」

砲手のピトー・ケアン伍長が笑いながら言う。

「何事も警戒しておくに越したことは無い!かの英雄の死が流れ矢だと知っているだろう!」

「へぇ、知らなんだ。どこの英雄で?」

「何も知らないんだなお前は……いいか…」 

 

◆◇◆◆◇◆  

「敵だ…数は4両」

付近の雑木林に潜む影。

ドイツ軍砲兵大隊第1小隊ランベルト軍曹は茂みからモント達の戦車隊を捕捉していた。

「こちらも4両だが不足は無し…と」

ランベルトは75ミリ長砲身のⅢ号突撃砲に乗り込む。

「しっかりと狙えよ…シャルンホルストの仇と思え……」

距離は600をきっていた。

「テッ!」

 

DOM!

                  

DOM!

DOM!

DOM!

ハウンド戦車に向かって75㎜砲弾が襲い掛かる。

2両が胴体に直撃し黒煙を吐き沈黙、中1両が砲弾に引火し爆発を起こして砲塔が吹き飛ぶ。

他1両が砲塔上部を掠り、残り1両は外した。

「ああっ!何やってんだよくそっ‼あんなに絶好のチャンスなんかないぞ‼次弾装填急げ!」

◆◇◆◆◇◆

「??あれは…」

二号車車長のバルドメ軍曹は遠くの雑木林に何か違和感を覚え双眼鏡を覗く。

そこには今まさに此方に向け撃たんとするⅢ突の姿があった。

「せn

そう言いかけた瞬間彼はミンチ肉と化した。

 

「???」

モントの目の前に肉片が飛んでくる、彼はそれが目の前を走っていたバルドメ軍曹の物だと理解するまで時間がかかった。

その直後彼の胃液が急速にこみ上げハウンドの車体を汚し同時に4号車が爆発し攻撃を受けたことを理解する。

「敵…」

そして指示を出そうとした瞬間彼の意識は永遠に途絶えた。

◆◇◆◆◇◆

「に……逃げねぇと!」

二号車の操縦手クレメンスはハウンドから這い出て逃げるも今度は榴弾が撃ち込まれる。

「うわぁぁぁ母ちゃぁぁぁん‼」

彼は爆風で全身を叩きつけられ動かなくなった。

◆◇◆◆◇◆

「何?モント軍曹の部隊が未帰還?」

近くの村の指令テントでは装甲大隊指令のイダン少佐が通信兵の報告を聞いていた。

「もしや敵と遭遇して全滅したんじゃ…」

「いくら何でも生き残りが一人もいないのはおかしいのでは?」

「想像以上の大部隊、まさか大規模反攻作戦の可能性…?」

テントの中にいる全員の背筋が凍る、いくらムー程度の戦力といえど装甲大隊規模ぐらい人海戦術でどうとでもなる。

「偵察機を飛ばせ!今すぐ‼」

イダンは部下に怒号に近い指示を飛ばす。

周辺の基地からは零式観測機*1に酷似したレグルス偵察機が数機飛び立った。

「無事見つけられるでしょうか…」

「わからん、偵察機が上手くやってくれることを期待しよう」

 

◆◇◆◆◇◆

実際既にドイツはムーと徒党*2を組んで攻め込んで来たのだ。

上空にはスツーカとフォッケウルフが、地上にはⅢ号戦車とⅣ号戦車*3、兵士を載せた装甲車とトラックが正に電撃の如くグラ・バルカスの警戒網をぶち破ってキールセキに向かい侵攻を開始した。 

◆◇◆◆◇◆

レグルスに乗ったアルトスはつまらなそうに仕事を行う、前やっていた潜水艦隊の偵察任務よりかは戦線に近いし幾らかやりがいはある、だがやはり乗れるのならばアンタレスに乗って戦いたい。 

そんなアルトスを相棒が注意を促す。

「おいきちんと見張りをしろよ、我々は目なんだぞ」

「解ってるって……………おいあれなんだ」

アルトスの目線の先にはゴマ粒大の斑点が見え、地上は砂煙が上がっている。

「ド……ドイツだ…!」

そう言っている間にも敵戦闘機の姿形が確認できるまで迫っている。

「早く報告を「今やってるよ‼」

アルトスは逃げるためスロットル全開で急降下を行い速度を稼ぐも所詮複葉機、フォッケウルフはピタリと付いてくる。

「クソッ!クソッ‼アンタレスだったらあんな奴‼」

アルトスは錯乱気味に喚き散らす。

未だフォッケウルフは撃つことなくいたぶる様に追いかけまわしている。 

 

「早く逃げろよ、何をモタモタしている?」

 

「逃げる気か?この私から逃げられるとでも?」 

 

朦朧としたアルトスの頭に何者かの声が流れ込んでくる。

「ドイツ野郎は悪魔だというのかッッ‼」

直後13㎜と20㎜各2門の機関銃が火を噴き、レグルスは木端微塵に砕けながら地面に叩きつけられた。 

◆◇◆◆◇◆

「大変だ……‼」

通信兵がアルトス機からの報告を見て急いでイダンの元へ走る。 

「何てことだ、応援を呼び直ぐに防衛準備を急げ!」

偽装網に土嚢、機関砲、戦車砲を用意するが数が足りない、しかし今ある物で戦わなければならない。

聴測機からは既に計算が済み増援は間に合わないという結果を改めて示しているだけだった。

◇◆◇◆◆◇◆

QUWAOOOO‼

甲高い唸りを上げスツーカは敵陣地へ500キロ爆弾を叩きこみ、付近に止めてあった装甲車が吹き飛ばされる。

「耳がッ!!」

「何だこの数はッ!!」

「お前ら無駄口叩いてないで撃てッ‼」

生き残りのシェイファー戦車がⅣ号戦車に応戦するも弾が弾かれた後めでたく松明の仲間入りを果たした。

 

イダン少佐の装甲大隊は敢えなく全滅した。

◆◇◆◆◇◆

『こちらリチャード、敵戦車を撃破!』

先程から聞こえてくる無線からは敵の撃破報告しか聞こえてこない。

「流石はドイツの戦車ですね。グ帝の戦車など一捻りです。」

技術士官として乗り込んだラグノフは思わず感嘆の声を漏らした。 

 

空洞山脈を崩した際に鹵獲したハウンド戦車を使いドイツ戦車の威力を調べた際ほぼ一方的に撃破出来る事が解ったムーはドイツ戦車からなる戦車隊を編成し実戦投入した。

既に敵は総崩れとなった今、ムーにとっても狩りと言って差し支えなかった。

◆◇◆◆◇◆

「敵は既に第三防衛線を突破しています‼」

ゴート中佐の部隊はドイツ軍に備えていたが、ほかの部隊同様蹂躙の憂き目にあっていたが遂にエヌビア基地より援軍が目の前まで来ているとの情報が入った。

「戦いの女神は我らに微笑んでくれた…!」

ゴート中佐は涙ながらに呟いた。

 

◆◇◆◆◇◆

「なんだもう敵はいないのか」

37ミリ砲に蹂躙されたハウンドをみて呟くはハンス・ウルリッヒ・ルーデルその人であった。

「そう焦らなくとも直ぐ敵と会いますよ」とアルフレート・シャルノヴスキー。

「もう少し奥に行ってみよう」

彼を乗せたスツーカはエヌビス方面へ飛んだ。

 

…そこにはゴート中佐救援のために向かっていたハウンドの群れがあった。

「どうやらツキは此方にあるようだな」

ルーデルは満面の笑みで操縦桿をさげた。

 

 

 

 

 

 

*1

【挿絵表示】

(フロートではなく普通のタイヤがついている)

*2
目的を同じくして集まり団結するさまなどを意味する表現。よからぬ事を企てている集団について用いることが多い表現。グラ・バルカスにとって良からぬ事なので良しとしましょう

