FGO×REBORN 〜人類最後の希望達の物語〜 (ただの名のないジャンプファン)
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大空IN冬木

一応新作です。続けるかどうかは今のところ不明です。


~side並盛町~

 

並盛町、日本の某県にある何の変哲のないこの町は特に有名な観光スポットとかもないごく普通な町である。

綺麗な町並みを見せてくれる住宅街を分かつ舗装された道路には鳥のさえずりと子供達の声、それにごく普通の爆音が今日も晴天の空に響き渡る。

そして爆音の発生源と思われる所には煙が吹き出る窓は少し焦げ、ガラスが庭に散らばっていた。

これがこの町の日常である。

爆発何て日常茶飯事、他にもパンツ一丁で町を走る変態や爆弾魔、裏社会を支配する中学生などもいるが特にほかの町変わらない……のかな?

だが、決してこの爆発はテロによるものではない。

そして、場面は最初に戻り煙の立つ地点に戻る。

ここも誰が見ても普通の二階建て住宅である。

ここは沢田家、現在はここの家主の妻である奥さんとその一人息子、後何人かの居候が住んでいる。

この家の評判は様々あり、いい噂もあれば悪い噂もチラホラと耳にするがまぁそれは彼の日常を見て判断をしてみてくれ。

 

「…ガハッ!おい、リボーン!!いい加減に問題を間違えるたびに爆発されるのを止めろ!!」

 

「何俺が悪いみたいに言ってんだ?何度教えても間違えるお前が悪いんだろう。いい加減理解しろ。これぐらい犬だって理解出来る内容だぞ」

 

煙の発生地点には1人の少年と赤ん坊がいた。

少年は黒焦げとなり赤ん坊に怒鳴り、赤ん坊はそのつぶらな瞳でその少年を見ていた。

少年の名は沢田綱吉、ここ並盛町に住むごく普通だった中学生である。

 

「間違える度に爆発させる常識なんて何処にあるんだ!」

 

「ここにあんだろう?これが俺のやり方だ。」

 

赤ん坊の名前はリボーン。

見た目は可愛らしい赤ん坊に見えるが沢田綱吉の家庭教師であり、裏社会で名を轟かす殺し屋だ。

此処で疑問なのが、何で、赤ん坊で、殺し屋のリボーンがこんな所で家庭教師なんて事をしているかって?

それは最も抱く疑問だ。

これを説明するには沢田綱吉について説明をした方がいいだろう。

沢田綱吉、友達はツナと呼ぶが彼の渾名はダメツナ。

成績下位者で運動もダメ、ドジで何をやらしても上手くいかないそれが彼の中学1年生までの人生。

そんなある日に現れたのがリボーンである。

リボーンに彼は実はイタリアの裏を取り仕切る巨大マフィアのボス候補である事を聞かされた。

リボーンはそのマフィア『ボンゴレファミリー』の9代目である人物と仲が良くその伝でツナの面倒を見ている。

ボンゴレファミリーの後継者候補というのを聞いてからは大変だった。

争いが嫌いなのに運命に翻弄され無理矢理戦わされて、ついこの間にもボス候補をかけた決闘をさせられた。

ツナはこれまでの戦いを見事勝ち抜き生き抜いた。

それでも元来の甘さはなくならず、今も現在進行中でボスにはなりたくないの一点張りだ。

だが、リボーンもツナをボスにすること以外は考えていない。

水と油のように全く合わさることが無いこの2組だが、リボーンはツナに無茶振りをさせているがそれでもできるからと、常日頃信じている。

ツナは振り回されているがそれでも今まで導いて貰い、彼は無茶だけど間違っていない。

普通に考えれば3日と持たないコンビの様であるが、2人の仲はこれまでの戦いでとてつもない強固な絆と信頼関係が築かれていた。

 

「さて、間違えたから罰で100冊追加な」

 

「んなっー!?ページじゃなくて冊!?」

 

「ヴァリアーとの戦いで溜まっていた補講分だ。ん?」

 

ツナが頭を抱えて駄々をこねている時にリボーンに向かって何かが飛んできた。

リボーンはその飛来物を受け取る。これは何か...包みかな先の方にはCのマークが刻まれていた。

 

「これは‥‥」

 

「ん?どうしたんだ?リボーン。」

 

「こいつはアルコバレーノだけが使える暗号だな。」

 

リボーンが胸についているおしゃぶりの光を灯す。

おしゃぶりから光灯された綺麗な黄色い光が白紙を照らす。すると炙り出しの様に文字が手紙に浮かんできた。

でもそれは日本語ではないためにツナには読めない。だが読めるリボーンはその手紙を見ると険しい顔つきで手紙を睨んでいた。

 

「ど、どうしたんだよ?リボーン。」

 

「しばらく出る。数週間は帰ってこれないってママンに伝えといてくれ。」

 

「お、おい!リボーン!!」

 

ツナの言葉に返事もせずに彼は空へと飛び立った。

 

「何だ?どうしたんだよ。リボーン‥‥」

 

それから本当に暫くリボーンは帰ってこなかった。

彼がいない日常は平和といえば平和だった。

ゲームもプレイできて、勉強も自分のペースでできるし朝ごはんもいつも横からかっさわられていたが居ない事でそれもなく、ただ彼を強く好意を寄せているもう一人の居候ビアンキはその間少々荒だっていた。

そんな日常が崩れたのはそれから2週間が過ぎようとしたある日の事。

 

「はぁ、リボーンの奴いつになったら帰ってくるんだよ。ビアンキも今は暴れてないがずっとピリピリしているし...!?」

 

突如変な感じがした。

背中のあたりがゴワゴワと登ってむず痒いら何かとてつもない力が足の下に宿った気がした。

すると足元が突如変な光が灯って変な形に線を結んでいた。

 

「逃げろ!!ダメツナ!!」

 

「っ!?リボーン!?」

 

空から声をかけられて戸惑うツナの足元はどんどん光が強くなり、2人は並盛町から突如消え去ることとなった。

 

 

 

〜side???〜

 

熱い...

 

「おい、起きろ。」

 

今は夏だったけ?いや夏だったとしてもこれは暑すぎる。まるで何か燃えているような感じもする。

 

「起きろ」

 

そういや耳に嫌な音が聞こえる。何か風に何かが揺れている、それに焦げ臭い。

自分の肌に接触してる何かはまるで焼かれた鉄板のようちりちりとした熱さを持つ気がする。

 

「起きろって言ってるだろう!!」

 

「へぶ!?」

 

突如、頬にものすごい衝撃が走る。そしてツナは、空中を3回転して地面に落ちた。

 

「いったいな!何すんだよ、リボーン!!」

 

「やれやれやっと起きたか」

 

「う〜いつつ、ここは?...何だよ?これ‥‥?」

 

息をすると周りの炎を吸い込んだように熱い。

これはまずい息をする度に苦しくなる。

痛みに現を取られたがすぐに現状を理解することが出来た。

何故ならば視界に広がるそれがもう語っていた。燃え盛る業火に焼かれた町。

人の気配1つしない、それどころか動物の気配すら全く感じられない。

地震でもあったのか町並みは崩れ去っていた。

そして何より信じられないものが...

 

「避けろ!ダメツナ!!」

 

リボーンが隣からまた蹴飛ばしてきた。

ツナはその勢いのまま地面を擦っていくがそれは良かったのかもしれないなぜなら、彼の先程まで立っていた場所がピンポイントで爆発したのだ。

 

「んな!何がどうなってんの急に爆発したぁ!!」

 

「違う、狙撃されたんだぞ。」

 

「狙撃!?」

 

「来たぞ。」

 

リボーンが確認した狙撃してきたポイントから数百は離れていたはずだ。だがそんな距離をすぐに詰めてくるあたり只者ではない。

 

「よく避けた。一応褒めておこう。だが、君達は一体何者だ?先程の漂流者とは少々違う気がする。かと言って一般市民が生きている...ということはないだろう。魔術師とも思えん、極めつけに私の矢に反応したのはその少年ではなく君だ!!赤ん坊。」

 

「あ...貴方こそ、貴方こそ何者なんですか?」

 

ツナは震える体を制して聞いた。

彼の特徴30代にも満たない好青年のような感じがし、頭は白いが若そうな感じはすごくする。袖無の黒の服から見える筋肉質だけでも相当鍛えられている感じがした。

 

「おっと、これは失礼をした。尋ねる前に自分から名乗るのが流儀というものだったな。と言っても私の名前は伏せさせてもらう。...そうだな、アーチャーとでも呼んでくれ。」

 

「アーチャー...魔術師...ふむもしかしてこれが聖杯戦争ってやつか?」

 

リボーンは顎を手で擦りながら聞いたことがない単語が聞こえた。

 

「リボーン、何だよ?聖杯戦争って‥‥?」

 

「俺もそこまで詳しいわけじゃない。噂程度を耳にしたって感じだ。いいかツナ俺達もオメルタっていう掟に守られて重要機密が外に元はない。魔術師も似た掟があるんだ。それによりマフィアと魔術教会はお互いがお互い干渉させないでも噂程度は耳に入ってくる、聖杯戦争もその一環で手に入った情報の一部だ。聖杯戦争ってのは、7人の魔術師が7人全員サーヴァントってのを使って行う、勝者には何でも願いが叶う願望器である聖杯を手に出来る。」

 

「んな!?魔術って魔法の事かよ、そんなものある訳が‥‥」

 

「存在しないと思うか?だがな、俺達にだってそんな不思議な力があるだろ...死ぬ気の炎だ。俺たちの象徴が死ぬ気の炎なら魔術師の象徴は魔術って事だ。で、魔術の中でも最も危険なのが聖杯戦争で召喚されるサーヴァント」

 

「サーヴァント...」

 

「サーヴァントってのは、お前がやってるゲームに出てくる犬や猫なんかじゃない。聖杯戦争に召喚されるサーヴァントってのは、本当にやばい奴らだ。ここのサーヴァントってのは人類が歴史的に認める過去の本物の英雄ってやつをサーヴァントして戦うらしい。」

 

「過去の英雄...」

 

ツナはゴクリと唾を飲み込む。

彼自身英雄と言われても名前をあげることが出来ないが、スケールのでかさだけは理解出来た。ようは教科書なんかに出てくる人達のことを指しているという認識をもてたからだ。

 

「ふむ、君は本当に何者だ?魔術師の秘匿は絶対、それをそこまで知っているとは...いや私も少々君の事に心当たりがある...世界には呪われた赤ん坊が7人存在する...とね。そうか君がアルコバレーノだな。実際にこの目で見たのは初めてだな。」

 

「俺もサーヴァントなんてのを見たのは初めてだぞ。」

 

「アルコバレーノ、君はここでは少し厄介な立ち位置にいてね、悪いが消えてもらう。」

 

アーチャーの鷹のように鋭くなった眼で彼は持っていた弓を獲物に向けて構えた。

リボーンはすぐ様ツナに臨時体制を取らせるが本人は未だにこの現状についていけてない。

 

「おい、リボーンやばいって!」

 

「あぁ、これは最初から全力でいかねぇとまずいな。」

 

「な、どうすんだよ。」

 

「そんなもん決まってんだろう。お前が何とかしろ。」

 

「この期に及んで何でそんな無茶なことを言うんだ!?相手は英雄なんだろう!?」

 

「うるせー、ごちゃごちゃ言っている暇があったらポケットの中に入っているグローブをつけろ」

 

リボーンの指示にツナはポケットの中身をゴソゴソと探ると、普段自分では絶対入れないアレが入っていたことに驚く。

 

「んなーー、何でこれがここに「来るぞ」」

 

そんなコントをしている間をアーチャーが狙わないわけが無い。

アーチャーの矢が2人のいたところに炸裂した。

リボーンは当然のことのそれを交わしていたがツナはそこから出てこない。

 

「流石はアルコバレーノと言ったところか、だが良かったのかね?あの少年を見殺しにして」

 

「アイツを舐めるなよ、アーチャー、それと俺を誰だと思ってやがる俺は世界一のヒットマンだぞ。」

 

ニヤリと不敵な笑みを不敵な笑みを浮かべるリボーンに疑問を抱いたがそれはすぐに違うものに移った。

自分の矢が貫き土煙が立ちこめている中それはすぐ様オレンジの炎に包み込まれた。さらにその中から何かが飛び出してきたが、アーチャーは油断してそれを目視できなかった。

 

「どこを見ている「!?」お前の相手はここだ。」

 

声のする方を...自分の後ろを振り向くとそこには彼が立っていた。先程までとは一転して冷静で静かな声、眼も恐怖に染まっていなく寧ろ何色にも染まっていない澄んだ瞳に額にはオレンジの炎が灯っていた。

先程の少年と姿は同じに見えるが全くの別人にしか見えない。

アーチャーはそんな彼に殴り飛ばされ地面に激突した。

 

「奴は仕留めた筈だが...それと死ぬ気の炎を灯した額」

 

頭に疑問がよぎっているがやることは変わらない殲滅の一言が彼を動かした。

彼は牽制するように3発矢を放つが、ツナはそれを悉く躱していた。

 

「バカなっ!?魔力もなく空中移動だと!?」

 

そう、彼は矢を手から放っている炎をジェットとして扱い彼はアーチャーの矢を全て躱した。

 

(あの少年のキーは、恐らく手に灯っている炎、遠距離系の武器も見られない。とするとタイプ的には完全近接型だな。スピードは中々のものだ。そしてパワーも彼の見た目からするとかけ離れているな。)

 

ツナに矢を放ちながら彼の戦闘スタイルを分析しているアーチャー。

それはツナも同じで彼にはいくつもの疑問が浮かんでいた。

 

(あの矢はどこから出ているんだ?先程から矢が突然現れている。いやさっきまでの会話にも彼は弓を持っていなかったな。なにかの能力か、手から突然武器が発生しているようにしか見えない。)

 

次々と放たれる矢をツナは旋回しながら躱していった。

お互いがお互い探り合いをするような戦いで未だ目立った動きは見せていなかった。

 

「ならば、これは‥‥どうかな?」

 

先に動いたのはアーチャーだ。

彼の攻撃の手が数秒ほど止めた。ツナはそれをそこまでの疑問に止めなかったが、アーチャーはこの間に合わせたのだ。

彼が次から放たれた矢は先程までとは一転してさらに細めにしてスピードが上がった。

 

「!?」

 

急にあがったスピード、ツナは形状が変わったことに気がついた。

さっき間よりも細くなって風の抵抗がさらに弱まったのだろう、その証拠に風を切る音が先程よりも鋭くなっていた。

だが、それでもギリギリ反応できない速度には至っていない。

ツナは、どうにかして近距離に持ち込みたいがスピードが上がった矢は連射性能がよくさっきよりもスキがなくなりました入れなくなり距離が離れる一方だ。

 

「馬鹿め!!油断したな、上がガラ空きだぞ!!」

 

ツナはその言葉に上を見ると確かに1本上から飛来していた。

今までの間にアーチャーは一本だけ上に向かって放ち時間差攻撃を仕掛けていたのだ。

躱しそうにも彼の矢が退路を塞ぎ逃げることができない。

 

「貰ったぞ!!」

 

誰もが当たると思ったその瞬間彼は右手の炎を強め1枚の幕を貼りそれをシールドとして扱ったのだ。

 

「ほう」

 

「今度は俺の番だ。」

 

今が最大の隙と思ったツナは一気に攻めに転じた。炎を強め最大加速でギアをあげるツナ、アーチャーの矢は炎のシールドを貫けない、彼は陽動もいらないこの事実が彼の頭に残っている今を叩く。

接近している間もアーチャーの矢は飛んでくるが、スピード型から前までの矢に戻っても炎のシールドを貫けずにいる。

 

「ふっ」

 

「油断するな、ツナ!」

 

それなりの距離にまで詰められたその時アーチャーの手からは稲妻が迸る。

 

偽・螺旋剣(カラド・ボルグ)

 

矢と言うには剣にも見られるその1発は簡単にツナの炎のシールドを貫き肩に深く突き刺さった。

 

「あぁ...」

 

ツナは撃ち落とされ地面に倒れ込んでしまう。

貫かれたその肩からは激痛が走り、血が流れ落ちていて、片方の手でその部分を抑えている。

 

「君の炎、最初は驚いたが別に大したことは無い。人1人を簡単に飛ばす炎なんだ、それなりのエネルギー量である事は容易に想像できる。ならばその炎には別の使用方法もあると思ってね...やはり相殺系統のシールドとしたか」

 

ツナの事は簡単に見抜かれていたようだ。

アーチャーはそれを確かめるために矢を使い分けてツナの行動を分析していたのだ。ツナも分析はしていた、だがそれはアーチャーとツナの圧倒的な経験値から天と地程の差が生まれた。

 

「何、悲観する事ではない君の敗因は若さ故だ。年を重ね経験を積めばもっと強くなっただろうな。中々のものを体験させてくれた例に私の能力を最後に教えてあげよう。私の魔術はただ一つ、作り出すことだ。」

 

アーチャーはそう言って手をツナの方にかざしまた光が迸る。

すると手に何も無かったのに一振りのナイフが形成されていた。

 

「魔力がある限り生み出し続けられる私の魔術に翻弄されたのが君の1番の敗因だな。さらばだ少年!」

 

振り下ろされ心臓が貫かれるかと思ったその時突然アーチャーが吹っ飛ばされた。

 

「おいおい、ガキ相手に語るだけ語って大人気ねぇなアーチャー。」

 

見るとそこには杖を持った青い髪の大人と、白い紙の若い女性とピンクの大きな盾を持った少女に青年もいた。

 

「キャスターか。」

 

「ガキに気を取られすぎたなアーチャー、おいあの坊主を拾ってやれ。それと時間もねぇ俺がここをやるからお前達は早くセイバーの方にいけ。」

 

「わかりました。」

 

ツナは、その人達に担がれた。

 

「傷が深い。魔術師でもないのに、たった1人でサーヴァントと戦っていたなんて」

 

「そんなことよりも早くここから離れるわよ。サーヴァント同士の戦いに私達は邪魔でしかないし、手当なら途中でできるわ。」

 

「おい。」

 

リボーンがツナの元にまで来ていた。リボーンを初めて見た反応はただの赤ん坊以外の何者にも見えない為に早速保護しようと青年が抱き上げるが...

