ダンジョンに欲望を求めるのは間違っているだろうか (REDBOX)
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プロローグ





 僕ことベル・クラネルは、亡くなったおじいちゃんが熱く語ったハーレム(男の浪漫)とよく読んでもらった英雄譚に出てくるような英雄に憧れ、故郷である村を離れ、広大な地下迷宮、通称「ダンジョン」を中心に栄える迷宮都市オラリオに向かって旅をしているのですが

 

 えっ! 着いてからの話じゃないのかって?でも、これは僕の旅の中でもかなり大事な話だから...。

 

 えーと、続けますね。旅をしていたある日、僕はとても困っていた。

 

 

 

「申し訳ございません、本日は宿泊されている方が多く満室となっておりまして、他の宿を探していただいてもよろしいでしょうか?」

 

 泊まる宿がなくなりました。

 

「でも、この町の宿はどこも満室で、ここが最後なんです。ロビーでもかまわないので泊めてもらえませんか?」

 

「そういわれましても」

 

 この町から次の町までは歩いて半日はかかる。しかも、今は夜だ。暗い上にモンスターに襲われたら一溜りもないだろう...。でも、そうするしかないと思っていた時

 

「すいません、そこの君。僕と同じ部屋でいいなら泊まらないかい?」

 

 声のする方を見ると、僕より少し背が高くて紫色の髪に紅い目をした青年がいた。

 

「お客様!ですが、もしもということがあれば」

 

「構いませんよ。その時はあなたがたにどうこう言うつもりはありませんから」

 

 おじいちゃん、僕にはこの人が神様に見えます。

 

「でも、もし僕のものを盗ったりしたらどうなるか分かるよね?」

 

 前言撤回します。この人は悪魔かもしれません、見たことない位悪い顔してる

 

「というわけで、僕の泊まってる部屋に来ても問題ないよ。その前に名前を聞いてもいいかな?」

 

「はっい、ベル・クラネルといいます。」

 

「はじめまして、クラネル君。僕の名前はギル、しがない探検家さ。」

 

「この度はなんとお礼をしたらいいか。ギルさん、ホントにありがとうございます。」

 

「なに、気にする事はないよ。昔から目の前で困ってる人は見過ごせないたちでね。ところで、君は1人でどこに向かって旅をしているんだい?」

 

「僕は、冒険者になるために、オラリオを目指して旅をしているんです。」

 

「冒険者ねぇ」

 

 そう言って、ギルさんは目を細める。おそらく、僕の見た目だからやめた方がいいって思うんだろうな。

 

「それで、君は冒険者になって何がしたい?」

 

「何がしたいかですか?」

 

「そう、僕の知る冒険者にはねいろんな人がいたよ。冒険者になって莫大な富と名声が欲しいって人もいれば、一族の再興のためになっている人もいる。更に言えば、強くなって憧れの人の横に立ち守りたいって人もいた。これを聞いたうえで、もう一度聞こう。君は冒険者になって何がしたいんだい?」

 

 僕が冒険者になってやりたいこと。男の浪漫(ハーレム)を作って、英雄譚に出てくる英雄のようになること...違う、僕が本当にやりたいことは

 

 

「英雄になりたいです」

 

「英雄?」

 

「目の前で助けを求める人を救える英雄になるために、僕は冒険者になります。」

 

 ギルさんは、それを聞いて少し黙った後。細めていた目を元に戻した。

 

「少し意地悪なことを言ってごめんね。君がなりたい英雄はとてつもなく厳しい道だ。冒険者になったばかりの頃は、嗤われるしバカにもされるだろう。それでもそんな英雄になりたいのかい?」

 

「はい、僕はそんな英雄に憧れたバカな人間ですから。」

 

 それを聞き、またギルさんは黙った。僕は思わず聞いた。

 

「ギルさんは、いまのを聞いても笑わないですか?」

 

「嗤う?そんなことはしないさ。僕は他人の夢を嗤わないよ。寧ろ、君を応援したくなる位さ。...クラネル君、さっき言ったように、君はオラリオに着いたら最初は嗤われるだろう、バカにもされるだろう。それでも、英雄になりたいと思うなら。最後にものすごく意地悪な質問だ。」

 

「英雄になった君は、自分を嗤いバカにした人でも助けることができるかい?」

 

 ギルさんのその言葉は、とても重く感じられた。まるでそのようなことを経験したかのように、嘘をつくことは許さないと言わんばかりの迫力もあった。それでも僕は

 

「助けますよ。目の前で助けを求める人が例え僕を嗤いバカにした人でも、僕は絶対に見捨てません。」

 

「そうか、その言葉を信じるとするかな。」

 

「信じてくれるんですか?」

 

「勿論だとも、僕は旅の中でいろんな人を見てきた。その中でも君は嘘をつくような人じゃないこと位は分かるよ。それと、何度も意地悪なことをいって、ゴメンね。そのお詫びと言ってはなんだけど、これを君にあげよう。」

 

 そう言って、ギルさんは自分の小さな鞄から四角い何かを取り出した。

 

「これは、先日、訪れた遺跡で発掘されたとある英雄の防具の1つだ。これを君にあげるよ。」

 

 そう言って、僕にその防具を渡してきた。その防具は少し古くなっていて3箇所何が入るような窪みができていることを除けば防具として使えるであろうものだった。

 

「それは、ベルトのバックルのようなものだと思えばいい。試しにつけてごらん。」

 

 そう言われて、僕はこれをベルトの上に重ねることにした。すると、その防具の左側からベルトのようなものが伸び、僕の腰を1周して右側に刺さった。

 

「カッコいいですね、これ。」

 

「そう思うかい?ならよかった。僕もその防具にどんな力を秘めているか分からないけど、冒険者じゃない僕が持つより君が持っていた方が良いだろう。」

 

「でも、良いんですか?宿の部屋を提供してくれただけでも感謝しているのに」

 