*3
いずれにしても長砲身




遂に始まりました。


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イシュタム基地奇襲

中央歴1643年七月五日 

あの悪名高いイシュタムは現在軍門に下ったニグラート連合ギゼル共和国の最南端の軍港であるキンコー湾港を中心に行動していた。

そこではイシュタムの兵士達が常日頃から飲酒をしては街に来て暴力を振るい、駆逐艦で近くの漁村に向け面白半分に艦砲射撃を行っていた。

とんでもない行為だが本国は無視を決め込んでいる。

◆◇◆◆◇◆

ニグラート連合キンコー湾港都市ノーデンス

まだ日も登りきらぬ時間、グラ・バルカス兵が目を光らしている中、数人の掃除夫が箒と籠を持って歩いている。

彼らはそのまま山に入るが掃除夫という仕事上、人の多くない時間に行動するのと焼却場が山にあるのでグ帝兵士は特に疑問にも思わない。

焼却施設に着いた彼らは隠していた魔信機に何か話しかけると、パイロットスーツに着替えた掃除夫達が箒と籠に乗り込みキンコー湾に飛び立った。

◇◆◇◆

同時刻

作戦開始が告げられる。

ギゼル共和国近辺の古城や集落から抵抗組織に属する共和国兵のワイバーンロードにギルドのワイバーンや巨大火喰い鳥が次々に飛び立っていく。

マギカライヒ共同体からもワイバーンロードや三葉機にムーから購入した魚雷*1を積んだ雷撃機25機が飛び立っていった。

 

◆◇◆◆◇◆

この作戦の最初の一撃はレーダーサイトからであった。

レーダー員はウイスキー片手に眠っていたが爆音の目覚ましで彼は永遠の眠りにつく。

他の見回りの兵士は驚いて上を向くと箒や籠に乗った人影が超低空飛行で湾内を飛んでいる。

魔導士達は爆雷を落としてレーダーサイトを破壊すると、火炎弾を放ち兵舎を焼き始めた。

この時点で警報が鳴り響き、寝間着のまま銃座に着くが大した練度もない彼らが即座に対応するのは難しく、給弾すらままならない有様であった。

そうしている内に火炎弾が甲板に被弾し火災が起きる。

 

そんな蜂の巣をつついたような騒ぎの中魔導士と入れ替わる様に、ワイバーンロードや雷撃機が大挙してやって来たのだ。

まず最初に狙われたのがペガスス級空母シェアトであり、飛び起きたパイロットが発艦しようとしたが頭がさえておらず艦橋に激突、救助最中にワイバーンロードの火炎弾を受け炎上後、魚雷3発が命中し爆沈。

これによりイシュタム指令のメイナードは戦死した。

 

メイサは対空射撃で雷撃機を数機撃墜するも火炎弾を受け炎上、撃墜し損ねた雷撃機が魚雷を抱えたまま激突し爆発浸水、キンコー湾に着底した。

総仕上げに海からは海賊を中心とした上陸部隊が突入する。

どう猛さにおいてはイシュタムの比ではない彼らは艦船に横付けしマスケットと剣を構えて白兵戦を始めた。

捕虜という考えは毛頭ない彼らは降伏してきたイシュタム兵を袈裟切りにして海に叩き落としたという。

 

その後イシュタム兵を殲滅すべく山狩りが行われた。彼らがその後どうなったかは書くまでもないだろう。

◆◇◆◆◇◆

ムー北西部

中央歴1643年七月五日午前10時

国境線沿いにパーパルディア侵略以前の第三文明圏国旗を掲げた軍団が進んでいた。

 

『グラ・バルカス戦において功績を挙げた属領は再独立を約束する』

 

破格ともいえる皇帝の勅命に属領は沸き立った。

長く辛い時代がようやく終わる。

属領の腕利きの物は皆挙って志願し、隠し持っていた家宝の鎧を丹念に磨きこんだ。

おまけにパーパルディアとしてでは無く、自国の国旗を持ち自分の国として戦場に立てると聞き感涙を流すものまでいたという。

◇◆◇◆

遠くにグラ・バルカス占領下の町が見える。

魔導砲による一斉射撃の後、騎兵隊が槍を構え突撃し歩兵もそれに続いた。

 

ムー大陸における三方面からの反攻作戦は今口火が切られたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

*1
ドイツ魚雷のコピー品した物を独自改良したもの




次回は今作戦のグラ・バルカス側の反応回になります。


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再侵攻

昼食時、ダラスは食堂で食事をとる。

いつものように、情報収集の一環をかねてムーのテレビ放送をつけていた。

 

するとテレビから勇ましい音楽と共にドイツのグ帝向けのプロパガンダ番組が始まった。

話に内容は主に、ゲルマン民族は優れており軍隊は精強であり、植民地でも現地民との関係も円滑である様子を映していた。

 

しかし今回は違っていた。

「グラ・バルカス帝国の諸君、開戦より続く連戦連勝実にお見事だ。しかし我々は諸君に残念なお知らせをしなければならない。さる日、我ら同盟軍はムー・レイフォル奪還の為諸君の領土へ電撃的な攻勢を開始した。これにより諸君らが奮戦の末手に入れたキールセキの奪還に成功した。諸君らの努力を無駄にしてしまい誠に心苦しい…さて次は作戦時に単機で30両の敵車両を撃破し、一級鉄十字勲章を受賞したハンス=ウルリッヒ・ルーデル少尉のインタビューを…」

 

「何⁉」

いきなりの報告に食堂は騒然となった。

ダラスは執務室へ走り、部下から軍部からの報告を受け取る。

「馬鹿な…短期間でこれ程進軍出来る物か!」

ダラスは震える様に報告書を読む。

ドイツが覚せい剤を兵士に服用させ狂気の進軍速度にしたとは知る由もないダラスは震えるしかなかった。

◇◆◇◆

グラ・バルカス帝国 帝都ラグナ

連日の雨の中、帝王グラ・ルークスの住まう邸宅の1室において、緊急の帝前会議が開催されていた。

「此度の同盟軍の三方面からの攻勢を防ぎきれなかった様だな、サンド・パスタルよ。如何にして取り戻すのか予定が知りたいものだ。」

「…はっ対ドイツ戦線においてはバルクルス基地の戦力を増大し、特殊殲滅作戦部の出撃も視野に準備を進めております」

「ドイツ懲罰艦隊は出撃出来るのか」

「陛下、現状ナルガ戦線の維持に手一杯の為、懲罰艦隊の出撃は非常に厳しいです」

「む…そうか。ではニグラード方面とレイフォル方面は大丈夫そうなのか?」

「そちらの方は同盟軍の主体はマギカライヒとパーパルディアなので現状の戦力でも時期に撃退出来ましょう」

 

その後も話し合った結果、ドイツ軍を最重視し必要ならば特殊殲滅作戦部の投入も視野に入れるとした。

◇◆◇◇◆◇

アルー基地

占領後駐留軍を置いていたアルーは、キールセキを奪還された直後からドイツ軍の爆撃の標的となった。

占領から日が浅く対空兵器も満足にない中で連日に渡る猛爆。

一時は撤退も視野に入れていたがバルクルス基地より反攻作戦が命じられた。

一方ドイツ軍は邪魔者がいなくなった空洞山脈を爆走、ドーソン基地を占領。

機甲師団はグ帝の戦車を蹴散らしアルーまで目前に迫っていた。

 

◆◇◆◆◇◆

ニューランド島

現在ここにはグ帝潜水艦を監視する為のドイツ軍のUボート及び水上機の基地があり、第三文明圏における最重要拠点となっている。

ドイツがおりパーパルディアも健在な今、グ帝に寝返るのはただのアクロバティック自殺に過ぎずドイツに恭順の意を示して生き残っている。

 

 

 



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再侵攻②

ドーン! ドドーン!

