狩人と、ゼロの主従 (蜜柑ブタ)
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序章  モンスターハンター・セエ

ダンジョン飯の次の巻が出るまでの息抜き文の始まりです。


ココット村のモンスターハンター・セエ、サイトとルイズを拾う。


 

 

「ニャー! ご主人!」

「なんだい?」

「大変ですにゃ!」

「どうしたんだ?」

「庭に人が倒れてますにゃ!」

「えっ? なんだって!」

 

 男は、家で雇っているアイルーと共に、家の庭に急いだ。

 

 そこには、二人の男女が倒れていた。

 見たところ、少年と少女という感じで、気を失っている。

「君達! しっかり!」

「医者呼びますかにゃ?」

「まずは家に運ぼう。手伝え。」

「分かりましたにゃ!」

 人間一人とアイルー達で、少年と少女を家に運び込んだ。

 一人用のベットしかないので、狭いが二人を寝かせる。

「うーん。外傷は無いな。」

「気絶してるだけかにゃ?」

「とりあえず、様子を見よう。俺は、今から次のクエストのための買い出しにいなきゃいけないから、見ててくれるか?」

「了解ですにゃ。」

「じゃあ、行ってくる。」

 男は、そう言って家を出た。

「…にゃー、それにしても珍しい髪の色にゃ? 染めてるのにゃか?」

 アイルーは、そう呟きながらピンク髪の少女を見た。

「う、う~ん。」

「にゃ、きがついたにゃ?」

「ふえ?」

「ん? う…、うわ! 猫!?」

「にゃ! 猫じゃないにゃ、アイルーにゃ。」

「喋った!」

「酷いにゃ。アイルーは、喋って当たり前にゃ。」

「ここ、どこだ?」

「あんた達が、庭で倒れてたから家に運んだのにゃ。」

「ああ、そうなのか…。なあ、本当に合ってるの? ルイズ。」

「座標は間違ってないはずよ。」

「何の話にゃ?」

 

「あ、目を覚ました?」

 

「だ、誰だ!?」

「酷いにゃ。ここの家の主人にゃ。」

 身構える少年少女に、アイルーが怒った。

「庭で倒れてたからびっくりしたよ。どこも悪くないかい? 気分は?」

「あの…、ここって…?」

「俺の家だ。」

「じゃなくて…、ここはどこなんですか?」

「ん? ああ、ココットの村だよ。」

「村ぁ!? おい、ルイズ!」

「ざ、座標は間違ってないって言ったじゃない! たまたま村だっただけでしょう?」

「? どういうことだい?」

「えっと…、言っても、信じてもらえるかどうか…。」

「それは、聞いてみないと分からない。話してくれるかい?」

「実は……。」

 

 それから、男は、少年少女から事情を聞いた。

 

 少年の名前は、サイト。

 少女の名前は、ルイズ。

 二人は、ハルケギニアという土地から、魔法という未知の力を使ってここへ来たのだという。

 そして、彼らがなぜ魔法を使いここへ来たかというと……。

 彼らの世界に、謎の竜や怪物が現れ始めて、住処や領土を侵し始めているからそれに対抗する力を手に入れるためにやってきたのだそうだ。

 

「なるほど…。それで、どんな竜なんだい?」

「最初に見たのは、口から火を吐いて…、ごっつい茶色の鱗のでっかい奴です。」

「リオレウスか。」

「! ルイズ! おまえの魔法、間違ってなかったな!」

「ええ、そうね!」

「つまり、君達の世界に、俺が知っている竜が現れたってことか?」

「そういうことです。」

「う~ん。」

 男は腕組みして悩んだ。

「…村長に相談してみるか。」

「怪しすぎるにゃ。」

「けど、彼らは嘘は言ってないよ、たぶん…。」

「人が良いのはいいこどにゃけど、度が過ぎるとこっちの身が危ないにゃ。」

「あの…。」

「なんだい?」

「あそこにある剣は…?」

 サイトが部屋の壁に立て掛けられている大きな剣を指さして言った。

「あれは、俺の剣だ。それが?」

「あなたは…、何をしている人なんですか? 兵士?」

「バカね。あんな大きな剣を振り回す兵士がいるわけないでしょ。」

「俺は、ハンターだ。」

「はんたー?」

「モンスターを狩るのが生業だ。」

「それって…、竜も?」

「竜も倒すし、時には捕まえる。」

 それを聞いた途端、二人が互いの顔を見合わせて、再び男を見た。

「あなたは、竜を何匹も?」

「あ、ああ…。一応。」

「あの!」

「ん?」

「あの剣を俺にくれませんか!」

「は?」

「なに言ってるにゃ?」

「俺たちには、あの竜を倒す武器が必要なんです! お願いします!」

「ちょ、ちょっと待ってくれ…。」

「私からもお願いします!」

 二人が床に土下座をし始めた。

 男は、オロオロとした。

「そんな厚かましいこと、よく言えるにゃね?」

「…くそ…。仕方ねぇ…。ルイズ!」

「ええ!」

「えっ?」

「ご主人!」

 次の瞬間、小さな爆発が男の目の前に起こり、驚いて男は尻餅をついた。

「うぐぐぐぐ! な、なんだこれ!」

「ちょっと、どうしたの!?」

 見ると、サイトが、男の大剣を握って持ち上げようと悪戦苦闘していた。

「待つにゃ、このドロボー!」

「ぎゃっ!」

「きゃあ!」

 アイルーがモンスター用のネットを投げつけて二人を拘束した。

「ああ…、もったいない。」

「言ってる場合かにゃ! こいつら村の自警団につき渡すにゃ!」

「待て待て。彼らはそれだけ必死なんだよ。そうだね?」

「……急がないとみんな死ぬから。つい…。すみません。」

「村長に事情を話す。一緒に来てくれ。」

 二人を解放し、男は、二人を連れて家を出た。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

「村長。」

「むっ。どうしんたんじゃ? クエストか?」

「違います。ちょっと、お時間いただけますか?」

「時間ならだいじょうぶじゃ。どうした?」

「実は…。」

 男は、後ろにいる二人を交えて事情を話した。

「む…。なるほど? つまりそちらの二人の子供らの故郷に竜が?」

「リオレウス系だけじゃないようです。」

「…小耳の挟んだんですが、山のように大きな竜も現れたとも聞いてて…。」

「やまのように? ラオシャンロンかの?」

「俺たち、どうしてもあの竜達と戦うための武器が必要なんです!」

「それで、武器を盗もうと?」

「…すいません。」

「焦っておるようじゃが、ドロボーはいかんぞ。」

「はい、すみませんでした。」

「謝るのは、わしにじゃない。こっちじゃ。」

「はい、すみませんでした…。」

「いいよ。未遂で終わったんだし。」

 男は、そう言って微笑んだ。

「しかし、なぜ、この村に?」

「実は…、さっきも言いましたけど、俺たちには、竜を倒すための武器が欲しくて…。」

「それで、魔法でその武器がある場所を示して、転移してきました。」

「ふむ…。なるほど。にわかには信じられんが、目指した場所としては間違ってはおらんな。この村は、ハンター稼業で生計をたてている。」

「そういえば、そっちの人もそうですけど、ここに来るまでに鎧を着た人が何人かいましたね?」

「そうじゃよ。この村の若者の多くは、ハンターを目指し、ハンターとなる。中には出稼ぎもおるぞ。」

「じゃあ、竜に対抗できる武器も売ってますか!?」

「まあ、武器屋に行けばあるぞ。」

「そうか…。ルイズ! 武器屋に行こうぜ!」

「待ってくれ。」

「なんです?」

「君達…、知らないだろうけど……。武器屋の武器は、初心者向けのものばかりなんだ。」

「初心者向けっていうと…。」

「つまり、竜を倒すには少し力不足かもしれない。山のように大きな竜…ラオシャンロンなんて倒すなんて無理だ。」

「そ、そんな! じゃあ、あなたのあの大きな剣は?」

「あれは…、俺が竜を倒して、それからその素材を使って作ってもらった剣なんだ。」

「えええ!?」

「武器屋の隣には、それを専門とする店がある。武器を作りたければ、そこを利用することじゃ。」

「そ、そんなこと言われても…、俺たち素材なんて…。」

「なら、自分で手に入れることじゃ。」

「えっ!」

 村長の言葉に、サイトとルイズは、固まった。

 そして助けを求めるようにハンターの男を見た。

「こりゃ。いくらなんでも、そりゃ図々しすぎるわい。お主も、仮にもこの村を救ってくれた英雄なんじゃ。そろそろ次世代のハンターの育成をする頃じゃろう。」

「えっ?」

 言われたハンターの男は、キョトンとした。

「こやつらを育ててみんかということじゃ。」

「ええっ!?」

「えーーー!?」

「そ、そんなこと…。」

 三人は村長の言葉に驚いて声を上げた。

「お、俺たちは、あくまで武器を…。」

「お主、武器を手に入れて、その後どうする?」

「そ、そりゃ、竜を…。」

「しかし、どの竜にどの武器が有効かは分からんじゃろう?」

「えっ?」

「つまり、竜には、属性があるって事ですか?」

「そうじゃよ。効きづらい属性もあれば、有効的な属性もある。竜それぞれじゃな。一本だけ武器あっても、しゃーないわい。」

「そんなぁ…。」

「それに、なんの苦労もなく、武器だけ手に入れたところでハンターにはなれん。いいか、ハンターというものはじゃな……。」

 そこからクドクドと、村長の説教が始まった。

「あの村長…。」

「なんじゃ?」

「俺が、彼らを育てるなんて…、彼らの世界はとても危険な状態らしいですよ? そんな悠長なことしてたら…。」

「お主らの世界は、そこまで追い詰められておるのか?」

「ええ。ですが、ここへ転移してきた時の魔法を使えば、転移してきた時の時間に戻れるはずです。」

「っというわけで、大丈夫そうじゃな。」

「そ、そんな…。」

 ハンターの男は、戸惑った。

「いつもソロでクエストをこなしておるお主じゃ、これを機会に、複数でクエストに挑んでみるのもいいと思わんか?」

「……。君達は、それでいいのかい?」

「……ルイズ。どうする?」

「私に言われても…。」

「少し考えさせてください。二人とも、いったん戻ろう。」

 ハンターの男は、二人を連れて村長のもとから離れた。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 ハンターの男の家に戻った三人は、黙っていた。

「お茶にゃ。」

 アイルーがお茶を持ってきた。

「はあ…。大変なことになったな。」

「どうしたら…。」

「二人は、どうしたい?」

「武器さえ手に入れば、終わりだと思ってました。」

「私も。」

「君達の故郷に竜がたくさんいるなら、やっぱり…ハンターとしての知識は必要だろうな。俺は…、教えられることは少ないと思うけど、二人がそうしたいなら、構わないと思う。」

「ご主人…、あんま強くないですからにゃ。」

「強くないんですか?」

「あ…ああ…。そうなんだ。英雄なんて言われてるけど、俺は、最近になってやっとG級になったばかりの弱小ハンターさ。」

「地道な下積みが実った結果にゃ。誇るべきにゃ。」

「ありがと、トウマ。」

「じーきゅう?」

「ハンターの最高ランクにゃ。」

「えっ! じゃあ強いんじゃないですか!」

「けど、そこまで行くまで何度も何度も死ぬような思いをしたにゃ。小さいクエストから大きいクエストまで、すごい下積みをしたにゃ。ご主人から武器を盗もうとしたドロボーにゃ、わからないにゃ。」

「ドロボードロボーって言うなよ。」

「実際に盗もうとしたこと、もう忘れたにゃ? ご主人、こんな奴ら指導する必要ないにゃ。」

「もうそのことは許してるよ。」

「…人が良すぎるにゃ。」

「それで? どうしたい?」

 サイトとルイズは、悩んだ。

「……力が、必要なんだ。」

「うん。」

「だから…、お願いします!」

「私からもお願い!」

「……分かった。」

 男は、頷いた。

「そういえば、まだ俺の名前、紹介してなかったな。俺の名前は、セエ。ココット村のモンスターハンターだ。」

 

 

 こうして、G級ハンターになりたてのハンターと、魔法使いの少女と、その使い魔の少年は出会ったのだった。




サイトとルイズ、焦りからモンスターハンターの大剣を盗もうとする。
でも失敗。盗もうとしたのは、大剣リオレウス。
ガンダールヴのサイトが扱えなかった理由は、後々語られます。

アイルー・トウマは、実際にゲーム中で筆者がアイルーキッチンで最初に雇って今も雇っているアイルーです。彼の出番は多いです。


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第一話  肉を手に入れよう その1

師弟関係になりましたが、やることはスローペースです。

いきなり飛竜種に挑まず、基礎からやらされます。

今回は、アプトノスから肉を採集するクエスト。

あとゲームのメタ表現あり。


 

 

「とは言ったものの…、何から教えたらいいんだ?」

「ご主人、思い出すにゃ。ハンターとして登録してもらってから何をしたのかを。」

 アイルー・トウマからの助言を受け、ハンター・セエは腕組みして思い出した。

「……村長クエストか。」

「ハンターの基礎は、まず村長が出す課題をクリアすることにゃ。」

「何するんですか?」

「俺がはじめてやったのは…、生肉を手に入れることだった。」

「なまにくぅ?」

「基礎中の基礎にゃよ!」

 うさんくさそうにするルイズに、トウマが怒ったように言った。

「肉はスタミナのもと! ハンターは、体力とスタミナ勝負にゃ! 肉は必須にゃ!」

「トラップにも使えるしな。」

「こんがりと焼けば、スタミナを付けられる食料になるにゃ。」

「そうと決まれば、まずは肉の入手からだな。」

「そんなことから…?」

「肉があるかないか…、ないととても困るんだ。スタミナが切れたら何も出来ない。いいね?」

「…はい。」

 不服そうにするサイトに、セエは、先が思いやられそうだとため息を吐いた。

「あ、そうだ。クエストをするなら、武器と防具がいるな。」

「武器なら一応、ひとつだけ持ってます。」

「どんな武器だい? へえ…、片手剣?」

「いえ…両手で持ちます。」

『まあ、あんたにゃ、片手の武器でしかないだろうな。』

「うわ!」

「喋ったにゃ!」

「あ、すみません。これ、喋る剣なんです。」

『インテリジェンスソードって、種類の剣だ。……つっても残念ながら俺じゃ、あの竜の鱗を断てねぇ…。』

「これも魔法かい?」

「ええ。一応…。」

『武器と防具を、貸してやっちゃくれないか?』

「…あー…、ハンターになりたての頃に使ってたのがあるから、それを貸してあげるよ。」

「そんな古くさいのじゃなくて、もっと上等な…。」

「贅沢言うにゃよ? ハンターとして力を付けたいにゃら、自分で! 獲って! 自分で稼ぐにゃ!」

「わ、分かってるわよ…。」

「分かってないにゃ、おまえ、もしかして偉いところの娘かにゃ?」

「……公爵家の…出よ…。」

「こいつハンターにゃなれないにゃ。」

「なんですって!」

「俺がハンターになるから、ルイズはいい。」

「いいえ! 私も戦う力を付けたいわ!」

「……これ、持てるかい?」

 そう言って、セエは、部屋に置いてある箱の中から一本の剣を取りだして、ルイズに渡した。

「重っ!」

「それ…、ハンターになりたての頃に支給された片手剣なんだ。この剣と盾でセットだ。」

「俺なら持てそうだな。」

「こっちが、アイアンソード。大剣だ。」

「セエさんは、大剣を使うんですよね?」

「大剣を主に使ってるよ。たまに、双剣も使うけど。」

「双剣の方が軽いですね。」

「防御と攻撃の両立がしやすいのは、片手剣で、攻撃のスピードなら、双剣。攻撃力なら、大剣やハンマー、ランスがいいかもな。」

「ボウガンも忘れるにゃよ?」

「うっ…。ボウガンか…。」

「どうしたんです?」

「俺…、遠距離武器が苦手で…。あるにはあるんだけど…。」

 セエは、ポリポリと頬を指でかいた。

 でも、一応見せておくと言って、取り出したのは、ライトボウガンと、ヘビィボウガン。

「ライトボウガンと、ヘビィボウガンの二種類があるんだ。」

「へびぃ…って言うぐらいだから、重いんですよ?」

「そうなんだよね…。」

 ハハハっと、セエは、乾いた笑い声を上げた。

「けど、遠距離武器は、弾の種類が豊富にゃ。使い方次第じゃ、竜も倒せるし、強力にゃ。」

「それは、分かてるよ…。」

『娘っこは、ボウガンを使ったらどうだ?』

「私が?」

『おめーさんの魔法は、残念だがあの竜種に効き目がねぇ。精神力を全部使っても倒しきれねぇ。それに攻撃を受けたらひとたまりもねぇしよぉ、なら遠くから攻撃するってのはどうだい?』

「……ええ。分かったわ。」

「じゃあ、ルイズは、ライトボウガンを使うか?」

「……なんとか持ち上げられそうね。」

「筋トレするにゃ。」

「じゃあ、準備が出来たら、村長のところに行こう。」

 準備が始まった。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

「おお。孫にも衣装じゃな。」

「何言ってんのよ。」

「おい、ルイズ…。仮にも村長さんだぞ?」

 ガショガショと、重たそうにサイトは、鎧を着ていた。

「村長。彼らに、まず、生肉の納品のクエストをさせようと思います。」

「ふむ、なるほど、まず基礎からか。よいよい。」

「よろしいですか?」

「このクエストを無事終わらせられたら、二人を仮ハンターとして登録してやろう。」

「そうですか。二人とも、頑張ろう。」

「はい。」

 二人は返事をした。

 そして、クエストの登録をセエがして、三人は、森と丘へ向かおう事になった。

 森と丘への定期便として馬車が運行しており、それに乗って、向かう。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 キャンプ地にたどり着くと、馬車は去って行った。

「さてと、時間が来る前に終わらせよう。」

「時間があるんですか?」

「そう。クエストには、決まった時間がある。それまでにクエストを達成しないとクエスト失敗で報酬は無し。」

「ハンターって、自由稼業だと思ったけど、違うのね。」

「さあ、グダグダ言ってないで、始めよう。まずは…、そこにある、青い箱の中を見てごらん。」

「これですか?」

 キャンプ地に設置されている青井は箱の中を見た。

「なんか入ってる。」

「地図とかあるだろ?」

「あった。」

「それが、狩り場の地図だ。必ず入ってる。クエストに欠かせない。」

「でも、手持ちが埋まっちゃうわね。」

「そう。だから、手持ちには気をつけないといけない。クエスト前に、手持ちの整理はしっかりとしていかないと、地図さえ持てなくなるし、クエストに必要な物を持てなくなるなんてこともある。」

「今回のクエストって何をするんですか?」

「狩り場にいるモンスターを狩って、肉を採集して、それをそっちの赤い箱に納品するクエストだ。」

「いきなり狩りですか?」

「大丈夫。これから狩りに行くのは、大人しくて臆病な草食のモンスターなんだ。行こう。時間は限られている。」

 セエが先導し、二人はその後を追った。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 森と丘のフィールドは、その名の通り、森と丘で構成されている。

「うわぁ…。」

 その圧巻な景色に、二人は、見とれた。

「ほら、あそこだ。」

 セエが指さす先には、中型の恐竜のような四本足のモンスターがのんびりと草を食んでいた。

「あれ…ですか?」

「アプトノス。肉を獲りやすい格好のモンスターだ。行こう。」

「えっ? あれを…狩るの?」

「子供がいませんか?」

「? そうだけど?」

「こ、子供がいる親子を殺すなんて…。」

「……いいかい? アプトノスは、子供の方が狩りやすい。そして、アプトノスがいる場所は安全地帯なんだ。つまり、肉を狩り取って、調理するには打って付けのモンスターだ。」

「で、でも!」

「早く、武器を。」

「できません!」

 拒否する二人に、セエは、ため息を吐いた。

「じゃあ…、俺が手本を見せる。今回のクエストは、肉を取って、納品までの流れを見てもらうから。」

「あ、待っ…。」

 次の瞬間、近づいても逃げないアプトノスに、セエが背負っていた大剣を振り下ろした。

 そして切断され、断末魔の声を上げて倒れるアプトノス。

 他のアプトノスは、仲間を殺されたことでようやく危険を察知して、川の方へと逃げていった。

 サイトとルイズは、口をあけてセエの行動を見ていた。

 セエは、大剣を背負うと、ナイフを取り出し、ザシュザシュと、アプトノスから肉を切り取った。

「これで生肉が取れた。あと、たまに小さい竜骨が取れるから、肉だけ目当てなら、骨は捨てていい。」

「…の、残りは?」

「? 生肉さえ取れればあとは、他の動物が一掃する。」

「…そう…ですか…。」

「もしかして、生き物を殺されるところを見るのは初めて?」

「そ、そういうわけじゃ…。でも大人しい動物を殺すのはちょっと…。」

「いい? ハンターが狩るターゲットに、大人しいも糞も無いんだ。君達が倒そうとしている竜だって、同じモンスターなんだよ?」

「けど、草食動物と竜じゃぜんぜん…。」

「違う。同じ生き物だ。草食か肉食かの違いでしかない。…時間が無くなっても仕方ないから。今からこの肉を納品しいく。ついて来て。」

 納得していない二人の横を通り過ぎならセエは、そう言った。

 サイトとルイズは、死んだアプトノスの死体を見つめ、やがてセエのあとを追いかけていった。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

「納品系のクエストは、この赤い箱に、納品する品を入れて、クエストが達成される。」

 そう言いながら、セエは、生肉を赤い箱に入れた。

 すると、どこからともなく、ファンファーレのような音が聞こえた。

「うわ、なんだ!?」

「クエストを達成すると聞こえてくるんだ。」

「なんですか、それ?」

 まるでゲームみてぇだとサイトは、苦笑いを浮かべたのだった。

 やがて、アイルー達が、馬車を連れてきた。

「クエストが終わると、こうやって迎えが来る。クエストの報告書をまとめて…、それで終わり。」

「はい、確かに確認しましたにゃ。これは、今回のクエストの報酬にゃ。」

 そう言って馬車に乗っていたアイルーがちょこっとの報酬金と種や骨などを出した。

「種?」

「赤い種と、緑の種。これは、村の農園で使う。使い方は、帰ってから教えるから、馬車に乗ろう。」

 セエは、二人と一緒に馬車に乗って、村に帰った。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

「で? どうじゃった?」

「…正直…、問題外としか…。」

「えっ!?」

「なんですって!?」

「これこれ、何があった?」

「実は…。」

 セエが何があったのか話した。すると村長は、呆れたとため息を吐いた。

「お主ら、菜食主義者か?」

「違います。」

「じゃあ、今後肉を食うのは止めるんじゃな。」

「なんでですか!?」

「お主らが食ろうておる、肉ももとを辿れば動物じゃ。アプトノスと何ら変わらん。」

「それは分かって…。」

「分かっておらん。ただ大人しいからじゃからと言って、モンスターを殺せんでは、ハンターにはなれん。大人しく故郷に帰ることじゃな。」

「そ、そんなことできるかよ!」

「あの竜を倒せる武器が無いとハルケギニアが…!」

「じゃあ、そこの武器屋で武器でも買うことじゃな。」

「でも、初心者用の武器じゃ…。」

「初心者用の武器でも飛竜は倒せる。じゃが…、まあ、モンスターを素材にした武器と比べたらかなり劣るがのう。」

「それに、俺たち、金もなくても…。」

「じゃあ、働くことじゃな。」

「けど…、この村って…。」

「働き口を紹介してやらんことはないぞ?」

「でも、俺たち、力が欲しいんです!」

「なら…、非情になることじゃな。」

「ひじょうに…?」

「可愛いからとか、大人しいからじゃとか、そういう気持ちを捨てることじゃ。殺して、肉を採取できん者がハンターになどなれるわけがないのじゃ。」

 村長にきっぱりと言われ、二人は押し黙った。

「…そうじゃ、セエ。」

「なんです?」

「この子供らをハンターに育て上げるのならば、わしらがすべきことを決めねばならん。」

「っと、言いますと?」

「どこまで手を出していいか。仮にもお主は、G級ハンターじゃ。この子らの成長に差し支えるほど手助けしては意味がない。」

「……けど、下手すると死なせてしまう可能性が…。」

「それは、運と実力がなかったということじゃ。」

「…はい。」

「えっ…助けてくれないんですか?」

「強くなるのは、お主ら次第じゃ。生きるも死ぬもな。」

「死んだら意味ないわ!」

「じゃから、強くなるのじゃ。積み重ねもなしに、いきなり竜を狩ることなんざできんわ!」

 リオレウスなどの飛竜種の強さを目の当たりにしているサイトとルイズは、それを言われて俯いた。

「わしらの集会場では、ある程度のクエストをこなせた者だけが竜を狩りに行けるようにしておる。まずは、数あるクエストのいくつかを成功させてみよ。」

「で、でも、肉を獲りに行くだけじゃ強くは…。」

「馬鹿もの! 基礎がなければ、強さは身につかん! ここおるセエも、最初はキノコやら肉を狩り獲るクエストに勤しんだぞ!」

「キノコも獲るんですか?」

「キノコは色々と種類があって、回復薬の材料にもなるから知識は身につけておけば色々助かるよ。」

「まずは、肉以前に、採集クエストで、使えるモノと使えんモノの区別ができるようになることじゃな。」

「釣りはどうします?」

「それも含めて教えなさい。」

「つ、釣りも?」

「魚も武器の素材になるし、食べられものもある。」

「…やること、多っ。」

「虫の採取や、鉱物の採取のクエストもある。他にも飛竜の卵とかを運ぶ運搬クエストってのもある。」

「虫もですか…。」

「虫も武器の材料になるのがあるし、カエルなんかも釣りの餌になる。」

「か、カエルは、イヤ!」

「こらこら、好き嫌いはダメ。竜の中には、カエルを好む種類がいるから。カエルは必須だよ。」

「カエル食べる竜がいるんだ…。」

「その竜も、そのうち狩るからね。」

「その前に、基礎じゃ基礎!」

 

 

 こうして、第一回目の生肉納品クエストは、セエがこなして終わったのだった。




アプトノス狩りから躓く二人。
ハンターになる前から鍛錬を詰んできたセエには、大人しいから殺せないというのがよく分からない。

次回は、やっとアプトノスを狩ることに成功するサイトとルイズです。


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第二話  肉を手に入れよう  その2

やっと肉を獲ることに成功するサイトとルイズの話です。


そして、急展開。


 

 

「サイト、ルイズ。準備はいい?」

「はひ…。」

「…眠い。」

 翌日、生肉の納品のクエスト再トライのため、準備をした。

 のだが、元々一人暮らしのセエの家に急に二人の他人が押しかけてしまったのだ、当然だがベットがない。

 そこでと、アイルー・トウマがマットを引っ張り出してきて、床に敷き、そこで寝ろと言った。

 ルイズは、難色を示したが、急に押しかけたのはこちらなので文句は言えないとサイトが説得し、渋々床のマットで寝たのだった。

 元々、ベットのマットの換えとして倉庫にしまってあったものだから、埃をかぶっており、質も良くない。

 上流階級の生まれのルイズが、それで寝ることができず、またサイトも急に寝床が変わったことや、異世界に来た緊張から寝られず、二人は寝不足だった。

 体調がよくないことに、セエは、心配になったが、これからするクエストが草食のモンスター・アプトノス狩りであることを考え、なんとかなるだろうと思い、二人を連れて村長のところへ行った。

「おはようございます。」

「おはよう。おや? 眠れなかったのか?」

「はい…。」

「今日も昨日と同じ、生肉の納品のクエストをします。」

「今度こそ、アプトノスを仕留めるのか?」

「やらせます。」

「…やります。」

「うむ。では、クエストを手配しよう。」

 そうして、生肉の納品のクエストが始まった。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 森と丘には、昨日と変わらず、アプトノス達が草を食んでいた。

「危機感ねーのな…。」

 昨日、セエに一匹殺されているにもかかわらず、同じ場所でのんびりしているアプトノス達に、サイトは半ば呆れた。

「今日は…。」

「分かってます。」

 サイトが片手剣を抜いた。

 そして、ゆっくりと近づく。アプトノス達は、まったく気にしていない。

 そして、サイトが剣を振り上げた。

「っ、ごめん!」

 そして、ザシュッと音を立てて大きなアプトノスの身体に剣の刃が食い込んだ。

 鳴き声を上げたアプトノスは、尻尾を振ってサイトを弾いた。

「ぐえっ!」

「ちょ、反撃してくるなんて聞いてないわ!」

「アプトノスは、たまに反撃してくる奴がいるよ。」

「早く言ってよ!」

「ほら、早く仕留めないと、逃げるぞ!」

 セエが声をかける。

 先ほど切られたアプトノスが他の仲間と共に川に逃げようとしていた。

 立ち上がったサイトは、慌てて傷つけたアプトノスを追い、その背中に飛びかかるように斬りかかった。

 そして、断末魔の声を上げて、アプトノスが倒れた。

「次は、肉を獲る。昨日、俺がやったとおりにやってごらん。」

「は、はい!」

 慌てて、剣を鞘に収め、ナイフを取り出したサイトは、アプトノスの身体をナイフで切り裂いた。

 そして、ボロボロだが、生肉をとった。

「うんうん。初めてにしては上出来だ。」

「……。」

「まだ、可哀想だと思う?」

「…なんで、セエさんは、可哀想だとか思わないんですか?」

「…うーん。俺にとっては、当たり前だったからかな。」

「そうですか…。」

「じゃあ、次は、ルイズだ。」

「わ、私も?」

「サイトだけが肉担当ってわけにはいかないだろう?」

「…分かった。でもアプトノスは、もういないわ。」

「別の場所に移動しよう。大丈夫。アプトノスは、あちこちにいるんだ。」

「はい。」

 場所を変えると、すぐにアプトノスがいた。

 ルイズがヨロヨロとボウガンを構える。

「子供を狙おう。」

「えっ?」

「今のルイズじゃ、大きいのは仕留められそうにないから。」

「そんな…。」

「いいかい、ルイズ。狩るべき対象に、大も小もない。いいね?」

「……分かったわ。」

 ルイズは、セエから使い方を教わりながら、ボウガンを構えた。

 そしてのんびりと草を食んでいるアプトノスの子供に狙いを定める。

 そして発射される、弾。

 それはまっすぐに小さいアプトノスに命中し、小さいアプトノスは倒れて絶命した。

「……後味悪。」

「肉をとろう。」

 セエは、ルイズの呟きを聞かず、肉をとるよう促した。

 ルイズは、子供のアプトノスから肉を切り取った。

 

 そして、納品用の箱に生肉入れ、クエスト終了となった。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 村に帰るとすぐに村長に報告した。

「うむ。まあまあじゃな。」

「少し危なかったですが、なんとかなりました。」

「うむ…。肉の採り方もこれならばよいじゃろう。して、セエ。これからのことじゃが…。」

「はい。」

「わしらがこの二人にすべきこと、しないことなんじゃなが…。

 村長から提示されたのは以下の通りだ。

 

・最初は、新人ハンターに支給される基礎の武器と装備を与えられ、村長から出される課題のクエストをクリアしていくこと。

・集会所のクエストも可能だが、村長クエストより厳しいので採集以外では行っちゃダメ。ただしセエが集会クエストをしに行きそれに見学者として同行するのはOK。

・村の秩序に従ってもらう。破れば村から追い出す。

・強い装備は、自分で狩ったモンスターから採取したり、採集クエストを利用して得た鉱物などを自分が稼いだお金で作ってもらうこと。

・クエストによっては装備が左右されるため、装備や道具を充実させるために別のクエストをする必要があるなどのアドバイスをセエがする。(運搬クエストなど)

・回復薬や爆薬などの調合などの道具作りなどもセエが教える。材料は自分で買ったり、集めること。

・自分でクエストに挑む場合は、セエが立ち合い、死にそうになったらクエストを中断させる役をする。

・飛竜種との戦いでは、セエは一切手出しない。飛竜種クエストの討伐&捕獲はサイトとルイズがやること。

・飛竜種との戦いで死亡した場合は、一切責任は取らない。

 

 死んだ場合、一切責任はとらない……。

 それを聞いたサイトとルイズは、顔を青くした。

 彼らは、リオレウスなどの飛竜種がどれだけ強いのか知っている。それにセエが手伝ってくれないとなると……。

「分かりました。」

 セエは、そんな二人を後目に村長に返事をした。

「もちろん、ドロボーなんぞしたら、村から追い出すから、気をつけることじゃ。」

「うぐっ。」

 セエが持っているアイテムボックス内の余っている素材を…となんて少しでも考えたサイトを見透かしたかのように村長が言った。

「くれぐれも! 甘やかすでないぞ?」

「は、はい。」

 村長からの念押しに、セエは、返事をした。

「あの、村長。」

「なんじゃ?」

「彼らは、それなりに戦いを知っているようなので、ランポスの狩りをやらせてみては?」

「まだ早いじゃろう?」

「らんぽす?」

「小型の肉食モンスターだよ。」

「こがた…、ですか。」

「なんじゃ? 不服そうじゃな?」

「あ! いいえ、そんなこと…。」

「ランポスの恐ろしさを知らんからそんな顔が出来るんじゃ。一般人ならひとたまりもないから討伐クエストが多いんじゃよ。」

「そんな凶暴なの?」

「飛竜がいるところでもかまわずいるから、討伐の時に邪魔で邪魔で…。」

「怖いっていうか、邪魔なんですね…。」

「ランポスに攻撃された直後に、リオレウスにガブリッと…。」

「よく死ななかったですね!?」

「出血はしたけどなんとかなったよ。」

 アハハっと笑うセエに、サイトとルイズは、口元をひくつかせた。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 そして、ランポス狩りの日取りを決め、家に帰った。

「ランポスってどんなモンスターなんですか?」

「えーと、二本足で、顔が尖ってて、歯が鋭くて、身体が青くて、黒い縞模様があるかな。」

「え…それって…。」

「? 知ってるのか?」

「ええ…。」

「リオ…なんとかって竜とかの他にもなんか見たこともない奴がいて、たぶん、そのランポスって奴だと思うんです。そいつは、白くて…。」

「白ランポスか。ランポスの亜種だ。」

「…竜だけじゃないんだ……。」

 サイトとルイズは、自分達のいた世界に飛竜以外のモンスターも流出していることに暗くなった。

「ご飯できたにゃ。」

「さ、明日ランポスを狩りに行くんだから、英気を養おう。」

「はい。」

 

 そして、一日が終わった。




基礎からとはいえ、戦いを知っている二人のために、ランポス狩りを提案するセエ。
それが吉と出るか凶と出るか……。

次回は、ランポス狩り。(村長クエスト)


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第三話  ランポスを狩ろう

ランポス、三匹狩り。

そして最後に急展開。


 

 

「二人とも、準備はいいかい?」

「はい。」

「準備できたわ。」

「じゃあ、行こう。」

 セエは、大剣を背負い。サイトは、片手剣、ルイズは、ライトボウガンを重たそうに背負って家を出た。

「おはようございます。」

「うむ、おはよう。では、早速じゃな。」

「はい。よろしくお願いします。」

 セエが村長から村長クエストをもらい、三人は出発した。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 討伐対象のランポスがいるのは、森と丘。

「森と丘って、結構来るんですね?」

「飛竜の巣があるし、結構来るね。さあ、ランポスを探そう。」

「えっと…、三匹倒すんですよね?」

「倒した後、剥ぎ取りをするかどうかは自由だ。」

 サイトは、それを聞き流しながら、今回は楽勝そうだなっと思っていた。

 そして、セエに先導され、森と丘の中の、陰ったフィールドに入った。

「いた。」

 三匹のランポスがアポトノスの肉をむさぼっていた。

「ランポスは、群れで襲ってくるモンスターだ。一匹ずつ誘い出すという戦いは難しい。いっぺんに来るからうまく躱して確実に仕留めるんだ。」

「はい!」

「あ、気づかれた。」

 サイトの返事に気づいたランポス達が、吠えた。

「二人とも戦って。」

「は、はい! ルイズ、援護は頼むぞ!」

「え、ええ…。」

 その間にもランポスはこちらに向かって走ってくる。

 そのうち一匹がサイトに飛びかかってきた。

 サイトは片手剣を抜き、飛びかかってきたランポスを切りつけた。

 ギャアッ!と悲痛な鳴き声を上げて飛びかかってきたランポスは、地面に倒れ、すぐ起き上がった。

 残った二匹が左右からサイトを狙う。

 ルイズは、ボウガンの装填に手間取っていた。

「早くしてくれ、ルイズ!」

「ちょっと待ってよ!」

「いでーー!」

 背中をひっかかれ、サイトが悲鳴を上げた。

「サイト!」

「ほら、早くしないとサイト君が死んじゃうよ。」

「っ!」

「こな……くそーーーー!」

 サイトは、頬をひっかかれながら一匹のランポスの首を切った。そのランポスは絶命した。

 残る二匹がひるまず襲ってくる。牙が迫ると、サイトはしゃがんで避けてそのランポスの腹を大きく切り裂いた。切り裂かれたランポスは、断末魔の悲鳴を上げて死んだ。

「最後ーーーー!!」

 最後のランポスの頭に剣を突き刺し、ついにすべてのランポスが倒された。

「すごい、すごい!」

 セエが拍手した。

「じゃあ、次は剥ぎ取りだ。」

「…ふえ?」

 地面にへたり込んでいたサイトにセエが言った。

「ランポスの皮や牙は、武器や防具に使えるからね。」

「分かりました。」

 よっこいしょと立ち上がったサイトが、死んでいるランポスから皮や牙を剥いだ。

 何も出来なかったルイズは、ただその光景を見ていることしか出来なかった。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 報酬を受け取り、村に戻ってすぐに村長のところに向かった。

「ふむ、そこそこに苦戦したようじゃのう?」

 サイトの怪我を見て村長がそう言った。

「手貸してはおらんじゃろうな?」

「はい。サイト君一人で全部仕留めました。」

「ほう? 一人でか。」

 村長がチラリッとルイズを見た。ルイズは気まずそうに俯いていた。

「お主も最初の頃は、ボロボロになっておったのう。成長したわい。」

「ええ…。」

 村長がセエを見て言い、セエは気恥ずかしそうに頬をかいた。

「まあ、今もすぐボロボロになって来るのう。」

「俺は弱小ハンターですから。」

「あの…。」

「なんじゃ?」

「竜を狩るクエストは……。」

「まだダメじゃ。」

「ええー。」

 サイトの問いに、村長は即答した。

「あの、村長。」

「なんじゃ?」

「彼は少なくとも戦いを知っているようですし……、イャンクックくらいなら…。」

「じゃから、いきなり飛竜種はダメじゃ。」

「いゃん?」

「別名、怪鳥って呼ばれてる飛竜の一種だ。」

「どんな竜なんですか?」

「……例えるなら…鶏?」

「えっ? 弱そう。」

「こりゃ。」

 村長が怒った。

「イャンクックは、ハンターが最初に討伐する最初の飛竜種じゃ。じゃが、侮っておると、忽ちやられてしまう。一見鳥の習性を持つよう見えるが、動きが素早く、火も吐くのじゃ。セエ、お主も何度も苦渋を舐めさせられておるのに忘れたか!」

「すみません…。」

「結構強いってことですか?」

「飛竜種としては、小型な方じゃが、油断すれば慣れたハンターでも負ける。」

 サイトとルイズは、それを聞いて僅かに青ざめた。

 飛竜の恐ろしさは知っていたつもりだったが、小型と言われるそのイャンクックでさえ、慣れたハンターでも負けることがあるというのだから。

 村長は、少し考え、そして…。

「……お主らは、一度飛竜種の恐ろしさを身をもって知るべきじゃな。」

「えっ?」

「イャンクックの討伐クエスト。受けなさい。」

「いいんですか!?」

「死にそうになったら、助けるんじゃぞ?」

 村長はセエを見て言った。

 セエは、慌てて頷いた。

 

 こうして、飛竜・イャンクック討伐クエストの許可が下りたのだった。




手間取って何も出来なかったルイズ。
飛竜種の恐ろしさを身をもって知れと、イャンクック討伐クエストの許可が下りる。

しかし……、二人は悪夢を見ることになる。って展開になれば良いな…。


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第四話  イャンクック討伐 その1

村長クエスト、イャンクック討伐。


しかし……。


 

 

 馬車に送られて、ジャングルの到着した。

「蒸し暑い…。」

「これで暑いって言ってたら、この先やっていけないぞ。」

 ちょうど良い季候だった森と丘と違い、湿った暑さを感じるジャングルに、ルイズが文句を言うとセエが窘めた。

 そして、キャンプ地に到着した。

「じゃあ、まずは支給されている道具を取り出して。」

「はい。あれ? なんですか、コレ?」

「ペイントボール。竜を討伐する時は、これが必需品になる。これをぶつけることで逃げられても位置を把握できる。でも効果が限られてるから注意だ。」

 支給された道具を持てるだけ持って、キャンプ地から出発した。

「…ここにいるな。」

 セエが地図のある部分を指さした。

「なんで分かるんです?」

「そういう装備をしているからね。」

 そう言ってセエは、耳のピアスを触った。

「装備でそんなことができるんですか?」

「組み合わせ次第さ。今、俺は、千里眼というスキルを発動させてるから竜の位置が分かる。」

「……欲しいなぁ。」

「頑張って素材を集めて作りことだよ。」

 セエは、そう言って微笑んだ。

 そう言われてサイトとルイズはがっかりした。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 ジャングルの中を進んでいく。

 やがて……。

「ここだ。」

 セエが止まるよう制した。

 そしてセエがジャングルの木々の間を指さした。

 

 そこには、木々の間にピンク色の巨体が見えた。ちょうどこちらに背中を向けているが、長すぎず短すぎない尻尾があり、そしてピンクの鱗に覆われている。

 翼が左右にあり、どう見ても……鶏には見えない。

 

「なんですか? アレ? まさか…。」

「そう、イャンクックだ。」

「…で、でかくない?」

「あれでも小さい方だけど?」

「どこか鶏なんですか?」

「ほら、口が……。」

 言われてみると、確かに口が鳥のように形状になっている。

 しかし、デカい。あんなので突かれたら死ねそうだ。

 嘗めてかかってしまった!っとサイトとルイズは思った。ハンターが最初に討伐するという飛竜で、小型な方だと聞いていたが、人間と比較したらデカいのだ。

「さあ、やろう。」

 セエは、ニッコリと笑って行けと指さす。

「ま、待ってください! まだ心の準備が…。」

「あ、そんな大声出したら…。」

 すると、イャンクックが、ん?という感じで顔を上げた。

「イャンクックは、耳が良いんだ。ほら畳んであるけど、エリマキみたいな耳があるだろ?」

「それを早く言ってくださいよ!」

 っと小声でサイトは怒った。

「ほら、時間が経過するとクエスト失敗になる。急いだ方が良い。」

「……ルイズ。」

「わ、分かってるわよ。」

 二人は深呼吸し、意を決した。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 イャンクックに向かって、サイトは片手剣を抜いて抜き足差し足で近づいた。

 デカい!

 近寄れば近寄るほど、想像していた小型の竜の想像を上回る。

 鱗は筋肉の隆起によって、ごつく見え、怪鳥などという別名で呼ばれる理由が分からない。

 やがて、尻尾の下に入り込んだサイトは、剣を足に向かって振り下ろした。

 ガチンッ!

 っと音を立てて、剣が弾かれた。

「硬っ!」

 驚くサイトの存在に気づいたイャンクックが、甲高い鳴き声を上げてエリマキの耳を立てた。

 ブンッとイャンクックの尻尾が振られ、サイトが吹き飛ばされた。

「サイト!」

「ルイズ。」

 セエが構わずルイズに声をかけた。

 その間にもイャンクックは、尻餅をついているサイトの方に振り向き、大きなそのくちばしを振り下ろした。

 サイトは、間一髪で転がって避けると、サイトがさっきまでいた位置の地面が大きくえぐれた。湿った土と小石が飛び、サイトの顔の横に当たった。

 イャンクックは、口をパカッと開けて、火の玉を吐いた。小さい火だが人を丸焼きにするには十分な大きさだった。

 サイトは、大慌てで転がり火を避けた。

 フーフーと荒い呼吸をして急いで立ち上がると、イャンクックが身体を回転させて尻尾攻撃を行ってきた。

 盾を使って防ぐ。盾の上を滑るように尻尾が頭上を横切った。

 次の瞬間、ルイズがライトボウガンで矢を撃ちこんだ。

 カンッと音を立てて矢が弾かれた。

「効かない!?」

「撃ち込んだ位置が悪いな。硬いところと柔らかいところがあるから。」

 セエがなんてこと無いように言った。

「どこよ! 柔らかいところって!?」

「…えーと…、お腹? あと頭とか?」

「無理よ!」

「まあ、初心者用の武器だし、切れ味が足りないから弾かれちゃうんだ。でも、ダメージがないわけじゃない。」

「サイト! お腹が弱点よ!」

「そ、そんなこと言われても…。」

 サイトは、せわしなく動くイャンクックの下には入れず一定の距離を取ろうとしていた。

 だが距離を離すと、イャンクックが火を吐いたり、ドスドスと鶏のようにくちばしを突き出して距離を詰めてくる。

 ルイズは、必死になってボウガンを撃つが、ほとんどが外れて、当たっても大して怯まない。

 ふいに、甲高い鳴き声を上げながらイャンクックが突撃してきた。

「うわっ!」

 サイトは間一髪で横へ飛び、その突撃を避けた。

 突撃の後、イャンクックは、翼で羽ばたきながら火を吐いて大きく後退した。

「あちちちち!」

 すぐに消える火だが、熱はある。熱風を浴びてサイトは顔を腕で覆った。

 甲高い鳴き声を上げて、再びイャンクックが突撃してきた。

 ガバッと口を開けたイャンクックが、サイトの腕を噛んで振り回した。

 そしてパッと離し、その勢いで投げ出した。

 振り回された反動で、肩が外れたサイトは、肩を押さえて呻いた。

 イャンクックがトドメを刺そうとくちばしを振り上げようとした。

 

「ここまでだね。」

 

 次の瞬間、ザンッ!と、イャンクックの首めがけてセエが大剣ガノトトスを振り下ろしていた。

 大きく切られたイャンクックは、悲鳴を上げ、サイトから離れた。

 続けざまに横切りをして、胸、腹、足と切りつける。

 やがて黒い煙を吐いてイャンクックは、飛び跳ねた。

「イャンクックは、ある程度ダメージを与えると怒り状態になる!」

 セエは、そう言いながら剣を盾にした。

 次の瞬間、火を吐きながら翼で羽ばたきながら後退するイャンクック。明らかにスピードが違う。

 セエは、剣を背負い直し、イャンクックから一定の距離を保ちながら走り出した。

「怒ると攻撃力が上がるから、怒りが治まるまで待つ! 攻撃しても良いけど!」

 走り回っている間にも、イャンクックは、セエを追いかけて火を吐いたりする。

 それを避けているうちに、イャンクックの口から黒い煙が消えた。

 エリマキの耳を畳み、イャンクックは、翼を広げて飛び立っていった。

「イャンクックは、臆病だから、ピンチになるとよく逃げる。弱ってくると耳を畳む。逃げられる前に、先にペイントボールを投げつけておくといい。じゃ、追いかけよう。」

「うぅっ……。」

「無理よ、この怪我じゃ…。」

「いいから立って。回復薬を使って。時間が経つと相手は眠って回復を図るから。急ぐ!」

 肩が外れているサイトを気遣わず、厳しい声でセエは言った。

 サイトは、なんとか立ち上がり、回復薬を無理矢理飲んだ。それを見たセエは、背中を向けてイャンクックを追いかけだした。二人は見失わないように必死になって追いかけた。

 イャンクックは、いくつかのエリアを抜けた先にいた。

 こちらを見つけると、まるで自棄を起こしたように突撃してきた。

 セエは、剣を抜き、大きく振り上げた。

 そして眼前に迫ったイャンクックめがけて大剣を振り下ろした。

 イャンクックは、断末魔の声を上げて、横に倒れた。

「……どうだった? 二人とも。」

 セエは、イャンクックの鱗や皮を剥ぎ取りながら聞いた。

 サイトとルイズは、黙っていた。

 剥ぎ取りを終えたセエは、そんな二人を見つめていた。

 

 やがてクエスト終了のファンファーレが聞こえ、報酬を受け取った後、村に帰った。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

「予想通りじゃな。」

 村に帰って村長のところに行くと、まずそう言われた。

「分かったじゃろ? 飛竜を倒すには、まずは基礎を叩き込むのじゃ。イャンクックは、虫や穀物を好む比較的温厚な飛竜じゃが、縄張り意識が強い。ゆえに、縄張りに入ってきたハンターにやたらと好戦的なんじゃ。こりゃ、聞いておるのか?」

「…ソッとしといてあげた方が…。」

「セエよ。」

「はい…。」

「イャンクック討伐を提案したのはお主じゃ。」

「…はい。」

 セエは、己の浅はかさを悔やんだ。

「これを教訓に、基礎に励みなさい。」

 村長がそう言うが、サイトとルイズは俯いたまま黙っていた。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 家に帰ると、トウマが出迎えた。

「にゃー、災難だったみたいにゃね?」

「なんだ聞いたのか?」

「ご主人も厳しいにゃね。」

「だって……、厳しくしないといけないって言われたから…。」

 セエは、ばつが悪そうに言った。

「あんなに硬いなんて聞いてない!」

 今まで黙っていたサイトが叫んだ。

「部分によっては、刃は通るよ…。それに弾かれたからってダメージがないわけじゃないし。」

「どこが弱い飛竜なんですか!?」

「そうよ! あんな強いなんて聞いてないわ!」

「ご主人を責めるのはお門違いにゃ。」

「おまえは黙ってろよ、猫!」

「アイルーにゃ。弱いお前らが悪いのにゃ。悔しかったら強くなるのにゃ。」

 そう言われてサイトとルイズは、悔しそうに顔を歪めた。

「ご主人も、イャンクック討伐にはずいぶんと苦戦したにゃ。何度も何度も諦めずに挑んだにゃ。お前らはまだ一回しか戦ってないにゃ。甘いにゃ。」

 トウマにズバズバと言われ、サイトとルイズは、俯いた。

「いや……、俺もイャンクックくらいならいけるなんて、思ったのが悪いんだ。そのせいでサイトに怪我をさせてしまった。」

「いいんです…。俺が弱いのが悪いんですから。」

 サイトは、震える声でそう言いながら拳を握りしめた。

 セエは、オロオロとした。

 自分の提案が二人の自信を無くさせてしまった。

「だーーーもう!」

 サイトが急に叫んで、両手で自分の頬を叩いた。

「サイト?」

「俺、強くなる! 絶対強くなる!」

「う、うん…。」

「サイト…。無理しちゃダメよ?」

「いいや! あの鳥! 絶対倒す! じゃないと、学校を襲ったあの竜に届かねぇから!」

 学校を襲った竜とは、リオレウスのことだった。

「セエさん!」

「えっ? なに?」

「イャンクックにリベンジしたいっす!」

「えっ…でも…。」

「最初に倒す竜なら、初心者用の武器で倒せるって事ですよね!? だから倒せるはず!」

「……いいの?」

 サイトの強いまなざしを受け、戸惑いながらセエは言った。

「たぶん村長は許してくれないよ?」

「なら、倒せるだってことを見せつけるだけっす!」

「……そうか。」

 セエは、そう返事をした。

 

 翌日……。

 

 村長にイャンクック討伐クエストのリベンジを頼んだが。

「ダメじゃ。」

 あっさり却下された。

「じゃあ、やるべきことを教えてください。」

「セエ…。」

「俺だってクリアすべきことをクリアしてイャンクックを倒しましたから。二人にもソレが出来れば…。」

「……まったく。」

 村長はヤレヤレとため息を吐いた。

「では、ドスを倒してみよ。」

「どす?」

「ランボスや、ゲネポス、イーオス、ガレオスには、ボスがいるんだ。ボスのことを、ドスって呼ぶ。」

「ドスランポス、ドスゲネポス、ドスイーオスを倒してみよ。そしたらイャンクックのリベンジを許そう。」

「ドスガレオスは?」

「ありゃイャンクックより強い。無理じゃ。」

「ですよねー。」

「えっ? 同じドスなのに、そいつだけ別格なんですか?」

「ドスガレオスは、別名、砂魚竜って呼ばれてる砂に住むデカいモンスターなんだ。倒すのが面倒というか……、ちょっと特殊でね。」

「イャンクックを討伐できたら、挑戦してもよいぞ。」

 そう言われて、サイトとルイズは、顔を見合わせた。

 

 

 こうして、ドス系(ガレオス以外)の討伐が目標となった。




実際のゲームの村長クエストのイャンクックは、最弱です!
こんなに強くありません!
でも筆者は、ゲームで村長クエストのイャンクックに何度も負けました!(下手)


次回は、ドス系狩り(ガレオス以外)。

とりあえず、今(2018/06/27)書けているのはここまでです。


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第五話  ドス系(ガレオス以外)を狩ろう

ドス系は、ガレオス以外は、基本同じなのでかなり簡略化されてます。


 そして、ガレオス以外のドス系モンスター討伐クエストに挑むことになった。

 

 まず、ドスランポス。

 

 森と丘へ行き、ドスランポスを探すのだが……。

 

「ランポスだらけじゃないっすか!」

「ドスランポスは、群れのボスなんだから、他のランポスがいても不思議じゃないよ。」

 そう、ドスランポスを探すまでに、無数のランポスがいるエリアを通らないといけないのだ。当然こちらを見つけたランポス達は集団攻撃を行ってくる。

「そうそう、ドスランポスは、基本他のランポスと習性は同じだけど、ある程度するとエリアを移動するんだよな。」

「えー! つまりこの群れをかいくぐりながら仕留めろってことですかー!?」

「そういうこと。」

 ダッシュで逃げながらドスランポスを探ししつつそんな話をした。

 体力がないルイズが遅れだすので、ランポスから守りつつ進む。

 そして……。

 

「いた!」

 

 赤いトサカ、他のランポスより大きな身体、大きな爪。

 ドスランポスをついに発見した。

 ドスランポスがすぐにこちらの存在に気づくと、甲高い鳴き声を上げた。すると、他のランポス達がゾロゾロと集まり襲ってきた。

「サイト、ルイズ!」

「はい! やるぞ、ルイズ!」

「分かってるわよ!」

 サイトが前に出てランポス達を攪乱。そしてルイズが必死にライトボウガンから弾を発射してランポスを仕留める。

 やがてサイトがドスランポスに接近した。ドスランポスは逃げずに、大きな口を開けてサイトに襲いかかった。

 それを横に転がって避け、横から片手剣で切りつける。

 ギャアッ!っと叫び声を上げたドスランポスが、横を向いて爪を振り上げる。それを盾で防ぐ。

 そして懐に飛び込んで腹と胸を切りつけた。

 更に大きな悲鳴を上げたドスランポスは、背中を向けて走り出した。

「逃がすかよ!」

 サイトがその背中を追いかける。

「待って、サイト!」

 ルイズが大慌てでライトボウガンを背中に背負ってサイトを追いかけた。見守っていたセエも、その後を追った。

 

 次のエリアで、ドスランポスは、追ってきたサイトの方に振り返った。

 そして再び鳴き声を上げ、ランポス達を呼ぶ。

 しかし、ランポス攻略を覚えたサイトは、それをかいくぐり、ドスランポスにすぐに接近した。

 そんなサイトの後ろからランポス達が襲いかかろうとすると、遅れて来たルイズがライトボウガンを撃ってランポス達を仕留めた。

「うおぉぉぉぉ!!」

 そして、ドスランポスの胸に、心臓に、サイトは剣を突き刺した。

 ドスランポスは、断末魔の声を上げて絶命した。

「いっっっよっしゃああああああああああああああああああ!!」

 サイトは、渾身のガッツポーズを取った。

「やったわね、サイト!」

「さ、剥ぎ取り、剥ぎ取り。」

 喜び合う二人に、嬉しそうに笑っているセエが言った。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 報酬を受け取り、報告を終え、補給もした。

 次に狙うは、ドスゲネポス。

 ドスゲネポスは、沼地にいる。

 

「霧、すご!」

 

 初めて来る場所に、サイトもルイズも戸惑った。

「セエさん。ゲネポスってどう違うんですか?」

「身体が、緑っぽい色をしてて…、あと、牙に麻痺する毒があるってことかな?」

「麻痺…ですか?」

「効果は短いけど、麻痺で倒れたところを攻撃されるのは痛い。」

「うわっ、地味に厄介ですね!」

「でもそれ以外は、ランポスとそう変わらないかも。さあ、行こう。」

 キャンプ地で支給品を取り、ドスゲネポス探しに入った。

 

 霧の深いエリアを抜けると、霧の無い、沼地エリアに入った。

 浅いが、ドロと濁った水があり、ルイズが心底嫌がったが、先を進んだ。

 そこには、ランポスに似ているが、ランポスと違い、緑と茶色の体色のまだら模様をしているモンスター達がいた。

 

「あれがゲネポスだ。」

「色が違うけど、ランポスに似てますね。」

「習性もランポスそっくりだから、攻略方法も一緒と考えていいと思う。だけど麻痺にだけは気をつけるんだ。」

「分かってますよ!」

 そう言いながらサイトは、片手剣を抜いて、襲いかかってくるゲネポスに立ち向かった。

 すると、遠くから、普通のゲネポスより一回り大きいゲネポスが走ってきた。

「ドスゲネポスだ!」

 セエが叫んだ。

 その声に気を取られたサイトは、目の前にいたゲネポスに噛まれた。

 その瞬間。

「!?」

 全身から力が抜け、沼のドロの上に倒れた。

「サイト!」

 ルイズが悲鳴を上げた。

 倒れたサイトに向かってゲネポス達が襲いかかろうとした。

 ルイズは、急いでライトボウガンに弾を装填しゲネポス達に向かって撃った。

 大半は外したが、注意を引くには十分だった。

 8秒ほどしてサイトが起き上がった。

 そこにドスゲネポスが迫る。

「ペッペッ! ドロが口に入った!」

 口に入ったドロを吐きながら盾で、ドスゲネポスの攻撃を防ぐ。

 麻痺する毒を持つ以外は、ランポスと攻撃の仕方などはほとんど一緒だった。

 ドスゲネポスの横に回り込み、身体を切りつけ、逃げ出したら追いかけ、仕留めた。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 報酬を受け取り、村で補給をして、最後の獲物であるドスイーオスを狩るために出発した。

 ドスイーオスは、ジャングルにいた。

 

「イーオスって…、あ、いいです、ランポスと似てるんですよね?」

「習性はランポスそっくりだけど、こっちは、身体が赤くて、口から毒液を吐くってことかな。」

「麻痺じゃなくて?」

「猛毒。浴びたら、しばらく体力を奪われ続ける。」

「死なないの!?」

「体力が残り少ないと下手すると死ぬ。けど、時間が経てば消える。」

 なんてこのないように言うセエに、サイトとルイズは、顔をひくつかせた。

 

 

 そして、ジャングルの中に入るのだが、件のイーオスだらけだった。

「毒液に気をつけて。」

「うぉぉおおお! 紫色の液体がーーー!」

「あ、それ毒液。」

 早速毒液を口から吐いてくるイーオスからサイトは逃げ回った。

 毒液を吐くといっても、そんな頻繁にではない。

 毒液に気をつけて、エリアを移動すると、一回り大きいイーオスを見つけた。ドスイーオスである。

 サイトが早速とドスイーオスに迫った。

 その時だった。

「きゃああ!」

 ルイズの悲鳴が聞こえて、そちらを見ると、ルイズに一匹のイーオスが毒液を浴びせていた。

「ルイズ!」

 サイトが慌てて引き返し、ルイズの近くにいるイーオスを倒した。

「うぅう…。」

「毒にやられたのか! セエさん! どうしたら!?」

「げどく草、買っただろ?」

「! ルイズ! これ使え!」

 大慌てでげどく草を使う。

 だが……。

「き、効かない!? セエさん、どういうことですか!?」

「あ、そうか…。げどく草だけじゃ、確率50パーセントだった。」

「なんですか、それ!?」

「もう一回! まだあるだろ!?」

「今度こそ…、どうだ? ルイズ!」

「…うん…。大丈夫、もう消えたと思うわ。」

 白い顔で汗をかきながらルイズは、サイトに笑顔を向けた。

「よかったぁぁぁ…。」

 サイトは、ルイズを抱きしめて泣きながら言った。

「もう、大げさよ。」

「だって! ルイズが死ぬかもしれないって思ったら…。」

「サイト…。」

「ルイズ…。」

 その時。

 

「二人とも…、悪いんだけど、クエスト失敗だ。時間切れで……。」

 

 

 

 なお、後日、ドスイーオスを狩った。




ドス系は、書くのは結構難しかった……。基本的に他のと同じだから。

次回は、イャンクック討伐クエスト、リベンジ。


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第六話  イャンクック討伐  その2

イャンクック討伐クエスト、リベンジ。


 ガレオス以外の、すべてのドス系を倒し、村長のもとへ行った。

 報告を受けた村長は、腕組みをして考え込んでいた。

「村長。」

「……セエよ。」

「はい。」

「お主、調合を教えておらんのか?」

「は、はい…。」

「調合は死活問題じゃ。その場で調合できるかできんかで、生死が分かれることもある!」

「すみません…。」

「あ、あの、イャンクックのことは?」

 村長が説教している最中、サイトが怖ず怖ず聞いた。

「…まあ……、いいじゃろう。イャンクックの討伐クエストを許可しよう。」

「やった!」

「やったわね、サイト!」

「しかし! 死にそうなっても知らんぞ。」

「同じ失敗はしませんから!」

「それと、セエ! お主、クエストが終わったら、二人に調合と素材の見分け方を教えるんじゃぞ!」

「はい!」

 

 こうして、イャンクック討伐クエスト、リベンジが決行されることになった。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 そして。

「やってきました! ジャングルーーー!」

 テンションMAXのサイトが声を上げる。

「サイト、ずいぶん嬉しそうだね?」

「だって、今度こそアイツ(イャンクック)倒せるかと思うと!」

「いやいや、まだ倒せるとは限らないから…。」

 セエが半ば呆れながらツッコんだ。

 

 そして、支給品を取り、イャンクックを探した。

 

 イャンクックは、あのときと同じエリアにいた。

 

「今度こそ負けない!」

 小声でそう決意の言葉を言ったサイトが片手剣を抜いて、抜き足差し足でイャンクックに近づいた。

 その時。

 パキッと、サイトは落ちていた太めの枝を踏んでしまった。

 次の瞬間、サイトの存在に気づいたイャンクックがエリマキのような耳を広げ翼も広げて鳴いた。

 振り向き、火を吐く。

 サイトは、横に避けて、イャンクックの横腹を切った。

 イャンクックは、大きなくちばしをサイトに振り下ろそうとした。

 それを盾で防ぐ。

 ルイズが撃つライトボウガンの弾が、ドスドスとイャンクックに当たり、徐々にではあるが、体力を削る。

 そして、イャンクックの下にうまく入り込んだサイトが、イャンクックの胸と腹を大きく切った。

 悲鳴を上げたイャンクックの耳が、やがて畳まれた。

 そして翼を広げ、飛んで逃げていく。

「あっ! しまった! どこに逃げたかわかんねーー!」

「ペイントボールを最初に投げとかないと。」

「それを早く言ってくださいよ!」

「俺はあくまで見守りだから。」

 そして、エリアを廻ってイャンクックを探した。

 幸いなことにすぐに見つかった。

 立って寝ていたイャンクックは、サイトが接近し、腹を切りつけるまで起きなかった。

 少しだが体力を回復させたイャンクックが怒り、黒い煙を吐く。

 そして、突撃してきてサイトを弾き飛ばした。

「ぐぅ!」

「サイト!」

 攻撃力が1.5倍になった突撃に、サイトは呻きながらなんとか立ち上がった。

 そして、必死に逃げる。イャンクックの怒りが治まるまで。

 やがて、イャンクックは、黒い煙を吐かなくなった。

 そこを狙ってサイトが攻撃する。

 足の内側を狙って切りつけると、イャンクックは、横に倒れもがいた。

「うぉおおおおおおおおおおお!!」

 サイトは、倒れたイャンクックの頭にとどめの一撃を加えた。

 イャンクックは、断末魔の鳴き声を上げて、息絶えた。

 イャンクックを倒し終えたサイトは、その場に膝をついた。

「サイト! やったわね!」

「ああ…。いててて…。」

 さっきの突撃で肋骨を折っていた。

「さ、剥ぎ取り剥ぎ取り。」

「…容赦ないですね。」

 怪我を気遣わず剥ぎ取りを急かすセエに、サイトは苦笑いを浮かべた。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 村に戻り、村長のところへ行った。

「よくやったようじゃな。」

「はい!」

「うむ。では、お主らを、ハンターとして認め、登録しよう。」

「ありがとうございます!」

「まさか、二回目で倒すなんて…。」

「うむ、セエ、お主より強いようじゃな。この二人は。」

「ははは……。」

「じゃが、油断は禁物じゃ。慢心は油断を生む。」

 村長が厳しい口調で言った。

「イャンクックを倒したからと慢心せず、励みなさい。そして、セエ。この子達に、調合と素材の見分け方をしっかりと、教えるのじゃぞ。」

「は、はい!」

「えー。討伐クエストの方が良いな。」

「こりゃ! 調合も素材の見分け方もできんで、ハンターがやれるか! 撤回じゃ! お主らは、“仮”ハンターとして様子見じゃ!」

「ええー、そんなー!」

 サイトの迂闊な言葉によって、二人はハンターとして認められなかったのであった。




まだ、調合と素材のことを教えてなかったセエでした……。

次回は、調合と素材集め。


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第七話  調合と、素材集めをしよう

今回は、調合と、素材集め(キノコが主)。


 

 

「はぁぁぁ…。」

「ため息はやめるんだ。」

「だって、面倒なんですもん。」

 イャンクック討伐クエストを終えた後日。

 サイトの怪我が治ってから、調合と素材の見分け方の勉強となった。

 基本的に家でやる。最近、狩り場で動いてばかりだったので、窮屈に感じているのだ。

「じゃあ、まずは調合だけど。これは、基本的に、二つの素材から作る。例えば……。」

 セエは、アオキノコと、薬草を出した。

「この二つで、回復薬が作れる。素材さえ現場で獲れれば、その場でこれを作れて補給も出来るから、覚えておかないと。」

「どういうところで採れるんですか?」

「薬草は、意外とそこら辺に生えてる。アオキノコは、キノコが生えてる場所を探れば見つかる。キノコを見つける方法として、モスっていうモンスターを利用するって手もある。」

「もす?」

「背中にコケが生えた、豚みたいなモンスターだ。モスは、キノコが好物だから。」

 セエは、絵を交えて、どういうところに薬草などが見つかるか教えていった。

「そして、回復薬は、さらにパワーアップさせることができる。」

「どうやって?」

「コレをかけ合わせるんだ。」

「ハチミツ?」

「そう、ハチミツだ。これを合せると……、あっ、失敗した。」

「ええーーー!?」

「調合は確率があって……、上質な薬ほど失敗しやすいんだ…。でも回復薬は、まだ作りやすい方だよ。」

「失敗の確率を抑えるアイテムもあるにゃ。」

 そう言ってトウマがアイテムボックスから、本を出した。

「調合書にゃ。これがあるのとないとじゃ失敗のリスクが違うにゃ。」

「それ欲しいわね。」

「自分で買うにゃ。」

「いくらするんですか?」

「一番安くて、100G。高くて、1500Gかな。」

「五冊あるにゃ。」

「高っ!」

「でも、値段相応かそれ以上の効果が得られるにゃ。」

「クエストを地道にクリアしていけば、お金も貯まるよ。」

「むむぅ…。」

「そうだ。採集クエストをしないか?」

「さいしゅう?」

「特産キノコの採集だ。」

「とくさん、きのこ?」

「クエストは色々とある。食用キノコの納品も立派なクエストさ。」

「えー、つまらなさそう。」

「こら。クエストに良いも悪いもないからね。」

「はーい。」

 

 そして、特産キノコの納品クエストに挑むことになった。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 特産キノコの納品クエストは、森と丘で行う。

「ほら、あれが、モスだ。」

 日陰になっているエリアに、背中にコケが生えた豚のようなモンスター達がいた。

「ほんとにブタみたいなモンスターなんですね。」

「基本大人しいけど、攻撃を加えたら攻撃してくるから気をつけて。ちなみに、モスからも肉は採れるし、たまにキノコが採れる。」

「えっ? なんで?」

「さあ? 背中にコケが生えるくらいだし、キノコも生えるじゃないのかな?」

 あまりそういうことは考えたことがないので、セエは腕組みして首を傾げた。

 遠目にモスを見ていると、モス達は、ある場所を鼻で探り出していた。

「あそこにキノコがあるな。」

「分かりやすいですね。」

「さ、採集しよう。」

 そう行って、セエが二人を連れて、モス達のところへ向かった。

 モス達は、まったくこちらに興味も関心も示さず、鼻でキノコを探っている。

 横から手を伸ばしてキノコを採っても怒ったりしない。

「これが、特産キノコ、こっちがアオキノコ。そしてこっちが……、ニトロダケ。」

「にとろ?」

「これ、爆薬の材料になるんだ。」

「ニトロ…、ニトロ…、どっかで聞いたことがあるような?」

 ちなみに、サイトが言いたいのは、ニトログリセリンのことだ。サイトの元いた世界では、狭心症の薬や、ダイナマイトの材料となっている。

「なにせ爆薬の材料だから、火薬草があるときとは、混ぜる予定が無いなら、混ざらないように気をつける。」

「どうして?」

「火薬草と、ニトロダケで、爆薬ができるからだ。」

「あー、なるほど。」

 もし火がついて、爆発したら大惨事だ。

「で、こっちが、毒テングダケ。食べると、毒状態になるけど、50パーセントで、最大体力を増減させる効果がある。」

「いやいや、毒になるのってヤバいでしょ?」

「これと、生肉を合せると…、毒生肉ができる。これを肉食の飛竜に食わせれば…。」

「毒状態に?」

「そう。で、こっちが、マヒダケ。名前の通り、麻痺させるキノコ。これも生肉と合せると、シビレ生肉になる。」

「食べさせれば、竜は痺れるのね?」

「そう。」

「イャンクックの時に使ってれば…。」

「イャンクックは、虫と穀物を食べる飛竜種だから、肉は食べないよ。」

 そして、特産キノコを必要な分だけ採り、そして薬草などが採れる場所、ハチミツが取れる場所、クモの巣や虫が捕れる場所などを教えて、キャンプ地へ戻り、特産キノコを納品した。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

「なんか、使えなさそうな物ばっかですね…。」

 村に戻り、収穫してきた素材を見てサイトが言った。

「クモの巣は、ツタの葉と合せると、ネットになる。ネットは、トラップツールと合せることで、落とし穴になる。」

「落とし穴?」

「うまく飛竜を落とせれば、一定時間拘束できる。捕獲クエストじゃ、必需品だ。」

「そういえば、捕獲もするって言ってましたっけ?」

「討伐クエスト、捕獲クエスト、飛竜種を相手にするクエストは、だいたいこの二つだね。」

「だいたい? 違う場合も?」

「……ラオシャンロンの場合は、倒すか、別方向に方向転換させるかなんだ。」

「そのラオシャンロンって、山のように大きな竜でしたっけ?」

「そう。視界に収まらないほどデカい竜だ。」

「そんな竜も相手に……。」

「いつか……、君達もラオシャンロンに挑むことになるかもね。」

「そ、それは……できれば避けたいわね。」

 そんな山のように巨大な竜を相手にはしたくないというのが、二人の思いだった。

「けど、君達の世界にもラオシャンロンがいるんだろう? だったら戦い方を知っておかないと……、大切な人が住んでいる場所を踏み潰されるよ?」

「それは…。」

「いつか…。今は無理だけど。その時は来るよ。それまでに、強くなろう。」

 セエは、そう言って微笑んだ。

 その微笑みは、どこか気を張っているような、無理をしているように見えた。

「…はい!」

 二人は、その違和感を感じながらも返事をした。

「そうだ。せっかくだし、イャンクックの捕獲クエストをしてみない?」

「はい?」

 急な話の展開に、二人は頭が追いつかなかった。

「倒すんじゃなくて、生かして捕獲する……、正直、ただ倒すより難しい。」

「あの鳥モドキを?」

「飛竜だ。捕獲クエストは、難しいけど、報酬もいいんだ。もらえるアイテムも豊富だし、それに……。」

「それに?」

「実は、次に討伐してもらおうって思ってたモンスターに、絶対必要なアイテムがあるんだ。それを調合するには、爆薬とイャンクックの鳴き袋がいる。」

「なきぶくろ?」

「それに、装備ももっとグレードを上げよう。イャンクックを使った鎧を作ろう。」

「…それ、何匹くらい倒さないといけないんですか?」

「さあ? 材料が揃うまで頑張ろう!」

 オーッ!と手を上げるセエの姿に、サイトとルイズは、口元をひくつかせた。

 あんな苦労したイャンクックを何回も倒さないといけないのかと思うと……。

 しかし、そんなサイトとルイズの気持ちなどお構いなしに、セエは、イャンクック捕獲クエストの日取りについて話を進めていた。




筆者は、調合には、攻略本と、攻略サイトが手放せませんでした。

クックシリーズの装備は、序盤でお世話になりました。

次回は、捕獲クエストに挑む。
爆薬と鳴き袋……、この組み合わせで出来る物を必要とするモンスター……。たぶん分かると思います。


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第八話  イャンクックを捕獲しよう

セエは、指導者としてはかなり未熟者です。
ずっとソロでやっていたツケが回ってきてしまったというこにしましょうか…。

今回は、イャンクック捕獲クエスト。
そして、武器のパワーアップなど。(今までサイトは、ハンターナイフでやってました)


 

 

 結局、流される形でイャンクック捕獲クエストに挑むことになった。

 今までのクエストで稼いだお金でトラップツールを買い、調合で作ったネットをかけ合わせて落とし穴を作っておいた。

「一個しか持てないんですね…。」

「あんまり大荷物だと狩りに支障が出るからね。」

 念のため、その場で落とし穴を作れるようにトラップツールをもう一つ買い、ネットを持っていくことにした。これは、セエもやっていることで、捕獲クエストでは、飛竜へのダメージ量によって捕獲の成功が別れるため、失敗したときの備えて多めに持っていっている。手荷物は増えるが、クエストを確実にこなしたいなら用心に越したことは無い。

 回復薬などもサイトとルイズが調合して自分達の分は用意した。

「……なるほど、捕獲クエストか。」

「討伐より難しいし、必要な物があるんです。」

「それはなにかね?」

「鳴き袋です。」

「…ふむ、アレを討伐させる気か。」

「はい、アレです。」

「アレって?」

「それは、準備が整ったらのお楽しみだよ。」

 セエは、そう言って微笑み。また村長も話してはくれなかった。

 

 そして、イャンクック捕獲クエストの手続きが済み、出発した。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 捕獲クエストのイャンクックは、ジャングルではなく、森と丘にいた。

「生息地って決まってないんですね。」

「森と丘は、飛竜の巣があるからね。」

「捕獲っていってもどうしたらいいの?」

「まず弱らせる。」

「戦うんですね。」

「次に巣に逃げ帰ったところを、落とし穴を用意し、はめる。」

「それだけ?」

「はめたところを、捕獲用麻酔玉か、捕獲用麻酔弾で、眠らせる! 以上!」

「あれ? 簡単?」

「ただし! 一定以上弱らせないと、麻酔玉で眠らせてもクエストは達成にならないから。」

「えっ? なんで?」

「クエスト達成には、ある程度の基準があるからね。殺しちゃいけないから、加減が…。」

「ちょっと、緊張してきた…。」

「俺も捕獲クエストは、いつも緊張するよ。」

「でも、落とし穴って、穴掘らないと…。」

「安心して、この落とし穴の罠は、設置するだけで、ブワッ!って広がって落とし穴が出来るんだ。人間の重さじゃ反応しないから安心して。」

「意外とハイテク。」

 

 そして、支給品の中から、捕獲用麻酔玉と、捕獲用麻酔弾などを取り出し、イャンクック探しをした。

 

「いた…。」

「普通に戦えばいいんですか?」

「そう。耳がしおれて、足を引きずって逃げるまでやるんだ。ペイントボールも忘れずに。」

「はい。」

 前回の失敗について、村長にこってり怒られ、セエはちゃんとそう指示した。

「ルイズも、イャンクックの様子に気をつけて攻撃するんだ。」

「分かってるわよ。」

 まず、サイトが抜き足差し足で、イャンクックに近づく。

 しかし、イャンクックがクルッと急に振り向き、サイトの存在に気づいた。

 イャンクックが動くより早く、サイトが腹の下に入り込んで、腹を切りつけた。

 イャンクックがサイトに向かってくちばしを振り下ろす。それを盾で防いだ。

 ルイズが弾を撃ち、イャンクックの体力を削っていく。

 ジャングルのいたイャンクックとほとんど変わらないため、やがてイャンクックの耳がしおれた。

「よし!」

「いや、まだだ! 足を引きずってない!」

「えっ? うわちちちちち!」

 耳がしおれたので安心したところに、イャンクックの火が飛んできてサイトは、少し炙られた。

 ルイズも耳がしおれたので安心してしまったため、弾の装填に手間取った。

「この!」

 サイトがイャンクックの顎下を切りつけた。

 するとイャンクックは、尻尾を振り回し、サイトを弾くと、足を引きずって、それから飛び去っていった。

 飛び去る直後に尻餅をついていたサイトが慌てて、ペイントボールをイャンクックに当てた。

「よっしゃ!」

「じゃあ、追いかけよう。」

 地図を見ると、ペイントボールを当てた効果で、イャンクックがどこへ飛んでいくかが見えた。

「…ち、地図なのに、なんで分かるんだ?」

「さあ?」

 セエは、そういうことは深く考えたことがないので首を傾げた。

「そういえば、セエさんは、スキルってのを使ってるから、竜がどこにいるか分かるんですよね?」

「そうだよ。ペイントボールをつけたようにずっと見える。」

「…なんかゲームみてぇ。」

「は?」

「いや、こっちの話です。」

「それより急ごう。巣に逃げ帰った竜は、寝て回復するから、せっかく削った体力を回復されたら振り出しに戻る。」

 三人は、急いでイャンクックが逃げた場所へ向かった。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 飛竜の巣は、高所にあった。

「手が届かないー!」

「ほら、手ぇ出せ! 引っ張り上げるから。」

 背が低いルイズでは、上れなかった。

 サイトが先に上って手伝い、ルイズをあげた。

「この先にいる。落とし穴の設置の用意をして。」

「分かってますよ。」

 そして三人は巣の中に入った。

 巣の中は、洞窟になっており、無数の動物の骨が土に混じって転がっており、その中央にイャンクックが眠っていた。

「ここって、よくランポスも出るんだ。」

「今回はいないみないですね。」

「運が良い。今のうちに落とし穴を。」

 そしてイャンクックから遠からず近からずの距離の位置に落とし穴の設置をした。

 ブワッと広がり、スイッチ式の落とし穴が設置完了した。

「麻酔玉の用意も忘れずに。準備が出来たらイャンクックをたたき起こす!」

「どうやって?」

「切るなり、なんなり。」

「分かりました。」

 サイトがグースカ寝ているイャンクックに近づき、軽く横腹を切りつけた。

 ハッと起きたイャンクックが怒り、黒い煙を吐いた。

「落とし穴に誘導だ!」

 セエが指示した。

 怒り状態のイャンクックは、背中を見せて逃げるサイトを追って、突撃した。

 サイトが踏んでも起動しない落とし穴の罠が、イャンクックが踏んだ瞬間、イャンクックの巨体を地面に沈めた。

 暴れるイャンクック。

「麻酔玉を! 二発投げて!」

「は、はい!」

 サイトが慌てて、捕獲用麻酔玉を取り出し、暴れるイャンクックめがけて投げつけた。

 一発、二発と投げた瞬間、イャンクックは、弱々しい声を上げながら穴の中で倒れた。

 すると、クエスト完了のファンファーレが鳴った。

「やったな、二人とも!」

「やったーー!」

「案外簡単だったわね。」

 

 捕獲クエストは、獲物を搬送するためなのか、帰還するまでの時間が短い。

 すぐに帰還の準備が整い、報酬を受け取って村に帰還した。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 村に帰り、村長のところへ報告に行った。

「うむ。よいよい。よい傾向じゃぞ。」

「鳴き袋も手に入りましたし、音爆弾を作らせます。」

「うむ。準備が整ったら、来なさい。」

「あの……、俺達に戦ってもらいたいってモンスターってなんですか?」

「なんじゃ、話しておらんのか?」

「ドスガレオスだよ。」

「ドス? 他のドスと違うんでしたっけ?」

「いや…、ガレオスでもいいか。」

「うむ。いきなり魚竜を相手にするのは荷が重いじゃろう。」

「えー。」

 セエと村長の会話を聞いて、サイトは残念そうに声を漏らした。

「ガレオスから、魚竜キモを一定数採ってくるんじゃ。そしたら、ドスガレオスの討伐を許可しよう。」

「はい。じゃあ二人とも準備をしよう。」

「あら? そういえば、装備をグレードアップさせるんじゃ…。」

「あ、そうだった。村長、二人の装備を調えるまで待ってください。」

「ゆっくりいいぞ。」

「ルイズ~…。」

「な、なによ。私は痛いのが嫌なだけよ。」

 恨めしそうに見てくるサイトに、ルイズはそう答えた。

 

 この後、二人は、クックシリーズの装備を調えるため、イャンクック討伐クエストを繰り返し行うことになった。

 

「そうだ。サイトの剣も、パワーアップさせよう。」

「えっ、これで十分じゃ…。」

「ハンターナイフじゃ、詰むよ。イャンクックでも弾かれてるんだし。切れ味悪いんだよ。」

「はーい。でも、どうやってパワーアップさせるんですか?」

「武器屋の隣にある店に行こう。」

 そう行ってセエは、武器や隣に行った。

「いらっしゃい!」

「パワーアップさせたい武器を見せて。」

「はい。」

「この武器なら、鋼鉄石がひとつあればハンターナイフ改にできますぜ。」

「この店主さんに聞けば、武器のパワーアップの後と、必要な素材とか教えてくれるよ。」

「…お金は?」

「パワーアップさせるときにかかる。見せただけじゃかからない。」

「はあ、よかった…鑑定料とか取られるかと思った。」

「おいおい、セエ。弟子に何教えてんだ?」

「俺はなにも…。」

「まあ、いいや。材料が無いみたいだから、素材が集まったら来な。」

「鋼鉄石なんて、売ってませんよね?」

「あ、そうか…。素材集めには、鉱物の採集もあったんだ。」

「なんで先に教えてくれないんですかー!」

「ごめん…。」

 サイトに怒られ、セエは、シュンッと項垂れた。

 

