ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか?〜雷霆兎は道化と踊る〜 (bear glasses)
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雷霆兎の英雄譚:序章

突然だが、ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか?

 

結論、

 

『ヴモォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!』

 

僕が間違っていた。

 

「ハ、ハハハ」

 

思わず失笑した。なんで、なんで、なんでっ!

 

第五階層(・・・・)にミノタウロスが居るんだよ………ッ!!!」

 

ミノタウロス—————————Lv.1の自分一人では到底倒せない敵だ。かといって、逃げることも出来ない。逃げ出そうがいつかは死ぬ。だから————

 

『ヴゥウウ…………!!』

「ぶっ潰す!!」

 

たとえ無理でも此処で倒す!!

 

『ヴゥウウウモォオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!』

「—————————ッ!」

 

振りかざされる攻撃を避ける。そして、

 

「【雷霆よ、鳴り響け】!【ロスト・ケラウノス】!!!」

 

全身を付加魔法で強化する。

 

『ヴモォオオオオオオオ!!』

「うぉおおおおおおおおおおお!!」

 

高速で移動し、襲い掛かる刃をすり抜け、すれ違いざまにナイフで切る。

 

「(Lv.1の僕がこいつを倒すためには、あれ(・・)しかないっ!だから!)」

 

必ず当たる状況を作るッ!!!!!

 

振りかざされる刃を避ける。雷の付加された刃で切り裂く。避ける。切り裂く。避ける。切り裂く。避けて、切り裂く。ただそれを繰り返す。それしか勝機を手繰り寄せる手段がないから、繰り返す。

 

「(そろそろ付加状態が切れる。決めるなら—————————————)」

 

今ッ!!!

 

『ヴ、モォオオオオオオオ!!!!!!!!』

「【遺されし我が身に来たれ雷霆】!」

 

何かを察知したのか、先ほどよりも焦ったようにミノタウロスが攻撃を加えていく。ベルは付加魔法のリソースをひたすら回避に使い、避け続ける。

 

『ヴモァアアアアアアアアアアアアア゛ア゛ア゛ア゛! ! ! ! ! !』

「【灰燼すら残さず焼き尽くせ】!!」

 

苛烈になっていくミノタウロスの攻撃。進む詠唱。

 

『ウ゛モ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛! ! ! ! !』

「【失われし大いなる雷光(ひかり)よ】!!!」

 

そして、最後、全霊の拳がベルに迫る。避ける直前、付加魔法が切れた。

死が迫る。終わりが近づく。しかし、ベルの瞳に諦めは無く、絶望もない。

 

「(間に合えッ!)【輝け】、【ロスト・ケラウノス】!!!!」

 

瞬間、眩い雷火が迸り—————————————————

 

世界が、白く染まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

光が消えて、残った迷宮には

 

精神枯渇(マインド・ゼロ)』で気絶し、倒れた少年(ベル・クラネル)と、ミノタウロスの魔石、そして、戦いの一部始終を見ていた(・・・・・・・・・・・・)剣姫(アイズ・ヴァレンシュタイン)が居た。

 

「ミノタウロスを、倒した—————————?」

 

全くの無名の、恐らくはLv.1であろう少年が、ミノタウロスを倒したという事実に、剣姫は暫く放心していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

—————————————

 

剣姫、アイズ・ヴァレンシュタインは愕然としていた。

自身が逃したミノタウロスを倒してしまった兎の様な少年の強さに。

 

「(一体、どうすればこんな強さを……)」

 

純粋に、興味が湧いた。この少年に。この強さの秘訣に。

 

「(知りたい。教えてほしい)」

 

自然と、足が動いた。近くまで来て、しゃがみ込む。

 

「(気持ちよさそうな寝顔)」

 

安らかで、庇護欲をそそられる寝顔。

 

「ふふ……」

 

かわいいな。と、純粋に思った。何故だろう、初対面の筈のこの子をとても好ましく思う。

 

「たしか、こういう時は—————————————」

 

膝枕?すればいいんだっけ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

——————————

 

 

ふと、目が覚める。瞬間、目に入ったのは————————————

 

金色。輝くような、美しく、艶やかな金色の髪と瞳を持つ、綺麗な女性。わかった、わかってしまった。金の髪と金の瞳、青い装備に身を包む、美しい女性。

僕の所属しているファミリア(・・・・・・・・・・・・・)の第一級冒険者。

————【剣姫】アイズ・ヴァレンシュタイン。

 

「あ、起きた………?」

「う、あ………」

 

顔に熱が集中する。喉が乾く、動悸が激しくなる。

 

「あ、ああああ」

「……?」

 

ああ、僕は、僕はアイズ・ヴァレンシュタイン(このヒト)に、

 

恋を、した。

 

「ねぇ、大丈夫?」

「だ、大丈夫ですっ!!」

 

慌てて状況を把握する。後頭部に柔らかな感触。視界に少女の顔。これは、これは———

 

膝枕だ。

膝 枕 だ っ ! ! !(大事なことなので二回(ry)

 

「失礼します!!」

 

慌てて起き上がり、飛びのく。

 

「あっ……」

 

何故か残念そうな声が聴こえたが、気のせいだ。気のせいったら気のせいだ!!

