俺と私の日記帳 (竹俣 兼光)
しおりを挟む

幸せだった日々
俺とわたしの出会った日


二作品目。


どっちも気が向いたら書くタイプになっておりまする。


やあ!はじめまして。

俺は…まぁ名前はいい。

 

さて、早速だが皆に質問だ。

ヨーロッパとかってカッコよく思ったりした事ないかい?

 

まぁ、人それぞれだろう。

俺は憧れた。親に頼み込んでレイピアやアーチェリーなんかを習わせて貰う位には。

やるからにはと、大会も何度か出場した。優勝こそできなかったものの、それなりに良い成績を残せたと思う。

大人になってからは銃がカッコいいと思い、クレー射撃なんかもやった。

 

うん?自分語りが長いって?

…すまん。少し現実逃避したかったんだ。

こんな風に記憶はしっかりしてる。成人男性だったと記憶してる。

 

 

正面には困惑した顔の幼女。可愛らしいヨーロッパ風のドレスを着ている。

もう少し離れて見ると正面にあるのは鏡だと分かる。

俺…幼女だったっけ…?

 

いやいやいや、成人男性だとしっかり記憶している。おかしい。

 

「あなただれ?」

 

〈うん?俺しゃべった?〉

 

「ずっとしゃべってるよ」

 

〈今喋ったのは俺じゃなくて君?〉

 

「うん。わたしだよ」

 

〈そっかぁ。俺は多分君のナカに居るから、周りには声は聞こえないはずなんだ。〉

 

「?うん。」

 

〈そうすると君は一人で話してる女の子になっちゃう〉

 

「うん」

 

〈周りから見ると気持ち悪いんだ。〉

 

"やだ"

 

"やだやだやだ"

 

「ぎらわれ"だぐないよ"ぉ」

 

〈おちっ、落ち着いて!泣かせたいわけじゃないんだよ〉

 

「ゔぅ」

 

〈言いたいことを頭の中で考えてみて?〉

 

"こう?"

 

〈それで大丈夫。〉

 

"ありがと。おにいさん"

 

〈どういたしまして〉

 

"わたしはメルセデスっていうの。おにいさんは?"

 

〈俺?俺は…そうだなぁ俺は俺だけど、俺は君なんだ。

記憶は男で大人でも君なんだ。

だから俺はメルセデスだよ。〉

 

"?わかんない!"

 

〈そっか。

じゃあ君が俺に名前を頂戴?〉

 

"う〜じゃあわたしのこときみじゃなくてメルセデスって呼んで"

 

〈うーんメルセデスだと長いなぁ…〉

 

"お父さんとか、お母さんとか、フェルナンおにいさんとかはわたしのことメリーって呼ぶよ"

 

〈じゃあメリー、俺に名前をつけておくれ〉

 

"わかった!

えーっと、おにいさんは、わたしで、でもちがくて…

わたしはメルセデスで、おにいさんもメルセデスだから…

 

おにいさんは、メル!

メルおにいさん!"

 

〈メル…メルだね。ありがとうメリー。〉

 

"きにいってくれた?"

 

〈あぁ、とっても!

あとメリー、《メルおにいさん》は長いだろう?メルでいいよ。〉

 

"でも、お母さんが『年上は敬いなさい。それが淑女です!』って"

 

〈そっかぁ。

俺は君での友達で居たいんだ。

君は友達に敬語なのかい?〉

 

"…ともだち?ご本でよんだよ!なかよしで、いっしょにあそんで、いっしょにいたらたのしいんだって!"

 

〈そうだね。メリーは俺と話しててつまんない?〉

 

"ううん!すっごくたのしい!"

 

〈じゃあ友達になってくれるかい?〉

 

"うん!ともだちなんてはじめてできた!

よろしくね!メル!"

 

〈よろしくねメリー。

でも他にお友達居ないのかい?〉

 

"おべんきょうばっかりで、お外はおにわにしかでたことないよ"

 

〈そっか…〉

 

 

 

コンコン

 

〈びっくりした…〉

 

「はい、なんでしょう?」

 

〈待ってメリー、さっき泣いたせいで目が赤くなってたりしない?〉

 

"だいじょうぶだよメル"

 

「メリー、愛しのメリー。勉強は終わったかい?」

 

〈えっと…こいつは…?〉

 

"フェルナンおにいさん"

〈フェルナン?

ふーん?なんか…こう…視線が気持ち悪い。五歳児にむけるモノじゃない。〉

 

"そうなの?"

 

〈こういう奴は大きくなったらなんかやらかすから気をつけておきなよ。〉

 

"はーい"

 

「メリー?」

不審に思ったフェルナンが近づいてくる。

 

「すみません。すこしボーッとしていました。」

 

そう言って一歩後ずさる。

 

「どうして逃げるんだい?」

 

そう言ってどんどんと近づいてくる。

 

「なんですか。こないでください。」

 

壁にぶつかり、これ以上後ろには進めない。

 

「どうしてそんなこと言うんだい?」

 

近づいてきて手首を掴まれる。そしてどんどん顔が近づく。

 

〈メリー、交代だよ。〉

"え?"

 

メリーとメルが入れ替わる。

 

「触るな」

そう言ってメルセデス(・・・・・)は男なら誰でも付いている弱点に蹴りを入れる。

「くぁwせdrftgyふじこlp」

言葉にならない叫びを発しながら崩れ落ちる。

「バァカ」

そう言ってメルセデスは部屋から駆け出した。

 

 

 

 

 

 

メルセデスは自分の部屋から駆け出し、近くを歩いていた女中に抱きつく。

 

「助けて下さい!」

 

必死な顔でそう叫ぶ。

 

「お嬢様、どうされたのですか?」

女中に聞かれた途端にボロボロと大きな瞳から雫が落ちる。

「フェルナン、おにいさん、が…」

しゃくりをあげながらも伝えようとする。

「フェルナン様がどうかなされたのですか!?」

「違うの、急に近づいてきて、壁に押し付けられて…うぇぇぇん!」

メルセデスは大声で泣きだす。

書斎に居る父や、部屋に居る母にも聞こえるほどの大声で。

「何事だ!よもや貴様が娘を泣かせたのか!」

走って駆けつけた父親は泣いているメルセデスをあやそうとしている女中に怒鳴る。

「ちがっ!」

「違うの!フェルナン、おにいさんが…ふぇぇぇえん!」

また同じことを説明しようとしたメルセデスは恐怖がぶり返したのかまたも大泣きする。

「…お嬢様はフェルナン様に襲われたようでございます。」

 

父親は驚いた顔をし、メルセデスに確認する。

そしてそれが真実だと知った時、フェルナンがメルセデスの部屋の扉を開けて出てくる。

 

「メルセデス!それにおじ様!どうなされたのですか?」

 

さも何もなかったかのようにフェルナンは振る舞う。

しかし、あまり泣くことのなかったメルセデスがここまで泣いている。

それならば父親としてすることは1つ。

 

「フェルナン君。金輪際私達の屋敷には近づかないでくれたまえ。」

 

そう言ってメルセデスを抱き上げて背を向ける。

 

フェルナンは女中や執事にやんわりと追い返された。

 

 

 

 

 

 

疲れた。本当に疲れた。

大きくなってから来るかと思ったが、最近(19世紀)のガキはませているようだ。

 

そうだ。ここはヨーロッパ風ではなくヨーロッパだった。19世紀の。

 

まぁなったことはなったことで置いといて、

とりあえずは最直近の危険は取り除いた。

 

〈大丈夫?怖くなかった?〉

 

"こわかった…けどメルがいてくれたし、たすけてくれたからだいじょうぶ。"

 

〈そりゃもちろん。俺はメリーの友達だからね。〉

 

それでも、箱入り娘のメリーにはとっても怖かっただろう。

外に出ないから肌は白いしヒョロヒョロだ。

今度どうにかしよう。

 

 

あと、『お父さん』がメリーに欲しいものはないかと聞いて、日記を書くための本が欲しいと言っていた。

 

 

 

 

 

あぁ、メリー!メリー!愛しのきみ!

僕のメリー!

食べてしまいたいくらいだ!

 

少年は意気揚々と廊下を歩く。スキップと言っていいかもしれない。

そして少年は扉を叩く。

そしてすかさず

「はい、なんでしょう。」

鈴を転がすような声が聞こえる。

嗚呼美しい!小鳥の囀りのようだ!

少年は扉を開く。

部屋の中はとても豪奢だった。

大きなシャンデリアがぶら下がり、上質な赤絨毯が敷き詰められている。

大きな本棚にはこれまた大きな分厚い本がぎっしりと詰められている。

そんな中、鏡の前に立つ美しい少女が目を惹く。

真雪のように白い肌。赤くぷっくりとした唇。

そして特筆すべきはその瞳と髪だろう。陽の光が当たれば瞳は藍や翠に輝き、髪は金や赤、桃色に輝く。さながらミステリックトパーズの様だった。

 

「メリー、愛しのメリー。勉強は終わったかい?」

そう声をかけるが、返事がない。

無視しているのだろうか?

まさか!あの心優しい天使が!この僕を無視するなんて、嫌うなんてあり得ない!

「メリー?」

メリー、メリー、メリー!君は僕を嫌ってなんかいないだろう!?

 

「すみません。すこしボーッとしていました。」

 

ああ、なんだただの考え事かい?いや、そうは言っているがきっと僕に見惚れてときめいていたんだろう?

一歩ずつ近づいて行く。

 

そして少女は後ずさる。

「どうして逃げるんだい?」

 

知ってるよ。君は恥ずかしがり屋さんだからね。

大好きな僕が近づいてきて恥ずかしいんだろう?照れてしまったんだろう?

 

「なんですか。こないでください。」

 

ふふふ。強がってる君もとっても可愛い。

さあ、恥ずかしがらずに僕に抱きついておくれ。

 

「どうしてそんなこと言うんだい?」

 

彼女は壁にぶつかり、もう下がれない。

彼女の細い手首を握る。

元々年は5つ離れているため、メリーは逃げ出せない。

照れ屋な彼女にキスをする為、顔を近づける。

しかし、

「触るな」

そう言ってメルセデス(・・・・・)は男なら誰でも付いている弱点に蹴りを入れる。

「くぁwせdrftgyふじこlp」

言葉にならない叫びを発しながら僕は崩れ落ちる。

「バァカ」

そう言ってメルセデスは部屋から出て行ってしまった。

 

…怒った顔もとっても可愛いよメリー。

どんな手を使っても手に入れたいくらいに。




●月✖︎日
天気:はれ(心の中は大雨
きょうはふしぎなおともだちができました。
よくわかんないけど、わたしなんだって。
でもメリーってよぶのはやだったからメルってなまえをつけてあげた。

あと、きょうはフェルナンおにいさんがこわかったです。
お父さんが「もう来ないから安心していいよ」っていってた。ほんとうにそうだったらちょっぴりうれしい。





今日は初めてメリーと会って話をした。メリーは5歳のようだ。それにしてはしっかりと言葉を話して理解するし、字も書ける。この時代においての識字率は低い。そしてメリーの部屋を見ると分厚い専門書がずらりと並んでいた。
そしてフェルナンが言っていたお勉強は恐らくこの本を使ったものだろう。記憶を漁ればわかる。膨大な知識量だった。…この話は疲れる。

そういえば今日襲ってきたフェルナンとやらは俺の演技で少々誇張したものを大泣きして伝えたら効果は抜群だった。あれが来なくなるのは本当に良かった。

この体はメリーと共有のため、そろそろ寝なければならない。まぁ5歳だし。
それじゃあおやすみ。


1ページ目はここまでのようだ。




どうでしたか?気に入っていただければ幸いです。

ちなみにメリー5歳、フェルナン10歳のつもり。
あれれ〜?フェルナンが齢10にしてヤンデレ変態ストーカー(M)になってる〜ふしぎ〜



今分かってること
・メリーは5歳だからひらがなばっかり。メルは大人だから漢字が多い。
・メリーは頭がいい箱入り娘。
・フェルナンは変態。
・入れ替わり可


ミステリックトパーズトパーズとは
様々な色に輝くトパーズで、人工的に作られる石。この時代には無いけど、魔法的ななんたらでとっても希少なものの、存在している事にしてくださりませ


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

強くなるための日

テスト後の友人を癒すことがでけたらええなぁ


●月▲日

くもり

きのうはすごくいやなことがあった。

そのせいでちょっぴりおとこのひとがこわい。

なんにもしてこないとおもうけど、でもなんかいや。

でも、メルや、お父さんはだいじょうぶだった。

きょうはメルが「あんな事になった時に対処できるように体を鍛えない?」ときいてきた。あさごはんのまえだったからお父さんにおねがいしてみた。

きょうのおひるごはんにお父さんはおくれてきたけど、ごはんがおわったくらいに先生ができた。

つらかったけど、メルがやさしくアドバイスしてくれたからうまくできた。

メルがやりたそうにしてたからかわってあげたらすごくつよかった。

ぬかせるようにがんばる。

 

 

 

 

 

さて、フェルナンの件から早数日…

 

なんて事はなく、次の日。

メリーはどうやら男嫌いになり掛かっている様だ。

うん?俺?なんともないよ。

可愛らしい美少年(変態)に迫られただけじゃ動じないぜ!

ドM、おっさん、天使…うっ頭が!

 

まぁどうでもいい。

とりあえず、メリーのトラウマをどうにかしないと。

 

うーむ…

男が自分より弱いとなればいいか?

手っ取り早く武器を持たせるのと、いらないくらい強くしてみるの…どちらにしろ鍛えないとダメか。

 

〈おはよう、メリー〉

 

"おはよう、メル"

 

〈ご機嫌だね〉

 

"うん。メルがいる事が夢じゃなかったから。"

 

〈そっか。ところでメリー、君は昨日のことは大丈夫かい?〉

 

"まだちょっぴりこわいかも。"

 

〈それなら、あんな事になった時に対処できるように体を鍛えない?〉

 

"なにをするの?"

 

〈フェンシングとかみたいに武器を持つ奴か、バリツとかみたいな格闘技のどっちかじゃないかな。

メリーのしたい方でいいと思うよ。〉

 

"まえにメルがいってたフェンシングがしてみたい!

でも、それだとレイピアがないとちからにならないよね…"

 

〈いいや?少し筋肉をつけるだけでも意味はあるよ。

けど、心配ならいっそのこと両方やってもいいんじゃないかな。〉

 

"じゃあお父さんにはなしてみるね。"

 

 

寝巻きからドレスに着替えつつ、そんな事を話す。

普通、ドレスは使用人なんかに手伝ってもらいながら着る物だ。

しかし、使用人はいない。

 

何故か?

 

それは、日が昇り始めたばかりの外を見ればわかる。

 

メリーは5歳だというのに起きたのは日の出と同時だった。今が夏であるのを考慮すると睡眠時間が圧倒的に足りない。

倒れないだろうか。

 

 

ハラハラとする此方のことなど知らずにテキパキと着替えていくメリー。

 

 

淡い黄色のドレス。肌が透けるほど薄い…わけはなく、透けない程度の厚さのモスリンできている。

胸元がガバリと開き、ハイウエストの部分を絹でできた太い橙のリボンで締めている。

 

つまるところシュミーズドレスなんだが、この時代でも子供には着せないだろう…普通。

 

少し高めのヒールを履き、くるりと鏡の前で一回転する。

 

後ろにギャザーがあるため回るとふわりと膨らむ。足首まで隠れる長さなので転ばないかも心配になる。

 

 

「にあってる…かな?」

 

〈とっても可愛いよ。〉

「よくお似合いでございます。」

 

扉の前にはメイドさんが1人。

愛らしいものを見る目で見つめてくる。

 

「もう…ノックくらいしてください!」

メリーは頬を膨らませて怒っている様だった。…可愛い

 

「申し訳ございません。ノックは一応しましたが、昨日のことがあったのであまり強くはしなかったのです。」

 

確かにきのうはフェルナンがノックしてから入ってきた。

けどその時近くにいたのだろうか?

…いやまぁフェルナンもそれなりにマナーは叩き込まれているだろう。ならば自然か

 

「そうだったの…ありがとうございます。」

 

「いいえ、仕事ですから。」

 

そう言ってメイドさんは此方に近づき、細かい身だしなみをチェックしてくれる。

 

「大丈夫そうですね。では朝食の席へ向かいましょう。」

 

 

 

 

食卓につき、お母さんとお父さんに挨拶をする。

 

そして、食事の前に「お父様、おねがいがあるのですが…」

と切り出した。

 

んん?お父様?あれ〜?この子結構猫被り?

 

「わたしは、つよくなりたいのです。どうかきょかをいただけませんか?」

 

じっと此方を見つめた後、

 

「食事は書斎で摂る。後で運んで来い。」

 

とだけ言ってもどっていった。

 

 

 

 

 

"お父さん…ダメっていうかな…"

 

〈さぁねぇ。俺は分かんないからなぁお父様(・・・)の事は。〉

 

"ちょっと?"

 

〈冗談だよ。まぁ俺たちはお父さんを信じるしかないしね。〉

 

"うん…"

 

 

 

 

 

 

 

いつもどうりだという家庭教師との勉強を行った。俺が増えた事による並列思考をふんだんに使っているため、進みが早く、どんどんと進んでいく。

 

「お嬢様は素晴らしいくらいに才能があります。

ですが、あなたは肉体と精神がかみ合っていない様に感じますね。」

 

 

無駄にイケメンで黒髪の胡散臭い笑いが特徴的な家庭教師だった。

 

 

 

 

昼になり、使用人に食事だと呼ばれる。

今度は執事だったため、メリーは少し怯えている様に見えた。

 

 

食卓についたが、まだお父さんがいない。

 

「お母様、お父様は?」

 

「さぁ?分からないわ。きっとお仕事が忙しいのよ。」

 

メリーが学んでいる教科からも察することができるが、おそらく商人なのだろう。

経済学や、心理学、果ては航海術まであった。

 

 

「すまない。遅れた。」

 

そうして、食事が始まった。

 

あまりお父さんは話さない人の様で、お母さんとメリーで話している。

 

一足先に食べ終えたお父さんは

「後で書斎へおいで、メリー。」

とだけ残して部屋を出て行った。

 

〈何だろうね〉

 

"朝のことかな?"

 

〈なら急いだ方がいいかな〉

 

"でもいそぐとお母さんに『はしたない!』っておこられちゃうよ"

 

〈本当にいいお母さんだね〉

 

"わたしのじまんよ"

 

 

 

 

食べ終えた俺たちは書斎にきた。

 

コンコン

「しつれいします。」

 

少しして、

「入りなさい」

というかお父さんの声が聞こえた。

 

 

そっとドアを開けると、そこには金髪のイケオジが立ってた。

お父さんみたいな寡黙なイケオジとは違うタイプだ。

 

「おはつおめにかかります。メルセデスともうします。」

 

丁寧に挨拶をする。

 

「これはこれはご丁寧に。僕はガブリエル。ガブリエル・グランド。」

 

なんか…軽いというか、チャラいというか…

 

「安心しなさい。これは私の古い友人だ。心配する事はない」

 

「はい…」

 

「僕のことそんなに信じられない!?」

 

メリーの周りにいないタイプの人だなぁ。

 

やいのやいの言ってるガブリエルさんと適当にあしらってるお父さんを見ながら、なんで呼ばれたんだろ…なんてメリーと話してた。

 

そんくらい放置されてるんだもん…

 

 

 

 

 

「…ということで、メリーにはこいつが教える。…手は出すなよ?」

 

「ちょっとばかしその殺意を抑えてほしいなーなんて」

 

お父さんの話を要約するとこうだ。

・ガブリエルは現在、フランス陸軍の中将をしている。

・フェンシング程度なら私も出来るが、こいつの方が強い。

・私の知り合いのため、手を出す心配が無い。

 

 

という事で、ガブリエルさ…先生に教えてもらう事になった。

メリーも平気そうだ

 

 

「よろしくおねがいします!」

 

元気に頭を下げたメリーは、急いで部屋の外に出る。

 

「ではさっそくきがえてまいります!」

 

ドアの閉まる直前に、

「僕はロビーにいるからね」

という声が聞こえた。

 

 

 

 

 

 

 

部屋に戻り、動きやすいパンツスタイルに着替える。

 

"たいへんだわメル!"

 

〈なんだい?〉

 

"先生はどこにいるのかしら!"

 

〈…ロビーにいるそうだよ〉

 

"ありがとう!"

 

部屋を飛び出して、ロビーに向かう。

 

 

 

 

ロビーでは、準備が終わったガブリエル先生がいる。

 

「来たね、メリーちゃん」

 

「よろしくおねがいします、先生」

 

キョトンとした後ににっこりと笑う。

 

「ああ。ではさっそく、剣を選んでおくれ。」

 

そこに並ぶのは、フルーレ、エペ、サーブルの三種の剣。

メリーは戸惑いなくサーブルを掴んだ。

 

サーブルは一番小さく、軽いためメリーには丁度かもしれない。

 

「よし、じゃあ軽く打ち合いしてみようか!」

 

なんとなくは思ってたけどこいつ…脳筋だ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

メリーをフルボッコにしたのは許さん

 




先生をぼこぼこにするのが俺の目標になった。
なんで動きが良くなったかはなんとかごまかしきったと思う。多分…恐らく。ありがとう、メリー。
手加減してた先生に本気を出させるまでは頑張る。

あと、メリーが、筋肉痛になった。




テストは続くよ〜♪どこまでも〜♪

あいきゃんふらい


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

お願い(脅迫)した日

設定練るのが楽しくなってきた。



ナポレオンは爆死しました


先生が出来てからかれこれ1年経った。

メリーも6歳になったからそろそろ家の外に出たいらしい。

これまではひたすらに筋トレして、いつもと変わらず年中無休で胡散臭い家庭教師(ナイさんと言うらしい)と勉強していた。1ヶ月くらいはずっとふらふらしてたメリーも、今では慣れてぴんぴんしている。

 

そんな事よりも大切な事がある。メリーが外に興味を持ったのだ。

元々外に出たいとは言っていたが、主な原因はガブリエル先生だ。先生は、戦争から帰るたびに今回はこんな戦いだった、そしてこんな綺麗な所があったんだと教えてくれる。毎回、きっと君に似合うよとか、君が気にいると思って…とか言ってお土産をくれる事も あるせいかもしれない。

とりあえず、メリーが外に出たいなら俺は即座に行動に移す。

ほらそこ、親バカとか兄バカというんじゃありません!やめてくれロリコン(その言葉)は俺によく効く…

まぁ、行動しますけど?

と、言うことでやってきました!書斎です!

〈それでは突撃!隣のお父様!〉

 

"わーわーどんどんぱふぱふ〜"

 

〈目指せ外出!〉

 

"私をそとにだせー"

 

「お父様、失礼します。」

 

「入りなさい」

 

そっと扉を開けるとそこには…

 

 

 

死人のような顔をしたお父様が…!

 

「お、お父様!?顔色が悪いです!お休み下さい!」

 

ただでさえ悪い目つきがさらに悪化して、目線で人が殺せそうな位だ。やべぇ。

 

「用件を早く言いなさい」

 

「そんなことどうでも良いです!休まないとお父様が、倒れてしまいますよ!」

 

「まだ仕事がある。」

 

いやいやいや、まだ仕事があるって…休んでよぉ!目つき怖いし、元々白い肌がもう真っ白すぎて気持ち悪いよぉ!

 

〈やべぇ…何がとは言わないけどやべぇ〉

 

"先生のこと呼んだらおとなしくなるかな?"

 

〈お母さんの方が良いんじゃないの?〉

 

"お母さんは『さいしゅうしゅだん』だよ。"

 

〈じゃあお母さんをダシに脅したら良いんじゃない?〉

 

"きくかな?"

 

「お母様に言いつけますよ!」

「ゔっ…しかし…」

多少狼狽えただけだった。ほう?ならばこうじゃ!

ぱたぱたと扉の方へ移動してみる。

「…待ってくれ。彼女を呼ぶのはやめて欲しい。」

 

ねぇ待って??なんで更に顔色悪くなってんの??これ以上ないくらい真っ白だったのに更に白く…というかもう今にも灰になって崩れていきそうな状態だよ?

〈お母様効果やば…〉

 

"前に一回お父さんがむりしてた時に、お母さんがへやに行ってお父さんのことなぐりとばしてたから。"

 

〈お母様つおい…〉

 

「でしたら是非休んで下さい」

 

「…………ならばメリーの用件を済ませてから休もう」

 

どんだけ悩んでんだよ…社畜かよ…メリーから聞いたぞ?お父様社長なんだろ?トップが社畜じゃダメだろ…

 

「では手短に。外へ行きたいです。」

「却下だ」

 

即答だな!なんだおめぇ親バカか!過保護か!嫌われんぞ!

「何故ですか?」

「外に出たら危ない事が多いだろう?メリーに何かあったら俺も彼女も心配する。だからダメだ。」

 

「何歳になったら外に出ても良いですか?」

 

「…2…0………だ…」

「家出しますよ?意地でも逃げ出して国外に出ますからね?」

「………」

 

黙りこくってしまった。なんか窶れてるようにも見え始めた。というかこの顔…見覚えがあるぞ?確か…そう、前世で父さんが溺愛してた妹に「お父さん臭い!」って言われてたときと同じ…絶望してる顔だ。

 

〈黙っちゃったね〉

 

"どうしよう…早くお父さんに休んでもらいたいのに…"

 

こちらは無表情を貫いたまま2人で脳味噌をフル回転させる。

その時

「話はぜーんぶ聞いてたよー!」

 

バーンと扉をすごい勢いで押し開いてきたのはガブリエル先生だ。

 

「帰れ」

「こんにちはガブリエル先生」

「こんにちはメリーちゃん。良かったーメリーちゃんがこいつに似なくて」

こんな可愛い子に帰れなんて言われたら僕泣いちゃう!

なんて言いながらもお父さんにハグしに行く先生はホモですか?幼馴染だから?さいですか。

 

「とりあえず!僕からの提案なんだけどね、僕のところ他に弟子がいっぱい居るんだけどね〜?大体メリーちゃんよりもちょっと上の実力の子が教え子の中で1番強い子なんだけど、その子と戦ってみて勝てれば外出。負ければ20までお預け!どう?」

 

〈どうする?〉

 

"ちょっとでもチャンスがあるならやる!"

 

〈了解〉

 

「…やります!」

 

「メリーちゃんがこう言ってるんだよ?まだ確定はしてないけど、可愛い娘のお願い叶えてあげれば?」

「…」

 

さっきから一言も喋んないなぁ

そんな時、お父さんが目を離した隙に先生がスススと近づいてきて

ゴニョゴニョゴニョ(お願いきいてくれなきゃ嫌いになるよ)って言ってみて」

 

おまっそれは!娘が大好きな父親にとって契約書類(ギアスロール)となり得る言葉だぞ!?しかし…使うしかないのか…?

ええい!背に腹は変えられん!

 

「…お父様、お願いを叶えくれないのなら私はあなたの事を…大、大、大っ嫌いになりますよ」

 

がたりと椅子を蹴飛ばしてお父さんはこちらに近づいてくる。

真っ正面に立つと逆光で顔が見えなくなる。

こちらの身長は他の子よりも大きいであろう130cmくらい。6歳にしては大きい方だ。対するお父さんは190cmくらい。でかい。

「…わかった。許可しよう…」

 

▼お父さん は 何かが 欲しそうに こちらを見ている

 

〈どうする?〉

 

"ハグしたら良いんじゃないかな?"

 

〈本当に?〉

 

"たぶん"

 

よぉしメリー、信じるよ?

 

たぶんって言ったからね!なんて頭に響く声は無視してお父さんに抱きつく。ちょうどお腹辺りに頭があるのでグリグリと擦り付ける。

 

「お父様、大好きです!」

普段全く以って仕事をしない表情筋を引き上げて笑顔を作る。勿論心の底から嬉しいと思っているのはメリーも俺も同じ事。

つまりは美幼女の心の底からの嬉しい気持ちを表した輝く笑顔だ。

滅多に笑わないメリーの笑顔に驚いたようでお父さんは目を見開く。瞳に映るメリーはそれはそれは綺麗な笑顔をしている。ちょっと待て先生、なんで顔赤くしてんの?ロリコン注意報?そっちに意識が逸れた途端に視界が急に高くなる。

「わっ!」

お父さんに抱きかかえられているようだ。

お腹のところにお父さんの頭があって、さっきと逆転したなぁーなんて思いながらふわふわする癖っ毛をそっと撫でる。

 

少しだけ撫でてからふと、視線をあげると先生の真後ろにお母さんがいる。それよりもお母さ、お母様の背後にお見えになっていらっしゃるドラゴンはお母様のペットにあらせられますのでしょうか?

 

"お母さんがおこってる…"

 

〈どう対処すれば良いのかな!〉

 

"前にね、ナイ先生が教えてくれたんだけどね、東の方の国には[さわらぬかみにたたりなし]って言葉があるんだって"

 

〈どうしようもないのかーそうなのかー〉

 

先生が俺の顔色がおかしい事に気がついたみたいで背後を振り返ろうとした途端、崩れ落ちた。

 

 

あ…ありのまま

今 起こった事を話すぜ!

 

『俺がみている中でお母様の方に先生が振り返った瞬間崩れ落ちた』

 

な…何を言っているのかわからねーと思うが

おれも何を受けたのかわからなかった…

 

頭がどうにかなりそうだった…

催眠術とか超スピードだとか

そんなチャチなもんじゃあ断じてねえ

 

もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ…

 

 

いやな、たぶんお母様が先生の顎に掌底を叩き込んだだけなんだろうけどね?

見えたのかって?そんな訳ないじゃん。ただ先生の左の頬の下の方が赤くなってるからだよ。

 

ドサリと音がしたせいでお父さんが気づいてしまった様だ。誰がいるのか気づいてしまったお父さんはSANチェック。

抱きついて回復した顔色がどんどん白くなってるから失敗かな。

 

「あなた?」

 

「シルヴィ、待ってくれ!話せば分かる!」

 

お父さんは首を横に振りながらジリジリと下がっていく。俺のことをしっかりと抱きしめながら。

お父さん、巻き込み、いくない。

 

「メリー、おいで?」

 

おかしいな…疑問符が付いているような声色なのに命令されてる…そして勿論逆らいませんとも。

 

先生との修行でつけた瞬発力と筋力をフル活用しながらスルリと抜け出す。

あばよ〜とっつぁん!生きたまま会えると良いなぁ!

 

タタタタとお母様の隣を走り抜け、後ろに倒れてる先生の近くに行く。

とりあえず小声で話しかけてみる。

 

(「先生?先生!」)

 

返事がない ただの屍のようだ▼

 

惜しい先生をなくした。

とりあえず白目むいたイケメンとか目に悪いのでそっと目を閉じさせる。

見ろよ、こいつ…寝てるみたいだろ?気絶させられたんだぜ?

 

 

とりあえず神に祈っとこ。

〈アーメン〉

"アーメン"

 

 

 




▼月ω日
今日はお父さんに外に行きたいっておねがいした。大体のことをメルがやってくれたから私はほとんど何もしていない。でも、こんどのしあいはメルはアドバイスだけしかしないって。私なんかがかてるかなぁ?心配だけどいっぱいれんしゅうしたし、メルがついてるし、だいじょぶだよね。

お母さんが怖かったです。




さて、とりあえず外出するチャンスを取り付けることができた。あのチャラチャラわんこ系脳筋め、メリーに手を出したらゆ"る"ざ ん"!
ちなみにあの後にあった事は何も知らない。知らないったら知らない!




1つだけ。安らかな顔をしてたよ…うん。本当に。


お母様を怒らせてはいけない






この日はこのページで終わっているようだ。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

戦った日

さあ、今日があの約束の日!メリーは勝てるのでしょうか!?

 

戦うのはメリーだけだと約束してるので、手出しはしません。足も頭も出さないよ?知恵は貸すかもしれないけど。

 

「お嬢様、頑張ってくださいね。」

「お嬢、金持ちのボンボンなんてボコボコにしてやんなよー!」

「お嬢様、どうかお怪我をなさらないよう…」

「メリー様ー!結k「ゴミは片付けましょうか」

 

ロビーに向かうまでに出会った使用人さん達が応援してくれる。

そう、あの事件の後復活した先生が大声で知らせまくったからみんな知っているのである。

 

「はい、がんばってきます。」

メリーが少し緊張した面持ちでキュッと手を胸の前で握る

 

がわ"い"い"‼︎‼︎‼︎

何が可愛いっていつもの無表情が!なんと!眉がハの字になってるし、口が!いつも真一文字の口が!こう、への字になってる!しかもそれだけじゃなくて、応援されて嬉しかったからほんのり顔がピンクに!

 

 

 

 

え?このテンションやめろって?わかりますん

 

 

 

 

 

 

 

さてさて!

着きました決戦の地!ロビーへ!

 

 

まだ先生達は来てないみたい

 

〈大丈夫かい?メリー〉

 

"………"

 

メリーは反応すらせずにひたすら素振りをしている。

 

「…リ……メリー…メリー!」

 

振り向き様に声をかけた《モノ》に足払いをかけ、当て身を仕掛ける。

《モノ》は体格差があったが、不意打ちに反応出来ずに倒れ込む。そしてすぐに上にのし掛かり、急所である首にサーブルを突き付ける。

 

「…メリーちゃ…メリーさん…急に声をかけたのは謝るから退いて?

君の背後の人達の殺気がやばい…あとメリーさんからの殺気もやばい。」

 

モノ、もといガブリエル先生がメリーを抱きしめる。

おい、良いのか中将。お前の後ろの子がお前のこと軽蔑するような目線になってるぞ

お巡りさーん!こっちでーす!

