東京喰種 「Policy」 (岐阜喰種 金)
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~プロローグ~

東京喰種のアナザーストーリーです。
原作との絡みは原作に忠実にします。


2012年11月✖️日

東京 5区

 

ふと、気がつくと目の前には赫胞を喰われ生死の境目をさまよっている喰種がいる。

傷が治っていくのを見ると生きているようだ。

???「そっか、またやっちゃたか。」

と、大きくため息をつく。

???「時季に動ける様になりますよ。これからは、肩が当たっただけで襲うのはやめておいた方が良いですよ。

そんなに、気が短いと血圧が高くなったらどうするんですか?

まぁ、喰種だからそんな事はまず無いでしょうけど。」

今宵は、満月。

月明かりに照らされた場所には、1人の喰種が立っていた。

そのマスクは、横倒しになった「太陰太極図」の様な柄をしている。

黒、そして白丸のところからは赫眼が見えている。

立ち去ろうとすると、3人組の男達が倒れている男に駆け寄った。

チンピラ喰種A「アニキっ‼︎ウッソだろ⁉︎あのアニキがこんなガキに負けるなんて…」

と、驚きと悲しみで膝を地面に落としながら言った。

チンピラ喰種B「アニキっ‼︎大丈夫ですか‼︎」

チンピラ喰種C「こんな事なら3人揃って缶コーヒーなんて買いに行くんじゃなかったぜ!

チンピラ喰種アニキ「うぅ…気をつけろ。ヤツを…ただの…ガキと…思…う…な………」

A「アニキっーー!」

B「アニキっ!」

C「大丈夫。気を失っているだけだ。」

と、脈を計りながら言った。

A「アニキはやられたが、流石にこんなガキだ。

俺たち3人がかかればいけるだろう!」

「3人よれば、まんじゅうの知恵ってな。」

と、ニコニコと笑顔で言った。

B・C「???」

首を傾げながら、その2人の頭の上には?が浮いていた。

B「お、おう!そうだな!」

C「そうだね。(まんじゅうじゃなくて、もんじゅだと思うけど…)

A「よし、行くぜ。」

B「ああ。」

C「うん。」

3人とも赫眼を開いて近づく。

???「出来れば、争いは避けたいんだけどなぁ…

まぁ、正当防衛と言うことで。」

「殺したくは無いので、ヘタに抵抗しないでくださいね。」

ニッコリと笑い、赫眼を見開きながら言った。

A「ナメやがって!これでもくらえ!」ヒュンヒュンヒュン‼︎

風を切る様にして、赫子から青いガラスの破片の様な物が飛び出た。

???「羽赫持ちか。すばしっこくて面倒だな。」

と、言いながら全て軽く避ける。

B「気をとられすぎだぜ!」

???「そうかな?」ガギィン‼︎‼︎

甲赫で襲ってきたチンピラに、日本刀の様な形の赫子で応戦をする。甲赫だ。

???「こんなもんか。」ザシュ‼︎

B「グハァッ!」バタッ

C「ウ、ウワーッ!」ニュルン

ザシュッ‼︎

C「やった!」

???「こっちは、鱗赫か。」ズズズッ‼︎トスン

C「尾赫⁉︎甲赫だけじゃなくて⁉︎」

A「二種持ちか。厄介だな。」

「しかも、なんだその赫子は⁉︎なぜ、甲赫も尾赫も二つに分かれてるんだ!」

「そうか、思い出したぞ!

お前!20区の『二又』(ふたまた)だな!」

???「だったら、何?」

バンッ!ドゴッ!

C「カハッ!」ズルッ バタン!

壁に打ち付けられ、伸びている様だ。

A「おい!大丈夫か!クッソー、ウラァ!」ヒュンヒュンヒュン!

???「同じ攻撃が、当たるわけないでしょ。」スッスッスッ

ニュルンニュルンニュルン

A「おいおい。マジかよ。鱗赫まで、持ってやがんのかよ。」

ザシュッ ザシュッ

???「殺しは、しない。それが、僕のポリシーなんでね。」

「でも、赫胞は頂いていくね。」ガブッ グチャッ クチャクチャ ゴクンッ

???「何度食べても、マズイな。」

「ふー。この5区にも、もう用事はないし。ここんとこ、ずっと移動してたから疲れちゃったなぁ〜」

「しばらく、のんびりしたいなぁ〜。

そうだ!久し振りに、お店に顔を出してみようっと。」

翌朝、通勤ラッシュが終わった頃の事。

20区にある喫茶店「あんていく」の前に1人の若い男が現れた。

彼の名は、「太田 巧」(オオタ タクミ)

喰種だ。

 

この物語は、ここから始まる。

To be continue

 

 

 

 

 

 




出来るだけ更新を急ぎます!毎月更新を目指します!
気軽にどうぞ!


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第一章 ~再開~

思っていたより、早く仕上がりました。
手は一切抜いていません。


ここは、20区にある喫茶店「あんていく」

この、喫茶店は喰種が経営しており20区に住む喰種達の憩いの場となっている。

タクミ「久し振りだなぁ〜。あんていく。」

そして、目一杯鼻から息を吸い込んだ。

タクミ「うーん。いい香り。みんな、元気かなぁ。」

と、言い階段を登り始めた。

その時、遠くから怒っているであろう声が聞こえた。

???「ニャーニャー、うっさいんだよ!何にも、出来ねぇくせに‼︎」

タクミ(この声は、トーカさんかなぁ…怒られているのは誰だろう…

まさか、アイツが帰って来たのかな?)

