惑星タルカスと惑星サイレン(pixivにも投稿しています) (トーマス・ライカー)
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外宇宙へ・・承前

地球は還流磁場磁束帯(D層)が地殻付近にまで浮上し、全地球的に地殻変動が活発化し、全地球的に火山活動も活発化し、最終的に地球はマグマオーシャンに満たされ、焔の球となった。人類はそうなる以前に太陽系内惑星領域から外惑星領域に掛けて拡散して居住していた。宇宙での人口環境の中での生活に疲れた人類は、地球型の第二の故郷となる惑星を求め始めた。超光速航法を開発して獲得した人類は外宇宙に進出を始める。


地球は焔の球だった。マグマオーシャンに満たされていた。

その状態になってから、もう470年以上が経過している。

どのような予測に於いても、今後一万年はこの状態のままであろうと示されていた。

人々は月のラグランジュポイントと、地球のラグランジュポイントと、火星のラグランジュポイントと、木星のラグランジュポイントに、スペースコロニーを建設して分かれて住んでいた。

スペースコロニーを建設するのに必要な鉄の資材・資源は、地球が焔に満たされる前に出来得る限り軌道空間に運び出した。

人々が地球を離れた当初、技術的且つ経済的な理由から月軌道上のラグランジュポイントに住んでいたが、やがて太陽系内惑星領域から外惑星領域へと拡散していった。

地球が火の玉になって、100年ほどが経過した当りで、火の玉になる前の地球の記憶を持っていた人々は、総て退場した。だが、記録は残っていた。

250年が経過した当りで、人々はコロニーの中での生活に疲れ始めていた。

300年が経過する頃から、第2の地球を探して移住しようと言う意識・意志が芽吹き、非政治的な運動としても、政治的な運動としても組織され始めるようになった。

外宇宙の恒星系や惑星系を対象とした観測は、一つの観測機を100万人が居住するスペースコロニー並みの大きさにまでスケールアップさせて継続されていたが、観測機を外宇宙に送り出す事は実施されていなかった。

地球が焔の球となって322年目に、太陽系外から大きさに於いても質量に於いても火星の衛星ダイモスと同程度の岩塊が侵入してきた。

問題はその岩塊が反物質であった事で、観測・調査の段階で多大な犠牲を払ったが、何とか土星を周回する軌道にその反物質岩塊を乗せる事に成功した。

正物質と反物質による対消滅反応から、強力なエネルギーが得られるようになり、太陽系内人類社会のエネルギー問題は解決したが、超光速航行技術の開発研究も進展する事になった。

木星圏の宙域で建設された超大規模な粒子加速器を使用して、超重粒子の加速・衝突の実験が行われていたが、その実験の過程で稀に、マイクロブラックホールが生成される事もあった。

マイクロブラックホールの特性・特質が様々に観測・調査され、マイクロブラックホールに於ける様々な分野での基礎研究が進められて、データが蓄積されていった。

その中の一つに、マイクロブラックホールに電磁気的な旋回運動をさせると、その旋回面に対して90°での一方位に於いて、重力場が発生する、と言うものがあった。

遠心力以外では初めての人工重力場の発生と言う事で、様々な方面・分野での利用が見込めるのではないかと考えられた。

例えば、宇宙船のような航行船体に、マグネトロン・サーキットコイルにマイクロブラックホールを封じ込めた(マイクロブラックホール・モーター【M B H M】)ものを取り付け(組み込ん)て、モーターを駆動させれば、その船を推進させて進行させたい方位に、重力場を発生させられる。

モーターの回転数(マイクロブラックホールの回転数)を上げれば、進行方位に発生させた実体の無い人工重力場の重力を、いくらでも強められる。

船体は重力場に引き寄せられ、重力加速度が掛かって加速する。

モーターの回転数を高速に維持し続ければ、船体には強い重力加速度が掛かり続けて加速が続き、ついには光速を超えられるのではないか・・?・・。

高重力加速度・重力場駆動転位航法の研究と実証実験が始められる事になった。

その為には素粒子レベルよりも大きい、原子核レベルの大きさのマイクロブラックホールが必要になる事が判った。

少量の反物質をマグネトロン・コイルカプセルに封じ込めた爆縮炉駆動装置を、適当な大きさの岩塊の表面に数個取り付けて、爆縮炉が完成する。

同一のタイミングで反物質コイルカプセルを起動させ、対消滅爆圧の方位とその集中をコントロールして爆縮を引き起こさせる。

爆縮ポイントで誕生した原子核レベルの大きさのマイクロブラックホールを見失わないように、マグネトロン・サーキットコイルに封じ込めて、マイクロブラックホールモーター【M B H M】が完成する。

【M B H M】が組み込まれた、【H S T C】ハイパー・スペース・テストシップが建造され、無人自動航行試験が開始された。

幾つかの紆余曲折と多少の犠牲も払ったが、有人での高重力加速度・重力場駆動転位航法は確立され、実用化された。338年目の事だった。

 