 

 

「赤ん坊までいるのかもう大丈夫ぶぅぅ!」

 

それが気に食わないらしく思いっきり蹴り飛ばした。

 

「気安く触んな。」

 

「先輩!」

 

「おい、目的地があるんだろう。向かいながら状況を説明してくれ。後俺達はここら辺の地理もないんだ。」

 

「え、わ、せん、わ、わかりました。」

 

リボーンの方はここら辺の状況がわからないと言っているが、こちらの方もこの謎すぎる2人組が分からない。

取り敢えず、青年も立ち上がり蹴られた部分をさすっている。

少女もそれにほっとして手をなでおろす。

 

「いてて」

 

ツナも貫かれた肩を抑えながら立ち上がる。

 

「大丈夫ですか?で肩お貸ししましょうか?」

 

「これぐらいなら大丈夫だ。後で包帯を巻いてやるから早くいくぞ。」

 

 

 

 

 

〜sideそれから〜

 

それから暫く走ってアーチャーとキャスターの戦場から大分離れられた今、敵の気配も感じられないのでツナに包帯を巻いて最低限の止血を行っている。

そんな中軽い自己紹介と情報交換を行い始める。

 

「さっきは危ないところを助けてくれてありがとう。俺は沢田綱吉でこっちがリボーン。」

 

「ちゃおっス、よろしくな。」

 

「えっと、俺は藤丸立香」

 

「と、先輩のサーヴァントのマシュ・キリエライト」

 

「オルガマリー・アニムスフィアよ。で、状況説明だけどアンタ達は私達に協力しないと死ぬだけって最初に言ってあげる。」

 

「!?」

 

「それはわかっている。元々こんな地獄絵図で生きながらえるのは無理だろう、どうやったら生き残れるんだ?」

 

「生意気な赤ん坊ね。それは協力するってことでいいのよね?」

 

「あぁ、協力してやるぞ。」

 

どちらも自分が上ということを主張している。

何か目からバチバチと火花が飛び散っている気がする。

 

「何か、張り合っていますね。」

 

「張り合っているな。」

 

「あの、何かすみません。プライドが高くて」

 

張り合っている2人に少々呆れている3人はちょっと通じる何かが生まれた。

 

「で、状況だけどアンタ達魔術師じゃないわね。」

 

「...はい、貴方達は魔術師何ですか?」

 

「余計な質問はしない!」

 

「はいぃ!」

 

「一応聖杯戦争のサーヴァントが暴れているってのはわかってるぞ。」

 

「っ!?魔術師じゃないくせに何で聖杯戦争を知っているのよ!?」

 

「余計な質問をしている時間はないんだろう?取り敢えず踏み込まない立ち位置だと思ってくれ。」

 

少しオルガマリーの顔がこわばった感じがした。

だがすぐにため息を吐きさっきとは一変して落ち着いた

 

「わかったわ、これ以上は追求しない。んで問題を完結にいうわ、問題はこの先の山にいるセイバーが所有している大聖杯がここを作り出している。私達はセイバーに勝って大聖杯を手に入れる。キャスターが言っていたアーチャーと戦っていたのはあなたなんでしょ赤ちゃん。今見たらそのおしゃぶり、アルコバレーノって言うのなんでしょう?初めて見たわ。」

 

さっきまでの犬猿の仲と思われた2人がある一言で通じあっていた。

リボーンはニヤリと笑う。何故なら彼女はひとつ間違えている、アーチャーと戦っていたのは彼の生徒であるツナだ。

 

「おっと、また出たわね。」

 

「マシュ!」

 

「はいマスター!」

 

「アンタも戦いなさい、アルコバレーノ。」

 

「いや、俺は掟で戦えない、俺の生徒が片付けてくれるはずだ。」

 

「え?」

 

「下がっていろ。」

 

ツナの感じがまた急に一変した。

燃えるオレンジの炎を額にともして彼は颯爽と一陣の風のように飛び出した。

目の前の敵は人の様で人ではないと確信できた。

敵には肉も皮もなく骨だけで構成されており、手には剣を持っている。

魔術により産み出された骸骨兵だ。

骸骨兵が武器を持って襲ってくる何て見慣れていないツナにとってはおぞましい以外に表す言葉がない。

まさにホラー映画かホラーゲームの様な光景だ。

骸骨兵は剣をツナに向かって振り下ろしていくがそれは、全て紙一重で避けていく。

1人1人先程のアーチャーとは比べ物にならないぐらい劣っているために簡単に躱すことができた。

 

「あまり時間が無い、すぐに終わらせる。」

 

ツナは振り下ろしたばかりの骸骨兵が次の行動に移る前に蹴り飛ばした。ツナが上手いこと破壊しなかった為に衝撃の逃がすことができなかった骸骨兵は周りを巻き込んで吹っ飛ばされた。

ツナは次々と骸骨兵を砕いていく。

砕かれて残骸になっていく骸骨兵を見て3人は唖然としていた。

 

「何よ‥これ、これってちょっとしたサーヴァント位の力があるじゃない?」

 

「信じられません。彼からは魔力もサーヴァントの気配も感じられない...どこからどう見ても普通の人ですよ。」

 

「しかも俺やマシュよりも年がしただろう...高校...いや中学生にしか見えない。」

 

「ふっ、ツナあらかた片付いたら先に上に上がれ!」

 

3人が驚き戦いに目を奪われる中リボーンは、骸骨兵がほとんど無くなれば1人で山の方に飛んで先に戦っておけと言った...だがそれはあまりに無謀な事だ。

サーヴァント、それも最優と呼ばれるセイバー相手に1人何て自殺行為も同然だ。

 

「ちょ、アンタもセイバーを相手に一人で何て無謀もいいとこよ!彼を死なせる気!!」

 

「そうだ、俺もキャスターや他のサーヴァントの戦いを見たけど人が1人で勝てる筈がない!!」

 

「わかった。」

 

藤丸やオルガマリーが考え直させるように談判していたのだがそれを気にもせずにツナは先に先行していった。

 

「あ、ちょ...」

 

「どうするんだ?えっと‥リボーンだっけ?彼はアーチャー相手にだって負けていたんだろう!?俺たちの中じゃ1番戦えるのは間違いなさそうだけどそれでも死んじゃうかもしれないんだぞ!?」

 

「大丈夫だ、何も全部1人でやれって言ってるわけじゃない。いいか、ツナが正面から殴り込んでいる間に俺達はセイバーの後に回り込んでツナのサポートをするんだ。」

 

「確かにそこらの相手ならそれが有効打でしょうけど相手を考えなさいよ!!相手はサーヴァントでしかも最良のクラスのセイバーよ!!不意打ちなんて効くわけがないじゃない!!」

 

「そうですよ、効く効かないい以前に私達何て気にも...」

 

「そうだ、自信があればあるほど低レベルのやつ何て気にしないもんだ。ましてや、相手は英雄と呼ばれる部類、自信がない奴がなれる類のもんじゃない。だからこそ俺達はその隙でツナへの最大のサポートをするんだ。殺気も出さずに可能な限り消してな。」

 

「でも、彼がそこまで耐えられるか...」

 

「ふ、それこそ大丈夫だ。英雄って呼ばれる奴らからしたらそこまでの場数を踏んでいる訳じゃないが、あいつだってもう何度も死線を潜り抜けて生きてんだ。」

 

根拠としては乏しい...だけど何故かリボーンの今の目を見ていたら信じたくなる、だって彼の目に疑惑なんてのは一欠片も感じられない。感じられるのはただ1つ‥あいつを舐めるなという念押しだけだった。

 

 

 

「ついた。」

 

先に飛んで彼は着いた。飛べば普通よりも回り道をせずに数段早く登れるのは当たり前だ。

傾斜を走って登るより山に合わせて飛べば簡単だ。

それに敵に飛ぶことのできる者がいないためにたまに矢が飛んでくる程度で楽に登れた。

数もそこまでいなく、すごい数の骸骨兵が集団で固まっていたら倒そうと考えていたのだが、そこまでいなくてチラホラという感じなので置いていてもリボーン達なら片付けられるだろう。

 

そんな当たり前なことよりもこちらの方に意識を向けなければならない。

まだ視界に入っていないがとてつもない気配がする。

それはアーチャーよりも上かもしれない。

セイバー...恐らく名のある英雄何だろう。

そして感じられる死ぬ気の炎とは違う異質な力が集約され1つの大きな塊と感じられる。それがセイバーとは違って感じられる。この気こそが大聖杯と呼ばれるものだろう。

ツナは入口のようにも思える2つが裂けてできた道を通った。

近づけば近づくほど気配は強く濃くなっている。

臆していても仕方が無い、ツナは引き返すことの出来ない道を一人で進みそしてセイバーの前に立った。

 

「問おう、貴様何者だ?魔術師でもなければサーヴァントでもないな。」

 

物凄く薄い金色の髪が炎の光を反射させて、髪のとは真逆な黒いドレスがここの死地を物語っている気がした。

 

「俺は沢田綱吉、ただの中学生だ。そしてお前を倒す!」

 

右腕に炎を集中させて彼は一直線にセイバーに近づく。セイバーは持ち前の剣が彼の拳を迎え撃った。

 

「ほぉ、我が剣を震わせるその拳...よかろう‥ならば少し戯れに付き合おう。」

 

ツナは、持ち前の炎の噴射を軸とした高速移動でセイバーの後ろをとる。

 

「中々のスピードだ。」

 

だがセイバーにとってそれは余裕の範囲らしくすぐに反応して、剣を横薙ぎに振る。

 

「と言っても、私には通じないがな。」

 

ツナはそれを躱して距離をとる。背後に回った程度では、これっポチの意味もないらしい。

今度はセイバーから攻め始める。

セイバーの剣戟は、これまで見た剣士の中でも群を抜いている。

キレのある太刀筋に攻め込むことが出来ない領域が出来ているな感じがする。攻めに転じようとしてもまず斬られるだろう。

 

「どうした、少しはできると思い私の剣技を見せているのだが買いかぶりすぎたか?」

 

「ぐぅ」

 

ついにツナはかすり傷を付けられた。

それを好きと見たのか、セイバーはツナを貫こうと鋭い突きを放つ。

 

「今のはよく止めたな。」

 

ツナは両手で剣を受け止めた。

セイバーが押し込もうと引き戻そうともしても剣はピクリしか動かせなかった。

ツナは、剣を自分の元に引き込むように力を入れ、セイバーを3回転に回して投げ飛ばした。

空中に浮かんだセイバーに好機と見たツナはそのまま飛んで攻める。

 

「ふん、宙を飛べたとして、私がこの程度で崩れはせん。」

 

セイバーの不敵な言葉‥それは真実だろう、ツナもそれぐらい分かった。

彼女にこの程度で状況を崩せられるわけが無いぐらいわかる。

だけどこれならば...ツナは剣の間合いに入る前に炎のシールドで彼女の視界を覆う。

 

「何!?」

 

そしてその隙ツナはまた背後に回る。

しかしそれが愚行だったセイバーにはそれが読めていた。

 

「貴様の高速移動は中々のものだ、私じゃなければそれで崩せただろう。だがなお前が相手にしている私に1度封じられたパターンが通じると...思うな!!」

 

空中のバランスがとても綺麗に取れている為に見事な空中回転で空気を切り裂く。

 

「何?」

 

だがツナもそれだけで終わるツナではなかった。空中戦はツナの方に一日の長があった。

そこまで読まれることはツナも理解していた。

だからこそそこで止まらずツナは下方へ回り込んで顎から蹴り上げた。

更に、足をまた掴んで更に上空に飛ばしあげて、彼女の腹を3発蹴り込む

 

「ぐぅぅ」

 

「終わりだ!」

 

ツナは腕に拘束をかけて関節を決める。高速を外されないように力を込め、重力に任せて地面に激突させた。

 

ツナは飛び上がりセイバーから離れた。

 

「いいな、サーヴァントでも魔術師風情でもない貴様にまさかこれ程のダメージを受けるとはよかろう貴様を認め我が剣の錆としてくれよう。」

 

だがセイバーはなに食わない顔で立ち上がる。全くダメージとして効いていなかった。

それどころか今まで本気を出してすらいなかった。

 

(何だ‥?これは‥‥?)

 

セイバーの周りから黒くおぞましい気配が漂う。剣もまた今まで以上に黒く染まり異様な光が剣から放たれていた。

ツナはこんなものを今まで見たことの無い。純黒に染まった異様な剣にいい気配なんてするはずもなく、そのまま放たれた。

 

約束された勝利の剣(エクスカリバー・モルガン)

 

「ぐ...ぐわわぁぁぁぁぁぁ!」

 

純黒に飲み込まれ、それは巨大な柱が立つぐらいの魔力が込められていた。

ツナが食らったこの技はサーヴァントが持つ奥義と言っても過言ではない宝具と呼ばれるもの。宝具とはサーヴァントが生前に行った偉業や伝承からなったモノ‥‥

ツナもまたこのエクスカリバーという名を聞いたことがあった。これが伝説の剣、今まで食らったどの攻撃よりも凄まじかった。

 

「ちょっと、あの子やられてんじゃないのよ!?」

 

リボーン達は宝具の光が見えて急いでこちらに駆けつけたが宝具を放たれたあと既に遅かった。

オルガマリーの大声に折角後から回り込みツナに気を取られて気づかれなかったかもしれないのにこれで完全に目指された。

 

「小娘、その盾...そこの名も無き娘、私が相手をしよう。」

 

「くっ!?」

 

藤丸はマシュが指名されたことに顔を歪めたが、マシュは覚悟を決めたようだ。

 

「マシュ・キリエライト行きます!」

 

 

 

 

 

「ねぇ、アンタ戦いなさいよ!」

 

マシュとセイバーの戦い正直に言うと勝ち目が見えなかった。そんな様子を見かねたオルガマリーはリボーンに共闘させる事を強要させるが藤丸はそれに反対する。

 

「所長...いくら何でも赤ん坊にそんな事無茶が過ぎます。」

 

「アンタは...馬鹿なのねやっぱり。コイツが普通の赤ん坊なわけないでしょ。」

 

「確かに凄く不思議な感じはしますけど...でもやっぱりこんな子に戦いを無理やりさせるなんて...酷すぎると思います。」

 

「言っただろ俺は掟で戦えない。そういうお前はどうなんだ?お前も魔術師の家系なんだろ。」

 

リボーンの言ってる事は当たっている。

オルガマリーの性アニムスフィアの家柄も魔術に関する家系である。

でもだからこそリボーンやツナよりもサーヴァントを強く見すぎている為に自分からでにくく、自分よりも強そうな人に頼ってしまう。

 

「まぁ、考えている事はわかるけどな。ビビるか強がるか俺にはどっちでもいいことだ。ただそれならそこの奴のようにあいつを信じてやれ。呑気かもしれねぇが、覚悟を決めきれていないよりはましだ。」

 

「...」

 

「なら、落ち着いている君は何を信じるの?」

 

藤丸は純粋な目でリボーンを捉え質問した。

 

「...人間生きていたら何かしら修羅場は来るもんだ。俺は俺の生徒に教えるのはそんな時が来たら畏まって冷静なふりをして逃げ道を探させる事じゃない。俺が教えるのはどんな場面でも死ぬ気なら乗り越えられるっつう事を教える。あいつはダメダメだが、それでも俺の教えを叩き込んだあいつは何かしてくれる。」

 

 

痛い、激痛が全身を今も走っている。

俺はこのまま...死ぬのか...心臓の音も弱ってきている。大地の振動が背中を通して自分も感じられる。

震えている強すぎる力がここに集中し過ぎて耐えられていないんだ。

大地の震え、大地の鼓動、大地の熱となってツナに感じさせているのはここに眠る霊脈だけじゃない、暴走しかかっている大聖杯の魔力だった。

ツナには魔力素質はない、魔術回路なんてものもない。でも今ツナが一番大聖杯というものを感じられていた。

熱が冷えきっていた体の熱を温め心臓を止まらせず、ツナの気力を絞り出させる。

 

(あの子は...マシュと言ったか.....今はあの子が戦っているのか...?...!?あの子震えているんだ。戦うの...俺と同じで怖いんだ...それはそうか...こんなに痛くて辛いものになれる訳ないんだ。今あの子の隣に立って彼女を助けられるのは.......俺だけだ!!)

 

 

 

セイバーの剣に防戦一方のマシュ、苦渋に満ちた表情で今の現状をどうにかしたいと思っているのだが好機が訪れない。

 

「くっ...しまった‥‥」

 

マシュの守りが切り崩されてしまった。

セイバーはそれが好きと見て縦をはじき飛ばして懐に入り込んだ。

セイバーの無視さ表情な瞳に、マシュは目を瞑り死を感じた。

 

「終わりだ!グッ」

 

「え」

 

だがその剣は届くことはなかった。

振り上げる前にガラ空きだった横側を蹴り飛ばした者がいたのだ。

 

「あの」

 

「大丈夫か?済まなかったな、後は俺がやる。」

 

マシュの前に立ち拳を構える少年にマシュは命を救われた。

 

「俺があいつを倒す、だから貴女が後で彼らを守ってやってくれ、まだ簡単にしか名前を聞いてなかったな。えっと...マシュでよかったか?」

 

「はい、マシュ・キリエライトです。」

 

「俺は沢田綱吉だ。宜しくな」

 

柔らかに微笑む彼からは暖かさしか感じられなかった。今まであってきた人物の中でも、そして藤丸立香とも違う心が和らぐ笑顔に私はこんな状況なのに何故かほっとしていた。

 

「いくぞ、セイバー、次はお前を倒させてもらう。」

 

「ふん、我が剣をまともにくらい立ち上がるとは...もう一度私の前に倒れさせてやろう。」

 

 

 

 

「あの子...満身創痍じゃない。さっきの光宝具を1度受けたんでしょ!」

 

「もう、戦える状態じゃないんじゃ...」

 

オルガマリーも藤丸も2人ともツナの現状を見たらもう戦えないと言った。

それはそうだ、アーチャーに手傷を負わされて、セイバーに宝具を食らった。

ここまでのダメージ量...正直サーヴァントだって立ち上がる事はできそうにないのに生身のしかもまだ子供の彼が立ち上がるなんて奇跡でも起きたんじゃないかと魔術側の人間は思った。

それは当然だ、魔術側にしてみたら宝具の強さは嫌という程知っているし、藤丸だってサーヴァントの戦いぶりを見たことがあるんだ。

だからこそ信じられなかった上にまだやると言っている。

 

「...いいや、あの目のあいつは手強いぞ。」

 

だけどそれはリボーンも同じだ。

サーヴァントの戦いはアーチャーしか見ていないが、ツナの戦いぶりは誰よりも見て誰よりも彼の成長ぶりと、強敵を覆す奇跡を見たんだ。

それがある限りリボーンはそれを根拠として、ツナを信じ続けるだろう。

 

 

 

 

「再び、この剣を見よ!卑王鉄槌... 約束された勝利の剣(エクスカリバー・モルガン)

 

再度見るとさっきよりも、何故か体が動く。

天に突き立てる純黒の柱が見えた瞬間ツナは柱の元に行く。

 

「ほう、発動前に防ごうと無駄な努力だ。私が剣を抜いた以上これは大地をも引き裂く。」

 

炎を噴射して、一気にスピードをあげ加速する。

 

「「うおぉぉぉぉぉぉ!!」」

 

だがそれでも遅かったツナはセイバーに届かずにセイバーの宝具が振り下ろされた。

それでもツナの目は死を覚悟しなかった、振り下ろされ自分の額に届くその瞬間...それを狙っていた。

 

「届いた!」

 

「何!?」

 

ツナは収束された魔力を纏っているエクスカリバーを掴んだ。

真剣白刃取りという奴だ。

 

「俺が食らった部分はエネルギーの塊みたいなものだった、だからこそ掴むことができなかった。でもこれはこんな派手な技であっても柄もあって刃もある...ならそこを掴めばいいだけだ。」

 

 

 

何て事を言っているがこんなものは無謀もいい所、爆発し始めた爆弾に飛び込んで意味の無い解体をしようとするようなものだ。

 

「何考えてんのよ!?1度宝具食らって混乱してんじゃないでしょうね。ヤケになってどうにかなる場面じゃないわよ!!」

 

「...あいつあれをやる気だな。」

 

「あれ?...何何か秘策でもあるの?」

 

「秘策って程じゃねぇが勝てるチャンスは十分に生んでくれる大きな賭けだ。」

 

「賭けって、サーヴァント相手にそんな事を‥‥?」

 

「ゴチャゴチャ言うな...どの道このままやるより確実に好機を掴める筈だ。」

 

リボーンは賭けと言うが確信はあった。

ツナなら好機を掴み、そして勝利を掴む事を‥‥

 




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大空INカルデア

更新です。
水着キャラ当たんねぇ〜、1300万~イシュタル〜今回ので手に入った水着キャラ...イシュタルとジャンヌ・オルタだけ!


