Fate Kaleid Divider (オスミルク)
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目覚めの森
いくつかの箇所を修正しました、もしかしたらこの先もまた修正するかもしれませんが御容赦下さい
はぁ、はぁ、はぁ、
勢い良く家から出てきてしまった。
と言うより逃げてしまった。
家や町に居るのが怖かった。
今も目の前を埋め尽くす沢山の情報が世界はこんなにも簡単なんだと、教えられて、叩きつけられた。
空気がどう出来てるかとかその一つ一つの濃さとか。
水や食べ物に付いた少しの細菌やそれの原料に動物の生きていた時の姿。
何か生き物を見ればその度にそれの骨や病気まで見えた。
気付くと今目の前に有るモノが何なのかわからなくなっていた。
そして、何より怖かったのは目の前を埋め尽くす沢山の線だった。
それと比べれば、まだ他のは我慢できたかもしれない。
家や町が線にそってバラバラに崩れていく
目の前の人が線にそってバラバラになっていく死んでしまう。
兄もセラやリズ、切嗣さんやアイリさん、そしてイリヤも自分自身もみんなころしてしまう。
そんな感覚を気づくと見てる。
だから、怖くなって逃げ出した。
だから一人で森に居る事にした。
ここなら落ちそうになっても木に捕まれば何とかなりそうだ。
電柱よりは頼りになるし、何より気分が楽だった。
ココには壊れてしまっても心配ないモノしかない。
「ははっ」
地面に寝転がりながらヒビだらけ宙をみてふと笑った。
「オレって生きてるのかな...」
自分が生きてるか、わからなくなったのでその辺に合った木の枝で手首を刺してみると血が出てきた。
痛みは生きてる証だなんて言うくらいだし刺してみれば分かるだろう。
ザクリと鈍く小さい音が鳴る。
「あ~、痛いし生きてるな~、オレ」
ズキズキと痛みが続く、変な物で刺したせいだろう、血が止まらない。
「あ~、痛いな~、何やってんだろうなオレ」
自分のしてしまった事を少し後悔して、適当に血を止める。
少し疲れてきたし眠ろう...。
そして、少し夢を見た。
痛いのは嫌だ
苦しいのは嫌だ
死ぬのは嫌だ
そんな当たり前の事を声を枯らして叫ぶ沢山の人の悲しい記憶だ。
まるで沢山の人の記憶を混ぜ合わせた様で何がなんだか分からなかった。
ただ自分達が何処に居るか分からなくなって山から降りれなくなって...、
少しでも多くの食料を持たせるために人が人を殺し始めた。
助けて と許しを求める人
死にたくない と人を殺す人
何もせず全てを諦める人
色々な気持ちが混ざりあった怖い夢を見た。
何処かに沈んでいく。
それはまるで沼の様で、はまれば抜け出せない底なし沼。
溺れているのか息苦しい。
そんな、なか何故かふと例え話を思い出した
沼男
とある男がハイキングに出かけて、その男は不運にも沼のそばで、突然 雷に打たれ沼に落ちて死んでしまう。
その時、もうひとつ別の雷が、すぐそばの沼へと落ちた。なんという偶然か、この落雷は沼の汚泥と化学反応を引き起こし、死んだ男と全く同一、同質形状の生成物を生み出してしまう。
そして、新しく生まれた男は、死んでしまった男と同じ生活をするのだと言う。
しかし、自分は思うのだ、本当に偶然なのかと。
確かにハイキングに出掛けた男が死んだのは偶然かもしれないけれど、沼から生まれた奴は本当に偶然なのだろうか?。
もしも、沼に意識があったなら、きっとこう思う筈だ。
こんな所に居続けるなんて嫌だ。
何も変わらずただソコに有り続け朝も夜も過ぎて何時消えられるかも分からず居続けるなんて嫌だと。
人が生まれて来るのだから沼に意識が有っても不思議じゃないと思うのだ。
息が更に苦しくなって来た。
あまりの息苦しさにオレは目を覚ました。
「クルシイならヨコワタセセツラいなワたシレワォレニそのカラダをアケワタセヨコセクレレククレレラろ」
渇れ果てた土気色の肌色、何処から生えているのか分からない沢山の人の手顔と思える場所には顔のパーツを幾つか足してぐちゃぐちゃにかき混ぜられて何処が何処かも解らなくなっていた。
そんな怪物がオレの首を絞めていた。
「な...ん...!??」
とっさに木の枝で怪物を刺すが空を切った。
怪物が避けたのではなくまるでそこに何も無いかのようにすり抜けた。
「ハァ...ァ!?」
一瞬意味が分からなかったがすぐに線に沿って木の枝を走らせて何とか腕を切り落とせた。
「ギやャァハアアイアアアアア!!!!」
不気味に怪物が叫び声を上げる。
「イタイいアアイイイタイタイイイタい....!!!」
怪物は腕を一つ失いのたうち回る、急いでソコから離れる。
木々のお陰で直ぐに怪物は見えなくなる。
しかし、砂利や木葉のせいで音は殺してる筈なのに嫌に聞こえる音が騒がしく聞こえる。
「meツけタテテタタタタ!!!」
直ぐに見付かり足を捕まれ転倒する。
凄い力だ。
「クッソ!!」
先程と同じく足を掴んでいる手を切って逃げる。
しかし、逃げても直ぐに追い付かれるのはわかった。
隠れられそうな場所はない。
なので仕方がないので山道から飛び降りて怪物から逃げる。
バキバキ ガサガサ
とても大きな音を鳴らしてしまう、コレでは直ぐに見つかってしまう。
直ぐに隠れる場所を探さ無くちゃいけないが土の上は見付かる可能がとても高そうなので木によじ登り枝や葉っぱに体を隠す。
そして、そこで自分の逃げ道を失った事に気付いた。
「ドコダドコダドコダドコニニゲネテタタァアアア唖唖唖唖唖???!!、」
怪物が追ってきた
どうやって逃げよう
いや、逃げられない、
オレを食べるまでアイツは絶対に諦めない。
いくら考えても自分が死ぬ事を理解していくだけだ。
全て諦め死んでしまおうか。
どうせ生きて帰っても目に写る情報に飲み込まれて、また死にたくなるだけだ。
ならばいっそこの身を投げ出してしまおうか?。
そう思った瞬間声が響いた。
情けない、それでもオマエは 衛宮 士貴 なのか?
...誰だろう?
疑問が湧いたがソレを無視され更に声が響いた。
目を反らすな。
オマエはコレの使い方を知っている。
オマエはこの目の見方を知っている。
大丈夫だ恐れる事はない。
全ては最初からそこにあって知らないふりをしていただけだ。
何時かは目を合わせなくちゃいけないモノだ。
それが早まってしまっただけだ。
大丈夫、■■■■なら出来る。
何て言ったんだ?
「ドコダドコダドコダどこだドコニイッッタアァァアアアア!!!」
何を言っているかは何と無く分かっていた、しかしそれより先に自分を探して徘徊する脅威がある。
アレは不気味で恐ろしい。
今更あんなヤツに遅れをとるオマエではないだろう?
武器はどうする銃や刃物何て持ってない。
あんなヤツに対する武器なんてその辺の木の枝で十分だ。
…どうすれば良い?
意識を研ぎ澄ませろ。
眼に写すのは必要な情報だけに絞れ、それはオマエの起源に少し逆らうがその分絞ったモノへ見聞を深めておけば問題は無い。
目の視点と焦点を切り替える為に体の中にある神経を繋がろ
そうすれば答えは出てくる。
目を閉じ
言われるがままに自分の目の神経と神経に似た何かを繋げる。
バチリと電気でも流された様な痛みが全身に走り、眼球が弾ける様な錯覚をする。
よし、
...目を開く。
必要な情報...、つまりは奴の死だ。
ぼやけた視界の焦点を合わせる様にソレだけを視る。
するとはっきりと怪物にデカデカと死が目に写る。
なるほど確かにあんなにデカイ死はやはり木の枝で十分だ、
理解してバキリと木の枝をへし折り 適当に構える。
よし、準備は整った、後はアイツを殺するだけだ。
「キコエタミツケタミツケタミツケタミツケタケタケタワタセワタセワタセWATASEYOkOsEWATASEEEEEE!!!!」
そして異常に良すぎる聴覚で木を折った音を聞きつけたのだろう、こちらを発見し木をよじ登って来る。
不気味だ。
気持ち悪い。
恐ろしい。
しかし、だから何だ。
あれより恐いものを知っている。
あれより不気味なものを知っている。
あれより強いものを知っている。
「目に写るコレとアイツに比べればオマエなんて怖くもない」
木から飛び降り怪物に向かって落下する、建物の三~四階は有るが不思議と怖くはない。
「ゴ!ギャ??!!?」
怪物に受け止められる、現状を理解する力ぐらいは有るのだろう。
折角オレから怪物に飛び込んであげたのに歓喜ではなく恐怖したような声をあげる。
「...さっさと消えろ」
そしてそのまま怪物をクッションにしながら木の枝で線を切った。
「ウ...ガ...ガ...死...ヌ...n..?o?」
元々存在が希薄だったせいもあってアッサリと怪物は死に灰になり風に飛ばされて消えた。
怪物の正体はよくある死者の怨念だったと理解できる、それがきちんと埋葬されず適当に埋まった骨等にオレの血が反応してオレの体を狙った。
魔力の濃いこの街だからこそ起きた奇跡なのだろう。
特に何の感情もなく怪異の正体を理解する。
帰ろう、ここに居ても仕方がない。
きっととても怒られるだろうけどそれは仕方がない事だ。
そんな事を考えながらその場を後のしてふと思った。
「って、あれ? オレ 人を線を通して殺したこと無いよな?」
最近この眼が開いた筈なのに妙な既視感を覚えていた。
「どうなってんだ....」
そう疑問を覚えたが答えは返ってこなかった。
その答えもいつか分かるだろう、衛宮 士貴として生きている限り、しかしそれはまだ少し先の話だ。
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ナイトメア第1話
もしこのサイト内の物で既視感を覚えたなら多分それです
人が死ぬのはいつだろう
何と無く、そんな意味のない事を考えた
刃物で体をさされて、血をたくさんながした時だろうか
それとも首をしめられて、息が出来なくなった時だろうか
はたまたとても強い電流を体に流されて感電した時だろうか
それともとても寒い所にひとり置き去りにされた時だろうか
答えはどれも正解だった、そしてそのどれもがきっといたくて、とても苦しそうだった。
しかし、それでも死んだらその痛みは感じなくるんじゃ無いだろうか?
死ねば痛みも感じないだろうし、
ぜったいのこどくとそこから来る安心、それはとてもすばらしい事なんじゃないか.....
死ねば苦しくないんじゃないだろうか....
そんな無意味な事を考えた、そうすれば少しは今の状態が楽になる気がしたから、だけど体の痛みが強くなったように感じた。
体の皮がナイフによってベリベリと剥がされていく、
その異常なまでの痛さで頭がおかしくなりそうになる。
だけどそれ以上の痛さのせいかわからないけどそれを理解できる正気に戻される...。
そしてソレにも耐えられなくなって、意識を飛ばしては痛さでまた無理矢理 意識を戻す、そんな事を何回も何回も何回も繰り返す。
いたい
そう絶叫とも悲鳴ともわからないような声で叫んだ。
痛い、痛い、怖い、恐い、嫌だ、イヤだ!!!。
痛みから少しでも逃げるために、削がれていく体から目を反らして別の場所に目を逃がす。
しかし反らした先には他のヒトたちの...、"死体だった"モノを置かれた場所だった...。
そして初めてソレらを凝視し、何かを諦め
そう、理解したのだ。
あぁ、そうか■■もあんなモノになるのか...、
そして死にながらにも体はいじくり回されてあんな玩具にされるんだ......
そして■■は人ととしての形すらも無くすんだ....。
壊れていく、削がれていく、殺れていく。
アレが自分の結末だと。
ハハハハはは...
何故かそれが可笑しくて。
バカバカしくて。
どうしようもなく...
「■■■■」
「ランプシェードってこんな感じでいいのかな?」
そんな事を殺人鬼が言った気がする。
ああぁぁ!!、嫌だイヤだ!!、死にたくない!!、シニタクナイ!!、誰か!、誰か!!、助けて!!、お願い.....!!、お父さん...!!、お母さん....!!!。
誰か誰か誰か誰か誰か誰か誰か誰か誰か誰か誰か誰か誰か誰か誰か誰か誰か誰か誰か誰か誰かダレカダレカダレカダレカダレカダレカダレカダレカダレカダレカダレカダレカダレカダレカダレカダレカダレカダレカダレカダレカダレカダレカダレカダレカ!!!!!!
