ウルトラマンメビウス&ストライクウィッチーズ (オレの「自動追尾弾」)
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邂逅編
第一話 出会いの空で


今から43年前、地球は、怪獣や宇宙からの侵略者の脅威に晒されていた。

 

人々から笑顔が奪われそうになった時、遥か遠く『光の国』から、彼らはやって来た。

 

『ウルトラ兄弟』と呼ばれる、頼もしいヒーローたちが。

 

そして今――――――

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

小高い丘にある、街を見わたせる高台。そこから二人の男性が、街を見下ろしていた。

一人は、デニムのジャケットを着た人の良さそうな優しい顔の20代前半程の青年、もう一人は、白いTシャツを着て短い髪を逆立てた強気そうな同年代の青年だ。

 

「……この景色も、しばらくは見られなくなるなあ。」

「やっぱ寂しいか、ミライ?」

 

ミライと呼ばれた青年の呟きに、髪を逆立てた青年が聞く。ミライは青年―――アイハラ・リュウに振り返った。

 

「はい。明日には、もう帰らなければいけないので………」

 

ミライは本来、『ここ』から遠い場所で警備チームの任務に就いている人物である。

ひと月ほど前、今は亡き暗黒の皇帝『エンペラ星人』の遺産『アーマードダークネス』を追ってきたミライは、リュウたちと共にこれを破壊する事に成功した。

その後、ミライは上司の計らいで休暇をもらっていた。アーマードダークネスの影響で出現が頻発していた怪獣たちはぱたりと現れなくなり、このひと月、平穏な日々を送れたのだが、それも今日で終了、明日には再び警備隊の任務に戻らねばならなかった。

そこでリュウは最後にと、ミライと共にこの場所に、3年前、二人が初めて出会ったこの場所に来ていたのだ。

 

「早いモンだよなあ、もう1カ月経っちまったのか………」

「でも、またリュウさんたちに会えて、嬉しかったです。」

 

よせやいと、ミライの言葉に照れたように返すリュウ。ミライは満面の笑みでそれを返すと、再び街を見下ろした。アーマードダークネスの接触が原因で起動した『ダークネスフィア』の落下を阻止した事で、今日も平穏な日を過ごしている街を見ていると、二人は自然と笑みを浮かべてしまう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――ぁぁぁぁぁぁあああああああああ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん………?」

「何だろう?」

 

ふと、どこからか声が聞こえてきた。その声がどこからかと辺りを見わたす二人は、発信源の場所に行きついた。そこは、

 

「「………上?」」

 

空であった。上を見上げた二人が見たものは――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「きゃああああああああああああああああ!!」」

「………………えええっ!!?」

「マジかよぉお!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『二人の女の子』が、ミライたちの元へ、空から真っ逆さまに落ちて来る真っ最中であった………

 

一瞬茫然としてしまったミライとリュウであったが、慌てて彼女たちの元へ駆けだすと、受け止めようと両腕を伸ばした。

 

あと少し、ミライと少女が激突すると言うその時だ。

少女たちの身体が急にグンッ、と減速し、ミライとリュウは二人をガッシリと受け止めた。

 

「………ふう~~~、危なかったぁあ~~~」

「な、ナイスだ、ミライ………正直、ダメかと思ったぞ………」

「君、大丈夫かい!?」

「きゅう~………」

 

ミライは受け止めた少女に声をかけるが、二人の少女は目を回して気絶をしていた。

 

「気絶しているみたい、ですね………」

「こっちもだ………っていうか、何つう格好してんだコイツら!?」

 

先ほどは彼女たちを受け止める事で頭がいっぱいだったが、よくよく見てみれば、二人の少女はとても奇妙な格好をしていた。

 

一人は髪を肩のあたりで切りそろえてセーラー服を着ているが、その下は紺色の水着を着用しているのみである。

もう一人に関しては、ベージュ色の髪を腰まである一本の三つ編みにして、ベストとワイシャツの上に上着を着ているが、下はローライズの下着のみと言う格好であった。

 

そして二人とも、その両の脚には飛行機に似た長いブーツのような物を装着し、更に手や肩に銃を持ち、短い髪の少女は、右手に古い型のカメラを握りしめていた。

 

「………この子たちは、一体………?」

 

ミライは、少女の顔を見つめながら、そう呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ウルトラマンメビウス&ストライクウィッチーズ

 

第一話 出会いの空で

 

異次元怪異ネウロイ(GX-01)

宇宙怪獣ベムラー

登場

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

GUYS(ガイズ)』とは、ニューヨーク沖に総本部を置く怪獣防衛組織であり、その名前は『Guards of UtilitY Situation(あらゆる状況に対応する防衛隊)』の頭文字を取ったものである。

各国のGUYS本部には怪獣や宇宙人に対しての実践部隊である『CREW GUYS(クルーガイズ)』が配備されており、日夜、人々の平和を守っているのだ。

そして、関東の都市郊外に設置された基地内中央にそびえるここは、日本の防衛チーム『GUYSジャパン』ベースのシンボル『フェニックスネスト』である。

 

 

 

 

 

「―――空から、二人の女の子が?」

 

その作戦指令室である『ディレクション・ルーム』で、黒い髪を外にハネさせた女性―――『CREWGUYSジャパン』新人オペレーター『ババ・エリ』(愛称はエリー)は、本日非番のアイハラ・リュウ隊長からの通信を聞き返していた。

 

[ああ、妙な格好で、銃まで持ってやがる………]

「銃?」

[結構古い型の機関銃とライフルだ。しかも、モデルガンとかじゃなくて本物だ。資料で見た事がある程度だが、大戦時に使われていた銃によく似ている。]

 

リュウの答えに首を傾げるエリー。すると、それを横で他の隊員たちと聞いていた小柄で髪の薄い男性、トリヤマ補佐官が横から割り込んできた。

 

「あーアイハラ隊長、その子らはアレだ、いわゆるコスプレでもしていて、そこを宇宙人に攫われた、という事ではないのかね?」

[いや補佐官、それじゃあ銃の説明が付かない。それに、軍服の下に下着や水着以外何も履かないこんな格好はコスプレとしてもおかしいし、何より、脚に着けていたこの装備の説明もつかない。]

「………え?その女の子たちって、そんな格好なんですか?」

 

若干引き気味でそう聞くのは、新人隊員のハルザキ・カナタである。ひと月前に起きた『アーマードダークネス事件』では旧CREWGUYSメンバーと共にダークネスフィアで活躍した隊員だ。

 

「ちょっとハルザキく~ん、まだ見ぬ少女に何を欲情しているのかな~?」

「!?そ、そんなのじゃないですよ!!」

「やめてやって下さいよ、マリさん。カナタはこう見えて結構ウブなんスから………」

 

そんな反応をしたハルザキに気付いたのか、ショートヘアーで緑色のカチューシャを着けたハルザキより2~3歳年上くらいの女性『トウドウ・マリ』がからかうが、それを見ていた大柄で眼鏡をかけた男性隊員『イノウエ・コウジ』がフォローする。

そんなやり取りを横目に、エリーは通信を続ける。

 

「それで隊長、二人の様子はどうなのでしょうか?」

[今の所は気絶しているだけだ。目を覚ましたら話を―――]

[リュウさーん!]

 

リュウが言いかけた所で、ミライの呼ぶ声がした。どうやら、少女たちが目を覚ましたようだ。

 

[―――っと、またかけなおす。]

「G.I.G.」

 

そう言って通信が切られた。

 

「まったく、今日はサコミズ総監がいないというのに………」

「そう言えば総監、今日は何でお休みなのですか?」

 

トリヤマのぼやきに、マリがそう問いかける。するとそれに、背の高い男性、マル秘書官が答えた。

 

「先日亡くなられたお姉さんの遺品整理を手伝いに行っているそうです。」

「あー、そう言えば、葬儀に出席するって言って、先々週も休んでいましたね。」

 

コウジは、思い出したようにそう呟いた。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

リュウがGUYSに通信をしている頃、ミライは二人の装備していた銃やブーツのような物を脇に置き、少女をベンチに寝かせて様子を見ていた。

ふと、何かが気になったミライは、ショートカットの少女の額に手をかざし、目を閉じて意識を集中させた。

しばし目を閉じていたミライは、少女が何か強い力を持っている事を、手のひらを通じて感じ取った。

 

(この子は、間違いなく地球人だ。だけど、何だろう子の力は?まるで陽の光に似た温かさを持っているけれど、今まで感じ取った事のない力だ………)

 

少女の中に眠る未知の力に疑問を持つミライ。その時、目を覚ましたのか少女が瞼をゆっくりと開いた。

 

「う………ん?」

「あ、気が付いたかい?」

「え?ここ………は………?」

 

ミライは慌てて手を引っ込めると、少女に優しく声をかける。少女は身を起こすと額に手を当てて、自分がどうしていたのか思い出そうとする。

 

「え、ええと、確か私たち………ヴェネツィアの巣の調査に行って、それで………」

「大丈夫かい?急に空から落ちてきて、今まで気を失っていたんだよ?」

「え?あ、ええとその、だ、大丈夫です!ありがとうございます!」

 

しばし思い出すように呟いていた少女であったが、急にミライの顔が目の前に現れ、驚いて返事をした。ミライはよかったと笑顔で返すと、振り返ってリュウを呼ぶ。少女は周りを見わたしていると、自分の銃やブーツのようなもの、そして、

 

「!リーネちゃん!!」

 

ベンチで眠る親友の姿を見つけた。少女は親友、リーネの元に駆け寄り、彼女の容体を見た。

 

「………良かった、怪我はないみたい。」

「ええと、その子、リーネちゃんっていうのかい?」

「はい。私と同じ部隊で、大切な友達です。」

 

安心したように少女はミライに答える。ちょうどその時、通信を終えたリュウが駆け寄って来た。

 

「おお、起きたか。」

「は、はい………」

「あ、そう言えば君、名前は?」

 

ミライが気付いたように少女に聞く。少女は多少戸惑いながらも、名前を二人に名乗った。

 

「あ、宮藤芳佳って言います。」

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

ミライたちと芳佳が会っていたその頃、フェニックスネストでは東京の3,200m上空に高エネルギー反応を観測していた。

 

「高エネルギー反応ですって?」

 

ショートカットの黒髪に黒いスーツの女性、総監代行ミサキ・ユキは、ディレクション・ルームに入って来て早々にそう聞いてきた。

 

「このエネルギーの波長は……『四次元エネルギー』です!」

「何いい!?」

 

『四次元エネルギー』、それはその名の通り四次元空間が発生した際に生じるエネルギーのことである。解析していたコウジがそう報告をすると、トリヤマが声を上げる。

 

「映像出ます。」

 

エリーはディレクション・ルームのメインスクリーンに、映像を映し出した。

映像では、東京の上空の空間が歪み、各種観測装置の数値化されたデータが映っていた。

 

「空が、歪んでいる………?」

「アーカイブ・ドキュメント内に残る、四次元に潜む怪獣や宇宙人の記録と照らし合わせた結果、これは、何かが来る前触れと推測されます!」

「出現予想時間は?」

「エネルギーの上昇スピードから計算したところ、約35分後と予想されます!」

「ええい、一か月前にようやくダークネスフィアの問題が解決したというのに!」

 

エリーの報告に対し、悔しがるトリヤマとマル。だが、今はそのような場合ではない。ミサキは隊員たちに向き直り、冷静に指示をする。

 

「すぐに周辺住民を避難させてください。ハルザキ君はアイハラ隊長に連絡を。」

「「「G.I.G.!」」」

「マル、『ガンフェニックス』の修理状況は!?」

「昨日、最終チェックをして、いつでも飛ばせるという事です。」

 

『アーマードダークネス事件』で、GUYSの主力戦闘機『ガンフェニックス』は一度破壊されてしまい、つい先日まで整備班が修復作業に追われていたが、その甲斐あってようやく直り、怪獣や宇宙人に対抗できる訳だ。

 

「よし、アイハラ隊長が到着次第、ガンフェニックスとガンブースターを発進させるぞ!あの歪みから怪獣だろうと何だろうと、何が出てきても良いようにしておけ!!」

「「G.I.G.!」」

 

トリヤマの指示に、カナタたちが答えた。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「大丈夫、リーネちゃん?」

「うん、ありがとう、芳佳ちゃん。」

 

一方その頃、芳佳と、先ほど目覚めたリーネことリネット・ビショップに話を聞く事にしたリュウとミライ。芳佳とリーネがミライの買ってきた缶のお茶に口をつけていると、早速話を切り出した。

 

「で、お前たちはどこから来たんだ?しかもそんな古い型の銃なんか持って。」

「え?古いって………」

「芳佳ちゃんの九九式二号二型改13ミリ機関銃は、『最近』配備されたものですけれど……」

「最近?」

 

リーネの言葉に、リュウが首を傾げる。先ほどトリヤマに報告した通り、二人の持つ銃は大戦時に開発がされたものだ。それを最近配備されたと言っているのは何故か?

 

「何言っているんだ?これを使っていたのは、60年以上前の大戦末期だぞ?」

「60……え?そんなはずは………」

「ええと、今は1945年、で合っていますよね………?」

「へ?」

「は?」

「「……え?」」

 

芳佳の質問に呆気にとられるリュウとミライ、そして、二人の反応に声を上げる芳佳とリーネ。しばし、両者の間に沈黙が流れるが、リュウが若干困惑した様子で口を開いた。

 

「………何言ってるんだ?今は2009年だぞ?」

「「えええええええええ!!??」」

 

リュウの言葉に驚く二人。ミライたちも驚いた様子である。

 

「………どういう事だ?」

「まさか、本当に1945年から来たって事でしょうか?」

「ええ?わ、私たち、60年後の未来に来ちゃったってことですか!!?」

「………いや、それだったら、余計にこいつらの格好とアレの説明がつかなくなる。」

 

困惑する芳佳たちと、小首を傾げるミライ。だが、リュウは芳佳たちの装備品であるブーツのような物に指を指した。

 

「ストライカーユニットのこと、ですか?」

「ああ、あんなもの、見たこともないぞ。」

「………どういう事でしょう?」

 

リュウの説明に、ミライが首をかしげた。芳佳とリーネは、未だに困惑した様子であった。

 

「………急な事で混乱しているようだが、お前たちがどこから、どうやって来たのか色々調べる必要がある。少し落ち着いてから―――」

 

そうリュウが言いかけた時だ。リュウのポケットから通信音が鳴り響いた。

リュウはポケットから小型モバイルパッド『メモリーディスプレイ』を取りだすと、モニターに表示された通信先がGUYSジャパンベースである事を確認し、スイッチを入れた。

 

「こちらアイハラ。」

[アイハラ隊長、至急本部に来てください!東京上空に、高エネルギー反応が観測されました!]

「何?」

 

通信してきたカナタの言葉に、眉をひそめるリュウ。基地のカナタは、続けてきた。

 

[後30分ほどで観測地点から何かが出てくると予想されています。ガンフェニックスはいつでも出せますので、隊長も早く!]

「つっても………」

 

リュウは振り返った。今自分が基地に戻ったら、混乱している芳佳とリーネをミライ一人に任せる事になってしまう。するとそれを察したのか、ミライは笑顔でリュウに答えた。

 

「リュウさん、行ってきてください。」

「ミライ………」

「芳佳ちゃんたちは僕が見ていますので、リュウさんは早く。」

 

ミライは笑顔でそう答える。リュウは口の端を釣り上げると、

 

「……余計に不安になるけどな。」

「あ、ひどいですよ!」

「冗談だ。頼んだぞ!!」

 

そう叫んで、リュウは駆けだして行った。その様子を見ていた芳佳が、ミライの隣にまで歩いてきた。

 

「あの、アイハラさんって、軍の人なんですか?」

「まあ、似たようなものかなあ。怪獣防衛チームの隊長さんなんだよ。」

「怪………獣?」

 

ミライの言葉に、芳佳とリーネは顔を見合わせた。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

それから10分後、GUYSの制服(襟が白い隊長専用のもの)に着替えヘルメットを被ったリュウは、複座型小型ポッド『ガンスピーダー』にカナタと共に乗り込み、メモリーディスプレイをセットした。

 

《Welcome to Gun Speeder.》

[エネルギーの観測ポイントは、東京J地区の、上空3,200mです。]

「…さっきの場所から、そんなに離れていないな。」

「隊長、ミライさんは…」

 

後部席のカナタが不安そうに聞くと、リュウは、ふ、と笑う。

 

「ま、マジでヤバくなったら駆けつけてくれる。そういう奴だろ?」

[こちらガンスピーダー2、イノウエ、搭乗完了しました。]

[同じくガンスピーダー3、トウドウ、搭乗しました!]

 

ちょうどその時、同じくガンスピーダーにそれぞれ乗り込んだマリとコウジから通信が入った。

一方、フェニックスネストの地下ドックでは、白いボディの両翼に描かれた“ファイヤーシンボル”が特徴の戦闘機『ガンフェニックス』の発進準備が進んでいた。ガンフェニックスが所定位置に着くと、リフトが上昇して、フェニックスネストの目の前に出現した。

 

「ガンスピーダー、ブラストオフ!」

 

それを確認したリュウの掛け声と共に、ガンスピーダーは発進位置へと移動、リフトに乗り、そこを下って行く。

フェニックスネストからブリッジが伸びて接続されると、そこをガンスピーダーが通りガンフェニックスに搭載され、コックピットとなる。同じくマリの乗るガンスピーダー2がガンフェニックスの後部に搭載されると、発進準備は整った。

 

「ガンフェニックス、バーナーオン!!」

 

リュウの号令と同時にガンフェニックスは垂直離陸、ある程度の高度まで行くと後部のジェットエンジンを噴射させ、発進した。

 

「ガンスピーダー3、ブラストオフ!」

 

それから間を置いて、地下ドックから下部にブースターを釣り下げ、金色に輝く翼を持った姿が特徴の機体『ガンブースター』にコウジの乗るガンスピーダーが搭載され、カタパルトが上がる。

 

「ガンブースター、バーナーオン!!」

 

そしてガンブースターは空高く飛びたち、ガンフェニックスと合流、そのまま高エネルギー発生地点まで飛んで行った。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「来た!」

「見た事のない戦闘機……」

「あれに、アイハラさんが…」

 

それから十数分後、高台からガンフェニックスとガンブースターが飛んでくるのを確認したミライは、声を上げた。

すでに上空の歪みは大きくなっており、ミライや芳佳たちにも分かるほどになっていた。

 

「間もなく、出現予想時間です。」

「あれか……」

 

リュウは、目の前で渦を巻くように歪む空を確認して呟いた。その時ガンフェニックス後部でエネルギー発生点を観測していたマリが声を上げた。

 

「四次元エネルギー、急激に上昇!何か来ます!!」

「何!?」

 

マリの声に発生源を睨みつけるリュウ。発生源の渦は回転を早めていき、やがて光球のようになった。

 

「お出でなさったか!」

 

睨みつけたリュウが叫んだ瞬間、光球がパンっ、とはじけ飛び、中から『それ』は現れた。

 

 

 

 

 

「キィィイイイイイイーーーーーーーーーーーーーーー!」

 

 

 

 

 

「ッ!?………え?」

「そ、そんな………!」

「ふたりとも………?」

 

甲高い鳴き声を上げる『それ』を見た芳佳とリーネは、顔を青ざめる。

 

 

 

『それ』は、全長約100mの黒いハニカム状の体表を持った、主翼と尾翼をアーチ状のパーツで繋いだずんぐりとした前翼機のような姿で、身体の各部分を赤く輝かせていた。

 

 

 

「「………『ネウロイ』!」」

「ネウロイ?」

 

二人の呟いた名前を聞き、ミライは再度、上空の黒い航空機のような物を見る。だがミライが目を離した瞬間、二人は先ほどの装備品の元へ駆けだして行った。

 

「え、ちょっと!?」

「すみませんミライさん!でも、私たち行かないと!!」

「え?」

「ごめんなさい!」

 

二人はミライに謝ると銃を肩にかけ、ブーツのようなものに脚を入れる。瞬間、眩く光る紋様が地面に現れ、同時に芳佳の頭から豆柴の耳、お尻から尻尾が現れ、リーネの頭とお尻からはスコティッシュフォールドの耳と尻尾が現れた。

 

「………ふぇ?みみ?え?」

「行きます!」

 

ミライが驚くのもつかの間、芳佳たちの装置から光るプロペラが出現、そのまま回転を始めたかと思うと、土煙を上げて飛び上がってしまった。

 

「ゲホッ、ゲホッ………うそー?」

 

土煙にむせていたミライは、空に飛んで行った二人を見上げて、思わずそう呟いた。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「………何だこいつは?」

「見た感じ宇宙船っぽいですけど………?」

 

一方、ガンフェニックスを駆るリュウとカナタは、目の前に現れたネウロイを見て首を傾げていた。フェニックスネストでネウロイを解析していたエリーは、解析結果をリュウに通信する。

 

[いえ、微弱ながら生命反応を感知しましたが、宇宙人などの物ではありません。いうなればそれは、『金属怪獣』です。]

「金属怪獣………」

 

マイがそう呟いた瞬間、ネウロイが血のように赤いビームを赤い部分から無数に放ってきた!

 

「隊長!」

「ガンフェニックス、スプリット!」

 

リュウの号令と共に、ガンフェニックスは前部のガンウィンガー、後部のガンローダーに分離し、ビームをギリギリでかわした。ネウロイのビームのいくつかは地上の建物に当たって爆発を起こし、避難途中の住人たちの悲鳴が上がるのを見たカナタがリュウに叫ぶ。

 

「お友達になりたいって意思はないみたいですね!」

「攻撃開始!」

「「「G.I.G.!」」」

 

三機のガンマシンは旋回すると赤いビームを搔い潜り、ネウロイに向けて攻撃を始めた。

 

「ウィングレッドブラスター!」

「バリアブルパルサー!」

「ガトリングデトネイター!」

 

ガンウィンガーは両翼から赤い熱線を、カンローダーは機首から黄色い重粒子ビームを、そしてガンブースターは6門ものビーム砲をネウロイに浴びせ、ネウロイのその身を削いでガラス片のような体表をまき散らした!

 

「キィイイイイイイイ!!」

「効いています!」

「……いや、見ろ!」

 

カナタが歓喜の声を上げたが、リュウは見た。今の攻撃で破壊されたはずのネウロイの体表が、瞬く間に再生していく様を。

 

「再生していく!?」

「あの程度、なんて事ないっていうの!?」

 

コウジとマイが驚きの声を上げる。だが、リュウは冷静に判断を下す。

 

「……いや、攻撃は通ったんだ。どっかに弱点があるはずだ。エリー、ヤツの身体を詳しく―――」

 

 

 

バキンッ

 

 

 

「「「「!?」」」」

「キィイイイイイイイ!!」

 

リュウが指示を出そうとした瞬間、突然、ネウロイの前側の翼が弾け飛んだ!

 

「今のは!?」

「レーダーに機影あり!でも、この大きさは……?」

「!あれは…!」

 

その時、リュウは気付いた。真下から芳佳とリーネがネウロイに向けて銃を掃射しながら上昇してくるのを!

 

「お、女の子が、飛んでいる………!?」

「あいつら………!」

 

芳佳たち二人の姿を見たリュウが驚いたようにつぶやく。が、二人がネウロイに銃弾を浴びせているのを見て、すぐさまガンウィンガーの外部スピーカーをオンにして叫んだ。

 

「オイお前ら!」

「わ!?アイハラさん!?」

「何やってんだ!危ないから下がってろ!」

「嫌です!ネウロイがこうやって出てきている以上は、私たちが!」

「ネウロイ?」

 

芳佳に向けて怒鳴っていたリュウだが、芳佳の口から出た単語に疑問を持ち、再びネウロイに目を向ける。

 

「この怪獣のことか?」

「何であの子たちが、あの怪獣の事を?」

「お前ら、アイツの事知っているのか?」

「はい!私たち“ウィッチ”は、ネウロイと戦う為にいるんです!」

 

ネウロイのビームを手から発生させたシールドで防ぎながら、芳佳が叫ぶ。カナタたち三人が未だに戸惑っているが、そんな中リュウははあ、とため息をつくと、再び叫んだ。

 

「仕方ねえな……だったら任せてやる。」

[アイハラ隊長!何を勝手に………]

「だが、詳しい話は後で聞かせてもらうぞ。コイツに弱点はあるのか?」

 

トリヤマからの通信を気にせず芳佳に聞くリュウ。芳佳は機関銃でけん制しつつ、答えた。

 

「ネウロイは、内部に赤い「コア」があります!それを砕けば破壊されます!」

「でも、それにはネウロイの装甲を剥がす必要が……!」

「分かった。聞いたなみんな!攻撃を続けて、コアとやらを露出させるぞ!!」

「「「G.I.G.!」」」

 

リュウの指示を聞いた三人は、力強く答えた。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「何でこっちの話を聞こうとしないのだ、あの隊長はあ!!」

 

一方、その様子をモニター越しで見ていたトリヤマは、突然現れた芳佳たちの協力を許したリュウに対して声を荒げていた。そこに、この場を冷静に見ていたミサキ代行が意見を述べた。

 

「しかし、今の会話から彼女たちがあの怪獣―――彼女たちの話から、便宜上『ネウロイ』という名前で呼びますが、それを倒しているというのであれば、非常に心強い味方です。」

「そ、………そうですよねぇ~~!いやあ、誰だかは知らないけれど、助かった助かった!」

 

ミサキの言葉に意見を急転換したトリヤマに、エリーとマルは顔を見合わせてため息をついた。モニターの向こうでは、芳佳が目の前に魔法陣のような物を展開させて、ネウロイのビームを防御していた。それを分析するエリーが、報告をした。

 

「通常、あのような機関銃や対戦車ライフルでは、あのサイズの怪獣にダメージは与えられません。たった今のシールドを含めて、彼女たちには、何らかの特殊な力を備えている可能性があります。」

「それが、あのネウロイとやらにダメージを与えていると?」

「はい。」

 

トリヤマの質問に対し、エリーは短く答える。話している間にもネウロイの攻撃は続き、街に少なからず被害が生じていた。それを見たミサキが、リュウに通信を入れる。

 

「アイハラ隊長!これ以上街に被害が出る前に、ネウロイをせん滅させる必要があります!直ちにメテオールを―――」

 

 

 

ビー!ビー!ビー!

 

 

 

ミサキが全て言いきる前に、ディレクション・ルームにアラートが鳴り響き、更なる緊張が走った。

 

「今度は何事だ!?」

 

トリヤマの叫びに、エリーはキーボードを叩き、状況を報告した。

 

「GUYSスペーシーより緊急連絡!日本の上空約3万メートルに、謎の次元エネルギーを捕捉!!」

「何だと!?」

「スゴイエネルギー量………すぐにでも怪獣が現れます!」

 

エリーの報告に、トリヤマたちの顔が青ざめる。ミサキは更なる危機を感じ、通信機に叫んだ。

 

「アイハラ隊長!!」

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「あれは!?」

 

その時、高台からネウロイとGUYSの戦いを見ていたミライは、上空から『青い光』が、こちらに向けて高速で落下してくるのを見た。

 

「青い光………!まさか!?」

 

ミライは、青い光に心当たりがあった。

 

その瞬間、青い光はネウロイとガンウィンガーを掠めて地上に落下し、もうもうと粉塵を巻きあげた。

 

「何!?」

「あれは………!?」

 

粉塵の中からフラッシュのように光を点滅させながら、ソイツは現れた。

 

 

 

 

 

トゲとうろこに包まれた寸胴な直立体系の身体、

鋭く光る金色の目、

尖った爪を生やした短い腕と長く伸びた尻尾。

 

 

 

 

 

「ギャァアアアアアアアオオオオオ!!」

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

 

咆哮を上げたその怪獣をフェニックスネストで確認したエリーは、過去の怪獣や宇宙人の記録が載った『アーカイブ・ドキュメント』のデータを呼び出した。

 

「ドキュメントSSSP(スリーエスピー)に、同種族の記録を確認!」

 

その怪獣は42年前、竜ヶ森湖で初めてウルトラマンが地球で戦った相手、その名も―――

 

 

 

 

 

「レジストレーション・コード、『宇宙怪獣ベムラー』!!」

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「ベムラーだと!?」

「あれって、あの時の………!」

 

ベムラーの姿を見たリュウと芳佳が、驚きの声を上げる。ベムラーは口から青い熱線を街に向けて吐き始め、街を爆炎に包みこんでいく!

 

「街が………!?」

「こっちは俺たちに任せて、ガンローダーとガンブースターは、ベムラーの方に行け!」

「「G.I.G.!!」」

 

リュウの号令を聞き、二機はベムラーに急行、リュウは照準をネウロイに向けると、機首に装備された『ビークバルカン』を放った。

 

「お前の相手は俺たちだ!!」

「キィイイイイイ!!」

 

ネウロイは鳴き声を上げながら赤いビームを放ち応戦してくる。その時、ネウロイのビームの一閃が地上に向けて放たれる。

 

「えーん、えーん!」

 

芳佳たちは気付かなかった。そのビームの先に、逃げ遅れた小さな男の子がいることに!

だが、気付いたとしても既に遅い。ネウロイのビームは、男の子に向かって一直線に迫って行く―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁあああああああああッ!!」

 

 

 

ドオッ!!!

 

 

 

「………?」

 

だが、ビームは男の子に当たるはるか前で何者かによって二つに枝割れし、道の左右に着弾、爆発を起こした!

 

「早く逃げろ!」

「う、うん!」

 

男の子は涙を拭うと、立ち上がってその者の言うとおりに走って逃げて行った。それを見送ると、上空のネウロイに向けて飛び立った。

 

「え………!?」

「あれは……!?」

 

その爆発で、ようやくリュウたちは気付いた。白い軍服を着て右目の眼帯とポニーテールの女性が、日本刀を片手に自分たちの元に飛んでくるのを。

 

「坂本さん!!」

「宮藤、リーネ!無事だったか!!」

 

坂本と呼ばれたその女性は芳佳とリーネの姿を見ると、笑みを浮かべる。だが、そこにネウロイのビームが放たれて坂本に迫るが、芳佳が寸での所で障壁を張って防ぐ。

 

「今はコイツらが先だ!」

「はい!」

 

ネウロイのビームを防ぎながら芳佳が返事をする。その時、ガンローダーとガンブースターを尻尾の攻撃で後退させたベムラーが、ビームを防ぐので無防備な芳佳にむけて青色熱線を放った!

 

「芳佳ちゃん!!」

「「!?」」

 

リーネが叫ぶが、今の彼女たちの位置からでは到底間に合わない!

皆がそう思ったその時―――

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

その頃、高台で戦闘を見ていたミライは、ベムラーの口から青色熱線が放たれようとしているのを見て、左腕を構えた。すると、左腕に光が集まり、それは赤に金色のラインが光るブレスレットとなった。

ミライはそのブレスレットの中央にはめ込まれた球状のクリスタルに右手を当てると一気に振りおろして回転させ、左腕を突き上げ、叫んだ。

 

 

 

 

 

「メビウゥゥウウウウウウウス!!!」

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

リーネが叫ぶが、今の彼女たちの位置からでは到底間に合わない!

皆がそう思ったその時―――

 

 

バシュゥウッ

 

 

「!?」

「え………?」

「あれは………?」

 

突如、金色の光が飛来して青色熱線を弾き返し、驚くベムラーと芳佳たちの間にとどまった。

 

「あれは………!」

「間違いない!」

「来てくれたか!!」

 

「メビウスの環(∞)」のような軌跡を描きながら見る見るうちに人型になって行く光を見つめて、リュウたちが感嘆の声を漏らす。

 

 

 

赤いラインを走らせた銀色の身体、頭頂部とこめかみには後方に伸びるヒレ状の突起を持ち、胸にはひし形の『カラータイマー』を青く光らせ、左腕に『メビウスブレス』がきらりと輝く。

 

 

 

 

 

「ウルトラマン………メビウス………!」

 

 

 

 

 

『ウルトラマンメビウス』が、戦場に降り立ったのだ。

 

 

 

 

 

「銀色の、………巨人!?」

 

始めて目にする巨人(ウルトラマン)の姿に、坂本は驚きの声を上げる。メビウスの姿を見たベムラーが興奮して吠える中、メビウスは二人に振り返ると、未だ上空で赤いビームを放つネウロイに視線を移した。

 

「……ここは任せろと言うのか?」

『………』

 

坂本の言葉に、メビウスは頷いて見せた。二人はしばし、メビウスの目を見ていたが、決心したかのように芳佳が坂本の肩を叩いた。

 

「行きましょう、坂本さん!」

「宮藤……そうだな。頼んだぞ!」

 

メビウスにそう叫ぶと、二人はネウロイに向けて飛び立っていった。

 

「ギャァアアアアアアアオオオオオ!!」

 

二人の姿を見送ったメビウスは、尻尾を振りまわしながら咆哮を上げるベムラーに向き直ると、拳を作った左手を上に、開いた右手の指先をベムラーに向けた構えを作り、駆けだした。

 

『セヤアッ!!』

 

メビウスに向けて青色熱線を放つベムラーだが、メビウスは走りながらブレスに右手を添えてから突き出し、光の刃『メビュームスラッシュ』を手裏剣のように連続で発射して相殺、ベムラーに十分近づくとその首筋に連続でチョップを入れると、その姿勢のまま回し蹴りを喰らわせた。

起き上ったベムラーは怒ったように吠えると、メビウスに向けて熱線を連続で発射するが、メビウスは目の前に金色のバリア『メビウスディフェンサークル』を発生させて防いでみせると、空高くジャンプ、数回空中で回転を加えてベムラーの頭目がけて飛び蹴りをお見舞いして転倒させる。

 

ベムラーの青色熱線は非常に強力な光線ではあるが、その分前足が退化している影響で格闘戦は苦手としている。それを知っているからこそ、メビウスは接近戦でダメージを与えているのだ。

 

頭を強く打ったのか目を回すベムラーを見たメビウスは、好機とみてメビウスブレスに手をかざそうとした。

 

「キィィィイイイイイイ!!」

ドォオン

『ぐああ!?』

「メビウス!」

 

だがその時、上空のネウロイの放った赤いビームがメビウスの背中を直撃、メビウスはうつぶせに倒れてしまった!

 

「ギャァァァァァァアアアアオオオオオオオオ!!」

 

回復したらしいベムラーはそれを見ると、お返しとばかりに熱線を発射、メビウスに大ダメージを与えた!

その時、メビウスの胸のカラータイマーがピコン、ピコンと音を立てながら赤く点滅をし始めた。

ウルトラマンは地球上では3分間しか活動できず、カラータイマーの点滅は時間の経過や、エネルギーの消耗を知らせるものなのだ。

 

「な、何か赤く光り出したけど…?」

「ひょっとして、危険なんじゃあ?」

「ええ!?」

 

上空の芳佳たちにはそのような事など知る由もなかったが、苦戦するメビウスの姿を見て、彼が危険である事は理解できた。

ふらつきながらも立ち上がるメビウスに向けて、再度攻撃を仕掛けようとする二大怪獣。

それを見たリュウは、CREW GUYSジャパン隊長として、隊員たちに指示を飛ばした。

 

「“メテオール”、解禁!!」

 

隊長の解禁宣言により、パイロットたちはコックピットの厳重にロックされたスイッチを押しこみ、出現したレバーを掴んだ。

 

「パーミッション・トゥ・シフト!マニューバ!!」

 

宣言と同時にレバーを押し上げると、各機に内蔵されたイナーシャルウイングが展開され、金色の粒子を纏った『マニューバモード』に変形した!

 

「変わった!?」

 

ガイズマシンが変形した事に驚く三人であったが、ベムラーとネウロイの攻撃が同時に発射され、メビウスに迫る!

 

「スパイラル・ウォール!!」

 

だが、その間にガンブースターが割って入ると機体を回転させ、金色のバリアを発生させてネウロイのビームとベムラーの熱線を防ぎ、威力の上がったガトリングデトネイターをベムラーに向かい放った!

 

「ギャァオオオオン!!」

 

悲鳴を上げ倒れるベムラーをよそに、上空のネウロイは、再度メビウスに向けてビームを放とうとした。

 

「ファンタム・アビエイション、スタート!!」

「!?」

 

だが、ネウロイの目の前にガンウィンガーが現れ、金色の粒子をまき散らしながら分身を残しながら周囲を変則的な飛行を行い、ネウロイを翻弄する!

 

「てめえの相手はこっちだ!」

「こっちは私たちが!」

 

ガンウィンガーのリュウが機首のビークバルカンを、芳佳が手にした機関銃を浴びせながら叫び、ネウロイはそちらに標的を変える。

一方、起き上ったベムラーが怒りの咆哮を上げ、再び口から熱線を放つ体勢を取る。

 

「ブリンガーファン、ターン・オン!!」

「!?」

 

だが、ガンローダーの両翼に装備された荷電粒子ハリケーン『ブリンガーファン』が起動し、一対の竜巻がベムラーを巻き上げ投げ飛ばし、地面に叩きつけた!

 

「スゴイ……」

「宮藤!」

「は、はい!」

 

ガンローダーの隠された能力に驚き、今現在メビウスにヘッドロックからの連続チョップを受けるベムラーを見ていた芳佳であったが、坂本の呼びかけに慌てて返事をする。

坂本は右目の眼帯を外し、赤く光る右目でネウロイの方を見ていた。

 

「コアの位置が分かった!尾翼付近の深い所だ!」

「はい!」

「だが、本当に深い所だ………リーネのライフルでも届くかどうか………」

「………尾翼付近だな?」

 

坂本が不安そうに呟いているその時、聞いていたらしいリュウが、ネウロイに照準を合わせた。

 

「残り後15秒です!ここは一気に!」

「俺も同じ意見だ!」

 

ハルザキに賛同すると、リュウは操縦桿のスイッチに指をかけた。

 

「“スペシウム弾頭弾”、ファイヤー!!」

 

リュウが叫びながらスイッチを強く押すと、ガンウィンガーの左右に設置されたミサイル発射管から3発の“スペシウム弾頭弾”が発射され、ネウロイの上半分を吹き飛ばした!

 

「キィィィイイイイイイイイイイ!?」

「うわぁ!?」

「スゴイ……」

「何という威力だ!?」

 

スペシウム弾頭弾の威力に舌を巻く三人。その時、ネウロイの吹き飛ばされた部分に、赤い正十二面体のクリスタルが見えた。

 

「見えた!」

「あれがコアか!」

 

コアの出現に声を上げるリーネと、初めて見るネウロイのコアに関心の声を漏らすハルザキ。だが喜んでいるのもつかの間、ネウロイのボディは徐々に再生していき、コアを隠そうとする。

 

「再生が早い!早くコアを―――」

《Return to Cruise.》

「時間切れ………!」

 

丁度その時、メテオールの限界時間の1分に達したため、ガンウィンガーはマニューバモードからクルーズモードに変形してしまう。

 

「こんな時に……!」

「………いや、問題なさそうだぞ?」

「え?」

 

「再生しきる前に!!」

 

ネウロイのその真上、対戦車ライフルの照準を合わせるリーネがその引き金を引いた!

数秒の間が空いて、今にもコアを隠しきれそうなほど再生していたネウロイの装甲に弾丸が命中、再びコアが露出した!

 

「やったぁ!」

「坂本さん!」

「応!!」

 

叫びと共に坂本は刀を構え、コアに向けて急降下をする!

 

 

 

「グゥウウウウウ………」

 

一方、地上ではベムラーとの戦いも決着の時が近づいていた。

メビウスの連続攻撃を受け、ベムラーは足をふら付かせ、既にグロッキー状態。倒すのならば今しかない、そう判断したメビウスは、左腕のメビウスブレスの中央に光る、赤いクリスタルに手をかけた。そして、クリスタルを回転させるように両手を横に伸ばす。そして、それを頭上に回すと、両手に金色のエネルギーが蓄積されていく。

そしてエネルギーが極限までたまるのを感じ取ったメビウスは、その両手を十字に組んだ。瞬間――――――

 

 

 

 

 

『セヤァアアアア!!』

バシュゥウウ

「グャアアア………」

 

 

 

「必殺!烈ッ風ぅうう斬ッ!!!」

ズドォオオン

「キィイイ………」

 

 

 

組まれた腕から放たれた金色の光線―――メビウスの必殺技『メビュームシュート』がベムラーに吸い込まれ、倒れこんだベムラーは大爆発起こし、

坂本の烈風斬の一撃がネウロイのコアに叩きこまれ、ネウロイはガラス片のように砕け散った!

 

「ィィイイイやったーーーーーー!!」

「おっしゃああああ!!」

 

ベムラーとネウロイが倒された事に、ガイズマシンや芳佳たち、そしてフェニックスネストのトリヤマたちから歓喜の声が上がる。

上空では、喜びのあまりに芳佳がリーネに抱きつき、それを見て呆れながらも笑みを浮かべる坂本。

 

「それにしても………」

 

ふと、坂本はこちらを見上げるメビウスの姿を見た。ネウロイとの戦いに気を取られていたが、突然現れた銀色の巨人に今更ながら疑問を持った。

 

「あの巨人は、一体………?」

 

メビウスは坂本や芳佳たちに向けて頷くと、遠い空を見上げた。そして、

 

『シュワッ』

「あ………」

 

そのまま両手を伸ばし、空の彼方へと飛んで行った。

 

「行ってしまった………」

「あの、どなたか知りませんが、ありがとうございましたーーー!」

 

芳佳は、メビウスの飛んで行った方に手を振りながら大声でお礼を言う。リュウはメビウスが飛んで行った方を見て笑みを浮かべると、いつまでも手を振る芳佳たちを見た。

 

「さーてと。」

「隊長、あの子たち……」

「分かってるよ。オイお前ら!約束通り事情を聞かせてもらう!着いてこい!」

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「そうか、俺の留守中にそんな事が……」

 

その日の夕方、神奈川県のとある民家で40代くらいの男性、GUYSジャパン総監、サコミズ・シンゴは、ミサキからの通信を受けていた。

 

[彼女たちの事情聴取は、明日より行う予定です。]

「分かった。こちらも、ハルカ姉さんの遺品整理がようやく片付いた所だ。俺も、明日は同席しよう。」

[お願いします。]

 

ミサキとの通信を切ったサコミズは、茜色に染まる空を見上げた。

 

「空から降って来た少女たち、謎の金属怪獣、再び現れた怪獣………」

 

何か、嫌な予感がする、そう思いながらも、サコミズは部屋に戻って行った。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

そして今、異界の魔女たちは、一人の若き勇者と出会った。

 

 

 

彼の名は、『ウルトラマンメビウス』。

 

 

 

 

 

つづく




第一話です。
『M78ワールド』に来ちゃった芳佳たち。ウィッチたちに何があったかは次回、と言う事で。

ハルザキ以外のメンバーは『アーマードダークネス』から男女1人ずつが判明していたので、それにオペレーター的役割を一人足しました。外見などは過去のウルトラシリーズのキャラクターをモデルにしていますが、名字は『電光超人グリッドマン』のレギュラーキャラに由来。

ネウロイの別名は色々考えて『異次元怪異』にしてみました。ちなみに、今回登場したネウロイには元ネタがあります。ヒントはアーチ状のパーツ。答えは、次回のあとがきで発表します。

では、また次回。


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第二話 魔女たちの消失

1939年、突如として世界に出没した『ネウロイ』と呼ばれる怪異により、人類は多くの国々を失った。

 

瘴気をまき散らし大地を腐らせ、金属を吸収するネウロイにより、人類は生まれ育った街を焼かれ、故郷を追われていった。

 

軍隊の通常兵器の効かないネウロイに唯一対抗できるのは、『魔法力』を持ち、『ストライカーユニット』で空を駆ける少女たち『ウィッチ』のみである。

 

1944年、ネウロイによって侵略されたガリアは同年、第501統合戦闘航空団『ストライクウィッチーズ』によって解放された。しかし翌1945年、ヴェネツィア上空に巨大なネウロイの巣が新たに出現しヴェネツィア公国は陥落、更に、隣国のロマーニャをも侵略の脅威にさらされてしまった。

 

この危機に対し、再び集結した第501統合戦闘航空団が防衛にあたり、ネウロイと日々戦いを繰り広げていた。

 

 

 

 

 

しかし―――

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

ババババババ……とエンジン音を響かせながら、一人のウィッチが空を飛んでいた。

 

緑色の軍服に赤く長い髪から灰色狼の耳を生やし、肩から機関銃を下げたそのウィッチは、眼下に広がる光景に、未だ信じられないといった風に見下ろしていた。

 

「こちら第501統合戦闘航空団、ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ。現在ヴェネツィア上空に到着しました。」

 

インカムに向けて通信をするウィッチ―――名前をミーナと言うらしい。

通信した通り彼女と、彼女の指揮する通称『ストライクウィッチーズ』は現在、ネウロイに占領されたヴェネツィア上空に来ていた。

だが、そこには――――――

 

 

 

 

 

 

「報告の通り…………ネウロイの巣は、見当たりません………」

 

 

 

 

 

 

そこにあるはずの物、天をも突くほど巨大なネウロイの巣は存在せず、綺麗な青空が広がっていた………

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

ヴェネツィアの巣が、こつ然と消えた。

 

数日前、501の基地に届いたこの一報に、ミーナを始めとした11人は衝撃を受けた。

 

最初は信じられなかった一同であったが、情報はそれだけではなかった。

 

ヴェネツィアの巣を監視していたロマーニャの海軍・空軍の所持する戦闘機12機と巡洋艦3隻が、巣の消失後に原因不明の墜落・沈没をしたのだというのだ。

 

司令本部はこれをネウロイの誘導作戦で、隠れていたネウロイの仕業であると断定、501のウィッチたちに、調査の命令が下ったのだ。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「………しっかしまあ、本当になくなっているのなぁー。」

「ホーント、綺麗さっぱりー!!」

 

眼下の荒廃した街並みを見ながら、赤い軍服の少女が、赤く長い髪とウサギの耳を風になびかせながら呟くと、隣を飛んでいた色黒の肌と黒いツインテールが特徴の少女がけらけらと笑って言う。

 

すると、その後方を飛んでいた緑の軍服に、茶色い髪を後ろで二つに結わき、両肩には大型の火器、首からはカメラをぶら下げた少女が、眉を吊り上げて叫んだ。

 

「気を抜くなイェーガー、ルッキーニ!どこにネウロイが潜んでいるか分からぬのだぞ!」

「しかしですねーバルクホルン大尉どの?今日はご覧の通りの快晴、雲も少ないし、隠れる場所なんてないですよー?」

「だからと言って!」

「おっこらーれたー♪」

 

バルクホルンは二人に怒鳴り散らすが、二人はそんな事どこ吹く風と聞き流し、ルッキーニはクルクルと回り出した。

 

「あり?」

 

その時、ルッキーニが下を見ると、地上に何か動くものを見つけた。

 

「ねえねえシャーリー。」

「ん?どーした?」

「あれ。」

 

シャーリーとバルクホルンがルッキーニの指を指した先を見ると、そこにはグレーと白を基調とした服を着た男性が、荒廃したヴェネツィアの町中を運河に沿って歩いているのが見えた。

 

「民間人か!?」

「何でこんな所に……?」

 

二人はその人物の存在を確認すると、ルッキーニを引き連れて降下していった。

近くまで降りて行くと、その人物が短い髪を金色に染めた男性であり、どこかのユニフォームのようなその服の背に「ASUKA」と白い字で描かれている事が分かった。

 

「アス……カ?」

「おーいアンター!」

「ん?」

 

シャーリーが声をかけると、ようやくその男性は彼女たちに気が付いたらしく、呆気に取られたようにこちらを見上げてきた。

 

「どーやってこんな所に入ったんだ?この辺りには、まだネウロイが潜んでいる可能性があるから、民間人の立ち入りは禁止のはずだぞ?」

「え?そーなのか?」

「そーなのかって………」

「いやー、悪い悪い。なんつうか、気付いたらこの場所にいたっていうか………」

「何を馬鹿な事を!!」

 

笑って頭を掻きながら言い訳をする男性にバルクホルンが怒鳴る。ルッキーニは男の周囲を回りながら、物珍しそうに見ていた。

 

「あー、こちらイェーガー。民間人らしき男性を保護した。年齢は30代、すぐに伝令所に―――」

 

シャーリーが通信機に向けて話していた、その時だ。

 

 

 

 

 

 

ザッバァァアアアアアアアアア

 

 

 

 

 

 

「!?」

「うぇ!?」

「な、なんだぁ~~~!?」

 

突然、運河の水面から水柱が上がり、驚く一同。

 

「あれは!?」

 

運河の水が降り注ぐ中、男は水柱の中に、巨大な何かがいる事に気が付いた。

 

「……は?」

 

水柱が収まり、その巨大な『ソレ』の姿を見たバルクホルンが、呆気に取られたように口を開いた。

男とルッキーニは目が点になり、シャーリーは思わず身を震わせる。

 

「な……………」

 

 

 

 

 

そこにいたのは、二本足で立ち、風船のように真っ赤な丸い頭部と6本の触手、青い目は右目が潰れており、突き出た丸い口を持っている………

 

 

 

 

 

「何ッッッじゃこりゃあーーーーーーーーー!?」

 

 

 

 

 

………早い話が、身の丈が60メートルもある、巨大なタコであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第二話 魔女たちの消失

 

四次元怪獣 ブルトン

大ダコ怪獣 タガール

巨大魚怪獣 ゾアムルチ

宇宙怪獣 ベムラー

灼熱怪獣 ザンボラー

円盤生物 サタンモア

怪鳥円盤 リトルモア

超古代怪獣 ゴルザ

再生怪獣 サラマンドラ

用心棒怪獣 ブラックキング

登場

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シャーリーたち3人が男性を発見し、巨大タコと遭遇する少し前、芳佳とリーネは、501副隊長である坂本美緒と共に訪れた巡洋艦内で生き残ったロマーニャ軍人たちの治療に当たっていた。

芳佳の固有魔法は『治癒能力』、即ち、傷を癒す力を持っているのだ。

 

「この人で最後ですか?」

「はい、ありがとうございます!」

「お疲れ様、芳佳ちゃん。」

 

芳佳の質問に、治療に当たっていた衛生兵が答える。リーネは芳佳にタオルを渡すと、芳佳はそれで汗を拭いた。

一方の美緒は、治療を受けた兵の中で比較的軽症で、話せる者に話を聞いていた。

 

「何があったか、憶えているか?」

「ええ………未だに信じられないし、信じてくれないと思いますが………」

「………分かった、信じよう。話してくれ。」

 

美緒に言われ、その兵士は話し始めた。

 

「……自分たちを襲ったのは、ネウロイではありません。」

「何だと?」

「………自分たちがヴェネツィアの上空を飛んでいたら、突然、街の地面から、赤く光るヒレを持った、巨大なトカゲのようなものが現れたのです。」

「トカゲ……?」

 

兵士の言葉に、美緒は聞き返す。後ろから芳佳たちも聞く中、兵士は続けた。

 

「そのトカゲが、こちらを睨んだと思ったら、次の瞬間、自分たちの乗っていたMC.202の翼が炎上し、墜落してしまったのです………」

「なんと………!?」

「あれは、あんな生き物、見た事がない………まるで悪魔だ……!!」

 

思い出してしまったのか、兵士は震えだしてしまった。美緒は兵士の手に自分の手を重ねると、気持ちを落ち着かせた。

その時、芳佳たちのいる部屋に兵士が慌ただしく入ってきた。

 

「失礼いたします!」

「ふえ!?」

「何だ騒々しい!けが人がいるのだぞ!」

「す、すみません………イェーガー大尉とバルクホルン大尉より入電!ヴェネツィアの運河で、交戦中とのことです!!」

「何だと!?」

 

兵士の言葉を美緒が聞き返し、芳佳とリーネは息をのむ。

 

「それで、ネウロイは?」

「い、いえ、交戦しているのはネウロイではないそうでして………」

「何?」

「じゃあ、シャーリーさんたちは何と戦っているのですか?」

「それが………」

 

芳佳の質問に対し、兵士は困惑した様子であったが、それに答えた。

 

 

 

 

 

「………『巨大な魚』、だそうです………」

「「「………………………………………………………………………………………………………………………………………………………は?」」」

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

芳佳たちが報告を受ける数分前―――

 

「キュィイィイィイィイィ………」

「タコ………か?」

「………タコだね。」

「な、何でタコ………なんかが………うぷっ」

 

突然現れた大タコに固まる4人。特に、タコが嫌いなシャーリーは、口に両手を当てて青ざめている。

 

「なんつうか、もう『怪獣』だな、こりゃあ………」

「カイジュウ?」

 

男が漏らした言葉を聞き返すルッキーニ。

彼女たちは知らない事であるが、このタコはある世界では『大ダコ怪獣 タガール』と言う名前で呼ばれており、かつて、『大ガニ怪獣 ガンザ』と戦って敗走した過去を持っていて、右目はその時、ガンザに潰されたのだ。

タガールは残った左目で周りを見わたしていると、ふと、目の前にいるシャーリーたち4人を見つけた。

 

「わ!こっち見た!?」

「ヤバくないか!?」

「キュィイィイィイィイィ!!」

 

そう叫んだ瞬間、タガールはその長い触手を鞭のようにしならせて一気に振りおろした!

すかさずバルクホルンは男性を抱えて飛び上がると、タガールの触手は3人のいた場所を大きく穿った。

 

「何という力だ!?」

「てか、君意外と力あるのな!?」

「固有魔法だ!」

 

思わず大声で叫ぶバルクホルン。3人は男性を離れた場所に降ろすと、タガールの方を見た。

 

「あのタコが何なのかは後回しだ!これ以上街を破壊させるな!」

「「了解!!」」

「え?お、おーい!!置いてくのかよー!?」

 

男の叫びを後ろに、3人は再度タガールに向かっていった。だがその時、運河の水面が爆ぜたかと思うと、青い身体と鋭い口を持った、巨大な魚のような怪獣が現れた!

 

「ウァァアアアアアオオオオオオオ!!」

「何!?」

「もう一匹!?」

「タコの次は鮭!?」

 

突然出現したもう一体の怪獣の出現に驚く3人。すると、ルッキーニが声を上げた。

 

「カルパッチョ何人分くらいかな~?」

「いや、食わないから!!」

「ウァァアアアアアアオオオオオオオオ!!」

「キュィイィイィイィイィ!!」

 

シャーリーが思わずツッコムなか、巨大魚はヒレから進化したような腕を回して、臨戦態勢に入った。

この巨大魚もある世界では『巨大魚怪獣 ゾアムルチ』と呼ばれる存在であり、かつては『宇宙調査員 メイツ星人』の用心棒のような役割で連れられたのだが、この個体はどうやらメイツ星人とは無関係のようだ。

タガールは悲しいような鳴き声を上げるゾアムルチに気付くと、触手を投げ縄の如く振りまわし、ゾアムルチに向かっていった。

 

「私らは眼中にないってか?」

「………もしかして、ロマーニャ海軍は、こいつらにやられたのか?」

 

バルクホルンがふと、思いついた事を呟く中、ゾアムルチはタガールを殴り始め、触手を三本程、口で引きちぎってしまった。

タガールはお返しとして口から大量の墨を吐きだし、ゾアムルチを真っ黒に染めていく。

だが、ゾアムルチは真っ黒になっただけで平然としており、タガールに向けて口を開くとそこから青い怪光線を発射、タガールの頭部に命中させ、爆発を起こした!

 

「キュゥウ~~~………」

「タコが!?」

 

ルッキーニが叫んだ瞬間、タガールはあお向けで倒れこみ、そのまま爆発を起こしてしまった!

ゾアムルチは勝ち誇ったように雄叫びを上げると、新しい獲物―――シャーリーたち3人を見つけ、歩み寄って来た。

 

「こっち来たー!」

「くッ………こちらバルクホルン、現在ヴェネツィア東にて、ええと、巨大な、魚?と交戦中!至急応援を求む!!」

 

ゾアムルチの青い光線を避けながら両手にした機銃を掃射しつつ、通信をするバルクホルン。だが、帰って来た通信に言葉を失った。

 

[―――こちらハルトマン、………ごめん、こっちもネウロイじゃない敵が出て………]

[こっちもダ!アイツ、何て早さナンダ!?]

「―――何だと!?」

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

バルクホルンの通信を聞いた芳佳たちは、困惑しながらも出撃していた。巨大な魚などという突拍子もない報告に頭を悩ませたが、とにかく、助けを求めている以上は出撃する必要があった。

しばらく飛んでいると、荒廃したヴェネツィアの街が見えてきた。

 

「間もなく、シャーリーたちの戦闘している区域が見えてくる。気を引き締めろ!」

「「はい!!」」

 

美緒の言葉に気を引き締める二人。だがその時、彼女たちの下にある海面が波打ったかと思うと、そこが爆発するようにして、何かが海中から現れた。

 

「何!?」

「ネウロイ!?それとも………!?」

 

突然の出来事に戸惑う三人であったが、そこにいたのはトゲとうろこに包まれた寸胴な直立体型の、トカゲのような巨大生物―――『宇宙怪獣 ベムラー』であった。

 

「ギャァアアアアアアアオオオオオ!!」

「な、何だこいつは!?」

 

今まで見た事のない生物の出現に、思わず声を上げる美緒。芳佳とリーネも、困惑した様子であった。そんな三人を気にする事なく、ベムラーは口から青白い熱線を吐きだし、眼下の街を炎に包んだ!

 

「街が!?」

「コイツ………二人とも!コイツが何者かは後回しだ!これ以上街を壊させるな!」

「「りょ、了解!!」」

 

若干戸惑ってはいるものの、街を破壊するベムラーを放っておく訳にはいかない。すぐに、地上へと上陸したベムラー目がけて降下していく。

だがその時、地面が爆発したかと思うと、そこから赤く光る角と背びれを持った、40メートルもあろう四足歩行のトカゲのような巨大生物―――とある次元世界では『灼熱怪獣 ザンボラー』と呼ばれている怪獣が、ベムラーの目の前に現れた!

 

「ギャオオオオオオオオオン!!」

「ギャァアアアアアアアオオオオオ!!」

「もう一体!?」

「赤いヒレのトカゲ………ロマーニャ空軍を襲ったのは、こいつか!!」

 

ザンボラーの姿を見た美緒が、その外見の特長から決定づけた。ザンボラーとベムラーは互いにその姿を確認すると、ザンボラーは雄たけびと共に背びれと角を赤く光らせる。瞬間、ベムラーの身体と周囲が炎につつまれ、ベムラーは悲鳴を上げる。

 

「きゃあっ!」

「この能力で墜落させたわけか!!」

 

ザンボラーの能力に驚きつつも、その力に納得をする。

ザンボラーは頭部と背中の赤い突起を発光させると同時に熱光線を放つのだが、それは瞬時に当たるために視認することは出来ず、相手を一気に炎上させてしまうのだ。

ベムラーは怒りの青色熱線をザンボラーに放つが、怒りのあまり狙いが定まっていないのか、街の被害を拡大してしまう。

 

「………行くぞ!これ以上奴らに暴れさせるな!!」

「「了解!!」」

 

暴れる二大怪獣に危機感を持った美緒は、二人に叫ぶ。

芳佳と美緒はベムラーの背に向けて機銃を掃射しながら突っ込んでいくと、ベムラーは魔力のこもった弾丸にダメージを受けると、怒ったように尻尾を振るう。二人はそれを避けると、旋回して銃を撃つ。

一方、リーネは対戦車ライフルの照準をザンボラーに合わせて引き金を引くが、その弾丸はザンボラーの手前で不自然に上昇し、その背びれに掠めることなく遠くに飛んで行ってしまった。

 

「そんな!?」

「何で狙いが………む?」

 

その時美緒は、平然とした表情をするザンボラーの周囲が、陽炎で揺らめいている事に気が付いた。

 

「周囲に陽炎が……まさか、あいつの体温はそれ程に高いというのか!?」

 

ザンボラーは、『灼熱怪獣』の異名に恥じない10万度という超高体温の持ち主なのである。その体温故に周囲の温度との差で空気の層が生じ、光線が屈折してライフルの狙いが外れてしまったのだ。

ある次元世界のアメリカ合衆国に出現したザンボラーの別個体も同様の能力を有しており、衛星レーザーを湾曲させる現象を起こしていた。

 

「こんな生物………今まで見た事ない………」

 

恐らく、先ほどベムラーが放った青色熱線が外れたのも、この現象によるものだろう。今までネウロイという人類の脅威と戦っていた彼女であったが、怪獣と言う未知の脅威に戸惑っていた。

再びザンボラーを狙うリーネ。今度は屈折の事を考えて、若干下の方を狙う。

 

ズドドドドドドォオン

「きゃあ!?」

「ギャオオオオオオオオオオオン!!」

「ギャァアアアアアアオオオオオオオオオオ!!」

 

しかしその時、上空から火の玉が降り注ぎ、ベムラーとザンボラーに直撃した!

リーネが上空を見上げると、そこには『空飛ぶ怪獣』と戦う2人のウィッチの姿があった。

 

「エイラ!?」

「サーニャちゃん!?」

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「グヮヮアアアアアアア!!」

「クソ!何なんだコイツ!?」

「早い………!」

 

銀色の長髪に黒い狐の耳と尻尾を生やした少女、エイラ・イルマタル・ユーティライネン中尉が悪態をつき、短い銀髪に黒猫の耳と尻尾を生やした少女、サーニャ・V・リトヴャク中尉がそのスピードに驚く。

彼女たちの目の前には、戦闘機を思わせるフォルムと鋭いくちばしを持った、巨大な怪鳥の姿があった。この怪鳥には『円盤生物 サタンモア』と言う名前があるのだが、彼女らがそれを知る術はない。

 

「グヮヮアアア!!」

「くっ………」

 

低い鳴き声を上げるサタンモアに怯む二人。すると、サタンモアは口から小型の『怪鳥円盤 リトルモア』を何匹も吐き出し、エイラたちを襲わせる!

 

「キキィイ!」「キキキィイ!!」

「こ、コイツラ………!!」

「エイラ下がって!!」

 

サーニャはエイラが下がったのを確認すると、肩に担いだフリーガーハマーをリトルモアの集まった辺りに向けて発射、十数体のリトルモアをまとめて仕留めた!

 

「グヮヮアアアアアア!!」

「っ!サーニャ!!」

 

サタンモアがひと鳴きした瞬間、エイラが叫ぶ。サーニャがすぐさま急上昇してその場を離脱すると、今までいた場所をサタンモアの目から発せられたレーザー光線が通過した。サーニャがぞっとしているのもつかの間、今度はリトルモアの集団が真っ直ぐにサーニャを狙う!

 

「サーニャに近づくナーーーーーー!!」

 

その時、機銃を乱射しながらエイラが突っ込んでいき、変則飛行するリトルモアもなんのそのと撃ち落とし、残りのリトルモアも静止した状態で全て狙い撃つ!

 

「大丈夫かサーニャ!?」

「う、うん、ありがとうエイラ。」

「グヮヮアアアアアアアアアア!!」

 

サーニャがエイラを安心させる中、サタンモアは怒りの声を上げて、口から炎を吐いた。二人はそれをかわすと、攻撃を仕掛ける。

 

「グヮヮアアアア!!」

「良し!行けそうダナ!」

「うん………!待って!あれは何!?」

「え!?」

 

エイラはサーニャが指差した方向を見ると、そこでは胸と頭を甲殻類のような殻で覆った青い怪獣が、運河にいるゾアムルチに向かって街を蹂躙している所であった。

 

「まだいたなんて………!」

「!あっちにも!?」

 

さらにエイラが見た方では、蛇腹状の黒い体表と金色の角と全身に生えたトゲを持った怪獣と、たてがみのような角と六角形の固そうな体表を持った怪獣が戦っていた!

 

「一体、このヴェネツィアで何が起こっているんだ!?」

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「グォオオオオオオオオオオオオ!!」

「………!あれは『ゴルザ』!?」

 

一方その頃、バルクホルンによって建物の屋上に連れられた男性は、目の前の青い怪獣―――『超古代怪獣 ゴルザ』の姿に驚く。

何故“あの”ゴルザがここにいるのか?男性がそう考えていると、ゴルザはゾアムルチの姿を見つけると、全身のエネルギーを額に集め、超音波光線を放つ。

 

ドォオオン

「ウァァアアアアアアオオオオオオオオオ!!」

「んなあ!?」

「また増えた!?」

 

光線を受けたゾアムルチは右肩に光線を受けると、標的をゴルザに定めて光線を放つも、ゴルザはそれを受けてなお立っている。相当タフな怪獣のようだ。

ゴルザはお返しとばかりに殴りかかると、ゾアムルチは尻尾を打ち付ける。ゴルザはそれを掴むと、ゾアムルチをグルグルと振り回し、遠くまで投げてしまった。

 

「グォオオオオオオオオオオオ!!」

「何て力だ!!」

「お前といい勝負じゃないのか!?」

「冗談ではない!!」

 

勝ち誇って雄叫びを上げるゴルザを見たシャーリーの冗談に怒鳴るバルクホルン。

一方、投げ飛ばされたゾアムルチはというと、立ち上がったものの目を回した状態でふらふらとした足取りである。ようやく目を覚ましたのもつかの間、気付けば自分の目の前には二体の怪獣―――固い皮膚に覆われた『再生怪獣 サラマンドラ』と、真っ黒な『用心棒怪獣 ブラックキング』の姿があった!

 

「アアアアアアアアオオオオオオオオオオ!!」

「グオオオオオオオオ!!」

「ウァァアアアアアアオオオオオオオオオ!!」

 

「何て事ですの………!?」

「また増えた~!?」

 

サラマンドラとブラックキングの二体と対峙していたミーナと短い金髪にダックスフンドの耳と尻尾を持ったエーリカ・ハルトマン、そして長い金髪に眼鏡をかけ、黒猫の耳と尻尾を生やしたペリーヌ・クロステルマンの3人が、ゾアムルチに警戒していると、そこに意気揚々とゴルザが現れる。

 

「グォオオオオオオオオオ!!」

「アアアアアアアオオオオオオオオオオ!!」

「ウァァアアアアアアオオオオオオオオ!!」

「グオオオオオオオオ!!」

 

四大怪獣は二人には目もくれず、互いにけん制し合って戦闘を開始した。

 

「な、なんだか大変な事に………!」

「おーい、ミーナ!」

「あ、トゥルーデ。」

 

サラマンドラがゾアムルチにラリアットをかまし、ブラックキングとゴルザが組み合っているのを見ている事しか出来ないでいると、ゴルザを追ってきたらしいバルクホルンらが、ミーナたちと合流する。

 

「何なの……この生物たちは……?」

「カイジュウ………」

「え?」

 

思わずミーナの口から出た言葉に答えるかのように、シャーリーが呟いた。

 

「さっき助けた男が、そう言っていた。あれは、『カイジュウ』だって。」

「カイジュウ………」

 

今まで見た事のない生物『カイジュウ』の名前を復唱するエーリカ。するとその時、ゴルザの右フックを受けたブラックキングが、自分たちの上空にいる5人のウィッチに気が付いた。

 

「グォオオオオオオ!!」

「こっち見た!?」

 

こちらを睨むブラックキングの目はネウロイにはない『狂気』に満ちており、歴戦のミーナたちでさえ恐怖を覚える。ブラックキングは口に赤いエネルギーを蓄積させていき―――

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

この怪獣軍団の戦闘を、遥か上空で見ている者たちがいた。

 

「ふん、宇宙警備隊の目の届かない異世界を選んではみたものの、この世界ではデータを取るのに少しもの足りないな………」

 

暗い部屋の中、円卓の中央に映し出した映像を、手足や胸に毛を生やして頭頂部に短い赤い角を持った細身の影が、椅子にふんぞり返りながら鼻を鳴らす。

 

「しかし、あのウィッチとか言う地球人の小娘らは、怪獣どもと戦うのに十分な力を持っているようですよ?」

「だが、それでも微々たるものじゃなイカ。」

「同感だな。」

 

その細身の影に、丸い身体の影が言うが、それを大きな耳を持った影と尖った耳に金髪の影が馬鹿にしたように返す。すると、大きなくちばしと四本の触角を持った影が立ちあがり、細身の影に進言した。

 

「おい、これ以上やっても時間の無駄だ!とっととあの小娘どもを始末させろ!」

「そう慌てるな。ブラックキング!その小娘どもに一発―――」

「待て!あれは何だ!?」

「「「「!?」」」」

 

だがその時、金髪の影が鉤爪を着けた左手を掲げて叫ぶ。投影された映像には、ヴェネツィアの街に光があふれ、『銀色の巨人』が現れた。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

ブラックキングが口から光線を放とうとしたその時、

 

ズンッ

 

「グゥウウ………?」

「え………?」

「い、今のって………?」

 

突然、ヴェネツィアの街に地響きが起こる。ウィッチや怪獣たちが戸惑っているその時、ルッキーニは街の中に巨大な人影が立っている事に気が付いた。

 

「何アレ!?」

 

それは、身長が50メートルの巨人だった。

銀色の身体に赤と青のラインを走らせ、胸には青く光るランプを中央に持った金色のプロテクターを着け、額には白く輝くクリスタルがある。

 

「巨人!?」

「また、新たな敵か!?」

「けど、何か今までのカイジュウとは違う感じがするぞ…」

 

巨人の登場に、バルクホルンは警戒するが、シャーリーは巨人の出す雰囲気に、今までの怪獣にはない『何か』に気が付く。

 

「アアアアアアアアオオオオオオオオオオン!!」

「グォオオオオオオ!!」

「ウァァアアアアアアアオオオオオオオオオオオオ!!」

「ギャオオオオオオオオオオン!!」

 

怪獣軍団は一斉に巨人に向けて駆けだす。遠くの方からはベムラーやザンボラー、上空からはサタンモアまでも駆けつける。巨人はそれに怯むことなく、ゆっくりと、それでいて堂々と歩み出す。

先手を打ったのはゾアムルチとサタンモアだ。それぞれ目と口から光線を発射するが、巨人はそれを腕で払いのけてしまう。ならばと、今度はサラマンドラが殴りかかると左腕でガード、右腕で殴り倒し、さらに近づいてきたブラックキングに蹴りをお見舞いする。

巨人と怪獣たちの激しい戦いに唖然とする6人。すると、3体の怪獣を追ってきたらしい

芳佳たちが飛んできた。

 

「ミーナ!」

「ペリーヌさーん!」

「少佐!」

「バルクホルンさん、これは一体……!?」

「わ、私にも、何が何だか………!?」

 

今まさに、サタンモアの突進をかわした巨人を見て問う芳佳であったが、彼女たちにも答えられない。

 

『ぐわああああああ!!』

 

その時、サラマンドラが鼻から放ったミサイル弾を受けて怯んだ巨人にベムラーの青色熱線とゴルザの超音波光線が直撃し、止めとばかりにザンボラーが熱線を放ち巨人を追い詰める。

それを見た美緒が、おかしい事に気付く。

 

「………おかしい。あいつらがあんな連携をするなんて………?」

「そ、そう言えばそうダナ…今まで戦っていたのに………」

「まるで、誰かに指示を受けているかのようだわ………」

「まさか、あいつらを操る何者かがいるというのか!?」

 

シャーリーが驚きの声を上げる。すぐさまサーニャが頭に魔導針を出現させて索敵を行う。

一方の巨人は立ち上がると、胸の前で腕を交差させ、斜めに広げる。すると、額のクリスタルが赤く光り、巨人の身体は真っ赤な身体にシルバーのラインが入り、先ほどより筋肉質な姿になった!

 

「変わった!?」

「真っ赤になっちゃった!?」

 

変化した巨人に驚く芳佳たち。怪獣たちも一瞬驚くが、ゾアムルチが真っ先に突っ込んでいくのを見て、それに続くように走り出した。

 

『デヤアアアアアアアア!!』

バギッ

「ウァァアアアオオオオオオオ!?」

 

ゾアムルチの平手打ちを弾いた巨人は左手を赤く光らせて殴ると、ゾアムルチは派手に吹き飛ぶ。次いで、ゴルザとサラマンドラが向かっていくが、パンチとキックで応戦、突っ込んできたサタンモアもくちばしを掴んで止めてしまった。

 

「何か、さっきより強くなってないか!?」

「ああ、力が上がったようだ…」

「強い………!」

 

パワーの上がった巨人に感嘆の声を上げる一同。怪獣たちが一斉に襲いかかろうとしたその時、巨人は掴んでいたサタンモアを大きく振りまわし始め、怪獣たちはうかつに近づけなくなってしまう。

 

「キュゥウ~~………」

 

三半規管がマヒしだしたのか、苦しそうな声を上げるサタンモア。巨人は遠心力で十分に勢いが付いたと判断すると、サタンモアを投げ飛ばした!

 

「キュウ~~~」

「ウァァアオオオオ………」

 

丁度その時、先ほど吹き飛ばされたゾアムルチが起き上った。しかし、そこに向かって投げ飛ばされたサタンモアが飛んできた。

 

グザッ

「ギャウウウウウウウウウ!?」

「グ!?グヮヮアアアア!?」

 

案の定、ゾアムルチのわき腹にサタンモアの鋭いくちばしが突き刺さり、悲鳴を上げるゾアムルチ。サタンモアも必死になって抜こうとするが、結構深く刺さっているのか、まったく抜ける気配がない。

ゾアムルチが痛みに暴れていると瓦礫に躓いてしまう。その先には戸惑ってたじろぐザンボラーの姿が………

 

ジュウウウウウウウウウ

「ギャウウウウウウウウウ!?!?!?」

「ギャオオオオオオオオオオン!?」

「うわあ~、カワイソー………」

 

泣きっ面に蜂と言わんばかりにザンボラーの上に倒れこみ、その熱でさらに苦しむゾアムルチ。ザンボラーもゾアムルチとサタンモアの重さで苦しんでいるその様子に、ルッキーニが思わず同情する。

サラマンドラとブラックキングをパンチで退けた巨人は、団子状態で苦しむ3匹を見て、好機と判断した。

 

『フウウウ………』

「!何か始める気ですわ!」

 

巨人は拳を作った両手を胸の前で合わせると、大きく腕を回す。すると、巨人の胸の前に赤いエネルギーが集まり、赤い球体となった。

 

『フウウウウウ………デヤァアッ!!』

ドォオオン

「「「ギギャァアアアアアアアア………!!!」」」

 

巨人はそれをパンチで打ち出し、それは3匹の怪獣に直撃し、哀れ3大怪獣は、大爆発の中に消えてしまった。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

 

「バカな!?3匹まとめてだと!?」

「あ、………圧倒的じゃなイカ、あのウルトラマン!!」

 

円卓で傍観していた影たちは、巨人の出現にざわついていた。細身の影は悔しげに拳に力を入れる。

 

「おい『ナックル』!どうする気だ!?」

「ええい、やむを得ん!!『アレ』を出すぞ!!」

 

ナックルと呼ばれたその影が立ちあがってそう言うと、円卓の一同はピタリと黙る。

 

「あのウルトラマンを地球人の小娘諸共、何処ぞと知らぬ異世界に飛ばしてしまえ!!」

「おお、それはいい!怪獣を回収でき次第―――」

「そんな時間はない!怪獣はまた後で集めればいい事だ!!早く奴を解き放つのだぁ!!」

 

ナックルがそう叫ぶと、背後に控えていたガイコツのような怪人が機器を操作する。その瞬間、部屋全体が大きく揺れた。中央の映像が切り替わり、何かのハッチが開き、そこから『ソレ』が出てきたと思うと、ふ、と姿を消してしまった………

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「な、何と言う強力な力だ………!!」

「あのカイジュウたちを倒したって事は、あの巨人は、我々の味方なのか………?」

 

たった今3大怪獣を葬った巨人の技に驚くウィッチたち。残った4体の怪獣が吠える中、巨人が胸の前で腕を交差させて開くと、先ほどの銀に赤と青のラインが入った姿に戻った。その時、巨人は何かに気付いたのか、街の一角を見た。

 

「?どうしたんだろう………?」

「……!?何か来ます!!」

「何だと!?」

 

サーニャが叫んだ瞬間、巨人が見ていた辺りの空間が歪みだして、元に戻った瞬間、そこには奇妙な『モノ』があった。

50メートルほどのフジツボか火山のような突起をいくつも生やし、上半分は青灰色、下半分は赤い色をした鉱物のような見た目であるが、時折ぶるぶる震える。

その物体の出現に全員が戸惑っていると、物体の突起から細長いアンテナのようなものが出てきたかと思うと、その先端がフラッシュのように光った。

 

「うわぁッ!?」

「眩しい!!」

「何だ、この光は―――!?」

 

その光は辺り一面を包み込み、全員は思わず目をつぶる。

 

「な、何これ―――」

「引き寄せられ――――――――」

「宮藤、逃げるん――――――」

「ば、バルクホルンさん!?」

 

バルクホルンが芳佳に叫んだ瞬間、側にいたシャーリーとルッキーニともども、バルクホルンは首にさげていたカメラを残して消えてしまった!

 

「そんな……バルクホルンさん………!」

「芳佳ちゃん――――――」

 

カメラを受け止めた芳佳が茫然としている間もなく、光は芳佳とリーネ、いや、ウィッチたちや怪獣、巨人を飲み込んだ。

 

 

 

 

 

光が消えた時には、ウィッチや巨人たち、そして、あの奇妙な物体の姿はなかった………

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「―――以上の内容で、間違いないですね?」

 

ミサキの言葉に、美緒と芳佳、リーネが頷く。

 

ここはGUYS ジャパン基地内の会議室。現在、芳佳たち3人の聴取をしたミサキやトリヤマにマル、そしてサコミズらは、聴取内容を確認していた。

 

「しかし、一部を除いて信じられない事ばかりで………」

「ですが、彼女たちの話では1939年にあのネウロイが出現したとありますが、そのような記録は残っておらず、昨日の出現が初めての物です。対して、彼女たちの世界に怪獣はいままで出現した記録もないと言います。」

 

訝しげに言うトリヤマにミサキがそう返す。それに、とサコミズが続ける。

 

「あの『ストライカーユニット』のメカニズムも、我々の見た事もない物ばかりです。大まかな技術は大戦中の物だそうですが、エンジンのエネルギー系統が不明とのことでした。そして、宮藤さんの持っていたカメラに残っていたフィルムには、怪獣や、彼女たちの言う「巨人」の写真が残っていましたし。」

 

サコミズはファイルから何枚かの写真を見せた。芳佳の持っていたカメラのフィルムを現像したものだ。そこには、ザンボラーやブラックキングと言った怪獣軍団や、巨人の姿が写っていた。

 

「これらの怪獣は、総本部のアーカイブに記録が残っていました。そして、最後に現れたという、この怪獣。」

「へ?………これも、怪獣なのかね?」

「これが、生き物だというのか?」

 

最後の一枚に写された突起の生えた物体が怪獣、つまり生き物である事に驚く美緒たち。ミサキは続けた。

 

「はい。ドキュメントSSSPに記録が残っていました。レジストコードは『四次元怪獣 ブルトン』。四次元を操る怪獣です。」

「四次元を………?」

 

怪獣―――ブルトンの別名を聞き、美緒たちはある事に行きついた。

 

「じゃ、じゃあ、私たちがここに来ちゃったのは、このブルトンのせい、と言う事ですか?」

「はい、宮藤さんたちがアイハラ隊長に保護された時や、ネウロイという怪獣やベムラーが出現する際に四次元エネルギーが観測された事を考えると、今回、ネウロイの『巣』をヴェネツィアから消し去ったのと同一人物である事が考えられます。」

「まさか………じゃあ、バルクホルンさんたちは………!?」

 

リーネの言葉を聞いたサコミズたちは、暗い面持ちになった。

 

「………君の仲間たちは、現在捜索を行ってはいるものの、まだ見つかっては……」

「………そう、か……」

 

残念そうな顔をする3人。すると突然、トリヤマが咳払いをした。

 

「あー、そこでなのだが、我々GUYSジャパンから、君たちに提案がある。」

「提案………」

「ですか……?」

 

トリヤマの発言に、3人は首を傾げる。

 

「君たちの仲間が見つかるまでの間、我らCREW GUYSジャパンに協力をしてはくれないかね?」

「え……?」

「ブルトンを操る者がネウロイを送り込んだとしたら、今後も怪獣だけではなく、ネウロイが出現する可能性もある。だから、こちらとしても対ネウロイ防衛チームである君たちの協力があると大いに助かるんだ。」

 

トリヤマに捕捉するようにサコミズが言うが、3人は突然の申し出に戸惑っている様子だった。

 

「もちろん、それまでの間の衣食住は保障するし、君たちを元いた世界に戻す術も探そう。どうだい?」

「え、そんな………悪いですよ………」

「気にする事はない。怪獣や宇宙人とネウロイという若干の違いはあれど、私たちと君たちは、互いに『地球防衛』の道を歩む者同士と言える。共に助け合って、人々を守ることが出来るはずだ。」

 

サコミズのその言葉を聞いた3人ははっとした顔になる。すると、突然美緒が高笑いし始めた。

 

「はっはっはっはっは!いやあ、総監殿には参りましたなあ!」

「それじゃあ…」

「はい!私たちに出来る事があるのなら!」

「ネウロイたちが来るのであれば、私たちが!!」

 

3人の快い返事に、決まりだな、とサコミズは手を差し伸べた。

 

「では坂本少佐、これから、よろしくお願いします。」

「ええ、こちらこそ。」

 

美緒はその手を握り返し、芳佳たちは笑い合った。

 

 

 

ふと、マルは写真に写った巨人に目が停まった。

 

「それにしても、このウルトラマンは、何者なのでしょうかねえ?」

「案外、坂本少佐同様に異世界から来たウルトラマンなのかもしれんぞ?」

 

トリヤマたちの話を聞いた芳佳が、首を傾げた。

 

「ウルトラ………マン………?」

「え?………ああ、そう言えば、君たちは知らないんだったね。」

 

一瞬、何故芳佳がその名前を知らないのか分からなかったサコミズたちであったが、3人がウルトラマンや怪獣のいない異世界から来た事に気付いた。

 

「この世界では、この巨人は『ウルトラマン』と呼ばれているんだ。」

「何だと?」

「ですが、このような姿のウルトラマンは、今までこの地球上で確認はされていません。」

 

サコミズとミサキがそう説明すると、今度はリーネが質問した。

 

「じゃあ、昨日のあの巨人も……」

「メビウスの事だね。彼は2年前に現れた、最も新しく確認されたウルトラマンだ。」

「そのウルトラマンとやらは、何者なのですか?」

 

今度は美緒が質問した。

 

「ウルトラマンは、地球から300万光年離れたM78星雲『光の国』から来た宇宙人なんだ。その星には、全宇宙の平和を守る「宇宙警備隊」の本部があって、彼らはそこに所属する戦士たちで、たびたび侵略者や怪獣の危機に瀕した地球を救ってくれたんだ。」

「そんなすごい人たちだったんだ………」

 

サコミズの話を聞き入る3人。

 

(………あ、ウルトラマンと言えば………)

 

その時ふと、芳佳はある人物の事を思い出した。

 

(昨日の戦いの後、あの場所に戻ったらいなかったけれど、ミライさん、どうしているかなあ………?)

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

『―――成程。異世界のウィッチと呼ばれる少女たちに謎の怪異『ネウロイ』、そして、怪獣を操る謎の存在、か………』

 

同じ頃、ウルトラマンメビウスはテレパシーで遠く離れたM78星雲と連絡を取っていた。

相手は、真っ赤な『ブラザーズマント』をたなびかせ、その下に見える胸には6対の勲章『スターマーク』、肩には3対の『ウルトラブレスター』を持ったウルトラマン―――『宇宙警備隊』隊長にして『ウルトラ兄弟』長男、ゾフィーである。

 

『メビウス、君は以前、異世界のウルトラマンと共に戦ったと言っていたな?』

『はい。彼女たちの写真にはその内の一人、『ダイナ』の姿がありました。ですが、恐らくそのダイナは、「僕の知らないダイナ」だと思います。』

『平行世界のウルトラマン、と言う訳か………』

 

そう、芳佳たちを助けたウルトラマンは、かつて異世界でメビウスと共に『闇の影法師』の陰謀を阻止し横浜の街を守った戦士、ウルトラマンダイナだったのだ。

だがメビウスが言った通り、以前共に戦ったダイナとは『別のダイナ』である可能性は十分にある。

 

『………実は、それと関係しているかは分からないが、ネオスと21から、怪獣墓場で不審な動きがあったという報告を受けている。』

『怪獣墓場で!?』

 

怪獣墓場とは、死んだ怪獣たちの魂が行きつく最終地点であり、そこは無数の怪獣たちの霊が眠る神聖な場所なのだ。

過去に何度かその場所が原因で騒動が起きる事があったものの、基本的にそこに入れる者は限られているのだが………

 

『他にも、チャックたちが宇宙各地でエンペラ軍団の残党が集結しているという情報を聞き、先ほど調査に向かった所だ。』

『そんな………まさか、今回の事も!?』

『確証はないが、何らかの関係性があるかもしれない………メビウス、予定通り君の休暇は本日を持って終了。早速で悪いが、今から新しい任務に就いて欲しい。』

『え………?』

 

心配するメビウスであったが、ゾフィーから突然の命令に一瞬戸惑った。

 

『では、任務を伝えよう。君はそのまま地球に滞在し、第501統合戦闘航空団『ストライクウィッチーズ』の残り8人を探し出し、無事に元いた世界に送り届けるのだ。』

『!ゾフィー兄さん………!』

『同時に、ネウロイや怪獣たちを操る黒幕をつきとめて欲しい。やってくれるね?』

『はい!もちろんです!!』

 

ゾフィーの指令に、メビウスは力強く答えた。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

翌朝、ディレクションルームに集まったCREW GUYSメンバーたちは、アイハラ・リュウ隊長の隣に立つ3人の少女たちに注目していた。

 

「と言う訳で、今日から俺たちGUYSジャパンと共に戦う仲間が、増える事になった。」

「坂本 美緒だ。ここではあまり意味を成さないらしいが、階級は少佐だ。よろしく頼む。」

「あ、宮藤 芳佳軍曹です!よろしくお願いします!」

「リネット・ビショップ曹長です。よろしくお願いします。」

 

リュウに紹介され、3人が自己紹介をする。

 

「3人は、他の仲間を探す間だけの一時的な入隊、という扱いとして、総監が話を通してくれている。こう見えてかなりの実力者だ。って、言わなくても一昨日一緒に戦ったお前らなら承知の上だろうな。」

「ええ、一昨日は助かりましたからね。」

「よろしくね~、3人とも♪」

「はい!よろしくお願いします!」

 

カナタやマイが挨拶をする。するとディレクションルームのドアが開き、アタッシュケースを持ったトリヤマとマルが入って来た。

 

「アイハラ隊長、用意が出来ましたよー!」

「ああ、すいませんね、補佐官。」

「気にするな。どの道必要になるのだからな。」

 

リュウがトリヤマから受け取ったケースを開くと、そこには『4つ』のメモリーディスプレイが入っていた。

 

「これって……」

「皆さんも、同じものを持っていましたよね?」

「メモリーディスプレイだ。通信の他に、過去に出現した怪獣たちの記録を呼び出す等、色々出来ると同時に、GUYSの一員である証でもある。」

「これを、私たちに?」

 

リュウが説明すると、美緒が尋ねた。

 

「一昨日みたいに、いちいち外部スピーカーを使う訳にはいかないし、持っていた方が便利だからな。使い方は、後でエリーにでも聞いてくれ。」

「…あれ?でもこれ、4つありますよ?」

 

物珍しそうに見る芳佳たちの後ろから、コウジが気付いたらしくリュウに聞く。すると、リュウはイタズラっぽく口の端を釣り上げた。

 

「ああ、それはな―――」

 

 

 

 

 

「すいません、遅れました!!」

 

リュウが言おうとした時、ドアが再び開いて、誰かが駆けこんできた。

 

「………え?み、ミライさん!?」

 

それは、GUYSの制服に身を包んだミライであった。リュウは呆れながらも、アタッシュケースに入ったメモリーディスプレイの内、右端の物を手に取る。その背面には、炎のシンボルが描かれていた。

 

「全く、何やってたんだよ?」

「すいません、少し内装が変わっていて、迷子に………」

「ええと、何でミライさんが………?」

 

リュウはメモリーディスプレイをミライに手渡すと、その肩を持って全員の方を向いた。

 

「あー、言い忘れていたが、今日は美緒たち以外に、もう一人増える事になっていたんだ。」

「今日からGUYSに復帰する事になった、ヒビノ・ミライです。よろしくお願いします!!」

 

「………え?」

「えええええーーーーーーーーー!?」

 

ディレクションルームに、芳佳の声が響き渡った。

 

つづく




大怪獣バトル!な第二話です(笑)
「ウルトラマンの世界にネウロイが現れた」前回とは逆で、「ネウロイしか出現しなかった世界に怪獣が現れる」という内容に決めたら、結構な数の怪獣が出る事に………タガールにサタンモア、ゴルザとかなりカオスな面子ですが、これでも減らした方です(減らす前はバンピーラやゲルカドンとかいたし…ゾアムルチはA版みたいな扱いと思ってください…)
ザンボラーの現象は、パワード版ザンボラーがレーザーを捻じ曲がった現象から思いつきました。

芳佳たちGUYSに協力、そしてミライが復帰した所で今回はここまで。次回からは、はぐれた8人がどうしているか、と言う感じになります。

最後に、前回のネウロイの元ネタですが、『ウルトラマン』より科学特捜隊の宇宙ビートルでした。

では、また次回。


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第三話 ネウロイの脅威

神奈川県藤沢市の片瀬東浜海水浴場。

有名な観光地「江ノ島」が目の前に見え、サーファーたちが波に乗っているここの道路脇にバイクを停めた女性が、ペットボトルの水を片手に空を見上げていた。

 

彼女の名は『カザマ・マリナ』。かつて、リュウやミライたち7人でエンペラ星人を打ち破った『旧CREW GUYS』の一員であった。現在は除隊して入隊時に一時離れていたバイクレーサーの夢に向かって再び歩み出していた。

今日はたまの休日にと、小田原を目指してバイクを走らせており、今は一休み中であった。

 

「―――そーいえばミライくん、どうするのかな………?」

 

一昨日のニュースで再び現れた怪獣と戦ったのは知っているが、メビウスが休暇の延長で地球に留まるのかどうかまでは、流石に報道機関が知っているはずもない。本人に直接聞くのもなんだか気が引ける気がする為、連絡はしていない。

今度、リュウ辺りにでも聞いてみよう。そう考えてペットボトルをバッグにしまうと、ヘルメットを手に取った。

 

「なんだありゃあ!?」「オイ、空を見ろ!!」「鳥だ!?」「飛行機だ!?」

「ん?」

 

ふと、サーファーたちが空を指さして何処かで聞いた事のある言い回しで騒いでいる事に気が付いた。マリナも見上げると―――

 

 

 

「………いや、人だぞ!?」

「えええ!?」

 

長い金髪の女の子が、空から落ちていた………

人々が騒ぎたてる中、女の子は海面近くで体勢を立て直し、衝撃波で海水を弾いて上昇した。

 

「くう………ここはどこですの?ヴェネツィアではないようです………が………?」

 

そのまま空中で静止する少女だが、急に頭を押さえて前のめりに倒れ、そのまま頭から海に落ちてしまった。

 

「お、おい、落ちたぞ!?」「どうする………!?」

 

サーファーたちが戸惑う中、マリナは意を決し、海に駆けだした。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「ヴェネツィアの怪獣たちを操っていた奴が分かったって?」

 

一方その頃、GUYS基地内では、クルーたちがマイとエリーから話を聞いていた。

 

「と言っても、実際の黒幕なのかどうかは別に、何らかのかかわりを持っている可能性はある人物です。」

「で、それは誰なんですか?」

 

芳佳がそう聞くと、エリーは端末を操作してメインモニターにヴェネツィアに出現した怪獣の一体、黒い蛇腹状の身体に金色の角とトゲを持った怪獣の画像を映し出した。

 

「わ、これって映写機になっているんですか?」

「便利な世の中になったものだなあ。」

「おばあちゃんかよ……」

「………話を進めますよ?」

 

未知の科学に驚く3人に呆れつつ、エリーが話を進める。

 

「レジストコード『用心棒怪獣 ブラックキング』。この怪獣が過去に出現した記録が、ドキュメントMATにありました。」

「この怪獣は、当時地球に滞在していたウルトラマン2世を倒す為にその能力を研究したらしい宇宙人が、それに対抗出来るように調教したらしく、その宇宙人とコンビを組んで、ウルトラマンを一度倒しています。」

「帰ってきたウルトラマンを、ですか?」

「新マンを研究して立ち向かうとは………なかなか用意周到な奴ですねえ……」

 

マイが続けた説明に、驚きと関心の混じった声を出すカナタとコウジ。すると、リーネがエリーに聞く。

 

「え?この怪獣って、ウルトラマンさんを3人も倒したんですか?」

「「「いいえ、1人です。」」」

「え?でも、名前が全然違うし………あれ?」

 

リーネたちが不思議に思うのも、無理はない。

ブラックキングと戦った『ウルトラマンジャック』は、活躍していた当時から呼び名が一定されておらず、現在でも『帰ってきたウルトラマン』、『ウルトラマン2世』、『新マン』、『帰マン』と呼ばれ、『ジャック』という本名は地球人には知られていないのだ。今のように別々の名前が飛び交う事もよくある話である。

 

「……まあ、帰マンさんの名前については置いといて。」

「また違う名前が!?」

「とにかく、その宇宙人というのがこの、」

 

話を戻して、エリーがモニターを切り替えて黒い頭に赤い角と大きな赤い目を持ち、白い身体にはいくつもの赤い球体、手足や首元には白い毛を生やした宇宙人の情報が呼び出した。

 

「『暗殺宇宙人 ナックル星人』なんです。」

「暗殺とは、なんとも物騒な別名だな………」

「ブラックキングはナックル星人にしか飼育できない怪獣ですし、無関係とは言い切れませんね。」

「へえ~、詳しいですねミライさん。」

「え?い、いや、その…」

 

芳佳の質問に戸惑うミライ。すると、それをリュウがかぶせた。

 

「ミライは、大学で『怪獣学』ってのを勉強していたんだよ。」

「え?あ、そ、そうなんですよ!はい!」

「へー。」

「まあ、40年以上も怪獣が現れている世界なら、怪獣について学ぶ事もあるだろうなあ。」

 

軍でもネウロイについて学ぶ場を作るよう進言してみるか、と美緒が考える。苦笑いしていたGUYSクルーメンバーだが、不意に、リュウがミライを引っ張りだした。

 

(おい、しっかりしてくれよ!あいつらに、お前がメビウスだって言ってないんだから!)

(すいません。流石に、いきなりじゃあびっくりしちゃいますからね……)

「?二人で何の話ですか?」

「「いや、別に。」」

「「?」」

 

首を傾げる芳佳とリーネ。

 

「ナックル星人は、非常に狡猾で、尚且つ卑劣な宇宙人です。ネウロイをブラックキング同様に侵略目的で利用しようとしているのかもしれません……」

「ネウロイを利用するだと?だとしたら、奴らはネウロイをも操れるという事か?」

「……連中が何を送りだそうと関係ない。俺たちの肩に、人類の未来が掛かっているんだ。みんな、気を引き締めていくぞ!」

「「「「「G.I.G.!」」」」」

 

リュウの言葉に、5人は答える。だが、美緒たち3人は困惑していた。

 

「じ、じーあい……?」

「ああ、僕らの合言葉で、『分かりました。』って意味です。」

 

そうなんですか、と頷く芳佳とリーネ。その時、ディレクションルームの扉が開き、右手に細長いアタッシュケースを持ったサコミズが入ってきた。

 

「みんな、今すぐ江ノ島に向かってくれ。」

「江ノ島、ですか?」

 

突然の指令に首を傾げる一同。サコミズは神妙な面持ちでその疑問に答えた。

 

「先ほど通報があって、江ノ島でウィッチらしき女の子が出現、海に落ちて救助されたそうだ。」

「何だと!?」

 

それを聞いて美緒が声を上げ、芳佳とリーネは心配そうに顔を見合わせた。

 

話し合った結果、美緒たち3人にリュウ、ミライ、カナタの5人で、江ノ島のウィッチの元へガンローダーに予備のガンスピーダーを積んで向かう事となった。

 

しかし、ここで問題が一つ。

 

「………行く前にお前ら、下にズボンか何か履いてくれ。」

「?もう履いているが?」

「いや、でもそれパンツだし……」

「いや、ズボンだぞ。」

 

当たり前のように言う3人に、リュウが呆れながら頭を掻いた。

 

「お前らがそう言っても、俺らからしたらズボンには見えないんだよ……」

「え?そうなんですか?」

「異世界のカルチャーショックですね………」

「とにかく、お前らをそのまま出すわけにはいかない。何か履いてもらうしかないんだ。」

 

不思議そうに首を傾げる3人にリュウとカナタがそう言うと、マイがふっふっふと笑いだした。

 

「こんな事もあろうかと、私トウドウ、3人分のホットパンツを用意しておきました~!」

 

そう言ってマイが出したのは、白く両サイドに黒いラインが入った、3着のホットパンツであった。試しに3人が履いてみると、3人にピッタリのサイズだった。

 

「おお、なかなか良いな!」

「この丈なら、ストライカーを着けても邪魔になりませんね。」

「ありがとうございます、マイさん!」

「何の何の。異世界同士のドッキング、てね♪」

 

こうして問題も解決し、今度こそ出発した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第三話 ネウロイの脅威

 

異次元怪異 ネウロイ(GX-02)

古代怪獣 ゴメス

サーベル暴君 マグマ星人

異次元宇宙人 イカルス星人

マケット怪獣 エレキミクラス

マケット怪獣 リムエレキング

登場

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

江ノ島の近くにある東浜海水浴場。

そこのライフセーバーが救助した人を休ませる目的の小屋に、2人の女性がいた。

1人はカザマ・マリナ。もう1人は、先ほど海に落ちた金髪の少女であった。

 

(この子、昨日のニュースで言っていた「ウィッチ」って女の子たちに特徴が似ているわね………)

 

タオルで女の子の髪を拭きながら、マリナはその装備と服装を見てそう思った。

 

「GUYSに連絡しておいたし、後は来るのを待つだけね。」

「う、ん………?」

 

その時、マリナの横の女の子が意識を戻したらしく、目をうっすらと開いた。

 

「………ここ、は?確かワタクシは、急に眩暈がして………」

「気を失って海に落ちて、救助されたのよ。はい、眼鏡。」

 

上半身を起こした少女に眼鏡を渡すマリナ。少女は慌てて眼鏡を受け取ってかけると、そのままの勢いで立ち上がった。

 

「も、申し訳ありません!ワタクシとした事が、飛行中に気を失ってしまうなんて………このペリーヌ・クロステルマン一生の不覚ですわ!!」

「え、いや、そんなに自分を責めないでも……」

 

ペリーヌと名乗るその少女が頭を下げるのを見て、マリナは彼女に聞いた。

 

「ひょっとしてなんだけれど、あなた、ウィッチっていうのかしら?」

「ふぇ?え、ええ、そうですけれど………?」

 

何でそんな当たり前のことを聞くのか?といった風に首を傾げるペリーヌ。それにマリナは答えた。

 

「あなたの仲間らしい人が、一昨日ネウロイっていう怪獣と戦ったそうなのよ。」

「ネウロイと!?」

「さっき連絡を入れたから、もうじき来ると思うわよ。」

 

マリナの言葉に、ペリーヌは少し戸惑いながらも、安堵の息を吐いた。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「クソゥっ!何でオレ様がこんな下っ端みたいな事を!!」

 

一方その頃、小田原の山中を2人の宇宙人が歩いていた。

 

金色の長髪に銀の仮面のような顔、黒い身体と、左手には銀の鉤爪を着けているのは、かつてレッドギラス、ブラックギラスの双子怪獣を引連れて地球に攻め入った宇宙人の同種族、『サーベル暴君 マグマ星人』だ。

 

「そうカッカするんじゃなイカ。そんなんじゃあ、仕事も上手くイカないからなあ。」

 

もう1人は、ひび割れた青い体表に大きな耳、頭髪と髭を生やしたその星人は、かつて四次元空間に前線基地を建設し、そこからの神出鬼没な攻撃で侵略を目論んだ宇宙人の同種族『異次元宇宙人 イカルス星人』である。

 

「第一、戦力はネウロイで事足りるであろう。なのに、何故怪獣を集める必要がある!?」

「けど、ネウロイだけでは行動に限界がある訳だから、こうやって地道に探すしかないじゃなイカ。」

「お前があのバオーンとか言う怪獣を捕まえていれば、こんな事、しなくて良かったのだがな!」

 

酷いじゃなイカ!と反りかえるイカルス星人。すると、マグマ星人の鉤爪についた装置が反応を示し、高い電子音を鳴らし始めた。

 

「む?どうやらこの辺りのようだな。」

「そんじゃあ、とっととおっ始めるイカ。」

 

イカルス星人はそう言うと、先端にパラボラアンテナのような物が付いた銃を取り出し、山の斜面に向けて超音波光線を発射した。

 

 

 

 

 

その地中深くの洞窟に、眠る『モノ』がいた。

 

イカルス星人の放った光線は地面をすり抜けてそれに当たり『モノ』を刺激し始める。しばらくそれが続いたその時、そのモノが目を覚ました………

 

 

 

 

 

「どうやら、目を覚ましたようじゃなイカ。」

「そうだな。よし、四次元転移装置、作動!」

 

さらにマグマ星人が腕の装置を操作すると、洞窟内の空間が歪みだし、巨大な物体が出現した………!

 

 

 

 

 

「キィィイイ……………!」

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「ペリーヌ、無事で良かった………!」

「坂本少佐!宮藤さんたちも!」

 

ペリーヌが目を覚ましたおよそ20分後、東浜海水浴場に予備のガンスピーダーを積んだガンローダーで急行した美緒、芳佳、リーネたちは、ペリーヌの無事に喜んでいた。

 

「それでペリーヌさん、あの女の人が助けてくれたんですか?」

「ええ。カザマさんと言うのですが、お恥ずかしいながら、重いのにストライカーまで持っていただいて………」

 

一方、リュウとミライも、通報したのがマリナだと知って、久しぶりの再会に喜んでいた。

 

「じゃあミライ君、もうしばらくはこっちにいるんだ。」

「はい!芳佳ちゃんたちの仲間を探す為にも、あのネウロイや怪獣たちを操る何者かを突き止めるにも、ここに留まる必要があるとの判断です!」

「そっかあ。」

 

ミライたちと笑顔で話すマリナを見て、芳佳が疑問に思った。

 

「あの人、ミライさんたちと知り合いなのかなあ?」

「ああ、カザマさんだね。」

 

するとそれに、カナタが答えた。

 

「カザマ・マリナさん。アイハラ隊長や、当時隊長だったサコミズ総監と一緒にエンペラ星人っていう悪の宇宙人を倒した7人の1人なんだ。」

「そんなスゴイ人だったんですか!?」

「今はGUYSを除隊して夢に向けて頑張っているらしいけど、隊長たちとは、今でも強い絆で結ばれた仲間だって事は、確かだ。」

「仲間………」

 

仲間、その言葉を聞いた芳佳たちは、不安げに顔を曇らせた………

 

 

 

 

 

「―――では、ワタクシたち以外の皆さんの行方は…」

「ああ。ペリーヌが2日遅れてきた事を考えて別の時間か、あるいはこことは別の世界か………」

「そんな………」

 

少しして、浜辺で美緒からここが異世界である事、ヴェネツィアに出現した怪獣たちを操る何者かがいる事、今はGUYSに身を寄せている事を聞かされたペリーヌは、不安そうに口に手を当てた。

 

「………ですが、意外ですわ。少佐が異世界のチームに、協力をするなんて。」

 

芳佳やマリナらと談笑するリュウやミライたちを見ながら、ペリーヌが美緒に聞いた。

 

「私も最初は少し戸惑ったが、私たちがネウロイから人々を守っているように、彼らもあの怪獣たちから人々を守る立場にある。戦う相手は違えども、平和を願う心は同じと考え、彼らを信じてみようと思ったんだ。」

「平和を願う、心………」

 

美緒の考えを聞いて、ペリーヌは物思いに彼らを見た。

その時、リュウのメモリーディスプレイから甲高い通信音が鳴り響いた。

 

「アイハラだ。」

[隊長、小田原の山中で異常な異次元エネルギーを観測しました。怪獣の可能性があります。]

「分かった。マイとコウジはガンウィンガーとガンブースターで向かってくれ。エリー、ナビは任せたぞ。」

[G.I.G.!]

 

リュウが通信を切ると、丁度美緒とペリーヌが駆け寄ってきたのを見ると、リュウはミライたちに向き直った。

 

「これより、小田原に調査に向かう。怪獣やネウロイの可能性が高い、気を引き締めていくぞ!」

「「G.I.G.!」」

 

ミライとカナタが答える。まだこの返事に慣れない芳佳たちだが、ネウロイの可能性と聞いて顔を険しくする。リュウたちがガンローダーに向かうと、ペリーヌがふらふらと美緒に駆け寄った。

 

「少佐!ワタクシも出撃を………!」

「ペリーヌさん!」

「無茶です!まだ体調が万全じゃあないのに!」

 

救出時に軽傷であった芳佳とリーネならばともかく、ペリーヌは気絶した上、海に落ちた為体力が落ちてしまっていたのだ。それでもなお、ペリーヌは美緒に進言した。

 

「ワタクシなら大丈夫ですわ!だから………!」

「ペリーヌさん………」

「……出会ってばかりのあの方々を信用していないというのもありますが、これ以上の失態は―――!」

「見栄張って命落としちゃあ、元も子もねえだろーが。」

 

ペリーヌが言い終える前に、手にアタッシュケースを持ったリュウが歩いてきた。

 

「アイハラ隊長……」

「そんな状態じゃあ、飛んでも墜落する。そんなお前を、怪獣やネウロイの元へ向かわせる訳にはいかない。」

「俺も同感だな。万全じゃないやつを飛ばすのは、危険すぎるからな。」

「ッ………しかし!」

 

尚も食い下がらないペリーヌ。そんなペリーヌを見て、リュウはふ、と笑う

 

「そんな顔するな。何も『戦うな』とは言ってねえよ。」

「アイハラ隊長?」

 

美緒が疑問に思っていると、リュウはミライに声をかけた。

 

「ミライ、コイツと一緒にスピーダーで地上から現地に向かってくれ!」

「G.I.G.!」

「え…?」

 

リュウはそう言って、ミライにアタッシュケースを渡した。

 

「サコミズ総監から、念のためにって持たされたモンだ。大事に扱えよ。」

「はい!」

 

ミライは笑顔で答えると、未だに戸惑うペリーヌに歩いて行った。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

リュウたちよりひと足先に到着したガンウィンガーとガンブースターは、エネルギー観測地帯付近を旋回していた。

 

「この辺りから、短い時間だけとは言え四次元エネルギーが観測されたんですよね?」

「………その、はずなんだけど…?」

 

眼下の山を見下ろすコウジとマイであったが、今の時点では、異状は見当たらない。二人が不振に思っていたその時、山の中腹が陥没し、その穴から怪獣が出現した!

 

「グゴォオウ!グゴォオウ!シャッシャーーー!」

「!あれは!?」

 

全長10メートルと小柄ながら、太い筋肉質な体にフック型の短い角とぼさぼさの眉毛と髪が生えた頭部を持ち、先端にとげが生えた尻尾と青いうろこに覆われ、背中を覆う甲羅がある怪獣を見て、マイが声を上げた。

 

丁度その時、美緒たち3人とガンローダーが現場に到着し、地上ではガンスピーダーからミライとペリーヌが降りていた。

 

「随分と、ちっちゃい怪獣ですねえ………」

「気ぃ抜くなよ。小さくても、人には十分驚異的だ。」

[隊長、あれは『ゴメス』です!]

「ごめす?」

 

エリーからの通信に、リュウがそれを聞き返した。

 

[アウト・オブ・ドキュメントに記録がある古代怪獣です。最初の防衛チームである『科学特捜隊』設立以前に出現した怪獣で、学名はゴメテウス。一見爬虫類に見えますが、新生代第三期頃の原始哺乳類で変温動物なんです。当時出現した際には―――]

[エリー、その話、今じゃなきゃダメ?]

「………流石はテッペイさんの従兄妹というか、何と言うか………」

 

怪獣について熱く語るエリーに呆れる一同。そんな事をゴメスが構う訳がなく、市街地に向けて走って行く。

 

「このままじゃあ、ゴメスが市街地に出ちまう!迎え撃つんだ!」

「待って下さい!あの怪獣、何か様子が可笑しくないですか!?」

「何?」

 

芳佳に言われて、リュウはゴメスを見た。ゴメスは何度か後ろを見ており、時折躓きながら走るその様は慌てているようで、何かに怯えているようにも見えた。

 

「グゴォオウ!グゴォオウ!シャッシャーーー!」

「何かに追われているのか……?」

 

美緒がそう呟いた時、ガンウィンガーのレーダーが、ゴメスの出てきた穴から移動する巨大な金属反応を感知し、警報音を鳴らした。

 

「金属反応?それもかなり大きい………?」

「移動している……?まさか!?」

 

リュウが叫んだその時、山の穴のすぐ隣が爆ぜ、そこから巨大な影が現れた!

 

「キィィイイイイイイイイイ!!」

「ネウロイ!?」

 

そう、出現したのは全長50メートル級の、陸戦型ネウロイだった!

節足動物を思わせる6本の細長い脚に自動車のような身体、先端の左右には回転するねじれた四角錐型のドリルが、イノシシの牙の如く鎮座している。

ネウロイは上体を起こしてひと鳴きすると、ゴメス目がけて走りだしたではないか。

 

「キィィイイイイイイイイ!!」

「グォオオオウ!!」

「あの怪獣、ネウロイに追われている…!」

 

リュウたちは気付いた。恐らくはあの地底を進むネウロイが、冬眠していたゴメスの住処に現れ、ゴメスを起こしてしまったのだ。

 

「あの、どうしますアイハラ隊長?」

「あの怪獣は、ネウロイの被害者みたいなものだからなあ………」

 

リーネと美緒が、ゴメスに同情するように聞く。リュウはため息を一つつくと、通信回線を開いた。

 

「……仕方ねえ。マイ、確かガンウィンガーに、怪獣用の麻酔弾が搭載してあったな?」

「はい。でも、非常用で1発だけですよ?」

「十分だ。ミライ!方法は任せる。ネウロイを足止めしろ!」

「G.I.G.!」

「ネウロイとゴメスの距離が十分に開いたら、ゴメスに麻酔弾を撃ち込む。その後、電磁ネットでゴメスを元の山奥に帰す。美緒、その後、ネウロイは任せたぞ!」

「了解した!」

 

リュウは全員にそう伝えると、気合いを入れるべく息を吸った。

 

「GUYS, SALLY GO!!」

「「「G.I.G.!!!」

 

作戦開始だ。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「でも、足止めってどうするのですか?」

 

ゴメスが逃げ行くのを横目に森を進むミライと、アタッシュケースを持つペリーヌ。

 

「このケースの中の物を使うんですの?それでしたら…」

「それもあるけれど、その前に動きを止めてもらうから、それからだね。」

「止めてもらう………?」

 

ペリーヌが首を傾げていると、ミライはベルトに着いたケースを開き、中から緑色のカプセルを取り出した。

 

「リュウさん、マケット怪獣の使用許可を。」

[成程な。メテオール、解禁!]

「あの、ヒビノさん?」

 

開いた場所でネウロイを見上げるミライは通信を切ると、そのカプセルをメモリーディスプレイのコネクタに接続し、ネウロイとゴメスの間を目がけ引き金を引いた。

 

《REALISE.》

「な!?」

 

同時に緑色の眩い光が放たれ螺旋を描くと、ネウロイの前に茶色い大きな顔と長短2対の角を持った怪獣が降り立った。

 

「グワォオォオォオオ!グワォオォオォオオ!!」

「キィイイ!?」

「か、怪獣!?」

「バカな!?」

[安心しろ。ミクラスは敵じゃねえよ。]

 

出現した怪獣―――『マケット怪獣 エレキミクラス』に驚くウィッチ一同であったが、リュウの言葉に警戒を若干ゆるめた。

 

「ミクラス?」

[マケット怪獣は、GUYS総本部にある怪獣のデータを元に、姿や能力を再現した怪獣です。カプセルに封入されたナノマシンと、フェニックスネストから転送される―――]

「ようするに、怪獣の偽物を作りだすモノなんですよ!」

「な、ナルホド……」

 

エリーが、長い上に専門用語が乱立する説明をしそうになったので、カナタが簡潔に説明した。そうこうしていると、ミクラスは突進してくるネウロイに掴みかかり、その進行を止めた。

 

「キィィイイイイイイ………!」

「グワォオォオォオオ!!」

「ミクラス、今だ!」

 

ミライが叫ぶと、ミクラスは身体から電撃を放出、ネウロイの身体を火花が走って、装甲の所々が弾け飛ぶ!

一方、ネウロイが足止めされているのに気付かないのか、ゴメスはネウロイから1,500メートルほど先まで走っていた。

 

「グゴォオウ!グゴォオウ!シャッシャーーー!」

「あれ位離れれば十分だ!『ネコだまし作戦』、GO!」

「「「………じ、G.I.G.!」」」

 

相変わらずネーミングセンスが微妙だなあ…と思いつつも、返事をする3人。ガンローダーとガンブースターからゴメスに向かってビームが発射される。が、ゴメスの目の前でビームは互いにぶつかり、爆発時の音と閃光で驚くゴメス。

 

「グォっ!?」

「今だ!麻酔弾、発射!!」

 

驚いて一瞬動きが停まったのを見て、マイはすかさず麻酔弾を発射、見事ゴメスの背中に命中した!

 

「グォオオウ………」

「閃光と爆煙で相手の隙を作り、そこを突く連携攻撃………ネコだましとは、上手く言ったモノだな。」

 

うつ伏せに倒れて眠りだすゴメス。見事な連携プレーを見て、舌を巻く美緒。ほどなくして、ガンウィンガーとガンローダーが機体下部から電磁ネットを射出すると、ゴメスは空中に浮かび空輸が始まった。

 

「こちらも行くぞ!あの怪獣に続け!」

「了解!」

「ミクラスですよ、坂本さん!」

 

芳佳がツッコむ中、ミクラスが相手をする陸戦型ネウロイに向かう3人。一方、地上のペリーヌは、ミライがアタッシュケースの中から取り出した大型の光線銃を受け取った。

 

「これは……?」

「ええと、『スパイダーショット改』、と言うらしいです。」

「らしいって……」

「とにかく、これならネウロイに十分通用するはずです。」

「……分かりましたわ!」

 

ペリーヌはスパイダーショット改を構えると、ネウロイに向けて引き金を引く。すると銃口から赤い光線が発射され、ネウロイの右足を撃ち抜いた!

 

「やった!」

「ペリーヌさんスゴイ!」

「あまり強い反動はありませんでしたわね………これなら!」

 

苦しむネウロイに勝機を感じたペリーヌは、再度スパイダーショットを構える。

 

 

 

「キィィイイイイイイイイイイイイイイ!!」

バシュッ

「何!?」

 

 

 

だがその時、ネウロイの背中の装甲が2枚になって後ろに跳ね上がり、その下からF字の両翼とV字形パーツが付いたアンテナを生やした、小型の球体ネウロイが無数に放たれた!

 

「何だコイツら!?」

「ネウロイの“子機”だ!まさか放ってくるとは…!」

ビーッ

「グワォオォオオ!?」

「ミクラス!!」

 

子機たちはミクラスを取り囲むと、球体の中心から赤いビームを放ってミクラスを拭き飛ばし、ネウロイを自由にする!ちょうどその時、メテオール使用期限である1分を切り、ミクラスは霧散する。

 

「ミクラスが!!」

「キィイイ!!」

 

ミクラスの消滅に声を上げる芳佳であったが、子機が迫りビームを放つ。芳かは障壁でそれを防ぐと、機関銃で撃ち落とす。

 

「子機を何とかしなければ、ネウロイ本体に近づけん!!」

 

子機がリーネや美緒に迫る中、十数の子機がガンウィンガーたちとゴメスに向かって飛び立っていく!

 

「ヤロウ…何が何でもゴメスをやる気か!!」

「隊長はゴメスを!喰らえ!アルタードブレイザー!!」

 

コウジはガンブースターの2門のビーム砲で子機を破壊するが、何体か砲撃をすり抜けてゴメスを捕獲する2機にビームを浴びせる!

 

「ウオオ!?」

 

ガンローダーがビームを喰らってしまい、電磁ネットが解除されて落下するゴメス。子機はゴメスに群がるが、ガンウィンガーとガンローダーが近づけまいと応戦する。

 

「こーなりゃ、ブリンガーファンでまとめて吹き飛ばす!」

「しかし隊長、ダメージがあるこんな状態でメテオールを使ったら………!」

「俺がとっつぁんにドヤされる、それだけだ!」

「……G.I.G.!」

 

カナタがそう答えると、リュウは叫んだ。

 

「メテオール、解禁!!」

「バーミッション・トゥ・シフト、マニューバ!!」

 

宣言と同時にガンローダーはマニューバモードに移行、ファンタム・アビエイションでネウロイに接近すると、両翼に装備されたブリンガーファンを起動させた。

 

「ブリンガーファン、ターン・オン!!」

ゴォオウッ

「!?」

 

巨大な二対の竜巻により子機は吹き飛ばされる!ネウロイが驚くのもつかの間、今度は自身がブリンガーファンの竜巻に捕まり、今にも吹き飛ばされそうになる!

 

「良し!このまま一気に――――――」

 

 

 

 

 

ズドムッ

 

 

 

 

 

「「「「『!!?』」」」」

「何!?」

 

皆がこのままハッチを破壊できると思った瞬間、突如としてガンローダーの右翼に光線が直撃してファンが急停止、黒い煙を上げながら高度を落として行く!

 

「操縦不能ーーー!!」

「馬鹿な!?どこからの攻撃だ!?」

「アイハラ隊長!!」

 

落ちていくガンローダーに向かおうとする美緒だが、彼女に向けても、まるで無数の針のような光線が狙い、行く手を阻む。

 

ビーーーッ

「くぅッ……!」

「芳佳ちゃん!!」

 

光線に苦しむウィッチとガンマシンたち。恐らくは、生い茂った木々の間辺りだろうか?地上の何処からかではあるのだが、狙撃手の詳しい位置が分からない。

ミライとペリーヌが地上で美緒たちを心配していると、

 

「ああ惜しい!もうチョイ右だ!」

「難しい注文するんじゃなイカ!チョコマカ動いて狙いずらイカ!!」

「「ん?」」

 

ふと右の方を見ると、木の間から2人の声がする。見れば、美緒たちを見上げるマグマ星人とイカルス星人の姿があった。イカルス星人は狙いを定めると、その大きな耳から無数の細い『アロー光線』を放つ。

 

「あの2人は!?」

「きっと、ヴェネツィアの怪獣を操っていた宇宙人の仲間です!」

 

そう確信すると、ミライは腰の銃『トライガーショット』を抜き、光線を放つ。弾が2人の近くに着弾するとイカルス星人が驚きのあまり転び、マグマ星人はようやく自分たちが見つかった事に気が付いた。

 

「見つかった!」

「ええい、お前が狙いやすい場所を探すなんて言うから!!」

「お、俺のせイカ!?」

「マグマ星人にイカルス星人!あのネウロイはお前たちの仕業か!!」

 

ミライが叫ぶと、マグマ星人はふんと鼻息を吐き、イカルス星人は起き上って、尻についた砂を払い落した。

 

「バレては仕方なイカ………イカにも。我々は地球侵略とウルトラ兄弟抹殺の為に結成された『宇宙人連盟』の一員だイカ!」

「あのネウロイを使って怪獣を捕獲しようとしていたのだが、とんだ邪魔が入っちまったぜ!!」

「何ですって!?」

 

マグマ星人たちの企みにペリーヌが叫ぶ。マグマ星人は右手に長い刃渡りのマグマサーベルを出現させ、切っ先を2人に向けた。

 

「これ以上邪魔をされては困るのでな。ここで消えてもらうぞ、ウル―――――――」

 

バギィイッ

 

「のわッ!?」

「何事イカ!?」

「「!!」」

 

マグマ星人が飛びかかろうとした瞬間、マグマサーベルと左手の鉤爪が爆発し、鉤爪がマグマ星人の腕から離れて火花を散らす!

 

「今のは…!?」

「大丈夫かミライ!?」

「リュウさん!!」

 

そこには、頭や頬から血をにじませ、手にトライガーショットと構えたリュウとカナタの姿があった。援軍の登場に驚くイカルス星人であったが、マグマ星人はそれ以上に、鉤爪に装着された装置の損傷に慌てていた。

 

「マズイ!コントロール装置が!!」

「何だと!?」

「その装置で、ネウロイを操っていたのか!」

「キ、キィイイイイイイイイイイイイ!!!」

「!?」

 

2人が慌てているその時、ネウロイは一瞬身を震わせると、ドリルを高速回転させ、その赤い部分を光らせて何条ものビームを発射し、地上を薙ぎ払った!

 

「操っていた状態から解放された今、ネウロイは手当たり次第に攻撃をする!オレ様たちにももう止められん!」

「マグマ、もうあのちっこい怪獣は諦めて、逃げるイカ!」

「そうしよう、覚えてろよ地球人ども!!」

「あ、コラ!」

 

カナタが止めようとしたが、マグマ星人とイカルス星人は一瞬の光と共に消えてしまった。

 

「キィィイイイイイイイイイイイイイイ!!」

バシュッ

「キャア!?」

「リーネちゃん!」

「このままでは、みんなもゴメスも……!」

「リュウさん、カナタ君、ペリーヌさんをお願いします!」

「ヒビノさん!?」

 

ミライは2人にそう言うと、ネウロイに向けて走り出す。ペリーヌが困惑したように声をかけるが、ミライの姿は森の木々の中に消えていった……

一方、ガンマシンとウィッチたちは、上空で子機や本体のビームを避けていた。

 

「これでは埒が明かん!本体のコアを探す!」

 

美緒は右目の眼帯を外し、固有魔法の『魔眼』でネウロイの身体を透視して、コアを探し出す。子機にはコアが存在せず、本体の意思で動く分身のような存在である。そのため、本体のコアを破壊すれば、子機も同時に消滅するのだ。

 

「む………?」

 

その時、ふと視界に入った木の影で、ある人物がいるのに気付いた。“彼”は左手を高く掲げると、強い光が包み込み、巨大な姿へと変わったのだ。

 

(あれは………!!?)

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

同じ頃、ペリーヌたちと別れたミライは、木々の間からネウロイを睨んだ。そして左腕を構えて『メビウスブレス』を現わすと中央のクリスタルサークルを高速回転させ、腕を高く掲げた。

 

「メビウゥゥゥウウウウウウスッ!!!」

 

叫ぶのと同時に彼の身体を金色の光が包み込み、ミライは本来の姿―――ウルトラマンメビウスへと変貌し、ネウロイの目の前に立ちふさがった!

 

「ウルトラマン、メビウス!」

「来てくれたんだ!」

 

芳佳とリーネが歓喜の声を上げる中、美緒は驚愕の顔で固まっていた。

 

(………まさか、彼が………!!??)

 

「あの巨人は!?」

「光の国からの使者、ウルトラマンメビウスだ!」

「ウルトラマン………?」

 

一方、始めてみるメビウスの巨大な姿を見上げて驚くペリーヌ。ヴェネツィアで見た巨人(ダイナ)とはまた違う姿であるが、リュウからの説明を受けて、味方なのかと考えた。

 

『セヤァアッ!!』

「キィイイイイイイイ!!」

 

メビウスが構えると、ネウロイは半数以上の子機を向かわせビームを放つ。メビウスがジャンプをすると、放たれたビームは地面を爆発させ、メビウスは子機ごとネウロイを飛び蹴りで吹き飛ばす!

 

「キィイイイイイ………!」

 

ネウロイは損傷した先端部分を修復すると、左右のドリルを回転させ、高速で突進する。そのドリルを、メビウスに突き刺すつもりなのだ。

メビウスは正面にメビウスディフェンサークルを発生させてドリルを防ぐと、ドリルとの摩擦で火花が散る。

 

「ミ………メビウス!」

『グゥウウ………』

 

リュウが叫ぶが、メビウスはチラリとガンウィンガーとガンブースターの方を見た。

リュウは気付いた。子機は先ほどのキックでほとんどの数が減り数機しか残っておらず、ネウロイ本体もメビウスに集中している。ゴメスを運ぶなら、今がチャンスだ。

 

「マイ、コウジ、もう一度電磁ネットでゴメスを!」

「「G.I.G.!」」

 

リュウの号令でガンウィンガーとガンブースターが再び電磁ネットでゴメスを捕まえると、そのまま元いた山を目指し上昇する。ネウロイの子機が気付いたらしく、数機追いかける。

 

「させん!!」

ザンッ

「「「キィイ………!!」」」

 

だが、それを美緒が一太刀で一掃すると、ゴメスを連れたガンマシンはすでに遠くへ行ってしまった。

 

「キィィイイイイイイイイーーー!!!」

 

ネウロイはメビウスから飛び退き、方向を転換してゴメスを追おうとするが、メビウスが後部を押さえつけて行く手を阻んだ。

メビウスを倒さねばゴメスを追えない、そう判断したのか、ネウロイは再度子機を放つべくハッチを開くと、その勢いでメビウスは後ろに倒れこんでしまった。

 

「メビウスを援護だ!」

「了解!!」

 

ネウロイのドリルとビームを寝た姿勢のまま避けるメビウスを見てリュウが叫ぶと、芳佳とリーネは銃撃で子機の数を減らし、美緒がネウロイに近づき、その刀『烈風丸』で装甲を斬り裂く!

メビウスは右手に炎のエネルギーを溜めると、ネウロイをその拳『メビウスパンチ』で殴りつけて怯ませる。ネウロイは再度ハッチを開いて子機を放つと、子機たちはメビウスにビームを放ち、ネウロイから遠ざける。

 

「俺たちも行くぞ!!」

「G.I.G.!!」

「ワタクシも!」

 

リュウとカナタはトライガーショットのグリップガードを上げて銃身の長いロングショット形態に変形させ、ペリーヌはスパイダーショット改を構え、メビウスに群がる子機に向けて引き金を引いた。

 

「キィィイイイイイイイイーーーーーーーー!!」

「ヤロウ、次々と……!!」

 

再び多くの子機を放つネウロイ。その時、コアの位置を探っていた美緒が、ついにその位置を捕捉した。

 

「コアを見つけた!」

「本当か!?」

「ああ、だが厄介だ。コアは機体後部、あの子機を放つハッチの真下だ………」

「何だと!?」

 

そう、コアの位置は、子機を放つハッチの下、二重の装甲の下という厳重な防御力な上に、開いても子機を放つ、厄介な場所だ。

 

「チャンスがあるとすれば、子機を放った瞬間、ですね………」

「かなり危険ですね……」

「ガンウィンガーがいれば、開いた時にスペシウム弾頭弾でふっ飛ばせるんだが……」

 

ネウロイの後部、ハッチ下のコアの辺りに照準を合わせながら、カナタとリーネは呟いた。

それを聞いていたのか、メビウスは子機のビームに苦戦しながらも左腕を構える。すると、メビウスブレスから金色の刃―――『メビュームブレード』が伸びた。

 

「剣だと!?」

「あんな物まで持っているんだ………」

 

接近戦や光線技だけではなく武器をも持っている事にウィッチたちが驚く。メビウスがブレードを振るい子機を一掃すると、ネウロイは両のドリルを回転させ、メビウスに突っ込んでいく!

 

『セヤァア!!』

バギッ

「キィィイイイイイイイイイ!!」

 

その時ネウロイがこちらに進行方向を変え、ドリルを高速回転させて地面を穿ちながら突進してきた!

 

「ペリーヌさぁぁあーーーーーんッ!!」

「宮藤さん!?」

 

放たれようとした瞬間、芳佳が両手を広げてペリーヌに向けて突っ込んできた!

丁度その時、子機からビームが放たれ、爆発が起こり、リュウたちやメビウスの表情がこわばる!

誰もが2人の命が失われたと思ったその時、カナタは爆炎の中に何かを見つけた。

 

「隊長!!」

「!?」

 

「はぁあああああああああ!!!」

「芳佳ちゃん!ペリーヌさん!」

 

炎の中から現れたのは、障壁を張り、ペリーヌを肩車した芳佳だ!乗っているペリーヌは一瞬戸惑うも、目の前にネウロイが見えるとスパイダーショットを構えた。

 

「合体した!」

「合体………って言うのか、アレ?」

 

今、ネウロイのドリルビームを掻い潜って先端部分に一発当てた芳佳とペリーヌを見て、そんなのアリかよと言いたげにリュウが漏らす。

その時、ネウロイは再び子機を出すためにハッチを開く。今がチャンスだ、そう思ったのはメビウスだ。メビウスはメビュームブレードを斜めに構えると飛び上がり、きりもみ回転をしながらネウロイに向けて頭から突っ込んでいくと、「燕返し」を思わせるV字の軌道を描き、両のハッチを斬り捨てた!

 

「ハッチが砕けた!」

「美緒!再生される前にコアを!!」

「「「「了解!!」」」」

「俺たちは、奴の脚を狙って動きを封じるぞ!」

「G.I.G.!」

 

リュウとカナタはトライガーショットを放って脚の関節を砕き、ドリルビームの隙間からリーネがライフルで美緒が指したコアの周囲の装甲を剥がす。数発命中したその時、破壊された装甲の中から赤く光るコアが露出した。

 

「コアを確認!!」

「ペリーヌさん!!」

「ええ!」

 

ペリーヌは芳佳に応えると、スパイダーショットの狙いを定め、引き金を引いた!

 

カチン

「!?エネルギー切れ!?」

「ええ!?」

 

だが、その銃口からエネルギー弾が発射される事はなく、乾いた金属音が響いた。

ネウロイは頭上の2人に気付くと、左右のドリルからビームを放つ!

 

「烈ッ風斬ッ!!」

ドォオンッ

「キィイ!?」

「メビウス!!」

 

だが、そのビームは美緒が放った『烈風斬』に相殺されてしまう。ネウロイは再生途中のハッチを閉じて何とかコアを守ろうとするが、すかさずメビウスが背後から押さえつけ、阻止する。

 

「キィィイイイイイイイイイイイ!!」

「メビウス!!」

『………!』

 

メビウスは、無言で頷く。自分が押さえつけている内に、コアを破壊しろと言うのが分かった。

ペリーヌは頷き返すと、ネコの耳と尻尾を出し、身体に電流を纏わせる。

 

「ペリーヌさん!!」

「ええ!」

 

ペリーヌは芳佳の機関銃とスパイダーショットを交換すると、装甲が再生しかけているコア周辺を狙い、電流を纏った銃弾を撃つ!

 

「このぉおおおおおおおおおおおおお!!!」

ピシィイッ

「キィィイイイ――――――」

『!!』

 

弾丸はコアに辺りヒビが入る!ヒビが徐々に広がるのと同調して、ネウロイの動きが弱くなり地面に倒れこむ。

 

「キィィイイイイイイイイ………!!」

パリィイン

 

最後のそのひと鳴きが断末魔となり、ネウロイは砕け散った………

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「ゴメスは無事、元いた山の中に返しました。今は、安定して睡眠をしています。」

「そうか。」

 

その日の夕方、フェニックスネストに戻った一同は、エリーからの報告を受けていた。

 

「全く、ネウロイのせいとは言え、迷惑な怪獣でしたわねえ。」

「ま、グースカ寝てるだけなら、寝かせといてやれ。」

 

リュウの言葉に頷くペリーヌ。その時、

 

「ピュウ!」

「キャァッ!?」

「ええ!?」

 

突然、体長40センチメートル程の黒い角と長い尻尾を持った、黄色地に黒い縞模様の小型怪獣が現れて、ペリーヌの頭にしがみ付いた。

 

「リム!」

「な、何なんですのコレ~!?」

「わ~、カワイイですよ~!」

「ひょっとして、さっきのミクラスと同じ?」

「マケット怪獣の『リムエレキング』ですよ。」

 

リムエレキングはかつて、ミクラスに電気能力を付加させるためにドキュメントUGに記録が残る『宇宙怪獣 エレキング』の能力を抽出しようとした際に、高エネルギー分子ミストを生成する粒子加速器の故障と、更にミクラスが過去にエレキングの記録を拒絶したため実体化した小型エレキングだ。現在はGUYSのマスコットとして採用されており、マケット怪獣活動限界時間の1分だけしか活動できないとはいえ、その特殊な出現の仕方故に基地内のあちこちに出現しているのだ。

 

「もう!いきなりレディの頭にしがみ付くなんて、失礼でしてよ?」

「ピュウ~………」

「ペリーヌさん、この子も反省しているみたいですし………」

「だったら、何で尻尾の先端を押しつけてきますの?」

 

「あの、ペリーヌさんって、さっき電撃放ってましたよね?」

「エサと間違えてなきゃ良いんだがな………」

 

リムを頭から引っぺがしたペリーヌを見ながら、ミライとリュウが小声でそんな心配をする。そんな中、美緒はミライを怪訝そうに見ていた。

 

(彼が……ミライ隊員が、あのメビウス……)

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

エーリカ・ハルトマンは、顔に日の光を感じて目を覚ました。身を起こすと、どうやら自分はどこかの湖畔にいるらしかった。近くには、自分の銃とストライカーユニットがある。

 

「………あれ、私………?」

「気が付いたかい?」

 

周りを見わたしていると、湖を背に20台前半くらいの男性が近づきながら声をかけてきた。

 

「………誰?」

「僕?そうだな………」

 

男性は少し考えると、こう名乗った。

 

 

 

 

 

「……『トウマ・カイト』とでも呼んでくれ。」

 

 

 

 

 

つづく




第3話です。

ペリーヌが気絶して墜落した理由は、次回判明する予定です。

ウィッチたちに何か履かせるなら、なるべく丈の短い物をと思いホットパンツを選出。ドッキングはいわずもがな。

ゴメス登場。記念すべき『ウルトラQ』第1話登場の怪獣ですが、最近は大怪獣バトル等で出番が多い(S)の方ではなくオリジナルの方です。最初考えた時はテレスドンの予定でしたが、体長10メートルと小柄なので、ネウロイに追わせるのに適任と思いました。

GX-02は陸戦型で、子機も発射するタイプ。モデルはそれぞれ『タロウ』より地底戦車ベルミダーⅡ世と偵察ヘリドラゴン。子機の出るハッチのギミックは、ケムラーの甲羅が元ネタ。

スパイダーショット改。マルス133とどっちにしようか迷ったけれど、「メテオールショットの試作機」という位置づけで考えたため、元々多機能なスパイダーショットにしました。今後も活躍する予定です。

ラストに登場した『トウマ・カイト』は、最強最速の彼なのか……?

では、また次回。


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第四話 ガリバーの冒険

「「「キィィイイイイイイイ!!」」」

「くう………ッ!」

 

ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ中佐は、上空5,000メートル付近で3体のネウロイ―――サーフボードを思わせる長いひし形の板状のボディの上部にV字に翼が生えているネウロイで、3体とも同じ姿―――と交戦していた。

ネウロイは、空気抵抗の少ないボディ故の高速移動でミーナに迫り、連携でビームを放つ。ミーナはシールドを張るが、数発がすり抜けて肩を掠める。

 

「っ………!(何……?いつものように動けない………?)」

 

ミーナは普段以上に動けない事に疑問を持つ。次第に目の焦点が合わなくなり、心拍数が異常なほどに上がっているのが分かった。身体の不調に顔を歪ませていると、ネウロイの一体がミーナに接近する!

 

「ッ!ええい………!」

 

ふらつきながらもネウロイと距離を取るミーナだが3機のネウロイは四方八方から迫る。

ミーナは固有魔法『空間認識』を使い避けるが、原因不明の不調により、すでに限界が近づいていた。

 

(何とか………弾を当てられれば………!!)

 

ミーナは気力を振り絞って狙いを定め、機関銃の引き金を引いて弾丸をありったけ撃ち込む。弾丸はネウロイの一機の装甲をえぐり、V字の翼の中央を破壊すると、そこからコアが露出する。さらに弾丸の1発が命中し、コアがひび割れ始め、やがて砕け散った。

 

「キィィイイイイ―――――!?」

パリィイン

「「キィィイイイイイイイイイーーーーーーーー!!」」

 

仲間が倒されたのを受けて、残りの2機が大きく鳴き声を上げる。ミーナは迎え撃とうとするが、視界が定まらず、飛ぶのがやっとであった。

 

「こ、こんな………とこ、ろで………!!」

 

気を失う寸前になりながらも、銃を構えるミーナ。ネウロイが先端を光らせたその時――――――

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「UNNOWN、一機撃墜。残り二機が少女に向かいます!」

「TEAM LIGHTNING、EXⅡ、UNNOWNとの接触まで4秒!」

 

空のはるか上で、この戦闘を見る者たちがいた。

オペレーターの女性2人の言葉に、落ち着いた雰囲気の男性はメインモニターに映る少女とUNNOWNを見た。

 

「間に合うか………?」

[攻撃開始!]

[ファイター2、了解!]

[ファイター3、了解!]

 

男性が呟いたその時、少女に迫るUNNOWNの一体が爆発し、装甲が破損した。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

ネウロイが先端を光らせたその時、ネウロイの一機の装甲が爆発し、装甲の一部が破損した!

 

「キィィイイイイイイイイイ!!?」

「…………!?」

 

ミーナには何が起こったか分からなかった。耳に聞こえたのは、暴風にも似た轟音。目に入ったのは、銀、青、赤の色をした4機の見た事のない戦闘機だ。

 

「あれ………は………――――――」

 

戦闘機を見上げた所でミーナの意識は途絶え、重力に従って落下を開始する。

 

 

 

 

 

「―――――――――!!」

「………(ガ、イ………ア………?)」

 

 

 

 

 

薄れ行く意識の中、赤い光とともにそう聞こえたような気がした………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第四話 ガリバーの冒険

 

用心棒怪獣 ブラックキング

宇宙戦闘獣 再生コッヴ

異次元怪異 ネウロイ(コード№04、コード№05)

暗殺宇宙人 ナックル星人

光波宇宙人 リフレクト星人

遊牧星人 ガラガラ星人

 

 

 

ウルトラマンガイア

ウルトラマンアグル 登場

 

 

 

 

 

 

 

 

 

太平洋上空を、一機の小型機が飛んでいた。

その座席に座る、服装を黒で統一した白髪が数束ある黒い長髪の男性は、正面に座る長い三つ編みを後ろに垂らした男性に話しかけた。

 

「―――まさか、『チーム・リザード』のリーダーである瀬沼さんが、自ら迎えに来てくれるとは思いませんでした。」

「“元”リーダーだ。今は後援だよ、藤宮博士。」

 

瀬沼と呼ばれた男性は、苦笑しつつ答えた。

 

彼の名は『藤宮 博也』、世界各地で『根源的破滅招来体』と呼ばれる存在の調査を行う科学者である。

藤宮は、瀬沼に渡された資料を捲る。資料には、黒い金属の身体を持った異形の写真が載っていた。

 

「このひと月で3体、奇怪な金属生物が日本に出現した。いずれも「ライトニング」と「クロウ」が撃退したが、似たような生物が続けて出現した事から……」

「ヤツラの尖兵、という事か?」

 

瀬沼は頷いた。

 

10年前、地球を破滅させようとした『根源的破滅招来体』が襲撃し、XIG(シグ)やアルケミー・スターズ、藤宮らは地球を守るべく戦った。

 

XIGはeXpanded Interceptive Guardiansの略称であり、若き天才科学者集団の「アルケミー・スターズ」と国連が連動して完成させた、汎地球防衛機構のG.U.A.R.D.(対根源破滅地球防衛連合)のエリート隊員で構成された最前線で根源的破滅招来体と戦う特捜チームで、オペレーションと複数の専門チームからなる尖鋭たちだ。

 

10年前の“最終決戦”において『根源的破滅将来体』の進行は収まり、現在は地球怪獣たちとの共存の道を歩むべく研究を進めているのだが、この3年の間に宇宙怪獣たちによるものと思わしき怪事件が多発、旧XIGメンバーが再集結しこれに対処することとなったのだ。

 

「もしかすると、博士が調査しているものと、何か関係があるのか?」

「現状ではわからん。だが、仮にそうだとしたら―――」

 

藤宮が言いかけた時、彼の右手に付けたブレスレットのクリスタルが、青い光を放った。

 

「………また、俺たちが戦うまでだ。」

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

エーリカ・ハルトマンは、目覚めた先の湖―――ちらっと見た看板によれば、『竜が森湖』という名前の湖らしい―――の湖畔に立っていた。

 

「………あー、これからどーしよー………?」

 

ストライカーと武器は、自分を助けてくれた青年『トウマ・カイト』が拾ってくれていたものの、見ず知らずの土地に墜落し、通信も通じない。完全に孤立無援であった。

 

「おーい、エーリカちゃん!」

「あ、カイト。」

 

すると、ストライカーと銃をサイドカーに束ねていたカイトが、彼女に駆け寄ってきた。

 

「とりあえず、近くの町まで出てみようか。そこで、何か分かるかもしれないし。」

「………そーだね。」

 

話しによると、このカイトという青年はサイドカーで各地を転々とする流れ者で、偶然にも落下してくるエーリカを見つけ、この「竜が森湖」に来たそうだ。

素性は怪しいが、今は彼に頼る以外の方法が思いつかないため、着いていく事にした。

 

「あのブーツみたいなの、結構重かったね。」

「ストライカーだよ。自分で持つと、確かにかなりの重量あるからねー。」

「所で、何でズボンとか履いてないの?」

「え?履いてるじゃん?」

「えっ?」

「?」

 

驚くカイトに、首を傾げるエーリカ。あまりにもナチュラルな反応に、カイトはこれ以上聞かない事に決めた。

 

 

 

 

 

「………やれやれ、どうやら無事のようだな。さて、あのお嬢さんは―――」

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

ミーナが目を覚ますと、最初に消毒液の匂いが鼻孔を刺激した。

起き上ってみると、自分は医務室らしき部屋で寝ていたらしく、濃い緑色の検査着を着せられていた。

 

「ここは………?」

「気が付いたかね?」

 

声をかけられて振り向くと、そこには少しくたびれた白衣を着た、ボサボサな白髪と無精ヒゲの老人がいた。ここの医師だろうか?

 

「ここはどこですか?私は、確かネウロイと戦っていたはず………あのネウロイは!?」

「君は気絶して、ここに連れて来られたのだよ。君が戦っていたあのネウロイの内一体は倒されたが、もう一体は逃げてしまった。ここは何処かと聞いたね。『空の上』、と言ったら、信じてくれるかな?」

「え………?」

 

医師の言葉にミーナが首を傾げると、そこの窓を見てみろと言われた。立ち上がって窓の外を見てみると、何とそこには真っ白な雲海が広がり、そのすき間からは海らしきものが見えたではないか。

 

「……………あの、本当にココ、何処なんですか………!?」

「『エリアルベースⅡ』。G.U.A.R.D.の誇る全長600mの巨大空中母艦基地だよ。」

「空中……母艦基地……?」

 

医師の言葉をオウム返しにするミーナは、頭を抱えて再度ベッドに腰掛ける。丁度その時、医務室のドアが開き、看護師らしき女性が入ってきた。

 

「あら、気が付いたのね。」

「え、ええ、今………」

「待っていて下さいね、今先生が来るから。」

「………え?先生ならここに…?あ、あら?」

 

看護師の言葉にミーナが先ほどの医師の方を見るが、そこには先ほどまでいたはずの医師の姿はなく、丸椅子が一つ残っているだけであった。

 

「どうか、なさいましたか?」

「い、いえ……私にも、何がなんだか………?」

 

混乱するミーナは、頭を抱えるのであった………

 

 

 

 

 

「―――多少の疲労が見られるけれど、だいぶ回復はしているようね。」

「最近、デスクワークが多かったせいかしら………?」

 

数分後、ミーナは精密検査を受けることになり、担当の医師(若い気さくな女性)の診断結果に苦笑しつつも答えた。

 

「うーん、なーんかそれだけとは思えないんだよなー、あなたの症状…」

「はあ………?」

 

首を傾げる医師とミーナ。すると、医務室のドアが開き、色黒で落ち着いた雰囲気の男性が入ってきた。

 

「失礼する。」

「石室コマンダー!」

 

入ってきた男性に医師が立ち上がるが、石室と呼ばれた男性は右手を挙げていい、と制し、ミーナに向き直った。

 

「初めまして、XIG司令官の石室 章雄だ。」

「(シグ?) 501統合戦闘航空団《ストライクウィッチーズ》隊長、ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ中佐です、司令官殿。」

 

聞きなれない組織名に疑問を持ったが、石室に敬礼をして名乗るミーナ。だが石室は、僅かに顔をしかめる。

 

「よろしく。それで、501とはどこの部隊だろうか?そのような部隊に、聞き覚えがないのだが………」

「え?いや、501は、ネウロイの進行を食い止めるべくロマーニャで活動中で……」

「いや、そんな筈はない。1995年にG.U.A.R.D.が設立してから……」

「1995年!?」

 

石室の説明に、ミーナは思わず大声をあげる。

 

「どうかしたか?」

「………失礼ですが、今は西暦何年でしょうか?」

「2009年だが、それが?」

「………私がヴェネツィアにいた時は、1945年だったんです。」

「何!?」

 

石室は目を見開く。ミーナや医師たちも訳が分からないように困惑していたが、石室は少し考えた後、口を開いた。

 

「………とにかく、詳しい話がしたい。着替えて、私と一緒に司令室まで来てくれ。」

「………はい。」

 

ミーナは頷くと、石室は部屋を出ていく。

 

数分後、着替えたミーナの姿(下が彼女曰く『ズボン』のみ)に石室が困惑したのを、医師と看護師の発信によりエリアルベース内で数日間話題になったのだが、それはまた別の話。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「―――コノ数週間、ねうろいヤ再生怪獣ヲ用イテ収集シタ、『アノ2人』ノでーたデス。」

 

同じ頃、地球の衛星軌道上に滞在する一隻の宇宙船があった。そこで2人の宇宙人が、曲がった角にただれた顔の宇宙人―――かつて、宇宙征服を目論んだ『侵略星人 ガルタン大王』に仕えていた遊牧星人の同種族『ガラガラ星人』の隊長(他と違い、胸に星型のバッジを着けている)から報告を聞いていた。

1人は、黒い頭に赤い角と大きな赤い目を持ち、白い身体にはいくつもの赤い球体、手足や首元には白い毛を生やした『暗殺宇宙人 ナックル星人』。

もう1人は、とげのついた鉄球を思わせる身体に手足と頭を持った『光波宇宙人 リフレクト星人』だ。

 

「ふーむ、『フォトンエッジ』及び『フォトンクラッシャー』の威力は28万度、『クァンタムストリーム』は30万度で、バリアーの強度はおよそ9万………何とも強力だな。」

「ですが、これで奴らの能力はまる裸。このデータを元にブラックキングを強化し、更に私が出向けば、2大ウルトラマンといえども、敵ではないでしょう。」

 

リフレクト星人がそう言うと、ナックル星人はフンと鼻を鳴らした。

 

「当然だ。だが、まず捕まえるのはこの青いウルトラマン、“アグル”の方だという事を忘れるな。」

「しかしあなたも人が悪い。ブルトンに飛ばされそうになったブラックキングを、こっそり回収していたのだから………」

 

ヴェネツィアであの謎のウルトラマン(彼らはまだ、そのウルトラマンの名前が「ダイナ」である事は知らない)やウィッチ、怪獣たちを次元の彼方に飛ばした際、ナックル星人は密かにブルトンにブラックキングを自分の宇宙船に回収させていたのだ。そして彼らはこの世界―――通称『ガイアアース』に存在する「ある技術」を狙い、数週間にも及ぶ計画を進行していたのだ。

 

「所デ、コノ世界ノ防衛部隊ハ、イカガイタシマショウカ?」

 

ガラガラ星人がそう聞くと、2人の宇宙人は急に笑い出した。

 

「アーッハッハッハッハッハ!!たかが人間ごときに何が出来る!?我らにかかれば恐れるに足らぬわ!!」

「あの連中はそんなに危険ではないでしょう。気にする必要はありません。」

 

ガラガラ星人はハア、と返事をする。

 

この判断が正しいのかどうか?

 

それは、今の彼らには問うまでもなかった。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「ねえ、あの格好、恥ずかしくないのかなあ……?」

「さあ?何も感じていないようダシ、平気何じゃないカナ?」

 

石室コマンダーと話すミーナを見ながら、オペレーターの佐々木 敦子とジョジー・リーランドはヒソヒソと話していた。

 

「………成程、ネウロイにウィッチ、か………」

「整備班があのストライカーユニットとやらを調べた結果、技術そのものは大戦末期のものですが、燃料の貯蔵部がなかったそうです。」

「君の言う、『魔法力』で動く、という事か?」

 

石室と話していた堤 誠一郎行動隊長と千葉 辰巳常任参謀が聞くと、ミーナは頷く。堤チーフが手元の機器を操作し、メインモニターに画像を出す。モニターには、短いY字の胴体とX字の複翼のネウロイ、三角の胴体と両翼の先端に楕円型のパーツを持ったネウロイ、そして二等辺三角形のボディと3枚の翼を持ったネウロイの映像が映し出された。

 

「これは………!」

「君の言う「ネウロイ」が初めて出現したのは1939年との事だが、我々がネウロイを確認したのは、この1ヶ月間だ。」

「なんですって!?」

「他にも、ネウロイと同時に怪獣が確認されている。今、地上のジオベースで関連性を調べている最中だ。」

「どういう事だ?1939年と言えば、第二次世界大戦が始まった年のはずだぞ………?」

 

千葉参謀が疑問の声を上げる。すると、腕を組みながら考えていた石室コマンダーが口を開いた。

 

「パラレル・ワールド………」

「え?」

「傘が、どうかしましたか?」「アッコ、『パラソル』じゃなくて『パラレル』ダヨ。」

 

古典的な聞き間違いギャグを放った敦子に構わず、石室コマンダーは話を続けた。

 

「つまり、我々のいるこの世界とは、まったく別の歴史を歩んだのが、ミーナ中佐の世界という事になる。ネウロイの存在が、その証拠だ。」

「そんな事が………!?」

 

ミーナと千葉参謀は驚愕の表情になる。しばらく沈黙が司令室を包むが、その時ジョジーがああ、と手を叩いた。

 

「そうだ!コマンダー、『アドベンチャー』がありますヨ!」

「アドベンチャー?」

 

ミーナの疑問に、堤チーフが答える。

 

「うちのアナライザーである「高山 我夢」が開発した、時空移動実験機だ。確かに一度、別の平行世界への移動に成功しているが………」

「我夢が、もう少しで2号機が完成するって言っていタヨ!それを使えば、アナタ元の世界に帰れるよ!」

「………何でその、高山さんは、アナライザーなのにそんなスゴイ物を開発出来るんですか?」

「まあ、その辺は後で。とにかく、私も一度我夢と話したい。」

「了解。」

 

堤は答えると、通信機を取って何処かに話し始めた。ミーナが少し不安そうになるが、ふと、先ほどから流れていた映像が目に入る。

映像では、ネウロイに3機編成の戦闘機が苦戦していると、突如、赤い光が降りてきて、それが『赤と銀の巨人』に変わり、ネウロイに向けて構えを取った。

 

「!あの巨人は………!?」

「どうかしたか?」

「………似ているわ……ヴェネツィアに現れた、あの巨人と!」

 

ミーナの言葉に、再度驚く一同。石室コマンダーだけは冷静であり、説明した。

 

「彼は、『ウルトラマンガイア』。」

「ウルトラマン………?」

「地球がつかわした守護者、といった所だな。もう1人の、」

 

映像が切り替わり、メキシコの砂漠で青い身体に黒のラインが特長のウルトラマンが、涎をだらだら垂らした強暴そうな眼の怪獣『アルゴナ』と戦っている場面になった。

 

「もう1人の青い巨人は『ウルトラマンアグル』、ガイアと共に、地球を守る者だ。」

「ガイアとアグル………ウルトラマン………」

 

2人のウルトラマンの映像を見て、ミーナはそう呟いた。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

エリアルベースⅡ内の格納庫。30代くらいの男性がミーナの履いていたストライカー『Bf109K-4』のハッチを開いて、内部構造を調べていた。すると、その男性の背後から若い男性とガタイの良い3人の男たちが近づいてきた。

 

「あの女の子が着けていた飛行ユニットか、“我夢”?」

「梶尾さん、吉田さんたちも。」

 

我夢こと高山 我夢は振り返ると、「チーム・ライトニング」の隊長である梶尾 克美と、その隣の「チーム・ハーキュリーズ」の面々に返事をした。

 

「何かわかったのか?」

「コレの内部構造は、確かに大戦末期の技術ですね。ただ、中の機械は軽傷ですが、外装の損傷が妙に多いです。」

「何故だ?」

「さっき堤チーフからの連絡が本当ならば、彼女は異なる次元を移動した事になります。その際の強い負担がかかった事が、原因と考えられます。」

「では、彼女が戦闘中に意識を失ったのも……?」

「恐らくは。機体の装甲でこれほどなので、生身の彼女はそれ以上のものだったのでしょう。」

 

我夢はそう説明する。するとそこに、堤に連れられ、ミーナが格納庫にやってきた。

 

「我夢、ヴィルケ中佐をお連れした。」

「ああ、堤チーフ。初めまして、ヴィルケ中佐。XIGでアナライザーを務めている高山 我夢です。」

「チーム・ライトニングの梶尾だ。」

「ミーナで結構ですよ、高山博士。」

「あ、じゃあ僕の方も我夢で。」

 

ミーナの差し出した手を、我夢が握って握手をする。吉田や志摩たちはミーナの奇抜な格好(彼女にはその自覚はない)に釘づけになるが、堤がワザとらしく咳払いをすると、慌てて視線をそらした。

 

「それで我夢、先ほど話した件だが……」

「はい。確かに、「アドベンチャー」を使えば、ミーナ中佐を元の次元世界に返す事は可能と思われます。」

 

しかし、と、我夢は言いにくそうな顔になる。

 

「正直、その次元世界と、更に別の世界に飛ばされたであろう中佐の部下の人たちを探し出す事は、非常に困難と思われます。平行世界、パラレル・ワールドというのは、無数に存在するのですから………」

「無数に、ですか……?」

「パラレル・ワールドというは、『もしも』の積み重ねですからね………例えるならば、広大な砂漠の中から、一粒の砂金を探し出すようなものです。以前は、一度訪れた世界だったから、探し出すことが出来ましたが………」

「そんな……!」

 

ミーナの顔が青ざめる。せっかく、皆を探せる手がかりを見つけたというのに、今度は別の問題が発生するなんて………

 

「安心してください。ミーナ中佐が元の世界に戻れるよう、僕たちも尽力します。「アドベンチャー」の完成も間近ですので、まずは先ほどの戦闘があった空域を調査して―――」

 

我夢が言いかけた時、突如として甲高い警報音がエリアルベース内に鳴り響いた。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「何事だ?」

「東京タワー上空に、ネウロイ出現!」

「先ほど、LIGHTNINGが逃がした一体と、もう一体、別の大型です!」

 

司令室で、敦子とジョジーが報告をする。映し出された映像には、東京タワーの上空十数メートルに、先ほどのネウロイ(コード№04)と、独楽のようなボディに尾翼のような部位と球体パーツ、アンテナのようなものが上部についた大型ネウロイが浮遊していた。

 

「現場の状況は?」

「突然の出現に、住人に混乱が生じているようです。G.U.A.R.D.の隊員が対応に当たっていますが、終息には時間がかかります!」

「何とか安全に避難をさせろ。ネウロイ殲滅にライトニング、援護にハーキュリーズを向かわせるんだ。」

「「了解!!」」

 

石室が冷静に指令を出す。すると、司令室の通信機が鳴り、我夢の顔が映し出される。見ると、横からミーナが覗き込んでいる。

 

[コマンダー!]

「我夢、ネウロイが出現した。『ピースキャリー』にEXとスティンガーを搭載し、発進してくれ!」

[分かりました。それと………]

 

我夢が返事をすると、ミーナと交替し、石室に進言した。

 

[私も同行させて下さい。ストライカーはまだ動かせませんが、ネウロイとの戦闘について、サポートが出来ます。]

「………いいだろう、ピースキャリーに搭乗させてやれ。」

[ありがとうございます。]

 

返答と共に、通信回線が切れた。

 

 

 

 

 

それから2分後、全長9mの六角柱型のコンテナが3機発進位置に移動、エレベーターが降り、パイロットが搭乗した。

 

「こちらライトニング1、発進準備OK。」

「ライトニング2、OK。」

「ライトニング3、OK。」

「2人とも、2度目の出撃だからって、気を抜くなよ。」

「了解!」「わかっていますよ。」

 

梶尾がそう言うと2人のパイロット、北田と大河原が返答し、操縦桿を強く握りしめた。

 

「チーム・ライトニング、発進!」

 

掛け声と共にアクセルを全開にすると、3機のコンテナはレールに沿って真っ直ぐに発射口へと吸い込まれ、エリアルベースⅡの先端にある射出口から雲海に放たれる。

すると、3機のコンテナは空中で展開し、白いボディに青いラインとX字の翼を持った戦闘機と、同じく白いボディだが、こちらは赤いラインに前から見ると台形に見える翼のフォルムが特徴の戦闘機2機に変形した。XIGが誇る戦闘機、XIGファイターSTとGTが発進した。

 

 

 

[スティンガー、ファイターEXⅡ、搭載完了。ピースキャリー、発進位置へどうぞ。]

「了解。」

 

ファイター3機が発進するころ、エリアルベースⅡ内では、大型輸送機『ピースキャリー』の発進準備が行われていた。ピースキャリー下部の格納庫に2機のコンテナが収容されると、ピースキャリーは発信位置へと移動し、エリアルベース後部のハッチが開き、ピースキャリーが上昇してきた。

 

「ピースキャリー、発進!」

 

パイロットの神山の宣言と共にピースキャリーは垂直離陸する。4機の向かう先は、東京タワーだ。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「こっちです!慌てないで避難してください!」

 

G.U.A.R.D.の隊員が避難を誘導する中、遠くに東京タワー上空に浮遊するネウロイが見える地点に、『KCB』というロゴがプリントされた1台の中継車が停まり、頭に巻いたバンダナが特徴の男性が出てきた。

 

「またアイツかぁ………ここんとこ同じタイプのばかりだなぁ………」

「リンブン、ぼさっとしてないでキャメラ用意しろキャメラ!」

 

後から降りてきた男性が怒鳴る。リンブンと呼ばれた男性は慌ててカメラを担ぐと、どなった男性はキャスターの女性に向き直った。

 

「悪いな玲子、博也君、今日だったのに……」

「………仕方ありませんよ田端さん。さ、気合い入れて伝えますよ!」

 

玲子と呼ばれた女性アナウンサーはそう気合いを入れて車から降りる。彼女が強がっているのは明白であったため、田端はやれやれとため息をついた。

 

ドンッ

「うお!?」「きゃあッ!」

 

その時、避難していたらしい年配の女性が田端にぶつかり、しりもちをついた拍子に手に持っていた包みを落としてしまった。

 

「大丈夫ですか!?」

「ああ、おじいさんの作った芋羊羹が……!」

 

田端が女性を起こそうとするが、女性は落とした包みからこぼれた芋羊羹を慌てて拾おうとする。田端も一緒になって芋羊羹を拾っていると、最後の一個を目の前に立っていた何者かに拾われてしまった。

 

「どうぞ。」

「え?あ、どうも……」

 

拾ったのは、20代前半ほどの青年であった。青年から芋羊羹を受け取った女性は、そそくさと包みなおして、青年と一緒にいた黒い服を着た金髪の少女の脇を通り避難所まで駆けていった。

 

「慌てないでね、おばあちゃん!」

「おい、君たちも早く非難しなさい。」

「ええと、それは、そうなんですが………」

 

青年、トウマ・カイトが苦笑しながら少女、エーリカを見ると、彼女は東京タワー上空に浮かぶネウロイを睨み付けていた。

 

「田端さーん!」

「今行く!それと君、慌てているからって、ズボンくらい履いてから避難しなさい!」

 

田端はそうエーリカに言うと、中継の準備にかかった。

 

「………だからもう履いてるよ?」

「エーリカちゃん、僕たちも早く………」

 

エーリカが小首を傾げていたその時、大きなジェットエンジンの音と共に、3機のファイターとピースキャリーが現場に到着した。

 

 

 

 

 

★☆★☆★☆

 

 

 

 

 

[ネウロイを確認!]

「状況は?」

[今の所、2機に動きはありません!]

 

ピースキャリー内で梶尾の通信を聞いて、我夢とミーナは疑問に思った。

 

「動きがない………?」

「どういう事かしら………?」

 

2人が疑問を口に出した瞬間、旋回していた№04がライトニングに向けてビームを放つ!3機は瞬時に散開して回避し、04に向けてレーザービームを撃つ!

 

「ファイターが近づいた途端に!?」

「我々が来るのを待っていたのか!?」

 

04の動きに神山と堤が声を上げる。タワー上空の№05からもビームが放たれ、ピースキャリーのすぐ横を掠めた。

 

「ネウロイがこんな行動を……!」

「攻撃!」

「了解!」

 

堤の宣言でピースキャリー機首から機関砲が放たれ、№05の装甲を剥がすが、当たったそばから再生してしまう。

 

「キィィイイイイイイイ!!」

「ダメか………!?」

「ネウロイには、体内に『コア』である赤い結晶体があります。それを破壊すれば、ネウロイは砕けます!」

「だったら!」

 

ミーナの説明を聞いた我夢はシートから立ち上がると、後部に続く扉を開いた。

 

「EXで近づいて、コアの位置をサーチします!」

「分かった!ハーキュリーズ!EXを援護しろ!!」

[了解!][やっと出番か!]

 

我夢がコックピットから出ると、通信機からハーキュリーズの野太くやる気に満ちた声が響く。

 

「ファイターEX、発進!」

 

ほどなくして、ピースキャリー下部のハッチが開きコンテナが投下されると、空中で展開して銀色の戦闘機、XIGファイターEXⅡが発進した。

 

「スティンガー投下!」

 

宣言と共に別のハッチからコンテナが投下されると、コンテナ前部が後ろにスライドして上に4連の砲身と赤いドーム状のコックピット、下部にキャタピラが出現する。ハーキュリーズの駆る巨大戦車、GBTスティンガーである。

スティンガーは150メートルほど先に停まっていた自転車を数台倒す程の衝撃と共に着地すると、ファイターEXを狙う№05に向けて前進、援護射撃を開始した!

 

「キィィイイイイイイイ!!」

ドドドォオンッ

「この野郎!」「スティンガーを舐めんじゃねー!」「撃て!撃てー!」

[あのー、東京タワーには当てないで下さいよー?]

 

ビームを放つネウロイ05に対して、暑苦しいハーキュリーズの叫びと共に砲撃をするスティンガー。我夢が思わず忠告するも、それが聞こえているのかはかなり怪しい。

 

[04はライトニングが引き受ける。我夢、05は任せたぞ!]

「了解!」

 

梶尾に対し我夢は返答すると、スティンガーにつきっきりのネウロイ05の真上を旋回し、内部をサーチしコアを探る。

 

「これは………!?」

[我夢さん?]

 

だが、内部を探った我夢は、驚きの声を上げる。ネウロイの内部には、『非常に高い生命反応があった』のだ!しかも、この熱量から推測するに―――

 

「ネウロイの内部に、怪獣がいる!」

[なんだと!?]

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「ふん、地球人の雑魚どもがわらわらと。」

「ヤツを出して、一掃しましょう。」

「そうしろ。」

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

我夢が報告した瞬間、ネウロイ№05の円錐状の下半分が花弁の如く開き、中に入っていた巨大な怪獣が投下された!

 

 

 

「ギャァァアアアアアアン!ピューーールルルルル!」

 

 

 

「何!?」

「コッヴだと!?」

 

尖った口に金色の角、胸に青い発行体を持ち両手が鎌になった怪獣―――『宇宙戦闘獣 コッヴ』の出現に、梶尾と北田が声を上げる。

コッヴは特徴的な鳴き声を上げると、額から金色の光線を発し、ファイターSTの翼を掠めた。2機のネウロイはここぞとばかりにビームを発射、大河原機の左翼に命中し、爆発を起こした!

 

「しまった!」

「大河原!脱出しろ!!」

「了解ーーー!」

 

煙を上げながら降下するGTから大河原が脱出すると、戦闘機は地面に激突し爆発した。コッヴと2体のネウロイは雄叫びをあげると、街を破壊し始めた。

 

「ギャァァアアアアアン!!ピューーールルルルル!」

「何と言う事だ………まさかコッヴまで現れるなんて!」

「なんて巨大な怪獣………!」

 

ネウロイを含めた3大怪獣の猛攻に焦りの表情を見せる堤とミーナ。神山がネウロイ04のビームを間一髪で避けたが、その時、コッヴが上空の自分たちに気付き、額にエネルギーを溜め始めた!

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

コッヴが街を破壊する様子を見た我夢は、意を決し、コクピット脇のスイッチを入れた。

 

「“PAL(パル)”、後は頼んだよ。」

《了解シマシタ、我夢。気ヲツケテ。》

 

我夢は、人工知能『PAL』の返事に頷くと、「逆三角形の手甲のような物」を右手に持ち、それを一度左肩に乗せた後、前に突き出し、叫んだ。

 

 

 

 

 

「ガイアァァアアアーーーーーー!!」

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

コッヴが光線をピースキャリーに放とうとしたその時、コッヴとピースキャリーの間に割って入るように、『赤い光』が飛来してきた!

 

「あれは………!?」

 

離れた場にいたエーリカがその光を見て声を上げる。赤い光は見る見るうちに人型となり、ズドンッ、と土煙を上げて着地をした!

 

 

 

 

 

「ウルトラマン………!!」

 

 

 

 

 

見つめていたカイトが、その名を呼ぶ。

 

『ジュア!』

 

銀色の体に赤いラインを走らせ、中央に青く光る『ライフゲージ』のついた金と黒のプロテクターを纏った巨人―――『ウルトラマンガイアV2(ヴァージョン2)』が降り立った!

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

[ガイアです!怪獣たちが蹂躙する街に、ウルトラマンガイアが来てくれました!!]

「我夢………!」

「東京は大変な事になっていますね………」

 

同じ頃、空港についた藤宮と瀬沼は、テレビで流れる映像を見ていた。映像ではアナウンサーの玲子が興奮した様子でコッヴと戦うガイアを中継していた。

 

「俺も行こう。車は?」

「表に用意してあるはずだ。すぐに―――?」

 

2人が外に出ようとした時、藤宮たちを囲むように11人の男が立ちふさがった。

全員、揃いのコートとつばの広い帽子を被り同じ短い髪型で、ガラガラと不気味な音を発していた。

 

「何だ、君たちは?」

「………藤宮博也博士、イヤ、うるとらまんあぐる、ダナ。」

 

男たちの1人が言う。藤宮は眉をしかめると、男たちを睨みつけた。

 

「我々ト一緒ニ来テモラオウ。断ル権利ハナイ。」

「貴様ら、何者だ!?」

 

瀬沼が怒鳴ると、男は右手を上げる。すると、空港の外で空間が歪みだし、そこに巨大な影が現れた。

 

「グオオオオオオオオ!!」

 

現れたのは、蛇腹状の黒い体表と金色の角と全身に生えたトゲを持った怪獣、『用心棒怪獣 ブラックキング』であった!

 

「怪獣!?」

「モシ断ルノデアレバ、ぶらっくきんぐガコノ辺リ一帯ヲ破壊スルゾ。」

「何だと!?」

 

ブラックキングが雄叫びを上げ、空港の人々が逃げ惑う中、藤宮はブラックキングを睨みつけた。

 

「その前に、俺が叩く!」

「藤宮博士!」

 

藤宮は男たちを押しのけると、右手を下に伸ばす。すると、右手に装着したブレスレット―――『アグレイター』の翼部分が開き、中央の青いクリスタルが点滅してエネルギーの高まりを示す音が響く。そして藤宮は右手を肩の方まで曲げるとブレスレットが反転し、翼の部分にエネルギーの柱が生まれ、彼を青い光が包み込んだ!

 

 

 

「アグルゥゥウウウウウウウウ!!」

 

 

 

藤宮が光りに包まれると、その光を握った両手で突き破るように青い身体に銀のラインを走らせ、胸に青く光る「ライフゲージ」を持った青い巨人―――『ウルトラマンアグルV2(ヴァージョン2)』が飛びだした!

 

「愚カナ………」

 

「グオオオオオオオオ!!」

『ジュワッ!』

 

男が嘲笑う中、アグルの姿を見たブラックキングは大きく鳴き声を上げ、アグルは握った拳をブラックキングに構える。アグルは腕から光弾『アグルスラッシュ』を放つが、ブラックキングは口から赤い光線を放って相殺してしまう。ならばと、アグルは接近してパンチを連続で放つが、ブラックキングの黒い体表はそれを全く受け付けず、逆にアグルの頭部に重い一撃を放った。

 

『グゥウ………!』

「グオオオオオオオオ!!」

 

ブラックキングの予想以上の攻撃にアグルは頭を押さえるが、頭を振って右手を握り手に細い刀身の光の剣『アグルブレード』を発生させ、ブラックキングに斬りかかる。

 

「グオオオオオオオオ!!」

ガブッ

『!?』

「し、白“歯”取り!?」

 

だが、何とブラックキングはその刃先に噛みついて、受け止めてしまったではないか!アグルは必死になって引き抜こうとするが、強靭なあごの力で押さえつけられておりなかなか抜けず、ブラックキングはそのままアグルブレードを噛み砕いてしまい、よろけたアグルの腹に尻尾を叩きつけた!

 

『グウ………!(コイツ、俺の動きを………!)』

 

アグルは、ブラックキングが自分の動きを読んでいる事に気が付いた。恐らくは自分と、いや、自分たちと戦うために訓練されているのだろう。

そう推測したその時、ブラックキングの赤い光線がアグルの胸に直撃し、火花を散らした。

 

『グアア!』

「藤宮博士!!」

「無駄ダ。うるとらまんハぶらっくきんぐニ勝テナイ!」

 

瀬沼の叫びに男は自身満々に言い放つ。その時、アグルのライフゲージが赤く点滅を始め、立ち上がるアグルも足がふらついている。ブラックキングは勝ち誇ったように胸を叩き、アグルを蹴り倒した。アグルはフラフラになりながらも胸の前でエネルギーをためて球状にすると、ブラックキングに向けて撃ちだした。アグルの必殺技の一つ、『リキデイター』だ。

 

「グオオオオオオ!」

バキッ

『ジュウ!?』

 

だが、ブラックキングはそれを受け止めると真上に放り投げ、直後に大ジャンプをすると打ち上げたリキデイターをまるでバレーボールのスパイクのように打ち返してしまった!

 

ドォオン

『グアアアア!!』

 

打ち返されたリキデイターの直撃を受けて、今度こそ倒れ込んでしまうアグル。ブラックキングはアグルの近くに着地すると、その首根っこを掴み持ち上げた。すると再び空間が歪み、X字のボードを鎖でぶら下げた2隻の宇宙船が出現し、X字のボードにアグルを磔にしてしまった!

 

「藤宮博士!

「うるとらまんあぐるハ捕エタ!此処ニモウ用ハナイ!」

 

11人の男たちはそう言い残すと、ガラガラという音を残し、宇宙船とブラックキング、そしてアグルと共に消え去ってしまった。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「キィィイイイイイイイイイ!!」

「ギャァァアアアアアン!!ピューーールルルルル!」

『ジュアッ!!』

 

その頃、東京タワーで2大ネウロイに加えコッヴと戦うXIGとガイアたち。ガイアはコッヴの鎌による攻撃を受け止めると蹴りで距離を取り、三日月型の光弾『ガイアスラッシュ』を数発連続で放ち、コッヴにダメージを与えていく!

 

一方のネウロイ04と戦うライトニング2機は、STを駆る梶尾が後ろから追い、それを北田が上から攻撃する「十文字作戦」で攻撃し、装甲を剥いで行く。

 

05と戦うハーキュリーズはゆっくり漂うように動く05に苦戦するものの、強力なスーパーナパームの威力でその身を削るも、着弾した地点から次々に再生していってしまう。

 

「クソ~!」「これじゃあキリがないぞ!」

 

ネウロイのビームに耐えながら、コンソールに拳を打ち付けて悔しがるハーキュリーズの

3人。すると、ピースキャリーから通信が入り、頭に灰色狼の耳を生やしたミーナが映り

こんだ。

 

[ハーキュリーズの皆さん!]

「嬢ちゃん………何だその耳?」

[そんな事より、ネウロイ05の中心部を、集中的に攻撃してください!その付近に、コアがあると思われます!]

「何故だ!?」

 

疑問に思う吉田に、ミーナが説明する。

 

「私たちウィッチは、それぞれ「固有魔法」を持っています。私の固有魔法は「空間把握」といって、遠くの声や気配を立体的に認識できるんです。先程の我夢さんからのデータと併用して、コアの大体の位置が確認できました。」

[なるほど、分かったぜ嬢ちゃん!][そうと決まれば撃ちまくるぞぉ!][[おおう!!]]

 

何とも暑苦しい3人の反応にミーナが苦笑していると、スティンガーの4連砲が火を吹き、ネウロイ05の中心近くを攻撃していく!

 

(それにしても………)

 

スティンガーの猛攻が続く中、ミーナはある事が気になっていた。先程、空間把握の魔法を使った際、ある事実に気が付いたのだ。

 

(間違いでなければ、今あの戦闘機には―――)

 

[こちらライトニング1、ネウロイ04を撃破!]

「了解、ハーキュリーズと合流し、ネウロイ05を叩いてくれ!」

[[了解!!]]

 

ライトニング2機が返答すると、ファイターをネウロイ05に向ける。

 

「ギャァァアアアアアン!!ピューーールルルルル!」

『ジュアッ!!』

 

一方のガイアは、コッヴの額から放たれる散弾のような光線をバリアーで防ぐと、そのバリアーを飛び越えてコッヴの頭に飛び蹴りを食らわせる!

 

「ギュウウ………」

 

ひるんだコッヴを見て好機と見たガイアは、交差させた腕で顔を隠し、その額に赤いエネルギーを蓄積する。そして、ガイアが腕を広げ、顔を上げた瞬間、溜まったエネルギーは鞭のようにしなりながら天を突き、ガイアが狙いをコッヴに向けた瞬間、赤い光の刃がコッヴに突き刺さった!

ガイアの必殺技の一つ、『フォトンエッジ』である!

 

「ギャアアア―――」

ドォォオオオンッ

 

コッヴは断末魔に一声上げると、着弾した腹部から閃光を放ちながら倒れこみ爆発四散した!

 

「コッヴの撃破を確認!」

「残るは、ネウロイ05………!」

 

爆散したコッヴをピースキャリー内で確認する堤たち3人。これで残るは、今現在ライトニングとハーキュリーズの攻撃をよけ続け、着弾してもすぐに再生しているネウロイ05のみだ。

ガイアもそちらに攻撃を仕掛けようと手を左側でT字に構え、腕から金色の光を放ちながら右側に回し始めたその時、

 

 

 

『そこまでですよ。』

 

 

 

『!?』

「何だ!?」

 

突然、戦闘の繰り広げられる東京タワー周辺に声が響いたかと思うと、ネウロイ05の頭上に2隻の戦艦が現れ、そこから垂れ下がった鎖の先端にはX字のプレートに磔にされた青い巨人―――ウルトラマンアグルの姿があった!

 

「アグル!?」

「博也さん………!?」

 

磔にされ、ライフゲージの点滅も弱々しいアグルの姿に、梶尾と玲子が声を漏らす。すると、ガイアの目の前にとげのついた鉄球に手足が生えたような宇宙人が現れた。

 

『ふっふっふっ………』

『お前は何者だ!?』

『私はリフレクト星人。別次元の宇宙からやってきました。』

「リフレクト星人………?」「別次元から来たって………」

 

リフレクト星人と名乗る宇宙人の登場にたじろぐガイアだが、すぐに構えを取って臨戦体制となる。

 

『おっと、今攻撃したら、アグルの命はありませんよ?』

『グゥ………』

 

アグルに向けて手の甲から刃を伸ばし突きつけながら、リフレクト星人はガイアに忠告した。

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「藤宮君が人質に!?」

 

一方、上空のエリアルベースⅡのコマンドルームでは、瀬沼からの通信を受けた千葉参謀が驚きの声を上げていた。

 

[すみません、私が付いていながら………]

「いや、今は自分を責めている場合ではない。」

「東京タワー上空に出現した宇宙戦艦は、現在アグルを捉えたまま静止中です!」

 

石室コマンダーは、瀬沼の映像と並んで映されたアグルの映像を見た。

 

「あの宇宙人は、いったい何が目的なのだ……!」

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

『アグルの命が惜しいのでしたら、XIGに所属する高山我夢氏に、異次元移動装置『アドベンチャー』とその研究の全てを持ってこさせなさい!』

『!?』

「なんですって!?」

 

リフレクト星人の要求に、一同は声を上げた。リフレクト星人は切っ先をガイアののど元に突きつけると、せせら笑うように告げた。

 

『場所はこの場所、東京タワーです。今からきっかり24時間後に持ってくるよう、お願いいたします。ふっふっふっ………』

 

余裕の笑い声を上げながら、リフレクト星人はネウロイ05と宇宙戦艦と共に四次元の向こうへと消えてしまい、ガイアは悔しげに地面を叩いた。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「な、何か大変な事に………!」

「博也さん………」「藤宮博士………なんて事だ!」

 

リフレクト星人の消えた虚空を見つめながら、エーリカは慌て、怜子はショックに口が開いたままであった。

 

「………エーリカ・ハルトマン君、それに、トウマ・カイト君だね?」

「え?」

 

その時、エーリカたち2人を呼ぶ声があった。振り返ると、そこには少しくたびれた白衣を着た、ボサボサな白髪と無精ヒゲの老人がいた。

 

「あの、あなたは………?」

「ウルトラマンアグルを助けるには、君たち2人の力が必要だ。」

「私たちの力って………ていうか、おじいちゃん誰?」

 

突然現れたこの老人に、カイトたちは戸惑うが、老人はそれに構わずカイトに近寄った。

 

「引き受けてくれるな、カイト君、いや―――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ウルトラマンマックスよ。」

「あなたは、まさか………!?」

 

 

 

 

 

カイトの右手には、いつの間にか金色に光るスティックが握られていた。

 

 

 

 

 

つづく




第四話、そして『ガイア篇』前編です。サブタイトルはガイア&平行世界繋がりで、映画『超時空の大決戦』に由来。

今回のネウロイのモデルは、コード№04が「ウルトラマンティガ」よりガッツウィング1号の待機形態、№05は「レオ」のMACステーション。コードナンバーはガンQに準じたもの。
以前に出現した3体はそれぞれ「ゼアス」のスカイフィッシュ、「ダイナ」のコネリー07、「ウルトラマン」の小型ビートル。4体目なのは、某未確認生命体が関係しているのかも?

再び現れたコッヴとアルゴナ。ナックル星人繋がりでシーゴラス(地球怪獣で、尚且つ倒されていない)とベムスター(宇宙怪獣)を意識して選出。

G.U.A.R.D.の設立が1995年となっているのは、藤宮がクリシスで根源的破滅招来体の出現を予測したのが本編(1998年)の4年前だったからその1年後に、という事で。後、パラソルと自転車はお約束。

カイトが手を貸した女性と変装したガラガラ星人には、実は元ネタがありますw

では、また次回。


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第五話 ウルトラマンの身代金

ウルトラマンガイアとアグルの守護する世界『ガイアアース』に迷い込んだミーナ・ディートリンデ・ヴィルケは、地球防衛組織『XIG』に保護される。

XIGと共に出現したネウロイと怪獣を撃退すべく出撃したミーナであったが、突如として別次元から来たというリフレクト星人が、アグルを人質に取って現れた!

 

『アグルの命が惜しいのでしたら、XIGに所属する高山我夢氏に、異次元移動装置『アドベンチャー』とその研究の全てを持ってこさせなさい!』

 

『場所はこの場所、東京タワーです。今からきっかり24時間後に持ってくるよう、お願いいたします。ふっふっふっ………』

 

果たしてアグルの運命は?

 

「ウルトラマンアグルを助けるには、君たち2人の力が必要だ。引き受けてくれるな、カイト君、いや―――ウルトラマンマックスよ。」

 

そして、同じくこの世界に迷い込んだエーリカ・ハルトマンとトウマ・カイトの目の前に現れた、この老人の正体は?

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「ようこそ、フジミヤ・ヒロヤ博士。私はナックル星人だ。」

 

エネルギーが切れて元の姿に戻った藤宮は、ガラガラ星人に縛られ、ナックル星人のいる部屋まで連れて来られていた。ナックル星人は、サイケデリックなマーブル模様が渦巻く異空間が見える大きな窓を背に、艦長席と思わしき机に脚を放り出してふんぞり返っていた。

 

「………貴様が、こいつらの親玉か。何故我夢を狙う?」

 

ナックル星人に藤宮は聞いた。ナックル星人はフンと鼻を鳴らすと、足を組み直した。

 

「いいだろう、教えてやろう。リフレクト星人が名乗った際に言ったが、我らは別次元の宇宙から来た。そして、別次元の怪獣や技術を持ち出して、我々のいた宇宙を征服する計画を立てていたのだ。」

「何だと!?」

「だが、調べている内にこの世界に別次元へと渡る技術がある事、そして、この世界にも『ウルトラマン』がいる事を知った。それらは、我らの大きな障害となる!」

「それで『アドベンチャー』を………!」

 

ナックル星人はそうだと返すと、立ち上がって藤宮に背を向け、後ろで手を組みながら窓の方を向いた。

 

「そうだ。その為にクローン再生させた怪獣や、別次元から持ってきたネウロイを用いて貴様らの戦闘データを取り、それを元にブラックキングを強化したのだ。結果は貴様が一番知っているだろう?」

 

ナックル星人の同族は、かつて帰ってきたウルトラマンことウルトラマンジャックを倒すために怪獣をクローン再生させてデータを収集した事があった(本来死んでいない筈の津波怪獣 シーゴラスも、MATによって折られた角から細胞を採取して再生させている)それほどまでに、ナックル星人は優れたクローン技術を持っているのだ。恐らくはコッヴの細胞片やアルゴナの卵の殻からDNAを採取し、クローン再生怪獣を生み出したのだろう。

藤宮がそこまで考えた時、ある事に気付いた。

 

「今、「この世界にもウルトラマンがいる」と言ったな。お前たちの世界にも、」

「ああ、ウルトラマンはいる。宇宙警備隊と言う大組織に所属し、宇宙の平和を守るとほざく、偽善者どもだ。」

 

ナックル星人はそう吐き捨てると、組んだ腕の力を強める。彼らからすれば、宇宙警備隊の存在は相当忌々しいのだろう。

 

「だが、連中には異次元を渡る技術がない。即ち、我々の邪魔をしに、こちらの世界に来る事は出来ない。後は貴様ら2人と『アドベンチャー』を潰せば、我らの脅威はなくなる訳だ!」

「勝手な事を………!」

 

ナックル星人の主張に怒りを覚える藤宮。だがその時、藤宮はある事を思い出し、ナックル星人に問いだした。

 

「………もう一つ教えろ。」

「何だ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前たちは、『ヤプ・ウル』の使者なのか………?」

「「……………!?」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第五話 ウルトラマンの身代金

 

用心棒怪獣 ブラックキング

暗殺宇宙人 ナックル星人

光波宇宙人 リフレクト星人

異次元怪異 ネウロイ(コード№05)

遊牧星人 ガラガラ星人

虚言宇宙人 フルータ星人

 

 

 

ウルトラマンマックス 登場

 

 

 

 

 

ネウロイの撤退から3時間後、我夢やミーナたちは、エリアルベースⅡに帰還していた。

 

「我々が東京タワーに釘づけになっている時に、アグルを待ち伏せして攫ったのか…」

 

司令室のモニターに映るアグルとブラックキングの戦いを見ながら、石室とミーナがリフレクト星人の企みを解析していた。傍らに立つ我夢たちは、不安そうにアグルの戦いを見る。

 

「この怪獣、手下らしき者の呼び名からブラックキングと呼びますが、ブラックキングは恐らく、アグルの攻撃に対抗出来るよう調教されている可能性があります。」

「では、この1ヵ月の怪獣やネウロイは、このための戦闘データ収集のために?」

「恐らくは。そして、確実にガイアの戦闘データも………」

 

ブラックキングの動きから推測される事を話す我夢。恐らく敵は、ガイアの戦闘データも収集済みであろう。今まで以上に厄介だ。

 

「一番の問題は、敵の目的はアドベンチャーとその研究の全て、と言う事だな。」

「リフレクト星人は、自分が『別次元の宇宙から来た』、と言っていた。だとしたら、アドベンチャーの存在は邪魔だと言う事だ。」

「それにこの怪獣、ブラックキングは、ヴェネツィアに出現した怪獣の内の一体です。」

「まさか!?」

 

ミーナの言葉に、千葉参謀は声を上げる。

 

「はい、今回、私たちの部隊が巻き込まれた事に、この宇宙人が関わっている可能性は大いにあります。」

「なんたる事だ………!」

 

千葉参謀が息をのむ中、ミーナは映像に映るリフレクト星人を睨んでいた。

するとその時、オペレータ席の敦子の元に通信回線が開いた。

 

「コマンダー、KCBの田端ディレクターからテレビ通信です。」

「田端さんから?」

「何でも、リフレクト星人に関して情報があるとか……」

 

意外な名前が出てきて聞き返す我夢。石室はモニターに出すように指示をすると、メインモニターに中年男性の顔が映った。

 

[お久しぶりです、石室コマンダー。先日、インタビューを受けてもらって以来………]

「挨拶はいい。それで、この回線を使って迄伝えたい情報というのは?」

 

田端の話をさえぎり、用件を聞く石室。すると、田端の横から金髪の少女の顔が割り込んできた。

 

[アレ?これって通信繋がってるの?]

[ちょ、ちょっと君!]

「!?フ、フラウ!?」

[あ、ミーナだ。オーイ!]

 

割り込んできた少女、フラウことエーリカ・ハルトマンはミーナの姿を確認すると、呑気に手を振ってきた。

 

「君の部下か?」

「ええ………フラウ、いえ、ハルトマン中尉、何でそんなところに?」

[こ、この子たちが、アグルをさらった宇宙人に関して知っているって言うから………]

「この子、たち?」

 

エーリカに押しやられる田端の話に千葉が疑問を持つと、2人の後ろから20代くらいの男性が割って入ってきた。

 

[失礼します。]

[あ、カイト。]

「………あなたは?」

[トウマ・カイトと言います。]

「トウマ、………カイト?」

「君は何者だ?」

[………僕は、あの宇宙人と同じ次元宇宙から来た、宇宙人です。]

「「「!?」」」

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

10年前、地球を滅ぼさんと現れた「根源的破滅招来体」。

2ヶ月ほど前、その襲来を予知した太古の遺跡や戦国時代の陰陽師『魔頭鬼十郎』が、ある名前を己の文献に残していた事が判明した。

偶然か必然か、その名前はまったく同じ読み方をしていたのだ。

日本では『夜腑迂瑠』、そしてメキシコのとある遺跡の壁画ではインカの言葉で「天上よりきたる者」を意味する『ヤプ・ウル』と呼ばれるその存在の詳細は、未だに不明である。

 

 

 

 

 

「―――ヤプールめ、まさかこの世界にも干渉していたとは………」

 

ガラガラ星人に藤宮を牢屋に連れて行かせ、ナックル星人とリフレクト星人は向かい合って話していた。

藤宮にはヤプ・ウルについては知らないと言ったが、異次元を渡るなど造作もないあの悪魔がこの次元世界に干渉しているとは思ってもみなかった。

 

「もしやと思いますが、こちらの地球に来たという『根源的破滅招来体』の正体と言うのは………?」

「………問題はない。仮にそうだとして、我々には関係のない事だ。」

「それもそうでしょうが………」

 

鼻を鳴らすナックル星人に対し、リフレクト星人は少し不安そうにする。すると、通信機から受信音が鳴り響き、通信用のモニターに黒い人影が映った。

 

[首尾はどうだ、ナックル?]