魔導砲がグ帝領の町を破壊する。

「行けッー‼足を止めるな!」

後方の皇国軍将校の命令と共に属領軍兵士が剣で突撃を仕掛けるが町にはシェイファー戦車と機関銃隊が待ち構えており、大多数が返り討ちにあってしまう。

 

パーパルディア外征軍司令シウスは指令テントで報告を聞いていた。

「第一陣攻撃隊壊滅しました」

「砲撃が不十分だったかな?」

「町の中に戦車がいる様です、こちらも戦車を出しますか?」

「その必要はない、爆薬があっただろう。それを属領兵に使わせろ」

 

「戦車を撃破したものは本人と家族に名誉皇国民章を授ける‼行けェー‼」

第二陣の属領兵にマスケットと爆薬を渡す。

「突撃ィーー‼」

機関銃の掃射により数人がなぎ倒されるも爆薬が炸裂し建物が倒壊し煙幕の代わりとなって兵士の手助けとなる。

「キエェェーーー!!!!」

ドガーン‼

肉迫してきた兵士が機関銃を自分諸共爆破する。

「撃て!撃て撃て!」

シェイファー戦車が前進してくるのでマスケットを撃ち込むが虚しく弾き返されてしまう。

「ウオォォーーー!」

兵士が履帯近くに爆雷を投げ履帯を切ることに成功する。が、大砲はいまだ健在、後方からはもう一台シェイファー戦車が確認出来た。

 

「敵戦車いまだ健在、増援を確認したとのことです」

「使えん奴らだ、戦車を投入しろ」

「はっ‼」

指示が出ると同時に空襲を警戒して被せていた迷彩網を取り払って現れたのはA7Vに酷似した3台の戦車であった。

ドイツから輸入したトラクターとムーの戦車を参考にして作ったものである。

エンジンはミリシアルからもらった魔導エンジンのコピー品だ。

 

戦車はギアを入れゆっくりと前進し町に進入する。

◆◇◆◆◇◆

「履帯がやられたか…?」

シェイファー戦車の車長がのぞき窓から様子を伺う。

(まさか捨て身攻撃をしてくるとは思わなかった…!)

吹き飛ぶ機関銃兵を思い出しながらも、震える声を抑えて指示を出す。

「援軍が間に合ったようだ、このまま応戦し持ち堪えれば…なんだあれは…?」

車長は衝撃を受ける、パーパルディア国旗を掲げた古めかしい戦車がこちらに向かってくるのだ。

「なんの冗談だ!」

車長は37㎜弾を装填し射撃したと同時に意識が吹き飛んだ。

 

パーパルディア戦車の搭載していたムーの小型艦艇用の47㎜砲はシェイファー戦車の装甲を正面から破壊したのだ。

ちなみにシェイファー戦車の弾はパ皇戦車が柔らかすぎたため貫通した。

「うおぉぉ!!!グ帝の戦車を倒したぞ!パーパルディア万歳!!!!!!!」

皇国兵は歓声を上げ、帝国兵を追い立てる。

パ皇戦車はもう一台も撃破し、前進する戦車に対抗する術のないグ帝兵は壊走を始めていく。

 

こうして昼過ぎには完全に町を制圧し、皇国旗が翻ったのだ。

◆◇◆◆◇◆

ドーソン基地

「アルー基地まで近づいたが…現在のわが軍の状況ははっきり言ってギリギリである。」

エーリッヒ・フォン・マンシュタイン歩兵大将が地図を広げ、会議を行う。

「現在我が西方軍集団は機甲戦力で押し上げロウリア方面軍で地均しをしているが、本国との距離が遠く戦力の補充が難しい。アルーを奪還した後は戦力の回復に努め、一時防戦に努める事になるだろう。」

 

アルー奪還作戦は間近に迫っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 




パ皇戦車 
各国の技術を使ったキメラ。
見た目はまんまA7V。


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バルクルス基地・アルー攻撃

今年ももう一ヶ月切ってる…

それと…

ダラス君さぁ‼‼何やってんのマジで⁉



1643年8月12日

ムー大陸の空を同盟軍航空機が覆いつくす。

 

目標はアルー、そしてバルクルス基地である。

払い下げのHe111を使用するムーと爆撃機型ゲルニカがアルーの町に爆撃を開始した。

 

「おい!バルクルスからのアンタレスはまだか!」

「そ、それが、バルクルス基地も敵機の応戦に手一杯で援軍は無理だと!」

その時彼らの上空にロケット弾を積んだマリンが現れ、一斉発射されたロケット弾が陣地を破壊し炎が嘗め回す。

 

ムー軍を主体とした第二文明圏軍が進撃を開始する。

既に形骸化したグラ・バルカス帝国軍は降伏する部隊も現れるが、既に同盟軍は白旗降伏のみと決めていたので不幸な事態も相次いだ。

 

◇◆◇◆

バルクルス基地

「…!レーダーに反応あり‼敵機50機前後!」

「アンタレス発進!」

 

アンタレスは次々離陸し、ドイツ軍のDo215爆撃機を捉えるが…

「クソッ長ッ鼻だ!」

護衛のFw190が攻撃を仕掛けてきたのだ。

これでは爆撃機に近づくことすらままならない。

 

しかし基地上空になると対空砲も加わり苛烈さが増す。

『コースよし!投下!』

爆撃機の腹から丸々太った爆弾がバルクルス基地に落とされていく。

◇◆◇◆

作戦指令室

「敵爆撃機、対空砲攻撃ラインを突破しました!」

「対空砲陣地攻撃用意始め」

「戦闘機隊は砲弾に巻き込まれないよう距離を置け」

 

「指令、念の為防空壕に退避しましょう」

「いや、あのGAに煮え湯を飲ませたドイツの事だ、どの様な戦いか目に焼け付けねば。」

「分かりました」

 

◆◇◆◇◆

程なくして爆弾が基地に炸裂し、衝撃波が指令室のガラスを振るわせる。

「ッ、対空砲はどうなっている」

「報告では撃墜多数とあります、一部では小型ロケットと見られる物によって撃破されているようですが」

「やはりここは防空壕へ…」

 

ドカン!

 

滑走路に1t爆弾が投下され、衝撃波で指令室の面々は吹き飛ばされた。

 

◇◆◇◆

数10分後ドイツ軍機が飛び去って行き、危機は去った。

 

「パース大佐!無事か!?」

爆撃から逃れたガオグゲルは作戦指令室にすっ飛んできた。

そこに広がっていた光景は悲惨なものであった。

ガラスが全て割れ、床には遺体袋が数体分並び、うめき声の中軍医が忙しく動き回っていた。

「中将殿!ご無事でしたか!」

「ああ、防空壕に引きずり込まれてな。そんな事よりパース大佐はどうした!」

「大佐はいま外の救急テントで治療を受けていますが相当ひどいですよ、お会いするのはしばらく待った方が…」

「生きてはいるのだな?」

「ええ…」

それを聞くと同時に安堵感からかその場に座り込む。

「中将殿⁉おおいだれか手を貸してくれ!」

「いや、大丈夫だ…それより先程から兵がざわついているが何なんだ?」

「それは…これを」

軍医はガオグゲルに1枚の煤けた紙を渡す。

「如何やら最後の方に一緒に撒いたようです」

 

『アルーは我々の手に下った、今やバルクルス基地は風前の灯火である。

 総攻撃を行えばたちまち諸君らは骸になり果てる。

 諸君らは戦後帝国を支える人材である、その人材がここで亡くすにはあまりに惜しい。もし命が大事であれば我々同盟軍に沿った降伏方法を取ってほしい。その方法は…』

 

…と、降伏勧告ビラであった。

 

「ふざけおって‼」

ガオグゲルはビラを破り捨てると叫ぶ。

「栄光あるグラ・バルカス帝国軍がこれしきで負ける物か!滑走路の修理を急げ!移動式の対空機銃を用意!急げ‼」

 

帝国軍は迫りくる同盟軍を前に勝機を見出す為に奔走する。

 

 

◇◆◇

ドイツ 

クロルオーパー

「諸君!本日はとても良き日である!先日ムー大陸から精強な我がドイツ軍がグラ・バルカスを叩き出した!」

「「「「「ジーク・ハイル‼ジークハイル‼ジークハイル‼」」」」

ヒトラーの言葉に党員は敬礼を送る。

 