 この後、森と丘に行き、飛竜の巣でピッケルを使い鋼鉄石を採集した。

 そして、無事にサイトの武器である片手剣をパワーアップさせ、パワーアップのリストが増えたことに驚くことになった。

「どうパワーアップさせるかは、君の自由だ。」

「あの…、パワーアップさせたあと、他のが欲しい場合は?」

「そしたら、また素材となる武器を調達して、別のパワーアップさせ方をすればいい。」

「ボウガンは?」

「ボウガンはパワーアップさせられるけど、種類が変わるわけじゃない。レベルが変わる。けど、中にはレベルを上げられない物もあるから注意だ。」

「面倒くさいわね…。」

「面倒くさがってたら、飛竜種は倒せないよ。」

「む~。」

 素材集めの複雑さに、ルイズは頬を膨らませた。

 サイトは、前のクエストで手に入っていたランポスから採れた素材を使って、サーペントバイトまで武器をパワーアップさせた。




武器のパワーアップについては、省こうかと思ってました。(ちょっと面倒だから)
しかし、このパワーアップによって、サイトにある問題が生じる予定です。

次回は、ガレオス狩り。
こいつは、砂の中を泳いでるだけに、苦労しました…。


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第九話  ガレオスを狩ろう

ガレオス狩りと、サイトに起こった異変。


 

「あじいいいいいいいいいいいいい!!」

「あついーーーーーーーーーー!」

「やっぱりこうなるか。」

 

 ここは、砂漠。

 そして、ガリガリと体力を削られる灼熱の太陽と砂の大地。

 ここに、目的のモンスター、ガレオスがいる。

 

 クックシリーズの装備を調え、武器をパワーアップさせ、爆薬を調合し、そこに鳴き袋を合せて音爆弾を作れるだけ作った。

 集会所でクーラードリンクを調達し(サイト達は自分達のお金で買わせた)、ガレオス、いや魚竜のキモの採集クエストに挑んだ。

 

「さ、クーラードリンク飲んで。」

 セエは、自分が持ってきたクーラードリンクを飲み、サイトとルイズは、大慌てでクーラードリンクを飲んだ。

 するとあっという間に身体が冷え、暑さを感じなくなった。

「すげぇ!」

「すごいわね、これ!」

「身体も冷えたし、行こう。ほら、あそこにいる。」

「えっ?」

「ヒレ。見えるだろ?」

「えっ? あれが?」

「ガレオスは、砂の中を泳ぐ、砂竜なんだ。ランポスとはわけが違う。」

「あれが、竜?」

「そう呼ばれてるだけだけど…。まあ、ドスは、特に竜に近いかも。」

「どうやって戦えばいいんですか?」

「音爆弾を使う。まず、俺がやってみるとこ見てて。」

「は、はい。」

 そして、セエが、走って行った。

 すると砂の中を泳いでいたガレオス達の動きが変わった。

 セエは、音爆弾を取り出すと、ガレオスに向かって投げつけた。

 パンッと弾けた音爆弾により、ガレオスが飛び出した。

 飛び出して砂の上をピチピチと跳ねるガレオスに向かって、セエが大剣を振り下ろして切った。

「こうだ! 分かった?」

「はい! 行くぞ、ルイズ!」

「ええ!」

 サイトとルイズも、ガレオス達のいるところへ向かった。

 ガレオス達は、合流した三人の周りをグルグル回るように泳いでいた。

 突如、一匹が飛び出し来て突撃してきた。

 セエは、それを剣を盾にして防ぎ、突撃してきたガレオスはすぐに砂に潜った。

 続けざまに、砂のブレスが飛んでくる。

 サイトは、ルイズを守るために盾で防ぐ。

「ルイズ、音爆弾を投げてくれ!」

「分かったわ!」

 サイトが飛び出し、ルイズが音爆弾をガレオスの方へ投げた。

 音爆弾の破裂音によって飛び出すガレオスを、サイトが攻撃する。

 その時、サイトは、剣がいやに重たいことに気づいたが、そんなことをしている場合じゃないと考え直し、攻撃した。

 大剣のように一撃のダメージ少ないため、砂の上に立ち上がったガレオスは、尻尾を振ってサイトを吹き飛ばした。

 ルイズが慌てて弾を装填し、ガレオスを狙って撃つ。

 頭に弾を受けたガレオスが絶命した。

「キモを取るんだ!」

「えっ、は、はい!」

 セエから指示され、サイトは慌ててナイフを取り出し、死んだガレオスから魚竜のキモを取った。

「うわぁ、グロ…。」

「ほら、次々。まだまだ取らないと。」

「うへぇ…。」

 こうして、次々にガレオスを倒し、魚竜のキモを必要な量採った。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 場所を変えると、暑さはなくなる。それでも気温は高い。

 魚竜のキモを納品する前に、採っておきたい物があると言って、セエが場所を移したのだ。

「何を採るんですか?」

「釣りカエル。」

「カエルは、いやーーー!」

「そのうち戦うことになる竜を釣るのに絶対必要なんだよ? 採っておかないと。」

「その竜ってなんですか?」

「水竜ガノトトス。魚竜とも呼ばれるけど、水棲の竜なんだ。」

「竜も釣れるんだ…。」

「ガノトトスだけだ。」

 ルイズが、遠巻きに見ながら、セエとサイトは、釣りカエルを採集した。

 そして、キャンプ地に戻り、魚竜のキモを納品してクエストクリアとなった。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 村に帰り、村長のところへ行った。

「うむ。楽勝だったようじゃな。」

「ちょっとやられましたけどね…。」

「では、ドスガレオス討伐の許可を出そう。」

「ありがとうございます。」

「ガレオスの、ドスってそんなにヤバいんですか?」

「というか、デカい。ヒレに麻痺毒もあるし。ある程度ダメージを受けると逃げて寝て回復するし、習性はガレオスに似てるようで、どっちかって言うと飛竜に近い感じなんだ。」

「イャンクックと、どっちが強いんですか?」

「……ドスガレオスかな?」

「あの頃は、お主もかなり苦戦したからのう。」

「リオレウスとかに比べれば、まだマシだったと思ってます…。」

 セエは、そう言って頬を指でかいた。

「そろそろ、アイルーキッチンを利用しなさい。そうでないと苦戦するじゃろう。」

「あいるーきっちん?」

「雇っているアイルーに料金を払って、料理を作ってもらうんだ。それで得られる効果で狩りが有利にもなるし、逆に不利にもなる。」

「あれ? でもいつもトウマが作ってくれてますよね?」

「キッチンに入ったことないだろ? キッチンには、他にもアイルー達がいる。いつも食べてるご飯は、そういう効果は無いんだ。」

「なんでお金払わないといけないのよ。」

「アイルー達も生活があるんだ。こっちは雇っている側なんだから賃金を払うのは当然だ。」

 

 こうして、アイルーキッチンの利用と、ドスガレオス討伐クエストの許可が下りた。

 

 

「……。」

『どうした、相棒?』

「なんか剣が重たいんだ。」

『あーそりゃ…たぶん…。」

「分かるのか?」

『たぶんだが、セエって奴の大剣を持ち上げられなかったことと関係しているかもな。』

「どういうことだよ?」

『ここが、余所の世界だってことを忘れるなよ。』

「…それって…。」

「サイトー、ご飯だって。」

「あ、ああ、今行く。」




ガンダールヴは、この世界では……。という設定です。

次回は、ドスガレオス狩り。


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第十話  ドスガレオスを狩ろう その1

ドスガレオス討伐クエスト。

しかし……という展開。


ルイズがヒスを起こします。


「また砂漠ですか…。」

「ガレオスは、砂漠にしか住んでないから。」

 また砂漠に来て、げんなりしている二人に、セエが腕組みしながら言った。

 砂漠の灼熱のエリアに入ると、クーラードリンクを飲み、ドスガレオスを探した。

 すると。

「……なんか、いる。」

「あれが、ドスガレオスだ。」

 ドスガレオスは、砂の中におらず、地上に出て立っていた。

 黒褐色の体表、ヒレのある二本足、ガレオスの二回り以上大きな身体。

「でけぇ!」

「あー、久しぶりに見たけど、デカいな。」

 しかしドスガレオスは、こちらに気づくと、すぐに砂に潜った。

 そして、砂の中を泳ぎなら、三人の周りを回り出す。

「習性は、ガレオスと同じだ。ただ飛竜に匹敵するほど体力も攻撃力も、あと麻痺するヒレまで持ってる!」

「分かりました! 行くぞ、ルイズ!」

「ええ!」

 サイトが走り、ルイズが音爆弾を投げる。

 すると、音爆弾の破裂音によって、ドスガレオスが飛び出した。

 ビチビチと少しの間跳ねていたが、すぐに立ち上がる。

 近くで見るとその大きさたるや…。イャンクックの非じゃ無いかもしれない。

 吠えたドスガレオスが、砂のブレスを吐いた。ルイズの方に向かって。

「きゃああ!」

 ルイズは、ギリギリで横に跳んで避けた。

「ルイズ!」

「よそ見をするな、サイト!」

「はっ!?」

 次の瞬間、ドスガレオスが振った尾ビレがサイトの身体に思いっきり当たって吹き飛ばされた。

「ぐは……。」

 サイトは、吐血し、砂の上に倒れた。そして、ドスガレオスは、再び砂に潜った。

「サイト!」

「これは…、サイト! 回復しないとやられるぞ!」

 一瞬、クエストをリタイアしようと思ったが思いとどまり、セエは、倒れているサイトに声をかけた。

 サイトは、うずくまり呻いていた。

 そこに、ドスガレオスの背びれが迫る。

「このこの! サイトに近づくな!」

 ルイズが必死にライトボウガンで弾を撃つが、ドスガレオスは止まらない。

「ルイズ! 音爆弾だ!」

 セエが咄嗟に指示を出した。

 ルイズは、音爆弾を取り出して、渾身の力で投げた。

 音爆弾の破裂音により、ドスガレオスが飛び出し、ビチビチと砂の上で跳ねた。

 近くで跳ねるドスガレオスのせいで、サイトは、再び吹き飛ばされ、転がるが、転がりながら、必死になって回復薬を飲み、立ち上がった。

 サイトは、先ほどのお返しとばかりに、ドスガレオスを切りつける。

 目が退化しているが、音と振動に敏感なドスガレオスは、的確にサイトのいる場所を狙って顔を振って噛みつこうとしたり、尻尾を振ったりする。

 ルイズは、必死にライトボウガンを撃つ。

 そして、ドスガレオスが砂に潜れば、また音爆弾を使う。それを繰り返した。

 やがて、またドスガレオスが砂に飛び込んだ。

「ルイズ、音爆弾を!」

「いや、ダメだ。」

「なんで!?」

「……逃げた。」

「えっ!?」

「…ペイントボール……、また忘れてた。」

 セエは、まったやってしまったと、両膝を折った。

「でも! この近くですよね!?」

「……。」

「だったら、探すぞ、ルイズ、行こうぜ!」

「待ってよ!」

 先に走っていくサイトを、ルイズが必死に追いかけた。セエも、その後を追った。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 しかし、中々見つけられず、やがて、セエは、自動マーキングスキルで、すでにドスガレオスが砂漠じゃない方に移動したのを感知した。

「しまったな……。」

「えっ?」

「もう回復されたみたいだ。」

「そんな…!」

「仕方ない…。今回のクエストは、リタイアしよう。」

「まだやれますよ!」

「そうよ!」

「…音爆弾の残量は?」

「あ……。」

 サイト達の音爆弾の残量は、残り一個だった。

「ね、ねえ…、他に! 他にアイツを引っ張り出す方法はないの!?」

「あるにはあるけど…。」

「教えて!」

「こういう大剣とか、ハンマーとか、そういう一撃が大きい武器なら、ヒレに当てれば引っ張り出せないこともないんだ。」

「そんな……。じゃ、じゃあ、その武器を貸して!」

「えっ? 無理だろ?」

「そんなことないわ! 私の使い魔わね! どんな武器でも扱えるのよ!」

「……。」

 胸を張って言うルイズを見るセエは、ため息を吐きながら、大剣ガノトトスを差し出した。

 サイトが、怖ず怖ずとそれを受け取るが……。

 ドスンッと音を立てて、大剣が地面に落ちた。

 サイトは、血管を浮かせて必死に大剣を持ち上げようとしていたが、持ち上がる気配が無い。

「そんな! どうしてよ! ギーシュのゴーレム倒したように振り回せないの!?」

「それも魔法の力なのかい? とにかく、このままじゃ、君達はドスガレオスは倒せない…。ここはいったん引こう。」

「……ごめん、ルイズ。」

「どうしてよ! どうしてなのよぉ!」

 喚くルイズに、サイトは俯きながら謝罪し、セエは、クエストのリタイアを宣言した。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 リタイアした際に払う、契約金を支払い、村に戻って、すぐに村長のところへ行った。

「おや? 失敗したのか?」

「リタイアしました。」

「どうした?」

「俺のミスです…。」

 村長は、セエと後ろにいるサイトとルイズを見比べた。

 サイトとルイズは、互いにそっぷを向いていた。

「ペイントボールの使用を忘れて、ドスガレオスの回復を許してしまいました。」

「なるほど……。音爆弾も尽きたと見た。しかし、そこの二人はなぜ仲違いをしておるのじゃ?」

「その……、大剣を持ち上げられなかったことに立腹しているみたいで…。」

「そうか。」

 三人は、報告を終えると、村長のもとを去り、家に帰った。

『よお。相棒。浮かない顔してるな。どうした?』

「デルフ…。やっぱり、この世界じゃ……。」

『ガンダールヴが反応しなかったんだろ? そうだろうって思ったぜ。』

「! おまえ知ってて…。」

『俺も確信が持てたわけじゃねーよ。ただ、この世界じゃ、神の左手が通用しないかもって予感があった。ハルケギニアで、あの竜共を倒せなかったようにな。』

「じゃあ、どうすんのよ!」

 ルイズが声を上げた。

「こっちの世界の武器が使えないんじゃ、この先どうすんのよ!?」

『鍛えるしかねーよ。なあ、セエさんよぉ。一種類の武器でも攻略する手立てはあるんだろ?』

「ああ…、どんな武器でも勝てないわけじゃない。」

『だってよ。』

「それに、今回の失敗は、ペイントボールを使うよう言わなかった俺のせいでもあるんだ。」

「いいえ…、俺もそれに気づかなかったのも悪いんです。」

 セエとサイトは、互いに自分達の失敗を後悔していた。

 そんな二人を見ていて、ルイズは、カッとなった。

「なによ、なによ! 二人して女々しくして!」

「なんでそんな怒ってんだよ?」

「あんたがあの武器さえ使えればこんなことにはならなかったわ!」

「だから…、この世界じゃガンダールヴが……。」

「この役立たず!」

「なんだと!」

「ふ、二人とも…。」

「にゃー、何の騒ぎにゃ?」

 騒ぎを聞いてキッチンからトウマが顔を出した。

 セエがオロオロしながら、トウマに事情を説明した。

「一時的なら…、すごく強くなる方法があるにゃよ。」

「えっ!?」

「トウマ…。」

「アイルーキッチンは、しっかり利用してほしいにゃ。」

 トウマは、そう言って、キッチンに三人を招いた。

 そこには、トウマの他に雇っていたアイルー達がいて、三人を出迎えた。

「ささ! 注文するにゃ!」

「サイト…。どうしたい?」

「えっ?」

「体力、力、スタミナ、防御力、食材の組み合わせで上がる能力が変わるんだ。」

「選ぶ食材は、二種類にゃ。」

「じゃ、じゃあ、体力と力を…。」

「ブレスワインと、ドラゴンテールを。」

「分かったにゃ!」

 他のアイルー達も一斉に手を上げ、にゃー!っとかけ声をあげた。

 そして調理。

 五匹のアイルー達が見事に料理を仕上げ、できあがったのはいつもの食事とは比べものにならない豪華なメニューだった。

「さ、食べよう。」

「は、はい。」

 戸惑いながら、その料理を食べた。その瞬間。

 己の身体の中で、体力が、力が湧き上がるのを感じた。

「なんですか、これ!」

「これがアイルーキッチンだ。料金を払って、こうして材料を選んで、料理してもらって、食べれば効果が得られる。」

「まあ、組むあわせ次第にゃ。失敗すると、逆に減っちゃうにゃ。」

「それに、たまにアイルー達のスキルが発動することもある。」

「アイルーのスキル?」

「戦闘に有利になるスキルや、クエストが終わった後に効果があるスキルとか、色々さ。」

「でも、いつ発動するかはランダムにゃ。今回だけは、特別サービスで作ったにゃけど、次からは金払ってもうにゃよ。」

「がめついな…。」

「違うにゃ。労働の対価にゃ。」

「……。」

「ルイズも食べたら?」

「……私は、いい。」

「おい、ルイズ。」

 ルイズは、ふて腐れたように言って、キッチンから出て行ってしまった。

「にゃー、どうしたにゃ?」

「あいつ…、焦ってるな。」

「そうなの?」

「今までが順調だったから、失敗して焦ってる。早く力を付けないとって。」

「そんなすぐに強くなったら、誰も苦労はしないにゃよ。」

「……実は、あいつの実家が竜にやられたんです。」

「えっ?」

「家族は無事だったんですけど、怪我をして…。」

「なるほど…。」

 今まで隠していたルイズの胸中を察したサイトの言葉に、セエは、気の毒そうにルイズ出て行ったキッチンの出入り口を見た。

 

 こうして、ドスガレオス討伐クエストは、失敗に終わり、再度挑戦するため、音爆弾の調達をすることになった。

 それと、サイトの武器をもう一段階パワーアップさせるため、ランポスやドスランポス狩りを行った。




サイトは、基本的にルイズ第一なので、ルイズに気を取られやすい。そのため、一撃をもろに食らいやすくもある。
サイトの身に起こった異変。それは、ガンダールヴがこの世界(モンスターハンターの世界)じゃ、ほとんど役に立たないということです。


次回は、ドスガレオス討伐クエスト、リベンジ。


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第十一話  ドスガレオスを狩ろう その2

ドスガレオス討伐クエスト。リベンジ。

攻略本見たら、音爆弾だけじゃなく、小タル爆弾でもドスガレオスを引っ張り出せるって分かった。


 音爆弾も持てるだけ用意した。

 さらに、サイトの武器をパワーアップさせ、サーペントバイト改にした。

「これも用意しよう。」

「これは?」

「小タル爆弾。破裂音に敏感なら、これでもいけるはずだ。火薬草と小タルでできる。」

「じゃあ、それも用意しましょう! ルイズー、手伝えよ!」

 しかしルイズは、家の庭で、切り株の上に座って動かない。

「…困ったな。クエストは、二人で受けてもらわないといけないのに。」

「セエさん。」

「ん?」

「一人でクエストをやるって、できます?」

「一人でやるつもりなのか?」

「セエさんも、一人でドスガレオスを倒したんでしょ? なら俺一人でも…。」

「勝てる確率は格段に下がると思うよ?」

「それでも……。」

「……なに一人で決めてるのよ。」

「ルイズ。」

 そこへルイズがやってきた。

「私もやるわよ。」

「無理するなよ?」

「無理なんてしてない!」

「二人とも……。非協力状態なら、止めた方が良い。死ぬぞ?」

 セエの呆れた声に、ルイズは、カッとなってセエを睨み何か言いかけたが、グッと堪えた。

 クエストの受注などは、セエが立ち会うことが条件だからだ。

 ルイズは、自分が思っている以上に焦っていた。

 思うようにいかないことに。

『娘っこ、世の中そんなうまく行くわきゃねーんだ。家族がやられたことを引きずって焦ったって、強くはなれねーよ。』

「っ! うるさい!」

『このままじゃ、村を追い出されちまうかもしれねーんだぞ?』

 それを聞いてルイズは、ハッとしてセエを見た。

 セエは、呆れた顔でルイズを見ていた。

 ルイズは俯いて唇を噛んだ。

 謝罪しないといけないのに、変な意地が働いてうまく言葉が出ない。

「セエさん。ルイズを許してやってください。」

「!? サイト?」

「こいつ、意地っ張りだから…。お願いします。」

「…別に怒ってないよ。」

 頭を下げてくるサイトに、セエは、苦笑してそう言った。

 ルイズは、自分が情けなくて涙が出そうになった。

「さ、二人ともドスガレオスに今度こそ勝つために準備だ。」

「はい!」

「…ええ!」

 三人は、決意を新たにし、準備を進めた。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 小タル爆弾も用意できるだけ用意し、今できる入念な準備を整えてドスガレオス討伐クエストに挑んだ。

 

 砂漠に行くと、ドスガレオスの姿は無かったが、進んでいくと、遠くから大きなヒレが砂の中から現れた。

「そうだ…。ガレオスは、一定のルートを遊泳する。だからそのルート上に小タル爆弾を置けば…。」

「よっしゃ! ルイズが爆弾だ!」

「ええ!」

 こちらにまっすぐ向かってくるドスガレオスのルート線上に小タル爆弾を置いた。

 小タル爆弾は置くとすぐに点火し、サイトが急いで離れた。

 そして、二秒ほどして、小タル爆弾は爆発し、その破裂音によってドスガレオスが砂から飛び出した。

 ピチピチと跳ねるドスガレオスにサイトがペイントボールを投げつけ、それから斬りかかる。

 すぐに体制を整え、立ち上がったドスガレオスが尻尾の一撃を与えようと大きく尻尾を振った。それを盾で防ぎ、首の下を切りつける。

 ルイズは、必死になってライトボウガンを撃って、援護した。

 やがてドスガレオスが砂に潜る。

 砂に潜ると、音爆弾を投げつけて再び砂の上に引っ張り出す。

 引っ張り出したら攻撃する。

 それを何度か繰り返した。

 やがてドスガレオスが砂に潜り、ヒレが砂の上から消えた。

「逃げやがったな!?」

 すぐに地図を広げると、結構離れた小さなエリアに移動していた。

「よし、追いかけるぞ!」

「ええ!」

「よしよし。」

 三人は、急いでドスガレオスを追いかけた。

 

 

 ドスガレオスは、岩陰に池が湧いているエリアにいた。

 立ったまま首を曲げて、ぐーぐー寝ている。

「ここには潜れるだけの砂はないし、泳ぐほど広くはない。つまり、砂に出てる状態で戦えるってことだ。」

「なるほど! じゃ、やります!」

 そう言ってサイトが早速と、寝ているドスガレオスに斬りかかった。

 そして、攻撃されて目を覚ましたドスガレオスが怒り状態になり、サイトに体当たりをした。それを盾で防ぐが、勢いは殺しきれず、サイトは吹き飛ばされた。

 尻餅をつくサイトに、怒り状態のドスガレオスが砂のブレスを吐く。

 サイトは、間一髪で転がって避けた。

 ルイズは、必死になってライトボウガンを撃つ。

 やがて、怒り状態が治まったドスガレオスの首を、サイトが大きく切り裂いた。

 断末魔の声を上げ、ドスガレオスがついに倒れた。

「や、やったぁ!!」

「やったわね、サイト!」

「さ、剥ぎ取り剥ぎ取り。」

「労ってくださいよ~。」

 倒したばかりで疲れてるところに、容赦なく剥ぎ取りを急かすセエに、サイトが弱った声で言った。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 村に帰り、恒例の村長のところへ行った。

「うむ。よくやったようじゃな。」

「ありがとうございます!」

 褒められてサイトとルイズは、喜んだ。

「ところで、セエよ。」

「はい。」

「お主、最近狩りに出かけておらんが、そろそろ行ったらどうじゃ?」

「えっ?」

「この子らを見学させるのじゃ。」

「ええーー!」

 暗にお手本を見せろと言われて、セエは、焦った。

 二人の方を見ると、二人がジッとセエを見ていた。

 セエの頬に汗が垂れる。

「手本を見せるのも、師匠としての務めじゃぞい。」

「……はい。」

 セエは、がっくり項垂れて返事をした。

「分かりました…。フルフル捕獲に行きます。」

「なぜじゃ?」

「アルビノエキスが欲しいんです。鬼人薬グレートと、硬化薬グレートが欲しいんです。」

「なるほど。確かにそっちの方が取れやすいわな。」

「ふるふる?」

「………初めて見ると、トラウマになるかも?」

「えっ!? どういう竜なんですか!?」

「見てのお楽しみじゃ。」

「えっ! なんか嫌な予感がするわ!」

「俺も!」

「じゃあ、帰って準備しよう…。」

「なんで暗くなってるんですか!? そんなに嫌な竜なんですか!?」

「いや、戦うのはイヤじゃないよ。ただ、二人に見られながら戦うってのが…、今までずっと一人だったから…。」

「セエさん…。」

「無様な戦い方しかできないけど、それでいいなら見てね。」

 そう行って、セエは、家の方に向かった。

 二人は顔を見合わせ、後を追った。




セエは、ずっと一人で狩りをしてきたので、誰かに見られながらは、初めてになります。


次回、フルフル捕獲クエスト(見学編)。


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第十二話  フルフルを捕獲せよ(見学編)

今回は、セエ一人で捕獲クエスト。
サイトとルイズは、見学。

フルフルの電撃は、たぶんライトニング・クラウド以上だと思う。


 

 家で準備を整え、大剣も、炎属性のリオレウスのものに変えた。

「ホットドリンクを買ってこよう。」

 そう言って、集会所の店でホットドリンクを買った。サイトとルイズにも買ってあげた(おごり)。

 そして、アイルーキッチンで、料理を注文して食べ、それから村長のところへ行った。

「では、村長。」

「うむ。では、フルフル捕獲クエスト、行ってまいれ。」

「はい。じゃあ、二人とも、行こう。」

 セエは、二人を連れて村を出発した。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 沼地のキャンプ地で、支給品を取りながら、セエは、大きくため息を吐いた。

「そんなに気が滅入ってるんですか?」

「いや、ごめん…。そんなつもりはないんだけど。俺…弱いから……。」

「いやいや、G級ハンターなんですよね? そこまで頑張ったんですから強いですよ、…きっと!」

「ありがとう…。」

「それで、これから捕獲する竜ってどんな竜なの?」

「それは……。」

 セエは、どもった。

「……楽しみにとっておくよ。俺もかなり衝撃受けたから。」

「ええー!?」

「どんな竜なのよ!?」

 結局言わないセエが、こんがり焼けた肉を食べ、それから沼地エリアを進んでいってしまったため、二人は慌てて後を追いかけた。

 

 

 セエが走る。

 その後ろを二人が追いかける。

「この先にいるんですか!?」

「まず、この先に行かないと、戦えないから!」

 そう行って、あるエリアの洞窟に入った。

「さぶっ!」

 その気温の低さにたまらず身体を丸める。

 セエは、そんな二人を置いて、洞窟の先に進んだ。サイトとルイズも慌てて追うと…。

 何かが天井付近にいた……。ソレは、すぐに洞窟の上に空いている穴に入って行ってしまった。

「あの…セエさん…。」

「なに?」

「何か…いましたよね?」

「いたよ。」

「アレ…が?」

「そう。」

「よく見えなかったわ。」

「とにかくフルフルが移動したから、追いかけよう。」

「あ、待ってくださいよ!」

「また走るのー?」

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 拾い沼地エリアには、イーオス達がいた。

 イーオスの間を走り抜けながら、セエは、フルフルが飛んでくるのを待った。

 そして……。

「う…え…!?」

「なにアレ!?」

 

 空から舞い降りてきたのは、白い巨体。

 鱗はなく、ブヨブヨとした質感の皮と肉、吸盤のついた足と、短めの尻尾、大きな翼、目の無いウナギのような長い頭と首、ダラダラと酸性の唾液を垂らしている気色の悪い口。

 

「これが、フルフルだ。」

「気色悪! これが竜!?」

「フルフルは、洞窟を住処にしている竜だから、目が退化してるんだ。だからあんな姿なんだ。」

「ど、どうやって倒すんですか!?」

「普通に戦う。」

「えっ?」

「あと、今回は捕獲クエストだから倒さない!」

 セエは、フルフルのところへ走った。

 そして、背中の大剣リオレウスを抜き、いきなり切った。

 バチバチと、フルフルが放電し始めた。

「ぐっ!」

「セエさん!」

 放電で弾き飛ばされたセエに駆け寄ろうとしたが、セエが手を伸ばして制した。

「今回は、見学だろ!」

「で、でも…。」

「いいから!」

 セエは、すぐに立ち上がり、大剣を振るって、フルフルの頭を切る。

 フルフルが、尻尾を吸盤状に地面に貼り付け、口に電撃を集中しだした。

 セエは、慌てて横に退く。

 すると、フルフルは、強力な電撃のブレスを吐き、その直線上にいたイーオス達が感電して倒れていった。

 ガスッ、バスッ!と剣を振り下ろし、切り上げを繰り返し、どんどんダメージを蓄積させていく。

 ブンッと棍棒のような短い尻尾が振られ、セエの身体に当たって吹き飛ばされるが、すぐに立ち上がり、斬りかかる。

 尻尾にあたると、ガキンッと弾かれるが、炎が発生し、ダメージを与える。

 やがて、フルフルが、足を引きずって飛び立った。

「よし、巣に行こう。」

「怪我は大丈夫なんですか?」

「ああ、…一応回復しよう。」

 そう行って、支給品の応急薬を飲んだ。

 そして、セエは、剣を背負って、走った。二人はその後を追った。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 巣である洞窟は寒く、セエは、ホットドリンクを飲み、二人もそれに習ってホットドリンクを飲んだ。

 落とし穴を設置し、フルフルが来るのを待った。

 やがて上の方に空いている穴から、フルフルが天井を這いながら入ってきた。

 そして、落下してきた。

 落とし穴の上に。

 一瞬にして、落とし穴にはまったフルフルが暴れる。

 すぐにセエが捕獲用麻酔玉を投げつけて眠らせる。

 だが……。

「あれ? あのファンファーレが鳴らない?」

「しまった…。」

「えっ?」

「まだだった!」

 セエは、剣を抜き、寝ているフルフルを切った。

 忽ち起きたフルフルが暴れだし、やがて落とし穴から飛び出した。

 白い煙を吐き、怒り状態になる。

 動きが素早くなり、セエは、逃げ回る。

 フルフルが天井に飛び移り、口を下に向けて、酸性の唾液を下に向けて吐いた。

 セエには当たらなかったが、ジュウジュウと地面が溶けた。

「うぇ…。」

「うわぁ…。」

 あの竜だけには、食べられたくないとサイトとルイズは思ったのだった。

 しばらくして、落下してきたフルフルがよく伸びる首を伸ばして、セエに噛みつこうとしたが間一髪で避けた。

 怒り状態は治まり、セエが再び攻撃に移る。

 何度か怒り状態にする、怒りが治まるまで待つを繰り返していると、やがて一撃を受けただけで怒り状態になるようになった。

「よし!」

 セエは、フルフルの真横で新たな落とし穴を設置した。

 フルフルがジャンプした直後、フルフルは足元にあったスイッチを踏んで、落とし穴にはまった。

 そして、セエは、再び捕獲用麻酔玉を二発投げつけ、フルフルを眠らせた。

 すると、クエストクリアのファンファーレが鳴った。

「よし…。」

「やりましたね、セエさん!」

 駆け寄ってくる二人。

 セエは、額の汗を腕で拭った。

 

 そして、報酬を受け取る。

 セエは、報酬の中にアルビノエキスがあったことに喜んだ。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 村に戻り、村長のところに行った。

「どうじゃった、二人とも?」

「…気色悪かった。」

「あんな竜もいるのね…。」

「ふぉ、ふぉ、ふぉ! アレは、確かにトラウマになるのう!」

「二人もいつか、あいつと戦うよ?」

「えー…、できれば避けたいわ。」

「けど、ハルケギニアにもアイツがいたら戦わないといけないぞ?」

「…あ、そっか…。それにしても雷を操る竜だったなんて意外だったわ。あの威力…、ライトニング・クラウド以上かも。」

 それを聞いたサイトは、ワルドとの戦いのことを思い出し、顔を歪めた。

 そんな電力を食らって立ち上がるセエの生命力の強さに驚きもした。

 あれだけの竜を相手にするのだから、この世界の人間は、それ相応に強いのかもしれない。

「そうだ。サイト。」

「なんです?」

「武器の種類を増やさないか?」

「えっ、でも…。」

「片手剣の種類を増やすんだ。例えば、毒を付与したり、麻痺させたりする武器を作る。そうすれば飛竜種との戦いで有利になる。」

「あ、なるほど。」

「まず、毒を持つ剣だけど…。確か、毒袋とイーオスの牙や皮が必要だったな。もしくは、ゲリョスを素材にする、ポイズンタバールでも…。」

「げりょす?」

「毒怪鳥って呼ばれてる、飛竜種だ。」

「うわ、聞いただけで、分かる。毒持ってるんですよね?」

「うん。猛毒。イーオスより強い。あと…、毒じゃないけど、厄介なことをしてくるんだ。」

「それって?」

「こっちが持ってる道具を盗むんだ。しかも倒しても盗まれた物は戻ってこない。だから貴重品が盗まれないように気をつけないと…。」

「うわ、嫌な攻撃!」

「だから極力、攻撃を受けないようにしないと。もしくは、貴重品を持っていかない。」

「ほう、では、次のクエストは、ゲリョス討伐かのう?」

「どうする二人とも?」

「武器が作れるなら、やります。」

「私もそれでいいわ。」

「よし、決まりじゃな。」

 

 こうして、ゲリョス討伐クエストの段取りが決まった。

 その前に、片手剣ハンターナイフを買い、強化していって、ポイズンタバール手前のアサシンカリンガまで強化させるために素材集めをした。




セエは、強くありませんが、弱くもない。(筆者の戦い方を参考にしています)

ちなみに、まだ村長クエストのモンスターが集会所クエストのモンスターより弱いことを二人に伝えていません。


次回は、ゲリョス討伐クエスト。


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第十三話  ゲリョスを狩ろう

ゲリョス討伐クエスト。

最後の方、筆者の気持ちをセエに少し代弁(?)。


 

 

 討伐対象のゲリョスは、沼地にいる。

「また沼地~?」

「仕方ないだろ、文句言うなよ、ルイズ。」

「む~。」

 足が汚れるのが嫌なルイズは、文句を言った。

 サイトをパワーアップさせるためだ。やるしかないのだ。

「セエさん、ゲリョスってどんな竜なんですか?」

「臆病だな。けど、怒ると厄介だ。それと…。」

「それと?」

「角から、凄まじい閃光を放つ。あれで目をやられたら厄介だ。先に壊せればラッキーだけど。」

「目くらましをしてくる竜ですか。」

「あと、死にマネをするってことかな。」

「しにまね?」

「死んだふり。倒れてこっちが近づくと重たい一撃を与えてくるんだ。あれで死ぬ場合もある。」

「そんなダメージが!?」

「本当に死んだのか、ふりなのかを見分けるには、しばらく様子を見るか、一撃を与えてみるかだ。」

「でも近づいたら…。」

「そうなんだよなぁ…。死にマネだったら、こっちが死ぬ。」

「死にマネで死んだらシャレにならないわ。」

「だから、俺は、様子を見るか、大剣の先端で、尻尾をザクッて行く。」

「うわ、痛そう…。」

 セエの背中にある大剣を見ながら、サイトは痛そうな顔をした。

「とにかく、そのゲリョスってのを探しましょうよ。」

「そうだな。じゃあ、行こう。」

「はい。」

 そして、三人はキャンプ地の箱から支給品を取り、ゲリョス探しをした。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 毒怪鳥ゲリョス。

 その体内に猛毒を生成する器官を持ち、そしてゴムのように弾力に富む皮を持っており、その弾力ゆえ皮は多くの防具のつなぎに利用される。

 また狂走エキスという素材となるエキスを持っており、スタミナを一定時間無限にする強走薬や強走薬グレートが作れる。

 

「へ~、ゲリョスの皮とその狂走エキスってそんなに使えるのね?」

「そう。だから他の防具を作るのに一々ゲリョスを狩らなきゃならない時もあるんだ。運搬クエストとかだと、スタミナ勝負だから強走薬は必須だし。」

「うわー、ってことは、ゲリョス狩りを何回もしないといけない?」

「そうなるかな。俺も何回もやったし。…あっ。」

「どうしました?」

「いた。」

 セエが指さした先に、ゲリョスがいた。

 

 霧で霞んだエリアの先に、濃い灰色の一匹の飛竜がいた。

 イャンクックのように露骨にくちばしがあるとかじゃなく、ごつい歯(鋭くない)があり、出っ張った顔、鼻と頭頂に角のような出っ張りがあることを除けば、すごく変な形というわけではない。

 先ほど聞いた通り、ゴムのような皮を持つからか、鱗はないようだ。だがフルフルと違ってたるんではいない。

 

「さあ、サイト、ルイズ。」

「はい! 行こう、ルイズ!」

「ええ!」

 サイトは、片手剣を抜き、ルイズは、ライトボウガンに弾を装填した。

 ゲリョスは、駆け寄ってくるサイトの存在に気づくと、飛び上がるように暴れ(驚いた?)、大きな鳴き声を上げた。

 そんなゲリョスに構わずサイトは、斬りかかる。

 ゲリョスは、切られると、悲鳴のような鳴き声を上げ、いきなり飛んで逃げていった。

「はあ!? 逃げやがった!」

「ゲリョスは、臆病だから、エリアをいくつも移動する癖がある。ただし、怒り状態になると積極的に攻撃をしてくる。」

「しまった! またペイントボール…。」

「…探そうか。」

 セエには、自動マーキングスキルで見えているが、これは、サイトとルイズの特訓であるため助けなかった。

 そして探し回り、やっと見つけたゲリョスは、また移動しようとしたため、サイトは大慌てでペイントボールを投げつけた。

 その甲斐あってゲリョスの行動パターンが読め、待ち伏せして攻撃をすることが出来た。

 何度か攻撃を受けるうちに、ゲリョスの目が赤くなった。

 大きな声で鳴いたゲリョスが大きな毒液の塊を吐いた。

 サイトは、間一髪でそれを避ける。

 サイトに向かって、ドスドスとイャンクックのように口を振り下ろしてくる。それを盾で防ぐ。

 やがてゲリョスが大声で鳴きながら突撃してきた。

 サイトは、跳ねられ、横に吹き飛ばされ、ある程度走ったゲリョスは振り向き、今度は、左右に毒を吐き散らしながら走ってきた。

「サイト!」

「うわあああ!」

 跳ねられた痛みにすぐに立ち上がれずにいたら、ゲリョスの毒をもろに浴びてしまった。

「サイト! 解毒薬だ!」

 セエが叫んだ。

 頭から毒を浴びてしまい、一瞬放心したサイトは、ハッとして持ち物の中から解毒薬を取りだして慌てて飲んだ。

「あ、危なかった…。」

「あ、ゲリョスが逃げたわ!」

「怒りが治まったんだ。」

「探そう!」

 サイト達は慌ててゲリョスを追いかけた。

 ゲリョスはすぐに見つかり、攻撃、逃げる、攻撃、逃げる、怒り……っと繰り返した。

 やがてゲリョスの変な動きをした。頭を前に何度か突きだし…。

 次の瞬間、凄まじい白い閃光が放たれた。

「きゃあああああ!」

「目、目が目がーーーー!」

 二人とも閃光をもろに浴びて目をやられた。

 視界を奪われ、フラフラとする二人。

 ゲリョスは、その間に逃げていった。

 視界が戻り、フラフラ状態から回復した二人はゲリョスがいないことに気づいて慌てて地図を広げて追いかけた。

 見つけたら即座に攻撃する。特にルイズは、よくもやってくれたなと言わんばかりに弾を撃ちまくった。

 そして……、ゲリョスが断末魔の声を上げて倒れた。

「よっしゃあ! 剥ぎ取りだ!」

「待ってサイト!」

「あ? なんだよ?」

「死にマネかもしれないわ。」

「ルイズ、偉い。よく気づいた。」

「あっぶねぇ…。危うく死ぬとこだった。」

 近づきかけたサイトは、慌ててゲリョスから離れた。

「どうする?」

「なあ、ルイズ。撃ってみろよ。」

「ええ、そうするわ。」

 そう言いながらルイズがライトボウガンに弾を装填し、ゲリョスの頭に向かって撃った。

 するとゲリョスは、顔をあげた。

「やっぱり!」

「危なかった~!」

 もし迂闊に近寄っていたらとんでもない一撃を受けて死んでいたかもしれない。

 起き上がったゲリョスは、悔しそうな大きな鳴き声をあげ、目を赤くして突進してきた。

 それをサイトは、それを難なく避け、ルイズは、弾を装填し、撃ちまくる。

 そして、とどめだとサイトがゲリョスの首を切ったとき、ゲリョスは、断末魔の声を上げて倒れた。

 するとクエスト終了のファンファーレが鳴った。

「なんだ、これを基準にすればよかったんじゃないですか!」

「ゲリョス討伐クエストは、二匹を同時に相手にする時もあるから、基準にはならないときもあるんだ。」

 倒したかどうかの判断基準について文句を言ったサイトに、腕組みしたセエが首を振ってからそう言った。

 それから、ゲリョスの死体から剥ぎ取りをし、報酬を受け取って、クエストは終了となった。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 村に帰ると、恒例となっている村長への報告に行った。

「うむ! よくやったようじゃな。」

「やったな、ルイズ!」

「やった、やった!」

 サイトとルイズは、褒められて喜び合った。

「あの村長…。」

「セエよ。」

「はい!」

「まだじゃよ。」

「えー、ダメですか?」

「ん? なんですか?」

 二人の様子を見て、サイトとルイズは訝しんだ。

「まだやっとらんクエストがあるじゃろ。」

「え? なんですか?」

「運搬じゃ! 運搬!」

「……飛竜の卵を運ぼうか。」

「えー! 地味!」

「そんなことしなくっても、飛竜はちゃんと倒せて…。」

「こりゃ! 運搬ひとつできんで何がハンターか!」

 文句を言う二人に村長は怒った。

「とにかく! 運搬クエストをやらんと、次の段階へは進ませんからな!」

「サイト、ルイズ。」

「なんです?」

「このクエストが終わったら……、リオレウスを狩ろう。」

「えっ?」

「えっ!」

 リオレウスと聞いて二人はキョトンとしたり、驚いたりした。

 リオレウスは、二人にとっては、因縁のある竜だったからだ。

 級友を傷つけ、学校の生徒や先生を殺し、そしてルイズの家族も傷つけた竜だった。

「戦うんですか…、アイツと…?」

「ああ。そろそろいいと思った。」

「今の私達に…?」

「二人とも、イャンクックや、ゲリョスもしっかり倒せた。俺よりもずっとずっと強いよ。」

「セエよ。」

「はい?」

「お主はお主じゃ。そこの子らと同じじゃないんじゃ。」

「…はい。」

「セエさん?」

「…いや、なんでもない。」

 セエは、そう言って背中を向けた。

 そして、グイッと腕で顔をこすっていた。

 村長がサイトとルイズに近づき、小さく耳打ちをした。

「セエは…、弱いことを気にしておるんじゃ。」

「あ…。」

 初めて出会った当初から、自分のことを弱小だと言っていたセエ。

 G級になれたものの、弱いことは彼にとって最大級のコンプレックスなのだ。

 サイトとルイズと違い、たった一人でG級まで上り詰めるまでどれほどの苦労をしたのだろう?

 そんな彼が、初見かリベンジ一回くらいでクエストをクリアしてくサイトとルイズをどんな気持ちで見ていたのか…。

「じゃがのう。同情だけはしてはならん。」

「でも…。」

「そうね…。」

「ルイズ?」

「同情されても、空しくなるだけよ。私、分かるわ。」

 ルイズは、虚無に目覚める前、たくさんの苦労をしてきた。弱い自分を責めて責めて、同情や哀れみの目や言葉がどれほど辛いかも。

「ん? どうしたの?」

「あ…、な、なんでもないです。」

 振り向いてきたセエに、サイトは慌てて取り繕った。

「三人とも。運搬クエストを成功させ、その後、リオレウスに挑むのじゃ!」

「はい!」

 

 そして、後日、運搬クエストを行うことになった。




筆者は、アクションゲー苦手です。
村長クエストでも、何度もやられて苦労しました。
セエ(筆者のアバター)は、サイトとルイズが二人一組で順調に勝ち上がっていくことに、若干思うところがあるという設定にしました。


次回は、飛竜の卵の運搬クエスト。


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第十四話  卵を運搬しよう

卵運搬クエスト。

今回は、卵を二個運搬するクエストなので、場所はジャングル。そして出現する竜はリオレイアです。(ポータブル無印基準)


 

 

 後日。予定通り、飛竜種の卵の運搬クエストを行うことになったのだが…。

「はあ~。」

「ため息つかない。」

「だって、ただ運ぶだけでしょ?」

「その運ぶだけのクエストが、地味に難しいから。」

 セエは、そう言って面倒くさがるサイトを窘めた。

「そうそう、運搬には、運搬向けのスキルもあるんだ。」

「装備ですか?」

「そう。装備の組み合わせで、戦い向きになったりとか、運搬や暑さや寒さに強くなったりもする。」

「戦い向きって、例えば?」

「ガード、攻撃力、防御力、はらへり、毒、麻痺、睡眠、気絶、回復速度、回復、風圧、千里眼、自動マーキング、斬れ味、他にもガンナーなら弾の種類を追加できる。まあ、色々あって、きりが無いな。」

「でも、たかが運ぶだけでしょ? スキルを付けるほどなんですか?」

「分かってないなぁ…。まあ、やってみれば分かるよ。」

「えっと、今回のクエストって、飛竜種の卵を二個取ってくるだったかしら?」

「ひとつは、サイト、二つ目はルイズ。」

「えっ、私も!?」

「二人ともできるといいけど、無理ならサイト一人で二つだ。」

 ちなみにここは、ジャングル。飛竜種の卵の運搬クエストが行える狩り場のひとつだ。

 セエは、二人には分からないが、ある竜の存在を警戒していた。

「じゃあ、行こう。ウダウダ言ってても始まらないから。」

「はーい。」

 不本意そうに二人は返事をして、三人は出発した。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 高台のような、高い位置に飛竜の卵はあった。

「……急ごう。」

「えっ? 別に運ぶだけでしょ?」

「いいから。」

「…分かりました。重っ!」

 サイトが大きな飛竜種の卵を持ち上げた。

「ほらね。この重さでキャンプ地まで運ぶってなったら…。あっ、マズい。」

「えっ?」

「急ごう!」

 セエがサイトを急かした。

 言われるまま、ヨタヨタとサイトが卵を運ぶ。

 その時だった。

 何かが上を通り過ぎた。

「!?」

「雌飛竜だ!」

 雌飛竜、そしてリオレウスの対となる竜、リオレイアだった。

「うわああああ!」

「きゃああああ!」

「早く移動だ!」

 サイトは、汗をかきながら必死に走ってエリア移動した。エリアを移動した直後、リオレイアが地面に着地して吠えた。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

「あんなのがいるなんて聞いてないわよーーー!」

「いや、卵運搬クエストには、竜は付き物だよ。なにせ自分の巣から卵を取られるんだから怒るよ。」

「なんでそれを早く言わないのよ!」

「言ったら意味ないと思って…。俺も最初は気づかなかったから。」

「ど、どうするんですか?」

「どうするもなにも…、このまま運搬するだけだよ。落とさないようにね。すぐ割れちゃうから。」

「うわぁ…。」

 地味で楽な仕事だと思った運搬クエストが、実は地味に大変なクエストだったことにサイトもルイズも悲鳴を上げた。

 一生懸命運んでいると……。

「あのセエさん…。」

「なに?」

「行きにいなかったランポスがなんでいるんですかーーー!」

「こういうことがあるから、このクエストは厄介なんだ…。一撃受けたら卵落としちゃうから絶対にダメージ受けないようにね。」

「ひえええええ!」

 素早く飛びかかってこようとするランポスの群れを避けながら、ルイズが援護射撃をしながら、なんとかエリアを抜け、やっとこさキャンプ地にたどり着いた。

「さ、赤い箱に納品だ。」

「重かった…。」

 やっとひとつ納品し、ゼーゼーと荒い呼吸をするサイト。

「じゃあ、あと一個、行こうか。」

 容赦なく、セエが言った。

「無理! 無理無理無理!」

「絶対巣にあの竜いるわよ!」

「いたら、逃げる。そして、移動するのを待つ。それだけだ。」

「どうやってよ!」

「支給品の中に、ペイントボールがあっただろ?」

「えっ……、投げつけるの?」

「二人とも、自動マーキングスキルがないんだから、それしかないよ。」

 グッと親指を立てて、それはそれはいい笑顔でセエは、そう言ったのだった。

 

 その後、運良くリオレイアが巣にいなかったため、もう一つの卵の運搬は迅速に行えた。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 村に戻ってきた三人を村長が見た時、セエの後ろにいる二人がいやにゲッソリしていた。

「どうした? そんなゲッソリして。」

「リオレイアに臆したみたいで…。」

「ほう、そうか。まあ、良いじゃろう。リオレウス討伐クエストの許可を出す。」

「ありがとうございます!」

 セエがお礼を言って頭を下げた。

 ゲッソリしていたサイトとルイズも、顔を見合わせ、喜びを噛みしめた。

「心してかかりなさい。」

「はい!」

 元気を取り戻した二人は、力強く返事をした。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

「おめでとうにゃ。」

 家に帰ると、トウマは、おやつとお茶をお盆に乗せて持ってきた。

「でも、これからにゃよ。リオレウスを倒してやっとハンターは一人前にゃ。でも飛竜種は、リオレウスだけじゃないにゃ。」

「分かってるって。」

「ほんとかにゃ?」

「うるさいわねー。」

 トウマとサイトとルイズは、おやつを食べながらそんな会話をした。

「ご主人も負けてられにゃいにゃよ。」

「…分かってるって。」

「セエさんが?」

「俺も早く武器をパワーアップさせたい。でも……。」

「素材獲得がとんでもなく難しいにゃ。」

「それって飛竜の?」

「そう、蒼火竜の逆鱗。あれひとつさえあれば……、コレがパワーアップするんだ。」

 そう言ってセエは、背中に背負っている蒼い大剣オベリオンを見た。

「蒼火竜?」

「蒼いリオレウスだ。リオレウスの亜種。」

「あおい? あ…。」

 それを聞いたルイズの顔が強ばった。

 ルイズの家族を襲い怪我をさせたリオレウスは、蒼いという特徴があったのだ。

「そうなのか、ルイズ?」

「父様に怪我を負わせたのは、そいつよ!」

「リオ系の亜種は結構いるにゃよ。」

「えっ?」

「蒼、銀、金、桜…。雌を合せても種類が豊富だ。」

「亜種は、通常種よりも強いにゃ。いきなり戦おうだなんて思わないことにゃ。」

「っ!」

 家族の仇討ちをしたいと考えていたルイズは、トウマに見透かされて肩を跳ねさせた。

「そんなこと言うなよ!」

「無謀を勇気とはき違えるにゃよ? ちゃんとした装備も道具も経験もなくて飛竜に戦いを挑んでも死ぬだけにゃ。」

「うぅ…。」

 トウマに論破され、サイトは呻いた。

「ま、ともかく、しっかり指導するにゃよ? ご主人。」

「あ、ああ…。」

 おやつを食べ終わり、空いた皿などの後片付けをしながらトウマがセエに言った。

 トウマがキッチンに行った後、三人は黙っていた。

「えっと……りお…。」

「セエさん!」

「はいぃ?」

 セエを遮るようにサイトが声を上げた。

「俺たち…勝てますか?」

「えっ?」

「リオレウスって竜にですよ!」

「……分からない。」

「セエさんは…、やっぱり大変だったですか?」

「ああ…。ずいぶんと苦労したよ。何度も武器を変えたりして、試行錯誤してやっと勝てた。」

 セエは、俯き、拳を握った。

「やっと……勝てたんだ…。」

 セエは、壁に立て掛けてある大剣リオレウスを見ながら言った。

「セエさん。」

「なんだい?」

 ルイズが真剣な目を向けて言った。

「私達…この世界に来て頼れる人がいません。」

「うん。」

「セエさんだけが、頼りなんです。」

「…うん。」

「あのとき…、指導してくれると言ってくれたこと…感謝しているんですよ?」

 だから…っと、少し間を置いて。

「自信を持ってください。」

「……ありがとう。」

 セエは、ルイズの言葉に微笑みを返した。

 




運搬クエストは…、地味に面倒です。
卵や岩、脆すぎない!?ってびっくりしたものです。


次回、ついにモンスターハンターの目玉モンスター・リオレウスと対決。


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第十五話  リオレウスを狩ろう その1

リオレウス討伐クエスト。

最初に言っておきます。
失敗します。


 

 

 入念な準備を整え、そしてゲリョスを狩って得た素材などを使って、片手剣ポイズンタバール、そして更にパワーアップさせ、ポイズンタバルジンにして挑むことにした。

 セエが言うには、リオレウスには毒も有効的だというので、この武器を選んだ。

 準備が出来た後、村長のところへ向かった。

「おはよう。いよいよじゃな。」

「はい。」

「リオレウスを見事狩ることができたなら、今度こそお主らを正式にハンターとしよう。そして集会所クエストを受けてもよい。」

「えっ、しかし村長…。」

「この子らの故郷を襲っておる竜は、おそらくわしが発足しておるクエスト以上じゃよ。」

「? どういうことですか?」

「…セエから聞いておらんのか? わしが発足しておるクエストのモンスターは、弱い分類なのじゃ。」

「よ…!?」

 今まで戦ってきたモンスターや飛竜種が実は弱い分類だと聞き、サイトとルイズは愕然とした。

「じゃがのう。いきなり強い相手を相手にしては、死ぬだけじゃ。じゃからこそ、わしは若きハンター達のためにクエストを発行しておるのじゃ。積み重ねて積み重ねて…、ようやく実を結ぶのじゃ。」

「納得できない?」

「…いいえ。けど集会所の飛竜はもっと強いんですよね?」

「うん。」

「村長さんのクエストで戦い方を覚えろってことですよね?」

「そうじゃ。」

「俺たち…、勝てそうですか?」

「それは分からん。」

「そうですか…。」

「どうする? 自信がないのならやめとくか?」

「いいえ!」

「やります!」

 二人は力強く言った。

「うむ。では、リオレオス討伐クエスト。行って参れ。」

「はい!」

「じゃあ、出発しようか。」

「はい!」

 

 

 そして三人は、村を出発した。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 リオレウス。

 雌の飛竜リオレイアの対となる雄の飛竜である。

 森と丘、沼地、火山などに幅広く生息する火竜で、その名の通り炎のブレスを吐く器官を持つ。

 普段は、小、中の草食モンスターを餌に、自らの縄張りの周りを飛び回って生活しているが、ひとたびハンターを見つければ凶暴性を露わにし、ハンターを排除しようとしてくる。

 また数種類の亜種が存在する。

 

 

 サイトとルイズは、ガチガチに固まりながら森と丘を進んでいた。

「二人とも、緊張するだろうけど、もうちょっと楽に…。」

「だ、だって…。」

「そりゃ、君達にとっては、仇敵だろうけど。」

「……たくさん死んだわ。」

 ルイズとサイトが語り出す。

 リオレウスが突如学院を襲い、たくさんの死傷者を出したこと。

 魔法がほとんど効かず、水精霊騎士隊として鍛えたはずの腕もほとんど意味を成さなかった。

 ルイズの家の敷地もリオレウス(蒼リオレウス)に襲われ、烈風のカリーヌの圧倒的な魔法でも倒せず、ルイズの父親を負傷させた仇敵。また、後で聞いた話だが、ヴァリエール家の領地の畑を食い荒らした竜もいたらしい。

「……ごめん。考え無しだった。」

「だいじょうぶ、戦えますから。」

「…二人が相手をしたリオレウスは、G級クラスかもしれないな。」

「そんなに違うんですか?」

「大きさだけでも二倍近く違う時がある。」

「えっ、そんな小さい!?」

 村長クエストでのリオレウスが、G級と違ってそこまで大きさが違うのだと聞いて二人はびっくりした。

「でも、火竜は火竜だ。小さいからって劣るわけじゃないんだ。」

「いや、侮ってるわけじゃ…。」

「けど、ちょっとだけ楽かもって思わなかった?」

「…う…。」

 少し思ったことを見透かされ、サイトは黙った。

 その時。

「あ…。」

「えっ?」

「二人とも。早速だ。」

「えっ?」

 空を見上げると、そこには、今まさに地上に降りようと羽ばたいているリオレオスがいた。

 遠目に見ても、サイトとルイズが遭遇したリオレウスより、小柄に見えた。

 リオレウスが舞い降りながら、こちらの存在に気づいた。

 セエが下がる。その際に、サイトとルイズの肩をポンっと叩いた。

 叩かれてハッとした二人は、慌てて武器を手にした。

 リオレウスが吠えた。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

「落ち着け…。落ち着け、俺!」

 今まで何匹もイャンクックやゲリョスを倒してきた。

 だが、相手が最初に見て戦ったリオレウスより小型とはいえ、それでも手が震える。

 しかし、それでも学院での惨劇といえる一方的なリオレウスの殺戮劇の光景は脳裏に焼き付いて離れない。

 魔法がほとんど効き目がなかった。いや、恐れなかったと言った方が良いのか。たったそれだけで、圧倒的な力を持つ象徴であったメイジは、総崩れだ。

 しかし、この惨劇の背景には、リオレウスに臆した教師や一部の生徒により扉を閉められてしまい、外部にいた生徒達が建物内に避難できなかったことも原因になっている。

 惨劇の片棒を担いだその教師や生徒達は、リオレウスが撤退した後、当然だが罰せられた。

 サイトも大怪我を負い、更に毒までもらってしまったが、アンリエッタの助力もありなんとか回復することができた。

 リオレウスだけじゃなく、他にも竜やモンスターが現れ、ハルケギニアの生態系が狂い、力の無い平民達が多く犠牲となり、いきなり強襲してくる飛竜種に兵力も削られていき、国そのものの危機となってしまった。

 原因究明をする暇も無い状況の中、ルイズが所持していた始祖の祈祷書が最後のページにある魔法を浮かばせた。

 それは、ワールド・ドアに似ているが、似て非なる物で、世界を移動すると同時に、移動した時間軸に戻るという時間と空間を操る唯一の魔法で、移動と戻る、二回しか使えない貴重な魔法だった。

 そのため、サイトとルイズは、飛竜種や他のモンスターに対抗するための力を手に入れるために希望を託され、魔法を行使し、ココット村でセエと出会った。

 自分達は、後戻りしてはならない。たくさんの人々の希望を託されたのだ。

 そのためにも……。

「絶対に…勝つ!」

「は…はぁ!」

「ルイズ?」

 サイトは、ルイズの様子がおかしいことに気づいて振り返った。ルイズは、過呼吸を起こしかけていた。

「ルイズ!」

「サイト! よそ見をするな!」

「えっ?」

 その時、リオレウスが突撃してきた。

「ガハッ!」

 油断してしまったサイトは、もろに轢かれた。

 ルイズの真横を通り過ぎたリオレウスは、動けないルイズに噛みつこうと牙を剥いた。

「ルイ…ズ!」

 倒れていたサイトは、すぐに起き上がれない。

 リオレウスの口が迫ったとき、ルイズがライトボウガンの発射口を向けて、咄嗟に撃った。

 口の中に弾が当たり、リオレウスは、悲鳴を上げその間にルイズは、リオレウスから離れた。

 ペッペッと口の中の弾を吐き出したリオレウスは、口をパカッと開け、炎の玉を吐いた。イャンクックとは比較にならない、大きな炎の玉だ。

 サイトは、横に転がって炎の玉を避けた。

 リオレウスが宙を少し飛びながらの突進をしてきた。

 サイトは、これも避け、リオレウスの尻尾の下に入り込み、腹を切りつけた。

 ルイズも必死で撃つ。

 リオレウスは、炎を吐きながら宙に浮いて後ろに移動する動作をした。

 吐かれた炎によりサイトは炙られ、その頭上をリオレウスが過ぎ去った。

 リオレウスは、宙に浮き、炎に炙られているサイトに向けて炎を三発吐いた。

「サイト!」

「当たるかよ!」

 サイトは、熱を腕で防ぎながら走り回り避けた。

 すべて避けたサイトに向かって、リオレウスが急降下してきた。足の爪を突き出して。

 その動作には見覚えあった。

「ハッ!?」

 その動きは速く、避けきれなかったサイトに強烈な蹴りと共に爪が刺さった。

 その瞬間、体中に激痛が走った。毒によって。

「ぐ…はぁ…。」

「サイト!」

「サイト、解毒薬だ!」

 セエの声でサイトは、ハッとして道具袋から慌てて解毒薬を出して飲んだ。

 念のためと持ってきていて正解だった。

 バサバサと舞い降りてきたリオレウスが、吠えながら突進してきた。

 サイトは、盾を構える。リオレウスの巨体に当たり弾かれるが、リオレウスの腹の下をくぐった。

 サイトが下をくぐった直後で立ち止まったリオレウスが尻尾を振った。

 サイトは、後ろを向いていたため、気づかず、身体の横からそれを受け、弾き飛ばされた。

 ルイズは、必死で弾を撃っているが、リオレウスは、まるで応えていないようだ。

 サイトは、口から血を垂らしながら、必死にリオレウスの腹を切った。

 すると苦しげにリオレウスが鳴いた。

 片手剣ポイズンタバルジンによって毒を食らったのだ。

 その隙に回復薬を飲んで回復したサイトは、口の中の血をペッと吐き出し、リオレウスの腹の下を斬りまくった。

 やがて、リオレウスの口から黒い煙が出た。

「怒り状態だ!」

 怒り状態になれば、攻撃力が五割増しになる。しかもスピードも上がる。

 サイトとルイズは、そのことを忘れかけていたため、そのスピードに驚かされることになった。

「ぐ、あああ!」

「サイト!」

 とんでもない速度で振られた尻尾を盾で受けるが、受け止めきれず弾かれた。

 リオレウスが、ふいにルイズの方を見た。

「っ!」

 目が合ってしまいルイズは、ビクンッと震え上がった。

 自分達がかつて遭遇したリオレウスより小型とは言え、リオレウスはリオレウスだ。

 リオレウスが鳴き声を上げながら、ルイズの方へ突進してきた。

 恐怖に固まって棒立ちになっていたルイズの前にセエが躍り出た。

「セエさん!?」

「クエストリタイアだ!」

 リオレウスの突進を大剣で防ぎながら、セエは、クエストのリタイアを宣言した。

 

 三人はリオレウスから逃れ、村へと撤退した。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 意気消沈で、村に帰ったサイトとルイズを連れて、セエは村長のところへ行った。

「リタイアしたのか?」

「はい。」

「どうした?」

「二人は、リオレウスにトラウマがあるようで…。」

「…そうか。」

「なんで、リタイアしたんですか!」

 サイトが叫んだ。

「あのままじゃ、ルイズが死んでた。過呼吸を起こしかけてたし、とてもじゃないがクエストを続行できないと思ったんだ。」

「わ、私は…。」

 自分のせいでクエストが失敗したと思い知り、ルイズは震えた。

「それは、困ったのう…。」

「あ、あの…もう一度…。」

「焦る気持ちは分かる。じゃが、リオレウスを前にして動けぬようでは、餌になりに行くようなものじゃぞ?」

 そう言われ、ルイズは押し黙った。

「まあ、少し休みなさい。リオレウス討伐クエストを行うかどうかはそれからじゃ。」

「はい…。」

 村長はそう言い、項垂れたサイトとルイズは力なく返事をした。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 家に帰ると、トウマが出迎えた。

「話は聞いてるにゃ。ま、これでも食べて休憩にゃ。」

 そう言ってトウマが持ってきたのは、サイトの世界でバウムクーヘンと呼ばれているお菓子だった。

 意気消沈しているサイトは、そのことに気づく余裕がなく、受け取ってモソモソと食べていた。

 ルイズに至っては、バウムクーヘンが乗った皿を受け取ったまま俯いている。

「さて、どうしたらいいんだ?」

 セエが額を押さえながら呟いた。

 指導することは出来る。だが、心の傷まではどうにもならない。それは他人ではどうすることもできないのだ。

「…ごめんなさい。」

「ん?」

「ルイズ?」

「私のせいで…。」

 ルイズの目からポロポロと涙がこぼれ落ちた。

「わわわ! どうして泣くの!?」

「ルイズ、とりあえず落ち着けって!」

「だってぇ、だってぇ!」

 ルイズは、ついにワーっと泣き出した。

 セエとサイトは、必死にルイズを慰めた。

 ルイズは、泣き疲れて眠ってしまった。

「……サイト。」

「なんですか?」

「君は、戦えるかい?」

「リオレウスとですか。もちろんですよ!」

「…問題は、ルイズか。」

「エクスプロージョンが効かなかったことが、あの時、よっぽどショックだったみたいで…。」

 ルイズにとって、爆発の魔法は自分自身の汚名の象徴でもあったが、それがやがて虚無という新しい自分自身の象徴となった力そのものとなった。それが通用しなかったことが本人が自覚していないがかなり応えているのだ。

「こればかりはな…。」

「そうですよね…。」

 こればかりは本人次第なのだ。

「やるしかにゃいと思うにゃ。」

「トウマ。」

「お前達には大きな戦う理由があるはずにゃ。だったら、こんなところで躓いてる場合じゃないにゃよ?」

「分かってるさ、そんなこと! けどルイズは…。」

「だったら辞める事にゃ。」

「なんだと!」

「トウマ、言い過ぎだ。」

「……本当にそれでいいのかにゃ?」

 トウマが寝ているルイズの方を見て言うと、ルイズの肩が跳ねた。どうやら起きてたらしい。

「ご主人も、イヤならもう、突き放すにゃ。」

「俺は…。」

「…ずっと一人で頑張ってきたご主人にゃ、いきなり二人の新人の指導は厳しいにゃよ。」

「俺は…、投げ出したりしない。」

「セエさん…。」

「この二人は、俺しか頼れる相手がいないんだ。」

「にゃー。ご主人もほんと人がいいにゃね。」

「悪かったな。」

「でも、言ったからには投げ出さないで欲しいにゃね。」

「分かってる。」

 トウマに念を押され、セエは、プイッとそっぷを向いて強くそう言った。

「ルイズ…。大丈夫だ。」

「サイト…。」

 起き上がったルイズの傍にサイトが膝をついた。

「ルイズは、一人じゃないし。セエさんもついてる。必ず、アイツ(リオレウス)に勝つぞ!」

「…うん!」

 二人は、手を取り合い、頷き合っていた。

 そんな二人の姿を見て、セエは、微笑ましく思った。

 




集会所クエストよりも小型でも、リオレウスはリオレウスです。そう簡単に倒せたら面白くありません。
そして、筆者は何度も負けました! 毒やら麻痺やらの武器を色々調達しては、頑張りましたとも!

ハルケギニア側ですが、いきなりG級クラスのリオレウスが攻めてきたら……。未熟なメイジ達がいる学院がどうなるか…。

しかし、脇役のアイルー・トウマがやたら目立つなぁ…。どうしても厳しいことを言うキャラが欲しくてトウマにやられせてしまってますが…。


次回、リオレウス討伐クエスト、リベンジ。


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第十六話  リオレウスを狩ろう その2

リオレウス討伐クエスト、リベンジ。

もっと長続きさせたかったけど、グダグダになりそうだったので、ここで終わらせました。


 後日。準備をまた整え、アイルーキッチンでしっかり料理を堪能してから、リオレウス討伐クエストに挑むことになった。

 村長は最初、ルイズの様子を心配しているようだったが、ルイズの顔色が良くなっていると判断すると、許可を下ろしてくれた。

 

「ルイズ。無理そうなら、またリタイアするから。」

「分かってるわ。」

 セエが念を押し、ルイズはそう返答した。

 サイトの方は、サイトの方で、自分が早くリオレウスを仕留めればルイズに負担をかけずに乗り越えられると思って意気込んでいた。

 

 そして、森と丘に到着し、支給品を取って、それからリオレウスを探した。

 リオレウスは、別のエリアにいた。

 こちらに気づく前に飛び立とうとしていたので、サイトが大慌てでペイントボールを投げつけた。

 そして行動を地図で確認し、エリアを移動した。

「なんかいますね? 猫? ってかアイルー?」

 進んでいくと、その先に棒のような物を持った猫型のモンスター達がいた。

「メラルーだ。気をつけろ。」

「えっ? 弱そう…。」

「厄介なんだ。物を盗むから。」

「はいぃ!?」

 それを聞いて驚いてる間に迫ってきたメラルーが棒でサイトとルイズを殴った。

「ギャッ!」

「痛ーい!」

 ニャーっと、泣きながらピョウンピョンと跳ねるメラルー。

 その手に、回復薬をひとつ持っていた。

「げっ! 返せよ!」

「そのまま斬っちゃえ。」

「えっ!?」

「じゃないと取り返せない。」

 容赦の無い言葉に唖然としている隙に回復薬を盗んだメラルーが逃げようとしたので、慌ててサイトがその背中をどついた。

 悲鳴に近い鳴き声を上げたメラルーは、ポロリッと持っていた回復薬を落とした。慌てて奪い返す。

「きゃー、来ないでー!」

 他のメラルー達に取り囲まれ、ルイズは、慌てた。

「サイト。容赦するな。」

「で、でも…トウマの仲間じゃ…。」

「例えそうでも野生のアイルーもメラルーも狩りの邪魔するなら敵だ。」

 セエは、自分に迫ってきたメラルーを容赦なく大剣で切った。メラルーは吹っ飛び、パタリッと倒れた。

 死んだ!?っと思ったら、そのメラルーは、地面を掘って逃げていった。

「あの通り、死なないから安心して。」

「頑丈!」

 小型のモンスターながら、その頑丈さに驚かされた。

 そうと分かればと、サイトは剣を抜き、メラルー達を斬って退治した。

 そして邪魔なメラルー達を排除してから、奥にいるリオレウスのところへ向かった。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 リオレウスは、ムシャムシャとアプトノスらしき肉を食んでいた。

「そういえば、リベンジするたび思うんですけど、同じ個体じゃないですよね?」

「たぶん違う。」

 近くに隠れてヒソヒソとそんな話をした。なにせそこにいるリオレウスには、サイトが負わせた傷が無いからだ。まあ仮にあったとしても、飛竜種の生命力では、寝ればたちどころに治ってしまうのだが…。

「そうだ、サイト、ルイズ。」

「なんです?」

「尻尾を切り落とそう。」

「えっ!?」

「尻尾、頭、翼の爪。リオレウスには、壊せる箇所が数カ所ある。壊せれば尻尾から素材が取れるし、報酬でもらえる素材も変わることもあるから、やってみよう。」

「でも…。」

 サイトがチラリッと背中を向けているリオレウスの尻尾を見た。

 あの太い尻尾を切り落とす? セエが持っている大剣でなら可能だろうが、片手剣で果たして切れるかどうか…。

「徐々に徐々に斬っていけば切り落とせるよ。」

 セエは、そう言ってグッと親指を立てた。

 ああ…、これ絶対やらなきゃいけないやつだ…。っとサイトは悟った。

「でも、ここ狭くないですか?」

「ここには、よくリオレウスとか他の飛竜も来るんだ。狭いけど我慢するしかない。」

「…はい。」

 このエリアは、一本道になっており、はっきり言って戦いにくい場所だった。

 だがここはよく飛竜種がやってくる場所で、しかも巣で本格的に眠る以外で少し回復を図る場所でもあるため戦いを余儀なくされるのだ。

 サイトは、フーッと大きく息を吸って吐き、心を落ち着かせると、意を決して片手剣を抜き、背中を向けたままのリオレウスの背後にソロソロと迫り、尻尾の下に入り込んだ。

 そして、尻尾の根元に向かって剣を振り上げた。

 ガキンッと鱗に弾かれ、リオレウスがサイト達の存在に気づいて大きな鳴声を上げた。

 あまりの大きな鳴き声に耳をやられ、たまらず耳を塞いだ。リオレウスや他の飛竜種がよくやるバインドボイスだ。

 振り返ったリオレウスが下にいるサイトに向かって噛みつこうと口を開けて頭を振り下ろしてきた。

 サイトは、それをバックステップで避けると、リオレウスは、大きな鳴き声を上げながら突進してきた。

 サイトは、横に転がって避ける。

 岩壁にぶつかるのも気にせずリオレウスは、突進し、岩壁にぶつかって止まると、再び振り返って口をパカッと開けて炎の玉を吐いた。

 サイトは、再び横に転がって避ける。

 ルイズは、横から弾を撃ちまくる。

 リオレウスは、ルイズを気にせず、サイトだけを狙って再び突進し、サイトがしゃがんで腹の下にもぐり、尻尾の下に行って再び尻尾を狙って刃を振るった。

 弾かれるのも構わず何度も何度も切りつける。

 やがて、鱗が剥げ、肉が露出しだした。骨が見え、トドメだとばかりに、サイトが大きく剣を振り上げてその場所を切りつけたとき、ついにリオレウスの尻尾が切り落とされた。

 リオレウスは、悲鳴じみた鳴声を上げ、宙に浮き、飛び去っていった。

「あっ! ペイントボール…。」

「探そうか…。あと、尻尾から素材が剥ぎ取れるよ。」

 そして地面に落ちている尻尾から素材をひとつ剥ぎ取り、サイト達は、急いでリオレウスを探した。

 幸い、リオレウスは、隣のエリアで見つかった。

 池の水を飲もうとしていたリオレウスがサイト達が来たことに気づいて、バインドボイスを放つ。

 距離があったため、幸い耳はやられなかった。

 リオレウスは、宙に浮き、そのまま炎の玉を地上に向けて吐いてきた。

 サイトは、その炎を避けつつ、降下してくるリオレウスに斬りかかった。

 翼の爪が折れる。

 再び飛び立とうとしたリオレウスに向かって、ペイントボールを投げつけ、地図で行動を確認しつつ追いかける。

 攻撃する、追いかける、攻撃する、追いかける……、それを繰り返していき、怒り状態になれば攻撃の手を緩め、怒りが鎮まるまで待つ。

 ポイズンタバルジンの毒もあって、徐々にダメージが蓄積されたリオレウスは、やがて足を引きずって逃げ出した。

「足を引きずった! ってことは、巣ですね!?」

「そう! よく覚えてた!」

「急いで追いましょう!」

 三人は、急いで飛竜の巣へ向かった。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 巣に入ると、ランポス達がお出迎え。

 そしてその中央で、グースカ寝ているリオレウスがいた。

「先にランポスを倒そう。邪魔だから。」

「分かりました! ルイズ、援護しろよ。」

「分かってるわ。」

 先にランポスを掃討し、サイトは、寝ているリオレウスに近づいた。

 目と鼻の先に近づいても起きやしない。

「ほら、早く。こうしてる間にも回復してるんだから。」

「分かってますよ。」

 そう言って、サイトは、剣を振り上げて、リオレウスの顔に向かって振り下ろした。

 ガキンッと弾かれたが、リオレオスを起こすには十分だった。

 起き上がったリオレウスは、怒り状態になり、サイトに襲いかかった。

 サイトは、盾でリオレウスの牙を防ぎ、宙に浮きながらの炎の玉の攻撃を横に転がって避ける。

 ルイズは、必死に弾を撃って援護する。

 リオレウスは、何度か足を引きずりながら、それでも攻撃をしてくる。

 そして、最後の一撃だとサイトが首の下を斬ったとき、ついにリオレウスは、断末魔の声を上げて倒れた。

 サイトとルイズは、クエスト完了のファンファーレが鳴ってもしばらく死んだリオレウスを見つめて放心していた。

「や、やった……。」

「私達…ついに…。」

 自分達が初めて遭遇したリオレウスには劣るものの、それでも同じ種類の竜を倒せた。

 その衝撃に身が心が震えていた。

「二人とも、剥ぎ取りだ。」

「あ、はい。」

 二人を現実に戻したのは、いつものセエの声と言葉だった。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 剥ぎ取りを終え、報酬を受け取り、村に帰還して恒例となっている村長のところへ行った。

「よくやった!」

 あっぱれじゃと、村長は自分のことのように喜んだ。

「見事じゃ! よくぞリオレウスを倒した。これでお主らも一人前のハンターに近づいたな。よし、お主らを正式にハンターとして認める!」

「やったーーー!」

「やったわね、サイト!」

 長い道のりだった…。迂闊なサイトの発言も原因ではあるが、やっと、ついに二人は正式なハンターとして認められたのだ。

「……。」

「嬉しくないか?」

「いいえ…。嬉しいです。」

「お主の指導が無ければ、二人はおそらく死んでおったじゃろう。自信を持つのじゃ。」

「そうですよ、セエさんのおかげで、俺たちここまでこれたんですから。」

「本当にありがとうございます!」

「俺は……。」

 セエは、どう反応したらいいか分からず戸惑った。

 嬉しいのは本当だ。だが心のどこかで……。

「俺は……師としては失格だな。」

「そんなことないですよ!」

 そう呟くセエに、サイトが言った。

「セエさんがいなかったら、俺たちここまでこれませんでした!」

「本当に、感謝してるんですよ?」

「…サイト…ルイズ…。」

 セエの目からポロリッと涙がこぼれ落ちた。

「あれ? あれ、なんで泣いてるんだ俺?」

「セエさん。自信持ってください。セエさんは、俺たちの大切な恩人なんですから。」

「……俺は、このままでいいのかな?」

「お主はこの経験を次のステップへの糧にするんじゃ。お主のハンターとしての人生はまだまだこれからじゃからのう。」

「…強く…なりたい。」

「励むのじゃ。お主ら三人で。」

「…はい!」

 三人は、顔を見合わせ、そして村長の方を見て力強く返事をした。

「そうじゃ。これを機に、農園を使うことも許可しよう。セエ、お主の農場を使わせなさい。」

「は、はい。」

「農場?」

「一定の基準をクリアしたハンターは、農場をもらえるんだ。そこで、畑で栽培したり、キノコを採集したり、釣りをしたり、鉱物を掘ったり…。」

「うわっ、それ便利!」

「ただし! 一定の基準をクリアするまで、使えない部分を設ける! それに従わなければ、即ハンターとしての資格を剥奪し、村を追い出すから、心しておくのじゃ!」

「ええー!?」

「まあ、俺も最初は、そんな感じだったし。妥当じゃないかな?」

 残念がる二人に対し、セエは暢気にそう言ったのだった。

 

 

 リオレウス討伐クエストは、こうして無事に終わったのだった。




村長クエストのリオレウスなので、こんなもんでしょうか?
集会所に挑んだとき…、そのタフさに驚かされる二人も書きたい。


次回は、農場。


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第十七話  農園を使おう

セエの農場を共有することになるけど、村長の命で一部は、クエストをクリアするまで使えないということにしました。例えば、上級の鉱物が採掘できる部分とか。


 

 リオレウスを倒し、大興奮の夜を過ごした翌日。

 セエの農園にサイトとルイズは、案内された。

「広っ!」

「アイルー達がいるわ。」

「そう、ここはアイルー達に管理してもらってるんだ。」

 そして、セエは、農園を案内した。

 まず畑。

「ここで、種や薬草とかを植えると、クエストが終わった翌日には収穫できるんだ。」

「へえ? 例えば何植えるんです?」

「例えばコレ。」

「あっ、赤い種だ。」

「緑の種もあるわね。これは?」

「こっちは、怪力の種、こっちは忍耐の種。どっちも鬼人薬や、硬化薬の材料になる。クエストで入手する以外は、ここで植えて増やした方が手軽かもね。」

「なにか植えるかにゃ?」

「植えたい物をここにいるアイルーに渡させば植えて、育ててくれる。」

「わー、便利ですね。」

「赤い種と緑の種は、二人とも持ってただろ? あとで、持ってきて植えたら?」

「そうします。」

「肥料があると収穫量が増えるにゃよ。」

「肥料?」

「飛竜のフンとか…。」

「やだわぁ…。」

「文句言うなよ。作物には肥料が必須なんだからよぉ。」

「ま、無くてもそれなりに収穫はあるからさ。じゃ、次行こう。」

 セエは、二人を違う場所へ案内した。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

「ハチミツが採れる養蜂場所だ。虫の死骸や、たまにツチハチノコが採れたりもする。」

「便利ですね。回復薬グレートがすぐ作れる。」

「採れる回数は、四回までだ。」

「なんで?」

「さあ? 四回採るとそれ以上は何も採れないから…。あ、でもクエストをクリアすると次の日にはまた採れるようになるよ。」

「あっちの草むら…、なんか光ってる…。」

「あそこは、虫の採集場所だ。釣りの餌や調合や武器とか防具を作る素材になる虫が捕れる。あっちの大きな木は、ハンマーで叩けばたくさん採れる。」

「そういえば、虫も大事な素材なんですよね。」

「虹色コガネとか……。農園でしか採れない虫もいるから利用率は高いな。」

 セエは、そう説明した後、二人を連れて、池の桟橋の方へ向かった。

「この桟橋で釣りができる。ネットがあれば、ネットを発射して、まとめて魚を捕ることもできる。」

「たまに魚竜の鱗が取れることもあるにゃよ。」

 桟橋を管理しているアイルーが補足を入れた。

「魚竜って、ガレオス?」

「違う。ガノトトスだ。」

「がの…。」

「いつか戦うことになるよ。じゃ、次行こう。」

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 屋根の下にキノコが生えた丸太が立て掛けられた場所に来た。

「ここで、キノコを栽培してて、特産キノコ以外のほとんど全部のキノコが採れるようなる。」

「あらぁ、便利ね。」

「まあ、慣れたらあまり利用しなくってね。」

「そうなんですか?」

「マンドラゴラがたまにいるくらいかな。この先、坂の上には、鉱物を掘れる岩盤がある。ただ、あそこは、一番下以外はクエストある程度クリアしないと利用できないと思う。」

「えー、なんでですか?」

「上に上がる場所があるだろ? 上に行くほど上級の鉱物が掘れるんだけど……、俺もある程度クエストが出来るようならなきゃ使えなかったからさ。ほら、はしごの下にアイルーが見張りしてるだろ。たぶん村長がつけたんだ。」

「ほんとだ。」

「残念だわ。」

「そうだ、久しぶりに爆弾使うか。」

「えっ?」

 そう言ってセエは、家に戻り、大タル爆弾を持ってきた。

 そして、三つある大きな穴のところへ行き、そこを管理しているらしい、アイルーに大タル爆弾を渡した。

 アイルーは、爆弾を受け取るとすぐに着火した。

 サイトとルイズがギョッとしている間に、着火した爆弾を抱えてそのアイルーは穴のひとつに入っていった。

 そして少し間を置いて爆発音と地響きが起こり、アイルーが穴から吹っ飛ばされてきた。

「と…とれたにゃ…。」

 そう言ってヨロヨロといくつかの鉱物を差し出してきて、そのアイルーは、バタリッと倒れた。

「死んだ!?」

「死んでない。気絶してるだけだ。」

「何してんのこの子!?」

「いや、こういう採掘の方法をする場所なんだ。爆弾が良質なほど鉱物の量と質が良くなる。」

「うわぁ…。」

「良質な爆弾ってなによ…。」

「そうだ、爆弾も調合でもっとも良質なGがつくものが作れるんだ。あとで教えるよ。飛竜種との戦いに有利になる場合もあるから。」

「小タル爆弾なら作れますよ?」

「戦いに使うなら、大タル爆弾の方が良い。作れるようになっとこう。」

「あー、そりゃ大きい方がいいですよねぇ。」

「ただな~…。」

「どうしたんです?」

「モンスターの濃汁って素材が必要なんだ。これは、クエストで調達するか、錬金術のスキルで作るしかないんだ。」

「のうじる?」

「言うなれば、モンスターの体液だ。けど、Gのつく爆弾の威力は大きい。ラオシャンロンのクエストじゃ必須だ。」

「ラオシャンロンって…、山のように大きな竜でしたっけ?」

「そうだ。」

「どうしてそんな竜が人里に現れるんですか?」

「さあ…? 一説じゃラオシャンロンは、何か恐ろしい存在に追われて移動してくるって言われてるんだ。その移動する線上に集落がある場合があって、ハンターは、それを止めるために依頼を受ける。」