「僕がやりたいからやっていることだよ。どうしてもって言うなら、必ず英雄になってきなさい。その時にお礼をしてくれればいいから」

 

 ホントにこの人は狡いなと思う。僕が英雄になる理由が増えたじゃないか...でも

 

「はい、その時に盛大にお礼をしますね」

 

 その後、僕はギルさんと英雄譚の話や生きていく上では、少しのお金と明日のパンツさえあれば大丈夫というたわいもない話をしていた。そして、夜が明け

 

「本当にありがとうございました。このことは忘れません。また、会えた時には少しでも英雄に近くなってみせますね。」

 

「あぁ、昨日は久しぶりに楽しい話ができた。君こそ、体に気をつけて冒険者になるんだよ。」

 

「はい、では」

 

 そう言って、僕は明日のパンツを吊るした木の棒を持って、宿を出てオラリオに向けて旅を続けた。

 

 

 side out

 

 

 

 ギルside

 

 

 クラネル君が宿を出た後、僕は荷物を整理して出発する用意をし、部屋を出る。そして、ロビーまで行くと行くと1人の女性が僕を待っていた。

 

「女性を待たせるのはいただけないぞ、ギル。」

 

 その女性は、腰くらいまでの長さの金髪に白く綺麗な肌、そして大き過ぎず小さ過ぎない胸を張り、僕に文句を零す。

 

「ごめんごめん、少し荷物の整理に時間がかかってね。」

 

「それで、彼に例のアレは渡せたのかい?」

 

「うん、きちんと渡せたよ。アレを使うためには、残りは彼の欲望しだいかな。」

 

 僕がそう言うと、彼女は腕を組みながら話を続けた。

 

「心配かい?」

 

「してないと言えば嘘になるかな。でもね、僕の感だけど、彼は呑み込まれそうになっても大丈夫だと思うんだ。」

 

「それは、英雄としての感かい、ギル。」

 

「いいや、1人の人間としての感だよ。それに英雄なんてやめてくれ、僕はそれを名乗れるような人じゃない」

 

「....そうか。」

 

「ゴメンね」

 

「いや、私の方こそゴメン。」

 

 少しの間沈黙だけが残る。それを壊したのは

 

「じゃあ、旅を再開しようか。次に向かうのはどこ?」

 

「次の向かうのは、とある男神のところです。」

 

「あんまり、信用できないけどあいつのとこにいる彼女の力は僕らの目的のためには必須だから仕方ないか...」

 

「えぇ、今の僕にとっては彼女の協力を得るためになら、あの男神のもとにでも向かいますよ。」

 

 口ではそう言っているが、ギルの顔は全く逆の表情だった。

 

「君がそこまで嫌がるとは、あいつとの間に何があったのやら」

 

 彼女が何か呟いているが、僕は気にせず宿から外に出て彼女に呼びかける。

 

 

 

 

「さて、この世界を救う英雄を救ける冒険を再開しようか、“クロノス”」

 

 

 

 





次回の物語は、ベル、ファミリアに入れない。

紐神様、新たな欲を見つける。

ベル、冒険者になる。

の3本です。


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家族と紐神とステータス

Count the medals

現在、??が使えるメダルは

???×1、????×1、????×1


 ギルさんと出会ってから数日過ぎ、僕は商人の馬車に乗ってオラリオに到着した。

 

「おい、ベル。着いたぞ、ここがオラリオだ」

 

「ありがとうございます。わざわざ馬車でオラリオにまで送っていただいて」

 

 この人は、とある衣類を専門に取り扱っている商人さんで、ギルさんと別れたその日にモンスターに襲われているところで出会った人です。でも、その時のモンスターたちは、なぜか僕を見た瞬間慌てて逃げ出しましたが.

 

「気にするなや、こっちは命を救ってくれただけでなく、俺の商品に理解もしてくれてんだ。むしろこっちがお礼をしたいぐらいだ」

 

「そんな、モンスターの時は何もしてませんし。それにおじさんの商品はとても素晴らしいものばかりじゃないですか」

 

「そう言ってくれるのは、お前ぐらいだよ。そうだ、これから冒険者になるお前に俺の商品の中から1つ好きなのをやるよ」

 

「良いんですか! じゃあ、これを貰いますね」

 

 そう言って、僕はおじさんから商品を貰う。

 

「俺はしばらくこの町で商売するから、何かあったら来な。いろいろサービスしてやるぜ」

 

「はい、その時はお世話になります」

 

 そうして、おじさんと別れた僕は、おじさんから貰った“パンツ”を鞄の中に入れて、冒険者の手続きをするためにギルドのある塔バベルに向かう。

 

 

 

 ギルドに入り、いろんな種族の人たちとすれ違いながら、僕は窓口に向かい受付の人の話しかけた。

 

「あの、すみません」

 

「はい、なんでしょうか?」

 

 その女の人は綺麗な笑みを浮かべて僕に答えてくれる。村にはこんな綺麗な人はいなかったから、少し緊張してしまう。

 

「ぼ、冒険者の登録をしたいのですが…………」

 

「冒険者? 君が?」

 

 その女の人は僕をジロジロと眺めてくる。

 

「冒険者っていうのは、君が考えているよりずっと危険な職業なんだよ? 当然命の危険だってあるし、ずっとLvが上がらないことだってあるんだよ。それでもいいの?」

 

「はい! もちろんです! 覚悟ならあります!」

 

 僕はハッキリとそう言う。

 

「そこまで言うなら止めないけど…………」

 

 そう言いながら受付嬢の女の人は用紙を取り出し、机の上に置く。

 

「この用紙に君の名前と種族、年齢、Lvと所属している【ファミリア】を記入して」

 

 ここで僕はあることに疑問を持ち質問した。

 

「Lvと【ファミリア】ってなんですか?」

 

 この時、僕の発言がこの場の時を一瞬止めたことを僕は知らない。

 

「冒険者になるには、まずどこのかの神様の【ファミリア】に所属しないといけないの.そしてLvっていうのは、冒険者の強さのランクよ。最初がLv1で、そこから何かを達成する度にLvが1つずつ上がっていくわ。今の最高Lvは7よ」