 

「すいませんでしたぁあああああああああああああああああああああああああ!!!」

 

急いで地上にダッシュする!!

今の真っ赤な顔を見られたら恥ずかして死んでしまう———————!!!

 

 

再結論、

 

ダンジョンに出会いを求めるのは、間違ってなんかいなかった。

 




ミノタウロス戦闘時のベル君のステイタス
冒険者歴半月
ベル・クラネル
髪色:白
髪型:原作通り
瞳:紅

基本的には原作通りだが、より立ち位置や役割がハッキリして、スキルとして発現。ロキファミリア所属で、スキルの事は知らず、魔法のことしか知らない

ステイタス
力:E403
耐久:H199
器用:E412
敏捷:D521
魔力:D520

魔法
【ロスト・ケラウノス】
付加魔法/殲滅魔法
雷、火属性
付加詠唱【雷霆よ、鳴り響け!】
通常詠唱【遺されし我が身に来たれ雷霆。灰燼すら残さず焼き尽くせ。失われし大いなる雷光(ひかり)よ!輝け!!】

スキル
【雷霆継承(ディオス・ブラッド)】
・大神の義孫たる証
・戦闘時、敏捷に超高補正
・格上との戦闘時、全ステイタスに補正
・以下、ランクアップするごとに解放

【最終英雄(ラストヒーロー)】
・黒龍殺しの宿業を宿すものにみ発現
・早熟する
・あらゆる呪い、状態異常効果を無効化
・攻撃に龍/竜殺し(ドラゴンスレイヤー)の付与
・己の信ずるものの為に戦う時、全ステイタスに超高補正

少し修正


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ロキ・ファミリアの白兎

そろそろヴァーくんの方も更新しないと⋯(白目)


走る、走る、走る————————

ドロップアイテムの換金だけ済ませ、全速力で本拠(ホーム)・黄昏の館へと走り出す。

本拠を守る門番に挨拶をして主神の部屋まで一直線。

 

「神様!!」

「おぉ、ベルきゅんやないの。どうしたん?」

「アイズ・ヴァレンシュタインさんのこと、教えてください!!」

「アイズたん?なんで?」

「一目惚れしました!」

「へ?……ちょっとごめんな。疲れてて聞き間違えたみたいや。もう一回言ってくれんか?」

「一目惚れしました!!」

「は、はぁあああああああああああああああああああああああ!?なんでや!?まだベルきゅんはアイズたんに直接会ったことないやん!ベルきゅんのこと知ってるの門番とフィンとかリヴェリア、ガレスぐらいやで!?」

「さっき会いました!」

「経緯!経緯説明してや!」

「実は———————————」

 

経緯を包み隠さず話す。ミノタウロスと交戦して、如何にか倒した事。その後気絶したら何故か起き抜けにアイズ・ヴァレンシュタインに膝枕されていたこと。一瞬で一目惚れした事。

 

「あんなぁ……ベルきゅん。んにゃ、ベル」

「はい、なんですか?神様」

「なんで自分ミノタウロス倒してんねん自分のLv.言ってみぃやぁ!」

「1ですけど」

「ミノタウロスの討伐推奨レベルは?」

「2ですね」

「Lv.1ソロでミノタウロス倒したなんて聞いたことあるか?」

「ないです」

「そっちの方がふつう驚くやろ!?レベルアップしててもおかしゅうないんやで!?」

「そんなことよりアイズ・ヴァレンシュタインさんの事の方が重要なんです!」

「そんなことってなんやねん!?」

「だってレベル上がった気がしないんですもん!」

「いや知るかぁ!そんな感覚に何で自信持てんのや!」

「なんとなくです!」

「もうええわ!取り敢えず、ステイタス確認するで!さぁ脱ぐんやベル!」

「何が取り敢えずかはわかりませんがけど、わかりました」

 

ベルは苦笑しながら上着を脱ぎ、ベッドに仰向けになって横たわる。

 

「ぐへへへへへへ、ベルの白くて筋肉質な肌……」

 

蹂躙しようと手を蠢かせるロキに対し、ベルは——————————

 

「【雷霆よ】——————————」

「すいませんでした」

 

速攻で付加魔法の詠唱に入る。この半月で学んだのはこの主神に遠慮はいらない。と言う事だ。まぁ、どちらにしよ本気ではなかったが。

 

「さて、更新するで」

 

 

 

 

「(いや、ベルきゅん強すぎワロえんわ)」

 

ベル・クラネル

Lv.1

【ステイタス】

力:E403→D591

耐久:H199→G233

器用:E412→C607

敏捷:D521→B702

魔力:D520→B700

 

魔法

【ロスト・ケラウノス】

付加魔法/殲滅魔法

付加詠唱【雷霆よ、鳴り響け!】

通常詠唱【遺されし我が身に来たれ雷霆。灰燼すら残さず焼き尽くせ。失われし大いなる雷光(ひかり)よ!輝け!!】

 

 

スキル

雷霆継承(ディオス・ブラッド)

・大神の義孫たる証

・戦闘時、敏捷に超高補正

・格上との戦闘時、全ステイタスに補正

・以下、ランクアップするごとに解放

 

最終英雄(ラスト・ヒーロー)