「この村も…?」

「ああ…。」

「そういえば、この村は、山と大きな塀で囲まれてますよね。」

「だいたいの人が住む場所はそうなってる。飛竜やモンスターが入ってこれないように。けど、ラオシャンロンほどになったら、その塀を破壊してくるんだ。その前に倒すか、進行方向を変えないといけない。」

「……もし、失敗したら?」

 恐る恐るそれを聞くと、セエは、黙った。

 聞かずとも分かるだろう。山のように巨大な竜が進行してきたら人が住む集落がどうなるかなど…。

 セエは、俯いた。

「…ラオシャンロンは、好き好んで人間の集落を襲うわけじゃないんだ。むしろ、こっちのことなんて雑草やアリ程度にしか思ってないと思う。実際、退治する時だって、ハンターのことなんて微塵も気にしてなんかいないんだ。」

「つまり、反撃すらしてこない?」

「そう。ただ前に進もうとするだけだ。」

 セエは、ハ~~っと大きく息を吐いた。

 ラオシャンロンを前にすると、自分がいかに小さい存在なのか思い知らされる。それほどに圧倒的なのだ。

「俺は……、嫌いだ。」

「セエさん…。」

 絞り出すように声を漏らしながらギリッと拳を握り、肩を震わせて俯くセエの様子に、もしかしたらラオシャンロンのクエストに失敗したことがあったのかもしれないと察することができた。

 ココット村には、その爪痕はないようなので、別の場所であったラオシャンロンの依頼を受けて……。

「…あ、あの、セエさん。」

「…ん? あ、ああ、ごめん。なんでもない。」

 セエは、青い顔で無理矢理笑った。

「農場って以上ですか?」

「ん、ああ…。まあ、こんなところだよ。」

「そうですか…。」

 なんか会話が続かない。

 一分ぐらいして。

「…ところで、何か植えるかい? 俺は別に植えたい物はないから、ウネ三つ貸すよ。」

「えっ? いいんですか?」

「いいよ。そうだ、怪力の種や忍耐の種は、店で売ってるから買おうか。それで植えよう。」

「はい!」

 三人は、農場を出て、行商人から怪力の種や忍耐の種を購入して、三つのウネに植えた。

「あとは、明日か、クエストをこなせば生えてくる。そうだ……。」

 セエが、ポンッと手を叩いた。

「鬼人薬グレートや、硬化薬グレートを作ろう!」

「……ん?」

 それを聞いて二人は、顔を見合わせた。

 その道具を作るには…、何かが必要だったはずだ。

 そう……白くてブヨブヨの……。

「フルフル狩りだ!」

「いやああああああああああああああ!!」

 ルイズが鳥肌になって今日一番の絶叫をあげたのだった。




セエは、ラオシャンロンにトラウマがあるという設定にしました。
別に失敗したことを責められたわけではありません。自責の念です。
ハードのラオシャンロンとか……、筆者は数え切れないほど失敗しました…。そのたびにいくつの町とか村が…っと思ったらセエの自責の念に繋がりました。

ラオシャンロンとは、いつかやり合います。

次回は、フルフル討伐。


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第十八話  フルフルを狩ろう

色々とすっ飛ばしてフルフル討伐クエスト。


フルフルは決して弱い飛竜じゃないです。
筆者は何度も奴に負けましたとも。


 ルイズは、ムスッとしていた。

「なあ、いい加減機嫌直せよ。」

「…うるさい。」

「これは、必要なことなんだぜ?」

「…分かってる。」

 

 今日は、フルフルを討伐する。

 その段取りと、今日の日を迎えるまでルイズはずっと不機嫌だった。

 

「さ、時間も限られてるし。急ごう。」

 セエは、そんな空気を読まず、暢気にそう言った。

「ほら、行くぞ。」

「分かってる。」

 ルイズは、ムスッとしたままそう返事をした。

「…セエさん。」

「ん?」

「グレートがつく薬作りって…、当然ですけど何匹もフルフルを?」

「……うん。捕獲クエストの方が取れやすいっちゃ取れやすいんだけど…。まあ今日は倒し方を学ぶって意味で。」

「はーい。だってさ。」

「……。」

「そうだ。フルフルは、リオレウスと違って、部分破壊がないから、報酬に影響はないんだ。」

「つまり、剥ぎ取りと、クエスト後にもらえる報酬の確立に頼るしかないってことですか?」

「そうなんだよな。」

 もらえる物は、確実性がないのだ。一部の素材は、確実もらえる物があるが、そのほとんどは運任せだ。なので、時に必要ない物ばかりということもある(※全ての素材はちゃんと使えます)。

「それと、目が退化してるから閃光玉は効かないし、耳はいいけど、音爆弾が効くかって言ったら、効かないし。フルフルは、匂いでこっちの動きを感知するから。」

「正攻法で行くしかないってことですか?」

「そう。」

「……正直、あんまり触りたくないです。あの竜…。」

「気持ちは分からなくはないけど。必要なことだから。剥ぎ取りもするから。」

「剥ぎ取りは、やってよ。私やらないから。」

「文句言うなよ。」

「そんなにイヤ? フルフル。」

「イヤです!」

 サイトとルイズは、口を揃えて言った。

「まあ、イヤだイヤだって言ってても倒せるようになっとかないと…、グレート系の薬はよく使うんだから。」

「…はい。」

「…分かってるわよ。」

「早く行こう。」

 そうして、三人はやっと出発した。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 フルフル。

 洞窟を住処にする白い飛竜。

 闇の中で生活、進化したため目は退化しており、身体に鱗や外殻はなく、湿り気を帯びた柔軟な皮膚と体内にある電気袋を活用するため分厚い脂肪に覆われていてとてもブヨブヨしていて、肉も霜降り状。

 他の飛竜種に比べてあまり活動的ではなく、凶暴ではあるがその場から動かずよく伸びる首を伸ばして獲物を捕えたり、天井に張り付いて酸性の唾液を上から吐きかけたり、電気ブレスを吐いてシビレさせるなどする。

 血のように真っ赤な亜種が存在する。

 

「さてと、ここはジャングルなわけだけど…。ここでのフルフルは、移動する範囲が広い。まず、ここか、ここにいるはずだ。だけど、すぐ移動されちゃうから、ペイントボールだけは間に合わせよう。じゃないととんでもなく時間のロスになる。」

「…セエさん。見えてるんですよね?」

「ん? ああ、そうだけど?」

「……俺たちもいい加減欲しいです、そのスキル。このクエストが終わったら…。」

「頑張ろうか。素材集め。」

「…ちぇっ。」

 遠回しに装備を作ってもらえないかと言ってみたがすげなく断られた。

「そうだ。」

「えっ?」

「ブラックピアスを作るのに必要な素材を教えるよ。」

「それってセエさんが付けてる…それですよね?」

「これは、ブラックGピアス。ブラックピアスより上の物だ。でも性能は同じだ。」

「ブラックピアスを付ければ…。」

「いや、自動マーキングスキルは、合計でプラス15の千里眼スキルが必要だ。それ以外の装備も調えよう。けど、ブラックピアスひとつで、プラス9は稼げる。」

「高っ!」

「このクエストが終わったら、必要な素材…を持ってる竜とモンスターを倒す準備をしよう。」

「やっぱり、竜か…。」

「ハンター稼業に竜の素材は必需品だ。頑張ろう。」

 セエは、そう言ってサイトの肩をポンッと叩いた。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 フルフルは、セエがいるはずだと言ったエリアのひとつにいた。

 すぐに飛んで行こうとしたため、サイトが慌ててペイントボールを投げつけた。

 そして行動を読み、先回りしてフルフルの到着を待った。

 やがてバサバサとフルフルが舞い降りてきた。

「うわぁ…。」

 ルイズがライトボウガンに弾を装填しながら嫌そうに声を漏らした。

「ルイズ、行くぞ!」

「え、ええ…。」

 離れているのに、鼻と耳がいいフルフルは、すぐにサイト達の存在に気づいて振り向いてきた。

 サイトが接近すると、フルフルは、リオレウスとは比べものにならないおぞましい大きな鳴き声をあげた。

 バインドボイスだが、リオレウスのそれよりも強いソレだ。

 たまらず耳を塞いだサイトとルイズ。

 するとバチバチとフルフルが口に電気を溜めだした。

「やべぇ!」

 耳をやられてふらついたところに電気ブレスが放たれた。

 慌てて横に転がったが、電気ブレスの一部を食らってしまった。

「ぐああああ!」

「サイト!」

 その威力たるや、ワルドのライトニングクラウドと同等ぐらいに思えた。まともに受けてたら死んでいただろう。

 膝をつくサイトに向けてフルフルがジャンプした。

 サイトが踏まれた。

「ぐぇ!」

「サイト! ちょっと、サイトの上からどきなさいよ、このブヨブヨ!」

 ルイズは、必死になってライトボウガンを撃ち続けた。

 撃たれてもものともせず、フルフルがサイトを踏んだままルイズの方に顔を向け、口に電気を溜めだした。

「来るぞ、ルイズ! まともに食らったら死ぬぞ!」

「っ!」

 セエの言葉にルイズは、ハッとして、射程範囲から逃げようとした。

「こ…の!」

 サイトは、踏まれたまま剣を抜いて足を切りつけた。

 しかし切り傷は浅く、電気ブレスを防ぐには至らない。

 ギリギリで、ルイズは、電気ブレスから逃れた。

 逃げるルイズを追うように、フルフルがサイトの上からどいた。

 その隙にサイトは、フルフルの下から逃れ、お返しだと言わんばかりにフルフルの身体を切りまくった。

 すると、フルフルの身体が放電を始めた。

「サイト、離れろ!」

「あ!」

 前にフルフル捕獲クエストで見ていたはずなのに、サイトは、もろにフルフルの放電を食らって吹っ飛ばされた。

 身体が焦げ、焼け焦げる匂いが鼻をついた。

 そんなサイトに、フルフルが首を伸ばして噛みついた。

 サイトは、痛みに呻きながら剣を突き刺し、フルフルを剥がした。

 そして距離を取って、慌てて回復薬グレートを飲んで回復した。

 サイトは、再び伸びてきたフルフルの口を転がって避け、身体の横に回り込んで切りつけた。

 棍棒のような短い尻尾が振られてきたので、盾で防いだ。

 バチバチと再び放電してきたので、転がって後ろに避けた。そして放電が終わってから切りつける。それを繰り返した。

 やがてフルフルが白い煙を口から吐き出すようになった。怒り状態だ。

 怒り状態になった飛竜の攻撃力とスピードがアップすることは、もう分かっている。

 怒りが治まるまで逃げまくり、ルイズが遠距離からライトボウガンを撃ってダメージを蓄積させた。

 怒りが治まると、攻撃を避けながらフルフルの白い身体を切りまくる。

 やがて、フルフルが足を引きずりだして、飛び立った。

「よっしゃ! 次は巣ですね!?」

「そう。」

「でも、この辺に巣ってあったかしら?」

「フルフルは、洞窟に住む竜だ。だから、場所も…。」

 セエは、地図を広げて二人に示した。

 場所は、薄暗い洞窟内。

 気温は低く、ホットドリンクを飲んで進んだ。

 洞窟内には、イーオス達がひしめいていた。

 その奥にフルフルがやってきて、寝る体勢になろうとしていた。

「邪魔だ!」

 サイトとルイズは、イーオス達を駆逐してから寝始めたフルフルに迫り攻撃した。

 たちまち起きたフルフルが、おぞましい大きな鳴き声(バインドボイス(大))をあげた。

 防ぎようがない大音量に耳を塞いでいると、目の前にいるフルフルが電気ブレスの動作に移っていた。

「や…べ…!」

 耳をやられてふらついているサイトに、地を這う電気ブレスが吐かれた。

 全身を焼かれたサイトがバタリッと倒れた。

「サイトーーー!」

 ルイズが悲鳴を上げた。

「サイト! 起きろ! 二発目が来るぞ!」

 サイトがヨロヨロと起き上がろうとしているときに、再びフルフルが電気ブレスの動作に移っていた。

 サイトは、最後の力を振り絞って横に転がり、ギリギリでブレスを避け、回復薬グレートを飲んだ。

「この…野郎!!」

 やられた仕返しだばかりにサイトがフルフルの横腹を切りまくった。

 やがて、怒り状態までの間隔が短くなった。

「怒り状態の間隔が短くなるのは、もう倒せる状態まで来てる証拠だ! 捕獲クエストなら、捕獲時だけど。」

「うおおおおおおおおおお!」

 セエの言葉を聞いてるのか聞いてないかは分からないが、サイトが大きくフルフルの首を切ったとき、フルフルは、断末魔の声を上げて倒れて絶命した。

「よっしゃああああああああ!」

「サイト、大丈夫!?」

「ああ、平気だよルイズ。」

「嘘! 火傷が酷いじゃない!」

「二人とも早く剥ぎ取りだ。」

「ちょっとぉ! 怪我の心配ぐらいしなさいよ!」

「治療はその後だ。先に剥ぎ取りをしないと迎えが来る。急いで。」

「俺は大丈夫だ。さてと…。」

 サイトは、死んでるフルフルを見た。

 …この湿り気を帯びたブヨブヨした白い身体にナイフを入れるのかと思うと勇気が必要だった。

 セエに早くと急かされ、サイトは意を決してブヨっとした肉を掴み、ナイフを突き刺した。

 ジットリした湿った感触の皮の表面、ブヨブヨとした質感の肉の掴んだ感触、分厚い脂肪を切り裂き、アルビノエキスを取り出し、皮を剥いだ。

 やがて、迎えが来て報酬を受け取り、村に帰還した。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 村に帰ると、いつも通り村長のところへ行った。

「ほっほう。フルフルを狩るとは、腕を上げたのう。」

「やったなルイズ!」

「ええ、やったわね、サイト!」

 あんなにフルフルを嫌がってたのに、どこへやら。

「しかし、まだまだじゃぞ。自惚れてはならん。」

「村長。彼らに自動マーキングスキルを付ける装備を作らせようと思うんですが……、バサルモスとカンタロス羽が取れるクエストを…。」

「そうか。ならば、ランゴスタのクエストを先にやりなさい。今ランゴスタとカンタロスが大量発生しておって依頼が殺到しておるのでな。」

「分かりました。二人とも、まずはランゴスタ討伐クエストをしよう。」

「らんごすた?」

「大型の昆虫だ。ブラックピアスを作るのに必要なカンタロスの羽が報酬で取れることがあるクエストだ。」

「一定数のランゴスタを狩るクエストじゃよ。」

「今度は虫ぃ?」

「虫も立派な素材になる。それに数が集まれば脅威だ。その脅威を退けるのもハンターの仕事さ。そうだ、このクエストは、片手剣の方が有利なんだ。サイトには向いてるかもね。」

「では、次はランゴスタ討伐クエストでよいか?」

「二人ともそれでいい?」

「自動マーキングスキルが手に入るならやります。」

「私も。」

「じゃあ、決まりだね。お願いします、村長。」

「うむ、では、準備をして翌朝出発しなさい。」

「はい!」

 

 

 こうして、自動マーキングスキルを手に入れるため、ランゴスタ討伐クエストに挑むことになった。




自動マーキングスキルは、装備のスキルの合計千里眼プラス15で身につきます(ポータブル無印基準)。
筆者は手っ取り早くこのスキルを手に入れるために、ブラックピアスを作りました。
サイト達にブラックピアスをあげるという案も考えましたが、それでは甘やかしになるのでやめました。


次回は、ランゴスタ討伐クエスト。(素材のカンタロスの羽を手に入れるため)


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第十九話  ランゴスタを狩ろう

ランゴスタ討伐クエスト。

今回は、可も無く不可も無いかな?


 

 

「うわーーーー! ウジャウジャいるーーー!」

「キャーー! 刺さないでーー!」

「二人とも冷静に!」

 ここは、ジャングル。

 ランゴスタとカンタロスが大発生中である。

 

 

 ランゴスタ。

 ほぼすべての狩り場に生息する、蜂のような昆虫が突然変異で巨大化したとされる昆虫型モンスター。

 ハンターを見つけると羽音を鳴らしながら近づいたり遠のいたりを繰り返して攻撃のチャンスを伺うというなかなかの知能犯。

 

 カンタロス。

 ジャングルや沼地に生息する巨大昆虫モンスター。

 ハンターを見つけると這いずりながら接近してきて強靱な足と背中の羽を使った跳躍で攻撃を仕掛けてくる。

 

 

「追いかけるより、自分を餌にした方が効率よく狩れるはずだ!」

「えっ!?」

「攻撃してくる瞬間、動きが止まる!」

「それ失敗したら刺されますよね!?」

「刺される覚悟でやるんだ! 俺もこのクエスト、何度も刺されまくってクリアしてきたんだ!」

「ぎええええ!?」

「ランゴスタの針は、低確率で麻痺が来るから気をつけろ!」

「刺される前提で攻撃しなきゃいけないのに、それはないわ!」

「ルイズは、遠距離攻撃なんだからいいじゃねぇかよ!」

「あ、そうだったわ。」

 なんて会話をしながら、ランゴスタ狩りが始まった。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 ランゴスタは、人ほどもある大きさの蜂のようなモンスターで、羽音を鳴らしながら接近してくるので分かりやすくはある。

 ただ接近してきてもすぐには攻撃をしてこないうえに、こちらが攻撃しようとすると途端に離れていくという知能犯で地味に厄介だ。

 だが接近してきたところを運良く攻撃したり、向こうが攻撃してきた瞬間を狙えば倒せる。

 ただひとつ問題があるとしたら……。

「…セエさん。」

「なに?」

「ランゴスタって、死体が残らないんですね…。四散しちゃうっていうか…。」

 攻撃して倒すとバラバラに四散してしまうことだろう。そのため剥ぎ取りができないうえに、バラバラすぎて素材にならない。

「サイトが使ってるポイズンタバルジンなら、毒を与えて毒で死ねば死体は残る。」

「素材が取りづらいんですね…。」

 それはそれで地味にイヤである。せっかく倒した努力が水の泡だ。

「カンタロスも同じだ。けど、カンタロスは無視しよう。討伐対象じゃないから。」

「きゃああああ!」

「ルイズ!?」

 見ると、ルイズがカンタロス達に取り囲まれていた。

 ガンナーであるルイズには、虫のモンスターは的が小さくうまく当てられないでいたらしい。

「…無視しろなんて言ってる場合じゃなかったか。」

「ルイズ、今助ける!」

 サイトが剣を抜いてカンタロス達を蹴散らした。

「だいじょうぶか、ルイズ?」

「ええ。それにしても虫がこんなに強いなんて…。」

「これだけ大きければ虫といってもとんでもない脅威になるんだ。G級ともなったら、もっと大変だよ。」

 巨大化していることで分厚くなった外殻は、竜ほどではないにしても硬く、脅威となる。

「この辺りは一掃した。次のエリアに行こう。」

 三人はエリアを移動した。

 次のエリアもランゴスタがうじゃうじゃ湧いていた。

 ところでエリア移動して、もといたエリアに戻るとまたランゴスタ達が復活しているのだが…。

「きりが無いわよ!」

「決まった数倒せばいいから。」

 あまりの数にルイズがキレ、セエが冷静にそう言ったのだった。

 

 その後、刺されながらやっとのことでランゴスタを決まった数倒し終え、報酬を受け取って村に帰還した。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 家に帰ると、すぐにトウマが虫刺されの薬を持ってきてくれて、サイトが上半身の着物を脱いで刺された箇所を塗ってもらった。

 なのだが…。

「ぎぇぇぇあああああああああああ!!」

「うるさいにゃ。我慢するにゃ。」

 メッチャ染みた。

「くうううううううう! 効く!」

「慣れないにゃね。」

 自分で刺された箇所を塗りながら悶絶しているセエだった。

 ルイズはというと、キッチンの方で他のアイルーに手伝ってもらって塗ってもらっていた。入り口から悲鳴が聞こえてくる。

「はー、しかし、まだまだ足りないな。」

「えっ?」

「ブラックピアスを作るには、カンタロスの羽が15個いるんだけど……。」

 セエは、キッチンから戻ってきたルイズと上半身裸のサイトを見た。

「がんばろう!」

 グッと親指立てて良い笑顔で言ったのだった。

 サイトとルイズは、気が遠くなった。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 その後、数回、ランゴスタ討伐クエストを繰り返して、ブラックピアスを作るのに必要なカンタロスの羽を集めた。

「むっ? いやにゲッソリしておるのう? どうした?」

「いやぁ、討伐は簡単だったんですけど、虫刺されの薬が染みて…。」

「なるほど。」

 セエの後ろにいるサイトとルイズの様子を見て言った村長に、セエが答えた。

「村長。次は、バサルモスのクエストを…。」

「うむ。では、手配しよう。準備をしなさい。」

「あの…、バサルモスって?」

「別名、岩竜って言われてる、幼体の飛竜種なんだ。」

「幼体!?」

「小さいからって、弱いわけじゃないからね?」

「むしろ小さい分、身を守るために睡眠ガスや、毒ガスを吐くうえに、火も吐くからのう…。」

「岩竜っていうくらいだから…、硬い?」

「うん。グラビモスほどじゃないけど。」

 

 

 こうして、ブラックピアスを作るため、素材となる岩竜の甲殻を手に入れために、バサルモス討伐クエストに挑むことになったのだった。

 




ランゴスタとカンタロスって、地味にイヤですよね……。邪魔。


次回は、バサルモス討伐クエスト。


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第二十話  バサルモスを狩ろう

バサルモス討伐クエスト。

バサルモスの硬さには、筆者もずいぶんと苦労させられました……。
しかし後にそれより硬いグラビモスが…。あー、考えたくない。


 別名、岩竜。バサルモス。

 飛竜グラビモスの幼体であり、飛竜種としては中型。

 その別名通り、並の鉱物よりも強固な外殻を持つ。

 あまり活動的ではなく、普段は岩に擬態している。

 

 

 

 バサルモスが生息してるのは、火山。

「初めて来る場所ですね。」

「バサルモスやグラビモスは、この場所を生息地にしてるんだ。」

「ああ…、暑いわね。火山の熱がここまで来るわ。」

「そのためにクーラードリンクを持ってきたんだ。あついぞ~。砂漠の比じゃないからさぁ。」

「うわぉ。」

 三人は、支給品を取り、キャンプ地からバサルモスを探すために出発した。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 バサルモスがいるエリアは、似たような岩が点在する。

「この中のどれかがバサルモスだ。」

「えっ?」

 一見しただけでは、どれが飛竜なのか見分けがつかない。

「俺は見えるから分かるけど…。どれかを攻撃すれば当たる。」

「剣で叩くんですか?」

「そういうこと。」

「剣が欠けそう…。」

「? そういえば…。」

 セエは、今更なことに気づいた。

 通常、刃系の武器は、斬れ味が落ちてくる。そのため砥石で研いで斬れ味を戻す必要があった。

 だが、サイトが手にしている武器はいずれも斬れ味が落ちたことがなかった。

 二人から聞いていたガンダールヴという魔法の特性のおかげだろうか?

 しかしそんなことを考えている場合じゃない。時間は限られている。時間が来る前にバサルモスを倒さなければならない。

「まあ、いいや。あとで考えよう。」

「えっ?」

「擬態中のバサルモスには、攻撃ダメージが二倍になる。けど、どれがバサルモスか分からないだろ?」

「ええ…。」

「自動マーキングスキルが手に入ったら、爆弾を置いてやってたたき出せば大ダメージになる。覚えておくといいよ。」

「分かりました。」

「さ、バサルモスを探すんだ。」

「私が撃ってみようか?」

「それがいいかもね。これが初めてなんだし。」

 別にゲリョスの死にマネのように手痛い反撃が来るわけじゃない。だがサイトとルイズは、まだ初心者だ。バサルモスの生態を知らない。

「撃つわよ。」

「ああ、いつでもいいぜ。」

 サイトは、いつバサルモスが出てもいいように剣を抜いた。

 そして、ルイズが弾を装填し、岩を撃った。

 すると……。

 うなり声を上げながら、岩が動き出し、バサルモスが姿を現わした。

「大当たりじゃねぇか!」

「体当たりを仕掛けてきたら、周りの岩に誘導しつつ攻撃だ!」

「どうして?」

「周りの岩は、バサルモスが激突したら爆発する! それでかなりのダメージを与えられる!」

「なるほど!」

 そんな会話をしている間にもバサルモスは、鳴き声をあげ、爆発性が高い火を吐いた。

 サイトは、それを避け、ルイズは、距離を取りながら弾を装填して撃ちまくった。

 しかし…、カンカンと空しい音を立ててバサルモスの強固な外殻によって弾が弾かれた。

「硬い!」

「どこが柔らかいんですか!?」

「いや、全部硬い。あるとしたら…、腹部かな?」

 腹部を破壊することで肉を露出させてそこを攻撃することでダメージを蓄積できる。だが、硬い外殻を剥がすまでが大変なのだ。

「腹部をまず破壊だ! それで肉を露出させてそこを重点的に狙うんだ!」

 セエがそう叫ぶ。

 サイトは、言われて困った。

 相手は、中型とはいえ、そのまさに岩そのもののようなゴツゴツとした姿形から繰り出される体当たりは、戦車や大型トラックを彷彿させる。

 そして、バサルモスが猛ダッシュで突撃してきた。

 動きは遅い方ではあるが、もしぶつかったらひとたまりもないだろう。サイトは、横に走って避けた。

 ズズンッと音を立てて、バサルモスが前のめりに倒れて止まり、やがて立ち上がって振り向く。

 サイトは、岩を見て、それを背にしてバサルモスが突進してくるのを誘った。

 狙い通りバサルモスが再び突進してきた。

 サイトは、ギリギリで横に転がって避ける。途端岩に衝突したバサルモスが岩の爆発に巻き込まれてうめき声を上げた。

 よし!っとガッツポーズを取るサイトだったが、次の瞬間、体制を整えたバサルモスの身体から白い煙が発生した。

「うっ…。」

 それを吸った途端、凄まじい眠気が来て、サイトは倒れた。

「サイト!?」

「睡眠ガスだ!」

 バサルモスが眠ったサイトを無視して、ルイズの方を見た。

「えっ?」

 そして、猛ダッシュによる突進をしようと身構える。

 まずいっと感じたルイズは、急いで横へ逃げた。

 バサルモスは、横へ逃げていくルイズを追うように突進してきた。

「サイト!」

「う…うぅん?」

 サイトに助けを求めて叫ぶルイズの声と、睡眠ガスの効果切れで起きたサイトが眠そうに起き上がった。

 サイトは、バサルモスに追われているルイズを見て、やっと頭が冴えて慌てて剣を握ってバサルモスに斬りかかった。

 ガキンッ!っと空しく音が鳴るが、注意をこちらに向けるには十分だった。

 ガン、ギン、っと何度も何度も刃を叩き付ける。

 やがて振り向いたバサルモスの腹部をサイトが弾かれるのも構わず攻撃し続けた。

 バサルモスが身体を大きく揺らし、尻尾攻撃を行ってきたため、サイトは弾き飛ばされた。動きは緩慢だが、パワーは凄まじい。たったこれだけで肋骨がやられた。

 追い打ちをかけるようにバサルモスの身体から紫色の煙が吐き出された。

「うっぐっ!」

 毒ガスだった。

 サイトは、慌てて解毒薬を飲み、毒を消した。

 ルイズは、弾かれるのも構わず弾を撃ち続ける。弾かれてもダメージがないわけじゃないからだ。

 サイトは、腹の下に入り込んで何度もバサルモスの腹を切りつけ続けた。

 やがてバキッと音を立てて腹の外殻が剥がれ落ち、赤い肉が露出した。

 サイトは、露出した肉めがけて剣を突き刺した。

 痛そうな鳴き声をあげ、バサルモスが悶える。

 そのまま突進をしてきたため、サイトは、轢かれたがスピードがのっていなかったため、死ぬほどではなかった。

「ルイズ、腹を狙え!」

「分かってるわ!」

 ルイズは、肉が露出している腹を狙って弾を撃つ。

 サイトは、突進を繰り返してくるバサルモスの隙を突いて、必死に刃を振るって、時に突進を誘って岩に突撃させてダメージを蓄積していった。

 サイトが手にしているポイズンタバルジンによって、バサルモスも毒状態になったりして、ダメージは確実に蓄積されていった。

 やがて、足を引きずりだすバサルモス。

 だがそれでも攻撃の手は緩めてこない。向こうも必死なのだ。

「うおおおおおおおおお!」

 サイトが絶叫しながら、腹に剣を突き刺した時、バサルモスは断末魔の声を上げて倒れ、絶命した。

 サイトは、膝を折り、ゼーゼーと荒い呼吸を繰り返した。

 何度も轢かれて身体のあちこちが痛かった。

「サイト! だいじょうぶ?」

「ああ…、なんとかな。」

「さ、剥ぎ取りだ。」

「…容赦ないですね。」

 どんなに疲れていても変わらず急かしてくるセエに、サイトは苦笑いを浮かべた。

 そうして、剥ぎ取りをして、欲しかった岩竜の甲殻を手に入れたのだった。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 村に戻り、手当てをした後、早速ブラックピアスを作るために店に向かった。

「らっしゃい! 今日は何のようで?」

「ブラックピアスを!」

「はいよ。材料は…、揃っていますね。では、お作りしますんで少々お待ちを。」

 そして店の奥に引っ込んだ店主。

 しばらくして、奥から出てきた店主は、ブラックピアスを台に置いた。

「完成です!」

「やったわね、サイト!」

「やったな、ルイズ!」

「でもこれだけじゃ、自動マーキングスキルは発動しないよ。」

「あ…。」

「あとは、千里眼のスキルが付いてる装備を調えて、それでスキルが発動する。」

「どの装備が…。」

「こちらが、各装備の付与スキル一覧ですよ。」

 そう言って店主がリストを見せた。

「うわ…。持ってないものばっかし!」

「手っ取り早いのは、タロスシリーズだな。カンタロスの素材が必要だ。」

「…あ……。つまり…。」

「がんばろう!」

「うげーー!」

「いやーー!」

 またランゴスタ討伐クエストをやれということになって、サイトとルイズは、悲鳴を上げた。

 

 その後、ランゴスタ討伐クエストを繰り返し、なんとかタロスアームと、タロスコートを作り、ついにサイトとルイズは、自動マーキングスキルを手に入れたのだった。




バサルモスの成体、グラビモスの脅威を…、サイトとルイズは、まだ知らない…。
自動マーキングスキルは、サイトが身につけてます。
これにより、今後はペイントボール無しで竜を追えるようなりました。
筆者は、このスキルを身につけるために必死でしたよ。竜をいちいち探すのが面倒で面倒で…。


次回は、ガノトトスの予定。


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第二十一話  ガノトトスを狩ろう

そろそろ狩る竜も少なくなってきたな…。

あくまでまだ村長クエストしかやってませんので、そのうち集会所クエストにも挑んでもらうか…。

今回はガノトトス討伐クエスト。


 

「さて…、これからどうしようかな…。」

 セエは、悩んでいた。

 

 サイトとルイズは、今のところ順調に村長クエストをこなしている。

 イャンクックに始まり、フルフルも倒せたし、バサルモスも倒せた。

 自動マーキングスキルも手に入れたので、竜(またそれに相当するボスモンスター)を狩るのも楽になるだろう。

 

「まだ狩ってない飛竜種は……。」

 セエは、まだ二人が狩ったことがない飛竜種を選ぶことにした。

「ちょっとぉ、見せないでよ!」

「カエルだって必要なの聞いてなかったのかよ?」

「それでもイヤ!」

「カエル……、そうだ。ガノトトスだ!」

「えっ?」

 所持アイテムを整理していたサイトとルイズを見ていて、セエが思いついたと声を上げた。

「釣りカエルもちょうどあるし、ガノトトスに挑戦しよう!」

「がのととす…、ですか…。たしかカエルが好きな竜がいるって言ってましたよね?」

「そう、それがガノトトスだ。」

「カエルは、イヤ!」

「これを機会に克服しようか?」

「イヤ、イヤー!」

「あの、セエさん。俺が釣りますから…勘弁してやってくれます?」

「甘いね。サイト。」

 あまりにも嫌がるルイズにしびれを切らしたサイトがそう進言して、セエはため息をつきながらそう言ったのだった。

「ついでに、武器も増やそう。ボーン系を作ろうか。」

「ぼーん? 骨?」

「骨を使った武器の種類も多くてね。双剣で、水竜のヒレを使うのがある。それを作ろう。」

 そうと決まればと、村長のところに行って、ガノトトス討伐クエストの許可をもらいに行った。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 ガノトトス。

 水中を住処とする飛竜種で、空を飛ばない分、非常に大型。なんと他の飛竜種と1,2を争うほど。

 ジャングルや砂漠エリアの水源を住処としている。

 またその生態やヒレの形などから、魚竜(ガレオスとはまったく別物)または、水竜と呼ばれている。

 カエルが好物。

 

 

「!?」

「どうしたんだ?」

「見える…。竜の位置が…!」

「そう、それが自動マーキングスキルだ。」

「セエさんは、ずっとこれでやってたんですか?」

「そうだね。」

「うわっ、便利すぎる!」

「そうなの?」

 ルイズは装備してないため分からないが、サイトにはハッキリと竜の位置が分かっていた。

「かなり遠いですね。」

「ここは砂漠。水源は限られてるから、ガノトトスはほとんど動かない。まずは、ガノトトスがいる水源のあるエリアへ。」

 三人は、ガノトトスを討伐するため、水源を目指した。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 途中にいるゲネポス達を無視して、水源がある洞窟に来た。

 洞窟内はとても寒く、ホットドリンクを飲んだ。

「さあ、あそこの水源に、釣りカエルを垂らすんだ。」

「ホントに釣れるんですか?」

「釣れる。」

 訝しむサイトに、セエはキッパリと言った。

 高所から降り、澄んだ水の中に、釣り糸につなげた釣りカエルを垂らした。

 そして、しばらく待つ。

 やがて、ポチャンッと浮きが沈んだ。

「引っ張れ!」

「っ!」

 とんでもない引きにサイトは悪戦苦闘した。

 踏ん張ってないと水に引っ張り込まれそうだ。

 ルイズがサイトの腰を掴んで一緒に踏ん張った。

 そして…。

 とんでもない巨体の竜が水の中から飛び出し地上に叩き付けられた。

 ビチビチと跳ねるその大きな竜、ガノトトスに唖然とする二人の肩をセエが叩いた。

「ボサッとしてないで、戦う! 急がないと水に戻られちゃう!」

「は、はい!」

 慌てて二人は武器を取り、サイトが急いでガノトトスに迫った。

 その間に立ち上がったガノトトス。

 その背の高さにサイトとルイズは驚いた。

「ガノトトスに部分破壊はない! そのまま正攻法で攻めろ!」

 セエが離れた位置からそう叫んだ。

 ガノトトスが足を踏ん張り、口をパカッと開けた。

 次の瞬間、ビームのような水鉄砲が吐き出された。

 サイトは、背中をわずかにかすったものの間一髪で避けた。

 そして、サイトは、足の下に入り込み、ガノトトスの足と腹を切った。

 ガノトトスは、身体を横に向け、体当たりをしてサイトを吹っ飛ばした。

「ぐはっ!」

 その巨体から繰り出された体当たりは威力があり、サイトは、吐血した。

「サイト!」

「る、ルイズ、構うな! 撃ち続けろ!」

 サイトは、腕で口元の血を拭いながら立ち上がり、そう叫んだ。

 次の瞬間、太い魚のような尾が振られ、サイトは盾で防ぐも吹っ飛ばされた。

 続けざまに、カパッと口を開けたガノトトスが水鉄砲を吐こうとした。

 水というのは、高水圧で発射されると岩をも切り裂くと言われる。

 幸いにも村長クエストのガノトトスであったため、威力的には集会所クエストに劣り、サイトの身体を引き裂くことはなかったが、工事現場の鉄球をぶつけられたような、トラックとかで跳ねられたような凄まじい攻撃を受けることになった。

 サイトが倒れて呻いている隙に、ガノトトスは、腹で地面を滑り、それから跳んで水の中に潜っていった。

「いったんこの場所から離れよう。」

「どうして!?」

「もう一度ガノトトスを釣り上げる。そのためには、警戒を解かせる必要がある。離れてから少し時間をおくんだ。」

「サイト、だいじょうぶ!?」

「な…、なんとか…。」

「今のうちに回復して移動だ。」

 セエに言われ、サイトは無理矢理に回復薬グレートを飲んだ。

 傷を癒やしたサイト達は、洞窟を出た。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

「自動マーキングスキルなら、竜の状態も見える。どう? 赤いだろ?」

「はい。なんか、ウロウロしてますね…。」

 ルイズには見えていないが、セエとサイトには、竜の状態が色で見えていた。

「赤い色が青になるまで待つ。それからまた釣りカエルで釣り上げて攻撃だ。」

「待って!」

「ん? どうしたの?」

「あれだけサイトが傷だらけになったのに…、どうして助けてくれなかったのよ!」

 ルイズがセエを責めた。

「……忘れた? 例え死んでも責任は取らないって。」

「だからって見ているだけなんて!」

「ホントにマズかったらリタイアする。でもサイトはまだだいじょうぶそうだったからリタイアしなかった。それともリタイアする?」

「いいえ。やります!」

「サイト!」

「ルイズ、心配してくれてありがと。俺はまだやれるからだいじょうぶだから。」

「でも…。」

「なんなら、俺だけでアイツ(ガノトトス)を倒すけど?」

「っ! いいえ、私もやるわ! 使い魔を一人になんてさせないわよ!」

「ルイズ…。」

「二人ともできそうだね? じゃあ、ガノトトスも警戒を解いたみたいだし、行こうか。」

 三人は再度洞窟の中に入った。

 ガノトトスらしきヒレが遠くに見える。どうやら完全にこちらへの警戒は解いているらしい。

 サイトは、釣り竿の糸に釣りカエルを結びつけて、再び水源に投げ入れた。

 そしてしばらくするとまた浮きが沈んだ。

 再び釣り竿にかかったガノトトスを釣り上げる。

 釣り上げられて地上に引っ張り出されたガノトトスの口から白い煙が出ていた。怒り状態だ。

 スピードは増し、水竜の名とは裏腹に地上戦も可能なガノトトスの激しい反撃が来る。

 サイトは、その攻撃をかいくぐり、腹や足を切る。

 やがてガノトトスがよろめいた。

 ガノトトスが地上の上を腹で滑るようにしながら這い、跳んで水に飛び込む。

 そうなればまた洞窟から出て、警戒が解けるまで待つ。そしてまた釣りカエルで釣り上げる。地上に出したら攻撃するを繰り返した。

 やがて毒を食らったガノトトスが、断末魔の声を上げて倒れて絶命した。

「やったーーー!」

「やったわね、サイト!」

「さ、剥ぎ取り剥ぎ取り。」

 喜び合う二人に、セエは満足そうにそう言ったのだった。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 村に戻り、武器を生産できる店で武器の生産リストを見た。

 ハンター系とボーン系の武器の種類があり、片手剣がなぜか双剣になるなどの分岐がある。

 ボーンククリからボーンククリ改にし、そこから水竜のヒレを使うスリープショテルを作ることにした。

 なのだが……。

「睡眠袋がないか…。」

「それ…何から取れるんですか?」

「……しまったなぁ。」

「なんです?」

 額を押させているセエの様子に、何かヤバい物を感じた二人。

「……グラビモスだ。」

「ぐら…、あれ? グラビモスって…。バサルモスの…?」

「そう大人になった奴だ。」

 セエは、しゃがみ込んでウーンっと唸っていた。

「えっ? なに? そんなにヤバい竜なの?」

「俺も…何回アイツに炭にされそうになったことか…。」

「炭!?」

「あーー! でもいつか必ずぶち当たる飛竜ではあるけど!」

 白くて短い髪の毛をぐしゃぐしゃとかきむしりながらセエは叫んだ。

「よし、やろう! 必ずぶち当たる以上、避けられない!」

 立ち上がったセエが、そう言った。

 二人は顔を見合わせた。

「どうする? 二人とも…?」

「…必ず戦うなら…、やりますけど。」

「私も…。」

「……まあ、とりあえず休んで英気を養おう。ホント強いから、グラビモス…。」

「リオレウスよりも?」

「うん。間違いなく、グラビモスの方が上だと思う。」

 ズーンッと暗くなってセエは、弱々しくそう言った。

 その様子に、いかにグラビモスが脅威となる竜であるか察して、サイトとルイズは青ざめた。

 そしてふと思い出す。

 ロマリアの方で、火山に近い集落が一瞬にして焼き払われた事件を噂で聞いたのを。

 それは、まるでちょっとした岩山のような巨体をした一匹の竜の仕業だと……。

 まさかと思い、一応確認した。

「あの、セエさん。グラビモスって、ものすごい炎を吐くんですか? 例えば一瞬で集落を焼き尽くすほどの…。」

「…まあ…、うん…、あれはもはや火じゃないな。集会所のGクエストくらいになると炭どころか、灰も残らないかもしれない…。」

 二人はそれを聞いて確信した。

 ロマリアの集落ひとつを焼き滅ぼしたのがグラビモスだということを。




ガノトトスは、釣るのは楽しい。
けどデカくて攻撃を避けれないのがイヤだ。いつもごり押しで倒してました。
ガノトトスの水ブレスって水のカッターぐらいの威力があるのかな? それだとハンターの身体真っ二つになる。(汗)

ハルケギニアに現れたグラビモスがロマリアの、たぶん…村のひとつを滅ぼしたのは捏造です。


次回、グラビモスに挑む。

奴の熱線に何回焼かれたことか……。


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第二十二話  グラビモスを狩ろう その1

グラビモス討伐クエスト、一回目。

まず言っときます。失敗します。


 しっかり休み、回復薬などを揃え、アイルーキッチンでしっかり食事を取ってパワーをつけた。

 そして村長に、グラビモス討伐クエストの許可をもらいに来た。

「ふむ…、グラビモスか。」

「武器の種類を増やすには素材が必要で…。」

「ふむ…。」

 村長は少し考えた。

 サイトとルイズが、グラビモスを倒せるだけの力量があるかどうかを。

 そして。

「…よいじゃろう。許可をする。」

「ありがとうございます!」

「じゃが、マズいようならすぐにリタイアしなさい。」

「分かっています。」

「うむ。では、行って参れ。」

「じゃあ、行こう。二人とも。」

「はい!」

 

 

 こうしてグラビモス討伐クエストに挑戦することになった。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 グラビモス。

 別名、鎧竜。

 その別名が示すとおり、幼体のバサルモスを超える強固な外殻に覆われた大型の飛竜種である。

 その大きさは、他の飛竜種に比べ、二回りも大きく、またその分厚い外殻ゆえに生息地の火山地帯の灼熱の溶岩を泳ぐことさえできる。

 口から吐き出す灼熱の熱線は、触れる物すべてを焼き払い焦土にしてしまうほどである。

 

 

「グラビモスは、正直言って、攻撃の隙も少ないんだ…。大きさの分だけ動きは緩慢ではあるけど、なにしろデカいから…。」

「そのうえ集落ひとつを焦土にするほどの熱線も吐く…。」

「…炭にならないように頑張ろう。」

「炭ぐらい残ればいいけど…。」

「不安を増長させるようなこと言うなよ!」

 ルイズの一言にサイトが怒った。

 

 まだ見ぬグラビモスへの不安を抱えながら、セエに連れられた二人は火山エリアへ向かった。

 

 

 溶岩が流れる灼熱のエリアには、イーオスがいた。

 イーオスに気をつけながらクーラードリンクを飲んだ。

「!」

 自動マーキングスキルで見えていたが、溶岩の中から、ヌウッと白っぽいような灰色っぽいような、まさに鎧竜という名にふさわしいゴツゴツとした巨体が出現した。

 グラビモスである。

 溶岩から地上に上がったグラビモスは、身体を振り、身体に付着している溶岩を水を払うかのように飛ばす。

「これが…グラビモス!?」

「嘘でしょ…! 溶岩に浸かってて平気だなんて!」

 二人は、グラビモスの生態に驚いていた。

「来るぞ!」

 グラビモスが三人の存在を認識し、途端に自動マーキングスキルで探知されている色が青から赤に変わった。

 低いうなり声を上げながら、グラビモスがノシノシとこちらに迫ってくる。

 途中で足を踏ん張りながら吠えて、リオレウスと比べれば遅い方ではあるが猛ダッシュによる体当たりをしてきた。

 その巨体の迫力に加え、ついさっきまで溶岩に浸かっていたため、灼熱を帯びた鎧のような外殻の身体の接近に、大慌てで三人は散り散りになって避けた。

 死ぬ! 死ななくても大火傷する!っと、サイトとルイズは走りながら思った。

「弱点は…、腹の外殻を破った肉の部分だ! あと尻尾も切れる!」

「無茶言わないで!」

「近寄れませんよ! アイツ、熱すぎる!」

 直に触ったら確実に皮膚が焼け爛れるだろう。

「反撃を恐れず近づくか、遠くから攻撃するか選ぶんだ!」

「…うぐ…。」

 二択しか無い。

 すると、グラビモスがくるりと身体の向きを変えて、顔を上げて、口を開いた。

 途端、凄まじい熱線。もはやSFのビームのような太い熱線が吐き出された。

「うわああああああああああああ!」

「きゃあああああああああああああ!」

 サイトとルイズは、間一髪でそれを避けた。ルイズに至っては髪が長いため、ちょっとだけかすって先端が焼けた。

 熱線の線上にいたイーオス達が巻き込まれ、燃えていく…。

 それを見た二人は、気温が熱いのに、背筋がゾワッと寒くなった。

 接近せず遠くから攻撃しても、あの射程距離じゃ、遠距離も危険だ。

「く…くそ! やるしかねぇ!」

「サイト! 無茶しないで!」

 自棄を起こしたサイトが剣を抜いてグラビモスに斬りかかった。

 刃が触れた瞬間、ガキンッと空しい音が鳴る。

 次の瞬間、グラビモスの身体からブワッと赤い煙が吐き出された。

「あ、熱っ!! あっつ、熱い!」

 火炎ガスである。

 あまりの熱さに身体を焼かれたサイトに、ブンッと振られたグラビモスの短く太い尻尾が当たりサイトは吹っ飛ばされた。

「ぐはっ!」

「サイト!」

「撃て、ルイズ!」

「で、でも!」

「あのままじゃサイトがグラビモスの餌食に…。」

「っ! こ、この! こっちに来なさいよ! このデカブツ!」

 サイトがこのままじゃ死ぬと感じたルイズは、セエに言われるまま必死にライトボウガンを撃ち、グラビモスの注意を自分に引こうとした。

 しかし、グラビモスは、弾が当たっていてもものともせず、倒れているサイトに近寄り、大口を開けようとした。

 その瞬間。

「クエスト、リタイアだ!」

 駆け出したセエが、クエストのリタイアを宣言しながら、大剣ガノトトスを抜いて、グラビモスに斬りかかってサイトを食おうとしたグラビモスを止めた。

 

 すぐに迎えの援軍が来て、グラビモスを牽制しつつ、倒れているサイトを拾い、撤退した。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 リタイアしたことで、クエストをリタイアした際に払うお金を払い、三人は村に帰還した。

 セエの家で、ルイズは、泣いていた。

 二人にあてがわれているマットの上には、全身を火炎ガスで焼かれて火傷をしたサイトが寝かされており、処置を受けた状態で包帯でグルグル巻きになっていた。

「いつまで泣いてるにゃ。」

 トウマが甘いココアの入ったカップを持ってきてルイズの傍に置いた。

 セエは、村長に報告しに出ていていない。

「だって…。」

「あと数時間もすれば治るにゃ。火炎ガスだけで済んでまだよかったにゃよ。」

「どこがよ!?」

「グラビモスの熱線をまともに受けたら、下手すると炭になるにゃよ。…炭で済めばまだいいかにゃ?」

 防具が揃っていないと即死するレベルの攻撃なのだ。

「ご主人もグラビモスのクエストは、何度も全身焼かれて帰ってきたにゃよ。あの熱線も食らったことあるにゃ。」

「よ…よく生きてるわね…。」

「防具である程度は防げたにゃ。あとは気合いで倒したにゃ。」

「気合いでどうにかなるなら…。」

「苦労はしないにゃね。たった一回リタイアしただけで心が折れるようならハンターなんて辞めることにゃ。」

「私達は…!」

「辞めるわけにはいかにゃいにゃね。故郷が危ないから。」

「っ…。」

「お前達は二人にゃけど、ご主人はずっと一人だったにゃ。その努力がどれほどのものだったか想像も出来にゃいにゃろうけど。」

「……あんたって、なんでそんな私達に辛辣なの?」

「出会った初日にドロボーしようとした奴らにゃ、優しくしてやる義理はないにゃ。」

 トウマは、フンッと鼻を鳴らしてそう言ったのだった。

「もう、それは済んだことでしょ?」

「ごめんで済んだら警察はいらないにゃ。」

「けいさつ?」

「自警団と思えばいいにゃ。」

「あんたって、根に持つタイプね。」

「悪かったにゃね。一番長く、ご主人に雇われている身にゃからね。」

 トウマは、アイルーキッチンの料理長であり、一番長くセエの家に雇われているアイルーなのだ。そこに雇い主と雇われる側以上の家を守る身としての責任感は生まれてくる。

「ココア…冷めたにゃね。新しく淹れてやるにゃ。」

「いいわ。飲むから。」

「冷めてるにゃよ?」

「せっかく淹れてくれたんでしょ? いただくわ。」

 そう言ってルイズは、冷めたココアを飲んだ。

 冷めてても、とても甘くて美味しい。

 泣いてたルイズのためにわざわざ作ってくれたのだ。トウマなりの優しさを感じ、ルイズは、クスッと笑った。

「なに笑ってるにゃ?」

「べっつに~。ごちそうさま。また作ってね。」

「……。」

 トウマは、空になったカップを受け取り、そそくさとキッチンに戻っていった。その後ろ姿が、どこか照れ隠しに見えてルイズは、ますます笑った。




あんな灼熱エリアを住処にしてるんだから、グラビモスの体表は触ったら危険な状態だと思うのです。だって初登場ムービーで溶岩を泳いでるんだもの…!

ところで、グラビモスって、何食べてるんでしょうか?
サイトを食べようとするなど、肉食という解釈にしてますけど…。攻略本によると、肉を仕掛けても無効みたいだし…。
肉食? 雑食? まさかの鉱物?


追記。
 次回は、リベンジじゃなく、老山龍・ラオシャンロンの緊急クエストにしました。


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第二十三話  老山龍(見学編)

グラビモスにリベンジじゃなく、老山龍・ラオシャンロンの緊急クエスト(ソロ)という展開にしました。

結構無理がある展開にしました。


 二時間後、火傷が治ってきて意識を取り戻したサイトは、ルイズを目にして驚いた。

「ルイズ! どうしたんだよ!?」

「サイト、もうだいじょうぶなの?」

「俺より…おま…髪が!」

「ああ…、焼けちゃったからちょっと切ったのよ。」

 そう、グラビモスの熱線で少し焼かれてしまい長く美しかったピンクの髪を半分切ったのだ。

 サイトは、ルイズの美しかった髪が酷いことになってしまったことを知りショックを受けた。

「髪なんてまた伸ばせばいいわ。」

「けど、おまえ…。」

「今は美容のことなんて気にしてる場合じゃないわ。」

「……そ、そうだな。」

「私の髪…、好きだった?」

「…ああ。」

「…ありがと。」

 二人の雰囲気が、良い感じに…。

 

「あ、起きたか。サイト。」

 

 なったところで、セエが帰ってきた。

「あ、えっと…セエさん、お帰り。」

「火傷は? …あと少しっぽいね。」

「……。」

「どうしたんだ?」

「……なんか自信が無くなって…。」

「急にどうした?」

「アイツが吐いた炎…、あんなの見たら…。」

「俺も最初はそうだった。」

 自信を失っているサイトに、セエが言った。

「あんまりにもクエストをクリアできなくて、グラビモスだけじゃなく、他の竜とも戦うのが怖くてたまらなかった頃があったよ。」

「セエさんは、一人でずっと戦ってましたもんね。」

「…けど、なんとかなるものさ。」

「なんとかなる…。」

 サイトは、それを聞いて俯いた。

 その時だった。

 

「セエ! いるか!?」

 

 村人がセエの家に転がり込むように入ってきた。

「どうたんだ?」

「ラオシャンロンがまたこの村に接近してるって知らせが!」

「!? いつ頃だ!?」

「あと三日ほどで砦まで来るらしい!」

「三日か…。」

「らおしゃんろん…。」

「山のように大きな竜のことよね?」

 ただ事じゃない様子にサイトとルイズは、顔を見合わせた。

 セエは、立ち上がり、アイテムボックスの中を確認した。

「十分だな…。」

「や、やってくれるか?」

「ああ…。」

「ありがとう! 村長に伝えてくる!」

 村人はホッとした様子で、セエの家から出て行った。

 セエは、閉めたアイテムボックスに手を置いたまま、フーッと息を吐いた。

「セエさん…。」

「だいじょうぶ…。」

 セエは、無理矢理に笑ってそう言った。

「お、俺たちにも手伝いさせてください!」

「いや…それは…。」

「セエさん一人が背負い込む必要なんてないわ! 私達だって戦える!」

「サイト…、ルイズ…。ありがとう。」

 セエは、そう言って俯いた。

「じゃあ、準備を整えよう。あと、三日しかない。」

「はい!」

 

 まず大タル爆弾Gを用意し、さらに小タル爆弾を用意する。

「爆弾を使うんですね?」

「ラオシャンロンの進行するところに設置するんだ。それで顔の下に来たところを小タル爆弾で爆破させる。……まあ、小石なり、蹴るなりして爆破させてもいいんだけどね。」

「どうして?」

「爆弾二個の方が威力ありそうじゃん。」

「あ、なるほど。」

 こうして、対ラオシャンロンの準備が整った。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 しかし、問題が発生した。

「ダメじゃ。」

「どうして!?」

「なぜです、村長?」

 サイトとルイズが、ラオシャンロンの緊急クエストに挑むことを、村長は良しとしなかった。

「正式にハンターになったばかりの未熟な者にやらせるには、あまりに困難じゃ。踏み潰されてお終いじゃろう。」

「俺が…サポートしますから!」

「それでは、ラオシャンロンの侵攻を止めるうえで邪魔になる。ずっと一人でやってきたお主がこの事態に急に複数で挑んで勝てる見込みがあるか? おそらくいつも通りの方が事を容易く進められるじゃろう。」

「っ!」

「で、でも俺達は!」

「お主はまだよい。問題は、そちらのピンクの髪の娘の方じゃ。」

「わ、私!?」

「聞くところによると、良いところの家の生まれらしいが、お主が山のように巨大な竜を前にして、足をすくまさず戦える自信はあるか?」

「それは…。や、やってみないと!」

「ソレではダメなんじゃ!」

「ひぅ…。」

「わしは、村長として、確実な方を選ぶ。」

「……分かりました。」

「セエさん!」

「ですが、二人に見てもらうのはダメでしょうか?」

「えっ!?」

「……邪魔をせんという制約を守れるならよい。絶対に手を出してはならん。守れないなら、ハンターとしての資格を剥奪する。」

「そ、そんな!」

「…分かってます。俺一人で勝ちます。」

「うむ…。では、行って参れ。」

「…行ってきます。二人とも、行こうか。」

「セエさん…。」

 二人は信じられないものを見る目で、セエを見た。

「…邪魔は絶対にしないって約束してくれ。」

「………はい。」

 二人は渋ったが、仕方なく返事をした。

 

 三人は、村を出発した。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 砦に着いた瞬間、小刻みに地震が来ていた。

「地震!?」

「いや、ラオシャンロンの足音だ。」

「地震を起こすほどって、どれだけ大きいのよ!?」

 砦を登り、岩の壁が両側を隔てている大きな道が見下ろせる場所に来た。

 地震は、どんどん激しくなる。

 そして……。

 

 ヌウッと曲がり角の道の向こうから、信じられないほど巨大な生物が顔を出した。

 道の反対側にある道を一望できる砦の下を、悠々とその竜はゆっくりと通過していく。

 しかし、突如足を止め、周りを見回すように首を振った老山龍・ラオシャンロンは、前足をあげ、急に二本足で立ち上がる。

 そして、低くとてつもない大きな咆吼をあげた。

 

「ーーー!!」

 その巨大さに、サイトとルイズは、声にならない声を出していた。

 ゆっくりと前足とあげていた上体を降ろしたラオシャンロンは、ゆっくりと、侵攻を始めた。

「行こう。」

「……。」

「二人とも。急がないとココット村が潰される。」

「は、はい!」

 ハッとした二人は、慌ててセエの後を追った。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 道に降りたセエは、爆弾を取り出し、道の途中にある土嚢と岩の前に設置した。

 霞んだ道の先から、ゆっくりとやってくるラオシャロンの顔が見えてきた。

 大タル爆弾Gの下に、ラオシャンロンの顎の下が来たとき、セエは、素早く小タル爆弾を置いて離れた。

 点火している小タル爆弾が爆発し、引火した大タル爆弾Gが爆発した。

 爆発によるダメージによるものか、ラオシャンロンが煩わしそうに首を振った。

「よし!」

「えっ、なんで?」

「うぉおおおおおおお!」

 セエは、答えず、大剣リオレウスを抜くと、ラオシャンの頭を下から切りまくった。

 しかしラオシャンロンは、切られても怯むどころか、まるで気にせず、歩み続ける。

 まったく、こちらを認識してすらいないのだ。いや、認識する価値すらないのだろう。

「なんて奴だ!」

「まったくね!」

 踏み潰されないよう岩壁側に避難しながらセエを追いかけて移動しているサイトとルイズが叫んだ。

 ラオシャンロンの頭ばかりを狙って切りまくっていると、ラオシャンロンが時々煩わしそうに首を振って立ち止まる。しかしすぐに歩み出す。その繰り返しをして、やがて土嚢と岩が見えてきて、ラオシャンロンがそこを越えていくまでに胸や腹を攻撃し、それからセエは、砦を登ってエリアを移動した。サイトとルイズも追いかけ、次のラオシャンロンの通過地点を目指した。

 次の地点も、さっきの場所と同じように土嚢と岩の前に、大タル爆弾Gを用意し、ラオシャンロンの到着を待ち、顎の下で小タル爆弾を設置して爆破。それから大剣で攻撃する。

 ココット村の命運がかかっているだけに、セエの顔は鬼気迫るものがあり(もともと余裕がないが)、元々激しい大剣による攻撃がさらに激しさを増しているように見えた。

 しかし、それでもラオシャンロンは、止まらない。やがてこのエリアを越えていった。

 そしてまた砦を登り、別のエリアへ移動。そして、爆弾、攻撃。

 そして、土嚢と岩をラオシャンロンが越えたら次のエリアへ。

「次で…、最後だ。」

「えっ?」

「行こう。」

 爆弾を調合し、斬れ味が落ちた大剣を研ぎながらセエは、そう言い、それが終わると急いで砦を登っていった。サイトとルイズは、顔を見合わせ、それからセエを追った。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 最後のエリアは、ココット村を守る砦の扉だった。

 セエは、土嚢と岩の前に爆弾を置き、ラオシャンロンの顎の下で爆破させ、それから、攻撃を続けた。

 それでも止まらないラオシャンロンがやがて、広い砦前のエリアの中央で少し立ち止まった。そして唸る。

 そして、後ずさったかと思ったら、首を曲げて、砦の巨大な扉に体当たりをした。

 セエは、すぐに砦の扉の上に登ると、ラオシャンロンが立ち上がり、砦の扉に迫るまで待ち、最終兵器、撃龍槍を起動させた。

 ゴリゴリと、砦の扉の周りから巨大な棘が伸び、ラオシャンロンは、刺されてよろめいた。

 急いで飛び降りたセエは、砦の扉に体当たりを繰り返すラオシャンロンの足や腹を切りつけ続けた。

 時々、巨大なラオシャンロンの足に蹴られるが構わず攻撃する。

「倒れろ、倒れろ!」

 ラオシャンロンを切りながらセエは、叫ぶ。

 やがて時間が迫ってきた。ラオシャンロンのクエストの失敗は、ソレすなわち砦を破壊されてその先にある集落を破壊されることだ。

「うおおおおおおおおおおおお!」

 焦りによって叫んだセエが、渾身の斬撃を繰り出したとき、ラオシャロンが断末魔の声をあげて、横に倒れた。

「や、やった!」

「セエさん!」

 死んだラオシャンロンの剥ぎ取りをしているセエに二人が駆け寄った。

 セエは、二人に目もくれず、黙ったままラオシャンロンをナイフで切り裂いていた。

 やがて甲殻と爪が取れた。

 セエは、それを両手で見つめていたが、やがて地面にへたり込んだ。

「セエさん!」

「……勝った…。」

 セエは泣いていた。

 ラオシャンロンにトラウマがあるセエにとって、故郷であるココット村を守り切れて緊張の糸が切れたのだ。

「…お疲れ様です。」

 サイトとルイズは、顔を見合わせて、それからセエを見て微笑んだ。

 

 

 老山龍・ラオシャンロン、緊急討伐クエストは、こうして終わったのだった。




村長が許可してくれなかったというのは、無理があったかな…。
ですけど、一人に慣れすぎているセエが急に複数クエストができるかって言ったら出来そうにないと思ったし、ラオシャンロンの討伐クエストは、特殊だからサイトとルイズに気を遣っている場合じゃないというのもあるのでそういう展開にしました。


グラビモスへのリベンジは次回かな。


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第二十四話  グラビモスを狩ろう その2

グラビモス討伐クエスト、リベンジ。


 

 老山龍・ラオシャンロンの緊急クエストから、数日後、グラビモス討伐クエストにサイトとルイズが挑むことになった。

「うむ、三人とも準備はできたかの。」

「はい!」

「では、行って参れ。」

「じゃあ、行こう。」

「はい! 今度こそ勝ちます!」

「そうだね。」

 

 こうして三人は、グラビモス討伐、リベンジのため、出発した。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 火山。溶岩が流れているエリアに入ると、こっちにちょうど背中を向けているグラビモスがいた。

 その後ろ姿は、足と翼が生えた、まさに鉱石の山だ。

「セエさんは、いつもどうやって倒してるんですか?」

「うーん…、腹を重点的に狙いながら、とにかく切る。」

「えっ?」

「……切りやすい箇所が少ないからいつもごり押しなんだ。」

「そうなんですか…。」

 なにせ溶岩を泳げる身体の持ち主だ。柔らかい箇所がほとんど無いのだ。

 今日は、幸いか溶岩に浸かっていないため灼熱をまとってはいない。それでも、この溶岩のエリアの気温のため熱をまとっていることには変わりないのだが…、溶岩に浸かりたてよりはマシだ。

「ルイズ、行こうぜ!」

「ええ!」

 二人は、グラビモスに挑むため、走った。

 ノッシノッシと歩いていたグラビモスの尻尾に向け、サイトが片手剣で切りつけた。

 ガキンッと音が鳴る。

 途端、青かったマーキングが赤くなった。

 グラビモスが振り向き、吠えて体当たりをかましてきた。

 サイトは、吹っ飛ばされたが、すぐに体制を整え、グラビモスの腹の下に入り込み、硬い外殻に覆われた腹を切りまくった。

 ガキンガキンと音が鳴るが構わず切り続ける。

 するとグラビモスの身体から白いガスが放出された。

「うっ!」

 バサルモスと同じ睡眠ガスだった。

 慌てて息を止めようとしたものの、僅かに吸ってしまったサイトは、強烈な眠気に襲われて倒れた。グラビモスの足の間で。

「サイト! 起きて!」

「ルイズ! 動け!」

「えっ!?」

「狙われてるぞ!」

 ルイズがグラビモスを見ると、グラビモスが顔を上げ、口をパカッと開けた。

 その体勢を見て、熱線が来ると感じたルイズは大慌てで横に走った。

 途端、ルイズがさっきまでいた場所を熱線が通り過ぎた。

「くっ!」

 熱風が来る。

 グラビモスは、熱線を吐き終えると、吠えてルイズに向かって猛ダッシュをしてきた。足元で寝ているサイトは完全無視だ。サイトは、腹の下に倒れていたため、運良く熱線の射程距離には入らなかった。

 ルイズは、横へ走りその猛ダッシュによる体当たりを避けた。グラビモスは、ルイズが背にしていた溶岩の川の中に飛び込むことになった。

 溶岩に浸かっても気にした様子もなく、グラビモスは、ノッシノッシと溶岩から出てきた。

「う…、ルイズ?」

「サイト!」

「あ、あの野郎!」

 目を覚ましたサイトは、ルイズがグラビモスに狙われていると気づいて、怒りのままにグラビモスに斬りかかろうとした。

「うっ!?」

 接近してみて溶岩と同じぐらいの温度をまとっていることに気づいて止まってしまう。その時、グラビモスのバインドボイスが放たれ、耳をやられた。

 耳を塞いでいると、グラビモスが吠えて、猛ダッシュによる体当たりをして、サイトを轢いた。

「がはっ!」

「サイト!」

「ルイズ、撃て!」

「で、でも…。」

「そうやって手を止めるから、村長にラオシャンロンの討伐クエストに行かせてもらえなかったんだ!」

「っ!」

「サイトを心配するのは分かる! でも攻撃し続けて倒すのも助けることに繋がるかもしれないんだ!」

「……くっ。」

「せ、セエさん…。ルイズは、ガンナー役なんですよ…? 一人じゃ…。」

 ヨロヨロと立ち上がったサイトが抗議した。

「むしろ飛竜種戦では、慣れればガンナーの方が有利なんだ! 遠くから攻撃できる有用性は生半可なものじゃない! 俺は下手だからガンナーになる道は捨てたが…。」

「サイト! 私、やれるわ!」

「けど、ルイズ!」

「私だってやれる!」

 ルイズは、猛ダッシュを止めてこちらに振り向いてきたグラビモスにライトボウガンを向けた。

 グラビモスが吠え、再び猛ダッシュの体勢に入る。

 ルイズは、横に走り、サイトは、盾を構えた。

 猛ダッシュによる体当たりを真っ向から受け、盾にぶつかり、サイトは、後ろに倒れそうになりながらグラビモスの腹の下に入った。

「うおおおおおおおおおおおおおお!」

 そして、片手剣を振り回し、腹の外殻を切りまくった。

 その結果、腹の外殻が剥がれ落ち、赤い肉が露わになった。

 チャンスだとばかりに、サイトは、そのままグラビモスの腹の肉を切りまくった。

 グラビモスが苦しげに鳴き声をあげ、よろめいた。

 追い打ちをかけて、ルイズが弾を撃ちまくる。

 サイトのポイズンタバルジンの毒もあり、ダメージはどんどん蓄積されていった。

 とどめだとサイトが剣を向けようとしたとき、サイトの眼前でグラビモスが口をパカッと開けた。

「!!」

 それが熱線の合図だと気づいたとき、ルイズが放った弾のひとつがグラビモスの顔にヒットした。

 グラビモスは熱線を吐かず煩わしそうに首を振った。

 グラビモスがルイズの方を向く。その瞬間、無数の弾がグラビモスの腹の肉に命中した。

 グラビモスは、断末魔の鳴き声をあげ、横に倒れた。

「えっ?」

 よりのもよってサイトの方に。

「ギャーーー!」

「サイトーー!?」

「あちゃー。」

 グラビモスの超重量級の身体に挟まれたのだった。

 セエが助けに入り、いつも大剣を振るっている腕力でグラビモスの巨体を少し浮かせてルイズがサイトを引っ張り出した。

「さ、剥ぎ取り剥ぎ取り。」

「容赦ないわね。」

 クエスト終了による迎えが来る前にグラビモスの死体から剥ぎ取りをしろと急かすセエに、ルイズは呆れたのだった。

 

 サイトは、潰されたものの、幸い軽傷で済んだのだった。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 村に帰り、武器を作ってくれる店で必要な素材を確認したところ…。

「睡眠袋、三つか…。」

 ちなみに、取れたのはひとつだけである。

「あの…セエさん……。まさか…。」

「頑張ろう!」

「ヒーーーー!」

 それはそれは良い笑顔でサムズアップするセエに、サイトとルイズは悲鳴を上げたのだった。

 

 その後、頑張ってグラビモスを二回倒し、睡眠袋を手にいれて、睡眠効果を持つ片手剣・スリープショテルを作ることに成功したのだった。




ルイズ、若干ガンナーとして覚醒? サイトの助力もありましたが、実は初めて竜を仕留めました。

スリープショテル…、いらんかったかな?
睡眠効果ってあんまり使えないような気がする。


次回は、集会所クエストに挑む予定。


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第二十五話  集会所クエストに挑もう

集会所クエストに挑む回。

青いイャンクックに初挑戦。しかも星4つ(ハード)。


いきなりでハードは、きつかったかな?


 

「集会所クエストって、村長さんのクエストとそんなに違うんですか?」

 それは、サイトのこの一言から始まった。

 食事中だったのだが、セエは、ピタッと手を止めた。

 不用意なことを言ってしまったかと、サイトが謝ろうとした時。

「…挑んでみる?」

「はい?」

「集会所クエスト。やってみる?」

「えっ!?」

「いいんですか?」

「ただし、村長に相談してからだ。」

 そう言ってセエは、食事の続きを始めた。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 翌朝、村長に相談しに行った。

「ふむ、集会所クエストか。」

「村長のクエストとの違いを知ってもらおうと思いまして。」

「では、星三つから挑戦しなさい。」

「あー、やっぱり。」

「いきなり、星四つなんぞやらせたら、死ぬ。」

「えっ!? そんなに違うの!?」

「死ぬってどんだけヤバいんですか!?」

「だいたい、体力だけで二倍くらい違う。」

「にばい!?」

「装備をきちんと調えてから、挑戦しなさい。そうでないと無駄死にじゃ。」

「は…はい。」

「ですが、村長。ノーマルの星三つよりも、ハードの星四つの厳しさを教えるのもひとつのやり方だと思うんです。」

「えっ?」

「ふむ…。そうじゃな…。」

 なんか話の雲行きが怪しくなってきた…っと、サイトとルイズは思った。

「では、イャンクックの討伐をやってみなさい。」

「イャンクックの亜種はどうですか?」

「うむ。それは良いじゃろうな。」

「あしゅ?」

「それぞれの飛竜種には、だいたい突然変異種がいるんだ。色が違うのがほとんどだけど。」

「! そういえば、リオレウスには蒼いのがいるって…。」

「そう、リオレウスは、蒼いリオレウスとかがいるように、イャンクックも、青いイャンクックがいるんだ。」

「どう違うんです?」

「あんまり変わらない。強いて言うなら、取れるモノが違うってことかな。」

「こりゃ、強さも違うわい。」

「あ、すみません。」

「そういえば、蒼いリオレウスの方が強いって言ってましたっけ。」

「では、集会所クエストに挑むのなら、そこの建物には行って受付に頼みなさい。わしはノータッチじゃからな。」

「はい。」

「集会所は、まったく別なんですね?」

「そう。だから支給品も全然違うんだ。ハッキリ言って集会所の方が厳しい。じゃあ、準備をして行ってみよう。」

 

 こうして、集会所の星四つ(ハード)の青いイャンクックの集会所クエストに挑むことになったのだった。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 集会所は、女性二人が受け付けを行っている。

 赤い女性の方がハードまでのクエストの受付けをし、青い女性の方はハードをクリアしたG級のハンターのみが受けれる星6つのクエストの受付けをしている。

「すみませーん。」

「は~い。あら、セエさん、久しぶりね。クエスト?」

「こっちの二人に星四つの青いイャンクックの狩りをさせたいんだ。」

「じゃあ、このクエストね。」

 赤い女性は、クエストの契約書類を出した。

「じゃあ、二人とも準備はいい?」

「えっ、あ、はい。」

 キョロキョロと集会所を見回していたサイトとルイズは、聞かれて返事をした。

「じゃあ、お願い。」

「は~い。では、ご武運を。」

 書いた書類を提出し、赤い女性はニッコリと笑って、集会所の別の出入り口を指さした。

 

 三人は青いイャンクックの狩りのクエストに出発した。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 青いイャンクック。

 イャンクックの突然変異亜種で、ごくまれに森と丘やジャングルで目撃される青い甲殻を持ったイャンクック。

 青い色のため、ジャングルのような緑の生い茂る場所では見づらいという特徴があるものの、基本的な生態は通常のピンク色のイャンクックと同じである。

 ただし、怒り時の攻撃力の上昇率はこちらの方が少々上。

 

 

「そんなに珍しいのに、狩りの対象なんですね?」

「珍しいけど、狩っちゃいけないってわけじゃないから。それに、青いイャンクックの武具の方が質が良い。」

「よくわかんないわね、そこの基準。」

「珍しいからこそ、欲しがってる人も多いんだと思うよ。」

 そんな話をしながら、やがて送迎の馬車が森と丘のキャンプ地に到着した。

「さあ、気を引き締めて、死なないように頑張ろう!」

「死ぬって…、大げさな…。」

「いや、ホントに死ぬかも知れないぞ? 油断してると。」

 イャンクックが狩りやすい飛竜種だと、村長クエストで知った二人は大げさだと思っていた。

「俺も何回ハードクラスのイャンクックにやれたことか…。」

「…えっ?」

「ま、戦ってみれば分かるよ。」

「あら! 支給品が少ないわ!」

「そう、これが集会所クエストだ。村長クエストのように甘くない。」

 地図と応急薬しか入ってなくて、ルイズは声を上げた。

「自動マーキングスキルがなかったら見失ってますね。」

「慣れれば自動マーキングスキルがなくても竜の位置が分かるようなると思うよ。俺は無理だけど。」

「無理って言っちゃうんだ…。」

 セエ的には、自動マーキングスキルが必需品なのだ。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 森と丘の狩り場エリアを進み、自動マーキングスキルで探知している青いイャンクックを見つけた。

「あ、ほんとだ。青っ。」

 青といっても、黄色の下地の上に淡い青色という色合いである。割と綺麗だ。

「よし、じゃあ行ってきます!」

「頑張れ。」

 サイトが余裕そうに片手剣を抜いて青いイャンクックに走って行き、ルイズは、ライトボウガンに弾を込めた。

 青いイャンクックがサイトの足音に気づいて振り向いた。

 そしてエリマキのような耳を立てて吠えた。

 サイトが接近し、剣を振ろうとした時、青いイャンクックが尻尾を振って攻撃してきた。

 ゴッとサイトはもろに食らい吹っ飛ばされて倒れた。

「ーーー!?」

 倒れたサイトは、その攻撃力の高さに驚いて声も出せなかった。

「どうしたの、サイト!?」

「ルイズ、来るぞ。」

「えっ? きゃあああ!」

 サイトを吹っ飛ばした青いイャンクックが鳴声を上げながら走ってきた。

 ルイズは、慌てて逃げる。

 ルイズがいた場所に、青いイャンクックの火が吐かれた。

「熱っ!」

 熱風を顔に受け、ルイズが怯んだとき、青いイャンクックの大きなくちばしが迫ってきて、ルイズは咄嗟に腕で顔を庇い、腕を啄まれた。

「ぐっ!」

 横に吹き飛ぶように倒れたルイズに、青いイャンクックが追撃をしようと大きなくちばしを振り上げようとした。

「このやろーーー!」

 起き上がったサイトが後ろから青いイャンクックを切る。

 ルイズは、腕を押さえて地面に蹲って呻いていた。

 それを見て怒りを露わにしたサイトは、青いイャンクックを切りまくった。

 クルッと振り向いた青いイャンクックは、鳴きながらサイトに体当たりをして吹っ飛ばした。

「が…。」

 サイトは、地面に倒れながら回復薬グレートを飲んだ。

 体当たり後、振り向いた青いイャンクックがサイトに向けて火を吐いた。

「ぐああああ!」

 もろに火を浴びたサイトが絶叫をあげた。火のダメージ量が明らかに違うのだ。

「さ…い…と…。」

「クエスト、リタイアだ!」

 その時、セエがクエストリタイアを宣言した。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 クエストリタイア後。

 

「うむ…。その様子じゃ、予想以上に苦戦したようじゃな。」

「はい。」

 村に帰って、村長のところに報告しに来たセエに村長がそう言い、セエが返事をした。

 なお、サイトとルイズは、セエの家にいる。ルイズは、腕をギブスで固めており、サイトは、火傷を負った箇所を貼り薬や塗り薬を塗っていた。

「どうじゃった? お主個人の感想としては。」

「二人とも村長のクエストのイャンクックに慣れてしまっていて、イャンクックをなめていました。たぶんそれも敗因になったかと…。」

「やはりのう…。」

 予想はしていたと村長はため息を吐いた。

「これを機に、精進すればよいのじゃが。」

「そうですね。」

 

 

 こうして、サイトとルイズの初めての集会所クエストは、失敗に終わったのだった。




うん、いきなりでハードはきついな…。
初めて集会所クエストのハードに挑んだとき、その攻撃力に驚かされましたね。
余裕だと思ったイャンクックに何回やれたことか…。

ハードへのリベンジは、まだ先になるかも。


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第二十六話  リオレイアを狩ろう

リオレイア討伐クエスト。

ライトボウガン・ヴァルキリーファイアを作ります。


 集会所クエストに失敗してから、二日。

「……二人とも、どうしたんだ?」

「…別に。」

 ルイズがムスッとして言った。

 サイトは、黙ったままである。こっちもムスッとしている。

 集会所クエストのハードの青いイャンクックのクエストに失敗してからというもの、二人はこんな状態が続いていた。

「にゃー、一回失敗したぐらいでなにむくれてるにゃ。」

「うるさいな!」

「うっさいわね!」

「けど、いきなりハードクラスに挑ませるなんて、ご主人も中々鬼畜にゃ。」

「そ、そうかな? 集会所と村長のクエストの違いが一番よく分かると思ったんだけど…。」

「違いすぎますって!」

「なんなのよ、あの攻撃力!?」

 サイトとルイズが、がーっとセエに怒った。

 怒られてセエは、ビクッとなった。

「…ごめん。」

 セエは、俯いて謝った。

「でも、いずれは挑むにゃよ?」

「はあ?」

「お前達の故郷に現れた飛竜種がG級クラスにゃら、それくらいの竜を倒せないと負けるにゃ。」

「っ!」

 トウマにそう言われて、サイトとルイズは、俯いて押し黙った。

「……どうしようか。」

「にゃー、どうするって?」

「ハードのイャンクックが倒せないようじゃ、G級なんて夢のまた夢だ。武器の強化が必要だし、防具も揃えないと…。」

「にゃ、だったら、そっちのピンクの髪の娘の武器を強化したらどうにゃ。」

「っと言うと?」

「にゃー…、分からないにゃね~。新しい武器を作るにゃ。」

「! あ、そうか。」

「あ、新しい武器って言ったって…。」

「まだお前らは、倒してない飛竜種がいるはずにゃ。それをクリアしないと上にはいけないにゃよ。」

「なによそれ!」

「とりあえず、店行って、それから村長に頼ったらどうにゃ?」

「ありがとう、トウマ。」

 導いてくれたトウマに、セエは感謝した。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 二人を連れて、セエは、武器・防具を作ってくれる店に来た。

 ボウガンの種類は豊富である。その性能も様々であるが、攻撃力が違ってくる。

 ヘビィボウガンの方が総合的に強いが、ルイズの体力や力ではライトボウガンが限界だった。

「まだ狩ったことがない竜は……。そうだ!」

 セエは、ポンッと手を叩いた。

「リオレイアだ!」

「りお…?」

「リオレウスの対になる、雌の飛竜種だよ。飛竜の卵を運んだときに見ただろ?」

「アレ?」

「それで何を作るの?」

「リオレイアから取れる素材から作れる、ヴァルキリーファイアはどう?」

「う゛ぁるきりー? うわ、強そうじゃねぇか。」

「なんでよ?」

「確か戦乙女って意味だったはずだぜ? 強い戦士をヴァルハラって神の国に連れて行ってくれるっていう女神だったはずだ。」

「ふーん。」

「ルイズ、どう?」

「……強い武器なら、いいわ。」

「じゃあ、これを作るためにリオレイアを狩ろう。」

「…村長さんのクエストですよね?」

「? そうだけど?」

「あー、よかった…。」

 これで集会所クエストをするなんて言われたら心が折れていたとサイトとルイズは胸を撫で下ろしたのだった。

 

 こうしてルイズの武器を作るため、リオレイア討伐クエストに挑むことになったのだった。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 リオレイア。

 その名前からも分かるとおり、火竜・リオレウスと同種の飛竜種。

 リオレウスが雄なのに対し、リオレイアは、雌である。

 生息区域が広く、砂漠や沼地なども住処にしている。

 その身体には、棘が多くあり、その棘は毒を持つ。

 リオレウス同様に数種類の亜種がいる。

 

 

「リオレイアは、身体がトゲトゲしてて、棘には毒があるんだ。」

「それってリオレウスと同じじゃ?」

「リオレウスは、後ろ足の爪だけど、リオレイアは、背中や翼にまで棘がある。サマーソルト尻尾攻撃なんて受けたら一発で毒だ。」

「さまー…?」

「のけぞるように一回転しながら尻尾でこっちを弾き飛ばしてくる技だ。あれは、痛い。」

 セエは、思い出してしまい、ブルッと震えた。

 自動マーキングスキルで、竜の位置を見ながらリオレイアのいるエリアに踏み込んだ。

 のんびりと肉を食んでいるリオレイア。

 その造形は同じ火竜であるためかリオレウスに似ているが、背中や翼、尻尾に生えたトゲトゲが痛そうで、身体の色は緑っぽいような全体的に地味な印象を受ける。

「いくぞ、ルイズ!」

「ええ!」

 サイトが剣を抜いて走り、ルイズはライトボウガンに弾を込めた。

 リオレイアが走ってきたサイトの存在に気づいた。

 そしてバインドボイスを放った。

 耳を塞いでやり過ごすと、リオレイアが尻尾を振った。

 サイトは、間一髪で盾を構えて防ぎきり、リオレイアの尻尾めがけて刃を振った。

 リオレイアは、鳴き声を上げながら猛ダッシュしてサイトを轢いた。

 ルイズは、猛ダッシュによる体当たりを避けながら弾を撃ちまくる。

 起き上がったサイトは、すぐにリオレイアの尻尾の下に入って尻尾を狙って切りつけた。

 振り向いたリオレイアは、一歩下がった。

「! サイト、気をつけろ! サマーソルトが来るぞ!」

「えっ!?」

 サイトがハッとしたとき、リオレイアがのけぞるように一回転して尻尾による強烈な攻撃をサイトに当てた。

「ガッ!?」

 吹っ飛ばされ、そして大きなダメージを受けたうえに毒まで食らった。

「サイト!」

「サイト、解毒薬だ!」

 言われてサイトは、慌てて解毒薬を飲んだ。

 リオレイアが追撃とばかりに猛ダッシュによる体当たりをしかけてきた。

 サイトは、盾を構えてこれを防ぎ、リオレイアの腹の下をくぐることになった。

 その間に急いで回復薬グレートを飲んで回復し、サイトは、攻撃しようとリオレイアに迫った。

 リオレイアは、クルッと振り向くと火球を吐いた。

 それを間一髪で横に転がって避け、サイトは、リオレイアに迫り、その頭を切った。

 するとリオレイアが一歩下がる。

 それがサマーソルト尻尾攻撃の合図だと分かったサイトは、すぐに盾を構えた。次の瞬間、サマーソルト尻尾攻撃が来て、盾で防いだ。

 ルイズが撃ちまくっていると、リオレイアがそれを煩わしく感じたのか、ルイズの方に振り向いた。

 その瞬間、サイトが接近し、リオレイアの尻尾を攻撃した。するとリオレイアの尻尾が切断された。

 悲痛鳴き声を上げたリオレイアは、白い煙を吐きながら怒り状態になった。

 凄まじく鳴きながら猛ダッシュを何度もしかけてくるので、避けて避けて避けて、怒り状態が冷めるまで待つ。

 尻尾が切れたためサマーソルト尻尾攻撃は来ない。だがそれでも火球や噛みつき攻撃、体当たりなど攻撃は多彩だ。

 ポイズンタバルジンの毒攻撃もあり、ダメージを蓄積され、やがてリオレイアは足を引きずって飛び去っていった。

 切り落とした尻尾から素材を取り、それから飛竜の巣に向かった。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 飛竜の巣には、相変わらずランポス達がおり、その中央でリオレイアはグースカ寝ている。

