キャラクタークリエイトのフィクサー (エリちゃん助ける)
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1話

鏡花ちゃん可愛い。けど、鏡花ちゃん自身を再現できるとは思わないので、中身は別人です。そう、綾波レイみたいに私は三人目とかをいきます。あくまでも外見と能力をキャラクタークリエイトの能力で作り変えているだけです。


 

 

 目覚めてから煙草を吸って考える。私は転生し、マフィアを結成した。この世界は僕のヒーローアカデミアの世界だ。つまり、世界総人口の約八割が超常能力“個性”を持つに至った超人社会である。“個性”を悪用する(ヴィラン)を“個性”を発揮して取り締まるヒーローは人々に讃えられている。

 私、伽羅創造も"個性"をもっている。私の"個性"はキャラクタークリエイト。つまり、キャラクターを作る"個性"だ。

 この"個性"は私自身にも私以外にも有効だ。私の好きなように身体を作り変え、設定した力を得られる。自分に使った場合、肉体を変化させるのは永遠で、キャラクターに設定した"個性"は一日数度までしか使えない。外見だけだ。

 逆に他人に施す場合はまた違う。しばらくキャラクタークリエイトを解除しないと、身体はその状態で固定される。しかし、"個性"は違う。"個性"は一日しか有効ではなく、継続するためには私の体液を摂取しないといけない。つまり、"個性"を利用すればいろいろとできるということだ。例えば"無個性"で虐められたり、虐待されたりして捨てられた少女達と契約して依存させ、自分の物にするとかできる。

 例えば今、私の隣で一糸まとわぬ姿で寝ている彼女。彼女は昨日、自殺を図ったところを説得して契約し、連れ帰って私の物として作り変えた美少女だ。彼女に与えたキャラクターは文豪ストレイドッグスの泉鏡花だ。

 昨日は作り変えた彼女の長くなった綺麗な黒色の髪の毛をベッドの上に広げ、身体を大の字にして天上の染みを数えてもらった。私の"個性"でキャラクターの力まで与えるとなると深い繋がりが必要で、私のDNAというか個性因子を叩き込まねばならない。故に"個性"まで与えるのなら相手は女の子になる。

 

「……おはよう、ございます……」

「ああ、おはよう」

「……どうぞ……」

 

 煙草を吸いながら挨拶をして、彼女の頭を撫でると少し嬉しそうにしてから、身体を震わせながら無表情で腕を差し出してくる。

 

「これは?」

「煙草、腕で消さないの……?」

「なるほど。やりたいのかな?」

「ちっ、違う……熱いし痛いから……」

「じゃあ、やらなくていいよ。それよりもお風呂に入ろうか」

「はいっていいの?」

「ああ、一緒に入ろう」

 

 ベッドから出て彼女をお姫様抱っこで抱き上げて風呂場に移動する。裸のままなのでそのまま浴室に入って彼女の身体を綺麗に洗っていく。

 

「これが私……綺麗……」

「そうだ。その身体の名前は泉鏡花」

「泉鏡花……それがこれからの名前……"個性"もあるの?」

「"個性"の名前は夜叉白雪。仕込み杖を持った女性の異形・夜叉白雪を具現化する力だよ。そちらは後で訓練すればいい」

「はい」

「では、次は私の身体を洗ってくれ」

 

 彼女の身体を綺麗に洗ってから、私の身体も洗ってもらう。続いて一緒に暖かな湯船に浸かるのだが、嬉しそうにしている。

 

「どうした?」

「初めて入った。こんなに気持ちいいものだったんだ……」

「今まで入っていなかったのかね?」

「水のシャワーだけ……」

「なるほど。ヒーローは助けてくれなかったのかね?」

「親はヒーローだった。仕事の鬱憤を無個性の私で晴らしてたの」

「それは辛かったね。まあ、ここでも似たようなものかもしれない。なにせ身体を私に捧げないといけないのだから」

「大丈夫。"個性"を貰えるなら、これぐらい平気……」

 

 学園でも相当虐められていたようだ。今の世界では"個性"がないと徹底的に虐められる。特にヒーローの子供で無個性となると致命的だろう。普通なら親が頑張るのだろうが、ろくなヒーローじゃないようだ。

 

「まあ、いいさ。これからのことの方が大事だ。私達は仕事をしていてね。基本的には護衛や逃がし屋だったり、運び屋、そして殺し屋だ。表の仕事としてはヒーロー免許も持っているし、会社の運営もやっている」

「それは……」

「そう、私達はマフィアだ。日本ではヤクザというのかもしれない。まあ、表で護衛として働くのもいい。給料を貯めて一定金額を支払って自由になるのもいい。その場合、"個性"はなくなるだろうが、新しい姿はあげよう。前の子はそうして我が社に就職して今は自由に過ごしている。もちろん、その姿は返してもらうがね。もちろん、末永く私と一緒にいてくれてもいい」

「……考えてみる……」

「それでいい。どちらにしろ、私達を裏切らないならいい。さて、話はこれくらいにしてでようか」

 

 鏡花のお腹が鳴った。彼女は恥ずかしそうに顔を隠すのではなく、怯えている。なので、彼女を抱き上げて風呂から出てタオルで彼女を拭って、ドライヤーの使い方を教えていく。自分も含めて身体を綺麗に拭き終わったら、彼女に黄色い帯の赤い着物を着せる。もちろん、これは新品だ。流石に前の鏡花のを着せるわけにはいかない。

 

「綺麗……こんな高そうなの、私なんかに……いいの……?」

「ああ、もちろんだとも。むしろ、それが泉鏡花の私服でもあるからね。後はメイド服か」

「メイド……ご主人様?」

「そうだね。さて、食事を取りに行こう。おそらく、君の好物になるだろう湯豆腐を用意してある」

「湯豆腐……なんでか、凄く嬉しくなる……」

「キャラに引っ張られることがあるからね。ただ、引っ張られすぎないように、ロールプレイしきらないようにするといい。原作では彼女は裏切って生き延び幸せになったかもしれないが……君を待つのがそうだとは限らないよ」

「はい。肝に銘じておきます」

「いいこだ」

 

 彼女を連れて脱衣所から出る。寝室を通りすぎてリビングに行くと、可愛い私の娘の二人が湯豆腐を用意して待っていてくれた。

 

「お父様、準備はできております」

「おかーさん、はやくはやく!」

「では、紹介しよう。彼女は新しい泉鏡花だ」

「いっ、泉……鏡花……です?」

 

 まだ自分の名前だとしっくりとこないのだろう。だが、しばらくすればそれも慣れるだろう。少なくともプロフィールは暗記させるし、これから訓練してもらう。

 彼女、泉鏡花のプロフィールはこの通りだ。まずは年齢が14歳。誕生日が11月4日。身長が148cmで体重40kg。血液型はB型で好きなものは兎、豆腐、紫陽花、おばけ。嫌いなものは犬、雷、蠅。異能もとい"個性"は夜叉白雪となる。最低でもこれは覚えてもらう。

 

「私はアビゲイル・ウィリアムズ、移動などを担当しているの。よろしくお願いするわ、三人目さん」

 

 金髪碧眼の美少女。身長152㎝で髪の毛も長い。彼女は窮極の門(ヨグ=ソトースの門)を通じてあらゆる空間にアクセスすることができる。ただし彼女以外が門をくぐる際は、その門やその向こうに広がる世界に正気を持っていかれないだけの強靭な精神力を必要とする。

 

「三人目……」

「わたしたちはジャック・ザ・リッパー。裏切り者を処理する仕事をしているよ。だから、おねーさんが裏切ったら、わたしたちが殺すことになるかもね。実際に一人目はわたしたちが処理したし」

 

 銀色の髪の毛をショートした金色の瞳を持つ。身長は134cmでこの中では一番小さい。そして、彼女の力は女性を殺すことと電子機器に及ぶまでに情報を消去できる。つまり、私が"個性"を与えた者を処理するのにはとても適している。後は彼女達に発信機を取り付ければいい。ちなみにアビゲイルことアビーもジャックもFateと呼ばれる者のキャラだ。

 

「っ!?」

「ですが、本来なら発信機を飲ませるのですが、私は考えました。もっと手っ取り早く裏切り者を処理する方法を思い付きました。これを飲んでいただきますわ。これを飲む事で私のゲートも問題なく使えるようになりますから」

 

 アビーが取り出したのは何かの肉片だ。

 

「さあ、飲んじゃってよ。大丈夫、わたしたちも飲んでるから」

「裏切ったら自動的に内部から喰い破ってくれますの」

「う、うん……」

 

 鏡花が恐怖に震える。二人はいざとなったら殺してしまう気だろう。殺気を浴びながら飲み込んていく。これで彼女はアビーのゲートも無事に通れるようになる。何故ならアレは名状しがたき者達の肉片だからだ。その肉片は彼女達に寄生して守ってくれる。

 

「さて、物騒な話は終わりにして食べようか」

 

 皆で湯豆腐を食べると、鏡花はとても美味しそうに無表情が崩れて笑顔をみせる。これで彼女も幸せになってくれるかもしれない。彼女が殺し屋になってしまってもいい。夜叉白雪は殺戮に特化しているの。それに名状しがたき者に寄生されたことで、殺人に対する忌避感も少なくなるだろう。

 

 

 

 

 泉鏡花

 

 

 

 

 私は望まれずに生まれてきた。家ではヒーローの両親に虐待され、学校でも虐められてきた。どちらも無個性というのが理由の一つ。別の人に助けを求めてもヒーローである両親がそんなことをするはずがないと言われ、どうしようもなかった。

 それに自殺をしようとして、何度か手首を切ろうとしても怖くてできなかった。だから、確実に終われるように飛び降りた。そのはずが、いつの間にか物凄く怖い空間を通った気がして気絶した。次に気付いたら別の場所に連れてこられていて、目の前に若い男性が話をしてくれました。

 内容は簡単に言えば契約して身体を差し出せば新しい人生を歩ませてくれるというものでした。どうせ死ぬつもりだったし、夢かもと思って契約したら身体を作り変えられた。

 髪の毛が長くなった上に身体が小さくなり、ガリガリだったのがほどよい感じになった。顔を手で確かめると綺麗な肌に変わっていた。その後、ベッドに連れていかれて天上の染みを数えることになりました。物凄く痛く気が付いたら眠っていたのです。

 目覚めると煙草を吸われていたので、何時もの通りに腕を差し出したら、必要ないと言われました。

 その後は久しぶりにお風呂に入れてもらって、身体を洗ってもらいました。湯船に入れてもらえてとても気持ち良くてよかったです。その後の食事もとても美味しくて幸せになりました。ただ、変なのを食べた後なので特にです。湯豆腐は至福の食べ物でした。

 

「アビー、鏡花を彼女の部屋に連れていってあげなさい」

「わかったわ。ジャックはどうするのかしら?」

「わたしたちはおかーさんに可愛がってもらうよ」

「了解よ。それじゃあ、鏡花はこちらに……」

「ほぇ?」

 

 幸せを噛みしめていると、アビゲイルさんに手を掴まれて連れていかれる。

 廊下をしばらく歩いていくと、鏡花と書かれた部屋がありました。

 