 

 へぇ、知らなかった。ってことは

 

「僕は冒険者登録できないってことですか?」

 

「その通り。そんなにしょんぼりしないの。新人の冒険者を入団させてくれそうな【ファミリア】のリストがあるから、そこを訪れたらどうかな?」

 

 そう言って、受付の人が僕にそのリストをくれた。親切な人だなぁ。きちんとお礼をしないと

 

「ありがとうございます。えっと、」

 

 名前が分からない

 

「自己紹介がまだだったね。私はエイナ·チュール、【ファミリア】に入団したら、また会うと思うわ。その時は攻略アドバイザーとして担当すると思うから、よろしくね、ベル君」

 

「はい、その時はよろしくお願いします、エイナさん」

 

 おじいちゃん。まだダンジョンに潜ってないけど綺麗な女性と出会いました。

 

「それと、今日はもう夕方だから、そのリストに載っているファミリアには明日伺いなさい」

 

「はい、今日は、ありがとうございました」

 

 

 翌日

 

「ここは、お前みたいな田舎臭く貧弱なガキが来るような弱小【ファミリア】じゃねんだ! さっさと帰った帰った!」

 

 

 お昼過ぎ、僕はエイナさんから貰ったリストの【ファミリア】全てに入団を拒否された.拒否された理由も大半が僕の見た目の弱さだった。確かに、僕は弱いよ。

 

 ────お前が弱いから何も守れなかったんだ。

 

 あれ、守れなかった? おかしい、今まで僕には守ろうとしたものなんてないはずなのに.

 

 入団を拒否されただけでなく、変な記憶まで頭に過ぎってなんだか気分が悪くなる。だがしかし、悲しきかな。ヒトはどんな状態でも腹が減れば、腹の虫が鳴くのだ。

 

「そう言えば、お昼まだだったな」

 

 お金がたくさんあるわけではないので、出店で何か一品買うだけで済ませようっと、考えながら歩き出そうとした時に僕は1人の男性にぶつかった。

 

 すいません、大丈夫ですか? っと、僕は呼びかけるが、その人は平然と立っていた。

 

「問題ありません。ですが、あなたの様なこの町に来たばかりの人が考えながら歩くには危なすぎます。次からは、気をつけてください」

 

 その人は、終始肩に乗せた人形に話しかけるように注意した後、僕が歩いてきた道を進もうとしたが、僕の方に振り返り僕に話しかけた。

 

「それと、あの角から君を見ている方は知り合いですか?」

 

 僕はその人に言われて、道の角から少し見えている黒い髪に気づいた。僕はその人のいる方に向かった。

 

「あの、僕に何か用でしょうか?」

 

「ふぇっ! ぼ、僕はヘスティア。こんな形だけど一応神様をしている」

 

 どうやら、この神様は僕に気づいたのに気づかなかったらしく驚いて返事をした。僕も人に教えられて気づいた身なのでなんとも言えませんが

 

「おや? 貴女はヘスティア様ですね。私の主神の友神だとか」

 

「君は.あぁ!! ヘルメスのとこの【眷属】だね。それで君の主神は今はどうだい?」

 

「ヘルメス様は、今オラリオ外のある遺跡の調査に向かわれております。まぁ、こちらにいてもケーキを作ってるだけなので、いてもいなくても大して変わりませんが.それよりも、ヘスティア様はなぜこの子を見ていたのですか?」

 

 神様って遺跡の調査とかするんだぁ。遺跡と言えばギルさんから貰ったあの防具にあったあの窪みはなんなんだろう? ギルさんも分からないって言ってたけど

 

「そうだった。ねぇ、そこの君。冒険者になるために【ファミリア】を探しているんだよね?」

 

「はい、でもどこの【ファミリア】も僕を入団させてくれなくて」

 

「そこでなんだけど、僕の【ファミリア】に入らないかい? 誰もいない駆け出しの【ファミリア】だけど「入ります」えっ! いいのかい」

 

「神様も見ていたと思うですけど、僕はギルドから紹介された【ファミリア】全てに門前払いされたんです」

 

「う、うん。それは途中から見ていたよ」

 

「それを見ていたのにも関わらず僕を誘ってくれた。貴女の【ファミリア】に入る理由はそれだけじゃ足りませんか?」

 

 僕はやっと巡ってきたチャンスを逃したくない。他に誰もいない、確かに駆け出しの【ファミリア】だけど、僕にはそれを選べる権利や力なんてない。何より嬉しかったんだ、僕を見た目で判断せずに【ファミリア】に誘ってくれたことが。

 

「神様、僕、ベル・クラネルを貴女の【ファミリア】に迎えてくれますか?」

 

「分かったよ。僕も【ファミリア】を作るのは初めてだから、至らないとこも多々あると思うけど、一緒に頑張っていこうじゃないか、ベル君」

 

 

 この1人の人間と神の出会いは、いずれオラリオに新たな歴史を刻むことになる。

 

 

 

 

 その後、僕ほ神様に連れられてとある書店へとやって来た。

 店に入ると、店長のお爺さんが神様に声をかけてくる。神様はお爺さんに断りを入れて、2階の書庫へ向かった。

 何でも、神様は初めての子供に【恩恵】を授ける場所は、前からここだと決めていたらしい。

 

「さ、服を脱いで、ここに座ってくれ」

 

「服をですか?」

 

「そう、上着だけでいいからね。今から君に僕の【恩恵】を刻むからね」

 

「あぁ、そういうことですか」

 

 神様の言うことを理解した僕は服を脱いだ。僕はなんだかウキウキしていた。神様も初めて【恩恵】を刻む事にウキウキしていたようだ。

 

「神様、脱ぎ終わりました」

 

 ベルside out

 

 

 ヘスティアside

 

 僕は今日初めてできた【眷属】に【恩恵】を刻んでいる。刻み終わるのに少し時間があるから、軽くベル君と話すことにした。

 

「そう言えば、ベル君はどうして冒険者になりたいと思ったの?」

 

 僕達はまだ、出会って1時間も経っていない。

 今更だが、あの場にいたヘルメスの【眷属】は、あの後すぐにどこかにいった。

 去り際に今度ヘルメスが帰ってきたら、ケーキが送られてくると言葉を残して、ヘルメスがケーキを作るようになったのは800年前位からだったかな? 