そう思いながら、タクミは店の扉を開けた。

カランカラン

カネキ「あっ、いらっしゃいませ〜。」

トーカ「いっ、いらっしゃいませ。」

2人とも、何もなかった様にごまかそうとして言葉が上手く出てきていなかった。

そして、トーカが気づいた。

トーカ「ん?てか、アンタ…もしかして…」

タクミ「うん、そうだよ。ただいま、トーカさん。」

その瞬間、タクミの顔面にトーカは膝蹴りをした。

タクミ「痛ッ‼︎」

思わぬ出来事が起こり、床に膝を着き前屈みになった。

そんなタクミにトーカは、タクミの背中を蹴り続けた。

トーカ「テメェッ‼︎このっ‼︎いったいっ…どこにっ…居たんだよっ‼︎このっ、クソタクッ‼︎」

タクミは、ついつい笑いながら痛みに耐えていた。

タクミ「痛いっ‼︎痛いよ、トーカさん。」

カネキ「ト、トーカちゃん。そのくらいにしてあげなよ。」

少し、パニックになりながらカネキが止めに入った。

しかし、トーカは止まらない。

その時カネキは、

カネキ(怒ったトーカちゃんは、暴走した機関車みたいだ。)

と思った。

トーカ「長い間、連絡もよこさないで!そもそも、何で突然姿を消したんだよっ‼︎

私や、みんながどれだけ心配したと思ってんだよ‼︎」

タクミ「ごめん!だから、ごめんってば‼︎お願いだから、一回落ち着いて‼︎蹴るのもヤメて‼︎」

トーカは、大きなため息をついて近くにあった椅子に座った。

タクミ「ト、トーカさん。あの〜。」

トーカ「………コーヒー。」

タクミ「えっ⁉︎」

トーカ「早く、淹れて来い!」

タクミ「は、ハイッ‼︎」

タクミの返事は、トーカの威圧で声が裏返っていた。

厨房に駆けていったタクミを見て、カネキが

「あっ、ぼっ僕も手伝ぅ」

と言いかけたカネキをトーカが

「カ〜ネ〜キ〜。」

と、呼び止めた。

「う、うん。」

トーカ「そこに、座っとけ。」

カネキ「わ、分かったよ。トーカちゃん。」

ストンッ

無意識にカネキはトーカと向かい合って座っていた。

トーカは、最初は目を見開いたが即座に窓の外を見た。

タクミは、カウンターの中から

(あの2人、お似合いだなぁ〜。)と思った。

「トーカさん。出来ましたよ。」

コトッ コトッ

タクミは、静かに手慣れた様子でカップを置いた。

カネキ「えっ、僕にも⁉︎」

タクミ「はい、よければどうぞ。」

ズズッ

 