「今日からここが貴女の部屋です」

「私の……いいの? 床下収納庫とか……」

「……どんな部屋に住んでいたの?」

「床下収納庫で寝起きしてた……虫がいっぱいで……寒くて……」

 

 思い出すだけで身体が震えて、アリやムカデが寝ている身体の上を這っていく感触とかを思い出していると、アビゲイルさんが抱きしめてくれた。

 

「もう大丈夫よ。これから温かいところで寝れるからね……」

「……」

 

 こくりと頷くと、嬉しそうに微笑んでくれてから、部屋の襖を開けてくれます。そこは和室になっているようで、畳の部屋でした。中に入ると凄く広くて置かれている調度品もたぶん凄く高いです。

 

「ここにある物は自由にしてくれていいからね。そこのタンスの下に新品の和服が、上にメイド服が入っているの。こっちは下着類。使い方はわかるわよね?」

「和服はあまり……」

「じゃあ、一緒に勉強しましょう。前の鏡花が色々と残してくれているはずよ」

「前の鏡花さん?」

「そうですわ。貴女は三人目なのよ。一番目は設定に引っ張られたのか、裏切ったからジャックに粛清されたわ」

「っ!?」

「二人目は寿退社よ」

「こ、寿退社? もしかして、ご主人様の……?」

「いえ、別の人が好きになったので、姿を別の人に変えて別の部署に移動したのよ」

「できるんですか?」

「身体の切り替え分の代金を支払い終わっていれば可能よ。裏切りさえしなければ基本的には自由にさせてもらえるわ。それと妊娠の心配もない、といいたいけれどわからないから一応この薬箱の中に入っているわ」

 

 渡された薬箱の中には生理用品や避妊薬が入っていた。使い方はわからない。

 

「えっと、それと本棚には二人目が残してくれた者が引き継ぎ書を作ってくれています。和服の着方とかもあります。これですね」

 

 渡してくれた本には着付けのこととかが書かれていた。本棚をみると、沢山の日記がある。

 

「基本的にはこれを読めばわかるわ。じゃあ、着替えましょう。それで、やってみたいことがあるの!」

「なに?」

「あ~れ~って奴よ」

「わかった」

 

 色々と遊びならが教えてもらった。とりあず、契約を犯さなければ問題ないみたい。

 私が交わした契約は衣食住を保証し、"個性"を持つ新しい姿を与える代わりに一定金額を支払うまでは身体を差し出してお仕事をするということ。お金を支払い終わった後は私の意思で契約を更新するかを決められる。ただし、色々な守秘義務が発生し、外部に漏らすと殺される。また契約中に裏切ると殺される。

 身体を差し出すことは"個性"の維持に必要とのことなので、私が望んだことでもある。"個性"がいらないなら、別に身体はいらないらしい。他の人とすることもない。

 

「鏡花はこのまま鏡花でいますか?」

「?」

「いえ、泉鏡花というのは"個性"を与えられるキャラクター、アバターの一つとして登録されているのよ。つまり、"個性"がいらないというなら、別の姿になることにならないといけないわ」

「もしかして、これからの境遇もかわる?」

「ええ、そうよ。今の鏡花の待遇はお父様の愛人としての立場があるから、かなりいい暮らしができるわ。でも、泉鏡花を止めるのなら、事務員とか色々とあるけど……」

「この姿じゃ駄目なの?」

「お父様の"個性"はそこまで便利じゃないの。"個性"を与えられるキャラクターをクリエイトするのには枠があるの。そして、その枠は前の人が訓練した力が引き継がれるのよね」

「それって無個性の私でよかったの?」

「逆です。無個性じゃないといけないのよ。"個性"をすでに持っていると反発して死ぬ場合があるわ」

「つまり、無個性の人達が時間をかけて鍛えあげた力が私の中にあるの?」

「そうなの。身体の記憶と"個性"は受け継がれていくのよ。素敵よね。それでどうするの? 今ならすぐにお父様にいって別の人にも変えてもらえるわ」

「はい。私は泉鏡花のままがいいです」

 

 私でも役に立てる。そう思うと嬉しくなる。それに何度も願っていた"個性"が貰えるのなら、身体を差し出すくらい我慢できる。

 

「わかったわ。部屋にはDVDとかもあるので色々と勉強するといいの。でも、その前に鏡花、貴女……殺し屋になるつもりはあるのかしら?」

「殺し屋……」

「あなたの"個性"は殺戮特化なの。すでに数十人は殺しているわ」

 

 殺し屋……人を殺す……怖い……と思うのだけど、不思議とそうは思わない。

 

「大丈夫?」

「大丈夫です」

「だったら、貴女のご両親をまずは殺しましょうか……」

「え?」

「今まで散々虐待されてきたのです。報復すべきでしょう? 大丈夫、手筈は後処理まで含めてすべてこちらで処理するから、貴女は手を下すだけよ。それに無関係な人を殺すより、恨みがある人からの方がいいでしょう? それと殺すのは依頼を受けて、その人をしっかりと調べてからだからほぼ大丈夫よ。あと殺しが嫌だったら、基本的にお父様のメイドとして護衛になってもいいわ。こちらは襲撃されたら相手を殺してもらいますけど」

「大丈夫。不思議と忌避感がない」

「そう。それはいいことね。"個性"の訓練をしたら復讐、報復しにいきましょう」

 

 楽しそうに暗い笑みを受かべるアビゲイルさんは怖いと思う。

 

「次は訓練しましょう。こっちよ」

「はい」

 

 ビルの中を移動して、エレベーターで最上階の居住フロアから地下へと下がる。そこで戦闘訓練を行うらしいです。

 

「では、まずは夜叉白雪をだします。最初はこの携帯電話を使います」

「携帯電話……ガラケー?」

「そうです。これを持ちながら電話をかけるみたいにしてください。まずは試してみましょう」

「でてきて、夜叉白雪」

 

 声をかけると、私の背後に仕込み杖を持った女性の異形が出現する。本当にでてくるなんて思わなかった。これが私の"個性"……すごく嬉しくなって涙が溢れてくる。

 

「さて、それじゃあ的をだすわね。それと罰ゲームもあるから気を付けてね」

 

 アビゲイルさんの姿が魔女の帽子にをかぶった不気味な姿へと変化していた。肌の色が白くなったいて、手に持つ魔導書からとっても不気味な触手の化け物が呼び出されている。

 

「これが的よ」

「ば、罰ゲームって……」

「触手プレイよ。身体中を犯してあげる」

「っ!?」

 

 流石にそれは嫌だ。怖がりながら迫ってくる触手の塊に必死に夜叉白雪に命令する。

 

「倒してっ!」

「駄目ね。もっと具体的に斬り裂けとかいった方が良いわ。そうね、この触手を嫌いな両親と思って具体的に斬るイメージをして伝えるといいわ」

「殺って、夜叉白雪」

 

 言われた通りにイメージすると、夜叉白雪が空中を駆け抜けて触手の向こうに通り抜けると斬り刻まれた。すごい。思った通りの場所を斬り裂いてくれた。

 

「この触手、一応対刃仕様なんだけど……まあいいわ。どんどんいくわ。夜叉白雪に頼るんじゃなくて、自分の身体もちゃんと意識して動かさないとだめよ」

 

 無数の触手が夜叉白雪を超えて殺到してくる。すると身体が勝手に避けてくれる。

 

「常に考えて夜叉白雪に指示をだしつつ、自分も戦闘できるようにしてね。それが最低条件よ」

 

 空中に無数の穴が空いて、そこから沢山の名状しがたき者達が現れてくる。それを頑張ってひたすら倒す。身体も夜叉白雪もが思った通りに動いて、とても楽しくなってくる。本当にこの身体は私の物じゃない。まさに生まれ変わった感じ。

 

「良い感じです。では次のステップに入るからね。次は人の急所を狙いましょう。暗殺者として一撃必殺が基本だから」

「ん」

「鏡花自身もお願いね」

 

 仕込み刀を渡される。不思議と使い方がわかるので、ひたすら戦っていく。だんだんと動きを思い出すかのように研ぎ澄まされていく。身体の違和感がなくなり、歯車がかみ合っていくのかどんどん殲滅速度が上がっていく。

 

「夜叉白雪の力は切断。相手の硬さなどを無視して斬れるレベルまですでに昇華されている。前任者の鏡花がそこまで仕上げてくれているの。そこまで最低でもいってね」

「頑張る」

「二次元だけではなく、三次元軌道で戦って。壁を蹴ったりすればいいから」

 

 必死に動いて戦っていると、油断して触手で吹き飛ばされて壁に激突する。同時に夜叉白雪で斬り倒す。ただひたすら戦っていく。

 気絶するまで頑張ったら、アビゲイルさんにお風呂に連れていかれて身体を洗われました。その後、美味しいご飯をもらって食べたら寝室に連れていかれました。

 そこから数日間はひたすら戦闘訓練をしていくと、最初は表情が動いていたのに無表情になってきた。でも、どんどん強くなっていく。相手の触手も強くなってきていて困る。全方位から襲い掛かってくるから、本当に大変。それにご主人様への奉仕もある。こちらは慣れてきたのもあるけど、マッサージまでしてもらえてとても気持ち良くしてもらえる。お陰で次の日にはスッキリして訓練ができる。

 戦闘訓練以外にも日記を呼んだり、今までの録画されていたものからご主人様が喜ぶことを勉強したり、作法の勉強をしたりする。

 

 

 

 新しい生活が始まって一ヶ月。戦闘能力はかなり上がったからか、呼び出された。

 呼び出された先はビルの最上階で、広い執務室みたいなところだった。ご主人様の他にはアビゲイルさんもいる。

 

「アビーから戦闘能力はかなり高くなったと聞いている。そんな訳で仕事をしてもらう。基本的に護衛と暗殺などの仕事をやってもらう」

「鏡花はどれがいいかしら?」

「わからない……」

「両親はどうするのだ? 殺したいなら、後処理させるが……」

「いい、です……もう、かかわりたくないから……」

 

 もう思い出したくもないから、これでいい。

 

「わかった。殺しはどうだ?」

「わからない……」

「なら、どちらでもいい護衛という仕事にしよう。アビー、戦闘がありえる護衛の仕事はあるか?」

「とある会社の役員が裏の機密を知ってしまって逃亡したいとのことよ」

「代価は何時も通りかな?」

「もちろんよ。その情報と姿、身分を含めて全て貰う契約をしているわ」

「ならよし。鏡花はその役員の護衛。アビーはサポート。後は部隊を動かしておいてくれ。それと鏡花」

「はい」

「これが鏡花の個性使用許可証と装備の許可証だ」

 

 渡されたのは私の顔写真が写っている許可証。

 

「前の鏡花が習得した個性使用許可証だ。年齢は気にしないでくれ」

「わかりました」

「そもそも、お父様の力で年齢なんて自由自在だから、あまり気にしなくていいわ」

「この力でアンチエイジングの商売もしているからね。お金持ちの方々には好評だよ。さて、今は仕事の話だ。移動はアビーがやってくれる。装備は渡した物で大丈夫だ。後処理も専門の者がいる。なので襲ってくる奴を返り討ちにすればいい。詳しい内容はこちらに書いてある」

「はい」

 

 受け取った封筒をもらい、退室する。それから、アビーさんに連れられて段取りや色々と教えられながら護衛対象との待ち合わせ場所に移動する。

 