「おお、これは“ボルター提督”。」

「順調だ。お前の心配など、不要なほどにな。」

 

ボルターと言うらしい通信相手に対し、ナックル星人は鼻を鳴らして答える。

 

[ならばいい。とにかく、我々の計画最大の障害たる異次元移動装置を破壊するのだ。]

「言われずともわかっている。貴様は一々口出しするな!」

[おー、怖い怖い。では、また連絡する。]

 

そうおどけた態度を取り、通信を切るボルター。ナックル星人は不機嫌そうにデスクへ拳を叩きつける。

 

「ええい、あの若造め!元エンペラ軍団の幹部だかなんだか知らんが偉そうに!」

「まあまあ………」

 

苛立つナックル星人を宥めるリフレクト星人。彼らからすれば、ボルターが心配する必要なく、明日の作戦は成功間違いなしであった。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「STのモーター、交換完了!」「クロウの分も修復急げよ!」「スティンガーの装甲板、痛んでいる所を重点的に修復!」「あーもー、ハーキュリーズはいつもムチャな使い方を………」

 

その日の夜。

整備員の声が飛び交う格納庫の片隅、そこでミーナと我夢は、ストライカーユニットの修復を急いでいた。

 

「これで、何とか飛べるはずです。代用できそうな部品での突貫工事なので。あまり無茶は出来ないでしょうけど………」

「いえ、十分です。」

「「リパルサーリフト」があればもっといいんだろうけど、さすがにこのサイズ用の物を用意するには時間が足りないからなぁ………」

「ああ、このエリアルベースを浮かせるのに使っているもの、でしたっけ?」

 

苦笑する我夢にミーナは聞き返す。

リパルサーリフトは我夢が開発した反陽子浮揚システムであり、エリアルベースを赤道上に浮かせているのに使用されている他、XIGの各戦闘機の揚力としても用いられている。そのためファイターのジェットエンジンは推進力としてのみ使われているのだ。

 

「明日は私も出撃します。ネウロイ05は任せてください。」

「そんな事は出来ませんよ。君一人であの怪獣と戦うなんて………」

「大丈夫ですよ。ネウロイに関しては、皆さんより一日の長がありますから。それに、敵のコアに位置は把握しています。」

 

それでも、と食い下がろうとする我夢に、ミーナはですから、と遮った。

 

 

 

 

 

「あなたは怪獣に専念して下さい、“ウルトラマンさん”。」

「ッ………!?」

 

ミーナの言葉に、我夢は面を食らった顔となる。少し驚いていた我夢だったが、気を落ち着かせてミーナに聞いた。

 

「………いつ、気付いたんですか………?」

「さっきのコッヴって怪獣と戦っている時ですね。」

 

そう言うとミーナは、灰色オオカミの耳と尻尾を生やした。

 

「ハーキュリーズの皆さんにも説明しましたけれど、私の固有魔法『空間認識』は、遠くの声や気配を立体的に認識できるんです。戦闘中に偶然、EXⅡが『無人になっている』ことに気が付いて、その後に、ガイアが消えたと同時に『我夢さんが戻った』ので、もしかしたらと思いました。」

「………なるほど、参ったなぁ………」

 

我夢は頭を掻きながら困った顔をする。

 

「いや、別に秘密にする気は無かったんだけど、話すタイミングが無かったというか、何というか………」

「いえ、別に怒っている訳ではないので。」

 

ただ、とミーナは耳と尻尾をしまって苦笑した。

 

「ただ、頼れる人が近くにいるのは、心強いかなあ、て………」

「ああ、そう言う事………」

 

ミーナの言葉に、我夢も苦笑する。すると2人の元に、ライトニングの3人が近寄ってくる。先ほど墜落した大河原は頭に包帯を巻いていた。

 

「中佐殿に一本取られたな、我夢。」

「梶尾さん………」

「大丈夫なんですか、大河原さん?」

「なあに、墜落するのは慣れっこなモンで。」

「慣れちゃダメだろ………」

 

笑い飛ばす大河原の頭を北田がひっぱたく。梶尾はミーナに向き直った。

 

「明日は、クロウも戦線に参加予定だ。必ず成功させるぞ。」

「ええ。」

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

同じころ、KCBのビルにある小会議室では。

 

「ほら、丁度前にコントの小道具で使ったのが、色々あったぞ。」

「ああ、ありがとうございます。」

 

田端から箱に入った小道具を受け取ったカイトは、田端に礼を言った。

 

「本当に、これで大丈夫なのか?」

「何とかなりますよ。宇宙人の見分け方って、結構単純なんです。」

「そういうモンなんだーね。」

 

箱から出したサンダルのサイズを確認しながら、田端の質問に答えるカイト。エーリカはというと、机に突っ伏しながら出された茶菓子を口に運んでいた。

 

カイトとエーリカがなぜここにいるのかと言うと、あの老人と別れた後、近くにいた田端たちにG.U.A.R.D.への通信をお願いし、そのまま石室の提案で2人に協力する事となったのだ。

 

エーリカが次の茶菓子に手を伸ばそうとすると、ふと、沈んだ表情の玲子に気が付いた。

 

「………あの青いウルトラマンが心配?」

「え、ええ、まあ、ね………」

 

力なく笑みを浮かべる玲子。それに気付いたのか、銀色に鈍く光る肌着を持ったカイトが近づいてきた。

 

「あのアグルというウルトラマン、とても大事な人なんですね?」

「………はい。」

「大丈夫です。必ず彼を助け出しますよ。」

 

優しく話すカイトに、玲子は小さく頷いた。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

そして翌日、約束の時間まで30分を切った頃、人間大になったリフレクト星人は、ガラガラ星人に繋がれた藤宮を連れて東京タワー前まで来ていた。

 

「ふっふっふっ、いよいよこの世界での目的が達成される時ですよ。」

 

ガラガラ星人が無気味にガラガラと言う音を出す中、リフレクト星人は不敵に笑う。その手には、『アグレイター』がもてあそばれていた。

 

「………お前たちは、その目的を達成させてどうする気だ?」

「そうですねえ、手始めに自分たちの世界の地球を制圧して、そこからは全宇宙に進出、ですかねえ~。」

 

小馬鹿にしたように笑うリフレクト星人。藤宮が唇をかみしめていると、先日の戦闘の折に撤去され切らなかったと思われる瓦礫の山の方で声が上がった。

 

「ちょ、離してよ!!」

「ん?」

「む?誰ですか?出てきなさい!」

 

リフレクト星人がそう叫ぶと、瓦礫の山の影から銀色に光るぴったりした服を着て、奇抜なデザインのサンダルを履いた男性が、黒い服を着て黒縁の眼鏡をかけた長い金髪の少女の襟を掴んで出てきた。

 

「この女が、こそこそしていましたよ。」

「誰ですかあなたは?どうやら、私たちと同様に地球人ではないようですが。」

 

捕まえた男性は、無表情でリフレクト星人の問いに答えた。

 

「私は、フルータ星人。」

「フルータ星人?そんな宇宙人、聞いたこともないですね。」

「私はこの次元世界の宇宙人。別次元から来たという君たちが知らないのも、無理はない。」

 

フルータ星人と名乗る男の説明に、なるほどと頷くリフレクト星人。

 

「私は、根源的破滅招来体が手を出さないこの機に、地球侵略をしようと潜伏をしていたのだが、丁度君たちが侵略行為をしていたので、手を組もうと来たのだ。」

「ちょっと、離してよ!」

「この地球人の女は、相当強い兵士のようだ。土産代わりに、渡そう。」

「ふーむ………」

 

少女を差し出すフルータ星人を訝しげに見るリフレクト星人。後ろのガラガラ星人たちもざわつきだす中、リフレクト星人は通信機を取りだした。

 

「どう思いますかナックル?」

[うむ、少し怪しいな。地球人ではないようだが…少し待て。]

 

ナックル星人が通信を切ると、瞬きをする間もなく隣に瞬間移動してきた。

 

(やはり、黒幕はナックル星人か………!)

 

いきなり現れたナックル星人に驚くフルータ星人だが、悟られまいと無表情を維持する。ナックル星人はそれに気づいていないのか、フルータ星人をジロジロ観察し始めた。

 

「ふーむ、地球人と同じヒューマノイド型星人か………確かに、この次元の宇宙人ならば、我々が知らないのも無理はないが………」

「信じてくれたかい?」

 

苦笑しながらナックル星人に聞くフルータ星人。ナックルは鼻を鳴らすと、彼の腕から少女を奪い取った。

 

「まあ良いだろう。この地球人は一応貰っといてやる。」

「ちょっと!」

「信じてくれて、うれしいですよ。」

 

少女が叫ぶのも聞かず、ナックル星人は彼女をガラガラ星人に引渡し、拘束させた。

 

「………」「………」

「………?」

 

この時、ナックル星人とリフレクト星人は気づかなかったが、2人がアイコンタクトを取ったことを、藤宮だけが気づいていた。

 

 

 

 

 

そして、約束の時間となった。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

約束の引き渡しの時間、発進されたピースキャリーから大型のメカが投下される。それは空中で変形すると、4輪の車体を下部に、左右に大きなホイール状のパーツを持ったメカ―――時空移動実験機『アドベンチャー』は下部からジェット噴射を放って着地した。

 

「これが、………『アドベンチャー』か………!」

「大きい………!」

 

『アドベンチャー』の姿に声も出ない一同。すると、コックピットから大きなジュラルミンケースを2つ持った我夢が降りてきた。

 

「約束の『アドベンチャー』と、その研究資料だ。」

「御苦労。さあ、こちらに渡して貰おうか。」

 

ケースを受け取ろうとするナックル星人。だが我夢は、ケースを後ろに隠した。

 

「その前に、人質を解放してもらおう。そこの女の子もだ。」

「………よかろう。」

 

ナックル星人は承諾すると、ガラガラ星人たちに命じて藤宮と少女を連れて来させる。2人は強く引っ張るガラガラ星人に睨みつけるが、それに構わずガラガラ星人は2人を引っ張って行く。

 

(―――ふん、馬鹿な奴らだ。)

 

ナックル星人は内心ほくそ笑む。

彼がちらりと見た方向には、機関銃を構えたガラガラ星人が密かに我夢たちを狙っていた。

卑劣な事に、ナックル星人たちは我夢や藤宮たちを生きて返すつもりは微塵もなかった。仮に『アドベンチャー』そのものや設計図を破壊したとしても、その理論を確立した高山 我夢の「頭脳」がある限り、永遠に失われた訳ではない。我夢と同じ『天才』である藤宮 博也に関しても、いつ同じような理論を作り出す可能性が無いと言い切れない。

さっき加わった小娘はオマケだ。ついでに死んでもらう。

 

(恨むなら、こんな所に来た自分のおマヌケさを恨むのだな………ククククク………!)

「………」

 

ナックル星人は勝利を確信していた。フルータ星人が傍観する中、ガラガラ星人たちと我夢の距離が縮まる。ガラガラ星人たちが接触した瞬間に、機関銃でハチの巣にする手筈だ。

引っ張っているガラガラ星人をも巻き込んで、である。

 

「我夢………」

「大丈夫だ藤宮、絶対に助ける。」

 

苦しげに友の名を呼ぶ藤宮に、我夢は優しく語りかける。エーリカは抵抗しているものの、ガラガラ星人の力は相当強いものらしく、びくともしない。

 

 

 

 

 

そして、我夢とガラガラ星人とが接触した瞬間―――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ダダダダダダァアアアーーーーーン

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

けたたましい銃声が静寂した街中に鳴り響き―――――――――『リフレクト星人とナックル星人、そして周囲のガラガラ星人が』被弾した!!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐう………!!!!!??????」

「なん………だと………!!?」

 

周囲のガラガラ星人たちが倒れる中、幸いにも堅い装甲に包まれたリフレクト星人とその背後にいたナックル星人は軽傷、フルータ星人は無傷であった。訳も分からず、ガラガラ星人がいるはずの方を見ると、

 

「残念だったな、宇宙人ども!」

「ガラ~………」

「地球人!?」

 

ぐったりしたガラガラ星人の首根っこを持った大河原と銃を構えた梶尾と北田、そして硝煙を燻らせる機関銃を構えたミーナの姿があった!

 

「いつの間に………?ええい、こうなれば人質を―――」

「シュトゥムッ!!」

ゴォォオオオオオオオオオオオオッ

『ガラーーーーーーーーーー!?』

「何ぃいい!?」

 

ナックル星人が命令を下そうとした時、いつの間にかダックスフントの耳と尻尾をはやした少女を中心に強風が発生し、ガラガラ星人たちを吹き飛ばしてしまった!

 

「こ、これはいったいどういう事だ!?」

「ずる賢い事で有名なナックル星人さまも、見抜けない事があるのだな。」

「何!?」

 

ナックル星人が振り返ると、そこにはいつの間にか奪ったらしいアグレイターを右手に持つフルータ星人の姿があった。フルータ星人は高くジャンプすると、藤宮と少女の拘束を解いた我夢のそばに着地し、藤宮にアグレイターを手渡した。

 

「どういうつもりだ、フルータ星人!」

「私はフルータ星人ではない。お前たちと同じ宇宙のM78星雲『光の国』のウルトラ星人だ!」

「何だとお!?」

 

してやったり、という風に笑うフルータ星人―――いや、トウマ・カイトの言葉に、驚きの余り素っ頓狂な声を上げるナックル星人。ミーナとライトニングの3人も合流した所で少女、エーリカ・ハルトマンは「じゃーん♪」と言いながら眼鏡とカツラを外した。

 

「ああ、お前は「あの世界」の!?」

「いやー、宇宙人って案外簡単にだませるモンなんだねー♪」

 

眼鏡を右手で弄びながら言うエーリカ。すると、ケースを放った我夢が前に出る。地面に落ちた衝撃で開いた2つのケースから数枚の白紙が舞い上がった。

 

「君たちが別次元の宇宙から来た事を利用して、宇宙人であるカイト君を接近させたんだ。」

「まさか光の国の住人が、この世界に居ようとは思わなかっただろう?」

「で、ではフルータ星人というのは………!?」

「10年くらい前、お前たちも利用したアルゴナの事件で『古田鉄工所』の職員が使った偽名を、拝借させてもらったのさ。」

 

ナックル星人の疑問に梶尾が答える。そこでようやく2人は、「フルータ=古田」という事に気付いた。安直すぎて、逆に気付かなかったのだろう。

 

 

 

なお、この名前を使用するにあたって昨晩、堤チーフが直々に古田鉄工所へ菓子折り持参で使用の許可を取りに行っていたりする。

 

閑話休題。

 

 

 

「だ、だが、何故隠れていたガラガラ星人の居場所が………!?」

「そんな直球な名前だったのか、あいつら………」

「………私たちウィッチを舐めていたようね。私の空間認識魔法で、伏兵のいる位置は簡単に割り出せたわ。」

「何!?」

「ずる賢いナックル星人の事だから、手下ごと彼らを殺そうとするだろうと予測して、捜索をお願いしていたんだ。」

 

ハイイロオオカミの耳と尻尾を生やしたミーナとカイトがそう言い放つ。リフレクト星人が愕然とする中、ナックル星人は怒りで拳を振るわせる。

 

「おのれぇ………下等な地球人の分際で………許さんぞ!」

「許さないのは俺たちも同じだ。ここまでやられて黙っていられるほど、俺もおとなしくないぞ………!」

 

ナックル星人たちを睨みながら言い放つ藤宮。ナックル星人は怒りの拳を振り上げて、叫んだ。

 

「ネウロイ!ブラックキング!!」

 

ナックル星人が叫ぶと、空中が歪んでネウロイコード№05とブラックキングが出現、更に、

 

「行くぞ!」

「ええ!」

 

ナックル星人の掛け声にリフレクト星人が返事をすると、2人はみるみる内に巨大化し、ブラックキングと並びたった!

 

「グォォオオオオオオオオオオ!」「キィイイイイイイイイイイ!!」

『勝負だウルトラマンども!ここでねじふせてくれるわ!!』

 

「なんとも、悪役らしいセリフだな。」

「藤宮、行けるかい?」

「ああ、この程度の傷、なんともない。」

 

藤宮は受け取ったアグレイターを右腕に装着すると、我夢と並んで巨大化した星人2人を見上げた。

 

「PAL、ピースキャリーにアドベンチャーを。」

[了解シマシタ。]

 

我夢はアドベンチャーに換装させたPALに通達すると、アドベンチャーはリパルサーリフトで上昇し、ピースキャリーに向かう。ナックル星人はネウロイに追撃を命じようとしたが、突如、自分たちに砲弾が直撃してたじろぐ。見れば、地上には鋭角なフロントと後部に供えられた7門の砲身を持った6輪の巨大戦闘バギー『バイソン』2台が、スティンガーと共に接近していた!

 

「ミーナ中佐、ハルトマン中尉のストライカーの修繕は完了し、バイソンに搭載されてる!中佐のも一緒だ!」

「分かりました。」

「俺たちもファイターに!」

「「了解!!」」

 

ハーキュリーズからの通信を受けたミーナは、カイトの護衛の元、エーリカと共にバイソンへ向かう。途中、スティンガーが瓦礫を飛び越えた衝撃で倒れた自転車を飛び越えつつ、2人はバイソンに搭乗した。

 

「行くぞ我夢!」

「ああ!」

 

我夢は呼応すると、右手にしたエスプレンダーを左肩に充て、藤宮は右腕のアグレイターの翼が開き中央のクリスタルが音と共に点滅を始める。

 

 

 

そして、我夢はエスプレンダーを前に突き出し、

 

 

 

藤宮は右腕を挙げて、

 

 

 

 

 

叫んだ。

 

 

 

 

 

「ガイアァァアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」

「アグルゥゥウウウウウウウウウウウウウウウウ!!!」

 

 

 

 

 

叫ぶと同時に、2人を赤と青の光が包み込み、

 

右腕を高く上げてウルトラマンガイアV2が、

両の握りこぶしで突き破るように腕を伸ばしてウルトラマンアグルV2が、

 

土ぼこりを高く上げて、地面に降り立った!

 

『ジュアッ!』『ジュワッ!』

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「こちらです。武器、弾薬の補充も済んでいます!」

「ありがとうございます!」

 

ガイアとアグルが2大宇宙人とにらみ合うその頃、バイソンの停車地点まで到着したミーナとエーリカはハーキュリーズの桑原からストライカーと銃器を受け取る。今にも激突しそうな両者を見上げていると、着替えたらしいカイトが歩み始めた。

 

「じゃあ、僕も行くよ。」

「カイト?」

「危険です!下がって………」

「大丈夫だ。流石の2人も2対3じゃあ分が悪いし、君たちは、ネウロイに集中してほしいからね。」

 

でも、と食い下がるミーナ。するとカイトは、懐から「金色のスティック」を右手で取り出し、2人に見せるように掲げた。

 

「それに、僕も『ウルトラマン』だからね。」

「え―――」

 

3人が問いただす暇もなく、カイトはそのスティック―――『マックススパーク』を高く掲げると、それを左腕の甲に装着、すると、カイトの体は金色の光に包まれ、胸を中央に青く光る『パワータイマー』を備えた白金色の胸当てが出現、そしてそこを中心に全身が赤く変化し、頭部を銀色が包み込むと、見る見るうちにその身体は巨大化していった!

 

 

 

 

 

『『!?』』

「グゥウウ………!?」

『何!?』

『これは………!?』

 

巨大化した赤い巨人は、金色の光と共に地面に降り立つ。その姿を見たナックル星人が、巨人を指差した。

 

『貴様は、一体何者だ!?』

『私は――――――『ウルトラマンマックス』!!』

 

ウルトラマンマックスは力強く名乗り、ガイア、アグルと並び立った。

 

『カイト君、いや、マックス………』

『ガイア、ネウロイは彼女たちが迎え撃つ。私はリフレクト星人の相手をしよう。』

『なんですってぇ~?』

 

マックスの申し出にリフレクト星人が首をかしげる中、それならばとアグルはナックル星人を睨んだ。

 

『ナックル星人は俺がやる。ガイア、あの怪獣を頼んでもいいか?』

『………ああ、任せてくれ!』

「グォォオオオオオオ!」

『小賢しい………貴様らなど、我らの敵ではない事を教えてやる!』

 

ナックル星人がそう言った時、ネウロイ05と2人のウィッチ、そしてライトニングのXIGファイターによる戦闘が始まった。

 

『ふん、地球人など、ネウロイで十分だ。』

『行くぞガイア、マックス!!』

『『オウ!!』』

 

ネウロイのビームとファイターSTのレーザーが交差した爆発を合図に、3大ウルトラマンと宇宙人・怪獣は駆けだした!

 

 

 

 

 

戦いの火ぶたは、今、切って落とされたのだ!

 

 

 

 

 

つづく




第五話・『ガイア篇』中編です。サブタイトルは言わずもがなw

ナックル星人がクローン技術に優れているというのは、原典で死んでいないはずのシーゴラスを『再生』させた事からの解釈。アルゴナの卵って、あの後どうしたのか描写がなかったので利用された事にしました。

ヤプールの件書いている時、勢い余って最後に民名書房刊と書きかけてしまいましたwボルターなる黒幕っぽい人物はいずれ。
ところで、「80」の宇宙人は集団で行動する星人が多いイメージ。ガラガラ星人といいバム星人といい、ゴルゴン星人にファンタス星人も。

フルータ星人が変わったデザインのサンダルを履いているのは『ウルトラQ』のルパーツ星人が元ネタ。銀色のぴったりした服はレトロな宇宙人の服装のイメージに由来。なお、ウルトラ星人という呼称は、『80』で星涼子に対して矢的猛が使ったものから。

種明かしからの決戦という流れ。次回決戦です。



では次回、第六話「地球の守護神」でお会いしましょう。


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第六話 地球の守護神

祝日なので、2日連続投稿です。


 

 

ウルトラマンマックスは、地球から300万光年離れたM78星雲「光の国」出身のウルトラマンである。

 

宇宙警備隊訓練校の卒業間近、彼は太陽系第3惑星『地球』へ赴任する戦士の候補に挙がる程の実力者であったが、もう1人の候補に挙がっていた1000歳年下の戦士と組み手をした際、彼に「無限大の可能性」を感じて彼に譲り、自分は『恒点観測員』に志願した。

 

そして卒業試験本番、試験官にして「勇士司令部」所属の『ゼノン』を相手に宇宙空間での模擬戦をしている最中、突如として『ブラックホール怪獣 ブラキウム』が2人に襲いかかってきた。

 

腹部にブラックホールを発生させる能力をもつブラキウムを2人は何とか倒す事に成功したその時、ブラキウムが制御していたブラックホールが暴走、マックスはそこへ吸い込まれてしまったのだ。

 

ブラックホールの先にある出口、即ちホワイトホールを出ると、そこは平行宇宙の『地球』があった。

 

今まで怪獣や宇宙人の脅威にさらされた事のなかったこの『地球』を衛星軌道上で観察していると、『冷凍怪獣 ラゴラス』と『溶岩怪獣 グランゴン』を相手に命を顧みず、見ず知らずの女性や街の人々を護るために立ち向かう青年―――『トウマ・カイト』に「共振する個性」を感じ、人類を守るために戦う事を決意し、彼と一体化、カイトに『ウルトラマンマックス』の名前を与えられた。

 

それから彼は、世界各地で頻発する自然災害や地球を狙う侵略者の影響で出現した怪獣や宇宙人たちから人々を守って来たが、マックスを探しにこの次元宇宙まで来たゼノンの導きによりカイトと別れなければならなくなった。

 

地底文明デロスとの戦いで一度は命を落としたが、カイトたち地球人の力で復活、暴走したギガバーサークを破壊し、地球の未来を信じて「光の国」へ帰還すべくゼノンが最終決戦中維持していたワームホールへ飛びこんだ。

 

だが次元の穴を通過している時、彼は次元の狭間を2人の少女が漂っているのを発見した。

 

ゼノンが止めるのも聞かず、急いで手の中にバリアを張って少女を助けるが、その際に次元宇宙の通り道から踏み外してしまい、これまた別の次元宇宙へと飛びこんでしまった。

 

更に、2人の内の赤い髪の少女(ミーナ)は、突入した際の衝撃でバリアから弾きだされてしまい自分たちとは別の場所へと飛ばされてしまったのだ。

 

そして、マックスはもう1人の少女(エーリカ)と共に『竜が森湖』に降り立つ。エーリカに不安を抱かせないため、かつて一体化した青年『トウマ・カイト』の姿を取り―――

 

 

 

 

 

「………誰?」

「僕?そうだな………」

 

 

 

「………『トウマ・カイト』とでも呼んでくれ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第六話 地球の守護神

 

用心棒怪獣 ブラックキング

暗殺宇宙人 ナックル星人

光波宇宙人 リフレクト星人

異次元怪異 ネウロイ(コード№05、GX‐03)

月光怪獣 キララ

月怪獣 ペテロ

登場

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

東京タワー周囲にて、4極の戦いが始まった。

 

「キィィイイイイイイイイイイイイイ!!」

「行くわよ、フラウ!」

「オーケーミーナ!遅れた分はきっちり取り返すよ!」

 

ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ&エーリカ・ハルトマン&チーム・ライトニング VS 異次元怪異 ネウロイ(コード№05)、

 

『ふっふっふっ………あなたに私は倒せませんよ?』

『堅そうな身体だな………だが、負けはせん!』

 

ウルトラマンマックス VS 光波宇宙人 リフレクト星人、

 

『借りは返させてもらう!』

『見くびるなよ………俺が怪獣より弱いと思わんことだな!!』

 

ウルトラマンアグルV2 VS 暗殺宇宙人 ナックル星人、

 

そして、

 

「グォォオオオオオオオオオオ!!」

『デャアアアアアアアアア!!』

 

ウルトラマンガイアV2 VS 用心棒怪獣 ブラックキング。

 

ガイアはブラックキングの首に手刀を打ち込むと、そのままの勢いで後ろ回し蹴りを放つ。ブラックキングは多少グラついたものの立ち直り、ガイアに尻尾を叩きつける。ブラックキングの猛攻は止まらず、口から放たれた赤い光線が倒れたガイアに直撃する。

 

「ガイア!?」

[ガイアは大丈夫だ!俺たちはネウロイに集中しろ!]

『了解!』

 

苦しむガイアにミーナが叫ぶが、梶尾の言葉に返事し、ネウロイの放ったビームをシールドで防ぐ。北田、大河原両機の攻撃が装甲をはがすが、すぐに再生してしまう。

 

「くそ!」

「あの装甲、前より堅くなってないか!?」

 

大河原が毒づくと、梶尾がネウロイの装甲の強度に驚きの声を上げる。ネウロイ殲滅の専門家であるミーナとエーリカであるが、流石にこのサイズを相手にするには少しばかり戦力が心もとなかった。

すると、通信回線が開き、ノリのいいロックミュージックが流れてきた。

 

「ふぇ!?」

「な、何、この音楽は………!?」

[なっさけない事言ってるわね、男衆は!]

「ようやく御登場か、お嬢様方!」

 

見上げれば、こちらに降下してくるライトニングと同じ3機編成の編隊があった。

 

チーム・クロウ。

『雷光』を由来とするチーム・ライトニングと同じく、知恵を司る『カラス』の名を冠したXIGのパイロットチームで、女性のみで編成されているのが特徴だ。

 

チーム・クロウリーダーの稲城美穂が合図をすると、三島樹莉機、多田野慧機が続き、波状攻撃を掛ける。

 

「クロウに続け!」

[[了解!]]

 

梶尾の号令でネウロイに攻撃を仕掛けるライトニングの3機。合わせて6機のファイターによる攻撃でネウロイの方も押されてきており、慌てたかのようにビームを頭上に集め、収束砲を放とうとする。

 

「させないよ!シュトゥム!!」

ゴォオオオッ

「!?」

 

だが、急降下で一気にネウロイに接近したエーリカの固有魔法により発生した突風を受けて側面を大きく削られ、収束したビームがかき消された。それと同時に、削られた所から中心部にあるコアが露出した。

 

「コアを確認!」「ミーナ中佐!!」

「ええ!!」

 

ミーナは叫ぶと同時にネウロイに向けて銃を乱射しながら突っ込んでいき、弾が数発コアに直撃してヒビが入り―――

 

 

 

 

 

「キィィイイイイイイ――――――」

 

断末魔と共に、ネウロイのボディは砕け散った!

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

『ふん、所詮はあの程度でしたか………』

 

ネウロイが砕け散ったのを見て、リフレクト星人は鼻を鳴らした。この隙をマックスは逃さず、リフレクト星人に右拳を叩きこんだ。

 

『おっと。』

ガギッ

『!?』

 

だが、リフレクト星人はそれを左腕の盾で防ぐと、右腕の盾から刀身を伸ばしてマックスに斬りかかる。マックスはそれをバク転で回避して距離を取ると、マックススパークを装着した左腕を高く掲げる。すると、マックススパークに虹色のエネルギーが集まり、最大までチャージがされるとマックススパークに金色の翼のイメージが一瞬現れる。

そして、マックスが左腕を縦、右腕をその肘に当てた『逆L字』になるように構えると、左腕から金色の必殺光線「マクシウムカノン」が放たれた!

 

『ふん!』

 

だが、リフレクト星人はそれにあわてることなく胸で「光線を受け止める」と、光線は星人の体表で反射され、マックスに迫ってきた!

 

『!?』

 

マックスは一瞬慌てたが、すかさず前方にシールドを作り出して防御するも、自分の放った光線の威力が強大すぎたため、後方に倒れこんでしまった!

 

『ふっふっふっ、私に光線は効きませんよ?』

『ぐう………頑丈なだけではないと言うことか………!』

 

立ち上がったマックスに対し、リフレクト星人が勝ち誇るように嘲う。ならばと、マックスは頭頂に手を当てると、の角飾りの一部を分離させた武器「マクシウムソード」を投擲する!

 

『ウルトラセブンと同じ、念動力系の武器ですか。だが!』

 

リフレクト星人は自信ありげに左手の盾で防御しようと構える。だが、次の瞬間マクシウムソードは何本にも分身し、四方八方からリフレクト星人に襲い掛かった!

 

『何だとぉお!?くっ!』

 

リフレクト星人は慌てて分身下マクシウムソードを防御しようとするが、肩や胸、頭や背中のトゲ等を何度も切りつけられてしまう。それでも自慢の頑丈さで耐えるが、一瞬のすきを突いた真上からの2本に、両肘の内側を切り裂かれてしまう!

 

『ガァアッ!!?ば、バカな………!?』

 

関節を切り裂かれたせいでまともに上がらないのか、両腕をダランとたらすリフレクト星人。マックスは分身したマクシウムソードを回収して手に構えると、ゆっくりと星人に近寄る。

 

『まさか………装甲の薄い「関節の内側」を狙うとは………!』

『いくら頑丈でも、動き回るならその部分の装甲は薄いと思ったが、その通りだったようだな。』

 

そして!とマックスは一気にリフレクト星人に近寄ると、右手に持ったマクシウムソードで何度もその胸を切りつける!

 

『な、何をしているのだ!あなたは!?』

『デャァアアアアアアアアアアアア!!』

 

リフレクト星人には理解できなかった。装甲の弱い関節部ではなく、わざわざ胸部を攻撃するのか?

マクシウムソードが摩擦熱で赤く光りだした時、マックスはマクシウムソードを胸部の一点に「突き刺し」、マックススパークを装着した左手に力を込め、「幻の左」とも呼ばれる左アッパー『マックスクラッシャー』を叩き込んだ!

瞬間―――

 

 

 

バッキィィイッ

『!?』

 

リフレクト星人の胸の装甲が大きく陥没し、砕け散った!

 

『き、貴様………最初から一点を狙って………!!』

 

リフレクト星人は驚きの声を上げる。おそらくは先ほどの分身シュートの時から胸の一点を寸分狂わず狙い装甲を摩耗させ、マクシウムソードを『くさび』にして装甲を砕いたのだ。その狙いと念動力のコントロールに戦慄した。

 

『“点滴 石を穿つ”、は、少し使い方が違うが、確かに固い装甲ではあった………』

 

胸のパワータイマーが赤く点滅する中、マクシウムソードを頭頂に戻したマックスが、左腕を高く掲げ、エネルギーを蓄積させる。

 

『だが、その装甲が砕けた今、お前を光線から守る術はない!』

『!?ま、待って―――』

 

リフレクト星人の懇願に耳を貸さず、マックスはその胸に必殺のマクシウムカノンを撃ち込んだ!

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

『リフレクト!?』

 

胸にマクシウムカノンを受けて爆発四散したリフレクト星人を見て、信じられないという声を上げるナックル星人。慇懃無礼でトサカに来ることはあったものの、その冷静かつ冷酷、そしてその体質と自分に劣るものの高い知能を気に入っていた為に、それなりにショックを受けていた。

すぐさまアグルは右手のアグルセイバーで突きを放つが、ナックル星人は寸での所でそれを避け、お返しにと腹に蹴りを喰らわせた。

 

「グォォオオオオオオオオ!!」

バキッ

『グアア!!』

『ガイア………!』

 

アグルがナックル星人の蹴りにひるんだその時、ブラックキングの口から放たれた赤い光線を受けたガイアが、アグルの近くにまで転がり込んできた。

 

『リフレクト星人が敗北したのは意外であったが、貴様らの今までの戦闘データは、既に研究済みであると言ったはずだ!我々に敗北はない!』

 

ブラックキングと並び立ったナックル星人が言い放つ。ガイアが立ち上がったその時、アグルはある事に気が付いた。

 

『(まてよ、“今までの戦闘データ”と言う事は………)そうか!ガイア、変身だ!!』

『!そうか!』

『何……?』

 

アグルの言葉から察したガイアは、両手を高く上げると、その身を赤く光らせる。そして、両腕を大きく回して真横に伸ばすと、ガイアはその姿を変えた!

 

「グウウウ………!?」

『な、何だと!?』

 

筋肉の膨れ上がった体の胸と肩に黒いラインの走った金色のプロテクターを纏い、その身には青いラインが配色されたその姿を見て、ナックル星人とブラックキングはたじろいだ。

 

ウルトラマンガイアSV(スプリーム・ヴァージョン)

かつて、藤宮博也からアグルの光を受け継いだガイアが、パワーアップした姿である。

 

ガイアSVはたじろぐブラックキングに向けて駆け出すと、その勢いのまま右拳を叩き込む。ガイアに気付いたブラックキングは戦闘データ通りであれば大したことはないと踏んだが、叩き込まれた瞬間、その身が後方に吹き飛ぶほどのダメージを受けてしまった!

 

「グォォオオオオオオオオ!?」

『ブラックキング!?』

 

吹き飛んだブラックキングに驚くナックル星人。今までの戦闘データにないパワーに驚いていると、ガイアはすきを見せるブラックキングに飛び掛かる。

 

『バカな、今までの戦闘で、あのような力を出していなかったぞ………!?』

『戦闘データを当てにしていたのが仇となったな。今までの戦闘で使わなかった能力を使った途端にこの様だ。』

 

胴を掴まれて、そのまま持ち上げられた後に地面に叩き付けられるブラックキングを見て戸惑うナックル星人に、アグルが言い放つ。ナックル星人は悔しげにアグルに振り返った。

 

『………それがどうした?仮にブラックキングが負けようと、俺が残っているぞ!!』

 

そう叫んでアグルに飛び掛かろうとした、その時、

 

 

 

ドゴォオンッ

『グ、ォァ………!?』

 

突然、ナックル星人の右側頭部が爆発し、ナックル星人は倒れこんだ!

 

『な、何だ!?何が起こったんだ!?!?』

「俺たちハーキュリーズを忘れてんじゃねーぞ!!アグルを援護だ!!」

「「ウォオオオオオーーー!!!」」

 

それは、チーム・ハーキュリーズの駆るバイソンとスティンガーの砲撃だ!さらに、上空からはライトニングとクロウのファイターたちが、星人に向けて集中砲火を行う!

 

ズドドドドドドドドドドドドッ

『ガあああああああ!!お、オノレぇ………地球人如きがこの俺様にいいいい!!』

 

集中砲火を受けた事が許せなかったのか、ナックル星人は怒りを露わにして両手から赤い稲妻状の光線を放つ!6機のファイターは回避するが地上のスティンガーとバイソンは直撃してしまい、コックピット内に火花が散った!

 

「やろお……怯むな!撃って撃って撃ちまくれ!!」「「おう!!」」

 

吉田の怒鳴り声に志摩と桑原が返事をすると、2機は再び砲撃を始めた。

 

 

 

『デャアアアアア!!』

「グォォオオオオオオオオ!!」

 

一方、ブラックキングと対峙するガイアSV。ブラックキングが放つ赤い光線に対しガイアはバリアで防ぐと、そのバリアを飛び越えてとび蹴りを喰らわせる。倒れたブラックキングをガイアは両手で高く持ち上げ、そのまま投げ飛ばしブラックキングは地面に体を打ち付ける。

 

「ギュゥウ………」

 

ブラックキングが身をよじらせる間もなく、ガイアはその尻尾を掴み、ジャイアントスウィングの要領で振り回し、遠くに投げ飛ばした!さらに、立ち上がったブラックキングの腕をつかんで背負い投げ、もう一つおまけにと両腕を掴んで振り回して投げ飛ばし、連続で体を強く打ちつけられたブラックキングはグロッキー状態だ。

 

『ぐ、おおおおお!!』

 

一方のナックル星人も、XIGのライドメカによる攻撃で足元がおぼつかない程のダメージを受けており、決着の時は近かった。

 

『フウウウウウウ………』

 

アグルは胸の前に手を合わせるように構えた後に両腕を広げ、右手を高く上げると、両腕を大きく回し球状のエネルギーを溜める。

 

『ハァアアアアア………』

 

ガイアも、右腕を高く掲げた後、右腕を後方に、左腕を前に出す構えを取り、大きく振りかぶって両手のひらを合わせるとその腕を胸の前に出した。

 

『お、おのれえ………こんなところで、この俺様が………!』

 

その時、最後の悪あがきにとナックル星人が光線を放とうとする。だが、その光線が放たれる前に背後からの銃撃を受け、八社は中断された。

 

『が、あ………?』

「今です!高山さん!!藤宮さん!!」

「やっちゃえー!!」

 

銃撃はミーナとエーリカ、2人のウィッチによるものであった。ナックル星人が怒りを通り越して信じられない表情になる。

 

『ま、まさか………地球人如きにこの俺様が―――』

『地球人をなめすぎだ、宇宙人!!』

 

アグルはそう言うと、球状のエネルギー弾『フォトンスクリュー』を放ち、放たれた光弾は星人の胴体を貫き、ナックル星人は爆散した!

 

『デャアアアアアアアアア!!!』

ドウッ

「ギャゥゥウウウウ――――」

 

それと同時に、ガイアが右手をずらし、I字になるように構えると、必殺の光線『フォトンストリーム』が発射され、ブラックキングは粉々に砕け散った!

 

「ヤッター!」

 

敵がすべて倒されたのを見て、エーリカが歓喜の声を上げる。ミーナもほっと胸をなで下ろし、各機のパイロットたちも声を上げていた。特に、ハーキュリーズの声が一番大きかったのは言うまでもない。

ミーナがふと見下ろすと、ガイア、アグル、マックスの3大ウルトラマンは、しばし互いに目を合わせていると小さく頷き、

 

『『『シュワッチッ!!』』』

 

上空を見上げて、空高く飛んで行った………

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「うっひゃー、すごい景色ー!」

「って、あなたも空を飛んでいたら、見れるでしょ?」

「いやー、でもこうやってゆっくり見れることはないからねー。」

 

「―――では、カイトさんは私たちのせいでこの世界に………」

「あ、いえ、別にそんな気になさる事はないですよ。」

 

戦闘後、エリアルベースⅡに帰投した一同は、カイトとエーリカを迎え入れて話をしていた。司令室の窓からエーリカが眼下に広がる雲海を珍しそうに眺めている中、カイトと話すミーナは申し訳ない顔となり、堤チーフが話に入ってくる。

 

「だが、君の仲間のウルトラマンも、君を探しているのではないか?」

「ええ、ですから、迎えが来るまで少しの間、こちらにお世話になってしまうかと………」

「それは構わないのだが……」

 

千葉参謀がそういうと、我夢と藤宮が入室してくる。

 

「藤宮くん。」

「みんな、今回は心配をかけてすまなかった………特に、異世界から来たという3人には、本当に迷惑を………」

「いえ、そんなことは………」

「お詫びという訳ではないのだが、元の世界に返す手伝いを、俺にもさせてほしい。俺の持てる知識を、存分に活かしたい。」

 

藤宮の申し出を聞き、石室コマンダーは頷きながら礼を言う。するとエーリカが、

 

「貸してくれるのはいいけれど、その前に玲子って人に会ってあげなよ。」

「え?」

 

寂しがってたよ~、とニヤニヤしながら言うエーリカに、藤宮は少し顔を赤くする。周囲が茶化すような雰囲気になる中、ミーナと石室がワザとらしく咳払いをしたのを切っ掛けに、慌てて気を引き締める。

 

「あー、それで今後の方針なのだが………」

「ええ、とりあえず、ミーナ中佐の世界か、カイト君の世界の座標を見つけ出す方法を探ろうと思います。」

「可能なんですか?」

「確実とは言えないのですが、『アドベンチャー』のシステムを応用すれば、何とか………」

 

ミーナの言葉に少し不安そうに答える我夢。すると、

 

 

 

 

 

「―――では、「竜が森湖」の上空付近を調査してみるといい。」

 

 

 

 

 

『………!!!!!?????』

 

 

 

 

 

突如として、XIGやウィッチ、そして2人のウルトラマン以外の人物の声が司令室の面々の耳に届く。声がした方に振り返ってみれば、そこには少しくたびれた白衣を着た、ボサボサな白髪と無精ヒゲの老人がいた。その老人の姿を見た瞬間、ミーナはあ、と声を上げた。

 

「あなたは………あの時の!?」

「知っているんですか?」

 

声を上げたミーナに、我夢が聞く。

 

「私が医務室で目覚めたとき、この人がいたんです………てっきりこの艦の医師かと思ったらそうじゃなくて、気付いたらいなくなっていて………」

「て言うかカイト、このおじいちゃん、私たちに作戦提案してきた人だよねえ?」

「そうだけど………」

 

エーリカとカイトが更に驚きの事実を告げる。堤チーフは警戒しつつ、老人に問いかけた。

 

「あなた、いったい何者なんだ………?」

「なあに、頑張る若いモンを応援したくなる、ちょいとお節介なジイさんじゃよ。」

「それで、その竜が森湖には、いったい何があると言うのだ?」

 

笑ってはぐらかす老人に、今度は千葉参謀が聞く。

 

「ウルトラマンマックスがこの世界に来たとき、その湖の上空から時空の穴を通って来たんじゃろ?その穴、まだ完全に閉じ切ってはいないと、ワシは思うんじゃがな~」

「!そ、そうか!」

 

飄々と答える老人の言葉に、我夢は気付いた。

 

「カイト君が通って来た穴は、『カイト君の迷い込んだ世界』と、元いた『M78星雲のある世界』とを繋いでいた道から外れて開いたから、」

「その穴を見つければ、『M78星雲のある世界』の座標が割り出せる、という事か!」

 

我夢と藤宮の説明になるほど、と頷く一同。老人はミーナとエーリカに向き直ると、にっこりと笑ってこう告げた。

 

「カイト君の元いた世界の地球に、君たちの仲間が集まりつつある。早く行ってあげなさい。」

「え………!?」

 

老人は驚く2人を見ると、顎を撫でながらハッハッハッと笑い背を向け歩き出す。ミーナが止めようとした次の瞬間、老人は煙のようにその姿を消してしまった………

 

「き、消えた………!?」

「何者だったんだ、あの人は………?」

 

堤チーフの言葉は、皆の代弁でもあった………

 

「………とにかく、これでこれからの方針は決まりましたね。」

「ああ。我夢、竜が森湖を調査し、カイト君のいた世界の座標を割り出してくれ。」

「了解!」

 

石室の司令に、我夢は大きく返答した。

 

「それにしても、他のみんな、カイトのいた世界にいたんだねー。トゥルーデたち、大丈夫かな?」

「どうだろう。ひょっとしたら、僕の先輩か後輩のウルトラマンと会っているかも。」

「美緒、無事だといいけど………

 

司令室の窓から青空を見ながら、3人は仲間たちの安否を気遣うのであった。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

『GUYSスペーシー』とは、大気圏外の宇宙圏から地球を防衛するチームである。

 

1年前に新設されたGUYSスペーシー月面基地配属チーム、通称『スペーシー・ルナ隊』もその任を帯びており、地球から見て月の裏側より、侵略者の脅威から地球を守るのだ。

 

 

 

[隊長、スペースウィンガー2、発進準備完了しました!]

[同じくスペースウィンガー3、発信準備完了っす!]

「よぉおしッ!スペースウィンガー隊、バーナー・オン!」

 

数十分前、月面に怪獣出現の知らせを聞いたスペーシー・ルナ隊は、リック・サンダース隊長の号令のもと、『スペースウィンガー』―――ガンウィンガーの宇宙仕様機で、大型化したジェットエンジンと白地に黒のラインの色が目を引く―――に搭乗し、現場に向けて飛び立った。

 

「キィィイイイイイイイイイイイイイ!!」

 

スペーシー・ルナ隊が現場に着くと、そこでは岩のようにゴツゴツした体に丸い目と小さい口、腹部の黄色い模様が特徴の怪獣が、細い胴体に矢のような機首を持ち、左右に円盤型の翼をもった黒い金属のような怪獣から、イソギンチャクが数個合体したような緑色のぶよぶよとした怪獣を守るように戦っていた。

 

「ありゃあ、ジャパンの連中が戦った『ネウロイ』とかいう金属怪獣か!」

[戦っているのは、レジストコード『月光怪獣 キララ』、守られているのは、『月怪獣 ペテロ』っす!]

 

隊員がそう伝えると、キララは口から火花を吐いて攻撃するが、飛行能力を有するネウロイは高度を上げて回避、両翼の中心からビームを発射し、キララとペテロの近くを爆発させた!

 

「総員、月の先住民たちを援護だ!」

[[G.I.G!]]

 

サンダース隊長はそう命じると、3機のすぺースウィンガーは宇宙使用のビークバルカンを発射、ネウロイの両翼を半分ほど削る事に成功した!

 

「GACCHA!見たか金属怪獣!」

『助かったぞ、地球からの移民よ!』

「って、お前さん、喋れんのかい!?」

 

キララからの感謝の言葉にサンダース隊長が驚いていると、ネウロイは瞬時に翼を再生させたかと思うと、その翼が本体から分離し、まるでピザのように八分割ずつ、合計16機の扇形の子機となった!

 

「何い!?」

 

サンダース隊長が驚きの声を上げる。16機の子機は散会すると、あっという間にスペースウィンガーを包囲してしまい、その先端からビームを発射した!

 

[くっそー!(こっち)に来てからピザなんて一片も食べてないっていうのに!]

「言ってる場合か!次地球に帰還したら何枚でも食わせてやる!!」

 

サンダースは叫びながらウィングレットブラスターを乱射、2機の子機の破壊に成功する。だがそれもつかの間、本体がキララとペテロに向けて突っ込んでいく!

 

「しまった………?!」

 

スペースウィンガーが向かおうとするが、子機にその道を阻まれてしまう。キララがペテロを庇うように前に立ち、ネウロイの攻撃にそなえる。ネウロイはその機首にエネルギーを溜めて、最大級のビームを放とうとし―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドウッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『………!?』

「キィイイ―――――――――!?」

 

突如、上空から青い色の光線がネウロイに直撃し、ネウロイのその身を粉砕した!

 

「いったい………、何が………?」

 

それと同時にスペースウィンガーを包囲していた子機も砕け散り、スペーシー・ルナ隊は解放されるが、何が起こったのか分からず混乱するばかりだ。

 

[9時の方向に、浮遊物体を確認!!]

「何?」

 

通信に、サンダース隊長が訝しんだ声を出す。コックピットのキャノピーから見上げた先に見たものは――――――

 

[あれは…………]

 

 

 

 

 

そこにいたのは、銀色の体に青いラインを走らせ、胸に青く光る丸いカラータイマーの周りには銀色の装飾がある。そうその者は―――

 

 

 

 

 

「青い………ウルトラマン………?」

 

 

 

 

 

つづく




第六話にして『ガイア篇』後編です。

今作におけるマックスとゼノンの設定。マックスはM78ワールド出身で、ブラックホールに飲み込まれて『マックス』本編の世界(マックススペース)に来たという設定。ちなみに今更ながら、カイトの名乗りシーンは『ウルトラセブン』第1話が元ネタ。

ゼノンはネオスと同じ勇士司令部の所属でマックスの卒業試験の試験官、その責任からマックスを探し出して、ギガバーサーク戦の間は帰還の為のゲートを維持し続けていた為に参戦できなかった、という設定。ちなみにマックス捜索の際にはある偉大な戦士が協力してくれたらしいのですが………

ネウロイ戦はあっさりと終了。リフレクト星人は「固い装甲」故の攻略法で決着させました。若干、『仮面ライダーSPIRITS』のライダーマン対ヨロイ元帥戦を参考にしています。

ナックル星人は地球人を見下していた為に地球人が原因で止めを刺されるという屈辱的な決着方法。こういう奴には一番の止めかと思います。
ガイア対ブラックキングは、投げの鬼スプリーム・ヴァージョンによる投げ無双。推奨BGMは「ガイアノチカラ」。

ラストに登場したオリジナルチーム『GUYSスペーシー・ルナ隊』。スペーシー・ルナ隊隊長の声は勿論、江原正士さん、スペースウィンガーの色はスペースシャトルを意識。

ネウロイGX-03は『レオ』のマッキー2号がモデル。レオやタロウのメカは、面白いデザインで好きです。

そして、物語は再びM78ワールドに。ラストの青いウルトラマンの正体も明らかに。

では、また次回。


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第七話 怪獣の涙

 

1966年に「隕石怪獣 ガラモン」を用いて地球侵略を目論んだチルソニア遊星人(別名、「宇宙怪人 セミ人間」)を皮切りに、「ピット星人」や『ズール星人』、『ファンタス星人』など、地球はこれまで幾度に渡り、異星人からの侵略行為を受けてきた。

 

それらの侵略者から地球を守ったのは、『科学特捜隊(科特隊)』を始めとした防衛チームや、遠い宇宙の彼方から来たウルトラマンたちだ。

 

彼ら異星人は、時に地球人では信じられないような科学技術や特殊能力を用いては、地球人を驚かせた。

 

例えば、彼らの宇宙船に使われるバリアや浮遊装置はもちろん、ドキュメントUGに記録が残る「反重力宇宙人 ゴドラ星人」が使ったような重力操作能力や、ドキュメントMATの「発泡宇宙人 グロテス星人」が『魔神怪獣 コダイゴン』を生み出した物質「グロテスセル」がそうだ。

 

 

 

 

 

「それらの技術を、星人たちの兵器や宇宙船などから採取、研究したオーバーテクノロジー、それが「Much Extreme Technology of Extraterrestrial ORigin(地球外生物起源の超絶技術)」、通称『メテオール』なんです!」

 

ビシッ、と指し棒でホワイトボードに書かれた『METEOR』の文字を指すエリー。やたらと熱のこもった解説に、圧倒される芳佳たちであった。

 

 

 

 

 

芳佳たち4人のウィッチがGUYSに身柄を置くようになってから、1週間がたった。

その間にネウロイや怪獣が出現することはなく穏やかな日が続いており、ちょうどいいからとアイハラ隊長の提案でフェニックスネスト内の小会議室で、エリーによる『メテオール』の講座を受けていた。

 

 

 

 

 

「でも、宇宙人の技術って、危険なんじゃないですか?」

 

芳佳は、自分の世界で開発された兵器―――「ウォーロック」の事を思い出していた。

 

ウォーロックは、ブリタニア軍空軍大将トレヴァー・マロニーが、捕獲したネウロイのコアを使い、軍上層部にも秘密裏に製造した『無人人型航空兵器』だ。1年前、マロニー大将はネウロイのコアが未知数で調整段階であるにも関わらず、功を焦るあまり実験段階のウォーロックをガリアのネウロイの巣殲滅作戦に導入、戦闘開始時は巣のネウロイと同調させて支配下に置く事で圧倒していたが逆にネウロイに乗っ取られて暴走してしまい、芳佳たち501の最大の敵として立ちはだかったのだ。

 

心配そうな顔を浮かべる芳佳に、エリーはそうです、と頷いた。

 

「確かにメテオールは、発動すれば驚異的な威力を発揮できる反面、不明な点が多い危険な物ですので、『メテオール規約』によってその使用は厳しく制限されていて、緊急時を除いて隊長以上の許可の下に『1分間』しか使用できません。」

「1分………」

「それだけ、危険な代物と言う訳ですのね………」

 

実際、先日の戦闘でその威力を目の当たりにしているだけに、メテオールの危険性を実感するリーネとペリーヌ。

 

「でも、それを使わないといけないくらい、怪獣や宇宙人は恐ろしいと言う事なんですかね、坂本さん?」

「……………」

 

芳佳は、隣に座る美緒に尋ねるが、当の美緒は心ここに非ず、という雰囲気であった。

 

「坂本さん?」

「え、ああ、すまん…少し、考え事を、な………」

 

真面目に聞いてくださいよー、とエリーに注意され、美緒は小さく謝る。芳佳たち3人は、それを不思議そうに見つめるのであった。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「―――これが、月面基地所属の『スペーシー・ルナ隊』を助けたという、『青いウルトラマン』です。」

 

その同じころ、ディレクション・ルームでは本部に出張中のサコミズ総監に代わり、ミサキ・ユキ総監代行がエリー以外のCREW GUYSメンバーと会議をしていた。

スクリーンに映し出されているのは、今からおよそ12時間前に『スペーシー・ルナ隊』と2体の月面怪獣をネウロイから助けたという青いウルトラマンであった。

 

「確かに青い身体だ。だが、ウルトラマンヒカリとは、全くの別人………新しい青いウルトラマンか………」

 

トリヤマ補佐官の言うとおり、2年前に初めて地球で確認された青いウルトラマン―――『ハンターナイト・ツルギ』こと『ウルトラマンヒカリ』とは、別の姿であった。

ヒカリの特徴的な尖った『耳』やカラータイマーの横の「スターマーク」や肩の突起、何より右腕の『ナイトブレス』がなく、身体が青く頭部のトサカが少し大きいことを除けば、その姿は『初代ウルトラマン』や『ウルトラマンジャック』に酷似している。

 

「ミライ、こいつの事、知ってるか?」

 

リュウは隣に座るウルトラマンメビウスことミライに聞くが、ミライはいいえと首を横に振った。

 

「確かに、ヒカリの地球での活躍で宇宙警備隊にブルー族、つまり青いウルトラマンの入隊希望者は増えたそうですが、訓練を終えた戦士が導入された話は、まだありません。」

 

ミライはそう説明する。

話によると、M78星雲『光の国』のウルトラマンは3つの種族があり、メビウスや初代ウルトラマンのように銀色の身体の「シルバー族」、ウルトラセブンやウルトラマンタロウのように赤い「レッド族」、そして、ヒカリのような「ブルー族」に分かれているのだという。なお、シルバー族同士であるウルトラの父とウルトラの母の実子であるウルトラマンタロウがレッド族であるので、おそらくは地球人で言う所の血液型のようなものであると推測される。

 

「では、この青いウルトラマンはもしかしたら、ヴェネツィアに現れたウルトラマンと同様に別の世界から?」

「可能性はあると思います。」

 

マル秘書官の推測にミサキが頷いた。丁度その時、ディレクション・ルームのドアが開き、講座を終えた美緒たちウィッチが入ってきたため、リュウはモニターを消し、会議は終了となった。

 

「メテオール規約、思った以上に多いですわね………」

「覚える事、多いね………」

 

メテオール規約の書かれたコ■コ■か●ン●ンほどの厚さがあるA4用紙の束にウンザリした表情のペリーヌと苦笑するリーネ。芳佳と美緒も戸惑っている様子であった。

 

「どうだ、様子は?」

「覚える事は多いですが、何とか。こら、離れなさいな!」

「ピュ~」

「そうか。」

 

リュウの問いに、いつの間にか頭上に出現したリムを引きはがしながら答えるペリーヌ。最初にディレクション・ルームで抱き着いて以来、リムはペリーヌの事が気に入ったのか、毎回頭にしがみ付いて来てはペリーヌが引きはがすのがお約束になりつつあった。

 

「メテオールといえば、明日辺りに最新のマケット怪獣が届くって言っていませんでしたか?」

 

思い出したようにミライが聞く。トリヤマはコホン、とわざとらしく咳払いをして、

 

「その通り。頻発する怪獣、特にネウロイ対策のため、私が、この私が自ら厳選、提案した最新鋭のマケット怪獣!その名も―――」

 

トリヤマが発表しようとしたその時、けたたましい警報が鳴り響く。

 

 

 

皆が慌ただしく臨戦態勢に入る中、一人ガックリとうなだれるトリヤマを、ペリーヌから飛び移ったリムが、優しく撫でるのであった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第七話 怪獣の涙

 

宇宙大怪獣 ベムスター

サーベル暴君 マグマ星人ヴァルドスキー

異次元宇宙人 イカルス星人ジュリコ

 

 

 

ウルトラマンコスモス 登場

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

長野県の山中付近で四次元エネルギー反応を感知したCREW GUYSジャパンは、美緒とペリーヌを同行させて、ガンフェニックスで出動した。怪獣が出現するならまだしも、ネウロイであった場合の対処のためだ。

 

「エネルギーが検知されたのは、この付近でしたわね。」

[この辺って、前に『アーマードダークネス』の影響で、怪獣が出たトコじゃなかった?]

[ああ。確か、マグロだかマグマだか………]

[『地底怪獣 マグラー』ですよ、隊長。]

 

惜しいなと笑うリュウに、少し呆れる一同。その時、地上に異変を見つけたペリーヌが声を上げた。

 

「少佐!」

「む?」

 

見れば、木々の一部がなぎ倒されたかのようにぽっかりと開いていた。近寄って判明したことであるが、そこは何かがそこの木々をなぎ倒したのであった。その先には不時着したと思わしき全長30m程の赤い戦闘機が、エンジン部から黒い煙を出していた。

 

「見たことのない飛行機だ………」

 

見たところ地球産の物に見える戦闘機に驚くリュウと美緒。一応、本部でエリーがアーカイブを確認するが、該当する宇宙人はいない。

 

「四次元から出てきたのは、コイツか?」

 

戦闘機を確認したCREW GUYSは少し離れた地点に着陸すると、各々、トライガーショット等の銃器を(美緒は背負った烈風丸を)構え、木々に身を隠しながら戦闘機に先ほどの場所まで足で接近する。

ドキュメントUGに記録が残る「キュラソ星人」や「プラチク星人」は、ウルトラ警備隊が誇るメカニック・ウルトラホークやマグマライザーを操縦して逃亡、ないしは地球防衛軍を攻撃したと言う。戦闘機が仮に地球産だとしても、乗っているのが地球人とは限らないのだ。

 

「………」

 

戦闘機が目と鼻の先に見えたその時、先行していたリュウがハンドサインで止まるように合図をする。うまく聞き取れないが2人の人物の話し声が聞こえたのだ。

 

「―――!―――?」

「――――――??」

「………」

 

リュウが、3カウント後に突撃する事を合図し、ゆっくり3本伸ばした指を曲げていき、

 

「おい!そこに隠れている奴ら!!」

『!?』

 

最後の1本を曲げようとした時、戦闘機の方向から怒鳴り声と銃器を構えたらしき音が聞こえた。

 

「え?」「今の声って………」

「そこにいるのは分かってるんダ!さっさと出てこい!」

 

美緒とペリーヌには、その声に聞き覚えがあった。美緒が眼帯を外し、魔眼で戦闘機の付近を見た。そして、飛び出して声を上げた。

 

「待て『エイラ』、『サーニャ』!!」

「え!?」

「坂本少佐に、ペリーヌさん……!?」

 

飛び出てきた美緒に声の主―――銃を構えた『エイラ・イルマタル・ユーティライネン中尉』と、倒れている男性を看病している「サーニャ・V・リトヴャク中尉」は、驚いた。エイラが銃を下すと、困惑した様子でリュウたちも木々の中から出てきて美緒に問いただした。

 

「いったい、何がどうなって…?」

「美緒、こいつらもしかして………?」

「ああ、私たちの仲間だ。」

 

美緒が説明すると、サーニャに看病されていた男性が起き上がろうとするが、腕が痛むのか、顔を歪めた。

 

「ムサシさん!まだ無理しないで………」

「ああ、ありがとう、サーニャちゃん………」

「あの、失礼ですが、あなたは…?」

 

サーニャに介抱される男性に、ペリーヌが聞く。

 

「はい、僕は、『春野ムサシ』と言います………」

 

春野ムサシはそう名乗った瞬間、激痛に顔を歪める。

 

(この人は………!)

 

リュウがメモリーディスプレイで救護班を要請する中、ミライはムサシに『何か』を感じ取っていた―――

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「―――まったく、なかなか怪獣を送ってこないと思ったら。」

 

同じ頃、ここは東京都郊外のとある廃工場。持ち込んだと思わしきアンティーク調の白いイスとテーブルに腰を掛けた黒いタキシードに片眼鏡、白い口髭を蓄え白髪をオールバックにした老紳士が、執事と思わしき男性の入れた紅茶を飲みながら嫌味たらしく言う。

 

「既に、別次元のナックル星人達の方は、今日にも達成できるそうですよ。なのに君たちときたら………」

「面目なイカ………」

 

老紳士の前で正座をさせられたイカルス星人とマグマ星人は、肩を震わせていた。優雅に紅茶を嗜むこの老紳士のプレッシャーに、圧倒されているのだ。老紳士は口を拭いて立ち上がった。

 

(なんつうプレッシャーだ………かつての『暗黒四天王』直属ってのは、伊達じゃねえって事か………!)

「まあいいでしょう。まさかまだメビウスが地球にいる事は予想外でしたが、アレのテストには丁度いいでしょう。」

 

シルクハットを被り、執事からマントと杖を受け取ると、老紳士は2人に背を向けた。

 

「この私、カウントが直々にネウロイの有効利用法を見せてあげましょう。君たちも存分に働いてください。」

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

それから1時間半後、フェニックスネストに3人と戦闘機―――『テックスピナー1号』を搬送し、ムサシは治療で処置を受けていた。

 

「じゃあ、サーニャちゃんたちは、その『EYES(アイズ)』っていう組織の人たちに、助けてもらったんだ。」

「うん。落ちたのは、『ジュラン』っていう遊星で、そこの研究チームに参加していたムサシさんに会ったの。」

「そうしたら、馬鹿デカいロボットに襲われて、一緒だったムサシさんの友達が攫われたんダ。」

「で、そいつを追って異次元の門をくぐったら、」

「あの場所に出たってコトか。」

 

ムサシの治療を待つ間、リュウたちはサーニャとエイラから事情を聴いていた。宇宙空間の異次元の門から出てきた際に出口の高度が想像以上に低く、ムサシは操縦を誤ってしまい不時着してしまったそうだ。その際にムサシは気絶してしまったが、操縦桿は放さなかったという。

 

「しかしお前達、良く俺らがいたのに気が付いたな。」

「ふふーん、サーニャの固有魔法「全方位広域探査」があれば、雲の中に隠れていても見つけられるんダゾ。」

「そうなのか。」

 

エイラの説明に納得をして頷くリュウ。しばらくすると、腕を吊ったムサシが医療室から出てきた。

 

「ムサシさん!」

「大丈夫ですか?」

「ああ、軽い打撲だけど、念の為に数日は安静にって。」

 

心配する2人に笑いかけるムサシ。その時、ふと、ムサシとミライの目が合った。

 

《―――君は何者なんだ?》

「!?」

「ムサシさん?」

 

突然、頭の中に響く声にムサシが驚き、サーニャが心配する。

 

《驚かせてすいません。この声は、君にしか聞こえないから………》

《テレパシーか………》

《僕は、光の国から来た宇宙警備隊員だ。君は、別次元のウルトラマンなのかい?》

「………?」

「ど、どうしたんダ2人とも…?無言で見つめ合って………」

 

テレパシーでの会話であるため、無言で見つめ合う2人に戸惑うエイラたち。若干アブナイ描写に見えなくもない。

 

《―――なるほど、私の存在に気づいていたのか。》

《!?》

《コスモス!》

 

その時、突然ムサシの方から『ムサシ以外の声が』届く。落ち着いた印象を受けるその声は、ミライに名乗った。

 

《私は、ウルトラマンコスモス。君の言うとおり、別次元の宇宙から来たウルトラマンだ。今、私はムサシと一体化して、彼と共に戦っているのだ。》

《初めましてコスモス。僕はメビウス。この姿では、ヒビノ・ミライと呼ばれている。》

 

一体化していると聞いて、ミライはかつての兄弟たちと同じ境遇であると思った。

 

「おーい、2人ともー?」

《とにかく、これ以上黙っていては不審に思われる。》

《そうですね………何とか自然な形で………》

「あ、ムサシさん、肩に糸くず付いていますよ?」

「え、どこに?」

「ほら、ここに…」

「え?どこどこ?」

 

いいかげん怪しまれてきたので、慌ててごまかす2人。芳佳とリーネ、サーニャは不思議そうに首を傾げ、美緒とエイラが訝しげな眼を向ける。2人がコントのようなやり取りをしていると、所で、とリュウが切り出した。

 

「サーニャ達に聞いたんだが、アンタの『友達』が攫われたんだって?」

「あ、そうなんです。突然、『遊星ジュラン』に、全長が150m程のロボットが現れて………」

 

ムサシはそう言うと、悔しそうに唇を噛む。

 

「150mって、相当な大きさだな……」

「一般的なウルトラマンや怪獣のおよそ3倍に相当しますね………」

「もし良ければ、俺たちGUYSも手伝うぜ。今、こっちの世界で起こっている事件と、関係があるやもしれないからな。」

「ありがとうございます………」

「それで、攫われたというお友達の写真等はありますか?」

「ああ、1年半ほど前に撮ったやつが…」

 

そう言うとムサシは、ポケットから1枚の写真を出した。写真にはウェディングドレスを身にまとった女性と白いタキシード姿のムサシを中央に、周りを数名の男女が囲み、後ろには温厚そうな3匹の怪獣が写っていた。

 

「何で怪獣まで?」

「て言うか、結婚していたんですかムサシさん!?」

「それで、この中の誰だ?まさか花嫁って言うんじゃないだろうな?」

 

それは、とムサシが言おうとしたその時、本日2回目の警報が鳴り響く。

 

 

 

 

 

「何事だ?」

 

ディレクション・ルームに駆け付けたリュウは、オペレーター席に着いたエリーに状況を確認する。

 

「大気圏に次元エネルギーが発生し、怪獣が出現しました!」

「GUYSスペーシーの迎撃衛星は射程距離外であるため迎撃不能、このままですと、1時間以内に日本に到達します!」

 

立て続けに彼方が報告する。立体モニターには怪獣の移動経路と到達予測地点の計算状況が示されていたが、ぱっと、怪獣を映した映像に切り替わった。

 

『ピヤアアーー!!』

 

その怪獣―――鳥に似たくちばしのある顔に鬼を思わせる短い1本角を持ち、星形の体系と腹部の五角形の器官が特長―――が一声鳴くのを見て、リュウは目を見開いた。

 

「『ベムスター』じゃねえか!!」

「ベムスター?」

 

『宇宙大怪獣 ベムスター』ドキュメントMATに2件、ZATに1件の記録を持つ宇宙怪獣だ。2年前にも出現し、いずれも防衛チームやウルトラマンを苦しめた強敵だ。

 

「かなりの強敵だが、弱点は判明している。エリー、着陸予測地点を割り出してくれ。」

「G.I.G!」

 

リュウの指示で計算を開始するエリー。未だにこの挨拶には慣れないな、と美緒が思っている間に、エリーが叫ぶ。

 

「着陸予測地点が出ました!場所は………新宿、D地区?」

「東京のど真ん中じゃねえか!」

 

着陸地点を聞き、リュウは右拳を左手に打ち付ける。一方、読み上げた張本人であるエリーは小首を傾げるが、リュウは司令を出す。

 

「ベムスターの迎撃に向かうぞ。GUYS,Sally GO!!」

『了解!!』『G.I.G!!』

 

号令と共に、GUYSとウィッチは出動した。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「ピヤアアーーー!!」

 

東京上空に出現したベムスターは、エリーの予測通り新宿のど真ん中に着地したのち、頭頂の角「レイホーン」から光線を放って、街を破壊し始めた。避難が遅れた人々が逃げ惑う中、CREW GUYSのガンフェニックスとガンブースター、そしてエイラとサーニャを除いた4人のウィッチたちが到着した。

 

「ベムスター確認!」

「よく見るとかわいい顔していますわね、この怪獣………」

「ガンフェニックス、スプリット!!」

 

ガンフェニックスがガンウィンガーとガンローダーに分離、ベムスターへの迎撃が始まった。ガンマシンがビームを発射するが、ベムスターは腹部の器官で吸収してしまった。

 

「吸収しただと!?」

「あれが奴の厄介な所だ!」

 

ベムスターは腹部の器官「吸引アトラクタースパウト」で水素やヘリウムを餌として吸収するだけでなく、ウルトラマンジャックのスペシウム光線やメビウスのメビュームシュートをも吸い込んでしまうのだ。

ならば、と美緒が烈風斬を顔面に向けて放つが、ベムスターの前で急に軌道を変えて腹部に吸収されてしまう。魔法力までも吸収してしまうベムスターの能力に戦慄するウィッチ一同。これまで戦ってきたベムラーやゴメスとは一線を画していた。

 

「何という怪獣ですの………」

「大怪獣の名は伊達ではないと言う事か………」

「だが、コイツには弱点がある!」

 

そう叫ぶと、ガンウィンガーはベムスターの背後にまわり、ピークバルカンを放ち、背中にダメージを与えた!

 

「ピヤアアーー!!」

「コイツの背後は、がら空きなんだよ!」

「なるほど!!」

 

そうと分かればと、美緒は芳佳たちに指示を飛ばす。

 

「宮藤とペリーヌはベムスターの注意を向けろ!私とリーネは背後から攻撃だ!」

『了解!!』

「ガンローダーは芳佳たちの援護だ!」

[G.I.G!]

 

返事をすると、美香たち3人とガンローダーは攻撃を開始する。ビームは吸収され、魔法力の籠った弾丸は堅い体表に阻まれてしまうが、引きつけるのには十分だ。

 

「ウィングレットブラスター!!」

「ガトリングデトネイター!!」

「喰らええいッ!!」

 

2大マシンの攻撃と美緒の烈風斬が、ベムスターの背中に向けて放たれた!

 

 

 

バシィイッ

「!?」

「何!?」

 

だが、放たれた攻撃はベムスターまで届くことなく、突如として現れた黒い影に阻まれた!

 

『悪いが、そうはイカないのだよ!』

『こいつはやらせねえぞ!!』

 

現れたのは、巨大化したマグマ星人とイカルス星人のコンビだ。ただ、2人とも若干装備が変わっており、マグマ星人は左手を隠す長い黒いマントを纏い、イカルス星人は胸と右腕に拳闘士を思わせる茶色い革製の鎧と籠手で覆っていた。

 

「こいつらは!」

「マグマ星人とイカルス星人………!」

「あの時の宇宙人!ベムスターは貴様らの差し金か!!」

 

2体の宇宙人に向けて美緒が怒鳴る。マグマ星人はふん、と鼻を鳴らすと、右手のサーベルの切っ先を向けた。

 

『自己紹介をしていなかったな。オレ様はこと座のシュリアク辺りではちょいと名の知れた無法者(アウトロー)、『地獄の狂犬』、ヴァルドスキー様よ!!』

 

マグマ星人こと、ヴァルドスキーが名乗ると、隣のイカルス星人も手のひらを回すような奇妙な動きをしながら名乗った。

 

『同じく俺は、イカした怪力闘士、ジュリコ様だ!!』

「ヴァルドスキーに………ジュリコ………?」

 

名乗りを上げた2大星人に息をのむ一同。次の瞬間、ベムスターがレイホーンから光線を発射し、ガンローダーの翼をかすめた。

 

「ピヤアアーーー!ピヤアアアーーー!!」

『こら、暴れるな!』

『とにかく、俺たちも相手になるぞ!かかってこイカ!!』

 

両手の爪を振り回しながら突進していくベムスターをヴァルドスキーが追いかける中、ジュリコは両耳からアロー光線を発射し、ビル群を破壊していった!

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「やっぱりおかしいです、あのベムスター!」

「おかしいって、何がだね!?」

 

一方、フェニックスネストのたエリーが立ち上がり、声を荒げた。それに驚いたトリヤマ補佐官が素っとん狂な声で聞くと、

 

「ベムスターがあんな風に暴れる事はほとんどないですし、何より新宿にはガスタンクがありません!」

 

ベムスターは大量の窒素や水素、ヘリウムをエサとする怪獣であるため、過去に襲来した際には(『異次元人 ヤプール』に操られていたとされる「改造ベムスター」でさえ)、必ず『ガスタンク』を襲ってきていた。だが、今回は新宿のど真ん中。ガスタンクなんてありはしない。おまけに、ヴァルドスキーが止めるのも聞かずに暴れまわっている。

 

「それは確かに、おかしいですねえ………」

「そうです、おかしいですよ!」

 

顎に手を当てたムサシが共感すると、エリーも頷いた。そして、マル補佐官が気付いた。

 

「………っていうか、君、いつの間に入ったの!!?」

「え?」

「あ、ムサシさん。」

 

そう、医務室にいたはずのムサシが、いつの間にかディレクション・ルームにいたのだ。

 

「いや、みんなの事が気になったもので………」

「気になったって、君は部外者だろう!とっとと出て行って………」

「あれは!」

 

トリヤマがムサシを追い出そうとした時、エイラが声を上げる。モニターには、金色の光が溢れていた。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「ピヤアアーーー!!」

『喰らえアロー光線!』

 

2大星人に守られながら街を蹂躙するベムスター。めちゃくちゃに手の爪を振り回しながら突進するベムスターにヴァルドスキーに対し、ジュリコはガンマシンやウィッチたちに向けて得意のアロー光線を放ち、ベムスターから遠ざける。

 

「このままじゃあ街が!」

 

ベムスターが自分たちから離れる様子を見て、美緒が唇を噛む。その時、ミライは通信機がオフになっているのを確認して、リュウに話しかけた。

 

「………リュウさん、僕がイカルス星人を止めます!」

「頼む!」

 

リュウがそう言うと、ミライは左手を構えてメビウスブレスを出現させ、中央のクリスタルを回し、金色の光に包まれる。瞬間、メビウスの環の軌跡を描く光がジュリコの目の前に現れ、ウルトラマンメビウスが参上した!

 

「メビウス!」

(ヒビノ隊員………)

 

『現れたな、ウルトラマンメビウス!』

『セヤァア!!』

 

メビウスの姿を確認したジュリコは、レスリングのような構えから低いタックルをかまして腰の辺りに掴みかかる。メビウスは一瞬怯んだが、ジュリコの背中に拳を振りおろす。

 

『イカイ、いやイタイ!背中痛いって!』

『ダァ!デヤア!!』

「メビウスが奴を引きつれている間に、俺たちはベムスターを!」

『G.I.G!』

 

リュウの言うとおり、ジュリコをメビウスに任せてベムスターへと向かう一同。マグマ星人ヴァルドスキーはそれに気づくと、右腕のサーベルを掲げた。

 

『ええい、何をやっているんだジュリコ!行け、ベムスター!!』

「ピヤアアーーー!」

 

ヴァルドスキーにけしかけられて突進するベムスター。近くのビルの屋上に立ててあった映画の看板(シャイニングキノコ狩りⅡ)を弾いて当てようとするが、ガンマシンたちは寸での所で飛んできた看板を回避、各自砲撃を開始した。ベムスターはレイホーンから光線を放ち応戦すると、背後に回ったガンブースターが掃射、だが、とっさにヴァルドスキーがマントを翻して弾を跳ね返してしまった。

 

『オレ様のこのマントは、丈夫なんだよ!』

「どうやら、そうらしい………!」

「ピヤアアアーーー!!」

 

ヴァルドスキーが勝ち誇ったその時、ベムスターはヴァルドスキーを押しのけてガンブースターに突っ込んでいき、飛び上がって爪を振り下ろした。ガンブースターはぎりぎりで躱そうとしたが翼の先端にダメージを受け、ふらふらと高度を下げる。

 

『おいコラ!それが助けてやった奴に対する―――』

「ピヤアアアーーー!!ピヤアアーーー!!」

「この怪獣………!?」

 

ヴァルドスキーの言葉に耳も貸さず、ベムスターは滅茶苦茶に暴れ始める。ジュリコの相手をしていたメビウスもその異常性に気づき、疑問に思っているその時、芳佳は気が付いた。

 

「ピヤアアーーー!!ピヤアアーーー!!」

「あれは………!?」

 

ベムスターの目から、光るものが、落ちた………

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「涙………?」

「怪獣が、涙を………?」

 

フェニックスネストでも、ベムスターが涙を流すのを確認し、トリヤマ達は唖然とする。

 

「あの怪獣………いけない!!」

「ムサシさん!?」

 

ベムスターの涙を見たムサシは何かを察したのか、弾かれたようにディレクション・ルームを飛び出して行き、サーニャとエイラが慌てて追いかけた。

 

《コスモス、あのままではあの怪獣は!!》

《ああ。行こう、ムサシ!》

 

フェニックスネストの外に出たムサシは、腕を吊っていた布を取り払うと懐から『先端につぼみ型のクリスタルが付いたスティック』―――「コスモスプラック」を取り出すと、天高く掲げ、叫んだ!

 

 

 

「コスモーーース!!」

 

 

 

瞬間、コスモスプラック先端のクリスタルが花弁の如く展開し光が溢れ、眩い光がムサシを包み込むと、追いついたサーニャの目の前で光の球となって、飛んで行った。

 

「行っちゃった………」

「ムサシさん………」

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「ピヤアアーーー!!」

『ええい、貴様、いい加減にせんか!!』

 

暴れまわるベムスターにしびれを切らしたヴァルドスキーは、マントに隠されていた左腕を出す。左手には鞭が握られており、ヴァルドスキーはそれをベムスターに向けて振るった。

 

ビシィッ

「ピヤアアーーー!ギュウウ~~」

「コイツ………!」

『さあ行け、メビウスを倒せ!!』

 

悲鳴を上げるベムスターに向けてヴァルドスキーが命令をすると、ベムスターはジュリコを組み伏せるメビウスに突っ込んでいく。

 

「もしかしてあの怪獣、無理やり従わされているんじゃあ………」

「だとしたら、まずは星人を!」

「ピヤアアーーー!!」

 

芳佳とペリーヌが気づくものの、ベムスターはジュリコを放り投げて構えを取るメビウスに迫る!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ピカァアッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『!!!??………』

 

 

 

 

 

だがその時、突如として空から青い光がベムスターの目の前に舞い降りた!

 

「何だ!?」

「!あれは………!?」

 

皆が戸惑う中、芳佳は光の中に「巨大な人影」を見た。徐々に光が薄れていくと、その中から銀色の体に青いラインを走らせ、胸に青く光る丸いカラータイマーの周りには銀色の装飾がある巨人が現れた!

 

「青い………ウルトラマン………!?」

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「あれは!」

「月面に現れたという、青いウルトラマン!」

 

フェニックスネスト内で、青いウルトラマンの姿を見たトリヤマとマルは、驚きの声を上げる。その時、サーニャとエイラがディレクション・ルームに戻ってくると、モニターに映された青いウルトラマンの姿を見た。

 

「コスモス………!」

「コスモス?」

 

エイラの呟いた言葉にマルが聞き返し、サーニャがそれに答えた。

 

「私たちの迷い込んだ、ムサシさんのいた世界で出会った、『ウルトラマンコスモス』と呼ばれていた巨人です!」

「ウルトラマン、コスモス………!」

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

『馬鹿な!ウルトラマンがもう1人だと!?』

『あいててて…い、イカんぞこれは………』

 

青いウルトラマン―――ウルトラマンコスモスの出現に、ヴァルドスキーとメビウスの拘束から逃れたジュリコは焦っていた。メビウスはコスモスの側まで行くと、コスモスは彼に顔を向けた。

 

『コスモス………!』

『メビウス、ベムスターは私に任せてくれないか?』

『え?』

「ピヤアアーーー!!」

 

コスモスの進言にメビウスが聞き返した時、ベムスターが一鳴きして腕を振るう。コスモスは暴れる宇宙大怪獣に向き直ると、両腕を、まるで鳥の翼を思わせる形で大きく広げ片足を上げるポーズを取り、開いた手を相手に向けた、太極拳を思わせる構えを取った。同時にベムスターがコスモスに向けて突進を仕掛けるが、それをコスモスは軽く受け流すとベムスターの背後に回る。

 

「ピヤアアーーー!!」

『フゥッ、ハァアッ!』

 

ベムスターが振り返ると、コスモスは先ほどの鳥のような構えを取り、ベムスターの振り回す腕を次々と払いのける。

 

「あれは………」

「戦いを、避けているのか?」

 

コスモスの動きに疑問を持った美緒とリュウが、思わず声に出す。

 

『コイツ、調子に乗るんじゃねえぞ!!』

『お、おいヴァルドスキー!?』

 

その時、しびれを切らしたらしいヴァルドスキーが右腕のサーベルを掲げてコスモスに襲い掛かる!

 

『セヤアア!!』

ガギイインッ

『何!?メビウス……!』

 

しかし、左手にメビュームブレードを伸ばしたメビウスがそれを受け止め、鍔迫り合いとなった!

 

『こっちは任せてくれ!』

『すまない、メビウス…』

 

コスモスが頷くと、ベムスターはレイホーンから光線を発射、コスモスはバリアでそれを弾くと両手を大きく広げた。

 

『ハァアー………!』

 

すると、腕と腕の間に虹色のオーラが発生、コスモスが右掌を突き出すと、オーラはベムスターを優しく包み込んだ。

 

「キュ~………」

 

するとどうだろう、あれだけ暴れていたベムスターが動きを止めて、大人しくなったではないか。

 

「大人しくなった………?」

「あの光線には、怪獣を抑制する効果があるのか………」

『あ、あいつよけイカ、いや余計な事を!』

 

大人しくなったベムスターに一同が驚く中、コスモスはベムスターにゆっくりと歩み寄る。

 

 

 

 

 

「ッッッ!!!?ピヤアアアアアアアアアーーーーーーーーッ!!」

『!?』

 

だがその時、大人しかったベムスターが急に大声で鳴くと、再び暴れだしてしまった!

 

「何だ!?何が起こったのだ!?」

「ピヤアアアアーーー!ピヤアアアーーー!!」

『お、オイお前―――ぎゃああ!?』

『ウワア!?』

 

コスモスも困惑していると、レイホーンからメチャクチャに放たれた光線がメビウスとヴァルドスキー、更にコスモスにまで直撃してしまった!

 

「メビウ―――」

「ヒビノ隊員!!」

「!?」

「え………?」

 

芳佳が悲痛の声を上げたその時、美緒の叫びにウィッチ達は耳を疑った。言ってしまった美緒も無意識であったのか、口に手を当ててしまった、という顔をしていた。

 

「坂本、少佐………?」

「いま、何て………」

「ベムスターが!?」

 

ウィッチ達が困惑する中、ベムスターは空に向けて飛び立とうとしていた。

 

「逃がすか!」

『させるか!』

 

追おうとするガンウィンガーをジュリコがアロー光線で狙い撃つ!

 

「アイハラ隊長!」

「しまった………!」

 

気付いた芳佳が急行するが、光線は真っ直ぐにガンウィンガーに迫る!

間に合わない、皆がそう思ったその時―――

 

 

 

 

 

ドォオオンッ

『グァアアアアアア………!!』

『ッ!?』

『コスモス……!!』

 

ガンウィンガーを庇い、コスモスがその身にアロー光線を受け止めたのだ!コスモスはその身を燃やしながら、重力に従い地面に激突、その間にベムスターは再び発生した次元の門を通って消えてしまった。

 

『グァア………』

『くっそお………』

『ここは引くぞ、ヴァルドスキー!』

 

2人のウルトラマンが倒れるのを見て、ジュリコはヴァルドスキーの肩を抱えて姿を消した。残ったウルトラマンも苦しんだ声を上げながら光と共に消え、その場にはウィッチ達と3機のガンマシンが残った。

 

「消えた………」

「!あれは…!!」

 

リーネが指を指した先には、コスモスの消えた後に倒れるムサシに、ミライが駆け寄っている所であった。

 

「ムサシ、さん………!?」

「じゃあ、コスモスはまさか………!?」

 

2つのショックが3人のウィッチを襲い、その元凶の一端たる彼女らの副隊長も困惑をしていた。

 

[………基地に帰還する。医療班をこっちに回してくれ。][G.I.G。]

「アイハラ隊長!!」

 

一拍おいて、リュウが指示を出す。冷静なその様子にペリーヌが声を上げるが、

 

[話はあとだ。今は被害状況と、けが人の救護が先だ。]

「………了解。」

 

リュウにそう言われ、渋々引き下がった。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「ムサシさん………!」

 

瓦礫の中、倒れるムサシに駆け寄るミライ。ムサシは腕や足を赤く滲ませ、頭からも血を流していた。明らかに先ほどよりも重症だ。

 

「僕が着いていながら………」

「ミライ君、君のせいでは………アグッ!」

「ムサシさん!」

 

苦しむムサシに駆け寄るミライ。その時、近くのビルの外壁が崩れ、瓦礫がムサシに向けて落ちてくる!

 

「くっ………ハアッ!!」

グンッ

「!?ミライ君……!」

 

瞬間、ミライが手をかざして力を込めると瓦礫は空中で静止、そのまま移動をすると、ムサシからかなり離れた地点で落下した。

 

ウルトラマンの持つ超能力『ウルトラ念力』の一つ、「ウルトラサイコキネシス」だ。

 

「はあ、はあ、………あぐッ!」

「ミライ君……!うう………」

 

だが、生身で使うと体力を大きく消耗する念力を戦いの後で使ったせいか、倒れこんでしまうミライ。ムサシも限界が来たのか、気を失い倒れこんでしまった。

 

「!ミライさん!ムサシさん!」

「2人とも!」

 

少しして、芳佳とリーネが血を流す2人を発見して駆け寄った。

 

 

 

 

 

つづく




第七話、『コスモス篇』前編です。サブタイトルがギンガのあれっぽいのは偶然です、念のため。

エリーによるメテオール講座。ウォーロックって「スト魔」世界におけるメテオールと言えると思うんですよ、ある意味。メテオールの例は、グロテス星人は言わずもがなエベッ様のアレですが、ゴドラ星人が重力偏向板の元のイメージです。

ムサシ、エイラ、サーニャ登場。ちなみに、以前長野山中に出現したマグラーは小説版が元ネタ。

以前登場したマグマ星人とイカルス星人の本名はヴァルドスキーとジュリコ。元ネタがあるのですが、それはいずれ。なお、ヴァルドスキーの異名等は中の人ネタw(メビウスに登場したマグマ星人は、稲田徹さんが声を当てられています)カウントは「伯爵」という意味の英単語から。

ガスタンクに降りないベムスター。調べたら新宿にも昔はガスタンクがあったけど、今は跡地が新宿パークタワーになっているそうです。ガスタンクがない場所に出現したのは公式では「ギンガS」に出たのが初?

では、また次回。


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第八話 慈愛の蒼い月

 

メビウス達ウルトラ兄弟のいる世界『M78ワールド』に来訪した春野ムサシと、彼に助けられたサーニャとエイラが、GUYSと合流した。

 

だが、それと同時に宇宙から宇宙大怪獣 ベムスターが襲来。さらに、それを守るようにマグマ星人ヴァルドスキーとイカルス星人ジュリコも巨大化して現れた!

 

苦戦するメビウスに異世界の青い巨人『ウルトラマンコスモス』も加勢しベムスターを鎮静化させたのだが、ベムスターは再び狂暴化して逃亡してしまった。

 

さらに、

 

「メビウ―――」

「ヒビノ隊員!!」

「!?」

「え………?」

 

倒れる2大ウルトラマンを前に坂本美緒が言ってしまった言葉が、ウィッチたちに波紋を呼ぶ………

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「どういう事だ、カウント!」

 

その日の夜、アジトに使っている廃工場についたヴァルドスキーは、早々に怒鳴り込んだ。カウントは澄ました顔で紅茶を飲んでいたが、ヴァルドスキーは構わずに続けた。

 

「ウルトラマンがもう1人いるなんて聞いてないぞ!何者だアイツは!?」

「君の怒りはごもっともだ、ヴァルドスキーくん。私も知らなかったのだよ、どうやら、君たちの言う『アネゴ』とやらを追ってきたようですね。」

「え、姐さんを?」

 

カウントの言葉に、ジュリコが聞き返す。カウントはやれやれと頭を振ると、

 

「兎に角、今回あの青いウルトラマンに受けた光線のせいで、ベムスターには調整が必要です。最低でも3日はかかるかと―――」

「残念だが、そう悠長な事は言っていられない。」

 

カウントがそう言いかけた時、廃工場の入り口から声がした。振り向けばそこには、黒いテンガロンハットに薄茶色のポンチョを着込んだ男と、その背後には異形の宇宙人が立っていた。

 

「お前、ボルター!」

「ボルターさん、何の用です?」

 

ボルターと呼ばれたその男は、帽子の縁を指で押し上げる。鋭い目つきと左頬に傷を持った若い顔つきの男は、4人を見据えた。

 

「状況が変わった。明日、再びベムスターを出すぞ。」

「無茶を言わないでほしいですな。ベムスターに仕込んだ“アレ”の調整はかなり困難で……」

「ナックルと、リフレクトがやられた。」

 

カウントの進言を遮るようにボルターがそういうと、4人は息をのんだ。

 

「今日の午後の事だ。貴様らがあの時、ヴェネツィアで巻き込んだ『ウィッチ』とか言う小娘共や地球人に邪魔された様だ。」

「まさか、あの2人が………!」

「悪いニュースがもう1つ、「惑星グルータス」にいるカタン星人達との通信が途絶えた。こちらも地球人や別次元のウルトラマンの姿が確認されている。状況は、はっきり言って最悪と言っていいだろう。」

 

吐き捨てるボルターに対し、信じられない表情のカウントたち。静まり返った廃工場で、再度口を開いたのはヴァルドスキーであった。

 

「じょ、冗談じゃねえ!宇宙警備隊だけでも厄介だってのに、これ以上ウルトラマンが増えられちゃあ命がいくつあっても足りやしねえ!オレ様は降りるぞ!」

「俺もだ。あんなハシタ金で、これ以上命ははれなイカらな!!」

 

ヴァルドスキーとジュリコはそう言って廃工場を後にする。ボルターは帽子をかぶり直してやれやれとため息を吐くと、カウントが声をかける。

 

「追わなくて、いいのですか?」

「構わん。所詮は金で雇ったアウトローどもだ。無理やりや従わせては、作戦に支障が出る。」

「確かに。では、明日の出撃には「バトラー」を向かわせましょう。手負いのウルトラマン達には、十分すぎるくらいです。」

 

カウントがそう言うと、控えていた執事・バトラーが会釈をした。

 

 

 

「キュ~~~………」

 

 

 

異次元の狭間に、ベムスターの苦しげな声が響いていた………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第八話 慈愛の蒼い月

 

宇宙大怪獣 ベムスター

異次元怪異 ネウロイ(GX‐04)

怪異変形獣 ネウロイ(GX‐04β)

宇宙超人 スチール星人バトラー

マケット怪獣 アギラ

登場

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時間は多少前後して、CREW GUYSジャパン基地フェニックス・ネスト

 

「ベムスターと2大宇宙人の行方は、依然不明。現在、急ごしらえではありますが、次元観測装置による調査が進んでいます。」

 

ディレクション・ルームでは、ミサキ代行がベムスターたちの捜索状況を報告する。次いで、カナタが報告をする。

 

「春野さんは肋骨2本にひびが入っているのと全身に打撲と擦り傷で、少なくとも3日間は安静、ミライさんは疲労で寝込んでいますが、芳佳ちゃんの治療があったおかげか、2人とも命に別状はないそうです。」

「そうか………」

 

カナタから2人の容体を聞いて、リュウは腕を組んで深刻そうな顔になる。

 

医療室の集中治療室のガラスの向こうにあるベッドには、それぞれ包帯だらけのムサシと、点滴を打つミライが眠っている。芳佳とサーニャはガラスに張り付いて、ソファーに座るエイラが心配そうにそれを見つめていた。

 

皆が押し黙る中、戸惑いながらもペリーヌが美緒に問う。

 

「あの、………少佐はいつから気付いていたのですか?ヒビノさんがその、ウルトラマンであると………?」

 

ペリーヌの問いに、一同の目が美緒に集中する。美緒は少し迷うもそれに答えた。

 

「………1週間前、陸戦型ネウロイのコアを探っている際に、偶然、ヒビノ隊員がメビウスに変わる瞬間を見てしまったのだ………」

「あの時、か……」

「少々うかつでしたね。まあ、ウィッチの能力をちゃんと認識していなかった我々にも非はありますが………」

 

美緒の言葉にリュウは額に手をやり、トリヤマも自分たちの認識の甘さを反省する。その様子を見たリーネが、ある事に気づいた。

 

「え?………あの、アイハラさんたちは、ミライさんがメビウスって知っていたんですか?」

「「………あ。」」

 

一拍おいて、自分のミスに気づきしまったと口を押えるリュウとトリヤマ。あっけに取られるウィッチ一同と、何やっているんですかとトリヤマに突っ込みを入れるマル。少し間を置いて、ペリーヌがため息をついた。

 

「………その様子ですと、何やら事情がおありのようで……」

「あ、えっとその………スマン。」

「いや、私たちも責めている訳では………」

(もしかして、最近少佐が何か悩んでいたのって………)

 

美緒の悩んでいた事に気づいたリーネであった。すると、治療室から通信回線が開き、エイラの顔が映った。

 

[エート、………これでいいのか?ちゃんと繋がってる?]

「………あー、エイラっつったか?ちゃんと繋がっているぞー?」

[ああ、良かった、初めてで分からなかったから……こちら医務室。2人が目覚めたゾ!]

「本当か!」

 

初めての通信機を使った為か、若干不安そうであったもののエイラの報告を聞いてディレクション・ルーム内に喜びの表情が浮かんだ。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

ムサシが目を覚まし、痛む体を起こすと、そこは集中治療室のようであった。自分の隣のベッドにはミライが寝ており、廊下側の窓を見ると、芳佳とサーニャが安心した顔を見て、自分に起こった事を思い出した。

 

「………そうか、僕はあの時………」

「ムサシさん………!」

 

ムサシが思い出していると、治療室のドアが開いてサーニャが入ってくる。

 

「サーニャちゃん……うぅっ!」

「まだ無理しないでください。」

 

胸が痛んだのか、苦痛の表情になるムサシ。サーニャと芳佳がベッドに寄るとムサシは再び横になり、2には心配そうに見る。ムサシは笑って大丈夫と返すが、無理をしている事は明らかであった。その時、隣のミライも意識を取り戻したのか、軽く声を出してゆっくり起き上がった。

 

「ううん、………」

「!?ミライさん!」

 

それに気付いた芳佳がミライの傍へ寄る。エイラがディレクション・ルームと通信する中、ミライは芳加とサーニャの気まずそうな様子に、何か気づいたようだ。

 

「………そうか、知っちゃったんだね。」

「ミライ、さん、……その………」

「いいんだよ、芳佳ちゃん、言わなかった僕も悪いんだから。」

「いえ、あの、少しショックでしたけど、メビウスの正体がミライさんだって知って、ちょっと、ほっとしたと言うか、何と言うか………」

 

しどろもどろながらも芳佳は自分の気持ちを述べた。ミライはそんな芳佳に微笑みかけ、

 

「大丈夫だよ。」

「え?」

「僕は、僕だから。」

「ミライ、さん………」

 

優しくそう話すミライに、芳佳は涙腺が少し緩んだ………

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「―――では、お二人は春野さんがウルトラマンであると、知っていたのですわね?」

 

翌朝、朝食の席でペリーヌらウィッチたちはサーニャたちとムサシの事で話をしていた。

 

「うん、ムサシさんとウルトラマンコスモスが一体化して、変身したのを見たの。」

「それで……」

 

食パンにジャムを塗りながら、サーニャの説明に頷く芳佳。そこに、エイラが続けた。

 

「コスモスの話では、ムサシさんたちのいた宇宙中で奇怪な事件が起きていて、仲間の「ジャスティス」っていうウルトラマンと一緒に調べていたそうだ。そんな時に、遊星ジュランで、ムサシさんの友人が攫われたンダ。」

「コスモスは、その攫ったロボットの裏にこの異変の元凶があるとにらんで、元の世界をジャスティスと、『もう一人の友人』に任せて、私たちと共にこちら側の世界に来たの。」

「そうだったんだ………」

 

サラダを刺したフォークを口に運びながら頷くリーネ。それはそうと、とペリーヌが席を見渡して、

 

「坂本少佐は、まだ来ないのですか?」

「あ、はい……何か、考え事していたみたいですけど………」

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

「フッ………!ハッ………!」

 

その頃、美緒はGUYS基地の敷地内で素振りをしていた。何かに憑かれたかのように一心不乱で木刀を振り続けており、体中汗まみれであった。

それからしばらく素振りをしていた美緒だったが、しばらくすると木刀をおろし、息を整え始めた。

 

「はぁ………、はぁ………、………」

「いやあ、朝から感心ですな、少佐殿!」

「………トリヤマ補佐官………」

 

声を掛けられて振り返ると、今来たと思われるトリヤマ補佐官が、笑顔で歩み寄って来ていた。木刀を下げて礼をする美緒にトリヤマは大丈夫だというと、美緒の隣に立った。

 

「ですが、妙に力が入りすぎているようでしたな。」

「何……?」

「こう見えても私、剣道の段を持っていりましてな。何か、お悩みの様子で。」

 

やわらかい物腰でそう聞く補佐官。この男、一見軽そうに見えてなかなか鋭い。

 

「………ヒビノ隊員の正体を最初に知り、戸惑っていました。」

「ふむ?」

 

少し間をおいて、美緒は話し出した。

 

「出会って少ししかたっていませんでしたし、宮藤たちは既にあっていたようですが、そんな人物を、直ぐには信用できないという事もあったのでしょうが、どう接していいか、悩んでいて………ただ、その本人に悩みがあるなら聞くといわれた時には、非常に困ったのですが………」

「………」

 

苦笑する美緒。トリヤマには、その時の情景が安易に想像できた。確かに、彼ならば言いそうである。

 

「数日の間は、少し距離を置いていたのですが………来たばかりのペリーヌを、彼なりに気遣っている事や、我々を帰還させる事を心配している事を知ったりして、なんとなくですが、彼の性格を知って………それで、余計にどう接していいのか分からなくて………」

「………なるほど。」

 

トリヤマは、美緒の悩みを聞いて頷いた。

 

「少佐殿の見た彼が、どの様に映っているか、ワシには分かりかねますが、」

 

ふと、トリヤマは話し始めた。

 

「私の知っているヒビノ・ミライという青年は、誰より一生懸命で、誠実で優しい男であり、ウルトラマンである以前に、私の部下でもあります。」

「………」

 

そうだ、と美緒は思った。自分は、メビウスであると知る前のミライの事を思い出す。自分に優しく、真面目に接してきた彼のあの姿は、ウルトラマンであっても変わらないのだと思った。

少しすると、美緒は笑顔でトリヤマに向き直った。

 

「………ありがとうございます、補佐官。」

「いや、私は何も。」

「いえ、私はもしかしたら、誰かに聞いてもらいたかったのかもしれません。それでは。」

 

そう言って美緒は頭を下げると、その場を立ち去った。

 

「やれやれ、副隊長といっても、まだ若い。若い者は、悩みが尽きないからな。」

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「しかし、しばらくは安静って言われていたのに、もう動いて大丈夫とは………」

「芳佳ちゃんの治癒魔法があったとはいえ、すごい生命力ですね。」

「うん………僕がいた「EYES」のカワヤっていうお医者さんにも、「ウルトラマンモス健康体」って言われた位だからね。」

「何と言うか、割と笑えない冗談だな、ソレ………」

「あはは………」

 

少しあきれ気味に言うリュウと、苦笑するムサシとミライ。

コスモスと一体化している影響なのか、ムサシは予定より遥かに早く回復し、芳佳たちと共にディレクション・ルームへと入った。

 

「こんな怪獣たちと、戦っていたんだ。」

「見ろよサーニャ、変な鼻ダナーコイツ!」

「こらこら、遊ぶんじゃないぞー?」

 

司令室に入ると、席に備え付けられたPCの画面を食い入るように見るサーニャとエイラの姿があり、モニターにはラッパのような鼻とランプの様な赤い眼が特徴的な怪獣が映っていた。ふと、リュウは疑問に思った。

 

「えーと、一つ聞いていいか?」

「あ、隊長。今、2人に、アーカイブの閲覧方法のレクチャーを…」

「いや、それは良いんだけど………」

 

その姿を見たリュウが、不思議そうにしていると、エリーたちは首をかしげる。

 

「何で、ZATとMACのユニフォーム着てるんだ?」

 

リュウの言う通り、サーニャは青を基調としたZATの、エイラはシルバーとオレンジのMACのユニフォームをそれぞれ着ていた。

 

「ええと、実はこれ、マリさんが着てくれって。」

「ほら、サーニャちゃんたち、着の身着のままでこっちに来ちゃったじゃないですか。だから、私が持っていたのを少し改修して着せてみたんです。」

「だからって、何で歴代の防衛チームの制服を………」

「似合うと思ったからです!」

 

リュウの疑問にキリッとドヤ顔で答えるマリ。どうやら、彼女の趣味でチョイスしたらしい。

リュウが顔を引きつらせていると、オレンジ色が目を引く科学特捜隊のユニフォームに身を包んだ美緒が入ってきた。

 

「遅れてすまない。」

「少佐まで………」

「割と似合っているのが、何とも………」

 

ナチュラルに科特隊のユニフォームを着こなす美緒に少し呆れるペリーヌと芳佳。美緒が首を傾げていると、リュウが咳払いをして全員が向き直った。

 

「それで、ベムスターの行方はつかめたか?」

「いえ。次元観測装置にも反応は無く、GUYSスペーシーの観測衛星にも引っかかっていません。」

「一旦別次元に逃げ込まれると、厄介だな………」

 

エリーの報告に顎に手をやりながら悩むリュウ。それと、とエリーがキーボードを操作しながら報告する。

メインモニターにベムスターの画像が表示されると、体内をスキャンした画像に移り変わり、腹部に何やら金属のようなものがある事が表示された。

 

「昨日のベムスターを解析してみたのですが、どうやら体内に『異物』が混入しているようなんです。」

「異物?」

「もしかして、昨日コスモスの技が通じなかったのは………?」

「それが原因って事ですね!」

 

エリーの報告にリーネが声を上げる。その「異物」を取り除く事が出来れば、ベムスターを無力化出来るやもしれない。ただ、

 

「問題は、当の大怪獣さんが出てこない事だな………」

「今は、向こうの出方を待つしかないか………今のうちに、除去の方法を―――」

 

リュウがそう言いかけた時、ディレクション・ルーム内に警報が鳴り響いた。

 

「次元観測装置に反応あり!」

「おいでなすったか!?」

 

全員が慌ただしく配置に就く中、エリーが報告をする。観測された地点は都市のど真ん中、しかも、昨日よりも低空であった。

 

[ピヤアアーーーーー!ピヤアアーーーーー!]

 

出現したベムスターは甲高い声で叫びながら、まだ避難警報の準備すらできていない都市部をレイホーンからの光線で破壊し始めた!

 

「倒すしかないのか………!?」

「出撃する。芳佳、お前にこれを預ける。」

「え?」

 

そう言ってリュウは、芳佳に緑色のカプセルを手渡した。すると、ムサシがリュウに抗議をする。

 

「待ってくれ!」

「ムサシさん?」

「コスモスなら、ベムスターの体内から操っているモノを取り除ける!だから………」

「街が大変な事になってんだ!そんな事言ってる場合じゃねえだろ!!」

 

ムサシの言葉を遮りるようにリュウが叫ぶ。ムサシが押し黙ると、リュウはムサシに向き直った。

 

「これ以上、被害を出さないためにも、俺たちはベムスターを倒さなきゃならないんだ!」

「リュウさん………」「アイハラ隊長………」

 

リュウはそういうと、ヘルメットを手に取って隊員たちを見渡した。

 

「現場に到着するまで、『3分』はかかる。芳佳は、ミライたちの体調がまだ万全じゃないだろうからこっちに残ってくれ。GUYS,SARRY GO!!」

「「「G.I.G.!!」」」

 

一同が号令し、出動をした。残された芳佳はムサシを心配そうに見るが、ミライがムサシの肩をたたいた。

 

「行きましょう、ムサシさん。」

「ミライさん?」

 

芳佳が不思議そうにしていると、ミライは笑いかけて

 

「折角リュウさんが、『3分かかるから、何とか出来るならその内にやれ』って言ってくれたんです。それを無駄には出来ませんよ。」

 

芳佳がはっとする。ムサシはミライに頷くと、ディレクション・ルームを飛び出した。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「ピヤアアーー!ピヤアアーー!」

 

ベムスターの攻撃により、都市部のあちこちから火の手が上がる。その中のあるビルの上で、カウントとバトラーは宇宙大怪獣の暴れる様を見ていた。

 

「ふーむ………ボルターさんに急かされて無理やり出撃させましたが、やはり制御がききませんな………」

「………」

 

カウントがやれやれと溜息をつくが、バトラーは興味なさそうに無表情である。そんな中、カウントは空から青い光が飛来してくるのに気が付いた。

 

「ピユウ!?」

『フウッ、ハァアッ!!』

「現れましたね、ウルトラマンコスモス。」

 

青い巨人、ウルトラマンコスモスの出現に驚くことなく、カウントはバトラーに目をやった。バトラーは小さく頷くと、その姿を異形に変えて巨大化した!

 

「え!?」

「あれは………!?」

 

一方、戦闘区域まで来た芳佳とミライは、ベムスターとコスモスの間に現れた宇宙人に驚く。

「凸」の形をしたロボットのような頭部の3方向には赤い丸鋸のような部位が付き、黄色い体にも銀色のトゲがいくつか生えていて、異様に長い両の人差し指が特徴の宇宙人だ。

 

『わが名は、スチール星人バトラー。』

『スチール星人だと………!?』

 

芳佳も、メモリーディスプレイで確認した。『宇宙超人 スチール星人』、ドキュメントTACによれば、当時ブームになっていたパンダのグッズを片っ端から盗み、挙句中国から本物のパンダまで盗んでしまったという宇宙人だが、その戦闘力は侮れない。

バトラーはベムスターに並び立つと、額から炎を出して攻撃をする!

 

『グゥウ………ハァアッ!』

『おっと。』

 

コスモスは炎を避けるとバトラーに接近しようとするが、バトラーはベムスターの背後に回ってしまう。コスモスがそれにより攻撃を止めた隙に、ベムスターのレイホーンの光線が放たれ、コスモスに直撃してしまう!

 

『グァア………!』

「ムサシさん!」

 

倒れるコスモスを見て、芳佳が悲痛な叫びをあげる。2対1、しかもコスモスは昨日の戦いのダメージがまだ回復しきっていない不利な状況だ。何かできる事はないか、芳佳が考えていた時、ミライが声を上げた。

 

「芳佳ちゃん、さっきリュウさんに渡されたマケット怪獣!」

「え?ああ、そうか!」

 

ミライにそう言われて、芳佳は先程リュウに渡された緑色のカプセルを取り出した。恐らくリュウは、この為に渡したに違いない。

 

「リュウさん!」

[もうそっちに着いてんだな。メテオール、解禁!]

「G.I.G.!」

 

解禁の許可を得ると、芳佳はカプセルをメモリーディスプレイにセット、コスモスに迫るバトラーに向けてトリガーを引いた。

 

《REALISE.》

『む?』

 

現れたのは、恐竜のプロトケラトプスに近い外見の2足歩行型怪獣で、額の一本角と半開きの眼を持った、グレー色の怪獣だ。

 

「ギョオギャアアアーーー!ギョオギャアアアーーー!」

「アギラ、スチール星人を止めてくれ!」

 

ミライの指示を聞いたマケット怪獣、レジストコード『アギラ』は、襟巻をピクピクと動かして気合を入れると、バトラーに突っ込んだ!

 

『ぐお!?こ、コイツ………!』

「ギョオギャアアアーーー!」

「今だコスモス!」

『………すまない!』

 

アギラによってバトラーが遠ざけられた隙にコスモスは起き上がると、ベムスターに向き直る。

 

「ピヤアアーーー!ピヤアアーーー!」

『フゥッ、フッ!』

 

コスモスは暴れるベムスターの放つ光線をバリアで弾くと、目から透視光線『ルナスルーアイ』を放つ。すると、腹部に「黒い金属の塊」のような物を発見した。

 

『フゥウッ、ハァアアアアア………』

パァアアアアアアアアア

「ピヤア………」

『何!?』

 

コスモスは胸の前に手をやって優しい虹色の光を放つエネルギーをためると、右手を突き出してベムスターに照射した。すると、腹部の「吸収アトラクタースパウト」が大きく開き、体内から金属の塊を吐き出した!

 

「あれは!?」

 

吐き出された塊は、中央に2つの球体が刺さった棒状の胴体を持ち、4方向に伸びたパイプ状のパーツでリングを繋いだボディをベムスターの体液で濡らしたネウロイであった。

 

「キイイイーーーーーー!!」

「ネウロイをベムスターに飲み込ませて、無理やり従わせていたのか!」

『おのれえ!!』

「ギョオギャアアアーーー!」

 

バトラーはアギラを突き飛ばし、消耗して倒れたベムスターを気遣うコスモスを襲おうと向かっていく。だがその時、突如としてバトラーの背が火花を散らした!

 

『グゥウ!?』

「スチール星人とベムスター、それにネウロイを確認!」

「ベムスターの方は沈静化されているな………ウィッチたちはネウロイを撃て!」

『了解!!』

「キイイイーーー!」

 

振り返ったバトラーが見たのは、集結したガンマシンとウィッチたちの姿であった。5人のウィッチはネウロイの方へと攻撃を開始し、ネウロイは独楽のように回転しながら赤いビームを放つ。

 

「ギョオギャアアアーーー………」

《BANISH.》

 

制限時間となりアギラが霧散すると、バトラーはガンマシンの集中攻撃に対して3つの円盤パーツから光線を発射、3機のマシンが散開して回避をすると、バトラーはベムスターを庇うコスモスへと向かう。

 

「待ちなさい、バトラー。」

『!?』

 

だが、その進行をひと声で妨げる者がいた。彼の主人、カウントその人だ。

 

「ベムスターは、捨て置けばよいです。あなたは邪魔な地球人を打ち落としなさい。」

『し、しかし、カウント様………』

「ご安心を。コスモスの相手は、もう決まっています。」

 

バトラーが首をかしげる中、ガンウィンガーを駆るリュウは、動きの止まったバトラーに迫る。

 

「スチール星人の動きが止まった!今だ!」

「G.I.………!?待ってください、あれは!?」

「何!?」

 

カナタが見上げた先には、ウィッチ達に追われるネウロイの目の前に、大型の円盤が横から飛んできた所であった。

慌ててアーカイブから、同型の円盤が無いか検索するカナタ。すると、『ドキュメントUG』に、同型機の記録があった。

 

「あれは、イカルス星人の円盤です!」

「何!?」

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

一方その頃、ヴァルドスキーとジュリコのコンビは、円盤に乗って地球脱出を試みていた。

 

「あーあ、ワザワザ地球まで来たってのに、こんだけぽっちの稼ぎかよ………」

「でも、前金だけでもこれだけあるなら、半年は遊んで暮らせるんじゃなイカ?」

「だがよお、これだけ持って帰っても、アネゴに何言われるか分からないぜ?」

 

公用宇宙語で書かれた小切手をヒラヒラと振りながらふて腐れるヴァルドスキーに対し、操縦桿を握るジュリコは左程気にしている様子はなかった。

 

「まあ、その辺は追々考えるとして、どうだ、帰りに土星でおでんでも食べてかなイカ?」

「お、いいな。奢ってくれんだろ?」

「いや、あのワリカンで………」

 

ジュリコが慌てて言い直そうとしたその時、機体に重い衝撃を受けて、2人は一瞬跳ね上がった。

 

「何事だ!?」

「き、機体に何かぶつかったみたイカ………!?」

 

ジュリコが期待のセンサー類を確認していると、コックピットの各所から黒い触手のような物が伸びてきた!

 

「おおおい!?どうすんだコレ!?」

「この円盤はもうイカん!脱出!!あ、ポチッとな。」

 

計器類を見て円盤が墜落すると察したジュリコがスイッチを押すと、転送装置が作動し、2人は円盤から脱出した。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「何だと!?」

「これは………!?」

 

ネウロイを追って飛んでいた美緒達ウィッチーズは、目の前に現れた円盤に取り付き、同化を始めたネウロイに驚きを隠せなかった。見る見るうちに円盤をその身に吸収していくネウロイを見て、かつての光景、暴走し、赤城と同化したウォーロックの姿が脳裏に蘇る。

 

「宇宙人の円盤に、同化していくだと………!?」

「…!待ってください!あれは!?」

 

だがその時、ペリーヌは円盤がグネグネと変化していることに気付く。

円盤から角が3本生え、胴体が5方向に伸びて星型になったかと思うと、うつろに光る眼と尖った嘴を持った大きな頭と鋭い爪を持った細長い腕、そして腹部に六角形の器官を持った姿へと変貌したではないか!

これはまるで………

 

「まるで、まるでベムスターではないかッ!?」

「クァアアアキイイイーーー!!」

 

ベムスターのような姿となったネウロイは高速でウィッチたちを掠めて降下をすると、ベムスターを庇うコスモスの元へと降り立った。

 

「クァアアアキイイイーーー!!」

「ピヤ!?」

『何………!?』

 

突然現れたもう一体のベムスターに驚く一同。間近にいたミライは、ひと目見て何故そのような姿になったのかを察し、リュウに通信を入れた。

 

「リュウさん、おそらく、宇宙人たちの狙いはこれだったのです!」

[どういう事だ?]

「ベムスターの体内にネウロイを潜ませて従わせていただけでなく、体内から細胞組織を解析させて、ベムスターの姿と能力を模したのです!」

「じゃあ、光線やミサイルの吸収も………!?」

 

隣で聞いていた芳佳が聞くと、ミライは頷く。ネウロイはバトラーと共にコスモスとベムスターに迫っていた。

 

「でしたら!」

 

コスモスの危機に、ペリーヌがネウロイに向けて降下する。狙うのは、その背中だ。

 

「ベムスターと同じ能力ならば、背後は無防備でしてよ!」

 

そう、昨日の戦闘時にベムスターの弱点は背後であると聞いていた。故に、同じ能力を持つネウロイも同様であると、ペリーヌは確信していた。

だがその時、エイラの持つ「未来予知」の魔法が、ペリーヌの危機を告げた。

 

「ペリーヌ、逃げロ!!」

「え!?」

「クァアアアキイイイーーー!!」

 

エイラの忠告が聞こえたのも束の間、何と、ネウロイの背中が赤く光り、無数のビームが背後に向けて放たれた!ペリーヌは慌ててシールドを展開しつつ後退、ネウロイから遠ざかる。

 

「背中からビームを………!?」

「ヤロー、本家と違って、背後の弱点を克服してやがる!!」

『形勢逆転、だな。』

 

ネウロイの思わぬ攻撃に驚いていると、バトラーが再度、コスモスに迫る。その時、ベムスターを庇うコスモスのカラータイマーが赤く点滅を始める。限界時間が迫っていた。

 

「………」

「行くんですね、ミライさん。」

 

決意を固めた目をするミライを見て、芳佳は聞く。ミライが小さく頷くと、芳佳は手を握り締めた。

 

「あの、私、何て言えばいいのか、分からないけれど………」

「芳佳ちゃん………」

「あの、………ムサシさんの、みんなの事を、お願いします………!」

「………ああ!」

 

ミライはそう返事をすると、左腕を構えた。そして左腕に光が集まり、赤に金色のラインが光る『メビウスブレス』が出現する。ミライはブレスの中央にはめ込まれた球状のクリスタルに右手を当てると一気に振りおろして回転させ、左腕を突き上げ、叫んだ。

「メビウゥゥウウウウウウウス!!!」

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

『む?』

「キィイー……」

「あれは………!」

 

コスモスの目の前に、メビウスの環の軌跡を残しながら金色の光が舞い降りる。赤いラインを走らせた銀色の身体、頭頂部とこめかみには後方に伸びるヒレ状の突起を持ち、胸にはひし形の『カラータイマー』を青く光らせ、左腕に『メビウスブレス』がきらりと輝く。

 

『現れたな、ウルトラマンメビウス!』

「クァアアアキイイイーーー!!」

「ヒビノ隊員………!」

「ミライさん………!」

 

バトラーが意気揚々と叫び、ネウロイが雄叫びを上げ、5人のウィッチがその姿を見つめる中、ウルトラマンメビウスは、拳を作った左手を上に、開いた右手の指先をバトラーに向けた構えを作り、叫んだ。

 

『セヤァッ!!』

 

 

 

 

 

つづく




第八話、『コスモス篇』の中篇です。

ボルター登場。活躍はもう少し後になるかと思います。惑星グルータスはアンドロメロスに登場したグルータス星に由来。

スチール星人バトラー登場。名前は執事の英語から。スチール星人って、ヤプールと無関係という、「A」では珍しい宇宙人なんですよね。

アンデレスホリゾントで未遂に終わってしまったマケットアギラ登場。鳴き声はにせセブン時に再登場したものを意識しています。

ベムスターの体内に潜んでいたネウロイは、「帰マン」でベムスターが飲み込んだMAT宇宙ステーション、変形態および鳴き声は「タロウ」の改造ベムスターがモデル。最初はベムスターから出てすぐに変形する予定でしたが、怪獣の体内に入るサイズだと大きさが合わないのでジュリコの円盤と融合させました。

次回はコスモス篇後編になります。

では。


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第九話 強き太陽の勇者

 

コスモスの放った「ルナエキストラクト」により、ベムスターを従わせていたネウロイを吐き出す事に成功した。しかし、ネウロイはイカルス星人ジュリコの円盤と融合して、ベムスターの姿を模した形態へと変貌してしまった。

 

ベムスターを庇うコスモスに、スチール星人バトラーとネウロイが迫る。その時、金色の光と共に、ウルトラマンメビウスが舞い降りた!

 

ベムスターを巡る戦いは今、最後の局面を迎えようとしていた………

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「ミライさん………」

 

金色の光と化して戦場へと赴いたとミライを送り届け、メビウスを見上げる芳佳。その時、芳佳の背後の方でエンジン音が聞こえた。振り返った芳佳の目の前で、アンテナや銃器がゴテゴテと装備された独特なシルエットの赤いジープが、ドリフト気味に急停止した。

 

「おお、ここにいたか、嬢ちゃん!」

「あ、アライソさん!?」

 

車から降りてきたのは、アライソ整備班長だった。ストライカーユニットの整備の為、芳佳は美緒と共に何度か会っていた。リュウによると、世界で最初に設立した防衛チーム『科学特捜隊』からメカニックに携わり、『ジェットビートル』を始め『ウルトラホーク1号』、『マットアロー』などの歴代防衛チームの航空メカを整備してきたのだという。

芳佳が驚いている間に、アライソはジープのハンドルに付いたスイッチを押しこむと、後部がスライドして開き、中から芳佳の「J7W1震電」が出てきた。

 

「あ、私のストライカー……!」

「こんな事もあろうかと、整備の合間にマックロディーのレストア車両を、ストライカーユニット搭載可能に改造しておいてよかったな。まあ、スペースの問題で1機しか載せられないが。」

 

飛び出した「震電」に驚く芳佳に、アライソは口角を上げて言う。

「こんな事もあろうかと」、メカニックなら一度は言ってみたいセリフである。

 

「最高の状態に整備しといてやったぞ。コイツでウルトラマン達を助けてきな!」

「え?………はい!」

 

突然現れたアライソと車から飛び出したストライカーに戸惑っていた芳佳であったが、アライソの言葉にはっとし、大声で返答をするとマックロディーの後部に手をかけるとひらりと飛び越えて、ストライカーに乗り込む。

瞬間、芳佳の使い魔である豆柴の耳と尻尾が出現し、足元に眩い光を放つ魔法陣が展開された。そして、車両後部横の銃器収容スペースに納められていた自身の機関銃を手に持った。

 

「行きますッ!!」

 

芳佳はコスモスに迫るベムスター型ネウロイを睨むと、宣言と共に飛び立った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――「その力を 多くの人を守るために」、か………一郎よぉ、お前さんの娘は、立派に育ってるぜ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第九話 強き太陽の勇者

 

変形怪異獣 ネウロイ(GX‐04β)

宇宙超人 スチール星人バトラー

宇宙大怪獣 ベムスター

要塞ロボット ビームミサイルキング

登場

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『メビウス………』

『現れたな、ウルトラマンメビウス!』

「クァアアアキイイイーーー!!」

 

金色の光と共に現れたメビウスを見て、バトラーとネウロイは敵意を向ける。メビウスはベムスターを庇うコスモスの傍に立膝を付いた。

 

『コスモス、今、エネルギーを分けるぞ。』

 

そう言ってメビウスブレスを構えると、ブレスから金色のエネルギーが放たれ、コスモスのカラータイマーへと吸い込まれた。しばらくエネルギーを補充していると、赤く点滅していたカラータイマーが青い輝きへと変わった。全開の状態ではないが、コスモスのエネルギーは回復された。

 

『すまない………』

『ありがとう、メビウス。』

『バカめ、隙だらけだ!!』

「クァアアアキイイイーーー!!」

 

コスモスとムサシがメビウスに礼を言ったその時、バトラーが頭部の円盤から、ネウロイが頭頂のレイホーンを思わせる角から光線を放つ!

 

「危ない!」

「ミライさん!!」

バシィイッ

『『!?』』

「キィイ!?」

『何!?』

 

だが、2体の攻撃は間に入ったウィッチたちの障壁によって阻まれた!

 

「宮藤!」

「ミライさん!ムサシさん!私も戦います!みんなを守りたいから!」

『………!』

 

メビウスは芳佳の言葉に頷き、コスモスと目を合わせ立ち上がった。

 

『ネウロイ!私は、お前を許さない!!』

 

コスモスはネウロイに向けて叫ぶと、右腕を高く掲げた。すると、コスモスの周囲に赤いエネルギーが集まり、コスモスは強く、赤く変わる!

 

「あれは………!?」

「コスモスが………変わる………!」

 

皆が驚く中、コスモスは燃え上がる陽炎のような左右非対称の赤い姿となり、額のクリスタルも縦長のオレンジ色のものに変わっていた。

 

ウルトラマンコスモス コロナモード

 

『慈愛』を体現する青い「ルナモード」とは対象に、『強さ』を体現した姿である。

 

「コスモスは、ヴェネツィアに現れたウルトラマンと同じで、姿と能力を変えることが出来るのか………!」

『フゥッ、ダァアッ!!』

 

美緒が驚く中、コスモスはネウロイに向けて拳を突き出すと、咆哮を上げるネウロイに向けて駆け出した。

 

「宮藤とペリーヌは私と共にネウロイを、サーニャたちはベムスターを頼む!」

『了解!!』

「俺たちはスチール星人を叩く!」

[G.I.G.!]

 

美緒とリュウの指示に各々が返答し、戦闘が再開された。

 

『お前は僕が相手だ!』

『望む所!!』

 

バトラーが突きを放つと、メビウスはパンチで軌道をずらして回避、お返しにローキックを喰らわせて怯んだ所で、3機のガンマシンが攻撃を行う!

 

「ウィングレッドブラスター!」

「バリアブルパルサー!」

「ガトリングデトネイター!」

ズガガガガガッ

『ぐあ!?オノレエ………!』

『セヤアッ!!』

 

ガンマシンの集中攻撃にバトラーが悪態をつく。メビウスは左腕のブレスにエネルギーをためると、左拳を突き出して金色のプラズマ光線「ライトニングカウンター」を放ち、バトラーを吹き飛ばした!

 

「クァアアアキイイイーーー!!」

『フゥッ!ハァアッ!!』

 

一方、ネウロイと対峙するコスモス。

攻撃を受け流していたルナモードの時とは打って変わり、握り締めた拳をネウロイに叩きつけ、回し蹴りで蹴り飛ばす。

 

「クァアアアキイイイーーー!!」

「何という激しい攻撃………!」

 

咆哮を上げるネウロイに対し、鷹を思わせるポーズから流れるような動きで拳を構えるコスモス。ネウロイは怒っているかのようにがむしゃらに突っ込んでくるが、コスモスは右手に気を集中させると、両の拳をネウロイに叩きつける!コスモスコロナモードの技の一つ、「サンメラリーパンチ」だ!

パンチの衝撃で後退したネウロイに、今度は正面から首筋を狙った手刀『ソーラーチョップ』をお見舞いし、装甲の一部を破壊した!

 

「クァアアアキイイイーーー!!」

 

だが、ネウロイは怒りの咆哮と共に装甲を再生させると、背中の赤い発光部分から光線のエネルギーを角に収束、巨大なエネルギーを溜めると一気に解き放ち、コスモスに血のように赤い「収束レイホーンバースト」を放つ!

 

「コスモス!」

『!!』

 

コスモスは背後の美緒たちに気付き、正面にバリアを張って防御する。光線の勢いで背後に押されてしまうが、踏ん張ってバリアを固定、飛び越えて飛び蹴りを喰らわせた!

 

「クァアアアキイイイーーー!!」

「今だ!奴に集中砲火だ!」

「「はい!」」

 

キックに怯んだネウロイを見て好機と見た美緒が叫び、芳佳とペリーヌが機銃を浴びせる。ネウロイの体表に命中して、火花と共に装甲をはぎ取るが、致命傷には至らない。

 

『どの攻撃も、決定打には至らないのか………!』

「あのネウロイのコアを探しているが………体内で高エネルギーが渦巻いていて、分かりづらいな………いくらベムスターの姿を模しているとは言え、ネウロイである以上はコアを破壊すれば一瞬で砕けるハズなのだが………」

 

コスモスと一体化したムサシの声が聞こえたのか、眼帯をずらして魔眼を発動させた美緒がつぶやく。恐らくはイカルス星の円盤と融合した影響なのだろう。惑星間を移動する程のエネルギーが、ネウロイの体内で渦巻いていた。

そんな時、ネウロイが爪を振るってペリーヌに攻撃を仕掛けようとする!咄嗟にコスモスは手先から『ハンドドラフト』を発射して爪を破壊するが、それにより黒き怪異はコスモスに標的を変えてしまう。

 

「少佐!?させませんわ!トネールッ!!」

バリバリバリッ

「クァアアーーー!」

 

その時、ペリーヌの体に雷光が光り、固有魔法の「電撃」をネウロイに浴びせる!ネウロイは一瞬驚いた素振りを見せたが、すぐに腹部の器官でベムスターと同様に吸収してしまった!

 

「ああ!」

「やはり、ベムスターの能力を………!」

 

電撃を吸収するネウロイに落胆する美緒と芳佳。このままではこのネウロイを倒せないと思ったその時―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バキィッ

 

 

 

 

 

 

「「「!?」」」『『!?』』

「キイイイーーー!?!?」

 

何と、ネウロイの脇腹や背中が裂けたかと思うと、内部から稲妻がスパークしたではないか!

 

「き、効いてる………!?」

 

自分でもまさか効果があるとは思わなかったのか、驚きを隠せないペリーヌ。予想だにしなかったダメージに混乱するネウロイを見て、ムサシはある仮説に行きついた。

 

『もしや、あのネウロイはベムスターの能力を完全にはコピー出来ていないんじゃないのか?』

「何!?」

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「ネウロイは、ベムスターを完璧にコピー出来てない!?」

 

スチール星人バトラーと対峙するメビウスを援護していたリュウは、美緒からの通信を聞いて思わず聞き返した。

 

[はい。ですが、ペリーヌの電撃でも、コアまで攻撃が通らなかった事を考えると、破壊するにはより強力なエネルギーを吸収させる必要があるかと………]

「より強力なエネルギーか………」

『リュウさん!』

 

美緒の言う「より強力なエネルギー」に、リュウは一つ心当たりがあった。そして、バトラーの赤い光線を避けるその「心当たり」から、テレパシーが届いた。

 

『僕とコスモスの光線を合わせれば、もしかしたら!』

「俺も同じこと考えていたぜ!ガンローダー!メテオール解禁!!」

[G.I.G.!!バーミッション・トゥ・シフト、マニューバ!!]

 

リュウの解禁命令を聞き、ガンローダーはマニューバモードに変形、金色の粒子をまき散らしながら上昇すると、左右のファンが唸りを上げる。

 

「ブリンガーファン、ターンオン!!」

ゴォオオオッ

『うおおおおおおおおおおおお!?!??』

 

ブリンガーファンの荷電粒子ハリケーンを受けて、バトラーは吹き飛ばされた!

 

「今だ!ここは俺たちが引き受けるぜ!」

『ハイ!!』

 

メビウスは答えると、ネウロイと戦うコスモスの元へ駆け寄る。コスモスの隣にメビウスが並び立つと、2人のウルトラマンは目を合わせて頷き合うと、ネウロイに向けて拳を構えた。

 

『セヤァッ!』

『デヤァッ!』

「ウルトラマンに続け!!」

「「了解!!」」

 

メビウスとコスモスが駆け出すのを見た美緒の号令の元、芳佳とペリーヌたちもネウロイへと向かう。

 

「クァアアアキイイイーーー!!」

『セヤァアッ!』

 

ようやく電撃のダメージから再生したネウロイは、爪を長く鋭利に変形させて2人に斬りかかる。メビウスはブレスから『メビュームブレード』を伸ばして爪をいなすと、すかさずコスモスが横っ面にパンチをお見舞いする。ひるんだ隙にウィッチ2人の機関銃が火を噴き、右の爪と肩を砕く!

 

「クァアアアキイイイーーー!!」

「そこだぁあッ!!」

斬ッ!!

 

更に、美緒が烈風丸を振るうと、必殺の烈風斬がネウロイの左の爪を切り裂いた!

 

「今だッ!!」

 

美緒が叫ぶと、メビウスはメビウスブレスに手を当てて中央のクリスタルサークルを回転させるように手を左右に伸ばす。

コスモスは手を鳥の翼を思わせる形で広げると、伸ばした手の先で円を描くように回し、気を集中させる。

 

「クァアアアキイイイーーー!!」

 

だが、ネウロイは頭頂の一本角に赤黒いエネルギーを溜め、「収束レイホーンバースト」の発射体制に入ってしまった!

 

「マズい!」

「くそう!烈風―――」

『させるか!!』

 

美緒が烈風斬を放とうとしたその時、突如飛んできた赤い光線によって阻まれてしまう。3機のガンマシンを振り切ったバトラーの攻撃だ。一瞬の隙を許してしまい、ネウロイの必殺光線が2人の巨人に向けて放たれてしまった!

 

「いかん!」

「ミライさん―――」

 

 

 

 

 

ぐんん

 

 

 

 

 

「!?」

『ナニィイ!?』

 

だが、ウルトラマン達に直撃すると思われた光線は、2人のおよそ100m手前で急に『曲がり』、2人から遠ざかっていく!

驚く一同が、ビームの行く先を見ると、その終着点は――――――

 

 

 

 

 

「ピヤァアアーーー!」

 

起き上がったベムスターの腹部、『吸収アトラクタースパウト』だ!

体力を消耗していたベムスターは、最後の力を振り絞って立ち上がり、ネウロイの光線を吸い込んでいるのだ!

 

「ベムスターが、ウルトラマンを守った………!?」

「コイツ……急に起き上がったかと思えば………!!」

「ミライさん!ベムスターが吸い込んでいる内に!!」

 

ベムスターの思わぬ行動に全員が、ネウロイですら驚く中、芳佳は叫んだ。宇宙大怪獣ベムスター自身が、そういっているように思えたのだ。

 

メビウスは金色のエネルギーを蓄積させながら伸ばした手を頭上に回すと手を十字に組んで―――

 

コスモスは球体状の気を突き出して―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『セヤァアアアアアアーーー!!』

 

『デヤァアアアアアアーーー!!』

 

ドウッ!!

 

ウルトラマンメビウスの金色の破壊光線『メビュームシュート』とウルトラマンコスモス コロナモードの赤い炎の圧縮波動『ブレージングウェーブ』がネウロイの腹部に叩き込まれた!

ネウロイは光線の発射を中断して吸収しようとするが、2つの強力な光線を吸収しきることが出来ず、所々から火花を散らしだし………

 

 

 

 

 

「クァアアア………」

 

 

 

 

 

パキィイイン

 

 

 

 

 

限界を迎え、ネウロイは最後の一声と共に砕け散ってしまった………

 

 

 

 

 

『そ、そんな………!!』

「やったーーー!!」

 

バトラーが呆然とする中、ウィッチ達は喜びの歓声を上げ、ベムスターも嬉しそうに手を振る。どうやら、先ほどネウロイの光線を吸い込んだことで回復したようだ。

 

『ま、まだだ!まだ私がいるぞ!!』

「スチール星人!」

『ウルトラマン共のエネルギーも、もう残り少ない!今なら勝ち目が―――』

『見苦しいぞ、バトラー!』

 

バトラーが立ち向かおうとしたその時、突如空中から赤い影が飛来してきた!

 

「あれは!?」

 

降りてきたのは、赤い色の全体的に四角い印象を受けるロボットであった。顔面には黒く大きなバツ印が刻まれ、吊り上がった目が睨みつけるように輝いている。背中に搭載された大きなミサイルポッドと両腕のビーム砲を装備しており、ロボットの火力を物語っていた。

 

「ロボット!?」

『貴様、ボルターか!?邪魔をするなら貴様とて……』

『引き際をわきまえろと言っている。この状況では、貴様の敗北は確実だ。』

 

バトラーにそう言い放つのは、このロボットの操縦士だろうか。まだ若い印象のその声に、バトラーはたじろいだ。

ロボットはウルトラマンやウィッチ達に向き直ると、操縦士の声が外部スピーカーから聞こえてきた。

 

『初めまして地球人の諸君、そしてウルトラマンよ。オレはエンペラ軍団「ロボット騎兵軍」提督のボルターだ!』

「エンペラ軍団だと!?」

「それって、ミライさん達が倒した宇宙人の………!?」

『今回の所は引いてやるが、今度出会うことがあるならば、』

 

ボルターはそう言うと、ロボットが両手のビーム砲を構えた。

 

『この「ビームミサイルキング」で塵にしてくれる!』

 

そう言い放つとロボット―――ビームミサイルキングは両腕のビーム砲を地面に撃ち、爆炎がロボットと宇宙人の姿を隠す。煙が晴れた時には、1人と1機の姿は無かった………

 

「逃げたか………」

「やはり、エンペラ星人の配下の宇宙人が動いていたか………」

 

立ち去った2体の宇宙人に方の力を抜いたリュウがつぶやく。カラータイマーが赤く点滅を開始する中、コスモスは青い『ルナモード』に変わると、ベムスターの傍に寄り頭を撫でた。

 

「キュ~」

「アイツ、随分と律儀な奴ダナー」

「コスモスが優しく接した事で、心を開いたのかもしれないわね。」

「優しさの青と強さの赤………コスモスは、その2つを併せ持つウルトラマンなのか………」

 

ベムスターは気持ちよさそうな声を上げると、コスモスと共に頷いて飛び上がる。メビウスもそれに付き添うように飛び上がったのを見て、リュウは通信を入れた。

 

「GUYSスペーシー、こちらGUYSジャパンのアイハラだ。今から、ウルトラマン2人が怪獣を宇宙に還す。撃ち落さないでくれよ!」

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「ふーむ………やはり、調整が不十分でしたか………」

 

数時間後、どこかの廃ビルの一室で、カウントとバトラー、ボルターの3人が話し合っていた。

 

「だが、お陰でコスモスの戦力を調べる事が出来た。カウント、お前の『大怪獣戦団』がグルータスで使い物にならなくなり、『宇宙人遊撃衆』が動けない以上、我が『ロボット騎兵軍』の戦力で地球を一気に攻め込ませてもらうぞ。」

「………ふん、『豪将様』直属の親衛部隊長であった貴様らしい、単純な作戦だな。」

「『謀将殿』の配下は、策を練りすぎるから動くまでが遅くていけねえなあ。」

「何を………!」

「よしなさい、バトラー。」

 

先程の事を根に持っているのか、拳を握るバトラーをカウントが諌める。

 

「良いでしょうボルターさん。作戦の指揮権をあなたに移します。」

「ふ、感謝するぞ、『カウント提督』よ。先ずは、あのロボットと怪獣どもでおびき寄せるとしよう。後は任せてくれ。」

 

ふ、ふ、ふ、という笑いを残して、ボルターはその場を立ち去った。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

翌日 GUYS基地

 

 

「GUYSスペーシー月面基地より連絡がありました。ベムスターは、無事に月軌道を抜けてかに座方面へ飛んで行ったそうです。」

「ネウロイの元となった円盤に乗っていたであろう、イカルス星人ジュリコとマグマ星人ヴァルドスキーの行方は、未だ知れていません。」

 

朝礼の席で、ミサキ代行とエリーの報告をリュウ達は頷きながら聞いていた。

あの後、無事にベムスターを宇宙に送り届けた2人のウルトラマンは、GUYSやウィッチ達の元に帰ってきた。ミライとムサシは美緒や芳佳たちにウルトラマンであったことを改めて告白し、6人はそれを受け入れたのであった。

 

「生きているとしたら、まだ地球に居るんだろうな。アウトローつってたし、あの円盤も地球を脱出しようとしてた事から、エンペラ軍団とは手を切ったのか?」

「恐らくは。でも、また襲ってこないとは言えませんが………」

「ま、あの程度の連中なら、大丈夫だろ。」

 

楽天的な事を言うリュウだが、そうだろうと全員が思った。

ふと、リュウはウィッチ達を見渡した。サーニャとエイラがZATとMACのユニフォームを着ているのは勿論であるが、今日は芳佳と美緒はオレンジ色の科特隊、ペリーヌはグレーと白のウルトラ警備隊、リーネは濃いオレンジに銀のラインが入ったUGMのユニフォームを、それぞれ着ていた。

 

「お前ら、結局着てるんだな………」

「あははー、でも、かっこよくないですか?」

「まあ、気に入っているなら、別にいいけど………」

 

ユニフォームの袖を伸ばしながら、見せるように回る芳佳に苦笑するリュウとカナタ。

しかし、と、不意にトリヤマが口を開く。

 

「改めてみると、ずいぶんと華やかになったのぉ~」

「でも、これでやっと半分の6人ですからねえ。他のみなさんも、早く見つかると良いのですが。」

「いえ、もうすぐ、あと3人来ますよ。」

 

え?

 

ミライからの突然の発言に、一同の意識はミライに集中する。

 

「実は、ベムスターを大気圏外まで連れて行ったとき、80(エイティ)兄さんからのウルトラサインが届いたんです。」

「ウルトラ、サイン………?」

 

ウルトラサインとは、ウルトラマンにのみ知覚可能な通信手段である。上空に輝く文字を描き、遠くにいるウルトラ戦士にメッセージを送ることが出来るのだ。

 

「それによると、ゲルトルート・バルクホルンさん、シャーロット・E・イェーガーさん、フランチェスカ・ルッキーニさんが、地球から約300光年離れた惑星グルータスで見つかって、今、タロウ兄さん達と地球に向かっているそうです。」

「バルクホルンたちが!?」

「ルッキーニちゃんとシャーリーさんも!良かった~」

 

3人の安否を知り、喜びの声を上げる芳佳達。ふと、ペリーヌは気になる事があった。

 

「あの、ヒビノさん、今、『タロウ兄さん「達」』と言いましたわよね?タロウさんはウルトラマンでしょうけれど、他にもウルトラマンが一緒なんですの?」

 

ペリーヌの言葉に、一同も気づく。ミライは肯定の意味で頷いた。

 

「はい。今地球に向かっているのは、タロウ兄さんともう1人………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヴェネツィアに現れたウルトラマン、………『ダイナ』も一緒です。」

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

地球時間で3日ほど前―――

 

 

眼を覚ましたゲルトルート・バルクホルンは、異様に日の光が強いように感じた。

 

「………あ、れ?」

「お、起きたか、バルクホルン。」

「い、イェーガー………?」

 

起き上がって見渡すと、ここはどこかの森の中らしく、近くに小川が流れており、シャーロット・E・イェーガーが手を着けていた。

 

「今、ルッキーニ達が、周囲を見に行っている。取りあえず、この水は飲んでも大丈夫だ。」

「ああ。だが、ここはどこだ?私たちは、ヴェネツィア上空にいた筈だが………?」

 

立ち上がり、小川に歩きながらシャーリーにそう聞く。シャーリーは頬をかきながら、

 

「分からないが、とりあえず地球ではない事は確かだ。」

「何だと?冗談を言うな!何故そう言い切れる?」

 

バルクホルンはシャーリーに食って掛かる。寝起きで妙な事を言われ、若干気が立っているようであった。

 

「いや、でもさ、あれ見てみ?」

「何?」

 

シャーリー自身も若干困惑しているのか、顔を引きつらせながら上空を指差した。バルクホルンが見上げてみると、丁度木々の隙間が空いた所から青い空が見え―――

 

 

 

 

 

「………なあイェーガー、私は寝ぼけているのだろうか?太陽が2つあるように見えるのだが…?」

「いや、寝ぼけていない私でも見えるから、現実だ。」

「マジか。」

「マジだ。」

 

太陽が2つあった。

 

ついでに言うと、月らしき衛星も3つくらい浮かんでいた。

 

「………うそ、だろう………まさか、本当に………?」

「ああ、ウソじゃあない。」

 

突然、背後から声を掛けられる。振り返ると、フランチェスカ・ルッキーニと共に、ヴェネツィアで発見したあの金髪の男性がいた。その手には、紫とオレンジのマーブル模様のやたらトゲトゲした果物が数個抱えられていた。

 

「あなたは、あの時の………?」

「オレはアスカ・シン。ただの流れ者だ。」

「おお、戻ったかルッキーニ!」

「これ、食べれそうだったよー!」

 

アスカと名乗ったその男性は、ルッキーニと一緒に果物を大きめの葉っぱの上に置いた。

 

「ここがどこかは分からないが、俺たちはあの怪獣の能力で、この場所に飛ばされてしまったことは確かだ。」

「あの時の、あの光か………」

 

バルクホルンは思い返した。あの時、あのよくわからない生物(ブルトンの事である)が発した光に引きずり込まれ、気を失っていたのだと。

ふと、気を失う寸前、自分はあの時の銀色の巨人が手を伸ばすのを見たような気がした。

 

「そうだ、あの巨人!あの銀色の巨人は!?」

「ダイナだ。」

「え?」

 

バルクホルンが思い出して口に出した言葉に、アスカが口をはさんだ。

 

 

 

「あの巨人の名前は、『ウルトラマンダイナ』だ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




第九話、『コスモス篇』の後編です。

マックロディー改(仮)登場。小説版に倣ってラビットパンダでもよかったのですが、マックロディーの方がストライカーユニットの搭載ができるスペースがあると思いまして。

ベムスター化ネウロイの弱点は割と分かりやすい物にしてみました。合体光線と怪獣の協力は、個人的に結構燃えます。

ボルターはロボット騎兵軍、カウントは大怪獣戦団の提督。今作のエンペラ軍団はこれに「宇宙人遊撃衆」を加えた三大兵力があって、それぞれがグローザム、デスレム、メフィラスの配下となっております。
ビームミサイルキングはボルターの愛機。今後はもっと活躍する予定です。

ウィッチ達の歴代防衛チームコスプレはそれぞれ合うと思うものを選んでいます。残りの5人の物も現在検討中。

次回は、満を持しての『ダイナ篇』です。お楽しみに。

では、また次回。


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第十話 悪魔の住む星

「ギャォオオオオオオ!キャキャキャッキャッキュルルル!」

 

山中に突如として出現した怪獣が、まるで金属を擦り合わせたかのような鳴き声を上げ、口から火炎を吐き出す。

黒い体にマグマのような赤いラインが光り、頭頂に黄色い角を持ったその怪獣は、かつて「光の巨人」に封印されたと言い伝えられていた『天目亜牙』こと、『溶鉄怪獣 デマーガ』だ。

デマーガは背中を赤く発熱させたかと思うと、そこから火炎弾を噴出させて周囲に赤い炎が降り注ぐ。その時、キーーーンという風を切る音が聞こえた。

上空を見上げれば、白と青に彩られた全長30mの大型収納攻撃空母艦機「スーパーマードック2世号」―――先代との違いは、尾翼が十字型になっている点しか見えないが、エンジンや内部の機器も格段にバージョンアップしている―――が、デマーガに接近してきていた。

 

「怪獣を確認!」

「運転手君!もっと近づくんじゃもっと!」

「っ、これ以上は近づけませんよ!あと、自分はトベです!」

「ええい、飛んでいるのは十分分かっとるわい!」

「博士、落ち着いてください!」

 

そのスーパーマードック号の中では、操縦している細身の男性に白い長髪と長いひげを蓄えた老人が肩を掴んでガクガクと揺らしながらわめく。大柄な男性が博士をなだめるが、博士は咆哮を上げるデマーガをマードック号のキャノピー越しに鋭い目つきで見ていた。

 

「ギャォオオオオオオオ!キャキャキャッキャッキュルルルル!」

「あの怪獣、何の前触れもなく山中に現れよった!ここ最近、アフリカエリアやアジアで起こっている怪獣消失事件と関りがあるに違いないんじゃよ丸いの!」

 

博士はデマーガを見ながら自分を抑える大柄な隊員に叫ぶ。

ここ最近、怪獣が何の前触れもなく表れては煙のように消える事件が多発しており、彼ら科学警備隊はこの老人、ヘンリー・ニシキ博士と協力して調査をしていたのだ。

 

「博士の言う事はごもっともですがね、やつのあの火力じゃあ近づこうにもうおおおお!!?」

 

紺色のコートを羽織った長髪の男性が抗議しようとしたが、突如、デマーガの目の前の地面が爆ぜ、マードック号は急転換した。

 

「プープルプル・プルプル、プープルプル・プルプル」

「キャップ、ロボットです!」

「何ぃ!?」

 

現れたのは、赤と白の派手な縞模様が前面に描かれたしずく型の胴体に金色の顔を持ち、両腕が鋭いハサミになったロボット、『侵略ロボット スフィンガー』であった。スフィンガーは電子音を鳴らしながらデマーガに近づくと、威嚇をするデマーガに掴みかかろうとする。

 

「ギャォオオオオオオオ!キャキャキャッキャッキュルルルル!」

「プープルプル・プルプル、プープルプル・プルプル」

「アイツ、あの怪獣を捕まえようとしているのか!?」

 

操縦士が驚いていると、スフィンガーはデマーガが放つ炎を物ともせず近づいていき、その体を掴んでしまった。暴れるデマーガに今度は、ヴヴヴ、といった風に目からリング状の光線を発すると、見る見るうちにデマーガは大人しくなり、気を失ってしまった。

 

「ギュゥ………」

「プープルプル・プルプル、プープルプル・プルプル」

 

スフィンガーは気を失ったデマーガを捕まえたかと思うと、スフィンガーが出てきて空いた穴の付近から2本の尖った柱が出現する。すると、2本の柱の間が歪んだかと思うと、それは紫色のエネルギーを纏い、「赤い花畑のある別の景色」が見えた。

 

「あの柱は!隊長君!あの柱は別次元へのゲートになっているようじゃぞ!」

「別次元………それが怪獣消失の真相という事ですか!!」

「そうじゃ!そうに違いない!」

 

門へと向かうスフィンガーを見てニシキ博士が声を上げる。すると、後部座席に座っていた若い男が立ち上がった。

 

「キャップ、僕がバーディーで足止めします!そうしたら、マードックで!」

「え?あ、おい、ヒカリ!」

 

ヒカリと呼ばれた青年はキャップが止めるのも聞かずにコックピットから飛び出した。

 

 

「ヒカリ、勝手に出るのはマズイんダナ、やっぱし。」

「心配いらないよピグ、ちょっと足止めしてくるだけさ。バーディー、発進します!」

 

赤い生物じみた姿のロボット「ピグ」を宥め、ヒカリ隊員は赤い戦闘機『バーディー』で発進した。

 

「プープルプル・プルプル、プープルプル・プルプル」

 

バーディーの姿を確認したスフィンガーは、捕まえたデマーガを奪われまいと、口から黄色い光線を発射、バーディーはそれを避けるとビーム砲を放つ。ビームは会うフィンガーの背中に直撃してスパークを起こすが、少しひびが入っただけでダメージは少ないようだ。

 

「相当、頑丈な金属で出来ているな………!」

「今だ!ミサイル発射準備!」

「はい!!」

「プープルプル・プルプル」

 

攻撃されたことで自分の障害になると認識したのか、バーディーを狙い始めるスフィンガー。その隙にキャップはトベ隊員にミサイルの発射を準備させるが、その時、スフィンガーが腕をバーディーに向けたかと思うと、何と一気に伸びてバーディーを襲ったではないか!

 

「しまった!」

バキッ

「ヒカリ!」

 

スフィンガーの思わぬ攻撃に反応が遅れ、ヒカリ隊員の乗るバーディーは左胴体と翼にスフィンガーの腕を受けてしまい、煙を吹きながら高度を下げていく!

更に悪いことに、そのバーディーの進行方向には、あの異次元のゲートがあった!

 

「いかん!このままでは、あのゲートの向こうの次元に行ってしまうぞ!」

「ヒカリ!脱出しろ!」

[ダメです!さっきのダメージで、脱出装置が作動しません!]

「ヒカリ!」

 

キャップとトベの警告もむなしく、ヒカリ隊員はゲートの向こうへと消えてしまった。

それを追うように、腕を元に戻したスフィンガーが、デマーガを連れてゲートを通っていく。

 

「キャップ!」

「ヒカリを放ってはおけん!我々もあのゲートを通るぞ!」

「了解!」

 

キャップがそう命じると、トベは操縦桿を操り、スフィンガーが通って今にも閉じそうなゲートに間一髪で飛び込んだ。

 

 

 

 

 

スーパーマードック号が通った瞬間、異次元へと通じたゲートは閉じてしまった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第十話 悪魔の住む星

 

宇宙大怪獣 アストロモンス

溶鉄怪獣 デマーガ

侵略ロボット スフィンガー

剛力怪獣 シルバゴン(スカーシルバゴン)

猛毒巨虫 ビッグライガー

バリヤー怪獣 ガギ

再生怪獣 サラマンドラ

豪炎怪獣 グレイガス

は虫怪獣 ジャニュール三世

四次元宇宙人 バム星人

幻覚宇宙人 メトロン星人マーズ

水棲獣人 ピニヤ星人ロー

 

 

 

 

 

ウルトラマンダイナ

ウルトラマンジョーニアス 登場

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目を覚ましたバルクホルンは、ルッキーニとアスカが持ってきた何とも言えない色の果物を食べて少し落ち着いていた。果物の味に関しては、甘いともしょっぱいとも酸っぱいとも言えないものであった事を、一応記載しておこう。

 

「さて、今後のことなのだが……」

「まず、第一に、この惑星からの脱出、その為の惑星間飛行が可能な宇宙船の確保、なんだけど………」

 

アスカはそう言うが、少し難しそうな顔をした。

 

「正直、脱出は難しいと俺は思っている。」

「えー!?帰れないの!?」

「どういう事だ!!」

「落ち着けって。さっきこの森を散策した限りでは、人っ子一人、猛獣の類にも出会わなかった。仮に、森の外に人がいたとしても、この星の技術力が宇宙進出できるレベルのものかどうかも分からない。」

「た、確かに………私の祖国でも、宇宙まで行ける技術はまだないが………」

 

アスカの考えに、バルクホルンは気付かされた。ここが地球外の惑星である以上、人がいる可能性はゼロではないにしろ、文明のレベルが地球の原始人並み出会った場合、脱出できない事には変わりがない。

 

「………つまり、貴様は私たちにここに骨を埋めろと?」

「そこまでは言っていない。ただ、諦めずにこの星を調べれば、脱出の糸口が見えるかもしれないだろ?」

「しかし!!」

 

バルクホルンがアスカに突っかかるが、アスカはいたって落ち着いていた。

 

「だから落ち着けって!」

「ぐっ………」

「こういう時に一番やっちゃいけないのは、冷静さを欠く事だ。大事なのは落ち着いて、心に余裕を持つ事だ。」

 

アスカはそう言うと、3人を見渡した。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

数十分後

 

「いやー、思った通り、上流に大きめの滝つぼがあったなぁー」

「そうだな。」

 

明るく言うアスカに、バルクホルンは冷静に答える。

 

「3人とも、汗まみれだったみたいだし、いい水浴び場になって良かったよ!」

「ああ、それは私も大助かりだ。」

 

アスカの言葉に、冷静ながらも肯定するバルクホルン。

 

「………とりあえずさあ、俺にヤマシイ気持ちは無い訳なので、その銃を下してはくれないでしょうか?」

「おっと、それは出来ない相談だな。」ジャキッ

「サイデスカ………」

 

銃器の銃口を向けられながら、アスカは冷や汗を垂らしながら苦笑した。

男性であるアスカがいるため、じゃんけんで負けたバルクホルンが見張りとして残り、2人が先に水浴びをすることとなった。

 

「お前ら!私も入るのだから、早く上がれよ!」

「あいよー!」「はーい!」

 

機関銃をアスカに向けながら、現在水浴び中のシャーリーとルッキーニに叫ぶバルクホルン。滝の方からは、元気な2人の返事が聞こえてきて、バルクホルンはやれやれとため息をついた。

 

「まったく、呑気なものだ。」

「あの2人は、十分リラックスしているよ。何というか、マイペースだな。」

「………さっきはすまなかったな。私は少し、焦っていたようだ。」

「気にするなよ。誰でも、いきなり見知らぬ土地に飛ばされたら混乱するって。」

 

少し気まずそうに、アスカに謝るバルクホルン。

 

「やっぱりあれか?軍人だと、脱走兵扱いにでもされるとかか?でも、あの怪獣軍団相手だった訳だし………」

「それもあるが、故郷に妹を残してきていてな。行方不明となっては、非常に不安がるだろうと思ってな。」

「なるほど。それは心配だな。」

「妹かあ。俺は天涯孤独で、色んなとこ回っているからな。」

 

苦笑するバルクホルンに、アスカは少し、自分の事を話す。

 

「そういえば、君のその制服はどこの物なのだい?」

「これは、TPC(地球平和連合)の所属部隊「スーパーGUTS」のものだよ。俺は元々そこの隊員だったんだけど、ある事情で色んな次元を流れてんのさ。」

「次元を……?では、あの時ヴェネツィアにいたのも……」

「言ったろ、気付いたらあそこにいたんだ。」

 

そうだったのか、と頷くバルクホルン。

 

「「ん?」」

 

だがその時、2人は気付いた。先ほどから、自分たちの会話に入ってくる存在がいる事に。バルクホルンの背後の方を振り向くと、

 

「やあ。」

 

そこには、赤く尖った頭に黄色い目と発光器官(話す時に光ってる)を持ち、青い体のやたらと派手な体色の宇宙人が、胡坐をかいて、先がふさふさした筒状の白い手をフレンドリーに振っていた………

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「「うわああああああああああああああ!!??」」

 

 

 

「うじゅ?どうかしたのかな?」

「バルクホルンのやつ、トカゲでもふんづけたか?」

 

悲鳴を上げる2人を余所に、一糸纏わぬ姿で水浴びをしているシャーリーとルッキーニ。割と呑気である。

 

「さーて、そろそろ上がるぞー」

「えー、もうちょっと水浴びしたいー!」

「いや、汗ももう流せたし、もう上がらないと、バルクホルンの雷が落ちるぞー」

 

それはいやかも、と顔を引きつらせるルッキーニ。岸まで戻ろうとした2人だが、不意に、目の前の水面が不自然に波打っていることに気が付いた。

 

「ん?」

「なんだろ?」

 

2人が首を傾げていると、波打っていた場所から、浮き上がって来た者があった。

 

「ぷはあっ!」

「「え?」」

 

現れたのは、魚がそのままくっついたような頭と、独特の模様のウロコで覆われた体を持った緑色の宇宙人で、水かきのついた手のひらで顔を拭くと、2人の存在に気付いたらしい。

 

「「………」」

「あれ?えーと、どちら様?」

 

その宇宙人が2人に聞くが、前述した通り2人は現在一糸纏わぬ姿である。

 

つまりは、全裸である。

 

ハダカである。

 

すっぽんぽんである。

 

そんな2人の姿が、ルッキーニの幼い肢体が、たわわに実ったシャーリーの胸部が、宇宙人の目に入り―――

 

 

 

 

 

「きゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!!!!!!!」

「うわ、ちょ、待っげぶっ!!??」

 

宇宙人が止めるのも聞かず、赤面したシャーリーの悲鳴と共に繰り出された回し蹴りを顔面にモロに喰らい、宇宙人は吹き飛んだ………

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「はっはっはっ、いやあ、災難だったなロー。」

「笑い事じゃないよ、マーズ。オイラ特に悪い事してないじゃないか………イテテ。」

「割とデリカシーないな、お前。」

「ダイジョーブ?」「ルッキーニ、むやみにそいつらに近づくな。」

 

けらけらと笑い飛ばす赤い宇宙人と、蹴られた頬を抑える緑の宇宙人。心配するルッキーニを余所に、シャーリーとバルクホルンは銃器を2体の宇宙人に向け、警戒していた。

 

「いや、待ってくれ。我々は君たちに危害を加える気はない。何より、ローの件に関しては、事故なのだから。」

「それは、そうだが………」

「自己紹介が遅れたな。私は「メトロン星人」のマーズという者だ。」

「そんでオイラは、「ピニヤ星人」のローだよ。」

 

マーズとローが、味方であるアピールをする。怪訝そうな顔のウィッチとアスカに対して、マーズは続けた。

 

「とりあえず、銃を下してくれ。我々は、宇宙レジスタンス『アンドロメダの夜明け』のメンバーだ。」

「レジスタンスだと?」

「そうだ。全宇宙を支配しようとした暗黒宇宙大皇帝、エンペラ星人の軍団に対してね。」

「暗黒宇宙大皇帝、ねえ?」

 

未だ信用していないシャーリーとバルクホルンだが、アスカとルッキーニは興味深そうに聞いていた。

 

「で、その宇宙レジスタンスのお二方がいるという事は、この惑星にはその皇帝とやらがいんのか?」

「え?皇帝いるの?」

「いや、エンペラ星人は既にこの世にはいない。だが、彼の者の残党達が、討ち取った者たちへ復讐せんと行動をしていてな。この惑星「グルータス」は、その為に利用されているのだよ。」

 

マーズの説明を聞き、4人はこの惑星の名前が『グルータス』である事を知った。

 

「そして我々『アンドロメダの夜明け』も潜入し惑星奪還を目指していたのだが、つい数時間前、この付近にウルトラマンが降り立ったのを目撃してね。もしかしたら、我々の情報を受け取った宇宙警備隊かと思って見に来たのだが………」

 

そう言うと、マーズは4人を見渡して、

 

「どうやら、違ったようだな。先ほどの話を聞く限りでは、偶然この惑星に来てしまったようだ。」

「それじゃあ、悪いことは言わない。早くこの星を立ち去るんだ。」

「何?」

 

マーズ達の忠告にバルクホルンが思わず聞き返す。アスカは怪訝そうな顔になりながら、2人に聞いた。

 

「そうしたいのは山々だけど、俺たちには宇宙船がないから、丁度探そうと思っていた所なんだ………」

「あ、そうだ、おたくら、宇宙船余ってたりしない?」

「え?うーむ、無くはないが………」

「おいおいマーズ、まさかアレを?」

 

シャーリーの提案に顎に手をやって(どこからが顎なのかは定かではないが)考えるマーズ。だったらと、シャーリーが言おうとしたその時、森の木々が騒がしく倒れる音が聞こえ、一同はそちらを振り向いた。

 

「グギュゥゥウウウウウウウウウウウウ!!」

「か、怪獣!?」

 

地響きと共に現れたのは、羊のような曲がった角と銀色のウロコに包まれた体を持ち、背中に何本ものトゲが生えた怪獣で、瞳のない金色の目を光らせて大きく咆哮した。

 

「あれは『シルバゴン』だ!」

「シルバゴン!?」

「知っているの、アスカ!?」

 

アスカが思わずその名前、『剛力怪獣 シルバゴン』の名前を呼んだことに、ルッキーニが聞き返す。

 

「俺の、元いた世界の怪獣だ。けど、何でこんな所に?」

「グギュゥゥウウウウウウウウウウウウ!!」

「わあ!こっちにくるよ!?」

「待て!動くんじゃあない!! 」

「何!?」

 

自分たちを見つけたのか、雄叫びを上げてのっしのっしと歩みを進めるシルバゴンを見て、思わず逃げ出そうとする一同。だが、アスカがそれを止めた。

 

「シルバゴンは視力の弱い怪獣で、「動いているもの」しか見えないんだ!」

「成程、だからこうやって止まってやり過ごそう、という訳か………」

「そ、そうか………けど………」

「ギュゥウ………?」

 

止まっていればいいと言われたのは良いのだが、両足を着いているのはアスカとマーズだけで、シャーリーとローは片足立ち、ルッキーニとバルクホルンに至っては片足のつま先立ちというかなりキツイ体制だ。

しかし、効果はあるらしく当の怪獣シルバゴンはキョロキョロと足元を探している。本当に見えていないようだ。

 

「グギュゥゥウウウウウウウウウウウウ!!」

 

しばらくすると、つまらないと言わんばかりに鳴き声を上げ、シルバゴンは立ち去って行った。

 

「………行ったか?」

「そうみたいだ。」

「もう、動いて平気?」

「平気だ。」

『ふぅうう~~~………』

 

アスカがそういうと、息を大きく吐いてへたり込む一同。

 

「け、結構きつかったな………」

「あの怪獣、左肩に星みたいな傷があったー」

「よく見えたなルッキーニ。」

 

意外と見ていたらしいルッキーニに感心するアスカ。その時、マーズがどこからか出した通信機に話しかけていた。

 

「何?分かった。君も気を付けてくれ。」

「どうかしたか?」

「みんな、身を隠すぞ!」

「え?」

 

 

 

 

 

数分後、アスカたちのいた地点にホバーバイクに乗った5人の宇宙人がやってきた。

 

「このあたりか?詳細不明の怪獣が現れたのは。」

「そのはずだ。だが、もうどこかへ行ってしまったようだな。」

 

つぶれた饅頭を思わせる緑色の大きな頭に光る目を持ち、軍服のようなものを着た宇宙人たちは、銃を持ちながら辺りを捜索し始めた。

 

「………アイツらは?」

「バム星人。先ほど話した皇帝の残党だ。」

 

身を隠しながら、バム星人の動向を探るアスカ達。どうやら彼らは、先ほど現れたシルバゴンを探しているらしい。

 

「全く、勘弁してほしいぜ。昨日のサラマンドラだって、元々はカウント提督が用意したやつなんだろ?案外その怪獣も………」

「待て。」

 

1人のバム星人が銃を肩に担いで文句を垂れる中、リーダー格らしい腕章を着けたバム星人が、通信機に耳をやった。

 

「捜索は中止だ。スフィンガー“97-IX-Vi”が、怪獣を連れて3番ゲートに出てくるそうだ。ゲートに一番近い我らが『血の花畑』まで運べと、ゴンゴルド大佐から指令があった。」

「はいよ。」

「やれやれ、次から次へと………」

 

うんざりしたようにバム星人がぼやくと、星人達はその場を立ち去った。

 

「………行ったか。」

「マーズ、『血の花畑』というのは………?」

 

バム星人が去ったのを確認し、木の影から出たバルクホルンは、マーズに聞いた。

 

「………『血の花畑』というのは、奴らの育てている『怪獣兵器』の飼育場だ。」

「怪獣兵器だと!?」

「ここからそう離れていない。離れた場所からではあるが、見に行こう。」

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

事の発端は数か月前、自然豊かな無人惑星グルータスに本来生息しないはずの恐ろしい吸血植物「チグリスフラワー」が確認された事から始まる。

 

このチグリスフラワーは、実は怪獣の幼態であり、動物の生き血を吸って十分に成長をすると怪獣になってしまう恐ろしい花なのだ。

 

「調べてみた所、エンペラ軍団4大部隊が1つ、『大怪獣戦団』が、植物の飼育に最適なこの星にチグリスフラワーを持ち込み、「エサ」を与えて怪獣を育てていたことが分かったんだ。」

「………おい、エサってまさか?」

「おそらくは、君たちの考えている通りだ。見えてきたぞ。」

 

マーズの言葉に、アスカ達は青ざめる。マーズが言った通り、今アスカ達がいる巨大な一枚岩の少し先にきれいな赤い花が咲く花畑があり、その少し離れた地点には尖った2本の柱がついた異次元ゲートがあり、十数名のバム星人が待機していた。

 

「あれが、チグリスフラワー………」

「キレー………」

「吸血植物で真っ赤な花だから『血の花畑』、か………何ともブラックなネーミングだぜ。」

「あれが、すべて怪獣になるというのか………」

 

アスカ達が一見きれいに見えるチグリスフラワーに見とれながらも戦慄していると、異次元ゲートが作動し、柱の間にエネルギーがたまり始めた。

 

「あそこから、怪獣を運び込んでいるのか。」

「ああ。ゲートごとに繋がっている次元が違うようだ。だったら、反対側のゲートをどうやって運び込んだのだ?という話になるが、今はおいておこう。あれのせいで、本来この次元世界にいない怪獣まで呼び込んでしまうモノから、グルータスの生態系はめちゃくちゃになってしまったんだ。」

「では、さっきのシルバゴンも?」

「多分な。そうか、だからゴルザが現れたのか。」

「ゴルザ?」

 

アスカが上げた怪獣の名前に、シャーリーが聞き返す。

 

「ヴェネツィアに現れた怪獣の中に、青い身体で甲羅を持った奴がいただろ?アイツはシルバゴンと同じく俺のいた世界の怪獣なんだ。何であそこにいたのか疑問だったが、これで合点がいったぜ。」

「おっと、そうこうしている内に、怪獣が出てくるようだぞ。」

 

アスカの話を聞いている内に、ゲートが完全に開ききったらしく、待機していたバム星人達が準備をし始めた。

そして、ゲートから出てきたもの、それは、

 

ゴウッ

「戦闘機!?」

「被弾しているぞ!」

 

黒い煙を上げる、赤い色の戦闘機であった!

 

予想だにしなかった戦闘機の登場に慌てふためくバム星人達。すると、後を追うように怪獣デマーガを抱きかかえたロボット『スフィンガー』が出てきて、さらに、白い大型空母艦が出てきた。

 

「あのロボットを追ってきたのか!」

「マズいぞ!あの戦闘機、あのままだとあの花畑に!」

 

シャーリーの言う通り、赤い戦闘機があのまま不時着すればチグリスフラワーの咲く花畑のど真ん中に落ち、何も知らないパイロットが被害にあってしまう。

 

「どうするんだ!?」

「どうするって………ん?」

 

どうしようかと迷っていると、援軍として来たらしいバム星人のホバーバイク部隊が、こちらの方に来るのが見えた。

 

「よおおっし!」

「アスカ!?」

 

アスカは叫ぶと、やって来たバム星人の最後尾の1人に飛びつき、突き落としてホバーバイクを奪ってしまった。

 

「うおっとととっとぉおーーー!?………へへ、地球のバイクとそんな変わんないな!」

「ず、随分と無茶をする奴だな………」

「な、何だ貴様は!?」「なぜ地球人がこの星に!?」

 

最後尾のバム星人がやられた事に気付き、他のバム星人が振り返って銃器を構える。アスカはそれを見ると、ウィッチ達に向けて叫んだ。

 

「3人はストライカーを取りに行ってくれ!」

「分かった!」

 

3人はそれを聞いて走り出した。それを見たアスカは、バム星人達を見据えた。

 

「さーて、ひとっ走り行きますか!」

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「何?地球人だと?」

 

同じ頃、惑星グルータスの司令施設で、最高責任者であるゴンゴルド大佐は通信を聞いていた。

 

[は!スフィンガーを追ってきた者たちと、何故か例のレジスタンスの連中と一緒にいた者たちを確認しました!]

「バカヤロー!だからあれ程衛星軌道の防衛をちゃんとしとけっつったろ!暇な職場だからって怠けてんじゃねーぞコノヤローが!」

[す、すいません!]

 

ゴンゴルド大佐は怒鳴ると、時計を確認した。

 

「丁度時間だ。エサの怪獣どもを解き放って、お前らは撤収準備だ。」

[了解!]

「レジスタンス共め、目にモノ見せてやる。」

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

一方、ヒカリ隊員はチグリスフラワーが咲き乱れる花畑の中心に不時着したバーディーから外に出ようとしたが、集まったバム星人達に囲まれて逃げられずにいた。

 

「地球人め!無駄な抵抗はよすのだな!」

「くっ………」

 

銃を突きつけられて、身動きの出来ないヒカリ。そっと、腰に着けた「エメラルド色に輝く星」に手を掛けようとしたとき、星人の乗っていたホバーバイクの1台が爆発し、花畑の中に落ちてしまった!

 

「ぎゃあああああああああああああっ!!??」

「何!?」「何事だ!?」

 

チグリスフラワーの餌食となり、見る見るうちに干からびていく同僚に気を止める暇もなく、爆発の原因を探る星人たち。すると、1人のバム星人に追われる地球人の駆るホバーバイクが、こちらに向かってきていた。

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

「地球人!?」

「彼は………?」

「飛び乗れ!!」

「!」

 

ヒカリは一瞬戸惑うも、ホバーバイクに乗った彼の言葉を聞いてバーディーのコックピットから目の前まで来たバイクに飛び乗った!

 

「逃がすか!」「追え!」

「しっかり捕まっていろよ!」

「ああ!」

 

ヒカリは彼の肩に捕まると、ホバーバイクはスピードを上げた。

その時、ふと、ヒカリの心に語りかける者がいた。

 

《ヒカリ………》

「!《ジョーニアス!?》」

《ヒカリ、彼はウルトラマンだ。》

《何ですって………!?》

《しかし、私の故郷U40の者ではない。別次元のウルトラマンのようだ。》

 

ジョーニアスの言葉に驚くヒカリ。思わず声に出してしまいそうになったが、

 

《やっぱり、あんたらもそうなのか。》

《!?》

 

運転をする彼から、テレパシーが届いた。

 

《気づいていたのか………》

「まあな。はっきり分かったのはたった今だ。俺はアスカ・シン。ウルトラマンダイナだ。」

「僕は、ヒカリ超一郎。ウルトラマンジョーニアスと一体化している。」

 

ヒカリとアスカは、今度は自分たちの口で互いにそう自己紹介をするが、追ってくるバム星人の銃撃が迫るため、残りは後ほどとなった。

 

「アンタのお仲間の所まで行くぞ!」

「分かった!」

「アスカ!!」

 

上空を飛ぶスーパーマードック2世号を見上げたアスカがそう言うと、バム星人の背後からストライカーを装備し、機関銃を構えたバルクホルンとルッキーニが接近してきた。2人の攻撃で何機かのバム星人が赤い吸血植物の餌食となり、思わぬ強襲に全員が戸惑う。しかし、アスカとヒカリの前方からも、シャーリーに追われるバム星人の編隊が迫る!

 

「アスカ、前!」

「しっかり捕まってろよヒカリ!!」

「え?うわあ!?」

「何だと!?」「わー!ぶつかる………」

ドゴォオーン

『ぎゃあああああああああ!?』

 

しかし、ギリギリまでバム星人を引き付けたアスカは、何とぶつかる間際で垂直に急上昇!

前後から迫っていたホバーバイクはそのまま全機衝突、爆発してしまった!

 

「おっしゃー!見たか、俺の超ファインプレー!」

「む、無茶苦茶だな君は!!」

「アスカすごーい!」

 

上空で勝ち誇るアスカに対し、危うく振り落とされかけたヒカリは冷や汗で顔を濡らし、ルッキーニは素直に称賛していた。

 

「何というヤツだ………ハルトマンでもあんな事せんぞ………」

「うちにはいないタイプだなー」

「このまま一気に行くぞ!」

「あ、ああ!(彼女たちの格好は一体………?)」

 

ヒカリがウィッチ達の格好に戸惑う中、マードックへと進路を変えようとするアスカ。だが、そこで彼らは気づいた。

 

「ギュウュウュウュウュウュ!」

「何!?」

「デッカイ、………ハエ!?」「蛾にも見えるな。」

 

マードック号は現在、大きな翅と堅い甲羅を持ち、頭部の2本角が特徴の巨大な昆虫型怪獣『猛毒巨虫 ビッグライガー』に襲われていたのだ!

ビッグライガーが翅を羽ばたかせてりん粉を飛ばすと、マードック号が段々とりん粉で黄色く染まっていき、飛行が困難になってきているのか、ふらふらとしていた。

 

「ギュウュウュウュウュ!ギュウュウュウュウュ!」

「あのままでは、いずれ墜落してしまうぞ!」

「早く行かないと!」

 

そういうと、ルッキーニとバルクホルンが先行し、マードック号へ向かう。

 

 

 

 

 

ゴチンッ

 

 

 

 

 

「に゛ゃっ!?」

「あうっ………!?」

「えっ?」

 

だが、先行した2人は、見えない何かに頭を打ってしまい、それ以上進めなかった!

 

「な、何だこれは!?見えない壁があって、これ以上進めないぞ!?」

「おでこ打った~~~………」

「見えない壁……バリヤーか!?」

「バリヤーだって?」

 

思いっきりぶつけて赤くなった鼻を押さえながら(幸いにも鼻血には至らなかった)不思議そうに見えない壁、バリヤーを叩くバルクホルン。その時、アスカらの背後から怪獣の鳴き声が聞こえた。

 

「ギシュシュゥゥウウウウ!ギシュシュゥゥウウウウ!」

「………まさか!?」

 

いやな予感がしたアスカが振り返ると、果たしてそこには、予想通りの怪獣の姿があった。

尖った口先と稲妻型に曲がった一本角を持った頭に、トゲで覆われた体表、平たい手には2本の爪を持ち、その間から触手を鞭のように伸ばした生物、「バリヤー怪獣 ガギ」だ!

ガギはその別名の通り、巨大な見えないバリヤーフィールドを張る能力を有しており、アスカ達はそのバリヤーの中に閉じ込められてしまったのだ!

驚くのも束の間、ガギのいるのとは別の方向から、怪獣の鳴き声が響いた。

 

「キャァァァアアアアアアアゴォウッ!キャァァアアアアアアアアゴォウッ!」

「こちらにも!?」

 

炎や翼を思わせるヒレを持ち、口から火炎を吐き出しているのは、本来であればアリゾナの地底に生息する『豪炎怪獣 グレイガス』である!

 

「アアアアアアアアオオオオオオオオオオ!!」

「ああ!ヴェネツィアに出てきたヤツだ!」

 

さらにこちらには、たてがみのような角と六角形の固そうな体表を持った怪獣、『再生怪獣 サラマンドラ』が、雄叫びを上げる!

 

「ギャァアキュルルルル!」

「!あれは、バデル族のは虫怪獣!?」

 

そして地底から出現したのは、3つの首を持った全長400mはあろう巨大な白蛇、『は虫怪獣 ジャニュール三世』だ!

 

「ギャォオオオオオオ!キャキャキャッキャッキュルルル!」

 

トドメとばかりにデマーガまでもが目覚め、バリヤーの内と外が怪獣による大ピンチとなった!

 

「奴ら、怪獣を解き放ったのか!」

「いや、それだけじゃないようだぜ………」

「何、………まさか!?」

 

ジャニュール三世が3つの頭で怪獣それぞれにけん制をする中、アスカたちの脳裏にマーズの説明がよぎった。つまりあの怪獣たちは、

 

「アイツらは、チグリスフラワーのエサだというのか!」

「ああ、上質すぎるほどのな………」

「ギュウュウュウュウュ!ギュウュウュウュウュ!」

「プープルプル・プルプル、プープルプル・プルプル」

 

全員が怪獣たちの運命に戦慄している間に、マードック号にビッグライガーに加え、スフィンガーまでもが迫っていた!ビッグライガーに体当たりを仕掛けられ何とか避けたものの、スフィンガーの口から放たれた破壊光線が襲い、あわや直撃する所であった!

 

「マードック号が危ない!」

「くそう!液体窒素があれば、このバリヤーを破壊できるんだが………どういう原理かは、思い出せないけれど。」

 

アスカの言うとおり、ガギのバリヤーは液体窒素で急激に冷やすことによって原子構造が崩壊し、簡単に破壊することが出来るのだ。

 

「液体窒素なら、怪獣対策でマードック号に積んであったはずだが………」

「それを待っている余裕はないな………離れていろ!」

「バルクホルン?」

 

ビッグライガーに襲われるマードック号を見たバルクホルンはそう言うと、機関銃を背中に背負い、右拳を握って力を込めると、

 

「ずおりゃぁあっ!!」

バキィッ

「いい!?」

 

掛け声と共に、バリヤーを殴りつけ、頑丈な筈のバリヤーに大きめのヒビを作った!

 

「よし、後2、3発で通れる位の穴が開くな!」

「いや、なんつー力だよお前!?」

「君も、割と無茶苦茶だね………」

 

固有魔法である「怪力」にアスカとヒカリが若干引くが、当のバルクホルンは脱出の糸口が出来てガッツポーズだ。

 

「ギャァアキュルルルル!」

 

だがその時、アスカたちの様子に気づいたのかジャニュール三世の3つあるうちの1つの頭がこちらを向いて牙をむいた。

 

「気づかれたか!」

 

ヒカリは腰に下げた「ウルトラガン」を抜き、ジャニュール三世に照準を合わせる。倒せないにしても、時間稼ぎくらいにはなるはずだ。しかし、同じく気付いたらしいデマーガが口から火炎を発射し、バルクホルンに向かっていく!

 

「!危ない!」

「何!?」

 

咄嗟に、ヒカリとアスカはバルクホルンを突き飛ばし、火炎から守った。しかし、乗っていたホバーバイクに直撃してしまい、2人はそのまま真っ逆さまに落ちてしまった!

 

「そんな!」

「アスカーーー!」

 

シャーリーとルッキーニが慌てて飛び出そうとしたその時、まばゆい光が2人を包み込み、進行を妨げた。

 

「な、何だ!?」

 

シャーリーが驚いていると、光の中からアスカとヒカリが飛び出し、見る見るうちにその姿を変えた!

 

 

 

2人が落ちた瞬間、アスカは懐から棒状の岩のようなアイテム『リーフラッシャー』を取り出し、ヒカリは腰に着けたエメラルド色の星『ビームフラッシャー』を手にした。

 

そして、アスカがリーフラッシャーを斜めに突き出すと上部のクリスタルが飛び出し、ヒカリがビームフラッシャーを額に当てると、その姿を巨大な光の巨人へと変える!

 

 

 

 

 

「ダイナァァアアアアアアアアアアアア!!」

「ウルトラチェーーーンジ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何、だと………!?」

「あれは………!?」

 

シャーリー達3人のウィッチは、目の前で起きた事が信じられなかった。

 

アスカとヒカリが眩い光に包まれたかと思うと、その姿を大きく変化させたのだから。

 

「ギャァアアアアア!」

「アアアアアアアオオオオオオオオオ!!」

 

怪獣たちの目の前に現れたのは、1人は、銀色の身体に赤と青のラインを走らせ、胸には青く光るランプを中央に持った金色のプロテクターを着け、額には白く輝くクリスタルがある巨人―――新たな光の巨人『ウルトラマンダイナ』

 

もう1人は、赤い身体に銀色の頭と手足、胸と額には大小のエメラルド色の星型のランプ『スタースポット』と『スターシンボル』が光り、金色の目が鋭い巨人―――誰もが知っているウルトラ戦士『ウルトラマンジョーニアス』だ!

 

「アスカが、ダイナだったのか………!?」

「それに、もう1人のウルトラマン………!?」

 

『ゼヤッ!』

『ジョゥワッ!』

 

2人の正体に驚くウィッチ達であったが、ダイナとジョーニアスが構えを取ると、ガギ、グレイガス、サラマンドラ、デマーガが2人に迫る!

 

「ギシュシュゥウウウウウ!」

「ギャァアアアアア!キャキャキャッキャッキュルルルルル!」

 

ガギが両手の鞭をジョーニアスに浴びせるが、ジョーニアスは難なくつかみ取り、逆に引き寄せて腹部にパンチを1発、後退したガギはデマーガにぶつかってしまい、ガギは角を光らせて光線を、怒ったデマーガも一緒に火炎弾を発射、ジョーニアスに直撃してしまうも彼はそれを耐え、額のアストロスポットから「スタービーム」を撃ち、ガギの角は折れてしまった。

 

「キャァァァアアアアアアアゴォウッ!キャァァァアアアアアアアゴォウッ!」

「アアアアアアアオオオオオオオオオ!」

 

一方、サラマンドラが鼻先からバルカン砲でけん制し、グレイガスが口から炎を吐いてダイナを攻撃する。ダイナはそれを避けると、グレイガスの頭に手をついて側転をするかのように飛び越え、サラマンドラにかかと落としをお見舞い!さらに、グレイガスの後頭部には手刀のプレゼントだ!

 

「2人とも、強い………!」

「バルクホルン、今のうちにバリヤーを!」

「あ、ああ!」

 

しばし、2人のウルトラマンの戦いに見入っていたが、シャーリーに言われて先ほどヒビが入った箇所に攻撃を再開するバルクホルン。

 

「ギャァアキュルルルル!」

 

その時、2人のウルトラマンに気を取られていたジャニュール三世がバルクホルン達に気付き、身体に電流を迸らせて威嚇をする!

それに気づいたダイナとジョーニアスは目を合わせて頷き会うと、相手をしていたガギとグレイガスにそれぞれつかみかかり、ジョーニアスはジャイアントスイングの要領でガギを投げ飛ばし、ダイナはグレイガスに巴投げを掛けて投げると、2体の怪獣は真っすぐにジャニュール三世の3つある内の2つの頭に直撃し、巨大な白蛇は怪獣を下敷きに倒れてしまった!

 

「「ギギェエ!?」」

「ギャァアキュルルルル………!!」

 

15万トン以上あるジャニュール三世の体重に押しつぶされ、2体の怪獣は出血する程のダメージを負ってしまい、ジャニュールも無傷では済まなかった。

 

シュルシュルシュルシュル

「ギャァァキュルルルル!?」

「ギシュシュゥウウウウウ!?」

「キャァァァアアアアアアアゴォウッ!?」

『『!?』』

 

その時、怪獣達の血液に反応したのか、チグリスフラワーが怪獣達に蔦を巻き付け、その生き血を吸い始めた!見る見るうちに萎んでいき、干からびて息絶える3匹の怪獣達。そして、怪獣達の血を吸い尽くすと、周囲の吸血植物は地面に潜っていく。数泊置いてその地面が震えだし、みるみる盛り上がってきた!

 

『何だ!?』

『まさか、チグリスフラワーが成長しきったんじゃあ!?』

『何!?』

 

ダイナの予測通り、チグリスフラワーは血を十分に吸って完全に成長し、怪獣へとその姿を変えようとしているのだ。そして、地中より成長した3匹の怪獣がその姿を現した!

 

 

 

 

 

「キィィイイシャァアウ!」

「キィィイイシャァアウ!」

「キィィイイシャァアウ!」

 

 

 

 

 

腹部に巨大なチグリスフラワーを持ち、赤い角が生えたとがった顔と右手は赤い鞭、左手は鎌になったその怪獣こそ、チグリスフラワーが完全に成長した姿、

 

『宇宙大怪獣 アストロモンス』の誕生である!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




第十話、『ダイナ篇』前編です。

科学警備隊登場。「アニメ作品とのクロスなんだから、ザ☆ウルトラマン出さないと」と思い、今回登場する形となりました。『ザ☆』の名物おじいちゃん(※個人の感想です。)ヘンリー・ニシキ博士もセットです。今回はアスカ達がメインなのでヒカリ以外の出番は最初だけでしたが、次回は活躍させる予定です。

今回登場したスフィンガー、グレイガス、ビッグライガーはオリジナルの怪獣ではなく、赤い通り魔こと「レッドマン」の没怪獣です。鳴き声はそれぞれユートム、ケルビム、マジャバのアレンジという設定。なお、デマーガを捕まえたスフィンガーのシリアルナンバーの頭に19を加えると………

宇宙レジスタンス『アンドロメダの夜明け』のメンバーは、『アンドロメロス』に登場したアンドロ超戦士に由来した名前になっています。マーズがアンドロマルス、ローがアンドロウルフ(ウルフ→狼→ロー)です。ピニヤ星人も、『セブン』の没宇宙人ですね。

今回登場したシルバゴン、左肩に傷がある個体なので「スカーシルバゴン」と分類してあります。傷の位置と形状は言わずもがなw

気付いたら、第二話以上に登場怪獣が多くなっていました(汗)デマーガは『Ⅹ』でカッコよかったから、残りのメンツは『ザ☆』と『ダイナ』の怪獣で、尚且つ特徴的な怪獣を選んでいます。ガギは好きな怪獣なので、ここで退場させたのはもったいなかったですけど………
後、劇中で4大部隊と呼称していますが、本来は前回明かされた3部隊に加え「ボガール一族」、あるいは「超獣軍団」が加わります。現在はどちらも活動停止中の為、前回は数に入れていませんでしたと、後付します(汗)

次回はアストロモンス戦、そして大怪獣戦団の目論み発覚です。

では、また次回。


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第十一話 怪獣牧場の罠

 

 

 

惑星グルータス 司令施設

 

「おっと、今回は冒頭からいきなりワタシの出番か。まあ、アストロモンスが育ったし、当然の事ではあるな。」

 

司令官室のモニターで成長したアストロモンス3体を見ながらほくそ笑むゴンゴルド大佐。

 

「しかし、異世界のウルトラマンの登場には驚かされたな。しかも2人だし。」

 

モニターの映像がダイナとジョーニアスに移ったのを見て、ゴンゴルドはつぶやく。しかし、と手元のスイッチを押すと司令室の後ろにあるシャッターが開き、窓の向こうの景色が見える。窓の外は施設の内部らしく、ドーム状の広い空間が広がっていた。

 

「ワタシの可愛いアストロモンスの力を見せつければ、連中だけではなく宇宙警備隊共にも思い知らせることが出来るわけだ。そのために、火星のバラやケロニアにホオリンガ、その他諸々の植物怪獣の細胞を採取して、品種改良を施した一品なのだからな!ハーッハッハッハッハッハッ!ハーッハッハッハッハッハッ!悪役なので、意味もなく無駄に笑っております。ハーッハッハッハッハッハッ!」

 

ゴンゴルドの高笑いが、司令官室に響く。

 

ドームの中には、広いドームいっぱいの大きさもある巨大なチグリスフラワー、『チグリスマザー』が一輪、赤い花を咲かせていた。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「キィィイイシャァアウ!」

「キィィイイシャァアウ!!」

「キィィイイシャァアウ!!!」

 

「あれが、チグリスフラワーが育って生まれた怪獣…!」

 

3匹のアストロモンスが、右手の鞭を振り回しながら咆哮する。血走った眼にシャーリーが戦慄すると、新しい獲物を見つけたサラマンドラとデマーガが、アストロモンスに突っ込んで行く!

 

「アアアアアアアオオオオオオオオオ!」

「ギャォオオオオオオオ!キャキャキャッキャッキュルルルルル!!」

 

2匹の怪獣が鳴きながら突進してきたのを見ると、アストロモンスの内2匹が前に出て右手の鞭をサラマンドラとデマーガに打ち付ける!怯んだ所にアストロモンスは怪獣の首に鞭を巻き付けて引き寄せ、何と、腹部の花の中央で呑み込んでしまった!

 

「アアアアアアアアオオオオオオオオ!?!?!?」

「ギャウウウウウウウウウ!?!?!?」

「キィィイイシャァアウ!」

「キィィイイシャァアウ!!!」

「何!?」

「あわわわ!食べちゃったよ~!?」

 

怪獣が怪獣を丸呑みにするというとんでもない光景を目の当たりにして、驚きを隠せないシャーリーとルッキーニ。2匹の怪獣の声が聞こえなくなったその時、パリンッ、というガラスが割れるような音がして振り返ると、バルクホルンがガギの張ったバリアを割り、直径3m程の穴が開いていた。

 

「よし!割れたぞ!」

「ナイスだバルクホルン!」

「でも、アスカ達が………」

 

穴が開いたのは良いが、未知の怪獣3匹、しかも、相手は自分と同じ位の怪獣を捕食してしまうようなとんでもない大怪獣だ。そんなものを相手にするダイナとジョーニアスが心配になるルッキーニだが、ダイナと目があった。すると、ダイナはルッキーニ達に向けて右手を向けると親指を上げ、サムズアップをする。心配するな、という意味だろうか。それを見たルッキーニは少し心配ながらも頷き、シャーリー達と共にビッグライガーとスフィンガーに襲われるマードック号へ向かった。

 

「キィィイイシャァアアウ!!!」ポンッ

「キィィイイシャァアアウ!」ポンポンッ

 

3人を見届けたダイナの前で、サラマンドラとデマーガを丸呑みしたアストロモンス2匹は満腹とばかりに腹を叩くと、ダイナとジョーニアスに狙いをつける。もう1匹も加わると意気揚々と鞭を振り回し、ダイナとジョーニアスに突っ込んで来る。

3大怪獣対2大ウルトラマンの戦いが、今始まった!

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「―――あれが、メビウスの言っていた「異世界のウルトラマン」、それにウィッチたちか。」

 

この戦いの様子を遠くで見ていた1人の行脚僧が、笠のふちを持ちながらつぶやいた。

 

「今の所は大丈夫そうだが………お手並みを拝見させてもらおうか。」

 

 

 

 

 

その指には、獅子の顔が彫られた銀色の指輪が光っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第十一話 怪獣牧場の罠

 

宇宙大怪獣 アストロモンス

巨大宇宙植物 チグリスマザー

熔鉄怪獣 デマーガ

再生怪獣 サラマンドラ

猛毒巨虫 ビッグライガー

侵略ロボット スフィンガー

四次元宇宙人 バム星人

幻覚宇宙人 メトロン星人マーズ

水棲獣人 ピニヤ星人ロー

宇宙蝦人間 ビラ星人フローラ

 

 

 

 

 

ウルトラマンレオ 登場

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ギュウュウュウュウュウュ!」

「くそーこの虫公め!」

 

ビッグライガーの突進をギリギリでかわしたスーパーマードック2世号では、操縦桿を握るトベが悪態をついていた。先程見えた限りではウルトラマンも現れていた様子なので、自分たちがかなり危機的状況であると分かった。

更に地上からは、スフィンガーの破壊光線も放たれ、マードック号を破壊せんとしていた。

 

「プープルプル・プルプル、プープルプル・プルプル」

「ギュウュウュウュウュウュ!ギュウュウュウュウュウュ!」

「コイツら!キャップ!ベータミーで出撃を―――」

 

大柄な男性・マルメ隊員が進言しようとしたその時、ビッグライガーが何かに突き飛ばされ、マードック号から離された。

 

「何だ!?」

「キャップ………お、女の子が空を飛んで………!?」

「な、………何だぁありゃぁ!?」

 

トベが報告するが、キャップやマルメにも、マードック号の外で、空を飛ぶウサギや猫や犬の耳としっぽを生やした3人の女の子の姿は見えており、思わず素っ頓狂な声を上げるキャップ。どうやら、彼女たちに助けられたようだ。

そのうちの一人、重火器を2丁持った少女がビッグライガーの背後を取ると、銃器を逆さに持って大きく振りかぶり、

 

「ずおりゃぁああッ!!」

ゴギャンッ

「ギュウューーーーー!?」

 

グリップの部分で思いっきり頭を殴りつけた!

殴られた衝撃でビッグライガーは目を白黒させながら、きりもみ回転しながら地面に墜落、そのままピクピクと足を痙攣させていたが、しばらくすると動かなくなってしまった。

 

「プープルプル・プルプル、プープルプル・プルプル」

 

ビッグライガーがこと切れたのを確認し、スフィンガーは少女たちを標的とみなしてか腕を伸ばす攻撃を仕掛ける。しかし、マードック号に比べて小さい標的にスフィンガーの大振りな攻撃は通じず、逆に銃弾を浴びる羽目となってしまう。

それでもあきらめず、今度は破壊光線で応戦するも、1人の少女が展開させた「光る盾のような物」に防がれてしまう。更に少女の中の1人、赤い服の少女がスフィンガーの懐に高スピードで入り込み、機関銃の弾を左腕に浴びせた!何発もの弾丸を受けた左腕は徐々にダメージを蓄積させ、小さい爆発を数回繰り返して破壊された!

 

「プープルプップププププ、、、、、ピーピョーチャララー」

「今だトベ!あの腕の傷に攻撃だ!!」

「了解!!」

 

腕を破壊されたせいでエラーが起きたのか、今までとは違う電子音を鳴らしながらカクカクと動きを鈍らせるスフィンガーを見て好機とみなしたキャップがトベに命じる。トベは返事をすると、破損したスフィンガーの左腕に向けて数発のミサイルを放ち、ミサイルはスフィンガーの左半身に次々と着弾し、スフィンガーは大破して倒れこむ!