 ランポスを退治し、寝ているリオレイアの顔を切りつけて起こす。

 起き上がったリオレイアは、怒って激しい攻撃をしてくる。

 それをかいくぐり、リオレイアを攻撃し、やがてリオレイアの首の下を大きく切った時、リオレイアは、ついに絶命した。

「よっしゃああああああ!」

「やったわね、サイト!」

「さ、剥ぎ取り剥ぎ取り。」

 喜び合うサイトとルイズ、そしていつも通り剥ぎ取りを急かすセエだった。

 

 この後、ヴァルキリーファイアを作るため、リオレイアを数回ほど倒すことになるのは別の話である。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 ルイズは、店の台に置かれたできたての武器・ヴァルキリーファイアを見つめて微かに震えていた。

「ルイズ?」」

「これ…ほんとに私に?」

「そうだよ。君達が素材を集めて、クエストで稼いだお金で作った武器なんだ。君のだよ。」

 セエは、微笑んでそう言った。

 ルイズは、恐る恐るといった様子でヴァルキリーファイアを手にした。

「……私の武器。」

「そうだよ。」

「……ねえ、セエさん。」

「ん? って、泣いてる!? どうしたの?」

「…私達…、勝てるのかなぁ?」

「なにに? あ、飛竜種か…。」

「だいじょうぶだってルイズ。おまえ一人じゃないんだぜ?」

「サイト…。うん!」

 ルイズは、サイトに抱きついた。

「あ…あの、二人とも…、場所…。」

 お熱いのはいいことだが、ここは、武器屋の前、そして人の往来もある。

 いやー、仲の良いことでなんて冷やかす店主はいるし、野次馬がいるし…。

「……ほんとは、リオレウスを使ったスパルタカスファイアの方が攻撃力は高いんだけどな…。」

 そんなことをそっぷを向きながら、そんなことを小さく呟いたのだった。




トウマがなんか三人の導き手みたいになってるなぁ。ま、いっか。そういう役は必要だ。
本当は、スパルタカスファイアの方を作ろうかと思いましたが、まだリオレイア討伐クエストをしてないのでヴァルキリーファイアを選びました。

次回は…、リオレウス捕獲クエストかな。キークエストだけどまだやってないし。


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第二十七話  リオレウスを捕獲しよう

リオレウス捕獲クエスト。


狩りのルールなど、捏造が多々あります。


「ダメじゃ。」

「えっ?」

 村長クエストの上を目指そうと相談したところ、返されたのは否定の言葉だった。

「な、なぜ?」

「まだやっとらんクエストがある。それをクリアせんと次の段階には行かせん。」

「それは…?」

「リオレウスを捕獲するのじゃ!」

「えっ? アレを捕獲?」

 リオレウスにトラウマがある二人は、サーッと青ざめた。

「捕獲も出来んでなにがハンターか!」

「倒すより難しいですもんね。」

 怒る村長と、腕組みしてウンウンと頷くセエ。

「ルイズ…、俺達、アイツ(リオレウス)を倒せたんだ。捕獲だってできるはずだ。」

「…そうね。」

「そのクエスト受けます!」

「うむ。では、準備が出来たら来なさい。」

「はい!」

 元気よく返事をするサイトとルイズに対し、セエは、余所を見ながら…。

「なんか…嫌な予感がするな。」

 っと呟いていた。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 捕獲クエストのための準備を整え、アイルーキッチンでしっかり食事を摂った。

「上のクエストを目指すには、キークエストって言って、必要なクエストをクリアする必要があるんだよな。」

「それがリオレウス捕獲クエスト?」

「それもそのひとつになる。」

「けっこう面倒なのね。」

「ハンターとしての技量が試されるし、上を目指すだけの力を付けるにはちょうど良いよ。」

 セエは、そう言って微笑んだ。

「けど倒さない分、楽勝そうだな。」

「……そうかな?」

「えっ?」

「油断は禁物だ。」

 セエは、気楽そうなサイトの様子にため息を吐いた。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 場所は、森と丘。

「お、いるいる。」

 自動マーキングスキルでリオレウスの位置を把握したサイトは、宙を見上げて笑っていた。

「倒さない分、きっと楽に終わるわね。」

「君もか…。」

「なによ?」

「油断したら失敗するよ? 捕獲は倒すより微妙で難しいんだ。」

「だいじょうぶよ。私達、アイツ(リオレウス)を倒してるし!」

「……。」

 もう何を言っても無駄そうだと思ったセエは、それ以上言わなかった。

 

 

 リオレウスの位置を自動マーキングスキルで見ながらエリアを移動し、リオレウスを見つけた。

 リオレウスがこちらを見てバインドボイスを放つ。だが距離があり、バインドボイスの射程距離には入らなかった。これがフルフルなら遠くでも危険だった。

「よっしゃあ、行くぜ! ルイズ、援護頼むぜ!」

「分かってるわ。」

「あー…うー…。」

 何か言わないとと思うが、言葉にならずセエは呻いた。

 サイトが意気揚々とリオレウスに斬りかかり、ルイズが援護射撃をする。

 一回リオレウスを倒してるだけに、リオレウスからの攻撃も読めてサイトとルイズは、ガンガン攻めていく。

 やがてリオレウスが怒り、黒い煙を吐くようになり、攻撃スピードと攻撃力がアップする。

 こうなるとヤバいのは分かってるので、怒りが治まるまでとにかく逃げまくる。

 そうして怒りが治まってから攻撃を始める。

 ポイズンタバルジンの毒もあり、やがてリオレウスは足を引きずって飛び去っていった。

「あとは巣に行けば!」

「終わりね!」

「……。」

 元気の良い二人を余所に、セエは浮かない顔をしていた。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 巣には相変わらずランポス達がおり、その中央でリオレウスがグースカ寝ていた。

 ランプスを一掃し、サイトがリオレウスに近づいて剣を振り上げた。

「サイト、待て!」

「なんですか?」

 いつも通りたたき起こそうとしたのを止められ、サイトは顔をしかめながらセエを見た。

「今回は、捕獲クエストだ。分かってるね?」

「…あ…。」

 どうやら忘れてたらしい。

 セエは、ため息を吐いた。

「捕獲のための準備準備。」

「は、はい!」

 サイトとルイズは、慌てて道具から落とし穴を取り出し、リオレウスの前に設置した。

「これでよし。」

「じゃあ、竜を起こしましょう。」

「ああ、任せとけ!」

 そう言ってサイトが今度こそリオレウスを剣で切って起こした。

 リオレウスは、起こされて慌てたように鳴き声を上げた。

 サイトは、背中を向けて落とし穴の上を走ってリオレウスを誘導した。

 サイトを追ってリオレウスが突進すると、落とし穴にはまった。

「よし!」

「捕獲用麻酔玉を!」

「分かってますよ!」

 そう言ってサイトは、捕獲用麻酔玉を二個、ジタバタ暴れているリオレウスに投げつけた。

 リオレウスが眠った。

 だが……。

「あれ? 音が…。」

 クエストが終わったときに鳴るファンファーレが鳴らないのだ。

「二人とも、まだだ!」

「えっ?」

「まだリオレウスが弱っていない!」

「えっ、でも…。」

「寝ている間に回復されたんだ!」

「ええっ!?」

 やがてリオレウスが眠りから覚め、落とし穴の中でジタバタと暴れてついに落とし穴から出てきてしまった。

 怒り状態になったリオレウスは、お返しだとばかりにサイトに襲いかかった。

「サイト! この…!」

 ルイズは、ライトボウガンを構え、弾を連射した。

 逃げ回るサイトを追いかけ回すレオレウスに当たりまくる。

「この…野郎!」

 そしてサイトが隙を突いてリオレウスの顔を切ったとき。

 リオレウスが断末魔の声をあげて倒れ、絶命した。

「あ……。」

「…えっ?」

「あちゃー…。」

 悪い予感が当たってしまい、セエは、額を押さえた。

 

 捕獲対象の死により、クエスト失敗。

 

 それが結果だった。

 

「失敗? うそ…。」

「あ…、で、でも剥ぎ取りすればまだ素材だけでも…。」

「ダメだ。」

「なんでですか!?」

「捕獲クエストでの失敗では、剥ぎ取りはできない。」

「そんな…。」

「ほら、迎えが来た。帰ろう。」

「うぅ…。」

 サイトは名残惜しそうに、死体となったリオレウスを見つめた。

「いいじゃない、失敗したけど、取るぐらいなら…。」

「それじゃあルール違反だ。剥ぎ取りをしたかったら討伐クエストをすればいいんだ。」

「でも、もったないわ。」

「ルールは、ルールなんだ。それを守れないとハンターの資格を剥奪される。」

「そんな…。」

「とにかく、帰ろう。」

 セエは、迎えに来たアイルー達の荷車に乗った。

 サイトとルイズは、お互い顔を見合わせ、こっそりと……。

「二人とも! ハンターの資格を失いたいのか!?」

「っ!」

 剥ぎ取りをしようとした二人をすぐに見つけ、セエが怒鳴った。

 ビクッと震え上がった二人は、急いで荷車に乗った。

 セエは、ムスッと腕組みをして二人を睨んだ。

 サイトとルイズは、居心地悪そうにするだけで謝罪をしなかった。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 村に帰り、村長のところに行くと、村長は厳しい顔つきでサイトとルイズを見た。

「報告は受けておる。」

 そう言われ、サイトとルイズは、ビクッと震えた。

「ルールを守れねば本来ならハンターの資格を剥奪するところじゃが…、今回は大目に見ることとする。」

 それを聞いたサイトとルイズは、ホッとした。

「じゃが! 次はないぞ!」

 そう怒鳴られ、安堵していた二人はビクッとなった。

「あ、あの…。」

「なんじゃ?」

「なぜ、剥ぎ取りしちゃダメなんですか?」

「……。」

「もったいないじゃないですか…。」

「そうよ。もったいないわ…。」

「それでは、なんのためのルールじゃ?」

「えっ?」

 

 ずっと過去には、捕獲に失敗した死体や、捕獲した獲物から素材を取ったりするなどの行為や、密漁などが横行していた。

 それゆえに素材の流通の破綻や、違法に作られたモンスターの武具が裏取引されるなどの犯罪、密漁によるモンスター減少により生態系が狂い、より凶悪なモンスターが人里までやってくるという非常事態が発生したりして、それを取り締まるため狩りのルールは厳しくなった。

 

「ルールとは、我々全てのモノを守るためにある。それを守れんで、何が守れるか。」

「…でも…。」

「まだ言うか。もういい、分かった。」

「はい?」

「この村を出て行きなさい。」

「えっ!?」

「な…!? ま、待ってください! どうして!?」

「最初に決めたお主らの教育のための取り決めを忘れたか? 村の秩序には従ってもらうと。それが出来ぬなら…。」

「す…すみませんでした! 二度としませんから、それだけは!」

「本当にごめんなさい、もうしません!」

 村を追い出される事態に発展し、青ざめたサイトとルイズは、必死に頭を下げて謝罪した。

 村長は黙ったまま、二人を見ていた。

 頭を深く下げていたサイトとルイズは、チラリッとセエの方を見た。助けを求めて…。

 だがセエは、フイッと顔を背けた。

 そのことに、二人は大きくショックを受けた。

「……今回だけじゃぞ。」

「…あ…、ありがとう…ございます。」

 ため息を吐いた村長から仕方なく許してもらい、二人はヘナヘナと膝をついた。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 三人は、セエの家に帰った。

「おかえりにゃ。にゃ? どうしたにゃ、浮かない顔して。」

 セエを初めとして、後ろにいるサイトとルイズもズーンッと暗くなっていてトウマが首を傾げた。

「何かあったのかにゃ?」

「……実は…。」

 セエが重い口を開いた。

 わけを聞いたトウマは、ふーんっと声を漏らした。

「次からは気をつけるにゃよ。」

「どうして…助けてくれなかったんですか?」

 サイトが震える声で言いながらセエを睨んだ。

「最初に決めたことは守らないといけない。」

「ルール、ルールって…、そんなもんにこだわってなんの利害が!」

「あるからルールがあるんだ!」

 セエが怒鳴った。

「昔のことだから俺だって知らない、けど先人達が必死になって作ったルールならそれに従わないと大変なことになるのは間違いないんだ。自分だけなら…なんて思って破ってたら他の人も破り出す。そうなったらもうメチャクチャになる。従えないなら、いや…守れないならハンターをやめるんだ。」

「俺達は…!」

「そうだね。やめられない理由がある。けど、そのために俺達の生活やハンターのルールが壊されたらたまったものじゃない。君達のせいでこの村が…危険にさらされるなら、俺は君達を追い出すよ。」

「セエ…さん…。」

 ルールを守れぬなら、自分の故郷を守るためなら、自分達を追い出すと言われ、サイトとルイズは、ワナワナと震えた。

「………頼むから…。」

 セエは、俯き絞り出すように言った。

「…頼むから、それだけはやらせないでくれ。」

「セエさん…。…すみませんでした。」

「ごめんなさい…。」

 そんなことは本当はしたくないのだという気持ちが込められた言葉に、サイトとルイズは、俯き謝罪した。

 しばらく三人は黙っていた。

 するとそこへ、お菓子とお茶を乗せたお盆を持ってきたトウマ。

「お茶とお菓子があるにゃ。おやつにするにゃよ。」

「…ありがと、トウマ。」

「あ、うまそ。」

「…いただくわ。」

「失敗したのなら、それを糧に次を頑張ればいいにゃ。」

 トウマの言葉に、三人は笑った。

 

 

 

 そして、後日。

 無事にリオレウスの捕獲クエストを成功させたのだった。




狩りのルール……。かなり悩みました。
ゲームだと失敗したという文字のあと違約金を払って村に戻るですが、実際に現場にいたら、もったいなくて捕獲対象の死体から剥ぎ取りしたくなると思うんですよ。
けど、何かやっちゃいけない理由があるからできないはずなんですよね…。でもその理由を考えて考えて…、素材の流通の価格の破綻とか、違法な武器の製造と売買、密漁とかの影響で生態系が狂って人里に直接被害が及ぶことが多くなったとかこじつけみたいな理由にしてしまいました。

もし、こういう理由があるんじゃないか?というご意見がありましたら、書き換えを見当します。


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第二十八話  火薬岩を運ぼう

火薬岩の運搬クエスト。


最後にルイズが……。


「火薬岩?」

「火山エリアで採れる鉱石だ。」

「割れ目から採れる鉱物と違うんですか?」

「クエストとしては、卵の運搬クエストと同じだ。」

「ん? …ってことは…。」

「運ぼうか。」

 セエは、ニッコリと笑った。

「あ、あのセエさん!」

「なに?」

「運搬ってメチャクチャ大変じゃないですか!」

「そうだね。」

「……運搬に向いたスキルってあります?」

「あるよ。」

 セエは、あっさりと言った。

「サイトが今付けているブラックピアスは、運搬プラス4。運搬スキルは、プラス10で発動する。」

「あれ? 意外と簡単?」

「運搬スキルは意外と安上がりなんだ。」

「けど、俺達…。」

「持ってないね。作ろうか。ランゴスタシリーズなら、前やったクエストで素材が溜まってるだろ? それを使おうか。」

 

 こうして、運搬の達人というスキルを発動させるため、ランゴアーム、ランゴフォールドを作った。

 

「あ…、自動マーキングスキルが…。」

「仕方ないよ。何か得ようとしたら、何かを切り捨てないといけないんだ。」

「……。」

「納得してない?」

「何も犠牲にせずに済むなら、それに超したことはないなって思って…。」

「それは、偽善だと思う。」

 サイトの言葉に、セエはそう言って切り捨てた。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 火薬岩。

 その名の通り、とっても取り扱いが難しく脆い鉱物。

 火山の狩り場で採集できるが、火口に近い場所であるため、非情に危険。

 

「暑い!」

「クーラードリンク、クーラードリンク。」

 灼熱の溶岩エリアに入ると、途端に凄まじい熱が襲ってくる。

 三人は急いでクーラードリンクを飲み、火薬岩が採れるエリアを目指した。

 

「あれ?」

 

 サイトとルイズが立ち止まった。

「ほら、急がないと…。」

「…あの…セエさん?」

「あそこにいるのは…?」

「グラビモスだけど?」

「なんでいるんですかぁ!?」

「いや、こういうクエストは、こういう難所は付き物なんだ。」

 あんな苦戦したグラビモスがのっしのっしと歩いていて、サイトとルイズは、絶叫した。

「火薬岩を一個納品すればいいんだから、辛抱しよう。」

「うぅ…。」

 三人は、グラビモスを無視して、急いでエリアを移動した。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 火薬岩が採れるエリアは、イノシシに似たブルファンゴというモンスターが希にいる。

 運搬クエストでは、猛烈に邪魔なモンスターである。

 火口が近いのか、それとも火山の噴出口が他にあるのか、両壁に巨大な火柱が立ち、ガランゴロンと灼熱をまとった鉱物が転がる。

「……熱そう…。」

 目の前に転がっている黒く、赤い割れ目が入った火薬岩を前にしてルイズはそう呟いた。

「だいじょうぶ。運べるから。」

「手が黒焦げにならないかしら?」

「俺もやってるけどなったことないよ。」

「そう…、じゃあ、サイト。」

「ああ。…よっこいしょっと。」

 運搬の達人スキルを持っているのはサイトだ。そのため必然的にサイトが運ぶ係になる。

「あ…、重いけど…、なんかちょっと高いところからでも落とさないって自信がある…気がする。」

「ちょっと高いところから落ちても運搬対象を落とさないのが運搬の達人スキルだ。運搬のスピードも上がる。スタミナ切れを起こさない程度に走ろう。」

「えっ? 走る必要なんて…。」

「ほら、あれ。」

「あっ!」

 セエが指さした先には、ブルファンゴが数匹いた。

「ブルファンゴが体当たりしてくる前に運ぼう。ルイズは、サイトを援護するために撃つんだ。」

「は、はい!」

 セエが先行して走り、ルイズが援護射撃をした。

 そうしてサイトを狙ってくるブルファンゴを牽制し、ルイズも後を追って走った。

 運搬速度は確かに上がった。だがそれでも普通に全速力で走る速度には及ばない。

 必死に走っていると、セエがサイトを止めた。

「スタミナが切れるぞ! 落としたいのか?」

「す、すみません…。」

 スタミナが戻るまで少し立ち止まる。

「ちょ、ちょっとぉ、立ち止まってたら…。」

 ルイズが焦る。

 なぜならここは、ちょうどグラビモスが徘徊しているエリアだからだ。

「いける? サイト。」

「はい、行けます。」

 セエはサイトに確認した。

 その時、溶岩から出てきたグラビモスがこちらを見つけてしまった。

 そして、熱線を吐く動作に移ろうとした。

「走れ、走れ!」

 セエが急かす、その直後、サイトがいた場所を熱線が通り過ぎた。

「うわ、ちちち!」

 背中を炙られ、サイトはよろついた。

「走れ走れ! ルイズ、牽制してくれ!」

「わ、分かってるわよ!」

 こちらを追ってくるグラビモスに向け、ルイズはライトボウガンを撃ちまくった。

 顔に当たり、煩わしそうにグラビモスが顔を振っている隙に、セエとサイトがこのエリアを突破した。ルイズもそれに続いて走る。

 その直後、ルイズの背中に向かってグラビモスが熱線を吐いた。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 キャンプ地についたサイトは、急いで火薬岩を納品用の赤い箱に入れた。

 そして、クエスト達成のファンファーレを聞いて、は~っと安堵の息を吐いた。

 そして、気づく。

 ルイズがいないことに。

「ルイズ?」

「あれ?」

 すると、アイルー達が押してくる荷車が溶岩エリアの方から走ってきた。

「る…ルイズ!?」

 サイトは、驚愕した。

 ルイズは、全身を焼かれてぐったりと動かなかった。

「ルイズ、ルイズ! しっかりしろよ! まさか…アイツ(グラビモス)の熱線に…!?」

「これは…。」

「ルイズ、ルイズ----!」

「どくにゃ!」

 そこへ治療班のアイルーが来てサイトをどかして、ルイズの処置に入った。

 ルイズは、薬を塗られ、全身を包帯でグルグル巻きにされ、送迎の馬車に運ばれていった。

「ルイズ…ルイズ…。」

 送迎の馬車の中で揺られながら、サイトは泣きながらずっとルイズの手を握っていた。

 ルイズは、苦しげな呼吸を繰り返している。

 セエは、悲痛な思いでそんな二人を見ていた。

 

 

 村に帰ってから、ルイズは、セエの家に運ばれ、セエのマットの上に寝かせた。

 

「集会所クエストだったら、間違いなく死んでたにゃね。」

 事情を聞いたトウマがそう言った。

 セエは、いない。村長に報告に行ったのだ。

「俺のせいだ…。」

 サイトが呟く。

「俺のせいでルイズが…。」

「おまえのせいじゃないにゃ。運搬クエストは、複数で挑むにゃら、誰かが囮になるのものにゃ。セエのご主人は見守り役で手が出せにゃいし、おまえが運ぶ役だったのにゃら、仕方ないにゃ。」

「……。」

「今、おまえ…、この娘にハンターを辞めさせようって思ってるにゃね?」

「なんで分かるんだよ…?」

「おまえらが好き合ってることくらい見れば分かるにゃ。けど、娘がそれを受け入れると思うかにゃ?」

「それは…。」

「負けず嫌いっぽいからそれは無理にゃよ。精進するしかないにゃ。」

「精進しろって言ったって!」

「強くなって、より強い防具を手にいれて、勝ち続けるしかないにゃ。今回のことは、熱線をまともに受けるような油断をした娘の責任にゃ。」

「ルイズのせいだって言うのか!?」

「そうにゃ。それ以外に何があるにゃ?」

 サイトは、トウマを睨んだ。トウマは、やれやれと言った様子で腕をすくめた。

「自分のせいだって思うのは、しょせん気休めにゃ。気休めにもならないかもにゃね。」

「…くそっ!」

「サイト…の…せい…じゃ、ない…わ。」

「ルイズ!」

 その時、ルイズが目を覚ました。

「トウマ…の、言うとおり…よ。」

「でも、でも!」

「こんど…は…、油断…しないように…する、から…。」

 ルイズは、包帯が巻かれた顔のまま無理矢理に笑った。

「安心して?」

「…ルイズ。」

 サイトは、ルイズの手を握って涙をこぼした。

 

 

 こうして、火薬岩の運搬クエストは、ルイズの負傷という重い結果を残して成功したのだった。




ルイズの重傷は、どこかでやりたいと思ってました。
村長クエストだったから、なんとか生き残ってますが、これが集会所クエスト・ハードだったら間違いなく死んでました。
エリア移動直後に、ビシャーって熱線の音がした時は…もうねぇ。

それにしても、モンスターハンターの世界の治療ってどうやってるんでしょうね?
回復薬とかの回復力を考えると、簡単に治せるのかもしれないけど。


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第二十九話  防具を新調しよう その1

サイトは、ブラックピアス、クックメイル、タロスアーム、タロスコート、ハンターグリーヴ。

ルイズは、クックシリーズ。(それ以外は決めてない)


今回は、防具の質を上げるため、桜リオレイアに挑む。


 ルイズが完全に回復したのは、一週間後のことだった。

「よかったぁ…。」

「もう、それ何回目?」

「だって…、火傷の跡が残ったらって思ったら…。」

 幸い、火傷の跡も残らず回復し、サイトはうれし泣きした。

「えーと…、残るキークエストは……。」

 一方でセエは、次にやらないといけないクエストについて考えていた。

「いや…、その前に…。」

 セエは、ちらりっとサイトとルイズを見た。

「そうだ。装備を新調しよう。」

「えっ?」

「特にルイズの装備だ。」

 モンスターからの攻撃を防ぐのは、結局のところ身につけている装備の質だ。

 凶悪な攻撃による死を防ぐには、それを防ぐだけの武具がいる。

 しかし、小柄で細身なルイズが装着できそうな装備は……。

「やっぱり、リオ系かな?」

「りお…ってことは、リオレウス?」

「リオレイアもだ。あ、リオレイアは、レイア系だった。……そうだな。亜種のリオレウスか、リオレイアの装備はどう?」

「亜種っていうと、蒼いやつとか?」

「そう、蒼いリオレウスか、桜色のリオレイアとかはどう?」

「さくらいろぉ?」

「ってことは、そいつの素材で作った防具は…。」

「当然、桜色。」

「ピンク色装備か…、似合うんじゃねぇの? ルイズ。」

「髪の色つながりで言ってない?」

「いーじゃん、ピンク。似合うと思うぜ?」

「それとも、蒼いリオレウスがいい?」

「なんで二択? もっとないの?」

「リオ系とレイア系もあるけど…、色合い的に地味だからな。更に上の亜種となると…、それだともっと上のクエストになるから、無理なんだ。」

「えー…。」

「なあ、ピンクにしろって。」

「…なんかやらしぃこと考えてない?」

「えっ! べ、別に…。」

「ちゃんと目を合せて言いなさいよ。」

「で? どうする? 桜リオレイアを狩りに行くか?」

「セエさんは、ブレないわねぇ…。」

「?」

 空気を読まないセエに、ルイズは、半ば呆れながら言ったのだった。

 

 

 結局なんやかんやで、桜リオレイアを狩りに行くことになった。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 桜リオレイア。

 雌火竜リオレイアの突然変異亜種で、桜のような淡い赤色の甲殻を持つ。

 この火竜には、こんな言い伝えがある。

 『太古の時に、波乱に満ちた生涯を送った乙女を見守る、特別な飛竜。』

 当時、目撃情報が少なく、またこの言い伝えにより、穏やかな存在として描かれているが、近年、他のリオレイア同様に火山地帯に生息していることが確認され、本来は獰猛で縄張り意識も強く、例え自分がピンチに陥っても逃げ出すことが少ない種であることが判明している。

 また、美しい桜色の甲殻は、異常なほど硬い。

 

 

「あれ? なんだかヤバげ?」

 送迎の馬車の中で、桜リオレイアについての話を聞いて、サイトとルイズは、僅かに青ざめ汗をかいた。

「基本的な攻撃とかは、リオレイアと同じだよ。ただ、硬くて体力が高いだけ。」

「いや、それ、かなり重要でしょ。」

「普通のリオレイアより、倒しにくいってことですよね?」

「ああ。今の装備じゃ、長期戦は免れないだろうな。」

「それ言っちゃう!?」

「防具より武器の方がよかったんじゃ…。」

「攻撃は最大の防御なんて言うけど、俺は違うと思うな。武器も防具もどっちも重要だ。」

 不安がる二人に、セエは、腕組みしてそう言った。

 

 

 やがて、送迎の馬車が、桜リオレイアのいる、ジャングルに到着した。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 サイトとルイズが不安を抱えたまま、三人はキャンプ地で支給品を取り、自動マーキングスキルで把握している桜リオレイアの位置まで移動した。

「いた!」

 確かにそのリオレイアは、見事な桜色だった。

 あれだけ美しければ、乙女を見守る飛竜なんて言い伝えがあるのも頷けるが……。

 ブルファンゴを足で踏みつけて、口を血で真っ赤にして、ガツガツとその肉を食っていては、その美しいイメージも思いっきり壊れるものだ。

「おおう…。」

「うわ…。」

 美しい桜色の雌火竜のそのギャップに、二人は顔を歪めた。

「さ、頑張ろう。」

「心の準備ってものがありますよ!」

 行けと指さすセエに、さすがのサイトもそう叫んだ。

 その叫び声で、桜リオレイアがこちらに顔を向けた。

「あ…。」

「バカ!」

 慌てて口を塞ぐが後の祭り。

 桜リオレイアは、食っていたブルファンゴを蹴ってどけ、大きな鳴き声をあげながら突進してきた。

 三人は散り散りになりそれを避けた。

 ルイズは、こけそうになりながらライトボウガンに弾を込め、桜リオレイアに照準を向けた。それに気づいた桜リオレイアがルイズの方を見る。

「おらおら! こっちだ!」

 サイトが桜リオレイアの尻尾の下に潜り込んで、その尻尾の根の方を切りつけた。

 だが、ガチンッと弾かれる。

「カッてぇ!?」

 先に聞いていた話通り、桜リオレイアの甲殻はとても硬かった。

 この硬さでは、尻尾の切断は難しい。

 サイトに攻撃され、桜リオレイアがサイトの方に振り向いた。

 そして一歩下がる。それは、サマーソルト尻尾攻撃の合図だった。

「サイト! 逃げて!」

「えっ?」

 ルイズがいち早く気づき叫ぶが、サイトは反応が遅れ、次の瞬間振り上げられた尻尾をもろに食らうことになった。

 結果、大ダメージのうえに毒まで食らった。

「ガハァ!」

「サイト!」

「サイト、解毒薬を!」

 血を吐くサイトは、先ほどの攻撃で吹っ飛び転がされ、止まったところで慌てて解毒薬を取り出し、飲んだ。

「ルイズ! 手を止めるな!」

「わ…分かってるわよ!」

 セエに言われ、ルイズは慌ててライトボウガンを構えて撃ちまくった。

 ドスドスと弾は当たる、だが桜リオレイアはまったく応えていない。

「この…野郎!」

 口元から垂れた血を乱暴に腕で拭ったサイトは、桜リオレイアの腹の下に転がり込んで切りまくった。

 やがてポイズンタバルジンによる毒を食らった桜リオレイアは、苦しげな鳴声を上げた。

 桜リオレイアは、首を曲げ、下にいるサイトの背中を噛んで引っ張り出した。

「ぐ、くぅ…!」

 噛まれた痛みに耐えながらサイトは、桜リオレイアの顔を切りつけた。途端、桜リオレイアは、サイトを離した。

 ルイズが撃つ弾が桜リオレイアの頭に被弾し、桜リオレイアは、煩わしそうに首を振った。

 そのすきに離れたサイトは、回復薬グレートを飲んだ。

 亜種ではあるが、攻撃手段は他のリオレイアと同じであるため、注意さえすれば防げなくはない。

 だが、タフさは段違いだ。

 しかも普通のリオレイアより敵対者に対して攻撃的なのか、自ら逃げるような素振りもない。徐々に徐々に、サイトとルイズの戦う体力を奪っていく。

「はあ…はあ…、ま…まだかよ?」

 足を引きずる様子もない桜リオレイアに、呼吸を乱したサイトが疲れで震え出す足を押さえて呟いた。

 離れた位置から攻撃をしていたルイズも、限界が近づいていた。

「まずい。時間切れだ。」

「えっ!?」

 セエがそう言った時、迎えのアイルー達が援護に来て、桜リオレイアを牽制し、荷車に乗るよう急かした。

「ちょ、ちょっと! ここまでやって!?」

「仕方ないよ。狩りには時間が決まってるんだから。」

「くそ!」

 ルイズとサイトは、悔しさをにじませ、荷車に乗り、セエも乗って、退却した。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 村に戻り、村長のところへ報告に行った。

「時間切れとな?」

「選択するモンスターを間違えたかもしれません…。」

「しかし、いずれは戦う相手じゃ。経験にはなったじゃろう。」

「……あれだけ硬かったら、防具も相当いいってことですよね?」

「うーん…、リオハート系は、他のリオ系とレイア系とあまり変わらないからな。」

「えっ!?」

「さらに上物が欲しいなら、星四つか、それ以上の集会所クエストに挑むしかないよ。」

 それを聞いて、サイトとルイズは、口開けて絶句した。

 あれだけ苦戦した桜リオレイアで作った防具も、他のリオレウスや、リオレイアとそう変わらないと言われたのだから。

「じゃ、じゃあなんで…アイツ(桜リオレイア)と戦わされたんですか?」

「…うーん。特に理由はないけど、亜種の厄介さは知ってもらいたかったし。」

「そ、そんなぁ…。」

 サイトは、がっくりと膝をつき。ルイズは顔を両手で押さえて嘆いた。

 

 

 こうして、桜リオレイアの防具…リオハート系の防具を手に入れるのは失敗したのだった。




なんで、桜リオレイアを選んだか…、単純にルイズの髪の毛の色つながりで選びました。
いずれは戦う相手だし、亜種の厄介さを知ってもらうという意味も後付けしました。

装備は多いので、どの組み合わせにするか、悩みます。
これがいいんじゃないか?っというご意見がありましたら、活動報告の方へお願いします。


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第三十話  青イャンクックを狩ろう(ハード)

装備の新調って、大変……。

今回は、ハードの青イャンクックにリベンジ。


「やっぱり、装備を新調しよう。」

「あの…、そう言って桜色のリオレイアで失敗したじゃないですか?」

「サイトの片手剣をパワーアップさせる意味もある。」

「えっ?」

「今、ポイズンタバルジンだろ? それをさらに一段階あげて、アッパータバルジンにする。」

 セエは、サイトが装備しているポイズンタバルジンを指さして言った。

「えっ、でもこれをもう一段階パワーアップさせるには…。」

「上竜骨と、青怪鳥の甲殻がいる。これはどっちも集会所のクエストじゃないと手に入らない。」

「つまり…?」

「星四つ! ハードクラスの青イャンクックに勝つんだ!」

「えーーー!」

 ハードの青イャンクックにボコられたサイトとルイズは、悲鳴じみた声を上げた。

「そ、村長さんのクエストじゃダメなんですか?」

「村長のクエストじゃ、甲殻じゃなくて、軟殻しか取れない。」

「………でも私達、それ以上の敵と戦わないといけないのよね。」

「ルイズ…。そうだな…。」

 二人は、お互いの顔を見て、少し間を置いて決意したように頷き合った。

 そしてセエを見て言った。

「受けて立ちます!」

「よく言った!」

 セエは、グッと親指を立てた。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 前の失敗を教訓に、イャンクック(青含む)が苦手な音爆弾と閃光玉を用意できるだけ用意した。

 アイルーキッチンでガッツリ食事も摂り、グレート系の道具も用意した。

「こんだけ用意したんだ。絶対勝つぜ!」

「勝ちましょうね、サイト!」

「油断しないで行こう。」

 油断すれば熟練のハンターでも、負けることだってあるのだから。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 森と丘のキャンプ地に着き、支給品の地図と応急薬を取って、硬化薬グレートを飲んで、自動マーキングスキルで把握している青イャンクックの居場所まで行った。

 ツンツンと、芝生にいる虫を啄んでいる青イャンクック。まだこちらには気づいていない。

「行くぞ、ルイズ!」

「ええ!」

 二人は、青イャンクックを仕留めるため走った。

 二つの足音に気づいた青イャンクックは、畳んでいたエリマキのような耳を広げてクエーッと鳴いた。

 接近してきたサイトに向かって青イャンクックは尻尾を振った。それを盾で防ぎながら腹の下に入ったサイトは、青イャンクックの腹を切った。

 ルイズは、適度な距離を保ちながらライトボウガンに弾を込め、撃った。

 サイトをなぎ払おうと青イャンクックは、尻尾を振りまくる。

 その間にも青イャンクックの背中や翼に、ルイズが撃つライトボウガンの弾が当たる。

 ライトボウガンを新調した結果、攻撃力はアップしており、やがて青イャンクックはよろめいた。

「うおおおおおお!」

 サイトは、よろめいた瞬間を見逃さず青イャンクックの腹を切りまくった。

 やがて青イャンクックは、翼を広げ、後ろに飛びながら火を吐いた。

 腹の下にいたサイトの目の前に火は落ち、サイトは盾を持った腕で熱を防いだ。

 怒った青イャンクックは、火を左右に吐きまくりながら突進してきた。

 サイトは、横に逃げてそれを避け、結構な距離走った青イャンクックは、立ち止まり黒い煙を吐きながらこちらを見た。

 その瞬間、サイトは、閃光玉を投げつけ、青イャンクックは、その閃光によってクラクラになった。

 青イャンクックは、デタラメに尻尾を振りまくる、サイトはそれをかいくぐり、青イャンクックの首の下を切った。

 ポイズンタバルジンによる毒もあり、やがて青イャンクックは、エリマキのような耳を畳んで足を引きずって飛び去っていった。

「巣ですね!?」

「そう。」

 次に行く場所などもう熟知した。

 三人は、飛竜の巣に急いだ。自動マーキングスキルで、飛んでいる青イャンクックは見えるので、先回りできた。

 巣には相変わらずランポス達がいたが、それを先に掃討していると、巣の上に空いた穴から青イャンクックがバサバサと翼をはためかせながら降りてきた。

 地に着地すると、こちらの存在に気づいて、威嚇のつもりか翼を広げてクエーッと大きく鳴いた。

 サイトが迫ると、青イャンクックは、巨大なそのくちばしを振り下ろす。それを盾で防ぐと、青イャンクックの顔にルイズが撃った弾が被弾する。

 青イャンクックがそれで首を煩わしそうに振った瞬間、サイトが下から青イャンクックの首を大きく切った。

 青イャンクックは、断末魔の鳴き声をあげて絶命した。

「や、やった…。」

「勝った! 勝ったのよ、サイト! 私達!」

「さ、剥ぎ取り剥ぎ取り。」

「…ブレないわねぇ。」

 喜ぶ暇も与えてくれないセエ(クエスト後迎えが来るまで1分少々なので急いでいる)に、ルイズは肩をすくめた。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 クエスト後、青怪鳥の甲殻は手に入ったものの、上竜骨が手に入らなかった。

「あれ?」

「ま、このクエストじゃ、上竜骨は、5パーセントだからな。」

「低っ!!」

「どうしたらいいの?」

「そんなの決まってるじゃないか。」

「あ……。」

 嫌な予感を覚え、サイトとルイズは、青ざめた。

「取れるまで勝ち続ける! もしくは、別のクエストをやる。」

「…ハードで、ですよね?」

「うん。上竜骨は、ハードかそれ以上じゃないと取れない。」

「えーーーー!」

「アッパータバルジンに使う甲殻も足りないし、頑張ろう!」

「ひえええええ!」

 ニッコニコと笑うセエに、サイトとルイズは、悲鳴を上げたのだった。

 




片手剣は、盾もあるし、攻守のバランスはいいですが、一撃のダメージ量が少ないですからね…。大剣と比べて。
なので、サイトの武器は、毒属性のある武器が主力になるかも。
そのうち双剣も持たせたい。


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第三十一話  錬金をしよう

錬金術スキルを身につける回。

セエの実力というか、ハンターライフは、筆者のプレイ状況とほぼ連動させているので、まだほとんどG級には挑んでいません。

ちょっとだけ最初に上半身裸表現あり。


 ルイズは固まった。

 セエの家の庭に出たら、セエが上半裸でいたからだ。

 しっとり汗をかいており、鍛錬をしていたことがうかがえる。

 その身体は、鎧を着ていた時には分からなかったが、非常に引き締まった筋肉をしており、おそらく飛竜にやられたと思われる大きな噛み傷や爪痕があちこちにあった。

「…? ルイズか。」

 今気づいたとセエがルイズの方を見た。

「あ、…その…ごめんなさい。」

「? なんで謝るんだ?」

 セエが首を傾げると、顔を赤くしたルイズは、家の中に逃げるように入っていった。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

「セエさんの傷?」

 家の中に入って、サイトにルイズがセエの身体の傷跡について言った。

「それがどうしたんだよ?」

「だ、だって…。すごい傷跡ばっかりだったから…。」

「俺は、脱衣所で一緒に着替えとかしてたから見てるけど?」

「あっ。」

 そういえばそうだったと、ルイズは声を漏らした。

「努力の積み重ねにゃよ。」

 そこへトウマが洗濯籠を持って通りがかりに言った。

「ご主人は強くないから、生傷が絶えなかったにゃよ。」

「でも、G級になったんだろ?」

「それでもまだ自分は弱いって思ってるにゃよ。実際まだG級クエストにほとんど挑んでないにゃ。」

「どうして?」

「G級はほんとにキツイにゃよ? それこそハードなんて目じゃないにゃ。準備って言って、他のクエストやってるにゃ。」

「それって…。」

「逃げ…とか言うんじゃないにゃよ。やり方は、ハンターそれぞれにゃ。」

 トウマは、そう言ってジトッとサイトとルイズを見た。それは暗に、セエには言うなと言っているようである。

 

「どうしたんだ? みんな揃って。」

 

 そこへ部屋着に着替えたセエがタオルで頭を拭きながらやってきた。

「あ…セエさん…。」

「にゃー。ただの世話話してただけにゃよ。」

「そうか。」

 そう納得したセエは、鎧の手入れを始めたのだった。

 サイトとルイズは、顔を見合わせ、なんと言ったらいいのか分からない顔で、セエをチラッと見たのだった。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

「錬金術?」

「そう、錬金術。」

「錬金って言ったら…。」

「魔法じゃないよ。調合の上級版だと思えばいい。これを行うには、装備の組み合わせで発動するスキルがいる。」

「また装備ですか。」

「文句言わない。錬金術は、一応調合の一種だ。使い方次第じゃ、在庫が切れてる素材を手に入れられる。モンスターの濃汁なんか、錬金術の方が早いし。」

「で、どんな装備で?」

「ハンター系の防具とか、ボーン系とか…、店に行って見てみようか。」

「はい。」

 三人は、武具を作ってくれる店に行った。

「らっしゃい! 今日はどんなご用で?」

「防具に付与されるスキルを見たいんだけど…。」

「へい、じゃあ、これがリストです。」

「……これ…。」

「どんなスキルをご要望で?」

「できたら錬金術を。」

「それでしたら…、マカルシリーズなんてどうですかい?」

「まかるぱ? ああ、確かに高いな。」

「ほんとだ、マカルパフードだけで錬金術プラス6!」

「錬金術は、プラス10で発動するから、コレひとつに、他の装備を組み合わせようか。」

「けど、これって…。」

「魚がいるな。春夜鯉に、ハリマグロ、水竜のヒレに、調合書の1入門書。」

 そう、魚がたっぷり(春夜鯉×2。ハリマグロ×30)いるのだ。

「春夜鯉は、農場でしか獲れない…。だから…ネットをたくさん用意しようか。ついでにハリマグロも獲れるはずだ。」

「水竜のヒレは?」

「…頑張って、ガノトトスを狩ろうか。」

「セエさんもG級クエスト頑張りましょうね。」

「ちょっと、サイト!」

「あ…。」

 慌てて口を塞ぎ、恐る恐るセエを見ると、僅かに目を見開いて固まっていた。

「うん…。そうだね。」

 やや時間をおいて、そう言って微笑んだのだった。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 その後、農場の桟橋で、ネットの射出機を使い魚の群れを獲りまくり、無事魚を揃えたら、今度はガノトトスを狩り、水竜のヒレを揃えてマカルパフードを作ったのだった。

 そこに、店で売っているハンター系やレザー系の防具を揃え、錬金術のスキルを手に入れたのだった。

「モンスターの濃汁を作ろうか。これでGのついた爆弾が作れる。」

「爆弾としては最強なんですよね?」

「ついでに、爆弾採掘もしようか。」

「ばく…。」

 それを聞いたサイトとルイズは、点火した爆弾を抱えて洞窟に入って行く農場のアイルーのことを思い出した。

「いや、やめときます。」

「えっ? 爆弾採掘の方が量も質も良いのに。」

「いやいや! アイルーが可哀想でしょ!」

「? 彼はそういう仕事をしているんだから…。」

「セエさん……。」

 文化の違いというか、感覚の麻痺というか……。

 キョトンッとしているセエに、若干の恐怖を覚えたサイトとルイズだった。




別にルイズとのフラグが立つとかそういうのはありません。
あくまで、サイト×ルイズです。

錬金術スキルって、モンスターの濃汁を作る以外じゃほとんど使わないなぁ…。


次回、G級に挑むかどうかは、筆者次第です。なので更新遅れるかも。


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第三十二話  挟撃の青イャンクック(見学編)

セエがG級クエストをやる回。

G級やってないなーって思って、思って受付してみたら、G級星6をクリアしてて、星7まで行っていたことに気づいた今日この頃。


「さてと…。」

 セエは、アイテムボックスから回復薬グレートや鬼人薬グレート、硬化薬グレートなどのグレート系を取り出し、さらに閃光玉なども一式用意した。

 さらに、アイルーキッチンで食事もする。

「セエさん? クエストに行くんですか?」

 その様子からセエが何かのクエストをやろうとしていることを見抜いて聞いた。

「ひっさしぶりに、G級…行くか。」

「えっ!」

 セエの呟きを聞いて、サイトとルイズは、驚いた。

「二人とも、見学に来るよね?」

 セエが振り返ると、二人は驚いた顔をした。

「まあ…、巻き添え食わないように気をつけてくれ。」

「…えっ?」

「じゃあ、先に行ってるから、二人とも準備してくれ。」

 準備が出来たセエはそう言って、二人の横を通り過ぎて出て行ったので、慌てて二人も準備をして追いかけた。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

「ほう…、G級クエストをするか。」

「久しぶりにやろうと思いまして。」

「そこの二人、巻き込まれんように気をつけるんじゃぞ。」

「は、はい…。」

 思い出されるのは、学院を襲ったあのリオレウスだ。

 あれは、強さからして村長クエストのリオレウスよりもずっと強かった。もしG級だったなら……、自分達はいずれG級に登り詰めなければいけないのだ。

 っとなると、ここでG級の一端を見るのは良い経験になるだろう。

 そして、セエは、二人を連れて集会所に入った。

 ハードクラスまでを受け付けている赤い受付嬢の隣にいる青い服を着た受付嬢が、G級のクエストを受け付けている。

「あら、セエさん。久しぶりね。クエスト?」

「挟撃のイャンクックを。」

「はーい。では、契約金はこちら。」

「イャンクック?」

 まさかのイャンクックに、二人はちょっと拍子抜けした。

「欲しいのは、堅竜骨なんだけど、飛竜ならなんでもいいんだ。堅竜骨は、G級からしか取れない。」

「あら? そっちの二人は噂のお弟子さん?」

「うん…。まあ…。」

「見学なら気をつけなさいね。」

「え…、は、はい…。」

 イャンクックと聞いて拍子抜けした二人は、曖昧な返事を返したのだった。

 

 そして、受付を終えたセエは、二人を連れてクエストに出発した。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 サイトとルイズは、なんとも複雑そうな顔でセエを見ていた。

「なに?」

「いえ…、なにもイャンクックじゃなくても…。」

「…覚えておくといいよ。このクエストは、G級のさらに上を目指すためのキークエストのひとつなんだ。」

「えっ!?」

「今回は、青イャンクック二匹を相手にする。実は、単体より二匹相手の方がやりやすいんだ。」

「どうしてですか?」

「同士討ちを狙いやすい。」

「あ、なるほど。」

 そんな話を森と丘のキャンプ地でして、セエは、二匹の青イャンクックを倒すべく出発し、サイトとルイズもそれについて行った。

 エリアを進んでいくと、一匹目の青イャンクックを見つけた。

 セエは、走って接近し、青イャンクックが反応するよりも早く背中の大剣を抜いて切りつけた。

 青イャンクックは絶叫のような鳴声を上げ、尻尾を振る。

 尻尾は偶然にもセエの頭の上を通り過ぎた。G級のモンスターは、大きいのだ。

 振り下ろした大剣をセエは、切り上げるように振り上げさらに青イャンクックを切る。

 サイトは、自分の自動マーキングスキルで見て気づいた。

 もう一匹の青イャンクックがこちらに向かってきていることを。

「セエさん! もう一匹来ますよ!」

「知ってる!」

 自動マーキングスキルは、セエも持っている。なのでサイトより先に気づいていた。

 やがてもう一匹の青イャンクックが空から舞い降りてきた。

 もう一匹の青イャンクックは、すぐにこちらに気づいて、突撃してきた。

 セエは、すぐに横に転がる。すると、セエの前にいた青イャンクックに、もう一匹の青イャンクックが激突した。

 二匹いるとはいえ、協力しているわけじゃなく、まったく別々の意思で攻撃してくるらしい。ただし、攻撃の優先順位は、ハンターらしい。

 一匹が火を吐けば、そこにもう一匹がいて当たってもお構いなしだ。

「! うわあああ!」

 二匹いるものだから、セエだけじゃなく、サイト達まで襲ってくるので逃げ回る。戦闘に参加することは許されていないので、反撃しないでいるのが大変だ。巻き添えを食うと言われたのはコレのせいだ。

 セエが交互に青イャンクックを攻撃していると、やがて青イャンクック達は、優先すべきハンターがセエだと認識したらしく、セエを狙うようなった。

 そうしてセエは、もう一匹の青イャンクックの攻撃が、もう片方に当たるように誘導しつつ、隙を見て攻撃していた。

 そんなことを繰り返していると、やがて一匹が息絶えた。

 あとは、残る一匹を攻撃するだけだとばかりに攻撃していく。

 やがて青イャンクックは、足を引きずって飛び去っていった。

 セエは、大剣を背中に戻し、死んだ青イャンクックから剥ぎ取りをしてから巣に向かった。サイトとルイズもその後を追った。

 巣に行けば、そこにはランポス達がいる。

 セエがランポスを倒していると、青イャンクックが舞い降りてきた。

 青イャンクックは、こちらを見つけると、怒りだした。

 セエは、激しい青イャンクックからの攻撃を回避しながら、時々攻撃を加え、反撃を時に食らいながら攻撃を繰り返した。

 そして、ついにもう一匹の青イャンクックも息絶えた。

「…よし!」

「セエさん、お疲れ様です!」

 死んだもう一匹の青イャンクックから剥ぎ取りをしているセエに、サイトとルイズが駆け寄った。

 そんな二人にセエは顔を向け、微笑んだ。

 

 

 そして、クエスト終了後、堅竜骨が報酬に無くて、セエはがっかりしていた。




案外、楽勝そうにやってますが、二匹だと、実際一匹相手にするよりやりやすいですよね。同士討ちを狙えるから。
でも、G級だから攻撃力は半端ないです…。

今日は、G級バサルモスに挑んで、うっかり解毒薬を忘れてボコボコされました筆者です。尻尾攻撃だけで結構体力持ってかれる……(泣)。


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第三十三話  一対の火竜を狩ろう その1

リオレウス&リオレイア討伐クエスト。(村長)

果たして、今の実力で、ハルケギニアを救えるのか…?
っと言われたら、否です。


「……。」

「……。」

「さあ、どうする?」

 セエが、クエストのリストの紙を机の上に並べてサイトとルイズに問うた。

 

「このまま村長クエストに挑むか! それとも、集会所クエストに挑むか!」

 

 そう、このままの装備で村長クエストを行うか、集会所クエスト(ハード)で装備を調えるか。

「……噂じゃ、鎧無しで飛竜種を倒してるハンターもいるって聞くけども。」

「誰ですか!? そんな超人的な人!」

「ま、そんな人は希だ。こっちは順当に行かないといけないと思うんだ。そのためにも、このままの装備で行くか、それとも難しいクエストに挑んで装備のグレードをあげるかなんだ。」

「……この武器(アッパータバルジン)で、勝ち上がることってできるんですよね?」

「出来ないことはないだろうけど、だんだんきつくなってくると思う。」

「セエさんみたいに大剣が振れない以上、一撃の大きい武器は望めないわ。」

「それを補うのが、属性や毒とか、爆弾とかを利用することだ。その武器を手に入れるためには…。」

「モンスター(飛竜種)を倒すしかない…。」

「けど、そのモンスターを倒すには…。」

「武器と防具が必要…。なにこれ、詰んでない?」

「サイトは、なんとかなるかも知れないけど、問題はルイズだ。」

「この間やったハードのイャンクック(青)のクエストで装備は整えたわ。」

「元々魔法使いだったこともあるんだろうけど…、体力がなさ過ぎる…。」

「っ!」

「このままだと、サイト達のいた世界に戻っても、そこにいる飛竜種達には勝てないかもしれない。」

「わ…私だって、毎日筋トレだってしてるわ!」

「そんな付け焼き刃のトレーニングで体力がすぐにつかないにゃよ。元々、良いところのお嬢ちゃまにゃし、身体が貧弱にゃ。」

 そこへトウマがお茶を持ってきた。

「そうだな…。一人で、G級をクリアできるほど力を付けないと、君達の世界を襲っているモンスター達に対抗できないかもしれないんじゃないかな?」

「ひ、一人で?」

 今だって二人でやっとハードのイャンクックを倒せる状況なのに、それ以上が求められ、サイトとルイズは絶望した。

「思い出して。君達が最初に遭遇したリオレウスがどれだけの強さだったかを…。」

「……確かに…村長さんのクエスト以上でした。」

「ハードか、それ以上の可能性がある。それに対抗するためには…、何が何でも強くなって装備を調えないと。」

「……俺達…ほんとに勝てるのかな?」

「さあ? それは俺には分からない。」

 ハルケギニアの住人ではないセエには、所詮は他人事だ。

「ともかく、どうする? 村長のクエストか、集会所クエストをするか。」

「……村長さんのクエストは、集会所のより強いモンスターと戦うための予行演習みたいなものなんですよね?」

「…うーん。極端な話、そうなのかな?」

「だったら、村長さんのクエストで力を付けてから、集会所に挑むのは?」

「…確かに、俺もそうだったな。」

「じゃあ、決まりですね!」

「二人はそれでいいの?」

「ええ。私はサイトの意見に賛成するわ。」

「なら、それで行こう。」

 目標は、とりあえず決まった。

「じゃあ、次のキークエストだけど……。」

 少し間を置いて次に出された言葉に、サイトとルイズは、驚愕することになる。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 サイトとルイズは、送迎の馬車の中で不安がっていた。

「二人とも…、そこまで…。」

「だって…。」

「一匹でも大変だったのに…!」

 そう、次にやらなければならないキークエストの内容が問題だった。

 

 一対の巨影。そのクエストは、そう名付けられている。

 雄火竜リオレウスと、雌火竜リオレイア。

 二匹を同時に相手をしなければならないクエストだ。

 

 サイトが、あああ~~っと、顔を両手で覆って嘆いた。

「でも、やるって言ったじゃないか。」

「言いましたよ! 言ったけども、いざ!っとなったら腰が引けるってあるじゃないですか!」

「あるね。うん。」

「でも、なんでこのクエストなのよ…。」

「だって、先にフルフルやガノトトスを倒しちゃったから、残る最後のキークエストがコレしか無かったんだ。」

「つまり私達、色々すっ飛ばしてたのね。」

「そう。」

「サイト。これをクリアすれば、もう一段階上に行けるのよ。大変だけど、これさえクリアすれば、更に上に行けるんだから、そう考えて前向きにやりましょうよ。」

 ルイズがサイト励ます。

 顔を手で覆っていたサイトは、顔を上げた。

「……そうだな。ありがと、ルイズ。」

「頑張りましょう。」

「ああ。」

 二人はお互いを見つめ合い頷いていた。

 

 やがて、狩り場となる森と丘のキャンプ地に到着した。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 着いた途端、サイトの顔色が一気に悪くなった。

「いる! …二匹!」

 自動マーキングスキルでハッキリと、二匹の竜のマークが見えている。

「リオレウスとリオレイアを相手にするんだから、二匹いて当たり前だよ。」

「分かってますよ! 分かってますけど!」

「と、とにかく行きましょ! 時間はいつもと同じなんだから時間切れが怖いわ。」

「そ…そうだな。」

「じゃ、支給品を取って、急ごう。」

「は、はい!」

 狩りのルールで決まっている時間内に、二匹の飛竜を倒さなければならないのだ。とにかく時間が惜しい。

 三人は急いで一匹目のところへ向かった。

 近場にいたのは、リオレウスだった。

 村長クエストのリオレウスであるため、サイトとルイズが初めて遭遇したリオレウスより小型ではあるが、やはりまだその姿を見ると身震いしてしまう。

 学院の生徒達や教師達をその牙で、その爪で引き裂き食らった姿は、忘れられるわけがない。

「落ち着け…。俺達は何度もアイツを倒してんだ…。できる…。できるはずだ!」

「サイト…。」

「行こうぜ。ルイズ。」

「ええ!」

 二人は、リオレウスを倒すために駆けだした。

 リオレウスが早々に、サイトとルイズの存在に気づいて、バインドボイスを放った。

 まだ距離があったため、耳はやられなかった。

 バインドボイスが終わると同時に、サイトがリオレウスの顔の下に入り込み、下から首を切りつけた。

 リオレウスがグルンッと身体を回し、サイトを尻尾でなぎ払った。

 サイトは、地面を転がされるが、なんとか起き上がり再びリオレウスに切り掛かった。

 その時、リオレウスが猛ダッシュによる体当たりをしてきたため、サイトは轢かれた。

「サイト…!」

 ルイズは、サイトが焦っていて冷静さを失っていることに気づいた。

「サイト! 焦っちゃダメ! 時間内にしなきゃいけないけど、冷静になって!」

「うるせぇ! 分かって…。グハァ!」

「サイト!」

 分かってると言いながら、リオレウスに翻弄されているサイト。

 サイトは、吐血し、膝をつく。

 ルイズは、このままではクエスト達成以前にサイトが死ぬと判断した。

 そして彼女は、リオレウスの気をこちらに引くため、ライトボウガンを撃ちまくった。

 狙い通り、リオレウスは、ルイズの方を見て、向かってきた。

「る、いず…!?」

「さあ、こっちよ! こっちへ来なさい!」

 手招きするルイズに反応してか、リオレウスが猛ダッシュによる体当たりをしかけてきた。

 ルイズは、横に逃げる。

 そして地面を滑るようにこけるリオレウスに、素早くライトボウガンを向けて撃つ。

 体制を整えルイズの方を向いたリオレウスが口をパカッと開けて、火球を吐いた。

 ルイズは、ライトボウガンを抱えたまま横に走り、ギリギリで避けた。

 そして、また撃つ。

 攻撃を避ける。撃つ。

 それを何度も繰り返した。

 やがてリオレウスが宙を飛んだ。そして…。

「ルイズ! リオレウスの下へ行くんだ!」

「えっ?」

 セエが叫ぶが遅く、ルイズの身体にリオレウスの後ろ足の爪が容赦なく刺さった。

「あ…が…!」

 強烈な攻撃に加え、強力な毒を食らい、ルイズは、両膝、両手を地面についた。

 口から血があふれそうになるが、こらえたルイズは、無理矢理に解毒薬を飲み、立ち上がった。

 いまだ宙を浮いているリオレウスに向け、ライトボウガンの照準を向けて撃ちまくった。

 やがて地に降りたリオレウスが足を引きずり、飛び去っていった。

「次は…巣!」

「そうだよ。サイト、立ち上がられる?」

「なんとか…。」

「急ごう。巣に行かれたら、寝て回復される。」

「分かってますって!」

 サイトとルイズは、回復薬グレートを飲んで回復し、巣へ急いだ。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 しかし、巣の手前のエリアに、接近するターゲットマークをサイトは感知した。

「リオレイア!?」

 すると、リオレイアが空から舞い降りてきた。

 舞い降りる途中でこちらの存在に気づいたリオレイアのターゲットマークの色が一瞬で赤く染まった。

「無視だ!」

「で、でも…。」

「今はリオレウスを優先だ!」

「分かりました!」

 三人は、リオレイアを無視して巣へ急いだ。

 リオレイアが攻撃を仕掛けてくるが、なんとか避けて、高台を登り、巣に入った。

 巣の中には相変わらずランポス達がいて、それを掃討する。

 そして、グーグー寝ているリオレウスを切りつけて起こす。

 起こされたリオレウスがバインドボイスを放つ。耳をやられるが、すぐに体制を整え噛みつき攻撃を盾で防ぐ。

 サイトが切りまくり、ルイズが撃つ。

 やがて、リオレウスが絶命した。

「や、やった!」

「まずいな…。」

「えっ?」

「時間がもう半分以下だ…。これでリオレイアを狩れるかどうか…。」

「や…やってみないと分からないわ!」

「そ、そうですよ! 諦めるのは早いです!」

「…うん、そうだな…。よし、リオレウスの剥ぎ取りをしたら、リオレイアを倒そう。」

 時間は惜しいが、素材も惜しいので倒したリオレウスから剥ぎ取りをしっかりしてから、リオレイア討伐に挑むことになった。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 巣を出ると、リオレイアがいた。

 リオレウスと違い、リオレイアは、あまり移動しない性質があるのだ。

 まだ巣に通じる高台にいるのだが、リオレイアは、まだ気づいていない。

「時間が無いぞ。」

「分かってます! 行こう、ルイズ!」

「今度は冷静になってね!」

「分かってる!」

 サイトとルイズは、高台から飛び降り、リオレイアの方へ向かった。

 リオレイアは、すぐに振り向きバインドボイスを放つ。

 サイトが耳をやられた直後、一歩下がったリオレイアがサマーソルト尻尾攻撃を行った。

「グハァ!」

「サイト!」

 大ダメージに加え、毒を食らいながらサイトはその攻撃で吹っ飛んだ。

 リオレイアがサイトに追撃しようと口を開けようとしたので、ルイズは慌ててライトボウガンを撃ちまくり、自分に注意を引こうとした。

 顔に命中し、リオレイアが煩わしそうに首を振る。その隙にサイトは解毒薬を飲み、リオレイアから離れた。

 リオレイアは、サイトが逃げた方向に身体の向きを変え、猛ダッシュした。

「こっち来なさいよ!」

 怪我をしているサイトからリオレイアを離れさせようと、ルイズが必死に弾を撃つが、リオレイアは、無視している。

 やがて逃げ回っていたサイトが怪我の痛みによって足をもつれさせてこけた。

 リオレイアが口をパカッと開け、火球を吐いた。

 ルイズが悲鳴を上げかけた、その時。

 いつの間にかセエがサイトの傍に来ていて、大剣を盾にして火球を防いだ。

「セエさん!」

「時間切れだ!」

 時間切れを告げる音が聞こえ、少しして迎えのアイルー達が来てリオレイアを牽制しつつ、セエ達を乗せるための荷車を引いてきた。

「ま、まだ…。」

「ルールは、ルールだ。帰ろう。」

「…クソッ!」

 サイトは、悔しさをにじませ、足を引きずりながら荷車に乗り、セエもルイズも乗って撤退した。

 

 

 

 一対の火竜を狩るクエストは、失敗の終わったのだった…。




二匹同時の狩りは、時間との勝負ですよね…。
時間切れで負けたことが何回かありました。

サイトとルイズは、セエと違って、武器の都合上、一撃のダメージ量が少ないので余計に時間がかかってしまう。
この問題を解決させるには……、どうしよう…。


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第三十四話  双剣を作ろう

今回短め。

サイトの武器の変更。

片手剣じゃそろそろ限界を感じたので。


 サイトは、セエの家の庭でメチャクチャ落ち込んでいた。

「いつまで落ち込んでるにゃ?」

「うるせぇよ…。」

 庭で洗濯物を干しているトウマに言われ、サイトは弱々しく答えた。

「落ち込んでても、結果は出ないにゃよ?」

「…うるせぇ。」

「娘っこにゃんか、農園で畑を見に行ったりしてるにゃのに、おまえときたら…。」

「うるせぇ、って言ってんだろ!」

「叫ぶ元気があるにゃら、鍛錬でもすればいいにゃ。大剣にゃり、ハンマーにゃりを振れればだいぶ違うにゃよ?」

「あー! 分かったよ分かった! 筋トレすりゃいんだろぅが!」

「身体痛めない程度に頑張るにゃよ~。」

 ヤケクソで立ち上がり、筋力トレーニングを始めたサイトに、トウマは洗濯籠を抱えて家に戻りながらそう言ったのだった。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

「サイト。武器を変えてみる気がある?」

「はい?」

 筋トレをした後、水浴びをしてから着替えたサイトに、セエがいきなりそう言った。

「武器ったって…。俺、セエさんみたいに…。」

「大剣じゃない。もちろんハンマーでもないし、ランスでもない。」

「つまり?」

「双剣を使ってみる気はある?」

「そうけん…ですか?」

 言葉通り、二本の剣のことである。

「サイトの腕力じゃ、大剣は無理だ。だけど、双剣は、片手剣より軽い。」

「でも盾はないですよね?」

「盾は無いけど、攻撃スピードは、最速だ。総合して与えられる攻撃力が高い。」

「!」

「たぶん…、片手剣より、いけるんじゃないかな?」

「そういえば、セエさんも、双剣を使うんですよね?」

「うん。そうだけど?」

「…特訓、お願いできますか!?」

「えっ? いいけど。」

「お願いします!」

 サイトは、光明が見えたと目を輝かせて頭を下げた。

 

 この日から双剣を使うための特訓が始まり、ルイズは、サイトが元気を取り戻したことを喜んだ。

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 セエとサイトは、武器屋の前で悩んでいた。

「…ドスネイルを作るか、デュアルトマホークを作るか…。」

「どっちが強いですか?」

「ドスネイルの方が、ちょっとだけ強い。問題があるとしたら…。」

「なんです?」

「火竜の翼膜とアルビノエキスがいるってことかな。」

「火竜ってことは…。」

「…リオレウス。」

「アルビノエキス…。」

「フルフルだ。」

「じゃあ、デュアルトマホークで…。」

「でも斬れ味が悪いんだよ。」

「そうっすねぇ。斬れ味で選ぶんなら、ドスネイルがおすすめですよ?」

 店主もそうおすすめしてきた。

 斬れ味の良し悪しは、飛竜種の鱗や甲殻、皮に攻撃を当てたとき弾かれるかどうかが別れてくる。

 なお、デュアルトマホークが、斬れ味最大黄色で、ドスネイルが最大緑だ。

 赤→オレンジ→黄色→緑→青→白の順に斬れ味が良くなっていく。

「結局のところ、斬れ味がの良し味が与えられるダメージ量にも影響してくるから…。」

「じゃあ…、ドスネイルを作ります。」

「リオレウスを狩ることになるけど、だいじょうぶ?」

「……二匹相手にするよりはマシっすよ。」

「それもそうか。サイトとルイズは、もうリオレウス単体なら村長クエストで倒せるようなったしな。」

「…はい。」

「? 元気ないね?」

「えっ…、あ…なんでもないです。」

 空気が読めないセエは、首を傾げたのだった。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 その夜。

「なあ、ルイズ…。」

「なに?」

 セエが寝静まった頃、マットの上でルイズと一緒に寝ていたサイトがルイズに話しかけた。

「俺、双剣を使おうと思うんだ。」

「そういえば、特訓してたわね。それで?」

「それで…双剣を作るんだけどさ…。」

「なに?」

「リオレウス…と、フルフルを何回か狩らないといけないんだ。」

「…えっ?」

「あー、やっぱ、イヤだよな?」

「で…でででで、でも武器を作るんだし…、が、我慢するわよ!」

「ごめん…ルイズ。」

「謝らないで。これは必要なことなんだから。」

「ルイズ…。」

「サイト…、私は、だいじょうぶよ。」

「ありがとう…。」

「ねえ、サイト。」

「ん? なんだ?」

「最近…その…。」

「あ…。」

 モジモジとしているルイズの様子にサイトは、頬を赤らめた。

 キスのおねだりである。

 サイトは、ルイズの顎を指で持ち上げ、触れるだけのキスをした。

「…もっと……。」

「セエさんが隣にいるんだし…。」

「だいじょうぶよ。ほら、熟睡してるじゃない。」

「あーもう…、甘えん坊だなぁ、俺のご主人様は。」

「悪かった?」

「むしろ、嬉しいよ。」

 そして、二人は深くキスを交わした。

 

 

「……仲良いね…。」

 

 サイトとルイズの方に背中を向けたまま寝ていたセエだったが、ふと目が覚めて、全部、聞いていた。そして、二人に聞こえない小さな声でそう呟いたのだった。




双剣で、ラオシャンロン倒してる動画とかあったので、双剣は相当な攻撃力(ダメージ量)を持ってると思ったので。

最後の方、本当は、空気読まずにセエが、借家を借りるか?っと言わせようと思ってましたが、トウマとのやりとりがなくなるので無しにしました。

次回は、ドスネイルを作るための素材集めの予定。


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第三十五話  フルフルを捕まえよう

アルビノエキスを手に入れるため、比較的手に入りやすいフルフル捕獲クエストに挑む回。

書くのがちょっと億劫で色々と省いてしまった…。


 アルビノエキスをほぼ確実に手に入れる方法として、フルフルの捕獲クエストをしようということになった。

 入念な準備を整え、アイルーキッチンでしっかりと食事も摂った。

「ま…、触らないだけいいわ。」

「アイツ(フルフル)の剥ぎ取りしてねーくせに何言ってんだよ。」

「そうだったかしら?」

「そうだぜ!」

 とぼけるルイズに、サイトが軽く怒った。

「二人とも。」

 そんな二人をセエが窘めた。

「では、フルフル捕獲クエストをするのじゃな?」

「はい。アルビノエキスを8つ必要でして。」

「ふむ。では、頑張りなさい。」

「二人とも。行くよ。」

「は、はい!」

 三人は、フルフル捕獲のため、出発した。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 捕獲クエストは、討伐クエストより繊細で難しい。

 それは、以前やったリオレウス捕獲クエストで実感したつもりだが…。

「飛竜種によっては、分かりにくいんだよね。」

「イャンクックみたいに弱ってるのが分かるのがいいんですけど。」

 イャンクックは、分かりやすい。弱るとエリマキのような耳を畳むからだ。

「まあ、弱ってくると攻撃すると怒りやすくなるから、それを目安にするといいかも。」

「目安あるじゃん。」

「例え怒りやすくなったとはいえ、捕獲できるほど弱ってるとは限らないから、そこの加減が難しいんだ。攻撃しすぎれば、捕獲対象が死んでしまうし。」

「このクエストでアルビノエキスってどれだけ貰えるんです?」

「運が良ければ、二つとか。無いとこもあるけど。」

「つまり、六匹、八匹は捕まえないといけないってことですか?」

「うん。そうだね。」

「うひゃぁ!」

 あの不気味な飛竜を何度も相手にしなければならないと聞いて、サイトとルイズは、悲鳴を上げた。

「まあ、とりあえず行こう。支給品を忘れないようにね。」

 

 三人は、支給品を取って、キャンプ地から出発したのだった。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 フルフル捕獲は、だいぶ前にセエが一人でやったのを見ている。

 だが今回は、サイトとルイズがやるのだ。

 沼地に生息するフルフルは、相変わらず、地図でいうと右下に潜んでおり、自分達が来ると途端にエリアを移動する。

「変な習性ですよね…。」

「こうしないとこのクエストのフルフルは、動かないからなぁ。」

「うわ、地味に面倒。」

「これから先…、アルビノエキスためにフルフルを何度も捕まえることになると思うよ。俺なんて、すごく見飽きたもの。」

「イヤーー!」

「嫌がってもダメ。」

 嫌がるルイズに、セエはヤレヤレといった様子で言った。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 自動マーキングスキルでフルフルを追っていくと、ゲネポスとイーオスがいるエリアに来た。

 そこにフルフルが飛んできて、沼地のドロの上に舞い降りた。

「カオスだ!」

 毒、麻痺、電気の大乱闘だ。

 アルビノエキスためとはいえ、ここに乱入したくないっというのが、サイトとルイズの本音だった。

「? 普通だろ?」

「セエさん、感覚崩壊してるっすね!」

「そう? まあ、とりあえず、時間もあるから、さっさと行こうか。」

 セエが笑顔でフルフル(※ゲネポスとイーオスが周りにいっぱいいる)を指さすので、サイトとルイズは、泣きたくなった。

 しかし、ここで躓いていてはいられないので、仕方なく武器を抜いてフルフルとゲネポスとイーオスが乱闘している中に走って行った。

 ゲネポス達とイーオス達が新たな乱入者であるサイトとルイズを威嚇する。

 フルフルもこちらの存在に気づいた。そして、電気ブレスを吐く動作に入った。

 サイトとルイズは、左右に分かれて電気ブレスを避けた。電気ブレスの線上にいたゲネポスとイーオスが感電し、倒れる。

 サイトが片手剣でフルフルの横腹を切りつける。するとフルフルは、放電するため身体に電気を溜めだしたので、サイトはすぐにフルフルから離れた。

 放電によってフルフルの傍にいたゲネポスとイーオスがダメージを受けた。

 フルフルが凄まじい音量のおぞましい鳴き声をあげた。その範囲は広く、離れていたルイズまで耳を塞ぐ羽目になった。

 フルフルは、耳をやられている隙にサイトの方に振り向き、電気ブレスを吐く動作に移った。

「やべ…!」

 キンキンする耳をさすりながらサイトはギリギリで電気ブレスを避けた。

 そして、攻撃。ルイズも離れた位置から弾を撃つ。

 やがてフルフルが怒るようになる。

 だが怒りの感覚がまだ長いので、慎重に、だが急いで攻撃を繰り返した。

 そしてフルフルが足を引きずりだして、飛び去っていった。

「次は、巣だ!」

「どこだったかしら?」

「自動マーキングスキルで追えばいいよ。」

 自動マーキングスキルで、フルフルが飛んでいく先を読み、先回りした。

 洞窟は猛烈に寒く、急いでホットドリンクを飲む。

「あとは、来るまで待つだけ…。」

「これは、捕獲クエストだよ。」

「あ…。」

 言われて思い出した二人は、急いで落とし穴の準備をした。

 落とし穴が起動し、湿った洞窟の地面の上に広がる。

 そこへ、洞窟の穴からフルフルが天井を這いながらやってきた。そして天井から地上に落ちたとき、そこにあった落とし穴にはまった。

「よし!」

「えいえい!」

 穴から出る前に、捕獲用麻酔玉を投げつける。

 二個投げつけると、フルフルは、ビクビクと痙攣して、そして眠った。

 クエスト終了の音が鳴り、クエストの達成がなった。

「やったーー!」

「今回は簡単だったわね。」

「さ、報酬をもらって帰ろうか。」

 捕獲対象を運搬する者達が来て、フルフルを運び出していき、セエ達はセエ達で帰るための荷車に乗っていった。

 

 報酬品の中に、ちゃんとアルビノエキスがあって三人は喜び合ったが…。

「一個か…。」

「あと七匹。頑張ろうか!」

「ひええええ!」

 

 その後、フルフル捕獲クエストを、計六回(アルビノエキスが一回二個出た)やったのだった。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 ドスネイルを作るのに必要な材料は、火竜の翼膜。四個。

 これは、リオレウスからしか取れない。

 なので必然的に村長クエストのリオレウス狩りに行くことになる。

「翼膜は、捕獲クエストでも取れるけどね。」

「どっちが確実ですか?」

「どちらが確実かは分からない。好きな方を選ぶしかないね。」

「うーん…。」

 捕獲クエストは、前に失敗していることもあり、あまり気が進まない。

 残るキークエストである、一対の巨影に挑むには、リオレウスの討伐の仕方を身体に叩き込むのがいいかもしれない。

 そう考えたサイトは、討伐クエストを選んだ。

 リオレウスを前にすると、どうしてもあの時…、魔法学院での惨劇が過ぎり、腰が引けそうになるが堪え、リオレウスを狩り続けた。

 そうしてようやく、四つの翼膜を手に入れた。

 

 材料が揃い、武器屋でドスネイルを注文しようと思ったら…。

 

「あ、ドスランポスの爪がない。」

 

 ……ことに気づいたて、出鼻をくじかれたのだった。

 

 なので、この後、ドスランポスを狩りまくり、ドスランポスの爪を六つ手に入れた。

 そして、ようやく、ついに、双剣ドスネイルを制作することができたのだった。

 

「これが、ドスネイル?」

「そう。」

 名前の通り、ドスランポスの爪によく似た見た目の双剣。

「目的の武器も手に入ったし、試しに何かのクエストで双剣を試してみるってのもアリだよ。」

「ぶっつけ本番じゃマズいですもんね。」

 

 その後、ドスランポスを狩るクエストで試し切りをして、双剣特有の鬼人化と、乱舞のやり方を覚え、サイトは双剣のコツをなんとか掴んだ。




フルフルが生理的に受け付けないルイズ。
可愛いという意見もあるフルフルだけど、リアルで見たらきっととてつもなく気持ち悪いと思うのです。体表もたぶん、ネッチョリしてると思うので、触るのも嫌な感じ。

双剣ドスネイルを手に入れたサイト。これからは、片手剣と双剣を使い分けることになると思う。
様々な飛竜種に対抗するため、もっと種類を増やさなければ。


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第三十六話  一対の火竜を狩ろう その2

一対の巨影(村長)、リベンジ。

双剣に変えたので、片手剣で足りなかった攻撃力が格段に上がったかと思う。


 

「武器は?」

「持ちました!」

「回復薬は?」

「グレートも含めて揃えました!」

「鬼人薬や硬化薬は?」

「グレート系全部揃えました!」

「閃光玉は?」

「持ちました! 予備のためを作るための素材も持ちました!」

「よし! アイルーキッチンでご飯食べてから出発だ!」

「はい!」

 そして、アイルーキッチンでしっかりと食事を摂って、三人は、残るキークエストである一対の巨影をクリアするため、出発した。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 森と丘に到着し、支給品を取り、どちらかは分からないが、近場にいる飛竜のマークがあるところへ向かった。

「! リオレイア!」

 近場のエリアにいたのは、リオレイアだった。

 エリア内にいたアプトノス達が一斉に逃げ出している。

 リオレイアは、そんなこと気にせず、ボーッとしているようだった。

 何もせずボーッとしているだけの相手を殺すのは、なんとなく気が引ける。

「時間が無いから急がないと。リオレウスもいるんだ。」

「…はい。行こう、ルイズ!」

「ええ!」

 二人は、武器を抜いて走った。

 リオレイアがその足音に気づいて振り向く。

 そしてバインドボイスを放った。

 近場まで来ていたので耳をやられる。

 バインドボイスを放ち終えたリオレイアが、ブンッと尻尾を振り、耳を押さえているサイトをなぎ払った。

「ぐっ!」

 サイトは、痛みを堪え、転がりながら体勢を整え立ち上がると双剣を構えてリオレイアの尻尾の付け根を狙って切りつけた。

 試し切りはしたが、片手剣以上に軽い剣の感触を感じながら、サイトは、凄まじいスピードで剣を振り続け、リオレイアを切りつけ続けた。

 ルイズも、離れた位置から弾を撃つ。

 リオレイアがルイズの方を向き、口をパカッと開けた。

 火球が来る!っと感じたルイズは、ライトボウガンを下げ、横に逃げた。その直後、ルイズがいた場所を火球が通り過ぎた。

「おおおおおおおおおおおおおおおお!」

 サイトは、鬼人化を使い、リオレイアの腹の下で乱舞を行った。

「サイト! スタミナに気をつけろ!」

 セエが声をかける。

 やがてrリオレイアの尻尾が切断された。

 怒り状態になったリオレイアは、乱舞を終えてスタミナが切れたサイトに向かって牙を向け、その左肩に噛みついた。

「サイト!」

 ルイズが急いでリオレイアの顔を狙って弾を撃ちまくった。

 数発当たり、リオレイアは、サイトを離して首を振った。

 ドスネイルの片方を持ったまま、出血する左肩を押さえながらリオレイアから離れていくサイトは、自動マーキングスキルでもう一つの飛竜のマークがこちらに移動してくるのを見た。

「マズい!」

 リオレウスが来るっと一瞬焦るが、ふと我に返る。

 思い出されるのは、セエがやった挟撃のイャンクック(青)でのセエの戦い方だ。

 一匹より、二匹の方が戦いやすい…。なぜなら二匹の飛竜は、協力しているわけではないからだ。

 今回のクエストの雄火竜リオレウスと、雌火竜リオレイア。おそらく番ではないだろう。

 やがてリオレウスがバサバサと翼を羽ばたかせながら舞い降りてきた。

 リオレウスは、すぐにこちらの存在を認識し、攻撃してくる。

 ……リオレイアに攻撃が当たるのを無視して。

「こっちだ!」

 サイトは、回復薬グレートを飲みながらリオレウスを挑発し、誘導した。

 うまく、リオレイアに攻撃が当たるように。

 サイトが先にやった攻撃ダメージもあり、やがてリオレイアが足を引きずって飛び去っていった。

「ルイズ! リオレイアを仕留めに行くぞ!」

「待って!」

 逃げ去っていったリオレイアを追い、襲ってくるリオレウスを無視して巣へ急いだ。

 巣に行くと、リオレイアがぐーすか寝ていた。

「今度こそ…!」

 怨みはないが、さらなる高みに行くためだと覚悟を決めたサイトが剣をリオレイアに振り下ろして叩き起こした。

 起き上がったリオレイアは、途端に怒り状態になり、容赦なくサイトに襲いかかる。

 怒り状態の攻撃を避けながら、時に食らいながら、時に閃光玉を投げつけて目を回させながら攻撃を繰り返し、やがてリオレイアは息絶えた。

 時間にして、前回リオレウスだけを仕留めた時よりも早く倒せた。

「すっげぇ…、武器ひとつでここまで変わるんだ…。」

 サイトは、手にしている双剣ドスネイルを見つめてそう呟いた。

「急いで剥ぎ取りをして、残るリオレウスを倒しに行こう。」

「はい!」

「あと、さっき切り取った尻尾の剥ぎ取りも忘れずにね。」

「あ、はい。」

 剥ぎ取りに余念がないセエであった。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 リオレウスは、場所を変え、巣の近くに来ていた。