「国際会議の場で宣戦布告し、騙し討ちを行った第八帝国を名乗る卑劣な国家は今こうして劣勢に立たされている!しかし世界の支配を目論む愚かな皇帝はこの事実に目を背け己の野望の為に若人を死地に送り込む!我々はドイツのみならず、この世界を狂った老人の魔の手から救うべく前進せねばならぬのだ‼」

「「「「「ジーク・ハイル‼ジークハイル‼ジークハイル‼ハイルヒトラー‼‼」」」」

 

「第二文明圏のムーはかつては地球の国家であった、いわば我々と彼らは同胞である!しかし別世界から転移したグラ・バルカスはどうだ!?見境なく侵略し他人の土地を蹂躙している!ユダヤに劣らずとも野蛮で明らかに劣等的であるではないか!」

「「「「「ジーク・ハイル‼ジークハイル‼ジークハイル‼ハイルヒトラー‼‼」」」」

 

「我々の使命はこの様な野蛮人の手から我がドイツ国民を!同胞達を!国家を守る事だ!後に訪れんとするラヴァーナル等という厄災も跳ね除けねばならぬ!強く太い木は幾多の嵐を得て強くなる、多くのを試練を耐える強さを得て初めて千年帝国の道は開かれるのだ‼」

 

「「「「「ジーク・ハイル‼ジークハイル‼ジークハイル‼ハイルヒトラー‼‼」」」」

 

テレビジョン、ラジオの電波に乗ってヒトラーのムーにおける勝利演説はドイツの全土に広がり、フィルムはプロパガンダとしてグラ・バルカスに向け電波を発信した。

 

 

新しい局面を迎えた世界大戦、最後に勝利の女神がどちらに微笑むのか。それはまだ誰も分からない。

 

 

 

 

 

 

 

 




彡(゚)(゚)〈日本が手ごわいやで、でも消極的やからまだ手はあるで。

(´・ω・`)〈グ帝の兄ちゃんごはん頂戴、国民が餓死してるよ。

    i⌒i
   | |   (゚)(゚)
   | |  彡  と
    | | _ノ   ー、
   (ミ)、    !フ /
   ¢\二二二__ノ
      |    /
     / ソ⌒ 、ヽ
    ( <    ヽ )
   ⊂_)   (_つ〈はぁ?うるさいガキやな、これでも喰らえ。

(´;ω;`)〈ひどい…
◇◆◇◆

彡(^)(^)〈まだ腹立つなぁ、せや!王様王妃幽閉して他全部殺したろ!ワイ外交官やけど特殊部隊に命じて暗殺させるやで。

(´・ω・`) (・ω・`) (´・ω・)
ソンナー  (姉妹たち)


  (;ω;`)⌒ヽ   〈逃げて日本軍に亡命しないと!
  と。と,ノ、(,__つ
 
◇◆◇◆


     /⌒ヽ.
    /´・ω・ )
 _, ‐'´  \  / `ー、_
/ ' ̄`Y´ ̄`Y´ ̄`レ⌒ヽ
{ 、  ノ、    |  _,,ム,_ ノl
'い ヾ`ー~'´ ̄__っ八 ノ
\ヽ、   ー / ー  〉
  \`ヽ-‐'´ ̄`冖ー-/    〈幽閉&暗殺で非常時国家保護法により、
                 現時点をもってヒノマワリ王国の
                 実質的権限は、すべてこのフレイアに
                 移行いたしましたヒノマワリ王国として、対グラ・バルカス第二文明圏連合国家及び日本国へ、正式に要請いたします。
 王国内において、国民を苦しめ続けているグラ・バルカス帝国を国外へ排除したい。
 協力を……要請致します!!


┏━━━━━┓
┃   / \ ┃
┃ /     \┃     〈ファーーーーwwwwwww
┃ (゚) (゚)ミ┃
┃ 丿     ミ ┃
┃ つ   ( ┃
┃   )  ( ┃
┗━━━━━┛


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グディマウン

別に質が上がったとかそういうのは無かったり。


1643年10月1日

グラ・バルカス帝国

ルッグン

 

港湾作業員のタンジンは石油貯蔵所で作業をしており、同僚とぼやいていた。

 

「最近はタンクがいつも半分以下だ。これじゃ商売あがったりだね」

「戦略物資なんだ、しょうがないさ」

「しかし最近じゃ帝都沖にも敵潜水艦が来てるって噂が…」

「不用意な事は言わない方が良いぞ。何処に警察の目があるか分からないんだから」

 

その時タンジンは沖の方で何やら船を見つけた。

「ん?何か変な船だな?」

「漁船じゃないのか」

「いやエンジン音なんか聞こえなかったが…」

「聞こえなかっただけだろ、近くで工事やってるし」

「そうかな…そうかm」

 

◇◆◇◆

Uボート

浮上したU-47の艦砲の88㎜砲が装填される。

 

「撃てッ!」

 

 号令と共に88㎜砲が火を噴き、ルッグンの石油貯蔵庫が大爆発を起こし、作業員達が逃げ回る中にも容赦なく弾が降り注ぐ。

 停泊中の輸送船が次々に着底し、街が黒煙に包まれる中サイレンが鳴り響く様子をプリーン艦長は双眼鏡で確認し、指示を出す。

 

「警報も喧しくなってきた。そろそろ撤退するぞ。」

 

Uボートは喧噪をよそに悠々と離れていった。

 

ムーにおける反攻作戦を機に、デーニッツは輸送船のみならずグ帝本土の港湾都市を砲撃によって攻撃せよとの指令を出した。

 これによりグ帝海軍は潜水艦の警戒の為これまでよりもさらに多くの駆逐艦を投入せねばならず、別海域における作戦に支障をきたし、石油の消費も無視できなくなっていた。

 

 

 

グラ・バルカス帝国 

首都ラグナ 国会議事堂

議員達は非常に悲痛な面持ちでまるで通夜の様だ。

 

「ムーにおける帝国軍の撤退ッ!! そして侵攻軍総戦力4割の喪失。この未曾有の大損害をどう補うのか?!」

 

「内閣総辞職しろ!帝国の三将による連立政権を組閣だ!」

「そうだそうだ‼」

「弱虫を国会から追い出せ!」

ギーニ・マリクス議員は総理大臣を睨みつけ、同党の議員はヤジを飛ばす。

 堪りかねた対立派の議員が立ち上がり反論する。

 

「そんなことを言うが、イシュタムはニグラートで壊滅したそうじゃないか」

「ぐ…私は現在の石油の備蓄を海軍に回して懲罰艦隊を編成し、ムーを再度焦土にすべしと考えている!」

ギーニは蛮族の卑劣な奇襲によって敗北したイシュタムの仇を討とうと躍起になっている。

 

「海軍は既にレイフォル=本土間の護衛で既に手一杯だろう!そこから懲罰艦隊で船を引いてみろ!ドイツの潜水艦に更に好き放題にされるぞ」

 

転移前グラ・バルカスの石油の大部分は植民地から得ていたが、転移後は膨れ上がった艦艇に航空機、戦車ととてもじゃないが本土から産出される石油では補いきれなかった。

 その後レイフォルを手に入れギリギリ賄える分の石油を手に入れたが、肝心のタンカーがUボートの餌食となり護衛艦隊をつけなくてはならず余計に石油を消費してしまう。

 しかも前世界では潜水艦を保有していたのはグラ・バルカスだけなので対潜戦闘のノウハウが皆無という有様であった。

 

「かくなる上はグテイマウンを…!」

「飛ばしたとして何処に攻撃するのかね⁈ムーかミリシアルか!はたまたドイツか!それに報復でバルチスタ沖海戦で現れた空中戦艦が来たらどうするのか!あの超威力爆弾が帝都に落とされれば…!」

「貴様ァ!敗北主義者かァ!!!」

 