約束された勝利の剣(エクスカリバー・モルガン)!」

 

絶望の光が振り下ろされる。

あまたの願い、平和全てを打ち砕いた黒い聖剣は天から振り下ろされた。

山を砕き海を干からびせ、人々の安寧はこの剣を見たら最後残りカスも消し飛ばされた。

味方の羨望い一点に受けた剣は敵から見たらこれ以上の恐怖はないだろう。恐怖、憎悪、怨念と言ったものが呪いとなり形成された剣がツナを襲う。

 

「く、うぉぉぉぉ!死ぬ気のゼロ地点突破初代エディション!!」

 

突如ツナの手から徐々にセイバーの宝具を氷が侵食していった。

 

「これは...」

 

死ぬ気の零地点突破初代エディション。ボンゴレ10代目の跡を巡って戦ったXANXUSとの戦いの時にツナが手に入れたボンゴレの奥義である。

元々死ぬ気の炎とは、圧縮したエネルギーの塊だ。オーラなどのエネルギーよりも数倍ものエネルギーが集まって、炎の性質と形を取ったもので、そのため死ぬ気の炎は厳密に言えば炎とは少し異なるものだ。で、この圧縮エネルギーをプラスと考えた時にマイナスに当たるのがこの氷である。この技はいつか死ぬ気の炎を使った戦いが起きる事を予感して、死ぬ気の炎すらも封じ込めるこの技を編み出して、以後ボンゴレのボスを務めるものがこの境地にたどり着くと自然と伝授されてきた技である。

 

「こんなものに封じられるほど...甘くはない!この程度の氷など粉砕する!」

 

柄を掴んでいるセイバーの手に力がこもると、彼女の黒い魔力が更に強まり濃くなる。

余りの力の強さにツナが踏みとどまっている大地も砕けるぐらい重く強くなっていた。更に宝具に力が増した。ツナもこれ程のものを封じるなんてのは初めてでこれだけでも気力を全部もっていかれそうなのにさらに追加されてしまった。

 

(これでは...もう)

 

額に灯る炎の勢いも若干弱くなっていた。

歯を食いしばり必死止めようとしていたツナだが、もう気力の限界を迎え

 

「諦めてんじゃねぇツナ!後ろを見ろ!!」

 

背後からしたリボーンの声に咄嗟に反応したツナ、目に映ったのは不安そうな瞳でこちらを見るマシュだった。

 

「負けないでください沢田さん!!」

 

だけじゃない、不安になっているのはマシュだけじゃない。マシュの他にあの青年、藤丸立香もオルガマリーでさえも諦めかけている。

自分が負けそうになっているせいで...

 

(まだだ、俺はあの子に後ろを託した。俺はあの子に前を託されたんだここで折れてなるものか!!)

 

「負けてたまるかぁぁぁ!!」

 

突如胸のあたりが光りだした。ぼわぁと光り始めた事に気がついたのはセイバーだけだった。

淡いオレンジの色は濃くな氷の勢いをよ助長させた。

 

「何!?」

 

(何だこれ、力が増したように感じられる。これは...これなら行ける!)

 

当然光っていることにすら気がついていないツナはなぜ光ったのかその要因すらわからない。ただ感覚だけでいえば突然力が増したような感じだけした。

不規則にノッキングする炎は突如弾け、オレンジ色の炎に深みが増したかのように澄み切った綺麗な色になった。

 

「ここまで張り合うところは見事だ。若輩にしてそこまで至るには度重なる努力の賜物だろう満身創痍で立ち上がったその精神力、更にはそれを可能とさせた成長の速さは見事と言えよう。だが、それを差し引いても時期が早かったな少年。」

 

突如気配を感じた。鷹の様に鋭く入り込み圧倒的な存在感を放ちセイバーの気が少し逸れた。

英雄は英雄を呼ぶ。

 

「貴様はアイルランドの光の」

 

「我が魔術は炎の檻...茨の如き緑の巨人」

 

(こいつは気力を使い果たしたな。しっかし面白いガキ共だ。星の巡り合わせに導かれた人達この運命の先を見てみたいものだが、そん時はランサーとして手を貸してやりたいな。)

 

ツナはキャスターに助けられたと同時に集中の糸が切れてしまい、気を失った。キャスターはツナを担いだ。

展開する炎の陣がセイバーの足元に浮き出た。

 

「因果応報、人事の厄を清める杜...焼き尽くす炎の檻!」

 

赤く熱く、燃える炎の式から飛び出てきた木の巨人はツナをキャスターに投げ飛ばして、もう片方の腕はがっしりとセイバーを掴んでいた。

キャスターの宝具から逃れようとするが、暴れても暴れても解放されることはなくあと少しで炎の檻の中に放り込まれる寸前に、誰かに撃ち抜かれた。

キャスターはセイバーの方を見た。

セイバーはその後誰かに不意打ちをされたのか腹部を撃ち抜かれていた。

 

「ぐ、貴様。」

 

「全く、余計な事をしてくれたなセイバー。」

 

貫かれたセイバーが目を細めて犯人を睨んだ。

そこに立っていた人物は帽子にスーツ、それから変わったネクタイでブーツを履いている。

 

リボーンは彼の事なんて全く知らないが彼を見た藤丸、マシュそれからオルガマリーは信じられないものを見ている様に驚いていた。

 

「レフ!生きて...」

 

「「待て(待ちな!)」」

 

「テメェ何者だ。」

 

キャスターは抱えているツナをマシュに渡してその人物をさらに強く睨みつけた。

だが急に現れた人物はそんなキャスターを噛み付こうとしてくる憐れな子犬のように見た。

 

「セイバーが退去した今、君の出番も終わりのはずだキャスター。」

 

「げっ強制帰還、確かに聖杯戦争は終わったけどよ。はぁ、坊主それと嬢ちゃん、サーヴァントなんてのはこれで終いよ。呼ばれては戦って終われば終了だ。今回はクソみたいな仕事だったがテメェらと戦えた事は中々面白かったぜ。」

 

サーヴァントは聖杯戦争をするために呼ばれ、終われば消えていく。

藤丸は初めてこんな別れをする。もう会うことはないだろうし、会える人ではない。

短い間面倒を見てもらい、助けてもらい、少ない時間で自分をここまで成長させてくれた彼に藤丸は涙を見せずに...

 

「キャスター、ありがとう。」

 

笑顔で別れを告げた。

最後の最後まで面白い奴、キャスターはそう思い満足そうに帰還を受け入れる。

 

「おうよ、それから眠ってる坊主に伝えといてくれ。ランサーとして召喚された時は殺りあおうぜってな。」

 

サーヴァントとの出会いは一期一会、彼の様な英雄もいれば悪魔のような反英雄だっているんだ。でも今回出会えたサーヴァント達のおかげでマシュと藤丸には最高の始まりだっだろう。

 

「レフ!」

 

「おい待て!藤丸、オルガマリーを止めろ!!」

 

「待ってください所長!」

 

「うるさいわよ!私にはレフが必要なの。レフ...怖かったもう予想外の出来事ばかりででもあなたがいれば...貴方さえいてくれれば何とかなるわよね。」

 

「はは、本当に予想外の出来事ばかりで頭に来るよ、特に君の足元に爆弾を設置したというのにこうしてまた顔を合わせるとはね。」

 

「...え?」

 

「だが折角だ。よく見たまえ、アニムスフィアの末裔。あれがお前達の愚行の末路だ。」

 

大聖杯の前に現れた天球儀カルデアス本来はこんな赤くはない、これをレフは結末と言った。

 

嫌な予感が的中したリボーンは誰も気がつけないスピードで銃弾を放った。

 

「おっと」

 

「ちっ。」

 

だがレフはそれを容易く弾く。

 

「動くなアルコバレーノ。君は後で必要になる素体だ。」

 

(っ!?動けねぇ。)

 

リボーンは全身金縛りにでもあたっかのようにピクリとも動かすことが出来なくなっていた。

 

「さぁ、余計な邪魔を入れてしまったね。君の宝に触れるといい。」

 

ふわりと簡単に浮くオルガマリーの体、レフは抵抗を許さずに宙をゆっくりと進ませた。

カルデアスは高密度の情報体、人間が触れれば分子レベルで分解される。こんな所に放り込まれるというのはブラックホールに落ちるに等しい事、レフはそれを織り込み済みで彼女をゆっくりと近づかせる。彼女はあの中に放り込まれるとわかってレフや周りに助けを求める。

「や、やめて...私は...私はまだ誰にも認めてもらっていない。」

 

オルガマリーがそれに触れた瞬間彼女はなす術なく飲み込まれた。

 

「所長っ!!」

 

「さて、改めて自己紹介だ。私はレフ・ライノール・フラウロス。君達人類を処理するために遣わされた2015年担当者だ。未来が観測できなくなって未来が消失などとほざいているが...未来は消失したのではない焼却したのだ。」

 

ぎらりと光る眼光と影がレフの語る事に真実味を持たせた。

 

「時間は複雑入り交じって出来ている。未来が焼却したってのは言っちまえばそこに辿る過去もなのか?」

 

だけど、リボーンは冷静に分析をした。

あいつは未来がなくなったと言った。未来が無くなるというのはそこに至る過去まで影響を及ぼす。まさに現在リボーン達がいる所はその犠牲になってるものと考えた。

 

「少し違うな。私の言っているのは結末が確定したという事だアルコバレーノ。今確定した終焉に向かっているのがお前達だ。」

 

『ザザっ...やっと繋がった。』

 

「やぁロマン、彼らの登場でおかしくなった通信をようやく回復させたか。」

 

『無事で何よりだ立香君。今ようやく理解出来たよ。こっちだけじゃなくて外部と連絡が取れないのは通信の支障ではなくそもそも受け取る相手がいないからですね。』

 

「冷静じゃないか臆病者。」

 

通信から聞こえてくる人の声の本人を罵る。

 

「さて、アルコバレーノ。本題に入ろうか、君には私達の元に来て封印されてほしい。」

 

「「!!?」」

 

「何を言ってやがる?そんな要求飲むわけないだろ。」

 

訳の分からない要求にリボーンは当然の選択を選び拒否をした。

 

「だろうね、そう答えると思っていたよ。だが君はこの要求を飲むしかない。何故ならここはもうすぐ完全に無くなる。マスターである彼とマシュは助かるが、時期ボンゴレボス候補の彼は霊気データがカルデアにない以上レイシフトで逃げることができない。だが時間さえあれば可能...そうだろロマン。私ならばレイシフト用の時間を作ることができる。」

 

「さっきからのお前を見てそうすると思えんのか?」

 

レフに対してリボーンからの信頼はゼロだ。全く信用していないし、信用するに値しない。

そんな相手の要求も条件もリボーンが鵜呑みにするわけがない。

 

「別に私は構わんのだよ。寛大な私を信じられずに無惨になす術なく二人同時に死んでも...」

 

だが、レフにとってはリボーンが飲もうが飲まなかろうがどっちでも変わらない。変わるとしたら犠牲者が増えるか減るか、

要は気まぐれだ。

羽虫が足掻くのを見るのは愉快らしい。一人の人間があいつらと組んでも変えられない運命だと言うのをわかっている。

 

「おい、ツナには後は頼んだって伝えてくれ。」

 

信頼はできない。がこうすることで希望が残るなら選択をするしかない、俺のやるべき事はツナに生きてもらわないと達成しない。あいつにはどうあっても生きておいてもわらないといけないから...

 

「ふふ、流石だ。金縛りを解いてあげよう。」

 

リボーンは前に歩き出した。

希望のために絶望に進んだ。

 

「待て!何でその子なんだ。なぜ封印する必要がある。」

 

「...まぁいいだろう。元来、この世界には7³というものがある、7つのおしゃぶり、7つのマーレリング、7つのボンゴレリングを一括りにして7³、その1つのマーレリングの保持者はこの世から消したが、ボンゴレリングはこの世界のバカが既に破壊し、おしゃぶりだけが残っている。」

 

既にこの世界の7³は崩れさり、時間が既に狂いを見せていた。

生命の進化、人類の築き上げた歴史、全ての可能性を支えるのが7³なのだ。

マーレリングを使いこの時代を支配しかけていたものは既に消された。

 

「だが、厄介な事にボンゴレリングの危険性は未だに残っていてね、その為正式な保持者事消さねばならなくてねその為に沢田綱吉の最も危険のない時代で尚且つリングの使い方を知らない彼を招待したのさ。」

 

ボンゴレリングはこの時代の保持者であるツナが既に壊したのだ。

なら既に、脅威はないと思うのだがまだ何か

 

「7³と一体となり尚且つアルコバレーノのボスはその運用も可能だ。態々無くしたのにまた創造されては困るだろう、時空に及ぼす聖杯の安定を兼ねて聖杯に封印されてもらう。もう既に6人のアルコバレーノを封じさせてもらった。後は君だけだ黄色いおしゃぶりのアルコバレーノリボーン。」

 

また歩き出すリボーン、行くなと藤丸は言うがリボーンは止まることなくレフの元に行く。

だがそんな時ふとリボーンの足が不自然に止まった。

 

「?」

 

そして彼はいつもの不敵な笑みを浮かべてこういった。

 

「やっぱお前の要求は飲めねぇな。」

 

「何だと。2人まとめて道ずれが希望か?」

 

「いや、死ぬ気はねぇ。まだツナは俺がいねぇとダメダメだからな俺がこの戦いでビシバシしごいてやんねェといけねェんだ。」

 

「ふ、あの様な小僧に何ができる。何もできやしないから生かしてやろうと思ったが...まぁ私はここでお暇させてもらうよ。」

 

「おい、通信していたやつ!藤丸とマシュを早く元の世界に送れ!俺とツナもすぐに行く。」

 

『でもどうやって行く気なんだい?そんな事不可能だ。』

 

「いいからさっさとやれ、こんな事をしてるうちに時間がなくなっちまう。」

 

「く、仕方がない。藤丸君、マシュ」

 

 

 

 

 

 

 

『さ...だ...ん』

 

誰かの声が聞こえてくる。心に直接響いている感じがする。

 

『さわ...ん』

 

だんだん聞き取れるようになってきた。

でも誰の声かはわからない。

 

「さわださん」

 

俺の名前?でも誰だろうやっぱり聞き覚えのない。

 

 

「沢田さん。」

 

「え?」

 

「よかった聞こえましたか?」

 

「君は」

 

ここはどこか分からない。周りは見えず知らない声がずっと響いている。

今、ツナは黒い世界の中を飛んでいるような感覚がある。

 

「私は...です。」

 

何故だろう一部ノイズがかかったように、名前の部分だけどうしても聞き取れなかった。

君は誰なんだ。

 

「今の私は世界に受け入れられない存在、本来ならば私の声も聞き取れない筈なんですが...貴方がに付けているボンゴレリングのおかげで今私の声が聞こえているのです。」

 

声の主の言っていることの殆どがツナには分からなかった。

 

「ボンゴレリング...君は何でボンゴレリングを知っているの」

 

「それは.....が.....なので」

 

やはり一部聞き取りづらい。

まるでその1部を聞かせたくないかのように重要な部分だけノイズが重なる。

 

「貴方は今人類の希望なのです。貴方に力を与えました。その力を使って世界を救ってください。」

 

「世界!?待って君は何を言っているんだ。何でそんな大きな事になるんだよ!!」

 

「大丈夫です。こんな事を聞いて無責任と思っても仕方がありませんが...貴方にはまだ.....いますので」

 

段々声が遠のいていく。

もう彼女が言う時間が迫っているのだろう。

もう少し話を聞かせてほしい。ツナは無駄であろうと思いながら手を伸ばし繋ぎ止めようと足掻くがそれ以来声が届くことは無かった。

 

 

 

 

 

「じゃあ、その子のおかげなんだね。君達がカルデアに来られたのも。」

 

「あぁ、俺も原理はよくわからねぇがな。」

 

「よかったよ。今は一人でも多く人が欲しい所だからさ。」

 

「だろうな、まさかここまでのことになるとは思ってなかったぞ。」

 

「お、目が覚めたみたいだね。」

 

「ちゃおっス、起きたかツナ。」

 

「ここは...」

 

見たことの無い所だった、あたりは白く結構広いが置いてあるものは自分が寝させてもらっているベッドのみだ。

そんな所に、リボーンと見たことのない人が話していた。

 

「起きたみたいだね。僕はロマニ・アーキマン医者だよ。ここは人類存続保証期間フィニス・カルデア、まぁさっきの場所とは時間も場所も違う所だから」

 

「そうですか...ありがとうございます。リボーン...俺は」

 

「お前はセイバーを倒した後気絶して倒れたんだ。」

 

「ほかの人達は?えっと」

 

「マシュや藤丸君は無事に回収できたよ。」

 