その空間のヒト達が同じ願望をもって何かに願っていた。
──誰か助けてくれ──
しかしそんな願いが通じる程世界は優しくなど 無かった。
そしてまたわかった、■■の身は■■で守らなくてはいけない。
■■は■■の為にあれを■■■なくちゃいけない。
息が止まっていく
鼓動が小さくなる
視界が掠れていく
死んでなって行く体、消えて行く意識の中、■■は他のひと達と違う"ナニ"かを願った。
「■■■■■■■■■■■■!!」
瞬間、■■の世界はバラバラに弾け飛び、■■は意識を手放した....、
ああ、もしも これがただの悪い夢だったら良かったのにな。
そんな事を誰もが思った。
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ナイトメア第2話
「….」
パチパチと瞬きをして視界を確認する。
何時もの天井だ。
ほんの少しの間そうしてた呆然としていたが、現状を理解し一言だけ呟く。
「夢か...」
ガンガンと酷い頭痛が頭に響く。
そして、何故か猛烈に体が怠くなっている事にも気付いた。
風邪でも引いたのだろうか? とも思ったが熱も吐き気も特に無いしそのうち治るだろう。
とそう思い、学校へ行く準備のためにベットから降りようと、はしごに手を伸ばそうとして不意に壁掛けの時計を見た。
7時50分
「はい.........?」
目を擦りもう一度時計を確認する。
7時51分
1分進んだようだ。
そしてわりと絶望的時間だ。
頭痛もだるさも吹き飛ぶくらいには衝撃的だった。
瞬時にマットレスに着地し急いで寝巻きを脱ぎ制服に着替える。
部屋を出て階段を跳ぶ様に下り、洗面所の洗濯カゴに寝巻きを突っ込み顔を洗って歯を磨き玄関へ直行する。
「あれ?士貴どうしたの?」
しかし、住み込みで働いてるらしい家政婦のリズがリビングから顔を覗かせてくる。
「え? リズねぇちゃん!? 今まじで遅刻しそうだから朝ご飯いらないごめん!!」
リズには申し訳ないが時間も無いので話も聞かず靴を履き玄関を出る。
「あー、いってらっしゃ~い」
「行ってきまーす!!」
やる気の無いリズねぇちゃんの見送る声に返事してそのまま全速力で学校に向かった...。
とは言っても家から走れば一分もかからずに学校に付けるのであった。
セーフ!!
心の中で叫びながらギリギリよりも少し余裕を持って自分の教室へ入る事が出来た。
そして妙に人が少ない事に気づく。
「おはよー...って、あれ?」
挨拶しながら席に座ると机に突っ伏していた友人がこちらに振り返った。
「珍しいな、士貴がオレより後に来るなんて...、明日は雨か?」
オレの前の席に座ってる友人が空の方を見ながら気だるそうに言った。
確かにこの友人より後に来るのは珍しい方だと思うがそこまで言うのは言い過ぎなような気がする。
「まぁ、ちょっと寝坊してな...」
「ふーん、にしても聞いてくれよ士貴今日ちょういやな夢見たんだよ...。
何か変な爺さんの所で怪しげな実験みたいなのをしてたら何か渦みたいなのが出て来て、それに吸い込まれて全身がネジ切れる夢を見たんだ、おれはもうダメだ...」
そう言いながら友人が更に項垂れる。
「いや なんだよいきなり、意味不明過ぎてついていけねぇよ...。
何で来てそうそう そんな変な夢の話を聞かなくちゃいけないんだよ、気色悪い...」
「え? いや 人に嫌な夢の話を言うと、そうはならないって言うよな?本だったかテレビだったかで見たんだけど...」
「そんな、話聞いた事無いんだが...、まぁ一応聞いてやるよ...」
そう、友人の夢の話を区切りの良い所まで聞いたのでこちらも気になっていた事を聞く。
「 なぁクラスの人数少なくないか? 今日全校朝会とかだったか?」
一応のため今日の予定を思い出すがそんな予定は無かった筈だ。
「そういえばそうだな、クラスの半分位じゃ
ねえか? この人数」
友人は今気付いたらしくクラスを見回す。
正確には十五人しか居ない、一クラス三十人程度なので本当に半分も休んでいる。
季節外れのインフルエンザにしてもいきなりこの数の人数が休むのは不自然だろう。
ソレに昨日五月に入って明日からまた連休が再開するGWの中間辺りだ。だが昨日はだいたいの人数が来ていた。
「だよな、GW中とは言え流石に少ないよな...」
そう話した所でガラリとドアを開けて先生が入って来たので話を切り上げた。
「えー、おはようございます、みんな気付いてると思うけど風邪が流行って他の子達が休んでいます、みんなも手洗いうがいを━━━」
と先生が教壇に達話始めるが本当に風邪かどうか気になるな なんて妙な勘繰りを覚えてしまう。
この街では何時も珍妙な事件が多発するせいだ。
と一人変に考え事をしているオレに向かって先生が言った。
「衛宮君も具合が悪くなったら直ぐに言うんだよ?」
「えっと、何です?」
「さっき親御さんから連絡が来てね、もし体調が悪そうになったら迎えに行くって、イリヤちゃんも休んでいるし本当に体調が優れなかったらちゃんと言うんだよ?」
「あぁ、はい」
と曖昧に返事しながら内心少し驚いていた。
けれど同時に何で今日の朝と言うかさっき、あんな時間になっても誰にも何も言われなかったのか解った。
体調を悪くしてると思われてたのだ。
にしてもイリヤも風邪か、特に何もなければ良いけど。
まぁ、セラさんも居るし問題は無いだろう...。
そんなに事を思いながら、朝の会も終わり授業が始まる。
しかし、と言うか当然の事だが、休んでる子が多かったので殆どの時間が自習だった。
他に特別何かあった訳では無いが取り敢えず給食の余りが多く全て食べ切るのに苦労したとだけ言っておこう。
これなら自分も休んで置けば良かったと少し思う。
そして、お残しは許しません。
「なぁ士貴!!外でドッチボールしねぇか今日は1~3年生も5~6年も居ないから結構なスペース使って遊べると思うんだけど!!」
と昼休みのチャイムが鳴ったと同時にビニールボール片手に友人が元気にはしゃぎながら満腹で突っ伏したオレに向かって言って来た。
「お前良くそんなめっちゃ動く遊びする気になるな...、腹めっちゃ痛くなるぞ、という事で断る」
「え~グランド全部使って二人で遊べるのはたぶん休みが多い今日位だぞ?」
「おいまて、結構のスペースからグランド全部に変わったのはまだ良いが...、そんなに休みが多いのか?」
「ん? さっきボール借りてくる時に他の教室もチラッと見て来てグランドも見たけど全然居なかったぞ」
それは真面目に洒落にならない、グラウンドはいつもサッカーや鬼ごっこをする子達で満員も同然だそれがほとんど居ないのは流石におかしい。
「なぁ、その教室にはそのクラスの奴は皆 居たんだよな?頼むからそう言ってくれ。」
「え?、あ、うん、そう、ソノクラスノコタチハミンナイタヨ」
と目を反らし挙動不審な振りをする。
意図的に嘘を吐いている振りをしているのだろう。
「...オレが悪かった普通に事実を言ってくれ...」
「いや、ホントにそのクラスの子達はオレたちのクラスみたいな感じだったけど居たよ外に行ってる子は居なかったけど」
数秒前とは打って変わってごく普通の様子で言う。
何時もの事だが友人は少しでもふざけられそうなタイミングを見つけると直ぐにふざけ始めるのでめんどくさい時がある。
「そうか、良かった、でもその話聞くかぎりGW中の旅行って線は低そうだよな、毎年そんな休む子少ないし」
「だからチャンスだと思うんだ」
「またその話かやだよ食いまくった後にお前とドッチボールとか冗談じゃねえ」
ここぞとばかりに喰い気味に迫って来る友人の提案を拒絶する。
食事直後で友人の相手など絶対にしたくない。
「ちぇー、まだ冬じゃないからトランプとか持って来てないから遊べる事無いんだよなぁ」
「冬じゃないからってよりまだ五月始まったばっかりだと言うか四年生になったばっかりだよ」
「あれ?まだそんなだっけ?」
「そうだよ、さっきから言ってるけど一応GW中だ」
「そう言えば父さんも家にいたなあ」
そう言えば とは悲しい言い方である、彼の家庭では父親の存在感は低いモノなのだろうか。
「まぁいいや、何かして遊ぼうぜ まだ5時間目まで時間あるし」
「...いや、その前にボール返してこいよ...」
「あ、忘れてた」
と友人が教務室か体育館かは知らないがボールを返しに行き少しして、唐突に放送が鳴った。
[児童のお呼びだしをします四年二組 衛宮 士貴 君 至急 折手死亜先生の所に来て下さい 繰り返します──────]
保険医の折手死亜先生本人の声でそう放送された。
「うわぁ、めんどくさい予感しかしねぇ...」
正直に言って物凄く行きたくない。と言うか何処に居るかが言われていない。
教室で寝ていてこの放送を聞かなかった事にしたら駄目だろうか?。
そう、放送を聞かなかった事にしようと思った矢先に更に放送が鳴る。
[なお、放送から三分を越えてあなたが折手死亜先生の所に現れなかった場合あなたのあったりなかったりする大切な秘密がうっかり放送に流れたり流れなかったりする可能性がありますのでお気をつけ下さいませ]
「さて行くか」
折手死亜先生の元へ向かう事にして、教室を出る。
あの人なら本当にやる時はやる。
居場所など最初から決まっているので考えるまでも無いのだ。
保険医なのだからだがら保健室に居るだろう。
そこに、居なければお手上げだ。
秘密の漏洩は諦めるしかない。
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ナイトメア第3話
保健室の前まで着いた、一応三分以内にこれたのでオレのあったり無かったりする秘密の漏洩は防げるだろう。
「しつれします、呼び出しを受けた衛宮士貴です」
「あら、衛宮君来てくれて嬉しいわ、とりあえずそこの椅子に座りなさい、仕事の話をするわ」
当然の様にソコに居た折手死亜先生がテーブルを挟んだこちら側の椅子を指差す。
「で、何ですか? 折手死亜先生、あんな放送まで使って、定期報告の日はまだですよね?」
折手死亜 可憐 またの名、と言うより本名を カレン オルテンシア 聖堂教会と呼ばれる組織のシスターであり、言峰教会の司祭代理らしいが、今は趣味でここの小学校の保険医を兼任しているらしい。
詳しい事は知らないので説明は出来ないが、とりあえず本業は一種の 退魔師 の様な者だと認識している。
ちなみにオレがこんな所に呼び出しを受けたのはオレにも 退魔師 の代わりになる能力を持っているのを知られているからだ。
ちなみにオレの秘密とは一応この事だ。
「分かってはいると思いますが、町に夢魔が潜伏しています、今日の異常な欠席の数はソレの過剰量の魔力収集によるモノです」
単刀直入に今日の悪夢の真相が語られる。
予想はしていたが、これから調べようと思っていたため、少し複雑な気持ちになる。
「ああ、そうですか、にしては折手死亜先生は元気そうですね、被虐霊媒体質はどうしたんですか? 夢魔もソレに反応する 悪魔 ですよね?」
被虐霊媒体質、それが彼女の 退魔師 としての能力であり呪いだ。
所謂 悪魔 と呼ばれる存在を自分の傷で感知し捜索するモノだそうだ。
傷で感知 と言われると傷が疼く みたいなイメージを持つかもしれないが違う。
オレは見た事はないので詳しい事は知らないがざっと言うと 悪魔 を感知すると彼女の体に傷を受けるらしいのだ。
だが現在町に 悪魔 と呼ばれる存在が居る筈なのに彼女に新たな外傷が増えた様子はなかった。
「あれはあくまでも他人に憑依したモノに過度に反応するモノです、今回のモノは土地に憑いているうえ直接に遭遇した訳ではありませんのでそこまで実害はありません、ですので心配は無用です」
「悪魔だけに? …、ああ、はい了解しました、じゃあその夢魔の潜伏先はどうなんですか?」
「はい、夢魔の潜伏先は既に調べが付いています」
と町の地図を取り出し赤い丸を記す。
相変わらず手が早い事に感心しながら地図を見て、
軽く後悔した。
「ココの地下の様です」
「はぁ、そうですか...」
地図を見れば分かるがこの場所なら隠れられる場所は地下しかないだろう。
「当然ですが、相手は夢魔ですので直接言った所で本来なら意味はありません。
まずは眠ってから、夢魔の動きを封じ その後本体を叩くと良いでしょう」
「...オレにそう言うの意味無いって知ってますよね?」
「確かにソレもそうですが、こちらの方が幾分か楽だと思いますので、私からはこちらをオススメします」
「アー、了解しました」
大きくため息をして席を立つ、これ以上話す気が無くなったのでさっさと自分のクラスに帰ろう。
やはり来ない方が正解だったと後悔する。
無駄に嫌な気分をしただけだった。
もう少し時間をかければ自分で調べてれば、自分で気付けなったと嫌な感情は湧かなかった。
「あぁ、あと忘れていましたが報告は教会の方へ来てください。明日からまた楽しい連休ですので...」
そう、微笑みながらオレを見送った。
「まったく、相変わらずあなたはサディストですね...」