 

 

それよりも前にお父さんがナイフ(ガチ)を突き付けてたけども。

 

「ガブリエル…?」

「ごめんごめん…ごめんなさい、謝るからそれどかして欲しいなぁ…」

 

 

なんか2人が仲良く喧嘩してるけどまぁいいよね。お母様出てないし。

 

 

〈あの子に話しかけてみたら?〉

 

"そうする"

 

 

「こんにちは」

「っ、ああ、こんにちはレディ。」

 

おっ?おっ?初心?初心なの?

 

「はじめまして。私はメルセデスっていうの。あなたは?」

「これは失礼しました。小さなレディ。私はトマ。トマ=ロベール・ブジョーです」

 

トマ、トマ、よし覚えた。今日からお前トマトな!

 

「そう。トマ、あなたが私の相手なの?」

「わかりません。ただ私はとても強い方と手合わせしてもらうと言われました。」

 

トマトに何にも教えて無いのか…

あとトマト手前こんな小さな子が相手なはず無い…とかいや、しかし…先生を一瞬で組み伏せていた…とかブツブツうるさいな!根暗か!

 

「私がおしえてもらったのは相手が私よりも10歳くらい年上の男の人っていうことだけよ。」

「…そうですか。」

 

 

「リアムー!若者2人がキャッキャウフフしてるー!」

「あ"?」

 

それなりに和やかに話をしていたのに何処ぞのロリコンホモ野郎のせいでぶち壊された…よろしいならば戦争だ!クリーク!クリーク!クリーク!

 

〈メリー、〉

 

"うん"

 

(すうっ)お父様!この前ガブリエル先生が私にむぐっ!

 

「メリーちゃーん本当にやめてね〜?僕がリアムとシルヴィに殺されちゃうから」

 

だったらあんなことしなければ良かったのにヴァカめ!

そして背後には2つの影が…

 

 

フルボッコだドン!

 

 

 

 

 

 

 

とりあえず色々落ち着いたところで試合の説明が始まった。

 

「一つ、骨を折ったりなどの大怪我をさせないこと、

二つ、相手を気絶又は相手に参ったと言わせること、

三つ、手を抜かないこと。

この三つを守ってくれ。一つでも破ればそこで負けだ。」

 

いいな?と確認してくる先生にメリーは大きく頷く。

 

「トマは約束どうりにメリーちゃんに勝てば軍の方に口利きしてやる。メリーちゃんはトマに勝てば外出許可がおりる。

あともう一つ、これは試合だが別に殴る、蹴るなどの事を禁止しているわけでは無い。」

「なっ!先生!フェンシングの試合では無いのですか!?」

 

先生は大きくため息をつく。

 

「トマ、お前は軍人になりたいのだろう?ならばよく考えてみろ。自分を殺しに来ている敵軍がフェンシングのルールに従ってくれるとでも?そんな甘っちょろい考えしてるなら軍に行くなんて嘘でも言ってんじゃねえ」

 

おお?珍しく先生がイケメンしてる…

 

「…すみませんでした。」

 

「それに!」

「?」

「メリーちゃんとお前じゃただの試合にしたらメリーちゃんの圧勝に終わるからね!」

 

イケメンなんて居なかった。いいね?

 

 

「さあ!位置について!」

 

 

10mくらい離れて向かい合うように立つ。

 

「構え!」

 

トマは左腕をあげて半身になり、胸の高さ辺りでエペを水平に構える。

エペは一番大きくて重い。最高で750gほどの重さだ。構えも普通のフェンシングの構えをしている。

 

それに対してメリーは半身にはなるがフェンシングの構えではなく正眼の構え…剣道と同じような構えをしている。左手は腰に添えて、右手で相手の目に切っ先を向けている。

 

 

「始め!」

 

その掛け声で動き出したのは向こうの方だった。

エペのため、なぎ払いには向かず、突くことしか出来ない。しかし足に向かってなぎ払いをしてきたのはいい判断だと思う。

けど、メリーがそんな簡単に倒れるはずなんてない。

エペを持っている側を走り抜けて後ろ側へ回る。

そしてメリーは体制を崩すのがいいと踏んだのか膝裏に蹴りを入れる。

 

ぐらりと体が傾くけれど、すぐさま左手をついて蹴りに移行する。そこは流石軍人志望だ。

 

メリーはサーブルを蹴られるが、ガードが付いているから弾き飛ばされる事は無かった。

 

"どうしたらいい?"

 

〈難しいね〉

 

楽なのは相手の顎に衝撃を与える事なんだけれど…

相手は恐らく170cm。こちらは130cm。普通に届かないのだ。

下手に組み敷いても体重が軽すぎてすぐに脱出されるだろう。

 

〈それこそバリツとか?〉

 

"どうやるの?"

 

とりあえず、腕挫十字固でも決めればいいと思う。いくら小柄でも脇の下と首に足が掛からない訳じゃないし。

 

〈えっとね〜〉

 

ひと通り説明するとわかった、やってみる。とだけ言ってそのまま戦い続けてる。かれこれ20分くらいたった。打ち合いと蹴り合いしかしていない。

 

メリーは瞬発力があるからできると思ったんだけど…

 

トマがまた突きを、今度は顔を狙って来た。

エペは約1mほどの長さがある。顔を素早くずらし、サーブルを投げ捨てる。

そして伸ばしきった腕を掴んでそのまま飛びつく。

脇の下と首の下に足をかけ、手首を抱え込んで捻りあげる。

 

メリーはそのままかけた足で首を締め出した。

 

「はやく負けをみとめて。」

 

トマは苦しそうにもがくが、力が入らないらしい。

 

「ま…いっ…た」

 

「そこまで!」

 

メリーはちゃんと勝てたらしい。

 

でもトマには悪いことをしたと思う。

 

ぐったりしてるトマから離れ、息がしやすくなる体制に変えてあげる。

そして放り投げたサーブルを拾って、蹴られたりしてたから曲がってないかをチェックする。

大丈夫そうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ありがとうございました。」

私のめのまえで頭を下げているのはさっきの試合で私が…えっと…ウデヒシギジュウジカタメ?という技をかけたトマだ。

メルがボソッとトマトとつぶやいたのはゆるさない。ふき出すかと思った。

「こちらこそ、ありがとうございました。もう苦しくない?」

「ええ、大丈夫です。私は頑丈ですから。」

 

トマはもう帰ってしまうので少しさみしくかんじる。

 

「またこんど、手合わせしましょう?」

「レディのお誘いですから喜んで。」

 

にっこりと笑ったトマはとってもカッコよく見えた。

そして私の手をとって、手のこうにキスをしてきた。

びっくりしたけど、わるい気はしなかったからお父さんにするようにほほにキスをした。

 

「やくそく。やぶったらすっごくおこるよ、私。」

歩き出したトマの背中に言う。

「それは怖いのでしっかりと守らせて貰いますね。」

首だけ振り返って言う。

 

「またね!」

「ええ、また。」

 




▼月@日
今日はトマと試合をした。とってもつかれたけど、楽しかった。勝つことができたから、来週は外に出ていいって言われた。楽しみ。

トマにキスをされたけど、いやなかんじはしなかった。ふしぎ。なんとなく、お父さんに…というか先生にされたときとおんなじかんじだった。



トマ許すまじ!何気安く俺の天使にキスしてんの?馬鹿なの?アホなの?殺すよ?
…いや、まぁあいつのしたキスはただ小さい子のご機嫌とりみたいな感じなのは分かってる。けど!それとこれとは別なの!馬鹿か!〜〜〜〜(以下ミミズがのたくったような字でトマに対する罵詈雑言が書かれている。






すみませんでした!書いてはいたのですが、あっちにふらふらこっちにふらふらしてたらいつの間にかこんなに時間が…

次回は番外編を書こうと思います。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Mon premier ami

「先生はいつお父様におあいになったのですか?」

 

親友の娘兼可愛い教え子のメリーちゃんが言う。

メリーちゃんはめちゃくちゃ可愛い。どんぐらい可愛いかというとノーマルな人がイケナイ扉を開けるくらい。僕は半分くらい開けた。

 

「おっ?メリーちゃんてば僕の事知りたくなっちゃったのぉ?えっち♡」

「聞きたいと思いましたがいまので9割くらい聞きたくなくなりました」

 

ん〜毒舌ぅ!なんていいながらメリーちゃんを抱き上げる。こうしてみると本当にあの2人にそっくりだなぁ…

大きな青い目とサラサラとした髪質はシルヴィ譲り。光が当たるとキラキラと様々な色に輝く髪と仏頂面はリアム譲りだ。

 

 

メリーちゃんを抱っこして壁に寄りかかるように座る。必然的にメリーちゃんが三角座りの体制になる、けど大丈夫!さっきまで鍛錬してたからパンツスタイルだよ!汗臭いかもしれないけどごめんね!僕ちゃんと汗拭いて香水かけといたよ!

 

「んーとねーまず、僕とリアムは〜…僕がこっちに来てからすぐだったから6歳くらいの時からの付き合いかな」

「つまりかれこれにじゅむぐ」

「歳が分かっちゃうことやめよ?僕もいい加減身を固めなきゃいけないことを自覚しちゃうから。」

 

べべべつにモテないとちゃうわ!むしろモテモテだよ!ただ…彼女よりもリアムとかメリーちゃんを優先して振られるだけなんだもん…

 

「ぷはっ!じゃあどうでもいいので早くなれそめを教えてください。」

「酷いこと言うなぁ…まぁいいや」

 

「ほわんほわんガブガブ〜」

「噛まれそう…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Sale fils de pute!(薄汚い娼婦の息子め!)

 

Je voudrais pouvoir mourir!(死んじまえばいいんだ!)

 

そう言って周りの人子供達は石を投げてくる。

毎日毎日飽きもせずよくやるなぁって思ってたよ。

 

僕はハーフだった。

フランスとイタリアの。

 

 

当時はまだアメリカやインドとの戦争で負けたばかりだったフランス人はピリピリしていたんだ。

そこにハーフ(外国人)の僕がいればどうなるかは明白だろう。

当然当たり散らされる。家に帰るたびに悲しそうな顔をする母を見るのが嫌なので石を投げるのはやめて欲しかった。

 

 

「死んじまえ!このクソ野郎!」

「クソはお前らだろ」

そんな時だった。リアムが現れたのは。

彼は後ろから背中を蹴飛ばした。

逆光であまり顔は見えなかったけど、ふわふわした綺麗な髪だなぁ…天使様かなぁなんて思ってた。

 

「うわぁ!やべぇ!仮面野郎がきた!逃げろ!ボコボコにされるぞ!」

 

石を投げてたやつはワァワァ騒いで逃げていった。

 

「大丈夫か?」

「うん。」

間近で見るととても綺麗な顔立ちをしている。

とっても綺麗で思わず

「天使様…」

って言っちゃった。

 

「は?」

 

何言ってんだこいつって顔されたけどね!

 

「俺はリアム。お前は?」

「へ?」

「名前だよ名前!」

「あっと…えっと…ガブリエル…です、」

 

同い年くらいの子供に名前を聞かれるなんて初めての事だったから何事かと思った。

 

「いつもああなのか?」

「うん。」

「ふーん、(あとで言い聞かせておこう。)

「え?何?」

「なんでもない。お前家どこらへんだ?」

「ここから10分くらい歩いたところ。」

「じゃあ一緒に帰るか。」

僕はもうリアムがなんて言ったか分かんなかったね。

「へ?」

「明日からお前と一緒に居てやる。」

「は?」

「帰るぞ」

僕の手を掴んでリアムはズンズン進んでくからぽかんとしてたよ。

 

「リアム…くん。えっと…僕と友達になってくれる…?」

「リアムでいい。よろしく頼む。」

 

その時はとっても綺麗な夕日だったんだ。僕らが真っ赤になるくらいのね。

 

 

その日以降から毎日リアムが僕の家に来て一緒に遊んだ。

リアムの家はとっても裕福で、リアムはとっても頭が良くて、リアムの両親はとっても優しかった。

貴族の子供なのに平民の友達を作っても、いい友達になってくれとかあの子をよろしくねとか。リアムの家に連れてかれた時は場違いすぎて気絶するかと思ったよ。

10を超えてからはリアムの家に行ってリアムに勉強を教えてもらったり、フェンシングを教えてもらった。

外国人の父さんをリアムのとこの会社で雇ってくれた時はほんとに助かったよ。

 

 

あとは…そうだな…

 

ああ、そうだ15歳くらいの時かな。

僕はずっとリアムが大好きだったんだ。

だから意外と真面目に告白した事があるんだよ。

男同士はおかしいって?うん、まぁそうだけどね。あれだよ若気の至り。

 

9本のバラの花束を持って、うちに来たリアムに、

「大好きだよ、リアム」

って言って渡したんだよ。

そしたらさ、リアムってはどう返したと思う?

え?キモいって言いそう?言われてたら僕大泣きだわ。

正解はね、

僕の贈った花束から4本のバラをとって、

「愛の告白はごめんだな」

って残りの5本のバラを渡して来たんだよ。

かっこ良すぎない?

ねえ、俺の親友かっこ良すぎじゃない!?

 

 

…はい…ごめんなさい。静かになります…だからシルヴィにバラさないで…

 

 

あと?うーんあとは…そうだなぁ…

 

僕が軍人になった理由とか?

まぁ、アレなんだけどね。

ただリアムの事を守りたかったのがあるし、リアムがいるこの国を守りたかったんだよ。

だって僕の愛してる大事な親友がいるんだもん。あとは母さんと父さんがいるからかな。

親は二の次なのかって?うん。リアムの方が大事。

 

リアム>>>【超えられない壁】>>両親>>>>>その他

 

だったからね。

 

石投げてたやつ?さあ?軍人になってたら死んでるんじゃない?

笑顔が黒い?

何を言ってるのさ。いつもと変わらないピュアっピュアなガブリエルお兄さんだろう?

お父様と同い年だろって…そうだけど…父親と同い年はお兄さんじゃない?

ごもっともです。

 

というかまぁ軍人になったメインの理由はそれじゃないんだよね。

何かって?

立場が上の方になると社交パーティーに参加出来るんだよ。

 

結局はリアムに会うためなんだよね!

 

やー大変だった。

早く昇格する為にひたすら敵の大将ばっかり首獲ってたの。

もー血塗れだし鬼だ悪魔だ言われるし。

良いことはリアムが昇進祝いに一緒に酒飲んでくれる事だけだよ。

 

他ぁ?うーんうーん?何があるかな…

逆にメリーちゃんは何が聞きたい?

…え?喧嘩?喧嘩かぁ…うん、したよ。

 

えっとね、いつ頃だっけ…?まだ10代だった時なんだけど…

 

僕が軍人になって間もなく、フランス革命戦争が起きた。

僕はもちろん軍人だから戦ったんだけど、腹に鉛玉打ち込まれちゃってね。

そしたらさ、リアムってば

「お前が死にかけるなら軍から抜けろ。」

なんて言うんだよ?どれだけ温厚な僕だってプッツンしちゃうでしょ?

「なんで親友のはずのお前が俺のことを否定するんだよ!」

ってキレて怒鳴っちゃって…

「否定なんてしてない!」

「してるだろ!だからお前は…!」

「うるさい黙れ!お前なんか親友じゃない!大嫌いだ!」

「ああそうかよ!僕だっておまえみたいのと別れられて清々するわ!」

 

最初は僕の事心配してくれてたんだけどさ、撃たれて、すぐに戦えなくなっちゃったからさ…ちょっと気が立ってたんだよ…

でもでも、リアムが言葉足らずなのもいけないよね!ね!

 

そんで僕とリアムとで殴り合いの大げんか。転がりながらもひたすら殴って。

もうボロボロで立ち上がれなくなってから、2人とも大泣きしながら、

「ごめん…ごめんね…本当は僕…リアムの事大好ぎだがら"ぁ"!嫌いにならないでぇ"!!」

「すまん…言葉が足りてなかった…すまない。俺とお前は親友だから……。大切なんだ…傷付いて欲しくない…」

 

そんなこんなで仲直r

《両思いのバカップルだ》

ばっ!?

いやいやいや、嬉しいけどね!?

流石にそこまでじゃ…ない…よね?

 

無言で首を横に振らないでよ!

 

えぇ?だからかな…なんかリアムとシルヴィの結婚が決まってから、

「てっきりガブリエルとかと思ってた」

とか周りから言われてたの。

 

うん?シルヴィとのこと?

 

………うん、そう、だね、

 

…シルヴィと出会ったのは22、3位の時なんだけど、急にリアムが

「彼女が出来た。」

とだけ手紙を送ってきたんだよ。

それで、居てもたってもいられずに素早く休みを入れて、リアムに会いに行く旨を伝えて、凸しに行ったんだ。

第一印象は清楚な深窓のお嬢様って感じだった。

 

「僕は認めない!そんなんじゃリアムも子供も守れないだろ!」

今思えば訳わかんないキレ方だよね。なんで母親が旦那もまもるんだよ。

「馬鹿かお前は」

「馬鹿で良いよ!せめて俺のことを倒せるくらいじゃないとダメ!」

そんな(ひと)いないだろって感じだったリアムが、言葉に出す前に、僕の鳩尾に綺麗な体重ののった重いストレートが突き刺さった。

「うぐっ!」

そのまま倒れた僕にシルヴィは

「これで認めてもらえますね?」

ってにっこりしてた。

 

怖かった。

 

 

 

そろそろこれくらいにしておこうか。

もうすぐお茶の時間だろう?

 

お話はこれでおしまい。

また今度ね。




Mon premier ami(初めての友達)

バラの花言葉は愛。
9本のバラは[いつも一緒に居てください]
5本のバラは[あなたに出会えて幸せです]
棘のないバラは友情


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

敬老の日

毎週日曜投稿したかった


あっるっこ〜あっるっこ〜♪

わたっしはげんき〜♪

 

 

オッス俺メル!

幼女(inお兄さん)だ!

現在男装して俺が散歩してるYO!

 

 

…俺誰に挨拶してんだろ…?

まあ良いや

どうせどっかに胡散臭い観測者とか居るんだろうし

 

ちなみに俺たちが住んでる所はフランスのちっちゃい村だったわ。

まぁ周りの家の5〜6倍くらいの大きさの屋敷にその屋敷がもう2、3個立ちそうなくらい広い庭がある。

村の3割くらいうちの敷地なんだけど…?うん?敷地自体は村全部?マジかぁ…

 

 

 

小さな子供が1人で歩いていた。綺麗な顔立ちをして、綺麗な服を着た少年だった。

あぁそれは美しい草原だろうか。それとも艶やかな薔薇が咲き誇る庭園だろうか。白い壁の清廉な街並みだろうか。

そこを歩くならば天使が舞い降りた様な神々しさを感じるだろう。しかしながら彼が歩いて居るのは薄暗く黴臭さが鼻を突く汚らしい裏路地だった。

微笑みをたたえた口元とは対照的に目元は温度を感じられない。それは精巧な人形だと言われても納得するだろう。しかし彼をよく知る者は口を揃えてこう言うだろう。「慈愛を持った優しい瞳だ」と。

そこには彼のことをほとんど知らないボロ布をまとった人々がいるだけだった。

下卑た笑いを浮かべた者たちはゆっくりとその少年に近づいてゆく。

 

 

 

 

えまーじぇんしー!えまーじぇんしー!

 

背後から変態3人が近づいています!武力行使して良いですか!?良いですよね!

 

「坊や?坊やは1人かい?ならおじさんたちと遊ぼうか」

振り返りざまにgoldenなballに蹴りを叩き込もうと心に決めた時、優しそうな声が聞こえた。

 

「あらあら、こんなところに居たのね。お婆ちゃんもう待ちくたびれちゃったわ」

 

声のした方に視線を向けると其処には優しそうな顔をした老婆がいた。

ふむ…これには乗った方がラクだな。

「すみませんお祖母様!早くお祖母様に会いたくて近道しようとしていたんです!」

笑顔のまま老婆のいる変態とは反対方向へ走り出そうとした(・・)

 

 

 

そう、過去形だ。したはした。けど変態が俺の腕をきったねえ手で掴みやがった様なので進めなかった。

 

「よぉ、オバアチャン?坊やは俺らと遊んでくれるみたいなんでね

帰ってくれねえか?」

ニヤニヤしてる変態…こいつ超くっせえ!うん●と吐瀉物とヘドロ混ぜたものを腐らせた臭いがする!

 

我慢がならないのでボコる!

 

体を捻りながら飛び、男のこめかみに膝を叩き込む。掴んでいた腕に子供1人分の体重がかかってバランスを崩したため、簡単に決まって男は崩れ落ちた。

さあ残りは2人!と思って振り返ると先ほどの老婆によって鎮圧されていた。いくら離れていたのが10m程だったとはいえ、膝を叩き込む数秒で倒せるものなのか…?

 

それは置いといて、とりあえずお礼を言わねば!

 

「助けていただき有難う御座いました。マダム」

「おや、でも助けは必要なさそうだったが?」

さっきと口調が違う…

「それでも助けていただいたことは事実ですから。」

ニコニコと笑うマダムの手にはレイピアが握られている。

この人常にこれ(凶器)持ってるのか…?

「そういえば、貴女のお名前は…?」

「あぁ、すまないな。私の名は…そうだな…リア・ド・ボーモンだ。」

 

リア…?どこかで…?いや、ボーモンの方を考えろ…ボーモン……

「君の名前は?私だけが名乗るのは公平じゃない」

「…ぁあ、すみませんマダム・ボーモン。俺の名前はメルです。訳あって姓は名乗れません。」

 

ボーモン?ああ!思い出した!リア・ド・ボーモン!ロシアへ行った女スパイ!

「貴女も本名ではないのでこれなら公平でしょう?」

ねえ?騎士(Chevalier)殿?と続ければ、

「なかなかに賢い子の様だな。将来が楽しみだ」

老婆と少年は含みのある笑みを浮かべて見つめ合う。

 

「俺はもう行きますね。時間は有限ですから。」

「あぁ。ただでさえ君は器量が良いんだからよく気をつけて」

そう言って2人は別れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…じさんたちと遊ぼうか」

 

路地裏から下卑た笑いが聞こえる。それはこのご時世には似つかわしくない…なんてことはない。ごくありふれた光景だ。

路地裏は家のない人々が転がり、飢え死んだ人々が倒れている。そしてそこから見目の良い女子供を連れて行き、金持ちの富豪(変態ども)に売る。

ただその時は気まぐれだった。

 

「あらあら、こんなところに居たのね。お婆ちゃんもう待ちくたびれちゃったわ」

 

いつもの私には似つかわしくないほどの"優しいお婆ちゃん"を演じる。生きていたのならばあの人はニコニコしながら「貴女はそちらの方がよく似合うわ!」と言ってくれただろうか

少年はこちらに気づくとすぐに

「すみませんお祖母様!早くお祖母様に会いたくて近道しようとしていたんです!」

と、こちらに来ようとしたが男に腕を掴まれた様だった

 

「よぉ、オバアチャン?坊やは俺らと遊んでくれるみたいなんでね

帰ってくれねえか?」

約10mほどしか離れていないとはいえ、強烈な悪臭が鼻を突く。

 

 

我慢がならなかったのか、少年は男に攻撃を仕掛けた。

体を捻りながら飛び、男のこめかみに膝を叩き込む。掴んでいた腕に子供1人分の体重がかかってバランスを崩したため、簡単に決まって男は崩れ落ちた。

 

なかなかに良い体捌きだ。男2人を気絶させつつ観察する。

的確に脳を揺らして無力化したのは高得点だな。

 

振り返った少年が驚いた顔をしているのはなかなかに見ものだった。

 

 

 

 

 

助けた少年はとても礼儀正しかった。

 

「助けていただき有難う御座いました。マダム」

「おや、でも助けは必要なさそうだったが?」

マダム…未だに慣れないその呼び方にむず痒くなる。

「それでも助けていただいたことは事実ですから。」

ふんわりと微笑む少年はとても男を昏倒させられそうにはなかった。

「そういえば、貴女のお名前は…?」

名前は…あちらの名では少し有名かもしれないからな…

「あぁ、すまないな。私の名は…そうだな…リア・ド・ボーモンだ。」

 

こちらは知る人ぞ知る名だろう。ましてこんな小さな子供が知っているはずがない。

しかし、心当たりがあるのか少年は考え始めた。

「君の名前は?私だけが名乗るのは公平じゃない」

意地悪をするつもりで声をかけた。

「…ぁあ、すみませんマダム・ボーモン。俺の名前はメルです。訳あって姓は名乗れません。」

 

こんな小さな子供が?訳あって名乗れないなど…

「貴女も本名ではないのでこれなら公平でしょう?」

ねえ?騎士(Chevalier)殿?

 

先ほどの考えが吹き飛ばされる一言だった。

よくぞ気がついた!技術があり、知識があり、実力がある。とても優秀で、若ければ囲っていたかもしれない

「なかなかに賢い子の様だな。将来が楽しみだ」

 

不思議な色をした金髪に深い海の様な瞳。強い光を灯した瞳は【してやったり】と悪戯っぽく細められていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

先程はマダムとの戯れがあったが、今日の目的は違う。

今日の目的は友達を作ること。

しかし、男装するため必然的に友達を作るのは俺になる訳だ。

 

うん?どうして男装するかって?君ィ!ちょっと1話を見直してきなさい

 

それでもわからないニブチンはちょっと変態に襲われればいいと思う。

 

 

 

 

そう!フェルナンと言う名の障害(変態)が居るんだよ!

メリーが歩いていたら近づいて来るだろう?近くだけならまだしもお触りしてくるからギルティだ。

だから俺が男装してる状態で歩く必要がある。

みんなもよく考えてみろ?好きな子とそっくりな男の子がいて、話しかけたら声が少し違うし話し方も一人称も違う。行動も違う。それを同一人物だと思うか?思わないだろ?

だから俺が男装してんの!

 

 

そんなことを誰かに熱弁してると、男の子が1人、歩いてきた。

 

黒い髪に黒い瞳。癖のある髪は肩にかかるくらいの長さで、小麦色に焼けた肌がとても健康的な少年だった。

 

「ねえ君、今暇かい?」

なんて声をかけたら良いか分からなかったからなんかナンパしてるみたい…

コミュ障?うるせえお前らもだろ!

「えっと…俺?」

ちょっとびっくりした顔で自分のことを指差して聞く。

「残念ながら君しかいないんだよね」

「あはは…うん、まあ暇だよ」

苦笑いしながらも暇だと答える少年

「じゃあ俺と遊ばない?」

そう聞くと眼をキラキラさせて、

「本当に?良いの?」

「勿論。だってこっちから声をかけたんだから」

嬉しそうな顔をする美少年はとても目の保養になるなぁ…微笑ましいなぁ…なんて考えていたけれど、

「そうだ!名前!俺はエドモン!エドモン・ダンテスだよ!」

 

この一言で気がついた。もしかしてだけどさ、これって『モンテクリスト伯』の中なの…?

 

君は?と無邪気な笑顔聞かれたから

「メルっていうんだ、よろしくね」

とだけ返した記憶とまた遊ぼうと約束した記憶がぼんやりと残っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ねえ、メルセデスってあのメルセデス?




▼月☁︎日晴れ

今日はふしぎなおばあさんとカッコいい男の子にあった。
きもちわるい男の人にもあったけど、メルが出てたから変なことされなくて良かった。
ステキなマダムはとってもつよかったし、カッコいい男の子とはメルが友達になった。エドモンくんっていうらしいけど、私はともだちじゃなくて恋人になりたいなぁ


今日は予想外の事ばかり起きた。1番はエドモンの事だけど、マダム・ボーモンの事もびっくりだった。普通の女性にしか見えなかったけど…どうなんだろ。











やったね!原作キャラ2人だよ!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

親友に大笑いされた日

前回のは何処が敬老?とか言われそうですが、メルが敬語の時点で結構敬ってます。


エドモンとの出会いからかれこれ数年。現在10歳のメルセデスちゃんでございます。

 

この数年間ずっと悩み続けてきた。友達はエドモン・ダンテス、従兄はフェルナン、そして自分はメルセデス。

アレクサンドル・デュマ作の『モンテ・クリスト伯』の主人公はエドモン、ライバルにフェルナン、恋人のメルセデス。多くの事が合致している。

前世では読んだことはないけれど、アニメや漫画にもなっていたから大まかな事は知っている。

主人公エドモンは18、9歳で船の船長に抜擢され、可愛い恋人メルセデスと結婚が決まり、幸せの絶頂だった。けれどメルセデスに恋する恋人の従兄フェルナン、船長になる事を妬む会計士のダングラール、守銭奴な隣人カドルッスに嵌められて、結婚式の途中で逮捕され、牢獄(シャトーディフ)に入れられる。そこで色々あってファリア神父に宝の隠し場所教えてもらって脱獄し、色々やって美人な元王女の奴隷のエデと出会って色んな人味方に付けてモンテ・クリスト伯と名乗り復讐していく…って話だった筈。

だけど、エドモンとメルセデスは貧乏って設定だったのに、俺らは金持ちの家に生まれた。エドモンの方は貧乏だったけど。

 

つまり、この世界はパラレルワールドな訳だと俺は思った。だから、とりあえず俺はメリーの幸せを願う事にする。原作だとメルセデスはフェルナンと結婚する事になっていたから、それだけは阻止する。というかまず第一にメリーからフェルナンに対する好感度がマイナスになってるからあり得ないはずだ。うん。

 

 

うだうだ考えててもどうしようもないからとりあえずエドモンの家に遊びにいこうと思う。イヤッフゥー!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なあなあ、エドモンって好きな子いないの?」

「ブフッ!」

「きったね!林檎噴き出すなよ…」

「ゲホッ…お前のせいだろ!コフッ…」

おやつに新鮮な林檎を持参してエドモンとお喋りちゅう。

親父さんにも、体が弱いらしいのでいくつか持ってきた。お袋さんは生まれた時に亡くなったらしい。医療が発達してないから意外とある事だった。

 

「で?いるの?好きな子」

今の俺の顔はめっちゃニヤニヤしてると思う。あ、最近気づいた事だけど、メリーは無表情なのに俺に変わると表情豊かになるみたい。

「…教えない」

「ホォー?いるんだぁ?教えてー!」

座りながらエドモンに体当たりする。おしえろー!

教えて!嫌だ!教えて!やだ!教えて!この繰り返しでなかなか聞き出せない。

「じゃあ、女の子の好みは?」

「……」

おお?悩んだり、急に顔を赤らめたり…青春ですなぁ!

エドモンの手で遊びながら待つ。おっ?俺より手がちっさい!

にぎにぎしたり、引っ張ったり、指を絡めたり…

「ねえ、メル…流石に気になるんだけど…」

「だって待つのが暇…」

俺は寂しいと死んじゃうんですぅ〜!ちなみに野生のウサギは1匹で暮らしてるのが殆どらしいよ

「じゃあメルの好みの男の子は?」

「おうテメェいい加減俺のこと女扱いすると〆るぞ?」

「君の〆るは俺の意識が飛ぶからやめてほしいかな」

体はメリーだから女の子だけど、俺は男だし女の子が好きだ。

エドモンの認識としては女顔を気にする男の子になってる。

「ほら拗ねるな拗ねるな。で?メルの好みの女の子は?」

「うぅ…まあ芯の強い人かな…というか俺を女扱いするならせめて力比べに勝てるようになってからにしろよ」

「それは無理だな。俺は忘れないぞ?メルが木を叩き折ったの。」

「あれは悪い夢だったんだよ…」

オレ、ナニモ、シラナイ

「で!エドモンの好みは!?」

「あぁ、俺は…」

サクッ…サクッ…

 

誰かが草を踏みしめてこちらに来る。こちとら美少年2人だから何回も人攫いに出会った事があるため、周りを警戒する。

 

 

大人にしては少し足音が軽そうだった。女性か少年といったところか。

 

木の陰からのぞいてみると、見覚えのある亜麻色の髪が…

おおん…マジか…危惧していたことが起きてしまった……あっ…目が。

 

「っ!メリー?メリー!愛しのメリー!やっと会えたね!僕のメリー!」

ズンズンと歩み寄って来る。そして、一緒にいたエドモンにも気がついた。

「メリー、誰だい?そいつは…君と僕の邪魔をする…」

そして俺を抱きしめる。

こいつは絶対殴りたい。

「大丈夫だよメリー、僕が守ってあげるよ可愛いメリー。僕の奥さん」

ブチッ

訂正しよう。こいつは半殺しにするべきだ。

あとエドモンテメェプルプルしてんの見えてんだよ?笑ってんの気づいてんぞ?

「おい、俺は男に抱きしめられる趣味はないぞ」

意外と低い声が出た。

「…メリー?」

「第一メリーって誰だよ!俺はメルだ!」

そう言って突き飛ばすフリして鳩尾を殴る。

「メリー、そんな言葉遣いしてたらおば様に叱られてしまうよ」

「第二に、テメェは誰だよ!知らねえ奴なのに急に馴れ馴れしくしやがって!」

体制を整えようとするフェルナンを蹴飛ばす

「メリーはこんな事しない!メリーは僕のことを愛してるんだ!貴様は誰だ!メリーのふりをして!」

「してねえよ!さっきから俺はメリーじゃなくてメルだって言ってんだろ!あとエドモンお前いい加減殴るぞ!笑い転げてんじゃねえよ!」

フェルナンの手を踏みつける。

「ごめwwんwwだって我慢できないwww」

イラついたようにフェルナンの顎を蹴ってフィニッシュ。

相手は気絶する。

 

そんで、過呼吸起こしかけてるエドモンの襟を掴んで帰る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これだから俺の親友は。

 

 

 

面白くて手放せないね!