・黒龍殺しの宿業を宿すものにみ発現

・早熟する

・あらゆる呪い、状態異常効果を無効化

・攻撃に龍/竜殺し(ドラゴンスレイヤー)の付与

・己の信ずるものの為に戦う時、全ステイタスに超高補正

 

憧憬一途(リアリス・フレーゼ)

・早熟する

・懸想(おもい)が続く限り効果持続

・懸想(おもい)の丈により効果向上

 

「(トータルの上がり幅がエグイ。ちゅうかなんやねんこの新しいスキル。まんまアイズたんへの恋慕やんけ。しかも早熟効果付き。これで早熟効果ふたつめやぞ。どんだけ早く成長するんやろ。もう見当つかんわ!)……ふぅ。終わったでー。取り敢えず紙に移すから待っててなー」

「はい」

 

ベルはステイタスが写された紙を見る。

 

ベル・クラネル

Lv.1

【ステイタス】

力:E403→D591

耐久:H199→G233

器用:E412→C607

敏捷:D521→B702

魔力:D520→B700

 

魔法

【ロスト・ケラウノス】

付加魔法/殲滅魔法

 

スキル

 

「———————なにこれ」

 

トータルの上がり幅が可笑しい。778ってなんだ。嘗めてんのか。

 

「いや、まぁ、ミノタウロス殺したんだったら納得っちゃあ納得なんよ。ぶっちゃけランクアップしてもおかしくあらへんし」

「確かに……そういえばそうですね」

「とりあえず今日はもう寝て明日に備えとき!明日はやっと他の団員との顔合わせなんやからな!ちゃんとダンジョンからも早めに上がるんやで!」

「はい!おやすみなさい。神様」

「おう、おやすみな〜」

 

 

 

そして、ベルが居なくなった後、ロキは静かに目を閉じ、溜息を吐く。

 

 

「さて、どうなるもんかなぁ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、明朝。

 

 

「ついに……顔合わせか」

 

そして、顔合わせの日の朝。そして、今日——————————

 

 

 

 

 

「此処が、オラリオ。『ベル兄(・・・)』のいる場所」

 

道化の元の兎が新たな家族と邂逅し、炉の女神が白銀の少女と出逢う。

 




少し修正


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幕間/プロローグ

副題、
白兎収斂/銀月少女、炉の神と出会う
諸事情(作者の深夜テンション)により、ベル君の顔合わせが夜になりました(白目)


—————夢を、見た。

 

「ねぇ、ベル兄。行っちゃうの?オラリオに」

 

思い出す。自分と、妹のような白銀の少女との会話。

 

「うん。僕の目標の為に」

「目標?」

「決めたんだ。強くなるって。もうあんな思い(・・・・・)をしない為に。護りたいものを護れる力を手に入れる」

 

故郷を去って迷宮都市へと向かう、前日の出来事。

 

「英雄みたいな?」

「英雄みたいな……か。僕は別に英雄の様な力が欲しいわけじゃないんだ。英雄にはなりたいと思った事はある。でも、僕は英雄になれなくてもいい。僕は、この手の届く範囲の全てを救いたい。だから僕はオラリオに行きたいんだ。信念を貫き通す力を手に入れる為に」

「そっか……でも出会いも求めてるんでしょ?」

「勿論!」

「変態」

「なんで!?」

「うるさい。ベル兄のバカ。オークに掘られちゃえ。それか狼に食べられちゃえばいいんだ」

「冗談でもやめて!?」

「……私も追いかけるから。何時か、オラリオに行くからね」

「————うん。わかった。待ってるよ」

「じゃあ、お休み」

「うん、お休み」

 

—————泡沫の夢。故郷での最後の安穏とした出来事。

 

 

「………朝か」

 

ふと、目が覚めた。しかし、

 

「懐かしい、夢だったな」

 

妹のような存在は、■■■■は元気だろうか。オラリオに何時か来ると言っていたが、無事だろうか?危険はないだろうか?

 

「まぁ…考えててもしょうがない、か。よっし、行くぞぉ!」

 

朝の支度をし、朝食へ向かう。

 

 

 

———————————————————

 

 

 

朝食を終え、ここはダンジョン5階層。

 

「スゥッ—————【雷霆よ、鳴り響け】!【ロスト・ケラウノス】!」

 

身体に、雷が迸る。思考が、身体が加速する。

 

コボルトが、フロッグ・シューターが、知覚する間もなく切り裂かれる。

数秒もすれば、そこにはモンスターの灰と魔石(亡骸)が転がっていた。

ベルは魔石を拾ってポーチに入れる。

 

「————よし」

 

6階層に行こう。

 

 

 

 

ダンジョン6階層。ここから、新たな敵が現れる。

ダンジョンの壁から、同時に6体。モンスターが生まれた。

 

「———ウォーシャドウ……!」

 

影のような、顔に十字架の浮かぶ不気味なモンスター。

6階層での鬼門にして、上層でも屈指の戦闘力を持つ。

三本の指の切れ味は凄まじく、Lv.1にすぎない自分の首などバターの様に切れるだろう。

しかもそれが6体。

本来ならば窮地なんてものじゃあない。しかし————————

 