 リオレイアと違い、リオレウスはしょっちゅうエリアを移動する習性があるのだ。

「急ぐぞ、ルイズ!」

「分かってる!」

 サイトとルイズは、巣の出入り口の高台から飛び降り、リオレウスに向かって行った。

 リオレウスが宙を飛び、火球を放ってきた。

 ルイズは、距離を取り、宙を飛ぶリオレウスに照準を向けて撃った。

 やがて降りてきたリオレウスが猛ダッシュによる体当たりをしてきた。

 サイトは、剣を交差させて防御し、ルイズは、横に逃げてそれを避けた。

 リオレウスがルイズに身体を向けて火球を放った。

 ルイズは、さらに横に逃げて避け、弾を込めて撃つ。

 サイトは、鬼人化し、リオレウスの翼の下に入って乱舞を行った。

 翼を切られ、翼の爪が折れる。

 よろめいたリオレウスは、翼をはためかせ、宙を飛び、そして別のエリアへ移動してしまった。

「追うぞ!」

「ええ!」

 その後、何度もエリアを移動するリオレウスを追い、攻撃を繰り返し、時に攻撃を食らいながらも攻撃の手を緩めず攻め続けた。

 やがてリオレウスが足を引きずって飛び去っていった。

「よっしゃ! 巣だ、巣に行くぞ!」

「分かってるわ!」

 二人は、巣に急ぎ、セエは、順調な状況にほくそ笑んだ。

 リオレウスは、リオレイアの死体の隣で寝ていた。

「おらぁ! 起きろ!」

 サイトが剣を振り下ろし、リオレウスを叩き起こした。

 起きたリオレウスは、怒り状態になり、激しくサイトとルイズを攻め立てた。

「今よ!」

「おおおおおおおおおおおおおおおお!」

 ルイズが閃光玉を投げつけてリオレウスの目を回させた。そしてサイトが鬼人化して乱舞を行った。

 それを何度か繰り返すと、リオレウスは、断末魔の声をあげて息絶えた。

 クエスト終了のファンファーレが鳴り、クエスト達成がなった。

「や…った…。」

「やったわよ、サイト! 私達…、勝ったのよ!」

「ルイズ!」

「サイト!」

「さ、剥ぎ取り剥ぎ取り。」

 抱き合おうとした二人に、セエがいつもの調子で剥ぎ取りを急かしたのだった。

「もう、水を差さないくださいよぉ。」

「?」

 そう言われても、空気が読めないセエは、首を傾げたのだった。

 渋々剥ぎ取りしていて…。

「あ、尻尾忘れてた。」

 リオレイアの切り落とされた尻尾の剥ぎ取りを逃したのだった。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 村に帰ると、村長がニコニコしていた。

「うむ! よくぞやったのう!」

「はい!」

 褒められてサイトとルイズは、喜んだ。

「では、村長。」

「うむ! では、お主らにモノブロスを狩る権利を与える!」

「もの…ブロス?」

「村長クエストでしか狩れない、希少な飛竜種だ。」

「えっ?」

「その飛竜を見事狩ることができれば、お主らを一人前のハンターとして認めよう!」

「本当ですか!?」

「やりましょう、サイト!」

「おう!」

「その前に…、休もう。疲れただろう? 二人とも。」

「あ…。」

「そうね…。なんか…力抜けたかも。」

「ルイズ。」

 言われて緊張の糸が切れたルイズがへたり込んだので、サイトが肩を貸した。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 家に帰ると、甘い良い匂いがした。

「にゃー。お疲れ様ですにゃ。」

「トウマ。」

「疲れたときには甘い物がいいにゃ。今日は腕によりをかけたにゃよ。」

「おおー、美味そう!」

「手を洗って、お祝いにゃ。」

 そして手を洗ってきた三人と、トウマを含めたアイルー達で、モノブロスの狩りの許可が下りたことへのささやかなお祝いをした。

「なんで、モノブロスっていう飛竜が村長さんのクエストだけなんですか?」

「確か…、村長が現役のハンターだった頃にたったひとりで倒したって言われてるんだ。」

「それだけ?」

「あと、住んでる場所が限られてるってのもあるから、乱獲ができないんだと思う。今じゃ村長がココット村の一人前のハンターになるための条件にしてるんだ。」

「じゃあ、集会所のクエストはないってこと?」

「うん。ない。ディアブロスはあるけど。」

「でぃあ…?」

「そのうち戦うことになるよ。」

 そう言ってセエは、お茶をグーッと飲んで、お代わりをトウマに要求した。

「にゃははは、嘗めてかかると痛い目に遭うにゃよ?」

「別に嘗めてなんて…。」

「いいや。お前らは、今、楽観視してるにゃよ。二匹の火竜を倒した余韻がそうさせてるにゃ。」

「モノブロス…強いからなぁ…。」

「えっ…?」

「俺…、何回やられたっけ? ああ…、アイツ(モノブロス)に刺された傷が疼く気がする。」

「…えっ?」

 腹の辺りを摩るセエの姿を見て、サイトとルイズは、顔を見合わせたのだった。

 トウマは、その様子を見て。

「ほらニャ。」

 っと呆れた様子で言ったのだった。




セエは、基本空気が読めない。

モノブロス…、カッコいいけど強いよなぁ…。
角は、折るか、折らないか…。でも素材集めのためには、折らないといけないし…。
あと、白モノブロスも控えているし。
この緊急クエストをクリアしたら、今度はラオシャンロンが待ってるし…。

結構なスピードでキークエストをクリアしてるサイトとルイズですが、あくまでまだ村長クエストなので、まだまだまだまだです。今のままじゃハルケギニアに戻っても返り討ち必須です。
G級クエスト到達と、クリアが当面の目標かな?
でも…、果たして片手剣と双剣とライトボウガンでG級まで上れるのだろうか?
大剣と双剣でGに上った私が言うのも何ですが…。


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第三十七話  モノブロスを狩ろう その1

モノブロス討伐クエスト、第1回目。

まず言っておきます。

失敗します。


 数日間、しっかり休んだ。

「村長さん…。」

「なんじゃ?」

「モノブロスって…、どれくらい強いんですか?」

「……。」

 セエがいない時に、野暮なことをサイトとルイズは、村長に聞いてしまった。

「それは、自分の目で、身体で感じることじゃな。」

「村長さんが、若い頃にたった一人で倒したっていうのはセエさんか聞きました。」

「うむ。そうじゃ。それが、どうした?」

「いや~、あの~。」

「なんじゃ? 言いたいことがあるなら言いなさい。」

「えっと……、セエさんも一人でそのモノブロスを倒してるのに、なんで村長さんが倒したことの方が伝説みたいに語られてるんだろうって…。」

「……。」

 黙ってしまった村長の様子に、二人は、あっ、怒らせてしまったと思った。

「ならば、お主らも越えてみるがよい。」

「えっ?」

「疑問に思うのは自由じゃ。別に怒ったりなんぞせん。」

「は、はあ…。」

「じゃがのう。実力が伴わぬ発言は、控えた方がよいぞ。」

「あ…。」

 それはつまり、二人にそれだけの力が無いということだ。

「モノブロスは、生息区域が限られておる希少な飛竜種じゃ。わしは、わしの若い頃のことを思い、ハンターギルドと連携してハンター達に一人前になるための関門としてモノブロスをわしが発足しておるクエストのみ限定したのじゃ。」

「…どうしてですか?」

「……越えるべき対象があるのと無いとでは、まったく違うのじゃよ。わしは、若い頃の自分自身を後々のハンター達の越えるべき目標のひとつとしたのじゃ。お主らにも目標があるじゃろうが、それはあまりにも大きい。」

 ひとつの世界を救わなければならないという重たすぎる目標……。それがサイトとルイズが背負う、いや背負わされた目標だ。

「その目標を達するためには、小さな目標を一つ一つ…、越えなければならんのじゃ。じゃからこそ、焦るでないぞ?」

「っ…。」

 この世界に来る前の直前の時間に転移は可能であるが、急ぎたい気持ちも強いため、内心では焦っていた二人は図星を突かれた。

「急いで…、それが元で死んでは意味がないのじゃからな。よいな?」

「…はい。」

 サイトとルイズは、俯いて弱々しく返事をした。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 買い物を終えて家に帰ってきたセエは、ズーンっと暗くなっているサイトとルイズを見つけた。

「あれ? 二人ともどうしたの?」

「…いえ…、なんでも…。」

「いや…なんか、暗くないか?」

「あははは、気のせいですよ!」

「そうそう!」

 二人は、無理矢理笑ってそう言い訳をした。

「…うーん。そうならいいけど。」

 セエは首を傾げつつそう納得したのだった。

「あ、そうだ。二人とも、モノブロスの狩りだけど。いつ行く?」

「あ、はい。いつでも行けます。」

「私も。」

「そっか、じゃあ今日中に準備を整えて、明日行こうか。」

「はい。」

「買い物は…、もう俺がついてなくてもいいね。」

「はい、だいじょうぶですよ。」

「もう…二人ともここまで強くなったんだなぁ。」

「セエさん…。」

「俺なんて、何年かかったか分からない。二人は強いよ。」

 セエは、そう言って自虐的に笑った。

 そんなセエの様子に、二人は何も言えなくなった。

 セエは、ずっと一人でハンターをやってきたのだ。その苦労は凄まじいだろう。

 サイトとルイズは、二人だ。きっととても恵まれているのだ。

 

「にゃ? 三人とも、ボーッとして、どうしたにゃ?」

 

 そこへやってきたトウマの声で、三人はハッとした。

「なんでもないよ。」

「そうかにゃ?」

 トウマは、深く追求することなくそう言うと、キッチンに戻っていった。

 トウマがいてくれてよかった…っと、三人は声に出さず同じ事を思ったのだった。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 翌日。予定通りモノブロス討伐クエストに挑むことになった。

 道具も揃え、アイルーキッチンもしっかり利用した。

「うむ。では、行って参れ。」

「はい!」

「じゃあ、行こう。」

 

 三人は、モノブロス討伐クエストのために出発した。

 

 

 砂漠への馬車の中で揺られながら。

「……結局、モノブロスってどんな飛竜なんですか?」

「一言で言えば、一本角。」

「つの?」

「対してディアブロスは、二本角。」

「その違い?」

「生態系も似てると思うし…。攻撃方法もよく似てるんだ。」

「へえ…。」

「なんか…不安より、ワクワク感が湧いてきたわね。」

「ああ、村長さんが昔倒して、それからは専用クエストが出来るくらいの飛竜だからな。」

 そう話し合って笑い合うサイトとルイズを見て、セエは、微笑ましそうにしていた。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 モノブロス。

 別名、一角竜。

 その呼び名の通り、一本の深紅の角を持つ飛竜種。

 生息区域が砂漠と限定されており、さらに人里離れた辺境でしかその姿を目撃されていないため、ココット村の村長がハンターギルドと話し合って、ココット村の一人前のハンターになるための関門として指定された。ゆえに、この竜と戦いたければ、ココット村の村長を通さなければならない。

 発達した角と翼爪で、地中を掘り進むという能力を持つ。

 またすべての者の耳をつんざく大きなバインドボイスや、相手を突き刺し殺すその自慢の一本角、さらに巨体に似合わぬ俊敏性、硬い甲殻と高い体力、どれを取っても飛竜種としては、最高クラスであると言われる。

 なお、縄張り意識故に凶暴ではあるが、食性は、草食。

 

 

「さいこうくらす~~~~!?」

 モノブロスの生息区域である砂漠に到着するまでの間に聞いたモノブロスの話を総合してみて、ルイズとサイトは、声を上げた。

「そう…、モノブロス…強いんだ。俺なんて、腹突かれたよ。」

「よく死ななかったですね!?」

「さすがに迎えの死神が手前まで来てたなぁ…。」

「うわーーー!」

「ま、二人とも。死神が来ない程度に無理せずやろう。」

 そう言って笑うセエに、サイトとルイズは、寒気を覚えた。

「どうしよう…。ワクワク感が一気に不安に変わったわ…。」

「俺も…。」

 二人は、ヒソヒソとそう話し合ったのだった。

「さあ、時間もあるし。行こう。」

 殺されかけた相手(飛竜種)のクエストだというのに、脳天気に振る舞っているセエに、熟練ハンターゆえの価値観(?)の崩壊かと…サイトとルイズは、思ったのだった。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 ああ~、どんな竜なんだと不安がる二人を後ろに、セエが先を進む。

「……サイト。見えてるだろ?」

「…えっ? あ、は、はい!」

「あそこ…。」

「えっ?」

 自動マーキングスキルで見えてるだろと言われ、そしてセエが指さした先は崖の上。

 そこに、尻尾が見えた。

 そして、その尻尾が動く。

 グルンッと崖の上で身体を回転させたその飛竜には、額に長くて大きい立派な深紅の角があった。

 鳴き声を上げながら飛び降りてきたその飛竜には、唇は無く、くちばしのように歯がむき出しになっている。

 飛竜種にしては、発達したごつい翼爪があり、翼というより腕だ。

 頭はまるで恐竜のトリケラトプス系のそれのようになっており、平たい部分がおそらくは耳の役割をしているのであろう。

 そして、全身を覆う甲殻は、いかにも硬そうだ。

「これが…!」

「モノブロス!?」

「二人とも、来るぞ!」

 セエが言った直後、モノブロスが角を前に突き出して突進してきた。

 三人はそれぞれ左右に散開し避けた。

 セエは、いつものように傍観者として徹するため、エリアの端に逃げ、サイトとルイズは、武器を抜いた。

「速い!」

 その巨体からは想像も出来ないスピードであったが、なんとか避けれた。

 サイトが切り掛かろうと接近したとき、モノブロスは、急に地面をその発達したごつい翼爪で掘り出し、あっという間に地中に潜っていった。

「はあ!?」

「サイト! 下から来るぞ!」

「えっ?」

 セエからの言葉に戸惑ったサイトは、周りを急いで見回した。

 そして数秒後、凄まじい勢いでサイトの真下からモノブロスが飛び出し、サイトは、跳ね上げられ、角で脇腹を抉られた。

「ーーーー!?」

 地面に叩き付けられて倒れたサイトは、すぐに立ち上がれなかった。

 立ち上がれないサイトに畳みかけるようにモノブロスが尻尾を振り、サイトはなぎ払われて岩壁に叩き付けられた。

「ぁ…が……は…。」

 サイトは、ズルズルと岩壁に血を付けながら滑り落ちた。

「サイトーーー!」

 ルイズが攻撃をするのを忘れ悲鳴を上げた。

 その悲鳴に反応してか、モノブロスがルイズの方を向き、角を突き出して突進してきた。

 サイトの大怪我を見て、恐慌状態に陥ってしまったルイズは、棒立ちだった。

 そこへセエが、走ってきて、大剣を盾にしてルイズの前に来た。

 しかし突進の勢いを殺しきれず、後ろに弾かれ、ルイズを巻き込んで倒れることになった。

「クエストリタイアだ!」

 セエは、そう叫ぶと、どこからともなく迎えのアイルー達が荷車を引いてきて、モノブロスを牽制しつつ、血だらけで倒れているサイトを荷車に乗せ、セエは、ルイズを抱えて荷車に乗って退却した。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 村に戻るまでに治療を受けたサイトは、腹を包帯でグルグル巻きにされてセエの家に運び込まれた。

 ルイズは、馬車の中でも、家に戻ってきてもサイトの傍で泣いていた。

 セエは、村長のところへ行き、報告した。

「そうか…。失敗したか。」

「とてもじゃないですが、戦える状態ではありませんでした。」

「あの二人は焦っておる。自分の元いた世界を救うという目標のために。」

「……二人は、果たしてその目標を達成することが出来るでしょうか?」

「否…じゃろうな。今のままでは。」

 ふ~っと村長はため息を吐いた。

「俺は、二人の師として…、何も出来ないんでしょうか?」

「お主はしっかりとやっておるよ。」

「そうでしょうか…。」

「二人のためについてておやり。頼る者もなく、異世界へやってきたあの二人には、お主しかおらんのじゃ。」

「……俺が傍にいるだけで、違うのでしょうか?」

「ああ、そうじゃよ。」

「モノブロスは強い…。なら、俺はどう二人を導けば…。」

「よく、考えなさい。」

「そうだ…。集会所クエストだ…。防具が脆弱すぎるんだ。」

 そのため、サイトは、脇腹をモノブロスの角で抉られてしまった。

「けど…、自動マーキングスキルを保ったまま装備を調えるとなると…。集会所に挑むしか…。」

「やるかどうか決めるのは、あの二人じゃ。」

「…分かりました。話してみます。」

 セエはそう言うと、村長に頭を下げてから家に戻った。

 

 家に戻ると、マットの上で荒い呼吸を繰り返しているサイトの手を握っているとルイズがいた。目を真っ赤にして、泣いていた。

「ルイズ…。」

「…セエ…さん…。サイトが…サイトが…。」

「だいじょうぶだ。明日には治る。」

「本当に?」

「ああ。」

「………私達…やっぱり、無理なのかも…。」

「えっ?」

「だって、最高ランクの飛竜種にすら、こんな様で!」

「誰も…初めから強いわけじゃないよ?」

「でも…。」

「焦りすぎだよ。」

「っ…。」

「焦っても結果は逃げていくだけだ。それを忘れちゃいけないよ。いいね?」

「……うん。」

「それでなんだけど…。サイトの装備を新調しないといけないかもしれないな。」

「新調ったって…。」

「自動マーキングスキルを保ちつつ、防具のグレートをあげる…。俺だってそうしたんだ。同じ事ができないはずがない。」

「セエさん。」

「サイトが目を覚ましたら、どうするか決めよう。」

「…はい。」

 ルイズは、頷いた。




筆者は、モノブロスには、ディアブロスと並んで、メッチャやられましたとも。
つえーもん…、ほんと…。岩に角刺さらないとまともに攻撃できなかったなぁ…。
下からぶっ飛ばされ、横から尻尾でなぎ払われ…、もうねぇ。

次回は、サイトの装備をパワーアップさせる予定。今のままじゃ、アイルーキッチンや硬化薬グレートを使っても厳しいかも。


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第三十八話  防具を新調しよう その2

防具の新調は、これから何度もやると思います。

今回は、サイトの装備を変える回。
そして感想欄で頂いた案を参考に、ルイズが自動マーキングスキルを引き継ぎます。


 サイトは、翌日目を覚ました。

 起き上がろうとして、モノブロスにやられた脇腹の痛みに悶絶した。

「サイト! 目が覚めたのね!」

「にゃ、急に起きると傷が開くニャよ?」

「イデデデデ…。」

「ほら、水にゃ。」

 急須みたいな入れ物を持ってきたトウマが痛みに苦しんでいるサイトの口に水を入れて飲ませた。

「はあ…。あんがと…トウマ…。」

「こりゃ、今日も一日安静にゃね。」

「サイト。起きたか?」

 そこへセエが家に入ってきた。

「話、できる?」

「…な、なんとか…。」

「君の防具を新調しよう。」

「えっ?」

「今の装備じゃ、そのうち…いや確実に死んでしまう。だから装備の質を上げるんだ。」

「で…でも…。」

「そこでなんだけど…。」

「えっ、私?」

「ルイズが自動マーキングスキルを持つのはどう?」

「えっ?」

 セエに指さされて、ルイズは戸惑った。

「ルイズは、遠距離攻撃だし、主に攻撃するのはサイトだ。なら、サイトは、スキルを無視して防御力重視とか、戦闘向きスキルの装備をして、ルイズが竜を見ればいいんじゃないかな?」

「私が?」

「ルイズ…。」

 寝ているサイトからの視線を受け、ルイズはサイトを見た。

「…サイト。私がやろうか?」

「いいのか?」

「竜の位置を見るだけでしょ? それくらいならできるわよ。」

「じゃあ、決まりだね。サイトの防具をルイズのサイズに変えてもらって…、あ、その前にサイトの次の装備を決めないと。」

 というわけで、ルイズが自動マーキングスキルを担当することになり、翌日サイトが動けるようなってから、武器・防具屋に行って、サイトの新しい防具を決めることにした。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 セエは、悩んでいた。

「話は聞きやしたぜ。そっちの坊ちゃんの新しい防具をでしょ?」

「坊ちゃんじゃない。サイトです。」

「おう、悪かった。サイトの坊ちゃん。」

「坊ちゃんは余計ですって。」

「……機能性で選ぶなら…、リオ系…かな?」

「りお…ってことは…。」

「リオレウスを素材にした防具だ。…それもただのリオレウスじゃない。蒼いリオレウスのだ。」

「リオソウルっすね。」

「りおそうる…、なんかカッコいい響き。」

「だろ? 格好良さも必要だと思うんだ。テンション上げるために。」

「しかもリオソウル系なら、飛竜種のバインドボイスから身を守れますしね。」

「えっ? そうなのか?」

「聴覚保護。プラス10で、耳栓。プラス15で高級耳栓になりやすぜ。」

「大声で怯まなくなるのはかなり戦闘で有利になると思うんだ。」

「なるほど!」

 バインドボイスには、何度もやられてきた。あれで隙が出来て攻撃されることも少なくなかった。それが防げるならとてつもないことだ。

「防御力もそこそこ高いですし。いいんじゃないっすか?」

「そこそこ?」

「普通のリオソウルならそうだけど、それ以上となると…、素材が…。」

 なにせリオソウルの上位は、ハードでなければ手に入らない素材でなければ作れないのだ。(例、蒼火竜の逆鱗)

 ちなみに、リオソウルの聴覚保護スキルは、普通のリオソウルだけである。上位にはない。

「…分かりました。リオソウルにします。」

「蒼いリオレウスは、村長クエストで狩れる。装備が揃ったら、ルイズに、サイトの今の装備を渡そう。」

「はい。」

 サイトの新しい装備は決まった。

 

 蒼いリオレウスを狩るため、準備を整えることにした。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 蒼いリオレウスを狩ると聞いて、ルイズは顔をしかめた。

 そんなルイズの様子にサイトは気づいた。

 蒼いリオレウスは、ルイズの家族を傷つけた敵だ。

 同じ竜ではないにしろ、気は引けるだろう。

 送迎の馬車の中でも、ルイズはずっと眉を寄せていた。

「せ、セエさん。」

「ん? なに?」

「な、何匹くらい狩ればいいんですかね?」

「……頑張ろうか。」

「えー…。」

 空気が悪いので話を変えようとしたが、かえって空気が悪くなった。

「そうだなぁ…。まず、翼がいる。翼膜がたくさんいる。鱗もたくさんいる…。あれ? あ…。」

 ブツブツと言っていたセエが急に青くなった。

「どうしたんです?」

「蒼リオレウスの翼…。村長クエストのさらに上か、集会所のハードかそれ以上じゃないと取れないんだ。」

「…えっ?」

「…どうする? サイト。」

「どうするったって…。」

「……集会所…上がってみる気、ある?」

「そ、それって…、モノブロス討伐より大変なんじゃ…。」

「選ぶしかない。モノブロス討伐を優先するか。集会所クエストに挑むか。」

「……G級を目指すなら…。」

 するとずっと黙っていたルイズが口を開いた。

「いずれは、挑むんでしょ?」

「そ、そうだけど…。」

「だったら、やるっきゃないじゃない!」

「ルイズ…。ああ、そうだな。」

「ま…まあ、とりあえず、蒼リオレウスを倒してから考えよう。翼が必要なことを忘れてた俺のミスもあるし、どっちにしても素材がいる。」

 セエは、ズーンっと落ち込んだ。

 今更引き返すことも出来ないので、蒼リオレウスを倒すことにしたのだった。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 村長クエストの蒼リオレウスは、火山にいる。

「あぢぃぃぃぃ!」

「ほら、クーラードリンク。」

 溶岩がドロドロと川のように流れている場所におり、この灼熱の環境だというのに平然としている。

 それがムカついたのか、ルイズは蒼リオレウスを見つけるなりライトボウガンを構えた。

 サイトが止めるよりも早く、ルイズが撃ったため、蒼リオレウスは、すぐにこちらに気がつき、吠えた。

 そして宙に浮き、宙から火球を吐いてきた。

 ドカンドカン!っと地面に命中する火球を避け、サイトは、蒼リオレウスの真下に行った。

 真下に行けば、空中蹴りをしてこない。また火球も届かないというのは、普通のリオレウスから学んだ。

「サイト! 蒼いリオレウスは、空中戦をよくやるんだ!」

「そうなんすか!?」

 つまり地上戦をあまり好まないらしい。

 蒼リオレウスがバサバサと羽ばたきながら降りてきた。

 その風圧を腕で防ぎ、サイトは、双剣を抜いて蒼リオレウスの腹を切りまくった。

 蒼リオレウスがグルンッと身体を回転させてサイトをなぎ払おうとする。それを身をかがめて防ぎつつ腹を切っていく。

 蒼リオレウスがまた飛んだ。

 そして、ぐおっと宙で何やら悔しそうに鳴く。空中からの後ろ足による蹴りを行えなかった場合はこうなる。

 空中からの蹴りを行えなかった蒼リオレウスは、舞い降りてきた。

 すると、ガガガガっとルイズからの乱射が命中し、蒼リオレウスがルイズの方を向く。

「こっちを忘れんなよ!」

 サイトが連続で蒼リオレウスの尻尾を切りつけた。そして尻尾が切断された。

 よろめいた蒼リオレウスが、尻尾を振るが、尻尾が短くなっているためあまりダメージにならない。

「やっぱり…、村長クエストの蒼リオレウスは、弱いんだな…。」

 セエは、エリアの端でサイトとルイズの戦いを見つめながらそんなことを呟いたのだった。

 やがて、蒼リオレウスが絶命した。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 村に帰る途中と、村に戻ってからもセエは、浮かない顔をしていた。

「セエさん?」

「……ん?」

「だいじょうぶですか?」

「あ…なんでもないよ。」

「本当に?」

 サイトとルイズが心配した。

「そうだ。サイト。」

「はい?」

 するとセエがアイテムボックスから、ある物を取り出した。

「これ、あげる。」

「こ、これは!」

「蒼火竜の翼だ。」

「えっ!? 上のクエストでしか手に入らない…、ものを!? どうしてですか!」

「……もうすぐ一人前になることへのお祝いだと思って受け取って。」

「貰えませんよ! 貴重じゃないんですか!?」

「あと三つあるからだいじょうぶ。」

「で、でも…。」

「無くさないようにね。」

 そう言って蒼火竜の翼を押しつけ、どこか切なそうに笑うセエに、サイトとルイズは、お互いの顔を見合わせた。

 そしてセエを見て、蒼火竜の翼を受け取り、ありがとうございますっとお礼を言って頭を下げた。

 

 その後、何度か蒼リオレウスを狩り続け、ついにリオソウル系の装備を調えることに成功した。

 

「どう?」

「うん、すごくいいと思うわ。」

「おおーー! 俺、今すっげーカッコいい!」

 とりあえず着替えてみて、全身蒼い鎧に包まれたサイト。そして姿見の鏡を見て喜んだ。

 モンスター由来の防具は、見た目に反して、軽いため、サイトでも問題なく走って動くことが出来る。

「じゃあ、サイトが着けてた装備(※自動マーキングスキル発動装備)を店に行ってルイズのサイズにしてもらおう。」

「…お下がりをもらうなんてちー姉様からもらって以来かも。」

「俺ので悪かったな。」

「別に悪いなんて言ってないわよ。」

 そして、サイトからのお下がりである装備を身につけ、ルイズが自動マーキングスキルを身につけたのだった。




自称弱小ハンターのセエにとって、どんどん次の段階へ進んでいく二人の姿は、ちょっと複雑な思いがあるけど、できる限り出さないようしている…つもり。(つい顔などに出てしまう)

セエが蒼火竜の翼をあげたのは…、単に筆者がリオソウル装備に翼が必要なのを忘れてて、それでいてそれを手に入れるクエストが上のクエストだったからです…。

これから先は、ルイズが自動マーキングスキルで竜の位置を探知し、サイトは攻撃に徹することになると思います。

果たして、リオソウル装備でモノブロスに勝てるかどうかは分かりませんが…。


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第三十九話  モノブロスを狩ろう その2

モノブロス討伐、リベンジ。

しかし、こんな順調で本当にいいんだろうか?

筆者は、メッチャ苦労しただけに…。


 リオソウル装備を身につけたサイトは、ゼーゼーと荒い呼吸をしていた。

「ちょっとぉ、まだ狩り場についてないのよ?」

「そうは言っても…。苦し…。」

「今まで顔を丸出しにしてたからかな?」

 ブラックピアスから、顔を覆う兜に代わったため、息が苦しく感じてるいるのだ。

「サイト。モノブロスは、前回もやられた通り、地中からの攻撃を得意とするんだ。それを避けるには、かなり走り回らないといけない。」

「わ、分かってますよ。」

「しかも、角を使った体当たりも多くてね…。そうだ!」

「えっ?」

 するとセエがサイトの横に来て、耳元でヒソヒソと話した。

「…うまくいくんですか?」

「俺は、この方法で倒したよ。」

「それなら…。」

「ねえ、ちょっと、なに?」

「やってみたからのお楽しみだぜ!」

「なによそれ!」

「二人とも、到着したぞ。」

 送迎の馬車がキャンプ地に到着し、セエが二人に降りるよう促した。

 キャンプ地降りると、途端ルイズが顔をしかめた。

「…み、見えるわ! 竜の位置が!」

「だろ?」

「便利だけど…、慣れないと戸惑うわね。」

「地図と照らし合わせて竜の位置を把握するんだ。」

 支給品の中の地図と取り出し、ルイズは、自動マーキングスキルにより探知された竜の位置と、地図を合せて見て確認した。

「支給品も取ったし、行こうか。」

「はい!」

 三人は、モノブロス討伐のため出発した。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 モノブロスは、また崖の上にいた。

 そしてこちらの気配を察知して、飛び降りてくる。

 サイトが双剣を抜き、モノブロスに迫った。

 するとモノブロスは、バインドボイスを放つ。

 しかし高級耳栓スキルを身につけたサイトは、バインドボイスの影響を受けない。

「すげぇ!」

 逆にバインドボイスを放つために止まっていたモノブロスの隙をついて攻撃が出来た。

 しかし、バインドボイスの影響を受けなかったことによる余裕が隙となって、モノブロスの回転尻尾攻撃を許すこととなった。

「ぐへっ!」

「馬鹿!」

 岩壁の方に吹っ飛ばされたサイトを見て、ルイズが頭を抱えた。

「ルイズ、攻撃の手を緩めるな!」

「わ、分かってるけど…。」

 モノブロスは、角を突き出し、サイトに向かって体当たりを仕掛けようとした。

 岩壁近くに吹っ飛ばされたサイトは、それを見て、しめた!っと兜の下で笑った。

「サイト! にげ…。」

「いや、いい。」

「どうして!?」

「見てごらん。」

 焦るルイズにセエがそう言うと、モノブロスが角を突き出してサイトに向かって体当たりをしかけた。

 サイトが横に転がる。そして、モノブロスの角が岩壁に突き刺さった。

 岩壁に角が刺さり、モノブロスは、グオー、グオーっと鳴きながら抜こうとしていた。

「隙あり!」

「ルイズ、攻撃のチャンスだ!」

「えっ? えっ?」

 動けないモノブロスに遠慮なく攻撃をするサイトと、戸惑うルイズ。

 少しして、岩壁から角を抜いたモノブロス。

 途端怒り出す。

 そして凄まじ勢いで地面を掘り進み、地中に入った。

「走れ! サイト!」

 セエが指示を飛ばす。

 サイトは、双剣を握ったまま、走った。

 走り回っていると…、しばらくして地中からドバッとモノブロスが飛び出してきた。

「ルイズ! ボーッとしてる場合じゃないよ。」

「えっ…、あ、はい!」

 ポカンっとしていたルイズをセエが叱咤し、ハッと我に返ったルイズが攻撃を開始した。

 バインドボイスの影響を受けないため、サイトがモノブロスを翻弄し、学習能力が無いのかモノブロスは、誘導されては何度も岩壁に角を刺してしまう。

「おおおおおおおおおおおおおおお!」

 鬼人化したサイトが角が刺さって動けないモノブロスを乱舞で切り刻む。

 乱舞をしていると、刃がモノブロスの角をかする。実は、これが何度か起こり、やがて角が折れた。

「えっ?」

 サイトが乱舞を止めてポカンッとした。

「角が!」

「いや、だいじょうぶだ。」

「で、でも岩壁に突き刺さらなく…。」

「もう十分弱った。」

「えっ?」

 すると、モノブロスは、再び地中に潜った。

「! モノブロスが移動したわ!」

「弱ると逃げるからなぁ。」

「先に言って! 追いかけましょう!」

「ルイズ、おまえがマーキングスキル持ってんだからおまえが先導しろよ。」

「分かってるわよ!」

 二人がエリアを移動するべく走り、セエもその後を追った。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 モノブロスが逃げ込んだのは、前にドスガレオスを仕留めた場所だ。ここは、他の飛竜種も休憩ポイントにしている場所だ。

 自慢の一本角が折れてしまったモノブロスは、ここでグーグー寝ていた。

「起きろーー!」

 サイトは、剣を振り上げて振り下ろし、モノブロスを叩き起こした。

 もう角が無いため岩壁に突き刺して行動不能にする手段はとれない。

 怒り状態になり、激しい攻撃が来るが、それは他の飛竜種と同じだ。

 土質が違うためか潜っての攻撃が来ないのが幸いし、サイトとルイズは、攻撃を避けながら攻めに攻めた。

 そして…、モノブロスが絶命した。

「や…やった。」

「やったの…? 私達…?」

「そうだよ。」

 死んだモノブロスを前にして呆然とする二人に、セエが言った。

「さ、剥ぎ取りだ。」

「セエさん…。」

「早く。」

 どこか切なそうに微笑みそう急かすセエに、二人は何も言えなくなり、モノブロスの剥ぎ取りをした。

 

 

 報酬の中に、真紅の角というものがあった。

「これは?」

「モノブロスの角だ。角を破壊しないと手に入らない貴重品だよ。」

「折れないと手に入らないってことか…。」

「そう。それは、ディアブロスも同じだけどね。」

「あの…、セエさん…。」

「なに?」

「えっと…。あ…なんでもないです。」

「そう?」

 

 こうして、モノブロス討伐は終わった…。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 村に帰り、早速村長に報告。

「うむ。よくやったのう。」

「はい!」

「これで…、お主らも一人前のハンターじゃ。」

「ありがとうございます!」

「じゃがのう。まだまだ精進しなければなんぞ? それを忘れるな。」

「は、はい…。」

 喜びもつかの間、しっかり釘は刺される。

 セエは、何か言いたげに村長を見ていた。

「セエよ。」

「…はい。」

「この二人の今後じゃが…。」

 それを聞いたサイトとルイズは、ハッとした。

 自分達は、一人前のハンターとして認められた。そうなると、セエとの今後が変わることになる。

「モノブロスも倒せた…。俺がいなくても…、もう十分でしょう。」

「…お主はそう思うか。」

「はい。」

「二人はどう思っておる?」

「それは…。」

 二人は戸惑った。

 今までずっとセエの指導の下、時に助けられてきた。家でもトウマなどのアイルー達と親しくさせてもらった。

 一人前になったということは、今の生活から切り離されるということだろう。

「借家ならあるぞ。出稼ぎする者用じゃがのう。」

「二人は、もうアイルーだって雇える級に上がってる。」

「あの…。」

「なんじゃ?」

「……今のままじゃダメですか?」

 それは、口に出さずとも二人が出した答え。

「えっ?」

「俺達…、まだまだです。だからセエさんの教えが必要です。」

「でも…。」

「それとも、俺達のこと、邪魔だと思ってます?」

「そんなことはないよ!」

 サイトの言葉に、セエはすぐに否定した。

「よかったわ。」

「そうだな。」

「あ、あの…二人とも?」

「じゃ、これからもよろしくお願いしますね! セエさん!」

「ええーー!」

 

 二人の若きハンターを巣立たせるのは、まだまだかかりそうである。




というわけで、一人前のハンターとして認められても、オリ主・セエから離れないことになったサイトとルイズでした。
Gまで上がるまで、頑張らないと…。

一人前のハンターになったからって、二人の虚弱体質(※モンハン世界のハンターと比べての話)が改善されたわけではありません。
下手すりゃすぐ死にますよ。
そこを…どう改善するか…。やはり、装備の質を上げるしかないか…。


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第四十話  ガノトトスを捕獲しよう その1

ルイズの武器を新調するため、ハードのガノトトス捕獲クエストに挑むが…?
っという、話。

極力優しかったセエが、最後にルイズに…?


 さて、ついにココット村の一人前のハンターの資格を得るための関門、一角竜モノブロスを倒したサイトとルイズであるが…、二人は、一人前のハンターとして独立するのを拒み(※二人にとって独立することは即ち元の世界に帰ること)、またしばらくセエのもとで厄介になることになったのだった。

 

「お前ら…、さては自立するのが面倒にゃから戻ってきたにゃろ?」

「ち、違うって!」

「目が泳いでるニャよ。」

「そんなことないわよ。」

「声が震えるニャよ。」

「うそ!」

「嘘にゃ。」

 トウマがそう言ってプククっと笑ったので、サイトとルイズはずっこけた。

「まあ、賑やかニャのは悪くないにゃ。ご主人もそうにゃろ?」

「ああ。」

 話を振られ、セエは微笑んだでそう答えた。

「すみません。セエさんは、まだしばらく厄介になります。」

「ああ、よろしく。」

 三人は握手し合った。

「さて…、これからどうするかだね。」

「モノブロスも倒せましたし…。」

「もう、何でも来いって感じ?」

「……死ぬよ?」

 モノブロスを倒せて一人前のお墨付きをもらったので余裕をぶっこく二人に、セエは苦笑した。

「…何にしても、そろそろルイズの武器を変更しないか?」

「えっ、今でも十分…。」

「…あの時は、まだ狩ったことがない飛竜種で選んだからなぁ。」

「そうなの?」

「レア度的には、良くも悪くもない程度だし、もっと上のモノを作ろうか。」

「…ええ?」

「……そろそろ、属性を優先するべきかもね。」

「属性ですか?」

「そう。飛竜種やモンスターによって、苦手な属性が違う。それを見極め、それに合った攻撃をするのもハンターの力だ。」

「ルイズは、いつも何の弾使ってんだ?」

「通常弾…。弾切れしないから…。」

「それだけで今まで切り抜けてきたルイズは、相当だと思うよ。」

「違うにゃ。こっちの坊主におんぶに抱っこしてたからにゃよ。」

「そういえばそうか。」

 主攻撃をするのは、サイトだ。つまり攻撃の大半は、サイトに頼っているのが現状なのだ。

 ルイズの攻撃力、そして攻撃手段を増やす方法は、ひとつ。

「弾を購入するか、調合するかだ。」

「調合…?」

「その場で弾を作れれば、弾切れを起こしてもなんとかなるよ。」

「でも弾切れしない通常弾があるし…。」

「それじゃあ、これから先のクエストで力不足だ。G級ともなったら、もう無理だと思う。」

「…うう…。」

「はいはい、泣き言言ってる場合じゃないから。」

 俯くルイズに、セエがパンパンと手を叩いた。

 

 その後、ルイズは、メッチャ弾の調合をやらされ覚えさせられた。

 サイトは、農園の鉱物採掘をやりに行った。モノブロスを倒したことで、上の採掘を行えるようなったので、上質な鉱物を取れるようなっている。たくさん取れてホクホクとしてサイトは家に帰ってきたのだった。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 ルイズに新しいライトボウガンとして、メイルシュトロームが選ばれた。

 炎、水、電気の三属性を撃てるライトボウガンで、今使っているヴァルキリーファイアよりも攻撃力がある。

 水竜の鱗と、水竜のヒレ…、つまりガノトトスの素材が必要となる。

 さらにマカライト鉱石と……。

「ユニオン鉱石?」

「上級の鉱石のひとつだ。今の段階なら、爆弾採掘で取れるはずだ。」

「爆弾って…、アレさせるの!?」

 アレとは、爆弾採掘でなぜか吹っ飛ばされ気絶するアイルーのことだ。

「文句言わない。」

「文句とか言う以前に、アイルーを心配しましょうよ!」

「それは、彼らの仕事だから。」

「ブラック企業!」

「?」

 サイトが生まされ育った本当のもといた世界での、流行言葉の意味が分からず、セエは首を傾げた。

「たくさん、それでいて質が良いものを取るとなると…。分かるよね?」

「……良質な爆弾。」

「そう。じゃあ、爆弾を用意して、行こうか。」

「……だいじょうぶかなぁ。」

 あのアイルーが…っとぼやいても、セエは聞いてはくれない。

 しかたなく、大タル爆弾Gを持って農園に行った。

 爆弾採掘担当のアイルーは、久しぶりの来客に喜んでいた。

 自分への被害を顧みず、あくまで楽しく仕事をしているらしいこのアイルーに、サイトとルイズは、心配したのが損だったかと思い始めた。

 そして、大タル爆弾Gを渡し、三つある穴のひとつを指定して、採掘してもらう。

 しばらくして、爆発と共にアイルーが吹っ飛ばされてきて、ヨロヨロ状態で採掘した鉱物を渡してきた。そして、気絶した。

 他の鉱物と共に、ユニオン鉱石を少しだけ手に入れ、足りない分は、集会所クエスト、ハードの採集クエストで取りに行った。

「あーもう! なんであたしがこんなことしなきゃいけないのよ!」

「文句言うなルイズ! 俺にだけやらせる気かよ。」

「なによ、使い魔のくせに生意気ね!」

「ほら、二人とも、喧嘩してる暇あったら、掘る。」

 採掘作業にたいして文句を言うルイズを窘めるサイト。そんな二人に、作業に集中するようセエが言ったのだった。

 

 こうして、ユニオン鉱石と、マカライト鉱石は集まった。

 

 最後は、足りないガノトトスの素材を集めるだけであるが、そこでセエが提案した。

 

「二人とも。集会所クエストに挑戦しよう。」

 

 っと。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 ルイズは、ムスッとしていた。

「ルイズ、機嫌直せよ。」

「だって…。」

「カエル、いい加減克服しようぜ?」

「イヤ!」

 送迎の馬車の中で、釣りカエルを見せてくるサイトに、ルイズは、全力で馬車の隅に逃げたのだった。

「そこまでカエル嫌いだと…、この先思いやられるなぁ。」

 釣りカエルは、ガノトトス攻略では不可欠だ。

 カエルを何より嫌うルイズには、ガノトトス攻略に不可欠なそのカエルがイヤでイヤ仕方がない。

「ハルケギニアに帰っても、ガノトトスを狩るときはカエル使うことになるかもしれないんだぜ?」

「その時は、あんたが、やってよね。」

「そこまで!?」

 ハルケギニア救済を天秤にかけてもカエルはイヤみたいだ。

 

 

 やがて、捕獲対象のガノトトスがいるジャングルに到着する。

 

 

「ジャングルのガノトトス…。」

「生態は同じだよ。ただ、住んでるところが違うだけ。リオ系が別の場所に住んでるのと同じだよ。」

「いるわね…。」

 ルイズは、自動マーキングスキルでガノトトスの位置を把握した。

「……分かってるよね?」

「えっ?」

「……あーもう…、言わなくても理解する。」

「あ…捕獲クエスト…。」

「そう! 自分が受注したクエストの内容はしっかり覚えておくこと!」

「は、はい…。」

 モノブロスは、倒したが、まだまだこの世界のハンターのルールとかは身につききれていないサイトとルイズだった。

 支給品が入った箱から、応急薬や、捕獲用麻酔玉を取り出し、三人は出発した。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 自動マーキングスキルでガノトトスの位置を追っていくと、開けた…けれど川があるエリアに到着した。

 川を見ると、ガノトトスの背びれが見えた。

「サイト。」

「はい! ルイズ。」

「ええ。」

 サイトが釣り竿の糸に釣りカエルをくくりつけ、ルイズはいつでもライトボウガンを撃てるように用意した。

 そして、サイトが川に近づき、釣り竿の糸を垂らした。

 今はルイズにしか見えていないが、ガノトトスがカエルに反応して陸地の方に顔を向けた。

 少しして…、浮きが沈んだ。

「うお! きた!」

「サイト、頑張って!」

 サイトが必死になって竿を立てて耐える。

 見かねたルイズがライトボウガンを背負い直して、サイトのもとへ行き、腰を掴んで手伝った。

 やがてガノトトスが釣れて、陸地に跳ね上がった。

「これは、捕獲クエストだ、忘れないように!」

「分かってます!」

 陸地に上がったガノトトスに剣を抜いて攻めようとするサイトにセエが叫ぶ。

 集会所クエストのハードだからか、ガノトトスのサイズは、村長クエストよりもやや大きかった。

 双剣を抜いて迫ってきたサイトに、ガノトトスが巨体に合わないスピードで体当たりをしてきて、サイトを吹っ飛ばした。

 転がされたサイトは、すぐに体制を整えて、剣を握りしめてガノトトスに迫る。

 ルイズは、炎属性の弾丸をこめてライトボウガンを撃つ。

 一度は倒したとはいえ、今回は討伐ではなく、捕獲だ。おまけにガノトトスは、弱った具合が分かりづらい。

 殺さぬよう慎重に、様子を見る必要がある。

 だが、しばらくするとガノトトスは、水の中に逃げ込んでしまう。

 そうなれば、警戒が治まるまで別のエリアに移動する必要がある。

「面倒ね…。」

「面倒でもやるの。」

「はーい。」

「おい、ルイズ。」

「なに?」

「今回のクエストをするのはな、おまえの武器を作るためなんだぞ?」

 サイトが厳しい口調でそう言った。

「だから、面倒とか言うな。」

「……悪かったわ。」

 ルイズは、ばつが悪そうにそう言った。

 そうこうしているうちにガノトトスの警戒が治まり、再びガトトトスがいるエリアへ踏み込んで、カエルで釣り上げる。攻撃する。ガノトトス水に逃げる。別のエリアに移動する。警戒が治まったらまたカエルで釣る…を繰り返して、やがてガノトトスの怒りまでの間隔が短くなっていった。

「そろそろか? ルイズ!」

「分かってるわ!」

 ルイズは、ライトボウガンを納め、落とし穴の準備をした。

 あとは、落とし穴がブワッと広がるだけ…、の、時に。

「グアッ!」

「えっ? キャア!」

 ガノトトスの尻尾攻撃で、サイトがルイズのところに吹っ飛んできた。

 二人が衝突した直後に落とし穴がブワッと広がり、あとはガノトトスが踏み込めば発動する体制になった。

 ガノトトスがゆっくりとした足取りで接近してくる。

「うう…、は、早く…ど、いて…!」

「ぐ…。」

 ルイズは、鎧を着たサイトの下敷きになり、一方でハードクエストの飛竜種の攻撃力にサイトは、呻いた。

 やがてガノトトスが落とし穴の上にきて、落とし穴を発動するスイッチを踏み込んだ。

 その瞬間、ガノトトスの巨体が地面に半分沈んだ。

「二人とも! かかったぞ! 早く起き上がれ!」

「うう…。」

「サイト! 起きてよ!」

 呻きながら、横に転がり、ルイズの上からどいたが、サイトはすぐに起き上がれなかった。

 そうこうしているうちに、ガノトトスが落とし穴から飛び出した。

「落とし穴を調合だ!」

「あ!」

 っという間に、ガノトトスが水の中に逃げ込んだ。

「ルイズ、釣りカエルの残量は?」

「…い…いや…。」

「残量は?」

 嫌がるルイズに厳しくセエは言った。

 ルイズは、嫌々、渋々、道具袋の中を覗いた。

「な…ないわ…。」

「……採集だ。」

「えっ?」

「釣りカエルを獲る!」

「イヤーー!」

「サイトも起きろ!」

 悲鳴を上げるルイズを無視して、転がってるサイトを叱咤するセエ。

 サイトは、回復薬グレートを飲んでなんとか立ち上がった。

「が…ガノトトスは?」

「水の中に逃げた。」

「えっ! ルイズがやってくれたんじゃ…。」

「私はあんたの下にいたからできるわけないじゃない!」

「あ、ごめん…。」

「それより、釣りカエルがもうない。だから獲りに行こう。」

「えっ? 獲れるところが…。」

「教えるから、覚えておいて。」

 セエは、そう言うと背中を向けて走り出した。

 サイトは、慌てて追いかけた。

 ルイズは、その場で立ち止まっていたが、サイトは気づかなかった。

 

 浅い水のエリアで、釣りカエルを収穫していて、サイトはやっとそのことに気づいた。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 ガノトトスがいるエリアに戻ると、ルイズはそこにいた。

「ルイズ…。」

 するとセエがツカツカとルイズに近寄る。

 そして、手を振り上げ、ルイズの頬を手のひらで叩いた。

 セエは、ハンターとして長く身体を鍛え続けている。ゆえにその分怪力だ。

 小柄なルイズは、少し吹っ飛んで倒れた。

「ルイズ!」

「いい加減にしろ。」

 ルイズに駆け寄ろうとしたサイトを腕で制し、セエは、低い声で言った。

 ルイズは、ヨロヨロと起き上がり、地面に乙女座りして叩かれた頬を押さえて俯いていた。

「……もうダメかもな。」

「セエさん?」

「クエストリタイアだ!」

「えっ!?」

 そう宣言したセエに、サイトは驚きの声を上げた。

 ルイズは、乙女座りのまま何も言わなかった。




二人のどっちかを叩くイベントは、どこかで入れたかった。
ルイズ、好き好んで叩いたんじゃないよ。ホントだからね!
あと、セエは、ちゃんと加減して叩いてますから! じゃないと大怪我ですから! あんな大剣振り回す怪力で本気で叩いたら大事だから!
ルイズのカエル嫌いは、ガノトトスのクエストで大きな支障になるので、なんとか克服しないと…っということで、このイベントを書きました。
克服とまではいかなくても、採集するぐらいはできるようならないと…。サイトへの負担が大きくなるばかりですからね。

次回は、急展開かも。


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第四十一話  ソロクエスト(ルイズ編)

……前回のイベント(ルイズを叩いた)で、感想欄が…。ああ、そんなつもりなかったためにそういう解釈されてしまった。
でも、そういうことにしましょうということで、今回は、ハンター資格剥奪の危機と、ルイズのソロクエスト挑戦。

……見切り発車には気をつけます。


 送迎の馬車の中で、ルイズは、ずっと膝を抱えていた。

 セエは、どっすりとあぐらをかき、足の上に膝を乗せて顎を支えながら余所を見ている。

 サイトは、険悪なその雰囲気にひとりオロオロとしていた。

 やがて、ココット村に到着しても、ルイズは、トボトボと後ろをついてくるだけであるし、逆にセエは、ズカズカと早足だ。

 そして、集会所から出て、村長のところに来た。

「おや? どうした?」

「村長…。」

「む?」

「二人のハンター資格を剥奪して貰えますか?」

「ぬ?」

「セエさん!?」

 村長は、わずかに顔をしかめ、サイトは驚愕し、後ろにいたルイズは、やっと顔を上げて信じられないという驚いた顔をしていた。

「どうした? なぜそうなった?」

「……。」

 セエは、うまく言葉に出来ず、唇を噛んで俯いた。

 その様子を見て村長は腕組みをしてう~むっと声を漏らした。

「……話は、あとで聞く。それから検討しよう。」

「そ、そんな! どうしてなんだよ!?」

「っ…!」

「あとで、詳しい話を聞く。とりあえず、もう、家に帰りなさい。」

「…はい。」

「セエさん! 村長さん! ルイズも何か言えよ!」

 話を振られたルイズだったが、ビクッと固まり、そして、また俯いて、血が出そうなほど拳を握りしめただけだった。

「ルイズ?」

 その様子を訝しむサイトだったが、セエがもうこの場にいないことに気づき、ルイズの腕を掴んで引っ張るようにしてセエに家に戻った。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 セエが先に家に戻ると、トウマが出迎えた。

「にゃー? 浮かない顔してどうしたにゃ?」

「別に…。」

「嘘にゃ。ご主人、正直ニャから。」

「……実は…。」

 二人がいない間に、セエはわけを話した。

「…そりゃ、あの二人が悪いニャね。」

「……叩いちゃった…。」

「いや、ご主人の愛の手は、気付け薬になったはずにゃよ。」

 ルイズの頬を叩いた手を見つめ、セエは俯く。そんなセエをトウマが励ました。

「セエさん!」

 そこへサイトがルイズを引っ張りながら家に入ってきた。

 セエは、グッと口を閉じた。

「どうして、俺達からハンター資格を剥奪するなんて話になるんですか!? まさか…ルイズがカエルがダメだからってことなんですか!?」

「……それもある…。」

 大声で聞いてくるサイトに、セエは、重い口を開いて答えた。

「…君達の心構えというか…。」

「はあ?」

「…本気の在処が分からなくなったんだ…。」

「それは、どういうことで…。」

「サイト。」

「ルイズ?」

「私達は、慢心してたのよ。」

「はっ?」

 ルイズが絞り出すように言った言葉に、サイトは、キョトンッとした。

「一人前の証…、モノブロスを倒したからって……、村長のクエストのガノトトスを倒したからって…、私達は、甘く見ていた。」

「あ、甘く見てなんて…。」

「あんたは分かってないわ。」

「なんだと!?」

「私の方に吹っ飛ばされるなんて醜態を見せておいて、よく言えるわね。あんたがあの時私の方に吹っ飛んでこなかったら、クエストは完遂してたと思うわ。」

「そんなこと言われたって! アイツ(ガノトトス)があんな強力な体当たりしてくるなんて…!」

「集会所クエストの方が、モンスターや飛竜種が強い。それはもう耳にタコができるほど聞いてたはずよ。なのに、私達はどう? クエストの内容をちゃんと覚えてないし、ガノトトスとの戦い方について面倒がっちゃった…。私なんてカエルがダメだからって、あの場から動かなかった…。集中力も、ハルケギニアを助けることへの気持ちも切らして!」

「よく分かってるニャね。」

 喚くように言い続けるルイズに、トウマがウンウンと頷きながら言った。

「おまえ達…、本気でひとつの世界を救う気があるのかにゃ?」

「俺達は本気だ!」

「じゃあ、どうしてガノトトスで後れを取ってるにゃ?」

「そ、それは…。」

「どうして、ガノトトスの攻略を楽にするカエルがイヤで、逃げたニャ?」

「……。」

「……お前らは、結局、ハンターなんて無理な話だったにゃ。」

「な…。」

 トウマに吐き捨てるように言われ、サイトはカッとなった。

「今のままじゃ。ダメだ。」

「セエさん!」

「たった一人で、飛竜種を倒せるほどの力がないと、君達の目的には到底届かない! それができないなら…、ハンターを辞めることだ。」

「そんな…。」

 サイトは、青ざめ、思わず助けを求めるようにセエに視線を送っていた。

 しかし、セエは、首を横に振った。

「…やってやろうじゃない!」

「ルイズ!?」

「ガンナーの方が飛竜種戦では有利なら、私だって飛竜一匹ぐらい倒せるわ!」

「な、何言ってやんがんだ! 死ぬ気かよ!?」

「あんたも挑戦しないさいよ、サイト。」

「えっ?」

「えっ。じゃない! このままじゃハルケギニアを襲ってるあの竜達に絶対に勝てないわ! だったら、証明しようじゃない! 自分一人でもあの竜に勝てるんだってことを!」

「そんな無茶な…。だって、今までだって、二人でやっと倒せて…。」

「だからダメなのよ!」

「けど、死んだら元も子もないじゃないかよ!」

「今更じゃない! 私達は、死ぬ気でこの世界に来たって事忘れた!?」

 二人の言い合いは、しばらく続き、お互いに息を切らしたところで。

「…で? どうする? ひとりでやってみるか、やってみないか?」

 ずっと黙っていたセエがそう聞いた。

「それは…。」

「やるわ!」

「ルイズ! 早まるなよ!」

「なら、決まりだ。」

「セエさん!」

「何を狩る?」

「……ガノトトスを。」

「おま…、カエル、ダメなくせに!」

「釣りぐらい…、やってるやるわよ!」

「ルイズの体格じゃ、アイツ(ガノトトス)釣り上げられないって!」

「あんただって、私の手伝いないと釣り上げられないくせに。」

「うぐ…。」

「……そっか、ウェイトの問題があったか。」

「セエさん?」

「でも……。カエルで釣る以外の方法で引っ張り出す方法はある。」

「えっ!?」

「そんな方法があったんですか!?」

「遊泳中に、音爆弾を当てると、怒り状態になる。怒り状態だと、地上に自分から上がってくる確率がぐっと上がるんだ。けど、釣りに比べれば、確実性は…。」

「釣らなくてもできるんでしょう? なら、やるわ!」

「上がってこないかもしれない。それでクエストの時間が過ぎて失敗する場合もある。それでも、やる?」

「やってやろうじゃない! ガノトトスの素材は、私の新しい武器にもなるわ! だから、やる!」

「ルイズ…。」

 燃えているルイズに、サイトはオロオロとした。

 

 

 こうして、ガノトトス討伐のソロが決定した。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 村長クエストのガノトトスは、砂漠の洞窟にいるのだが、砂漠のガノトトスは、すでに攻略したので、ジャングルにいるガノトトスを狩ることにした。

 ジャングルにいるガノトトスのクエストは、星三つの集会所クエストにある。

「セエさん…。集会所クエストは…。」

「勘違いするな。星四つより下は、ノーマルって言われてるんだ。つまり、ハード言われてる星四つから五つのクエストよりも、モンスターが弱い。」

「! なるほど! じゃあルイズでも…。」

「けど、それでも村長のクエストよりも強くてタフだ。体力だけで二倍ぐらい違う。」

「!?」

「準備が出来たわ。早く行きましょう。」

「る、ルイズ…。」

「なによ?」

「準備が出来たのか? じゃあ、行こう。」

「せ、セエさん…。」

「置いていくわよ。」

「あ、待てよ!」

 

 今回のクエストは、あくまでルイズ一人でやる。

 そのため、サイトもセエと一緒に傍観に徹することになる。危険だと判断したら、即座にクエストリタイアをさせるためだ。ルイズの性格では、死にかけてもリタイアをしなさそうだからだ。

 

「なあ、ルイズ…。」

「なによ?」

「今からでも辞めないか?」

「イヤよ。」

 送迎の馬車の中で、サイトが何度目かになる問いかけを、即座にルイズは却下した。

「けど…、傷が残ったりしたら…。」

「それが?」

「死ぬかもしれねぇんだぜ?」

「死ぬ気でやらないで、どうするのよ?」

「えっと…。」

「二人とも、着いたぞ。」

「行くわよ。」

「あ…。」

 送迎の馬車がキャンプ地に着くと、すぐにルイズは荷物を抱えて馬車を降りていってしまった。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 アイルーキッチンで事前に体力アップと、攻撃力アップ効果を持つ料理を食べ、現地に到着すれば硬化薬グレートを飲み、万全な体制で挑む。

 ガノトトスは、以前と違い、川沿いにある狭いエリアにいた。

 ルイズは、音爆弾を取り出し、渾身の力で川を泳ぐガノトトスの背びれに向かって投げつける。

 途端、音爆弾は破裂し、ルイズに見えているガノトトスのマークの色が変わり、水面からガノトトスが飛び上がり、自ら地上に飛び出てきた。

 ガノトトスがピチピチ跳ねてる隙、弾を込めたルイズは、ライトボウガンを構えて、撃つ。

 怒り状態のガノトトスが水ブレスを吐いた。

 ルイズの身体の横を通り過ぎ、辛うじて当たらなかった。

 ルイズは、ライトボウガンを背負い、ガノトトスに接近した。

 途端、ガノトトスが接近してきたルイズに体当たりかまそうとしてきた。

 それを辛うじて避け、ルイズは、大タル爆弾Gを傍に置いた。

 ガノトトスがくるりっとこちらを向いて、水ブレスを吐いた瞬間、大タル爆弾Gに当たり、爆発する。途端、ガノトトスはよろめいた。

 その隙に離れたルイズは、ガノトトスの様子をうかがう。

 ガノトトスは、煩わしそうに首を振り、白い煙を吐きながらルイズの方を向き、再び水ブレスを吐いた。

 それを横にずれて避け、ルイズが再び接近した。

 ガノトトスが水ブレスを再び吐く。ルイズは転がって避け、ガノトトスの真横に大タル爆弾Gを再び置いた。

 ガノトトスが体当たりをし、ルイズが逃げる。その瞬間、横にあった大タル爆弾Gがガノトトスに接触して爆発し、再びガノトトスがよろめいた。

「…っし!」

 ルイズがガッツポーズをした瞬間、横からガノトトスの尻尾が振られて吹っ飛ばされた。

「がっ…。」

「ルイズ!」

 エリアの端にセエと共にいたサイトが咄嗟に駆け寄ろうとするが、セエに掴まれて止められた。

「サイト。これはルイズのクエストだ。邪魔をするのはルール違反だ。」

「でも!」

「それともハンター資格を失いたいのか?」

「っ!」

 二人がそんな問答をしている間に、ルイズは回復薬グレートを飲んで立ち上がり、ガノトトスは、水に逃げていった。

 川の中から上体を出したガノトトスが地上にいるルイズに向かって、地を走るような水ブレスを吐いた。

 それをルイズは転がって避ける。

 ガノトトスは、自ら飛び出し地上に出てきた。

 ズリズリと地上を腹ですべり、それから立ち上がる。

 ルイズは、距離を取り、ガノトトスにライトボウガンを向けた。

 そして炎属性の弾を撃ちまくる。

 水ブレスを避け、撃つ、避けて、撃つ、避けて、撃つを繰り返した。

 時にガノトトスが水に逃げ、水中から水ブレスを吐くこともあったが、それを避けて、自ら地上に出るのを待ち、また攻撃と避けるのを繰り返した。

 そして……、ガノトトスの顔に命中したとき、ガノトトスは断末魔の声を上げて倒れた。

 ルイズは、ハアハアと荒い呼吸を繰り返した。

「や、やった…?」

「よくやった。」

「ルイズ! すげぇよ!」

「やった? 私、やった?」

「さ、剥ぎ取りだ。」

 ヘナヘナと座り込みそうになるルイズに、セエがそう言ってガノトトスの死体を指さしたのだった。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

「ほう…。ソロで集会所のガノトトスを倒したのか。」

「はい。素晴らしい動きでした。」

 村に帰ると、すぐに村長に報告。

 セエは、嬉しそうにそう報告した。

「これで身に染みたろう? 緊張感を持ち、やり方さえ間違えなければ、勝つことはできるのじゃ。」

「はい。」

 ルイズは、頷いた。

 サイトは、そんなルイズの横顔を見ていて、どこか複雑そうだった。

「…娘の方がやったのじゃ。次は、そちらの方じゃな。」

「……俺ですか。」

「サイト。できるわよ。」

「……。」

 ルイズに励まされるが、サイトは俯いた。しかも何やら汗をかいている。

「サイト?」

「二人とも、それぞれソロで飛竜種を倒すことができたなら、ハンター資格剥奪の件は無しとしよう。」

「本当ですか! だって、サイト!」

「……。」

「サイト? どうしたのよ?」

「まあ、とりあえず家に帰ろう。それから、サイトが狩る飛竜種を決めよう。」

 そう言って、セエが家に帰ろうと促すが、サイトは反応しなかった。




ルイズは、ガンナーだし、身軽な分、集中力さえ途切れさせなければ一人でも勝つことは可能。っということにしました。
大タル爆弾Gは、動画サイトの戦いを参考にしました。

……正直な話、実は、カエル釣る以外の方法でガノトトスを引っ張り出す方法を筆者は知りませんでした。感想欄で教えてくださりありがとうございます。


次回は、サイトがソロクエストに挑む?


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第四十二話  迷い込んだ轟竜

サイトのソロクエストかと思いきや…?

筆者は、現在MHP2をやってて、タイトルの別名を持つ奴には、現在進行形(2018/09/05現在)で、苦しめられてます。
奴の素材を使った装備が必要なんだ!


 サイトは、部屋の隅で膝を抱えていた。

「サイト…。」

「緊張感持ちすぎるのもマイナスにゃね。」

 心配するルイズと、暢気にそう言ったトウマだった。

 

 そう、サイトは緊張感のあまりヤバい状態に陥っていた。

 それもこれも、ルイズがたった一人でガノトトスを倒してみせたからだ。

 今まで自分がいなければ倒せないと思っていた飛竜種の一匹を、非力なルイズがライトボウガン(と爆弾)で倒したのだ。

 結果、サイトは自分の価値に悩み、そしてルイズが倒せたのだから…というプレッシャーを受けることになったのだ。

 

「ほら、ハンター資格剥奪がかかってるにゃから、いつまでも部屋の隅でキノコ生やしてる場合じゃないにゃよ?」

「……うるせぇ…。」

「サイト。頑張ろうよ。」

「…待ってくれ…。」

 話しかけても、ボソボソと返答するだけだ。

 そこへ、セエが家に帰ってきた。

「ん? まだ隅にいるの? いい加減動かないと…。」

「ねえ、セエさん。今のサイトが狩れそうな竜って何かいるかしら?」

「う~ん…。」

 ルイズに聞かれて、セエは腕組みして悩んだ。

「イャンクックやゲリョスじゃ、印象弱いし…。それこそ、ガノトトス以上のモンスターを相手にして倒さないと…。だから…。」

 セエは、悩んだ。

 そして。

「……グラビモス?」

「はあ!?」

 グラビモスと聞いて、前に後ろから熱線を受けて全身を焼かれたことがあるルイズは、ゾワッとなった。

「で、でも…、グラビモスなんて…。」

「毒さえ与えられれば、片手剣でも倒せる相手だ。それに…今言うのはなんだけど、本来は村長のクエストは、一人用なんだぞ? 特別に二人には二人で受けられるようにしてもらってたわけなんだし…。」

「!?」

 あれだけ苦労してきた村長クエストが、本来は一人でやるべきものだったと聞いて、ルイズも、膝を抱えていたサイトも驚いて顔を上げた。

 セエは、首を振った。

 トウマも、腕をすくめていた。

 それだけ、サイトとルイズが弱いのだと暗に言われて、ルイズは唇を噛み、サイトは再び膝に顔を伏せた。

 その時だった。

 

「セエ、いるか?」

 

 家の入り口がノックされ、そんな声が聞こえた。

「なんだ?」

 セエは、入り口に行き、戸を開けて尋ねてきた村人に聞いた。

「村長が呼んでたぜ。」

「分かった。じゃあ、ちょっと行ってくる。」

「行ってらっしゃいにゃ。」

 セエは、村人共に村長のところへ行った。

 それから、しばらくしてセエは帰ってきた。

「何かあったのにゃ?」

「偵察に行ってくれないかって言われた。」

「どうしたにゃ?」

「砂漠の地域の辺りで、見たこともない竜が現れて、キャラバンや他のハンターが行方不明になってるらしいんだ…。」

 セエは、そう言いながらアイテムボックスに近づいた。

「竜の情報を少しでも集めて、ヤバいなら逃げてこいって。」

「ハンターが行方不明になるのは珍しくないにゃけど…。いったいどんな竜にゃ?」

「さあ? とにかく行ってくるよ。」

「…私達は?」

「今回は待っててくれ。頼まれたのは俺なんだから一人で行ってくる。」

 セエはそう言って、準備を整えた。

「じゃ、行ってくる。」

 セエは、そう言って出発した。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 砂漠の狩り場エリアに来て、セエがまず見たのは……。

 血の染みこんだ砂の大地だった。

「な…。」

 ゲネポスだろうか? 死体は一掃されているがところどころに、緑っぽい鱗の欠片が落ちている。

 それにしても、これだけ砂を血で染めるほどとは、一体何がいるのだろう。急にセエは不安になった。

 しかし、頼みを受け入れた以上、情報を持ち帰る必要がある。

 何か…証拠となるものが必要だ。例えば、竜の身体の一部だ。鱗一枚でいい。

 慎重に周りを警戒しながら進んでいくのだが、モンスターの姿が無かった。

 異様な静けさの中、進んでいくと、轟音が聞こえた。

 何か大きな物が倒れたような、そんな音だ。

 音がした方に行くと、リオレイアが岩壁に叩き付けられて、倒れていた。

 ピクピクと痙攣しているリオレイアに、濃い黄色いような青っぽいような巨体が飛びかかる。

 リオレイアは、たまらず悲鳴じみた鳴き声を上げ暴れる。

 黄色い巨体のその見たこともない竜は、そんなリオレイアなどお構いなしに食らいつき、喉笛を噛みきった。

 血が大量に噴き出し、リオレイアは、絶命した。

 セエは、呆然とその光景を眺めていることしか出来なかった。

 その竜は、竜と言うより、恐竜という感じの無骨な見た目で、翼は翼ではなく、強靱な腕のように太く爪が発達しており、リオレイアの甲殻や鱗を難なく引き裂いている。

 びっしりと並んだ歯が肉を食み、ごつい上顎と下顎が肉をむしり取る。

 セエが呆然と突っ立っていると、別の方向から、ハンターらしき人間がエリアに入ってきた。

 位置的にこの竜の視界に入ってしまう。忽ちそのハンターを見つけた竜は、リオレイアの上から跳び、驚いているハンターに、恐るべき速さで襲いかかった。

 向こうにいるハンターも、この竜を見たことがないのか、驚いて逃げようとしたが、あまりに速さについていけず、その身体に爪が振り下ろされ……、ハンターは、あっという間に切り裂かれた。

 地面に倒れるハンターは、助けを求めるようにセエの方に手を伸ばすが、その腕を竜が噛みつき、食った。

 ハンターを蹂躙していた竜が、セエの存在に気づいた。

 瀕死のハンターの上からどいた竜は、周りの岩や砂が舞い上がるほどの咆吼をあげた。

 セエは、ハッと我に帰った。

 竜が腕のような翼を使って凄まじい勢いで迫ってくる。

 セエは、大剣を抜いて、盾にした。

 ガチンッと音を立てて竜とぶつかり、セエは数歩弾かれた。

「くっ!」

 見たこともない竜だから、当然どう戦えばいいか分からない。

 竜は、凄まじい勢いで攻めてくる。

 走り回って逃げるのがやっとだった。

 逃げろ、逃げろ!っと自分に言い聞かせて走るセエ。

 しかし、スタミナが切れ、ふらついたところに、凶悪すぎる爪が迫って背中を引き裂かれた。

 さらに、追い打ちをかけて、竜は、その強靱な腕を使って砂と岩を吹っ飛ばしてきてセエはもろに受けてしまい、倒れた。

 グワッと口開けながら、竜が迫ったとき、セエは、吐血しながら力を振り絞って横に跳んで砂の上を転がった。

 直後、竜の口が、歯が岩壁に刺さって竜は動けなくなった。

 苦しそうな鳴き声をもらしながら、ジタバタする竜を見て、セエは思いついた。

 何か証拠がいるのなら、今だと。

 そしてよろつきながら、大剣を振り上げ、竜の身体を切った。

 飛び散る血と、数枚の鱗。

 急いで、鱗を一枚拾い上げ、竜が岩壁から解放された直後、セエは、エリアから全力で走って逃げた。

 失血で目の前がかすみそうになりながら、追ってくる気配を感じながら、セエは、走り続けた。

 キャンプ地に逃げ込み、急いでネコタクチケットを納品して迎えを呼ぶ。そして砂漠の狩り場から逃げ去った。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 家で待ってたサイトとルイズは、驚いた。

 家に運び込まれてきたセエに。

「セエさん!」

「なにがあったの!?」

「どくにゃ!」

 トウマが二人をどけ、セエの顔を叩いて無理矢理起こした。

「う…。トウマ?」

「気がついたかにゃ?」

「……俺…生きてる?」

「生きてるニャよ。トウガラシでも傷にすり込んでやるかにゃ?」

「それは勘弁。」

「傷って…。うわっ!」

 起き上がったセエの背中の傷を見て、サイトが悲鳴をあげた。

 包帯が巻かれているが、そこに染みこんだ血の量に驚いたのだ。

「トウマ…、悪いけど、傷薬を塗り直してくれ。」

「分かったニャ。」

 そう言って、セエは、包帯を外して背中をトウマに向けた。

 その背中にある大きな爪の傷に、サイトとルイズは、絶句した。

 トウマが急いで持ってきた薬壺と消毒液で、トウマが傷の手当てをする。

「イデデデデ!」

「我慢するにゃ。ご主人にはいつものことにゃから。」

「そうは言っても…、これは慣れない!」

 セエから文句を言われながら、トウマは慣れた手つきで傷を癒やし、包帯を巻いた。

「とりあえず、傷口が塞がるまで安静にゃね。今日は、血が増えるようにレバー系を料理するにゃ。」

「ありがと。」

 セエは、トウマにお礼を言いつつベットに横たわり、トウマは、薬壺と消毒液に入った容器を持ってキッチンに戻っていった。

「セエさん…。何があったんですか?」

「…見たこともない、竜がいた。」

 セエは、額ににじんだ汗を手で拭いながら二人に語った。

「その、ハンターさんは?」

「…さあ?」

「さあって!? 死んだんですか!?」

「分からない…。逃げるので必死だったから…。」

「そんな…。」

「そうだ…。村長に報告しなきゃ。」

「動いちゃダメですよ!」

「急いで報告しないと…、これ以上犠牲者が出たら…。」

「俺達が行きます。」

「いや、当事者の俺が行かないと意味がない。」

 セエは、そう言うと、痛みを堪えながら立ち上がって、上着を着ると家を出て行った。

 心配になった二人は、ついて行った。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 村長のところに来たセエは、命がけで取ってきた竜の鱗を村長に見せた。

「これは……。」

「知っているんですか?」

「…見たことがあるのぉ。少し調べる。追って知らせるから、家に帰りなさい。」

「しかし…。」

「無理をして来たんじゃろう? 傷が塞がってからで良かったのに…。」

「…すみません。」

 セエは、頭を下げると、振り返って歩き出そうとして、後ろにいたサイトとルイズにぶつかった。

「わっ。」

「あ、ごめんなさい!」

「なんで、二人がいるんだ?」

「心配だったんです…。」

「…ごめん。ありがとう。」

 三人は家に帰った。

 

 

 それから、しばらくして、村長が直接家に来た。

「村長? 竜のことが分かったんですか?」

「にわかに信じがたいことじゃが…。あの鱗は、ティガレックスのものじゃ。」

「てぃがれっくす?」

「別名、轟竜と呼ばれておる、別の地域の砂漠や雪山に生息する凄まじく凶暴な竜じゃ。」

 なぜ、この地域にいるんじゃ?っと村長は腕組みしてうーむっと唸った。

「そんなに珍しい竜なんですか?」

「少なくともこの地域には生息しておらんはずじゃ。……迷い込んできたのか…、それとも生息範囲を広げたのか…。それによっては、生態系が劇的に変わってしまうわい。」

「とんでもない竜なんですね…。」

「そこでなんじゃが、セエよ。」

「はい?」

「わしは、これより、ギルドと提携して、そのティガレックスの討伐クエストを設けようと思う。」

「あれを狩るんですか?」

「狩った死体を調べて、繁殖した痕跡があるかどうかも調べねばならん。それに、あの区域を奴に奪われたままでは、流通に多大な被害とハンター達の命が無残にも奪われてしまう。一応、村や集会所には、ティガレックスを見つけたらすぐに逃げるようお触れを出すが……。」

「……俺に、やれってことですね。」

「そ、そんな!」

「セエさんは、あんな大きな傷を受けたんですよ!」

「今、この村では、一番の腕を持つのはセエだけじゃ。」

「それって、死ねって事ですか!?」

「…死ねとは言っておらんわ。」

「それ言ってたら、他のクエストだって死ねって言ってるようなものだよ。」

「でも!」

「村長。準備が出来たら、そのクエスト、受けます。」

「うむ。すまんのう…。」

 村長はそう言うと、家から出て行った。

 サイトとルイズは、信じられない物を見る目でセエを見た。

「どうしてですか、セエさん!」

「なにが?」

「あんな大怪我したのに、それでもソイツに挑むなんて!」

「…ま、ハンター稼業なんてそんなもんだよ。」

「そんなもんって…、納得していいんですか!」

「納得するしかないし、好き好んでやってるんだから。」

「そんなのって…。」

「二人は別の目的があって、ハンターをやってるだけだけど、俺はもっと若い頃から好き好んでやってるんだ。だから、納得できないとかそんなことはないよ。」

 そう言って笑うセエに、二人は押し黙った。

 やがて夕食の時間になり、トウマが呼びに来るまで三人は黙っていた。




MHP2のティガレックスに初遭遇したとき、あの速さに驚かされましたな~。そして怒り状態になった時の攻撃力…。
装備を作るために今、何度も挑んでるけど、メチャメチャ強い。けど、ネットとかで見るところによると、シリーズを経るごとに残念なことになってるらしい?


次回は、ティガレックス討伐かも。


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第四十三話  轟竜ティガレックスを倒せ!

ティガレックス討伐。
セエがソロでやるが……?