会議は紛糾し怒号が飛び交うのを見てコハマは眼を背けたくなった。

 少なくとも現在のナルガ戦線の戦況は圧倒的に不利だ。レイフォルはまだ無事だが、いつ同盟軍の総攻撃が始まるのか気が気でなかった。

 

「現時点で石油、鋼鉄、食料等の戦略物資はほぼ全てをレイフォル地区から補っております。

 しかし現在ドイツの潜水艦作戦により物資の補給が滞っているのが現状です。

 本土にも植民地にも物資が届かず国民は配給で飢えをしのいでいます。」

 

「その状況を打破するために会議をしているのだろうが!」

 

「ええ、その為にもドイツに対し講和を申し込み、潜水艦を引上げさせるのです」

 

「正気かね!蛮族に対しそのような対応をするとは!」

 

「勿論最後に敵に大打撃を与えて講和に持ち込む考えでありますが、彼らはレイフォルやパガンダの様な時代遅れの国家ではなく文明的に対等な国家であり、もはや戦況は一刻を争うのです。」

 

荒れに荒れた国会であったが最終的に同盟軍の主要構成国を大打撃を与え、脅迫の意を込めて講和をするという事になった。

◇◆◇◆

グラ・バルカス帝国 

 ニヴルズ城 御前会議

 

これまでの話題はナルガ戦線の戦況についてであったが、今回は総理自ら立案した講和案について討議する事となった。

 

「して…コハマよ、お主が立案した講和案は実現の可能性はあるのかね」

 

「はっ…私が立案した作戦は、同盟軍の名目上とは言え盟主であるミリシアル首都を焼き払うのでありますから、苛烈な迎撃態勢が整っているでしょう。ですから最初は高々度から侵入し…」

 

◇◆◇◆

 

レイフォル領 ルブ基地

 

「…ルーンポリスを焼き払うというわけだ。この作戦は総理大臣閣下直々の発案である」

作戦前のミーティングで今回の作戦の詳細が特殊殲滅作戦部作戦部長であるアーリ・トリガーによって伝えられる。

 

ルブ基地から出発した200機のグテイマウンはオタハイト上空を突っ切り、ルーンポリスを爆撃するという作戦であった。

「前世界でも我々は無敵だった、そしてこの世界でも我々は無敵だ」

 

こうしてルーンポリス爆撃の口火が切って落とされたのである。

 

 

 

 

 



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69話目

「今日もいい天気ですねぇ」

 

「ええ、ほんとに」

 

ミリシアル首都ルーンポリス

午前十時

  

帝都は人々で賑わい、カフェでコーヒーを飲む婦人、経済新聞を読む投資家、看板を描いている職人。

まるで戦争など最初から起こってないかのように和やかな雰囲気だった。

 

すると一人の男性がムー大陸方面からやって来る無数の航空機を見つけた。

 

「ん?あれはなんだ?」

 

「さぁ…?なにか演習でもあるんでしょうか、でもこんな街中に沢山…」

 

 

 

WUUUUUUUUUUU‼

 

「えっ!?」

 

「どうしたの、訓練?」

 

上空に現れたグテイマウンが爆弾倉が開くのと空襲警報が鳴らされたのはほぼ同時であった。

しかしそれでも驚異的な速度と言っていいだろう。

この瞬間までこのルーンポリスが戦場になるなど誰も想像していなかったのだから。

 

 

 

◇◆◇◆

この日

ミリシアルは帝国開闢以来初めて首都が攻撃にさらされた。

成層圏から侵入したグテイマウン200機は邪魔されることなく

 官庁街やアルビオン城の一部を破壊し、首都機能の一切を停止させた。

 

この爆撃でミリシアル8世が死んだという噂が広がる程だった。

(その後すぐに皇帝自ら被害地の慰問に訪れたため騒ぎは収まった)

 

◇◆◇◆

アルビオン城

 

「国防省!農林省!外務省!魔法省!財務省!いずれも庁舎半壊!

 被害深刻!水産省、対魔帝対策省の各大臣は未だ連絡取れず!!」

 

「焼け出された臣民の救援も現状ままなりません!」

 

「このままでは周辺国がグラ・バルカス帝国側につきかねない…」

 

「早く報復を行わなければ列強一位の面目丸つぶれですぞ!」

 

「しかし現状、パル・キマイラは

 ワールマン機の修理に持ち切りで他の機体を出す余裕がありません!」

 

慌てている閣僚をよそに皇帝ミリシアル8世は口を開いた。

 

 

「…パルカオンを投入するか…いや、

 まずは基地があるであろうムー大陸の奪還を優先させるべきである。

ドイツ軍との連携を密にして共同の侵攻作戦を考えるのだ、

 首都とは言えたかだか都市一つがやられた位で降伏するほど帝国は軟か?」

 

「いや、そうだ帝国がこれしきの事で折れるわけにはいかない!

 周辺部隊で救援部隊を編成するんだ!」

 

「ドイツに連絡して再度侵攻についての計画をたてるんだ!」

 

会議場は再び活気づき閣僚達は動き出した。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆

そしてこの情報は当然チョビ髭にも伝わる訳で…

 

「なに!みすみす敵の爆撃機を見逃したのか!?ゲーリング!空軍(Luftwaffe)は何をしていたんだ?!]

落第伍長の叱咤にモルヒネデブは弁明する。

 

「しかしお言葉ですが閣下、成層圏を飛ぶ敵重爆をレーダーで捕えるには性能が低く、迎撃機もBf109では性能不足です。戦闘型Me262であれば撃墜も容易いのですが」

 

「ではMe262を直ぐに前線に送りたまえ、

 戦闘機型の増産も許可する!なんとしてでもグラ・バルカスを滅せよ!」

 

「ハイルヒットラー!」

 

◇◆◇◆ 

 

この頃にはドイツ軍は第二陣の出撃用意が済んでおり、

この中には新型のMe262、Ⅴ号戦車*1の他、試験的に配備されたMKb42で編成した部隊もいた。

彼らは無事ムー大陸へ上陸を果たし、着々と一陣と交代する形で前線に配置される。

 

グラ・バルカスも流石に気づいており、アンタレスやハウンド戦車で防衛ラインを構築していた。

そして同盟軍は未だ士気は削がれてないとしてグテイマウンを再度出撃させ、今度はオタハイトを焦土にする計画を実行に移す。

 

 

二つの狂った歯車は再度大きな音を上げて回り始めた。

 

 

 

*1
75㎜長砲身、車体はVK3001(H)に近い




モチベがGTAに吸われていく。
自作パソコンにも…
三つもパソコン作ってどうすんだよ…


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戦神の目覚め

あけましておめでとうございます


グラ・バルカス帝国領レーダーサイト

 

レーダー員は猛烈な速度で迫ってくる航空機の反応があるのを見逃さなかった。

 

 

 

「ン!鳥かな」

 

BOMB!

 

レーダーサイトは破壊され、ジェット機が地をなめる様に飛んで行った。

 

 

バルクルス基地 戦線監視所

 

「ーーーッ!!なんだあれっ!」

 

「司令部ッ!未確認機が!どこの国だ?!プロペラがない!」

 

「早すぎる対空砲が間に合わんッ!」

 

「つうか電探からなんも連絡がなかったんだが!?」

 

 BOMB!

 

「重砲陣地がやられたぞ!おい!」

 

かつてアルーの街を耕した重カノン砲がロケット弾によりあっけなく吹き飛ばされる。

 

「落ち着け、落ち着いて持ち場につけ!」

 

部隊長は動揺する兵士を宥め双眼鏡で敵が来るであろう方角をにらむ。

 

「!!」

 

突如草むらから幾つもの爆発が起こり爆炎はそのまま上空へ飛び立ち、こちらへ落ちてくる。

 

VUO!!VUOVUO!