地球人類は太陽系から半径300光年の範囲で、外宇宙に進出し探査したが、『これ』と言う地球型の惑星は発見できなかった。新しい超光速航法を開発して確立した人類は、新型探査船を数隻建造して送り出した。そのうちの一隻が、ある奇妙な惑星系の宙域に到達した。


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大進出時代・・新航法開発・・邂逅(承前)

人類は大進出時代に入ったが、半径300光年の範囲内で、永住し得る地球型の惑星は発見できなかったし、知的生命体との接触も無かった。
新超光速航法を開発して探査範囲を拡大した。
H S S C 218が、人跡未踏の惑星系に入った。


350年目に掛けて、H S探査船は30隻が建造され、外宇宙探査に送り出された。

大進出時代の始まりだった。

342年目に、ほぼ同じ大きさで2個目の反物質岩塊が太陽系に侵入してきた。

今回は初回時ほどには苦労せずに、土星を周回する軌道に乗せる事が出来た。

360年目が終るまでに、雑駁ながら太陽系から半径300光年の宙域で地球型惑星の探査が行われたが、人類が永住するのに適していると判定できる惑星は発見できなかった。

探査範囲拡大の方針は出されたが、大進出当初の頃の積極性は、その動きからは観て採れなかった。外宇宙探査にも、人々は疲れ始めていた。

大進出当初には期待されていた外宇宙知的生命体とのファーストコンタクトが無かったことも、人々の意欲にブレーキを掛ける要因の一つになっていた。

さて、重力場が駆動転位してH S(ハイパースペース)に入ると、その先はいくらM B H Mの回転数を上げても、スピードは上げられない。

その改善策として亜空間航法の研究開発が、363年目から開始された。

危険ではあるが相当量の反物質を探査船に積み込み、対消滅反応炉の中で正物質と反応させ、急激に発生する莫大な対消滅反応エネルギーをそのまま推進力として噴射し、船体を急激・急速に加速するのと同時にM B H Mの回転数を上げると、船首前方に発生する慣性重力場と船体との中間で亜空間が開く事が判った。

そのまま船体を亜空間に入らせ(亜空間転移させ)ると、亜空間の中でならモーターの回転数を上げればそれに応じて加速が効く事も判った。

実験が繰り返されて犠牲も払ったが、372年目の半ばには重力場次元駆動転移航法が実用化された。

新型の探査船はH S S C(ハイパー・サプスペース・シップ)として区分され、20隻が建造された。378年目の事だった。

そして472年目の5月半ばに、H S S C218が、ある恒星系に到達した。

物語は、これより始まることになる。

「・・あっ船長、お早うございます・・・」

「・・おはよう・・いつも早いな・・・大してやる事も無いだろう・・?・・」

「・・そんなことありませんよ・・このタイプの船は初めてなんで新鮮です・・」

私はトマク・ラオ・シン・・このH S S C218のキャプテンだ。

(ドリンクコーナー)に言って、アイスコーヒーを出して貰った。

今話した彼は、キミル・ユマ・ゼタス・・フォース・ナビゲーションコーディネーターだ。

研修期間が明けて2ヶ月経ったばかりの新人だ・・・張り切ってる。

一口飲んで腕時計を見る・・予定時刻まで5分だ。

シートに着くと続けて6人が入ってきた・・中の1人と眼が合ったので、お互いに左手を軽く挙げた。

彼はイアン・サラッド・・メイン・パイロットだ。サード・パイロットのラフ・ロモロからpadを受け取って、代わりにパイロットシートに着いた。

二口目を飲んでカップをホルダーに置いたところで・・・「・・遅くなりました・・」

振り向くといつの間にか副長が座っていた。

「・・いや・・まだ3分ある・・・」

彼女は、ミレーナ・ファルチ・・ファースト・オフィサーとしてのキャリアは6年目になるベテランだ・・・本船の副長としては18ヶ月目に入る・・・次の人事では間違いなくキャプテンだ・・・。

「・・全乗員に通達・・こちらはチーフ・エンジニア・・間もなく予定時刻です・・全員着席してベルト着用・・・減速スタンバイ・・・」

セバット・ボスカ機関部長が全船に通達した。

残り2分と少し・・アイスコーヒーの味を楽しんで過ごすのにはちょうど良い・・。

ちょうど飲み終わったくらいの頃合いで、警戒警報が響いた・・。

「・・10秒前です・・モーター回転数を4ヘ・・サブ・スペースアウト・・・更に回転数を1へ・・・ハイパー・スペースアウト・・・慣性重力場消失・・・通常空間に復帰しました・・・」