「(それが如何した……!?)当たらなければいいだけだ!【雷霆よ、鳴り響け】」

 

自分を絶望させるには、値しない。

即座に呪文を詠唱する。対象は自身の身体。

 

「【ロスト・ケラウノス】!まだまだ!【雷霆よ、鳴り響け】ッ!!」

 

続けて対象に取るは己の(ナイフ)

 

「【ロスト・ケラウノス】!!」

 

纏われた雷は刀身の延長線まで発され、長剣のような様相を呈する。

瞬間、ベルは自信を加速させ、1体目のウォーシャドウを切り裂く。

的確に魔石を狙ったその一撃に反応できず、ウォーシャドウはドロップアイテム『ウォーシャドウの指刃』と魔石を残し、灰に還る。

 

『………!!』

「甘いんだよっ!」

 

すぐさま背後から飛び掛かる2体目のウォーシャドウに対し、『ウォーシャドウの指刃』を地面から拾い上げて、高速で投擲する。

 

『…!?…!!』

()ッ!」

 

牽制にしかならないとわかっていたので、指刃が弾かれた直後に、空いた胸元を袈裟斬りに切断する。2体目が魔石と灰に還った直後、首元に風を感じた。

 

「くっ、そ!」

 

瞬間、身体を伏せて、左手に持っていたナイフを右手に持ち替え、回転しながら3体目を切り裂く。

2つ目の『ウォーシャドウの指刃』がドロップする。

ベルは一つ目と2つ目を回収しながら、残りの3体と距離を取る。

 

「——————っ、ふぅ」

 

左手の指刃を1本、投擲する。

その直後、加速を開始する。ウォーシャドウが牽制の指刃を弾くより早く、その腕を振るうより(はや)く。

左手で握り締めて血が溢れる刃と、雷の長剣で、三体のウォーシャドウを灰に還す。

魔石と共に、指刃が一本だけ落ちる。

 

「(———————ウォーシャドウの指刃、鉤爪にでもして貰おうかな)」

 

と、くだらない事を考えながら、置き去りにした指刃を確保する。

 

「これじゃ、足りない。もっと、もっと、もっと、力をつけないと」

 

あの憧憬(剣姫)に追いつくために、護る力を、救う力を、『家族(ファミリア)』の為に。

 

「強く、ならないと」

 

もう、大切な人(家族)を喪うのは、ゴメンだから。

 

————そうして、少年は収斂する。

 

 

 

 

 

————————————————————

 

「———————で、な・ん・で!6階層まで進んでるのかなぁベル君!?」

「あ、あの、えと、その…ごめんなさいエイナさぁん!」

 

目の前の茶色の髪と緑玉色(エメラルド)の瞳、そして尖った耳が特徴的な女性は『エイナ・チュール』。

ヒューマンとエルフのハーフ(ハーフエルフ)で、受付役兼、ベルのアドバイザーである。

 

「……早く、強くならないといけないから。です」

「なんで、『早く』強くならなきゃいけないの?」

「ごめんなさい、これはまだ(・・)エイナさんには言えないんです」

 

それを聞くと、エイナは、ハァ。と溜息を吐き

 

「…わかった。じゃあ、いつか聞かせてね?」

「はい。いつか、必ず」

「でも!無理や無茶は許すけど、『無謀な行動』だけはダメ!約束よ!」

「はい!」

 

 

————————————

 

 

ベル兄を追ってオラリオに来て2日。数々のファミリアに声を掛けたけど、

 

「弱そうな奴はいらん」

「お嬢ちゃんは家に帰ってママのおっぱいでもすすってな!」

 

と、門前払い。前途多難とはこの事だ。そろそろ明日を生きるお金にも困ってきたころ。

 

「————やっぱり、私ファミリアには入れないのかなぁ……」

 

グスン、と、泣きそうになってしまう。

 

「ねえ、君!今、ファミリアって言ったかい!」

「———え?」

 

ふと、顔を上げると———————

 

「僕の名前はヘスティア!しがない女神さっ!君の名前を教えておくれよ!」

「神、様?名前、ですか?」

「ウン!」

「私は、フィーナ。フィーナ・アリエスです」

「フィーナ君か。いい名前だね。君さえ良ければ、だけど」

 

————僕の【家族(ファミリア)】になっておくれよ!

 

「……はいっ!」

 

私は、差し伸べられた手をとった——————————

 

この日、炉の神と銀月の少女は出会う。

これこそ、もう一つの『眷属の物語(ファミリア・ミィス)』。

いずれ伝説になる2つの物語の1つの始まりである———————————

 




このペースがいつまで続くか⋯(自嘲)


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兎の顔合わせ。そして

何時も以上に良くかけた気がしないです。
間違って別の所に投稿してました(汗)次回からないようにします


ウォーシャドウを討伐し、ドロップアイテム『ウォーシャドウの指刃』を回収したベルは、魔石を換金して自身の本拠【黄昏の館】への帰路へと着いた。

 

 

 

そして、夕食後。

 

「突然やけど、今日は新しい団員を紹介するでぇー!」

『うぉおおおおおおおおおおお!!』

 