 

 

 

 

 

 今、私は護衛対象は中年男性だった。彼の手を引いて裏路地を走っている。相手は追手を差し向けてきているようで、最初に乗っていた車が襲撃されて破壊された。そこを夜叉白雪で地面を切断して地下へと逃げ出し、下水道を通って裏路地にでてきた。

 

「はぁっ、はぁっ……」

「大丈夫ですか」

「なんとか……これで撒けたと思って、いいんですか……?」

「わかりません。聞いてみま……夜叉白雪っ!?」

 

 上から降ってくる人影が見えた瞬間、夜叉白雪を使って切断する。上から降ってきた人は上下に別れて左右に落ちた。

 

「ひぃぃぃっ!?」

 

 思わず人を殺してしまった。動揺しているはずなのに身体は勝手に動いて夜叉白雪を使って、私達を運ぶ。その瞬間、さっきまで居た場所に無数の弾丸が打ち込まれていく。

 

『手助けはいるかしら?』

 

 別の路地裏についたと同時に携帯電話から聞こえてくる声に考える。正直言って手助けが欲しい。護衛対象が邪魔だから。

 

「欲しいけど……もうちょっと頑張ってみる」

『それなら、いい方法があるの。前の子は夜叉白雪を放って自分で護衛していたわ。だから、こういうだけでいいの。攻撃してきた相手を殲滅してって』

「攻撃してきた相手を殲滅して」

 

 そう言うと、夜叉白雪が壁をすり抜けて消えていった。携帯電話を耳にあてていると、悲鳴が聞こえてくる。

 

「なっ、なにがどうなっている!」

「多分、追手を始末してる」

「一方的な殲滅なのだわ」

 

 空間に穴が空いて、そこから魔女ルックの不気味な姿のアビゲイルがでてくる。

 

「先の曲がり角を曲がり、右にいけば車を用意してあるわ。車までいけば今回はゴール。って、計画だったけれど下水道まで使うと思わなかったから、時間が経ちすぎたわ。他のヒーローが駆け付ける前に撤収よ」

「うん」

「わ、わたしはどうなるのだ!」

「貴方はこれを飲んでくださいな」

「な、なんの薬だ!」

「睡眠薬よ。流石に私達の本拠地に機密保持の観点から案内するわけにはいかないの。だから、眠ってもらうわ。それと新しい身体については要望通りにするから、安心してくださいな」

「もし、飲まなければ……」

 

 アビゲイルさんは首を切る仕草を行う。それに青ざめた表情をした男性は薬を受け取って飲み込んでいく。すると意識を失って倒れる。

 

「さて、ゲートを開くから連れて帰って。私はヒーロー共が来る前に死体を処理するから」

「うん、わかった。でも、運べない」

 

 私の力は普通の人と同じだから、そこまで筋力がない。

 

「引きずるぐらい簡単なはずよ。その身体は普通の人間よりかなり強く作られているのだから」

「……本当だ」

 

 試してみたら、本当に引きずれた。なので、黒いゲートを通って進んでいく。すると私が斬り殺してきた変な生物がいっぱいいる。普通なら発狂しそうなのにそんなこともない。その生物は手(触手)をあげてフリフリと挨拶をしてくる。その後、案内してくれる。

 案内に従って外にでると、たぶん会社のビルに到着した。そこには窓のない部屋で、沢山の黒いスーツを着た人達がいて、怖い。でも、ご主人様とジャックもいるので合っていると思う。

 

「ご苦労だったね。よく頑張ってくれた。後はこちらで預かろう」

「はい」

 

 ご主人様が頭を撫でて労ってくれる。両親はいくら頑張っても褒めてくれずに殴られるばかりだった。頭に手をやられると殴られると思って怖いけれど、褒めてくれるのはすごく嬉しい。

 

 

 

 

 アビゲイル

 

 

 

 

 鏡花の後始末を行うために目的の場所に転移すると、眼下では依頼人の会社に子飼いか雇われた連中を処理する。彼等は手足が別れていたり、身体が半分になったり、頭がなくなったりしている。

 

「痛い痛い痛い痛い!」

「腕っ、腕がぁぁぁっ!」

「今楽にしてあげるわ」

 

 額にある鍵穴が現れ、手元に黒い鍵を呼び出してから虚空に突き刺す。そして鍵を回して空間の扉を開ける。

 

「肉と骨、血は食べていいわよ」

 

 その空間から無数の名状しがたき者達が出現し、死体を喰らっていく。もう片方の手にも鍵を呼び出して、門を開く。そこから配下の黒服さん達を呼び出して相手の持ち物を回収させる。

 

「ウィリアムズ様、まもなくヒーローが駆け付けてきます」

「撤収よ」

 

 彼等の持っていた銃器などを黒服達持たせてすぐに帰らせる。

 

「証拠は一切残さず綺麗に食べなさい」

 

 周りを全て触手で埋め尽くしてから彼等を回収して撤退する。これで髪の毛に至るまで証拠はない。コンクリートの地面なども消しているのだから。それと監視カメラとかは事前に潰してある。

 

「さて、帰りましょう」

 

 門を開いて帰るタイミングでヒーロー達が通報を聞いて駆け付けてきた。残されているのは弾痕で壊れた一部のみ。目撃者がいたとしても消している。

 

 

 帰宅するとお父様がすでに処置を終えて、手に入れた情報を精査していた。

 

「戻ったわ」

「ご苦労様。そいつを何時も通り二、三日したら我が社の支部に飛ばしておいてくれ」

「ええ、わかったわ」

 

 クライアントをヨーロッパにある支部に飛ばして、あちらの部下に任せる予定。彼はこれからあちらで我が社の社員として新しい生活を初めてもらう。アフターサービスも充実しており、彼の家族もちゃんと送ってある。

 

「それで何をしていたの?」

「"個性"を使った人体実験だ。どうやら麻薬なども作っているようだな」

「潰すの?」

「潰す。そして、会社は乗っ取る。何時もやっている通りね」

「そう」

 

 私達の会社が大きくなっている理由は簡単。逃がし屋として依頼を受けて、逃げたい人から相手の会社の弱みを教えてもらう。他にも社の機密情報とかを抜き出したりしてから、逃亡してもらう。それが終わったら新しい生活をプレゼントするの。

 後はこちらでその情報を使って相手の会社を脅したり、一部の情報を公開して経営陣を新しくする。相手が靡かなかったら、拉致してタイミングをみて皆殺しにする。拉致したら配下をトップと同じ姿にして告発とかをしてから、残しておいた死体で自殺に偽装する。基本的に殺す方法を門で飛ばして空から落とせば転落した死体になる。

 

「製薬会社か。これは錬金術師が喜びそうね」

「ああ、欲しがっていた。それで邪魔をしてくれた連中だが……」

「日本のヤクザみたいよ。どうやら、製薬の機械を購入したりしていたみたいね」

「なるほど。麻薬か何かか」

「喰らった奴から覗いた情報では"個性"を消す弾丸や、それを無効化する血清を作っているみたいね。それも時を戻す"個性"の子供を斬り刻んでは再生させているみたい。素敵よね」

「全構成員に告げてくれ。連中を見張って行動を調べろってね。そいつを掻っ攫う。楽しみだろ?」

「ええ、楽しみね。久しぶりの抗争だわ。他の子達も呼びましょう」

「そこまでの戦力が必要だとは思わないんだが……まあ、いいか。戦闘員は戦争の準備をしていこう。だが、メインはアビーとジャック、鏡花だ。キャロルはくるかわからんしな」

「たかが日本の落ち目なヤクザを潰すぐらい、過剰戦力だと思うわよ。ラヴィニアはきてくれるかしら?」

「彼女はリビングデット作りにはまっているらしいね。ふむ。その戦力を送り込むのも面白そうだ」

「リアルバイオハザードね!」

 

 すてきよね。とっても楽しみだわ。でも、誰かはお留守番しないといけないわね。お父様の護衛は必要だもの。やっぱり、リアルバイオハザードで見学するのが一番いいかしら? まあ、情報収集が先ね。後は(ヴィラン)連合とかいうのも気になるわ。

 

 

 

 

 

 



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2話

 

 

 

 鏡花の初仕事から翌日。製薬会社の方は資料が集まった。事前に依頼が来た時に潜入させていた部下に情報の裏付けを頼んでいる。

 

「おかーさん、電話だよ~」

「ああ、ありがとう」

 

 ジャックから電話を受け取ってでる。彼女は俺の膝の上に座ってくる。

 

「私だ。そちらの首尾はどうだ?」

『裏が取れました。これからどうしますか?』

「何時もの通り、必要な情報を集めて証拠を回収して戻っておいで。それからご本人達とお話ししようか」

『了解です』

 

 私の"個性"キャラクタークリエイトで製薬会社の社長の姿に変えて部下と一緒に潜入している。本人は今朝の出社前にこちらまでご同行してもらった。アビーがいれば簡単だ。

 

「ジャック」

「なに~?」

「仕事だ。護衛を頼む」

「りょうか~い」

 

 ジャックの姿が霊体化などで消えたらいいのだろうが、流石にそんな能力は付与できない。なので普通についてきてもらう。それとメイド達にもついてきてもらう。このメイド達は色々な手段で集めた。ここ以外、いくところのない子達でもある。といっても、彼女達は"個性"があるので、姿を変えてメイドとして働いてもらっている。当然、銃器の戦闘訓練をしっかりと積んでもらってもいる。

 廊下に出てから、地下へと移動する。そこには製薬会社の社長がいらっしゃる。部下の一人を助けた人の姿に変えて面談だ。

 

「どういうつもりだ! ここを出せっ!」

「貴方の会社は調べさせてもらった。色々とやってしまったようですね。彼が色々と教えてくださった」

「わっ、私は知らんっ! 他の奴が……」

「ああ、もはやあなたが知っていたかどうかは関係ない。こちらの要求は一つ。会社の資産を全て頂くということだけだ」

「なんだと!?」

「それと経営陣には全員、贖罪のために自殺して頂く。我々に全てを譲ってからね。なに安心してくれ。君の家族の生活は最低限、保証してやる。拒否権はない」

「そんなこと、できるはずが……」

「それができるんだ。おい」

「はい」

「解体しないの? つまんな~い」

 

 メイドの一人に洗脳の"個性"を持つ子がいるので、そちらに頼もうとしたが……ジャックに任せてもいいか。

 

「じゃあ、ジャックの好きにしていいよ。ただし、殺さないことと契約書にサインさせるんだ」

「任せて~」

「何人かはやりすぎないように見ておいてくれ」

 

 一部を残して移動する。廊下を歩いているとアビーがやってくる。彼女には秘書のようなこともやってくれている。

 

「今日の予定は?」

「お偉い政治家さんとの会談があるわ」

「どうせ金の無心だろう」

「じゃあ、こちらで対応しておくわ。それと連中が欲しいのはお金じゃないわ。おそらく、情報よ。それにお金を渡すのは危険すぎるわ。後を辿られたら話にならないのよ。そう教えてくれたのはお父様じゃない」

「そうだな。しっかりと覚えてくれていて嬉しいよ」

 