 

「プープルルルル……ピ―――――」

 

倒れたスフィンガーは電子音と共に目のランプが消え、完全に機能を停止した。

 

「よっしゃあ!」

「安心するのはまだ早いぞ!」

 

歓喜を上げるマルメを咎めるキャップ。未だ怪獣と戦うウルトラマンが心配だ。その時、マードック号のコックピットにピグが慌てて飛び込んでくる。

 

「キャップ!今、外を飛んでいる女の子から、ピグに通信が入ったんダナ!」

「何!?」

「何故マードック号ではなく、ピグに?」

「通信機の規格が違うせいなんダナ。マードック号では受信出来なかったけれど、ピグが電波を拾う事が出来たんダナ。」

「それでピッケル君、あの娘さんたちは何と言っとるんだね!?」

 

ニシキ博士がピグに聞く。尚、博士は何故かピグの事をピッケル君と呼ぶのだが、今は置いておこう。

 

「ええと、『今、ウルトラマンと怪獣の周囲にはバリアが張られていてマードック号では近づけないけれど、バリアは液体窒素で冷やせば無くなる。』って言っているんダナ。」

「バリアだと!?」

「キャップ!液体窒素なら、あの怪獣対策で丁度積み込んでありますよ!」

「よおし、バリアを解除して、ウルトラマンを援護だ!」

「「了解!」」「なんダナ!」

 

2人と1匹が返事をすると、マードック号は少女らと共にウルトラマンの元へと向かった。ニシキ博士は、外の少女たちを興味深そうに見ていた。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「キィィイイシャァアウ!」

「キィィイイシャァアウ!!」

『ジョウワ!』

 

一方、ジョーニアスは2匹のアストロモンス (以下、A、Cとそれぞれ呼称する。) を相手にしていた。アストロモンスCが鞭をジョーニアスの右腕に巻きつけて動きを封じている隙に、アストロモンスAが鎌で切りかかる!ジョーニアスが何とかかわすと、腕を巻き付けていたCがジョーニアスを引き寄せようと引っ張ってくるが、ジョーニアスは逆に引っ張って見せてAにCをぶつけた!

 

「キィィイイシャァアウ!!」

ブシャァァアアアアアッ

『!?グゥウ………!!』

 

一方のダイナは、アストロモンス(こちらはBと呼称)が腹部のチグリスフラワーから噴射される霧状の溶解液のせいでうかつに近づけず距離を取った。ダイナは手に丸鋸状のエネルギー、ダイナスラッシュを作り出すと、アストロモンスBに向けて投げつける!光のカッターはアストロモンスBの角を切り裂き、アストロモンスBは切断された痛みに悶える!

 

「キィィイイシャァアウ!!?」

ブシャァァアアアアアッ

『!』バッ

「キィィイイシャァアウ!?」

「キィィイイシャァアウ!!!?」

 

悶えたBが暴れまわり、溶解液がジョーニアスの戦う方まで飛んできた。ジョーニアスは何とか避けたものの、アストロモンスAの鞭とCの鎌を溶かしてしまった!

 

「キィィイイシャァアウ!」

「キィィイイシャァアウ!!!」

「キィィイイシャァアウ!!」

 

耐えがたい痛みに悶え、暴れだす3匹のアストロモンス。その時、スーパーマードック2世号から機雷が投下されバリアに当たる。瞬間、機雷が破裂して中に詰まった液体窒素がバリアを冷やし、バリアは崩壊した。

 

『マードック号は無事だったか。』

『こっちもさっさと終わらせようぜ!』

 

ダイナの言葉にジョーニアスは頷くと両腕をL字に構え、ダイナは腕を十字に構えると、密集する3匹のアストロモンスに光線を発射した!

 

「「「キィィイイ!?」」」

ドォオン!

 

ジョーニアスの「プラニウム光線」とダイナの「ソルジェント光線」を頭部に受けて、アストロモンス達の頭は吹き飛んで動かなくなった!

 

「やったー!」

「倒したか………」

「やれやれ、俺たちが心配するまでもなかったなー!」

 

上空ではウィッチ達と科学警備隊の面々が動かなくなったアストロモンスを見て歓喜を上げる。

 

『………?』

『どうした、ダイナ?』

「アスカ……?」

 

しかし、ダイナは頭のない立ったままアストロモンスの死体に違和感を覚える。

不信に思い、ダイナがアストロモンスの死体に手を掛けると、

 

 

 

グニャァリ

 

 

 

『!?』

「なに!?」

「あれは………抜け殻!?」

 

アストロモンスの死体は、3つともグニャリと地面に落ちる。それに中身はなく、脱皮した後の抜け殻であったのだ!

更に、密集していて気が付かなかったが、3匹の怪獣の足元には怪獣が通るのに丁度いいくらいの大きな穴が開いていた。

 

「光線の当たる寸前に脱皮して、地中に逃れたというのか!?」

「あの一瞬でそんな芸当を!?」

 

アストロモンスの行動に舌を巻く一同。という事は、アストロモンスは今現在地底でこちらの動きを見ているのだろうか。

2人のウルトラマンは背中合わせになると地面に意識を集中させ、上空のマードック号やウィッチ達も警戒する。

その時、2人の近くの地面が盛り上がったかと思うと、2本の触手が飛び出しジョーニアスを襲う!

 

「ヒカ…ウルトラマン!」

『!!』

 

マルメの声に弾かれ、ジョーニアスは振り返り2本の触手を掴む!

更に、反対側の地面も盛り上がると、中から火炎放射が噴出し、ダイナはギリギリで回避した!

 

「キィィイイシャァアウ!!」

「キィィイイシャァアウ!!!」

 

そして、地面から咆哮と共に2匹のアストロモンスが出てきた。だが、その姿は大きく変わっていた。

 

ジョーニアスに鞭を喰らわせた個体は両手が平く、2本の爪の間から触手を鞭のように伸ばし、頭の角は稲妻型に歪んでいる。

 

もう1匹は、背中に翼や炎を思わせるヒレを生やし、両手は鋭い爪の5本指となっていた。

 

「あの怪獣の姿は………!?」

「さっき血を吸われた怪獣に似ているぞ!?」

 

そう、2匹のアストロモンスの姿は、先ほど生き血を吸いつくされた怪獣、ガギとグレイガスのものによく似ていた。その時、ガギに似た個体(アストロモンスB)の角が光ったかと思うと、触手を掴んだままのジョーニアスに向けて赤い光線が発射され、ジョーニアスの胸に当たってしまう!

 

『ジョーニアス!』

「キィィイイシャァアウ!!!」

ゴォオウッ

 

ジョーニアスがやられた事に驚くダイナであったが、もう1体のアストロモンス(アストロモンスC)が炎を吐き出す!ダイナは咄嗟にバリアを張って防御するが、アストロモンスCの炎は止まらず身動きが取れない。

 

「ウルトラマンを援護だ!」

「了解!」

「我らも行くぞ!」

「「了解!!」」

 

キャップとバルクホルンの号令に各々が返事をすると、宇宙大怪獣に向けて降下をしていく。だが、再度地面が爆ぜると地中から最後の1匹が飛び出して行く手を遮った!

 

「キィィイイシャァアウ!」「キィィイイシャァアウ!」「キィィイイシャァアウ!」

 

やはりこの個体(アストロモンスA)も血を吸いつくされたジャニュール三世のように、腕の代わりに3つの長い首を、足の代わりに蛇を思わせる長い胴体と2つに分かれた尾を持っており、3つの首それぞれが威嚇の鳴き声を上げていた。

 

「コイツも出たか………!」

「コイツは私が引き付ける!ダイナたちの方へ!」

「ああ、シャーリー!?」

 

シャーリーはそう言うと、アストロモンスAに機関銃の弾丸を浴びせながら猛スピードで周囲を飛び始める。アストロモンスAはシャーリーに狙いを定め口から火を吐くが、シャーリーは急上昇して回避をした。

 

「ふう、この高さなら、奴の攻撃は来ないな。このままヒット・アンド・アウェイで………」

 

シャーリーが高い位置からアストロモンスAを見下ろしたその時、信じられないことが起きた。

 

「キィィイイシャァアウ!」「キィィイイシャァアウ!」「キィィイイシャァアウ!」

「……んなぁあ!!??」

 

何と、アストロモンスAがこちらまで「飛んでくる」ではないか!こちらに突っ込んでくるアストロモンスAを咄嗟に避けると、アストロモンスAはシャーリーを通り過ぎて上昇し、方向転換して再度突進を仕掛けてくる。

 

驚くべきことにこの宇宙大怪獣は、翼や飛膜の類を持たないと言うのにマッハ3の速度で飛行することができるのだ。蛇のような姿に変わった今でも、その飛行能力が残っていたのである。

 

アストロモンスAは蛇のように尾をくねらせながら飛び回り、逃げるシャーリーを追跡していく。いくらスピード自慢のシャーリーであっても、最高速度マッハ3のアストロモンスにはかなわない。

 

「シャーリーが危ない!」

「トベ!ミサイルだ!!」

「了解!!」

 

シャーリーの危機にキャップが命じると、スーパーマードック号からミサイルがアストロモンスAに向けて発射される。しかし、放たれたミサイルはアストロモンスAの手前10数メートルの地点で爆発してしまい、アストロモンスAはそのままシャーリーを追って飛び去ってしまった。

 

「何だ、今のは!?」

 

マルメが驚きの声を上げる。だが、バルクホルンはミサイルが「見えない壁」に当たって爆発したのを見ていた。

 

「まさか、さっきのバリアか!?」

「ええ!?でもでも、さっきのバリアはあの飛行機が消したんじゃないの!?」

「そのハズだが……まさか!?」

 

バルクホルンは、ジョーニアスと戦うアストロモンスBを見た。あの個体は、先ほどのバリアを発生させていた怪獣ガギに似た外見をしていた。だがもしも、あの怪獣が外見だけではなく、能力までそのままなのだとしたら?

 

「まさか、あの怪獣が再度バリアを!?」

「ええー!?」

 

ルッキーニが驚きの声を上げるが、そうとしか考えられなかった。ダイナやジョーニアスが何とかしようとしているものの、2匹のアストロモンスがそれを許さない。そうこうしている内に、アストロモンスAがシャーリーの目の前に回り込み、その大きな(あぎと)を開く。

 

「しまっ………」

「シャーリー!!」

 

ルッキーニの悲痛な叫びが響く。そして、アストロモンスAの口から炎が放たれようとしたその時―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『イィヤアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!』

ゴギャアッ

「ガ………!?!?!?」

「キィィイイシャァア!?」

 

「………ぇ?」

 

 

 

 

 

突如、空から「赤い影」が飛んできたかと思うとアストロモンスAの中央の首が大きくひん曲がり、そのまま赤い影に押し込まれるように地面に向けて急降下していく!

 

『あれは………!?』

「!ルッキーニ!バリアから離れろ!!」

「え?」

 

こちらに向かってくるアストロモンスAを見て、バルクホルンが叫ぶ。そして、赤い影はみるみる内にこちらに近づいてくる。そして、

 

『ハィィイイイイイイイイイイイヤアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!』

「ギ、キィィイイ………」

ゴシャァアッ

 

そのままバリアに激突すると、バリアを突き破って地面に激突!土煙をもうもうと巻き上げ、周囲に衝撃波を発生させた。

 

『グゥウ………!?』

『今のは!?』

「キィィイイシャァアウ!!?」

「キィィイイシャァアウ!!!?」

 

その場にいた全員が衝撃波に動きを止める。土煙が晴れてくると、そこには中央の首が千切れて倒れるアストロモンスAのそばに立つ、1人の巨人がたっていた。

 

獅子の鬣の如くさかだった銀色の頭に鋭い眼光を放つ金の瞳、青いカラータイマーの周りを銀色のプロテクターが包み、腹部には銀色の文字が刻まれ、腕には銀のブレスレットが1対、左二の腕には金色の腕輪を着けた戦士―――赤き獅子の王子、『ウルトラマンレオ』だ!

 

「ウ、ウルトラマン………!?」

「ウルトラマンが、3人も………!」

 

3人目のウルトラマンの出現に驚く一同。

 

「キィィイイシャァアウ!!!」

「キィィイイシャァアウ!!」

 

その時、驚いて動きの止まっていたアストロモンスBとCが、再度ダイナとジョーニアスに襲い掛かる!

 

「キィィイイシャァアウ!」「キィィイイシャァアウ!」

『む!?』

 

更に、レオの背後に倒れていたアストロモンスAも起き上がり、左右の首がレオに吠え掛かる。どうやら、首を1本失っても平気なようだ。

 

その時、ダイナの胸のカラータイマーが赤く点滅し、ピコン、ピコン、という音を鳴らし始めた。

 

ウルトラマンダイナが活動できるのは、わずか3分間のみである。胸のカラータイマーの光が消えると、ダイナは二度と立ち上がることはできないのだ。

 

『ハァッ!』

「!ダイナが!?」

 

限界が近い事を悟ったダイナが胸の前で腕を交差させると、額のクリスタルが輝きを放つ。

 

『フゥゥウウウウウ………ダァアッ!』

 

輝きが収まると、銀色の身体に青いラインを描き、額のクリスタルも青く光らせる、青いダイナがそこにいた。

 

「ヴェネツィアの時とは、また別の姿だ………」

「今度は青くなった!」

「キィィイイシャァアウ!!!」

 

ダイナが姿を変えたその時、上空のルッキーニ達に気づいたらしいアストロモンスCが、炎を吐き出そうとしていた。ダイナはそれに気づくと飛び上がり、体を丸めて回転しながらアストロモンスCの目の前に立ちふさがる。突如現れたダイナにアストロモンスCは驚くも、鋭い5本の爪で斬りかかる。

 

『ハッ!』

「!?」

『デュア!デヤァッ!』

 

しかし、ダイナは高速で回避、なおも追おうとするアストロモンスCであったが、ダイナはアストロモンスCの周囲を目にも止まらないスピードで動き回り、早すぎて追うことが出来ない。アストロモンスCはダイナの動きを追っている内に、フラフラと目を回してしまった。

 

『ハッ!フゥゥウウ………』

「キ、キィィイイシャァアウ!!!?」

 

ダイナはアストロモンスCが目を回したのを見ると、額に手を当てて気を集中させる。すると、見る見る内にアストロモンスCは宙に浮いていくではないか!慌てたアストロモンスCはジタバタと手足を動かすが、そんな事をして元の地面に戻る訳がない。

 

「キィィイイシャァアウ!!!」

 

それならばと、アストロモンスCは口から火炎を放つ!だが、ダイナは右手の平で火炎を受け止めると、そのまま炎を吸収した!

 

『フゥゥウウウウ………ダァアアッ!!』

 

そのまま腕を突き出すと、アストロモンスCに向けて受け止めた炎を撃ち返した!

ダイナの必殺技の1つ、超衝撃波・『レボリウムウェーブ(リバースバージョン)』である!

 

ゴォォオオオオオオ

「キィィイイシャァアウ!!!??」

ドォオオオン

 

撃ち返された炎に焼かれ、アストロモンスCは断末魔と共に爆発四散した!

 

「キィィイイシャァアウ!!」

『ム!?』

 

一方のジョーニアスも、胸のスターシンボルが黄色に変わり、エネルギーの限界が近づいていた。ジョーニアスはアストロモンスBの鞭攻撃をジャンプで避けると、そのままの勢いで飛び蹴りを食らわせ、額の角をへし折った。アストロモンスBが悶えるが、ジョーニアスは隙を与えず首筋に数発大振りの肘打ちを食らわせ、更に蹴り飛ばした。

 

「キィィイイシャァアウ!!」

 

蹴り飛ばされたアストロモンスBが起き上がろうとするが、ジョーニアスは再度腕をL字に組んで右腕にエネルギーを溜め、溜まったエネルギー弾型の『プラニウム光線』を宇宙大怪獣に目がけて投げつけた!

 

「キィィイイシャァアウ!!?」

ドゴォオン

 

破壊力に特化したタイプのプラニウム光線を受け、アストロモンスBは胴体から爆散した!

 

「キィィイイシャァアウ!」「キィィイイシャァアウ!」

『フッ、タァアッ!!』

 

そしてこちらは、大蛇型のアストロモンスAと対峙するウルトラマンレオ。左右の長い首から繰り出される噛みつき攻撃をレオは腕で正確に払い、逆に首と胴にダメージを与える。アストロモンスAが後退するがレオは飛び上がると同時に足で踏みつけて背後にまわり、背中に蹴りを喰らわせた。

 

「キィィイイシャァアウ!」「キィィイイシャァアウ!」

『タァァアアアア!!』

 

蹴られた怒りからか、大きな咆哮と共に再度左右同時に噛みつきにかかるが、レオは腕で弾き返し、両腕にエネルギーを集中させると流れるように手刀を素早く幾度も喰らわせる『流れ斬りの技』を放ち、アストロモンスAの首がすっ飛んだ!

 

「キ………」「シャ………」

 

首を全て切断されてはさしもの宇宙大怪獣も無事な筈はなく、絶命したアストロモンスAは、地面に伏したのであった。

 

「やった!」

「倒したか………!」

 

3匹の宇宙大怪獣が倒されたのを見て、安堵の域を吐く一同。しかし、ここが敵地である以上、ゆっくりはしていられない。既に、遠くの方から数十人のバム星人のホバーバイク部隊が向かってきていた。

 

[君たち、下がっていてくれ!]

「!?マーズ!?」

 

その時、彼女たちの通信機にメトロン星人マーズの声が届く。一体、いつの間に通信機の周波数を調べたのだろうか?そう思っていると、バム星人たちの手前から赤い煙幕が発生し、星人たちはその中へ突っ込んでいった。

 

「うわぷ!?」「な、何だこの煙は!?」「おい、みんな大丈夫か………」

 

バム星人たちが混乱しているが、しばらくすると声が聞こえなくなる。そして、更に少し経つと………

 

「………ガアアアアアアアアアアア!!」「うわああああああああああああああ!!」「ウバッシャァアアアアアアアアアアアアア!!」

「お、おいお前ら……ぐわあ!?」「やめろお前ら………ギャアア!?」

 

バム星人たちは奇声を上げながら、手にした銃を乱射し始めた!正気の星人たちは止めようとするも、発射された銃弾の餌食となり、次々と倒れていく。

 

「何が起こって………?」

「宇宙ケシの実を利用した、特性の幻影煙幕だ。」

「マーズ!」

 

声がしたので振り返ると、いつの間にかマーズとローの2人が浮遊する円盤型の乗り物に乗っていた。

 

「今のうちに、私についてきてくれ。我々のアジトまで送ろう。」

「分かった!」

「あっちの飛行機の方々も。」

 

そういうと、2人の乗った乗り物は発進し、3人とマードック号もついていく。一方のウルトラマン達も空に飛びあがると、光になって消えて行った。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「ええい、何やっているんだお前らは!!」

 

数時間後、惑星グルータスに夜が訪れた頃、司令施設でゴンゴルド大佐は尖った槍状の右手を振るって、目の前のバム星人数名に怒鳴っていた。

 

「も、申し訳ありません!」

「全く、レジスタンス共が想像以上に厄介な上に、地球人や宇宙警備隊まで現れて混乱しているのは分かるが、だからってこんな強制的人員削減やらかすのはどうなんだよ!」

 

頭を掻きながら文句を言うゴンゴルド。カウント達提督の「計画」が迫っているため、アストロモンスの『納品』を急かされているのだ。ただでさえ人員は限られているというのに、これ以上減ってしまっては支障が出る。

 

「ウルトラマンレオや未知の戦士2人が現れたという事は、連中はこれを機に明日にでもここに乗り込んでくるかもしれん。他のウルトラ兄弟もいずれ来るだろう。そうなったら元も子もない。」

「大佐………」

 

ゴンゴルドは拳を握りしめる。

 

「………いざとなったら、チグリスマザーを活性化させて、連中に当てる。命の惜しい連中は、今のうちに母星に帰るよう、伝えておけ。」

「大佐!」「そのような事………!」

「ワタシにそこまでの忠誠を誓う必要はない。命がありゃあ、後は何とでもなるからな。」

『大佐ーーー!』

 

ゴンゴルドなりの優しさに、バム星人たちは叫んだのであった。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

同じ頃、惑星グルータスのとある岩山

 

「それにしてもマーズ、ずいぶん大勢のお客さんを連れてきたわね?」

「いやあ、私もここまで大所帯になるとは思っていなかったよ。」

 

そう言うのは、マーズ達の仲間であるフローラと名乗る宇宙人であった。エビを思わせる平たい顔と細長い胴体を持ったビラ星人の彼女は、細い脚を動かしながらアスカ達を出迎えてくれた。

 

「初めまして、『科学警備隊』隊長のゴンドウ大助だ。」

「マルメ敬だ。」

「トベ博明です。」

「ヒカリ超一郎です。」

「ピグなんダナ。あっちにいるのはニシキ博士なんダナ。」

「ん、どうも。」

「アスカ・シンです。」

「ゲルトルート・バルクホルン大尉であります。」

「シャーロット・E・イェーガー大尉です。」

「フランチェスカ・ルッキーニ少尉でーす。」

 

ヘルメットを脇に持ち、自己紹介をする科学警備隊とアスカ達。なお、隅に置かれたストライカーに興味津々であるニシキ博士は、こちらをちらりと見て適当に返事をした。

 

「宇宙警備隊所属、ウルトラマンレオ。この姿の時は、「おゝとりゲン」と呼んでくれ。」

 

最後に、黒いゆったりした服の上からブラウンの羽織を着た初老の男性、おゝとりゲンが、そう名乗った。

 

「さて君たち、改めてようこそ、宇宙レジスタンス「アンドロメダの夜明け」のアジトへ。」

「ああ。」

「レジスタンスのわりに、結構装備は充実しているみたいだな。だけど………」

 

岩山の洞窟を利用したと思わしきアジトは意外と広く、スーパーマードック2世号が収容されても十分な広さの滑走路に加え武器弾薬の入った木箱や赤い顔のようなロゴの入った燃料のドラム缶、食料といった物資が置かれ、通信機やレーダーの類も見られる。しかし、何故かそれらの中央には六畳一間の畳と丸いちゃぶ台、箪笥に冷蔵庫までが置かれており、非常にシュールな雰囲気を醸し出していた。

 

「………何でアジトのど真ん中に、昔懐かしい昭和な感じのスペースがあるんだ?」

「いやなに、昔地球に行った同胞が持ち帰った地球の文化が流行してな。いつの間にか、母星に根付いてしまったのだよ。」

「わざわざ持ってきたのか………」

「地球の文化に馴染みすぎだろ、お前ら。」

「でも、タタミって落ち着くよなー」

「分かるわー」

 

畳に腰掛けながら言うローとフローラに呆れながらも(ビラ星人である彼女が座っているかどうかを判別するのは難しいが)、マーズ達に続き靴を脱いで畳に上がるアスカ達

 

「いやあお待たせ。なかなか興味深い機械だよ、ありゃあ。」

「今、お茶を出すよ。」

 

ニシキ博士もやって来ると、マーズは冷蔵庫を開けて人数分の缶の飲み物を出した。

 

「ほい、眼兎龍(めとろん)(ちゃ)。あ、味と成分は、地球のお茶とそんなに変わらないよ。」

「どうも………」

 

メトロン星人を模したと思わしき派手な色に『眼兎龍茶』と書かれたお茶の缶に戸惑いながらも、プルタブを開けて恐る恐る一口飲んでみる地球人一同。

 

(………あ、普通においしい。)

 

全員、そう思った。

 

「さて、一息ついた所で、お互いに情報交換をしようではないか。」

 

マーズが、ちゃぶ台の前に胡坐をかいて切り出した。

宇宙人とちゃぶ台、妙に親和性の高い組み合わせだと全員が感じた。

 

 

 

 

 

「―――なるほど、異世界のウルトラマンにウィッチか………」

「どうやら、君たちの世界と我々の世界とでは、異なった歴史の歩み方をしているようだな。」

「確かに……U40という惑星に住むウルトラマンの話なんて、聞いたこともないな……」

 

お互いの話――U40の事、ウィッチやネウロイの事、グランスフィアの事、等――を聞いて、何名かがこの「M78星雲 光の国」のある世界とは別の次元世界の出身である事が確認された。

 

「しかし、我々はあのゲートを起動させれば元のU40のある世界に帰れるが、君たちはそうはいかないのだろう?」

 

トベがアスカやバルクホルンに聞くと、アスカが「まあな。」と返事をする。

 

「ま、俺は元々色んな次元を流れているから、元の世界にすぐに帰ろうとは思ってないけどな。」

「何じゃキミ、迷子か。」

 

気に入ったのか、3本目の眼兎龍茶に口を付けながら言うニシキ博士に、ずっこけそうになるアスカ。

 

「………ま、あながち間違ってはいないけど………」

「まあどちらにしろ、そのなんとかいうヤツらを何とかしない事には、この星から脱出する事は不可能じゃな。」

 

眼兎龍茶の缶をちゃぶ台に置き、そう決定づける博士。ゴンドウキャップも、同じ意見であったのか頷いた。すると、マーズが大丈夫だと身を乗り出した。

 

「こうして宇宙警備隊が来てくれて、更に偶然とはいえウルトラマンが3人もいるのだ。それに、あのアストロモンスも、これ以上増えないようにする方法も見つかっている。」

「そうなのか?」

「ああ。先程、ローが敵地に潜入して手に入れた情報だ。実をいうと、ローには一昨日から敵の施設に潜入してもらい、情報を集めてもらっていたんだ。」

 

マーズの説明にそうなのか、と一同が頷いていると、ふと、シャーリーは気づいた。

 

「もしかして、あの時滝壺から出てきたのって?」

「ああ、あの場所でマーズと落ち合う手筈だったんだ。思わぬ攻撃を受けたけどね………」

「あー………何か、ゴメン。」

 

気まずそうに謝るシャーリーに、ローはいいんだよ、と返す。マーズは、話を続けた。

 

「ローの話によれば、奴らの施設の中に『チグリスマザー』と呼ばれるチグリスフラワーの母体が存在するそうだ。それを破壊できれば、この惑星内のチグリスフラワーを一挙に駆除できるわけだ。」

「母体か………」

 

マーズの話を聞いて呟くバルクホルン。今度は、ゲンが口を開いた。

 

「既に他のウルトラ兄弟にもグルータスの状況は伝わっている。明日にでも到着するだろうが、それを待たずに施設に乗り込もう。」

「ああ。その為の「秘密兵器」もある。今日の所は明日の準備をして、ゆっくり休もうではないか。」

 

マーズがそう締めて、ちゃぶ台を囲んだ会議はお開きとなった。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「では、宮藤や少佐たちは、地球に!?」

「ああ。私の仲間で、ウルトラ兄弟の一員でもあるメビウスと、地球の防衛チームと共にいる。」

「芳佳たちも無事だったんだー!!」

「よかったな、お仲間が無事で。」

 

少しして、ゲンから地球で501のメンバーが保護されている事を聞き、安堵の息を吐くバルクホルンとルッキーニ。ゲンは地球にいるメビウスからウィッチの事を聞いており、科学警備隊ほど驚いてはいなかったのだ。

 

「うーむ、しかし不思議だ。ここまで機械がぎっちり詰まっているんじゃあ、足何て入らないぞ?」

「おーい、ウサギのお嬢さん、ここは何の機能があるんじゃ?」

「ああ、そこは魔力フィールドの発生装置で、そこから足を異空間に移すんだよ。」

「なるほど、それでか………」

 

一方のシャーリーは、トベとニシキ博士に頼まれてストライカーユニットのハッチを開き、構造の解説をしていた。なお、ニシキ博士の呼び名は特に気にしていないらしい。

ふと、ヒカリがアスカに気になったことを聞く

 

「しかしアスカ君、ダイナの姿が変わったのには驚いたよ。」

「あ、そういえばそうだな。」

「ヴェネツィアでは、赤くなっていたよね?」

 

バルクホルンとルッキーニも、思い出したように声を上げた。

 

「タイプチェンジの事か。」

「タイプチェンジ?そんなものがあるのか?」

 

アスカが何てことないように答えると、ゲンが聞き返した。

彼もまた、ダイナの姿が変わった事は『光の国』のウルトラマンにはない能力であるため、気になっていたのだ。『光の国』で一番近いのは、メビウスがナイトブレスを使って変わる「メビウスブレイブ」や、GUYSの仲間との絆で生まれた「バーニングブレイブ」、そしてGUYSとウルトラマンヒカリと合体した「フェニックスブレイブ」であろうか。タロウの「ウルトラオーバーラッピング」や「スーパーウルトラマン」は、少し違うだろう。

 

「ああ。俺や、俺の世界にいたもう1人のウルトラマン、『ティガ』は能力をある方向に特化させた形態に変わることが出来るんだよ。」

 

ダイナの場合、基本形態の「フラッシュタイプ」

パワーに秀でた赤い「ストロングタイプ」

それに、スピードと超能力が得意な青い「ミラクルタイプ」の3つの形態があるのだ。

 

「すると、ヴェネツィアで見せたものがストロングで、先程の戦闘で変わったのがミラクル、という事か。」

「なるほど、戦闘に合わせて自由に形態を変えるという事か。」

「へぇー、便利だねー!」

 

アスカの説明に頷く一同。するとアスカは、

 

「いや、そんなに便利ってワケじゃないんだよなぁ~」

「え?」

「ミラクルかストロングのどちらかに変わると、フラッシュ以外のもう一方に変わる事は出来ないんだ。だから、タイプチェンジを間違えてピンチになった事も、何回かあってさぁ………」

「そうなんだー」

「うーむ、一長一短といった所だな………」

 

ダイナのタイプチェンジの難しさに、バルクホルンはそう呟く。その時、シャーリーと一緒だったニシキ博士が、声を掛けてきた。

 

「おーい、黒ヒョウのお嬢ちゃん!君のストライカーとウサギのお嬢さんのとを見比べさせてくれんかのー!?」

「え?うん、いいよー!」

 

そう言って、博士の元へと駆けていくルッキーニ。博士のウィッチ達の呼び名は使い魔から来ているのだろうと思うバルクホルン。すると博士は、

 

「ああ、後で力持ちのお嬢さんのも、見せてくれんかの?」

「私だけ何か違わないか!?」

 

自分の呼び名があんまりであった為、思わず叫ぶバルクホルン。アスカは口に手を当てて笑いをこらえているが、シャーリーとルッキーニはニヤニヤ笑っていた為、バルクホルンはキッと睨み付けた。

気にするな、と笑いかけるのは、ピグと一緒に武器の積み込みをしていたマルメであった。

 

「博士は、怪獣とウルトラマンの名前しか、ちゃんと呼ばないんだよ。」

「そうそう。ピグやトベ隊員が何回も違うって言っているのに、ぜんぜん直してくれないんダナ。気にしないで勝手に呼ばせておけばいいんダナ、やっぱし。」

「けどマルメさん、いくらなんでも女の子に力持ちは無いと思いますよ?」

 

ぐぬぬ、と押し黙るバルクホルンをフォローするヒカリ。すると、マーズとゴンドウがアスカの元へやって来た。

 

「アスカ君、ちょっと来てくれないかい?」

「ん?俺?」

「ああ。お前さんに、聞きたいことがあってな。」

 

 

 

 

 

ゴンドウとマーズに連れられ、アスカは滑走路の更に奥へと案内された。

 

「先ほど言った「秘密兵器」についてなのだが、君のその「スーパーGUTS」のロゴが気になっていてね。実は、それと全く同じマークを見たことがあるんだ。」

「このマークを?」

 

アスカは、自身の来ているユニフォームの左腕に刻まれたマーク―――十字にSの上からGUTSと描かれたスーパーGUTSの紋章を見た。

 

「この惑星に来る途中の空域に、地球製と思わしき戦闘機を見つけたんだ。その機体に、そのマークが描かれていたのだよ。」

「なんだって?」

「その機体に搭載された武器が強力でね。それならば連中を一網打尽にできると思っているんだ。」

 

そう言うと、マーズは滑走路の奥のスペースにある、大きなシートが被せられた物の前に立ち、シートの端を掴んだ。

 

「それが、この戦闘機だ。」

 

マーズがシートを引っ張ると、シートに隠されていた物が姿を現した。

 

「これは………!?」

 

銀色の三角形のボディにエンジンを積んだカナード翼、赤いラインを引き、前翼に装備された熱線砲『ネオジーク』が輝く戦闘機を見て、アスカは驚いて声が出なかった。

 

「α………スペリオル………!!」

 

かつての愛機―――ガッツイーグルαスペリオル号が、そこにあった。

 

 

 

 

 

つづく




第十一話、『ダイナ篇』中編です。

アストロモンスは、血を吸った怪獣の能力を得るように品種改良されていました。前回血を吸われた怪獣は、実は外見及び能力で変化が分かりやすいものを選んでいました。同じ怪獣で腕などの形状がそれぞれで違うのは、シードラゴン(ショッカー怪人)みたいですね。

レオこと、おゝとりゲン登場。アストロモンスA戦は、ツルク星人戦を意識しています。

ゴンゴルド大佐は千葉繁さんの声の、というか千葉トロンをリスペクトしています(笑)

ビラ星人フローラ登場。人型以外の宇宙人も入れたかったけれど、チブル星人とクール星人の出番は決めてあるのでこのチョイス。名前はもちろんアンドロフロルから。

ニシキ博士の呼び名は、バルクホルン以外は使い魔からそのまま。何気にルッキーニの使い魔が黒ヒョウであると気づいている辺り、博士が侮れない人物であると思います。

αスペリオル号登場。これでファイターEX、テックスピナー1号と併せて、主人公機が全員分登場しました。何でヴェネツィアの時は乗っていなかったかは、次回説明します。

次回は、ゴンゴルド大佐の元に殴り込みです。お楽しみに。

では、また次回。


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第十二話 ふたつの再会

 

 

 

遡る事、数週間前―――

 

 

 

異次元間をガッツイーグルαスペリオル号で移動していたアスカ・シンは、不気味な声を聴いた。

 

―――フッフッフッフッフッ

 

「誰だ!?」

 

―――時は満ちた。我らの復活は近い!

 

「復活だと………!?」

 

一体何の事だろうか。アスカが疑問に思ったその時、αスペリオル号を強い衝撃波が襲い、コントロールが利かなくなってしまう。

 

「うわあああああああああーーー!?」

 

衝撃波できりもみ回転をするαスペリオル号内で、アスカは落下する感覚を感じながら悲鳴を上げる。間もなくして、彼は意識を手放した………

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

そして現在―――

 

「その後、気が付いたら別の次元にいて『Mydo(マイド)』って組織に助けられていたんだけど、どうやらそこに着く前にスペリオル号から放り出されていたみたいでさ。その世界のどこを探しても見つからなかったんだ。」

「それが、この世界に流れ着いていた訳か。」

 

αスペリオル号を見上げながら、そう説明するアスカ。すると、あごに手を当てて聞いていたゴンドウキャップが、アスカに聞いた。

 

「しかしお前さん、その後どうやって次元超えていたんだ?」

「ああ。次元の穴の跡を見つけて、そこにエネルギーを当てて開いていたんだ。ひょっとしたら、開けると思ってさ。で、その世界を出てから、次に出たのがシャーリー達の世界のヴェネツィアだったんだ。」

「なるほどな。お前さんならその内、自由に次元を越えられるかもな。」

 

納得したように頷きながら、ゴンドウはそう言った。

 

「けれど、コイツに搭載された「スパークボンバー」なら、連中を一網打尽に出来る事は確かだな。あまり使ったことはないけれど………」

「このαスペリオル号は、君に返却しよう。地球製とはいえ、出来る限りの整備は出来ているよ。」

「ありがとう。あいつらを倒したら、これでシャーリー達と地球に向かおう。」

 

そう言って、αスペリオルの胴体を触るアスカ。それを聞いて、ゴンドウは聞き返した。

 

「ん?こっから地球まで300光年離れているんだろう?そう簡単に着けるとは到底思えんが………?」

「コイツをはじめとしたガッツイーグルには、『ネオマキシマ・オーバードライブ』って言うワープ航法エンジンが搭載されているんだ。地球から火星まで1時間で行けるし、太陽系なんて数時間で飛び出せるぜ。」

「そんなぶっ飛んだ物があるのか!」

 

アスカが説明した時、背後から声がした。振り返ると、シャーリー達3人のウィッチが、物珍しそうにαスペリオル号を見上げていた。

 

「すごーい!これがアスカの乗ってた飛行機なんだー!!」

「先程の話を聞くと、この戦闘機は単体で宇宙空間をも飛行できるのか……」

「へぇー、随分と進んでいるんだなーアスカの世界は!」

 

αスペリオルを見ながら各々が感想を漏らす。3人が見ていたことに驚きながらも、アスカは自慢げに話し始めた。

 

「ああ。オレのいた世界では、人類が宇宙進出を果たして更に先を目指す『ネオフロンティア』時代に入っていたんだ。ネオマキシマは、人類が「更に前へ進む」ための、技術と言っていいだろう。」

「更に前へ………か。」

「シャーリー達の世界は、非常に困難な時代なのかもしれない。けれど、困難を乗り越えた先には、新しい時代が待っているんだ。」

 

アスカは、遠い日を思い出すかのようにαスペリオル号を見上げながら言う。

 

 

 

ひとつの嬉しい再会に、目頭が少し熱くなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第十二話 ふたつの再会

 

超宇宙合成獣 アストロモンス・ギガ

巨大宇宙植物 チグリスマザー

宇宙大怪獣 アストロモンス

侵略ロボット スフィンガー

目つぶし星人 カタン星人

四次元宇宙人 バム星人

幻覚宇宙人 メトロン星人マーズ

水棲獣人 ピニヤ星人ロー

宇宙蝦人間 ビラ星人フローラ

 

 

 

 

 

ウルトラマンタロウ

ウルトラマン80  登場

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、惑星グルータスの広い森林のど真ん中に建った複数の巨大なドームと塔で構成された司令施設の周囲に、怪獣の鳴き声が木霊していた。

 

「キィィイイシャアウ!」「キィィイイシャァアウ!」「キィィイイシャアアアウ!」

 

鳴き声を上げるのは、数十体のアストロモンスである。しかし、その姿は様々であった。

恐竜のような形状の巨大な頭を持った個体がいたかと思えば頭に巨大な刃を思わせる一本角を持った個体、手足が無く頭が下にあり背中を赤いとげで覆い上部に2本の鞭を持った個体、虫のような透明な翅と両手が鎌になった個体に手足や頭に炎の様な『ヒレ』を持った個体、そしてクワガタのような上あごと虫の腹に鋭い爪を持った個体等々、様々な形状のアストロモンスがひしめき合っていた。

 

「カウント提督より受注された個数には足りませんが、これだけいればウルトラ兄弟に十分対抗できるかと。」

「ご苦労。後はコイツらをカウントの所に送れば、こんな惑星とはバイバイキーン!と言う訳だな。いくら土壌が豊かだからって、こんなヤブ蚊や虻の多い星なんて、もうウンザリだわい。」

 

副官のバム星人から報告を聞き、ふんと鼻を鳴らすゴンゴルド大佐。割と虫に刺されやすいのかもしれない。

 

「まあ、背中を蚊に刺されてもこの手なら孫の手いらずなんだがね。」

「それと、別次元のナックル星人さんは今日中に事が済ませると連絡があったそうで。」

「あー、結構結構。あいつの自慢話なんて、聞きたくもない。それより、輸送船の到着は、いつ位よ?ダダ時間で答えてちょ。」

「え?えーと、ダダ時間だと、552頃になるかと………」

「うん、ありがと。」

 

突然のムチャブリに何とか答えるバム星人。周囲のアストロモンスはどうやら輸送待ちであると同時に、レジスタンス達への防衛線であるようだ。

 

「兎に角、さっさと『出荷』するぞ。レジスタンスや地球人にこれ以上邪魔をされたら………」

 

 

 

ドッガァァアアアアアアン

 

 

 

ゴンゴルドが言いかけたその時、突然爆発音と衝撃が襲い、ゴンゴルドは椅子ごと倒れ込んでしまった。

 

「何事だぁあッ!!」

「大変です大佐!レジスタンスと地球人が、攻め込んで来ました!!」

「何だとぉお!!」

 

司令室に入ってきたバム星人の報告に、ゴンゴルドは思わず素っ頓狂な声で聴き返した。

モニターのスイッチを入れると、昨日確認された地球人の戦闘機とウィッチ達に加え、銀色の全翼機が攻撃を仕掛けて来ていた。

 

「奴らめ、思った以上に早かったな………緊急事態だ!総員戦闘態勢!!」

「「はっ!!」」

 

ゴンゴルドの命令に、2人のバム星人が敬礼をする。施設内は、ハチの巣を突いたかのような騒ぎとなった。

 

「………んん?」

 

ふと、ゴンゴルドはモニターを見てある事に気が付いた。そして、その理由に思い当たると、通信機のスイッチを入れた。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「お、始まったようだな。」

 

一方、施設内の通路を物陰で見る者たちがいた。マルメ、ヒカリ、フローラ、バルクホルン、そしての5人だ。彼らはローが施設に潜入した際のルートを使い、施設内に侵入したのだ。

 

作戦はこうだ。ゴンドウキャップとトベ、アスカ達がスーパーマードック2世号とガッツイーグルαスペリオル号で正面から攻め込む。敵が外に気を取られている隙に、潜入したヒカリ達が内側から施設を破壊する、というものだ。今頃は、アスカが駆るαスペリオル号とマードック2世号のゴンドウキャップとトベによる攻撃が行われているだろう。加えて、しばらくしたらゲンがウルトラマンレオに変身してアストロモンス軍団に立ち向かう手はずだ。

 

「ルッキーニ達、うまくやれているだろうか…?」

「俺が一番心配なのは、じいさんが余計な事をしないかどうかだよ。」

「それも、割と心配だな………」

 

マルメの言う事が何となくわかってしまうバルクホルン。ニシキ博士は興味があるからと言って、アスカと一緒にαスペリオル号に搭乗しているのだ。好奇心旺盛かつ興味のある事にはトコトン向かっていく性分の博士故に、確かに少し心配である。

 

「では、ここからは手はず通りこの爆薬を例のチグリスフラワーの母体周りに仕掛けて、内と外から爆破させてしまおう。」

「ああ。」

「さーて、じゃあ作戦開始よ!」

 

フローラが物陰から飛び出るとオーラ状の光線を放ち、周囲のバム星人を包んだ。すると、何も気付いていないバム星人達は走ったままの姿勢で動かなくなってしまった。ビラ星人特有の「時間停止光線」である。

 

「さあ、早くチグリスマザーの元へ!」

「オウ!」

「こっちだぜ!」

 

フローラとローを先頭にした一同は、止まった星人たちを横目に駆けて行った。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

5分ほど走った潜入班一同の前に、厳重にロックがされた重厚な扉が現れる。ローの入手した内部図の通りであれば、この奥がチグリスマザーのある施設の中枢だ。

 

「ここか………」

「待っていて。パスコードを入力するわ。」

 

フローラは顔の下にある細長い脚をせわしなく動かし、扉に備え付けられてある端末を操作し始めた。

 

「と言っても、パスコードってここの責任者の誕生日なのよねー」

「それ、一番やっちゃいけないパスワードのパターンじゃん………」

「開くわ。」

 

各々が銃やバズーカを手に身構える中、扉が重厚な音を立てながら開く。そして、開いた扉の向こうに見えたのは………

 

「はぁい♪」

「何!?」

「喰らえ、目つぶし光線、ビビビのビ~!!」

バシュッ

「ぐあッ!?め、目が………!」

「バルクホルン!!」

 

茶色く硬質化した体表を持ち、長い嘴に赤い目、刃のように尖った右手を持った宇宙人が待ち構えており、両目から放たれた光線を受けたバルクホルンが目を抑えて蹲ってしまった!

 

「この野郎!」

 

マルメはバズーカを宇宙人に向けるが、星人はバズーカの砲身を蹴り上げ、バズーカが宙を舞った!

 

「こいつ、カタン星人!!」

 

フローラが思わずそう漏らすと、

 

「そう、オレはカタン星人ゴンゴルドだ!!」

 

ゴンゴルドと名乗ったそのカタン星人が左手の指を鳴らすと、アスカ達の背後の壁がスライドして、中からバム星人が十数名現れて銃を構えた!

 

「しまった!!」

「残念だったな~君たち。外の連中にその女がいない事に気づいて、チグリスマザーの警護を強化しておいて正解だったわい。」

「く、読まれていたか………!」

 

ゴンゴルドの目つぶし光線を受けてしまったため見ることは出来ないが、(この光線を得意としている事から、カタン星人は地球で「目つぶし星人」の異名すら持っている)囲まれている事は分かったバルクホルン。

 

「無駄な抵抗はしない方がいいぞ?昨日はホバーバイクと言う動きの限られた場所であったので地の利があったが、バム星人は1人で地球のグリーンベレー50人分程の力がある。大人しく、投降するのだな。」

「くっ………!」

 

悔しく唸るマルメ。泣く泣く、ヒカリ達は持っていた武器や爆弾を地面に置き、両手を頭の後ろにやった。

 

「おっと、お前はコイツもだな。」

「あ………!」

 

ゴンゴルドはヒカリのベルトからビームフラッシャーを奪い取り、左手で弄んだ。

 

「コレがなければ、お前はウルトラマンにはなれない。外にいるであろうウルトラマンレオともう1人のウルトラマン、それに地球人の戦闘機では、周囲のアストロモンス達相手に苦戦するだろう!いずれ他のウルトラ兄弟もこの惑星に来るだろうが、その頃には貴様らの死体処理の仕事くらいしか、残っとらんかなぁー!」

「くっ………!」

 

高笑いするゴンゴルドに唇をかむ一同。バム星人達に拘束されたヒカリ達は、ゴンゴルドに連れられて司令室へと向かわされた。

 

 

 

 

 

「………(―――もう少ししたら、目つぶし光線の効力が切れる。その時がチャンスだ。)」

「………?」

 

苦虫を噛み潰したような顔になるバルクホルンであったが、拘束するバム星人に後ろから小声でそう言われ動揺するが、できる限り平然を保った。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

その頃、施設の外では、アストロモンス軍団と、スーパーマードック2世号とガッツイーグルαスペリオル号の2大戦闘機、そして2人のウィッチ達による攻防戦が繰り広げられていた。

 

ズドドドドドッ

「キィィイイシャァアウ!」

 

ガッツイーグルαスペリオル号から放たれたネオジークのレーザーがアストロモンスの頭頂の角を破壊し、悶え苦しむ怪獣。間髪入れずにマードック号からミサイルが放たれ、アストロモンスの1匹は沈黙した。

 

「くそう、このままでは、カウント提督に届ける怪獣が全滅してしまうぞ!」

「残っているスフィンガー66-Vii-Xvii、06-Iv-Vii、96-Iii-Iを全機出せ!」

 

怪獣の出荷準備に当たっていたバム星人たちは、戦闘機の襲撃に右往左往していたが隊長格の命令を受けて3機のスフィンガーが起動し、2機の戦闘機に狙いを定めた。

 

「プープルプル・プルプル」「プープルプル・プルプル」「プープルプル・プルプル」

 

3機のスフィンガーは電子音を鳴らしながら口からの破壊光線で攻撃をする。マードック号とシャーリーは難なく回避するが、αスペリオル号は翼に当たるギリギリで避けた。

 

「アスカ!」

[だ、大丈夫だ、問題ない。]

 

ルッキーニが思わず叫ぶと、アスカは焦ったように返事をする。無事を伝えたものの、うかない表情のアスカに後部座席のニシキ博士が聞いた。

 

「のう迷子君、さっきからどうしたんじゃ?」

「迷子君て………」

「何か、気になる事が在るようだの?」

 

博士の呼び名に若干不安はあるものの、アスカは怪獣軍団の後ろにある施設を見て答えた。

 

「建物に近づいてから、なんとなく嫌な感じがするんだ。」

「嫌な、」「感じ?」

 

アスカの言う事に、通信を聞いていたゴンドウとシャーリーが首をかしげる。シャーリーは、アスカに聞いた。

 

「どういう事だ?」

「いや、気のせい………って訳じゃない。この感じ………俺はこの感じを知っている、そんな気がするんだ………」

「アスカ………」

 

神妙な表情のアスカに、トベは心配そうにする。その時、スフィンガーの1体がαスペリオル号に向けて腕を伸ばす。慌ててアスカが避けると、ネオジークのレーザーをお見舞いし、スフィンガーの胸を破壊する。

 

「迷子君!今は戦闘に集中して、後でゆっくり考えるんじゃ!」

「あ、ああ。………ィヨッシャァアアア!!」

 

博士の言葉で我に返ったアスカは、気合いの叫びをあげる。そしてαスペリオルを急降下させたかと思うとアストロモンスが密集した地点を掻い潜り、ビームを放とうとするスフィンガーの目の前で急上昇!すると、αスペリオルを狙ったアストロモンスの攻撃とスフィンガーのビームがすれ違い、互いの攻撃が直撃する結果となった!

 

「「「キィィイイシャァア………!!」」」

「プーププププ………!?!?」

「よっしゃぁー!見たかよ、俺の超ファインプレー!!」

 

見事同士討ちが成功し、数匹のアストロモンスと1機のスフィンガーが倒れたのを見たアスカが叫んだのも束の間、頭部に大きな刃を思わせる1本角を持ったアストロモンスが角に手をやったかと思うと、何とその角を「分離」させて投擲したではないか!

 

「アスカ!」

「ゲッ!!」

 

ブーメランの如く襲ってくる角を慌てて何とか避けると、角は投げてきたアストロモンスの頭部に戻った。おそらくこの個体は、「凶剣怪獣 カネドラス」の能力を持っているのだろう。

 

[油断をするな!戦場では、一瞬の油断が命取りとなるのだぞ!!]

「ご、ごめんなさい………」

 

通信でゲンに怒鳴られて、反省するアスカ。そう言えば、自分があのセリフを言う時はかなり油断しているような気がした。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「ほほう、地球人の技術もなかなかやるではないか。」

 

司令室でこの様子を見ていたゴンゴルド大佐は、自軍の怪獣達が次々と倒れていくにも関わらす感心していた。

 

「感心している場合ですか大佐!このままでは」

「分かっている。その為の人質が、自分たちの方から来てくれたのだ。」

 

ゴンゴルドが振り返ると、そこには拘束された光たち5人がいた。悔しがる5人を尻目にゴンゴルドは通信機のスイッチを入れると、マイクに口を近づけた。

 

「ピンポンパンポ~ン。えー、外の地球人並びにウルトラマンの諸君、ワタシはカタン星人ゴンゴルド大佐である。」

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「何!?」

「こいつがココのボスってわけか!」

 

通信機のモニターに映り込んだカタン星人を見て、アスカが叫ぶ。しかし、モニターに映ったバルクホルンたちを見て、息をのんだ。

 

「!みんなが人質に!?」

「ええ!?」

[Exactly(そのとおりでございます)]

 

映像を見ることが出来ないシャーリーとルッキーニは、アスカ達の通信を聞いて声を上げた。

 

[君たちが抵抗をしなければ、危害は加えない。君たちはただ、アストロモンスが出荷されるまでの工程を見学してくれればよいのだ。]

「卑怯な………!」

 

スーパーマードック号に乗るマーズは、ゴンゴルドの手口にどこにあるのか分からないけれど唇を噛む。何とでも言え、とゴンゴルドが突っぱねたその時、自分の頭上に違和感を覚えたルッキーニが空を見上げると、上空の一部分が歪んで見えた。

 

「なにあれ!?」

「え!?」

 

ルッキーニの言葉にシャーリーが上空を向くと、歪んていた部分が徐々に正常に戻っていき、そこには3隻の巨大な宇宙船が浮かんでいた!

 

「宇宙船だ!」

「宇宙警備隊にばれないように、光学迷彩でここまで来たのか………!」

 

3隻の宇宙船を確認したゲンが、握り拳に力を入れる。人質を取られている以上、こちらが手を出せばバルクホルンたちに何をするか分からない。ゲンたちが手をこまねいていると、宇宙船は少しずつ降下していく。このまま、アストロモンスを収容するようであった。

そして、スフィンガーの放つ電波に操られているのか集結したアストロモンス達の目の前に宇宙船が着陸し、ハッチが開いた―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドゴォォオオオオオオオオオオン!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『!!?』

[な、ナニャイイイイイイイイイイイ!!??!?]

 

ハッチが開いた瞬間、宇宙船は3隻とも大爆発を起こし、集まっていたアストロモンスも巻き添えを喰らって大半が炎に包まれた!

 

「キィィイシャ………」「キュウウウ………」

「プープルプル・プルプル」「プープルプル・プルプル」

 

爆発から逃れた2機のスフィンガーであったが、突然の出来事に電子頭脳が混乱しているのかオロオロとしている。残ったアストロモンスも、片手で数えられる程度だ。

 

「一体、何が………!?」

「もしや………!?」

 

『トァアーーー!!』

『シュワッ!!』

 

ゲンが頭によぎらせた考えを口に出そうとしたその時、炎の中から赤と銀の2つの影が躍り出た。

 

1人は、赤い身体に金色の六角形の目を持ち、銀色の力強い角と左腕にはめた王冠型のブレスレットを持った戦士―――ウルトラマン№6『ウルトラマンタロウ』だ。

 

もう1人は、銀色の体に赤いラインを引き、大きく丸い金色の目と鼻筋が特徴の顔を持った戦士―――遠くの星から来た男『ウルトラマン80』である。

 

「おお、ウルトラ兄弟!」

「タロウ兄さん!80もか!!」

『遅れてすまないレオ!それと、君たちがウィッチとダイナだな。大体の事情は、地球にいるメビウスから聞いているよ。』

 

タロウは簡単に挨拶を済ませると、残った宇宙大怪獣と2体のロボットに向き直る。

 

『タロウ兄さん、まずはコイツらを!』

『ああ!レオ、行けるな?』

「勿論です!」

 

ゲンはそう言うと、マードック号のコックピットから飛び出し、外部ハッチから外に出た。

そして、両腕を大きく回して左拳を突き出し、叫んだ。

 

 

 

「レオオオオオオオオ!!」

 

 

 

叫んだ瞬間、左薬指に光る金色の『レオリング』に彫られた獅子の瞳が輝いて、ゲンを包み込む。

光が晴れると共にウルトラマンレオがそこに現れ、タロウと80と共に並び立った!

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「ば、馬鹿な………!?」

 

タロウと80、2人のウルトラマンが現れ、アストロモンス軍団が壊滅してしまった為に、司令室は騒然としていた。ヒカリ達も唖然とする中、ようやく目つぶし光線から回復したバルクホルンが見たのは、スフィンガーの腹に連続でパンチを叩き込むウルトラマンタロウと、空中で回転を加えた80の飛び蹴りが、アストロモンスに叩き込まれている所であった。

 

「ウルトラ兄弟が来ることは予想できたが、何故だ!?何故宇宙船の事に気付いたのだ!?」

 

ゴンゴルドが疑問に思うのも無理はない。彼らはウルトラ兄弟に惑星グルータスから怪獣を運び出す事を感づかれないように、光学迷彩を施した宇宙船で複数回のワープを使い、航路を読まれないようにしていたのだ。だというのに、タロウと80の2人が宇宙船に乗り込みこの星に来た。

モニターではカネドラスを吸収した個体の投げた角をレオが白羽取りで受け止めて投げ返し、その個体の眉間に角が突き刺さってしまう。立て続けに放たれたハンドスライサーで、その個体は一刀両断にされてしまった。

ゴンゴルドが悔しげに左拳を握りしめたその時、

 

「ずおりゃぁああッ!!」

「ふんッ!!」

バギィッ

「!?」

 

背後で騒ぎが起きたと気づき、振り返ったゴンゴルドが見たものは、バム星人の1人とバルクホルンが見張りのバム星人を殴り倒している所であった。

 

「な、なにをしている貴様ら!?何故手錠が外れている!?」

 

ゴンゴルドが叫び、周囲のバム星人達が混乱していると、殴り倒したバム星人はおやおや、と言わんばかりに肩をすくめた。見張りを倒したバルクホルンは、ヒカリたちの拘束を解いている。

 

「助かった~!」

「しかし、あなたは一体……?」

「何故『タロウ兄さん』達が宇宙船の居場所を突き止めたのか、疑問に持っていたな。教えてやろう。僕が、兄さんたちに教えていたのさ。」

「何!?」

「ついでに言うと、手錠は予め簡単に外せるようにしておいたんだ。昨日の戦闘で、彼女の力は見ていたからな。」

「貴様………バム星人ではないな!」

 

ウルトラマンタロウを兄さんと呼んだことで、ゴンゴルドはこのバム星人が何者かが化けた偽者であることに気付いた。

 

「正体を現せェエ!!」

 

ゴンゴルドが右手を突きつけると、バム星人はふっふっふっと笑って服を翻すように脱ぎ捨てた。

そこに立っていたのは、初老の行脚僧であった。だが、ヒカリたちはその顔を見て驚いた。

 

「お、おゝとりさん!?」

「バカな………!!?」

 

何と、その顔は今施設の外で戦っている筈のおゝとりゲンことウルトラマンレオにそっくりであったのだ!しかし、その人物は苦笑しながら振り返ると、

 

「………いや、僕はレオ兄さんではないよ。」

「え?」

「レオ、『兄さん』?………まさかあんたは!?」

 

ローは、その言葉でこの男性が何者なのか、心当たりがあった。男性はゴンゴルドに向き直ると、両腕を回して右手を突き出して、叫んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アストラァアアアアアアアアアアアア!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

瞬間、「右手薬指に」はめられた獅子の顔が彫られた銀色の指輪―――「アストラリング」が輝き、光が迸る!

 

「うおっまぶしっ」

「これは!?」

 

眩い光に思わず目を閉じる一同。光が晴れると、そこには人間大の赤いウルトラマンがたっていた。

 

その顔つきはウルトラマンレオに似ているが、カラータイマー周りの銀色のプロテクターのデザインが違い、「A」とも見える腹部のマークと鎖を垂れ下げた左太ももの枷、そして逆立った鬣のようなレオの頭部と違い、こちらは後ろに撫でつけたような鬣を思わせる頭部を持っていた。

 

「き、貴様は『アストラ』!?」

『その通り!レオの双子の弟、アストラだ!!』

「あ、アストラ………?」

「おゝとりさんの、双子の弟!?」「どうりで似ている訳だ………」

 

レオの弟 アストラ

レオと同様、今は亡き獅子座L77星の出身で、ウルトラ10兄弟の八男である。宇宙警備隊に所属しているが単独行動が多いため、普段はどこにいるのか、それは誰も、兄のレオですら知らない大宇宙の謎なのだ。

 

「だが、何故貴様が!?」

『「アンドロメダの夜明け」からの情報を受け取った僕は、光の国に連絡をした後に単独でこの惑星に潜入していたのだ。そして、輸送船の航路をタロウ兄さん達に教え、アストロモンス一掃作戦を計画したという訳だ!』

「そうだったのか………」

「つまり、おゝとりさんはアストラさん経由でここに来た訳か………」

『予想外の事態は幾つかあったが、こうして怪獣達を一層出来た訳だ!』

「な、何という事だ………!」

 

アストラの明かした事実に驚くゴンゴルドたち。その時、施設を強い衝撃が襲った。施設の外で、αスペリオル号がスパークボンバーを放ったのだ。

 

「大佐!このままでは怪獣やチグリスマザーだけではなく我々も………!」

「ええい、やむおえん!かくなる上は………」

 

いよいよ追い詰められたゴンゴルドは、アストラ達を睨み付けた。そして、背中に隠した左手を出すと………

 

 

 

 

 

「降参するから、命は助けてちょ~だい❤」

 

 

 

 

 

左手に握られた小さな白旗をパタパタと振り、投降してきた。

 

 

 

 

 

ズコーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!

 

突然の行動に思わずズッコケるゴンゴルド以外の一同(バム星人含む)。

外の2機の戦闘機も墜落しそうなのを持ちこたえる程のズッコケであったが、何とか起き上がったバルクホルンが聞いた。

 

「な、何のつもりだ貴様!!?」

「いやあね、チグリスマザーがあるとはいえ、流石にウルトラマン6人に君たち地球人の兵器相手にこの戦力差じゃあ、勝ち目全くないじゃん?命には代えられないし、だったら降参した方が利口でしょ~奥さん。」

「誰が奥さんだ。」

「ま、まあ、そうなんだろうけど………」

『お前、意外と潔いんだな………』

「こう見えてワタシ、ドラ○エでも「ガンガンいこうぜ」より「いのちをだいじに」派だから。」

 

半ば呆れつつも、ゴンゴルドのいう事にも一理あると思う一同。バルクホルンはド○クエが何か分からないので首を傾げていると、ゴンゴルドはヒカリに近づいてビームフラッシャーを手渡した。

 

「あ、コレ返しとくね。とりあえずワタシとバム星人たちの安全を約束してくれ。ああ、チグリスマザーの関しては好きにしていいぞ。」

『それは構わないが…………』

 

ゴンゴルドの申し入れにアストラが応え、一同はやれやれと溜息をついた。

 

 

 

―――ふん、情けない奴め。

 

 

 

「?何か言いましたか?」

「いや、俺は何も………」

 

何か聞いたような気がしたバルクホルンがマルメに聞いたその時、司令室を再び衝撃が襲った!

 

「なんだ!?今、降参したのに!」

「いや、この揺れは攻撃によるものではないぞ!」

 

連続する衝撃、いや、コレは地響きだ。司令施設全体が揺れているのだ!

その揺れの最中、ゴンゴルドははっと気づいた。

 

「まさか………」

 

ゴンゴルドは不安を抱き、モニターを操作する。映ったのは施設の中枢であるチグリスマザーの収まったドームだ。だが、映ったチグリスマザーは太い根を何本も地面から触手のように突き出し、ドームの壁面を攻撃していた!

 

「な、何故急にチグリスマザーが暴れだしたのだ!?

「も、もしかして、融合させたアレが……!?」

「どういう事だ!?」

「じ、実は、チグリスフラワーに怪獣の能力を付加させる為に、その筋の業者から特殊な生命体を買い取って、入手した細胞のつなぎとしてマザーの球根に融合させたんだ………」

「それがチグリスマザーを暴走させていると言うのか!?」

 

ヒカリの質問にそうかもしれない、と少し弱弱しく答えるゴンゴルド。そうこうしている内に揺れは大きくなり、ついに根とツタが壁面を突き破ってしまった!ゴンゴルドは通信機のマイクを掴んで施設内に放送を入れた。

 

「この施設を放棄する!総員、施設を退避しろ!繰り返す!総員退避!」

 

ゴンゴルドの退避命令を聞き、施設内のバム星人達は持ち場から逃げ出す。しかし、既にマザーのツタと根は建物の床や壁を突き破り、建物の内外と星人達に甚大な被害をもたらしていた!

 

「大佐、我々も早く!」

 

副官に諭され、ゴンゴルド達も施設の脱出を試みる。だが、出入り口付近の床が陥没したかと思うと、床から根が飛び出して塞いでしまった!

 

「しまった!」

「離れろ、こうなったら力ずくで―――」

 

そういってバルクホルンが前に出ようとした矢先、司令室のあちこちから根とツタが突き破ってきた。アストラが両腕を合わせて「シューティングビーム」を放ち迫るツタを焼き切るが、長くは持たないだろう。

 

『ヒカリ!』

「く、仕方がない!」

 

ヒカリは先ほどゴンゴルドから返してもらったビームフラッシャーを手に取ると高く掲げる。そしてビームフラッシャーにエネルギーがたまるのを感じ取ったヒカリが額に当てると、眩い輝きと共に、彼をウルトラマンへと変貌させた!

 

「ジョーニアス!」

『君がジョーニアスか!』

『アストラ、みんなを連れて外へ!』

 

ジョーニアスはそう言うと、アストラと共に他のみんなを抱えて巨大化、司令室を突き破って脱出した!

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「これは………!?」

 

施設の外では、残ったアストロモンスとスフィンガーを片付けたタロウ、レオ、80達が、崩壊していく施設のドームを見て呆然としていた。ドームのあちこちから根やツタが飛び出して大小のチグリスフラワーを咲かせ、中央のドームの天井からは巨大な赤い花、チグリスマザーが咲いていた。

 

『あれが母体………チグリスマザーか!』

『アストラたちは………!?』

「バルクホルン………!」

 

ウルトラ兄弟とウィッチ達に不安がよぎる。その時、施設の壁の一部が爆ぜ、中から2人のウルトラマンが飛び出した。

 

『ジョーニアス!アストラもか!』

 

2人の姿を見たレオが、声を上げる。ジョーニアスとアストラはマードック号と並んで飛行すると、ハッチの付近に手を伸ばす。その手のひらには、バルクホルンとフローラ、ロー達がいた。

 

『彼女らを頼む!』

「分かった!」

「ゴンドウキャップ!私のストライカーを!」

 

ハッチから中に入るや否や、バルクホルンはゴンドウキャップに言う。バルクホルンたちを送り届けたアストラとジョーニアスはウルトラ兄弟の元に降り立った。

 

『アストラ!』『アストラ兄さん!』

『アストラ、無事であったか。』

『はい、レオ兄さん!』

 

兄弟達が再会を喜び合い、マードック号からバルクホルンが発進したのも束の間、基地を覆っていたチグリスマザーの根とツタが萎んでいき、巨大な花も枯れていくではないか。

 

『チグリスマザーが、完全に成長しきったのか!』

『あれほど巨大な花だ。気をつけろ!』

 

この中で一番上の兄であるタロウが指示を出す。ジョーニアスも倣って構えを取る中、施設周囲の地面が大きく盛り上がり、大怪獣がその姿を現した!

 

 

 

「キィィイイイイイイイイイイシャァアアウッ!キィィイイイイイイイイイイシャァアアウッ!」

 

 

 

現れたのは、全長が300mはあろう超巨大な球根の前部から鞭状の腕と鋭い爪の3本指の腕が1対ずつ持ったアストロモンスの腹と頭部を生やし、球根の先端を包むように生えた6本の角と後部に生えた5本の尻尾にチグリスフラワーを咲かせ、がっしりとした4対の脚で地面を踏みしめ、球根や頭部、肩等に青白く光る器官を持ったケンタウロス型の怪獣だ!

 

「何と巨大な怪獣………!」

「あのチグリスマザーが、ここまでのモノになるなんて………」

「巨大なアストロモンス………さしずめ、「アストロモンス・ギガ」と言った所か………!」

「キィィイイイイイイイイイイシャァアアウッ!」

 

バルクホルンが「アストロモンス・ギガ」と名付けたその怪獣は雄叫びをあげた。

 

「あんな馬鹿デカい怪獣、どうやって………迷子君?」

 

ニシキ博士が前の席に座るアスカに問いかけるが、アスカは信じられないという表情でアストロモンス・ギガを見て、いや、厳密に言えば、アストロモンス・ギガの各所に生えた、「青白く光る器官」を見ていた。

 

「まさか………あれは………!?」

[どうした、アスカ!?]

[アスカーー!?]

 

ゴンドウとルッキーニの通信も聞こえていないほど、アスカは驚いていた。

 

時折、波打つように蠢き、網目模様の表面を光らせたその器官は、見間違えようがなかった。

 

「………間違いない。あの怪獣は、………」

 

「キィィイイイイイイイイイイシャァアアウッ!」

 

アスカが言い淀んでいると、アストロモンス・ギガは大きく咆哮を上げる。

 

 

 

 

 

「あれは、『スフィア合成獣』だ!」

 

 

 

 

 

 

ひとつの最悪な再会に、アスカは怒りの表情を見せ、叫んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




第十二話、『ダイナ篇』後編です。今回、割とてんこ盛りになったなあ………

ひしめき合う宇宙大怪獣軍団。元となった怪獣はロックイーター、ケンドロス、リトマルス、ドラコ、バグダラス、キティファイヤーです。ミラーマンの怪獣までいるのは、「様々な次元世界から連れてきた」事を強調するためです。

ゴンゴルド大佐はカタン星人でした。以外と潔いですけど、今回は前回以上に千葉さんっぽさを再現できたんじゃないかなぁと思っています。

タロウ、80、アストラ登場。実は前回の冒頭に出ていた行脚僧はアストラでした、というオチ(どっちの手にリングがあるか書いてないし服装が違う、何よりリングが銀色)。尚この指輪はレオリングの対となるアストラリング、という設定です。
ところで私は、アストラが兄さんと呼ばれるのも80先生が兄さんと呼ぶのも、違和感と抵抗がある………

チグリスマザーにはスフィアが混ざっていました。そしてスフィア合成獣アストロモンス・ギガ登場。イメージは映画の没案となったグランドタイラント。『球根ケンタウロス』な見た目はお気に入り。

次回はダイナ篇完結編となります。

では次回、『明日へのウィニングショット』でお会いしましょう。


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第十三話 明日へのウィニングショット

 

 

 

 

 

これは、とある宇宙の話―――

 

 

 

 

 

ウルトラマンティガが闇の力を倒した7年後、人類は宇宙開発に希望を求めた『ネオフロンティア時代』と呼ばれる新たな大航海時代を迎えていた。

 

しかしそれは、人類の宇宙進出を快く思わない地球外生命体や、未知なる怪獣達の襲撃を受ける等、新たな困難の幕開けでもあった。

 

そんな時、ネオフロンティア時代を迎えようとする人類と地球を救うために、新たな宇宙の光の巨人、ウルトラマンダイナが現れた。

 

そして、宇宙進出の拠点として基地を建設していた、太陽系第4惑星『火星』での初戦以降、幾度となく立ちふさがった謎の生命体こそが、『宇宙球体 スフィア』である。

 

スフィアは、異名の通り球体とも宇宙船ともとれる姿をしているが、同時に高度な知性を持っており、個々の分離や融合は自在、さらに、有機物・無機物問わず取り付き、スフィア合成獣に変化させてしまう。

 

そして、すべてのスフィアの本体である『暗黒惑星 グランスフィア』―――遠い昔にある惑星の全生命体が母星ごと同化した存在であり、それ故に地球の直径とほぼ同じサイズを誇る―――が太陽系もろとも同化して1つの存在になるという最終目的を果たさんと襲来したが、スーパーGUTSのネオマキシマ砲に対してバリアを展開したグランスフィアに、ソルジェント光線をぶち込み、戦いに終止符を打った。

 

しかしダイナ、即ちアスカ・シンも無事ではなく、グランスフィア消滅時の重力崩壊で、光すら飲み込む時空の歪みが発生。 逃げ切ることができず、ダイナは時空の歪みに飲み込まれてしまったのだ……。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「キィィイイイイイイイイイイシャァアアウッ!」

 

[そのスフィアに生き残りがいて、業者がワタシに売りつけたと言うのか?]

「ああ。何でその業者ってのがスフィアを持っていたかは分からないけれど、間違いなく、あのアストロモンス・ギガはスフィア合成獣と化している。」

[あ、名前それで決定なんだ………]

 

自分の提案した名前が決定になってちょっと嬉しいバルクホルンであるが、今はそれどころではない。出現したアストロモンス・ギガの撃退が先決だ。

 

「ゴンドウキャップ!αスペリオル号を収容してくれ!」

「迷子君!?」

「スフィア合成獣を相手にするのに、博士が一緒だと危険がある!」

[分かった!]

 

ゴンドウの返答を聞き、アスカはαスペリオルをスーパーマードック2世号へと収容、ブレーキと同時に機体が固定されたのを確認すると、ハッチを開いて外に飛び出した。

 

「ちょっ、アスカ!?」

 

ピグが止めるのも聞かず、アスカはマードック号から飛び出すと重力に任せて落下、そして、懐からリーフラッシャーを取り出すと目の前に突き出し、叫んだ!

 

 

 

 

 

「ダイナァァアアアアアアアアアアアア!!」

 

 

 

 

 

瞬間、リーフラッシャーから上部のクリスタルが飛び出し、アスカを眩い光が包み込む。そして、銀色の身体に赤と青のラインを走らせ、胸には青く光るランプを中央に持った金色のプロテクターを着け、額には白く輝くクリスタルがある巨人―――ウルトラマンダイナが、5人のウルトラマンに並び立った!

 

『―――行くぞスフィア。』

 

ダイナはアストロモンス・ギガを睨みつけ、ウルトラ四兄弟とジョーニアスと共に構えを取る。

 

『本当の戦いは、ここからだ!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第十三話 明日へのウィニングショット

 

超宇宙合成獣 アストロモンス・ギガ

雑兵獣 スフィアシード

目つぶし星人 カタン星人ゴンゴルド大佐

四次元宇宙人 バム星人

幻覚宇宙人 メトロン星人マーズ

水棲獣人 ピニヤ星人ロー

宇宙蝦人間 ビラ星人フローラ

剛力怪獣 シルバゴン(スカーシルバゴン)

登場

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「キィィイイイイイイイイイイイイシャァアアウッ!」

 

スフィア合成獣アストロモンス・ギガとの戦いが始まった!

 

アストロモンス・ギガが腕の鞭を六人のウルトラマン目がけて勢いよく振り下ろすが、六人のウルトラマンは飛び上がって回避をした。

80は前転をして衝撃を和らげながら着地をすると、両手に赤いエネルギーを溜めて矢じり型にするとアストロモンス・ギガに『ウルトラダブルアロー』を、ダイナも青白い『ビームスライサー』を投げつける!放たれた3本の矢は複雑な回転をしながらアストロモンス・ギガに向かっていくと、両腕の鞭を切断した!

 

「キィィイイイイイイイイイイイイシャァアアウッ!」

 

アストロモンス・ギガは怒り狂ったように球根部のスフィア器官からマシンガンの如く弾丸状の光線『バルカンレーザー』を周囲に放つ!着地していたウルトラマン達は八方に飛び、レオ兄弟はバック転で避けながら距離を取った。

 

『ジュワッ!』

『トァアアーーーッ!』

 

回避をしたタロウは飛び上がると飛び蹴りの姿勢で足から「フット光線」を、ジョーニアスも額から「スタービーム」を発射し、背中のスフィア器官と球根部の角の1本を破壊する事に成功した!

 

『行くぞアストラ!』

『はい、レオ兄さん!』

 

掛け声と共にレオ兄弟は高くジャンプし、数回回転を加えて同時に飛び蹴りを繰り出す『ダブルレオキック』を放ち、アストロモンス・ギガを数歩後退させた!

 

「キィィイイイイイイイイイイイイシャァァアアウッ!」

 

一瞬ひるんだアストロモンス・ギガだが、ウルトラマン達をキッ、とにらんだかと思うと4対の脚を折り畳んだ姿勢で空中に飛んだ!飛行能力があの巨体になっても残っていた事に驚くのも束の間、背中の残った5本の角がミサイルの如く発射され、放たれた角は地面に突き刺さると膨れ上がり、更にツタが伸びて赤い花と足が生え、不気味な唸り声と共に動き出した!

 

「ウォォォオオオオオオオン………」

「ウォォォオオオオオオオン………」

『何だ、こいつらは!?』

 

植物とも動物とも見える緑色のぶよぶよした体にトゲの生えたツルを絡ませ、右腕がハエ取り草の様な牙の生えた平たいハサミ、左腕がトゲの生えた長い鞭、身体の中ほどあたりには赤いチグリスフラワーを咲かせ各所にスフィア器官を光らせた顔のない5匹の怪獣、『雑兵獣 スフィアシード』の出現に、6人のウルトラマンに緊張が走る。

 

「ウォォォオオオオオオオン………」

『くっ………ダァアアッ!!』

 

向かってくるスフィアシードに対し、先陣を切ってダイナがパンチを放つ。しかし、ぶよぶよの体はパンチの衝撃を吸収してしまい、逆にダイナはスフィアシードの鞭による打撃を受けてしまった!

 

「アスカ!!」

「ウォォォオオオオオオオン………」

 

倒れるダイナを見て悲鳴を上げるルッキーニ。しかし、スフィアシードは彼女たちにも牙をむく。頭上を飛ぶルッキーニに狙いを定めると、花の中央から霧状の溶解液を放ってきた!

 

「ルッキーニ!」

「あっ………!」

 

間一髪でシャーリーが叫んだことで回避が出来たが、なおもスフィアシードは攻撃を仕掛けてくる。そうはさせまいとウルトラマンレオが後ろから羽交い絞めにして自分に目をつけさせるが、スフィアシードはレオをふりほどき右手のハサミで腕に噛みついた!

 

『グゥウ………!』

『レオ兄さん!』

 

噛まれた痛みで苦痛の声を漏らすレオに80が駆けつけようとしたが、それを他のスフィアシードが行く手を阻む。既にウルトラマン達は、雑兵獣たちに囲まれていたのだ!

タロウは鞭を振るってきたスフィアシードの攻撃を受け止めると、両の角から「ブルーレーザー」を本体に放つが、スフィアシードは青い熱線をものともせず、逆にスフィア器官からの光線を浴びせる!

 

『グァアッ……!』

『タロウ兄さん!光線も効かないなんて………!』

「キィィイイイイイイイイイイイイシャァァアアウッ!」

 

ダメ押しとばかりに、アストロモンス・ギガが上空から『バルカンレーザー』を放ち、ウルトラマン達は爆炎に包まれた!

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「ウルトラマンが!」

「なんてこった!」

 

スーパーマードック2世号から炎に包まれたウルトラマン達を見たトベとマルメが、悲痛な叫びをあげる。6人のウルトラマンは何とか炎から出てきたものの、無事では済まなかったようでふらふらと立っていたが、そんな事はお構いなしとばかりにスフィアシードの攻撃が続く。

 

「マズいぞ………このままではウルトラマン達が………!」

[おい、ゴンゴルド!あの怪獣に弱点とかはないのか!!?]

「そ、そんな事言っても………弱点なんて………」

 

バルクホルンが通信で叫ぶも、ゴンゴルドは腕を組んでうんうんと悩む。そうこうしている内に、ダイナに2体のスフィアシードが迫り、鞭を身体に絡ませてしまった。

 

「アスカーーー!」

「あ、おいルッキーニ!!」

 

ルッキーニが叫びながらスフィアシードの1体に向かい、機関銃を乱射する。魔力が込められている弾丸とはいえ、スフィアシードの体表はそれを弾いてしまいダメージはない。

 

ズダダダダダダダダダダダダ

「ッッッ!!!ウォォォオオオオオンッ………!!??」

「え!?」

 

だが、ルッキーニの放った弾丸の内、数発がチグリスフラワーに当たったかと思うと、スフィアシードは悶えて苦しみ始めたではないか。

スフィアシードが1体離れたことでダイナはもう1体の拘束を解いて距離を取る。

 

「あれー?何で今、効いたんだろう………?」

「分からない。あの花に当たった瞬間………ん、花だと?」

 

ルッキーニの言葉にシャーリーも首をかしげていたが、ふと、昨日の戦闘を思い出した。

たしかあの時、アストロモンスは腹部にある赤い花の中央から、怪獣を1匹丸呑みにしてしまったのだ。

 

「そうか!あの怪獣は、腹にある花から、怪獣を丸呑みにしてしまうんだった!」

[何!?それは本当かね!?]

 

シャーリーが思わず声に出すと、マードック号のニシキ博士が身を乗り出して聞いてきた。

 

[ああ。という事は、だ、あの花は怪獣の口、つまり]

「怪獣の体内に繋がっている、という事か!!」

「成程!体内に直接攻撃を叩き込めばいいのか!」

 

ニシキ博士がそう決定づけると、マードック号内に希望の笑みが光った。

おそらく先ほどは、ルッキーニの弾丸が体内に入ってしまったがためにスフィアシードは悶え苦しんだのだ。

 

「ウルトラマーン!花だ!腹部の花の中心を狙うんだー!!」

 

シャーリーが叫ぶと、はっとしたようにウルトラマン達が見上げて頷いた。

 

『聞いたなみんな、各自、怪獣の腹にあるチグリスフラワーの中心を狙え!!』

『ダイナ、君はアストロモンス・ギガを!』

『おう!!』

 

タロウの号令に、6人のウルトラマンはそれぞれスフィアシードに向かっていく。

 

 

 

 

 

『トァアーーー!!』

「ウォォォオオオオオオオオン………」

 

タロウは高くジャンプをすると、空中で数回回転し得意の『スワローキック』を食らわせ、さらにボディに素早くパンチを何発もお見舞いし、スフィアシードを後退させる。怒ったのかスフィアシードは鞭をタロウに振り下ろすが、タロウは額のランプから『ヒーロー光線』を発射する!先程のブルーレーザーとは比べ物にならない強力な光線を受けた鞭は、簡単に焼き切れてしまった!

 

「ウォォォオオオオオオオオン…!!?」

『今だ!』

 

タロウは左腕の大きな王冠の装飾が特徴の『キングブレスレット』を外すとブレスレットは光輝き、両刃の手槍「ブレスレットランス」に変化。タロウがそれをチグリスフラワーのど真ん中目がけて投擲すると、ブレスレットランスは真っすぐに飛んでいき花の中央に吸い込まれ、怪獣の胴体を貫通した!

 

「ウォォォオオオオオオオオン……!」

 

たまらずのけ反るほどのダメージを追ったスフィアシード。タロウはすかさず、右手を高く掲げると左手をそれに重ね、大きく回すように腰に持っていき、全身に七色のエネルギーを蓄積する。

 

『ストリウム、光線ッ!!』

 

そして、腕を『T字』に組むと、七色の破壊光線が怪獣目がけて飛んで行った!

 

「ウォォォオオオ―――」

ドォォオオン

 

発射されたストリウム光線はスフィアシードに見事命中し、爆発を起こして炎上した!

 

まずは、1匹。

 

 

 

 

 

「ウォォォオオオオオオオオン………」

 

スフィアシードの1体が光線を放ってくると、ウルトラマンレオはギリギリで回避する。すると、レオは左腕にはめられた金色の腕輪に手をやると、腕輪は一瞬で銀色の大きなマントになった。このマントこそ、伝説の超人『ウルトラマンキング』より授かった伝家の宝刀『ウルトラマント』である。

レオはウルトラマントを頭上で何度も振り回と、瞬く間にウルトラマントは折り畳まった銀色の傘『レオブレラ』に変化する。レオはそれを開いて回すと、傘は光線を受け止めてスフィアシードに跳ね返してしまった!

 

「ウォォォオオオオオオオオン………」

 

軽いダメージを受けたようであるが、尚も光線で攻撃してくるスフィアシード。しかしレオはレオブレラで防御をしたままスフィアシードに接近、そして、十分に近づいたところで傘を閉じると、そのまま傘の先端で花の中心を貫いた!

 

「ウォォ………!!」

『イヤァアアア!!』

 

レオは掛け声とともにレオブレラを抜いて元のアームブレスレットに戻すと、カラータイマーからの破壊光線「タイマーショット」を撃ちこみ、スフィアシードを炎上させた!

 

続いて、2匹目。

 

 

 

 

 

アストラは、スフィアシードの鞭とハサミの猛攻を耐えながらチャンスを伺っていた。得意のファイトスタイルであるキックボクシングを活用して回し蹴りを放つものの、大したダメージを与えられていない。

その時、スフィアシードのハサミと鞭が同時に向かってくるが、アストラは何とか回避、すかさず左右同時に放つアストラチョップで左右の腕を切断した!

 

「ウォォォオオオオオオオオン………!!」

 

怒りに燃えるスフィアシードは体当たりでアストラを突き飛ばすと、そこに目がけて光線をがむしゃらに放ち、アストラは炎の中に消えてしまう!

 

「………?」

 

しかし、炎と黒煙が晴れるとそこにいるはずの赤い獅子の戦士の姿はなく、黒焦げてえぐれた地面があるのみだ。不思議に思ったスフィアシードが辺りを見回すが、アストラの影も形も見当たらない。

跡形もなく吹き飛んでしまったのかと思ったその時、スフィアシードは木っ端みじんに吹き飛んでしまったではないか!

 

跡形もなく吹き飛んだスフィアシードがいたその場所には、何とアストラが勝利を知らせるかのように腕を掲げて立っていた。

 

これこそ、身体をミクロ化して怪獣の体内に潜入し、内部から破壊する荒業『ウルトラリダクション』だ。

アストラは爆炎に紛れて身体をミクロ化させ、チグリスフラワーの中央からスフィアシードの体内に潜入、破裂させたのだ。

 

更に、3匹目。

 

 

 

 

 

スフィアシードの1体がジョーニアスに鞭を振るうと、ジョーニアスはそれを掴みジャイアントスウィングの容量で振り回すと、遠くの方へと投げ飛ばしてしまう。

 

『ジョゥワッ!』

 

ふらふらと立ち上がるスフィアシード。ジョーニアスはこの機を逃さず飛び上がると、両腕を真っすぐに伸ばしてきりもみ回転をしながら、弾丸の如くスフィアシードに向かって行く!

それに気が付いたスフィアシードが光線を放つも、ジョーニアスの回転で弾かれてしまい、必殺の『ウルトラボディスクリュー』を花の中央に受けてそのまま貫かれてしまった!

 

「ウォォォオオオオオオオオン………!」

 

胴体に大きな風穴を開けながらも、背後に着地したジョーニアスに向かって行こうとするスフィアシード。しかし、ジョーニアスは振り返り様に腕をL字に構えて「プラニウム光線Bタイプ」を発射、哀れ、スフィアシードは粉砕されてしまった。

 

これで、4匹目。

 

 

 

 

 

 

ウルトラマン80がビュッ、と風を切る音が鳴るほどの勢いで構えを取ると、スフィアシードは右手のハサミで掴みかからんと突進するが、80はスフィアシードを飛び越えて回避、近くに寄って背後から水平にチョップを食らわせる。驚いたスフィアシードは振り返り様に鞭の一撃を食らわせる!

 

『グゥウ………ッ!』

「ウォォォオオオオオオオオン………」

 

鞭に撃たれて後退する80に対し、スフィアシードは光線の乱れ内をお見舞いする。80は何とか光線を避けると、右手を高く上げる。すると、右手に光り輝く槍『ウルトラレイランス』が生成される。80はそれをスフィアシード目がけて投げると、光の槍は花から怪獣の身体を貫通し、スフィアシードは苦しんだ!

 

「ウォォォオオオオオオオオン………」

 

悶える怪獣を見た80は左腕を上に、右腕を横に伸ばした後左手を右手に合わせ両腕を腰に持っていく。すると、腰の金色のバックルから無数の光線が飛び出し、スフィアシードのチグリスフラワーに『バックルビーム』が叩き込まれた!

 

「ウォォォオオ―――!!」

ドォォオオン!!

 

バックルビームを受けたスフィアシードは身体から火花を散らせ、力尽きて倒れるとそのまま爆発四散したのであった!

 

ついに、5匹のスフィアシードは全て倒されたのだ!

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

5匹のスフィアシードは倒され、残るはウルトラマンダイナと戦う、上空のアストロモンス・ギガとなった。

 

「キィィイイイイイイイイイイイイシャァァアアウッ!」

 

咆哮を上げるアストロモンス・ギガが上空からバルカンレーザーを放つ中、スーパーマードック号と3人のウィッチの援護を受け、ダイナは両腕を目の前で交差させる。すると、額のダイナクリスタルが赤く輝き、ダイナは『ストロングタイプ』へとその姿を変えた!

 

「おお、ヴェネツィアで見た姿だ!」

「『ストロングタイプ』だ!」

『ダァアアアッ!!』

 

ストロングタイプに変化したダイナは、アストロモンス・ギガへ急接近するとその顎にアッパーカットをお見舞いしてひるませる。すかさず背後に回り込むと、7本もある尻尾を一つに束ねて掴みグルグルとジャイアントスウィングだ!

 

「キィィイイイイイイイイイイイイシャァアアウッ!」

『ダァアアアッ!!』

 

ある程度回転がかかった所で、ダイナは地面に向けて大怪獣を叩きつけた!

 

「キィィイイイイイイイイイイイイシャァアアウッ!!」

 

高く土煙を上げて叩きつけられたアストロモンス・ギガが、悲鳴を上げる。ダイナは地面に降り立つと、アストロモンス・ギガに急接近し、左腕に力を込めたストロングパンチを顔面にめり込ませる!更には強烈な頭突き『ウルトラ・ダイナムパッド』を食らわせ、ついにはその赤い角が折れて宙を舞った!

 

「キィィイイイイイイイイイイイイシャァアアウッ!!」

 

アストロモンス・ギガは怒りの咆哮を上げると口から火炎を放射し、ダイナを自分から遠ざける。すると、先程ダイナと80に斬り落とされた筈の2本の鞭が再生し、ダイナを拘束してしまった!ダイナはストロングの力に任せて引きちぎろうとするが、それよりも前にアストロモンス・ギガの口から放たれた火炎を受けてしまった!

 

『グァアアア………ッ!!』

 

火炎を受けて吹き飛ぶダイナ。見ると、アストロモンス・ギガの折れた角が再生しかかっていた。

 

「ある程度のダメージは、直ぐに回復してしまうのか………!」

「アスカ!花を狙うんだ!!」

 

マードック号と共にアストロモンス・ギガへ攻撃を仕掛けながらシャーリーが叫ぶ。ダイナは頷いて起き上がると腕を顔の前で交差させてフラッシュタイプへとチェンジ。チェンジと同時に腕を十字に組んでソルジェント光線を発射した!

 

「キィィイイイイイイイイイイイイシャァアアウッ!!」

バギンッ

「ああ!」

 

しかし、アストロモンス・ギガはそれを予測していたのか両腕でそれを防御し、逆に鞭の連打とバルカンレーザーを発射して攻撃をした!

ダイナはギリギリでかわし、周囲を爆炎が包み込む。勝ち誇るようにアストロモンス・ギガが鳴き声を上げ、カラータイマーが赤く点滅する中、ダイナはある事を思いつく。

 

『フゥウウ………』

「キィィイイイイイイイイイイイイシャァアアウッ!!」

 

ダイナはアストロモンス・ギガの真正面に立つと、足で地面を数回『ならし』、右手の平に青白い光球を発生させる。奇妙な行動に一同が首をかしげる中、ダイナはその光球を持ったまま大きく振りかぶり、さながら野球のピッチャーのようにアストロモンス・ギガの顔面に目がけて投げつけた!

 

「キィィイイイイイイイイイイイイシャァアアウッ!!」

 

しかし、真っすぐ向かって行った光球はアストロモンス・ギガに見抜かれてしまい両腕で防がれてしまった。

 

「ゲャッゲャッゲャッ!」

『ダイナ………?』

『一体、何を………?』

 

駆け付けたウルトラ兄弟も、ダイナの行動の意図を読めない。アストロモンス・ギガがバカにするかのように嗤う中、ダイナは再度光球を生成し、振りかぶった。

 

「ん………?」

 

その一瞬、シャーリーはダイナの光球の持ち方に気が付いた。人差し指と中指の間に、ボールをはさんでいるのだ。

そこでシャーリーは気付いた。この球は………

 

『ダァァアッ!』

 

一瞬、炎を背負ったような錯覚を覚える程大きく振りかぶったダイナが、第2球を投げる。真っすぐに自分の顔面に向かって来る事を確信した宇宙大怪獣は再度両腕で防御し、その隙間から覗き込んだ。

 

 

 

 

 

かくんっ

 

 

 

 

 

「!?」

 

 

 

 

 

しかし、予想に反して光球は目の前でかくんっ、と落下したではないか!

アストロモンス・ギガが気付くももう遅く、落下した光球は腹部の赤い花の中央にスポッと入り込み、アストロモンス・ギガの上半身は内部から爆発してしまった!

 

『ストライッ!!』

「い、今のって………?」

「スプリッターだ!!」

 

全員が呆気にとられる中、シャーリーが思わず声を上げる。今のは間違いなく、野球のスプリッター、我々日本人には『フォークボール』の呼び名が馴染み深い変化球だ。

 

『ウルトラフォーク』

かつて、「変異昆虫 シルドロン」を倒す為に編み出した、ダイナの『決め球』である。

 

『フォークボールとは考えたな!』

『あのような技、私でも思いつかないな………』

『タロウ兄さん!アストロモンス・ギガが!』

 

驚いたものの、ダイナの奇策にウルトラ兄弟達も称賛する。しかし、上半身を吹き飛ばされたにも関わらずアストロモンス・ギガの球根の様な下半身はうごめき始め、そこら中から触手を伸ばしてきた!

 

『まだ終わっていないか!』

 

タロウが叫んだ時、アストロモンス・ギガは4対の脚で高くジャンプして飛び立ち、少しずつ上昇し始めていた。宇宙へ逃亡しようとしているのだ!

 

「トベ、マルメ!ヤツを逃がすな!ミサイル発射だ!!」

「了解!!」「これでも喰らえぇ!!」

 

ゴンドウキャップの号令と共にマードック号からミサイルが放たれ、アストロモンス・ギガの足を2本吹き飛ばす!更に、バルクホルンのMG42機関砲2丁が火を吹き、その身にダメージを与えた!

 

「行くぞ、ルッキーニ!」

「ホイ来たぁー!!」

 

更に、上空で待機していたシャーリーはルッキーニを抱えると、ルッキーニは伸ばした両腕の先にシールドを展開する。

 

「行って………」

 

そしてシャーリーは大きく振りかぶると、

 

「来ぉぉおおいッ!!」

 

自身の固有魔法「加速」を加えてルッキーニをアストロモンス・ギガに向けて『投げ飛ばし』た!

高速で投げ飛ばされたルッキーニのシールドがアストロモンス・ギガの体表に当たると、そのままその球根型の巨体を貫き、風穴を開けてしまった!

ルッキーニの固有魔法『光熱』はシールド前方に熱エネルギーを発生させるもので、射程は零距離ながら、シャーリーの『加速』と君合わせる事によりルッキーニ自身が『弾丸』となって敵を貫けるのだ!

予想外の強力な攻撃を受けてか、アストロモンス・ギガは浮遊したままその場でよろけていた。

チャンスは今だ。ウルトラマン№6はそう判断し、命令を下した。

 

『全員の必殺技を、奴にぶつけるんだ!!』

『オウっ!!』

 

タロウの号令に従い、6人のウルトラマンは横一列に並んで必殺技の発射体制に移る。

 

タロウは自身のエネルギーを集中させると、腕を『X字』に交差させ、

 

レオとアストラは両腕を胸の前で交差させると左右に真っ直ぐ伸ばし、レオの前にアストラが片膝をついてしゃがみ、掲げた両手の先端にレオの両手が交差し、

 

80は右手を横に、左手を真上に真っ直ぐ伸ばした動作の後に腕を『L字』に組んで、

 

ジョーニアスは両手の拳を打ち合せぐぐぐ、とゆっくり開くと、拳の間に球状のエネルギーが蓄積されていき、

 

ダイナが胸の前で拳を合わせるポーズの後に右腕を斜め下、左腕を斜め上に伸ばしてエネルギーをチャージし、腕を十字に組んで、

 

 

 

『ダァァアアアアアアーーーッ!!』

 

 

 

ジョーニアスの『ロッキングスパーク』が、

 

80の『サクシウム光線』が、

 

レオ兄弟の『ウルトラダブルフラッシャー』が、

 

タロウの『ネオストリウム光線』が、

 

そして、ダイナの『チャージソルジェント光線』がアストロモンス・ギガに撃ちこまれ、球根型のスフィア合成獣は爆発四散、ついに倒されたのであった!

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

戦いが終わり、焼け野原となった施設跡地には、生き残った十数名のバム星人と、ゴンゴルド大佐の姿があった。

 

「何でい、生き残ったのはこれだけか。」

「では、約束通り、お前とバム星人たちの身の安全は保障しよう。ただし、お前にはエンペラ軍団の情報と、スフィアを売りつけた奴の事をしゃべってもらうぞ。」

「もちろんだ。」

「大佐………」

 

ウルトラマンタロウの人間態、東 光太郎とゲンがゴンゴルドに話す中、バム星人の一人が不安げに話しかけてきた。

 

「なあに、心配するな。お前らもワタシも、命がありゃあ何とかなるだろ。」

『大佐―――!』

 

ゴンゴルドの言葉に涙を流して叫ぶバム星人一同。結構慕われているのだなあ、と思う光太郎。すると、80の人間態である矢的 猛が近づいてきた。

 

「そう言えばレオ兄さん、アストラ兄さんは?」

「ああ、逃げ出したアストロモンスがいないか調べてくると言って、飛んで行ってしまったよ。」

「そうですか……相変わらず、忙しい人ですね。」

 

全くだ、と笑いあうゲンと猛。一方のアスカ達は、αスペリオル号の整備をしていた。

 

「しかし、この機体で地球まで行くにしても、4人は流石にきつくないか?」

「まあ最悪、ルッキーニはシャーリーの膝に乗せて、俺が変身してαスペリオル号抱え込めば、何とかなるだろ。」

 

シャーリーと一緒に、先の戦闘で破損個所がないか確認をしながら、背後のバルクホルンに返事をするアスカ。小柄なルッキーニならそれで問題がないように思えた。ふと、覗き込んでいたルッキーニが、思い出したようにつぶやいた。

 

「あ、そーいえばさー?」

「ん?どうしたルッキーニ?」

「あの怪獣、えーと、シルバゴンだっけ?どうしたんだろうね?」

「「「え?」」」

 

それを聞いて、アスカ達も気が付いた。確かに、昨日出現したシルバゴンは、あれ以来姿を見せていなかった。

 

「昨日の戦闘にもいなかったし、アストロモンス軍団の中にも、それらしき個体はいなかったな………」

「バム星人達の反応から見ると、想定外の怪獣のようだったからな………何者だったのだ、あの怪獣は………?」

 

首を傾げるも、シルバゴンの行方は分からないままであった………

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

同じ頃、惑星グルータスに程近い宇宙空間では………

 

「やれやれ、惑星グルータスに怪獣が集まっていると聞いて行ってみたら、エンペラ軍団やウルトラマンがいて、修行どころではなかったな………」

「グギュゥゥウウウウウウウウウウウウ!!」

「ギィィイイシュウ!!ギィィイイシュウ!!」

 

宇宙人が右手で赤い薔薇を弄びながらため息をついていると、彼の背後で『左肩に星型の傷がある』シルバゴンと、赤い目を持つカニのような怪獣が、咆哮を上げた。

 

「そう嘆くな。また別の場所を探そうではないか。」

 

2匹の怪獣をそう宥めると、彼は星々の輝く宇宙空間を映し出す窓を見た。

 

「大いなる大戦まで、まだ時間はある。我が覇道のためにも、力をつけねばなるまい………!」

 

宇宙人の左手には、長方形の白い機械が握られていた………

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「色々と、世話になったな。」

「いえ、俺たちも、助かりました。」

 

ゲートの前で、アスカとゴンドウが固く手を握り合う。ゴンドウ達科学警備隊は、このゲートで元の次元世界へ帰還するのだ。

 

「それより、良いのか?このゲートを調べれば、君たちの世界を見つける事も出来るかもしれないのに?」

 

トベが、バルクホルンたち3人のウィッチに聞く。科学警備隊が通った後、ゲートは悪用されないように破壊される事になっていた。

 

「ああ、ゴンゴルドの話では、これは特定の場所に移動できるだけの装置のようだからな。これも、スフィアを売りつけた者から情報を貰ったらしい。」

「私らの世界に来るのに使った宇宙船は、ナックル星人が乗って行って連絡がつかないみたいだしな。」

「そうか………」

 

少し、心配そうにするトベ達。すると、何か大きな段ボール箱を抱えたニシキ博士が、同じく段ボールを抱えたローと一緒にやって来た。

 

「ああ、運転手君、コレ、積み込んどいてくれ。」

「え?博士、何です、コレ?」

「いや、気に入ってくれたみたいだから、余った眼兎龍茶を5箱ほどお土産にね。ああ、アスカ君たちにもあるよ。」

 

渡された段ボール(1箱24本入)によろけるトベに、マーズが説明する。

 

「いいのか、こんなに?」

「いいのいいの。私の実家が、この茶葉の農園でね。物資と言ってたくさん渡されているんだよ。」

「あんたらは、これからどうするんだ?」

 

眼兎龍茶の段ボールを受け取ったアスカが、マーズにそう聞いた。

 

「ここ以外にも、エンペラ軍団の支配が続く惑星があるだろうからね。その拠点を潰して、この星のように開放をしようと思っているよ。」

「そうか。」

「この惑星も、時間はかかるだろうけれど、元の緑豊かな惑星に戻るだろう。」

 

チグリスフラワーの花畑が消え、草木が風に揺れる大地を見渡しながら、マーズが言った。

 

 

 

 

 

「じゃあなー!」「元気でなー!」

「バイバーイ!」

 

飛び立っていくスーパーマードック2世号に向けて、アスカやルッキーニ達が手を振る。スーパーマードック号はゲートをくぐり、元の次元世界へと飛んで行き、次元エネルギーが消えると同時にゲートは爆発し破壊された。

 

「さーてと、俺たちも地球に向かうとするかー!」

「ああ!」

「芳佳たちに、早く会いたいねー!」

 

ゲートが破壊されたのを見届け、アスカは伸びをしながらそう言う。すると、光太郎が話しかけてきた。

 

「アスカ君、地球までは、私が送ろう。」

「え、いいんですか?」

 

光太郎の申し出に、シャーリーが聞き返す。一応、今いる兄弟の中では最年長であるため、敬語である。すると、ゲンが話に入ってきた。

 

「ああ。後の事は我々で片づけられるからな。」

「それに、メビウスの様子を、一度見ておきたいからな。」

 

何故か、少し嬉しそうに言う光太郎。話によれば、今地球にいるウルトラマンメビウスはウルトラ兄弟の末っ子であるらしく、カワイイ弟が気になるのだろう。

 

「わかった。地球までの航路、よろしく頼むぜ!」

「ああ!」

 

アスカと光太郎は、サムズアップをしながら微笑みあう。

アスカは、3人のウィッチをαスペリオル号に連れていこうとする。すると、何故か猛はバルクホルンを呼び止めた。

 

「………バルクホルン大尉、宮藤 芳佳君と、彼のお父さんによろしく頼む。」

「え………?」

 

バルクホルンは、一瞬、何を言われたか分からなかったが、そして気が付いた。

 

芳佳の事はともかく、何故彼女の父親の事を………?

 

「おーい、何やってるんだー!?」

「早くしないと置いてくぞー?」

「………あ、おい、待て!!」

 

そう思ったが、ルッキーニ達が自分を呼んだため、短く返事をして走り出すバルクホルン。

 

猛は、その後姿をじっと見ていた。

 

 

 

 

 

「よーし、3人とも乗ったな?」

「ああ。」

 

少しして、バルクホルン達3人のウィッチはガッツイーグルαスペリオル号に搭乗し、(ルッキーニは当初の予定通り、シャーリーの膝の上だ)地球に向かう準備が整った。

 

「けれど、本当に操縦は大丈夫なのか?」

「ああ。俺が抱えるし、それに、木星付近まで行けば、もしもの時に自動操縦で地球まで行けるよ。」

「便利だなー」

 

異次元の技術に感心するウィッチ一同。

 

「よし、それじゃあ。」

「ああ、行こうか。」

 

ハッチを閉めると、アスカと光太郎の2人は頷き会った。

 

そして、懐からリーフラッシャーを取り出すと目の前に突き出し、

光太郎は左肩の『ウルトラバッヂ』を外すと右手を突き出すようにして、

叫んだ。

 

「ダイナァァアアアアアアアアアアアア!!」

「タロォォオオオオオオオオオオオオウ!!」

 

そして、2人が光に包まれると、そこには2人の光の巨人の姿があった。

 

『さて、お嬢さま方、楽しい空の旅へ出発ですよ。シートベルトをしっかりお閉め下さい。』

「おお、よろしく頼む!」

「しゅっぱーつ!」

 

ダイナはαスペリオル号を抱えると、タロウの先導で飛び立つ。程なくして、2人のウルトラマンは宇宙空間へと飛び出した。

 

「ふえー!もう宇宙に出ちゃったよ!」

「私たちの時は、10人がかりで1人を飛ばすのがやっとだったもんねー」

『いやちょっと待ってくれ、魔力があるとはいえ、生身で宇宙行ったのか?』

「まあ、高度30,000mまでだったけれどな。」

 

流石のウルトラマン達も、この話には唖然とする。鉄仮面を思わせるその銀色の顔も、若干苦笑いのように見えた。

少し驚きながらも、タロウは両腕にエネルギーを溜めるとクロスさせて光線を照射、すると、それは光り輝く『トゥインクルウェイ』となる。

 

『ここを通れば、地球まですぐだ。』

『分かった。しっかり捕まっていろよ!』

 

3人のウィッチを連れた2人のウルトラマンが光の道に消えると、トゥインクルウェイは閉じて静寂が戻った。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「やはり、あの空間に時空の穴があるようだ。」

 

竜が森湖の湖畔に設置された作戦本部で、高山 我夢がパソコンを操作しながら呟いた。

 

現在、我夢たちXIGの面々は、ミーナとエーリカ、そしてウルトラマンマックスことトウマ・カイトをM78星雲のある世界へと送るため、竜が森湖の調査を行っていた。

 

我夢がモニターに映る数値に目を光らせていると、ミーナと藤宮がやって来た。

 

「どうだ、我夢?」

「ああ、確かに上空に時空の穴はあるようなんだけど、数値を見る限りでは、時空間移動ができるものではないようなんだ………」

「そう、ですか………」

 

我夢の報告を聞いて、少し残念そうにするミーナ。隊長という立場上、早く仲間たちの安否を確認したい気持ちでいっぱいなのだろう。

そんな彼女の心配を察してか、だけど、と、我夢が続けた。

 

「この穴は小さいから、何かしらの方法で広げることが出来れば、通ることが出来ると思うんだ。例えば、巨大なエネルギーをぶつける、とか………」

「巨大な、」

「エネルギー、か………」

 

我夢の言葉を、藤宮とミーナは口にして考える。すると、藤宮が何かを思いついたらしく、我夢に聞いた。

 

「なあ我夢、ゾーリムの事を覚えているか?」

「ゾーリムを?ああ、覚えているともさ。」

 

『巨獣 ゾーリム』は、かつてワームホールから顔を出現させた超巨大な怪獣で、全体を把握できないほどの巨体を持っていた。

 

「君から、『アグルのヒカリ』を託されなかったら、倒すこともできなかっただろう。」

「そ、そんなとんでもない怪獣がいたんですか………」

 

ゾーリムの話を聞いたミーナが、恐ろしいと言わんばかりに身を震わせた。すると、藤宮が話を続けた。

 

「あの怪獣がそもそも出現した原因のワームホール、それは俺たちが放った光線がぶつかり合い、生じたエネルギーだ。」

「光線がぶつかり合ったエネルギー………!藤宮!」

 

藤宮の考えに気が付いた我夢が、思わず立ち上がった。

 

「ああ。もう一度、あの現象を起こすんだ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




第十三話、ダイナ篇の完結編です。

スフィアシード登場。戦闘員的立ち位置(ダイナのフォーガスに近い位置)の奴が欲しくて出しました。デザインイメージはクトゥーラっぽいグリーンモンス+チグリスフラワー。

それぞれの方法で花の中央を狙うシーンはお気に入り。乱戦状態でそれぞれの個性が出るのは面白いと思います。

そして止めのウルトラフォーク。正直、ウルトラフォークやりたくてこの話作った感はあります(笑)技の特性上仕方ないとはいえ、結構使い道難しいですしね。シャーリーがスプリッターと言っているのは、アメリカなんかではそう呼ばれていることから。

戦い終わって、まだ謎が。スカーシルバゴンの主と矢的先生の意味深な言葉はいずれ。

正直、光太郎さんは出そうかどうか最後まで悩みましたが、ダブル変身をさせようと思い出してしまいました。

ラストは久々のガイア勢。ゾーリムの出てきたワームホールを開く方法ならゲートを広げられるので、帰る目途が立ちました。

次回は舞台を地球に戻して、メビウスたちの話になります。ボルター達提督も登場予定です。

では、また次回。

なお、蛇足ですが「藤宮と宮藤でややこしい」というネタを思いついたけれど、今の所芳佳と藤宮が会う予定はないです(笑)


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第十四話 無法者の島

西イリアン諸島のとある無人島。

 

突如として地響きが起きたかと思うと周囲の木々がなぎ倒されて、地中から巨大な怪獣が出現した。

 

「キャゴォォオオオオオオオ!キャゴォォオオオオオオオ!」

 

雄々しき鼻先の一本角とたてがみを持った2足歩行の怪獣は、三日月の夜空に大きく吠えると海に向けてのっしのっしと去っていった。

 

まるで、何かに導かれるかのように………

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「西イリアン諸島に、シーゴラスが?」

 

ベムスターが宇宙に帰ってから2日後の朝、GUYSジャパン基地 フェニックスネストのディレクション・ルームでは、朝の定期連絡が行われていた。

 

「はい。しかし、現地のCREW GUYSが急行した時には、海中に逃げられ、」

「行方が分からない、っていう事ですか。」

 

芳佳の質問に、ミサキ女史は頷く。海中に逃亡した怪獣シーゴラスは現在、公海の防衛を担当する『GUYSオーシャン』が、目下捜索中であるとの事だった。

すると、ペリーヌの頭からリムエレキングを引きはがし、胸に抱いたサーニャが聞いた。

 

「西イリアン諸島って、インドネシア、でしたっけ?」

「そう、1ヶ月半前の『ダークネスフィア事件』以来、日本以外での怪獣出現は、久しぶりなんです。」

「確か、あの時は世界中でも怪獣が確認されていたな。」

 

思い出したかのように、リュウが言う。『ダークネスフィア事件』の際には、確認されているだけでもモンゴルで「暴れん坊怪獣 ベキラ」、アリゾナ州で「地底怪獣 デットン」の同型と思わしき怪獣が(アメリカには以前、テレスドンの同型と思われる怪獣が出現している)、フランスのパリでは「有翼怪獣 チャンドラー」が現れ、他にもブラジルの上空を「円盤生物 UF‐0」が飛び去ったという報告が挙がっていた。

 

「ここ最近の状況を考えると、エンペラ軍団の仕業とも考えられるな。」

「エンペラ軍団………何らかの方法で、ネウロイを操る技術を習得している連中………」

 

エンペラ軍団の名前を聞いた美緒が呟く。一応、自分たちの世界でもネウロイを操る技術は確立されてはいるが、それでも脅威には変わりない。

 

「奴らの真の目的や、時空を移動する術を得た経緯も分かっていない。一層の警戒に努めてくれ。」

『G.I.G.』『了解!』

 

リュウがそう締めて定期連絡は終了、各々、自分の持ち場に着いた。

ふと、エリーがミサキ女史に聞いた。

 

「そういえば、シーモンスは出なかったんですか?」

「いえ、シーモンスの出現報告は、まだ上がっていません。」

「「シーモンス?」」

 

エリーの出した名前に、芳佳とムサシが反応した。

 

「はい。以前出現したシーゴラスには、シーモンスという奥さんの怪獣がいたんです。」

「奥さん?つまり、その怪獣は『つがい』なのか。」

「そうなんですよ。」

 

ちょっと待って下さいね、と言ってエリーがコンソールを操作すると、モニターに2匹の怪獣のデータが呼び出された。

 

1匹は、大きな角とたてがみが特徴の2足歩行怪獣『竜巻怪獣 シーゴラス』、

もう1匹は、顔つきはシーゴラスに似ているもののたてがみがなく、丸みをおびて鼻先の角が短い4足歩行怪獣『津波怪獣 シーモンス』だ。

 

「2足歩行の方がオスのシーゴラス、4足歩行の方がメスのシーモンスです。」

「確かに顔つきは似ていますけれど………」

「オスとメスで立つ足の数が違うのって、あり得るんですか?」

 

ご尤もな指摘をするリーネ。

 

「………まあ、それは置いといて………ドキュメントMATによると、産卵を控えたシーモンスが東京のセメント工場に襲撃してしまった為に攻撃を受けたところ、助けるようにシーゴラスが現れたそうです。」

「へぇー、奥さんを助ける為に現れたのかー」

「何とも、男らしい怪獣がいたものだな!」

 

美緒は感心して笑うが、この時の被害を考えると笑い事ではない。

西イリアン諸島の伝承によれば「シーモンスをいじめるとシーゴラスが怒り、海も空も、大地も怒る」と言われている。実際、2匹の怪獣の超能力によって大竜巻が発生し、東京は壊滅寸前にまで追い込まれたのだ。

 

「このことから、GUYS総本部はシーモンスの捜索も視野に入れています。」

「ず、随分と過激な夫婦愛だな………」

「もしもシーモンスが来ても、そっとしておこうな………」

 

リュウの提案に、一同は賛成するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第十四話 無法者の島

 

竜巻怪獣 シーゴラス

どくろ怪獣 レッドキング

ロボット大怪獣 クレージーゴンジャイアント

強奪宇宙人 バンダ星人

超古代怪獣 ゴルザ

甲殻怪地底獣 ゾンネル

宇宙超人 スチール星人バトラー

反重力宇宙人 ゴドラ星人

異次元怪異 ネウロイ(GX‐05)

登場

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こらー宮藤―!ペースが落ちているぞー!!」

「は、はいー!!」

 

数十分後、芳佳は追いかけながら怒鳴る美緒に返事をした。5人のウィッチは、坂本美緒少佐指導の元、訓練を行っていた。先ずは基地周辺のランニングだ。

 

「そ、そう言えば、ムサシさんのご友人の件なのですが、あれからどうなりましたの?」

 

息を切らしながらも、エイラとサーニャに聞くペリーヌ。

 

「う、うん。アイハラ隊長とトリヤマ補佐官が口添えしてくれて、捜索を手伝ってくれる事になったの。」

「まあ、怪獣相手なら、GUYSも捜索しやすいだろうってコトでサ。」

「そっかー」

 

ムサシとコスモスがこちらの世界に来た本来の目的は、誘拐されたムサシの『3匹の友人』の救出である。

 

話を詳しく聞いた所、怪獣との共存を研究するべく設立された『ネオユートピア計画』のために多くの地球怪獣と共に移住した『遊星ジュラン』に、突如現れた超巨大ロボットにより、ムサシの友人である3匹の怪獣が攫われてしまったのだ。

ムサシはコスモスと再び一体化して、ウルトラマンジャスティスと共に対処した物の、あと一歩の所でロボットは異次元に逃げてしまった。そこでムサシは、ロボットの逃げた時空の穴に強大なエネルギーを撃ちこめば無理やりこじ開けて時空移動が可能であることを確認し、―――この際、こちら側の月に一時的にやってきて、ネウロイGX-03を撃退している。―――テックスピナーでサーニャ達と共にやってきたのだ。

そして攫われた友人、つまり『友好巨鳥 リドリアス』、『地中怪獣 モグルドン』、『電撃怪獣 ボルギルス』の3匹は、現在捜索中である。

 

「だけど、最初聞いたときはビックリしたよねー」

「うん。写真のお祝いしてくれている手前の人達じゃなくて、奥の怪獣だったからね………」

「3匹ともムサシさんの大切な友達、特に、リドリアスとは仲が良いんです。」

「でも、ロボットの写真が無かったのは、少し痛手ですわね。」

「こらお前ら!無駄口を叩くんじゃないぞー!」

『は、はいーーー!!』

 

後ろから美緒に怒鳴られ、疲れが出始めてはいるものの速度を上げる5人。すると、美緒の後ろから暑苦しい叫び声がした。

 

「一つ!腹ペコのまま学校に行かぬこと!」

「む?」

「一つ!天気の良い日に布団を干すこと!」

 

美緒が振り返ると、『ウルトラ五つの誓い』を叫ぶリュウ隊長を先頭に、GUYSジャパンの面々とムサシが、同じくランニングをしていた。

 

「おう!お前らも走り込みか!」

「はい!日々鍛えねば、身体が鈍ってしまいますからな!」

「そうか!それじゃあ、お先に失礼するぜ!」

 

そう言って、リュウは美緒を抜かす。

 

「いえ、追われていると分かった方が、隊員たちに危機感を与えられますから!」

 

そう言うと、美緒はリュウを抜かした。

 

「いや、基地の周囲はオレの方が詳しいからな!」

 

再度、リュウが美緒を抜かした。

 

「いえ、この数週間で、私も周囲は把握していますので!」

 

再度、美緒がリュウを抜かした。

 

「いや、流石に芳佳たちもバテているみたいだし!」

「いえ、バテているのは、そちらのイノウエ隊員等も同様かと!」

 

そう言って、リュウと美緒は抜いたり抜かされたりを繰り返し、いつの間にやら芳佳たちを追い越して先頭に出ていた。

 

「いやいやいやいやいやいや………」

「いえいえいえいえいえいえ………」

「しょ、少佐……?」

「リュウさん、何をやって………?」

 

エイラとミライの戸惑った声にも耳を貸さず、2人の走るスピードは徐々に上がっていき………

 

「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」」

バッビューーーン

 

「坂本さーーーーーん!?」

「隊長ーーーーーーー!?」

 

そのまま何故か激しい競争にまで発展してしまい、呆然と立ち尽くす芳佳達を尻目に、あっという間にはるか先まで走り去ってしまった………

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「―――で、こんなにバテているのか、この2人は………」

 

「ぜぇー、はぁー、」

「ぜぇー、はぁー、」

 

十数分後、トリヤマ補佐官の目の前には、汗だくでデスクに突っ伏し、息を切らすリュウと美緒の姿があった………

 

「まったく、競争するのはいいけれど、業務に支障が出るレベルで張り切るものではないぞ。」

「い、いえ、補佐、官、こんなの、疲れてるうちに、入りませんよ……」

「そ、そうです!確かに、さっきは、ちょっと張り切り、すぎて、しまい、ましたが………ゴホッゴホッ!」

「完全に息も絶え絶えに疲れているじゃないですか!」

(割と似たもの同士なのかなー、この2人………)

 

やせ我慢でトリヤマに反論するも急き込んでしまい、芳佳とリーネに介抱される2人を見て、そう思うムサシであった。

 

「兎に角、2人とも午前中は休んだ方が良いですよ。来週の新型機のテストに関する手続きもありますし………」

「新型って、例のメテオールを積んだ奴ですね。」

「そうはいかん。こうしている間にも、いつ怪獣やネウロイが現れるのか分からないのだからな………」

 

息を切らしながらも、そう答える美緒。しかし、とミライは口を出した。

 

「そうは言っても、そんな状態で怪獣やネウロイが現れでもしたら………」

 

ミライがそう言いかけた時、ディレクション・ルームに警報が鳴り響いた!

 

「怪獣か!」

「ネウロイか!」

「おお、復活した!」

 

先程までの疲労はどこへやら、鳴り響いた警報に勢いよく立ち上がる2人の隊長。エリーがコンソールを操作すると、モニターに地図情報と赤く点滅する光点が映し出された。

 

「多々良島付近に、ネウロイが出現しました!」

「多々良島だと?」

「映像、出ます!」

 

エリーがそう言うとメインモニターの映像が切り替わり、鳥のくちばしを思わせる先端を少し曲げた尖った機首と、四角い形状の翼を持ったネウロイが、島に上陸していく様が見えた。

 

「多々良島には現在、怪獣の生態研究の調査団が滞在中です!」

「被害が出る前に追っ払うぞ!GUYS,SALLY―――」

 

リュウが号令を飛ばそうとしたその時、モニターの映像に動きがあった。

 

ゴシャァアッ

[キィィィィイイイイイイイ!?]

「!?」

「何だ!?」

 

何と、突然飛んできた巨大な岩がネウロイに命中し、翼の一部が損傷してしまったのだ!

 

「何だ!?何で今、岩が飛んできたのだ……!?」

「多々良島………まさか!?」

 

心当たりがあるのか、ミライが声を上げる。すると、画面が切り替わって、巨大な怪獣の姿が映し出された!

 

[ピギャァァアアアアアアアアアアアオッ!ピギャァァアアアアアアアアアアアアオッ!]

 

一目で石頭と分かる骸骨のような頭に鋭い牙をはやした口、力強い筋肉を蛇腹のような凹凸の体表で覆われたその怪獣は、胸をパコンパコンと鳴らして雄たけびを上げた!

 

「レッドキングだ!」

「前に出てきたヤツの他にもいたのか!!」

 

その怪獣の姿を見たリュウが、その名を叫ぶ。

この怪獣こそ、ドキュメントSSSPに2件、ドキュメントUGMに1件の記録を残す他、アメリカでも亜種の存在が確認され、2年前にも多々良島に出現した怪獣、レジストコード『どくろ怪獣 レッドキング』だ!

 

「レッド………?」

「キング………?」

 

その名前を聞いた6人のウィッチとムサシは、再度モニターに映るレッドキングを見た。

 

「………赤くないですよ?」

「むしろ、色白ダナ。」

 

リーネとエイラが指摘した通り、レッドキングの体表は名前に反して赤い色ではなく、黄色っぽい白色であった。

すると、エイラの評した「色白」という言葉が(何故か)聞こえたのか、レッドキングは「うふっ❤」と“しな”を作るポーズを取ったかと思うと、

 

[………ピッギャァァアアアアアアアアアアアオッ!!]

 

「何やらせてんだ!」と言わんばかりに、足元の岩を蹴り飛ばした。ついでに、その岩はネウロイに命中した。

 

「何だ、今の………?」

「………ちなみに、名前は「凶暴で赤い血を好む」のが由来とされています。」

 

レッドキングの行動に一同が呆気にとられる中、エリーが名前の由来を解説する。

 

「その由来は、聞きたくなかったかも………」

「………もしかしたら、レッドキングはネウロイに、自分の縄張りを荒らされたと思っているのかもしれない。」

 

芳佳が名前の由来にぞっとしていると、ミライは自分の考えを呟く。その考えの通りなのか、レッドキングはネウロイに向けて投石を繰り返しており、ネウロイも何発か受けてフラフラである。

とどめとばかりに特大の岩をレッドキングが投げると、岩はネウロイに命中し、ネウロイは砕け散った。

 

[ピギャァァアアアアアアアアアオッ!]

 

「た、倒しちゃいましたよ!?」

「どうやら、上手い具合にコアに当たったらしいな………」

 

ネウロイを倒したレッドキングに驚く一同。レッドキングはそのまま勝ち誇るようにドラミングをすると、どこかへ立ち去ってしまった。

 

「行っちゃいましたけど………?」

「………どちらにしろ、レッドキングが現れたんなら、調査団が危ない。」

「それに、ネウロイがなぜあの島を襲ったのかも、気になるな。」

 

リュウと美緒はそう言うと、隊員たちを見渡した。

 

「これより、調査団の安否確認と現地の調査の為、多々良島に向かう。ウィッチの6人とムサシも、協力してくれ。」

「はい!」

「勿論です!」

「GUYS,SALLY GO!」

『G.I.G.!!』

 

CREW GUYSの面々が返事をして、発進位置に着く。すると、エリーが立ち上がってリュウに進言をした。

 

「あの隊長、私も同行をしたいのですが………」

「………分かった。ガンローダーに予備のガンスピーダーを搭載して、そこに乗れ。」

「G.I.G.!」

 

エリーはそう返答し、ヘルメットを持って同行した。

芳佳は、エリーの行動が珍しいと思いながらも、出動すべく格納庫へと走った。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

怪獣頻出期、太平洋に浮かぶ多々良島は、火山活動の停止を受けて定点観測所を再開した際、3匹の怪獣や吸血植物の無法地帯と化しており、科学特捜隊とウルトラマンが奮闘をした島である。

現在は無人島となっているが、時折調査隊が組まれ、独自の進化を遂げたその生態系、とりわけ怪獣の調査を行っているのだ。

 

先程のようにレッドキングに気づかれてはいけないと、海岸に着陸した一同は、レッドキングに警戒して身動きが出来ない調査団のキャンプを目指し、本当に日本国内なのかと疑いたくなるジャングルを進んでいた。

 

「扶桑に、あ、違った………えーと、に、日本?にこんな所があったんですね………」

「小笠原諸島以上の生態系の宝庫、なんて言われていますからね。」

 

調査団の残してくれた目印を頼りに、目の前のツタや草をかき分けて前に進むカナタの後ろで、芳佳とエリーが話す。各自が銃を構えながら、あたりを警戒して進んでいた。

 

「気をつけろよ、どっから怪獣や「吸血植物 スフラン」が出てくるか、分からないからな。」

「でも、ピグモンなら人間に友好的だから、大歓迎ですね。」

「この世界にも、そう言う怪獣がいるんですね。」

「油断するなって、言ったよな?」

 

早速ムダ話をするエリーたちを叱るリュウ。その時、目の前の茂みがガサガサと音を立てて動く。全員が警戒して、銃を目の前に構えた。

 

「ま!!、待ってリュウさん!!」

「え?」「この声………」

 

すると、茂みから白衣を着た、リュウ達と同世代位の男性が出てきた。

 

「テッペイ!?」

「テッペイさん!?」

「テッちゃん!!」

 

その男性を見て、思わずミライたちは驚きの声を上げ、

 

「え?」

「お知り合い、ですの?」

 

芳佳たちはリュウ達とテッペイと呼ばれた男性を交互に見て、首を傾げた。

 

彼こそ、リュウやミライ達と共にエンペラ星人と戦った『旧CREW GUYS』の1人にしてエリーのいとこ、クゼ・テッペイであった。

 

 

 

 

 

「父の紹介で、今回の調査団に医師として加わったんだ。」

 

ジャングルを抜け、キャンプを目前にした岩場を歩きながら、テッペイは説明をしていた。

 

「GUYSでの経験と怪獣の知識を、この調査団で生かせればってね。」

「成程な。」

「もしかして、エリーさんが今回志願したのって………」

 

芳佳が振り返り、エリーに聞いた。

 

「はい、テツハルおじさんから、今回の多々良島の調査団に加わったという話を聞いていたので………」

「テッペイさんが、心配だったんですね。」

 

ミライに笑顔で聞かれ、エリーは小さく頷いた。間もなくして、一行は調査団のキャンプ地に到着した。

 

「はじめまして、GUYSの皆さん。私が調査団の代表を務めるキシと申します。専門は、怪獣生態学です。」

「よろしくお願いします。」

 

眼鏡をかけ、七三分けにした髪の男性、キシ博士と握手をするリュウ。調査団はテッペイを含めて6名。代表であるキシ博士を筆頭に助手のマスジマ、フクダ、モトハシ、クルスのメンバーだ。

 

「いやしかし、まさかネウロイだけでは無く、レッドキングが出てくるなんて、思ってもみませんでしたよ。」

「レッドキングは非常に凶暴な怪獣です。いつでも脱出の出来る準備を。」

 

リュウはそう進言するが、キシ博士はまあまあと手のひらを見せて制した。

 

「レッドキングを始めとした怪獣の生態は、未だに不明な部分が多いですから、これはまたとない機会なんですよ。生態調査をしてからでも、遅くはないでしょう?」

「しかし、万が一の事があっては………!」

「博士、僕も同意見です!」

 

テッペイもそう言う。キシ博士は不安そうにすると少し考え、

 

「………分かりました。でしたら、定点カメラ等の遠隔操作できる観測機器の設置をさせてください。それくらいなら、構わないでしょう?」

「それくらいでしたら………」

 

リュウが渋々承諾すると、キシ博士はマスジマ助手とモトハシ助手に指示をして、機器の準備をさせた。美緒がリーネに護衛を指示し、2人が銃器を手に助手たちの方に向かった。

助手たちが準備をしていると、リュウのメモリーディスプレイの通信音が鳴った。相手はミサキ女史であった。

 

「こちらアイハラ。」

[アイハラ隊長!多々良島の上空に、次元エネルギーが!]

「何!?」

 

通信を聞いたリュウが空を見上げると、渦巻く時空エネルギーが発生し、中から銀色の戦闘機が飛び出した!

 

「戦闘機!?」

 

戦闘機の出現に驚くのも束の間、戦闘機はみるみる内に高度を下げ、岩山地帯に不時着をしてしまった。

 

「コウジとエリーはここに残れ!ミライとカナタはついて来い!」

『G.I.G.!』

「ペリーヌと宮藤も行け!」

『了解!』

「僕も行きます!」

 

リュウと美緒はそう命じ、ムサシを含めた6人は戦闘機の落ちた地点に向かい駆け出した。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

一方、岩場に墜落した戦闘機のハッチが開き、中から人が出てきた。

 

「………な、何とか不時着できた、な………」

「うじゅぅう~~~………」

 

出てきたのは、赤く長い髪の少女と色黒の肌と黒いツインテールが特徴の少女、そして、緑の軍服に、茶色い髪を後ろで二つに結わいた少女。

 

そう、シャーリー、ルッキーニ、バルクホルンであった。

 

「ここは地球、なのか?」

「分からない。通信機が使えれば何とかなるんだろうけど………アスカに使い方聞いとけばよかったなぁー………」

「………アスカ、大丈夫かな………?」

 

戦闘機―――ガッツイーグルαスペリオル号から地面に降り立った3人だが、ルッキーニが不安そうに俯く。シャーリーはそんなルッキーニの頭を撫でてやった。

 

「とにかく、まずは周囲を散策して、状況の確認を………」

「ん?」

「んん?」

 

その時、バルクホルンは視界に何か動くのを見た。それに気づいたシャーリーとルッキーニも、視線の先を追って振り返った。

 

〔………あ。〕

 

そこには銀色に光るプレートで顔を覆ったヘルメットをかぶり、黒いぴったりついた宇宙服の上に同じく銀色の小手と胸当てを着けた、小柄な女性らしき人物がいた。

 

『………』

〔………う、〕

「ん?」

 

しばし固まっていた女性であったが、突然立ち上がったかと思うと、腰から銃を取り出して3人に向け構えた。

 

〔動くなぁあーーー!!〕

「わぁあ!?銃を出した!?」

 

どこか機械を通したかのようなノイズの入った声で叫ぶ女性に驚く一同。女性は焦っているのか、銃身はブレブレである。

 

「おーし、落ち着け。私たちは今、お前を見ただけで何をしているかは分かっていないから―――」

〔やかましいわ!あんたら、見たからには生きて帰れる思わん事やな!〕

「おい、落ち着けって!!」

 

何故か関西弁で怒鳴る女性にシャーリーとバルクホルンは呼びかける。当の本人は聞く耳を持たず、今にも撃ってしまいそうな雰囲気であった。ルッキーニが、その声に聞き覚えがあると思ったその時、

 

ガァンッ

〔ぎゃぁ!?〕

「何だ!?」

 

突然、銃声と共に女性の銃が弾かれ、弾かれた衝撃で女性は腕を抑えた。

 

「大丈夫か!?」

「あれ!?シャーリーさん達!?」

「芳佳だ!」

「宮藤!無事だったか!」

 

発砲をしたのは、岩場の上の方から現れたリュウ達であった。女性は岩場のリュウと芳佳に気を取られるが、その時、背後からジャキン、という音が聞こえる。背後から、ミライ、カナタ、ペリーヌに銃を突きつけられているのだ。

 

「おっと、油断大敵でしてよ!」

〔何やと!?〕

「ペリーヌもか!」

「仲間のウィッチか。」

「はい。でも、ウルトラマンタロウさんと一緒のハズじゃあ……?」

 

リュウの問いに芳佳が答える。女性が振り返ると、ペリーヌの顔を見て困惑のそぶりを見せた。

 

〔んな、アホな………!?〕

「君は、………?」

 

ミライが女性に聞こうとした時、女性はヘルメットに手をかけ、それを脱いだ。瞬間、長い金髪がなびき、素顔が明らかになった。

 

「!?」

「え………!?」

 

顔を見合わせたペリーヌが、驚きの顔となる。

 

 

 

 

何と、その顔はペリーヌ・クロステルマンと瓜二つであったのだ!

 

 

 

 

 

「ぺ、ペリーヌさんが、………2人!?」

 

芳佳が、思わず声を出す。

 

ペリーヌとの違いは瞳が青く、耳がネコ科を思わせる黒く尖った物で、かけているのがゴーグル型のメガネである点だろうか。

 

「アンタ!何でアタシと同じ顔しとんねん!?」

「なっ!わ、わたくしは生まれつきこの顔ですわ!あなたこそ!わたくしと同じ顔をするなんてどういうつもりですの!?」

「アホンダラ!アタシも生まれつきや!そっちこそ、けったいな声しよってからに!!」

「何ですって!!あなたこそ、そんなキンキン声で!!」

「ちょ、ちょっと2人とも………!」

 

同じ顔同士で、しかも声まで同じに聞こえる(女性の方がやや声が高い)2人が互いに怒鳴りあうのを、必死に止めるミライとカナタ。しかし、2人の口喧嘩はヒートアップしていき、今にも手が出そうだ。

 

「待たんかいエニレプ!!」

「え!?」

「今度はなんだ!?」

 

その時、野太い男性の声が聞こえて振り返ると、同じデザインの宇宙服を着て、同じく尖った耳と吊り上がった三白眼にギザギザの歯を持った宇宙人がいた。

 

「エ、エモラス班長!!」

「仲間の宇宙人か!!」

 

そう言って、エモラスと呼ばれた宇宙人に銃を向けるカナタ。しかし、エモラスは手で制し、

 

「ま、待ってえな!勝手に地球に来たのは謝るさかい。ワシらは地球侵略が目的ちゃうねん。見逃してや。」

「何だと?」

「自己紹介させてもらいましょ。ワシはバンダ星人のエモラス。そっちのちっこいのは、エニレプや。」

「やはり、君たちは『バンダ星人』か。」

 

ミライは、2人の特徴から宇宙人の正体に検討を付けていたらしく、2人に聞く。すると、エモラスはミライの方を向いた。

 

「そういうあんさんは、ウルトラマンメビウスやな。」

「え?」「あんたが、メビウス!?」

 

シャーリー達がミライの正体に驚く。カナタとリュウは、バンダ星人という名前に聞き覚えがあった。

 

「パンダ星人?」

「パンダ星人やない!バンダ星人や!半濁音やのうて、濁音や!!」

「あ、ゴメン。」

 

リュウの間違いにエニレプが怒り訂正をする。カナタは、バンダ星人について覚えている事を口に出した。

 

「バンダ星人ってたしか、自分の星の鉄資源がなくなったから、地球の鉄を奪うためにロボットを送り込んできた宇宙人、だったかな?」

「随分と、セコイ宇宙人だな………」

「何やと!?」

「落ち着けエニレプ。まあ、セコイっちゅうトコは認めざるを得ないな。」

 

エモラスが怒るエニレプを制し、GUYSの面々に向き直った。

 

「しかし、慎重な性格のバンダ星人が、姿を現してまで何で地球に?」

「おお、そやった。」

「班長、言うてええんですか?」

「ウルトラマンや、地元住民の協力があった方がええやろ。実はな、さっきあんさんらが言うてた、ロボットが関係しとんねん。」

「ロボット?」

 

エモラスの言葉に、一同は首を傾げた。

 

「ところで、何で関西弁なんだ?」

「え?これ、地球の標準語ちゃうの?」

「せやから、中古のやっすい翻訳機使うのやめよ言うたやん、班長。」

 

 

 

 

 

2人のバンダ星人の話はこうだ。

 

バンダ星の深刻な鉄資源枯渇問題を解決するために、彼らは宇宙空間に無数に浮かぶスペースデブリに目を付けた。

スペースデブリ(宇宙ゴミ)とは、破棄された人工衛星や打上げに使われたロケット本体や、その一部の部品を始めとする、宇宙空間に浮かぶゴミの事である。

バンダ星人たちは宇宙に破棄され、しかも増加の一途を辿っているゴミならば、自分たちが回収しても誰も文句を言うまいと考えて、惑星を上げて回収用の超巨大ロボットの試作1号機を作り上げたのだ。

 

「せやけど、その試作機を宇宙空間で機動実験しとる最中に、突然エンペラ軍団の「ロボット騎兵衆」言う連中が、襲ってきよったんや。」

「エンペラ軍団だって!?」

「ロボット騎兵衆って言うと、この間のボルターとか言うやつの部隊か!」

 

エモラスの話に、ミライ達は驚いた。

 

エンペラ軍団は試作機を奪い取ると、数機のロボットでバンダ星人の宇宙船を破壊して追跡を困難にさせると、そのまま逃走をしてしまったのだ。

エモラスたちはそのロボットの捜索班として派遣され、調査の結果、地球にロボット騎兵衆が来ている事を知り、次元エネルギーの方にGUYSの目が向いている隙をついて、2人が先行したというのだ。

 

「勝手に地球来たんは悪い事思うたんやけど、エンペラ軍団の事ならバンダ星だけやのうて、地球や他の星にも関わる案件やさかい。急ぐあまり、無断で潜入してもうたわ。」

「そう言う事だったのか………」

 

エモラスの話を聞いて、リュウが納得したように頷いた。

 

「それで、そのロボットというのは?」

「ああ、前に地球の自動車集めた時のを、そのままでっかくしたようなモンや。確か地球では、『クレージーゴン』とか呼ばれとったな。」

「クレージーゴン?」

 

バルクホルンが首を傾げると、カナタが咄嗟にメモリーディスプレイで検索をかける。

 

「ありました。ドキュメントUG、レジストコード『ロボット怪獣 クレージーゴン』」

 

ディスプレイに移ったのは、凸型のボディと頭部と持ち、右腕が異様に長い2本爪のアームで、対照的に左腕は極端に短いシオマネキを思わせるフォルムを持ち、腹部にはシャッターのある、くすんだ真鍮色のロボットだ。

 

「これが、クレージーゴンか………」

「おお、コレやコレ!そんで実際の奴は、右アームが4本爪で、左はレーザーネット発射装置になっとるんや。」

「何だって!?」

「ムサシさん?」

 

その特徴を聞いたムサシが、カナタに詰め寄ってメモリーディスプレイを覗き込んだ。そして、クレージーゴンの写真を見て、驚きの声を上げた。

 

「………間違いない、リドリアス達をさらったのは、そのロボットだ!」

「何だって!?」

「さらった?一体、何のこっちゃ?」

 

ムサシは、シャーリーやエモラス達に、自分がこちらの宇宙に来た経緯を話した。

 

「じゃあ、その怪獣達をさらったのは、エンペラ軍団だったのか!」

「そうか!連中は戦力になる怪獣を捕まえるロボットが欲しかったんだ!」

「それには、アタシらの作ったロボット、………あー、試作機で名前決まっとらんし、地球の名前から取って、『クレージーゴンジャイアント』と仮称しとくけど、そいつがうってつけだったワケやな。」

 

エニレプ達も、今回の怪獣誘拐事件とクレージーゴンジャイアント強奪事件がつながっている事に気づいた。

 

「リュウさん………」

「………エンペラ軍団が絡んでいるなら、地球とバンダ星だけの問題じゃあ済まない。それに、リドリアス達をさらった犯人でもあるなら、なおの事放ってはおけない。」

「せやったら………」

「正式な決定ではないが、隊長である俺の判断で、今回のクレージーゴンジャイアントの奪還に協力しよう。」

「ほんま、おおきに!」

 

そう礼を言って頭を下げる、2人のバンダ星人。エモラスは、早速宇宙空間にいる仲間に連絡を取ると言って、通信機を取り出して少し離れる。リュウもGUYS基地に連絡を入れると、芳佳はシャーリー達に聞いた。

 

「ところで、シャーリーさんたちは、ウルトラマンタロウさんとダイナさんと一緒に地球に来るって聞いていましたけれど……?」

「あ、そう言えば………タロウ兄さん達は、どうしたんですか?」

 

芳佳の質問に気づき、ミライもそう聞く。しかし、タロウとダイナの話題が出た途端、3人は顔を俯かせる。それを見て、ミライは思わず聞く。

 

「どうかしたんですか…?タロウ兄さん達に、一体何が!?」

「ミライ君、落ち着いて………」

「じ、実は………」

 

思わず詰め寄るミライをムサシが宥め、バルクホルンが気まずそうに話そうとしたその時、通信をしていたエモラスが大声で呼びかけてきた。

 

「た、大変やで!こっち来てや!!」

「エモラスさん?」

 

慌てた様子のエモラスにただならぬ事態を察し、駆け寄るミライとリュウ。すると、エモラスは通信の為に近寄った岩場の影に立つと、そこには銀色のテープで拘束された5人の人間がいるではないか。

 

「これは!?」

「ワシが岩場に近寄ったら、既にこの状態やったで………」

「この、銀色のテープは………?」

 

ミライはふと、5人を縛るテープに見覚えがあった。芳佳は拘束されたうちの1人に駆け寄り、身を起こした。

 

「大丈夫ですか!?」

 

瞬間、その顔は驚愕に変わった。

 

「え………!?」

「キ、キシ博士!?」

 

その人物は、眼鏡をかけ、七三分けにした髪の男性であり、その顔は先程まで一緒だったキシ博士の物であった!芳佳は慌てて口に貼られていたテープをはがすと、目を回した博士は大きく呼吸をする。良く見ると、他の4人も助手のマスジマ、フクダ、モトハシ、クルスではないか。

 

「大丈夫ですか博士!一体、何が………!?」

「が、GUYSの皆さんですか………クゼ君がキャンプから離れた途端に、複数人の宇宙人が突然現れて、私たちを拘束したんだ………」

「なんだって!?」

 

キシ博士の言葉に、リュウが思わず声を上げた。そこで芳佳がはたと気付く。キシ博士たち調査団がここに拘束をされているならば、今キャンプにいる調査団は………?

 

「じゃあ、今リーネちゃん達と一緒にいる博士たちは………!?」

「みんなが危ない………!」

 

ミライ達も気付き、リュウは胸元のメモリーディスプレイを取り出した。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

美緒が観測機器の準備をしている博士たちの護衛をしていると、メモリーディスプレイの通信音が鳴り響いた。

 

「ええと、このボタン、だったかな?こちら坂本。」

 

まだ慣れていない手つきでディスプレイを操作すると、リュウとの通信がつながった。

 

[美緒!今すぐみんなを連れてそこを離れろ!]

「何?」

 

リュウの言った言葉の意味が分からず、美緒は思わず聞き返した。その時、

 

「きゃぁあ!?」

「何だ!?」

「サーニャちゃん!?」

 

サーニャの悲鳴に、弾かれるように美緒たちは振り返った。そこには、右腕が爪の短い銀色のハサミになったキシ博士が、サーニャを捕まえて右手を首に突きつけていた!

 

「キシ博士!一体何を………!?」

「どうやら、『本物の博士が見つかってしまった』ようだな………ならば、この姿でいる必要もあるまい。」

「何だと!?」

「あのハサミはまさか………!?」

 

博士の右手を見て、心当たりがあるのかテッペイが声を出す。すると、博士と4人の助手はドロン、と正体を現した。

どことなくエビやシャコを思わせる長い顔に白い網目模様の体表を持ち、爪の短いハサミ状の手とチョッキを思わせる赤い胸の宇宙人―――

 

「は、『反重力宇宙人』………!」

「『ゴドラ星人』………!」

 

テッペイとエリーがゴドラ星人の名前を口に出す。気が付くと、美緒たちは十数人のゴドラ星人達に囲まれていた!

 

「我々は、エンペラ軍団『宇宙人遊撃衆』所属の「ゴドラ忍群」だ。本物の調査団は、今メビウスたちのいる岩場の辺りに拘束されている。」

「何だと!?」

 

サーニャを捕えたリーダー格と思わしきゴドラ星人が名乗る。すると、ゴドラ星人の背後からふ、ふ、ふ、という不敵な笑い声がした。

 

「流石に殺してはいない。不要な殺生をするのは、オレの主義に反するのでな。」

「その声………!」

 

ゴドラ忍群の背後から現れたのは、黒いテンガロンハットに薄茶色のポンチョを着た男と、黒いタキシードに片眼鏡、白い口髭を蓄え白髪をオールバックにした老紳士だ。その声を聴いたリーネが気づき、ポンチョの男を見た。

 

「貴方が、ボルター提督!?」

「その通りだ。」

「私の方は、初めましてですね。大怪獣戦団提督の、カウントと申します。」

 

2人の提督はそう名乗る。コウジ達が腰に下げた銃を構えようとするが、ゴドラ星人の1人がリング状の光線「ゴドラガン」を足元に放ち、地面を爆発させた。

 

「下手に動けば、人質がどうなっても知らんぞ?」

「くっ………!」

 

サーニャを人質にとられている以上、うかつに手を出せなくなった美緒たち。すると、カウントは手にした杖で数回地面を突いた。

 

「しかし、人質がいるとはいえウルトラマンに来られては厄介です。」

「同感だ。そこで、こちらは手を打つことにしよう。」

「何………!」

 

ボルターはそういうと、右手の指をパチンッ、と鳴らした。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「サーニャが人質に!?」

 

一方、通信越しにサーニャが人質に取られた事を知ったリュウ達は、戦慄した。手を出せない以上、美緒たちも人質に取られたと考えていいだろう。

すると、博士たちの拘束を何とか解いたミライとエニレプが、リュウに進言をした。

 

「リュウさん、敵にはゴドラ星人だけではなく、『ザラブ星人』もいると思います!」

「ザラブ星人?」

「ハカセたちを拘束しとったあのテープは、ザラブ星人が使う拘束テープや。エンペラ軍団に、あの破壊好きの星人が加担しとるんは、安易に想像できるで。」

 

ミライとエニレプの話を聞いて、リュウも頷く。初代ウルトラマンやメビウスに擬態して地球文明を破壊しようとしたザラブ星人は、文明を持つ惑星を破壊することが目的の宇宙人だ。2年前には、他の宇宙人と手を組んで「異次元人ヤプール」の残した超獣『Uキラーザウルス』を復活させようとした個体も地球に飛来している。そんな『凶悪』そのものと言っていい星人であれば、エンペラ軍団に従軍していても不思議ではない。

 

「その通りだ。」

『!?』

 

その時、岩場の上から声がする。見上げれば、そこには「凸」の形をしたロボットのような頭部の3方向には赤い丸鋸のような部位が付き、黄色い体にも銀色のトゲがいくつか生えていて、異様に長い両の人差し指が特徴の宇宙人、スチール星人の姿があった!

 

「スチール星人バトラー!」

「カウント、ボルター両提督率いる軍勢により、すでにこの島は我らエンペラ軍団の支配下に置かれているのだ!」

「何だと!?」

 

バトラーの言葉に驚く一同。その時、バトラーの頭上の空間が歪み、中から2体の怪獣が出現した!

 

「グォオオオオオオオオオオオオ!!」

 

1体は、胸と頭を甲殻類のような殻で覆った青い2足歩行怪獣!

 

「グォオーーー!ギャァァアアアアウ!」

 

もう1体は、サメを思わせる牙を生やした顔と山のような甲羅が特徴の4足歩行怪獣だ!

 

「あれは、ヴェネツィアに出現した怪獣!?」

「ゴルザ!?やはりエンペラ軍団の支配下にあったのか!」

「あの怪獣は………ジュランに出てきた怪獣…!?」

 

2足歩行の青い怪獣、『超古代怪獣 ゴルザ』の名前を叫ぶバルクホルン。

武蔵が見上げるもう1体の4足歩行怪獣にも、『甲殻怪地底獣 ゾンネル』という名前があるのだが、彼らがその名前をまだ知らなかった。

 

「貴様らの相手は、この2匹だ!せいぜい、頑張る事だな!」

「貴様………!」

 

2大怪獣を見上げ、高笑いをするバトラー。

 

太平洋に浮かぶ多々良島は、エンペラ軍団の支配する戦場と化していた………!

 

 

 

 

 

つづく




第十四話です。今回から多々良島篇になります。

シーゴラス登場。この怪獣夫婦はメビウスの時代でもオシドリ夫婦なんだろうなあと思いますが、登場しなかったのが残念。今、7体中3体分しかスーツないのかな?

実は『コスモス篇』でリドリアス達の事説明するのを忘れていたので、ここで挿入(汗)もっさんとリュウさんは、根は似たような性格だと思うのでやってみました。

レッドキングに倒された哀れなネウロイGX-05。モチーフはTACのタックスペース。

テッペイ登場。多々良島の調査団の名前には、実は元ネタがあったりしますw

バンダ星人のデザインは、宇宙服は『ダイナ』のクレア星雲人、男性の正体は一峰大二先生による漫画版ウルトラセブンに登場した、サロメ星人をイメージしています。エニレプがペリーヌにそっくりなのは、501のキャラに関西弁を喋らせたかったからですw名前も、それぞれサロメ(SAROME)とペリーヌ(PERRINE)の逆さ読み。

ゴドラ星人が忍者集団なのは、ウルトラファイトで『宇宙忍者』の異名を持っている事に由来。ゾンネルとムサシの因縁は、いずれ別編で書こうと思います。

次回は多々良島の戦いになります。そして、両提督の正体も発覚です。

では、また次回。


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第十五話 襲撃の竜巻怪獣

ネウロイと怪獣レッドキング出現を受けて、多々良島へ向かったGUYSとウィッチたち。

 

クゼ・テッペイとの再会を喜ぶも、地球に潜入していたバンダ星人から、エンペラ軍団に奪われた超巨大ロボット「クレージーゴンジャイアント」の奪還の手伝いを依頼される。

 

しかし、多々良島は既に、カウント、ボルター両提督の配下であるゴドラ星人と怪獣軍団に支配されていたのだ!

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

十数人のゴドラ星人に囲まれた美緒達の耳に、怪獣の咆哮が聞こえた。

 

「怪獣………!?」

「ウルトラマン達へは、怪獣を送り込みました。これで、足止めは出来るでしょう。」

 

そうカウントは言い放つと、シルクハットを取って顔を隠し、手を下した。すると、帽子に隠されていた顔が明らかになる。

 

黒く細長い顔に黄色い筋を走らせ、金色の単眼に頭頂には短い触手が伸びた宇宙人―――かつてウルトラマンを殺害し、科学特捜隊を壊滅させた怪獣、『宇宙恐竜 ゼットン』を解き放った宇宙人、『変身怪人 ゼットン星人』だ!

 

「ゼットン星人!?」

「カウント提督の正体は、ゼットン星人だったか………!」

 

カウント提督の正体が、ゼットン星人である事に驚く一同。

 

「………だが、納得は出来るな………大怪獣戦団の提督を、最強の怪獣たるゼットンの主であるゼットン星人が務めているのは………」

「ふ、お褒めにあずかって、光栄ですな。」

 

本来の姿に戻ってもかけている片眼鏡を上げて(最も彼の場合、単眼なので片眼鏡が正式なメガネなのかもしれないが)、皮肉っぽく言うカウント。すると、隣に立っていたボルターがふ、ふ、ふ、と不敵に笑った。

 

「ふ、カウントが正体を現したのなら、オレも明かした方が良いのだろうな。」

「何!?」

「え、………いや、ボルターさんはいいんじゃあないですか………?」

 

ボルターが正体を現そうとするが、カウントは慌てて制止する。彼の正体には、何かばれてはいけない秘密があるのだろうか?

 

「そうはいかない。いつまでも地球人を模したこの姿では、勘違いをされてしまうやもしれぬではないか。」

「いえ、しかし………」

「では、改めて自己紹介をさせていただこう。」

 

カウントが止めるのも聞かず、ボルター提督は纏っていたポンチョを脱ぎ捨てた。すると、その下から宇宙人としての正体が明らかとなる!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

頂点が2つに割れたはげ頭、

 

窪んだ眼とおちょぼ口、

 

茶色い鱗に覆われた、細い身体、

 

そう、この宇宙人は………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「わが名は、『バド星人ボルター』!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第十五話 襲撃の竜巻怪獣

 

ロボット大怪獣 クレージーゴンジャイアント

どくろ怪獣 レッドキング

超古代怪獣 ゴルザ

甲殻怪地底獣 ゾンネル

友好巨鳥 リドリアス

竜巻怪獣 シーゴラス

バド星人ボルター提督

変身怪人 ゼットン星人カウント提督

宇宙超人 スチール星人バトラー

凶悪宇宙人 ザラブ星人

反重力宇宙人 ゴドラ星人

強奪宇宙人 バンダ星人(エモラス・エニレプ)

登場

 

 

 

 

 

「グォオオオオオオオオオオオオ!!」

「グォオーーー!ギャァァアアアアウ!」

 

同じ頃、ゴルザとゾンネルの2大怪獣を相手にするミライたち。トライガーショットの『アキュートアロー』を放って足止めをしているが、ゴルザの腕や胸に当たっても効果はなく、ゾンネルに至っては堅い皮膚に阻まれてダメージを与えられない。

ゴルザは額から超音波光線を放ち、ゾンネルは口から火炎球を吐き出すと地面を爆発させた。

 

「失せろ!地球人ども!!」

ゴォォオオッ

「くぅっ………!」

 

それに加え、地上では地球人サイズのスチール星人バトラーの攻撃が迫る。バトラーは額から火炎放射を放ち、2大怪獣への攻撃を妨害してくる。

 

「コイツ………!」

「リュウさん!怪獣は僕たちが―――」

「待ちい!何やあれは!?」

「えッ!?」

 

メビウスに変身しようとしたミライだが、空を指差して叫ぶエモラスにより中断する。

見上げれば、空の彼方から飛来してくる赤い影が見えるではないか。その影は数秒と待たずに怪獣達の目の前に着地をした。

 

「あれは………!?」

 

赤い身体に金色の六角形の目を持ち、銀色の力強い角と左腕にはめた王冠型のブレスレットを持った戦士―――

 

 

 

 

 

「ウルトラマンタロウ!!」

 

 

 

 

 

飛来した戦士、ウルトラマン№6こと、ウルトラマンタロウの登場に驚きつつも、歓喜の声を上げる一同。特に、シャーリー達3人は安堵の表情を浮かべていた。

 

「グォオオオオオオオオオオオオ!!」

「グォオーーー!ギャァァアアアアウ!」

 

ゴルザとゾンネルは、目の前に降り立ったタロウを睨んで大きく吠える。すると、シャーリーが前に出てタロウの姿を見上げた。

 

「タロウさん!無事だったのか………!」

『………』

「タロウ………?」

 

シャーリーが大声で問いかけるが、タロウは返事をしない。疑問に思う一同だが、そこでミライは気が付いた。良く見ればタロウの目は吊り上がって目つきが悪く、頭の角が鋭く角ばっているではないか。

 

「あれは、タロウ兄さんじゃない!!」

「何!?」

『トアッ!!』

 

ミライが叫んだ瞬間、タロウは額のランプから地上のミライ達に向けて光線が放たれた!

 

「危ない!!」

ドォオオンッ

「きゃぁあっ!?」

「ミライさん!!」「シャーリー!?」

 

ミライは叫ぶと同時にシャーリーを庇うと、タロウの放った光線はすぐ近くの地面に直撃して爆発を起こした!爆煙が晴れると、ミライの張った金色のバリアが2人を守り、ほっと息を吐く芳佳達。すると、リュウはタロウを見上げて怒りを露わにした。

 

「ヤロウ…本当にタロウじゃないのか!!」

『フッフッフッフッフッ………』

 

タロウは不敵に笑うと、両手で顔を隠した。

 

『やあ、兄弟。』

 

そしてその手をどけると、そこには銀色の巨大な頭と岩のように固い茶色い体表を持ち、アノマロカリスを思わせる星形の口と吊り上った目の宇宙人の姿があった。

 

「ザラブ星人!」

「あのタロウは、ザラブ星人の化けたニセモノやったっちゅう事か!!」

 

そう、この宇宙人こそ『凶悪宇宙人 ザラブ星人』である。今までミライ達の前にいたタロウは、ミライ達を油断させる為にこの凶悪宇宙人の化けた『ニセウルトラマンタロウ』だったのだ!

 

「よくも騙したな!!」

 

リュウは怒鳴るとトライガーショットをザラブ星人に向けるが、そこにバトラーの火炎放射が迫る。更に、ザラブ星人は指先から『エネルギーバルカン』を、ゴルザとゾンネルもそれぞれ攻撃を放ち、地面を爆発させる!

 

「攻撃と変身の機会を与えない気か!!」

「これでは、じり貧ですわ!」

 

ウィッチの障壁やウルトラマンの超能力で攻撃を何とか防いで入るものの、怪獣2匹に巨大化した宇宙人、そして等身大ながら超能力を有した宇宙人を相手にしていれば、いずれは魔力が不足してしまう。

万事休すか、ミライ達の頭にその言葉が浮かんだその時―――

 

 

 

 

 

ゴシャッ

 

 

 

 

 

『ほぎゃっ!!??』

「何!?」

「え?」

 

突然、ザラブ星人の左側頭部を強烈な衝撃が襲い、悲鳴と共に星人は倒れ込んだ!

 

「グォオ!?」

「ギャァアウ!?」

 

何事かと思い、周囲を見回す2大怪獣。すると、あたり一帯に怪獣の咆哮が木霊した。

 

「ピッギャァァアアアアアアアアアオオオ!!」

「あの鳴き声は……」

「レッドキングか!」

 

下手人は多々良島の主、レッドキングであった。自身の縄張りへの侵入者を叩きのめそうと投げた岩が、ザラブ星人に直撃したのだ。

 

「グォォオオオオオオオオオオ!!」

「グォオーーー!ギャァァアアアアウ!」

「ピッギャァァアアアアアアアアアアオオオ!!」

 

ゴルザとゾンネルは、出現したレッドキングを威嚇する。当のレッドキングも、「よそ者」を相手に敵意むき出しである。

 

「グォォオオオオオオオオオオ!!」

 

攻撃を仕掛けたのはゴルザだ。額からの超音波光線を放つと、レッドキングの脇をすり抜けて背後の岩山の一部を吹き飛ばしてしまう。レッドキングは驚いたものの、吹き飛んでできた岩を拾い上げ、自慢の腕力で2匹目がけて投擲する。岩はゴルザの腕で弾かれてしまうも、レッドキングは続けざまに岩を拾っては投げ、拾っては投げていく。

 

「グォォオオオオオオオオ!!」

 

ゴルザは雨あられのように飛んでくる大小の岩をうっとうしく思ったのか、咆哮を上げると同時に岩を投げるレッドキングに向けてタックルを喰らわせる。ひときわ大きな岩を投げようとしていたレッドキングは、ボディにゴルザのタックルを喰らってしまい、その反動で岩が手から離れてしまう。すると、岩はゴルザの後頭部に直撃して跳ね返り、レッドキングのつま先に直撃してしまう。そのまま倒れた2大怪獣は、悶絶してのたうち回るのであった。

 

「グギギャギャギャギャギャ!」

 

ゴルザとレッドキングのコメディじみたやり取りを見て、ゾンネルはのたうち回る2匹を余所に笑いだす。意外とツボだったらしい。すると、それに気づいた2匹は起き上がると、ゾンネルを睨みつけて唸り声を上げる。尚も笑い続ける怪地底獣は、まだそれに気づかない。

 

「グゥゥウウウウウウウ………」

「ギュウウウウウウウウ………」

『あー、イテテ………うぎゃ!?』

 

ゴルザとレッドキングは顔を見合わせて頷き会うと、起き上がろうとしていたザラブ星人の背中を踏むのも気付かずにゾンネルに向かって行くと、ゾンネルを蹴り飛ばして吹き飛ばす。

突然の事で対応できなかったゾンネルは吹き飛んだ先で目をパチクリさせるが、レッドキングは尻尾を掴んで大きく回すように投げ飛ばし、待ち構えていたゴルザが右フックをお見舞いした。見事な連携である。

 

『な、何なんだいったぎゃっ!?』

 

ザラブ星人は何が起こったのか分からずしりもちをついた形で起き上がろうとしたが、哀れ吹き飛んできたゾンネルの下敷きになってしまった。

 

「ピッギャァァアアアアアアアアオ!!」

「グォォオオオオオオオオオオオオ!!」

「な、何だか、怪獣だけで盛り上がっていますね………」

 

勝ち誇った雄叫びを上げる2匹を見て、芳佳が顔を引きつらせながら呟く。この怪獣達のやり取りが、気に食わない物が1人いた。

 

「何をやっているのだ、貴様らはぁぁあああーーー!!」

 

スチール星人バトラーである。バトラーは叫ぶと共に巨大化すると、ザラブ星人の上でもがくゾンネルを押してどかすと、3匹の怪獣に向けて光線を放った!

 

『貴様ら!馬鹿な事していないでさっさと』

『おいバカ!そんな事したら………』

『え?』

 

「グゥゥウウウウウウウ………」

「ギュゥゥウウウウウウ………」

「ギャゥウウウウウウウ………」

 

ザラブ星人に指摘されたバトラーが気付くと、怪獣達は1匹残らずこちらを睨み付けていた。

 

『お、おい、何だよお前ら…?』

『あんな事されたら、怒るに決まっているでしょうが!』

「ピッギャァァアアアアアアアアアアオッ!!」

「グォォオオオオオオオオオオオオオオッ!!」

「グォオーーー!ギャァァアアアアウ!」

 

バトラーとザラブ星人が戸惑っているうちに、3匹の怪獣はひと鳴きした後に突っ込んで行く!

レッドキングがザラブ星人にラリアットを振るが、星人はしゃがんで避ける。しかし、そこにはゾンネルの牙が待ち構えており、ザラブ星人は左足を噛まれてしまう!

一方のバトラーは、ゴルザの超音波光線を自身の光線で相殺すると、飛び蹴りを仕掛ける。しかしゴルザは、前転と同時に尻尾による打撃を浴びせ、地面に叩き伏せてしまった!

 

『がぁあっ!き、貴様ら………ッ!』

『イタタタ!痛いって!!』

「よし、今のうちにキャンプに戻るぞ!芳佳とハルザキ、それにムサシさんは、俺と一緒にガンフェニックスの所に行くぞ!」

『G.I.G.!』

「皆さん、こっちです!」

 

星人達が怪獣軍団に気を取られている隙に、リュウたちはその場を立ち去る。星人たちは怪獣の方に気が行ってそれに気づかず、ミライ達はキャンプに向かった。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

【バド星人】

『宇宙の帝王』を名乗り、地球が火の玉だった頃に冥王星にある文明を滅ぼしたと言うこの宇宙人は、その自称らしからぬ容姿と地球で起こした事件のせいで、わりと名が知れている星人の1体なのだ。

事の発端は、地球の周囲にバリアを張る『プロジェクト・ブルー』を阻止すべく地球に潜入したが、ウルトラ警備隊と我らがウルトラセブンにより阻止されたのだ。

ここまで聞くと他の侵略宇宙人と何ら変わりないように思えるが、この星人が笑いものにされている由縁がある。

まず、細い見た目通りに体重が軽く、40mに巨大化しても5千tしかない(参考に、メビウスは49m時に3万5千tである。)。等身大時は光線銃を使うのだが、巨大化時はプロレス技と投石を使い、得意技はフライングボディアタック。しかし、セブンにあっさり避けられ自爆したので、威力は不明。かなわないと見るや降参するふりをしてメリケンサックの不意打ちを決し、セブンに投げ飛ばされて頭を強打、血の泡を吹いて絶命と、かなり情けない最後を迎えたのだ。加えて、この戦闘がわずか1分半ほどで終了し、セブンはエメリウム光線などの光線技やアイスラッガーによる念動力もつかっていない事も、バド星人を語るうえで欠かせない。

以上の点から、ウルトラマン永遠のライバル・バルタン星人とは違った意味で有名になっているのだ。

 

 

 

 

 

ボルターが自身の正体がバド星人である事を明かすと、その場は静寂に包まれた。

 

「バ、バド星人………?」

「ふ、ふ、ふ、驚いて声も出ないか。」

 

ボルターは、黙る一同を見て笑う。しかし、

 

「………変な頭。」

「ヒョロっとしてて、そんなに強そうじゃないナー。」

「なんだ、バド星人か。」

「ペダン星人とかならまだしも、バド星人じゃあねー。」

「うん、違う意味で驚いたよ。」

「散々引っ張っておいて、バド星人かー」

 

等と、呆れた表情で言われてしまう。

ちなみに、上からサーニャ、エイラ、テッペイ、エリー、コウジ、マリである。

 

「え、何この微妙なリアクション?」

(あ、あれ?さっきまでのテッペイさんたちの反応と違う……?)

 

呆れに近い反応をする一同に、困惑するボルターとリーネ。カウントやゴドラ星人達も、やれやれ、といった具合の様子だ。

 

「だから言ったじゃないですか。地球での同族の評判くらい、事前に調べといてくださいよ。」

「いや、一応調べているけど、まさかここまでとは………」

「え?何をやったんですか?バド星人って…?」

 

あまりにも酷い扱いを受けるボルターを見て、美緒が聞く。テッペイは呆れ気味に説明した。

 

「うん、「宇宙の帝王」を自称する、割と弱い方に分類される宇宙人だよ。」

「帝王だと………?」

 

テッペイが「宇宙の帝王」と言うと、ボルターが反応して振り返る。その形相は、鬼のようにも見え、威圧感を与えた。

 

「!?」

(コイツ………雰囲気が変わった……!?)

 

ボルターから発せられる威圧感に、呆れていたGUYSとウィッチ達に緊張が走る。ボルターは、テッペイを睨みつけて静かに口を開いた。

 

「他の同族はどうかなんて知らんが、このオレをそう呼ぶのはよして戴こうか………オレにしてみれば、同族など帝王を自称する口先だけの井の中の蛙よ………このオレも、かつてはそうであったが、陛下に出会って己の小ささに気付き、軍門に下ったのだ。故に、これだけは断言しよう………『帝王』はエンペラ星人陛下ただ一人だッ!!依然変わりなくッ!!」

『………ッ!』

 

力強く言い放ったボルターに、その場にいた者たちは圧倒される。そこで、改めて彼がエンペラ軍団の幹部クラスである事を認識する。

 

「相当な忠誠心だな………」

「………どうやら、バド星人だからとなめてかかっては、痛い目を見るようだな………」

「お褒めにあずかり、光栄だよ。」

 

ボルター提督は気を落ち着かせたのか、テンガロンハットを被りなおして不敵に笑う。その時、遠くの方から怪獣の咆哮と星人の悲鳴が聞こえ、足に地響きを感じ取った。

 

「何だ!?」

「知らない怪獣の鳴き声がしますね。この島の怪獣に、邪魔をされたようです。」

「何だと!?」

「この島の怪獣……レッドキングか……!?」

 

鳴き声からレッドキングと推測し、何が起きたのかを察する美緒。おそらくは先ほどのネウロイ同様、縄張りに侵入者が来たがために迎撃に現れたのだろう。

その時、上空から黒い影が差した事に気付く。見上げると、『大きな岩』が、こちらに向けて降ってくるではないか!

 

「何じゃぁああああ!?」

ドッゴォオオオオオオンッ

「うぉゎああああああああ!!??!」

 

振ってきた岩が落ちた衝撃で、数人のゴドラ星人が吹き飛ぶ。そのはずみでサーニャの拘束が解け、倒れこむようにしてサーニャは走り去る。

 

「しまった!?」

「サーニャ!」

 

逃げたサーニャをエイラが介抱し、ゴドラ星人の数名が掛けようとするが、後方から放たれた光線を受けてしまい、その場に倒れる。

 

「坂本さん!!」

「少佐、大丈夫か!?」

「宮藤!バルクホルンたちもか……!」

「……あれ?ペリーヌさんが、2人いる………?」

 

撃ったのは、ミライであった。トライガーショットを構えたミライはゴドラ星人の腕を打ち抜いてゴドラガンを撃たせないようにしながらシャーリー、ルッキーニ、ペリーヌ、エニレプ、エモラスと共に、美緒たちと合流する。この時、リーネがエニレプの姿に気付くが、今はそれどころではない。

ゴドラ忍群は軽い身のこなしで迫るが、その時、何かが星人達を薙ぎ払い、吹き飛ばされてしまう!

 

「見たか宇宙人!」

 

犯人は、大木を抱えたバルクホルンであった。バルクホルンは迫りくるゴドラ星人に向けて大木を振り回し、星人達を薙ぎ払う!体制の乱れたゴドラ忍群は慌てふためくが、カウントとボルターは、冷静なまま歩みだした。

 

「おいカウント、この島の怪獣の妨害を視野に入れていなかったのは、うかつにもほどがあるのではないか?」

「いえ、おそらくはバトラーかザラブ星人に、何かあったと思います。」

「アイツらは………!」

「バド星人ボルター!やっぱ地球におったんやな!!」

 

ボルターの姿を見たエニレプとエモラスが声を上げる。

 

「おやおや、バンダ星人のお二方ではないか。まさか、自分の星のロボットを取り戻しに、この地球にまで来るとはな。」

「ボルター提督の正体が、バド星人だったとは………しかし、ヤツの纏う威圧感は………!?」

「気ぃつけやメビウス!ヤツは腕っぷしとロボット操縦技術で、提督の地位まで上り詰めた実力者や!」

 

エモラスが、ミライに忠告をする。すると、ボルターは不敵に笑みを浮かべ、

 

「ふ、ウルトラマンが来てしまっては仕方がない。バンダ星人共、貴様らのロボットは、我々が有効利用させてもらっているぞ!」

 

そう叫ぶと同時に右手を掲げ、高らかに指を鳴らす。

 

「この通りなぁッ!!」

 

瞬間、上空の空間が歪んだかと思うと、中心から超巨大なロボットが舞い降りた!

 

「あれは………!?」

 

凸型のボディと頭部と持ち、右腕が異様に長い4本爪のアームで、対照的に左腕は極端に短いバズーカ砲になったシオマネキを思わせるフォルムを持ち、背中から伸びた2機の砲門、腹部にはシャッターのある、1本の太い軸で繋がった4本脚のくすんだ真鍮色のロボット、『クレージーゴンジャイアント』だ!

 

「クレージーゴンジャイアント!」

「お、いいな、その名前。特に決めていなかったし、気に入ったぞ。」

「何やあの脚とバズーカ!?けったいな改造しおってからに………!!」

 

背中の砲身と左腕のバズーカ、そして三脚を思わせる4本脚を見て、エニレプが怒りの声を上げる。元々スペースデブリの回収用である為、本来は脚ではなくブースターユニットになっていたのだ。

カウントとボルターは人間だったらありえないほど高く跳び上がり、クレージーゴンジャイアントに乗り込むと、ロボットのエンジンが唸りを上げて機動、右手を上げると同時に4本のクローを回転させる。

 

「エンジンの音もちゃう………結構ええシロモノ使っとるで………」

『あの2匹の輸送と同時に、貴様らを葬るための切り札として持ち込んでおいたのだ!』

 

外部スピーカーから、ボルターの声が聞こえる。ミライは左腕を構えてブレスを出現させ、変身の準備をする。

 

『おっと、これを見て欲しい。』

 

しかしその時、クレージーゴンジャイアントのシャッターが開くと、そこには円柱型のカプセルがあり、そのうちの1つに収められて眠る、青い鳥のような怪獣の姿があった!

 

「リドリアス!!」

 

その怪獣、『友好巨鳥 リドリアス』の姿を見たサーニャが叫んだ。

 

『この怪獣はあの青いウルトラマンの“オトモダチ”なんだよな?傷ついても知らないぞ?』

「そんな………!!」

 

一同が唇を噛み悔しんでいると、クレージーゴンジャイアントの額に当たる部位から光線が発射され、地面で爆発を起こした!

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

その頃、海岸に停めたガンフェニックスの元に向かったリュウとカナタ、ムサシの3人。待ち構えていた数名のゴドラ星人を倒してコクピットの景気を調べていると、クレージーゴンジャイアントの出現と、リドリアスが捕まっている事を知る。

 

「隊長、機器に異常は見当たりません。いつでも出せます。」

「良し、クレージーゴンジャイアントの迎撃、並びにリドリアスの救出に向かうぞ!」

「G.I.G.!」

「リドリアス………!」

 

カナタが返事をしてガンフェニックスに乗り込もうとする。しかしその時、芳佳は海岸の波が不自然に大きくなっている事に気が付く。不思議に思って沖の方を見ると、数百m程先の海面がまるで吹き上がる様に波打っているではないか。

 

「あれは………!?」

 

リュウが声を上げた次の瞬間、吹き上がっていた所から巨大な角が浮上し、巨大な怪獣が現れた!

 

「キャゴォォオオオオオオオ!キャゴォォオオオオオオオ!」

「シーゴラス!?」

「西イリアン諸島から、ここまで来たって言うのか!?」

 

雄々しき鼻先の一本角とたてがみを持った2足歩行の怪獣、竜巻怪獣 シーゴラスの姿を見たリュウが、驚きの声を上げる。

海面に浮上したシーゴラスは雄々しく雄叫びを上げると、真っすぐにこちらに向かって来るではないか。

 

「キャゴォォオオオオオオオオ!キャゴォォオオオオオオオオ!」

「こっちに来る!?」

「迎え撃ちますか!?」

 

多々良島に向かって来るシーゴラスを警戒し、カナタがリュウに聞く。しかし、それをムサシが止めた。

 

「待って、シーゴラスがこの島を目指す目的が分からない!」

「けれど、これ以上怪獣に増えられては………!!」

 

ムサシが止めようとするが、カナタは反論をする。その時、爆発音と木々がなぎ倒される音が進藤と共に聞こえた。クレージーゴンジャイアントの攻撃が続いているのだろう。

 

「今は、クレージーゴンからみんなを助けるのが先決だ!ムサシさんと芳佳は、悪いけど、シーゴラスを見といてくれ!」

「分かった!」

「了解!」

 

シーゴラスの見張りをムサシと芳佳に任せ、2人はガンフェニックスに乗りこみ、発進させる。

 

「キャゴォォオオオオオオオオ!!キャゴォォオオオオオオオオオ!!」

 

シーゴラスは、迷いのない歩みで多々良島を目指す。その時、シーゴラスの雄々しい角が、眩しく閃光を放った。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「ピッギャァァアアアアアアアオオ!!」

「グォォオオオオオオオオオオオ!!」

「グォオーーー!ギャァァアアアアウ!」

 

一方、3大怪獣相手に苦戦するバトラーとザラブ星人のコンビ。バトラーはレッドキングに何度も頭突きを喰らったせいで、鋼鉄製のような頭が若干ひしゃげており、ザラブ星人も身体のあちこちが傷つき、血がにじんでいる。

 

『こ、こいつら………調子に乗りおってからに………!』

 

バトラーは恨めしい目で3匹を見る。はっきり言うと彼の自業自得なのだが、頭に血が上った彼にそれがわかるわけがない。

その時、森林部のキャンプのある地点の方から轟音が鳴り響く。振り返ると、そこにはくすんだ真鍮色の超巨大ロボット、クレージーゴンジャイアントの姿があった!

 

「ギャゥウ!?」

「グォォウ!?」

『おお、ボルターの奪った、バンダ星人のロボットか!』

 

クレージーゴンジャイアントの出現に驚く3大怪獣とは対照的に、期待のまなざしを見せる2人の星人。すると、クレージーゴンジャイアントは腰の軸を回転させて2人と3匹の方を向いた。

 

『バトラー!ザラブ星人!一旦下がっていろ!コイツでウルトラマン諸共、片付けてくれるわ!!』

『は、はいぃ~!』

『………チッ、』

 

ボルターの声が聞こえると、ザラブ星人とバトラーは下がる。レッドキングは出現したクレージーゴンジャイアントに向けて投石をするが、超巨大ロボットは特徴的な右腕を振るってはじき返してしまう。ゴルザとゾンネルも攻撃を仕掛けるが、クレージーゴンジャイアントのボディに少し煤が付いた程度で、大したダメージはない。

その時、上空からガンフェニックスが飛来してくるとガンウィンガーとガンローダーに分離、2機の戦闘機が攻撃を開始するが、腹部にリドリアスが捕われているので背中等を狙うが、これも決定打にはならない。手をこまねいていると、クレージーゴンジャイアントは額にあたる部位から光線『クレージーガン』を発射する!

 

ドゴォオオンッ

「ピッギャァァアアアアアアアオオ!?」

「グォォオオオオオオオオオオオ!?」

「ヤロー!こっちが手出しできないからって……!!」

 

光線を回避したが、地面に当たって爆発を起こしたのを見てガンウィンガーを駆るリュウが悪態をつく。すると、クレージーゴンジャイアントは上半身を高速で回転させながら『クレージーガン』と肩のバズーカを乱射、地面と上空を爆発で埋め尽くす!

 

ズドドドドドドドドォオオンッ

「ピッギャァァアアアアアアアオオ!!」

『ぎゃぁあああああああああ!!』

「アイツ……!味方まで巻き添えにして………!」

 

地上で巻き添えを喰らい、炎の中に消えるゴドラ星人を見て、ミライが顔をゆがませる。すぐさま変身をしようとした時、メモリーディスプレイが通信音を発した。出てみると、シーゴラスを監視していた芳佳からであった。

 

[大変です!シーゴラスの角が光ったと思ったら、津波がこっちに………!]

「なんだって!?」

 

すぐさま、ウルトラマンの超能力で海岸の方を確認すると、シーゴラスの力によって津波が迫っているのが見えた。上空のリュウたちも、それを目視した。

シーゴラスとシーモンスは自然を操る能力を持っており、津波や竜巻を起こす事が出来るのだ。

 

「隊長、このままでは津波が………!」

「…!待て!あれは………!」

 

その時、青い光が現れたかと思うと、その光は青い巨人、ウルトラマンコスモスへと変わる。ムサシが、コスモプラックで変身したのだろう。

コスモスは両手を広げると、巨大な青白い光のバリアを発生させ、津波を受け止める。強い衝撃に耐えながら、バリアで津波を押し返そうと踏ん張る蒼き慈愛の戦士。しかし、それは敵に背を向ける事を意味する。それでもコスモスは、津波から芳佳やGUYSのみんなを守ろうとしているのだ!

 

ドドドドドドドドドドドォッ

『グゥウ、ウ………、ウォオオオオ………!!』

『アイツ………』

『バカめ!隙だらけだ!』

 

バリアを張ってみんなを守るコスモスの姿を見たボルター。しかしその時、下がっていたバトラーが額から稲妻型の光線を放とうとする。

 

『辞めんか、バカ者がーーー!!』

ガシィッ

『な!?』

「何!?」

 

しかし、ボルターの駆るクレージーゴンジャイアントがバトラーを掴み、妨害をする。バトラーも驚いたが、何よりも驚いたのはリュウたちGUYSとウィッチ達だ。

 

『ボ、ボルター!?一体何を………!?』

『………フンッ、今の奴を討てば、地球人が卑怯だラッキョウだとピーチク騒いで仕方がなかろう?それに、あのような無防備な背中を見せたウルトラマンを討っても、何の名誉にもならんではなか!』

『ぐ、し、しかし………!』

 

バトラーは悔しげに、バリアで津波を受け止めるコスモスを見上げる。コックピットでは、マイクのスイッチを切ったボルターに、カウントが話しかけた。

 

「あなたも、まだ若いですね。」

「……ふん、あのような状態のウルトラマンを討つ等、無粋以外の何でもないからな。」

 

皮肉気に笑うカウントに対し、ボルターは何でもないかのように吐き捨てる。

 

『グゥウウウ………』

 

その時、津波を受け止めていたコスモスは、津波が収まったことを確認すると、バリアを解除して片膝をつく。既に胸のカラータイマーは赤く点滅し、ピコン、ピコン、と警鐘を鳴らしていた。

 

「キャゴォォオオオオオオオオ!!キャゴォォオオオオオオオオ!!」

 

しかし、シーゴラスはいつの間にかコスモスの目の前まで来ており、ついに竜巻怪獣は多々良島へと上陸を果たしてしまった!

 

『ま、待て……!ぐぅ………!』

「キャゴォォオオオオオオオオオ!!キャゴォォオオオオオオオオオ!!」

 

シーゴラスは横に倒れるコスモスには目もくれず、真っすぐにクレージーゴンジャイアントに向けて歩いていく。コスモスは追いかけようとするが、エネルギーを限界まで消耗してしまい思うように動けず、その場に倒れこんでしまう。

 

(クレージーゴンの、方に……?一体、何故………!?)

 

コスモスと一体化していたムサシは、シーゴラスがクレージーゴンジャイアントに向けて真っすぐ向かって行く事に疑問を抱く。

だが、そこでエンペラ軍団が何故クレージーゴンジャイアントを奪った理由を思い出した。コスモスは力を振り絞って立ち上がり、クレージーゴンジャイアントの腹部格納庫を『ルナスルーアイ』で透視をする。そして、正面からでは分かりづらかったが、カプセルはリボルバーのシリンダーのように4つ並んでおり、リドリアスのとらえられているカプセルの裏にもう1つのカプセルと見つけ、シーゴラスが多々良島へと来た理由を知った。

 

(そ、そうか……!やはり、シーゴラスは………!!)

 

しかし、そこでエネルギーの限界が来てしまい、そのままコスモスは光と共に消えてしまい、ムサシの姿へと戻ってしまった。

 

「ムサシさん!」

「キャゴォォオオオオオオオオオ!!キャゴォォオオオオオオオオオ!!」

 

芳佳は森の中で倒れるムサシに駆け寄る。多々良島に、竜巻怪獣の咆哮が響いた。

 

 

 

 

 

つづく




第十五話です。

カウントは当初ザラブ星人の予定でしたが(老紳士なのも、故青野武さんを意識したため)、怪獣を率いるなら最強のゼットン送り込んだゼットン星人の方がいいのではと思い、ゼットン星人に変更しました。けれど、ゼットン星人なら初代がスーツ姿だし、あってる気はします。
ザラブ星人も別キャラで出しましたが、ただ出すのはつまらないと思い、原典に出ていなかったニセウルトラマンタロウとして登場させました。

怪獣対星人の乱闘。最近のゴモラの十八番である前転尻尾攻撃を使うゴルザや敵対していたのに見事な連携とか、割とお気に入りw

ボルターはバド星人でした。これはインパクト狙いというのもありますが、「自称『宇宙の帝王』バド星人がエンペラ星人の配下に加わったら」という考えもあります。彼らならきっと、自分が井の中の蛙と知り屈服、忠義に生きる男になるんじゃないかと考えています(冒頭の登場怪獣紹介にも、『宇宙帝王』の肩書を書いていません)。ちなみに、ボルターは檜山修之さんの声を意識しています。

クレージーゴンジャイアントは「巨大な重機」を意識したデザイン。元がスペースデブリ回収ようなので、怪獣捕縛用に若干の改造を施されている設定。腰は三脚の接合部の感じ。

次回は、多々良島篇クライマックスです。


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第十六話 必殺のフォーメーション

多々良島で、GUYSとエンペラ軍団の激闘が繰り広げられている頃、M78星雲『光の国』では―――

 

『タロウ兄さんが、行方不明………!?』

 

惑星グルータスから帰還したレオ兄弟と80は、宇宙警備隊本部でゾフィーから聞かされた事に驚きを隠せないでいた。

ダイナと3人のウィッチと共に地球へ向かった筈のタロウの行方が分からず、連絡も取れないという状況だというのだ。

 

『タロウ兄さんとダイナに、何かあったのか…!?』

『しかし、“トゥインクルウェイ”で向かったのであれば、地球にはそんなに時間をかけないで到着するハズなのでは?』

『確かに、ワープ中に襲う事は不可能………いや、待てよ………』

 

そこまで言いかけて、80はある可能性に気づく。

 

『確か、エンペラ軍団のロボット兵器「インペライザー」は、空間移動能力を持っていた筈では?』

『まさか!その能力で、トゥインクルウェイに侵入してきたのか!?』

『可能性はあり得る………だとしたら、タロウとダイナは今、別の次元にいる可能性が高いな………』

『一緒にいた、ウィッチの3人も心配だ………急いで捜索を………』

 

80の出した仮説に、レオとゾフィーが唸る。インペライザーはタロウですら苦戦した相手である。不意打ちであればなおさらである上、エンペラ星人が地球に降臨した際には、13機のインペライザーが兵士として送り込まれている。1機だけとは限らないだろう。

レオが捜索に乗り出そうとしたその時、4人のいる部屋に慌てて駆け込んだ戦士がいた。

 

『た、大変です!』

『ユリアン?どうしたんだ?』

 

入ってきたのは、80の幼馴染でもあるウルトラの女戦士『ユリアン』であった。ユリアンは息を整えると、ゾフィーに報告をした。

 

『大変です!治療中のウルトラマンヒカリが、………!!』

『何だと!?』

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

『―――ククク、マヌケなエンペラ軍団の連中め………そうやってウルトラマン共とつぶし合うがいい………』

 

同じ頃、多々良島の戦いをどこかで見る者がいた。そして、戦場にいるある者へテレパシーを送った。

 

《そのロボットを、ウルトラマンに破壊させるように誘導しろ!》

《了解した。》

『これで、エンペラ軍団の戦力は大分裂かれる………後はこの私が出れば、ウルトラマンは一網打尽よ………ふふふはははははははははははっ!』

 

異形の者は、高笑いをする。

 

 

 

 

 

彼の後ろには、物言わぬウルトラマンの銅像が、2つあった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第十六話 必殺のフォーメーション

 

ロボット大怪獣 クレージーゴンジャイアント

要塞ロボット ビームミサイルキング

バド星人ボルター

変身怪人 ゼットン星人カウント

宇宙超人 スチール星人バトラー

凶悪宇宙人 ザラブ星人

どくろ怪獣 レッドキング

超古代怪獣 ゴルザ

甲殻怪地底獣 ゾンネル

友好巨鳥 リドリアス

竜巻怪獣 シーゴラス

津波怪獣 シーモンス

強奪宇宙人 バンダ星人(エモラス・エニレプ)

登場

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「キャゴォォオオオオオオオオオ!!キャゴォォオオオオオオオオオ!!」

「シーゴラス、なおもクレージーゴンジャイアントに向かい前進!!」

 

多々良島に上陸し、クレージーゴンジャイアントに向かうシーゴラス。ロボット大怪獣を駆るボルターはそれに気づくと、右クローで掴んでいたバトラーを下した。

 

『ふん、怪獣ごときが楯突こうと言うのか!』

『先程の津波は、あの怪獣の超能力のようですね。捕まえて、我が軍の戦力にしましょう。』

 

ボルターに進言をするカウント。たった今見たシーゴラスの超能力は、即戦として欲しい程に強力であった。実際、ウルトラマンジャックもこの力で発生した津波を防いでエネルギー切れになっている。

 

『ナルホドな。適当に痛めつけて、とっ捕まえるとするか!』

 

ボルターもそれに賛同をすると、クレージーゴンのアームでシーゴラスを捕まえようとする。クレージーゴンに向かっていたシーゴラスは向かってくるアームに驚いたが、すんでの所でしゃがんで回避、腕が頭上に差し掛かった瞬間に、鼻先の角でかち上げた!

 

「ぅおおッ!?コイツ………!」

「キャゴォォオオオオオオオオオ!!」

 

シーゴラスが腕を弾いたことに驚くも、なおも追撃をせんと額から光線を発射させる。光線はシーゴラスの目前の地面を爆発させ、シーゴラスは驚いて仰向けに倒れてしまった。

その時、今までシーゴラスとクレージーゴンジャイアントの戦いを見ていたレッドキングとゴルザが、クレージーゴンに攻撃を仕掛けた。シーゴラスが自分たちの味方と判断したのだろう。レッドキングの投石とゴルザの超音波光線がクレージーゴンジャイアントを襲うが、真鍮色のボディには、傷一つつかない。お返しにと、クレージーゴンは額からの光線を発射し、2匹をけん制する。レッドキングとゴルザは足を止め、クレージーゴンジャイアントは3匹の怪獣を捕獲すべく4本の脚をせわしなく動かす。

 

ボゴンッ

『うぉおおお!?』

『なんとォオ!?』

 

しかし、ロボット大怪獣の足元に大きな岩が突き出ると、それを踏んでしまったがためにバランスを崩すクレージーゴンジャイアント。

 

「ギャァァアアアアウ!」

 

下手人はゾンネルであった。隙をついて地中に潜り、大きな甲羅を使ってつまづかせたのだ!

 

「今だ!やつの足を狙え!」

[G.I.G.!]

 

躓いてふら付くクレージーゴンジャイアントを見て、GUYSジャパン隊長アイハラ・リュウはこれを逃さない。2機のガンマシンはクレージーゴンジャイアントの足に狙いを定めた。

しかし、そのトリガーを引くより先に動くものがあった。シーゴラスだ。

 

「キャゴォォオオオオオオオオオ!!キャゴォォオオオオオオオオオオ!!」

 

シーゴラスは鼻先の角を振りかざして果敢にもクレージーゴンジャイアントに向かっていくと、バランスを崩した四本脚にめがけてタックルをかまし、クレージーゴンジャイアントは仰向けに倒れた。

 

「キャゴォォオオオオオオオオオ!キャゴォォオオオオオオオオオ!」

『コイツよくも!!』

 

雄叫びを上げてクレージーゴンジャイアントに乗り込もうとするシーゴラス。しかし、ザラブ星人のエネルギーバルカンとバトラーの稲妻状の赤い光線がシーゴラスを襲い、シーゴラスは爆発に倒れ込んでしまう。

 

「ギュウウ………」

「ピッギャァァアアアアアアオオオ!!」

「グォオオオオオオオオ!!」

 

倒れたシーゴラスと星人の間に割って入ってきたレッドキングとゴルザは、星人たちに向けて突っ込んでいった。

 

「あの2匹………?」

 

リュウは、シーゴラスを庇うゴルザとレッドキングを見て疑問に思った。

先程の2大星人との戦いを見る限りでは、よそ者の宇宙人を倒すのに全力を尽くし、倒れたザラブ星人を踏みつける等ぞんざいに扱っていたにも関わらず、倒れたシーゴラスを庇い、2大星人と戦っているのだ。

リュウが怪獣たちの行動に疑問を抱いているその時、通信が入った。

 

[リュウさん!]

「ミライ?」

 

通信の相手は、地上でムサシを介抱しながら、バトラーをけん制するミライと芳佳であった。

ミライはトライガーショットを構えながら、リュウに通信をする。

 

[ムサシさんが、シーゴラスについて伝えたい事があると……!]

「何だと?」

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

2大星人と2代怪獣が戦い、クレージーゴンジャイアントが起き上がろうともがく中、森のほうに避難したミライと芳佳、美緒、ムサシは、リュウに通信をしていた。

 

「さっき……エネルギーが尽きる寸前に………あのロボットの中を透視したんだ………」

 

疲労で息を乱しながら、ムサシは話す。

 

「シーゴラスは、かつてと同じように、シーモンスを追ってこの島に来たんだ……」

「何だって…!?」

[しかし、シーモンスの姿は西イリアン諸島で確認されていない………まさか!?]

 

言いかけて、リュウは気が付いた。あのロボット大怪獣は、エンペラ軍団が戦力になる怪獣を捕獲するためのものだ。と言うことは………

 

[シーモンスは、クレージーゴンジャイアントの中に!?]

[何だって……!?]

「そうか!それでシーゴラスはクレージーゴンに……!」

 

ここで、シーゴラス出現の理由に行き着いた一同。怪獣同士であるが故に、理解ができたのだろう、おそらくはレッドキングとゴルザもそれを察し、シーゴラスに協力をしているのだ。

 

「だとしたら、なおさらクレージーゴンの中にいる怪獣を助けないと………」

 

そう芳佳が言ったそのとき、倒れていたクレージーゴンジャイアントが、長い右腕を器用に使い、腰を回して起き上がった!