そう言ってオレは入ってきた時より嫌そうな態度を取りながら保健室を出た。
そしてクラスに戻った数分後、オレを探し回っていた友人があや取りを持って来たがそこで丁度5時間目の授業のチャイムが鳴ってしまった。
そしてあや取りを出来なかったと直ぐ目の前の席で肩を落としているのを見て軽く同情したが直ぐ元気を取り戻すだろう
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ナイトメア4話
五時間目の授業も終わり、後は帰るだけだ。
遊びたがっていたが実は掃除当番だった友人を置いて教室を出る。
いつもならイリヤと帰る所だが今日はいないので一人で下校する。
「...あれ?」
と、そう思っていたが、オレは教務室前の廊下で足を止めた。
「失礼いたました」
そう礼儀正しくお辞儀をして、とても目を引く外見の女性が教務室から出て来る。
年齢は20代前半から中盤程で身長は163㎝程度
体格はスラリとした華奢な体型。どこかのモデルかと思う程とても整った顔立ちに銀色の髪と赤色の瞳のよく見知った女性が出てくる。
「え? どうしたのセラさんこんなところで...」
いつものこの時間なら洗濯物等を弄ったり夕飯の準備をしている時間だが何かの書類でもあったのだろうか?。
声をかけるとセラさんもこちらに気付く。
「ああ、士貴君ちょうどよかったです、今ちょうど迎えに行く所だったんです」
「え? 何で?」
思わず首をひねって聞き返す。
そんな オレの様子にセラさんは少し呆れたように
ため息をして言った。
「士貴君が朝にとても体調が悪そうだったので迎えに来たんです。 ですけど結構元気そうでよかったです」
オレの様子を見てセラさんが嬉しそうに頷く。
そこでようやくオレは朝に先生に家から電話があったと言われた事を思い出した。
よくよく考えて見たらセラさんには黙って来たのだ、もしかしたら心配をかけたのかもしれない、そう思うと少し申し訳なくなる。
「あー...、ごめん セラさん...」
普段から只でさえ心配をかけているのに朝の事でまた心配をかけたのならわりと色々ヤバイ気がする。
「...あの、士貴君 いつも言っていますが、私は家政婦 ですが結構な時間一緒に住んでいるんですからさん付けはいかがなものでしょうか?」
オレの心配をよそにセラさんが別の方への不満があるようだ。
「んー、何かセラさんって セラさん って感じでそっちの方が楽なんだ、だからちょっと さんはちょっと取れないな...」
「...そうですか...、その話はまた後日にして取り敢えず帰りましょうか...」
そう言ってセラさんがガックリと落ち込む。
少し申し訳無いと思うが直すつもりはない。
その後、セラさんが先生達に挨拶をしてから一緒に帰る、その途中思い出した様にセラさんが言った。
「そう言えば士貴君はどうやって家から出たんですか? 私が目を話したのは ほんの数分ですよ?」
「急いでたら音が消えてました。」
「はい? なにを言ってるんですか? 士貴君...」
説明をするのが面倒だったのでこうやって、と実践して見る。
朝とは勝手が違うけれどスニーカーでも足音は確かに消せている。
しかも普通に走るより早いため普段からよく使っている。
振り向くと数十歩後ろから、頭を抑えたセラさんが今日二度目の大きなため息を吐いた。
ため息をすると幸せが逃げていく とか言いたいが今は止めておこう。
「あなたはアサシンか何かですか?」
そうこうしているうちに家に着く、今日は色々あったなぁと思いながら、玄関を開ける。
「ただい...まー...?」
開けたと同時に今日何度目かの思考停止、玄関を開けた直後に待ち構えてた様に義姉のイリヤがオレに寄りかかって来た...。
「大丈夫! 士貴! ちゃんと生きてる!?怪我してない!?」
とても慌てた様子でしゃべるイリヤに
「え?どういう事?」
ただそう言うしかなかった。
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ナイトメア第5話
時間は遡り
早朝 午前7時頃 士貴が起きる少し前
セラが朝食を作り終えて学校に行く三人を待っていた。
「三人とも遅いですね、珍しい...」
三人と言ったがイリヤが寝坊して遅れてくることは別に珍しくない。
だが士郎と士貴が起きてこないのは珍しいのを超えて軽く異常だった、いつものこの時間なら二人とも起きてセラを差し置いて朝食の準備を手伝い始めていたか、それを怒られてテレビのニュースでもいていただろう。
一応年頃の男の子達の部屋なので少し遠慮したが、さすがに遅すぎる。
様子を見に行こうと思った矢先に制服に着替え、いかにも体調が悪そうな顔をした士郎がふらつきながら降りて来た。
「ああ、おはよう..、.セラ...」
「ど、どうしたんですかシロウ! 物凄く体調が優れないように見えますが...!? 取り敢えず学校に休む連絡でもしますか?」
慌てて士郎に駆け寄る、そして士郎の魔力が命に関わる程に減っているのに気づいた。
魔力とは命であり生命力だ、それが低くなれば体力や免疫力等が低下してしまう、今の士郎を例えに出せば、少しの風邪でも引けば ほぼ百%死ぬレベルの免疫力まで減っていた。
「いや、大丈夫 あんまり眠れなかったのと、妙に貧血気味なだけだから...」
しかし、そんな事を露とも知らない士郎は只の貧血だと思っているらしい。
もはや心配を越えて軽く怒りすら感じる。
いくら魔力...と言うより自分の状態を知らないとはいえ、相当辛い筈だ。
なのに変に無理をしようとするのは士郎の昔からの悪い癖だ。
取り敢えず学校に行こうとする士郎を説得(説教)して士郎と同じく体調が悪いらしい士貴を見に行く。
「士貴くん 大丈夫ですか? 入りますよ?」
一応、なるべく静かに声をかけるが返事はない。士郎の言うとおり うなされて寝ている様だ。
そして士郎と同じくナニカに奪われた後の様だ。
自分の不甲斐なさとナニカに対して純粋な怒りが沸いてくるが今は抑える。
熱を計るように士貴の額に触れ魔力を流して渡すと顔色も良くなり静かに寝息をたて始めた。
士貴を起こすのも気が引けたので眠らせたままにする、起きた時 混乱しない様に一応紙に今日は学校に行かなくてもいいと書いておいて部屋を出る。
「こうなるとイリヤさんも同じ様な状況でしょうか...」
士貴と同じような声をかけてから部屋に入るが、やはりまだうなされながら眠っている。
また士貴と同じように額に手を置くとイリヤがパチリと目を開いた。
「あっ、起こしてしまいましたか? イリヤさん...」
「えっと …あれ? ......!?」
イリヤはひどく動転しているように辺りを見回して泣きそうになりながらセラに振り替える。
「ねぇセラ 士貴は!?士貴は大丈夫なの!?」
とイリヤは懇願するかの様にセラにしがみつく。
「お、落ち着いてくださいイリヤさん、何にがあったんですか? 」
取り敢えず落ち着かせるためにしばらく深呼吸をさせ、夢と現実を区別させるためにどうしたのか聞く。
「えっと、ちょっと夢...なのかな..、.それでこのないだの事故の事を見て、ちょっと混乱した...。」
落ち着きを取り戻したのか、先程までの様子の原因を少し恥ずかしそうに語る。
確かに士貴の事故はイリヤ達にとっても十分すぎるトラウマとなっている。
取り乱すのも仕方がないだろう。
「大丈夫ですよイリヤさん 士貴くはちゃんと元気です」
少し嘘をつく、今の士貴の状況を伝えようものなら最悪の場合発狂しかねない。
「...ご飯 食べれますか?」
元気はなさげだが 食べる と頷いてベッドから下りて士郎とは違いしっかりと立つ。
それは意外な事ではなくイリヤと士郎の魔力量では奪われたパーセンテージが同じでも残された魔力の規模が違う。
「セラー 居るー?」
ノックもなしに入ってきたのはリズだった。
先程までの騒動の外でぐーたら寝ていたのかと思うと怒りが込み上げてくる。
「リズ!!」
怒りに任せて叱責しようとしたセラだがリズの言葉に言葉を失った。
「なんか、体調悪そうって 言われてた士貴 学校に行っちゃったけど、今から止めに行く?」
こてっと首を傾げるリズに先程までの怒りが消え失せた。
別に首を傾げたのに癒されたとかそんなのでは断じてない、ただセラの頭にあったのは あの体でどうやって学校に行ったのか それだけである。
しかし、それも吹き飛ぶ。
「えっ、士貴体調 悪いの? あの日も...っ!!」
一瞬イリヤの残り少ない魔力が暴れかけたが直ぐにセラがイリヤの意識を奪う。
説得する時間はなかった。
仕方無い事とはいえ主に手をあげてしまった事に心が痛む、あのまま行けば鍵を壊していただろう。
「リーゼリット...今回の元凶は?」
憔悴したセラがリズに聞く、もしわからないとでも答えようものなら自分共々家から追い出すことも視野にいれる。
非情かもしれないが、たびたび起こしている失態を考えればもはや自分達はこの家に居ない方がいいまである。
そして彼女はこういう時のために居るのだわからないとは言わせない。
「幻想種の夢魔 多分そこそこの霊脈を根城にしてる」
「分かりました、では今日中に排除なさい」
「分かってる 絶対に許さない」
こんなに間を開けてしまった事及び、この記述を掲載するのを遅れてしまい。
大変申し訳ありませんでした、次からはなるべく更新がとどこらない様に致します。
一応理由と言う理由がちょっとこの話が軽い気持ちで書いていたんですが、色々拗れかけてしまいどうしたものかわからなくなってしまっていたためです、本当に申し訳ありません。
しかし、誠に勝手ながら軽い気持ちで書いてるため。
よく考えればこれヤバくね?となり再び更新が開いてしまう可能性がありますが、もしよろしければこの小説をよろしくお願いします。
後 明けましておめでとうございます
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ナイトメア第6話
「へー、そんな事が有ったのかー」
ポリポリと3時のおやつを食べながら今の原因を聞く。
ようは夢魔がイリヤにオレが事故に遭った時の夢を見せてトラウマが想起したんだろう。
まったく、嘗められたものである、セカンドオーナーの不在がここまで深刻な事になるとは...。一応 可憐先生からマキリと言う人が代わりに管理していると聞いたが、たかが夢魔の被害がこんなにも深刻になるとは思わなかったのだろう。
「だ、大丈夫か? 士貴 目がすわってるけど...」
色々考えていたら隣にいた兄ちゃんが、顔をひきつらせながら聞いてくる、気づかぬうちに恐い顔をしていたようだ。
取り敢えず大丈夫だと言っておこう。
「にしてもほんっっとに申し訳無いです。
そんなことになってるとは知らずに呑気にしててごめんなさい」
「いっ、いえ別に学校に行っちゃったのは別に良いんですよ? ただタイミングが悪かっただけなんですか...」
そうセラさんは言ってくれるが只でさえバレれば心配どころの騒ぎではない事をしているためこういう時にまで心配をかけたくはない。
今日この後 夢魔 退治をしに行くなどと バレようものならセラさんが発狂しかねない。
決してバレないように しよう...。
だが取り敢えずそれより先に。
「あのさイリヤ いい加減離れてくれないか?」
左腕にしがみついたこの姉をどうにか せねばなるまい。
「…やだ」
一言でバッサリと断られる。
セラさんに助けを求める意味で目線を向けるが優しそうな目で返されるだけだった。
次にリズ姉ちゃんに目線を向けるが我関せずとポリポリと3時のおやつを食べているだけだった。
ついでに兄ちゃんに目線を向けるが目をそらされた。
どうやら 助けは無いらしい...。
まぁ、しばらくしたらイリヤも勘弁してくれるだろう。
その後風呂まで勘弁してくれなかった。
そして夢の時間が始まる。
時間が進み、夜9時 健康的な小学生ならば既に寝る準備を済ませ布団に入っていてもおかしくない時間だろう。
オレも例外ではなく既に布団に入っていた。
セラさん達が何か言いたげだったが特に気にせず寝始める
微睡みに身を任せ、現実と夢が入れ替わる。
意識は有るのに脳は働かず、目の前の異常を現実として受け入れる。
そうだ、自分はいつもの道で家に帰っている。
途中 転んだのか座り込んで泣いている女の子が居たので声をかけた。
だいじょうぶ?
すると女の子は赤く泣き張らした目をこちらに向けて、コクリと頷いた。
しかし、膝や手の平から沢山血を流していたので近くの公園に行って少女をベンチに座らせて近くの水道でハンカチやティッシュを濡らして顔などにも着いた血を拭き取ってあげる。
すると女の子はとても驚いた様な顔をして少女は逃げる様にその場を去って行った。
それを心配しながら見送る。
まぁ気にしても特に意味はないか...
そう思った。
自分も公園から出て帰路に付く。
そして少女との再会はその直後だった。
交差点、赤く光った信号と立ち止まっている少女と駆け出す自分...。
先程出会った少女を突き飛ばして少女の代わりに眼前から来る車に跳ねられた。
痛いなぁ...