「・・お見事、機関部長・・続けて全員で全船・全システムのフルチェックを頼む・・」

「・・船郭、船体構造異常なし・・」「・・推進システム、異常なし・・」

「・・メインパワー、補助パワー、動力系異常なし・・」

「・・メイン・コンピューター、異常なし・・」「・・循環系、生命維持システム、異常なし・・」「・・センサーシステム、異常なし・・」「・・マイクロブラックホールモーター、異常なし・・」「・・対消滅反応炉、異常なし・・」「・・ノーマルドライヴ、異常なし・・」「・・全船・全システム、異常ありません・・」

「・・ご苦労さん・・・それじゃ・・全天座標確認・・」

「・・了解・・アルファ・クアドラント・・357A J269セクター・・・697マーク214・・目標恒星系の外縁部に侵入しています・・・目標恒星は、方位220マーク137、距離・・3億8千8百40万km・・」

「・・目標恒星に向けてコースをセット・・ノーマルドライヴ始動・・ファーストスピードで発進!・・続けて惑星探査行動に入る・・・」     「・・了解・・」

「・・目標恒星の近傍に惑星系を二つ探知しました・・・しかし、これは・・・・・」

「・・?・どうした・・?・・」

「・・奇妙です・・・二つの惑星は、物凄く巨大です・・・しかし、比較して恒星は・・明るさは強いものの・・二つの巨大惑星を引き留めておけるだけの重力がありません・・・」

「・・?・・二つの惑星の軌道は・・?・・」

「・・?・・こ、これは・・二つの惑星の軌道は・・・全く同一です・・・恒星を挟んで・・・いや・・中心点として、点対称に・・いつも反対側にいます・・・恒星の光が強いので・・・一方の惑星からもう一方の惑星を・・肉眼では確認できない筈です・・この惑星系は、一つです・・・共通の重心の周りを・・お互いに廻り続ける・・共通重心連星です・・・」

「・・そして、その共通重心に・・あの恒星がある・・」

「・・そうです・・しかもあの惑星は二つとも、ガス状惑星ではありません・・あれ程に巨大なのに、岩石惑星なのです・・・」

「・・大きさの概略を出してくれ・・・」  

「・・はい・・大きさは二つとも凡そ・・?!木星の550倍?!・・そんなバカな!!?・・・」

「・・岩石惑星がどうしてそれ程の大きさを維持できるんだ?・・たちまち重力崩壊を起こしてしまうだろうし・・・そもそもそんな大きさにまで成長できない筈だ・・・」

「・・うーん・・謎ですね・・もっと接近して様々な観測を精密に行い・・データを取得しないと・・・」      「・・惑星に大気はあるのか?・・」

「・・大気の反応はありますが・・まだ遠いので、組成までは何とも・・・」

「・・衛星の反応はあるのかな・・?・・」

「・・ありますね・・双方とも少しはっきりしない部分はありますが・・30個弱の衛星があるようです・・・中には大気と豊富な水の存在を示す岩石質の衛星もあります・・・」

「・・何れにしろ、もっと接近して観測しないと、詳しい事は判りませんね・・・」

「・・人工的・人為的な電磁波は検知できるか・・?・・」

「・・はい・・人為的なパターンを含むと観られる、電磁波を検知しました・・・これがレーダー探査波か、通信波か、データストリームなのかの判別は、まだできません・・・もっと接近して観測する必要があります・・・」

「・・よし分かった・・ノーマルドライヴ停止・・船首逆噴射10秒・・減速してくれ・・・副長・・地球型惑星探査推進本部に宛てて・・ここの位置情報を添付の上、第一報を頼む・・・『地球型と観られる【天体】を発見した』で良い・・・直ぐに問い合わせが来るだろう・・・それじゃあ、メインスタッフは全員、私の控室に集まってくれ・・・ミーティングを開く・・・」

そう言って、立ち上がった。

 




メインスタッフによるミーティングが始まる。

若干、補足しました。


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第一次探査航行(承前)

人為的なパターンを含むと観られる電磁波を探知し、その発信源と観られる地球型と思しき衛星に向けて針路を定めた。


副長は自分のコンソールに向き直って、パネルの上で指を走らせ始めた。

「・・!ちょっと待って下さい!・・」

メイン・センサーオペレーターのモーレイ・カラムが声を挙げた。

「・・どうした・・?・・」

「・・あの二つの巨大惑星ですが・・両方とも火星並みの大きさの衛星が・・一番遠い軌道を廻っていますが・・両方とも反物質の衛星です・・・」

「・・確かだな・・?・・」  「・・はい・・」

「・・一番遠い軌道だから・・今まで対消滅破局が起きなかった・・んだな・・」

「・・まあとにかくミーティングだ・・集まってくれ・・」

また(ドリンクコーナー)に言ってジンジャーエールを出して貰って、船長の控室に入った。自分のデスクには座らずにソファーセットの隅に座った。

直ぐにメンバーが入ってきて思い思いに座る。

セバット・ボスカ機関部長・・・メイン・センサーオペレーター、モーレイ・カラム・・・メイン・パイロット、イアン・サラッド・・・ファースト・ナビゲーションコーディネーター、コリン・ユーリィ・・・保安部長、アレジ・ダ・ナシ・・・ドクター、ドゥペル・モノ・コット・・・チーフ・サイエンスオフィサー、シーモン・アヤラ・・・そして最後に、副長のミレーナ・ファルチが入って来て座った。