やたらとノリのいいロキ・ファミリア(主に男性陣)は突然のドッキリにも余裕で反応できる。

と、その歓声に押され気味になりながらも、ベルは如何にか団員達の前に出る。

 

「ええと、ベル・クラネルと言います。特技は家事です。若輩者で至らない点もあるとは思いますが、よろしくお願いします!」

『よろしくぅー!!』

「可愛い男の子ね、食べちゃいたいくらい」

「少年趣味め」

「黙りなさい幼女趣味」

「兎みてぇ」

「男装女子の可能性は……?」

「ない」

「っすよねー」

 

と、特に女性から元気な挨拶が返される。

 

「静まれ!」

『ッ!?はい、ママ(リヴェリア様)!!』

「ママと呼んだ奴らは覚えておくがいい。」

「そんなぁー」

「黙れロキ。さて、ラウル」

「はいっす!」

「暫くベルの面倒を見てくれ。なんならチームメンバーの決定や育成はラウルに一任する」

「マジっすか!?」

「ああ。信頼できる団員だからな。後続の育成の為にも学んでおくべきだ」

「……わかりましたッ!ご期待に添えられるよう頑張るッス!」

「頼んだ」

 

そうして、夕餉の時間。ベルはラウルの隣に座った。

 

「よ、よろしくお願いします。ラウルさん!」

「宜しくっす。ええと」

「ぜひベルって呼んでください!!」

「わかったっす。これから宜しく!ベル!」

「はい!」

 

そんな光景を尻目に、一級冒険者、所謂幹部メンバーが食するスペースで

 

「(あの子…うちのファミリアだったんだ)」

 

アイズ・ヴァレンシュタインは驚きを露わにせざるを得なかった。数日前、Lv.1でありながらミノタウロスを討った少年。それが今、目の前にいる。

 

「(今度、お話してみたいな)」

 

そしてあわよくば————————

 

「(もふもふしたい)」

 

剣姫は可愛らしいものに目が無いのだ。

 

翌日、朝食後。

 

「さて、早速スけど…ベルは少し前までソロで潜ってたんすよね?」

「はい」

「何階層まで?」

「六です。」

「ソロで六階層っすか……冒険者になってどんくらいっすか?」

「半月です」

「半月で六階層……!?ソロにしちゃちょっと異常な気がするんすけど」

「そう…なんでしょうか」

「———まぁ、いいっす。魔法は使えるんすか?」

「はい。付与魔法と殲滅魔法の二つを使えます」

「ハイスペック過ぎません!?」

「気のせいですよ」

「……もう突っ込むの諦めたッス。んんー、どうせならほかのLv.1の子と組んでもらっても良いんすけど」

「けど?」

「今のベルと同じLv.1を合わせるのは毒っすかねぇ…他のLv.1に。」

「毒…ですか?」

「うん。君の成長速度を鑑みれば寧ろ、格上と訓練しつつソロで潜った方が効率がいいっす」

「成程……」

「で、も!無謀なことをしないように、より勉強していくっスよ!ステイタスアップによる精神(こころ)と身体のズレとか、帰りを考えたうえでの体力の限界とか、体で覚えるべき部分もいっぱいあるッスから」

「はい!」

「取り敢えず僕は手を出さないからダンジョンで実力を見せてほしいっす。それによって訓練相手とか見繕うんで」

「わかりました!」

「行くっスよー!!」

「おおーーー!!」

 

 

場所は変わってダンジョン六階層。

 

「【雷霆よ、鳴り響け】、【ロスト・ケラウノス】!!」

 

ベルは身体に雷を付与。加速し、ウォーシャドウに接近。雷を纏った貫手で魔石ごと身体を貫いた。

それだけに留まらず、更に加速。ウォーシャドウやフラッグシューターに接近しては、ナイフや貫手、手刀で魔石を刈り取っていく。

 

「(雷の付与魔法っすか、珍しい。詠唱も比較的短文で効果も絶大。応用も効きそうっすね。ただ、攻撃補正値が少しだけ低い気がするッス。まぁ、敏捷の補正値が高いお陰でそこまで気にならないっすね)」

 

このまま全滅するかと思われた。が—————————

 

バキバキバキ……

 

破砕音と共に、モンスターが次々と現れる。

 

「『異常事態(イレギュラー)』……!!」

 

ウォーシャドウの大量発生。軽く数えただけでも20は固い。明らかにLv.1が処理できる数を超えている

 

「ベル!引くッス!」

「大丈夫です。—————————【残されし我が身に来たれ雷霆】!」

 

ウォーシャドウの刃が無数に煌く。

 

「【灰燼すら残さず焼き尽くせ!失われし大いなる雷光(ひかり)よ】!」

 

その全てを紙一重で避け、襲い来るウォーシャドウの全てを抜き去る。

 

「【輝け、ロスト・ケラウノス】!!!!!」

 

瞬間、眩き光が視界を支配した——————————

 

 

雷が止み、ラウルの視界に写ったのは、

 

「っな、なんスか。これ」

 

荒い息を整えるベル。表面が溶けた大量の魔石と、未だ熱の冷めない灰の山だった。

 

「(Lv.1でこの殲滅力にあのスピード、規格外にもほどがあるッス……!)これは、予想以上にヤバい新人が入ってきたっスね」

 