年相応に軽い自分の体は簡単に跳ねとんで道路に突っ伏した。
そんな中で道路を這いつくばって突き飛ばした女の子を探す。
そして少女は直ぐに見つかった、
そして少女は驚愕と憎悪の籠った、目で自分を見下ろしていた。
先ほどまで一切喋らなかった少女が少女とは思えない程の掠れた声を発する。
「ナンデい間タは助たノ」
一瞬少女が何を言っているの分からなかった。
「イ可でアノトキはナニモしてくれなかったタノニイマサラ」
声がでない。
「あなたダケ生きのびるナンテ許サナイ、アナタ丈ガ幸セにナルナンテユルサナイゆるさないアナタハワタシ達ト同じ様な形にナラナクちゃいけないダケどワタシ達じゃデキナイ、ダカラここで死ンデ」
そう少女が音を発して、あぁそうか とそこまで言われてようやく分かった。
少女....、いや少女達は自分を殺しに来たのんだ。
今少女達が言ったようにおれだけか平穏な世界を生きるのは許さないと せめて死ねと。
死んでくれと。
おれを殺しに来たのだ。
あぁ、おれはもっと早く気づくべきだった。
手の血が着いたにしては妙に血が多かった事。
泣き張らしたにしてはあまりにも目が赤すぎた事を。
少女の顔に見覚えが有った事を。
あの時の━━━━
どうやったかは分からないけど、どうにかこうにか人間の体を頑張って作っておれを殺す為に無い筈の頭を使って考えて。
おれを殺しに来たんだ。
だからやはり、オレを殺す権利を持つのはあの子達だけなんだろう...。
だから…
「だから、この思い出に侵入して挙げ句の果て 俺の家族にまで手を出した、てめぇを許さない.....!!」
オレはそのまま立ち上がり少女の形をした夢魔の指で切りつける。
「...ガッ!… ニ...ッ!!」
そして半身をバッサリと切られた馬のような怪物に変容する。
あぁ、最悪な気分だ。
好きな食べ物に毒物でも仕込まれたような最悪な気分だ。
コレにもコレなりの事情が有るのだろう。
とか、コレにとって人間に悪夢を見せるのは美味しいご飯を作る様なモノだから仕方がないのかな?
とか、考えていたがやはり衛宮 士貴はコレを許す気にはなれない
さっさと殺してカレンさんに引き渡そう。
いきなりの事で悲鳴すら上げられなかったらしいが憎悪の籠った目で此方を見てくる。
「ニン...ゲン ッ!! ゴトキが!! コロシテヤル!!」
「それは無理だな」
しかし関係はない、そのまま指突で念入りに殺しておく。
例え分体だろうがこの夢魔は本体との関係が濃すぎる、直ぐにでもこの 死 は夢魔の本体まで届いて致命傷ではすまない死が本体を襲う。
放置しても直にこの夢魔は死ぬが念のため確認しておこう。
目を覚まして一言
「行くか...」
これが致命的ミスになる事をオレはまだ知らない。
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ナイトメア第7話
深夜零時を回っている時間
少なくとも今の時間 警察だろうがなんだろうが誰かに見つかれば一発で補導対象だろう。
そんなことにはなりたくないので黄色いレインコートで顔や体格を隠しながら きちんと警戒しながら目的地へめざす。
オレの身長は135と意外と高いのできっと大丈夫だと信じる。
道すがらふと、前もこんな事があったな と去年の冬の事を思い出した。
去年も最初にあの時の事を夢に見て、でもその時はまだ忘れて。
ただ巻き込まれただけだと思っていた。
そしてあんな事態になるまで彼女たちを放置した。
思い出しているうちに目的の場所までたどり着く。
あの時と同じ様に格子を壊して侵入する、少し広い下水道を通って奥へ向かうと、これまた広々とした空間に繋がっている。
幾つか高くまで伸びた太く厚い走らした柱に色のない白い壁や床、もうずっと使われていない地下の貯水槽だ。
中を見回すと直ぐに目標を見つける。
つい最近置いたばかりの花束の下から、霊脈の根を張っているようだ。
そろそろ嫌になってくるほど、あの時関連の
物が利用されている。
はぁ と思わずため息を吐き出す。
とりあえず そこから張られた霊脈とアスファルトの境界を木のナイフで断つ。
元々ここに縁のあった訳ではないし、何の問題なく死に体の夢魔はあっさりとその姿を表した。
もし仮に縁があったとしても、そのまま現実に帰れずに霊脈から更に龍脈に落ちてそのまま溶けて消えていた だけだろう。
先ほど見た真っ黒な上半身だけの馬は ヒューヒューと今にも死にそうな様子でこちらを見上げている。
止めは刺さずに可憐さんから貰った拘束道具で夢魔を封じる。
とりあえずこれで可憐さんからの依頼は達成できた、これを明日いちに持っていってゆっくりと昼寝でもしよう。
とそう思や否や
「シキ?」
とその声にゾクリと背筋が凍りつく。
その声の方向へフードを深く被り、ゆっくりと振り返る。
そこにはジャージ姿で バカみたいに重そうな斧槍を携えたリズ姉ちゃんが居た。
「シキ? どうしてこんなところに居るの?」
「なっ、何を言っているんだ君は私はここに悪魔退治をしに来た、ただの教会関係者だ 」
それはこちらの台詞だと 言いたいのを堪え 他人の振りをする、ただの嘘を言ってもバレそうなので少しの真実を混ぜながら言う。
「私だよ? シキ」
やはりダメらしい、リズ姉ちゃんはジャージのパーカーを脱いで自分の顔を見せてくる。
完全にこのレインコート少年はリズ姉ちゃんの中で=衛宮 士貴の図式が正解らしい。正解だけど...。
「ちょっと何を言っているか解らんな...ホントにただの身長の低い教会関係者で...」
「...まどろっこしい、 嘘ついちゃダメ、私も怒られてあげるから、一緒に家に帰ろ?」
死の宣告である。
しかし、まだ顔さえ見られてなければ、まだ何とか誤魔化しきれる。
しかし、この状況をどうしようか...。
と
───瞬間、本の数瞬 どう逃げるかの算段をつけようとした数瞬の間に、数十メートル先に居た筈のリーゼリットの手が目の前にあった。
今この瞬間 士貴のフードを剥がそうと迫っていた。
「───っッッ!!」
ギリギリだった、間一髪だった、転ぶように屈んで何とかソレを回避する。
「抵抗しちゃダメ、ちゃんと、セラのとこに行こ?」
「何のことかわからん!!」
しかし、追撃するようにフードに手が伸びる、是が非でも顔を見るつもりらしい。
ギリギリで彼女の腕を掴んで後ろに回りそのまま突き飛ばす。
「む...」
と少し驚いたような声を出してリズ姉ちゃんは出口の方へ距離をとる。
現状顔さえ見られてなければ どうとでもなるのは未だ変わらない。
そしてリズ姉ちゃんがフードを狙っているのは、オレの思考と同じく顔さえ見てしまえば観念すると理解しているのだろうか?。
いや、違うな と自分の見通しの甘さに気付く。
確かにリズ姉ちゃんからすれば今は、顔を見れば終わりなんだろうがあんな重そうな物を軽々と持っていたのだ。
何処でもオレの体を掴めば終わりの筈だ。
それにもうひとつの行動をされようものなら、オレは完全に詰む。
嫌な汗が出る、正直今の現状でも詰んでいるのにそれを打開する方法を考える時間もない。
チラリ と今この場に有る物を確認する。
この場に有るのは動きを封じた夢魔とオレの夢魔様に持ってきたアイテム... は使えない。殺し用なので確実にリズ姉ちゃんを傷つける。
と───、リズ姉ちゃんの後ろへ目が行く...。
あぁ...、何とかなるかもしれない。
「よし」
と言ったのは彼か彼女か 恐らく両方だろう、互いが何かを決断したようだ。
再び互いの距離が詰められる。先に動いたのはリズだった。
そして直ぐに腕に手が伸びてくる。
捕まれてしまえばリズを傷つけるという選択肢のない士貴に抵抗の余地はない。
「すまん!!」
しかし、そのまま逆に腕を掴みリズ姉ちゃんの腕を踏み台にし彼女の肩から下水道へ全速力で跳び抜ける。
足蹴にするのは本当に申し訳ないが傷つけるよりは遥かにましだ。
手足の届く位置に腕を持ってきてくれたのは幸運だった。
「待って...」
当然ながら振り返って追ってくる、数秒で追いつかれる。
しかし、それでも数十メートルの距離は稼げていた。
先に放置されていた ひどく重い斧槍に手が届く───!!
それを少し勿体ないが斧槍を切断し 棒の部分をリズ姉ちゃんの足元へ滑らすように投擲する。
例えどんなに身体能力がよくても、流石に走ろうとしている所に棒を挟まれれば当然 転ぶ。
更に数十メートル稼げる
そのまま下水道を走り抜けて 何とかリズ姉ちゃんから逃げる事に成功した。
そこまでの距離はないがこちらも夢魔を放置した以上 注意はそちらに行く筈だ。
多分リズ姉ちゃんが貯水槽に来たのはソレが目的の筈だ。
考えたくはないが、仮に最初からオレを追って来た可能性を考えるのなら、矛盾を感じさせる発言が多い事からそれは ないと思う。
「疲れた」
そう一言だけぼやく、何で また 家族と戦闘をしているんだオレは 頭がおかしいんじゃないか?。
そんなにことを考えながら家に帰る、寝ている兄ちゃんにバレないよう音を立てずに窓から部屋に入って荷物を鞄に容れベットに入る。
明日朝一で風呂に入る事を心に決める。
夢など見ないで静かに眠ろう。
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間幕 殺鬼は夢を見ているのか? 衛宮 士貴の記憶
物心がついた頃から違和感があった。
兄は良かったが、父と母と姉への違和感が沸々と沸き上がって来ていた。
別に態度がどうのという話ではなく、顔の形や肌の色 髪の毛の質や色、そういった他の家族は似ている様な物が純粋に似ていなかったのだ。
兄と自分はよく似ていると言われたし自分でも似ていると少しは思ったが 父達と自分は似ても似つかないと物心がついた時には思っていた。
そんな事を頭の中でぐるぐると考えていた時期に藤村組の大晦日の飲み会に呼ばれたので行った。
セラさんはあまり良い顔をしなかったが、自分自身はそういう人たちは嫌いではなかったし、特に怖いと感じた事は無かったので行く前は楽しみだった。
そして事件は起きた。
「まったく...、神様ッてのはひでぇよな...、こんな良い子達なのに本当の親が死んじまってんだから」
酒の席だった、酔った組員が口走った。
あぁやっぱりそうなんだな とそれが事実だと簡単に受け入れた自分。
なに食わぬ顔で自分はその人にお酒を注いでいた。
しかし他はそうでは無かったらしい。
周囲を見ると皆一同に固まってこちらを見ていた。
その後の事はあまり覚えていない。
しかし、誰かに外に連れられて 血の繋がりなんて関係はない 等と言われたがあまり覚えてはいない。
まぁ、確かに受け入れはしたが多少の落胆考えはした
自分になにより近しい筈の人物の姿どころか名前や声も知らないのが悔しいやら悲しいやらで当時は少し悩んだ。
しかし、兄が居たのでかなり気が楽だったし家族も優しかったので悩んでいた時間は半日もなく本当に短かった。
しかし、だからこそだろう。
自分がこの正義の味方のような父や兄に認められたくて、彼らの真似をするのはある意味当然だったのかもしれない。
別に今思うと本気で正義の味方になりたいと思った事はなかった、せいぜい戦隊モノやライダーモノのごっこ遊びをする様な感覚だった。
最初は迷子の猫探しや落とし物探しとべつだんおかしな事はしていなかったつもりだ。
しかし、その内地域で子供や女性の失踪事件や行方不明事件が起き始めた。
そんな正義の味方ごっこをしていた自分がその事件に付いて調べ始めるのは不思議な話じゃないだろう。
それが本当に危険だという感覚やある種の運的な感覚で本来なら見つかる筈の無いソレを見つけてしまう何て誰が思うだろうか。
当時 事件を調べ始める前に犯人の人相。
そして被害者が何処かに行く所を目撃してしまった。
そう、自分は警察が知れば直ぐにでも事件を終らせられる程の情報を殆ど揃えてしまっていたのだ。
そして自分は捜索などの才能があったのだろう。犯人の潜伏場所まで発見し......、乗り込んでしまった。
普段の自分ならば大人に話すなどして対処していただろう。
しかし、ある種の運が悪かった としか言いようがなかった。
「分かった、ありがとう、だけど○○君達はただの風邪だから心配しなくて大丈夫だよ」
調査途中の情報を担任の先生に話たが、そう返答されてしまった。
当時の自分は刑事ドラマ等も好んでいたため。その言葉が事件の隠蔽とかの物だと思ってしまったのだ。
故に自分がやらなくてはいけない。
正義の味方のように...。
そして何の力も持たない自分一人で乗り込んでは捕まったのだ。
連続殺人犯でもあるその犯人に。
何の力もない村人が魔王...いや盗賊のアジトに乗り込んで無事でいられる筈など無いだろう...。
次の話までの繋ぎ
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ナイトメア後日談
朝 衛宮家リビング、士貴は冬木教会へ行く予定が何故かリズとリビングで対戦ゲームをしていた。