 ものごとの誕生にすごい祝うようになっていた。それがどうしてかは知らないけど。

 

「どうしてなりたいかですか? 前にも同じこと聞かれたんですけど、僕はダンジョンに出会いを求めて、冒険者になろうとしていました」

 

「出会いって女とかい? それにしていたってことは、今は違うのかい?」

 

「はい、ここに来るまでの旅の途中でやっと気づけたんです。僕は目の前で助けを求める人を救える英雄になりたいんです」

 

「それは大きな目標だね、僕は好きだよそういうの。それに出会いを求めるよりもよっぽどいい」

 

「神様も笑わないんですね。でも、僕は出会いを諦めた訳じゃありません。どんな英雄だって出会いを通して英雄になっていくんですから」

 

 それにと続けてベル君は口に出す。

 

「僕を小さい頃から育ててくれた祖父がよく言ってました。『ハーレムは至高だ!』って」

 

 なるほど、全ての元凶はそのお爺さんか。

 

「君、絶対育ての親を間違ったよ」

 

 そんなことを話しているとベル君の【恩恵】を刻み終え、僕はベル君の【ステータス】を確認した。

 

 ベル・クラネル

 

 Lv.1

 

 力  :I 0

 

 耐久 :I 0

 

 器用 :I 0

 

 俊敏 :I 0

 

 魔力 :I 0

 

 

《魔法》

【】

【】

 

 

《スキル》

 【欲望摩耗】(プトティラコンボ)

 成長に必要な経験値が激増。

 欲望を摩耗させて、太古の力を得る。

 器が危険な時、太古の力が暴走。暴走後ステイタスがダウンする。

 

 

 

 僕はベル君の【ステータス】に現れたスキルに注目した。そもそも余程のことがない限り初めからスキルが現れることはない。加えて現れたスキルに僕は戦慄させられた。

 

【コンボ】それは、800年前のとある英雄が持っていたスキルと同じものだ。加えて言うなら、そのスキルは神々の欲望によって生み出されたものを使って発動するものだ。

 

(ベル君、君はいった何者なんだい)



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受付嬢と駆け出しと逃亡牛

すごい久しぶりの投稿です。待ってる人居てるのかな...
殆どの人が忘れてると思うけど、一応再開したいと思います。
では、続きをどうぞ






前回の???の3つの出来事。

1つ、ベルはギルドに行くも【ファミリア】に所属していないために、冒険者登録ができなかった。
2つ、受付嬢のエイナに紹介された【ファミリア】のどれにも入団できなかった。
3つ、紐神様ことヘスティアと出会い、新生ファミリアを結成し遂に冒険者へのスタートラインに立った。


どうも、ベル・クラネルです。昨日、神様の新生ファミリアに入団することができ、【恩恵】を刻んでいただき表れた僕の【ステータス】は全てが“空白”でした。神様曰く初めからスキルが出現することは稀とのことで、大して気にしませんでしたが、欲を言うとスキル欲しかったなぁ。

 

改めて、【ステータス】を刻んだ僕はバベルにあるギルドで冒険者登録をしに来ているのでした。

 

「ベル君、ここに来てるってことは【ファミリア】に入れたんだね。どこに入れたの?」

 

「【へスティアファミリア】っていう、新設の【ファミリア】なんです。でも、神様も優しい方で問題はないと思います。」

 

「なら、よかったわ。じゃあ、前に書いたのと同じように紙に書いてね。」

 

前回は書くことのできなかった部分も含めて書いていき。登録は問題なく終わった。でも、その後に問題は起きた。

 

「只今をもちまして、ヒューマン、ベル・クラネルをオラリオの冒険者として登録します。宜しいですか?」

 

「はい!」

 

「分かりました………それでは改めてまして私、エイナ・チュールがベル・クラネルさんの攻略アドバイザーとして担当することになります。以後お見知りおきを」

 

「あっ、は、はい! よろしくお願いします! エイナさん!」

 

「ふふっ! 改めてよろしくね。 ベル君」

 

「それじゃあ早速、ダンジョンの注意事項を“みっちりと”教えてあげるね」

 

気のせいだろうか?やけに“みっちりと”が強調されてたけど...そんな不安を抱きながらも、案内された別室で、僕はダンジョンに関する勉強を受けることになった。その“みっちりと”の理由はすぐに分かることになった。

 

元々、僕は勉強ができる方ではないことは知っている。そんな僕が膨大な情報を頭に詰め込むと当然こうなる。

 

「頭がグルグルする。すごい疲れた」

 

今日学んだことは、ダンジョンに潜る時の注意事項、上層に出てくるモンスターの情報などであるが、普段から頭をあまり使わない人間なので、頭痛がひどい。明日ある復習試験に合格するためにも、僕は学んだことを頭の中で整理しながら帰宅した。

 

 

エイナside

 

「エイナ、貴女が担当してる新人君の噂になってるよ」

 

「あぁ、さっきやった試験の結果のことね」

 

「そう、なんでも授業には精一杯だったのに、高難易度の試験問題だけ正解だったんでしょ?」

 

「そうなんだけど、カンニングは私が見てる手前で出来るわけないしね。」

 

「多分あれだね、火事場の馬鹿力的なやつだよね」

 

「そうだね、アハハハ」

 

それに何かそこを解いてる時だけ人が変わったみたいに手が動いてたのは、気のせいだと思うし...

