岸辺露伴は戻らない (王者スライム)
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Ex.エピソード 『平等町』

頑張って書いたけど短いです。それでも良いって方はどうぞ。


「今回は本当に運が良かった。だって、足の骨折だけですんだんだから。手に異常が無ければ漫画は描けるからね。ああ、運が良かったというのは、別に車にひかれて足の骨折だけですんだって話じゃあない。それだけであの場所から逃げ出せたって事だ……まあ、そんな事言ったって分からないとは思うが、僕も一回凡人になりかけてしまった……だから車にひかれた事じゃあない。まあ、この話は今から話そう」

 

 

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僕はその時、読み切りの話を考えていたんだ。編集部から「できれば、アイドルに関連した話にしてくれないかい?」と頼まれてね。別に断る理由も無いし、僕はそのままその話を引き受けた訳だが……いかんせん僕は全くアイドルという者に興味が無かった。

 

一応、他の漫画家が描いたアイドル系の物を見ては見たんだが……どれも平凡な女性がトップアイドルに成り上がる話ばかり。まあ、僕の選ぶセンスが悪かっただけかもしれないが……まあ、僕はそんな周りがもう既に描いてる話なんて書きたく無かったから別の話を考えていた訳なんだがね。偶然その場所の話を聞いたんだ。

 

K県B市……その場所自体に目立つ特産品があるわけでも、そこ出身のトップアイドルとかプロのスポーツ選手とかが居るわけでもない。別に最近何か新しい事をやってたりもしていない。全く、特徴の無い場所……それが僕の思った感想だった。

 

だが、僕が聞いた噂はアイドルの話。昔人気のあった元アイドルがその市で暮らしている。そんな噂を聞いたんだ。これはチャンスだって思ったね。周りが凡人からトップアイドルになる物ばかり描いてるなら、自分はその逆……つまりトップアイドルからただの凡人に成り下がる物を描こうと思ったんだ。  

 

僕は早速、その元アイドルに電話して取材を頼んでみたんだ。向こうは余り乗り気じゃあ無かったみたいだが……何度もお願いしてうんと言わせてみせた。そして、許可も、もらった所で、次の日にその場所に行き、待ち合わせの駅のカフェで取材を開始した。

 

僕が少し、雑誌を読みながら待っているとその元アイドルはきっかり時間通りにやって来た。

 

「あの……あんたが岸辺露伴さんであってるか?」

 

彼の姿は完全な私服姿。当然、今は凡人なんだから着飾る必要は無いだろうが……彼のファッションは良くも悪くもない感じで、いかにも平凡……そう言わざるをえなかった。

 

「ああ、僕が岸辺露伴だ。早速だが、取材させてもらってもいいか?」

「待ってくれ、何か飲み物を注文してからで良いだろ?そっちだって注文しているんだからな」

 

彼はそう言うとウェイトレスを呼び、何か注文した後「飲み物が来るまで取材は待ってくれ。」と言った。そこまで飲み物にこだわる必要があるのか疑問には思ったが、直ぐに彼が頼んだ飲み物が来たので取材を始める事にした。

 

「さて、早速取材に移らせて貰うが……君のアイドルからの転落はどこからなんだ?」

「行きなりズバッと切って来るな……まあ、良いだろう。知っての通り私は前はまあまあ人気のアイドルだった。レギュラー番組だってあったし、雑誌にも何回も出ていた……しかし、この町に移り住んでから私の人気は右下がりになっていったんだ」

「この町に移り住んでからだって?偶然じゃあ無いのか?」

「確かに偶然かもしれない……だが、私がこの町に移り住んでから私の人気が下がった事は間違い無い。偶然もタイミングが良すぎれば必然になりえるんですよ」

 

彼は自分の人気が下がった理由がこの町に移り住んだからと本気で信じているようだった。まあ、誰も起こってしまった事を自分のせいにはしたくは無い物だろう。偶然何かに責任を擦り付けれそうだったから擦り付けた。彼はそういう事をしているのだと思っていた。

 

「この町に移り住んでからの私はさんざんだった。まず、歌が下手になったし踊ることも満足に出来なくなった。それのせいでレギュラー番組から降格になったし、雑誌の依頼も来なくなった。そう、この町に移り住んでからだ」

「だったら尚更分からないね。なんで自分の人気が下がったのがこの町に移り住んだからと考えたんだったらなんでこの町から引っ越さなかったんだ?」 

「その時はこの町に移り住んだ事で人気が下がったとは思って無かった。それに良い場所なんだ。物件も、まあまあ安ければ事故もない。自然だってある。アイドルという職業を失ってもすぐに仕事が見つかった」  

「この町自体は悪く無いということか……。分かった。取材はこれでOKだ」 

「ん?これだけで良いのか?」

「君の転落した理由もまあまあ分かった。それに良いストーリーも思い付いた訳だ。それを、早速描いて置きたくてね」

 