 アビーには会社の裏を担当してもらっている。だからこそ、色々と確認しなくてはいけない。ご褒美にアビーを抱き寄せて口付けをして唾液をたっぷりと飲ませてやる。アビーも美味しそうに飲み干して、足りないとばかりに舌を入れてくる。

 しばらく堪能しているといきなり床がなくなって落ちていく。落ちた先は寝室だった。そのまま身体をベッドに横たえさせられると、アビーが第三再臨状態で俺の上に乗ってくる。普段は第一再臨状態なのだが、戦闘などはこちらだ。第三状態だとかなりエロイSになる。つまり、搾り取られる。だが、第一再臨だと逆に可愛くて大人しいし、どちらかというとMだ。額の鍵穴を弄るととても気持ちがいいらしい。

 

 

 

 

 楽しんだ後、シャワーを浴びて汗を流してから部屋に戻ると、アビーが俺の体液を採取して水筒に入れている。

 

「アビー、それは?」

「ラヴィニアとキャロルに渡すのよ。彼女達にも必要だからよ」

 

 嫌な予感がする。これを逃したら大変なことになるかもしれない。

 

「それを使ってクローンとか作るのはやめてくれよ」

「なっ、なんのことかしら……?」

「待てこら」

 

 アビーの頬っぺたをぷにぷにしながら聞く。それでも答えないので性的に尋問していく。そしたら、吐いてくれた。

 

「いや、あれよ? クローンを作って裏切ろうなんて思ってないのよ? 本当よ? でも、ほら、お父様が亡くなったら大変じゃない? その対策として記憶転写型クローンを作ってるの。キャロルの"個性"なら作れるみたいだから……」

 

 そういえばそうか。キャロルは本名、キャロル・マールス・ディーンハイムといい、彼女は戦姫絶唱シンフォギアGXのキャラクターである。

 彼女は見た目こそ幼い少女そのものだが、錬金術の奥義にて精製したホムンクルスにオリジナルのキャロル・マールス・ディーンハイムの記憶を転写、複製するという手法で数百年にも及ぶ長き時を生きており、膨大な時間を錬金術の統括、習得と、自らの計画遂行の為の暗躍に費やしてきた。

 戦闘手段としては錬金術によって四大元素(アリストテレス)をはじめとする様々なエネルギーを自在に使いこなす事ができ、強大な戦闘能力をその幼い肢体に秘めている。しかし、それを扱うには蓄えてきた想い出を償却し使い捨てのエネルギーと変換錬成する必要がある。

 これが公式の設定だ。それらの力を"個性"として錬金術に落としこんである。といっても、ここで色々な問題がある。記憶や思い出なんてものは得られない。ましてや錬金術は学問みたいなものだ。一から訓練するしかない。そのため、色々とやってもらった。

 まず、環境を整えるために欧州でマフィアを潰して乗っ取り、そこで色々と悪事をやっていた連中を実験台にして記憶転写やクローン技術を完成させる。あとはその技術を使い、ひたすら自分のクローンを作って錬金術を訓練し、記憶と技術を回収する。

 クローンの死体はラヴィニアの錬金術によって死体として戦う力を得ていく。つまり、我が誇る錬金術師は二人だ。二人の錬金技術は相乗効果もあり、欧州でかなりの技術を会得している。彼女達にとってクローンの作成など朝飯前だ。

 

「俺の予備のクローンを作るのは別にいいが、目覚めさせるなよ」

「いっておくわ。でも、いいの? "個性"を維持する方法を得られたらお父様を殺して会社を乗っ取っちゃうかもしれないわよ?」

「構わない、といいたいが……俺が死んだ時点で終わりだからな」

「"個性"だけがなくなるんじゃないの? それもお父様のクローンで解決できるのに」

「俺が死ぬか死んだ時点でキャラクタースロットが破棄される。さて、ここで問題だ。破棄されたらそのキャラクターはどうなる?」

「当然、デリートされ……ちょっと待って。ねえ、デリートされたら、私達の身体ってどうなるの?」

「短い時間の奴なら大丈夫だろうが、長い時間をその姿で固定されている奴はどうだろうか? おそらく老化は始まり、身体の力も落ちるだろう。だが、"個性"を得るまでに深く繋がり、俺の個性因子を採取し続けているお前達はどうなるか、わからないな」

「わ~素敵なことね」

 

 引き離されるとか、そんな次元ではない。おそらく鏡花はともかく、すでに何年、何十年もその姿で活動している彼女達には影響は大きいだろう。

 

「君達は私から逃げられないよ。"個性"を返すなら別だがね」

「お父様の変態。まあ、逃げるつもりもないけれど」

「だろうね。逃げるなら自分から言うはずはないからね」

「はいはい。私達としても今が楽しいから別にいいわ。それでお父様はこれからどうするの? できれば鏡花のことをみてあげて欲しいわ。初仕事を終えたご褒美もまだよね?」

「そうだね。じゃあ、デートに連れていってこようかな」

「護衛の手配はしておくわ」

「いらないんだけどね」

「絶対に駄目よ。お父様に死なれたら困るのは私達なんだから。それに運命共同体みたいなものなのだから、絶対に逃がさないわ」

「やれやれ、どっちが囚われたのかわかりやしないね」

「そんなの、私達に決まってるじゃない」

 

 お手上げだ。大人しく護衛を連れていこう。まあ、普段から一人になれる場所なんてないのだけどね。まずジャックかアビーが傍にいるし、どうしても離れないといけない時はこれでもかっていうぐらいの防備を整えて、私の傍にはアビーの使い魔達が屯している状態になる。見た目がメイド服なので問題ないが、正体を知っていると正直気分がいいものではない。もちろん、そのメイド服を着た子達からも不平不満がでる装備だ。戦闘がある時は防御用としてアンクルとかにして身に着けるのは仕方ないと思っているようだが。

 

「ちなみに何人動員するつもりだね?」

「完全装備を五十人ね。これでも鏡花がいるからましな方よ。それとデートプランが決まったら教えてちょうだいね」

「彼女の希望次第だが、湯豆腐だろうな」

「鏡花ならそうでしょうね。料亭を予約しておくわ」

「よろしく。私は鏡花をデートに誘いにいくとしよう」

「いってらっしゃい。って、遊んでいるジャックを護衛にしましょう。それで大概、どうにかなるわね」

 

 アビーは過保護だし、やっぱり対象が移るラヴィニアには戻ってきてもらわないと駄目だね。

 

 

 

 

 

 



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3話

 

 鏡花を向かえに彼女の部屋にいくと、彼女は布団を敷いてその上に座りながらテレビをみていた。そのテレビには鏡花であって別の鏡花の淫らな映像が映し出されている。それを見ながら自分でしていた。

 

「鏡花」

「っ!?」

 

 こっちをみて、無表情なまま顔を赤らめさせながらあわあわと両手を振っていく。まあ、見られたら恥ずかしいだろう。しかし、可愛いくて襲いたくなるが、残念ながら今は搾り取られて賢者タイムだ。

 

「まずは乱れた服をなおそうか」

「ひゃい……」

 

 鏡花の乱れた和服を整える。それから理由を聞いたら恥ずかしそうにしながら、勉強のためにみるように言われたと答えてくれた。おそらくアビーが言ったのだろう。

 

「さっ、最初は剣術とかをみていたら、そういうのにもなって……」

「まあ、録画したのがいっぱいあるからな」

 

 それに"個性"が代を重ねるごとに強化されているので、個性因子を手に入れるために依り代を発情ぐらいさせるかもしれない。

 

「それに……ご主人様を気持ち良くできないと、捨てられるかもしないから……」

「心配しなくてもいいさ。これからゆっくりと教えていってあげるからね」

「はっ、はい……」

 

 姿見の前で髪の毛も梳いて綺麗に着物を着た鏡花。火照った雰囲気でとろんとしている彼女はとても可愛らしい。それに無表情なのも相まってまるで着せ替え人形みたいだ。

 

「これから初仕事のご褒美としてデートに出掛けるよ」

「誰と誰が……」

「私と鏡花だね。それでどこかいきたいところはないかね?」

「いっ、いきたいところ……」

「どこでもいいよ」

 

 後ろから鏡花の肩に手を置いて耳元で囁いていく。鏡花は恥ずかしそうに身体を震わせる。

 

「えっと、その湯豆腐を食べたいです……」

「高級料亭を予約しているよ。他に行きたい場所はないか?」

「その……ないです」

「どこでもいいよ。なんなら海外でもいい。パリでもいってみるかい?」

「だ、大丈夫です……」

「それならとりあず、店に移動しようか」

「はい……」

 

 鏡花の手を引いてエレベーターで地下まで進む。その時にはすでに周りに護衛のメイド達と黒服達が待機している。そして、まわされたリムジンに乗って移動する。

 

「んっ、ふぅ……んんっ!」

 

 後部座席に座りながら、鏡花を膝の上に乗せて後ろから彼女を抱きしめる。片手は胸元から着物の中に入れて柔かい微かな膨らみを楽しむ。

 

「ほら、素直になるんだ」

「うぅ……」

 

 首筋や耳を舐めたりして鏡花の判断能力を奪い、彼女の求めを聞き出してやる。それに柔らかい美少女の身体を堪能できるので損はない。

 

「ご主人様、遊ぶのはいいのですが、お仕事をお願いします」

 

 俺を見詰めるのはメイド服を着た美少女。彼女は人ではありえない水色の髪の毛に猫耳と尻尾をしていて、瞳の色が翡翠のような色をしている。年齢は17歳くらいで身長は150㎝。体重42㎏で3サイズはB74/W55/H78。彼女の"個性"は飛翔。姿はケットシーにしてある。そして武器はウルティマヘカートⅡ。これでもうわかるだろう。SAOのシノンだ。ただ、GGOではなくALOの姿でだ。

 

「はいはい」

 

 膝の上に乗せながら、鏡花を抱きしめながら渡された書類をみる。それは私が支配下におく会社の決裁書だ。といっても私は経営していないが、人事権も経営権も全て支配下においている。そして、トップには私にとって都合のいい連中を配置している。もちろん、キャラクタークエリエイトの能力で経営関連は強化している。

 警備部門に関しては別に政府に個性使用許可証を発行させて、武器の携帯許可も発行させている。これで我々が武器を持っていても問題ないし、警備中なら"個性"や銃器の使用も可能だ。まさに素晴らしいのは政治家の連中だ。まあ、彼等……政治家や金持ちの方々の護衛を専門に受けている。ちなみに殺しても正当防衛が認められるので問題ないようにしてある。

 警察は護衛でも"個性"は使えないので、護衛には別にした方がよい。ヒーローはもしもの場合、他の人を助けにでないといけない。そうなるとまともに護衛できないことになる。そういう理屈でヒーローとは別に護衛対象者を優先して相手を制圧、もしくは殺傷してでも止めるのを法律で認めさせた。政治家達にもメリットがあるし、少し脅しもしたからな。

 

「よし、新しい連中を用意しよう。ピックアップしておいてくれ」

「了解。経営部から送り込んでおくわ」

「頼む」

 

 他にも色々と頼まれた仕事をこなしつつ、鏡花の温もりや匂い、柔らかさを堪能する。

 

「ご主人様」

「どうした?」

「あの、あれ……」

 

 どうやら、銀行強盗が起こっているようだ。当然、俺達は無視する。

 