 




◇月#日
今日はフェルナン兄さんに会った。気持ち悪すぎて家に着いてから湯浴みの時に全身を熱心に洗った。……手はそこまでは洗わなかった。
…思い出すだけで顔が赤くなりそう。あれを素でやるメルは凄いと思う。それとも男の子同士だとあんなものなのかな。お父様とガブリエル先生もあんな感じだし…
早く私として会ってみたい…





さて、俺は今日、すっごく自分の体の皮を剥ぎたいと思った。痛いしメリーの体だからやらないけど。あの変態、前よりも悪化してる気がする。メリーのこと奥さんとか言いやがったし…今度俺で会ったら顔面殴り抜いても許される気がする。




このページはここまでのようだ。




















所々、筆圧が強すぎて字が潰れているが、隅に何かが書かれている。


◼️◼️◼️よ
◼️き◼️
独◼️◼️◼️◼️だ


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

初めまして(サヨウナラ)の日

すいません。
県大会で疲れて爆睡しました。

銀メダルとったんで許してくだちい


息を切らして走る黒髪の少年のその顔は喜色に染まっている。

 

向かうのは森の中、大事な友の待つ月桂樹の下へ

 

木の下で野ウサギと戯れる少年は見目麗しく、まるで童話の様だった。

 

 

きらきらと輝く不思議な髪に海を閉じ込めた様な青い瞳、白磁の肌。触れれば壊れてしまいそうな程に繊細だ。

 

「どうしたの?」

 

その微笑みは世間の闇なんて知らない天使の様で、とても美しい。黒髪の少年の頬が赤いのは急いで来たからだけではないだろう。

 

「聞いてくれ!俺、商船の乗組員になったんだ!モレルさんって人の船なんだけど、「エドモン」っ」

 

「おいでよ、取り敢えず座りな。」

 

クスクス笑いながら自分の隣を叩く。

ストンと座ると、

「それで?カッコいいクルーのエドモンくんはどうしたんだい?」

 

ふふん!と自慢げに

あの(・・)モンテゴ商会に商品を卸してる船に乗るんだ!」

 

モンテゴ商会とは、フランスでは知らない人はいないほどの大きな会社だ。主に香辛料と、布製品を扱っている。

 

「凄いじゃ無いか!」

でも…と少年、メルは続ける。

「そしたらエドモンとあんまり会えなくなっちゃうね。」

エドモンはハッとした顔になり、考え込んでしまった。

 

 

 

 

 

 

はい、どうもメルです。

 

うちは結構大きな会社だって知ってたけど、まさかうちの会社に就職(厳密には違うけど)するとは…

 

会うのは控えないとだな。

 

エドモンがパッと頭を上げると、

「そうだ!メルも来ればいいじゃ無いか!」

 

おおん…そうきちゃう?

 

「俺もそうしたいのは山々だけどね、母さんが許さないし…」

めっちゃショボンとしてるな…

 

「じゃあ俺、お土産持って会いに行くから!」

 

「楽しみにしてるね」

 

取り敢えず話はそこで切り上げて、森の中で2人で遊ぶ。

 

 

 

 

 

早く俺は消えなくちゃ…

 

 

 

 

「じゃあね、メル!また明日!」

「またね、エドモン!」

手を振って帰路につく。

 

 

 

 

家に着いてからすぐに部屋に行く。

服を着替えて一枚の便箋を出す。

 

そこにさらりと一文を書く。

 

 

 

【親にバレたからもう会えない】

 

 

そして机の引き出しから小さな小さな箱を出す。

 

古びた木の箱を開ける。

綿をシルクのハンカチで包み、箱の中に入れる。

自分の首にかかったサファイアのネックレスを外し、最近教えてもらった呪い(まじない)とやらを施す。

 

彼に不幸が訪れませんように。

 

壊れにくくなるという、ナイ先生直伝の呪いも施す。

 

「これでよし」

 

箱にネックレスと手紙(メモと言った方が正しいかもしれない)を入れて蓋を閉じる。

 

 

その後はいつも通りに食事をして、湯浴みを済ませ、おやすみのキスをする。

 

 

 

 

 

いつも通りに稽古して、勉強をする。

 

 

「お嬢様、昨夜魔術を使いましたね?何かありましたか?

…そうですか。まぁ別に怒りませんよ、面白そうですし。」

 

何故かナイ先生にはバレたけど。

 

 

 

小箱をポケットにしまい込み、月桂樹の元へ走る。

 

昔は1時間くらいかけてたけれど、今じゃ30分もかけずに着く。

 

息切れ1つせずに着いたそこにはまだ彼は来ていない。

 

10分ほど待てばふんわりとした黒髪が木の間から見えてくる。

 

「お待たせ!さあ、いっぱい遊ぼう!」

 

15なのにまだ彼は純粋無垢で、とっても眩しい。

 

将来で復讐鬼なんて呼ばれるとは夢にも思っていないだろう。

 

 

 

日が傾き始めると

じゃあそろそろ帰ろうか、

という話になる。

 

「待って、エドモン。プレゼントがあるんだ。」

 

「プレゼント?なんだい?」

 

きょとんとする顔が面白くて、でも俺として会うのは今日が最後で、凄く複雑だった。

 

 

「はい、これあげる…大事にしてね」

「わぁ!ありがとう!開けてもいい?」

 

ここで開けられると凄く困る。どうしようか…

 

 

「うーん…ダメ」

家で開けて!

と言えば素直なエドモンは、

「わかった、楽しみにしておくよ」

とニコリと笑って手を振る。

「また明日!」

「…うん、じゃあね!」

 

 

手を振って走り出す。

 

 

 

 

ああ、バレてないだろうか。

全速力で走っているから、だから心臓が締め付けられるように痛いのだ。

視界がぼやけるのも目が乾いただけだ。

息が上手く出来ないのも。

 

 

全部全部、走っているせいだ。

 

 

 

「さよなら、大親友」

 

 

 

 

 

 

 

俺の親友はとても可愛い。

 

ただし男だ。

 

変質者に女の子と間違われて襲われる。

 

ただし男だ。

 

俺の初恋の人物である。

 

ただし男だ。

 

出会いは10年ほど前、貧乏な俺は少しでも父さんを助けようと思い港で手伝いをしていた。

 

獲った魚の仕分けなんかを手伝い、ほんのすこしの駄賃をもらっていた。

 

その帰りに、

 

「ねえ君、今暇かい?」

綺麗なソプラノボイスが聞こえた。

「えっと…俺?」

きっと間抜けな顔をしていたと思う。

「残念ながら君しかいないんだよね」

「あはは…うん、まあ暇だよ」

帰っても誰もいない家に戻ってすることなど無かった。

「じゃあ俺と遊ばない?」

その時の俺はとても嬉しくて、彼にグイグイ近づいていった。

「本当に?良いの?」

「勿論。だってこっちから声をかけたんだから」

 

フフ、と控えめに笑った彼は純粋に綺麗だった。

 

「そうだ!名前!俺はエドモン!エドモン・ダンテスだよ!」

 

勢いに驚いたのか、少し沈黙して、

「…俺は、メルだよ。よろしくね!」

 

そして疲れるまで遊んで、また明日!って別れたら、本当に次の日も来てくれて、

 

「また明日」

 

は会うための呪文だった。

メルは絶対に約束を破らない。

必ずどちらもまた明日と言って帰っていた。

1日もかかしたことがない。

 

 

 

 

 

 

なのに…今日は無かった

 

「また明日!」

「…うん、じゃあね!」

 

ただ、忘れただけかもしれない。

きっとそうだ。

そうに決まってる。

自分に言い聞かせた。

貰った小箱を握りしめて走る。

 

家の中に入って、

「父さん、ただいま。」

「おかえり、エドモン。…おや?どうかしたかい?」

 

箱をそっと開ける。一枚の紙が入っている。

そこには、

【親にバレたからもう会えない。】

という一言だけ。

「…うそだ…」

後から後から涙が出て止まらない。

 

ずっと、ほぼ毎日欠かさず会っていた。

大事な親友だった。

なのに…なのに…どうして?

こんなに急に…

「エドモン…?」

父さんが近づき、紙を覗き込んで

「…メル君からかい?」

 

こくりと頷くと、

「バレたら会えなくなるような立場だったのに、よく毎日会いに来てくれたね。優しい彼に会えなくなるのは悲しいけれど、エドモン、君の人生は長い。いつかまた会えるはずさ。」

 

父さんの大きな手が俺の頭をゆっくりと撫でる。

 

「それに、こんなプレゼントを貰ったんだから頑張らなくてはね。」

 

プレゼント…?まだ小箱の中に入っていたのか…

 

「…え…?」

 

小箱の中に入っていたのは蒼い宝石のネックレスだった。

貧乏な俺は宝石の不思議な輝きに見入ってしまった。

 

あぁ、メルの瞳とそっくりだ…

 

「これはサファイアだね。サファイアには危害から守ってくれる力があるそうだよ。」

大事にね。

 

そう言って笑う父さんは、俺が船に乗ることを心配していたと思えないほど清々しい顔をしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして数ヶ月後に俺は

 

 

 

2回目の恋をした。

 




*月¿日晴れ

エドモン君と、メルが別れた。
別に付き合ってた訳じゃないけれど。
エドモン君はウチの会社と取引しているところに入ったらしい。

今度彼の船が帰った時に視察と称していけないかしら。





エドモンとさよならをした。流石に会い続けてたらメル=メリーに辿り着かれそうだったから。
でも、メリーの幸せが1番大切だから。我慢する。




さみしい。




このページはここで終わっている










▼おまけ

右から強さ順


【挿絵表示】



「何ウチの旦那と娘にベタベタしてるのかしら?」
「タスケテ」
「無理だな」
「ご愁傷様です」

この後ガブリエルがどうなったか知るものは本人達しかいない。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

恋愛した日

先週はテスト期間でして…

すみませんでした。


ザザン…ザザン…

 

ゆったりとした波の音が心地よい。

波に合わせて揺れる甲板で忙しなく動き回る男達。

 

「おい新入り!帆を畳め!」

 

「はい!」

 

港が近づいてきた。

このまま波に乗っていれば着くだろう。

 

「やっと帰って来れた…」

 

 

 

 

 

 

 

「そっと降ろせよ〜!そいつの中身は硝子だからなぁ!」

 

「その箱はこっちでさぁ!」

 

「おら!チャキチャキ動け!」

 

 

船から積荷を下ろしていく。

 

「すみません、これは…?」

「あぁ?中はなんだった?」

中身は…

「たばk「船室の方に隠しとけ!」…はぁ、」

「納得してねえ顔してんなぁ…新入り、お前さんにも教えといてやる。」

「?」

「俺たちは少しだけ(・・・・)悪い事をしてるのさ。煙草や茶なんかを関税の目から隠してるんだ」

関税から隠してる?

…それはつまり…

「密輸入ですか…」

新入りの少年…エドモンは少し顔色が悪くなる。

「安心しろ、これは密輸入じゃなくだだ国外から持ってきただけさ」

「それを密輸入と言うのでは?」

「そうとも言うな!けどこれはモレルさんだって知ってるぞ」

「そうですか」

 

もう何も言うまい。

これは皆がやっている。

俺だって貧乏だから文句は何もない。

木箱を船室の方に隠してから荷物運びに戻る。

 

 

 

やっと積荷を運び終わり、昼飯を胃につめこんでいるとまわりが騒がしくなる。

 

「…何かあったんですか?」

「大ありだ!モンテゴ商会の御息女が視察にいらっしゃった!」

 

モンテゴ商会の御息女………モンテゴ商会の!?

ガタリと立ち上がる若い面々。モンテゴ商会の御息女は若い。

顔は知られていないが、どんな見た目でも構わないと逆玉の輿を狙う男も多い。

 

まあ俺はただただ驚いただけだが、他は皆手摺から身を乗り出している。

 

俺も見てみるか。さぁ、どんなに肥え太った女かな…最近は周りの人達に毒されてる気がする。

女性にそんな失礼な事言っちゃダメだろ!と会えなくなった親友は叱るだろうか。

少しセンチメンタルになりながら自分も身を乗り出してみる。

 

「あの人だ」

そう言って教えて貰った女性を見ると、ロマンチック・スタイルのドレスを着ていた。ワインレッドのドレスは目を引くものの肝心の顔は白いポークボンネットで見ることができない。

こちらに気がついた女性はモレルさんに何かを言ったようだった。

船に上がってきたベテランの人が、

 

「お嬢さんが船員と顔合わせしてみたいとよ!」

 

一瞬だけ硬直したと思ったら皆、ボートの方へと詰め掛けていった。

 

「お前さんは行かないのかい?」

「いや、行きますけど…でもあそこに混じるくらいなら最後に行こうかと」

「冷めてるなぁ…それとも誰か好きな(ひと)でもいるのか?」

えぇ?どうなんだ?

そう言ってつついてくる船長は少しだけメルに似ていた。

「そうですね。まあ好きな人はいましたけど、あの人を超えられるとは思ってないので。」

 

「……ック…あははは!」

船長はキョトンとした顔になったと思えば急に大笑いしだした。

「あはは!熱烈じゃねえか!だがなぁ…一度お嬢さんとあったが、ものすげぇ別嬪だったぜ」

あと20年若ければあそこの仲間入りしてたな!

 

…そんなに美人ならどうせ相手がいるだろうに。

 

 

 

しばらくすればボートが空いて、船長やほかの既婚者の船員と一緒に陸に行く。

 

陸に上がれば、こちらに背を向ける女性。その正面には若い男たち。それでも海の男だから通常よりは身体が大きい。

それなのに普通の男女と変わらない身長差なのは彼女の背が高いのだろう。

「あっ!船長!」

1人の船員が声を上げたためこちらに気づき、振り向いた。

 

それが酷くゆっくりで長い時間に思えた。白いポークボンネットの下から覗くのは彼に貰ったサファイアと同じ蒼。ドレスとは真逆の白磁の肌。ちらりと見える前髪は薄桃色にも見える金糸の髪。

 

「メル…?」

「…え?」

メルよりは数段高い声。

けれど…それでも…彼女はメルと同じだ。あぁ会いたい。もう一度だけでも…

「メル!」

気がつけば勝手に走り出していた。

そして、すぐに抱きしめて…違和感があった。柔らかい。

真綿のようなそれの存在感があまりにも大きかった。

 

「あの?離していただけませんか?」

すぐに手を離して一歩下がる。

そして抱きしめた相手の全身を見た。

身長は自分とあまり変わらないが、ほっそりとした腰と激しく主張する2つの山。

 

メルに似てはいるものの、改めて見れば別人だ。

そして、彼女が誰か思い出しさっと血の気が引いた。

 

「貴方は誰ですか?私を知っているようでしたが?」

 

「エドモン・ダンテスと申します…すみません。もう会うことのできない友人ととても似ていたので…」

 

「…そうですか。まあ、いいです。私はメルセデス・モンテゴと申します。以後お見知り置きを。」

 

あまりにもよく似た彼女は酷く冷めた目をしていた。

 

そのまま後ろにいた船長と話を始めた彼女から視線を逸らすことができない。

 

 

 

 

 

…。俺は人生で二度目の恋に落ちた事を理解した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガタガタと揺れる馬車の中には1人の女性…いや、年齢的には少女と言える。そんな彼女は物憂げな表情で窓の外を見ていた。

「はぁ…」

 

吐き出す息は色っぽく、成熟した体躯も合わせれば妖艶な美女にしか見えない。

まだ幼い顔立ちが背徳感を刺激する。

 

 

〈あぁ、このせいで襲われやすいんだ。〉

納得〜なんて呑気なことをメルは言う。

 

"そんなことはどうでもいいから彼に出会ったらどうしたらいいか教えて…"

 

中身はただの恋する乙女でしかないが。

 

〈えぇ〜?とりあえず他人のふりしておけばいいんじゃないの?〉

"投げやりすぎるわ"

〈だって俺恋する乙女じゃないし〉

"だってメルは彼に好かれているじゃない!"

〈だって親友だし〉

"そうゆう所よ、メル"

〈?わかんない〉

 

メルは本当に好意に鈍いわね。

あれを見てればわかるけどどう見たってメルに初恋持ってかれてるじゃない。

 

〈まぁ予想だけど、あんな別れかたしたしメリーに突撃してくるんじゃないかな〉

 

…言い逃げどころじゃない別れかただったから多分じゃなく突撃してくるわね。絶対に。

 

 

 

 

港に到着してからはまず、モレルさんを探さなければ。

建前はモレルさんのところへの視察にですから。

 

「モレルさん」

「!おやおやこれは、メルセデス嬢。お久しぶりですね」

「ええ、会えて嬉しいわ。けれど、もうお仕事は終わってしまったみたいね。」

「あぁ、先程終わったところでして。今は皆船の上で昼食を食べておりますよ」

「あら…そうみたいね。」

ちらりと船を見やれば落ちるのではないかと思うほど身を乗り出す男たち。

「ねえモレルさん。私彼らに会ってみたいわ。」

「彼らにですか?そりゃまたなんで…」

少し唇が尖っているのは自覚しているけれど…お父様が悪いのよ!

「だって…えぇ、えぇ。分かってますわ、お父様やお母様に大事にされている事くらい!」

「あぁ…旦那様ですか…」

「こんな所でしか出会いなんて無いのよ。どうせお父様は私が気に入った方としか結婚させてくれないもの。それなのに男性と出会う場はまだ早い!なんて言うんですから。」

「苦労してますねぇ…まぁうちの船員達はみんな屈強な海の男どもですから。なかなかに見目のいい奴もいますしね」

 

そう言ってモレルさんは近くにいた男の人に彼らを呼びに行くように言った。

 

 

 

 

「自分、ピエールっていいます!一目惚れです!」

「おいテメェ!抜け駆けしてんじゃねえぞ!」

「ちょっと面貸せや!」

「騒がしくてすみません、レディ。ちなみに俺はサミュエルです。」

「先輩!サミュエルさんがどさくさに紛れて告白しようとしてます!」

「わっ!バカやめろ!」

 

…騒がしいなぁ…

この告白ラッシュはかれこれ10分続いてる。

さして興味のない男性達なのでほぼ聞き流してます。

 

 

飽きたなあ…

 

 

 

「あっ!船長!」

 

船長が来たなら挨拶くらいしておかないといけない。

 

くるりと後ろを振り返ると、

 

 

「メル…?」

「…え?」

流石にこの格好をしていて即座にメルの名前を呼ばれるとは思ってもいなかった。

「メル!」

返事をする間も無く走ってきた彼…エドモンに抱きしめられる

ああああああ!顔が真っ赤になりそうだわ!もう、これをされて平気でいられるメルはおかしい!うぅ、ずっとこのままがいいけれど、平静を保ちながら声をかけなければいけない。

 

「あの?離していただけませんか?」

 

すぐに手がはなれていく。

改めて彼をまじまじと見る。

自分より少し高い身長。黒く、ふわふわとした髪。黄金色の瞳。小麦色に焼けた肌。長い船旅で少し汚れてはいるもののそれが気にならないほどに爽やかな彼に見惚れる。

 

そして、急に彼の顔色が悪くなる。

 

 

「貴方は誰ですか?私を知っているようでしたが?」

違和感のないタイミングで話しかける。

 

「エドモン・ダンテスと申します…すみません。もう会うことのできない友人ととても似ていたので…」

 

「…そうですか。まあ、いいです。私はメルセデス・モンテゴと申します。以後お見知り置きを。」

 

少し気まずくなってしまったのでそそくさと彼の後ろに立っている船長に話しかけに行く。

 

話している間もエドモンの視線が背中に刺さるのがよく分かった。




¥月£日晴れ

今日は初めて私としてエドモンに会うことが出来た。
本当にもう…もう…かっこよかったです…
あと、なぜかすごく話しかけられた。少しでも私に気があった嬉しい。
もっと会いたい。







最近、メリーが推しが尊すぎて語彙が溶けてるオタクみたいな事になってる。
完全にオタク化してやがる…遅すぎたんだ…

なんだかんだでエドモンが元気そうだし、メリーも嬉しそうだから良かった。





この日はここで終わっている。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

有名人と出会った日

短いけど一応


さて、今私が…というよりも俺がいる場所ばどこでしょう?

別にメリーの中とかいう頓知じゃないよ?

 

 

 

 

 

なんとここは!

 

 

フォンテーヌブロー宮殿!

 

 

 

フォンテーヌブロー宮殿ってなんぞや?って人に軽く説明すると、12世紀辺りにルイ6世だかが建ててからちょくちょく増築されてる宮殿で、現在の住人はかのナポレオン・ボナパルト。

 

 

ちなみに今日は父さんの代わりに仕事として来ている。

 

依頼者はナポレオン。

内容は、

息子の服を作りたいから生地を見繕いたい(意訳)

だって。

 

 

ちなみに今の西暦は1811年。

ちょうど彼の息子が生まれる年だ

 

 

なっがーい廊下を数人の部下を引き連れて進んでいく。

 

「こちらが謁見の間にございます。」

どデカイ扉の前に案内される。

まじかーうちの扉も大概デカイけどこっちもデカイなぁ…

うん…現実逃避してるだけだよ。

だって…ナポレオンなんて有名人と会えとか…やばいくらい怖いかもしれないじゃん。ルイ・ル・ビアン・ネメ(愛すべきルイ)ナポレオン・ル・モディ(呪うべきナポレオン)って言われるくらいだし…

 

ええい!ままよ!

意を決して扉を叩く。

 

「モンテゴ商会の者です。」

「…入ってくれ」

 

扉が開き、中へ進む。

まずはドレスの裾を摘んでお辞儀をする。

「お初お目にかかります。メルセデス・モンテゴと申します。父の代理として参りました」

「ふむ…顔を上げてくれ。堅っ苦しいのは好きじゃない。」

顔を上げて、ナポレオンを見る。

短い茶髪にパッチリとした青い目。顎鬚を蓄えているのも特徴的だ。端的に言おう。イケメンだ!イケオジだ!爆はt流石にダメだなあと数年で死んじゃうし。

 

「それでは早速、どういった服をお考えですか?」

 

「息子の寝巻き用の服と礼服、それに動きやすい服が欲しい。」

 

「でしたらまずは寝巻き用の物から、こちらはいかがでしょうか?フランス産の布地でして、綿でできております。ですからご子息様の柔らかな肌に合うと思います。」

「ふむ…ではそれにしよう。他は?」

「こちらの布地で動きやすい服を作るとよろしいかと。こちらはインドから輸入したものでして、細かな刺繍が美しい一品です。他にもこちらの……

 

 

布の性質と産地を伝えていく。案外彼は即決で購入するタイプのようだ。まぁ即決してくれて構わない。うちの商品の質は世界一ィィィィィィ!!!だからね。

 

 

「ご苦労だった。若い女が来たからてっきり質の悪いものでもつかまされるかと思えば、むしろ全部上質なものばかりと来た!良い買い物をさせて貰った!」

 

ニコニコしている彼は礼服を着ていなければ気さくなただのおじ様(イケメン)にしか見えない。

「それはどうも。布地や装飾品の類は父よりも私の方が詳しいですから。これからもぜひご贔屓に。」

「はっはっは!それなら彼もすぐに楽隠居出来そうだな!」

隠居…?あの仕事中毒者(ワーカーホリック)が?

 

「…どうでしょう…あの人が隠居する姿が想像出来ません。」

「まあ優秀な後継者がいることはいいことだ!息子が大きくなってからも頼むぞ!」

「喜んで。」

 

談笑して、奥さんと息子さんも交えてお茶もした。

ルイーズ皇女めっちゃ美人だった。

 

 

 

まあメリーの方が美人だけど!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「つっかれたー!」

帰りの馬車の中で伸びる。

ちなみに数日かけて宮殿まで行った。

まあそれでも次回を取り付けてきたから安いものだ。

"おつかれ様、メル。ありがとうね。"

〈別に、メリーの為ならこのくらいへっちゃらさ!〉

今回、メリーの代わりに俺が行った理由はメリーだと表情筋が動かなすぎてアウトだから。作り笑いも張り付かないような鉄仮面を装備してるメリーに相手をさせない方が良いという2人の判断だった。

 

 

とりあえず、

 

 

 

これ、数年後にボナパルト党として豚箱に放り込まれない?

大丈夫?死なない?

 

 

 

 

 




$月€日曇天
今日はフォンテーヌブロー宮殿に行った。かの有名なナポレオンはただただ気さくなおじ様でした。

最近、メルにばっかり頼っている気がする。あんまり良いことではなさそうだからもう少し自立したい。





ナポレオンとの商談はうまくいった。あと、ナポレオンがパパさんしてるのが意外すぎて笑いそうになった。

良い人だったから死んで欲しくないなぁって思うけど、どうしようもない。
あと最近メリーが冷たい。寂しい。



この日はこれで終わりのようだ。








初の連続投稿!と言う名のお詫びです…




許して♡


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

心の底から告白した日

メリーの一人称はメルとエドモン、フェルナンには「わたし」
それ以外には「わたくし」



そよそよと優しい風が吹く草原

 

森に向かう2つの影

 

傾きかけた太陽は空を紅く染める

 

黒髪の青年と金髪の乙女

 

古いシャツにボロボロのコートを羽織る青年と見るからに上質なドレスを着る乙女

 

一目見ればどれ程身分が違うかが分かる

 

やがて2人は森の奥の小さな宿り木の下へ

 

 

 

 

 

 

意を決したように口を開くエドモン

「メリー…いや、メルセデス。俺は…君が…きみが……」

それ以上の言葉は詰まって出てこないの?

私はこんなにも待っているのに…

「きみが…」

不意にちらりと白い物が目に映る

「あ…」

今日はキリストの生誕祭。

恋人たちはみんな宿り木の下でキスをする。

キス(baiser)しちゃえば?このままだと2人とも風邪引くよ〉

"本当にね。でも、そんな可愛いところが好きなの"

〈彼、揶揄うと面白いよね〉

心の中で2人で笑い合う。

ふ、と笑みがこぼれると彼の顔は真っ赤になってしまった。

ああ、もう、そんなところに私は恋をしてしまったのでしょうね。

私よりも少しだけ高い位置にある彼の頭を引き寄せ頬にキス(baiser)をする。

赤い顔がさらに赤く、リンゴのようになってしまった。

食べてしまいたいくらいだわ。

「その先の言葉はいつまで待てば出てくるのかしら?」

ぐっ、と言葉に詰まった彼はゆっくりと冷たい空気を吸い込み、白い息を吐き出す。

「俺は…君のことを……愛してる!」

「ええ、それで?」

意地が悪いと分かっていても、それでもその先の言葉も聞きたい。彼の首筋を撫ぜるように手を引いて行けばその手をそっと掴まれる。

「俺は君のことを愛している。だから…だから、恋人に…俺の恋人になって欲しい!」

掴まれている手は痛いほどに握られ、告白した彼の顔は赤く不安と希望の混じった表情(かお)をしている。

可愛い可愛い私の愛しい人…やっと愛し合えるのね…

「ええ、勿論喜んで!」

その一言で彼の涙腺が決壊したようだった。

ポロポロとこぼれ落ちる涙を見て、

「涙が止まらないよ。それに嬉しくって、俺はもう死んでしまうかもしれない…」

「貴方が死んでしまったなら私はマルセイユの美しい海に身を投げてしまうわ」

クスクスと笑う2人はどちらからともなく顔を近づけてゆく。

そっと、触れるだけのキスをすれば彼の少しカサついた唇の感覚がしっかりと残る。

「私は貴方のことが世界で1番大好きよ」

「でも、俺は君のことを世界で1番愛してる!」

ふふん、と自慢げに笑う彼が愛おしい。

ずっとこのままで居られれば良いのに…

 

 

 

 

 

 

 

 

暗くなり始めた道を手を繋いで歩く2人

彼の家に向かう途中だった

〈メリー、気付いてる?後ろから誰かが尾けてるよ〉

"…そう"

この道を曲がれば彼の家に着くことは知っている。

曲がろうとする彼の手を引いてまっすぐ進む。

「メルセデス?そちらは俺の家の場所じゃないよ」

「知っているわ。」

「じゃあなんで…」

ピタリと足を止めて振り返る。

「やあ、こんばんわ(Bonsoir)メルセデス。」

「お久しぶりね、フェルナン。元気そうでよかったわ」

長い亜麻色の髪を結った彼は精悍な顔立ちになっていた。が、それでも瞳に映るのはドロドロとした愛欲ばかり。

「綺麗になったね」

「そう?彼に恋をしたからかもしれないわ。でも、貴方は全然変わらないわね」

エドモンに殺意が降り注ぐ。

「其奴が君を誑かしたんだね」

「そうだったとしても貴方に恋心を抱く事は億が一にもないわ」

さらに強く睨みつける彼はなぜ自分が愛されないのかをまったく分かっていないのでしょうね。

「そんなことはないさ…」

彼は私を守るように立つエドモンに狙いを定めた。

「其奴を殺せば君は僕のところに戻ってきてくれるんだろう?」

ナイフを持って走り出した彼。軍人になった彼は素早い。

「彼を殺せば私は貴方を恨みながら死ぬ!」

 

ドリー・バーデン・スタイルにしたバッスルドレスはあまり動きやすいものではない。

そもそもドレス自体が動きやすくはない。

 

 

しかし、隠し武器を仕込むことは容易い。

 

 

たくし上げたオーバードレスの中に仕込んだそれを投げる。

 

キンッと硬質な音が響く。

私の手から放たれたナイフは彼の手のナイフをはじき飛ばす。

 

 

「ど う し て ……?どうして?なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで!メリーはずっと僕を愛しているんだ、そうだろう?僕を嫉妬させるためなんだろう?あんまりにも長い間会えなかったから拗ねているだけなんだろう?そんな奴よりも僕の方が良いだろう?どうしてそんなにそんな汚らしい奴のことを助けるんだい?ねぇ、ぼくのメリー、僕だけのメリー」

 

「いい加減にして!私は最初から貴方のことを愛してなんかいない!気持ち悪いのよ!」

ポロポロと涙を流すフェルナン。だとしても私の心には全く響かない。

 

「そっか…君はニセモノなんだね。昔も居たんだよ。君に似たニセモノが。」

そう言って再びナイフを握ったフェルナンは私の方へと走ってくる。

 

もう一度、今度はオーバードレスの前部分に手を入れる。

 

それを広げてナイフを受け止める。

 

それは以前、胡散臭いチャイニーズが教えてくれたものだった。よくわからないが、ヌンチャクだとか、サンセツコンだとか言う武器らしい。

 

3つの棒が短い鎖で繋いである。繋いでも40cm程しかない。

それでも十分な武器にできる。

 

なるべく怪我をさせないようにしたいと思うけれど、彼はそうではないらしい。

 

「すばしっこいな。早く死んでくれないとメリーに会えないよ。」

 

ふつりと頬が切れ、赤い血が流れる。

 

「あ…」

エドモンが横から飛び出してフェルナンに掴みかかった。

 

「よくもメルセデスに…俺の恋人に怪我をさせたな!」

怒り狂った彼はフェルナンの頬を殴る。

金の瞳には憎悪が映っている。

ああ、嫌だ。彼があんな顔をするのは…それでも私のためにあの顔をするのならば、と愛しさも湧いてくる。

 

けれど彼が責められるのは私の本望ではない。

胸元から針を出し、フェルナンの背後にまわりこんで刺す。

 

ガクリと倒れ、動かなくなる。放っておけばまた襲ってくるだろう。

古びた教会に運び、捨てておく。

 

 

 

 

 

 

 

「さあ、帰りましょう。愛しい人!」

 

 

 

この幸せを邪魔するのならば

 

 

 

 

 

 

 

私は

 

 

 

 

 

殺してでも障害を消し去ってみせる。

 

 




☆月♭日雪
つぎはころす






メリーとエドモンがやっと恋人になった。
これからは熱々な2人を眺めるのにアイスコーヒーが必要になるかもしれない。

あと、いい加減にあの変態をどうにかしなければいけない気がする。気がするだけじゃなくしなきゃいけないと思う。
メリーの殺意が天元突破してるのもどうにかしなくちゃいけない。




この日はこのページで終わっているようだ。



おまけ

ドレスと仕込み武器

【挿絵表示】


やりたかったけどドレスの構造的にできなかったラフ

【挿絵表示】

あのドレスって後ろに詰め物とかしてるんだよなぁ


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

結婚式より少し前の日

友人に、
「前回の変態で穢されたからギャグで浄化して」
とリクエストされたので今回はギャグ(?)です。




ガブリエルと書いてギャグと読む。これ、この小説の常識。


「メリーちゃーん!!」

大きな音を立てて扉を開けたのは、ガブリエル先生だった。

「静かにしてください。扉を壊すつもりですか。」

真っ青な顔で息を切らしている先生は久し振りに見た。

前はお母様との鬼ごっこの時だった気がする

「そんなことはどうでもいいんだよぅ!メリーちゃんてば彼氏出来たの!?聞いてないよ!?」

「逆になんで知ったんですかあなた」

お父様にも言ってないのに。

「マダム達が教えてくれたよ?領主様のとこのメリーちゃん、彼氏さん出来たみたいねーって」

マダムー!何故かなんでも知ってるマダムそんなのも知ってたのか…

マダムを諜報部員にしたら国は安泰かな

「彼氏出来たのって本当なのメリーちゃん!僕を差し置いて彼氏になったのはどこの馬のほn「は?」ヒエッ」

「ええ、ええ。あの人はたしかに身分が低くて貧乏よ。いっつもお世辞でも綺麗だなんて言えないような服を着ているわ。それでもね、私はあの人を愛しているんです。あの人の瞳に、心に、全てに。貴方からしたら馬の骨としか言えないかもしれないけれど、私はあの人のためならなんでも出来る。あの人が死んだのなら私だって死ぬわ。そのくらいの覚悟は出来てるの。だから先生、貴方だろうとお父様だろうとお母様だろうと。あの人の事を悪く言うなら許しません。許せません。良いですね?」

「はい!」

あら先生?別に敬礼なんてしなくて良いのよ?私は別に、貴方の上官じゃないのですからね。

 

 

「ねぇお父様。そう言うわけだからあの人と結婚しても良いかしら?」

先生が私に彼氏が出来たと叫んだ時からずっと居たのは知っていますよ?