 

『あー、びっくりした。改善の余地ありだな、こりゃ。』

「そんな………!」

 

起き上がったクレージーゴンジャイアントを見上げ、驚きの表情になる芳佳。自由に動ける状態では、リドリアスとシーモンスを救い出すのは困難だ。

どうすればいいのか芳佳が悩んでいると、エニレプとエモラスが駆けてきた。

 

「オイメビウス!クレージーゴンの腹のシャッターを狙うんや!」

「え?」

「設計上、シャッターの装甲は他に比べて薄くなっとんねん!シャッター壊して中に入りゃ、こっちのモンや!」

「でも、クレージーゴンを壊したら……?」

 

エモラスの提案に、芳佳が聞き返す。2人はクレージーゴンジャイアントの回収が目的で地球に来たはずだ。その目的を破壊する事に、彼女は戸惑いを覚えたのだ。

しかし、エニレプは口角を吊り上げ、

 

「なあに、壊れたらまた直せばええ!けど、なるべく壊す範囲は小さめで頼むわ!」

「……!そういう事なら!」

 

エニレプに笑い返すミライ。しかし、あのシャッターを破壊するにしても、問題はクレージーゴンジャイアント自慢の長い右アームと重火器だ。仮にそれらを掻い潜ったとしても、内部のリドリアスとシーモンスに傷をつけないようにしなければならない。

どうしようかと考えていると、通信機からリュウの指示が飛んで来た。

 

[美緒、ストライカーを装着して来てくれ!腹のシャッターを斬り裂いてやるんだ!!]

「しかし、アイハラ隊長……?」

[策がある。お前の烈風斬なら、あのシャッターだけを斬れるだろう?]

 

リュウからの提案に少し戸惑うも、美緒はムサシをミライと芳佳に任せ、ペリーヌとバルクホルンを同行させ、自分たちのストライカーのもとに向かった。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「ピッギャァァアアアアアアアアオオッ!」

「グォォオオオオオオ!!」

『ええい、小賢しい怪獣どもがぁ!!』

 

バトラーの破壊光線とザラブ星人のエネルギーバルカンが、レッドキングとゴルザに迫る。2体は接近を試みるが、2人の攻撃に阻まれて近づけない。

 

「キャゴォォオオオオオオオオオ!キャゴォォオオオオオオオオオ!」

「グォオーーー!ギャァァアアアアウ!」

『貴様もうっとうしい!!』

 

一方のシーゴラスとゾンネルも、クレージーゴンジャイアントの巨大な腕から繰り出される攻撃に躊躇し、近づけないでいた。その時、クレージーゴンジャイアントはその巨大な右腕でシーゴラスを掴み持ち上げると、地面に叩きつけてしまった!

倒れたシーゴラスは、そびえ立つクレージーゴンジャイアントを見上げ、自分の妻、シーモンスを諦めかけた。しかしその時、上空を飛ぶガンウィンガーと美緒たち3人のウィッチの姿が目に入った。

 

[美緒、ガンウィンガーの後ろに着いてろ。ヤツを引き付けるから、そうしたらシャッターを斬り裂け!]

「了解!」

[後はそこから2人が内部に潜入し、怪獣2体を救出と同時に、クレージーゴンジャイアントを破壊しろ!!]

「「了解!!」

 

リュウの指示に3人が返答をする。ガンウィンガー達に気づいたのか、クレージーゴンジャイアントは向きを変えて肩のバズーカを構えた。

 

『邪魔をするな地球人!』

 

ボルターが叫ぶと同時に、クレージーゴンの肩と左腕のバズーカが火を噴く!

ガンウィンガーは機首のビークバルカンで相殺し、さらにクレージーゴンに近づいていく。

 

「アイハラ隊長は、いったい何を………?」

「!?まさか、リュウさんは………!?」

 

ムサシは突っ込んでいくガンウィンガーに疑問を持つが、ミライはリュウのしようとしている事に気が付いた。

ガンウィンガーはクレージーゴンジャイアントの腕を掻い潜り、その懐まで接近した!

 

『特攻か!?』

『地球人め、『カミカゼ』のつもりですか……!?』

 

2人の提督が、ガンウィンガーの行動に驚いたその時、ガンウィンガーはクレージーゴンの目前で機首を上げ、急旋回をした!

 

『何!?』

[今だ美緒!!]

「烈ッ風ぅう斬ッ!!」

斬!!

『ぅおおお!?』

 

急旋回したガンウィンガーに驚く暇もなく、クレージーゴンジャイアントの腹部に美緒が烈風斬を叩き込み、シャッターを斬り裂いて人が通るのに十分な切れ込みを開いた!

 

『バカなぁあ!?』

「土壇場で『フォーメーション・ヤマト』を決行するなんて………アイハラ隊長も、本当にムチャクチャだなぁ……!」

 

『フォーメーション・ヤマト』

ジャックナイフ・フライトという攻撃法を応用した二機一組で行うフォーメーションで、 先行機が相手の注意を惹きつけ、その隙に後続機が懐深くに飛び込んで攻撃すると言う戦法である。

1980年代に防衛チーム「UGM」で編み出され、考案者である『矢的 猛』隊員―――一般には知られていないが、ウルトラマン80その人である―――の名前から、その名前が付けられている。

 

烈風斬でシャッターを斬り開けた美緒はひねりこみの要領で離脱すると、切り裂かれたシャッターへペリーヌとバルクホルンがクレージーゴン内部へ侵入した。入ってすぐにリドリアスの入ったカプセルが目に飛び込んできたので2人は驚くが、すぐに気を引き締めて自分の役目をこなす。

 

「大尉!リドリアスとシーモンスは、わたくしが!」

「おう!!」

『あ、コラ!中で暴れるなぁッ!!』

 

ボルターの叫びもむなしく、バルクホルンは内部から機関銃を乱射してシャッター付近の機械を破壊し、ペリーヌはリドリアスの入ったカプセルを調べる。すると、リドリアスのカプセルの陰に隠れて見えなかったが、後ろ側に、シーゴラスに似た顔つきでたてがみがなく、丸みをおびて鼻先の角が短い4足歩行怪獣の入ったカプセルがあった。

 

「シーモンスを発見!」

 

ペリーヌは報告をすると、右手を装置に向けた。

 

「髪が乱れるけど……言っている場合ではありませんわね!!」

 

すると、彼女の周囲にバチバチと電流が走り出し………

 

「トネールッ!!」

バリバリバリバリバリバリッ

『ぐおおおおおおおおお!?』

 

彼女の固有魔法『電撃』が発揮され、周囲の機械はショートして壊されていく!

クレージーゴンジャイアントの異常は外部からでも分かるほどであり、ボディのあちこちから火が出るほどであった!

 

「………ギュゥウ……?」

「クュゥウ………」

 

すると、電撃のショックなのか2匹の怪獣が目を覚まし、カプセルを角やクチバシで攻撃し始めると、カプセルにひびが入る。ほどなくしてカプセルは破壊され破片が飛び散るが、ペリーヌは障壁を張って身を守った。

 

「クャアアーーー!」

「キャァァアアアアアアゴォオッ!!」

 

2大怪獣はひと鳴きすると、若干ふらつきながらもバルクホルンによって大きく穴の開いたシャッターから外に飛び出した。

 

「クャアアーーー!」

「リドリアス!」

「シーモンスも無事だったか!」

「キャゴォォオオオオオオオオオオ!!」

「キャァァアアアアアアゴォオッ!!」

 

リドリアスとシーモンスの姿を見て喜ぶ芳佳たち。シーゴラスも、シーモンスに駆け寄って再会に涙した。

 

『し、しまったぁあーーー!』

「もう人質はいねぇ!ドッキングだ!」

[[G.I.G.!]]

 

ペリーヌとバルクホルンが脱出したのを確認し、リュウの指示にカナタたちが応えると、ガンウィンガーとガンローダーが再度ドッキングしてガンフェニックスに、更にガンブースター下部の翼とエンジンがスライドし、尾翼を畳んだガンローダーを挟むように合体。ガンフェニックス強化合体形態『ガンフェニックスストライカー』となった!

 

「喰らえぇ!バリアントスマッシャァアアーーー!!」

バッシュゥウッ

 

ガンフェニックスストライカーの全砲門からの砲撃「バリアントスマッシャー」が炸裂し、クレージーゴンジャイアントは爆発を起こして仰向けに倒れる!

 

『何ぃい!?』

『だ、脱出を………!?バトラー!』

『え………!?』

 

慌てて脱出をしたボルターとカウントだが、その時、レッドキング達を相手にしていたバトラーにクレージーゴンの右腕が迫っていた!カウントが慌てて声を出すがすでに遅く、バトラーは右腕の下敷きになってしまった………!

 

『がっ………ぁ………』

『バ、バトラー………!!』

「オノレぇ………ビームミサイルキング!!」

 

ボルターが叫ぶと、空の彼方から赤いロボット・ビームミサイルキングが飛来、ボルターは空中で飛び乗ると、目を輝かせた要塞ロボットが地面に降り立った!

 

『貴様ら、生きては帰さんぞ!!』

「ボルターさん、ここは頼みますよ。」

 

あなたと違って私は非力ですからね、と言い残して、カウントは煙のように消え去った。

ボルターの叫びと同時に、ビームミサイルキングの全身から光線とミサイルが放たれる!ザラブ星人も一緒になって攻撃を再開し、あたりに爆炎が吹き上がった!

 

「芳佳ちゃんはここに!」

「ミライさん!」

 

ミライは芳佳にムサシを頼むと左腕を構え「メビウスブレス」を出現させる。そして中央のクリスタルに手をやって回転させると、左腕を高く掲げて叫んだ!

 

「メビウゥウーーース!!」

 

掲げると同時にミライを金色の光が包み込み、彼をウルトラマンメビウスの姿へと変える!

 

「あれが、ウルトラマンメビウスか………!」

『セヤァッ!!』

 

初めてメビウスを見るバルクホルンが、感嘆の声を上げる。

メビウスはザラブ星人とビームミサイルキングに向かって構えると、2体に向かって行く!

 

『なめるなぁっ!』

 

ボルターはビームミサイルキングの両腕からビームを放って応戦するが、メビウスは軽々と避けて接近、その赤いボディにパンチを叩き込んだ!

 

『ぬぅうんっ』

ギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギ

『ッ………!?』

 

後退したビームミサイルキングを庇うように、今度はザラブ星人が前に出た。メビウスは咄嗟に攻撃しようとしたが、ザラブ星人が両手をかざして破壊音波を発したため、メビウスは頭を押さえて苦しみ始めた!

 

「きゃあッ!」

「何だ、この音は………!?」

 

美緒たちウィッチも破壊音波の影響を受け、近づくことがままならない。ガンフェニックスストライカーにも不調が出ているのか、期待が安定しないでいた。

怪獣たちも苦しむ中、ザラブ星人は破壊音波を発し続けながら背後に立つビームミサイルキングに振り返った。

 

『さあ提督!今のうちに……』

『………そ、そう思うのなら…………』

『え?』

 

しかし、当のビームミサイルキングは動かず、ボルターの苦しそうな声が聞こえた。

 

『その音波を止めろ………!何でこっちにまで影響の出る範囲で音出してんだよッ!?』

『……あ、すいません………』

 

ボルターに言われて、ようやくザラブ星人は音波の範囲を間違えていたことに気が付いた。

芳佳がズッコケる中、ザラブ星人は音波を止めてメビウスに向き直った。しかし、メビウスは音波の消えるこの時を勿論待っており、急接近して眉間に右ストレートをお見舞いし、ザラブ星人は倒れて後頭部を強打してしまう。

 

『あの阿呆が………』

 

ボルターは後頭部を押さえて悶えるザラブ星人にあきれるが、メビウスに両腕の光線銃や胸からビームを、両肩、両足からミサイルを放つが、メビウスは『メビウスディフェンサークル』で防御をする。しかし、ビームミサイルキングはその隙に背中の『ジャイアントミサイル』の発射体制に入り、メビウスに狙いを定めていた!

 

「!?メビウス!!」

『!?』

『遅いわぁッ!!』

 

気が付いたバルクホルンが叫ぶが、8発のミサイルはメビウスに向け放たれようとしていた!ガンフェニックスストライカーと美緒たちは先ほどの破壊音波の影響でうまく動けず、メビウスは防御が間に合わない!

 

ゴォオオオオオオオオオオッ

『!?』

 

だがその時、突然竜巻がビームミサイルキングを襲い体制を崩してしまう!放たれたミサイルはメビウスの頭上を通過し、空中で爆発を起こした!

 

「キャゴォォオオオオオオオオオ!!」

「キャァァアアアアアアゴォオッ!!」

 

何事かと思っていると、シーゴラス・シーモンス夫妻が大きく人ひと鳴きをする。

見れば、2匹の角が稲光の如く光っている。2匹は力を合わせて竜巻を起こす超能力を発揮し、ビームミサイルキングを攻撃したのだ!

 

『しまった!メビウスに気を取られて………』

「ピッギャァァアアアアアアアアオオッ!」

「グォオオオオオオオオオオオオッ!!」

「グォオーーー!ギャァァアアアアウ!」

 

ボルターが自分の失態に嘆く暇もなく、レッドキングの投石とゴルザの超音波光線、そしてゾンネルの火炎弾が矢継ぎ早に放たれ、ビームミサイルキングの周囲を炎が包む!

 

『うおおおおおおおお!?』

『て、提督………!』

「クャアアーーー!!」

ゲシッ

『ぐぇっ!?』

 

慌てて起き上がり、ビームミサイルキングを援護しようとしたザラブ星人だが、上空からリドリアスが踏みつけるようにけりを入れて再度倒れこむ!

怪獣たちの援護で混乱に陥った2人を見て、アイハラ・坂本両隊長は指示を飛ばした。

 

「今だ!一気に攻め込むぞ!!

「「了解!!!」」

 

ペリーヌとバルクホルンは応えると、3大怪獣の攻撃の隙間を縫って銃弾を浴びせ、ビームミサイルキングの赤い装甲を剥がすほどのダメージを与えた!さらに、美緒が放った『烈風斬』が起き上がったザラブ星人の額に当たり、左から右への斜めの傷をつけた!

 

『がぁあッ………おのれぇ………!!』

「メテオール解禁!!」

 

すかさず、リュウの号令の元ガンフェニックスストライカーは金色の粒子に包まれた『マニューバモード』へと移行、全体に金色の粒子がチャージされていく。

それを見たメビウスも左腕のブレスに手をやり、両腕をまっすぐに伸ばした。そして、ゆっくりと真上に伸ばすと、胸の前で十字に構え―――

 

 

 

 

 

「『インビンシブルフェニックス』、ディスチャァアアアアジッ!!!」

ゴウッ

『セヤァアアアーーーッ!!』

バシュッ

 

『『!?』』

 

メビウスの『メビュームシュート』と、ガンフェニックストライカーのシルエット状のエネルギー波、ガンフェニックスストライカーの必殺技である『インビンシブルフェニックス』が放たれ、まっすぐにビームミサイルキングとザラブ星人に吸い込まれるように叩き込まれた!

 

『い、いかん!』

 

ボルターは咄嗟に背中を向け、背中のジャイアントミサイルポッドにメビュームシュートを当てた。しかしザラブ星人はインビンシブルフェニックスをまともに受けてしまい、爆発四散してしまった!

 

「やったか!?」

[隊長、それやってないフラグ………]

 

リュウの言葉に思わず突っ込みを入れるマイ。だが彼女の言う通り、ビームミサイルキングは背中のポッドと左腕を失い、各所から火花を散らしながらも立っていた。

 

『くッ……オレとしたことが、油断していたか………!』

 

苦し気なボルターの声が、ノイズ交じりで外部スピーカーから聞こえる。メビウスのカラータイマーが点滅をし始め、怪獣たちが唸り声をあげる。メテオールの使用時間が過ぎてクルーズモードに戻ったガンフェニックスストライカーとウィッチたちも集まり、既にボルターの勝ち目はなかった。

 

「きゃぁあーーーッ!?」

『!?』

 

しかしその時、聞き覚えのある少女の悲鳴が聞こえた!

振り向くとそこには、クレージーゴンジャイアントのアームの下敷きになったはずのバトラーが、左手にエイラとサーニャを掴んで立っているではないか!

 

「エイラ!サーニャ!」

『おっと、動くなよ?こいつらがどうなってもいいのかぁ?』

「くそー、離せヨー!!」

 

エイラが叫びながらもがくが、バトラーは離す筈がない。

バトラーの卑劣な行為に対し、真っ先に異見を唱えたのはボルターであった。

 

『バトラー!貴様、誇り高きエンペラ軍団の一員が、何という卑怯な事を……!』

『喧しい!エンペラの家来ごときが、この俺に異見するんじゃあない!!』

『何!?』

「あいつ………エンペラ軍団じゃないのか………?」

 

バトラーの叫びに、一同は静まり返る。今までエンペラ軍団の一員と思っていたバトラーが、あのような事を言うなんて…………?

 

『“あのお方”が蘇ったならばエンペラの残党など木端も同然!貴様らは、我らの宇宙支配の為の礎となるのだぁー!』

『貴様………!』

 

高らかに宣言をするバトラーに怒りが込みあがるボルター。メビウスたちは人質がいるために手が出せない上、エネルギーも残りわずかであった。

 

『当初の目的も果たせた!後は手負いのボルターと貴様らを始末して―――』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドウッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『がッ………!?』

『!?』

「なんだ!?」

 

その時、バトラーの左ひじに銀色の光線が直撃し、衝撃と痛みでバトラーは2人を放してしまう!メビウスは咄嗟に飛び込んで2人をキャッチすると、離れた地面に下ろして、光線の飛んで来た方を見上げた。

 

「あれは………!?」

 

見上げた先から飛んで来た『それ』は、片膝を着く形で着地をすると、立ち上がってその姿を見せた。

 

青い体に、銀色の尖った『耳』にカラータイマーの横の「スターマーク」と肩の突起、右腕に『ナイトブレス』を光らせた青い巨人―――

 

 

 

 

 

「ウルトラマンヒカリ!!」

「セリザワ隊長!!」

 

その青い巨人、ウルトラマンヒカリの姿を見たテッペイとリュウが、その名を叫んだ。

 

『ば、バカな………!?』

 

バトラーが戸惑う中、ヒカリは右腕のナイトブレスから光剣『ナイトビームブレード』を伸ばすと、バトラーに向けて駆け出す!

 

『デヤァアアーーーッ!!』

斬ッ!

『が………!?』

 

そして、すれ違い様にバトラーに一太刀浴びせ、袈裟懸けに両断した!

 

『がぁあああッ………!?……、……ダ………さまぁあ………!!』

ドォオオンッ

 

斬られたバトラーは断末魔と共に崩れ落ち、そのまま爆発の中に消えた………

 

「すごい………!」

「何という腕前だ………!」

 

一太刀でバトラーを下した光の腕前に心を奪われる一同。すでにヒカリのカラータイマーは赤く点滅している中、ペリーヌははっ、と我に返った。

 

「ボルターは!?」

「え!?」

 

ペリーヌの叫びにようやく気付いたが、振り返った先にいるはずの赤い要塞ロボットの姿は、既にどこにもなかった。

 

「逃げたか………!」

 

リュウが歯を食いしばる中、メビウスとヒカリは金と銀の光の粒子となって、その姿を消した。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「ファイターEXⅡ、アドベンチャー輸送形態に入りました。」

 

エリアルベースⅡのオペレーションルーム。敦子とジョジーが、コンソールを操作しながら報告をする。モニターの向こうでは、竜が森湖の畔に鎮座した『アドベンチャーⅡ』カイトの駆るXIGファイターEXⅡに吊り上げられており、湖の上空でガイアとアグルが向かい合って浮遊していた。

 

「いよいよだね、ミーナ。」

「ええ。美緒たち、無事かしら………?」

 

アドベンチャー内のシートに座るミーナとエーリカが、そのような話をしていた。アドベンチャーは内部のシステムなどは未完成ながらも、装甲などは次元移動に耐えられると判断されたため、2人用のシートとストライカーや研究資料等をしまうスペースを設ける等の改装を施されていた。

 

『チャンスは一度きりだ。頼むぞ、藤宮。』

『ああ、こっちの世界は俺とXIGに任せておけ。』

 

ガイアとアグル―――我夢と藤宮は短く会話をした。

我夢はワームホールを開けると同時に、カイトたちと共に次元を超えて行くつもりでいた。自分の持つ『アドベンチャー』の理論を活用し、11人のウィッチをもとの次元に返す研究をしようと考えての決断であった。

 

『行くぞ我夢!』

『ああ!』

 

2人は頷きあうと、額に赤と青のエネルギーを集める。溜まったエネルギーは鞭のようにしなりながら天を突き、2人は『フォトンエッジ』を互いに撃ち合う!放たれた光線は空中で衝突し、激突したエネルギーは合わさって天に上る!

すると、強大なエネルギーによって閉じかけていた『次元の穴』がこじ開けられ、空中にぱっくりとその口を大きく開けた!

 

「成功だ!」

『今だ!』

 

カイトは開いた穴に飛び込むと、ガイアはアグルの方を見て頷き、自分もそれに続いた。

ガイアが次元の穴に飛び込んだ瞬間、次元の穴は再び閉じたのであった。

 

『頼んだぞ、我夢………』

 

 

 

 

 

つづく




第十六話です。

実は、シーモンスはクレージーゴンジャイアントの中にいたというオチ。
フォーメーション・ヤマトはカッコよくて好きだけど、三篇連続で決め手が腹部への一撃でちょっと反省。

バトラーは実はエンペラ軍団ではありませんでした。彼の言う“あのお方”の正体とは、はてさて?

ラストでは、ガイア達の共同作戦。『ガイア』第25話、26話の再現です。次回、いよいよ合流となります。

では次回、『鋼鉄の進撃』にてお会いしましょう。


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第十七話 鋼鉄の進撃

「何ですって………!?」

 

ビームミサイルキングを退け、スチール星人バトラーを斃した後、ミライは、バルクホルンの告げた事に対し、信じられないと言った風に聞き返した。

バルクホルン自身もつらそうな表情になり、シャーリーとルッキーニは顔を暗くしている。ルッキーニにいたっては、今にも泣きだしそうだ。

 

「それは、本当なんですか………!?」

「………ああ、間違いない………」

 

 

 

 

 

「ウルトラマンタロウとダイナは、木星第3衛星ガニメデで敵の襲撃を受け、行方不明となった………」

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

67ある木星の衛星の一つ、第3衛星『ガニメデ』。その地表に、2人の赤い巨人が叩き付けられる。ダイナとタロウだ。ダイナは抱きかかえたαスペリオル号を庇うように背中からスライディング気味に地面へと落下し、土煙を上げて停止をした。

 

『グゥウ………!』

「ダイナ!」

「アスカ、大丈夫か!?」

 

αスペリオルのコックピット内で、バルクホルンとシャーリーが叫ぶ。ダイナは苦しそうにしながらも頷くと、αスペリオル号を抱えて立ち上がった。

 

『トゥインクル・ウェイで移動中に攻撃してくるとは………』

 

近くで起き上がったタロウが、周囲を見渡しながら言う。ダイナも周囲に気を配っていると、αスペリオル号のレーダーが電子音を鳴らした。

 

「レーダーに反応?8時の方向だ!」

『!?』

 

バルクホルンが叫ぶと、ダイナとタロウは振り返る。

 

《グォオオオオ………》

 

そこにいたのは、顔に当たる部位に三連のガトリング砲を持ち、両肩には銃口が赤く光る大砲を装備させた、黒いボディを鈍く光らせたロボットであった!

 

『コイツ、いつの間に………!?』

『インペライザー!?私でも勝てなかった強敵だ……!!』

『何だって!?』

 

目の前でエンジンの唸り声を上げるロボット、『無双鉄神 インペライザー』の情報に、驚きの声を上げるダイナ。

 

『奴には、空間を瞬時に移動する能力がある………それを応用して、ワープ中の我々に攻撃してきたのか!』

『なんて奴だ………!』

 

インペライザーのスペックを聞いたダイナが舌を巻く。その時、再度スペリオル号のレーダーに反応があった。しかも、今度はかなり大きいようだ。

 

「また現れた!?」

「上だ!アスカ!!」

『!?』

 

ダイナたちが上空を見上げると、上空の空間が歪みだし、歪みの中から銀色の影が飛び出てきた!

 

《………》

『何………!?』

 

そのロボットを見たダイナが、驚愕の声を上げた。

 

モザイクのような模様の装甲、左腕にはガトリングガン、右腕にはビーム砲とシザーアームを持ち、胸部の中心に黄色い装甲を備え、顔面は液晶パネルのようになっていて、ピピピピと電子音を鳴らしながら放射状に並ぶ赤い線を光らせている。

 

『デスフェイサーだと………!?』

「ダイナ………?」

 

αスペリオル号を持つ手が震え、ダイナの異変を察知したルッキーニが見上げる。

ロボットこと、『電脳魔神 デスフェイサー』は右腕のハサミをガチンガチンと鳴らすと、並び立ったインペライザーと共にゆっくりと歩き出した。

こちらに向かってくる2大鉄神の姿を見て、2人のウルトラマンは警戒を強める。

 

「アイツら、ここでやりあう気か!?」

『………!』

 

インペライザーとデスフェイサーが向かってくるのを見て、シャーリーが悪態をつく。

ダイナは少し考えると、額のクリスタルを青く光らせ『ミラクルタイプ』へと姿を変える。

 

「ダイナ…?」

『タロウ、すぐに戻る!』

 

姿を変えたダイナに疑問を持ち、顔を見上げるルッキーニとシャーリー。ダイナはαスペリオル号を抱えたまま、上空に飛び上がり、重力の範囲外にまで出る。

 

「アスカ、一体………?」

『あのロボット、デスフェイサーは、オレが一度敗れた程の強敵だ………とてもじゃないが、シャーリー達を庇ったままで倒せる敵じゃないんだ………』

「じゃあ………!?」

 

ダイナは地球の位置を確認すると、αスペリオル号の機首を地球に向けて手を放した。

 

「ダイナ!?」

 

驚くルッキーニはダイナの方を見るが、ダイナは手をかざして超能力を発揮、αスペリオル号のコンピューターを操作し、ネオマキシマドライブを発動させた。

 

『地球に行ってこの事を伝えてくれ!αスペリオル号には、GUTSやスーパーGUTSの戦った怪獣や宇宙人、ロボットのデータが入っている!それを地球にいるウルトラマンメビウスに渡すんだ!!』

「アスカは!?」

 

シャーリーが叫ぶが、αスペリオル号がネオマキシマ航法の体制に入る。ダイナは右手の親指を立てて頷いた。

 

『心配するな、やつをぶっ飛ばして、すぐに地球に向かう!』

「アスカ!!」

「アスカァアーーー!!」

 

アスカの名を叫ぶシャーリーとルッキーニだが、無情にもαスペリオル号はネオマキシマ航法を発動させ、地球に向けてワープを開始してしまった………

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

ここから先は、シャーリー達の知らない事である。

 

 

 

 

 

ガニメデに戻ったダイナであったが、そこで彼を待ち受けていたものは、

 

『タ、タロウ………!?』

 

両腕を交差させた姿勢のまま、物言わぬブロンズ像と化したタロウの姿であった………

 

『フッフッフッ………恐れる事はあるまい………』

『!?』

 

突然、自分に声をかける者がいる事に驚くダイナ。振り返ると、2大ロボットに並ぶように、赤い身体と3本の角を持った宇宙人がいるではないか!

 

『貴様も、タロウと同じ末路を迎えるのだからな!ハッハッハッハッハァッ!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第十七話 鋼鉄の進撃

 

無双鉄神 インペライザー

電脳魔神 デスフェイサー

四次元ロボ獣 メカギラス

宇宙竜 ドラゴドス

ロボット怪獣 ガメロット

侵略変形メカ ヘルズキング

異次元怪異 ネウロイ(GX-06・GX-07)

ドン=マノウ

登場

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

昼休み、ミライは屋上の手すりに肘をつき、何度目か分からないため息をついていた。

 

「………タロウ兄さん………」

 

 

 

多々良島事件を終えて2日がたっていた。

事後処理の話をすると、中破した『クレージーゴンジャイアント』はバンダ星人によって回収された。修理には時間はかかるであろうが、エモラスはいいエンジンが手に入って儲けものだ、と笑っていた。

エニレプはペリーヌに世話になったと感謝をしていた。そして、この借りは必ず返すと言って握手をして、地球に別れを告げた。

 

リドリアスとシーモンスは、長時間捕らえられていた影響で体を弱らせているらしく、しばらくは多々良島で休養することになった。幸いにもレッドキングたち3匹は大人しくしていて人を襲う気配はなかったし、シーモンスにはシーゴラスがついているので不安はないようだが、念のために観測班が見張りについていた。

 

 

 

「ミライさん、元気ないね………」

「やっぱり、先輩のウルトラマンさんだから、心配なのかな………」

 

屋上の入り口からこっそりミライの様子を伺う芳佳、リーネ、ペリーヌの3人。

 

「………アイハラ隊長の話では、ウルトラマンタロウはメビウスの教官をしていたそうですわ………わたくし達で言えば、坂本少佐が行方不明になってしまう事と同じ………それに、ダイナとは以前、共に戦ったとも伺っておりますし………心配しない方がおかしいですわ……」

「そう、だね………」

 

ペリーヌの話に頷く芳佳。3人の目に、悲しげなミライの背中が映った。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

同じ頃、郊外の廃工場では―――

 

「どういう事ですかそれは!!」

 

バド星人ボルター提督は、思わず通信機に食って掛かった。後ろにいるゼットン星人カウントも、神妙な面持ちで聞いていた。

 

[先ほど言った通りだ。お前の用意した100万体のゴブニュ・ギガを含めたロボット軍団が、勝手に光の国に向けて発進をしてしまったのだ。こちらで止める間もなくな……その様子では、お前は認知をしていなかったようだな………]

「当たり前です!まだカウント達の怪獣は揃っていないし、ビアンコは宇宙人選出の最中………戦力が足りないにもほどがある状況です!」

 

通信相手の、全身にトゲの生えた細身で一つ目の宇宙人にそう答えるボルター。

彼らエンペラ軍団の計画では、ロボット騎兵軍、大怪獣戦団、そして宇宙人遊撃衆の3軍団の戦力を持って、光の国に攻め入ることになっていた。

惑星グルータスで育てていたアストロモンス軍団もこの計画のためであったのだが、宇宙警備隊に阻止され、宇宙人遊撃衆のビアンコ提督も戦闘部隊の編成が遅れているため、襲撃はまだ先の筈であった。

 

[それともう一つ、ゴブニュたちが発進したのと時を同じくして、ドン=マノウが姿を消した。]

「マノウが………?」

 

通信相手の言葉に、ボルターが反応する。ドン=マノウは、自分が地球に来ている間、騎兵軍のロボットの管理を任せていた副官であった。

 

「確か、彼はバトラーさんと同じ時期に入って来たのでしたよね……?」

「ああ。………!?まさか!?」

 

ボルターは気が付いた。バトラーは自分たちと別の軍勢からの刺客(スパイ)であると考えられている。だとしたら、マノウも………

 

「………奴の目的がウルトラマンの打倒と地球侵略であるなら、ある意味好都合ではありますね………」

「ああ、だが……癪に障る………!」

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「アスカ………」

 

GUYS基地の休憩スペースで、ルッキーニは俯きながらアスカの身を案じていた。隣に座るシャーリーはルッキーニの頭を撫でてやるが、彼女の顔もどこか暗い。シャーリーだけではなく、バルクホルンもウルトラマンダイナこと、アスカ・シンが心配なのだ。

 

アスカの言う通り、αスペリオル号のデータベースにはアスカの所属していたスーパーGUTSと、その前身であるGUTSの戦った怪獣のデータが記録されていた。その中にはガニメデで襲い掛かってきたあのロボット『電脳魔神 デスフェイサー』の記録も残っていた。

 

デスフェイサーは元々、地球平和連合TPCが開発した電脳戦艦『プロメテウス』が、モネラ星人によって改造・変形したロボットだ。人類の未来を担うはずの戦艦であったためネオマキシマ・オーバードライブを搭載されており、さらにそのエネルギーを利用した「ネオマキシマ砲」を搭載し、さらにモネラ星人の策略により、ダイナのデータがインプットされているのだ。ダイナとの初戦では先述のダイナのデータを元にした戦法に加え、ネオマキシマ砲の一撃で戦場となったクリオモス島もろとも吹き飛ばしてしまっている。再戦で撃破をしたものの、この戦いでダイナは初戦で完膚なきまでに叩きのめされてしまったのだ。

それ程のロボットに加え、ウルトラマンタロウとメビウスを苦しめたインペライザーがいては、さすがの2人でも苦戦は免れないだろう。それ故に、彼女たちの不安は大きかった。

 

(だが、それ程の戦力を有しているエンペラ軍団が、今のところ何の行動を起こさないのもおかしい………何を企んでいるのだ………?)

 

スチール星人バトラーの最後の言葉を考えると第3の勢力があることは考えられるが、それと何か関連があるのだろうか?バルクホルンが考えていると、基地にけたたましく警報が鳴り響いた。

 

 

 

 

 

「東京湾に、巨大な次元エネルギー反応を確認!!」

 

ディレクションルームにGUYSメンバーとウィッチ達が揃った時、モニターには空間の歪んだ東京湾が映されていた。

 

「なんて大きさだ………!」

「これは……今までと同様に、ネウロイや怪獣を呼ぶのとは訳が違うぞ!」

 

今までにない大きさに全員が息を呑む。やがて歪みが収まると、東京湾のど真ん中に直径10km程の円形の平らな大地が現れていた。

 

「これは……!?」

「まるで相撲の土俵だな………!エリー!土俵の中央を拡大してくれ!」

「はい!」

 

リュウの指示に、エリーはリュウ曰く「土俵」の中央を拡大する。中央には、ダイナとタロウのブロンズ像らしきものが立っており、タロウの物は腕を交差させたポーズを、ダイナの物は拳を突き出したポーズをそれぞれ取っていた。

 

「これって……?」

「ウルトラマンの、銅像………?」

 

リーネと美緒が首を傾げる。ふと、芳佳はミライの顔が青ざめていることに気が付いた。

 

「ミライさん……?」

「……違う………あれは………」

 

 

 

 

 

「あれは、2人がブロンズ像にされているんだ!!」

 

 

 

 

 

『!?』

『ええッ!?』

 

ミライの叫びに、全員が驚愕する。

 

「馬鹿な……ウルトラマンが、ブロンズ像になるなどと……!」

「アスカ………!!」

「ウルトラマンがブロンズ像に……?」

 

信じられない表情で画面を見るバルクホルンと、涙目になるルッキーニ。一方のエリーは、今回の状況と同じことが過去に起きている事をふと思い出し、アーカイブに接続しようとする。

しかし、アーカイブを呼び出す前にアラートが再び鳴り響いたため、それは中断されることになった。

 

「今度は何だ!?」

「時空間エネルギー反応を感知!場所は……!あの『土俵』の端3か所です!」

「何だと!?」

 

再度カメラが切り替わり、『土俵』の北側の端が映し出された。すると、そこにはインペライザーの姿があった!さらに東南東の1角にはデスフェイサーが!そして西南西の1角にはエイのような形状の円盤が姿を現し、三方から中心に向けて、ほぼ同じ速度で進行し始めた!

 

「インペライザーとデスフェイサーが!?」

「アイツら………2人をやる気か!!」

「………!」

 

2機のロボットと円盤が動き出したのを見て、ミライは弾かれた様に走り出す。しかし、それをリュウが肩を掴んで止めた。

 

「待てミライ!これは罠だ!」

「どういう事ですか!?」

 

リュウの言葉に、芳佳が聞く。

 

「奴らは空間転移できるのに、それを使わないでじりじりと近づいている!文字通り、自分の土俵に来いと誘っているんだ!このまま行ったら、思うつぼだぞ!」

「しかし、このままではタロウ兄さん達が!」

 

ミライが反論するが、その時、三度警報が鳴り響く。

 

「次元エネルギーを観測!『土俵』の上空です!」

「またロボットか!?」

 

リュウは、ロボットの増援かと思い怒鳴る。コンソールをたたくエリーが報告をする前に、モニターに映るウルトラマンのブロンズ像の目の前に、土煙を上げて、赤い巨人が着地をしていた。

 

「あれは………!?」

 

そこに現れたのは、銀色の体に赤いラインを走らせ、中央に青く光る『ライフゲージ』のついた金と黒のプロテクターを纏った巨人―――

 

「ウ、ウルトラマン!?」

「あれは………ウルトラマンガイア……!?」

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「わぁあああああああああああああああ!?」

「きゃぁああああああああああああああ!?」

 

アドベンチャーⅡのコックピット内で、エーリカとミーナが悲鳴を上げる。

次元ゲートをガイアと共に通ったまではよかったのだが、通り抜けた衝撃でファイターEXⅡと繋がっていたワイヤーが切れてしまい、あっという間にアドベンチャーは回転しながら落下している最中であった。外装のみの機体では操縦することは不可能であり、このままでは地面に激突するのを待つほかはない!

 

ガシィイッ

「「!?」」

 

しかし、空中でガイアがアドベンチャーをがっしりとつかみ取り、そのまま大きく土煙を舞い上げ、地面に着地した!

 

「あ、危なかった………」

[大丈夫か、2人とも!?]

「うん、何とか………ガイアがナイスキャッチしてくれたからよかったよ………」

 

上空のファイターEXⅡのカイトは、通信機越しに聞こえたエーリカの声を聞いて安堵する。

ガイアは2人の安全を確認して頷くが、しかし、今自分の降り立った場所を見て驚愕していた。非常に広い大地のど真ん中に、2体のウルトラマンらしきブロンズ像が立っている場所にいるのだ。

 

「な、何アレ………?」

「ウルトラマンの、銅像……?」

 

ようやく落ち着いて外を映したモニターを見た2人も、巨大なウルトラマンのブロンズ像に驚いていた。

 

[タ、タロウ教官………!?]

「カイト?」

『ダイナ………なのか………?』

「我夢さん……?」

 

2人のウルトラマンの困惑した声に心配する2人。

 

《キキィーーー!!》

『!?』

 

その時、ガイアの背後に甲高い鳴き声が聞こえる!

振り返るとそこには、寸胴型の胴体を持った銀色の怪獣型ロボットの姿があった。

 

「こいつ……いつの間に!?」

「メカギラス!?バム星人のロボット怪獣だ!」

《キキィーーー!》

 

カイトが叫ぶと、『四次元ロボ獣 メカギラス』は上あごに4門設けられたミサイル発射口からミサイルを連射する!

 

ズドドドォオオッ

『グゥウ………ッ!』

「ガイア!!」

 

ガイアは咄嗟にアドベンチャーを手に背を向け、その背中にミサイルを受ける!ガイアの周囲で爆発が起き、ダイナとタロウのブロンズ像にも危うく当たる所であった。

 

《グォオオ………》

《………………》

「何!?」

 

ミサイルが止んだかと思ったのも束の間、今度は未知のロボット2機―――インペライザーとデスフェイサー、飛行円盤が接近!ガイア達は囲まれてしまった!インペライザーのガトリング砲が回転を始め、デスフェイサーのシザーアームに備えられたビーム砲が、無防備なガイアの背中に狙いを定める!

 

「!」

 

カイトは咄嗟にマックススパークを掲げるが、それよりも早くインペライザーの両肩で爆発が起き、肩の一部を破損した!

何事かと周囲を見回してみると、上空から3機の戦闘機と9人のウィッチが降下してきた!

 

「あれは!?」

「美緒!みんなも………!」

 

ウィッチたちの姿を見たミーナとエーリカは安堵の声を出す。

 

「各機、ウルトラマンを援護!ブロンズ像から遠ざけるんだ!」

[[G.I.G.!!]]

「芳佳たちは、ウルトラマンの持っているマシンに向かってくれ!」

『了解!!』

 

ガンウィンガーを駆るリュウが指示を飛ばす。3機のロボットは標的をガンマシンとウィッチに変更して上空に向けて攻撃!各機は散開すると、それぞれロボットと円盤に向かう。芳佳たちはリュウの指示通りにガイアの元に向う。すると、美緒たちのインカムに通信が入った。

 

[こちら第501統合戦闘航空団、ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ。]

「!?ミーナ!?」

「ミーナ隊長!?」

[私もいるよー?]

「ハルトマンさんも!?」

 

ミーナとエーリカの声に驚くも安心するウィッチ一同。だが、今は喜んでいる場合ではなかった。

 

「ミーナ、話は後だ。今はウルトラマンの救出と、ロボット軍団の殲滅だ。」

[……どうやら、そのようね……]

[てことは、あれってウルトラマンが銅像になってるって事……?]

 

美緒がミーナと通信機越しに会話をしている間に、ガンマシンたちはインペライザーとデスフェイサー、メカギラスに向けて攻撃を開始していた。その時、破損したインペライザーの肩がグニグニとうごめき、あっという間に再生してしまった。

 

「再生しただと!?」

《グォオオ………》

 

バルクホルンが驚くのもつかの間、インペライザーは両肩のキャノン砲から光弾を発射!ガンローダーの翼すれすれを通過したが、光弾は通り過ぎた先でUターンをすると、背後からガンローダーを狙う!

 

「危ない!」

ドォオンッ

「ぐっ………きゃあッ!?」

[ペリーヌ!?]

 

咄嗟にペリーヌが障壁を張って防御をするが、その威力に吹き飛ばされてしまった。

 

「光弾が追尾式だなんて………!」

《キキィーーー!!》

《………》

 

リーネが戦慄しているが、今度はデスフェイサーが左腕のガトリングガンを、メカギラスがミサイルを掃射、上空のウィッチたちを狙う!

 

「サーニャ!」

 

エイラが叫ぶと、サーニャは回避をしてフリーガーハマーのロケット弾をメカギラスに向けて発射、しかし、ロケット弾はメカギラスの目の前に出現したバリアに当たって爆発してしまった。

 

「バリア!?」

「何て厄介な………!」

 

一方、ガンウィンガーとバルクホルンは、円盤を追撃していた。円盤はバルクホルンの機関銃とガンウィンガーのビークバルカンを巧みによけながら上昇する。すると、円盤は空中で回転を始め、次第に回転の速度を速めていき竜巻と化してしまう。

 

「何だ!?」

 

竜巻にリュウとバルクホルンが驚いていると、竜巻の中から巨大な長い胴体と巨大な翼を持ったロボットのドラゴン『宇宙竜 ドラゴドス』が出現した!

 

《ギャキィイキィイーーー!!》

「ドラゴン!?」

 

金切り声を上げるドラゴドスに驚くのもつかの間、ドラゴドスは口を開くとガンウィンガーとバルクホルンに向けて炎を吐き出した!

寸前で避けたガンウィンガーとバルクホルンであったが、そばを通り過ぎた炎の熱波に戦慄した。

 

その頃、GUYS達がロボット軍団の気を引いている隙に、ガイアと美緒達は戦場から数百メートル離れた地点へアドベンチャーを下していた。

 

「ミーナ!」

 

ファイターEXⅡと共に着陸した美緒は、ハッチの開いたアドベンチャーから降りてくるミーナとエーリカに駆け寄った。

 

「美緒!良かった………」

「みんな無事みたいだねー」

 

再会を果たしたウィッチたちを見たガイアは小さく頷くと、ロボット怪獣と戦うGUYS達の元へ飛翔、インペライザーとデスフェイサーの目の前に降り立った。

 

《………》

 

ガイアを確認したデスフェイサーは標的をガイアに設定、右腕のシザーアームを構えると、上部の砲を放つ。ガイアはバリアを張って弾くと、デスフェイサーに向けて飛び蹴りを放つ!

 

《………》

バシュッ

『!?』

 

しかし、デスフェイサーはシザーアームを伸ばすと、飛び上がったガイアを掴み、そのまま地面に叩きつけた!

 

『グアァッ………』

 

叩きつけられたガイアが苦し気に声を上げる。更に、今までウィッチやGUYSを相手にしていたインペライザーとメカギラスがガイアに近づいてくる!

 

「ガイア!!」

「やらせるかよぉッ!!」

 

ガイアに集結するロボット軍団を阻止すべく、ガンマシンとウィッチが向かおうとしたその時、ガンウィンガー内のレーダーが警告音を発した。

 

「次元エネルギー!?」

 

レーダーに表示された内容に驚くミライであったが、何よりも、その波形パターンに驚愕した。

 

「このパターンは、まさか!?」

 

ミライが声を上げたその時、

 

 

 

 

 

ピシッ………ピシッ………

 

 

 

 

 

地上にいたミーナは、異変に気付いていた。

 

「何、あれは……!?」

「え?」

 

ミーナの声に反応し、美緒たちも上空を見上げる。そして、驚愕の顔となった。

 

 

 

 

 

ピシッ………ピシッ………

 

 

 

 

 

「あれは………!?」

 

上空の芳佳や、地面に倒れていたガイアも、上空の異変に気付いた。

 

 

 

 

 

「空が………割れる………!?」

 

 

 

 

 

芳佳がそう呟いた瞬間、まるでガラスを割ったかのようにバリーンッ、と音を立てて『割れた』!

 

「バカな………この現象は一体………!?」

 

突然の出来事に困惑するウィッチたち。しかし、ミライたちはこの現象に覚えがあった。

 

「このエネルギーの波形パターン………間違いない!」

「異次元を自在に移動できる『あいつ等』が、今回の件に絡んでいないワケがなかったか!」

 

リュウたちがその存在の名前を言おうとした時、割れた空の向こうから、中央に巨大な砲を構え、それを二分割させた巨大な機首で挟んだかのような10m大ネウロイが5機、さらに、先端が矢じりになった爪のような部位が生えた球体型の小型ネウロイが無数に出現した!

 

「こ、この数は………!」

「これだけの数………まさか、巣があの中に!?」

 

芳佳たちが戦慄しているのもつかの間、球体型ネウロイの集団が攻撃を開始した!

 

「くっ………こいつら………!」

「このままじゃあ、ガイアやダイナが………!」

《キキィーーー!!》

《グォオオ………》

 

小型ネウロイを対処しながら毒づくシャーリーとリーネ。ガイアはデスフェイサーのシザーアームに抑えられて身動きが取れず、インペライザーとメカギラスが迫る!

 

「ムサシさん!」「ああ!」

 

ミライとムサシは通信機越しに頷きあい、ミライは左腕にメビウスブレスを出現させ、ムサシはコスモスプラックを構えた。

 

「PAL、頼んだ!」

《了解シマシタ、オ気ヲツケテ。》

 

一方ファイターEXⅡから降りたカイトは、マックスパークを構えると、左腕に装着させた。

 

「メビウゥゥウウウウウウウス!!!」

「コスモーーース!!」

 

それとほぼ同時に、ミライとムサシは金と蒼の光になって飛び出し、カイトは金色の光になって飛び上がった!

 

『セヤァアアッ!!』

『フアァアアッ!!』

『デャァアアッ!!』

 

光は空中で人型になり、3人のウルトラマンとなってロボット軍団に突っ込む!

 

《グォオオ………!?》

《キキィーーー!?》

《………!?》

 

マックスとコスモスの跳び蹴りがインペライザーとメカギラスに食い込み、メビウスの拳がデスフェイサーに叩き込まれ、3体のロボットは吹き飛んだ!

 

「メビウス!」

「コスモスも………って、あのウルトラマンは………!?」

「マックス………!」

「カイト………!」

 

メビウスとコスモスに加え、見たことのないマックスの登場に驚く芳佳たち。メビウスは倒れたガイアを起こしていた。

 

『大丈夫ですか、ガイア………』

『君は……この世界のウルトラマンか………』

『久しいな、メビウス。』

『君はマックス!無事だったのか………!』

 

マックスはメビウスに短く挨拶をすると、4体のロボット怪獣が体制を立て直し、にらみをきかせてきた。

 

《ギャキィイキィイーーー!!》《キキィーーー!!》

《グォオオ………》《………》

 

『メビウス、話はあとだ!』

『ああ!』

 

4人のウルトラマンは並び立つと、ロボット怪獣軍団に向けて駆け出した!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドォオオッン

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『グアアッ………!?』

『グゥウ………!?』

『『!!??』』

 

しかし、駆け出した瞬間に背後からの攻撃を受け、メビウスとコスモスが倒れこんだ………!

 

「ミライさん!!」

《………》

《グホォオ………》

 

芳佳が悲痛な声を上げる。見てみると、いつの間にかウルトラマンたちの背後に、2体のロボット怪獣がいるではないか!

 

1体は銀色のがっしりとしたボディに赤いランプをいくつも光らせた『ロボット怪獣 ガメロット』、

もう1体は、甲殻類を思わせる装甲を持った長い首の単眼ロボット『侵略変形メカ ヘルズキング』だ!

 

「また別のロボットが……!?」

 

芳佳とエイラが驚いていると、ヘルズキングとガメロットの背後から赤い体色の宇宙人が現れた。

 

『ハッハッハッ!愚かなり、ウルトラマン!』

「アイツは!?」

 

現れたのは、3本の角と象の鼻を思わせる口の管を持ち、毒々しい赤い体色を持った宇宙人だ。マックスはその姿を見て、その宇宙人の名前を叫んだ。

 

『ヒッポリト星人!タロウ教官をこんな目に合わせたのは、お前か!』

『いかにも!このヒッポリト星人ドン=マノウ様が、貴様らウルトラマンに引導を渡してくれるわぁッ!!』

 

ドン=マノウと名乗った『地獄星人 ヒッポリト星人』は高らかに宣言をすると、ロボット軍団がうなりを上げた。

 

 

 

 

 

つづく




第十七話です。個人的に、ここから序盤の山場的な話になります。

インペライザーにデスフェイサーという、絶望的状況からのスタート。戦場がガニメデなのは『ダイナ』の最終3部作から。

東京湾に10kmの戦闘フィールドってデカすぎる気もしますが、実はガオガイガーのディバイディングフィールドから取っています。

メカギラスにドラゴドス、ガメロットにヘルズキングというロボット怪獣大集合。ロボット怪獣ならキングジョーやナースも入れたい所ですが、この2体は自分的に『別格』な立ち位置にいると思うので、個別の話を用意しています。
個人的に、メカギラスは80の中で一番好きな怪獣です。ロボット怪獣とは違う、「怪獣型ロボット」というべきデザインが何とも言えません。

割れた空から出てくるネウロイ。今回の件、ガイア篇でも少し触れたあの存在が絡んでいました。GX-06は『ティガ』のガッツウイング2号(デキサス砲発射形態)、07は『タロウ』で出てきた際(海野さんのやつ)に乗っていた宇宙船がモデル。

ドン=マノウはヒッポリト星人でした。まあ、ブロンズ像にした時点でバレバレですけれど………

では、また次回。


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第十八話 沈黙のウルトラマン

 

 

地球で巨大な土俵が出現した頃、地球から300万光年離れたM78星雲『光の国』では―――

 

 

 

 

 

『宇宙警備隊隊員は、衛星軌道上へ向かえ!第1級戦闘配備だ!』

『銀十字軍は、非戦闘員の避難を急げ!』

 

美しいクリスタルの街並みに甲高いサイレンが鳴り響く中、2人のウルトラマンが周囲に大声で指示を飛ばす。ウルトラ戦士の一員、グレートとパワードだ。

パワードは視線を上空に移すと、ウルトラマンの超人的な視力で光の国に進行してくる大群を見た。

光の国に近い宇宙空域では、巨大な『島』のような物を中心に、無数の銅色のロボット―――『巨大機械人形 ゴブニュ(ギガ)』が迫ってきていた。

 

『あれだけの数………エンペラ軍団め、ついに動いたか!』

『しかし、司令格である提督の姿がない………何かおかしい……』

 

グレートが忌々しいように右拳を左手のひらに打ち付けると、後ろから声がした。振り返ると、そこにはウルトラ兄弟次男・ウルトラマンと三男・ウルトラセブンの姿があった。

 

『ウルトラマン!セブンも………』

『他の兄弟や隊員たちは、既に皆を連れて迎撃に向かった。我らも向かうぞ。』

『ハイ!』

 

2人は頷くと、両手を伸ばして飛び上がる。

 

『しかし、セブン……』

 

ふと、パワードはセブンに聞いた。

 

『光の国にこれだけの数を送り込んでくるという事は、地球にも兵を送り込んでいるのでは……?』

『うむ………』

 

セブンも同じことを考えていた。今現在、地球に攻め入っている『提督』の地位の星人が何人か確認され、さらに別次元の『ネウロイ』を投入している以上、エンペラ軍団が地球を本格的に滅亡させようとしている可能性は高い。

光の国に攻撃を仕掛けてきているという事は、地球にも同等の戦力を向かわせている可能性がある。2人が考えている間に、他の兄弟や宇宙警備隊員の集まる防衛ラインへと着いた。

 

『………地球の事はメビウス達に任せよう。今はあの一団を倒すのだ!』

『ああ………地球には別次元のウルトラマンたちが、そしてGUYSがついている!』

『攻撃開始!!』

 

ウルトラマンの言葉にグレートは頷くと、先頭に立つゾフィー号令の下、他のウルトラマンたちと共に光線を放った!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第十八話 沈黙のウルトラマン

 

地獄宇宙人 ヒッポリト星人・ドン=マノウ

無双鉄神 インペライザー

電脳魔神 デスフェイサー

四次元ロボ獣 メカギラス

宇宙竜 ドラゴドス

ロボット怪獣 ガメロット

侵略変形メカ ヘルズキング

異次元怪異 ネウロイ(GX-06・GX-07)

巨大機械人形 ゴブニュ(ギガ)

登場

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻・地球 東京湾に出現したフィールドでは―――

 

 

『ハッハッハッ!』

《ギャキィイキィイーーー!!》《キキィーーー!!》

《グォオオ………》《………》

《………》《グホォオ………》

 

6体のロボット怪獣を率いた地獄星人ヒッポリト星人・ドン=マノウが高笑いをしていた。

 

[ヒッポリト星人……不意打ちとはいえ、ウルトラ兄弟5人を全滅させ、ウルトラの父を倒した強敵です!]

「ウルトラ兄弟を………!?」

 

通信機越しにエリーからの情報を聞いた芳佳が、声を上げた。そのような強敵と6体のロボット怪獣、ダメ押しとばかりにネウロイの大群というこの危機的状況。

 

「わたくしたちだけではなく、ウルトラマン達も危険ですわ……!」

「宮藤とサーニャ、バルクホルンは私と共にウルトラマンを援護!他の者はネウロイを迎撃!」

『了解!!』

「ミーナ、私たちも!」

「ええ!!」

 

美緒が指示を飛ばすと、4人はロボット怪獣と戦うウルトラマンやガンマシンの元に向かう。エーリカとミーナもストライカーを履くと、戦場に向けて飛び立った。

 

『うざったい地球人どもめ!!』

 

ドン=マノウが叫ぶと同時に、ロボット軍団が動き出した。

 

『グゥウ………』

『とにかく、戦わないと……!』

 

メビウスとコスモスが立ち上がると、ウルトラマンたちもロボット軍団に向かっていく!

 

《グォオオ………》

『ジュア!』

 

インペライザーと戦うガイアは、その胸部にパンチを叩き込んで後退させる。数歩下がったインペライザーは両肩の砲身から光弾を放つがガイアはそれを叩くと地面に着弾、右手に青い光の剣『アグルブレード』を出現させ、一気に接近して剣を振るうと、インペライザーは上半身と右腕が袈裟懸けに斬り裂かれた。

しかし、上半身はすぐに再生してしまい、更に腕は巨大な剣に変化して右腕に収まった!

 

《グォオオ………》

『!』

 

剣を構えたインペライザーがガイアに迫る。ガイアはブレードの切っ先をインペライザーに向けるが、その時、背後から光線が襲い掛かる!

 

『グァア……!』

《グホォオ………》

 

背後にいたヘルズキングの両腕に付いた銃口が、真っすぐにガイアを狙っていた。背後からガイアを射撃したのだ。

 

「ウルトラマンが!!」

 

バルクホルンがそれに気づいて向かおうとしたが、上空からドラゴドスの火炎攻撃が迫り阻まれる。ドラゴドスはバルクホルンに鋭いカギ爪を振りかざすが、コスモスが間に入って受け止める。そのままコスモスはコロナモードに変わってドラゴドスを殴りつけるが、その背にネウロイ数体のビームを受けてしまう!

 

『グァアアッ……』

「コスモス!!」

「「「キィイイイイイイイイイイイ!!」」」

 

サーニャがコスモスの元に向かおうとしたが、それをネウロイの群れが阻み、彼女に向けてビームを連射する。サーニャは回避と同時にフリーガーハマーを向けるが、そこへメカギラスのロケット弾とネウロイのビームが同時に迫り、サーニャは咄嗟に上昇してやり過ごす。

 

《キキィーーー!!》

『!』

 

上空のネウロイをマクシウムソードで対処していたマックスはメカギラスの攻撃に気付き、マクシウムソードを念力で操作してメカギラスに向ける。しかし、メカギラスはそれに寸でのところで察知したのか、バリアを張って防がれてしまった。マックスは再度攻撃しようとするが、その時、背後からネウロイが1体マックスの背中に特攻を仕掛けてきた!

 

『グァア…!!』

『マックス!!』

《グホォオ………》

《………》

 

メビウスがマックスの元に向かおうとするが、行く手をデスフェイサーが阻み、ガメロットがマックスに攻撃を仕掛けていた。メビウスはメビウスブレスからメビュームブレードを伸ばして斬りかかるが、デスフェイサーは冷静にハサミで受け止めると左腕のガトリング砲をメビウスの腹部に押し当てた!

 

『!?』

「ミライさん!!」

 

芳佳が気づいて機銃で左腕を攻撃する。被弾したデスフェイサーはそこまでダメージがない様子であったが、標的を芳佳に変更してガトリング砲を向けるが、メビウスは咄嗟にメビュームブレードをしまうと同時に『ライトニングカウンター』を放つが、デスフェイサーは難なく避けたうえにシザーハンドでメビウスの後頭部を殴りつける!

 

「メビウスが!!」

「「「キィイイイイイイイイイ!!」」」

 

ガンマシンがウルトラマンの援護に向かおうとするが、周囲を飛び回るネウロイが邪魔をして近づくことが出来ない。

 

《グホォオ………》

ビィーーー

『グアアッ!!』

 

GUYSが手を拱いている間に、ガメロットの胴体のランプが光り赤い破壊光線が発射されてマックスに直撃!悲痛な叫びと共にマックスが倒れる!

 

「カイト!!」

「こんな混戦状態じゃあ………」

 

ネウロイの包囲網に苦言を漏らすリーネ。その時、10m級ネウロイの砲身にエネルギーが蓄積され、強力な赤い光線が放たれた!

 

「キィイイイイイイイイイ!!」

ドウッ

「「「!?」」」

 

赤い破壊の閃光が戦場に走り、「土俵」をえぐり爆発を起こす!

 

『ゥウ………!?』

「!いけない!!」

 

ウルトラマン達が爆風にたじろぐ中、芳佳は、ネウロイの放った光線の軌道上にタロウとダイナがいる事に気が付いた。芳佳は咄嗟に2人の前に飛ぶとシールドを張ってビームを防ぐ!

 

「ぐっ‥‥……ううう………!!」

「芳佳ちゃん!!」

「無茶だ!いくら宮藤のシールドでも………!」

 

リーネと美緒が思わず叫ぶ。芳佳自身も踏ん張るが、段々と光線に押されていく。メビウスはデスフェイサーのハサミを避けて蹴り飛ばすと、メビウスブレスを素早く操作してメビュームシュートでネウロイを攻撃、直撃したネウロイは爆散した!

 

「た、助かった………」

 

しかしホッとする一瞬の内にデスフェイサーがメビウスの背後に接近、気が付いて振り返ったメビウスに左腕のガトリングを容赦なく撃ち込んだ!

 

『ガァアアア………!!』

「メビウス!!」

 

美緒の悲痛な叫びが戦場に響く。しかしそれは直後に起きた爆発にかき消される。

振り返ってみれば、それぞれの場所で戦っていたウルトラマンたちが倒れ、それをロボット怪獣たちが見下ろすかのように立っていた。

 

「ウルトラマンたちが………!!」

『ハッハッハッ!!どうだウルトラマンども!!』

 

倒れるウルトラマンたちを嘲笑うドン=マノウ。リュウはそんなマノウをキッと睨むと、ガンウィンガーのウイングレットブラスターを放つ!

 

『おっと。』

「テメー!『ヤプール』の使いっぱしりの分際で!!」

「ヤプール………?」

 

難なく避けたマノウに向けて叫ぶリュウ。シャーリーはリュウの発した「ヤプール」という単語に小首をかしげるが、当のマノウはフン、と鼻で嗤った。

 

『誰がヤプールなんかの使いっぱしりだ!ヤプールなど、『あのお方』の前では木っ端も同然よ!!』

「何!?」

「ヤプールの、更に上………!?」

 

マノウの告げた衝撃の事実に息を呑む一同。ウィッチやガイアたち異世界のウルトラマンにはいまいちピンと来ていないようだが、GUYSやメビウスたちには、それが驚異的な事であると感じ取っていた。

 

「ヤプールの更に上となると、エンペラ星人レベルの大物ということか……?」

『喰らえ、地球人ども!!』

 

その時、マノウは両手のひらを合わせて指先をガンウィンガーに向けると、その手の間から『ヒッポリトミサイル』を発射した!

 

「!しまっ―――」

「アイハラ隊長!!」

 

リュウが気づいたときにはヒッポリトミサイルが目の前まで接近してきており、回避には間に合わない。

 

ドォオンッ

「!?」

「あれは………」

 

しかしその時、ガンウィンガーの目の前に青い影が現れると、ミサイルを一刀両断に斬り裂いた!

爆煙の中から現れたのは青い巨人・ウルトラマンヒカリだ!

 

『な、何ィい~~~!?』

「ウルトラマンヒカリ!!」

 

カナタが弾んだ声を上げ、マノウは1歩後退る。ヒカリの増援があればロボット軍団に対抗できると思ったその時、ヒカリは片膝をついて苦しそうに肩で息をし始めたではないか。

 

「!?」

「セリザワ隊長………!?」

 

カラータイマーまで鳴り始めたヒカリの様子に驚く一同。その時、リュウはある事に気が付いた。

 

「まさか………アーマードダークネスと戦ったダメージがまだ!?」

「何ですって!?」

 

二ヶ月ほど前に起きた戦いで、ヒカリはアーマードダークネスに取り込まれ、倒した後もダークネスフィアをウルトラの星にまで運んでいる。そんな事をして体に溜まった疲労とダメージは尋常ではないはずだ。おそらくは地球で起きている事態を知って、自分のダメージを顧みずに飛び出してきたのだろう。

 

『グゥ………』

『………ふ、フン!何だ、死にぞこないではないか!!』

 

たじろいでいたマノウはヒカリの状況を理解したのか、嘲笑うマノウ。そのまま再度手のひらを合わせてヒッポリトミサイルの発射体制に入った。

 

『ヒカリ!!』

 

ミサイルが発射されたその時、立ちあがったメビウスがメビュームブレードを伸ばし、ミサイルを斬り割いた。しかしマノウは第2射をメビウスに放つ。メビウスは同じようにメビュームブレードの刀身で防いだ。

 

 

 

 

 

バシュッ

 

 

 

 

 

『!?』

「なんだ!?」

 

しかし、切断されたミサイルは爆発せず、中から毒々しい緑色の液体が噴き出てメビウスの左腕ごとブレードにかかった。突然のことに困惑していると、メビウスの左腕は肘から先が固いブロンズになってしまった!

 

「!?」

「メ、メビウスの腕がブロンズに……!?」

「あれは、ヒッポリトタール!?」

 

ヒッポリトタール

それはヒッポリト星人の得意とする、浴びるとブロンズ化してしまう液体である。

ウルトラ兄弟をブロンズ像に変えた際には、専用のヒッポリトカプセルを使用していたのだが、マノウはミサイルに詰め込んで発射したのだ!

 

『ハッハッハッ!貴様らをブロンズ像にするのに、わざわざカプセルを使うよりもこの方が効率的であろう!3発も当たれば全身ブロンズ像よ!!』

 

マノウが高笑いをすると、たった今の出来事を見たシャーリーがある事に気づき、ブロンズ像と化したダイナとタロウを見た。

 

「そうか、アスカもタロウも、あのミサイルにやられたのか………!!」

「下郎が………!」

 

マノウの手口に毒づくシャーリーとバルクホルン。マノウは再度合わせた手の先をメビウスに向けた。

 

『さて、諸君らには「通常のミサイル」と「タールの入ったミサイル」の区別がつくかな?』

『ぐっ………』

 

ブロンズ化した左腕を庇いながら唇と噛むメビウス。ガイアたちも立ち上がるが、マノウは鼻で嗤った。

 

『ふん、懲りずに立ち上がるか。しかし!!』

《キキィーーーッ!!》

『!?』

 

マノウが叫んだ瞬間、待機をしていたメカギラスが咆哮とともにミサイルを発射する!それに気が付いたマックスがマクシウムソードを投げて斬り割くが、何とその中からヒッポリトタールが噴出して、ブロンズ化したマクシウムソードが地面にゴトリ、と落ちた!

 

『何!?』

ドォオンッ

『グヮアア………―――』

 

ブロンズ化したマクシウムソードに驚く間もなくマックスにミサイルが着弾し、全身にヒッポリトタールが浴びせられてブロンズ像と化してしまった!!

 

「カイト!?」『マックス!!』

「まさか………こいつらもタール入りミサイルを!?」

 

エーリカとメビウスがブロンズ像となったマックスに息を呑むが、それと同時に、メカギラスだけではなく他のロボットたちにもヒッポリトタールの入ったミサイルが搭載されていると察して戦慄をした。

 

『行けぇ、ロボット軍団!!』

《ギャキィイキィイーーー!!》

《グォオオ………》

《グホォオ………》

 

ウルトラマンたちが怯んだ隙にマノウが号令をかけると、ロボット軍団は攻撃を再開した!

 

『くっ………た、ただでさえ手ごわいのにミサイルも気にしないといけないなんて………!!』

 

ガメロットの拳を避けながら、メビウスが困惑する。メカギラスが再びミサイルを発射するが、コスモスは咄嗟にバリアを張って防御をする。すると、バリアに直撃したミサイルが破裂して中に入っていたタールが飛び出し、瞬時に固まった。

 

『ふん、当然防御をするだろうな………では!!』

 

それを見たマノウが、指先をコスモスに向けてミサイルの発射体制に入る。コスモスが再度防御をしようとしたその時、マノウは指先を空に向け、ミサイルを発射した!

 

『!?』

「サーニャ!!」

「え………!?」

 

ミサイルの行く先―――ネウロイを撃破したサーニャは咄嗟の事で反応が遅れてしまい、ミサイルが目の前にまで迫る!

 

 

 

ドォンッ

 

 

 

「―――!?」

 

 

 

しかし、その間に入ったコスモスの背中でミサイルが破裂、中のタールが噴出して全身を覆い、コスモスをブロンズ像に変えてしまった……!

 

「コ………コスモス!!」

 

仰向けに倒れたコスモスに、エイラの悲鳴が響く。

 

「そ、そんな………」

「コスモス………ムサシさんまで………」

『ハッハッハッ!弱く脆く、ちっぽけな地球人を守る!ウルトラマンはいつでも愚かだ!!』

『ッ!!マノウ!!』

 

メビウスが怒りをぶつけるようにマノウに向けて駆け出すが、デスフェイサーがマノウを守るように立ち塞がると、右腕のシザーハンドを向けた。メビウスがデスフェイサーのデスシザーレイを避けたその時、デスフェイサーの胸のパネルが甲虫の羽のように左右に開くと、中から物々しい砲門が現れた。

 

『!?』

「まさかあれが………」

「ネオマキシマ砲か!!」

 

出現した砲門を見たシャーリーとバルクホルンは、それがデスフェイサー最強の武器・ネオマキシマ砲であると瞬時に察した。島を一つ吹き飛ばすそれを放たれれば一たまりもない。メビウスは意を決すると、ブロンズ化した左腕のメビュームブレードの切っ先をその砲口に向けて走り出した!

 

「!そうか、アイツの弱点!!」

 

シャーリーはメビウスの狙いに気づく。αスペリオルに記録されていたデスフェイサーの弱点、つまり、ネオマキシマ砲のチャージ中は身動きが出来ないため、その時がチャンスなのだ。

 

『ハァアアアアアアア!!』

「行っちゃえーーーメビウスーーー!!」

 

突進するメビウスにルッキーニが声を上げる。しかしその時、美緒はマノウが不敵な笑みを浮かべたように思えた。

 

「………!?いかん!!ダメだ、ヒビノ隊員!!」

「え!?」

『―――!?』

 

美緒が止めるように叫んだその時―――

 

 

 

 

 

『かかったなアホが!』

 

 

 

 

 

ドバッ

 

 

 

 

 

「「「「「―――!?」」」」」

 

 

 

 

 

マノウが叫んだ瞬間、ネオマキシマ砲の砲口から『毒々しい緑色のタール』が決壊したダムの如く噴射され、メビウスの身体に降りかかった!!

 

『グゥ………』

「な………!?」

「ミ、ミライさん………!!」

「ミライィイーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!」

 

瞬間、メビウスはメビュームブレードを構えた姿勢のまま、物言わぬブロンズ像へと成り果ててしまった………!!

芳佳やリュウは、ここが戦場であることも、今が戦闘中である事も忘れ、悲痛な叫びを上げた………

 

『フハハハハハ!!愚かなりウルトラマン!!』

「き、貴様ァアーーーーー!!」

「!?ダメだ、少佐!!」

 

美緒が叫びながら、マノウに向けて烈風斬を放つ。しかしデスフェイサーが瞬時にバリア『ジェノミラー』を展開して防いでしまった。

 

その時、フラフラになりながらもインペライザーの光弾を回避していたヒカリが、同じくドラゴドスが口から発射したミサイルをバリアで防いだガイアにテレパシーを送った。

 

《君、ガイアと言ったな………君だけでも逃げるんだ……!》

『!?《だ、だが………》』

《メビウスから話は聞いている。君の頭脳があれば、このタールを除去する方法を見つけられる筈だ。GUYSとウィッチたちをたのむ!!》

 

ヒカリはテレパシーを切ると、ナイトブレスを着けた右腕を天高く掲げた。すると、ヒカリの身体に銀色の光が降り注ぎ、その身を銀色の鎧で包み込んだ。

 

「!?姿が………」

「アーブギア………修復されていたのか!!」

 

リュウが歓喜の声を上げた。惑星アーブより授かった勇者の鎧・アーブギアを纏ったヒカリは、ハンターナイトツルギへと姿を変えた。

 

『デヤァアアアアアア!!』

『血迷ったか!!』

 

ツルギは右腕にナイトブレードを生成すると、マノウに向けて斬りかかる!しかし、マノウの前にロボット軍団が集結し、ツルギを迎え撃つ!

 

『ッ………みんな!今の内に撤退を!』

「えっ……!?」「だが………」

 

ガイアが進言をするが、リュウや美緒は戸惑うばかりだ。しかし、ガイアは続けた。

 

『ここは体制を立て直すんだ。今の僕達では、あのタールを除去して皆を救えない………』

「ぐっ………」

 

ガイアに諭されて、リュウは苦虫を噛み潰したような顔でメビウスのブロンズ像を見た。

 

「アイハラ隊長………」

「………すまん、ミライ………今は退くぞ!」

「「「ッ………G.I.G.………!」」」

「ミライさん………」

 

リュウが苦渋の決断をして指示を飛ばすと、彼方たちも辛そうに返答する。ガイアはアドベンチャーを回収すると、ウィッチやガンマシンらと共に、戦場から撤退していった……

 

『フン、尻尾を巻いて逃げるか………あのウルトラマン1人逃がしたところで、何の脅威でもないわ。』

『マノウ!!』

 

去っていくGUYSとウィッチを嘲笑うマノウ。その背中に向けて、ツルギがナイトブレードを振り下ろす!

 

『手負い如きに、このドン=マノウが討てるものかぁッ!!』

 

しかし、マノウは3本の角からヒッポリトビームを発射して胸鎧で爆発を起こす!その隙をマノウは逃さず、ロボット軍団がタール入りミサイルを集中砲火して、ツルギをブロンズ像に変えてしまった………

 

『……フフフ………ハッハッハッ!ウルトラマン6人!このドン=マノウが討ち取ったぞォオオーーー!!フハハハハハ!!ハッハッハッハッハッハッ!』

 

戦場に、マノウの高笑いが響き渡る。背中にそれを聞いていた芳佳は、涙を流して振り返った。

 

 

 

「ミライさん………ミライさーーーん!!」

 

 

 

それを、ブロンズ像となったタロウ、ダイナ、コスモス、マックス、ツルギ、そしてメビウスは、止める事が出来なかった………

 

 

 

 

 

つづく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【次回予告】

ウルトラマンが敗れた……

 

しかし、だからと言って悲しんでいる場合ではない。

 

ヒッポリト星人に見せてやろうではないか、我らウィッチの、地球人の力を!

 

次回、『ウルトラマンメビウス&ストライクウィッチーズ』

第十九話 地球の意地




第十八話です。

・ウルトラマン敗北、光の国からの救援も期待できないという絶望的展開。1クールアニメだったら最終回2話前くらいの感じです。

・ヒッポリトタールをミサイルに詰めて放つマノウ。カプセル使ったり直接触ったりするよりもフェイント使えるし効果的なんじゃないかなと。実際漫画版だと口から吐き出したり(内山版)投げつけたり(STORY 0)してたし。個人的にヒッポリト星人はこれくらい卑怯もラッキョウもないくらいがちょうどいい。

・ウルトラマンがやられた今、今度は地球人が頑張る版です。というわけで、次回をお楽しみに。


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第十九話 地球の意地【Aパート】

ちょっと今回長くなってしまったので、読みやすさを考えて2パートに分けました。


[地球人共よ、我こそは宇宙で一番強~い生き物、ヒッポリト星人のドン=マノウだ!!]

 

ウルトラマンたちが完全敗北した数時間後の18時。突如、日本中のテレビに映ったのはヒッポリト星人・ドン=マノウだ。人々が騒ぎ始める中、モニターの中にはブロンズ像と化した6人のウルトラマンが映し出された。

 

[ご覧の通り、ウルトラマンたちは我が手によって討たれた!こやつらは今から18時間後、明日の正午に処刑する!]

 

次いでマノウが宣言をすると、人々に衝撃を与えた。

 

[おっと、「他のウルトラ兄弟が助けに来てくれる」なんて思っているならば、それは無駄な希望だ。今ごろ光の国では、10万を超えるロボット軍団の襲撃を受けている頃だろうからな!ムダな抵抗はせずに、ウルトラマンたちの最後を見届けるのだ!ハッハッハッ!]

 

マノウが高笑いをするところで、映像は終わった………

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

ヒッポリト星人ドン=マノウの卑劣な作戦とロボット軍団の攻撃により、タロウ、ダイナ、マックス、コスモス、ハンターナイトツルギ、そしてメビウスは、ブロンズ像となってしまった。

 

ツルギの決死のしんがりにより、ガイアと共に撤退をしたGUYSとウィッチたち。

 

しかし、ウルトラマンたちの完全敗北に、ウィッチたちは強くショックを受けていた………

 

はたして、地球とウルトラマンの運命は如何に………!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第十九話 地球の意地

 

地獄星人 ヒッポリト星人・ドン=マノウ

無双鉄神 インペライザー

電脳魔神 デスフェイサー

四次元ロボ獣 メカギラス

宇宙竜 ドラゴドス

ロボット怪獣 ガメロット

侵略変形メカ ヘルズキング

異次元怪異 ネウロイ(GX-06・GX-07)

マケット怪獣 エレキミクラス

マケット怪獣 アギラ

マケット怪獣 ウインダム

登場

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「第501統合戦闘航空団隊長、ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケです。」

「XIGアナライザーの、高山我夢です。」

「CREW GUYSジャパン隊長、アイハラ・リュウだ。」

 

2人の隊長と我夢が、固く握手をする。しかし、その表情は暗いものであった。

 

「………私とハルトマン中尉で、501は全員が集合しましたが……」

「素直に喜べないよなぁ、これじゃあ………」

 

リュウがため息をついた。『ストライクウィッチーズ』11名が揃ったものの、ウルトラマンたちがブロンズ像と化した今の状況では、喜ぶ気にはなれなかった。

 

「現在、『土俵』の上にヒッポリト星人の姿はありませんが、ロボット軍団とネウロイが巡回中です……」

「近づく事すらままならない、か………クソッ!!」

 

エリーの報告に、苛立ったようにリュウが机を強く叩く。今は別室にいる芳佳たちも、暗く俯いていた。

悔しそうに俯くリュウに、トリヤマが肩を叩く。

 

「アイハラ隊長………こうして、手を拱いていていいのか…?」

「そうだな………ヤツの指定した18時間以内にウルトラマンたちを助けねーとな!」

 

リュウは頷くと、ミーナも肯定するように頷き、我夢はエリーに話しかけた。

 

「すいませんが、ヒッポリト星人に関する情報をもらえませんか?」

「はい、もちろんです。」

 

エリーが返答をすると、アーカイブ・ドキュメントから『地獄星人 ヒッポリト星人』のデータを呼び出した。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

『―――やるではないか、ヒッポリト星人・ドン=マノウよ。バトラーを失ったのは少々痛手だが、エンペラの残党の戦力を内部から低下させ、ウルトラマンを6人仕留めるとは。』

『は!わたくしめにかかれば、この通り!!』

 

同じ頃、マノウはとある場所で主君と謁見していた。50mあるマノウが見上げるほど高い位置にある玉座にふんぞり返るその者は金色に光る甲冑で全身を覆い、赤く鋭い目を光らせていた。

 

『しかし、あのガイアというウルトラマンと地球人たちを逃したのは、失態だな。』

『う…お、お言葉ですが、ウルトラマン1人と地球人十数名など、まったく脅威ではないかと………」

「その地球人に、エンペラ星人や暗黒四天王は敗れているのだぞ?」

『!?』

 

主君に言い訳をするマノウだが、その背後から来た者に遮られた。振り返ってみれば、そこにいたのは黒いコートと帽子を着た、怪しげな老人であった。

 

『ヤプール………!!』

「地球人なんぞに自分が負けるわけがない、そういう慢心と油断で、何人の宇宙人が討たれた事か………」

『その通り!』

 

ヤプールと呼ばれた老人に賛同するように、今度はいびつに尖った銀色の頭を持った宇宙人が現れた。

 

『ヅウォーカァ将軍………!!』

『ウルトラマンを6人倒し、エンペラどもを弱らせたことは褒めてやるが、まだ1人残っている!勝ち誇るにはまだ早い!』

『は、はぁ………』

 

ヅウォーカァと呼ばれた宇宙人にマノウが頷くと、主君は玉座から立ち上がって

 

『マノウよ!地球には、「おうちに帰るまでが遠足」という言葉があるそうだ。ブロンズ像にした6人と、取り逃したウルトラマンの7つの首をワシの目の前に持ち帰るまで、気を抜くんじゃない!』

『は、ははーッ!!』

 

マノウは頭を深く下げると、ヤプールをキッと睨んでから立ち去った。すると、立ち去ろうとするマノウの目の前に中国戦国時代の参謀を思わせる緑色の着物を着た、ふくよかであごまであるどじょうヒゲを垂らした男が現れた。

 

「う~ん、やっぱりマノウちゃんだけだと心配ねぇ~……良ければ、知恵をお貸ししましょうか?」

『不要だ!私一人で事足りる!!』

 

マノウはオネエ口調で話す男の申し出を突っぱねると、そのまま足早に立ち去ってしまった。

 

「やっぱり心配ねぇ~………」

『コウメイよ、本人がああ言っている訳だし、今回はマノウに一任させよう。』

「はぁ、承知いたしましたわ………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『ジュダ様』。」

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

ウルトラマン処刑まで、残り17時間12分………

 

「ミライさん………」

 

GUYSジャパン基地内の会議室に集まったウィッチやGUYSクルーたち。しかしその顔は誰もが暗く沈んでおり、芳佳やルッキーニは今にも泣きそうになっていた。

 

「……(あのダイナとタロウの構え………タロウはミサイルから身を守ろうとして、ダイナはデスフェイサーのネオマキシマ砲を破壊しようとして、タールをその身に浴びたのか………)卑劣なッ………!!」

 

バルクホルンがマノウの卑劣な手段に苛立って机を強く叩いた。(流石に机は壊れなかったが。) ちょうどその時、会議室のドアが開いてリュウやミーナ、我夢が入ってきた。

 

「これより、作戦会議を始める。」

「アイハラ隊長………」

 

会議室の上座に立ったリュウの宣言に、芳佳が涙を拭きながら顔を上げた。リュウの後ろに現れた映像には、アーカイブ・ドキュメントから呼び出されたらしいヒッポリト星人のデータが (マノウに比べると丸っこい) 映し出されていた。

 

「アーカイブを調べたところ、過去に出現したヒッポリト星人によってブロンズ像にされたウルトラマンA(エース)は、駆け付けたウルトラの父によってタールを洗い流されて復活している。タールを洗い流すことが出来れば、ウルトラマンたちは復活するはずだ。」

 

皆が顔を上げる中、リュウが説明を続ける。映像では立派な大きい角を持ったウルトラマン『ウルトラの父』が映し出され、彼によって騎士の兜を思わせる穴の開いた大きなトサカが特徴的なウルトラマンA(エース)がブロンズ像から元に戻る様子が流れた。

 

「………ただ、マノウの言う通りならば今『光の国』にはロボット軍団が攻めてきているだろうから、ウルトラの父の救援は望めないだろう………」

「そんな………」

 

リュウが影を落として言うが、そこに今まで話を聞いていた美緒が立ち上がった。

 

「………だからと言って、ウルトラマンたちが処刑されるのを、黙って見ていることなどできない!!」

「ええ、少佐の言う通りですわ。」

「ウルトラマンに洗い流せたんだ。僕たちにも不可能ではないはずです!!」

 

美緒に賛同するように、ペリーヌとカナタも立ち上がる。

 

「そうだよな………ここでうじうじ悩むのは、私ららしくないよな!」

「ここで屈しては、カールスラント軍人の名折れ!」

「方法はまだ見つかっていないけれど、ミライさんたちを助けないと!」

 

シャーリーとバルクホルン、リーネも顔を上げた。芳佳も涙を拭うとうんと頷き、皆も顔を明るくするが、けれど、とエーリカが口にする。

 

「………問題は、どうやってあのタールを洗い流すかだよねー………」

「確かに………」

「あまり強い薬品だと、ウルトラマンの身体に悪影響が出てしまいますね………」

 

エーリカの言葉に、一同はうーむ、と悩み始める。

 

「けれど、人体を傷つけないで、周りのブロンズだけを溶かすなんて………」

「ブロンズ………金属だけを………!」

 

悩むリーネのつぶやきに、芳佳はある事を思い出した。直ぐに立ち上がると、GUYSタフブックを操作するエリーの元に向かった。

 

「すいません、ちょっと貸してください!」

「宮藤?」

 

突然の芳佳の行動に美緒たちは呆気にとられる。芳佳はタフブックを操作して、アーカイブ・ドキュメントから情報を呼び出した。

 

「あの、これって使えませんか!?」

 

芳佳が呼び出した情報がモニターに映し出された。現れたのはラッパのような鼻とランプの様な赤い眼に大きな耳、胴体に銀色の突起を6つ持った怪獣だ。

 

「………何だコイツ?」

「変な顔ー」

「ドキュメントZAT、レジストコード『しんきろう怪獣 ロードラ』?………ああ!」

 

シャーリーとエーリカがキョトンとしていると、その怪獣を見たエリーがその名前を口に出すと、あることを思い出した。

 

「ロードラは、生物を溶かさないで金属だけを溶かす性質の溶解液を持っています!」

「本当か!?」

「確か、溶解液のサンプルが、メテオール研究所にあったはずです!」

 

ウルトラマンの救出に希望の光が見えて沸き立つ一同。シャーリーがふと、疑問を芳佳に聞いた。

 

「宮藤、よくこんなの知ってたな?」

「前にサーニャちゃんたちがアーカイブで調べていた時に気になって、私も調べて覚えていたんです。」

「そうだったんだ………」

 

サーニャは、最初にアーカイブの使い方を教わった時に、確かにロードラのデータを見た事を思い出した。その時はエイラが言ったように変な見た目の怪獣だなと思った程度だったが、まさかこんな形で思い出すことになろうとは思わなかった。

 

「よし、それじゃあ僕は、ロードラの溶解液を元にタールを除去するメテオールの作成に取り掛かります。」

「出来るか?」

「やってみせますよ!ウルトラマンヒカリに、託されましたからね!!」

 

我夢が力強く応えると、早速作業に取り掛かるべくエリーと共に会議室を後にする。

 

「さて、これでブロンズ化したウルトラマン救出の目途は立った。問題は、あのロボット軍団とネウロイだ………」

「それならば、わしに作戦がある!」

「補佐官?」

 

リュウが話をしようとした時、トリヤマが挙手と共に発言をした。意外な人物の発言に驚く間もなく、トリヤマはつづけた。

 

「作戦はこうだ。ガンマシン3機とウィッチ数人でネウロイとロボット軍団、それに宇宙人をひきつけて、その隙に別の場所からメテオールを搭載した武器を持ったウィッチたちで奇襲を仕掛け、ウルトラマンをブロンズ像から救出するのだ!」

「なるほど………」

 

トリヤマの作戦にシャーリーやリュウが頷くが、ミーナがしかし、と手を挙げた。

 

「しかし、あの数のネウロイの包囲網をかいくぐるのは不可能であるかと………」

「確かに…」「いっぱいいるもんねー………」

 

ミーナの指摘にペリーヌとルッキーニがうーんと頷く。しかしトリヤマは、

 

「いや、問題ない………奴らの包囲網には、大きな穴がある。」

「穴?」「どこに?」

 

サーニャとエイラが首を傾げる。トリヤマは、モニターに映し出されたロボット軍団とネウロイが見張る“土俵”のある一点を指さした。それは、ウルトラマンたちの『足元』であった。

 

「ここだ。」

「ここ………って………?」

「もしかして、地面………?」

 

リーネの問いに、そうだと答えるトリヤマ。エーリカが呆れたように聞いた。

 

「まさかとは思うけど、地面に穴を掘って奇襲しようって言うんじゃないよねー………?」

「その通りだ。」

「へ?」

 

エーリカはまさか、本当にそんなことを考えていたとは思っていなかったので顔をひきつらせた。シャーリーやルッキーニはおいおいと呆れていたが、リュウがはっとしたように聞いた。

 

「補佐官………まさかアンタ、このぶっつけ本番で新型を投入する気か!?」

「新型………?」

「そうだ!我々には長年にわたり培った怪獣退治のデータと技術がある!それがこの奇襲作戦を可能とするのだ!!」

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

ウルトラマン処刑まで、残り13時間35分………

 

GUYS基地内にある射撃場にバシュンッ、という音と共に白いクレーが射出された。白いヘルメットを被ったミーナは手にした大型の銃の引き金を引くと、銃口から放たれた緑色の光弾がクレーを撃ち抜いた。

次いで、今度は一度に3枚のクレーが左右から射出されたが、ミーナは再度引き金を引く。すると、光弾は3方向に分離してそれぞれがクレーのど真ん中を正確に撃ち抜いた。次々にクレーが何発も放たれるが、放たれた光弾は複雑な、通常の弾丸ではありえない軌道を描きながら、正確に着弾して砕かれた。

 

「………なるほど、良い銃だわ。」

 

終了を知らせるブザー音を聞いてヘルメットを脱いだミーナが、銃の感想を口にした。すると、『ヒュー』という短い口笛を吹いたリュウが歩み寄って来た。

 

「凄いな。メテオールショットをそこまで使いこなしたのは、ジョージ以来だぜ。」

「ありがとうございます。クセは強いけれど、そこまで難しくありませんでした。」

 

ミーナは手にした大型の銃『メテオールショット』を見ながら言う。

このメテオールショットはその名の通りメテオール弾を撃ち出す光線銃であり、GUYSメットで読み取った射撃手の大脳皮質の電気的活動を検出し、それを基に敵の位置を捕捉し、発射後の弾道を制御して敵を自動追尾する光線を発射することが可能だ。また、アメイジング・トリプルという特殊な機能を持ち、3つの銃口から複数の敵を同時に攻撃することが可能だがこの機能は優れた空間認識能力を持つ者にしか扱えない。

このアメイジング・トリプルを完璧に使いこなしたのは、旧CREW GUYSのメンバーであるイカルガ・ジョージのみであったが、ミーナの『空間認識』の固有魔法であればジョージと同様に使うことが可能であった。

 

「アメイジング・トリプルが使えれば、奇襲チームを最低限の人数にすることが出来る。これで奇襲チームはハルザキとあんたに、芳佳とペリーヌ、バルクホルンの5人で決定だな。」

「了解です。それにしてもこのヘルメット、面白いですね。」

 

ミーナはGUYSメットを見て言った。このGUYSメットは少し特殊な細工が施されており、ウィッチたちの放つ魔力を感知すると、使い魔の耳が出るこめかみの辺りがスライドして、耳が出せる仕様となっているのだ。アライソが整備の合間に、ウィッチ専用に作成したらしいのだが、それでいて元の機能を一切損なっていないのだから大したものである。

 

「とっつぁんの気づかいだ、有難く受け取っておけ。」

「そうですね。」

 

ミーナとリュウの両隊長は、笑いあった。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

ウルトラマン処刑まで、残り10時間15分……

 

「インペライザーの右肩に、再生装置がある。それを破壊すれば、インペライザーは再生出来なくなる。」

 

とある港の倉庫前で、ボルターが目の前の男に説明をした。

 

「それと、メカギラスのバリアは前面にしか張れない。そこを突けば倒せるだろう。………俺が教えられるのは、そこまでだ。」

 

ボルターは踵を返して立ち去ろうとするが、男に何故それを教えると聞かれて立ち止まらないで応えた。

 

「マノウは、我らエンペラ軍団の裏切り者だ。それに、あんな卑劣な奴に、エンペラ陛下を倒したメビウスを討たれるのは癪に障るのでな。」

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

ウルトラマン処刑まで、残り8時間45分

 

[METEOR Over Drive.]

 

格納庫の一角に立った我夢がメモリーディスプレイをトライガーショットに接続すると、承認の電子音声が響く。メテオール研究所の研究員たちが見守る中、我夢が目の前にそびえ立つ湾曲した物体―――アドベンチャーと共に回収しておいた、ブロンズ化したマクシウムソードを見上げて銃口を向けた。

 

「メテオール、解禁!」

 

我夢の後ろに立っていたミサキの号令により我夢が引き金を引くと、銃口から青白い物質が噴霧され、マクシウムソードを包みこんだ。すると、瞬く間に周りのブロンズ化した箇所が洗い流され、銀色の輝きを取り戻した。

 

「成功だ!!」

「「「おおおおおーーー!!」」」

 

研究員たちがガッツポーズで沸き立つ。我夢自身も笑っているとミサキが話しかけてきた。

 

「やりましたね!まさか、こんな短時間で完成させるなんて………」

「いえ、ボクだけではなく、みなさんの協力のおかげです。」

 

我夢は笑いながら、左手に握った「H」とラベルが貼られた銀色のメテオールカードリッジを見た。

 

「この『ハイドロ・タールウォッシャー』なら、ヒッポリトタールのみを溶かして洗い流すことができます。これでメビウスたちを助けられる……!」

「名称は仮で付けたんだけど………まあ、その方が分かりやすいしいいのかなー………」

 

ミサキの発言に我夢が苦笑する。ふと、我夢は疑問を口にした。

 

「そういえば………ヒカリは僕の事をメビウスから聞いたと言っていたけれど、メビウスはどうして……?」

「ミライさんから聞いたことがあるのですが、以前、平行世界のあなたやダイナと共に戦ったそうです。」

「そうだったのか………」

 

ミサキの説明に、我夢はかつて自分が赤い球が引き起こした事件を解決した時と同様に、メビウスも平衡世界を救ったことを知った。

平衡世界の自分とは言え『戦友』であるメビウスを必ず救おうと、我夢は心に決めた。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

ウルトラマン処刑まで、残り3時間40分………

 

仮眠を取って体を休ませた芳佳たちは格納庫に集まり、ストライカーや武装の最終調整に入っていた。

 

「みんなの武装の他に、こちらで使えそうな物は出来るだけかき集めた。好きなものを使ってくれ。」

 

リュウが見せたのは、人数分のトライガーショットに加え、スーパーガンやマッドバズーカ、エレクトロHガンやマットガン、ZATマイティにダイナミックショットといった、歴戦の対怪獣武装の数々だった。

 

「これだけの武器、よく集めたものだな……」

「開発部で資料や改良用に保管されていたものだが、まだまだ現役さ。」

「てか、それって片手で担げるものじゃないんだけど………」

 

マッドバズーカとエレクトロHガンを担いだバルクホルンにコウジが答える。ウィッチたちの武装だけでも十分であるが、念には念を入れての事だ。

 

「ミクラス、ウインダム、アギラ………マケット怪獣もチャージOKです。」

「よし。メテオールに武装、ストライカーも万全だ。」

「まさに総力戦ダナ。」

 

エリーとマリが、マケット怪獣のカプセルを持って報告に来る。ダイナミックショットを構えて握り具合を確認していたエイラが呟いていると、美緒から集合の号令がかかった。

 

「では、予定通り、誘導チームと奇襲チームに分かれてウルトラマンを救出する。」

『了解!!』

 

美緒が告げると、ミーナが一歩前に出た。

 

「みなさん、思えば今まで、私たちはウルトラマンに助けられてばかりいました………」

 

思い出すのは、最初に怪獣軍団の現れたヴェネツィアの時から、ベムラー、陸戦型ネウロイ、ブラックキング、ベムスター、アストロモンス、ビームミサイルキング、スチール星人バトラー………いずれもウルトラマンの助けがなければ、勝利はなかっただろう。

 

「ですが今、そのウルトラマンたちが命の危機にあります。ですから、今度は私たちが、ウルトラマンを助ける番です!」

「そうだ。ヒッポリト星人に見せてやろうではないか!我らウィッチの、いや、地球人の力を!!」

 

「ああ!」「もちろんですわ!」「はい!」

 

ミーナに続いた美緒の宣言に、口々に応えるウィッチたち。リュウは一呼吸おいて時計を確認すると、宣言した。

 

「これより30分後、『オペレーション・アースズ・ウィル(地球の意地)』を開始する!」

 

 

 

 

 

「GUYS, SALLY GO!!」

 

『G.I.G.!!』

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

ウルトラマン処刑まで、残り2時間55分………

 

ヒッポリト星人ドン=マノウは、ウルトラマンのブロンズ像を前に含み笑いをしていた。

 

『後2時間55分……ウルトラマンを処刑してその首を捧げれば、ジュダ様もぽっと出のヤプールなんかよりも、私の方が『七星将』に相応しいと分かってくれるに違いない………』

 

既にウルトラマンを倒した後の皮算用をするマノウ。その時、遠くの方からジェットエンジンの噴射音が聞こえてきた。見てみれば、そこには2台のガンマシンとファイターEX、そして7人のウィッチがこちらに向けて飛来していた。

 

『……私は忠告したよなぁ?ムダな抵抗はするなって………忠告したよなぁあ~~!!』

 

少し苛立ったようにマノウが呟くと、上空を旋回していたネウロイの群れが一斉に向かって行く!

 

 

 

 

 

Bパートにつづく



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第十九話 地球の意地【Bパート】

第十九話 地球の意地【Bパート】

 

 

 

 

 

「来るぞ!攻撃開始!!」

 

先陣を切った美緒が手にしたスーパーガンの引き金を引くと、稲妻状のジグザグした光線が発射され、先頭のネウロイ1体を撃破した!

 

「おお!コアの位置を把握していたとはいえこの威力か………いい銃だな。」

[感想なら、後で原稿用紙にでも書いといてくれ!ガンフェニックス、スプリット!!]

 

リュウが美緒に言うと、ガンフェニックスが分離してガンブースターと共に攻撃を開始する。

 

「ウィングレッドブラスター!」

「バリアブルパルサー!」

「ガトリングデトネイター!」

 

ガンマシンとファイターEXⅡが放つ光線がネウロイを十数体撃破するが、次々にネウロイが迫ってくる。ネウロイのビームが飛び交う中をシャーリーが駆け抜けながらマットガンを発射して、ネウロイに命中させる。

 

「こっちの世界でいくら撃ち落としても、勲章はもらえないかもよねー、っと!」

「これだけの数倒せば、勲章でチェスが出来るナ!」

 

軽口を叩きながらエーリカがZATマイティを、エイラがダイナミックショットを撃つと、ネウロイ数体が砕け散った。その時、大砲を構えた大型ネウロイがエネルギーを蓄積し始め、ビームを放つ体制に入った。

 

「ガイアァァアアアーーーーーー!!」

 

その時、我夢はエスプレンダーを前に突き出すと赤い光に身を包み、土煙を大きく巻き上げて、ウルトラマンガイアが現れる!

 

「「「キィイイイイイイイイイ!!」」」

 

ガイアの着地と同時にネウロイがビームを放ちながら迫るが、ガイアはビームを避けると右手から三日月形の手裏剣光線『ガイアスラッシュ』を放つと迫って来たネウロイを返り討ちにした。

 

『ジュアッ』

 

ガイアは『フォトンエッジ』を放つと、エネルギーを貯めていた大型ネウロイを貫いて爆発と共に砕け散る。

 

『現れたなウルトラマンガイア!貴様の首ももらうぞ!!』

《ギャキィイキィイーーー!!》《キキィーーー!!》

《グォオオ………》《………》

《………》《グホォオ………》

 

ガイアの姿を確認したマノウが叫ぶと、待機をしていた6体のロボット軍団が機動し、ガイアに狙いを定めた。

インペライザーとヘルズキング、デスフェイサー、メカギラスの光線がガイアに迫るが、ガイアはバリアを張って防御をする。その隙を突いてガメロットがバネ状の足を駆使して大ジャンプをすると、落下と同時にガイアを殴りかかる!

 

『ガァアッ………デヤァッ!!』

 

ガイアは一瞬怯むが、直ぐに向き直って右フックを顔に叩き込むと、ガメロットは数歩後退る。

 

《ギャキィイキィイーーーッ!!》

 

そこにドラゴドスが火炎を吐きながら迫るが、ガイアは飛び上がって回避、そのまま空中で前転をして飛び蹴りを喰らわせると、ドラゴドスは空中でのたうち回るように長い胴体をくねらせた。

 

『ええい、ちょこざいなッ!!』

 

マノウが苛ついて叫ぶと、デスフェイサーとインペライザーが迫った。

 

「メテオール、解禁!!マケット怪獣の出番だ!!」

 

その時、リュウの号令を聞いた美緒、エイラ、サーニャが腰のホルスターからマケット怪獣のカプセルを取り出すと、メモリーディスプレイにセット、ロボット軍団を狙ってトリガーを引いた。

 

《REALISE.》

 

電子音と共に緑色の光が集まり、3体の怪獣が現れる。

 

「グワォオォオォオオ!グワォオォオォオオ!!」

「ギョオギャアアアーーー!ギョオギャアアアーーー!!」

「ガァアアアーーー!ガァアアアーーー!!」

 

エレキミクラス、アギラ、そして全身が金属を思わせる銀色の身体に大きなトサカ、クチバシを持った怪獣・ウインダムが2大ロボットの目の前に現れて勇ましく鳴き声を上げた。

 

「ウインダム!デスフェイサーを撃て!!」

「ガァアアアーーー!!」

 

美緒の指示を受けたウインダムが、デスフェイサーに向けて額からレーザーショットを撃つが、デスフェイサーは体を捻らせて避けた。

 

「ギョオギャアアアーーー!!」

《……!?》

 

その時、アギラがデスフェイサーの背中にタックルを叩き込む!レーザーショットの回避に入っていたデスフェイサーは予期せぬ攻撃に対処できずタックルを受けてしまい、うつ伏せに倒れてしまった。

 

「いいゾ、アギラ!」

 

アギラに称賛の声を送るエイラ。エイラは『未来予知』の固有魔法でデスフェイサーの行動を予測し、アギラにあらかじめ指示を送っていたのだ。

デスフェイサーは起き上がろうとしたが、そこにウインダムのレーザーショットが左腕に直撃、肩から先を破壊することに成功した!

 

《グォオオ………》

 

ミクラスと対峙していたインペライザーがそれを察知すると、ミクラスを放り投げて救護に向かおうとするが、起き上がったミクラスが背後から掴みかかってそれを阻んだ。

 

「ミクラス!!」

「グワォオォオォオオ!」

 

サーニャの指示を聞いたミクラスが電撃を放つと、インペライザーは電撃に体をしびれさせる!そのまま回路がいくつかショートしてしまったのか動かなくなる。

 

「デスフェイサーはウインダムに任せて、今の内に他のロボットを!」

「「はい!!」」

 

インペライザーは自己修復機能で修復されるだろうが、流石に内部の修復の間は動けないだろうと判断した美緒の指示を聞いて、エイラとサーニャはミクラスとアギラをヘルズキングとメカギラスの元に向かわせた。

 

『ええい、地球人の分際でぇッ!!』

 

しかし、怒りの声を上げたマノウが口から突風を吹いて妨害を行う。怯んだミクラスとアギラに向けてヘルズキングがキャノン砲『ヘルズガン』を放つと、2体を爆発が襲った!

 

「グワォオォオォオオ!」

「ギョオギャアアアーーー!!」

「ミクラス!」「アギラ!」

 

2体が攻撃を受けたことに悲鳴を上げるサーニャとエイラ。消滅まではいかなかったが、ダメージは大きいようだ。

 

『怪獣のハリボテごときが、私に勝てるものか!!』

「コイツ……!!」

 

マノウが小馬鹿にしたように嘲笑う。エイラは手にしたダイナミックショットを構えるとマノウに向けて引き金を引いた。しかし、目の前にメカギラスが波打つように転移をしてバリアを展開して防御してしまった。メカギラスの持った四次元テレポート能力だ。

 

《キキィーーー!!》

 

そのまま口から光線を放つが、サーニャが障壁を張って防御をする。

 

《BANISH.》

 

しかし、そこで活動限界時間を迎え、3体のマケット怪獣が霧散してしまう。インペライザーも修復が完了したのか再起動し、右腕のみになったデスフェイサーも起き上がった。

 

「ここまでか………!」

 

上空の小型ネウロイは粗方片付いたが、大型がまだ3体残り、ロボット軍団もデスフェイサーに損傷が見られるがそれ以外に目立ったダメージがないようであった。

 

『グァアッ……!!』

 

その時、ガメロットの拳を受けたガイアが苦痛の声を上げて倒れた。ガンマシンやウィッチたちはネウロイ殲滅のためにガイアたちから距離があり、今から向かっても時間がかかった。

 

『ハッハッハッ!地球人にしてはなかなか手こずったが、所詮はこの程度だ!!』

 

勝ち誇るように笑うマノウ。意気揚々とガイアに近づき、両手のひらを合わせて狙いを定めた。

 

『さて、諸君には残念だが、これでウルトラマンは終わりだ!!』

 

マノウは宣言をすると、ヒッポリトタールの入ったミサイルを放とうとした!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『―――いや、終わるのは貴様だ!ドン=マノウッ!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ズバッ

 

 

 

 

 

「「「「「!?」」」」」

 

『………え………?』

 

次の瞬間、マノウの右腕が宙を舞い、後方数十メートル先に落下した。

何が起こったのか分からないマノウの目の前には『青いウルトラマン』の姿があり、一瞬遅れて、右腕の痛みが彼の脳に伝達された。

 

『ぎ、ぎゃあああああああああああああああッ!?』

「あ、あれは………!?」「どういうことだ!?」

 

悲鳴を上げるマノウの目の前に現れたのは、青い体に銀色の尖った『耳』にカラータイマーの横の「スターマーク」と肩の突起、右腕の『ナイトブレス』から『ナイトブレードを伸ばした巨人―――

 

「ウルトラマンヒカリ!?」

 

ウルトラマンヒカリその人であった!

 

『ばッ!?バカなぁああ!!き、貴様は、あそこでブロンズ像になっている……!?』

 

痛みと、目の前で起きたあり得ない光景に混乱するマノウ。しかしマノウの言う通り、ウルトラマンのブロンズ像の中にある、『ハンターナイトツルギ』のブロンズ像が確かにあった。

 

「ツルギの、ブロンズ像………?あ!!」

 

しかしリュウは、目の前のウルトラマンヒカリと、ハンターナイトツルギのブロンズ像から、その答えが結びついた。マノウも同様に、真相に気づいた様子だった。

 

『ま、まさか貴様!鎧を………!?』

『そうだ。ヒッポリトタールミサイルが直撃する瞬間、私はアーブギアを脱いでその場から離れると身体を休め、反撃の機会を伺っていたのだ。日本で言う『空蝉の術』と言うヤツだ。惑星アーブに怒られても仕方がないがな………』

「鎧を囮にしたのか………!」

 

ヒカリの作戦に舌を巻く一同。マノウは悲鳴を上げながら、後退ってヒカリから離れた。

 

『こ、こんな事………ロボットども何をしている!私を守れぇッ!!』

 

先ほどまでの余裕はどこへ行ったのか、情けなく叫ぶマノウ。すぐさまインペライザーとドラゴドスがマノウを守るように立ち塞がった。

 

『見苦しいな……』

 

ヒカリはため息をつくとナイトブレードを構えた。

 

「まてヒカリ!」

『?』

 

しかし、ガンウィンガーのリュウがそれを止めた。ヒカリは、自分の体を気遣っているのかと思ったが、実は違った。

 

[こちらエリ。奇襲チーム、目標地点に到着しました。]

「よし、こっからが本当の『オペレーション・アースズ・ウィル』だ!」

 

エリーからの通信を聞いたリュウが笑みを浮かべる。既にロボット軍団もマノウも、十分にウルトラマンのブロンズ像から遠ざかっていた。

 

「メテオール、解禁!!」

「「「「「「「[G.I.G.!!]」」」」」」

 

リュウの宣言にエリーと、7人のウィッチたちが返答をする。ウィッチたちは腰に下げたトライガーショットを引き抜くと、ロボット軍団に狙いを定めた。

 

「『キャプチャー・キューブ』、発射!!」

 

そして美緒の号令と共に、7つの銃口から青い光弾が発射された。そしてそれぞれがロボット軍団とマノウを包み込むように、ドーム状のバリアが展開された!

 

『な、何だこれは………!?』

 

マノウは自分を包んだバリア『キャプチャー・キューブ』に困惑する。ロボット軍団もバリアを叩くが、そう簡単には破壊できそうにない。

キャプチャー・キューブはドーム状のバリアを展開して敵の攻撃から身を守るメテオールだが、怪獣をバリアの中に閉じ込めて足止めをすることもできるのだ。

 

「ウルトラマンを助けるまで、そこで大人しくしていろ!」

「陽動は『ここまで』だ!」

 

シャーリーと美緒が叫ぶ。しかしその時、キャプチャー・キューブに封じられていたインペライザーが空間転移して、バリアの外に出てしまった!

 

「何!?」

『おお、インペライザー!でかしたぞ!さあ、そいつらを殺せぇッ!!』

《グォオオ………》

 

美緒が驚きの声を上げる。マノウが命令を下すとインペライザーは中央のガトリング砲を回転させ始めた!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドンッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『何!?』

『!?』

 

しかし、その時、インペライザーの足元の地面が爆ぜたかと思うとインペライザーの腹部に大きな穴が開いて、インペライザーの上半身が重低音と共に地面に落ちた!

 

「来たか!」

 

リュウたちの目線の先には、金色の粒子を撒きながら飛ぶ、戦闘機―――第4のガンマシン『ガンスピンドラー』の姿があった!

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

ここで一度、時を戻そう。

 

ウルトラマン処刑まで、残り15時間20分………

 

「こ、これは………!!」

 

トリヤマとリュウ、アライソ整備長らに地下の格納庫に連れられた芳佳、ミーナ、バルクホルン、ペリーヌ、カナタたち奇襲チームは、黒光りするボディの先端に尖ったドリルを光らせる、巨大なマシンに圧巻されていた。

 

「マグマライザー。かつての防衛チーム『ウルトラ警備隊』の誇る地底マシンだ。」

「地底マシン………つまり、地面の下を進むんですか!?」

 

アライソの説明に、地底を掘り進むメカの概念すらなかった芳佳たちウィッチは、その事実を聞いて驚いていた。

 

マグマライザーはウルトラ警備隊が使用していた地底戦車であり、地上を時速100kmで走り、地底を時速25kmの速度で掘り進み、補給なしで12日間の地底作戦行動も可能である。鋼鉄の十万倍の硬度を誇るドリルと岩石破砕用のレーザーを装備、謎の地底都市の粉砕やガッツ星人に捕らわれたウルトラセブンの蘇生など、重要な任務をこなしてきた名機中の名機だ。

 

「でもこれ、穴を掘るドリルよりも車体の方が大きいですわよ?これじゃあ、先端が突き刺さったらそれ以上進めませんわよね?」

「あ………」「確かに………」

 

ペリーヌの指摘に芳佳とバルクホルンも気づいた。よく気づいたなとアライソが笑った。

 

「ま、お嬢ちゃんの言う通りだ。コイツには、当時地球に攻めてきた宇宙人の技術、要するに今で言う『メテオール』が積まれていたんだ。」

「メテオールが………?」

 

ミーナは、先ほどメテオールについて簡単に説明を受けたが、まさかそれが目の前の戦車に積まれているとは。

 

「コイツには、岩石を砂にまで粉砕する音波を発する装置が積まれていてな、コイツで車体全体を包み込んで、ドリルとレーザーと併用して地面を掘り進むってワケよ。それでいて、中の搭乗者は安全なんだから、大したモンだよな。」

「なるほど………」

 

アライソの説明に納得をする一同。

 

「でも、やっぱ人間には手に余る品だったみたいでな……これの後に作ったヤツはてんでダメだったんだよ。ダックビルはいい線行っていたんだが、他のは1回でオシャカになったり、ハリボテや設計図だけ作って計画が中止になったりしてなぁ………だが、今度の新型は違うぜ。」

「それがアレ、ですか………」

 

ミーナはマグマライザーの隣に鎮座した新型戦闘機を見た。

両翼を持って大気圏内を飛行できることが分かるが、それ以上に目を引くのは、機首で銀色の光を反射する巨大なドリルだ。実に機体の3分の1を占めるドリルを持ったこの機体こそ、ガンブースターに次ぐ第4のガンマシン『ガンスピンドラー』だ。

 

「コイツで地底から奇襲を仕掛けるって作戦は分かりましたけど………」

「メテオールの限界時間の1分じゃあ、あの土俵の下まで地底を進めないのでは?」

 

ミーナが疑問を口にするが、トリヤマは問題ないと答えた。

 

「調べたところ、あの土俵の下には怪獣頻出期に途中で計画が中止になった「海底特急電車」の海底トンネルがあった。それを利用して、土俵まで掘り進むことが可能な地点まで移動し、一気に掘り進む。」

「そこまで調べていましたのね……」

 

ペリーヌは、普段ののん気でとぼけたトリヤマのイメージが強いせいか、ここまで調べて作戦を発案したと知って素直に感心していた。しかし、とアライソ整備班長が頭を掻きながら口を開いた。

 

「だが、コイツは慣らし運転も住んでない、出来立てほやほやもいいトコだぜ?」

「だが、他に手段はないんだ。無理を承知で、こうしてお願いをしに来たのだ………頼む!この通りだ!!」

「お願いします、アライソさん!!」

 

トリヤマが頭を下げると、芳佳たちも同じく頭を下げた。それを見たアライソはやれやれ、と肩を落とした。

 

「………朝までには、最終調整を終わらせる。」

「え?」

「それまでに、パイロットにはマニュアルを頭に叩き込ませとけ!」

「アライソさん………ありがとうございます!」

 

アライソの言葉に芳佳たちは深く頭を下げた。リュウがミーナにメテオールショットを試してほしいと話し、芳佳たちが作戦の段取りを確認していると、アライソがトリヤマに話しかけた。

 

「それにしても、補佐官がこんな無茶な作戦立てるとはなぁ。」

「なーに、孫娘とあまり歳が変わらない娘たちが、命を懸けているんだ。大人のワシらが無茶をせんで、どうするんじゃ?」

 

それもそうだな、と呟くアライソ。

 

「そんじゃあ、俺も調整に入るかね………(俺も命張るぜ、一郎………)」

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

そして現在………

 

ガンスピンドラーの掘った穴からミーナ、ペリーヌ、バルクホルン、そして芳佳が飛び出すと、ウルトラマンのブロンズ像へと向かって行った。

 

「ウルトラマンを確認!」

「ここからは、我々の番だ!!」

 

再生に時間がかかっているらしいインペライザーに目もくれず、ウルトラマンのブロンズ像の前まで来た4人。それぞれが手にしたトライガーショットとメテオールショットをウルトラマンに狙いを定めると、リュウが号令を下す。

 

「メテオール、解禁!!」

「「「「ハイドロ・タールウォッシャー!!」」」」

 

宣言と同時に、ミーナはタロウとマックスとツルギ、ペリーヌはコスモス、バルクホルンはダイナ、そして、芳佳はメビウスに向けて引き金を引くと、銃口から青白い物質が噴霧されて、ウルトラマンたちを包み込んだ。

 

「目覚めて、ミライさーーーん!!」

 

芳佳が叫んだその時、ウルトラマンたちをブロンズ像にしていたヒッポリトタールが洗い流され、赤と銀の体を取り戻し、その目に命の光が蘇った!

 

『ダァアッ!!』

『デャァアッ!!』

『トァアーー!!』

『ダァアアッ!!』

『セヤァアッ!!』

 

アーブギアが地面に落ちてガシャンと音を立てる中、5人のウルトラマンは立ちあがると気合を入れる声を上げる!

 

「やったー!!」

「ウルトラマンが蘇ったー!!」

『そ、そんな………!?』

 

一同が歓喜の声を上げる。その時、ようやくバリアが解除されて外に出たマノウが愕然としていた。

 

『メビウス!』

『ヒカリ、ガイアも………』

『サンキューな、みんな!』

 

ヒカリとガイア、ウィッチたちが合流して、7人のウルトラマンは頷き合い、ダイナは芳佳たちにサムズアップを送った。

 

『さて、積もる話もあるだろうが………』

『まだ、あれだけのロボットがいるのか………』

 

しかしマックスとコスモスは、周囲に立つロボット軍団を見て気を引き締める。だがその時、各々のカラータイマーがピコン、ピコン、と点滅を始めてしまった。

 

「カラータイマーが………!」

「助けたのはいいけど………」

「今度はこのまま撤退、って訳にもいかなそうだな………」

 

ウルトラマンたちのエネルギーが既に限界だと知って、顔をひきつらせるエーリカとシャーリー。マノウは冷や汗をかきながらも、無理に笑った。

 

『ハ、ハッハッハッ!ヒッポリトタールを洗い流したのは驚いたが……そんな虫の息の貴様らなんぞ、仕留めるのにブロンズ像にする必要もないわぁあッ!!』

《ギャキィイキィイーーー!!》《キキィーーー!!》

《グォオオ………》《………》

《………》《グホォオ………》

「くっ………!」

 

マノウの笑いに乗じてか、ロボット軍団もエンジンを唸らせる。更に、上空の大型ネウロイや残った小型ネウロイも集まり始めた。

 

 

 

―――邪悪な力に負けるでない!

 

 

 

『!?』

「え……?」

「今の声は………?」

 

その時、その場にいた者達に聞こえた声があった。どこから聞こえたのだろうと辺りを見回していると、サーニャが声を上げた。

 

「!?こっちにすごいスピードで、何かが近づいてきます!!」

「何!?」

「でも、なにこのスピード……2時の方向です!!」

 

サーニャが指した方向を見ると、それは金色に光る、18mほどの大きさの鳥のような飛行物体であった。

 

『な、何だあれは!?』

『あれは、マックスギャラクシー!?』

 

それを見たマックスが飛行物体・『マックスギャラクシー』に驚いた。マックスギャラクシーはそのままネウロイの群れを掻い潜り、ウルトラマンたちの頭上で静止をした。

 

「よく頑張ったなGUYS、そしてウィッチたちよ!」

 

すると、マックスギャラクシーの上から少しくたびれた白衣を着た、ボサボサな白髪と無精ヒゲの老人がひょこっと顔を出した。

 

「あれ!?あのおじいちゃん……!」

「知っているのか、ハルトマン?」

 

その老人を見たエーリカが声を上げた。バルクホルンの質問に答えたのは、ミーナであった。

 

「私たちが、我夢さんのいた世界で出会った人よ。ただのおじいさんとは思っていなかったけど………」

 

ミーナ自身もいきなり現れた老人に驚いているが、メビウスやヒカリ、タロウ、それにリュウは、この老人に会ったことがあるような気がした。

 

「さーて、ヒッポリト星人にロボットにネウロイか………最後のひと踏ん張りじゃ。わしがすこーし手を貸してやろう。」

「え…?」

 

老人の申し出にキョトンとしていると、老人はどこからともなく金色の打ち出の小槌のようなものを取り出して、大きく振りかざした。

 

「お前たちはまだ死ねない………地球の人間が、一人でもお前たちを欲している間は死ねない………辛くとも、まだ戦わなければいけないのだぁあッ!!」

 

老人は叫ぶと同時に、小槌をマックスギャラクシーに向けて振り下ろす!

 

カァーーンッ

 

『『『『『『『………!!』』』』』』』

 

するとどうだろう、マックスギャラクシーから金色の光が放たれて、ウィッチたち共々ウルトラマンたちを包み込んだではないか!

 

「この光は………?」

「あったかい………」

 

芳佳たちは自分たちを包む光から、何か温かいもの感じ取る。その光に包まれていると、カラータイマーの点滅が消えて、青く輝きだした!

 

「カラータイマーが………!」

「この光は、エネルギーを回復してくれるのか………」

 

マックスギャラクシーから放たれた光でエネルギーを回復したウルトラマンたち。心なしか、芳佳たちも魔法力が回復しているようだった。光が晴れると、たじろいでいたマノウがウルトラマンたちのエネルギーが回復している事を知って1歩下がってしまう。

 

『ま、まさか……!?』

『ありがとうございます!』

『おかげで元気満タンだぜ!!』

 

メビウスとダイナが老人に礼を言うと、老人は納得したようにうんうんと頷くと、背中合わせに円を組むように立つウルトラマンとウィッチたち。

 

「さーてと、元気いっぱいになったし、こっから反撃と行くか!!」

「ああ。奴らは、一発殴るだけじゃあ気が済まん!」

「反撃だー!」

 

シャーリーとバルクホルン、ルッキーニがデスフェイサーを見ながら叫ぶ。

 

「サーニャとコスモスに酷い事しやがって……!」

「今日は、私も怒ってるよ…!」

 

エイラとサーニャが、ヘルズキングを睨んだ。

 

「これより、ネウロイとロボット軍団の殲滅作戦を開始します!」

「勲章は別にいらないけど、カイトの分も借りを返さないとね!!」

 

ミーナがドラゴドスを、エーリカがガメロットを見据えた。

 

「これ以上、あなた達の好き勝手にはさせません!」

「万死に値しますわ!!

 

リーネとペリーヌがインペライザーに向けて叫んだ。

 

「今までの狼藉、許すわけにはいかん!!」

 

美緒がメカギラスに、烈風丸の切っ先を向けた。

 

『みんな、ヒッポリト星人は、私に任せてくれ。』

『タロウ教官…わかりました。』

 

タロウの申し出にマックスが頷き、ガメロットを睨む。

 

『さて、決着をつけるぞ!』

『ああ!本当の戦いは、ここからだぜ!!』

 

ガイアがインペライザーを、ダイナはデスフェイサーを見ると、拳を手のひらに打ち付けた。

 

『ヒカリ、君はダメージがまだ残っているのだろう?無理はするなよ……』

『心配はいらない。この程度、何という事はない!』

 

コスモスはヒカリを心配するが、ヒカリはドラゴドスを見上げ、コスモスはため息をつくとヘルズキングを見た。

 

「各機、ウルトラマンとウィッチを援護しつつ、ロボット軍団殲滅に当たれ!」

[[[G.I.G.!!]]]

 

アイハラ・リュウ隊長はガンマシン各機に師事を飛ばすと、CREW GUYS ジャパンの隊員たちは返答をした。

 

「ミライさん、行きましょう!!」

 

芳佳が、メカギラスを睨むメビウスに向けて言うと、メビウスは頷いた。

 

『みんな………行くぞぉおッ!!』

『『『『『『おうッ!!』』』』』』

 

今、ロボット軍団との決戦の火蓋が切って落とされた!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




第十九話です。

・今回の黒幕、宇宙の帝王 ジュダがついに登場。ヤプールすら従える辺りはウルトラファイトビクトリーの影響がありますね。スチール星人バトラーの断末魔も、ジュダの名前です。
 ちなみに今回ヒッポリト星人を登場させたのは、序盤の山場を作るためなのと、映画『ウルトラマン物語』でヒッポリト星人がジュダの配下だったことにも由来しています。

・まさかの勝利の鍵となったロードラ。実は第八話で、さり気なく登場していたりします。メビウスって、過去の怪獣や宇宙人がまさかの活躍見せるのが魅力だと思います。
 今作初のオリジナルメテオール『ハイドロ・タールウォッシャー』。裏設定として、調整すればヒッポリトタール以外も溶かせます。

・メテオールショットを使うミーナ。ミーナならば固有魔法でアメイジング・トリプルを使いこなせるかな、と思いまして。でも、ミーナが魔法で使うそれを素で持ってるジョージもスゴイ気が……

・歴代防衛チームの武器にマケット怪獣総進撃と、まさに総力戦。何気にウインダムは今回が初登場。

・アーブギアで空蝉の術をやらかすヒカリ。鎧をまとうヒカリだからこそできる業です。

・小説版『アンデレスホリゾント』よりガンスピンドラー登場。やっぱり防衛チームにドリルマシンは付き物という事で、数話前から登場を仄めかしていました。

・ガイア篇に登場した謎の老人再び。マックスギャラクシーはエネルギー増幅装置みたいなものと考えているので、今回、このような登場となりました。

・次回、いよいよロボット軍団との決着です。お楽しみに。


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第十九.五話 その時ウルトラの星は

第十九.五話 その時ウルトラの星は

 

機械人形 ゴブニュ(ヴァハ)

巨大機械人形 ゴブニュ(ギガ)

巨大機械人形 ゴブニュ(オグマ)

 

ウルトラ兄弟 登場

 

 

 

 

 

地球でウルトラマンたちを救う作戦が開始されたころ、遠く離れた光の国に近い宇宙域では、ウルトラマンたちとゴブニュの戦いが続いていた!

 

『ダァアッ!!』

『ジュァッ!!』

 

ウルトラマンのスペシウム光線とセブンのエメリウム光線が発射され、ゴブニュ数体を破壊する。更に飛来してきたゴブニュにはウルトラマンジャックのシネラマショットと80のサクシウム光線が貫き、ウルトラマンAの放ったバーチカルギロチンが10体近くのゴブニュを両断した。

 

『すごい……さすがはウルトラ兄弟だ!』

『我々も負けていられないな!』

『ああ!!』

 

グレートがパワードにそう言うと両の拳を突き出して必殺のバーニングプラズマを放ってゴブニュを破壊する。パワードも両手を十字に組んでメガ・スペシウム光線を発射して遠くから迫るゴブニュ数体を破壊し、接近してきた1体に掌底打ちを喰らわせて吹き飛ばし、背後にいた個体と衝突して両者とも破壊した。

その時、2人の頭上からゴブニュ数体が光線を放ちながら迫ってきていた。グレートたちは回避して反撃をしようとした時、横から光線がゴブニュに直撃して爆散した。何が起きたのかと交戦の放たれた方を見ると、額に青いクリスタルを持ったシルバー族のウルトラマンと、同じく額に大きなクリスタルを持ったレッド族のウルトラマンだ。

 

『遅くなってすみません!勇士司令部所属ネオス、只今到着しました!』

『同じく宇宙保安庁セブン21(ツーワン)、戦線に加わります!』

『おお、ネオスに21!』

『助かったぞ!』

 

グレートがネオスと21に礼を言う。4人が頷き合っていると、遠くの方でレオとアストラの兄弟が放ったダブルキックを受けて、何十体ものゴブニュが爆炎へと変わっていった!

 

『数が多すぎる………これじゃあキリがないわ!』

『弱音を吐くなベス!こいつらを光の国に近づけてはならない!』

『だがスコット、この数は流石に………!』

 

グレートたちから離れた宙域でチャック、スコット、そしてウルトラウーマンベスのUSAチームがグラニウム光線を放ちながら会話をする。しかし、ベスとチャックの言う通りゴブニュは母艦と思わしき『機械島』から次々に発進してきており、他の宇宙警備隊員たちもかなりエネルギーを消耗してきていた。

 

『負傷した者とエネルギー切れの者は、銀十字軍の元まで下がれ!無理に戦線に残るな!』

『こっちよ!』

『す、すみません………』

 

80が負傷したレッド族の隊員を運ぶシルバー族に指示を飛ばすと、ユリアンが誘導をする。

しかしその時、1体のゴブニュ(ギガ)が迫って来た!気づいた80が咄嗟にサクシウム光線を放つが、ゴブニュ(ギガ)は何体もの小さなゴブニュ(ヴァハ)に分離して回避、そのまま80にしがみ付こうと接近してきた!

 

『おっと!』

『ッ!?』

ドガァアアンッ

 

しかし、80の目の前に何者かが割って入るように現れたかと思うと、その者にしがみ付いたゴブニュ(ヴァハ)が次々に自爆してしまった!

 

『なっ………!?』

 

80が絶句していると、爆炎が晴れてその白いボディの輝きが目に入った。

 

『………へっ、しゃらくせえ!俺は全身が鎧!この程度の爆発どうってことないぜ!!』

 

それは地球の西洋の騎士のような白銀の鎧に身を包み、顔には不敵な笑みを浮かべた仮面を付けた戦士であった。

頭頂の赤い飾り尾をなびかせるその姿を見た隊員の1人が、声を上げた。

 

『おお、メロス支部隊長だ!!』『メロス支部隊長が来てくれたぞ!!』

『来てくれたのか、メロス!』

 

80もその戦士、宇宙警備隊アンドロメダ星雲支部隊長・メロスに声をかけた。

 

『ゾフィーから出動要請があってな!光の国の危機にはぜ参じたわけだ!』

『あにき、先に行くもんじゃないぜ。』

『ファイタス!』

 

メロスが説明をすると、彼の隣に銀色に光る翼のような装飾のフェンシングを思わせる鎧を見に纏い、腰にレイピア状の剣を差した戦士、メロスの弟ファイタスが軽口を言いながら現れた。

その時、再び無数のヴァハがしがみ付かんと迫って来た。

 

シュパッ

『!?』

 

しかし、それに気が付いたファイタスが腰の剣を引き抜くと一瞬の内に十体近くを切り裂いた!

 

『さっきアニキにしたみたいに自爆しようったってムダだぜ!ウルトラナンバーワン戦士のオレを、甘く見るなよ!!』

 

ファイタスはそう言うと、フェンシングのような突きを無数に放ち、迫って来ていたヴァハをすべて貫き砕いてしまった!

 

『やるなファイタス!俺も負けていられないぜ!!』

 

メロスはそう言うと鎧の両肩にあるロックボタンを押した。すると、両肩のサスペンダー状のパーツが跳ね上がり、先端から稲妻のような光線を発射、遠くから迫ってきていたゴブニュ数十体を破壊した!

 

『見たか!アンドロレーザーN75!』

 

勝ち誇るメロスは、次に腹部に装着された武装を手にして、投擲する!

 

『アンドラン!』

 

投げられたアンドランは高速で回転をしながらさらに数十体を斬り割いて爆散させた!戻ってきたアンドランをキャッチしたメロスは腹部に再度装着すると、腕を大きく回し始めた。

 

『トドメと行くぜ、レーザーショット………ん?』

 

必殺の光線を放とうとしたメロスだが、遠くに輝くウルトラサインを察知して中断させた。

 

『総員、退却?………!?ゾフィーがウルトラキーを!?』

『確かにアレを使えば、あの”島“を………!』

 

ウルトラサインを読み取ったメロスたちは、大隊長・ウルトラの父の決定に驚く。

 

ウルトラキーとは、その名の通り巨大な鍵であり、ウルトラの星の軌道を司っている。その莫大なエネルギーは兵器として使えば天体すら破壊可能な代物であり、ウルトラの父はかつて運航の邪魔となる惑星「デモス一等星」を破壊したことがあった。

 

現在はウルトラの星の軌道にウルトラキーを必要としないよう調整がされており、キーは厳重に保管をされており、使用には大隊長・ウルトラの父の許可が必要だ。

ゾフィーはゴブニュと機械島を破壊すべく、ウルトラの父にウルトラキーの使用許可を申請していたのだ。

 

『おいおい………ちょっとまずいぞ………』

『どういうことですか?』

『さっき、アウラがあの”島“に乗り込んじまったんだよ………』

『何だって!?』

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

同じ頃、機械島の上では王冠を思わせる頭部を持ったシルバー族の女戦士―――宇宙警備隊S・P5星雲支部隊長アウラが、無数のゴブニュ(ギガ)と戦っていた。

 

『アーパッシュ!!』

 

飛び上がったアウラが光の球に包まれると、その光にゴブニュは一瞬動きが止まると光球から無数の光の矢が放たれた!

 

『デルタアロー!!』

 

光の矢がゴブニュ数十体を貫き爆散させた!アウラはアーパッシュを解除させると着地をした。

 

『ふん、機械人形じゃあこの程度でしょうね!』

『アウラ支部隊長ーーー!!』

 

アウラはゴブニュの残骸を見下ろして鼻を鳴らす。すると、彼女の後ろから声をかける者がいた。頭頂とこめかみに、合わせて4枚のヒレを持ったウルトラマンゼノンだ。

 

『ゼノン。』

『光の国から撤退命令が出ています!ウルトラキーで島を破壊するそうです!』

『何ですって!?分かったわ。』

 

アウラはウルトラキーの使用を聞いて驚くが、直ぐに冷静になると撤退命令に従って島から立ち去ろうとした。

 

《ピャラピョロピャラピョロ………》

『!?』

『なに………!?』

 

その時、2人の目の前に右腕と左足、そして胴体に不可思議な模様の入った装甲を付け、左右非対称の巨大な頭部の左側の4つのランプがスクロール点滅するロボット『巨大機械人形 ゴブニュ(オグマ)』が現れた!

ゴブニュ(オグマ)は頭部から電撃を放つが、アウラとゼノンは左右に飛んで回避をする。

 

『私たちを逃がさないって魂胆ね………!』

 

アウラが舌打ちをする。すると、ゴブニュ(オグマ)の背後に足元から順番に積みあがるようにしてもう2体のゴブニュ(オグマ)が出現し、計3体の機械人形が2人に立ちふさがった!

 

《ピャラピョロピャラピョロ………》《ピャラピョロピャラピョロ………》《ピャラピョロピャラピョロ………》

『数で圧そうって気?させないわ!』

 

アウラはそうはいかないとばかりに飛び上がるとアーパッシュの体制となった。

 

『デルタアロー!!』

 

そして無数の光の矢がゴブニュ(オグマ)に向けて放たれた!

 

ガキキキキッ

『!?効いていない………!?』

 

しかし、デルタアローはゴブニュ(オグマ)の装甲に弾かれて地面に落下し爆発を起こす。

 

『相当頑丈なようね……ならこれはどう!サウザンドアロー!!』

 

アウラは叫ぶと、今度はデルタアローよりも大型の矢を無数に放った!サウザンドアローはゴブニュ(オグマ)の1体を貫き機能を停止させるが、他の2体には掠った程度であった。

 

『そこだ!』

《!?》

 

しかし、そこにゼノンが腕を逆のL字に組んで必殺のゼノニウムカノンを放ち、オグマの1体に直撃をして装甲を爆発させた!

破壊までは至らなかったものの、巨大機械人形の動きを止めるのには十分であった。

 

『アウラ支部隊長、今のうちに!』

『ええ!』

 

アーパッシュを解除させたアウラが返答をすると、ゼノンと共に飛び立とうとした。しかし、周囲からヴァハが何百体も現れると、2人の身体にしがみ付いてきた!

 

『何!?』

『こいつらッ……ドコさわってるのよ!』

 

振り解こうと足を振り回すアウラ。しかしヴァハたちは離れず、そのまま自爆をしてしまう!

 

ドォオンッ

『グァアッ!!』

『キャアッ!!』

 

悲鳴と共に地面に落ちる2人。ヴァハの自爆によるダメージで悶えていると、そこに2体のオグマが、ハーモニカのような電子音を不気味に発しながら近づいてくる。

 

《ピャラピョロピャラピョロ………》《ピャラピョロピャラピョロ………》

『ぐっ………!』

 

文字通り機械的に迫ってくるオグマ。アウラは負傷した左腕を庇いながら立ちあがるが、この傷ではアーパッシュを使えない。

 

『スパイラルビーム!!』

ドウッ

《………!》《………!?》

『!?』

『あれは…!』

 

しかし、上空から螺旋状の光線が降ってくると、オグマの胴体を貫いて爆破させた。見上げてみれば、そこにはメロスとファイタスの兄弟が来ていた。

 

『メロス!』

『大丈夫か!?』

『まったく、このじゃじゃ馬が………!』

 

メロスたちの救援にゼノンは声を上げる。メロスは負傷したアウラにため息をつくが、最後に残ったオグマが電撃を放ってきた。

メロス兄弟は咄嗟に2人を庇うが、ブラックホールの重圧にも耐える鎧には通用しない。

 

『とっとと終わらせてやる!』

 

メロスは叫ぶと、両腕を大きく回す。

 

『レーザーショット………』

 

そしてエネルギーが両腕に溜まると、伸ばした腕を交差させて、必殺の光線を放った!

 

『アンドロメロース!!』

ビシュッ

《ピャラピョロピャラピョロ………ッ》

 

メロスの必殺光線『レーザーショットアンドロメロス』はゴブニュ(オグマ)に直撃し、ゴブニュ(オグマ)は仰向けに倒れ爆発した!

 

『助かったわ、メロス………』

『おいおい、感謝しているようには見えないぞ?』

 

ゴブニュ(オグマ)が倒されたのを見たアウラが、少し悔しそうに感謝をする。気の強い彼女らしくはある。

 

『それよりも、早くこの島から離れるぞ。ゾフィーの攻撃の巻き添えになっちまう。』

『そうね。』

『肩貸すぜ。それとも、お姫様抱っこをご所望か?』

『ひとりで行けるわ。』

 

釣れないねえ、と肩をすかすファイタスをしり目にとっとと飛び立つアウラ。メロスとゼノンも飛び立ち、機械島から離れていく。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

ウルトラの星からウルトラキーを持って飛び立ったゾフィーは、機械島周囲の隊員たちの撤退が完了したと連絡を受けた。護衛として付いたネオスと21が左右に立ち、機械島を十分に狙える地点に静止してウルトラキーの狙いを定め、エネルギーのチャージを開始した。

その時、ゾフィーを察知したらしいゴブニュ(ギガ)が数体迫って来た!

 

『来たぞ!ゾフィー隊長に近づけるな!』

『おう!』

 

21はネオスに言うと、ネオスは腕を十字に組んだネオマグニウム光線を、21はL字に組んだレジア・ショットを放ってゴブニュを破壊する。しかし、ゾフィーが背後に迫る気配を感じ取って振り返ると、無数のヴァハが集まってギガとなって、ゾフィーに向かってきた!気づかれないように分離した状態で背後に接近いてきたのだ!

 

『!?しまった!』

『『!?』』

 

ネオスと21が気付くもすでに遅く、ギガはゾフィーに迫ってきていた!

 

 

 

 

 

ザシュッ

 

 

 

 

 

『『………!?』』

『何だと……!?』

 

だがその時、どこからか飛んできた高速回転するカッターでゴブニュは両断された!

カッターが戻っていく先を見たゾフィーの目に映ったのは、鋸のようなギザギザの刃がついたカッター・アイスラッガーを頭頂に戻す、1人のウルトラ戦士の姿だ。一瞬ゾフィーはウルトラセブンだと思ったが、その鋭い目つきと額の青いビームランプを見て、その名前を口に出した。

 

『エプター!』

『ゾフィー隊長、今の内だ!』

『!ああ!!』

 

ゾフィーにエプターと呼ばれた戦士はゾフィーに諭す。既にエネルギーの充填は完了しており、いつでも撃てる状態になっていた。

ゾフィーは再度機械島を狙うと、ウルトラキーの先端から強大な破壊光線が放たれた!

眩い光を放つ破壊光線は真っすぐに機械島に着弾すると、内側から爆散した!

 

『す、すごい………!』

『これがウルトラキーの力か………!』

 

初めて目の当たりにしたウルトラキーの力に、ネオスと21は目を丸くする。ウルトラキーを下ろしふう、と息を吐くゾフィーに、エプターが肩に手を置いた。

 

『やったな、ゾフィー。』

『エプター……さっきはありがとう。』

『何、宇宙警備隊隊長を助けるのは当然の事だ。』

 

エプターは笑って返す。すると、ウルトラマンとセブンがこちらに飛んできた。

 

『ゾフィー!』

『!エプター司令も………ご無事でしたか………』

『おいおいよしてくれ、今は君の方が上官じゃないか。』

『いえ………』

 

エプターの姿を確認したセブンが、恐縮したように挨拶をする。

 

エプターは現在、宇宙警備隊要請学校の教官を務めているが、元恒星測員で宇宙観測員時代のセブン直属の上司であった。セブンはかつて彼の命令に背いてしまったことがあったため、今でも彼に頭が上がらないときがあるのだ。

 

『さて、島は破壊したが、まだロボットが残っているようだな。』

『ああ、残りのロボットを破壊せねば!』

 

ウルトラマンはそう言うと、セブンたちは頷いて残ったゴブニュ(ギガ)に向かって行った。

 

 

 

 

 

本編につづく




光の国での戦いを描いた番外編です。サブタイトルの元ネタはウルトラマンタロウ第2話「その時ウルトラの母は」から。

冒頭でウルトラ兄弟登場と書いてあるのに、ウルトラ兄弟以外がメインという詐欺w一番目立っていたのは80とユリアンくらいですね。

あまり公式で出番がないゼノンと、最近ちょっと知名度を上げてきているメロス兄弟とアウラという珍しい組合せ。ところでゼノンってシルバー族とレッド族どっちだろ?

ウルトラキーを使うゾフィー。当初は「ザ・ウルトラマン」つながりでビッグM87光線も考えていました。現在のウルトラの星の軌道にウルトラキーを必要としないのは、ウルトラマン超闘士激伝から。

最後に登場したエプターは、要するにセブン上司です。
「セブンXをセブン上司として登場させる」というアイデアを思いつき、登場させました。
メタ的には「セブンXのスーツのビームランプとアイスラッガーを取り換えただけ」という設定で、他はセブンXまんまです。アイスラッガーのデザインは一峰大二先生の漫画版から。
名前はギリシャ語で「7」という意味の「Επτά」から。


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第二十話 二十二人の勇士

第二十話 二十二人の勇士

 

地獄星人 ヒッポリト星人・ドン=マノウ

無双鉄神 インペライザー

電脳魔神 デスフェイサー

四次元ロボ獣 メカギラス

宇宙竜 ドラゴドス

ロボット怪獣 ガメロット

侵略変形メカ ヘルズキング

異次元怪異 ネウロイ(GX-06・GX-07)

登場

 

 

 

 

 

GUYSとウィッチの活躍により、5人のウルトラマンは復活した。

 

消耗していたエネルギーも謎の老人により回復し、ロボット軍団との最後の戦いが始まろうとしていた!

 

 

 

 

 

『ッしゃぁあ!!行くぜぇッ!!』

 

右の拳を左手の平に打ち付けたダイナが、右腕のみになったデスフェイサーに駆け出した。デスフェイサーは対処すべくシザーハンドをダイナに向けた。

 

「!待てダイナ!アイツはお前のデータを………」

 

バルクホルンが、思わずダイナに叫ぶ。デスフェイサーにはダイナのデータが蓄積されている。正面から突っ込んでは危険だ。

バルクホルンはそれを思って止めようとしたが、それを並行して飛ぶシャーリーが「いや」と遮った。

 

「おそらく、あのデスフェイサーは………」

「ん?」「え?」

 

シャーリーは目の前のデスフェイサーを見ながら口にする。そうこうしている内にダイナに向けてシザーアームから光線を放つ!しかし、ダイナは走りながら難なく避ける。デスフェイサーはそれでも光線を放つが、次第にダイナとの距離は縮まりその右拳を顔面に受けて100m以上後退した!

 

《………ッ》

「!?」「攻撃が通った………!?」

 

デスフェイサーにダメージが入った事に喜ぶよりも、何故攻撃が入ったのか疑問になるバルクホルン。ダイナもそれは同じらしく小首をかしげていたが、シャーリーは思った通りという顔をしていた。

 

「やっぱりそうだ……あれはダイナと戦ったデスフェイサーそのものじゃなくて、デスフェイサーのデータを元に複製された模造品なんだ!」

「もぞーひん?」

 

それを聞いてルッキーニは首を傾げるが、バルクホルンは気が付いた。

 

「そうか、あのデスフェイサーは複製されたものだから、以前とは違ってダイナのデータがない………つまり、今が初対面な訳か!」

「ああ。ネオマキシマ砲じゃなくて、タールの水鉄砲が積まれているのが、何よりの証拠だ!」

『なるほど、さすがのエンペラ軍団も、ネオマキシマドライブは入手出来なかったのか。』

 

シャーリーが指摘をした通り、あのデスフェイサーにはネオマキシマ砲ではなくヒッポリトタールを放つようになっていた。ダイナそれを聞いて頷いていると、ダイナのパンチを受けて顔がひび割れたデスフェイサーはシステムが正常に戻ったのか、再度ダイナに照準を合わせた。

 

「させるかッ!!」

 

バルクホルンが叫ぶと、シャーリーとルッキーニが先行して攻撃を開始する。デスフェイサーは顔面と胸部に弾丸を受けて爆発を起こすがあまり問題ではないらしく、再度ダイナをロックオンするが、そこにはミラクルタイプに変化して、更に3人に増えて自身を取り囲むダイナの姿があった!ミラクルタイプの超能力の一つ、『ウルトラマジック』である。

 

「ダイナが増えたーーー!?」

「あ、あんなことも出来るのか………!」

 

ルッキーニとシャーリーがダイナの超能力に驚く。デスフェイサーは片っ端から攻撃をするが、いずれもすり抜けて後方で爆発が起きる。本物が目の前にいない事にエラーが起きたのか、がむしゃらに目の前のダイナへの攻撃を続けるデスフェイサーは、隙だらけだった。

 

「うおおおおおおおおッ!!」

ズドムッ

《………!!》

 

バルクホルンがデスフェイサーの頭上からマッドバズーカとエレクトロHガンを掃射して、両肩と右腕で爆発を起こして地面にシザーアームが落下した!

 

「今だ、ダイナ!!」

 

攻撃手段を失ったデスフェイサーから離れたバルクホルンが叫ぶと、3人のダイナの姿が煙のように消え失せた。そしてデスフェイサーの上空で太陽を背に浮遊していたダイナは胸の前で腕を交差させた後、腕を大きく回す動作をしてV字に広げると、頭上に光のレンズが生成される。

 

『ダァアッ!!』

 

そして、そのレンズを通った太陽光が高熱ビームと化し、デスフェイサーに向けて放たれた!

かつて、クリオモス島で『初代デスフェイサー』に破られた必殺技『シャイニングジャッジ』だ!

 

《………!?!?!?!?》

ドォオオンッ

 

シャイニングジャッジをもろに受けたデスフェイサーは、33万倍に増幅された太陽光に熱せられて赤熱化、ボディの各所を小さな爆発をいくつも起こした後に、内部から大爆発を起こして砕け散った!!

 

「やったぁッ!!」

 

ルッキーニが歓喜の声を上げると、デスフェイサーの爆炎を背に着地したダイナが3人の方を向いてサムズアップを送った。ルッキーニとシャーリーは笑顔でサムズアップを返し、バルクホルンは少し戸惑ったが、少しぎこちない笑顔で同じくサムズアップをした。

 

 

 

 

 

電脳魔神 デスフェイサー―――撃破

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

《グォオオ………》

『ジュアッ!!』

 

エンジンの唸りを上げるインペライザーと対峙をするウルトラマンガイア。インペライザーは右手をブレード、左手をドリルユニットに換装すると、ガイアに向けて歩き出した。

 

《リュウ、インペライザーの右肩を狙え。そこがヤツの再生を司る装置だ。》

「!セリザワ隊長………!」

 

その時、ガンウィンガーに乗ったリュウにヒカリからのテレパシーが届く。リュウはインペライザーの右肩に赤く光る装置を確認して、そこが自己再生装置であると確信して小さく頷くと、各機に指示を飛ばした。

 

「ガイアを援護だ!!インペライザーの右肩を狙え!!」

[G.I.G.!!]「「了解!!」」

 

リュウが指令を飛ばすとガンスピンドラーのカナタ、そして周囲を飛んでいたリーネとペリーヌが返答をする。インペライザーは上空から迫る2人と2機に気づき、優先的に攻撃をすべきと判断、左手のドリルをミサイルとして発射する!

 

「ドリルにはドリルだ!マグマロックブレイカー!!」

ビーッ

 

しかし、カナタが先行してガンスピンドラーのドリルの先端からマグマライザーの岩石破壊光線を応用した破壊光線を発射して空中で撃ち落とし、爆炎の横をガンウィンガーとペリーヌが通り抜けてインペライザーに接近をする。

 

「ウィングレットブラスター!!」

「喰らいなさい、トネールッ!!」

[ジュアッ!!]

 

ガンウィンガーからの光線とペリーヌの電撃、そしてガイアのガイアスラッシュが全弾インペライザーに直撃し、胸部や右足、左肩が破損して吹き飛んだ!

 

《グォオオ………》

 

インペライザーは直ぐに自己修復を開始して、吹き飛んだ箇所がインペライザー本体に集まってくる。しかしその時、インペライザーの右肩にある自己再生装置に弾丸が命中し、大きく火花が散った!

 

《グォオオ………ッ!!》

「やったぁ!!」

 

それを見て、インペライザーの頭上でライフルを構えるリーネが歓喜の声を上げた。ペリーヌたちが気を引いている間に、上空で狙いを定めていたのだ。再生装置を破壊されて、インペライザーに集まっていた破損個所が地面に落ちてボロボロになった。

ガイアはそれを確認すると、両手を高く上げると、その身を赤く光らせる。そして、両腕を大きく回して真横に伸ばすと、ガイアはスプリーム・ヴァージョンに変身をした。

 

『フゥウ………ダァアッ!!』

《グォオオ………》

 

SVに変身したガイアはインペライザーに向けて駆け出す。インペライザーは直ぐにビーム弾を放つが、ガイアは腕で簡単に弾き飛ばし、そのままインペライザーに飛び蹴りを放ち仰向けに倒れさせた!

 

《グォオオ………》

『ジュァアッ!!』

 

起き上がったインペライザーは破損個所の修復がされていないためか、動きが文字通り『油の切れたロボット』そのもののようにぎこちなくなるが、ガイアはそれに構わずに一気に接近して中央のガトリング砲をガシッと掴み、そのまま背負い投げの要領で投げ飛ばした!

 

《グ、グォオオ、オォオ………》

 

投げられた衝撃で右肩のキャノン砲とブレードが外れ、ガトリング砲が千切れてコード数本で繋がってぶらぶらと垂れさがっており、見ていて非常に痛々しい。

 

「再生出来なければ、そこまで脅威ではありませんわね………」

「前は、とんでもなく苦戦したんだけどな………」

 

再生装置の破損でシステムに異常が発生したのか、ガイアの激しい攻撃に一方的に攻められるインペライザーを見て呟くペリーヌと、かつての強敵の惨めな姿に遠い目になるリュウ。

ガイアはインペライザーの姿を見てチャンスだと判断し、左拳を肩の高さ、右腕を右下に伸ばす構えを取ると、ガイアの目の前に金色の光の環が出現、そのまま手を左側でT字に構え、腕から金色の光を放ちながら右側に回し、左手を肘の内側に入れた「L字」に構えると、金色の必殺光線『クァンタムストリーム』が放たれて、インペライザーに叩き込まれた!

 

《グォ、オ―――》

ドゴォオオオオン

 

クァンタムストリームを受けたインペライザーは破壊され粉々になるが、自己再生装置を破壊された以上、もう再生することはない。それを確認したリュウたちは、小さくガッツポーズを取った。

 

 

 

 

 

無双鉄神 インペライザー―――撃破

 

 

 

 

 

[隊長!マクシウムソードが!]

「何?」

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

『フゥッ、ダァアッ!!』

《………》

 

コスモスが掛け声と共に拳を突き出すと、ヘルズキングは両手の甲のシャッターを開きヘルズガンを展開させると、コスモスに向けて放った。コスモスはそれを回避すると、一気に接近をしてパンチを放とうとした。

 

「「「キィイイーーー!!」」」

『!?』

 

しかし、それを妨害するようにヘルズキングの背後から数体の小型ネウロイが攻撃をしてきた。コスモスは咄嗟の事で数発受けてしまい、更に、ヘルズキングの接近を許してしまい、その拳を受けてしまった。

 

『グゥ………!!』

「コスモス!!」

 

コスモスがダメージを受けたのを見たサーニャとエイラがネウロイを撃破した。コスモスは立ちあがると、ヘルズキングの喉の部分にある、黒い部位に拳を叩き込んだ!

 

ブヒュー

《ゴォ………》

 

その瞬間、何とも言えない気の抜ける音が発せられると共に、ヘルズキングの動きが不自然になり、シャッターが途中で止まりそうになりながらもヘルズガンを展開するが、滅茶苦茶に光線を放つ。

 

「!?効いている………」

「そうか、そこがお前の弱点か!!」

 

その様子を見たエイラとサーニャが、ヘルズキングの弱点が喉である事を見抜く。すかさず2人はダイナミックショットの光線とフリーガーハマーのロケット弾をヘルズキングの喉目掛けて発射し、その全てを受けたヘルズキングは仰向けに倒れてしまった。

 

《繧、繝ウ繝壹Λ@縺ヲ縲∝聖縺埼!?!?》

『フゥッ、ハァア………』

 

最早、解析不能な電子音を発しながら動きを止めるヘルズキング。

コスモスはそれを見ると、両腕を鳥の翼のように広げた後に腕を伸ばすと、広げた腕で円を作るような動きをした後に両腕を右側で大きく振りかぶり、振り下ろしてI字に構えた右腕に左手を添え、赤い破壊光線『ネイバスター光線』を放った!

 

『デヤァアアーーーッ!!』

バシュッ

《………!!》

 

ネイバスター光線を受けたヘルズキングは胴体と頭部が爆発し、修理も不可能な程に破壊された!

 

 

 

 

 

侵略変形メカ ヘルズキング―――撃破

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

《グホォオ………》

 

マックスはガメロットを前に拳を構えるが、そこに小型のネウロイが迫って来た。

咄嗟に放たれた光線を避けるが、そこにガメロットが胴体のランプを赤く点滅させてビームを放ってきた。

 

『グァアッ………!!』

「カイト!こんのぉーーーッ!!」

 

マックスがふらつくのを見たエーリカがネウロイの群れに突っ込み、『シュトゥム』で一気に吹き飛ばした。その時、ガメロットがジャンプをしてマックスにのしかかり、馬乗りになって殴打し始めた!

 

『グゥッ………!!』

 

マックスは殴られながらも、気を集中させた。すると、土俵近くの海面から何かが飛び出して、ガメロット目掛けて猛スピードで迫って来た!

 

《グホォオ………》

ガギンッ

 

ガメロットが気づいたときには接近していたそれ:マクシウムソードが目の前にまで迫ってきており、そのままガメロットの額に直撃する!

マックスはマクシウムソードが近くにある事を察して、念動力で引き寄せたのだ。

額にダメージを受けたガメロットはマックスから離れるように後転すると、マックスは立ちあがってマクシウムソードを回収、頭頂に収めた。だが、ガメロットは手足をまるで亀のように機体に収納してロボット宇宙船形態に変形、UFOのように浮遊してマックスを見下ろしてきた。

 

「飛べたんだ………!」

《グホォオ………》

 

驚く間もなく、ガメロットは赤い破壊光線を放ってきた!マックスは難なく回避するが、ガメロットは飛行しながらマックスとエーリカに光線を放ってくる!

 

「好き勝手やって………あれ?」

 

光線を避けながら悪態をついていると、ふと、エーリカはあるものを見つけた。それを見た彼女は何か思いついたのか、悪戯っぽい笑みを浮かべた。

すぐさまガメロットに向き直ると、シュトゥムを放ってガメロットを激しい竜巻が襲い掛かった!

 

《グホォオ………》

 

ガメロットは竜巻を避けるように軌道を変えると、エーリカはその隙を突いて背後を取り、機銃を掃射、ガメロットはボディで数回小さな爆発が起きたためか飛行が難しくなったらしく姿勢を直すと、手足を出してロボット形態に戻り着地をした。

 

 

 

ずぼっ

《!?》

『あ。』

 

 

 

しかし、着地地点に大きな穴があったために落ちてしまい、下半身がそこにハマって身動きが取れなくなってしまった!

 

「やり~♪」

 

その穴は、先ほどガンスピンドラーが出てきた穴であった。エーリカはこの穴を見つけてそこにガメロットを落とそうと思いつき、誘導するように攻撃したのだ。ガメロットは脱出しようと必死に藻掻くが、うまくハマっているのか手こずっていた。

 

「今だよ、マックス!!」

『!!ああ!』

「マックスーーー!!」

 

ガメロットに起きた珍事に呆気に取られていたマックスだが、エーリカの声に我に返って頷いた。すると、更に遠くから自分を呼ぶ声があった。声の方を見てみれば、先ほどの黄金色の鳥・マックスギャラクシーが、老人を乗せて飛来してきた!

 

「あ、おじいちゃん!」

「マックスよ!コレを使えーーー!!」

 

マックスギャラクシーの上で腕を組み仁王立ちする老人が叫ぶと、マックスは頷いて、右腕を高く掲げた。老人はなんと飛翔するマックスギャラクシーから飛び降りてしまったが、マックスギャラクシーはマックスの右腕まで来るとその身を180度回転、両翼を畳んで短剣のような形態となって装着された。

マックスはマックスギャラクシー中央のクリスタルに手をかざすとクリスタルは青く輝き、刀身にエネルギーが蓄積される。そして、マックスはジタバタと藻掻くガメロットに向けて右腕を突き刺すと、マックスギャラクシーから必殺の『ギャラクシーカノン』が放たれてガメロットの頭部に直撃!頭部が爆発四散し、さらにボディ内でも爆発が起きて上半身が吹き飛んで落下、そのまま動かなくなった。

 

 

 

 

 

ロボット怪獣 ガメロット―――撃破

 

 

 

 

 

「やったー!!」

「かっかっかっ!よくやったぞ!!」

 

ガメロットの破壊に喜ぶエーリカと老人。だがエーリカは、直ぐに老人がその場で浮かんでいる頃に気づいてギョっと驚いた。

 

「って、なんでおじいちゃん浮いてんのさ!?」

「んー?」

 

老人はエーリカの質問に笑ってはぐらかしていたが、その時、大型ネウロイ2機がこちらに迫ってきていた!

 

「「キイイイーーーーーー!!」」

「わっ!おじいちゃん危ない………!」

 

エーリカは咄嗟に声をかけるが、老人は涼しい顔をするばかりだ。慌ててシュトゥムで1体を攻撃して足を止めるが、もう1体はマックスと、その前の老人に向けて急降下していた!

 

「チャー………」

 

すると、老人は先ほどの小槌を取り出すと、まるでゴルフクラブのように構えた。

 

「シュー………」

 

ネウロイが迫る中、老人が大きく小槌を振りかぶり………

 

 

 

 

 

「メェーーーンッ!!」

グワァラゴワガキィーーーン!

「キイイイーーーーーー!!?」

 

 

 

 

 

『………ウソーン…』

「うぇ!?え?!ええええええええええええええええええええええええええええええええ!?」

 

そのまま小槌をネウロイに叩き込むと、ネウロイは何とも奇怪な打撃音と共に大きく吹き飛び、空のはるか彼方でキラーンと星になってしまった!あまりの出来事にマックスは茫然とし、もう1体を破壊したエーリカは思わず叫びを挙げた。

 

「い、いやいやいやいや!?おじいちゃんマジで何者なのさ!?」

「また後でのー」

「え!?ちょっと!?」

 

老人はエーリカの質問に答えることなく、煙のようにその場から消えてしまった………

 

(あの老人………もしかして………)

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

《ギャキィイキィイーーー!!》

 

自分の頭上を飛ぶドラゴドスを見上げるヒカリ。ドラゴドスは先制にと口から火炎を吐き出すが、ヒカリはナイトブレードを振るってかき消した。しかし、炎の先で待ち構えていたドラゴドスが目から光線を放ち、ヒカリは胴体にダメージを負ってしまった!

 

『グゥウ………!』

《ギャキィイキィイーーー!!》

「「「キィイイーーー!!」」」

 

ヒカリが数歩下がるとドラゴドスが金切り声を上げた。すると、周囲から小型ネウロイが数体集まってきてヒカリに集中砲火を浴びせた!

 

『グゥウ………!』

「いけない!!」

 

ミーナがネウロイの光線を掻い潜りながら確実に撃墜をするが、その隙にドラゴドスがヒカリに接近、その長い胴体で巻き付いてしまった!

 

『しまっ………!』

「ヒカリさん!!」

 

ミーナがそれに気づいて駆け付けようとしたが、周囲のネウロイが行く手を阻む。ドラゴドスはヒカリを逃がすまいと強く締め付け、尻尾の先端の丸鋸を回転させてヒカリの頭へ近づけていく!

 

「いけない………!」

[ミーナ隊長、下がって!]

「!!」

 

その時、ミーナにマイから通信が入る。ミーナが後方に下がると、ガンローダーのブリンガーファンによる荷電竜巻がネウロイの群れを襲い、まとめて吹き飛ばされた!

 

「「「キィイイーーー!!」」」

「マイさん!」

「今よ!!」

「G.I.G.!!アルタードブレイザー!!」

 

マイの掛け声にコウジが返答をすると、ガンブースターの放ったビームがドラゴドスの翼が破壊され、ドラゴドスはヒカリからガンブースターに視線を移すと、目から光線を発射するが、ガンブースターになかなか当たらない。

ミーナはこの隙にドラゴドスに接近をすると機銃を掃射、直撃をした尻尾が半ばから破壊され、更に丸鋸が頭部を直撃して顔の左側が破損した!

 

《ギャキィイキィイーーーッ!?》

 

ドラゴドスは破損で機能に支障が出たのか、ヒカリを解放するとボディをうねらせながら上空に逃げようとする。ヒカリは体を確認すると、逃げた宇宙竜を追って飛び上がり………

そのまま追い越してはるか上空で静止をした。

 

《ギャキィイキィイーーー!!》

 

驚くドラゴドスの頭上でヒカリが右手を掲げると、銀色のエネルギーが腕の『ナイトブレイザー』に蓄積される。ヒカリがエネルギーを確認するように下げた右腕を左手で掴むとそのまま頭から自然に落下、右手が左手をくぐる様にして十字に組むと、すれ違いざまにドラゴドスへ銀色の破壊光線『ナイトシュート』を浴びせた!

 

《ギャキィイキ―――》

ドォオンッ

 

地上に見事10.0の着地を決めたヒカリの背後で、ドラゴドスは爆発四散!バラバラと、その残骸が降り注いだ。

 

 

 

 

 

宇宙竜 ドラゴドス―――撃破

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

『く、くそう………こんなことが………!!』

 

次々に破壊されるロボット軍団にたじろぐドン=マノウ。思惑が外れてしまい、どうすればいいか混乱をするが、そこへウルトラマン№6・ウルトラマンタロウが、迫ってくる。

 

『トァアーッ!!』

『!?ぐっ………!』

 

タロウの放ったスワローキックがマノウに叩き込まれ数m後退をする。マノウは右腕を失っているため、両手のひらを合わせる事で発射可能となるヒッポリトミサイルは使用不能となっているが、マノウは口から火炎を吐いて攻撃をする。タロウは側転をして回避をすると角のわきから『アロー光線』を発射、マノウの体表で爆発を起こした。

 

『ぎゃああ!!ネ、ネウロイども何をしている!お、おれを守れぇえええ!!』

「「「キィイーーーッ!!」」」

『む?』

 

マノウは悲鳴交じりにネウロイに命令すると、上空に残っていた小型ネウロイ数十体がタロウに向けて光線を放った!タロウは回避をするが、今度はマノウが両目と角から光線を放って攻撃の手を緩めない。

 

『タロウ!!』

『!!』

 

しかしその時、背後から声がするとデスフェイサーを撃破し駆け付けたダイナがフラッシュタイプにタイプチェンジをすると、両手を交差させてエネルギーを蓄積、そのまま広げるようにして大型の三日月状カッター『フラッシュサイクラー』を放つと、ネウロイを一掃した!

 

『何ぃいー!?』

 

驚愕するマノウだが、この機を逃すまいとタロウは一気に距離を詰める。マノウは慌てて火炎を吐くが、タロウは腕のキングブレスレットを外してマノウに向けて投げつける。するとブレスレットはマノウの口に輪投げさながらに入り、輪のサイズが小さくなってマノウの口を塞ぐ。かつて『火山怪鳥 バードン』のくちばしを塞いだ口輪作戦だ!

 

『もが!?もがが………!?』

 

何とかブレスレットを外そうと必死になるマノウであるが、左手だけなので必要以上にてこずっていた。タロウは一気にマノウの懐に入り込み、右拳を叩き込んだ!

 

『アトミックパンチ!!』

ドゴンッ

『ブゴッ………!』

 

タロウ必殺のパンチ『アトミックパンチ』が、マノウの腹を貫通させた!

 

「貫通した………!?」

「分かっていたが、タロウも相当強いな………」

 

同じく駆け付けたシャーリーとバルクホルンは、アトミックパンチの威力にドン引きしていた。

タロウは腕を抜いて数歩下がり右手をかざすと、マノウの口を塞いでいたキングブレスレットが飛来して右手に収まる。再び左手にブレスレットを装着したタロウは、両手を掲げると大きく回して両腰に持っていき、全身に七色のエネルギーを蓄積した。

 

『ストリウム光線!!』

バシュッ

『ぎゃぁあああああああああああああああ!!』

 

トドメのストリウム光線がマノウに直撃し、地獄星人の全身を焼いていく!

 

『ジュ、ジュダ様!!なぜですか!?なぜ私ではなくヤプールなのですかぁーーーーーーーーー!?』

『!?』

 

ドン=マノウはその叫びを断末魔に倒れ、爆発四散した。

 

『ジュダ……?』

「それが、あいつの親玉なのか……?」

 

ダイナとシャーリーがマノウの断末魔を聞いて疑問に思うが、タロウだけは、その名前を聞いて静かに驚いていた………

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

《キキィーーー!!》

『セヤァアッ!!』

 

メカギラスと対峙するメビウス。メビウスはメカギラスのミサイルをライトニングカウンターで爆発させると一気に距離を詰めてパンチを繰り出す。しかし、メカギラスの目の前にバリアが発生して阻まれてしまう。

 

「てやぁああーーー!!」

ドォンッ

《キキィーーー!!》

 

しかしその瞬間、メカギラスの背中が爆発して装甲に亀裂が生じる!メカギラスが首を左に120度回転させてみれば、そこには機銃から紫煙を吐かせる芳佳の姿があった。

 

《キキィーーー!!》

 

メカギラスは上あごからミサイルを放つが、芳佳は障壁を展開させて難なく防御をした。メカギラスに負けない障壁である。

 

「はぁああっ!!」

ビーッ

《キキィーーー!?》

 

しかし、今度は反対側から美緒のスーパーガンの稲妻状の光線が直撃をして左目が破損して火花が飛ぶ。メカギラスがそちらを見たが、更に今度は正面からメビウスのパンチが襲い腹部が小さく爆発を起こし陥没した!

 

美緒と芳佳は先ほど、リュウと同様にヒカリからのテレパシーを受け取っており、メカギラスのバリアは正面にしか展開できないと聞いていた。そこで2人はそれぞれの方向から攻撃を仕掛ける事で、メカギラスにバリアを張らせる暇を与えない作戦に出たのだ。

 

《キキィーーー!!》

 

頭部を反時計回りに1周させたメカギラスは数歩下がりメビウスを攻撃しようとしたが、美緒と芳佳がメカギラスの周囲を旋回しながら銃弾と光線を浴びせてきたため、その場で頭をグルグルと回転させる。頭部のダメージと旋回しながらの波状攻撃にコンピューターがオーバーヒートを起こしたのか首の付け根や頭頂から火花が噴き出し、メカギラスは頭を回転させながらよろよろカクカクと動きが鈍った。

 

「今だ!!」

「ミライさん!」

 

2人の呼びかけにメビウスは頷き、左腕のメビウスブレスに手をかける。しかしその時、美緒はメビウスの背後から大型ネウロイが迫ってきている事に気が付いた!

 

「危ない!!」

『!?』

「キィイイーーー!!」

 

美緒の叫びで、メビウスは背後のネウロイに気づいた。ネウロイは甲高い鳴き声と共にボディの各所から光線を放つが、メビウスは咄嗟に側転をして回避、着地をした地点でライトニングカウンターを放って右側の機首を破壊した!

 

「キィイイーーー!!」

「ネウロイは私たちが!」

 

芳佳と美緒がネウロイに向けて飛んで行くのを見届けたメビウスは、ようやく頭部の回転を止めたメカギラスに向き直った。

 

「キィイイーーー!!」

「坂本さん!!」

 

芳佳はネウロイの放ったビームを障壁で防御、美緒は魔眼で大型ネウロイのコアの位置を探ると、コアは大砲の根元に見えた。

 

「コアを確認!あの大砲の根元だ!」

「はい!!」

 

芳佳が返答をするが、ネウロイは大砲にエネルギーを蓄積させ始めていた。メカギラスに格闘を仕掛けるメビウスを狙っていた。

 

「メカギラスごとメビウスを仕留める気か!!」

「させませんわ!!」

 

その時、ネウロイの頭上からペリーヌが機銃を掃射しながら降下してきた。ネウロイは自分のダメージに構わずエネルギーを溜めるが、今度は左右からバルクホルンとシャーリー、エイラとサーニャが攻撃をしてくる。

 

「キィイイーーー!!」

 

ネウロイは大砲の発射準備をしながらビームを放つが、ウィッチたちは障壁で防御、更にミーナとルッキーニ、エーリカとリーネが機銃を撃ちながら飛来して、ネウロイの身を削っていく。しかしネウロイはついにその大砲から光線の発射体制に入った!

 

「させない!!」

「宮藤!?」

 

しかしその時、芳佳がネウロイの射線上に入り、障壁を張ったままその砲口に向かって行った!

 

「キィイイーーー!!」

「うおおおおおおおお!!」

 

そしてビームが放たれるその瞬間、芳佳の障壁が砲口に衝突してビームのエネルギーが大砲内で逃げ場を失い大砲の各所で爆発が起きて暴発した!

 

「うわ!?わあああああああ!?」

ガシッ

「芳佳ちゃん!!」

「まったく、なんて無茶を………!!」

「キィイイーーー………」

 

爆発の衝撃で吹き飛んだ芳佳を、リーネとペリーヌが受け止める。機首と大砲を失ってコアが露出したネウロイがふらふらと高度を下げ、コアが破壊されて砕け散った。

 

《キキィーーー!!》

 

一方のメビウスも、メカギラスとの戦いに決着をつけようとしていた。

ボディの各所がショートして火花を散らすメカギラスを前に、メビウスは左腕のメビウスブレスの赤いクリスタルに手をかけた。そして、クリスタルを回転させるように両手を横に伸ばす。そして、それを頭上に回すと、両手に金色のエネルギーが蓄積されていく。

そしてエネルギーが極限までたまるのを感じ取ったメビウスは、その両手を十字に組む!

 

 

 

 

 

『セヤァアアアアッ!!』

バシュゥウウ

《キキィ―――》

 

 

 

 

 

メビウスの腕から金色のメビュームシュートが放たれるとメカギラスに直撃!メカギラスの両腕と頭が爆発と同時に吹き飛び、倒れた胴体も爆炎の中に消えた!

 

 

 

 

 

四次元ロボ獣 メカギラス―――撃破

 

 

 

 

 

「やったー!!」

 

ネウロイとロボット軍団、そしてヒッポリト星人ドン=マノウが撃破され、歓喜の声を上げるウィッチとGUYS一同。7人のウルトラマンたちも集まり、互いに顔を合わせて頷き合った。

勝利に笑いあうウィッチたちであったが、ふと、ウルトラマンヒカリが土俵の地面を見たかと思うと、既に地下から脱出していたエリーから通信が入った。

 

[隊長!すぐにそこから離れてください!]

「どうした?」

[土俵の地下から、次元エネルギーが観測されました!このままだと、2分もしない内に土俵が消失します!!]

「「「「「「え?」」」」」

 

エリーからの通信に喜んでいたウィッチたちが一斉にきょとんとした。そうしている内に、土俵の地価が微弱に揺れ始めていた………

 

「「総員撤退ぃいいいいいいーーーーッ!!」」

『わぁああああああああああああああーーーーーーーーーー!?』

 

アイハラ、ミーナ両隊長の号令の下、慌しくその場から飛び立つガンマシンとウィッチ、そしてPALの操縦するXIGファイターEX。ウルトラマンたちも飛び立ったその次の瞬間には、土俵の中心から空間が歪み始め、直ぐに消失した………

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「………まったく、勝利の余韻も味わわせないなんて………」

 

10分後、海沿いの公園に緊急着陸したウィッチたちはその場でへたり込んでいた。土俵の消えた辺りを見ながらペリーヌがぼやいていると、リュウたちGUYSも集まって来た。

 

「ま、これでロボット軍団は倒せたわけだな………」

「そうですね………マノウの親玉と、ネウロイの巣が残っていますが………」

 

美緒がリュウに答えていると、その時、芳佳が顔を上げた先を見ると満面の笑みで声を弾ませた。

 

「ミライさん!!」

 

芳佳の声に、弾かれたように皆が目線の先を見た。

そこには東光太郎、アスカ・シン、高山我夢、春野ムサシ、トウマ・カイト、セリザワ・カズヤ、そしてヒビノ・ミライの、7人が並んでこちらに歩いてくるところであった。

 

「ヒビノ隊員!!」

「アスカ!!」

「カイト!!」

「ムサシさん!!」

「我夢さん……!」

「セリザワ隊長!!」

「東さん!!」

 

各々が名前を呼びながら、勇士たちの元へ駆け出す。ルッキーニがアスカに抱き着き、リュウとセリザワが肩を叩き合い、エイラとサーニャがムサシと笑い合い、我夢とミーナが固く握手をする。

 

「みなさん、心配かけてすいませんでした………」

「ううん、私たち、ずっとミライさんたちに助けられてばかりだったから………!」

 

本当に良かったと、涙目で笑う芳佳。エーリカがカイトと手を取り合って笑い、バルクホルンと光太郎が話していると、そこに声をかける者がいた。

 

「カッカッカッ!改めてよくやったぞ、みんな!!」

『!?』

 

振り返ってみれば、そこにはベンチに座ったあの謎の老人の姿があった。老人は立ちあがって、笑いながらこちらに歩み寄ってくる。

 

「おじいさん………」

「光の国に送り込まれたロボットも全滅したようじゃ。ま、これでひと安心じゃな。」

「そろそろ、あなたの正体を明かしてくれると嬉しいのですが?」

 

からからと笑う老人にミーナが聞く。皆も同じ考えのようで、頷いていた。

 

「それもそうだのー………」

 

老人は少しうーんと考えたかと思うと、スッと背筋を伸ばして真面目な顔になる。そして、白衣を翻したかと思うと、その身が眩い光に包まれた!

 

「うわ!?」

 

その眩さに、思わず目を閉じる一同。光が収まったかと思うと、その老人の姿は消えていた。

しかし、次の瞬間、ズシン!!と地響きがしたかと思うと、目の前に巨大な銀色の足が現れた!

 

『ハッハッハッハッハッ!!』

 

それは、ウルトラマンの足であった。

先端に玉の付いた銀色の王冠とルビーのような赤い目、口には立派なひげを蓄え、肩にはたなびく銀色のマント、腰には赤い勲章が光っていた。

 

「おじいちゃん、ウルトラマンだったんだ………!」

 

老人の正体に一同が呆気に取られている中で、エーリカが思わず呟く。すると、ミライが見上げるウルトラマンに声をかけた。

 

「やはりあなただったんですね、『ウルトラマンキング』!!」

「ウルトラマンキング?」

 

ミライの告げた名前―――伝説の超人『ウルトラマンキング』に、芳佳が聞き返した。それに答えたのは、セリザワとカイトであった。

 

「ウルトラマンの間でも、『伝説の超人』と呼ばれている、光の国の長老だ。」

「神秘の力を持つと言われていて、我々でも信じられない奇跡を起こすことが出来ると言われている………僕でも、こうして会うのは初めてだ……!」

「そ、そんなすごい人だったんだ………!」

「ただのおじいさんとは思っていなかったけど………」

 

2人の話を聞いて驚くリーネとサーニャ。皆の様子を笑いながら見ていたキングに、畏まった様子でミーナが話しかけた。

 

「あの、ウルトラマンの偉い人とは知らずに、失礼なことを………」

『なに、構わんさ。わしもあまり出しゃばったマネはしたくなかったしのぉ。』

「でも、なんでそんなスゴいウルトラマンが僕たちの世界に?」

 

我夢がキングに問いかけた。

 

『ゼノンと共に、マックスをこちらの宇宙に連れ戻す作戦をしていたのじゃ。だが、ゼノンからマックスとウィッチたちがガイアの地球に突っ込んでいったと聞いて、こちらの世界に来るよう導いたんじゃよ。』

「そうだったんだ………」

 

ひげをなでながら答えるキングに、納得したように頷くエーリカ。すると、神妙な面持ちで光太郎が話しかけた。

 

「キング、マノウは『ジュダ』の配下のようでした。」

「ジュダ………!?」

『うむ………1500年前に次元の狭間へ封じ込めた筈じゃが………あのネウロイの出現方法から察するに、ヤプールが蘇らせたのだろう………』

 

ジュダと聞いて驚くミライとカイト。キングは続けた。

 

『異次元のネウロイを配下に置いている事を考えると、ヤツは様々な次元から怪獣や星人を集めたのやもしれん……わしは地球を離れるが、わしの方でも、ジュダの事を調べておこう。』

「あの、改めて、色々ありがとうございました!!」

 

芳佳がキングに頭を下げると、美緒たちもそれに倣う。キングはひげを撫でながら笑うと、両手を上げて飛び立っていった。

 

「さーてと………これからまだまだ大変だろうなー………」

「だな………色々話し合わなきゃだけど………今はまず、シャワー浴びて寝たいよ………」

 

空の彼方で光になったキングを見送ると、リュウとアスカが身体を伸ばしながらそう言った。

 

「確かに……1日以上、立ちっぱなしでしたもんね………」

「僕、もうこれで固められたの4回目だから、もうこりごりです………」

「いや、結構多いですね!?」

「呪われてんじゃないノカー?」

「エイラ!」

『あっはっはっはっは!!』

 

一同は笑い合いながら、フェニックスネストに向けて帰路に着いた。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

『「何故か」と聞いたな、ドン=マノウよ………』

 

玉座で頬杖をつき、散ったドン=マノウの遺影を前に黄金の鎧を着た主君―――ジュダが、彼の最後の言葉に答えた。

 

『貴様の詰めの甘さと、戦略眼の無さだ。故に貴様は、『七星将』に相応しくなかったのだ。だが、お前はよくやってくれたよ。』

 

最後にマノウを労うと、ジュダは玉座の前で跪くヤプールに告げた。

 

『ヤプールよ、ワシを蘇らせた礼に、今を持って空席になっていた『七星将・魔の星』に任命する。超獣軍団の指揮に加え、ネウロイの強化と研究を任せる!!』

「ははー!!」

 

ヤプールは深く頭を下げた。すると、彼の目の前にチェーンが付き、奇怪な文字の刻まれた六角形の金色のメダルが現れた。

 

『それは『七星将』の証である『魔の星』のメダルだ。常に身に着けるようにしておけ。』

「は!」

 

ヤプールはメダルを受け取ると、それを首から下げた。ジュダは先の戦いの映像に映る、ウルトラマンメビウスを見ていた。

 

『ウルトラマン、光の国よ………今こそ我がグア軍団が、宇宙を支配するッ!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ウルトラマンメビウス&ストライクウィッチーズ

第1部 終




第二十話です。

・今回のデスフェイサーは複製品だったというオチ。そして初代に破られたシャイニングジャッジで撃破。何かダニエルなら見破れたイカサマを見抜けず負けたテレンスみたいですねwまあ、ダイナも初戦のリベンジ果たせたって事で。

・マグマロックブレイカーとドラゴドスの目からビームは今作オリジナル。マグマライザーの正当後継機なら、岩石破壊光線は標準装備です。

・穴にうっかりハマっちゃうガメロットは少しお気に入りw追い越して落下しながらの光線掃射はちょっとカッコイイと思ってます。

・予想していた人は多いと思いますが、謎の老人の正体はウルトラマンキングでした。マックスギャラクシーに仁王立ちしたり浮遊したりネウロイをホームランしちゃったりと、今回はかなりやりたい放題w

・というわけで、今回で第1部は終わり。外伝を挟んでから第2部に入る予定です。

では、また次回。


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外伝
外伝 コスモス・ビギンズ Ⅰ


 

―――私の名は、ウルトラマンコスモス。

 

 

 

―――春野ムサシと再び一体化し、サーニャとエイラという少女達と共にウルトラマンメビウスのいる『M78星雲』のある世界へと訪れた。

 

 

 

―――その話をするにはまず、アルファケンタウリ第13惑星での『もう1つの再会』の事を話させてもらおう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ウルトラマンメビウス&ストライクウィッチーズ外伝

コスモス・ビギンズ

 

BEGINSⅠ 再会の13惑星

 

 

 

 

 

 

 

 

《―――コスモス………聞こえるか、コスモス………!》

『テレパシー……?誰だ?』

《アルファケンタウリ第13惑星が危ない………宇宙怪獣トロンガーの襲撃を受けている………早く来てくれ………ウルトラマンコスモス―――!!》

『待て!?通じない……あの声は、まさか………それに、宇宙怪獣トロンガーだと……?とにかく、アルファケンタウリ第13惑星に行ってみよう………』

 

 

 

 

 

『デラシオン』との戦いから、地球時間でおよそ5年の月日が流れた。

 

この数か月、宇宙各地で異常が起きていた。

 

突如として空間移動をした惑星同士の衝突に始まり、謎のロボット群の襲撃による星の滅亡、100を超える怪獣軍団の出現など、留まることを知らない。

 

私とジャスティスはこの異変を探るべく、宇宙各地を飛び回っていた。

 

そして、私は謎の声に導かれるまま、アルファケンタウリ第13惑星へとたどり着いた。

 

 

 

 

 

『これは………!』

 

私は、目の前に広がるあまりの惨状に、言葉を失った。

 

アルファケンタウリ第13惑星は、高度な文明と豊かな自然の共存する惑星であると聞いていた。

 

だが、目の前に広がるのは燃える木々や草花と、崩壊し、瓦礫の山と化した都市、長い角と青い毛皮を持った星人たちの亡骸が死屍累々としていた。

 

『なんと、惨い事を………!!』

「ギュウュウュウュウュウュ!!ギュウュウュウュウュウュウュ!!」

『!?』

 

そして、瓦礫の向こうから現れたのは、左右に開く大きな口を持ち、更にその中には十字に開く顎に4本の歯牙、身体の各部に金色の捻じ曲がった角を持つ怪獣が現れ、長い鉤爪を持つ手から放つ光線で街を破壊し暴れまわっていた。テレパシーの言っていた、『怪獣トロンガー』に違いない。

私はこれ以上の被害を出さないためにも、トロンガーへと向かっていった。まずは、けん制に右手から光線「ルナストライク」を放つ。怪獣は光線を受けて腕に傷を負ったが、すぐに再生してしまう。

 

「ギュウュウュウュウュ!」

《――――――来てくれたのか、コスモス………!》

『!?この声は………!?』

 

その時、振り返ったトロンガーから私を呼んだあの声が聞こえた。すると、トロンガーの背後から金色のオーラが見えたかと思うと、そこには翼を持った金色の魔神のようなものが見えた。

 

『やはり、カオスヘッダー………君だったのか!』

 

私を呼んでいたのが、かつての宿敵『カオスヘッダー0』の声であった事を確信したとき、トロンガーが暴れだし、鉤爪で攻撃をしてきた!

 

「ギュウュウュウュウュ!」

《すまない、私の力をもってしても、トロンガーを止める事は出来なかった……!》

『では、このトロンガーはカオス化を…!?』

 

怪獣トロンガーの―――言うなれば『カオストロンガー』だろうか―――攻撃を避けながら、カオスヘッダーの声を聴く。

カオスヘッダーは本来、ある惑星で秩序をもたらすために人工的に生み出された存在だが、惑星が滅んでしまったために秩序を守るために全生物の意識を一体化することを目的としている。生命体と同化することは、カオスヘッダーの秩序に組み込まれることなのだが、今回は、トロンガーを止めるために同化しているようだ。

 

《この星を荒らすトロンガーを止めるべく同化をしたのだが、同化して、初めて分かった……この怪獣を、完全に止める事は出来ない!!》

『何だと!?』

 

カオストロンガーの光線を避けながら驚く。トロンガーは後頭部から伸びる尻尾で巻きつける攻撃をしてきた。

 

「ギュウュウュウュウュ!ギュウュウュウュウュ!」

《今まで私が同化してきた怪獣には、怒りや悲しみ、喜び等の様々な感情があった………だが、コイツにはそれがない!あるのは破壊と殺戮の衝動のみ………まるで破壊マシンだ!》

『そんな………そのような怪獣がいようとは………!?』

 

巻きついた尻尾を何とか振りほどきカオストロンガーから距離を取ると、カオストロンガーは急に動きを止めた。

 

「ギュウュウュウュ………!!」

《コスモス……私の力を最大にして、トロンガーの動きを止める………その隙に、トロンガーを倒すんだ………!》

『そんなことをしたら、カオスヘッダー、君は………!?』

《トロンガーの弱点は、右肩の心臓だ!私に構わず、早く………!!》

 

動けないながらももがくカオストロンガーから、カオスヘッダーの必死な声が響く。

私には出来ない。下手をしたら、同化したカオスヘッダーをも破壊してしまう。迷う私に、カオスヘッダーが叫ぶ。

 

《迷うなコスモス!私ならば大丈夫だ!撃て、コスモス!!》

『………!!』

 

その言葉で、私は握りしめた両手を上げ、大きく回すようにしてその姿を赤き陽炎の勇者、『コロナモード』へと変える。狙うは、右肩の一点のみ。カオスヘッダーをできるだけ傷つけない可能性があるとすれば、そこへの一点集中攻撃だけだ。

 

『………痛いかもしれないが、我慢してくれ………』

《信じているぞ、勇者………!》

 

カオスヘッダーと短く言葉を交わすと、私は腕を構え、必殺の「ネイバスター光線」を発射、トロンガーの右肩に直撃させた!

 

「ギュウュウュ~~~………!」

バシュゥウウッ

『カオスヘッダー!』

『うぅぅ………!』

 

トロンガーが倒れる寸前、眩い光のエネルギーが飛び出たかと思うと、実体化して金色の魔神「カオスヘッダー0」の姿となった。

 

『危なかった………トロンガーの生命活動が停止する寸前に、分離することが出来た………』

『大丈夫か?怪我は………』

『ああ、心配しないでくれ……このダメージのほとんどは、トロンガーを抑え込む際の物だ………』

 

倒れて動かなくなり、ついでに言えば、カオスヘッダーが分離して角や鉤爪のなくなったトロンガーを見ながら、私はルナモードへ戻り、カオスヘッダーへ治癒光線を放った。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

『地球を離れた後、宇宙中を旅して回っていたんだ。』

 

トロンガーを倒し、その遺体を埋葬した後、生き残った惑星の人々を安全な場所まで避難させて、私とカオスヘッダーは話をしていた。

 

『様々な星で暮らす人々を見てきた。その暮らし振りや考え方を見て、『秩序』の意味を考えていた。そんな時、惑星を荒らすあの怪獣と出くわし、破壊活動を止める為に同化をしたのだが………』

「気にしないでくれ、ウルトラマン、カオスヘッダー。君たちのおかげで、我々は滅亡の危機から逃れることが出来たのだから。」

『………済まない…』

 

礼を述べる星人の代表に、カオスヘッダーは少し申し訳ないように頷いた。

 

『しかし、あの怪獣は一体どこから………?む、あれは!』

 

私が首を傾げていると、ふと、空に輝く文字のようなものを見つけた。それは、ウルトラマンジャスティスからの連絡であった。

 

『“遊星ジュランに………謎の超巨大ロボットが出現………怪獣たちを次々と攫っている”!!?』

『遊星ジュラン?パラスタンのいた、あの星か……?』

『ジュランには今、ムサシや、リドリアス達地球の怪獣がいる………!』

『何だって!?』

 

その内容に私は息をのむ。隣で質問をするカオスヘッダーに、私は説明した。私は焦る気持ちを押え、飛び立とうとすると、カオスヘッダーが呼び止めた。

 

『コスモス、私も行こう!』

『しかし………』

『ムサシは、私に『心』を教えてくれた。怒りや憎しみから解放し、優しさを教えてくれた。そんなムサシが危ないのであれば、私は力になりたい………!』

『カオスヘッダー………』

 

私は、カオスヘッダーの真剣な眼差しに胸を打たれた。カオスヘッダーにわかったと頷くと星人たちに別れを告げ、一路、遊星ジュランを目指し飛び立った。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

『コスモスとカオスヘッダーは、遊星ジュランへ向かったか………』

「ギュウュウュウュウュ………」

『トロンガーよ、別次元に飛び散った我らの細胞片より生まれし野良超獣のお前だが、まだ利用価値がある。強化改造をしてウルトラマンどもに今度こそ………!!』

 

 

 

 

 

To Be Continued...

 

 

 

 

 

【次回予告】

 

遊星ジュランで目覚めたサーニャとエイラは、春野ムサシや怪獣たちと出会う。

 

だが、そこに超巨大ロボットが現れ、怪獣たちを次々と攫って行く!

 

「やめろおおおおおおおお!!」

 

ムサシの叫びに呼応するように、天空より赤き巨人、ウルトラマンジャスティスが舞い降りる!

 

次回 BEGINSⅡ 出会いの遊星(ほし)で

 

正義の力、ここに降臨!




「ヒカリサーガ」を意識した、コスモスたちの前日譚に当たる外伝三部作の前編です。最近だと、ボイスドラマになりそう。

今回の舞台となるアルファケンタウリ第13惑星は『ウルトラセブン』に登場したペガ星人の出身星ですが、今回登場した星人は「ペガ星人に外見のよく似た別の宇宙人」と思ってください。

トロンガー、そしてカオストロンガー登場。原典である『ダイナ』ではヤプールと無関係の超獣でしたが、今作では最後にあった通り『別次元に飛んだ細胞片から生まれた野良超獣』と言う設定。

次回予告は『コスモス』風。可能な方は磯部弘さんのナレーションで再生して下さい(笑)

次回は遊星ジュランでのエイラーニャのお話です。では、また次回。


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外伝 コスモス・ビギンズ Ⅱ

年内最後は外伝の中編です。


「な、何これ―――」

「引き寄せられ――――――――」

「宮藤、逃げるん――――――」

「ば、バルクホルンさん!?」

 

ヴェネツィアの町に、突如として出現した奇妙な物体が放った光が私たちを包み込み、光の向こう側へと強く引き寄せられる。

 

「エイ、ラ―――」

 

気を失う寸前、私―――エイラ・イルマタル・ユーティライネン―――の方へと手を伸ばす、サーニャの姿が見えた―――

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「う………ん………?」

 

どれだけの時間、気を失っていたのだろうか、消毒液のにおいが鼻を刺激して、私は目を覚ました。

 

「ここ、は………?」

「キュウ~?」

 

起き上がってみると、何処かの医務室のようであった。

だけど、見渡すと見た事のない機械や薬品、後はベッドに付き添う赤いトゲトゲの体を持った、ブサイク顔の珍獣が1匹いるだけだった。

 

「………………」

「………………」

 

珍獣と目が会ってしまった。

 

 

 

何故か何処からともなくモクギョの『ポクポク……』という音が聞こえてきた気がする。

 

 

 

「うわああああああああああああああああああああああああああ!!!???」

「キュウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ!!!???」

 

驚きのあまり同時に叫ぶ私と珍獣。その拍子に思わず仰け反ってしまい、そのまま後ろ向きにベッドから落ちてしまった。

 

「アイタ!?」

「キュ~?」

 

転がって仰向けになってしまった私を、赤い珍獣が心配そうに見下ろしてきた。そんな風に心配されると、驚いてしまって申し訳なくなってしまう……

その時、ウィイン、といったような音と共にドアが開いたようだ。

 

「どうかしたのか?ああ、君、起きたの。」

 

倒れた私の顔を覗き込んできたのは、ボサボサの髪に無精ヒゲを生やし、眼鏡をかけた男だった。白衣を着ているところを見ると医師のようにも見えるが、なんだかウサン臭い。

 

「あー、ハイ。大丈夫です。」

「おー、あんだけ廊下に聞こえるくらい叫んでたし、元気そうで何よりだ。」

 

医師の手を借りて起き上がる。どうやら、ワタシの叫び声は廊下まで聞こえていたらしい。ハズカシイ………

 

「申し遅れたけれど、俺はここで医者をしている、カワヤ・ノボルだ。」

「あー……初めまして、エイラ・イルマタル・ユーティライネンです。エート、カワヤさん、ここドコですか?何でワタシ、ここに?」

「ここは、『遊星ジュラン』の研究施設。君は数時間前に、突然空から落ちてきたんだよ。」

「じ、ジュラン?何ソレ?」

 

思わず私が聞き返すと、再度ドアが開き、私の一番知っている顔が入ってきた。

 

「エイラ、起きたの?」

「サーニャ!!」

 

入ってきたサーニャを見て、思わず声を上げてしまった。すると、先程の珍獣がぴょこぴょことサーニャに近づいていく。

 

「キュ~」

「ミーニン、エイラを見ていてくれたの?ありがとう。」

「み、ミーニン?」

 

サーニャがミーニンと呼ぶその珍獣は、サーニャにほめられて嬉しそうな声を出す。いや、別に、羨ましいとか、そんなんじゃないけど。

 

「うん、この遊星に着いたとき、リドリアスと一緒に私たちを助けてくれたの。」

「リド、リアス………?」

 

また知らない名前が出てきた。少し混乱していると、カワヤ先生が話しかけてきた。

 

「簡単な診療をしてから、外に出てみると良い。たぶん、君も驚くと思うよ。」

 

 

 

 

 

ウルトラマンメビウス&ストライクウィッチーズ外伝

コスモス・ビギンズ

BEGINSⅡ 出会いの遊星(ほし)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………ナンダ、コレ………?」

 

診察を終えた私が外に出ると、信じられない光景が広がっていた。

 

「クャアアーーーーー!」

「プィーユ!プィーユ!」

「ギュウィーーー!!」

 

頭上を、馬鹿でかい鳥が鳴き声を上げながら通り過ぎた。その行く先の湖畔では、ヴェネツィアで見たような50mはあろう巨大生物たちが何匹か戯れていた。

 

頭や首を固い甲羅で覆った奴は、湖の畔で水遊びをしている。

 

トゲトゲした赤く固そうな体表の4足歩行の者は、対照的に青くつるつるした身体の者にじゃれ付かれている。

 

三角形の頭の細い4足歩行のやつは、岩場でじっと縮こまっていた。

 

「な、何だよ、ココ………?」

「あ、カワヤさん、その子起きたんですか。」

 

私が唖然としていると、青い服を着た男性が振り返ってこちらに来た。

 

「ムサシさん。」

「こんにちは、僕は春野ムサシ。ここで怪獣たちの世話を手伝っているんだ。」

「カイジュウの、世話を………?」

 

ムサシと名乗った男性の自己紹介を聞いて、更に訳が分からなくなる。『カイジュウ』って、あのデカい生物の事だよな?アレの世話ってなんだよ?