「気にしなくていい」

「うん……」

「そうだ。今は料亭が先だ。美味しい湯豆腐が待っているぞ」

「湯豆腐……いく」

 

 料亭に到着したら、数人が先に入ってルートを確保してくれる。後はそこをゆっくりと進んでいく。

 

「すごい、高そう……」

「高そうじゃなくて、高いよ」

「まあ、高いね」

 

 料亭の中を歩いて離れに移動する。そこではすでにジャックが待っていた。

 

「ジャック、押したか?」

「うん。すぐに押して面白くなかったよ」

「そうか。ジャックも食べていくか?」

「食べる~」

「鏡花もいいか?」

「うん、いいよ……」

 

 許可をもらえたので、一緒に座って一緒にご飯を食べることにする。鏡花を膝に乗せながら湯豆腐や他の鍋も用意してもらう。

 シノン達は外で護衛してくれているので、安心して食事ができる。

 

「鏡花、あ~ん」

「……あっ、あ~ん」

 

 恥ずかしそうにする鏡花は一瞬、考えてから諦めて食べ出す。彼女達にとって設定した好物が他の物よりも、数倍から数十倍の美味さになる。

 

「美味しいか?」

「……美味しい……美味しいよ……」

 

 泣きながら食べていく鏡花。俺はそんな彼女達と楽しみにする。

 

「どこか行きたい場所は決まったか?」

「……本当にいいの……?」

「ああ、いいよ。どこでも連れていってあげよう」

「……なら、遊園地、いってみたい……楽しそうに話してたから……」

 

 窓を開けて外で待機しているシノンに声をかける。

 

「遊園地か、シノン、手配してくれ」

「了解」

 

 しかし、遊園地か。今度皆でいくのもいいかもしれない。しかし、この近くに遊園地なんてあっただろうか?

 

「と、いいたいけれど流石に当日で貸し切りは無理ね」

「あの、貸し切りじゃないと駄目……?」

「警備上、そっちの方がいいの。でも、やっぱり無理ね。遊園地は後日にしてほしい。流石に不特定多数の人がいるところでの護衛は難しいから」

「そうだね。それなら後日、社員や系列グループに慰安旅行としようか。家族も参加できるようにすればいいだろう。鏡花もいいかな?」

「はっ、はい……いいんの?」

「もちろんだ。シノン、そのように手配してくれ」

「はい。お任せください」

「さて、鏡花。それじゃあどこにいきたい?」

「……その……ぬいぐるみが、ほしいです……」

「ぬいぐるみか。いいね、買いにいこう」

 

 話していると、ふとジャックの方をみる。彼女は虚空を睨み付けていた。

 

「シノン」

「各員、警戒。襲撃がくる」

 

 シノンが太股から拳銃を取り出して警戒を始めると、虚空に黒い靄が現れる。その靄にシノンが発砲する。

 

「拳銃では役に立たないか」

 

 彼女は結晶体を取り出して、それを地面に叩き付けて割ると沢山の銃火器がでてくる。外のメイド達も機関銃や対物ライフルで武装していく。アルカノイズなど錬金術の技術で作られているものだ。

 

「危ないじゃないですか。いきなりこれとは……」

「アポイントメントがない客に容赦する必要はないからね。ジャック、時間を稼げ」

「は~い!」

 

 携帯を取り出して鏡花の携帯にかける。鏡花は不思議がりながらでてくれる。

 

「黒い靄を斬れ」

 

 本来の夜叉白雪よりもこの夜叉白雪は強化されている。というのも、無形の物でも斬れるからだ。"個性"にしたことで成長しているのだ。ましてや二人目の泉鏡花は天才だった。"個性"を使わずに縮地や無明三段突きを行えるほど。ある意味、最強だった。だから、彼女の姿は桜セイバーこと沖田総司にしてある。

 

「夜叉白雪」

 

 黒い霧が切断される瞬間、ジャックが押し込んでシノンがグレネードランチャーを叩き込み、鏡花が斬り裂いた。向こう側から悲鳴が聞こえるが気にしない。

 

「今のは?」

「ん? どうでもいいさ。鏡花とのデートには必要ないからな」

 

 まあ、連中の要件はわかっている。俺の"個性"を使ってオール・フォー・ワン、先生の治療をしろということだろう。確かにそれはできる。しかし、先生と直接会って"個性"を奪われる訳にはいかない。なので、直接会うのは先生が捕まってからだ。もちろん、オールマイトも治療しない。アレは私にとって邪魔だからだ。

 

「さて、デートにいこうか」

「護衛は継続します」

 

 さっさとここから出て別のところに向かうとしよう。

 

 

 

 鏡花と腕を組んで手を握り合って歩いていく。彼女と一緒にぬいぐるみ専門店にいって、色々と購入していく。鏡花以外にもジャックやアビー、ラヴィニア、キャロルにあげるためだ。キャロルはいらないっていうだろうけど、送っておこう。

 

「どれがいい? なんなら全部でもいいけど」

「ひ、一つでいい……もらったこと、なかったから、一つで十分です……」

 

 嬉しそうにぬいぐるみを抱きしめ、顔を埋めて喜ぶ鏡花。

 

「他に欲しい物があればいってくれ」

「えっと、よくわからない……」

「そうか。なら、スイーツの食べ歩きといこうか」

「はっ、はいっ」

 

 鏡花をリードしていろんな店に連れていく。映画館やゲームセンターなど様々なところに連れていく。他の子にも鏡花を遊びに連れていくように頼むとしよう。

 

 

 

 

 

 

 



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4話

 

 泉鏡花

 

 

 

 

 ご主人様とのデートは驚きと楽しさの連続だった。欲しかったぬいぐるみや下着とか日用品を買ってもらたり、ゲームセンターという遊ぶ場所にも連れていってもえた。

 そこであいすほっけーやしゅーてぃんぐげーむなるものを遊ばせてもらった。ゆーふぉーきゃっちゃーは夢があるけど、貯金箱だった。ご主人様にお願いすると、少し待っているように言われてから、すぐに戻ってきてやってくれた。全部とってプレゼントしてくれたけれど、いっぱいはいらないから護衛してくれているメイドさん達にあげる。

 

「おかーさん、わたしたちも~」

「あ、わたしはアレが欲しいです」

 

 ジャックさんやシノンさんもいいだすと、ご主人様がいっぱい取ってくれて、皆にプレゼントしていた。両親とは違って本当に優しい。店員の人は泣いていたけれど、大丈夫だよね。

 その後、ご主人様が離れて戻ってきてから手を繋いでホテルへと向かった。凄く高級そうなホテルで中も凄く綺麗で、シャンデリアとかもあった。そんなホテルの最上階で夜景を見ながら食事をして、とても広い景色のいいお風呂やベッドでご主人様と一緒に過ごして可愛がってもらう。

 

 次の日はホテルのプールなどで遊んだり、探検したりして夕方に食事をしてからチェックアウトして、夜の街にでて遊ぶ。たまにアビゲイルさん達もきていたけれど、ご主人様とキスしたり、他のを受け取ってから帰っていった。

 

「あの、騒がしいです……」

「そうだな。アレが原因だろう」

 

 離れないようにご主人様の腕に抱きつき、手を握りながら帰り道を歩いていると騒がしくなっていた。どうやら、ビルの側面に設置されたテレビをみているみたい。

 

「あ、かわいい……」

「アレが雄英高校の校長だよ。みてみるかい?」

「うん。気になる」

 

 止まってみていると、雄英高校が(ヴィラン)連合なるものに林間合宿を襲撃されたらしい。そこで一人が誘拐されたみたい。

 

「全然駄目だよね~もっと人数をさかないと。特に拠点である学校から離れるならね」

「ご主人様なら、どうしたの?」

「ばれてもいいから、ヒーローを大量に雇う。特にワープ系の人材を確保して常に連絡を取り合って電波が切れたり、暗号文が放たれなかったら即座に人員を投入して蹴散らさせる。正直言って、認識の甘さだね。ヒーロー殺しの時から、連中はテロリストだとわかるだろうに……オールマイトも落ちたものだ」

「オールマイト、あの役立たず……」

「何言ってるんだ! オールマイトは……」

 

 何時の間にか、私達の話を聞いていたのか、数人の違和感ある男女がいた。私はすぐに周りをみると、メイドさんは消えていて、数人の黒服さんが銃口で彼等を狙っている。

 

「君にとってはどうかもしれないが、彼女にとっては役立たずだろう。なにせ救ってもらえなかったのだから」

「っ!?」

「まあ、それにこの子はヒーローの両親から虐待を受けていたからね」

「そんな……」

「ヒーローだって聖人君子じゃないんだから、裏表はあるのだよ。しかし、君、どこかでみたことがあるね」

「そ、それは……」

「なにしてますの!」

 

 どうやら、彼に向かえがきたようだ。そして、私が待ち望んでいた時でもある。

 

「いってくるがいいさ。私達もいくとしよう。鏡花、いくよ」

「はい、ご主人様」

「ご主人様っ!?」

 

 彼が驚いている間に鏡花の手を引いて、空いている片手でサインを出して指示をだす。

 

「まっ! え?」

 

 沢山の黒服さんが道を塞ぎ、銃を構える。

 

「護衛対象にこれより近づくことを禁止します。強行する場合、防衛権を行使して制圧します」

 

 彼等が止まっている間に撤退する。止められている車に乗ると同時にご主人様が顔を近づけてきて、キスしてきた。受け入れていると、少しして離れた。

 

「鏡花、これから楽しいバトルを見にいかないかい?」

「楽しいバトル?」

「ああ、そうだ。なんなら乱入してもいい」

 

 ご主人様はそのままゆっくりと、進むように指示をだした

 

「ジャック」

「なに~?」

 

 何時の間にかご主人様の膝の上に座って猫のように甘えるジャックさん。

 

「手に入れたか?」

「これ?」

「そうそれだ。場所が判明した。行くぞ」

 

 車で進んでいく。進んだ先で皆では廃工場がある。

 

「数百メートル先のビルで狙撃準備をして待機だ」

 

 しばらくすると、ヒーローたちが突入して化け物が現れ、突入していく。その後はもっと化け物がでてきた。

 

「あははは、来るぞ、来るぞ」

「オールマイト?」

「そうだ。そしてあれがオール・フォー・ワンだ。しっかりと見学しておくといい。私は少しでてくる」

「はい」

 

 それからすさまじい戦いを見学する。それでも、恐怖は感じなかった。動きがしっかりと見えるから。ふと横をみると、ご主人様が変な動物みたいな奴になにかをして、動かなくなった。メイドさん達が動いていないから大丈夫なんだろう。

 

 

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 さて、用意していた生物の身体をキャラクタークエリエイトして、一番使っていたキャラクターにする。そして視界などを共有して行動させて戦場に移動する。いや、しようとした。

 

「お待ちください。キャロル・マールス・ディーンハイムから、兵器のテストを願い出ています」

「わかった。任せてくれと伝えてくれ」

「はい。伝えておきます」

 

 私はビルから飛び降りて彼等の下へと向かう。狙うはただ一つ。オール・フォー・ワンの死だ。オールマイトはこれでいなくなるから必要ない。

 オールマイトとオール・フォー・ワンの戦いが終わりまでしっかりとみながら潜む。しばらくしてから、運び込まれてきた黒い筒の中に入って待つ。するとそこにオール・フォー・ワンが入れられてくる。