 

まぁ、気にすることでもないかな。さて、仕事仕事···

 

 

 

ベルside

 

ギルドでの試験に合格し、晴れて冒険者になった僕はギルドにあるお古の武器と防具を買い、エイナさんの指示に従ってダンジョンの1階層にいます。ですが...

 

「なんで、モンスターが全部逃げていくのかな...」

 

そう、オラリオに来る時に出会ったモンスターと同じように、僕を見たらこの階層モンスターたちは怯えて逃げていきます。

 

そんなことがあったため、初日に倒せたモンスターの数は逃げ遅れたゴブリン3匹とコボルト2匹、不意打ちで倒せたゴブリン1匹のみでした。

 

初日ということで、神様に【ステータス】を更新してもらったのですが、殆ど数値に変化が無かったとのことでした。モンスター10匹も倒せていないので、やはり当然かなと思いながらショックも受けています。

 

あれから、2週間が過ぎ、僕は五階層に来ていた。モンスターに逃げられ、それを追いかけるのに慣れてしまったせいで、僕の【ステータス】は敏速だけが群を抜いて高くなっていた。しかし、逃げるモンスターに追い打ちをかけるか不意打ちでの戦闘しかしておらず、正面からの戦闘をしていなかった。そのことを、僕は後悔していた。

 

大きな足音を立てて、僕に迫ってくる一匹の雄牛。ミノタウロスと呼ばれるモンスターだ。本来なら五階層には存在しないモンスターのはずだが、それはそこにいた。当然、レベル1の僕が敵う相手ではなく、逃げることしかできない。さっきまで怯えられて追う側だった僕が、モンスターに怯えて追われる側になるとはなんて皮肉なんだろうか。

 

僕は、もう死にものぐるいで走った。それこそ、今までは走ることだけに意識を集中し、口を動かし言葉を放つことさえも忘れて走った。しかし、相手は僕よりも格上の存在だ。徐々に距離を詰められ時の流れが遅くなったようにも感じていたが、急に体中から力が湧いてきて僕の体はさっきまでより軽くなり、走る速度も上がった気がする。そして、ミノタウロスとの距離を確認するために振り返ると、さっきまでのミノタウロスの速度よりも落ちているようにも見えた。

 

なんでミノタウロスの速度が落ちたのかとか、思うところはあるけれど、これはチャンスだとも思えた。これなら逃げきれると思い、僕はここから2M先にあった角を曲がったが、そこは行き止まりだった。引き換えそうにも、ミノタウロスはもう近くにまで来ていているし、僕も行き止まりに気づいた時点で、失速していてすぐに距離は詰められるかもしれない、そう思った時

 

 

「グッ」

 

 

僕は、突然痛み出した自分の胸を押さえ、そこに蹲ってしまった。

 

 

その行動がこの場では、命取りとなった。ミノタウロスは、もう目の前に立っていて僕を殺すために、拳を振り下ろそうとしていた。

 

 

 

 

 

 




現在、???が使用できるメダル。

???×1 ????×1 ????×1



次回の物語は、ベルにウンメイノー出会いが訪れ、変化が起きる。
       そして、不思議な少女に出会い、ある約束をする。







近いうちに投稿できたらいいな...


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剣姫と情景と看板娘

仮????????
前回の3つの出来事。
1つ、ベル・クラネルは冒険者登録をしてダンジョンに潜るが、モンスターから逃げられる。
2つ、ダンジョンでベルは、ミノタウロスと遭遇する。
3つ、突然の胸の痛みで蹲り、絶体絶命のピンチを迎える。


 一閃により、動きを止め、大きな牛型モンスターが地に伏せ消滅する。

 

 今、私は同じ【ファミリア】のベートさんと一緒に、私たちが取り逃したミノタウロスを追いかけるために5階層に来ている。先ほど倒した分を除いて残りのミノタウロスはあと1体だけど、この階層に来てから感じるこの違和感はなんだろう? 

 

 そんなことを頭の片隅に置きながら、最後のミノタウロスを探していると、急に私の体の動きが遅くなった。振り返るとベートさんも同じく動きが遅くなっていた。

 

 なぜ、こうなったのかは分からないけれど、動きが遅くなったのはほんの数秒だけだったので、すぐに捜索を再開すると、運よく遠目ではあるけれど、追いかけていた最後のミノタウロスが冒険者を追いかけているのを確認し、冒険者が曲がった角を向かって走ったら、胸を抑えて蹲る()()の髪の少年の冒険者がいた。私は彼を助けようと自分の得物に手を掛けた瞬間、蹲っていた少年が雄叫びを上げながら立ち上がり、ミノタウロスを切り裂き、返り血を浴びとともに消滅させた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ベルside

 

 

 

ミノタウロスに追い込まれ、胸が急に痛くなり蹲った僕は、数秒程意識がなかった。なぜ、それがわかるのかといわれると、僕がさっきまでいた場所から動いているの加えてなぜか頭が濡れていたからだ。

 

カャンっと、武器を仕舞う音が聞こえたので、音のした方を向くと女神様と見紛うような少女がいた。

 

「大丈夫ですか?」

 

心配する声が聞こえるが、相手に失礼ながら僕は彼女に見惚れいた。彼女は、オラリアで有名な【ロキ·ファミリア】の【剣姫】アイズ·ヴァレンタインだ。

 

「あの.....大丈夫、ですか?」

 

2度目の心配する声で、ようやく我に返った僕は大丈夫じゃなかった。今にも彼女への思いが爆発しそうだった僕は、返事もせずに走り去ってしまった。

 

走っている最中、僕は彼女への申し訳なさに加えて、初対面のはずの彼女に懐かしい感じがしたのだった。

 

 

 

 

 

 

その後、僕は走ってギルドの自分のアドバイザーの元に向かった。その道中に頭が濡れていたのを思い出し、いつもズボンのポケットに常備している布切れ(パンツ)で頭の血を拭き、ギルドに到着すると手に持つドス黒い血が着いた布切れ(パンツ)を上に挙げ振り回しながら、アドバイザーの名を呼んだ。