 

『こちら第四連隊、連隊長が戦死した!指示を!』

 

『重砲部隊は各自の判断で撃て!指揮所は壊滅した!』

 

「チクショー戦闘機は!戦車はまだか!」

 

既に眼前には地面を覆いつくさんばかりのドイツ装甲師団が迫っていた。

 

 

 

バルクルス基地

ガオグゲルはパース大佐からの報告を聞いていた。

 

「ムーから帰還してきた偵察機によるとアルーの転車台において列車砲が確認されたと、幸いまだ準備はされてない用ですがこのままだとこの基地は列車砲の射程内です、至急爆撃機で破壊する必要があります。」 

 

「現状航空機が圧倒的に不足しており、列車砲という絶対護衛機が雲霞の如くいるであろう所にはいかせられん。取り合えずグテイマウンの行きかけに爆撃してもらうよう頼んでおいたから安心しろ」

 

「はっ」

 

 

 

 

ヒュルルルルルルルルルル

 

 

「は?」

 

ドォン!!!

 

すさまじい衝撃にガオグゲルが椅子から転がり落ちる。

 

「!!???!???!!」

 

基地には大穴が空き一部防空壕が崩れ落ちていた

大慌てで戦車や兵士が配置につくが、そんなのお構いなしに数分おきに巨弾が降り注ぎ戦車は衝撃波でひっくり返り、兵士は吐血し絶命する。

 

その後間髪入れずに聞きなれぬ飛翔音と共にプロペラのない航空機が大挙して飛来しロケット弾を発射し格納庫や兵舎に攻撃を加える。

 

 

「そんな・・・歩哨からは何の報告も・・・」

 

パース大佐は混乱した様子で腰を抜かす。

 

「攻撃だ!地下壕に向かうぞ!」

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆

ヒノマワリ王国 ハルナガ京

 

≪戦神は目覚めた、繰り返す、戦神は目覚めた≫

 

バルクルス基地からの通信を受けた駐屯基地は迎撃準備をはじめ、現地民が働いている外務省は大混乱に陥っていた。

 

「なっなんだ!もうドイツがここまで来たというのか!?」

 

ダラスは外務省から飛び出して空を見ると、既に雲霞の如く爆撃機が迫ってきているのが見える。

 

 

「あっあうあう!うわあぁ!!どけ!蛮族!俺が先だ!!」

 

ダラスは職員を押しのけ、一目散に防空壕に飛び込んだ。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆

神聖ミリシアル帝国軍航空隊 

 

 

爆装ゲルニカ40機がハルナガ京を目指し飛んでいる。

 

同盟国軍はグラ・バルカスに戦わずに降ったヒノマワリ王国を、同様に戦わずに降った国に見せしめとして焦土化する事を決めた。

 

「世界の調停者たる我が帝国ではなく蛮族と手を取る!正に万死に値する!無限の炎の中で苦しみながら朽ちるがいい!!」

 

今となっては誰が言ったがわからないが、この様な意識で任務にあたっていた者も少なくなかった。

 

爆弾は制統府や王宮、貴族屋敷、住宅街に満遍なく降り注ぎ、その後焼夷弾が投下されハルナガ京は火の海となった。

 

 

翌日・・・

 

瓦礫の山となった統治軍地下司令室から一機の連絡機が飛び立ったが、残敵掃討のために出ていたTa 152に捕捉されあっけなく撃墜されたという。これがオル・ブーツだとわかるのは暫くしてからである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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約束

半年ぶりです…

割とウクライナ情勢で気が滅入ってたりしてて、ニコニコで東方MMD紙芝居の方を作ってたりしてた。

https://nico.ms/sm39971746




グラ・バルカス帝国の入植民が着の身着のままで原野を逃げ回る。

 

「助けて!」

 

「お母ちゃん!足が痛いよ!」

 

「もうすぐ兵隊さんの所につくから頑張って!」

 

入植民の親子はグラ・バルカスの支配地域まで急ぐが、後方から無数の蹄の音が木霊する。

 

「追え!帝国人は皆殺しにしろ!」

 

彼らは元レイフォル軍人であり、今はドイツから武器の供与を受け入植民を襲うゲリラとして活動していた。

 

銃声が木霊し母親が倒れ込むや、子供達を囲い込むと首に縄を引っ掛けてどこかへ連れて行ってしまった。

 

 

「行ったか」

 

一部始終見ていたダラスは藪の中から顔を出し辺りを見渡し、こそこそと駆け出す。

 

ヒノマワリ王国から逃げてきたダラスは徒歩で帝国領まで逃げている途中であった。

 

 

(どのくらい歩いただろうか、足が痛い)

 

道中幾つかの部隊と会ったが、そのいずれもが空襲を受け壊滅しており、唯一無事だった荷台のチャリンコをパクったが未舗装の道路で直ぐイかれてしまった。

 

数日さまよい続け意識が朦朧としてきた時、遠くにグ帝軍の戦車が止まっている村落を発見しダラスは矢も楯もたまらず走り出した。

 

 

「はぁ…はぁ…はぁ…おおぉぉぉーーーい!!!」

 

ダラスは力の限り叫ぶ、すると歩哨が気付いたのかこちらに近寄って来た。

 

「それ以上動くな!手を後ろに組み…」

 

「何!?貴様俺の事を知らんのか!」

 

そのまま歓迎されるところか銃を向けられたダラスは憤慨し、外交官を示すバッチを見せようとするが逃避行の際に落としたのを気付く。

それどころか服はぼろぼろに擦り切れ、体は垢まみれ、髭も髪も伸び放題で戦火から逃げてきた入植民といった風貌であった。

 

ダラスは胸ポケットに外交官の証明書があったのを思い出しそれを見せた。

 

◇◆◇◆◇◆◇◆

 

「はっはっはっそいつは大変でしたな」

 

その村にいた戦車部隊の隊長は笑いながらダラスにコーヒーを渡した。

 

飲まず食わずのダラスの体にコーヒーの旨味と苦みが五臓六腑に染み渡る。

 

「しかし…道中の戦車部隊は壊滅していましたか…」

 

「ああ…アンタレスの姿も見えん、航空隊は何をしているのだ」

 

ぼやく様にコーヒーをすするダラスは外に目を向けると、戦車兵がハウンドI、Ⅱ戦車を灰色に塗りなおしており、おまけに箱を付けてシルエットが角ばる様にしてもいた。

 

「なんだあれは?新型迷彩なのか?」

 

「まぁ欺くという点ではそうではありますな、現在我が隊では偽旗作戦を任されているんですよ。」

 

(あまり公には言えませんがね)と隊長は柔らかい笑顔ではにかんだ。

 

対照的にダラスの顔が強張る。

 

「……貴様、自分が何をしているのかわかっているのか?!

恐れ多くも皇帝陛下から預かった戦車に敵国の塗装を施すなど!恥を知れ!」

 

まだ熱いコーヒーをぐいと飲み干すとテーブルに叩き付ける。

(やはりこういう堅物か)と言わんばかりに隊長は肩を竦める。

 

 

「お言葉ですがねダラス外交官、この作戦は帝王府でも承認済みの作戦なのですよ。

最早帝国はこのような作戦を取らねばならぬ程に追い込まれているのです。」

 

「なっなんだとぉ!帝王府が!?」

 

隊長はダラスの目を見つめ、「そのような状況を作ったのは、貴方達外交官なのですよ」と目で訴えかけた。

 

 

「隊長、全部隊準備出来ました。何時でも出発出来ます」

「うむ、ご苦労。では今から五分後にここを出るぞ」

 

ダラスが振り向くと其処には正規装備ではない民生用の後頭部にひさしの付いたヘルメットを被り、灰色の軍服を着た兵士がいた。

ダラスは震えが止まらず隊長に詰め寄る。

 

「き…貴様…栄光ある皇軍兵にこんな格好を…」

 

「ダラス殿。説教なら地獄で聞きます。

 

……どうしても生きている内に叱りたいなら国に帰って戦争をやめさせる事だ、そうしたなら説教なぞ何時間でも何日でも聞いてやる。

 

 

 

 

…いいか!貴様は早く帰ってこの馬鹿げた戦争を終わらせろ!これは命令だ!分かったか!?」

 

「貴様…なんだ!命令とは、上司でもない癖に…ふざけるんじゃない…」

 

「私の部隊はこれよりドイツ軍に対し攻撃を開始する。外交官は足手纏いなので至急帰ってもらいたい」

 

その言葉を最後に隊長は小屋を出て戦車に乗り込み出て行ってしまった、ドイツ軍の戦車兵の帽子に被り替えて…

 

 

「…何なんだよ…」

 

ダラスはよたよたと小屋のわきに置いてあった背嚢を見つける、中身には肉の缶詰めやチョコレート、機関短銃、近隣のさらに大きい帝国軍基地までの道のりが書いてある地図が入っていた。

 

 

そして地図の端に一言。

 

【幸運を】

 

「…ほんとうになんなんだよ…あいつらは…」

 

ダラスは涙を流しながら、再び歩き出した。

 

 

 

 



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ラテ・アルマイ攻略作戦

やったねコルヒ君!相手にされるよ!