 

「君か。わざわざ見学していたのかい」

『契約しにきた。私と契約して願いを叶え、魔法少女になってみないかい? まだまだ外で暴れたいだろう? 彼を育てるのだろう?』

「だが、断る。だいたい魔法少女ってなんだい」

『魔法少女は魔法少女だ。願いを叶えて……』

「その後は破滅だろう。君がアメリカで数百人を魔法少女と魔女に変えて殺し合いをさせたのは知っている。もちろん、その時に発生するエネルギーを君が掻っ攫っているのもね」

 

 そう、今の姿はキュゥべえだ。キュゥべえは自身が選んだ人間にしかその姿は視認できず、会話は特定の対象とのテレパシーで行う。劇中では少女の願いを1つ叶える代わりに魂をソウルジェム化し、魔法少女へと変化させる。そして、その後彼女達に絶望を与える。

 

「それで、何の用かな。まあ、理解はしているが……どうせ、裏世界の支配者でも狙っているのだろう」

『いかにも。故に契約しないのなら、ここで死んでもらおう。生きていられると邪魔だからね』

「まあ、そうなるよね。裏世界の支配を目指すのなら、僕は邪魔だろう。それで、どうやって殺すつもりだね。その不思議生物で殺す気かい?」

『いいや、これを使うんだよ』

 

 キャロルから渡された結晶体を割る。すると魔法陣が現れて、中から不気味な生物がでてくる。

 

「ほう、そいつは……」

『ああ、錬金術で作られた兵器、新しい魔女だよ。貴方の記憶を吸い取り、心臓を破壊する。その後、死体は有効活用させてもらおう。貴方達が作り上げた脳無、それと同じような存在になってもらうよ』

「これは因果応報というのだろうね。まあ、しかない。私は彼に託した。次は彼だ。地獄で先に待っているよ」

『随分と潔い』

「ああ、そうだね。それと……僕の身体を君にあげるつもりはないよ」

『なに?』

「バルス」

 

 その言葉と同時にオール・フォー・ワンの体内から急激に光が放たれる。

 

『ちょっ!? よりによってそれかよ!』

「ふははは、もちろん本物ではないよ。ただの爆弾さ。一度、言ってみたかったんだよ」

『おのれっ、オール・フォー・ワンっ!』

「さらばだ古き同胞よ。ああ、しかし君を殺せないことはくやしいなあ。この爆弾は君を殺すために用意したが、どうせ本体じゃないのだろう。その姿は何度も殺しているからね。効果範囲にいてくれればいいのだが……いっそ化けて出るか」

『やめろよ! その可能性が大きいんだから!』

「まあいいさ。地獄でまた会おう」

 

 きゅうべえの身体が爆発によって消し飛ばされる。しかし、すぐに別の身体が現れる。爆心地には薔薇に酷似した大きなキノコ雲の姿がある。

 やれやれ、おっきな花火だ。しかし、これであの空域は入れなくなった。それに護衛していたヒーローや警官は結構死んだが、一般人の被害は少ない。すでに逃げたからだ。

 

「さて、あの爆心地を買い取ってくれ。汚染されているはずだから格安だろう」

「はい」

 

 元の身体に戻って、すぐに執務室で仕事を開始する。きゅうべえは死なないし、いずれすぐに戻ってくる。なので放置だ。"個性"を得るのは私自身には無理だが、きゅうべえを使うことで間接的に支配権を得て視覚などを手に入れられるようにしてある。

 ちなみにきゅうべえのお仕事は魔法少女の契約をとってきて、彼女達に魔女や(ヴィラン)、キャロルとラヴィニアの失敗作を潰させることだ。そして、死んだり絶望したりしたら原作通りに発生するエネルギーは私のもとにやってくる。そのエネルギーによって私の"個性"は成長してきている。

 逆に言えば絶望したり、死ななければエネルギーは回収できない。そして、絶望したらこれまた原作通りに魔女が発生する。ソウルジェムもちゃんとある。

 

「おい、俺の兵器はどうなった?」

 

 執務室で仕事をしていると、床に魔法陣が現れてキャロルとラヴィニアが現れていた。

 

「残念ながらオール・フォー・ワンの自爆に潰されたよ。それより欧州はどうなっている?」

「欧州の支配は完成した。それと例のアレの建造もほぼ終わっている。後はこちらに移せばいい」

「アメリカは?」

「……ゾンビ、いっぱい作って放った……欧州とアメリカ、魔法少女とヒーロー殺し合ってる……」

「あちらは管理なんてしていないしな。しかし、これから本格的に日本で活動する。邪魔なオールマイトも、オール・フォー・ワンも排除できた。これから動きやすくなる。まずはヤクザ共を排除させてもらおう。キャロル、ラヴィニア、アビー、ジャックと協力して存分に暴れろ」

「任せろ。俺達が世界を作り変えてやる」

「……頑張る……だから……」

「ああ、褒めてやるし可愛がってやる」

 

 そのまま二人を連れて寝室に移動する。そこにはすでにアビーとジャック、それに鏡花やシノン達もいる。

 

「そいつが新しい鏡花か」

「……殺されない……?」

「大丈夫なはずだ。奴はすでに別人だし、ここにはこないはずだ。新しい家庭もあるはずだし……多分」

「……よかった……」

 

 ラヴィニアとキャロルは沖田さんに扱かれていたからな。基本的に家に籠っているので、二人は強制的に外に連れ出されて訓練させられたり、クローンを容赦なく滅多斬りにされていたから仕方ない。

 

「? あの、なんですか?」

「いや、なんでもない。それで、さっきの話には鏡花が入っていなかったが……」

「それは簡単だ。鏡花には雄英生徒の護衛依頼が入った。そっちにいってもらおうと思う。サポートにシノンもつけるし、俺もいってみようかと思うがな」

「それはやめておけ」

「だめだよ~」

「まあ、別にどうとでもなるわ。ヒーローも護衛に回るしかないでしょうしね。こっちはあくまでも表はちゃんとした会社だから」

「私は表と裏は使い分けるわ」

「アビーなら、いける」

「ええ、その通りよ!」

 

 アビーがラヴィニアに抱き着いてすりすりしつつ、服を脱がせていく。とりあえず、これからやることは簡単だ。裏社会を支配下するために色々と滅ぼさせてもらおう。まずはマフィアと(ヴィラン)連合を始末しよう。

 

 

 



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5話

後半はグロいです。


 泉鏡花

 

 

 

 あの凄い戦いから私は前の私の人に連絡を取り、修行をつけてもらった。沖田桜さんは本当に強くて、私では勝てない。それでも様々な技術を数日だけで覚えられたのは、この泉鏡花の身体が桜さんが使っていた技術を覚えていたかららしい。

 本当に蓄積されて経験というのは凄い。最初は桜さんもそうやって覚えてきたらしいけれど、アビゲイルさん達はもっと凄いらしい。

 

「入ってこい」

「はい」

 

 目の前の巨大な扉を開けて中に入る。そこは教室であり、私が入ると数十人の視線が一斉にやってくる。続いて可愛いとか小さいとか言われる。その視線が少し怖い。でも、我慢して頑張らないといけない。

 

「うぉっ、すげぇ美少女じゃねえかっ! しかも着物を着てる!」

「ヒーローコスチュームが着物なんやね……」

「あれ、あの子っ!」

「挨拶しろ」

「泉鏡花。私はヒーローが嫌いだから、よろしくしなくていい」

 

 私を苦しめてきたヒーローの両親と助けてくれなかったヒーローなんて大っ嫌い。だから、そのヒーローを目指すこの人達も嫌い。

 

「え?」

「ヒーロー科なのにヒーローが嫌い?」

「ウチと同じ名前?」

「こいつは八百万の護衛として入学してきている。だから、授業は受けるが、基本的に八百万についていると思え。他に何があるか?」

「ない。邪魔なら斬るだけだから」

「そうか。八百万、こいつのことは任せる」

「はい、任せてください。鏡花ちゃん、こちらにいらしてください」

 

 てててと歩いて護衛対象の八百万百の後ろの席に座る。何時でも斬り殺せるようにしておく。

 

「よし、授業を始める」

 

 私はご主人様に連れていかれた屋敷のことを思いだす。

 

 

 

 

 ご主人様に連れられていった巨大な八百万の屋敷で私は彼女と先生と出会った。大金持ちの家に生まれ、何不自由なく優しい両親と過ごしてきた彼女を妬む気持ちがあるのが自分でもわかる。

 詳しい話をご主人様が教えてくれた。内容としてはこないだの事件を受けて雄英高校は全寮制にすることになったらしい。その許可を得るために面談にしにきているらしい。私はそんな彼女の護衛として雄英高校に通うことになるかもしれないとのこと。聞いただけでも嫌だけど、命令だから仕方がない。拒否して嫌われたくない。

 

「それで、全寮制のことですが……」

 

 八百万百の両親と八百万百が座り、その対面にイレイザーヘッドが座っている。私はご主人様と共に八百万家の後ろに立っている。

 

「うむ。それなのだが、度重なる(ヴィラン)の襲撃を防げなかったのでこちらも要求がある」

「はい。なんでしょうか?」

「百に護衛をつけさせてもらう」

「それは……」

「護衛をつけることが最低条件だ。彼等が私の雇うことになる者達だ」

「お初にお目にかかります。イレイザーヘッド。私は守護の盾(イージス)という民間警備会社をしております。その代表を務めさせております伽羅創造と申します。以後お見知りおきを」

 

 ご主人様が手を胸に充てて頭を下げるので、私も右手にケータイを握り、左手に仕込み刀を持ちながら同じように頭を下げる。

 

「今回、護衛対象である八百万百様がまだ学生とのことで、同性であるこちらの泉鏡花を担当に当てさせます。もちろん、彼女以外に大人の護衛を複数配置させていただきます」

「受け入れられなければ……」

「当然、転校させる。もしくはプロを雇って英才教育させようと思う。何も雄英高校に拘る必要は無いからな」

 

 相手の人は苦々しい表情をしている。ご主人様は気にせず私の頭を撫でてくるのでイレイザーヘッドを見ながら、頭ご主人様に擦り付ける。

 

「それは校長と話さなければいけません」

「うむ」

「こちらが受け入れてくれた場合の警備の人員と装備です」

「拝見します。対人捕獲用地雷、対空迎撃装備、装甲車……人員の装備はPDWに対物狙撃銃ですか。戦争でもするつもりですか?」

「相手は戦争を仕掛けています。失礼ながら、雄英高校の防御力は低いです。それとこれらは武力による威圧でもあります。雄英バリアでしたか、それを常時展開すればすくなくとも地下と上空を警備すればましでしょう。校内には一部メイドに偽装した警備人員を配置しますので、ワープ系にも対応できるようにしております。銃火器を使用するのは戦闘時にわざと大きな音をさせることで互いに異変を気付かせる意味もあります」

「しかし、過剰すぎでは?」

「いえ、今の雄英高校の状態を考えると世間がドン引きするぐらいの警備でいいのですよ。次に破られた時はこれほどの警備をやっておいて駄目だったので、次は戦略兵器を用意しないと駄目だと言えばいいのです。もちろん最初はゴム弾や麻酔弾など威嚇から開始しますし、これらの装備は偽装して配置しておきます。地雷に関しては体育祭で使われた物を改造して配置するぐらいですから問題ないでしょう」