 

「……あー、エイラ・イルマタル・ユーティライネンです。あの……」

「クャアアーーーーー!」

 

私が茫然としていると、さっき通り過ぎた鳥がこっちに向かってきて、私たちの目の前に降り立ち、その際の地響きで倒れそうになった。

 

「うわああ!?」

「リドリアス!」

 

サーニャがそう言って、青い鳥に手を振った。どうやら、この鳥みたいなのがさっき言っていた『リドリアス』のようだ。

 

「こいつが、落ちてきた君たちを助けてくれたんだよ。リドリアスがいなかったら、君ら2人とも地面に叩きつけられていたんだぞ?」

「そ、そうだったのか………アリガトウな、リドリアス。」

「クァア~♪」

 

戸惑いながらも、リドリアスにお礼を言う。リドリアスは嬉しいのか、頭を下して妙に甘えた感じの声を出していた。

 

「……なあ、本当にここって何なんだ?」

「さっきも言ったが、ここは地球外の『遊星ジュラン』。怪獣と人間の共存を研究しているんだ。」

「ち、地球外の遊星!?」

「………リドリアスが空から落ちてきた君たちをキャッチしたことを考えると、恐らく地球から転移をしてきたと思う………」

「そんな………!?」

 

ムサシさんの説明を聞いても信じられなかった。ここが地球外で、しかも怪獣の保護をしているなんて………

 

「こんな、地球外の星に行くなんてスオムスどころかカールスラントでも………!?」

「……2人の話を聞いた限りだと、2人はこことは違う世界から来た可能性が大きいね。」

「違う世界って………」

「………今はまだ、整理がつかないだろう。暫く休むといい。」

 

カワヤ先生にそう言われて、私たちは小さく頷いた。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

しばらくして、ムサシさんの案内で周囲を見渡せる高原に来た私たちは、草原に腰かけて眼下の怪獣たちを見下ろしていた。

 

「じゃあ、ここでは怪獣たちを保護して、人間との共存の研究を……?」

「うん。みんなここでの生活に慣れはじめているし、共存の道も見えてきているんだ。」

 

ムサシさんは、遠くで水浴びをする怪獣―――『ゴルメデ』と呼んでいた―――を見ながら話していた。

縮こまっているテールダスはこっちに引っ越してから体調が悪かったらしいけど、最近良くなったらしい。ゴルメデとリドリアスも以前は天敵同士だったそうだが、こちらに移り住む前から仲は良いそうだ。

怪獣たちの事を話すムサシさんは、本当に楽しそうな顔をしていた。

 

「他の星に人が住んで、怪獣と共存する計画が進んでるって………」

「私たちの世界じゃあ、夢物語ダナー………」

 

サーニャと私が口に出すと、ムサシさんは笑いかけてきた。

 

「………実現するまでは、いつも夢物語だったんだよ。まあ、これは僕も受け売りなんだけどね。」

「………」

 

ムサシさんのその言葉に、私とサーニャは聞き入っていた。

 

「……前向きなんですね、ムサシさんって。」

「そんな事ないよ。何度も挫けて失敗して、それでも諦めないで、ようやくここまで来たんだよ。」

 

ムサシさんは懐かしむようにそう話す。

 

「グォオーーー!ギャァァアアアアウ!」

「ん?」「……?」

 

その時、遠くから怪獣の鳴き声が聞こえた。鳴き声の方を見てみれば、山みたいに尖った大きな甲羅を持った、青い体表の牙を生やした四足歩行の怪獣がいた。

 

「ムサシさん、あの怪獣は…?」

「見た事のない怪獣だ………ジュランにあんな怪獣はいないはず………?」

「何ダッテ?」

「グォオーーー!ギャァァアアアアウ!」

 

ムサシさんも怪獣に驚いていると、その怪獣は鳴き声を上げながら周囲の様子をうかがっている様子だった。

 

「あの怪獣………怯えている……」

「え………?」

「見ず知らずの場所にきて、戸惑っているのか………」

 

怪獣の様子を見たムサシさんが、推測を立てた。怪獣を何匹も見てきた彼ならではの観察眼だろう。

その時、怪獣に気づいたらしいモグルドンとボルギルスが怪獣に近づいてきた。

 

「ギュウィーーー!!」

「プィーユ!プィーユ!」

「グォオーーー!ギャァァアアアアウ!」

「ボルギルスたちが………」

「話し合う気カ…?」

 

2匹にあの怪獣を攻撃する気配はなく、説得を試みようとしている事が伺えた。その時、サーニャが使い魔の黒猫の耳と尻尾を出し、そして頭部に光る魔力針を頭部に展開させると、声を上げた。

 

「!?何かいる……ッ!!」

「え!?」

 

サーニャが声を上げたその時、空中に巨大な『光の網』が現れて、あの怪獣諸ともボルギルスとモグルドンを捕えてしまった!

 

「何!?」

「ボルギルス!モグルドン!」

 

ムサシさんが叫んだその時、怪獣たちの後ろの空間が歪み、そこから怪獣よりも大きな影が現れた。

 

「ロボット!?」

「ゴンに似てる………?」

 

凸型のボディと頭部と持ち、右腕が異様に長い4本爪のアームで、対照的に左腕は極端に短いバズーカ砲になったシオマネキを思わせるフォルムを持ち、背中から伸びた2機の砲門、腹部にはシャッターのある、1本の太い軸で繋がった4本脚のくすんだ真鍮色のロボットが、左腕のバズーカ砲から繋がったネットを巻き取って捕まった3匹を宙吊りにしてしまった!

 

「ギュウィーーー!!ギュウィーーー!!」

「プィーユ!プィーユ!」

「グォオーーー!ギャァァアアアアウ!」

「アイツ、ボルギルスたちを連れていくつもりか!」

 

ロボットの目的にすぐに気づく。急いでストライカーを取りに行こうとしたが、その時、上空からリドリアスがロボットに向けてドロップキックをお見舞いした。

 

「クャアアーーー!!」

「リドリアス!!」

「オイ、危ないゾ!!」

 

思わずなおも攻撃を続けるリドリアスに声を荒げてしまった。しかしロボットは腰の部分を180度反時計回りに180度回転させると、その長い右アームでリドリアスを捕えてしまった!

 

「クャアアーーー!!」

「リドリアス!!」

「エイラ、早くストライカーを!!」

 

サーニャに言われて、私とサーニャはストライカーを取りに走りだす。間に合うかどうかは分からないが、何もしないよりはマシだ。しかし、ロボットは下半身からロケット噴射をして、直ぐに飛び立とうとしていた。

 

「!?マズイ!!」

「やめろおおおおおおおお!!」

 

ムサシさんが悲痛な叫びを上げたその時、空の彼方から金色の光がロボット目掛けて飛んできて、背中に直撃をして爆発が起きた!

 

「え!?」

「今のは………!?」

 

爆発でロボットはロケット噴射を中断して地響きと同時に着地をする。揺れる網の中と右アームで怪獣たちが悲鳴を上げる中、ロボットの目の前に巨大な赤い人影が現れた。

 

「あれって……!?」

「ヴェネツィアに現れた巨人に似ている……!?」

 

そこにいたのは、赤い身体に黒と銀のラインを走らせ、金色の釣り目を持った巨人だった。

 

「ウルトラマンジャスティス!!」

「ジャスティス………?」

『ジュァッ!!』

 

ムサシさんがその巨人をそう呼ぶと、巨人―――ジャスティスはロボットに向けて構えを取った。しかしロボットは捕えた怪獣たちを前に突き出した。

 

『…!?』

「アイツ、怪獣を楯に………!!」

 

ジャスティスは怪獣を楯にされて迂闊に手出しできないようだった。しかしジャスティスは飛び上がったかと思うと、高速で飛んでロボットの背後に回ると、全身を金色に発光させて腕を突き出すと、金色の光線を発射、ロボットの後頭部で爆発が起きた!

ロボットは慌てたように後ろを振り向くが、ジャスティスは素早い動きでロボットをほんろうする。

 

「上手い!あの腕じゃあ、一方向にしか怪獣を向けられない!」

 

ジャスティスの攻撃を見てムサシさんが歓声を上げた。ロボットはあちこちから煙をあげ始め、動きが鈍くなってきている。今ならリドリアスたちを助けられるとふんだジャスティスは一気にロボットと距離を詰めた。

 

ドシュッ

『グアァッ!?』

「え!?」

 

しかし、ジャスティスに向けて放たれた光線が直撃し、地面に墜落してしまった。

 

「何ダ!?」

 

驚いていると、ジャスティスの背後にボロボロのマントとターバンみたいなマスクを着けて、右手にライフル銃を持った巨人が現れた。

 

「誰だ!?」

『……我が名は『ハンター・D』。』

「ハンター・D?」

 

ハンター・Dと名乗った宇宙人は左腕に付けた装置を操作すると、ロボットの頭上の空間が歪み、ロボットはそこに吸い込まれるようにして消えていった。

 

「しまった!リドリアスが………!!」

『ヌゥウ………』

 

ロボットが消えたのと同時にジャスティスが起き上がると、ハンター・Dに向けて右拳を突き出すようにして光線を発射、ハンター・Dは咄嗟に躱すが、向き直った時にはジャスティスは目の前まで来ており、その顔に右拳を叩き込んだ!

 

『グアッ………!!』

 

ハンター・Dは数歩下がって、打たれた頬に手を当てた。

 

『チッ、ダメだ………ウルトラマンは強い………!!』

 

ハンター・Dはそう言い残すと、先ほどのロボットと同様に歪んだ空間の中に消えてしまった………

 

『………!』

「逃げられた………!!」

「そんな………!」

 

ロボットとそれを操るハンター・Dに逃げられて、私たちは呆然と立ちすくんでしまった………!

 

 

 

 

 

to be continued...




外伝三部作の中編です。今回はエイラ視点。

ヴェネツィアから遊星ジュランまで飛ばされた2人。寝起きでミーニンはインパクトありすぎてキツいw

ゾンネルとクレージーゴン・ジャイアント登場。多々良島篇で判明したムサシ達との因縁も判明です。

ジャスティス、そして謎の宇宙人ハンター・D登場。正体は謎ですが、後に本編にも登場予定です。

では、よいお年を。


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外伝 コスモス・ビギンズ Ⅲ

ウルトラマンメビウス&ストライクウィッチーズ外伝

コスモス・ビギンズ

BEGINSⅢ 勇者の旅立ち

 

 

 

(オープニングテーマ:STRIKE WITCHES ~わたしにできること~)

 

 

 

 

 

私―――サーニャ・V・リトヴャグの目の前で、リドリアス達3匹の怪獣が巨大なロボットに攫われてしまった。呆然としていると、先ほどムサシさんが『ウルトラマンジャスティス』と呼んでいた巨人が光に包まれて消えてしまった。

 

「ジャスティスが……!?」

 

私とエイラが驚いていると、いつの間にか私たちの目の前に、黒い服とバンダナの女の人が立っていた。

 

「!ジュリ!」

「ムサシ、すまない……リドリアスたちが………」

 

ムサシさんに『ジュリ』と呼ばれた女性は申し訳なさそうに謝る。ムサシさんは気にしないでと言うが、私たちは何の事なのかわからなかった。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

私たちは駐留基地に戻ると、先ほどのロボットとジャスティスの戦いと、あの山みたいな怪獣が現れた時の映像を見ていた。こんな風にさっきの映像を見ることが出来るなんてと最新鋭の技術に驚いていると、カワヤ先生が口を開いた。

 

「あのロボットは、この遊星の怪獣を狙って来たんだろうな………昔地球に現れたノワール星人みたいに………」

「あの山みたいな怪獣は、その囮だったんダナ………」

 

カワヤ先生に次いで、エイラが呟いた。

 

「まるで、アユの『友釣り』だ……」

「トモヅリ?」

 

ムサシさんの言葉にジュリさんが首を傾げる。ムサシさんは説明した。

 

「アユっていう魚は縄張り意識が強くて、よそ者の魚を見つけると追い出そうと攻撃をするんだ。その習性を利用して、攻撃してきた時に針が引っかかるようにする釣りを、友釣りって言うんだ。」

「なるほど。」

 

ムサシさんの説明に納得をした様子のジュリさん。

 

「あのロボットの消え方から言って、異次元に逃げた可能性がある。そうなっては、正直探しようがない………」

「ええっ!?」

「そんな………!!」

 

ムサシさんの言葉に思わず声が出てしまう。しかし、その時ジュリさんが口を開いた。

 

「いや、方法はある。」

「え?」

「あのロボットの消えた辺りに、まだ次元エネルギーが残留している。そこをこじ開ければ、ヤツを追跡できるはずだ。」

「本当か!?」

 

ムサシさんに頷くジュリさん。けれど、彼女は何故そのようなことが分かるのか……?

 

「あの、何でジュリさんはそんなことが?」

「ていうか、何者なんダアンタ?」

「え?」

「あ、えーと、それは………」

 

言いよどむ3人を見て、そういえば、とエイラがつぶやいた。

 

「考えてみたら、ジュリさんはジャスティスが消えた直後に現れていた………」

「あっ……」

「「うっ………」」

 

エイラの指摘に言葉を詰まらせる2人。何か隠しているのかと聞こうとしたその時、室内にけたたましい警報が鳴り響いた。

 

「!?」

「うぇっ!?な、ナンダ!?」

 

驚いていると、カワヤ先生がキーボードを操作するとモニターの映像が切り替わった。映像は今現在の外の様子らしきものが映っており、そこには青白く光る球体のようなものが5機編成で飛んできていた。

 

「侵入者か!?」

 

驚くのもつかの間、球体たちは緑色の光線を発射して、着弾地点で爆発、爆発の衝撃が施設まで到達して大きめに揺らした。

 

「きゃあッ!!」

「攻撃してきた……!?」

 

球体からの攻撃を受けて、あれが友好を築こうという意思がないことが分かった。私はエイラと顔を見合わせて頷き合うと、ムサシさんたちの止める声も聞かずに格納庫に向かい走り出した。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

ストライカーで出撃をした私たちが球体の下へ到着すると、球体は攻撃を続けて周囲を破壊していた。ゴルメデやエリガルたちが逃げ惑うのを眼下に見下ろしつつ、球体の背後を取るとエイラの機関銃と私のフリーガーハマーが放たれて、球体の1体が爆炎の中に消えた。

 

「そこまで防御力がない様子ダナ……!」

 

エイラがそう呟くと、球体たちは私たちに標的を変えたらしく方向転換をしてこちらに攻撃を仕掛けてきた。

 

「サーニャ!!」

「!!」

 

エイラの予知で警告を受けて回避、再度攻撃を仕掛けるが避けられてしまう。Uターンをした球体たちの攻撃を回避していると、レーダーに飛翔体の反応があった。その次の瞬間、9時の方向からの攻撃で球体3体が爆散した。

 

「今のは!?」

[2人とも!!]

「!ムサシさん!?」

 

飛んできた赤い戦闘機から聞こえた声はムサシさんのものであった。戦闘機で駆け付けてきてくれたようだ。その時、残り1体となった球体が私たちに背を向けるように転身をして飛んで行ってしまった。

 

「逃げる気か!?」

 

私たちは球体を追いかけると、進行方向には岩山地帯に建った発電施設が見えた。すると、球体は速度を落とさないまま高度を下げて、発電施設に激突!爆発が起きて岩山の一部まで崩れた。

 

「自爆………!?」

「何で……!?」

 

驚いていると、爆発した施設と岩石が吸い寄せられるように集結して生物のような姿になって立ちあがった。

 

「ガァアア!ピィーーーッ!!」

 

ごつごつとした岩の身体と金色に光る5つの目に叩きのような束になった尻尾を持ち、背中から4本のコイルを生やした怪獣が咆哮と共に背中から電撃を周囲に放つ。

 

「怪獣!?」

「何で………!?」

[まさか、さっきの球体が岩石と発電装置を取り込んで怪獣になったのか!?]

「―――!?2人とも避けろ!!」

 

ムサシさんがそう推測をした時、エイラが叫ぶと怪獣が背中からの電撃をこちらに向けて放ってきた。エイラの警告で間一髪回避出来たが、怪獣は攻撃の手を緩めなかった。

 

「ガァアア!ピィーーーッ!!」

「アイツ………!!」

[!?]

 

エイラが悪態をついたその時、岩山の影でテールダスが縮こまっているのが見えた。逃げ遅れたようだ。そのテールダスに向けて、怪獣の電撃が放たれた!

 

[ダメだぁあーーーーッ!!]

「!?」

 

その時、ムサシさんの戦闘機がテールダスと怪獣の間に入り電撃から身を挺して盾となった!

 

「ムサシさん!?」

 

私が悲鳴を上げた瞬間、戦闘機から火花が散り、次の瞬間には爆発を起こした!

 

「ムサシさん!?」

「イヤァアアーーーッ!!」

 

 

 

 

 

しかし、悲鳴を上げたその瞬間、空の彼方から青い光が飛んできて爆発の中に飛び込むと、その光が巨大な人型―――さっきのジャスティスのような、青いウルトラマンになった。

 

「えっ……!?」

「ウ、ウルトラマン………!?」

 

青いウルトラマンの登場に驚いていると、遠くからジャスティスと、全身が金色の魔神のような者が飛来して、青いウルトラマンに並び立った。

 

「あの巨人たちは、一体………!?」

『サーニャちゃん、エイラちゃん。』

「!?」

「ムサシさん………!?」

 

その時、私の脳内にムサシさんの声が響いた。エイラも同様らしく驚いていた。

 

『僕は大丈夫だ。後はコスモスとジャスティス、カオスヘッダーに任せてくれ!』

「え……!?」

「ガァアア!ピィーーーッ!!」

 

ムサシさんの声に戸惑うが、3人は咆哮を上げる怪獣に向けて構えを取った。

 

『フウッ、ハァアッ!!』

『ジュァッ!!』

「ガァアア!ピィーーーッ!!」

 

怪獣が雄叫びを上げたかと思うと、何と両腕を伸ばしてジャスティスとコスモスを攻撃してきた。2人はそれを受け止めると、金色の魔神―――カオスヘッダーはテールダスを抱えて飛んで行った。安全な場所まで連れていくようだ。

私たちはテールダスの安全を確認すると、怪獣の元まで飛んで行き、エイラは両腕を、私は背中のコイルに向けて攻撃、腕の中ほどが吹き飛び、背中のコイルを2本破壊した。

 

「ガァアア!ピィーーーッ!!」

 

怪獣の部分破壊に成功すると、コスモスとジャスティスは腕を頬り投げ、コスモスとジャスティスが金色の光線を放ち怪獣の胸部に直撃する!

 

「ガァアア!ピィーーーッ!!」

ドォオオンッ

 

怪獣が悲鳴を上げると、頭部から弾け飛ぶように爆散した。

 

「やった!」

「スゴイ………!!」

 

怪獣が倒されたのを見たエイラが歓喜の声を上げた。

 

『―――コスモス、やはり強い………』

『『『!?』』』

「え……!?」

 

突然、声が聞こえた。振り返ってみれば、そこには不気味な赤い光球が浮かんでいた。

 

「何ダあいつ………いきなり現れたゾ!?」

『あれは『ワロガ』!?あの球体は、お前の差金か……!』

 

驚いていると、球体は話し始めた。

 

『『闇の星』ワロガ………コスモス、同胞の仇!倒す!必ず!!』

 

光球はそう告げると、そのまま消えてしまった。

 

「消えた………」

 

光球の消えた辺りを見て呟くと、コスモスとジャスティスはヒカリに包まれて、みるみる小さくなっていった。

光の小さくなった先に行ってみれば、そこにはムサシさんと、ジュリさんの姿があった。

 

「あ………!」

「やっぱり、2人が………!?」

 

驚く私たちに、2人は少し気まずそうな笑みを浮かべていた。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

戦いのあった2日後。

ジュリさんの言っていたロボットの消えた辺りを調べてエネルギーを掃射してこじ開けてコスモスと一体化したムサシさんが向かってみると、平行世界の地球の月面につながったそうだ。ムサシさんは戦闘機―――テックスピナー1号に乗って、リドリアス達の捜索に向かう事となった。

 

「君たちも行くのか。」

「はい。」

「向こうの地球に、私たちの仲間がいる可能性があるからナー。」

 

私たちもそれに同行し、他の501隊員の捜索も同時に行う事にした。

 

「アヤノくんには、連絡したのか?」

「はい、「無事に帰ってこい」と、釘を刺されましたけど………」

 

すると、ジュリさんとカオスヘッダーが話しかけてきた。

 

「ムサシ、こちらの宇宙は任せてくれ。」

『君たちのいない間、ジュランは私が守ろう。』

「ありがとう、2人とも。」

 

ムサシさんが礼を言うと、私たちはテックスピナーに乗り込み、ジュランから旅立った。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

(エンディングテーマ:ウルトラマンコスモス〜君にできるなにか)

 

 

 

 

 

―――こうして、僕たちは旅立ち、メビウスたちに出会った。

 

―――この先、どんな困難が待ち受けていようと、絶対に乗り越えてみせる、そう、胸に刻んで。

 

 

 

 

 

ウルトラマンメビウス&ストライクウィッチーズ外伝

コスモス・ビギンズ     END




あとがき

外伝三部作の後編です。今回はサーニャ視点。

OPとEDは「わたしにできること」と「君にできるなにか」っていうダジャレですw作業BGMに作った主題歌プレイリスト聴いてた時に思いつきました。

まさかのスフィアとサンダ-ダランビア登場。サンダ-ダランビアって『ダークスパークウォーズ』に参戦していたけど誕生経緯が不明だったため、今回誕生秘話的な感じで登場させてみました。
自分的にはこの後怪獣墓場から復活して『ダークスパークウォーズ』に参戦した、という感じ。

ムサシとコスモスの一体化。そしてかつて敵対していたカオスヘッダーとジャスティスとの共闘。何気にジャスティスはカオスヘッダーと初対面でしたね。

今回の黒幕はワロガ。その二つ名が差すものは一体?

ムサシたちの出発。この時カオスヘッダーが残ってそのままジュランの守護者になり、『ウルトラマンサーガ』に繋がります。

次回からは本編に戻ります。

では、また次回。


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グア軍団編
第二十一話 平成の6兄弟


 

 

とある惑星………

 

「ガァーーーッ………!!」

 

4足歩行の怪獣が断末魔の叫びを上げると、周囲にガラス片のような物が散らばる地面に轟音を立てて倒れ、こと切れた。

怪獣を倒した羊のような曲がった角と銀色のウロコに包まれた体を持ち、背中に何本ものトゲが生え、左肩に星形の傷を持った怪獣―――『剛力怪獣 シルバゴン』が、胸をドラミングして、勝利の雄叫びを上げた。

 

「グギュゥゥウウウウウウウウウウウウ!!」

「ああっ、オ、オイドンのパラゴンが………!!」

「おのれぇ………よくもワチキのかわいいスペクターをッ!!」

 

大きな銀色の帽子のような頭と3本指を持った『ストラ星人』が怪獣『パラゴン』が倒されたことに嘆いていると、鬼のような顔を持った『マザラス星人』が、シルバゴンを操っていた宇宙人に怒鳴る。2人とも、その手には3つの窓のようなものが開いた長方形の白い機械が握られている。

宇宙人は白いスーツに藍色のシャツを着て首には赤いスカーフ、頭には白いソフト帽と黒ぶちの眼鏡をかけた伊達男風のヒューマノイド宇宙人であった。男は2人と同じだが、角の辺りにバラの模様が描かれた機械をかざした。

 

「戻れ、シルバゴン。」

「グギュゥゥウウウウウウウウウウ!!」

 

すると、シルバゴンは光の粒子となって、その機械の中に収められた。

 

「一度に2体を相手取って勝つとは、とんでもない怪獣でゴワス………」

「それ以上に、アイツの指示も的確だったわいな………」

 

2人が先ほどの戦いを振り返っていると、男ははぁ、とため息をついた。

 

「あ、お前何がっかりしたようなため息ついてるわいな!!」

「………がっかりもするさ。私と同じ『早期覚醒者』と出会えたかと思ったのに、我がシルバゴンに手も足も出ない為体(ていたらく)など………」

「なっ………!」

 

マザラス星人が絶句していると、男は踵を返して自分の銀色の宇宙円盤に向かって歩き出していた。

 

「この程度では、我が覇道に到底及ばない………やはり向かうか、太陽系第3惑星―――地球へ………」

「!?チキュウだと?本気わいな?」

「い、今地球には、ウルトラマンが何人もいるって聞いているでゴワス!悪いことは言わん、よすでゴワス!!」

 

ストラ星人が思わず止めるが、男は歩みを止めた。

 

「だからだよ。」

「なぬ?」

「地球の『コトワザ』に、「虎穴に入らずんば虎子を得ず」とある。危険結構!それでこそ修行になる。まあ、虎は虎でも、『ウルトラ』だがな。ハッハッハッハッハッ!」

 

自分で言ったことに大笑いする男。呆気に取られるマザラス星人とストラ星人を余所に、男は両手を『チョキ』の形にして笑いながら宇宙船に乗り込んだ。

 

「ホッホッホッホッホッ!」

 

男の笑い声を残して、宇宙船は飛び去って行った………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第二十一話 平成の6兄弟

 

幻影宇宙帝王 ジュダ・スペクター

グア軍団七星将

剛力怪獣 シルバゴン(スカーシルバゴン)

宇宙怪人 ストラ星人

鬼女 マザラス星人

蜃気楼怪獣 パラゴン

登場

 

 

 

 

 

ロボット軍団を撃破した翌朝―――

 

「ミライさん、もう大丈夫なんですか?」

「うん、芳佳ちゃんが治療してくれたし、一晩寝たらもう大丈夫!」

 

朝食の席で、芳佳が未来に聞く。ミライは満面の笑みで力こぶを作る様に右腕を見せて元気であることをアピールした。

 

「ウルトラマンの超人的な身体能力があるとはいえ、随分と早い回復ですね?」

「本当ダナ。何を食べたら、そんな強くなるんダ?」

 

リーネとエイラがふと、疑問に思ったことを聞く。ミライはうーんと考えた後、

 

「カレー、ですね。」

「カレー………そういえば、よく食べてるね、ミライ君。」

 

至極真面目に答えるミライに、ムサシが苦笑気味に言う。それを聞いた美緒は感心した様子で

 

「うーむ、ジャガイモが効くのか、肉が効くのか………」

「美緒、真に受けないで。」

 

真剣に考える美緒に呆れてツッコミを入れるミーナ。その時、反対側のテーブルから声が上がった。

 

「えー?カイト、帰っちゃうの?」

 

バルクホルンにたたき起こされたエーリカ(タンコブ付)がカイトに聞いた。カイトとセリザワ、そして光太郎の3人は、この後『光の国』に帰還するのだ。

 

「うん、今回のことの報告と、卒業試験のやり直しをしないとね。」

「あー、試験の最中に異次元に放り出されちゃったんだっけ………」

「ウルトラマンが『訓練校中退』じゃあ、格好付かないもんなー」

 

エーリカとシャーリーが笑って返す。カイトが苦笑をして答えた。

 

「まあ、キングとゼノンの証言から別宇宙での活躍が考慮されて、ほとんど形だけらしいけど、それでも全力を尽くすつもりだよ。」

「それに、ヒカリの方は治療に専念してもらわねばな。」

「そっかー………」

 

カイトと光太郎の説明を聞いて納得するエーリカ。それに、とセリザワは右腕を上げると、ナイトブレスの青いクリスタルが光った。

 

「『コイツ』を光の国に持ち帰らなければならないからな。」

「え?」

 

ナイトブレスのクリスタルが光ったかと思うと、中から正十二面体の赤い結晶体―――ネウロイのコアが現れた。

 

「これって!?」

「ネウロイのコアじゃん!?」

「昨日の戦いの折に、ネウロイの1体から回収した。これを光の国で解析する予定だ。」

「いつの間に………」「意外に抜け目がないな………」

 

セリザワ―――ウルトラマンヒカリの抜け目のなさに感心する一同。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「しかし、これだけ人数が増えると、さすがにこの部屋じゃあ狭いなー」

「ごめんなさい、皆さまにご迷惑を………」

 

ディレクションルームに集まったウィッチたちとアスカは、一気に20人近くもいる現状に思わず口に出した。コウジやマイも同じことを思っていたのか頷いていると、ミーナが申し訳なさそうに謝った。

 

「今、501の皆さまのために「第2指令室」を使用できるよう、調整を行っていますので………」

「第2指令室?」

「はい、フェニックスネストが使用不能になった時に備えていたものですが、施設点検も兼ねて使ってもらおうと………」

 

ミサキ女史が説明をしていると、ディレクションルームのドアが開いて新聞をリュウが入って来た。

 

「おい、昨日の事新聞の一面を飾ってるぞ!」

「本当ですか!?」「見して見してー!」

 

リュウが嬉しそうに新聞を見せると、そこにはロボット軍団の残骸が散らばる『土俵』に立つ、メビウス、ヒカリ、ダイナ、ガイア、コスモス、マックス、タロウと芳佳たちウィッチの写真が大きく写り、『ロボット軍団、ウルトラマンとウィッチ達に倒される!』という見出しが付けられていた。

 

「うひゃー、いつの間に撮られてたんだよこんな写真!」

「『撮影者:瀬良照夫』とありますが………」

「他の新聞も、一面は昨日のロボット軍団撃破で持ち切りですよ!」

 

リュウの後ろから顔を出したマルとトリヤマも、嬉しそうに話す。ふと、芳佳はマルの手にしたスポーツ新聞の見出しが目に入り、マルから新聞を受け取るとその見出しを読み上げた。

 

「『平成ウルトラ兄弟、誕生か?』………?」

「え?」

「ウルトラ兄弟?」

 

ウルトラ兄弟と聞いて小首を傾げるウィッチ一同。我夢たちも不思議そうにしていると、ミライが少し恥ずかしそうに頭を掻いた。

 

「ぼ、僕たちがウルトラ兄弟かぁー………」

「なあ、ウルトラ兄弟って何だ?」

 

アスカが未来に聞くと、リュウが少し得意げに答えた。

 

「ウルトラ兄弟というのは、ウルトラマンたちがまるで兄弟のように仲間を大切にしているのを見て、地球人が付けた呼び名なんだ。」

「光の国でも、兄弟の誓いを結んだ宇宙警備隊の精鋭として、地球人のみなさんが付けてくれたこの呼び名を使っているんです。」

「そういえば、光太郎さんのこと「兄さん」って呼んでましたね。」

 

リュウとミライの説明を聞いて、納得したようにリーネが頷く。

 

「つまりは、『サカズキ交わした兄弟』ってワケかー」

「エイラ………」

「ある意味間違ってはいないけど、その言い方はちょっと………」

 

エイラの言い方に難色を示す一同であった。9年後くらいに分かりやすい喩えが出るのは別の話である。

 

「僕たちが、兄弟かぁ……」

「いいんじゃね?これから協力し合って、みんなを家に帰さないといけないからな!」

「そうだね………」

 

我夢が少し照れくさそうに言うとアスカが肩を叩いて笑い、ムサシもそれに続いて笑った。

 

「みんなで帰る………そのためには、『ジュダ』とやらを倒さなければならない………」

「………ミライさん、ジュダとは一体何者なんですか……?」

「………」

 

芳佳に質問をされて、ミライは神妙な面持ちとなる。リュウやアスカも聞く中、ミライは少し考えて、話し始めた。

 

「ジュダというのは、かつて『光の国』に攻めてきた『グア軍団』を率いる、宇宙の帝王のことです。」

「光の国を………!?」

 

アスカが信じられないという風に聞き返す。ミライは頷いて続けた。

 

「グア軍団は、かつては『グア』という帝王が納めていたそうです。しかし、グアはエンペラ星人とジャッカル大魔王を同時に相手取った『暗黒大戦』で戦死しましたが、グア亡き後に『モルド』、『ギナ』、そしてジュダの三兄弟が新たに首領となり、生まれ故郷である惑星グアを移動要塞惑星に改造して、惑星ごと移動しながら宇宙中を荒らしていました。」

「移動要塞惑星って………!?」

「惑星を宇宙船みたいにして、飛び回ってたってわけか………」

「スケールがとんでもないねぇ………」

 

ミライの話を聞いて、その途方もないスケールに戦慄する我夢とエーリカ。

 

「1500年前、グア軍団は惑星グアごと光の国に攻めてきました。幸いにも、ウルトラの星に激突する前にウルトラキーによって惑星は破壊されましたが、爆発の前に脱出した三兄弟はウルトラの星を乗っ取って第2のグア星にしようとしてきました。既にグア星の寿命は尽きかけていたため、最初から乗り捨てるつもりで特攻をかけてきたんです。」

「ひどい………!!」

「馬鹿な、自分の故郷だぞ………!!」

 

グア軍団の非情な行いに思わず絶句するバルクホルン。ミライはつづけた。

 

「直接乗り込んできた三兄弟と『ファイティング・ベム』と呼ばれる怪獣軍団は、ゾフィー兄さんやウルトラの父が迎え撃ちました。そしてモルドとギナは、ウルトラの父によって倒されました。しかし、2人は死の間際に自身の全エネルギーをジュダに受け渡し、ジュダは数十人がかりでも止められないほどの力を得てしまいました。何とか駆け付けたウルトラマンキングによって、砕けたグア星の破片に封印されたうえで、次元の彼方に追放することができました。」

「残ったファイティング・ベムや怪獣軍団は、「ウルトラベル」の神秘の力で退けることができたが、父もキングも激しく消耗するほどの戦いだった。この戦いは『グア戦役』と呼ばれ、光の国でも広く伝わっているんだ。」

「それが、さらなる戦力を整えて、帰還したというのか………!」

「私たちは、グア軍団の宇宙侵略計画に巻き込まれた訳ね………」

 

ミライに続くように光太郎も続けた。壮大な光の国とグア軍団の歴史を聞いた地球人一同と異世界のウルトラマンたちは、スケールの大きさに戦慄した。

 

「と、とんでもない話だな………」

「そうだね………キングのおじいちゃん、1500年以上生きてるんだね………」

「そっちか!?」

(………あれ、じゃあもしかしてミライさんたちも……?)

 

エーリカのとぼけた発言に思わずツッコミを入れるバルクホルン。一同もガクッとズッコケていると、リーネは余計な事に気が付いたが、言わないでおく事にした。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

次元のはざまに浮かぶ巨大な城。

 

『……揃ったか、グア軍団七星将よ。』

 

城内の長いテーブルのある大広間の上座に座るジュダが、静かに告げた。

すると、部屋の陰からカニの甲羅を思わせる体表と不気味な目を持ち、足元まである白いマントを着込んだ者が音もなく現れた。

 

『『魔の星』ヤプール、ここに。』

 

七星将『魔の星・異次元人 巨大ヤプール』が告げると、彼の隣からいびつに尖った銀色の頭を持った宇宙人が現れた。

 

『『嫌の星』レギュラン星人ヅウォーカァ、ここに!』

 

同じく『嫌の星・悪質宇宙人 レギュラン星人ヅウォーカァ将軍』が踵を合わせて姿勢を正し、胸の前に右拳を作る啓礼をした。

次いで、ヅウォーカァの対面から中国戦国時代の参謀を思わせる緑色の着物を着た、ふくよかであごまであるどじょうヒゲを垂らした男が現れた。

 

「ほっほっほっ、『策の星』コウメイ、ここに。」

 

策の星・コウメイが不気味な笑みを浮かべながら名乗る。

 

『フオォオオ………』

 

すると、今度はコウメイの背後から赤い光球が現れると、見る見るうちに人型となり、頭巾めいた頭と大きな尖った爪を持った宇宙人となった。

 

『『闇の星』ワロガ、ここに………』

 

不気味な声の片言で『闇の星・邪悪宇宙生命体 ワロガ』が、無数の小さな赤い目を光らせて名乗りを上げた。

 

『『覇の星』、ここに。』

 

そして、席の下座に濃い灰色のローブを着た『覇の星』が名乗りを上げる。深くフードを被っていて、顔は判別できない。

 

『グゥウ………ウオオオオオ………!!』

 

その時、一番下座から唸り声とも雄叫びとも聞こえる声がした。そこには、ボロボロの薄茶色のローブを着こみ、何本もの鎖で雁字搦めに縛られた者がいた。

 

『……あー、『暴の星』は、最初からそこにいたな。これで全員か。』

 

ジュダが『暴の星』の事について告げるが、ここでヅウォーカァが挙手をした。

 

『ジュダ様、『呪の星』の姿がありませんが……?』

[私ならばここだ。]

 

声が聞こえたかと思うと、空いていた席に黒く光る巨大な石板があることに気付いた。石板には大きな一つ目が描かれており、時折キョロキョロと動いていた。

 

[悪いが儀式の際中でな。音声のみで参加させていただく。]

『構わぬ。そちらは順調か?』

[無論だ。ジェロニモンとプレッシャーのお陰で、再生怪獣は十分にそろっている。]

『上々だ。コスモスに倒された『魔の星』の後任も決まった事だし、いよいよ本番にとりかかれる!』

 

ジュダは7人の幹部を前に頷いた。

 

『手始めに地球にいるウルトラマンメビウスとGUYSを倒し、地球をあらたな移動要塞惑星にしてやる!』

『お言葉ですがジュダ様、移動要塞惑星ならば、別に地球でなくともようのでは……?』

 

覇の星がジュダに進言する。ジュダはウムと頷いた。

 

『確かにお前の言う通りだ。だが地球人とメビウスは、我が宿敵エンペラ星人を倒した連中だ………奴らを倒さなければ、宇宙侵略もままならぬ………例えるなら連中は、「決勝で会おう!」と約束したライバルを予選で破った新たな強敵なのだ!』

「………いや、言いたいことは分かりましたが………」

 

ジュダの妙な例え話に呆れる一同。コウメイがツッコみを入れると、ワロガが挙手をした。

 

『不安ある。ヤプール、エンペラの残党に、ネウロイやった。それ、まだ残ってる。』

『問題はない。連中はネウロイを操れても、進化させ強化までは出来ない。ま、ロボットに融合させることが関の山だろう。』

 

ワロガの発言を嘲笑うようにはねのけるヤプール。コウメイがほほほと笑った。

 

「まあ、エンペラ軍団にはネウロイの他にバトラーやマノウ、それにゴルゴン星人たちエージェントを送り込んで、内部から破滅させたから、しばらくは大きく行動は起こせないでしょうねぇ~………」

『うーむ、かつての宿敵亡き後の軍団の惨めな姿を見るのはしのびないが………ま、エンペラいなくなったら烏合の衆だし、問題ないか。』

 

ジュダはそう結論づけた。続いて、ヅウォーカァが発言をした。

 

『怪獣戦艦艦隊の準備は、着々と進んでおります。我が艦隊にかかれば、地球侵略も容易いでしょう!』

『自惚れるなよヅウォーカァ……地球人とウルトラマンを甘く見ては、痛い目を見る。』

『ぬぅ………新参者でエンペラの軍門に下っていた気に喰わない奴だが、何度もウルトラマンと地球人にこっぴどくやられたお前が言うと、説得力があるな。』

 

ヤプールに釘を刺されたヅウォーカァだが、言い返されたヤプールは割と図星のためか反論はしなかった。2人の間に火花が散るが、コウメイがまあまあと諌めた。

 

「それとジュダ様、我が軍門に入りたいという宇宙人の採用試験についてなんですが、最終選考はいかがいたしましょうか?」

『そうだな………』

 

ジュダはしばし考えていると、ふと、ある事を思い出して、ワロガに尋ねた。

 

『そういえば、例の『子ネズミ』はどうした?』

『連中、まだ第2エリアにいる。隠れて、見つけられてない。』

『そうか……メビウスたちの実力をこの目で見ておきたいし………』

 

ワロガから報告を受けると、ジュダは悪い笑みを浮かべた。

 

『よしコウメイ、ヤプール、準備をしたい。後で来てくれ。』

『は。』

「承知。」

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「キィイィイーーー」

「キィイィイィーーー」

「ギュシャァアア………」

 

ナメクジのような2mほどの異形と昆虫を思わせる2足歩行の化け物数匹が、崩壊しかけたビルが立ち並ぶ廃墟を徘徊していた。異形たちは何かを探すように周囲を見渡した後、目的のものがないと知ったのか、その場を離れていった。

 

「………行ったか?」

「うん………」

 

その様子を、息を殺して荷台に『高収入』の文字とサムズアップをした『青色発砲怪獣 アボラス』のイラストが描かれた、大破したトラックの影から見ていた3人の少女が、銃を手に確認をした。

 

「ひかり、弾薬はあとどんくらいだ?」

「もう残りはあまり……」

「私も………ストライカーも破損して動かないし……」

 

ひかりと呼ばれた、紺色のセーラー服の少女とセーターを着た少女が答える。短髪で頬に絆創膏をはった少女は舌打ちをした。

 

雁淵 ひかり、菅野 直枝、ニッカ・エドワーディン・カタヤイネンの3人は当初、ネウロイ出現の報を受けて出動していた。目的地にいた円盤の下部に砲門を備えたようなネウロイ3体と交戦をしていたが、突然地中から巨大な四足歩行で首の長い恐竜のような生物が現れ、ネウロイと共に攻撃してきたのだ。

 

ネウロイだけではなく、恐竜の目から放たれる光線とバリアに苦戦していると、驚くことに空中がガラスのように『割れて』、ネウロイと恐竜と共にその穴に吸い込まれてしまった3人は、気が付けばこの廃墟の街にいたのだ。

 

この場所に流れ着いてから5日間、街には先ほどの異形や小型のネウロイがうごめいており、ストライカーが故障した現状、逃げるしかなかった。

 

「何なんだよアイツら………何処なんだよここは………!?」

 

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「じゃあメビウス、アスカくん、我夢くん、ムサシくん、地球の事は頼むぞ!」

「はい!タロウ兄さんも、お気をつけて!」

「卒業試験を終えたら、私もグア軍団の調査に当たる。地球にもすぐに戻るだろう。」

「カイト、気を付けてねー」

「隊長、ちゃんと身体治してくださいよ!」

「ああ、リュウも元気でな。」

 

その翌日、それぞれが言葉を交わし、固く握手をする。3人は笑顔を浮かべると、それぞれが赤い光の球となって浮かび上がり、あっと言う間に空の彼方まで飛んで行ってしまった。

 

「行っちゃったねー」

「なに、すぐにまた会えるさ。」

「そうですね。」

 

3人の飛んで行った空を見上げながら、芳佳とミライがそう話す。さて、とリュウが腕を伸ばしながら切り出した。

 

「これから第2指令室に案内する。ついてきてくれ。」

『はい!』

 

 

 

 

 

案内されたのは、フェニックスネストから徒歩10分ほど(エレベーターを使わなければ15分)の距離にある50mほどの建物であった。戦艦の艦首を思わせる形状のタワーと横に長い滑走路が内蔵された建物で構成されており、滑走路の壁には『№4』とペイントされていた。

 

「ここが第2指令室………」

 

第2指令室のタワー上階にあるフェニックスネストに似た内装のディレクションルームに案内された芳佳たちが、中を見渡しながら感嘆する。

 

「しばらくはこの第2指令室、『サンダーバード』がお前らの基地になる。」

「サンダーバード?」

「ああ、『フェニックスネスト』(不死鳥)の弟分だからな!」

「はあ………」

 

リュウが自信たっぷりに言う。ミライやアスカ、芳佳等は感心した様子だが、ペリーヌなどは呆れた表情であった。

 

「急造とはいえ、ストライカーの整備施設とカタパルトも用意している。常駐と発進はこの基地を使ってくれ。」

「何から何まで、すみません……」

 

いいって事よ、とリュウがミーナに返した。

 

「さて、これから施設の案内しよう。まずはストライカーの……」

 

リュウが言いかけたその時、警報が鳴り響く。全員の顔が一瞬で引き締まると、浮かんだモニターにエリーの顔が映った。

 

[隊長!湾岸の石油コンビナートに、ネウロイが出現しました!]

「ネウロイだと!?」

[そちらのモニターに出します!]

 

モニターの映像が切り替わり、石油コンビナートの上空を大小の球体を束ねられたパイプで繋いだような50~70mサイズのネウロイが飛び、光線を地上に向かい放ち小規模の爆発を起こしていた!

 

「あれ以上攻撃されては大災害が起こってしまうぞ!」

「石油コンビナートを守るぞ。GUYS, SALLY GO!!」

『G.I.G.!!』

 

アイハラ・リュウ隊長号令の下、隊員たちは返答をした。

 

 

 

 

 

つづく




第二十一話です。

・冒頭でまさかのレイオニクスバトル。スカーシルバゴンの使い手の正体はまだ内緒。
 マザラス星人は跳ね返り風、ストラ星人が薩摩弁なのは、ストラ星人の写真をじっと見ていたらゴワス口調でしゃべるイメージが浮かんだのでw

・マックス、ヒカリ、タロウ帰還。そして平成ウルトラ兄弟結成。今回のウルトラマンたちにチーム名が必要と思い、思いついた名前です。時代は今や令和ですが、作中はまだ2009年ごろなのでw

・今作におけるグア軍団の説明。既にグア星も上の兄姉もいない状況でジュダ単体なのは『ウルトラマン物語』のオマージュですね。

・グア軍団七星将登場。当初はワロガもまだ顔を出す予定はありませんでしたが、よく考えたら正体分かっているのが7人中2人(コウメイは顔見せしてるけど正体不明なので)ってどうなんだろうと思ってワロガも出しました。

・まさかのブレイブウィッチーズからひかり、直枝、ニパが登場。色々考えて、登場させることにしました。アボラスのトラックは、相方だったら色々ヤバかったw

・第2指令室『サンダーバード』登場。人数も増えたので、常駐する場所が必要と考えて登場させました。名前は劇中でリュウさんが言った通り。実はちょっとした秘密があったりして。

・最後のネウロイは『ウルトラマンダイナ』よりNSPカンパネラが元ネタ。最近では『ジード』の星雲荘として活躍してますね。

では、また次回。


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第二十二話 地獄への招待状

リュウにサンダーバード基地地下のストライカー格納庫に案内された501部隊は、各自ストライカーを装着して銃器を手にした。そして手元のスイッチを押し込むとストライカーのケージごと3機分が定位置に移動をすると、回転しながらリフトが上昇した。

 

サンダーバード基地の外壁の先端がリフトアップすると、滑走路の先端が動物の舌のように伸びた。そして、ストライカーが上昇しきると、足元に眩い光を放つ魔法陣が展開された。

 

「発進!」

「「了解!!」」

 

坂本 美緒戦闘隊長号令の下、ストライクウィッチーズは次々に発進、GUYSのガンフェニックスとガンブースターも合流し、ネウロイの下へ向かった。

 

 

 

 

 

第二十二話 地獄への招待状

 

異次元怪異 ネウロイ(GX―08・GX-09)

怪異変形獣 ネウロイ(GX―08・GX-09)

幻影宇宙帝王 ジュダ・スペクター

暗黒星人 バビラー

ブロブタイプビースト ペドレオン(クライン)

インセクトタイプビースト バグバズンブルード

グア軍団入団希望宇宙人集団

登場

 

 

 

 

 

「キィイイイイイイイイイイイ!!」

 

石油コンビナートを襲撃したネウロイは、周囲にビームを放ち蹂躙していたが、石油の詰まったタンクの上空で静止したかと思うと、大きい50mの球体から管のようなものを伸ばしたそして管の先端がタンクを突き破ると、中の石油を吸収し始めた。

 

「ネウロイを確認!」

「石油を吸収しているようだな………迂闊に攻撃できないぞこりゃ………」

 

現場に到着したリュウはネウロイの様子を見て、現状からネウロイへの攻撃は迂闊にできないと判断した。

その時、眼帯を外してネウロイの様子を見ていた美緒が声を上げた。

 

「これは!?」

「どうした?」

「あのネウロイ、前後にコアが1つずつある………アイツは2体のネウロイだ!」

「何だと!?」

 

リュウが驚きの声を上げた瞬間、石油を飲み干したらしいネウロイが管を回収すると、パイプの中心から分離して、大きい方の球体が地面に落ちて重低音と砂埃を巻き上げた!

 

「落ちた!?」

「石油の重さで落ちたのか?だとしても………!?」

 

分離したネウロイが地面に落ちたのを見て、どうやって退治すべきか考えていたその時、砂埃の中のネウロイがその姿を変貌させていた。

 

「カァーキャアーーーッ!!」

 

球体の上部から3本指の短い腕が生えて、二足歩行で胴体の下には瞳の無い顔、球体にはずらりと丸い印が赤く光り、パイプは太い尻尾となって地面を叩き、咆哮をあげた!

 

「か、怪獣になった!?」

「まさか、以前のベムスターのように……!?」

 

以前のベムスターの時のように怪獣の姿になったネウロイを見て芳佳が驚きの声を上げる。ネウロイが空になったタンクを尻尾のひと振りで吹き飛ばし、数百m先の建物に激突して破壊された!

 

[隊長、ドキュメントMATに酷似した怪獣を確認しました。]

 

フェニックスネストのエリーから通信が入り、各自のメモリーディスプレイにデータが送信される。データには丸い胴体にタコの吸盤のようなものを持った怪獣の画像が添付されており、確かにネウロイと酷似していた。苦い顔で、シャーリーが聞いた。

 

「な、何だよ、このタコみたいなやつは………?」

[レジストコード、『オイル怪獣 タッコング』。石油を主食とする怪獣です。]

「石油を………それであのネウロイも………!」

 

ネウロイが石油を吸収していた理由をリーネが悟ると、残ったもう1体が動き出して、光線を放ってくる!

 

「キィイイイイイイイイイイイ!!」

「くっ……!」

 

光線を障壁で防御するが、タッコングの方はオリジナルの吸盤にあたる体の赤い発光部から光線を放ち、周囲で爆発が起きる。そのままタッコングは、街に向けてのっしのっしと歩き出した。

 

「カァーキャアーーーッ!!」

「このままじゃあ………!」

「タッコングは俺たちで退治する!美緒と芳佳とリーネ、それにペリーヌはついて来てくれ!ミーナたちは、小さい方を頼む!」

「了解!!」

「「「G.I.G.!!」」」

 

リュウの指示に返答をする一同。分離したネウロイの方にウィッチたちが向かい、芳佳たちとガンマシンでタッコングの方へ向かった。

 

「でも退治って言っても………」

「ネウロイのボディには大量の石油が詰まっている………迂闊に攻撃すれば、あっと言う間に街は火の海ですわ……!」

 

リーネが呟き、ペリーヌも不安をあらわにする。しかし、アイハラ隊長は冷静に判断していた。

 

「芳佳たち、みんなトライガーショットは持ってきているな?」

「あ、はい………あ、もしかして!」

 

リュウに聞かれて腰に下げたトライガーショットを確認しながら答えた芳佳は、リュウの作戦を察した。

 

「これからタッコングを、9時の方角にある広い地点に誘導する。そこでネウロイに向けてスペシウム弾頭弾発射後、着弾の寸前にキャプチャーキューブで閉じ込めて爆発の被害を最小限に抑える!」

「なるほど!」

「そうと決まれば!」

 

リュウの作戦を聞き、ガンローダーとガンブースター、芳佳とペリーヌが先行してタッコングの進行方向の地面に攻撃、爆発を起こした。

 

「カァーキャァアーーーッ!」

 

タッコングは足を止めて、攻撃してきたウィッチ達を確認すると、両目から光線を放ってくる!ウィッチとガンマシンは難なく回避すると再度攻撃を、しかし直接ダメージを与えないように仕掛ける。タッコングは攻撃してきた相手に狙いを定めると、それを追うべく歩き始めた。

 

「カァーキャァアーーーッ!」

「タッコングは追いかけてきます!」

「狙い通りだ!」

 

タッコングが追いかけてくるのを確認すると、目的の地点まで誘導する。すると、タッコングは走りながらジャンプをしたかと思うと、手足と尻尾を引っ込めて球状になり、飛翔してきた!

 

「飛んだ!?」

「元が飛行するネウロイだから、飛べたのか!?」

 

一同が驚く中、飛行形態となったタッコングは発光部から赤い光線の『トゲ』を発生させて突撃してきた!急旋回して回避をすると、タッコングはUターンをして再度『星球レーザーストライク』を仕掛けた!

 

「カァーキャァアーーーッ!」

「危ない!」「芳佳ちゃん!」

 

その時、タッコングの進行方向に芳佳が背を向けるように飛行しているのを見たリーネとミライが声を上げた。ミライは咄嗟に左腕に『メビウスブレス』を発現させて、変身しようとした。しかし芳佳がその場で急上昇をすると突撃してきたタッコングはその場を通過、左回転をしながら落下した芳佳は、タッコングの背後に付いた!

 

「左捻り込み!!」

「初めて見た………」

 

芳佳の「左捻り込み」を目の当たりにしたペリーヌとカナタが感嘆の声を出した。芳佳はタッコングのトゲに機銃を掃射すると、トゲのいくつかがスパークを起こした。危うく石油に引火するのではないかと一瞬肝が冷えたが、タッコングは目的地点の地面に墜落した。

 

「カァーキャァアーーーッ!」

「今だ!メテオール解禁!!」

「パーミッション・トゥ・シフト!マニューバ!!」

 

運悪く上下反転するように墜落してしまったタッコングがジタバタと藻掻く様を見て、リュウはいち早く指示を飛ばした。ガンウィンガーがマニューバモードに変形すると、美緒たちもトライガーショットを手にするとブルーチェンバーにモードチェンジさせ、タッコングに狙いを定めた。

 

「スペシウム弾頭弾、ファイヤーッ!!」

「キャプチャーキューブ、発射!!」

 

そしてタッコングに向けてスペシウム弾頭弾が発射され、着弾する寸前にキャプチャーキューブがその身を捕らえた。瞬間、バリア内でタッコングは爆発四散するが、爆発の衝撃はバリアで抑えられ、周囲への被害は全くと言っていいほどなかった。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

[タッコングタイプ撃破。バリア解除後、消火活動に入る。]

 

「やるな、アイハラ隊長!」

「ええ、ちょっと危ない場面もありましたが、的確な指示でした。」

 

ディレクションルームでモニター越しに様子を見ていたアスカと我夢が、GUYSの戦いを称賛する。そばに立つムサシも、うんうんと頷いていた。そこに、エリーとミサキ女史が口を開いた。

 

「しかし、ビームを『トゲ』にするなんて……これまでのネウロイにない攻撃方法ですね。」

「はい。これはやはり………グア軍団が、ネウロイを『兵器』として研究していると考えるべきかと………」

「グア軍団………あれ、たしかエンペラ軍団も………?」

 

ムサシが疑問を口に出そうとしたその時、モニターの向こう、石油コンビナートで動きがあった。先ほど分離したもう1体が、芳佳たちのいるあたりに飛び込んできたのだ。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

バリアが解除された地点にガンマシンが消火用塩化ナトリウム剤を投下し、無事に消火したその時、目の前を赤い光線が通過した!

 

「うお!?」

「今のは………!!」

「ゴメンナサイ、あのネウロイ妙にすばしっこくて………」

 

ネウロイを追いながらミーナが謝る。ネウロイは高速で飛行し、シャーリーとルッキーニが掃射しながら追ってくるが、ネウロイはユラユラと揺れたり、急な方向転換をしたりする不規則な動きで回避してしまう。

 

「な、なんだよコイツ!?」

「んもー!ゼンゼン当たんないじゃーん!」

「まるでUFOだな………」

 

シャーリーがネウロイの動きに困惑し、ルッキーニが文句を叫ぶ。エーリカのシュトゥムやフリーガーハマーのロケット弾もあっさりと避けられてしまった。

 

「そこダッ!!」

ダンッ

「キィイイイイイイイイイイイ!!」

 

その時、『未来予知』でネウロイの進行方向を読んだエイラが機銃を放つとネウロイに命中!パイプ個所を破損したネウロイはよろけたかと思うと急上昇、上空でピタリと静止した。

 

「何だ?」

「観念したのか………?」

 

静止したネウロイに一同が不振に思っていると、ネウロイはパイプ部分が大きく広がってまるでマントのようにはためいた。

 

「マント!?」

「何か、てるてる坊主みたいな………?」

「あの姿は………!?」

 

変形したネウロイに驚く一同。球体のようなパーツと合わさっててるてる坊主のような見た目となった事で、ミライの脳裏にある怪獣が思い浮かび、そして球体に浮かび上がった赤い『顔』を見て、まさにその姿であると確信した!

 

「ギュィイーーーッ!!ギュィイーーーッ!!」

「ノーバ!?」

「こいつも怪獣ネウロイだったのか!!」

 

ネウロイであるために、本来の赤と黒のカラーリングが反転した外見となっているが、その姿は正しく『円盤生物 ノーバ』そのものであった!ノーバに変形したネウロイに一同があっけにとられていると、ノーバはマントを大きく広げて、ウィッチたちを包み込もうとしてきた!

 

「何!?」「これは………!?」

「マズい!!」

「ミライ!?」

 

ノーバの動きを見たミライが叫ぶ。リュウが止める間もなくミライは金色の光の粒子となってウィッチたちのもとへ向かう。その瞬間、ノーバは金色の光もろともウィッチたちをマントで包み込んでしまった!

 

「ギュィイーーーッ!!」

 

ノーバがひと鳴きするとマントを再度広げた。しかし、その下にウィッチたちの姿はなかった!?

 

「何!?」

[芳佳ちゃんたちは……!?]

 

リュウたちが困惑の声を出す。その時、フェニックスネストから通信が入った。

 

[アイハラ隊長、ノーバがみんなを包み込んだ瞬間、強大な次元エネルギーをマントの中に観測しました!]

「次元エネルギーだと!?」

[つまり、みんなはノーバによって、別の場所に転移させられてしまったんです!あのネウロイを倒したら、下手したらみんなが帰還できなくなります!]

「まさか、最初からそれを狙って………!?」

 

エリーと我夢の話を聞いたリュウは、ネウロイの、グア軍団の狙いを知って愕然とする。

目の前で、ノーバの姿となったネウロイはふわふわとたゆたうだけであった。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「う………」

「今のは………!?」

 

芳佳とエイラが気づくと、先ほどまでの石油コンビナートではなく、荒廃したビル街が目下に広がっていた。周囲にいる美緒やミーナたちも、突然のことに困惑していた。

 

「あのネウロイのマントに覆われたかと思ったら……」

「また次元転移か!?」

「そんな!?」

 

一同が困惑していると、芳佳は荒廃したビル街の向こうに山のように巨大な城があることに気づいた。

 

「何あれ………お城………?」

「クヮアッ!!」

「ア゛ア゛アッ!!」

 

芳佳が城の存在に気付いたその時、周囲にいつの間にか烏天狗を彷彿とさせる嘴を持った顔とコウモリのような翼をもった宇宙人『暗黒星人 バビラー』が百人近く飛翔して接近してきた!

 

「何!?」

「落ちろ、地球人ども!!」

「きゃあッ!!」

「リーネちゃん!」「サーニャ!!」

 

バビラーたちはウィッチたちに襲い掛かってきた!突然の襲撃にリーネやサーニャは碌に対処できず地面に向けて落ちていき、バルクホルンやシャーリーは抵抗するものの数に押されて次々に落ちていった。助けに行きたくとも、バビラーたちがそれを阻んだ。

 

「みんな!!」

「クヮアッ!!」

「キャアッ!!」

「宮藤!!」

 

芳佳が叫んだ瞬間、バビラーの1体が接近して掴みかかり、そのまま地面に落とそうとしてくる!咄嗟に美緒がバビラーの背中を切り裂いて引きはがすが、芳佳は上昇が間に合わず地面に向かっていく!

 

「宮藤!!」

 

きりもみ回転をしながら落下していく芳佳が美緒が向かうが、間に合わない!

 

がしっ

「………え?」

 

しかし芳佳は、地面にたどり着くよりも前に何者かに抱きかかえられて墜落を免れた。誰かと思い見上げてみれば、そこには見知った銀色の瞳があった。

 

「え!?」

「メビウス………いつもより小さい…?」

 

地球人サイズのメビウスは頷くと、芳佳を抱えたまま(思いっきりお姫様だっこである)地面に降り立つ。美緒も近くに降り立つと、周囲に飛んでいたバビラーたちが浮足立ったようにざわつき始めた。

 

「ウ、ウルトラマンだ!」

「なんでウルトラマンが………連れ込まれたのは、ウィッチという地球人だけではないのか!?」

「コウメイ様、ウルトラマンです!地球人と一緒にウルトラマンメビウスが!!」

 

バビラーの一人が腕に巻いた通信機でどこかに報告をする。しかし通信先は全く慌てた様子もなく返答をした。

 

[問題はないわ。あなたたちはウィッチを地面に落としたら、そこから撤収しなさい。]

「しかし………」

[もうそろそろ、『試験』が始まるわ。それに、そのあたりには、まだ『連中』がいるはずだし。]

「!?しょ、招致いたしました………!」

 

バビラーはそれを聞くと、周囲のバビラーたちもその場から離れ始める。

 

「行ったか………」

「まだ上空を旋回しているな…あれでは碌に飛ぶこともできない………」

『みんなともはぐれちゃったし………』

「ていうか、ウルトラマンって大きさ変えられるのか……?」

『え、はい。あまりやらないんですけどね……』

 

美緒が芳佳を下したメビウスに聞くと、メビウスは頬を書きながら答えた。その時、周囲に不気味な気配を察知して、緊張が走った。警戒をしていると、周囲の物陰からナメクジのような2mほどの異形と昆虫を思わせる2足歩行の化け物数匹が現れた!

 

「キィイィイーーー」

「キィイィイィーーー」

「ギュシャァアア………」

 

「コイツらは!?」

『スペースビースト!?こんなところに何で…!?』

 

周囲から現れた不気味な異形―――『ブロブタイプビースト ペドレオン(クライン)』と『インセクトタイプビースト バグバズンブルード』を見たメビウスが思わず声を上げた。

 

「スペースビースト?」

『かなり凶悪な宇宙怪獣です!2人とも僕から離れないで!』

「は、はい!」

「ギュシャァアア!!」

 

メビウスが簡単に説明をすると、バグバズンブルードが2匹飛びかかってくる!メビウスは咄嗟にメビュームブレードを伸ばすと横一文字に切り裂くと2匹は仰向けに倒れ、そこにメビウスはメビュームスラッシュを放って焼却した。

次にペドレオン(クライン)が触手を伸ばして襲い掛かるが、美緒がそれを切り捨てるとペドレオン(クライン)はそれに怯み、その隙をメビウスは見逃さず、メビュームシュートを放ってその身を焼き尽くした!

 

「キィイィイィ………!!」

『ありがとうございます。』

「いや……というか、ちょっと念を入れすぎな気が………」

 

倒したバグバズンとペドレオンに念入りに光線を放ったメビウスの様子に美緒が聞く。メビウスはメビウスブレスを構えると、ミライの姿に変わると、説明をした。

 

「……スペースビーストは、細胞の1片でも残っていれば、再生が可能なんです。だから、完全に細胞を焼却しないと、短時間で再生してしまいます。」

「そうだったのか………!」

「以前、ダークザギという邪悪な魔神によって光の国の周辺に出現したときも、この特性ゆえに多くの犠牲が出ました。異次元から来たノアというウルトラマンが来てくれなければ、大変な事になっていました。」

 

スペースビーストの特性を聞いて戦慄する芳佳たち。その時、物陰からバグバズンブルードが1匹飛び出して来た!

 

「ギュシャァアアーーーッ!!」

「!?」

「しまった……!!」

 

ミライが気付いた時には、バグバズンブルードは芳佳に向かってその爪を振り下ろしてくる!

 

ガガガガガッ

「ギュシャァアア………!?」

「「!?」」

「え………!?」

 

しかし、その場に銃声が響くと、バグバズンブルードが被弾して倒れてしまう。何事かと思い周囲を見ると、紺色のセーラー服の少女が硝煙の燻る機関銃を構えていた。

 

「あの娘は……!?」

「大丈夫ですか!?」

 

ミライは少女の姿―――セーラー服の下にはスクール水着―――を見て、彼女がウィッチであると感づいた。美緒が少女に問いかけた。

 

「君は、ウィッチか?どこの所属だ?」

「あ、はい!第502統合戦闘航空団「ブレイブウィッチーズ」所属、雁淵 ひかり軍曹です!」

「雁淵………?もしや、孝美の?」

「はい、妹です!」

 

美緒が雁淵 ひかりと話していると、芳佳とミライは不思議そうにしていた。

 

「え?坂本さんの知り合いですか?」

「いや、姉が教え子でな……ほら、前に宮藤に佐世保まで治療を頼んだ…」

「ああ、あの時の!」

「え!?お姉ちゃんを!?」

 

納得したように手を叩く芳佳に、ひかりは自分の姉を治療してくれたのか芳佳だと知って驚いたかと思うと、頭を深く下げた。

 

「あの、お姉ちゃんを助けてくれてありがとうございましたッ!!」

「あ、いえ……それほどのことは………」

 

急に頭を下げ始めるひかりに芳佳は畏まる。美緒とミライはその様子を笑ってみていたが、ミライははたと気づき、バグバズンブルードの死体のもとに向かってトライガーショットのレッドチェンバーに変形させて焼却させた。

 

「ところで、ひかり一人か?他に誰かいないのか?」

「あ、そうだった!私と、あと2人います。」

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

[はあ!?ニパたちもいんのカヨ!?]

「は、はい……今、調度合流しました……」

 

ひかりに案内されてとある廃ビルの2階で菅野 直枝とニッカ・エドワーディン・カタヤイネン(ニパ)の2人と合流すると、芳佳たちと離れた場所にサーニャと共に不時着したエイラが、芳佳からの通信を聞いて思わず声を上げた。美緒とミライは現在、ひかりと直枝、ニパに現状の説明をしていた。

 

「……よーするに、オレたちはそのグア軍団とかいう連中の侵略計画に巻き込まれたってのか?はた迷惑な話だぜ!」

「まったくだね………そいつらがネウロイ利用してるのもトンデモないけど………」

「とりあえず、ここから出られる可能性が出てきましたね………」

「お前たち、よく5日間耐えたな。」

 

話を聞いた直枝、ニパ、ひかりは話のスケールの大きさ故かいまいちピンときていない様子であったが、同じ世界の味方と出会えてほっとしていることが分かった。美緒はそんな3人を労った。

 

「しかし、ネウロイだけではなくスペースビーストまで配下に置いているとは………ジュダは恐ろしく力をつけているということか………?」

「ん?外が騒がしいような……?」

 

ミライがグア軍団の戦力について考えていると、美緒が外の様子を窓からこっそりと覗いた。そして、すぐにその顔が驚きのものに変わった。

 

「!?なっ……あれは………!?」

「どうしました?」

 

美緒の声に気付いて、芳佳たちも窓から外を見て、驚愕した。

外の道路には、ターバンのようなもので顔を覆った二本角の『グア兵』に先導されて、数十人の宇宙人たちが団体でぞろぞろと歩いていたのだ!

 

「な、なんだアイツらは………!?」

 

直枝が小さく驚いていると、一団の中で十数名いるシャドー星人のリーダーらしき男が、レキューム人とムザン星人の後ろからグア兵に声をかけた。

 

『おい、いつまで歩かせるんだ!?』

『グア!もうこの班のスタート地点グア!開始時間まで待つグア!』

 

グア兵はそう答えると、宇宙人の一団は立ち止った。

 

「シャドー星人にザンパ星人………アトランタ星人、ボーグ星人とカーン星人に………あれはザタン星人か………見たこともない宇宙人もいる………」

 

ミライが一団の宇宙人の名前を呟く。レキューム人とムザン星人の他にもガルト星人にナターン星人、黒いロングコートと十字架の描かれたとんがり頭巾で顔を隠した宇宙人がおり、何やら殺気立っていた。

すると、宇宙人の集団の目の前の空間にモニターが映し出された。

 

[―――あー、あー、マイクテス、マイクテス………あ、OK?オホン、諸君、わしがグア軍団首領、宇宙の帝王ジュダ・スペクターである!!]

「!?ジュダ………!?」

「あれが……!?」

 

モニターに映った、金色の鎧を身に纏い、不気味な笑みを浮かべた顔と2本角を持った宇宙人・『幻影宇宙帝王 ジュダ・スペクター』にミライたちは驚く。まさか、このような形で敵の首領にお目にかかれるとは思ってもみなかった。

 

[今諸君がいるのは、我が『次元城』の周囲に6つあるエリアの1つ『第2エリア:廃墟ゾーン』だ。ここは主に、軍団員の訓練に使用されるエリアだ。]

 

ジュダは『次元城』と呼ぶこの場所の地図を表示させて説明する。

 

[さて、まずは、これを見てくれたまえ。]

 

そういうとジュダは、モニターの映像を切り替えた。そこにはなんと、芳佳たちウィッチ14人の顔写真がずらりと並んでいるではないか!

 

「え!?」

[こいつらは、『ウィッチ』と呼ばれる特殊な能力を持った地球人だ。情けない、信じられないなんて声も上がるかもしれないが、既にこのウィッチどもに我が軍団やエンペラ軍団の宇宙人や怪獣、ロボットが倒されている。非常に油断ならん連中だ。]

『なんだと!?』

『こんな地球人の小娘どもが……!?』

 

ジュダの告げたウィッチの実力にザワつく宇宙人たち。ジュダはつづけた。

 

[こんな小娘たちが、今諸君のいる第2エリアに隠れている。というわけで、グア軍団に入団を希望する君たちに、最終選考の内容を伝えよう。なに、簡単なことだ。]

 

 

 

 

 

[このウィッチたちを、1人でも多く殺すのだ!!]

 

 

 

 

 

「!?」

「何だと!?」

 

ジュダの告げた内容に血の気が引く芳佳とひかり。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

[獲物を奪い合うもよし、協力して狩るもよし、各々の好きにしてくれたまえ。]

 

「何てことを………!」

「私たちをハンティングの獲物にしようというのか、ふざけおって!!」

 

同じく宇宙人の集団から隠れたミーナとバルクホルンが憤慨する。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

[制限時間は無制限としておく。なお、ウィッチどもの反撃を受けて死傷したとしても、当方は一切責任を負わないものとする。]

 

「反撃していいってこと?」

「だな。なめやがって………!」

「返討ちにしてやろーか!」

 

シャーリーとエーリカ、ルッキーニが、銃を構えて不敵に笑う。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

[1人でも多く殺した者には、我がグア軍団の一員として迎え入れてやろう。入団後は思う存分その力を使い戦果を挙げれば、全宇宙侵略後は絶対の地位を約束しようではないか!]

『おお!』『さすがジュダ様だ!』

 

「そんな………!?」

「なんてことを……!?」

 

リーネとペリーヌが息を呑む。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

[先ほども言ったように、ウィッチの実力は計り知れない。油断せずに狩りに勤しんでくれたまえ。]

『ふん、異能といえど所詮は地球人だ。』『軽ーく狩ってやろうぜ!』

 

「これはマズいナ………」

「早く、芳佳ちゃんたちと合流しないと………」

 

自身の得物を手に嗤う宇宙人たちを陰で見ながら、エイラとサーニャが冷や汗を垂らしていた。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

[それでは………グア軍団入団試験最終科目『魔女狩り』を、開始するッ!!]

ジャァア~~~ン

『『『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!』』』

 

モニターの中でジュダの宣言と共に銅鑼が鳴り響くが、宇宙人たちの雄叫びがそれをかき消してしまった。その様子を隠れて見ていた芳佳とひかりは怯え、直枝は怒りのこもった目で宇宙人たちを見ていた。

 

「何考えてんだアイツ………!」

「私たちは、このために連れ込まれたのか………!!」

「ジュダ………ッ!!」

 

美緒はジュダの企みを知り、唇を噛んだ。ミライは、モニターで高笑いするジュダをキッと睨んだ。

 

 

 

 

 

つづく




第二十二話です。

・発進シーンは『タロウ』や『レオ』のOPを見ながら書きました。回転しながらリフト上昇とか、まんまですね。

・ネウロイが分離してタッコングとノーバに変形。カンパネラを画像で見た時に、分離してタッコングになったら面白いと思い、今回出してみました。
 ノーバは今回、ジュダの根城に連れ去るべく登場させました。

・前半はウルトラマンがいなくても防衛チームで怪獣退治ができるという描写。リュウさんも隊長として立派にやっています。

・『ザ☆ウルトラマン』よりバビラー登場。ウィッチたちに空中戦できる宇宙人をと探したところ、バビラーが調度いいと思いまして。好きな宇宙人だしかっこいいデザインなんだけど、マイナーなのが残念。
 あと、何気にメビウスは等身大で戦うのは初めてですね。

・グア軍団の根城・次元城。城を中心にいくつかのエリアがあるのは、64の『爆ボンバーマン』のステージがイメージ元。

・感想でも性格が変だと言われていたジュダ様ですが、『アンドロメロス』版のノリがいい性格をベースに『ノリがいいけど冷酷』っていう、『ワンピース』に一人はいるタイプのボスになりました。イメージとしては金獅子のシキですね。今作のジュダもある意味境遇似ていますね。

・『魔女狩り』の標的にされてしまったウィッチたち。次回、宇宙人軍団との戦いになります。

では、また次回。


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第二十三話 魔城からの脱出(前編)

次元城でジュダが最終試験開始の宣言をした、同じ頃………

 

 

 

 

 

GUYSジャパンの一同は地上に降りると、石油コンビナートの上空でふよふよと浮かぶノーバ型ネウロイを、地上で監視していた。

 

「あのネウロイ………どうして攻撃もしないで、ああやってふよふよ浮いてるだけなの……?」

「アイツは次元を転移させる『ゲート』の役割をしている………つまりは………」

「誘っているんだ………「芳佳ちゃんたちを助けたかったら、ゲートを通って来い」って………確実に罠だ………!」

 

カナタは浮かぶノーバを恨めし気に睨みつけた。その時、彼らの背後でエンジンの起動音が響いた。振り返ってみれば、ガンウィンガーが垂直離陸をしている所だった。

 

「アイハラ隊長!!」

「無謀です!1人で行くなんて………!!」

 

慌てた様子でカナタがメモリーディスプレイに叫んだ。

 

[あの先に美緒たちがいるんだ。ミライがいるとはいえ、敵に捕まっているんだ。]

「危険です!僕たちも………」

[全員で行ったら、誰が地球を守るんだ!そっちは頼んだぞ!]

「「「………!!」」」

 

リュウの一括に黙るカナタ。リュウはノーバの目の前まで上昇すると、キッと睨みつけた。

 

『―――みんなを救いたいのは、俺たちもだぜ!』

「!?」

 

その時、リュウたちの脳内に声が響いた。驚いたリュウが空を見上げてみれば、そこにはダイナ、ガイア、コスモスの3大ウルトラマンが両手を伸ばして飛んで来ていた。

 

「あんたら………!」

[すいません隊長、一応止めはしたんですけど………]

 

直後に、エリーから申し訳ない通信が入ってきた。カナタが、空で静止した3人に向けて大声を出した。

 

「みなさん、行く気ですか!?」

『ああ、恐らくは連中のホームグラウンドだ。みんなも心配だし、リュウさん一人でも危険だからね。』

『僕たちが行けば、少しは勝算上がると思うよ。』

 

リュウに向けてガイアとコスモスが答えた。ダイナは右拳を右手に打ち付けた。

 

『それに、俺たちは『ウルトラ兄弟』なんだろ?兄弟だったら、助け合うもんだぜ!』

「みんな………!」

 

思わず笑顔になるリュウ。だがすぐにノーバに真剣な眼差しでノーバを睨むと、3人のウルトラマンと共に向かって行く。ノーバはそれに気付くとマントを大きく広げて包み込んでしまう。

 

「ギュィイーーーッ!!」

 

ノーバのひと鳴きと共にマントを広げると、そこにはウルトラマンたちの姿はなかった………

 

 

 

 

 

第二十三話 魔城からの脱出(前編)

 

グア軍団入団希望宇宙人集団

ヴァジュラリン

奇獣 ガンQ

怪獣酋長 ジェロニモン

怪獣人 プレッシャー

超獣人間 コオクス

怪異変形獣 ネウロイ(GX-09)

登場

 

 

 

 

 

グア軍団の根城である『次元城』の一角に捕らわれてしまった芳佳たち。そこではグア軍団への入団を希望する宇宙人軍団の入団試験が行われており、ジュダは芳佳たちを標的に『魔女狩り』をすると宣言した。

 

『へへっ、地球人ごとき楽勝だぜ!』

『奇怪な力を使うというが、我々の力があれば恐るに足らずよ!』

 

ザンパ星人とアトランタ星人が下品に笑いながら、獲物(=ウィッチ)を探る。

その様子を、半壊した店のカウンターから覗いていた芳佳とひかりは、自分たちの命を狙う宇宙人たちに怯えていた。

 

「外は宇宙人だらけだね………」

「…これじゃあ、逃げようにも見つかっちゃう………」

「例え逃げられても、この次元から脱出できないと意味がないな………」

 

直枝が忌々しく呟く。ミライも外の様子を見て、この次元城からの脱出を思案していた。その時、考え事をしていた美緒が、通信機のスイッチを入れて話し始めた。

 

「みんな聞いてくれ。」

「坂本さん?」

「先ほどあの宇宙人たちが来た時、あの『城』と反対の方向から歩いてきた。つまり、そちらの方向に乗り物か、あるいは転移装置のような物があるのだと推測できる。」

「そうか、あの『城』まで行けば、元の次元に帰る術も見つかるか。」

 

美緒の提案に一同も納得する。通信機の向こうで[流石は少佐ですわ!]とペリーヌが称賛していた。

 

「そうと決まれば!」

 

そう言ってニパが立ち上がったその時、ニパの背中が棚に当たって倒れそうになる!

 

「あっ!?」

「やば………!!」

 

慌ててミライと直枝が棚を押さえたので倒れる事はなく、一同はホッと胸をなでおろした。

 

ガシャンっ!!

「「「「「「え?」」」」」」

『『『『『『あ。』』』』』』

 

しかし、店の外で『芋長』と書かれたこの店の看板が、派手な音を立てて落下した。

それに驚いた宇宙人たちが音のした方に視線が集まり、呆気なく見つかってしまった。

 

『いたぞ!!こっちだッ!!』

『『『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!』』』

「ぎゃー!こっち来たーーー!!」

「ニパてめーこらーーー!!」

「ごめーん!!」

 

一斉に迫ってくる宇宙人軍団に驚きつつも、店から脱出して星人たちから逃げだす。

 

「と、とにかく!合流するぞ!城の真逆にある、赤い塔で合流だ!」

[了解!!]

 

慌てて美緒が通信機に向けて指示を叫ぶ。後方から銃声が聞こえたかと思うと、シャドー星人が手にした銃を発砲し、銃弾が顔のすぐ横を掠めていった!

 

「ひえっ……!?」

「マジに殺しにかかってきた!?」

 

芳佳と直枝がシャドー星人たちの銃撃に戦慄する。その目の前にムザン星人とザタン星人が立ちふさがり、手にした銃から光線を放つ!

 

「危ない!」

バチンッ

『!?』『何だと!?』

 

しかし、咄嗟に芳佳とひかりが障壁を張って防御をした。宇宙人たちが驚いた隙を突くように、ミライと美緒がトライガーショットとスーパーガンを放った!

 

『キ………ブ……ッジ…』

 

ムザン星人が短く悲鳴を上げて、ザタン星人と共に倒れて動かなくなる。

 

『今のがウィッチの………!』

 

シャドー星人のリーダーが実際に見たウィッチの異能に感心と戦慄するが、芳佳たちはそのままたおれた星人の屍を横目に、その場を走り去っていった。

 

『逃がすな!追え!!』

 

シャドー星人のリーダーが叫ぶと、シャドー星人をはじめとした星人達は芳佳達を追いかけ始めた。

 

『………』

 

その様子を、覆面とロングコートの星人は静かに見ていた………

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

『ヒャッハー!』『待ちやがれーーー!!』

 

同じ頃、ミーナとバルクホルンはフルフェイスヘルメットにライダースーツを着た『キル星人』の乗るバイク集団に追われていた。なんとも世紀末な叫びを上げて迫って来るキル星人の突撃をミーナが回避するが、同じくバイクに乗っていた『ツルク星人』数人が跳び下りて斬りかかってきた!

 

『プォーオッ!!』『プォーオッ!!」

「!?」

 

ツルク星人は飛びかかると共に刀身となった両腕を振り下ろしてきたが、咄嗟にミーナは障壁を張って防御、ツルク星人たちは自身の剣を防がれた事に驚いていると、その隙にバルクホルンが手にした機関砲のグリップ部分で殴り吹き飛ばした!

 

『ブォッ!?』

『何!?』

『ツルク星人を一撃で!?』

 

バルクホルンの攻撃を目の当たりにして、ナターン星人やゼラン星人が驚きの声を上げたが、吹き飛ばされたツルク星人はキル星人のバイク群に突っ込み数台が転倒、ピット星人とナターン星人、数名のイルドを巻き込んで大破、爆散した!

 

「行くぞ!」

「ええ!」

『逃がすか!!』

 

バイクが爆破されたのをみたバルクホルンとミーナがその場から走り去るが、ゼラン星人と、生き残った数人のキル星人とイルドが追いかけてくる。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「おい、今ので何人だ?」

「何人だっけ?10人より先は数えてないや。」

「さすがに多すぎたかな~………」

 

一方のシャーリーは、強行突破しようと機関銃で宇宙人達を撃破してきたが、十数人のヴァイロ星人とバーミン星人、ベル星人を倒したあたりで銃弾が残り少なってきたため現状を確認していた。

 

「これ以上弾の無駄使いはできないな………こっからはトライガーショットで………」

『ギャギャアーーーッ!!』

「うお!?」

 

シャーリーが言いかけたその時、瓦礫の陰から氷像のような宇宙人・グロスト星系人が飛び出してきた!グロストは両手から冷凍ガスを発射して、3人を攻撃してくる!

 

「ぴゃあッ!!」

 

咄嗟にルッキーニが障壁を張ると同時に、固有魔法の『光熱』を発動させて防御をした。すると、グロストの体表が溶けはじめたため、驚いたように飛び退いた。

 

『ギャ!?ギャギャアーーーッ!?』

「あれ?」

「何か、想像以上に効いてないか?」

 

ルッキーニとシャーリーは、想像以上にグロストに効果があった事に呆気に取られた。

 

3人は知る由もないのだが、グロストは寒冷惑星であるグロスト星系JA52番星の出身であり、そのために地球の焼き芋にすら怯むほど熱に弱いのだ。故に、ルッキーニの『光熱』はグロストにとって天敵であったのだ。

 

思わぬ好機をエーリカは逃さず、トライガーショットを引き抜いて眉間を撃ち抜いた!

 

『ギャギャアーーーッ!!』

 

撃ちぬかれた星人は断末魔を上げると仰向けに倒れて爆散をした。しかしその爆発に気が付いたのか、息つく暇もなくターラ星人とミステラー星人、ヴァイロ星人十数人が集まってきた。

 

「早くみんなと合流しないとね!」

「だな!」

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

『へっへっへっ…』

『大人しくしてろよ、お嬢さん』

「くっ………!」

 

同じ頃、リーネとペリーヌは周囲をジャダンとレボール星人の集団に囲まれていた。ジャダンは蛮刀を手に下劣な笑みを浮かべ、レボール星人は手にレーザーガンを持って迫ってきており、リーネはトライガーショットを手にしつつも怯えていた。ジャダン達が蛮刀を構えて斬りかかろうとしたその時、ジャダンの1人に何処からか放たれた光線が命中して地面に伏した。

 

『何!?』

 

何事かとジャダンが見た先には、1人のサーペント星人が両腕に装備した光線銃を構えていた。

 

『ソイツらは、ワタシの得物だ!』

『何だと!?』

『抜け駆けは許さんぞ!!』

 

ジャダンのリーダー格が怒りを露わにすると、周囲からシャプレー星人にドロン星人、ユーリー星人も集まり始め、互いに睨み合い始めた。痺れを切らしたのか、シャプレー星人が手にした光線銃でレボール星人を撃ち抜いたのを皮切りに星人たちは互いにつぶしあい始めた!

 

『ウギャアッ』

『おのれ小癪な!!』

『邪魔をするな!!』

「い、今のうちです!」

「ええ!」

 

宇宙人たちの小競り合いに驚いていたペリーヌであったが、リーネに諭されて走り出す。背後で爆発が起きてユーリー星人が倒れた事に目もくれず、争いに気を取られる宇宙人たちに気付かれないまま路地に逃げ込んだ。

 

『………』

 

2人が逃れたのを確認したサーペント星人は小さく頷くと、両手の光線銃を放って最後のレボール星人とドロン星人を撃ち殺した。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

『逃がすか!!』

『ええい、なぜ当たらんのだ!?』

 

逃げるエイラとサーニャに向けてカナン星人とズール星人が光線銃を、キリエロイドが火球を放つが、2人は後ろに目があるかのように回避して全く当たらず、ズール星人は苛立ちを露わにする。

その時、2人の目の前にバルダック星人とプラチク星人が立ちはだかってきた!

 

「サーニャ!」

「うん!」

 

エイラが叫んだ瞬間、バルダック星人とプラチク星人が凍結噴射煙とプラスチック液を吐いてきた!しかし、サーニャが障壁を張って防御をして、障壁に当たってプラスチックと氷が固まった。

 

『!?』

『何だと!?』

 

バルダック星人とプラチク星人が驚いて攻撃の手を止めた瞬間、エイラの手の機関銃が火を噴いて2体を絶命させた!

 

『クソ!あの2人を取り囲め!』

『さすがにこの数で囲めば動けまい!』

 

光線銃を構えたインベド人の1人が叫ぶと、数十人が2人の周囲に集まり始めた。遅れを取るまいとカナン星人たちも飛び出して来たのを見て、サーニャは困惑をした。

 

「こ、これじゃあ………」

「!?サーニャ、避けろ!!」

「え!?」

 

エイラがサーニャを庇い飛び出した瞬間、インベド人の集団を巻き込んで吹き飛ばしながら、何かが突進してきた!

 

『ウェウェウェウェウェウェウェ!』

『うぎゃああーーー!?』

 

突進してきたのは両肩に大きな角を持ったカーリー星人であった。カーリー星人は肝心のエイラとサーニャに避けられても止まることなく、インベド人の大半とキリエロイドを巻き添えに廃ビルに突っ込み、ビルを半壊させた!

 

『うわあーーー!?』

 

崩れたビルにカナン星人やインベド人が下敷きになったのを見てゾッとするサーニャ。しかし、瓦礫の中からカーリー星人が大したダメージもないまま現れると恐怖を覚えた。

 

『ウェウェウェウェウェウェウェ………』

「ひっ………!」

「化け物カヨ………!」

 

不気味に笑うカーリー星人にエイラやズール星人をも戦慄した。

しかしその時、崩壊したビルの反対側から爆発が起きたかと思うと、爆発の中からアトランタ星人とカーン星人が吹き飛んできた。吹き飛んできた星人にカーリー星人が驚いていると、爆炎から芳佳やミライたちが飛び出してきた。

 

「あ、イッルだ!」

「え、ニパ!?」

 

エイラは芳佳たちやニパが現れた事に驚いていると、後ろからシャドー星人たちが追いかけてきていた。

 

『他の班の連中か!』

「!?カーリー星人まで………!?」

 

一方、カーリー星人に気付いたミライが小さく驚いていた。カーリー星人は芳佳たちに向けて突進を仕掛けてくると、芳佳は咄嗟に障壁を張るが衝撃で後ろに吹き飛ばされてしまう!

 

「きゃあ!?」

「宮藤!!」

「宮藤さん!!」

 

吹き飛ばされた芳佳に美緒たちが駆け寄ろうとしたが、シャドー星人の集団がそれを阻んだ。倒れた芳佳に向けてレキューム人とズール星人が迫って来るが、ミライが咄嗟にトライガーショットを放って倒し、美緒はシャドー星人を数人斬り捨てた。

 

『おのれぇ!!』

 

逆上したザンパ星人が美緒に襲い掛かるが、美緒は烈風丸で受け止めて斬りかかる。ザンパ星人は胸に大きな傷を作って仰向けに倒れて動かなくなった。

 

『こ、こいつ………!?』

『ウェウェウェウェウェウェウェ!!』

 

ザンパ星人が倒れたのを見たボーグ星人が襲い掛かろうとしていたが、そこにカーリー星人が突っ込んできて肩の角が腹部を貫通する!そのままカーリー星人は美緒に突っ込んでくるが美緒は咄嗟に飛び退き、カーリー星人はシャドー星人を数人巻き込んで止まった。

 

『ウェウェウェウェウェウェウェ………』

『ぶ、不気味な奴だ………!』

「今のうちに!」

「は、はい!」

 

カーリー星人の不気味な笑いに一同が怯えていたが、ミライはその気を逃さずこの場を去ろうと話しかけて走り去る。後ろからインベド人とシャドー星人が怒号と共に追いかけてくる。

 

「………弱気を吐くわけじゃねーけど………」

「?」

 

走りながら、直枝が口を開いた。

 

「正直、初めてネウロイと戦った時よりも「怖い」って思ってるよ………」

「………」

 

不安そうな顔の直枝に、ミライたちは何とも言えなかった。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「これで参加者の大半は脱落、残ったのは集団参加の連中に偶然生き残った者、それにガルド星人やカーリー星人みたいな実力者ね……」

『まったく、地球人だからって油断するなと、ジュダ様も仰っていたと言うのに………』

『油断しすぎ。後、ウィッチの力、予想以上。』

『思いの他、ウィッチの能力が強かったようだな………しかし、それでもここまで数が減るとはな…………』

 

ここまでの戦いを次元城のモニターで見ていたジュダと七星将たちは、星人達の為体(ていたらく)にため息をついていた。

 

『地球人を嘗めている連中もそうだが、互いに潰し合う奴らまでいるとはな………』

『まあ、連中の中には獲物を選り好みしている者もいるようだが……ん?』

 

呆れたヤプールが呟いていたが、ふと、何かに気が付いたのか画面から目を離した。

 

『どうしたヤプール?』

『どうやら、ブンブン煩い夏の虫が、飛んで火に入ってきたようだ………』

『夏の虫………他のウルトラマン共か!!』

 

ヤプールの言葉にズウォーカァが反応し、ジュダもそれを聞いてほう、と口を開いた。

 

『わざわざ、我らの懐に飛び込んできたか………』

『見上げた根性。でも、無謀。』

『ジュダ様、ウルトラマン共は我が超獣軍団で―――』

『いや、この場はコウメイの宇宙人軍団の方が………』

『怪獣、いつでも出せる。』

『ウオオオオオ!!』

 

七星将達は我こそはと次々に名乗り出て騒がしくなる会議室。そこにジュダが手を挙げて制止すると、7人はピタリと黙った。

 

『先ずは連中を他のエリアに飛ばし、各エリアでお前らの指揮する軍団がそれぞれ丁重にもてなして差し上げろ。』

『『『『「はっ!!」』』』』

 

ジュダはそう命ずると、末席の黒いモノリスに目をやった。

 

『案内は頼むぞ、『呪の星』。』

『御意。』

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「芳佳ちゃん!」

「リーネちゃん!」

 

合流地点に決めていた赤い塔―――どこか東京タワーに似ている―――の元に、芳佳やリーネ達が集まってきていた。ミーナは集まったウィッチたちを見渡した。

 

「これで全員ね。後は帰る手段を……」

『追い付いたぞ!』

 

声のした方向を見れば、周囲にウィッチを追って宇宙人達も迫ってきていた。

 

『コイツら、全員集まるために走っていたのか………』

『いつの間に連絡を………』

 

追い付いたシャドー星人とジャダン達が呟く。周囲ではヴァイロ星人やゼラン星人、ボロボロのシャプレー星人達も手にした得物を構えて臨戦態勢であった。

 

「妙にボロボロのヤツもいるが………」

「ああ、それはさっき宇宙人同士で戦っていたからかと………」

『ウェウェウェウェウェウェウェ!!』

 

ペリーヌが説明をしようとしたその時、カーリー星人が美緒に向けて突進を仕掛けてきた!

 

ガシンッ

『!?』

「え………!?」

 

しかしその時、突然上空から覆面とコートの宇宙人が現れると、突進してきたカーリー星人の右肩の角を片手で掴んでその進行を止めた!

 

ウララララララ………

『ウェ………!?』

「な、何を………!?」

 

一歩も動けないカーリー星人と美緒が困惑していると、星人は甲高い奇怪な音を出しながら口を開いた。

 

『………この女は、ワチキの獲物ヴァヴァ!』

「何?」

「女、か………?」

 

美緒や星人たちはそのしゃがれた声から宇宙人が女性である事を知るが、星人はカーリー星人の角を掴んだまま、簡単にへし折ってしまった!

 

『!?ギッ!ウギギャァアアアアアア!?』

『な………!?』

『か、片手で………!?』

 

角を折られた痛みでもんどり打つカーリー星人を見て、他の星人たちは驚愕をする。覆面の宇宙人は折った角を適当に放り投げた。

 

「何故………?」

『この白い服の奴は、あのウィッチの中で一番強いジュラ。』

「え?」「さっきと別の声………?」

 

美緒に向き直った星人の、先ほどとは全く別の冷酷そうな声で話した事に驚いた。

 

『アタシの相手に相応しいリン!』

「また違う声!?」

「アイツ、あの服の中に3人で肩車でもしてるのか?」

 

しかし今度は幼さの残る声を発した事に驚き、直枝は疑問に思った事を口に出した。

 

「お前は、一体………?」

『ええい、調子にのるな!!』

 

美緒が星人に問いかけようとしたその時、ゼラン星人が光線銃を星人に向けて放つ!星人は放たれた光線を左手で受け止めるが、そのまま爆発と共に炎上してしまった!

 

「な………!?」

 

美緒は炎上する星人に唖然としていたが、炎の中から人影が現れたかと思うと、ゼラン星人に向けた左手から火炎弾を発射して命中させた!

 

『ウギャアーーー!?』

「強い………!」

『無粋なマネをするから、そうなるヴァヴァ。』

 

燃え盛るゼラン星人は断末魔を上げて倒れると、コートと覆面が燃え尽きて星人のその姿が露わとなった。

 

ウララララララ………

「!?あの姿は………」

 

それは、怒り、笑い、無表情の顔が縦に並んだ、トーテムポールを思わせる石像のような宇宙人であった。先ほどの奇怪な音を発しながら、額の赤いランプと金色の目を上から順番に点滅させていた。

 

「何あれ?」

「トーテムポール?」

 

奇怪な姿の宇宙人にシャーリーやエイラが疑問を口に出したが、見覚えのありすぎるその姿を見たミライが、その名前を声に出した。

 

「ジャシュライン!?」

『!?ジャシュラインだと!?』

『ジャシュラインは、地球でウルトラマンメビウスに倒されたはずでは………!?』

 

ミライの口から出てきた『ジャシュライン』の名前に、周りの星人たちもざわつき始めた。

しかしジャシュラインと呼ばれた宇宙人は一番上の顔のランプと目を光らせて、声を荒げた。

 

『ダァ~レがジャシュラインヴァヴァ!!』

「え?」

『ジャシュラインじゃ、ないのか?』

 

一同が呆気に取られていると、今度は真ん中の顔のランプと目が光った。

 

『ワラワたちを、あのような一族の恥さらしと一緒にしないでほしいジュラ。』

『不愉快だリン!』

「ジャシュラインの、同族………?」

 

今度は一番下の顔のランプと目が光って答えると、ミライも驚いた。

 

『フン、ワチキらをあんな奴と間違われるのは嫌だし、ちゃんと自己紹介するヴァヴァ。』

『ワラワたちは、誇り高き宇宙三面魔像の一族!』

『『ヴァジュラリン三姉妹』だリン!』

 

上から順番にヴァジュラリンと名乗った宇宙三面魔像に息を呑む芳佳たち。

 

「ヴァジュラリン………」

「三姉妹………!?」

『………ってコラ!ナァ~ニ阿呆な事言ってるヴァヴァ!!』

 

しかしその時、一番上の長女が一番下の顔に向けて怒鳴った。

 

『ドォ~コが三姉妹ヴァヴァ!オマエ『男』だろうがヴァヴァ!!』

「「「「「え?」」」」」

『ごめんなさいリン、お姉様………つい………』

『まったくこの愚弟は!ちっとも男らしくないジュラ……』

 

ヴァジュラリン三姉妹もとい三姉弟のやり取りに困惑する一同。

 

「何で同じ体で、性別が違うのさ………?」

「宇宙人に、私たちの常識は通じないんダロ。よく知らないけど。」

 

ヴァジュラリンたちのやり取りに、呆れたエーリカとエイラが話す。ふと、ニパがヴァジュラリンに話しかけた。

 

「あのさ、ヴァジュラリンだっけ?一ついいかな?」

『ん?何だヴァヴァ?』

「同じ体にお姉さん2人がいるんだから、弟がそういう性格になるのは当たり前じゃない?」

『『『え?』』』

「「「「「確かに………」」」」」

 

ニパの指摘にキョトンとするヴァジュラリンと、納得したように頷く一同。ヴァジュラリンはしばらく考えたかと思うと、

 

『………あの、今まで男らしくないとかさんざん怒鳴って、悪かったヴァヴァ………』

『許してほしいジュラ………』

『あ、いえ………受け入れてくれたなら良いリン………』

「思いの他素直だ!?」

「ていうか、それをわざわざ言いに行くニパさんもすごい………」

 

素直に末弟に謝る姉2人に呆れる一同。当のヴァジュラリンは一通り身内で話し合うと、美緒に向き直った。

 

『まあ、それはさておき……ワチキたちがここに来たのは、強いやつと戦うためヴァヴァ!』

『グア軍団に入れば、強者と戦う機会も増えるジュラ。』

「何?」

『早速強敵と思える奴と出会えて、本当にラッキーだリン!』

 

ヴァジュラリンがそう言い放つと、美緒に向き直った。

 

『そこで、一番強そうなお前に、1対1の決闘を申し込むヴァヴァ!』

「なっ………!?」

 

ヴァジュラリンに決闘を申し込まれた美緒は困惑し、ウィッチたちも息を呑んだ。ヴァジュラリンはゴキゴキと手を鳴らしていると、今まで地面に伏していたカーリー星人がゆっくりと立ち上がってこちらを睨んできた。

 

『ウェウェウェウェウェウェウェ………!!』

「あ!?」

 

カーリー星人に気付いたひかりが声を上げたのと同時にカーリー星人は赤い煙に包まれて、みるみるうちに巨大化していく!

 

「ビヤァアーーオーーー!!」

 

巨大化して尻尾の生えた怪獣のような姿になったカーリー星人が、こちらを見下ろしてきた!

 

「怪獣になった!?」

「いや、星人の中には巨大化して姿が変わる者もいるんだ。」

(ミライさんたちが、ウルトラマンになるのと似たようなものかしら………)

『アイツ………せっかくの決闘に水を差しやがったヴァヴァ!』

「ビヤァアーーオーーー!!」

 

ミライの説明を聞いてペリーヌが内心解釈をしていると、ヴァジュラリンは憤慨してカーリー星人を睨んだ。カーリー星人は目下のヴァジュラリンを睨み返すと、残った左の角から光線を発射して、地上を爆発させた!

 

『うおっと!?』

『『『うぎゃぁああああああああああああああ!?』』』

「ビヤァアーーオーーー!!」

 

美緒たちは光線を回避してヴァジュラリンは腕で光線を弾くと、イルドの集団とミステラー星人に光線が着弾して吹き飛んでしまった。カーリー星人はひと鳴きすると、ヴァジュラリンたちを踏み潰さんと歩き始めた!

 

ドォンッ

「!?」

「ビヤァアーーオーーー!?」

 

しかしその時、カーリー星人の顔面が爆発して後退をした!何事かと思っていると、上空からジェット機のエンジン音が響いた。

 

「ガンウィンガー!」

[大丈夫かミライ!]

「リュウさん!」

 

メモリーディスプレイから発せられたリュウの通信を聞いて、ミライが声を上げた。それに次いで風を切るような音と共にダイナ、ガイア、コスモスも飛んで来て、3人のウルトラマンがカーリー星人の目の前に並び立った!

 

『ダァアッ!!』

『ジュアッ!!』

『ハァアッ!!』

「ダイナたちもか!!」

「な、なんだあれ!?」

「巨人………!?」

「味方、なの………?」

 

初めて見たウルトラマンを見上げたひかり達が驚きの声を上げた。それに気づいた芳佳が答えた。

 

「あれは、ウルトラマン。」

「ウルトラマン……?」

「宇宙の平和を守る、光の戦士だよ。」

「光の、戦士………」

 

芳佳から話を聞いた光が、ウルトラマンたちを見上げて呟いた。

 

『う、ウルトラマンだ!』

『ウルトラマンが、3人も………!』

『ええい、次から次へと邪魔が入るヴァヴァ!!』

『水を差されすぎて、表面張力で溢れる寸前リン!!』

 

一方の宇宙人たちはウルトラマンの出現に狼狽え、ヴァジュラリンは憤慨していた。カーリー星人はウルトラマンの出現に驚いたものの、直ぐに臨戦態勢となってダイナに向けて突進を仕掛けてきた!

 

「そいつの弱点は眉間だ!」

『!!』

 

巻き添えを恐れて宇宙人たちが逃げ惑う中、ミライがダイナに向けて叫ぶとダイナは小さく頷く。ダイナはカーリー星人が突き刺さんとしてくる角を回避すると、アッパーカットをカーリー星人の顔に叩き込むと、カーリー星人は上半身を持ち上げた。ダイナはすかさずビームスライサーを眉間に向けて撃ち込み、カーリー星人の眉間で爆発を起こした!

 

「ビヤァア………」

 

カーリー星人は小さく鳴き声を上げると、うつ伏せに倒れてこと切れた。

 

『つ、強い………!』

 

ダイナの戦いを見ていたシャドー星人が呟いた。ヴァジュラリンやガルト星人は強敵の出現に闘志を燃やしていた。

 

 

 

 

 

―――キヤハハハハハ!!キヤハハハハハハハハハハ!!

 

 

 

 

 

「「「「「!?」」」」」

『『『『『!?』』』』』

 

その時、戦場に不気味な笑い声が響いた。声の出所を探っていると、地面からズルリと、巨大な目玉に手足が生えたような怪獣が現れた!

 

「キヤハハハハハ!!」

「きゃあーー!?」

「な、なんだよアイツ!?」

「気色悪………!!」

 

その不気味な出で立ちに、ウィッチたちは悲鳴を上げた。その怪獣を見たガイアこと我夢は、驚いたように怪獣の名前を口に出した。

 

『ガンQ!?』

『がんきゅー?』

『知っているのか、ガイア?』

 

怪獣・ガンQの名前を聞いたダイナとコスモスが尋ねた。

 

『僕の世界の怪獣、というか、コイツは………』

「キヤハハハハハハハハハハ!!」

 

ガイアの説明を終える間もなく、ガンQが鳴き声を上げた瞬間、その目玉を大きく開いた。すると、まるで目玉から重力が発生しているかのように、ウルトラマンたちを吸い込み始めた!

 

『!?な、何だこりゃ!?』

『吸い込まれる………!?』

 

ウルトラマンたちは何とか耐えるが、徐々に引き寄せられていく。そして引きずり込まれていくのは、足元のウィッチや宇宙人たち、そしてガンウィンガーもであった。

 

「きゃあ!?」

「何だよこれは………!?」

『ヴァヴァ~~~!?』

 

ウィッチたちは何とか引きずり込まれまいとするが、吸い込む力が強まり、ついに一同はガンQの目玉にまるで金角・銀角の瓢箪のように吸い込まれてしまった!

 

「キヤハハハハハ!!」

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

―――爬區阿葉寸蛇袈砺㰦裏………爬區阿葉寸蛇袈砺㰦裏………

「うう………」

「ここは………?」

 

気が付くと薄暗くだだっ広い荒野に倒れていたエイラとニパ、エーリカ、ペリーヌの4人。

周囲には卒塔婆を思わせる梵字の書かれた木の板が所々に刺さり、ひんやりとした空気に包まれていて、どこからか不気味な呪文のような物が聞こえてきていた。

 

「な、何ですの、ここは………」

「なんだか不気味ダナ………サーニャは!?」

 

エイラはサーニャがいない事に気付いて周囲を見渡していると、遠くからこちらを呼びかける声が聞こえた。

 

「おーーーい!」

「あ、我夢さん!」

「ガム?」

「あ、サーニャ!」

 

走ってきた我夢とサーニャにエーリカとエイラが反応すると、ニパは初対面の我夢に小首を傾げていた。

 

「大丈夫だった?」

「うん。」

「えーと……?」

「ああ、さっき少佐から聞いたと思うけど、こっちでお世話になってる人。」

「ああ、そうなんだ。」

 

ニパが納得したように頷いたその時、巨大な影が5人を覆った。

 

「!?」

「何………!?」

「ガァアーッ!!」

「フッフッフッフッフッ………」

 

見上げた先には、赤や白、青の派手な色の羽根を頭に生やした『怪獣酋長 ジェロニモン』と、不気味な笑い声をあげる『怪獣人 プレッシャー』であった。怪獣と星人に見下ろされた我夢たちは慄くが、その時、空中に不気味な紫色の炎が現れたかと思うとガンQの姿となった。

 

『ジェロニモン、プレッシャー、儀式に戻れ。』

「!?」「喋った……?」

「グゥ………」

「フフフ……」

 

宙に浮かぶガンQの命令を聞いてジェロニモンとプレッシャーはその場を後にした。

 

「今の声、間違いない………」

「我夢さん、何か知っているの…?」

「キヤハハハハハ!!」

 

我夢がガンQを睨んで呟いていると、ガンQは紫色の炎に包まれて、みるみるうちに小さくなっていった。

 

「あのガンQは、僕の世界の500年前にいた呪術師が生み出した『呪いの化身』なんだ。そして、その呪術師こそが………」

 

そして紫色の炎が晴れると、そこには白い短髪で派手な服装の男性が、奇妙なポーズで浮かんでいた。

 

「あの男、魔頭 鬼十朗だ!」

「その通りだ。久しいな、ウルトラマンガイア!」

「え?」

 

魔頭は笑いながら挨拶をした。ニパは、魔頭が我夢をウルトラマンと呼んだことに驚いていたが、我夢やエイラたちは魔頭に気を取られていたため気づいていなかった。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

ミライと芳佳、美緒、リーネ、ひかりは、気が付くと荒廃した遺跡のような場所にいた。

 

「ここは………?」

「あの怪獣に、空間転移させられたのか………?」

「大丈夫、リーネちゃん?」

「うん。」

 

ミライと美緒が周囲を見渡すと、近くにはガンウィンガーが不時着をした様子で止まっており、ハッチが開いてリュウが這い出てきていた。

 

「リュウさん!」

「ミライ、美緒たちも無事だったか………」

 

リュウとミライが会話を交わしていると、遠くで戸惑った様子のシャドー星人やジャダンの集団にターラ星人の姿が見えた。

 

「他の宇宙人もいるな……さっきのジュダの話からすると、ここは他のエリアのようだ……」

「何だろうここ?妙に暗いけど………!?」

 

芳佳が空を見上げたその瞬間、青ざめた表情になった。

空には、緑色の光を放つ黒い竜巻のようなものが渦巻いており、その中央には赤く光る結晶が見えた。

 

「こ、これって……!?」

「ネウロイの、巣……!?」

「まさか、ヴェネツィアから消えた巣か!?」

「何だと!?」

 

驚いた美緒たちの話を聞いて、リュウとミライも驚く。

 

『その通りだ。』

「「「「「!?」」」」」

 

その時、こちらに声をかけてくるものがいた。そこにはカニの甲羅を思わせる体表と不気味な目を持ち、足元まである白いマントを着たヤプールが、黒いプロテクターを着た赤いトサカと嘴、3本指を持った怪人を複数人連れていた。

 

「ヤプール!!」

「ヤプールだと?」

「後ろは、コオクス……!」

 

リュウがヤプールの名前を告げると、ヤプールはフンと鼻を鳴らした。

 

『ネウロイは超獣と同等の戦力になると目をつけてな。ウィッチたちの世界でデータを取り終えた後、ジュダ様に巣ごと献上したのだ。』

「じゃあ、ヴェネツィアに巨大な巣が新たに出現したのは………!?」

「ヤプールの仕業だったのか!」

 

ヤプールの企みに戦慄する一同。ヤプールはその通りだと返答すると、鎌になった右手を上げた。

 

『ウィッチは受験者どもに任せるが、貴様ら2人はわれらが相手だ!行け、コオクス!!』

「「「「「ガァアーッ!!」」」」」

 

コオクス達は鳴き声を上げると、両手を上げて襲い掛かってきた!

 

 

 

 

 

つづく




第二十三話です。

・宇宙人軍団は、瞬殺された奴も含めて出すメンツを選んでからどこでどう戦うか考えて出してます。おまけで名簿も投稿しますので、そちらも良ければ参考にしてください。
 ムザン星人の断末魔は『キ………ブ……ッジ…』→『キブッジ』→『キブツジ』という駄洒落w
 バイクに乗ったツルク星人は故・内山まもる先生の漫画版から。グロストVSルッキーニは相性が悪かった。
 ドロン星人は円谷プロの『戦え!マイティジャック』に出てきた宇宙人なんですが、スーツがシャプレー星人の改造なのは割と有名な話。ユーリー星人はピニヤ星人同様にウルトラセブンの没宇宙人。

・『メビウス』本編のエンペラ軍団は「M78星雲宇宙の集大成」という印象が強かったので、今作のグア軍団は「M78星雲を含めた多次元宇宙の先鋭」というイメージで構成しています。一応枠としては『M78』、『ティガ&ダイナ』、『ガイア』、『コスモス』、『ネクサス』、『マックス』、『その他(ザ☆等)』の7枠で、七星将もこれに該当します。

・ジャシュラインの同族、ヴァジュラリン登場。ジャシュラインは結構好きなキャラだし、設定上は宇宙人なので同族がいてもおかしくないと思い登場させました。
 ジャシュラインがチンピラっぽいキャラだったので、戦闘狂ながらも武人気質なキャラにしました。性別が女性なのはウィッチサイドのライバルキャラが欲しいと思って。末っ子が男の娘なのはもちろんあの紙ゲーからw

・ガンQ/魔頭鬼十郎登場。最近のガンQは割とゆるキャラに片足突っ込んでる感がありますが、今作では『呪いの産物』という面を強調しよう&敵幹部に呪術師が欲しいと思い、魔頭を幹部格として登場させました。

・コオクスは、七星将の各配下に戦闘員ポジションを用意しようと思って登場させました。ちょうど人間に化けられるので、今作では地球人サイズにもなれると解釈しました。後、ヤプールのマント姿は『メビウス&ウルトラ兄弟』の没デザインが元ネタ。


では、また次回。


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【参考資料】グア軍団入団試験参加者名簿

二十三話に登場する宇宙人の紹介です。

一応、ネタバレ注意です。


※=集団参加

 

【1班】

甲冑星人 ボーグ星人

宇宙ゲリラ シャドー星人※

復讐怪人 ザンパ星人

宇宙怪人 カーン星人

変身怪人 アトランタ星人

変身宇宙人 ザタン星人

メタル宇宙人 ガルト星人

極悪ハンター宇宙人 ムザン星人

レキューム人

宇宙三面魔像 ヴァジュラリン

 

【2班】

変身怪人 ピット星人

侵略宇宙人 キル星人※

宇宙怪人 ゼラン星人

奇怪宇宙人 ツルク星人※

侵略宇宙人 ナターン星人

パラサイト宇宙人 イルド※

 

【3班】

音波怪人 ベル星人

銀河星人 ミステラー星人

ねこ舌星人 グロスト星系人

昆虫星人 バーミン星人

空間移動宇宙人 ターラ星人

ヴァイロ星人※

 

【4班】

暗黒星人 シャプレー星人

マグネチック宇宙人 ドロン星人

ユーリー星人

宇宙怪人 レボール星人※

侵略星人 ジャダン※

憑依宇宙人 サーペント星人

 

【5班】

オーロラ怪人 カナン星人

プラスチック怪人 プラチク星人

雪男星人 バルダック星人

宇宙参謀 ズール星人

暗闇宇宙人 カーリー星人

宇宙海賊 インベド人

炎魔戦士 キリエロイド

 

 

 

【おまけ】

以下、登場作品ごとに分けた一覧

 

【「ウルトラセブン」より】

変身怪人 ピット星人

音波怪人 ベル星人

オーロラ怪人 カナン星人

甲冑星人 ボーグ星人

侵略宇宙人 キル星人

宇宙ゲリラ シャドー星人

プラスチック怪人 プラチク星人

暗黒星人 シャプレー星人

復讐怪人 ザンパ星人

ユーリー星人

【「戦え!マイティジャック」より】

マグネチック宇宙人 ドロン星人

【帰ってきたウルトラマンより】

宇宙怪人 ゼラン星人

雪男星人 バルダック星人

宇宙参謀 ズール星人

銀河星人 ミステラー星人

【ウルトラマンAより】

宇宙怪人 レボール星人

【ウルトラマンタロウより】

ねこ舌星人 グロスト星系人

宇宙怪人 カーン星人

【「ウルトラマンレオ」より】

奇怪宇宙人 ツルク星人

暗闇宇宙人 カーリー星人

昆虫星人 バーミン星人

変身怪人 アトランタ星人

【「ザ☆ウルトラマン」より】

侵略星人 ジャダン

宇宙海賊 インベド人

【「ウルトラマン80」より】

変身宇宙人 ザタン星人

【「平成ウルトラセブン」より】

メタル宇宙人 ガルト星人

【「ウルトラマンティガより」】

炎魔戦士 キリエロイド

極悪ハンター宇宙人 ムザン星人

侵略宇宙人 ナターン星人

パラサイト宇宙人 イルド

【「ウルトラマンマックス」より】

空間移動宇宙人 ターラ星人

【「ウルトラマンメビウス」より】

憑依宇宙人 サーペント星人

宇宙三面魔像 ヴァジュラリン

【「ウルトラQ darkfantasy」より】

レキューム人

【「ウルトラセブンX」より】

ヴァイロ星人

 

 

 

 

【第二十三話時点での生存者】

侵略宇宙人 キル星人

宇宙ゲリラ シャドー星人

暗黒星人 シャプレー星人

侵略星人 ジャダン

宇宙海賊 インベド人

メタル宇宙人 ガルト星人

空間移動宇宙人 ターラ星人

憑依宇宙人 サーペント星人

ヴァイロ星人

宇宙三面魔像 ヴァジュラリン

 




文字数の関係で、多少おまけをつけ足しました(^_^;)


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第二十四話 魔城からの脱出(中編) 【Aパート】

【2021年12月29日追記】
後編書いている内にかなり長くなってしまったため、中編を2パートにしました………ペース配分うまくなりたい………


次元城で試験が始まった頃、光の国に帰還したタロウたちは―――

 

 

 

 

 

『タロウ兄さん、ヒカリにマックスも無事だったか!』

『はい、心配かけてすみませんでした。』

『ユリアン、ヒカリを頼む。』

『はい!』

 

出迎えてきたレオと80にマックスが返答をすると、タロウは少しふらついたヒカリをユリアンに預け、光の国の街並みを見渡した。

 

『ロボット軍団が攻めてきたと聞いていたが、光の国に被害はなさそうだな。』

『はい。いずれも衛星軌道上で撃破することができました。ゾフィー兄さんがウルトラキーの使用を判断してくれたのが大きかったです。』

 

タロウがレオから報告を受けていると、ふとマックスは、『ウルトラスペースポート』に1隻の宇宙船が停まっている事に気が付いた。

 

『あの宇宙船は…ナックル星人の!?』

『何?』

 

マックスはそれが、ナックル星人のものであるとすぐに分かった。それに気が付いた80が、マックスに説明をした。

 

『あれはロボット軍団の襲撃前に、キングが持って来たんだ。「ウルトラマンガイア」のいた宇宙に、無人で乗り捨てられていたそうだ。』

『キングが…』

『そうか、あの時エリアルベースから消えたのは、これを回収するためだったのか………』

『今、ゾフィー隊長たちが内部を調べている。次元を移動できる事から、もしかしたらグア軍団に繋がる情報が見つかるかもしれないからね。』

 

80の説明になるほどと頷くマックスとタロウ。そこに、脱いだ兜を脇に抱えたメロスとアウラが、タロウたちに気が付いて声をかけてきた。

 

『よおタロウ!マックスも元気そうだな!』

『メロス支部隊長!アウラ支部隊長も、ご無沙汰してます!』

 

マックスはそう返答するが、アウラは何処か不安そうな顔をしていた。

 

『?どうかしたか、アウラ?』

『タロウ………実は、S・P5星雲支部で預かっている委託隊員2名が、行方不明なのよ……』

『なんだって!?』

『半人前に毛が生えたような連中で頼りないけど、私なりに目をかけていた2人でね………光の国に向かう途中で、次元の歪みに飲み込まれたのを、他の隊員が目撃したそうよ………』

 

消えた隊員の心配をするアウラ。タロウも心配しているのか、アウラに話しかけた。

 

『それで、その2人は?』

『「ピカリの国」と「TOY1番星」出身の2人よ。』

『!?あの2人か………!!』

 

 

 

 

 

第二十四話 魔城からの脱出(中編)

 

グア軍団七星将

グア軍団入団希望宇宙人集団

宇宙工作員 ケイル

宇宙工作員 ケダム

誘拐宇宙人 レイビーク星人

強化型バルタン星人(Ver.5.2)

コブ怪獣 オコリンボール

登場

 

 

 

 

 

ミーナとバルクホルン、シャーリーが気づいた時には、2人のキル星人とシャプレー星人と共に金属製の広い廊下らしき場所にいた。

 

「ここは………?」

『動くな!』

「!?」

 

バルクホルンが周囲を探っていると、バラバラと複数の足音と共に銀色の顔と青い目を持ち、手に光線銃を構えた宇宙人―――『宇宙工作員 ケダム』が、何人も現れてその場を包囲した!

 

「コイツらは………!」

『ウルトラマンはいないようだな………この軍港エリアで暴れられては困る。ウィッチと受験者は、他のエリアに転移させよう。』

(軍港………?)

 

ケダムの1人が言った言葉にミーナが反応するが、キル星人とシャプレー星人はここから移動するように説明を受けていた。銃を握る手に力が入るが、下手に動けばケダム達の光線銃が火を噴くだろうことは安易に想像できた。

 

「そこまでだ!!」

『!?』

「アスカか!!」

 

しかしその時、彼女たちに向けて叫ぶ声がした。それがアスカ・シンのものであると気付いたシャーリーが、声を弾ませた。

 

「助けに来たぜッ!!」

 

ケダム達は声のした方角を見た後に、モーゼによって割られた紅海のごとく左右に分かれて道を開けた。果たしてそこには、アスカ・シンの姿があった!

 

 

 

 

 

………ただし、他のケダムに捕まってロープで縛られていたが。

 

 

 

 

 

「「………」」

「いや、捕まった状況で言われても………」

「………ゴメン。」

 

まったくもって締まらない状況に呆れるシャーリーに謝るアスカ。ケダム達も呆れていたが、直ぐに気持ちを切り替えた。

 

『ま、まあ、ウルトラマンも捕まったし……そこのヤツらと一緒に他のエリアに連れて行くぞ。』

 

リーダー格らしきケダムの発言に頷くケダム達。そのままアスカたちをどこかに連れていこうとした。

シャプレー星人も着いて行こうとしたが、キル星人たちが移動しない事に気が付いた。

 

『?どうした、早く移動して―――』

 

そこまで言った瞬間、キル星人が手にした光線銃をシャプレー星人に向けると引き金を引いた。

 

『ひゅッ………!』

『『『!?』』』

 

シャプレー星人は短く悲鳴を上げて倒れると、騒動を察知したケダム達やアスカ達が振り返った。しかし、キル星人たちは素早く接近をするとケダム達の腹部を光線銃で打ち抜き絶命させた!

 

「何!?」

「どういう事………!?」

 

アスカとミーナが戸惑っていると、銃を頬里投げたキル星人の1人が口を開いた。

 

『まったく、ウルトラマンがついていながら、かっこ悪いねー』

「なに?」

 

そう言うと、キル星人はヘルメットを外した、ヘルメットの下は短い金髪に、褐色肌の少女の顔があった。

 

「!?お、お前は!?」

「知り合いかバルクホルン?」

「えーと、もしかして彼女は………?」

 

その少女の顔を見たバルクホルンは驚きの声を上げた後、呆れたようにため息をついた。少女はライダースーツのジッパーを下げるとそこには紺色の軍服を着ており、懐から出した帽子を被ると、こちらに向けて笑みを浮かべた。

 

「お前もこの城に迷い込んでいたとはな………『ヴァルトルート・クルピンスキー』。」

「やあ、久しぶりだね♪」

 

クルピンスキーと呼ばれた少女は笑いかけてきた。シャーリーにロープをほどいてもらいながら、アスカが小首を傾げた。

 

「どちら様?」

「えーと、ひかりさんたちと同じ、第502統合戦闘航空団『ブレイブウィッチーズ』の1人で、私たちと同じカールスラントの出身なんです。」

「お前も、こっちに迷い込んでいたのか………」

「まあね。ひかりちゃんたちとははぐれちゃったけれど、この人に助けられてね。」

 

クルピンスキーがそう言うと、もう1人の大柄なキル星人もヘルメットを外した。そこには武骨な顔の大男がいた。

 

「俺もここに迷い込んでな。たまたまコイツらと鉢合わせしたんだ。」

「それでグア軍団の情報を探っていたんだけど、ひかりちゃんたちやみんなが狙われているのを知ってね。こっそり君たちの倒したキル星人の服を拝借して、他の宇宙人に紛れ込んでいたんだ。」

「そうだったのか………」

 

バルクホルンが頷いた時、騒ぎに気付いたのかこちらに近づいてきているのが分かった。

 

「ここにいてはまずいな。この場所を離れよう。」

「そうだな。」

 

アスカはそう言うと、バルクホルンもそれに応えて一同はその場から離れた。

 

「あ、そういえばあんたは………?」

「ああ、俺は『ゴライアン』ってんだ。」

 

ゴライアンはそう名乗った。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

『見つかったか!?』

『いや、こっちにはいない………!』

『奴らめ、どこに………!!』

 

軍港エリアでは、ケダム達がアスカたちを探していた。しかし、未だ見つからずイラついたように地団太を踏んだ。

 

「騒がしいぞ。隠れている連中にバレたらどうする?」

『『『!?』』』

 

そんなケサム達の元に、2体のケダムを引き連れた1人の少女が現れた。背中まである黒髪をサイドアップにして、その金色の目つきは鋭く、刃を思わせた。

 

『ケ、ケイル隊長!』

『すみません………』

「まったく………こちらのブロックにはいなかった。恐らく他のブロックに向かっただろう」

『りょ、了解しました。』

 

ケイルと呼ばれた少女に対して畏まるケダム達。どうやら、彼らの上官のようだ。

 

「お前たちは残りのブロックを探せ。私は反対側を探す」

『はい!』

『分かりました!』

 

敬礼をしてその場を去るケダムたち。ケイルもケダムを引き連れてその場を後にした。

 

「………行ったみたいだな。」

「ええ。」

 

物陰から顔を出したアスカとミーナが、ケダム達が去ったのを確認する。その後ろでシャーリーたちも姿を出した。ゴライアンもその大柄な体を物陰に隠れていたのかは不明だが………

 

「さて、まずは状況を整理しましょうか。」

 

周囲の安全を確認したミーナの言葉に、全員が顔を見合わせた。今ミーナたちがいるのは、大きな窓のある部屋であった。

 

「おそらくここは、ジュダの言っていた6つのエリアの1つでしょうね。」

「さっきの宇宙人、ここを『軍港』って言っていたけれど……?」

 

シャーリーはそのことを思い出しながら、窓の傍にまで行って外の様子を伺った。その時、外の光景を見て目を見開いた。

 

「な、何だよあれ!?」

「どうした?」

 

バルクホルンやミーナも窓にまで行くと、そこには巨大な、ウルトラマンよりもはるかに大きなロボットが並んでいたのだ!

 

「な!?あれは………!?」

 

ロボットは両腕が巨大な人型、楯を思わせる鳥のような物、それに翼竜を思わせる首の長い者の3種類であった。アスカもそれを見て驚いていると、クルピンスキーが口を開いた。

 

「アレが、グア軍団の最大戦力である『怪獣戦艦』か………」

「怪獣戦艦だと………!?」

「戦艦っつーか、ロボットだぞ………ウルトラマンが乗ったらちょうど良いサイズじゃねえか………!」

 

クルピンスキーが怪獣戦艦の説明に、バルクホルンとアスカが呆れと恐れの混じった感想を口にした。クルピンスキーに、ゴライアンが続いた。

 

「奥からキングジョーグ、ベムズン、ギエロニアの3タイプだ。既に艦隊と呼べるほど量産がされているらしい………」

「あんなのに攻められたら、地球はひとたまりもないぞ………!!」

「クルピンスキー、お前何でそんなに詳しいんだ………?」

 

バルクホルンがクルピンスキーに聞くと、彼女はいたずらっぽく笑った。

 

「ボクたちが何もしないで隠れていたと思うのかい?グア軍団について、ある程度は調べていたのさ。」

「そうか………」

「けど艦隊って事は、あれを動かす宇宙人も揃っているのか?」

『その通り!』

 

アスカが疑問を口にしたその時、一同の背後から声がしたかと思うと、いびつに尖った銀色の頭を持った宇宙人と中国戦国時代の参謀を思わせる緑色の着物を着た、ふくよかであごまであるどじょうヒゲを垂らした男が、先ほどのケイルとケダム、それに鳥のような頭の宇宙人―――『誘拐宇宙人 レイビーク星人』を引き連れて現れた!

 

『俺はレギュラン星人のヅウォーカァ将軍!グア軍団七星将『嫌の星』にして、怪獣戦艦艦隊総司令官だ!』

「ほっほっ、同じく『策の星』コウメイよ♪」

 

ヅウォーカァ将軍とコウメイはそう名乗るが、いきなりの事でアスカたちはキョトンとしていた。クルピンスキーは、名乗った二人の名乗りを聞いて口を開いた。

 

「彼らがグア軍団の幹部『七星将』か………」

『ほう……その小娘は、この短期間に随分と詳しく調べたのだな。』

 

ヅウォーカァが感心したように言うが、当のクルピンスキーは少し複雑そうに笑うと、懐から1冊の冊子を取り出した。

 

「いや、この『グア軍団入団希望者向けパンフレット』に書いてあったけど?」

『『「「「「パンフレット!?」」」」』』

 

その事実を聞いて、その場にいた全員がずっこけた。厳密に言えば、クルピンスキー以外の全員だが。

 

「7つある軍団や次元城の施設案内、それに七星将それぞれのコメントが書かれていたよ。」

「こんなもの配ってたのか……」

「何考えてんだよ、お前らの上司………?」

 

クルピンスキーから受け取ったパンフレットを見ながら呆れるミーナとシャーリー。アスカがヅウォーカァ達に聞くと、ヅウォーカァとコウメイは顔を見合わせて話し合っていた。

 

『オイ、このパンフレット作成ってお前らの所の担当だったよな?ちゃんと中身見てなかったのか!?』

「い、いやー………私も忙しかったものだからねー………部下に任せちゃったわよ………」

『部下って……どいつだそれは!?』

 

ヅウォーカァがコウメイに詰め寄って聞くと、恐る恐るケイルが手を上げた。

 

「あの……パンフレットの担当私です………」

『お前か!!』

「すみません……なるべく詳しく書いた方がいいかと思って………」

『流石に限度があるだろ!!』

 

ケイルが申し訳なさそうに謝ると、ヅウォーカァは怒鳴りつけた。アスカやバルクホルンだけでなく、ケダムやレイビーク星人も呆れていた。

 

「まあまあ、その件は後にして………」

『コウメイ、お前の部下はちゃんと見ておけよ!』

「それはごめんなさいねぇ………それよりも今は、あのウィッチとウルトラマン達をどうするか考えましょう。」

『むう……それもそうだな……おい!奴らを始末しろ!』

 

コウメイが話を戻すと、ヅウォーカァに命じられたケダムとレイビーク星人は光線銃を構えた。

 

『フォーフォーフォーフォーフォー』

『『!?』』

「何!?」

 

しかしその時、両者の間に割って入るように宇宙人が現れた!

 

「ば、バルタン星人!?」

 

それはセミのような顔をしているが口吻が豚鼻のように見えて、両手が大きなハサミを持った宇宙人・バルタン星人であった。バルタン星人はアスカ達にハサミを向けると、ハサミの間から光弾を発射してきた!

 

ドガアアン!!!

「くっ!」「きゃあああ!!」

 

光弾の直撃は逃れたが、爆破で吹き飛ばされてしまい、ガラスも数枚吹き飛ばされた。

 

「バルタン星人という事は………」

『どういうつもりだ『覇の星』!?』

 

ヅウォーカァが叫んだ瞬間、いつの間にか部屋の隅にいた『覇の星』が口を開いた。

 

『何、役割分担をしようと思ってね。』

『何だと!?』

『ウルトラマンは私の部下に任せて、君たちはウィッチに集中してくれたまえ。』

 

それだけ言うと、『覇の星』はその場から消えてしまった。

 

「そういう事ね………」

『せめて前もって相談しろよ………』

 

コウメイとヅウォーカァはため息をつくと、ケダムとレイビーク星人は再び光線銃を構えた。ケイルもハンドガンタイプの光線銃を抜くと、構えた。

 

「まずいな……」

 

シャーリーが呟いた時、アスカはバルタン星人と割れた窓を見て、立ち上がった。

 

「やろ~……本当の戦いは、ここからだぜ!」

「アスカ!?」

 

驚くシャーリーに構わず、アスカはバルタン星人に飛び掛かった!咄嗟の事でケダム達は動くことが出来ず、アスカはバルタン星人共々窓の外へ落ちていった!

 

『フォオオッ!?』

「アスカさん!?」

「何という事を………!?

 

ミーナが悲鳴に似た声を出したその時、アスカの体が光り輝き、その身体をウルトラマンダイナへと変貌させた!

 

「あれがウルトラマン……!」

 

その姿を見たクルピンスキーが思わずつぶやいた。ダイナとバルタン星人は落下しながら格闘戦を繰り広げていたが、やがて地面に着地した。

 

『ジュアアッ!!』

 

 

着地と同時に両社は巨大化をしてファイティングポーズを取ると、バルタン星人はハサミを振りかざして来た!

 

『フォーフォーフォーフォーフォー!』

『デュワッ!!』

 

向かってくるハサミに対して拳を突き出すと、バルタン星人はその衝撃で吹っ飛んだ。その隙を突いてビームスライサーを放つが、バルタン星人は難なく避けた。しかし、避けられたビームスライサーは背後のキングジョーグの足で爆発を起こし、その装甲に傷をつけた。

 

『!?き、キングジョーグが………!!』

 

バルクホルン達相手に戦っていたヅウォーカァは、キングジョーグに傷が付いたことに気付いて声を荒げた。その背後では、ミーナが放たれた光線銃を避けて、レイビーク星人の1人を手にしたトライガーショットで撃ち抜いていた。

 

『ぐえっ!』

「後ろがガラ空きですよ?」

『この野郎!』

 

今度は別の個体が光線銃を撃ってきたが、ミーナは即座にシールドを張って防御、その隙にシャーリーによって狙撃された。

 

「そらよっと!」

 

ゴライアンは襲い掛かって来たレイビーク星人2人を片手で首根っこを掴むと、無造作に放り投げて他のケダムに激突させた。見た目に違わぬ怪力っぷりである。

 

『ダァッ!!』

『フォーフォーフォーフォーフォー!!』

 

同じ頃、ダイナとバルタン星人は、待機中の怪獣戦艦の足元で戦っていた。バルタン星人が光線を放つが、ダイナは避けたり弾いたりして、周囲の怪獣戦艦に当たって爆発が起きた。

 

『あ、アイツ!バルタン星人と戦いながら怪獣戦艦を破壊する気か!!』

「それでアスカは外に………!」

 

その様子を見ていたヅウォーカァはダイナの狙いに気が付いて焦り始め、一方でシャーリーはアスカの考えに感心していた。

 

『フォーフォーフォーフォーフォー!』

「デアアアッ!!」

 

バルタン星人はそれに気づいていないのか光線を乱射するが、いずれも命中せず、逆に反撃を受けてダメージを受けていた。そしてそのまま怪獣戦艦が光線を受けて各部で爆発を起こした!

 

「こ、これはマズいんじゃあ………!?」

『ええい、『覇の星』!どこにいる!?』

『ここだよ。』

 

ヅウォーカァの声に反応して、『覇の星』は彼らの前に姿を現すと、右手を上げて『パチン』と指を鳴らした。

 

同じ頃、グロッキーになったバルタン星人に対して、ダイナがとどめの光線を放つ体勢に入っていた。

 

ドォンッ

『グアァッ……!?』

 

だが次の瞬間、ダイナの背中が爆発して火花を散らした。何事かと振り返ると………

 

『フォーフォーフォーフォーフォー!』

『フォーフォーフォーフォーフォー!』

『何!?』

 

そこには2体のバルタン星人がいた!

 

『援軍だと………!?』

「あの宇宙人……仲間を呼んだのか!」

 

シャーリーは援軍のバルタン星人に驚くが、3体のバルタン星人はダイナを囲んでハサミで殴打し始めた!

 

『デェア!?』

「ダイナが!?」

「人の心配をしている場合か!?」

「ッ!?」

 

ダイナの心配をしていたクルピンスキーだが、直後にケイルの蹴りが迫り、寸での所で頭を後ろに下げて回避する!

 

「うわぁっ!?」

 

クルピンスキーは腰から銃を引き抜いて構えるが、ケイルはそれを蹴り飛ばしてしまった。驚く間もなく、ケイルは光線銃の銃口を向けて光線を放つが、クルピンスキーは使い魔のワイマラナーの耳と尻尾を発現させてシールドを展開し防御をした。

 

「なかなか怖い事するねー………顔はタイプなのに、残念だよ。」

「なッ………!?」

 

腕で冷や汗を拭いながら軽口を叩くクルピンスキー。言われたケイルは顔を赤くして困惑をしていた。

 

「こんな時に何を言っているんだお前は!?」

「くそっこれじゃあダイナどころか私たちも………!?」

 

シャーリーは何とかダイナの元に向かおうと試みるが、レイビーク星人とケダムに阻まれて動くこともできない。

 

『フォーフォーフォーフォーフォー!』

『フォーフォーフォーフォーフォー!』

『ぐあああっ!!』

「………!!」

 

その時、ケダム3人を適当に倒したゴライアンは、割れた窓の傍に立つとバルタン星人がダイナを殴る姿を見て、何かを決意した顔になった。

 

「ゴライアンさん………?」

「………しょうがねえな。助けてやっか!」

「え?」

 

ゴライアンはそう言うと、どこからか中央に緑色の鉱石の埋められた銀色のベルトを取り出すと腰に巻きつけた。

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!」

 

そして両手を上げて大きく叫ぶと、ベルトから放たれた100万ワットの輝きがゴライアンを包み込み、光の球となってダイナの元へ飛んで行った!

 

「何!?」

「まさか………!?」

 

その姿を見たケイルは驚きの声を上げるが、シャーリーやバルクホルンは、希望が見えたと感じ取っていた。

 

『フォーフォーフォーフォーフォー!』

『グァアッ!!』

『フォーフォーフォーフォーフォー!』

『フォーフォーフォーフォーフォー!』

 

3体のバルタン星人の連携攻撃で、ダイナはカラータイマーが点滅し始めていた。バルタン星人はとどめを刺すべくハサミをダイナに向けた。しかし、そこに巨大化したウルトラマンが現れた!!

 

『な、なんだ……?』

 

バルタン星人とダイナが、目の前に現れたウルトラマンに驚愕する。

 

ダイナを超える60mを超える巨体に大きく尖ったトサカにモミアゲを持ち、鍛え上げられた銀色の肉体を惜しげもなく見せつけるように胸を張るその巨人こそ、ゴライアンであった!

 

『大丈夫か、ダイナ。』

『ゴライアン!あんたもウルトラマンだったのか………!』

 

ダイナがゴライアンの正体に驚いていたが、バルタン星人の1体がゴライアンに襲い掛かってきた!

 

ガシッ

『フォ…!?』

()せえよ。』

 

しかし、ゴライアンは迫って来たバルタン星人の頭を掴むとそのまま大きく振りかぶり―――

 

『うおらァアッ!!』

『フォーーー!?』

 

そのまま全力で投げてしまった!投げられたバルタン星人は停泊していたキングジョーグの腹部を突き破り、内部で爆発を起こして絶命した!

 

『何ィ!?』

 

ゴライアンの力に驚くヅウォーカァ将軍。だが、爆発が起きたキングジョーグは各部で誘爆を起こしながら仰向けに倒れ、後ろに泊まっていた機体に当たるとドミノ倒しのように次々に倒れて爆発が起きる大惨事を引き起こしていた!

 

『お、俺の怪獣戦艦艦隊がぁあ~~~………』

 

次々に倒れ爆発する怪獣戦艦に嘆くヅウォーカァ。その隣でシャーリーやクルピンスキーはその光景に唖然としていた。

 

『お前さんのやりたかったのは、こういう事だろ?』

『あ、ああ………』

 

ゴライアンはダイナに笑いかけながら手を差し伸べた。ダイナは呆気に取られながらもその手を掴んで立ち上がると、爆発に慌てふためくバルタン星人2人を見た。

 

『とっとと片づけるぞ!』

『おう!』

 

2人はそう言うと腕を十字に構え、ゴライアンはスペシウム光線を、ダイナはソルジェント光線を放った!

 

『フォ……』

 

2体のバルタン星人は悲鳴を上げる間もなく光線を受け、そのまま倒れて爆散してしまった。

 

「すごい………!」

「あれがウルトラマンの力か………!」

 

バルタン星人を倒したダイナとゴライアンに感嘆の声を上げるクルピンスキーと戦慄するケイル。コウメイもその様に唖然としていたが、その横でヅウォーカァは膝から崩れ落ちて「おれのかんたい……おれのかんたい……」と呟いていた。

 

『なかなかやるではないか、ウルトラマン。』

『何!?』

『いつの間に………!?』

 

その時、ウルトラマン2人の背後にウルトラマンと同じサイズに巨大化した『覇の星』が立っていた。

 

『クローン生成した人造バルタン星人では荷が重かったようだな……』

『人造だと……!?』

『以前、自我を与えたら動物園作ろうとしたり子供利用したりした変な作戦立ててたから、自我のない私の操り人形だがね。以前地球に送り込んだサイコバルタン達は数少ない成功例なんだが。』

 

自嘲気味に笑う『覇の星』の言葉を聞いて、ゴライアンは怒りを覚えた。

 

『バルタン星人に『命』の概念がないとは聞いたが………ふざけた奴だぜ………!』

『私は常に真剣だよ。』

『…………ッ!』

『さて、君たちは私が直接手を下そう。』

 

そう言うと、『覇の星』は着ているローブのフードを下した。その下からは、頭頂部に1本の触角を持ったバルタン星人の顔があった。

 

『この『覇の星』・キングバルタンがな!』

 

キングバルタンがそう名乗ると、ダイナとゴライアンは構えを取って臨戦態勢となった。

 

[待て、キングバルタン!]

『『『!?』』』

 

その時、3人の間に映像が浮かび上がると、そこにジュダの顔が映った。

 

『ジュダ様!?』

[そいつらの対戦相手は既に決まっている。第4エリアに転移させるぞ。]

『しょ、承知いたしました………』

 

キングバルタンは深く頭を下げると同時に、ゴライアンとダイナの足元に魔法陣のような物が浮かび上がり、2人を転送し始めた。

 

『ま、待て―――』

 

ダイナが言い切るよりも先に、ダイナとゴライアンはそこから消え去ってしまった。

 

「ダイナ!?」

 

ダイナたちが転移した事にシャーリーが驚く間もなく、彼女たちの足元にも同じ魔法陣が浮かんで転移を始めてしまった。

 

「え!?」

「私たちも………!?」

 

ミーナたちが驚く間もなくその場から転移してしまった。

 

「……ジュダ様の方は、準備ができたようね。」

『おれのかんたい……おれのかんたい……』

「あーもー、しっかりしなさいよ。」

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

ペリーヌとルッキーニ、直枝が気づいた時には、無数の窓のないビルのような建物が並んだ、開けた場所にいた。

 

「ドコココ~?」

「あの建物は一体………?」

 

ペリーヌが建物に疑問を持ったその時、建物の一つが大きな振動と共に揺れて、中から大きな声がした。

 

「ギャガァガァアーーーッ!!」

「ひぃッ!?」

 

その声に驚いたペリーヌだが、その時建物の1面が開いていて、緑色のバリアが張られている事に気が付き、その中には全身が青いトゲでおおわれて鼻先に大きな1本角を持った怪獣『吸血怪獣 ギマイラ』が閉じ込められていた。

 

「ギュワワワァーーーッ!!」

「ギィキャァーーウッ!!」

「キュアーーィイ!!

 

ギマイラの鳴き声を皮切りに、他の建物からも『深海怪獣 グビラ』、『冷凍怪獣 ラゴラス』、『岩石怪獣 サドラ』、他にも多くの怪獣の鳴き声が響く。

 

「怪獣が、閉じ込められてる!?」

「もしかして……グア軍団の戦力の怪獣………!?」

 

そこにいるのが、グア軍団の戦力である怪獣であると気付いた直枝とペリーヌ。その時、背後に多数の足音がしたかと思うと、インベド人の集団が光線銃を手にこちらに近づいてきた!

 

『いたぞ!』

『殺せぇえっ!!』

「もう来たのか!」

「こっちよ!!」

 

咄嵯の判断で、ペリーヌはルッキーニの手を引いて駆け出すと、檻の影に飛び込んだ。

 

『逃げたぞ!』

 

インベド人は、2人が逃げ込んだ檻を光線銃で攻撃し始めた。咄嗟に直枝は障壁を張って防御をすると、跳ね返されて光線がインベド人数人に直撃をした!

 

『ウギャ!?』

『ぎゃぁああっ!!』

「やったか!?」

 

だが次の瞬間、三人の行く手をヴァイロ星人が阻み、更に背後にも現われて四人の星人に囲まれてしまった!

 

「!?」

「しまった!?」

「わが名はナエフ。」

「ロック。」

「レルヤ。」

「リアーデ。」

「「「「怪音波攻撃!」」」」

 

自己紹介をした4体の宇宙人がそれぞれの口から超音波を出すと、3人の頭に激しい痛みが走り膝をつく。

 

「にゃああああ!?」

「くぅ~ッ!!」

「頭が割れそうですわ…………ッ!!」

 

そして動けなくなった三人組に対して、インベド人達は再び光線銃を構える。

 

(どうする?このままじゃやられる!)

 

必死に逃げ道を探す直枝だったが、ヴァイロ星人ロックの背後に人影が現れたかと思うと、強烈な蹴りを放って吹き飛ばした!

 

『なにっ!?』

『何者だ!?』

 

リアーデとナエフは突然現れた人物を見て驚きの声を上げる。それは青い服を着た男性だった。

 

「大丈夫か!?」

「ムサシさん!!」

 

ムサシはヴァイロ星人を蹴散らすと、三人を連れてその場から走り去った。

 

「だ、誰だか知らないけれど、助かったぞ!オレは菅野 直枝だ!」

「僕は春野 ムサシ!」

 

直枝とムサシはそう名乗るが、インベド人とヴァイロ星人が追いかけて来た。

檻の外で騒ぎが起きたためか、檻の中にいたグロテングや姑獲鳥、キングマイマイが騒ぎ出していた。

 

「この怪獣たち、どこかから連れて来られたんだろうね………」

「とんでもない連中ですわね………」

 

少し悲しそうな顔をしたムサシに、ペリーヌも同意をした。

 

『フオォオオ………』

「「「「!?」」」」

 

その時、目の前に地球人サイズの二つの人影を見て、ムサシたちは立ち止った。そこにはボロボロのローブを着て体を太い鎖で縛られた不気味な者と、頭巾めいた頭と大きな尖った爪を持った宇宙人だった。

 

「ワロガ!!」

『よく来たな、ウルトラマンコスモス。』

「え?」

 

直枝はワロガがムサシをコスモスと呼んだことに驚くが、ワロガは構わずに首から下げた六角形の金色のメダルを見せて名乗った。

 

『グア軍団七星将・『闇の星』ワロガ。コイツ、『暴の星』。』

『ウオオオオオ………』

 

ワロガが『暴の星』を紹介するが、『暴の星』は唸り声を上げるだけだった。

 

「『七星将』……?」

『グア軍団、7つの軍団ある。七星将、その軍団の(おさ)。その頂点にジュダ様いる。このエリア、おれの『怪獣軍団』の飼育場。』

 

ワロガの説明を聞いて、ムサシが声を上げた。

 

「飼育場だと……まさか、この怪獣達はお前達が捕まえてきたのか!!」

『そうだ。我らが捕えた怪獣達。』

「なんということだ……!!」

「なんてひどいことをしますの!?」

 

二人の怒りを余所に、ワロガは淡々と言葉を続ける。

 

『地球侵略、それに宇宙侵略のため。仕方ない事。』

「そんなくだらない事のために………!!」

『くだらなくない。宇宙侵略、グア軍団の悲願。』

 

ムサシの怒りも受け流すワロガ。直枝がムサシに話しかけた。

 

「ムサシさん、コイツには何言っても通じないみたいだぜ……!」

「そうみたいですわね………!」

「やっつけちゃおう!!」

 

三人の言葉に、ムサシは少し戸惑いながらも頷いた。その時、後ろから先ほどのインベド人とヴァイロ星人の集団が追い付いてきた。

 

『一つ教える。』

「なんだ!?」

 

ワロガが急に話し出したので、思わず反応してしまう直枝。だがワロガはそのまま話し続けた。

 

『檻に普段、バリアは張っていない。外に出ようとすると、電流が流れるだけ。バリア、巻き添え食わないため。』

「巻き添え………?」

「どういうことですの?」

 

ペリーヌが疑問を口にしたその時、檻の1つが開いて中から無数のボールのようなものが飛び出し、浮遊してこちらに向かってきた!

 

『やれ、『オコリンボール』!』

 

ワロガの指示を受けたオコリンボールと呼ばれる物体は、空中を飛び回りながら直枝達に体当たりを仕掛ける!

 

「きゃあ!?」

 

3人は慌てて避けると、オコリンボールは背後にいたインベド人数人に取り付いた。すると、オコリンボールは体から針のような物を生やして首筋に突き刺すと、みるみるうちにインベド人は干からびて命を落としてしまった。

 

『なっ………!』

『こいつ、吸血怪獣か!?』

『気を付けろ!この怪獣、危険だ!!』

 

インベド人達がオコリンボールを警戒する中、ナエフが光線銃を向けて発砲するが、オコリンボールはその軌道を読んでひらりとかわしてしまった!

 

『ちいっ……!』

「アイツ、速いぞ!」

 

オコリンボールの群れから逃げながら、直枝が思わず声に出した。それと同時に、ワロガの言っていた『巻き添え』の意味も理解した。

 

「他の怪獣達がアレに襲われないように、バリアを張ったのか………!」

『そういうことだ。では、サラバ。』

 

ワロガはそれだけ言うと、『暴の星』と一緒にその場から消え去ってしまった。残されたのは大量のオコリンボールたちと、その餌食となる哀れな犠牲者たちだった。

 

『アイツ、我々諸共ウルトラマンを始末する気か!!』

『こ、これでは試験どころではないぞ!!』

『逃げろーーっ!!』

 

インベド人たちが逃げる間にも、オコリンボールは次々と取り付き、あっという間にインベド人たちはミイラのような死体に成り果ててしまった。

そんな様子を見たムサシが、オコリンボールの群れを睨みつけた。

 

「ムサシさん!!」

「ここは僕に任せて、みんなは離れて!」

「な、何を言って………!?」

 

直枝はムサシの言っていることが理解できず、思わず声を上げて止めようとしたが、ムサシは懐からコスモプラックを取り出すと高く掲げた。

 

「コスモーーース!!」

 

瞬間、コスモプラック先端のクリスタルが花弁の如く展開し光が溢れ、眩い光がムサシを包み込むと、その姿をウルトラマンコスモスに変えた!

 

「え!?ええええええええええええ!?」

「コスモス!」

「いつもより小さい………?」

 

直枝はムサシがウルトラマンコスモスに変身した事に驚くが、ペリーヌとルッキーニはいつもよりコスモスが小さなサイズな事に驚いていた。

 

コスモスは両手を大きく広げて腕と腕の間に虹色のオーラを発生させ、右掌を突き出して『フルムーンレクト』を放った。すると、照射されたオコリンボールの群れは動きを止めて、次々に地面に落下して地面に落下していった。

 

「ボールが止まった………?」

 

オコリンボールの群れが動きを止めた事に驚く直枝。同じくオコリンボールに襲われていたヴァイロ星人はボールが大人しくなった事に気が付き、コスモスの方を見た。

 

『ウルトラマン………』

『俺たちを、助けてくれたのか………?』

 

ウルトラマンが自分たちを助けたことが信じられない様子のヴァイロ星人たちに、コスモスは頷いてみせた。

 

『!?』

 

しかし次の瞬間、地面に落ちていたオコリンボールたちが再び浮かび上がって襲い掛かって来た!

 

「また襲ってきたーーー!?」

「フルムーンレクトが効かないなんて………!?」

 

再び襲い掛かってくるオコリンボールに驚く一同。ボールたちはたじろぐコスモスにも突っ込んでくるが、コスモスに当たった瞬間に爆発を起こしてダメージを与えた!

 

『ゥアアッ!?』

「コスモス!?」

 

コスモスが倒れた事に思わず叫ぶルッキーニ。しかしそんな状況でもオコリンボールが襲い掛かって来る!

 

「クソったれェエエーーーーーッ!!」

ドガッ

 

その時、直枝は使い魔であるブルドッグの耳と尻尾を発現させると、右手に魔力を込めて殴りつけた!殴られたオコリンボールは地面に落下すると、ベチャっと潰れた。

 

「うげっ!?」

「キモチワルー!!」

 

潰れたボールを見て思わず顔をしかめる2人。その時、ヴァイロ星人リアーデが潰れたボールに近づいて観察をすると、何かに気が付いたように叫んだ。

 

『このボールは………分かったぞ!こいつは「無数の小型怪獣」じゃなくて、「分裂した怪獣の一部」なんだ!』

「何ですって!?」

『こいつは分裂して動き、血を吸う怪獣なんだ。つまり、どこかに指令を出す部位があるに違いない!』

 

立ち上がったコスモスがそれを聞いてハッとした様子を見せた。先ほどフルムーンレクトが効かなかったのは、怪獣の一部のみで本体ではなかったからだ。

 

『つまり、どこかにいるんだな、こいつらの『親玉』が!『(ボール)』だけに。』

『上手い。』

「怪獣の本体、ですか………」

 

ロックとナエフが漫才みたいなやり取りをしてサムズアップをし合う後ろで、オコリンボールの群れからよけながらペリーヌと直枝が考える。意外に余裕ある連中である。

 

「ネウロイの子機みたいに、本体がやられたらコイツらもやられる………だとしたら、安全な場所に隠れるはず………」

「安全な場所………!!」

 

そこまで言って、2人は気が付いた。この場所で安全な場所があるとしたら、1カ所あった。

 

「アイツの出てきた檻!あそこから出てきて追いかけまわされたら、オレたちは檻から遠ざかる!」

『親玉はそこか!!』

 

それに気が付くと、コスモスがバリアで守る中、ヴァイロ星人を含めた一同はオコリンボールの入っていた折に向かって行った。そこには、宙に浮かぶ巨大なボール、マザーボールの姿があった。

 

『あれがボールの本体か!』

 

マザーボールの姿を確認したナエフが叫んだ。コスモスはそれを睨んで構えを取ろうとしたが、その時、彼らの前にワロガが再び現れた。

 

「!?ワロガ………!」

『流石、オコリンボールの正体、気付いた。』

『ふざけた真似を!!』

 

ワロガは一同に称賛をしたが、ヴァイロ星人達はそれを『皮肉』と捉えた。

 

『でもここ、戦うのに不向き。場所変える。』

「何だと!?」

 

ワロガがそう言った瞬間、一同の足元に魔法陣のようなものが現れて、光に包まれて転移されてしまった。

 

 

 

 

 

つづく




第二十四話です。

・今作のアスカは『大怪獣バトル』や『サーガ』以前の時系列なので、TV本編くらいのいまいち締まらないキャラになっていますw

・クルピンスキー登場。キル星人は見た目がヘルメット被っただけだから変装がしやすいですね。
 そして『ウルトラマンSTORY0』からゴライアンが登場。ゴライアンはどこかのタイミングで出したかったので、今回登場させました。

・オリジナル宇宙工作員ケイル登場。クールに見えて割と抜けてる感じですね。

・強化型バルタン星人は『80』に登場した、所謂『ブタ鼻バルタン』です。『ウルトラマン物語』でジュダの配下だった繋がりで。
 サイコバルタンの一味がグア軍団の一員だったというトンデモ設定。あの一味って他のバルタン星人に比べて割と異質だと思ったので、今回『80』と『パワード』のバルタン星人達はグア軍団という設定です。

・『覇の星』の正体であるキングバルタンは、故・内山まもる先生の『ザ・ウルトラマン』から。正体を知っている人がいたらまさかと思っていると思いますが………

・ヴァイロ星人の怪音波攻撃は言わずもがなw名前は某マイスターの4人が元ネタですwロックとレルヤはそのまんまだし、分かりやすいかも。

・まさかのオコリンボール登場。ワロガの非情さが分かるかと思います。ボールだけに親玉は個人的に傑作w

では、また次回。


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第二十四話 魔城からの脱出(中編) 【Bパート】

第二十四話 魔城からの脱出(中編) 【Bパート】

 

 

 

 

 

各エリアでウィッチたちと宇宙人たちが戦っている頃、ジュダはコンピューターの置かれた部屋でコンソールを操作していた。

 

『―――どうやら、あのウィッチ以外にも誰かが侵入していたようだな………』

 

コンピューターが操作された形跡を見つけてジュダが呟いた。既に『賊』は退散した後のようだが、何を探っていたかまでは不明であった。

 

『まあ、何かデータを盗られた事はないようだし、放っておいても問題ないだろう。』

 

そう判断して、ジュダは再びモニターに視線を戻した。そこには、いくつもの平行世界の様子が映っていた。

 

鎧をまとったウルトラマンと宇宙人、怪獣が己の拳で戦う世界。

ウルトラマンを模したパワードスーツを着た地球人が戦う世界。

怪獣の姿をした少女が黒い怪物と戦う世界。

忍者のような服装のウルトラマンや怪獣が戦う江戸時代っぽい世界。

ウルトラマンのような力を持ったネコが奮闘する世界。

他にも、ウルトラマンに似ているが異なる巨人や改造人間の世界をいくつも映し出していた。

 

『1500年前、ウルトラマンキングによって次元の狭間へ追放されたが、そのおかげで平行世界を観測し、テレパシーで干渉することが出来た。それを利用して、平行世界の星人や怪獣、技術を取り入れて、グア軍団を再興どころか、ここまで強大な組織となった……ヤプールの協力もあって、ようやくあの宇宙に帰還できる………だが、まだ早い。わしが地球に、光の国に降り立つにはまだ………』

 

ジュダはモニターを見つめながら、ぶつぶつ独り言を言っていた………

 

 

 

 

 

第二十四話 魔城からの脱出(中編)

 

幻影宇宙帝王 ジュダ・スペクター

奇獣 ガンQ

再生怪獣軍団

双頭怪獣 ジャゴン

宇宙三面魔像 ヴァジュラリン

超獣人間 コオクス

ミサイル超獣 ベロクロン

グア軍団七星将

グア軍団入団希望宇宙人集団

 

 

 

 

 

ウルトラマンゼアス

ウルトラマンナイス 登場

 

 

 

 

 

―――爬區阿葉寸蛇袈砺㰦裏………爬區阿葉寸蛇袈砺㰦裏………

 

不気味な呪文が聞こえてくる荒野で、我夢とウィッチたちは呪術師・魔頭 鬼十朗と対峙していた。

 

「魔頭……あの時、倒したと思っていたのに………!」

「ふん、私は元より霊体、生死などに縛られぬ存在よ………」

「え、あの…ガムさんがウルトラマンって………?」

「ニパ、その話は後で。」

 

魔頭と我夢が睨み合っている後ろで、戸惑ったニパをエイラがなだめた。魔頭は、首から下げた六角形のメダルを見せた。

 

「元の世界でさ迷っていたところを、ジュダに誘われてな。今ではグア軍団の「再生怪獣軍団」と「妖魔呪幻衆(ようまじゅげんしゅう)」を率いる、七星将『呪の星』という訳だ。」

「再生怪獣だと………?」

 

我夢は魔頭の言葉の意味が分からず聞き返すが、その時、地面が大きく揺れた!

 

「うわ!?何ダ!?」

「地震!?」

「いや、これは……!?」

 

我夢達が必死に倒れないよう踏ん張っていると、地面が割れて2体の怪獣が姿を現した!

 

「ギャヮアーーリュリュ!ギャヮアーーリュリュ!」

「ピギャァーオッ!ピギャァーオッ!」

 

それぞれ上下に向いた三日月形の2本角が頭に生えて、腹部と腕がトゲで覆われ、正気には見えない目を持った『古代怪獣 ゴモラⅡ』、

もう一体は、一目で石頭と分かる骸骨のような頭に鋭い牙をはやした口、力強い筋肉を蛇腹のような凹凸の体表で覆われた怪獣―――

 

「レッドキング!?」

「多々良島のとは、別のヤツか!?」

 

レッドキングの姿を見たサーニャとエイラが声を上げた。

2体の怪獣は別の種類だが、共通点として、胸のあたりに先ほどのガンQに似た『目玉』が付いていた。

 

「あの目玉は………?」

 

ニパがゴモラⅡとレッドキングの目玉に気付いたが、魔頭の笑い声が遮った。

 

「ふははははは!死んだ怪獣をジェロニモンたちが復活させ、私の呪術で強化させた再生怪獣だ。お前たちに勝てるかな?」

「死んだ怪獣を………!?」

 

魔頭の告げた事実にサーニャが驚いたその時、レッドキングが大きく口を開けるとその口から岩のようなものを吐き出した!

 

「!危ない!!」

ドゴォオオオオンッ

 

我夢が咄嗟に飛びつくように庇うと、その背後に着弾した岩が大爆発を起こした!

 

「爆発した!?」

「アイツ、こんな技持ってたカ!?」

 

倒れたエイラとサーニャが思わず口に出した。

 

「おそらく、君たちの知っている怪獣とは見た目が似ているだけで、別の怪獣なんだろう………」

「怪獣にも、そっくりさんがいるんだ………」

 

我夢の推測通り、今目の前にいるレッドキングは、『M78星雲』の世界にいるレッドキングとは別の宇宙の怪獣『装甲怪獣 レッドキング』であった。

このレッドキングは爆発性の岩石を大量に飲み込んでおり、これを吐き出す攻撃が武器であった。

 

「ギャヮアーーリュリュ!」

 

続いて、ゴモラIIも角から放つ光線を放ち、我夢達を襲う!我夢たちは背中を見せて全力疾走で逃げると、その背後で爆発が連続して起きた!

 

「くっ……このままでは……!?」

 

我夢は走りながら振り向きつつ、何とか反撃しようとした。しかし、今度は崖の上からもう1体の怪獣が姿を現した。

 

「フェッフェッフェー!」

「もう1匹!?………?」

 

現れたのは、木彫りの恵比寿像がそのまま巨大化したような見た目をしており、左手に釣り竿、右手に木彫りの鯛を持ち、ゴモラⅡとレッドキングと同様に胸に目玉を持った『魔神怪獣 コダイゴンジアザー』であった!

 

「………何あれ?」

「怪獣………なのか、アレって………?」

 

コダイゴンジアザーの珍妙な出で立ちに茫然とする、怪獣2匹含めた一同。コダイゴンジアザーはそんな事を気にすることなく、手にした鯛をこちらに向けてきた。

 

『商売繁盛!商売繁盛!』

 

手にした木彫りの鯛はそう言うと、口から光弾を発射してきた!

 

「うわぁーー!?」

「きゃああああっ」

 

光弾は我夢達から離れた地面に着弾して爆発を起こした。その威力にゾッとする間もなく、コダイゴンジアザーは更に光弾を放ってくる!

 

『商売繁盛!商売繁盛!』

「うわわわ!?」

 

コダイゴンジアザーの攻撃に困惑する5人。咄嗟にニパが障壁を張って防御しようとしたが、そこに背後からゴモラⅡとレッドキングが光線と岩を吐き出してきた!

 

「うわああああ!?」

 

5人は吹き飛ばされ、地面を転がった。そこへコダイゴンジアザーが再び鯛を向けた。

 

「フェッフェッフェー!」

「まずい……このままじゃ全滅ダ……!」

「アイツ、ふざけた見た目で何て強さなのさ………」

 

エイラが思わずつぶやいた。迫って来る3大怪獣の前に魔頭が現れると、我夢に向けて笑いながら聞いてきた。

 

「どうした、変身しないのかウルトラマンガイア?それとも、休憩が必要か?」

「くっ………!!」

 

挑発してくる魔頭を前に、我夢は唇を噛んだ。先ほどの変身からまだエネルギーが回復しておらず、変身までまだインターバルが必要だ。

その間にも3大怪獣が迫って来る。絶体絶命の危機と思われた時、

 

ドォオンッ

「!?」

「え、な、何………!?」

 

突如ゴモラIIとレッドキングに光線が命中して、体表で爆発させた!何事かと思って周囲を見渡すと、彼らの背後にある崖の上に、2人の人影が見えた。サーペント星人とガルト星人だ。

 

『よし、命中!』

『いや、まだ倒してないから油断しないで!!』

「アイツらは………?」

 

突然現れた宇宙人2人に一同は呆気に取られていた。魔頭は眉をひそめてサーペント星人たちを睨んだ。

 

「何だ貴様らは?試験ならウィッチを狙わんか!!」

 

魔頭はそう叫ぶと、翳した右手から紫色の火の玉を放つ!火の玉は星人たちの足元に着弾すると、爆発を起こして星人たちは吹き飛んだ!

 

『『うわぁーーーッ!!』』

ドシャッ

「あ。」

 

吹き飛んだ星人たちはエイラたちの目の前に頭から落下してきた。落ちてきたサーペント星人とガルト星人はふらふらと立ち上がると、その時、星人たちの頭がズレてガシャンと落ちた。

 

「え!?」

 

その下にあったのは、少し気弱そうな顔の男性と、少し濃い顔の男性だった。2人は少し痛そうな顔をしていたが、直ぐに笑顔を我夢たちに向けてきた。

 

「あ、大丈夫だった?」

「あ、はい………」

「あの、あなたたちは………?」

「あ、僕は「朝日 勝人」です。」

「僕は「夢星 銀河」です。」

 

2人が名乗ると、我夢達は彼らが地球人である事に驚いた表情をした。そしてそれは魔頭も同じであった。

 

「試験の参加者に、地球人が紛れていたか………!」

「まさか、お前らも異世界から来たのカ!?」

「いや、僕たちは『光の国』のある宇宙の人間だよ。」

「そうなんだ……」

 

勝人の説明を聞いて頷くエーリカ。しかし魔頭は、顔をしかめていた。

 

「ええい、私の邪魔をするとは……怪獣ども!」

「ギャヮアーーリュリュ!ギャヮアーーリュリュ!」

「ピギャァーオッ!ピギャァーオッ!」

「フェッフェッフェー!」

 

そう言って両手を上げると、崖の上にいた3匹の怪獣がこちらに向かってくる!我夢とエーリカたちは手にした銃を構えたが、それを5人の前に立った勝人と銀河が制した。

 

「ここは僕たちに任せて!」

「え!?」

 

何を言っているんだと、エイラが言おうとしたが、勝人は振り返って笑いかけた。

 

「それに1つ訂正しておくと、僕たちは地球人じゃないんだ。」

「へ?」

 

我夢が呆気に取られていると、勝人は懐から電動歯ブラシを取り出した。

 

「………え?」

「は、歯ブラシ………?」

 

一同が、敵味方関係なく呆気に取られる中、勝人は歯ブラシを歯に当てて、手ではなく頭を動かして磨き始めた!

 

「え、何で歯磨きしてるの?」

 

思わず素で聞くニパだったが、当然答える者はいない。そしてその隣では、銀河が左腕に付けた腕時計のボタンを押すと上蓋が開き、中に入っていたチョコレートを1つ取り出して口に入れた。

 

「こっちはチョコ食べてるし!?」

 

エーリカが思わず突っ込みを入れたその時、勝人は歯磨きをした後に再び歯ブラシを天に掲げると、歯ブラシの先端から放たれた光が勝人を包み込み、銀河の体が発行し、2人は巨大な姿となった!

 

「!?」

「何ぃい!?」

 

赤い顔に前方に尖ったトサカと尖った耳、赤い体に銀色のラインを走らせて、金色の目を光らせた戦士―――『清なる巨人』ウルトラマンゼアス。

そして左右非対称の模様に左胸にカラータイマーが特徴の戦士―――『ナイスな奴』ウルトラマンナイス。

 

『シュワッ!!』

『ナァッ!!』

 

2人のウルトラマンが、再生怪獣達の前に立ちはだかった!

 

「うええええええええ!?え?あ?えええええ!?」

「ウルトラマンだったのか………!!」

「なんて正反対の変身方法のコンビなんダヨ………」

 

2人が変身した事に驚くニパや我夢たちであったが、エイラの驚きと呆れの混じった一言に「確かに……」と納得して頷いた。

ゼアスとナイスは3大怪獣に向き合うと、ゼアスはゴモラⅡとレッドキングに、ナイスはコダイゴンジアザーに向けて走り出した。

 

『シュワッ!!』

「ギャヮアーーリュリュ!ギャヮアーーリュリュ!」

「ピギャァーオッ!ピギャァーオッ!」

 

ゼアスは初手でレッドキングに殴りかかるが、その体表は装甲のように固く、逆に拳を痛めて殴った手を振って痛そうにしていた。そこをレッドキングが後頭部を殴ってきて倒れ込む。そこにさらに踏みつけようとするが、ゼアスはなんとか転がるように回避する。そこをレッドキングの岩石とゴモラⅡの光線が襲い掛かった。

 

「ギャアアーーリュリュ!」

「ピッギャァーオッ!」

『ウワアッ!!』

 

倒れた状態で何とか避けるゼアス。何とか立ち上がると、ゴモラⅡに向けて駆け出し、その尻尾を掴んだ。そのままジャイアントスイングをして投げ飛ばすと、レッドキングの拳を空手の型でいなし、カウンターで顔面をぶん殴ってふっ飛ばした。

 

『ナァッ!!』

「フェッフェッフェー!」

 

一方、コダイゴンジアザーと対峙するナイスは、チョップをしたりキックしたりして攻撃をするが、レッドキング以上に頑丈な身体のコダイゴンジアザーにはまるで効いていない様子であった。コダイゴンジアザーは手にした釣り竿で何度も殴り、怯んだナイスは膝をつく。

 

『グウッ……!』

「フンッフンッフンッ!」

 

それでも殴るのをやめないコダイゴンジアザー。しかしナイスは振り下ろされた釣り竿を掴むとそれを奪い取り、逆にコダイゴンジアザーに振り下ろした!

 

バキッ

『ナ………』

「ア~~ン?」

 

しかし、釣り竿は殴った拍子に折れてしまい、唖然とするナイス。おまけに自分の釣り竿が折れた事に怒ったらしいコダイゴンジアザーが、拳を握りしめていた。

 

「フェェエエェー!」

『ナッ!?』

 

慌てて落ち着くようにジェスチャーするナイス。しかし、コダイゴンジアザーはナイスを殴り飛ばすと、手にした鯛―――『鯛砲』を思いっきり放り投げてきた!

 

『商売繁盛!商売繁盛!』

『ナァ!?』

 

すると鯛砲は飛翔しながらナイスに突っ込んできた!鯛砲はナイスの頭を何度もつつくようにこうげきすると、距離を少しとって口から光弾を発射してきた!

 

『商売繁盛!商売繁盛!』

『ナッ、ナァッ!?』

「「「「「鯛強!?」」」」」

 

鯛砲の強さに思わず叫ぶ我夢たち。まさか単鯛、もとい単体でウルトラマンを圧倒するとは思ってもみなかった。鯛砲は倒れたナイスになおも突進をして苦しませる。

 

『!?』

 

苦戦するナイスに気が付いたゼアスが駆けつけようとしたが、ゴモラⅡが腕で円を描くとそこに円型の拘束光輪が発生、それがゼアスを縛り上げて、身動きが取れなくなってしまった。

 

『ヌゥ!?』

「ギャアアーーリュリュ!!ギャアアーーリュリュ!!」

 

ゼアスが動けなくなったところに、レッドキングが尻尾の一撃を喰らわせて転倒、そこにゴモラⅡは腕を向けると、手の甲からロケット弾を発射させた!

 

ドォン!ドォンドォン!

『ウグアァッ!!』

「ゼアス!」

「た、ただでさえ1対2のハンディマッチで厳しいのに、結構強いぞあいつら!」

「このままじゃまずいゾ!」

 

苦戦を強いられるゼアスを見て、エーリカたちは焦燥感を抱く。エイラは腰に下げたトライガーショットを引き抜くと、コダイゴンジアザーに向けて光線を放つが、コダイゴンジアザーの体表に当たっても「ポンッ」という鼓のような音と共に弾かれてしまった。

 

「光線が通じない……!?」

「無駄に強いなアイツ……!?」

 

光線の着弾地点を、まるで蚊に刺されたかのようにポリポリと掻くコダイゴンジアザーを見上げながら、呆気にとられるエーリカたち。コダイゴンジアザーは攻撃してきたエイラに気付くと、エイラに向かって歩き出した。

 

「やばい!」

 

急いで逃げようとするエイラだったが、そこに、サーニャがエイラに叫んだ。

 

「エイラ、胸の目玉を狙って!」

「!!」

 

エイラはサーニャの言葉を聞くと、トライガーショットをロングバレルモードに変形、胸の目玉に照準を合わせると、引き金を引いた!

 

ドォンッ

「!?グェエエ!?」

 

するとどうだろう、コダイゴンジアザーは苦しそうに胸を押さえ、鯛砲も連動して地面へと落下した。

エイラ自身、コダイゴンジアザーに自分の攻撃が効いた事に驚いていると、サーニャがそれを見て確信した顔で声を上げた。

 

「やっぱり、あの目玉が再生怪獣の弱点なんだ……!」

「何だって!?」

「そうか、あの怪獣達は魔頭達の呪術で蘇った。あの目玉が術の要だったんだ!」

 

コダイゴンジアザーの様子を見た我夢が言う。そしてその言葉を聞いたナイスは立ち上がると、コダイゴンジアザーの胸の目玉を睨み、落ちていた鯛砲をコダイゴンジアザーに向けて投げた。

 

『商売繁盛商売繁盛!?』

ゴンッ

「グエッ!?」

 

鯛砲が直撃したコダイゴンジアザーはよろめくと、ナイスはそれを好機と見たのか、右手をカラータイマーに重ねると、人差し指と中指を伸ばした状態で腕を伸ばし、指先から破壊光線『ミレニアムショット』が発射された!

 

ドォンッ

「イタイッ!?」

 

ミレニアムショットは胸の目玉に直撃して消滅させた。コダイゴンジアザーは悲鳴を上げると仰向けに倒れ、煙のように消滅してしまった。

 

『ゼァアッ!!』

 

そこで拘束光輪を破ったゼアスも立ち上がり、ショルダータックルでゴモラⅡとレッドキングを突き飛ばすと、距離を取って右手を上に上げて高速回転を始めた!

 

「ギャヮアーーリュリュ!ギャヮアーーリュリュ!」

「ピギャァーオッ!ピギャァーオッ!」

 

ゴモラⅡとレッドキングはロケット弾と岩石で攻撃をするが、高速回転に弾かれてしまう。ゼアスは回転をしたまま2大怪獣に接近し、右足を伸ばして『ゼアス・スーパー・キック』で空高く蹴り飛ばしてしまった!

 

「ギャヮアーー!?」

「ピギャァー!?」

 

吹き飛ばされて空中でグルグルと回る怪獣達。ゼアスは回転を止めると、伸ばした手の先で球を描き、胸の前に手を持っていくと、腕を左側で十字に組んだ。

 

『シュワッ!!』

バシュッ

 

腕から放たれた必殺の『スペシュッシュラ光線』が怪獣に向かって行き、胸の目玉を正確に打ち抜き、再生怪獣を消滅させた!

 

「やった!!」

「倒した………!」

 

再生怪獣が倒されたのを見たニパとサーニャが歓声を上げる。一方、エーリカは別の事を考えていた。

 

「あのウルトラマン………(あんなグルグル回って吹っ飛んでる怪獣の胸の目玉を、正確に撃ち抜くなんて………なんつー射撃技術なのさ………!)」

 

エーリカはゼアスの隠れた実力を見抜き、密かに感心していた。

 

「おのれ小癪なぁッ!!」

 

しかしそこに、怒りの表情の魔頭が叫ぶと再び紫色の炎に包まれて、巨大なガンQの姿に変貌してナイスとゼアスの目の前に現れた!

 

『ナァッ!?』

「キヤハハハハハハハハハ!!」

 

突然現れたガンQにゼアスとナイスは驚くが、ガンQは体当たりを仕掛けた!

 

ドォンッ

『ジュアッ!?』

『ナァッ!?』

「キヤハハハハハハハハハ!」

 

吹き飛ばされる2人を嘲笑うガンQ。ゼアスとナイスは何とか立ち上がるが、カラータイマーがピコンピコンと点滅を始めた。

 

「これ以上は……」

「え?あれってマズいの?」

「ああ、エネルギー切れ間近の合図ダ……」

「ええ!?」

 

カラータイマーが鳴り始めたウルトラマン2人に危機感を見せる我夢やエーリカに対して、ウルトラマンを詳しく知らないニパはエイラの説明を聞いて、ようやくピンチに気が付いた。

立ち上がったナイスとゼアスだが、その時、今まで怪獣達と戦っていて気が付かなかったが、丘の向こうに4匹の怪獣や宇宙人が、大きな魔法陣を囲んで不気味な手の動きをしており、まるで儀式をしているようであった。

 

面子は先ほどのジェロニモンとプレッシャーに加えて、リング状のパーツが付いた尖った頭に発光体を持った『異次元人 ギランボ』と、悪魔のような姿に大きな角を持った『大魔獣 ビシュメル』であった。

 

そしてその後ろでは、ボロボロでくたびれた怪獣の群れが犇めいているのが見えた。

 

『アイツらは……まさか、怪獣の再生を行っているのか!?』

『何だと!?』

 

ゼアスとナイスはそれに気が付いて阻止をしようと駆けつけようとするが、ガンQが行く手を阻むように立ち塞がり、目玉から光線を直撃させて爆発を起こして吹き飛ばした!

 

『ウァアッ!!』

『グァアッ!!』

『まだあの怪獣達は、再生したばかりだ。後で呪術による強化を施すから、まだ倒されては困る。』

 

地響きと共に倒れるウルトラマンたちに、ガンQ=魔頭が言う。我夢はエスプレンダーを手にすると、エネルギーがある程度溜まっている事を確認した。

 

「今なら1回くらいなら………!」

 

そう言ってエスプレンダーを構えようとするが、その時、ガンQがこちらを見下ろしてきた。

 

「キヤハハハハハハハハハ!!」『待て、この場でこれ以上暴れられるわけにはいかん……!』

「何!?」

 

そう言った瞬間、ガンQの目玉から不気味な光線が放たれると我夢たちを包み込み、数秒もしない内に消えてしまった!

 

『何!?』

『みんなをどうした!?』

『安心しろ、アイツラは別の場所に送り込んだ。お前らも行け!!』

 

そう言って、ガンQは先ほどと同じ光線をナイスとゼアスに放ち、同じように他の場所に送り込んでしまった。

 

『儀式の方は任せたぞ、ジェロニモン。』

「グォゴゴォオウ………!」

 

ガンQはジェロニモンにそう言うと、その場から姿を消してしまった。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

シャドー星人フォードは突然の空間転移に困惑していたが、直ぐに体制を整えて他のシャドー星人に指示を飛ばした。

 

『お前ら、大丈夫か!?』

『はい、しかしここは……?』

『わからないが………とにかく、試験を続行すべきかどうかは不明だが………』

 

残っていたシャドー星人、キュード、サッド、ジャッド、オード、サンド、カイドも少し困惑していたが、周囲のジャダン5人とターラ星人も、周囲を探っていた。その時、遠くの方で爆発が起きた!

 

『何だ!?』

 

フォードが何事かと見ると、そこではウィッチたちが黒いプロテクターを着た赤いトサカと嘴、3本指を持った怪人複数人と戦っている所だった。

 

『ウィッチどもはあそこか!!』

『しかし、あの怪人たちは………!?』

 

シャドー星人たちが戸惑っていると、ジャダンがウィッチたちの元へ走って向かって行った。

 

『ウィッチがいたぞ!!』

『早い者勝ちだ!!』

『あ、アイツら!』

『無謀だろ………』

 

フォードたちは呆れていたが、ジャダンたちに気が付いた芳佳たちは怪人・コオクスの攻撃を避けながら驚いた。

 

「う、宇宙人たちが!?」

「今はそれどころじゃないのに………!?」

『うおおおおおおお!!』

 

驚いている間にもジャダンたちは蛮刀を振りかざして来たが、そこにコオクスが指先から放った閃光やロケット弾がジャダンに直撃をして爆発し倒れた。

 

『ぐああッ!!』

『何!?』

「ガァアーッ!!」

『うわああ!?』

 

仲間がやられて驚くジャダンだが、コオクスたちの攻撃は芳佳たちだけではなくジャダンにも及ぶ!生き残ったジャダン2人はコオクスを睨むと、意を決したように顔を見合わせて頷いた。

 

『ええい、このままで済むかぁッ!!』

 

2人のジャダンは飛び上がると両手を合わせた。すると、2人は光に包まれて1つの巨大な姿に変わって行き、長い2つの頭と巨大な翼を持った100m以上はある『双頭怪獣 ジャゴン』に変貌した!

 

「怪獣になった!?」

「「グォオオォウッ!!グォオオォウッ!!」」

 

芳佳たちやコオクスがジャゴンに変身した事に驚いていると、ジャゴンは口から火炎を放ってきた!

 

「危ねえッ!!」

「きゃあ!?」

 

リュウが咄嗟に芳佳たちを庇い火炎から守ったが、その火炎はコオクス数体を焼き尽くした!

 

「「グォオオォウッ!!グォオオォウッ!!」」

 

ジャゴンは勝ち誇ったようにひと鳴きするが、残ったコオクスが閃光やミサイルを放つとジャゴンに命中、爆発によってダメージを負った!

 

「「グォオオォウッ!?」」

「何!?」

「あのサイズの怪獣を、数体の攻撃で………!?」

「人間サイズでも、超獣は超獣という事か………!!」

 

それを見た美緒が驚嘆している中、リュウは冷静な分析をしていた。ジャゴンは地面に落ちるが長い首をこちらに向けてきた。

 

「「グォオオォウッ!!」」『『こ、これほどとは……!!』』

 

コオクスの意外な戦闘力に驚くも、ジャゴンは何とか立ち上がり反撃を仕掛けようとした。しかしコオクスは容赦なく追撃をして頭部で大爆発を起こし、ジャゴンは地に伏して絶命した。

 

「つ、強い………!!」

「何、あの怪人………!?」

 

コオクスの圧倒的な強さを見て唖然とするウィッチたち。ミライはそれに答えた。

 

「あれが『超獣』だ…!」

「超獣………?」

「ヤプールが怪獣を改造して生み出した怪獣兵器だ。怪獣よりも強力だし知能も大分高い………」

『その通りだ。』

 

ミライの説明にヤプールが続けた。

 

『コオクスは能力故に、貴様らの人間サイズにも対処ができる。戦闘員としては十分だ。』

「1体1体が、怪獣以上の力だと………!?」

「そんなのが、まだいるの……!?」

 

ヤプールの説明を聞いた美緒とリーネが戦慄した。コオクスは再度ウィッチたちに狙いを定めると、ミライとリュウは4人を庇いつつトライガーショットを構えた。

 

『ヴァヴァ~~~!!』

「「「「「!?」」」」」

 

しかしその時、叫び声と同時にコオクス達のど真ん中に何者かが飛来してきた。それは腕を振るうとコオクス達を吹っ飛ばした!

 

「うおっ!?」

「なんだ!?」

 

突然の事態に驚いた一同だったが、現れたのは3つの顔が縦に並んだトーテムポールを思わせる石像のような宇宙人―――ヴァジュラリンであった。

 

「ジャシュライン!?」

「いえ、同族のヴァジュラリンだそうです。」

「同族……!?」

 

リュウはヴァジュラリンを見てジャシュラインだと思い驚いたが、ミライに訂正されて別の意味で驚いた。ヴァジュラリンはコオクスの大半を蹴散らすと、ヤプールが怒鳴りつけた。

 

『何をやっておる!?何故こちらに攻撃をする!?』

『やかましいヴァヴァ!!』

『このウィッチは、ワラワたちの獲物ジュラ!』

『たとえヤプールでも、渡すわけにはいかないリン!』

 

ヴァジュラリンはヤプールに啖呵を切ると、美緒を睨みつけた。

 

『お前!邪魔が入ったが、ようやく決闘の時ヴァヴァ!!』

「な………!?」

「こんな時に………!!」

 

ヴァジュラリンに宣言されて絶句する美緒と芳佳。するとヴァジュラリンは右手に付いた丸い楯を取り外すと翼のような鍔と柄を持った両刃の剣に変化、切っ先を美緒に突き付けた。

 

『いざ、尋常に勝負ヴァヴァ!!』

「くそ、仕方ない……!!」

 

宣言と同時に飛び掛かってくるヴァジュラリン。美緒は意を決すると烈風丸を引き抜き、振り下ろされたヴァジュラリンの剣を受け止めて、鍔迫り合いになった!

 

「坂本さん!!」

「来るな宮藤!コイツの目的は私だ!!」

 

心配して駆け寄ろうとする芳佳だが、美緒はそれを制止した。そして何とか押し返そうとするも、ヴァジュラリンはニヤリと笑った。

 

『やはり、ワチキの目に狂いはなかったヴァヴァ!!』

『この腕前、なかなかのものジュラ!』

『あなたとならば、良い戦いができそうだリン!!』

「ぐぅ………!!」

 

楽しそうに笑うヴァジュラリン三姉弟。美緒は何とか耐えようとするが、徐々に押され始めた。そこで美緒は、咄嗟に左手でトライガーショットを引き抜くと、トリガーを引いて光弾を発射した!!

 

『ヴァヴァ!?』

 

光弾はヴァジュラリンの脇に着弾をして火花を散らし、美緒から離れて着地をした。

 

『やるじゃないヴァヴァ……』

「す、すまない……剣の戦いとは思っていたのだが………」

『いや、それくらいは構わないジュラ………』

 

そう言うと、中段の顔のランプと目が光り、剣を腕に収めた。

 

『ワラワたちも、似たようなものジュラ!!』

「!?」

 

次の瞬間、ヴァジュラリンの両手に炎が纏われ、腕を振るって火球を放ってきた!

 

「ぐぅッ………!!」

 

美緒は何とか避けるが、炎はそのまま地面にぶつかり爆発を起こした。その爆風に身を晒される美緒だったが、再び飛んできたヴァジュラリンの剣を避け、烈風丸を振り下ろしたが受け止められてしまった。

 

『まだまだヴァヴァ!!』

「ぐうっ!?」

 

今度は逆に烈風丸を受け流されると、返しの一閃が放たれ、美緒は慌てて後ろに飛んで避けるが、前髪の数本がはらりと落ちた。

 

「く……!」

「坂本少佐!!」

 

リーネが悲痛な叫びを上げたが、美緒は烈風丸を構えると、ヴァジュラリンに向けて振り下ろした!

 

「烈風斬!!」

ドウッ

『むぅッ!!?』

 

美緒の放った烈風斬がヴァジュラリンの腕に命中、数m後ろに飛ばされると、ヴァジュラリンは腕に付いた傷と美緒の烈風丸を交互に見た。

 

『今の技は………!?』

『あの技………これ以上使わせるわけにはいかないリン!』

『同意見ジュラ………もっと楽しむジュラ!』

「何?」

 

ヴァジュラリンは下段のランプと目が光り、飛びあがると同時に美緒にドロップキックを放つ!美緒は咄嗟に避けるが、地面を大きく穿つキックにゾッとする間もなく、ヴァジュラリンは回し蹴りを放ってくる!

 

「なっ………!?」

『さっきの技は使わせないリン!』

『ここで決めるヴァヴァ!!』

「ちぃっ!!」

 

美緒は再び烈風丸を構えてガードの姿勢を取る。だが、ヴァジュラリンは剣を上段に掲げる構えを取った。

 

『喰らうヴァヴァ!!』

「なっ!?」

 

次の瞬間、ヴァジュラリンは剣を振り下ろしてきた!

 

ガギンッ

『なっ!?』

 

しかし、その剣撃は割って入ってきた芳佳が張った障壁に阻まれた!

 

「宮藤!!」

「大丈夫ですか坂本さん!!」

 

芳佳はシールドを張って防ぎ切った直後、すぐに間合いを取ってトライガーショットの一撃を喰らわせた!

 

『ヴァヴァ!?』

「宮藤!!」

「すみません、坂本さんが危ないと思ったら………!」

「いや、いい…ありがとう………」

 

美緒は呆気に取られていたが、礼を言うと改めて烈風丸を構えた。そしてヴァジュラリンは、自分の攻撃を防がれた事が信じられない様子であった。

 

『ま、まさかあの小娘に、ワチキの剣を防がれるなんて………!』

『実力を見誤っていたジュラ………』

『これは油断できないリン……!』

「ヴァジュラリン!これ以上戦っても、意味はないぞ!!」

 

美緒はヴァジュラリンにそう告げるが、ヴァジュラリンは首を横に振った。

 

『それは無理な相談ヴァヴァ!!ワチキたちは戦いを楽しむためにここに来たヴァヴァ!!』

戦闘(バトル)(マニア)め……!」

 

ヴァジュラリンの執念に、美緒は思わず舌打ちした。

 

『とにかく、このままでは終われないリン!!』

 

すると、中段の顔のランプと目が光り、ヴァジュラリンは美緒に向かって跳躍してきた!!

 

「来るか!!」

 

美緒はヴァジュラリンの攻撃に構えるが、その時、横から飛来してきた物体が美緒たちの間に着弾、爆発を起こして3人を吹き飛ばした!

 

『『『うぉお!?』』』

「きゃあッ!?」

「芳佳ちゃん!!」

「坂本さん!?」

 

吹き飛ばされた芳佳と美緒にミライたちが駆け寄った。ミライたちに手を貸されて起き上がると、何が起きたのかと周囲を見ると、

 

「グロロローーーッ!!」

 

いつの間にか、彼らを見下ろすように黒い身体に赤い突起がゴテゴテと生えた巨大な生物がいた!

 

「怪獣!?」

「いや、超獣だ………『ミサイル超獣 ベロクロン』だ!!」

「あれも超獣………!!」

「グロロローーーッ!!」

 

ミライの説明にひかりが驚いていると、ベロクロンは全身のミサイル発射管から無数のミサイルを放ってきた!

 

「!マズい!!」

「逃げろ!!」

 

全員が一斉にその場から離れようとするが、ミサイルは周囲の地面に着弾し、あちこちで爆炎が上がった!

 

『ぐわあああーーーっ!!』

『こ、こっちにまで何で……ぎゃぁあッ!?』

 

ミサイルの雨はシャドー星人やターラ星人にも降り注ぎ、悲鳴を上げて爆炎の中に消えていく!生き残ったフォードと部下のキュード、サッドの2人はその光景に唖然としていた。

 

『そ、そんな……!?』

『ヤプールめ………我々まで巻き添えにする気か!?』

「グロロローーーッ!!」

 

さらに、ベロクロンはミライたちに狙いを定めると口を開き、内蔵されている2連装のミサイルが顔を見せた。

 

「まずいっ!!」

 

ミライが咄嗟に叫ぶが、ベロクロンは無情にもミサイルを放った!

 

「グロォオオオオッ!!」

 

2発のミサイルはミライたちに向かって行く!ミライは咄嗟に後ろにいる芳佳とひかりに目を向けた。

 

「2人とも伏せて!」

「え!?」「ミライさん……!?」

 

ミライは右手を突き出すと、赤いブレスレットが出現、そこから金色の光が放たれるが、そこにミサイルが着弾して爆発が起きた!

 

「!?ミライ!!」

「芳佳ちゃん………!?」

 

ミサイルの爆発が起きて、炎に包まれるミライたちを見てリュウたちは不安の声を上げるが、爆炎が晴れるとそこには金色の光に守られて芳佳とひかり、そして………

 

「あっ………!?」

 

銀色の身体に赤いラインを走らせた異星人………ウルトラマンメビウスの姿があった!