事実、僕の右腕がペンを持ってどこかにこのストーリーを描こうとしている。だが、ここはカフェ。描くための白い紙など持ち込んでは来ていない。まあ、メモ張はあるにはあるんだが……それを描くのは取材が終わってからだ。

 

「まあ、もう取材終了ならそれで良い。最後に一つ言っておくが……この町は良い町だ。少し位観察していってくれ。良い場所だと分かる筈だから。じゃあな」  

 

そう言って彼はそのままレジで代金を払い、外の車に乗ってどこかへ行ってしまった……まあ、凡人に落ちた元アイドルが暮らす場所のモデルとして見てみるのも良いだろう。そう思い僕は彼の言った通りにこの町を観察する事にしたんだ。

 

当然、飲み物代を払い外に出た僕はそのまま適当に歩き始めた。特に宛もなく。そこら辺の普通の町並みを観察したいと思ったんだが……あまりにも普通だった。巨大なデパートがあるかと思えば、小さいスーパーもあり、住宅街が広がっていたりもする。

 

まさに特徴の無い町。そう言っても過言では無い、そう思ったほどだ。適当に横を見るとそこに不動産があり、家の値段とかを見ておこうかな……そう気軽な感じで見たわけだが……そこでこの町の異常さに気づいた。

 

「おいおい待て待て……()()()()()が同じ広さだと⁉いや、それだけじゃあ無いな。場所……駅の近さによって多少値段は変わってるが()()もほぼ同じだ。こんなのあり得るのか⁉」

 

普通ならあり得ないそんな状況に僕は身を震わせていた。

 

「【ヘブンズ・ドアー】‼周りの人達を本にしろ‼」

 

そして僕はその人達の本を読んでいく。

 

「山辺 和子 37歳 元芸人で今はサラリーマン。芸人の時はまあまあ、人気だったらしいが今は単なるサラリーマン。月収30万か。こっちは和司 弘 22歳 元ニートで今は警察官。月収が30万?公務員なのにサラリーマンと給料が同じなんてあるのか?で、こっちは山壁 透。 55歳 元ホームレスの今はカフェの店長。月収は……30万だと?まさかこの町に住んでるやつらは月収すら同じだと言うのか⁉」

 

僕が更に本を読み漁ろうとすると……突然本が閉じて行き、本にした人達が立ち上がりそのまま何処かに行こうとする。

 

「なっ、【ヘブンズ・ドアー】の能力が解けただと⁉なら、もう一度だ‼【ヘブンズ・ドアー】‼」

 

だが、【ヘブンズ・ドアー】は出て来なかった。何度も叫んだが【ヘブンズ・ドアー】が出てくる気配は無い。

 

「おいおい、まさか僕も凡人になりかけて居るのか⁉くっ、こんな町早くでなければ……さっき思い付いた話も……待て、さっき思い付いた話は一体どんなんだったんだ?」

 

左手にメモ張を持ち、右手にペンを持つ。しかし、右手が動く事は無い。つまり……僕自身が忘れてしまったと言うことだろう。

 

「そうか、さっきの奴らもこの町に来てから仕事が変わっていた……恐らくここは全てを平等にするんだ。バイトと正社員で給料の差があろうが、正社員での給料の差は無いだろう。みんなこの町に来たから変わった……いや、平等にさせられたという訳か……クソッ‼どうすればいいんだ⁉このままじゃあただの凡人になっちまう⁉今から出ても間に合わない‼何も作品が、思いつかなくなる‼」

 

話を新しく作ろうとする。しかし、全く思いつか無かった。僕は焦りに焦り、錯乱してしまったのだろう。気づけば車道に出ていて、いかにも普通そうな車にひかれ、僕は意識を失ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん?ここは病院か?」

 

僕は目が覚めると病院に、入院していた。

 

「……新しい話が思い浮かんで来るぞ。早くペンを動かしたくてたまらないな。だが、僕は凡人になりかけた筈……まさか僕が完全に凡人になる前に車にひかれて、怪我をしたから平等ではないと判断されたのか?とりあえず【ヘブンズ・ドアー】‼」

 

そして、僕の右隣に【ヘブンズ・ドアー】が出てきた。スタンドも普通に使えるらしい。

 

「しかし、B市……あそこは一体なんなんだ?一体誰がなんのためにあんな町にしているんだ?」

 

そんな疑問が頭に浮かぶ。しかし、また行ってしまえば今度こそ凡人になりかねない。僕はあの町の事を頭の片隅に入れるだけにしておこうと思った。

 

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「これが今回体験した話だよ……何?僕をひいた車に乗っていた人はどうなったのかって?そこのテレビを見てみろよ。久しぶりに写ってるぜ」

 

テレビには一度人気が無くなって、普通の仕事をしていた筈の元アイドル……アイドルがそこに写っていた。

 

 

 

 

 

 

『平等町』……終わり




岸辺露伴感がほぼねぇなぁ……多分続かない。


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