To be continue



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第ニ章 ~あんていく~

本当は、第一章で終わらせるつもりでしたが長くなってしまうので二つに分けました。
第一章後編と言った方が正しいのかもしれません。


午前中の、穏やかな時間帯。

喫茶店「あんていく」では、営業中にも関わらずのんびりとコーヒーを飲んでいる喰種が2人いた。

カネキ「美味しい‼︎このコーヒーものすごく美味しいよ!え〜っと、そういえば名前をまだ聞いてなかったね。

僕は、『金木 研』。君は?」

タクミ「あなたが、カネキさんでしたか。僕は、『太田 巧』です。」

カネキ「君、いくつ?」

タクミ「今年で15歳になりました。」

カネキ「誕生日は?」

タクミ「1月の20日です。」

カネキ「へぇ〜。じゃあ、僕の3つ下でトーカちゃんの2つ下って事だね。」

自分の名前が出て流石に嫌気がさしたトーカは、

「いつまで、気持ち悪い事言ってんだよ。カネキ。私の弟分の事、口説いてんのか?」

と言った。

カネキ「ち、違うよ。トーカちゃん。」

カネキは、慌てながら言った。

タクミが吹き出していると、トーカが突っかかって来た。

トーカ「何笑ってんだよ!クソタク‼︎」

タクミ「いやっあのっ、こういうのが久し振りだったからつい…」

その一言で店内が沈黙に陥った。

トーカ「っと、まあとにかくお前の淹れてくれたコーヒー、美味かったぞ。」

悪い事をしてしまったと思ったトーカは、笑顔で言った。

タクミ「なら、良かった‼︎」

トーカの一言で、明るさを取り戻したタクミはとてもウキウキしている。

トーカ「やっぱり、元々うちで働いていただけはあるな。」

カネキ「えっ⁉︎タクミくん、あんていくで働いていたの?」

その時、ガチャッという音と共に奥の部屋から初老の男性が出てきた。

芳村「本当だよ。カネキくん。」

カネキ「店長!そうだったんですか。」

「だから、あんなに美味しいコーヒーを淹れられるんだ。」

芳村「ああ。彼は、あんていくの歴代の店員の中でもトップクラスにコーヒーを淹れるのが上手かったんだよ。」

「色々話したい事はあるけど、とりあえず…おかえり、タクミくん。」

タクミ「ただいま。店長。」

ガチャッ また、奥の扉が開き中からは親子が出てきた。

タクミ「あっ!リョーコさん。それに…ヒナミ?」

ヒナミは、元気のない声で

「うん…」

と答えた。

そんなヒナミを見てタクミは、今まで以上に明るく話しかけた。

タクミ「ちょっと見ないうちに、大きくなったなぁ〜」

トーカ「ったく、オマエは親戚のオッサンか?」

カネキ「確かに。」

暗い顔をしていたヒナミを含めその場にいた全員が、思わずプッと吹き出した。

リョーコ「久し振りねぇ、タクミくん。あなたも、背が伸びたんじゃないの?」

タクミ「そうですか?自分ではあんまり分からないものですね。」

リョーコ「あら、そうなのね。」

と言いながら、微笑んだ。

ヒナミ「タクミお兄ちゃん。」

少しずつ表情が明るくなってきたヒナミが口を開いた。

タクミ「どうかした?ヒナミ。」

ヒナミ「私も、お兄ちゃんのコーヒー久し振りに飲みたい!」

「良い、かな?」

タクミ「うん!もちろん‼︎」

と言い残してタクミは、厨房へと走っていった。

芳村はカウンターに座り、ギリギリタクミにだけ聞こえる声で呟いた。

芳村「タクミくん、後で奥の部屋に来てもらえないかな?」

タクミは、コーヒーを淹れながら芳村と同じくらいのボリュームで返した。

タクミ「わかりました。もちろん、オッケーですよ。」

タクミは、お盆に5つのカップをのせてカウンターから出た。

タクミ「はい、店長。」

芳村「おぉ、すまないね。」

タクミ「いえいえ、どうぞ。」

そして、カネキとトーカ、笛口親子が座っている窓際の席へと歩いていった。

タクミ「はい、ヒナミ。リョーコさん。それに、トーカさんとカネキさんも。」

コトッコトッ

次々とテーブルに並べられていくカップには、淹れたて熱々のコーヒーが入っており良い香りで店内をいっぱいにした。

ヒナミ「わーっ!」

クンクン

ヒナミ「良〜い、匂い。」

リョーコ「本当ね。ヒナミ。」

トーカ「アタシら、さっき飲んだばっかりなんだけど…」

カネキ「まあまあ、トーカちゃん。せっかく淹れてくれたんだから飲もうよ。」

カネキに言われて、少し頭にきたトーカは静かに

トーカ「テメェに言われなくても飲むに決まってんだろうが。」

と、ボヤきコーヒーを飲んだ。飲んだ後のトーカは、笑顔だった。

店内にコーヒーを飲む音が響き、皆香りを楽しむ。

少し経って、会話が始まった。

芳村「うん、美味しいよ。タクミくん。また、腕を上げたね。」

タクミは、他でもない店長に褒められてとても喜んだ。

タクミ「本当ですか!やったぁ〜!」

ヒナミ「やっぱり、おいしいね。お母さん。」

リョーコ「えぇ、本当に。」

2人は、顔を見合わせて微笑んでいる。

トーカは、ヒナミが少しずつ笑う様になって安心した。

気づけばそんな2人につられて全員が笑顔になっていた。

そこで、芳村が立ち上がりこう言った。

芳村「さぁ、飲み終わったら仕事にかかってもらおうか。私も、奥で書類の整理があるから先に行くよ。

タクミ君、ごちそうさま。」

トーカ「あっ、いっけねー。」

カネキ「本当だ。もう、お店はオープンしてたんだった。」

2人は、ドタバタしながら自分の使ったカップを片付け仕事にかかった。

ヒナミ「お兄ちゃん。」

タクミ「どうした?」

ヒナミ「ここに来たってことは、お店に戻るの?」

タクミ「うーん。どうだろうなぁ〜。」

「カネキさんも、居るし人手は足りてるんじゃないかなぁ。」

「店長と、話してみるよ。」

ヒナミ「うん‼︎」

「あっ!お兄ちゃん。」

タクミ「ん?」

ヒナミ「コーヒー、ありがとう‼︎とっても美味しかったよ‼︎」

タクミ「どういたしまして。」

と、言い店長の待つ奥の部屋に入っていった。

 

To be continue

 