 

「ウルトラマン………!?」

「メビウス……!!」

 

はじめて見たメビウスの姿にひかりは戸惑うが、芳佳はメビウスに期待の目を向けていた。

 

「グロロローーーッ!!」

 

一方、ベロクロンはメビウスの出現に警戒するように距離を取るが、すぐにメビウスを睨み、再びミサイルを発射する体制に入った。

 

『待て、ベロクロン!』

「グロォ………」

『!?』

 

しかし、ベロクロンをヤプールが止めるとミサイル超獣は後ろに下がった。メビウスたちはそれに戸惑っていると、美緒がヤプールに聞いた。

 

「何のつもりだ!?」

『何、貴様らと戦うには別の場所があるという事だ。』

「別の場所だと?」

 

美緒の言葉にヤプールは不敵な笑みを浮かべて鎌状の右手を掲げると、全員の足元に魔法陣のようなものが現れて、光を放ち始めた!

 

「これは……!?」

 

美緒が何が起きたかと思う間もなく、ウィッチとメビウス、それにシャドー星人やヴァジュラリンたちはその場から消え失せてしまった………

 

 

 

 

 

★☆★☆★☆

 

 

 

 

 

『………』

 

ジェロニモン達が儀式を続けているのを、後ろから隠れている覗いている者がいた。その者はジェロニモン達の後ろで犇めく再生怪獣たちの姿を見た。

 

(迷い込んだコントロールルームで再生怪獣の姿を見て飛び出して来たが………あの数、俺1人では難しそうだ………だが、母星に連絡はとることはできないし、あのウルトラマン達も戻って来るか分からない………やるしかない。俺1人でやるしかないんだ………!!)

 

その者は意を決したように腕を大きく回すと拳を握り、己を鼓舞する意味を込めて、叫んだ。

 

 

 

 

 

『レッドファイト!!』

 

 

 

 

 

―――こうして、レッドマンの孤独な戦いが幕を開けた。

―――この戦いを描いたのが、テレビ番組『レッドマン』であるという事は、ファンの間では周知の事実である。

陳瓶(ちんぺい)書房刊『レッドファイト~赤いあいつ列伝~』より

 

 

 

 

 

つづく




第二十四話【Bパート】です。

・冒頭の別世界の映像は『ウルトラマン超闘士激伝』、『ULTRAMAN』、『怪獣娘~ウルトラ怪獣擬人化計画~』、『ウルトラ忍法帖』、『ウルトラニャン』となっています。それ以外も円谷作品やそれ以外の世界になっています。

・再生怪獣軍団は「そっちかよ!」シリーズw証であるガンQの目玉はカラータイマーみたいな分かりやすい弱点として設定しました。
 再生怪獣がボロボロでくたびれているのはアトラクション用スーツの言い訳ですw

・ゼアスとナイスのコンビ登場。この2人ってよくコンビで登場してるけど、劇中にある通り変身方法は正反対なんですよねw
 この2人の戦いは、未熟故にちょっと危なっかしい感じを目指しました。

・ちなみに『爬區阿葉寸蛇袈砺㰦裏』は周囲に流れてるお経なんですが、『ハウアバズンタカレコリ』と読みます。元ネタはウル忍の100回記念。

・シャドー星人の名前はシャドーから車道を連想して、歩道、弓道、茶道など『道』にちなんだ名前を付けました。

・ジャゴンVSコオクス。ジャゴンって100m以上あるんだけど、「超獣は怪獣より強い」という分かりやすい例として出しました。

・まさかまさかのレッドマン登場。レッドマンの劇中の戦いは援護もなにもない状況で必死になっていたって説をどこかで見かけて、それを採用しています。書籍は元ネタに似た語感のカンガルー怪獣チンペから。

では、また次回。


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第二十五話 魔城からの脱出(後編)

あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。


 

 

『グゥウ………』

 

ゴライアンが意識を取り戻して身体を起こすが、ダメージを受けた腹を庇うように手を当てた。

 

『くそ、気を失っていたのか………』

『ゴライアンさん!』

 

ゴライアンが周囲を見渡していると、頭部が王冠のような形状で手にシールドを持ったシルバー族の戦士がこちらに走ってきた。

 

『大丈夫ですか!?』

『アキュラか………』

 

アキュラという戦士はゴライアンに駆け寄ると、肩を貸して立ち上がった。

 

『何が起きた………!?』

 

「ピヤァアーーー!」

「ゼットーン……」

「フォッフォッフォッフォッフォ……」

 

ゴライアンの目線の先では、無数の怪獣達が宇宙警備隊員と戦い、周囲のクリスタルの街を破壊していた。ゴライアンはその光景に愕然としていたが、自分の近くに息絶えて倒れる4人のウルトラ戦士の姿に気が付いた。

 

『ザ、ザージ………カラレス………ドリュー………フ………フレア………ッ!!』

 

それは、ゴライアンと共にある戦士に師事していた兄弟弟子であった。ゴライアンはそれにショックを隠せなかった。

 

『そんな……みんな………う、うう………ッ!!』

『ゴライアンさん!しっかりしてください!』

 

ゴライアンの様子がおかしい事に気付いたアキュラは、彼を必死に呼びかける。しかし、彼はその言葉に応える事が出来ず、ゴライアンはアキュラを払いのけて、涙を流しながら吠えた。

 

『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!』

『ゴライアンさん!!』

 

ゴライアンは大きく叫ぶとすぐにその場から飛び出した。ゴライアンは飛び立った先でこの事件の首謀者―――黒い身体をして長い棍棒を持ったウルトラマンの姿を見ると、急接近しながら殴りかかった!

 

『ベリアルゥウウウウウウウウウウッ!!』

『あん?』

 

そのウルトラマン―――ベリアルはいきなり現れたゴライアンを見て眉間にシワを寄せたが、次の瞬間には彼の拳が自分に迫っていた。しかし、宇宙人は棍棒を振るうと拳が激突し、衝撃波が周囲に広がった。

 

『なんだ、生きていたのか、ゴライアン。』

 

ベリアルは吊り上がった目でゴライアンを見ると鼻で笑い、軽く払いのけた。

 

『何故だ!?何故フレアたちを殺したぁあ!?』

『分かりきった事を。力のある者が弱いヤツを蹂躙する………この宇宙の真理だ。』

『ふざけんなぁああ!』

 

ゴライアンは再び攻撃を仕掛けるが、ベリアルはそれを再び受け止めると今度は投げ飛ばし、倒れたところを棍棒で腹を強打した。

 

『ぐぼおっ!!』

『やはりこの程度か……お前も他の奴らと同じだったようだな。』

 

ゴライアンは倒れ伏したまま立ち上がれなくなり、その様子を見たベリアルは失望するようにため息をつくと、そのまま棍棒を担いでゴライアンに背を向けた。

 

『そこで寝ていろ。自分の無力さを噛み締めながらな。』

 

そう言い残して去っていくベリアル。ゴライアンは悔しさと悲しみが入り混じった表情を浮かべ地面を叩いた。

 

『ベリアル………ベリアルゥウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウッ!!』

 

 

 

 

 

第二十五話 魔城からの脱出(後編)

 

幻影宇宙帝王 ジュダ・スペクター

グア軍団七星将

ミサイル超獣 ベロクロン

コブ怪獣 オコリンボール

奇獣 ガンQ

異次元怪異 ネウロイ(GX-07)

登場

 

 

 

 

 

「―――ぃ、―――イアンさん!!」

「ぅうん………?」

 

ゴライアンが目を覚ますと、いつの間にか人間態に戻っており、寝そべった自分を心配そうに見つめるミーナの姿があった。

 

「大丈夫ですか!?」

「あ、ああ………何とか、な………」

 

ゴライアンは痛む頭を押さえながらも起き上がり、辺りを見渡した。そこにはバルクホルンやシャーリーにアスカたちが集っており、皆安堵のため息をついた。

 

「良かった……目が覚めたんだね。」

「ここは……一体何処なんだ?」

 

ゴライアンは頭を手で押さえたまま記憶を辿る。確か、キングバルタンと戦っていた最中に転移をさせられたのだ。

周囲を見てみると、今いるのはスタジアムを思わせるすり鉢状の石造りの建造物の中のようであった。かなり広く直径が数百mくらいありそうなほどの広さである。自分達がいるのは周りの観客席のような場所であり、天井には透明なドームでおおわれていた。

 

「随分と広い場所だな……?」

「ロマーニャにある、コロッセオに似ているな………」

闘技場(コロッセオ)ってのは、合っているようだぜ?見ろ。」

 

アスカが指をさした先には地面に散らばる機械の残骸であった。それに見覚えのあったシャーリーやバルクホルンは、あっと声を出した。

 

「あれは、この間のロボット軍団!?」

「じゃあここって………あの時の『土俵』!?」

 

あの時の『土俵』がグア軍団の所有物である事を知り、全員が驚いた。よく見ると、ガンスピンドラーの開けた大穴もあった。その時、こちらに芳佳や美緒たちが走って来た。

 

「ミーナ!」

「美緒!」

「あ、シャーリー!」

「坂本少佐!!」

「あれ、クルピンスキーさん!?」

「ああ、ひかりちゃんたち。」

 

次々にミライやウィッチたちが集まってきた。

 

「無事だったのか……良かった……」

「お二人ともご無事で何よりですわ。」

「みんな、怪我はないみたいだな。」

 

お互いの無事にホッとする一同。すると、ミライはゴライアンたち3人に気が付いた。

 

「あの、あなたたちは………?」

「ああ、オレはゴライアンだ。」

「僕は朝日 勝人。」

「僕は夢星 銀河だよ。一応、僕たちは『光の国』で会ってるんだけどね………」

「え、そうだっけ………?」

 

ミライは勝人と銀河の言葉に小首をかしげた。それを聞いたゴライアンが、口を開いた。

 

「光の国の………そうか、お前らゾフィーんとこの………」

「ゾフィー隊長を知っているんですか?」

「まあな、古いダチだ。」

 

ゴライアンが懐かしむように言う。クルピンスキーと話していたひかりは少し不思議そうにしていると、周囲に気配を感じた。振り返ってみると、そこにはシャドー星人やヴァイロ星人、ヴァジュラリンたちの姿があった。

 

「あ、こいつら!!」

「まだやる気か!?」

 

シャドー星人たちに警戒するウィッチたちをよそに、彼らは少し慌てた様子で両手を上げてきた。

 

『いや、俺たちはもう戦う気はない………もう試験どころではないだろうからな………』

『ワチキらも、邪魔され続けて興が冷めたヴァヴァ………』

『でも、戦いを諦めたワケじゃあないジュラ。』

『この場は引くだけで、いずれ必ず決着をつけるリン!』

「は、はあ………」

 

ヴァジュラリンの宣言に顔を引きつらせる美緒。妙なヤツに目をつけられたなと、アスカが同情の目を向けていた。

 

「ところで、ここは一体?」

「パンフレットを見たんだけど、ここは第3エリアにある闘技場のようだね。」

「パンフレット?」

 

パンフレットを見ながら答えるクルピンスキーに、直枝が思わず聞いた。

 

「ここに連れて来られたってことは、ここで戦えってことか?」

『その通り!』

「あ、あいつら!!」

 

背後から声がしたかと思い振り返ると、反対側の観客席にヅウォーカァ将軍を筆頭にコウメイ、ヤプール、ワロガ、キングバルタン、魔頭、『暴の星』たちグア軍団七星将が勢揃いしていた!

 

『偉大なるジュダ様の命により、この場所に転移させた。生き残った試験参加者も一緒にな。』

『何だと!?』

「何のために………!?」

 

ヅウォーカァの言葉にフォードとリーネがヅウォーカァの言葉にフォードとリーネが反応し、他の者も困惑する。しかしその時、巨大な気配を感じ取った。

 

「―――ッ!?」

 

その気配に、芳佳は全身から冷や汗が噴き出す。すると、七星将の背後にある大きなドアが開き、金色の鎧を身に纏い、不気味な笑みを浮かべた顔と2本角を持ち、黒いマントを翻し巨大な剣を持ったジュダ・スペクターが、ゆっくりと出てきた!

 

「あ、あれは………!?」

「ジュダ………!!」

「なんと禍々しい………!?」

 

現れたジュダの放つ邪悪なオーラ圧倒される一同。ジュダはフッ、と笑みを浮かべると、パチパチと拍手をした。

 

『よく来たな、ウルトラマン、それにウィッチの諸君!相手が油断していたとはいえ、あれだけの数の宇宙人をよくぞ退けた!!』

「何………?」

 

ジュダからの突然の称賛に戸惑う一同。すると、ジュダはウィッチたちに目を向けた。

 

『ふむ、先輩と後輩とヘンタイと貧乳未満のウィッチたちとも、ちゃんと合流できたようだな。』

「ん?」

 

ジュダの言葉を聞いて疑問を抱く直枝。おそらく自分たちの事を言っているのだろうとは理解し、そこでニパ(先輩)とひかり(後輩)とクルピンスキー(変態)に目を向けた。

 

「………誰が貧乳未満だオラァアアアアアアアアアッ!!?」

『夜叉の構え。』

「ふざけてんのか!?」

「お、落ち着いて管野!!」

 

怒髪天をつく勢いでキレる直枝に対して、剣を持って変な構えを取るジュダ。ひかりとニパが直枝を止めていると、ワロガがジュダに進言をしていた。

 

『ジュダ様、今2009年の設定。そのアニメ、2012年。』

『あ、そうだっけ?』

『いや、ドコにツッコミ入れてるんだよ!?』

 

ワロガとジュダのとぼけた会話にヅウォーカァがツッコむ。そんな様子のグア軍団上層部を見て、困惑した様子の芳佳がミライに聞いた。

 

「あの、ミライさん……あの人たち本当に宇宙の悪の軍団なんですか?」

「………ちょっと自信ない。」

『自信持ってそこは!?』

 

戸惑った様子のミライにジュダが大声を上げるが、周囲は呆れ返った様子であった。慌てて咳ばらいをしたジュダは、改めて口を開いた。

 

『ゴホン!とにかく、お前たちはよくやったぞ、うん。ワシの想像以上だった!』

『ジュダ!試験であんなことになるなんて、聞いていないぞ!』

 

ジュダが称賛をすると、フォードが抗議の声を上げた。それを聞いたジュダは不敵な笑みを浮かべる。

 

『そりゃあそうだろう?あれも試験の一環だったのだからな。』

「な、なんだと!?」

『相手を侮らず、想定外の事態にも冷静に対処をする。それができる人材が欲しかったのだ。』

 

ジュダの言葉に唖然とするシャドー星人たち。一方で、美緒やミーナは一理あると頷いていた。

 

『そう言うことで、君たちは失格。あとそこの宇宙三面魔像は獲物を選り好みしていたけど、合格ラインギリギリって感じだな。』

『ふん、ワチキらは元々強いヤツと戦いたいだけヴァヴァ。』

『別に入団したかったわけじゃないジュラ。』

『あ、そう………じゃあ、今回の試験は合格者ゼロでフィニッシュか。はー残念残念。』

 

ジュダは左程残念そうではない口調で言うと、両手を上げて肩を落として見せた。しかし、ジュダはしかし、とミライたちに目を向けた。

 

『しかし、貴様らには怪獣戦艦艦隊の大半を破壊され、わが軍の戦力をかなり削られてしまった………そんな事をされて、怒らぬとでも思うか………?』

「うっ………」

 

ジュダの言葉にミライたちは息を飲む。ジュダはニヤリと笑うと、七星将たちに目を配らせた。すると、ヤプールとワロガが指を鳴らし、魔頭が高く飛び上がった。

 

その瞬間、空中にピシピシとひびが入り、まるでガラスを割ったかのようにバリーンッ、と音を立てて割れると、その中から『ミサイル超獣 ベロクロン』が飛び出してきた!

 

もう一方では、巨大なマザーボールが現れて、無数のボールが集まると巨大な怪獣『コブ怪獣 オコリンボール』になった!

 

更に、飛び上がった魔頭が紫色の炎に包まれると、巨大な目玉に手足が生えたような怪獣『奇獣 ガンQ』になった!

 

「グロロローーーッ!!」

「グォオオオオン………!!」

「キヤハハハハハハハハハ!!」

 

3体の巨大怪獣の出現に驚いていると、ジュダは腕を組みながら言った。

 

『こいつらの相手は、ウルトラマンだけではない!右手をご覧ください!!」

 

そう言ってジュダが右手で指した方を見ると、そこには15機のストライカーユニットとガンウィンガーが設置されていた。

 

「あ、私たちのストライカー………!」

『わざわざ拾ってきてやったぞ。さっきは逃げるのに必死だったようだしな。ああ、爆弾仕掛けたり細工したりする無粋な真似はしてないから、安心してくれ』

「何でわざわざ………!?」

『なあに、貴様らウィッチは空を飛んでこそだろう?その力を、我らに見せてくれたまえ。』

 

ジュダはそう言うと、客席に用意された大きな椅子に腰かけた。そして足を組んで指を鳴らすと、背後から現れたグア兵がワイングラスにワインを注いだ。

 

「嘗められたものだな………どうする?」

「………やるしかないでしょうね。」

 

バルクホルンの問いかけに対し、ミーナは覚悟を決めた表情で答えた。その様子を見た芳佳たちも頷いた。しかし、ひかりたちは少し困った顔になっていた。

 

「あの、私たちのストライカーは、破損していて………」

「そうだったか………」

「ちょっと私に見せてくれ。どれくらい壊れているのか確認したい。」

 

シャーリーはそう言うと、ひかりたち4人と一緒にストライカーの元に走った。

 

「うーん………この程度なら、応急処置で何とかなるな。ルッキーニ、手を貸してくれ。」

「おっけー!」

「俺も手伝うぞ。」

 

そう言ってリュウを含めた3人は、ひかりたちの機体の応急処置を始めた。その間に芳佳たちは自分のストライカーを履いて発進の体制に入った。

 

「発進!!」

「「「「「了解!!」」」」」

 

坂本の声とともに、5人の魔女たちは空へと舞い上がっていった。一方、ミライたちは怪獣達をにらむと、頷き合ってそれぞれの変身アイテムを取り出した。

 

「行こう、みんな!」

「「うん!」」

「おう!」

 

ミライの言葉に全員が答えると、それぞれアイテムを手にすると、天高く掲げた。

 

「ダイナァァアアアアアアアアア!!」

「ガイアァァアアアーーーーーー!!」

「コスモォース!!」

「メビウゥゥウウウウウウウウス!!」

 

そして7つの光が天に上り、3大怪獣の目の前にダイナ、ガイア、コスモス、ゴライアン、ゼアス、ナイス、そしてメビウスが降り立った!!

 

『ダァアッ!!』

『ジュアッ』

『ハァアッ!!』

『シュワッ!!』

『ナァアッ!!』

『ヌウンッ!!』

『セヤァアッ!!』

 

7人のウルトラマンが並び立ち、飛んできたウィッチたちも合流した!

 

「す、すごい………!!」

「ウルトラマンが、あんなに………!!」

「あれだけの人数が集まると、壮観だね………!!」

「うわー………」

 

7人のウルトラマンが集まった様を見たひかりたちが感嘆の声を出した。ジュダは満足げな笑みを浮かべると、手を掲げて合図をした。

 

『かかれ!』

「グロロローーーッ!!」

「グォオオオオン………!!」

「キヤハハハハハハハハハ!!」

 

ジュダの合図と同時に、3体の怪獣・超獣が攻撃を開始した!ベロクロンのミサイルとオコリンボールの光線、ガンQの光線が迫り、全員が散開をして回避をすると背後で爆発を起こした!

そのままメビウスとゴライアンはベロクロンに、ダイナとコスモスはオコリンボールに、ガイア、ナイス、ゼアスはガンQの元に走り出した!

 

「ウルトラマンに続け!」

「「「「「はい!」」」」」」

「わかりました!」

 

美緒の指令を受けて芳佳、エイラ、サーニャがベロクロンに、美緒、リーネ、ペリーヌがオコリンボールに、ミーナ、エーリカ、バルクホルンがガンQに向かって行った。

 

 

 

VSガンQ

 

「キヤハハハハハハハハハ!!」

 

ガンQは寄声と共に念力で周囲の瓦礫を念力で浮遊させ、それを砲弾のごとく発射した。ミーナはシールドを張ってそれを防ぐも、次々と飛来する瓦礫を防ぎきれずにいた。

 

(くっ……なんて力なの!?)

 

ミーナが防戦一方の中、エーリカは咄嗟に『シュトゥム』を使って吹き飛ばし、バルクホルンは裏拳で弾き飛ばした。

 

「大丈夫か!?」

「えぇ……ありがとう。」

「キヤハハハハハハハハハ!!」

 

2人が会話をしている間にもガンQは次弾を発射しようとした。しかしガンQの目に赤いレーザーサイトが当たったかと思うと、次の瞬間には青白い光線がガンQに迫った!

 

「キヤァアア!?」

 

ガンQは咄嗟に避けて光線は地面に着弾した。反対側ではスペシュッシュラ光線を放ったゼアスが立っていた。

 

『シュワアッ!!』

『ジュアッ!!』

『ナアッ!!』

 

ゼアスの攻撃に続き、ガイアとナイスが続いた。

 

『今の攻撃………(あの赤い光線は『当てる為』ではなく、『()()()()()()()』のものか………なかなか切れる男だ………)』

 

ゼアスのスペシュッシュラ光線を見たジュダが、内心でゼアスの評価を上げた。その間にガイアは水平チョップをお見舞いし、ナイスも連続パンチ『パパパンチ』をお見舞いし、ガンQは大きく後退した。

 

「ミュキヤアアアアア!!」『おのれェ!!」

 

ガンQが怒りの叫びを上げると目から紫色の光線を放つ!ガイアたちは腕で防御をするが、その威力に押し負けそうになる。そこに頭部に弾丸を受けて火花を散らし、怯んだ隙を見てゼアスとナイスが接近してパンチをお見舞いして、大きく後退させた!

 

「やった!」

『ありがとう、君たち!』

 

ナイスは援護をしてくれたエーリカたちに礼を言う。ガイアたちは起き上がったガンQに目を向けると、ガイアとゼアスは光線の発射体制に入り、クァンタムストリームとスペシュッシュラ光線を放った!

 

「キヤハハハハハハハハハ!!」

 

しかし、ガンQはその目玉に光線を吸収してしまった!驚く2人に、ガンQは吸収したエネルギーをそのまま返すと、光線は返されてしまい、直撃を受けた2人は悲鳴を上げて倒れ伏した!

 

『グァアッ!?』

『グゥウッ!?』

「ガイア!?」

「光線を返しただと!?」

 

光線を受け倒れた2人を見たミーナとバルクホルンは驚愕の声を上げ、ガンQはさらに追い打ちをかけようとしてきた。しかし、そこにナイスが立ち塞がり、両腕で受け止めた!

 

「グッ……グウゥッ!!?」

「ナイス!?」

 

ナイスは苦痛の声をあげながら踏ん張り、ガンQを投げ飛ばした。

 

「ミュキヤアアアアア!?」

 

倒れたガンQが痛そうな声を上げる。ナイスは右手を斜め上、左手を斜め下に伸ばし他後、胸の前で『X字』に構えた。必殺の『ベリーナイス光線』の構えだ!

 

「キヤハハハハハハハハハ!!」

 

しかし、ガンQは起き上がって先ほどのように光線を跳ね返そうとしてきた!

 

「………」

『………』

『『………』』

「「「………?」」」

「キヤ~?」

 

………しかし、いつまでたっても光線が発射されない。不思議に思ったガンQが構えを解いて首をかしげると、ナイスは首を左に傾けた。

 

 

 

 

 

ビュシュンッ

「キキヤ~~~!?」

ズドォオンッ

 

 

 

 

 

『『あ………』』

「「「あ………」」」

 

その瞬間、虹色の『ベリーナイス光線』が発射されてガンQに直撃!そのままガンQは目を『×』にして、仰向けに倒れて爆発した!

 

『ナァアッ!!』

「じ、時間差で発射して、返されるのを防いだのか………!」

「スイッチ入れてない掃除機みたいに、光線全部を吸収できるわけではないって事ね………」

 

胸の前でサムズアップをするナイスに、バルクホルンとミーナは呆れながらも感心する。ガイアとゼアスも立ち上がり、ナイスに敬意をこめて同じサムズアップを送った。

 

 

 

VSオコリンボール

 

「グォオオオオン………」

 

オコリンボールは不気味な声を上げると、頭部から稲妻状の赤い光線を放ちダイナの足元を爆発させた!咄嗟にジャンプをしたダイナは飛び蹴りを喰らわせて倒すが、オコリンボールは起き上がり小法師のごとく弾かれるように起き上がり、体当たりをダイナにお見舞いした!

 

『ジュアッ!?』

「ダイナ!?」

 

ダイナが倒れて美緒が声を上げるが、オコリンボールは再び光線を放ってくる!何とか防いだところに、今度は身体の一部である吸血ボールを数個分離させて襲わせた!

 

「!?少佐!あのボールに取りつかれたら、血を吸われてしまいますわ!!」

「ええ!?」

「なんだと!?」

 

ペリーヌは咄嗟に吸血ボールの恐ろしさを伝える。それを聞いたリーネと美緒は驚くが、その間にも無数の吸血ボールは襲いかかってくる!

 

「撃ち落とせ!」

「「はい!!」」

 

美緒の指示を受けて、リーネとペリーヌは魔力弾を発射して吸血ボールを撃墜していく!その間にオコリンボールは再度光線を放とうとするが、そこにコスモスが接近して頭を掴んで投げようとする。しかし、ツルンと手が滑って掴むことが出来ず、地面に倒れてしまう。

 

『ゥウ!?』

「あの球体の身体では、掴みにくいのか………!?」

「厄介ですわね………!?」

 

オコリンボールの特徴に2人が顔をしかめていると、立ち上がったダイナが腕を十字に組んでソルジェント光線を放つ!しかし、オコリンボールは身体を無数のボールに分離させて、光線を避けた。

 

『ッ!?』

 

そして再び合体すると吸血ボールを体当たりさせて爆発させた!

 

『グァアッ!?』

『ムゥウッ!?』

「ダイナッ!!」

「コズモスッ!!」

 

吹き飛ばされるコスモスとダイナを見て、吸血ボールを何とか対処した美緒とリーネが声を上げた。何とか2人が起き上がったその時、美緒たちの脳内に声が聞こえた。

 

《みんな、今からヤツのボールを分離させるから、それを合体させないよう一ヶ所に集めてくれ。》

「え!?」

《アイツを倒すためなんだ。頼む!》

「……よし、分かった!」

 

美緒は一瞬戸惑うが、すぐに意を決して了承する。リーネとペリーヌも戸惑いながらもコクっと小さくうなずいた。

ダイナはコスモスと共に立ち上がると、再度ソルジェント光線を放つ!オコリンボールは再度分離して回避をするが、そこにペリーヌが電撃を放った!電撃を受けた吸血ボールの動きが鈍ったところで、3人はトライガーショットとスーパーガンで攻撃し、マザーボールから引きはがすように誘導した。

 

『よし、いいぞ。そのあたりがベストだ!』

 

ダイナはそう言うと、額のクリスタルを青く光らせてミラクルタイプに、コスモスはコロナモードに変身をした。ダイナは誘導されたボールを見ると美緒たちにテレパシーで離れるように言うと、美緒たちは一斉にその場から離れた。

3人の姿が離れたことを確認した後、ダイナは両腕を額のあたりで交差させ右手にエネルギーを溜めると、右手を突き出して金色の光線を放つ!光線をボール群が受けると、その背後に小型のブラックホールが発生、ボールを1つ残らず吸い込んでしまった!!

これこそダイナの持つ超能力の1つ、超衝撃波・『レボリウムウェーブ(アタックバージョン)』である!

 

「グォオオオッ!?」

 

身体を構成するボールの大半を失ったオコリンボールは、大きく後退りをして苦しそうな悲鳴を上げて逃げようとする。しかしそれに気付いたダイナが、念力で動きを封じた。

 

『いまだ、コスモス!!』

 

ダイナが合図をするとコスモスは頷いた。コスモスは両腕を前に伸ばすと両腕を右側で大きく振りかぶり、振り下ろしてI字に構えた右腕に左手を添え、赤い破壊光線『ネイバスター光線』を放った!

 

「グォオオオオン………!!」

ドォオオンッ

 

赤い光の奔流に包まれたオコリンボールは、そのまま大爆砕した!

 

「やった!」

 

美緒たちは喜びの声を上げる。一方でコスモスは少し悲しげな顔をしていたが、ダイナはそんな彼に近づき肩に手を置いた。

 

『さぁ、戻ろう』

『……ああ。』

 

 

 

VSベロクロン

 

「グロロローーーッ!!」

 

ベロクロンはひと鳴きをすると、ミサイル発射管から無数のミサイルを放つ!メビウスとゴライアンは側転や前転をして回避をするが、ベロクロンに接近していた芳佳とサーニャはミサイルが追尾をしてきて振り切れず、何とか撃ち落として爆発させた。

エイラは固有魔法の未来予知を駆使してミサイルの間をすり抜けるように飛行、左右から迫って来たミサイルを急旋回して回避をすると、ミサイル同士がぶつかって爆発した。

 

『ミサイルが多すぎて、近づけない………!!』

『こりゃ面倒だな……おじょうちゃんたち、離れてな!』

「え!?」

 

ゴライアンがそう言うと、腕を勢いよく振るってその衝撃波でミサイルが一掃された!

 

「すごい………!!」

「力業カヨ………」

『ふうっ。まあ、こんなもんよ』

「グロロローーーッ!!」

 

ゴライアンの技を見て、芳佳は思わず感嘆の声を上げる。ベロクロンは驚いた様子もなく、口から1億度の火炎を吐いて攻撃してくる!メビウスは芳佳たちを火炎から守るべくメビウスディフェンスサークルを発生させて防御をすると、そこにゴライアンが腕にエネルギーを溜めてリング状に高速回転させ『ウルトラスラッシュ』(またの名を『八つ裂き光輪』)を精製、ベロクロンに向けて投げつけた!

 

「グロロローーーッ!!」

ガキィンッ

 

しかしベロクロンは、ハエでも追っ払うかのようにウルトラスラッシュを右手で払いのけてしまった!その瞬間、火炎が途切れたのを見てゴライアンが一気に接近してアッパーカットを打ち込んだ!

 

「グロォ~~~!?」

 

予想外の一撃にベロクロンは大きく仰け反るが、すぐに体制を立て直して口から2連装ミサイルを装填した。

 

「今ダ!!」

「はい!」「うん!」

 

しかしそこにエイラが号令を出すと、芳佳たちのトライガーショットとサーニャのフリーガーハマーが火を噴き、口内のミサイルに命中、誘爆を起こした!

 

「グロァアアッ!?」

 

誘爆を受けて顎が外れ口から煙を吐き、全身から火花を散らしてふらふらとよろめくベロクロン。この機を逃さないべく、メビウスは『メビュームシュート』の発射体制に入った。

 

『セヤァアアアア!!』

バシュゥウウ

「グロロローーーッ!!」

 

腕を十字に組んで放たれたメビュームシュートを浴び、ベロクロンは断末魔を上げながら倒れ、爆散した!

 

「やりましたね!!」

「何とかなったナ……」

 

芳佳たちはベロクロンが倒れた事を見て安堵する。ゴライアンも頷いていると、ダイナや美緒たちも集まって来た。

 

「すごいな、あのウルトラマン達………!」

「私たちが来る間もなかったねー」

 

そこに、ストライカーの修理が済んだひかりやシャーリーたちに、ガンウィンガーに搭乗したリュウもやって来る。その時、パチパチと拍手の音が聞こえた。

 

『見事だ!見事な戦いだったぞ!ウルトラマン、それにウィッチの諸君!』

『ジュダ………!!』

 

観客席で称賛の拍手を送るジュダを、メビウスがキッと睨んだ。その後ろでは、コントのようにボロボロで煤まみれの魔頭がふらふらと戻ってきていた。

 

「ゆ、油断した………」

「大丈夫?」

『だが、安心するのはまだ早い。これからがメインイベントだ!』

「なんだと?」

 

後ろで魔頭をコウメイが介抱する中、ジュダの言葉を聞いて美緒やバルクホルンが訝しんだ。ジュダは立ち上がって剣を天に向ける。

すると切っ先の空間が歪み、中央に巨大な砲を構えそれを二分割させた巨大な機首で挟んだかのような10m大ネウロイが現れた!

 

「キィイイイイイイイイイイイ!!」

「ネウロイ!?」

「あれってあの時の………!?」

 

そのネウロイは、ロボット軍団と共に出現をしたネウロイの1体であった。それを見たエーリカは、ある可能性が浮かんだ。

 

「あれって、キングのおじいちゃんがホームランしちゃったヤツじゃない………?」(第二十話参照)

「ああ、あの時の………」

「いや、ホームランってどういう事?」

 

エーリカの言葉を聞いたバルクホルンがあきれたように言うと、クルピンスキーがツッコミを入れた。

 

『ふっふっふっ、銀河のバックスクリーンまで飛んでいきそうだったのをナイスキャッチしてやったのだ。だが、これで驚いてもらっては困るな!』

 

ジュダが合図を送ると、ネウロイはメビウスたちに見向きもせずに飛んでいく。飛んで行った先を目で追っていくと、ネウロイは破壊されたロボットの残骸の1つ、メカギラスの頭部に向かって行き、突っ込んでしまった!

 

「何!?」

 

驚くのもつかの間、ネウロイはメカギラスの後頭部に同化して角に見える形になり、その場に浮遊をした。

 

『ロボットの残骸と同化した………!?』

「キィイイイイイイイイイイイ!!」

 

メビウスたちが驚愕していると、ネウロイは大きくひと鳴きをした。すると、首の根本から触手のようなケーブルが何本も伸びると、周囲に散らばるロボットの残骸に向かって次々に同化していく!

 

「こ、これは………!?」

 

ガメロットの胴体が!

 

「冗談じゃないぞ……!?」

 

インペライザーの両肩の砲身が!

 

「ロボットの残骸が………」

 

デスフェイサーの両腕が左右逆に!

 

「寄せ集まって………」

 

ヘルズキングの両脚が!

 

「合体していく………!?」

 

ドラゴドスの翼と尻尾が!次々にネウロイ化して1体のロボット怪獣となった!

 

「ギキャァギィイイイイイイイイ!!」

 

ネウロイ化した合体ロボット怪獣が、翼を広げながら着地をすると、地響きと共に大きく鳴き声を上げた!

 

『ふははははは!!見たか!!これぞ『怪異合成機獣(かいいごうせいきじゅう) グランギラス』よ!!名前は今考えた。』

『グランギラス………!?』

 

ジュダによって『グランギラス』と名付けられたロボット怪獣は、右腕のガトリング砲と尻尾の先の丸鋸を回転、左腕のハサミをガチガチと打ち鳴らし、標的であるウルトラマンとウィッチをロックオンした。

 

 

 

 

 

つづく




第二十五話です。

・今作のゴライアンはベリアルの弟子というトンデモ設定。原典と同様に前線から離れている理由付けになっています。

・ラスボスと直接対面なのにふざけるジュダ。最近この歌聞いたらひかりたちに当てはまる事に気が付いてしまいましてw直ちゃんファンの皆さんごめんなさい。

・ゼアスとナイスは笑えるけれど強いんだというアピール。レーザーサイトと首をかしげる時間差光線は個人的に会心の出来。

・オコリンボールって実はダイナと天敵なんだと気づきました。こんな凶悪な怪獣でも心を痛めるコスモスは本当の勇者。

・今作を始める時に「エイラVSベロクロンで板野サーカス」というアイデアがうっすらあって、今回それを少しだけとはいえ取り入れてみました。これで合っているのかはわからないけれど……

・合体ロボット怪獣グランギラス登場。当初は土俵の戦いで最後に出す予定だったんですが、話が冗長になりそうだったので今回登場させました。ロボット怪獣達が部分破壊されていたのはこのため。
 こういうロボット版タイラント、リアルのウルトラマンでも出てほしい。

では、次回をお楽しみに。


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第二十六話 帝王の復活宣言

第二十六話 帝王の復活宣言

 

怪異合成機獣 グランギラス

幻影宇宙帝王 ジュダ・スペクター

グア軍団七星将

登場

 

 

 

 

 

「ギキャァギィイイイイイイイイッ!!」

 

ジュダによってネウロイとロボット怪獣の残骸が合体し『怪異合成奇獣 グランギラス』が誕生、7人のウルトラマンと15人のウィッチに迫っていた。

 

『さあ、グランギラスよ!奴らを血祭りに上げろ!!』

「ギキャァギィイイイイイイイイッ!!」

 

グランギラスは甲高い声を上げると翼を広げ、いくつもある赤い発光部を光らせて無数の光線を放った!

 

「何!?」

「くっ………!!」

 

ウィッチたちは咄嗟にシールドを張ってウルトラマン達も何とか防御、回避をするが、そこにグランギラスは左腕を伸ばして攻撃してきた!

 

「うわぁ!?」

「きゃあっ!」

 

伸ばした腕がウィッチたちの傍を掠め、その衝撃で吹き飛ばされてしまう。そのままハサミは防御していたダイナの腹部に直撃して吹き飛ばされる!

 

『グアアッ!?」

「ダイナッ!?」

 

更にグランギラスはそのまま長い尻尾を振るい、近くにいたメビウスとコスモスを吹き飛ばす!

 

『ウワァア!』

『グウッ……』

「このぉおお!!」

 

吹っ飛んだ2人を見て、直枝が手にした機銃を放つ!弾丸は右目に直撃して、火花と共に大きく破損した!

 

「どうだ!ざまあみろ!!」

 

直枝は自身の手応えを感じながら勝ち誇ったが、グランギラスの目は瞬時に修復された。

 

「何!?」

「あの再生速度は………!?」

 

異常なほどの再生速度に直枝とニパが驚きの声を上げているが、その時、リーネが両肩を見てある事実に気が付く。

 

「まさか……インペライザーの再生機能がネウロイ化で!?」

 

そう、グランギラスの両肩にはインペライザーの砲身が一体化しており、それによって得た再生機能がネウロイ化により強化されていたのだ。

 

「ギキャァギィイイイイイイイイッ!!」

 

グランギラスは再度ビームを放ち、メビウスたちを攻撃する。メビウスたちもすぐに態勢を立て直すが、それでもグランギラスの攻撃は止まらない!

 

「ぐぅお……!!」

『このままじゃまずいぞ……!!』

「ギキャァギィイイイイイイイイッ!!」

 

グランギラスの猛攻にウルトラマンやウィッチたちは焦りを覚える。メビウスは『メビュームスラッシュ』、ダイナの『ビームスライサー』を放ちグランギラスの翼を攻撃、破壊をするが、直ぐに再生をしてしまう。

 

「何だよあのデタラメな再生速度は!?」

「ウルトラマンの攻撃でもダメなんて………!?」

「これじゃあ手の打ち様がないぞ!!」

 

グランギラスの再生速度にシャーリーやペリーヌ、直枝が苦言を示す。観客席で見ていたシャドー星人たちも、手に汗を握っていた。進撃してくるグランギラスにバルクホルンとニパが機関銃で対処をしていると、そこに、ガンウィンガー内のリュウが通信を入れた。

 

「方法があるとすればただ一つ。ヤツのコアだ。」

「え?」

「ヤツもネウロイである以上、コアを破壊すれば砕け散るハズだ。コアのある箇所に、再生速度が追い付かない程の攻撃を与えるんだ。」

「そ、そうか………!!」

 

あの巨体と姿に気圧されていたが、グランギラスは『ネウロイ』に区分される以上はコアが存在する。そこを狙えば倒すことが可能だ。

 

「………ただ、スペシウム弾頭弾はさっきのタッコングに使い切っているし、ウィッチたちの今の装備にそこまでの威力はない………」

「火力が足りないか………」

 

だが、次いでリュウが言った言葉に肩を落とす美緒。そこに、話を聞いていたらしいゼアスとナイスが顔を見合わせて、メビウスに話しかけた。

 

『メビウス、『スペースQ』だ!』

『!?スペースQ!?』

『あの技なら、ネウロイのコアを破壊する事が出来るはずだ。僕たちがヤツの動きを止めている間に、準備を頼む!』

『わ、分かった!!』

 

ゼアスとナイスの提案を聞いたメビウスは、彼らの意図を理解して即座に承諾した。話を聞いていた美緒たちも頷くと、すぐに行動を開始する。

 

「よし、我々はヤツを足止めしつつコアの位置を探るぞ!」

「「「「「了解!!」」」」」

『みんな、集まって!説明します!』

 

美緒の指示にウィッチたちが応答し、グランギラスに向かって行く。一方でメビウスはダイナたちを呼び集めて、作戦を説明した。

 

『スペースQというのは1人のウルトラマンにエネルギーを集めて放つ、エース兄さんの技です。』

『なるほど、1人のエネルギーでダメでも、みんなのエネルギーを集めて放てばグランギラスを倒せるという訳か!!』

 

ダイナが納得したように言う。コスモスも頷くと、ガイアが作戦に補足した。

 

『よし、エネルギーはメビウスのメビウスブレスに集めよう。』

『僕の?』

『ああ、君のブレスに光エネルギーを溜めて増幅させれば、強力な一撃になる筈だ。』

『分かりました!』

 

作戦が決まったところで、ゴライアンがグランギラスと戦うウィッチたちに目を向けた。

 

『よしお前ら、チャンスは1回だ。嬢ちゃんたちがコアの位置を見つけるまでエネルギーを温存しとけ。』

『『『『はい!!』』』』

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「ギキャァギィイイイイイイイイッ!!」

 

ウルトラマンたちの作戦会議中、ウィッチとゼアス、ナイスがグランギラスを牽制していた。ウィッチたちやガンウィンガーの銃撃をグランギラスは全身に浴びるが、傷ついた所から瞬時に再生してしまうため、一向にダメージを与えていない。

ゼアスとナイスがパンチを喰らわせようとするが、グランギラスの目の前に障壁が張られてしまい、逆に左腕の一撃を頭に喰らってしまう!

 

『グァアッ!?』

『ナァアッ!?』

「あれは、メカギラスのバリアか!!」

 

先ほどのインペライザーの再生機能と同様にメカギラスのバリアも保有していたのだ。グランギラスは右腕の右腕のレーザーガトリング『デスバルカン』をウィッチたちに向けてレーザーを放った!

 

「ギキャァギィイイイイイイイイッ!!」

ズガガガガガガガガガガガッ

「きゃぁああっ!?」

 

回避する間もなく、シールドに直撃を受けて吹き飛ばされるウィッチたち。さらにグランギラスは胸から稲妻状の『ガメロレーザー』と両肩の突起をミサイルとして発射する『ギラスボマー』を、ゼアスとナイスに向けて放った!

 

『グァア………!?』

『ナァア………!?』

 

2人はミサイルとレーザーによって起きた爆炎に晒されて膝を付く。

 

「こ、こいつ………!!」

「アイツ1匹で、ネウロイ何体分だよ………あんなの怪獣の形した要塞じゃねーか!?」

「これでは、コアを探る事も………!!」

 

あまりにも規格外の強さにクルピンスキーと直枝が冷や汗を流す。他のウィッチたちもグランギラスの圧倒的な強さに歯噛みをしていた。眼帯を外して魔眼でコアを探ろうとしていた美緒も、その猛攻にうまく探ることが出来ないでいた。

 

(クソッ……!!一体どうすれば……)

「私が行きます!!」

 

美緒が焦っているその時、グランギラスの光線が降り注ぐ中、ひかりが宣言をするとグランギラスに向けて突っ込んで行った!

 

「ひかりちゃん!?」

「あのバカまさか!?」

 

直枝はひかりの考えに気付いた。

ひかりの固有魔法『接触魔眼』は、直接触れたネウロイを透視するものだ。グランギラスのコアを探るには今まさに猛攻を続けるグランギラスに触らなければならない。危険すぎる賭けだった。

 

「無茶よ!いくらなんでも危ないわ!」

 

ミーナが止めようとするが、ひかりは構わずグランギラスへと向かって行く。しかし、グランギラスは両肩のキャノン砲を向けるとビームを発射してきた。

 

「うわっ!?」

 

間一髪で避けるひかりだったが、放たれた光弾『インペリアルブラスト』はUターンをしてひかりの後ろに迫ってくる!

 

「ひかりちゃん!!」

ドォンッ

「あっ!?」

 

しかし、そこに芳佳がひかりの後ろに飛来し、シールドを張って光弾を防いだ!

 

「宮藤さん!」

「あの怪獣の所まで行くよ!一緒に!!」

「はい!!」

 

ひかりと芳佳は、グランギラスに向けて飛んで行く。こちらに接近してくる2人に気付いたグランギラスは尻尾の先端の丸鋸『ドラゴソーサー』を回転させると、2人に向けて尻尾を振るい攻撃してきた。

 

「ギキャァギィイイイイイイイイ!!」

「うわあ!?」

 

迫り来る巨大な回転刃を何とか回避をするが、なんと『ドラゴソーサー』は尻尾から分離して、2人を追尾してきた!

 

「分離した!?」

「なんじゃそりゃ!?」

「そんな機能があるのか!?」

 

驚くウィッチたちを他所に、分離をした『ドラゴソーサー』は凄まじい勢いで旋回しながら2人に襲い掛かる!

 

『させるか!!』

 

しかし立ち上がったナイスが『ミレニアムショット』を放って撃ち落とす!回転刃はボディの一部だったせいか破壊されて再生しても尻尾の先に戻ったため、その隙にひかりと芳佳は武装の少ないグランギラスの腹まで接近した。

 

「よし、ここなら……!!」

 

そう言ってひかりは右手でグランギラスに触れると接触魔眼を発動させて、グランギラスの体内にあるコアを探し始めた。

だが、グランギラスの装甲は厚く、なかなかコアを見つける事が出来ない。グランギラスは再度『ドラゴソーサー』を発射しようとしたが、それを阻止しようとバルクホルンとペリーヌ、そして直枝の3人が攻撃を繰り出していた。

 

「やらせませんわ!!」

「喰らえぇえ!!」

「くそったれ!!」

「ギキャァギィイイイイイイイイ!!」

 

3人の連携攻撃を受けたグランギラスは、再び後ろによろめく。その時、グランギラスを探っていたひかりが目を開いて叫んだ。

 

「見つけた!胸の真ん中です!!」

 

ひかりの言葉を聞いたウルトラマン達が頷き合い、メビウスの周りを囲む陣形を取った。そしてダイナ、ガイア、コスモス、ゴライアンがカラータイマーの左右に握りこぶしをあてがう構えを取ると、メビウスが掲げたメビウスブレスに向けてエネルギーが照射された。

 

「2人とも、離れて!」

「「はい!!」」

 

ミーナの号令に芳佳たちがグランギラスから離れる間に、メビウスブレス内で増幅された5人分のエネルギーが虹色に光り、輝きが段々と増していく。

 

『あれはマズそうだな………グランギラス!!」

「ギキャァギィイイイイイイイイ!!」

 

ジュダはメビウスブレスで増幅されるエネルギーに危機感を抱きグランギラスもそれに気付くと大きくひと鳴きする。そして頭部の角が2段階で伸びると、その間に赤黒いエネルギーを蓄積し始めた。

 

「あれは………!?」

「あんなモノ撃たれたら、一たまりもないぞ!?」

 

グランギラスがチャージする様子に気付いたウィッチたちは顔を青ざめた。メビウスはまだかと目線を移すが、エネルギーの安定に手間取っているようだった。

 

『メビウス、早くしないと………!!」

『分かってるけど、もう少しなんだ!』

 

焦りながら言うメビウス。しかしグランギラスの方がエネルギーのチャージが早く、グランギラスは必殺の収束ビーム『ギラスキャノン』が放たれた!

 

「ギキャァギィイイイイイイイイ!!」

ドォオオンッ

「マズい!?」

「ミライさん!?」

「え?」

 

ギラスキャノンの巨大なエネルギーの奔流が、メビウスに迫る!しかし止めようにもダイナたちはエネルギー切れ寸前で動けず、ウィッチたちも間に合わない。

誰もが終わりだと思った次の瞬間、メビウスたちの前にゼアスとナイスが現れ、ナイスは胸に右手を当てた後に両手を大きく回しX字に構え、ゼアスは伸ばした手の先で球を描き、胸の前に手を持っていくと、腕を左側で十字に組んだ。

 

『シュワッ!!』

『ナァアッ!!』

 

ゼアスのスペシュッシュラ光線とナイスのミレニアムクロスが放たれ、ギラスキャノンと正面からぶつかり合う!

 

「相殺する気か!!」

「頑張ってーナイスー!ゼアスー!!」

「いけー!!」

 

2つの技は拮抗していたが、2人もエネルギー切れ間近であったためか、徐々にギラスキャノンが押し始める。

 

『ヌゥウウ………!!』

『嘗めるなよぉお!これでもアウラ支部隊長に死ぬほどしごかれたんだ!!』

『ゼアス!ナイス!』

『メビウス!今のうちに早く、スペースQの準備を………!!』

『!はい!!』

 

メビウスは頷くと、ブレス内で増幅するエネルギーを安定させようと尽力する。ゼアスとナイスも顔を合わせると、最後の力を振り絞った。

 

『ヌゥウ………シュワッチ!!』

「!?」

 

ゼアスは()()()()()叫ぶと、十字に組んでいた腕をX字に組み替えると威力を強化した『クロススペシュッシュラ光線』となり、ナイスのミレニアムクロスと合わさってギラスキャノンを相殺して爆発が起きた!

 

「きゃあっ!?」

「ぐぅう………む?」

『相殺されただと!?』

 

爆発の衝撃波にウィッチたちがたじろぐ中、ジュダはギラスキャノンが相殺されたことに面喰ってしまう。

 

『見たかぁ!『ミレニアムクロススペシュッシュラスパーク』!!』

『いや、長いし言いづらいよ!?武装(アームド)現象(フェノメノン)じゃないんだから………』

 

カラータイマーが激しく点滅し膝を付きながらも、今の光線に名前を付けるナイスにゼアスがツッコミを入れる。しかし、爆発の衝撃波によってグランギラスは動きを止めていた。

調度その時、メビウスブレスの虹色の光が今までで一番強く光り輝いた。エネルギーが十分に増幅し安定したのだ。

 

「今です!!」

 

芳佳の言葉にメビウスは頷くと、両手を大きく広げて手の間に虹色のエネルギー球を精製した。

 

『あれは『スペースQ』………いや、さしずめ『メビュームQ』というところか………!!』

 

メビウスのやろうとしている事を察知したヤプールが、冷や汗を流しながら呟き身構える。そしてグランギラスが我に返って動く前に、メビウスは砲丸投げの要領でメビュームQを投擲しようとする!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドォンッ

『ゥアアッ!?』

「「「「「!?」」」」」

『『『『『!?』』』』』

 

しかし、メビュームQが投げられようとしたまさにその瞬間、メビウスの足元の地面が爆ぜて飛び出してきたものがメビウスに直撃、メビュームQは明後日の方向に飛んで行ってしまった!

 

「なっ………!?」

『惜しかったなぁ~……実に惜しかった。』

 

バルクホルンやシャーリーが絶句していると、ジュダが嘲笑った。地面から飛び出したもの―――『ドラゴソーサー』がグランギラスの尻尾に戻ると、その尻尾の先端の地面に大きな穴が見えた。

 

「あの穴は………!?」

『前に貴様らが開けた穴を利用させてもらったぞ。ギラスキャノンを撃つ直前にドラゴソーサーを放ち、穴を掘ってメビウスの足元まで到達させたのだ。』

「そんな……!」

 

愕然とする一同に、ジュダは愉快そうに笑う。メビウスはダメージとエネルギー切れで立っているのが精一杯だった。

 

『ここまでよく頑張ったが、もう動けまい。せめてもの情けだ、一思いに殺してくれよう!』

 

ジュダの命を受けてゆっくりと迫ってくるグランギラス。ゼアスやダイナが立ち上がろうとするが、エネルギー切れ間近で身体が動かなかった。

 

『ここまでか………!!』

『すみません、みなさん………』

『謝るなよボウズ………向こうが一枚上手だったんだ………』

 

謝罪するメビウスにゴライアンが答えると、他の者も同じ気持ちなのか俯いていた。

しかしコスモスがメビウスの方を見ると、謝罪をしたはずなのにメビウスは不敵な笑みを浮かべているように見えた。

 

『作戦、勝手に変えちゃいました………』

『………え?』

 

どういう事かとウルトラマン達が問うよりも早く、コウメイが声を上げた。

 

「ジュ、ジュダ様!あれを!!」

『なに?』

 

何事かと思って全員が上空を見上げると、そこには………

 

「ぐっ、ぐぅうううううう………!!」

「なっ!?」

「さ、坂本さん!?」

 

巨大な虹色のエネルギーを纏った烈風丸を両手で持ち、歯を食い縛っている美緒の姿があった!

 

『ま、まさか貴様!メビウス!チャージしたエネルギーをあのウィッチに!?』

 

メビウスの作戦を察したジュダが声を荒げた。

実はメビウスはグランギラスのドラゴソーサーが射出されていたことに気が付いており、咄嗟に美緒にテレパシーを送っていたのだ。そしてダメージで放り投げてしまったように見せかけて、メビュームQのエネルギーを烈風丸に受け渡したのだ。

 

『ま、マズい!グランギラス!はやくその小娘を―――』

「ぐぅううあああああああああああっ!!」

 

ジュダが命じようとしたその直後、裂帛の気合いと共に烈風丸が振り下ろされて虹色の竜巻のような光線が放たれてグランギラスに直撃!そのまま勢いは止まらずに背後にいるジュダ達にまで迫った!

 

『チィイッ!!』

『ジュダ様!?』

 

ジュダは七星将を押しのけると、剣を振るい光線を受け止めた!

 

「ギキャァギィイイイ―――」

 

光線を直撃したグランギラスはコアを破壊され、断末魔と共に爆炎の中に消えた。

 

「やった……!」

「すごい………!!」

 

光線が晴れて、焼け焦げえぐれた地面と黒煙を見て芳佳とひかりが歓声を上げる。バルクホルンや直枝はその威力に味方ながら戦慄していると、汗でずぶ濡れになった美緒が肩で息をして烈風丸を振り下ろした姿勢のまま飛んでいた。

 

「ハァッ…………ハアッ…………」

「坂本少佐、大丈夫ですか!?」

「ああ、なんとかな……」

 

駆けつけたペリーヌに肩を借りながら、美緒は返した。

 

「もう、ミライさんったら美緒にこんな無茶させて!」

『す、すみません………』

「え、あの………ミライさんって………?」

 

ミーナに叱られて頭を下げるメビウスの声を聞いて、ひかりが首を傾げる。

 

『ヌゥウウウウウウウ…………!!』

『!!』

 

その時、黒い塊となって立ち込めていた煙の中からジュダが現れた。両腕が光線に焼かれて赤くなっておりマントもボロボロで、左の肩に大きな傷を作っていた。

 

『ジュダ様!!』

『ヌウウ…………不覚………ッ!!」

 

ジュダは怒りの目をウルトラマン達に向けていたが、心配するヅウォーカァ将軍とワロガをよそに右足を地面にダンダンと打ち始めた。

 

『不覚不覚不覚不覚不覚不覚不覚不覚不覚不覚不覚不覚不覚不覚不覚不覚不覚不覚不覚不覚不覚不覚不覚不覚不覚不覚不覚不覚不覚不覚不覚不覚不覚不覚不覚不覚不覚不覚不覚不覚不覚不覚不覚不覚不覚ゥウーーーーーーーーーーーーーーーッ!!』

『ジュ、ジュダ様………』

 

激しく地団太を踏みながら悔しさを露わにするジュダの姿に、さすがの七星将らも呆然としていた。ジュダはひとしきり叫んだかと思うと、ぜいぜいと息を切らしながら左肩の傷に触れると、ウルトラマンとウィッチを睨んだ。

 

『この傷はッ………ワシの『落ち度』だ!『メビュームQ』のエネルギーを阻止した時点で慢心し、ウィッチに目もくれなかったワシの責任!!あの光線、我がバットキャリバーの一撃でも完全には防ぎきれなかった!この敗北、潔く受け入れてやろう!!』

 

ジュダは叫ぶと、手にしたバットキャリバーを構えた。既にウルトラマンたちはエネルギーがわずかしかなく、ウィッチたちも疲労が見えている。ここでジュダと戦えば敗北は必須だろう。

だがジュダは、バットキャリバーを天にかざすと、切っ先の空間に大きな穴が開いた。穴の先には、先ほどまでGUYSが戦っていた石油コンビナートが見えた。

 

『あれは………!?』

『あの先は地球に繋がっている………帰還するエネルギーくらいは残っているだろう?』

「何!?」

『ワシに一杯食わせた褒美だ。今日の所は見逃してやろう。弱ったヤツを倒しても何の価値もないしな………』

 

驚くミーナに向かってそう言うと、ジュダはバットキャリバーを肩に担いだ。

 

『だが覚えておけ。次に会った時は、必ず貴様らを葬ってくれるぞ……!!』

 

ジュダが睨みを利かせると芳佳たちは慄くが、顔を見合わせてワームホールに向かって飛んで行った。

ウィッチとガンウィンガーが飛び去る姿を確認した後、ウルトラマンもそれに続いて飛翔した。

 

『ゾフィーやケン…ウルトラの父に伝えておけ!帝王ジュダが、グア軍団が復活したとな!!フハハハハハハハハハハ!!』

 

飛んで行くウルトラマン達の背中に、ジュダの高笑いが聞こえた………

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

ノーバ型ネウロイを監視して6時間、現地で動きがあった。

ネウロイの内部で大きな次元エネルギーの発生が観測され、GUYS隊員は臨戦態勢に入った。

 

「ノーバのヤツ、何をする気だ………!?」

 

ガンローダーのコックピットでカナタがつぶやいていると、ノーバはマントを大きく開き、ゲートを作り出した。すると、そのゲートから芳佳たちウィッチとガンウィンガー、そしてウルトラマン達が次々に出てきた。

 

「!!隊長!!」

「芳佳ちゃんたちも………あれ、なんか増えてない?」

 

ウィッチやウルトラマンの姿を見て思わず笑みをこぼす3人。マイはウルトラマンやウィッチが増えている事に驚いていたが、直ぐに笑って各所に連絡を入れ始めた。そして、最後にゴライアンがゲートから出てくるとゲートからエネルギーが消えた。

 

「ギュィイーーーッ!!」

 

全員が地上に降り立ったその時、ノーバの全身から火花が噴き出したかと思うと、突然爆散してしまった!

 

「ノーバが!?」

「あっちにはもう行けない、ってか、来るんじゃねえって事なんだろうナ………」

「ショーコインメツー!」

「隊長ーーー!」

 

ノーバが自爆したのを見届けたエイラが呟きルッキーニがウンザリした顔になっていると、カナタたちがこちらに駆け寄ってきた。すると、背後にいたウルトラマン達がその場から煙のように消えてしまい、その足元にはミライたち7人が倒れていた。

 

「ミライさん!みんなも大丈夫ですか!?」

「うん……何とかね………」

「みんなは、大丈夫か………?」

 

芳佳に支えられながら上体を起こすミライを見て、カナタは胸を撫で下ろした。

 

「何があったんですか、隊長?」

 

カナタがリュウに聞く。リュウが説明をしようと思ったその時、「グゥ~~~」という大きな音がいくつも聞こえてきた。

 

「あっ………」

 

音のした方を見てみると、顔を真っ赤にしたひかり、直枝、ニパ、クルピンスキーの姿があった。

 

「あ、安心したら、お腹が………」

「よく考えたらオレ達、5日くらいロクなもの食べてなかった………」

 

お腹を押さえて恥ずかしそうに笑うニパ達。ミライたちも暖かい目で見守っていると、リュウが切り出した。

 

「……報告の前に、メシだな。」

「そうみたいですね………」

「あ、出来たらシャワーとかも借りられるかな?」

「まずは基地に戻りましょう。詳しい話はそれからです。」

「だな。」

 

そう言ってリュウたちはフェニックスネストへ帰還しようとした。ふと、美緒が芳佳に声をかけた。

 

「ところで宮藤、先ほどの技に『無限烈風波』と名付けようと思うのだが、どうだろうか?」

「え?あー………いいんじゃ、ないですか………?」

 

芳佳は少し困ったように答えると、ミライが話に入ってきた。

 

「あー、さっきは咄嗟に思いついたんですけれど、あれは烈風丸が魔力を込めて放つことが出来る刀だから出来たんです。それに流石に何度も使うわけにはいかないから、もう使うことはないと思いますよ。」

「むう、分かった………」

 

ミライの話を聞いて、美緒は少し残念そうにしていた。その時、背後で大きな音と地響きがした。振り返ると、そこにはウルトラマンゴライアンが立っていた。

 

「ゴライアンさん!?」

『悪いが、俺はナイスとゼアスを連れて、光の国に帰る。』

「ええ!?」

『コイツらは消耗が激しいからな。地球よりも光の国の方が、治療がしやすい。』

 

ゴライアンはそう言うと、手の中で目覚めない勝人と銀河をバリアで包み、飛び立とうとする。そこに、ミライが声をかけた。

 

「ゴライアンさん、また会えますか………?」

『………さあな。』

 

ゴライアンは短く答えると飛び立ち、あっという間に空の彼方で光になってしまった。すると今度は、ヴァジュラリンにシャドー星人、ヴァイロ星人の姿に気が付いた。

 

「宇宙人!?」

「待て、コイツらは大丈夫だ。

「君たちも、こっちに来ていたのか………」

 

警戒するカナタたちにリュウが止めると、我夢がシャドー星人に聞いた。

 

『ああ………試験は失格になったし故郷に帰る事にするよ………』

『我々もだ。グア軍団とも地球とも、関わらないと誓うよ……』

 

フォードやナエフは疲れ切ったように言った。しかし、ヴァジュラリンは美緒に睨みを利かせながら言い放った。

 

『ワチキらはまた来るヴァヴァ!』

『ミオとの決着は、まだついていないジュラ!』

『腕を磨いて、必ず地球に戻ってくるリン!』

 

ヴァジュラリンはそう言うと、光に包まれて飛んで行った。

 

「アイツ、諦めないなー………名前覚えられてるし………」

『あ、自分らは母星から宇宙船来るんで。』

「あ、はい………」

 

シャドー星人とヴァイロ星人は一緒に歩いてその場を去って行った。

 

「………さあ、帰りましょうか。」

「はい。」

「じゃあ、案内してもらおうかな。ボクたちも、聞きたいことがあるし………」

 

ミーナの一言で、今度こそ帰路に就いた。

 

 

 

 

 

つづく




第二十六話です。

・グランギラスは歩く要塞かつ超再生能力持ち。武装名とか戦術とか考えるのめっちゃ楽しかったですw

・必勝の策はスペースQ。厳密にいえばスペースQとは別なんだけど、ゼアスたちが少し勘違いしていたって事で。『メビュームQ』の命名は『メビュームダイナマイト』が元ネタ。

・ゼアスとナイスの合体光線『ミレニアムクロススペシュッシュラスパーク』。長いし言いづらいけど、2人とも最強技の名前にクロスが付くつながりで思いつきました。

・とどめがまさかのもっさんの一撃。終盤でミライが言ったようにもう使う事はないでしょうが、ウルトラマンと地球人の共闘は燃える展開。

では、次回をお楽しみに。


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第二十七話 勇士の足跡

「ぶぅえ~~~っくしょん!!」

 

深夜の山中に、大きなくしゃみの声が響く。一斗缶の空き缶で燃える焚火だけでは暖を取るのにはいささか心もとないが、ないよりはマシだった。

 

「まったく、いつになったらこの星から脱出できんだよ………」

「食料も尽きそうだし、これはイカんぞ………」

 

焚火に当たっていたのは『マグマ星人ヴァルドスキー』と『イカルス星人ジュリコ』のコンビだった。

乗っていた宇宙船がネウロイに乗っ取られて脱出をしてから、関東にある山の中で隠れて過ごしていた。

 

「ドヤされるの覚悟でアネゴに信号送ったけど………いつまで待てばいいんだよ………」

「まあ、この星には監視の目が光ってるし、そう簡単に来るのは難しイカもなー………」

 

ボヤくヴァルドスキーに対して、ジュリコは半分諦めたようであった。ヴァルドスキーは懐から、大事にしていた小切手を取り出した。

 

「もはやエンペラ軍団は風前の灯火……早くしないと、この小切手が紙くずになっちまうぜ………」

「あ、小切手気をつけろよ?燃えたら水の泡になるから………」

 

ジュリコに注意されて、慌てて小切手を燃やさないように大事に懐に戻した。その時、ヴァルドスキーの腕に着けていた通信装置に反応があった。

 

「こ、この反応は!!」

「おお、やっと来たんじゃなイカ!?」

 

ヴァルドスキーとジュリコの声が弾む。しばらくすると、茂みの奥から何者かが現れた。それはボロボロのマントとターバンのようなマスクを着けて、右手にライフル銃を持った宇宙人であった。

 

「ったく、世話やかせんじゃないよ、お前たち!!」

「アネゴ~~~!!」

「姐さ~~~ん!!」

 

現れた宇宙人の名は『ハンター・D』―――かつて、コスモスのいた宇宙の遊星ジュランで、リドリアス達を連れ去った宇宙人であった………

 

 

 

 

 

第二十七話 勇士の足跡

 

サーベル暴君 マグマ星人ヴァルドスキー

異次元宇宙人 イカルス星人ジュリコ

ハンター・D

バド星人ボルター

宇宙怪人 ササヒラー・ビアンコ

変身怪人 ゼットン星人カウント

誘拐怪人 ケムール人アイチヨ

知略遊撃宇宙人 エンディール星人

岩力破壊参謀 ジオルゴン

登場

 

 

 

 

 

「ふわぁ~~~、気持ちよかったぁ♪」

 

フェニックスネストに案内されたひかりたちは、芳佳らと一緒にシャワーを浴びた。

5日近くサバイバルをしていたせいか全身が汗や砂埃まみれになっていたため、みんなスッキリした表情を浮かべていた。

ひかりたちがタオルで髪を拭いていると、マイが脱衣所に入ってきた。

 

「はいこれ、みんなの着替え。急だったからサイズ合うといいんだけど。」

「あ、ありがとうございます!」

 

マイは4人の着替えを持ってきていた。1人1人に手渡すと、彼女たちはTシャツに短パン姿になった。

 

「あ、ご飯も準備出来てるって。」

「すみません、何から何まで………」

 

マイに渡された『クマに注意』の標識が描かれたシャツを着たニパが、申し訳なさそうに礼を言う。移動をしながら、胸に桃のイラストとその右上に数字の「3」が書かれたシャツが、芳佳に話しかけてきた。

 

「あの、宮藤さんたちはヴェネツィアからこっちに来たんですよね?」

「あ、うん。あの時は、何が何だか分からなかったけどねー」

「そういえば、ヴェネツィアは怪獣だらけになってたんだっけ?」

 

意味が分からない英文が書かれたシャツを着たクルピンスキーも会話に加わってきた。

なお、その文は以下の通りである。

 

“YO SOKONO MITI YUKU NIICHAN♪ NEECHAN♪

TSUKISUSUMU STYLE♪ KAKURITU♪ DOKURITU♪

ZIDAI NO HANKYOU♪ HITORI NO ZEKKYOU♪

KONO KAMESHAKAI NI UMARETA ORETATI WAKAMONO♪

SOREDEMO TAENUKU ORENO SPIRIT DEMERIT♪

KORETTE YUUJOU? AIJOU? KAME SANJOU♪ EYAーーー♪

KONO MUJUNNO NAKADE IKITERU BOKUTATINO IRADATI♪

YURUSENAKU YARUSENAKU KAMEDASUKE ZINSEI♪

SAA TATIAGARU NARA IMA♪ MITI SUSUMU NARA IMA♪

KORETTE JUNJOU? SEIJOU? KAME SANJOU♪ EYAーーー♪”

 

 

「はい、今までネウロイしか見た事なかったから、あんな光景は初めて見ました……」

「それはそうだろうなー、オレも、あんなデカい生き物見た事無かったぜ………」

 

左胸に『界』と書かれたオレンジ色のシャツを着た直枝も、芳佳に同意する。そして、全員が着替え終わった所で食堂に向かう。

 

「あの時は怪獣同士で戦いだしたり、ウルトラマンが現れたり、その後に別の世界に飛ばされて………」

「ちょっと聞いただけでも、訳が分からないですね………」

 

ヴェネツィアで怪獣軍団と戦い、更に『四次元怪獣 ブルトン』によってこの世界に飛ばされていた事を思い出しながら話す芳佳に、ひかりは困惑しながら相槌を打つ。

 

「そういえば、その怪獣のせいでロマーニャ海軍は壊滅させられたんだってねー」

「うん、ボクたちもその話は聞いたけど、501部隊も全員行方不明になったって言ってたよね……」

「あ、はい……私やリーネちゃん、それに坂本さんたちはこっちの地球に来たけれど、他の人たちとは離ればなれになってしまいまして……」

「それは、大変だったな……」

 

直枝が芳佳の話を聞いて顔を引きつらせている内に、食堂にたどり着くと、先に来ていたルッキーニとサーニャが声をかけてきた。

 

「あ、芳佳たちー!」

「何の話してたの?」

 

食堂でシチューやパン、サラダを配膳するのを手伝いながら、芳佳はひかりたちに話していた事を聞かれた。

 

「うん。ヴェネツィアからこっちの世界に飛ばされた時の話をしてたの。」

「あー、あん時かぁ………」

 

つい1ヶ月ほど前の話だというのに、もう遠い昔の出来事のように感じてしまう。懐かしむ様子のエーリカやシャーリー、エイラたちに、芳佳が周囲を見て話しかけてきた。

 

「あれ、ミライさんたちは?」

「先に指令室で、会議だそうだ。」

「そっかー………」

 

バルクホルンが答えると、ニパがエイラたちに話しかけた。

 

「そう言えば、イッルやサーニャはこことは更に別の世界に行ってたんだよね?」

「まあナー。」

「私たちは、ムサシさんの世界にある『遊星ジュラン』に飛ばされたの。」

「へぇ、どんなところだったの?」

 

ニパの質問に、サーニャとエイラは答える。

 

「うん、自然が豊かで、地球から連れて来られた怪獣達と共存をする研究をしていたの。」

「怪獣と共存!?」

「ああ、ムサシさんの世界では、そういう考えがあるみたいダ。」

 

席に着きながら驚く直枝にエイラが説明する。

 

「でも、そこにロボット……クレージーゴン・ジャイアントが現れて、ムサシさんと仲のいい怪獣が攫われちゃったの。」

「まだ1匹、リドリアスしか見つかってないから、心配ダナー」

「そうなんですね……」

 

サーニャやエイラが少し悲しそうな顔をしていたのを見て、ひかりも心配そうになった。

 

「それにしても、ミライさんたちがウルトラマンだったなんてね………」

「ああ、あれは驚いたなぁ………」

 

クルピンスキーのつぶやきに直枝もつづく。そこにニパが、素朴な疑問を口にした。

 

「そう言えば、そもそもウルトラマンって何者なんだろう………?」

「うん、私たちもアイハラ隊長に聞いたんだけれど、地球から300万光年離れたM78星雲『光の国』から来た宇宙人で、全宇宙の平和を守る「宇宙警備隊」の隊員なんだって。」

「つまり、宇宙人だったのか………!!」

 

芳佳の説明に、直枝は思わず驚きの声を上げた。そこに、エーリカがパンを口にふくみながら話に入って来た。

 

「でも、それはミライさんやカイトの事だよねー?我夢さん、ガイアは違うみたいだし。」

「カイトって?」

「うん、今はいないけど、メビウスと同じ光の国のウルトラマンマックスなんだよ。」

 

パンを飲み込んで、エーリカは続けた。

 

「ガイアは別の世界の地球の意思が力を与えてくれた光の巨人で、他にアグルっていう海の巨人もいるんだよ。」

「そうなんだー」

 

エーリカの説明に、ニパは感心するようにうなずいた。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

芳佳たちが食堂で食事をしているころ、フェニックスネストのディレクションルームでは、リュウやミライ、アスカ、我夢、ムサシ、そしてGUYSメンバーが集まっていた。

アスカや我夢、ムサシらが提出した映像データをこちらの機器で視聴できるように変換できたため、こちらの地球に来るまでの戦闘映像を確認しようという事になったのだ。

 

「まずはこの動画を見てくれ。」

 

スクリーンに映し出されたのは、遊星ジュランに現れた青白い球体状の生命体の映像だった。

 

「スフィア!!」

「やはり、これはスフィアなのか。」

 

アスカが球体―――スフィアの名前を大声で呼ぶと、ムサシは冷静に答えた。その後、スフィアは岩山と発電施設と合体して、岩の身体と金色に光る5つの目、背中から4本のコイルを生やした怪獣に変わった。

 

「この怪獣……スフィアが岩石と合体した『ネオダランビア』に似ている………!!」

 

アスカが驚いていると映像が一時停止され、アスカから提供された怪獣のデータから『超合成獣 ネオダランビア』の画像が呼び出されて、ジュランに現れたスフィア合成獣と比較された。

 

「発電施設を取り込んでいるため腕や背中に違いはありますが、この怪獣はネオダランビアの亜種と考えて良いと思われます。」

「あのスフィアは、グア軍団のワロガが連れてきたんだ………そして、惑星グルータスでアストロモンス・ギガを生み出したのも、スフィア………」

「まさか、グルータスの件もグア軍団が裏で手を引いていたのか!?」

「エンペラ軍団のスチール星人バトラーや、ヒッポリト星人ドン・マノウがグア軍団の一員だったということも踏まえれば………」

「連中は、エンペラ軍団の内部にまで入り込んでいたという事か……だとしたら、スフィアもその作戦の一つだったのか………」

 

映像を見ていたアスカの言葉に、我夢とムサシが答える。そこでリュウが、口を開いた。

 

「とりあえず、この怪獣は『サンダーダランビア』と仮称するが………おそらく目的は、エンペラ軍団の戦力を削る事だろうな。残党とはいえ、その力は侮れんからな。」

「じゃあ、僕たちにロボット軍団を差し向けたのも………」

「戦力を削ぐのを兼ねてのことだろうな………」

 

ミライの言葉にリュウが頷く。そこに、ムサシがしかし、と口を開いた。

 

「あのボルター提督たちが、このまま引き下がるとも思えない………エンペラ星人を倒したミライ君たちに、相当執着をしていたようだしね。」

「確かに……」

 

ムサシの言葉にミライやリュウもうなずく。エンペラ軍団がこの事で大人しくしているとは考えにくい。

 

「いずれにせよ、我々も警戒を強めなければいけませんな。」

「そうだな……」

 

リュウの結論に、一同は同意した。

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

同じ頃、砂漠の広がる惑星デルーマの岩山。

 

「うぐぇあッ………!!」

 

岩山の中へと続く洞窟の中から一人の宇宙人、長い金髪と金色のプロテクターを持った『暗黒星人 ババルウ星人』が放り出された。男は地面に叩きつけられ、砂まみれになってうめき声を上げる。

 

「ほれ、起きなさいな。」

「ぐおぅ………」

 

ババルウ星人の前髪を掴んで無理やり顔を上げさせるのは、頭頂に触角をもった細身の宇宙人『誘拐怪人 ケムール人』だった。その後ろからは2つに割れた禿げ頭に窪んだ眼のバド星人ボルターと、槍を思わせる尖った頭と手を持ち、四角いアンダーリムの眼鏡をかけて首から白いストールを下げた『宇宙怪人 ササヒラー』が姿を見せる。

 

「て、てめえボルター………それに、「鎌鼬のビアンコ」か………エンペラ軍団の三提督が、どういうつもりだ………っ」

「しらばっくれても意味はないぞ?貴様がゴンゴルド大佐にスフィアを売りつけたのは調べがついているんだ。」

「聞いたところによると、あのスフィアというのは別宇宙の生命体だそうですね~?どこでそんなものを仕入れたんですかな?」

 

ボルターとビアンコが倒れるババルウ星人に詰め寄る。ババルウ星人は冷や汗を流しながら、必死に逃げ道を探していた。

 

「ぐ……知らん!!俺はただスフィアを売るように頼まれて………!!」

「頼まれただと?誰にだ?」

「わ、わからん!ローブを着ていて、顔は見えなかった………!」

 

慌てたババルウ星人が答えるが、ボルターは眉をひそめた。

 

「顔はともかく………名前も聞いていないのか?」

「き、聞いたけど、多分偽名だ………で、でも!書面は交わしてある!!」

 

そう言ってババルウ星人が懐を探ると、1枚の書類を見せた。ボルターが奪い取ったその書面の下には、地面に突き刺した十字架のような赤い紋章が入っていた。

 

「!?これは、グア軍団の紋章………!?」

「なんと……!!」

 

2人は驚き、ボルターとビアンコはその書面を見つめると、ババルウ星人に目を向けた。

 

「これを見るに、お前も利用されただけのようだな………もういい。立ち去れ。」

「は、はぃい~~~!!」

 

解放されたババルウ星人は情けない声を上げながら、脱兎のごとく逃げ去っていった。それを見送ると、ボルターとビアンコは再び紋章に視線を落とした。

 

「まさか、グア軍団が再び動き出していたとはな………」

「あのお二方とカウントさんには、私から連絡しておきましょう。私は他のメンバーと共にグア軍団の調査と、今行っている計画を進めます。行きますよ、アイチヨさん。」

「御意にアリンス。」

 

アイチヨと呼ばれたケムール人は返事をすると、その場から消えていった。それを見送った後、ボルターは書類を握り潰した………

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「―――そうか、グア軍団が………!」

 

どこかの惑星にある機械仕掛けのエンペラ軍団の基地。ビアンコから通信を受けた3人の宇宙人が、静かに驚いていた。

 

大きな一つ目で全身にトゲの生えた細身の宇宙人『知略遊撃宇宙人 エンディール星人』と、全身が岩石で出来た大柄な宇宙人『岩力破壊参謀 ジオルゴン』、エンペラ軍団闇の2大幹部と恐れられる2人であった。

 

「まさか、次元の彼方に消えた連中が我が軍に入り込んでいたとは………おかげで我らはせっかく準備した戦力が一気に減ってしまった………」

「ぐふっ!けどこれはチャンスでもあるぜ、エンディール!」

 

悩むエンディール星人と対照的に、ジオルゴンは楽し気に笑っていた。

 

「今、宇宙警備隊や地球人はグア軍団に目が向いて、俺たちに見向きもしてねーぞ?つまり、その間に暗殺や裏工作し放題って訳だ!!」

「それはそうだが………」

「今ビアンコが人選してる暗殺部隊が編制出来たら、直ぐに動くぞ!ぐふっ!連中が驚き絶望する顔が早く見たいぜぇ~~~!!」

 

笑いながらドスドスと足音を立てて部屋を出ていくジオルゴン。残されたエンディール星人はため息をつくと、椅子に深く座り込んだ。

 

「まったく、相変わらず単純なヤツだ………」

「エンディール様。」

 

頭を抱えるエンディール星人に、カウントが話しかけた。

 

「私の方でも、怪獣の調整をいたします。幸い、切り札はまだ残されていますからな……」

「うむ、頼んだぞカウントよ……今はお前たち三提督が頼りだ。」

「は。」

 

カウントは短く返答をすると、通信機を取り出してスイッチを入れた。通信機の画面に映るのは、薄い膜に包まれた、黒い巨大生物であった。

 

「ゼットンよ早く育て………」

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「えーと、長い首で四足歩行、頭に2本、鼻先に1本の角、それと大きな背びれ………」

 

夕食を終えたウィッチたちは、ミライやエリーと共にサンダーバード基地のディレクションルームに来ていた。ひかりたちが遭遇したという怪獣がアーカイブドキュメントに記録がないか調べようと芳佳が提案し、操作に詳しいエリーに協力を仰いだのだ。

 

「外見と能力から推測するに、ひかりちゃんたちが遭遇したのはこの怪獣だと思われます。」

 

そう言ってエリーがエンターキーを弾くと、メインモニターが表示された。

 

「わあ、これ映写機なんだ!?」

(芳佳ちゃんたちも同じ反応してたなー………)

 

ひかりたちが未知の技術に驚くと、ミライはその反応を懐かしんだ。メインモニターには、長い首に頭と鼻先の3本角、大きな背びれを持った四足歩行怪獣のデータが映っていた。

 

「ああ!コイツだよコイツ!」

「間違いない。あの時ネウロイと一緒に現れたのは、この怪獣だ。」

 

その怪獣を見た直枝とクルピンスキーも同意した。彼女たちがこの世界に来る切っ掛けとなった怪獣のデータを、エリーが読み上げた。

 

「ドキュメントMAT、レジストコード『古代怪獣 キングザウルス三世』。角からの光線と突進、そしてバリアを張る能力を持っており、ウルトラマンも一度は敗れてしまう実力を持っています。」

「そんなに強いんだ……」

 

ひかりが思わずつぶやいていると、ニパがキングザウルス三世の画像を見ながら言った。

 

「これが三世なら、私たちの世界に現れたのは一世かな?」

「あ、そうかもね。」

「いえ、一説によれば一世と二世は姿の似た別の怪獣だそうです。」

「じゃあ三世なのかな?」

「でも私たちの世界に他のはいないから一世でも………」

「けど、改造ベロクロン二世は三世じゃなくて二世だし、ロベルガー2世もロベルガーとは別で………」

 

ニパの一言を切っ掛けに「あの怪獣は何世か談義」が始まる一同。そんな中、ミライがふと思ったことを口に出した。

 

「その怪獣、どこから来たんだ……?」

「え?」

「どこからって………地面から?」

「それはそうなんだろうけど………」

 

ミライの呟きにひかりが答えるが、ミライは真剣な顔をしていた。

 

「ヴェネツィアに現れた怪獣達は、ナックル星人たちが連れてきたものだ。だけど、キングザウルス三世は同じように連れ込まれたのか?」

「連れ込まれたって………もしそうじゃないとすれば………」

「私たちの世界に、元から住んでいた………!?」

 

ミライの仮説に、ひかりたちは顔を見合わせた。確かにそれならば辻妻が合うかもしれない。だがそうなると、新たな疑問も湧いてくる。

 

「でも、今まで私たちの世界に怪獣なんて出きませんでしたよ?何で今になって………!?」

「可能性があるとすれば、ネウロイが原因かな……?」

「ネウロイが?」

 

クルピンスキーの呟きに芳佳が聞き返した。

 

「ああ。元々怪獣がいたけれど、そこにネウロイが現れて住処を追われて他所に追いやられて眠りについていた………」

「それをグア軍団が、ネウロイを使って無理やり叩き起こして連れ出した………」

「ありえる話ですね………」

 

ミライの言葉の芳佳が頷く。喩えるならば怪獣が在来種で、ネウロイが外来種という感じだろうか。

 

「だとしたら、ネウロイはどこから………?」

「それこそ異次元か、宇宙、かな………?」

 

芳佳の呟きにひかりが返すと、クルピンスキーが笑って答えた。

 

「面白い話だね?ネウロイは宇宙怪獣かい?」

「あくまで、可能性の話だけどね………」

「けどそれが本当なら、オレたちの世界にはまだ怪獣がたくさん眠ってるっていうのか……!?」

 

ミライが苦笑しながら言うと、直江が信じられないという風に言う。だが、おそらくはここで話し合っても結論など出ないだろう。

 

「………それじゃあもう遅いし、今日はこの辺にしておこうか。」

「そうだな。オレたちもそろそろ寝ないと……」

「うん………」

「じゃあ、部屋に案内するね………」

 

ともかく今は、戦いの事を忘れて休もう。ウィッチたちはエリーに連れられて、ディレクションルームを後にした。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

翌日、ストライカーの格納庫でシャーリーは、ひかりたち4人のストライカーを診ていた。

 

「どうですか、シャーリーさん?

「うーん、応急処置をした状態でわりと無茶な飛行したせいか、あちこちガタがきてるなぁ……」

「すいません……」

 

申し訳なさそうに頭を下げるひかりたち。昨日の戦いの際に応急処置のみで飛んだため、各所に不具合が出ているようだった。

 

「いくつかの部品は交換が必要だし、それに私らのストライカーの整備もしないと………」

「この数を一人では難しいだろうね………」

 

格納庫に並ぶ501部隊のストライカーを見ながら呟くクルピンスキー。現状で整備が出来るメンバーも少なく、何よりも交換用の部品もこの世界で手に入れるのは不可能に近い。

どうしたものかと考えていると、格納庫の入り口からガヤガヤと騒がしい声が聞こえてきた。不思議に思った一同が入り口の方を見ると、そこには作業服を着た男女が十数名、格納庫に入ってくる様子だった。それぞれ手には工具箱や、大小の部品が入ったカートを押していた。

 

「何だ?」

「おーい、お前らー!」

 

何事か首をかしげていると、先頭を歩いていた短髪で活発そうな若い女性(シャーリーと同じくらいの年齢だろうか)が手を振りながら駆け寄ってきた。

 

「サコミズ総監とアライソ班長からストライカーの整備チームを任された、GUYS整備班のヒナタだ。よろしく頼むぜ!」

「整備チーム?」

 

ヒナタと名乗った女性の言葉にシャーリーが反応する。

 

「ああ、ストライカー整備するには人手が足りないだろうって、整備班から何人かチーム組んで派遣することになったんだよ。アライソ班長から何回か整備の仕方も教わってマニュアル化してあるし、代用できそうなパーツも一通りそろえてあるぜ。」

「おお、それはありがたいな!!」

 

ヒナタが右手の親指で指した先の部品を見てシャーリーが声を弾ませる。ヒナタは整備士たちに指示を飛ばすと、それぞれストライカーの整備に取り掛かった。

 

「………」

 

クルピンスキーはその様子を見ながら、何か考え事をしているようだった。

 

「ん?どうかしたのかクルピンスキー?」

 

そんな彼女に気付いた直枝が話しかけると、彼女は少し不思議そうな顔をした。

 

「いや、そのアライソって人だけどさ、何者なのかなって思って………」

「え、何者って……?」

 

クルピンスキーの疑問に直枝が聞き返す。それを聞いていたシャーリーが話に入って来た。

 

「ああ、宮藤やミライさんに聞いたんだけど、一番最初の防衛チームの『科学特捜隊』のころから、メカの整備に関わって来た超ベテランらしいぞ。」

「へぇ、そんなベテランなのか。」

 

直枝が納得したように相槌を打つ。しかしクルピンスキーは、それでも疑問は解決していない顔をしていた。

 

「けれど、いくらそんなベテランでも異世界のストライカーまで整備できるものかな?」

「あ、確かに……」

「言われてみれば………?」

 

クルピンスキーの意見を聞いて、ひかりと直枝も同意を示す。

 

「仮に宮藤さんたちのストライカーを整備していたからだとしても、それを誰かに教えたり出来るレベルまで、メカニックの技術を習得するのは簡単なことじゃないと思うけど……」

「うーん……」

 

5人が考えてみるが、答えがでることはない。そうしていると、ヒナタが呼びかけてきた。

 

「おーい、ちょっと聞きたいことあんだけどー?」

「あ、はーい。」

「……とにかく、今はストライカーの整備が出来ることを喜ぼう。後でアライソさん本人に聞くのも手だと思うしね。」

 

クルピンスキーはそう言うと、自分の愛機へと向かっていった。他のメンバーもそれに続き、ストライカーの調整に戻ることにした。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

 

光の国の丘の上に、50mのウルトラマンよりも大きな十字架型の慰霊碑が立っていた。

 

『………』

 

大柄なウルトラ戦士・ゴライアンは、慰霊碑に刻まれたザージ、ドリュー、カラレス、フレアの名前を、悲しそうな目で見つめていた。その背中を見つけた3人の戦士が、静かに歩み寄って来た。

 

『ゴライアン………』

『………ゾフィーか。』

『随分と、懐かしいヤツが帰って来たって聞いてよ。』

『メロスに、アキュラもか………』

 

振り返った先にいた3人、ゾフィー、メロス、アキュラの顔を見ながら、ゴライアンは懐かしそうな顔をしていた。

 

『……スターマーク、似合ってんじゃねーか。アキュラも、防衛隊長になったんだって?』

『お久しぶりです、ゴライアンさん。今までどこに………?』

 

アキュラはゴライアンに聞くが、ゴライアンは俯きながらも答えた。

 

『………宇宙中を飛んでいた。フレアたちが死んで、ベリアルのやったことが信じられなくて、何が正しいのかわからなくなってから、ずっとな……』

『そうだったのか……』

『ゴライアン、ゼアスとナイスを助けてくれてありがとう。』

『別に礼はいらねーよ。偶然遭遇して、助けられただけだからな……』

 

ゾフィーの言葉に対して、ゴライアンは顔を上げずに答えたが、ゾフィーは彼の肩に手を置いて言った。

 

『それでもだ、感謝するぞ。』

『……ああ。』

『ゴライアンさん、宇宙警備隊に戻って来てください。あなたがいれば……』

 

アキュラはそこまで言うが、ゴライアンは空の彼方に浮かぶ立方体の牢獄を見上げた。

 

『………ここに来ると、嫌でもあの人を思い出しちまう………』

『ゴライアン………』

『……すまねえな、お前らの気持ちには応えられねぇ……』

 

3人はゴライアンが去った後、しばらく黙り込んでいた。

 

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「じゃあ我夢さんは、メテオール研究所に?」

「はい。我夢さんの知恵を借りたいとか………」

 

同じ頃、ミライやムサシ、アスカが談笑しながらディレクションルームに入ると、ミーナと芳佳、サーニャの前でエイラが神妙な面持ちで立っていた。

 

「え、みんなどうしたの?」

「あ、はい。エイラさんから話があるって………」

 

ミライが芳佳に事情を聞くと、ミーナがエイラに問いかけた。

 

「それでエイラさん、話があるって言っていたけど……」

「実は、この先のワタシたちの運勢を占ったんダ………」

「占い?」

「はい、エイラは占いが得意なんです。」

 

アスカの疑問にサーニャが答える。エイラはちらりとサーニャを見ると、話をつづけた。

 

「それで占いの結果なんだケド………宮藤、ひかり、ミーナ隊長………それにサーニャ………」

「え?」

 

名前を呼ばれたミーナたちは、思わず顔を見合わせる。それを見て、エイラはさらに言葉を続けた。

 

「この4人に………」

 

 

 

 

 

「人生最大級の恋愛が待ち受けているんダーーーーーーーーーッ!!」

 

 

 

 

 

「………はい?」

 

エイラが告げた内容に、全員の反応が一瞬遅れた。

 

「れ、恋愛って………」

「それだけなの?」

 

キョトンと呆気に取られて問い返す二人。しかし、エイラは真剣そのものの顔で話を続ける。

 

「い、いや、人生最大級なんダゾ!?ダリラガーンダゴズバーンなんダゾ!?」

「お、落ち着いてエイラさん………何を言っているのかわからないわ………」

 

動揺するエイラを落ち着かせようと、ミーナが声をかける。しかしエイラは熱弁をつづけた。

 

「だから!人生の転機になるくらいの大恋愛が、これから近い内に起こるんだっテ!」

「そ、そうは言ってもねぇ……」

 

何やら興奮気味にまくし立てるエイラに、ミライと芳佳が困り果てた表情を浮かべ、アスカとムサシは呆れた顔になっていた………

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

地球の衛星軌道上、白地に黒い縞模様が入った、楕円の下部分が平らになったような形状の円盤が浮かんでいた。

 

「まったく、なんてザマだい!!」

「「面目ねえ………」」

 

その中で、ハンター・Dがヴァルドスキーとジュリコに怒鳴っていた。

 

「アタシも異次元から帰ってくるのに戸惑ってたけど、その間にウルトラマンにボロ負けとは………」

「け、けど、あの時は2人もいて………」

「言い訳すんな!!」

「ひえっ………」

 

言い訳をしようとするヴァルドスキーにぴしゃりと言い放つハンター・D。そのままため息をつくと、背後に置いてあった愛用のライフルを手に取って、各部を調整し始めた。

 

「お前ら、地球に戻るよ。」

「ええ!?せっかく脱出出来たのに!?」

「そ、その心境やイカに!?」

 

驚く二人の前で、ハンター・Dはライフルを肩で担いでニヤリと笑った。

 

「子分どもが痛い目合って、黙っているワケにはいかないからねェ………いっちょ仕返ししてやろうってのさ!!」

 

 

 

 

 

「このハンター・Dこと、『ドルジュ』様がね!!」

 

 

 

 

つづく




第二十七話です。
今回はひかりたちにこれまでの話をする形で進む、総集編っぽいお話。

・忘れかけていたヴァルドスキーとジュリコのコンビ、そしてハンター・Dの再登場。ハンター・Dがヴァルドスキーの言っていたアネゴだったというまさかの事実でした。

・ひかりたちのダサT。実はある法則でチョイスしています。ちなみに伯爵のは某ラップの冒頭部分w

・スフィアの出所からグア軍団の暗躍が表に。サンダーダランビアはここで命名されましたが、リュウさんらしいネーミングセンス感も醸し出してます。

・戦力を削がれながらも密かに活動を続けるエンペラ軍団。三提督最後の1人ササヒラー・ビアンコも登場。異名が鎌鼬な理由はもちろんウル忍からですが、服装は『るろうに剣心』の武田 観柳(※香○さん成分皆無の初登場時)をイメージ。

・エンディール星人とジオルゴンの2大幹部登場。エンディール星人は十七話でシルエットだけ登場していましたね。そしてカウントの切り札はもちろんゼットン。登場をお楽しみに。

・キングザウルス三世からネウロイはどこから来たのか問題。ちょっとこの辺はオリジナル設定入るかと思います。ちなみに、今作では一世、二世、三世はトゲアリトゲナシトゲトゲ的なよく似た怪獣、という感じ。

・漫画『ウルトラマン THE FIRST』から整備士ヒナタ登場。そしてアライソさんの謎。今後の展開をお楽しみに。

・ゴライアンとゾフィーたちの再会。今作ではメロスとも旧知の仲です。

・エイラの占いはこの先、とんでもないトラブルの切っ掛けになると思います。

・ハンター・Dの本名は『ドルジュ』。元ネタはタイムボカンシリーズ『ヤッターマン』のドロンジョ様と『怪盗きらめきマン』のルージュから。
 最初に姐御肌キャラとその子分2人って決めた時に「タイムボカンの三悪じゃん」って気づいて、そこから三悪を由来にしようと名付けました。
 同じようにヴァルドスキーは『オタスケマン』のドワルスキー(ヴァルドスキー→ドヴァルスキー→ドワルスキー)、ジュリコは『ヤットデタマン』のコケマツことジュリー・コケマツが元ネタです。

では、次回をお楽しみに。


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第二十八話 芳佳とひかりの一番長い日(前編)

これは、現在よりもほんの少しだけ未来のお話―――

 

ここは、ペテルブルグにある第502統合戦闘航空団『ブレイブウィッチーズ』の基地。雁淵 ひかり、管野 直枝、ニッカ・エドワーディン・カタヤイネン、ヴァルトルート・クルピンスキーは無事に帰還を果たし、グンドュラ・ラル隊長らと再会を果たしていた。

 

「お姉ちゃーーん!!」

「ひかりーーー!!」

 

隊長執務室でひかりは姉の孝美と抱き合い、涙を流しながら無事を喜ぶ。

 

「よかった………ひかりが無事で……本当に………!!」

「えへへ……」

 

妹の無事を確認し安心したのか、笑みを浮かべる孝美。微笑ましい光景に呆れつつも温かい視線を送る一同。そんな中、ラル隊長は4人に話しかけた。

 

「改めて、よく無事で帰ってきてくれたな。」

「はい。」

「501部隊からの報告書も見せてもらったけれど、本当に大変だったようね………」

 

手にした書類をめくりながらアレクサンドラ・イワーノヴナ・ポクルイーシキン(サーシャ)が労うように言う。それに、エディータ・ロスマンも続けた。

 

「所どころ理解が出来ないものも多いけれど、こちらはヴェネツィアの巣が消失してからネウロイの出現がめっきり減り、代わりに世界各地で報告書やあなたたちの話にあった怪獣の目撃情報が増えていたから……」

「やっぱり、怪獣がこの世界にも………!」

「ああ。」

 

ロスマンが報告書に添付されたレッドキングの写真を見る中ラルが頷くと、サーシャも続けた。

 

「宇宙の侵略者に怪獣にロボット、それに異次元の帝王………本当に色々大変だったみたいね………」

「うん、そうだねー」

 

それに、クルピンスキーが相槌を打った。

 

 

 

 

 

「ひかりちゃんが結婚しそうになったのが、一番大変だったかなー?」

 

 

 

 

 

「「「「はぁあッ!!??」」」」

 

クルピンスキーの言葉を聞いた途端、孝美とラル隊長の声が揃う。その声の大きさにひかりたちはビクッと驚き、直枝とニパがクルピンスキーに詰め寄った。

 

「おいお前、色々大変だったけど、真っ先にその話するってどういう神経してんだよ!!」

「そうだよ!もうちょっと空気読んでよね!!」

「あれ?戦いでハラハラする話よりも、こっちの方がいいと思ったんだけど、ダメだった?」

 

怒鳴る2人に首を傾げ惚けるクルピンスキー。そんな中、孝美が3人に詰め寄って来た。

 

「ちょっ!そ、それってどういう事なんですか!?」

「えぇ~っとぉ……」

「詳しく聞かせて下さい!!」

「お、落ち着け孝美………!」

 

血走った目で迫ってくる孝美に気圧され、思わず言葉を失うクルピンスキー。そして、それを見ていたラルとサーシャは孝美を止めてはいるが、その顔には困惑の色がありありと見れた。

 

「あ、ああ………!!」

「ちょ、ひかり大丈夫!?」

 

一方で、話の中心であるひかりは顔を青くさせてガクガクと震えていた。その時の事を思い出してしまったらしい。

 

「な、なんだかトラウマになっているようだけど………?」

「だ、だって……」

 

心配そうに声をかけるサーシャに対し、ひかりは目を潤ませる。直枝たちは顔を見合わせ、観念したようにため息をついた。

 

「わ、分かったよ。話すから落ち着いてくれ………」

 

孝美は申し訳なさそうな表情で謝ると、ソファーに座るひかりの隣に座った。

 

「えーと、あれはボクたちがあっちの世界に来て3日たったころだったかなー………」

 

 

 

 

 

第二十八話 芳佳とひかりの一番長い日(前編)

 

剛腕怪地底獣 ゴメノス(A・B)

ハンター・D ドルジュ

サーベル暴君 マグマ星人ヴァルドスキー

異次元宇宙人 イカルス星人ジュリコ

地中怪獣 モグルドン

電撃怪獣 ボルギルス

登場

 

 

 

 

 

「―――という訳で、アスカさんや我夢さんから提供された怪獣や宇宙人のデータは、『ドキュメント・パラレル』としてアーカイブに追加されることが、GUYS総本部で決定いたしました。」

 

ミーティングでミサキ女史が通達をする。ひかりたちは芳佳たちと同様にメモリーディスプレイを受け取り、不慣れながらも操作方法を教わっていた。

 

「これ、結構便利だねー」

「ここまで技術が進歩してるのか~」

 

未知の進歩した技術に感心を見せるクルピンスキーとニパ。ミサキはつづけた。

 

「後で、芳佳さん達にも同様の説明をしますね。」

「あれ、そう言えば今日、宮藤さんたちはどうしたの?ひかりや管野もいないし………」

 

ニパがきょろきょろと見渡しながら聞く。それにミーナが答えた。

 

「今日は、ミライさんやムサシさんと一緒に出掛けるって言ってたわよ。なんでも、ミライさんのご友人が会いたいって。」

「ふーん……」

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

その頃、芳佳たちは………

 

「キャッキャッ♪」

「わーーい!!」

「うわぁ、ちょっとぉ!!」

 

………幼稚園児にもみくちゃにされていた。

 

ここは都内にある、とある幼稚園。ミライがかつてのGUYSの仲間に会いに行くと聞いた芳佳やひかり、直枝らは、興味本位でついて来ていた。まさか幼稚園だったとは思っていなかったのだが……

 

「はいはーい、みんなお姉ちゃんたちを困らせないでねー!」

「「「「「はーい!!」」」」」

 

保育士の女性が手を叩き子供たちに言うと、全員が返事をして芳佳たちから離れていく。ようやく解放された芳佳は、その場にへたり込んだ。

 

「び、びっくりしたぁ……」

「わたしも……」

「大丈夫?」

「ありがとうございます………」

 

ひかりもその隣に座り込み、ミライとムサシが気遣って声をかける。すると、先ほどの女性保育士が駆け寄ってきた。

 

「ごめんね、みんな元気すぎて………」

「コノミさん。」

 

話しかけてきた保育士アマガイ・コノミが謝ってくると、ひかりたちも笑顔を浮かべて返した。

 

「いえ、大丈夫ですから………」

 

優しく笑うコノミに対して、ペリーヌは不思議そうにしていた。それに気づいたコノミが、何があったのか聞いてきた。

 

「えーと、どうかした?」

「あ、いえ………コノミさんはミライさん達と一緒にエンペラ星人と戦った『伝説の七人』の一人と聞いていたので……」

「え?私達そんな呼ばれ方してるの………!?」

 

自分が大それた呼び名で呼ばれていることを初めて知ったらしく驚くコノミ。すると、園児が数人駆け寄ってきて話しかけてきた。

 

「コノミせんせい、すごいんだよ!」

「ウルトラマンといっしょに、わるいうちゅうじんをやっつけたんだよ!」

「そ、そうですか………」

 

自分の事のように誇らしげに話す子供に対し、苦笑交じりに返事をするペリーヌ。一方のコノミは間違ってはいないためか、否定もしなかった。

 

「……ん?」

 

その時、ひかりは地面に着いた手に僅かな振動を感知する。何事かと思っている間に振動が大きくなってきたかと思うと、突然地面が大きく盛り上がり、長い蛇のようなものが飛び出した!

 

「な、何!?」

「みんな、こっちに!!」

 

驚いている子供達を庇いながら、コノミはその場から離れる。細長い蛇らしきものは地面から顔を出したまま、ひかりたちの方に向かってきた!

 

「うわあああっ!?」

「きゃああ!!」

 

悲鳴を上げながら逃げる子供たちを庇うコノミとミライ。咄嗟に直枝が蛇に飛びついて、その胴体を掴んだ!

 

「うおお!?」

 

しかし蛇の頭のあたりを掴んだというのに、直枝はその反対方向に引っ張られていく!?

 

「こ、こいつは蛇じゃねえ!尻尾だ!!」

「尻尾!?」

 

直枝の言葉に、ミライ達は驚きつつも振り返る。その時ムサシは、直枝が掴んだ事でその尻尾の形状を詳しく見ることが出来た。

 

「あの尻尾は………!!」

「こんのぉおーーー!!」

 

驚いたムサシはその場から駆け出して、尻尾を引っ張る直枝に向かって叫んだ。

 

「直枝ちゃん!そのまま引っ張って!」

「え?」

 

直枝は驚きながらも、そのまま引っ張り続けた。

 

「引っ張ったら緩めて、再び引く!!」

「お、おう!!」

 

ムサシのアドバイスの通りに直枝は尻尾を一度緩めて引っ張ると、尻尾の根本部分から何かが引きずり出されて地面に落ちた。

 

「「「「「おお~~~!!」」」」」

 

見事に引っ張り出されたのを見て、思わず拍手を送る一同。そこに、ミライが声をかけた。

 

「すごいです、ムサシさん!」

「名人直伝の、怪獣一本釣りです!あ、そうだ………」

 

ムサシは自慢げに言うが、直ぐに引っ張り出された怪獣に駆け寄った。

 

「プィーユ!プィーユ!」

「モグルドン!!」

「も、もぐるどん………?」

 

ムサシが悶える怪獣、イルカやカツオに似た青くツルツルとした肌にモグラに似た顔立ちと手足を持った『地中怪獣 モグルドン』の介抱をしながら名前を呼んだ。それを見た直枝やひかりは呆気に取られていると、芳佳たちはモグルドンの名前と姿に驚いた。

 

「モグルドンって確か………」

「エンペラ軍団に攫われたっていう………!?」

「何でこんなところに………というか、何であんな小さく………?」

 

芳佳たちがモグルドンの出現に驚いていると、モグルドンはムサシと同じ大きさではあるものの再会できた事が嬉しいのか、お腹の顔のような模様を見せながら甘えた鳴き声を上げてすり寄っている。

その一方で、保育士達はモグルドンを遠巻きで見ながら、ひそひそと話していた。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

………この様子を、幼稚園の植木の陰から探っている者がいた。

 

(ふふん、これでお前らは、デカくなったその怪獣に踏みつぶされるのさ!!)

 

そう言ってその者、ドルジュは、手にしたライフルの銃口をモグルドンに向けた。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「………ん?」

 

その時、芳佳とひかりの視界の隅に動くものを捉える。そちらに目を向けると、そこには植木の陰から大きなライフルが顔を出しており、モグルドンを狙っていた!

 

「危ない!!」

 

咄嵯の出来事だったためか、反射的に飛び出た2人はモグルドンの前に立って両手を伸ばした。その瞬間、銃口から光線が発射され、2人の腕に命中した!

 

「うわっ!?」「きゃあっ!!」

 

着弾した粒子状の光線が、2人の全身を包み込んでいく!

 

「芳佳ちゃん!?」「ひかり!?………え!?」

 

リーネたちは芳佳たちが光線を受けたことに驚くが、直ぐにその顔は唖然としたものに変わっていき、視線が少しずつ上に上にと上がっていく………

 

「………ぅうん………?」

「あれ………?」

 

一瞬痛みとも熱ともとれる感覚が芳佳とひかりを襲い、ぎゅっと目を瞑ってしまう。そして感覚がなくなり、2人は目を開いた。

 

「………え………?」

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

同じ頃、フェニックスネスト内にアラート音がけたたましく鳴り響いた。

 

「都内ポイント222に、巨大生物出現!!」

「そこって確か、コノミさんの幼稚園のあたりじゃあ………!?」

 

エリーからの報告に驚くカナタ。サンダーバード基地内でも連絡が来て、一同の気が一気に引き締まった。

 

「映像、出ます!!」

 

そうしてモニターに映った光景に、一同は唖然とした。

 

 

 

 

 

………モニターに映っていたのは、30mほどの大きさに巨大化した宮藤 芳佳と雁淵 ひかりの2人だったからだ。

 

 

 

 

 

「「「………………は?」」」

「え?ええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!?」

「なんっっっじゃありゃーーーーー!?」

 

ミーナやクルピンスキー、バルクホルンはそれを見て間の抜けた声を上げ、ニパは叫び、シャーリーが大声を出した………

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「えええええええええええ!?ちょ、どうなってるのこれーーーーーー!?」

「な、何コレ!?えええええ!?どういうこと!?」

 

芳佳とひかりは混乱して悲鳴を上げて、慌てて自分の体や周囲を見回す。足元にはさっきまで自分のいたはずの幼稚園があり、周囲の建物や車や人が小さくなっている。

 

「よ、芳佳ちゃん………よしかちゃんが………よしかちゃんが………きゅう。」

「リ、リーネさん!?」

 

あまりの出来事にリーネは卒倒してしまった。一方で、直枝やミライも驚きの表情を浮かべながら、スクール水着に包まれた2人のお尻を見上げていた。

 

「嘘だろ……」

「これって………む!?」

 

その時ミライは、植木の陰で巨大化した芳佳たちを見上げる3人組を見つけた。そのうちの2人はマグマ星人ヴァルドスキーとイカルス星人ジュリコだった。

 

「しまった……あいつらが盾になって光線受けちまったか………!!」

「ど、どうするんスかアネゴ!?」

「ええい落ち着け!早くこのミクロ化機改造ライフル(巨大化機能付き)で………」

 

ドルジュは慌ててライフルの目盛りを操作しようとしたが、直ぐにミライとムサシが走って来てドルジュの腕を掴んだ。

 

「させるか!」

「げげ!?」

「!お前はハンター・D!?」

「あの2人はいつぞやの………!?」

 

ドルジュは驚いてライフルを取り落としてしまい、ムサシは隠れていたのがハンター・Dであることに驚く。ヴァルドスキーとジュリコも驚いて固まってしまっていたが、その時、怒りの表情をした直枝が殴りかかって来た!

 

「テメェ!!よくもひかりをォッ!!」

「うわぁ!?ちょッ!?」

 

咄嗟にミライが飛び退くと、直江の拳はドルジュの顔面に叩き込まれる!その拍子にドルジュは後退し、被っていたターバンとマントが外れて地面に落ち、その素顔が露わとなった。

 

「ダ、ダダ!?」

 

その姿は黒いおかっぱ頭に見える頭部と白黒の幾何学的な縞模様の身体を持った女宇宙人だった。ミライの記憶にある姿に比べれば小顔で吊り上がった目をして何より女性個体であったが、ドルジュの正体は『三面怪人 ダダ』に間違いなかった!

 

「チィ、バレたからってどうって事無いが………!」

「アネゴ!!」

「姐さん!!」

 

ドルジュは舌打ちするが、直枝はそのまま掴みかかった。

 

「おい!さっさと2人を戻しやがれ!!」

「わ、分かってるよ!それにはあのライフルを使うから、手を放しなよ………」

 

ドルジュの言葉を聞いて直枝は舌打ちをしつつ手を放すと、ドルジュは立ち上がって落としたライフルを拾うと目盛りを操作して、銃口を2人に向けて引き金を引いた。

 

「………」

「あれ?」

 

しかし、銃口から光線が全然発射されない。何度か引き金を引くが、うんともすんとも言わない。

 

「あのー、アネゴ?」

「イカがいたしました?」

「………さっき落とした時に、壊れちゃったみたい………」

「「「何ぃい~~~!?」」」

 

申し訳なさそうな顔で振り返るドルジュに、思わず叫ぶ一同であった。

 

「な、何やってんだよお前!?」

「しょ、しょうがないだろ!?こー見えて結構デリケートなメカなんだから………」

「というか、芳佳ちゃんだけじゃなくって、モグルドンも戻してほしいし、ボルギルスの居所も………」

「プィー………」

「「ふぇ~ん………」」

 

困った顔で言うムサシとモグルドン。直枝に詰め寄られて肩身の狭そうなドルジュ。そして卒倒したままのリーネを介抱するペリーヌと、巨大化したまま涙目になる芳佳とひかり……もはやカオスである。ミライも流石に、困惑していた。

 

「ま、待て!修理にはアタシの円盤に行く必要がある!それまで待つんだ!」

「本当だろうな!?」

「も、もちろんだ………さすがにこの状況で嘘はつかねーよ………」

 

ドルジュは困り顔で弁解をする。直枝は訝しんでいたが、今は信じるしかない。ちょうどその時にガンマシンとウィッチたちがやって来たのが見えた。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

一方その頃、山中に隠してあるドルジュの円盤内では、ミクロ化された状態でカプセルに捕らえられたボルギルスが目を覚まし、周囲を見渡すと、カプセル内から口から火球を放って脱出を図った。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「―――なるほど、事情は分かった。とりあえずダダの円盤を隠してある場所にはコウジや直枝たちが3人を連れて行ってもらってる。修理が出来次第、芳佳たちや怪獣を戻そう。」

 

近隣住民が避難した後、近くのビルの屋上に陣取ったリュウがミライたちから話を聞いて納得したように言った。

その場にはミライたちの他にカナタに美緒とシャーリーにルッキーニ、バルクホルン、クルピンスキーがいた。ペリーヌとムサシは倒れたリーネとモグルドンを連れて基地に帰還していた。

 

「うえーん、坂本さーん………!」

「気持ちは分かるが泣くな宮藤ー!」

「ウルトラマンの目線って、こんな感じなんですかねー………」

 

さめざめと泣く芳佳をメガホン片手に慰める美緒。一方のひかりは体育座りをして、現実逃避をしていた。

 

「しっかし、人間を巨大化させるなんてなー………」

「まあ、ウルトラマンが人間になれるくらいだからね………」

 

シャーリーとクルピンスキーが手すりに寄りかかりながら、呑気に話していた。ルッキーニも同じく手すりに寄りかかって芳佳たちを見ていると、ふと、ある事に気が付いたのか目を輝かせた。

 

「ひかりー!ちょっとこっち来て!」

「え?うん………?」

 

ひかりはルッキーニに言われた通り、皆のいるビルの所まで歩み寄った。

 

「そのまましゃがんで。後、少し背中反って!」

「えーと……こう?」

「そう、そんな感じ!!」

 

言われた通りにしゃがんで上半身をそらせるひかり、ルッキーニはそれを確認すると、

 

「しゅわーっち!!」

「!?」

 

手すりに足をかけてひかりに向けて跳び出したではないか!!ルッキーニは満面の笑みでひかりに向かって行くが、そこで芳佳が横から手を伸ばしてナイスキャッチした。

 

「あ、危なかったぁ………」

「ルッキーニちゃん!危ないじゃない!何やってるの!?」

 

ホッと胸をなでおろした芳佳がルッキーニに言うが、起き上がったルッキーニは芳佳に文句を言ってきた。

 

「何すんのさ芳佳!せっかくおっきなおっぱいに飛び込もうとしてたのにー!!」

「ええ!?」

 

何とも頭の痛くなるようなルッキーニの発言に困惑する芳佳。それを聞いて美緒やシャーリーは呆れていたが、

 

「彼女は天才か!?」

「いやバカだろ!!お前も!!」

 

クルピンスキーは感心をしていたため、バルクホルンはスパコンッと後頭部を引っ叩いた。

芳佳がルッキーニを屋上に下ろすと、ルッキーニは不満そうな顔をしていた。

 

「ぶー、せっかくのおっぱいなのにー!」

「そんなにがっかりしないでよ。」

 

そんなルッキーニの肩をクルピンスキーが叩き、サムズアップで笑いかけた。

 

「後でニパくんのおっぱいでやればいいじゃないか!!」

「そっか!!」

「おいルッキーニ。」

「アイハラ隊長、あいつら殴っていいですか?」

「お前に任せる。」

 

数分後、頭にタンコブを作ったルッキーニとクルピンスキーが屋上で正座をしていた。

その首にはそれぞれ『Ho cercato di abusare della tecnologia degli alieni.』、『Ich habe versucht, die Technologie von Außerirdischen zu missbrauchen.』と書かれた札を下げられていた。

意味は、『私は宇宙人の技術を悪用しようとしました。』である。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

一方、円盤に向かうドルジュ一味とGUYS一同。

 

「まだか?」

「もう少しだ。この先の広い場所に停めてあるから………」

 

コウジが聞くとドルジュが答える。ヴァルドスキーとジュリコは肩を落として、すっかり落ち込んでいた。そして円盤を止めた場所に着いたのだが、そこには半壊した円盤が黒い煙を上げていた………

 

「なぁ!?ア、アタシの円盤がぁああああああああああああああ!?」

「これって………!?」

「ギュウィーーー!!」

 

絶叫を上げるドルジュと驚くコウジたち。すると破壊された円盤の陰から、全身が赤くゴツゴツした体表を持った四足歩行の怪獣『電撃怪獣 ボルギルス』が顔を出した。

 

「ギュウィーーー!!」

「あ!あの怪獣、たしかボルギルス………!!」

「アイツ!内部で破壊しやがったな!!」

「せ、せっかく帰れると思ったのにぃ………!!」

 

少しおびえた様子のボルギルスに対して、膝から崩れ落ちるドルジュ一味。一方の直枝は、円盤の近くの地面に大きな穴が開いている事に気が付いた。

 

「この穴は………?」

「あ、そう言えばこいつらの他に後2匹………」

「何!?」

 

ドルジュが思い出して口に出したことに直枝が思わず声を上げた。すぐにコウジがメモリーディスプレイに通信を入れた。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「何!?他にも怪獣が!?」

 

コウジからの通信を聞いたリュウが聞き返す。驚く一同であったが、その時、地面が大きく揺れたかと思うと、数百m先の地面が大きく爆ぜて巨大な怪獣が2匹出現した!

 

「ギギュゥウィー!!」

「ギギュゥウィーー!!」

 

現れたのは、丸みを帯びた頑丈そうな体表に大きな口、三本指の太い腕を持った同型の2匹の怪獣で、片方は額に切り傷を持っていた。

咄嗟にシャーリーはメモリーディスプレイのカメラを怪獣に向けるとアーカイブドキュメントから怪獣のデータを検索した。

 

「あった!ドキュメント・パラレル、XIGの項目に記録確認!レジストコード『剛腕怪地底獣 ゴメノス』!!」

「我夢さんの世界の怪獣か!!」

 

ゴメノスの情報を聞いたリュウはトライガーショットを抜こうとしたが、それよりも早くゴメノスは、目の前にいる芳佳たちに向かって突進をしてきた!

 

「ギギュゥウィー!!」

「ギギュゥウィーー!!」

「ええ!?」

「きゃあっ!?」

 

驚いた芳佳たちは慌てて障壁を張ると、ゴメノス達はそのまま突っ込んできて衝突、衝撃で倒れそうになった!

 

「宮藤!!」

「ひかり!!」

 

倒れる前に何とか踏みとどまったが、ゴメノスは土俵際まで相手を追い詰めた力士のように更に力を入れてくる!

 

「こんっ、のぉおおお!!」

「でぇええええいッ!!」

 

しかし2人は、渾身の力を込めるとゴメノスを押し返し、2匹の怪地底獣は仰向けに倒れた!

 

「うおっと!?」

「やるじゃねーか!!」

 

倒れた際の地響きによろけるも、肩で息をする芳佳たちを褒めるリュウ。

 

「ギュウュウュ~………」

 

しかし、一足先に額に傷を持ったゴメノスAが起き上がると、自分を押し倒してきた芳佳を睨みつけた。

 

「ひっ……!!」

 

同じくらいのスケールとはいえ、怪獣に睨まれて固まる芳佳。同じく起き上がったゴメノスBも、ひかりを睨みつけてきた。

 

「あの怪獣、2人と戦う気か!!」

 

リュウはトライガーショットをゴメノスA・Bに向けるが、ミライはゴメノスを見てリュウを止めた。

 

「待ってください、様子が変です。」

「何?」

 

リュウたちもゴメノスを見ると、ゴメノス達はジッと芳佳とひかりを見つめていた。

 

「え………?」

「な、何………?」

 

ゴメノスに見つめられて、恐怖から困惑に変わる芳佳たち。すると、ゴメノス達は数回瞬きをしたかと思うと、

 

「「……キュゥウ~ン♡」」

 

目を潤ませて甘えた声を出して、身体をくねらせてきた。

 

「え………?」

「は………?」

 

突然態度を変えてきた2大怪獣に呆気に取られていると、ゴメノスは両手を広げて芳佳たちに向けて走ってきた!

 

「わあああああまた来たぁ~~~!?」

「ひゃあああ!!」

 

2人とも悲鳴を上げて飛び退くが、ゴメノスA・Bはなおも迫ってくる。

 

「ギギュゥウィーー♪」

「ギギュゥウィーー♪」

「ひぇえ~~~!?」

「な、なんかあの怪獣たち、おかしくないか……?」

「確かに………まるで甘えてくる子犬だぞ……?」

 

ゴメノス達の変わりように戸惑っていると、ゴメノス達は再び抱きつこうとするかのように両腕を広げた。芳佳たちはゴメノスに抱き着かれそうになると障壁で防ぐが、目が『(ハート)』になっているように見えるゴメノスA・Bは、障壁に顔を擦りつけて来た。

 

「ちょ、ちょっとやめて!!」

「ギギュゥウィーー♡」

「ギギュゥウィーーー♡」

「何!?何なの!?」

 

ゴメノスの行動の意味がわからず混乱し涙目になる芳佳とひかり。ゴメノス達が攻撃の意思がないと見たアイハラ隊長は、ゴメノスの背後にまで来たカナタの駆るガンローダーに通信を入れた。

 

「カナタ、怪獣用麻酔弾の使用を許可する!」

『G.I.G.!』

 

ガンローダーは機体の下部から麻酔弾の入ったミサイル弾が顔を出すと、ゴメノスA・Bに狙いを定めて発射した!

 

「ギギュゥ………?」

「ギュ~~………?」

 

麻酔弾の針が刺さるとゴメノスA・Bは力なく倒れ込み、眠りについた。

 

「た、助かったぁ………?」

「怖かったぁ……」

 

安堵してその場にへたり込む芳佳たちを他所に、アイハラ隊長はゴメノス達を観察した。

 

「一体なぜ急にあんな風に………?」

 

 

 

 

 

つづく




第二十八話です。

・ずっとバトル展開だったので、ウルトラシリーズらいギャグ回を入れようと思いました。

・他のブレイブウィッチーズメンバー出したいと思ったけど、今の展開だと最終決戦辺りまで出番はないため、思いついたのが「未来の時系列で現在の話を過去回想という形式で語られる話」という、変化球どころか消える魔球みたいな話にw
 ちなみにロスマン先生がレッドキングの写真見ていたのは中の人ネタw

・モグルドンの一本釣りのアドバイスは原作の通りですね。あれも結構好きな話。

・芳佳とひかりの巨大化。これ思いついた時はかなりのギャグだなあって思ってにやけちゃいましたw

・ドルジュの正体はダダでした。色々とそれらしい所は出していましたが、小顔なのは『大怪獣ラッシュ』の影響ですね。
 ハンター・Dの由来は『ダダ』と『ドルジュ』、それに『ダダ第4の顔』のトリプルミーニング。

・書いている内に、ルッキーニなら巨大化したウィッチのおっぱいに飛びつくだろうと思いましたwそしてそれに乗っかる伯爵と反省の正座w

・ゴメノス登場。ガイアの怪獣ではミズノエノリュウに並ぶくらい好きな怪獣です。突然の豹変はまた次回。

では、また次回。


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第二十九話 芳佳とひかりの一番長い日(後編)

第二十九話 芳佳とひかりの一番長い日(後編)

 

剛腕怪地底獣 ゴメノス(A・B)

巨大宮藤軍曹

巨大雁淵軍曹

どくろ怪獣 レッドキング

超古代怪獣 ゴルザ

三面怪人 ダダ・ドルジュ

サーベル暴君 マグマ星人ヴァルドスキー

異次元宇宙人 イカルス星人ジュリコ

地中怪獣 モグルドン

電撃怪獣 ボルギルス

登場

 

 芳佳「ちょっと!何で私たち怪獣みたいな扱いなんですか!?」

ひかり「おかしくないですか!?」

 美緒「オープニングの映像をフリップみたいに持つな………」

 

巨大宮藤軍曹

身長:35m

体重:9000t

 

巨大雁淵軍曹

身長:35m(アホ毛含む)

体重:8500t

 

 芳佳「やめてー!怪獣みたいなプロフィール出さないでー!」

ひかり「体重は!体重は見ないでーーー!!」

 

 

 

 

 

フェニックスネストのディレクションルームに、我夢とムサシが飛び込んできた。

 

「ゴメノスが現れたって!?」

「はい、でも、何だかおかしくってな………」

「おかしい?」

 

先に来ていたアスカやミーナ、ニパが首を傾げながら我夢たちに言う。モニターには先ほどまでのゴメノスが巨大化した芳佳とひかりに倒された後に、甘えるように抱きしめようとする様子が映し出されていた。

 

「何で急にあんな行動を………?」

 

我夢とアスカが小首をかしげるが、ムサシはその行動を見てある事に気が付いた。

 

「これって………?」

「ムサシさん?」

「さっきの所、ゴメノスが芳佳ちゃんたちに体当たりしている所、もう一回再生してくれない?」

「G.I.G.」

 

ムサシに言われてエリーが映像を巻き戻した。ムサシはその様子をもう1度見ると、確信したような顔になった。

 

「やっぱりそうだ………!」

「何かわかったんですか!?」

「あぁ、間違いないよ……」

 

ミーナが聞く中、そう言ってムサシはある仮説を立てた。

 

「僕の世界の怪獣には、自分よりも強い個体を『伴侶』にする習性を持ったものがいるんだ。あのゴメノスの行動は、その怪獣によく似ているんだ。」

「伴侶?」

「うん、つまりゴメノスは今『繁殖期』で、あの突進は『求愛行動』、プロポーズだったんだよ!!」

 

ムサシの話にミーナはなるほど、と頷いてモニターに視線を戻すと、

 

「………プ、プロポーズゥウウ~~~~~!?」

 

数泊おいてその言葉の意味を理解すると、思わず素っ頓狂な声で聴き返してしまった。それに、ニパが付け足すように聞いた。

 

「それってつまり、ひかり達が怪獣を倒したのが、怪獣のプロポーズにOK出しちゃったって事!?」

「そういう事に、なるね………」

「「「えええええええええええええええええええええええ!?」」」

 

ムサシの仮説に、ディレクションルームに絶叫が響き渡った………

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「「えええええええええええええええええええええええ!?」」

 

フェニックスネストから連絡を受けて、ゴメノスの行動の理由に思わず声を上げる芳佳とひかり。その下ではミライやリュウ、美緒やシャーリーも驚きの顔をしていた。

 

「そ、そんなぁ!?私、そんな気なかったのに………!!」

「それに、私たち怪獣じゃないのに!?」

「ゴメノスにとっては、種族なんて些細な違いなんだろう……」

 

顔を真っ赤にして慌てる二人に、リュウが冷静に分析する。ふと芳佳は、先日のエイラの占いを思い出した。

 

「もしかして、『人生最大級の恋愛』って、この事ーーー!?」

「確かに最大級だなー、物理的な意味で………」

 

頭を抱える芳佳に対して、シャーリーが呆れた表情を浮かべる。話を理解するのに時間がかかっていたルッキーニは、何とか理解すると、驚きの声を上げた。

 

「ええ!?芳佳、怪獣と結婚しちゃうの!?」

「え?」

「怪獣と………」

「結婚………?」

 

その一言で、一同はイメージした。イメージしてしまった。

 

 

 

 

 

鐘が鳴り響くチャペル、真っ白なウエディングドレス姿の芳佳とひかりが、白いタキシードを着たゴメノスと腕を組み、皆に祝福されながらバージンロードを歩く姿が……

 

 

 

 

 

「………それは、ちょっと……」

「てか、結婚って言っても、そうはならないかと………」

 

一様に微妙な顔になる一同。クルピンスキーだけは、そのイメージに物申していたが。

その時、メモリーディスプレイが再び通信を知らせる通知音を鳴らした。

 

[隊長、ゴメノス2体をスキャンした結果、ある事実が判明しました。]

「ある事実?」

 

フェニックスネストのエリーが、神妙な面持ちで報告をする。

 

[ゴメノスは、2匹ともメスです。]

「「「メス?」」」

[はい。女の子です。]

「女の子………」

「………ということは………」

 

その一言で、一同はイメージした。イメージしてしまった。

 

 

 

 

 

雅楽の笛の音が鳴らされる中、白無垢姿のゴメノスと、紋付袴姿の芳佳とひかりが、参列者の前でお辞儀をする姿を………

 

 

 

 

 

「いや、だからそうはならないでしょ!?てか何でさっきは洋式で今度は神前式!?」

 

イメージを両手で払いながらツッコミを入れるクルピンスキー。とんでもない事態の中で、彼女だけは冷静だった。

 

「落ち着けお前ら!まずは両家の顔合わせと結納をして………」

「少佐も落ち着いてよ!?「この人と結婚します」って言って怪獣紹介されたら、親御さん腰ぬかしちゃうでしょ!?」

[美緒!]

 

混乱しているのかとんちんかんな事を言い出す美緒。その時、フェニックスネストにいるミーナが通信を入れてきた。

 

[仲人はトリヤマ補佐官にお願いを………]

「いや、何でミーナさんも坂本さんも、結婚する方向で話進めようとしてるんですか!?」

「どうしよう………飛ばされた異世界で怪獣と結婚するなんて………お姉ちゃんに何て言えば………!?」

 

ミーナもおかしな事を言い出す事態に、芳佳が慌てて止めようとする。その横では、ひかりは頭を抱え涙目で震えていた。その時、メモリーディスプレイが再度鳴り響いて出てみると、コウジからであった。

 

[こちらコウジ。ドルジュの円盤から、ミクロ化機の修理に必要な部品を回収することができました。修理には30分くらいかかるそうです。]

[ひかりが結婚なんて………孝美になんて説明すりゃいいんだ………]

「わ、分かった。」

 

コウジの報告を聞いてリュウが返事をする。後ろでは現状を聞いた直枝が頭を抱えていたが、今はそんな事を気にしている場合ではなかった。

すると、コウジの後ろからジュリコが話しかけてきた。

 

[あのー、ミクロ化機が直っても、直ぐに元のサイズに戻す訳にはイカないと思うのだが?]

「何故だ?」

 

疑問を投げかけるリュウに、ジュリコは答えた。

 

[あの怪獣達は、その2人に惚れてるんだろ?その状況で2人が元のサイズに戻ってその場から消えたら、目覚めたその2匹は消えた恋人を探すために、暴れるんじゃあなイカ?]

「「あっ……!」」

 

その言葉に、全員がハッとなる。確かに、今の状況で芳佳たちが消えれば、ゴメノスたちは愛しの伴侶を探すために街で暴れ、大混乱になるだろう。

 

「そ、それじゃあ、2人を戻す前にあの怪獣をどうにかしないと………!」

「でも、どうすれば………?」

 

頭を悩ませる一同。どうにかしてゴメノス達には芳佳とひかりを諦めてもらわないといけないのだが、その方法がなかなか思いつかない。

だがその時、シャーリーが「あ。」と声を出した。

 

「あの怪獣ってさ、自分より強いヤツと結婚するんだよな?」

「そうだけど………?」

「だったらさあ………」

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「それじゃあ、行きますよ!」

「「はい!」」

「おう!」

 

十数分後、現地で合流をしたアスカ、我夢、ムサシとミライは頷き合うと、それぞれリーフラッシャー、エスプレンダー、コスモスプラック、メビウスブレスを掲げると、叫んだ。

 

「ダイナァァアアアアアアアアア!!」

「ガイアァァアアアーーーーーー!!」

「コスモォース!!」

「メビウゥゥウウウウウウウウス!!」

 

4人は光に包まれると、その場にウルトラマンダイナ、ウルトラマンガイア、ウルトラマンコスモス、それにウルトラマンメビウスが現れた!

 

「うわ、すごい………!」

 

自分の傍に立ったウルトラマン4人に、芳佳とひかりは同じスケールになったというのに、その大きさに圧巻していた。

ウルトラマン達は顔を見合わせると、ダイナとガイアはそれぞれゴメノスA・Bを重量挙げのように持ち上げ、メビウスは芳佳を、コスモスはひかりを抱きかかえた。ちなみにお姫様だっこである。

 

「うわっ」

「ひゃっ」

 

芳佳とひかりが、ウルトラマンとはいえ異性に抱きかかえられて恥ずかしそうにしている(芳佳は2回目だが)と、4人のウルトラマンは空高く飛び立った。

 

「これより、ウルトラマンと共に作戦を続行する。」

[G.I.G.!]

「「「「「了解!!」」」」」

 

ガンフェニックスに乗ったリュウとカナタに、ウィッチたちがストライカーを履いてウルトラマンを追う形で飛び立っていった。

 

「目指すは多々良島だ!」

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「うわぁ………」

 

コスモスに抱きかかえられたまま、ひかりは自分に吹く風や空を見回す。ストライカーで飛ぶ感覚とは違う、独特の浮遊感。そして、見下ろす大地から海原へと変わる風景。

現在、怪獣に迫られている身だなんてことを一瞬忘れるくらい、綺麗な光景が広がっていた。

 

「すごい……こんな景色………はじめて……」

『ああ。』

 

思わずつぶやく言葉に、コスモスが反応する。その声色はとても優しくて、自分の中にあった不安や恐怖が少しだけ和らいだ気がした。

 

そのまましばらく飛んでいると、海岸が見えてきた。多々良島に到着したようだ。

 

ウルトラマンたちは芳佳とひかり、そしてゴメノスを地面に下ろすと、そそくさとその場から離れた。そして制限時間が終わって人間態に戻り、追ってきたリュウたちと合流した。

 

「じゃあ、作戦通りいくぞ。」

「G.I.G.!」

 

ミライたちはそう言うと、手にした発煙筒をゴメノスに向けて投擲、煙に燻されたゴメノスが目を覚まして起き上がると、煙に気付いたこの島の怪獣、レッドキングとゴルザがやってきた。この2匹、今ではすっかり仲良くなっていた。

 

「ピギャァァアアアアアアアアアアアオッ!」

「グォオオオオオオオオオオオオ!!」

「ギギュゥウィー!!」

「ギギュゥウィーーー!!」

「来た!」

 

レッドキングとゴルザが現れたのを見たミライが声を上げる。ゴメノスA・Bは2大怪獣の見て驚きの声を上げた。

 

「いまだよ、2人とも!」

「は、はい!」

「行きます!!」

 

ミライに合図を受けた芳佳とひかりは、顔を見合わせてレッドキングとゴルザに向けて走り出した。

 

「ええいっ!」

「やぁあああっ!」

 

気合を入れて、2人はレッドキングとゴルザにドロップキックを放つ!2体は不意打ちで攻撃を受けるが、数歩下がっただけでダメージはなく、飛び蹴りを放った2人は逆に弾かれて地面に仰向けに倒れた。

 

「あいたっ!!」

「グゥウ……!?」

「ガウゥウ……!?」

 

レッドキングとゴルザが驚いている間に、芳佳とひかりは立ち上がる。ゴメノスたちは戦いの行く末を見つめる中、芳佳とひかりは立ち上がり、レッドキングとゴルザは拳を握った。

 

「「………!!」」

 

芳佳とひかりは2大怪獣に向き直るとゴクリと唾を飲み込み………

 

 

 

 

 

「「………う、うわ~!や~ら~れ~た~~~!!」」

ドテ~ン

「「!?」」

「「!?」」

 

 

 

 

 

芳佳とひかりは、すっごい棒読みの悲鳴を上げると、その場に倒れて動かなくなった。

突然の事にレッドキングとゴルザは呆気に取られて目をパチクリ瞬きすると、顔を見合わせて首を傾げる。

 

「グォ………?」

「グゥ………?」

 

訳が分からない様子のレッドキングとゴルザだが、その時、自分たちに熱い視線が向けられている事に気が付いた。見てみると、そこにはこちらを見つめるゴメノスA・Bの姿があった。

 

「「………」」

 

見つめられていた事にギョッと驚く2匹だが、ゴメノスは2匹を見つめ続けていた。そして、

 

「「……キュゥウ~ン♡」」

「「!?」」

 

目を『♡』にして、甘えた声を出してきた。そして倒れた芳佳たちに目もくれず、レッドキングとゴルザに向かって駆け出し、そのまま抱き着いた!

 

「ピギャァァアアアアアアアアアアアオッ!」

「グォオオオオオオオオオオオオ!!」

 

2大怪獣はゴメノスに抱きつかれて困惑するがどこかまんざらでもないように見えなくもない。

 

「ギギュゥウィーー!!」

「ギギュゥウィーーー!!」

 

そんな事はお構いなしと言った感じで2体のゴメノスはじゃれ合い始める。レッドキングとゴルザは無理やり引きはがすと後退りして距離を取るが、しかしゴメノスはじりじりと2体に近づいていき、レッドキングとゴルザはついに背を向けて逃げ出してしまい、ゴメノスはそれを追いかけていった。

 

「………うまくいったね。」

「そうですね………」

 

倒れたふりをしていた芳佳とひかりが起き上がってそう言うと、ミライたちも作戦成功にガッツポーズをとっていた。

 

シャーリーの立てた作戦は、実にシンプルなものだった。

ゴメノスは自分よりも強い者を伴侶にする。ならば、「自分よりも強い者よりも、更に強い者」が現れれば、そちらに靡くという算段だった。

そこでミライたちは多々良島のレッドキングとゴルザに芳佳とひかりが挑み、わざと負けてゴメノスを押し付けようと企んだのだ。

結果として、ゴメノスは目論見通りレッドキングとゴルザに夢中になり、芳佳たちは眼中にない様子だった。

 

「………でもこれ、勝手に惚れられたと思ったら勝手に振られたから、わりと複雑な感じが………」

「……ま、まぁいいじゃないですか。これで一件落着です!」

 

ひかりの言葉を受けて、芳佳はうんと大きくうなずく。

 

「まあ、あいつらが結婚する時は、せめてご祝儀くらいは送ってやろうぜ。」

「怪獣の結婚、かぁ………」

 

その一言で、一同はイメージした。イメージしてしまった。

 

 

 

 

 

花弁が降り注ぐ中、タキシードを着たレッドキングとウエディングドレス姿のゴメノスA、紋付袴姿のゴルザと白無垢姿のゴメノスBが、皆に祝福されて照れている姿を………

 

 

 

 

 

「………そうはならないと思うけど、合ってるっちゃ合ってるな。」

 

アスカの一言に、一同は微妙な表情ながらもうんうんと頷いた。

その時、遠くの方からジェットエンジンの音が聞こえて来た。振り返ってみれば、そこにはガンブースターがこちらに飛んでくるのが見え、搭乗しているコウジが通信を入れてきた。

 

「隊長ーーー!ミクロ化機直りましたよー!」

「本当か!!」

 

リュウが嬉しそうに声を弾ませ、芳佳とひかりもホッとした顔になった。その後、ガンブースターに同乗していたドルジュがミクロ化機を芳佳とひかりを狙い引き金を引くと、放たれた光線が2人を包み込み、みるみるうちに元のサイズに戻った。

 

「「も、戻ったぁあ~~~~~!!」」

「「よかったぁあ~~~~~!!」」

 

芳佳とひかりはお互いの無事を確かめるように抱き合うと、感極まって涙を流した。そこに直枝やバルクホルンも後ろから抱きしめると、同じく涙を流して喜ぶのであった。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「芳佳ちゃ~~~ん!良かったよぉ~~~!!」

「リーネちゃ~~~ん!!」

 

十数分後、無事に基地に戻った芳佳たちを出迎えたリーネは、涙を流しながら芳佳を抱きしめた。その隣ではペリーヌが呆れてため息を吐きながらも、笑いかけていた。

 

「全く、心配させて………」

「ごめんなさい……」

 

苦笑しながら言ったペリーヌの一言に、芳佳は申し訳なさそうな表情を浮かべる。

 

あの後、同じく元のサイズに戻ったモグルドンとボルギルスも多々良島に運び、今頃はリドリアスと再会している事だろう。

ゴメノスたちはレッドキングとゴルザに夢中であるため、このまま放置しても問題はない。一応、念のため監視用のカメラ等を設置済みである。

 

そして、今回の騒動の元凶であるドルジュ、ジュリコ、ヴァルドスキーの3名はというと………

 

「………で、何でこいつら着いてきてんだ?」

 

直枝が、後ろにいるドルジュ一味を見ながら指摘をした。ドルジュが口を開いた。

 

「いや、アタシの円盤壊れて地球から出れなくなっちゃったから………」

「修理するにも金がかかるから、どうにかして金を稼がないといけないからなぁ………」

「という訳で、働き口を紹介してくれなイカな~、と思って………」

「図々しいなお前ら!!帰れ!!」

「いや、帰りたくても帰れなイカら………」

 

ドルジュたちに対して直枝は怒鳴るが、彼らはどこ吹く風と言った様子だった。すると、ため息をついたリュウが話に入って来た。

 

「分かった、フェニックスネストで働けないか、総監に聞いてみよう。」

「本当か!?」

「ありがたイカ~~~!!」

「アイハラ隊長!?」

「何を考えて………」

 

リュウの言葉に美緒やバルクホルンが反論をしようとするが、リュウはただし、と付け加えた。

 

「ただし、条件がある。お前らには、エンペラ軍団、またはグア軍団について知っている事を、全部話してもらうぞ?」

「あ、そう言う事………」

「なるほどな……」

 

リュウの説明を聞いて、シャーリーとクルピンスキーが納得したような顔になる。リュウからすればドルジュ一味は貴重な情報源だ。逃す手はなかった。

 

「………ま、背に腹は代えられないわな。」

「バレて小切手が無効にならなイカ心配だけど………仕方なイカ。」

「まぁ、なるようになるってな。」

 

三者三様に言いながら、ドルジュ一行は渋々といった形で承諾をするのであった。

こうしてドルジュ一味は情報を渡す代わりに、フェニックスネスト内で清掃員と食堂の店員として働く事になるのであった。

 

 

 

 

 

「ねえ、エイラ………」

「どうした、サーニャ?」

「これってもしかして、私とミーナ隊長も相手が怪獣になると思うんだけど、大丈夫かな………?」

「………ど、ドーナンダロ………?」

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「―――とまあ、事の経緯はこんな感じだね。」

「それは、災難でしたね………」

「結婚しそうになったって、そう言う意味か………」

「大変でしたね………」

 

話し終えたクルピンスキー。ラルやサーシャ、ロスマンは、話を聞いて呆れた顔をしていた。一方の孝美は、ひかりが巨大化した辺りで青い顔をしていたが、無事に戻ったと聞いてほっと胸をなでおろしていた。

 

「しかし、作戦とはいえ生身で怪獣に飛び蹴りするなんて………」

「はい、でもあの時は必至だったから………ゴルザ意外と堅かった。」

「体幹いいよな、アイツ。」

 

ロスマンが無茶な作戦に呆れていると、何故かゴルザを評価する直枝。それを聞いたラルはふっと笑った。

 

「まあ、それもまたブレイブ、というものだな。」

「え?」

「何ですかそれ?」

「いや、何でもないよ。」

「?」

 

笑うラルに対して首を傾げる直枝。ひかり達も不思議そうにしていたが、サーシャとロスマンは顔を合わせて笑っていた。すると、執務室のドアが開いてジョーゼット・ルマール(ジョゼ)が入って来た。

 

「失礼します。サーシャさん、物資が届きました。」

「分かりました。」

 

ジョゼに返答をすると、サーシャは執務室から出て行った。

 

「何の話をしてたの?」

「うん、向こうの世界で起きた事をね。」

「そうなんだ………」

「あれ?下原さんは……?」

「ああ、定ちゃん、あの子にメロメロで………」

 

ジョゼが呆れたように言っている中、ラルは窓から見える空を見上げていた。

 

 

 

 

 

つづく




第二十九話です。

・初っ端からメタい発言をする芳佳とひかり。名前は『巨大フジ隊員』のオマージュです。

・ゴメノスの生態は今作オリジナル。この展開にしてからは『コスモス』の「地球生まれの宇宙怪獣」を意識しました。ミーナの反応とか、完全にヒウラキャップまんまだし。ゴメノスとの結婚式のイメージはウルトラゾーンというか浦沢脚本っぽいw

・コスモスに抱かれたひかりのシーンはお姫様だっこをしたシーン書いた時にふと思いついて、急遽追加しました。

・久々のレッドキングとゴルザ。いつの間にか仲良くなっていたけど、イメージとしてはジョジョの仗助と億泰。で、リドリアスは康一君。でもゴメノス押し付けられてちょっと不憫かも。

・ドルジュ一味、まさかの準レギュラー化。今後は背景なんかでちょいちょい姿を見せたりするかと思います。

・ラル隊長の「ブレイブ」発言の理由は、いずれ判明するかもしれません。

・次回からは通常の時系列で進行します。

では、また次回。


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第三十話 禁断の力

次元城から帰還した翌日。

 

メテオール研究所で、アドベンチャーの理論を応用してウィッチたちを元の世界に帰還させる方法を研究する準備していた我夢は、トリヤマとマルに呼び出された。

 

「これは………!!」

 

メテオールの開発に知識を貸してほしいと、トリヤマから渡された資料に目を通した我夢は、驚いた顔をトリヤマに向けた。

 

「確かにこのメテオールが完成すれば、怪獣や宇宙人を無力化できる………でも、コレは危険ですよ!?」

「ああ、確かに危険だ………だが、わしだって出来れば戦わずに済む方法があるなら使いたいんじゃよ………」

 

トリヤマはいつになく真剣な表情で我夢に答える。我夢はその表情を見て、黙り込んでしまった。

 

「わしの孫とあまり歳の変わらないウィッチたちに、傷ついてほしくないんじゃよ……頼む………!!」

 

トリヤマとマルは、我夢に向けて深く頭を下げる。そんな2人の姿を見た我夢は、決意を固めた。

 

「………分かりました。このメテオール開発を手伝わせてもらいます。」

「ありがとう………!!」

 

我夢の返事を聞いて、トリヤマはその手を固く握った。

 

「総監の許可は得てはいるが、この件は完成間近になるまで他言無用で頼む。出来れば、この『ワイアール計画』は部外秘に進めたい。」

「分かりました………」

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

それから数日後の13時過ぎ。

 

[さあ、各馬一斉にスタート!先頭はモンキーフェイス、次いでナンテコッタ、センセイニフラレタ、シャミセンマスター、シットジェラシー、ブルブルディー、ウアオー、ケーキトカツドン、遅れてヨッシャラッキーとなっております。]

 

川崎市にある昔ながらのラーメン屋『スミジロウ』、競馬中継がテレビで流れる店内に、2人の客がカウンター席に座っていた。

 

「ワイアール計画?」

「はい、GUYSメンバーにも極秘で進められている、メテオールの計画のようです。」

 

注文した大量の野菜のトッピングの上に麺を乗せながら、小太りの客は隣に座る背の高い男の話を聞く。男は同じく大量のトッピングが乗ったラーメンの野菜を食べる手を止めて、口を開いた。

 

「詳しい内容まではわかりませんでしたが、現在、メテオール研究所で開発が進められているようです。近い内にテストが行われるらしく、ウィッチ数名も護衛に当たるそうです。」

「ナルホドね。」

 

小太りの男は再び箸を動かし麺をすすり飲み込むと、男に話しかけた。

 

「それじゃあジュモクソウ、詳しい日程が分かったら連絡しなさい。」

「承知しました、コウメイ様。」

 

ジュモクソウと呼ばれた男は、その面長の顔を深々と下げると店の外へ出ていった。残されたコウメイはスープまで飲み干すと立ち上がり、レジへと歩いていった。

 

[あーっと!ここでヨッシャラッキーが出た!ヨッシャラッキー、モンキーフェイスに並んだ!ヨッシャラッキー、モンキーフェイスを抜いて今ゴールイン!ヨッシャラッキー!!]

 

コウメイが会計を済ませ店を出ると同時に、テレビの中の馬がレースを終えて歓声が上がっていた。

 

 

 

 

 

第三十話 禁断の力

 

異次元怪異 ネウロイ(GX‐10)

宇宙工作員 ケイル

宇宙工作員 ケダム

マケット怪獣 リムエレキング

登場

 

 

 

 

 

「ハルトマァアアアアアアンッ!!」

 

GUYSジャパン基地内に備え付けられた寮施設内、ストライクウィッチーズの1日は、ゲルトルート・バルクホルンの怒鳴り声で始まった。

 

「え!?な、何………!?」

「さあ?まあ、大体の予想はつきますけれど。」

 

驚いて部屋から飛び出した芳佳に対して、あくび交じりにペリーヌが呆れた様子で言った。芳佳やひかりが様子を見に行くと、エーリカとバルクホルンに与えられた部屋(ウィッチたちの部屋は、2人1部屋)の開かれたドアから中の様子を除いてみると、そこにはちゃんと片付いた一角と物であふれた一角で綺麗に分かれている光景があった。そして物であふれた方のベッドではだらしなく寝るエーリカを、バルクホルンが腕組みをして睨みつけているところだった。

 

「うわ、何あれ………」

「ハルトマンさん………」

「ん~もう……あと80分~…………」

 

物が散乱している部屋にひかりが引いていると、寝たままのエーリカがぼやいていた。どうやら起床時間になっても起きないエーリカを叩き起こそうとしていたらしい。しかし当の本人は一向に起きる気配がなく、バルクホルンは怒り心頭だ。

 

「お前という奴は………第一、なんだこの部屋は!?どうやったら1週間かそこいらでこんなに散らかるんだ!?」

「後70分~………」

「~~~きさまぁああ!!」

ゴォンッ

 

とうとう堪忍袋の緒が切れたのか、バルクホルンは拳を振り上げてエーリカの脳天に振り下ろされた。その光景を見ていた芳佳は顔を引きつられ、ひかりは思わず目を手で覆った。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「まったくコイツは!!」

「いた~い………」

 

頭にタンコブを作ったエーリカは、涙目で頭を撫でていた。ディレクションルームの朝のミーティングを待っていた時にそれを見ていたひかりとニパは、少し困ったような顔になっていた。

 

「なんだか、大変そうですね。」

「まあ、501(うち)じゃあいつもの事だから。」

 

ひかりの言葉に、シャーリーが笑いながら答える。それにバルクホルンがキッとシャーリーをにらんだ。

 

「いつもの事ではダメだろう!こちらで衣食住を世話してもらっている身であるのに、あんな風に汚しては示しがつくまい!」

「はいはい、わかったわかった。」

「まあまあ、そんなにカリカリしないでよ。」

 

シャーリーが適当にあしらうと、クルピンスキーも止めに入った。しかし、バルクホルンの目はクルピンスキーに向いた。

 

「元はといえば、誰のせいだと思っているんだ!?」

「え?ボク?」

 

突然矛先が自分に向いたので、クルピンスキーはキョトンとした表情になった。芳佳たちも一体なんのことかわからず、首を傾げた。

 

「どういう事ですか?」

「あー、私やトゥルーデは昔、第52戦闘航空団でクルピンスキーと一緒だったんだよねー」

「えっ、そうなんですか………」

 

エーリカの説明を聞いた芳佳が頷いていると、バルクホルンが溜息交じりに説明した。

 

「あの頃はまだハルトマンも真面目な性格だったが、コイツのせいでこのような性格となってしまったのだ………」

「ひどい言い草~」「まったくだね~」

「黙れ!!」

 

再び怒鳴られたエーリカとクルピンスキーだが、特に気にする様子もなくへらへらと笑っていた

ちょうどその時、ミーナと美緒が部屋に入って来て、朝のミーティングが始まった。

 

「今日は、メテオール研究所で我夢さん主導の実験があるそうです。我々からも護衛をお願いしたいとの事です。」

「今回はカナタ隊員が同行してくれることになっている。我々からはバルクホルンが責任者となって、数名を連れて行ってほしい。」

「護衛が必要な実験なんですか……?」

 

ミーナと美緒の説明を聞いて、思わずリーネが聞いた。それを聞いたミーナが苦笑交じりに答えた。

 

「まあ護衛は名目で、実験の見学でもしてくれとのことよ。」

「そうなんだ………」

「ふむ………」

 

ミーナと美緒の話を聞いて、腕を組んで考え込んだバルクホルンは、チラリとエーリカの方を見た。

 

「ハルトマン、行くぞ。」

「んな!?何でさ!?」

 

いきなり指名されて驚いたエーリカだが、バルクホルンは有無を言わさず言った。

 

「いい機会だ、その根性たたき直してやる!」

「そんな~!!」

「頑張ってね~」

「お前もだぞ、クルピンスキー!」

「うえぇ!?」

 

笑っていたクルピンスキーだが、突如自分も指名されたことに驚いて素っ頓狂な声を上げた。しかし、バルクホルンはそれを気に留めることなく話を続けた。

 

「では、このメンバーに決定とする。各自準備を整えておくように。以上解散!」

「ちょ、ちょっと待って!どうしてボクまで!?」

「問答無用!来い!!」

「いやぁああ!!」

 

結局、バルクホルンが嫌がるエーリカとクルピンスキーの首根っこを無理やり引っ張って、ディレクションルームを出て行った。その様子を見て、他のウィッチたちは呆れたような顔になり、ひかりたち三名は困惑したような顔になった。

 

「大丈夫かなぁ、あの二人……」

「少し不安だな………ペリーヌ、すまないが同行をお願いできるか?何かあったらすぐに知らせてくれ。」

「わ、わかりましたわ!」

 

美緒の要請に、ペリーヌはしっかりとした声で返事をすると、バルクホルン達を追って行った。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

次元城の大広間に、ズズズ~、という液体をすする音が響き渡った。

 

『………あ~、ほうじ茶うめー………』

『……あ、あのー、ジュダ様?』

 

ほうじ茶の入った湯呑を手に和むジュダに対して、ヅウォーカァ将軍が困惑した様子で声をかけた。ジュダは湯呑をテーブルに置くと、咳ばらいをして集まった七星将を見渡した。

 

『あー、すまんな。これから憂鬱な報告を聞かないといけないって考えたら、つい現実逃避してた………では、報告を聞こう。』

 

ジュダがそう言うと、ヅウォーカァ将軍は立ち上がって報告を始めた。

 

『………怪獣戦艦艦隊は実に8割近くが壊滅し、残ったものも修理が必要となっています。すぐに出せるのは数機のみです………しかし、別の場所でメンテナンス中だった新型怪獣戦艦は無事でしたので、こちらは発進が可能です。』

『それは朗報だな。』

『しかし、新型は最大の戦力である反面、小回りがききません。また、操艦できる人員も限られています。怪獣戦艦の数が揃うまでは、現状維持にとどめておくべきでしょう。』

『ふむ、確かにその通りだ。戦力の再編には時間がかかるだろうからな……』

 

ヅウォーカァ将軍の言葉にジュダが頷いた後、魔頭が報告を始めた。

 

「………再生怪獣軍団についてだが、あのレッドマンとやらとの戦闘によって結構な数が減ってしまった………ジェロニモン達はエネルギーを使い切って回復まで時間がかかる。現在、レッドマンは捜索中だが、残りの再生怪獣にも被害が出ている………」

『そうか……レッドマンの事は気付かなかったワシの責任でもある………引き続き捜索を続けてくれ。我が『ファイティング・ベム』を使っても構わん。』

 

そう言うと、ジュダはほうじ茶を飲み干し、急須を手に取ると再び注いだ。

 

『ふぅー………思った以上に被害が多いな………』

「ほっほっほっ♪ジュダ様、このコウメイ、良い情報をお持ちしてきましたわ。」

『む、そうなのか?』

「えぇ、実は地球人が新型のメテオールを開発中という情報をキャッチしましたの♪」

『ほう?』

 

コウメイの報告にジュダは興味深そうに目を細めた。コウメイは嬉々として続けた。

 

「なんでも、対異星人用の特殊兵器だとか……実験があるようだから、ワタシの『エージェント宇宙人部隊』がこれから向かう予定ですわ。」

『おお、準備がいいな。流石はコウメイだ!』

 

ジュダは感心したように言った。コウメイは得意げに笑うと、向かいの席に座るヤプールに声をかけた。

 

「それでねヤプールちゃん、お願いがあるんだけどね?ウルトラマンやGUYSが来たら厄介だから、ネウロイを一体貸してほしいのよぉ~♪」

『成程………私に囮を用意しろという事か。』

「話が早くて助かるわぁ~」

 

そう言って笑うコウメイだが、当のヤプールは不満げだった。

 

『ふん、貴様の配下に任せればよい事ではないのか?』

『そうだな。或いはワロガの怪獣軍団でもよかろう?』

「イヤねぇ、ワタシのエージェント宇宙人部隊は偵察や破壊工作専門だから、ウルトラマンと真正面から戦えるほど戦闘が得意じゃないのよ。ワタシ自身、力はないけど知恵はあるタイプだし、それに……」

 

そこまで言うと、コウメイは笑みを浮かべた。

 

「それに、新入りのヤプールちゃんに、手柄を与えてあげたいじゃない?」

『何?』

「たとえ囮でも、ウルトラマン達にケガを負わせればそれで万々歳じゃないの?」

『ほぅ……』

 

コウメイの提案に、ヤプールは面白そうな顔をした。そして、しばらく考えるような仕草をした。

 

『……まぁ、それも一理あるな……いいだろう、その話、乗ってやろうではないか。』

「ありがとうねぇ~♪」

 

ニヤリと笑ったヤプールが言うと、コウメイは嬉しそうな顔をしてお辞儀をした。ジュダも満足気にうなずくと、2人に命じた。

 

『ではコウメイ、ヤプール、メテオール開発阻止と新型メテオールの破壊を命じる!』

『承知いたしました。ちょうど、コスモスに邪魔をされた『計画』を再会しようとしていたところだ。ついでにコウメイの作戦に付き合ってやろう。』

 

そう言うとヤプールは呼び出したコンソールを操作して、ネウロイを出撃させた。

 

『まずは下準備だ。月面の『ポイントEH』にネウロイを向かわせた。』

「じゃあ、そっちは任せたわよ。」

 

そう言ってコウメイも立ち上がると、2人は会議室を出て行った。

 

『月面の『ポイントEH』………狙いは、タロウが封印したアレか………』

 

残されたキングバルタンが小さく呟く。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

同時刻、フェニックスネストのディレクションルームでは、ミライたちが作業の傍ら話をしていた。内容は勿論、今日行われるメテオールの実験についてだった。

 

「それにしても、今回のメテオールって、どんなものなんでしょう?」

「なんでも補佐官の肝煎りらしいぞ?総監は知っていたけど、俺も詳しい事は聞いてないんだ。」

「そうなのか、意外と秘密主義なんだな。」

 

ミライの言葉にリュウが答える。それを聞いたアスカの感心したようにつぶやくと、ミーナから資料を受け取ったリュウが答えた。

 

「隊長の俺ですら「ワイアール計画」って計画名しか聞いてなくてな。詳しくは不明だ。」

 

リュウから「ワイアール計画」の名前を聞いて、ミライはふと疑問に思ったことを尋ねた。

 

「ワイアール、って………まさか、ワイアール星人のことですか!?」

「え?ワイアール星人………?」

 

ワイアール星人の名前を聞いてアスカとコウジが小首をかしげていると、エリーがコンソールを操作してアーカイブから植物がヒト型になったような宇宙人のデータを呼び出した。

 

「ドキュメントUG、レジストコード『生物X ワイアール星人』。特殊な液体を地球人に噴霧して、自信と同じ植物生物に変えて侵略しようとした宇宙人です。」

「ええっ!?そんな宇宙人いたんですか!?」

 

ワイアール星人の恐ろしい計画を聞いたミーナが顔を強張らせた。

 

「……ちょっと待ってくれ、それが今回のメテオールに関連しているとしたら………」

「生物を植物人間に変えてしまう代物ってことか!?」

 

アスカとリュウの推測を聞いて、一同の顔色が変わった。もしこれが事実なら、非常に危険なメテオールと言わざるを得ない。

 

「補佐官、なんつーモンを………!!」

(トゥルーデ達、大丈夫かしら………?)

 

リュウが頭を抱え、ミーナは内心不安そうにしていた。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

さて、リュウたちの思いなどつゆ知らない一同は、メテオール研究所にやって来ていた。実験用の部屋に向かう最中、興味深そうに周囲を見ていた。

 

「あまりきょろきょろしないでくださいね?一応機密施設なのですから。」

「すみません………どれも珍しいものだったから………」

「まぁ気持ちはわかりますけどね……」

 

申し訳なさそうにしているペリーヌに、案内をしていたマルは苦笑いしながらフォローを入れた。

 

「しかし、色々な物があるな………」

「この研究所には、過去の防衛チームが回収した、宇宙人の兵器や宇宙船の残骸を解析して得られた技術を元に作られた研究設備もあるんですよ。」

「GUYSの以前から、そんな部隊が?」

「ええ。」

 

マルは説明をしながら、壁に掛けられた歴代の防衛チームのエンブレムに目を向けた。

 

「『科学特捜隊(SSSP(スリーエスピー))』をはじめ『ウルトラ警備隊(UG)』、『MAT(マット)』、『TAC(タック)』、『ZAT(ザット)』、『MAC(マック)』、『UGM(ユージーエム)』、この他にも、試験的に導入された『UMA(ユーマ)』に『W.I.N.R.(ウィナー)』、『ウルトラフォース』が、この地球を守って来たんです。」

 

マルの説明を聞いて頷くクルピンスキー。その時、エーリカが大声を上げた。

 

「うわ!?何あれ!?」

「おいハルトマン!何を騒いで……!?」

 

エーリカを注意しようと振り向いたバルクホルンだったが、彼女の視線を追って絶句した。

 

そこには日本刀が、彼女たち的に言えば扶桑刀が台に鎮座されていた。しかし、その大きさは非常に巨大であり、恐らくは刃渡りが25メートルはあるだろう。ウルトラマンが持ったら、ちょうど良さそうなサイズ感だ。

 

「なっ!?………何だ、あの刀は………!?」

「大きい………!?」

「いや、それ以上に………何だこの気迫は………!?」

 

ただ置かれているというのに、刀から発せられる『気迫』に圧倒される一同。それに気づいたマルが、慌てて説明を始めた。

 

「『星斬丸』………宇宙最強と言われる剣豪『ザムシャー』の刀です。」

「宇宙に剣豪が………!?」

 

マルの説明を聞いて驚きを隠せないバルクホルン。そんな彼女に、マルが説明を続ける。

 

「はい、元々はウルトラマンヒカリに戦いを挑みに地球に来たんですが、止めに入ったメビウスの強さを認めて地球を去ったんです。でもその後、エンペラ星人との最終決戦に駆けつけて来てくれたのですが、エンペラ星人の攻撃から我々を守るために………」

「………!!」

「その後、残された星斬丸はヒカリがエンペラ星人に傷を負わせた後、このメテオール研究所で保管されています………」

「そ、そうだったのか………」

 

マルが悲しそうな顔をしながら語ると、バルクホルンも複雑な表情を浮かべながら返事をした。

 

(あの刀の気迫は、そのザムシャーの物………死してなおこれ程なんて、ザムシャーとは一体どんな人物なのだ……!?)

「お待たせしました。こちらの部屋になります。」

 

研究員の1人がマルたちを呼びに来ると、バルクホルンたちもそれに続いた。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

メテオール研究所で実験が始まろうとしていた頃、フェニックスネスト内ではアラートが鳴り響いていた。

 

「GUYSスペーシーより入電、月面にネウロイが出現しました!」

「ネウロイが!?」

 

ミーナが驚きの声を上げると、モニターの画像が変わって月面の様子が映った。

画面の中にいたのは、流線型のボディに四本爪の巨大なアームを持った30m級のネウロイだった。ネウロイはGUYSスペーシーの攻撃をものともせずに突き進んでいた。

 

「何が目的だ………?」

 

美緒が呟くと、エリーがある事に気が付いた。

 

「あのままネウロイが進行したら、『ポイントEH』に到達します。」

「ポイントEH?」

 

エリーの呟きに芳佳が聞いた。エリーはアーカイブのデータを呼び出して、説明をした。

 

「かつて、ウルトラマンタロウが『再生エレキング』の角を封印した場所です。」

「エレキングの角を?」

「ピュ~………」

 

サーニャが聞き返すと、彼女の腕に抱かれていたリムエレキングが自分の角を隠すようにうずくまった。

 

「そうか、エレキング(E()LEKING)の角(H()ORN)が封印されているから、EHか………」

「ネウロイ、間もなく『ポイントEH』に到達!!」

 

美緒が納得したように言うと同時に、エリーが報告をする。ネウロイの進行方向には紙垂のついた注連縄が巻かれた巨大な岩があり、それが『ポイントEH』であった。ネウロイはアームを回転させながら岩に突っ込むと、岩を破壊してその下の地面も掘り始めた!

 

「岩が!?」

 

美緒が叫んだ時、ネウロイが先端を持ち上げ飛び立った。そのネウロイの先端には、三日月型の角、エレキングの角が生えていた。

 

「狙いは、エレキングの角か!!」

 

ネウロイの狙いに気付いたリュウが叫ぶと、ネウロイはその場から飛び上がり、その場から姿を消した。一同が驚いていると、再度アラートが鳴り響いた。見ると、地球の上空約3万メートル付近に次元エネルギーが発生を知らせるものであり、ネウロイが出現していた。

 

「このままだと、1時間以内にネウロイが東京に到達します!」

「くっ、メテオールの実験が行われるという時に………!!」

 

コンソールで軌道計算をしたエリーの報告に美緒が思わず呟くと、それを聞いたリュウははっとした。

 

「アイハラ隊長、迎撃の準備を………!」

「………いや、タイミングが良すぎる。」

「え?」

 

リュウの言葉に首を傾げるミーナだったが、リュウは備え付けられた通信機を手に持って回線を開いた。

 

「こちらフェニックスネスト、メテオール研究所、応答せよ!」

 

リュウが通信を入れるが、通信機のスピーカーからはザーッと言う雑音しか聞こえてこなかった。

 

「通信が妨害されている………!!」

「何ですって!?」

「じゃあ、ネウロイで攻撃をしつつ、メテオールを!?」

 

ミライが驚愕の声を上げると、リュウは肯定の意味で頷いた。ネウロイによる破壊行為と地球側の戦力になるメテオールの開発阻止、それを同時に行うつもりなのだ。

 

「ミライ、美緒たちと一緒にメテオール研究所に向かってくれ!」

「G.I.G.!」

「ミーナ、ネウロイを頼む!」

「ええ!」

 

ミーナが力強く返事をすると、ミライは美緒やシャーリー、リーネたちと共に格納庫へと向かった。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

一方、メテオール研究所では「ワイアール」の実験が始まろうとしていた。

我夢やトリヤマ、ウィッチたちがいるコンピューターが並んだ観測室の目の前には厚い特殊ガラスが張られた大窓があり、その先の白くだだっ広い部屋の中央には、「ワイアール」の入った銀色の円柱型カプセルが設置されていた。

 

「あの中にメテオールが?」

「はい。とても危険な効果を持っているため、厳重に保管されています。」

 

ペリーヌの問いに我夢が答えた。

 

「本来は宇宙人が侵略のために持ち込んだものなので、地球人に影響がないように調節するのが、今回の実験です。」

「なるほど。」

 

我夢の解説に、ペリーヌが納得したように言った。トリヤマはそんな二人の会話を聞きながら、自分の推し進めてきた「ワイアール」を見つめていた。

 

(これが成功すれば、グア軍団にも対抗できる力となるはずだ………!)

 

今回の実験にトリヤマは並々ならぬ意気込みを見せており、彼は自ら「ワイアール」を起動させる装置の前に立って操作をしていた。

 

「トリヤマ補佐官、準備ができました。」

「うむ。」

 

研究員に促されると、トリヤマはキーボードを操作して、スイッチにかけられたカバーを開けた。

 

「このワイアールが、宇宙人の侵略から人類を守る盾となる事を………!」

「それは困るな。」

 

トリヤマが言いかけたその時だった。突然扉が開かれ、銀色の顔と青い目を持ち、手に光線銃を構えた『宇宙工作員 ケダム』が、何人も現れた!

 

「なっ!?」

「宇宙人!?一体どこから!?」

「こいつら、グア軍団の!?」

 

突如として現れたグア軍団の刺客たちに、その場にいた全員が驚いた。出入口はケダムに塞がれてしまっており、逃げる事はできそうもなかった。

 

「これは……まさか、『ワイアール』を狙って!?」

「その通りだ。」

 

バルクホルンの推測に、ケダムの後ろから1人の影が現れた。背中まである黒髪をサイドアップにして、その金色の鋭い目の少女、ケイルだった。

 

「君は………」

「まさか、お前とまた会う羽目になろうとはな………」

 

ケイルの姿を見たクルピンスキーが驚いている中、トリヤマは咄嗟にスイッチのカバーを閉じてロックをかけた。

 

「こ、このメテオールは渡さんぞ!」

「ふん、ならば力ずくで奪わせてもらう!」

 

言うなりケイルは手で合図をすると、ケダム達は一斉に銃を構えた。

 

「うわ!?」

「じゅ、銃を撃つと危ないぞ!?この研究所には、危険なメテオールの研究もされている!それに引火したら、お前らもろとも吹っ飛ぶぞ!!」

『!?』

 

咄嗟にマルが叫ぶと、ケダムたちは動揺して動きを止めた。その瞬間、バルクホルンが使い魔を発現させて、力いっぱいケダムの1人の顔面を殴りつけた!

 

『ぐぎゃあ!!』

 

殴られたケダムが悲鳴を上げて吹き飛び、他の者の足元に転がった。

 

「な、何をしている!爆発する危険があるなら、接近戦で対処しろ!」

『は、はい!』

 

ケイルが怒鳴りつけると、残りのケダム達が慌てて銃を放り出し警棒やナイフを取り出して襲い掛かってきた。ケダム達は訓練された兵士であり、非戦闘員の研究員達では相手にならなかった。

 

「このぉッ!!」

 

咄嗟にペリーヌが障壁を張って研究員を庇い、ケダムのナイフを防いだ。その隙に、エーリカが横からタックルを喰らわせると、2人ほどまとめて突き飛ばした。我夢やカナタも出入口付近のケダムを殴って気絶させていくが、相手は複数人おり、しかも訓練を受けたプロの兵士であるため、なかなか突破できなかった。

 

「こいつら………!!」

 

我夢が歯噛みをしているその時、トリヤマがその場にあった椅子をケダムに向けて勢い良く押し出すと、椅子は床を走ってケダムに直撃をした!

 

『うお!?』

 

当たったケダムは持っていた警棒を取り落とすと、トリヤマは落ちた警棒を拾って構えた。

 

「きえぇえええええええええいッ!!」

 

トリヤマは奇声を張り上げると、目の前にいたケダムの頭を殴りつけて昏倒させた。さらに別のケダムに向かって行くと、小手や突き、胴に次々と打ち付けてなぎ倒していく!

 

「ほ、補佐官………!!」

「強かったんだ………」

 

トリヤマの意外な強さに、我夢やエーリカが驚いていた。その間にも、バルクホルンがケダムの1人を蹴り飛ばし、ケイルに迫った。

 

「くらえ!!」

「ぬぅ!?」

 

ケイルは手にグローブを装着すると、バルクホルンの拳を受け止める。そのままバルクホルンは左手で再度殴りかかるが、ケイルは難なく避けてしまった。

 

「力任せか、甘いな。」

 

ケイルはバルクホルンの手を掴むと、背負い投げの要領でバルクホルンを投げ飛ばす。バルクホルンは空中で姿勢を整えて着地し、振り向き様にケイルに蹴りかかった!だがケイルは素早く後ろに下がって避けると、バルクホルンの足を掴んで投げた!

 

「がっ!」

「トゥルーデ!!」

 

飛ばされたバルクホルンを見て、エーリカが激昂した。そのまま飛びかかろうとしたその時、背後でトリヤマが振り下ろした警棒が、ワイアールの起動スイッチの保護カバーに当たって、割れると同時にスイッチを押してしまった。

 

「あ………」

「え………?」

 

スイッチが押されると、実験場の中央に設置されたカプセルの上半分が上にスライドし、中に収まっていたものが露となって、緑色の光があふれ出した。

 

「こ、これは………!?」

 

その光を見た一同が驚き、中には思わず後ずさりする者もいた。やがてその光に全員が照らされて――――

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

ネウロイの到達予測地点にガンフェニックスとガッツイーグルαスペリオル、ミーナを筆頭に芳佳、ひかり、直枝、エイラが到着をした。

 

「来ます!」

 

固有魔法の「空間認識」でネウロイが来た事を察知したミーナが叫ぶ。見上げた先には先ほどのネウロイが地面に向けて降下してきており、徐々にスピードを落とすと方向転換をしてこちらへ向かってきた。

 

「あいつ、形状が変わってるゾ………!?」

 

エイラが指摘した通り、ネウロイの後部は尻尾のように長くなっており、まるで腕の生えた蛇のようになっていた。ネウロイは尻尾をうねらせながら地面に向かうと、落下の衝撃と直後に起きた爆発で衝撃波が走った。

 

「何!?」

「どうなってんダ!?」

 

予想外の攻撃にウィッチ達は戸惑うが、そのとき、粉塵の中から巨大な

怪獣が現れた!

 

「カァーーーキャァーーーッ!!」

 

三日月型の黒い角を持った頭と長い首、やや前傾姿勢の黄色い身体に黒い縞模様を持っているが、よく見ればネウロイ特有のハニカム状の装甲になっており、赤く発行している箇所も確認できる。長い尻尾と手の甲に2本のかぎ爪を持った手を振りまわしながら、その怪獣―――『月光怪獣 再生エレキング(N)』は、甲高い鳴き声を上げた!

 

「なんて事だ………再生エレキングが復活しちまった!!」

 

鳴き声を上げる再生エレキングを前に、思わずリュウが叫んだ。

 

「再生エレキングが復活………」

「………なんだか、おかしな言葉ですね?」

「………うん、言ってから俺も変だなって思った。」

 

 

 

 

 

つづく




第三十話です。

・序盤は何やら企むトリピー。今回はこの『ワイアール計画』にまつわるお話。

・ラーメン屋で流れてた競馬、競走馬名はヨッシャラッキーとナンテコッタ以外は某猿顔の一般市民こと岸祐二さん関連になってますw店名とラーメンは言わずもがなw

・スト魔では見慣れたバルクホルンとエーリカのやり取り。今回の話書く際に、このシーンは割と早く書けました。

・ジュダも割と苦労している感じ。レッドマンは今でも大暴れ中w

・コウメイは割と他人と協力できるタイプ。敵味方関係なく、こういうタイプは必要と思いました。

・まさかの星斬丸登場。最終決戦の後どうしたのか考えて、メテオール研究所で保管されている設定にしました。

・ネウロイGX-09は、『ダイナ』よりガッツマリンがモチーフ。あのアームを展開した形態がかっこよくて好き。
 今回の目的は再生エレキングの角。ポイントEHの岩はタロウらしい日本文化風にしてみました。

・メテオール研究所を襲う宇宙工作員部隊。意外と強い補佐官はやる時はやる彼らしい一面。

・今回、「再生エレキング復活」というちょっとおかしな日本語がやりたくて、再生エレキングをチョイスしました。
 再生エレキングなんだけど、首が長くてやや前傾姿勢、手の甲の2本爪なのは、『マックス』の「放電竜 エレキング」が元ネタ。

では、次回をお楽しみに。


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第三十一話 なまけ者の唄

[再生エレキング、街を破壊しながら進行を開始しました!]

「やっぱり、エレキングが現れたか………!」

「怪獣を蘇らせるのが目的だったのか………」

 

メテオール研究所に向かう車中、ミライと美緒は備え付けられたモニターで再生エレキングが角から電撃を放って街を破壊しながら、進んでいく様子を見ていた。

 

「怪獣とメテオール研究所に、我々を分断するのが目的なのだろう………どちらを取っても連中にとって得になる………!!」

「僕たちは、早くメテオール研究所へ!」

「分かった!」

 

ミライの運転する『ラビットパンダ』とシャーリーの運転する『マットビハイクル』は、メテオール研究所に向けてスピードを上げた。

 

「………ところで、今更ながら何ですかこの車?」

「ZATのラビットパンダだそうです。」

 

美緒は自分とミライの乗る、丸っこいフォルムにピエロの鼻のような突き出たレーダー、異様に大きいリアウイングのゴテゴテした車―――ラビットパンダに、今更ながら疑問を口に出した。

 

「………シャーリー達の方に荷物を積んだ都合があるとはいえ、他になかったんですか?」

「直ぐに出せるのがこの2台だったそうで………」

「………はあ、まあ、贅沢は言いません………」

 

緊急事態とはいえ何とも言えない顔になる美緒。一方、後ろを走るマットビハイクルの中で、(あっちに乗らなくて良かった)と内心思うリーネであった。

ちなみに、フェニックスネストからメテオール研究所まで、車で約30分の距離である。

 

 

 

 

 

第三十一話 なまけ者の唄

 

月光怪獣 再生エレキング(N)

異次元怪異 ネウロイ(GX‐10)

宇宙工作員 ケイル

宇宙工作員 ケダム

登場

 

 

 

 

 

「カァーーーキャァーーーッ!!」

 

再生エレキング(N)は角を回転させて電撃を放ち、街中で爆炎が上がった!

 

「わぁ~!?」

「逃げろぉおおお!?」

 

避難の終えていない街の人々はパニックになり、我先にと逃げ出し始める。その様子を見たリュウが、全員に指令を出した。

 

「全員、エレキングを足止めしろ!!奴をこれ以上進ませるわけにはいかない!!」

「了解!」

 

リュウの命令を受け、ウィッチたちが先行して出撃した。

 

「あのエレキングもネウロイ怪獣であると推測できます。まずは体内のコアを探りましょう!」

「「「「はい!!」」」」

 

4人のウィッチが返事をしてエレキングに接近をする。エレキングはそれに気が付くとウィッチたちに三日月型の角から電撃『クレッセントサンダー』を放ってきた。

 

「きゃあッ!?」

「くっ………!!」

 

ウィッチたちは電撃を回避、あるいはシールドで防御をしたが、その威力に圧倒されていた。

 

「これじゃ近づけない………」

「どうすればいいんだ!?」

「カァーーーキャァーーーッ!!」

 

芳佳と直枝がエレキングの攻撃に戸惑っていると3機のガンマシンとスペリオルαがエレキングに接近をして光線を放つが、エレキングの身体をすり抜けてしまった。

 

「どういう事だ!?」

 

リュウとアスカが驚くが、エレキングはウィッチたちの方を見たかと思うとその口から火炎『ルナティックファイヤー』を吐き出してきた。

 

「うそっ!?」

「こいつ火吹いたぞ!?」

 

予想外の攻撃方法に驚くウィッチたちだったが何とか火炎を回避する。先ほどまで電撃で攻撃をしていたために、まさかこんな方法で反撃されると思っていなかった。

 

「あいつ、雷だけじゃないのかよ!?」

「とにかく距離を詰めないと!」

「カァーーーキャァーーーッ!!」

 

ひかりがそう言うが、エレキングは近づいてきたウィッチたちに向けて尻尾を鞭のようにしならせて叩きつけてきた。

 

「きゃあッ!?」

 

咄嵯に回避行動を取ったため直撃こそ免れたものの、その衝撃波によって吹き飛ばされてしまう。体制を立て直そうにもエレキングは再度『クレッセントサンダー』を放ってくる。

 

「カァーーーキャァーーーッ!!」

「ぐぅ……ッ!?」

「なんてやつだ……!」

 

辛うじてシールドを展開して防いだものの、強力な電撃に近づくこともままならない。しかしその時、芳佳は先ほどネウロイが着地をした地点に穴が開いている事に気が付いた。

 

「あの穴は………?」

「え?」

 

ミーナとアスカも芳佳の報告からその穴に気が付いた。大きさ的に先ほどのネウロイが通るのに十分なサイズだ。

 

「これって……?」

「カァーーーキャァーーーッ!!」

 

ミーナは穴を見た後に、咆哮を上げて電撃を放つ再生エレキングを見た。

 

「もしかして………」

 

アスカはある可能性に気が付くとミーナに声をかけてスペリオルαを着陸させた。そして穴に近づくと、ミーナはアスカの元へ降りて行った。

 

「この穴の中、探れないか?」

「やってみるわ。」

 

ミーナは「空間認識」の魔法を発動させると、目の前の穴の中から何かを感じ取った。

 

「………やはり、地中に何かいますね………ちょうど今、エレキングの足元にいます。」

「てことは………」

 

アスカはエレキングを見ると、懐を探った。

 

「ミーナ隊長、みんなにエレキングから離れるように言っておいてくれ!」

「はい!」

 

ミーナが返事をして飛び立つと、アスカはリーフラッシャーを取り出し、穴に飛び込みつつ前に突き出した!

 

「みんな、エレキングから離れて!」

「え!?」

 

穴の中でひかりは放たれるのを後ろに、ミーナが通信を入れる。何事だろうと全員が疑問を抱いたその時、エレキングの動きが止まり藻掻くように暴れ始めた。

 

「カァーーーキャァーーー!?」

「なんだ!?」

 

突然苦しみ出したエレキングを見て誰もが困惑していたが、その時、地面が盛り上がりそこからウルトラマンダイナが姿を現した!

 

「ダイナ!?」

 

ダイナの登場に驚いて声を上げるエイラだが、ダイナが持ち上げていたものを見て更に驚いていた。

 

「キィイイイイイイイイイイイ!!」

「ネウロイ!?」

 

それは、月面でエレキングの角を強奪した大型アームを持ったネウロイであった!ネウロイはダイナに捕まってジタバタと藻掻いていたが、それと連動するようにエレキングも藻掻いていた。

 

「あれは………ネウロイとエレキングが連動しているのか?」

「あのエレキングは、ネウロイそのものが変異したわけではなかったのか………」

 

かつて再生エレキングは、ウルトラセブンに倒されたエレキングが月の光で再生したゾンビのような存在であった。この再生エレキング(N)もまた、エレキングの角にネウロイのコアが連動して復活をした幽霊のような存在だったのだ。エレキングの角と尻尾のパーツを持っていたため、ネウロイが変形をしたものと思われていたのだ。

 

「コアは、あのネウロイの中か!!」

 

直枝がネウロイのからくりに気付くと、ダイナは掴んでいたネウロイを投げ捨てた。エレキングはしばらくネウロイと似たような動きをしていたが、しばらくしてエレキングは腕を大きく動かした。

 

「カァーーーキャァーーー!!」

『ネウロイは任せたぜ!』

「はい!」「わかりました!!」

「俺たちはエレキングだ!」

「「G.I.G.!!」」

 

芳佳たちはすぐに返事をするとネウロイに向かって行き、リュウたちは再生エレキングと戦うダイナに援護を始めた。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

その頃、メテオール研究所の前にまで来ていた。車から降りると、広い研究所を包み込むようにハニカム状のドーム型バリアで包まれていた。

 

「研究所にバリアが………?」

 

シャーリーがバリアに驚いていると、ミライのメモリーディスプレイにミサキ女史から通信が入った。

 

[研究所の周囲には、非常事態が発生した際にメテオールが外部に流出しないようにバリアが張っています。これから研究所のバリアの上から別のバリアを張って、内側のバリアを解除します。その間に、防護服に着替えてください。]

「G.I.G.!」

 

ミライがミサキに返答をすると、マットビハイクルに載せた防護服を取り出して美緒たちに手渡した。

 

「少し面倒だが、まあ、危険なメテオールだし、流出は怖いわな………」

「急いで着ましょう。」

 

全員はヘルメットを被ると、それぞれ渡された白い防護服を着込んでいった。全員が防護服を着たのを確認したミライはフェニックスネストに再度通信を入れると、バリアの張られた地点から5メートル離れた場所からバリアが発生した。

 

[それでは、これより内側のバリアを外部から解除します。くれぐれもご注意ください。]

「G.I.G.!」

 

ミライがそう答えると、内部のバリアが解除された。ミライたちはそれを確認すると、門を開いて内部に入り込んだ。

 

研究所の入り口に入ると、各通路には隔壁が封鎖されており、しんと静まり返っていた。

 

「静かだな………」

「実験場は地下のようですね。」

「通路は、メモリーディスプレイをキーにして開くことができるはずです。急ぎましょう。」

 

ミライがそう言って先陣を切り、シャーリーが殿(しんがり)になって先に進む。地下に向かう通路を確認すると、その先には大きな扉があった。ミライはメモリーディスプレイを操作パネルにかざすと、電子音と共にロックが外れる音が響き、轟音と共に扉が上にスライドして開いていく。

 

「実験場はこの先です。」

「了解。」

「………」

 

ミライに言われて前に進む。先ほど、『ワイアール』という計画名から『ワイアール星人』について聞いていたリーネとシャーリーは不安ながらも意を決し、ゆっくりと中へと入っていった。

扉の向こうは照明で明るくなっていたが、廊下には白衣を着た研究員が何人もいたのだが………

 

「あ~~~………」

「うへへ~~~………」

 

………皆、顔に黒い斑点を作り、廊下に座ったり寝転がったりして、漫画を読んだりしてだらけていた。

 

「な………」

「こ、これは一体………!?」

 

あまりの状況に呆気に取られていると、ミライが一番近くにいた研究員に話しかけた。

 

「だ、大丈夫ですか?何があったんですか!?」

「あん?」

「こ、ここでメテオールの実験があるって聞いていますけど…?」

「ああ、あったんだけどなぁ、オレはもうやめたんだよぉ。」

「ええ?」

「ここんとこずっと働き詰めだったしさぁ………もうやる気ないんだわぁ………」

 

研究員の男はダルそうな声でそう言うと、そのままゴロリと仰向けになった。他の研究員も似たような状態であったため、美緒もシャーリーも呆気に取られていた。

 

「ど、どうなってんだ、これ……?」

「わからない………けど、この先の実験場に行けば何かわかるかも……」

「そ、そうだね!行ってみよ!」

 

ミライの言葉を聞いて、3人はさらに奥へと進んで行った。進んで行く道中にも、その場に寝転がったり座ったりしてだらけている研究員が何人もいた。

ミライたちが唖然としながら進んでいると、目的の実験室まで来た。

 

コンピューターが並び、入り口の反対側の壁にはめられた大きな窓の向こうの部屋には、中央に緑色の結晶体の入ったカプセルが設置された部屋が見えており、その部屋もまた、他と同様に研究者たちがだらけきっていた。その中にはトリヤマやマル、カナタ、それにバルクホルンとペリーヌ、クルピンスキーたちの姿があった。

 

「!?ペリーヌ!!」

「バルクホルンさん!!」

 

倒れたペリーヌとバルクホルンに美緒とリーネが声をかけると、2人は顔を起こして顔をこちらに向けてきた。その顔は他のものと同様に黒い斑点が出来ていた。

 

「しょ、少佐………!!」

 

美緒の顔を確認したペリーヌとバルクホルンは慌てて立ち上がろうとしたが………

 

「………や~めた。」

「ええ!?」

「なんだか、起き上がるのも面倒ですわ………」

「もう少し寝てよ~」

 

直ぐに横になって、普段からは想像もつかないような事を言い出す始末であった。

 

「お、おい!私は夢でも見てるのか!?今、バルクホルンとペリーヌとは思えないような事言ったぞ!?」

「坂本少佐の前なのに、ペリーヌさんがあんなダラけるなんて………」

「これは一体………!?」

 

ペリーヌとバルクホルンの言動に美緒たちは困惑する。アーカイブ・ドキュメントの記録とは異なる状況に疑問を抱いていると、机の陰からミライたちを呼ぶ声が聞こえた。

 

「み、ミライ君………」

「我夢さん!!」

 

机の陰で横になっていた我夢にミライが駆け寄った。机にもたれかかる我夢も同様に顔に黒い斑点が出来てはいたが、比較的軽症のようだ。

 

「大丈夫ですか!?」

「なんとかね………あのメテオールの影響で、起き上がるのもめんどくさいけど………まさか、ここまで強力だったとは………」

「あのメテオールは何なのだ?ワイアール星人とは関係がないのか?」

 

美緒が我夢に問いかけた。我夢は手にした資料をミライに渡した。

 

「詳しくはこの資料を見て。早い話、あのワイアールはワイアール星人とは無関係だよ。」

「何だと?」

 

美緒は怪訝な顔になる。ミライは我夢から渡された『【極秘】ワイアール計画』と表紙に書かれた資料をめくった。

 

「『YR(ワイアール)』、正式名称『YAMETARANS(ヤメタランス) RADIOACTIVITY(レディオアクティビティ)』………ヤメタランスだって!?」

「知っているんですか?」

 

ヤメタランスの名前を見たミライが、思わず大声を上げた。

 

「かなり厄介な怪獣と聞いています。僕もジャック兄さんから、悪い怪獣じゃないけれど出来ればもう会いたくないと話を聞きました。」

 

ミライの話を聞いて、シャーリーはメビウスが先輩ウルトラマンの話を聞いている様子を想像した。何故か、酒場でウイスキーの入ったグラスを片手に話している様子であったが。

 

「ドキュメントMATに記録が残る、『宇宙怪人 ササヒラー』が地球侵略のために送り込んだ『なまけ怪獣 ヤメタランス』のなまけ放射能を発生させる物質………ヤメタランスの出現地点に残っていた皮膚片を回収し精製したが、制御ができないため厳重に封印されていた………」

 

ミライが書類を読み上げる。リーネがメモリーディスプレイを操作してアーカイブ・ドキュメントからヤメタランスのデータを呼び出すと、やる気のなさそうな顔で耳が大きい怪獣が表示された。

 

「これがヤメタランス………」

「何だか、見た目と肩書きから一切脅威を感じないのだが………」

「なまけ放射能は、周囲の生物からやる気を奪い、なまけ者にしてしまうエネルギーであり、制御が出来れば怪獣や宇宙人にのみ効果が出るように調整し、無力化が期待できる………」

「人をなまけ者に………!?」

 

説明を聞いた美緒が、周囲の様子を見た。確かに、今目の前にいる研究員やペリーヌたちのだらけきっている姿を見て納得できた。

 

「……なるほど、それでこんな状況な訳か………」

「あのペリーヌさんたちですら、なまけ者になっちゃうなんて………」

 

メテオール『ヤメタランス・レディオアクティビティ』の効果に呆れ以上に恐怖を感じるリーネとシャーリー。すると、話を聞いた美緒が口を開いた。

 

「もしかしたら、ソイツは史上最強の怪獣かもしれないな。」

「史上最強の怪獣!?」

 

美緒の発言に思わず聞き返すリーネ。しかし、美緒は至極真面目な表情で続けた。

 

「みんななまけ者になってしまったら、誰もヤメタランスを止められないからな!」

「………た、確かに………」

「現状を見る限り、ワイアール星人よりもヤバいな………」

 

美緒が頷きながら言う言葉にシャーリーが呆れた顔で周囲を見ながら感想を述べた。

 

「……と、とにかく、今はあのメテオールを何とかしないと!カプセルの蓋を閉じれば、なまけ放射能が止まってみんな元に戻るはずだから………」

「あれー、みんなどうしたの?」

 

ミライがメテオールの開閉スイッチに向かおうとしたその時、その場に相応しくない間延びした声が聞こえてきた。全員の視線が集まる先にいたのは、キョトンとした表情のエーリカ・ハルトマンであった。その顔には黒い斑点が出来てはいたが、他の者とは違い特に問題なさそうだ。

 

「ハルトマン?」

「お前………大丈夫なのか!?」

「うん、トゥルーデたちは何だかだらけちゃったけどねー。みんなどうしたの?」

 

心配する美緒とバルクホルンの言葉に対し、いつも通りの態度で答えるエーリカ。一同は疑問に思い首をかしげるが、そこでリーネがエーリカに聞いた。

 

「そういえばハルトマンさん、さっきまでどこに?」

「あ、うん。ちょうど良かったよ。こっち来て。」

「え?」

 

ミライの手を引き、エーリカはミライを連れて部屋から出ようとする。何がなんだか分からないミライたちであったが、連れていかれた先の空き部屋に縛られたケダムとケイルを見て驚いた。

 

「こいつらは………!?」

「こいつら、実験を邪魔しに来たんだよ。トゥルーデ達みたいになまけ者になっちゃってさ~。私でもあのメテオールのカプセルを閉めれたんだけど、元に戻った途端に暴れ出すと思ったから、先に縛っとこうと思ってさ。」

「なるほどな……」

 

エーリカの説明を聞いて納得をするミライ。しかし、よく見るとまだ数名縛られていないことに気が付いた。

 

「まだ縛ってないのもいるからさ、縛るの手伝ってよ。」

「あ、はい………」

 

こうして、ミライたちは残ったケダムたちを縛り上げるのを手伝うのであった。

 

「……(なぜハルトマンに、なまけ放射能が効いてないんだ………?)」

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

『ダァアアーーーッ!!』

「カァーーーキャァーーー!!」

 

同じ頃、ダイナと再生エレキング(N)、芳佳とミーナたちウィッチとネウロイGX-10の戦いが続いていた。

 

ミーナと芳佳がネウロイのアームの攻撃を回避し光線を障壁で防御していると、エレキングは接近してくるダイナに電撃を放ってくるが、ダイナはものともせずに突き進んで行きエレキングの顔面に右拳を叩き込んだ!