活動報告でも書きましたが、繁殖はしていません。繁殖してたら、あの辺りの生態系が激変してしまうので。


 セエは、傷が癒えてから入念な準備を整えた。

 大量に用意したのは、大タル爆弾Gと、大タル爆弾と、大タル爆弾Gの素材と、大タル爆弾の素材だ。あと、小タル爆弾も。

 あと、閃光玉と、閃光玉の素材を。

「ば、爆弾ばっかり…!」

「強敵相手には、爆弾が一番だよ…。」

「そういえば、ラオシャンロンの時も爆弾使ってましたよね。」

「爆弾の素材はどうするの?」

「その場で調合するのに使う。」

「えっ!」

「現地で調合して作れば、実際に持ち込める量の倍以上の物が手に入るんだ。覚えておくといいよ。ただし、道具の空きはなくなるけどね…。」

「そうなると、支給品があんまり取れないってことですね。」

「そう。」

「サイト、私達も…。」

「君達は留守番だ。」

「えっ!?」

「そんな、俺達だって…。」

「今回は、相手が悪すぎる。俺も初めて狩る相手だ。君達を守りながらなんてできない。」

「俺達は、もう一人前…。」

「一応そうだけど、君達はまだまだだ。本来、一人でやるべき村長クエストを二人でやってる時点で。」

「っ!」

「…ごめんね。」

 悔しそうに顔を歪める二人に、セエは謝った。

 

 そして大荷物を抱え、セエは、ティガレックス討伐に向かった。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 砂漠のキャンプ地で、一度入念に持ち物を確認し、ちゃんと道具が揃っていることを確かめると、自動マーキングスキルで見えているティガレックスの居場所へ向かった。

 行く途中、ハンターの物だったであろう、壊れた鎧や武器が落ちていた。死体はない。食べられたか、他の獣に一掃されたのだろう。

 すると、地図上のティガレックスのマークが移動した。

 セエがいるエリアに向けて。

 セエは、移動し、エリアの端でティガレックスを待った。

 やがて崖を飛び越えてティガレックスが飛び降りてきた。ティガレックスの翼…というより、骨も筋肉も太い、もはや腕は、羽ばたいて飛ぶようにはできてないらしい。その代わり、凄まじい跳躍力と優れた身体能力が武器なのだろう。リオレウスやフルフルのように何かしらの属性の攻撃を持つのではなく、かといってモノブロスやディアブロスのように地を掘って攻撃するなどの特異性もない、肉弾戦に特化した原始的な飛竜種、それが轟竜ティガレックスだ。

 ティガレックスは、首をあげて周りを見回し、セエの存在に気づいて吠えた。

 セエは、閃光玉を取り出して、投げつける。

 凄まじい閃光にティガレックスが目を回す。

 そして接近し、ティガレックスのすぐ傍に、大タル爆弾Gを、二つ並べる。そしてさらに着火用として小タル爆弾をひとつ置いて、急いで逃げる。

 2秒後、小タル爆弾が爆発し、大タル爆弾Gが二つ大爆発した。

 ティガレックスが悲鳴じみた鳴き声を上げて悶えた。

 目を回した状態から回復したティガレックスは、発達した腕をガサガサと凄まじく動かして突進してきた。

 セエが逃げるが、追いつかれ、轢かれた。

 突進してきたティガレックスは、方向転換して更に突進する。

 間一髪倒れていた箇所から、ティガレックスの2回目の突進を避けることが出来た。

 立ち上がったセエは、横に逃げながら、回復薬グレートを飲んだ。

 ティガレックスの動きを読み、また閃光玉を投げつける。

 そしてまた目を回させて、接近し、大タル爆弾Gを置いて、小タル爆弾で爆破させる。

 大タル爆弾Gが切れたので、近くにある微妙な高台に登って、そこで大タル爆弾Gを調合した。

 その間にもティガレックスは、襲いかかろうと高台の下に突進してくる。幸い、攻撃は高台の上には届かなかった。

 セエは、調合を終えると、飛び降り、ティガレックスから距離を取った。

 ティガレックスが追ってくる。横に逃げて逃げて、隙を見つけて閃光玉を投げて目を回した状態にする。そしてまた爆弾を置いて爆破する。それを繰り返した。

 やがて、ティガレックスの身体に赤い筋が走った。手足が特に赤くなり、速さが増す。

 怒り状態だった。

 凄まじい突進と、砂の固まりを飛ばしてくる攻撃によって、セエは大ダメージを受けた。

 なんとか、高台に登り、攻撃を逃れ回復する。

 下で、突進してきたティガレックスの歯が岩壁に刺さって、ジタバタしていた。

 その隙に飛び降り、距離を取って、ティガレックスが歯を抜いてこちらを見た直後に閃光玉を投げてまた目を回した状態にし、また接近して爆弾を置いて爆破させた。

 大爆発が起こった途端、ティガレックスが断末魔の声を上げて倒れた。

 そして、絶命した。

「……やった…。」

 セエは、ズルズルと岩壁を背に、座り込んだ。

 集中力と血が足りたいためか、目の前が暗くなりかけた。

 ヤバいと思って、急いで回復薬グレートを飲もうとした時。

 反対側の岩壁の上から何かが飛び降りてきて、セエはその影に覆われた。

「はっ?」

 上を見上げた時、黄色と青の巨体が降ってくるのを見た。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

「一匹じゃなかった!?」

 

 集会所のハンターギルドでは、ちょっとした騒動になっていた。

 この地域に生息していないはずのティガレックスが、もう一匹いたという報告が入ったからだ。

「番か!?」

 それだとしたら、繁殖が行われている可能性があった。

 セエに倒されて死んだ一匹を今解剖に回して、調べているので、まだ繁殖しているかどうかは分からない。

 

 集会所の様子を出入り口付近で、ルイズが聞いていた。

 やがてルイズは、足早にその場を去り、家に帰った。

 

「…どうだった?」

「大変なことになってるわ。」

「そうか…。」

 サイトとルイズは、そう会話をし、それからベットの方を見た。

 ベットには、意識がまだ戻らないセエが寝ていた。

 帰ってきた…といより、搬送されてきたという方が正しいだろうか。とにかく意識が無いまま、治療された状態で運び込まれてきた。

 セエがティガレックス討伐に向かったのは、二日前。そして今日までまだ意識が戻らない。

 クエストを終了させた直後に、もう一匹いたティガレックスに襲われ倒れたセエを、セエを迎えに来た班が見つけ、回収して治療して村に戻しに来たのだ。

 五体満足だったのが奇跡的で、直前に飲んでいた回復薬グレートが効いていたため、辛うじて命は取り留めた。

 苦しそうに呼吸を繰り返すセエの姿は痛々しく、サイトは知らず知らずのうちに拳を握りしめていた。

「…まだ起きないにゃね…。」

 そこへトウマがやってきた。

「ここまでやられたのは、久しぶりにゃ。」

「前にもこんなことが?」

「さすがにクエスト直後に別の個体にやられたのは初めてにゃ。まだ新米だった頃に、散々色んな飛竜種に負けてきて、よく大怪我してたにゃ。そのたびに、こうして寝込んでたにゃ。」

「……それでもハンターをするなんて…。」

「異常だと思うかニャ? けど、ご主人は、ハンターになるのを子供の頃から志してきたにゃ。本当に好きでやってるにゃからお前達がとやかく言う筋合いはないにゃ。」

 トウマは、そう言いながら、セエの頭に乗せていた濡れタオルを桶に入った冷たい水で濡らして絞って、また乗せた。

「…なあ、ルイズ…。」

「言いたいことは分かるわ…。でも…。」

「俺…! 敵討ちしたい!」

「おいおい、何言ってるのにゃ?」

 トウマが呆れたように言った。

「そのティガ…ってのが、別の地域にいるんなら、攻略法だって伝わってるんだろ!? セエさんだって、一匹は倒せたんだ! 俺達だって…。」

「村長のクエストを二人でやっとクリアしてるような、半人前が…、轟(とどろ)く竜なんてあだ名を持つ獰猛極まりない飛竜種に勝てるわけないにゃ。無駄死にで終わるにゃよ。」

「そんなのやってみなきゃ…。」

「そのやってみなきゃで、死ぬっていってるにゃ!」

 トウマが怒鳴った。

「いいかにゃ。絶対に! 余計なことをするにゃよ!」

 怒鳴られて固まった二人を置いて、トウマは水の入った桶を抱えてキッチンに引っ込んだ。

 しかし、トウマの願い空しく…、トウマがいなくなったのを見計らってサイトとルイズが道具をかき集め、あっという間に準備をすると、家から出て行ってしまった。

 

「…う……っ。」

 サイトとルイズが出て行った後、間もなくセエが目を覚ましたのだった。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 砂漠エリアを、サイトとルイズが歩いていた。

「ねえ、どうするつもり?」

「このエリアにいるんなら、採集クエストでも出会うはずだろ? 飛竜って縄張り意識が強いらしいし。」

「……でも私達…、ティガレックスの特徴なんて知らないわ。」

「見たこともない奴が出たら、そいつだ。」

 ちなみに、二人は、砂漠の採集クエストで集会所に応募し、こうしてまんまと砂漠エリアに入ったのだ。

 ただし、ティガレックスを見たら即座に逃げるようにという注意つきでだ。

 キャンプ地で、栄養剤グレートを飲み、鬼人薬グレートや、硬化薬グレートを飲んだ。

「ルイズ、見えてんだろ?」

「……。」

「いないのか? どうなんだ?」

「……いるわ。でも、ティガレックスかどうかは分からないわ。」

「よし! じゃあ、マークがあるところに行こうぜ!」

「待って! このことがバレたら、今度こそハンター資格を剥奪されるかも知れないわよ?」

「けど、俺…、このままセエさんだけが傷つくのを見てられねぇんだ! イヤなら、俺一人でやる! ルイズだけでも帰れ。」

「何言ってんのよ! 竜の位置も分からないのに、できるわけないじゃない! それに…、腹が据えかねてるのは、あんただけじゃないんだからね!」

「ルイズ…。」

「こうなったら、何が何でもティガレックスを倒すわよ。」

「…おう!」

 二人は、手を合せ合って、そしてルイズの自動マーキングスキルで探知している竜のマークの位置に向かった。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 サイトとルイズは、そーっとそのエリアに踏み込んだ。

「…いる!」

「でかっ!」

 小声で言う。

 背中を向けているが、恐竜のような無骨な鱗に覆われた太い尻尾と強靱そうな後ろ足が見える。

 身体の色は、黄色と薄い青で彩られ、色合いは悪くない。

 ふいに、ティガレックスが顔を上げて周りを見回した。思わず身構えたが、こちらにはまだ気づいてない。

「竜って言うか…、マジで恐竜じゃねぇかよ…。」

「なにそのきょうりゅうって…。」

「帰ったら話す。」

 そんな話を小声でしている間に、くるりっと方向転換したティガレックスがこちらの方にのっそのっそと歩いてきた。

 ここまで来たのだ、やるしかないと、二人が身構え、サイトは剣を抜き、ルイズは弾を込めて照準を合わせた。

 やがてティガレックスが二人の存在に気づいた。

 そして周囲にある小岩や砂を巻き上げるほどの強力な咆吼をあげた。

 高級耳栓を発動しているサイトには効かず、サイトは、ティガレックスに迫った。

 ルイズがティガレックスの顔めがけて撃つ。

 しかし、まったく怯まないティガレックスは、翼と言うには、あまりにも発達した両腕の爪で地面を掴むようにして岩をめくりあげ、押し出すように投げてきた。

「キャアアアアア!」

「ルイズ!」

 岩の塊が飛んできて、ルイズは吹っ飛ばされ、直後ティガレックスに接近していたサイトの身体を、凄まじいスピードで身体を回転させたティガレックスの尻尾が襲い、岩壁に叩き付けられた。

「がっ…。」

 その攻撃力に、ズルズルと岩壁を滑るように倒れるサイト。

 そんなサイトに追い打ちをかけるように、ティガレックスが口を開けて猛ダッシュしてきた。

 サイトは、力を振り絞って横に転がる。岩壁に衝突したティガレックスの口が、歯が、岩壁に刺さった。

 ジタバタと暴れるティガレックスからサイトは、ヨロヨロと離れた。

 そして急いで回復薬グレートを飲んで、ルイズの方を見ると、ルイズは、ヨロヨロと回復薬グレートを飲みつつ岩に寄りかかっていた。

「る、いず…!」

 背後では、ティガレックスが岩壁から解放され、サイトの背中に向かって口を開いた。

 それを見たルイズは、咄嗟にライトボウガンを撃った。弾はティガレックスの口の中に命中する。だがそれでもティガレックスは怯んだ。

 ハッとしたサイトは、大慌てでティガレックスから離れた。

 だが離れようとした直後、凄まじい猛ダッシュによる噛みつき攻撃を受けた。

「ぐっ!」

「サイト!」

 噛みついたティガレックスは、そのままサイトを横に放り捨てるように首を振って口から離した。

 放り捨てられ、転がされるサイトに向かってティガレックスが跳んだ。

「ぐえっ!」

 サイトは、下敷きになり、吐血した。

 そんなサイトの上からどいたティガレックスは、発達した腕と爪を使って横になぎ払った。

 ルイズは、必死にライトボウガンを撃つ。だがまったく注意がこちらに向かない。

 その間にも、サイトを爪先で、転がし続けるティガレックス。食らう気も、本気で殺す気もないらしい。ただただ遊んでいるのだ。

 それは、まるで虫けらを転がし遊んでいるようである。

 サイトは、もう抵抗する力も残ってないのか、されるがままだ。

 ルイズは、後悔した。サイトに賛同せず、なんとしてでも止めるべきだったのにと。

 やがて、飽きたのか、ティガレックスがトドメとばかりに、サイトに向けて大口を開けようとした。

 その直後だった。

「うぉらあああああああああああ!」

 聞いたことがある男の声がして、大きな刃がティガレックスに振り下ろされた。

 ティガレックスは、驚き、首の横を切られて怯んだ。そして後方に大きく跳んで逃げた。

「せ…、セエさん!?」

「逃げるぞ!」

 セエは、大剣を背中に引っかけると、転がっているサイトを掴んで抱え上げ、ルイズの方へ走ってきた。

 ルイズは、ハッとして、セエと共にエリアから走って逃げた。

 背後でティガレックスが追ってくる気配と音や咆吼が聞こえる。しかし振り向いている暇はなかったし余裕も無かった。

 キャンプ地に逃げ込み、セエが急いでネコタクチケットを納品して、三人は迎えの馬車に乗って撤退した。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 村に帰ると、村長が集会所に集まっていたハンターギルドの面々を従えて出迎えた。

「……何か申し開きはあるか?」

「……ありません。」

 馬車の中で傷を癒やしたサイトと、ルイズは、俯いたまま弱々しく答えた。

 セエは、その様子を傍観していた。

「なぜ、このようなことをした?」

「…セエさんの敵討ちを……。」

「誰がそんなことを頼んだ?」

「俺の独断です。」

「いいえ。私も同罪です!」

「ルイズは、違う! 俺が無理矢理…。」

「いいえ、私もやりたかったの。だから同罪よ。」

「……ティガレックスを見たら、逃げるようお触れをだしておったというのに…。お主らには、罰が必要じゃ。」

 それを言われ、二人は押し黙った。

 今度こそハンター資格を剥奪されると身構えていると。

「…二か月の謹慎処分とする。」

「…えっ?」

「それまで一切のクエストは許さぬ。」

「村長…。」

「セエには、しっかりと感謝するのじゃぞ。今日は、これにて解散!」

 村長がそう叫ぶと、村長はギルドの面々を連れて去って行った。

 残された三人は、ポカンッとしていた。

「……村長には、感謝するんだよ?」

「………はい。」

 サイトとルイズは、知らず知らず泣いていた。

 村長の寛大な処罰に。

 

 その後家に帰って、トウマにこってり怒られたのだった。




セエは、G級とはいえ、ティガレックスを相手にするのが初めてで、そのため、重装備で行きました。
けど、実はもう一匹いて、クエスト終了直後に襲われてしまい大怪我。
セエの怪我を見て、敵討ちをしたいと思い立ったサイトとルイズは、勝手にもう一匹のティガレックスを討伐するため、採集クエストを利用して砂漠に。
結果は、言わずもがな。
セエに助けられて、辛くも逃げ延び、そして村長の寛大な処罰で謹慎処分を受けたということにしました。

感想欄で、雑魚って言われてるけど、いつか、私も…アイツ(ティガレックス)を雑魚呼ばわりできるようになるのだろうか?


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第四十四話  ソロクエスト(サイト編)

今回は、謹慎の終わりと共にサイトのソロクエスト。

イャンクックの大量発生クエストに挑みます。


 

 サイトとルイズの二か月の謹慎処分中に、セエがもう一匹のティガレックスを退治した。

 ギルドの調査結果によると、両方とも雄で、あの二匹以上はいなかったことが分かった。

 二匹のティガレックスが、なぜこの地域にやってきたのかは分からないが、ある者はあの二匹は兄弟ではないかと言っている。

 まあ、モンスターの事情など人間には分からないし、問題となったティガレックス二匹が死んだ今となっては関係のないことであるので、この件は解決…ということになった。

 けれど、引き続き狩り場に、この地域に住んでいない個体がいないかどうか警戒しつつ、砂漠地域の流通の再開やティガレックスを警戒するお触れは無くなった。

 

 そうして、二か月が過ぎた……。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 サイトは、浮かれていた。

 双剣ドスネイルを持って踊っていた。

「ちょっとぉ、浮かれすぎじゃない?」

「だってよぉ! 明日やっとクエスト受けれるんだぜ!」

「…あんた一人でやるクエストね。」

「あー、早く明日になんねーかな!」

「もうちょっと緊張感持ちなさいよ。下手すると死ぬわよ?」

「分かってるって!」

「わかってなーい!」

 浮かれ過ぎているサイトに、ルイズは怒った。

「ただいまー。って、うわっ。剣を家の中で振り回すな。」

 そこへセエが帰ってきて、双剣持って浮かれているサイトを見て驚いた。

「そんなに楽しみだった?」

「だって、二か月も待ったんですよ! 身体がなまってなまって…。」

「鍛錬はしてただろ?」

「こうなんですか? 緊張感って言うの? それがなかったから…。」

「なるほど。じゃあ、何を狩るかは決めたんだね?」

「あっ…。」

「決めてないの?」

「なんで肝心なこと忘れてんのよ!」

 二人に呆れられ、サイトは、しゅんっとした。

 その後、サイトがやるクエストを決めた。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 で……、結局なにを狩るかというと。

 

「大怪鳥の大発生?」

「たくさんいるイャンクックを、時間切れまで狩り続けるクエストだ。」

「数は?」

「決まってない。タイムアッップか、ネコタクチケットを納品するかしないと終わらない。」

「持久戦って…ことね。」

「数は決まってないけど、たくさん狩れば狩るほど報酬も良くなるから、頑張ってたくさん狩ってもらおう。」

「お待たせ!」

 そこへ準備を終えたサイトが走ってきた。

 変わらず、リオソウル装備で、ドスネイルを装備している。

「あのセエさん…、自動マーキングスキルないけど、だいじょうぶっすよね?」

「自動マーキングスキルがない時はどうしてた?」

「あっ。」

「そういうこと。忘れないように。」

「はい。」

 初心忘れるべからずとはよく言ったものだが、サイトにしてもルイズにしても、まだまだだと思い、セエはため息を吐いた。

 集会所の受付で手続きを済ませ、三人は出発した。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 大怪鳥の異常発生。

 その名の通り、怪鳥というあだ名を持つイャンクックが大量発生した狩り場で、イャンクックを時間切れか、ネコタクチケットを自分で納品するまで狩り続けるクエストだ。

 ランゴスタ(巨大昆虫)の大発生など、大発生系のクエストはあるが、飛竜種の大発生は、決まった数がない。そのため、狩りのルールで決まっている時間内、または、自分自身の持久力などを考え、自らクエストを終了させるかでクエスト終わることになっている。なので、一匹で終わる者もいれば、何十匹も倒して終わる者もいたりと、成果はバラバラだ。

 ただし、数を倒せば報酬が高くなるシステムなので、狩れば狩るほど得ではある。

「15頭以上までだね。ボーナスが付くのは。」

「それ以下は?」

「それ以下でもボーナスは付く。2~3頭からボーナスがつくけど、でも、16頭狩っても15頭以上のボーナスしか付かない。」

「つまり最大で15匹倒せって事ね。やれる? サイト。」

「うーん…。」

 送迎の馬車の中でそんな会話をしていてサイトに話を振ると、サイトは悩んだ。

 今の自分の力量と装備で、そこまでの数を倒せる自信は…正直なところ、ない。

「最低でも五匹は倒させろって、村長が…。」

「マジっすか!?」

「無理そうなら、2~3匹でもいいぞってさ。」

「急にレベルが下がった!」

「ちょっとぉ、私がガノトトス倒せたんだから、あんたも頑張りなさいよ! イャンクックぐらいで後れを取らないでよ!」

「うぅ…。」

 ルイズにプレッシャーをかけられ、サイトは呻いた。

「……そのイャンクックに、あんなに苦労してたのにね。」

「…うっ。」

 目を細めてそう呟いたセエの言葉に、ルイズは固まったのだった。

 

 そしてキャンプ地に着き、支給品を取ろうとしたが…。

 

「げっ!? 地図とネコタクチケットしかねぇ!」

「この手のクエストは、こんなもんだよ。」

 驚いているサイトに、セエがなんてことは無いように言った。

「俺…だいじょうぶかな?」

 2ヶ月のブランク後のイャンクック祭りに、出発前の浮かれた様子はどこへやらなサイトであった。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 キャンプ地を抜け、モンスターがはこびるエリアに入ると……。

「うおおお! 早速ぅ!」

「ほら、頑張れ。」

「頑張って、サイト!」

 イャンクックが二匹いた。この分だと自動マーキングスキルが無くても、すぐにイャンクックを見つけられるだろう。

 サイトは、フーッとと息を吸って吐き、双剣を抜いて走った。

 野生の穀物を食んでいたイャンクックがサイトの存在に気づく。そして鳴き声を上げる。

「うおおおおおおおお!」

 サイトは、早速、鬼人化を使いイャンクックを切りつける。

 サイトの大声に、もう一匹のイャンクックも気づき、驚いたように飛び跳ねた後、サイトに向かって突撃してきた。

 サイトは、切り刻んでいたイャンクックから離れると、突撃してきたもう一匹がもう一匹に激突した。

 大量発生しているとはいえ、イャンクック達は協力しているわけではない。だが倒すべき敵はハンターだと第一にしているのか、お互いに攻撃が当たっても構わずサイトを狙ってくる。

 サイトは、剣を握ったまま走り回り、イャンクック達を誘導する。お互いの攻撃がお互いに当たるように。

 やがて最初にサイトから攻撃を受けた一匹が先に倒れて絶命した。

 弱った残る一匹を、サイトは攻撃した。

 その時。

「あっ、別のイャンクックが来たわ!」

 別のエリアにいたイャンクックが飛んできたのだ。

「倒すごとに増えるんだよな。」

「それ早く言ってよ! サイト!」

「分かってる!」

 サイトは、もう一匹が飛びかかってきたので避けた。

「……成長したなぁ。」

 今のところ無駄なく動いているサイトに、セエは惚れ惚れしたように声を漏らした。

 しかし、これは集会所クエスト。モンスターの体力は、村長クエストの約二倍だ。

 二匹倒すだけで、もう時間の半分は使っている。だがそれでも、村長のクエストのイャンクックに苦戦した頃を思えば、とんでもない成長ぶりである。

 ところが、サイトの体力が限界に達しそうになっていた。

 軽いとはいえ、重さはある鎧で全身を包んでいるうえに、もっと若い頃からハンターとして身を立てるために鍛えてきたセエと違い、元々ただの一般人であるサイトは根本的な身体のつくりの違いもあり精神力に対して身体が悲鳴をあげる。しかもハルケギニアで散々助けになっていたガンダールヴの力がこちらでは通用しないのもあり、一時的な身体能力の向上も望めない。謹慎を言い渡された二ヶ月間、鍛えてきたもののそれでも十代半ばを戦いとは無縁の普通の一般市民として過ごした貧弱な身体。ちょっと鍛えたくらいじゃ、やはりこちら側のハンターの人間には追いつけない。

「ぐっ…は…。」

 やがて疲れて足をもつれさせたところに、尻尾の一撃がきて吹っ飛ばされた。

 そこへもう一匹のイャンクックが大きなくちばしを振り下ろそうとした。それを間一髪で転がって避ける。

 転がった直後、くちばしを振り下ろしたイャンクックの首に片方の剣を突き刺した。

 刺されたイャンクックは、絶叫をあげて首を振る。その反動で剣が抜けてサイトは後ろに倒れた。

 その直後、もう一匹が炎を吐いた。

「アチチチチ!」

「サイト!」

「ルイズ、ダメだ。」

「でも!」

「君の時もそうだけど、これはサイト一人でやるクエストだ。手を出すのはルール違反だ。」

「っ…!」

 ルイズは、自分がしたガノトトス討伐クエストのことを思い出し、唇を噛んだ。

 炎で炙られたサイトは、転がり、追撃してくるイャンクックからなんとか離れて体制を整えた。

 その時、クエストのタイムアップが近づいていることを告げる音が聞こえた。

「あと、一匹ーーー!」

 それが最低でも狩らなければならないイャンクックの頭数だ。

 サイトは、力を振り絞り鬼人化を使い、イャンクックを切り刻んだ。

 やがて、弱っていたイャンクックが倒れて絶命した。

 なんとか三匹倒せて気が抜けた直後、もう一匹の元気なイャンクックのくちばしの攻撃をもろに受けた。

「うぎゃ!」

「あーもう、油断するから…。」

「サイト! 時間が無いわ!」

「もう無理そうだな。」

 セエは、そう言って、クエストを切り上げるようにサイトに促した。

 サイトは、ゼーゼーと呼吸しながら追ってくるイャンクックから走って逃げつつエリアを移動し、キャンプ地に戻った。

 ヨロヨロとネコタクチケットを納品してクエスト終了の音を聞いた直後、バタッと倒れた。

「サイトーーー!」

「うーん…。体力不足が今後の課題かな。」

 駆け寄って介抱するルイズと、冷静に今後のことを検討するセエだった。

 

 

 その後、ココット村に帰り、村長に報告して、なんとかサイトとルイズは、これからまたハンターを続けてもいい許可をもらうことが出来たのだった。




やっぱ、ガンダールヴの補正無しだと、元一般人にはずっと走り回り続けるのはキツイと思うのです。だってゲームだとフルマラソン状態だもん…。
集会所じゃなければ、もっと倒せたと思います。

サイトとルイズは、なんとか合格ラインを乗り越えてハンター資格剥奪の危機を乗り越えました。
けど、まだまだこれからです。
あと、今後も、ティガレックスのように別の地方からのモンスターが乱入してくる予定もあります。
ただし、MHPシリーズに限定しますが…。
コイツ出して欲しいってリクエストありましたら、活動報告で受け付けます。


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第四十五話  キリンを狩ろう その1

題名通り、キリン討伐だけど…?

感想欄でのリクエストは、確か違反だったっけ?
申し訳ありませんができれば活動報告の方にお願いします。

今回は、キリンが不憫?
そして感想欄でいただいた、アイツが……。


 

「困ったにゃ…。」

「トウマ? どうしたんだ?」

 昼食の給仕をしていたトウマがため息と共に呟いたので、セエが尋ねた。

「最近、野菜の値段が高騰してるにゃ。」

「こうとう?」

「それがどうしたんだ?」

「問題ニャよ。家計が圧迫されるニャ。ニャー達は、限られた予算でご主人達に栄養満点、美味なご飯を作ってるニャよ。」

「給食と同じだな。」

「きゅうしょく?」

「俺が元いた世界で学校で出てた昼ご飯。」

「ふーん。」

「じゃあ、もっと払おうか?」

「猫婆との契約もあるにゃ。だからそう簡単にはいかないにゃよ。」

「そうか…。」

「まあ、こんなことは、何度もあったからなんとか帳尻を合せるにゃ。」

「ごめんな。負担ばっかりかけさせて。」

「これが仕事にゃ。」

 

 そんな話をした後、外出して道具を買いそろえていた時、たまたま聞こえた村人達の噂で……。

 

 雷をまとった馬にようなモンスターが、野菜を食い漁っていると聞いた。

 

 

「雷をまとった馬~?」

「キリンだな。」

「キリン? キリンって…あの首の長い…。」

「それは知らないけど、俺は狩ったことがある。頭に一本角があって、青白く光った古龍種の一種だ。」

「馬が龍?」

「別名、幻獣って呼ばれてる。一角獣によく似てて、滅多に姿を現わさないんだけどな……。」

「けど、そいつが野菜を食ってるって…。」

「野菜の高騰の原因は、キリンかな? だとしたら集会所のギルドが討伐クエストを設ける。」

 

「おーい、セエ。」

 

「ん?」

 そこへ、セエ以外のハンターの男がセエに声をかけてきた。

「聞いたか? ギルドの中央から直々にキリン討伐クエストが入ったらしいぜ。」

「それって野菜を食ってるっていう?」

「なんでも畑どころか、荷車まで直接襲うようなったらしいんだ。」

「ってことは…、キリンは複数いるってことか。」

「二匹いるのは間違いないだろうなぁ。俺、このクエストやるぜ。村長もこの辺りの農村を荒らしてるキリンを狩るクエストを出すってさ。」

「そうか。」

「じゃあな。」

 ハンターの男は、そう言って去って行った。

 セエは、顎に手を当て、何か考え込んだ。

「そうだ。」

 ポンッと手を叩いて、サイトとルイズの方を見た。

「二人とも。キリンを狩ってみないか?」

「俺達がですか?」

「キリンを素材にした武器は、当然だけど雷属性なんだ。属性系の武器を増やせば、これから先、飛竜種との戦いで有利になる場合がある。」

「そういえば最近、新しい武器作ってませんね。」

「どうする? やってみるか?」

「俺はやりたいな。ルイズは?」

「サイトがやるなら私もやるわ。」

「ただ、キリンは、かなり俊敏で雷を操るって点じゃ、フルフルより厄介だ。それでもやれるか?」

「やってみないと分かりませんよ。」

「それもそうか。危なくなったらいつも通りリタイアだ。」

「極力それしないように頑張りまーす。」

 

 こうしてキリン討伐クエストに、サイトとルイズが挑むことになったのだった。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 キリン。

 滅多に姿を現わさない幻のモンスターと言われている。

 そのおとぎ話に出るような一角獣に似た姿や、雷を自在に操る様から巷では幻獣と呼ばれており、いまだに正確な生息地や生態が不明な点が多い古龍種の一種でもある。

 美しい外見とは裏腹に、気性は荒く、縄張りに入ってきたハンターには容赦のないのは、他の飛竜種と同じである。

 

「幻のモンスターくせに、野菜畑荒らしって……。」

「……。」

「セエさん?」

「胸騒ぎがするな…。」

「キリンって強いんですか?」

「……。」

 セエは、答えなかった。何か思い詰めたように俯いている。

 やがてジャングルのキャンプ地に到着した。

「?」

 セエは、顔をしかめた。」

「セエさん? どうしたんです?」

「……キリン以外のマークがある。」

「本当だわ。二つある。どっちがキリンなのかしら?」

「それは…行ってみないと…。」

 セエは、胸騒ぎを感じ続けながら、支給品を取らせ、二人と共に先へ進んだ。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 狩り場を進み、動いていないマークのあるエリアに踏み込んだ。

 そこには、まさに…幻獣と呼ぶにふさわしい美しい一角獣の姿をした青白い一頭のモンスターがいた。

「あれが…。キリン!」

「綺麗…。なんて、綺麗なの…。」

「……。」

 キリンの美しさに見惚れる二人を余所に、セエは、もう一つのマークが地図上で不自然に動いているのを気にしていた。

 このクエストは、キリンを一頭狩るだけのクエストのはずだ。だからもう一匹いるはずがない。

 ならば、あのマークの正体はなんだ?っと考えていると、近くで落雷が落ちた。

「うわあああああああああ!」

「きゃあああああああああ!」

 こちらの存在に気づいたキリンが攻撃を仕掛けてきたのだ。

 我に返ったセエは、走ってエリアの端に逃げた。いつも通り二人の狩りを監督し、リタイアのタイミングを計るためだ。

「セエさん、どうしたらいいです!?」

「キリンは、俊敏だ! 隙を見て攻撃するしかない! あと、角が破壊できるから角を狙え! そこが弱点だ!」

「ルイズ、援護頼むぜ!」

「分かってるわよ!」

 ルイズがそう言いながらライトボウガンに弾を込めて、キリンを狙う。

 キリンは、見た目通りの俊敏に動き回り、両前足をあげて雷を発生させる。

「ち、近づけねぇ!」

 雷を恐れてサイトは接近できずにいた。

 そんなサイトに向け、角を突き出したキリンが突進してきた。

「うわわ!」

 慌てて双剣を盾にして突進を防ぐ。角と剣の刃がぶつかり火花が散り、サイトは、腕を跳ね上げられるように弾かれ、キリンは左にそれながらサイトの横を通り過ぎた。

 すぐにクルッと方向転換したキリンは、再び角を突き出してサイトの背中を狙って突進してきた。

「サイト! 後ろ!」

「くっ!」

 なんとか反応して後ろを向いたサイトは、ギリギリで角を避け、通り過ぎる直後にキリンの身体を切りつけた。

 ルイズは、ライトボウガンを撃つ。だがキリンは、ジグザグに走り回り当たらない。

「うおおおおおお!」

 サイトは鬼人化し、キリンに切り掛かった。

 途端、キリンは、自らの身体に向けて落雷を落とした。雷をまとうキリン自身に雷が落ちたとてダメージはない。だが、接近した者はひとたまりもない。忽ち感電したサイトは膝をついた。

 膝をついたサイトの下に角を入れたキリンは、そのまま角を振り上げ、サイトを後ろへ投げ飛ばすように飛ばして転がした。

「~~~~っ!!」

「サイト!」

「攻撃の手を緩めるな、ルイズ!」

「わ、分かってるけど…。当たらないのよ!」

「よく観察して、隙を見つけるんだ!」

「くっ…。」

 ルイズは、ライトボウガンの照準を合わせようと必死になった。

 その時、倒れているサイトの前にいるキリンが雷を放とうと身構えた。

「! 今!」

 その隙を見逃さずルイズは、撃った。

 弾は、キリンの身体と、角に命中した。

 キリンは、急所である角を攻撃されて怯み雷が飛散した。

「この…野郎!」

 立ち上がったサイトが怯んでいるキリンの角めがけて、剣を振った。

 ガキンッと音を鳴らしてキリンの角と剣の刃がぶつかった。

 ライトボウガンの一撃より効いたのか、キリンは、甲高い鳴き声を上げ、激しく首を振りサイトは角から逃れるために距離を取らざる終えなかった。

 体制を整えたキリンは、前足をあげ、前方に向かって落雷を落としてきた。

 サイトは、咄嗟に横に転がってそれを避けた。

「この、この!」

 キリンの隙を突いてルイズが撃ちまくる。

 キリンは、サイトを近づけさせまいと周囲に落雷を落としまくる。しかし充電するためか、隙は出来る。そこを突けばいいのだと学習した二人は、的確にキリンを攻めた。

「おおおおおおおおおおおおおおお!」

 サイトが渾身の斬撃を当てた瞬間、キリンの角が折れた。

 キリンは、悲痛な鳴き声を上げた。

 やがて、よろついたキリンが、逃げようと別のエリアに通じる道へ移動を始めた。

「逃がすかーーー!」

「サイト! 気をつけろ!!」

「えっ?」

 セエの絶叫を聞いた直後だった。

 

 キリンが向かった先の別のエリアに通じる道の先から、くすんだ緑色っぽいような黄色っぽいような巨体が現れ、その醜いイボイボのある発達した大きな下顎と大きく上へと持ち上がった上顎で……、弱ったキリンを食らった。

 

「えっ…?」

「なに…あれ?」

 目の前で、ガリガリボリボリと、キリンを貪っているそのモンスターに、三人は呆然とした。

「マズい…。逃げるぞ二人とも!」

「えっ、えっ?」

 混乱する二人に冷や汗をかいたセエが、逃げるよう促す。

 キリンよりもずっと大きなそのモンスターは、キリンを食べ終えると、三人の方を見た。

 キリンの皮とたてがみの毛が歯に挟まり、ダラダラと垂れる涎には血が混じっている。上顎と下顎を繋ぐ皮の部分は、いかなる獲物を捕えて食らうと言わんばかりに大きく口を開けられるように発達しているように見える。

 低いうなり声を上げたそのモンスターは、翼は無く、腕は小さく、だが尻尾は顔よりも縦長に太くて長い。そして鱗とごつい皮に覆われた身体から生えた後ろ足は地までの高さが巨体の割に低いように見え、よく発達しており、顔より太い首が異様に長かった。それこそ胴体と首の境目が分からないほどである。

「逃げるぞ!」

「は、はい!」

 三人がキャンプ地に向けて走り出した直後、そのモンスターは、ドスドスと、だが巨体に似合わないスピードで追ってきた。

「きゃっ!」

「ルイズ!」

「っ、…くそっ!」

 ルイズがこけた。

 セエが振り向き、大剣を抜いて、追ってくる謎のモンスターの突撃を剣で防いだ。

「セエさん!」

「先に行け!」

「ルイズ、立て!」

「うぅ…。」

 サイトに助け起こされ、ルイズはサイトと共に急いで走った。

 セエは、大口を開けてきたモンスターから逃れるため横に転がり噛みつかれるのを避けた。

「おおおおおおおおおおお!」

 セエは、渾身の力で大剣を振り下ろし、モンスターの太い首の横を切った。

 飛び散る血と鱗の一部。

 セエは、顔に張り付いたその鱗を取ると、大剣を背負い直して、一目散に走って逃げた。

 背後でモンスターが追いかけてくる気配がする。

「クエスト、リタイアだ!」

 走りながらそう叫ぶ。

 しばらく逃げ続けていると、迎えの者達が来て、モンスターを牽制しつつ、セエを回収し、一目散に逃げ去った。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 急いでセエが転がり込んだ馬車の中で、サイトとルイズがセエに駆け寄った。

「セエさん、だいじょうぶですか!?」

「なんとか…。」

 ハアハア、ゼーゼーと荒い呼吸を繰り返すセエは、ドカリと座り込んだ。

「なんなの、あれ…? キリンが…。」

「帰って村長と…ギルドに報告しよう…。」

 セエは、片手に握りしめていたモンスターの鱗を大事にしまった。

 

 

 そして逃げ帰ったココット村で、すぐに村長のところに行き、それから集会所でギルドの人間達の前で鱗を見せた。

 

「よくぞ持ち帰ったな。」

「…ギリギリでした…。」

 それから更にモンスターの特徴や、キリンが食べられたことなどを伝えた。

 ギルドの人間達がざわっとなる。

 まさか…、そんなはずは…っという声がちらほら聞こえる。

「あのモンスターはいったい?」

「……悪魔だ…。」

「えっ?」

「悪魔の顎…。イビルジョーだ。……おそらく。」

「いびるじょー?」

「なんてことだ…! ティガレックスに続いて、イビルジョーまで、この地方に!?」

「近頃の、キリンの野菜荒しは、イビルジョーが原因か?」

「環境を破壊されて餌を奪われて仕方なく…か。」

「あの…イビルジョーとはどういうモンスターなんですか?」

「君は知らないか…。イビルジョーは、まさに歩く胃袋だ。常に空腹に襲われていて、何かを食べるためだけに動き回っていると言っても過言じゃない、獣竜種と言われている。」

「聞いたところによると、古龍種すらも餌にする見境のなさで、せっかく狩った獲物が食われる被害や、環境破壊まで起こす厄介な種、らしい。」

「それで、キリンを…。」

「ココット村の村長。ジャングルの、狩り場の一帯をいったん閉鎖しましょう。」

「…うむ…。」

 

 イビルジョーという竜の存在が明らかとなり、狩り場を一時的に閉鎖することで被害を食い止めるという流れとなった。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 家に帰ったセエは、先に家に帰していたサイトとルイズに報告した。

 イビルジョーのことを。

「イビルジョー?」

「俺も初めて見た…。」

「いびる…、確か、悪魔って意味だったような…。ジョーは…、顎だったかな。」

「つまり、悪魔の顎って意味? 確かにすごい口だったけど…。」

「しばらくは、ジャングルへの出入りは禁止だってさ。」

「これからどうなるんです?」

「さあ? それは、ギルドと村長が決めることだからな…。」

 セエは、そう言うと、疲れたと言わんばかりにドカッと椅子に座った。

 

 

 

 こうして、初めてのキリンの討伐は、イビルジョーの乱入によってメチャクチャになった。




ティガレックスに続き、イビルジョー登場。
ナルガクルガの予定だったけど、キリンを出すことにしたので、イビルジョーに変更しました。可哀想に…キリンは弱っているところをバクッと食われました…。
イビルジョーの名前の意味って、悪魔の顎で間違いないですよね?間違ってたらすみません…。
まだ筆者は遭遇したことがありませんが、動画で見て驚きました。あんなデカいくせに攻撃が速いなんて…。

ギルドと連携して、ジャングルの一部を閉鎖してイビルジョーの被害を防ごうとしました。効果があるかどうかは不明ですが…。腹すかせたら人里にまで来そうだもの…。来るかな?

次回は、武器の強化かな?


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第四十六話  双剣(ドスネイル)を強化しよう

前に登場したイビルジョーの件は、序盤で。

今回は、サイトの武器の強化。


 この地方にいないはずの、イビルジョーという竜種の登場で、ジャングルの一部の狩り場が閉鎖となり、また各地でイビルジョーが別のエリアに現れていないかという調査が行われた。

 結果、現段階では、ジャングルでセエ達が遭遇した一匹しか確認されておらず、それでも一匹だけでもジャングルの一部の環境の破壊を引き起こしていて、それが影響してか、ジャングルに住むモンスターの一部が人里にまで現れるという事態が報告された。

 キリンの野菜荒しは、一応は沈静化したものの、見境なくすべてを食い荒らすイビルジョーの問題が残されることとなった。

 ギルドでは、イビルジョーが閉鎖区域を食い尽くした後、壁を越えて手っ取り早く獲物を得られる人里に来る可能性を考えて、封鎖を解くべきだとする意見と、見境の無い食欲による環境破壊をこれ以上広げないため封鎖を強化すべきだとする意見とに別れた。

 少ししてイビルジョーが目撃される、または、狩り場に現れることがしょっちゅうの地域のギルドからの資料で、イビルジョーが食らいすぎて生態系を狂わせ、終いには絶滅に追いやった種もいることなども明らかになり、ギルドは、すぐにイビルジョー討伐のクエストを設けることを決定した。

 セエからの情報や、調査隊の報告から、この地域に迷い込んできたイビルジョーがハードクラスか、G級クラスに匹敵する大物であることが判明し、討伐の依頼をイビルジョーの討伐に慣れたギルドのある地域に依頼し、その地域のハンター達に遠征で来てもらうことになった。

 よって、セエは、今回の件で出動することはなかった。

 

 ちなみに、セエは、その後、まだまだ半人前のハンター二人を無事に連れて帰ったことと、彼自身も五体満足で帰って来ることができたことを、ジャングルの狩り場の封鎖前に件のイビルジョーを目撃したココット村のハンター達に賞賛されたのだった。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

「仕方ない…。武器を強化しよう。」

 セエがそう言った。

「強化ですか?」

「そう。ドスネイルを、ドスネイル改にする。」

 セエは、サイトが装備しているドスネイルを指さして言った。

「結局…、キリンの装備は手に入らなかったし…、せめて武器を強化しよう。」

「そうですね…。」

「密林の封鎖っていつ解除されるのかしら?」

「あのイビルジョーが討伐されるまでだね。」

「今回はセエさんは行かないんですね。」

「あのイビルジョー…、ハードか、G級クラスだったらしいんだ。だから、イビルジョー討伐に慣れたハンターギルドのハンター達に依頼が行ったらしいよ。」

「そんな奴が…。俺達よく生きてたな…。」

「うん。正直、話を聞いたときは、生きた心地がしなかったよ…。」

「他のギルドに救援を要請するほどだから、事態はよっぽど深刻だったのね。」

「そういうことだろうね。」

 セエは、件のイビルジョーの迫力を思い出し、ハ~~っと重いため息を吐いた。

「ま、いいや。今回は、俺達の出る幕じゃないし、別のことをしよう。」

「武器の強化ですね。」

「そう。ハードのドスランポスから、ドスランポスの頭を手に入れよう。」

「頭ですか?」

「低確率だけど、報酬としても手に入るし、強化すればこれからの飛竜種戦で役に立つ。」

「ですよね~。」

「私の武器も新調したいわ。ガノトトスの素材が足りないの。」

「そうだったな。忘れてた。」

 

 っというわけで、武器強化のため行動することになった。

 

「それと、サイト……。」

「えっ?」

 いきなりセエに、肩を掴まれた。

「……肉が足りないな?」

「はい?」

「筋肉が全然足りてない! だから大量発生クエストでスタミナ切れ起こしたんだ! っというわけで、鉱物を集めると同時に筋力強化のため、ピッケル持って行くぞ!」

「ひええええええ!?」

「がんばれ、サイト。」

 悲鳴を上げるサイトに、ルイズが完全に他人事のように言った。

「ルイズも、ヘビィボウガン持てるように頑張ろう!」

「いやああああああ!」

 おまえも人のこと言えないぞと言わんばかりに、腕を掴まれ、ピッケルを持たされたルイズは悲鳴をあげたのだった。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 集会所星四つ、つまりハードクラスのドスランポス討伐クエスト。

 これは、ドスランポスを三匹倒さないといけないクエストだ。

「ま、楽勝だよな。」

「ほら、油断してると死ぬぞ?」

「だいじょうぶですって、今更ドスランポスくらいで後れを取りませんよ。」

「……このクエストがハードクラスだってことを忘れないようにね。」

 それ即ち、攻撃力や体力が村長やノーマルよりも高いということだ。

「俺だって、たまにやるけど、油断してるとゴリゴリダメージ受けて死にかけた…。」

「それって大剣の隙が大きいからじゃないですか?」

「……まあ…うん…。」

「そういうときは、臨機応変に武器を変えた方がいいと思うっすよ。」

「……。」

 最近、ハンターとしての技術力がついてきたこともあり、サイトも言うようなってきた。

「サイト。大剣使えない人が、他人の流儀を非難するなんてお門違いよ。」

 セエが、もう師としては限界かもっと思っていると、ルイズがサイトを咎めた。

「いや別に…俺は…。」

「そうやって調子に乗るからダメなのよ。」

「なんだと?」

「いい? あんたは、大剣どころか、ハンマーもランスも使えない。重たすぎるから。つまり、一撃の攻撃力が全然なのよ。それなのに、臨機応変? 大物の飛竜種にこそ、大きくて攻撃力のある武器の方がいいに決まってるじゃない。」

「う…。」

「武器の選択ができないうちは、そんなことをセエさんに言わないの。もちろん他のハンターにもね。」

「…わ、…分かったよ。すみません、セエさん。」

「ああ。別にいいよ。それと、ルイズ。」

「ん?」

「…ありがとう。」

「気にしないでください。調子に乗ってる使い魔を躾けるのは主人の役目だもの。」

 そんな会話をしているルイスとセエに、サイトは、いたたまれなくなった。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 その後、ギクシャクしながらドスランポスを狩り、頑張って、ドスランポスの頭を五つ手に入れた。

 そして、ココット村に帰った後、武器屋に行った。

「らっしゃい! 今日はどんなご用で?」

「武器の強化を…。」

「これを。」

「ドスネイル改ですね。材料は…揃ってますね。じゃ、少々お待ちを。」

 ドスネイルと、材料を受け取り、奥に引っ込んだ店主。

 しばらくしてドスネイル改に強化された双剣を机に置いた。

「おまたせしやした! ドスネイル改です!」

「やったーー!」

「やったわね、サイト。」

 一見すると形は変わってないように見えるが、手にしてみると性能が明らかに上がったのを感じてサイトは喜んだ。

「うーん…。」

「どうしたんです?」

「ここまで来たら、もっと属性のある武器を増やすのもありかなって思って。」

「例えば?」

「火属性とかは、どう? キリンは…、しばらくは無理だから、レッドサーベルか、コロナ辺りが欲しいね。」

「どう違うんです?」

「どっちも火属性で、違うとしたら、見た目と火属性の攻撃力の差かな。どっちが高性能とかないけど、強化の段階が多いのはレッドサーベルかな。」

「それでしたら、水属性の武器もどうですかい?」

「ああ、それもいるな。双剣の水属性で、ガノカットラスっていうのはどうかな? スリープショテルも強化してもいいし…。」

「やること多いっすね。」

「ハンターのほとんどは、腕を上げたり社会貢献するより、欲しいものを手に入れることに執着することが多いかもな。かくいう俺もそんな感じだし。」

「へ? そうなんです?」

「まあ、その物欲センサーのおかげで、うちも商売させてもらってるっすよ。」

 そう言って店主が笑った。

「あー、そう言ってたら、久しぶりにハードの蒼リオレウスの逆鱗を手に入れるために頑張ろうかな?」

「あんなに、手に入らない…手に入らないって…落ち込んでたのに、やる気が出たんですかい?」

「やっとね。もう、アイツ(蒼リオレウス)の顔は見飽きたから…。」

「…えっ?」

 サイトとルイズは、顔を見合わせた。

 二人はまだ知らない…。

 どれほど希少な素材を手にれるために、苦労しなければならないかを。




さすがにイビルジョーの討伐は、無理だと判断しました…。
MHPシリーズ以降の常に飢餓状態のあの危険極まりないタイプじゃないけど、ハードかG級クラスのイビルジョーということにしました。なので中央のギルドがイビルジョー討伐に慣れたハンターを遠征させるということにしました。

次回は、セエが久しぶりに蒼リオレウスから逆鱗を手に入れるために頑張ろうとするかも。(※筆者が挑戦します)


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第四十七話  お肉を焼こう

感想で、ご指摘いただき、今回は生肉を焼く回にしました。
ハンターの基本中の基本なのに、なんで忘れた私……。

ルイズの肉焼きセンスが壊滅的です。


 蒼火竜の逆鱗。

 その名の通り、蒼火竜…、蒼いリオレウスの逆鱗である。

 頭、または、尻尾にあるらしく、そこを破壊できれば手に入る………こともある。

 

「それが欲しいんですか?」

「……全然取れなくてさ。」

 サイトが聞くと、セエは、キノコ生えそうなほどズーーンと暗くなった。

 こりゃ相当だ…っと、サイトとルイズは、思った。

「で、でも、手に入らないなら仕方ないですよ? なあ、ルイズ。」

「…あんた、分かってないわね。」

「はあ?」

「セエさんのことちゃんと分かってないわ。」

「えっ? なんだよ、それ……って!? セエさん!?」

 見ると、セエは、床にうつ伏せで倒れていた。

「ほら、言ってたじゃない。ハンターのほとんどは、社会貢献とか腕を上げるとかより、欲しいものを手に入れるためにモンスターを狩ってるって。」

「……げきりん……げき…りん……。」

「しっかり! セエさん!」

「ハンターの物欲……半端じゃないわね。」

「……あっ。」

「?」

 急に顔を上げたセエに二人は訝しんだ。

「忘れてた…。すごく重要なこと。」

「えっ?」

「生肉…焼いたことないよな?」

「えっ?」

「そうだった…。ハンターの基本中の基本をやり忘れるなんてどうかしてた。」

 そう言いながら起き上がったセエ。

「基本中の基本?」

「肉、焼こう。」

「はい?」

「はい、決定。行こうか。」

「ええー!?」

 困惑する二人を余所に、セエは準備を整え、困惑している二人に準備するよう言った。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 そしてやってきました、森と丘。

「だー! また焦げた!」

「これで何回目よ!?」

「うっせぇよ!」

「はいはい、出来るまでやる。生肉無くなったら、アプトノトスを狩りに行こう。」

 すぐそこ行ったら、いるからね。っとセエは言った。

 ココット村の商店で買った肉焼きセットを使い、今現在サイトは、生肉をこんがり肉にするため悪戦苦闘していた。

「まったくもう、これじゃあアプトノトスも浮かばれないわ。」

「サイトが出来るようになったら、次はルイズだからね。」

「うっ…。」

 サイトの次は自分だと言われ、ルイズは呻いた。

「今度は、生焼けー!」

「肉から目を離さない。」

「はい…。」

「クルクルしっかり回す。回しすぎないように。」

「はい…。」

「……今!」

「よっ、っと、出来た! 上手に焼けたーー!」

 こんがりと程よい焼き加減に焼けた肉を掲げ、サイトは喜んだ。

 その後、タイミングを掴んだサイトは、三回に一回は失敗するが、こんがり肉を焼けるようなった。

「じゃあ、次はルイズだ。」

「うぅ…。」

 ルイズは、元々、良いところのお嬢様だ。食材に触る機会はほぼ無いに等しい。

 肉焼きセットの前に腰かけ、生肉をセットし、火を付ける。

 クルクルと回しながら焼いてると、ジュージューと肉汁が滴り、肉が煙で炙られる。

「美味しそうね…。」

 っと、呟いたルイズは、ついボーっと淡々と肉を回転させて続けていた。

 やがて…。

 そこには、灰色、黒っぽく染まってしまった元生肉が残った。

「ひでぇなこりゃ。」

「……。」

 サイトに肉が焦げたことを責めていただけに、ルイズは何も反論できなかった。

「さ、出来るまでやろうか。」

「…はい。」

 その後、一割生焼け、九割コゲ肉を量産するルイズであった。

「どーすんだよ、こんな生焼けと、コゲ肉…。」

「どっちも一応は食べられる。生焼け肉は、強走エキスと調合することで、強走薬になる。コゲ肉は…、錬金でモンスターのフンと調合することで生肉に戻る。」

「なんか、それヤダな。」

 錬金で戻るとはいえ、モンスターのフンと混ぜた肉は食いたくない。

「ああ…、もうお肉が無い。」

「狩りに行こうか。」

「……。」

「ルイズ?」

「出来るまでやる。時間いっぱいまでやって、それでも出来なかったらまたやる。」

「…うぅ…。」

 ルイズは、俯いて呻いた。

 自分の失敗で、無駄に大人しいモンスターであるアプトノトスが無駄に犠牲になることへ罪悪感。

 ルイズは、唇を噛んだ。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 そして…。

 

「は~。結局、二回も採集クエストに行って、時間いっぱい使って、一回も成功しないってどうなんだよ?」

 ルイズの肉焼きだけで、一日が終わり、家に帰ったのだった。

「こりゃ派手にやったにゃね。」

 トウマが、三人が持ち帰られてきた生焼け肉とコゲ肉の山を見て呆れて言った。

「捨てていけばよかったにゃのに。」

「戒めだよ。」

「にゃるほど…。」

 トウマは、ルイズを見た。

 ルイズは、背中を向けていてズーンっと暗くなっていた。

 サイトもなんと声をかけたらいいか分からず戸惑っていた。

「ここまで来ると、才能にゃね。」

「うぐっ!」

「おい、トウマ!」

 トウマの言葉が刺さり呻くルイズ。サイトは、トウマに怒った。

「本当ならハンター失格にゃよ?」

「そ、そんなことないですよね? セエさん。」

「……たぶん、ハンター資格すら取れないと思う。」

「そんな! ただ肉が焼くのが下手なだけで!?」

「焼いた肉は、スタミナ源! スタミナがないと竜どころかランポスだって狩れないんだ!」

「あと、寒いところじゃスタミナがゴリゴリ削られるニャから、必須ニャね。それに、時間が経ってもスタミナは減るにゃ。」

「…まあ肉を食べなくてもスタミナを維持する方は無くないけど。」

「その方法は?」

「強走薬を飲む。」

「えっ…、でも材料が…。」

「そう。ゲリョスを狩る必要がある。結局スタミナがないとやれない。」

「娘は、ガンナーにゃから、近接武器を使うハンターよりスタミナの消費は少なくても済むかもしれないにゃけど、いずれはスタミナ不足で倒れるニャよ。」

「俺が焼けばいいじゃん。」

「それだとソロクエストで、娘はどうするにゃ?」

「焼いたやつを俺が渡しとく!」

「それだと反則にゃ。」

「じゃあ、どうしろってんだよ!」

「上手に焼けるようになるしかないにゃ。」

「……トウマ。」

「にゃ?」

「焼き方教えて!」

 俯いていたルイズが振り向き顔を上げて叫んだ。

「いいにゃけど…。食材を無駄にされるのは…。」

「お金! 払うから!」

「…分かったにゃ。」

「トウマ。頼む。」

「世話が焼けるニャね。」

 トウマは、腕をすくめてヤレヤレといった様子で言いつつ、ルイズを連れて台所に引っ込んだ。

 

 その後、トウマ達、キッチンのアイルー達の指導の下、ルイズは焼き肉の練習をした。

 そしてなんとか5回に一回はきちんと焼けるようになるまで、数日ほどかかったのだった……。




プロアイルーキッチンのアイルーの指導でも、数日かかったルイズの肉焼きでした。

筆者も最初は肉焼きには苦労しました。タイミングがね…。
その都度、生肉補充のために狩られるアプトノトス…。

ちなみに、失敗した生焼け肉とコゲ肉は、あとで調合と錬金術の練習に利用されました。


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第四十八話  物欲センサーという敵

いくら、慣れてきても、飛竜種を倒すのは、超疲れると思います。


「ふ~~~~~~。」

 セエは、長い息を吐いた。

 すぐ傍には、死んだ蒼リオレウス。

 頭の甲殻や皮が剥がれている。

「……また、ダメでした?」

「………うん。」

 暗くなるセエの様子に、見学で参加させてもらっているサイトとルイズは、顔を見合わせた。

 なお、これで、三匹目である。

 蒼火竜の逆鱗が出るのは、集会所クエスト星五つ、つまりハードクラスからなので、当然だがモンスターが強い。その分大きめ。尻尾からも逆鱗が取れることもあるらしいが、剣が届かないのだ。けど、やろうと思えば出来んことはない。だがセエ曰く、こちらも低確率で、面倒くさいとのことだった。

「やっぱ、百匹以上やらないとダメか…。」

「そんなに!?」

「どれだけ低確率なんですか!?」

「…確か、4パーセント…。」

「低っ。」

「翼は取れるんだけどな~。」

「翼の確率は?」

「6パーセント。」

「ちょっだけ高いだけだけど、10パーセントもなし!」

「もっと高確率なクエストってないの?」

「ない。」

「せめて捕獲クエストとかあれば…、もしかしたら?」

「あれば良かったんだけどね…。」

 セエは、そう言いながら黄昏れた。

 すると、セエは、ふと思い出す。

「…まあ、確率だけで見れば、もっと高いのはあるんだけどね。」

「それは?」

「G級クエスト…。それで尻尾を切断する。」

「えっ? それ難しくないです?」

 ハードでも切れてないのに…。

「星8つだから、今のままじゃダメなんだ。上に上がるためには、強くなるしかないし…、武器が必要だ…。でもその武器を手に入れるには…。」

「…確率に賭けるしかない。」

「そう。」

 セエがそう答えると、三人は黙ってしまった。

「どうしてそこまでして…。」

「欲しいものは、欲しいんだ…。」

「ああ…、物欲センサーって奴ね。」

「二人とも…、君達もいずれはそうなるよ。」

「そ、それは…ないかな…?」

「そうね…。」

「いいや。君達は、武器がいるんだろ? だったら、低確率な素材がどうやっても必要だ。」

「そ、それは…。」

「仕方ない…。今回はここまでだな。」

 セエは、そう言って肩をすくめる、大剣を背負って二人の横を過ぎた。

 サイトとルイズは、慌てて後を追った。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 ココット村に帰ると、朗報があった。

 ジャングルの狩り場の封鎖が解除されたのだ。それは、つまり…。

「イビルジョーが倒されたんですね。」

「うむ。」

 ハードか、Gクラスの大物だったイビルジョーが遠征してきた中央のハンター達に倒されたのだ。

「ルイズ。これでガノトトス討伐が出来る。」

「また一人でやらせるんですか!?」

「それも修行だよ。」

「で、でも…。」

「サイト。余計な心配しないで。私はやれるわ。」

「ルイズ…。」

「だいじょうぶよ。前に一回成功してるじゃない。あの要領を忘れず、集中すれば勝てるわ。」

「そうそう。」

 意気込むルイズに、セエは、うんうんと頷いた。

 

 新たなライトボウガン、メイルシュトロームの素材が集まるまで、ガノトトスに挑むことになった。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 そうしてできあがったライトボウガン・メイルシュトロームを手に、ルイズは嬉しそうにクルクル踊った。

「やった! やったわ!」

「すごいぞ、ルイズ!」

「ルイズは、飲み込みが早いな。」

 ルイズは、一回もリタイアせず、集会所クエスト星三つのガノトトスを倒してみせたのだ。

「うふふ、そうでもないわ~。」

 そうは言いつつ、照れくさそうに笑うルイズであった。

「じゃあ、次は、サイトだな。」

「俺ですか?」

「忘れた? 属性武器を増やすって。」

「えっと…、火と水?」

「そう。リオレウスから作れるレッドサーベルとか、コロナとか、水属性のガノカットラスとか…。ああ、でも水属性ならフロストエッジでもいいか。」

「ふろすと…。」

「氷結晶から作る氷の片手剣だ。ただ…素材がな…。」

「何がいるんです?」

「白一角竜の甲殻がいる。」

「白…?」

「モノブロスの亜種だ。」

「アイツ(モノブロス)、亜種もいるのか。」

「これも村長クエストだけど、どうする?」

「うーん。どっちが作りやすいです?」

「どっちかって言うと…、俺の見方じゃ、フロストエッジかな。強化もしやすいよ。ただ、二段階までだけど。」

「じゃあ、フロストエッジにします。」

「じゃあ、決まりだな。」

 こうして、サイトの武器入手の方針も決まった。




ついに、…というかやっとルイズの武器を新調。
メイルシュトロームで、属性弾の種類が増えました。

次はサイトの属性武器を増やす。


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第四十九話  白モノブロスを狩ろう その1

片手剣・フロストエッジを作るために白いモノブロスに、サイトひとりで挑みます。
だが……?


 白モノブロス。

 通称、白一角竜。

 全身が白いのが特徴のモノブロスの突然変異亜種。

 当然だがそれゆえに目撃情報も少なく、その希少さ故にその素材は高値で取引される。(だいたい、通常モノブロスの3倍くらい)

 ただし、通常のモノブロスより巨体であることが多く、攻撃力も高く、体力も倍以上である。スピードも、怒り状態になると1.4倍と高い。

 モノブロスは、ココット村において村長のクエストでのみ狩ることが許されている。それは、白いモノブロスも例外ではない。

 

 

「ああ…。」

 モノブロスに対して、若干のトラウマがあるサイトは、前に通常のモノブロスに角で抉られた脇腹を押さえた。傷は癒えたが、少しだけ傷跡が残っていた。

「白っていっても、やっぱり生態系とか同じなんですよね?」

「そうだね。」

「やっぱり、地中からドーン!って来る?」

「来る。」

 亜種も、攻撃法などは通常種とあまり変わらない。それは、他の飛竜種にも言えることだ。まあ、体力や攻撃力などの違いはあれど…。

「ところでサイト。」

「はい?」

「本来は、村長クエストは、一人でやるべきなんだけど…。」

「あ、はい。言われなくても分かりますよ。一人でやってみろってことですよね?」

「えっ!?」

 うんざりしたように言うサイトの言葉に、ルイズが驚いた。てっきり二人で狩るのだと思っていただけに。

「ルイズ。悪いけど今回は見学だ。」

「そんな! せっかくメイルシュトロームの試し撃ちしようと思ってたのに…。」

「それはまた別の機会だ。」

 しょんぼりするルイズの肩を、セエがポンッと叩いた。

「それに、サイトひとりで本当に、アイツ(モノブロス)倒せるの? あんな大怪我させられたのに。」

「やるっきゃないだろ。」

「まあ、亜種は通常種より強い傾向があるから心配ではあるけど…。いずれは一人で村長のクエスト全部やれるぐらいにはなってほしいね。」

「オゥ…。」

 サイトは、めまいを覚え、額を押さえた。

「で? するのかせんのか決めたか?」

 実はこの会話、村長のところでやっていた。

「やります。」

「そうか。では、準備が出来たら、わしのところで手続きをして、それから出発しなさい。」

「はい!」

 強く返事をするサイトを、ルイズが心配そうに見ていた。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 モノブロスの亜種である、白モノブロスも砂漠に生息している。

 今、サイトには自動マーキングスキルがないので、自力で白モノブロスを探す羽目になったが、それは自動マーキングスキルが無かった頃を思えばそこまで苦じゃない。

「いた! でけぇ!」

 白モノブロスは、通常のモノブロスより巨体だった。

 ルイズは、ハラハラとした様子で白いモノブロスとサイトを交互に見た。

「や、やっぱり、私が援護を…。」

「ダメ。これは、サイトのソロって契約なんだから。」

「でも…。」

「もし危なくなったらリタイアだ。」

 二人がそう会話している間に、サイトは双剣を抜いて、白いモノブロスに迫った。

 たちまち白いモノブロスがサイトの存在に気がつき、バインドボイスを放つ。だがリオソウル装備のおかげで音による拘束は効かない。

 接近したサイトは、白いモノブロスの下に潜り込んで腹と足を切りつけた。

 しかし白いモノブロスは、ダメージなど意に介さず数歩進むと、よく発達した翼の爪を使って地中に潜った。

「やべっ!」

 通常のモノブロスから受けた攻撃を思い出して青ざめたサイトは、急いで走り回った。

 そして、サイトのすぐ後ろで白いモノブロスが飛び出した。

「あっ、ぶねぇぇぇl!」

 サイトは、肝が冷えた。

 だが一瞬立ち止まったところに、ブンッと白いモノブロスの尻尾が振られてきて弾き飛ばされた。

「サイト!」

「立て、サイト! 高台に登れ!」

「…ぐっ…。」

 倒れていたサイトは、なんとか立ち上がる。

 その直後、白いモノブロスが角を突き出して突進してきた。

 それを転がって避け、よろつきながら走ったサイトは、近くにある高台の上によじ登った。

 登り切った直後、再び突進してきた白いモノブロスの角が高台の岩壁に刺さった。

 グオーグオーっと苦しげな鳴き声を上げながら角を抜こうともがく白いモノブロス。

 回復薬グレートを飲んだサイトは、高台から飛び降り、鬼人化して、動けないでいる白いモノブロスを切りまくった。

 やがて白いモノブロスは、岩壁から角を抜き、サイトの方に顔を向けた。そして角をサイトの下に入れ、サイトを角で突き上げた。

「うわぁ!」

「サイト、危ない!」

「っ!?」

 転がされながらなんとか体制を整えた直後、ルイズが叫ぶ。見ると白いモノブロスが角を突き出して突進してきていた。

 咄嗟に剣を交差して防御すると、角が接触し火花が散り、腕が上へ上がりサイトは身体ごと弾かれた。

 数メートル走った白いモノブロスは、急ブレーキをかけ、振り向き、再び角を突き出して突進してきた。

 先ほどの防御で腕が痺れたサイトは、横に跳んでそれを避けた。

「くそっ!」

 白いモノブロスを見ると、地中に潜る最中だった。

「サイト! 音爆弾だ!」

「!」

 用意していた道具を指定され、サイトは慌てて音爆弾を取り出すと、完全に地中に潜った白いモノブロスがいた場所に向かって投げた。

 破裂音が響き渡り、白いモノブロスの上半身が飛び出てきた。

「うわ!」

「攻撃のチャンスを逃すな!」

「は、はい!」

 落とし穴に落ちたみたいに、地中に下半身を埋めた状態で呻いてもがく白いモノブロスに迫り、サイトは鬼人化して切りまくった。

 少しして地中から脱出した白いモノブロスは、黒い煙を口から吐いた。怒り状態だ。

 白いモノブロスがブンッと凄まじいスピードで尻尾を振った。

 あまりの速さに追いつけなかったサイトは、もろに受けてしまい弾き飛ばされた。

 弾かれた直後、角を突き出し、白いモノブロスは突進してきた。すごいスピードで。

 倒れていたサイトは、起き上がる直後だったため、背中を角がかすり、岩壁にそのまま白いモノブロスの角が刺さった。

 グオーグオーっと白いモノブロスがもがく。

「サイト! 立て!」

「うぅ…。」

 サイトは、なんとか立ち上がり、回復薬グレートを飲んだ。

 その間に角を抜いた白いモノブロスが地中に潜る。

「うわわ!」

 地中に潜る際に飛び散る土と小石で視界が遮られ、サイトが腕で顔を防いだ直後。

 すぐにサイトの下から白いモノブロスが飛び出して、角でサイトを弾き飛ばした。

「ぐっ、がっ!?」

「サイト!」

 地面に叩き付けられ、血が地面に広がる。鎧で守られたとはいえ、かなりのダメージだった。

 ポタポタと血を垂らし、四つん這いになるサイトの上から、白いモノブロスがくちばしのような尖った歯を横から振り、弾き飛ばした。

 サイトは血を飛ばしながら転がり、動かなくなった。

「さ、サイトーーー!」

「クエストリタイアだ!」

 ルイズが青ざめて悲鳴を上げ、セエがクエストリタイアを宣言した。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 無事に村に帰ったのだが、サイトは身体のあちこちを血がにじんだ包帯で巻かれた状態で俯き、マットの上で座り込んでいた。

「サイト…。」

「……ちくしょう。」

 心配するルイズ。サイトは、悔しさをにじませた声で呟き、拳を握りしめていた。

 そこへ、村長に報告し終えたセエが帰ってきた。

「次からは、ルイズと一緒に狩りに行った方が良いかもね。」

「っ…、つ、次は…絶対に…。」

「いいや。無理だ。武器の性能もあるけど、ちょっと相手が悪かった。」

「ねえ、サイト。死んだら元も子もないわ。だから…。」

「……くそっ。」

 自分は、まだまだ弱いのだと実感したサイトは再び悔しそうに呟いた。

「そうだ。モノブロスは、水属性が弱点だから。ルイズは、水冷弾(すいれいだん)を使おう。」

「…分かったわ。サイト。私達は、一人で戦ってるんじゃないわ。私も一緒よ?」

「……うん。」

 サイトと目線を合せたルイズの言葉に、サイトは頷いた。




モノブロスに弱いサイト。別に限定して弱いわけじゃありません。
通常種のモノブロスですら、飛竜種最高ランクって攻略本に書かれてるのに、その亜種だと……。

次回、二人で白いモノブロスに挑む。


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第五十話  白モノブロスを狩ろう その2

果たして…、このままでいいんだろうか?(答え:否)


 サイトの怪我が治ってから、白いモノブロスへのリベンジ戦となった。

 

「準備はいい?」

「私はできたわ。サイトは?」

「俺もだ。」

「じゃあ出発だ。」

 三人は、砂漠の狩り場に向けて出発した。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 白いモノブロスは、同じエリアにいた。

「同じ奴か?」

「もしかしたら…かも?」

 ただでさえ希少種なのに、更に亜種なのでもっと希少だから殺さない限りは同じ個体である可能性は高い。

 しかし遠目に見た限りでは、サイトに切られた傷は無かった。

「もう治ってるかもな。」

「もう!?」

「寝たらだいたい体力が回復されるから…、生命力が高いからな、飛竜種は。」

 エリアの出入り口から見える白いモノブロスは、のんびりとサボテンを食んでいた。

「……ああ見えて草食なんですね。」

「まあね。縄張り意識が強くなかったら…いいんだけど。」

「それって他の飛竜種にも言える事よね。」

 縄張り意識が強い。それはすべての飛竜種に言える共通した特徴だった。

「じゃあ、行こう。」

「はい。ルイズ。行こうぜ。」

「ええ。」

 サイトは双剣を抜き、ルイズは、新しいライトボウガン・メイルシュトロームに弾をこめた。

 サイトが接近すると、後ろを向いていた白いモノブロスが振り向いた。

 サイトの存在を認識し、バインドボイスを放つも、リオソウル装備のスキルによって拘束は阻まれる。

 ルイズが遠くから照準を合わせ、白いモノブロスに水冷弾を撃ちまくる。

 白いモノブロスは、煩わしそうに首を振りつつ、サイトに狙いを定め角を突き出し突進した。

 サイトは、横に転がり避ける。

 数メートル走り、急ブレーキをかけた白いモノブロスが振り向き、地中に潜った。

「おらぁ!」

 潜った直後、サイトが音爆弾を投げた。途端、白いモノブロスが上半を出し、下半身を地面に埋めた状態でもがいた。

 サイトが接近し鬼人化して切りまくり、ルイズも撃ちまくった。

 しばらくして飛び出した白いモノブロスが怒り状態になった。

 白いモノブロスは、ルイズの方を向き、角を突き出して突進した。

「ルイズ!」

 サイトが叫ぶ。

 幸い距離があったため、避けるのは容易だった。

 ルイズがライトボウガンを抱えたままサイトの横を走り抜け、エリアの橋に行って、再び白いモノブロスと距離を取った。

 白いモノブロスが振り向き、再び角を突き出して突進した。

 サイトは横に跳んで避け、岩壁を背に、突進を誘った。

 怒り状態の白いモノブロスは、再度角を突き出して突進した。そしてサイトが横に跳ぶと、岩壁に角が突き刺さった。

 チャンスだ!っと言わんばかりに、サイトが鬼人化して切りまくり、ルイズも遠距離から弾を撃ちまくる。

 それを何度も繰り返した。

 やがて白いモノブロスの角が折れた。

「倒れろおおおおおおおおおお!」

 サイトは、構わず腹と足を切りまくった。

 そして。

 白いモノブロスは、断末魔の声を漏らしながら倒れて絶命した。

「や…やった…。」

「やったわよ、サイト!」

 ハアハアっと荒い呼吸を繰り返すサイトは、膝を折り、そこへルイズが駆け寄ってきた。

「さ、剥ぎ取り剥ぎ取り。」

「…容赦ないですね。」

 いくら疲れてても剥ぎ取りを急かすセエに、サイトは苦笑した。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 氷結晶、クーラードリンク、白一角竜の甲殻、マカライト鉱石。

 これが片手剣・フロストエッジの素材である。

 幸い、白一角竜の甲殻以外はすべて揃っていたので、今回の白いモノブロス討伐クエストで甲殻が手に入り、フロストエッジを作ることが出来た。

「おお。なんか、氷みたいな刃だな。」

「氷結晶を使ってるからかな?」

 氷のような青白い光沢を持つ刃のフロストエッジ。

 武器としての攻撃力は196と低めではあるが、改良前で水属性の追加ダメージ量が380と高めである。

「モノブロスもリオレウスも、グラビモスも水属性が弱点だから、使い勝手はいいと思うよ。ルイズは、新しいライトボウガンの使い心地はどうだった?」

「良かったわ。」

「それは、よかったね。」

「セエさん。この際ですから火属性も作りたいっす。」

「レッドサーベルにする? それともコロナ?」

「レッドサーベルで。」

「じゃあ作ってもらおう。お願いします。」

「はいよ!」

 店の前にいたので、ついでにレッドサーベルを作ってもらった。

「このままだと弱いから、リオレウスを狩って素材を溜めよう。」

「はーい。」

 

 こうして着実に、少しずつ少しずつ、サイトとルイズは、強く(?)なっていった。




武器が強くなれば、狩りもやりやすくなるので必然的に強くなっていくと思うけど……。

特にサイトの武器の選択肢の少なさがネックになってますね…。
ガンダールヴがモンスター由来の武器に反応しないという設定にしているので、攻撃力重視のデカい武器が使えないのは大きいと思う。
けど、ラオシャンロンを、双剣で倒してる人だっているんだし、どの武器でも倒せるようにはなってるはずだけど…。難しいですね。

しかし、気づけば、50話か…。終わりが見えない…。


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第五十一話  鉱石を掘ろう!

セエは、筆者のアバターなので、教え方などは筆者なりのやり方です。
なので、とても下手です…。はい。

一応G級ハンターでも、先生としては新米です。


 

 ガツーン、ゴツーンっと、硬いモノ同士がぶつかり合い、砕ける音が入り交じって、沼地の洞窟エリアの内部に響き渡る。

「ほらほら、もっと力入れて。」

「無理っす!」

「……し、死ぬ…。」

 洞窟の中にある巨大な鉱脈を、ピッケルで掘るサイトとルイズ、そして後ろから指導するセエ。

 筋力作りを兼ねた鉱物採集だったが、これが中々…。

「二人とも筋肉が足りなすぎるんだ。だから比較的簡単に肉が付いて、それでいて鉱物も取れるから一石二鳥の…。」

「その前に…、体力が尽きる…。」

「こんなに寒いのに…汗が…。」

「やる気でない?」

「疲れました…。もう勘弁してくださ…。」

「そうかそうか…。」

「セエさん?」

 するとセエが二人に近寄り、ガシッと両者の肩を掴んだ。

「でもね。二人とも、やらなきゃいけないよ? ん?」

 にっこりと、それはそれは良い笑顔で、ただし背後にゴゴゴゴゴっという黒いオーラをまとって言ったのだった。

 二人は青ざめ、ゴクリッと息をのんだ。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 いったん村に帰り、そしてサイトとルイズは、セエに掴まれたまま集会所に引きずられて行った。

「痛い痛い! セエさん勘弁してー!」

「ダメ。」

「イヤーー!」

「嫌がってもダメ。」

 大剣使いの腕力に勝てるはずがなく、二人はされるがままだった。

 受付のところでポイッと捨てられるように投げられ、セエは、腰や尻をさする二人を後目に受付嬢と話をした。

「ずいぶんと乱暴ね。」

「いまいち二人のやる気がね…。」

「それで? クエスト?」

「白水晶の採掘だ。」

「そこのお二人に?」

「させる。」

「せ、セエさん…。」

「勘弁して…。」

「俺達をそこまでゴリゴリのマッチョメンにしたいんですか!?」

「ごりごり…。」

「いやぁ、だって筋肉が足りてないから…。」

「そう言うセエさんだってそこまでゴリゴリじゃないじゃないですか!」

「触ってみるか?」

「セエさんってば、着痩せするタイプですもんね~。」

「なんで知ってるんだ?」

 そう言って茶化してくる受付嬢をセエは見た。

「ハンターの筋肉は、見てくれじゃないわよ~。」

「俺は別に二人に見栄えの良い体になって欲しいわけじゃないぞ? 二人とも武器を振るったり持ち上げる力が足りてないから…。」

「分かってますわよ。それで? クエストを受ける? 受けない?」

「あの、質問…。」

「なに?」

「白水晶のクエストって?」

「ほら、採掘って言ってたじゃない。」

「あっ…。ってことは…。」

「運搬だ。」

「わーー!」

「それに、このクエストは必要だぞ?」

「なんでですか?」

「採掘するときに取れる可能性があるノヴァクリスタルっていう鉱石は、フロストエッジの強化に使える。」

「あ……。」

 

 なんだかんだあったが、休憩をさせてもらってから白水晶の採掘クエストをやらされることになったのだった。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 運搬クエストには、邪魔者が必ずいる。

 例えば、ゲネポス、イーオス、ランポス、ブルファンゴ……、そして飛竜種。

 これは何の試練だ?

 っと、思いたくなることもある。

「……サイト。」

 ルイズの目線の先には、綺麗にこけて白水晶の塊を落として砕いてしまったサイトがいた。

 ルイズは、群がってくるゲネポスを倒していたので少し目を離していた。その間にこけたのだ。そこらに転がっている木の枝に躓いて。

「何やってんのよ!」

「うぅ…。」

「まだ2個目でしょ!」

「う、うるせぇよ…。運んでない奴が言うなよ。」

「私が運搬の邪魔をしてくるモンスターを倒しているんでしょうが!」

 しかも運搬の邪魔をしてくるモンスターは、だいたい無限湧きだ。正直倒していても埒があかない。

「はいはい。言い合いしてる暇があったら次行こう。」

 言い争いを始めかけた二人に、セエがパンパンと手を叩いてそう言って止めたのだった。

「……セエさん…。」

「ん?」

「俺達…、運搬クエストをやってるセエさん、見たことないです。」

「…何が言いたいのかな?」

「…今回のクエストリタイアしますから、手本見せてくださいよ。」

「……分かった。」

 不満そうなサイトの言葉に、セエは頷いた。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 その後、いったん村に戻り、セエは運搬クエスト用に用意していた装備をまとい、白水晶のクエストに挑んだ。一人で。

 水晶の鉱脈のある洞窟の前で強走薬グレートを飲んだ。

 ピッケルを握りしめ、水晶の鉱脈を削る。

 力強いその振りによって白水晶の塊が一発で取れた。

「さすがに慣れてるわね…。」

「……。」

 その手早さに脱帽するルイズと、黙っているサイト。

 白水晶の塊を両手で持ち上げ、セエは、走って洞窟を出て行った。それを二人が追いかける。

 重たい荷物を持っての走りなので、遅いが、強走薬グレートのおかげで止まることなく走れる。ゲネポスの群れの中も、ジグザグに走り回って避けて、木の枝も踏み潰して進み、あっという間にキャンプ地の宝箱に納品した。

「あと、二つ。」

 セエは、肩を回してから水晶の鉱脈のある洞窟に走って戻った。二人も後を追うが、二人は息切れしかけていた。

 とにかく手際が良い。早い!

 その後も一回も落とすことなく、セエは白水晶の塊を二つ運搬したのだった。

 終わった頃には、セエは息切れひとつしておらず、逆にサイトとルイズは、膝を折ってゼーハーゼーハーっと必死に呼吸していた。

 

 何この体力の差!? スタミナの差!(※強走薬グレートを飲んでます)

 

 っと、サイトとルイズは、思った。

「どうだった? 参考になったかな?」

「……。」

 集会所に帰ってきてから、セエが聞くと、二人は押し黙った。特にサイト。

「それは、酷よ。セエさん。」

「えっ?」

 さりげなくフォローしようとする受付嬢に、セエはキョトンとした。

「この子達の噂は聞いてたけど。正直、ハンターには向いてないわね。そんな子達に同じ事させるなんて相当酷だと思うけど?」

「っ!?」

 フォローどころか、トドメを刺した。

 彼女は、これまで様々なハンター達のクエストの受注をしてきた受付嬢だ。向いてるか向いてないかぐらいの良し悪しは分かる。

「ちょっと、あんたがとどめ刺してどうするのよ。」

「あら?」

 隣にいたG級クエストの受付嬢がツッコミを入れた。

 見ると、サイトとルイズは、それぞれ別の方向を向いて俯いて拳を握りしめていた。

「けど、間違ったことは言ってないわよ。このままじゃ、いずれ近いうちに死ぬわ。」

「っ…。」

「そうさせない。」

「セエさん?」

「そのための修行なんだ。」

「…新米のお師匠さん。頑張ってね。」

「ああ。言われなくても。」

 セエは、そう言うと、サイトとルイズに向き直った。

「帰ろうか。」

「……はい。」

 サイトとルイズは、俯いたまま返事をした。




なんか、集会所の受付嬢が毒舌っぽくなっちゃった。(?)

基本、見てるだけで助けてくれないセエに、疲れもあって不満を持ったサイトでした。
そして、セエが難なくクエストをクリアしたのを見て、この世界の人間と自分達の身体のつくりの差に愕然とすることになった。(ハンターが基本超人なだけ?)


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第五十二話  老山龍 その2

ラオシャンロン、その2。

こんな頻度でラオシャンロン来るかな?

今回は、サイトとルイズが戦闘に参加します。


 

 白水晶の採掘のクエストをセエがやってみせてから、二、三日が経過した。

「…はあ…。」

「どうしたにゃ、ご主人?」

 家の庭の切り株に座り込んでいるセエにトウマが話しかけた。

「トウマ……、俺、師として失格かな?」

「誰も最初から上等な指導者なわけないにゃ。」

 実は、あれからサイトとルイズとギクシャクしていた。

「今までずっとひとりでやってたご主人が急に誰かの指導するなんて、かなり無茶な話だったニャか?」

「そんなことは…。」

「けど、いつかはその日が来るかもしれなかったにゃよ。それが早かっただけにゃ。」

「そうか……。」

「けど、このままじゃマズいニャね。」

「そうなんだよな…。」

 

「セエ!」

 

「ん?」

 そこへ、庭の柵の向こうから声をかけられた。

「大変だ!」

「どうした?」

「ラオシャンロンが近づいてるって訃報が!」

「また!? まだ数ヶ月も経ってないのに!」

「そんなこと言われたってよぉ…。」

「で? どれくらいで来るんだ?」

「たぶん今の侵攻速度なら、一週間とちょっとだ。」

「一週間…。」

「それでよ…。お前んとこに居候してる二人組を連れてこいって村長が言ってたんだ。」

「えっ?」

 まさかの村長からの指名にセエは驚き、トウマと顔を見合わせた。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

「今回のラオシャンロン討伐には、そこの二人と共にやりなさい。」

「どういうことですか?」

 サイトとルイズを連れてきたセエに、村長がそう言い、セエは戸惑い、またサイトとルイズもびっくりした。

 ラオシャンロンといえば、セエがひとりで討伐したのを見学したが…。

「俺達も…ですか?」

「そうじゃよ。」

「なぜです?」

「モノブロスも倒し、あの頃よりお主らも力を付けたじゃろうからな。」

「は、はあ…。」

「どうした? セエ? 不服か?」

「いえ…。ただ…。」

「複数クエストはお主も初めてじゃろうが。やるんじゃ。」

「…セエさん。俺達、頼りないですか?」

「違う…。」

「じゃあどうして?」

「俺は今までひとりだった。だから、守りながらなんて無理だ。それにラオシャンロンとの戦いは…。」

「守らんでよい。」

「村長?」

「踏み潰されようと気にするな。」

「そ…!」

「お主らも、覚悟せよ。ここで死んでいるようでは、お主らは自分の世界など救えんのじゃからな!」

「……はい!」

「サイト…、ルイズ…。」

「準備が出来たら、わしのところへ来い! よいな!」

「はい!」

「……。」

 強く返事をしてからさっさと家に戻っていくサイトとルイズ。一方でセエは、どこか納得がいかない顔をしていた。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 そして、一週間後……。

「それにしても、どうして私達が…?」

「認めてくれたってこったろ。」

 セエと少し離れた位置にいるサイトとルイズがそう会話していた。

 サイトは、嬉しそうだ。

「でも、失敗したら村が…。」

「それだけ信頼してくれてるってことだぜ。」

「そうかしら?」

 ルイズは、今回の村長からの依頼に不信を感じていた。

「考えすぎだって。」

「……。」

「サイトとルイズ。」

 するとセエが声をかけてきた。

 三人の間に緊張が走る。

「ラオシャンロンが、来るぞ。」

「よっしゃあ!」

「サイト。」

 それを聞いて気合いを入れるサイトを、ルイズが窘めた。

 ズシンズシンと、さっきから大きな地響きがする。

 ラオシャンロンが確実に近づいているのが分かる。

 そして、三人は砦の外に出た。

 すると、ラオシャンロンがその全貌をみせる。

 山のような巨体が上体をあげ、凄まじい咆吼をあげてから、再び足を下ろし、侵攻を開始する。

「行くぞ!」

「はい!」

 三人は走った。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 左右を岩壁に囲まれた一本道の先からラオシャンロンがやってくる。

 セエが前に出て、大タル爆弾Gを置き、ラオシャンロンの顔が来た直後に爆破する。

 ラオシャンロンが煩わしそうに首を振るが、すぐに前進を始める。

 セエがどき、そこへサイトとルイズが同時に侵攻経路に爆弾を置き、ラオシャンロンの顔の下で爆破させる。

 これは、事前に打ち合わせしていたことだ。

 まず爆弾で攻め、村を守る最後の砦の前でトドメを刺す。

 セエが大剣を抜き、サイトも双剣を抜き、ルイズもライトボウガンを構えた。

 そして一斉に攻撃をする。とにかく最後の砦の前に突入する前に、ダメージを蓄積しないといけないのだから。

「きゃあああ!」

「ルイズ!」

 ラオシャンロンが踏みしめるたびに起こる風圧で、岩壁の方でライトボウガンを撃っていたルイズが煽られる。体重が軽いため風圧に弱いのだ。

 セエは、歯がみする。守っている場合じゃないからだ。

 村長からは踏み潰されても気にするなと言われているが…。

「ぐぇ!」

 ルイズに気を取られたサイトが、ラオシャンロンの足で蹴っ飛ばされた。

 転がるサイトの真上をラオシャンロンの足が通り過ぎ、すぐ横で踏み込まれた。ちょっとずれていたら踏み潰されていただろう。

 セエは、悔しそうに歯を食いしばりながら、ラオシャンロンを攻撃し続けた。

 そしてラオシャンロンが次のエリアへ移動した。

「次…。」

「サイト! だいじょうぶ!?」

「な、なんとか…。」

「セエさん、待って!」

「待ってる場合じゃない!」

 サイトに駆け寄り回復薬グレートを飲ませるルイズが、さっさと行こうとするセエを止めようとしたが、セエは止まらなかった。

 回復したサイトは、ルイズと共にセエを追った。

 次のエリアで、ラオシャンロンが来る前に爆弾を調合し、ラオシャンロンの進行上に置いた。そしてラオシャンロンが霞の向こうから来て、爆弾の上に顔が来たとき、前のエリアと同じように爆破させる。

 一方、爆弾の調合に手間取っていたサイトとルイズは、打ち合わせ通り爆破させることが出来なかった。

 セエは、構わず攻撃に移る。また、ラオシャンロンもまったく気にした様子も無く侵攻を続けるため、サイトとルイズは、岩壁の方へ逃れた。

「くそっ!」

 サイトは、爆弾の調合を諦め、双剣を抜いて、ラオシャンロンの腹の下に入った。

 ルイズは、風圧に耐えながら、爆弾調合を続けようとしたが、風圧に煽られ、火薬が舞い飛んで、タルが転がり無駄になった。

 やがて、ラオシャンロンが次のエリアに移動した。

「次!」

「あ…。」

 ゼーゼー荒い呼吸を繰り返していたサイト達など気にせず、セエは大剣を背負って走った。

 二人も急いで追うが、息が切れた。

 次の次で最後のエリアとなる。

 曲がり角のある次のエリアだが、やることは同じだ。

「ルイズ…。」

「さっきのエリアで…、火薬とタルが…。」

「マジかよ…。」

 そんな話を息を切らしながらしている二人に、セエは目もくれない。セエは、息一つ切らしてなかった。

 セエは、二人に構うことなく、調合した爆弾をラオシャンロンの進行上に起き、顔の下で爆破した。それから攻撃をする。

「おおおおおおおおおおお!」

 サイトは、鬼人化し、ラオシャンロンの腹を切りまくった。

 ルイズも岩壁に避難しつつ、横から撃ちまくる。

 セエは、黙ったまま大剣を振って切る。

 三人からの攻撃など気にせず、ラオシャンロンはゆっくりと次のエリアへ移動した。

 セエは、大剣を背負い、最後のエリアへ向かう。

 一方、サイトは、片膝をついて息を切らした。ルイズも、ルイズで、風圧によって巻き上げられた土を被って全身ドロドロになっていた。

「く…そ…。」

「サイト…、い、急ごう…。次で、最後…。」

 そう次のエリアは、村を守る最後の砦だ。そこを突破されてしまったらココット村は、ラオシャンロンに踏み潰される。

 ゴシゴシと手で乱暴に顔に付いた泥を拭いながらサイトのところに駆け寄ったルイズは、サイトを助け起こし力を振り絞って走った。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 サイトとルイズが駆けつけたとき、すでにラオシャンロンは、最後のエリアに入っていた。

 セエがラオシャンロンの下で必死に大剣を振るっている。

「うぉお!?」

 自分達も参加しようとしたら、ブオンッ!っとラオシャンロンの尻尾が頭上を過ぎて咄嗟にしゃがんでしまった。

 その間にラオシャンロンは、最後の砦を破壊すべく体当たりのために後退を始めていた。

 迫ってきた後ろ足から逃れるため、サイトはルイズを抱えて横へ転がった。

「は、早くしないと…。」

「分かってる!」

 最後の砦に体当たりを始めたラオシャロンの姿を見て、ルイズが焦る。

 ルイズは、距離を取って弾を込め、撃ちまくった。

「早く倒れて!」

 ラオシャンロンは、攻撃されていてもまったく気にせずとにかく前進しようと体当たりを繰り返す。

 サイトは、セエの近くに来て鬼人化を使い切りまくった。

 サイトは、ちらりっとセエを見ると。セエは、凄まじい形相で大剣を振るっていた。

 そして、ちょっと気を取られている隙に、前進したラオシャンロンの後ろ足でサイトは蹴られた。

「ガハッ!」

「っ…!」

 転がるサイトを見て、セエは一瞬止まった。

 その時、タイムアップを知らせる音が聞こえた。

 するとラオシャンロンは、方向を変え、別の方向へ歩き出した。

「えっ…?」

「……やった。」

 別の方向へ歩いて行くラオシャンロンを見ながら、呆然とするルイズと、大剣を降ろして膝をつくセエ。

「えっ…、でも倒してない…。」

「あれでもいいんだ。ある程度ダメージを与えて、方向転換させても成功なんだよ。」

「そ、そうなの?」

「ただし…剥ぎ取りはできないけどな。」

「サイト? サイト!」

 ハッとしたルイズが倒れているサイトのところに駆け寄った。

 サイトは、気絶していただけで、命に別状はなかった。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 村に戻ると、村長や村人達が出迎えてくれた。

「よくやった!」

 村長がそう言うと、村人達もすごい!よくやった!っと賞賛してくれた。

 びっくりしているサイトとルイズを残して、セエは、そそくさとその場から去ろうとした。

「こりゃ、セエ。どこへ行く?」

「えっ…、俺は邪魔かなって思って…。」

「なぜじゃ? これはお前達の手柄じゃぞ?」

「でも…。」

「俺達…、足手纏いでした。」

 するとサイトが俯いてそう言った。ルイズも同調し、俯く。

「どうした?」

「爆弾の調合に手間取るし…、蹴られて無駄にダメージ食うし、スタミナ切れで遅れるし…。」

「あのままだったら、間に合わなかったわ…。セエさんがほとんどやってくれたようなものよ。」

 シューンっとなる二人。

「じゃが、何もしなかったわけではあるまい。」

「はい…。」

「二人は十分頑張りました。」

 するとセエがそう言った。

「今回のラオシャンロンは、前に来たラオシャンロンよりタフでした。ですから、二人の協力がなかったら…、失敗していたと思います。」

「セエさん…。」

「もう…いいですよね。」

「セエさん?」

「俺が指導しなくても。二人はもう十分やっていけると思います。」

「ちょっ…!?」

「何言ってるんですか!」

「えっ?」

「こりゃ、セエ。」

 二人に叫ばれ、あと村長に呆れられセエは戸惑った。

「いいか、わしは確かにこの二人の指導をしてみないかと提案したが…、これは、お主が新たなステップに上がるためでもあるのじゃぞ?」

「新たなって…。」

「お主はずっとひとりじゃった。これを機に、複数クエストに挑むのも良いとは思わんか?」

「えっ?」

「まあ、急にやれと言われても無理じゃろうが。少しずつでよい。それに、この二人もまだまだヒヨッコじゃしのう。」

「えっ?」

「そうですよ。俺達、まだまだなんですから。」

「途中で放り捨てられたらとても困るわ。」

「で、でも、二人とも…。俺の教え方…。」

「誰だって急に教えろって言われてもできませんって、そこはセエさんが頑張るしかないですよ?」

「そうそう。」

「…はあ。」

「今後のことじゃが、せめて一人でわしのクエストをクリアできるようになることじゃな。それができんと、まともに集会所なんざできんぞ。」

「はあ…。」

「精進せよ! 今回のクエストで己の今の力量も分かったはずじゃしな!」

「ええー。」

 セエは、なんだかんだでサイトとルイズの指導の続行となった。

 

 

「あの、セエさん…。すみませんでした…。」

「ん?」

「俺達、確かにセエさんの教え方には不満でしけど……。セエさんの苦労のこと全然気にしてませんでした。」

「本当にごめんなさい。」

「なんだ、急に?」

「あんな山みたいにデカい奴に一人で挑んで勝ってるから、高くくりましたけど、実際やってみたら…、メチャクチャ大変で…あれじゃ俺達の事なんて守ってる余裕なんてあるわけないって分かったんです。」

「…そうか。」

「他のクエストだってそうだわ…。飛竜種は、どれも強力…。誰かを守りながら戦うなんてそもそも無理なのよ。」

「俺、結局自惚れてました。村長がラオシャンロンの討伐に参加させてくれて、信頼を置いてくれなんて思って…。」

「ええ、そうね。」

「でも、実際、二人はずいぶんと強くなったよ。」

「本当ですか?」

「うん。間違いないよ。」

 セエは、そう言って微笑んだ。

 サイトとルイズは、顔を見合わせ、それから笑った。

 

 

 二度目のラオシャンロン討伐は、こうして終わった。




村長は、セエをハンターとして成長させるため、そして二人に今の力量を自覚させるために二人をラオシャンロン討伐に参加させました。無理矢理ですみません…。
失敗してたら村が潰れる状況だったけど、人って結局火事場の馬鹿力みたいに追い詰められてないと限界の力を発揮できないと思うのです。
あと、三人の仲直り?