 

「エイナさぁあああああああんっ!」

 

「ん?」

 

 

「アイズ・ヴァレンシュタインさんの情報を教えてくださぁぁぁぁい!!」

 

 

僕の呼び声と、思いのままに口走ったその言葉で振り向いたエイナさんが、僕の現在の格好を見て悲鳴をあげ、僕を怒るのを想像するのは容易いだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの後幾分か冷静になった僕は、シャワーを浴びてサッパリしたあと、エイナさんと向かい合ってい、血で真っ赤に染まったパンツを振り回しながら街中を突っ切ってきたことについて少々小言を言われている。

 

「だいたい、パ、パンツで血を拭いて、しかもそれを振り回しながら走ってくるかなって言いたいのもあるけど、なんで

下着をポケットに入れてダンジョンに潜ってるのかな?」

 

あ、途中で、パンツから下着に言い換えてる。やっぱり恥ずかしいのか?それよりも、質問に答えてないと

 

「それは、僕を育ててくれた亡き祖父の影響です。」

 

「えっ?」

 

「おじいちゃんが言っていました。『ベルよ、男はいつヤられるのか分からないからせめてパンツは一張羅を穿いておけ』って。だから僕はいつでも綺麗なパンツを履き替えれるように予備のパンツを持っているんです。」

 

「.........(ドン引き)」

 

あれ? なんだか、呆れられてる? そういえば、村にいた頃にこの話したら、村の人が20人連続でおじいちゃんをドロップキックしてったっけ、懐かしいなぁ

 

その後、エイナさんは落ち着いてから本題について聞かれた。

 

「それで、アイズ・ヴァレンシュタイン氏の情報だっけ? 何でまた?」

 

僕はちょっと言い辛かったけど、

 

「え~~~っと…………ちょっと言いにくいんですけど、今日は5階層まで足を伸ばしまして………」

 

そこまで言うと、エイナさんのこめかみがピクリとする。

 

「それで5階層に降りて最初に遭遇したモンスターが、何故かミノタウロスでして………」

 

今度はエイナさんのこめかみがピクピクっと2回動く。

 

「それで逃げてる時に、アイズ・ヴァレンシュタインさんが現れてミノタウロスを倒しちゃったんです」

 

その後一目惚れして、恥ずかしくなって逃げてきちゃったと伝えると、遂にエイナさんが爆発した。

 

「………もぉっ! どうして君は私の言いつけを守らないの!? 唯でさえ君はソロで潜ってるんだし、そうホイホイと下層に行っちゃダメじゃない! 冒険者は冒険しちゃダメって、いつも言ってるでしょ!?」

 

エイナさんは身を乗り出しながら僕を叱る。

 

「すみませんすみません! でも、浅い階層のモンスターじゃなんでか怯えて逃げちゃうんで、つい………」

 

「“つい”じゃない! その“つい”が冒険者の命を落とす最大の原因なんだからね! そりゃ、今まで君が殆ど怪我をせずに帰ってきたことだけは認めてあげるけど………」

 

「すみませんすみません! でも、『オラリオ』に来る前にも、ゴブリンやコボルトなら討伐経験があるのと、さっきも言ったようにどうしてもモンスターが怯えて逃げちゃうので………」

 

「討伐経験があるって言っても、所詮1匹や2匹でしょう!? ダンジョンの『中』と『外』を同列に考えないで!」

 

エイナさんの言葉は、全て僕を心配してくれているから出てくる言葉だ。

本気で心配してくれているから、僕は頷くことしかできないんだけど…………

一通り説教して気が済んだのか、エイナさんは気を取り直して椅子に腰掛ける。

 

「それで、アイズ・ヴァレンシュタイン氏の情報だっけ?」

 

「は、はい………!」

 

「う~ん………ギルドとしては冒険者の情報を漏らすのは御法度なんだけど………」

 

「そ、そこを何とか………」

 

僕は手を合わせながらお願いする。

 

「………教えられるのは公然となってることぐらいだよ?」

 

エイナさんは、そう前置きしながらも情報を教えてくれる。

やっぱりこの人は親切だ。

エイナさんが語った情報は、

 

 

アイズ・ヴァレンシュタイン。

大手【ファミリア】である【ロキ・ファミリア】の幹部。

剣の腕前は冒険者の中でもトップクラス。

Lv.5相当のモンスターの大群をたった一人で殲滅したこともあるらしく、二つ名の【剣姫】の他に【戦姫】とも呼ばれる。

下心を持って近寄ってくる異性は全て撃沈。

ついには千人切りを達成したとか………

あと一番大事な情報として、付き合ってる異性がいるとは聞いたことがない、ということだった。

エイナさんもこれ以上は職務に関係ないとかで教えてくれなかった。

趣味とか好きな物とかも聞ければ良かったんだけど、僕としては最後の情報が聞ければ十分だった。

すると、エイナさんが話の最後に、

 

「君はもう神ヘスティアから恩恵を授かったんでしょう? 【ロキ・ファミリア】で幹部も務めるヴァレンシュタイン氏にお近付きになるのは、私は難しいと思う」

 

確かにエイナさんの言うとおりだ。

 

「………想いを諦めろとは言わないけど、現実をしっかり見なきゃ、ベル君の為にはならない」

 

「………はい」

 

わかってたつもりだったけど、こうやって現実を突きつけられると、苦しいものがある。

そんな僕を見て、エイナさんは困った顔をしながら、ギルド職員としての対応をした。

 

「換金はしていくの?」

 

「あ………はい。 ミノタウロスと出会うまでは、普通にモンスターを倒していたのと、あのドロップアイテムのこと分かりました?」

 

「そのことなんだけど、ギルドの職員でも詳しくことが分からなくて..........しかも、あれに詳しくかもしれない神が、今はオラリオを離れているらしいから、もう少しだけ待っててもらえるかな?」

 

「そうですか、分かりました」

 

「じゃあ、換金所まで行こう。 私も付いて行くから」

 