結構すぐに抜かれるんじゃないか?と、半ば現実逃避するラウルを尻目に、ベルは

 

「(まだ、足りない)ラウルさん」

「な、なんスか?」

「もう少し下まで潜ってもいいですか?」

「……無茶しそうになったら即刻Uターンっすよ?」

「はい!」

 

この後九階層まで潜り、夕方までモンスターを狩り続けた——————

 

ロキ・ファミリア、本拠地

 

「今日の戦闘の大まかな評価っすけど————————————」

「は、はい」

 

神妙な顔に、思わず身構える。

 

「10段階中7ってとこすかね」

「7ですか……悪かったところというと、やっぱり」

「うん。スタミナ配分っす。細かいところはもう少しあるんすけど、一番目立ったのはそれっす。暫くソロでやっていく以上、スタミナ配分ってのは斬っても斬れない関係に入る者なんで、そこをがっつり教えるッス。後は、付加魔法に頼らない戦闘方法も教えていくっスよ!」

「よろしくお願いします!ラウル兄さん!」

「———兄さん?」

 

いきなりの兄呼びに思わず聞き返す。

 

「あ、す、すいません!僕、お兄ちゃんとかいなくて、なんか、あの、ええっと……!」

「ぷっ、くく、あはははははははは!!」

 

言葉を探してキョドり始めるベルに、思わず笑いが溢れる。ひとしきり笑った後。

 

「良いっすよ。ラウル兄さんで。ベルみたいな弟なら大歓迎っす!」

「———!ありがとうございます!ラウル兄さん!!」

 

かくして兄弟のようになった二人だが、夕食中にベルがラウル兄さんと呼んだことでまたひと悶着有ったのは内緒だ。

 



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■■王■ル■ー■・ヴァ■■シュ■イン/■■傭兵■ル■イ■ス

※捏造過多
新刊と道化行進にやられたんです。許してください


それは、はるか昔の物語。

 

『始まりの英雄』アルゴノゥトがDESKVJの眷属たる■■より恩恵を得たことにより生まれた『■■■■

 

どんな絶望を前にしても、どれだけ潰されても、『笑顔』を忘れなかった愚かで矮小で惰弱で高貴で偉大な『最弱の英雄』

 

家族を亡くした幼きエルフを、笑顔を無くしたアマゾネスを、食人の迷宮の牛人(ミノタウロス)の贄になる運命のヒューマンの女王を、様々な人々を救い、笑顔を創った英雄。

 

その冒険譚には必ず、妹だというエルフ、精霊に愛された魔剣鍛冶師、素直になれない銀髪の狼人(ウェアウルフ)、豪胆たるドワーフの斧使いの戦士、男とも女とも取れないエルフの吟遊詩人、銀髪碧眼の美しい女性、占い師たるアマゾネスと、暗殺者(アサシン)のアマゾネスがいたという。

 

そして何時しか、アルゴノゥトの時代より人々を脅かし続けた怪物の湧き出る大穴には天にも登る巨塔(バベル)という蓋がされ、そこでは様々な神々と、その血の加護と契約を受けた眷属達が日々その大穴を攻略し続けたという。

 

その大穴は何時しか《ダンジョン》と呼ばれ、そこを攻略する眷属たちの物語は迷宮神聖譚(ダンジョン・オラトリア)として書物に綴られることとなる。

 

例えば、大英雄■ル■ー■。彼は剣の覇者、『傭兵王ヴァ■■シュ■■ン』など、様々な名で呼ばれている。大英雄と呼ばれた彼には何時も横で共に戦ったもう1人の大英雄がいた。

 

曰く『イレギュラーモンスターたる斬撃無効の獅子のモンスターを絞め殺し、そのドロップアイテムの毛皮を装備とした』。

 

曰く『ヒドラと言う九つの頭を持ったインファント・ドラゴンの突然変異を九つの頭全てを同時に潰して討伐した』。

 

曰く『超レアモンスターであるケリュネイアを調教(テイム)し、月神に献上した』。

 

曰く『人喰いブラッドボアを一撃で討ち取った』。

 

曰く『青銅の鳥型モンスターを素手で全滅させた』。

 

曰く『ミノタウロスの強化変異種を真っ向から打ち倒した』。

 

曰く『人喰い馬のモンスターを殴り殺した』。

 

曰く『水の迷都の紅き魔牛の首を刈り取った』。

 

曰く『未開拓領域の魔竜を討ち、黄金の林檎を得た』。

 

曰く『3つ首の魔狗を撃ち殺した』。

 

この10の栄光を讃え、大英雄『■ル■イ■ス』は2つ名として『女神の栄光(ヘラクレス)』と呼ばれる事となり、大英雄■ル■ー■と双璧を成す英雄として、語り継がれている。

 

ーーーーー

 

■■にて

 

「ーーーーすまぬ。■■よ」

 

天国とも見紛うような花園に、白と金の入り交じった髪と紅の瞳が特徴的な美丈夫が佇んでいた。その瞳には後悔と悲しみの火が灯っていた。

 

「お前に最後の(失われた)雷霆も、我が栄光の残滓も、全てを押し付けたままにしてしまった。黒龍を討つ宿業も、世界の絶望を終わらせる『最後の英雄』の重責を」

 

その瞳はどこか遠くを見て、郷愁に似た色を灯しながら瞼を閉じる。

 

「ああ、だが、それでもお前の幸せを願う弱き■を許してくれ」

 

ーーーー我が愛しき■よーーーーー

 

その声は、風に攫われて消えていった



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継承試練《ゴッド・ハンド》ー起ー

まさかの夢の試練編スタート


ーーーーー

 

ここは、どこだ?白亜色の建材の宮殿⋯?