「・・よし、始めよう・・・協議して決めたいのは、この船に於ける今後の基本方針だ・・つまり、第一次探査を続行するのか・・すっぱり辞めて次の星系に向かうのか・・だ・・考慮すべき要点を出していこう・・・勿論、微妙な差異はあるだろうが・・地球型と観られる【天体】を複数発見した・・・衛星の方だがね・・巨大惑星は、現時点では除外して良いだろう・・情報が少なすぎるし、謎も多い・・・除外しても、3個から4個はあると観て良いだろう・・・だが、先住民がいる・・・送受信のできる、技術レベルにはあるようだ・・・詳細は、まだ不明だがね・・・これが普通のサイズの惑星だったら結論は単純だ・・・もう次の星系に向って出発してる・・・それだけ・・・この惑星系の巨大な規模は・・それだけでも私には魅力だな・・・つまり、先住民に気付かれずに移住・入植する事も不可能ではないかも知れない・・・まあ、かなりハイリスクではあるな・・・また・・移住・入植までは考えなくても・・補給地としては充分に利用できると思う・・・何と言っても火星並みの大きさの反物質の塊が二つと言うのは魅力だな・・・もう少し第一次探査を続行して各種のデータを得てから、またミーティングを開くのもアリだろう・・・他にはあるかな・・?・・」

「・・私は、もう少し調・探査を続行するべきだと思います・・・この惑星系に対しての、今後の基本方針を決定するには・・まだ早いですね・・」

ボスカ機関部長が、言葉を選んで言った。

「・・私も時期尚早だと思いますね・・・もう少し調べて検討するべきです・・」

シーモン・アヤラも肯いて言う。

「・・私も、もっと調べたいですね・・・自分の興味本位の部分が大きいですけれども・・・」

モーレイ・カラムが、率直に言う。

「・・かつての地球上での・・2050年代当時の、レーダー探査波やレーザーセンサーでしたら・・回避できるステルス遮蔽機能が、こちらにはあります・・・もう少し接近して調査しても大丈夫でしょう・・・」  アレジ・ダ・ナシ保安部長も請け合った。

「・・今のところ、あの恒星からも周辺の宙域からも、人体に有害な放射線は検出されていないね・・・」 ドクターも言った。

イアン・サラッドとコリン・ユーリィは、私の眼を見返して肯いた。

「・・君はどう思う・・?・・」 副長の顔を見遣って訊いた。

「・・私もまだ調査を続行するべきだと思います・・・それに本船なら衛星の間を縫って巨大惑星にも接近できるはずです・・・過激な意見かも知れませんが・・・」

「・・過激とまでは言わないが・・・大胆だなとは思うね・・・」

「・・それにこの船なら、大気圏内でも航行できますよ・・・パイロットとしては、一度やってみたいですね・・・」   そう言ってイアンは、悪戯っぽく笑った。

「・・よし、調・探査続行する・・第2警戒配置・・ノーマルドライヴ始動、最微速発進・・先ず電磁波の発信源を特定しよう・・・当面の目標は・・手前に見える巨大惑星だ・・接近してみよう・・・」

そう言って立ち上がり、ジンジャーエールを一口飲んだ。

控室から出て自分のシートに着く。ブリッジが動き始める・・・・。

「・・ノーマルドライヴ始動・・定格起動・・」

「・・最微速発進・・時速250km・・・」

「・・対電磁波探査に入ってくれ・・」   「・・了解・・」

「・・人為的パターンを含むと観られる電磁波を探知しました・・・」

「・・分析して種別の特定と、発信源探査に入ってくれ・・」  「・・了解・・」

「・・第一次分析、終了しました・・・まだ距離がある上に総じて出力が弱いので、曖昧な部分もありますが・・最も出力が強いのはやはり、レーダー探査波です・・・」

「・・遮蔽が必要かな、保安部長・・?・・」

「・・いや、この出力なら、まだ大丈夫です・・探査波のパターンをこちらでも分析しましたが・・あまり高度なものでもないようですので・・捉えられたとこちらで判定できた時点で遮蔽を掛けても、充分に間に合うでしょう・・・」

「・・そうか・・・他の電磁波については・・?・・」

「・・出力の強い順になりますが・・映像や音声の通信波・・ネットワークデータストリームと・・一般の放送電波ですね・・・」

「・・それで、発信源は判ったかな・・?・・」

「・・右から2番目に見える衛星からですね・・・地球型の天体であろうと見受けられますが・・・正確な方位と距離の測定は・・・まだ難しいです・・・」

「・・分かった・・よし、その衛星に接近しよう・・針路設定・・当該衛星に向かう・・ファーストスピードまで加速・・目標は標準周回軌道・・・他の電磁波を精密に分析して、使用されている言語の解析作業に入ってくれ・・・」  「・・了解・・」