 

「却下したらお前はどうするんだ…」

却下したらもちろん、

「私、皇女様に教えていただいたのですよ?オーストリアはとってもステキな国だそうですね。」

 

諦めてくださいね、お父様。私は強情ですから。

「…最近は本当にシルヴィに似てきたな…」

「あら、ありがとうございます。とっても嬉しいですわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カランコロン

 

「いらっしゃい…おや?リアム坊ちゃんにガブリエルの坊主じゃないですか。珍しいですねぇ2人でここに来るなんて。」

ここは小さな居酒屋

酒も美味いし飯も美味い。だが一番好かれるのは何よりマスターの人柄だ。

 

「マ"ズダー!メリーぢゃんがあ"!」

店に入った途端に大泣きしだすガブリエル。

顔から出せる粘液全てを撒き散らしてる状態だ。

「うっわひでえ顔。ほらタオル貸してやるから…まあ座って酒頼め!話はそっからだぞ」

 

ボトルでガブリエルはウィスキー、リアムはウォッカを頼んだ

 

「飲み過ぎて潰れるなよ?今からでもオーダーの変更は受け付けるぜ?ワインにしとけ?これならまだアルコール低いから、な?ストレートで飲もうとするのやめろ!坊ちゃん!ラッパ飲みはいけない!話ちゃんと聞くから落ち着け!」

 

 

 

 

 

 

「ほー?メリー嬢がとうとう結婚かぁ……良いんじゃねえの?」

「良くない!俺の可愛い娘を簡単にやれるもんか!」

ボロボロと大泣きしていたのにまた泣き出すリアム。

「……僕…メリーちゃんと結婚したい…」

泣きまくってガブリエルのタオルは今2枚目に突入している。脱水にならないように水出しとこう…

「坊主の戯言は置いといて、別にメリー嬢が結婚したいって言ってるんだし。それに話聞く限り優しくて貧乏だけど頑張り屋で、周りから愛されてる奴なんだろ?ああ、なんて名前の坊主だったか教えてくれりゃわかるかもしれねえぞ?」

 

真っ赤になった4つの目がじっとこちらを見る。

「エドモンとか言う奴。」

「確かモレルさんのところで働いてる筈だ。」

 

エドモン…?

「おお、ダンテスさんところの倅か!あいつは良い男だよ!優しくて自分から働き始める。父子家庭に関わらず良い男に育ったよな!」

 

「エドモン・ダンテス…許さない…」

酒瓶を抱えながら言ってもあまり迫力がない。

今にも呪い始めようとしている2人を見て、一言。

「フェルナン坊やより万倍マシだと思うんがだな…」

 

「「それな」」

息をぴったり合わせた2人はそのまま残っていた酒を煽り、カウンターに沈んだ。

 

だから言ったのに…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう言えば最近、ナポレオンが引き摺り下ろされたが…商業的な面でナポレオンと関係があったモンテゴ商会は大丈夫だろうか。

 

 

 

 




□月〒日
お父様からの了承が出たので、もうあと数日で結婚することができるわ!
嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい

邪魔をすれば許さない





メリーとエドモンの結婚が決まった。もうあと1週間くらいでエドモンが帰ってくるから、それから結婚式になる。
何事もないと良いのだけれど…

この日はこのページで終わっている


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

幸せだった日

やっと原作開始だぞい


波を割く様に進む大きな帆船

数ヶ月の旅を終えてもうすぐ港へ着く

 

船員の指揮をしているのは一等若い男

黒い髪に金色の目、小麦色の肌

 

この船の船長は彼になった

前任は病に倒れ、海の中で長い眠りについた

 

 

 

 

 

「さあ、帆を畳め!錨を降ろせ!小舟を降ろす準備は出来たな!」

「あいあい船長!」

「エドモン!もうおろせるぜ!」

「じゃあ降ろしてくれ!さあどんどん積荷を運べよ!」

「「「了解!」」」

 

 

積荷を降ろし終わり、皆でちょっぴり(・・・・・)悪いことをしてから家族の元へ帰ってゆく。

 

「やあ、エドモンくん!お疲れ様だ。この後時間はあるかい?何人かで一緒に酒を煽りにいこうと思ってね」

少しふくよかな男性が話しかけてくる。

「モレルさん!ありがとうございます。けれど俺は1番に父さんに会いに行かなければいけないのです。」

モレルはニコニコして、

「そうだった、君は親孝行者だからね!その後はどうだい?」

エドモンは申し訳なさそうな顔をして、

「すみません。俺には父さんと同じくらい会いたい(ひと)がいるのです。」

モレルは大笑いする。

「はっはっは!君はそうだった!とても美しい彼女がいるんだったね!酒はまた今度一緒に飲もうじゃないか!」

「ええ、ありがとうございます。」

そう言って立ち去ろうとするエドモン。

「ああ!エドモンくん、船長就任おめでとう!」

「ありがとうございます。」

「引き止めてすまないね。お父さんのところへ行っておいで」

「はい」

家に向かって走るエドモンの表情(かお)はとても晴れやかだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おや、メルセデスお嬢様!一体如何なされ…あぁ、エドモンでしたらまず父親のところへ走って行きましたよ。いや、お礼をされるほどでは…ほお!結婚!よく旦那様からもぎ取れましたね。さすが奥様の娘、と言ったところでしょうか。」

 

「お幸せに!」

 

 

 

 

 

 

走る、走る、走る。

淑女だと言う事などかなぐり捨てて。

 

駆ける、駆ける、駆ける。

それでも、喜びで頬を上気させながら。

 

さあ、彼の家はもう目の前。

 

 

 

家の外から呼ぶ。

 

「エドモン!」

 

扉が勢いよく開き、待ち人が出てくる。

 

「メルセデス!会いたかったよ!」

 

熱い抱擁を交わし、互いの無事を喜ぶ。

 

「ねえ、エドモン。結婚しましょう!」

「えっ!けっ、結婚!?」

「そうよ!だって、貴方からそんな話が出てくるのに後何年かかるかわからないんですもの。エドモンのお義父様にも私のお父様にもお母様にも許可は頂いたわ!」

「うぅ…何も言い返せないのが悲しいね…でも、俺は一度も君の両親に会ったことないよ?」

私はにっこりと満面の笑みを浮かべる

「ええ、知ってるわ。だから今から会いに行きましょう。」

「……今から?」

そのまま問答無用で手を引いていく。

「もちろんよ。」

「君の家は隣町だよね、今からじゃもう日が沈んでしまうよ。」

安心して、と言って振り向く。

「私の家に泊まって構わないから。」

それでも…と渋るエドモンに、仕方がないわ、とそっと脇の下を通すように抱きつく。

困惑しながらも抱き返してくる彼を可愛く思いながらも首に回された彼の腕が離れないうちに片腕を彼の膝の裏に通して持ち上げる。

 

「メルセデス!?」

そう、所謂姫抱きというものだ。

そのまま問答無用で走り出す。

 

「降ろしてくれ!手を離してくれ!」

そう叫ぶ彼を見て、やっぱり嗜虐心が湧く。

 

「そんなに言うならそうね。」

パッと抱き上げていた手を離してすぐに戻す。

「うわっ!危ないだろ、そっと降ろしてくれないか。」

離した瞬間にギュッと強く抱きしめて来るのがこの上なく可愛い。

「だって、私の愛しい人がすっごく可愛らしいんですもの。少しくらい揶揄ってもいいじゃないですか。」

そっと降ろしながら言う。

「俺としては愛しい人が意外とパワフルだった事に驚いているよ。それでも君のことが好きなのは変わらないけれどね!」

笑いあいながら2人で手を繋いで道を歩いていく。

「さぁ、俺も腹をくくらないといけないね。頑張るよ」

 

「頑張ってくださいな。港に馬車を停めているのでそれで帰りますよ。」

海に沈む夕陽が街を赤く染めていく。空にはもう月が出ていた。

ゆっくりと歩く2人月と太陽は見守っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「娘さんを、俺にください!」

「…………」

へんじ が ない 。ただ の しかばね の ようだ 。

ということはなく、ただ単にメリーが貰われていく事を再認識して、精神がボロボロになってるだけだからモーマンタイ!

「……」

なんでおるん?って言いたくなるけど、ガブリエル先生が壁に寄りかかってムスッとしてる。

やっぱり黙ってればイケメンだね、先生って。

 

「メリー。少しお母さんと外でお話ししましょう?」

「…ええ、分かりました。」

 

ちらりと視線を3人に向ける。エドモンはお父さんの方を向いてるからこちらが見えていない。メリーは"エドモンに何かあれば許さない"とアイコンタクトしている。

お父さんも先生もゆっくりと息を吐いて、

「少し、3人だけにしてほしい。」

と言った。

 

「失礼します」

とそっと扉を閉める。

 

 

中庭でお母様と話す。

「ねえメリー。どうしてあの殿方を気に入ったの?」

メリーは暫く沈黙してから、

「数年前に会ったの。その時に一目惚れして…」

ぱちりと目が合う。

「本当に?そんなに最近じゃなさそうな気がするのだけれど…話してはくれないの?」

この人はやっぱり怖い。

でも言葉の端々から優しさが感じられる。

「本当は、もっと前から。」

「いつ?」

「13、4年前くらいの時…」

ふふ、とお母様は笑って、

「それじゃあ仕方ないわね。貴方がそれだけ大事にするのもわかるわ」

 

くるりと振り返って、

「さぁ、戻りましょう」

彼方も話が終わる事でしょうし、とご機嫌そうに歩いてゆく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「君は本当にメリーを愛しているのかい?」

 

「もちろんです。俺は彼女を一目見た時から愛しています。4年などという短い間だったとしても彼女のことは一度も思い出さなかった事はありませんでした。」

 

「そんなの僕らだってそうさ。彼女がとても小さな時からずっと。君の何倍も思い続けてる。」

 

空気の動く音が聞こえそうなほど静かになる。

ピリピリとしたこの場所はすわ戦場か、と思うほどに張り詰めていた。

 

「あの子を泣かせたらすぐにでも別れてもらう。」

 

「絶対に泣かせませんとも。」

 

 

その後、すぐにコンコンと戸を叩く音が聞こえた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ああ、

 

 

 

 

もうすぐ

 

 

 

 

 

 

始まる劇は

 

 

 

 

 

悲劇(Tragédie)

 

 

 

 

 

 

喜劇(Comédie)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

舞台の幕が今、開いた。




*月◎日 晴れ
明日は結婚式
早く寝なければいけないけれど、明日が楽しなせいで眠れない。
やっと、彼と夫婦になれる。
うれしくてうれしくて死んでしまいそう。





明日は結婚式になった。
エドモンもよくOKしたなと思う。
まあただのバカップルなだけなんだとは思う。
明日の結婚式でもしかしたら新婦が新郎を姫抱きする光景が見られるかもしれない。
それだけ楽しみだ。

この日はここで終わっている。










「よぉ、フェルナン坊ちゃん、俺らの親友!」
「どうしたんだよそんなに浮かない表情してさ!」
「ほーぅ?メルセデスのお嬢にこっ酷く振られたのか?」
「とうとうメルセデス嬢が結婚するとか?」
「おっと、あたりだな?」
「エドモンか、俺にとってもあいつは目の上のたんこぶだからなぁ」
「俺としては良き隣人だぜぇ〜?」
「まあそれはいい、フェルナン坊ちゃんはどうしたいんだよ」
「やっぱりあいつをどっかにやりたいよなぁ」
「だが怪我させりゃメルセデス嬢の怒りがなぁ」
「手を出さなきゃいいんだろ?なら(ここ)を使うのさ!」
「どうすんだ?」
「おうい!ウェイター!紙とペンを貸してくれないか!」
「何すんだよそんなので」
「ちょっとだけ待っとけや」
「そらできた。こいつをある人物にどどければ終わりさ!」
「ほぉ、密告書かい?やっぱり頭がいいなぁお前は」
「そうかい?まあ幸せの絶頂の友人のためにはこんなものはこうさ!」
「まあそれが一番だな」
「さぁ帰ろう!」
「ああ、帰ろう!」




2人が店を出た後に転がっているぐしゃぐしゃの紙を拾い僕はポケットにそっと忍ばせた。









目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

不幸の始まった日

喘息の発作がやばい


幸せとは山のようなものである

 

険しい山の苦しく長い道のり

 

道無き道を進み

 

頂上に立つ(幸せになる)

 

そして少し足を滑らせれば

 

下に転がり落ちるばかり

 

登るよりも早く

 

下へ下へと堕ちてゆく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

真っ白なドレスを身に纏い、赤いカーペットの上をゆっくり歩く

一段ずつ階段を上る

牧師様の前で止まり、彼の方を向く

彼と目が合い、ふわりと微笑む

彼は白い礼服を身に付けている

腕を組み、牧師様に向き直る

 

「新郎エドモン・ダンテス、あなたはここにいるメルセデス・モンテゴを、

病める時も、健やかなる時も、

富める時も、貧しき時も、

妻として愛し、敬い、

慈しむ事を誓いますか?」

「はい、誓います。」

 

「新婦メルセデス・モンテゴ、あなたはここにいるエドモン・ダンテスを、

病める時も、健やかなる時も…」

その時、幸せが壊れる音がした

荒々しく開かれる扉

神聖な結婚式を踏み荒す軍人達

 

「エドモン・ダンテスさん、貴方には逮捕状が出ています。

我々にご同行願います」

 

そう言って軍人達は彼の腕を掴み、無理やり連れて行く。

「離してくれ、どうして俺が…」

「彼が逮捕されるなんて有り得ない!」

「何かの間違いだ!」

どうして…?

 

どうして私のしあわせを邪魔するの?

 

 

邪魔するなら

 

 

 

 

()してしまおう

 

 

「何か間違いよ…

有り得ない…

離して…」

 

ふらふらと覚束ない足取りで進む

 

「離して、離して、離して離して離して離して離して離して離して離して離して離して離して離して離して離して離して離して離して離して離して離して離して離して離して離して離して離して離して離して離して離して離して離して離して離して離して離して離して離して離して離して離して離して離して離して……彼を返して!」

 

走り出して近くにいる軍人に摑みかかる

 

首を握り、折れる寸前まで握っていた

 

 

 

ドスンと首に衝撃を感じてから記憶が途切れている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最後に見えたのは悲しそうな顔をした彼だった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今日は彼女との結婚式の当日だ。

 

窓を開けると清々しい空が見える。

 

お義父さんからプレゼントされた白いタキシードを着て、髪を整える。

 

 

 

 

古めかしい小箱の蓋を開けると

日の光を浴びて深い蒼がきらめく。

 

「今日まで来れたのは君のお陰だよメル。

ありがとう。俺の大親友、ここで見守っておくれ」

 

そっと小箱の蓋を閉めると、ちょうど父の声が聞こえてきた。

 

 

さぁ、俺の人生の晴れ舞台だ!

 

 

 

ああ、こんなにも幸せで良いのだろうか

 

 

 

 

幸せとは己で勝ち取るもの

 

 

 

 

 

 

何と戦えば良いのだろうか

 

 

 

 

 

 

 

 

パタリと扉を閉めた後。

 

ぴきり、と小箱から音がした

 

 

 

 

 

 

 

 

人生とは

 

 

 

誰も

 

 

 

 

幸せになれるという

 

 

 

保証などない。

 

 

 

 

狂ってしまったのはここからなのか

 

 

 

 

 

 

それとも

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最初からなのだろうか

 

 

 

全ては神の思うままに動いているのだ。

 

 

 

 

 

目を覚ませば見慣れた天井で

 

自分の部屋の中にいることに気がついた。

 

 

 

白いドレスを着ていたはずなのに。

今は私のお気に入りのドレスを着ている。

 

……夢だった?

ならばこれから彼との結婚式で、私は彼と夫婦になれるの?

ずっと一緒に添い遂げて、彼の帰りを待つことができるの?

子供を産んで、育てて、独り立ちさせて。

 

…本当に?

私の手にはまだ首を絞めた感覚が残っている。

彼と腕を組んだ感覚がある。

白いドレスを着た感覚がある。

 

…じゃあ、彼は?

連れていかれたまま?

どうして?

お父様なら知っているかしら。

 

嫌に冷めた頭で考える。

 

 

 

「ねえお父様。彼はどうなったの?」

 

何も答えない

 

「答えて?」

 

「…連れていかれた。」

「罪状は?」

「ボナパルト党の人間である可能性が高いため」

何を言っているのだかわからない。

「…は?彼が?何を言っているのです?彼はナポレオンになどあったことなければそんなものに参加するわけないでしょう。むしろ私の方があの人に関係があるではないですか!」

 

ふ、と窓の外を見る。

青く晴れ渡った空は太陽の位置が前に戻っているように感じる。

 

「お父様…今はあれからどれだけ経ちましたか?」

 

「丸2日経っている。少し目を覚ましたと思えば暴れだしていた。」

 

 

 

彼は監獄党に押し込まれることが確定しているらしい。

 

 

彼女(メリー)(エドモン)はこの後、もう二度と会うことはなかった。




息子の机の小箱を開けば粉々に砕けた蒼い宝石が

あの子の宝物であることは知っている。

ずっと昔から親友のあの子と別れの品だ。

「君ももう疲れただろう?すまないね」



*月%日








メリーがもうダメになってきた。
早くエドモンをなんとかしなくちゃ…

どうすれば…



この日はこれだけのようだ。







すごく短くてごめんなさい




おかーたまの好きな数字は8
発狂表8→反響動作あるいは反響言語


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

お別れの日

大会でズタボロです


やっと、やっとだ!

あの忌々しい男を彼女から引き離せた!

 

ああ、もう嬉しくて仕方がない。

これならやっと彼女が僕のものになってくれるのだから!

さぁ早くお姫様を抱きしめてキスをしなければいけない。そうだろう?

 

 

 

コンコン

「どなたですか?」

「僕だよ、愛しいメリー。」

「…お引き取りください」

「どうしてだい?どうして顔をあわせてさえくれないんだ?」

舌打ちが微かに聞こえた。

あの男のせいだ。あの男のせいで天使のようだった彼女が穢されてしまった。

「…お引き取りください。貴方と会う気はありません」

扉を押せばぎしり、と音を立てるものの鍵がかかっているらしい。

小さく縮こまり、ずっと泣き続けている彼女をこの腕で抱きしめたい。そうすれば彼女はきっと素直になってくれるだろう。

 

 

「僕は帰らないよ。君と会うまでは。」

思いっきり体当たりをする。2回、3回と繰り返すと段々と感覚がわかってくる。

7度目で鍵が壊れ、8度目で扉が開いた。

 

革張りのソファーには目を腫らしたメリーがこちらを見つめていた。

 

 

「出て行って下さい。」

「嫌だ。メリー、君が泣いているのが耐えられない。だからメリー、僕と結婚しよう。僕は君を泣かせることなんてしないよ。」

大きな溜息をついた。

「当たり前でしょう。私にとって貴方はどうでもいいので、貴方が何をしても心に響く筈がないです。」

 

強がらなくていいんだよ。悲しいでしょう?結婚式を滅茶苦茶にされただけじゃなくて彼は連れていかれてしまった。

そんなすぐに約束を破る人間となんで結婚しようとするんだい?

 

そのままソファーにメリーを押し倒す。

 

「僕の奥さんになっておくれ。ずっとずっと愛しているよメリー。帰ってこれない男なんて放って置こう。」

「…何ですって?帰ってこれない?」

「おや?知らなかったのかい、メリー。あの憎っくきエドモン・ダンテスは監獄島(シャトーディフ)にぶち込まれたよ。もう死ぬまで出てこれないさ。」

 

「………(う そ)……」

 

「嘘じゃないさ。こんなところで嘘をつく意味が無いよ。」

 

蒼い宝石のような瞳から大粒の涙が溢れ出す。

とても美しい。

 

「………ね……も…る」

「え?」

「死ね死ね死ね!もう絶対に許さない!殺してやる!」

 

押さえつけていた筈の手首が外れている。もう一度捕まえなければ。

そう思い手を伸ばすものの、掴むことができない。手首から先が動かない。

それに気がついた瞬間に激痛がはしる。

「ゔぁぁぁあ!」

手首は外れ、ゆびは数本他の方向に向いている。

カタリ、と音がする方を向けば、レイピアを手にする彼女が。

飛びのいてみるが、避けきれずにレイピアが足を刺す。

グリグリと捻じ込まれ、鋭い痛みが襲い続ける。

 

何度も足や腹を刺される。それでも急所を外しているのは彼女の優しさだろうか。それとも嬲る為だろうか。

 

 

「貴方を殺せば私も監獄島に行けるかしら?ねぇ。」

 

レイピアを振りかぶる彼女は酷く冷たく美しかった。

 

 

そこに不躾に声がかかる。

「ダメですよぉ〜?お嬢様。そんなの殺したって監獄島には行かずに裁かれて死ぬだけですから。」

 

レイピアはピタリと途中で止まり、おろされた。

 

「メイド達に片付けて貰います。」

ドアのそばに待機していたのか、すぐに駆けつけて彼を連れて行った。

「ナイ先生、ごめんなさい。ありがとう。」

「お礼を言われるようなことはしていませんよぉ?」

 

くすくすと笑いながら部屋から出て行く先生を見送る。部屋の奥の扉を開き、寝室へと移動する。

 

 

 

ベッドに座りそのまま倒れる。

今はもうドレスがシワになったって、髪がグシャグシャになったって構わない。

もう…もう…

「疲れちゃったよ、メル。」

〈大丈夫?交代する?…俺はメリーのことが心配だよ…〉

「優しいなぁ…でもね、もう疲れたの。(メリー)はもう目覚めたく無いわ。」

〈待って!待ってよ!〉

「おやすみ、メル」

「待ってよ!」

ガバリと起き上がればもう体の支配権は俺になっていて、何度呼びかけても彼女は何も答えてくれない。

どれだけ彼女を感じようとしても、今まであった暖かさがどこにも無い。

 

 

 

「どうしたらメリーは帰ってくるのだろう。目を覚ますのだろう。」

 

まるで眠り姫のようだ。

 

悪い魔女の呪いでずっと眠り続ける。

 

呪いを解くには、王子様のキス。

 

 

 

 

 

ああ、なんだとってもかんたんなことだった。

 

 

エドモンをたすければいいんだ。

 

 

 

 

 

じゃあまずは何をしようか。

軍人になるのが一番早いが、父さんが反対するだろう。先生も反対する。

 

 

 

 

 

色々なことを考えて俺はとある人物に手紙を送った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

親愛なる友へ

 

お久しぶりですね。

お身体の方は大丈夫でしょうか。

他にも色々と聞きたいことがございますが、あまり長く手紙を書くのは趣味ではないので単刀直入に聞きます。

貴方に直接会って話をする事は出来ませんか?

軍人になった貴方はやはり忙しいでしょうか?

会える日があれば是非折り返しお手紙を届けて頂けると嬉しく思います。

 

貴方の友人

メルセデス・モンテゴ

 

 

宛先は私の兄弟子であるトマ=ロベール・ブジョーだ。

 

彼なら合理的で口が堅い。

人手が足りないといつも先生は嘆いているから多分大丈夫だと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さようなら半身。

 

 

俺は君のことが大嫌い(大好き)だ。

 

 

 

 

いっつも自分勝手で

 

 

 

 

 

いっつも努力して

 

 

 

 

 

いっつも人を傷つけて

 

 

 

 

 

 

いっつも人を助けてる。

 

 

 

 

 

 

そんな君がいなくて俺は清々する(寂しい)

 

 

 

 

 




☀︎月♭日








大事なあの子はもういない。

でも、いつ目覚めても良いようににっきのスペースは空けておこうと思う。


荷物をまとめておこう。

寂しいよ


この日はここで終わっている。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Bénédiction

クトゥルフ風味







覚悟はいいか!?


作者は出来てる!!


もしも

 

 

 

 

 

 

 

もしもあの時

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少しでも変わっていたら?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

真っ白なドレスを身に纏い、赤いカーペットの上をゆっくり歩く

一段ずつ階段を上る

牧師様の前で止まり、彼の方を向く

彼と目が合い、ふわりと微笑む

彼は白い礼服を身に付けている

腕を組み、牧師様に向き直る

 

「新郎エドモン・ダンテス、あなたはここにいるメルセデス・モンテゴを、

病める時も、健やかなる時も、

富める時も、貧しき時も、

妻として愛し、敬い、

慈しむ事を誓いますか?」

「はい、誓います。」

 

「新婦メルセデス・モンテゴ、あなたはここにいるエドモン・ダンテスを、

病める時も、健やかなる時も…」

その時、幸せが壊れる音がした

荒々しく開かれる扉

神聖な結婚式を踏み荒す軍人達

 

「エドモン・ダンテスさん、貴方には逮捕状が出ています。

我々にご同行願います」

 

そう言って軍人達は彼の腕を掴み、無理やり連れて行く。

「離してくれ、どうして俺が…」

「彼が逮捕されるなんて有り得ない!」

「何かの間違いだ!」

 

えぇ、そうよ間違いだわ

 

〈メリー、落ち着いて〉

 

"大丈夫よ、とっても落ち着いてるもの。"

 

「待ってください。どうして彼が連れていかれるのですか?罪状は?」

 

1人の軍人が、一枚の紙を見せて来た。

 

「こちらの密告書が検事殿のところに送られて来ました。」

 

それを受け取り、目を通す

 

そこには、彼が航海中にセントヘレナ島に行き、ナポレオンに会っていたと書かれている。

 

 

「そうですか。だからと言ってこんなに手荒に連れて行く事は無いのでは?事実確認をしていないのですし。ですからまず、ここで聞けば良いではないですか。」

 

「それは出来ません。」

 

「どうして?」

 

「規則ですから。」

 

 

「…分かりました」

 

 

〈落ち着いて、絶対にエドモンは大丈夫だから。〉

"分かってる。ここで暴れてはいけないことくらいはね。"

 

 

「ああ軍人さん!私達のエドモンを早く返してくださいな!」

モレルさんがそう叫ぶと、

 

 

「なんだ、やっぱり犯人なのか。少しでも同情した俺が馬鹿だった。」

と1人の若い軍人が呟いた。

 

聞こえたのは私だけ。

 

 

彼は絶対に帰ってくる。

 

 

 

 

 

耐えなければいけない。

 

 

 

 

 

 

 

[本当に?]

[本当に耐えれば良いだけですか?]

[あんなことを言っているのです。保身に走って彼を牢獄に閉じ込めるかもしれない]

[そんなことない?…言い切れますか?人間というのは昔からそうなのに。]

 

 

グルグルと誰かの言葉が頭の中で巡っている。

 

帰ってくる確証なんて無い

 

耐えていたって意味が無い

 

 

 

私だって知っている人間の醜さ。

 

 

 

 

 

 

[私が狂気(チカラ)を与えましょう]

 

 

 

 

 

 

 

真っ赤に染まる視界

 

 

巻き起こる悲鳴

 

 

温かな液体

 

 

響く怒声

 

 

 

 

 

 

 

 

気がつけば私は若い軍人を殺していた。

 

へし折れた首は骨が突き出している

 

何故かとても冷めた頭は客観的にものを考えていた。

 

軍人を殺した女。

彼は監獄島へ連れていかれる。

ならば連れていかれる前に障害は

 

 

全て

 

 

 

()そう

 

 

 

死んだ軍人の佩くサーベルを手に取る

 

自然と笑みが零れる

 

 

「クハッ…フッ…あははははははは!!!!」

 

楽しい。

 

肉を裂くのが

 

 

血が舞うのが

 

 

悲鳴を聞くのが

 

 

怯えた表情を見るのが

 

 

 

 

 

命が散るのが

 

 

 

とても楽しい。

 

「あはははッ!楽しい、楽しいッ、楽しい!」

 

 

 

 

軍人だけじゃ物足りない。

 

結婚式に来てくれた人。

 

取引先の人

 

村に住む人

 

エドモンの知り合い

 

船乗りさん

 

モレルさん

 

ガブリエル先生

 

お母様

 

お父さん

 

 

 

みんなみんな

 

 

 

()しちゃえ

 

 

 

 

 

白いドレスが真っ赤に染まる。

 

 

 

 

血が床や壁に模様を描く。

 

 

 

 

「うふふふ、最後の1人は貴方ですよ。フェルナン。」

 

 

切り捨てられて尚、笑顔でいる彼はきっと私以上に狂ってる。

 

「あぁ、僕のメリー。やっぱり世界で1番美しい…」

 

 

 

 

 

パチ、パチ、パチ

 

 

「いやぁ、素晴らしいですねぇ。さすがお嬢様です。」

 

「あら、ナイ先生。私、気づいたのだけれど…頭の中で聞こえた声は貴方でしょう?」

 

「よく気が付きましたねぇ。教師としてとても誇らしいですよ。」

 

「ねぇ、先生。この前ね、私の本棚に見知らぬ本が入っていたの。その本にはね、色んな神様が書いてあったの。」

 

「……」

 

「Ia.Ia.Nyarlathotep.」

 

「おや、」

 

「先生でしょ?この神様は。」

 

 

「ええ、そうですよ。それで?何か望みますか?」

 

 

 

「私は…私を生贄に捧げます。だから、彼に害を為す人間全てを殺して!」

 

「分かりました。どうするべきかは分かっているのでしょう?」

 

 

「 にゃる・しゅたん にゃる・がしゃんな にゃる・しゅたん にゃる・がしゃんな 」

 

 

その呪文を唱えると目の前の先生の姿がボコボコと音を立てて変わってゆく。

 

整った顔は靄になり

 

 

浅黒い肌は薄汚れた灰色に

 

 

身体はどんどんと肥大化して

 

 

足は蛸のような触手に変化した

 

 

 

それはとても悍ましく、名状し難き存在である。

 

 

 

それは貌の無いが故に、千の貌を持つ神である。

 

 

 

 

それは冒涜的な言葉を発しながら私の事を掴み上げる。

 

ミシリ

 

 

バキリ

 

 

身体中から嫌な音が聞こえる。

 

意識が飛ぶ程の痛みが襲う。

 

 

 

けれど

 

 

「うふふふ…あははは!」

 

 

 

 

笑いが止まらない。

 

 

「暗黒のファラオ万歳!…ガフッ……ニャルラトテップ…万…ざ…い!…ふふふ…先生…私、先生のこと…家族の次に大好きよ…」

 

 

靄の前まで持って来られ、もう食べられるのみかと思った。

 

 

 

 

 

 

[気に入りました。貴方のことを私の化身にしましょう]

 

 

 

それが聞こえた時には靄の中に放り込まれていた。

 

 

 

 

 

 

[ふふふ、これはこれで面白そうですねぇ]

 

[ああ、喋り方を変えなければ!声もですねぇ]

 

[そうだわ、私はエドモンを助けにいかないと!なんて、どれだけ健気な子なのでしょうね。(この子)は]

 

[まぁ約束は約束ですし。とりあえずフランスの人間を全て殺せばいいでしょう。]

 

 

[さあ、大仕事_______________

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パチッ

 

 

 

 

 

 

ただ眠るだけの神

 

 

 

 

 

 

慰めの唄を聴きながら

 

 

 

 

 

 

数多の(世界)を見る

 

 

 

 

 

そして今、一つの(世界)覚め(壊れ)

 

 

 

 

 

 

 

こうして無駄な(歴史)覚め(剪定され)てゆく

 

 

 

 

 

 

 

「残念ですね。中々に面白い世界()だと思ったのですが」

 

 

 

貌の無い神が1人呟いた

 

 

 

「まぁ、まだ世界()は有りますし。次はどんな面白い事が起きるのか…楽しみですねぇ」

 

 

無い貌が酷く歪な笑みを浮かべたように見えた。

 

 

 

 

 

 

「それでは良い(悪夢)を…お父様」

 

 

 

 




[皆さま、どうでしたか?お楽しみ頂けましたでしょうか?]

[おや、どうしましたか?私が誰に話しかけているかわからないのですか?]

[勿論、貴方達ですよ。これを見ている貴方達。]

[楽しかったですか?他人の不幸話を見るのは。]

[別に楽しくて良いのですよ。だって人間(貴方達)にとって“他人の不幸は蜜の味”なのでしょう?]

[それでは私はそろそろお暇させて頂きます。]

[またどこかの世界()で違う私と会いましょう]












サブタイ:祝福

祝福しろ!

結婚にも邪神召喚にもそれが必要だ!




ついでにバーに色付いた事にも祝福して?