寝坊してしまった為 すこし遅い朝御飯を食べて、いざ出掛けようとしたのだがリズ姉ちゃんに誘われてしまったからだ。
昨日 というか今日の午前の事もあり、断るのが申し訳なかった為つい はい と答えてしまった。
向かい合うように殴りあっている二人の男性 、よくある2Dの格闘ゲームだ。
勝率は五分五分といったせいもあり、オレも地味に楽しんでいた。
一勝負終ったのを区切りにリズ姉ちゃんが口を開いた。
「ねぇ士貴 レインコート って持ってる?」
「持ってるけど どうしたの急に?」
ちょっと見せて と言うので普段 物を入れている、キャリーバックを持って来て中を見せる。
「あれ? 違う...」
と首を傾げる、黄色のレインコートを広げて何かを確認するが、更に首を傾げた。
「...コレ以外 ホントに無い?」
「と言うかオレの持ち物って全部この鞄に入っているよ?」
服は基本別だけど趣味で作った木彫りのナイフや骨董品の類いも全てこの中だ。
兄ちゃんにも部屋に飾って良い、とよく言われるが鞄に入れて置くのは便利だし ただ整頓されたのを眺めているのも好きなのだ。
「あれ~…?」
と気が付いたら荷物を全てひっくり返して中を覗き込んでいたので流石に止める。
「ねぇ 姉ちゃん全部出されるのは片付けるのも面倒だし 困るんだけど...」
「...ごめん 」
そう、一言謝ると荷物を元に戻し始める。
やはり、というか当然というか。どこか浮かない顔をしているが、何も言わないでおこう。
これ以上言うのは墓穴を掘りかねない。
「とりあえず他になにも無いなら持って帰って良い?」
「うん、ありがと」
リビングを出て、
なんとか誤魔化せたかな? と ホッと胸を撫で下ろす。
そう、この中には間違いなくリズ姉ちゃんと対峙した時のレインコートや木のナイフが入っているのだ。
他にも見られて困る 偶然見つけた古い魔術品や幾つかの武装品も きちんとこの中に入っている
ただ、リズ姉ちゃんが見つけていないだけで嘘は何一つ言っていない。
それはやはりこの鞄に魔術的な細工があり。
面白い事に 中で手を広げればその分、中だけが拡がり外は何も変わらないと言う魔術品なのである。
とりあえず 某青い狸の猫型ロボットの四次元ポケットを想像してほしい。
その特性を利用して、中に区切りを仕込みそれを鞄の中に押し込む事で見せたくない荷物をその区画事で隠すことが出来ている。
実質この鞄は上下左右と中央で五個分以上の容量が有るため今のところ物を収納しておく場所には困っていない。
…のだが、鞄を部屋に戻して、話を少し変える。
現状とりあえずリズ姉ちゃんを誤魔化すのは多分何とかなったが問題はセラさんだ。
起きた時にはセラさんは居なかった、もしかしなくても教会に行った可能性が高いだろう。
可憐先生が、そう簡単にオレの事を話すとは思えないが、なんせ人を虐めたり苦しんでいるのを見るのが趣味の人だ。
ついうっかり とか言ってオレの事を書かれたレポートとかをばら撒いたりしてそうで怖い。
そんでしまいには「言ってませんよ?ついうっかり貴方について書いてあったような気がする紙を彼女の前に落としてしまっただけです」
とか言いそうだ、被害妄想甚だしい かもしれないなが、悪い方へと考えてしまうのは今までの人生経験のせいだ。
朝寝坊してしまったのは失敗だった。
コレでも小4だ、さすがに深夜まできちんとした睡眠が取れず、その後馬鹿みたいな戦闘を繰り広げて 早起きできる筈もないが、あの後の夢魔の処理を見れ無かったのは最悪だ。
...セラさんに会いたくないなぁ。
とりあえず今はリズ姉ちゃんとのゲームに戻って現実から目を背ける事にしよう…。
憂鬱なゴールデンウィークの始まり方だった。
同時刻 場所は変わって冬木教会 ソコに二つの女性の影があった。
「ご協力ありがとうございました 貴女方のお陰でこの夢魔を捕らえられ然るべき処罰を与えることが出来ます」
一人は教会に合った修道服を着た、金色の目をした白く長い髪をした年若い女性と。
「...本当に士貴君は関係無いのですね?」
もう一人はよく有る婦人服を着た白い髪の赤色の目をした女性だ。彼女は疑惑の瞳で修道服の彼女を睨んでいた。
「はい、先程も言わせて貰った通りただの小学生を危ない事件に巻き込む様な事は私自身本意ではありませんし一般人に神秘について漏らすのは教会でも許されておりませんので...、
まさか貴女は衛宮 士貴が ただの小学生では無く とでも言いますか?」
そう修道服の彼女は笑った。
これ以上は墓穴を掘るぞ と言外に語る。
もしも私が本当に衛宮 士貴について知らなければ情報を渡す事になる。
少なくてもただの小学生ではないと。
彼の性格上 ほんの少し関われば深くまで首を突っ込んでコチラ側に来る事になる。
それは衛宮家の大人達が恐れている事の一つだ。
「...分かりました 今はその言葉を信じます。」
彼女は撤退を選んだようだ、そのまま失礼しました と教会を出ていった。
それも そうだろう、衛宮家には現状様々な悩みの種があるが、今最もその芽が芽吹いているのは 士貴だ。
彼は みる ということに関して神がかり的な才能を持っている。
例えば 一目見ただけで人の肉体的な障害を見抜いたり。
例えば 難しく巧妙な手品の種を見破ったり
例えば 数日前に付けられた足跡からそれを着けた人物の体重や体格を正確に見破ったり
例えば バラバラにされた複数人の死体をそのそれぞれの人物に仕分けしたり。
例えば 街角で見かけた連続誘拐殺人犯の居所を見付けたり...。
例の 一番最初以外は全て本当に彼が異能に目覚める前にした事だ。
ほんの少しの神秘に触れるだけでも■■の近くまでたどり着くでしょう、
まあ、すでにたどり着いているかもしれませんが…。
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とある青年との出会い
ゴールデンウィーク中 意外な事にセラさんからの追及も特になく平和に過ごせていた。
嵐の前の静けさのようで些か不気味だが、可憐先生はいつもの事に何も教えてくれないので諦めた。
憂鬱な気分は晴れないが報酬は受け取れたのでそのお金で少し奮発し、お菓子や唐揚げ ジャンクフードをコンビニで買い漁って、公園で豪勢に祝杯を上げる。
道中の事である。
道ばたで行き倒れた青年を拾った。
「すまない少年 倒れている所を助けて貰っただけでなく、こんな豪勢な食事も貰って 何と言ったら言いか…」
そう焼き鳥を飲み込んでからドイツ語で頭を下げる男性。
年は恐らく二十代ぐらいだが見た目は中学生位の成長しきっていないように感じるの青年だった。
「いえ 一人で食べるのも退屈だったので気にしないで下さい」
と、オレもドイツ語で話ながら てきとう菓子に手をつける。
セラさんに教わっておいて良かったと胸を撫で下ろす。
とりあえず 元気そうだったので救急車は呼ばずお菓子や唐揚げを別け与えた。
もう少しお粥とかお腹に優しい物を渡した方がいいんだろうが、手持ちがこれしか無いのでこれで我慢して貰う、本人も喜んで食べてるし多分大丈夫だろう。
「行き倒れなのは分かりますけど何であんな所で倒れてたんですか?
道に迷っているなら警察に行ってみても良いんじゃないですか?」
「事情が有ってな、警察には行っても仕方ない 、と言うより行けないんだ」
「...不躾かもしれませんが、何でそんな状況でこの国に来たんですか?」
もういっその事他国からのスパイか何かじゃないだろうか?
目を見ればある程度嘘かどうか分かるしとりあえず語って貰おう。
「…この国には元々母に会いに来たんだ」
と青年は語り始める。
少し前まで海外のとある国で軍人紛いの事をしていた事や
その国が崩壊したこと、
その後色々あって、とある人権団体に引き取られた事。
そして、そこで生き別れの自分の母親が生きている事を知ったらしい。
ならば と団体の人が日本までのチケットやパスポートを用意して共に日本まで母親に合い来てみれば、道中でガイドと団体員が交通事故に合い意識不明の重体で入院。
道も言葉も分からぬまま放り出され途方に暮れていたら行き倒れていたらしい。
そして、その国が色々と厄介な国で色々な国々と完全敵対していたらしく、そこに属していたせいで色々な国の公的機関を利用しづらいらしい。
「...なんと言うか、壮絶ですね...」
その一言に限る、軍人をやっていたのは体つきと指の感じで分かったが、その後が色々意味わからん状態だ、嘘や動揺 誤魔化そうと言うきは一切感じられなかった。
話の節々で幾つか質問もしたが矛盾等もなく信じられない事にそれが真実であるように感じた。
と言うか嘘をつくならもう少しましな嘘をつくだろう。
「その団体の連絡先は分からないんですか?」
「分からない、事故に合った彼らとは別に携帯や手記は溝に落ちて使えなくなってしまった
電話番号は覚えていない 」
要するに、警察も使えず 宿もなく 家の場所も連絡先も分からない……。
何だこのプロの迷子は…、迷子の子猫でももうちょいましだぞ。
「とりあえず、待ち合わせはしてたんですよね? そこへ行ってみましょう、地図は有りますか?」
「ああ、少し待ってくれ」
と唐揚げを口に目一杯詰め込んで鞄を探る。
そんなに慌てなくても良いのに、とも思ったが戦場に居たらしいし、きっと仕方がないのだろう。
と、取り出した地図は新都の方を記していた。
勿論そこに行っても、誰も待っては居なかった。
一応聞き込みでここに数日前まで黒髪を短く刈り込んだ目の厳しい女性が一週間ほど毎日同じ時間同じ時刻に誰かを待っていたらしい。
そして、かなりのちょっかいを掛けてくる相手にそれは見事なCQCで撃退していたりして、少し話題にもなったりしたらしいが、少し前からめっきり見なくなったそうだ。
「一応印象画で描いてみたけどこんな感じなのか?」
首くらいの長さの黒い髪に少し細目の眼、すっと立っている鼻立ちに薄い唇…。
と彼の母親なら多少彼に似ているだろうと彼をベースに女性を描いたが、自信はない。
と言うか相手の顔写真もないのにどうやって探せば良いんだろうか。
しかしこれ以上の手がかりもない…、
うーむ と思わず唸り声を上げていると青年が声をかけてくる。
「…正直な話 母親に会った所で何か在る訳でも無いだろう」
何いきなり今まで事を否定してくるんだこの人。
「君はもう帰って良い…」
…成る程そっちが本音か。
「オレにこれ以上 迷惑をかけたくないみたいですけどそんなに気にしなくて良いですよ?
暇だから付き合ってるだけですし。
もし、本当に迷惑なら止めますけど、違いますよね 、」
「もしそんなに気にするなら、恩とか縁だと思ってください。
人の繋がりって言うのは馬鹿に出来ません、もしこれからオレが困った時に助けてくれればそれでチャラです」
「いや、しかし……、いや、そうか、すまない 恩に着る」
彼なりに少し考えたのだろう、
「…そういえば、いちおう母の知り合いがこの街に要るらしいのだが、誰に聞いても分からないそうなんだ」
「どんな名前の人なんですか?」
「エイヤと言う人物らしい…」
「…それ人名ですか?」
「ああ、皆同じ事を言っていた」
エイヤ…エイヤ……あ、いや待てよ?そんな名前の人が居たな。
心当たりを思い出す。
もう3ヶ月程前だがそんな名前の洋菓子店の店長と仲良くなったのを思い出した。
そう 名前は喫茶エイヤー亭……。
「あらやだシキちゃんじゃないの~! ちょっとまた新しいケーキのアイディアがあるんだけど試食してみない?」
色白な肌が綺麗な丸々と肥たの巨漢の金髪男性がオレたちを迎える。
「この人はエイヤ アンダーソンさん この西洋菓子店の店長さんなんだ」
店長をスルーしての紹介をする。
元はドイツの方で、幼いから平和で緑の豊かな日本でお店をやりたいと夢を抱いていたらしいのだが、日本に来た当初は日本語がまだ下手で。
店の内装などの細かい指示を業者の人に出せず、困っていた所にたまたま興味本位で見学に来た、オレがエイヤさんの変わりに指示を出して、エイヤさんの理想の店作り の手伝いをして仲良くなった。
ちなみにちょっとオネェ気味なのだがそれが良いアクセントになって最近は中々繁盛しているらしい。
彼の事情を伝えて心当たりが有るか尋ねるてみる。
「う~ん、ごめんなさいね心当たり無いわ」
そう言ってエイヤさんは申し訳なさそうに首を横に振る。
「やはりダメか…」
ただ受け入れる様に呟く。
オレも予想はしていたが、こうなるといよいよ詰んでしまった様に感じる。
「流石にうちは無理ですけどオレが山に作った秘密基地で暮らします?」
「…問題が無いのならそれもありだな…」
とりあえずオレが去年作った円蔵山の山小屋を紹介する。
あそこならある程度人が住める設備が揃えているし問題は無いだろう、山は一成さんの家の物だがきっと許してくれるだろう。
と一成さんへの説得方法を考え始めていると、エイヤさんが青年に声をかける。
「ねえ、君 宿に困っているならうちで働いてみない?