今回は、いつもよりも長めになってしまいました。


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第三章 ~成り行き~

原作は、完結しましたがこっちはまだまだ終わりません。
今回は、いつもよりも長めです。



ガチャッ バタン

扉が開き、閉まる音がした。

芳村「タクミくん。来てくれてありがとう。」

タクミ「いえいえ、それで用件は何ですか?」

芳村「いくつか聞きたい事があるんだ。あと、警告しておきたい事が一つあってね。」

タクミ「そうですか。分かりました。店長には全て、包み隠さずに喋ります。」

そして、自慢気に鼻をフンと鳴らした。

芳村「そうしてくれると助かるよ。じゃあ、まず君は突然姿を消した後何処で何をしていたんだい?」

タクミの顔は、真剣そのものだった。静かに大きく息を吸って吐いた。

そうして、重たい口を開いた。

タクミ「店長は、何故僕が『二又』と呼ばれているかは知ってますよね?」

芳村「あぁ、肩の甲赫と腰の尾赫。二種類の赫子を持ち、その赫子が二つに分かれているからだろう?」

タクミ「えぇ、その通りです。」

タクミは、近くのソファーに腰を落とし芳村と向かい合って座った。

タクミ「今までは、確かにそうでした。ですが、今はそうでは無いんです。僕は二又ではなくなりました。

僕は、三つ目の赫子を手に入れてしまいました。」

芳村「どういう事なんだい?」

芳村は、落ち着いた口調でゆっくりと話した。

タクミ「僕は、昔から無益な殺しを嫌い仲間や自分を『守る力』を欲していました。」

「あの鉄骨落下事件のあった頃、僕の噂を聞きつけた男がいました。」

芳村「その男とは、一体誰なんだい?」

タクミ「嘉納…嘉納明博。嘉納総合病院の院長で、元CCGの解剖医で長年喰種の研究に携わっている男で す。」

芳村「何⁉︎それは、本当かね?」

流石の芳村も驚きが隠せない。

タクミ「えぇ、本当です。」

「僕は、嘉納に守る為の力が欲しいかと聞かれました。そして僕は、欲しいと答えました。」

「そのあと、嘉納が喰種の研究をしている研究所にトラックの荷台に乗せられて連れていかれました。

そこには、神代理世の姿がありました。」

芳村「リゼちゃんが⁉︎生きていたのかい?」

タクミ「はい。タンクの様な物の中で無理やり生かされている感じでした。」

「嘉納はどうやら、リゼさんを使って人間を喰種に変える実験をしていました。」

芳村「人間を喰種に変える、か。そんな事が可能なのかい?」

タクミ「正確には、半喰種です。その喰種化施術を受けさせられた第一号が…」

芳村「カネキくんという訳か…」

タクミ「はい。」

「嘉納は、カネキさんで成功したのを確認して今度は喰種に施術を行えばどうなるか興味本意で僕に施術をしました。」

「それで僕は、父の甲赫と母の尾赫さらにリゼさんの鱗赫を持つ『三つ又」の喰種になったんです。」

「嘉納の研究所にいた時は、毎日赫子の動作確認と言って拷問に近い実験をされました。毎日、毎日。何度も何度も。

痛めつけられて…」

「何故か、リゼさんの鱗赫だけ出せなかった僕は嘉納にとって用済みとなり捨てられました。」

「その後は、見た事もない場所に連れて来られていたので完全に迷子でした。」

「ウロウロとしていると、柄の悪い喰種が何人も襲ってきました。」

「僕も、殺さない程度に戦おうと赫子を出すと、何度か戦う内にリゼさんの鱗赫が出るようになったんです。」

「でも、それと同時に我を失ってしまい気づいたら襲ってきた喰種を喰っていたんです。」

芳村「暴走して、共喰いか…」

タクミ「僕は、消えゆく意識の中で殺してはいけない‼︎命を奪ってはいけない‼︎と、強く念じていました。

すると、僕は相手の赫包だけを食べていたんです。」

「最初は、何人か殺してしまった喰種もいました。でも僕は、赫包だけを食べる様になってそれ以降鱗赫もコントロールできる様

になりました。罪悪感は、今も感じています。ですが、僕の赫子は以前よりも強くなった感じがします。」

芳村「なるほどね。君も、災難だったね。共喰いの事は君が気に病む必要はないよ。少なくとも、私は、君を責めたりはしない。」

芳村に優しく言葉をかけてもらったタクミは、今まで溜め込んできた事が全て出るように彼の頬を涙が伝った。

タクミ「うっ…くっ…うわはぁぁぁん。」

タクミは、泣いていた。

そんなタクミを見た芳村は、スッと立ち上がりタクミの隣に座り背中をポンポンと軽く叩いた。

芳村「辛かったろうね。訳の分からない場所で一人で苦しい思いをしていたんだね。」

タクミ「それだけじゃないんだ。店長ぉ〜、ケースケが…ケースケがぁぁぁぁ…」

芳村は、やはりそうだったかと頷いた。

芳村「そうらしいね。どうやら、20区に派遣された本部の捜査官によるものらしいね。」

タクミは、泣きながら怒りと悲しみをどちらもが含まれた声で喋った。

タクミ「ケースケを、助けたい。僕の仕入れた情報だと、まだ生きているらしいから。」

芳村「だが、あのコクリアから救い出すのは不可能に近い。少なくとも、私達だけでは難しい。」

タクミ「どうしたら良いのか分からない。うぅっ…」

芳村「君達二人は、昔から公私ともに中の良い親友だったからね。」

「あんていくでは、二人共ホールだけじゃなくて裏方としてもよく働いてくれていたからね。喰種の世界だけでなくCCGにも

知られていたからね。A+レート『情報屋』として。」

「普段は、二人共また違う名前で呼ばれていたね。君は、『二又』。彼は、『カッター』。どちらも、赫子の形状から由来しているね。うちのスタッフに、手を出されたんだ。私も最善を尽くすよ。」

タクミ「店長、ありがとう!」

芳村「次は、私からの警告だよ。もしかしたら知っているかもしれないがCCG本部から、捜査官が二人派遣されてきたそうだ。」

タクミ「そうですか。じゃあ僕も、その事について色々と調べてみますね。」

芳村「それは、ありがたいがくれぐれも危険なマネはしない様にね。今の君は、赫子を三つ持っていると言うだけでかなり目立ってしまうからね。四方くんの様に、やってくれると安全かな。」

タクミ「気をつけます‼︎」

そして、立ち上がり部屋を出ようとしてタクミは思い出した。

タクミ「あっ、そういえば。店長!僕、店に戻っても良いですか?」

芳村「あぁ、良いとも。上にある君の部屋もそのままだよ。でも、今日から向かいの部屋には笛口さんが住むよ。」

タクミ「うん!ありがとう‼︎店長‼︎」

ガチャッ バタンッ

タタタタタタッ バタンッ

芳村(部屋に行ったか。それにしても、やはりあの子は昔から辛い目にばかりあっているな。どうにか出来ないものだろうか…)

コンコン

ドアをノックする音がした。そして、トーカの声が聞こえた。慌てた感じだ。

トーカ「店長、お客が増えてきて回らなくなったんでホールに来て下さい!」

芳村「あぁ、分かったよトーカちゃん。いま行く。」

その日は、いつもよりお客が多く忙しかった。

 

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月一で、更新出来ればと思ってましたが結構ペース早く進んでます。
出来るだけ急いで書き上げていきます。
これくらいの長さが、続くかもしれないです。


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第四章 ~過去~

中々、話が前に進まずイラついている人もいるかもしれませんがあと2,3話程で大きく進展しますのでご了承を…
今回は、主人公のタクミがほとんど出てきません。


その日の夜は、今までにないくらいぐっすり眠れた。

次の日の朝、鳥の鳴き声で目を覚ました。

誰かいないのかと下へ降りると、店内にはカネキと懐かしい顔ぶれが開店の準備をしていた。

タクミ「古間さん‼︎カヤさん‼︎」

そこにいたのは、『古間円児』と『入見カヤ』だった。

古間「やぁ、タクミくん。おはよう。」

入見「あら、お久し振りね。」

タクミ「おはようございます!そして、お久し振りです!」

古間「今日から、店に戻るのかい?」

タクミ「はい。そうです。」

入見「じゃあ、早く着替えてきなさい。寝癖が付いてるから、寝起きだって一目瞭然よ。」

タクミ「あっ、そうだった。急いで支度してきます!」

タクミは、急いで部屋に戻っていった。

古間「相変わらずだね。あの、明るさと慌てっぷりは。」

入見「あなたと同じ事を考えていたのは癪だけど、そうね。」

テーブルを拭いていたカネキが、古間と入見の側に寄ってきた。

カネキ「タクミくんが、ここで働いていた時の事を教えてくれませんか?昨日、忙しくて聞きそびれちゃって。」

古間「あぁ、良いとも。」

入見「そうね。何から話せば良いかしら…」

古間「初めて、あんていくに来た時の事から話してあげれば良いんじゃないかな?」

入見「そこからぁ?まぁ、でもそうね。」

 