「そうですか...よかった。あと一人誰かいませんでしたか?」

 

「...」

 

ツナの言った人物の事となると急にテンションが下がった。

いや元々いい報告にしては2人とも随分沈んだ空気で話しているのを更に下げた。

 

「えっと...えっとどうしたんですか?」

 

「ツナ、ここからは冗談でもなんでもねぇそれをわかって聞いてほしい。」

 

ツナは少し疑問に思うが...大体察した。でもツナの考えの数倍もの大きい出来事だった。

 

「オルガマリーを初めとした人間はみんな死んだ、このカルデアにいる奴ら以外死んじまったらしい。」

 

「え?何を言ってるんだよリボーン...」

 

「世界は滅んだんだ。」

 

「嘘だろ!?なぁリボーン!」

 

「嘘でも冗談でもねぇって言ったはずだぞ。」

 

「山本は!獄寺くんは!ハルやランボにイーピン母さんも京子ちゃんは!!?」

 

「例外なく死んだはずだ。」

 

「お兄さんや雲雀さんも...」

 

「...」

 

「何で.....こんな」

 

「と言っても死んだというのには語弊がある。」

 

「え?」

 

「人類の歴史から存在し無くなったって言うべきなんだろうな。そうだろロマニ。」

 

「うん。レフが言った通りなら多分君の友達達は人類史がなくなった影響で亡くなった筈だ。」

 

「えっ、ちょっちょっと待ってください。リボーンどういう状況なんだよ。じんるいし?何の影響なんだよそらにレフって…」

 

「一体本当にどういう状況なんだよ。」

 

「あっはははははは、やっぱり失敗したね。怖い情報から彼に決意させるしかないことを悟らせて状況に無理矢理突っ込ます。まぁ詐欺グループがやるならば相手だと思うよ。」

 

「えっと」

 

「おっと急に出てきた救世主の美女に目を奪われているね君。私の名はダヴィンチ、ダヴィンチちゃんと呼んでくれ。君ここがどこかもまだわかっていないだろ?」

 

「えっと、はい。」

 

「まずは、君とリボーン君が住んでいた2006年の10年後である2016年というのを頭に入れといてほしい。」

 

「えっとリボーン、俺って10年バズーカでここに飛ばされたんだっけ。」

 

「違うぞ。魔術の召喚術っぽい何かで無理矢理飛ばされてきたんだ。」

 

「おっと、予想していた着眼点とすこし違っていた。君の言ったバズーカには大変興味が惹かれるが今は置いておこう。」

 

リボーン以外は知らないだろうが、ツナは知り合いに何度も10年後と入れ替わっている子供がいるためにそこらへんの驚く感覚が麻痺している。

 

「あ、その前にいいですか?」

 

「何だい?」

 

「あの人達、俺と一緒に戦っていた人達は無事何ですか?」

 

この時ダヴィンチ達の顔が一瞬強張ったような気がした。

 

「そうだね。君結構優しいね。」

 

「え、あぁいや、その。」

 

「ふふ、藤丸君は部屋で少し気を落ち着かせているところ何でマシュはその付き添いをしている。後で会いに行くといいよ。さてと、じゃあここが何年かわかったところでここがどこかという話に戻るよ。ここは人類継続保障機関フィニス・カルデアさ。人類史を長く存続させるために魔術・科学の区別なく…って君今言った所の半分も理解できていないでしょ。」

 

「うぅ、はい。」

 

「まぁ要するに、皆んな集まって人間守ろうぜってやる所。」

 

漢字の多い説明を理解できなかったツナにダヴィンチは物凄く掻い摘んだ説明でここのことをわからせた。

 

「で、普通ならもう少し人数がいてしっかりと調査を行なった後に作戦を決行するつもりが敵さんに先手を打たれこの様さ。」

 

やれやれとダヴィンチは呆れたように首を左右に振っている。けどツナにとってはこの様という割にはこの人は凄く落ち着いてる感じにしか見えない。

 

「んま、そういう訳だ。俺の言った説明と何ら変わらなかっただろ。」

 

「何処がだよ!?お前が言ったのこの人の説明のどこにも含まれていなかったよ。」

 

「その敵てのが人類滅ぼした元凶なんだしあってるだろ。」

 

「それ順を追ってしないといけない部分だろ!?」

 

「だが、俺が最初に言ったおかげで理解はできるだろ?」

 

「何のだよ?」

 

「ここがどこであれ、こいつらが何者であれ、俺達に引く道はねぇんだ。人類史を戻せばその影響で死んだ奴らは戻ってくる。俺達がやらねぇと皆助からないんだぞツナ。」

 

「!?...」

 

ツナは下を向く、リボーンが最初言ってくれた現在の出来事何で俺なんかがこんなところに来て俺の手で皆を助け出す何てのは...

 

「大丈夫だ。」

 

「な!?お前なぁ大丈夫ってまたなにを根拠に」

 

「お前は1人じゃない。」

 

「え?」

 

「守護者も仲間も確かに居ないけど、俺達にはまだ助けてくれる奴らがいるんだ。」

 

「その通りだ、沢田綱吉君。まだ現状を飲み込めないかと思うけど、今は君のような戦力が1人でも欲しい所なんだ。頼む僕達と一緒に戦ってくれ!」

 

ロマニは頭を下げてツナに手を貸してと頼む。

 

「え、頭を上げてください。」

 

「いや、これは現在のここの責任者として当然の行いだ。魔にも関わったことのない少年に無理を押し付け無理やり頷かせようとしてしまった者の責任だよ。それでもこんな卑怯な大人だけどもどうしても君の力が必要なんだ。」

 

こういう頼み方をされるとツナは弱い。でもこの人がどれくらい真剣にお願いしているのかが分かった。

そんな人の頼みを無下にできないと思う程の程のお人好しなのがツナである。

 

「まだ、事のでかさに驚いて頭を整理できていませんが、俺も、俺にも救いたい人達がいますなのでその人達を救う為に戦わせてください。」

 

ツナもぺこりと頭を下げ返した。

 

「ありがとう、君の勇気ある一言に感謝を!」

 

熱く、ロマニはツナの勇気に賞賛し握手した。

 

「全く彼といいこの子といい最近の少年は勇ましいね〜。でもねリボーン君はわかっていると思うが...」

 

「わかっているぞ、その為にロマニに無理言って時間を作らせたんだ。」

 

「さてと、交渉が済んだ所で悪いが悲報がある。」

 

「悲報?」

 

「君、前所長に君にはちょっとしたサーヴァントぐらいの力があると言われたそうだね。」

 

「えっ...?」

 

「あ、忘れてたのかい?それとも聞こえてなかったのか?まぁいいや、一応君の戦いを見てもらったけど、正直君は私のような非力な英霊と単純な力比べをしたら勝てると思うけど、戦いが本文な英霊からしたら君は足元にも及ばないだろう。」

 

「!?そうですよね」

 

「お、気がついていたのかい?」

 

「俺、最初アーチャーって人と戦っていて、俺は一瞬隙を作れたと思いました。でもそれはアーチャーが仕組んだ罠だったんです。その時気が付きました。俺はずっとアーチャーの掌の上で遊ばれていたんだって」

 

「成程ね、しっかりと自己を分析してるならよろしい。まぁ英霊の私から言わせれば中々の方だと思うよ、君の未来に投資してもいいぐらいに筋はいいはず。英霊の私の意見だがね」

 

「あ、ありがと...う英霊?」

 

「三度目の正直」

 

「んなぁァァァ!?ダヴィンチさんて英霊だったの!!」

 

「そうだよ、これ以上引っ張っても意味がなさそうなんで先に言ってあげよう。私はルネサンスの誉れ高いレオナルド・ダ・ヴィンチその人さ!」

 

レオナルド・ダ・ヴィンチ、14年代のイタリアの偉人、有名所と言えばモナ・リザを書いた人と思えば大抵の人は分かるだろう。

だけどツナは...

 

「え...とレオ、...」

 

「ぷっ!」

 

これにはロマニもたまらずに吹いてしまった。

 

「バカツナが」

 

「...ロマニは後でしばこう、うんしばいてあげよう。こほん、ん〜英霊としちゃぁ傷つくなぁ〜本当に私の事知らない教科書とかにも載っているだろ?ほら有名な美女が」

 

とダヴィンチは言っているが頭を捻らせて考えても思い浮かばない綱吉君。

 

「言っても無駄だぞ、ツナは教科書とかを見てその日の授業でで忘れちまうぐらいどうしようもない奴なんだ。」

 

「仕方ない、今度私が個人授業をしてあげよう。これで君も明日から教師泣かせのダヴィンチマスターとなれるよ。」

 

「はぁ〜え、っとで?」

 

「おっといけない本題を忘れていた。今の君じゃサーヴァントと本当に渡り合うようになるには10年はかかると思う。今の君の戦闘データを見る限りはね。」

 

10年、とても長い時間だ。しかもこれはダヴィンチ的には最低限かかる時間である。正直に言うと追いつけない可能性だって示唆しなければいけない。それがサーヴァントの領域である。

 

「でも、君は冬木の戦いで一瞬のうちにその証明を覆せる可能性を出してみせた。」

 

「え?」

 

「とりあえず、私についてきてくれ。」

 

「え、ちょ」

 

ダ・ヴィンチに手を引っ張られ彼は病室を強引に引っ張り出される。

強引なために彼の上半身は脱いだままだったがそれを指摘する者は誰もいなかった。

連れ出されてこの施設の中を初めて歩かせてもらったが中々の広さを有していた。

病室から出て数分たって付いた部屋に入った。

 

「えっとここは?」

 

「私の私室さ。ちょっと待っててね。えっとこれじゃない、う〜んどこにしまったけな〜。」

 

ダ・ヴィンチはパソコンを取り出して何やらデータを探している様子。

 

「えっと...ロマニさん」

 

「ロマンでいいよ、みんなそう呼んでいるからね。」

 

「あ、はい。ロマンさん彼女は何をやってるんですか?」

 

「君に見てもらいたいものがあってね。」

 

「俺に?」

 

「僕達は君のセイバーとの戦いの時の映像データさ。僕達通信をいれることははできなかったが様子は見ててね。それで君に気になる点があったんだ。」

 

セイバーとの戦い正直頭がいっぱいいっぱいで他のことなんて何も頭に入っていなかった。

なのでツナ自身に何にがあったのと頭を捻らせる。

 

「お、何このデータ?違うねこっちだモニター下ろすからしっかりと見たまえ。」

 

ダ・ヴィンチがモニターに映し出したのはセイバーの宝具を死ぬ気のゼロ地点突破初代エディションで凍らせようとしたところだった。

今思えばだいぶ無茶していたと思う。あんな凄い技を自分から突っ込んでいくとは...自分でもよく止められたものだと思う。

 

「ここでこの行動は愚行にも程があるよね。幾ら自分に他の方法がないからといっても運がいい悪い以前に絶対死んでいたよ。ほら君自慢の氷も所々砕け始めてる。」

 

確かに力では砕けないはずの氷にヒビが入っている。

 

「なら何故君は助かり、そしてセイバーの宝具に耐え続けたのか?疑問に思わないかい?」

 

「思います。」

 

「結果は次の瞬間覆された。見てみなよ君の胸元を」

 

「あ、光ってる。」

 

あの時は全然気がついていないけど今見たら自分の胸のあたりが光っていた。

自分の胸にあるもの...それは首から下げてるこのリングしか思い当たらない。

沈黙が存在を守り、常闇の間を人の手から人の手へ伝わってきた。時にはそれを強引に手に入れようとして血を流し争いの種、引き金となってきた曰く付きの代物血塗られたボンゴレの象徴。

 

「ボンゴレリング!」

 

 

 

 

 

〜side???〜

 

ここは世界に当てはまらず、人が簡単に踏み入られる領域では無い。

空を照らすは夜空を彩る星々と極に幕を貼るオーロラが空を永遠と照らしている。

地もあるのは花と泉だけで他には何も無い。

ここは人の来ることが出来ない領域人におそれられたし人外達の聖域である。

ここにいるものは基本不干渉で一頭一頭がゆったりと過ごしていた。

そんな世界にいつの間にか人は居た。彼女がいつから居たのか、どうやって来れたのかそれはわからない。

彼女はこの聖域を歩いた。まるで目的がはっきりしているように迷いなく歩いている。

そんな彼女が足を止めたのは一匹の竜の前だ。

そこは花畑の絨毯が敷かれており、真ん中に光る1つの杯があった。

とても綺麗でまるで月のような輝きを放今ここに竜がいる理由なのだ。

竜はこれを護るようにして目を閉じていた。

この杯はこの竜が持つたった一つの宝なのだ。

これ人に渡す時が来るまでここてで護り続けることこそいまここに理由なのだ。

だけどまだその時ではない、どうにかして彼女を返さねばならない。

できるだけ荒事にせずにする方法を考えていると少女が頭を下げた。

 

彼女は話を聞いて欲しいと頼んだ。

 

竜は快く話を聞いた。

 

 

「ありがとうございます。ご協力感謝します。」

 

竜は彼女の話しを聞いて彼女の頼みを聞いて引き受けた。

彼女の頼みとはただ一つ「人類を救って欲しい」

竜は二つ返事で答えを出した。

 

「別に構わない。」

 

我は人を信じる者

我が為したことはいかに邪悪か彼女は知っていた。

我は人類の願いを奪い取り人々を信じた。、

 

「いいのですか?この杯は貴方の勝利品、貴方が勝ち取って得た...」

 

少女は邪竜と話す。

邪竜は思う、この子は彼女と似た雰囲気が感じられる。未来を信じ、人に希望の可能性を見出して、彼女は笑顔を浮かべる。笑顔の裏にどれだけの絶望を自分が抱いている闇に対しても笑顔を崩すことは無い。

そんな所も彼女と同じだ。

だからこそ、邪竜は手を貸したくなった。あの時彼女を守れなかった。

自分は選択をした。

邪竜もまた信じられる人が信じた道のためになにかしたかった。

 

「これは人が通る道に、いつか辿り着くはずの可能性。その前に人がいなくなるのは...俺も困る。俺のできることなら何でもしよう。」

 

「ありがとうございます本当に感謝を優しい竜。貴方の待ち人は必ず来ます。私はその邪魔はしません。私も貴方の幸せを望んでいますので」

 

向日葵の様な暖かい笑顔で彼女は断言した。

彼女もまた信じているのだ。人の可能性は無限大で可能性に届くまでたくさんの犠牲をはらう生き物である。

でも人は折れない。人々の欲望がある限り人は進化の歩みを止めることは無い。人は常に明日に向けて歩くのだから。

 

「...ありがとう」

 

その言葉に竜は目を細め暖かい瞳で彼女を見てそれから瞼を閉じた。また何年も寝続けるのだろう、世界が変わるまで、自分の信じが人がやってくるまで竜は目を閉じて眠った。

 

後何年経ったら人は到達するのか、何百何千いや何億年もかかるかもしれない、それでも竜は信じられた。久しく見た彼女もまた人の可能性に満ち溢れていた。

 

そんな彼女が言ってくれたのだ、待ち人は必ず来てくれると...

 

 

 

・・・・続く




ではまた次回。


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大空INカルデア 後半

「そうだぞ、俺もリングしか原因が思い当たらない。」

 

その場にいる全員の視線を集めたリングをツナは自分の目線に合わせてボンゴレリングを見た。

 

 

「そして、君の光が輝いた時にそれに呼応する様に君の炎の色も一気に綺麗になっていたよ。多分パワーアップはそれの影響だろうね。君の炎の色が澄んでいればいるほど力が増すようだ。う〜んますます興味深いね。」

 

ダ・ヴィンチは見たことの無い物への好奇心が隠しきれず、ツナの首からぶら下がっているボンゴレリングを持ち上げて覗き込むように見た。

 

「でも何で急に光り出すなんて」

 

リングが光り出すなんての怪談話もいいろところだ。普通ならそんな事は怒るわけがない。でもこれは普通のリングではない、血塗られた掟により闇の中にひっそりと継がれてきた伝説の代物である。

それにこのリングには色々な逸話がある。

以前にも似たようなことがあった。

 

「恐らくそれは光ったんじゃないと思うぞ。」

 

「え?」

 

「お前も見ただろ。XANXUSの氷を溶かす時にリングから死ぬ気の炎が灯ったのを」

 

リボーンに言われツナも思い出した。

そうだ、確かにあの時俺が死ぬ気の零地点突破で氷らせたXANXUSを部下のひとりが全てのリングから炎を灯して溶かしていた。

あの炎は何故リングから灯ったかは不明で、ツナは怖がってあれ以来リングを自分から持ち出そうとしなかったが、リボーンや一部のマフィア達は原因を調べていた所だった。

 

「お前は今回自分で炎をともすことでお前はまた一段落上に上がれた。」

 

「君の成長は後々大きな戦力になるかもしれないし、炎を灯すことを最初の段階として自分で灯すことでより炎の質を上げて大きな戦力になって欲しいんだ。」

 

「わかり...ました。やってみます。」

 

「話は決まったようだね。なら時間が無い早速訓練に入ろうか。」

 

「ロマニ、ダ・ウィンチ何処か訓練室みたいなものはねぇか?」

 

「あるよ。僕が案内するよダ・ウィンチはどうする?」

 

「私も同行しようこんなチャンスがないと死ぬ気の炎の事に触れることがないからね。」

 

 リボーンや、案内してくれるロマニはともかくダ・ウィンチもついてくるようだ。

 ダ・ウィンチの私室から出てしばらく歩く。ここカルデアは物凄い大きな施設だ、ランボがいたら秘密基地だーみたいなことを言って騒ぎだすんだろうな。そんな事を思ったら微笑ましくもありそして懐かしく感じてしまう。ついさっきまで俺の隣にいたのに。

 沈んだツナを訝しげに見ているリボーン。何かを言うのかと思ったが何も言わずにただ長い廊下を四人で歩いて行った。

 

「ここだよ、っと何かな」

 

ついた途端にロマニに一報が入った。

 

「ごめん、僕はちょっと用事ができたから僕はここで席を離すよ。」

 

 ロマニは返事も聞かずに走って何処かに行ってしまった。

 ツナが茫然とロマニの背中を見ていたら、ダ・ウィンチがツナの背中をぐいぐいと押して部屋の中に入れた。

 

「さぁさ、早くしないと時間は刻一刻と過ぎていくものなんだから。」

 

「はい、わかりました。」

 

 中に入ると一面ただ白く何も無い部屋に案内された。実際は小体育館ぐらいなのだろうが家具や置物何でもが一切ないために余計広く感じている。

 

「さてと、一応訓練室に連れてきたのはいいが、そこまで暴れる必要はなさそうなんだけどね。」

 

「まぁ、いいだろ。時間によっては戦闘訓練をするかもしれねぇしな。」

 

「さて、早速君の持つリングを見せてくれないか?」

 

「え、はい。」

 

ツナは自分の胸から下がっているボンゴレリングをダ・ヴィンチに渡した。

ダ・ヴィンチは細かい造形やほり

 

「ふむ、何度見ても不思議なものだな。こんな原石が存在していたなんて、天才の私も知りえないことがあるとはね。そういえば気になったんだけど」

 

 

 

「はい?」

 

「これって指輪なんだよね?何で指にはめないのさ。」

 

「え!?」

 

藪から棒に聞かれた。まぁ当たり前のことだが、これはペンダントでもネックレスでもない指輪である!