 

僕は確か、《黄昏の館》に戻ってきて、晩御飯を食べて、床について⋯

 

『ここはお前の夢の中だ。ベル・クラネルよ』

「っ!?」

 

気付くと、目の前に白と金の入り交じった髪が特徴的な牛骨の仮面の精悍な青年が現れた。

 

「⋯貴方は?」

『私か?私は残りカスのようなものさ。名前など無い。そうさな⋯折角の牛骨の仮面だ。《ミノス》とでも呼ぶといい』

「ミノス、さん」

『うむ。さて、何故私が夢の中に現れたのか。だが、有り体に言えば《継承》の為だ』

「《継承》?それは一体⋯」

『簡単な事さ。貴様には未発現の《スキル》がある。()()()()()()()()()、な』

「ーーーー!?」

 

思わぬ言葉に愕然とする。()()()()()()()()()

 

「どう⋯いう⋯」

『それ程貴様の置かれた状況が特殊だということだ。《スキルの継承》など、本来ならば出来るはずがないのだからな』

 

と。そこまで言ってミノスは頭を振り

 

『まぁ、これ以上話しても時間の無駄だ。今からお前には十の試練に挑戦してもらう』

「十の試練⋯?」

『ああ。精神世界とは言え強さは本物。戦闘には貴様のスキルも適応される。心してかかるが良い。さて、無駄話もこれくらいにして、そろそろ挑戦してもらおう』

「え、ちょっと!もう少し話w『スタート』」

 

パチン!

とミノスが指を鳴らすと、突如として場面が転換した。

 

 

 

ーーーーーー

ところ変わって

 

「⋯ここは、ダンジョン⋯!?」

 

気付くと、自分の衣服もダンジョン時のそれとなっている。

 

『Grrr⋯⋯!!』

「⋯!」

 

唸り声と共に、奥からモンスターらしきものが現れる。

 

「⋯獅子!?」

 

そう、それは獅子だった。しかし、唯の獅子ではない。その巨躯は並の獅子を凌駕し、あふるるような威圧感は獣のそれではない。

 

「モンスターか!」

『GruA!』

 

叫び声と共に飛びかかってくる獅子にナイフを突き立てる。ナイフはその獅子の身体にめり込み、皮膚を斬りさくーーーーことは無かった。

 

「な、なぁっ!?」

 

刃が、通らない!?

 

『Goa!!!』

 

瞬間、飛んでくる爪を回避し、体勢を立て直す。

 

「刃が通らない⋯!?」

 

単純にナイフの切れ味が足りない?いや、それにしたっておかしい。切れ味が足りないにしろ、表面を少し斬るくらいはする筈。でなければあそこでナイフが折れるなりしていたはずなのだから。

 

「刃が通らない獅子⋯ダンジョン⋯」

 

斬撃無効(現時)の獅子、そしてダンジョン。この条件に符合するモンスターは()()()()()()()

 

「《ネメアの獅子》⋯?迷宮神聖譚(ダンジョン・オラトリア)の断章『十戒の試練(ゴッド・ハンド)』最初の敵の?」

 

英雄アルケイデスに討たれたとされるモンスターが、何故!?

しかし、僕の困惑などお構い無しに、獅子は僕に襲いかかる

 

『Grrrrrrraaaaa!!!』

「⋯クソっ!」

 

僕はナイフを仕舞って徒手空拳に移る。

どうやって討伐する?

・伝説通り『絞め落とす』

 ステイタスが足りない。却下。

・殴り殺す

 逆に出来るのか?

・体内に魔法を放って内部からグシャグシャにする。

 採用

 

『Gooooooaaaaaaa!!!!』

「【雷霆よ、鳴り響け】【ロスト・ケラウノス】!!」

 

爪で斬り掛かる獅子をよそに、付与魔法(エンチャント)を全身に行い、そのまま爪を避ける。

 

『Grrrrrrrruuaaa!』

 

避けた僕に噛み付きにかかる獅子。僕はそれと呼吸を合わせてーーーー

 

『Gya!?』

 

獅子の下顎を蹴り上げた。僕は勢いそのまま上げた足に力を乗せて、そのまま獅子に叩きつける。

 

『Gyyyyyyyyyii!?Gaaaaaaaaaaaaaaa!!!!!!!』

 

獅子は怒り狂ったように咆哮し、僕に襲いかかる。

 

「【遺されし我が身に来たれ雷霆】!【灰塵すら残さず焼き尽くせ】!!」

 

僕はそれを避けながら、詠唱を続ける。

 

「【失われし大いなる雷光(ひかり)よ】!」

 

獅子は僕を睨みつけながら歯軋りをしている。

好機!