おまけ

【挿絵表示】


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

俺の覚悟をした日

テストがそろそろなのが嫌だ


親愛なる友へ

体の方は健康そのものです。

しかし、最近強制的に退役されましたのでそこで少し参っています。

さて、私も長く文を書くことは得意では無いので用件を書かせていただきます。

前述した通り、現在は従軍しておりませんので時間は余っています。

貴方も健康には気をつけて

貴方の友

トマ=ローベル・ブジョー

 

 

 

次の日には返ってきた手紙

 

律儀な彼は本当に付き合いやすい

 

「俺は、もう決めたから…迷っちゃいけない。」

 

そんな彼にこんな事の片棒を担がせるのは気が引ける

 

それでももう此処には居られない

居たらいけない

俺はあの人達の娘じゃない

 

 

麻の袋にありったけの金貨を詰め込む

 

貴金属の類は別の袋に入れた

 

持っていても怪しまれないサイズのカバンの中にそれを入れる。

ナイフも入れる

以前俺の時に着ていた服も入れる

日記とインクとペンも入れる

 

 

これでひと通りは大丈夫だ

最悪金があればどうにでもなる

 

 

「おやおやぁ?家出ですかぁ、お嬢様?」

バッと後ろを振り返るとニヤニヤしたナイ先生が

 

いっつもそうだ

何か行動を起こすとすぐに嗅ぎつける

隠し事なんて出来やしない

 

「ええ、帰るつもりが一切無い家出です。」

 

ふふふと気色わr((げふんげふん

色っぽい笑みを浮かべる先生

はークッソエドモン以外のイケメン爆ぜろ

(お父さんとかガブリエル先生はイケメンじゃなくて残メンだからね)

「面白そうですねぇ。やっぱり人は自由になるといろんなことをしでかすものです。」

 

人は?

それじゃあまるで

「人じゃ無いみたいないいかたですね」

スッとめを細める先生は異様な雰囲気を醸し出す

これは危ないものだと本能が警報を鳴らしている

「んふふ…そうですね…私は人でなし(・・・・)ですから」

そう言った先生の影が蠢いた気がした

 

 

ダメだ、飲まれちゃいけない

どうしたらいい

殺されそうだ

………………

…いや、別にいいじゃ無いか

この身体なのだからきっと俺は1度死んでいるのだろうから

もっと太々しくならなくちゃ

 

「そうですか。だからといって何も変わらないですし。いいのでは?」

「は?」

先生がキョトンとする

そりゃあれだけオーラ出して脅してたのにこの反応は驚くか

「だって先生は先生でしょう?人だろうが悪魔だろうが天使だろうが神だろうが何も変わりませんよ」

 

ポカンとしていた顔が下を向き、そのまましゃがみ込んだ

だんだんと肩が震えて

「ぷっ…あははははははは!!」

大笑いした

 

「ああ、やっぱりこっち(・・・)の方が面白い!」

何と比べているのかわからないが機嫌が良いことは分かった

 

「そうだわ、先生。先生が神様か何かならお呪いでもしてください。魔除けとか。」

頼んでから物凄い後悔した

 

めちゃくちゃイイ笑顔で

「いいですよぉ!じゃあ…貴方の旅路に(苦難)あれ!」

 

副音声で変なのが聞こえた気がする…

 

「では、私はこれで!」

そう言って出て行く先生を呼び止めようと廊下に顔を出すと…

 

 

既に誰もいない

 

はぁ…

トマトのとこ早く行こ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カバンを持って馬車に乗り込み早2日

マルセイユからリモージュまで最短距離を走ってきた

 

 

「あと1日はこのままかぁ」

誰もいない馬車の中でグデッとする

 

誰もいないなら淑女の仮面なんてつけてられない

 

〈メリー…起きてよ…〉

 

 

時間があればずっとこうやってメリーに話しかけている

でも、やっぱりと言うべきか反応がない

 

 

「メリー…エドモン…」

 

ポロポロと溢れる涙を止めるすべなんてなく

ハンカチを目にあてることしかできない

 

「………フェルナンはいつか殺す……」

 

 

 

 

ガタン

 

 

一際大きな振動で目を覚ました

泣き疲れて寝ていたらしい

 

コンコン

「お嬢様、着きましたよ」

「随分と早いのね。驚いた」

あともう1日かかるはずが半日で着いたのだ

物凄く早い

「馬を褒めてやってください。頑張ったのは馬ですから。」

「そうね、じゃあこれであの子達に美味しい野菜を食べさせてあげて」

そう言って5枚の金貨を握らせる

「そんな!頂けませんよ!お代は頂いているのに…」

「これは半日早く着いたお礼よ。それに貰えるものは貰っておきなさい。断るのは失礼よ。」

渋々というように金貨を受け取った彼は、

「この恩は絶対返しますからね!」

 

そう言って宿屋の方に歩いて行った。

 

 

「トマ!夜遅いけど起きてるかしら!」

ドアを叩くとすぐに

「起きてるよ」

と言ってドアが開く。

ドアを開けたのは金髪の美丈夫…トマだった

数年ぶりに会うけど男前になりやがって!

180後半くらいの身長で灰色ががった青い瞳、天然パーマのふわふわした金髪は耳にかかるくらいの長さだ

最後に会った時はぴっちりオールバックにしてあったのに…

「とりあえず、夜も遅いし泊めてくださらない?」

そう言った途端に顔が真っ赤になるトマ

やっぱお前トマトだわ

「なっ、ななな何を言うんだ、破廉恥な!第一年頃の娘が男の家に泊まるなどと!」

あー忘れてた。こいつエドモン以上のピュアピュア人間だった。

てかお前もう30になるだろ…それでこれって…

「あら、そんな風に考える貴方の方が破廉恥なのでは?」

「〜〜〜ッ!」

さらに顔が赤くなって、もう涙目になっている

やりすぎたかな…?

「取り敢えず貴方はきっと優しいのでか弱い乙女を寒空の下に放り出したりしませんよね?」

「…か弱い…?」

そこだけ真顔になるのやめろよ

取り敢えず野宿嫌なんだよ

 

「まぁ…妹弟子を放り出すほど薄情じゃありませんよ…」

「それじゃあ遠慮なく♡」

揶揄いついでに腕に絡みついてみる

「………」

反応がないと思ったらこいつショートしてる

どうしようもないのでそのまま中に引きずって行った




☀︎月♨︎日







トマの家に着いた。
相変わらずトマがピュア人間で安心したけど心配だ。
明日の朝にトマに全てを話すことになった。どう話すか未だに悩んでいる。
こんな時にメリーがいたら相談出来るのに。







チャラい人とかふざけてる人とかしか書いてないからお堅い人がかけなくなった…
もともとはトマトも堅い人にしたかったのに…
因みに他にもこんな人にしたかった原案↓





いつぞやのマスター:面倒見のいいオネェ
フェルナン:もっとヤベェ変態
エドモン:カッコイイエドモン
お父さん:とっても無口な人
お母様:オラオラ系


作者に文才のないせいで…


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

俺になった日

テストが終わったぞい!


赤点が無ければ冬休みは更新増やせます


朝食を済ませ、ゆったりとしたソファに腰掛ける

 

「それで、要件とはなんです?」

目の前の男…トマが問いかける

 

「もう少しゆっくりしたって良いじゃないですか。せっかちですね」

「それが家主に言う事か?」

「さぁ、どうでしょう。でも、短気は損気ですよ」

湯気の上がるコーヒーを啜る

コーヒーは結構好きだ

香りも落ち着くし飲めば目が冴える

どちらかといえば浅煎りコーヒーの方がフルーティで好みだ

前世にはどちらにしろ泥みたいだと言うやつもいたが…

 

ふぅ、と溜息をついてみる

「こっちが溜息をつきたいです」

本当にもう怒りっぽいなぁ

「だから女の子にモテないのでしょうね」

「聞こえてますよ、余計なお世話です。というか早く本題に入ってください」

あなた、いつもはこんなに揶揄うことなんてないでしょう。

 

「…仕方ないわね。ストレートに言う事にするわ。私は軍人になりたい。その為には何だってする。」

 

トマの手から滑り落ちたマグが床に落ちた

 

ガシャンと耳障りな音が響く

 

「………貴女、婚約者が捕まったからって気でも可笑しくしたのでは?」

「私が狂ってるように見える?」

「…いえ、そういえば貴女が突拍子も無いことを言い出して無理矢理押し通すのはいつものことでしたね。」

「失礼なひと!まぁ自覚はあるけれど」

 

クスリと笑ってからすぐに真面目な顔になる

「本気ですか?」

「勿論よ」

 

そう言ってから俺はナイフを取り出して髪を切った

 

「このくらい本気よ」

残った髪は頸が見えるほど短くなった。

こんな事をするとは思わなかったのかトマは目を見開いた

「分かりましたがどうするんですか?私が出来るのは軍に入るための手引きくらいですよ?」

 

「大丈夫ですよ、私…いや、俺は一応魔術もかじってるから見た目どうこうは問題ない。」

 

持っていた髪を魔術で全部燃やす

ごめんねメリー

君の髪は俺には邪魔だったんだ

伸ばせたら伸ばしてみるね

 

「分かりました。では着替えてきて下さい。それを見て私が判断しましょう…貴女、元々実力は申し分無いですから」

 

「ありがと。俺、トマのそういうところが好きだよ」

「…はぁぁ…私は貴女のそういうところが嫌いですね」

 

 

 

 

 

あはは、いけずだなぁ

そう言ってドアの向こうに消えた彼女は本当に人が変わったようだった。

初めて会ったのはいつだったか…

もう十数年も経つと考えると感慨深いものがある

 

それこそ人形のようだと思っていた

 

私は女性が苦手、確かにそうだ

けれど最初の彼女は少女というよりは人形だと思っていたので何ともなかった

しかし、だんだんと成長して女性らしくなってからだ

見た目だけは一級品で、顔を見て話しづらくなった

ただ、そんな物はすぐに無くなった

亡くなったと言ってもいいかもしれない

見た目がアレでも中身がバトルジャンキー一歩手前な女に湧く羞恥心は即座に死んだ

下手をすればそこらの男よりも男らしい精神をしている彼女に女性だからと剣を向けない事も出来た

それをすればおそらく死なない程度に嬲られるだろうが

 

しかし4、5年前から様子が変わった

婚約者が出来てしおらしくなった

見た目どうりの深窓のお嬢様になった

それでも欠かさず鍛錬はしていたようだ

 

 

そしてまた、今度は女を捨てた

彼女が髪を切った時

 

ずきり、と痛んだ胸の事はきっと無視しなければいけない

そうしなければ、彼女を裏切る事になる

床の茶色い水たまりを見ればひどい顔をしている自分がうつる

 

 

 

染みて取れなくなる前に片付けなければ

 

 

 

 

 

 

割れた破片とともにこの感情も捨てられれば

どれだけ楽になるだろうか

 

 

 

 

 

 

 

 

ドレスを脱いでコルセットを外す

 

綺麗な靴もずっと使っていた黒いシルクのチョーカーも外す

 

ドレスは処分しよう。どうせなら質に入れる方が良い

 

靴ももう履くことは無い

 

それでもチョーカーは手放したく無かった

これはメリーが初めてエドモンから貰ったプレゼントだから

 

「これはメリーだけの物だから…」

 

昔着ていたシャツに袖を通し、丈の長いズボンを履いた

少しヒールのあるブーツを履いてジャケットを着る

 

トマの整髪料を少し拝借して髪を整える

 

 

まだ魔術は使っていないけれど取り敢えずはこれで良いだろう

 

 

 

 

「着替え終わったけど、どうかな?」

俺の事を見たトマは一瞬だけ悲しそうな顔をした

「ええ、男に見えるので良いのでは?それにしても魔術とは便利ですね」

このままで男に見えるなら重畳だな

「まだ俺は魔術使ってないよ」

魔術を使えば俺の見た目が変わったのか驚いた顔をした

「違和感は全くなくなりましたね。取り敢えず交渉してあげますが、貴方家はどうするのです?」

「このままここに住んじゃダメ?」

「ダメです」

ケチー!ちょっとくらい良いじゃん!

まぁお金はそのために持ってきたんだけど

 

「安心してよ。あてはあるからさ」

 

ドレスや靴、少しの宝石を持って来る

 

「取り敢えずこれを質に入れ来ようと思うんだけど良いかな?」

「どうして私に意見を求めるんです」

「…なんとなく!」

だって君、俺が正直に寂しいからなんて言ったら笑うだろう?

《貴女にもそんな可愛らしいところなんてあったんですね》

とかさ

 

 

 

 

 

でもね、

 

 

 

 

君は知らないかもしれないけどね

 

 

 

 

 

 

 

独りぼっちはとっても寒いんだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だから今だけは一緒にいてね

 

 

 

 

 

 




☀︎月@日






意外とトマが上の立場にいたのが良かった。
家も調達できたし良いこと尽くめだ。
模擬戦なんかもしてすぐに5日後には仕事が入ったしまた忙しくなりそう
余計な事を考えなくて済みそうだ。



この日はここで終わっている




どんどんお気に入りが増えてビビってる作者です

世の中って物好きが多いんだね!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

初仕事した日

ちょっと長め


船に揺られて早数日

 

着慣れない軍服に袖を通してブーツを鳴らして歩く

 

「目的地に着くのは後どれくらいでしょうか?」

少し大きめの声で聞く

 

この船には数人の軍人と数週間分の食料、船を操るのに充分な船員が乗っている

「ええ、後半刻ほどで着きますよ!あそこにうっすら影が見えまさぁ!」

見張り台の上にいるガタイのいい船員が教えてくれた

 

「ありがとう!」

満面の笑み、所謂営業スマイルでお礼を言う

赤面している男などいなかった。いいね?

 

海の男は周りに男しかいないからな、そういうのに走る人も多いかもしれない

いくらメリーの面影があるとしても男なんだよ

こっちはしっかり女の子が好きだし

 

取り敢えず船室に戻ろう

ちなみに1人部屋だ

本当はもう1人いたけど…

 

 

 

思い出したく無いほど悍ましい事件だったね…うん

 

 

 

 

 

気をとりなおして荷物を纏める

これから受ける任務というのが目的地に1月留まるようなものだから荷物は多い

 

着替えに、ナイフ、一応の救急キット(手作り)、薬(手作り)、日記、筆記用具、お金、保存食

特に保存食とお金、日記は見つからないようにしなければ…!

 

 

 

 

準備が終わればちょうど上官が来た

「新入り!降りる準備は整ってるよなぁ!?」

「勿論です」

敬礼しないと煩い上官は本当に面倒くさい

「声が小さい!」

「失礼しました!次からは大きくします!」

こいつ難聴かよとか思いながらも表面には出さずに敬礼する

「いいだろう!後数分で目的地に着く!荷物を持って甲板に1集合しろ!」

「はっ!」

詰め終わった荷物を掴み、上官が出て行ってから甲板に行く

後ろからあの上官の怒鳴り声が聞こえるが、隣は部屋が汚かった筈だ。それのせいだろう

 

 

 

 

甲板に並び、説明を受けて船を降りる

 

この島での仕事はたったひとつ

 

 

【ナポレオン・ボナパルトの監視】

 

 

 

それだけだ

 

ただ監視するだけだが、周りはみんなナポレオン達に対してひたすら陰湿な嫌がらせをしている

俺がするかって?

 

…あの人ってうちの上客だったんだよなぁ〜話すのも楽しかったんだよなぁ〜

 

つまりそうゆう事だ

 

 

 

俺の仕事はナポレオン達にくっついている事だった

他の仕事は上官の世話が3人、馬の世話が4人だけだった。と言っても上官が起きている間はほぼずっとナポレオン達を虐めるので一緒にいるのだが

 

まぁちゃんと他にも軍人じゃない人もたくさんいて、お世話してくれる。

 

 

 

何はともあれ、お仕事のスタートだ!

 

 

 

 

 

「さぁどうぞ、ナポレオン将軍?美味しい葡萄酒ですよぉ?」

ニヤニヤと下卑た笑みを浮かべてナポレオンに酒を勧めているのはハドソン・ローだ。一応上官だが、心の中ではこのクズは呼び捨てで構わないだろう。

 

「…頂こう」

明らかにドロリとしてすえた臭いがするそれを一気に飲むナポレオン

明らかに顔色が悪くなっているが、俺はここでは助けに入れない。

「ボナパルト殿…顔色が悪いです!お暇させていただきましょう!」

「おやぁ?まだ食事をしていませんよぉ?良いんですかぁ〜?」

話してるのは俺じゃないけどすごくイラつく。ハゲのデブ野郎と苦しんでるイケオジだったらどっちの方を持つかは明白だろう

 

「構わない、食事は結構だ。」

そう言って席を立つナポレオンの後ろについて行く

廊下に出ると壁に手をつき、足取りがおぼつかなくなる。

「何故ついてくる」

「仕事ですから」

フラフラとしながらトイレに入りひたすら吐くナポレオン

廊下を歩く使用人に声をかけて水差しいっぱいの水とグラス、漏斗を要求する

すぐに持ってきてくれた使用人に老若男女問わず惚れられた実績のあるスマイルで「ありがとう子猫ちゃん❤︎(意訳)」と言っておく。ちなみに仕事中はずっと無表情貫いてるので一瞬で堕ちる。ラクですねぇ!(ヤケクソ)

 

「水です。飲めますか?」

ナポレオンはこちらを睨みつけ、

「…結構だ」

と胃酸で掠れた声で言う

一応今の俺は軍帽をかぶっているので目元に影がかって顔が分かりにくくなっているとだけ言っておこう。

「そのままですともっと辛くなりますよ」

「構わない」

掠れた声のまま即答する。よし、ならば強行してやろう!

ナポレオンの顔を掴んで無理やり口を開かせる。弱っているナポレオンの力では振りほどくことはできないくらいには強い力があるのでそのまま片手で口を開き、空いた手で口に漏斗を突っ込んだ。

「ゔぁっ…!」

苦しくても我慢しましょうね〜と思いつつ漏斗に水を注いでいく。グラス二杯分くらい飲ませてから吐かせるという事を数回繰り返す。

水しか出てこなくなったら完了。この時代にだとこうするのが一番いい。ヤバイもんは吐かせるに限る!

 

「ゲホッ…ゲホッ…くそが」

めちゃくちゃ睨んでくるけど俺より力弱いから怖くないんだよな…

「口の中がまだ気持ち悪いでしょう。これですすいでください」

グラスに入った水を差し出せばもっと睨んでくる。

「また私がやった方が良いですか?」

そういえば渋々受け取ってくれる。

口をすすげばすぐに立ち上がって、彼の部屋へと歩く。

 

彼の部屋は大きく豪華だが、先ほどの嫌がらせを見ると皮肉に感じる

俺はドアの前で監視をする。彼は机の引き出しから本を取り出して何かを書き始めた。

 

 

…腹が減った。十分我慢できる状態だが、それでも嫌なものは嫌だ。また、違う近くにいた使用人に声をかけて彼を見ていて貰う。

 

そのままキッチンに走って、そこの使用人に

「食事はまだ残っているでしょうか?」

と聞けば、ハドソン様が残っていたものを全て食べてしまわれましたとの返答。あのデブ殺してやろうか?

キッチンを少し使う許可と余った食材を分けてもらった。

貰えたのは一部が傷んだ玉ねぎと、乾燥したパン、トマトだった。

どうしよう…メニュー…パンはとりあえず乾燥してて食べづらいし…

 

…よし、パン粥を作るか。

まずは俺の手持ちの保存食より、干し肉を取り出して刻む。

そのまま鍋に水を張って浸しておく。次に玉ねぎの食べれる部分を薄切りにする。トマトは火で炙って皮を剥き、ペーストにする。鍋を火にかけて玉ねぎを入れる。玉ねぎが透け始めたらパンを千切って入れる。トマトのペーストを入れて煮込み塩、胡椒であじを整える。

これで完成。あとは皿を借りて盛り付けるだけだ。

お盆と皿、スプーンを借りて2人分を持って行こうとしたら先ほど、水を持ってきてくれた使用人が、ホットミルクのカップ2つをお盆に乗せてくれた。

「ブランデー入りです。よかったらどうぞ」

なぁ君さ、良かったらって言うなら無理やりお盆に乗っけないと思うの。などと野暮なことは言わずに

「ありがとう」

とあっまーい顔で微笑んでから素早く去る。

…変なもの入ってないよな?

心配になったからどちらも少しずつ飲むけど、なんともなかった。安心、安心。

 

 

 

部屋に戻り、使用人にまた同じく老若男女問わ(ryで微笑んで耳元でありがとうと囁き、真っ赤になって後ずさりしたら目を細めて艶やかに見えるように笑う。そうすると首まで真っ赤にして走っていく使用人。

 

 

 

男であの反応なら女の子にしたらどうなるんだろ。

 

ナポレオンは机で未だに何かを書いている。その横の空いたスペースにお盆を置いて、ベットの横の椅子を持ってくる。

 

「何をしている」

「一緒に食事でもどうかと思いまして。」

不服そうなナポレオンを無視して軍帽を外して側に置く。

「安心してください。変なものは入ってませんよ。」

湯気のあがるパン粥をナポレオンの近くに置き、自分の分をスプーンで掬って食べる。あっつい。そっと息を吹きかけて冷ましてからそれを口に突っ込んだ。…ナポレオンの。

ナポレオンは目を白黒させている。スプーンを引き抜いてから、

「美味しいですか?」

と聞くと、驚きつつも首を縦に振ってくれた。

皿をナポレオンのものと交換してから食べ始めれば、俺が毒味もしているからか、食べてくれた。ホットミルクも目の前で一口飲んでから渡せばすぐに飲んでくれた。

なんだろ…こう…餌付けしてるような…この感情…これが母性か…

 

 

食事が終わり、ナポレオンの警戒心も和らいだようなので、少し会話を試みた。

「自己紹介がまだでしたので、今させていただきますね。私の名前はメル。メーガス・グランツです」

これはトマと一緒に考えた偽名だ。

メルだけだとバレる可能性があるからね。

「分かった。ところでメル、君はどうして俺の利になる事をする?バレれば捕まるだろう?」

「何のことでしょう?私はただ貴方に無理やり水を飲ませては吐かせていただけです。料理だってただ作りすぎただけですよ」

真っ直ぐに目を見て話せば、すぐに彼から笑みがこぼれる。

「そう言うことにしておこう。とりあえず助かった。礼を言おう。」

あれを飲んだあとは吐くだけじゃなく下痢までするんだと苦笑いをするナポレオン。

「礼には及びませんよ。ただ少し、恩を返そうかと。」

「恩?」

えぇ、そうです。と答えて、にっこり笑いながら彼の椅子の背もたれに手をついて、顔を近づける。あごを人差し指で撫で上げれば、彼の顔が引きつる。笑いそうになるが、ここで大笑いすると負けだ。耳元でそっと、

「私のことを忘れてしまいましたか?」

と声をメリーの方に戻して囁く。

笑いながら顔を離せば、驚きに満ちた顔をするナポレオン。クスクスと笑ってから、

「それではお休みなさい。また明日」

と言って、食器を持って部屋を出て行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼が覚えているようで良かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1ヶ月間は独りぼっちにはならなくて済みそうだ。




♭月☆日






やっと到着した。
船旅のストレスと、メリーのいないストレスで周りをひたすらいじった感がある。周りに変な疑いを掛けられないといいなぁ…



この日はここで終わっている。




ナポレオンが見せ筋と同じ筋力と聞いて


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

気に入られた日

赤点回避ー!!!
イヤッホゥ!





最近フランス大変だなーと、思いつつ投稿


ふと、目を覚ました

 

ベッドから降り、カーテンを開く

 

 

まだ日が昇っておらず薄暗い

 

窓を開ければじっとりした風が吹き込む

 

 

勝手に目が覚めたのは久しぶりだ。最近は彼が日が昇ると同時に起こしに来ていたからな。

 

着替えを済ませてもまだ日が昇らない。暇を持て余す事が最近は無かったから何をするべきか迷う。書き物は昨夜に書けることは書いてしまった。

 

 

 

ならば逆に彼を起こしに行くというのも一興だろう。

一度思いつけばそればかりを考えてしまう。

 

「…よし」

決めたらば即座に行動するのが俺の信条だ。

 

 

廊下は明かりが無く、何も見えない。

燭台を片手に彼の部屋へと歩を進める。

 

 

 

 

〜♪………〜♬

 

微かになにかが聞こえる。歌だろうか?

 

 

近づいていくにつれて音がはっきりと聞こえる。鼻歌のようだ。

 

 

〜♪〜〜〜♩〜〜♬

 

 

…違和感を感じる。良く通る綺麗な音だ。しかし、些か響きすぎているように思える。いや…響いているのか?複数の音の様な…

 

 

Ru〜〜〜〜♪〜〜〜〜♬

〜〜〜〜〜♪〜〜〜〜♬

Ah〜〜〜〜♪〜〜〜〜♬

部屋の扉の前に立った。明らかに1人の声ではない。3人の男女がハミングしている様だ。だが、彼にそこまで親しい者は居ただろうか?使用人か?ただ、もう起きてしまっているというのは確定の様だ。それでもこの扉を開けるだけでも驚かすことは出来るだろう。

 

ガチャリ

 

扉を開くと目を開けていられないほどの強い風が吹いた。燭台の灯りは消えてしまっただろう。目を開ければちっとも荒れていない部屋の真ん中で服を着る途中の彼がいた。白磁の肌の身体は鍛え上げられており、しなやかな筋肉のついた上半身が惜しげも無く晒されている。

 

目が合うと、口元を緩めて

「…貴方は覗きの趣味でもあるのですか?」

と、揶揄ってくる。

あまりにも整った彼の顔で言われるとどきりとした。それを自覚しているのか、いないのか、周りの人間をいつも弄んでいるのが彼らしいと言えるのかもしれない。

 

彼は

悪戯を好む少年の様であり

 

人を誑かす毒婦の様であり

 

荒々しい益荒男の様であり

 

慈愛に満ちた聖母の様だ

 

 

初めに見た時は冷たい氷の様な奴だと思った。

 

しかし、俺の口に食事を突っ込んだ時は悪戯に成功した子供の様だった。その後にこちらを見る目は優しい母親の様で、居心地が悪かったのを覚えている。暇になると使用人に(男女問わず)声をかけて誑かしているのも見かけた。夜になると外でひっそりと鍛錬しているのも幾度か見かける事が出来た。

 

 

彼の本質がどれなのかも分からない。ましてや本当に男かも怪しい。

けれどそれでも俺は(彼女)が気に入っている。

 

 

これだけ人に気に入られやすく、意外にも人望が厚い彼が全盛期に居たのならば何か変わっていたかもしれない。

 

 

 

いや、そんな夢物語はあり得るはずがないか。

 

俺と彼が共に戦場に立つなど…

 

 

 

 

不可能なのだ

 

 

 

 

 

 

だが…

 

 

そういえば

 

 

 

 

 

 

俺の辞書には『不可能』って奴は居なかったな

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

軍のお上からの推薦だとかいうクソガキがこちらに来るという知らせを受けた時、

 

 

上に気に入られたクソガキという会ったことのない奴を想像しては苛ついていた。

 

 

只でさえイラつく原因のナポレオンが近くにいて、いびってストレスを発散出来ても追加でストレスの種が増えるとか最悪だった。

 

戦場に出た事もないクソガキがこの島に来てひと月働かせる?その後に今度はすぐ出世?なんなんだよクソが!

 

 

軍に入って俺の下につくなら殴ったって構わないだろう。

 

そう思いながら会ったクソガキは、身長が高く、無表情で、軍に入るにしては細かった。やっぱりスカした奴だとか思い、イチャモンをつけた。だがそいつは全て無視しやがった。ムカついて掴みかかったら、全て避けられて、終いには

「どうかなさいましたか?」

とにこやかに笑って言われた。その時はカッとなってやってしまった。

その後、会話をするうちに欲しいと思った。

男に惚れるなんてありえないと思っていた。だが、冷たくも美しいあの男を自分のものにしたいと思った。だからあいつの前ではナポレオンのクソ野郎をたっぷり絞った。

だからきっと強い俺を気に入ってくれるだろう。

ああ、楽しみだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれ?なんかさぶいぼが…

 

最近、クソデブのクソ野郎に付きまとわれて女の子口説き辛いと迷惑してる

 

ずっとこっち見てるし、空き時間にはすぐ寄ってきて腰に手を回そうとしてくるのが本当に不愉快だ

 

あのクソ野郎には声かけてないんだけど付きまとってくる

俺としてはフェルナンの方がマシ……いや、マシも何も変態はまず第一にお断りだわ

 

 

 

そういえば

今日は珍しくナポレオンが自力で起きてきた

 

いつも通りに日の出前に起きて、鼻歌を歌いながら着替えていた

いつも、鼻歌を歌っているとナニカが部屋に入って来る。

鏡にも映らず、触れられもしない。けれどそこにナニカが居る。

実害は無く、見えない彼らは一緒にハミングして、気がすむと帰っていく。

 

ナイ先生がアレだったから、その類の何かだろうと別に怖くはなかった。

 

ただ、今日はハミング中に邪魔をされて怒ったようで、彼に風をぶつけて帰って行った

先生から俺のことを聞いているのか、人に害になる事は一切しない様だ

 

 

邪魔をした本人は何が起きたか分からず、ポカンとしてから、

こっちを見て顔を赤くした。

 

魔術がかかっているから安心だが、今は着替え中で上裸だった

物凄くマジマジ見てくるナポレオンを揶揄いつつ、着替えて、いつもと同じように過ごした。

 

 

 

後数日で帰ることになっているので、少し寂しいがこれもエドモンとメリーの為なら我慢できる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時間がかかるけど、待っててね

 

 

 

 

 

 

 

 

俺、頑張るからさ




◼️月◇日






今日はナポレオンにラッキースケベされた。
彼はエドモンの次くらいに揶揄うととっても楽しい。
でも後数日で別れるので、まあしょうがないと思う。




この日はここで終わっている


次辺りに感想とか、友人からとかの質問回答やろうと思います。



そんなのがないとパパさんママさん先生諸々が登場できないですしおすし


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Une question①

冬休みだーーーーーー!!!!





台本形式ですよ


わちゃわちゃ

【挿絵表示】



ニャル「どうも皆様、お久しぶりに御座います。私、お嬢様の家庭教師をさせていただいておりました、ナイと申します」

「メインのMCをさせて頂く事になりました」

 

ニャル「実況、解説には御三方が来ております。自己紹介をお願いしますね」

 

リアム「リアム・モンテゴだ。メルセデスの父親で、モンテゴ商会の2代目社長をしている」

 

ギャグ野郎シルヴィ「ガブr「シルヴィと申します。メルセデスの母親で、社長補佐をしております。どうぞお見知り置きを」

 

ガブリエル「…ガブリエル・グランドだよ。リアムの幼馴染で、フランス軍に入ってるんだ。はっきり言って僕はシルヴィが苦手だ」

 

ニャル「ありがとうございます。皆さま40過ぎなのに若々しいですねぇ」

「それではお次はゲストの紹介です。どうぞ」

 

竹「どうも。作者の竹俣兼光です。高校生です。ゴリラとか、眼鏡取ったら指名手配犯とか言われます。推しはアステリオス、苦手なのはドリカムおじさんです」

 

エミヤ「作者友人①のY田…の代役のエミヤだ。チャームポイント…?……眼鏡と前髪だそうだ。推しは…衛宮家で、苦手なのは同じくコロンブス」

 

ニキ「作者友人②のI場の代役のクー・フーリンだ。チャームポイントぉ?えーっと…サラサラな髪らしいぜ。推しは、小っ恥ずかしいなこれ…クー・フーリン'sって書いてあるな。嫌いなのは…死因:チーズ?メイヴじゃねえか」

 

ニャル「見た目は可愛らしいもちなのにこの声なのは違和感しかないですね」

 

ガブリエル「ねーリアムー僕そんな事より甘い物食べたい!仕事しないで構ってよぉ!」

 

リアム「黙れ。一番の稼ぎ時に引っ張って来たのはお前だろう。」

 

ニャル「少し早いですがガレット・デ・ロワならありますよ?」

 

ガブリエル「ありがとー貰うね!……残念、ハズレだー」

 

エミヤ「では私も頂こう」

 

ニキ「俺はそれより酒が欲しいぜ」

 

シルヴィ「じゃあ私も失礼して…」

 

 

エミヤ「おっと、私が当たりか」

 

 

 

竹「どうでもいいから早く進めよう?」

 

 

 

Q1, I場より

フェルナンの変態さが10歳にしてはやり過ぎでは?

 

A,

知ってる。

反省も後悔もしてない。

だってその方が面白いでしょ?

 

Q2, Y田より

推しはまだか?

 

 

A,待て、しかして希望せよ

 

Q3, 〃

クトゥルフ関係の解説寄越せ

 

A,

ニャルラトテプ

貌が無い故に千の貌を持つ邪神

化身いっぱい。

悪戯っ子で気分屋。

土を司ってたはず。

今回は黒い男(The Black Man)イメージしました。

名前はナイ神父から。

 

透明なナニカ

トルネンブラの事。

あんなに優しく無い。

生きた音で、クトゥルフの主神のお守りをしてる。

ニャルの配下。でも邪神。

気に入った音楽家を信者にする。

 

あとはggれ!

 

 

Q4, 〃

他、type moon作品とコラボせんの?

 

A,GOは確定だけど他は気分。

 

 

Q5, 饅頭ともち様

16話について途中からメルの存在感消えてるのが気になるところ。

 

ニャル「これは私が答えましょう!」

彼女(メリー)を誑かすのには(メル)が邪魔でした。なので私はまず、彼を出てこれないように押し込めました。」

「それでも無理やり表へ出ようとするので彼女と同化し始めてしまいました。」

「混ざって1つになった彼女()は願い事を言いましたね?よくそれを思い出して下さい。」

「彼女だけの願いならば幸せになるのは2人です。彼は、願えば自分(メルセデス)が居なくなる事を理解していたのでたった1人の愛しい人のために願ったのです」

 

Q6, スペアカバー様

何人堕とす気だ!?