ちょうど人手が欲しかった所なのよ~」
「…良いのか? 自分で言うのも何だがこんな正体不明の不審人物を置いておこうとするのはどうかと思うぞ?」
表情や声のトーンは殆ど動いていなかったがとても驚いた様子で青年は純粋な疑問をぶつける。
「ええ、良いわ シキちゃんの紹介だし 貴方可愛いもの 」
「…ずいぶんと信頼されているだな君は…」
「人が良いだけなんじゃないですかね? それにエイヤさんも忙しい時とかはドイツ語が出てしまいますしね そういう時に直ぐに対応出来る人が欲しいんじゃないですかね 」
「あらやだ シキちゃん 全部言わないでよねぇ~!」
プンプンと言う効果音が鳴りそうな感じでエイヤさんがブー垂れる。
とりあえず話は纏まりそうなので細かい話は本人達でして貰いオレは退散しよう。
「じゃあオレの家の電話番号を渡して置くので何かあったら電話下さい」
そうメモを置き書きし店から出ようとする、が呼び止められた。
「待ってくれ、そういえば君の名前を聞いていなかった、何て言うんだ?」
「そう言えばきちんと名乗ってませんでしたね、衛宮 士貴です シグマさん」
「今日は本当に助かった、ありがとう シキ」
こちらとしては楽しかったので別に良いのだが話が長くなりそうなのでさっさと店から出て帰宅する。
元傭兵であり、言っては無かったが魔術師でもある青年との変な出会いはとりあえずここで終わった。
喫茶エイヤー亭 ここには良く来るのでこれからもシグマさんが彼の母親と出会か入院しているガイドが退院するまでそこにいるのだろう。
…全く関係ない話だがエイヤさんに日本語を深く教えたのはオレだ
とりあえず言えることはシグマさんはFate/strange Fakeに出てくるΣさんと大体 同一人物です、要するにこの世界のΣさんだと思ってください。
ついでに言うとエイヤと言うのは分かっていると思いますがエミヤの間違った言い方で、シキ君がそれに気づかないの? ってなったりしてもやもやするかと思いますがご容赦下さい。
遅れた理由はそのもやもやとか純粋な遅筆です本当にすいません。
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とある英雄ではない彼女の話
雨季 ジメジメとした季節、肌にまとわりつく湿気が嫌になってくる季節なのだが、昨日 一昨日の天気予報通り今日はやけに天気が良い。
そんな天気のおかげだろう、イリヤ達は三人で仲良く買い物をしに出掛けた。
自分も先日シグマさんに紹介だけした山の秘密基地の整備に行くべきだろうか。
何せ素人の木造建築だ、湿気や雨漏りで色々と道具がダメになってしまうかもしれない。
そんな事をリビングで兄の料理姿を見ながらぼんやりと考える。
「なぁ、兄ちゃん そんなに弁当用意してどうしたんだ?」
きっと大勢で出かけるのだろう、およそ十人前程度に重ねられたお弁当の山を見て 聞いてみる。
「ん? ああ、ちょっと知り合いが色々な料理を食べたいって言うから色々と用意してるんだ」
そう言う兄ちゃんの前には確かに様々な調理器具が並べられており、それを全て同時に使いこなしている。
何か煮込んでいる合間にオーブンで何かを焼き、その間にボールで卵か何かをかき混ぜ、氷の入ったボールに置いて冷やす、その間でも野菜や肉を丁寧にカットしフライパンへ放り込んでいく。
うん、流石兄ちゃんだ。
まるで料理アニメか何かを見せられているような早さとタイミングの正確さだ。
やはりセラさんの一流クラスの料理人の技術を見て盗み、自分のモノへと昇華させただけはある。
「そんなに食べきれるの?」
「ん~…、たぶん全部食いきるな…」
少し考えてから、いや、むしろ足りないんじゃないか? と兄ちゃんら重箱を見て小さく呟き唸り始める。
どんだけの人と出かけるんだよ…、
いっそ、普通にお店とかで注文した方が良いのではないだろうか?
と思っていると、玄関のチャイムが押される。
「悪い士貴 ちょっと出くれないか?今ちょっと手が離せないんだ」
「分かった~」
と代わりに玄関へ向かう。
女の人だろうか、青いスカートが扉の曇りガラスから見え隠れしていた。
「はい、どちら様でしょうか?」
ガチャリと扉を開けてると、そこには麦色の髪をシニヨン型にまとめ頭頂部からアホ毛を生やし緑色の瞳と一つの神秘的な剣の様な雰囲気、それと僅かな男性的さを含んだとても綺麗な女性が立っていた。
服は青いセーラー服に赤いリボン、確かとなり町の女子校 聖ジョージ学園の制服、袖には生徒会と書かれた腕章と何の変哲もない目を引く竹刀袋。
新聞とニュースで持て囃されていたのを見た覚えがある。
確か名前は竜崎 アルトリア 全国中学校剣道大会 三年連続優勝、そのあまりにも圧倒的な実力はあの冬木の虎をも越えると誰かが言っていたのを思い出す。
でも何でここに居るんだ? ここオレの家だよな?
藤村さんの家じゃ無いよな? 竹刀持ってるし決闘の申し込みとかじゃないの?
「御免下さい シロウ…、君はまだいらっしゃいますか?」
……うん…、普段はシロウ呼びなのだろう、少し引っ掛かってそう口にする。
「…少々お待ち下さい…」
そう一言置いてから、スーっと肺に空気を溜め込み、一気に吐き出す様に声を張り上げる。
「ニイちゃーん!!
金髪緑眼の美人さんがいらっしゃったよー!!」
近いのだから直接行けば良いものを 無意味に大声で兄を呼んでみる。
数秒の思考の間か もしくは料理の手間時間かを置いて ドッタドッタと慌ただしい足音を発てながら兄ちゃんが現れる。
「なぁ…ッ!!」
竜崎さんを見てあり得ないモノでも見たように驚愕する、が大きく深呼吸をして気を落ち着かせる。
「……悪い 竜崎 弟が急に大声だしたりして…、でもどうしたんだ? あそこの広場で待ち合わせしてたよな?」
「いえ、急に押し掛けてしまったのはこちらですシロウ。
ちょっと面倒な輩に絡まれてしまいまして…、
逃げていたらこの家の近くまで来ていたのでつい…」
とげっそりとした様子で言う竜崎さん。
「面倒な輩? 竜崎ならどんな奴が来ても大丈夫そうなものだと思うんだが…」
「はい、まぁ確かに本来ならその通りなのですが…、本当に面倒な相手でして……」
「お前がそこまで言うなんてよっぽどなんだな…」
やはり親しい仲なのだろう、オレの存在などわりと忘れられているんじゃないかと、思う程度には会話が進んで行く。
普段なら気にしないが、人物が人物なだけに割り込ませて貰う。
「ところで兄ちゃん、何でうちに全国中等学校剣道大会連続優勝者さんが来ているの?」
兄ちゃんも弓道部のエースで 運動系の部活同士何かしらの友好関係が有るのかもしれないが、そう離れてないとはいえ、となり町からわざわざ訪ねて来るのはどういう関係か流石に気になる。
「んッ…あ~…えっと……」
「シロウは私を助けてくれたんです、」
そう目を泳がせていた兄ちゃんの代わりに竜崎さんが話し出す。
何でも竜崎さんの学校の生徒がある日 失踪してしまい、とある町 に行ったと目撃情報を聞きその町への道案内を、ちょうどその町へ用事があった兄ちゃんがしてくれて色々あって、その後も交流が続いているのだそうだ。
「成る程…」
またオレの姉候補が増えたのか…。
これでオレが知るかぎりでは四人目か?
他に候補が居てもおかしく無いのが兄ちゃんの怖いところ。
さっさとセラさんか桜さんとくっつけば良いのに…。
「で、どうするんだ? 竜崎 オマエの言うには近くに 厄介な奴 が居るんだよな?」
「そうなんですよね…アレがそこら辺に居ると思うと…、しかしせっかくの士郎のお弁当を無駄にするなんて絶対にあり得ませんし…」
う~ん と二人で唸りだす。
もしかしてあの料理って竜崎さんに作ってたのだろうか。
「じゃあ、家で食べてけば良いじゃん何か不味いの?」
「…良いのですか?士郎」
「あー、そうだな、お弁当を家で食べちゃいけないなんて決まりは無いんだし 家で食っちまおう」
「じゃあ二人の邪魔にならないようにオレも出掛けてくるな~ 、誰も居ないからってあんなことやこんなことをしちゃダメだぞ~」
「いやまて士貴!!なに言ってるんだオマエ!!」
準備は予めしていたので、怒る兄ちゃんから逃げるように家を出て秘密基地のある山へ向かう。
士貴が出掛けたその後、兄弟のやりとりを見ていた竜崎が口を開く。
「あの子が士郎の言っていた弟さんですか…」
「ああ、士貴だ 今は出かけてるけどイリヤって言う妹も居るんだ 」
話には聞いていた。
衛宮 士貴 シロウに残された唯一の両親からの忘れ形見で幼い頃から事件に巻き込まれ続け、
去年の春に交通事故に合い三ヶ月間 意識不明の重体になっていた少年。
正直の話 あの少年が玄関から現れた時 敵意等は感じず、息をする様な正確さと自然さでナイフで切り裂かれる未来が見えた。
ただの直感だが決して無視は出来ない感覚……。
…いえ、今は止しましょう、今日はご飯を食べに来ただけなのですから。
「では士郎お弁当いただきますね!」
「では、どうぞお召し上がり下さい」
この後 帰って来た女性陣とひと悶着あるのだがそれはまた別の話。
実はここだけの話この世界線では宇宙的恐怖が存在して
士郎と竜崎は巻き込まれてたりする。
そのうち小説として描きたい欲はあるけどいつになる事やら……
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衛宮 士貴と白いカラス
魔術と呼ばれるモノがある、現代社会から隔離され閉鎖された世界でのみ活躍と活動を許された古い技術。
一般人はソレを見る事も知る事も許されず、知れば抹消され、教えても抹殺される、理不尽の極みの世界。
そんなんだからこの世界でその存在を知っているのは世界中でも1/100にも満たないだろう。
しかし逆に言えば百人に一人は知っている計算になるので意外と多いようにも感じる。
例えば貴族社会の上流階級や警察官の上層部、果ては大物政治家にトップアイドル クラスの変人から山岳の僧侶まで etc etc…
世界の大物は大体魔術を知っていると思った方が良い…。
その1/100に一応俺も含まれていたりもする。
秘密基地の点検を終えて机に向かう。
道具箱からフラスコを取り出してあらかじめ用意していたオレの髪の束と爪を炭になるまで蒸し焼きにする。
物が物な為、嫌に香ばしく甘味のある独特な匂いが煙と共に充満する。
窓も扉も明け放っているので換気は直ぐに済むがすぐ近くに居るので匂いは直に感じる。
あまり良い気分の匂いでは無い。
家でやれば一発でバレてなにやってんだお前ルート突入の行動だ。
家では少しもこういう常軌を逸した黒魔術or呪術的な行為はしない様にと心に決めている。
でないと色々と心配させてしまう。
ただでさえ色々とやらかして様々な心労を貯めさせているのにこれ以上心配はかけたくない。
…いや、まぁ そういう事を既にしてる時点で色々と駄目なんだろうけど、将来的にも絶対に必要になるし、仕方がないと自分に言い聞かせながら、火事と燃えすぎない様に気を付けながら炭になっていくのを見守る。
全て炭になったのを確認して、それを砕き粉末にしてソレを麻に刷り込みながら糸にし水でよく薄めたオレの血を使って固めアイロン掛けして乾かす。
これで触媒の完成だ、あとはこれを使い勝手の良いナイフの柄に巻き付けて終了。
テストの為ナイフを無作為に放り投げ右手と投げたナイフを連想しながら一言呟く
i'm where set
放り投げたナイフが消え それと同時に右手に握られる。
転移魔術といわれる魔術だ、オレの体から作られた物であるなら、たとえそれが焼かれていようがは縁として機能し、オレの魔力がある限り手元へのみ召喚が可能となる。
触媒の作成と魔術練習が終わり、やることが無くなる。
「…まだ1時か……」
何となく家に帰っても もったいない気がするし、兄のでラブコメには厄介ごとに巻き込まれる気しかしないので出来るだけ関わりたくない。
もう少しここで時間を潰す事にする。
「仮眠でもするか…」
Ga〰️!! Ga〰️!!
微睡みの中聞き覚えのある白いカラスの鳴き声が慌ただしく扉が叩き、たたき起こされた。
「ん? どうした?ヒノ 腹でも減ったのか?餌は外だぞ?」
いつもエサをねだりに来る白いアルビノのカラスだ、しかし今日はとても焦って居る様で少し様子が変だった。
ガー !!ガー!!
ガーGAー!!カーッ!!