ー15年前ー

芳村「よし、それじゃあ開けようか。」

古間・入見「はい‼︎店長‼︎」

2人共、顔を見合わせて睨み合っている。

芳村「ほらほら、そんな事をしている時にお客さんが来たらどうするんだい?」

古間と入見は、溜め息をついた後睨み合いをやめた。

古間「そうだな。仲良くしよう。」

入見「そうね。お互い過去の事は水に流しましょう。」

芳村は、そんな光景を見てうんうんと頷いた。

カランカラン

ベルの音が鳴り、ドアが開いた。

古間・入見「いっ、いらっしゃいませ‼︎」

入って来たのは、子連れの若い夫婦だった。

夫「芳村さん。この度は、お招きいただきありがとうございます。」

芳村「太田さん、来てくれてありがとう。君達が、1組目のお客さんだよ。」

「古間君、入見さん。怖がらなくて良いよ。彼らも喰種だから。」

古間「そう、だったんですか。」

入見「なら、良かったです。」

2人は、ホッとした。

入見「お好きなお席にどうぞ。」

夫「どこにする?」

妻「じゃあ、あの窓の外が見える席にしましょう。」

夫「うん。いいね。」

入見「ご注文は何になさいますか?」

夫「じゃあ、ブレンドで。」

妻「それなら、私も。」

入見「かしこまりました。」

「店長、古間。ブレンド2つです。」

芳村「あぁ、分かったよ。」

古間「承知‼︎特製『魔猿』ブレンドを淹れよう。」

夫「いやぁ〜こんな街中に、喰種が経営する喫茶店が出来るなんて思ってませんでしたよ。」

入見「えぇ、私も最初はびっくりしました。」

母親に抱かれていた子供が目を覚ました。

妻「あっ、タクミ。目が覚めた?」

タクミ「あー、あー。」

タクミは、初めて会った入見にかなり反応を見せた。

妻「あら、なぁに?このお姉さんが気になるの?」

タクミ「うー、うー。」

タクミは、入見のいる方向に手を伸ばす。

入見は、それに気づいてタクミに近づく。

入見「タクミくんって、言うんですね。タクミく〜ん、カヤお姉さんだよ〜。」

入見は、タクミの頭を撫でる。その表情は、とても穏やかで優しかった。

タクミ「キャッ、キャッ」

妻「あなたの事が気に入ったみたいね。少し、抱いてみてもらえるかしら?」

入見「えっ⁉︎良いんですか?」

夫「えぇ、もちろんどうぞ。」

そう言われた入見は、母親からタクミを渡された。

入見「意外と、重たいんですね。」

タクミ「キャッキャッ」

タクミは、入見を見て喜んでいる。

そんなタクミを見て入見は、とても幸せそうだった。

古間「入見は、子供にはモテるんだなぁ〜」

と、古間は少し羨ましそうに言った。

入見「うるさいわよ。今、ウトウトしてきてるんだから。」

(ヤバい。私今、急激に母性が目覚めてきてる。子供って可愛い〜)

 

ー現在ー

古間「それが、タクミくんとの出会いだよ。」

入見「タクミくんの両親は、あんていくをとても気に入ってくれてその後も週に一回は必ず来てくれたわね。」

古間「入見がいない時に来たら、タクミ君はずっと泣いていたんだよ。それに入見も、ものすごく残念がってたなぁ。」

カネキ「へ〜。そうだったんですかぁ。

それで、その後どうなったんですか?」

その瞬間、2人の表情が曇った。

古間「えっと、その後はね…」

ガチャッ

タクミ「みなさん‼︎お待たせしました‼︎」

「あれ?どうしてそんな辛気臭い顔してるんですか?」

古間「何でもないよ。みんな、君が来るのを待っていたのさ。」

タクミ「そうでしたか。それは、ごめんなさい。」

入見「良いのよ。さぁ、仕事に取り掛かりましょう。」

一同「はーい。」

カネキ(一体、何があったんだろう…そういえば、タクミ君は何でここに住んでいるんだろう…家族は、どうしたのかなぁ…)

その日は、タクミ以外少し暗い気持ちであんていくはオープンした。

 

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第五章 ~宵~

その日の夕方、学校帰りのトーカが店に顔を出した。

カネキ「あっ、トーカちゃん。どうしたの?」

トーカ「最近、体がなまっちまってるから、タクミを使って訓練しようかと思って…アイツは?」

カネキ「今、裏で食器を洗ってるよ。

あっ、そうだトーカちゃん。今日、古間さんが教えてくれたんだけど。タクミ君は、今まで

一つも食器を割った事が無いんだって。」

トーカ「へ〜、そうなのか。ってか、何だよ。アタシに対しての嫌味か?」

カネキ「あっ、いや。別に、そういう訳じゃ…」

トーカ「どうだか…」

カネキは、本当にそういうつもりはなかったのにと思い悲しそうな顔をした。

トーカ「なに、ショボくれてんだよ?別に、アンタの言った事なんか誰も気にしちゃいないって。」

カネキ(それはそれで、ショックだよ。トーカちゃん。)

「あ、アハハ…そうだったんだね。」

カネキの心境は、複雑だった。

夕方は、客がほとんどいない時間であり、今日はトーカが来る前に帰った客が最後だった。

店内には、床にモップをかけている古間とテーブルを拭いている入見、そしてカップを並べていたカネキとトーカの4人だけだった。

長い間沈黙が流れていたが突如、誰かの叫び声が聞こえた。

声のした部屋に行ってみると、タクミが床に落ちている割れたカップを見て嘆いていた。

その瞬間、古間と入見とカネキは驚き、トーカは喜んでいた。

古間「タ、タクミくんもとうとうやったか。」

入見「まぁ、誰だって失敗する事くらいあるわよ。」

カネキ(今まで一つも、食器を割ってなかったタクミくんがとうとう割った…)