「それは……」

「確かにここまで過剰な戦力を警備にあてるとなれば世間も認めるしかないでしょう。政府の許可も得ています。後はそちらの許可しだいだ」

 

 よくわからないけれど、私が雄英高校に通うことは決定みたい。でも、学校にはいい思い出はない。それに高校なんて私の学力は足りないと思う。

 

「それにお忘れかもしれませんが、相手は核を使ったのですよ。爆心地は汚染で大変なことになっています」

「わかりました。持ち帰って検討してみます。しかし、政府が良く許可を出しましたね」

「もちろん常に人が待機し、緊急事態と認められた時にしか対空迎撃装備や装甲車とかは使えません。基本的には個人が携帯できる火器がメインになります。それも雄英高校の事務員として生徒からはわからないようにしておくように言われました。その為に外見年齢的に問題ない彼女となります」

「彼女の“個性”はなんでしょうか」

「それは契約が完了次第お教えいたします」

「わかりました」

「では、今日はこれまでにしましょう」

 

 その後、イレイザーヘッドが帰ってから、私達も自宅の宿舎に戻った。それからご主人様や先輩達に教えてもらいながらいっぱい勉強したけれどわからないことが多い。こればかりは身体を使った技術と違って引き継がれないので痛い。うぅ、頭が痛い……先生達が怖い。間違ったらお仕置きでお尻を叩かれる。

 

 

 

 

 そんな訳で私は嫌々だけれど雄英高校にいる。一応、警備主任に師匠である桜さんがいて、他にも用務員として清掃しているメイドさんや雄英高校の外に装甲車で待機している黒服さん達がいるのであまり心配せずに課題をやるように言われています。私が警戒するのはワープ系の人や彼等を突破してやってきた人達だけなので、そういう手合いはアビゲイルさんで慣れているので大丈夫。

 やっている課題は算数です。ドリルです。十二人の敵がいて、八人斬れば残り何人でしょうかという問題です。答えは……六人? 全員斬れば関係ないし、必要なのかな? 

 

「これで授業は終わりだぜ」

 

 ちょうどチャイムが鳴ったのでドリルを閉じる。教科書も一度しか買ってもらえなかったし、その教科書も同級生に破り捨てられたからほとんど勉強できていない。

 

「終わった~!」

「じゃあ、さっそく……質問タイムだよ!」

 

 どうしようかと考えていると、すぐに囲まれました。警戒して仕込み刀を握りしめます。

 

「泉鏡花ちゃんでいいよね? 私、麗日お茶子」

「ウチは耳郎響香。同じ名前だけどよろしく」

 

 確かに同じ名前。まだ鏡花と言われて自分の事だと思い出している状況だけど、それでも同じ名前だとは思える。

 

「私は蛙吹梅雨。梅雨ちゃんって呼んでね」

「う~」

 

 沢山の人が私を囲んできて怖い。虐められた時の事が思いだされて身体が震えてきそうになる。それを無理矢理抑え込んで仕込み刀を握り込む。

 

「皆さん、泉さんが困っておられますわよ。それより、今日の予定ですが……なにかあるんですわよね?」

「搬入作業があるってご主人様がいって、ました」

「「「ご主人様!?」」」

「おいおい、ご主人様ってなんだよ!」

「そういえば、彼女、夜にみたことがある。男性をご主人様って呼んでた……」

「まじかよ……」

 

 夜に見た事……誰? わからない。

 警戒していると、扉が開いてご主人様と師匠が入ってきた。私はすぐに飛び上がって、天井を蹴ってご主人様に抱き着こうとしたら師匠が抜刀したのか、目の前に刀が迫ってくる。すぐに仕込み刀を引き抜いて防ぐ。

 

「「ええ!?」」

「和服美少女きたぁああああ!」

「って、斬りかかった!?」

「ふふふ、まだまだ甘いですね」

「残念、です」

 

 刀を仕舞ってからご主人様に抱き着くと頭を撫でてもらえる。そのまま頭を擦りつけて甘える。やっぱり、ご主人様の側が一番落ち着く。

 

「うわ、女の顔をしてる……」

「甘えん坊ですね」

「かまわないさ。それよりも、八百万さん」

「はっ、はいっ!」

「これから鏡花は校内を散策させて地理を覚えこませるので、少し連れていきます。代わりこちらの沖田を置いておきますのでご安心ください」

「そうです。沖田さんにお任せください~」

「わかりました」

「鏡花、マスターは弱いですからしっかりと守るのですよ」

「頑張る」

「まあ、他の人もいるから問題ないさ。むしろ鏡花の勉強だからな」

「しっかりと学ぶのですよ」

 

 頷いてから、ご主人様の手を引いて外にでる。校内を師匠がつけた印がある地図に従って見て回り、逃走経路の確認や装甲車の位置や地雷の位置などを確認していく。雄英高校の教室であるパワーローダー先生たちもついてきています。メイドさん達もすぐに敷地内を探索し、お掃除しだしています。彼女達が持つ清掃道具に偽装されたカートや鞄にはPDWや狙撃銃などが入っていたりする。

 

「森の中にも監視装置と防衛装置を設置しておくんだ。それと森の中は警戒が薄いと思ったら逆に厳しかったりするから気を付けるように」

「なるほど……」

 

 ご主人様と一緒に雄英高校の広い敷地を探索していく。いくつかに逃げ込むポイントを作ってあるので、それを覚えるように言われる。

 

 

 

 

 

「あの中年野郎っ、美少女にご主人様って!」

「犯罪じゃ……」

「確かにそれっぽい感じがする……」

「保護すべきなのでは……?」

「まあ、鏡花はマスターの彼女ですからねえ~」

「なっ!」

「犯罪でしょ!」

「いえ、大丈夫ですよ。マスターは結婚していませんし、不倫もくそもありません。鏡花の年齢も高校生なので問題ありません。二股三股は当たり前にしていますけどね~沖田さんもその一人ですし~」

「不潔です!」

「最低ね!」

「うらやましすぎるぞ!」

 

 

 

 

 

 

 アビゲイル

 

 

 

 

 

 ビルの屋上。時刻は深夜。私の目の前にはノリノリの魔法少女の恰好をした錬金術師と黒いワンピースにローブを着た錬金術師。そして、魔女の恰好をした私。つまり、三人の魔法少女がここにいる。

 

「時は来た!」

「……来たの……?」

「来たんじゃないかしら? 攻撃許可はもらってないけれど、包囲して監視部隊も狙撃部隊も配置してあるから……」

「兵器の実験許可はもらったんだ。なんら問題はない」

「そうよね! 楽しいカーニバルを始めましょう!」

 

 テンションが高いキャロルの言葉に答えてから、私も楽しく遊ぶ準備をする。アメリカでもいっぱい遊んだけれど、やっぱり遊ぶのは楽しいわ。

 

「……そんなことはないと思う……」

「ラヴィ~?」

「なんでもない」

「くっくっく、アビーやってくれ」

「任せて」

 

 別の場所に待機させていた裏稼業の人達の10tトラック。それを巨大な触手に複数投げさせる。投げる先には門を開いて空間転移させてヤクザのアジトの中にプレゼントするわ。

 投げた力のまま門を潜ったので、そのまま床を破壊して施設の奥へと入っていく。

 

「さあ、まずは一手だ。この程度で落ちてくれるなよ、日本のヤクザ共」

「……無理……」

「さあさあ、ラヴィーの素敵な玩具達の出陣よ!」

 

 10tトラックが壊れると、その中に詰め込まれたゾンビ共が動き出し、生きとし生ける者共に襲い掛かっていく。本物の死体から作られてゾンビと生きた状態でゾンビにした連中が暴れだす。当然、相手側は混乱したまま……なんてことはなく、襲撃に慣れているのか、すぐに立ち直って戦闘を開始していく。

 

「ゾンビ、思ったより強いわ」

「"個性"をもっているし、脳のリミッター解除してる……それに指揮官を置いてある……」

「指揮官は魔女かしら? 流石はラヴィーね!」

 

 魔女。魔法少女の慣れの果て。絶望した彼女達は災厄を振りまく(ヴィラン)へと変化していく。その過程で魔女の子供である使い魔も生み出され、どんどんヤクザさん達の敵が増えて襲い掛かっていく。

 

「どんどんいくぞ」

「任せて」

 

 日本のヤクザの支部にもゾンビ共を送り込んで皆殺しにしていく。ゾンビは殺されたらイブン・グハジの粉末をばら撒くようにされていて、殺されたヤクザ共の死体もゾンビ化する。さらに噛みついて体内にイブン・グハジの粉末が入ると魂が実態化して肉体と肉体がぶつかって変なゾンビが生まれる。つまり、ゲームでいう感染するみたいな感じになるわ。

 

「しかし、なかなかしぶといわね」

「……手ごわい……」

「流石に対応してくるか。だが、ヤクザなどなにするものぞ!」

 

 キャロルの指の間にはそれぞれ結晶体が握られていた。それを地面に叩き付けて割ると、中から鳥の形をした不思議な生物が現れた。

 

「流石に位相結界は再現できていないが、それでも兵力としては十分だ。行け、アルカノイズ。数十体のキャロルによる数百年の研鑽の結果をみせてやれ」

 

 飛び上がったアルカノイズ達は空から螺旋の槍みたいな姿になってヤクザの家に飛び込んでいく。

 しばらく様子をみると予定通り、相手側は迎撃に戦力を裂いている

 

「そろそろ潮時ね」

「そうだな。オレ達が動く時だ」

「……いってらっしゃい……気を付けて……」

「いってきま~す」

「ああ、任せろ」

 

 私が門を開いて目標が閉じ込められている部屋に移動する。しかし、そこには誰もいない。

 

「流石に優先順位はわきまえているか」

「そうみたいね。残念だわ」

「ならば狩り立てるとしよう」

「頑張ってお父様に褒めてもらうのだから、ちゃんと捕まえましょう」

「そうだな。お父様のために本気をだそうか。アリストテレス!」

 

 キャロルが四大元素の風を利用して巨大な竜巻を発生させ、地下施設の奥深くから全てを吹き飛ばして空にあげる。

 

「開いて、異界の門」

 

 私は大量の触手を呼び出して吹き飛ばされた人の形をした物を貫いていく。狙うのは一人の子供だけだ。他は容赦する必要はない。それに狙撃されているのか、敵がどんどん殺されている。

 

「獲物はかかったか?」

「ええ、巣穴からでてきたわ」

「では行こう」

 

 配置しておいた監視用の異界の物を基準にして門を二つ開いて二人で通る。すると更地になった裏路地にでてきた。そこでは小さな女の子を抱えている二人の男がいる。その二人は必死に狙撃を交わしている。地面を崩壊させたり、盛り上げさせても使われているのは対物ライフルで特別製なので貫通してくる。

 

「ちっ、どうなっている」

「おそらく、こちらの情報が筒抜けだったのでしょう。裏切り者がいたのかもしれません」

 

 残念ながら裏切り者なんていない。外見が同じで中身が別人なだけなのだから、裏切ってはいないわ。

 