と鳴いたあとバサバサバサハッと羽を動かす。
「怪我した子猫拾ったからここで治せって 前も言ったけどオレは医者じゃ…」
ないと言い終わるより先にヒノは咥えていた黒い布を嘴を使い開ける。
「重症だな…」
怪我ってレベルじゃない、かろうじて生きている状態だ。
腹から木の枝にでも落ちたのだろう。
肋骨に罅が入いり、胸に枝が刺りっぱなしで出血はしていないが大事な血管をいくつか貫いて体内で出血してる、それが肺にも刺さって酷い呼吸障害が起きている。
手当てしなきゃあと数十秒で死ぬ
取り急ぎ行うべきなのは肺等の重要内臓器官の修復と枝の除去だろう。
出血は枝が栓になって重症の割には少ないので止血は後で良い。
I'm Where Set
もう一度魔術回路を起動させ魔力の生成を開始する。
オレの魔術はまず本質として 無色無形で火や土 風や水とは違いある種の空間そのモノだ。
明記する場合は魔術=魔力とする 。
性質として スライムや粘土の様に変形し魔力出力の多少で風船の様に伸縮させられる。
そして全くの透明で空気との違いは差ほどないのだが、それを見分けるのは素人でもたやすいというのが面白い所だ、
そう、水にガムシロップを入れた時、同じ透明色の筈なのに明らかに違いが分かるのと少し似ている。
まず始めに作った魔力を子猫を傷つけない様 接着する様に流し込む。
まず最初に破れている箇所を見つけ出しそこを魔力で保護する。
そして、次にそれを極限まで薄くだいたい0.1㎜以下 の薄さのゴム風船の様にし肺や他の臓器を一つ一つなるべく丁寧に覆い。
肺は猫がしようとしている呼吸に合わせて、塞いだ穴から魔力を肺の中で網のような布の様な形にし展開して広げる。
他の臓器には疑似血管を魔力で作り そこへ血を流しながら内臓を後々で自然治癒で修復させる。
内臓関係は1ミクロンでも魔力生成がずれれば猫の内臓が大変な事になるので慎重に行う。
あとは肺にやったのと同じように枝を魔力で包んでゴミがほんの少しでも体内に残らないように抜き取る、魔力で体内をガードしておく事で出血もごく僅かで済む。
「あとは殺菌してガーゼやって包帯してそれで終了だな…」
手当てが無事に終わり、ほっと胸を撫で下ろす。
こんな大怪我の治療はヒノと出会った時以来だ。
白いアルビノのカラス故に仲間から迫害され同じ巣の兄弟達にすら嫌われ行く場もなく一匹さ迷い挙げ句の果てには車に跳ねられ危うく命を落としかけた憐れなカラス。
あの時は魔術もからっきしで普通の切開手術だったから手術跡がヒノの体に残っている。
時計を見れば4時を回っているしそろそろ帰るか。
「ああ、そう言えばヒノ なんでお前オレが今日ココに居るって分かったんだ?」
もしオレが居なかったらこの子猫は確実に死んでいただろう。
こいつは獣医にも顔が利くし動物病院に行った方が確実だったんじゃないだろうか?
ガァガァガー コンコンコン
とヒノは鳴いたあと 嘴で床をつつき机の方へ嘴を向ける。
「あぁ、煙の匂いか、独特な匂いだし分かるか…」
あらかじめオレがここに居るのはわかっていたらしい。
それで後で行こうと考えながら山を飛んでいたいた所 偶然 子猫が落ちる所を目撃し慌ててオレの所へ連れてきたらしい。
「つーかやっぱり餌貰う気だったのかよ…。」
本来であれば動物に餌を与えると狩りの仕方を忘れて人間から餌を奪う事を覚えてよくないのだが、ヒノの場合は人と会話が出来るレベルで頭が良すぎてそれに当てはまるか分からない。
普通に餌をねだったりするのはオレと獣医ぐらいみたいだし…。
しかし、時々町で芸を披露して 餌を貰っている 白いカラスの噂がたっていたりもする…。
…実はこいつ人間だって言われても信じるぞたぶん。
とりあえず森なら近隣住民も居ないし餌を与えても許されるだろう、ゴミを漁られるよりは、ましだ。
「とりあえずソーセージ食うか?」
とりあえず色々とツッコミどころがあると思いますがある部分はある種の伏線、また有るところは書いてて、あっこれ修正してたらまた更新ペースが更に空くなと修正を投げた所です、機会が合ったらこっそり修正すると思います。
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江野 友人 の休日
5月も終盤の第四日曜日
俺の名前は江野 友人 漢字だけで読むとユウジンとなるが実際はユウトだ。
親は何を思ってこの名前にしたのかは、名付けた本人はもう居ないので不明だ。
「シーキー君遊びましょ!!」
ピンポンを鳴らし名前に反して俺の数少ない友達の名前を呼び出て来るのを待っていたが出てきたのは俺の予想に反した人物だった。
身長は165~6㎝と年齢からしてみれば少し低い方だが鍛えているおかげだろう、平均的に見れば体格自体は良い方だ。
そして髪は少しだけ特徴的で一見すると不良少年に見えそうなとても明るい色でオレンジ色と赤色の間で位の色だが、顔立や目つきはとても真面目そうでとても落ち着いた印象を受ける、そんな青年だった。
とまぁ、無駄に長々と説明したがこの青年の素性を簡単に言う事が出来る。
凄いね!!
「あれ?士貴の兄ちゃん? 」
「ああ、悪いな友人 士貴ならさっき出掛けた所なんだ」
なんてこった今日の予定が全て狂ってしまった!!
士貴は引きこもり属性だから外にはそう簡単には行かないと思っていたのに!!
ってあれ?
「女性のお客さん……」
玄関の靴を見て思わず呟く、士貴の家にはいつも来ていたので分かる。
今まで見た事の無い女性物の革靴のローファー、そこから導き出される答えは…。
またやったのかこの人…ッ!!!
幾つもの女性を無意識で口説きかけたり口説いたりして初等部にまでその噂が轟いていたりしなかったりで、ついたあだ名が穂村原のブラウニー…。
あれ?なんか違う?
中等部の桜さんとか森山の姉さんとか噂だけならいくらでも聞くそれにとなり町の副生徒会長さんと仲睦まじく歩いてたとかの噂も聞いたことがある。
あの女たらしめと妬みの声も聞く…。
「おい…友人 なんか不穏な事を言おうとしてないか…?」
俺が声を出すより先に士貴の兄ちゃんは恐ろしい形相で睨んで来た。
どうやら士貴の兄ちゃんは俺の心が読めるらしい。
「むぅ、士貴がいないなら仕方ないや、士貴の兄ちゃんの邪魔しちゃ悪いし…」
「なあ、さっきの士貴もそうなんだが、なんでお前ら俺の事そう言う奴みたいにしようとするんだ…?」
「じゃっ 士貴の兄ちゃん 俺は別のとこに遊びに行くよ」
「聞けよ!!!」
怒る士貴の兄ちゃんをスルーして家を去る。
さて、どこへ行こう。
と、あてもなく町をブラブラする、お金もないので買い物も出来ない…。
そう一人で考えていると不意に声をかけられた。
「おい !そこのオマエ!
ココら辺で この人を見なかったか!!」
そう言って俺の返答を聞く前に目の前へ見せて来たのはこの町の地方誌で日付は去年のヤツだった。
剣道 中等部全日本 三年連続優勝
聖 ジョージ女学園中等部 竜崎 アルトリア
写真と共にでかでかと掲載された紙面。
えっと、この人を探して居るのかな?
しかし、もちろんそんな人は知らないので 知らないと返答する。
「チッ なんかオマエなら知ってそうな気がしたんだがな…」
と何だかよく分からない事を言う。
ふと、彼女の顔を改めて見てみると、
掲載されている少女の顔と瓜二つだった。
だが、しかし 彼女の身に付けている体操着はとなり町の中学生の制服を巻き付けていた。
もし、写真の人と同じ人なら年齢が合わない写真の人は今は高校一年生の筈だ。
それに新聞の彼女の雰囲気は物静かさで清楚そうな女性だが、目の前の彼女は 猛々しく気性が荒そうで今にも殴れそうな恐ろしい雰囲気がある。
とてもじゃないが同一人物だとは思えない。
「えっと、もう行って良い?、ですか? 」
「ア?何か用事でもあんのか?」
「いえ、別にないですけど…、えっと…手伝えとかですか?」
「イヤ?別にようが有るなら引き留めて 悪かったなって」
雰囲気に対してそんなに悪い人じゃないかもしれない…
とりあえずもう行って良いようなのでその場を後にする。
普通なら手伝ってあげようかと思うが不良っぽくて怖いので仕方がない。
でも、うん、見つけたらまた今度教えてあげよう。
で
気がつくと商店街エリアまで来ていた。
お金が無い俺には無縁の場所だが新作のオモチャは見ているだけで幸せになれるので問題ない。
むしろ買った方が邪道な気さえする
そんな事を思いながらオモチャ屋まで向かっていると。
━━━━「━━━そう、じゃあやっぱり見つからなかったのね…」━━
━━━━「はい、残念な事に数日待ってみましたが…」━━━━
と聞き覚えのある声がカフェテリアのオープンテラスから聞こえてきた。
「あれ? イリヤの母さんだ 珍しい…」
「え? えーと イリヤの友達かしら?」
「あ、ああ いや 俺は士貴の友達の友人です よろしくお願いします 前に授業参観で見たので…」
「まぁ!そうなの!? 士貴にも友達が出来たのね! 」
良かったー と嬉しそうにするイリヤのお母さん。
普通に酷い事を言うが士貴は去年の夏休み明けまでまともに学校に来ていなかったのでそう思われてもその通りだった。
「…そう言えば、その人何かあったんですか?励ましてたけど」
「この人はわたしの友達の舞弥さん 切嗣…士貴のお父さんの元仕事仲間なの」
「いえ、マダッ…」
ジロリ
と厳しい目で睨むイリヤのお母さん。
マダ 何とかの呼び方が嫌なのだろう。
「いえ、アイリ 私を友と呼んで下さるのは嬉しいのですが…」
友達とは違がくないだろうか…。
舞弥は声にこそ出さなかったが、初対面の自分でも気付ける感情がそこにはあった。
「いいえ 違ってなんか無いわ、こうやって一緒にケーキを食べてお話してるんですもの十分お友達よ それに舞弥さん いえ、舞弥がこんなにケーキ好きだなんて驚きだわ ケーキ好きなのね」
そう、他人の俺でも照れくさくなる事を当然の事のように語るイリヤのお母さんに舞弥は照れる様子ないが、一つため息をして口を開く。
「…貴女がそこまで言うのであれば友と言うことにしましょうアイリ、
しかし こんなに と言うのは心外です、まだ七皿程度しか食べてはおりません折角のバイキングなのですからアイリももっと取ってきたらどうですか?
現状でオススメは抹茶黒ゴマロールケーキです」
そう無表情で言う彼女は少し満足気であった。
…ケーキガチ勢かな?
と、少し時間が進み。
折角だからとイリヤのお母さんにバイキングに連れ込まれ一緒にケーキを食べさせてもらっていた。
そんな中イリヤのお母さんが何かを思い出した声を上げた。
「ああ そうだ! 舞弥 ユウト君にも聞いてみましょうもしかしたら何か知ってるかもしれないわ!!」
「そうですね、情報は多いに越した事はないです 、この写真の青年に心当たりはありませんか?」
と舞弥が茶封筒から写真を取り出す。
写って居たのは黒い癖っけの髪に光が無い黒い目に年齢は十代中盤から後半程度の少年と特に特徴の無い人だった。強いて特徴を言えば、目の前の舞弥さんの面影が確かに感じられる位だろうか?
「多分シグマって名乗っていると思うのだけど心当たりない?」
「うーん、無いな~ 町ですれ違ったかもだけど何か違う気もするし…」
折角ケーキをご馳走になっているのだし力になりたいのは山々だけど分からないのは仕方ない。
今日は全く人を探している人に良く出会う、そう言うのは士貴に言って欲しい。
あいつなら顔写真があれば簡単にその人に会いに行けるのに。
まぁ、イリヤのお母さんは士貴のお母さんでもある訳だしそんな事知ってるだろうし言っても仕方ないよな…。
うん、言うのはいいや!