 要塞長コルヒ・ミールは余裕の面持ちで空調の効いた指令室でコーヒーを嗜んでいた。

 

 

 というのも……

 

 ドド──ン! ドド──ン! 

 

 パーパルディア外征軍司令部

 

「良いか諸君! 真の列強というのはあのような要塞など造作もなく攻略出来て初めて真の列強と言うのだ!」

 

 外でドイツ製カノン砲*1が景気よく砲撃している最中、ベルトランは麾下の兵士に大演説を行った。そうパーパルディアはマジノ線ばりの要塞を攻略しようとしているのだ。

 

 属領軍の他にロデニウス連合、アルタラス、フェン等が同盟軍として渋々付き合っている。

 

 それで三日三晩要塞に向けて砲撃を繰り返している訳だが、与えられている被害は微々たる物だ。

 

「砲撃では思った様な効果は得られませんね……、ここはいっそ……坑道を掘ってそこから侵入してみても良いんじゃないでしょうか? 幸いコチラには穴掘りのプロがいますし」

 

 ヨウシは作戦を提示する。

 

 コチラにはクイラの炭坑夫を主体としたドワーフの工兵が送られてきている、彼らを使い要塞の中にまで穴を掘りそこから爆破、侵入するというものだ。

 

「うむ、成程戦場は何も地上と上空だけではないという事だな。よろしい、同盟軍総出で奴らの尻を蹴り上げようではないか! それと悟られないために属領軍の総突撃を何回かに分けて行え」

 

「はっ……かしこまりました」

 

 この日から掘削作業が始まった。小柄で力強いドワーフ達は固い土を難なく掘り進めていき、エルフの魔法で空気の入れ換えを行う。作業は順調そのものであった。

 

 一方で地上は地獄そのものであった。

 

 

「うおおおおッ!」

 

「エドリン王国万歳!!」

 

「手柄をあげて俺達の国を取り戻すんだ!」

 

 属領兵が合図と共に要塞へ突撃を繰り返していた……が、要塞に取り付く前に埋められた地雷や火点の機銃掃射でいたずらに死体を積み上げるだけであった。

 

 ◇◆◇◆◇◆◇◆

 

「同盟国軍の奴らは近代的な戦いというモノを知らんのだろう、だからこうして悪戯に死者を出す。哀れなものよ」

 

 その日の夜もいつもの様にコルヒは部下達と愉快に談笑している最中……

 

 

 

カツンッ……

 

 地下で掘り進んでいたドワーフは要塞の一角まで掘り進んだ、洞窟から野戦司令部まで引かれた電話でベルトランは指示を出す。

 

「よし……そのままだ、この位置だと……ここか……」

 

 航空写真と掘った位置を照らし合わせる。

 

「そのまま右方向に掘れば大型砲塔にたどり着くはずだ」

 

《しかし土が固いですな、所々コンクリートで掘るのに随分時間が掛かりますぜ》

 

「問題ない、夜が明けたら航空機を投入して誤魔化すからその間に掘れ!」

 

 ◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 夜明け

 

 空にはムーの旧式爆撃機とパーパルディアのFi167が雲霞の如く襲来する。

 

 要塞内はけたたましくサイレンが鳴り響き、対空砲が迅速に砲撃を始める。

 

「レイリングのアンタレスは何をやっている!? 電話も無線も通じないぞ!」

 

 近接信管で時代遅れの複葉機は落ちていくが、数機が森に向けて焼夷弾を放ち要塞を火に包んでいく。

 

「くそったれの蚊蜻蛉が、防火扉を閉めろ! 換気を回せ!」

 

 換気システムにより切削音が掻き消されたのは好機であった。

 

 昼過ぎ……

 

《砲塔と思しき地下部に到達しました!》

 

「でかした! 後は爆弾の設置だ! 穴を広げてありったけの爆弾を詰めろ!」

 

 

 工兵たちはありったけの爆弾を要塞沿いに、それこそドイツ製の航空爆弾からクイラ軍の黒色火薬までを一日かけありったけ置きその量なんと50トン。

 

「工兵は洞窟から退避せよ。翌正午に起爆する」

 

 ◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 退避した後は要所要所に土嚢で蓋をし、入り口からは数百メートル離れて爆風に備える。

 

「果たして……あれであの要塞を破壊する事が出来るのでしょうか……」

 

「分からん、しかしまぁあれだけあれば何とかなるだろう……そろそろだな」

 

 ベルトランはドイツ製腕時計で時刻を確認する。

 

 

 

 ◇◆◇◆◇◆◇◆

 

「要塞長、如何なされましたか?」

 

「いや……今朝あれ程の航空機がやって来たのに砲撃の一発も寄越さないとは奇妙だとは思わないか?」

 

「どうせ弾切れという所でしょう」

 

 副官は笑い飛ばし、席について資料をまとめる。

 

「すぐ昼だってのに真面目な奴だ」

 

 コルヒは壁時計に目を見やる、分針は既に三分前であった。

 

 ◇◆◇◆

 

「あれだけ撃って来たのに今日は全く撃ってこないな」

 

「まぁ何もしてこないのはいい事だ、要塞内の奴らはともかく俺らみたいな塹壕にいるような奴はな……そろそろ昼だ、交代が待ち遠しいぜ」

 

 兵士は腕時計を見る、正午まであとに二分であった。

 

 ◇◆◇◆

 

「患者の容体は安定してきましたね」

 

「ええ、今回の戦闘は焼夷弾による火傷や呼吸気管の損傷が酷かったので、今度の補給では呼吸器系の機器を持ってきて貰う様に頼みましょう……もう昼ですね、患者も大丈夫ですし先に昼食をとってきて大丈夫ですよ」

 

「はっ、では軍医殿。先にご飯を頂いてきます」

 

 軍医は腕時計を見る、昼まで一分を切っていた。

 

◇◆◇◆

 

ベルトランの腕時計が正午を示すのを見て、手元にある起爆スイッチに手を伸ばす。

 

「爆破!!」

 

ベルトランは起爆スイッチを捻った。

 

 

*1
10.5cm sK 18




MMD動画の方もなんとかせんとなぁ


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ラテ・アルマイ攻略作戦2

そもそも要塞砲の地中深い弾薬庫は弾も爆弾も貫通しない為、要塞用コンクリート等は必要無かった。

 

その弾薬庫周囲に50トンもの爆弾が爆発したらどうなるか。

 

「爆破!」

 

ベルトランが起爆した瞬間、幾つも土嚢を積んで塞いだ坑道の入り口から凄まじい衝撃が発生し、入り口付近にいた鎧を着た兵士が数十メートル程空を舞った。

 

ある程度離れた外征軍司令部のテントも衝撃で崩れた。

 

「うわっ!」

 

「ベルトラン様!大丈夫ですか?」

「ああ、私は大丈夫だ……」

 

すると周りの兵士がざわめく。

 

「おい!土が降ってくるぞ!」

 

要塞の方に目を向けると、成る程仕掛けた爆弾と誘爆して爆発した砲弾の爆発で要塞砲が宙を舞い、それと同時に周囲の土が外征軍に降り注いだのだ。

 