 

『Ga!?』

 

僕は拳を歯に叩きつけ、牙ごと殴り砕き、拳を口内に侵入させる。

 

「【輝け】、【ロスト・ケラウノス】!!」

 

 

そのまま雷は獅子を焼き、身体を破裂させた。

 

 

 

「⋯はあっ、はあっ、」

『クリアだな。ベルよ』

 

疲れて息を整えていた僕に、ミノスはの声が響く

 

『さて、次だな』

「ちょっと!?」

 

無慈悲なことを言うミノスさんに思わず声を上げてしまう

 

『ここは夢の中だぞ?疲労感くらいすぐ操作出来る』

「な、なるほど。でもーーー『ヘイスタートォ!』ふざけんな!?」

 

 

 

また、場面が転換する。そこにはーーーーーーー

 

 

『ヴモォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!』

「⋯ミノタウロス」

 

なんの悪夢か、天然武装(ネイチャーウェポン)と思われる白亜の巨大な両手斧(ラブリュス)を持った巨大な角に通常のミノタウロスよりも長めの毛を持った、()()()()のミノタウロスの強化変異種が現れたのだ。

 

ふと、自身の背中に違和感を感じ、背中に手を伸ばすと。

 

「⋯大剣?」

 

そう、それは大剣だった。Ηφαιστοs(ヘファイストス)のロゴが刻印された、獅子の意匠が鏤められた大剣。不思議と重さは感じ無い。更には、()()()()()()使()()()()()()()()()()()()()

 

『ヴモアア!』

「っ!?気を抜いてる場合じゃない!【雷霆よ、鳴り響け】【ロスト・ケラウノス】!」

 

身体に雷が迸る。

 

『ヴルルルルル⋯ヴモォオオオオオオ!!』

 

ミノタウロスは、両手斧を振りかざし、僕に斬り掛かる。普通ならギリギリで避けて反撃すべき、だけどあれが伝承通りならばーーーー!!

 

 

「【雷霆よ、鳴り響け】【ロスト・ケラウノス】」

 

右手の大剣にも雷を装填、そのまま跳躍し、早めの回避行動を取る。

 

1拍遅れて、ミノタウロスの斧は地面に叩きつけられた。その瞬間。

 

ドガン!

 

と言う音ともに、叩きつけられた地面の半径1mが地面に()()()()()

 

「やっぱりあの天然武装(ネイチャーウェポン)は」

 

ーーーー牛人の重力斧(ミノス・グラビトス・ラブリュス)

 

伝説に置いて英雄アルケイデスを苦しめた、強力な天然武装。

 

「スゥーーーーー」

 

落ち着け。多分この試練は調整されてる(敵が弱体化している)。恐らくレベル1に過ぎない僕でもクリアが出来るように、多少は弱くなっている。しかしそれは死力を尽くせば(殻を破り続ければ)の話。

 

「ハァーーーーー」

 

勝利を得るための条件は3つ

・一撃も受けない事

・魔石を砕いて確殺する事

・短期でケリを着ける事

 

『ヴゥルルルルルル⋯ヴモォオオオオオオオオ!!!』

「ーーーー行くぞ」

 

斧をもう一度振りかぶり、攻撃モーションに入るミノタウロスの胸元に飛び込む。

 

『ヴモッ!?』

 

右手の大剣で、ミノタウロスの胸を横一文字に斬り裂く。

 

『ヴモアアアア!?』

 

そのまま後ろによろめくミノタウロスに、大剣の突きをかます。

 

『ヴモォオオ゛オ゛!!!』

 

間一髪で避けようとしたミノタウロスだが、右角を大剣が捉え、右角を斬り飛ばしながら、ミノタウロスを押し込む。

倒れかけているミノタウロスの胸部を足場に高くジャンプし、空中で回転。大剣を地に向けて、ミノタウロスの魔石がある胸部に向かって落ちる。

 

『ヴゥウウウヴモ゛ォオオオオオオ゛オ゛オ゛!!!!』

 

ミノタウロスは殺されまいと斧を向けて大剣を弾き飛ばそうとする、が。

 

「【雷霆よ、鳴り響け】【ロスト・ケラウノス】」

 

左腰に差してあった『自分のナイフ』に付与(エンチャント)を行い、投げつける。

 

『ヴモァアア!!』

 

それは斧を持っていた腕を地面に縫い付け、反撃を不能にした。

 

「おぉぉおおおおおお!!!!」

 

大剣は胸部を突き刺し、貫通した。

 

『ヴ、ヴモォオオオオオオオオ!!!!!』

 

しかし、ミノタウロスはまだ抵抗している。

僕は素早く大剣を引き抜き、掲げ、全ての雷を大剣に集約し、唐竹割り。

 

『ヴmーーーーーーー』

 

その一撃は今度こそミノタウロスの魔石を砕き、ミノタウロスを灰へと変えた。

 

 

ーーーーーー

 

ベルの夢のとある場所。

 

『まさか、1度も死なずに2つ目をクリアするとはな⋯』

 

ミノスは驚きと称賛を込め、言葉を漏らした。

 

十戒の試練(ゴッド・ハンド)も残り8つ。ベルは我が奥義(■■■■■■■)を得る事ができるだろうか⋯』

 

 

 



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