とそんな会話がありながらも、更に時間は進みイリヤのお母さんたちと別れる。
さてと、どこかに行こうと思っていたけれどすっかり忘れてしまった自分に気がついた。
ケーキが旨かったのが悪い。
「まぁ、いいや 士貴の秘密基地にでも行こうと…」
全て罪をケーキに擦り付けて次の予定を立てる、最初からそうすれば良かったと思うがケーキが食べられたので結果オーライだ。
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Kaleid liner編
とある事件後の優雅さが消えた屋敷の話
梅雨
じめじめとした季節で時々霧 等も出て人が不意に消える事もあると言う都市伝説が有ったり無かったりするらしい。
そんな噂を聞いたのはつい最近で、発端はとある動物病院から出て来ようとした、小学生二人組が出入口のドアで転びそうになったところ突如として消えたらしい。
……ちょうどその動物病院はオレの行きつけなのだがそんな物騒な噂が流れて居ると思うと少し足がその病院に向けづらくなる。
という事で暫くの間あの病院に行くのは止めよう、子猫はあの日の内に預けたし行く理由もないのだから当然だ。
「なぁ、士貴 あれって結局サタンだったのか?それともザッハーク?」
「うるさい 黙れ!! 殴るぞ貴様!! オレたちはそんな神話生物は知らん 全て夢だ忘れろッ!!!」
いきなり意味不明なことを言ってくる友人に罵詈雑言を投げつけて。
なにもなかったと脳内の改竄をもう一度始める。
断じてうっかり転んで、時空の穴に落ちて過去なのか未来なのかよく分からない世界に行ってサタンとかザッハークが融合した怪物になんて出会ってない。
「お、おう、でも あの冒険であの西洋屋敷よりヤバい状況になるとは思わなかったぞ?」
「…まぁ、あの冒険 が何の事かはわからないがあの西洋屋敷が危険だったのは他のヤツも居たからだな お前とオレだけならそんなでもないだろ…」
それにあの館はまともに機能することはない。
何種類もの呪いをかけてくる壁紙や絵画に光線やら刃物を放ってくる宝石の数々。
入ったら最後生きては帰さんと言わんばかりの危険なトラップ屋敷はもう、その機能を果たすことはない…。
「でも、あれはヤバかったよなぁ 俺 春樹の心臓が止まった時はどうしようかと思ったわ…
士貴が居て助かった あれは俺じゃどうしようもなかった…」
少し苦そうな表情する友人。
一歩間違えればクラスメイトが死んでいたんだ、どうやってもいい思い出には変わらないのだろう。
「オレが居て って…、オレが居なきゃそもそもあんな洋館行かなかったんじゃないのか?」
そう、あれは去年の秋ごろの話だ。
友人達に誘われ共にもう誰も住んでいない廃墟の洋館へ冒険、と言うよりも肝試しへ行ったのだ。
当時学校に復帰したばかりでクラスでも浮いていたオレの為の友人達によるレクリエーションのようなつもりだったらしい。
正直あまり乗り気では無かったが、その時はオレの為と言うことに気付かず、自分が居なくとも行ってしまうと、何だか嫌な予感がしたので、仕方ないと思いながらついていったのが妙に印象に残っている。
そしてその悪い予感は的中し、冗談抜きで致死性のトラップだらけで割りと瀕死になったがオレの魔眼と友人の身体能力のお掛けでなんとかなったのだ。
「なぁ いい加減帰らないか? 友人 春矢 日辻」
「なんだよ 衛宮 ビビってるのか?」
「なっ!、ビビっては…!」
思わず春矢に反論しそうになる、怖くはないが危険だと確信していた。
自分だけならどうにかできる目は持っているが守りきる自信はない。
一刻も早く真後ろに有る玄関の扉から外へ出たいと心から思っている。
「いや超ビビってるから今すぐ帰ろう!!」
「大丈夫だって だって ただの洋館だぜ?お化け何かいるわけ無いし もし仮に居ても俺が何とかしてやるよ!」
シュッシュッと拳を高速で突き立てる友人。
予想はしてたが完全にただの廃墟だと思っているらしい。
実際はお化け屋敷も真っ青の実害だらけのトラップハウスだ、入ってくる途中も不可視色の砲丸が飛来してきたのを定規で切り捨てた。
不可視なので誰も気付きはしなかったが当たれば致命傷は免れなかっただろう。
元々実体が無かったせいか切った瞬間消えてしまったので証拠すらない。
それに今現在視界に入るトラップの数だけで頭がおかしくなりそうだ。
さて、どう帰らせるか…
そう、思考を巡らせていたが……
パリン!!
と思考を途切らせる様に何処かから何かが割れる音がした。
「なんだ? 今の音 あっちから聞こえたけど」
「まるでこっちに来いって招くような感じだったな」
「ガラス…、じゃないな皿の音だな今のは」
背筋に冷や汗が垂れる。
マズイこのままでは確実に誰か一人は確認をしに行く。
それはダメだ、確実に行った奴が死ぬ。それだけは何とか回避しなくちゃいけない。
「う、うわー、なんだ今の音わあっちから聞こえたぞー?
皆ココで待っててくれオレ見てくるー」
情緒不安定なヤツかオレは、もうちょっとましな事をもっと感情的に言えよ…。
自分の演技力や口下手さに呆れ果てながら、音のした部屋へ周りの罠を全て壊し急いで入り。
即座に扉を閉じて意識を切り替える。
眼球に魔力をフルに流し部屋の全てを把握する。
罠の数はざっと30程 全て一つ一つが別の起動口になっていて、かつ感知と迎撃を備えた術式をしており、オレの目でも一回で全てを壊すことは出来ない様になっている。
「オイコレ オレ以外じゃ絶対死ぬぞ?」
術式を解除するのも困難だがそれを保存している触媒も頑丈で、普通なら一つ無効にするだけでもかなりの時間と労力を費やす事になり、そんな事をしている内に他の罠で殺される。
この部屋に入った時点で詰む仕様だ。
「危ないし全部壊して行くか…」
まぁ、オレには関係無いのだが…。
製作者には可哀想だがどれだけ複雑に術式を組んで配置しても結局 順番に対処すれば紙一重気味だが全て解体するのはそう難しくは無い。
一発でも当たればそれでほぼ死ぬが3~4分の1位の確率で即死じゃ無いので、まぁ何とかなる。
そうこうしている内に全て解体し、この部屋に来た当初の目的の割れた皿を回収する。
そして実害のある危険だと分かるようなモノも罠のなかに運良く有ったのでそれも回収する。
「って誰も待ってねぇ」
当然の事のように玄関には誰も待ってなかった。
玄関の鍵は普通のと魔術的なの両方壊しておいたので帰ったのか、とも思ったが家の別の廊下へと足跡が続いていた……。
全速力で三人の跡を追う、そう離れてはいなかったので直ぐに見つけるが、場は阿鼻叫喚となりかけていた。
春矢が一人白目を向きながら倒れそれを日辻が一人で懸命に心肺蘇生等の治療わして、友人はガトリング光線相手に殴る蹴るで応戦していた。
まるで意味が分からない(主に友人が)と思考を止めかけたが直ぐに意識を正気に戻して、危険な物から取り除く事にする。
製図用のコンパスを取り出してガトリング光線の術式に投擲して壊す。
「友人! 2時の方向の天井オマエから3mのとこを今すぐ蹴り壊せ!!」
友人が壊せる術式を指示しオレも次に起動するモノを取り急ぎ解体する。
春矢の方は日辻の適切な処置で少しは時間稼ぎが出来るので、その間にこの部屋の安全確保をする。
安全確保をして呪われて心肺停止した春矢を治して十分この屋敷が危険なのを痛感し大人しく皆で帰路に着いたのだ。
だが、オレはその日の深夜の内に、また同じような事があったら危ないと思ったので、屋敷の中の危険物を全て片付けて置く事にした。
その過程で色々と自分にも使えそうな魔術のヒントや最後の部屋で見つけた宝箱はかなりの収穫だった。
中には何も入って無かったが宝箱その物はそんじょそこらの財宝よりも価値が有るものだった。
オレのアタシュッケースの元となった礼装。
名前は知らないが物を入れたらほぼ確実にどんな物でも収納出来てしまう万能の宝箱だ。
友人とオレで解析して複製を作ってから秘密基地に設置してある。
一人だけ収穫を獲られたのについて若干の罪悪感を感じるが…。
「そう言えばあの屋敷が結局なんだったか何もわかってないんだよなぁ…」
ふと、黙っていた友人が項垂れる様に口を開いた。
「そう言えばそうだな、一応可憐さんには報告はしたけど、何か色々知ってるみたいだけど教えてくれる気は無いみたいなんだよなぁ、
なんかめっちゃ笑ってたし…」
「可憐先生が素直に教えてくれるわけ無いじゃん、せめて交渉材料がなきゃ…」
すっかり可憐さんの本性に慣れてしまった友人に同意した。
この時はまだ、後の惨劇をまだ知らない……。
某年某月某日
ほぼ廃屋と化したとある少女の屋敷にて……。
「なんじゃこりゃぁああああ!!!」
少女はあまりの惨状っぷりに優雅さや華麗さを忘れて絶叫した……。
そして、犯人は必ず殺すと亡き父や母に誓ったのだ。
とある事件後と言うのは私の執筆速度などを考えて省かせて頂いた冒険の話です。
何時になるか分かりませんが原作にたどり着いて、切りが良さそうな所に行ったらそちらの方も書かせていただきます。
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とある少女との出会い
5月某日今年のゴールデンウィークは特に何もなく平和に過ごせた、そのまま何もなく平和に過ぎれば良いなぁと思う反面、退屈なのも嫌だなぁとも思っていた。
しかし、それはせいぜい猫探しとか程度でそんな大それた事じゃなかった筈だ。
「お兄ちゃん!!」
断じてオレに妹が出来るとかそういう話ではなかったはずだ。
数時間前 丁度朝食を食べ終えて今日の予定を考えていた時にきた一本の電話から始まる。
例のごとく 可憐先生から「ちょっとそこの山が色々面倒な事になってるみたいだから、とても目の良いあなたに調べて貰いたいのだけれど」殆どの一方的に頼まれた事が発端だった。
「…なんだコレ」
その辺りの土を試験管に入れてみて見る。
円蔵山のとある区画、ちょうど地下大空洞の上の所に来ていた。
そこの土には見た事の無い有毒物質や、この地区で見ない植物の根が数種類含まれている。
「しかも、こんな時期に雪…?」
ほぼ溶けかかっているが土の表面上に雪がまるで少し前に降ったばかりの様についている。
。
ただでさえココは温暖な気候で雪が殆ど積もらないのに木陰でも無いのに残ってる…。
山の地脈や霊脈が千切れているのから始まり、生えていたはずの木々の消滅や入れ替わるように現れた数種類の未確認物質。
ココは異世界からでも来たのか?
そう、考察していると、携帯電話の着信音が鳴る。
「…もしもし?」
「ああ、士貴? そう言えば言い忘れていたのだけれど、朝方誰も居なかった筈の地下大空洞から一人で出て来た少女が居ました。
まぁ今回の件に関係ありませんが些細な事でも無いので一応伝えておきます。」
そう、言い終えると再び一方的に電話が切れる。
連れては来るなと言うことだろう。
「探すか…」
ため息をついて、件の少女を探す事に決めた。
丁度ココらへんの調査も一段落したところだし
洞窟の入り口に降りると、すぐに不自然な足跡を見つけられる。
それは一番新しいもので20cmくらいの外へ向かう裸足の足跡だった。細さや深さから軽い体重の女の子の物だとすぐに分かるし、この大きさの足跡はこれだけだ。
少し気になったのはその上から黒い布の繊維が引っかかっていた事だが、探す手掛かりが増えただけなので、どちらかと言うとプラスだ。
あとは、その足跡を追って少女を見つけるだけだった。
「なあ、あんたこんな所でなにやってんだ?」
足跡を追って、少女を見つけたのは林にあった大きな木の根のうろの中だった。
そこにすっぽりとうずくまり、異様に長いスカートを抱えるように纏って小動物の様に震えていた。
少女はオレの声にビクリと体を震わせて恐る恐るオレの顔を見た。表情は恐怖から歓喜の色に変わる。
「お…、お兄ちゃん!!」
「は?」
オレの顔を見るなりそう言いながら飛び出すように抱きついてきた。
無事で良かったとか さっきはごめんなさいとか 一人で寂しかったとか色々と言っているが、断じてオレはこの少女の兄では無いので抱き返す事に躊躇する。
「えっと…、感動の再会を果たしたような感じをぶち壊すようで悪いんだけど、本当にオレは君の兄か? 見たところ同い年くらいに見えるんだけど…」
え? と少女はオレの顔をよく見て、足下から頭へと身長を確認し、顔がみるみるうちに赤くなっていく。
「ごっ、ごめんなさい! お兄ちゃ...兄によく似ていたので、つい...」
「いや別に気にしては...」
「本当にごめんなさい!!」
オレの言葉も聞かず、少女は慌ててこの場を去ろうとするがそれを慌てて止める。
「いや、まて まて 落ち着け 人違いで恥ずかしいのは分かるけど、そんな格好をしている子を放って置けるほど人格腐ってないぞオレは」
見るからに特殊そうな魔術的な事情を察する服だが問題はそこじゃない。
普通に考えてももうすぐ夏だからってどう考えても彼女の着ているワンピースは薄すぎるし、こんな山奥で裸足は危ない。
「コレでも金はあるんだコンビニで売ってる服ぐらいなら買ってやれる」
「コンビ...? えっと、いや、でも…」
「別に良いよ、そんな格好をしているんだ、なんか事情があるのは分かるけど聞こうとも思わない」
そう言ってもまだ、もじもじしとしていたが、その後数十分の説得の末 少女は大人しく折れてくれた。
「とりあえずこんな所で立ち話もなんだし移動しよう、良い場所があるんだ」
とオレは腰を低くして背中を少女に向ける。
「えっと…?」
「乗れよ 裸足じゃ危ないって話してんのにそのまま移動させる訳ないだろ?」
「…えっと、お願いします…」
「よし来た」
彼女を背負っていつもの山小屋に向かう、あそこなら雨風はしのげるしベッドだってある。そこら辺で野宿させるよりかは良いだろう。
「そうだ、オレは衛宮 士貴 あんたは?」
「えっと……、美遊…です」
何か後ろめたい事でもあるのか、少し沈黙して絞り出す様にそう言った。
道中で軽く自己紹介だけでもと思ったが何故か辛い思いをさせてしまったらしい。
少し後悔しながら山小屋に彼女を連れて行った。
それがオレと後の美遊・エーデルフェルトという少女との出会いだった。
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