ジンジャーエールを飲み干してグラスを片付けると、軽い加速度を感じた。座り直したタイミングで副長が報告した。

「・・船長・・本部から返信が入りました・・短いですが・・・」

「・・何と言ってきた・・?・・」  「・・詳細を送信せよと・・・」

「・・そうか・・現状で判っている事実をまとめて報告してくれ・・・予断させるような予想は入れなくて良いから・・・」   「・・分かりました・・」

 



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グリーン・サテライト1(GS1)に対して、接近しつつの調・探査1

副長はまた自分のコンソールに向った。

「・・船長・・目標当該衛星まで距離・・187万8千6百kmです・・規模は地球と比較して・・96%程です・・重力はほぼ1Gと言う事でも良いでしょう・・陸地と海の比率は・・65対35ですが・・大陸と呼べるほどの陸地は無いようですね・・・大気組成は・・1970年代の地球の大気に・・よく似ています・・孫衛星と言えば良いんでしょうか・・?・・ありますね・・ざっと見た限りでは月によく似ています・・・距離は、126万4千kmです・・・相対的に、接近中です・・・規模は月と比較して86%程ですね・・・それでその孫衛星の表面になんですが・・・人工の建造物が認められます・・・まあいわゆる月面基地と言っても良いでしょう・・あります・・検知されたレーダー探査波は・・この基地からのものです・・ですが、出力は強くないので・・40万kmまで接近しても・・捉えられるような事は無いでしょう・・・それと・・目標当該衛星の圏内で飛び交っている電波を解析中ですが・・・既に7種類の言語を確認しています・・・多民族社会のようですね・・・」

モーレイ・カラムがコーヒーカップを左手に、モニター上のセンサーデータをスクロールさせながら説明した。

「・・分かった・・ありがとう・・コース・速度はこのままでいこう・・・各言語の解析と翻訳作業を別系統で始めてくれ・・・これにはメインコンピューター内のワンブロックを割り当てても良いから・・・」   「・・分かりました・・・」

副長が立ち上がって来た。送信が終ったようだ。

「・・キャプテン・・送信終了しました・・」

「・・ああ・・副長、補給物資の残量から、我々はここでの調・探査をどのくらい続行できるだろうか・・?・・ここは恒星系として大きくはないが、2つの巨大惑星を含めれば居住可能と観られる天体は、7.8個は発見できるだろう・・・総てを充分に調査するには、もう物資が足りないのは明らかだからね・・・」

「・・そうですね・・・調べて報告します・・・」

「・・頼む・・・今送信した第2報が、推進本部のお偉方の興味をかなり引くだろう・・・もしかしたら本部内がかなり色めき立つかも知れない・・・そうなれば、第2陣の調査船か調査団が編成されて・・ここに派遣される事になるかもな・・・地球圏でのュースネットのフォローも頼む・・・もしかしたらどこかがスッパ抜くかもな・・・」

「・・分かりました・・・」

「・・キャプテン・・天体測定ラボにお願いします・・・」

シーモン・アヤラからコールが入った。

「・・すぐ行く・・」それだけ答えて左手で副長によろしくと合図をすると、ブリッジを出た・・・・・。ラボに入ると、既に全システムがフルに稼働していた。

「・・報告してくれ・・・」

「・・ああ、キャプテン・・レベル2でのセンサースキャンが現在進行中です・・・現在接近中の巨大惑星系を・・取り巻く衛星の周回軌道高度のエリアごとにまとめました・・・低高度軌道エリア・・・中高度軌道エリア・・・高高度軌道エリア・・・超高高度軌道エリア・・です・・・超高高度軌道エリアに属しているのは、反物質衛星だけです・・・現在接近中の地球型天体と観られる衛星は・・・高高度軌道エリアに属するもので・・軌道高度の高い方から数えて・・3個目です・・・高高度軌道エリアに属する衛星は・・・13個です・・・中高度軌道エリアに属する衛星は・・・16個です・・・低高度軌道エリアに属する衛星は・・・12個です・・・反物質衛星を含めれば・・この巨大惑星を取り巻いている衛星は・・42個です・・・全く信じられない惑星系ですね・・・レベル2なので、まだ雑駁なセンサースキャンですが・・一次判定で地球型と観られる衛星が、現在接近中の衛星も含めると・・5個見付かりました・・・」

「・・・ああ・・全く凄い所だな・・・この場にいても信じられないよ・・・今聞いた話をそのまま推進本部のお偉方に聞かせて・・どんな顔をするのか観てみたいね・・・ただ、その場で調査船団の編成と派遣が決定される事だけは確実だろうな・・・反対側の巨大惑星系については・・?・・」