次回は、どうしようかな?
武器の強化かな。


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第五十三話  虫の採集と、釣り

虫の採集と、釣り。

セエが新しい大剣を入手。


 

「もう、イヤーーー!」

「ほら、文句言わない。」

「ルイズ。文句言うなよ。」

「だって! いくらやっても埒があかないんだもん!」

「根気根気。何事も。」

「そうそう。セエさんの言うとおりだ。」

 サイトは、虫あみを片手に、ウンウンと頷いた。

 

 今現在、三人は素材になる虫を採集していた。

 

 光蟲(ひかりむし)は、閃光玉の素材になる。

 にが虫や、不死虫は、消費アイテムの素材になる。

 のりこねバッタや、雷光虫などは、武具の素材になる。

 

 意外にもこの世界において虫は重要な素材だった。

 

 

 農場では…。

 

「うっ…おおおおおおおおおおお!」

 大きな木に向けて、サイトが全力でハンマーを振って叩いた。

 叩かれて揺れた大木の上からパラパラと小さな枝と葉っぱと共に、虫が落ちてくる。

 それを虫が捕れるこの木を管理しているアイルーが拾う。

「にぎゃああああああああああ!」

「ルイズ!?」

「ガエルーーーーー!」

 ルイズは、小さなカエルを顔に乗せた状態で右往左往した。

 どうやらたまたま木の上にいたらしい。NOT釣りカエルである。

 右往左往するルイズをセエが捕まえ、サイトがルイズにくっついたカエルを払った。

「もう、いゃぁああああ…。」

 セエに羽交い締めにされた状態で、ルイズは、号泣した。

「カエル克服は、まだまだか…。」

「ってか、虫の木からカエルって取れるんですか?」

「そんなことはない。たぶん、たまたまだ。それに大きさ的にも餌にならない種類だったし。」

「そうなんです?」

「あの大きさじゃ、ガノトトスも食べないよ。」

「……離してよ。」

「ん? ああ、ごめん。」

 泣き終わったルイズが不機嫌そうに言ってきたので、セエはルイズを離した。

 ルイズが完全に機嫌を損ねてしまったため、農場での虫採集は中止となった。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

「そろそろ、新しい武器が欲しいな…。」

 昼ご飯を食べながら、セエがそんなことを言った。

「セエさんの? 大剣ですか?」

「そう。」

「大剣ってそんなに種類があるんですか?」

「かなりある。」

「それって強化前も含めてでしょ?」

「片手剣や双剣も種類が豊富だし。他の武器も豊富だよ。」

「で? 何の大剣を作るんですか?」

「……。」

「セエさん?」

「…釣り行こうか。」

 昼ご飯を食べ終えたセエが席を立った。

「釣り?」

「ああ。アレにゃね。」

「アレ?」

「面白いモノが見れると思うニャよ。」

「?」

 トウマの言葉に、サイトとルイズは、顔を見合わせた。

 

 アイテムボックスがある部屋に戻ると、セエが準備をしていた。

 

 マグダンゴという、釣りの餌をたくさん用意して……。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 そして、やってきたのは、森と丘。

「うーん…。いないな。」

「えっ? ここ?」

 キャンプ地にある池を見つめているセエ。

「仕方ない。出入りして様子を見よう。」

「えっ?」

「エリアを移動すれば魚影も変わるから。」

「なんかゲームみてぇ…。」

「ん? なに?」

「いいえ、なんでもないです。それで、何を狙ってるんですか?」

「カジキマグロ。」

「かじ…!?」

「どうしたの、サイト?」

「カジキマグロって、アレですよね!? 鼻がすっげー尖ってるでかい魚!」

「知ってるのか?」

「でもその魚って、海にしかいないんじゃ…。」

「海? ああ、サイトのいた世界じゃ海にしかいないのか。ここの世界じゃ、そこの池にもいるぞ。」

「こんな…小さなところに!?」

「えっ? なに? そんなに大きな魚なの?」

「見れば分かるさ。」

 そう言ってセエは、エリアを移動した。サイトとルイズもついて行く。

 それを何度か繰り返すと……。

「いた!」

「おかしくね!?」

「ええー!」

 サイトとルイズは、小さな池の澄んだ水の中にいる、巨大な魚影を見て驚愕した。

「じゃあ、釣ろうか。」

「つ…釣れるんですか?」

「カジキマグロは、マグロだから、マグダンゴが有効なんだ。」

「ああ、なるほど…、だからマグ(ロ)ダンゴか…。」

 セエは、説明してから、マグダンゴが付いた釣り糸を池に垂らした。

 そしてしばらく待つ。

 やがて……。巨大な魚影が食いついた。

「うおおおおおお!」

「セエさん手伝います!」

「いや、いい! おらぁ!」

 セエは、持ち前の怪力で釣り上げた。よく考えたらガノトトスを単身で釣り上げるのだ。カジキマグロぐらい釣り上げられて当たり前かもしれない。

 そうして釣れたカジキマグロ。

「これが武器の素材に?」

「そう。じゃあ、帰ろうか。」

「えっ? もう?」

「これ一匹でいいんだ。」

 セエは、採集クエストを終えるためのネコタクチケットを納品して、それから微笑んだ。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 そして……。

「どう?」

「……えーと…。」

 なんと言ったら良いか分からない。

 だが迫力だけはある。

 

 大剣レイトウマグロ。

 

 カジキマグロを豪勢に一本丸ごと使った…、というかそのまんまな大剣(?)だ。

「これは、もう一段階強化できる。」

「まだ上が!?」

「レイトウ本マグロになる。」

「なんか…美味そうな名前…。っていうか、それ武器としてどうなんですか?」

「高性能だよ? 水属性が高い。」

 なお、レイトウ本マグロの水属性攻撃力は、800だ。

「けど、カジキマグロが8個必要なんだよな…。」

「地味に大変ですね。」

「そう…素材の調達って。地味に大変なんだ。あと、砂竜の背ビレがいる…。G級じゃないと取れないんだよな。」

「大変だわね。」

「難しくはないし、カジキマグロと砂竜の背ビレを獲りに行こう。」

「頑張ってくださいね!」

「じゃ、準備してから行って来る。」

「あれ? 私達は?」

「二人は…わざわざ来なくてもいいんじゃないかな? 今更ドスガレオスを狩るのを見学してもな。」

「そうですよね。」

「さて…、それだと二人はどうする?」

「虫を集めます。」

「えー…。」

 サイトがそう言うと、隣にいたルイズは、不服そうに声を漏らした。

「おい、ルイズ。虫は大事な素材なんだぜ?」

「分かってるわよ。」

「ったく、これだからお嬢様は…。」

「そういうあんたは、ただの平民でしょ。」

「なんだと?」

「なによ?」

「二人とも。喧嘩はダメ。」

「むぅ…。」

 にらみ合う二人の間に手を入れ、二人を引き離すセエ。

 セエは、ため息を吐きつつ、別行動を取り、単独でカジキマグロと砂竜の背ビレを取ってきた。

 家に帰ると、なんとか仲直りしたのか、トウマ達の手伝いをして夕飯の支度をしていた二人に出迎えられたのだった。

 そして、後日、お金が足りなかったのでアイテムボックスの中で余りまくっていた高価な鉱石を売ってお金を稼ぎ、レイトウ本マグロを手に入れたのだった。

「どう?」

「やっぱシュール…。」

「そう?」

 大剣レイトウ本マグロを背負ってかっこつけるセエを見て、ハンターの感性はよく分からんっと、サイトとルイズは、ちょっと思ったのだった。




まあ、今更ドスガレオスを倒すのを見学する必要はないだろうと判断しました。
しかし、レイトウ本マグロは、背負ってるとなんとも……。ゲーム作った人達はすごいですね。

次回はどうしようかな?
ハードクラスを登るためにキークエストに挑ませるか。


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第五十四話  ディアブロスを狩ろう

今回は、ハードクエストの四本の角(ディアブロス×2)に挑む前の予行演習のた、村長クエストのディアブロスに挑む。

捏造話で、シエスタの故郷のタルブ村をディアブロスが襲ったという話が出ています。
怖い見た目に反して草食だから、ブドウも食べるかな?


 

「予行演習をした方がいいかもな。」

「なんですか、急に?」

 庭で鍛錬をしていた時に急にセエが言い出した。

「この間、集会所クエスト星四つの、キークエストは、ほとんどやった。」

「イャンクックを捕まえたり、ゲリョスを捕まえたりしましたね。」

「あと少しで、星五つのクエストに上がれる。問題は、そのための緊急クエストだ。」

「と言いますと?」

「四本の角っていうクエスト名で、ディアブロスを二匹倒すクエストをすることになる。」

「でぃあぶろす…。」

「生態は、モノブロスに似てるけど、ディアブロスの方がかなり凶暴だ。」

「そうなんですか?」

「あと、見た目が怖い。」

「そこ!?」

「ディアブロ(悪魔)って名前が付くくらいだからな。」

「イビルジョーと似てますね。」

「けど、草食だけどな。サボテンが主食だし。」

 イビルジョーと同じようなものかと想像したサイトは、それを聞いてずっこけた。

 草食イコール大人しいは、この世界では当てはまらないらしい。アイルーやメラルーのように人間と友好を築けるモンスターや、アプトノスのような大人しいモンスターは本当に少ないのだろうか。

「村長のクエストにもディアブロスのクエストがあるから、それで予行演習しよう。いきなりハードクラスを二匹も相手にするのは死にに行くようなものだから。」

「そ、そりゃそうですよ!」

 サイトがずっこけたことには、ツッコまずセエは真剣に語るので、サイトは起き上がりつつ叫んだ。

「…ねえ、その飛竜って…。角が二本ある?」

 そこへルイズが話に参加してきた。

 実はルイズも庭でライトボウガンの射的の訓練をしていた。

「うん? 確かに二本角だけど。それが?」

「ねえ、サイト。シエスタが言ってたなかった? 故郷の村のブドウ畑を食い漁った竜のこと。その竜の特徴って、確か大きな角が二本あったって聞いたけど…?」

「!!」

「どうしたんだ?」

 それから、セエは、二人からシエスタというメイドの故郷が飛竜種に襲われ、メチャクチャにされたことを聞いた。

 死人は辛うじて出なかったが、負傷者が多く、シエスタの親や兄弟も怪我をしたらしい。

 そして故郷を襲った飛竜種は、地中を掘り家をひっくり返して、さらにシエスタの村の名物であるブドウ畑を荒らしたのだそうだ。

「収穫間近だったブドウをやられて、村の収入源がなくなってとても困ってるって聞いたわ。」

「二本角で、地面を掘る飛竜種は…、確かにディアブロスっぽいな。でもブドウを食べたって話は聞いたことがないぞ。」

「あくまで俺達の世界で起こってる異変についての推測なんですけど、飛竜種や他のモンスターがハルケギニア中にデタラメに召喚されていて、たまたまディアブロスがシエスタの故郷に来たのかも……。」

「よっぽど腹が減ってて、気が立ってたんだろうな…。」

 空腹で主食のサボテンがない状況にいきなり放り込まれたら、良い匂いがする果実を食べたくなるかもしれない。それがよく熟れていたのならなおさらだろう。

「それにしても、どうして、君達の世界に、この世界の竜が?」

「原因が分かったら…。」

「苦労なんてしないわ。」

「ああ…。」

 原因は不明らしい。そのデタラメにやってきてしまうモンスター達を相手にするのに精一杯で。そして追い詰められて、この世界に直接時空転移してきて、モンスターを倒す手段を求めてきたのだ。

 三人は黙ってしまった。

「ニャー、おやつの時間にゃよ。」

 そこへトウマが呼びに来た。

「えっ? ああ、分かった。行こう。」

「あ、はい。」

 ハッと我に返った三人は、汗を拭いて家の中に入った。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 ディアブロス。

 別名、角竜と呼ばれるが、その凶暴さや、立派な二本角、その風格ゆえに、砂漠の暴君とも呼ばれる。

 しかし一方で、モノブロス同様に草食で、サボテンが主食。

 攻撃手段などは、ほぼモノブロスと同じ。

 ただし、こちらの方が身の危険を感じるほど凶暴になるため、モノブロスよりも怒りやすい性質である。

 

 

「攻略方法は、モノブロスとほとんど変わらない。だけど、怒りやすいし、攻撃力も高い。」

「モノブロスとの戦いをちゃんと覚えてれば出来そうね。サイト?」

「お、おう…。」

「ちょっと…、まさか?」

「お、覚えてるって! 忘れるはずがねーよ!」

 モノブロスに横腹を抉られたことがトラウマになって、モノブロスとの戦いはよく覚えていた。

 これでディアブロスまでトラウマになったら目も当てられないが…。

「予行演習だからって嘗めてかからないようね。」

「分かってますよ。」

 

 そんな会話をしている間に、ディアブロスが生息している砂漠の狩り場に到着した。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 ルイズが自動マーキングスキルでディアブロスのいる位置を把握し、移動する。

 ディアブロスは、モノブロスの時と同じエリアにいた。

「…なるほど、確かに砂漠の暴君って感じだな。」

 遠目に見た、その姿。

 大きくて歪んだ二本角。

 ごつい甲殻。

 唇は無く、露出した鋭い歯。顔つきは、まさに悪魔のようである。この顔で草食なんだから信じられない。

 トリケラトプスのようなエリマキのような甲殻があり、その辺はモノブロスと似ている。

 尻尾は太く、先端が丸い二つに分かれている。

 翼もモノブロスのようによく発達しており、おそらくあれで地中を掘り進むのだろう。

 確かに、あんな立派な角と地中を掘り進む力あれば、シエスタの村の建物くらいひっくり返し回れるだろう。

 

 やがてディアブロスが、こちらの存在に気づいた。

 

「サイト!」

「おう!」

 サイトがフロストエッジ改を抜いて迫る。事前にディアブロスが水属性に弱いことを聞いての選択だ。

 サイトが接近するとディアブロスは、バインドボイスを放つが、リオソウル装備のおかげでバインドボイスの影響は受けない。

 まんまと接近したサイトは、フロストエッジ改で切りつける。

 ブォンッとディアブロスが尻尾を振るが、それを足の間に入り込むことで避ける。

 ルイズは、遠距離から水冷弾を撃ちまくる。

 ディアブロスがルイズの方を向き、角を突き出して突進してきた。

「ルイズ! 行ったぞ!」

「くっ!」

 ルイズは、急いでライトボウガンを下ろし、横へ逃げた。ルイズの横をディアブロスの巨体が通り過ぎる。

 逃げて距離を取ろうとするルイズの後ろからディアブロスが再び角を突き出して突進した。

 サイトが走ってきて間に入り、盾で防ごうとする。ガチンッ!とサイトが弾かれディアブロスの突進方向が僅かに横にそれた。

 サイトは、盾を持つ腕が痺れた状態で岩壁方向に走った。

 ディアブロスが方向転換し、サイトに向かって角を突き出して突進した。

 サイトが横へ転がり避けると、ディアブロスの角が岩壁に突き刺さった。

 苦しげに鳴いて抜こうともがくディアブロスの隙を狙い、サイトがフロストエッジ改で切りまくり、ルイズが水冷弾を撃ちまくった。

 やがて角を抜いたディアブロスが黒い煙を口から吐き出し始めた。怒り状態だ。

 するとディアブロスが地中に潜り始めた。その時に発生する土と小石の雨を、サイトは盾で防ぐ。

「サイト! 走れ!」

「っ!」

 セエが叫んだ直後だった。サイトの真下からディアブロスが飛び出し、サイトは吹っ飛ばされた。

 怒り状態であるためスピードが増しているのだ。

「がっ……。」

「サイト!」

 吐血しながら地面に落ちて転がるサイト。

 すると、再びディアブロスが地中に潜った。

 ルイズは、ハッとし、その場から移動した。その直後、ルイズがいた場所からディアブロスが飛び出した。

 その間にサイトは、回復薬グレートを飲んで立ち上がり、ルイズを追い回すディアブロスを追った。

「おい! こっちに来い!」

 サイトが追いかけながら叫ぶが、ディアブロスがそれを聞くわけがなく、ルイズを追いかけている。

「うおおおおおおおお!」

 サイトは、後ろからディアブロスの尻尾の付け根を切った。

 ガキンッと音が鳴り、ディアブロスがサイトの方に振り向いた。

 バインドボイスを放つディアブロスだが、リオソウル装備をまとっているサイトには効かない。バインドボイスを放っている隙に股下をくぐったサイトは、尻尾を更に攻撃した。

 ディアブロスがサイトをどかそうと激しく身体を回転させるが、その足を避けつつ、サイトは尻尾を攻撃し続け、やがてディアブロスの尻尾が根元から切り落とされた。

 悲痛な鳴き声を上げたディアブロスは、突然地中に潜っていった。

「! 移動したわ!」

「尻尾の剥ぎ取りをして、追いかけよう。」

 ルイズが自動マーキングスキルでディアブロスが移動したのを感知し、セエが切り落とされた尻尾の素材を剥ぎ取るよう急かした。

 尻尾の剥ぎ取りをして、サイトとルイズは、エリアを移動し、その後ろをセエが追いかけた。

 尻尾を失ったディアブロスは、灼熱の砂漠のエリアにいた。

 凄まじい熱を感じて急いでクーラードリンクを飲む。

 こちらが来たことに気づいたディアブロスが振り向き、鳴声を上げながら角を突き出して突進してきた。

 岩壁がない現場であるため、とにかく避ける。そして立ち止まったところを撃ち、斬りかかる。

 やがてディアブロスがまたエリアを移動した。

 追いかけては攻撃する。

 やがて怒り状態になる間隔が短くなっていく。つまり弱ってきているということだ。

 しかし怒り状態は、スピードも攻撃力も増すので厄介だ。

 たちまち攻撃を受けて回復薬を消費してしまう。

 そして、回復薬グレートも残り僅かとなった時、ついにディアブロスが絶命した。

「や、やった…。」

「やったわね、サイト!」

「けど…。」

「?」

「ああ…、これじゃあマズいな。」

 死んだディアブロスの死体を前にして荒い呼吸を繰り返すサイトがどこか浮かない顔をしていて、ルイズは首を傾げ、セエが駆け寄ってきて言った。

「これだけ時間がかかって、回復薬も使ってたら、二匹を相手にするクエストは難しい。」

「しかも、ハードなんですよね? コイツ(※村長クエストのディアブロス)の倍以上なんですよね?」

「そう。少なくとも、一匹20分以内に倒せないと…。」

「そんな早くなんて…。」

「とにかく今のままじゃ力不足だ。何度も挑んで倒す手順を覚えよう。」

「はい…。」

 

 こうして村長のクエストのディアブロス討伐は、力不足を実感しつつ終わった。




タルブ村に現れたディアブロスがブドウ畑を荒らしたのは捏造です。
ディアブロスがサボテン以外の植物を食べられるのかどうかは分かりません。
ハルケギニアにデタラメにモンハンの飛竜種やモンスターが現れている原因は不明です。ディアブロスがタルブ村に現れたのも偶然です。かなり空腹状態で放り込まれたので、気が立ってて村を破壊してしまったのです。

攻略本で、ハードの四本の角の攻略について、一匹あたり20分で倒せないといけないみたいに書かれてて、当時は絶望しましたね…。
でもなんだかんだでクリアはできました。なんとかなるものですね。


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第五十五話  四本の角に挑戦しよう(村長クエスト)

タイトル通りのクエストに挑む。

サイト達もだいぶ強くなったので、かなり早く事を終わらせられるようなりました。


 

 村長が発足するクエストにも、ディアブロスを二匹狩るクエストはある。

 

「なら、そっちの方をすればよかったじゃない。」

「初戦で、ディアブロスを二匹相手にするのは、死にに行くようなものだよ。それこそ、リオレウスとリオレイアの二匹をいきなり相手にするようなものだ。」

「うわ…。」

 想像してサイトは、顔色を悪くした。

「何も知らない状態より、知った状態で戦う方が良いに決まってる。」

「そうですよね。」

 そういう意味ではぶっつけ本番の人間同士の戦いよりは、予備知識を得られる分ハンター稼業の方が生き残れる率は高いかもしれない。…まあ、竜が強力すぎてそっちで死ぬ可能性が高いが。

 そういえばっと…、ルイズは、セエは聞いた。

「この世界では、戦争って…あるの?」

「ん?」

「人間同士が…争うことはないんですか?」

「…うーん。喧嘩は見かけることはあったけど、人間同士で殺し合いをするってことは聞いたことがないな。」

「そうなんですか? 意外と平和なんですね。」

「…というより、それどころじゃないからかな?」

「それって…、あっ。」

 サイトは察した。

 この世界では、人間同士が争う以前に、超強力な飛竜種やモンスター達が生息しているのだ。おそらく自分達の住む領域を守るので精一杯なのだろう。

「確か…、大昔、竜と人間が戦争をしたって話は、本で読んだことがあるよ。その時に、すごい兵器も作られたって言われてる。」

 この世界では、人間の存在など本当にちっぽけなのだ。

 そんなちっぽけな人間達が生き残るために、狩りの技や武具を作り上げ、飛竜種やモンスター達と戦うことで均衡を保つ…、それがこの世界なのだろう。

「じゃあ、村やギルドはあっても、街や国とかってないんですね。」

「あるよ。」

 サイトの言葉に、セエはあっさりと国などはちゃんとあることを言ったので、サイトとルイズは、ずっこけた。

「貴族だっているし。そういう人達からの依頼はたくさんある。飛竜の卵を食べたいって依頼があるくらいだから。」

「な、なるほど…。」

 卵運搬クエストの謎が解けた。

 強力な飛竜種やモンスター達がいて、勢力図では人間は弱いが、人間の社会の中ではちゃんと階級社会や文化や国家はちゃんと存在しているのだ。ただハンターを稼業とする者達には縁があまりないだけで。

「さてと。準備は出来た?」

「えっ、あ、もうちょっと待ってください。」

「先に村長のところに行ってるよ。」

 セエは、そう言うと先に家を出た。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 入念な準備をして来たが、緊張はする。適度な緊張は必要であるが、度を超せば害になる。

「一匹20分以内……。」

 今回は村長クエストのディアブロスであるため、ハードクエストのものより弱いのは分かっている。

 先に単体のディアブロスを相手にしたとはいえ、まだ20分を切れていない。

 閃光玉、音爆弾を駆使するやり方は教わった。

 二匹を相手にする場合、どれだけ回復アイテムを消費せず、かつ迅速に一匹を倒せるかが鍵となる。

「いるわ…、二匹! どっちをやる?」

 ルイズが自動マーキングスキルで、二匹のディアブロスの存在を探知する。

「時間が惜しい。できるだけ近くにいる方を先にやろう。」

「はい!」

 近くにいるディアブロスは、灼熱の砂漠エリアにいた。

 クーラードリンクを飲み、砂漠の砂の上を悠々と歩いているディアブロスに斬りかかるサイト。ルイズは、ライトボウガンに水冷弾をこめて撃つ。

 たちまちディアブロスがこちらの存在に気がつき、角を突き出して突進してきた。

 サイトは、身をかがめ、ディアブロスの足の間に入って避け、ルイズも横に逃げて避けた。

 ディアブロスは、突進を終えると地中に潜った。

 潜った直後、音爆弾を投げつける。するとディアブロスが上半身を飛び出させてもがいた。その隙をついてとにかく攻撃する。

 焦りつつ、とにかく急ぐ。

 二人の猛攻撃が効いたのか、ディアブロスが黒い煙を吐き出し始めた。怒り状態だ。

「焦るな…落ち着け!」

 怒り状態であるため、攻撃力もスピードも増しているが、落ち着いて隙をついて攻撃していく。

 地中に潜れば、音爆弾を使う。閃光玉も駆使して隙を作り、攻撃を加えた。

 そして……、なんとかギリギリ20分以内で一匹目のディアブロスが死んだ。

「や、やった!」

「20分以内には倒せたわ!」

「さあ、次だ。急ごう。」

 

 死体から剥ぎ取りをして、二匹目のディアブロスのいるエリアを目指した。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 二匹目のディアブロスは、岩壁があるエリアにいた。

 ここなら、角を岩壁に突き刺させることで動きを封じられる。

「よし!」

 一匹目同様に、まだこちらに気づいていないディアブロスを攻める。

 尻尾を切りつけると、たちまちディアブロスが気がついて、早くも地中に潜りだした、その時に発生する土と小石の雨を浴び、サイトは、顔を腕で庇い目を閉じた。

「サイト!」

 ルイズがディアブロスの移動位置を把握した直後、サイトの下からディアブロスが飛び出した。

 吹っ飛ばされ転がるサイトは、血を流しながらもなんとか立ち上がり、回復薬グレートを飲んだ。

 ディアブロスが角を突き出して突進してきたら、岩壁へと誘導し、岩壁に角を突き刺させる。そうすることで出来る隙をついて攻撃を加えた。

 サイトは、尻尾を狙って何度も切りつけると、やがて尻尾が切断された。

 怒り状態になったディアブロスが、突進を繰り返す。誘導されて角を岩壁に突き刺し、動けなくなると攻撃する。それを繰り返した。地中に潜れば音爆弾。

 そうこうしているうちに、ディアブロスの怒り状態になる頻度が短くなった。

「あと少し!」

 それは、弱っている合図だというのはもう分かっている。

 最後だとばかりに、ダメージを気にせず攻めまくる。

 やがて、二匹目のディアブロスが倒れ、絶命した。

「よっっっしゃーーーー!」

「やったわね、サイト!」

「さ、剥ぎ取りだ。」

 ガッツポーズを取って大喜びするサイトとルイズ。セエは相変わらずだった。

 

 四本の角…、二匹のディアブロスを狩るクエスト(※村長クエスト)は、無事に終わったのだった。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 村に帰ると、村長がギルドの人間達と何か話し合っていた。

「村長?」

「む…、セエか…。」

 声をかけると村長が振り向いた。その顔色は優れない。

「どうしたんです?」

「…お主達は運が良かったな。」

「はい?」

「しばらく砂漠の狩り場を閉鎖する。」

「はっ?」

「イビルジョーがまた現れたのですよ。」

 ギルドの人間がそう答えた。

 三人は、それを聞いて驚いた。

「また…。」

「しかも目撃情報によると、少なくとも二匹はいるらしい。」

「にひ…。」

 あんなのが二匹もいる状況で、ディアブロス二匹を倒せたのは奇跡だったのかもしれない。

「じゃが、今回現れた個体は、前に現れた個体よりも小型だと聞いておるが…念のため閉鎖し、中央のギルドから遠征を依頼する予定じゃ。」

「そうですか…。」

「すまんがイビルジョーがいなくなったことが確認されるまで、砂漠には行かせられん。」

「分かりました。」

 

 

 砂漠のエリアに行けないということは、集会所クエスト星四つ、すなわちハードクエストの四本の角に挑めないということだ。

 しかし、ギルドの決定だし、送迎用の馬車だってギルドが管理している。無断で行くことは出来ない。

 仕方ないので、別のクエストで鍛えようということになったのだった。

 




最後の方で、イビルジョー再登場。(姿は見せてないが)
今回のは、前のよりも小型で、おそらく下位ぐらい。ただし、二匹いる。もしかしたらそれ以上も…?

砂漠エリアを一時閉鎖したので、次回はそれ以外のエリアでクエストをします。


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第五十六話  砦蟹の侵攻

タイトル通りの奴が、ココット村に侵攻してきます。

筆者は、現在(2018/10/15)、まだシェンガオレンと戦ったことありません。

なので動画を参考にしました。


 

 

 セエは、時々思う。

 老山龍ラオシャンロンが来ないことがどんなに平和なのかと…。

 何かに追われている言われているラオシャロンが、悪なわけではない。モンスターにはモンスターの事情があるのだ。人間の方がむしろ勝手なのだろう。

 

 しかし、過酷な大自然は、人間が築いた楽園を簡単に壊していくのだ。

 

 

「シェンガオレン?」

「別名、砦蟹(とりでがに)。ラオシャンロンの頭部の骨をヤドとする巨大なモンスターだ。その被害は、ラオシャンロンと同等じゃ。」

「なぜ、そのモンスターが…。まさか…。」

「そのまさかじゃ。シェンガオレンが、この付近に接近しておるという報告があった。」

「この村に?」

「侵攻方向がまだハッキリしておらんから、断言できん。だが用心に超したことはない。……念のためじゃが、準備をしておいてくれるか?」

「…ですが、なにが必要なんでしょう?」

「シェンガオレンは、ラオシャンロンと同等の歩く災害じゃ。同じアイテムを揃えておくと良いじゃろう。」

「分かりました…。」

「もしも…、シェンガオレンが接近してくると分かったら…、あの二人も連れて行くのじゃ。」

「なぜです?」

「セエ、お前も初めて遭遇する相手じゃ、小さいながらも力は必要じゃろう。」

「……守ることは出来ません。」

「それでよい。あの二人も、分かっておるはずじゃ。」

「二人にも伝えておきます。」

「うむ。そうしてくれ。」

 セエの言葉に村長は頷いた。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 村長との会話の後、すぐに家に帰ったセエは、すぐにサイトとルイズに伝えた。

「とりでがに~?」

「そう。砦のように巨大で強固なモンスターだ。俺もまだ見たことがない。」

「それってラオシャンロンと同じぐらい?」

「聞いた話だと、ラオシャロンの頭の骨をヤドにしているから、同じぐらいの脅威だ。」

「蟹っていうか…、ヤドカリ?」

「まあ…そうとも言えるかも?」

「俺達も参加するんですね?」

「ああ…。村長も二人を連れて行けって…。」

「でも…セエさんも戦ったことがない相手なんですよね…。勝てる見込みがあるんですか?」

「…ない。」

「そんな! もし失敗したら…。」

「村は…踏み潰されることになるだろうな。」

「そんな!」

「ラオシャンロンの時もだけど、村人全員は、避難する。建物を踏み潰されたとしても、生きていれば…復興は出来る。」

「……けど…!」

「砦を守る兵士達もみんな全力は尽くす。そして、俺達ハンターも。」

「セエさん…。」

「……どうすればいいの?」

「ルイズ…。」

「私達は、何をすればいいの。教えてください。」

「ラオシャンロンの時と同じアイテムを揃える。まだ…、シェンガオレンが来るとは決まったわけじゃないが、準備を整えておいてくれ。」

「はい!」

 こうして、対シェンガオレンのための準備を整えることになった。

 

 

 その後、件のシェンガオレンの侵攻方向がココット村だと分かったのは、二、三日後だった。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 そして、ラオシャンロンの時と同じ砦のエリアに来た。

 すでに地震が起こっている。それだけで、シェンガオレンがどれだけ巨大なのかが分かる。ただ、ラオシャンロンに比べると、やや地震の大きさは小さいように思える。それは、おそらくシェンガオレンがラオシャンロンの頭をヤドとするから本体はラオシャンロンそのものよりは小さいからなのかもしれない。

 しかし、それでも足踏みだけで地震が起こるので、地震を起こすほどの巨大なモンスターが来れば、人間の集落などひとたまりもないことは間違いないのだ。

「そういえば、村長とギルドからの話で…、シェンガオレンは、ルートを決めて徘徊する習性があるらしいんだ。」

「なんでまたココット村に…。」

「さあ? モンスターの考えることは分からない。」

「そうですよね。」

 やがて、地震が徐々に大きくなってきた。

 そして……。

「デカッ!」

 巨大で長い足を持つ蟹…シェンガオレンが霞の向こうから姿を現わした。

「そ、想像以上だわ!」

「行くぞ、二人とも!」

「は、はい!」

 いつもラオシャンロンを迎える高台から砦の中に移動し、侵攻するルート上に出る。

 霞の向こうからシェンガオレンがゆっくりとやってくる前に、大タル爆弾Gをルート上に置く。

「げ…。」

 思わず変な声を出してしまったセエ。

 っというのも、ラオシャンロンと違い、シェンガオレンは、数本の足で本体を高い位置で支えているのだ。つまり、爆弾を置いた位置に足が来ない。ラオシャンロンなら、真ん中に置けば弱点である頭を爆破できたのに…。

「くそっ!」

 セエは、シェンガオレンの足がやや離れた爆弾の位置に来たとき、小タル爆弾を置いて爆破した。

 距離が離れていたため、大ダメージにはならず、シェンガオレンは、そのまま侵攻を続ける。

「二人とも! 足の位置に気をつけて爆弾を!」

 セエは、大剣を抜いて、シェンガオレンの足を切りながら叫んだ。

 サイトとルイズは、言われたとおり爆弾の位置を調整し、シェンガオレンの足が次に踏み込まれた瞬間を狙って爆破させた。

 途端、シェンガオレンの足が一本、赤くなり、シェンガオレンが立ち止まった。

 しかし時間をおくと、すぐに侵攻を始める。

「か、硬い!」

 サイトは、双剣で足を切りつけるが、その硬さに驚愕した。

 ルイズは、遙か頭上にある本体を狙って撃つ。

 デカい! 高い!

 そう思いながらルイズは、必死に上に向かって撃っていた。

 すると、岩壁の方から岩が振ってきた。

「うわわ! なんだ!?」

「砦の兵達が岩を落としてるんだ!」

「俺達がいるんだぞ!?」

「そんなこと言ってられないんだ!」

 とにかく、みんな必死なのだ。

 しかし、それをあざ笑うように、ゆっくりとした歩調でシェンガオレンは歩いて行く。

 やがて、シェンガオレンのもう一本の足が赤くなった。

 途端、シェンガオレンが足の節を折り曲げ、巨大な本体部分を地上に降ろした。

 チャンスだ!っとばかりに、セエとサイトは、本体を攻撃した。ルイズも撃ちまくった。

 しばらくして、シェンガオレンがゆっくりと曲げていた足を持ち上げて再び立ち上がった。そしてまた侵攻を開始する。

「ちくしょう! 止まれよ!」

「まずい…。エリアを移動される…。急ごう!」

 シェンガオレンが、次のエリアへ移動してしまい、三人は急いで砦に戻り、シェンガオレンが来る予定の次のエリアへ移動した。

 そして、次のエリアでも爆弾を使う。そして攻撃する。それを繰り返した。

 次の侵攻エリアでもそれを繰り返し、足を折って降りてきた本体を攻撃した。しかしそれでもシェンガオレンは止まらない。

 やがてココット村を守る最後の砦の前に来た。

 最後の砦の前に来たシェンガオレンは、その大きな鋏を振り上げ、砦を攻撃し始めた。また強力な酸も吐き出す。

「倒れろ! 倒れろ!!」

 セエは、叫びながらシェンガオレンの足を攻撃した。

 サイトもルイズも必死に攻撃する。

 やがてシェンガオレンの足がまた折り曲げられて本体が降りてきた。

 セエの斬撃がヤドに当ったとき、ヤドであるラオシャンロンの頭蓋骨が一部壊れた。

 タイムアップの時間(砦の耐久力の限界)が迫ったとき……。

 ついに、シェンガオレンが倒れて絶命した。

 三人は、ハーハーと荒い呼吸を繰り返し、へたり込んだ。

「や、…やった!」

「やった…! 俺達の勝ちだ!」

「私達、やったのね…。」

 三人は、それぞれ喜び合った。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

「よくぞやったぞ、お主ら!」

 村に帰ると、避難していた村長や村人達が出迎えてくれた。

「…もう…ダメかと思いました。」

「うむ。ようやった、ようやったのう…!」

 村長が涙ぐみながら頷いていた。

 村人達も口々に、賞賛の声をかけてくれた。

 セエ、そしてサイトとルイズは、お互いの顔を見て、笑い合った。

 

 

 こうして、砦蟹…シェンガオレンの緊急クエストは、終わった。




一応弱い個体だったので、なんとかなりました。
これが上位だったら……。
ところで、シェンガオレンがルートを決めて徘徊するという習性があるというのを見たので、ココット村の方面に侵攻を決めてしまったという風にしましたが…、あり得ますかね?
イビルジョーは、環境適応能力が高いので現れる可能性は高いことは分かっているのですが。

砂漠に現れたイビルジョー討伐は、まだなので、砂漠にはまだ行けません。


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第五十七話  四本の角に挑もう(ハード) その1

ハードクラスの四本の角(ディアブロス×2)に挑むが…?

サイトもルイズも若いから、シェンガオレンみたいな大物倒したら浮かれちゃうと思うのです。


 

 

 シェンガオレンを倒してから、二週間後。

 サイトとルイズは、四本の角…、つまりディアブロス二匹を相手にする集会所クエスト星五つに挑むことにした。

 砂漠エリアのイビルジョーが討伐され、砂漠エリアの閉鎖が解除されたのだ。

 

 

「…だいじょうぶかしら?」

「なにが?」

「浮かれてるじゃないの。あのお二人さん。」

「うーん…。」

 セエは、手続きをしている最中に受付嬢とそんな会話をした。

 サイトとルイズは、シェンガオレンを倒すのに協力できたことで、浮かれていた。まあ、仕方ないだろう。あんな大物を倒して賞賛されたのだから。

「死なないように、しっかり見てあげてね。」

「分かってる。」

「セエさーん。まだですかー?」

「ああ、あとちょっとだ。」

 ウキウキした様子の二人に、セエは苦笑しつつ書類の特記事項を書いた。

 

 セエは、なんとなく……、今回のクエストは失敗するな…っと予想した。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 そしてやってきた、砂漠。

 

「……なんか、血痕が残ってる?」

「ギルドで聞いた話だと、この辺り一帯のゲネポスが、イビルジョーにかなり食われたらしい。」

 岩壁のあるエリアに、古い血痕があちこちにあった。

 この血の跡が、イビルジョーに食われたゲネポスのものなのか、それとも討伐されたときのイビルジョーの物なのかは分からない。

 そのせいか、ゲネポスの姿がほとんどなかった。

 イビルジョーが過去に他の種を絶滅まで追いやったことがあるという話は本当なのだろうと実感させられる。エリアを閉鎖して、イビルジョーを二匹(っとギルドで聞いた)、同じ場所にいさせたのも良くなかったのだろう。

「まあ…、障害がないのは、得ではあるけど…。」

「生態系が変われば、強いモンスターは餌を求めて人里に現れるかもしれないんだ。…ディアブロスは、草食系だから、まだマシな方だったかもしれないけどさ。」

 それでも主食のサボテンが無くなれば、草を求めて人里に現れる可能性はある。

 ハルケギニアで、空腹で放り出されたディアブロスが、シエスタの故郷・タルブ村を襲撃したように…。

「イビルジョーって、どうしてそこまで食欲旺盛なんですかね?」

「聞いた話だと、体温を維持するために常に何かを食べてないと生きられないらしい。」

「そんな燃費が悪い身体なんですか…。」

「生き物を絶滅させるまで、食べちゃうなんて…。」

「そういう種もいるってことさ。それはそうと、ディアブロスがそこにいるぞ。」

「あ…。」

 移動しながら話していると、やがてディアブロスがいるエリアに来ていた。

 ディアブロスは、まだ背中を向けていて、こちらには気づいていない。

 サイトは、フロストエッジ改を抜き、ルイズは、ライトボウガンに水冷弾をこめた。

 そして二人は、走り出した。

 その足音を聞いたディアブロスが振り向く。

 村長クエストのディアブロスよりも大きなディアブロスは、途端にバインドボイスを放つが、リオソウル装備をまとったサイトには効かない。まんまと顔の下に入り込んだサイトは、首の下をフロストエッジ改で切りつけた。

 ディアブロスは、一歩下がると、角を地面に刺し振り上げた。サイトは、めくれ上がる地面ごと吹っ飛ばされた。しこたま後頭部を打ったサイトが悶えていると、ブンッとディアブロスが尻尾を振り、サイトを岩壁の方に吹っ飛ばした。

「サイト!」

「…う…ぐ…。」

 血を流して呻くサイト。

 ハードクラスのモンスターの攻撃力が、村長クエストの倍以上なことを半ば忘れていたのだ。もちろん、体力も…。

 そのおかげで、いくら撃っても、切っても倒れない。村長クエストのディアブロスだったらとっくに倒れているほど攻撃しても倒れない。

 そしてあっという間に、20分以上が経過した。

 35分ぐらい経って、やっとディアブロス一匹目が倒れて絶命した。

「まずいな…。時間が…。」

「で…でもまだ…。」

「うん。諦めるには早い。剥ぎ取りをして、急ごう。」

「はい…。」

 急いで、死んだディアブロスから素材を剥ぎ取り、もう一匹のところへ急いだ。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 結果から言えば…、クエストは失敗だった。タイムアップで。

「やっぱり…。」

 セエは、自分の予想が当ってしまいため息を吐いた。

 セエがチラリと横を見ると、ズーンっと暗くなっているサイトとルイズがいた。

「なんで、失敗したんだ…?」

 サイトが呟いた。

「うーん…。結構順調そうに見えたんだけどな…。やっぱり一回の攻撃を受けた後の隙が大きかったかな?」

「だって…、あんな攻撃力が…。」

「集会所クエストのモンスターが、村長のクエストより強いのは知ってたはずだけど?」

「それは…。」

「忘れてた?」

「……。」

 サイトが気まずそうに俯く。その様子を見て、セエは再度ため息を吐いた。

「浮かれてたせいね…。」

「ルイズ?」

「シェンガオレンを倒して、私達…浮かれてたわ。たぶんその傲慢のせいね。」

「そんなわけ…。」

「ないって言えないわよ。あんたも私も、あんな大物倒したし、村長のクエストのディアブロスも倒せてたから、高くくってたのよ。」

 ルイズは、キッとサイトを睨んだ。

 サイトは、ルイズの視線にたじろくが、それでも何事か言い訳を探していた。

「…失敗したものは仕方ない。次回頑張ろう。ね?」

「そうね。」

「帰ろうか。」

「はい。」

「……。」

 そう会話するセエとルイズは、家に帰るために歩き出し。サイトは、一人俯き、遅れて後を追った。




ゲネポスがイビルジョー(×2)に食われて数を減らしたというのは捏造です。
次回にはおそらく数は戻っていると思います。モンハンの世界、モンスターの繁殖力もずば抜けていると思う…。

反省して原因について振り返るルイズと、失敗した理由が納得できないサイト。
そこらへんは、生まれ育った環境の違いとか性格の違いですかね。

次回は…、キリンにでもリベンジしようかな?


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第五十八話  イビルジョー、三度目

タイトル通りの、アイツが三度目の登場です。

そして、またキリンが酷い目にあいます。キリン嫌いじゃないですよ?


 

 キリンを狩ろうと思ったとき、運良く村長の緊急クエストに、キリン討伐のクエストが入った。

「キリンのクエストって、安定してないんですね?」

「幻のモンスターって言われてるくらいだから、中々姿を見せないからだと思うよ。」

「その割には、前の時は結構出てきてたみたいですね。」

「そりゃ、イビルジョーのせいだ。」

 あの時の密林のキリンによる人里の畑や配送中の野菜荒しは、密林に迷い込んできたイビルジョーに餌を奪われてしまったので仕方なくやった可能性が高いのだ。

「それにしても、なんでイビルジョーみたいな、この地方にいないモンスターが来たんですかね?」

「イビルジョーは、環境適応能力が極めて高いらしい。あの食欲だから、そうじゃないと生きられないんだろう。」

「つまり、イビルジョーは、どこにでも現れる可能性があるってことね。」

「イビルジョーがよく目撃される地域じゃ、クエスト中に乱入してくることが多いらしい。」

「うわ…、それ嫌ですね。」

「確か…、他のモンスターを呼び寄せる能力を持ったモンスターもいて、そいつが呼び寄せることもあるって聞いたな。」

「そんなモンスターが?」

「でも、それって、自分が食べられる可能性があるんじゃない?」

「……聞いた話だと、イビルジョーを呼んだら、ソイツは、食われるらしい。」

「それって自動自得じゃないかしら?」

「ハンターに狩られて死ぬよりはマシってことかな?」

「そこまでして……。」

 モンスター達からしてみれば、ハンターは害悪でしかないのだろう。ハンターを見つけると率先して攻撃してくる理由がそれならなんとなく分かる。

 やられる前にやれとは、よく言ったものだ。

「まあ、とにかく、前イビルジョーの乱入でダメになったクエストだから、今度こそやってみよう。」

「今度は…、出ないだろうな…?」

「出たら、逃げるしかない。」

「うわぁ。」

 イビルジョーの乱入が再び起こる可能性はゼロではないのだ。

 

 イビルジョーが三度現れる可能性を危惧しつつ、キリン討伐のための準備を整えた。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 二度あることは三度ある。……誰が言った?

 

「どーすんだよぉ…。」

「シッ! 静かに。」

 大岩の影に隠れた三人。

 セエが、ソーッと様子をうかがう。

 

 イビルジョーとキリンが今、対決している。

 イビルジョーの大きさは、見たところ最初に見た個体よりはやや小さく見えるが、それでもキリンと比べるとかなりの巨体だ。

 キリンが雷と落としまくる。

 しかしイビルジョーは、まったく意に介さず、大口を開けてキリンに迫る。

 キリンは、俊敏な動きでそれを避け、再び雷を放つ。

 イビルジョーは、クルリっと方向転換し、足を踏ん張ると、口から赤黒いブレスを吐いた。

 キリンが素早くそれを避けると……。

「わあああああああああ!」

 三人が隠れていた岩に当たり、砕けてしまって三人は慌ててその場から離れてしまった。その結果、キリンとイビルジョーに存在がバレてしまった。

 キリンがこちらに気を取られた瞬間、凄まじいスピードで近寄ったイビルジョーの大口がキリンを捕えた。

 暴れて雷を闇雲に放つキリン。だがイビルジョーは雷などお構いなしで、地面にキリンを押さえつけて首を捻る。強靱な顎力とイビルジョーの太すぎる首の力により、地面に頭を擦りつけられた拍子に、キリンの首があり得ない方向に曲がった。

 動かなくなったキリンを、イビルジョーは、貪り食った。

「う…。」

 ルイズがその様を見て吐き気を感じた。

「逃げるぞ!」

 セエが叫び踵を返したとき、二人はハッとしてセエの後ろに続いて走った。

 背後で、イビルジョーが咆吼をあげ、追ってきた。

 イビルジョーは、見かけによらず速い。

 キャンプ地まで逃げる途中、サイトがこけた。

「サイト!」

「くっ!」

 背後から迫るイビルジョーがこけたサイトを食おうと大口を開けた。

 ルイズが咄嗟にライトボウガンを構えるが、間に合わない。

 セエが走り、サイトの身体を蹴って横へ転がした。

 その直後、セエの身体がイビルジョーの口に捕われた。

「ぐっ!」

「セエさん!」

 メキメキ、ギシギシとイビルジョーの歯が身体に食い込んでくる。

 セエを捕えたまま、イビルジョーは、頭を振り上げ、そのまま地面に叩き付けた。

「がっ、ハッ…!!」

 叩き付けられ、骨が折れる感触と共に、セエは吐血した。

「この野郎! セエさんを離しやがれ!」

 サイトが双剣を抜いて、イビルジョーに斬りかかり、ルイズもライトボウガンを構えて撃った。

 セエは、血で溺れかけながら道具袋から、何かを取り出したが、イビルジョーが首を動かしたため、そのアイテムが地面に落ちて転がった。

「さ…い……と…、そ…れ…を……。」

「セエさん! セエさん!」

「サイト、そのアイテムを使うのよ!」

「えっ?」

 サイトは、自分の足の近くに転がってきたそれを拾った。

 しかし、拾い上げて、顔をしかめる。

 その時、再びイビルジョーが頭を振り上げた。セエにトドメを刺す気だと気づいたサイトは、望みを託して、そのアイテムをイビルジョーに投げつけた。

 途端、凄まじい悪臭が広がり、イビルジョーは、首を振り回しながら口を開けてセエを離した。

「う…ぐぁ…。」

「セエさん!」

 セエは、血を流しながら、震える手で道具袋を探り、回復薬グレートを取り出して、飲み込んだ。

 途端、傷が一気に塞がり、立ち上がった。

 イビルジョーは、まだ悶えている。

 その隙に、三人は走り、安全なキャンプ地まで逃げ込んだ。

「……さすがに…、死ぬって思った。」

「あの…セエさん…。」

「なに?」

「あのアイテムって…。」

「ああ…、こやし玉だ。」

 イビルジョー攻略のアイテムとして、ギルドから教えてもらっていた物を、念のため用意していたのだ。

「万が一、イビルジョーの口に捕まった時に有効だって聞いたから。」

「……。」

 するとルイズが泣き出した。

「ルイズ? どうした、どこか痛いのか?」

「違う…。セエさんが無事でよかった…。」

「……ごめん。」

 緊張感が解けて、涙を零すルイズの頭を、セエが撫でた。

「…うっ! 臭っ!」

「セエさん、臭いっす!」

「あ…。」

 至近距離でイビルジョーに投げつけられたこやし玉の匂いが、自分にも染みついてしまっていたのだった。

 自分の身体を匂って、「うわっ、臭っ!」っと鼻を曲げるセエ。

 ついでに、散布されてしまったこやし玉の匂いは、サイトとルイズにもついていて、三人は笑い合った。

 その後、迎えの者達に消臭玉を投げつけられ、匂いは取れたのだった。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 村に帰ると、すぐにギルドと村長に、イビルジョーがまた現れたことを伝えた。

「ううむ…。こう何度も現れるということは、どこかで繁殖しておる可能性が高いのう。」

「そうなれば、遠征費を考えると、中央からの救援は難しくなりますな。」

「うむ…。」

 村長は、その後、ギルドの人間達と話し合い…。そして。

「セエよ。」

「はい。」

「お主…。いや、お主らじゃな。」

「はい?」

「イビルジョーの討伐をせぬか?」

「えっ!?」

 それを聞いたセエは驚き、サイトもルイズ驚いて顔を見合わせた。

「イビルジョーは、確かに凶悪な竜じゃが、勝てぬ相手ではない。中央のハンターが勝てるのじゃ。お主らが勝てぬ道理はない。」

「しかし…。自分は、危うく食われて死ぬところでした。」

「じゃが、うまくこやし玉を使ったのじゃろう?」

「サイトに使ってもらいました。」

「攻略法さえ分かれば、勝つことは難しくはないはずじゃ。」

「ですが…。」

「我々からも頼む。」

 するとギルドの人間達から頭を下げられた。

 セエは、考え……そして。

「分かりました。」

「セエさん…。」

「ですが、一人でやらせていただきます。」

「! セエさん!?」

「それは…、これまで通りソロでやる気か。」

「はい。」

「俺達、そんな役に立ちませんか!?」

「いや、違う…。俺は…、二人をアイツ(イビルジョー)に食わせたくないんだ。」

「自分の身くらい自分で守れるわ!」

「ルイズ…。」

「俺だってやりますよ!」

「サイト…。」

「二人もこう言っておる。まだまだ半人前じゃが、お主の力となるじゃろう。」

「…それでいいの?」

「抜け駆けなんてしないでくださいよ。俺だって、アイツ(イビルジョー)に負けてられません!」

「私だって!」

「二人とも…。」

 セエは、少し涙ぐんだ。

「では、決まりのようじゃな。我らはこれより、イビルジョーの討伐のクエストを発足する。準備が出来たら、来なさい。」

「はい!」

 三人は、村長の方を向き、力強く返事をした。




イビルジョーの出現頻度が多くなっているのは、近くで繁殖しているから?っということにしました。
なので、この地方のハンター達は、必然的にイビルジョーとの戦いをしなければならなくなりました。

イビルジョーとは、まだ遭遇したことないので、動画を参考にします。
あと、三人による戦いになるので、頑張って戦闘書こうと思います。


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第五十九話  イビルジョー討伐!

イビルジョーには、まだ遭遇したことが無いので、かなり苦戦しました。

攻略本見ても、攻撃方法も多彩だけど、噛みつき攻撃が主だとは分かったんですが……、動画は上手すぎてあまり参考にならなかった…。

なので、イビルジョーがあまり強く書かれていないと思います……。


 

 セエは、家で、調合を行っていた。

「何作ってるんです?」

「シビレ生肉、眠り生肉…。」

「肉ばっかりですね。」

「イビルジョーは、戦いより食欲を優先することが多々あるらしい。必ずってわけじゃないが、引っかかってくれればラッキーだ。」

「イビルジョーからしたら、ハンターなんて食べ応えがなさそうね。」

「それでもイビルジョーは、食おうとしてくる。実際に、俺は食われかけた。」

「サイトがこやし玉を投げなかったら……。」

 ルイズは、あの時のことを思い出し、顔を青くした。

「お…俺達…勝てるのかな? アイツ(イビルジョー)に…。」

「勝つしかないんだ。」

「でも…。き、棄権ってできないんですか?」

「イビルジョーを放っておけばどうなるかなんて、この間のキリンのことや、砂漠でも見ただろ? 他のモンスターが追いやられて人里が危ないし、たくさんいたゲネポスの姿が無くなるほどだ。餌が無くなれば…、もしかしたらココット村にだって足を運んでくる可能性だってあるんだし。」

「それは…。」

 想像したサイトは、顔色を悪くした。

「……こう言っちゃなんだが、君達の世界にもイビルジョーがいるんじゃないのか?」

「…それは、聞いたことがないわ。でも、いる可能性は高いわね。もし、無差別に、メチャクチャに召喚されているのなら、イビルジョーだって召喚されてても不思議じゃないわ。」

 ルイズが腕組むして真剣に考えている一方で、サイトは俯いていた。

「二人も準備して。特にルイズは……、睡眠弾や、麻痺弾を大量に用意してくれる?」

 イビルジョーの攻撃力は、非情に高く、一撃をもらえば、瀕死か、最悪一撃死するとギルドで聞いた。

 それを聞いたとき、セエは、イビルジョーの口に捕われてよく生き残れたよ…っとしみじみ思った。

「とにかく、動きを封じることが先決だ。そして、攻撃を食らわないように避けまくるのも…。」

「な、なんで俺を見るんですか?」

「いや…、サイトって案外攻撃を受けやすいかなって思って。」

「サイト。私の事なんて気にしないで。」

「でも…。」

「あんた、たいがい私に気を取られてるから隙を作るのよ。強いハンターでも、一撃で殺されるほどの竜を、相手にしなきゃいけないんだから、絶対に攻撃を受けないで。」

「……。」

「お願い。分かって。」

「……分かった。その代わり、おまえもヤバいって思ったら逃げろよ。」

「分かってるわ。」

「話はついた? 準備をしてくれ。」

「はい。」

 

 こうしてイビルジョー討伐のため、入念な準備を整えた。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 出発前にアイルーキッチンで食事を摂り。体力と攻撃力を上げた。

 封鎖されたジャングルの狩り場に入れてもらって、キャンプ地で硬化薬グレートを飲み、強走薬グレートも飲んだ。

「よし! 強走薬グレートの効果が切れる前に行くぞ!」

「おーー!」

 そしてキャンプ地から、ジャングルの緑生い茂るエリアに踏み込んだ。

 虫の声は聞こえるのに、動物の気配がない。

 すでにイビルジョーに食われたのか、隠れているのかは分からない。

「…不気味だわ。」

「なあ…ルイズ…。アイツ(イビルジョー)…、いるか?」

「…たぶん…、イビルジョーかも…?」

 自動マーキングスキルで探知できているマークがイビルジョーかは分からない。ただエリアを移動している。

 同じく自動マーキングスキルを持つセエは、黙って前を歩いていた。

「……っ、俺達の存在に気づいたか。」

「えっ?」

 自動マーキングスキルがないサイトは、キョトンッとした。

 マークが見えているルイズは、イビルジョーらしきマークが今自分達がいるエリアに向かって動き出したのを感知した。

「来る…!」

「二人とも! 準備をしてくれ!」

「はい!」

 急いで罠を設置する。

 落とし穴が設置されたとき、別のエリアへ通じる場所から、イビルジョーが姿を現わした。

 イビルジョーは、こちらを見つけると、すぐに突進してきた。

 三人は散開し、イビルジョーが巨体に似合わないスピードで通り過ぎようとしたとき、罠が発動して落とし穴にイビルジョーがはまった。

「隙あり!」

「うおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

 ジタバタと暴れるイビルジョーに、猛攻撃をかける。

 ルイズも麻痺弾を撃ちまくる。

 やがて麻痺の毒が回ったのか、イビルジョーは、落とし穴に落ちたまま、ビリビリと痙攣して動きを止めた。

 その隙に、とにかく攻撃する。

 やがて麻痺が解けたイビルジョーがまた暴れだし、そして落とし穴から飛び出した。

 そして、ブオンッ!っと首と同じぐらい太い尻尾を振った。

 セエは、大剣を盾にして防ぐが勢いは殺せず、数歩吹っ飛ばされた。

「あぶね!」

 頭を振り上げ、振り下ろすような連続の体当たりを、サイトは、イビルジョーの足の間に転がり込んで避けた。

 一撃を受けたら、死ぬ!

 凄まじい緊張感に、過呼吸を起こしそうになりそうだった。

 イビルジョーは、その巨体からは想像も出来ないスピードで、後ろに飛び、さっきまで足元にいたサイトに向かって大口を開けて迫った。

「おおおお!」

 次の瞬間、セエが、大剣を振り下ろして、イビルジョーの尾を攻撃した。

 あまりに太く、強靱であるため、一撃では切断できない。だが、今の攻撃でサイトを食おうとしたイビルジョーを止めることは出来た。止まった隙に、サイトはその場から逃げた。

 あと、逃げる時に、眠り生肉を置いていく。

 すると、眠り生肉を見つけたイビルジョーが眠り生肉を食べた。そして眠った。

「隙あり!」

「よっしゃあ!」

 あっさりと引っかかってくれたイビルジョーに感謝しつつ、眠ってる間にさらに攻撃を加えた。

 攻撃していたら、やがてイビルジョーが目を覚ました。

 咆吼をあげ、地団駄を踏む。サイトが飛び退くと、イビルジョーをそちらを見た。

「おらおら! こっちだ!」

 サイトは、来い来いと手で示し、素早く背中を向けて、走り回った。イビルジョーは、涎をまき散らしながら大口を開けては閉め、サイトを追い回す。サイトを捕えんと口をガツンッと閉じるたびにいったん立ち止まる。その隙を突いて、後ろからセエが攻撃していた。

「うおおおおおおおおおお!」

 尻尾を重点的に攻撃していたセエの大剣の一撃が、ついにイビルジョーの尻尾を切り落とした。

 苦悶の鳴き声をあげたイビルジョーがよろめく。

 するとイビルジョーの口から黒い煙が出始め、そして身体の色が変わった。いや、傷跡が赤く染まり浮き上がったのだ。

 怒り状態である。

 スピードが増す、振り向いたイビルジョーが先ほど自分の尻尾を切り落としたセエを狙い頭を使い、地面の岩を掘り上げて飛ばしてきた。

「ぐっ!」

「セエさん!」

 大剣を盾にして防ぐが、衝撃を殺しきれず、セエは、後ろに転がった。

 その隙をつこうとイビルジョーが大口を開けた。

 セエは、ギリギリで横に転がり、それを避けた。

 セエが立ち上がった時、イビルジョーがグワッと口を開け、赤黒いブレスを吐いた。

「セエさーーん!!」

 サイトが青ざめ絶叫した。

 イビルジョーが巨体に似合わない俊敏さで、ピョンピョンと横に跳んだとき、地面にうつ伏せで倒れているセエが見えた。

「セエさん! セエさーーーん!」

「うぅ…。」

「セエさん!?」

「だいじょうぶよ! 生きてるわ!」

 泣きそうな声で叫ぶサイトだったが、セエが呻いて起き上がったので、ルイズがそう叫んだ。

 セエは、ギリギリのところで、横に跳んで避けたのだ。

 しかしそれは大きな隙となり、起き上がったセエをイビルジョーが口で捕えた。

「くぅっ!」

「この野郎! 離せ!」

 サイトは、素早くこやし玉を出すと、イビルジョーに投げつけた。

 凄まじい悪臭により、イビルジョーは、たまらずセエを離し、悶えた。

 イビルジョーの口から解放されたセエは、素早く体制を整え、大剣を振り上げた。

 イビルジョーの頭部を大きく切り裂く。その一撃によろめいたイビルジョーは、口から涎を垂らしながら、ヨロヨロとした足取りでエリアを移動した。

「追いかけよう!」

「はい!」

 三人は、イビルジョーを追った。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 エリア移動すると、イビルジョーがこちらに振り向いてきた。

 そして大口を開けて、ブレスを吐いてきたので、三人は散開して避けた。

 イビルジョーが、その巨体からは想像も出来ないスピードで、走ってきて左右に首を振りながら噛みつき攻撃を行ってきた。

「えっ?」

 ルイズを狙って。

「ルイズ!」

 大口がルイズの小さな身体を覆おうとした時、ルイズが咄嗟に撃ったライトボウガンの拡散弾がイビルジョーの口の中に命中した。

 イビルジョーは、悶え、口から涎と共に血をまき散らした。そのすきにルイズは、逃げた。

「この…野郎!!」

「サイト!」

 ルイズを狙われ、サイトが激昂してイビルジョーに斬りかかる。

 直後、イビルジョーの短くなった尻尾が横に振られ、サイトが弾き飛ばされた。

 尻尾が短くなっているため攻撃力は下がっているが、それでも結構な威力である。

「ぐ…が…。」

「馬鹿! 何やってんのよ!」

「ルイズ、逃げろ!」

「えっ? っ、きゃあああああああああ!」

 サイトに気を取られた隙に、イビルジョーの口がルイズを捕えた。

 その直後、セエがこやし玉を出して、投げつけ、幸い軽傷で済んだ。

 こやし玉をまた食らい、イビルジョーは、ヨタヨタとエリアを移動していった。

「サイト…!」

「早く追わないと…。」

「待って! 回復させるから。」

「急いでくれ。」

 ルイズは、倒れているサイトに急いで回復薬グレートを使わせた。

 回復したサイトは、立ち上がり、三人は再びイビルジョーを追った。

 次のエリアで、イビルジョーは、再びこちらに向かって振り向き、またブレスは吐いた。

 三人は散開し避ける。セエに続いてルイズを食らうことに失敗したためか、イビルジョーは、今度はサイトを狙ってきた。

 口から逃れるため、サイトは、イビルジョーの足の下に潜り込んだ。

 その瞬間、四股をイビルジョーが踏んだ。

「ぐああ!」

 踏み潰されはしなかったが、その時に発生する衝撃と飛び散る土くれにサイトは顔を腕で覆った。

 素早く動き回るイビルジョーの足によって蹴られ、サイトは、前にこけた。

 そこに向かってイビルジョーが再び四股を踏もうとした。

 だが、ルイズが撃っていた睡眠弾が効き、イビルジョーは、眠ったためギリギリで踏み潰されずに済んだ。

「ここで終わらせよう!」

「は、はい!」

 ラストスパートだとばかりに、三人は攻撃した。爆弾も使い、とにかく猛攻撃をしかけた。

 そして……。

 

 ついにイビルジョーが、断末魔の鳴き声をあげて倒れて絶命した。

 

 三人は少しの間、呆然とした様子で、倒れて死んだイビルジョーの死体を見つめていた。

 

「や……やった…。」

「俺達…勝った! 勝ったんだ!」

「私達、やったのね!」

 三人は、ようやく現実に戻り、喜び合った。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 剥ぎ取りをして、村に帰ると、村長とギルドの人間達が出迎えてくれた。

「ようやった!」

「はい! し、死ぬかと思いました…。」

「む…、なんか匂うのう?」

「あ、こやし玉です。」

「消臭玉使ったんですけど…。」

 さすがに二個分の匂いは完全には取れなかったらしい。

「よくぞ、イビルジョーを討伐しました。」

「……これで、終わりじゃないですよね?」

「ええ。どこかで繁殖していると分かった以上、これからもイビルジョーは、この地方に現れるでしょう。そうなればあなた方ハンターの出番です。」

「一人だったら…、勝てなかったと思います。」

「イビルジョーの討伐と、繁殖の件は、中央にも報告しますが……、救援はおそらく来ないでしょうね。」

「ええー、そんな!」

「すみません…。我々も一枚岩ではないうえに、遠征費を考えるとどうしても…。」

 中央からのハンターの助けを得られないと聞いて声を上げるサイトに、ギルドの人間はすまなさそうに顔を歪めた。

「今のところ、密林以外ではまだ目撃情報はないが……。もし目撃されたら、またお主らに頼むことになるかもしれん。」

「……はい。」

「今日は、帰りなさい。そしてしっかり風呂で匂いを落としなさい。」

「は~い。」

 話を終え、三人は、家に帰ったのだった。

 家に帰るなり、出迎えたトウマが、こやし玉の残り香を嗅いで倒れたのは別の話である。




本当は、失敗するという展開も考えました。けど、グダりそうだったのでやめました。

イビルジョーは、しばらくは出しません。まだ遭遇したことがないモンスターを出すのは、無茶だと分かったので…。
でも、今後の執筆のためにゲームを進めようにも弱小ハンターゆえに、進まないからなぁ…。

ココット村がある地方にいないイビルジョーの出現には、ギルドも困っています。
中央から手練れのハンターを呼ぼうにも費用はかかるし、おそらく中央からは自分で対処しろとか要請を受けたりして…。


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第六十話  轟竜、再び

ティガレックス再び。

あと、ハンターの遺品について捏造があります。


 ある日、セエが家に帰ると、黙って椅子に座り、ボーッとしていた。

「どうしたにゃ? ご主人。」

「んー…。」

「上の空で…。いつもの鍛錬もしにゃいで…。本当にどうしたにゃ?」

「……あー…。」

「聞いてにゃいにゃね。」

 トウマの問いかけに、んーっとか、あーっとかしか答えないセエにトウマは手をすくめた。

 

「セエさーーん!」

 

 そこへ、転がる混むように玄関からサイトとルイズが入ってきた。

 

「ん? どうしたの?」

 やっと我に返ったセエが聞いた。

「大変ですよ! また、えーと…。」

「ティガレックスよ!」

「あ、そいつそいつ! その竜がまた現れたって、聞いた!」

「ティガレックスが? それで?」

「この村にいるハンターの何人かがティガレックスが出たっていうエリアに行ったっきり、戻ってきてないらしいんですよ! …それで……。」

「それで?」

「そのうち一人のハンターの人が…、出稼ぎで村にいたって話だから、家族の人がせめて形見だけでも持って帰ってきてくれないかって村長と話してるの聞いちゃって…。」

「……なるほど。」

「行方不明になるハンターにゃんて、珍しくないニャけど。」

 トウマがそう言った。

「死体は無理でも、遺品ぐらいにゃら、早く行けば見つかるかもしれにゃいにゃね。」

「どうしてだよ?」

「そういう死体漁りというか…、死んだハンターの武器を拾って闇で流通している奴らがいるにゃよ。」

「ひでぇ…。」

「まあ、そういう武器には、盗難品もある可能性もあるにゃから、人の物かどうか識別する識別紋があって、それで引っかかるもんにゃから、よっぽどの貴重度の高い素材を使った物じゃない限り、買い手は中々つかないって噂にゃけどにゃ。たいがいは、解体されて使えそうな素材だけを売られるか、鉱物なら溶かされて別の物に加工されるにゃね。解体費もかかるにゃし、あんまり需要はないって聞くにゃから、専門でやってる以外は、貧困層が危険を冒してやってるって話にゃけど。」

「逆に言えば、貴重度が低ければ、その場に残ってる可能性も高いってことだな?」

「そういう見方もできるにゃね。」

 セエの言葉にトウマがそう答えた。

「…その人が使ってた武器が、貴重度の低いものであることを祈るしかないのか。」

「そもそも、この手の話は、珍しくにゃいし、クエストとして発足されはしにゃいにゃよ?」

「そんな!」

「やっぱりにゃね。お前らの考えそうなことにゃ。」

 声を上げるサイトに、トウマがヤレヤレといった調子で言った。

「すべてのクエストは、ギルドが管理しているにゃ。たまに貴族や王家とか、例えば飛竜の卵が食べたいから卵を取ってくるクエストがあるように、金を積んでギルドに依頼を出すことはあっても、ただの一般人が…それも金のない人間がクエストを依頼しようと思ったら大変なことにゃ。特に遺品を持ち帰るにゃんて…、危険なだけにゃから、ボランティアもいにゃいにゃよ。」

「どうしてだよ! 大切な人の形見が欲しいって思っちゃいけないのかよ!?」

「それ自体は悪い事じゃにゃいにゃ。ただ、ハンターってやつは、危険な場所か、危険なモンスターのところで死ぬことが多いのにゃ。つまり、相応に死ぬ可能性もあって二次被害者を出す可能性が高いにゃ。だから、そういう理由もあるにゃから、遺品回収のクエストがないにゃ。」

「じゃあ…、それでも遺品が欲しいかったら…。」

「自分で行くしかないにゃね。」

「個人でハンターの頼むのは?」

「それは、ルール違反にゃ。遺品回収ついでに素材の収集をしたり、モンスターを狩ったりしてギルドに報告しなかったら、それこそハンター資格を剥奪される重罰にゃ。」

「そ、そんなことしねーよ。」

「にゃー…、分かってないニャね。そういう可能性があるから、はなからダメなのにゃ。お前ら、ハンター資格を剥奪されたら、もうクエストどころか、ハンターの武具を持つことができなくなるニャよ?」

「っ!」

「誰かがルールを破れば…、他の誰かもルールを破り出す。だからダメなんだ。自分だけが、なんて思わないでくれ。」

 セエがそう言った。

 悔しそうに歯がみするサイトを見て、ルイズは、心配そうにしていた。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 その後、セエが村長に呼ばれたため、二人もついて行った。

「村長。あの…。」

「それとは別件じゃ。」

「はあ…。」

 別件の話と聞いて、サイトとルイズは、顔を見合わせた。

「お主はすでに聞いておるか? ティガレックスのことを。」

「はい、後ろいる二人から聞きました。」

「そうか…。それでじゃが、討伐のクエストを設ける。もしやる気があるのなら…。」

「それって、ハンターを何人も殺したっていう奴ですか?」

「おそらくはな。どうした?」

「サイト。」

 ずずいっと前に出てきたサイトを、セエが止めた。

「……遺品の件か。」

「! どうしてそれを…。」

「お主らが立ち聞きしておったのを見とるわ。」

「だ、だったら…。」

「じゃがのう。この手の話は珍しくないんじゃ。クエストとして設けはできん。」

「そんな…!」

「気持ちはわかるが、押さえなさい。」

「遺族の方は?」

「……彼らは、今、ギルドと交渉しておる。じゃが、無理じゃろうな。わしからも、やめるように言ったのじゃが。」

「………あの、もしもの話ですが。」

「なんじゃ?」

「クエストの途中で遺品らしき物を見つけた場合は?」

「セエ、お主…。」

「セエさん!」

「例えばの話です。どうですか?」

「……まあ、持ち帰っても構わんが、持ち帰っても使用はできんぞ?」

「用途は自由ですね? 例えば、人に渡すのも。」

「識別紋で、本人の物かどうか確認できればようがのう…。」

「分かりました。じゃあ、サイトとルイズ、準備だ。」

「セエさん! ありがとうございます!」

「お礼はいらないよ。」

 

 三人は、急いで家に帰っていった。

 そんな三人を見送り、村長は、ヤレヤレとため息を吐いたのだった。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 件のティガレックスは、砂漠にいた。

 

「……サイト。言っておくけど…、遺品が残ってる可能性はとても低い。それをよく考えて欲しい。」

「分かってますよ。」

「本当に?」

「サイト…、見つかっても、もしかしたらその人の物じゃないかもしれないわよ?」

「なんでだよ?」

「だって、私達、その人がどんな武器を使ってたとか、色んな情報も無しに来たじゃない。」

「あ…。」

 サイトは、重要なことに気づき青ざめた。

「……とりあえず、クエストを受けた以上、やるだけのことはやろう。」

 セエは、そう言って急かした。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 自動マーキングスキルで、ティガレックスらしきマークを追いつつ、遺品を探し、やがてそのマークがあるエリアに入ると……。

「あれ? ちょっと待って。」

「どうした、ルイズ?」

「あのティガレックスの首のところ……。背中に近いところに、何か刺さってない?」

「…ほんとだ。」

 それは、よく見ると、片手剣だった。

 二人がそんな話をしていると、ティガレックスが、こちらに気づいた。

「二人とも、来るぞ!」

「えっ! あ、はい!」

 轟くような咆吼をあげながらティガレックスが突進してきた。

 三人は散開して避ける。

 ブオンッと素早く尻尾が振られたので、セエは、大剣を抜くのが遅れ、吹っ飛ばされた。

「ぐっ!」

「セエさん!」

「か、かまうな!」

 セエは、痛みを堪えて立ち上がり、大剣を抜いた。

 サイトとルイズも武器を抜き、ティガレックスを攻撃する。

 ティガレックスのスピードに、翻弄されつつ、ルイズが離れた位置から、睡眠弾を撃ち続けていると、やがて睡眠弾の効果でティガレックスが眠った。

 その隙に、大タル爆弾Gを二個置き、小タル爆弾Gを置いて、爆破させる。途端、ティガレックスは、起きて悶えた。

 ティガレックスの身体に赤い血走りのような模様が浮き上がった。怒り状態だった。

 スピードは、更に増し、三人はとにかく怒り状態が治まるまで逃げ続けた。

 発達した腕を使った突進を何度も繰り返すため、途中で追いつかれて轢かれることもあった。ダメージを受ければ、回復薬グレートを飲んだ。

 やがて、怒りが治まり、ティガレックスの身体の色が戻った。

 ルイズが撃っていた麻痺弾が効いて、ティガレックスが麻痺をして止まった。

 その隙をついて、とにかく猛攻撃をかけた。

 三人の攻撃に、ティガレックスは、やがて弱って、ヨロヨロと逃げ始めた。

「逃がすかああああああああ!」

 サイトが鬼人化して、逃げようとするティガレックスに攻撃した。

 すべての斬撃が決まったとき、ティガレックスが絶命した。

「か、勝った! 勝ったーー!」

「やったわね、サイト!」

「さ、剥ぎ取り剥ぎ取り。………首にある剣が、件の物ならいいけど。」

 剥ぎ取りついでに、首に刺さっていた片手剣を抜き取った。

 これが、あのハンターの遺族の物かどうかは、持って帰って鑑定しないと分からない。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 焦る気持ちと、達成感が入り交じる中、ギルドに持ち帰った片手剣を鑑定してもらった。

 その場には、村長も、そして件のハンターの遺族も立ち会った。

 結果は……。

 

「残念ですが…。これは、違いますね。これは、この方とパーティーを組んでいた別の方の物です。」

 

 ティガレックスの首に刺さっていた片手剣は、遺族の家族だったハンターの仲間の物だった。そのハンターも、行方不明になっているので、ここに武器があるということは……。

「そんな…。」

 そのハンターの遺族の一人が、ヘナヘナとへたり込んだ。おそらく件のハンターの奥さんだろう。

「すみません…。」

「どうして…?」

「えっ?」

「どうして! 探さなかったのよおおおおおおお!」

「うわっ!」

 謝罪したサイトに、へたり込んでいた遺族が掴みかかってきた。

 途端、ギルドにいた人間達が集まってきてその人を押さえ込んだ。

 その人は、泣きわめきながらサイトを睨んでいた。憎しみを込めて。その視線にサイトは、青ざめたじろいた。

「サイト…。君のせいじゃない。」

「せ、…セエさん…。」

「気にするでない。こういうことは珍しくないんじゃからのう。もう、今日は帰りなさい。」

「でも…。」

「いいから。」

「帰ろう。二人とも。」

 セエは、二人の腕を掴んで引きずるようにギルドから出て行った。

 後ろでは、いまだに遺族の女性の叫び声が聞こえていた。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 家に帰ると、トウマが出迎えてくれた。

「にゃー…、良くない結果だったみたいにゃね。」

「ああ…。別の人の物だったんだ。」

「それは仕方ないニャ。何かが見つかっただけでも運が良かったニャ。」

 トウマは、そう言いながらおやつを用意した。

「ま、これでも食べて元気出すにゃ。」

「サイト…。」

 俯いて震えているサイトに、ルイズは恐る恐る声をかけた。

「どうしたにゃ?」

「実は…。」

 セエは、ギルドであったことをトウマに話した。

「おまえのせいじゃないにゃよ。」

「……なんで間違えちまったんだろ…。」

「仕方ないわよ…。トウマの言うとおり、何かが見つかっただけでも運が良いのよ。」

「でも…、俺…。」

「その遺族も、誰かに当らないと行き場が無かっただけにゃ。たまたま近場にいたおまえに当っただけにゃ。」

「俺…俺…。」

「サイト…。」

「うぅ…!」

 サイトは、ついに泣き出した。

 そんなサイトを、抱きしめ、ルイズは、慰めた。

 セエは、そんな二人を見つめ、やがて視線を外しお茶をすすったのだった。




ハンターの遺品は、どうなるのか?って考えてこうしました。
もしかしたら、ゲームでアイルー達にベースキャンプに運ばれるように、回収されるのかもしれないけど、あくまでそれはゲームの話なので。
キノコなどの採取クエストはあるのに、ハンターの遺品回収がないのは、こういう理由があるのかな?って思いながら書きました。
それとも、遺品を回収するのを専門とする人達がいるのか…。でも、もう持ち主がいなかったら、その武具はどうなるのか?
盗難品もある可能性もあるから、指紋みたいに識別する紋があっても不思議じゃないかなぁ?っとも思ったり。
ハンター稼業は、上手くいけば一攫千金だけど、常に死と隣り合わせだから、行方不明者が多いというのも捏造です。モンスターに死体を一掃されちゃうから、家族のところに死体が戻るのは希だとか…。


もし、こういう設定があるという情報がありましたら、教えて頂けると助かります。


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第六十一話  秘薬を作ろう

今回は、タイトル通り。秘薬といにしえの秘薬を作る回。

あと、前半、前回のことで落ち込んだサイトが立ち直ります。


 

 あの日から、サイトは鍛錬すらせず、庭の切り株に座って俯いている姿をよく見せていた。

 形見の品を持ち帰れたとにわかに期待させ、あのハンターの遺族を失望させてしまい責められたことがショックだったのだろう。

「サイト。いつまでも落ち込んでいても仕方がないぞ?」

 そう何度も声はかけた。

 トウマだって毒舌混じりに励ましたりもした。ルイズだって慰めた。

 しかし、サイトは、ほとんど喋ろうとしない。

 セエは、もう何度目かになるため息を吐いた。

「サイト。君は、ひとつの世界を救うためにハンターになったんだろ? それを忘れたわけじゃないだろ?」

「……ん…は…。」

「ん?」

「………なんでそんな軽いんですか?」

「はっ?」

 サイトがやっとまともに喋った。

「セエさん達にとって、命ってそんなに軽いんですか?」

 サイトが顔を上げて、セエを睨むように見てきた。

「軽い? そんなふうに考えたことはないよ?」

「だったら!」

 サイトが立ち上がった。

 そしてセエの胸を鎧の上から殴った。

「どうして命を捨ててまでハンターなんてやってんですか!?」

「そんなこと言われても…。やりたいからやってるとしか…。」

「じゃあ、あの女の人の旦那さんだったハンターもそうだっていうんですか!?」

「そうじゃないのか?」

「っ……。」

 それは、当たり前のことだ。やりたい者がハンターになる。ハンター稼業は、もっともこの世界で必要とされる稼業だろう。そのため様々な理由でハンターを目指す者達が現れる。そして、その大半は死んでいく。現役引退までハンターを続けられる者はほんの一握りだ。

「まあ……、運も実力のうちって言うけどさ。俺だって、何度も死ぬような目にあってきたし、顔見知りのハンターが死んだことだって少なくないんだ。村長だってそうだ。なまくらな武器で、モノブロスを狩ったような、まだ武器の加工技術がなかった時代もあったんだ。その頃考えれば、現在(いま)は、かなり恵まれてるんじゃないかな?」

「なまくらって…。」

「たぶん、ハンターナイフぐらいの低級の武器だ。」

「あの村長が…。」

「竜との戦争があった時代もあったんだ。人間がどれだけ命を削って、今の時代を築いたか……。命を軽く見るなんてとんでもないよ。」

「…すみませんでした。」

「ん?」

「俺…、この世界の人達が…特にハンターが自分の命を軽く見てるなんて思ってしまいました。だって、死んだらあんなに悲しむ人がいるのに……、なんでわざわざ危険な稼業をするんだろうって…。」

 

「それは、理解不足にゃね。」

 

 そこへトウマが洗濯籠を持ってやってきた。

「そのハンターの遺族は、ハンター稼業をうまく理解してなかったのにゃ。いつ死ぬかも分からないで、死体どころか遺品だって手元に帰ってこない可能性が高いって事を理解してなかったのにゃ。ま、今となっては、死人に口なしにゃから、そのハンターがどうしてハンターをやっていたのかなんて、これ以上深く考えてもどうしようもないにゃよ。」

「…分かってる。分かってるって!」

「本当かにゃ? お前はまだ若いにゃから、ウジウジ考え込むのも分かるにゃけど。」

「うっせーな。」

「ま、早くクエストなり鍛錬なりして、勘は取り戻した方がいいにゃよ? じゃにゃいと、死ぬことになるニャよ?」

「俺は、君達の遺品を拾うなんてしたくはないな。」

「……死にませんよ。俺は。」

 

「当たり前じゃない。」

 

 そこへルイズが来た。

「主人を残して死ぬなんて許さないわよ。」

「ルイズ…。」

「さ! 早くクエストに行きましょう! あんたが休んでる間に、結構お金使っちゃったんだから、稼がないと。」

 ちなみに、サイトとルイズの生活費などは、居候料金としてトウマが徴収しているのだ。そのお金で食費や衣類、二人が寝る用のマットを新調したりしている。

「あ、ああ…。ごめん。」

「この間のティガレックスの時に、グレート系も使っちゃったから、素材を集めないと。」

「えっ…。それって、おまえ…、フルフルを…。」

「……言わないで!」

 ルイズは、プウッと頬を膨らませてそっぷを向いた。ルイズは、フルフルが嫌いなのでできれば触りたくないし、できることなら見たくもないのだ。

「強くなるためには、好き嫌いなんて言ってられないからね。良い傾向だ。」

 ルイズが進んでフルフルを倒しに行くと言うので、良い傾向だと嬉しそうにセエは頷いた。

「じゃあ、いい加減、釣りカエルも…。」

「それは、別!」

「ありゃりゃ…。」

 ルイズに、ギッと睨まれたセエは、別に臆することなく、ヤレヤレと肩をすくめたのだった。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 その後、何度かフルフルを捕獲するクエストに挑み、アルビノエキスを集めた。

「そういえば、忘れたな…。」

「何を?」

「秘薬と、いにしえの秘薬…。すごい回復アイテムの作り方。教えてなかったな。」

「そんなアイテムが?」

「ああ、秘薬は、体力の回復が凄まじく高く、さらに体力を限界まで増幅させることもできる。その回復力は、回復薬グレート以上だ。いにしえの秘薬は、体力を限界まで増幅させ、なおかつスタミナをすべて回復させることができる。どちらも、強敵を相手にする時にあると便利ではある。」

「そんなのがあったんなら、早く教えてくださいよ!」

「ただし! 持てるのは、1個だけなんだ。いにしえの秘薬は。秘薬は、2個だけ。」

「ええーっ! そんな上限が!」

「欲しかったら、その場で材料を調合するしかない。」

「それだと道具袋の空きが…。」

「そう…。だからアイテムの選択は重要だ。数で勝負か(回復薬グレートなど)。質で選ぶか(秘薬など)。」

「それだけ貴重なアイテムだと、素材を手に入れるのも大変そうね…。」

「秘薬は、マンドラゴラと栄養剤グレートを調合することで出来る。いにしえの秘薬は……、活力剤と……、ケルビの角がいる。」

「ケルビ?」

「ほら、採集クエストとかで沼地とかで見かけるじゃない。小型で角がある四本足の。」

「…………あれ!? あの鹿みたいな奴!?」

「しか?」

「あ…そっか、この世界には鹿はいないのか…。で…、そのモンスターの角がいるんですか?」

「そう。」

「……なんか、気が引けるわけ…、あのモンスター…アプトノスみたいに大人しいもの。」

「それでいて臆病だから、すぐ逃げ回るんだ。大剣で倒すのは苦労するよ。」

「それ武器を代えればいいだけでしょう?」

「……。」

「ちょっと、サイト。ハンターの流儀とかにとやかく言う筋合いはないわよ。」

「えー、だって…。」

「まあ…、俺もケルビを狩るときは、片手剣をよく使うよ。ランゴスタの時も。ケルビの皮も装備の素材に必要な場合もあるし、肉は生肉として使えるし、狩って損はないと思うよ。じゃあ、いにしえの秘薬を作るために、ケルビの角を集めに行こうか。」

「はーい。」

 

 こうして準備をして、沼地の採集クエストに向かった。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 ケルビ。

 森と丘、沼地などに生息する小型の草食モンスター。雄と雌がいる。

 サイトが言うところの、鹿に似ている。

 とても臆病で、ジグザグに素早く逃げ回り、飛竜種が来れば、一目散にエリアから逃げ去る。

 その角は、いにしえの秘薬の素材となるため、多くのハンターに狙われる。

 

「……なんか、分かってても、気が引けちゃいますね…。」

「見た目は関係ない。モンスターは、モンスター。」

 沼地狩り場。不気味な霧で霞んだエリアの中を走り回っているケルビを見て、攻撃する気が失せかけるサイトに、セエがきっぱりと言った。

「サイト…。やるしかないのよ。…できるだけ、一撃で。」

「…ああ。」

 最初の頃、大人しいモンスターの代表格みたいなアプトノスを狩ることに抵抗していたのが嘘のような、二人の様子に、セエは、成長したなぁっとしみじみ思った。

 サイトが双剣を握り、走り回る、というか跳びはねるように逃げるケルビを追いかける。

 ケルビは、五回跳びはねるといったん止まる習性があることは、事前にセエから聞いていた。なので、止まった瞬間を狙って、攻撃した。

 アプトノトスよりもずっと小さいケルビは、あっという間に死んだ。

 サイトは、死んだケルビに心の中で合掌しながら、角を剥ぎ取った。

「あら? こっちのケルビには角が無いわ。」

「たぶん、雌だね。」

「雄と雌がいるのね。」

「ケルビの皮は、使い道があるから取っておこう。肉も使える。」

「分かってるわ。」

 剥ぎ取りのやり方もすっかり板に付いたルイズ。難なくケルビの皮と生肉を取った。

 こうして時間いっぱいまで、ケルビを狩り続け、角を集めた。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 家に帰ると、早速調合することにした。

「まず、活力剤を作ろう。」

 活力剤の材料は、マンドラゴラと、増強剤だ。増強剤の素材は、にが虫とハチミツだ。

 なお、増強剤は、行商人のおばあさんからも買えることがある(品揃えはその日で違う)ので、ある時に大量買いしておいた。

「マンドラゴラは、あの行商人のおばあさんから買えることもあるし、農場のキノコの木からも取れることがあるし、クエストだったら、特産キノコの納品で手に入ることもある。」

「マンドラゴラって、使い道多いっすね。」

「魔法の調合薬でもマンドラゴラはよく使うわよ。」

「まあ、とりあえず、ある材料で練習しよう。」

「はい。」

 調合の本も使い、調合の成功率も上げておく。

 何度か失敗したものの、なんとか秘薬といにしえの秘薬を作ることができた。

「はー、やっとできた!」

「これが、秘薬といにしえの秘薬なのね。」

「作っておいて、アイテムボックスに常にひとつは置いておくと面倒がなくていいけど、アイテムボックスも空きが限られてるから、うまく使おう。」

「はーい。」

 割と最近ではあるが、サイトとルイズ用のアイテムボックスの設置してもらっていた。

 ちょっと部屋は狭くなったが、まあ仕方がない。もともと殺風景な部屋だったので、そこまで支障は無かった。

「さてと……、そのうち、集会所クエスト星五つのクエストに上がるために頑張らないとね。」

「…ディアブロス、二匹……。」

「一匹20分以内だ。頑張ろう。」

「うぅ…。」

「セエさんは、よく一人で出来ましたね…。」

「今思うと、奇跡だったなぁって思うよ。それぐらいギリギリだった。」

 セエは、そう言って微笑んだのだった。




次回は、ハードの四本の角に挑むかな?