気を使わせちゃったみたいだ。

 

ギルド本部内にある換金所で、今日の報酬を受け取ったあと、ギルドを出ようとしたところで、

 

「………ベル君」

 

突然エイナさんに呼び止められた。

 

「あっ、はい。 何ですか?」

 

僕は振り向いて要件を尋ねると、エイナさんは少し躊躇するような仕草をしてから口を開いた。

 

「あのね、女性はやっぱり強くて頼りがいのある男の人に魅力を感じるから………えっと、めげずに頑張っていれば、その、ね……………ヴァレンシュタイン氏も、強くなった君に振り向いてくれるかもよ?」

 

一人の知人として、励ましてくれるエイナさんの姿に、僕は自然と笑みを浮かべる。

そして、また心のままに口走った。

 

「エイナさん、大好きです!!」

 

「えうっ!?」

 

「ありがとぉー!!」

 

そのまま踵を返し、軽くなった足取りで駆け出した。

 

 

 

 

 

ヘスティアside

 

 

 

 

ボクの【ファミリア】を立ち上げてから半月。

相変わらず新規入団者は現れてないけど、1人だけいる団員のベル君。

彼の非常識さに頭を悩ませていた。

いや、ベル君はいい子だし、むしろ好感がもてる子なんだけど、如何せん彼はある点に関して非常識すぎる。

 

それは、パンツだ‼︎.......やっぱり言い直そう、彼が()()()持ち歩いている予備の明日のパンツのことだ。

 

 

まあ、それでもベル君の非常識ぶりも新人冒険者の中ではの話だし、何事も無くあと数ヶ月もすれば、特に騒ぎ立てるようなものでもない。

 

 

他の神々にも、興味を持たれることは無いだろう……………何事もなければ。

例えば、街中でパンツを振り回しながら走ってしまったり、明日のパンツを他人に布教してしまいだししったり……………

どっちもベル君なら出来てしまいそうなので不安だ。

そんな事を考えていると、

 

「神様! ただいまー!」

 

いつもより早く、ベル君が帰ってきた。

 

「おかえり、ベル君。 今日は早かったね」

 

「ええ。 ちょっとダンジョンでトラブルがありまして」

 

「トラブルー? でも、君が怪我しているようなには見えないと思うんだけど……」

 

「トラブルといいますか、運命的な出会いといいますか…………」

 

そこでボクはさっきまで考えていたことを思い出した。

 

「もしかして…………パンツの同志かい?」

 

「それなら、もうオラリオにきた初日にできました」

 

「えっ?……いろいろと聞きたいことはあるけど、今はいいや。それでなにがあったんだい?」

 

思わず低い声になったボクにベル君は説明を始めた。

第5階層に進んだら、何故かミノタウロスと遭遇したこと。

ベル君は、ミノタウロスから逃げていたけど、追い詰められてしまったこと。

その直後で、第一級冒険者のヴァレン某という女剣士が横槍をいれて、ミノタウロスを瞬殺したこと。

そのヴァレン某に、ベル君が一目惚れしてしまったことを聞いた。

 

 

「ベル君、アイズ・ヴァレンシュタインだっけ? そんなに美しくてべらぼうに強いんだったら、他の男共がほっとかないよ。 その娘だって、お気に入りの男の一人や二人囲ってるに決まってるさ」

 

「そ、そんなぁ………」

 

ベル君は情けない声を上げる。

けれど、ボクは続ける。

ベル君を出会ってすぐの女に渡すもんか!(ベル君の非常識さを感染させないために)

 

「いいかい? そんな一時の気の迷いなんて捨てて、もっと(自分の)身の回りを注意してよく確かめてみるんだ。」

 

ボクはそう言うけど、ベル君は少し考える仕草をした後、複雑な表情をする。

むむっ、これはもうひと押し必要だな。

 

「ま、ロキの【ファミリア】に入っている時点で、ヴァレン某とかいう女とは婚約できっこないんだけどね?」

 

そう言うと、ベル君は項垂れる。

よし、ここからボクが気を引けば………

 

「そうだベル君。 【ステイタス】の更新をしてみようか」

 

ボクの言葉を聞いて、ベル君は顔を上げないが、話には食いついた。

 

だが、ボクも【ステイタス】の更新は、不安に思っている。なにせ、スキルの名称にコンボが入っていて、しかもボクら神々も知らないコンボ名だからだ。

でも、なんとかベル君の気をヴァレン某からボクに逸らさないと。

 

「今日の出来事が影響して、【ステイタス】に変化がおきてるかもしれないから、一度は更新してみようと思うんだ」

 

「あっ、なるほど。 その可能性も捨てきれませんね」

 

「じゃあベル君。上着を脱いで、ベッドに横になるんだ」

 

「分かりました」

 

そう言って、上着を脱いでいき、ベッドにうつ伏せに横になった。

 

「じゃ、ちょっと失礼するよ」

 

ボクはベル君の背中に馬乗りになり、ボクはベル君の【ステイタス】を更新する。

やがて更新が終わり、【ステイタス】を確認した。

そこでボクは溜め息を吐く。

やっぱり変わってな………………

 

 

 

 

 ベル・クラネル

 

 Lv.1

 

 力  :I 77→I82

 

 耐久 :I 13

 

 器用 :I 93→I96

 

 俊敏 :I G209→G210

 

 魔力 :I 0→⚫️⚫️

 

 

《魔法》

 

【⚫️⚫️ー⬛️・ボ⚫️⚫️】

 

【】

 

 

《スキル》

 【欲望摩耗】(プトティラコンボ)

 成長に必要な経験値が激増。

 欲望を摩耗させて、太古の力を得る。

 器が危険な時、太古の力が暴走。暴走後ステイタスがダウンする。

 

 【情憬一途】(リアリス·フレーゼ)

 早熟する。

 懸想が続く限り効果持続。

 懸想の丈により効果向上。

 

 

 

 

 

 見知らぬスキルが生まれてるし、魔法と魔力の項目がおかしくなっている。

 

 

 

side out

 

 

 

 

 

昨日【ステータス】を更新してから、いつものように部屋にパンツを干そうとして、神様に怒られたけど、僕は今日も朝早くから、ダンジョンに向かっていた。

 

 

突然胸がざわつき、誰かの視線を感じた。

 

敵意でも悪意でもなく、まるで心の中を覗かれるかのようなその視線に僕は思わず視線を感じた方を向く。

 

その方向は、バベルの塔。

 

確か、バベルの塔には神様達が住んでるんだよね。

 

じゃあ、神様の誰かが僕を見てたってことなのかな?