「・・とてもじゃありませんが、まだそこまで目も手も廻りません・・・レベル2のスキャンですから、この時間でここまで調べられたんです・・その代わり、精度は少し粗いですがね・・・それでも・・反対側の巨大惑星も、40個以上の衛星を持っているぐらいは分かります・・・」

「・・そうか・・そろそろ仮称を付けた方が良いだろうな・・接近中の巨大惑星をBP1(ブルー・プラネット・ワン)と呼称しよう・・向う側の巨大惑星はBP2だ・・・こちら側の惑星系で、地球型と観られる天体衛星は、惑星からの距離が遠い順でGS(グリーン・サテライト)1・2・3と呼称していこう・・・ライブラリー・ファイルにも取敢えずそう名付けていってくれ・・・」   「・・分かりました・・・」

その時、ラボに副長が入って来た。

「・・船長・・概算ですが、帰還航程も考慮すると、この恒星系に滞在できるのは2週間ほどですね・・・」

「・・そうか・・今レベル2でこちらの惑星系をスキャン中だが・・一次判定で地球型と観られる衛星が、この惑星系の中だけでも5個あると判った・・・この5個の衛星についてのデータをまとめて・・推進本部に第3報として送ってくれ・・それで調査船団の編成とここへの派遣が決定されるかも知れない・・・」

「・・分かりました・・その船団が到着すれば、補給が受けられますね・・・」

「・・ああ・・補給が受けられなければ、本船は2週間後に帰還航程に入ると添えてくれ・・」

「・・了解・・」

「・・アヤラ・・地球型天体に対しては、レベル3のスキャンを始めてくれ・・副長、ブリッジに戻ろう・・」  そう言って一緒にラボから出た。

「・・正直、推進本部の判断がどっちのベクトルを向くかは、微妙かもな・・・」

「・・どう言う事でしょうか・・?・・」

「・・先住知性体のいる天体を調査対象にすべきでない、と言う考えも根強い・・」

「・・でも、調査は続行されるでしょう・・?・・」

「・・そうだな・・移住候補地からは外れても、資源開発候補地にはなるだろうね・・・」

「・・反物質天体がありますからね・・・」

「・・木星型・土星型のガス状巨大天体も、ゴロゴロあるみたいだしね・・・ただ・・調査は一旦切り上げて・・帰還しろと命じられる可能性もかなりある・・まっ、その時はその時だね・・・」  そこまで言ってブリッジに入った。

ミレーナは自分の席で作業に入る・・私はパイロットに指示した。

「・・イアン・・コースはこのままでセカンドスピードまで加速しよう・・目標は衛星から高度500キロでの周回軌道だ・・・」   「・・了解・・」

また船体がグンと加速された・・。

「・・アレジ・・孫衛星表面にある人工建造物から、40kmに入る手前で、遮蔽シールドをレベル1で展開してくれ・・・」   「・・分かりました・・・」

「・・今現在の衛星までの距離は・・?・・」

私はモーレイ・カラムの右側に立って訊いた・・。

「・・185万2千8百kmですね・・現在のスピードで衛星の地表から高度500kmに到達するまでには・・72時間弱です・・」

私はキャプテン・シートに座ると、左肩越しに半身で振り返って訊いた・・。

「・・アレジ・・この宙域でサード・スピードまで増速したら・・外からはどう観える・・?・・」

「・・ちょっとした彗星のように観えるかも知れませんね・・望遠鏡で捉えられれば、ですけど・・」     「・・まあ焦っても・・リスクを高めるだけだしな・・」

「・・セバット・・デルタ4クラスの自律航行探査機を10基用意してくれ・・GS(グリーン・サテライト)1~5にかけて2基ずつ先行して発射させる・・本船は外からどう観えるのかも考慮しなければならないから、これ以上増速できない・・コリン・・GS2~5に向かわせる探査機のコースは、他天体の重力の影響を極力受けないような設定で頼む・・いいかな・・?・・」

「・・了解しました・・」  「・・10分で用意します・・」

「・・それとセバット・・直通リンクを保持するのは、GS1に向かう探査機だけで良い・・他の探査機は一定時間ごとに探査ログを記録して・・後でこちらに転送しよう・・それと勿論探査レンジの設定はフル・オープンだ・・」   「・・了解です・・・」

「・・探査機の呼称はGS1・A、B・・GS2・A、Bとする・・それじゃ、15分後に発射だ・・ミレーナ・・今の決定をシーモンに伝えて、GS1・A、Bと天体測定ラボとの間に、通信リンクを確立するように伝えてくれ・・ついでにGSの最新スキャンデータを貰って・・本部に第4報として、送信してくれ・・」  「・・分かりました・・・」

「・・それが終ったら交替で半舷休息だ・・GS1を周回する軌道に入る2時間前まで・・5時間ごとに交替しよう・・保安部長から全乗員に通達してくれ・・副長と機関部長とで、勤務スケジュールを編成して発表してくれ・・」  「・・了解しました・・・」