「こんにちは、すぐに終わらせましょうね」

「残念ながらここまでだ。お前達はこの先にはいけない」

 

 私とキャロルが帽子をなおしながら、挟み撃ちで対峙する。キャロルの方は沢山の結晶体をばら撒いてアルカノイズを召喚していく。私も名状しがたき者達を呼び出していく。

 

「餓鬼か……」

「何者でしょうか?」

「こいつらは知っている。魔法少女とかいう変な連中だ。おそらく、大陸のマフィアだ」

「マフィア……」

「正解よ。ご褒美に投降を許してあげるわ」

「早く決めろよ」

「どうしますか?」

「決まっている。現状だと逃げられそうにない。大人しく降伏しよう」

「なら、手をあげてそれぞれ距離を取ってもらおう」

「わかった」

 

 二人がそのまま離れていく。流石に目的の子は降ろさないわね。

 

「その娘も降ろせ。どんな"個性"をもっているかわからないからな」

「それと"個性"を教えてもらおうか」

「貴方達は近付いて拘束なさい。下手な動きをしたら殺しなさい」

 

 名状しがたき者達を向かわせて、全員を拘束するために近付くと針の男が針を飛ばし、もう一人の男が地面を破壊する。その瞬間、対面のキャロルがニヤリと笑う。

 

「喰らえ」

 

 地面が半径数十メートルにわたって地下から現れた巨大生物、クジラの口に飲み込まれる。まるでパックマンっていう昔のゲームみたい。

 

「にしても土のクジラって……面白いわね」

「そうだろうそうだろう。ラヴィニアとの合作だ。普段は霊体化していて、必要な時に実態化する。後はアビー、頼む」

「任せて」

 

 内部に門を開いて潜り、中に入るとクジラの中は無数の死体に溢れていて、三人に襲い掛かっている。二人は女の子を守るように立っているので、彼女の下に門を開いて触手で絡め取ってもらっていく簡単なお仕事よ。

 

「ひぃっ!?」

「なっ!?」

「狙いはエリか! くっ!」

「それでは確かに頂戴したわ」

 

 エリと呼ばれた子は時を戻す"個性"を発動させたようだけれど、私にはきかない。ヨグ=ソトースは時や空間を操るのだから、私の力にそんな物は効かない。同系統の能力なのだから、使い慣れているほうが勝つのが当然なの。

 

「分解してやる!」

 

 周りを一気に分解するけれど、瞬時に再構成される。相手の能力は対象の分解・修復が可能らしいけれど、それって錬金術と同じなわけで……つまるところキャロルの得意分野なの。ラヴィニアはどちらかというと薬を作るほうだけれどね。

 

「時を止める? 分解する? 再構築する? そんなのは元から知っているの。なら、対策として天敵である私達が相手をするのは当然よね」

「ああ、まったくだ。ラヴィー、出番だ」

「……バジリスクの毒とアビーの眷属を……混ぜた粉末。人間には毒……あと……ボツリヌストキシンA……青酸カリの約682,000倍の威力」

 

 ラヴィーが注射器でクジラに注入すると、内部で毒のシャワーが発生したみたい。生きながら溶かされるみたいね。

 

「そいつはどうだ?」

 

 私が目標の幼い女の子を抱きながら話していると、キャロルが聞いてきた。

 

「気絶してるみたいよ?」

「貴様等、そこを動くな!」

「あら」

 

 周りをみれば沢山のヒーロー達が集まってきていたわ。流石にこれだけ派手に破壊したらヒーローだってでてくるわね。住宅地の一角が消し飛んだのだから当然ね。

 

「あいつ、どっかで見たことがあるな」

「……№2ヒーロー……エンデヴァー……」

「オールマイトが引退したから№1よ。それとオールマイトのサイドキックだった人もいるみたいね」

 

 日本に居なかったキャロルの言葉に情報収集をしっかりとしていたラヴィニアが古い情報を答える。それを私が訂正してあげる。

 

「ふむ。お披露目としてはいい機会だろう。どうだ?」

「そうね。お父様も喜んでくれるでしょう」

「ああ、お父様のために動くとしよう。ラヴィーもいいか?」

「……どうせ……いってもきかない……それに戦力はいっぱいある……」

「では、はじめよう」

「皆様、盛大に踊ってください。我が手に(しろがね)の鍵あり。虚無より顕れ、その指先で触れたもう。我が父なる神よ。薔薇の眠りを超え、いざ窮極の門へと至らん! 光殻湛えし虚樹(クリフォー・ライゾォム)っ!!」

 

 大量の門を開いて無数の名状しがたき者達を呼び寄せる。

 

「来い自動人形(オートスコアラー)

 

 キャロルも自らの人形とアルカノイズを大量に呼び出す。

 

「……こわい……」

 

 ラヴィーは私の後ろに隠れた。当然、友達だし、可愛いから許すわ。確保した女の子を任せたらいいしね。

 

「さあ、あーそーびーまーしょ!」

「盛大にな」

「……帰りたい……」

「ふざけおって……」

 

 私達の言葉にエンデヴァーさんが怒り心頭のように炎を噴き出します。

 

「と~りま~せと~りま~せ、ここはど~この街だ~」

「なんだ?」

「あ、やばい」

暗黒霧都(ロンドン1850年代)だ~」

 

 骨董品のようなランタンを持った無数の人影が現れ、周りに霧が充満してくる。何時の間にか街並みが幻術によって1850年代のロンドンへと変わっている。そして、ランタンからは強酸性のスモッグが発生してより周囲を霧で覆っていく。この霧は呼吸するだけで肺を焼き、目を開くだけで眼球を爛れさせる。一般人は数分以内で死亡するでしょう。

 

「このタイミングでくるか、ジャックめ!」

「……撤退っ、撤退よ! 巻き込まれて殺されるわ!」

「……帰ろ、絶対帰る……強化してあるから私達でも死ぬ……」

 

 幻影の“個性”によってロンドンの街を再現し、毒ガスの“個性”で生み出した強酸性の霧で覆いつくして方向感覚を迷わせる。霧を吹き飛ばさないと勝機がないけれど、次々と霧を発生させるランタンが投げ込まれてくる。それにジャミングも行われている。

 ジャック・ザ・リッパー、ただしい意味でわたしたちといっている彼女はお父様が無数の人をキャラクタークリエイトし、魔法少女が絶望して魔女に転じる時に生み出される大量のエネルギーを使うことで作り出した"複合個性"。暗黒霧都(ザ・ミスト)

 それに加えて解体聖母と呼ばれる"個性"や情報抹消という"個性"を持っている。私と同じく大量の人の"個性"のデータを集めて膨大なエネルギーを使うことで完成されている。故に裏切り者を解体する始末屋。特に女性に対しては天敵という性能を持つ。強酸性の毒物はこれ以外にもラヴィーによって様々な種類を使うことができる。例えば眠らせることもできたりする。

 

「敵味方識別信号とかないのか?」

「ある訳ないわ。あってもジャックは無視するから、止められるのはお父様だけよ」

「そうか。なら、目的は達したのだから撤退だ」

 

 結晶体を地面に叩き付けて転移を発動する。私達を一旦分解してまた別のところに再構築する技術。私のとは別の力。世界を解き明かしている錬金術師だからこそできる移動技術。

 

「あはっ♪ わたしたちはジャック・ザ・リッパー。よろしくね♪ それじゃあ、解体するよ♪」

 

 エンデヴァー達によって霧が吹き飛ばされるまで八分。その間に被害を受けた49人。その内の23人が身体をバラバラに解体されて肉片となり、残りは全身や身体の一部が爛れたりして緊急搬送される。それ以外にもアルカノイズや名状しがたき者達の死体が沢山転がるという地獄が現れました、ま~る

 

 

 

 

 

 

 

 



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6話

 緑谷出久

 

 

 

 八百万さんの護衛としてやってきた少女はあの夜に出会った少女だった。彼女の発言から、おそらくオールマイトが言っていた救えなかった少女の一人なのだろう。ヒーローの飽和状態のこの時代というのにトップヒーローであるオールマイトですら全てを救えないのだ。

 

「ヒーロー嫌いってのは……」

「鏡花はヒーローの両親に虐待されてたんですよね~」

「嘘だろ!」

「ヒーローが虐待なんて……」

「事実ですよ~? まさか、ヒーロー全てが聖人君子だと思っているのですか? ヒーローも人ですから、イライラが募って発散するのに子供を虐待したというだけでしょう。そして、彼女は飛び降り自殺しようとしたところをマスターに拾われ、新しく素晴らしい生活をおくらせてもらえました。それはもう彼女にとって幸せに暮らしているといっていいでしょう。つまり、彼女にとってマスターは白馬に乗った王子様です。さて、ヒーローの卵さん。貴方達は彼女の目を覚まさせることができますか?」

「できるに決まって……」

「そうですか。まあ、頑張ってください」

「それでいいの? あんた達からしたら困るんじゃ……」

「勘違いしているようですが、マスターは自分から離れることを止めてはいませんよ。私もマスターから離れて別の人と結婚しましたしね。それとご主人様というのはメイドというのも理由の一つです。雄英高校にもこれから警備のために多数のメイドが配属されます。ああ、あといっておきますが……鏡花は見た目通りの年齢ではありません。マスターの能力でアンチエイジングをすればどんな老いた老婆でも美女や美少女に早変わりです」

「なんですと!」

「それってもしかしてナイスバストにもできますか!」

「可能です! 実際に豊満な我がままボディーを手に入れたお金持ちもいますから」

「ウチ、胸が! 胸が欲しいです!」

「ワンカップ格安のたった10万円からですね」

「だす! 借金してでも手にしてやる!」

「落ち着いてください!」

 

 女性にとって胸は大事なことなのだろう。どちらにしろ、彼女を助けることがヒーローの仕事だろう。

 

 

 

 

 鏡花

 

 

 

 

「配置は終わったけれど、よく対空迎撃装置とか装甲車の許可がおりたわね」

「当然だ。オール・フォー・ワンの配下にはジャイアントレディーのような巨大な存在もいる。ミサイルといっても殺し切れない相手だ。そもそも本当に鍛えぬいた"個性"を持つ連中に旧時代の兵器などたいして効かないさ」

「それもそうね。あくまでもミサイルとかって、旧時代の人間を相手にするために作られている物だし。対物ライフルですら硬化した連中に防がれる時があるし」

 

 シノンさんがこちらにやってきて報告している。私は聞いているだけ。

 

「鏡花なら、ミサイルが降ってきたらどうする?」

「夜叉白雪で斬ります」

「正解。まあ、知覚できたらの話だろうが」

「みえないところからの攻撃なら問題ないわ」

「逆に言うと見せびらかす防衛装置は真っ先に破壊されるから不利だ。そして、対空ミサイルも本物じゃない。捕獲用につくられた電磁ネットを搭載している。銃もトップヒーロークラスには効かないしな。ここにいる先生は跳弾とか使ってあててくるが……」

「弱い人にはきく?」

「そうだ。下手な連中なら楽勝だ。まあ、鏡花は自分の仕事を頑張ればいい」

 

 ご主人様が耳元で囁いてくる。私の仕事は護衛しつつ雄英高校の情報を流せばいいとのこと。特に緑谷出久について。彼に近付くように頼まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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