 

「カァーーーキャァーーー!!」

 

エレキングは数歩下がるが踏み止まると、その長い尻尾『スパークテイル』を振るってダイナに打ち付ける!ダイナはそれを受け止めるが、そこにエレキングは接近をして手の甲に生えたかぎ爪『スタンネイル』で切りかかって来た!

 

『グァアア………!!』

「アイツ、ケルビム並みに隙がないぞ………!!」

 

後退りするダイナを見たリュウが思わず口を開いた。

中距離には電撃『クレッセントサンダー』と火炎『ルナティックファイヤー』、近距離には尻尾『スパークテイル』、そして至近距離にはかぎ爪『スタンネイル』、と、再生エレキング(N)は距離を選ばない怪獣だったのだ。

戦慄するリュウであったが、そこにフェニックスネストからの通信が入った。

 

[隊長、エレキングの角を狙ってください!]

「角を?」

[ドキュメントZATの記録によれば、再生エレキングは角が本体なんです。そこを狙えば倒せるはずです!]

「よし分かった!」

 

エリーの提案を聞き、早速実行に移すリュウ。ガンウィンガーの『ウイングレッドブラスター』で再生エレキングの角に攻撃をした!

 

「カァーーーキャァーーー!!」

 

再生エレキングは角への攻撃におののくが、直ぐにガンウィンガーを睨むと電撃を放つ!

何とか回避をするが、エレキングは攻撃の手を緩めない。その背後からダイナが近づいて、羽交い締めにして止めようとした。エレキングの放った電撃は空を切り、その隙を突いてダイナはストロングタイプにチェンジしながら、エレキングを投げ飛ばした!

 

『ダァアアッ!!』

「カァーーーキャァーーー!!」

 

投げ飛ばされたエレキングが地面に倒れると、ダイナはその長い尻尾を掴みグルングルンと激しく振り回す。

 

『デヤァアアアアアア!!!!』

「カァーーーキャァーーー!?」

 

激しい『バルカンスイング』の回転による遠心力を利用して、そのまま豪快に放り投げる!その先には飛行していたネウロイがいて、危うくぶつかりそうになってニアミス、寸前で避けていた。

 

「カァーーーキャァーーー!!」

「キィイイイイイイイイイイイ!?」

「あ、危なっ………!?」

『下がっててみんな!!』

 

危うくエレキングに当たりそうになった直枝が冷や汗をかいていると、ダイナが一同にテレパシーを送る。ダイナは空高く飛んで行ったエレキングを睨むと、拳を作った両手を胸の前で合わせると、大きく腕を回す。すると、巨人の胸の前に赤いエネルギーが集まり、赤い球体となった。

 

『フウウウウウ………デヤァアッ!!』

 

ダイナは胸の前に生成された『ガルネイトボンバー』を両拳で撃ち出すと、ネウロイを巻き込んでエレキングは爆発四散し、ネウロイもコアを撃ち抜かれ跡形もなく消滅した。

 

「やった!!」

 

空高くで爆発したエレキングを見て歓喜の声を上げる芳佳。ダイナはエレキングの爆発を見届けると、空高く飛び立って行った。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「よし、これで最後だな。」

「あー………もう反抗するのも面倒だからやーめた………」

 

ケダムを全員縛り、最後にケイルを縛った。ケイルは縛られる事に抵抗すらしていなかった。

 

「ここまで無抵抗とは………」

「ヤメタランスを送り込まれたら、こうやって侵略されちゃうんですね………」

 

美緒とリーネが改めてヤメタランスの恐ろしさを実感する。シャーリーとリーネに見張りを頼むと、ミライたちはメテオールの開閉スイッチの元に向かい、そのスイッチを押した。

カプセルの蓋が閉まって『ヤメタランス・レディオアクティビティ』が収納されると、なまけ放射能の流出が止まり、やる気をなくしていた者たちの顔から斑点が消えて、立ち上がり始めていた。

 

「あれ、急にやる気が出てきたぞ!」

「うーむ、今まで何を………さ、坂本少佐!?」

 

起き上がったバルクホルンやペリーヌが美緒たちに気が付くと、ペリーヌは慌てて立ち上がるが、そこでペリーヌは先ほどまでの自分の行いを思い出し、顔を真っ赤にした。

 

「わ、わたくしはさっきまで何を………!!」

「お、落ち着けペリーヌ………」

 

涙目になって頭を抱えるペリーヌを、美緒が慰める。それをミライと我夢は苦笑しながら見て、エーリカはやる気のなさそうにあくびをしていた。

 

「まあ、何はともあれ一件落着………」

「ミライさん!!」

「大変です!!さっきの宇宙人が………」

 

ミライがホッと胸をなでおろしたその時、シャーリーとリーネが駆け込んで来た。ミライたちは2人から告げられたことを聞くと、信じられない様子で先ほどの部屋に向かうが、そこには縛ったはずのケダムたちとケイルの姿がなかった。

 

「な、何で………!?」

「見張っていたんですけど、ほんの一瞬で姿が消えてしまって………!!」

「どういう事だ………!?」

「逃げられた………!?」

 

ミライたちは宇宙工作員たちが消えた事に愕然としていた………

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

数時間後、ミライたちはフェニックスネストに帰還してきていた。

 

「そっちはそっちで、大変でしたね………」

「こっちとは別ベクトルみたいだけどな………」

 

ミライやシャーリーから、メテオール研究所での出来事を聞いていたひかりと直枝は、少し呆れたように呟いた。ちらりと部屋の隅を見れば、頭を抱えて項垂れるバルクホルンと、顔を両手で覆ってさめざめと泣くペリーヌの姿があった。

 

「まさか、あのような醜態を晒してしまうなんて………」

「坂本少佐の前で何と無様な姿を………ペリーヌ・クロステルマン一生の不覚ですわ………!!」

「ペリーヌさん………」

「ま、まあ、あのなまけ放射能はウルトラマンにも有効ですし………」

 

美緒たちの前でだらけた醜態を晒してしまった事を嘆くペリーヌとバルクホルンを、リーネとサーニャが慰めようと声をかけるが、ペリーヌとバルクホルンには届いていないようだった。

 

「ヤメタランス自身敵意も悪意もない大人しい怪獣で、ササヒラーの被害者なんですよね………」

「地味に厄介だな………」

「ウルトラマンを倒すのに、暴力なんていらないんダナー………」

 

直枝とエイラも、ヤメタランスの脅威に頭を悩ませるのであった。トリヤマ補佐官肝煎りの『ヤメタランス・レディオアクティビティ』は今回の事件から危険性が問題視され、計画の永久凍結とメテオールの破棄を決定された。

補佐官はひどく落ち込んではいたが、ミライたちの知る所ではなかった。

 

「しかし、宇宙工作員たちに逃げられたのは、少し痛いな………」

「それに、どこから今回の計画が漏れてしまったんだ………?」

 

そこでリュウとアスカが疑問を口に出した。そこに、美緒も加わる。

 

「分からないことがもう1つ、何故ハルトマンは、なまけ放射能の影響を受けなかったのだ?」

「あ、そうだった。」

 

美緒の言葉にシャーリーが思い返す。研究所内でなまけ者になっていなかったのは、エーリカただ1人であった。それを聞いたシャーリーが相槌を打つと、そこにリーネが答えた。

 

「実は私も気になって、ヤメタランスの記録を調べたら特記事項があったんです。ヤメタランスが出現した当時、なまけ放射能で防衛チームMATの隊員がなまけ者になる中、一般の子供がMATの装備を持ってヤメタランスを止めようとしたそうです。」

「子供が?」

「もしや、ハルトマンはその子供と同様に、何か特異体質なのか?」

 

美緒はリーネの話を聞いて、更に首を傾げた。その可能性を考えた美緒だったが、リーネは苦笑しながら答えた。

 

「その男の子、普段から学校をサボるなまけ者だったそうです。」

「「「え?」」」

「当時の隊員曰く、「なまける事をなまけて、働き者になった」、という事らしくて………」

 

リーネの説明を聞き、落ち込んでいたペリーヌとバルクホルンも顔を上げた。そこに芳佳が口を開いた。

 

「それってつまり、ハルトマンさんが普段だらしないから、なまけ者と判断されてなまけ放射能が逆に作用したって事?」

「うん………」

「って、元凶のクルピンスキーですらなまけていたのに、あいつは逆に作用したのかよ………」

 

リーネの説明を聞いたシャーリーが顔を引きつらせた。

 

「ま、まさか………」

 

それを聞いたバルクホルンは、この場にエーリカがいない事に気が付いた。まさかと思いペリーヌと共にその場を飛び出すと、エーリカの部屋まで走り出した。

 

「ハルトマン!」

 

部屋を開けると、そこにはいつものように散らかった部屋で寝るエーリカの姿があった………

 

「くぁ~~………」

「「…………」」

 

それを見たバルクホルンとペリーヌは呆気に取られるが、着いてきた美緒は苦笑気味に2人の肩を叩いた。

 

「………まあ、ハルトマンはなまけすぎだが、お前らは働きすぎなくらいだ。あれくらいなまけても、バチは当たらないだろう。」

 

美緒のフォローを受けた2人は拳を握りしめるが、直ぐに肩を落として一言。

 

「「………怒るのやーめた。」」

 

お後がよろしいようで。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「も、申し訳ございませんコウメイ様………まさかあのような事になろうとは………」

「いいえ、貴女の責任ではないわよ。今回はメテオールの詳細を知らなかった私の失態でもあるもの。」

 

 

次元城に帰還をしたケイルとケダムたちは、コウメイの前で深く頭を下げていた。コウメイは笑って許すものの、隣のヤプールは不満そうであった。

 

『ふん!私に手伝わせておいて、この様かッ!!』

「ヤプール……!」

「よしなさい。」

 

ケイルがヤプールに突っかかろうとするのを、コウメイが止めた。ヤプールは背中を向けると、その場から去ろうと歩き出した。

 

『ここからは私の番だ。調整をしたネウロイで、おもしろい物が出来たのでな………』

 

それだけ言うと、ヤプールは笑いながら何処かに消えていった………

 

 

 

 

 

つづく




第三十一話です。

・今回の話は、「ヤメタランスのせいでエーリカとバルクホルンの立場が普段と逆になる話」を考えたのがきっかけでした。

・再生エレキング(N)はこれまでのネウロイ怪獣と違って、ネウロイに操られている形。書いている内にケルビムみたいにオールラウンダーな怪獣になって意外に強敵になってましたね。

・なまけ放射能放つメテオールだから「ヤメタランス・レディオアクティビティ」にしよう→略したら「YR」だな→ワイアール星人でミスリードにしよう、と、こんな感じで展開を決めました。一応、前回『ポイントEH』でヒントを出していました。
 酒場でウイスキーを飲むジャックは言わずもがな。

・別にそんなつもりはなかったんだけど、ケイルはすっかりポンコツ属性が板についちゃいましたね。急に消えたり、ワイアールの情報が漏れた理由はいずれ。

・終わってみたら、今回はシリアスとギャグが入り混じって少し変な話になっちゃいましたね。次回はヤプールの企みになります。

では、また次回。


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第三十二話 必殺の0.7秒

光の国の医療施設『ウルトラクリニック78』の一室、2つの医療用カプセルが開くと、その中からナイスとゼアスが起き上がって出てきた。

 

『傷は癒えたようね。』

『アウラ支部隊長……』

『心配かけて、すみませんでした………』

 

ナイスとゼアスは、迎えに来たらしいアウラに謝るが、アウラは気にするなと返した。

 

『エネルギーを一気に消耗して、そのせいで意識を失ったんだろうってさ。アンタたち、随分無茶をしたようね?』

『は、はい………』

『まあ、相手はあのジュダが差し向けたネウロイって話だ。よく諦めなかったわね。』

『『は、はい!!』』

 

2人はアウラに向けて背筋を伸ばして返事をした。アウラは2人の目を見て、死闘を経験して一皮むけたように見えた。

 

『それで、ゴライアンさんは………?』

『もう光の国から出て行ったそうよ。一応ゾフィー隊長が、追跡できるようにしてあるそうだけど。』

『そうですか………』

 

アウラがナイスに答えると、もう1つのカプセル内にいたヒカリが、通信機で連絡を取っていた。

 

[!ヒカリさん!]

[お怪我は、大丈夫なんですか………?]

 

通信先の映像に映った白衣姿の3人、ゼアスと同じく『ピカリの国』出身である宇宙技術局員、Hotto(ホット)Motto(モット)Kitto(キット)のウルトラ出光人だ。

 

『ああ。まだ治療中だが、こうやって遠隔で指示を出す事は許可してもらえたよ。それで、経過は順調か?』

 

ヒカリは3人に聞く。3人のいる研究室の中央には、カプセル型の装置に収められたネウロイのコアがあった。

 

[現時点では、このコアは地球には存在しない物質で出来ている事が分かりました。もっとも、『我々の宇宙の地球』にはない、というだけなのかもしれませんが………]

『そうか………では引き続き調べてくれ。定期的に報告を頼む。』

[わかりました。ヒカリさんはけがの治療に専念してください。]

 

3人がそう言うと、ヒカリは了解したと答えてから通信を終えた。その様子を見たアウラは肩をすくめて笑った。

 

『まったく、仕事熱心なのもほどほどにしなさいよ。』

『あ、ああ………そうだな………』

 

自分よりも年下のアウラに注意された事に、ヒカリは苦笑いを浮かべるしかなかった。

 

 

 

 

 

第三十二話 必殺の0.7秒

 

異次元怪異 ネウロイ(GX-11α・β)

異次元怪異 ネウロイ(GX-12α・β)

登場

 

 

 

 

 

「キィィイイイイイイーーーーーーーーーーーーーーー!」

「ネウロイを確認!」

 

日本海の上空を飛ぶミーナを筆頭としたウィッチたちの前に、弾丸を思わせる滑らかなボディとV字に伸びた小さな翼と四角い突起を左右に持った10m級のネウロイが迫って来ていた。

ネウロイ出現の一報を受けたストライクウィッチーズのメンバーと、援護としてXIGファイターEXⅡに乗る我夢は、日本海へ急行していた。目前のネウロイはウィッチたちに気が付くと、左右の四角いポッドからビームを乱射してきた。

 

「来るぞ!!」

 

バルクホルンの声と共に全員が回避行動を取ると、シャーリーがネウロイの上を取った。

 

「思ったよりもスピードは無いな!!」

 

そう言って急降下しながらネウロイを翻弄するシャーリー。

 

ピー、ピー、ピー

「?何だ………?」

 

ふと、我夢はネウロイのボディから一定の周波数の電波が発せられている事に気が付いた。これまでのネウロイにない動きだった。

 

「この電波は……?」

「コアを確認!!」

 

我夢が電波に疑問を持っていると、シャーリーからの報告が入った。見ると、ネウロイの装甲の一部が剥がれてボディのちょうど真ん中あたりにコアが露出していた。

 

「各機、攻撃開始!!」

「「「了解!!」」」

 

ミーナの指令にペリーヌ、リーネ、バルクホルンが返事をすると、各自散開して一斉に射撃を開始した。

 

「キィィイイイイイイーーーーーーーーーーーーーーー!」

 

ネウロイは装甲を再生しようとしたのだが、一斉掃射によって再生の隙を突かれてしまい、瞬く間に無数の穴が開いていき、やがてコアが破壊された。

 

「キィィイイイイイイーーーーーーーーーーーーーーー!」

「やったぁ!!」

 

リーネがコアの破壊を喜ぶと、他のメンバーたちも安堵するかのように息をついた。

 

「キィィイイイイイイーーーーーーーーーーーーーーー!」

「!?」

「何!?」

 

しかしその時、破壊されたコアが巻き戻しをするかのように再生をしたかと思うと、装甲も再生して再び攻撃をしてきた!

 

「コアが再生しただと………!?」

「そんなバカな………!?」

 

予想外の事態に戸惑うメンバーたちだったが、ネウロイは攻撃を続けながら進行をする。ミーナたちはすぐに反撃を開始して撃墜を試みたが、再度コアを破壊しても再生をしてまた襲い掛かってきた。

 

「くそっ!どうなっているんだ、アイツは!?」

 

バルクホルンが悪態をつく。迎撃をしている間に、ネウロイの進行方向に鳥取砂丘が見えてきた。このままでは街に被害が出てしまうため、ミーナは指示を下した。

 

「各機、これ以上ネウロイを市街地に近づけては駄目よ!!絶対にここで撃破するわよ!!」

「「はい!!」」

 

そう言って隊員たちが返信をした時だった。

 

「!?みんな避けて!!」

 

ミーナが叫んだ瞬間、背後から真っ赤な光線が飛んできた!ミーナの叫びに回避が出来たが、何事かと思い振り返った先には、砂丘のど真ん中に陣取るもう1体のネウロイであった!

 

「キィィイイイイイイーーーーーーーーーーーーーーー!」

 

砂丘にいたのは、先端の左右にドリルを持った50m級の陸戦型ネウロイであった。後部には大きなタイヤを持ち、前部分はキャタピラのようになっていた。

 

「もう1体いたのか!?」

「砂丘に潜んでいたの………!?」

 

予想だにしない2体目のネウロイの出現に驚く一同であったが、飛行していたネウロイも攻撃を続け、ウィッチたちは挟み撃ちを受ける形となってしまった。

 

「「キィィイイイイイイーーーーーーーーーーーーーーー!」」

 

2体のネウロイはそれぞれビームを発射し、ウィッチたちを追い詰めていく。その時、危機を見た我夢は砂丘の陸戦型ネウロイから飛行ネウロイと同じ周波数の電波が発せられている事に気が付いた。

 

「これは………?」

「我夢さん!危ない!!」

 

リーネの声にハッとなって振り向くと、飛行していた方のネウロイがこちらに向かってきていた。慌てて我夢が操縦桿を切って回避をした。

 

「陸戦型ネウロイは僕に任せて!」

「は、はい!!」

 

我夢はそう言うとPALのスイッチを入れて、エスプレンダーを取り出すと一度左肩に乗せ、前に突き出し叫んだ。

 

「ガイアァァアアアーーーーーー!!」

 

叫びと同時に我夢は赤い光となって飛び出し、陸戦型ネウロイの目の前に大きく砂ぼこりを巻き上げながらウルトラマンガイアが現れた!

 

「キィィイイイイイイーーーーーーーーーーーーーーー!」

『ジュア!』

 

ネウロイは目の前に現れたガイアを視認すると、その大きなドリルを回転させながら突っ込んでくる!ガイアはそれをネウロイを飛び越えるようにジャンプで避けると、ネウロイの頭上からガイアスラッシュを発射、ネウロイの装甲を破壊した!

 

「キィィイイイイイイーーーーーーーーーーーーーーー!」

 

ネウロイは悲鳴を上げるが、破壊された装甲からコアが露出をしていた。着地をしたガイアはそれを確認すると、胸の前で青い光球『リキデイター』を生成、ネウロイのコア目掛けて発射をした!

 

「キィィイイイイイイーーーーーーーーーーーーーーー!」

 

リキデイターはコアに直撃をして破壊するが、そのコアも飛行ネウロイと同様に再生をしてしまった!

 

『!?』

「こっちも………!?」

「どういう事ですの!?」

 

陸戦型ネウロイのコアも再生をした事に驚いていると、飛行ネウロイが陸戦型ネウロイの頭上まで飛んできたかと思うと空中で静止、陸戦型の上部にドッキングをした。

 

「合体した……?」

 

ネウロイが合体をした事に一同が驚いていると、合体したネウロイはドリルを回転させて砂丘を掘り始め、そのまま地中へと消えていった。

 

「逃げた………?」

 

ネウロイが地中に潜った事に呆気に取られる一同。ガイアはネウロイの掘った穴を見ていたが、赤い光になってその場から消えた。

 

[みんな、一度フェニックスネストに帰投してくれ。]

「坂本少佐………」

[ネウロイは現在、地中で活動を停止している。今のうちに対策を練るぞ。]

「………了解。」

 

ミーナは通信を聞いてそう答えると、他の隊員と共にフェニックスネストに向かっていった。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「あのネウロイ、どうなっているんだ……?」

 

サンダーバード基地に帰投をしたバルクホルンは、ストライカーと銃器をハンガーに収めながら呟いていた。これまで、コアまで再生をするネウロイなど見たことも聞いたこともなかった。

 

「あんなネウロイが存在するなんて……」

 

シャーリーも同じ気持ちだったようで、その表情には困惑の色が浮かんでいた。そんな中、格納庫内に何とも明るい声が響いた。

 

「おっかえりなさーい♪」

「え?」

 

現れたのは、白衣を着た若い女性であった。女性は笑いながらウィッチたちに近づくと、握手を求めてきた。

 

「はじめましてぇ、フジサワ・アサミで~す♪」

「は、はじめまして………あの、フジサワさんは一体………?」

 

いきなり現れた女性に戸惑いながらも、ミーナはアサミに聞く。すると、ミーナたちの後ろから我夢が歩いてきて説明をしてきた。

 

「彼女は異次元物理学者なんだけど、みんなを元の世界に戻すためのプロジェクトチームとして招集されてね。」

「そうなんですか………」

「そーそー、ミライ君やガム君にあなたたちの話を聞いててねー、一度会ってみたかったのよー!」

 

「はぁ……」

 

テンションの高いアサミの話についていけないウィッチたちは苦笑を浮かべていた。すると、そこにリュウから通信が入った。

 

[みんな、帰って来て早々だが、作戦会議だ。すぐにディレクションルームに集まってくれ。]

「了解しました。」

 

ミーナは返事をすると、他の4人と共に格納庫から出て行った。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「合体したネウロイは現在、鳥取砂丘の地下150mで活動を停止しています。」

 

フェニックスネストのディレクションルームと通信で会議が始まった。サンダーバード基地では今回の戦闘に参加したメンバーが集まり、モニターにはリュウたちの顔と、砂丘のネウロイがいる地点が表示されていた。

すると、我夢が先ほど収集をしたネウロイのデータを解析した結果を報告した。

 

「あの2体のネウロイから、随時一定の周波数の電波が発せられていました。」

「電波?」

「はい。同じ周波数であることからネウロイ同士で交信することでコアの状態を互いに同調、片方が破壊されたらもう片方のコアがバックアップになって自身の情報を送信して………」

「よく分からないなぁ………」

「要するに、どーゆーこと?」

 

我夢の説明にニパとエーリカが頭を掻きながらそう言うと、我夢は少し困った顔をした。

 

「………つまり、片方のコアが無事なら、もう片方のコアを破壊されても修復してしまう、という事です。」

「なんと………!!」

 

砂丘のネウロイの厄介さに一同が驚いていると、今度は美緒が口を開いた。

 

「つまりこのネウロイは、「合体した2体のネウロイ」ではなく、「コアを2つ持った1体のネウロイ」という事か………」

「はい。」

「何という事だ………」

 

我夢から告げられた事実にミーナも頭を抱える。以前石油コンビナートに出現したタッコングとノーバとは訳が違う相手である。しかし、と我夢は説明を続けた。

 

「このネウロイ、その特性から『双体型』と呼称しますが、今ネウロイが地中で活動を停止しているのはエネルギーのチャージをしている為と思われます。いくら修復できるとはいえ、何度もコアを破壊されればエネルギーを消耗すると推測できます。」

「なるほど……だから地中に潜ったのか……」

 

我夢の予測に納得したバルクホルン。我夢はさらに補足をした。

 

「倒すには、片方のコアが破壊された後、修復する前にもう片方を叩くしかないですね。ただ………」

「ただ?」

 

我夢はネウロイの対策について説明をするが、我夢は少し言いづらそうにしていた。

 

「コアの修復速度を見たところ、修復される前に破壊するにはほぼ同時………誤差0.7秒以内にコアを破壊しなければなりません。」

「れ、0.7秒!?」

「そんなの無理なんじゃあ………!?」

 

我夢の解析を聞いた芳佳とひかりが思わず叫んだ。だが、ここで美緒が口を開いた。

 

「いや、方法はある。複数人でネウロイに接近して、至近距離から同時にコアを破壊するんだ。」

「それだと、かなりネウロイに接近しないといけませんね………」

「ああ。そこで、接近戦を得意とするバルクホルンと管野がネウロイに張り付き、コアが露出した瞬間を狙う。コアが現れるまでは宮藤らシールドに優れたウィッチたちが護衛に回って欲しい。」

「確かにそれが確実だろうが…………」

「それでは、君たちに危険が及ぶぞ………?」

 

美緒の提案にアスカとリュウが難色を示す。しかし、美緒は真面目な顔で答えた。

 

「確かに無茶だ。だが我らはウィッチだ。ウィッチに不可能はない!」

「今回はネウロイが相手です。確かに特殊なタイプではありますが、ネウロイの相手は私たちウィッチの仕事です。」

 

美緒の言葉にミーナが続ける。他の4人も同意するようにうなずいた。

 

「……分かりました。」

「……俺たちはサポートに徹しましょう。」

 

リュウがため息交じりにそう言うと、ミライもそれを肯定した。かくして、双体型ネウロイへの対抗作戦は決定したのだった。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

次元城の第4エリア。ここは広い庭と高い岩山、大きな寺院のある『寺院エリア』である。

とても闇の軍勢の本拠地とは思えない優美な庭園に置かれた椅子とテーブルに、『七星将』コウメイとヤプールが対面して座っていた。

 

『………ふん、ずいぶんと凝っているな。』

「まあ、このコウメイ自慢の庭ですもの。」

 

ヤプールが周囲を見渡しながらつぶやくと、コウメイは微笑みを浮かべた。

 

「それにしても、なかなか面白いネウロイを差し向けたわね?再生にエネルギーを喰うのが難点みたいだけど。」

『まあな。思いつきで加えたが、それなりに役に立ったようだな。』

 

テーブルに置かれた将棋盤の上で歩兵を動かしながらコウメイが言うと、ヤプールも桂馬を動かす。

 

「でも、あの程度ならウィッチたちだけで対処できそうよね?何か策はあるのかしら?」

 

コウメイは飛車でヤプールの桂馬を取りながら聞いた。ヤプールは香車をコウメイの陣まで動かすと、成香に返した。

 

『あれは言わば『三段跳び』の1歩目に過ぎん。これから次の『ステップ』だ。』

「ふぅ~ん……だとしたら、次のネウロイを出すのかしら?」

 

コウメイは金将を動かして成香を防ぐ。ヤプールは不敵に笑いながら、角行を動かし、その先にある銀将を取った。

 

『次のも同じく『双体型』……だが、『ある怪獣』の遺伝子を組み込んである。』

「へぇ~……?」

『クックック、目に物を見せてやろうではないか………!』

「王手。」

『あ。』

 

ニヤリと笑うヤプールだったが、コウメイは容赦なく金将を王将の前に打ち込んだ………

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

その翌朝、サンダーバード基地の格納庫で銃器の手入れをしながら、芳佳とシャーリーは話をしていた。

 

「あのネウロイ、すごい厄介ですね………」

「これまで、あんなネウロイはいなかったからなぁ……」

 

その翌朝、サンダーバード基地の格納庫で銃器の手入れをしながら、芳佳とシャーリーは話をしていた。これまで色々なネウロイを撃破してきたウィッチたちにとって、今回の双体型ネウロイは初めて見るタイプであった。

 

「ミライさんやアイハラ隊長は、ヤプールの生態改造のせいじゃないかって………」

「ヤプールの?」

 

ヤプールは宇宙怪獣と地球上の生物を融合させて『超獣』を誕生させている。今回の双体型ネウロイも、ヤプールによる生態改造が施されている事は、安易に想像できた。

 

「ヤプールのやつ………ネウロイを自分たちの兵器にするつもりかよ……」

 

シャーリーが呟くと、芳佳もうなずいた。その時、格納庫にけたたましいアラートが鳴り響いた。

 

[鳥取砂丘のネウロイが動き出しました!至急、出動の用意をしてください!!]

「来たか!!」

 

アナウンスを聞いたシャーリーと芳佳は頷くと、弾かれたように駆け出した。

 

「行くぞ!」

「はい!!」

 

二人は美緒やバルクホルン、ひかり、直枝らと合流し、出撃していった。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「「キィィイイイイイイーーーーーーーーーーーーーーー!」」

 

鳥取砂丘に再び現れた相対型ネウロイは、大きく咆哮を上げると左右のドリルを回転させた。ネウロイはそのまま人のいる街を見つけると、そのまま進行を始めた。

 

「ネウロイを確認!!」

 

ウィッチたちとガンマシンはネウロイの元にたどり着くと、ネウロイもそれに気が付いてビームを放ってきた。ウィッチたちは散開して回避をすると、左右からネウロイに攻撃を開始した。

 

「「キィィイイイイイイーーーーーーーーーーーーーーー!!」」

 

ネウロイはその攻撃を受けると後部の飛行ネウロイが分離をして、上下から攻撃をしてきた。

 

「よし、陸戦型の方は私がコアを探る。それまで飛行ネウロイを押さえていてくれ!」

「「「「了解!!」」」」

 

美緒の指示にバルクホルンを中心にひかりとシャーリーが飛行ネウロイに向かって行き、残った芳佳と直枝は陸戦型ネウロイの攻撃からコアを探る美緒をシールドで守っていた。

 

「なかなかいいチームワークじゃないか。」

「これは、僕たちの出番はないですかね?」

 

ガンマシンでウィッチたちの戦いを見ていたリュウとミライが、感心した様子で言った。芳佳がビームを防いでネウロイに向けて銃撃をしたその時、フェニックスネストから通信が入った。

 

[隊長、日本海に新たなネウロイが現れました!]

「何!?」

 

リュウが声を上げると、通信機に五角形に見える円盤型のボディから前方に伸びた2本のブレードを持ったネウロイの映像が表示された。

 

「新手が現れただと!?」

「ええ!?」

 

ウィッチたちも新たなネウロイの出現が伝えられると、美緒は驚きの声を上げた。芳佳たちは目の前のネウロイへの攻撃をどうしようか迷ったが、そこにリュウが通信を入れた。

 

[美緒たちはこのままネウロイを対処してくれ。新手の方は、俺たちで相手をする!]

「す、すみません!お願いします!!」

 

美緒がリュウに礼を言うと、ガンフェニックスとガンブースターは日本海へと向かっていった。

 

「よし、私たちはこのネウロイに集中するんだ!!」

「「はい!!」」

 

美緒の言葉にウィッチたちが返事をすると同時に、ネウロイも再びビームを放った。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

海上のネウロイの元までたどり着いたガンマシンは、こちらに気付いたネウロイのビームを回避、ガンウィンガーとガンローダーに分離をして、ネウロイの周囲を囲むように3機でフォーメーションを取った。

 

「よし、このフォーメーションのまま一気に接近して、ネウロイを攻撃するぞ!!」

[[G.I.G.!!]]

 

リュウの号令にガンローダーとガンブースターが攻撃をしようとしたところ、機体が大きく揺れてバランスを崩してしまった。

 

「うわっ!?なんだ!?」

 

急に機体が揺れた事に戸惑っていると、計器を見ていたミライが報告を上げた。

 

「あのネウロイから、磁力が発生しています!磁力で機体が引っ張られてコントロールが難しくなっているんです!」

「磁力だと!?」

 

ミライの報告にリュウが驚く。機体が大きく揺れるために狙いを定める事もできずにいた。

 

「くそッ、どうすれば……」

「僕が行きます!」

「頼むぞ、ミライ!!」

 

ミライはそう言うと、メビウスブレスを構えて金色の光になってガンウィンガーから飛び出し、ウルトラマンメビウスの姿になってネウロイに迫った!

 

「キィィイイイイイイーーーーーーーーーーーーーーー!」

 

ネウロイはメビウスの姿を見ると、急加速をしてブレードパーツを突き刺そうと突進してきた!

 

『セヤァッ!!』

 

メビウスはそれを回避すると、飛行したままメビウスブレスに手をかざし『メビュームスラッシュ』をネウロイに向けて放つ!ネウロイはボディを傾けて避けるが、掠ってボディの上部が火花を散らした!

 

「キィィイイイイイイーーーーーーーーーーーーーーー!」

「コアを確認!!」

 

ネウロイの上部が破損をして、赤く光るコアが露わになった。リュウはそれを見ると、機体がようやく安定をした。

 

「これだけ離れていれば、磁力の影響は受けないようだな。各機、射程のギリギリからコアを狙え!」

[[G.I.G.!!]]

 

リュウの指示を聞いて、ガンウィンガーはウィングレッドブラスター、カンローダーはバリアブルパルサー、ガンブースターはガトリングデトネイターを放つ!遠距離からの集中砲火を受けてネウロイはボディのあちこちを破損し、ついにコアに直撃をした!

 

「キィィイイイイイイーーーーーーーーーーーーーーー!」

『!?』

「何!?」

 

しかし、破壊されたコアは再生を果たし、ボディも直ぐに修復がされた!メビウスやリュウが驚く間もなく、ネウロイはビームを放ってきた!

 

「うおっと!?」

「あいつもコアを再生させたって事は………」

「あれも双体型か!!」

 

リュウたちは別の双体型の出現に困惑していた。だが、目の前のネウロイも双体型という事は………

 

「別の場所に、コイツの『相方』がいるのか!?」

 

リュウが推測していると、ネウロイはメビウスに向けてビームを発射してきた!メビウスは避けるが、ネウロイは加速をして陸に向けて飛んで行った!

 

「しまった!!」

 

リュウたちは焦るが、ネウロイはすでに追い付けない程のスピードになっていた。メビウスとガンマシンは、直ぐにネウロイを追っていった。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「コアを見つけた!機体の先端、ドリルの間だ!!」

 

その頃、陸戦型ネウロイの猛攻を防ぎながら魔眼で探っていた美緒がコアを発見した。しかし、その場所は激しく回転をする2つのドリルの間という、非常に危険な場所であった。

 

「あんな場所に………!」

「宮藤、ドリルの根本を攻撃するぞ。再生する前に管野はコアの位置まで接近してくれ!」

「「了解!!」」

 

美緒の言葉に芳佳と直枝が返答をする。芳佳と美緒は左右に散開すると、陸戦型ネウロイの持つドリルの根本を狙って銃撃、見事狙い通りに命中させると、ネウロイのドリルは根本から吹き飛んだ!

 

「キィィイイイイイイーーーーーーーーーーーーーーー!?」

「バルクホルン、今だ!」

「おう!!」

 

美緒の言葉にバルクホルンが反応する。同時に直枝はネウロイのビームを掻い潜りながら先端のコアのある部分にまで接近をした。同時にバルクホルンも、飛行ネウロイに接近をすると、2人は拳を握りしめた。

 

「いくぞ!!」

「おう!!」

 

2人はそう言うと拳を振るいあげる!

 

「「せぇえーのおッ!!」」

ドォオオオンッ

 

掛け声と共に振り下ろされた拳はネウロイの装甲ごとコアを砕いた!!

 

「「キィィイイイイイイーーーーーーーーーーーーーーー!」」

 

双体型ネウロイは悲鳴のように叫び声を上げると、そのまま爆散していった。

 

「やった!!」

 

ひかりが歓喜の声を上げるが、美緒やバルクホルンはまだ緊張を緩めていなかった。

 

「はやく、もう1体の方に………」

 

芳佳がそう言った時、彼女たちの背後の砂丘が大きく爆ぜた!

 

「!?」

「何だ!?」

「キィィイイイイイイーーーーーーーーーーーーーーー!」

 

そこには、先端に1本のドリルを持った4本足の陸戦型ネウロイがいた!更にネウロイが出現したことに驚いたが、ちょうどその時、海の方からも飛行ネウロイとそれを追うメビウスとガンマシンが飛んできた。

 

「悪い、取り逃がしちまった!」

「気を付けて、あれも双体型ネウロイだよ!!」

「何!?」

 

リュウとカナタからの報告に思わず美緒たちが驚くが、今はそれどころではない。

 

「だったら、あいつも同じ方法で………」

 

シャーリーがそう言おうとしたその時、陸戦型ネウロイが後ろ足で立ち上がりドリルを収納、ドリルのあった場所に円盤型ネウロイの下部がドッキングをした。

 

「合体した………!?」

 

合体した事に驚くが、ネウロイは更に変化をし始めた。

前方に伸びたブレードパーツがクワガタの上あごのようになり、昆虫の複眼のようなバーツがと短く先端が二股になった1本角が生えると、前足が3本爪の指に変わった!

 

「キュコォーォウ!!」

 

頭を大きく振り回しながら、怪獣の姿になったネウロイが咆哮を上げた!

 

「あの怪獣は………!?」

[隊-、ドキュメ――SSSPに、類――た記録――認しました!]

 

フェニックスネストから通信が入るが、ノイズ交じりの途切れたものであった。それでも送られてきた記録には、目の前のネウロイに類似した昆虫のような怪獣のデータが映っていた。

 

[レジス――ード、『磁力怪獣 アントラー』!!]

「キュコォーォウ!!」

 

アントラーとなったネウロイは、メビウスとウィッチを睨みつけた。

 

 

 

 

 

つづく




第三十二話です。

・まさかのウルトラ出光人登場。今作では3人とも宇宙技術局の所属です。
 実は今作の目標として「メビウスまでのウルトラマンを出来る限り全員出す」というものがあったりします。

・今回は真面目にネウロイ対処回。GX-11は『ネクサス』よりクロムチェスターα及びディグチェスター。よくいる「同時に破壊しないと倒せない」タイプで空と地底に分離できることからのチョイスですが、地底戦車って本編に出てくる機会が少ないからある意味救済措置。

・次元城の優美な庭園。コウメイは意外といい趣味してます。

・GX-12は「分離してタッコングとノーバ」に続き、「合体してアントラー」。モチーフは『ウルトラマンマックス』よりダッシュバード2号と3号です。
 ダッシュバード2号をネウロイ化させようって思った時に「ブレードパーツをクワガタみたくアレンジできるな→アントラーじゃん」と気付いて登場させました。隠れた強豪と名高いアントラーネウロイとの戦い、乞うご期待。

では、また次回。


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第三十三話 砂丘の支配者

第三十三話 砂丘の支配者

 

磁力怪異獣 アントラー(N)

忍者超獣 ゲニンガマス

登場

 

 

 

 

 

「キュコォーォウ!!」

「アントラーだって……?」

 

アントラーの姿となったネウロイが、大あごを振り回しながら大きくひと鳴きをする。全員がアントラーに警戒をしていると、エリーから再度連絡が入った。

 

[隊長!―――ラーにうか――――づかないで――さい!アン―――の磁りょ―――――に囚わ―――]

「エリーさん!?」

「通信状況が急に悪くなった………?」

 

ノイズ交じりで途切れ途切れになり、通信が切れてしまって困惑する芳佳たち。そこにリュウが通信を入れた。

 

「さっきもあのネウロイの磁力で機体に異常が出ていた………あいつの発する磁力で、通信に障害が出ているんだ!」

「何だって!?」

「キュコォーォウ!!」

 

美緒が驚きの声を上げたその時、アントラーは頭を高く上げると口から虹色の光線を上空に向けて放った。その瞬間、ウィッチたちの銃器とストライカー、そしてガンマシンが、アントラーに引き寄せられ始めた!アントラー必殺の『磁力光線』だ!

 

「きゃあ!?」

「こ、これがアントラーの……ぐっ!?」

 

アントラーの放った強い磁力に引き寄せられまいとは懸命に耐える。しかしストライカーユニットにも異常が発生して出力が上がらず、機体はどんどん引き寄せられる。

 

「くそっ……なんて力なんだ!?」

「いやぁあ!?」

 

リュウが悪態をつくが、その時、ひかりが悲鳴を上げながらアントラーに向かって行ってしまう!ガンマシンに比べて軽量なうえに、魔法力が少ないひかりは簡単に引き寄せられてしまったのだ!

 

「ひかりちゃん!?」

「待て宮藤!お前まであの怪獣に!!」

 

芳佳がひかりに向かって叫ぶが、バルクホルンがそれを止める。ひかりはアントラーに引き寄せられたのを見たメビウスは、咄嗟にアントラーの背中に向けてメビュームスラッシュを放った!

 

ドォンッ

「キュコォーォウ!?」

 

アントラーの背中で爆発が起き、衝撃で磁力光線が途切れた。磁力から解放されたガンマシンとウィッチたちはすぐにその場から距離を取った。

 

「なるべくアントラーから離れろ!またヤツの磁力に捕まったら今度こそおしまいだぞ!」

「G.I.G.!」「了解です!」

 

リュウの指示に従い、全員アントラーから離れる。アントラーはメビウスと向き合うと、頭頂部の短い角から赤い光線を放つ!メビウスはそれを身体を捻らせて避けると、メビウスブレスに手をかざして中央のクリスタルを回転させて、両腕に金色のエネルギーを溜めて『メビュームシュート』を放った!

 

『セヤァッ!!』

バシュッ

「キュコォーォウ!!」

 

アントラーはそれを回避することなくその体表で受け止めるが、光線はアントラーの体表で霧散してしまい、全くダメージを負わせることはできなかった。

 

「光線が効かない!?」

 

アントラーから離れたバルクホルンが驚く。

初代ウルトラマンが中東の街・バラージで戦った『磁力怪獣 アントラー』は、その固い外骨格でウルトラマンの必殺技スペシウム光線を防いでしまった強敵であった。アントラーの能力を有したこの怪獣ネウロイも、同様に固い装甲を持っていたのだ!

 

「キュコォーォウ!!」

 

今度はアントラーが、その大あごでメビウスを挟まんと迫ってくるが、メビウスはそれを両手で掴み止めた。

 

『グッ……!』

「キュコォーゥ!!」

 

アントラーは大あごに力を入れるが、メビウスは必死に抵抗する。だがアントラーの力は強く、互いの力が均衡して膠着状態になってしまった。

 

「メビウスを援護だ!!」

「「「はい!!」」」

 

美緒は芳佳たちに命ずると、ウィッチたちはアントラーに狙いを定めた。

 

「キュコォーォウ!!」

 

しかしその時、アントラーはメビウスに掴みかかったまま頭部と胴体を分離、そして胴体は回れ右をしてウィッチたちに向き直ると、手の甲から赤い光線を放ってきた!

 

「うわあ!?」

「キャアッ!?」

 

光線を咄嗟に障壁で防御をするが、威力が強く、ウィッチたちは後方に吹き飛ばされてしまう。更にアントラーの胴体は指を伸ばすと、左右合わせて6本の指がミサイル『ホーミングスティンガー』として発射された!

 

「クッ、散開!!」

 

美緒が咄嗟に師事を出すと、ウィッチたちは素早く左右に分散するが、ホーミングスティンガーはそれぞれ方向転換をしてウィッチたちを追尾してくる!

 

「追って来た………!?」

 

シャーリーがホーミングスティンガーが追って来た事に驚愕するが、その時、急に減速をしてしまう。

 

「こ、これは………!?」

 

彼女は気付いた。あのミサイルは「自分を追ってきている」のではなく、「自分を引き寄せてきている」のだ。引き寄せられているので、減速をしてしまったのだ。

 

「くっ………!!」

 

芳佳たちも同様にホーミングスティンガーに狙われていた。彼女達はその誘導弾から逃れようと懸命に飛びながら銃口を向けて撃墜を試みるが、ホーミングスティンガーの磁力によって狙いが定まらない。そして遂に、ホーミングスティンガーが直撃しそうになったその時だった!

 

『デェア!!』

ドガァアン

「!?」

「え!?」

 

突然、上空から飛んできた光線を受けて、ホーミングスティンガーは全て破壊された。

 

「今のは!?」

 

驚いた一同が見上げた見上げると、そこには中に浮かぶダイナ、ガイア、コスモスの姿があった!

 

「みんな!」

『大丈夫か!!』

『遅くなってごめん!』

『流石にメビウスも、エネルギーが少ないし、あの怪獣ネウロイの能力だと、ウィッチのみんなは相性が悪いみたいだからね。』

 

ダイナたちは地上に降り立つと、ガイアが直ぐにアントラーの頭部に阻まれたメビウスに向かう。胴体がそれを止めようとするが、逆にコスモスとダイナに阻まれてしまう。そうしてガイアは後ろからアントラーの頭部を掴むと、そのまま肘を叩きつけてアントラーの頭部を引き離し、両手で掴むと後方に向けて放り投げた!

 

「キュコォーォウ!?」

『ありがとうございます!』

 

地面に激突した頭部が悲鳴を上げているのを横目に、メビウスは礼を言う。アントラーの胴体は頭部の元へ慌てて駆け寄ると、指を再生させて拾い上げた。

アントラーが頭を拾っている間に、ダイナとコスモスがメビウスの元へ駆け寄って来た。

 

『厄介な双体型で磁力と装甲を持っているが、倒せない相手ではないはずだ。』

『よし、ウィッチたちを援護しつつ、頭と胴体で分担しよう。』

『ああ!』『はい!』

「俺たちも行くぞ。磁力にとあのミサイルには気をつけろ!」

「G.I.G.!」『了解!!』

 

ガイアの助言を聞いたコスモスが返事をし、ダイナとメビウスもそれに同意する。リュウも指示を出して、頭を拾い再度合体をしたアントラーに向かおうとする。

 

 

 

 

 

ボンッ

『!?』

ボボンッ

『デャッ!?』

ボボボンッ

『グゥッ!?』

 

 

 

 

 

「「「「「!?」」」」」

 

しかしその時、足元の砂が爆ぜたかと思うと、その中から飛び出してきた鎖分銅がダイナ、ガイア、コスモスの腕や胴に巻き付いて動きを封じてしまった!

 

「何だと!?」

 

突然の事態に美緒たちが驚く中、地中から3体の巨大な生物が出現した。

 

「ガガガッ!」

「ガガガガガガッ!」

「ガガガガガガッ!!」

 

赤く光る目に嘴を持った頭、背中には半月型の翼を生やした青っぽい緑色の怪獣達は、水かきを持った手で鎖分銅を手にしていた!

 

「怪獣!?」

「しかも三体も……!!」

「いつの間に砂に潜んでやがった………!?」

 

現れた怪獣達に芳佳たちが驚いていると、上空の方でガラスが割れるような「パリーン」という音が響き、空間に開いた穴からヤプールが顔を出した!

 

『フハハハハハ!その程度は読んでいた!』

「ヤプール!!」

『さすがのアントラーでも、複数のウルトラマン相手では分が悪いのでな。砂の中に超獣ゲニンガマスを潜ませておいたのだ!』

「ゲニンガマス………!?」

 

ヤプールが『ゲニンガマス』と呼んだ怪獣、もとい超獣を睨むリュウ。カナタはメモリーディスプレイでデータを検索すると、目の前の超獣に比べると体色の薄い緑色の超獣『忍者超獣 ガマス』のデータが呼び出された。

 

『かつてのガマスは写真に入り込む能力を持っていたが、最近は携帯電話にカメラが搭載されているからな。いちいち探したり、作戦の変更をするのは手間だ。ゲニンガマスはそれをオミットして分身能力に特化させたタイプだ。』

「あいつらも超獣なのか………!」

 

ヤプールの説明にリュウが歯噛みをする。ダイナたちは鎖から抜け出そうもするも、振りほどくことが出来ない。

 

「キュコォーォウ!!」

 

メビウスもほどこうとするが、その時、頭を拾って再度合体をしたアントラーがひと鳴きをする。そして頭の角と手の甲から赤い光線を発射する!

 

ドォンッ

『グァアッ………!?』

「メビウス!?」

 

光線を受けたメビウスは吹き飛ばされて地面に倒れてしまう。ちょうどそのタイミングで、カラータイマーが赤く点滅を始めてエネルギーの限界が来ていた。

 

「このままじゃあ………!?」

「ガガガッ!」

「ガガガガガガッ!」

「ガガガガガガッ!!」

 

メビウスのカラータイマーが鳴り始めたのを見て危機感を露わにする一同。しかしゲニンガマスたちは口を開くと、口内の2連装吹き矢を放ちダイナたちの背中に着弾した吹き矢が爆発を起こした!

 

『『『ウアァッ!!』』』

「「きゃぁっ!?」」

 

爆発で鎖分銅が外れ倒れるダイナたち。ガマスたちは鎖分銅を手元に戻すと、両刃剣をどこからともなく取り出して構えると、そのまま地面を蹴って斬りかかった!!

 

『クッ!』

 

ダイナは咄嵯に体を転がして回避し、ダイナとコスモスもしゃがみ込んで攻撃をかわす。

 

『デュァアッ』

 

ガイアは右手に『アグルブレード』を出現させると、ガマスの剣を受け流し、ダイナは両手で掴んで阻む。コスモスは直ぐにコロナモードに変身すると、ガマスの剣を避けて殴りかかった。

 

「キュコォーォウ!!」

 

メビウスも立ち上がって対抗をしようとしたが、その時、アントラーがひと鳴きをした。するとガマスたちはウルトラマン達から離れ距離を取ると、剣をどこかにしまった。

 

「何をする気だ!?」

「キュコォーォウ!!」

 

バルクホルンがアントラー達の動きに疑問を抱くが、アントラーは再び磁力光線を放つ!それと同時に、ガマスは全く同じタイミングで手裏剣をウルトラマンに向けて投擲!ダイナたちは手裏剣を撃ち落とそうとしたが、手裏剣は磁力によって加速され、ウルトラマン達の身体を切り裂いた!

 

『グアァ………ッ!?』

『グゥッ………!?』

「みんな!?」

 

悲痛な声を上げ膝をつくウルトラマン達を見た芳佳たちが叫ぶ。ガマス達はそれを確認すると、再び剣を出現させた。

 

「ガガッ!!」

「ガガガガガッ!!」

「このままじゃマズいぞ!!」

「磁力がどうのこうの言ってる場合じゃない!!」

 

ゲニンガマスが迫る中、シャーリーが焦ったように叫び、芳佳たちも頷いて向かおうとした。しかし、メビウスは手でそれを制すると、フラフラながらも立ち上がってアントラーを見ると、高くジャンプをした!

 

『セヤァアアアアアアアアアアアア!!』

「キュコォーォウ!!」

 

メビウスはアントラーの脳天に向けて飛び蹴りをお見舞いするが、アントラーはその厚い装甲で受け止めてしまう。

 

「止められた………!?」

 

しかし、メビウスは足をアントラーの脳天に押し当てたまま、高速できりもみ回転!摩擦熱で炎が発生し、アントラーの脳天を貫通した!

かつて、リフレクト星人を破った『メビウスピンキック』だ!

 

「キュコォー………」

『そう来たか………』

「メビウスピンキック!!」

「あの装甲を貫いた………!?」

 

アントラーの頭が爆発で吹き飛んだのを見たウィッチたちは驚くが、ヤプールは感心したようにしていた。メビウスは着地をしてアントラーに振り返るが、頭と胴体の一部を失ったとはいえ、アントラーは健在であった。

 

『やはり、片方のコアを破壊しても………』

『いや、メビウスは多分………』

『皆さん、今のうちにガマスを………!!』

 

アントラーの再生が始まる中、メビウスはエネルギー切れ間近になりながらもダイナたちに進言をする。ダイナたちは頷くと、アントラーの破壊に戸惑うゲニンガマスたちに向かって走り、手にしていた剣を奪い、その胸に深く突き刺した!

 

「ガガ………ッ!?」

「ギャッ………!?」

「ギャガ………!?」

 

3体のゲニンガマスは短く断末魔を漏らすと仰向けに倒れ、そのまま爆発四散をしてしまった!

 

「キュコォーォウ………!!」

 

ゲニンガマスを倒したものの、アントラーは再生をして、ひと鳴きした。まだ終わっていないと身構えるが、アントラーはその場にしゃがむと、地面の砂を両手で掘り始めたではないか!

 

「何!?」

「逃げる気か………!?」

 

逃走をし始めたアントラーを見て困惑したが、ふと、リュウは我夢の言っていた事を思い出した。

 

『いくら修復できるとはいえ、何度もコアを破壊されればエネルギーを消耗すると―――』

「そうか、メビウスは倒せずともアントラーのエネルギーを消耗させて撤退を………!!」

「そう言う事か………!」

 

リュウの言葉に、バルクホルンも納得をした。そうしている間にアントラーは地中に潜り込んでしまい、やがてその姿は見えなくなってしまった。

 

『考えたなメビウス。今はダメージで動けない以上、アントラーの動きを止めて撤退する作戦か………』

「ヤプール………!!」

『今日の所は『痛み分け』と言うところだろう。だが、次はこうはいかんぞ!!』

 

ヤプールはそう言ってその場から消えると、メビウスたちウルトラマンは膝をつき、その場から消えてしまった………

 

「ミライさん!みんな!!」

「大丈夫か!?」

 

ウルトラマン達の消えたあたりに飛んで行くと、そこには変身を解いたミライたちがおり、皆ボロボロになっていたが、命に別状はないようだ。

 

「はい、何とか………」

「ナイス判断だぞミライ……あのまま戦っていたら、こっちが危なかった………」

 

リュウがミライを起こしながら話すと、他の面々も安堵のため息を吐いた。

 

「現状はまだ、アントラーを倒すことはできない………今はエネルギー切れで少なくとも1日の猶予が出来た………」

「そうだな……」

「一度基地に戻って、アントラーの対策を練るぞ。」

「G.I.G.!」「「「了解!」」」

 

こうして、GUYSとウィッチたちは一旦基地に戻ることにした………

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「―――アントラーは現在、地中で活動を停止しています。昨日のGX-11と同様です。」

 

フェニックスネストに帰還をした一同は、傷の治療やマシンの修復をしながらアントラーの対抗策を話し合っていた。

 

「アントラー……恐ろしい怪獣だ………」

「ああ、武装やストライカーユニットが磁力で引き寄せられては、なす術がない……」

 

ストライカーユニットの整備をしながらシャーリーが呟くと、バルクホルンも同意するように言った。芳佳とリーネに傷の手当てをしてもらいながら、ミライも口を開いた。

 

「あの装甲に光線は効かないし、さっきみたいに接近戦でも勝てるかどうか……」

「それに、あのゲニンガマスが厄介だね………アイツらが援護をしてくるとなると、ちょっと厳しいかも……」

「そうだな……」

 

ミライとムサシが話していると、そこにフジサワ博士が話に入ってきた。

 

「いや、次はそれだけじゃあ済まないと思うわ。」

「え?」

「私がヤプールなら、次はウルトラマン達をアントラーに近づけさせもしない。恐らくは複数の都市に超獣を同時多発させて、ウルトラマンやGUYSを分散させるはずよ。」

「確かに………」

 

フジサワ博士の予測に、美緒は考え込むように腕を組んだ。するとフジサワ博士は、オーバーに肩をすくめた。

 

「あー、こまったわねー。ウルトラマンなしで、アントラーは倒せないかもねー。」

「………」

 

わざとらしい博士の言動に、ミライたちは呆れたような顔になった。

 

「フジサワ博士………」

「何か策があるんですね?言いたくて仕方がないんですね?」

「あ、バレた?隠す気なかったけど。」

 

博士はイタズラっぽく笑うと、会議室に隊員やウィッチたちを会議室に集めた。

 

「先ずは、これを見てちょうだい。」

 

そう言うと、ある映像を見せた。そこには、先端に磁石をくっつけたアルミ製の細い板を、バーナーで熱している実験映像だった。しばらく熱していると、先端の磁石が音を立てて実験をしている机の上に落ちてしまった。

 

「あ、落ちた。」

「見ての通り、磁石にはある温度になると内部で一方向に揃っていた磁力がばらばらになって、磁力を失ってしまうの。発見をしたピエール・キュリー氏から、これを『キュリー温度(キュリー点とも)』って言うの。」

 

フジサワ博士はそう言うと、映像を停止させた。映像に感心をしていた芳佳とひかり、ミライに対して、リュウは博士の作戦を察した。

 

「なるほど、アントラーも磁力を武器にしている以上、このキュリー温度があるって訳か!」

「つまり、アントラーも同じように熱してしまえば、磁力を失うという事ね。」

 

ミーナも納得して頷くと、博士は映像を切り替えた。映像にはCGで再現されたアントラーが映っていた。

 

「作戦はこうよ。アントラーを、マケット怪獣ファイヤーウインダムの火炎で熱する。」

 

説明をしながらPCを操作すると、アントラーの目の前にトサカが赤く、左腕に赤い獣が装備された『ファイヤーウインダム』が現れ、炎でアントラーを攻撃する姿が映し出されていた。

 

「そして熱せられ磁力を失ったアントラーに接近して、2つのコアを破壊する。名付けて『火あぶり作戦』!」

「なるほど………」

 

リュウがうなずくと、博士は微笑みながら言った。

 

「それじゃあ、みんなは明日に備えて休んでちょうだい。私たちは引き続き、GX-11の調査をするわ。」

「はい!」

 

ミライたちやウィッチたちは返事をすると、解散した。

 

「………アイハラ隊長、ミーナ隊長、ちょっと。」

「え?」

「はい?」

 

しかし、フジサワ博士は会議室から出るとリュウとミーナを呼び止めて別室に連れて行った。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

『―――なるほど、火あぶり作戦か………』

 

次元城の大広間に集まったジュダと七星将が会議中、コウメイから報告を受けたジュダが呟いた。

 

『ヤプール、アントラーの件は問題ないか?』

『はい。あの女(フジサワ)には見抜かれていたが、鳥取砂丘以外に北海道、東京、大阪、熊本の4ヶ所にゲニンガマスを数体ずつ差し向けて戦力を分散、ウルトラマン達が出現したのを確認した後に、アントラーを出現させて市街地に向かわせます。そしてアントラーの援護には、別の超獣を向かわせます。』

『なるほどな………』

 

ヤプールの作戦を聞いたジュダが頷く。ヤプールは続けた。

 

『ウルトラマンどもには、ゲニンガマスを倒した次の瞬間には更なる戦力を投下、GUYSやウィッチの元へ向かわせません。』

『用意周到だな。流石だ。』

『お褒めに預かり光栄です。』

 

ジュダが軽く笑うと、ヤプールは口元を歪ませた。すると、ジュダが他の七星将に目を向けた。

 

『ではその『戦力』に、怪獣軍団、再生怪獣軍団、エージェント宇宙人軍団、バルタン軍団、スペースビースト軍団を向かわせろ。』

『え?』

『なに、お前はこの前コウメイに『手柄』のチャンスをもらっただろう?他の者にも与えてやらんわけにもいかないだろう?』

『は、はあ………』

 

ヤプールは少し戸惑ったが、すぐに表情を引き締めて承諾をした。

 

「では、ちょうど暴れたいって子がいるから、その子に声をかけてくるわ。」

「最近なかなか強い怪獣を見つけてな。ソイツを向かわせるとするか。」

『ウオオオオオ!!』

『私のバルタン星人は、コウメイの方に向かわせよう。』

『怪獣、選出してくる。』

 

コウメイをはじめとした七星将は口々に言うと、大広間から出て行った。残ったヤプールに、ヅウォーカァ将軍が声をかけた。

 

『あー………俺は手伝えないけど、頑張れよ。』

『あ、ああ………』

 

少し引き気味のヤプールは、大広間から出て行った。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「フェニックスネストにスパイが………!?」

 

同じ頃、フジサワ博士にサンダーバード基地の格納庫へ連れられたリュウとミーナは、そこで衝撃的な事実を聞かされた。

 

「そう……先日のヤメタランス・レディオアクティビティの件がグア軍団にバレたのは、恐らくスパイが入り込んでいたからと推測できるわ………」

「そんな………!!」

 

ミーナとリュウが驚いていると、博士は手にしたノートPCを操作して、その画面を見せてきた。

 

「このサンダーバード基地はフェニックスネストとシステムは切り離されているから、この会話を盗聴される心配はない。だから、安心して話せるわ。」

 

画面には、あるメテオールの設計図が表示されていた。

 

「今回のほんとの作戦、『裁きの雷』の事は、あなたたち2人に話しておかないとね。」

「『裁きの雷』………?」

 

リュウが首を傾げると、博士は説明を始めた………

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

翌日、フェニックスネストにアラート音が響き渡った。

 

「北海道、東京、大阪、熊本の4ヶ所に、ゲニンガマスが出現しました!」

 

エリーが叫ぶように報告する。画面に表示された映像には、北海道の草原や東京の山中、大阪湾、熊本の阿蘇山付近に、ゲニンガマスが出現した姿が映し出されていた。

 

「博士の予測通りね………!」

「市街地に向かう前に叩くぞ!ウィッチたちはアントラーに備えて待機していてくれ!GUYS, SALLY GO!!」

「「「G.I.G.!!」」」

 

アイハラ隊長の号令とともに、ガンウィンガーは熊本へ、ガンローダーとガッツイーグルαスペリオルは北海道、ガンブースターとXIGファイターEXⅡは大阪、ガンスピンドラーとテックスピナー1号は東京に向けて飛んで行った。

 

 

 

 

 

つづく




第三十三話です。

・アントラーネウロイは、磁力光線とビーム、それに分離機であることを活かした戦法が得意。『ホーミングスティンガー』の逆転の発想は割と好き。

・ゲニンガマス登場。今の世の中カメラ付き携帯は当たり前なので、それによって作戦変更等をしないように&巨大戦闘員ポジションが欲しいと思い登場させたデチューン版です。こういう武器を使い分ける戦闘員って、個人的に意外に好きなんですよね。

・割と強いアントラーをウルトラマンなしで倒す作戦。「夫人じゃない方のキュリー」って、絶望先生でもネタにされてましたね。

・ヤプールによる戦力分散作戦。アントラー編はあと1~2回くらいを予定しています。

では、また次回。


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第三十四話 魔の磁界域

「首尾はどうかしら、ジュモクコウ?」

 

次元城の第4エリア内、自身の屋敷で茶を飲んでいたコウメイは、背後の気配に声をかけた。ジュモクコウと呼ばれた者は、静かに報告をした。

 

『ジュモクカクから、既にガンマシンは出撃をしたと連絡がありました。アントラーには作戦通りファイヤーウインダムによる攻撃をするようです。ただ………』

「ただ?」

『ジュモクソウの話によれば、サンダーバード基地への入り口はフェニックスネストとは違う経路と承認システムのようで、侵入は困難とのことでした………ウィッチたちの情報は、あまり集まっていないようです………』

 

ジュモクコウの報告を聞いたコウメイは、茶の入った湯呑を置くとため息をついた。

 

「侵入が困難なら、どうにかして入る手段を探さないとねえ……おそらくはフェニックスネストにカギがあるわ。『例の件』と併せて、調査をするよう通達しておきなさい。」

『はっ!!』

 

コウメイの命を受けたジュモクコウは頭を下げると、その場から姿を消した。コウメイは窓から見える庭園を見ながら呟いた。

 

「………()()を手に入れることが出来れば、GUYSの戦力低下とこちらの戦力強化を図れるんだけど………まあ焦ることはないわねぇ………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第三十四話 魔の磁界域

 

磁力怪異獣 アントラー(N)

忍者超獣 ゲニンガマス

アースロポッドタイプビースト バンピーラ

破壊獣 モンスアーガー

宇宙忍者 バルタン星人(Ver.U-40)

巨大異星人 ゴドレイ星人

戦車怪獣 再生恐竜戦車

登場

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「行ったな………」

 

サンダーバード基地の格納庫でガンマシンの発進をモニター越しに見送った芳佳たち。ストライカーユニットと銃火器の整備を終えたシャーリーが首にかけたタオルで汗を拭いていると、入り口からガラガラとカートを押してドルジュ一味が入って来た。

 

「はーい、おにぎりとお茶持ってきたよー!」

「腹が減っては戦はできなイカらな~!」

「おー、サンキュー!」

「あいつら、大分なじんできたな………」

 

エーリカたちにおにぎりを配るドルジュたちを見たシャーリーが呆れたように呟いた。芳佳もおにぎりを受け取って食べながら苦笑するしかなかった。ふと芳佳は、ドルジュに話しかけた。

 

「そういえば、ドルジュさんたちはエンペラ軍団に協力していたんですよね?」

「ん、ああ、まあな。元々アタシは管理国家のダダ星がイヤになって飛び出して、それからヤバイ仕事に手を染めてる内にいつの間にか裏社会で一目置かれるようになって、コイツらが舎弟になってなー………」

「そうですか………」

 

芳佳が相槌を打つと、ヴァルドスキーとジュリコが続けた。

 

「で、今回はエンペラ軍団からお声がかかって、怪獣集めたりネウロイの操作実験のデータ集めたりしてなー」

「あ、そー言えばアネゴは、何で今まで遅れてたんイカ?いかすか?」

「あー……実は次元転移の時に座標の設定がうまくいかなくて、他の次元とか言っちゃっててさー………平行次元の地球に降り立っちゃったんだよ………」

 

ドルジュが気まずそうに答えた。

 

「そんで赤いロケットみたいなロボットと青い車みたいなロボットに何故か「ダダ星人だ」って言って襲われたりしてさー………何とか逃げ切ったけど、それからこっちに来るまで時間がかかちゃって……」

「そ、そうだったんだ………」

 

芳佳は少し引きつった顔になった。今の状況も含めて、ドルジュが割と大変な目に遭っていたようだった。

芳佳たちが少し呆れた顔をしていると、格納庫にけたたましいアラート音が鳴り響いた。

 

[鳥取砂丘で、アントラーが動き出しました!至急出撃してください!!]

「お出でなすったか!!」

 

アントラー出現を聞いた一同はおにぎりをお茶で流し込み、ストライカーユニットに駆け出した。ストライカーを装備すると発進位置まで移動を開始した。

 

「アイハラ隊長とミサキ代行の許可は得ている。作戦通り、ウインダムでアントラーの磁力を無力化した後に、コアを破壊するぞ!発進!!」

「「「「了解!!」」」」

 

美緒の号令の下、芳佳、バルクホルン、直枝、リーネがカタパルトで発進をした。

発進を見届けたミーナは、サーニャに話しかけてきた。

 

「サーニャさん、これから私に着いてきてください。」

「え?あ、はい……?」

 

サーニャは小首を傾げつつも、素直についていった。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「ガガガッ!!」

「ガガガガガガッ!!」

 

一方、熊本県を代表する阿蘇山の麓に出現したゲニンガマスが3体、市街地に向けて進撃をしていた。その進行方向から、ガンウィンガーが飛んできた。

 

「ゲニンガマスを確認!」

「相手は超獣だ、一気に決めるぞ!」

 

リュウが宣言をすると、けん制にビークバルカンを発砲する。ゲニンガマスは機関銃の着弾に足を止めると、上空のガンウィンガーを睨みつけた。

 

「ガガガァッ!!!」

 

ゲニンガマスたちは手裏剣を射出した。ガンウィンガーはそれをかわすとそのまま急上昇、旋回してウイングレッドブラスターを放った!

 

「ガガガッ!?」

 

3体のゲニンガマスはウイングレッドブラスターを食らい、爆発を起こした。だがすぐにゲニンガマスは立ち上がり、再び進軍を始めた。

 

「くっ……なんてタフさだ……!」

 

超獣であるが故のゲニンガマスのしぶとさに、リュウは思わずうめいた。と、その時だった。

 

「ガガガッ!!」

「ガガガガガガガガガッ!!」

 

ゲニンガマスが鳴き声を上げたかと思うと、なんとそれぞれが2体に分身して、ゲニンガマスは6体に増えてしまった!

 

「増えただと!?」

「ヤプールのいっていた、ガマスの分身能力か………!」

 

リュウとミライは、昨日ヤプールの言っていたゲニンガマスの能力を思い出してそれが目の前で起きたのだと理解をした。

 

「このままじゃあ、倍々ゲームでどんどんゲニンガマスが増えちまう!」

[隊長!各地のゲニンガマスが分身をしてます!]

 

エリーからの通信にリュウがモニターを確認すると、確かにあちこちのゲニンガマスが分身を始めていた。リュウが歯噛みをしていると、後部座席のミライが進言をした。

 

「リュウさん、僕が行きます!」

「すまない、頼んだ!!」

 

ミライはそう言って左腕を掲げると『メビウスブレス』が出現、金色の光に包まれてガンウィンガーから飛び出すと、ゲニンガマスの目の前にウルトラマンメビウスが降り立った!

 

「ガガガッ!!」

「ガガガガガガッ!!」

『セヤァッ!!』

 

6体のゲニンガマスが一斉に飛びかかってくると、メビウスは構えを取って迎え撃った!

 

「ガガッ!?」

 

先陣を切って突っ込んできたゲニンガマスの一体が剣を振りかざすが、メビウスはブレスから『メビュームブレード』を伸ばすと受け止め、逆に蹴り飛ばした。続いて左右同時に斬りかかった2体は、それぞれ刀身を躱すとブレードを横一閃に振るった。

 

「「ガアッ!?」」

 

2体が悲鳴を上げ仰向けに倒れると爆散、残った4体はメビウスを囲むように陣形を取ると、メビウスは警戒をして身構えた。

 

「やらせるかよッ!!」

 

そこにリュウがウイングレッドブラスターを放つと、ガマスの1体の後頭部に直撃し、ひるませることに成功した。それをメビウスは見逃さず、素早く接近すると、残る3体をブレードで切り裂いた!

 

「ガガッ………」「ガッ………」「ガガッ………」

 

斬られたゲニンガマスが倒れて爆散する。怯んでいた残り1体は自分だけになった事に一瞬驚くも、メビウスに向けて手裏剣を放つ。しかしメビウスはそれをブレードで弾き飛ばしてそのまま斬りかかる!

 

「ガガガガガガッ!!」

『!?』

 

しかし、ゲニンガマスは突然姿を消してしまい、不発に終わった。そして次の瞬間、メビウスの背後に出現したゲニンガマスは手にした剣で突き刺そうとした。

 

「ガガガッガガガッ!!」

「ッ!?」

 

メビウスは咄嗟に横に転がって回避をすると、体勢を立て直してメビュームシュートを発射した!

 

『セヤァアーーーッ!!』

「ガガァーーー………ッ!!」

 

直撃をしたゲニンガマスは仰向けに倒れて大爆発を起こして爆発を起こした。メビウスは立ち上がると、ガンウィンガーでレーダーを確認していたリュウと目を合わせた。

 

「ここのゲニンガマスは、これで全部だな。」

『今なら、鳥取のアントラーのところにまだ間に合う!』

「ああ!」

 

リュウが返事をすると、メビウスとガンウィンガーは鳥取砂丘にいる芳佳たちの救援に向かうべく飛び立った。

 

シュバッ

『!?』

 

しかしその時、飛び出したメビウスの足を細い糸が絡まったかと思うと、メビウスは後方に大きく引き戻され、地面に叩きつけられた!

 

『グァア………ッ!!』

「ミライ!?」

「ピュキュキュゥーーーッ!!」

 

ガンウィンガーからリュウが叫ぶと、メビウスは倒れたまま振り返った。その先にいたのは、赤い4つ目を光らせる、巨大な蜘蛛のような怪獣の姿があった。

 

「クモ!?」

『コイツ………スペースビーストか!!」

「ピュキュキュゥーーーッ!!」

 

その怪獣は、『アースロポッドタイプビースト バンピーラ』であった。バンピーラは口から吐き出してメビウスの足に絡ませた糸を引き寄せて、そのまま空中へと持ち上げると再度地面に叩きつけた!

 

『ガハッ……!』

「ピュキュキュゥーーーッ!!」

 

何度も地面へ投げつけられてダメージを負うメビウスに対し、バンピーラは楽しげに鳴き声を上げた。そのまま再度攻撃をしようとした。

 

「コイツ、ミライを放しやがれ!!」

 

それを見たリュウが怒鳴りつけると、ウイングレッドブラスターを放つ。光線はメビウスを縛る糸の中ほどに着弾し、焼き切った。

 

「ピュキュキュゥーーーッ!!」

 

自由の身となったメビウスは再び立ち上がって構えをとると、バンピーラは怒りに任せて突進してきた。メビウスは迎え撃つと、両手で組み合って押し合いとなる。

 

『グゥウ………!!』

「ピュキュキュゥーーーッ!!」

 

メビウスはバンピーラを押し返して突き放すと、今度は蹴り飛ばす。だがそれでもバンピーラは起き上がると、再び突撃を仕掛けてきた!

 

「アイツ、意外とタフだな………」

 

リュウが再びメビウスと衝突するバンピーラに呆れと困惑の混じった表情を浮かべていると、通信が入った。

 

[隊長、各地でウルトラマンが怪獣や宇宙人と戦闘を開始しました!]

「何だと!?」

 

エリーの報告を聞いて、リュウはモニターを確認した。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「ギシュゥウウーーーッ!!」

 

北海道で戦うダイナの目の前で、赤く尖った身体に青白く光る頭頂部を持った『破壊獣 モンスアーガー』が両手を叩くと、その手から火炎弾が発射される!ダイナが咄嗟に回避をすると、炎はそのまま真っ直ぐ飛んでいき、道路やビルに命中して爆発を起こした。

 

『ジュアッ……』

「ギシュゥウウーーーッ!!」

 

モンスアーガーはダイナが身構えたのを見ると、気合を入れるかのように吠えた。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「フォオーーッ!!」

『フゥッ、ダァアッ!!』

 

東京郊外の山奥では、コロナモードにタイプチェンジしたコスモスが、コスモスの倍近くあるサイズで巨大なハサミを持ったバルタン星人(Ver.U-40)と対峙をしていた。

バルタン星人はハサミを開くと中から赤い光線を発射する!コスモスはそれをバリアで防ぐが、バルタン星人は追撃で急接近してハサミで殴打を行う!

 

『フッ!』

 

しかしコスモスは素早い動きで回避すると、素早く背後を取ると同時に手刀を放つ!

 

「フォオォッ!?」

『フッ!タァッ!!ダリャアァッ!!』

「フォオオオッ!?」

 

更に続けて連続パンチを放ち、最後に回し蹴りを叩き込むと、バルタン星人は倒れて転げまわった!

 

「フォッ……」

 

しかし、倒れると思った瞬間、バルタン星人の姿が煙のように消えてしまった。

 

「フワーッハッハッハッハー!」

『!?』

 

声の聞こえた方を振り向くと、コスモスの背後にバルタン星人が立っていた!バルタン星人は腕のハサミを振りかざすと、コスモスに向けて振り下ろした!

 

『グァッ………!』

 

コスモスは咄嵯に避けるも、バルタン星人の猛攻に徐々に追い詰められていく。

 

「フワァーッ!」

『!?』

 

そして次の攻撃が繰り出された時、咄嗟にコスモスは身を屈めて回避をすると、バルタン星人は勢い余って地面を大きく穿った。

 

『フゥウ……』

「ホァ………』

 

コスモスはバルタン星人から距離を取ると、両者は睨み合った。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「ビシュシュシュシュシュシュ!!」

 

大阪の港では、巻貝のような頭部と湾曲した腕を持ち、顔には縦に3つ並んだ緑色の目のようなものを点滅させる『巨大異星人 ゴドレイ星人』が、胸の発光部から放つ光線で周囲を破壊していた!

ガイアは破壊活動を行うゴドレイ星人の後ろから近づくと、背中に向かってキックを放った。

 

「ビシュシュシュシュシュシュ!!」

『デュワッ!!』

 

不意打ちを受けて前につんのめるゴドレイ星人。ガイアはその隙を逃さずに両腕を掴むと、ジャイアントスイングで投げ飛ばした!

 

「ビシュシュシュシュシュシュ!!」

『グゥッ!?』

 

だが、すぐに起き上がったゴドレイ星人は両腕を交差させると、両腕から眩い光を発する。ガイアはその光に思わず両腕で目を覆った。その隙を狙って、ゴドレイ星人は胸から光線を放ち、ガイアに命中させる!

 

『グゥッ……!』

 

光線を受けて倒れるガイアに、ゴドレイ星人は容赦なく追撃を行う。起き上がろうとするところに蹴りを浴びせ、倒れたところを殴りつける。

 

「ビシュシュシュシュシュシュ!!」

『ウゥッ!?』

 

ゴドレイ星人は腕を振りかざしてガイアに殴りかかろうとするが、そこにガンブースターからの攻撃を受けて頭部で小さく爆発を起こした。

 

「ビシュシュシュシュシュシュ!!」

 

ゴドレイ星人はガンブースターに攻撃をしようとしたが、立ち上がったガイアがそれを阻止し、掴むとそのままバックドロップを決める!

 

「ビシュシュシュシュシュシュ!?」

 

地面に叩きつけられたゴドレイ星人は頭への衝撃でフラフラであった。ガイアは星人と距離を取り、構えを取った。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「これは………!」

 

各地の戦いの様子を一通り確認したリュウが息をのんだ。フジサワ博士の読み通り、鳥取砂丘のアントラーの元へウルトラマンを向かわせない作戦であることが直ぐに理解できた。

 

「ピュキュキュゥーーーッ!!」

『セヤァッ!!』

 

出来る事ならアントラーと戦っているだろうウィッチたちの元に向かいたかったが、目の前でバンピーラと戦うメビウスを放っておく事もできない。リュウは操縦桿を握る手に力を入れると、バンピーラに向けてビークバルカンを放った。

 

「ここは、美緒たちの作戦に賭けるしかない………!」

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「キュコォーォウ!!」

 

各地で戦闘が繰り広げられている頃、鳥取砂丘で高らかにアントラーが鳴き声を上げながら、街に向かって進行をしていた。そんなアントラーの元に美緒、芳佳、バルクホルン、直枝、リーネの5人のウィッチたちが駆けつけた。

 

「アントラーを確認!」

「私と宮藤でアントラーを誘き寄せる!その隙に磁力の範囲外から、リーネが狙撃をしてくれ!隙をついてウインダムを呼び出す!」

「分かりました!」

「いくぞ!」

「「「「了解!」」」」

 

美緒の指示に芳佳たちが返答をした次の瞬間、ウィッチたちに気が付いたアントラーの光線が放たれた。ウィッチたちが間一髪回避すると、散開して攻撃態勢に入る。

 

「攻撃開始!!」

「はい!」

 

美緒の号令で芳佳は機関銃の銃口をアントラーに向けて引き金を引いた。着弾した弾丸はアントラーの体表で爆発を起こし、進行を止めることに成功した。

 

「キュコォーォウ!!」

 

アントラーはひと鳴きすると口から虹色の磁力光線を発射した。

 

「離れろ!磁力光線が来るぞ!!」

 

美緒が咄嗟に指示を飛ばすと、芳佳たちはアントラーから距離を取って磁力光線の影響下から脱した。

 

「アントラーの磁力光線の範囲はおよそ2㎞………ここまで離れれば磁力の影響を受けないが………」

 

バルクホルンはそう呟くと、アントラーは頭部を分離させてウィッチたちに向かい飛行してくる!

 

「やはり分離してきたか!」

 

飛翔してくるアントラーの頭部から光線が発射されるも、ウィッチたちは回避に成功する。しかし、アントラーは胴体から光線を放ってくる。光線を回避しながら、美緒が指示を飛ばした。

 

「私とバルクホルンは頭に向かう!宮藤と管野は胴体を頼む!」

「「「了解!!」」」

 

美緒とバルクホルンは空を飛翔し、アントラーの頭部へと接近する。芳佳たちも胴体に向かうと、胴体の方は収納していたドリルを展開させると回転を開始、さらにそこからビームを発射してきた!かつて、同じくドリルを有していたネウロイGX-02も使用した、広範囲攻撃だ!

 

「うわ!?コイツ……!?」

「直枝さん!」

 

ドリルからのビームに驚きながらも、直枝の前に芳佳が飛ぶと障壁で防いでくれた。

 

「すまない!助かったぜ!」

「いえ!」

「今、胴体の攻撃は上に向いているな…下に回りこむぞ!」

「はい!」

 

芳佳が返事をすると、2人はビームを掻い潜って胴体の下側へ回った。胴体はその動きに一瞬出遅れてしまい、その間に2人はビームの嵐から脱出に成功、背後に回って背中に銃弾を叩き込んだ!

 

「キュコォーォウ!!」

「効いてる!」

 

背中から火花を散らして悶える胴体。分離していては不利だと思ったのか、頭部が胴体の元に飛来し、合体を果たす。

 

「キュコォーォウ!!………?」

 

合体したアントラーは芳佳と直枝に向かおうとするが、急な合体だったせいなのか頭が前後逆になっていた事に数歩進んでから気が付いた。慌てて戻ろうとしていると、上空からのリーネの放った弾丸がアントラーの右顎に命中、折れて地面に落下した!

 

「キュコォーォウ!!」

 

悲鳴を上げるアントラーは足を止めて悶える。美緒はそれを見て好機と見たのか、芳佳に指示を飛ばした。

 

「メテオール解禁!」

「はい!」

 

芳佳は返答をするとメモリーディスプレイとマケット怪獣のカードリッジを取り出すとセット、アントラーに向けて発射した。

 

《REALISE.》

「ガァアアアーーー!ガァアアアーーー!!」

 

アントラーの目の前に、トサカが赤く左腕に赤い銃が装備された『ファイヤーウインダム』が現れて鳴き声を上げ対峙した。

 

「キュコォーォウ!!」

「ウインダム、お願い!」

「ガァアアアーーー!!」

 

アントラーは折れた上あごの再生途中ながらファイヤーウインダムを確認して威嚇するようにひと鳴きする。ファイヤーウインダムは左腕の銃口をアントラーに向けると、銃口から火炎放射を放った!

 

「キュコォーォウ!!」

 

アントラーは火炎を浴びて苦しむように鳴き声を上げながら後退をするが、ファイヤーウインダムは攻撃の手を緩めない。火炎で炙られて怯んだアントラーを見て、美緒は眼帯を外しながら指示を飛ばした。

 

「今なら磁力も出せない!頭部はあの小さな角、胴体は胸のあたりにコアがあるはずだ!一気に叩くぞ!」

「はい!!」

 

美緒の指示を聞いた芳佳は、アントラーに向かっていった。

 

ドォンッ

「ガァアアアーーーッ!?」

「!?」「何!?」

 

しかしその時、ファイヤーウインダムの背中に光線が飛んでくると爆発を起こし、火炎放射を中断されてしまった!何事かと思い周囲を見渡すと、数十メートル離れた場所から怪獣が砂の中から顔を出していた!

 

「ギュォオーーーォオウ!!」

「怪獣が砂の中に潜ませていたのか!!」

 

砂漠から現れた怪獣に驚いていると、怪獣はウィッチに向けて目から光線を放ってきた!

 

「くっ!!」

《BANISH.》

「しまった、制限時間か………!!」

「ギュォオーーーォオウ!!」

 

光線から回避をしていると、制限時間の1分が経過してしまいファイヤーウインダムが霧散してしまう。アントラーは熱せられたボディを冷却しているのか、装甲の隙間から煙を吐きながら動きを停止しているが、その隙に怪獣が砂漠のなかからはい出て来てきて、その全貌が露わとなった。

それは、巨大な戦車に怪獣が乗るように合体したような怪獣………『戦車怪獣 恐竜戦車』だ!

 

「………え、何あれ?」

「ギュォオーーーォオウ!!」

 

恐竜戦車の奇抜な出で立ちに唖然とする芳佳。恐竜戦車は体を持ち上げて威嚇するようにひと鳴きをすると、その腹に『目玉』が付いているのを見た。

 

「あの目玉は………」

「確か、再生怪獣のものだったはず………!!」

 

恐竜戦車に付いている目玉が、エイラたちの報告にあった再生怪獣の目印であり弱点である事を思い出し、恐竜戦車が再生怪獣である事に気が付いた。そこを狙えば倒せるかもしれない、そう思った芳佳だが、恐竜戦車は『伏せ』をした姿勢に戻ってしまい、目玉が怪獣と戦車の間に隠れてしまった。

 

「あれじゃあ目玉を狙えない………!!」

「意外な利点が………」

「ギュォオーーーォオウ!!」

 

恐竜戦車の再生怪獣としての利点に呆れと感心の入り混じった感情になる一同。恐竜戦車はキャタピラを唸らせながら前進をすると、戦車に搭載された三連主砲が火を噴いてウィッチたちを狙ってきた!

 

「うわ!?」

「きゃあ!?」

「ギュォオーーーォオウ!!」

 

ウィッチたちは恐竜戦車の砲撃に驚きながらも、何とか回避していく。恐竜戦車は冷却をしているアントラーに狙いを変えたかと思うと、アントラーに向けて戦車砲を発射した!

 

「キュコォーォウ!!」

「何!?」

「何でアントラーを………!?」

 

恐竜戦車がアントラーを攻撃した事に驚くウィッチたち。しかし、砲弾を受けたアントラーは熱せられたボディが急速に冷却されて行き、再び立ち上がって鳴き声を上げた!

 

「キュコォーォウ!!」

「冷却弾か!!」

「マズいぞ………アントラーの磁力が復活しちまう!!」

 

並び立って威嚇する二体の巨大生物。その様子を見て、美緒はあくまでも冷静に状況を判断すると、ウィッチたちに指示を出した。

 

「総員、あの2体と距離を取れ!」

「坂本さん!!」

「問題ない。こちらの作戦はまだ続行中だ。」

「え?」

 

芳佳たちは美緒の言葉に疑問を持つが、指示に従ってアントラーと恐竜戦車から距離を取った。アントラーと恐竜戦車はそれを追ってくるが、バルクホルンは美緒の飛行ルートが2匹をおびき寄せているようにも見えた。

 

「まさか、コイツらを誘っているのか?でも何故……?」

「……よし、この辺りまで来れば………」

「え?」

 

美緒は何かを呟くと、ある程度距離を保ったままアントラーと恐竜戦車の方を見て通信機のスイッチを入れた。

 

「こちら坂本、アントラーと恐竜戦車を例のポイントまで誘いました。」

[了解。こちらでも確認をしたわ。『裁きの雷』の準備もできているわ。]

 

通信機の先でフジサワ博士が答えると同時に、アントラーと恐竜戦車がウィッチたちに狙いを定めてきた。

 

瞬間、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドンッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「!?」」」」

「キュコォーォウ!?」

「ギュォオーーーォオウ!?」

 

アントラーと恐竜戦車の頭上から巨大な光線が降り注ぐと、その巨体を熱線が包み込んだ!

 

「な、何だあれは………!?」

「これが本来の作戦………『裁きの雷』だ。」

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「『裁きの雷』………正しくは『ソルレンズ・レーザー』。」

 

フェニックスネストのディレクション・ルームで、フジサワ博士が説明をしていた。

 

「大気圏外の重力偏向盤の設定を調整して重力レンズを生成、それに太陽光を通すことで高熱ビームとして地上に放つ………先日、ダイナがデスフェイサーを倒した『シャイニングジャッジ』をヒントに生み出した、メテオールよ。」

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「ファイヤーウインダムを使った『火あぶり作戦』は、この作戦の隠れ蓑だったんだ。この作戦は私とミーナ、アイハラ隊長にしか伝えられていなかったんだ。」

「そうだったのか………!!」

 

美緒とフジサワ博士の説明に納得をする直枝。その間にアントラーと恐竜戦車は高熱ビームに焼かれ、恐竜戦車は爆発に散ってしまい、その衝撃でアントラーは吹き飛ばされて高熱ビームから意図せず脱出した。

 

「キュコォー………」

 

脱出をしたものの、アントラーは全身が真っ赤に熱せられており、更に高熱と冷却を短時間で繰り返したせいで金属疲労を起こしたのかボディが崩れ始めていた!

 

「今度こそとどめを刺すぞ!!」

「「「「はい!!」」」」

 

美緒の指示に返事をすると、光線が止まったのを確認してからアントラーに向けて飛んで行った。アントラーはウィッチを確認するもボディがボロボロになっていて攻撃もままならず、上げた右腕がボロっと崩れ落ちてしまう。

その隙にウィッチたちの銃撃を受けて顎も両方とも撃ち落とされてしまった!そして、ウィッチたちの銃弾が同時にコアを直撃し、破壊された!

 

「キュコォーォ………!!」

パリィイン

 

コアを破壊されてついにアントラーは砕け散ったのであった。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「アントラー、完全破壊を確認!」

 

ディレクション・ルームにエリーの報告が響くと、トリヤマやマルが安堵した表情を浮かべた。

 

「よ、良かった~………一時はどうなるかと………」

[こちらリュウ、メビウスが怪獣を撃破した。]

[ダイナもモンスアーガー撃破を確認。]

[ガイアとコスモスも、宇宙人を撃破しました!]

 

次々に通信が来ると、指令室では歓声が上がった。

 

「これで一安心ですね!!」

「ああ!」

 

トリヤマたちは嬉しそうにするが、フジサワ博士は険しい顔をしていた。

 

「いいえ、まだよ。」

「え?」

 

博士の言葉にトリヤマたちはキョトンとするが、その時、ディレクション・ルームのドアが開き、ミーナとサーニャが入って来た。

 

「あれ、ミーナ隊長?」

 

2人とも使い魔を発現させており、サーニャは魔導針を展開させていた。2人は指令室内を見渡したかと思うと、部屋の隅を凝視した。

 

「いました、あそこです!」

「ええ!」

 

サーニャの指さした先を、ミーナは銃を引き抜き、引き金を引いた。

 

「うわあ!?」

「いきなり何を!?」

 

ミーナがいきなり発砲をした事に驚くトリヤマとマル。しかし、着弾した辺りの空間が歪んだかと思うと、全身の渦巻き模様と赤い逆三角形の単眼と黄色い双眼を持った2体の異星人が現れた!

 

『ギ、ギギ~!?』

「うわあ!?」

「う、宇宙人!?」

 

現れた異星人たちを見て叫ぶトリヤマたちだが、ミーナたちは特に驚いていなかった。

 

「フジサワ博士の読み通り、グア軍団の宇宙人が侵入していたのね!」

「何だと!?」

「我々の情報が漏れていたのか!!」

 

トリヤマとマルが驚くが、同時に『ヤメタランス・レディオアクティビティ』の事がバレていた理由も理解した。フジサワ博士はメモリーディスプレイで宇宙人のデータを確認した。

 

「『ドキュメント・パラレル』、EYESの項目に記録確認。レジストコード『異次元人 ギギ』。異次元からの侵略者ね。」

『くっ、まさか、我々に気付いていたのか………!』

『ジュモクソウ!』

 

ジュモクソウと呼ばれた双眼のギギ・ツインアイ撃たれた箇所の傷を押さえながら、隣のギギ・デルタアイに肩を借りて立ち上がった。

 

「まあね。侵入してきたのは、みんなが次元城から脱出した時かしらね?表向きの『火あぶり作戦』をみんなの前で発表したら、見事に対策取られて確信したワケだけど。」

『おのれ………!』

『ジュモクソウ、ここは引くしか………』

『だがジュモクカク、ここで引いてはコウメイ様に面目が立たぬ………!』

 

ジュモクカクというらしいギギ・デルタアイが心配そうに言うが、ジュモクソウは焦りで冷静な判断が出来なくなっているようだった。

 

「さて、観念してお縄についてくれれば、命までは取らないわよ?傷の手当ても必要でしょうし……」

『くっ………!』

 

フジサワ博士はそう提案をするが、その時、ミーナたちとギギの間の空間が歪み、更にもう一体の青いX字の目を持ったギギ・クロスアイが現れた!

 

「な!?」

『ジュ、ジュモクコウ!?』

『ジュモクソウ、ジュモクカク!今すぐ帰還するぞ!』

『だが!』

『コウメイ様の命令だ!!』

『『!!』』

 

なおも食い下がるジュモクソウであったが、ジュモクコウからコウメイの名前が出ると黙り込んだ。ジュモクコウは、ミーナたちに向き直った。

 

『今日の所は引く。だが忘れるな?我らグア軍団は、貴様らを見ている事をな………』

 

ジュモクコウはそう言うと、ジュモクソウ、ジュモクカクと共に消えて行った。

 

「撤退したか………」

「まさか、グア軍団のスパイが潜入していたとは………」

 

マルの言葉に、トリヤマが悔しそうな顔をしていた。

 

「グア軍団、油断ならないわね………!」

「はい………!」

 

グア軍団の脅威に改めて戦慄するミーナとサーニャであった………

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

『も、申し訳ございません………コウメイ様………』

 

次元城に帰還したジュモクカクは、ジュダや七星将の集まる前でコウメイに土下座をしていた。ジュモクソウは怪我の治療のためにこの場にはいない。コウメイは少し残念そうな顔をしていたが、ジュモクカクに話しかけた。

 

「いいえ、あなたたちの命が無事なら何よりだわ。それよりも、『アレ』の事は分かったかしら?」

『は、はい!データの解析はできておりますが、使う為にはまたあそこに直接向かう必要が………』

「分かったわ。そっちはまたゆっくり策を練りましょう。今はジュモクソウ共々、体を休めるといいわ。」

『は、はい!勿体なきお言葉………!!』

 

コウメイがそう言うと、ジュモクコウと共にジュモクカクは姿を消した。コウメイは席に戻ると、ジュダが話しかけた。

 

『今回は残念だったな、コウメイにヤプール?』

「いえいえ。敗北はしましたが、有力な情報を手に入れられましたわ♪これを元に、作戦と準備を整えたら、実行に移しますわ。」

『ほほう?』

 

コウメイはそう言って邪悪な笑みを浮かべた。ジュダはそれを見ると、コウメイに期待を寄せるのだった。一方のヤプールも、不敵な笑みを浮かべていた。

 

『私の方も、ネウロイと超獣以外の手を用意しております。ネウロイを差し向けつつ、準備をいたします。』

『なるほどな………こちらも負けていられないようだ。』

 

ジュダもヤプールの言葉に、ニヤリとした。

 

『敗北は勝利の糧となる………諸君、これからも励んでくれ。』

『『『『『「は!」』』』』』

 

ジュダの言葉に、七星将は力強く応えた。

 

 

 

 

 

つづく




第三十四話です。

・ドルジュ一味の過去がちらり。ドルジュを襲ったロボットはダダ繋がりでw

・日本各地で戦うウルトラマン達。各軍団から1体ずつって考えて、こんな面子になりました。バルタン星人は「ザ☆ウルトラマン」に登場したバージョンです。

・VSアントラー。頭が前後逆になるのはアントラーのソフビ持ってる人なら1度はやったことあるハズw

・再生恐竜戦車登場。再生怪獣軍団は当初コスモスに配慮して設定したんだけど、いつの間にかイロモノ怪獣枠にw四足歩行怪獣は今作の再生怪獣には意外と最適。
後、まったく意図してなくて途中で気付いたけど、こいつらキャタピラ地獄じゃん………

・秘密兵器はダイナの『シャイニング・ジャッジ』を再現したメテオール。実際の重力レンズってこういうのじゃないらしいけど、まあ、その辺はご容赦ください(汗

・スパイの正体はギギでした。コードネームのジュモクはジュモク→樹木→ギ(樹)ギ(木)という由来で、漢字で書くと樹木交、樹木双、樹木角。
コウメイとヤプールの企みについてはいずれ。

では、また次回。


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第三十五話 双体の復讐鬼

 

ここは、地球から38万8千400キロメートル離れた月の表面。そこで、兄弟星である地球の様子を見ている者たちがいた。

 

「………」

 

地球で起こっている地球人とグア軍団の戦いを心配そうに見ていたその者は、白い服の女性であった。

そして、同じく地球の様子を見ていた者は、1人の地球人、銀髪の少女に目を奪われていた。

 

『………』

 

地球に目を向けていた女性は、その者の呟きに気が付かなかった………

 

 

 

 

 

第三十五話 双体の復讐鬼

 

双体宇宙人 チェーン星人(ライト&レフト)

スーパー必殺怪獣 デマゴーグ(ツー)

登場

 

 

 

 

 

「これはこれは、ジュモクカクさん。大変だったようですね?」

 

次元城の廊下を歩いていたジュモクカク、ジュモクコウ、ジュモクソウの3人は、後ろから話しかけられて足を止めた。振り返るとそこには同じく『エージェント宇宙人軍団』に所属する2人の宇宙人がいた。その2人はそっくりなヒューマノイド型宇宙人のように見えた。

 

「聞いたぞ?潜入作戦に失敗したそうだな?」

 

宇宙人の1人が嘲笑うように言う。ジュモクカクはむっとして言い返そうとしたが、それをジュモクコウが手で制した。

 

「それはさておき、次は我々の番だ。既にコウメイ様の許可は下りている。」

「まあ、あなた方のように失敗はしないと思うがな?」

『キサマ………!!』

『言わせておけば………!』

 

ジュモクカクとジュモクソウは怒りの形相を浮かべたが、ジュモクコウがそれを止めた。

 

『ならば、見せてもらおうか。ウルトラマンダイナに無様な敗北をした貴様らが、どれだけの成果を出せるのかをな?』

「「ぐぬぅ……!?」」

 

2人は余裕そうに笑っていたが、ジュモクコウに痛いところを突かれ苦虫を噛み潰したように歪めた。しばらくジュモクコウたちを睨んでいたが、やがて背を向けた。

 

「いいだろう、我らがウルトラマンを倒す様を見せてやる!!」

「行くぞ!!」

 

2人はそのまま去っていった。その後ろ姿を見送ったギギたちは、ふっと息を吐いて肩の力を抜いていた。

 

『すまんなジュモクコウ、あの2人の挑発につい乗ってしまった………』

『気にするな。あれだけ大口を叩いたんだ。あの2人がどれほど出来るのか、見物しようじゃないか。』

『それもそうだな……』

 

ギギたちは小さくにんまりと笑っていた。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

女性の買い物とは、どうしてこうも長くかかるのだろうか?アスカ・シンはそう思った。

 

アスカはミライと一緒に、マイやシャーリーたちが日用品の買い出しをするのに付き合っていた。女性の日用品という事で、アスカとミライは店の前のベンチに座って待っていた。

 

「結構時間かかるなぁ……」

「仕方ないよ。女の子って色々買わないといけない物が多いみたいだし……」

 

隣で小さくぼやくミライにアスカが答える。ミライは少し地球の常識に疎い一面があるのだが、アスカにも女性の買い物が多い理由は分からなかった。

ふと周囲を見ると、休日という事もあってか家族連れの姿が多く見えた。子供を連れた夫婦らしき男女、子供たちが楽しげにはしゃいでいる様子が見える。平和だなぁ、と内心思っていると、自分たちの前に黒いレザージャケットを着て黒いサングラスをかけた男が立っている事に気が付いた。

 

「久しぶりだな、アスカ・シン………」

「え?」

 

突然名前を呼ばれて、アスカは戸惑った。何となくその顔に見覚えがあるように思ったが、男はそれに構わずにアスカに掴みかかると、そのまま遠くに投げ飛ばしてしまった!

 

「うわああ!?」

「アスカさん!!」

 

ミライは飛んで行くアスカを追って走り出すと、男は不敵な笑みを浮かべた。

 

「あれ?ミライさんは?」

「アスカもいないな……?」

 

調度その時、店から出てきたマイとシャーリーが辺りを見渡していたのを見た男は、その場から消えてしまった……

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

ドオンッ

「うッ!?ぐぅ………」

 

投げ飛ばされたアスカは廃車置き場で廃車の上に叩きつけられた。痛みで顔をしかめながら顔を上げると、そこにミライが走ってきた。

 

「アスカさん!大丈夫ですか!?」

「な、なんとかな………」

「リュウさんにはこの場所を伝えてあります。10分ほどで来ると思います………」

「ならば、10分以内にお前らを倒せばいい訳だな?」

 

ミライはアスカを介抱しながら伝える。すると、積み上がった廃車の上に先ほどの男が立っている事に気が付いた。

 

「思い出すなぁ、あの時も、ここみたいな廃車置き場でお前と戦ったんだったな………」

「何………!?」

 

男のその言葉を聞いたアスカは、その男がかつて自分と戦った宇宙人である事を思い出した。男は地面に降り立つと、野太い叫びと共にその姿を変えた。

左半身が真っ黒に染まり、右半身が赤くなった宇宙人『双体宇宙人 チェーン星人・ライト』であった!

 

「チェーン星人!!」

『やっと思い出してくれたようだな!!』

 

ライトは嬉しそうに叫ぶと地面を蹴り、アスカたちに殴りかかった!

 

「くうっ!!」

『む!?』

 

咄嗟にミライが拳を止めると、ライトは驚いた声を出すが、直ぐにフッ、と笑った。

 

『やるじゃないか……』

「くっ!」

 

ミライは腕を振り払うと左腕を構えてメビウスブレスを装着、ライトに向けて『メビュームスラッシュ』を放つ。しかし、放たれた光線はライトの体をすり抜けて、背後の廃車の山に着弾し火花を散らした。

 

「光線がすり抜ける…!?」

「お前、生きていたのか!!」

 

ミライが光線がすり抜けた事に驚く中、アスカがライトに問いかけた。ライトはフン、と鼻を鳴らして答えた。

 

『あの時は俺達も死んだかと思ったが、幸いにもコウメイ様に助けられてな………だが俺は、コウメイ様への恩義やグア軍団の使命以上に、貴様への復讐のためにここに来たのだ!』

 

ライトはそう叫ぶと、両腕を振り上げて襲い掛かってくる。ミライとアスカは攻撃を腕で受け止めるが、その威力に2人とも腕が痺れて顔を歪めた。

 

「ぐうぅ!?」

「なんてパワーだ!?」

『ははは!!どうした、そんなものなのか!?』

 

ライトは更に激しく攻撃を繰り返す。ミライとアスカは防戦一方になっていると、ライトは大降りに殴って2人を吹き飛ばしてしまった!

 

「ぐう…!?」

「大丈夫か!?」

「な、なんとか………」

『ふはははは!!』

 

倒れたミライをアスカが助け起こすと、ライトは余裕そうに腕を広げて笑っていた。

 

「アイツ、前は燃料に誘爆させて倒したけど………」

「じゃあ、似たような作戦で行きますか………」

「そうだな………」

『作戦タイムは終わったか!?』

 

2人が小声で話している間に、ライトが近づいて足を上げてかかと落としを繰り出してきた!ミライとアスカが左右に飛ぶと、ライトの足が大きく地面を砕いた!

ライトは左右に逃げた2人を目で追おうとしたのだが、2人は廃車の陰に隠れたかと思うと、そこから人間サイズのダイナとメビウスが飛び出して、同時にメビュームスラッシュとビームスライサーを放って、ライトを爆発の炎が襲った!

 

『ぬおおお!?』

 

ライトは廃車を巻き込みながら大きく吹き飛ばされ、廃車の山が崩れてライトを生き埋めにしてしまった。

 

『やったか……?』

 

ダイナが小さくつぶやくが、廃車の山の中から生命反応は感じられなかった。

 

『………死んだ様子ではない……逃げたのか………』

 

メビウスとダイナはライトが逃亡した事を察した2人は、変身を解いてミライとアスカに戻った。ちょうどその時、エンジン音が聞こえたかと思うと、背後にガンスピーダーが飛んできた。

 

「ミライ、大丈夫か!?」

「リュウさん!」

 

ガンスピーダーからリュウが声をかける。リュウはガンスピーダーから飛び降りると、ミライに駆け寄った。

 

「何があったんだ?」

「実は……」

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「―――つまり、そのチェーン星人って連中が、アスカさんに仕返しに来たって事か?」

「ああ。」

 

数十分後、サンダーバード基地に帰還したミライとアスカは、芳佳に治癒魔法を受けながら、リュウ達に先ほど起きた出来事を話していた。話を聞いたエリーがコンソールを操作して、アーカイブ・ドキュメントからチェーン星人の情報を呼び出した。

 

「チェーン星人、『ドキュメント・パラレル』、TPCの項目に記録確認。」

「さっきの赤いチェーン星人には、左右が逆で青いもう1人の『半身』がいるんだ。そいつは頭脳派で、子供を操ってゲームの怪獣を操作させていたんだ。」

「子供を利用したですって…!?」

「何と非道な………!!」

 

アスカからチェーン星人の所業を聞いたペリーヌとミーナが、怒りの声を上げる。スクリーンにはチェーン星人が実体化させ子供に操らせたという、サイボーグ化したティラノサウルスのような怪獣『スーパー必殺怪獣 デマゴーグ』の情報が映し出されていた。そこに、ひかりが口を出した。

 

「じゃあ、そのもう1人がまた襲ってくるかもしれないって事ですか!?」

「そうだな………あの時は地球で会社を作って、子供のゲームを売ってゲームで一番強い怪獣を実体化させて俺と戦わせていたけど………」

「わざわざ会社作って、社会的地位を確立するとは………用意周到だな………」

 

アスカの言葉に美緒が呆れたように言う。リュウはチェーン星人の対策を考えていた。

 

「とにかく、またチェーン星人が襲ってくる可能性がある。しばらく単独での外出は控えてくれ。」

「G.I.G.!!」

「分かりました!」

 

リュウに言われてアスカ、ミライ、ヒカリは返事をした。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

一方、次元城に帰還したチェーン星人・ライトは、怪我の手当てをしていた。半身であるチェーン星人・レフトがそれを見ていると、そこにギギの3人がやって来た。

 

『フン、大見栄を切ってそのザマか!!』

 

ジュモクカクがライトを嘲笑う。しかし、ライトはフッと笑うと立ち上がった。

 

『問題ない。これは作戦の第一段階に過ぎないのだからな。』

『何?』

『我々の計画はこれからだ。まあ見ているといい。』

 

ライトはそう言い残して、レフトと共にその場を立ち去った。

 

『負け惜しみ、という訳ではないだろうな………』

『ライトは正面から突っ込む事しかしないだろうが、レフトの方はなかなかの策士だ……』

『はてさて、どのような手を考えているのか……』

 

ギギたちはチェーン星人の背中を見ながら呟いた。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

『コウメイよ、お前の部下が面白そうな事をしているようだな?』

 

同じ頃、次元城の第4エリアでは円卓に座ったジュダ、コウメイ、ヅウォーカァ、ワロガが、ポーカーをしながら話していた。

 

「ええ。あの2人はウルトラマンダイナに恨みを抱いているようですからね。その復讐心で策を練っていたし、部下の怪獣を強化させていましたからね。」

『なるほどな。』

 

ジュダはそれを聞くとカードを2枚交換して、チップを1枚払った。次の番であるヅウォーカァがカードを1枚交換すると、ワロガにふと聞いた。

 

『そう言えばワロガ、何か探っているようだが、どうかしたか?』

 

ワロガは手札を見ながら考えていたが、ヅウォーカァの質問に答えた。

 

『………ブルトン、ずっと探してる。ブルトン、ヴェネツィアで消えて、見つかってない。』

『ブルトンが?』

 

ヅウォーカァが聞き返すと、ワロガは3枚交換をした。ジュダもそれに付け加えた。

 

『あの怪獣は、放っておけば面倒になるが手にすれば有効な戦力になる。おまけに倒そうにも、かなり厄介な手順で処理せねば、次元に穴が開いて大惨事となる………』

「なるほど、手元にあるだけで連中の脅威になりますわねぇ。」

 

コウメイが笑いながら言うと、ワロガがそれに続いた。

 

『ブルトン、逃げてる。おれからだけじゃない。他にも、狙ってるヤツ、いる………』

『何?』

『ブルトンを引っ張りだことは………悪いヤツもいるものだな………フラッシュ。』

 

ジュダは呆れながらも自分の手札を見せるが、

 

「ストレートフラッシュ。」

『フルハウス。』

『すいません、フォーカードです。』

『あら?』

 

他の3人がいい手札だったため、ガクッと肩を落としていた。ジュダはコウメイにチップを払うと、うーんと悩んだ様子をみせる。

 

『なーんでワシ、こういうゲーム弱いんだろ?顔に出ちゃうのかな?』

『そんな鉄仮面着けてるのに?』

 

ジュダの呟きに、思わずヅウォーカァがツッコミを入れた。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

チェーン星人の襲撃から1週間、警戒をしていたGUYSとウィッチたちであったが、あれ以来襲撃も怪獣等の出現はなかった。

 

「あれ以来、何も起きないですね………」

「チェーン星人のもう片方は、かなり用意周到だそうだし………いつ何を起こすかわからないな………」

 

格納庫で芳佳とミライが話していた。アスカもチェーン星人の動きがない事に首を傾げていたが、かつての戦いを思い出していた。

 

「あの時は、向こうから迎えに来て戦いを挑んできたけど、今回は特に動きはないみたいだし……」

「向こうが出てくるのを待つしかないのか………」

 

ミライがため息混じりに言った時であった。突然警報が鳴り響いた。

 

 

 

 

 

「どうした!?」

 

フェニックスネストのディレクションルームで、リュウがエリーに聞いた。

 

「GUYSスペーシーより、宇宙から怪獣が大気圏を突破したとのことです!」

「怪獣が!?」

「何で気が付かなかったんだ!?」

 

エリーの報告にカナタとコウジが疑問を口にした。

 

「GUYSスペーシーによると、怪獣はレーダーに感知されず、気が付いたら防衛ラインを突破していたとのことです!」

「レーダーに映らない怪獣………?」

「怪獣が日本の東京に向かったところまでは判明しましたが、その直後に見失ったとのことです。」

 

エリーの報告にリュウが聞き返した。スクリーンには怪獣の予測進路が表示されているが、関東方面の広い範囲に現れる事は分かるが、何処に現れるかまでは分からなかった。

 

「レーダーに映らない怪獣を、どうやって探す……!?」

「………俺に考えがある。」

「え?」

 

リュウはそう言うと、通信を入れた。

 

「美緒、それにサーニャ、悪いが手を貸してくれ。」

[私が……?]

「ああ、科学の目じゃあ見えないが、お前たちなら見えると思ってな。」

[なるほど、了解しました!]

 

リュウの頼みに美緒とサーニャは顔を見合わせながらも承知をした。

 

「怪獣を見つけ次第、対処をするぞ!GUYS, SALLY GO!!」

『G.I.G.!!』

 

アイハラ・リュウ隊長号令の下、CREW GUYSジャパンの隊員は出動をした。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

美緒をガンウィンガー、サーニャをガンローダーの後部座席に乗せたガンフェニックスは、東京の上空数百メートルにまで上昇していた。捜索だけであればストライカーじゃなくてもいいだろうと、ミーナからの提案であった。

 

「乗ったのは初めてだが、零戦よりも揺れは少ないな………」

「間もなく、怪獣の降下予測時間だ。分離して捜索を開始する。」

[G.I.G.!]

 

リュウの指示で分離をすると、2機の戦闘機は別方向に飛んで行った。

 

「どうだサーニャ?」

[………いえ、魔導針に反応はありません………]

「そうか………」

 

サーニャの全方位広域探査でも探せない事を聞いて、リュウは顔をしかめた。それを聞いた美緒は眼帯を外して魔眼を発動させ、怪獣の捜索を開始した。

 

「………!?なぁあッ!?」

「ど、どうした!?」

 

急に大声を上げた美緒にリュウが驚きながら聞いた。美緒は冷や汗を流しながらも、報告をした。

 

「い、いえ……十時の方向に、怪獣を確認しました。」

「確かか?」

「ええ。もうすぐ、あの雲から出てきます。」

 

ですが、と美緒が続けようとしたが、ガンウィンガーは美緒の指した方角に向かって行った。すると、雲の中から怪獣の足が現れ、危うく正面衝突をしそうになり、急転回をして回避をした。

リュウは舌打ちをしながら後方の怪獣を睨むと、その姿に呆気に取られてキョトンとした。

 

[[………は?]]

「……………何じゃ、あれは………?」

 

ガンローダーの2人からも困惑した声が聞こえ、リュウは思わず口に出した言葉は、彼女たちの代弁であろう。それ程、現れた怪獣のインパクトは凄まじかったのだ。

 

 

 

 

 

「フハハハハハ!!」

 

 

 

 

 

それは、巨大な臼に緑色の手足と尻尾、角が生え。赤く尖った目にキバの生えた口が付いたような怪獣であった!

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「………え、何あれ………?」

 

サンダーバード基地のモニターで怪獣の姿を見たアスカが、思わず呟いた。先日の恐竜戦車以上に見た目のインパクトが凄まじかった。

 

「あれって、臼、ですよね……?」

「だな………」

「もしかして、扶桑の「ツクモガミ」ってやつか?」

 

芳佳と直枝も困惑していると、エイラが言った。すると、隣にいたミライが思い出したように言った。

 

「あれは『モチロン』だ……!」

「も、もちろん?」

[ドキュメントZATに記録確認!レジストコード『うす怪獣 モチロン』!!]

 

ミライの言葉に芳佳が首を傾げた。ちょうどいいタイミングで、モニターにレジストコード『うす怪獣 モチロン』のデータが表示された。

 

[モチロンはかつて出現した際には、東京中の餅つき大会を襲撃し、推定十数トンの餅を捕食しています。]

「被害が大きいような、小さいような………」

 

モチロンの過去の所業を聞いて、微妙な顔になるバルクホルン。ミライはそれに付け加えた。

 

「タロウ兄さんの話では、モチロンは地球の人の「月では兎が餅をついている」という伝説を信じる心が月に到達し、怪獣化したものらしいです。」

[それで兎でも餅でもなく、臼の怪獣になんのかよ………]

 

通信機の先でリュウがツッコミを入れてきた。先ほどエイラが口にした「付喪神」というのも、あながち間違いではないように思えた。

モニターに映るモチロンに目をやると、モチロンはロープにつかまっており、その先には黒い飛行船が飛んでいた。

 

「あれでここまで来たのか………」

「さっきの話だと、特殊な生まれだからレーダーに映らない体質みたいダナ………」

 

直枝が呆れていると、エイラがそう推測した。

 

[モチロンは現在、日暮里方面に向けて進行中!]

「どちらにしても、モチロンがこのまま進むと街の被害が出るぞ。]

 

エリーの報告に美緒が言うと、リュウが指示を出した。

 

[補佐官、臼と杵、それにもち米を100㎏用意できるか?]

「え?ああ、できなくはないが………」

 

トリヤマは少し戸惑いながらも返答をすると、リュウは続けて指示した。

 

[よし、なら作戦は決まった。モチロンを餅つきでおびき寄せて、重力偏向盤で宇宙に送り返すぞ!]

「なるほど………」

 

リュウの指示を聞いたミライとアスカが納得をして頷いた。さっそく、餅つきの準備のために一同は奔走しはじめた。

 

「うーん、餅つきかぁ………」

「ネウロイと違って、怪獣は種類も対応も多種多様ダナ………」

 

芳佳とエイラは、モチロンの対処作戦に呆れと困惑の混じった顔になっていた。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

『モチロンが動き出したようだ。』

『そうか、いよいよか!!』

 

同じ頃、次元城でレフトから報告を受けたライトは意気揚々と立ち上がった。レフトは笑いながら、手にした端末を操作した。端末のモニターには、以前侵略に使用したデマゴーグを基に、頭部や背中にはビーム砲、自慢の尻尾の先端には円錐型ドリルを装備し、緑色の体表に黒と黄色のまだら模様を持った怪獣が映し出されていた。

 

『さあ目覚めろ、『デマゴーグ(ツー)』よ!ダイナへのリベンジの時だ!!』

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

十数分後、東京都内の広い公園に即席で作られた餅つき大会会場ができあがった。周囲にはガンマシンが停まり、リュウや美緒たちも手伝いをしていた。

 

「よし、モチロンはちょうどこっちに向かってきているし、準備完了だな!」

「このペースだと、あと数分でこちらに到達します。」

 

リュウとミライが、遠隔操作のカメラでモチロンの動きを見ながら言った。

 

「私、お餅つきって初めて………」

「わたしもダナ。」

「おーい宮藤、蒸したもち米って、臼に入れればいいのか?」

「あ、はい。それでつく前に杵で練って………」

 

背後ではバルクホルンが蒸しあがったもち米(新潟産)を臼に入れて、芳佳は餅つきの手順の説明をしている。エイラやサーニャ、ニパは醤油や海苔等、ついた餅を食べる時の調味料を用意している。

 

「………なんか、怪獣退治とは思えない雰囲気だな………」

「まあ、今回は相手が相手だからな………」

 

呆れる直枝に美緒は苦笑しながら答える。すると、ミライが声を上げた。

 

「モチロンが来ます!距離1500!」

「よし!餅つき作戦、開始!!」

『おー!!』

 

リュウの号令で、餅つきが始まった。

 

「よーし、はっ!」「はい!」

「はっ!」「はい!」

「はっ!」「はい!」

 

はじめてとは思えないバルクホルンの見事な腕前で、次々と餅が出来上がっていく。そうしていると、飛行船にぶら下がったモチロンが、肉眼でも確認できるまで接近してきていた。

 

「モチロンを確認!」

「よし、いいぞ………そのまま近づいて来い………!」

 

接近するモチロンを見ながら呟くリュウ。モチロンは段々と近づいてくると、餅つき大会会場に気が付いたのか飛行船から飛び降りて地響きと共に着地をした。

 

「んあ~~~?」

「気付いた!!」

 

こちらを見下ろしてくるモチロンにミライが小さく言う。後は餅を食べている間に重力偏向盤を使うだけなのだが、ふと、少しおかしい事に気が付いた。

 

「お、おお………!!」

「あれ?」

 

モチロンは臼の中の餅には目もくれず、急に恥ずかしそうにもじもじとし始めた。何だろうと思っていると、モチロンは目下で海苔を手に持ったサーニャに話しかけてきた。

 

「あ、あのー……そ、そちらの、黒い服の人………」

「え?」

「お、お名前は、なんて言うのでしょうか………?」

「あ、サーニャ・V・リトヴャグです………」

 

モチロンに名前を尋ねられて、困惑しながらも答えるサーニャ。すると、モチロンはもじもじしながらも嬉しそうな様子になった。

 

「サ、サーニャさん、ですか!あの、オ、オラ………月から地球を見てる時に……サ、サーニャさんを見てから、忘れられなくて………!」

「え?」

「は………?」

 

モチロンの突然の言葉を聞いて、美緒たちは呆然としてしまった。すると、モチロンはどこからか花束を出して、サーニャに差し出してきた。

 

 

 

 

 

「あの!ひ、一目見た時から、す、す、す………好きです!付き合ってください!!」

 

 

 

 

 

「………ふえ!?」

「はぁああああああああああああああああああ!!??」

 

モチロンの突然の告白にサーニャは顔を真っ赤にし、エイラは絶叫を、美緒たちは唖然となった。

 

 

 

 

 

つづく




第三十五話です。

・チェーン星人登場。割と好きなキャラだったので、今回実は生きてましたって事にしました。
 2人ともギギたちと同じコウメイの配下ですが、周りを挑発するというか下に見ているせいか、衝突は絶えない感じです。

・部下とポーカーに興じるジュダ。一応ヅウォーカァ将軍の忠誠心は七星将の中でも特に高いんですが、かの徳川家康公の「いさめてくれる部下は、一番槍をする勇士より値打ちがある」という言葉通り、遠慮なくツッコミ入れられるくらいにはいい環境。

・ブルトン行方不明問題。追っているのが誰かはいずれ。

・モチロン登場。今回、モチロンの名前出したら完全にギャグ回だって分かっちゃうと思い、サプライズ的に登場させました。

・サーニャに人生最大級の恋愛相手はモチロンでした。彼の恋の行方ははてさて?

では、また次回。


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第三十六話 恋の怪獣大相撲

ウルトラマンダイナに復讐心を燃やすチェーン星人が、アスカにリベンジを挑んできた。

 

それから一週間後、宇宙から現れた怪獣モチロンへの対処をしていたが、何と、モチロンの目的はサーニャに一目惚れしたためだったのだ。

 

突然の告白にサーニャは困惑し、エイラは叫んだのであった………

 

 

 

 

 

第三十六話 恋の怪獣大相撲

 

うす怪獣 モチロン

双体宇宙人 チェーン星人(ライト・レフト)

スーパー必殺怪獣 デマゴーグ(ツー)

異次元怪異 ネウロイ(GX-13)

登場

 

 

 

 

 

モチロンが花束を出して告白をし、その場はしんと静まり返った。

サーニャは顔を真っ赤にして困惑し、ミライや美緒は口をあんぐりと開けて唖然とし、エイラは絶叫をした顔でフリーズしていた。

 

「………………え、えーと……………」

 

おそらく、1分ほどの時間がたったと思うと、ようやくサーニャが声を出した。そして、手に持っていた海苔をテーブルに置くと、モチロンの目の前に出てきて、頭を下げた。

 

「ごめんなさい。」

「ええ!?」

 

サーニャに断られた事に大きくショックを受けるモチロン。後ろでエイラがホッと胸をなでおろしていると、モチロンはサーニャに聞いた。

 

「な、何で………何でダメなんだぁ!?」

「えーと、気持ちは嬉しいけど、怪獣はちょっと………」

「がーーーん………」

「まあ、そうだろうなぁ………」

 

真っ当かつストレートな理由、というか厳しい現実を突きつけられ、ショックのあまり周囲の背景ごとネガポジ反転してしまうモチロン。直枝が呆れたように呟くと、モチロンは花束を落として目に涙を浮かべてわなわなと震えていた。

 

「そ、そんな………う~~~うううあんまりだ……HEEEEYYYYあァァァんまりだァァアァ~~~~~~~~~~!!」

「あっ………」

 

モチロンはどこぞの怪焔王みたいに大泣きしながら踵を返し、ドスドスと足音を立てて走り去ってしまった。

 

「行っちゃった………」

「サーニャ、断るにしても、もう少し手心をだな………」

「いえ、あの、急だったから………」

 

走り去ったモチロンの背中を見ながら直枝はため息をつく。美緒はサーニャに苦言を呈したが、当の本人であるサーニャは困惑しながらも申し訳なさそうな表情をしていた。

 

「………ってか、モチロン放っといたらマズくないか!?」

「あ………」

 

そこで我に返ったリュウが叫ぶと、皆もハッとなった。傷心したモチロンが我武者羅に走ってしまっては、それだけで街に被害が出てしまう。慌てて一同はガンマシンやストライカーの元に向かうと、乗り込んで離陸をした。

 

「サーニャは、モチロンの方に行かない方がいいな………」

「そうだな………ひかりとエイラと一緒に、一旦基地に戻ってもらうか。」

「あ、はい………」

 

美緒と直枝に言われて、サーニャは2人と一緒に基地に方向転換した。

 

「とんだ災難だったナー、サーニャ。」

「う、うん………モチロンには、悪い事しちゃったかも………」

 

妙に嬉しそうなエイラに対し、モチロンに罪の意識を感じているらしいサーニャ。半分はエイラの占いのせいな気もするが、その時、隣を飛ぶひかりが話しかけてきた。

 

「………何言っているんですか、サーニャさん?」

「え?」

「話が通じる分、マシじゃないですか………」

 

ひかりは、ハイライトの消えた目でサーニャに話しかけていた。自分がゴメノスの時に味わった恐怖を思い出しているらしかった。

 

「ひ、ひかり………」

「何か、ごめん………」

 

ひかりの顔を見て、思わず謝ってしまうエイラとサーニャであった。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

それから数十分後、港の倉庫街でモチロンに追いついたリュウたちは、ガンマシンとストライカーから降りていた。モチロンは膝を抱えて座り込み、時折ため息をつきながら悲しそうな目で水平線を眺めていた。

 

「はぁ~………」

「………結構ショック受けてるみたいだな………」

 

倉庫の陰からモチロンの様子を見ていたリュウが呟いた。さすがに哀れに思えてくる。

 

「どうしますか、アイハラ隊長?流石に、このまま帰すのも少し気が引けますし……」

「地球に来た理由はサーニャちゃんへの告白で、悪意はないですからね………」

 

バルクホルンとミライが困り顔で言う。今回、モチロンの体質ゆえに混乱が生じてしまったものの、当のモチロンに悪気はなかった。ただ純粋に、想いを伝えようとしただけなのだ。

 

「話は通じるから、説得すればわかってくれると思う、が………」

「が?」

「………この中で、失恋したヤツ励ませるの、いるのか?」

「「「…………」」」

 

リュウの言葉に、全員黙ってしまった。よりにもよって今回、恋愛経験のないメンバーばかりが集まってしまっていた。

どうしたものかと頭を悩ませていると、どこからともなく、ピアノの音色が聞こえてきた。

 

「ん………?」

「何だ………?」

 

突然響いたその音に全員が耳を傾けると、その音は徐々に大きくなってきた。どこから聞こえてくるのだろうかと周囲を見渡していると、ピアノの音色は頭上から聞こえてくる事に気が付いた。

 

「上……!?」

 

芳佳が上空を見上げると、そこにははるか上空からグランドピアノが、ゆっくりゆらゆらと降りてきており、それを白い服を着た女性が弾いているのだ。

 

「え………!?」

「だ、だれ………!?」

「あの人は………!!」

 

芳佳たちはその人物に驚いているが、ミライはその女性に覚えがあった。

やがて女性はゆっくりと着陸すると、鍵盤蓋を上げて演奏をやめ、その場に立ち上がった。

 

「あなたは、月星人の南夕子さん、ですよね………?」

「ええ。はじめまして、みなさん。」

 

ミライは女性の方に駆け寄り、声をかけた。南夕子はニコリと微笑んで挨拶を返した。

 

「じゃあ、夕子さんは月の人なんですか………?」

「はい。この度は、うちのモチロンがまた地球の人に迷惑をかけてすみませんでした………」

「い、いえ………」

 

頭を下げる夕子に、芳佳たちは恐縮してしまう。

夕子はかつて、北斗星司とともにウルトラマンエースとして超獣と戦っていたが、遠い昔に超獣ルナチクスに滅ぼされた月星人の世界の再建のために地球を離れたのだという。

 

「月に文明があったとは………」

「最近になってヤプールがまた地球で悪事をしているって聞いて、地球の様子を見ていたんだけど、それをモチロンも一緒に見ていたらしくて……それでいつの間にか、地球に来ちゃったのよ………」

「そうだったのか……」

 

リュウが納得してうなずく。夕子は苦笑しながら話を続けた。

 

「まさか、モチロンが地球人の女の子に恋をするなんて思っていなくて……モチロンは、私の方で説得をしてみます。」

「は、はい、よろしくお願いします………」

 

夕子の申し出に美緒が会釈を返すと、夕子はモチロンの方へ歩き出した。しかしその時、リュウのメモリーディスプレイが通信音を鳴らした。

 

[隊長、目黒方面に怪獣が出現しました!!]

「何!?」

 

エリーからの通信により、怪獣出現が告げられた。モニターを見ると、そこには街を破壊する緑色の体表に黒と黄色のまだら模様を持った、サイボーグ化した怪獣の姿があった。その姿を見たリュウは、ある事に気が付いた。

 

「コイツ、この間アーカイブで見たチェーン星人の怪獣に似てるぞ!!」

「チェーン星人が動いたのか………!!」

 

その怪獣が、チェーン星人が生み出したデマゴーグに酷似している事に気が付いた。チェーン星人が強化して生み出した個体なのだろう。

 

「モチロンの対応に気を取られている間に………!!」

「まさか、チェーン星人はそれを狙って!?」

 

リュウの言葉に、美緒たちも気が付いた。レーダーに映らないモチロンが来るのを利用して、それの対処に追われている隙に攻め込む作戦であったのだ。

 

「アイツら、モチロンを利用しやがって………!!」

「みんな、直ちに怪獣の方に向かうぞ!」

「G.I.G.!」

「あ、宮藤とニパは、念のためモチロンの方に残ってくれ!」

「は、はい!」

 

リュウが指示を飛ばすと、美緒は芳佳たちに残るように伝え、その場から飛び去った。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「グヮァアアアウッ!!」

 

街に出現したデマゴーグⅡが咆哮と共に背中の大砲から破壊光線を放ち、建物を次々に粉砕していく。街中で爆炎が巻き上がり、逃げ惑う人々が次々と飲み込まれていく。

 

「きゃあああっ!?」

「助けてくれぇっ!!」

 

街の中を逃げる人々が悲鳴を上げる中、アイハラ隊長の率いるCREW GUYSジャパンが現場に到着した。

 

「怪獣を確認!!」

「市民の避難を優先しろ! 俺たちが時間を稼ぐ!!」

「「「G.I.G.!!」」」

 

ガンウィンガーからリュウが叫ぶと、ガンマシン各機はデマゴーグⅡに向かって行く。事前の情報から、デマゴーグは格闘センスに加えて先端の鋭利な尻尾を突き刺す「デマゴーグスペシャル」を武器とした怪獣だという事は既にわかっていた。おまけに背中や頭に大砲が装備されており、強化されている事は明白である。

 

「グヮァアアアウッ!!」

 

ガンマシンに気が付いたデマゴーグⅡが頭頂の砲門からビームを放つ!ガンマシンとウィッチたちはそれを回避すると、そのまま接近して攻撃を開始した。

 

「攻撃開始!!」

「「G.I.G.!!」」

 

先行したガンウィンガーがビークバルカンを放つと、デマゴーグⅡの腹部に当たって火花が散った。

 

「グヮァアアアウッ!!」

 

デマゴーグⅡは痛みに鳴き声を上げるが、その時、背中のビーム砲を持ったバックパックが分離をして空中に浮かび上がった。

 

「何!?」

 

バックパックが分離した事に驚く間もなく、バックパックはガンウィンガーに接近をしてビームを発射する。

 

「くっ……!!」

「グヮァアアアウッ!!」

 

リュウは咄嗟に回避をするが、そこにデマゴーグⅡの尻尾の先端でドリルが回転しながら迫ってくる!デマゴーグⅡの必殺技『ネオデマゴーグスペシャル』である!

 

「うぉおお!?」

 

リュウは回避をしようとしたが、右の翼にドリルが掠り小さい爆発が起きた!

 

「うおおお!?」

「アイハラ隊長!!」

 

黒煙を上げながらバランスを崩し落下をするガンウィンガーにミライが叫び声を上げた。幸い、ガンウィンガーは不時着をしたが、デマゴーグⅡとバックパックは攻撃の手を緩めず、街を破壊し続けていた。

 

「ぐぅ……!!」

「アイハラ隊長!」

「隊長、大丈夫ですか!?」

「ああ、何とかな……」

 

リュウは通信機越しに伝えた。その時、通信が入って来た。

 

[ふふふ、その程度かね、GUYSの諸君?]

「通信?」

「あの怪獣の背中にあったヤツからか………?」

 

リュウは、それが今飛翔しているバックパックからの通信である事に気が付いた。そしてメモリーディスプレイの画面には、左半身が青く右半身は真っ黒に塗りつぶされたような宇宙人・チェーン星人レフトの姿が映った。

 

「お前がチェーン星人か!!」

[はじめまして。先日はそこにいる私の片割れが、世話になったようだね。]

 

レフトが丁寧ながらも見下しているかのように挨拶をした。ミライはレフトの言った「そこにいる」という言葉に気が付いた。

 

「もう片方もいるのか…!?」

[その通りだ!!]

「グヮァアアアウッ!!」

 

ミライが呟いたその時、デマゴーグⅡの方から声が聞こえた。視線を向けると、デマゴーグⅡの頭頂部から右半身が赤いライトのホログラムが現れた。

 

「まさか、あの怪獣はお前らが!?」

[以前の失敗は、子供に遠隔で怪獣の操縦をさせていたからだ。デマゴーグⅡ本体はライトが、私がこのバックパックの砲撃を行う事で、その問題点を解決したのだ。]

[さあ、早く出てきたらどうだ?ウルトラマンダイナ!!]

 

チェーン星人の2人はそう言い放つ。リュウが歯噛みをしていると、ガンローダーから金色の光が飛び出たかと思うとみるみるうちに人型となり、ウルトラマンメビウスとなってデマゴーグⅡの目の前に着地をすると構えを取った。

 

「メビウス!!」

「グヮァアアアウッ!!」

『セヤァッ!!』

 

デマゴーグIIがひと鳴きをすると、メビウスはデマゴーグⅡに向けて駆け出した!

 

ドォンッ

『ゥアア!?』

「え!?」

 

しかしその時、メビウスの背中に赤い光線が直撃して爆発を起こした!背後を見ると、そこには左右に丸いファンを持った大型戦闘機のような30m級のネウロイが3体空中で静止していた!

 

「ネウロイだと!?」

[他のウルトラマンやウィッチに邪魔をされては困るからな。ヤプールに頼んで、ネウロイを拝借したのだよ。]

「くそっ………!!」

「「「キィィイイイイイイーーーーーーーーーーーーーーー!」」」

 

リュウが悪態をつくと、ネウロイたちはメビウスに向けて光線を放ってきた。メビウスは金色の『メビウスディフェンサークル』を発生させて防ぐが、そこにバックパックからの攻撃が襲い掛かる!

 

『グァアッ!?』

「メビウス!!」

「メビウスを援護だ!」

「「はい!!」」

 

美緒の号令で直枝とバルクホルンと共にネウロイに向かって行く。すると、ネウロイ3機はボディの上部から円盤型の子機が分離してウィッチたちに向かって行き、大型のネウロイ3機はメビウスに攻撃を再会した。

 

『さあ、どうしたんだウルトラマンダイナ!?早くしないと、お前の仲間が全員御陀仏だぞ!!』

 

戦いが激化する中、ライトが挑発するように叫んだ。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「メビウスが………!」

 

モチロンの元に残った芳佳とニパ、夕子が、デマゴーグⅡとネウロイとの戦いをメモリーディスプレイ越しに見ていて呟いた。

 

「このままじゃ、メビウスが………!」

[みんな、今からそっちに行く!それまで耐えてくれ!!]

 

アスカが通信を入れるが、フェニックスネストから戦場まで距離がある。少し歯がゆく思っていると、ふと、3人の背後でモチロンが大きなため息をついた。

 

「あ………」

 

それに気が付いたニパが、何か思いついたのかモチロンに向けて駆け足で近づいて行った。

 

「お~い、モチロン!」

「ん~~~?」

「お前、宇宙人の陽動に使われてたんだってさー!!」

「ええ………!?」

 

ニパに話しかけられたモチロンは、落ち込みながらもその内容に耳を傾けた。ニパは続けた。

 

「それでさー、ちょうど今その宇宙人が戦ってるんだ!モチロン、利用されて悔しくないの!!」

「そ、そりゃぁオラだって利用されて悔しいけど………」

「だったらさあ、アイツらぶっ飛ばしに行こうよ!!」

「ニ、ニパさん!?」

 

ニパの発言に芳佳と夕子も驚いた顔をした。確かにここからなら、アスカよりも先に戦場まで辿り着けるかもしれない。だが、当のモチロンはあまり乗り気ではない様子だ。

 

「でも、オラ……」

「それにさー………」

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

『グアアッ!!』

 

メビウスはネウロイの放った光線を受けて吹き飛ばされた。メビウスは立ち上がって構えるが、メビウスの背後に回ったネウロイの下部から先端にグローブのようなものが付いた長いアームが伸びると、メビウスを羽交い絞めにしてしまった!

 

『ゥウ!?』

 

メビウスは逃れようとするが、他のネウロイの下部からもアームが伸びると、メビウスに殴りかかってきた!

 

「メビウス!?」

「ネウロイが直接殴ってくるなんて………!!」

 

ネウロイの攻撃方法に直枝が驚いていると、円盤型の子機が光線を放ってくる。ビームをシールドで防ぐが、その間にネウロイ3機の攻撃でメビウスが倒れてしまう!

 

「メビウス!!」

『グウウ………!!』

 

リュウが声を上げるその時、メビウスのカラータイマーが赤く点滅を始めた。

 

「これ以上は、難しいか………!!」

 

美緒はメビウスの限界が近い事に気づくが、自分たちはネウロイの相手で手一杯。どうしようもない状況に舌打ちをした。

美緒はネウロイの光線を回避すると、烈風斬を放って一刀両断して破壊に成功した。

 

「私は大型に向かう。ここは任せ」

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

美緒が言いかけたその時、遠くの方から雄叫びが聞こえてきた。全員が振り向くと、そこには大きな臼がこちらにゴロゴロと転がってくるではないか!

 

「な、何だ!?」

「あれは、まさか……!!」

「どっせえええええええええええええええええええええええい!!」

 

一同が驚く中、臼は転がりながら大きく跳ねてそのままネウロイ3機に激突!ネウロイ3機は弾き飛ばされ、地面に叩きつけられ、そのまま粉々に砕け散り、子機も一拍置いて砕け散った。

 

『な、何事だ!?』

ドォンッ

『うげあ!?』

「グヮァアアアウッ!?」

 

バックパックのレフトがたじろいでいると、臼はデマゴーグⅡに直撃をして停止した。すると、止まった臼から手足がにょきにょきと伸びて、モチロンの姿になって立ち上がった。

 

「モ、モチロン!?」

「お前ら!よくも利用してくれたな!!」

『あ、あのやろぉー………!』

 

デマゴーグⅡ内のライトが悪態をついていると、怒りに燃えるモチロンが啖呵を切った。

 

『あの怪獣、我々が利用した事を知って……?』

『キサマ、よくもやってくれたな!!』

『ライト、落ち着け!』

 

レフトは怒るライトを窘めるが、ライトは聞く耳を持たない。モチロンは鼻息をフンと鳴らすと、デマゴーグⅡに向けて叫んだ。

 

「オラもう怒ったぞ!オラと相撲で勝負しろ!!」

『上等だ!受けてたつぞ!!』

『ライト!?』

 

モチロンの挑戦を勝手に受けたライトにレフトが困惑の声を漏らす。だが、モチロンとライトはやる気満々であった。

 

「な、何が起こったんだ………?」

「リュウさん!」

「おお、ミライ………」

 

同じくリュウが困惑をしていると、ミライがそこに駆け寄って来た。その時、上空の美緒たちの元に、夕子を連れた芳佳とニパが合流してきた。

 

「坂本さーん!」

「宮藤!って、夕子さんも飛んでる……?」

「そんな事より、モチロンのヤツ、どうしたんだ?」

「実は、モチロンに利用されていたのを教えて、ダイナが来るまでの時間稼ぎをしてもらおうってニパさんが………」

「なるほど……だが、モチロンのやつ、随分とやる気満々だな………」

 

腕を振って気合を入れるモチロンを見た美緒が芳佳は少し困ったような顔を浮かべた。

 

「そ、それが………」

 

 

 

 

 

「ニパさんが、「サーニャは逞しい男が好みだから、怪獣倒したら惚れてくれるよ!」って言ったら……」

 

 

 

 

 

「………なっ!?」

 

芳佳がそう言うと美緒たちは一斉にニパの方を見る。ニパは後頭部を掻きながら、誤魔化すように笑っていた………

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「何やってんダお前ーーーーーーーーーーーーーーーー!?」

 

同時刻、話を聞いたエイラが絶叫していた。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

街中に寄せ太鼓の音がなる中、設置された土俵の両側からモチロンとデマゴーグⅡが塩を撒いた。

 

どこから太鼓が鳴っているんだ、とか、

そんな大量の塩どこから用意したんだ、とか、

そもそも何で東京のど真ん中に怪獣が使えるようなデカい土俵が用意できたんだ、とか、

色々ツッコミどころがあるが、今は置いておこう。

 

「無駄に本格的だな………」

「こうなると、行司もいた方がいいかもな。」

 

怪獣たちの相撲が始まろうとする中、軽い冗談で直枝が一言言った。すると―――

 

『ならば、私が行司をしよう!』

 

どこからともなく声が聞こえたかと思うと、空間がパリンと割れてヤプールがその場に現れた!

 

「ヤプール!?」

「何で………!?」

『なに、相撲には行司が必要であろう?公平に審判をするから安心をしろ。』

 

ヤプールはそう言うが、過去の所業を考えると何一つ信用はできない。そうこうしている内に、モチロンとデマゴーグⅡは一礼の後土俵に上がり、四股を踏み始めた。

 

『に~し~、デマゴーグⅡ~~~!デマゴーグⅡ~~~!ひが~し~、モチロン~~~!モチロン~~~!』

 

ヤプールは鎌のようになった右手を軍配に見立てて、両者を呼びあげる。無駄に気合が入っている。

 

『ライトのヤツ………好戦的なのはいいが、こんな事に体力を使うんじゃないよ………』

 

レフトは離れた地点から、相撲の成り行きを呆れながらも見ていた。モチロンとデマゴーグⅡは中央で睨み合う。

 

『見合って見合って、はっけよい!!』

「どりゃあああ!!」

 

ヤプールが合図を出すと同時に、モチロンとデマゴーグIIはぶつかり合った!巨体同士がぶつかる衝撃に大地が揺れる。

 

『のこった!のこった!』

「グヮァアアアウッ!!」

「ぬぅううううんッ!!」

 

ヤプールが掛け声を掛ける中、モチロンとデマゴーグⅡは激しくぶつかり合い、互いに一歩も譲らない。力は互角のようだった。モチロンは勝負に出ようとしたのか、いったんデマゴーグⅡから離れると、勢いをつけて突進した!

 

「どすこぉおおおいッ!!」

「グヮァアアアウッ!!」

 

しかし、デマゴーグⅡは両手のひらを巨大化させてその突進を止めてしまった。ウルトラマンの光線をも完全に防いでしまうデマゴーグの能力の1つ「デマハンドプロテクション」である。

 

「な、」

「グヮァアアアウッ!!」ドドォンッ

 

モチロンは突進を止められた事に驚く間もなく、デマゴーグⅡは大きいままの手を振るって、モチロンを土俵の外にまで突き出してしまった!

 

「ぐぇえっ………!!」

「ああっ………!!」

 

土俵外に吹っ飛ばされて倒れるモチロンに美緒たちが悲痛の声を上げる。デマゴーグⅡは手のひらを戻すと、勝利を告げるように鼻息を荒くした。

 

「ウゥ……」

「モチロン………」

 

倒れたモチロンが悔しそうに顔を歪ませる。芳佳が思わず心配をしていると、行司を務めるヤプールが右手を上げて宣言をした。

 

『この勝負、モチロンの勝利ぃ~~~!』

「!?」

「何………!?」

 

ヤプールの思わぬ判定に、芳佳たちは驚き戸惑った。倒れていたモチロンも立ち上がる中、デマゴーグⅡ内のライトもバックパックのレフトも驚き、物言いをした。

 

『ヤプール、何を言っているのだ!?今のはどう見ても俺の勝ちだろうが!!』

『そうだ!貴様、どこに目をつけている!?』

 

チェーン星人が物言いをする後ろで、モチロンも不思議そうにしていた。当のヤプールはいたって真面目に答えた。

 

『では、今の試合を映像で確認しよう。』

 

そう言って手を振ると、上空に映像が投影されて先ほどの試合が流れた。一同の視線が映像に集中する中、映像はデマゴーグⅡがデマハンドプロテクションでモチロンを突き出す所からスローモーションになった。

 

『ここのデマゴーグⅡをよく見てほしい。』

 

ヤプールの言葉と共に、映像の中のデマゴーグIIが動き出した。そして、デマゴーグIIが手を突き出そうとした瞬間、直枝が「あ!」と声を上げた。

 

「あの怪獣の尻尾!」

「尻尾?ああ!」

 

ミライは何の事だろうと思っている中、映像をよく見ると、デマゴーグIIの尾が手を突き出す瞬間、自慢の長い尻尾が地面に叩き付けられて土俵の外にまで伸びきっていた!

 

『な、あ、あれは………!?』

『この通り、先に土俵外に出たのはデマゴーグⅡの方だ。よって、モチロンの勝利とした。』

 

ヤプールは堂々と言った。デマゴーグⅡは中のライトに連動してか、両手を両の頬に当ててショックを受けていた。

 

『そ、そんなバカな……!!』

「ギュウュ~~~………」

「こ、これは………」

 

意外にも公平な審判をしたヤプールにリュウやミライが困惑していると、芳佳はチラリとモチロンの方を見た。モチロンは勝利を告げられたものの、複雑な表情をしていた。

 

「う、うーん………」

「複雑そうだなモチロン………」

「試合に勝って勝負に負けてるからなー………」

 

美緒と直枝が顔を引きつらせていると、バックパックのレフトが声を上げた。

 

『ええい、こんな相撲などどうでもいいわ!!さっさとやるぞライト!!』

『お、おう………!』

 

ライトは未だにショックを隠せていないものの、デマゴーグⅡにバックパックが再度ドッキングし、デマゴーグIIは大きく咆哮を上げた。

 

「グヮァアアアウッ!!」

『おっと、これ以上長居は無用だな。』

 

ヤプールはそそくさと次元の穴に退散すると、デマゴーグⅡは再び街を破壊せんと動き出した。

 

「グヮァアアアウッ!!」

「アイツ、逆切れかよ!!」

 

直枝がうんざりしたように叫ぶ。突然暴れ出したデマゴーグⅡにモチロンもはっとなって構えるが、デマゴーグIIは頭頂部のビーム砲をチャージし始めた。

 

「モチロン、危ない!」

 

咄嗟にニパが叫んだその時、デマゴーグⅡの頭上で光ったかと思うと、人型になってデマゴーグⅡの顔に飛び蹴りが叩き込まれた!

 

『うぉおお!?』

「ギュウュ~~~!?」

『な、何だ!?』

 

デマゴーグⅡ内でチェーン星人が慌てふためく中、吹き飛ばされたデマゴーグIIは仰向けで倒れ込んだ。一体何が起きたのかと誰もが驚いていると、ウルトラマンダイナがその場に着地をした!

 

『ゼヤッ!』

「ダイナ!!」

 

ダイナはデマゴーグⅡに向けて構えを取った。デマゴーグⅡは起き上がると、ダイナを睨みつけた。

 

『ダイナ………!!』

『来いよ!俺と戦いたかったんだろ?』

『くっ……!』

 

挑発するような口調で来るダイナに対し、チェーン星人は歯ぎしりをするも、すぐにデマゴーグIIを動かした。

 

『上等だ!あの時の恨み、晴らしてやる!!』

「グヮァアアアウッ!!」

 

デマゴーグIIはひと声鳴くと、背中と頭のビーム砲を放つ!ダイナはバリアを張って防御をするが、デマゴーグⅡは直ぐに接近して巨大化させた手のひらで殴り掛かってきた!

 

『グワアッ!?』

『ふはははは!「攻撃は最大の防御」とはよく言ったものだな!!』

 

先ほどのモチロンとの戦いで見出した戦法を活かすライト。ダイナは倒れ込むが直ぐに立ち上がると、額のクリスタルを青く光らせて『ミラクルタイプ』にチェンジすると、ウルトラマジックを使って3人に分身、デマゴーグⅡの周囲を囲んだ。

 

「グヮァアアアウッ!?」

『そう来たか………!』

『だが、甘いわ!!』

 

ライトとデマゴーグⅡは慌てた声を上げるが、再度バックパックが分離して背後のダイナに向けて砲撃してきた。

 

『グゥッ!!』

 

背後のダイナは直撃こそ免れたものの、バックパックは攻撃の手を緩めない。更に、前側のダイナに砲撃と『ネオデマゴーグスペシャル』が襲い掛かる。ダイナはデマゴーグⅡの攻撃により何も攻撃が出来なくなってしまった。

 

『グ、グウウ………!!』

「グヮァアアアウッ!」

『このまま攻撃を続ければ、君は何もできないままエネルギー切れになる!!』

「それが狙いか………!!」

 

バックパックのレフトの言葉にリュウが呟いた時、デマゴーグⅡに向けて火炎が襲い掛かってきた!

 

「グヮァアアアウッ!?」

『な、何だ!?』

「うおりゃぁあああああ!!」

 

炎は、モチロンの口から放たれる「モチロンボイラー」であった。デマゴーグⅡはその攻撃にひるんで攻撃を止めてしまう。

 

『ライト!?』

 

レフトもそれに気が付いたが、バックパックの上部に火花が散って破損してしまった!

 

『な、何!?』

「よし!」

 

それは、ウィッチたちの攻撃によるものであった。美緒はガッツポーズを取ると、バックパックは慌てて攻撃をしようとした。しかし、その上空から直枝がバックパックに向けて急降下してきた!

 

「くらえやぁあッ!!」

ドゴォンッ!!

『ナニィイーーー!?』

 

直枝は右拳に魔法力を圧縮させてバックパックを殴りつけ、バックパックの右側が起こして地面にゆらゆらと落ちていった!

 

「どうだオラァ!!」

 

直枝が勝ち誇るように叫ぶ。ダイナは起き上がったデマゴーグⅡに向き直ると腕から『ハンドスラッシュ』を放って頭頂のビーム砲を破壊、デマゴーグⅡはデマゴーグⅡは頭を押さえて苦しみ出した。

 

「ギュウュ~~~………!!」

『こ、こんなバカなことが………!!』

 

レフトは信じられない声を漏らすと同時に、デマゴーグIIはフラつきながら立ち上がる。ダイナのカラータイマーが点滅を始めるが、ダイナは腕を交差させてフラッシュタイプに戻ると、素早く腕を十字に組んで『ソルジェント光線』の発射体制に入った。デマゴーグⅡはデマハンドプロテクションで防ごうとしたが、背中にウィッチたちの攻撃にひるんでしまい、その隙にダイナは必殺技を放った。

 

『ショワァアアッ!!』

バシュンッ

 

デマゴーグIIは避ける間もなく、ソルジェント光線を受けてしまった!

 

『うおおおおおお!?』

『ライト、脱出しろ!!』

 

レフトが叫ぶとライトは装置を起動させて脱出、その直後、デマゴーグⅡは倒れて爆発四散した!

 

「やった!」

 

芳佳が歓喜の声を上げると、ダイナは小さく頷く。しかしその時、地面に墜落したバックパックの中央部分から円盤が分離して空高く飛んで行った。

 

『おのれダイナ!覚えていろよ!!』

「あ、逃げた!」

「テンプレみたいな捨て台詞だな………」

 

逃げたチェーン星人に対して呆れる一同。ダイナはモチロンと顔を合わせると、モチロンの近くで何かがキラキラと光ったかと思うと、そこに巨大化した夕子が現れた。

 

「ええ!?」

「でっかくなっちゃった………!?」

 

巨大化した夕子に驚いているが、モチロンは夕子がいる事にようやく気付いて驚いていた。

 

「あ、姐さん………!!」

「モチロン、もう気は済んだでしょう?月に帰りますよ。」

 

夕子はモチロンに優しく話しかけた。モチロンは少しの間黙っていたが、やがて小さく頷いた。

 

「そうだな………相撲にも負けちまったし………」

「ええ。では、参りましょう。」

 

夕子が言うと、モチロンは渋々と言った感じで頷いた。夕子は皆に頭を下げて謝ると、モチロンはミライに顔を向けた。

 

「あの、サーニャさんに「強くなってまた来る」って、伝えてくんねえかな?」

「え?あ、うん………」

 

ミライは少し困ったものの頷いた。夕子はモチロンの手を引くと、ダイナと一緒に空高く飛んで行った。

 

「行っちゃった………」

「悪気はなかったとはいえ、はた迷惑なヤツだったな………」

 

芳佳と美緒が呆れながらも、遠くに消えていく夕子とモチロンを見送っていた。

 

「夕子さーーーん!!」

 

すると、ニパが空高くに消えていく夕子に向かって大声を上げた。

 

「ピアノ忘れてるよーーー!?」

『え?』

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

『首尾はどうだ、ドリダラ?』

 

次元城に帰還したヤプールは、待機していた配下の怪人に聞いた。聞かれた怪人―――三本角と大きな赤い目に大きな口、肩に赤い発行体を持った『マグマ超人 マザロン人ドリダラ』は、跪いて答えた。

 

『はっ、連中が相撲に気を取られている間に『ギロン人ヴィルダ』と『アンチラ星人パクチャー』が地球に潜伏しました。現在、『宇宙仮面イシュラ』が経過報告を聞いています。』

『そうか。あいつらを倒すには、まずは情報収集が必須だ。期待しているぞ、『ヤプール四鬼衆』よ。』

『御意!』

 

ドリダラは頭を下げ、それと、と話を続けた。

 

『少し気になる情報を得まして、まず、エンペラの残党が地球に潜入したと………』

『そうか………』

『それと………』

 

 

 

 

 

『宇宙各地で、『()()()()()()』らしき宇宙人が確認されている、と………』

『!?なにぃ………ッ!?』

 

 

 

 

 

つづく




第三十六話です。
サブタイトルから放たれるタロウ感が半端無くて好き(笑)

・あっさりフラれるモチロン。知性あるとはいえ、いきなり怪獣に告白されても困惑と恐怖があるだけなんで仕方ないと思います。芳佳たちの時は話通じなかったけど、モチロンは割とマシな方。

・ピアノを弾きながら南夕子さん登場。原典の再現なんだけど、改めて見るとわりとカオスな演出。

・ネウロイGX-13はウルトラマンコスモス劇場版よりトロイトータル。今回、ダイナ以外のウルトラマンやGUYS、ウィッチたちを引き離す必要があったため、アームユニットを持ったトロイトータルをチョイスしました。

・モチロンVSデマゴーグⅡ。尻尾が土俵外に出て負けるのは、怪獣同士の相撲ならではの敗因だと思います。デマハンドプロテクションの攻撃転用はお気に入り。

・ラストのニパのピアノ発言。「ウルトラ父子もちつき大作戦」を見て、冷静に考えたらあの後ピアノどうしたんだろうって思い入れてみました。

・ヤプール四鬼衆はいずれも『A』でヤプールの配下だった宇宙人、異次元人で構成。名前の元ネタは四天王(持国天ドゥリタラーシュトラ、増長天ヴィルーダカ、広目天ヴィルーパークシャ、多聞天ヴァイシュラヴァナ)から。無駄に由緒正しい由来。

では、また次回。


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レイオニクス編
第三十七話 春の吹雪


「グォオッ!グォオッ!」

 

深夜のブラジル、コルコバードの丘に低い鳴き声と、「キュイーーーン」と甲高い機械音が響いた。建つ高さ39.6メートルのキリスト像の後ろから現れたのは、頭や両腕、腹等に回転する丸鋸を持った怪獣『八つ切り怪獣 グロンケン』だった。

 

「グォオッ!グォオッ!」

 

グロンケンは右手の丸鋸をキリスト像の肩に入れると、そのままガリガリと袈裟懸けに入れていき、1分もしない内に真っ二つに切り裂いてしまった!

キリスト像の上半身が地面に落ちて砕け散ると、グロンケンは腕を上げて勝ち誇るように吠えたかと思うと、光になって消えてしまった。

 

『フフフ………』

 

 

 

 

 

第三十七話 春の吹雪

 

雪女怪獣 スノーゴン

冷凍怪獣 ギガス

凍結怪獣 ガンダー

冷凍怪獣 ペギラ

冷凍怪人 ブラック星人(RB)

ミニ宇宙人 ポール星人(RB)

一角超獣 バキシム

蛾超獣 ドラゴリー

異次元怪異 ネウロイ(GX-14)

八つ切り怪獣 グロンケン

登場

 

 

 

 

 

春も半ばになったある日、関東一帯を季節外れの大寒波を襲った。突然の猛吹雪で交通機関は麻痺し、多くの都市機能がストップしたのだ。

それは、東京郊外にあるCREW GUYSジャパン基地 フェニックスネストも、例外ではなかった。

 

「うひぃー!とんでもなく寒いなこりゃ………」

 

ある程度雪が弱くなったのを見計らって基地周囲の雪かきをしていたシャーリーは、防寒しながらも冷たい風に震えていた。そこにバルクホルンも加わる。

 

「だが、この雪を何とかしておかねば、緊急時に出動できなくなってしまう………今、GUYSの方でこの異常気象の解明に当たっているそうだが、早く原因を突き止めてくれればいいのだが……」

 

スコップ片手にため息をつくバルクホルン。すると、同じく雪かきをしていたリュウと美緒が近づいてきた。

 

「おう、すまねえな。」

「アイハラ隊長!」

「隊長自らとは………」

「ま、これくらいはやっておかないとな。」

「ところで、宮藤たちを見なかったか?」

 

美緒はキョロキョロと周囲を見渡して尋ねた。すると、シャーリーは一方を指さした。

 

「あっちで、雪合戦してますよ。」

「「「「わーい♪」」」」

 

指さした先では、芳佳がルッキーニやひかり、ニパと一緒に雪合戦をしていた。

 

「あいつら………」

「ほっとけ。それより、ミライたちを見なかったか?」

 

呆れる美緒にリュウが言う。リュウに聞かれたバルクホルンは少し顔を引きつらせながら一方を指さした。

 

「あっちで、雪合戦してますよ。」

「「わーい♪」」

「連れ戻せ。」

 

芳佳たちと一緒に雪合戦をするミライとアスカに、リュウは冷たく言い放った。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「ったく、一緒になって遊んでんじゃねーよ………」

 

数分後、フェニックスネストに戻って来たリュウは、ミライとアスカに苦言をしめしていた。

 

「いやー、悪い悪い。ミライが、雪見たの初めてって言うモンだから………」

「すみません、地球の雪って初めてだったから………」

 

アスカとミライが申し訳なさそうに謝った。すると、隣を歩いていたひかりが興味深そうに聞いてきた。

 

「え、光の国って、雪が降らないんですか?」

「うーん、雪って言うか、四季そのものがないかな。年中暖かい気候なんだよ。」

「へぇ~」

 

光の国の文化を聞いて感心するひかり。そうしている内にディレクションルームに到着した。

 

「エリー、何か分かったか?」

「はい、こちらをご覧ください。」

 

エリーはコンソールを操作すると関東一帯の地図が表示され、群馬県の山岳地帯の一点から寒波が発生している事が表示されていた。

 

「結論から言えば、この寒波は自然に発生したものではありません。寒波の発生源は群馬県榛名山です。」

「榛名山に?でもどうしてそんなところに……?」

 

ミサキ女史の説明に美緒は首を傾げた。エリーは再びコンソールを操作した。

 

「榛名山の調査をするために発進した、偵察用ドローンからの映像です。」

 

ディスプレイが切り替わって、吹雪の山中の映像が表示された。そして、吹雪の向こうに巨大な2体の怪獣が姿を現した!

 

『バオーーーッ!』

『プルップォーーー!!』

 

1体は全身が白い毛皮で覆われた1本角の怪獣、

もう1体は、カタツムリの触角のように飛び出た両目と、エイかあるいは(かみしも)のようなヒレを持った全身銀色の怪獣だ。

 

「怪獣!?」

「しかも、2匹も………!!」

 

怪獣の出現に驚く一同。2体の怪獣は殴り合っている様子だったが、一度離れた場面で映像が一時停止され、それぞれスキャンされた全身像が表示された。

 

「怪獣はそれぞれドキュメントUGとMATに記録がありました。白い毛皮の方はレジストコード『雪女怪獣 スノーゴン』、目が出ている方は『凍結怪獣 ガンダー』、どちらも冷凍能力を持った怪獣です。」

「冷凍怪獣……?」

「この2匹のせいで、寒波が起きてるというのか………!?」

 

バルクホルンが驚きで声を震わせ、リュウが怒りを込めた声で呟いた。

 

「現在、2体の怪獣は姿を消しています。そのために吹雪は止んでいますが、また現れれば吹雪が吹く可能性があります。」

「あの2匹は、それぞれ『ポール星人』と『ブラック星人』が操る怪獣です。恐らくは、星人がどこかに隠れていると思われます。」

 

エリーの報告にミサキ女史が付け加える。その報告を聞いたリュウは拳を強く握りしめた。

 

「ふざけやがって……何を考えてんだ宇宙人……!」

「だが、怪獣同士で戦っていたのが気になるな…何かあるのか………?」

 

美緒が訝しんで首を傾げていると、リュウは皆に指示を出した。

 

「よし、吹雪が止んでいる間に、怪獣を探して迎撃をする。万が一に備えて、コウジとマイはガンブースターと待機を頼む。GUYS, Sally Go!!」

「「「G.I.G.!!」」」

 

リュウの指示に一同が返事をする。すると、そこにミーナが申し出てきた。

 

「アイハラ隊長、私たちも今回の作戦に参加させてください。私やサーニャさんなら、怪獣や宇宙人の捜索に役立つと思いますので。」

「そうだな……よし、頼むぜ。」

「「はい!」」

 

かくして、GUYSとウィッチによる2大冷凍怪獣討伐作戦が開始された。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

同じ頃、次元城の一室にジュダはいた。小さい椅子に腰かけて目を閉じて、切っ先を下に向けた『バッドキャリバー』を握り、瞑想をしているようだった。

 

『………』

『ジュダよ………』

『ジュダよ………』

 

目を閉じるジュダの頭の中に声が響く。

 

『モルド兄上……ギナ姉上………』

『ジュダよ、状況はどうなっている?』

『はい。ウルトラマンや地球人たちとの戦いで力は集まっています。』

 

頭の中に響く声にジュダが答える。再び声が響いた。

 

『それで、もう1つの方はどうなっている……?』

『それが………レッドマンの対処に追われていて、まだ……』

『……まぁいいだろう、急ぐ必要はない。時間はいくらでもある。』

 

ジュダは申し訳なさそうに答えると、声の主である2つの声はあまり気にしないように答えた。

 

『ジュダよ、我らの使命を必ず果たすのだ………』

『はい必ずや………』

 

ジュダが小さく答えると、頭の中の声は聞こえなくなった。

 

『………使命は果たす。だが、その後は………』

 

2つの意思が完全に消えたのを確認したジュダは小さく呟きながら立ち上がった。

部屋から出たジュダは、場内が騒がしい事に気が付いた。

 

『……?何かあったのか?』

『グア!?ジュ、ジュダ様!!瞑想のお時間では………!?』

『今終えたところだ。それより、何があったのだ?』

 

ジュダは近くにいたグア兵に聞いた。グア兵は慌てた様子だったが、ジュダの質問に答えた。

 

『それが、ヤプール様が無断で超獣とネウロイを出撃させたんですグア!!』

『何だと……?』

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

十数分後、榛名山にガンフェニックスとミーナ、芳佳、ひかりが到着した。

 

「ここのどこかに、宇宙人が隠れているのか………?」

 

ガンフェニックスの後部座席でカナタがレーダーを睨みつける。ミーナも自身の『空間認識』で辺りを探していると、山の中腹辺りに不審な反応を見つけた。

 

「あれは……山の雪の中に、大きなものがあります!」

「確かか?」

「はい、間違いありません!」

 

ミーナは確信を持って返事をした。それを聞いたリュウたちは、機体を操作してその場所に向かうと、サーチをかけた。確かにその場所に、金属の反応があった。

 

「このサイズは、宇宙船のようだな………」

「吹雪に紛れて、雪の中に隠れていたのか………」

「もう1機も同様に隠れていそうだな………」

「よし、すまないがミーナ、もう1機の捜索を―――」

 

リュウが指示を出そうとしたその時、ガンフェニックスのコンソールがけたたましいアラート音を発した。

 

「隊長!ヤプールエネルギーを観測しました!」

「何!?」

 

リュウが驚く間もなく、空中が割れるように穴が開き、2体の怪獣、いや超獣が現れた!

 

「ゴガァーッ!ゴガァーッ!」

「ギュウュロロロロ!ギュウュロロロロ!」

 

1体は青い芋虫のような腹や手足とオレンジ色の結晶体のような頭と背中、尻尾を持ち、レーダーのような生物感のない目と頭頂部には銀色の1本角が生えた『一角超獣 バキシム』、

もう1体は、緑色の蛾の羽のようなザラザラした体表に大きな複眼と牙の生えた口、手や腰には虫の羽のようなものを持った『蛾超獣 ドラゴリー』だ!

 

「バキシムにドラゴリー!?」

「超獣が2体も………!?」

 

超獣が一度に2体も現れた事に驚いていると、バキシムは山に向けて両手を向けてその間から火炎放射を放ち、ドラゴリーも別の方向に向けて口から火炎放射を放って山を焼き始めた!

 

「アイツら、何をする気だ!?」

 

超獣の不可解な行動に一同が困惑していると、山の中から2機の円盤が飛び出してきた!

 

「あ、円盤が出てきた!!」

「ヤプールもあの宇宙人を探していたのか?だが、何のために………?」

「ゴガァーッ!」

「ギュウュロロロロ!」

 

困惑する一同を余所に、超獣たちは上空の円盤に標的を定めた。バキシムは両手の先からバルカン砲を放ち、ドラゴリーも両手からミサイルを連射して攻撃をしてきた!

円盤はジグザグに動きながら攻撃を回避すると、超獣たちから距離を取った。その時、円盤からそれぞれ小さな光が飛び出したかと思うと、地面で巨大化して地響きと共に怪獣の姿となった!

 

「ギゴオーーーッ!!」

「ギュイーーーッ!!」

「怪獣が!?」

「やっぱりあの円盤が………でも、さっきの2匹とは違う………?」

 

1体は白い体毛を持ったゴリラのような怪獣、もう1体はコウモリのような翼と角の生えたアザラシのような顔を持った怪獣だった。カナタが直ぐにアーカイブから怪獣のデータを検索すると、ドキュメントSSSPと、防衛チームが存在しない時期に出現した怪獣や宇宙人が記録された『アウト・オブ・ドキュメント』にそれぞれ記録が確認された。

 

「ゴリラみたいな方は「ギガス」、コウモリみたいな方は「ペギラ」!どっちも冷凍怪獣です!」

「別の冷凍怪獣!?」

「ギゴオーーーッ!!」

「ギュイーーーッ!!」

「ゴガァーッ!!」

「ギュウュロロロロ!」

 

ギガスとペギラはバキシムとドラゴリーとにらみ合うと、同時に駆け出してぶつかり合った!

 

「ギゴオーーーッ!!」

「ギュウュロロロロ!」

 

ギガスはドラゴリーに殴り掛かると、ドラゴリーはその拳を受け止めた。そのままドラゴリーは片腕だけで倒そうとするが、ギガスは全く動じず、逆に押し勝って転倒させるとその顔面にパンチを打ち込んだ!

 

「ギュウュロロロロ!?」

「ギゴオーーーッ!!」

 

ドラゴリーが悲鳴を上げながらも立ち上がるが、ギガスは容赦なくボディブローを叩き込んでドラゴリーを吹き飛ばした!

 

「ゴガァーッ!!」

「ギュイーーーッ!!」

 

一方のバキシムは両手の先端と鼻先からバルカン砲を放ってペギラに攻撃をするが、ペギラは翼を羽搏かせて飛翔して回避、そのまま飛び続けて回避するペギラをバキシムは追撃するが、ペギラはひらひらと避けながらバキシムに接近、その口から冷凍光線を放った!

 

「ゴガァーッ!?」

 

バキシムはそれを回避するものの、その瞬間、バキシムは弾かれるように宙を舞い、地面に墜落をした!

ペギラの武器である冷凍光線は、放射されると反重力現象が周囲に起こり、あらゆる物体が巻き上がるのだ。一説によれば、ペンギンの突然変異体であるペギラが空を飛べるのは、この能力に起因しているとされている。(民明書房刊『飛べない鳥が飛んだ!』より)

 

「すごい戦い………立ち入る隙がない………!」

「でも、おかしくないですか?超獣は怪獣よりも強いはずなのに………?」

「たしかに……一体どうなっているんだ?」

 

怪獣と超獣の戦いに圧倒されたカナタが呟く中、ふと、芳佳が疑問を漏らした。

確かに、怪獣と超獣では戦力差が大きいはずだ。しかし、目の前では怪獣相手に超獣は手も足も出せていないではないか。何が起こっているのか疑問に思っていると、バキシムとドラゴリーが地面に倒れて地響きを起こした。

 

「ゴガァ………!」

「ギュウ………!」

「ギゴオーーーッ!!」

「ギュイーーーッ!!」

 

倒れた2匹を前にギガスとペギラが雄叫びを上げた。そのまま2匹は超獣に近づいていくが、その時、上空から赤い光線が降り注ぎ、周囲で爆発が起こった!

 

「な、なんだ!?」

「今のは……?」

 

2人が上空を見上げると、そこには先端が尖った戦闘機のようなボディに先端が垂直に曲がった短い翼と後部に球体を持ったネウロイの姿があった!

 

「キィィイイイイイイーーーーーーーーーーーーーーー!」

「ネウロイまで……!?」

 

更にネウロイまで出現した事に驚く一同だったが、ネウロイは怪獣への攻撃を続け、周囲に爆発が巻き起る!

 

「ギゴオーーーッ!?」

「ギュイーーーッ!?」

「キィィイイイイイイーーーーーーーーーーーーーーー!」

「ネウロイまで出てくるなんて………!?」

 

ギガスとペギラが爆発にたじろいでいると、バキシムとドラゴリーが立ち上がって反撃をしようと向かって行った!

 

『ヤプールめ、調子にのるなよ!!』

「!?今のは………」

「あの円盤からか!」

 

突然聞こえてきた声にカナタたちが戸惑うと、円盤から小さな光が飛び出して2体の怪獣、スノーゴンとガンダーに姿を変えた!

 

「バオーーーッ!」

「ギゴオーーーッ!!」

「プルップォーーー!!」

「ギュイーーーッ!!」

「あの怪獣は…!!」

「やっぱり、あの円盤に怪獣を操る宇宙人が!!」

 

現れた2体を見てカナタと美緒は驚きの声を上げる。4体の冷凍怪獣の揃い踏みに超獣たちは一切の動揺もないのか、ネウロイと共にひと鳴きをして戦闘を開始した!

 

「キィィイイイイイイーーーーーーーーーーーーーーー!」

「ギュイーーーッ!!」

 

飛び上がったペギラがネウロイに向かって行く。ペギラはネウロイの攻撃を回避すると、口から冷凍光線を直撃させてネウロイを氷漬けにしてしまった!

 

「キィイーー………」

 

氷漬けになったネウロイはフラフラと地面に向かって落下、そのまま地面に激突すると、砕け散った。

 

「バオーーーッ!」

「ギゴオーーーッ!!」

「ギュウュロロロロ!」

 

ドラゴリーはギガスとスノーゴンを相手取っていた。ドラゴリーは口から火炎を放ってきたが、ギガスは口から冷凍光線を放って相殺、爆発で発生した衝撃波に双方が動きを止めた瞬間を狙ってスノーゴンがドラゴリーに接近して殴り掛かった!

 

「ギュウュロロロロ!!」

 

ドラゴリーが数歩後退をすると、ギガスがスノーゴンの共に接近してパンチを打ち込むが、ドラゴリーはそれを受け止めた。しかし、2匹の怪獣はそのままドラゴリーを押し返して地面に叩き付ける!

 

『超獣をカチンカチンにしてしまえ!!』

「バオーーーッ!!」

「ギゴオーーーッ!!」

 

円盤から星人の指示が飛び、スノーゴンは両手を合わせるとその指先と口から「凍結スノーフリーザー」を放ち、ギガスも冷凍光線を放った!

 

「ギュウュロロロロ~~……!!」

 

ドラゴリーは全身に冷凍ガスと冷凍光線を受けて凍り付く。スノーゴンは凍り付いたドラゴリーに近づくと馬乗りになり何度も殴りつけると、凍って脆くなったドラゴリーの手足や頭を文字通り千切っては投げ千切っては投げて解体してしまった!

 

「ひいっ………!!」

「流石に惨いな………!!」

 

ドラゴリーの惨状にひかりとリュウが顔を歪める。

 

「ゴガァーッ!」

「プルップォーーー!!」

 

一方、ガンダーと対峙していたバキシムは、両手からの火炎で応戦するも、ガンダーは口から強力な冷気を放ってそれを防ぐ。その隙を突いてペギラが後ろから飛び蹴りを頭部に喰らわせて転倒させた。

 

「ゴガァー……!?」

「プルップォーーー!!」

 

ガンダーは追撃でペギラと共に冷気と冷凍光線を放とうとするが、バキシムは咄嗟にガンダーに頭を向けると頭頂の一本角をミサイルのように発射した!

 

「プルップォーーー!?」

ドォンッ

 

ミサイルはガンダーに直撃をして、爆炎が舞い上がる。バキシムは立ち上がると飛び上がり、空中に割れるように開いた穴に飛び込んで穴を閉じてしまった。

 

「逃げたのか………」

「プルップォーーー!!」

 

バキシムが逃走したのを見てリュウが呟くと、爆炎の中から大してダメージを受けていない様子のガンダーが現れてひと鳴きをした。ペギラやスノーゴン、ギガスが集まってくると、円盤から声が響いた。

 

『見たか!我らの怪獣で、超獣を追い返したぞ!』

『その通りだ!我らレイオニクスの力を持ってすれば、超獣など恐るに足らず!』

「レイオニクス………?」

 

円盤から聞こえる声にカナタは首を傾げる。その時、円盤の上部からホログラムが現れて、尖った顔から直接手足が生えたような『ミニ宇宙人 ポール星人』と、血走った大きな目と角を生やし中央に赤い発行体を持った『冷凍怪人 ブラック星人』の姿が映し出された。

 

『我々のレイオニクスバトルの邪魔は、何人たりとも許さない!そのために吹雪を起こしたが、まさかウルトラマン達だけではなく超獣までも引き寄せてしまうとはな………』

「まさか、怪獣同士で戦わせるのに吹雪を………!?」

 

ブラック星人とポール星人の目的が怪獣同士の戦闘と聞いて、リュウが静かに怒りと不快感を露わにする。その時、凍り付いて地上に墜落したネウロイのボディの一部が赤く光ったかと思うと、その身を再生させて再び空へと浮上をした!

 

「コアは無事だったのか!?」

「キィィイイイイイイーーーーーーーーーーーーーーー!」

 

ネウロイは大きくひと鳴きをすると、周囲に赤い光線を放ってきた!

 

「くっ………!」

「ガンフェニックス、スプリット!」

 

ネウロイは上空のガンフェニックスとウィッチたちに狙いを定めて攻撃を仕掛けながら突っ込んで来た。ガンフェニックスは分離をしてガンウィンガーとガンローダーがネウロイを迎撃するも、ネウロイはビームを放ち続けて攻撃の手を緩めない。しかし、ウィッチたちはその隙にネウロイの上に回り込んだ。

 

「攻撃開始!」

「「了解!!」」

 

ミーナの号令で芳佳とひかりが銃撃を浴びせる!ネウロイの装甲が少しずつ剥がれ落ちていくと、ネウロイは上部から光線を放ってきた!咄嗟にシールドを展開させて防御をするが、ネウロイの攻撃は続く。

 

「キィィイイイイイイーーーーーーーーーーーーーーー!」

「くっ……!意外に強い………!」

 

ネウロイの猛攻に苦戦をしていながらも、どうにか反撃の機会を狙っていると、その時

 

「バオーーーッ!」

「ギゴオーーーッ!!」

「プルップォーーー!!」

「ギュイーーーッ!!」

「!?」

「何だ!?」

 

突然、4代冷凍怪獣の咆哮が山間に響いた。何をするかと思っていると、怪獣たちの口から冷気や冷凍光線を放ちながら回転をし始めると、次第に天候が悪化していき、大吹雪となって辺り一面を覆い尽くした!

 

「うおぉーーーっ!!?」

「きゃああ!?」

「キィィイイイイイイーーーーーーーーーーーーーーー!」

 

上空のウィッチたちとガンマシン、ネウロイは猛吹雪で飛行が難しくなっていき、ついに強風に流されて地面に向かって墜落をしてしまった!

 

『ふん、地球人共諸共吹っ飛ばされたか………』

『怪獣達は休息が必要だな………時間をおいて仕切り直すとしよう。』

 

円盤内のブラック星人とポール星人はそう取り決めると、怪獣たちは光になって円盤に回収されていった。円盤は山の斜面に着陸をして雪の中に消えるが、吹雪は病む様子がなかった………

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「ぅう………」

 

雪の上に墜落をしたミーナは、冷たい感覚に目を覚ました。起き上がって周囲を見ると、自分と同じように墜落した芳佳とひかりの姿があった。

 

「ふ、2人とも………!」

 

ミーナは何とか2人の元に向かい、抱きかかえた。2人とも気絶をしているようだが、傷はあまりないようであった。

 

「こちらミーナ、アイハラ隊長、応答願います。」

 

ミーナはインカムに通信をするが、ノイズが聞こえるだけで返答がない。墜落の衝撃で壊れたのか、宇宙人たちの妨害化は不明だが、連絡が取れない状況にあった。

 

「何とか、吹雪を凌げる場所でもあれば………」

 

周囲を見渡すが、見渡せる範囲には木々しか見えず、洞窟のような場所は見当たらない。どうするべきかを悩んでいると、その時、サク、という音が手元で聞こえた。何かと思ってみてみると、それは雪の上に赤い薔薇が一輪刺さっていた。

何故薔薇が?と疑問を思うが、よく見ると少し離れた場所にも同じように薔薇が、等間隔で雪の上に刺さっていた。まるで道標のようだと思い目で追うと、そこには大きなかまくらのようなものが見えた。

 

「いつの間に………」

 

先ほどまでなかったはずのものを見つけて何かの罠かもしれないと思ったが、今は悩んでいる暇はない。ミーナは芳佳とひかりを抱えると、赤い薔薇を辿るようにかまくらに向かって歩き始めた。

 

「失礼します………」

 

かまくらに到着したミーナが入り口から中をのぞきながら声をかけた。かまくらは意外に広く中央にはストーブらしきものがパチパチと燃えていた。15㎡くらいはあるのではないだろううか。その中央に、こちらに背を向ける白いスーツにソフト帽を被った男性の姿があった。

 

「ああ、ようこそ、美しいお嬢さん(マドモアゼル)………」

「は………?」

 

こちらに振り返った男性は赤い薔薇を右手に持ち、眼鏡をかけた顔で笑いかけてきた。

 

 

 

 

 

つづく




第三十七話です。今回から新章です。

・冒頭の罰当たりどころか宗教問題不可避のグロンケンは、今回のレイオニクス編のキーになる予定。

・今回は冷凍怪獣祭り。序盤の雪合戦の件はお気に入り。

・瞑想するジュダ。モルドとギナの意思が実は残っていて、ある企みをしていました。

・超獣対怪獣対ネウロイ。怪獣側はレイオニクスのバフかかっているため超獣すら圧倒しています。ヤプールがレイブラッド星人を恐れる理由を、自分なりに表現してみました。
 ネウロイのモチーフはマッキー3号。

・何回か登場した謎のレイオニクス本格登場。今回のキーマンとなります。

・ところで、ガンダーが裃着たように見えるのは自分だけかな?

では、次回もお楽しみに。


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第三十八話 白銀の死闘【Aパート】

関東一帯を大寒波が襲った。原因は群馬県榛名山山中で戦う冷凍怪獣であった。

 

ヤプールの放った超獣すらも倒す怪獣たちによって起こされた猛吹雪によって、ミーナたちは離れ離れになってしまった。

 

遭難したミーナを助けたのは、白いスーツを着て赤い薔薇を持った謎の男であった………

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

『さてヤプールよ、今回の無断行動について、何か弁明はあるか?』

 

次元城の謁見の間において、玉座に座ったジュダが目の前で跪くヤプールに問いかけた。ジュダの他、ヤプール以外の七星将がヤプールを睨みつけていた。

 

『貴様、分かっているのか?我らグア軍団の一員である以上、超獣とネウロイは貴様だけのものではないのだぞ!?』

「落ち着きなさいなヅウォーカァ将軍。でもヤプールちゃん、何か考えがあるんなら、言ってみなさい?」

 

イラつくヅウォーカァをコウメイがなだめつつ、ヤプールに問いかけた。すると、跪いていたヤプールが顔を上げた。

 

『……結論から言えば、あの怪獣は『レイオニクス』によって操られていました。』

『………!?』

『レイオニクス………?』

 

ヤプールの発言を聞いたジュダは、大きく目を見開いて驚いた。「レイオニクス」の名前を聞いてもピンと来ていないようであったが、ジュダはヤプールに聞いた。

 

『それは真か?』

『はい。ジュダ様もご覧になったでしょう?本来であれば、あの程度の怪獣ごとき、超獣の敵ではありません。超獣を圧倒したのは、レイオニクスの持つ『怪獣使い』の力で強化がされていたためです。』

『ううむ………』

 

ジュダは唸りながら考えた。内心冷や汗をかいていると、コウメイがジュダに問いかけた。

 

「ジュダ様、レイオニクスとは一体………?」

『………レイオニクスとは、かつて全宇宙を支配した『レイブラッド星人』の遺伝子を受け継いだ怪獣使いの事だ。』

『全宇宙を………!?』

『まあ、ワシやエンペラ星人、ジャッカル大魔王による『暗黒時代』以前の話だがな。そういえば、ヤプールはかつてレイブラッドに滅ぼされかけたのだったな?』

 

ジュダの説明に6人の七星将は信じられないといった反応をした。ヤプールは続けた。

 

『本来であればジュダ様の許可を得るのは必然でありました。しかし、ジュダ様の瞑想の時間が終わるのを待っている時間はないと独断して、超獣とネウロイを発進させてしまいました………大変申し訳ございませんでした………』

『ふうむ………』

 

ジュダは頭を下げるヤプールを見て、腕組みをしてしばし考える素振りを見せた。そして口を開いた。

 

『……よかろう、今回だけは不問とする。皆もそれでよいな?』

『ええ。あの怪獣共の力を見れば、やむを得ないかと。』

「同じく。」

『以後、注意するべき。』

「右に同じ。」

『意義なし。』

『ウオオオオオオオオ!!』

『ご理解をいただき、ありがとうございます。』

 

ジュダの言葉にヅウォーカァを始めとして七星将も賛同する。ヤプールは深々とお辞儀をすると、その場を後にした。

 

(バキシムはダメージがあるが、強化改造をすればまだ使える。とにかく、あの付近にある()()がバレる前に………)

 

 

 

 

 

第三十八話 白銀の死闘

 

雪女怪獣 スノーゴン

冷凍怪獣 ギガス

凍結怪獣 ガンダー

冷凍怪獣 ペギラ

冷凍怪獣 シーグラ

宇宙海獣 レイキュバス

冷凍怪人 ブラック星人(RB)

ミニ宇宙人 ポール星人(RB)

異次元怪異 ネウロイ(GX‐14)

誘拐怪人 ケムール人・隠刀のアイチヨ

登場

 

 

 

 

 

猛吹雪が関東一帯に発生する中、フェニックスネストでは美緒やバルクホルンが浮足立っていた。猛吹雪前に冷凍怪獣4匹とネウロイの出現を確認しており、その直後から連絡が取れなくなってしまったからだ。

 

「ミーナや宮藤からの連絡はまだなのか!?」

「落ち着けバルクホルン!今は慌てている場合ではひゃっ!?」

 

焦っているのか怒鳴るように大声を上げるバルクホルンに対して美緒が叱ろうとした時、突然首筋に冷たいものが当たったため、悲鳴を上げてしまった。

 

「まずは、君が落ち着きなよ。」

「が、我夢さん………」

 

振り返った先にいた我夢がミネラルウォーターの入ったペットボトル片手に立っていた。美緒はそれを受け取ると、キャップを開けて一口飲んだ。

 

「ミーナ隊長たちが心配なのは分かるけど、少しは冷静になりなよ?今はこの吹雪で捜索も難しいし、下手に外に出たら遭難してしまう………」

「そ、そうだな……すまない、私としたことが……」

 

我夢の指摘に冷静になったらしい美緒が謝ると、彼は気にしていないという風に手を振った。その時、美緒の持つメモリーディスプレイが通信を知らせる音を立てた。

 

「どうした?」

[ついさっき、宇宙人がこちらに向けて一方的な通信をしてきました!]

「何だと!?」

 

通信相手のミサキ女史が、少し慌てたように言ってきた。こちらのメモリーディスプレイにその映像を表示させてもらうと、そこにはブラック星人が映った。

 

[GUYSの諸君、俺はブラック星人だ。俺の目的は同じく地球に来たポール星人との決闘である。その邪魔をしなければ、我々は何もしない。もし邪魔をするなら、容赦はしないぞ!!]

 

ブラック星人はそう言って通信を切った。映像を見た美緒とバルクホルン、アスカの3人は、苦虫を噛み潰したような顔になった。

 

「アイツ……随分と勝手な事を………!!」

「宇宙人同士の戦いのためなんかのために、地球に迷惑をかけて………!!」

「今はこの場で待っている事しかできないなんて………!」

「くっ……!」

 

歯痒い思いをする美緒とバルクホルン。我夢は猛吹雪の先にいるであろうミライは芳佳たちを思いながら、ただひたすら祈るしかなかった……

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

一方、大雪に包まれた榛名山に墜落したガンウィンガーから降りたリュウとカナタは、機体に損傷がないか確認をしていた。

 

「エンジンや銃器に異常はなさそうですね。」

「ああ。だがこの吹雪じゃあ、しばらくは飛べないな……」

「ええ………」

 

2人が乗るガンウィンガーは、墜落の衝撃で所々へこみ塗装が剥げた箇所があったものの、幸いにも大きな破損はなく飛行に問題はなかった。しかし、2人の視界には猛吹雪によって辺り一面銀世界と化した光景が広がっていた。

 

「この吹雪に加えて電波障害……怪獣やネウロイが攻めてこないのは幸いだが……」

「ひとまず下山してどこかで暖を………」

「それは、賢くない。」

「「!?」」

 

カナタが言いかけたその時、不意に声が聞こえた。振り返った先には、黒い着物に深編み笠を被り腰に刀を差した、まるで時代劇からそのまま飛び出してきたかのような出で立ちの男が立っていた。リュウは何者かと疑問に思いながらも、男の足元に()()()()()()()事から只者ではないと判断し、トライガーショットを抜いて銃口を向けた。

 

「この吹雪では下山は難しい。遭難するのが関の山だ。」

「お前、地球人じゃないな!?」

「それは正しい。俺はエンペラ軍団『宇宙人遊撃衆』の一員、『魔剣のセンジューロー』だ。」

「エンペラ軍団だと!?」

 

センジューローと名乗った男の言葉に、リュウは思わず驚きの声を上げた。以前現れたカウントやボルターが率いていた部隊とは違うようだが、リュウはセンジューローに聞いた。

 

「まさか、あのブラック星人とポール星人のどちらかは、お前の仲間なのか?」

「それは違う。だが、あいつらは我々にとっても邪魔な奴らだ。」

「邪魔だと?どういうことだ?」

「それは言う必要はない。メビウスの方は、俺の仲間が見つけている。問題はない。」

 

センジューローのその言葉に、リュウとカナタは顔を見合わせた。

 

「仲間がいるのか?だが、何でお前らがウルトラマンであるミライを………?」

「それは成り行きだ。今回の俺たちの目的はあくまで偵察だ。さっき言ったようにあの連中は俺達にとって邪魔、敵は同じだ。」

「敵の敵は味方、って事か………」

「その認識で問題ない。あのウィッチとか言う小娘共も、別の宇宙人に助けられたようだ。」

「そうか…………」

 

美緒たちが無事だと知ったリュウは安堵した。センジューローはその場で踵を返して歩き出した。

 

「とにかく、今は待機しておけ。この吹雪も後数時間で止むだろうからな。」

「待て!」

 

リュウが止めるもの聞かず、センジューローは背中を向けたまま吹雪の中に消えて行ってしまった………

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「ぅう………?」

 

ミライは目を覚ますと、そこはどこかの洞窟のようであった。起き上がって周囲を見渡すと、焚き火の前に腰かける異形の姿があった。

 

「おや、起きたんでアリンスね。どこか怪我はアリンせんか?」

「ケムール人………!?」

 

ミライが見たのは、頭頂に先端がラッパのようになった触角を持ち、いびつな細長い頭部に入った黄色い亀裂に目を持った細身の宇宙人―――『誘拐怪人 ケムール人』であった。丈の短い紫色の忍び装束らしき服を着たそのケムール人は、立ち上がったミライに向き直って甲斐甲斐しく頭を下げた。

 

「ワチキはエンペラ軍団『宇宙人遊撃衆』所属の『ケムール人・隠刀のアイチヨ』にアリンス。以後、お見知り置きを。」

「エンペラ軍団………だが、何故僕を助けたんだ?」

 

アイチヨと名乗ったケムール人(どうやら女性個体のようだ)に当然とも思える疑問を口にするミライ。アイチヨは「フォ、フォ、フォ、」と笑いながら答えた。

 

「簡単な事でアリンス。あの宇宙人どもは、ワチキたちにとっても邪魔な存在故、主さんにも排除を協力してもらいたいのでアリンス。」

「協力?」

「と言っても、ワチキの方でもあの連中、レイオニクスの情報は少ないので、あまり力になれそうにもアリンせんけど……」

 

アイチヨはあまり申し訳ないようにそう言う。ミライはアイチヨが口にしたレイオニクスが何かはよく分かっていなかったが、アイチヨに尋ねた。

 

「それで、何か考えがあるのか?」

「残念でアリンスが、あまり手を貸す事は出来んせん。しかし、主さんはあの冷凍怪獣を倒せる術を持ってやす。」

「術を……?」

「ええ、主さんの持っている「炎」であれば、冷凍怪獣を倒せるでアリンしょう?」

 

アイチヨの言葉にミライははっとしたような顔となった。

 

「主さんの乗っていた戦闘機は、洞窟の外にアリンス。吹雪は止むまで、ここを使っていくと良いでアリンしょう。」

 

アイチヨはそれだけ言うと、触角の先端から液体を噴き出して自分自身にかけた。すると、液体のかかった箇所から段々と姿を消していった。ケムール人の持つ「消去エネルギー源」であった。

 

「主さんの健闘、祈ってアリンス。」

 

アイチヨはその言葉を残して、姿を消してしまった。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「………ひとまず、助けてくれたのはお礼を言っておくわ………」

 

同じ頃、かまくらに避難したミーナは、男に問いかけた。芳佳とひかりは、かまくら内のソファーに毛布を巻いて休ませていた。男は右が青、左が黄色の瞳でミーナを見ながら、右手に持っていた一輪赤い薔薇をミーナに差し出した。

 

「いえいえ、あなたのような美しい女性が困っていては、放っておくわけにはいきませんので。」

「はあ………」

 

ミーナは若干戸惑いながらも薔薇を受け取ると、男に問いかけた。

 

「あなた、一体何者なの?」

「そうですね、その赤い薔薇『クリスチャン・ディオール』から、『ディオール』と名乗っておきましょうか。生憎、生まれついて名前というものを持ち合わせていないものでして。」

「………そうですか。」

 

ディオールと名乗った男に不信感を露わにするミーナ。ディオールは気にしないでテーブルの上のティーポットから紅茶を入れると、それをカップに入れて差し出した。

 

「どうぞ、温まりますよ。」

「……いただきます。」

 

ミーナは一瞬躊躇ったが、受け取ったカップを口に近づけて少し香りを嗅いだが、嗅いだかぎり何らかの異変は感じられない。ミーナはゆっくりと口をつけた。

 

「……美味しい……」

「お口に合って良かったです。」

 

ミーナの呟きを聞いたディオールが、にっこりと微笑んだ。少なくとも彼に自分たちをどうにかしようと思っていないことを確信したミーナは、改めて彼の姿を見る。

 

(彼に私たちを傷つける気はないようだけど……彼は何者なのかしら?あんな格好でこの吹雪の中を登山する地球人はまずいないだろうから、恐らくは宇宙人……)

「ああ、こちらの情報を明かさないのは不公平ですよね?私は地球人ではありませんが、あなた方と敵対する気はありません。ご安心ください。」

 

ミーナの考えを見透かすように、ディオールは言った。ミーナは思わず息を呑む。

 

「………あなたの目的は?」

「私の目的ですか……それは、まぁおいおい話すとしましょう。さっきのあの連中、ブラック星人とポール星人とは、地球で言うところの「同じ穴のムジナ」でしてね。私たちは「レイオニクス」と呼ばれる、特殊な怪獣使いの一派なんですよ。」

「レイオニクス………」

「詳しい話をする時間はないでしょうから省きますが、同じレイオニクスでも争い合う間柄でしてね……まあ、私はアイツらと違ってその土地の人に迷惑をかけるような事はしたくないので、あの2人の行動は忌むべき事ではありますが……」

 

そう言うと、ディオールは肩をすくめた。ミーナはディオールの話を聞いて頷くと、逆に問い返した。

 

「あなたたちがレイオニクスだという事は分かりました。それで、何故あなたたちは私を助けたんです?」

「あの連中と敵対をしているということもありますが、何よりも、あなたが女性として魅力的だから、というのが大きいですね………」

「なっ………!!」

 

ディオールの突然の告白にミーナの顔が真っ赤になる。そんな彼女を尻目に、ディオールはにっこりと笑っていた。

 

「ミーナ隊長……」

「え?」

 

ミーナが呆然としていると、いつの間に目を覚ましたのか、芳佳とひかりがこちらを見ていた。

 

「何を宇宙人といい雰囲気になっているんですか………?」

「私たちやサーニャちゃんは怪獣だったのに………」

「え!?あ、いや、その………!!」

 

自分たちが経験した「人生最大級の恋愛」と比較して、幾分かマシな恋愛状況であるせいか、ハイライトの消えた目でミーナを見つめる芳佳とひかり。ミーナは慌てて弁明をしようとしたが、ディオールは笑っているだけであった。

 

「おや、吹雪が止んできたようですね。」

「……あ、本当だ。」

 

ディオールの言葉に、芳佳とひかりも外を見た。先ほどまでの猛吹雪は弱まっており、晴れ間が覗いていた。

かまくらの外に出た3人は空を見上げると、ミーナの持つメモリーディスプレイが通信音を鳴らした。

 

「こちらミーナ。」

[ミーナ隊長!よかった、無事でしたか!!]