「・・モーレイ・・GS1での各言語の解析と翻訳作業はどうなってる・・?・・」

「・・それなりに進んでいます・・主に使われている言語は、やはり7種類ですね・・似通っている部分もありますが、違う部分もあります・・他にあまり使われない言語を3種類、確認しました・・あまり使われないので解析・翻訳はそれほど進んでいません・・7種類の言語の解析と翻訳については・・43%・・と言ったところでしょうか・・もっと接近すれば、データストリーム・ネットワークにも入れるでしょうから・・入れてデータのダウンロードが出来れば・・解析・翻訳共にもっと進むでしょう・・」

「・・GS1上での・・国際情勢・・と言うのかな・・?・・何か判るか・・」

「・・名称が判明している・・国・・でしょうかね・・?・・9個、確認しています・・それぞれ・・同じような見解や主張の面もあるようですが・・対立していて係争しているような見解や主張の面もあるようです・・国同士での交流や貿易などは・・活発に行われているようです・・孤立して疎外されているような国とか・・自ら交流を断って鎖国しているような国などは・・確認されていません・・各国ともそれなりの規模での軍隊を、保持しているようです・・」

「・・印象として・・我らの母星であった地球での・・どの年代に相当すると思う・・?・・」

「・・ちょっと難しいですが・・現状で総合的に考えると・・2010年代の地球に近いんじゃないでしょうか・・?・・宇宙開発での技術レベルでは・・かつての我々の地球よりも先行しているようです・・孫衛星の表面に、基地を建設しているくらいですからね・・ただ・・自然環境の汚染レベルは・・我々の地球よりも軽い状況です・・しかし、地震と火山噴火の発生状況は・・2010年代での我々の地球のそれよりも・・数としては多いです・・ですが、それがD層の浮上に因るものなのかどうかについての判定は、まだ出来ません・・もっと接近しての調査が必要です・・・」

「・・了解したよ・・そのまま続行してくれ・・それと、君のチームの中で割り振っても良いし・・シーモンのチームと合同で調査しても良いが・・GS1から孫衛星基地へは、定期便が出ている筈だ・・どのコースを通ってどの程度の頻度で出ているのか・・調べてくれ・・」    「・・分かりました・・」

 



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半舷休息と地球型惑星探査推進本部での最高評議会議

「・・と、言う事は・・レベル1の遮蔽シールドだけで、孫衛星軌道の内側に入れば・・たちまち発見されるか・・アレジ・・本船が孫衛星軌道に掛かる10分前から・・遮蔽シールドのレベルを2へ・・それに加えて、光学迷彩も掛けてくれ・・・」

「・・ミラージュ・コロイドも使いますか・・?・・」

「・・いや・・そこまでは必要ないだろう・・」  「・・分かりました・・」

機関部長が報告した・・。「・・探査機の準備が完了しました・・・」

副長が報告した・・。「・・第4報の送信が完了しました・・・」

「・・よし、アレジ・・GS1に向かわせる探査機から順に射出してくれ・・副長、それが終ったら交替で半舷休息だ・・君と私とでは最初、2時間ごとに交替しよう・・君が先に休んでくれ・・」    「・・分かりました・・お言葉に甘えます・・」

最後に保安部長が報告した・・。「・・探査機10基、射出終了しました・・・」

「・・よし・・ありがとう・・それじゃあ、全船、半舷休息だ・・全員、勤務スケジュールに従って行動してくれ・・シーモン・アヤラとモーレイ・カラムは・・両名ともそれぞれ、勤務に復帰するたびごとに、GS1に対しての観測・分析のレポートを上げてくれ・・宜しく頼む・・以上だ・・ああ、ミレーナ・・食堂に言って、今日の日替わりモーニング・プレートを一つ、届けて貰ってくれ・・ここで食べるよ・・2時間で交替しよう・・・」

太陽系・・木星圏・・

木星の衛星ガニメデを周回するコロニー『ガニメデ003』とタイタンを周回するコロニー『タイタン002』の両方に、『地球型惑星探査推進本部』は設置されている・・。

二つのコロニーに機能を分散しているのではなく、規模の上でも機能の上でも全く同じものが二つのコロニーに設置されている・・。

木星圏が破局的変動に見舞われた場合を想定しての、防衛措置としてそのようにされている・・のだが、おかげで何をするにも手間が2倍掛かるようになった・・尤も今ではどちらの推進本部のスタッフも、それに馴らされている面があるのは否めない・・・。

今二つの推進本部は、亜空間通信で直結されている・・同じ惑星圏の中なのだからレーザー・ラインでも不都合は無いのだが・・ほんの僅かなタイムラグも、もどかしく感じて仕方ないらしい・・ちなみにガニメデの本部は『A』と、タイタンの本部は『B』と呼称されている・・。