「生き埋めになるぞ!逃げろ逃げろ!」

同盟国軍はてんでばらばらに後退する。

 

「ひいぃぃ!」

 

ベルトランも例外ではなく逃げ出す。

 

後に彼は皇帝の報告書にこう書き記す。

 

「まさかあんな事になるとか思わないじゃん(要約)」

 

◆◇◆◇◆◇

しかしもっと悲惨だったのは当然要塞側で……

 

 正午丁度、中央の要塞砲が突如爆発……それに気づく前に地下弾薬庫(100トン)が誘爆、爆発は要塞砲と土を空に舞うだけに留まらず、狭い要塞内の通路すらも巻き込んだ。

まず区画封鎖の鉄扉は間に合わない、それどころか換気システムから爆風が瓦礫と共に兵士に襲いかかった。

 

 大多数の兵士は食堂に居た為、衝撃と爆風をモロに受けた後、二次災害のガス爆発が起こり生存者はいなかった。

 

 これはコルヒでさえ例外ではない、要塞長室で食事が運ばれてくるのを待っていた彼は最初の爆発の衝撃で血を吐いて絶命した。

 

 あれほどの威容を誇っていた要塞がたった一瞬でがらくたの山へと変貌を遂げたのだった。

 

◆◇◆◇◆◇

 

同盟国軍は数キロ離れた地点に再度司令部を置き、翌日確実にしとめる為総攻撃の準備を行っていた。

 

「翌日の総攻撃の一番槍は我々クワ・トイネ遠征軍将軍のこのノウに任せて貰いたい」

 

「いやいや、ここはアルタラス騎士団の騎兵突撃が最初に」

 

「何を言うかこういう時こそ拙者らのフェン魂による突撃が」

 

「お前らは何も分かっちゃいねぇ、クイラの獣人部隊こそ!」

 

「頼む!ドイツ領ロウリアにもなにとそ活躍の機会を~!」

 

属国の手柄争いを見ながらベルトランはつまんなさそうにパイプを吸っていた。

 

◆◇◆◇◆◇一方その頃ドイツ軍は……

 

既に森を迂回しレイリングを攻略済みであった。音信不通で援軍が来なかったのもそういう訳であった。

 

余談ではあるが爆発音はここからは勿論、レイフォルの観測所でも聞こえる程のものだったらしい。

 

◆◇◆閑話休題◇◆◇

翌日

 

「うおおおおおお!わがロウリア兵の底力!とくと見よ!」

 

最終的に殴りあいにまで発展した一番槍争いを制したのは意外にもパンドールであった。

 

砲撃終了後ロウリア騎兵を先頭に同盟国軍が要塞跡に殺到する……が、既に生き残りは昨夜のうちに逃げており、残っているのは死体だけだった。

◆◇◆◇◆◇

要塞跡地にパーパルディア国旗が翻る。 

 

経過はどうあれ結果的にパーパルディアがグラ・バルカスの要塞を攻略したのだ、結果を知らされた同盟諸国は泡を吹くなり喝采なり三者三様ではあったが殆どの国がパーパルディアを称える異常事態となったのであった。

 




取り合えずラテ編は終わりです。
次は何処から切り出せばいいんだ。



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『ナルガ戦線未だ敗北知らず』

 

 

 

『各地兵力、レイフォル防衛の為に転進。同盟軍の決戦に備える構えか』

 

 

 

『先週だけでもドイツ巡洋艦8隻、ミリシアル戦艦4隻、パーパルディアフリゲート艦103隻、ムー空母9隻を撃沈』

 

 

 

『今朝、ドイツ爆撃機の撃墜機の調査、我が爆撃機と比較しても旧式化しており優劣の差は歴然』

 

 

 

 相変わらず言葉だけは勇ましい帝国の夕刊を読み終えたシエリアは自分のデスクに放り投げると、掛けていたコートを羽織り外に出る。

 

 

 

「やはり外の空気だけはレイフォルの方が良いな」

 

 

 

 入り口に用意されていた自動車に乗り込み夕暮れ時の街を走る。

 

 

 

 街は防空の為に明かりがついておらず、防空壕への案内板だけが蓄光塗料でほのかに光っている。

 

 

 

 暫く走るとにわかに活気づいてくる、グ帝将兵向けの歓楽街だ。

 

 

 

 その中でも、とりわけ立派な建物*1の前で止まり、シエリアは中に入っていった。

 

 

 

 ◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 シエリアがここに来たのはシオメル・カルタスと食事をする為であった。

 

 旧知の仲である彼女らは久しぶりの再会に会話が弾んだ。

 

 

 

 

 

「貴女と最後に一緒に食事したのはいつだったかしら」

 

 

 

「確か、女学院の同窓会を抜け出した時以来ですわ」

 

 

 

「そうだったわね、なんだかんだ貴女変わってないわよね」

 

 

 

「……ねぇシエリア」

 

 

 

「ん? どうしたの?」

 

 

 

 

 

「この戦争、あとどれ程続くのかしら……」

 

 

 

「……それは」

 

 

 

 

 

 現時点のナルガ戦線は膠着状態に陥っていた。

 

 

 

 ドイツはムーまで遠方から輸送船でやって来るが部品の補給が思うようにいかず、道中のグ帝潜水艦の攻撃に苦しめられており、戦車戦では敵なしだが航空戦では苦戦している。さしものドイツ自慢のジェット戦闘機ですらパーツ不足の整備不良には泣き寝入りするしかない。

 

 

 

 グラ・バルカスも間抜けではないので、特殊部隊の夜襲やベガによる夜間爆撃を繰り返し行っている。

 

 

 

 

 

 それにしても国土が広すぎて両軍ともにこれ以上攻勢をかけるだけの軍勢を抽出できずに攻めあぐねていた。

 

 

 

 現時点でドイツ軍はレイリング攻略後は周辺のゲリラ掃討をするのみで目立った動きは無い。

 

 

 

「……そうね、 でも、絶対に我が帝国が勝つわよ、安心して」

 

 

 

「貴女も同じことをおっしゃるのね……」

 

 

 

「……」

 

 

 

 

 

ウゥ──ーウゥ──ーウゥ──ー

 

 

 

 

 

 シエリアの思考を遮るようにサイレンが鳴り響く。

 

 

 

 

 

「空襲警報だ!」

 

 

 

 

 

「お客様、防空壕はこちらです! お早く!」

 

 

 

 

 

「シオメル! こっち!」

 

 

 

「あッ!」

 

 

 

 シエリアはシオメルの手を掴んで誘導された方に駆ける。

 

 

 

 

 

 空にはHE111が隊列を組んで飛んでいる所に向かってグ帝の双発戦闘機が迫っていた。

 

 

 

 

 

【グラ・バルカス帝国人専用防空壕】

 

 

 

 

 

「こちらです! 早く早く!」

 

 

 

 

 

 堅牢なコンクリート造りの防空壕は既に多数の兵士が座っていた。

 

 その中を二人は身を寄せ合うように座って、お互い手を握りながら敵機が去るのを静かに待った。

 

 

 

 

 

 遠くで爆発が起こるたびに、握る彼女の手が震えていた。

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

空襲警報が止み、兵士たちはぞろぞろと防空壕から出てくる。

 

 

 

 

 

「あ~あ、せっかく貴女とのお食事でしたのにドイツ野郎のせいでパーですわ」

 

 

 

シオメルは残念そうに腕時計を見る、彼女とて忙しいのだ。

 

 

 

 

 

「そんなこといわないで、また予定を合わせて会いましょう、今度は皇都で逢うのもいいかも」

 

 

 

「確かに、そっちの方が邪魔が入りませんわね!」

 

 

 

こうしてシオメルは迎えの車に乗り込み出発する、遠くなっていく彼女の車をシエリアは見えなくなるまでずっと手を振り続け見送った。

 

 

 




明けましておめでとうございます~
ダメだ死ぬ


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