 

とりあえず視線を感じたのは今だけだったので、ダンジョンに向かおうとすると

 

 

「あの」

 

 

「わっ!?」

 

 

突然後ろに居た人物の声に驚いた僕は声を上げて、すぐに振り返った。

 

そこにいたのは、薄鈍色の髪と瞳をして何かの本を持ったヒューマンの少女だった。

 

服装は、ウエイトレスのような格好をしているから、どこかの店の店員さんかな?

 

 

「あっと………すみません。 驚かせてしまいましたね」

 

 

「いえ、気にしないでください。それで、僕に何か?」

 

 

「あ………はい。 これ、落としましたよ」

 

 

そう言って差し出された彼女の手の平に乗っていたのは魔石の欠片。

 

 

「えっ? あれ………?」

 

 

僕は魔石を入れてある腰巾着に手をやる。

 

手に入れた魔石は、全部この腰巾着に入れてるけど、魔石は全部換金したはずだけど……残ってたものがあったのかな?

 

でも、一般人が魔石を持ってるなんて考えにくいし………

 

とりあえず、彼女からは嫌な雰囲気はしなかったので、受け取っておくことにした。

 

 

「すいません。 ありがとうございます」

 

 

「いえ、お気になさらないでください」

 

 

柔らかい微笑みが返ってきて、僕は少し見惚れる。

 

 

「こんな朝早くから、ダンジョンへ行かれるんですか?」

 

 

「ええ。 まだ低階層しかアドバイザーの人から許されていないので、少しでも収入を良くする為に………」

 

 

と、そこまで言ったところで、僕のお腹がグウっと鳴った。

 

 

「………………」

 

 

「………………」

 

 

あまりの気恥ずかしさに沈黙する僕と、きょとんと目を丸くする彼女。

 

そういえば、まだ朝ごはん食べてなかった。

 

すると、彼女はぷっと笑みを零し、

 

 

「うふふ、お腹空いてらっしゃるんですか?」

 

 

「……………はい」

 

 

「もしかして、朝食を取られていないとか?」

 

 

本当の事なので、僕は頷く。

 

すると、彼女は少しの間僕を見つめた後、「とても、興味深いですね」と小さな声で呟いた後、パタパタと駆けてカフェテラスを超えて店の中へ入り、少しすると再び出てきた。

 

その手に小さなバスケットを持って。

 

 

「これ、よかったらどうぞ………まだお店がやってなくて、賄いじゃあないんですけど」

 

 

「ええっ⁈ そんな、悪いですよ! それにこれ、あなたの朝ごはんじゃ………!」

 

 

「このまま見過ごしてしまうと、私の良心が痛んでしまいそうです。だから冒険者さん、どうか受け取ってもらえませんか?」

 

 

「ず、ずるいですよ、その言い方………」

 

 

そんな言い方されたら、断れないですよ。

 

僕が受け取るかどうかで悩んでいると、彼女が顔を近づけてきて、

 

 

「冒険者さん。それに、これは利害の一致です。私もちょっと損をしますけど、冒険者さんはここで腹ごしらえができる代わりに………」

 

 

「代わりに?」

 

 

「今日の夜、私が働くあの酒場で、晩御飯を召し上がっていただかなければなりません」

 

 

その言葉の意味を完全に理解すると、僕は思わず苦笑いしてしまった。

 

 

「もう、本当にずるいなあ………」

 

 

「うふふ、ささっ、貰ってください。 今日の私のお給金が、高くなるだけでなく、興味深いことが起こりそうですから」

 

 

「………それじゃあ、いただきます。容器を返すためにも今日の夜に伺わせてもらいます」

 

 

「はい。 お待ちしています。あと、できれば今日の冒険のことを聞かせてもらっていいですか?」

 

 

「いいですけど、新人冒険者なので、とても面白い話はできないですよ」

 

 

「いえいえ、なんだか久しぶりに冒険者さんの話を聞きたくなったんですから」

 

 

バスケットを受け取りながら、彼女と言葉を交わす。少し変わった人の感じがするけど、なんだか好奇心旺盛な人のようにも思えてきた。それに、なんだか彼女とは、どこかで接点があったような気もした。でも、彼女の名前も知らない…って、夜のためにも聞いておかないと

 

 

「僕はベル・クラネルといいます。 あなたのお名前は?」

 

 

 

「シル・フローヴァです。ベルさん」

 

 

 

そう名乗った彼女をこの世の全てをシル存在だと僕が知ったのは、まだ先の話だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




現在、???が使用できるメダル。

???×1 ????×1 ????×1



次回の物語は、

「ようこそ、いらしゃいませ。ベルさん」

シルの働く酒場に来たベルが、そこで出会ったのは⁈


「昨日、5階層で起きた不思議なこと?」


「俺に質問をするな」


 オラリオで有名なロキファミリア


「人は一人では強くなれません」


「だから、人は」


 討論の末にその場を去る者は




 酒と思い人と弱者の涙








「僕は強くなりたいです。神様」



次回もお楽しみに

 

ここからは今後の注意事項です。この物語の設定はこのシリーズの初投稿の時点での内容で構成されていることがおおいです。そのため、現在判明している内容とは、違ってきます。その一例としてシルが挙げられます。今後も、初期に作ったプロットで書いていきたいので、改変についてはご了承ください。




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