 

A,いっぱい

男も女もモンペにしようとしてます。

作者がおっぱいも筋肉も好きだからね!

圧迫祭り!

でも腰が一番好き。

脚もお尻も良いよね。

 

Q7, 樹の根様

歌ってたのはニャル関係?妖精伝説?

 

A,ニャル関係っすね

妖精伝説してもいいけど神秘の薄れた世界では…ねぇ?

 

 

ガブリエル「あれ?終わりなの?僕ら出番無し?」

シルヴィ「貴方は帰って良いですよ。私とリアムでこの場を繋いでいますから。」

リアム「…仕事…」

ニャル「無いんですか?質問」

竹「無いんだよねぇこれがさ。だから取り敢えずは裏話的なのでやろうかなと」

 

 

竹「まずはこれ。トマトについて。」

 

ガブリエル「トマがどうかしたの?」

 

竹「ただ単にお前らと違って実在する人物なだけ。」

 

シルヴィ「あら。すごい人なのかしら」

 

竹「後々元帥になる人。」

 

ガブリエル「へー」

 

竹「おまいら知らんだろうが一応coolな旦那と同じ階級だぞ」

 

エミ&ニキ「「……(嫌そうな顔)」」

 

竹「代役働け」

 

エミヤ「…へー」

 

ニキ「そーなのかー」

 

竹「言いたい事があるなら言ってみろ」

 

ニキ「将来のキチガイか?」

 

エミヤ「どうせ発狂するんだろう?」

 

竹「……」

 

エミヤ「おい。」

 

竹「よく理解しておいでですね!次!」

 

「メルの偽名について!」

 

ガブリエル「メーガス・グランツだっけ?」

 

リアム「グランツはどうせグランドだろう。俺の娘なのに…」

 

ガブリエル「トマと一緒だったからね。仕方ないね。僕の弟子が優秀で嬉し痛い!リアム!シルヴィが蹴った!」

 

リアム「よくやったシルヴィ」

 

シルヴィ「私から旦那と娘を取ろうとする輩は◼️◼️◼️します。」

 

ニャル「おや?でしたら◼️◼️◼️◼️◼️◼️の方がいいのでは?」

 

シルヴィ「あら、良いわね」

 

竹「物騒な話は中断して、まぁぶっちゃけメーガスはその場の思いつきみたいなものです。良い名前浮かばないなーとか思いつつ隣の奴と話してて、ハリポタ話した時に動物擬き(アニメーガス)の話になった結果。アニがアニマル的なのだろうしじゃあメーガスは~擬き的なのかな?擬き…ええやん!メーガスにしたろ!ってノリです」

 

「じゃあもう一つ、メルの身体の魔術について。」

 

ニキ「なんかあんのかよ」

 

竹「いや、魔術はナイ先生直伝だし…無茶してもいいかなって…」

 

エミヤ「何が言いたい」

 

ガブリエル「待って、なんか僕予想ついたよ?やめてね?」

 

リアム「早く終わらせろ」

 

竹「あの〜…ね?邪神直伝だし?身体作り変えるとか出来そうだよね?」

 

ニャル「端的にどうぞ」

 

竹「バベルの塔出来ても良いd…グフッ」

 

エミヤ「潰れ……」

 

シルヴィ「そこをどいてくださいな。その生モノの処分が出来ません」

 

ニャル「落ち着きましょう。Y田様が潰れています。旦那様もですよ。書類ぐちゃぐちゃになってます」

 

ガブリエル「さすがに僕も怒るよ?」

 

ニキ「ファーーーww大変だなぁww」

 

 

 

 

 

〜小一時間後〜

 

 

ニャル「解散でいいです?」

 

ガブリエル「べつにいいよー」

リアム「構わん」

シルヴィ「構いませんよ」

エミヤ&ニキ「「周回周回周回周回周回周回周回周回周回………」

竹「頑張れ、超頑張れ、特にニキ」

 

に「それではこれで第一回質問返答コーナーを終わりにしましょう。皆さまありがとうございました」

 

 

 




目を開けば最近慣れ始めた天井だった


不思議な夢を見た


ホームシックだろうか


それならば笑い者だ
帰るべき場所などもとから無いというのに



あそこに居るのは心地いい

しかしそれでは1人のままだ


ああ、考えれば考えるほど空虚(から)になった部分が冷たくなってゆく



さあ朝日が昇る



仕事を始めよう







空虚(さみし)さを誤魔化すためにも










ガレット・デ・ロワって何?
当たり付きのパイ
1月6日に食べるフランスのお菓子
当たったらみんなで盛大にお祝いするんだ!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

運命を信じた日

どうぞ、オリキャラが増えました。

まぁモブになってもらうがな!


薄暗い路地裏

 

糞尿は垂れ流し

 

腐った死体が転がっている

 

生きた者は病を患い、精神を患う

 

 

 

 

 

けれど

 

 

ぁあぁーーーーー

 

 

おぎゃーーーーー

 

 

そんな所でも

 

新しい生命は生まれる

 

 

 

カツン…カツン…

 

 

足音が響く

 

 

 

誰かが来た

 

誰だろうと構わない

 

私はこの子を生かすためには何だってしてやる

 

死体を漁って見つけたナイフを握り、足音に向かって走る

 

闇に紛れる事なんてもう慣れてしまった

 

綺麗な服を着た若い男だ

 

身包み剥いで売ってやろう

 

どうせ死体が一つ二つ増えても何も変わらないのだから

 

無防備な背中にナイフを振りかぶる

 

「…丁度いい所に来ましたね。マドモワゼル」

 

距離を見誤ったらしい

ナイフはギリギリ男に当たらなかった

 

もう一度…

そう思ったけれど

 

振り向いた男の腕には赤ん坊が一人抱えられていた

 

「マドモワゼル、貴女は困っているように思える。私も同じです。ここはひとつ助け合いとはいきませんか?」

 

「テメエは何言ってんだ」

 

「そのままですよ。今、私は乳母を探しているのです。貴女にお願い出来ません?」

 

悪い話ではない

たが、私に頼む理由がない

 

「何故?私にメリットはあってもお前には無いだろ」

 

「そうですね…ふむ…『運命』という奴を信じてみようと思いまして」

「馬鹿か?

第一、その赤ん坊だってお前の子じゃないだろう。何故そんな汚い赤ん坊を拾う」

 

「言ったでしょう?運命を信じてみたいと」

 

「お前は真性の馬鹿だな。いいだろう面白いから受けてやる」

 

心底面白い

 

改めて見た男は背が高く不思議な金髪だった。青い目はキラキラとしているがどこか暗さがある。

 

「私…いえ、俺はメーガス・グランツ。メルと呼んでくれると嬉しい」

「わかったぜメル。私はライリーだ。この子はミア、可愛いだろう?その子はなんて名前にするんだ?」

 

ぴたりと動きが止まった

いや、空間ごと動かなくなったような気がした

人好きする笑顔を浮かべていたメルは表情が抜け落ちた様に思える

 

「…名前……そうだな…俺の子なんだ…でも…彼女の子だ…なぁ、アルベール」

 

虚ろな目で

弱々しい声で

それでも愛おしそうに

その子の名前を呼んだ

 

 

「この子はアルベール。俺の愛する息子だ」

もう一度その子の名前を呼んだメルはとても幸せそうだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

長い船旅を終えて、家に帰ることが出来る

 

仕事が終わって帰る時にはこっそりナポレオンに手紙を残して来た。

読み終わったらすぐ燃やす様に書いておいたが、心配だ。

まぁどうにでもなるだろう!

 

町外れにある家(屋敷と言っても過言ではない)に帰ろうと町の中を歩いていると、赤ん坊の泣き声が聞こえた。

 

いつもの様に捨て子だろうとは思うが、何故かふらふらとそちらに足が向かってしまった。

 

 

 

薄暗い路地裏に布に包まれた小さな赤ん坊がいた

捨てられた直後なのか、汚れたり虫が集っていたりしない

そっと抱き上げるとすぐ泣き止んだ

 

後ろからする微かな衣擦れの音がそこに誰かいる事を教えてくれた

半歩前に出ると背中すれすれを何かが通ったらしい

そのまま振り向けば長く、燃える様な赤毛の女性が片手に赤ん坊、逆の手にナイフを持って立っていた

 

 

「…丁度いい所に来ましたね。マドモワゼル」

ふと、彼女がいれば一人にはならないのではと思った

 

「マドモワゼル、貴女は困っているように思える。私も同じです。ここはひとつ助け合いとはいきませんか?」

それに、軍にいる俺は殆ど家に帰ることが出来ない。ならば誰がこの子の世話をするのか?誰かに乳母をしてもらうしかない

「テメエは何言ってんだ」

 

彼女の抱えた赤ん坊は元気そうだ。彼女自身、少し痩せているものの、ここにいる人間よりはよっぽど健康に見える

 

「そのままですよ。今、私は乳母を探しているのです。貴女にお願い出来ません?」

 

それだけじゃない。彼女の思い切りの良さと、ある程度の実力も選んだ理由だ

 

「何故?私にメリットはあってもお前には無いだろ」

 

確かにそうかもしれない

けれど、やっぱり

「そうですね…ふむ…『運命』という奴を信じてみようと思いまして」

少しだけ、『運命』や『神様』というものを信じたって面白そうだと、ただそう思った

「馬鹿か?

第一、その赤ん坊だってお前の子じゃないだろう。何故そんな汚い赤ん坊を拾う」

 

「言ったでしょう?運命を信じてみたいと」

 

「お前は真性の馬鹿だな。いいだろう面白いから受けてやる」

 

いくら罵られても構わない

それでも今の俺は貴女の子供に向ける愛(母親の愛)を、彼女(メリー)の代わりに注いであげて欲しいと思った

 

「私…いえ、俺はメーガス・グランツ。メルと呼んでくれると嬉しい」

「わかったぜメル。私はライリーだ。この子はミア、可愛いだろう?」

 

ライリー(勇敢な人)ミア(聖母)とは、本当に運命を信じるものだとしみじみ思う

 

「その子はなんて名前にするんだ?」

 

ごく、当たり前のことだ

子供に名前をつけるのは

ただ、思いつかなかった。これ以外の名前は

やっぱりこの子の名前は決まって(知って)いる

 

「…名前……そうだな…俺の子なんだ…でも…彼女の子だ…なぁ、アルベール」

 

きっとこれは変えられない

メルセデスの子はアルベールだという事

愛する我が子だという事

 

「この子はアルベール。俺の愛する息子だ」

 

この子が俺の息子(運命)だという事は




%月!日





子供を拾った。
俺の息子のアルベールは、今はゆっくり寝ている。意外…でも無いがライリーは本当にいい母親だ。3人を風呂に入れて飯を喰わせたらとても綺麗になった。ライリーが話せるのはフランス語でも丁寧な物で無いので、そこだけしっかり教えようと思う。


この日はここで終わりの様だ



ミアはマリアだけでなく、私の子という意味もあります


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

音楽の日

ハッピーニューイヤー!!





サリエリ先生!サリエリ先生可愛よ可愛いprpr


「メーガス・グランツ。貴方を陸軍中将に任命します」

 

厳粛な雰囲気の中、ゆっくりと前へ出る

 

膝をつき、こうべを垂れる

 

「慎んで拝命致します」

 

 

 

 

 

 

王宮を去ろうと歩を進める

 

 

何処からか悲しさを感じるメロディーが流れている。俺はそっちが気になり、目的地を変えた。

 

 

 

音の聞こえる扉を見つけ、そっと開く。そこではこちらに背を向けて誰かがピアノを弾いている様だ

 

 

これは…きらきら星、だろうか

 

 

ピアノの音が終わり、彼はひと息つく様だ。ほぼ盗み聞きだけれど、聞かせてもらったならば感想を言うべきだろうか。ほらそこ!うわぁとか言わない!別に覗きじゃないんだし!

 

拍手をしながら、

「とてもお上手なのですね」

 

と、当たり障りないコメントを伝える。俺がいるとは思っていなかった様で、とても驚いた様子だった。

 

「それはどうも、ありがとう。いつから君は居たんだ?」

 

「そうですね、俺がここに来たのは五分前位です」

 

ニコニコ悪びれなくしていれば、流されてくれるだろう、たぶん

「そうか…それで君は…確か…グランツ少将だったか?」

 

おらって有名だったんけ〜そげな事知らんかったばい…

嫌だなー!エセ方言になるくらい嫌だなー!なんか知らんけど街歩くたびにヒソヒソされてるんだよなー!!!

やだぁ…なんでぇ?ちょっと軍に入って2、3年で少将…じゃねえや中将になっただけやん!きっと先生だってやってるよ!

 

「ええ、俺はメーガス・グランツ。正しくは先程中将の位を頂きました」

 

「おお、それはおめでとう。私はアントニオ・サリエリというしがない音楽家さ」

 

アントニオ・サリエリ?マジで?モノホン?

それを聞いた瞬間、彼の手を即座に握り締めた。うん、もう無意識だね

 

「本当にアントニオ・サリエリですか!?俺、貴方の事大好きなんです!オペラ全部見ました!」

グイグイいったにも関わらず、少し驚いた後にはにかむサリエリさんまじサリエリさん

 

「有り難いね。こんな私の事を気に入ってくれるなんて。しかも今話題になっている軍人さんが」

 

おろ?話題?

「話題って…?」

ポロッと口に出てたらしい。サリエリさんが教えてくれた

 

「知らなかったのかい?確か…物凄くイケメンで、物凄く強くて、何でもできて、凄く優しい…とか。最近は君をモデルにした絵が人気になってるみたいだ。」

 

はへ?何その漫画のキャラクターみたいな奴?俺?

「嘘ですよそんなの。俺は強くないし、カッコよくないし、全然優しくないし、何にも出来ないですから。」

 

だって友達1人すら、自分の半身でさえも助けられない奴が強いはずないでしょ

 

「そんな事ないさ、取り敢えず君が物凄くイケメンなのは私が保証しよう。」

 

えぇー本当にござるかぁ〜?

 

「きっとモーツァルトの方がイケメンですよ」

 

"モーツァルト"と聞こえると、サリエリさんの肩が震えた。だんだんと震えは大きくなり、やがてしゃがみこんでしまった。

 

「…て…い…私は…ヴォルフィを……」

「サリエリさん!?」

 

彼の瞳からポロポロと涙が溢れる

ただ、譫言の様に

「私はヴォルフィを殺していない」

と呟き続けている

 

「落ち着いて下さい、サリエリさん」

同じようにしゃがみこみ、肩を抱く

「貴方がモーツァルトを殺していないというならば、俺は貴方を信じます」

子供をあやす様に背中や頭を撫でる

「たとえ貴方がモーツァルトを殺したと言っても、俺は絶対に貴方は殺していないと信じます」

 

 

 

 

「すまない。見苦しい所を見せて…」

目元が赤いサリエリさんは少し気まずく思っている様だ。まあそりゃそうさな。自分の半分も生きていない様なガキの前で泣いたらそうなる

 

「いえ、気にしてませんよ。誰にも言う気は無いですし」

 

正直、泣いてるのを見て嗜虐心が(げふんげふん可愛かっ(ん"ん"っ何でも無いよ

 

「…その…さっきの事は本当かい?」

さっきの事?さっきって?

「私の事を信じると…」

「どうして初対面で嘘つく必要あるんです?」

ギュッとサリエリさんが抱きついてくる。頬に髭が当たってチクチクするけど、でもそれが心地よく思えた

「…ありがとう…」

「ふふ…どういたしまして!」

ふふ…というかんふふ…っていう笑いだけど、気持ち悪いとか言われなかったしいいよね?内心思ったりしてないよね?

 

 

 

 

 

 

 

少し、彼のことを思い出していた

彼が死んでから二十数年経っている

 

 

私の可愛い教え子

"私が殺した"教え子

 

 

ヴォルフィの作った曲を弾く

 

鎮魂歌(レクイエム)から始まり、ピアノ交響曲、オペラ

最後にきらきら星を

 

 

弾き終わり、鍵盤から手を離すと後ろからパチパチと手を叩く音がした

 

 

「とてもお上手なのですね」

 

柔らかな声が鼓膜を震わせる

気づかなかった。あまりピアノに集中し過ぎるのはよく無いな

「それはどうも、ありがとう。いつから君は居たんだ?」

振り返れば、ニコニコとした美しい青年がいた。ヴォルフィと同じくらいの背丈の青年は、子供の様だった。ただ、ヴォルフィの様な悪戯っ子ではなくてどちらかというと優等生の様だ

「そうですね、俺がここに来たのは五分前位です」

あぁ、この笑い方はヴォルフィそっくりだ。悪戯をして、怒られる時にこんな顔をしていた。

どこかで彼を見たことがある様な気がする

「そうか…それで君は…確か…グランツ少将だったか?」

思い出せば、最近貴族の間だけでなく庶民の間でも噂される様な有名人だと気づいた

軍に入ってすぐに少尉になり、無茶苦茶な事を仕出かし続けて3年程かからず少将になった化け物らしい。正直最初はゴリラを想像していたが、パレードで見た時にこんな細いとは思わなかった。今でも自分の愛馬が怪我をしたからと担いで来た噂は信じていない。彼の愛馬は他の馬のふた回り以上大きかった。キメラだといわれても信じる

 

「ええ、俺はメーガス・グランツ。正しくは先程中将の位を頂きました」

 

「おお、それはおめでとう。私はアントニオ・サリエリというしがない音楽家さ」

まあそれなりに知られてはいるが、彼の様な有名人が知っている筈が無いだろう

そう思ったが、思い込みだった様だ。勢いよく手を握られ

 

「本当にアントニオ・サリエリですか!?俺、貴方の事大好きなんです!オペラ全部見ました!」

鼻が触れ合う程顔を近づけてきた。

近くで見た彼の瞳は澄んだ青色で、太陽の光を浴びた海の様に輝いていた

 

「有り難いね。こんな私の事を気に入ってくれるなんて。しかも今話題になっている軍人さんが」

自分の事に頓着しないのか、噂を知らないらしい。コテンと首を傾げている

「話題って…?」

思わずといった様に漏れ出た言葉に答えてあげる

 

「知らなかったのかい?確か…物凄くイケメンで、物凄く強くて、何でもできて、凄く優しい…とか。最近は君をモデルにした絵が人気になってるみたいだ。」

「嘘ですよそんなの。俺は強くないし、カッコよくないし、全然優しくないし、何にも出来ないですから。」

即答だった。

 

「…だって友達1人………助けられてない……」

吐息の様に弱い声だ。こんなに近くでなければ聞き取れなかったかも知れない

 

「そんな事ないさ、取り敢えず君が物凄くイケメンなのは私が保証しよう。」

此方を疑っている様な目線で、

 

「きっとモーツァルトの方がイケメンですよ」

 

何の悪気も無い言葉だった。けれど、"モーツァルト"と聞いただけで震えるほど追い詰められていたらしい。

 

「…て…い…私は…ヴォルフィを……」

「サリエリさん!?」

 

溢れる涙を止めることが出来ない

周りからずっと「お前がアマデウスを殺した」と言われ続けた

あまりに長く言われて、自分でも自分を疑い始めた

 

「落ち着いて下さい、サリエリさん」

子をあやす母の様にそっと抱きしめて、ゆっくりと白い暖かな手が頭や背を撫ぜてゆく

「貴方がモーツァルトを殺していないというならば、俺は貴方を信じます」

「たとえ貴方がモーツァルトを殺したと言っても、俺は絶対に貴方は殺していないと信じます」

今は彼の優しさを信じて縋る事しか出来ない。

 

 

 

 

「すまない。見苦しい所を見せて…」

涙も止まり、顔を上げれば色の濃くなった肩が目に入る。ああ、自分は六十も過ぎて何をしているのだろう。自分の半分どころか下手すれば三分の一位の若者に縋って泣くなど…

 

「いえ、気にしてませんよ。誰にも言う気は無いですし」

屈託のない笑みが逆に心に刺さる事を彼は知っているだろうか

話を少しでも変えようと、話かけてみた

「…その…さっきの事は本当かい?」

また、コテンと首を傾げた。どうして彼はこうも幼い行動が似合うのだろう。

「私の事を信じると…」

「どうして初対面で嘘つく必要あるんです?」

本当に一瞬で答えてくれた。ただ1人だけでも信じてくれている人がいる事を知れば、本当に楽になる

また潤み始めた瞳を隠すために彼の首筋に顔を埋める

「…ありがとう…」

「ふふ…どういたしまして!」

 

 

 

 

何かお礼をしたいと言えば、

 

 

「俺の友人(先生)になって欲しい…じゃダメですか?ピアノを教えて欲しいんです」

 

 

こんな老人が教えられる事なんて無かっただろうが、彼と過ごす時間は素晴らしかった

 

 

 

「私は…君の様な教え子(友人)がいて…幸せ者だ……」

 

 

最期の時でも、他の教え子たちが信じてはくれなかった

 

「私はヴォルフィを、殺してなどいない」

 

彼だけは…

 

「勿論、知っています。その時は俺は産まれていないけど、それでも分かります。だってサリエリ先生は嘘つけないもの。先生が俺のお菓子こっそり食った後なんて挙動不審になってからすぐに謝りに来たじゃないですか。そんな人がこんな大きな嘘を死ぬまで吐き通すのは無理ですよ」

 

ただそれが嬉しかった

なんて無い事の様に言ってくれた

 

 

 

 

 

 

もう尽きる命だが、天国でもいい。地獄でも構わない

もう一度彼と過ごす事が出来ればとても嬉しい

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

幸せな時間をありがとう




●月♦︎日




アントニオ・サリエリと会った。本物と会う事が出来てとても嬉しい!今度、ピアノを教えてくれる事になったから、楽しみだ。




この日はここで終わっている…
下に小さく1825年☆月@日と書いてある

☆月@日




サリエリ先生が倒れた。
もうあまり長く無いらしい。

どうしてみんなおれのことおいてくの…?

さみ◼️いよ、まだしなないで…
◼️うして◼️◼️◼️こと◼️い◼️いくの?


所々涙で滲んでしまっている
この日はここまでの様だ


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

奪い取る日

グロ注意報


銃声が鳴り響く

 

 

兵士の雄叫びが響く

 

 

耳を劈く悲鳴が響く

 

 

 

汗の匂い

火薬の匂い

血の匂い

 

全部が混ざってむせ返る

 

 

 

さっきまで隣で話していた奴はもう冷たくなっている

 

 

さっきまで笑ってた奴らは血の海に沈んだ

 

 

さっきまで震えていた奴はおかしくなった

 

 

 

死臭と

狂気と

恐怖が

 

全てを飲み込んだ混沌とした場所

 

 

戦場とはこんな物だ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いらっしゃい兄さん!何を飲むんだい?」

 

ガヤガヤとした喧騒の中でもよく聞こえる声だ

 

「ふーむ…取り敢えずエールにしようか!」

 

古びたローブを羽織り、如何にも旅慣れしている様な青年だ。

 

「あら〜おにーさんイケメンね♡私がお酌してあげよっか?」

「キャー♡本当にイケメーン!私がお酌するわー!」

「えー貴女達よりも私の方がいいわよ〜、ねーお兄さん!」

 

「本当?でも俺、こんな可愛い子達に囲まれたら緊張してお酒の味分かんなくなっちゃう」

 

「「「いやーん!!可愛い〜!!!」」」

 

少し眉根を寄せて上目遣いをすれば女達は黄色い悲鳴をあげる

クスクス笑ってカウンターに座れば周りの男が声をかけてきた

 

「よお、兄ちゃんモテモテだなぁ!かぁ〜っ!羨ましいぜ!」

 

「あんたどっからきたんだい?」

 

「俺はフラフラ色んな所旅してるね。この前はフランスだったよ」

 

ドンッと大きな音でジョッキが置かれる

 

「うへぇ〜フランスなんてクソ喰らえだね!」

「そーだ!あんな気取った奴らの鼻っ柱叩き折ってやりたいぜ!」

 

注文したエールを受け取り、ちびちびと飲みながら

「そーいや俺聞いたけどさ、今度フランスと戦争なんだろ?」

 

 

「ああ!俺が指揮をする事になってるんだ!俺たちがあんな弱小国に負けるはずがない!」

 

誇らしげにする男の顔をジッと見つめる

 

「そっか、じゃあ安心だね!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「命令を下す。

メーガス・グランツフランス陸軍中将

これより、1万の兵と共にアルジェリアへ赴き、侵略して参れ!」

 

何を馬鹿な事を言っているんだと怒鳴りたいが、シャルル10世に怒鳴る事など出来はしない

 

Oui monsieur(了解致しました). 必ずや貴方様に吉報をお届けします」

 

 

 

 

 

 

 

淡々と

 

 

唯、淡々と

 

 

 

命を刈り取ってゆく

 

 

 

将が前に出るのは愚策だと笑う敵は、笑いが恐怖へと変わった

 

 

少し前に見た顔を探す

 

 

共に酒を飲み

 

共に笑い

 

共に語り合った

 

ひとりの男

 

 

だがそんな物は仮初めでしかない。ただ、一番情報を持った者である。ならば殺さずに捉えねば

 

 

敵にかける情けなど存在していない

 

 

口元が歪に歪む

 

Je l'ai trouvé.(みぃつけた)

 

兵を切り裂いて、前に立つ

 

「ひぃ!く、来るな!化け物め!穢れた悪魔め!」

ニコニコと笑って、自慢げに話していたあの顔はもう痛みと死に対する恐怖で染まっている

 

「首を振るだけで答えろ」

それを言えばガクガクと壊れた玩具の様に首を縦に振り出した

「お前が指揮官だな?」

ピタリと止まってから、一度だけ縦に首を振った

「お前より情報を持った奴はこの戦場にいるか?」

次は横に振る

「そうか。じゃあ、殺しはしないでおこう」

あからさまにホッとした顔になった。こいつは分かっているのか?情報を持った奴が自分しかいないなら、拷問されるのだと分かるだろうに

 

「こいつを捉えて連れて行け」

「「「はっ!」」」

部下に任せて、自分は愛馬に乗って敵を踏み潰しに行く。彼女は厩で暴れまくって、手が付けられないと同僚からの愚痴を聞き、面白半分で会ったら意気投合した。大きな黒毛の雌馬だ。この駻馬の名前はカージュ(勇猛)という。馬だろうが人間だろうが容赦なく踏み潰すヤベェ(ヤツ)だ。

 

 

さて、悪魔らしいんでね。それらしく暴れて来ようか、なぁ相棒?

 

一際大きな嘶きが殺戮(アソビ)の合図になった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ひいいあぁぁぁあ"あ"あ"!!!!痛い、痛いいだいイィィ!!!」

 

 

頑丈な鉄格子の向こうから悲鳴が聞こえる

 

「お疲れ様!どぉ?情報吐いてくれた?」

「メーガス中将!…いえ、悲鳴をあげるだけで情報は全く…」

 

そう答える彼の手元を覗き込めば、何も書かれていない報告書が握られている。

 

「あ"あ"あ"!!!やめてくれ!もう嫌だ!!!」

 

あれだけ叫ぶ割には情報を吐かないとは

 

「一旦拷問(コレ)中断しようか。」

 

「しかし…」

 

「この後は俺がちょっとやってみるね。」

 

鉄の扉を開いて、声をかける

 

「一度休憩しないかい?俺が責任取るから」

「…了解しました」

 

 

 

ぞろぞろと部下を引き連れて休憩する為に、食堂へ来た。

「丁度昼時だし、小腹もすいてるだろ?」

 

各々、食べたい物を注文して食事を始める。

俺も昼飯を食べる。さっさと食べ終えて、料理長に話しかける。

 

「やあ、料理長。今日のご飯も美味しかったよ。」

「あらそぉ?なら良かったわぁ〜こんなカワイイ子に褒められたらアタシってば調子に乗ってなんでもしちゃうかも♡」

体をクネクネとさせているのは少し長い金髪を後ろでキツく結った筋骨隆々な大男だ。それでも心が乙女なら、ちゃんと女性らしい扱いをするのが俺クオリティ。あとその方が色々融通利かせてもらえるし

「流石料理長!話が早いね。ちょっと譲って欲しい物があるんだけど…」

「いいわよぉ〜何が欲しいの?」

「……なんだけど」

「あらそんなもの?ちょっと待っててねん、今持ってくるから。」

「やっぱり良い女は懐が広いね!」

「んもぅ!貴方が既婚者じゃ無かったらアタシが意地でも貰ってたのにィ!」

 

そう。俺は既婚者になったのだ。まぁ別にライリーと結婚した訳じゃない。メリーと結婚した事になっているのだ。そうでなければメリーの持ち物を俺が持っているのはとても怪しい

 

「ほら、持ってきてあげたわ。古いからもう交換しようと思ってたし、あげる」

 

「ありがとう、料理長。」

「今度は別にアタシのこと貰いに来ても良いのよ?」

ケラケラと笑い

「俺には勿体ないから貰えないよ。それに、俺は彼女だけを愛するって決めてるから」

「知ってた。だって、そこが気に入ったんだもの」

 

 

しばらくお喋りを楽しんでから別れた

この後はまたお仕事があるからね

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おはよう。指揮官さん。気分はどうだい?」

 

ズキズキと身体中が痛む。叫びすぎて喉が渇いた。手足の指先には爪が一枚もない

「身体中が痛くて最悪だ。」

さっきの陰気な奴らとは違い、キラキラと輝くような、大輪の向日葵のような青年だった。あの時に出会った、旅の青年だった

軍服を着て、髪の毛をぴっちりオールバックにした青年は、紛れもなく一緒に酒を飲んだ青年だった

「お前は…」

「覚えてるかな?俺と酒飲んだの。あの時に話してくれたでしょ?指揮官は俺だー!って」

ニコニコ笑う男は場所もあいまってすこぶる不気味だ

「戦場でも俺以外に情報を持っている奴は居ないって教えてくれたでしょ?」

思い返せば、戦場で俺を捕まえたあの悪魔も同じ顔だった

「だからさ、情報吐いてくれない?」

「断る!」

いくら辛くても仲間を売る程腐っていない。死ななければまだマシだろうと思う

「…………そっか」

笑顔が消えて、無表情になる。

「お腹空いたでしょ?食べさせてあげるね」

そう言って取り出したのは何も乗っていない皿と銀のスプーン、そして…チーズスライサー?何をする気だ…?

 

「お肉は好き?」

「は?」

 

チーズスライサーを片手に持ち、俺の手を掴む。いや、嫌だ、まて、待て待て

「やめてくれ!」

「やだ」

スライサーが指先に食い込む。ミチリ、と音がして激痛が走る。

「やっぱり筋っぽくて削れにくいなぁ」

 

ぐちゃり

スライサーに絡まった肉を皿に盛っていく

「流石に少なすぎるか。あ!止血しとかなきゃ死んじゃうね。」

俺の肘に紐をぎちぎちに巻いた。だんだんと感覚は無くなっていくが、肉が削れる音が、骨が削れる振動が、俺に痛みを与えている

 

「ほら、あーん。口開けて?」

「ん"ーーー!!!」

スプーンに乗った、赤く血生臭い物体は、たった今俺から削り取られたモノだ

食べたくなくて口を固く閉ざして首を振る

顔を掴まれて無理矢理口に入れられる。

ぐちゃりとしていて生臭く、鉄の味がする。硬いものは削れた骨なのだろう

 

「美味しいでしょ?自分なんだしさ。」

吐き出したいが、口を押さえられ、無理矢理顎を動かされる

嫌悪感からボロボロと涙が溢れ出した。

 

 

 

 

「ねえ、情報教えてくれる?それともまた指食べたい?」

 

 

 

教えたのならば、もうこんな苦痛を味わうことは無いのか?

 

 

 

「教えてくれたら助けてあげる」

 

 

 

口から手が離れる。口に入ったままの肉を吐き出し

「全て話す!もう…こんな苦痛は味わいたく無い!」

恐怖と安堵から涙が止まらない。笑顔を浮かべた男は、

「ありがとう。じゃあ教えて欲しいな。でも先に手当てしようか」

そう言って優しく頭を撫でてくれた

 

 

 

 

 

 

「情報は充分かな?うん、じゃあ用済みだね。殺しちゃおう」

 

「了解です。死体はどうしますか?」

 

「そうだなぁ…首だけ切り取って、送りつけてあげようかな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

أو الاستسلام؟(降伏か?)

هل تموت؟(死か?)

أيهما تختار؟(どちらを選ぶ?)

 

指揮官の首とともに送られてきたメモ書きにはそう書かれていた

彼の指揮していた軍はこの国での戦力を殆どつぎ込んでいた。だというのにあの悪魔は…金の髪の悪魔は!全て踏み砕いた!

元々人間だったことなど分からないほどに!

 

「皆の者!我々は悪魔になど屈しない!悪魔の国、フランスを討ち取るぞ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうしてもらわないと歴史が狂う」

 

柱の陰には血のように赤い服の青年が1人

老人の様な白い髪は目立ちそうなものだが、誰も気がつかない

 

「ああ、解っているとも。また殺せばいいのだろう」

 

 

 

 

しばらく様子を見ていた男は、ポツリと呟く。

 

 

 

 

「……これが正義なのか…?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

人を殺す事で人を守る

 

より大きな善の為に

 

小を切り捨てる

 

 

本当にそれが正義なのか…?