 

「え...とそれはその...だってその指輪何かと物騒だし、付けてたらマフィアのボスになっちゃうし」

 

ツナは普段ボンゴレリングを装着していない。指輪をはめずにリボーンにバレないようにどこかに隠している。

それがリボーンには一瞬でバレてしまい、逆にツナにバレずに首に付けられている。

 

「でも首にかけて落としでもしたら気づかないよね、戦闘中とか尚更、指にはめて君の武器で隠した方が色々といいんじゃないかな?」

 

「わ、わかりました。」

 

ツナは手に付け直す。

 

「さて修行開始だ。」

 

「っても、俺もリングから炎が出た光景何てリング争奪戦以外見たことねぇからな。」

 

「う〜ん、君が頭の炎を灯す条件ってなんなのさ。」

 

「死ぬ気状態になることか?あれは死ぬ直前に後悔しているからどうかだな。やれば良かったっていう思いが引き金だぞ。」

 

「なら、あの時君はあの戦いの時に何か後悔をしていたかい?」

 

「...後悔、俺がもっと強ければ少なくともあの後ろの人達に心配させる必要はなかったとは思ったかも知れません。」

 

「なら、その強さを求める事が引き金かもね。それでやってみてよ。」

 

「は、はい!」

 

ツナは手に力を込めてみる。

 

「う、う〜ん。」

 

「つかないみたいだね。」

 

「...」

 

ツナの目が曇り始めた。どこにもぶつけられないモヤモヤが心の中に詰まっていき、表情の半分焦りが含まれている。

 

「ツナ、一旦休憩するぞ。お前まだ起きて藤丸やマシュに会ってないんだろ?せっかくだ今の内に会ってこいこれから戦いを一緒にする仲間だ。」

 

リボーンはツナのそんな心情を見逃さない。今のツナにはどこかかけている部分がある。

 

「ちょ、リボーン。」

 

「っと、マシュ達はここを出た所のマスター室で一緒にいると思うよ。」

 

 

 

暫く、ツナに時間を与えるという判断にダ・ヴィンチは納得しきれていない。

確かにこの実験に今の所終わりを見られない。と言うより見えない。見えない答えに対してひとつの答えを創り出すのは天才である自分は乗り越えたもの、乗り越えたからこそ自分は世界が誇る天才と称されたのだ。

でも、沢田綱吉という人は大きくなれば名を残す可能性があるが今はまだ若すぎるもう少し経験を積ませて...というのが現実的だと考える。

 

「ちょ、リボーンいいのかい?確かにできる兆しこそ見えなかったが、それならばそれならばロマニと合流させてレイシフトの適性を検査して作戦に...君はこの作戦が一刻の猶予もないというのはわかっているのかい?」

 

「確かに、それはわかってる。だけどなツナならやってくれる。」

 

リボーンは足を止めて正面からダ・ヴィンチと話し始める。

 

「その根拠は?」

 

「おれは俺はあいつを信じるぞ。」

 

「信頼じゃない具体性を述べないと納得できない。」

 

ただでさえ焦らないといけない状況であるのに、根拠の無いものに委ねる事なんてできない。

 

「お前の分析のおかげでもしかしたらの所までは見えた。だからこそあいつは今見失っているものを再認識してもらわないといけない。あいつは今何で戦うのかを見失っている。」

 

「戦う理由?」

 

「仲間を失った現実と追いつかない現実離れに頭がいっぱいいっぱいになってるんだ。だからこそあいつは戦う理由を見失った。」

 

ツナは戦いが嫌いだ。臆病で弱腰で何より敵が目の前にいても拳を握ることさえできない。泣き虫で力も無くダメな人間で、同級生達からもしたに見られて付いたあだ名が「ダメツナ」、悪い所を挙げればきりがない。でもいいところ上げれば一言でまとめられる、彼のいい所は優しい所、1人のつらさ友達のありがたみを彼は本当の意味で知っている。だからこそ彼は人の為に仲間の為に拳を握る。

人の為に戦うツナに惹かれ彼の魅力に魅せられてついてきてる人もいる。

 

「あいつにはそれをしっかりと確認してもらわねぇとな。これからの戦いた備えて...」

 

 

「えっとここでいいのか?」

 

まだ施設内を理解しきれていないツナは職員に頼んで藤丸立香の部屋に連れてきてもらった。

ツナは少し息を整える。心臓の鼓動が少し早い結構緊張している。まだあまり知らない人とどうすればいいか緊張させる。

 

「えっと、入っていいのかな。」

 

要するに怖気づいている。

だが、それも一瞬の思考停止により消え去る。

何故ならば自分が開けようとしていた扉が違う人に開けられたのだから。

 

「あ!」

 

「え...えっと」

 

「起きていたのか、沢田くんで良かったっけ?」

 

「は、はい。」

 

「改めてよろしくな。」

 

「こちらこそお願いします。えっと立香さんとマシュでしたよね。」

 

「はい、マシュ・キリエライトです。沢田綱吉さん。」

 

「俺の事はツナでお願いします。あまりそういう風に呼ばれないのでこっちでお願い。」

 

「わかりましたツナさん。」

 

「改めてよろしくありがとう。俺達を助けてくれて。お前がいなければ俺もマシュも生きていたかどうか」

 

胸に掌を当てて感謝を乗せた言葉をツナに伝えた。

マシュの一輪の花のような笑顔にツナは思わず照れてしまう。

 

「まずは中に入って話しましょう。」

 

「粗茶ですが、どうぞ。」

 

「ありがとう」

 

マシュから渡された簡易コップに注がれたお茶をツナは飲んだ。

そういえば、飲み物や食べ物を口に入れたのは久しぶりな気がする。喉をうろ押してくれるお茶がとても美味しく感じた。

 

「何か久しぶりにお茶を飲んだ気がするなぁ、何かこう生き返ったって感じられる。」

 

「確かに、さっきまでは悠長に水分補給なんてしてられなかったしな。」

 

「突然の出来事に皆さんが驚き必死になっていましたから...本当にあの惨状から生きて帰ってこられたのですよね。」

 

「...」

 

「あの、マシュ達は聞いたの?その...ロマンさんから」

 

「聞きました。そして決めました。」

 

「私は戦います。」

 

「俺も戦う。俺のできることなら何でもやりたい...。君は?」

 

「...」

 

「どうしたの?」

 

「大丈夫ですか?顔色が優れませんが...」

 

「ごめん、ちょっと」

 

(震えている。)

 

「大丈夫?」

 

「ごめん...なさい。怖いんだ、俺がしないといけないのに、俺しかできないのに、もう俺しかいないのに体の恐怖がとれないんだ。」

 

「沢田さん。」

 

当たり前と言えば当たり前のこと、彼はまだ10とちょっとしか生きていない子供だ。

思春期に入ったばかりの彼はまだ親と一緒にいたい、友達と遊びたい。本来ならこんな場所に、普通ならあんな力を持っているわけもないし、必要も無い。

この反応は普通なのだ。戦いを望まず平穏を求める彼にマシュは何を、なんて声をかけてあげればいいかわからない。

 

「てい!」

 

だが、そんなツナの頭を軽くチョップをする藤丸

 

「いた、」

 

「何1人だけだって思っているんだよ。俺もマシュもいるだろ?なぁ君はなんの為に戦っているんだ?」

 

「俺は、仲間が誰かが傷つくのは嫌なんだ。」

 

こんな時いつも隣にいた人達に勇気づけられてきていた。ずっと大事にしていた友達達がいないのがこんなに不安だと、またあの時に...いや失った悲しみがさらに大きくのしかかってきた。

 

「なら、お願いがあるんだ。俺達を守ってくれ」

 

「え?」

 

「先輩...」

 

「俺は弱い、ついこの前まで普通の学生だったし、こんな世界があるのも、綱吉のような力を持っている人を見るのも初めてだった。だからこそ俺はまだ弱い、力もないマシュ達を守ることも俺にはできない。だから!君の力を俺達に貸してくれないか!!綱吉が俺たちを守り俺達は綱吉を支えるから」

 

希望を差し伸べす。

新たな仲間ができた瞬間だった。

無意識にその手を掴んでいた。そして何か戻ってきた瞬間、今ならできそうな気がする

 

 

 

 

〜sideリボーン〜

 

「あいつは自分のためなら小さじ分の勇気も出せねぇ男だ。」

 

「開口一番に自分の生徒の悪口かい?趣味が悪いよ。」

 

「仕方ねぇだろ本当のことなんだから。」

 

「まぁまぁ、口が辛いのは君もだよ。」

 

「ロマニは同類ができて嬉しいのかい?」

 

「あれ!?流れ弾がこちらにも!」

 

「そんなあいつが今まで戦ってこれたのは、あいつの隣に誰かがいてくれたからだ。最初は1人だったからこそ出来てくれた友達を人一倍大切にして守ろうとして戦ってきていた。あいつには再認識をしっかりやってもらわねぇとな。あいつにはここにも守りたいと思う奴はいるってことを、そして守ってくれる奴らがいるってことを」

 

「何か...いいねそういうのは」

 

 

(俺はこの人たちを守りたい。この人達の期待に、力になりたい)

 

ツナの心の望みを覚悟と捉えたリングは意思を汲み取った。

 

「うわ、何だ!燃えてるぞ。」

 

「灯った。」

 

「綺麗...です。」

 

(そうか、このリングが求めていたのは、戦う意味じゃない、自分が何のために戦うのか、その覚悟を知りたかったんだ。)

 

「ありがとう、二人共...俺は君達を...俺の世界を取り戻すために、そして貴方達を守る為に為にこの戦いをするよ。」

 

 

 

 

 

 



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第一特異点 邪竜百年戦争
大空INオルレアン


のどかな木々風に揺れて右往左往と揺れる草木にツナ達は足を置く。

心地の良い快晴だ、太陽の光を遮る雲は殆どなく太陽の恩恵が直に感じられる。高層ビルや建物そんなものは一切なく、本当に自然のみで形成されていた。

ここは日本ではない、ここは時代も場所もツナが生きていた所より遠い、遠い過去、遠い地2000年代の人は誰も踏みしめたことの無い地面に不思議な気分で立っている。

 

「これが...レイシフト.....本当に過去に来たのか俺は」

 

沢田綱吉と藤丸立香、そして彼のサーヴァントであるマシュ・キリエライトは周りを見渡した。ここにいる3人は景色を見渡した。

ここまで緑の地平線が広がっている景色はツナも藤丸も見慣れないために、彼らは体感した。目で緑を見て風の匂いを感じ肌で照らしつける太陽を感じている。

コンクリ舗装なんてのもされていないので、ツナは靴から感じられる小石の感触をちょっとした好奇心で転がしていた。

藤丸も実感が湧いていないのだろう。ツナと同じでちょっとした好奇心とドラマやアニメだけだと思っていたタイムスリップを体験したという事に未知に対するワクワクとした好奇心とそれと対の不安感でいっぱいなのだ。

 

「はい、レイシフトは成功しました。ここは紛れもなく歴史のターニングポイントとなったフランスです。」

 

そんな中マシュだけは冷静で落ち着いていた。マシュはずっとカルデアにいて元々どんな作戦かも前社長のオルガマリーに聞いておりその為の準備をしていた。

だから彼女がこの3人の中で1番落ち着いている。

 

「心配しなくても、1431年のフランスで間違いないよ。」

 

「うわぁ!?」

 

「驚いたかい?魔術を併用しての空間通信さ。」

 

何も無い空間に突如Dr.ロマンの顔が映っている映像が映った。色は少しあせているが、音は十分に聞こえてくる。

科学でも至っていない技術の領域だ。

画面で可能の通信なんて映画やSF風のCMでしか見た事がなかった。

SF世界のような技術には藤丸も男の子なので驚くと同時にするのと同時に少し目を煌めかせた。

だがツナはそれよりもマシュの盾に何やらゆらゆらしている影が見えており、何これとその影の様子を伺っていた。

 

「フォウ!」

 

「ひぃ!」

 

「「どうした!(綱吉君)」」

 

「な、何ですかあの生き物」

 

 狐のような生き物にも見えるが、毛は雪の様に白くもふもふしている、触り心地は最高だろう。手で簡単に持ち上げられるくらい小さく、人の肩に簡単に乗せられそうなくらい小さかった。

 そんなに怖がるのかは不明だ。この小動物はどちらかというと可愛い部類に入ると思う。

 

「あ、フォウさん私の盾の裏に入ってついてきたのですか?」

 

「フォウ...さん」

 

「あ、君にはまだ紹介していなかったね。この動物はカルデアに住んでるんだけど僕達もなんの生き物かわからないんだ。」

 

「にしても、驚きすぎじゃない?そこまで驚くもんか。」

 

「ツナはチワワも怖いからな。見たことの無い生き物を目にしたらそりゃ驚くさ。」

 

ロマニに変わって、次はリボーンが話した。

ツナの意外な弱点に藤丸もまた微妙な顔になった。

 

「ちょ、リボーン!言うなよそんな事!?」

 

「チワワって...俺でもチワワには怖がらないぞ。」

 

さすがに小学生の怖がらないだろうと藤丸は思った。

だが目の前に丸くなって耳まで塞いでるツナは、可愛らしい小動物に見えてつい頭を撫でてやりたくなる。

だけどぼのぼのとした空気も長くは続かない。

 

「皆さん!来てください!!」

 

突如マシュが大きな声で呼びかけてきたので二人ともすぐにマシュの元に行き、何を見たのか状況を確認した。

そうしたら三人は揃って息を呑んで言葉につまる。

 

「「!?」」

 

「何だこれ...」

 

空にでかく浮かんでいる光の輪、怪しく奇怪な光景はある意味ミステリアスな魅力のある光景と思うものもいるかもしれない。だが彼らには恐怖を与えた。この奇怪な現象は今後の厄災の前触れのようで、見ているだけで背筋がゾクゾクしてきた。

 

「ドクター...14年代にこのような事があったという歴史は...」

 

「いいや、こんな事があったって言うのは聞いたことが無い。」

 

「あれは?」

 

光の輪から視線を落とし、ツナが目を細めて遠くを見ていたら一瞬だけ変なシルエットが目に入り疑問を口にした。

 

「どうしたんだツナ?何か見つけたのか?」

 

「空にトカゲ...?みたいなのが」

 

空にトカゲとは、非現実すぎてツナ自身も信じられなくてあまり自信が無い。そもそも遠すぎて見間違いの可能性が大きい。

 

「空にトカゲですか?」

 

「ん、いや気のせいかも」

 

確かにツナが示した方向に何か飛んでると思える物がマシュにも見える。

しかしとかげか?と聞かれれば首を傾げ出しまう。

そこまではっきりと見えない。

 

 

「皆あれを見てみろ、町が燃えている。」

 

藤丸がマシュやツナとは少し離れて違うところを見ていて、黒い煙がたっていたのを見つけて元を探すべく辿っていたら町が燃やされていた。

ここからじゃ町ひとつが火に飲み込まれててしまってるくらいしかみえないが、もしあそこが人のたくさんいる町ならその被害を思い浮かべるだけで、ツナはゾッとし、マシュはした唇を強く噛み、藤丸は苦虫を噛み潰したような顔をした。

 

「近くにまだ被害のうけてない町があります。そこで情報を集めましょう。」

 

この冷静さはツナも藤丸もまだまだ未熟で、マシュは冷静な判断はとても助かった。

 

「俺もそれに賛成だぞ。ツナ、藤丸ここは俺達の知っているフランスじゃない、何がどうなっているが聞くのが最前だ。」

 

1431年のフランス、ここが最初の特異点である。フランスは後の歴史に、いや世界に大きく影響を与えている。そんなフランスが現代に至るまでの大きな変化はこの時代に起きた戦争「百年戦争」にある。

百年戦争、イギリスとフランスんが起こした大きな戦争。ここでもしイギリス側に負けてフランスがイギリスの植民地になっていたら今のフランスは存在しない。世界経済の中心でで色んな文化を生み出した。そんなフランスだからこそ特異点となったのだろう。

 

ツナたちはヴォークルールという町で聞き込みを行っている。

だが、ツナも藤丸もこの時代の事は何も知らない。その為に、この時代の歴史に一番詳しいマシュを中心に情報の整理を行った。

そうしたら、ある怪現象が起きていたことがわかった。

 

「ジャンヌ・ダルクが蘇った。」

 

「リボーン、ジャンヌ・ダルクって?」

 

「フランスを救った聖女と呼ばれているぞ。お前はまだ授業でやってないから予習には丁度いいな。ジャンヌ・ダルクってのは嘘か本当かは知らないが神のお告げを聞いた女性で神のお告げ通りにフランスを救ったという。たがジャンヌは救った国から見捨てられ火刑に処されて死んだはずだ。お前達が今いる少し前にな。」

 

世界でも1番有名な聖女として名を残しているジャンヌ・ダルク。ただツナ達がいる今の時代は既にジャンヌは火刑に処された後のフランスでジャンヌは既に死んでいるとリボーンは教えてくれた。

 

「普通、死人は生き返らない。何かが起きてジャンヌ・ダルクが生き残った多分そこが歴史の歪みかも知れないな」

 

「しかも、どうやらそのジャンヌさんが竜を操っている。」

 

「竜?そいつは悪い情報だ。」

 

「あれ、ダ・ウィンチちゃん?そういやドクターは?」

 

「ロマニなら少し席をはずしている。大丈夫さ私とリボーンがいるし。カルデア職員一同トップの分までやってやるぞの意気込みでいるから大丈夫さ」

 

「そうだぞ、それよりも竜か...そいつは確かな情報か?」

 

「なぁ、リボーン竜ってゲームとかによくでるあの?」

 

「だろうな、でもそんなことがあるのか?竜は空想上の産物だろ」

 

「そうというなら、神話の英雄や伝説により生まれた英雄たちの存在も否定してると同じさ。でもその時代のフランスにはいないはず、なら何でこの時代にいるか、それはジャンヌ本人が竜を召喚したんだろうね。」