トーカ「ま、入見さんもこう言ってる事だし。これからは同罪だな。」

トーカは、笑顔で言った。

カネキ「同罪って…」

入見「そうよ、トーカちゃん。あなたとは、数と桁が全然違うのよ。」

入見は、微笑みながらも冷ややかに言った。

トーカ「入見さん!そういう事は、言わないで‼︎」

タクミ「トーカさんは、今でも記録更新中なんですか?」

トーカ「うっさい!クソタク‼︎」

「あっ、そうだ。アンタ、この後付き合いなさい。久し振りに、アタシがしごいてあげる。」

タクミ「場所は、いつもの地下ですか?」

トーカ「おう。さっさと片付けろよ。」

トーカは、足早に店の地下へと向かった。

古間「じゃあ、後の片付けはやっておくから早く行ってあげな。」

タクミ「いえいえ、そんなの悪いですし。」

入見「女の子を、待たせるのは良くないわよ。特に、気の短い子はね。」

最後にウインクをして入見は、ホールの片付けをしに行った。

カネキ「タクミくん。僕がカップを片付けておくから。後で、見学に行っても良い?」

タクミ「えっ、良いんですか?もちろん見学は良いんですけど…」

カネキ「すぐに片付けるから、先に着替えて待ってて。」

タクミ「わ、分かりました。」

そしてタクミは、更衣室に向かった。

 

5分後

 

タクミは、動きやすいジャージに着替えて小さめのクーラーボックスを持っていた。

また、カネキはあんていくの制服のままだった。

2人は、合流すると店の地下へと通じている薄暗い階段と梯子を降りて行った。

扉を開けると、目の前でトーカが仁王立ちをしていた。

タクミ「遅くなって、ゴメンね。トーカさん。」

トーカ「遅ぇよ、クソタク。ん?なんでカネキがいる訳?」

タクミ「見学したいって言ったから、来てもらったんだよ。」

トーカ「あっそ。ルールは、いつも通りどっちかが一発入れれば勝ち。赫子の使用は無し。これでいいな?」

タクミ「うん。いいよ。あっ、カネキさん。審判をやってもらっても良い?」

カネキ「うん。良いよ。」

タクミ「ありがとう、カネキさん。あっ、あと。もう少し、離れた場所で見ていた方が良いよ。」

カネキ「う、うん。分かった。」

と言って、カネキは少し離れた。

トーカ「よし。じゃあ〜、行くぞ‼︎」

 

To be continue

 




早く、物語を進めたいですが中々進みませんね。
すいません。


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第六章 ~董香と巧と研と~

今回は、誰が出て来るか…
サブタイトルの通りです。


落ち着いた雰囲気とコーヒーの味に定評のある喫茶店「あんていく」

今、その地下では店の雰囲気とは全く合わない事が起こっていた。

タタタタタタッ

トーカ「オォォラアッ‼︎」

タクミの周りを走り、死角に入ったところで跳び蹴りを入れた。

が、タクミはそれをヒョイとかわしトーカの足首を掴んで投げた。

トーカ「クソッ‼︎」

カネキ「凄い…あの、トーカちゃん相手に…」

トーカは、羽赫の喰種という事もあり、手数は多く動きはとても素早かった。

トーカ「ハァ…ハァ…クソッ…」

タクミ「そろそろ体力も残り少なくなってきたみたいだね。それじゃ、僕もそろそろ行くよ。」

今までは、防戦一方だったタクミが、いや、むしろ本気でかかってくるトーカを相手に遊んでいたタクミが動いた。

カネキ(そういえば、トーカちゃんはずっと赫眼状態だったけどタクミくんは違った。

恐らく赫子を出して、本気になったタクミくんにはトーカちゃんでもあっという間に

倒されてしまうだろうなぁ…)

カネキはその時、タクミが好戦的な喰種でなくて良かったと心底思った。

タクミは、走ったりせずまるで通学をするごく普通の学生の様に自然に歩きだした。

ヒュンッ

突風が吹いたのかと思われたその瞬間、20メートルは離れていたはずのトーカの

後ろにおり、トーカの背中にもたれかかっていた。

カネキ(速いっ‼︎)

タクミ「これからどうしようか、トーカさん。」

トーカは、思わぬ出来事が起こったせいで硬直していた。

トーカ「えっ…」

カネキは、そんなトーカを見て

「トーカちゃん‼︎動いて‼︎」

と叫んだ。

トーカ「えっ、あっ、おおう。」

トンッ トンッ パッ

なんとかタクミと距離をとり、やっと我に返ったトーカだったがまだ動揺を隠しきれていない。

タクミ「その様子だと、最近まともな食事をしてないんじゃない?」

タクミは、心配そうに尋ねた。

トーカ「別に、良いだろ。」

ヒュンッ

タクミは、またトーカの背後に回り今度はトーカの腰を両手で掴んだ。

タクミ「ダメだよ、トーカさん。」

「ただでさえ細いんだから、きちんと栄養摂らないと。」

「そうだ‼︎一回、休憩しよっか。」

カネキ(トーカちゃんなら、そのまま戦いそうだな…)

トーカ「する。」

そう言ったトーカの顔は、少し疲れていた。

カネキ(するんだ…)

タクミは、持ってきていたクーラーボックスの中から紙コップとコーヒーの入ったペットボトルを取り出した。

タクミ「ちょっと待っててね。二人共。今、コーヒー出すから。」

「あっ、あとトーカさんにこれ。」

そう言ってタクミは、茶封筒の様な包みをトーカに渡した。

カネキ(あれって…もしかして…)