 

 

 

 

悩める者は双剣を手に

 

 

空気に溶けるように消えていった




◉月▶︎日





最近の奴らは少し心を折るとすぐに情報を教えてくれるから楽だ。とはいえもう俺も34歳になる。そろそろ無茶はできなくなるか…
それでもまだ20そこそこだと思われる事も多いから大丈夫だと信じてる。
息子ももう15、6歳になる。俺の真似してか、女の子に声をかけて遊びまわっていると、ミアが苦言を呈し始めた。
楽しいならいいけど、女の人を不用意に泣かせるならケツ引っ叩いて説教するか。





この日はここまでのようだ




友人Y田よ、やっと推しが出るぞ、喜べ!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

"英雄"になった日

生でタンゴ見てきました。

あのお尻と足を撫でくりまわしたいと思いましたまる


「我らが強き同胞(とも)よ!戦え!そして勝つんだ!これより始まるは戦争では無い!虐殺だ!」

 

「「「「オオオオーーーー!!!!」」」」

 

戦場に益荒男供の雄叫びが響く

 

「俺に続け!」

 

飛び出したのは一際大きな黒馬に乗った男

 

名をメーガス・グランツ

 

その戦いはアルジェリア軍2万に対してフランス軍1万という、勝敗の分かりきった戦いだと思われた。

 

「何故だ!銃が当たらない!」

「剣が届かない!」

「大砲が壊された!」

 

「「「悪魔だ!あれは人では無い!」」」

 

一人で5,000以上の兵を殺した

血に濡れた

赤い"悪魔"

 

「あの人は本当に人間か!?」

「恐ろしく強い!」

「殺す姿でさえ美しい!」

 

「「「天使だ!神がフランスへと遣わしたのだ!」」」

 

一人で5,000以上の兵を裁いた

神が地に遣わした

黄金に輝く"天使"

 

 

相反する評価は、見方を変えればどちらも同じ

 

加護を与え(望みを叶え)

 

裁きを行い(対価を望み)

 

魂を連れて行く(魂を奪って行く)

 

 

ただ一点違うとすれば

 

強く美しい天使か

 

酷く恐ろしい悪魔か

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

逃した敵軍を追いかければ、いつのまにかもう1人になっていた

 

「お前で最後ね。」

 

残った1人を切り捨て、自軍の方向へ向かう

あー疲れた、身体中生臭いから早く風呂に入りたい。汗でベトベトもする…

 

「!」

 

まだ残りがいたのか?

こっちに敵意を向けている者が近くにいる。しかも、近くまで俺が気付かない程の手練れだ

 

カージュから飛び降り、

「カージュ、お前は先に帰っていて。俺も後から行くよ」

そう言って尻を叩き、走らせる

「お願いだ。彼女を撃たないでくれ。」

 

カージュが見えなくなって、木陰から出てきたのは赤い服で褐色の肌の男だった。

 

「貴様がメーガス・グランツだな?」

「ああ、そうさ。俺がメーガス・グランツ中将だ」

「ひとつ、聞きたいことがある。」

「どうぞ」

「何故、お前は存在する(・・・・・・・)?」

何故とは?

いや、分かっているとも。俺は、メルセデスであって、メーガスでは無い。存在しないはずのものなのだ。

じゃあ何故存在するか?

我思う、故に我あり(Je pense, donc je suis)

それだけ言って、俺はサーベルを抜いた

「デカルトか…すまない。愚問だったな」

赤い服の男は手に双剣を持ち、駆け出した。

 

速い。恐ろしく速い…が、追いつけないわけでは無い

俺も、サーベルで攻撃をいなすがどうしても向こうの方が手数が多いのだ

 

防ぎきれない刃が切り傷をつけていく

 

隙を作るには今はこれしか出来ない。うん、仕方ない!

 

相手のスカした顔に、思いっきり

 

 

唾を吐いた

 

「なっ!」

 

「おっとごめんごめん。ちょっと力んじゃったんだ、許してねん」

キャピッとなるべくウザくなる様な事をする。するとあら不思議、切れて単純な動きに…なんねえな。

 

「…勝てば官軍、負ければ賊軍だ。私は別に気にしていなければ、それで怒りはしないさ」

「わー大人だねぇ。可愛く無いなぁ」

 

また斬撃のラッシュが来るけど、慣れてきた。ここは一発、返しとくか。

 

「そぉれ!!」

 

剣の側面を殴って起動をずらす。そのまま無防備な腹にヤクザキックをかました

 

「大丈夫ぅ?君って斬撃も軽いし、体重も軽いし…ちゃんとご飯食べて筋トレしてる?簡単に内臓にダメージ入っちゃったでしょ」

筋肉なさすぎぃ〜

 

「生憎だがこの体は成長しないのでな!」

 

成長しないの?

「やっぱり君ってさ、人…生者じゃないよね。なんて言ったら…うーん…魔力の塊?」

 

「ほぉ、それに気づくか。では自己紹介をしよう。私はエミヤ。正義の味方になれなかった男だ」

正義の味方…

そりゃ誰でも一度は憧れる。けれど彼…エミヤが言うのはまた違う

彼は俺を殺しにきている。何故存在するのか?という質問から、俺は存在してはいけない人物なのだろう。じゃあ何故魔力で出来た彼が来るのか?…俺が世界にいてはいけないならば殺しに来るのは世界だ

「そして貴様を殺す男だ」

そう告げるエミヤは殺したくないのだろう。瞳に映る決意が揺らいでいる

「そんなに嫌なら"世界"の言う事なんて聞かなきゃいいじゃん」

「それが出来ているならば俺がここにいるはずがないだろう!」

 

瞳を見れば分かる。数え切れない程の人間を殺したのだ。守りたい人間を、その双剣で

 

「よし、分かった!俺が君を殺せば君は俺を殺さずに済むよね!」

「!…フッ…面白い、やれるものならやってみろ!」

 

 

そう言って、彼は双剣を投げた

なんか嫌な予感がした俺は全力で後ろに飛んだ

 

 

「どわぁ!?ナニソレ!?爆弾!?」

 

ニヒルに笑う彼はいつのまにかまた双剣を構えていた

 

「うげぇ…君遠距離も近距離も出来るとか…やな奴だね」

「軽口叩きながらも私の攻撃がほぼ当たらないそちらの方が"やな奴"だと思うが?」

 

お喋りをしながらも避け続ける

あー怖い怖い。さっきから髪の毛がちまちま切れてくのがやだな…女にとって髪は命なんだぞ!(メル)は男だけど

 

 

「うわっと!酷いな君!俺の綺麗な顔に傷つけるとか!」

「否定はしないが、普通は自分で言わないだろう…」

「何言ってんのさ、あの子とおんなじ顔なんだから綺麗に決まってるでしょ!」

お返しはきっちりする派代表の俺としてはやっぱり顔にやりたいな…

一度離れると、また爆発する双剣が飛んで来た

ただし、今度はただ避けるだけじゃなく、こっそり小さく折れた木の枝を拾う。丁度よく爆発で砕けているのがそこらに散らばっているしね

 

また打ち合いをし、強めに剣を弾いて、木の枝を投げつける。

 

顔スレスレに投げると一瞬だけ視線がズレるのだ。投げた勢いのままに、目に指を突き立てる

 

ぶちゅりと何かが潰れた感覚と、暖かい液体が手を伝う感覚が分かる

 

指を引き抜いて直ぐに後にそこから離脱すれば、さっきまで居た場所に、幾多もの剣が刺さっていた

 

「こっわ!危な!てか君武器多すぎでしょ!ずるい!」

 

「私としては平気な顔をして人の目玉を潰す人間の方が恐ろしく思えるがな。…しかし…ふむ、私では君は殺せないようだ」

「そりゃね、6歳の時から鍛錬してる俺が負けたらダメでしょ」

 

彼に近づいて、袈裟懸けに斬り捨てる。すると膝をついた彼から光の粒が出始めた

 

「すごい綺麗だね。幻想的だ」

「ふん、そう言う人間には会ったことが無い」

「じゃあ俺が初めてだね」

「皮肉も理解出来ないのか」

「うーん、ほら、俺ってポジティブだから」

「だろうな…だが、油断大敵だ」

 

俺の背後に剣を召喚したんだろうが、流石に違和感は感じていた。さっとしゃがみ込めば、頭上を飛んでいく剣が見えた

 

「危ないでしょ!もう…でもその心意気は気に入った!今度は味方側として出てきてよ、面白そうだし」

「それも悪くなさそうだ」

「考えといてね。それじゃ、バイバイ。エミヤくん」

 

全身が光の粒になって消えてしまった。少し残念に思うけど、なんとなくまた何処かで会えそうだし、期待しておこう

 

 

空はもう真っ暗で、沢山の星がキラキラと輝いていた

 

 

 

 

 

「メーガス中将!ご無事でしたか!?」

駐屯地に戻れば、部下達がわんさか押し寄せてきた

「大丈夫、大丈夫。多少切り傷あるけど大きな怪我ない…し………」

 

彼らの後ろにいる、彼女と目があった。そして俺は思った

ああ、俺の死因って馬に蹴られた事による頭蓋骨陥没かな?それとも内臓破裂かな

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

国に帰った俺は、エドモンが監獄島(シャトーディフ)を脱獄した事を知った

 




◉月△日





面白い子に会った。中々に強いし、是非とも一緒に戦いたくなった。エミヤくんだ。忘れないようにしっかり覚えておこう。後何ヶ月か前にエドモンが脱獄したらしい。俺が助けたかったのに…
まあ脱獄できたのはいい事(?)だし、嬉しい。



この日はここまでのようだ










書文先生が欲しい!!!!!!!!!!!!出ない!!!!!!!!!ちくしょうめ!!!!!!!!!!紅ちゃんは出たから少し許す!!!!!!!!!!!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

休みの日

すいませんでした!!!!!!!!!!!

この前の日曜日は英検という強敵がいたのです



「メーガス・グランツ。此度の戦いではよくぞフランスの勝利を持ち帰ってくれたな。その活躍を鑑み、貴公をフランス陸軍の大元帥とする!」

「はっ!」

…はっ?

今何つったこの人?

大元帥?中将から?バカなの?アホなの?死ぬの?中将だったら次は大将でしょ?死んでも二階級特進で元帥だよ?バカなの?俺死んで無いよ?

 

俺が表面は取り繕いつつも頭の中で疑問符をぽこぽこ生産している間に話が進んでいた

 

「そして、貴公には土地を与える。その為に、2週間の休暇も与えよう」

 

あれー?いつのまにか領主にもなっちゃったよ!?まじで!?頑張るけど!

 

「お心遣い感謝致します」

 

 

 

 

 

 

 

「てな訳で、俺は暇してます。やる事無い?」

「休む事が仕事です。」

「え〜〜だって暇なんだもん」

「貴方私より年上なのに何でそんなガキ…子供のような振る舞いをするんです?というか何で似合うんだよ」

敬語が外れかかってる彼女は俺の家でアルベールの乳母をしてもらい、現在は使用人をしている、燃えるような赤髪が特徴のライリーだ

 

「ミア〜ライリーがいじめる〜」

「うーん…旦那様が悪い気が…」

「ミアが反抗期!アルベールも最近冷たくて俺寂しい…」

この可愛らしい女の子はライリーの娘のミア。ライリーよりも少し暗めの赤髪だ

 

「そういえばアルベールは?」

「坊ちゃんでしたらデートだそうですよ」

「………」

「ミア?ミア?ねえ、銀のお盆引きちぎる気!?伸びてるよ!?」

「…すみません、旦那様。少し(・・)取り乱しました」

「あ、うん、少し…少しね」

 

ヤダ…怖い…

アルベールのことちょっと叱らなきゃ…

じゃないとアルベールの手足のどれかが千切れそう…

 

 

「あ、旦那様、そんなに暇でしたら買い出しに行って来て下さい。これ、メモです。5時までには買ってきてくださいね。じゃ無いとメシ抜きです」

「主人遣いが荒いなぁ」

「暇だって言ったのそっちでしょう」

「買い物行って来まーす。ミアとライリーは個人的に欲しいものはあったりする?」

「私はありません」

「あ、私はクッキーが欲しいです。広場の所のお菓子屋さんが美味しいと聞いたので…」

「了解!今日のお茶受けにしようか」

 

 

 

 

 

 

 

 

「えーと、卵買った、小麦粉も、オレンジあるし、あとは…牛乳とチーズ、鶏肉だな。」

 

街をのんびり歩きつつ、買い物を済ませていく

歩く度に、「メーガス様!」「領主様!」「大元帥!」とひたすらに声を掛けられる。一応笑顔で手を振りながら歩いてはいるけれど

 

「マダム、牛乳とチーズを貰えますか?」

「まあまあまあ!領主様!もちろんですとも!どれをご所望で?」

「そうだな…パンに合うチーズが欲しい」

「ではこちらはどうでしょう」

「ではそれにしよう」

「味見はなさらないのですか?」

「マダムのオススメならする必要なんてないでしょう?」

「あら!とっても嬉しいですわ!」

 

マダムからチーズを受け取り、お会計を済ませる

肉屋を目指して歩いていると前方から歩いてくる人が息子だと気づいた

 

「アルベール!」

「……父さん」

「えっ!メーガス大元帥!?」

心底嫌そうな顔をする、かわいい息子

俺より4インチくらい下にある顔は凄くイケメンだ。俺よりも暗く、茶色味の強い髪は短く、俺とお揃いの青い目をしている

端的に言えば、可愛い

全俺が一番可愛い男だと認識しているのが息子のアルベールだ

エドモン?あれはカッコかわいいだから違う

 

「何でいるんです?」

「ライリーに暇だって言ったら買い出し行けって」

「あんた主人でしょうに」

「別に俺からしたらみんな家族だし」

「召使いを家族扱いとかあんたほんと馬鹿ですよね」

「馬鹿でも変人でもいいよ。そういえばミアがすっごく怒ってたけど何したの?」

「別に何も?アソビに誘っただけですよ」

「ミアは純情なんだからそりゃ怒るよ…腕千切られる前に謝りなよ?」

「へぇへぇ分かってますって」

 

まぁいいや、デート楽しんで〜

と手を振れば、服の裾を掴まれる

うん?

振り返れば、アルベールの彼女さんが裾を掴んでいた。あっ(察し

「私、アイリンって言うんですけど…」

あぁー良くある奴ー

いやね、アルベールに嫌われる理由はさ、分かってるんだよ。アルベールの彼女が即座に俺に乗り換えようとするからなんだよね。父さん30後半っす。エドモンじゃないから息子と同い年の子なんかに手は出しません

「メーガス大元帥ってとってもステキな方ですよね。周りのみんなに優しくて…それに私って年上好きなんです!私は魅力、無いですか?」

 

腕を絡めて擦り寄ってくる。可愛いけどね…あのね、俺寝取り趣味もないんだよ。アルベールがヤバイ顔してるよ。怖いよ。

あれ、俺子供達の事怖がりすぎ…?

 

「おい、父さん(・・・)から離れろ」

「触らないでよ!メーガス大元帥…この人気持ち悪いですぅ」

は?

世界一可愛い俺の息子が気持ち悪い?目が腐ってんじゃねえの?

…KOOL、KOOLになるんだ俺。

こんな事で仮面は剥がしちゃいけない

「ごめんね、俺としては離して欲しいかな。」

「え…?」

「たしかに君は魅力的なレディだけど、俺としては可愛い息子の方が大事かな」

「何で…」

「俺の唯一の肉親だから。ね、ごめん。腕、離して?」

「父さん…」

「さ、アルベールも帰りな。俺は買い物終わらせてなきゃいけないし」

「…俺も行きますよ」

「重いよ?」

「子供扱いしねぇでくれます?」

「俺からしたらいつまでも子供だよ」

「だからあんたが嫌いです」

「えぇ〜昔はよく父さん大好き!って言ってたのに」

「いつの話です!?10数年前じゃないですか!」

「…あ、5年前だ」

「へ…?」

「戦争行く前に父さん嫌い!って言われたけど、帰ってきたら嘘だよ、大好きだよ!だから居なくならないで!って泣き付かれた」

「…………」

「あいた!記憶あるでし痛い!息子が暴力を振るってくる!」

「うるさい!」

 

 

 

 

 

 

「ライリー!買ったものどこ置いたらいい?」

「台所のテーブルの上にお願いします」

「はーい、置いとくねー」

「紅茶を淹れるので少し待っててくださいね」

「うん」

 

 

 

 

「ミア」

「何でしょうか?こんな召使い(・・・)のバカな女に用事だなんて」

「あ"〜…これ。食べたいって…」

「あら、卑しい私に施しとは、優しい坊ちゃんがいて私は幸せ者ですね」

「すまん」

「………」

「あんな事言ったのは謝りますよ。俺だってバカな事言ったって思ってますし」

「受け取りましょう。けれど、また女の子取っ替え引っ替えしている事について私は怒っています」

「は!?それはオタクにゃ関係ないでしょう!?」

「あります。旦那様にも迷惑かけているんですよ?私が納得できるように説明して下さい」

「だって…」

「だって?」

「父さんがイケメンすぎるんですよ」

「察しました。」

「父さんを見た瞬間父さんを、口説こうとするんです」

「貴方って不憫なんですね」

「でも父さんなら仕方ないかと思うんです」

「(ファザコン)」

「父さんはイケメンでなのに調子に乗っているわけでもなく優しいし、いっつも俺のこと気遣ってくれるし、幸せそうに笑ってる顔が最高に可愛いし、強いし、あまりにもイケメンすぎて男にも声かけられてるし、悪戯っぽく笑う顔が最高にエロいし、俺が触っても全く警戒心持たない癖に他の人が触ると一瞬眉をひそめるのが本当に尊いし、無表情だったのが俺を視界に入れた途端に笑顔になるし、父さんは天使か何かだと思う」

「ファザコン乙」

 

 

 

 

 

 

 

 




●月❤︎日





大元帥になった。
今日は久しぶりにアルベールとデートした。可愛い息子と買い物できて嬉しかった。明日はカージュに会いに行こう。それで、トマの所に行くのもいいかもしれない。




この日はここで終わっている





アルベールの見た目は、髪色が少し薄いロビンフットです。
Y田氏に20代くらいのイケメンサーヴァントは誰がいいと思うから聞いたところ、「ふと浮かんだのはビリー、次にロビンだった」等供述しており…


ちょっとプーサーと悩んだ


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

秘密の日

シリアス?知らない子ですね


「トマ!遊びに来たよ!」

 

「…やっぱり貴方ですよね。

普通の馬にしては力強過ぎる音がしてましたし…」

 

そう、今俺はトマの所に遊びに来ている!

何故って?勿論トマを揶揄うためさ!

カージュのご飯を桶を借りて準備してから家に入る。じゃなきゃ不機嫌になったカージュは周りのモノ全部踏みつける、プレス機になる

 

彼の尊い犠牲は無駄にはしない…!

 

死んで無いけどね

 

 

 

 

 

「で?今度はどんな厄介ごとですか?」

「ん〜信頼が欲しい!」

「信頼はしてますよ。だから聞くんです」

ひどいわ!と泣き真似していれば、トマが入れてくれた美味しいコーヒーが置かれる

「わーい」

「さっさと要件済ませてさっさと帰ってください」

「最近息子が冷たい…」

「こんな父親は嫌でしょうし」

「最近ライリーの対応が塩なの…」

「私でしたらこんな主人は願い下げです」

「最近、陛下が変わったけど、扱いは便利屋のままなの…」

「それには同情します」

 

トマまで冷たい…

もぅマヂ無理。カージュに慰めてもらぉ…

 

 

 

 

 

「茶番はいいですから早く本題には入ってください」

「え〜…あ、そういえばトマさ、国会選挙に出たけど落選したってね〜おつおつー」

「殺したい、その笑顔」

「……別に、トマにだったら良いかもね…」

「急に静かにならないでください。気持ち悪い」

 

本心なんだけどなぁ…

一人で死ぬのは嫌だから、何人か道連れにする気はマンマンだけども

でもこの変な空気は嫌だなぁ

何とかして話題変えなきゃ…

えっと〜あっと〜なんかあったかなぁ〜?

 

「………あ"〜…軍に復帰おめでと」

「…どうも」

「少将なんでしょ?俺のトコ来ない?」

「嫌ですよ。貴方のトコは、狂信者の集いなんですから」

「ひどい言われようだなぁ〜でも否定できないんだよなぁ〜」

天使天使言われるのは慣れたけど、今度は美の女神とか馬鹿なこといいはじめてるんだよ…

たしかに美の女神は戦いの女神も兼任してる所多いけども!

 

「ねえ、トマは口かたいよね」

「まぁ、そこそこ」

「今から言うことを墓まで持ってって欲しい」

「…どうせロクでもない事でしょう」

「うん、でもね、誰にも言えない俺の秘密」

 

 

ちゃんと守ってね

 

 

 

 

「俺はね、メルセデスだけど別人なんだよ。…心配しないで、本物ではあるからさ。訳わかんないよね、うん、だから説明するね。…俺はメル、で、元々この体の持ち主がメリー。ほら、分かりやすく言ったらあれ、二重人格だよ。昔から居たんだよー?いっつも無表情だったのがメリーだった時。わかった?それで、たまに表情が表に出てた時は俺、メルの時なんだ。…メリーはね、今は居ないんだ。原因…?ああ、うん、よくわかったね。正解だよ。エドモンが居なくなって疲れちゃったんだって。だから俺が軍人になって、エドモンを連れ返して、メリーが戻ってきたら良いなって思ったんだ。…エドモンの方が行動がはやかったんだけどさ。まぁとりあえず、今君の前にいるのはメリーじゃなくてメル、メリーに作られた可哀想なハリボテだよ」

 

 

悲しそうに笑う彼は、俺が初めて恋をした笑顔を見せてはくれなかった。冗談だと、悪戯だとは言ってくれはしない。

 

いつもはほんの数ミリ口角を上げるだけの笑顔ばかりだった。成長すればするほど表情は変わらなくなっていった。けれどあれは…チェスだった。勝負をして、唯一私が彼女に勝てるモノで、よくやる遊びだ。それでも、負ければ、へにょりと眉をさげ、たまに勝てれば向日葵のような笑顔を見せてくれた。その笑顔に、一目惚れをした

 

だのに、それは元々彼女ではなく、彼…作り物だったと?

 

「それがどうした」

「へっ!?」

「作り物だと何が悪いんだ?」

「だって俺は…」

「お前の部下はメリーではなくメルに惚れ込んでついている。俺だって、お前にっ…」

「俺に…?」

「お前に……信頼を寄せている」

言える訳ないだろう!初恋だと!?恋心だと!?精神が男だと暴露された後で告白できるはずないだろう!

 

「……ありがと…優しいね」

俯いた頭を乱雑に撫でてやれば、手に擦り寄って来る。猫か貴様は

 

 

 

 

心のうちを知ってか知らずか最終的に泣き疲れて私の腕に収まった初恋相手(おとこのすがた)はどうしたらいいのだろう

 

 

 

 

 

 

 

泣き疲れて寝ちゃった俺だよ!

目を覚ましたら夕方だったので、カッコよくて優しい兄弟子様に頼み込んでお泊りさせて貰うことが出来ました!わーわーどんどんぱふぱふ〜

 

 

あ、目を覚ました時はトマにだいしゅきホールドしてたよ。やっばいね、絵面が

トマがなんか悟り開いた顔してたのはなんかごめん

 

 

 

「トマ、お礼にさ、俺がご飯作ろうか?」

前にトマが作ったご飯は食べたことある。あれは漢の料理って感じだった。不味くはないけどやばかった

「…作れるんですか…?」

「俺のゴハン食べてくれないの…?」

必殺!捨てられた仔犬の目!

「不味いものは流石に嫌ですし」

何!?効かないだと…!?

「トマのよりは美味しいよ」

「そこまで言うならどうぞ」

「わーい!でもトマがすごく殺気ぶつけるー」

 

 

 

 

料理風景はカットしつつ、最終的にできたのはコレ!

牛肉のワイン煮

コンソメスープ

夏野菜のサラダ

魚のパイ

バゲット

 

 

「美味しい…」

「どやぁ…」

「うざいです」

「ひどいですー!」

わーん!ひどいよぉ!やけ食いしてやるー!

牛肉のワイン煮を口に放り込めば、ほろほろと崩れてワインの香りと牛肉の旨味が口いっぱいに広がる

コンソメスープは甘い玉ねぎとしょっぱいベーコンが丁度いい

サラダはチーズを使ったなんちゃってシーザードレッシングをかけて食べる。シャキシャキ〜トウモロコシ甘ーい

魚のパイ。骨まで食べれるようにちゃんと骨切りした。粉々になるくらいした。ホワイトソースたっぷりで、トロトロしてる。魚も生臭くなくてばっちぐー

バゲットサクサクーホワイトソース絡めて食べるとおいしー!

 

「…美味しそうに食べますね」

「美味しくなかった?」

「いえ、美味しいですが、よくもまあそんなに表情が変わるな、と。」

「だってそれがメル()だから!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 




◀︎月アヒャヒャ( °∀。)日






トマは約束を忘れないって信じてる
約束を忘れるって事は俺を忘れるって事だから、信じてる。
明日になればまた戦場に行くことになる。今度はオランダが敵らしい。

正直面倒臭い。



この日はここで終わっている。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

復讐を遂げた日

ジョジョに浮気しちゃった(>ω・)てへぺろ






 

 

 

 

 

 

 

 

「フェルナン・モンテゴ陸軍中将と申します!」

 

恨めしい

 

 

「此度の作戦、共に出来る事、嬉しく思います!」

 

 

憎らしい

 

 

 

「そうですか。私も貴方はとても優秀な人だと聞いています。貴方の働きに期待しているよ。」

 

 

この視界に入る

 

瞳が

 

髪が

 

顔が

 

この耳に入る

 

声が

 

心音が

 

呼吸が

 

俺に感じられる

奴の存在が

 

 

全てが

 

 

 

 

俺の殺意を燃え上がらせる

 

 

 

 

 

 

 

 

どうやって殺してやろうか

 

 

 

俺が殺すか?

 

 

 

どうやって?

 

 

 

首を切る?

滅多刺しにする?

毒でも与えるか?

首を釣らせる…?

 

 

あぁ、原作通り(・・・・)も悪くは無いか…

 

 

 

もっとあいつを惨めに殺すならばどうする?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、フェルナンくん。君は優秀で、腕がたつ事を見込んで頼みがあるんだ」

 

「アントウェルペン城近くの町へ潜入して欲しいんだ」

 

「大丈夫、俺もしっかり変装して行くからさ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「シャッセ将軍!砲撃用意、完了致しました!」

 

「構わん、撃て」

 

 

 

 

将軍と呼ばれた男はパイプを咥え、腕を組み、キラキラとした(濁った)蒼い目をしていた

 

 

 

 

 

 

 

ざわざわと騒がしい駐屯地

 

幾人かの兵は小さなテントで何かを話している

 

 

「おい、やっぱり大元帥がいらっしゃらない」

 

「ほかに誰がいない?」

 

「フェルナン中将が」

 

「その二人だけだ」

 

「どこに…?」

 

「………まさか。」

 

「予想がつくのか!?」

 

「言え!」

 

「まさかだが、大元帥、また勝手に情報収集に行ったのでは?」

 

「「「…またか…」」」

 

 

1人は深いため息

 

1人は頭を抱え

 

1人は諦めた顔をしていた

 

 

 

 

 

 

〜数刻前〜

 

町に…といってもオランダ軍が占領したせいで殆ど人がいないが…着いた

 

「ここからは別行動だ。」

 

「分かりました」

 

「情報が集まり次第、あの酒場に行ってくれ。もしかしたら俺は時間がかかる可能性があるんだ」

 

「はい。それではご武運を」

 

「君もな」

 

せいぜい苦しんでくれよ?

 

 

フラフラと町を歩き、酒場や路地裏を見ていく

 

数個目の路地裏で酒を飲みすぎたのか、蹲っている兵士がいた。蹲り、よく見えるようになったうなじ目掛けて足を振り下ろす。しっかりと首が折れるまで踏み続ける

 

 

ベキリと折れた感覚が足から伝わった

 

服を剥ぎ取り、少し離れたところに服を置き、先ずは顔をナイフで刻む

 

 

そのまま手近に転がっている木箱の中に押し込めればいい

 

あとは軍服に着替え、少しの血を服につけて、城に走る。

 

 

 

 

遠くから走ってくる男がいた

 

城の門番に息を切らしながら

 

「はっ、はっ…報告、です!フランス軍、中将、フェルナン、が、すぐそこの町に!あいつが、あいつに、1人、殺されちまった!他にもいるのかもしれない!もう俺たちは包囲されてるのかも!」

 

「何!?将軍に伝えなければ!」

「貴殿のお陰で早く気付くことができた。門は開けておく。中に入ったらしめてくれ」

 

「分かりました。報告、お願いします」

 

 

 

 

ちゃんと殺してやってくださいね?

 

 

 

走っていく門番2人を眺めながら呟き

 

 

くるりと踵を返した

 

 

 

 

 

 

 

 

コツコツと軍靴を鳴らし近づいてくる影がある

 

それは見慣れた軍服

 

ずっと殺していた敵国の軍服

 

 

いくら銃を撃てども当たらない

 

 

ひらりひらりと

 

風に舞う葉のように

 

 

するりと避けていく

 

「き、貴様何者だ!」

 

 

深く被った軍帽から見えるのは三日月のように歪んだ口のみ

 

 

 

「俺はーーーー」

 

 

 

 

 

 

 

「ただいま!ちゃんと情報盗ってきたよ!」

 

「あ"あ"ああぁぁぁぁ!!!!やっぱりぃぃぃ!!!」

 

「またフラフラフラフラあっちこっち行きやがって!」

 

「盗ってくる情報は素晴らしくても貴方の行動は素晴らしくない!」

 

「何でトップが行ったんだよ!」

 

「わーみんな怖ーい!体力無駄に消費しちゃうよ?」

 

「「「誰のせいだと!!!!」」」

 

「んー、俺のせいかな!」

 

 

もう全てを諦めたような顔の面々は、一つ、心に決めた

 

(こいつはやべえ奴だが、これに対して心配するのはバカらしいからやめよう)と

 

 

それだとしても、鬱憤は晴れない

 

ならば、

 

「「「カージュの姉さーん!大元帥お願いしまーす!!!!」」」

 

 

 

鋭い嗎は、カージュにとって、了承の意である

 

 

 

 

「待って流石に俺死んじゃう死んじゃうやばいまじ待って落ち着こう潰れる砕ける内臓もう吐きたくない無理無理無理やめて怖いよそっと押し倒すのも怖い待ってやめてまじでやめて!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

曰く、彼は腹筋のみで1tの重さに耐えられるらしい

 

 

 

 

 

「ねぇ、大元帥、一緒に行ったフェルナン中将はどちらへ?」

 

「うん?まだ帰ってないの?可笑しいね?情報掴んだらすぐに帰るように行ったのに…」

 

「…そのうち戻ってきますよね」

 

 

 

 

 

 

フェルナン・モンテゴ

享年43歳

 

職業

軍人

 

死因

オランダ軍からの砲撃

 

 

 

 

 

 

 

 

最後はゆっくり一人で死にな

 

お前なんかに近づこうとはしたくないが

 

それでも俺はお前が許せない

 

だからお前は(メルセデス)ではなく、敵国の砲撃で、誰にも看取られずに死ね

 

 

 

死んで地獄に堕ちろ

 

 

 

 

 




◀︎月〆日





やっと、やっと殺せた

これならメリーとエドモンのしあわせをじゃまするやつはいなくなったよ

早くでておいで


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

無茶振りされた日

ゲロ吐きまくってグロッキー





「貴殿に次の命を与える。ベラクルスの戦いに参戦し、勝利を収めて来い!」

 

「はっ!」

 

「貴殿はシャルル少将と共にエルミニに乗って貰うぞ」

 

「はっ!?」

 

拝啓エドモン

俺、陸軍の大元帥にまでなったよ。

でも、何故かこれから海軍を率いなきゃいけないみたいなんだ。

もしかしたらもう会えなくなるのかもしれないね。

 

 

…本心を叫ばせてもらうよ。

 

 

馬鹿じゃねーの!?

馬鹿なの!?ルイ・フィリップさんよぉ!?

俺は!陸軍の!大元帥であって!海軍じゃない!

手前は63だろ!?まともな判断しろよ!耄碌したかこのジジイ!

 

 

でもNOとは言えないフランス人の俺は腹を括って行くしかないんだけどね!

 

 

 

 

 

 

わー大砲が飛んでくるなぁー

 

危ないなぁ〜

 

 

うふふふふふふふはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは何でだよ!

 

 

なじぇ俺がぁ!大砲が飛んで来たから切り捨てるの?馬鹿なの?てかなんでこのサーベル折れないの?俺の技術的なあれがあっても無理だよ?何?妖刀的なサムシング?

 

 

「流石大元帥!大砲の弾を切り捨てるだなんて!」

 

「そこに痺れる!」

「憧れるぅ!」

 

なんかイギリス人が混じってたかな?

俺はゲロ以下の匂いなわけ無いと信じてる

多分、きっと、おそらく、めいびー、しないと思う

 

 

 

「私も負けていられませんなぁ!」

ムキムキ野郎シャルル少将が来た。立派な筋肉ですね…うん、兵士5人がかりで撃つ大砲一人で撃つのはおかしいと思うよ?