 

「召喚って、そんなことは可能なのですか?」

 

「想像の域はでないが、英霊召喚ににた術式だと思う。」

 

「なら、聖杯は」

 

 そんなことが普通の人にできるはずがない。

 例え聖人と呼ばれる人でも、まず不可能だ。だが聖杯があれば可能だ。元々馬鹿げた英霊召喚を可能とさせる聖杯の式を少しいじれば可能。その可能性に気が付いたマシュはいち早く声を上げた。

 

「本人が持っている可能性が大きいね。」

 

様々な考えが彼らの頭に浮かんでくるが、最悪こそあるがまだましというものは仮定は浮かんでこない。当然だ、最悪な情報ばかり集まりそれを元に作られた仮定ばかりだ。

ただよかった情報が一つだけあった。先程見た燃えている町「ドンレミ村」の住人は避難をおえて助かったらしい。

この情報に三人とも胸のつっかえがとれ撫で下ろす。

 

「よかった、さっきの村の人達は避難していたんだ」

 

「そうだね、でも油断はできない。ここも安全って訳じゃないんだから」

 

「やはり、解決するにはこの特異点を作り出している原因を見つけ出さないといけません」

 

「よし、一旦情報の整理をしよう。ここで聞けた情報は2つ」

 

「ジャンヌ・ダルクと普通はいないはずの竜」

 

「竜を召喚している原因は聖杯かも...ですよね」

 

「そう言えばツナがここに来る前に見た空のトカゲってもしかして」

 

「そういえば言ってましたね。どうなんですか?」

 

ツナは頭の中の記憶で先程の光景を思い出してみる。

正直に言えば、あの時見えたのはトカゲみたいに見えたけど殆ど黒い点みたいに見えていたような。

 

「え?う〜ん遠かったからどうなんだろ、それよりその...聖杯って言うのはジャンヌ・ダルクが持ってるのかな?」

 

「それが一番可能性が高いかと」

 

ツナとマシュそして藤丸達は情報を整理して情報から推測を立てる。

 

「そこまで決めつけるのは早いぞ」

 

「え、でもこれが一番自然な考えだと思うだけど」

 

「まだ、情報が少ない。俺はまだもう少しあると思うぞ」

 

「もう少しって」

 

「それはまだわかんねぇが、確信して視野を狭めるより何かあるかもって視野を広めておく方がいい」

 

「わかりまし」

 

「ドラゴンだぁぁぁぁぁ!!」

 

荒々しく上がった恐怖の声は周りにいた住人達にも恐怖を伝染させていく。それは空中を覆ういくつもの翼が目に入ったからだ。個体差はあれど人よりは大きく石にも食い込む鋭い爪や牙、竜たちの猛々しい方向が轟と人々は膝を地面につけて、耳を塞ぎ体を震わす。

その声に三人とも膝が曲がり少し少し足が下がっていく。

だけど、三人はわかる。今竜と戦えるのは自分達だけだ。それがわかった藤丸はマシュに指示を送りマシュはそれをくみ取って走り出した。

だが、それは

 

「よし、ここでの情報収集は切り上げ、みんな今すぐそこから離れることにしよう」

 

やるべき事ではない。おうべきリスクではない。

 

「え」

 

「それは、ここの人たちを見殺しにするということですか!」

 

「そうだ、今この時代において死んではいけないのは君たち三人だけ、他の人たちは人理修復と同時に生き返ることができる。ここで死んでしまっては人理修復はおろか、綱吉君のお友達も救うことができないよ。今一度考えるんだ君たちの判断には人類の全てがかかっている。」

 

その言葉の重さに勇みがかった二人の足はとまる。

ダ・ヴィンチの言っていることは正しい。そしてツナ達は改めて確認した。自分達が背負っている大きすぎる物を、自分達手には人類のこれからが乗っかっている。取り返しの出来ないことをしてしまえばそれは全て乗っかっているものに帰ってくるのだ。

これはゲームではない。コンテニューなんて無い、やり直す事なんてできるはずもない。

 

1を捨てて多くを救う。

 

ツナも拳が震えた。その手に持つXグローブと死ぬ気丸をツナはどうすればいいか迷う。

正しい答えは分かっている。それが正解なのは頭では理解出来てるんだ。

個人の感情にまかせてここで命をかけて戦うか、生き返ると思い仕方がないと高を括りここから離脱するか。

 

「きゃぁぁぁぁぁ」

 

 悲鳴がする方向を見たら、そこには小さい子抱えた女性が竜に牙を向けられていた。

 あの二人は親子なのだろう。あの二人と自分の守護者たちどちらの方が大事かなんてそんなものは比べるまでもない。

 

「好きにしやがれ、ツナお前の力は後悔をしないための力だ。お前が本当にしたい事叶える力なんだ」

 

そんなの比べること自体間違いだ。

 

彼女たちが死を覚悟したその時、彼は既に竜の口を押さえていた。

 

「逃げろ、そして生きのびるんだ」

 

「ああ、ありがとうございます、ありがとうございます」

 

彼女は礼を言いながら子供抱えてすぐにその場を離れていった。

それを横目で確認したツナは竜を思いっきり地面に叩きつけた。それからすぐにツナは飛び立って竜の群れのド真ん中に身を置いた。

死ぬ気状態に入ったツナは、先程までのツナから一転して凛々しくそこにいる。

 

「正気かい!?君は、君が死んだら」

 

「わかっている。でも、そんなの俺には比べられない。だけど俺は皆を助けるために貴方たちに協力するって言った。だから俺は皆を助けてまた再会するって決めたのに誰かを見捨てて、仕方ないって切捨ててしまったら皆に合わせる顔がない!!」

 

次々と襲ってくる竜たちをかわしていき、隙ができた個体を見つけたツナは、空いた背中に向かって勢いをつけた蹴りを入れた。

だが、思った程のダメージは入っていないだろう。

 

(思ったよりも硬い。)

 

「沢田さん!」

 

「マシュ。」

 

「今度は私も戦えます!」

 

「マシュは地上に降りてきた敵を頼む!思ってる以上に皮膚は硬いから半端な力で攻撃するとこっちがダメージを受けてしまう」

 

ツナの言葉にマシュは頷き地上に降りてきて人を襲おうとするワイバーンを片っ端から盾で殴り飛ばす。

 

「綱吉の指示通りに、俺は住人の避難を手伝う」

 

「助かる。...藤丸済まない、君だけは遠くに避難させてから戦えば...」

 

「...いや、良かったよ。むしろ見捨てた瞬間思いっきり顔を叩いてやろうと思っていた所だ」

 

「!?、沢田さん!!」

 

「う!?」

 

竜の放つ火球が自分に向かっているのに気が付かずに慌ててXグローブで受け止めた。

 

「これぐらい...うぉぉ」

 

それをツナは利用した。あの硬い皮膚は自分ではあまりダメージを与えることが出来ない。ならば、この攻撃をあいつらにぶつければいい。これならばそれなりのダメージになってくれるだろう。

ツナはできだけ勢いを殺して、人の密集の少ない所の竜の群れの中心にぶつけた。

 

その様子を画面で見ていたカルデア、そして現在指揮をとっているダ・ヴィンチちゃんはため息を漏らした。

 

「全く、人がいいにも程がある。君もだよリボーン君。」

 

「別にいいじゃねぇか、あいつらにはできるだけ戦闘経験を積ませたいところだし、じっとしてるよりは戦況が動くってもんだ」

 

「まぁ、確かに。一理はあるけど...仕方ないな、皆周囲を警戒、何かあったら...」

 

「もう、既にやっています。」

 

「お、全くみんな人が良すぎるよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「数が減らない。」

 

倒しても倒しても次々と湧いてくるワイバーン、まともに相手をしていたらこちらのスタミナが先に尽きてしまう。

「これは罰だぁ!俺達が見捨てたせいで、彼女は竜の魔女となって俺達を!この国を根絶やしにするつもりだ。」

 

叫んでいるのは兵士のようだ。

あまりの状況に乱心をしているようにしか見えない。

狂ったような目つきでで高々に叫んでいる。

 

「何ですかあれは?」

 

「わからないフランス軍の兵士にみえるけど」

 

藤丸の思った通り彼はフランス軍の兵士だ。

武器を持たず、避難誘導にも手を貸さずに辺りを混乱させるような行動をとってる。

だがこういう輩はこのフランスには珍しくない。

ジャンヌ・ダルクを審判したピエール・コーション司祭が死んでからワイバーン達の蹂躙は勢いづき、たくさんの死亡者が出た。

だからそれを少しでも抑えようとした兵士達はワイバーン達の力を知り、恐怖に飲み込まれてしまった。

そういう輩が戦場から逃げて色んな町で騒ぎ出してるのだ。

そんな彼に近づく女性がいた。

とても悲しそうに今にでも泣きそうな瞳で兵士を睨んでいた。

 

「そこの兵士さん。」

 

それからすぐにその人は、兵士の顔を思いっきり引っぱたく。

乾いた音ともにその瞬間空気が止まった。戦っているツナでさえ一瞬そちらに気を取られてしまったぐらいだ。

 

「ん?彼女は」

 

その状況を見ていたカルデアにいるリボーンとダ・ヴィンチ達は彼女が誰かというのに一人該当する人物が頭に浮かぶ。

 

「あの子は決してこんなことをする人間ではないわ!!」

 

その人はジャンヌ・ダルクの為に怒ったのだろう。なぜ怒ったのかはわからないけど、まるでジャンヌ・ダルク知っているような言い分で不思議だった。

だが、兵士にとってはそれが何であれ彼女が誰かなんてどうでもいいこと、叩かれたことに腹を立てて頭に血が上っていた。

その為に、周りの状況がわからなくなったのだろう。

 

「二人とも上だァァァァァァァ!!」

 

だからこそ戦う片手間でツナが叫んで二人の危機を知らせた。ワイバーンがそちらに向かっている。今すぐ逃げろと。

だが、間に合わなかった。兵士は竜に食い殺されてしまった。

その為に近くにいた女性も飛んできた血飛沫に心が乱れてしまった。動かなければ殺されてしまうのに、腰から下に力が入らずに動けなくなってしまう。

 

「くそぉ!!」

 

ツナはフルスピードで降下するが、正直間に合わない。それと同時に、藤丸もまたその人を助けようと走り出した。

 

(間に合わな...!?)

 

ツナも藤丸も間に合わない...助けられないと思った時に第三者が介入してきた。

しかも、その人はツナですら手こずっていた硬さに対して簡単に皮膚を貫き体が飛び散った。

ツナは焦って炎の向きを変えてスピードを落として地に足をつけた。

 

「お前は...」

 

改めてその人を見た。

上からマントをかぶっていてよく分からないが身長や体つきからツナはこの人が女性であること思った。

彼女はそんな視線をいにも返さずに彼女から声をかけてきた。

 

「こちらは大丈夫です。貴方は上の敵を下にたたき落としてください。私がやります。」

 

「...。」

 

 

それからは簡単に戦闘は終わった。

したに落とせば下のマントの人が一撃で屠った。

マシュも手伝ってくれたために被害は軽減され住民達はラ・シェリテに避難してもらった。

戦いが終わって自分たちは、マントの人に連れられてだいぶ人里から離れた所に連れてこられた。

 

「さて、見ず知らずの私に着いてきてもらってありがとうございます。ここまで来れば大丈夫でしょう。」

 

周りを見渡してそう言った、もしかしたら人気の無さを確認したのかもしれない。

それから隠していた顔を見せる。

眩しい輝きの金色の髪と、凛々しい顔つきに鋼の防具をつけている。女騎士と呼べる人だ、ツナもゲームでしか見たことがなかったが生では初めて見た。

 

「サーヴァント裁定者、真名はジャンヌ・ダルクと言います」

 

ツナ達3人はは呆気にとられた。

ジャンヌって言ったら、今フランスを襲っている原因の竜を操っている竜の魔女...

堂々と自分の招待を明かした彼女に対して、咄嗟に全員臨時戦闘態勢をとる。

そんな彼らに対して、ジャンヌ・ダルクは宥めながら落ち着かせる。

 

「慌てないでください。私はジャンヌ・ダルクですが、この国を襲っているジャンヌ・ダルクとは別人です。」

 

「別人?」

 

「どういう意味ですか?」

 

この国にはジャンヌ・ダルクというサーヴァントは二体召喚されているらしい。

一体は国を襲い、もう一体は現在目の前にいる。

何でも目の前にいるジャンヌ・ダルクはサーヴァントとしての力を失っているらしい。カルデアで観測しているが確かにジャンヌ・ダルクにしては弱々しすぎる数値だった。 なんでこんなふうになってるのか、ロマニ達の推測では、現在フランスを襲っている為に聖女としての知名度が下がっているのが原因だとか、藤丸はともかくツナの方はこの話の三分の一も理解できなかった。

 

「私の目的は、この国をもう一度解放して救う事です。」

 

裏切られてなお彼女はこの国を救うと言った。その瞳には一切の淀みもなく嘘のない真意が伝わってきた。

だから、三人とも、ジャンヌに協力をすると言う形に収まった。

 

そして、自分達の事情を理解してもらうために自分たちの目的を話した。

自分達はこのフランスを救い人理を救おうとしてる者だと、ジャンヌ・ダルクとこちらの目的は一致している手を組むのにそう時間はかからなかった。

それから、一旦ここでキャンプを行うことにきめて夜を超すことにきめた。

理由は、サーヴァントのマシュやジャンヌはともかく普通の人であるツナや藤丸は、睡眠や休息が必要なのでここでとった。

テントの中に眠る子供達をジャンヌは思った。

人理焼却、人類の未来を取り戻すために戦う彼ら。自分の悩みがちっぽけに感じてしまうぐらい大きなものを背負っている。

自分にはなにかしてあげられないか、彼らの重荷をどうにかしてあげたいと思う。

だけど、手に込もる自分の今の力と霞んでいるサーヴァントとしての記憶、もう少し裁定者としての力があったなら...

そんなことを考えていたらふとテントの入口がふわりと開く。

 

「あれ、眠らないのですか?」

 

「少し寝苦しくて。あの少しお話いいですかジャンヌさん。」

 

テントから顔を出したのはマシュだった。

マシュは不安そうに瞳を揺らぎながらお願いした。

そんなマシュをジャンヌは暖かい笑みで迎える。

 

「いいですよ、マシュ」

 

 テントから出て、マシュはジャンヌと一緒に焚火を囲む。

 それから少し間を置くマシュは確かに話をしたいのだがどうやって話を始めたらいいか、もじもじとしながら考える。

だがいつまで経っても話さないというのはジャンヌに失礼だろうと思い、一旦深呼吸をして緊張を解し話し始める。

 

「私はついこの前サーヴァントになったばかりです。だから自信がないのです。」

 

「自信…ですか?」

 

 マシュはツナたちと出会ったあの冬木の事件でサーヴァントになった。

 彼女はもとから、英霊の座に登録されているサーヴァントじゃない。もとはカルデアにいた普通の人間なのだ。なら何故彼女が今はサーヴァントなのかは、冬木で死にかけていた所にカルデアにいたという英霊と融合することにより生き延びてデミ・サーヴァントととなった。

 でも、サーヴァントと言っても自分は、自分の事がわからない。どんなサーヴァントが自分を助けてくれたのかもマシュは知らない。だからこそサーヴァントの力を引き出すことができない中でも深刻なのは

 

「私は宝具の真名を解放することができないのです。」

 

宝具とは、そのサーヴァントの持つ伝承や偉業が形となり技に昇華したもの。

サーヴァントの切り札といえるものである。

マシュは、英霊に救われてサーヴァントになったが、それが誰なのかどこの英霊で、どんな時代を生きていたのかわからない。名も知らない英霊なのだ。

 それは、本当にサーヴァントにとっては致命的だ。

 

 ジャンヌもそのことについての悩みはわかる。力を引き出すことができないことが自信の喪失となっている。

 

「すみません、私がちゃんと召喚されたルーラーであるのなら何かを言ってあげられたのですが、私にはどうすることも」

 

「いえ気にしないでください。これはやはり私の力不足で起きた事です。私でしか解決できないものですよね。」

 

「マシュ、これだけは覚えておいてください。宝具とはサーヴァントにとっては本能といっても過言ではないもの、切っても切れないものなのです。例え真名が伝わっていなくても力が貴女に継承されたのならあなたの中に必ずあります。この問題は貴女の心次第の問題のはずです。」

 

「ジャンヌさん、ありがとうございます。」

 

「貴女の心意が問われるときはいずれ来ます。その時になればその盾は必ず答えてくれます。さぁ貴女も寝なさい。貴女はまだ人間の部分が残っているのら休息は必要でしょう。」

 

 マシュは少し晴れやかな顔になって頷いた。そしてテントの中に入り眠りについた。

その顔を見て釣られてジャンヌも微笑む。

私の言葉は少しは助けになったでしょうか、そうであれば嬉しいと思う。だがそれと半面して不安もよぎる。私には自信が無い、先程の言葉も本当に私の言葉かもわからない。

 

 

 

 

そして夜が明ける。

朝日が昇り人々は一日の始まりを迎える。

だがそれは希望ではない。

日が隠れてしまいそうなぐらい大きな声で黒い翼がはためいている。

彼女は告げる、今日も始まる絶望を知らせる鐘の音のように。

 

「えぇ、とてもすがすがしい朝です。こういう朝にこそ絶望ははえる。」

 

「「!?」」

 

 何者かの声がジャンヌの心の中に入ってくるような感覚がした。

 それと同時に、ツナにも何かを感じた。背中がぞっとする変なものが体を走った。

 

「皆起きてくれ!!巨大な魔力反応がする。」

 

今日な回線とロマニの大きな声にマシュと藤丸も飛び起きた。

そして即座に魔力元に向かう。

藤丸はサーヴァントの速度に追いつくことができないので抱えてもらい、ツナは死ぬ気状態でトップスピードを出した。

 

「さぁ、我が使徒よ目覚めなさい。死の御旗はここに、我が旗に死を私に人々の恐怖を見せてください。震えあがる魂を主に与えましょう」

 

 ジャンヌ達は森を抜け、平地に出た。そしてやっと見えた。魔力の元が何なのか昨日戦ったワイバーンとそしてワイバーンとは比べ物にならないぐらい大きな竜がいた。

この竜は邪竜ファブニール、かつて伝説で打たれた竜である。

 

「口内部に巨大な魔力反応」

 

「やめて、」

 

何をするか嫌でもわかる。

絶望が私の大事な人の元へ行こうとしている。

 

「ダメですジャンヌさん!」

 

飛び出そうとするジャンヌをマシュが慌てて止めた。だが、ジャンヌだけではない飛び出したのはもう一人いた。

 

「沢田さん!!」

 

「綱吉君やめるんだ!」

 

止めなければ、是が非でも止めなければ!