トーカ「悪ぃ。ありがと。」

トーカは、タクミとカネキに背を向けて包みを開き中の肉を喰べ始めた。

ペリペリペリ カサカサカサッ

ハグッ ブチッ クチャクチャクチャクチャ…

ゴクンッ

トーカは、わずか数分で中の肉を喰べ尽くした。

その間、タクミとカネキはコーヒーを飲みながら談笑していた。

カネキ「へー。タクミくんとトーカちゃんは、昔からこうやって修行してたんだ〜。」

タクミ「はい。僕も最初は負けてたんですけど、ここ数年は勝てる様になったんですよ〜。」

その言葉に、トーカは俊敏な反応を見せた。

トーカ「わざわざそんな嘘、つかなくていい…」

「私が勝ってたのは、アンタが赫子を出す事もままならない時にあのバカと二人がかりでだし。」

タクミ「ハハハ…まぁ、そうだね。」

カネキ(あのバカ?一体、誰のこと事だろう…)

トーカ「よしっ、食事もしたし腹ごなしにもう一戦やろうぜ。」

タクミ「うん。良いよ。」

トーカ「あっ、でも。今度は赫子アリの勝負な。一発入れたら、勝ちの。」

タクミ「えっ…赫子…使うの?」

カネキ(タクミくん、何であんなに動揺してるんだろう…)

トーカ「昔からのルールで、勝った方が一つだけお願いを聞くやつな。」

タクミは、下を向いて何かブツブツと呟いている。

トーカ「よっしゃ、行くぞ!」

トーカは、瞬きをした。その瞬間、トーカの目は赫眼になっていた。

パキパキパキッ バサッ

カネキ(トーカちゃんの羽赫…ん?タクミくんは、まだ赫子を出してないな。何でだろう…)

トーカ「先手必勝だ‼︎くらえ、タクミ‼︎」

バサッ ヒュンヒュンヒュンッ

カネキ「タクミくん‼︎」

タクミは、カネキに呼ばれやっと顔を上げた。

もう、目の前にはトーカの飛ばした羽赫が迫ってきていた。

タクミ「…ッ⁉︎」

 

To be continue



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第七章 ~発覚、そして~

夏休みの間書き貯めていた分を久々に投稿します。


カネキ「タクミくん‼︎」

ヒュンヒュンヒュンッ

タクミ「…ッ⁉︎」

タクミは、避けなかった。

カンカンカンカン

カネキ(全部…受けた…)

だが、タクミの体には傷一つ無く、黒い赫子に包まれていた。

トーカ「なんだよ…それ…」

「お前の赫子は、そんなのじゃなかったはずだろ⁉︎」

トーカは、驚きを隠せなかった。

タクミは、両肩に鉤爪の様な甲赫と尾てい骨の辺りには天に向かって反った尾赫、そして腰には昆虫の足の様に動く鱗赫があった。

カネキはその時、タクミに妙な親近感を全身で感じた。

赫子の重さに耐えられないタクミは、四足歩行になり床に伏せていた。

タクミ「ふぅー。やっぱこうなっちゃったかぁ…」

と一息つき、

「あっ、そういえば一発入れられちゃったね。今回は、トーカさんの勝ちだね。」

トーカは、まだ困惑していた。

トーカ「あっ、ああ。そうだな。」

タクミ「どうする?」

トーカ「えっ?」

タクミ「約束。」

トーカ「考えとく。」

タクミ「分かった。」

シュルシュルシュル

タクミは、赫子をしまいやっと立ち上がれるようになった。

カネキ(なんだったんだろう…あの赫子…)

トーカ「じゃあ、戻るぞ。」

カツッカツッカツッ

3人は来た道を戻っていった。

そんな3人を見ていた男がいた。

「四方 蓮示」である。

四方(…あれは、間違いなく赫者の赫子…タクミのやつ、いつから…)

ーCCG 20区支部 ロビー ー

その日の午前中、とある喰種捜査官が人を探していた。

名は、「吉川 陸」(よしかわ りく)

吉川「えっと〜、どこにいるのかなぁ。」

その時、後ろから彼を呼ぶ声が聞こえた。

???「おぉ、吉川くんじゃないか」

パッと振り返るとそこには、死神の様な顔をし痩せている男と若く、背の高い男が立っていた。

吉川「真戸さん‼︎ん?それと、そちらは?」

亜門「亜門 鋼太郎一等捜査官です。吉川上等‼︎」

吉川「よろしくね。亜門くん。」

亜門「はっ‼︎よろしくお願いします‼︎」

亜門は、そう言った後に敬礼をした。

真戸「それにしても、久しぶりじゃないか。」

吉川「そうですね。最後にお会いしたのは、僕が20区に配属になる前ですからね。」

真戸「そういえば、吉川くん。君は、良いクインケを手に入れたと聞いたが本当かな?」

吉川「えぇ、同じ喰種から2つ。試作品ではありますが。」

真戸「ほう、どんな喰種だい?」

吉川「推定レートはA+。甲赫の喰種です。」

真戸「では、そのクインケを見せてくれ。」

吉川「えぇ、良いですよ。」

と言って、2つ持っていたアタッシュケースの内1つを床に置いた。

カチッ シューシュー

湯気が立ち込める中、吉川の手にはさっきまではなかったノコギリの様な物が握られていた。

吉川「このクインケは、甲赫から作られていますが割とレアな代物でして…よいしょっ。」

と言い、握っていた手の近くにあるスイッチを押した。

カチッ カタカタカタッ ペランッ ヒラヒラ

真戸「おぉ〜、素晴らしい。伸縮できるクインケは今まではなかったな。」

吉川「厳密に言うと、折りたたみ式なんです。」

「このペラペラな紙の様な物もこっちのスイッチを押せば…」

カチッ ジャキンッ

真戸「おぉ、まるでカッターナイフだな。」

「それで、名前は?」

吉川「喰種のつけていたマスクの形状から、[マウス ノコ 1/2]としました。

亜門「それなら、こちらは?」

亜門は、自分が好んでいる甲赫のクインケを見れてワクワクしている。

吉川「あぁ、こっちはね…」

カチッ シューシュー

ガシッ クルクルクル

吉川「さっきの紙の様な状態をそのまま棒に巻きつけた様な感じだよ。」

「おもちゃの、ペーパーヨーヨーを参考にしたんだ。さっきの紙が硬くなる…僕は[硬化]と呼んでいる

があれは、防御と刺す用だよ。ペラペラな時は、切断用。スイッチを押している間、硬化できるけど普

通のクインケよりも長い事持たないかな。」

真戸「いや〜、良い物を見させてもらった。」

「私と亜門くんは、これから723番について捜査があるので失礼するよ。」

吉川「そうですか。あの、喰種親子ですか…僕も、ひと段落したらそちらに回ると思いますので、その時はよ

ろしくお願いします。」

真戸「あぁ、もちろんだとも。」

「じゃあ、行こうか亜門くん。」

亜門「失礼します、吉川上等。」

吉川「はい、気をつけて行ってきてね。」

その夜、亜門は墓を掘り起こし696番「笛口 アサキ」のマスクを見つけた…

 