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第六十二話  四本の角に挑もう(ハード) その2

お待たせしました。待ってた方いるかな?

ハードクラスの四本の角(ディアブロス二匹)にリベンジ。


あと、最後の方でMHP2への布石。


 

 ココット村集会所クエスト、ハード(星五つ)に登るための最大の難所。

 それが、ハードクラスのディアブロス二匹を討伐する、『四本の角』である。

 

「さて…、二人とも、準備は出来た?」

「はい!」

「よし、行こう。」

 準備を整え、アイルーキッチンでも食事をしっかり摂ってから出発した。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 水属性を弱点とするディアブロス対策のため、サイトは、フロストエッジ改を装備し、ルイズは、水冷弾を大量に用意した。

「これで勝てなかったら、どうしよう…。」

「くよくよ考えても仕方ないよ。」

「そうだぜ、ルイズ。」

「…そうね。」

 やがて送迎の馬車が砂漠の狩り場のエリアに到着した。

 

 

 そして、キャンプ地で硬化薬グレートなどを飲み、ルイズの自動マーキングスキルで近場にいるディアブロスのところへ向かった。

「………遠目に見れば、カッコいいんだけどなぁ。」

「それ言ったら、ほとんどの飛竜がそうじゃないの?」

 遠くから見たディアブロスは、大人しくサボテンを食んでいる。

 これが近寄ったら途端に砂漠の暴君のごとく凶暴性を発揮して、縄張りに入ってきたハンターを全力で排除しようとしてくる……。それは、すべての飛竜種にも言えることだ。

「…うっし。行くぞ、ルイズ!」

「ええっ!」

 気合いを入れたサイトがフロストエッジ改を抜き、走り出すと、ルイズもライトボウガンを構えて水冷弾をこめた。

 後ろを向いていたディアブロスは、走ってくるサイトの足音に気づいて振り向いた。

 途端、バインドボイスを放つが、リオソウル装備により、スキルにより聴覚保護をされているサイトには効かない。たちまち距離を詰めたサイトが、ディアブロスの下に潜り込んでフロストエッジ改を振って切りつけた。

 ディアブロスは、発達した翼の爪を使い地面を掘り出した。

「うわわ!」

 大量の土と小石を浴び、サイトは、腕で顔を覆った。

「えい!」

 ルイズが音爆弾を投げた。破裂音が炸裂し、途端、土からディアブロスが半身を飛び出させジタバタと暴れ出した。

「ナイスだぜ、ルイズ!」

「今のうちよ!」

「おお!」

 ジタバタしているディアブロスに、二人は猛攻撃をかけた。

 少しして飛び出したディアブロスに向かって、サイトは、閃光玉を投げつけた。

 苦しげな鳴き声を上げ、ディアブロスがクラクラとよろめいた。

「うおおおおお!」

 フラフラとよろめいているディアブロスに、サイトは、フロストエッジ改の刃で切りつけていく。

 時々振られる尻尾攻撃も足元で踏まれないように巧みに移動することで避ける。

 しばらくして閃光玉の効果が切れると同時に、ディアブロスが怒りだした。

 ディアブロスは、黒い煙を口から吐き出しながら角を前に突き出し、水冷弾を撃っていたルイズに向けて突進した。

「えっ?」

「ルイズ! 逃げろ!」

 怒り状態でスピードが増しているディアブロスの突進に、一瞬呆けたルイズだったが、間一髪で横に避けて突進攻撃を逃れた。

 方向転換したディアブロスは、再び突進しようと角を突き出した。

 ルイズは、ライトボウガンを背中に納め、岩壁を背中にして突進を誘った。

 ディアブロスは、ルイズに向かって突進し、ルイズは、横に転がって避けた瞬間、ディアブロスの二本の角が岩壁に突き刺さった。

 グオーグオーっと苦しげな鳴き声をあげ、角を抜こうとするディアブロス。

 動けないでいるディアブロスに向け、サイトとルイズは、猛攻撃をかけた。

 やがて、ディアブロスは、倒れ、絶命した。

「よっしゃあ! 20分以内!」

「やったわね!」

「残り時間で、もう一匹だ!」

「分かってますって!」

 急いで死んだディアブロスから剥ぎ取りをして、もう一匹のところへ急いだ。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 もう一匹のディアブロスは、砂漠地帯にいた。

 灼熱のダメージを避けるため、クーラードリンクを飲み、早々にこちらの存在に気づいたもう一匹のディアブロスに立ち向かう。

 もう一匹のディアブロスは、穴掘り攻撃を多用した。

 潜るたびに音爆弾を使い、半身を地中から飛び出した状態にして攻撃を仕掛ける。それを繰り返した。

 怒り状態になれば、攻撃を避けつつ、隙を突く。

 集中力を切らさず、落ち着いて手順を踏んで二人は攻撃し続けた。

 ディアブロスが地中を掘って、場所を変えたりはしたが、岩壁があるエリアだったりして、かえって戦いやすくなったりもした。

 ゲネポスの群れの邪魔はあったりもしたが、麻痺に気をつけてゲネポスを倒しつつ、ディアブロスを攻撃した。

 そして……、タイムアップ直後になってもう一匹のディアブロスが息絶えた。

「や…、やった!!」

「やった! やったのよ、私達!」

「二人ともすごいぞ!」

 三人は、ハードクラスの四本の角のクリアを喜び合った。

「あ! 剥ぎ取り剥ぎ取り。」

「…よーしゃないですねぇ。」

 喜びもつかの間、迎えが来る前に急いで剥ぎ取れとセエに急かされたのだった。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 ついにハードクラスのディアブロス二匹を倒し、興奮冷めやらぬ二人と、セエは、集会所に帰って報告した。

「おめでとうございます。これから、お二人は、集会所、星5つのクエストに挑戦するランクになりました。これからも励んでくださいね。」

「やったーーー!」

「星5つをクリアすれば、次のランクが、G級だ。」

「あーー、ここまで来るまで長かった!」

「……そうだね。」

「セエさんは、何年もかかったのに、素晴らしいスピードですね、お二方。」

「えっ…?」

 受付嬢にそう言われて、ハッとした二人は、セエを見た。

 セエは、どこか切なそうに微笑んでいた。

「あ…あの…。」

「ん? どうしたの?」

「あの、俺達…。」

「別に悪いことじゃないだろ? 人それぞれだよ。」

「……。」

「気にやまないでくれ。」

 そう言ってセエは、背中を向けた。

 しかし、すぐに、ズビッと鼻をすする音がして、セエがちょっと泣いてるのが分かり、サイトとルイズは、気まずくなった。

「セエさんの言うとおりですよ? ハンターランクの上限の上がり方は、人それぞれなのですから。下手に気にすると悪いですよ?」

「…でも…。」

「まあ、その前に、ココット村の村長が発足するクエストを、一人ですべてやれるだけの実力は付けた方がよろしいかと…?」

「うっ。」

 いまだ二人で村長クエストをやっている二人に、受付嬢がずばり言い、二人は呻いた。

「ふふふ…。頑張ろうね。」

 気がつけば、振り向いていたセエがクスクスと笑っていた。

 

 サイトとルイズは、ついに、G級ランクの手前まで来たのだった。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

「そういえばセエさん。」

「ん? なに?」

「この間、ボーッとしていたことありましたよね?」

「ん? そうかな?」

「あったにゃよ。」

 家に帰っておやつを食べていたら、そんな会話になった。

「何かあったんですか?」

「……。」

「あ…、話せないことなら…。」

「…われたんだ…。」

「えっ?」

「ポッケ村に来ないかって誘われたんだ。」

「ぽっけ…?」

「あー、にゃるほど。」

「トウマ?」

「つまり、余所の地方の村のハンターにならないかってお誘いニャね。たまにあるにゃよ。」

「えっ!? それって左遷ってこと!?」

「それとは違うと思うニャよ。実力があるハンターにはよくあることにゃ。地方ごとに生息するモンスターが違ったりするにゃから、ハンターとしての実力を上げたいにゃら、住処を代えるってのもアリにゃ。」

「…じゃ、じゃあ…、セエさん…、セエさん、そのポッケ村に行くんですか?」

「まだ、決めてない。」

「そうですか…。」

 それを聞いて、ホッとしたような、モヤモヤするような…。

「ココット村でハンターを続けるも良し。他のところで新しく、一からハンターを始めるも自由にゃ。」

「…実は、悩んでるんだ。」

 そう言ってセエは、苦笑した。

「俺は、まだG級としては駆け出しだ。だからもっとG級を極めてから行くか、新しい新天地に行ってみるか…。」

「セエさん…。」

「はっはーん。さては、ここにいるコイツらのこともあるから悩んでるニャね?」

「俺達? あ…。」

「お前らは、一応ご主人の弟子にゃ。……そろそろ独り立ちの時かもニャね。」

「そ、そんなぁ。」

「もしかして、私達、足手纏いになってる?」

「いや、そういうわけじゃ!」

 セエは、そう言って手を振った。

「…実は、村長からこの話が来たとき…、二人も連れて行ってもいいぞって言われたんだ。」

「俺達も?」

「君達の世界に来てる飛竜種が、ココット村のある地方だけじゃないだろうから、違う地方で鍛えてやってもいいんじゃないかって…。」

「た…確かに…!」

「そうよね…。ハルケギニアに現れてる竜やモンスターが、この地方だけとは限らないものね…。」

「もちろん、無理強いはしない。俺について来る必要性自体はないんだ。」

「でも、俺達…。」

「君達の自由だ。」

「……はい。」

「トウマ。お茶、おかわり。」

「はいにゃ。」

 セエが差し出したカップにトウマがお茶を注いだ。

 サイトとルイズは、顔を見合わせ、そして少し考え込んだのだった。




MHP2で、キャラクターやデータなどの引き継ぎって、どういうやりとりがあったんだろうなぁって、色々と想像しちゃう。
少なくとも武器や防具の引き継ぎが無いから、一から始めることは前提なのだろうけど。
ここでは、村長からポッケ村に行ってみたいか?って話があって、それで前回あたりでセエは、どうするか考えてボーッとしてました。
ティガレックスとシェンガオレンも、MHP2への伏線として登場させたので、いつか行く予定。

次回は、グラビモスの亜種の予定。


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第六十三話  黒グラビモスを狩ろう(村長クエスト)

黒グラビモス狩り。

それにしても、なんでグラビモスが沼地にいるんでしょうね?
ムービーからするに、いかにも火山が生息地っぽいのに。


 

 飛竜種には、たいがい亜種が存在している。

 数が少なく、しかも通常種より強い傾向があり、その素材も高価である。そしてその素材で作った武具も強力である。

 

「黒いグラビモスがいるんだよな。」

「なんです? 急に。」

「ブラックピアスSっていう、ブラックピアスの上級の防具があるんだけど……、黒いグラビモスの頭が必要なんだよ。」

「…へえ。」

「G級じゃないと取れないんだよね。」

「…はあ。」

「予行演習する?」

「…はい?」

「グラビモスが、そっちの世界にいるなら、黒いのもいると思わないか?」

「う…。ああ、やっぱりっすか。」

「村長クエストには、黒グラビモスを狩れるクエストがある。やってみようか?」

「はーい…。」

 気は進まないが、これも修行だということで、黒グラビモス狩りをすることになったのだった。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 黒グラビモス。

 グラビモスの突然変異亜種。

 その姿は、まさしく黒色の火山岩に似ており、その黒い身体の甲殻は、通常種のグラビモスよりも硬く、身体も大きい。

 攻撃手段こそ通常種のグラビモスと同じだが、睡眠ガスをあまり使わない傾向にあり、その代わり口から吐き出す熱線の威力も、多用する火炎ガスもより強くなっている。

 麻痺に対する耐性もやや高く、そのため動きを封じるのも至難。通常種のグラビモス同様に俊敏性は低めであるが、熱線と火炎ガスのおかげで、近距離、遠距離ともに攻撃に秀でており、飛竜種の中でも最強の候補と言われている。

 

「さ、最強候補~~~!?」

「まあ、この地方での話だから。」

「イヤイヤイヤ!」

「例えそうでもマズい相手じゃないですか!」

「でも、攻撃手段自体は通常種のグラビモスと同じだから…。」

「けど、…亜種って強いんでしょ?」

「……まあね。」

 今までの傾向から、もう分かりきっていることだ。

 この世界のモンスター(飛竜種含む)の亜種は、強い。

「黒いって言ったら、ディアブロスの亜種も黒かったな。」

「なんか傾向があるんですかね?」

「それは分からない。」

 野生のモンスターの突然変異の傾向など、人間に分かるわけがなかった。まあ、専門家なら分かるかも知れないが……。

 

「さてと、じゃあ、始めよう。」

「はーい。」

 

 村長クエストの黒グラビモスがいるのは、沼地だ。

「沼地にもいるんですね…?」

「てっきり火山エリアが生息区域だと思ってたわ。」

「そこら辺の事情はよく分からない。」

 キャンプ地で準備を整え、ルイズの自動マーキングスキルで探知し、黒グラビモスのところへ向かった。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 霞の向こう……、黒を基調とした赤みのある巨体がノッシノッシと歩いていた。

「いた!」

 その姿は、まさに灼熱をまとい赤みを帯びた火山岩のようだ。霧のかかっていて気温も低めの沼地には、あまりにも似つかわしくない。

「うわ…、熱そう。」

「たぶん…、火山のよりは熱くはないと思うぞ?」

「見た目がね。」

 これが火山エリアだったらどうなったってたんだ?という疑問が浮かぶが、悪い疑問しか浮かばないため止めた。

「……っし! 行くぞ、ルイズ!」

「ええ、行きましょう!」

 フロストエッジ改を抜くサイト。ライトボウガンに水冷弾をこめるルイズ。セエは、いつものように傍観者に徹するため、エリアの端に移動した。

 ルイズが撃った水冷弾が背中の斜め横辺りに当ると、黒グラビモスは、こちらを振り向いた。

 そして大きく鳴き声をあげ、いきなり火炎ガスを放った。

「あつつ!」

 接近中だったサイトは、辛うじて火炎ガスの射程範囲に入らなかったが、熱風を受け思わず腕で顔を庇った。

 直後、黒グラビモスがやや緩慢な動きながら身体を回転させ、短いが太く強靱な尻尾を振った。

「ぐっ!」

 それを盾で防ぐサイトだったが、通常種のグラビモスよりも攻撃力が高い黒グラビモス。威力を殺しきれず横に吹っ飛んだ。

 クルリッと方向転換した黒グラビモスは、足を踏ん張り、口をパカッと開けた。

「サイト! 逃げて!」

 ルイズは、熱線が来るとみて、ギョッとしてたまらず叫んだ。

 直後、黒グラビモスの口から太い熱線が放たれた。

「くっ!」

 サイトは、間一髪で横に転がった。サイトが今いた場所を熱線が通り過ぎ、その射程範囲内のすべてを焼き払った。

 霞んでいたエリア内の霞が熱線の熱風で吹き飛び、視界がクリアになる。

 黒グラビモスは、突進しようと前屈みになり、やや緩慢な動きながらその巨体から繰り出される突進をサイトに向け、サイトは轢かれた。

「ぐほっ!」

 地面に倒れたサイトは、切れた口から血を流しながら、急いで回復薬グレートを飲み込み回復して立ち上がった。

 エリアの端まで突進を続けた黒グラビモスは、方向を変え、再度熱線を吐いた。

「うわっ、ちちちっ!」

 間一髪で横に跳び、熱線が背中を僅かにかすめた。

 まともに食らえば、間違いなく死ぬ!

 二人はそう予感した。それほどに黒グラビモスの熱線は、通常種のグラビモスよりも強かったのだ。

 ルイズは、水冷弾を撃ちまくる。しかし黒グラビモスは、まるで意に介していない。

「…っ、なら!」

 ルイズは、睡眠弾に切り替え、黒グラビモスを狙い撃ちした。

 何発か当ると、黒グラビモスは眠った。

「今っ!」

 チャンスだと接近し、大タル爆弾Gを傍に置いて、小タル爆弾で爆破した。

 途端、爆発の威力により黒グラビモスが起きて、煩わしそうに首を振った。

「うおおおお!」

 サイトは、黒グラビモスの腹の下を攻撃し続けた。

 やがて、腹の甲殻が破れて赤い肉が露出した。

 ルイズは、何度も睡眠弾を使い黒グラビモスを眠らせ、サイトがその隙をついて露出した肉の部位を攻撃する。

 それを繰り返し……、やがて、黒グラビモスは、断末魔の鳴き声を上げながら倒れて絶命した。

「うっしゃああ!」

「やったわね、サイト!」

「さっ、剥ぎ取り剥ぎ取り。」

「相変わらず容赦ないですね。」

「迎えが来たら剥ぎ取りできないからね。」

 喜びもつかの間、剥ぎ取りを急かすセエに、サイトとルイズは、苦笑したのだった。

 二人が一生懸命、黒グラビモスの素材を剥ぎ取っているのを後目に、セエは。

「……すごいな。」

 っと、小さく呟いたのだった。

「…もう、俺の指導も必要ないかな?」

 そう二人には聞こえない音量で呟いたのだった。




あんがい簡単に狩ってますけど、二人は熱線を食らわないようにするのでいっぱいっぱいでした。特にルイズは、背後から通常種のグラビモス(村長クエスト)の熱線を食らって死にかけたので特に警戒しています。

セエは、もう二人には自分の指導は必要ないと感じ始めてますが、これは単に筆者がネタ切れし始めているという心情からも来ています。
ハード(星五つ)に苦戦するサイトとルイズを書こうかな?
二人のトラウマ(捏造過去)、リオレウスもここから入るし。


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第六十四話  セエの選択

序盤に、モブのハンターが出てます。

セエがMHP2の舞台、ポッケ村に行くかどうか決める回?


 

「よお、異世界の新米。」

「その呼び方やめてくれよ。」

 サイトとルイズが異世界から来たことは、すでにココット村中に広まっており、村のハンターからは、異世界の新米(ハンター)などと呼ばれたりする。

 ムッとするサイトを無視して、若干上から目線のそのハンターは、サイト達にとっては衝撃なことを言った。

「聞いたか? セエがな…、ココット村を離れて雪山の向こうにある村に移る誘い、受けたってさ。」

「………えっ?」

「あ? 聞いてなかったのか?」

「…それって、ポッケ村のことっすか…?」

「さあな? 村の名前までは知らないな、俺は。ただこの地方じゃないのは確かだぜ? なにせ、とんでもなく年中雪がある、寒い地方らしいからな。」

「!!」

 その言葉でサイトは確信した。間違いなくセエが前に言っていたポッケ村というところじゃないかと。

 地形までは聞いていないが、少なくともちょうど良い春のような暖かさの、この地方ではないのは確かだ。

「大変だ…。」

「あ、おい! ………アイツ(セエ)の大事な分岐点だってのに。弟子を持つって大変だね~。」

 家に走って帰ってしまったサイトに手を伸ばしかけた若干上から目線のハンターは、その手でポリポリと自分の頭を掻いたのだった。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

「ルイズ、ルイズ、大変だ!」

「なによ、どうしたの?」

 家でライトボウガンの手入れをしていたルイズに、サイトが大慌てで駆け寄った。

「セエさんが…、セエさんが!」

「ちょっと、落ち着いて? なに?」

「セエさんが、ポッケ村に行くかもしれねぇ!」

「えっ!?」

「さっきハンターの人から聞いたんだ! 雪が年中すごいところって言ってたけど…、たぶん、ポッケ村じゃないかな?」

「うるさいにゃね…。どうしたにゃ?」

「あ、トウマ! おまえ話聞いてないのか!?」

 台所から騒ぎを聞いて出てきたトウマに、サイトがまくし立てるように聞いた。

「なんの話にゃ?」

「セエさんが、ポッケ村に行くって聞いてねぇのかよ!」

「にゃ? それは聞いてないにゃよ? はっはーん…、さてはご主人…。」

「なんだ? なんか心当たりあるのかよ?」

「そろそろ、お前らの指導も必要ないって思ったから、自分はいなくなった方がいいって思ったニャね。」

「なんでだよ! なんでそうなるんだよ!」

「ああ見えて、ご主人、早とちりニャから。ま、コレについては、ご主人のハンター人生ニャから、とやかく言う資格は誰にもないにゃ。」

「そんなぁ…。」

「それに、ご主人がいなくなれば、実質この家は空き家にゃ。にゃー達も新しい雇用先に行くことにニャるし、このままお前らの家にして、新しいアイルーかメラルーでも雇うことになると思うニャよ。」

「…帰ってくる可能性は?」

「たぶん、帰っては来ないと思うニャよ。向上心があるにゃら、なおさらにゃ。こういうお誘いで余所へ行ったハンターは、現役引退でもしない限り故郷には帰ってこないニャよ。」

 トウマにそう言われて、二人は黙った。

 

「ただいまー。」

 

 そこへセエが帰ってきた。

「ん?」

 何やら場の空気が悪いことにセエは気づいた。

「どうしたの?」

「セエさん…。」

「ん? なに?」

「……村を出て行くんですか?」

「えっ?」

「さっきサイトが…。」

「ん? ああ、そのことか…。」

 セエが否定しなかったことに、サイトとルイズは、ショックを受けた。

「実は…。」

 セエは、ポリポリと指で自分の頬を掻いた。

 そして、サイトとルイズとトウマは、セエの言葉を待った。

 

「サイトとルイズ、二人がG級に上がれたら…、もし二人が良ければ、一緒にポッケ村に行きますって村長と話をしたんだ。」

 

「…………………………えっ?」

 サイトとルイズは、キョトンとした。

 トウマは、すぐに理解し、ヤレヤレと腕をすくめていた。

 サイトとルイズは、お互いの顔を見合わせてからセエを見た。

「えっ……、じゃあ、すぐには行かないって事ですか?」

「そうだよ。でも、いつかは行く。行きたいんだ。」

「そうですか…。」

「なに? 迷惑だった?」

「そ、そんなんじゃ!」

「ただ、びっくりして…。私達、見放されたのかなぁって思っちゃって…。」

「見放す? そんなことしないよ。でも…、俺の指導はもう必要ないと思うよ。それは本当にそう思ってる。」

「セエさん…。」

「二人は、十分戦える。ハードクラスにだって上がれたんだ。G級までもうすぐだよ。」

 セエは、そう言って微笑んだ。

「まっ、村長のクエストをまだ二人でやってるニャから、まだ半人前っちゃ半人前ニャね。」

「それを言うなよな。」

 三人の間にたちこめていた感動の空気にトウマが水を差した。

「まあ…、そういうことだから、別に今すぐってわけじゃないよ。もちろん、二人が嫌だったらついてこなくていいんだ。」

「お、俺達は…。」

「…選択肢なんてないわ。」

「ルイズ?」

「だってそうでしょ? 私達の世界には、この地方以外のモンスターだって現れてる可能性がある。だから、別の地方でその倒し方を学ぶ必要があるわ。」

 サイトとルイズ、この二人がこの世界にやってきたのは、自分達がいたハルケギニアに現れ蹂躙しているモンスター達の倒し方を知り、また対策となる武具を持ち帰ることだ。

「そうだな…。そうだよな。セエさん。俺達も行きます。ポッケ村に!」

「二人とも…。」

「よかったニャね。ご主人。」

「……うん。」

 トウマにポンッと叩かれ、セエは、俯き小さく頷いたのだった。

 

 

 こうして、三人のポッケ村への移住の話が進んでいった。

 ただし…、サイトとルイズがG級に上がれたらの話である。




すぐには移住はしません。
サイトとルイズがG級に上がれたら移住を予定します。
あと、序盤に出てきたモブハンターは、若干上から目線ですが、悪気はありません。サイトが新米だからとちょっと先輩面してるだけです。

実は、現時点での予定としては、MHP2へ移行したら、トウマとは、お別れを予定してます。


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第六十五話  龍属性武器

筆者は、龍属性攻撃は、あまり重視してなかったので、あまり知識がありません。
なので、結構大変でした。書くのが。

MHP無印の武器情報を元にしているので、後期シリーズの武器の情報はありません。
そのことを踏まえた上でお読みください。


 

「無理だなぁ…。」

「どうしたにゃ?」

 庭の切り株に座って、腿の上に肘を乗せて顎を支えているセエに、洗濯物を取り込んでいたトウマが聞いた。

「いやね…。属性武器で、あの二人が持ってないのってなんだろう?って考えたら……。手に入れられそうにない物しかないなって思って。」

「何の属性にゃ?」

「龍属性。」

「……にゃー…。そりゃ大変だニャ。」

 

 龍属性武器。

 それは、その名の通り、飛竜種の戦いにおいて、もっとも有効といえる属性を持った武器である。多くの…というかほとんどの竜は、この属性を嫌う。

 ……噂によると、どこかの地方には、この属性を無効化してしまう特殊な攻撃手段を持った竜もいるらしいが。

 

 セエが言う問題は、サイトとルイズの武器の選択肢の少なさにある。

 サイトには、ガンダールヴというあらゆる武器を使いこなせる…はずの特殊能力があったらしいが、この世界ではなぜかそれがほとんど意味を成さない。

 そのためサイトは、元々の身体のつくりもあり、大剣やハンマーなど、重量のある武器が使えない。

 ルイズは、良いところのお嬢様であるため、これまで鍛えてきたが、そう簡単に筋肉がつくはずがなく(これについては、元々筋肉が付きにくい体質である可能性もある)、また小柄で体重もなくて接近戦は無理。そのためガンナーになったのだが、腕力が無いため、威力が高いヘビィボウガンが使えず、ギリギリでライトボウガンを使うに至っている。

 

「いや待てよ…。ルイズだけは、龍属性攻撃は出来なくはないか?」

「滅龍弾にゃね。」

「あーーー、でも!」

 っとセエは、頭を抱えた。

 問題は、その滅龍弾が使えるライトボウガンが、かなりレア度が高い武器であることだ。

 ココット村で制作できる現時点での、ライトボウガンで、滅龍弾を使えるのは……。

 

 カンタロスガン。

 デッドフリルパラソル。

 

 の、二種類だ。

 カンタロスガンは、まだハードクラスの大昆虫大発生で入手できるし、上竜骨もハードクエストで取ることは出来る。つまり比較的簡単なのは、こちらだ。

 問題はデッドフリルパラソル。

 黒龍と呼ばれる竜の素材と、落とし傘というレア素材が必要だ。

「……カンタロスガン一択か…。」

「そうなるにゃね。」

 額を押さえるセエに、トウマがそう言ったのだった。

「でも、属性の弾が使えないのがネックだな。」

「そりゃ仕方ないニャ。」

「多種多様な属性弾を使うか…、それを捨てて龍属性を選ぶか…。」

「クエストによって使い分けるしかないにゃよ。ご主人だってそうしてるにゃから。」

「まあ…、そうだけど。」

「選ぶのは、あの娘にゃ。」

「そうだな。」

 

「ただいまー。」

 

 そこへ、サイトとルイズが帰ってきた。

 なので、早速セエは、二人に龍属性武器について話すことにした。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 龍属性という竜によく効く属性があると聞いて、二人は目を輝かせた。

「そんなのがあるのなら、早く言ってくださいよ!」

「いやぁ…そうは言っても…。難しい属性でもあるんだ。」

「難しい?」

「いや、というか、入手が難しいってことかな? ガンナーはともかく。」

「っと、言いますと?」

「例えば、片手剣や、双剣……。俺が持ってる、大剣オベリオンなんかは龍属性武器だ。」

「もしかして…、希少な素材が必要?」

「例えば、老山龍…ラオシャンロンの逆鱗とか…。」

「げっ! アイツの!?」

「黒龍と呼ばれる竜とか…。」

「こくりゅう?」

「さあ? 俺も見たことがないし、資料も無いから、かなり上のランクの可能性が…。」

「龍属性を手にれる前に、死んじゃいますよ!」

「そうなんだよなぁ…。だから、他の弱点属性をついて倒して、それで素材を手に入れて、作るしかないんだよな。」

「でもガンナーは、簡単に手に入るのよね? さっきの言い分だと。」

「滅龍弾って、龍殺しの実にカラ骨(大)を調合した弾がある。これを撃てるボウガンは、ヘビィボウガンに多いんだけど、ライトボウガンにもある。ただし…、俺が知る限りじゃ二種類だけで、他の属性の弾が使えないとかあるけどね。」

「そのライトボウガンって?」

「カンタロスガンと、デッドフリルパラソル。」

「カンタロスはともかく…、あとひとつはなんか変な名前…。」

「ぱらそる…って、まさか傘ですか?」

「その通り。」

「レイトウ本マグロといい、ネタ的な武器がありますよね?」

「そうかな? まあ、作りやすいのは圧倒的にカンタロスガンの方だ。どうする、ルイズ?」

「……龍属性の弾が使えるなら、作っておいて損はないわ。」

「じゃあ、作ろうか。」

「あの、俺の武器は?」

「そこなんだよなぁ…。片手剣と双剣じゃ、老山龍の素材とか黒龍の素材とか、あと希に採掘できる、さびた塊か、太古の塊って素材を加工すれば手に入らなくはないんだ。」

「なんですかそれ?」

「さびた塊と太古の塊は、片手剣、大剣、ハンマー、ランス、ボウガンのいずれかなんだ。それは、店で加工してみないと分からなくてね…。しかも希少な上に、目的の武器になる可能性も低くて、普通に作れる武器になる可能性が高い。」

「下手すると何年もかかる可能性もあるにゃよ~。」

「げっ! そんなかかるのか!?」

「けど、その分、威力は絶大にゃ、って話にゃ。」

「あと、大地の結晶がメチャクチャいる。」

「どれくらい?」

「120個だったかな?」

「多過ぎ!」

「けど、農場の採掘も出来るニャから、大地の結晶は手に入りやすいニャよ? ご主人にゃんか、取りすぎて余らせてるにゃよ。」

「でも……、すごい希少なんだろ? その塊っての。」

 三人は悩んだ。

 いかにして、龍属性武器を手に入れるかを。

「分かった、こうしましょう。」

 するとルイズが言った。

「サイトの龍属性武器は、私が滅龍弾を使えるボウガンを作ってから、必要な素材を持ってる竜を倒して作る。それでいいんじゃない?」

「けど、ルイズ…。」

「セエさん。老山龍の逆鱗って、もしかして集会所クエストじゃないと手に入らない?」

 ルイズは、サイトを無視して聞いた。

「そうだね…。確率は低いけど、ハードクラスのラオシャンロンから取れる。」

「ご主人が、メチャクチャなんてもんじゃないほど苦戦した、アレ…にゃね。」

「……。」

 トウマが言うと、セエは口を閉じた。

「えっ? なに? そんなに大変?」

「ソロでやると、ムチャクチャ大変ニャよ~。けど、ご主人はそれでもなんとかクリアしたにゃ。お前らの目的になるラオシャンロンは、G級への最後の壁にゃ。」

「G級手前の奴!?」

「でも、お前らは二人にゃから、ご主人ほど苦戦はしないかもしれないにゃね。」

「お、おい…。」

「ソロでやるのも、複数でやるのも、それぞれにゃよ。」

 容赦なく言うトウマに、サイトとルイズは、恐る恐るセエを見た。セエは、黙ったままである。別に表情は変えてない。

「……俺は二度とやりたくないな。」

 そう言って、苦笑いを浮かべたのだった。

 そんなセエの顔を見て、サイトとルイズは、なんとも言えない顔をしたのだった。

 

 っというわけで、当面の目標は、ハードクラスのラオシャンロンのクエストに挑むための切符を手に入れるために、ハードクラスのクエストをクリアしていく、ということになった。




ハードクラスのラオシャンロンは、もはやトラウマです。何回失敗したことか……。
セエは、最初の頃ラオシャンロンに対してトラウマがあるみたいに書いてますが、原因はハードクラスのラオシャンロンにあります。

武器の選択肢の少なさが、だんだんアダになってきたなぁ…。どうしよう。


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第六十六話  フルフルを捕まえよう(ハード) その1

久しぶりの更新です。

ハードクラスのフルフル捕獲クエストに挑むが……?

これまで村長のクエストのフルフルと戦いまくったのに、ハードで立ち回れないなんておかしいかもしれないけど、そういう展開にしました。


 

 ルイズは、しゃがみ込んでいた。

「おい、ルイズ…。いい加減機嫌直せよ。」

「…だって……。」

 ルイズが機嫌を悪くしている理由は……。

 

 ハード(星5つ)のキークエストに、フルフルの捕獲クエストがあったからだ。

 

 フルフルが生理的に嫌なルイズとしては、グレート系のドーピングアイテムの素材であるアルビノエキスを取るだけでも一苦労なのに、なにゆえこうもフルフルと関わらなきゃならないのかと納得できないらしい。

「俺だってイヤだからな! いっつも俺ばっかりアイツ(フルフル)の剥ぎ取りやらせやがって!」

「触りたくないもん。」

「だからって、俺に押しつけんな! ルイズは、まだいいぞ。ガンナーで遠くから攻撃すればいいんだからな。俺なんて剣だぞ、接近戦だぞ。ネッチョネチョが付くし、ずっと変な匂いもすんだぞ!」

 

「で? やるの、やらないの? これやらないと、ハードクラスのラオシャンロンに挑めなくなるぞ?」

 

「……セエさん…、マイペースですね。」

 空気読まずに聞いてきたセエに、サイトは若干呆れた。

 結局、ぶうたれてつつ、ルイズは重い腰を上げ、ハードクラスのフルフル捕獲クエストに挑むことになった。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 クエストの難易度が上がるほど…、モンスターはデカくなる。そして強い。

「なんでですかね?」

「それだけ強いって事じゃないかな?」

「強くて優れた個体ほど大きくなるのは基本じゃないかしら?」

「ハードクラスともなれば…、もう分かってると思うけど、あらゆる攻撃が格段に上がってる。例えば電気ブレスをまともに食らえば、一撃で死ぬ場合もあるから。気をつけて。」

「はーい。」

「…分かってる?」

 微妙な返事をするサイトに、セエは顔をしかめた。

「えっ? わ、分かってますよぉ!」

 ホントに分かってんのか?って顔をされているのに気づいたサイトが慌てて取り繕う。

 セエは、そんなサイトを無視してルイズの方を見た。

 ルイズは、ムスッとした顔をして余所を向いている。

 セエは、ため息を吐いた。

「……遺品を拾うのも…、墓を作るのも嫌だからな?」

「そんな大げさな!」

「サイト。さっさと準備して行くわよ。」

「あ、ちょっと待てよ!」

 さっさとクエストを終わらせたいルイズが準備を始めたため、サイトも慌てて準備を始めたのだった。

 セエは、そんな二人の様子を見ながら、ヤレヤレと肩をすくめたのだった。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 フルフル生け捕りのクエストは、基本的に巣がある沼地でやる。

 沼地のぬかるみもあり、あとゲネポスやイーオスなど、邪魔者がウジャウジャいるため、ルイズの機嫌はますます悪くなる。

「分かってると思うけど、イーオスやゲネポスは無視だ。」

「ルイズ! フルフルの位置を教えてくれ!」

「……。」

「ルイズ! 聞いてんのか?」

「あ…。ごめん。……こっちに飛んできてる。」

 ルイズは、自動マーキングスキルで、自分達が今いるエリアに向かって移動してくるフルフルを探知した。

 フルフルは、目が見えないためか、飛行速度は遅い。しかし目が見えなくても飛行してくるのだから、それ以外の感覚の鋭さが際立つ。そのため、ハンターの存在にいち早く気づくのだ。その証拠に、セエとルイズに見えているフルフルのマークがすぐに赤く染まった。

「やだ、もう気づいたの!?」

「フルフルは、感覚が鋭いからね。さあ、頑張ろう。死なないようにね!」

 セエは、そういうとエリアの端に移動し、傍観に徹した。ゲネポスやイーオスが襲ってくるので、倒しながら二人の様子を見る。

 エリアの中央に、フルフルがゆっくりと飛来して着地した。

「ルイズ! 行くぞ!」

「分かってるわ!」

 二人はそれぞれの武器を抜いて駆けだした。

 途端、フルフルがいきなりバインドボイスを放った。

「うっ!」

「くっ…!」

 あまりの大音量にたまらず耳を塞いで止まってしまう。それほどにフルフルのバインドボイスは、おぞましく、そして音が大きいのだ。

 立ち止まった二人の方に、フルフルが振り向く。そしてゆっくりとした動作で、口に電気をため始めた。

「げっ! やべ…。」

 辛うじて立ち直れた二人は横へ散開する。

 直後、二人がいた場所を、地を走る電気ブレスが通り抜け、射程範囲にいたゲネポスやイーオスが巻き込まれて倒れた。

 フルフルが白い巨体をブルンと揺らしながら跳んだ。

「きゃっ!」

 ルイズのすぐ傍に着地したため、ドロが跳ねる。

 思わず跳んだドロから顔を庇おうとしたルイズが止まっていると、フルフルの身体から電気がほとばしった。

「きゃあああああ!」

「ルイズ!」

 その電気のダメージをもろに受けたルイズが弾き飛ばされた。

 激昂としたサイトが双剣を抜いて走り出し、フルフルを後ろから切った。

 ルイズは、泥まみれになりながら起き上がり、回復薬グレートを飲んでいた。

 フルフルは、サイトの方に振り向き、ブンッと短く硬い尻尾を振った。

「ぐ、がっ!?」

 剣を盾にして防ごうとしたが、クエストのランクのためか攻撃力が高まっており、威力を殺しきれずサイトは吹っ飛び転がされた。

「サイト! 起きて!」

 フルフルが電気ブレスの動作に移ったのを見て、ルイズが悲鳴を上げた。

 動作がゆっくりなので、こちらに注意を引こうとライトボウガンの弾を撃ちまくるが、全く振りまかない。

 サイトが立ち上がった直後、電気ブレスが放たれた。

「っ、ぎゃああああああああ!」

 サイトは、咄嗟に横へ転がって避けようとしたが、ブレスの範囲から逃れられず、電気ブレスのダメージを食らってしまった。

 全身を焼かれ、煙が出して倒れるサイトに向けて、再びフルフルが電気ブレスを放とうと口に電気をため始める。

 

「クエスト、リタイアだ!」

 

 セエがそう宣言し、走ってきて、サイトの足を掴んで横へ逃げる。直後、電気ブレスが通り過ぎた。

 救援がきて、フルフルを牽制しつつ、白目を剥いているサイトを迎えの荷車に放り込み、ルイズも乗せてからセエも乗って、退却した。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 ルイズは、泣いた。

 サイトの心臓が止まっていて。

 すぐに心肺蘇生処置が施されたおかげですぐに息を吹き返したものの、もうちょっと遅かったら完全に死んでたところだった。

「ほら、もう泣かない。サイトは無事なんだから。」

「だって…、だってぇ…。」

 サイトは、今寝ている。全身に包帯を巻いているものの、呼吸はちゃんとしている。

「しかし……、どうするかな…。ハードのフルフルでこれじゃあ、ハードクラスのラオシャンロンまで行けない。」

 今後の課題は、ハードクラスを乗り越えるための防具を整えることだろうか?

 サイトは、リオソウル一式なので、今よりも防御力の高い物を揃える必要がありそうだ。

 ルイズは……、自動マーキングスキルを保つなら、今のままでいるしかないかもしれない。

「いや…、待てよ。」

「セエさん?」

「なら、こうしよう。ルイズ。ピアスをパワーアップさせよう。」

「コレ(ブラックピアス)を?」

「俺が付けてる、ブラックピアスGを作ろう。ハードクラスのバサルモスを狩る必要があるけど…。」

「今のままじゃ…私達…。」

「そうだね。だからこそ、強くなるために乗り越えないといけないんだ。俺も相当苦労したよ。」

「……厳しいわね。」

「誰もが通る道さ。」

 セエは、そう言って笑った。

 

 こうして、防御力を上げるため、装備の新調をすることになった。




フルフル嫌いなルイズとサイト。
マイペース、セエさん。

ハードクラスだとモンスターの体力も攻撃力もずっと上ですからね……。村長クエストのフルフルのつもりで立ち回ると確実にやられそう。

次回は、防具の新調。


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第六十七話  防具を新調しよう その3

ひっさりぶりの投稿。

完全に詰まってた。


今回は、ブラックピアスGを作るため、ハードクラスのバサルモス討伐に挑む。


流血注意。


 

 

 

 サイトの怪我が治ってから、話し合い、ハードクラスのバサルモスから、ブラックピアスGの素材となる岩竜の翼を手に入れるために挑むことになった。

「ハードだけに…、やっぱヤベェんですよね?」

「攻撃力も体力も、倍以上だからね。グラビモスの幼体とはいえ、大きいし。」

「それは、もはや幼体って言えるんですか?」

「大きな赤ちゃんもいるってことさ。」

 そんなこんなで、準備を整え、ハードクラスのバサルモス討伐クエストに挑むことにした。

 

 

「もう口酸っぱくして言うけど、こういうクエストって、必ずしもその素材が手に入るとは限らないから。」

 火山エリアに行く途中の馬車の中。セエがそう言った。

「分かってますよ。」

「そうかな~?」

 じ~っと、セエがサイトを見つめた。

 サイトは、居心地悪そうにそっぷを向いた。

 そんな様子を見て、ルイズは、クスッと笑った。

「ルイズもだぞ?」

「え~?」

「油断すると、死ぬからな。なにせ、相手は、毒を持ってるし。」

「あ…。」

「ほら。」

 言わんこっちゃないと、セエは、首を振った。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 やがて、馬車は、火山エリアのキャンプ地に到着した。

 準備を整え、自動マーキングスキルでバサルモスのもとへ向かう。

「さて、どれだ?」

 大きな岩が点在する火山岩で出来た開けた場所。そこがバサルモスの生息区域だということは分かっている。

 バサルモスの生態は、岩に擬態することだ。そのため、近寄ってもピクリとも動かず、こちらが攻撃を仕掛けないと動かない。

 逆に言えば、それは完全なる大きな隙であり、爆弾を仕掛ければ大きなダメージを狙えるのだ。

「ルイズ。どれだ?」

「えーと、地図で見ると、ここ…。」

「あれか。」

 エリアの出入り口から見て、左方向、真ん中。

「じゃ、頑張れ。」

 セエは、傍観に徹するためエリアの端に行き、サイトとルイズは、タル爆弾を用意した。

 そして、動かないバサルモスの傍に、設置できるだけ設置し、小タル爆弾を点火した。

 そして大急ぎで逃げる。

 そして、大爆発。

 そして、地面から姿を現わすバサルモス。

 黒煙が舞う中、大ダメージを受けたバサルモスが黒煙を吐きながら吠え、突進してきた。

 サイトとルイズは、二手に分かれ、それを避ける。

 ルイズは、距離を取ってライトボウガンを構え、サイトは、双剣を抜いた。

 するとバサルモスが、その巨体から紫色のガスを放出した。毒ガスだ。

 風もなく、そしてサイトもギリギリで射程距離に入らなかったため、毒は受けなかった。

 毒ガスが消えたところで、サイトは、接近し、腹を狙ってガキン、ゴキンっと、刃を当てた。

「サイト! バサルモスの攻略法は覚えているか!」

「あ!」

 セエが声をかけ、ハッとしたサイトが剣を収めて、バサルモスに対して背中を向けた。

 その背中を見て、鳴き声を上げて猛ダッシュをかけようとするバサルモス。サイトは、他の岩の方へ向けて走った。

 追って来るバサルモスの体の翼部分が岩に接触し、岩が爆発した。

 バサルモスは、苦しげに鳴き声を上げた。

 ルイズは、水冷弾を撃ち続けていた。

 サイトは、距離を保ちながら、バサルモスの注意を自分に向けさせる。そして突進を誘い、岩へと導く。そして接触させて岩を爆破させ、バサルモスにダメージを与えた。

 やがて岩がなくなり、サイトは、剣を抜いて、バサルモスの下に入り込んで腹を切りつけた。

 爆発が効いたのか、いとも簡単にバサルモスの腹の甲殻が剥がれ落ち、赤い肉が露出した。

 露出した肉に、遠慮無く剣を突き出す。それだけでバサルモスは、悲痛な鳴き声を上げる。

 次の瞬間、バサルモスが睡眠ガスを吐き出した。

「ぐっ…。」

 避ける暇も無くサイトは、ガスを吸い込んでしまい、その場に倒れてしまった。

 そして、続けざまに毒ガスまで吐いた。

「サイト!」

「気にするなルイズ! 撃て!」

 眠っているうえに、毒まで喰らったサイトをルイズが心配するが、セエが攻撃の手を緩めるなと声をあげた。

 やがてサイトが目を覚まし、そして自分が毒をもらっていることに気づきよろめいた。

 そして慌てて解毒薬を飲み込もうとして…、ブオンッと振られたバサルモスの尻尾の攻撃を受け、吹っ飛んだ。

「がっ!」

 サイトは、吐血しながら地面を転がり、立ち上がろうとした。

 バサルモスは、猛ダッシュによる突進をして、サイトを轢いた。

 サイトは、血を流しながら再び地面を転がり、ピクピクっと痙攣した。

「起きろ、サイト!」

「ぐ…ぅ…。」

 猛ダッシュにより、かなり距離が離れたバサルモス。

 動きがのろかったのが幸いした。その隙になんとか起き上がったサイトは、回復薬グレートを飲み込み、解毒薬も飲み込んだ。

 バサルモスが再び猛ダッシュによる突進を仕掛けてきた。

「う、おおおおおおおおおおおお!」

 サイトは、その突進を避け、バサルモスが止まると同時に、バサルモスの露出した肉に剣を再び攻撃を加えた。

 バサルモスは、断末魔の鳴き声を上げ、絶命した。

「っしゃあ!」

「サイト!」

「だいじょうぶだ、ルイズ。」

「さ、剥ぎ取り剥ぎ取り。」

 お互いの無事を確認し合う二人に、セエがそう急かした。

 

 そして、一行は、無事に岩竜の翼を手に入れた。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

「あとは、王族カナブンがいるわけだけど……。」

 セエは、二人を連れて、農場に来た。

「地道に行くしかないか。」

「……えー。」

「もっと手っ取り早くはできないの?」

「王族カナブンは、希少でね。高い値段で売れるし、中々取れないんだ。けど、農場なら時間はかかるかもしれないけど危険を冒さず採れる。」

「地味ねぇ…。」

「仕方ねぇよ。」

「じゃ、サイト。虫の木、行こうか。」

「げっ!」

 サイトは、大きな虫の木を指差されて、嫌そうに声を漏らした。

「ほら、嫌がるな。地道も大事。」

「分かってますよぉ!」

「ルイズは、そっちの茂みを探してみて。見つかるかもしれないから。」

「はーい…。」

 二人は、不服そうに地味で地道な作業をした。

 

 結局、王族カナブンを必要な数集めるのに、数日をかかった。

 

 さらに、必要素材である、カンタロスの刃羽を手に入れるため、ハードクラスの、巨大昆虫大発生というクエストに挑み、地道に巨大昆虫ランゴスタを退治して、報酬でカンタロスの刃羽を入手した。

 

 

 そうして、ようやく……。

 

「やっと出来たな。」

「ご注文の、ブラックピアスGです。」

「やったな、ルイズ!」

「ええ、サイト!」

 

 やっと、ブラックピアスの上位であるブラックピアスGを作ることが出来たのだった。

 

 




強敵と戦うクエストと、地道に素材集めをする苦行と、どっちが辛いでしょうかね?

微々たるものですが、ルイズの防御力はこれで少し上がりました。

問題は、サイト。ここからどうするか……。
現在リオソウルの初期を装備しています。


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第六十八話  防具を新調しよう その4

ひっさしぶりの更新。


待ってた方おられます?


今回は戦闘無し。


 

「キリンの装備で行くか…?」

「キリン…って、あのイビルジョーに食われてばっかだった馬ですよね?」

 サイト達は、キリンに何度か挑んでいるが、実際に狩れたことはない。まるで疫病神みたいにイビルジョーが来て、キリンを食べてしまうのだ。

「キリンは、あの通り雷属性だ。あるいは、ハード以下のフルフルから作った防具で行くか…。」

「なんか、ネチョネチョしてそうで、イヤね…。」

「実物はネチョネチョじゃないから安心してくれ。しかも、フルフルの生態の都合で、寒さにも強いから、上から下まで揃えれば凍えることもない。どうだろう?」

「どっちが確実ですかね?」

「…キリンの依頼は、キリンが出ないと発行されないから…、フルフルの方だな。」

「うひゃー、ルイズー、お前の嫌いなフルフル大量狩りだぜ?」

「……。」

 サイトの茶化しにルイズは、閉口した。

 結局、どうあがいてもフルフル狩りは、やめることはできないのだと。生理的に無理な感じがするあの異形の竜を狩り、その身体から採れる素材を使い続けなければ力は得られないのだと。特にお世話になるのは、アルビノエキスだ。これがないと、攻撃力アップと、防御力アップの道具が作れないのだから。

「…はあ…、やるわよ。やるしかないんでしょ!」

「なんだったらサイトだけのソロで…。」

「フルフルぐらいで遅れとってたら、この先やってられないわよ! 私も行くわ!」

「ルイズ…。成長したな。」

「なによ?」

 ちょっと感動しているセエである。

「これで、あとはカエルを…。」

「それは別よ。」

「うーん…。」

 ルイズのカエル克服はまだかかりそうだ。

「けど、だからといってそれで安心かって言ったら否だ。あくまで電気攻撃をちょっとだけダメージを減らせるってだけだ。むしろ全体的に防御力が下がる可能性が高い。しかも相手は、ハードクラスのフルフル…、ハッキリ言って焼け石に水だけど…。」

「普通クエストと、ハードとの落差が激しすぎますよ。」

「俺も最初はそう感じたよ。だけど、G級行ってみてさ…、ハードなんぞ軽かったんだって思い知らされるのさ。」

 腕組みして、ものすごい疲れたようにフ~~~~っと息を吐くセエの様子に、サイトとルイズは、顔を見合わせ、G級どんだけ!?っと不安になった。

 まあ、とにかくフルフル装備を揃えることを前提にフルフル狩りをすることになったのだった。(ハードのフルフルを相手にするための練習もかねて)

「けど、その必要はないかもな。」

「えっ?」

「よく思い出してごらん。今までアルビノエキス目当てで狩ってきた数を。アルビノエキス以外にフルフルの素材が取れてただろ?」

「あ…。」

 そういえば大量にあったはずだった。

 っというわけで装備屋に行き、確認すると必要素材は揃っていた。

「っというわけで、かんせー。」

 サイト、上から下までフルフル装備で固める。全体的に白く、もっふりしたような感じで、あのグロテスクな異形の竜とかけ離れた感じである。

「ん? 回復速度アップなんですね。」

「あー、そっか、ダメージの回復速度が上がるんだったな。」

 回復速度アップ。それは、ダメージを受けやすい者には有り難いことだ。

「けど、火に弱いのね。」

「フルフルが火属性に弱いせいもあるだろうな。」

 っというわけで、フルフル装備一式(剣士)が完成である。

 これで多少(少々?)、フルフルの電撃攻撃に耐性はついたと思う。

 あとは、クエストを成功させるだけである。

 

 ハードクラスのフルフル捕獲クエストに、サイトとルイズは挑む。

 




アルビノエキス目当てでフルフル狩ってると、フルフル素材が溜まる溜まる。おかげで金には困らない。(ほぼ売ってる)


次回は、ハードのフルフル捕獲クエストかな。


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第六十九話  フルフルを捕まえよう(ハード) その2

フルフル(ハード)捕獲クエスト、リベンジ。


今回は、可も無く不可も無くかな?


 

「この装備…、あったけー。」

 ハードのフルフル捕獲クエストに向かう途中の馬車の中でサイトは、身を包むフルフル装備一式についてまずそう思った。

 気温が低い洞窟などを住処とするフルフルの皮を使ったフルフル装備は、火に弱いことを引き換えに寒さに強い。リオソウル装備とはまた違った守られている感じである。柔らかく弾力に富むフルフルの皮の装備は、ゲリョスのゴム質さとも違って硬さが無く、手触りは素材元と違ってネチョネチャさもなく、かといって毛皮のようなフワフワさもない不思議な柔らかさである。だが破れたりはしない。

 やがてハードのフルフル捕獲クエストの狩場となる沼地に着く。

 キャンプ地に置かれた箱から、クエストで自動で支給される回復薬を取り、必要な捕獲用アイテムを確認してから出発。

「いるか? ルイズ。」

「ええ。いるわ。例の場所でジッとしてる。」

「なんでかこの一帯のフルフルは、こっちが行くまであそこから動かないんだよな。」

 地図で見ると、左下の端。そこにフルフルがまず待機している。こちらが来るまで動かないため、1度ここへ行く必要があるのだ。

 とにかく時間もあるので移動開始。

 そしてフルフルがまず待機している場所に行くと、気配を察知したようにフルフルは、洞窟に空いた穴から移動を開始する。それを追ってまた移動。

 ゲネポスやイーオスの群れがいる沼のエリアの中央に着地するフルフルに、武器を抜いたサイトが斬りかかり、ルイズは離れた位置からライトボウガンを構える。

 目の無いフルフルは、匂いと発達した聴覚で獲物や敵を判別するため、反応速度は他の竜に比べてかなり優れているので空を飛んできた段階でこちらに気づいていた。それは、マーカーが赤く染まることで自動マーキングスキルを持っているルイズには見えていた。(※セエにも見えてる)

 捕獲クエストは、何度かこなしてきたが、単純に殺せば良いだけでないため慎重に行かないいけない。その慎重さを突かれてこちらが殺されかねないため大変だ。

 フルフルは、ある程度すると翼を広げて飛び立った。

「捕獲チャンス!」

「違うわ。まだ足を引きずってないもの。」

「そうそう。よく気づいたね。」

 ガッツポーズを取るサイトにルイズが注意し、注意したルイズをセエが褒めた。

「洞窟に逃げたわ。急ぎましょう。」

「お、おう。」

 俄然やる気のルイズに遅れてサイトが追いかけた。セエは、二人を見守るためその後を追いかける。

 フルフルが洞窟に到着すると同時に、サイトとルイズが洞窟に入り、洞窟にいたランゴスタを駆除しながら天井を這い飛び降りてきたフルフルを攻撃する。

 落ち着け!っと二人は心の中で自分に言い聞かせる。落ち着けばノーマルクエスト同様にうまくできるのだからと。

 フルフルの動作は分かりやすい、必殺の電気ブレスも溜める動作があるため大剣のような隙の大きい武器でなければ回避は決して難しくはないのだ。

 やがて攻撃を受け続けていたフルフルが怒りの証として口から白い息を吐き始める。それとともにスピードが上がる。

 サイトがフルフルの胴体を切りつけた瞬間、ゴウッとフルフルの短いが硬い尻尾が振られてきてサイトは防ぎきれず吹っ飛ばされた。そしてフルフルが天井に飛びつき、尻尾の吸盤を天井に張り付けて口から消化液を下へと吐き出してきたのでサイトは、転がり消化液を避けた。

 ルイズは、洞窟の寒さに耐えながら火炎弾を撃ちまくり天井にいるフルフルを攻撃し続ける。やがてフルフルが飛び降りてきて、足を引きずりながら再び天井へ飛びつき、そして洞窟の穴へと移動した。

「よっしゃ、来た!」

「捕獲場所の準備はいい? しっかり覚えてるよね?」

「あ、はい!」

「さあ、急ごう。」

 セエに促され、二人は捕獲のための準備をするためフルフルが巣としている別の洞窟へと移動した。そこが沼地のフルフルとの決戦場所となるのが基本だから。

 そしてフルフルが到着する前に巣の洞窟に入り、落とし穴を設置する。手に麻酔玉を握って待った。

 やがてフルフルが壁の上に空いた穴から入って来て、天井を這う。そして飛び降りてきた。落とし穴の上に。

 暴れるフルフルに、二人は捕獲用麻酔玉を二発投げた。

 そしてフルフルが眠り、クエスト完了のファンファーレが鳴り響いた。

「よっしゃーーーー!」

「やったわね!」

 今度は電気ブレスの大ダメージもなく、勝てた。二人は迎えが来るまで抱き合って喜び合った。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 報酬とアルビノエキスも貰え、ホクホク状態で帰還したのだった。

「えーと、ハードのフルフル捕獲クエストは終わり…、あとは、フルフルの討伐…、ガノトトスの討伐と、翠色のガノトトス討伐と……、リオレウスとリオレイアのハードのクリアとで……、ハードのラオシャンロンか。」

「先、ながっ!」

「捕獲が出来たんだから、討伐は簡単だろ?」

「簡単に言わないでくださいよー。」

「でも、よく頑張ったよ。この短期間で…。」

「セエさん…。」

「俺より君達の方がよっぽど強い。」

「俺一人じゃ無理でした。ルイズがいたからですって。」

「私だってサイトがいなきゃここまでこれなかったわ。」

 そう言って二人はお互いの顔を見る。

「ま、それはそうと夕食の時間だから帰ろう。」

「…ホント、マイペースっすね。」

 セエのマイペースさは変わりない。

 

 

 夕食を食べながら、次のキークエストについて話し合い、フルフル討伐を選んだ後、後日、見事討伐したのだった。

 

 

 




討伐は今更書いてもねぇってことで省略。捕獲より断然楽だと思って。


次回は、サイトに新しい双剣を。


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第七十話  双剣を作ろう その2

ひっさしぶりの更新です……。申し訳ありませんでした。



サイトの武器追加。


水の双剣・ガノカットラス作りのために。


 

 

「そろそろ武器のバリエーション増やしたいな。」

「ん?」

 ハードクラスのフルフル捕獲と討伐というキークエストを終えた後、サイトが不意にそんなことを言ってきた。

 サイトの持ち武器は……。

 

 

 片手剣・・・サーペントバイト、ポイズンタバルジン、スリープショテル、フロストエッジ

 

 双剣・・・ドスネイル

 

 

 いずれも軽く、スピード重視で小回りが利くが、セエが愛用している大剣と違い一撃の攻撃力に欠ける武器ばかりだ。こればかりはサイト自身の身体能力に原因があるので贅沢は言えない。

 逆に言えば大剣を多用するセエは、小回りが利かず、スピードに欠けるとも言える。

「そうだね…。属性武器や双剣とか増やして良いかもしれない。」

「でしょ? で、なにかオススメってってあります?」

「うーん。やっぱり火属性と水属性かな? でも、双剣の方がサイトが使いやすいなら、インセクトオーダーとか、どう?」

「いんせくと…、虫?」

「そう。カンタロスとランゴスタを素材にした双剣だよ。簡単に作れる割に斬れ味があるからどうだろう?」

「うーん。虫か~。」

「火属性なら、リュウノツガイとか。水属性ならガノカットラスとかもあるけど。」

「それ! それがいい! ん? でも、リュウノツガイって…、やっぱ、アレっすか?」

「うん。リオレウスとリオレイアだ。」

「うわぁ…。」

「ちなみにリュウノツガイの素材には、リオレイアの棘が十個いる。」

「多っ!」

「一応、ガノカットラスの方が作りやすいっちゃ作りやすい。」

「じゃあ…、ガノカットラスで…。」

「属性武器は増やしといて損はないからね。そのうち火属性も揃えよう。」

「へーい。」

「じゃあ、素材集め、いってみよー。」

「やっぱそうなるかー…。」

「当たり前だろ?」

「で? 話はまとまったわけ?」

 今まで同じ場所にいたが二人の会話を聞いていたルイズがやっと口を開いた。

 今回は、サイトの武器を増やす方向で行くことになった。

 ガンダールヴによるスピード重視の攻撃が身についていたこともあり、この世界の武器(※モンスター素材の武器)がガンダールヴの範疇で無いということがあったものの双剣の方が使いやすかったサイト。

 水の双剣・ガノカットラスを作るため、ノーマル(もしくは村長クエスト)クエストのガノトトスと、ドスガレオスから素材を集めることになった。水属性武器ならフロスエッジもあるのだが、双剣の方も作っておこうということだ。

「ルイズはいいよなー。ボウガンって弾を変えれば属性攻撃できるんだろ?」

「ボウガンによるけどね。」

 特に龍属性の弾を使おうと思ったら、他の属性を捨てるしかないのだ。すべての属性を使えないし、クエストに取り替えの武器を持ち込めないのが辛いところだ。それは他の武器にも言えるが。

「つまりハルケギニアに帰っても、敵ごとに使い分けにゃならないってことか…。」

「武器属性によっては効果が薄かったりするからね。そういえば、聞くところによると別の地方の竜の種類には一部の属性を無効化するってのもいるらしいよ。」

「マジですか!?」

「ま、聞いた話だから本当かどうかは…。」

「でもあり得る話ね。あれだけの竜なんだから私達が遭遇したことがある竜以上の竜がいても不思議じゃないわ。」

「そっちの世界にその竜がいないことを祈るよ…。」

「それフラグ…。」

「?」

 サイトが青い顔をして呟いたが、セエは分かってなかった。こちら側にいる竜が流れてきているのなら、別地方にいる竜がいないという確証は全くないからだ。実際、この地方にいないはずのティガレックスやイビルジョーが現れるように、別地方の竜が流れてくる可能性はゼロじゃないのだ。

 かつて竜との戦争があったほどの、ある意味で人類対竜の“縄張り争い”があったほどなのだ。なにかがひとつ狂えば、そこから簡単に決壊するほどに、この世界のモンスターは強い。時に季節や自然界の異常気象とかで大量発生などの自然災害が発生することだって当たり前だ。

「まあ、それはともかく、ガノカットラスを作るために、準備して行こう。」

「はーい。」

「準備はしっかり、集中力もしっかり。じゃないと、慣れたクエストでも簡単に死ぬからね。」

「言わんでくださいよ…。」

「俺の経験だよ。ドスガレオス狩りにクーラードリンクと、音爆弾を忘れて、死ぬところだったし。」

「それはヤバいですね。」

「だからしっかり準備をしていこう。ね?」

「はーい。」

「あっ、待って。」

「どうした、ルイズ?」

「音爆弾がもうストックが無いわ。」

「えー! 素材は?」

「火薬はあるけど、鳴き袋がないわ。」

「ってことは……。」

「イャンクック狩り…、頑張ろうー!」

「わー、そうなるよなー!」

 オーッと手を上げるセエに、サイトはガクーンと項垂れたのだった。

 

 

 その後、イャンクック狩りをして音爆弾を大量に用意して、ドスガレオス狩りに挑み、さらにガノトトス狩りも決行。

 そして無事に双剣・ガノカットラスを作ったのだった。

 

 

 

※サイトの持ち武器

 

 片手剣・・・サーペントバイト、ポイズンタバルジン、スリープショテル、フロストエッジ

 

 双剣・・・ドスネイル、ガノカットラス(追加)

 

 

 

 




リュウノツガイも追加するため、頑張って書こう! 頑張れ私!

しかし、改めてモンスターハンターを思うと…、たかが消費アイテム、されど消費アイテム……、それを作るための素材収集……、大変だけど、なぜか楽しい。


サイトは、ガンダールヴのスピード重視の戦いに慣れているため、どちらかというと双剣が合っていた。ということにしました。


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第七十一話  翡翠のガノトトスを討伐しよう その1

久しぶりの更新です!


お待たせして申し訳ない!


執筆が全然進まず……。


 

 モンスターにはたいていの場合、亜種がいる。

 そのほとんどは、色違いで見分けられるが、その体力・攻撃力・防御力などは従来種を超える。

 それゆえに武具の素材としてはとても良く、高みを目指すハンターは、亜種のモンスターに挑むことは、この世界ではまったく珍しくは無い。

 だが、先に述べたが、亜種のモンスターは、いずれも強力だ。そのため挑んで死ぬ人間も少なくは無い。

 ハンターの最高ランクである、G級の称号を得る上で、壁となるのも、この亜種のモンスターだ。

 ハンターランクを上げていきたければ、必然的にこの強力な亜種に挑まねばらならないし、亜種だけが持つ、その身から取れる素材も必要だ。

 

 今回、サイトとルイズが挑むことになったのが、ガノトトスの亜種である、翡翠のガノトトスだ。

 言葉通り、茶色っぽい通常種と違い、鱗が翡翠色なのが特徴だ。

 だが、先にも述べたが、亜種のモンスターは、強力だ。この翡翠のガノトトスももれなくそうだ。

 

「雷撃弾がいいかもね。」

「なんでです?」

「火にも弱いけど、なにせサイズがでかくて体力も通常種の倍…、だったら貫通性のある雷撃弾が有効かなって。」

「でも、習性は同じなんですよね? カエルがエサとか…。」

「うん。同じ。けど、サイズが他のモンスターのビッグサイズに匹敵するからさぁ…。」

「びっぐさいず?」

「どのモンスターにもいるんだ。ビッグサイズって言われてるデカすぎるほど成長したタイプが。まあ、ランクが上がれば必然的に当たるだろうけど。」

「うわぁ…。」

「デカいせいで、リーチの短い武器だと届かない。そうなると、足とかを狙うしか無くなる。腹や頭は諦めた方が良い。」

「それで、雷撃弾ね。」

「そう。」

「セエさんは、どうやって倒したんです? ボウガンが苦手って言ってましたけど。」

「…大剣でごり押し。」

「そうですか…。」

「俺の戦い方は参考にならないよ。」

 セエは、そう言って笑った。

 セエは、ごり押しタイプだ。細かい精度が必要なボウガンを苦手とし、大剣のような一撃の強い武器で強引に戦う。それゆえに生傷が絶えない。

「さっ、挑むクエストも決まったことだし。準備準備!」

「雷撃弾の材料は?」

「光蟲と、カラの実。」

「えっ…、虫?」

「がんばろうか?」

 ルイズの方に笑顔のセエがポンッと手を置いた。

 その後、採取クエストで光蟲を集めまくり、カラの実を入手して大量の雷撃弾をこしらえた。弾切れに備えて、その場で調合できるように材料も持って行く。

「本当は、ヘビィボウガンがいいところなんだけど、ルイズの筋力じゃね…。」

「……。」

「気にすんなよ、ルイズ。俺だって大剣とか使えないし。」

「じゃ、クエストを受注しに行こう。」

「マイペースっすね…。」

 セエは、相変わらずのマイペースである。

 

 

 

 ハードクエストの翡翠のガノトトスは、砂漠地帯にいる。

 正確には、砂漠の地域にある水場のある洞窟を住処にしているのだ。

 なにせこの洞窟…、砂漠にあるというのにメチャクチャ寒い。

 

「ガノトトスって、水竜のくせになんで砂漠に住むんですかね?」

「さあ?」

「見た目、竜と魚を合わせたような感じだから、乾きに弱いはずなのに…。」

「さあ?」

 ガノトトスの位置を確認しながら、砂漠地帯の岩壁に囲まれた道を進む。

「カエルOK?」

「OK!」

「雷撃弾…準備OK?」

「いつでもいいわ。」

「じゃあ、行こう。」

 そして一行は、洞窟に入った。

 

 

 砂漠の熱さと一転したひんやりとしすぎている空気が肌を襲う。

「がんばれ。」

 セエは、離れた位置から二人を見守る。

 サイトが釣り竿につけたカエルを水に落とした。

 そしてしばらく待つ。

 そして浮きが沈み、凄まじい力が釣り竿を襲った。

 ルイズも手伝って、翡翠のガノトトスを釣り上げる。翡翠のガノトトスは、地上に叩き付けられ魚のようにピチピチと跳ねたがやがて二本足で立ち上がった。

「で…デケぇ!」

 そのサイズ感に、サイトは驚愕する。

 翡翠の鱗が美しいが、その体のサイズは、通常種の倍以上はあった。

「サイト! ボーッとしないで!」

「あ、ああ!」

 サイトが双剣を抜いて、足下に行き、足を切りつける。

 ルイズは、距離を取り、雷撃弾を詰めたボウガンを向けた。

 次の瞬間、ブオンッと翡翠のガノトトスが太い尾ひれを振って、体を回転させるように動く。

「ウゴッ!?」

 デカすぎるぶん、動きは大雑把に思えるが、デカさの分範囲が広い。回転するために大きく動いた足にサイトは蹴り飛ばされた。

 なにせハードクラス。ダメージによる体力の減り方が尋常じゃ無い。

「サイ…。」

「ルイズ! 構わず撃て。」

「えっ? うわああ!」

 次に翡翠のガノトトスは、ルイズの方を見るなり、足を踏ん張って口から岩をも切断する水鉄砲を吐いた。ルイズは、慌てて転がって避ける。

 やがて翡翠のガノトトスは、水の中へ飛び込んだ。

「いってぇ…。」

「サイト!」

「釣り上げるなら、一旦洞窟から出る、それ以外ならこのまま相手が上がるまで待つ、どうする?」

「つ、釣り上げます…。」

「じゃあ、出よう。」

 そう言ってセエは、先に洞窟の足場を掴んで登った。サイトは回復薬グレートを飲んでそれに続いた。ルイズは、そんなサイトを心配しつつ登った。

 外に出て、ルイズが見てている地図上の翡翠のガノトトスの色が変わるまで待った。やがて色が赤から青になる。それを見計らって洞窟に再び突入し、カエルを餌にする。

 そして再び釣り上げ、地上に引っ張り上げてから攻撃開始。

 デカいぶん、体力の倍あり、中々倒れ込まないし、怯む様子も無い。

 やがて……タイムアップとなった。

「時間切れだ!」

「ま、まだ…。」

「決まりは決まり! これ以上はダメだ。」

 

 少しして、撤退するためのアイルー隊が来て、サイト達はその荷車に乗って撤退させられた。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

「くやしーーー!」

 帰って早々、サイトが地団駄を踏んだ。

「どうしたニャ?」

「翡翠のガノトトス討伐に失敗した。時間切れで。」

「そうかニャ。まっ、これでも食べて落ち着くニャ。」

 トウマはそう言って、おやつとお茶を持って来た。

 トウマ特製のケーキと、お茶に、さっきまでのイラ立ちが嘘のように落ち着いた。

「うーん…。」

 セエは、腕組むして首を傾げる。

「戦闘自体は間違ってなかったけど…、やっぱダメージ量が足りないのかな?」

「それって攻撃力が…?」

「そうだね。」

「っ…。」

「別にサイトの責任じゃ無い。なにも大剣とかハンマーとかじゃないと倒せないってわけじゃないんだ。ソロで片手剣でとかで倒すハンターだっている。」

「じゃあ、どうしたらいいのよ?」

「ひとつ。属性武器によるダメージ追加を狙うことかな。」

「属性武器か…。」

「ガノトトスが苦手な属性は、雷と火だ。このどちらかにしよう。」

「例えば?」

「作りやすいのは…、サンダーベインとか、レッドサーベル辺りからの派生かな? フルフルの電気袋と、リオレウスやリオレイアの火炎袋や骨髄で作れる。」

「そんなのがあるのなら、なんで先に…!」

「ごめん。忘れてた。」

 セエの一言にサイトとルイズは、ガクーンッとずっこけた。

「ごめんね…。」

「ま…まあ…、とりえあえず、対策はできるならいいっすよ…。」

 起き上がりながらサイトはそう言ったのだった。

「じゃあ、私は?」

「ルイズは、雷撃弾で変わらず攻撃するばいいよ。で? どっちを作る?」

「うーん…。」

「アイテムボックスの中にある素材を見て、考えよう。」

「そうですね。」

 そう言ってサイト達のアイテムボックスの中を確認した。

 すると…。

「サンダーベインが作れそうだね。レッドサーベルも。けど、この素材の数なら…、サンダーベインを改良してインドラまで作れそうだね。」

「じゃ、それで!」

「決まりだね。」

 

 

 っというわけで、サンダーベインを作り、改良を重ねて、インドラにしたのだった。

 

「ゴム質の上皮って?」

 インドラには、もう一段階改良項目がある。

「Gクラスのゲリョスから取れる皮だよ。」

「どうやっても…、Gに上がるまでが当面の目標ですか…。」

「そういうこと。」

 

 

 

 

 

※サイトの持ち武器

 

 片手剣・・・サーペントバイト、ポイズンタバルジン、スリープショテル、フロストエッジ、インドラ(追加)

 

 双剣・・・ドスネイル、ガノカットラス

 

 

 

 




ビッグサイズと並ぶデカさに、リーチの短い武器は不利かな?
けど、どの武器でも倒せるようにはなってるはず。

クエストの難易度があがると、敵になるのが時間制限ですよね…。私は何度もこれで失敗している。
ハードクラスのラオシャンロンなんて、特に思い出したくない!!(涙)


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