飛ぶことが可能なツナは竜の元にまで飛んでいく。

このままやらせてはならない。

超直感が告げた。

どうしようもない現実はすぐそこまで来ていると。

 

「やめろぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

悲痛の叫びは虚無の彼方へ、懸命な思いは報われることはなく、彼は間に合うことができなかった。

ファブニールはまるで痰を吐く様にそれは町に放った。

それは町に飛来してそしてまるで原爆の様にそのエネルギーがあたりを飲み込んだ。

町は消し飛び、そこにいた人は例外なく死に絶えただろう。

 

「何よ、この羽虫は」

 

その光景にツナの顔は青白くなり何もできなかった。

そんなツナに声をかけるものがいた。

竜の上から見下ろして本当に外注を見ているようなその瞳にツナはだんだんと怒りの沸点が上がってくる。

 

「お前か、お前が命令をしたのか!!」

 

「そうよ、私が竜の魔女ジャンヌ・ダルクです。」

 

命をゴミの様にあつかい、あそぶ様に殺戮を行う。

 

「俺は」

 

許しては行けない。許せるはずがない。

歯をかみ締め怒気に満ちた瞳でツナは睨む。

 

「お前は絶対に許さない!!」

 

 

 

 

 

・・・・邪竜百年戦争ここに開戦

 




とりあえず、書けたので載せときます。
長い間放置していた作品でしたが、暖かい感想と的確なアドバイスをありがとうございます。


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大空IN邪竜百年戦争 開戦

渡り烏のように群がるワイバーンの中に異質な存在感を放つ黒い大きな竜、ビルのように体は大きく手を振るだけでブルドーザー並の破壊力を持ってそうな鉤爪。その竜の頭部にいる竜の魔女に向かってツナは上から拳を振り下ろした。

 

「この!」

 

「何その惰弱な炎、火遊びのつもり?」

 

彼女は手をツナに向けるためにすっとあげる。

 

「羽虫が気安く私に触れんじゃないわよ!」

 

そう言葉を放つと、言葉と呼応して急にツナの体が発火した。

どこかで似た感じの炎を受けたことがある。殺意と憎しみの篭ったおぞましい炎、以前受けたことのあるXANXUSの炎に似た感じがする。

彼以外にもこんな炎を使う人がいるとは...

 

「焼け!ファブニール」

 

邪竜は口を開く、鋭い牙をギラつかせて口内に溜め込んだ灼熱の炎をツナに向けて解き放った。

ツナはそれを周り囲むように飛び竜の魔女に距離を詰めた。

そしてまた、近距離戦に持ち込むのだが

 

「く!」

 

押し切れない。ツナの方がパワーで負けているのだ。竜の魔女は軽くツナのパンチを受けとめこう言う。

 

「ほら、コッチの方が得意なのでしょう?」

 

完全にツナを下に見ている。まるで子犬との戯れを楽しむようにツナの誘いに乗った。

 

「なめるな!」

 

ツナは炎の噴射の勢いにのせて右拳の大振りを振るう。

 

「は!」

 

だが竜の魔女は難なく剣を抜き受け止める。

次は蹴り込むがそれもまた軽くあしらわれる。

 

「吹っ飛べ!」

 

(っ!?炎が急に)

 

何もしていない、少なくともツナにはそう見えた。ただ手をかざしただけで炎がが出てくる。

 

(何かの能力か?)

 

更に竜の魔女はワイバーンを意のままに操っている。

1匹が竜の魔女の元にまで来て、竜の魔女は黒い竜からそのワイバーンに乗り換えてツナに向かってクイクイと手の平で余裕な態度で挑発する。

 

「来なさいよ」

 

竜の魔女の余裕にツナ容易く煽られる。

戦闘時のツナは冷静で戦闘時ではないニュートラルの時ほど感情は激しくはない。

だから激情なども見せず、怒るときは常に静かで凍える冷気のように怒気は恐怖と共に敵に浸透し相手を竦ませるそれがツナの怒りだ。

だが今のツナは怒りを抑えられていない。目の前で起きた殺戮への恐怖笑うように人を殺す魔女、守れなかった町の人への罪の意識、この様々な感情が沸き上がり続け今のツナは自分の感情をコントロールできていないのだ。

怒り悲しみ自責の念、そしてその全てを抑え込もうとする理性それらがツナの調子を崩している。

乱雑な拳、リズムが崩れた単調な攻撃は相手に読まれやすく竜の魔女にとってツナの攻撃はあしらうのは簡単だ。

 

「おそい、弱い、はんっ!どうしようもない餓鬼ね!」

 

「何だと!?」

 

「ちょこまかと鬱陶しいたらあらしない」

 

竜の魔女は剣を振り下ろした。ツナはそれを両方のグローブで受け止めるが受け止めた手がビリビリと痺れる。

なんと重い攻撃だ。

これが剣を振り下ろしただけの女性の一撃なのか、やはりサーヴァントは普通の人ではない。この一撃だけで自分の予想を大きく上回る規格外というのがわかった。しかもこの攻撃は様子見の一発この人の攻撃はまだ終わりではない。竜の魔女のこの一撃から始まる激しい剣劇、まるで荒々しい暴風の様に、以前自分の仲間が戦ったスペルピ.スクアーロと近い、違う部分は彼にはちゃんとした太刀筋があり自分流に昇華させた剣技があったが、この竜の魔女の剣は叩きつけている。まるで鉄のこん棒と勘違いしているのかそう思えてくるような、だからツナは彼女の剣劇を捌ききれないわけではない。

 

「なめるな!」

 

ツナは捉えた攻撃弾き飛ばし今度はこちらの攻撃を入れる。

剣を弾き飛ばしノーガードとなった彼女の顎もとに蹴りを入れるが、彼女は読んでいたように紙一重で躱す。

 

「なめる?違うわこれは余裕よ!」

 

間髪入れず、彼女は旗でツナを殴り飛ばした。

更に

 

「汝の道は既に途絶えた」

 

突如空中に発生した数本の剣、剣は意思を持っているようにツナの頭上に舞い落ちる。

 

「ふっ!」

 

ツナは自分の拳の灯る炎くを大きく灯して自分の身を守る。

この炎のシールドはミサイルなんかは防ぐことができるだが、この剣は炎のシールド容易に貫く。

 

「ぐっ!」

 

横っ腹を貫けれ、肩に黒い剣が突き刺さる。

腕を上げようとすると鈍い激痛が走る。腕が熱い腹からもどくどくと血が流れる。

 

「う、ぁぁぁはぁはぁ」

 

「ふ」

 

まぁ子供にしてはよくやったんじゃない。

竜の魔女は嘲笑する様に思った。

ニヤリと浮かべる嗤みには一部の賞賛もない。あるとしたら、何も出来ず朽ちていく人間というのは見てるだけで心地がいいそんなことぐらいしか思ってなかった。

彼女は知らないのだ。今まで見てきた人間は死の間際には絶望し自分の無力さにうちひがれて泣きわめくそんな人間しか見てこなかった。

彼女は諦めない人間を彼女は知らない。

 

「!?」

 

ツナのスピード全開の勢いを乗せた頭突きを竜の魔女は正面から食らう。彼女にとってこれは初めてまともに受けた攻撃だ。

ツナはここから流れるように次の攻撃に繋げる。まずは右手のパンチそれも決まると次は左足で蹴りを食らわせる。それが顎にヒットするのを見たらツナは縦に一回転したかかと落としを食らわせる。

ツナの怒涛の連続攻撃、この連撃がまともにはいれば流石の竜の魔女でもダメージになるだろう。少なくとも今までの戦っていた相手はそうだった。

 

「だから」

 

だがどんなことにも例外がある。

そもそもを言うと、サーヴァントと常人を一緒と思うのが間違いである。

 

「ウザイって言ってんでしょ!」

 

綺麗に入ったと思ったかかと落としは受け止められてツナの足はがっしりと捕まっている。抜け出そうにも抵抗すればするほど掴む力が強まり、ツナの足を締め付ける。

 

「くらえ!」

 

「熱い!?」

 

竜の魔女はツナの足を掴んでいる所を発火させた。炎はみるみるうちにツナの足を燃やしていく。しかもそれだけじゃない、竜の魔女はツナをバトンのように回したのだ。これにより炎の浸食は拡大しまるで全身が燃えているようにも見える。

 

「ほら、ほらほらほらほら!燃えカスとなって消え失せなさい!」

 

「う、あぁぁぁぁぁ」

 

そしてそのまま投げ飛ばす。

 

「さぁワイバーンよ食事の時間です。行きなさい!」

 

竜の魔女は自分のっているワイバーンにツナの元まで急速で向かうように指示をする。

ツナの方はと言うと、自分の炎で勢いを殺して何とか止まることができた。だが止まった瞬間目の前にはワイバーンが突進してきていた。

ツナは慌ててワイバーンを受け止め何とか寸での所で止める事ができた。

だが一安心する間はなく、不穏な違和感を感じた。

このワイバーンって確か竜の魔女が乗っていたワイバーンではなかったのか、彼女の姿がどこにもない。

周りを見ても彼女の姿はなく完全に見失ってしまった。

一体彼女はどこに

 

「こっちよ!」

 

頭部に鈍い痛みが走る。額からたらりと血が流れる。

殴られた、これは拳ではない剣でもない。彼女の持っていた旗か、旗を鈍器として扱い棍棒のように振りおろした。

常人なら頭蓋骨が割れて死んでいる。

頑丈なツナでも鈍く響いており、意識が飛びかける。そんな痛みに耐えツナは意識を引っ張り戻し反撃に転じる。

ワイバーンの頭を掴んでいる自分の腕に力を込めて、先程自分が竜の魔女にやられたようにこのワイバーンを振り回そうとしているのだ。だが抵抗力が強く中々投げ飛ばせない。

ワイバーンは自分の口内に魔力を貯める。

竜の魔女の指示だろう。小賢しい真似をされる前に竜の炎で焼いてしまおうと、そろそろ戯れにも飽きてきたころだし丁度いいだろう。

 

(そろそろ殺してしまいましょう)

 

ゾクりとツナには嫌な感じが寒気となって背筋を走り抜けた。

このままではやばいと感じたツナはワイバーンの顎を蹴り上げ利き手の炎圧を最大まで上げたアッパーを腹に食らわせる。これでワイバーンはしばらく動けない。口内に貯めていた炎を上手く吐けずに体の中で暴発させた。ツナはこの隙に一瞬にして竜の魔女の背後に回り手刀で首を狙う。

 

(完全に死角)

 

ツナがこれまで戦ってきた者達は確かに人を超えた超人と言っても不足のない者達だろう。だがサーヴァントというのは、人類史に刻まれた奇跡を形どった者たちだ。常識を超え人類史に影響を与え歴史に名を残した英雄がサーヴァントなのだ。

そのことをまだ理解しきれていない、今目の前にいる彼女もまたその一人なのだ。

ツナの攻撃を躱して、竜の魔女は空高く飛び上がる。

 

「忌まわしき我が身を燃やした炎よ、剣に纏え我らが主の敵を穿て」

 

この剣は彼女の憎しみの誓い、戦場で抜かず敵を殺さなかった彼女は全てに裏切られた。守った民は魔女と蔑み、導いた王は逆賊と切り捨て、更には誓った神にも彼女は見捨てられる。こんな事があっていいのか、否あっていいはずない。私は求められ答えそして救ったのだから、その私を使い捨てた者達には、絶望を明日を脅えながら生きる枷を与えるのだ。

その為に私は剣を抜く、神のために救うために奔放した私はもう居ない。今あるのは全てを破壊する魔女としての私なのだから。

 

「全ての邪悪をここに」

 

真紅を纏った剣が召喚される。

その剣は意思があるようにツナに向かう。

剣はツナの急所だけを外し突き刺される。一撃で屠ってしまってはつまらないと言わんばかり苦痛を与えゆっくりツナの肉にくい込む。

そして傷口は発火する。魔女を焼いた炎がツナの身を蝕んでいく。

 

「がぁぁぁぁ」

 

どうにかしなければ、このままでは焼け死んでしまう。

動いてくれ、死ぬ気の炎でこの炎と相殺させて脱出する。そうしないとこのままでは本当に...

 

生き延びてどうする?

 

(!)

 

運良くこの場を切り抜けられたとして、何ができると言うんだ?

わかっただろう、竜の魔女と自分とでは圧倒的な差がある。

勝てると思っているのか?今まで勝てた様にこの場で奇跡的な逆転ができるというのか?

戦えば戦うほど痛感する。

自分は遊ばれているのだと、自分でわかっているんだろうこいつには勝てない

 

「絶望しているの?いい表情ね」

 

「なんだと」

 

「見せつけられた力の差、どうしようもない現実。逃げたいでしょ?仕方ないわよ子供だもん。いいわその行い私が許しましょう、死に脅え逃げ惑うがいいわ、ただしこのワイバーンの大群から生き延びられればね」

「!?」

 

いつの間にか自分の頭上をワイバーンの群れが跋扈している。

ワイバーンの影で陽光は遮られ光は消え去った。

そんななか竜の魔女は微笑み期待する。自分に愚かにも挑んだ無力な勇者が身の程を知り心が折れ無様に逃げ去る背中、その時は味わえよう甘美な愉悦と一時の快楽を。

 

「ふっ」

 

「ん?」

 

「来ないのか?」

 

「貴方、まさか」

 

「こないならこっちから行かせてもらうぞ」

 

「そう、愚かな選択をしましたね」

 

ツナは炎を込めワイバーンの群れに飛び出そうとする。

竜の魔女は呆れたように呟いた。

どこまでいってもいい子なのね呆れるほどの偽善には虫唾が走る。

相手にするだけ無駄だったか。

竜の魔女にとっては癪だが、最後だ望み通りにしてあげることに決めた。

 

「終わりの時間よ我がしもべ共、肉を引き裂き血を飲み干せ。骨も残さず食らいつくしなさい。愚かな愚行が身を亡ぼす。この国に教えて差し上げましょう。救いはないと、救いの可能性奇跡は貴方たちが手放したのだから」

 

竜の魔女は高らかに宣言するこれからの虐殺を、これから自分がこの国に何をするのか、あぁ顔がゆがむ。微笑む口を押さえられない。

 

(ごめん、俺には)

 

そんな彼女にツナはもう突っかからない。

止めることはできなかった。

勝てなかった、彼女は強すぎる。そして自分は弱すぎる。

結局自分はダメツナなんだ。期待されても応えられず、呆気なく

 

「縮こまってんじゃねぇ!」

 

突如自分の耳元に怒鳴り声が聞こえてきた。

よく聞き覚えのある声だ。自分がくじけそうなとき心が折れてしまいそうなとき、弱気になった心に活を入れてくれた赤ん坊の声だ。

 

「情けねぇ顔してんじゃねぇ」

 

「リボーン俺は」

「泣き言言ってる場合か、お前がやらねぇで誰が皆を助けんだ」

 

「わかっている。わかっているんだ、けど俺はあいつの勝てない」

 

「あぁ、見てた。確かにあいつは強い、やっぱサーヴァントは規格外だな。けどな諦めて死のうとするなんて俺の生徒ならそんなつまんない選択すんな、それをやるってんなら許さねぇぞ」

 

「なら、ならどうすればいいんだ!俺はどうすれば、リボーン俺の家庭教師(かてきょー)なら教えてくれ俺は、俺は」

 

「ツナ」

 

「なんだ」

 

「あいつは許せねぇか」

 

「うん」

 

「ママンや皆を救いたいか」

 

「助けたい、俺はもう一度皆に会いたい」

 

「藤丸やマシュはどうなんだ」

 

「いい人達だ。すごく強いし守ってあげたい」

 

「そっか、ならツナ逃げるぞ」

 

「え」

 

「この場から死ぬ気で逃げ切れ」

 

「リボーン、お前はいつも逃げようとする俺を怒るのに」

 

「そりゃ、いつものやつはお前はただ嫌な事から逃げてるからな。でも俺は勝つために逃げるならそれを咎めねぇ。ツナ今は勝てなくていい、だが絶対勝つぞ。勝ってこの特異点を修復するんだ」

 

 

 

 

〜side地上〜

 

ツナと竜の魔女の戦いを地上から見ていた三人、3人ともに空中での戦いはどうやっても割り込むことが出来ずに指をくわえて見てることしか出来ない。

彼らの戦いはとても激しく元々一般人であまり戦い慣れをしていない藤丸は目で追いかけるのもやっとなくらいだ。

藤丸とマシュ、この2人は上で行われている空中戦に目をうばられたかのように見入ってしまい、周りに対する注意が散漫にるぐらい見ていた。

 

だが、ここは戦場だ。初めての人はその鮮烈さに呆気を取られるが敵も同じとは限らない。

 

「皆さん注意してください!!既に囲まれてます!?」

 

「「!?」」

 

ジャンヌは周りの強い殺気の籠った視線に気が付き2人に警戒を促す。

呆気に取られていた二人だが、ジャンヌの慌てて自分達の状況に意識を向ける。

 

「マシュ!藤丸くん気をつけろ!?サーヴァントだ!!」

 

地面から草を覆い隠す量の杭がとてつもないスピードで迫ってきたのに気がついたジャンヌは藤丸とマシュを押し飛ばし自分も一緒に悔いから逃れた。

 

「ジャンヌさん!?」

 

「気を抜かないでください。まだです!」

 

まるでねずみ捕りのように地面に設置されたメイデンがジャンヌを食らうのを今か今かと待つ口のように広がっていた。

恐ろしいことにメイデンの尖っている棘から垂れる赤い液体がまるでヨダレのようで恐怖をさらに引き立たす。

 

「く!」

 

ジャンヌはギリギリのところで旗をうまく使って着地点をずらした。

 

「おそいわ...よ!」

 

だがまだサーヴァントがいたのだ。違うサーヴァントがジャンヌを思いっきり蹴りあげた。

 

「がぁ!?」

 

「嘘...だろ。」

 

マシュと藤丸の方にもサーヴァントが回り込んでいる。

 

「先輩!危ない!!」

 

「マシュ!?」

 

振り下ろされるレイピアにマシュは盾でガードする。

 

「上にばかり注意をしていていいのか。」

 

「先輩、また来ます!」

 

マシュは藤丸を抱えて空に飛び上がり、伸びてくる杭から逃れるが他数を相手に手を塞ぎながら飛び上がるなんて愚の骨頂である。

マシュの武器である盾を上手く使うための手は藤丸で塞がり片手だけでは守りが甘くなってしまった。

レイピアを携えたサーヴァントが空中から鋭い突きがマシュを地面にたたき落とした。

 

「あぅ」

 

「っ、大丈夫マシュ」

 

「はい、私は大丈夫です」

 

「お二人とも、大丈夫ですか?大丈夫ならすぐに立ち上がってマシュ!