…俺もできるけど

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやー、恐ろしく強いですな、メーガス殿は!」

「いえ、貴方も十分にお強いと思いますよ、シャルル少将」

 

戦いも終わり、帰る船の上で2人で酒盛りをしていた

俺自身結構酒好きで蟒蛇だからグイグイ飲んで、同じペースで飲んだ少将はこのとうり、絡み酒を始めた。とても面倒くさい

 

「そういえばぁ〜ヒック

最近貴族の間で面白い噂を聞いたのですがぁ!」

「どんなものですか?あまり社交の場に出る暇がなくて、知らないんですよね」

ガハハハと豪快に笑いながら教えてくれた

 

 

「えらい別嬪さん連れた白髪の美丈夫が来るようになったらしい…確か…クリスタ…?」

「……モンテ・クリスト伯…」

「おぉ!そうだそうだ!知っているじゃあないか!背が高くて教養もあるような男だから女どもがみぃーんなそいつのとこに行っちまうって愚痴をよく聞くな!」

「…………………」

「…どうした?」

「いいえ、ただ、そんな美人さん2人組を見てみたいな、と」

「うははは!どぉせメーガス殿に比べればどっちも霞んじまうだろうがなぁ!」

 

 

 

 

 

 

「…てな事を聞いたので、一緒に夜会に行こう!」

 

「馬鹿ですか?あまりにエドモン・ダンテスに会いた過ぎて錯乱しました?」

 

「えー俺はただ、未だに女の影がひとっつもない友達を出逢いの場に連れてってあげようと思っただけですー!」

 

「もう50を過ぎているので結構です。余計なお世話です!」

 

えー…女の子に囲まれてあたふたしてるトマを見るのがおもしrゲフンゲフン、愉えtゲホッゲホッ…

 

微笑ましく思えるよね!

 

「ねーーーー!いこーよー!俺はトマと一緒に行きたいのーー!ねーーーーーーぇーーーーー!」

「駄々っ子ですか貴方は!」

 

ぶーーーー!

ふん!

そんなに言うなら俺にも考えはあるんだ!

 

 

「一緒に行ってくれなきゃ俺の権限でトマの給料減らす」

 

「職権濫用だ!」

 

 

トマは顔を覆って崩れ落ちました

 

 

 

 

 

 

 

 

「すごく緊張するわ…」

 

私にとって、はじめての夜会

綺麗に着飾った男女(人々)がグラスを片手におしゃべりをしている

 

誰も私を見てなんか居ないのだ、緊張する必要はない!

 

ウェイトレスからジュースの入ったグラスを受け取り、先に行った姉たちを探す

 

「ほんと、人がいっぱい…」

 

少し耳を澄ませば沢山の会話が聞こえる

 

やれ宝石がなんだ

 

織物がどうだ

 

何処そこの息子はこうだ

 

あそこの夫人は男が途切れないだとか

 

 

下世話な話が耳に飛び込んでくる

 

「なんかやだ…」

早く姉さん達に合流しよう

 

 

 

 

 

しばらく歩けば、見覚えのある真っ赤なドレス

 

「姉様!やっと見つけた!」

「あら、あんたやっと来たの?」

 

姉様の向かいには、また増えたとばかりに嫌な顔をする白髪の男がいた。

 

わぁ…姉様よく話しかける勇気があるなぁ…

私無理だし彼も嫌そうだし…あとこんなイケメンなら奥さんいるでしょ…

 

「姉様…私気持ち悪くなっちゃった…」

「えぇ〜…しょうがないわね、向こうの出入り口の所に椅子があるから少し休みなさい。心配だから私も行くわ」

「ありがとう、姉様」

 

私の手を掴んだ姉様はスルスル人混みを進んでいく

 

「ごめんなさい…」

男の人の横を通る時にそれだけ呟けば、

「ありがとう」

と小さな微笑みが帰ってきた

 

 

 

 

「ほら、ここの先に椅子があるから休んでなさい」

 

「姉様は?」

ふふんと笑って

「勿論、旦那探しするに決まってるじゃない!」

姉様は男に対して夢を見過ぎなのだ

高収入で、イケメン、優しくて、家庭的なスーパーハイスペック男を探しているとか、苦笑いしか出来ない

「う〜ん…頑張って?」

 

「ええ!」

 

意気揚々と足を進める姉を見送ってから、扉を開けた…が、

「きゃっ!」

「おっと」

人とぶつかってしまった。

「ごっ、ごめんなさい!」

 

「こちらこそごめんね…怪我はしてない?大丈夫?」

 

背が高く、キラキラ輝く蒼い瞳と不思議な煌めきの金髪、美の女神が自ら作った最高傑作だと言われても信じるような(ひと)だった

 

「えっ、あっ、はい、大丈夫です」

 

「メル、ちゃんと前を見なさいと言っているでしょう!」

「わかってるよ、トマ。まぁ、そうそうぶつかることはないと思うけどね」

 

後ろから、金髪に少し白髪の混じったおじ様…ロマンスグレーとでも言うのか、こちらもイケメンだった

 

「大丈夫でしたね?貴女もちゃんと前を見なさい。怪我をしますよ」

 

すごく…パパみを感じます…

 

「あっ、そうだ!ねぇ君、会場で白髪の背の高い美丈夫を見なかったかい?」

「最近噂になっているようなのですが」

白髪の…?

「あ…心当たりがありますよ姉が猛アタックしてました」

 

「ほんと!?何処らへんだったか教えてくれない?」

「良いですよ。こっちです」

 

イケメンの過多は体に悪い。はっきりわかんだね。さっきから一言話すたびに心臓が口から飛び出そうだし、声も物凄い上擦ってる。

 

 

会場に入ってすぐに私は後悔する事になった

 

「キャーーーーー!!!!メーガス大元帥よーー!!!」

「見て!トマ大将もいるわ!」

「あーん!いつ見ても素敵ー!!!!」

「なにあの女」

「ブサイクのくせに」

「なんであんな女がすぐ近くにいるのよ…!」

 

 

パパ、ママ、姉様、私の胃は今日で死にそうです

 

 

 

 

 

 

 




□月◇日





疲れた。
大砲を切るなんてことはもう経験したくない。
エドモンらしい噂を聞いたから早く会いに行かなきゃ…早く、メリーが起きてくれないかな

やっと会えるね



この日はここで終わっている





国外から更新中

遅れた理由
テスト
修学旅行
英検

待って、希望してたら合格してました。

さあみんなも〜!

「待て、しかして希望せよ」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

再会した日

何書いてるかわかんなくなってきた








やっと…

 

 

やっと見つけた…

「エド…()…」

 

周りの声に掻き消され、声は届かない

それだけではなく、目の前の衝撃で声がでない

幸せそうに笑う彼と、腕を絡める知らない女

 

〈見つけた〉

 

 

〈みつけた"

 

 

"ミツケタ"

 

 

"なのに"

 

"嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つきウソつきウソツキ!!!!!!!!!!!!!!"

 

 

 

"わたしだけをアイシテくれるっテ言ったノニ"

 

 

"そっちの方がいいのね。私みたいな女よりマシよね"

 

 

"あぁ、私はただ自惚れてたんだわ"

 

 

"ワタシはいらないのね"

 

 

 

「ぁ…メ…リー……」

「どうしたんです!?貴方、顔真っ青ですよ!?」

 

視界いっぱいにトマの顔がうつる

「メリーが…」

「!…起きたんです?」

 

"ワタシはいらないのね"

さっきまであった暖かさは、その言葉を機になくなった。無くなってしまった

 

「ワタシはいらないのねって…消えちゃった……もう何処にも居ないよ………いないんだ…ねぇ、俺はどうやって生きればいいの…?もう…わかんない…」

 

「今まで通りに馬鹿みたいに笑っていればいいんです。死ぬのはせめて私が結婚してからにしてください」

 

トマが…結婚してから…?

 

「ふはっ…そんなの…もう永遠に死ねないじゃん」

トマは安心したように溜息をついた

 

「貴方ねぇ…本当に……ハァ…貴方が笑ってられるならそれで良いですよ、もう…」

 

「よぉーし!じゃあ俺が不死になる必要がないように、嫁さん候補を口説きにいこー!!」

 

「はっ!?ちょっと!!!」

 

 

 

 

 

 

「みて!グランツ大元帥よ!」

 

「あの子たちいーなぁ…踊ってもらえるのかぁ…」

 

「私がもっと美人だったらなぁ…」

 

若い女達が黄色い声をあげている。少し前まで自分に対してだった事を考えると、本当にミーハーというか、なんというか…

 

自分としては美しい愛人がいるだけで充分……いや、本当は、ここに彼女がいないかを探しに来たのだ。愛しい俺の婚約者、メルセデス・モンテゴを

 

「やっぱり綺麗よねー!」

「パレードの時に見かけたけど、ほんと女の人より綺麗よね!」

「特にあの髪!金なのに色々な色に見えるのが綺麗!」

「まさか!あのマルセイユの青い海を閉じ込めたような瞳でしょう!とっても神秘的!」

「それより私はあの肌ね!陶器のように白くて滑らかで…羨ましいわぁ…」

「「「やっぱり天使様は美しいわね!」」」

 

 

 

少しだけ、興味が湧いくる

そんなにも貴族に褒めそやされる大元帥というのがどんな人物か

 

 

 

 

一目だけでも見てみようと思った

 

 

時が、止まったように感じた

 

 

 

小さい頃から知ってる

‘メル’というか名しか知らない

 

 

昔からの親友

何十年も会っていない

 

 

 

「メル…?」

 

まだ、こちらに気づいていない彼は、熱心に女を口説いている

 

「………本当に君は綺麗だね。君には花が似合いそうだから贈りたいと思ったんだけど…君にあげたら花が可哀想だ。だって、どんなに綺麗な花も君を前にしたら恥ずかしがって閉じてしまうもの」

 

 

平気で歯の浮くようなセリフを言う所は変わらない

 

 

 

 

 

 

 

逞しくなった肩にそっと手をおいた

 

 

 

「…なんでしょう?」

 

口説いている途中に声をかけたからだろう。不機嫌そうで、それに加えて時間が経ち過ぎて姿形が変わってしまった。きっと俺には気づきはしないのだ

 

そう思えば、変に自信が湧いてきた

 

「いや?ただ少し大元帥と話をしてみたかっただけだ」

そう言うと、冷めた目の中に少しの光が揺らめいたように見えた

「…そうですか。レディ、すみません。また今度逢えたならダンスを一曲お願いしますね」

「ええ!喜んで!」

「それでは…

あちらに個室があります。そちらで話しましょう。俺はちょっと視線を引き過ぎますから」

 

スタスタと歩いていく彼は本当に気づいていないようで、悲しさと、少しの安堵感を覚えた

覚えていないなら、幻滅される事はない

この醜い傷も、白くなってしまった髪も

 

 

 

 

 

胸に渦巻く醜い復讐心も

 

 

 

 

 

 

「それで?話はなんですか」

 

そう聞かれれば、言い淀んでしまう。本当に話したい事は話せない。話したくない

 

「……とある女性を探している」

「愛人ですか?」

「いや…だが、なぜ愛人だと?」

「今は気難しそうな顔をしている貴方が、先程幸せそうに笑う姿を見かけたので」

「……そうか。」

「で?その(ひと)の特徴は?」

「…貴方によく似た女性だ」

「名前は?」

「メルセデス・モンテゴ…」

「分かりました。その人について教えて差し上げましょうか?」

「頼む」

「では、まずその女は俺の伴侶です。何年も前に亡くなりました」

「…は……?」

「子供は1人。」

「ま…さか…」

「【あの人しか愛せない】らしいですよ。そう言って居なくなりました」

「なんで…」

唯、幸せに生きて欲しかった

俺のことは忘れて、優しい人と一緒になって欲しかった

心の底から愛していたから

俺には幸せにする事が出来ない

 

 

 

ただ、幸せそうに笑う君が見たかっただけなのに

 

 

「ほんと、愛されてますね。エドモン」

「…なっ……!」

「髪も肌も随分と白くなったね。性格も荒んじゃってさぁ」

「気づいてたのか!」

「親友を忘れるはずないだろ〜俺そんな薄情に見える?」

「あの日…!」

「あれは…まぁ…ごめんね?許してちょ❤︎」

「…お前も変わったな。昔はもっと男らしくしようとしてた」

「それは君が揶揄うからだろ!女みたいだーってさ!」

「その度にお前は力で解決しようとしていたな」

「「…………」」

「まぁ、久しぶり?」

「あぁ、久しぶりだな」






こうはんにつづくよ!

だから日記はなし!




じゃあね!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

またまた再会した日

ウヘヘ…たのちい…







懐かしいね〜としばらく話してからいろんな話を聞いた

 

「ところであの別嬪さんは?奥さん?愛人?」

「エデは………愛人…?なの…か?」

「んんんwwwこれは笑うしかないwww

じゃあ出会いは?」

「出会い…戻ってくる途中で………買った」

「oh…なかなか不思議な出会いのようで……」

 

そんな話をしてから俺たちは部屋を出た

 

「メル!貴方勝手に居なくならないでください!また何かやらかしてないでしょうね!」

「んー!本当にトマからの信頼が欲しい!」

 

『エドモン、貴方私を放ったらかしにし過ぎよ。』

『すまない。なにせ懐かしい顔にあったのでな』

 

お?さっきの別嬪だ〜

 

「やあ、可愛らしいレディ。良ければ私に君の名前を教えてくれませんか?」

Δεν γνωρίζετε την ευγένεια;(貴方、礼儀を知らないの?)

おろろ?何処のだこの言語?

 

うーんと…えーっと…

 

 

あっわかったギリシャ語だコレ

 

そういやエデってギリシャ生まれだっけ?

「メル、彼女は…」

『失礼しました。私の名前はメーガス・グランツ。この国で陸軍の大元帥をさせて頂いています。レディ、貴方のお名前は?』

『あら、存外博識なのね。それとも言語に強いだけかしら。まあいいわ、』

「私はエデ。ギリシャの貴族よ、元がつくけれど。ごめんさないね意地悪して。この人が私の事放ったらかしにするんですもの」

「ヒュー愛されてるぅ」

「揶揄うのはやめろ。あとそっちの奴は誰だ?いい加減睨まないで欲しいのだが」

睨んで…?トマは睨んだりしな…

 

めっちゃしてるーー

わあい敵意MAXだー賊もびっくりなやばい顔してるぅ

 

「トマ?なんで怒ってるの…?」

「いえ、貴方は気にしなくて良いですよ。ただ私が気に入らないだけですから」

「睨むのはダメ〜」

そう言ってトマより高い身長を生かして目隠しをする

「離してくれます?」

「離したら睨みつけるか毒を吐くでしょ?」

「勿論」

「じゃあ離さない」

 

すごいエドモンから視線が刺さる

何してんだこいつって言う訴えが感じられるぅ

 

「ごめんねエドモン。この人はトマ。俺の昔馴染みで陸軍の大将してるよ」

「トマ・ローベル・ブジョーです。よろしくする気はありません」

「トマ!?」

「……………………」

 

 

なんでぇ?

初見だろ?

そんな気にくわないことある?

誰に対してもお父さんな対応をするトマが…なじぇ?

 

 

 

 

わからん!

 

「うーん…無理やり連れて来ちゃってご機嫌斜めだからかなぁ…もう帰る?」

「是非とも」

「そっか…じゃあまたね(・・・)エドモン。今度俺が治めてる領地に来てよ。そしたらまた会えるかも?よく街にいるからさ。エデちゃんもエドモンの事よろしくね〜」

ヒラヒラと手を振りつつ、空いている手でトマと手を繋いで歩いていく

 

 

「夜会、そんなに嫌だった?」

 

「…そうですね、そこそこ」

「…ごめんね、無理やり連れてっちゃって…」

「もう慣れました」

 

慣れるほど色々……やったわ…

 

え、正直ごめん。胃に穴が開いてたら俺のせいだわ…めんご♡

 

「どうしたら許してくれる…?」

「そんな怒ってませんよ。まぁ、また貴方の料理を食べるのも悪くないですが」

「…!いっぱい作る!」

「はいはい」

 

 

 

 

 

 

「とかなんとかやって別れたし、会うのはしばらく後かなーって思ってたんだけどなぁ?」

「ふん…笑えるほど早い再会じゃないか」

「残念…今日はあの可愛らしい髪型じゃないの?」

「あれは無理やり連れて行った腹いせにトマがやった事だから…」

 

「オタクら知り合いだったんです?」

 

いやぁ〜知り合いだったんですよねーコレが。

 

 

しばらくエドモンとおしゃべりしてたら何故かアルベールがエドモンを威嚇し始めた

 

「…なんで???恩人じゃないの…???」

 

「あらあらあら!へぇ〜そうなのねぇ…分かるわ。私だって彼を取られるのは嫌だもの」

「何がそうなの???教えて???何?若者言葉???」

 

若者2人が何か理解し合ったけどおじさんにも教えて?若者のことわかんないよ…ジェネギャが…しゅごいのぉ///……

 

「…ふっ……」

 

「どうしたのさ急に」

「テメェ…!」

 

なんかエドモンとアルベールがバチバチしてる

 

「わ"がん"に"ゃい"」

 

とりあえず至近距離でバチバチしていいけど俺の事挟むのやめて?

 

「決闘だ!」

 

「なんで!?」

 

「いいだろう」

 

「なんで!!!!????」

 

 

 

え????え??????睨み合ってた数秒で何があったの?2人の間にいたけど分からんよ?え???誰か説明ぎぶみー!!!

 

 

 

「え…?どうしたらいいの?」

「私のために争わないで!って言うのはどうかしら」

「無視しときゃいいだろ?馬鹿なんです?」

「殴って止めたらどうでしょう?」

 

え…じゃあ③の殴って止めるにする?

 

手袋投げ捨ててる2人の後頭部をミアから借りたお盆で殴った。とってもいい音がしました。まだやろうとするので、2発目はもっと強くしようと心に誓いました。

 

 

「寝てろ馬鹿ども!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 




□月@日





メリーが少し起きたけど、また居なくなっちゃった。本当にまた起きてくれるよね?1人にしないよね?
俺だってメリーがエドモンを大事に思うようにメリーのこと大事に思ってるのに……


あと、切実に若者のことを理解したい。でもアルベールとトマは分かりあってるみたいだった。トマは中身若人だったの?


この日はここで終わっている




「昨夜の髪型はトマがやったと言っていたけれど…?」
「うん。トマがやってくれたよ。貴方髪を結わないでいくつもりですか?って」
「リボンの三つ編みを?」
「リボンの三つ編みを。貴方は、そうですね…軍服の様な藍色のリボンが似合いそうですね、って言って、さささーっと」
「そのリボンは?」
「くれたよ。結構高めのやつだったのに良いのかな…?」


(可哀想な人ね、あの人も……)


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

HENTAIに会いに行った日

ドタバタしてて遅れました

すいまそん







「探して欲しい人?」

「ああ。俺よりも変な奴との人脈があるお前なら知っているのでは、と思ってな。」

 

エドモンが急にやってきて、頼みごとがあると言ってきた

 

けど、俺そんな変わった人間しか知り合いいないわけじゃ無いよ!?

ちょっぴり変わった、ほんっっっっのちょっぴり(強調)キャラの強い人がいるだけだもん!!!

 

「むむむ…そんな事言うなら俺手伝いたくなくなっちゃうぞ!」

「そいつの見た目なんだが…」

「話聞けよ!!!」

そいつの見た目なんだが!

「ウィッス」

「曰く、金髪で眼鏡をかけた美丈夫らしい」

「ふんふん」

「………」

「…………それだけ?」

「ああ。」

 

おーけー おーけー、落ち着け俺。相手はエドモンだ、元気いっぱいで可愛くて、おっちょこちょいだった少年時代のエドモンだ(と思い込め)

そう、優しく、諭すように伝えなければいけないんだ、落ち着け…

 

「それに該当する奴がどれだけいると思ってんだテメェは!!!!!!!!」

 

「いいか!?美醜が一番わかりづらい特徴なんだぞ!?もしかしたら物凄い醜男かもしれないんだぞ!?」

 

「眼鏡なんざ外してる時もあるんだぞ!?そしたら特徴なんて金髪しかないじゃ無いか!!!それならトマだって歳のせいで目が見え辛くてこの前眼鏡作ったわ!!!!」

 

 

 

「……すまん。」

 

「ううん、こっちも怒鳴ってごめん。ほかに何か覚えてる事ある?」

 

「ファリア神父から聞いた。彼を嵌めてシャトー・ディフに入れたのはそいつだと。」

 

「よく思い出して。神父ばどんな人だと言っていたんだ?」

「確か……名前はタランテラ…?だったか」

「えぇ〜?イタリア人の知り合いとかすっごい少ないんだけど…」

「イタリア人?」

「えっ……だって、タランテラでしょ?イタリア・ナポリの舞曲の名前だよ?偽名だと思うけど、イタリア人の可能性高いじゃん」

「ふむ……」

「ほかに何か関係する事言ってなかった?」

「……………………」

あらら、エドモンは唸りながら考え込んじゃったし凄く暇だ。

 

疲れたなぁと思いつつ、背もたれに体を預けて休む

ふと、エデも来ていた事を思い出して頭を倒した

 

逆さまになった世界ではアルベールとエデ、ミアが仲良くお喋りをしていた

 

ニコニコと笑っていて、本当に幸せなんだろう

 

 

 

妬ましい

 

 

 

みんなひとりじゃないんだ

 

 

ひとりをしらないんだ

 

 

 

かたわれ(たいせつなもの)をうしなったことなんてないんだ

 

 

羨ましい羨ましい羨ましい羨ましい羨ましい羨ましい羨ましい羨ましい羨ましい羨ましい羨ましい羨ましい羨ましい羨ましい羨ましい羨ましい羨ましい羨ましい羨ましい羨ましい羨ましい羨ましい羨ましい羨ましい羨ましい羨ましい羨ましい羨ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい

 

 

 

 

 

 

 

殺してしまおうか

 

「…!…ぃ!ぉい!おい!聞いてるのか!メル!

 

「ふぁい!?何!?」

「さっきから話している事をきいてないだろう」

「えっっっと…………」

「…はぁ、もう一度言うぞ、俺も良くは分からんが、【セイドウキョウカイ】と言っていた。【吸血鬼】とも」

「えぇ…【セイドウキョウカイ】?んん"?【セイドウキョウカイ】って【聖堂教会】?」

「知っているのか?」

「うん。確かこの前俺の事殺しにきた奴らがそう名乗ってた。貴様の行使する魔術は異端で〜うんたらかんたら言ってたよ。確かにその中に眼鏡の金髪ならいたよ。その後にも夜の散歩中に会ったりしたし」

「本当か!?」

「うん。住居も知ってる。けど行きたくない」

「何故だ」

「え?逆にエドモンは《私のモノになりなさい!》とか言いながら襲って(意味深)くる奴に近づきたい?」

「……お前は昔から変なのに好かれるな」

「やめて?なんでただ会話してただけなのに《貴方の知識全てが欲しい!私のモノになりなさい!》とか言って襲い掛かってくんの?ばか?しぬの?しね?」

 

あぁ、何だろぉなぁ〜!ちょっと汗かいちゃったかなぁ!?しょっぱい水が流れてくるなぁ!?

 

ちくしょう!!!なんで寄ってくるのは変態(♂)なんだよ!せめて変態(♀)が良かった!可愛い子が良かった!!!!!!

 

は〜〜〜(クソデカため息)

やだなーーーー!!!!

いろんな意味で死にたくなるんだよなぁ!!!!

 

 

「あ"あ"あ"あ"………ゔぅ…ちょっとまってて…」

「そんなに嫌か?」

「死ぬほど嫌だけどエドモンが言うから頑張る…」

 

 

 

 

自分の部屋の寝室、この部屋には少し特殊な仕掛けをしてある。実を言うと、昔質に入れたメリーのドレスを買い戻していた。そのドレスを隠すための仕掛けだ。クローゼットの奥の壁をスライドさせると、取っ手が現れる。そこを開くとドレスや、チョーカーなど、大事なものがしまってある

 

「えーっと……あった、これだ。」

 

木箱にズラリと並んだ宝石の1つを手に取り、小さな巾着に入れた

 

 

 

 

「エドモン、これ。首にかけといて」

「これは?」

「昔あげたサファイアあるでしょ?それとおんなじように魔術をかけてある石。」

「………ん?まて、あのサファイアにもかけてあったのか?」

「そうだよ。あのサファイアは水辺での危険を遠ざけるようなもの。ソレはファイブロライトって言う石。危ないモノが近くにいると警告してくれるよ」

「そうか…」

「うん……じゃあ……いくかぁ…」

「すまない」

 

 

 

 

 

 

カージュを説得して二人乗りして早数時間

真っ暗な森の中を突き進んでいた

 

 

ぽつりと一軒だけ建っている家の前で止まった

 

 

「ここだよ」

「随分と……」

「ボロい?でも魔術師だしここも工房なんだって」

「も?」

「他にも数箇所あるって」

「……よく知ってるな」

「連れてこうとするんだもん」

「…………」

「…………」

「「入るか……」」

 

 

あーいやだなぁ!!

今すぐ帰りたいなぁ!

そんな気持ちを込めながら、

「どっせい!!!」

「うわっ!!」

ふむ、外に気配を感じてドアのすぐ近くに居たみたいだ。可哀想に、ドアに潰されてしまった!いやぁー全くの偶然だ!カワイソウ!カワイソウ!

 

「誰だい!?こんな野蛮な……!メーガス!やっと私のモノになる気に……」

「エドモン、まだ日は沈んでないよね?うん、ないね!ミハイル!日光浴を楽しもうじゃあないか!」

「…………」

 

 

 

 

メルの寄越した宝石はコートの内ポケットに放り込んだ。だから何か変化があっても気がつかないかもしれない。そう思っていた。

 

石のある場所は火傷をしそうなほど熱く、耳元で金属の擦れ合う耳障りな音が響いている。

 

よくわかる

 

こいつが、俺では殺せないほどに強いのだということが

 

 

……ただ、見た目は、ただの痩せた科学者…というよりは親友の足に縋り付いている変態だろうか

 

 

 

 

「いい加減にしろ!!!」

「嫌だ!君が私のモノになるまで離さない!」

「ああもう!服にこびりついた血みたいな奴だな本当に!しつこいったらありゃしない!」

「吸血鬼には褒め言葉だね!」

「その長い三つ編み引っこ抜くぞ!!」

「もう引っ張ってるじゃないか!」

「離せ!」

「嫌だ!」

 

さっきからザクザクとひたすら刺してるのに全く離れようともしない。

頭が痛くなるから本当は使いたくなかったけど、先生直伝のアブナイ魔術を使うしかないか…

 

◾️◾️◾️◾️◾️◾️(クトゥルフの鷲掴み)

「ギッッ!」

「さっさとくたばれドグサレが!!!!」

 

ミハイルは魔術で強化されていたであろう家のかべに叩きつけられて、周囲を真っ赤にリフォームさせていた

 

「回復し切る前に帰ろ」

「あ、あぁ…」

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「それで?夕飯に遅れた訳ですか?」

「ウッス…」

「私のこと置いて行って二人でランデブーですか?モンテ・クリスト伯爵さま?」

「そんな訳では…!」

「せっかく私とミアが作った美味しい料理を放ってよぉ?」

「ウイッス…」

「あんた、恋人より友人取るとかフられても文句言えないんすよ?しかも親子ほども離れてるのに」

「ぐっ…」

 

「「しばらく私達は料理しません。旦那様(テメェ)が作ってくださいね」」

「何も言い返さないなんて酷いです!私、もう怒りました!メーガスさん!私と明日、デートしましょう!!」

「はぁ!?何言ってるんですオタク!?」

「えっ、うん、いいよ全然。好みの子だし」

「なっ…!メル!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

デート編につ・づ・か・な・い♡

 

 




▫︎月◎日




今日は記憶から一部抹消したい日だった
変態と会うことはいつもは書かないけど、今日はエドモンと一緒だったから書くことにする
エデにデートに誘われたから、今度一緒に花畑でも行こうと思う


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

死んだ日







生前最後!








コツリ、コツリとヒールを鳴らして歩く妖艶な美女

 

ワインレッドのドレスが目を惹く

 

 

表情はポークボンネットに隠れて見えない

 

 

 

 

ただ、血のように赤いルージュが微笑みを浮かべていた

 

 

 

 

 

 

「もし…そこの方」

 

伯爵の頼みで街に買い出しに行っていた俺は、伯爵の屋敷の前で呼び止められた

「はい?…………わぁ…」

振り向けば、そこにいたのは綺麗な女の人だった

マルセイユの海を切り取ったかのような瞳が印象的だった

「ここは、モンテ・クリスト伯の屋敷で間違いないかしら?」

「えっと、はい。なんでしたら伯爵のこと呼んできましょうか?」

「いいえ、それには及ばないわ。これを彼に渡して欲しいの」

そう言って彼女が渡してきたのは手紙だった

どこの家紋も押していない、ただ【M】という文字だけの封がされている

「あの!お名前は…」

「そうね…彼にはこう伝えて。貴方達の幸せを願った女だと」

よろしくね、

そう言って踵を返した女性に、俺は声をかけることが出来なかった

 

 

 

「伯爵、さっき屋敷に戻る直前に手紙を渡されたんですが……」

「また下らんパーティへの誘いだろう。捨てておけ」

「はぁ…そうなんですかね…?」

「違うとでも?」

「あっ、いいえ、そんな事無いと思います。ただ、渡してきた女性が気になって…」

「使いのものでは無いのか?」

「綺麗なワインレッドのドレスを着た若い女性でした。それこそエデさんくらいの」

「親の使いだろう」

「名前も聞いたんですが、貴方達の幸せを願った女だと名乗ってました。だからなのか封の部分も家紋でなくて【M】だけなんですよね」

「……まて、その女の特徴を言ってみろ」

「えっ!?あっと…ワインレッドのドレス、ポークボンネットつけてたから分かりずらかったけど、青い綺麗な目で…肌がすごく白くて人形かと思いました。あとは…うーん…あ!髪がメーガスさんみたいな色でしたよ!」

「今すぐその手紙をこちらに寄越せ!!!」

「ひゃい!!!」

 

 

 

 

 

 

親愛なるエドモン様

 

お久しぶりですね、と言える身分では無いことは分かっています。貴方のことを裏切って、逃げ出してしまいました。

今更何を、とお思いでしょうが1つ2つ、伝えたいことがあるので、伝えてしまいたかったのです。

まず、私の失踪について。2つ目はアルベールについて。

失踪についてはメルが全てを知っています。ですが、彼に聞くことはできないでしょうから、同封した鍵をお使い下さい。恐らく全てがわかるでしょう。

アルベールについては、気づいているかもしれませんが、私の子ではありません。メルの子でもありません。彼が町で拾った子供です。

こんな事を言って、何がしたいのか。私にもよくわかりません。ただ、伝えたいのは心の底から貴方を愛している。それだけは何があっても変わらない、ということです。

 

乱文、失礼しました

 

ご結婚、おめでとうございます。同じ人を愛したエデさんにも、どうぞよろしく。

 

貴方を愛したメルセデス・モンテゴより

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今、俺…私は、自分の身体にかけた魔術を解いた

体は華奢になり、背は低くなった

 

今、鏡に映る人物はメーガス・グランツではなく、メルセデス・モンテゴという女性だ

てっきり、魔術を解けば、それ相応の年になると思っていたけどかけた当時の見た目のままだった。

 

「このまま見つかったら、きっとエドモンなら気付くんだろうなぁ」

 

髪型をメリーと同じに切って、彼女が気に入っていたドレスを着る。手袋をつけて、ヒールを履く。髪をまとめてポークボンネットを被る。

 

最後に、黒いシルクのチョーカーをつければ完成だ。

 

 

手紙を持って、窓から飛び出した

 

 

 

誰にも見つかってはいけない

 

 

誰にも気づかれてはいけない

 

 

誰にも心配させてはいけない

 

 

 

 

手紙を託した俺は、

 

 

 

 

波の押し寄せる崖の上で

 

 

 

 

胸にナイフを突き立てて

 

 

 

 

 

 

 

 

 

飛び降りた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[いつも]

 

 

[本当に人は面白い(つまらない)

 

 

 

 

[貴方は特にです]

 

 

 

 

 

 

[だから]

 

 

 

 

 

 

 

[これはご褒美()ですよ]

 

 

 

 

 




メルが、行方不明になったと聞いた。
陛下には大元帥をやめる旨を伝えてあったらしく、アルベールから聞いた。机の上には手紙と鍵のかかった本があり、手紙には俺にアルベールを頼む事、遺産の半分をアルベールに、残りを使用人の2人に与える事が書かれていた。
本には鍵穴があり、きっと、彼女の送ってきた鍵を使うのだと思う

帰り道、近くの港に人だかりあった
ただの野次馬のつもりだった

「何かあったのか?」
「あれまぁ、貴族の方でないの!やあねぇ、なんか漁をしてたら網に死体がかかったらしいのよ!」
「死体?」
「そう!きれーなドレスを着た死体!ものすごいべっぴんさんだし、海に沈んでたのに腐ってないしでふざけてるんじゃないかと思ったわ!さっきアタシも見てみたけど、よく出来た人形かと思っちゃったわ!」

好奇心が擽られて本当に、ただの興味本位で見てしまった






自分の元婚約者が、胸にナイフを突き立てて死んでいるところを



「メリー…?なぜだ!なぜお前が死んでいるんだ!!!」

周りの野次馬を突き飛ばして彼女に近づく

「メリー!なぜ!お前が…!俺は…………」
「兄ちゃんこの死体の知り合いかい?」
「元…婚約者だ」
彼女の首元を見れば、俺が初めて渡したプレゼントがあった
シンプルな黒いシルクのリボン。それをずっと着けていたいからと、チョーカーにして俺の前では一度も外したことは無かった

とめどなく溢れてくる涙は、彼女の顔に落ちていく


彼女の冷たい頬を流れる涙は、本当に彼女が泣いているかのように見せた


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。