To be continue…

 

 

 

 




溜まっていた分を、どんどん投稿していきたいです。


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第ハ章 ~驟雨の後に~

その日の午前中は、雲一つない快晴だった。

だが、午後に入り夕方に近づくにつれ雲が空を覆い尽くしていった。

タクミは、その日一日休みを貰い、朝からずっとパソコンと向き合い格闘していた。

タクミ「え〜っと、CCGの捜査官名簿はっと…」

カタカタカタッ

パッ ガタンッ

タクミ「やっぱ、ロックかかってるかぁ〜。」

タクミは、「はぁ。」とため息をつき立ち上がった。

「一旦、休憩するか。」

そう言ってタクミは、部屋を後にした。

ーあんていく 店内ー

カネキ「それじゃあ、お疲れ様でした。店長。」

芳村「お疲れ様、カネキくん。」

「そうそう。明日からトーカちゃんが戻ってくるから、仕事は少し楽になると思うよ。」

カネキ「あっ…はい…」

カネキは、少し嫌そうに答えた。

カネキ(…またトーカちゃんに怒鳴られる日々が戻ってくるのか…)

ガチャ カランカラン ガチャ

トットットットッ

タクミ「店長〜。ヒナミ達が見当たらないんだけど、知らない?」

芳村「あぁ、笛口さん達はさっきここを出たよ。」

タクミ「えっ⁉︎本当?」

芳村「うん。ヒナミちゃんに心配をかけないために、自分達の力で生きていきたいらしいよ。」

芳村は、タクミに向かって静かに、悟すように言った。

タクミ「そうですか…」

芳村「なに、二度と会えない訳じゃないよ。落ち着いたら、また来てくれるさ。」

タクミ「そうですね。あっ、そういえば店長。」

芳村「どうしたんだい?」

タクミ「この間の20区に配属されてきた白鳩のプロフィールがもうすぐ分かりそうです。」

芳村「おぉ、そうかい。ありがとう。」

タクミ「いえいえ。」

タクミは、ふと窓の外を見て呟いた。

「雨か…」

その時、タクミは自分の体に冷たい何かが入り込んでくる様な感覚になった。

タクミ「店長‼︎嫌な予感がする。」

芳村(この子は、今まで自分が辛い目に遭ってきた分そういう事に敏感になっているのかもしれないな…)

「そうかい。タクミくん。笛口親子を追ってくれ。」

タクミ「ハイ‼︎」

芳村「私は、店を閉めてから行くよ。」

タクミ「分かりました。」

タタタタタッ ガチャッ バタンッ

パシャッ パシャッ パシャッ

タクミは、驟雨の中傘も持たずに飛び出し走った。

タクミ(間に合え‼︎間に合え‼︎間に合え‼︎)

そう心の中で叫びながらタクミは走った。

パシャッ パシャッ パシャッ

(間に合え!間に合え!間に合え!間に合ってくれ‼︎)

キュッ バシャッ

タクミは、角を曲がりきれず転んだ。

その時タクミの頭の中で、昔の記憶がフラッシュバックし、声が聞こえた。

「追え‼︎まだ、近くにガキがいるはずだ‼︎」

「お父さん‼︎お母さん‼︎」

タクミの脳裏には、両親を捜査官に殺され泣いている昔の自分が映っていた。

タクミ(クソッ!あんな思いをヒナミにまでさせる訳にはいかないんだ‼︎)

タクミは力強く立ち上がり、走った。

店が立ち並ぶ商店街をタクミは、走った。

そして、建物の間に隠れていたカネキとヒナミを見つけた。

タクミ「いたっ‼︎」

タクミは、急ブレーキをかけた。

そして、二人の目線の先には四人の捜査官と攻撃を受けボロボロになった笛口リョーコの姿があった。

タクミ(リョーコさんっ‼︎)

戦わなきゃ。タクミはそう思った。

その瞬間、タクミは芳村の言葉を思い出した。

「君の赫子は、特徴的だから捜査官に覚えられやすい。だから、捜査官と出くわした時は赫子は使わないよう

にしてほしい。みんなの安全の為だ。すまないね。」

タクミ(でも!リョーコさんを助けなきゃ‼︎店長…どうしたら良いんだよ…)

その時だった。

真戸「時間切れだッ‼︎」

パァァァァァン ブシュッ

ボタッ ボタッ

タクミ(リョーコ…さん…間に合わなかった…か。こうなったら…ヒナミだけでも…)

カネキ「あぁっ…そんな…」

タタタタタッ

タクミは、カネキのいる場所まで走った。野次馬に紛れて。

タクミ「カネキさんっ‼︎」

タクミは静かに話した。でも、言葉は強くハッキリしていた。

タクミ「早くここから逃げよう‼︎ここにいたら、みんなやられちゃう‼︎」

カネキはまだ、状況を飲み込めていない様子だった。

カネキ「えっ…あっ…うん。」

タクミは、ヒナミをおぶりカネキに後ろを警戒させた。

タクミ「こっちです!」

強い雨が降る中、傘も持たずに走った。

パシャ パシャ パシャ

パシャ パシャ パシャ

パシャ パシャ パシャ

三人がようやくたどり着いたのは[あんていく]だった。

 

To be continue

 

 



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