 

「はい」

 

「もし、万が一の場合はマスターの藤丸を逃がします」

 

「わかりました」

 

それがサーヴァントのやるべきこと、マスターを守り抜くのは今自分がしないといけないことだ。

例えそれが自分がここで死んでしまうとしても、サーヴァントは兵器だ。手段の為の武器でありマスターを守るための盾となる。

マシュもその覚悟はできている。

できているのだが

 

「はぁはぁ」

 

私は守り切れるのか、この状況から守れるのか彼を私ごときの命一つで足りない足りなすぎる。

無力な少女は思った。私はただ英霊の力にあやかっているだけだ。私自身はただの

そんな時空を切り裂く音がする。

なんの音?ワイバーンの羽ばたく音にしては違和感がある。これは何か落ちて

それは突如目の前に落ちてきた。私たちの心の支えを潰す様に

 

「ツナさん!?」

 

「ツナァァ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここは私が愛した国、私が愛した民は今下を向いている。地面に何か面白い物があるの?と聞いてみたら首を横に振っていた。今度はなら何で貴方は下を向くのと聞いてみた。

怖いから、不安だからと返された。

震えていた。泣きそうなのをぐっとこらえてこの子は生きているのがわかった。

泣かないの、そんな顔をしていたら幸せが逃げてしまうわよ。

いい、幸せを信じなさい。自分は助かるというのをずっと思っておきなさい。

もしそれでも恐いなら、そうねとっておきのおまじないの言葉を教えましょう!

悲しいときや寂しいときその言葉を言ってみてきっと明るくなるわ!

さぁ、下を向かないで前を見て生きるの。私も頑張るわ貴方が楽しいと思えるように

 

 

民が悲しんでいる国は決していい国ではない。

竜の魔女貴女がこの国に混沌をもたらすのなら、私はこの国の祝福を願おう。

 

フランス万歳!(ヴィヴ・ラ・フランス)

 

今こそこの国に祝福を、そしてどうか永遠なれ



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大空IN邪竜百年戦争 開戦②

こーしーんです。


「竜の魔女その子を離しなさい!」

 

「はぁ」

 

「なぜ?なぜなのです。なぜ貴女は人を殺すのですか」

 

例え彼女が私の一面なのなら、確かに私は人を殺します。

それが、主のお告げならば人を救うためにそれが必要と言うなら私は血に身を浸らせましょう。

その行いに善を問わない。

その行いに悪と決めつけない。

私は私が望むから殺した。主の啓示に従った行動でも、その行いは誇れる行いではない、だが決して否定していいわけでもない。

だから私が今までしてきたことはただの殺人だった。

だからあの時も、最後を迎える時でも私には後悔も後ろめたい気持ちもなかった。

それは、当然のことだから

自分のしてきたことの報いだから私には

 

「当然、彼らが私を見棄てたからです」

 

彼女の言葉を聞いた時私の中で何かがざわついた。

何だこの気持ちは彼女に対して私の何かが反応している。

 

「!?」

 

「貴女も私ならわかるでしょ」

 

初めて見た。自分はあのように笑うのか、あの笑顔には侮蔑と嘲笑で固められてそれに伴う快感を味わっているのだ。

彼女のそれは私もしたことがあるのか。

 

「もう一度といます貴女が私と言うのなら、貴女はなぜ蛮行を楽しんでいるのですか」

 

「愚問!」

 

竜の魔女は力強く吐き捨てる。

 

「貴女本当に私なの?私ならその身に刻まれているでしょう憎しみの断片が敵も味方も全てから見捨てられた憐れな女の末路が」

 

彼女の言うそれは確かに私にもある。

だけど彼女のいう事が理解できなかった。

彼女の言葉には嘘はないのだろう。

でもだからこそ私にはわからない。

 

「あぁ、その全てが私へ囁くのです。蹂躙しなさい、奪え犯せ踏みにじれ、そして殺してと」

 

彼女は身を両手で包み込みその体からあふれんばかりの憎しみを抑え込んでいるように見えた。

ジャンヌはそんな彼女を苦々しく見る。

 

「憎しみ、恨み貴女のそれはあなたのものなんだろう。でも私には」

 

イングランドに捕まり牢に閉じ込められた時も、魔女と糾弾されながら私を陥れようとするために設けられたあの場でも、取引に応じず私を切り捨てる判断をしたシャルル皇太子を思い浮かんでも、それを受け入れた国民達、火刑に処される時最後まで石を投げた彼らを思い出しても私の心は変わらない。

彼らに恨みはない。

そのはずだ。

そのはずなんだ。

なのに、私の心に覆うモヤっとした気持ちはなんだ?

 

「成程、要は貴女残りカスね。貴女を形成しているのは私が侮蔑したもの全てみたいね」

 

私は知らないだけかもしれない。

私には本当はあったのかもしれない。怒りも恨みも、殺意を抱きあの最後の瞬間を見ていたのかもしれない。

今の私は英霊の座からこぼれ落ちた抜け殻のようなサーヴァント、強い怒りや殺意への執着からこぼれ落ち私は召喚されたのか?

 

そう苦心するジャンヌを見下ろしながらこう思った。

反吐が出る。

お人好しにも程がある。

優しさ?善意?下らない。

そのようなもの既にこの心に宿す憎しみによって生まれた獣にくれてやった。

なぜ救わなければならない。

なぜ彼女は今も旗を振っているのか?

苦しむ民衆を見たからか?

虐げる竜が跋扈するこのフランスに過去のフランスでも重ねたか?

それとも神のお告げか?

どの理由にしても

 

「さぁ、お話は終わりです。私に従う全てのサーヴァントよあの醜い聖女を殺してしまいなさい!」

 

ランサー、アサシンそしてセイバーとライダーは殺気を放つ。

 

流石はサーヴァント身が凍える殺気は一級品の物ジャンヌは耐えられるが、私の側にいる藤丸と戦闘経験の少ないマシュはこの殺気に完全に飲まれていた。

これじゃあ危ない。

だが幸いにも、彼らの敵意はジャンヌに向いている。

固唾をのんで私はこの状況を幸いに思う。

私に変えはいてもマスターに変えはいない。

 

「藤丸」

 

「は、はい」

 

「ここは私が囮になるので、隙ができたらお二人であの子助け出して下さい」

 

私が彼らの前に立つ。

彼らにはまだ早すぎた。

サーヴァントは魔術師にとって使い魔に分類される。魔術師の多くは自分達の力の結晶であり、サーヴァントのブレーキにもある令呪が備わるから彼らの認識ではほんの便利なただの飼い犬と思う輩もいる。だがサーヴァントは生前人類史に名を刻んだ偉大な先達者なのだ。

歴の差がある。

この2人、藤丸はただの巻き込まれた一般人のようなものだ。

魔術師ですらないんだ彼は、まだ十と少しの若輩で非日常から切り離された平穏を謳歌していた男の子。

優しい目をして、温かい心を持ちまだ汚れを知らないその手をせめて私が守る。

私は後ろを振り向くことなく、竜の魔女のサーヴァントと迎え撃つ。

 

「!?」

 

ルーラー本来の力を使う事ができればサーヴァント複数にも引けをとらないはずだが、やはり力が上手く入らない。

ランサーが大きく槍を振るう。

ジャンヌは自分の旗で受け止め薙ぎ払う。ギリギリと押し合う最中私は必死に押し返そうとしているけど、ランサーは獰猛な笑みで私を見下ろす。

これがランサーの一振り、ここまで差があるのか。

私は押し返すのが難しいと判断した瞬間敢えて吹っ飛ばされて距離をとる。

そして今度は私から攻め込んだ。

パワーで負けているのならこちらは手数で勝負する。

私は自分の持つ旗でランサーの槍と打ち合った。

大きく右から振り下ろして流れるように私は次の動作に入り今度は旗の尖端で突く。

突きこそパワーよりもスピードでこそ威力がのる。

だけどそれもランサーは紙一重で躱していく。

パワー任せではない。

狂気に満ちたその瞳でも、彼が持っていると思える冷静な部分は何一つなくなってはいないんだろう。

私がランサーと打ち合っているその隙にアサシンとセイバーがジャンヌの懐に紛れ込む。

厄介だ。

このサーヴァント達見た所連携はそこまで洗練されていない。

ただ私を殺すと言う命の上彼らの動きは纏められていた。

一見嚙み合わないチームと思ってたがそんなことはなかった。

まだ、連携意識を持っていた方が乱れが生まれるのだが、彼らにはその意識はない。だからこそ単独に確実にジャンヌの命を狙っている。百戦の猛者である彼らはそちらの方が手ごわい。

ジャンヌは何とか彼らの鋭い攻撃をいなしていく。

ランサーと同じで重く鋭い一撃だが、ジャンヌは今度は防御に徹するつもりのようだ。

防御に徹していればしのぐことは可能。

その間もう一度隙を伺う。

ここで一つつけいる隙のある可能性について語ろう。

サーヴァントにも種類がある。

基本的にクラスで彼らは別けられているが、そのクラスの基準は伝説や逸話によって決まる。例えばセイバー、セイバーに別けられるのは忠義に生きた騎士がセイバーと分けられるアーチャーなら弓兵だった者、ランサーなら槍の名手、ここまでサーヴァント達は確かに武勇で名を刻んでいるが、アサシンやライダーは違う。

例えばライダー、ライダーは騎乗の名手戦場を駆けまわった馬やそれこそペガサスや竜と言った普通とは違う動物と心を通わし伝説になった者が別けられるクラスだ。

アサシンは暗殺者、その磨き上げた殺しのスキルを武器として戦うサーヴァント達。隠密行動が得意な彼らは気配遮断スキルを駆使して戦場で戦う。

一見この二つのクラスも厄介だとは思う。だがライダーには騎乗する動物が力の源であり、アサシンは奇襲が基本的な戦い方。なので本人自体はセイバーやアーチャーたちよりも戦闘力が低い事が多い。

付け入る隙があるとするならこの二機だ。この二機どちらかを崩して態勢に穴をあける。

ここで惜しいのがジャンヌにはルーラーとしての力が全くない備わっていないことだ。

本来ルーラーには真名看破という、サーヴァントの真名を姿を見るだけでわかるスキルがある。

だけど今の自分にはそれすらできない。

真名を知る事だができれば、より詳細に相手の事を知ることができるのだが、でもない物は仕方がない。自分も目で見たものだけで、判断するとしよう。

虚を突くならアサシンかライダーにするべきだ。

更に絞るなら、アサシンに虚をつくのは難しい。アサシンこそが虚をつくスペシャリストなのだ。

今目の前のアサシンは錫杖のような武器を所持しているが、あれがメインと言うわけではないだろう。

アサシンは寧ろ見えない部分を警戒しないといけない。不安要素の塊、それならライダー騎乗する動物を霊体化させているのだろうが理由の想像はつく。

大方足並みが崩れる可能性が一番高いからだろう。

馬もしくはチャリオットなどでも、そんなものがこの戦場を走っていたら、統率意識のないあちらからしたらそれが暴れた結果は予測できないのだろう。

だからこそ、取っているまだ先にとっておきの切り札として。

だがジャンヌからしたらありがたい。虚をつき撤退させる腹積もりの自分からしたら出し惜しんでいる今のうちにしかできない。

 

「はぁぁ!」

 

ジャンヌは地面を蹴り上げて勢いをつけてライダーを弾き飛ばす。

やや乱暴な力技だが上手く引き剥がすことができた。

そこからジャンヌは周りに気を配りながらライダーに集中攻撃をする。

武器と武器がぶつかり合う重低音。

ジャンヌは歯を食いしばって押し込もうとするがライダーは表情一つ変えないで受け止ている。

 

(これは)

 

不自然を感じる。

圧しきれない。寧ろこちらが押されてきている。

ジャンヌは両手で旗を掴み更に力を加えるが、いつの間にか立場が逆転している。このままではジャンヌの方が惜し負けてしまいそうだ。

おかしい、幾ら力の殆どが失われている身とはいえそれでもここまでの差があるとは思えない。

それと相まみえて気が付いた竜の魔女が従えるサーヴァントの様子。余りにも静か、別に戦場でこそ普段以上に冷静になる者はいるだろう。だが、目の前にいるライダーはまるで表情が壊れているかのようだった。

 

「っあ!?」

 

力技では危ないと判断したジャンヌは、相手の力を利用して攻撃をいなした。

長い旗を上手く持ち替えればライダーの攻撃は簡単に流れてくれる。

ジャンヌの想定していたよりも彼らはとても厄介だ。あの不自然は雰囲気とこのパワーやはり情報が少ない。

もう少し頭の中を整理したい。

だがそんな時間を彼らがくれるわけがない。

とまらない追撃がジャンヌを窮地に追いやる。

 

「これは」

 

ジャンヌの立っていた地面に突如鉄の刃が左右人の影のように浮かび上がっていた。

これはアイアンメイデン、拷問器具の一種だ。

どうやらアサシンが操っているみたいだ。

ジャンヌは挟もうとするメイデンに旗を突き立てつっかえ棒にする。

メイデンは無理やり挟み込もうとするが、ジャンヌの旗は全く折れずにせき止められジャンヌはその間に飛び上がり今度はアサシンに飛び蹴りをした。

 

「はぁぁ!」

 

飛び蹴りは錫杖で防がれたが上手く間合いに入ることができた。

これなら肉弾戦に持ち込むことができる。

ジャンヌは着地と同時に掌底をアサシンの腹に叩き込んだ。

 

「どうですか!」

 

掌に伝わる肉の感触、これは入った。

アサシンはすぐさま錫杖を振り下ろすがジャンヌはそれを紙一重で避ける。

この行動、この間合いで大きく振りかぶった攻撃、このアサシンは肉弾戦がそこまで得意ではないタイプのサーヴァントだ。

このサーヴァントの隠し玉も見せてもらった。

突如発生するメイデン一見厄介だが、警戒していれば対処はできる。

空いた隙をジャンヌは見逃さない。顎を殴りつけさらに

 

「そこです!」

 

がら空きな胴を蹴りこむ

アサシンは自分の錫杖を支えに踏ん張りをきかす。

初めてまともにダメージを入れることができた。

アサシンなら今の自分でも何と拮抗できそうだと、そう思った時地面をえぐるように無数の杭が発生して明らかジャンヌの方に向かってきている。

アサシンをここで逃がしたくないという判断が一瞬ジャンヌをこの場に足を止めさせてしまった。

これは悪手だ。

音には先に気がついていた。欲を言ってしまった、アサシンにもう一撃をたたき込めるそれが頭をよぎった時点で回避行動に移っておけばこの攻撃は躱すことができただろう。

完全な判断ミスのせいでジャンヌは避けきることも出来なかった。

杭がジャンヌの足を貫く。

それと同時に見えない速度で迫ってきた何かジャンヌは突き飛ばされる。

 

「そんな!」

 

(今のはセイバー、先程の杭はランサーの宝具)

 

ジャンヌは吹っ飛ばされて地面に転がる。頑丈な体といえど正面からセイバーの攻撃を受けてしまうとそれなりのダメージだ。

 

「あう!っうう」

 

ジャンヌは痛みの強い腹部を抑える。

セイバーに攻撃された箇所だ。足もそうだが上手く突かれた。

多分アサシンは囮だったんだろう、だからこそ攻撃を敢えて受けてジャンヌを誘い込みランサーとセイバーから意識を遠ざけた。

連携をとっていないと早合点したジャンヌのミスだ。

そしてそれと同時に気がついた、アサシンランサーそしてセイバー彼らには後一機サーヴァントがいる。

 

「ライダー!」

 

一瞬早くこちらに向かっているライダーに気がつくことが出来たジャンヌはすぐに迎撃できる態勢をとり、振り下ろされるライダーの拳とジャンヌの拳はぶつかり合う。

 

「はぁぁ!」

 

譲らない力と力のぶつかり合い。

それは空気に伝わり、その緊迫感は藤丸とマシュまで伝わる。

 

 

 

〜side藤丸〜

 

初めて見たのはつい最近のこと。

あの時は無我夢中だった。

腹を燃やす灼熱の空気に血なまぐさい悪臭が漂う戦場。

俺は、そこで見ていることしかできなかった。

傷ついた少女と自分よりも年下の少年が戦う姿を。

俺は何もできなかった。

俺に出来ることは無かったのだ。

そこ立っていたのも偶然、誰かに望まれたわけでもましてや自分が望んだ訳でもない。

自分しかいないからそこに足を運んだ。

自分しかいないから今ここにいる。

全ては偶然、仕組まれてたかのように無力な俺は今ここにいる。

今だってそうだ。誰かの背中に守られて俺は歯を食いしばっている。

情けない。

情けない。

何よりそれでも自分を動かそうとしない俺が情けない。

覚悟を決めたのに、みんなを助けるとそのために戦うと決めたのに俺には何もできな『藤丸立香!』

 

「!?」

 

『いつまで下向いてりゃ気が済むんだお前は』

 

「この声はリボーン」

 

声しか聞こえない彼方からの言葉には怒りが篭っていた。

 

『情けない背中を見せてんじゃねぇ、まだ戦いは終わってねぇんだぞ』

 

「そうだけど」

 

『わかってるなら下を向くな前を見ろ、戦場て下を向くのは諦めの証だ。自分の命を差し出してるのと同義だぞ』

 

「俺だってできることなら前を見たいけど前を見ているのが辛い」

 

鼓舞するのがきつい。

何か出来ると慰めるのが辛い。

だって現実は何も変わらないのだから。

 

「藤丸、お前自分がなにかしたところでって思ってるのか?そう思ってるなら違うぞ」

 

「え?」

 

「いいか、何も出来ない人間ってのは何もしない人間だ。力がねぇとかそんなん関係ねぇんだ、力がなくたって行動はできるその結果は誰にもわかなんねぇだからこそこの世には奇跡って言葉があるんだ。何をできない無力な人間が起こした事があるからこの言葉がある」

 

奇跡、救われた結果に与えられる言葉。

 

誰も信じてない、誰も予想していないだけど起こりうる可能性1%の出来事

 

「そいつを引き起こせるのは誰にだって出来る。だが条件はある諦めないことだ下を向かず、足を止めずに考えることを放棄しない。」

 

お前にはやれるか?




ではまた次回。


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