推進本部最高評議会議室は、どちらのコロニーにも設置されている・・『A』の会議室では『B』の最高評議会メンバーの姿がホログラムで投影されていて・・『B』の会議室では、『A』のメンバーが同じように投影されている・・。

「・・やはり・・H S S C218が送信してきたレポートデータの信憑性は・・充分に信頼し得るレベルのようですな・・」

と、『A』の評議委員、マッシュ・ガーバルドがPADのデータを上下にスクロールさせながら言う・・。

「・・しかし・・このレポートデータを3回読み直した上でも、まだ信じられんよ・・このような惑星系が実際に存在するとは・・しかも二つも・・」

と、『B』の評議委員、ファレス・ルーガンが左手で顎を撫でながら言った。

「・・それは・・ここにいる全員の共通認識の一つでしょうね・・」

と、『B』の評議委員、マライカ・ナーグラがブロンドのロングヘアを煩わしそうに掻き揚げて言った。

「・・それで・・先ず何を討議する・・?・・」と、『A』の評議委員、テッド・ウィンディが腕を組む。

「・・調査続行か否かでしょ・・それが決まらなければ、何も決められませんよ・・」

と、同じ『A』の評議委員、ウルミラ・シャルマがテッドを流し目で見遣って言った。

「・・よし・・調査続行か否かを討議した上で決議しよう・・評議委員諸兄にはそれぞれに想うところもあるだろうから、意見は忌憚なく述べて欲しい・・初めに私から言わせて貰うが、調査続行に賛成だ・・移住候補地やら資源候補地やらについてはもっと先に置いて・・今は更に多方面に及ぶ詳細なデータの収集が急務であろうと考える・・消費資源の状況から見て、H S S C218が現地に留まれるのはあと2週間と言う事だから、続けて探査船を派遣するか・・調査船団の編成と派遣を、この場で決議しても良いと思う・・」

と、『A』で評議会議長を務める、リムスレーア・ファレナスが言った。

「・・しかし、我々にはまだファーストコンタクトの経験が無い・・無いから手順も何も無い・・先住知性体の存在する惑星系に、長く居れば居るほど偶発的に接触する可能性が増大するし・・接触してしまった場合、手順の無い段階では・・意志疎通の行き違いから収拾できない事態に陥ってしまう可能性も高くなる・・離脱した方が良いのではないか・・?・・」

と、『B』で評議会議長を務める、マイロ・ヴィンティミリアが整然と述べた。

「・・先ず接触は、どのようなレベルに於いても厳禁とする・・偶発的に接触してしまう可能性も、出来得る限り想定して可能な限り排除しながら、一にも二にも慎重に時間を掛けて詳細なデータの収集・・調・探査を続行する・・調査船団の編成と派遣にも賛成ですが・・調査に於いて2隻以上で惑星系に侵入する事は禁止する・・これで良いと思うがね・・」

と、『A』の評議委員、ラビル・イスヤノフがテーブルを右手の指でタッピングしながら言った。

「・・確かに・・これ程の惑星系を、先住知性体が居るからと言う理由だけで見捨てていくのは・・あまりにも惜しいですわね・・」

と、『B』の評議委員、アーシア・アルジェントが軽く一息吐くと、少し肩を竦めて言った。

「・・しかしこの惑星系は・・あまりにも異常だ・・異常すぎる・・どうも嫌な感覚が拭えない・・議決とは別に・・いやその前にH S S C218に指示して・・緊急に確認すべきと思える事項がある・・どうだろうか・・?・・」

と、『A』の評議委員、ケフィ・アナンがその場の一同を見渡しながら言った。

「・・具体的には・・?・・」と、リムスレーア・ファレナスが先を促す。

「・・今からでもこの惑星系から脱出できるかどうかを確認すべきだと思う・・もしかしたら既に取り込まれてしまっているのかも知れない・・」

「・・そんな・・それは考え過ぎじゃないんですか・・?・・」

と、『B』の評議委員、ロクサーヌ・ギノーが少し引きながら言う・・。

「・・いや、この惑星系が既に存在しているのだから・・その可能性もあり得るだろう・・なに、確認すれば済む事だ・・別に何の不都合もあるまい・・通信室!・聴こえるか?・マイロ・ヴィンティミリアだ・・H S S C218に対して、私の名前で緊急通達を出してくれ・・内容はこうだ・・H S S C218へ・・緊急に通達する・・貴船は現在調査中の当該惑星系に・・既に捕獲されている可能性が指摘されている・・それを払拭して否定する為に・・直ちに一旦、惑星系から可及的速やかに、完全に離脱せよ・・繰り返す・・直ちに一旦惑星系から完全に離脱せよ・・これは緊急指令である・・・以上だ・・・」

言い終えてマイロ・ヴィンティミリアは、ケフィ・アナンに向って(これで良いのか?)と言う風に軽く両手を広げて見せた・・。

 



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