 

応答すると、すぐに切羽詰まった様子のエリーの声が聞こえてきた。通信障害が治ったらしい。

 

「エリーさん、すみません、どうにか助かりました。」

[いえ、無事で何よりです。ですが、先ほどのネウロイも再び動き出したようです!]

「何ですって!?」

 

ミーナが声を上げたその時、遠くの方でネウロイの甲高い鳴き声と爆発音が聞こえた。

 

「どうやら、ここから近いようね………」

[今、ガンブースターとガンスピンドラー、それに我夢さんのファイターEXが向かいました。アイハラ隊長と合流次第、迎撃をお願いしたいのですが……]

 

エリーがそう言った時、芳佳とひかりもかまくらから出て来ていた。その後ろからディオールが大荷物を引きずって出てきたかと思うと、その荷物は3人のストライカーユニットと銃器であった。

 

「あ、それ……」

「回収をしておきました。雪に埋もれては探すのも一苦労ですしね。」

「ありがとうございます!」

「お礼は不要ですよ。ただ、どうしてもというのであれば、後で個人的にお付き合い願いたいですけどね……」

「……は、はぁ……」

 

ディオールの申し出に戸惑うミーナ。その横で、ひかりと芳佳は自分たちの武器を点検していた。

 

「よし、大丈夫そうですね。」

「うん。」

 

2人とも問題がないことを確認すると、ミーナも点検を済ませて自分の武装を装着した。

 

「発進!!」

「「了解!!」」

 

ミーナの号令と共に、3人のウィッチは空高く飛び上がった。

3人を見送ったディオールは帽子をかぶり直すと、3人とは反対の方向にある『同胞』の気配を察した。

 

「………さて、向こうは私とウルトラマンメビウスでどうにかするか………」

 

ディオールはそう呟くと、踵を返して歩き出した。

 

 

 

 

 

いつの間にか、かまくらは跡形もなく消え去っていた……

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

洞窟から出たミライは直ぐ近くに停まっていたガンローダーの計器やエンジンに異常がないかチェックしていた。飛行するのに問題がないと確認をした時、上空からジェットエンジンの音が聞こえ見上げてみると、ガンウィンガーが垂直で着陸をする体制に入っていた。

 

「ミライ!」

「リュウさん!カナタくん!」

 

キャノピーを開けて飛び出してきたリュウとカナタに、ミライが駆け寄る。3人は互いに無事であったことを喜び合った。

 

「よかった、2人も無事だったんですね!」

「ああ。だが、さっきの宇宙人の他に、エンペラ軍団の連中も………」

「やはりそちらにもエンペラ軍団の宇宙人が………」

「怪獣使いの宇宙人もいるし、どうにも厄介な状況だな………」

 

3人が話し合っていると、エリーから通信が入った。

 

「アイハラだ。」

[隊長、先ほどのネウロイが再度出現しました!現在、ミーナ隊長たちが交戦しています!]

「分かった。俺の方もミライと合流した。今すぐそっちに………」

 

 

リュウが言いかけたその時、直ぐ近くで地響きと共にスノーゴンとガンダーが出現!ミライたちに気付かないままにらみ合いを始めた!

 

「バオーーーッ!」

「プルップォーーー!!」

 

「連中も現れたか!!」

「カナタ君、ガンローダーをお願い!!」

「はい!」

 

カナタが返事をすると、ミライは2体の怪獣に向けて走り出した。カナタがガンローダーの乗り込むと同時に、ガンウィンガーと共に離陸をする。ミライは怪獣たちを見上げると、左腕を構えて『メビウスブレス』が出現、ブレスの中央にはめ込まれた球状のクリスタルに右手を当てると一気に振りおろして回転させ、左腕を突き上げた。

 

「メビウゥゥウウウウウウウス!!」

 

叫ぶと同時にミライは金色の光に包まれて、メビウスの環の軌跡を描きながら、ウルトラマンメビウスとなって怪獣たちの前に現れた!

 

『セヤァッ!!』

「バオーーーッ!」

「プルップォーーー!!」

 

出現したメビウスにスノーゴンとガンダーが威嚇するように吠える。メビウスはファイティングポーズを取ると、怪獣たちの背後に宇宙船が浮遊してきた。

 

『現れたなウルトラマンメビウス!』

『我らの邪魔をするなら、容赦はせんぞ!!』

 

ブラック星人とポール星人が円盤の中から声を張り上げて言うと、円盤から光が飛んできてペギラとギガスの姿となった!

 

「バオーーーッ!」

「ギゴオーーーッ!!」

「プルップォーーー!!」

「ギュイーーーッ!!」

 

4体の怪獣がメビウスに敵意を向けると、メビウスの背後からガンウィンガーとガンローダーも駆け付けて臨戦態勢となった。

 

 

 

 

 

【Bパート】つづく



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第三十八話 白銀の死闘【Bパート】

第三十八話 白銀の死闘【Bパート】

 

 

 

 

 

戦場から近い場所に、ディオールが立っていた。ディオールは4匹の怪獣を睨むと、懐から3つの窓が開いた長方形の白い機械を取り出した。表面の角の辺りに薔薇の模様が描かれたそれを掲げると、高らかに宣言をした。

 

「行け、レイキュバス!!」

《バトルナイザー、モンスロード!!》

 

ディオールの声に反応して機械から音声が発せられるとカバーパーツが開き、中からカードのようなものが光を放ちながら射出、機械上部のリーダーでスキャンされると、空高く飛び上がった!

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

『ゥウ………!?』

「何!?」

 

メビウスと2機のガンマシンが4体の怪獣と睨み合っていいたその時、両者の間に割って入るようにカニとエビを足したような見た目で右手に大きなハサミと赤く光る目を持った怪獣が現れた!

 

「ギィィイイシュウ!!ギィィイイシュウ!!」

「また別の怪獣だと!?」

 

カニ型怪獣の出現にメビウスや怪獣たちが驚く中、フェニックスネストのエリーがアーカイブから検索した怪獣のデータを報告した。

 

[『ドキュメント・パラレル』、TPCの項目に記録確認!レジストコード『宇宙海獣 レイキュバス』!!]

「ギィィイイシュウ!!ギィィイイシュウ!!」

 

レイキュバスは大きく鳴き声を上げると、若干横歩き気味にスノーゴンとギガスの方に接近をすると、右手の大きなハサミでスノーゴンを殴りつけた!

 

「バオーーーッ!?」

『!?』

「ギゴオーーーッ!?」

 

殴られたスノーゴンが大きく吹き飛ばされると、その先にいたギガスも巻き込まれて転倒してしまう!レイキュバスは2匹に追撃をしようとハサミを振りかざすが、立ち上がったスノーゴンがそれを受け止めると、ギガスが攻撃をしてこようと腕を振りかざす。しかしレイキュバスは、口から火炎放射を放ってギガスに直撃!ギガスは怯んでしまう。

 

『な、何が起きている……?』

「あの怪獣、味方なのか………?」

『アイツ、まさか”同胞”か……?」

 

メビウスとリュウが戸惑っていると、ブラック星人とポール星人は何かに気が付いている様子だった。すると、メビウスとリュウたちに声が聞こえてきた。

 

《ウルトラマン、それに地球人の諸君。》

『!?』

「テレパシー……!?」

《あの2匹は私のレイキュバスに任せてくれたまえ。あの宇宙人たちは本来、私が相手をするべきなのだ。君たちは残りの怪獣たちを頼む。》

『あなたは一体……?』

 

メビウスが尋ねると、声の主である宇宙人は答えた。

 

《名乗るほどの者ではない。強いて言えば、『赤い薔薇の騎士』、と言ったところかな。》

『は………?』

 

メビウスは思わず呆気に取られてしまう。しかし、目の前で動きを止めるガンダーとペギラに視線を向けると、メビウスは構えをとった。

 

《リュウさん、カナタ君、スノーゴンたちはあの怪獣に任せましょう!》

「わ、分かった!」

 

メビウスはリュウとカナタにテレパシーで伝達すると、ガンダーとペギラを睨んだ。その時、通信機にミーナから連絡が入った。

 

[こちらミーナ!ネウロイがそちらに向かっていきました!]

「何!?」

「キィィイイイイイイーーーーーーーーーーーーーーー!」

 

リュウが声を上げた時、ネウロイが猛スピードで迫ってきた!リュウは反転をして迎撃をしようとしたが、ネウロイは地面に垂直になるように突き刺さった!

 

「なっ………!?」

「突き刺さった………!?」

 

ネウロイを追って来たミーナや芳佳たちも、予想外の光景を見て驚いている。その時、ネウロイはグネグネと液体のように蠢いたかと思うと、その姿を巨大な人型へと変えていった!

 

「パオーーーンッ!!」

 

まるで西洋の騎士を思わせる甲冑のような姿に赤い単眼(モノアイ)、胸にはカラータイマーを思わせる赤い発行体を持ったその巨人が雄叫びを上げ、ファイティングポーズを取った!

 

「怪獣ネウロイか!!」

「アパテー………!?」

 

姿を変えたネウロイを見た我夢が、その姿を見て驚いた。

 

[隊長、あのネウロイ『ドキュメント・パラレル』、XIGの項目に記録されたレジストコード『金属生命体 アパテー』に酷似しています!]

「金属生命体?」

「まさか、アパテーと同化しているというのか………!?」

 

エリーの通信を聞いたリュウと我夢が息を飲んだ。当のアパテーとなったネウロイは目の前のメビウスとガンマシンに目もくれず、目の前で動きを止めているペギラに向けてモノアイから赤い光線を放った!

 

「ギュイーーーッ!?」

「何!?」

「パオーーーンッ!!」

 

アパテーが怪獣を攻撃した事に驚いていると、アパテーは攻撃に数歩下がったペギラに向けて接近をして殴り掛かった!

 

「ネウロイも、あの宇宙人を狙っていたのか……!?」

「それなら好都合だ!今のうちに残りを片付けるぞ!」

「「「G.I.G.!!」」」

 

リュウの指示に一同が応えると、残ったガンダーに向かって行った!

 

 

 

 

 

レイキュバスVSスノーゴン&ギガス

 

「ギィィイイシュウ!!」

「バオーーーッ!!」

「ギゴオーーーッ!!」

 

レイキュバスは口から火炎放射を連射すると、ギガスが冷凍光線を放って相殺させる。スノーゴンとギガスは接近をして自慢の怪力で殴りかかるが、レイキュバスはそれを右のハサミで横殴りに払いのけると、2匹は地面に倒れた。

 

「ギィィイイシュウ!!」

『おのれ!スノーゴン!ギガス!その怪獣をカチンカチンにしてしまえ!!』

「ギゴオーーーッ!!」

「バオーーーッ!!」

 

2匹の怪獣は起き上がると、ギガスは口から冷凍光線を、スノーゴンは合わせた両手の先端と口から冷凍ガスをレイキュバスに向けて放った!しかしレイキュバスは横歩きで回避をすると、スノーゴンとギガスは追撃をしようとした。

 

「バオー………!?」

「ギゴオー………!?」

 

しかし、2体の怪獣は足を動かす事ができなかった。足元を見てみると、何と足が凍り付いてしまったのだ!

 

『な、何だと!?』

 

ブラック星人は驚きのあまり素っ頓狂な声を上げた。先ほどのレイキュバスの火炎で周囲の雪が溶けて、それが冷凍ガスと冷凍光線で周囲が再度冷やされて足元を凍らせていたのだ!

 

「ギィィイイシュウ!!」

 

レイキュバスはそれを確認すると、目の色が赤から青に変わり2大怪獣を睨みつけたかと思うと……口から『冷凍ガス』を放った!

 

「バオーーーッ!?」

「ギゴオーーーッ!?」

 

冷凍ガスを受けたスノーゴンとギガスは悲鳴を上げるが、あっという間に全身が氷漬けとなってしまった!

 

『ば、馬鹿な!?火炎と冷凍を操るだと………!?」

「ギィィイイシュウ!!」

 

ブラック星人が困惑する中、レイキュバスは右手のハサミでスノーゴンを掴んで持ち上げると、ギガスに向けて棍棒か何かのように振り下ろし、2体の怪獣は粉々に砕け散ってしまった!

 

 

 

 

 

アパテー(N)VSペギラ

 

「パオーーーンッ!!」

「ギュイーーーッ!!」

 

ぺギラはアパテーの拳を飛翔して回避すると、口から冷凍光線を放ってくる。回避をするも無重力状態になるが、アパテーは飛行形態に変形をして空中に飛ぶことで回避、ペギラの背後に回って光線を浴びせてきた!

 

「ギュイーーーッ!?」

 

光線を受けたペギラは悲鳴めいた鳴き声を上げて地面に落ちる。アパテーは人型に戻って地面に降り立つと、起き上がったペギラの顔面を殴りつけた!

 

「ギュイーーーッ!!」

「パオーーーンッ!!」

 

アパテーは攻撃の手を一切緩めず、至近距離から光線を何発も浴びせる。ペギラは避ける事もできずに直撃を受けて吹き飛び、フラフラになってしまう。完全に逃げ腰になったペギラは上空へ飛んで逃亡を図ろうとするが、アパテーは右手を槍のように変形させるとペギラの翼に突き刺してしまった!

 

「ギュイーーーッ!?」

 

翼に穴の開いたペギラはバランスを崩すと、そのまま地面に墜落してしまう。アパテーはペギラに向けて胸の発光体にエネルギーを溜めると、そこから『破壊光弾』を発射した!

 

「ギュ、ギュイーーーッ!!?」

ドォオオオンッ

 

破壊光弾が命中したペギラは断末魔を上げながら爆発四散していった。

 

「パオーーーンッ!!」

 

アパテーは一言雄叫びを上げると、飛行形態に変形して空高く飛んで去ってしまった。

 

 

 

 

 

ウルトラマンメビウス&GUYS&ストライクウィッチーズVSガンダー

 

「プルップォーーー!!」

『セヤァッ!!』

 

メビウスがガンダーに向けて『メビュームスラッシュ』を放ち体表で爆発を起こし、 ガンダーは数歩下がった。ガンダーはメビウスを睨みつけると、先ほど以上の強力な冷気を放ってきた!

 

『ゥウッ………!!』

「ミライさん!!」

 

冷凍ガスに怯んだのか動けなくなるメビウス。思わず芳佳が叫ぶが、メビウスは咄嗟にメビウスディフェンスサークルで冷気を防ぐと、空に飛んで上空から攻撃をした!

 

「プルップォーーー!?」

 

ガンダーは冷凍ガスを放つことが出来ず、急降下してきたメビウスのキックを喰らって転倒をする。メビウスは追撃をしようとするが、倒れたガンダーはなんと、その姿を消してしまったではないか!

 

『ゥウッ!?』

「姿が消えた!?」

 

ガンダーが消えた事に驚く一同。メビウスは周囲を見渡して探していたが、メビウスの背後から現れたガンダーがその爪で切りかかってきた!

 

『ゥアアッ!?』

「ミライさん!!」

「プルップォーーー!!」

 

メビウスは背中に切り傷を受けて倒れそうになった。咄嗟に4機のガンマシンが攻撃をするが、ガンダーはうつ伏せになるように回避すると、再び雪の中に数型を消してしまった。

 

「アイツ、雪の中に姿を隠せるのか!?」

「厄介な………!!」

 

ガンダーが姿を隠せることを知って、リュウとカナタが顔をしかめる。しかし、ミーナは『空間認識』の能力でガンダーの位置を把握した。

 

「そこよ!!」

ガガガガガッ

「プルップォーーー!?」

 

ミーナが手にした機銃で地面を撃つと、火花と共にガンダーが悲鳴を上げながら倒れたまま姿を現した!ガンダーが立ち上がってメビウスを睨むが、そこにガンマシンとウィッチたちの銃撃を受けて小さく爆発を起こしながらのけ反った。

 

「プルップォーーー!!」

 

ガンダーが怒りの声を上げると、メビウスが構えを取って一気に駆け出そうとした。しかしその時、ポール星人の宇宙船から再度光が飛んできたかと思うと、頭頂に2本の角と大きな牙を持った肉食恐竜のような怪獣が出現した!

 

「グルルァアーィイーーーッ!!」

『!?』

「また別の怪獣!?」

『ええい、奥の手のシーグラまで出す羽目になろうとは!!』

 

ポール星人が「シーグラ」と呼ぶ怪獣は威嚇するように頭を振りながら鳴き声を上げ、ガンダーも援軍の到着に嬉しそうに声を上げた。メビウスはファイティングポーズを取るが、ガンダーの冷気とシーグラの冷凍光線を受けてしまう!

 

『ゥアアッ!?』

「メビウス!!」

 

メビウスは2体の冷凍攻撃から逃れるが、ガンダーとシーグラは接近戦に持ち込んだのか、爪の切り裂きと怪力による攻撃をメビウスに仕掛けてきた!

メビウスはフラフラになりながらも回避するが、何発か攻撃を受けてしまった。

 

「おかしい……メビウスの動きが鈍いような………」

 

我夢がメビウスの動きを見て、動きがいつもよりも遅いように感じた。

 

「まるで、この寒さに影響を受けているような………?」

「寒さに……?」

 

我夢の話を通信機越しに聞いたひかりが、先ほどミライとの会話を思い出した。

 

(雪って言うか、四季そのものがないかな。年中暖かい気候なんだよ。)

「まさか、寒さが苦手なんじゃあ!?」

「何ですって!?」

 

ひかりの言葉に、ミーナが思わず声を上げた。

 

ひかりの予想は正しかった。過去にポール星人がガンダーを連れて現れた際、ウルトラセブンを冷気で苦しませ、彼に地球での活動時間に制限を付けてしまっている。他にもスノーゴンと戦ったウルトラマンジャックや、当のメビウスも暗黒四天王の”豪将”グローザムに氷漬けにされてしまっている。温暖な気候の『光の国』出身のウルトラマン達は、寒さに弱いのであった。

 

「じゃ、じゃあこのままだとメビウスは………!?」

 

芳佳がメビウスを心配そうに見つめる。メビウスはガンダーとシーグラの攻撃に苦戦しており、カラータイマーを点滅させ始めた。

 

「くっ!」

 

メビウスのピンチに我夢はエスプレンダーを取り出して変身をしようとするが、それよりも先に動いた者がいた。

 

「させるかぁあーーーッ!!」

「!?アイハラ隊長!?」

 

ガンウィンガーを駆るリュウが、叫びながらメビウスの前に飛び出していく。そのままガンダーとシーグラにビークバルカンを発射した!

 

「プルップォーーー!?」

「グルルァアーィイーーーッ!?」

「カナタ、ドッキングだ!!」

「G.I.G.!!」

 

ガンダーとシーグラは不意打ちの攻撃に驚いて後退する。傷ついて膝をつくメビウスだったが、その目の前でガンウィンガーとガンローダーがドッキングをして、ガンフェニックスとなった。

 

「ミライ!そんな冷気なんかに負けるんじゃねえぞ!!」

『!!』

 

リュウの言葉にメビウスが顔を上げると、ガンフェニックスは機体を傾けて機体にペイントされた『ファイヤーシンボル』が見えるようにした。

 

「『俺たちの炎』は、そんな程度で消えるもんじゃねえだろ!!」

『………!!』

 

リュウの言葉を聞いたメビウスは大きく頷いて立ち上がった。

 

「プルップォーーー!!」

「グルルァアーィイーーーッ!!」

 

ガンダーとシーグラは立ち上がったメビウスを睨みつける。メビウスは左腕を胸の前に持って来ると、メビウスブレスが赤い炎を発して、メビウスの全身を包み込んだ!

 

『フゥウーーー……ハアァッ!!』

「!?あれは………!?」

 

メビウスの全身が炎のように赤く染まり、胸にはメビウスとGUYSの絆の証『ファイヤーシンボル』が金色に輝いている。

 

ウルトラマンメビウスバーニングブレイブ

仲間たちの絆が生んだ、『炎の勇者』の姿である。

 

「メビウスが、変わった……!?」

「タイプチェンジできたの……!?」

『ええい、姿が変わったから何だというのだ!行け!ガンダー!シーグラ!』

「プルップォーーー!!」

「グルルルァアーィーーーッ!!」

 

新たな姿になったメビウスに驚きつつも、ポール星人に命じられたガンダーとシーグラがメビウスに向かっていく!ガンダーは冷気を放ってメビウスの動きを止めようとするが、メビウスは跳び上がって回避をすると同時に飛び回し蹴りでガンダーの頭を蹴り飛ばし、着地と同時にシーグラの突進をかわしながらパンチを叩き込んで押し飛ばした!

 

「プルップォーーー!?」

「グルルァアーィイーーーッ!?」

「よし、こっちもメビウスを援護だ!」

「「「G.I.G.!!」」」

「「「了解!!」」」

 

リュウの号令に、ガンマシンとウィッチたちも攻撃を開始、冷気と冷凍光線を放とうとしていた2大怪獣は光線と銃弾を受けて怯む。

 

「恐竜(=シーグラ)の方は任せろ!!」

 

リュウの言葉にメビウスは大きく頷くと、目の前に接近してくるガンダーに構えた。

 

「グルルァアーィイーーーッ!!」

「すまんが、あの怪獣の動きを少し足止めしてくれ!」

「はい!」

 

リュウが指示を飛ばすと芳佳たちがシーグラに向かって攻撃を開始する。リュウはガンスピンドラーに乗ったコウジに通信を送った。

 

「コウジ、ドッキングだ!」

「あれを使う気ですか!?でも訓練では………」

「ぶっつけ本番だが、ぶちかますぞ!!」

「じ、G.I.G.!!」

 

リュウの気迫に押されたコウジが返事をすると、ガンスピンドラーはガンフェニックスの後部につき、機体下部のキャタピラがスライドし、尾翼を畳んだガンローダーを挟むように合体。『ガンフェニックススピンドラー』となった!

 

「メテオール解禁!!一気に決めるぞ!!」

 

リュウの宣言と共に、ガンフェニックススピンドラーは金色の粒子に包まれた『マニューバモード』へと移行、全体に金色の粒子がチャージされると、それがガンスピンドラーのドリルに集中し、回転を始めた。

 

「みんな、怪獣から離れてくれ!!」

「「「はい!!」」」

「グルルァアーィイーーーッ!!」

 

芳佳たちがシーグラから離れたのを確認すると、ガンフェニックススピンドラーのドリルがシーグラに狙いを定めた。

 

「『フェニックス・スティンガー』ディスチャァアアアアジッ!!!」

ドォオンッ

 

リュウの宣言と共にドリルから膨大なエネルギーの奔流―――『インビンシブルフェニックス』と同等以上のエネルギーを一点集中させて放つ『フェニックス・スティンガー』が発射され、シーグラに直撃した!

 

「グルルァアーィイーーーッ!?」

 

光線はシーグラの胴体に大きな穴をあけ、更に貫通した先の地面を大きく穿つと爆発を起こして、シーグラを爆散させた。

 

「うわあ!?」

「す、スゴイ威力………!!」

 

シーグラの撃破以上に『フェニックス・スティンガー』の威力に驚く芳佳たち。驚いたのは放った張本人のリュウも同じであった。

 

「こ、こりゃあ地上に向けちゃヤバイやつだな……」

 

リュウは冷や汗を流しつつそう呟いた……

 

 

 

 

 

「プルップォーーー!!」

 

ガンダーは鋭い爪をメビウスに振りかざしてメビウスに走って行く。メビウスは胸の前でメビウスブレスに手をかざすと鳥の翼のように大きく両腕を広げて胸のファイヤーシンボルに炎のエネルギーを集中、巨大な火球が発生した。

 

『フゥウウウ………ハァアッ!!』

ビシュンッ

 

メビウスは両手を突き出してその炎―――『メビュームバースト』をガンダー目掛けて放ち直撃!ガンダーは全身を炎に焼かれる事となった!

 

「プォッ!?プルップォーーー!!」

ドォオンッ

 

ガンダーは悲鳴を上げながら地面に倒れ込むと、そのまま爆発四散した!

 

「やったー!」

 

リュウや芳佳は歓喜の声を上げた。すると、ブラック星人とポール星人の宇宙船から悔しそうな声が聞こえてきた。

 

『おのれぇー!よくも私たちの邪魔を!!』

『このままでは済まさんぞ!覚えていろぉーーーっ!』

 

2人の叫びを最後に、2つの宇宙船は宇宙に向けて飛んで行ってしまった。

 

「あっ、逃げた!」

「追いますか隊長!?」

「いや、あの速度じゃあもう………」

 

既に成層圏まで到達したであろう2隻の宇宙船を見上げてリュウが言うが、その時、メビウスの背後からレイキュバスが現れた。

 

「ギィィイイシュウ!!ギィィイイシュウ!!」

「レイキュバス……?」

 

レイキュバスが鳴き声を上げたかと思うと、目を赤く光らせて宇宙船の方を向いて、口から火球を数発放った!

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

『くそう………まさか怪獣が全滅するとは………ッ!!』

 

怪獣を失ったブラック星人が悪態をついていると、ポール星人から通信が来た。

 

『今度はもっと強い怪獣を連れて、別の場所で戦おう。』

『そうだな、その時は必ず決着を………』

 

2人の宇宙人は再戦を誓いあうが、その時、背後から迫って来た火球が宇宙船に直撃し、爆散してしまった………

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「成層圏で、宇宙船が撃墜された……!?」

「まさか、あの怪獣が撃ち落としたっていうのか………!?」

 

フェニックスネストから通信を受けたリュウがレイキュバスの方を見て信じられないといった表情をする。当のレイキュバスは一言鳴き声を上げたかと思うと金色の小さな光になって、何処へと飛び去って行った。

 

「き、消えた………!?」

「あの冷凍怪獣たちと同じ……」

 

レイキュバスが消えた事に驚き戸惑うリュウとひかり。怪獣たちのいた地点を呆然と見つめていると、メビウスは空を見上げると両腕を伸ばして飛んで行った。

 

「結局、あのレイキュバスっていう怪獣は何だったんでしょう?」

「さあ?」

 

カナタが口に出した疑問に、リュウたちは首を傾げた。ミーナはふと、左の胸にさしていた赤い薔薇に手をやった。先ほど、ディオールから受け取ったものだった。

 

「きっと、あの怪獣は彼が………」

「え?何か言いましたか?」

「いいえ、何でもないわ。」

 

小さく呟いたミーナの言葉を聞き返した芳佳が尋ね返すと、彼女は微笑みながら答え、ガンマシンと共に基地へと帰還を開始した。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「ご苦労だったな、アイチヨ、センジューロー。」

「はっ。」

 

とある場所に帰還したアイチヨとセンジューローが頭を下げる。彼らの前には、黒いタキシードの老紳士とテンガロンハットに黒いテンガロンハットに薄茶色のポンチョを着込んだ男―――カウントとボルターの姿があった。

 

「ビアンコ提督に依頼してお前たちの力を借りているが、この場所はバレていまいな?」

「それは問題ない。我らの痕跡は残していない。」

「ならば良い。こちらの準備はもう少し時間がいる。」

 

ボルターはそう言って背後のものを振り返った。そこには修復されたビームミサイルキングと、それ以上の大きさの繭を思わせる膜があった。膜の中には黒い巨大生物がおり、胸と頭に赤い発光体を持っていた。

 

「ビームミサイルキングは修復できたが………」

「すみません、まだ少しエネルギー不足のようでして………」

「構わんよ。だが、今はグア軍団だけではなくレイオニクスまでいるのだ。少し急ぐべきであろう。」

 

ボルターがそう言うと、繭が不気味に蠢いて、中の巨大生物が小さく鳴き声を上げた。

 

「ゼットーン………ピポポポポポポポポ」

 

 

 

 

 

つづく




第三十八話です。

・ヤプールはとりあえず無罪。そしてバキシム強化フラグ。ヤプールの企みはいずれ。

・暗躍していたエンペラ軍団2人が登場。アイチヨは2回目ですが、センジューローは初登場。

・謎のレイオニクス・ディオール。ミーナを口説くあたり結構なプレイボーイ感ありますね。正体はいずれ。
 シルバゴンの他にレイキュバスが手持ち。一応初登場の時にも出てきていましたね。

・ネウロイの正体はアパテーでした。アパテーはネウロイ化怪獣の候補に最初から入っていましたが、マッキー3号をチョイスしたのはアパテーの飛行形態に似ていたのが理由。アパテーは好きな怪獣なので、今後もしばらくは登場予定です。

・ガンダーの雪の中に隠れる能力は『大怪獣ラッシュ』に出てきたプラズマガンダーの能力が元ネタ。そしてシーグラ登場。『ザ☆』の怪獣はアニメ作品のせいか再登場の機会が全然ないので、積極的に出したいところ。

・満を持して『バーニングブレイブ』登場。やはり登場させるなか今回かなって。

・ガンフェニックススピンドラー登場。必殺技はオリジナルですが、一点集中の分使いどころが難しい感じ。

・ブラック星人とポール星人撃破。地球に迷惑かける以外は意外と正々堂々としていましたが、因果応報って事で。

・ラストは暗躍するエンペラ軍団。近い内に動き出すと思われます。

では、次回をお楽しみに。


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第三十九話 地底からの挑戦

大晦日に今年最後の投稿になります。


『まさか、成行きとはいえウルトラマンに協力する羽目になろうとは………』

 

次元城の第3エリアで、アパテーを回収したヤプールがため息交じりに呟いた。隣にいたワロガが、話しかけてきた。

 

『アパテー、意外と強い。かなりの実力。』

『秘蔵のネウロイの1体だが、レイオニクス相手なら惜しくない。』

『作戦、問題ないか?』

『無論だ。レイオニクスという想定外の事態ではあったが、予定通り作戦は実行する!』

 

ヤプールが不敵な笑みを浮かべて言う。ワロガは承知したと小さく言って、その場を後にした。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

M78星雲『光の国』、宇宙警備隊本部に、一人の青いウルトラマンが入って来た。

 

『傷はいえたのか、ヒカリ?』

『はい、まだ戦闘はしないように言われていますが………しばらくは、宇宙技術局でネウロイのコアの調査をします。』

 

ウルトラマンヒカリは、声をかけてきたウルトラマンタロウにそう答えた。タロウはそうか、と言って頷いた。タロウとヒカリが会議室に入ると、そこではゾフィーが、宇宙警備隊に届いたらしいウルトラサインを眺めていた。

 

『ゾフィー兄さん、メビウスからですか?』

『ああ、『レイオニクス』と呼ばれる怪獣使いが現れたそうだ………』

『レイオニクス?』

『私も噂程度でしか聞いたことがないが、どうやら怪獣を操ることができる者のようだ。この事は、大隊長にも伝達している。』

 

ゾフィーからの報告を聞いたタロウが、少し驚いた表情をした。その後ろから、不安そうな顔になっていたヒカリが前に出てきた。

 

『ゾフィー隊長、私に地球に向かわせてください。ネウロイの研究で分かったことを伝えたいですし………』

『それは許可できない。まだ傷の癒えきっていない君を、危険な目に遭わせるわけにはいかない。』

『しかし!』

 

ヒカリはなおもゾフィーに意見をしようとするが、振り返ったゾフィーはヒカリの肩に手を置いた。

 

『心配することはない。君の代わりに地球へ向かうのに、適任の者がいる。』

『適任………?』

 

ヒカリが聞き返すと、会議室にある人物が入ってきた。

 

『!君は………!』

 

 

 

 

 

第三十九話 地底からの挑戦

 

古代怪獣 キングザウルス三世

地底怪獣 マグラー

地底怪獣 パゴス

ウラン怪獣 ガボラ

異次元怪異 ネウロイ(GX‐15)

登場

 

 

 

 

 

関東一帯を襲った吹雪から数日後、雪も溶け切ったフェニックスネストではガンフェニックスとガンスピンドラーの修復が進められていた。

 

「『フェニックス・スティンガー』はまだ試験段階だったが、エネルギー系統の損傷が酷くてパーツを交換する必要なほどだった。敵を倒せても、コッチがいかれたら意味がねえ………」

「済まねえとっつぁん………」

 

整備員が作業をするガンフェニックスを見ながらアライソ班長が言うと、背後でリュウが頭を下げる。

先日の戦闘の後、ガンフェニックスとガンスピンドラーは帰還の途中で飛行に支障が出始めており、点検の結果エネルギー系統に異常が見られた。恐らくは『フェニックス・スティンガー』を使った反動で機体に負担がかかり、エネルギーの出力に耐えきれなくなったのだと思われた。

結果としてガンフェニックスとガンスピンドラーはオーバーホールに近い形で修理されることになり、急ピッチで作業が進められていた。

アライソはフンと鼻を鳴らしてリュウに振り返った。

 

「ま、今回の事でデータも取れたし、それを参考にして調整予定だ。しばらくはガンブースターやガッツイーグルで対処をしてくれや。」

「ああ、任せてくれ!」

 

リュウの言葉にアライソはニッコリ笑って作業に戻る。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

同じ頃、サンダーバード基地のディレクションルームに続く廊下をミライと芳佳が歩いていた。

 

「じゃあ、坂本さんはサコミズ総監と一緒にニューヨークのGUYS総本部に?」

「うん、何だか本部で坂本さんに用事があるみたいでね。3日くらいは向こうにいるって言ってたよ。」

「そうですか………」

 

ミライから話を聞いた芳佳が残念そうに言うと、2人はディレクションルームに入った。ディレクションルームでは、先日の冷凍怪獣との戦いの映像が映し出されていた。映像の中では、ドラゴリーをスノーゴンとギガスが圧倒する様子が映されていた。

 

[2体1とはいえ、超獣であるドラゴリーが怪獣に負けるのは本来あり得ないはずですが……]

「やはり、あの『レイオニクス』という存在が気になりますね…」

 

フェニックスネストからミサキ女史が通信機越しに言うと、バルクホルンが腕を組んで言った。

 

「宮藤さんやミーナ隊長を助けたという宇宙人も、そのレイオニクスの可能性がありますね。」

「そうね………」

 

ニパの言葉を聞いたミーナは、司令官席に飾られた一輪挿しに刺された赤い薔薇を見た。あの時、ディオールから受け取ったものだ。

 

「今回のレイオニクスの件は、宇宙警備隊にも連絡しています。向こうでも調査をしてくれるでしょう。」

「そうですね……」

 

ミライがそう言うと、フェニックスネストのディレクションルームにリュウが戻ってきた。

 

[今はグア軍団やエンペラ軍団もいるっていうのに………]

[それに、先日ブラジルのコルコバードの丘でキリスト像を破壊した怪獣の行方も分かっていません。今回の件と関連があると思われますが……]

画面は切り替わり、コルコバードの丘で切り裂かれたキリスト像が映され、切り裂いている最中と思われる怪獣の写真が映し出された。

 

[怪獣は恐らく、ドキュメントMATに記録される『八つ切り怪獣 グロンケン』と思われます。かつては観音像を切り裂いていました。]

[現在、グロンケンは行方不明……あの怪獣たちと同じように煙のように消えている……レイオニクスとの関連は濃厚だな……]

「怪獣を操るレイオニクス……何者なんだ………?」

 

バルクホルンが腕を組んで疑問を口にする。その時、基地内にアラートがけたたましく響いた。

 

[長野県の山中に、ネウロイが出現しました!]

「ネウロイだと!?」

[映像出ます!]

 

映像が切り替わると、下部に砲門を備えたような直径30mの円盤型ネウロイ3体が三角形のような陣形で、山の間を縫うように飛行している様子が映っていた。それを見た直枝とニパが、声を上げた。

 

[[[キィィイイイイイイーーーーーーーーーーーーーーー!]]]

「コイツらは!?」

「どうかしたの…?」

 

直枝とニパの様子を見たミーナが聞く。直枝がそれに答えた。

 

「間違えねえ、オレたちがこの世界に来た時に現れたネウロイだ!」

「何ですって!?」

 

直枝の言葉に一同は驚愕する。画面の向こうではネウロイが空中で静止をすると、その場でグルグルと回転を始めた。

 

「何をしているんだ……?」

「そういえばあの時、キングザウルス三世が現れる寸前にも、ネウロイが同じことを………」

 

ニパが思い出したように呟くと、ネウロイの真下の山肌が蠢き、地中から先端が尖った円錐型の物体が現れたかと思うと、花弁のごとく開いて巨大怪獣の顔が露わとなった!

 

[ガアアーーーゥウッ!]

 

怪獣は大きくひと鳴きをすると、大きな口を開けて大声を上げながら地中から這い出てきた。

 

[ドキュメントSSSPに記録確認!レジストコード『ウラン怪獣 ガボラ』!!]

 

首の襟巻と背中に蛇腹状の背びれが目を引くガボラが全身の土を振るい落とすように体を揺らすと、エリーがデータを読み上げた。

 

「あのネウロイは、眠っている怪獣を呼び起こすために……!?」

[ガボラは全身から放射能を放つ……ネウロイがいても、生身のウィッチたちを向かわせる事はできない!]

[僕が行きます!]

 

リュウの言葉に反応してか、ムサシが格納庫へ走り出そうとした。しかしその時、アラートが再び鳴り響いた。

 

「何だ!?」

[栃木県と山梨県の山中にも同型の三機編成ネウロイが出現………同時に怪獣も現れました!!]

 

画面の向こうでマルが慌てた様子で入室と同時に報告をする。画面が再び切り替わり、左右で2分割されて2体の怪獣が映し出された。

 

[グルルィイーーーッ!]

[ガアアーーーゥウッ!]

 

画面右の栃木県山中に現れたのはガボラに似た蛇腹状の背びれに頭に4本鼻先に1本角を生やした『地底怪獣 パゴス』、画面左の山梨県山中に現れたのは全身が黒いトゲに覆われた『地底怪獣 マグラー』だ!3匹の怪獣の頭上には円盤型ネウロイが浮遊しており、怪獣たちはネウロイに誘導されるように動き始めた。

 

「あの怪獣たち、ネウロイに操られているのか………!」

「随分、見た目が似てる怪獣たちダナ………」

 

ミライが言うと、隣にいたエイラがボソっと呟いた。確かに少し似ている。

 

「今回はグア軍団の仕業のようだな………」

[俺とムサシさんでガボラに向かう。マグラーとパゴスは、ミーナ隊長たちウィッチとアスカさんたちに頼みたい。]

[もちろんだ!]

 

リュウの指示にアスカと我夢、ムサシが頷いて了解をした。そこにミライも加わる。

 

「リュウさん、僕も………」

[いや、ミライは待機してくれ。]

「え……?」

 

ミライは一瞬キョトンとするが、リュウが続けた。

 

[前のノーバの時みたいに、この基地を狙われないと言い切れない。ミライと芳佳たちは待機を頼む!]

「あ………G.I.G.!!」

[GUYS,SALLY GO!!]

[[[G.I.G.!!]]]

「「「了解!!」」」

 

ミライはかつてノーバの襲撃を思い出して、リュウに頷く。リュウは全員に号令をかけると、全員がそれに答えて出撃していった。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

『GUYSとウィッチ、動いた』

『メビウスはフェニックスネストに残っているようだな………だが、それは好都合だ。』

 

次元城内でヤプールとワロガが様子を見て、ほくそ笑んだ。

 

『作戦を第2段階に移行する。ヤツを出すぞ。』

『承知。』

 

ヤプールが合図をすると、ワロガが手にしたデバイスを操作した。次元城内の第6エリアで待機状態の怪獣の檻の1つが起動をすると、1体の怪獣が転送を開始された。

 

「キュイイーーー!」

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

[各機、怪獣たちと戦闘を開始しました。]

 

ディレクションルームからエリーが報告をする。スクリーンには3匹の怪獣とそれぞれ交戦するガンブースターとテックスピナー、ガッツイーグルαスペリオル、ファイターEXⅡがウィッチたちと共にガボラ、パゴス、マグラーと戦闘を開始していた。怪獣たちに光線や弾丸が迫る中、頭上のネウロイたちが光線で応戦してくる。ネウロイの攻撃を掻い潜ったシャーリーたちウィッチがネウロイに接近して銃弾を浴びせるが、パゴスは口から「分子破壊光線」を、マグラーも口から高熱火炎弾を放ってきた。

 

[うわっ!?]

[手強いな……!]

 

ウィッチたちの悲鳴が通信から漏れる。ネウロイは怪獣を操り連携をさせるだけではなく、自身もビーム攻撃を行ってくるのだ。

 

「怪獣を剣と盾に、進撃をする気ね……」

 

各地で怪獣を率いて進行するネウロイの動きを見たミーナが呟いた。ガボラと戦うガンブースターとテックスピナーは下手にガボラへ攻撃が出来ないため周囲を旋回しているが、そこにネウロイの光線が襲いかかってきた。

 

[これじゃあ、埒が明かねえ………!!]

 

リュウが苦言を漏らす。しかしその時、三度、アラートが基地内に鳴り響いた。ミライが咄嗟にコンソールを操作して画面を切り替えると、フェニックスネストの目と鼻の先に同型の円盤型ネウロイ3機が現れていた!

 

[[[キィィイイイイイイーーーーーーーーーーーーーーー!]]]

「やはり、ここを狙ってきたか!!」

「ミーナ隊長、出撃を!」

「ええ!」

 

芳佳に促されて、ミーナは立ち上がって格納庫に向かおうとした。しかし、画面の向こうでアスファルトがひび割れ盛り上がり、地中より怪獣が現れた。

 

「キュイイーーー!」

 

現れたのは、長い首と頭に2本、鼻先に1本の角、背中に大きな背びれを持った四足歩行の青いウロコで全身を覆われた怪獣―――

 

「!?アイツは………!!」

「キングザウルス三世!!」

 

出現した『古代怪獣 キングザウルス三世』の姿を見た直枝とひかりが驚愕の声を上げた。キングザウルス三世は頭上のネウロイに導かれるように、フェニックスネストに向かって歩き始めた。

 

「アイツもネウロイに操られているのか!!」

「急ぎましょう!」

 

ミーナが急かすように言いながら、格納庫へと駆けていった。

ウィッチたちが出撃をした直後、フェニックスネストのディレクションルームにトリヤマが入ってきた。

 

「基地の真ん前に、怪獣とネウロイだと?」

「はい。今、芳佳ちゃんたちが出動をしました。」

 

トリヤマにエリーが答える。トリヤマはモニターに映るネウロイとキングザウルス三世を見た。

 

「………ん?」

 

ふと、トリヤマは怪獣を操るネウロイをじっと見つめた。

 

「どうかしましたか、補佐官?」

「このネウロイ………どこかで見た事、あるような……?」

 

トリヤマは頑張って思い出そうと、首を傾げていた。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「キュイイーーー!!」

「「「キィィイイイイイイーーーーーーーーーーーーーーー!」」」

 

出撃をしたミーナ、芳佳、ひかり、直枝、ニパ、クルピンスキーの目の前で、ネウロイに操られたキングザウルス三世が鳴き声を上げて進撃を続けている。キングザウルス三世がミーナたちを睨むと、口から赤い熱線を放ってくる!

ウィッチたちは四方に散開して回避をすると、そのまま上空に飛び上がりネウロイに攻撃を仕掛けた。だがネウロイは円盤状のボディの側面からビームの刃を展開させると高速回転をして全部弾いてしまった。

 

「ビームの刃……!?」

「あんな能力のネウロイ、初めて見た………」

 

ひかりたちが初めて見るネウロイの能力に驚くが、その間にもネウロイとキングザウルス三世が光線と熱線を放ち、ウィッチたちはシールドを張って防ぐ。一方、ミライたちは地上から銃撃を行うべく射撃可能な地点にまで来た。

 

「僕らは、ここからキングザウルス三世を攻撃するんだ!」

「「G.I.G.!!」」

 

ミライたちはトライガーショットをロングバレルモードに変形させると、キングザウルス三世に狙いを定めて光線を放った。だが、キングザウルス三世の周囲を光るカーテンのようなバリアが展開され、光線を弾いてしまった。

 

「あの時のバリアか!!」

[キングザウルス三世のバリアは、カーテン状のため頭上が無防備となっています。そこから頭の角を破壊出来れば、解除ができます。]

「そうは言っても………」

 

エリーからの通信を受けたミーナが、キングザウルス三世の頭上を見る。無敵のバリア唯一の資格である頭上は、3機の円盤型ネウロイが浮遊しているために攻撃ができないのだ。

 

「操ると同時に弱点をカバーするとは………」

「厄介ですね……」

 

ミーナとひかりが苦々しく言う。ネウロイとキングザウルス三世の猛攻に、ウィッチたちも苦戦をしていた。ミライはキングザウルス三世とネウロイを睨むと、カナタの方に向いた。

 

「カナタ君、僕が怪獣を引き付ける!」

「すみません……!」

 

ミライはキングザウルス三世に向けて走り出すと、左腕にメビウスブレスを出現させ、走りながら左腕を突き上げた。

 

「メビウゥゥウウウウウウウウス!!」

 

ミライは金色のメビウスの環を描きながら光に包まれ、ウルトラマンメビウスの姿でキングザウルス三世の目の前に現れた!

 

『セヤァッ!!』

「キュイイーーー!!」

「メビウス!」

 

メビウスの出現にキングザウルス三世は驚いて鳴き声を上げる。芳佳たちはメビウスの姿を見て声を上げた。

 

「「「キィィイイイイイイーーーーーーーーーーーーーーー!」」」

 

その瞬間、ネウロイはキングザウルス三世から瞬時に離れると、高速でメビウスに接近をしてきた!

 

『!?』

「何…!?」

 

メビウスはネウロイの接近に驚くが、ネウロイはビームの刃を出現させて回転しながら突進を仕掛けてくる!メビウスはメビウスディフェンスサークルで防御をするが、

 

『ゥウッ!?』

「メビウス!?」

 

ネウロイがメビウスへの猛攻に、ミーナたちは驚愕する。一方、ネウロイが離れたキングザウルス三世は、何が起こっているのかわからない様子で周囲をキョロキョロと見ていた。

 

「キュイイーー………?」

「キングザウルスは動きを止めているようだね………」

 

キングザウルス三世の動きを見たクルピンスキーが呟いた。その時、メモリーディスプレイにフェニックスネストから通信が入った。

 

[こちらエリー、各地で怪獣と戦っているウルトラマンに、ネウロイが攻撃をしてきました!]

「何……!?」

 

エリーからの通信を聞いたミーナと芳佳が思わず大声を漏らす。他の場所で戦っている怪獣たちの元でもダイナ、ガイア、コスモスが現れたのだが、ネウロイが怪獣を放り出しウィッチたちに目もくれずウルトラマンに攻撃をしてきているというのだ。

 

「一体どうして……?」

「まさか、あのネウロイたちは最初からウルトラマンを倒すために………!?」

「そんな……」

 

芳佳の言葉に、ひかりが愕然とした表情となる。その時、ネウロイの猛攻を受け続けていたメビウスの背中にネウロイの光線が着弾し、爆発を起こした!

 

『グワアアッ!』

「メビウス!!」「ミライさん!!」

 

メビウスが片膝をつき、ミーナたちが叫ぶ。だがネウロイ達は再度光線の発射体制に入った。

 

「させるかッ!!」

 

カナタが叫ぶと同時に、コウジとマイと共にネウロイに照準を定めトリガーを引く。ネウロイに光線が直撃すると小さく爆発を起こし、3機はボディの1ヶ所を破壊されてフラフラとメビウスから遠ざかった。

 

「やった!」

「いいえ、まだ油断は出来ないわ!」

 

ひかりが歓声を上げたが、ミーナは険しい表情でネウロイを睨んでいた。メビウスが立ち上がると、ネウロイはボディを再生させる。すると、ネウロイは上下を入れ替えるようにくるりと反転をさせた。

 

「あれは………!?」

 

その時、芳佳たちはネウロイの下部についていた砲門が、怪獣の顔のような形になっている事に気が付いた。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

モニターでその姿を見たトリヤマが、「あ!?」と声を上げた。

 

「コイツは、ワイルド星人の宇宙船ではないか!」

「ワイルド星人の……?」

 

トリヤマの発言にエリーが聞き返した。

 

「ああ、ウルトラ警備隊の新兵時代に、同僚がワイルド星人に襲われたことがあったんだ。いやあ、逆さまになってたから思い出せんかったわい!」

 

トリヤマが呑気に笑いながら語る。しかしエリーの脳裏に、ある仮説が浮かんだ。

あのネウロイの正体が、本当にワイルド星人の宇宙船としたら、あれの正体は………?

 

「ミーナ隊長!気をつけてください!あのネウロイは―――」

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「!?あれは!!」

 

エリーがミーナに通信を入れたちょうどその時、目の前で3機の円盤ネウロイは引き延ばされたばねのように上下に伸びたかと思うとあっという間に細長い紐のようになったかと思うと前後脚が出現して、生物のように体をうねらせた。

 

「クァーキャアーキャァアーーー!!」

「クァーキャアーキャァアーーー!!」

「クァーキャアーキャァアーーー!!」

 

ネウロイたちは細長いメカニカルなボディを持った龍のような姿になり、甲高い鳴き声を上げて、メビウスとウィッチたちを睨んできた!

 

「円盤が、龍に……!?」

[ミーナ隊長、あれは『宇宙竜 ナース』、ドキュメントUGに記録が残るロボット怪獣です!]

「怪獣ネウロイだったのか………!!」

 

円盤形態から変形したナースに驚くウィッチたち。3体のナースは混乱して動けなくなっている様子のキングザウルス三世の前を素通りし、体をくねらせながら、メビウスの元に接近をしてきた!

 

「クァーキャアーキャァアーーー!!」

「クァーキャアーキャァアーーー!!」

「クァーキャアーキャァアーーー!!」

 

ナースは両目から光線を放つが、メビウスはジャンプをして回避、先頭にいるナースの頭部に飛び蹴りを喰らわせるとのたうち回るように体をくねらせる。残った2体の内1体がメビウスの背後を取り尻尾を振り下ろしてきた。メビウスは振り返って左腕で受け止めるが、その隙にもう1体が目から光線を放ってきた!

 

ドォオンッ

『グァアアッ!!』

「くっ………メビウスを援護よ!!」

「はい!!」

 

ミーナの号令にウィッチたちはナースに向かって行く。だが、そこにナースの1体が現れると、頭と尾を繋いで輪を作るようにウィッチたちを囲み閉じ込めてしまった!

 

「何!?」

 

直枝が思わず声を上げるのもつかの間、ナースは輪の内側に向けて光線を乱射する技「ウロボロス・ケージ」で攻撃をしてきた!

 

「きゃああ!」

「うわぁ!」

「ぐぅ……!」

 

ウィッチたちは背中合わせになって障壁をはり、全方向からの攻撃に必死に耐えていた。一方、メビウスは先ほど受けた攻撃によりカラータイマーが点滅を始めた。

 

「クァーキャアーキャァアーーー!!」

 

ナースはフラフラになったメビウスに接近をすると、その体をメビウスに巻き付けて拘束をした!

 

『グゥ………!!』

 

メビウスは拘束を解こうとするが、ナースが締め付ける力を強めて逃げられないようにする。カナタたちはメビウスを助けようとするが、他のナースが攻撃をしてくるため思うように近づけない。

 

「クァーキャアーキャァアーーー!!」

ドォオンッ

「うわあ!?」

「これじゃあ、メビウスにも芳佳ちゃんたちにも手が出せない!!」

 

爆風に耐えながらカナタが漏らす。その時、エリーからの通信がウィッチたちの耳のインカムに聞こえてきた。

 

[大変です!各地でウルトラマンと戦うネウロイもナースに変形して、ウルトラマンを拘束してしまいました!]

「何ですって!?」

[ウィッチの皆さんも同じように動けなくなっています………このままじゃあ……!!]

「そんな……!」

 

各地の現状を聞いてミーナが絶望的な表情になる。ナースの光線を防ぎながら、ヒカリが隣の芳佳に話しかけた。

 

「宮藤さん、私たちが囲むので、メビウスの所に向かってください!」

「え!?でも……」

「いや、今はそれが最善策だね……」

 

戸惑った声を出す芳佳だったが、クルピンスキーが頬に汗を垂らしながらも笑顔で言った。ミーナも今はそれしかないと思ったのか、芳佳の背中を押した。

 

「頼んだわよ宮藤さん!メビウスの事をお願い!」

「………はい!!」

 

芳佳は力強く返事を返すと、ミーナたちの背中合わせの中央に入り込み一同に守られてナースの光線を防ぐ。そして上空に一気に飛び、ナースの『ウロボロス・ケージ』から脱出することに成功した!

 

「ミライさん!!」

『!芳佳ちゃん!!」

 

芳佳が叫ぶと、メビウスはこちらに飛んでくる芳佳に視線を向けた。芳佳はメビウスに巻き付くナースの頭部を睨むと、銃口を向けた。

 

「クァーキャアーキャァアーーー!!」

「……?」

 

ふと、芳佳はナースの目が規則的にチカッ、チカッ、と点滅をしている事に気付き、疑問を抱いた。さながらモールス信号のようなその点滅に何かおかしいと芳佳が思ったその時、ミーナが叫んだ。

 

「!?何かがこっちに飛んでくる!!」

「何!?」

 

ミーナの叫びを聞いた芳佳は、上空を見た。そこには、こちらにとんでもない速度で落下してくる黒い物体―――ネウロイの姿があった!

 

「別のネウロイ……!?」

「マズいわ!このままじゃあメビウスに激突する!!」

「くっ……!!」

 

芳佳は咄嵯に飛び出すと、目の前に巨大な障壁を展開させた落下してくるネウロイを受け止める気だ!

 

「な!?」

「宮藤さ―――」

 

ひかりが声を上げるよりも先に、芳佳の障壁にネウロイ―――巨大な砲弾のような形状のそれが激突し、衝突音を響かせた!

 

ゴッ

「ぐぅ!!きゃあああッ!!?」

 

衝突の瞬間、芳佳は弾かれて吹き飛ばされてしまった!瞬間、遅れて風を切る音が聞こえたかと思うと、メビウスに真っ直ぐ落ちて来ていたネウロイは軌道を変え―――

 

 

 

 

 

「キュイイーーー………」

ドォオオオンッ

 

 

 

 

 

戸惑って動きを止めていたキングザウルス三世の背中に直撃し、大きな爆発を起こした!!

 

『ゥウッ………!?』

「きゃあああ!?」

「「「うわああ!?」」」

「「クァーキャアー!?」」

 

爆発の衝撃波でメビウスやウィッチにGUYS、ナースたちまでもが吹き飛ぶ。フェニックスネストにもその衝撃が伝わり建物全体が大きく揺れ、モニターが乱れて映らなくなった。

 

「うわあ!?」

「ミーナ隊長!カナタ君!ミライさん!応答してください!!」

 

エリーはコンソールを操作しながら、通信機に慌てて呼びかける。だが、通信機はノイズを発するだけで誰も答えない。

 

「そんな……皆さん!!」

 

エリーが悲痛な叫びをあげる。

 

「クァーキャアーキャァアーーー!!」

「クァーキャアーキャァアーーー!!」

「クァーキャアーキャァアーーー!!」

 

炎の上がる戦闘現場で、頭部だけになった3機のナースが鳴き声を上げて空の彼方に飛んで行った………

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「ガァアーーーァアウ!!」

 

どこかの山中、巨大な生物がトンネルの中に姿を消した。木の陰に隠れていたディオールはそれが完全にいなくなったのを確認すると、手にした薔薇を目の前に構えた。

 

「あの怪獣………(この間の()()はブラック星人とポール星人の仕業と思っていたが、アイツの仕業だったのか………)これは、ミーナさんたちに伝えた方がよさそうだな………」

 

ディオールはそう言うと、その場から煙のように消えた………

 

 

 

 

 

つづく




第三十九話です。

・ヒカリ退院。地球に来るウルトラマンが誰かはお楽しみに。

・今回は地底怪獣祭り。元ネタ知っていれば気付いた方もいると思いますが、ある意味伏線です。

・ブレイブウィッチーズ4人にとって因縁の相手であるキングザウルス三世と円盤型ネウロイ。で、ネウロイの正体は上下逆転したナースでした。
 『ウロボロス・ケージ』は鬼畜技だけどお気に入り。

・不意打ちで飛んできた砲弾のようなネウロイ。正体は次回あたり。

では、よいお年を。


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第四十話 不可視の射手

少し遅れてしまいましたが、明けましておめでとうございます。


ネウロイ襲撃から十数時間後―――

 

 

 

 

 

「―――ううん………」

 

芳佳が目を覚ますと、そこは医務室のベッドの上であった。起き上がると、それに気づいたリーネが声をかけてきた。

 

「芳佳ちゃん!大丈夫……?」

「あ、うん。ありがとう………」

 

芳佳は腕や足に包帯を巻いた状態であったが、リーネに笑いかけた。そこでふと、気を失う前に起きた出来事を思い出した。

 

「!あ、そうだ!あのネウロイ………どうなったの!?」

「落ち着いて、芳佳ちゃん………」

「芳佳ちゃん、起きたの?」

 

リーネが芳佳を落ち着かせていると、医務室にミライが入って来た。

 

「ミライさん!よかった、無事で………!」

「芳佳ちゃんもね。ミーナ隊長やひかりちゃんも大した怪我もないし、街にもほとんど被害がなかったよ。」

 

芳佳にミライが優しく話しかけた。芳佳がホッとしていると、メモリーディスプレイにリュウから通信が入った。

 

[芳佳、起きてから早速で悪いが、すぐにディレクションルームに来てくれるか?]

「えっ……?はい……」

 

芳佳が返事をするとミライは先に退室し、芳佳は着替えをして医務室を出た。

 

 

 

 

 

第四十話 不可視の射手

 

異次元怪異 ネウロイ(GX‐15・GX‐16)

登場

 

 

 

 

 

「改めてみんな、よく無事だったな………」

 

フェニックスネストで、トリヤマが皆を見渡し笑顔で言った。アスカや我夢、ムサシが頷いた。

 

あの時、メビウスと同様にナースがウルトラマンに拘束されて直ぐに砲弾のようなネウロイが飛んできた。それを察知したダイナたちはそれぞれストロング、スプリーム・ヴァージョン、コロナモードにタイプチェンジをすると力尽くでナースを引きちぎり、砲弾ネウロイに攻撃をした。ネウロイは止まらなかったものの威力は弱まり、着弾をしても被害は出なかった。怪獣たちはその時の衝撃波で気絶をしたため、ナースたちが撤退しいたのを確認してから、元居た場所に返して今は休眠中だ。

 

「キングザウルス三世は芳佳ちゃんの障壁で軌道がずれたネウロイの直撃で絶命したけど、幸いバリアを張っていたおかげで爆発はバリアの内側に止まり、被害は最小限に収まりました。ただ、衝撃波で周辺の建物などはかなりの被害が出ています。

「そうか……だが、不幸中の幸いだ。死者も出ず、街への大きな被害もなかったんだからな……」

 

エリーの報告を聞いたリュウは、モニターに映る背中を大きく抉られたキングザウルス三世の死体を見ながらため息をついた。

 

「宮藤さん、あのネウロイが飛んできたときに、何か気づいた事はありますか?」

「あ、はい。あのネウロイが飛んでくる前に、メビウスに巻き付いていたナースの目がチカチカって点滅していたんです。」

「点滅を?」

「恐らく、あのナースはウルトラマンを拘束して遠くにいる別のネウロイに信号を発信、その信号を狙って砲撃をしてきたのでしょう。」

 

芳佳の話を聞いて我夢が推測をした。

 

「あのナースは怪獣を操ってウルトラマンをおびき出して、砲撃をする別のネウロイが砲撃をするための目印(マーカー)だったのか……。」

「じゃあ、その砲撃をするネウロイを探さないと………」

 

リュウの言葉にひかりが口に出すが、我夢がコンソールを操作して、戦闘記録映像から算出された砲弾ネウロイの全体像が映し出された。

 

「計算をしたところ、この砲弾ネウロイの全長はおよそ390㎝、直径は80㎝になります。」

「口径80㎝!?」

「扶桑の戦艦大和の主砲でも、43cmって聞いてるのに………」

「そんな大きさの大砲なんて、あるわけないダロ!」

 

我夢の出した数字の大きさに、全員が驚きの声を上げた。そこに、直枝が口を開いた。

 

「まさか、『グスタフ』か?」

「グスタフ?」

「それって確か、カールスラントの巨大列車砲だったか?」

「ああ、オレ達502がネウロイの巣を破壊するのに導入されたんだけど、ネウロイに壊されちまってな………」

「確かに、アレの口径は80㎝だったけど………」

 

直枝の説明にニパも補足をするように言った。そこにコウジが発言をした。

 

「たしか、前大戦時にドイツでも開発がされていましたね。」

「この世界にも、グスタフがあったのか………」

「仮にあったとしても、旧ドイツ軍の兵器が日本にあるわけないよなー」

 

話を聞いていたアスカがつぶやく。しかし、ふと横を見ると、トリヤマが何故か顔を青くして脂汗をかいていた。

 

「どうしたんだよ、補佐官?」

「………あるのだよ………」

「え?」

「何が?」

 

リュウが聞くと、トリヤマは少し躊躇いながらも答えた。

 

 

 

 

 

「………グスタフの“3()()()”が、日本にあるのだよ!!」

「「「………えええぇーーーッ!!!???」」」

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

1975年1月、悪魔の星「ブラックスター」から現れた『円盤生物 シルバーブルーメ』によって防衛チーム『MAC(マック)』が壊滅し、地球の防衛線が無防備となってしまう。特にウルトラマンレオの防衛する日本は円盤生物の被害が大きかった。

 

そこで、当時の防衛軍は世界各地に兵器の提供を依頼し、ドイツからは未完成だったグスタフの3号機を対怪獣用に改修されて提供される事が決定をした。

 

しかし、改修と輸送に手間取ってしまい、ようやく日本に到着した時にはブラックスターはウルトラマンレオによって完全に破壊され、グスタフは無用の長物となってしまった。

 

その後、新たな防衛組織である『UGM』の編成や兵器開発のゴタゴタの間にグスタフは余所に保管され、やがて忘れ去られていたのだ………

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「まさか、ヤプールがそれを見つけてネウロイ化させたってのかよ!?」

 

トリヤマの話を聞いたリュウが思わず大きな声を上げた。そこに、ムサシはトリヤマに聞いた。

 

「補佐官、何でそんな事を知っていたんですか?」

「当時、グスタフの輸送任務を指揮していたのは、わしだったんだ………」

「なんと………!!」

 

トリヤマの発言に、皆言葉を失った。

 

「それで、グスタフの保管場所は?」

「それが、当時のゴタゴタで資料のいくつかが紛失してしまって………どこかの山奥という事は覚えているのだが……」

「そうか……」

 

トリヤマの申し訳なさそうな顔で、リュウは肩を落とした。芳佳やひかりもどうしたものかと頭を悩ませていると、サンダーバード基地のディレクションルームのドアが開き、ミサキ女史が入って来た。

 

「失礼します。ミーナ隊長宛に、お届け物が届きました。」

「え?私?」

 

ミーナがキョトンとして、自分に指をさした。

こちらの世界で怪獣やネウロイと戦っている内に、ファンレターなどが届く事があった。芳佳たちはそれを嬉しそうに開けて読んでいたのを覚えている。

ミサキ女史は手にした赤い薔薇の花束をミーナに差し出すと、ミーナは少し戸惑った様子で受け取った。

 

「薔薇の花束とは、情熱的だな………」

 

バルクホルンが少し顔を引きつらせて呟く。何故か芳佳とひかりは冷たい視線を送っていたが。

ミーナは苦笑をしながら受け取った花束を見ると、花束に手紙が添えてあった。

 

「あら、これは……」

 

ミーナは手紙を手にして開けて読むと、目を見開いて驚いた。

 

「これは………」

 

手紙には『Ein Zuggeschütz Neuroi lauert in einem Tunnel in der Nähe des Berges Haruna in der Präfektur Gunma.』と書かれており、翻訳すると………

 

「『群馬県榛名山付近のトンネルに、列車砲ネウロイが潜んでいる。』………!?」

「何!?」

 

手紙の内容を聞いた一同が驚きの声を上げる。芳佳がミーナに聞いた。

 

「それって、本当なんですか!?」

「どうやら、そうみたいね……ご丁寧に地図も添えてあるわ………」

「だとしたら、一体だれがこんな物を……?」

 

我夢が疑問を口にするが、答えは出なかった。しかしミーナは、司令官席の一輪挿しと手にした花束を見て、ある人物が思い浮かんだ。

 

(まさか、彼が………?)

「とにかく、その情報が正しいならネウロイを捜索して、列車砲ネウロイを叩くぞ!」

「はい!」「そうだな!」

「……え、ええ。」

 

リュウがそう言うと芳佳やアスカが返事をし、ミーナもはっとしたように返答し、全員が動き始めた。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

群馬県榛名山近くの山中、そこの上空にガンブースターを筆頭とした4機の戦闘機とウィッチ14名が到着をした。

 

「この辺りだな………」

 

リュウが目的地に着いたため、皆に指示を送ろうと通信機のスイッチを入れた。しかし、通信機のスピーカーからは耳障りな砂嵐のような音しか聞こえない。

 

「何だ?」

「妨害電波………!?」

 

通信が妨害されている事に気付いて、後部座席のミライが声を上げた。そのことに気付いたらしいウィッチやアスカたちにハンドサインで着陸するように指示を出すと、近くの開けた場所に着陸をして集まり、話し合いを始めた。

 

「通信を妨害されてるって事は、この近くにネウロイが潜伏してるってのは本当らしいな。」

「ああ。ここからは複数班に分かれて山を散策しよう。発見したら、信号弾を発射してくれ。」

「「「G.I.G.!!」」」

 

リュウの指示で一同は3つの班に分かれ、地図に記された地点を中心に捜索を開始した。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「例のポイントには、この辺りが一番近いんだけど………」

 

ミーナを筆頭に芳佳、リーネ、ペリーヌ、ミライが銃を構えながら周囲を散策していた。ミライはメモリーディスプレイにダウンロードされたデータを再度確認していた。

 

「資料によれば、グスタフの全長は47.3m………それだけの物を隠すとしたら、どこかどこか大きな洞窟とかが必要になってくるはずですけど……」

「ウルトラマンと同じくらいの大きさなんですね………」

 

ミライの言葉にリーネが呟く。すると、ペリーヌは我夢が首を傾げている事に気が付いた。

 

「うーん………」

「我夢さん?どうかしましたの?」

「いや、例のネウロイが列車砲を取り込んだとして、あれだけの威力を出せるのかなあって思って………」

「言われてみれば………」

 

我夢の疑問にミライも同意するように考え込んだ。確かに、群馬県榛名山近くから東京や長野、栃木、山梨まで最長約220kmはある。例えネウロイ化で強化されたとして、そこまでの長距離を攻撃できるのだろうか。

そんな事を考えつつ歩いていると、先頭を歩いていたミーナがすぐ近くに高さが20mはある大きなトンネルがあり、4本の線路が敷かれているのを確認した。

 

「このトンネルなら、グスタフを隠すのにちょうどいい大きさだわ。」

「線路もあるし、間違いなさそうだ………」

 

一同は顔を見合わせて頷き合い、トンネルの目の前まで来た。ミーナは使い魔の耳と尻尾を発現させると、『空間認識』の固有魔法を発動をさせた。すると、ミーナは直ぐに声を出した。

 

「気をつけてください。奥に何かいます。」

「何!?」

 

ミーナがそう言うと、ミライたちは警戒しながらも手にしたライトをつけた。そして、ライトに照らされたのは……

 

「………ひっ………!?」

「これは………!?」

 

そこには、鼻先に1本、頭に2本の角を持った大きな口の怪獣の姿があった。光を当てられても目を閉じているその怪獣の様子を見たミライは、その怪獣が既に息絶えていることを確認した。

 

「死んでる………」

「この怪獣は一体………!?」

 

怪獣の死体を目の前に困惑する一同だったが、ミライが死体を調べようとするが、ふと、背後に気配を感じて振り返った。そこには、白いスーツの男の姿があった。

 

「!?あなたは………」

「やあ、皆さん。」

 

その男、ディオールの姿を見たミーナと芳佳が驚いた顔になった。

 

「どうして、貴方がここに……?」

「いえ、私の提供した情報が役に立っているのか、気になりましてね……」

「やはり、あれはあなたが………」

 

ミーナは予想通り情報を提供したのがディオールと知って納得の顔になる。一方の我夢は、ディオールが例の宇宙人だと理解をした。ディオールは右手の薔薇で、トンネルの中の怪獣を指した。

 

「その怪獣は、地球で『ネロンガ』と呼ばれていた。姿を消す『透明怪獣』にして、電気を喰らう『電気怪獣』だそうだ。」

「ネロンガ………」

「私が見たところだと、腹部の傷が死因のようだ。大きく抉り取られていたよ………」

 

ディオールはネロンガの説明をすると、手にした薔薇の香りを嗅いだ。我夢とミライはディオールの説明を聞いて、ある可能性に気が付いた。

 

「透明怪獣………?」

「まさか……!?」

「え?」

 

芳佳とペリーヌはキョトンとしていたが、ミライは考えを口に出した。

 

「列車砲ネウロイが、ネロンガの遺伝子を吸収した怪獣ネウロイなら………」

「透明化して、この辺りに隠れている、ってことですか!?」

「恐らくは……それに電気怪獣なら、今起きている妨害電波も説明が付く!」

 

我夢の仮説を聞いた芳佳が声を上げると、ディオールはつづけた。

 

「ついでに言うと、数日前の吹雪の時の妨害電波もそのネウロイの仕業だ。私も当初はブラック星人とポール星人の仕業かと思っていたが、どうやら違っていたらしいな。」

「そうだったのか………」

「ヤプールはあの宇宙人を倒したいのと同時に、この列車砲ネウロイを隠すのが目的だったのか………」

「そう考えると辻妻が合うわね……」

 

ミライとミーナがそう推測する。ディオールは笑みを浮かべると、踵を返した。

 

「私から話せるのは以上だ。後は君たちに任せよう。」

「待ってくれ!君は一体………!!」

 

ミライが立ち去ろうとするディオールに声を掛ける。すると、ディオールは振り返らずに答えた。

 

「私はただ愛する人のために情報を提供しただけにすぎない。」

「は……?」

 

ミライはディオールの言った言葉の意味が分からず首を傾げた。ディオールは振り返ってミーナに向けてウインクをした。

 

「な………!?」

 

ミーナは顔を真っ赤にして頬に手を当てる。リーネは妙にはしゃいだ様子を見せていたが、我夢は呆れた顔になっていた。

 

「それでは、失礼。」

 

そう言って、ディオールは姿を消した。その様子を見た一同は唖然としていたが、その時、地響きと共に森の中で土煙が上がり、大きな鳴き声が聞こえてきた。

 

「ガァアーーーァアウ!!」

「!?」

「怪獣の鳴き声………列車砲ネウロイか!!」

 

ミライたちは直ぐに臨戦態勢になるが、直後に信号弾が上がったのを確認した。

 

「信号弾!?」

「まずい、誰かがネウロイの近くにいるのか!!」

「急ごう!!」

 

我夢とミライの言葉に全員が走り出す。ディオールはそれを見送ると、森の中に消えて行った。

 

「電気怪獣……?まさか、あのネウロイは………!!」

 

走りながら、我夢の脳裏にある考えが浮かんだ。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

信号弾が上がる数分前、リュウとアスカはエイラとサーニャ、ニパらと共に森の中を捜索していた。

 

「本当にこっちか?」

「はい、こっちの方に怪獣くらいの大きさのものの反応があります。」

 

使い魔とレーダー針を出現させたサーニャがリュウに答えた。リュウは前方を見据えていると、急に大きく開けた場所に出た。

 

「あれ?何だここ?」

「何だか不自然に開けているナ………」

「!?目の前に、大きな影が……?」

「何!?」

 

サーニャが叫ぶが、目の前には開けた場所があるだけで怪獣の影も形もない。レーダーの反応を見ていたサーニャ自身も不思議そうにしていたが、その時、目の前の広場が不自然に歪んで何かが動いているように見えた。

 

「何だ?」

 

その光景を見た瞬間、アスカが首を傾げた。何だろうと思っていると、目の前に黒い金属のような装甲が現れて行き、段々とその姿が露わとなった!

 

「ガァアーーーァアウ!!」

 

全長50mほどはあり、怪魚めいた尖った顔の鼻先に1本角、サメのようなギザギザの歯を持った口の四足歩行怪獣のような見た目を持ち、背中には30m以上はある巨大な大砲を持った怪獣ネウロイが、大きく咆哮を上げた!

 

「こいつが列車砲ネウロイか!?」

「透明になって、姿を隠していたのか………!!」

 

リュウが驚きの声を上げ、アスカは冷静に分析をする。ネウロイはリュウたちに気付いていない様子だったが、リュウは指示を飛ばした。

 

「信号弾を撃て。」

「でも、それじゃあネウロイに気付かれるんじゃあ………!?」

「ネウロイは多分、信号弾に目を向ける。その隙にガンブースターとストライカーユニットの方に向かうぞ!!」

「あ、そうか!」

「了解!!」

 

リュウの指示を聞いて、ニパが信号弾を上空に向けて発射する。するとネウロイは打ち上げられた信号弾に反応をして視線を上に向けた。その隙に、5人はストライカーとガンブースターのところまで走る。

 

「アイハラ隊長!!」

「無事だったか!」

 

5人が着陸したポイントまで来ると、既にミライたちも来ており、我夢も心配そうな顔で待っていた。

 

「皆さん、ご無事でしたか……!?」

「ああ、何とかな……」

 

リュウが短く返事をすると、我夢が少し慌てた様子で話しかけてきた。

 

「隊長、あのネウロイはグスタフだけではなく、『透明怪獣 ネロンガ』の遺伝子も取り込んでいます。」

「透明怪獣?だからさっき………」

「ネロンガ………確か、エレキミクラスを生み出すのにデータが使われていたな………」

 

リュウが思い出したように呟くと、我夢は続けた。

 

「ネロンガは電気怪獣でもある事を考えると、透明化と妨害電波は副産物と言えます!あの砲身に電流を流すことで電磁気を生じさせて、『レールガン』にしている可能性があります!」

「レールガン……!?」

「それって確か、電磁力で弾丸を高速で撃ち出す兵器だよな!?」

「そうか、それであれだけの射程距離を出せたのか!!」

 

我夢の説明を聞いたムサシも納得する。一同が列車砲ネウロイの脅威に戦慄している中、エイラが声を上げる。

 

「おい!あいつまた動き出したゾ!?」

「ガァアーーーァアウ!!」

 

列車砲ネウロイは再び鳴き声を上げると鼻先の角を光らせて電撃を放ち、周囲に爆発を起こした!

 

「危ない!!」

「きゃあっ!?」

 

リュウの叫びに咄嵯に回避行動を取ったため直撃は免れたが、爆風で吹き飛ばされて地面に叩きつけられる。

 

「うっ……みんな大丈夫か?」

「何とか………」

 

すぐに立ち上がったリュウが全員の安否を確認する。幸いにも全員が軽傷程度で済んでいた。だが、ネウロイの攻撃はまだ終わっていなかった。

 

「ガァアーーーァアウ!!」

 

ネウロイは再び角から電撃を放ってくるが、今度は全員が散開して攻撃を回避、ウィッチたちは何とかストライカーユニットの元に辿り着くと装着をして上空に発進をした。

 

「みんな、ネウロイの電撃と砲撃に警戒して、あまり近づかないように攻撃をして!」

「「「はい!!」」」

 

ミーナの指示にウィッチたちが返事をすると、ネウロイは上空に向けて電撃を放ってくる!ウィッチたちは回避や障壁で防御をすると左右に展開、銃弾をネウロイに浴びせる。列車砲ネウロイの装甲の表面に火花が散り、数ヶ所に小さな傷が出来たが、大したダメージにはなっていないようだった。

 

「意外と堅いナ………!」

「でも、ダメージが通らない訳じゃない!」

「このまま銃撃を続けましょう!」

 

バルクホルンの言葉に芳佳が答える。皆は攻撃を続けようとするが、その時、山の陰から9機の円盤型ネウロイが現れると、ナースの姿に変形してウィッチたちに迫ってきた!

 

「「「クァーキャアーキャァアーーー!!」」」

「「「クァーキャアーキャァアーーー!!」」」

「「「クァーキャアーキャァアーーー!!」」」

「ナースタイプか!!」

「こいつらまで!?」

 

突然のネウロイの出現に驚くが、直ぐに迎撃態勢に入る。しかし、ナースの群れは一斉に両目からビームを発射してきた!

 

「きゃあ!?」

「くぅ!?」

 

ビームから回避や防御をするものの、攻撃によって陣形が崩れて散り散りにされてしまう。すぐに体制を戻そうとするが、そこに列車砲ネウロイが電撃を放ってきた!

 

「ガァアーーーァアウ!!」

バリバリバリッ

「「「きゃあああ!?」」」

「くぅッ………!?」

 

電撃とビームの掃射にウィッチたちは防御に徹するが、ネウロイは更に追撃を加えようとしてくる。

 

「スパイラル・ウォール!!」

 

だが、金色の粒子を纏ったガンブースターが割って入ると機体を回転させ、金色のバリアで電撃とビームを弾き返した!

 

「アイハラ隊長!」

「待たせたな!!喰らえ、ガトリングデトネイター!」

 

リュウはガンブースターから6門のビーム砲で列車砲ネウロイに狙いを定めると、一斉掃射をする!光線を受けて列車砲ネウロイは頭部と右腕を破損させたが、背中の列車砲への損傷はあまり見られなかった。

 

「ガァアーー………!!」

「まだ足りないか……!!」

《Return to Cruise.》

 

列車砲ネウロイがいまだ健在な事にリュウが悔しそうにしていると、ガンブースターはクルーズモードに戻ってしまう。列車砲ネウロイは動きを止めて再生を始めていたが、その速度は遅いようだった。

 

「再生が遅い……?」

「多分、さっきの電撃を放っていたせいでエネルギーを消耗したのかと………」

「今の内に……!!」

 

列車砲ネウロイが動きを止めて再生に専念をした隙に、ウィッチたちは周囲のナースへの攻撃を開始する。だがその時、ナースの光線がひかりの背後から迫ってくるが、ミーナが間に入って障壁で防御をした。

 

「大丈夫!?」

「す、すみません!!」

「クァーキャアーキャァアーーー!!」

 

ひかりが大声で礼を言うと、ミーナはこちらに鳴き声を上げるナースの眉間を撃ち抜く。すると、破損したナースの眉間の下からコアが露出、さらにミーナが放った弾丸を受けてコアが破壊されると、ナースは粉々に砕け散ってしまった!

 

「やっぱり……先日砲弾が着弾後に頭部のみが逃亡したから、もしかしてと思ったら……!」

「皆さん、コアはナースの眉間です!!」

 

ひかりが皆に向けて叫ぶと、他のナースと戦うウィッチたちは、残った8体のナースの眉間を睨みつけて攻撃を開始、2体の破壊に成功した。

 

「残り6体!!」

 

ウィッチたちは残った6体を睨むと、ナースたちに向けて突撃していく。列車砲ネウロイは再生にまだ時間がかかっているが、あまり時間はかけられないだろう

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

『ウーム、意外と梃子摺るな………』

 

戦いの様子を見ていたヤプールは、左手で顎を撫でながら呟く。

 

『少し時期が早いが、あれを出すか………』

 

ヤプールは右手を翳すと、ナースたちに指示を飛ばした。

 

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「「「クァーキャアーキャァアーーー!!」」」

「「「クァーキャアーキャァアーーー!!」」」

 

6体のナースは甲高い鳴き声を上げると頭を空に向けると、ボディをうねらせながら上昇を開始した。

 

「何だ?」

「何をする気だ……?」

 

ナースの不可解な動きにウィッチたちが困惑していると、上空でナースは3体ずつ集まると、それぞれ2つに折れるように変形して合体し人型になり、地面に2体の人型ネウロイが降り立った!

 

「クァアー………」

「キィイイ………」

 

スマートな人型を持ち、ボディの各所を『雷紋』のような渦巻き模様とラインで赤く発光させ、両肩と頭頂にナースの頭部を持ちナースの尻尾を垂らし、3本指の手をコキコキ鳴らしながら曲げ伸ばしをすると、唸るように鳴き声を上げてバイザー状の赤い目を光らせた。

 

「合体した………!?」

 

合体したナースの姿に芳佳が息を飲み、他のメンバーたちも驚いている。2体の合体ナースは列車砲ネウロイを守るように立ち塞がり、さながら中国拳法めいた構えを取った。

 

『ふん、なかなかやると誉めてやろう。』

「!?」

「この声、ヤプール!!」

 

その時、その場に何者かの声が響いた。ミライたちはそれがヤプールの声であるとすぐに分かった。ヤプールは姿を見せないまま話を続けた。

 

『だが、合体したこの『宇宙怪異竜人 ナースロイド』は、ウィッチの力のみでは倒せんぞ?』

「ナースロイド………!!」

 

ヤプールが『ナースロイド』と呼ぶ2体の合体ネウロイは顔の前で両腕を交差させて大きく開くと、バイザー上の目から強力な光線を放った!

 

 

 

 

 

つづく




第四十話です。

・キングザウルス三世死亡。完全に犠牲になってしまいましたが、今回は黒幕の列車砲ネウロイの話。

・気付いた方がいるかは分かりませんが、今回の話は『勇者王ガオガイガー』の第16話から着想しました。日本にグスタフ持ち込む理由で円盤生物対策って思いつきました。

・列車砲ネウロイのモチーフは『ウルトラマンタロウ』の潜水艦アイアンフィッシュ。機体の上部に付いた背びれみたいなパーツが光線銃のように見えたのでチョイス。それを列車砲の砲身にして、ネロンガの手足と角を着けてみました。
 前回、バラゴン改造怪獣の中でネロンガが出てこなかったのはこのため。

・ナースロイド登場。ネウロイ化ナースは当初クレージーゴンの左腕に合体して「ナースゴン」とか考えていたけどなんか違うと思いながら「帰ってきたハネジロー」を見てた時にワンゼットを見て、スマートな格闘タイプにしようと思いつきました。変形は所謂『龍星王方式』を少し意識していたりします。

では、また次回。


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第四十一話 雷竜の舞

諸々の事情で遅れてしまいました。


列車砲ネウロイの出現する数時間前、ニューヨークGUYS総本部に招かれていた坂本美緒は、サコミズ総監に連れられて総本部の機密書庫を訪れていた。

 

「サコミズ総監、私に見せたいものとは一体……?」

「着きましたよ。」

 

サコミズは『868番書庫』と記された扉の前で立ち止まるとメモリーディスプレイで承認させてからテンキーで暗証番号を入力して開錠、自動ドアを開けて美緒と共に中に入った。

書架が林立する部屋の奥、『315』とナンバリングされた鍵のかかった本棚にカードキーを読み込ませて開錠すると、中に入っていた1冊のファイルを取り出した。

 

「これは、『2009年文書』と呼ばれるファイルだ。後2ヶ月ほどしたら公表予定のものだが、君にはこれを見る権利があると判断して、最高総議長の許可を得てここで見せることにしたんだ。」

 

そう言うとサコミズは美緒にファイルを手渡した。美緒は受け取ったファイルを開いて目を通した。

 

「!?こ、これは………!?」

 

その中身を見た瞬間、美緒の顔色が変わった。

 

そのファイルの内容は―――

 

 

 

 

 

第四十一話 雷竜の舞

 

異次元怪異 ネウロイ(GX‐16)

宇宙怪異竜人 ナースロイド

登場

 

 

 

 

 

「クァアーーー!!」

「キィイーーー!!」

 

2機のナースロイドは金属をこすり合わせたような雄叫びを上げたかと思うと、バイザー状の目から赤い光線『龍眼・ドラゴニックレイ』を放ってきた!しかし、光線はウィッチたちの間に金色の光が飛来してきたかと思うと人型となり、光線を弾いてしまった。

 

「メビウス!!」

 

身を挺して自分たちを守ってくれたメビウスの背中に芳佳が叫ぶ。メビウスは振り返って芳佳たちに小さく頷くと、目の前の列車砲ネウロイと2体のナースロイドに向き直った。その時、メビウスの左右にダイナ、ガイア、コスモスが降り立った。

 

『流石にあの数はメビウス1人じゃあキツイでしょ?』

『すみません………助かります!』

 

ガイアの言葉にメビウスが頷く。すると、ダイナが指をボキボキ鳴らしながら列車砲ネウロイを睨んだ。

 

『俺とメビウス、ウィッチたちは列車砲ネウロイを相手にする。ナースロイドたちの方は任せたぞ!』

『はい!!』

「ガァアーーーァアウ!!」

「クァアーーー!!」

「キィイーーー!!」

 

メビウスが返事をしたその時、列車砲ネウロイとナースロイド2機が咆哮を上げる。

すると、右に立っていたナースロイドが右肩のナースの頭を掴んで引き抜いたかと思うと、それはナースの口から刃が生えたような薙刀『龍牙刀』となり、ナースロイドは大きく振り回して構えを取った。

そして左側のナースロイドは頭にあるナースの頭部にある角を引き抜くとそれは2本の剣『龍角剣』となって両手に収まり、同じように大きく振り回してから構えを取る。

 

「武器を出しただと!?」

「武器を使うネウロイだなんて………!!」

 

武器を構えたナースロイドにバルクホルンたちが驚きの声をあげる。ナースロイドは列車砲ネウロイを守るように立ち塞がり、列車砲ネウロイは砲身に電力をチャージし始めた。

 

「この距離で砲撃する気か!!」

『僕らでナースロイドを足止めする!その間に列車砲ネウロイの方を!』

「分かった!みんな、行くぞ!!」

「了解!」

 

メビウスからのテレパシーにリュウとミーナが返事をすると、ウィッチたちも一斉に動き出した。得物を手にした2体のナースロイドが駆け出すと、それを合図に戦いが始まった。

 

「クァアーーー!!」

『フゥッ、ハァアッ!!』

 

コスモスは鳥の翼のように広げる構えを取ると、ナースロイドが振り下ろしてきた龍牙刀を左手のひらで弾いて剃らす。龍牙刀の刀身が地面に叩きつけられた瞬間、コスモスは右手にエネルギーを溜めてナースロイドの腹部目掛けて青白い光弾『ルナストラック』を発射!光弾は見事に命中して、ナースロイドは後方に数百メートル吹き飛んだ。

 

「クァアーーー!!」

 

吹き飛ばされたナースロイドは腹部の損傷を再生させると、龍牙刀を頭上で風車の如く回転させながらコスモスに迫り横薙ぎに振るう。コスモスは空中へ飛び上がって回避すると、ナースロイドの振るった薙刀は宙を切り、その隙にコスモスは上空で赤く光ってコロナモードにチェンジすると同時に、空中に浮遊したまま連続蹴りを放つ「コロナサスペンドキック」をナースロイドの頭部に叩き込む!

 

 

「クァア………!!」

 

ナースロイドは手から龍牙刀を手から離して地面に落とすと、よろめきながら後退る。コスモスはそれを見ると両腕を鳥の翼のように広げた後に腕を伸ばしてエネルギーを溜めて両腕を右側で大きく振りかぶり、振り下ろすと同時に『ネイバスター光線』を発射、直撃を受けたナースロイドは大爆発を起こした。

 

 

 

一方、もう1体のナースロイドと戦うガイア。ナースロイドの振るう龍角剣を『アグルブレード』で受け止めるが、もう片方の剣で切りつけられてしまう!

 

『クッ!』

 

ガイアは咄嗟に後方に飛んで回避をするが、ナースロイドは赤い光線『ドラゴニックレイ』を放って追撃を仕掛けてくる!光線を回避したガイアは体勢を立て直すと、三日月型の光弾『ガイアスラッシュ』を数発連続で放ち反撃する。

 

「キィイーーー!!」

 

ナースロイドは龍角剣を振るって光線を全て弾き飛ばすが、ガイアはその隙に接近をして胴体にキックを叩き込んだ!ナースロイドは両手から龍角剣を取り落として後ろに倒れそうになるが、すぐに態勢を整え直したかと思うと、両手足の甲や膝から龍の爪を思わせる鋲『龍爪拳』が生成されて格闘戦を挑んできた。

 

「キィイーーー!!」

『ハッ!!』

 

ガイアはナースロイドの拳を避けながら額にエネルギーを充填すると、ナースロイドの顔面に目掛けて『フォトンエッジ』を放ち、ナースロイドは顔の前で腕を交差させて防御するも、光線の勢いで後方に大きく後退した。

 

「キィイ………!!」

 

ナースロイドはフォトンエッジのダメージを回復させようとするが、ガイアはその隙を見逃す事なく右手を左側でT字に構え、腕から金色の光を放ちながら右側に回し、腕をL字に構えてクァンタムストリームを放つ!

 

「キィーーー!?」

 

ナースロイドはクァンタムストリームを腹部に受け、そのまま大穴を開けて爆散してしまった。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「ガァアーーーァアウ!!」

 

ガイアとコスモスがナースロイドと戦っている間、メビウスとダイナはウィッチたちと共に列車砲ネウロイと戦っていた。

列車砲ネウロイをメビウスとダイナが引き付けている間、周囲をウィッチたちが銃撃で攻撃するが、装甲が厚いのかあまり効果はないようだ。

 

「硬いな、コイツ………!」

 

管野が小さく悪態をついていると、列車砲ネウロイは厚い装甲を砲身にエネルギーを充填(チャージ)し始めていた。

 

「!?マズい、砲撃する気ダゾ!!」

「撃たせる前に叩こうにも、あの装甲じゃあ……!」

 

列車砲ネウロイがチャージしているのを見たエイラとサーニャも焦りの声を上げる。一同が手をこまねいていると、ペリーヌの頭にダイナの声が流れ込んできた。

 

《ペリーヌ!一緒に電撃をアイツに喰らわせてくれ!!》

「え!?」

《アイツは電気を吸収するネウロイだ。その吸収する場所を探すんだ!》

「!分かりましたわ!」

 

ダイナの作戦を聞いたペリーヌは列車砲ネウロイに接近していった。

 

「ここまで近づけば………トネール!!」

バリバリバリバリッ

 

ペリーヌが叫んだ瞬間、列車砲ネウロイに向けて電撃が放たれる!

 

「ガァアーーーァアウッ!!」

 

電気をチャージしていた列車砲ネウロイに電撃が撃ち込まれると、砲身の根元辺りに吸収されてネウロイのエネルギーとされてしまう。

 

『あそこか!!』

 

ダイナは電気の充電地点を確認すると、顔の前で腕を交差させると額のクリスタルを青く光らせてミラクルタイプにチェンジ、右腕を掲げて上空に光線を放った。すると、上空に黒い雲が広がっていき、ゴロゴロと雷が鳴り始めた。

 

「これは………!?」

『ダァアッ!!』

 

急に天候が変わったことにウィッチたちは戸惑う中、ダイナは右腕を列車砲ネウロイに向けて振り下ろすと稲妻が列車砲ネウロイに向けて豪雨のように降り注ぐ!

ダイナの超能力の一つ、『ネイチャーコントロール』だ!

 

「ガァアーーーァアウッ!!」

 

列車砲ネウロイはそれをもチャージしようとしたが、既に相当の電力を蓄積していたせいか容量を大幅に超過、大砲が根元から大爆発を起こしてしまった!

 

「やったぁ!!ペリーヌさん!!」

 

列車砲の撃破を確認した芳佳がペリーヌに振り返ると、彼女は少し恥ずかしそうに笑みを浮かべた。列車砲ネウロイは背中から黒煙を上げながら地面に伏すと、うなじの辺りの装甲が砕けてコアが露出していた。

 

「コアを確認!!」

「列車砲が再生される前にコアを!!」

「「「了解!!」」」

 

ミーナの指示を受けて芳佳たちはネウロイに向けて一斉に突撃していく。先行した数名が機銃を掃射してネウロイの追撃を防ぎ、その隙に残りのメンバーが一気に距離を詰める。その隙を突いて、リーネがコアに向けて狙撃をする!

放たれた弾丸は真っ直ぐにコアに向かって行き命中、コアは粉々になって砕け散る!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………ハズだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……!みんな離れロ!!」

「え!?」

 

エイラが咄嗟に叫んだその時、列車砲ネウロイのコアがぐにゃりと蠢いて槍のような形に変わったかと思うと、ウィッチたちに向けて勢いよく飛び出してきた!

 

「きゃあああっ!?」

「!?ニパ!!」

「え?うわあ!?」

 

エイラが慌ててニパに向けて叫ぶも一足遅く、飛んできた物が高速で通過した際に生じた衝撃波を受けてしまい、彼女の体は吹き飛ばされて、地面に向けて落下していった。

 

「ニパさん!!」

 

リーネが思わず叫ぶが、ニパはそのまま森の木々の中に落ちて行った。

 

「そんな……!」

 

ニパの墜落にショックを受けるウィッチたち。咄嗟にペリーヌが向かって行く中、メビウスとダイナが飛んで行ったものを目で追っていくと、黒い槍は空中で更に変形をして赤い単眼と赤い発行体を持った西洋甲冑のような巨人―――アパテー(N)の姿となって地面に着地をした!

 

「アパテー!?」

「列車砲ネウロイの中に潜んでいたのか………!!」

「じゃあ、本物のコアは………!?」

「パオーーーンッ!!」

 

アパテーの出現にメビウスとダイナは驚きの声を上げる。ひかりが疑問を口にするものの、アパテーは隙を与えず右腕を槍に変形させてメビウスとダイナに襲いかかってきた。アパテーの槍による突きを左右に分かれて回避をしている間に、列車砲ネウロイはボディの再生を始めていた。

 

「ガァアーーーァアウ!!」

「列車砲ネウロイの護衛は、ナース以外にもいたという事か………!」

「このままじゃあ、また砲撃をされちまうぞ……!」

『くっ……!!』

 

シャーリーが悪態をついてダイナが小さく歯噛みしていると、アパテーが再び攻撃を仕掛けてくる。咄嗟にダイナが避けるとアパテーは振り返って再度槍を突き刺そうとしてくるが、それをメビウスが背後から羽交い絞めにして動きを封じた。

 

「パオーーーンッ!!」

『ダイナ、今のうちに!』

 

ダイナは頷くと、列車砲ネウロイに向かって行こうとする。しかし、列車砲ネウロイは全身から電撃を放って抵抗をしてきた!

 

『グァアッ……!!』

「ガァアーーーァアウ!!」

 

ダイナが電撃にたじろいで足を止めてしまう。電撃はメビウスの方にまで降り注ぎ、アパテーの拘束を解いてしまう。アパテーはメビウスから離れると単眼から赤い光線を放ち、ダイナの背中で爆発が起きた!

 

『グアアアッ……!!』

「ダイナ!!」

 

光線を受けたダイナは膝をつくとシャーリーが思わず声を上げる。ナースロイドを倒したガイアとコスモスが駆けつけるが、駆け寄ろうにも列車砲ネウロイの電撃で足を止めてしまう。

その隙にアパテーは8本の槍に分離・変形をすると上空に飛び上がり、ウルトラマンの周囲を囲むように地面に突き刺さると、ウルトラマンに向けて電撃を放ち始めた!

 

『ゥアアッ!!』

『グァアッ!!』

「ウルトラマンが……!!」

 

ウルトラマンが攻撃を受けて動けないのを見た芳佳が思わず声を上げる。その時、背中の砲身を再生させた列車砲ネウロイが、アパテーに動きを封じられたウルトラマン達に狙いを定めた!

 

「!?ウルトラマンに砲撃するつもり……!?」

 

ペリーヌがアパテーとネウロイの狙いに気付いて愕然とする。砲撃を阻止しようにも、周囲への電撃は未だ続いており迂闊に近づくことができない。

そして、列車砲ネウロイがチャージを終えて、砲弾を発射せんとした―――

 

 

 

 

 

ジャギキキキィインッ

 

『!?』

「!?」

「え……!?」

 

 

 

 

 

その時、上空から何かが飛んできたかと思うと、ウルトラマン達を拘束していたアパテーの槍を全て切り裂いて破壊してしまった! 地面にアパテーの槍がバラバラと落ちると、メビウスたちは一瞬何が起こったか分からずにいたが、すぐにアパテーの包囲から飛んで逃れたその瞬間に列車砲から砲弾が放たれるものの、それは空を切って地面へと着弾した!

 

「今のは……?」

 

ウルトラマン達が着地をした中、何が起こったのかわからないひかりが思わず呟いた。飛んできた物は上空に飛んで行くと、それは上空で静止していた者の手に収まり、頭頂部に装着をした。

 

「!あれは………」

「ウルトラマン……!!」

「援軍か………?」

 

胸の中央に青く光る『パワータイマー』を備えた白金色の胸当てを持ったその赤い巨人、ウルトラマンの姿を見て、ひかりと直枝、クルピンスキーが驚きの声を上げた。しかし、それ以外の者は喜びの声を上げる。

 

「ウルトラマンマックス!!」

「カイト!!」

「え?」

「知り合いなの……?」

 

ミーナやエーリカの反応を見て、ひかりと直枝が首を傾げる。マックスはメビウスたちの近くに降り立つと、メビウスたちは彼に駆け寄った。

 

『大丈夫か、メビウス!』

『ああ!マックス、どうして地球に?』

『再試験を終えて無事に宇宙警備隊に入隊したんだけど、早速エンペラ軍団の動きを調査指令が出ていたんだ。ちょうど地球に向かうルートにいたんでね。それで援護に来たんだ。』

『そうだったのか……』

「パオーーーンッ!!」

「ガァアーーーァアウ!!」

 

メビウスが納得して頷く。芳佳やリュウがウルトラマン達の無事を見てホッとしていた時、切り裂かれたアパテーが再び1つに戻って人型に戻ると、両腕を槍の形状に変形させ、列車砲ネウロイは再度大砲に電気をチャージし始めた。

 

「感動の再会は後ダナ!」

『アパテーは僕たちが引き受ける!メビウス、君は列車砲を!』

『分かった!』

「みんな、行くわよ!」

「「「了解!!」」」

 

ガイアとコスモス、マックスがアパテーに向かって行き、メビウスとダイナはウィッチたちと共に列車砲ネウロイへと向かって行く。アパテーは両腕の槍をウルトラマンに向けると、ミサイルの如く射出!ガイアとコスモスに迫って来た!

 

『ハッ!!』

 

2人は身体を捻って回避をすると、両手を上げて飛び上がって旋回する2機を追いかける。アパテーの槍は方向転換をしてダイナとコスモスを狙うが、2人は腕を振るって光弾を放つと槍は正面から光弾に直撃をして爆発を起こした。

 

『デャァアアッ!!』

「パオーーーンッ!!」

 

頭上で爆発が起きるその下で、マックスとアパテーは互いに走り出して拳をぶつけ合うと、そこから激しく格闘戦を展開していた。マックスとアパテーは手を組み合って互いに押し合っていると、アパテーは単眼を光らせて至近距離から光線を発射、だがマックスは腕を組んだまま上半身を反らして回避すると同時に、サマーソルトキックをアパテーの顎にお見舞いして吹っ飛ばした!

 

「パオーーーンッ!?」

 

アパテーは地面に倒れ込むと、マックスは距離を取ってマックススパークを装着した左腕を高く掲げると、虹色のエネルギーが左腕に蓄積され、金色の翼のイメージが一瞬現れる。そして、マックスが左腕を縦、右腕をその肘に当てた『逆L字』になるように構えると、左腕から金色の必殺光線「マクシウムカノン」が放たれた!

 

「パオーー………!!」

 

マクシウムカノンの直撃を受けたアパテーは短く悲鳴を上げながら藻掻きながら仰向けに倒れて爆発四散した!

 

「ガァアーーーァアウ!!」

 

一方、メビウスやダイナと共に列車砲ネウロイと対峙するウィッチたち。列車砲ネウロイは電気攻撃を停止させると、ウルトラマンを近づけまいと砲身を振り回して攻撃してくる。

 

「くそ!近づけねぇ………!!」

 

直枝が悪態をついて舌打ちをする。その時、列車砲ネウロイの砲身がメビウスとダイナの方に向くと、短く電気を溜めて3発の砲弾を連続で放った!

 

「危ない!!」

『『!!』』

 

思わず芳佳が叫ぶが2人のウルトラマンは1発の砲弾を回避すると、メビウスは両手で受け止めて、ダイナはフラッシュタイプにチェンジすると『ビームスライサー』を放って空中で撃ち落とした。チャージが少なかった事が幸いしてか、威力が低かったために回避と防御が可能なのだった。

 

「よ、よかった………?ん?」

 

メビウスが受け止めた砲弾を横に放り投げた時、ミーナはある事に気が付いた。

 

「……クルピンスキー少尉、着いてきてくれるかしら?」

「む?」

 

ミーナがクルピンスキーと共に別の方向に向かう。列車砲ネウロイは再度電気をチャージし始めるのを見たメビウスは何か思いついたのか腰の前で腕を交差させると、金色の光になってその場から消えてしまった。

 

「メビウスが消えた!?」

 

メビウスの消失に驚く一同。何が起こったのか困惑をしていると、リーネの頭にミライの声が響いた。

 

《リーネちゃん、あの砲口を狙い撃ってほしいんだ!》

「え?」

《合図を送ったら、正面から撃って!頼む!?》

「は、はい……!」

 

突然の指示にリーネは驚くが、言われた通りに列車砲ネウロイの砲口に狙いを定める。

 

「リーネちゃん?」

「今、ミライさんから指示があったんです!砲口を狙えって!」

「ミライさんから?」

「よくわからんが、ミライに何か考えがあるんだろう………リーネを援護しろ!」

「了解!」

 

リュウの指示を聞いて、芳佳やひかりが守るように前に出る。列車砲ネウロイはチャージが完了したのか、再び砲撃を行おうとしていた。

 

「ガァアーーーァアウ!!」

《今だ!!》

「行きます!!」

ドォオンッ

 

「ガッ……!?」

 

リーネが引き金を引くと、対戦車ライフルの銃口から弾丸が放たれた、はずであった。しかしライフルから放たれたのは、何と―――

 

「あっ!?」

 

弾丸とほぼ同じサイズに小さくなったウルトラマンメビウスであった!ライフルから放たれたメビウスは勢いをそのままに加速と巨大化をしていき、列車砲ネウロイの砲門に突っ込んで行った!

 

「ガァアーーーァアウ!?」

 

列車砲ネウロイが気付いた時には、既に大砲を発射した瞬間であった。そして内部でメビウスと砲弾が真正面から激突する!

 

「!?マズい!大砲が誘爆するぞ!」

 

バルクホルンが叫ぶが、爆発までもう時間がない。そう判断したダイナはガイアたちを呼ぶと、4人のウルトラマンはウィッチたちの前に出て両手を伸ばし、バリアを展開する。

 

「ガァアーーーァア―――」

ドゴォオオオン

 

瞬間、列車砲ネウロイが内部から大爆発して、周囲に衝撃波と黒煙、熱波が吹き荒れる!4人のウルトラマンは後ろのウィッチたちを守るべく必死に踏ん張って耐える。

 

やがて爆発が収まると、カラータイマーを赤く点滅させたダイナたちはバリアを解除する。爆発の中心を見てみれば、そこにはしゃがんだ姿勢のメビウスの姿があった。メビウスも、カラータイマーが赤く点滅し、ふらつきながらも立ち上がった。

 

「メビウス……!!」

「ったく、無茶しやがって!!」

 

立ち上がったメビウスを見て芳佳やリュウが安堵する中、ダイナとマックスがメビウスの元に駆け寄る。

 

『大丈夫か、メビウス!』

『ああ、何とかね……』

「でも、なんて無茶なことを………」

 

メビウスが返事をすると、ひかりが思わず呟く。

列車砲ネウロイは列車砲へのチャージをするときは放電攻撃を出来ないと踏んだメビウスは、発射寸前の隙を突くのが最適であると判断をした。そこで、かつてウルトラセブンから話を聞いていた『ロボット怪獣 クレージーゴン』を倒した際に使用した『ステップショット戦法』で、発射される砲弾を誘爆させる作戦に出たのだ。

 

「でも、これであの列車砲ネウロイを倒せたね!」

『……いや、妙なんだ。手ごたえがないというか……』

「どういうことだ?」

 

メビウスが首を傾げると、ダイナが聞き返す。その時、背後に気配を感じたかと思うと、吹き飛んだネウロイの破片が徐々に集まっていき、再生を始めていた。

 

「何だと!?」

「コアは無事だったってのかよ……!!」

「ガァアーーーァアウ!!」

 

一同が困惑をする中、再生途中の列車砲ネウロイが大きく咆哮を上げた!

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

戦闘地点から数百m離れた地点、森の中を4m程の大きさの黒い金属の塊が移動をしていた。6本の短い節足を忙しなく動かし、逃げるように移動していたが、その背に数発の銃弾が撃ち込まれると、火花を上げて爆ぜた!

 

「キィィイイイイイイイイイ!!」

 

爆発の勢いで動きを止める黒い塊―――列車砲ネウロイから放たれた砲弾ネウロイ。その頭上にはミーナとクルピンスキーが、見下ろしていた。

 

「考えたわね。砲弾にコアを移して、遠くに飛ばして逃げるなんて……」

「ミーナ隊長が、メビウス達が回避した砲弾が動いている事に気付いていなかったら列車砲ネウロイ倒すのに躍起になって、逃してしまうところだったよ。」

 

ミーナとクルピンスキーが呆れと感心の混じったため息をつくと、再生を始める砲弾ネウロイに再度銃口を向けた。

 

「さて、見たところあまり装甲は厚くないみたいだね。」

「ええ。とっとと終わらせましょう!!」

 

2人は容赦なく引き金を引いた。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「ガァアーーーァアウ………!!」

 

列車砲ネウロイは大きく咆哮を上げたかと思うと、粉々に砕け散ってしまった。

 

「え!?」

「何が起きた……!?」

[こちらミーナ。ネウロイのコアを持った砲弾を撃破しました。]

「ミーナ隊長!」

 

突然砕けた列車砲ネウロイに驚いていたが、通信機に入って来たミーナの報告に皆の顔が明るくなる。一同がホッとしている中、ふと、ひかりは視界の端で何かが動いたような気がした。

 

「ん?」

「どーしたひかり?」

「いえ、今何か………?」

 

ひかりは首をかしげていたが、その時、芳佳が思い出したように大声を上げた。

 

「ああ!そう言えば、ニパさんは……!!」

「あー、ニパなら大丈夫ダロ。」

「何を言ってるんですかエイラさん!!」

 

慌てる芳佳に対して呑気に答えるエイラ。直枝とひかりもあまり心配していないようだったが、調度その時、通信機にペリーヌからの通信が入った。

 

[こちらペリーヌ、ニパさんを回収しました。]

[みんなー、心配させてゴメンねー。]

 

若干疲れたような声のペリーヌに次いで、元気そうなニパの声が聞こえてきた。声を聴いた芳佳が、慌てたようにニパに話しかける。

 

「だ、大丈夫なんですか?怪我とかは!?」

[うん。服とか破けちゃったけど、私の固有魔法って自己回復だから。そういえば、宮藤さんたちにはちゃんと説明してなかったねー。]

[まったく、血まみれで腕や足が変な方向に曲がったニパさんを見つけた時は、驚いて口から心臓が飛び出すかと思いましたわよ………]

[ゴメンゴメン………]

「よかったぁ~……」

 

軽く謝罪をするニパに、ホッと胸をなでおろす芳佳。メビウス達も安心したように頷くと、マックスに向き直った。

 

『マックス、改めてありがとう。』

『礼には及ばないさ。それより、ヒカリから伝言を預かって……』

 

マックスが言いかけたその時、

 

『?』

『何だ………!?』

 

突然地響きがしたかと思うと、一同のいる場所から数百m離れた場所の地面が盛り上がり、その下から金属製のドームのようなものが現れた!

 

「ありゃ何だ!?」

 

驚くウィッチたちの目の前でドームが三方向に展開をすると、その中から黒い風船のような球体がみるみるうちに膨らみ始めた。

 

『……!!』

 

メビウスたちが警戒をしていると、球体の内部でバチバチとスパークが光った瞬間に爆発!爆発の衝撃に一同が思わず顔を伏せると、爆炎の向こうから、巨大生物があらわれた!

 

 

 

 

 

「ゼットーン………ピポポポポポポ」

 

 

 

 

 

「怪獣!?」

「ま、まさか………!!」

 

その怪獣には、手足があった。

 

頭があって、黒く固い体表を持ち、銀色の角を生やし、両胸に赤い発光体を持っていた。

 

しかし、その頭に『顔』はなかった。あるのはフジツボめいた2つの突起と、顔の中央で不気味に光る、赤い発光部分のみだった。

 

「ゼットーン………ピポポポポポポ」

 

その怪獣が放つ声は、生物とは到底思えない電子音と不気味な声であった。

 

『ゼ、………ゼットン………!!』

 

その怪獣―――『宇宙恐竜 ゼットン』は、生物でありながら無機質であった………

 

 

 

 

 

つづく




第四十一話です。

・冒頭はもっさんとサコミズ総監の会話。今後の展開に関わってくるかと思います。ちなみに書庫と本棚の番号は某コンサルタントの電話番号が元ネタ

・ナースロイドの武器は『るろうに剣心』の四神の武器が元ネタ。勿論後2つ残っているので、再登場する予定。

・列車砲ネウロイに潜んでいたアパテー(N)。槍をミサイルにしたり目からビーム放ったり、何気に色々パワーアップしてます。
 ニパの墜落ネタはどっかで入れたいなと考えていたので、今回入れてみました。

・マックス再び地球へ。けっこうおいしいところ持って行きましたね。

・決め手はステップショット戦法。列車砲ネウロイどうやって倒そうか考えて、これに行きつきました。が、書いている内に砲弾でコアだけ逃げる作戦思いついたので、取り入れてます。砲弾ネウロイは、『ガイア』のバイソンのイメージ。

・息つく暇もなく、まさかのゼットン登場。よく読むと違和感があると思いますが、詳細は次回という事で。

では、また次回。


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第四十二話 灼熱の刺客

列車砲ネウロイが砕け散った様子を、ジュダと七星将は、次元城会議室のモニター越しに見ていた。

 

『ネウロイ、アパテー、どっちもヤラレタ………』

『問題はない。全て計画通りだ。』

「計画…?」

 

ネウロイが敗れたと言うのに余裕綽々のヤプールにコウメイやヅウォーカァは怪訝な顔になった。

 

『うーむ……(かつてベムスターをコピーしたネウロイは、エネルギー吸収のキャパシティーオーバーが敗因であった。ヤプールがその対策をしていないなんて考えられない………何を企んでいる………?)』

 

ジュダがヤプールの思惑を探ろうとしていると、モニターの向こうで動きがあった。地底から現れたドームから風船のような球体が現れたかと思うと、破裂をして1体の怪獣が出現したのだ。

 

『!?あれは………!!』

『ゼットンだと!?まさか………』

 

現れた怪獣、『宇宙恐竜 ゼットン』を見て、ジュダは思わず腰を上げていた。

 

 

 

 

 

第四十二話 灼熱の刺客

宇宙恐竜 ゼットン(ゼットンレッド)

要塞ロボット ビームミサイルキング

変身怪人 ゼットン星人カウント

バド星人ボルター

グア軍団七星将

剛力怪獣 シルバゴン(スカーシルバゴン)

登場

 

 

 

 

 

「ゼットーン………ピポポポポポポ」

「何、あの怪獣……?」

「不気味なやつだな………」

 

現れたゼットンの姿に、ウィッチやウルトラマンたちがその異様な出で立ちに戦慄する中、リュウやメビウス、マックスは、ゼットンを警戒していた。

 

「みんな気をつけろ……あれはゼットンだ!」

「ゼットン?」

「かつて科学特捜隊の基地を壊滅させ、初代ウルトラマンが手も足も出ないまま命を散らす原因となった最強クラスの怪獣だ!並大抵の相手じゃないぞ!!」

「ウルトラマンの命を………!?」

 

ゼットンの情報を聞いたウィッチたちが絶句を絶句する。そこに、フェニックスネストのエリーから通信が入った。

 

[隊長、こちらでもゼットンを確認しました。アーカイブ・ドキュメントと比較をすると、頭部と胸部の発光体の色が異なっている事から、強化個体であると推測できます!]

「ただでさえ強いゼットンを、更に強化したってのかよ………!?」

 

リュウがアーカイブから呼び出したドキュメントSSSPのゼットンとドキュメントMATの二代目ゼットン、アウト・オブ・ドキュメントのパワードゼットンのデータを呼び出して、目の前にいるゼットンと見比べて悪態をつく。確かにアーカイブのゼットンの発光体はオレンジっぽい黄色であったが、目の前の発光体は炎のような真っ赤な色をしていた。

ゼットンが不気味に佇んでいた時、芳佳はゼットンの名前に聞き覚えがある事に気が付き、そして思い出したのか、それを口に出した。

 

「ゼットン……ゼットン星人………!!」

「ゼットン星人?」

「!?まさかエンペラ軍団の!?」

[気付いたようだな!!]

「「「!?」」」

 

芳佳の呟きを聞いたひかりが聞き返したその時、通信機から声が聞こえたかと思うと、空の彼方から赤いロボットが降りてきた!

 

「ロボット!?」

「ビームミサイルキング!!ボルターか!!」

『やはり、このゼットンはエンペラ軍団の……!!』

『いかにも!!』

 

ゼットンの隣に並び立ったビームミサイルキングからバド星人ボルターが答えた。それに次いで、ゼットン星人カウントの声が響いた。

 

『このゼットンレッドは、ヤプールが持ち込んだ『プラズマソウル』というエネルギー結晶を与えて生まれた強化個体です。私が最高傑作と自負する、最強のゼットンです!!』

「ヤプールが!?」

「アイツ、なんて余計なマネを……!!」

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

『え………?』

 

次元城で戦いの様子を見ていたジュダと七星将は、ボルターの発言を聞いてヤプールに視線を移した。当のヤプールは何か思い出したのか「あ。」と小さく口を開いていた。

 

『……そーいえば、連中にネウロイのコアと一緒に別次元で手に入れたヤツを渡したような記憶が……』

『何しとるんじゃお前はーーーッ!!』ゴガッ

『ぐぶぇ!?』

 

ヤプールが呟いた瞬間、怒りの叫びと共にヅウォーカァが後頭部目掛けてドロップキックを炸裂させた!キックをモロに喰らい吹っ飛んだヤプールは大広間の壁をブチ抜いて、2つ隣の部屋でようやく停止してひっくり返るように倒れ込んだ!

 

『ヅウォーカァ、城を壊すもんじゃあない………』

『も、申し訳ございません!!』

 

ジュダがため息交じりにヅウォーカァに注意をすると、ヅウォーカァは慌てて頭を下げた。起き上がったヤプールは、部下であるマザロン人ドリダラに肩を借りながら立ち上がり、大広間に戻って来た。

 

『も、申し訳ありませんジュダ様………連中を信用させるためとはいえ、あいつらに塩を送る事になろうとは………』

『いや、過ぎた事を悔やんでも仕方がない……それより、ここから見ものだな。』

『ウルトラマンたち、マックス以外エネルギー切れ間近。ウィッチたち、疲労溜まってる。エンペラ軍団、そこ狙って来た。』

「セコいといえばセコいけど、いい作戦よね~。」

 

ワロガとコウメイが分析していると、画面の向こうではゼットンとビームミサイルキングが動き出し、戦闘が始まった。

 

『さて諸君、ヤプールがエンペラ軍団に送った特大の岩塩でどれだけウルトラマンを苦しめるか、ウルトラマン達がどうやってこのピンチを切り抜けるか……このあたりでティータイムと行こうではないか。』

 

ジュダの余裕を持った、おまけに先ほどの自分の発言を皮肉った発言に、ヤプールは内心歯噛みしていた。

 

『くっ……(まあいい。連中のデータがより多く取れるならば、良しとしよう……)』

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

[さてウルトラマンの諸君、お疲れのところ大変申し訳ないのだが、我々の相手をしてもらおう!]

「ゼットーン………ピポポポポポポポ」

 

ボルターの宣言と同時に、ゼットンがウルトラマン達に向けて歩き始めた。ゼットンの接近に芳佳たちは銃器を構えるが、それよりも先にメビウスとマックスが前に出ると『メビュームスラッシュ』と『マクシウムソード』を先制として放つが、ゼットンは両腕を顔の横に持っていくと周囲にバリアを展開、直撃したメビュームスラッシュはパリン、と音を立てて消え、マクシウムソードは弾き返されてしまった!

 

『バリアか!!』

「あのバリア……キングザウルスと同じで頭上ががら空きだぞ!!」

 

バリアを張ったゼットンを見たシャーリーが咄嗟に叫ぶ。それを聞いたダイナが飛び上がって飛び蹴りを放とうとするが、ゼットンは頭上に迫るダイナを見上げると、頭部の発光体から『メテオ火球』を放ち、ダイナに直撃させた!

 

ドォンッ

『グァアッ……!!』

「ダイナ!!うわっ!?」

 

ダイナが火球を受けた事に驚くバルクホルンだったが、次の瞬間にはメテオ火球の余波の高温の熱波が周囲を襲い、思わず顔を腕で覆って防御した。

 

「な、なんだ今のは!?」

「ウィッチの魔法力が無ければ、無事では済まなかったぞ……!!」

「今のが、1兆度の火球か!!」

 

熱波の威力にシャーリーとエイラが冷や汗を流す。

ゼットンのメテオ火球は1兆度という驚異の超高温であり、初代ウルトラマンを苦しめた一因でもある。その余波でさえ周囲に甚大な被害を及ぼし、まともに喰らえばひとたまりもない事は明白だった。

ダイナが地面に倒れ込むと、咄嗟にガイアがS(スプリーム)V(ヴァージョン)に変身すると同時に、ゼットンに殴り掛かる!

 

「ゼットーン………ピポポポポポポポ」

 

しかし、ゼットンはバリアを解除するとガイアの拳を片手で受け止めてしまい、そのまま最小限の動きでガイアを投げ飛ばして地面に叩き付けた!

 

『グゥア!?』

「スプリームヴァージョンが力負けした……!?」

 

ガイアがアッサリ投げ飛ばされた光景を見たエーリカが思わず声を上げた。ゼットンは倒れたガイアに追撃をしようとするが、左右からメビウスとコスモスは挟み撃ちにするようにゼットンに迫る。しかし、ゼットンの背中の装甲が左右に開いて翅のように変形し、浮かぶように飛び上がると、2人は正面から激突をしてしまう。

 

「ゼットーン………ピポポポポポポポ」

 

上空に飛んだゼットンはその場に静止すると、無数のメテオ火球を地上に向けて放った!立ち上がったメビウスのメビュームシュートとコスモスのネイバスター光線、そしてマックスのマクシウムカノンを放って空中で相殺する事は出来たが、次の瞬間、浮遊していたゼットンの姿が消えたかと思うとメビウスの背後に現れて、両手を組んで後頭部に向けて振り下ろした!

 

『ゥアアッ!!』

「メビウス!!」

「テレポートまで………!!」

 

メテオ火球の余波をシールドで防いでいた芳佳たちの目の前で、背後のゼットンに気付いたコスモスとマックスに向けてゼットンが両手の先を2人に向けると、手の先端から高温の火花を放った!かつて、二代目ゼットンが使った『ゼットンナパーム』である!

 

『グゥウ……!!』

『ゥアァアア!?』

 

ゼットンナパームを受けたコスモスとマックスが地に伏せる。流石にこのままではいけないと、芳佳を含めた数人がゼットンに向かって行こうとするが、ストライカーユニットのエンジンから異音が聞こえ、煙が噴き出してきた。

 

「え!?」

「マズい!熱波の影響でオーバーヒートしたのか!!」

「火球を放つだけで、ここまでカヨ………!!

「これじゃあロクに戦えねーぞ!?」

 

ほとんどのストライカーユニットが煙を噴いて段々と高度も下がってきている事に、焦りの声が上がる。その時、ダイナとガイアがゼットンに狙いを定めると、クァンタムストリームとソルジェント光線の発射体制に入った。

 

『待て!ゼットンに光線は………!!』

 

メビウスは2人を止めようとするが間に合わず、ソルジェント光線とクァンタムストリームがゼットンに向かって放たれてしまった!

 

「ゼットーン………ピポポポポポポポ」

 

しかし、ゼットンは胸の前で両手の先を合わせる構えを取ると、2つの光線は吸収されてしまう!

 

『『!?』』

「光線を吸収した!?」

 

驚く間もなく、ゼットンが両手を伸ばしてダイナとガイアに向けると、波状の光線が放たれた!

 

「スパイラル・ウォール!!」

 

その時、ゼットンとウルトラマンの間にマニューバモードになったガンブースターが割って入ると、バリアで光線を防ぐ!ゼットンは驚いた様子も見せずに光線を連射するが、その全てをバリアで弾く。ゼットンはそれを見ると、ガンブースターに一瞬で接近をして殴りかかってきた!

 

「チィッ!!」

 

リュウが舌打ちと同時に回避運動を行うが、それでもゼットンの攻撃を回避する事が出来ずに、機体が大きく揺れる!

 

「ぐぅっ……!!」

「リュウさん!!」

「大丈夫だ!!」

 

何とか機体を立て直すもマニューバモードが強制解除されてしまい、ふらふらと飛行が安定しない。ゼットンの力に、冷や汗がリュウの頬を垂れた。

 

[フハハハハハ!!見ましたか!これがゼットンレッドの力だ!!]

『カウント………!!』

 

その時、ビームミサイルキング内のカウントが高らかに叫ぶ。普段の冷静で紳士的な彼からは想像もできないほど興奮しているようで、隣のボルターも若干引いていた。

 

[プラズマソウルの力だけではありません!格闘と超能力は初代ゼットン!パワーと瞬発力は二代目ゼットン!そして火力と飛行能力はパワードゼットン!ゼットンレッドは、ウルトラマンを苦しめた歴代ゼットンの能力を受け継いだ、最強のゼットンなのです!]

「ゼットーン………ピポポポポポポポ」

「ゼットンの良いとこ取りかよ………!!」

 

よほど自信作なのか、ハイテンションでゼットンレッドを自慢げに演説するカウント。ボルターは呆れながらため息をついていた。

 

『覚えておきなさい!ゼットンとはこういう恐竜なのですよ!!』

『ったく、念のためにビームミサイルキングで同行したが、この様子なら心配はなさそうだな。流石はカウントの自信作だ。』

『さあ、ゼットンレッドよ!奴らを蹴散らせ!!』

「ゼットーン……ピポポポポポポポ」

 

倒れたウルトラマン達のカラータイマーが赤く点滅する中、ゼットンは静かに鳴き声を上げると、ウルトラマン達に向けて歩き出した。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「みんな!!」

 

砲弾ネウロイを撃破したミーナとクルピンスキーは、ペリーヌとニパと合流していた。ニパを気遣ってゼットンとの戦いの場に遅れて向かおうとしていたが、メテオ火球の余波で動くことが出来ず、現状を知って思わず悲鳴に似た声を上げた。

 

「これは、マズいね………!」

「ウルトラマン達はエネルギー切れ間近、ストライカーとガンブースターは熱波の影響でロクに動かせない、仮に乗り切っても、ビームミサイルキングがいる……ここまで用意周到に準備していたなんて……」

 

カウントとボルターの計画的襲撃に、ミーナは歯噛みをする。ここで手を拱いていてもしかたないのだが、打つ手が思いつかず頭をひねっていると、メモリーディスプレイが通信の受信を知らせてきた。

 

「こちらミーナ。」

[やあミーナさん、ご無事で何よりです。]

「!?ディ、ディオールさん!?」

 

通信をしてきたのはディオールであった。どうやって彼が通信をしてきたのか分からないでいると、ディオールは続けた。

 

[いやぁ、偶然にもそこのお嬢さんの通信機を拾いましてね。ちょうどゼットンが現れたので力を貸そうと持ち掛けようとこの通信機を借りたのですが、なにぶんM240(エム・ニ・ヨン・マル)惑星、地球の機械は扱いに慣れていなくて、遅くなってしまいました。]

「へ?」

 

ディオールの言葉を聞いたニパが慌てて懐を探り、そこである事に気が付いた。

 

「あ……さっき墜落した時に、メモリーディスプレイ落としちゃってたんだ………」

「拾ってくれたことには感謝しますが、勝手に使うのは感心しませんわね………」

[まあまあ、この件が終わったらお返しいたしますので。]

 

ペリーヌの苦言を、ディオールは軽く流した。

 

[まあとにかく、ゼットンとビームミサイルキングは、私に任せてください。ああ、このお礼がしたいのであれば、後日にでも……]

「は、はぁ!?」

 

ディオールの発言にミーナが顔を赤くして困惑をするが、当の本人は通信を切ってしまった。ペリーヌとニパが苦笑しクルピンスキーが「隅に置けないね~♪」と茶々を入れていると、

 

「グギュゥゥウウウウウウウウウウウウ!!」

 

遠くの方からゼットンのものとは別の怪獣の鳴き声が聞こえてきた。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「グギュゥゥウウウウウウウウウウウウ!!」

「む?」「何だ?」

「ゼットーン………」

 

ウルトラマン達に迫っていたゼットンであったが、突如として聞こえてきた怪獣の鳴き声に歩みを止めた。鳴き声の方に振り返ってみると、そこにいたのは羊のような曲がった角と銀色のウロコに包まれた体を持ち、背中に何本ものトゲが生えた怪獣―――『剛力怪獣 シルバゴン』であった!

 

『シルバゴン!?』

「あの怪獣、どこから現れたんだ……?」

 

突然現れたシルバゴンに唖然とする一同。その時、ルッキーニはシルバゴンの左肩に星形に見える大きな傷がある事に気が付いた。

 

「あ!星みたいな傷のシルバゴン!!」

「何!?」

「それって、惑星グルータスでルッキーニちゃんたちが見たっていう……?」

「グギュゥゥウウウウウウウウウウウウ!!」

 

目の前の怪獣が、かつて惑星グルータスで見たものと同一である事に驚く一同。その時、ビームミサイルキングが動いた。

 

『何だ、コイツは?我々の邪魔をするつもりか?』

『どこから来たかは知りませんが、ゼットンレッドの邪魔はさせませんよ。』

『ゼットンの力を借りるまでもない!このビームミサイルキングで十分だ!!』

 

ボルターがそう言いきると、ビームミサイルキングは両腕や肩、両脚のビーム砲をシルバゴンに向けて放つ!

 

ズドドドドドドォオンッ

「グギュゥゥウウウウウウウウウウウウ!!」

「ああ!?」

 

ビームの連発を受けてシルバゴンが爆炎に包まれる!思わず芳佳が悲鳴に似た声を上げた。

 

『フン、いきなり現れて少し焦ったがビームミサイルキングにかかればこんなもの………』

「グギュゥゥウウウウウウウウウウウウ!!」

『何!?』

 

勝ち誇ったボルターが嘲笑っていたが、煙の中からほとんどダメージを負っていないシルバゴンが雄叫びを上げながら現れて突進してきた!

 

『バカな!?直撃のはずだぞ!?』

「グギュゥゥウウウウウウウウウウウウ!!」

『ぅおおお!?』

 

あまりの頑丈さにボルターが驚愕する中、シルバゴンはビームミサイルキングのボディに頭突きを喰らわせると、そのまま突き上げるように持ち上げて地面に叩きつけた!

 

『うぉおおおおっ!?』

『何とぉお!?』

「す、すごいパワー………!」

「あの光線を受けて、ほぼ無傷なのかよ……!!」

 

ひかりと直枝が、シルバゴンのパワーとタフさに驚く。

かつて、ウルトラマンティガと戦ったシルバゴンの別個体は、ティガの必殺技であるゼペリオン光線を真っ向から受けても立ち上がるほど頑丈であったが、この個体は明らかにそれ以上の防御力と剛力を持っていることが分かる。

 

「グギュゥゥウウウウウウウウウウウウ!!」

『な、なんてヤツだ………!』

『ゼットン!ウルトラマンはこの際後でいい!この怪獣を先に片付けなさい!!』

「ゼットーン………ピポポポポポポポ」

「グギュゥゥウウウウウウウウウウウウ!!」

 

カウントの命を受けたゼットンが、シルバゴンに狙いを定める。シルバゴンもゼットンに気付くと雄叫びを上げてドラミングを行い、突っ込んで行った!

 

「ゼットーン………ピポポポポポポポ」

 

ゼットンは先ほどのガイアの時のように突っ込んできたシルバゴンを片手で受け止めるが、シルバゴンの足は止まらず、少しずつ後退を始めていた。

 

「グギュゥゥウウウウウウウウウウウウ!!」

「ゼットーン………ピポポポポポポポ」

 

ゼットンは慌てる様子もなく、右手の先を押さえつけるシルバゴンに向けると、ゼットンナパームを至近距離で放った!

 

「グギュゥゥウウウウウウウウウウウウ!!」

『さっきのビームに比べれば豆鉄砲ですが、怯ませるには十分ですよ!』

 

至近距離でゼットンナパームを受けたシルバゴンは怯んで力を緩めてしまい、その隙にゼットンはシルバゴンを放り投げる。地面に倒れたシルバゴンを見下ろすゼットンは、追撃でメテオ火球を放とうとしてきたが、シルバゴンは頭を上げると同時に頭突きを喰らわせて角を突き刺さんとしてきた!

 

「グギュゥゥウウウウウウウウウウウ!!」

「ゼットーン………ピポポポポポポポ」

 

シルバゴンの頭突きを受けたゼットンは角の刺突は避けられたものの吹き飛ばされてしまい、背後の山に激突した!

 

「ゼッ、トーン………ピポポポポポポポ」

『ゼットン!?』

 

倒れたゼットンがフラフラしながら立ち上がる。見たところ外傷はないようであるが、胸の発光体の光が弱々しくなっている事に気付いて、カウントは慌てた声を出した。

 

『マズいですね……エネルギーが切れそうだ………!』

『さっき、ウルトラマンを仕留めるためにバカスカ火球を放ったせいか!!』

 

ゼットンのエネルギーが切れかけている事にカウントが歯噛みをする。

 

(現時点でゼットンレッド唯一の弱点は“エネルギー切れ”………それを悟られないよう、戦闘後でウルトラマンが消耗した時を狙ったというのに余計な邪魔が………!!)

『ええい、これ以上好き勝手させてたまるか!!』

 

ボルターが叫ぶと同時に、ビームミサイルキングの背中のミサイルポッドからジャイアントミサイルが数発発射され、シルバゴンに向かって行く!

 

「シュトゥム!!」

ゴォオウッ

『何!?』

 

しかしその時、ミサイルに向けて竜巻が吹いたかと思うと、ミサイルは軌道を変えてシルバゴンから大きく離れた地点に着弾し、爆発した!

 

「ハルトマンさん!」

「流石に、任せっきりなんてできないからね!とは言え、今日はこれで打ち止めだよ………」

 

竜巻の元凶であるエーリカは笑って見せたが、高度を維持できないほど消耗をしたのか、ふらつきながらバルクホルンの肩につかまった。

 

『し、しまった!オレとしたことが………ロクに動けないだろうと思って、ウィッチの事を忘れていた……!ええい、かくなる上は残りのエネルギーとミサイルを一斉掃射だ!!』

『ゼットンレッド!最後の一撃を放つのです!!』

「ゼットーン………ピポポポポポポポ」

 

ボルターがやけくそ気味に叫ぶと、ビームミサイルキングの各所からビームとミサイルが雨霰となってシルバゴンに迫り、ゼットンが最後の力を振り絞ってメテオ火球を放った!

 

「グギュゥゥウウウウウウウウウウウ!!」

 

しかし、シルバゴンは尻尾を大きく振るうとメテオ火球が弾かれて、ミサイルに向かって行く!メテオ火球を受けたミサイルが爆発し、周囲のミサイルに誘爆していく!

 

『何だと!?』

『バカな!?』

「グギュゥゥウウウウウウウウウウウ!!」

 

尻尾の一振りで一斉掃射を防がれた事にボルターとカウントが驚愕する中、ミサイルの爆炎の中からシルバゴンが飛び出してゼットンに掴みかかると、柔道の一本背負いのように投げ飛ばしてしまった!

 

「ゼッ、トーン………」

『ゼ、ゼットンレッド………!!』

「……?(動いていないゼットンを?)」

 

ビームミサイルキングの目の前に投げ飛ばされてきたゼットンレッドにカウントが息を飲む。一方、シルバゴンがゼットンを投げ飛ばしたことに、シャーリーは違和感を覚えた。

 

『残弾もエネルギーもない………カウント、悔しいがここは引くしかないぞ………!』

『………クッ!致し方ありませんね………!!』

 

ボルターに言われて、カウントは苦虫を潰すような顔をしながら撤退を決断する。

 

『ウルトラマン!不本意ながら今日の所は引いて今日の所は引いてあげますよ!次こそは必ず……!!』

『覚えておれよ!!』

 

そう言い残すと、先ほどゼットンが出てきた円盤が頭上に飛来して下部から光線が照射されると、ゼットンとビームミサイルキングは吸い込まれるように回収されて、円盤は一瞬で空の彼方に消えてしまった。

 

「た、助かった、の………?」

「そのようだな………」

「まあ、ほとんど痛み分けに近いがな………」

 

芳佳が思わず呟くとバルクホルンとリュウが答え、一同はホッとした表情を浮かべる。ウルトラマン達はエネルギーがほとんど残っていないものの立ち上がると、結果的に自分たちを助けてくれたシルバゴンに目を向けた。

 

「グギュゥゥウウウウウウウウウウウ!!」

 

シルバゴンがひと鳴きをすると、次の瞬間、小さな光になってどこかへ飛んで行ってしまった。

 

『あ………!!』

『消えた………?』

『今の消え方……先日の冷凍怪獣たちと同じ………?』

 

シルバゴンが姿を消したことに驚きつつも、消えた際の状況が先日の冷凍怪獣軍団が消えた時と同じ状況であるとガイアが気付いた。シルバゴンが何者かの差し金であると思われたが、その正体の謎が深まるばかりであった。

 

ボスンッ

「ひゃっ!?」

「ストライカーが限界だ!一旦着陸するぞ!!」

「は、はい!!」

 

その時、芳佳やリーネのストライカーユニットから黒い煙が噴き出して、エンジンに異常が起きている事が分かった。バルクホルンの指示で一同はすぐ下に降下して着陸をすると、ウルトラマン達も顔を見合わせて頷くと、光になってみるみる小さくなって人間態へと戻った

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「ネウロイは倒せたけれど、こっちも結構被害を受けたわね………」

 

夕陽で周囲が紅く染まる中、ため息交じりにミーナが呟いた。周囲では急遽駆けつけた整備班がストライカーやガンブースターの点検と回収を行い、負傷したミライたちを治療する芳佳を、リーネとひかりが手伝っていた。

 

「あのゼットンっていう怪獣、すごく強かったですね……」

「ああ。今回は、向こうのミスとシルバゴンに助けられた形だね………」

 

芳佳が治療をしながらミライと話し合っていた。一方、整備班と共にストライカーの点検をしていたシャーリーは、後ろにいたバルクホルンに話しかけた。

 

「………なあ、あのシルバゴン、動いていないゼットンに攻撃したよな?」

「………お前も気付いたか。」

「え?なになに?何の話ー?」

「どうかしたの?」

 

2人の話に、ルッキーニとミーナが入って来た。

 

「いや、シルバゴンは視力が弱くて、動いていないものは認識できないんです。それなのに、あのシルバゴンは()()()()()()()()()()を攻撃していた………」

「あ!?」

「あのシルバゴンは、肩の傷から見てもグルータスにいたものと同じ。あの時は動いていない我々が見えていなかったのに、動いていないゼットンを何故攻撃できた………?」

 

シャーリーの言葉にバルクホルンが疑問を口にし、他の面々も考え込む。その時、ミーナが口を開いた。

 

「………おそらく、あの怪獣は以前『レイオニクス』と名乗った怪獣使いと同じく、宇宙人の命令を聞いて戦っていたのでしょう。スイカ割りで、周囲の声を聴いてスイカの位置を探るみたいにね………」

「何……!」

「そうか……それならば説明が付くな………」

 

ミーナの仮説にシャーリー達は納得をするが、バルクホルンはミーナの表情からそれが仮説ではなく確信していると気づいた。

 

「……ミーナ、あのシルバゴンを操っていた宇宙人に心当たりがあるのか?」

「……ええ、あの時私たちを助けたディオールさんよ。」

「何だと!?」

 

バルクホルンの質問に対して返ってきた答えに、バルクホルンだけでなくその場にいる全員が驚愕する。

 

「その人と会ったことはないが……レイキュバス以外にもシルバゴンも所有していたのか………!」

「ブラック星人たちといい、何が目的なんだ?」

 

レイオニクスたちの目的が分からず頭を抱える。ミーナは少し考えていると、ふと、シャーリーの手元のストライカーの上に、薔薇の花束が置かれている事に気が付いた。

 

「え?あれ……いつの間に…?」

 

シャーリーが戸惑いながらも花束を持つと、薔薇の間にメモリーディスプレイと手紙が添えられている事に気付いた。

 

「あ、ニパのメモリーディスプレイ………ミーナ隊長宛だな………」

「ディオールさんからみたいね………」

 

多少呆れながらも花束を受け取るミーナ。手紙を開けてみれば、そこには後日食事でも、といった内容が書かれていた。

 

「デートのお誘いかよ………」

「だいたーん!」

「どうするミーナ?かなり怪しいぞ?」

「……そうね………冷凍怪獣の時に加えて、今回の情報提供にシルバゴンのお礼があるのは確かだし………」

 

ミーナは少し悩んだものの、手紙を手にしてある決意をした。

 

「彼のお誘い、受けようと思うわ。」

 

 

 

 

 

つづく




第四十二話です。

・ゼットンレッドは、まさかの大怪獣ラッシュからのプラズマソウルで強化されていました。パワードゼットンまでの歴代ゼットンのいいとこどりという事で、背中が開いたりゼットンナパームを放ったり、カウントの言う通り、「ゼットンとはこういう恐竜だ!」とばかりにやりたい放題しちゃったかもw

・ゼットンの代名詞である1兆度の火球の表現ってどんなもんだろうと考え、余波で周囲に熱波が走るって形にしてみました。

・スカーシルバゴン登場。ビームミサイルキングとゼットン2体相手でも全く引かないのは割と強いですね。ゼットンは今回エネルギー切れで撤退。今後も登場すると思います。

・ディオールからのお誘い。という訳で、次回はいよいよディオールの秘密に迫ります。

では次回、「ミーナのデート大作戦」にご期待ください。


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第四十三話 ミーナのデート大作戦

列車砲ネウロイを撃破した日の夜、ニューヨークからGUYS特別機で帰還した美緒を芳佳とペリーヌが出迎えた。

 

「坂本さん!!」

「すまない、みんなが大変な時に………」

「いえ、坂本さんが謝るような事はなにもないですから………」

 

申し訳なさそうにする美緒に対して、芳佳が言った。

 

「それで、助けてくれたという宇宙人について何か分かったのか?」

「いえ、それはまだ………」

「今、ミーナ隊長が接触できないか試みていますが……」

 

歩きながらペリーヌが美緒に答えると、ちょうどディレクションルームに到着をした。ドアが開いて中に入ると、ミーナが電話の受話器を置いていた。

 

「ミーナ!」

「美緒!帰ったのね……」

「ミーナ隊長、どうでした?」

「……ええ、今話はついたわ。」

 

美緒との挨拶もそこそこに、ミーナはため息をひとつついて答えた。

 

「今週末、彼とデートをする事になったわ。」

「………はぁあッ!?」

 

ミーナの予想外の言葉に美緒は一瞬固まり、その言葉の意味を理解してか、思わず大声を上げた。困惑しながらも周りを見てみれば、芳佳たちはこうなる事を予期していたのか苦笑をして肯定の意味で頷いた。どうやら、知らなかったのは今来たばかりの自分だけであったと理解し、美緒は肩を落とした。

 

「えーと、落ち着いて?デートと言ってもあの人から情報を引き出すためだから……」

「そ、そうか………そういう事なら………」

 

慌ててミーナがフォローを入れると、美緒は納得した様子で返した。そんな美緒の様子を見た芳佳は、話題を変えようと口を開いた。

 

「……あ、そう言えば坂本さん、ニューヨークはどうでした?」

「え?あ、ああ………どうといっても、ほとんどネウロイに対する会議に出席した程度だからな……特にこれといったものはなかったな。」

「そうですか。」

 

芳佳はそう言ってちょっぴり残念そうな顔をする。美緒は呆れたようにため息をつくが、内心ある事を考えていた。

 

(“()()()”は、まだ皆に話す事は出来ない………あの文書に記載された『Xデー』まで2ヶ月もないが………)

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「え?カンノン像を探してるって?」

 

中東の某国某所、観光客らしき人物が現地民の集まる酒場で1人の男に話しかけていた。観光客の顔はよく見えないものの、男は酔っているのだろうと思ってあまり気にしなかった。

 

「んー、この国にそんなのがあるって聞いた事ねーが………そーいやぁ、『ニホン』って国にそんなのがあるって聞いた事があるぞぉ~」

 

男が気だるげに返すと、観光客は本当か、と嬉々として食いついてきた。

 

「あ~、アジアの端っこの島国だったなぁ確か……まぁ俺も行ったことないから詳しくは知らんけどよぉ……」

 

男は手にしたグラスをグイっと煽り中の酒を飲み干して反対の席を見ると、いつの間にか観光客の姿がない。テーブルの上を見れば、そこには数枚の紙幣と「情報料」というメモが置いてあった。「せっかちだなぁ」と男は呟きながら、紙幣をジーンズのポケットに押し込んだ。

 

 

 

 

 

第四十三話 ミーナのデート大作戦

 

剛力怪獣 シルバゴン(スカーシルバゴン)

鬼女 マザラス星人ウイミイ

光熱怪獣 キーラ

宇宙怪人 ストラ星人アトール

凶暴怪獣 アーストロン

宇宙狩人(ハンター) クール星人ボンヌイ

八つ切り怪獣 グロンケン

登場

 

 

 

 

 

そして数日後、約束のデート当日となった。

エリーやマイが見立てた服―――赤を基調としたワンピースを着て、ミーナは待ち合わせ場所のオープンカフェでコーヒーを飲んでいた。

離れた席ではミライ、アスカ、芳佳、ひかり、美緒が、こっそりその様子を窺っていた。

 

「待ち合わせの時間まで10分だな………」

「上手くいくと良いんですけれど……」

 

少し心配そうにする美緒とミライ。反対の席に座っていた芳佳とひかりも「そうですねー」とつぶやいていた。

 

「……まあ、個人的には失敗してくれた方がいいんですがねー」

「そうですねー、何か私たちの時と比べて、明らかに差があるように思えますしー」

「宮藤………」

「結構根に持ってるね、2人とも………」

 

自分たちの時(ゴメノス)とは大分違う相手である事にどこか納得ができない様子の芳佳とひかり。

 

一方のミーナは、コーヒー口に含みながらもどこか落ち着かない様子であった。

 

(任務とはいえ、流石にちょっと緊張してきたわね……)

 

今回のデートは結果にかかわらず、ディオールから『レイオニクス』に関する情報を聞き出す事が目的となっている。どのように彼に聞き出そうかと考えていたが、ふと、先日カイトから聞いたウルトラマンヒカリからの伝達を思い出していた。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「―――『マイナスエネルギー』?」

「ええ。ヒカリ達宇宙技術局の調査の結果、ネウロイのコアはマイナスエネルギーを吸収し、自身の稼働エネルギーにする性質があると判明したそうなんだ。」

 

フェニックスネストで、カイトがリュウや美緒に説明をしていた。ちょうどその時、ひかりと直枝が入って来ると、不思議そうな顔でひかりが話しかけてきた。

 

「え?私がどうかしましたか?」

「え?ああ、そうじゃなくて、ウルトラマンヒカリの事だから………」

「あ、そうですか…」

「紛らわしいな。」

 

自分の話をしていると勘違いしたひかりにカイトが訂正をすると、直枝は呆れた様子で呟いた。呆れながらも、美緒がカイトに話を続けるよう促した。

 

「それで、そのマイナスエネルギーとは一体?」

「マイナスエネルギーは、「人間の心の暗い波動」とも言われているエネルギーで、怒りや悲しみ、妬みに憎しみといった『負の感情』から生まれ、邪悪な怪獣を呼び寄せ、生み出したりするものなんだ。」

「人間の心から………?」

「実際、ドキュメントUGMにはマイナスエネルギーによって生まれた怪獣が数多く記録されています。」

 

エリーがコンソールを操作し、アーカイブ・ドキュメントから『三日月怪獣 クレッセント』や『硫酸怪獣 ホー』、『妄想ウルトラセブン』のデータを呼び出しながら補足をする。それを聞いたエイラが、膝の上に寝転がるリムエレキングを撫でながら口を開いた。

 

「それって、ある意味モチロンと逆ダナ。」

「………あー」

「言われてみれば………」

 

エイラの言葉に、一同が感嘆の声を出す。

モチロンは『月ではウサギが餅をついている』という伝説を信じる人の心から生まれた怪獣だ。それはマイナスエネルギーとは逆のプラスの感情から生じたエネルギーと言えなくもない。

 

「その性質を考えると、ヤプールが気に入る理由も頷けるな。あいつらはマイナスエネルギーを糧に、何度でも蘇る事が出来るそうだからな………」

「なるほど……いざって時には、吸収させたマイナスエネルギーを自分の非常食にしようって魂胆か………」

 

ヤプールの目論見を察したリュウが納得した様子で頷いた。カイトも小さく頷くと、話を続けた。

 

「現状判明したのはその性質のみだが、調査は続行されるとのことだ。また何かあったら伝えるよ。」

「ありがとうございます。」

 

リュウが頭を下げると、カイトはディレクションルームを出ようとした。

 

「あれ?カイトさん帰っちゃうんですか?」

「あ、今回は地球の近くに寄ったついでだったからね。太陽系を何回か周回して、異変がないか調査してから光の国に帰還する予定だよ。」

 

ひかりの質問にカイトは答えると、部屋から出ていった。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

(ネウロイがマイナスエネルギー………負の感情を糧にしている、か………)

 

カイトの言葉を思い出しながら、ミーナは考えた。

自分たちの世界でネウロイは古代からいた事が記録されているものの、進攻が始まったのは1939年。それまでの間に自分たちの世界で人の悪意や怒り、憎しみが蓄積され、ネウロイがそれを摂取し、成長したのが侵攻の始まりなのではないか。

ミーナはそう推測していた。

 

(負の感情を糧にする……人から負の感情を消すことは不可能……だとしたら、ネウロイの侵攻を止める手立ては……)

 

ミーナが考え込んでいると、前の方から赤い薔薇の花束暴を手にした白いスーツの男性、ディオールがこちらに歩いて来るのが見えた。

 

「来た、あの人です!」

「白いスーツに薔薇……話に聞いてはいたが、今時珍しいくらいのキザ野郎だな……」

 

ディオールの姿を見た芳佳が小声で言うと、同じくその姿を見たアスカが呆れた様子で呟いた。ミーナも近づいてくるディオールに気が付いたのか、その姿に若干引き気味だった。彼がミーナの座る席に来ると、片膝をつき花束を差し出した。

 

「お待たせをしてしまって、申し訳ありません。」

「い、いえ……」

 

ミーナは困惑しながら花束を受け取ると、ディオールは立ち上がり、ミーナに微笑みかけた。

 

「この度は、私の申し出を受けて頂き、ありがとうございます。」

「いえ……こちらこそ……」

「………見た目だけじゃなくて、性格までキザだな………」

 

ぎこちなく会釈をするミーナにディオールは微笑むのを見たアスカが、顔を引きつらせながら感想を言った。隣のミライたちも無言で頷くと、ディオールはミーナに話しかけた。

「では、行きましょうか……」

 

そう言ってディオールが手を差し出すと、ミーナはその手を取った。

 

(よし……後は上手く聞き出すだけね……)

 

そう心の中で呟くと、ミーナは会計を済ませてディオールと一緒にカフェを出ると、ミライたちも顔を見合わせ頷き合い席を立った。

 

「それで、どこへ行くんですか?」

「そうですね、まずは王道で映画にでも………」

 

外に出たミーナとディオールが話していたその時、急に周囲がざわめいた。何事かと思い周囲を見ると、前方の人混みが旧約聖書に記されたモーセの十戒の如く左右に割れて、その中心に白い着物のような服を着た、鬼のような白い顔と角、黒い長髪を持った女性宇宙人と、大きな銀色の帽子のような頭と3本指を持った宇宙人の姿があった。

 

「見つけたわいな………!」

「!?宇宙人………」

「あれはマザラス星人にストラ星人!?何故地球に………?」

 

現れた宇宙人『鬼女 マザラス星人』と『宇宙怪人 ストラ星人』の姿を見て、ミライが驚いた様子で呟く。ミーナも突然の事態に困惑をしたが、ディオールは不服そうな顔でため息をついた。

 

「……あー、君たち、確かウイミイとアトールと言ったかな?わざわざ地球にまで来たのかい?」

「フン!ワチキらもあのままやられっぱなしなのは、性に合わないわいな!」

「怪獣を仕入れて、鍛えて来たでゴワス!今度はそう簡単にはいかないでゴワスよ!」

 

ディオールの問いかけに、ウイミイとアトールが答える。ミーナは事情が良く分かっていないものの、目の前の2人がディオールと因縁がある事は理解できた。

 

「見ての通り、今日は取り込み中でね。出来れば明日とかにしてほしいのだが………」

「問答無用わいな!!」

 

断ろうとするディオールを無視してウイミイが叫ぶと、懐から3つの窓のようなものが開いた長方形の白い機械を取り出した。

 

「?(何、あの機械は………?」

「一番手はワチキわいな!行くわいな、キーラ!!」

《バトルナイザー、モンスロード!!》

 

ウイミイの言葉に機械が反応して機械から音声が発せられるとカバーパーツが開き、中からカードのようなものが光を放ちながら射出、機械上部のリーダーでスキャンされると、空高く飛び上がった!

 

「何!?」

「あの光は………!!」

 

飛び上がった光を見た芳佳が声を上げた。あの光は、以前冷凍怪獣軍団やレイキュバスが現れた際のものと同じであった。

飛び上がった光は空中で巨大化し、怪獣の姿へと変わって地面に降り立った!

 

「キュォキュイィーーー!!」

 

出現したのは、光る大きな目が特徴で昆虫を思わせる堅そうな体表と甲羅、頭に短い触角を持った怪獣だった。突然、何の前触れもなく出現した怪獣に周囲の人々はパニックとなり、あちこちで悲鳴が上がり逃げ惑う人々でごった返していた。

 

「ドキュメントSSSPに記録確認!レジストコード『光熱怪獣 キーラ』!」

「あの機械で怪獣を呼び出して操れるのか………!!」

 

芳佳がメモリーディスプレイでキーラの情報を読み上げる中、ミライはウイミイの持つ機械の仕組みに気付いた。

 

「キュォキュイィーーー!!」

「さあ、お前のシルバゴンを出すわいな!」

 

臨戦態勢のキーラが高らかに鳴くと、ウイミイは挑発するように機械でディオールを指した。ディオールは少しうんざりしたような目でウイミイを見ると、ため息をひとつついた。

 

「……すいませんミーナさん、ちょっと荒っぽい事をします。」

「え?」

 

ディオールがミーナに断りを入れると、後ろからミライが前に出てきた。そしてキーラを睨むと腕を構えてメビウスブレスを出現させた。

 

「待て、ウルトラマンメビウス!!」

「!?」

 

しかし、変身しようとしたミライをディオールが止めた。

 

「これっは私たち「レイオニクス」の戦いだ。手出しをしないでいただきたい。」

「だが………!!」

 

ミライが反論をしようとするが、ディオールがオッドアイの瞳で睨みつけると、その異様な威圧にミライは押し黙ってしまった。ディオールは懐に手を入れると、複数個のサングラスを取り出して、ミライに向かって放り投げた。

 

「直ぐにそれが必要になる。他の者にも渡しておいてくれ。」

「え?」

「さあ、ミーナさんも。」

「あ、はい………?」

 

ディオールに促され、ミーナもミライ同様にサングラスを渡された。ディオールは再度懐に手をやると、ウイミイと同様の機械を取り出した。こちらはカバーパーツの角に薔薇の模様が描かれている違いがあるが、ディオールはウイミイと同様にその機械を掲げた。

 

「行け!シルバゴン!!」

《バトルナイザー、モンスロード!!》

 

ディオールが機械をウイミイと同じように掲げると、先ほどと同様に光が飛び出して怪獣・シルバゴンが出現した!

 

「グギュゥゥウウウウウウウウウウウウ!!」

「キュォキュイィーーー!!」

「やはり、あのシルバゴンはあの人が………!」

 

睨み合ったキーラとシルバゴンの雄叫びが、街中に大きく轟いた。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

東京都内に2体の怪獣が出現した知らせは、フェニックスネストにも届いていた。緊急事態のアラートが響く中、リュウはモニターに映るキーラとシルバゴンを見て眉を顰めた。

 

「やはり、例の宇宙人がシルバゴンを………!」

「隊長!キーラが両目から放つ閃光は、見た人を失明させてしまいます!」

「早いところ対処しないと、甚大な被害がでるって訳か……!!」

 

リュウが拳を握りしめると、格納庫のアライソから通信が入った。

 

[リュウ、ガンフェニックスの修理と慣らし運転は済んである!いつでも出せるぞ!!]

「よし!ガンフェニックスとガンブースターで現場に急行するぞ!」

「「「G.I.G.!!」」」

 

リュウの指令に全員が格納庫へ向かおうとしたその時、再度アラートが鳴り響いた。

 

「鎌倉市に、怪獣出現!!」

「何だと!?」

 

その報せに、全員が驚愕の表情を浮かべた。モニターが切り替わると、頭や両腕、腹等に回転する丸鋸を持った怪獣―――『八つ切り怪獣 グロンケン』の姿が映し出された!

 

「こいつ、この間ブラジルに現れたヤツか!!」

 

グロンケンの姿を見たカナタが声を上げた。リュウはグロンケンを睨みつつも、隊長としてメンバーに指示を出した。

 

「オレとカナタ、マリはガンフェニックスでキーラとシルバゴンの方に行く。コウジはガンブースターでグロンケンの方に向かってくれ。」

「「「G.I.G.!!」」」

「我夢さんとウィッチ数名は、ガンブースターの援護を頼む。対戦校某業容ゴーグルを忘れずに装備してくれ!」

[[[了解!!]]]

 

リュウの指示を聞いた全員が、それぞれ動き出した。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「グォオッ!グォオッ!」

 

鎌倉市に出現したグロンケンは、何かを探すように周囲を見渡す。そして目的のものを見つけたのか歩き出した。グロンケンは鎌倉を代表する観光名所『鎌倉大仏殿高徳院』に到着すると、右腕の丸鋸を回転させて大仏を斬りつけ始めた!

 

『待て、グロンケン。』

「グォオッ………」

 

しかし、その途中で何者かに止められた。グロンケンは切断を中断すると、上空を見上げた。

 

「それは『カンノン像』ではなく、『ダイブツ』のようだ。このボンヌイとしたことが、間違えてしまった。カンノン像は別にあるようだ……」

 

不可視の宇宙船からグロンケンに命令していたのは、昆虫の腹を思わせる大きな銀色の頭とフック状の6本腕、細長い尾を持った『宇宙狩人(ハンター) クール星人ボンヌイ』であった。ボンヌイは鎌倉市の観光雑誌を読みながら、目的の『観音像』がどこにあるのかを探して指示を出した。

 

「カンノン像がどんなものか知らなかったから違う像を斬っていて時間がかかったが、ようやく見つけたぞ。グロンケン、カンノン像は北の方角だ!」

「グォオッ!グォオッ!」

 

ボンヌイに命じられたグロンケンは、北に向かって歩きだした。グロンケンの目線の先には、全長25mの大船観音があった。グロンケンが鎌倉中央公園に差し掛かった時、ガンブースターとファイターEXⅡ、そして直枝、クルピンスキーが到着した。

 

「グロンケン、鎌倉中央公園から北上中!」

「大仏の次は観音像をぶった切ろうってか?罰当たりな怪獣だな!!」

「攻撃開始!!」

 

ガンブースターがグロンケンの目の前に回り込むと、機首のアルタードブレイザーを放ち、直江とクルピンスキーは背後から機銃での攻撃を仕掛ける。

 

「グォオッ!グォオッ!」

 

グロンケンは目の前に現れたガンブースターに驚く間もなく攻撃を受けて面食らったものの、あまりダメージがない様子だった。グロンケンは両手の丸鋸を回転させて、ガンブースターに斬りかかった。

 

「うわっと!」

「グォオッ!グォオッ!」

「危ねーなオイ!!」

 

ガンブースターはギリギリで回避すると、そのまま旋回して距離を取る。グロンケンは周囲を飛び交うガンマシンとウィッチに両腕を振るって攻撃するが、距離を取って攻撃をするガンブースターとウィッチたちには当たらない。

 

『グロンケン、そいつらは放っておけ!今はカンノン像が最優先だ!!』

「グォオッ!グォオッ!」

 

グロンケンが躍起になってガンブースターとウィッチを攻撃していた事にボンヌイがイラついたように指示を出すと、グロンケンはピタリと動きを止めて大船観音へ向き直って、進軍を再会した。

 

「あれ?攻撃をやめた?」

「一直線に北上……もしかして、コイツも宇宙人に操られているのか……?」

 

グロンケンが行動を変えた事に呆気に捕られた直枝とクルピンスキーだったが、その動きから我夢は、グロンケンが何者かに操られている可能性に思い至った。ガンブースター達がグロンケンを追いかけている間に何か操っている電波などがないか我夢が調べるが、その間にグロンケンは大船観音像の目の前にまで来てしまった。

 

「くっ!!」

 

我夢はこれ以上被害を出すわけにはいかないと判断してエスプレンダーを取り出した。しかし、その瞬間に警告音がなったかと思うと、上空から光線が何発もEXⅡを上空から光線が何発もEXⅡを掠めた!

 

「うわあ!?」

 

我夢は咄嗟に操縦桿を握ると慌てて光線を躱した。上空を見ても何も見当たらないが、攻撃が止む気配は一向になかった。

 

「我夢さん!!」

「グォオッ!グォオッ!」

 

EXⅡが攻撃された事にクルピンスキーがたじろぐが、グロンケンは観音像に丸鋸を横一文字に入れてしまった!

 

「観音像が!?」

 

直枝が思わず声を出してしまう。グロンケンはあっという間に観音像を切り裂いてしまい、像の頭が派手な音を上げて地面に落ちて地面に落ちて砕け散った。

 

「グォオッ!グォオッ!」

 

観音像を破壊したグロンケンは、大船観音の残骸を横薙ぎに払い除けて破壊した。その様子に直枝は怒りの声を上げたが、グロンケンは観音像のあった場所を不思議そうに覗き込んでいた。

 

「グォオ………?」

『どういうことだ?これはカンノン像ではないのか?』

 

ボンヌイも同じように首を傾げていたカンノン像であれば、破壊して何も出てこない筈がない。どういう事かと頭を抱えていると、グロンケンに向けて攻撃が再開されて体表で爆発が起こった!

 

「グォオッ!グォオッ!」

『くっ!一先ず戻れ、グロンケン!!』

 

ボンヌイはこれ以上この場に居たら不利だと判断して懐から白い機械を掲げると、グロンケンは光になってボンヌイの手元に戻って来た。

 

「消えた………?」

「あ、あれ……?」

 

グロンケンの消失に驚いて周囲を探るが、その隙にボンヌイは円盤を操作してその場から人知れず飛び去って行った。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「グギュゥゥウウウウウウウウウウウウ!!」

「キュォキュイィーーー!!」

 

東京の街中で、シルバゴンとキーラがぶつかり合った。頭突きでぶつかり合った2体の怪獣は反動で100m近く後ろに下がるが、頭への衝撃で直ぐには動けない様子だった。

 

「グギュゥゥウウウウウウウウウウウ!!」

 

いち早くシルバゴンが復活すると、尻尾を振るってキーラに叩きつけた!キーラは咄嗟の事で防御が間に合わず、吹き飛ばされてビルに激突した!

 

「キュォキュイィーーー!!」

「いかんな……これ以上地球人に迷惑をかけては寝覚めが悪い………」

 

悲鳴を上げるキーラに対して、ディオールは破壊されたビルを見て、これ以上の市街地での戦闘は被害が出ると判断した。

 

「シルバゴン、別の場所に移るぞ。ソイツを投げ飛ばしてくれ。」

「グギュゥゥウウウウウウウウウウウ!!」

 

ディオールの命令を聞いたシルバゴンは返事をするように鳴き声を上げると、キーラに向かって歩き始めた。

 

「何を余裕ブッコいてるわいな……キーラ!!」

「キュォキュイィーーー!!」

 

ウイミイがアトールと共にゴーグルを装着してキーラに向かい叫ぶと、キーラは顔をシルバゴンに向けてその大きな両目を瞑った。

 

「来るぞ!対閃光防御!!」

「え!?」

 

ディオールが叫ぶと同時にサングラスをかけると、ミーナたちは同じ様にサングラスをかけた。そしてキーラの目が開かれた瞬間、眩い光が発せられた!

 

「グギュゥゥウ!?」

「ああ!?」

「見たか!これがキーラのクラッシュ光線だわいな!!」

「キュォキュイィーーー!!」

 

閃光を受けたシルバゴンが苦しむ様子を見てゴーグルを外したウイミイが勝ち誇ったように言うと、同調するようにキーラも鳴き声を上げてシルバゴンに向かって歩きだした。シルバゴンが苦しむ様子を見たひかりが思わず声を上げるが、サングラスを外したアスカが口を開いた。

 

「だけど、シルバゴンって視力弱い怪獣だから、視力奪う光くらってもあまり効果ないんじゃないか?」

「え?」

「「え?」」

「シルバゴン、そこだ!」

「グギュゥゥウウウウウウウウウウウ!!」バギッ

「キュォキュイィーーー!?」

「あ、本当だ。」

 

アスカの言葉にひかりとウイミイ、アトールが呆気に取られた声を上げた。その瞬間、ディオールの指示を聞いたシルバゴンは何の問題もない様子でキーラの顔面を殴りつけた。

 

「キ、キーラ………!」

「シルバゴン、ソイツを投げ飛ばせ。」

「グギュゥゥウウウウウウウウウウウ!!」

 

キーラが轟音と共に倒れたのを見たウイミイが思わず悲鳴を上げるが、それを無視してディオールはシルバゴンに命じた。シルバゴンはキーラの尻尾を掴んで掴むと、背負い投げの要領で大きく振りかぶって投げ飛ばした!

 

「キュォキュイィーーー!!」

「キーラ!」

 

ウイミイが叫ぶ中、投げ飛ばされたキーラは遠くの方へ飛んで行ってしまい、空の彼方でキランと光った。

 

「さて、止めを刺しに行くか………」

「そ、そうはさせないでゴワス!!」

 

ディオールはキーラを追いかけようと機械をシルバゴンに向けたが、それを止めるようにアトールが叫ぶ。アトールは2人と同様に手にした機械を掲げた。

 

「行け!アーストロン!!」

《バトルナイザー、モンスロード!!》

 

アトールの宣言と共に光が飛び出すと、頭頂部に一本角、口には鋭い牙を持った二足歩行の怪獣、『凶暴怪獣 アーストロン』が出現した!

 

「ガギャァーアウ!!」

「アーストロンまで!?」

「何か、怪獣らしい怪獣が出てきたな………」

「グギュゥゥウウウウウウウウウウウ!!」

 

アーストロンを見たアスカが感想を呟くと(芳佳たちは「怪獣らしいって何だろう?」と小首をかしげていた)、シルバゴンはアーストロンに気付いたのか標的をアーストロンに定めて腕をパコンパコンと鳴らした。

 

「今のうちにキーラを!」

「す、すまんわいな………」

「やるでゴワス、アーストロン!!」

「ガギャァーアウ!!」

 

ウイミイはアトールに礼を言うとその場を去って行った。アトールが命令をすると、アーストロンは口からマグマ光線をシルバゴンに向けて放った!

 

「グギュゥゥウウウウウウウウウウウ!!」

 

シルバゴンはマグマ光線を受けたものの、それをものともせずアーストロンに向けて突き進んで行った。

 

「アーストロン、角でゴワス!」

「ガギャァーアウ!!」

 

命を受けたアーストロンは自慢の角を突き刺そうと振りかざすが、シルバゴンは難なく首を傾けて避けてしまい、その顔面にフックをお見舞いした!

 

「ガギャァーアウ!!」

 

アーストロンは倒れこみそうになるが、倒れる寸前で火球状のマグマ光線を放った!マグマ光線はシルバゴンの脇をすり抜けてしまうが、その先にはディオール達の姿があった!

 

「あ、バカ!?」

「マズい!!」

 

アーストロンの行動に思わずアトールが非難の声を上げるが、ミライが咄嗟にバリアを張ろうとするが、ディオールとミーナは自分たちと離れているせいで間に合わない!ミライは慌てるが、マグマ光線は目の前にまで迫ってきていた!

 

「間に合わない………!!」

「ミーナ!!」

 

美緒が悲痛な悲鳴をミーナが上げたが、その瞬間、マグマ光線が近くに着弾して爆発が起きた!

 

「うわあ!?」

「きゃああ!?」

 

爆炎が襲い掛かり、アトールが吹き飛び、ひかりが悲鳴を上げる中、咄嗟にミライがブレスを掲げてバリアを張るものの、ミーナとディオールは間に合わない。そう思った時、ディオールがミーナを庇うように前に出るとその姿が変貌した。

 

「何!?」

 

ディオールの変貌に驚くが、2人の姿を爆炎が隠してしまい、衝撃波でミライたちは身を屈めた。

 

「ぐぅう………!!」

「大丈夫か!?」

「は、はい………」

「ミーナ隊長は!?」

 

爆炎と衝撃波をバリアで凌いだミライが芳佳たちに聞くと、芳佳が大声を上げて周囲を見渡す。周囲の煙が晴れて来ると、煙の向こうに多角錐上のバリアに守られたミーナと、異形の宇宙人の姿があった。

 

「これは………!?」

「大丈夫ですか、ミーナさん?」

「!?」

 

宇宙人はミーナに優しく話しかけるが、ミーナはその姿に驚いてしまった。その声を聞いて、そして右が青、左が黄色の瞳を見て、宇宙人がディオールである事が辛うじて分かった。

 

「ディ、ディオールさん、なの………?」

「ええ。」

「あれがディオールの正体……!?」

「あれは………!!」

 

ディオールの正体を見た芳佳と美緒が驚きの声を上げる。吹き飛んだアトールも戻って来て来て宇宙人の姿を見るが、その姿を見て驚愕の声を上げた。

 

「あ、あの宇宙人は………!?」

 

V字の尖った頭頂部、

 

セミを思わせる複眼と口吻、

 

銀色に光る巨大なハサミになった両腕、

 

 

 

 

 

「フォッフォッフォッフォッフォッフォッフォッフォッフォッ………」

 

 

 

 

 

 

………これを読んでいる方の中にウルトラマンや怪獣に疎い方がいたとしても、ここまでの説明と笑い声で、この宇宙人、ディオールの正体に気づいた方もいるだろう。

何せ、説明する必要もない程に有名な宇宙人なのだから。

 

だがあえて、今回はあえてこの宇宙人の名前を説明させてもらおう。

 

ドキュメントSSSPに3件、MATに1件、ドキュメントUGMに2件、アウト・オブ・ドキュメントにはアメリカに出現した記録が3件残る、地球来訪記録最多数記録を保持する宇宙人!その名も―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「バルタン………星人………!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レジストコード『宇宙忍者 バルタン星人』!

 

 

 

 

 

つづく




第四十三話です。

・今作ではネウロイがマイナスエネルギーを糧にしているという設定。他にもいろいろ考えてるのでいずれ。

・マザラス星人ウイミイとストラ星人アトールが再登場。今作のレイオニクスはディオールに合わせて薔薇の品種から名前を付けています。ウイミイはちょっと宇宙人っぽい語感で好き。

・キーラ登場。実はザラガスとどっちにしようか迷ったけど、ザラガスだと変身したら厄介だと思いキーラにしました。まあ、どっちにしても閃光攻撃はシルバゴンには通用しないでしょうが。

・グロンケンを操るのはクール星人ボンヌイ。目的があるようですが、観音像が何か知らなくてキリスト像や大仏を狙うのはちょっとマヌケ。

・ディオールの正体はバルタン星人でした。元々、バルタン星人のレイオニクスを出そうと思った時に今までにいなかったタイプのバルタン星人にしようと思い、真っ先に思いついたのがキザな伊達男でした。で、キザなキャラには薔薇だろうと考えてトレードマークにしてディオールのキャラが完成しました。

では、次回をお楽しみに。


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第四十四話 赤い薔薇のディオール

『くそ!まさかニホンにはカンノン像がこんなにあるなんて………!』

 

宇宙船の中で、クール星人ボンヌイはどこで手に入れたのか日本中の観光雑誌やパンフレットを周囲に散らかしながら、毒づいていた。

 

『こんなことなら、ちゃんと下調べしてから動くんだった……不用意に地球人を刺激してしまったぞ………とにかく、例の()()が封じられたカンノン像の在り処を調べねば………』

 

ボンヌイはそういうと、6本のうち2本の腕で操縦桿を握ったまま、他の腕で1冊の観光雑誌を手に取った。しかし、警告音が鳴ったので見てみれば、どういう訳か前方から怪獣キーラが飛んできたのだ!

 

『うぉおお!?』

 

慌てて舵を切ってキーラを避けると、キーラは後方に向かって飛んで行った。ボンヌイは額の汗を拭って、肩で息をした。(どこが肩なのかよく分からないが………)

 

『な、何だ今のは………さっきのあの怪獣、飛べる怪獣じゃなさそうだったぞ………む?』

 

ボンヌイは宇宙船を平行に戻して落ち着いたが、ふと、先ほど手にしていたパンフレットが床に落ちており、開いたページには観音像の写真が写っていた。

 

『栃木県宇都宮市、大谷町平和観音像……!!』

 

そのページに添えられた1枚の写真を見たボンヌイは、目を見開いた。

 

 

 

 

 

第四十四話 赤い薔薇のディオール

 

宇宙忍者 バルタン星人ディオール

剛力怪獣 シルバゴン(スカーシルバゴン)

宇宙海獣 レイキュバス

鬼女 マザラス星人ウイミイ

宇宙怪人 ストラ星人アトール

宇宙狩人(ハンター) クール星人ボンヌイ

宇宙怪人 チルソニア遊星人(セミ人間) ミラト

エリ巻き恐竜 ジラース

登場

 

 

 

 

 

『フォッフォッフォッフォッフォッフォッ………』

『バルタン星人だったでゴワスか………!』

 

バルタン星人の正体を明かしたディオールは、腕のハサミを上げ下げしながら特徴的な笑い声をあげていた。アトールはディオールの正体を知って驚いた様子であったが、アスカがディオールに詰め寄った。

 

「お前、グア軍団の一員だったのか!!」

『何の事だ?』

「惚けるな!グア軍団にはキングバルタン率いるバルタン軍団がある!その1人なんだろ!」

 

アスカの問いにディオールは何事もないように答える。それを聞いてミーナも、以前次元城で遭遇したグア軍団七星将覇の星・キングバルタンと遭遇していた事を思い出した。ディオールも同様にその一員である事は、容易に想像できた。

ディオールはあー、と小さく呟いて頬を掻くしぐさをした。

 

『生憎だが、私はグア軍団の一員ではない。』

「何?」

『バルタン星人も一枚岩ではなくてね。グア軍団に属するバルタン星人は、キングバルタンの生み出したクローン個体だが、私は別の無人惑星に移住した生き残ったバルタン星人の子孫のようなものなのだよ。』

 

ディオールはそう言いながら、右手のハサミに薔薇を持って匂いを嗅ぐような仕草を見せた。その様子を見て、アスカは嘘をついているようではないと感じたものの、まだ信用をするには早いと警戒した。

 

「ガギャァーアウ!!」

「グギュゥゥウウウウウウウウウウウ!!」

 

全員がディオールに警戒をしていると、アーストロンとシルバゴンの吠える声が聞こえた。見上げれば、起き上がったアーストロンとシルバゴンが睨み合って威嚇をしあっている所であった。

 

『おっと、忘れそうになったな。戦いの続きをしようか。』

『そうでゴワスな。水を差されたが、仕切り直しでゴワス。』

「まだ続ける気か!!」

 

ディオールとアトールが再び戦いを始めようとしたのを見て、ミライが止めに入ろうとする。しかし、2人の宇宙人はミライを睨んで牽制した。

 

『邪魔はしないでもらおうか、ウルトラマン。』

『手出しは無用でゴワス。』

「……くっ!」

 

2人の殺気の混じった視線にたじろぐミライ。ディオールとアトールは睨み合う怪獣たちを見上げると、手にした機械を握る手に力を入れた。

 

ドォオオンッ

「ガギャァー!?」

「ギュゥウ~~~!?」

『!?』

『何!?』

 

しかし、今にも両者がぶつかり合いそうになったその時、2体の怪獣に光線が飛んできて爆発を起こした!見上げてみれば、攻撃をしたと思わしきガンウィンガーとガンローダーが2体の怪獣の頭上を飛んでいた。

 

「ガンウィンガーとガンローダー!」

[大丈夫か、みんな!?]

「アイハラ隊長!!」

 

メモリーディスプレイから聞こえたリュウの声に芳佳が声を上げた。ミライたちがホッとした表情になる中、ディオールはウンザリした様子で肩を落としていた。

 

『やれやれ、興が冷めたな。これ以上、私たちの邪魔はされたくないな。』

『逃げる気でゴワスか!?』

『元々、私は戦いに来たわけじゃない。お前たちに用はないさ。』

 

ディオールはそう言うと機械を掲げた。

 

『戻れ、シルバゴン。』

「グギュゥゥウウウウウウウウウウウ!!」

 

ディオールがそう言うと、シルバゴンは小さな光となって機械に吸い込まれていった。アトールは一瞬迷ったが、ディオールに倣ってアーストロンを回収した。

 

『さてミーナさん、邪魔が入らないように場所を移しましょうか♪』

「え!?」

 

ディオールはミーナに向き直ると、右手をミーナの腰に回した。ミーナはディオールの行動に戸惑ったが、当のディオールは左手のハサミをパチンと鳴らしたかと思うと、地面に丸い光が浮かび上がり、少しずつ2人が沈むように消え始めて行った。

 

「え、ええ!?」

「ミーナ!!」

『では諸君、機会があればまた会おう。』

「ミーナ隊長!!」

 

ディオールはそう言って手を振っていく。しかし咄嗟に芳佳が光の円に飛び込んで、一緒に光の中に沈んで行った!

 

「芳佳ちゃん!!」

『何!?』

「宮藤さん!?」

 

ディオールとミーナは飛び込んできた芳佳に驚いたが、3人は光の中に消えていき、光の円は消えてしまった。

 

「何てことだ………宮藤とミーナが………!」

「芳佳さん……」

 

ひかりが芳佳とミーナが消えた地面を触るが、光の円は完全に消えて地面には何もない。あの光は、転移ポートの類のようであった。

 

「あの野郎、何を考えてやがる………!!」

「すみませんリュウさん、僕がいながら……」

[気にするな。バルタン星人の行方はこっちで追う。]

「お願いします。」

 

ミライがリュウに通信を入れると、アスカはふう、と腰に手を当ててため息をついた。

 

「だったら、俺達は………」

「む?」

 

アスカが目線を一点に向けると、そこにはキョトンとした様子のアトールの姿があった。

 

『?え、何でゴワス………?』

 

アトールは訳が分からないと言った様子でミライたちを見る。ミライたちはアスカの言わんとする事を理解したのか、立ち上がってアトールに向けてにっこりと笑みを浮かべたままジリジリと近づき始めた。嫌な予感がしたアトールはジリジリと後退り、振り返って走って逃げようとした。

………が、直ぐに追いかけてきたミライたちにアッサリと取り押さえられた。

 

『な、何をする気でゴワス!?放すでゴワス!!』

「悪いが、お前には聞きたい事がある。」

「本当はディオールから聞き出そうと思っていたのだが、お前もレイオニクスとやらなんだろう?こちらとしては好都合だ。」

『え?あ、ちょ………ゴワース!!』

 

アスカと美緒はそう言うと、アトールの両脇を抱えて引きずって連行する。その場にはアトールの悲痛な叫びが残った……

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

芳佳が気付くと、どこか薄暗く広い部屋にいた。

 

「あ、あれ?ここは………?」

「宮藤さん。」

「あ、ミーナ隊長。」

 

芳佳が辺りを見回すと、すぐ近くにいたミーナが駆け寄って来た。

 

「まったく、無茶をして……」

「すみません………」

 

ミーナが心配と呆れの混ざった表情で芳佳を叱る。芳佳は申し訳なさそうに頭を下げた。部屋をよく見ると、様々な物が乱雑に置かれていた。

テーブル、やかん、考える人の像、バーバーポール、自転車、パチンコ台、番傘、信楽焼のたぬき、ブラウン管テレビ、大きな将棋の駒、おでんの屋台、招き猫、等身大の鏡、etc(エトセトラ)etc(エトセトラ)………

 

「ここは、どこですか?なんだか、いろんなものが置いてありますけど………」

「恐らくだけど、ディオールさんのアジトだと思うわ。あの光を通って、ここまで連れて来られたようね………」

『アジト、というのは少し違いますね。』

 

急に声が聞こえて振り向くと、パチンコ台の前の椅子に座るバルタン星人ディオールの姿があった。ハサミの先端で器用にパチンコのハンドルを操作して玉を打ち出していたかと思うと、瞬きをする間もない内に姿を消してしまった。

 

「ここは私の宇宙船の中。現在、日本の上空2千メートルを飛行中です。」

 

気が付くと、すぐ隣にあるテーブルにかけた人間態のディオールが手にした『天突き(※心太(ところてん)を押し出す器具)』で心太をガラス製の器に押し出して酢醤油をかけて食べ始めた。

 

「散らかっていてすみませんね。興味を持った物を集めて置いてある部屋なのですが……」

「………あなた、何が目的なの?」

「いえ、先ほども申した通り、デートの邪魔をされたくなかっただけです。想定外のお客様が紛れ込んでしまいましたがね………」

 

ディオールは芳佳をチラッと見ると、芳佳はムッとした表情になった。

 

「あの、あなた達レイオニクスって、一体何者なんですか?」

 

芳佳がディオールに問いかけると、ディオールは少し困った様子で頭を搔いた。

 

「やれやれ、どうやら私の誘いに乗ってくれたのは、それが目的だったようですね………」

 

ディオールが箸を置いてため息を付くと、再び姿を消してしまう。そして、後ろのバーバーポールの陰から、バルタン星人の姿で現れた。

 

『………レイオニクスとは、はるか大昔に全宇宙を支配した『レイブラッド星人』の遺伝子を受け継いだ怪獣使いを指す………』

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「レイブラッド星人?」

 

同じ頃、フェニックスネストでは捕えたストラ星人アトールの事情聴取が行われていた。アトールから話と聞いたコウジが聞き返すと、隣の部屋では、マジックミラー越しにミサキ女史とミライ、美緒が事情聴取の様子を聞いていた。

 

「レイブラッド星人………!!」

「知っているのですか、ヒビノ隊員?」

「ええ。光の国の歴史の教科書で、大昔の宇宙の支配者として名前が載っていました。」

「教科書とかあるのか………」

 

ウルトラマンの文化の一端を垣間見た美緒だが、今は置いておいて、アトールの方に再び目をやった。

 

『レイブラッド星人は、滅ぶ前に自身の遺伝子を宇宙中にバラまいたでゴワス。その遺伝子を受け継いだ者を、レイオニクスと呼ぶでゴワス。』

 

アトールは、取調室の机の上に置かれた白い機械を持ち上げた。

 

『この「バトルナイザー」は、レイオニクスが怪獣を操るのに使う機械でゴワス。正しく扱えるのは、レイオニクスのみでゴワス。』

「さっきのディオールやウイミイも、同じレイオニクスなのか。」

『うむ。先日のブラック星人とポール星人、それに先日現れたグロンケンも同族が操る怪獣にゴワス。』

「アイツらもか………!」

 

アトールの告げた事実を聞いたコウジ。ある程度予測は出来ていたものの、先の事件や今起きている事件の黒幕が同じレイオニクスである事実に、ミライは拳を握った。

 

「それで、何故レイオニクスは怪獣を戦い合わせているんだ?」

『簡単な事でゴワス。レイブラッド星人の後継者となって、宇宙を支配する事でゴワス。』

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「何ですって………!?」

 

ディオールの宇宙船内で、おでんの屋台の椅子に座ったミーナと芳佳は、ディオールの説明を思わず聞き返した。ディオールは手にした薔薇をかぎながら続けた。

 

『レイオニクスは、私を含めて宇宙中に何千人といる。それらが集まり、闘って、闘って、闘い抜いて、レイブラッド星人の後継者となり、宇宙を支配する事も可能とする、強大な力を手に入れる事ができる、とされている。』

「”されている“、って………」

「何だか、随分と随分と曖昧なんですね。」

 

芳佳とミーナがディオールの説明に首をかしげる。ディオールは少し困ったように笑うと、一瞬で再度人間態となって話を続けた。

 

「私もレイオニクスだからって、何でもかんでも知っている訳ではないのでね。だが、私の中のレイオニクスの遺伝子が語り掛けてくるのだよ。レイブラッドの後を継ぎ、宇宙の頂点に立て、とな………」

「遺伝子が……」

「我々レイオニクスが戦いあうのは、運命と言うべきなのかもしれないな………」

 

どこか哀し気に語るディオール。ミーナはそんな彼の様子に何も言えないでいたが、芳佳が意を決したように言った。

 

「でも、そんなことのために命を奪い合うなんて………間違っていると思います!」

「宮藤さん………」

 

芳佳の言葉にミーナは少し驚いたが、当のディオールはキョトンとした表情をしていた。

 

「イノチ………?」

「そうです。大体、あなたは一番になって………」

 

芳佳は言い続けようとしたが、ディオールの不思議そうな顔を見て続けられなかった。

 

「………分からないな。”イノチ”とは何だ?」

「へ……?」「え……?」

 

ディオールの問いかけに、芳佳とミーナは目を丸くした。ディオールは首を傾げ、3人の間に沈黙が続いていると、突然、宇宙船内にけたたましいアラートが鳴り響いたかと思うと、船体が大きく揺れた!

 

「なに!?」

 

驚く芳佳に対して、ディオールは空中にモニターを出現させて状況を確認した。

ディオールの見るモニターには、宇宙船の下にある湖に立つ1匹の怪獣の姿があった。ディオールはそれを見て、ある事に気が付いた。

 

「あの怪獣、どうやらさっきの2人とは別のレイオニクスがいるようだな。」

「何ですって!?」

「恐らく、私の気配に気づいて攻撃を仕掛けて来たのでしょう。すみませんが、一度船を停めます。」

 

そう言うと、ディオールは空中に出現したコンソールを操作して宇宙船を下降させ始めた。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

『すみませーん、身元引受に来たんですけどー』

「おう、さっさと連れて言ってくれ。」

 

アトールを引き取るためにフェニックスネストに来たウイミイは、一度帰還したリュウに首根っこを掴まれて引き摺られるアトールを受け取っていた。

 

「じゃあ、情報提供を条件に今回は見逃すが、次戦う時は人の迷惑にならない場所でやれよ。」

『わ、分かったでゴワス………』

『まあ、今回みたいに面倒なことにならないためには、そうするしかなさそうだわいな…』

 

アトールとウイミイは肩を落としてとぼとぼと去って行く。リュウがやれやれとため息を付いていると、そこにミライや我夢たちがやって来た。

 

「あの宇宙人たち、もう来ないといいんですけどね………」

「まあ、釘を刺しておいたし、あいつらもバカじゃないだろ。」

 

リュウが呟くと、顎に手を当てて考えている様子のクルピンスキーに、美緒が声をかけた。

 

「どうした、クルピンスキー?」

「いや、さっきのグロンケンもレイオニクスが操っているのなら、何で観音像を破壊したのかなって思って………」

「そういえば、そうだな………」

 

美緒やミライも首をひねる。我夢やアスカも考えていると、リュウがある事に気が付いてメモリーディスプレイに通信を入れた。

 

「エリー、観音像に関連した怪獣を調べてくれ。」

[G.I.G.!]

「リュウさん、どうしたんですか?」

 

ミライがリュウに聞くと、振り返って答えた。

 

「レイオニクスってのは、要するに「怪獣使いナンバー1決定戦」に優勝するのが目的なんだろ?」

「まあ、そうですね。」

「だったら、優勝するからにはすっげー強い怪獣を手に入れたいんじゃないか?」

「確かに……あ!」

 

そこまで聞いて、ミライたちも気づいた。グロンケンを操る宇宙人の目的が自分の手持ちに強力な怪獣を手に入れる事なのであれば………

 

「強力な怪獣が、観音像に封印されているから………?」

「じゃあ、ブラジルで像を破壊したのは?」

「相手は宇宙人だ。肝心の観音像が何か知らなかったんだろうよ………」

 

リュウの推測からグロンケンを操るレイオニクスの目的を察する一同。すると、ディレクションルームのエリーから直ぐに通信が返ってきた。

 

[隊長、グロンケン以外で観音像に関係した怪獣が、ドキュメントUGMに1件確認できました。]

 

エリーの言葉に次いで、モニターに1体の怪獣のデータが表示された。頭頂に蛇の頭のような器官、顎にヒゲのようなものが生え、左腕が鞭のようになった怪獣であった。

 

[レジストコード『ムチ腕怪獣 ズラスイマー』。大谷町の平和観音像の下に封印されていた怪獣で、ウルトラマン80が観音像の力を借りなければ負けていたとされています。]

「ウルトラマンが自力で勝てなかったって事か?」

「なるほど、それだけ強いのならわざわざ地球まで足を運ぶのも納得だ………」

 

ズラスイマーの情報を聞いた一同は、レイオニクスが狙う理由に納得がいった。

おまけにグロンケンは観音像をいとも簡単に切断してしまう怪獣だ。もしもグロンケンに平和観音像を破壊されてしまっては、ズラスイマーに対抗できる手段がなくなってしまう。

 

「グロンケンを使ってるのは、観音像を破壊してズラスイマーを封じられないためか。」

「すぐにでも、その観音像の元に向かうべきか………」

「だが、ミーナと宮藤の行方も捜索しなければ………」

 

美緒が心配そうに呟いた時、フェニックスネスト内にアラートが鳴り響いた。

 

[隊長!栃木県の湖に、怪獣が出現しました!]

「何!?」

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

栃木県のとある湖の畔に潰れた雫のような銀色の円盤を着陸させたディオールは、船外に出て湖に立つ怪獣を見上げた。

 

「ギヤャーオオーーー!!」

 

そこにいたのは、首にエリマキトカゲを思わせる大きな皮膜を持った二足歩行の怪獣だった。高らかに雄叫びを上げる怪獣をディオールが睨んでいると、同じく円盤から降りて来た芳佳がメモリーディスプレイを怪獣に向けて検索をかけた。

 

「ドキュメントSSSPに記録確認。レジストコード『エリ巻き恐竜 ジラース』!」

「地球の怪獣なのね………」

 

目の前の怪獣・ジラースの情報を芳佳から聞いたミーナが呟く。すると、どこからともなく高らかな笑い声が聞こえてきた。

 

『ヒャッハホォーウ!ようやくお出ましか、兄弟(きょうだぁい)!!』

『「「!?」」』

 

湖の近くにある木の陰から飛び出すように現れたのは、セミに似た頭に透明な服を着た縞模様の体表を持った宇宙人であり、その手にはバトルナイザーが握られていた。その姿を見た芳佳が、驚いた声を上げた。

 

「あれ?あっちもバルタン星人!?」

(ちっげ)ぇーよ!!オレは、チルソニア遊星人のミラト様よぉ!!』

 

バルタン星人に似た姿の『宇宙怪人 チルソニア遊星人(別名セミ人間)』のミラトが間違えられた怒りを芳佳にぶつけた。芳佳が委縮していると、ディオールはミラトに話しかけた。

 

『それでミラト君とやら、私に何か用かね?』

『レイオニクスがレイオニクスに用事なんて、1つしかないだろう?とっととおっぱじめようぜぇーーーッ!!レイオニクスバトルの始まりだぁーーーッ!!』

「ギヤャーオオーーー!!」

 

ミラトの好戦的な叫びに呼応してか、ジラースも大きく鳴き声を上げる。ディオールは顔を顰めてミラトを睨みつけた。

 

『悪いが、今日は用事があってね。出来ればまた後日にしてほしいのだが?』

『そっちの都合なんざ聞いてねえよ!早く怪獣を出さねーと、テメーに直接攻撃させんぞ!!』

 

ディオールはやんわりと断りを入れたのだが、ミラトはイラついたように脅しとも取れる発言をする。ディオールはため息を付くと、仕方ないといった様子でやれやれとため息をついた。

 

『仕方がないな………お二人とも、下がっていてください。』

「あ、はい………」

 

ディオールに言われたミーナと芳佳は数m下がる。ディオールはそれを確認すると、バトルナイザーの3つの窓を見た。

 

『(シルバゴンはさっきの戦いで多少とはいえ疲労があるようだ……今は回復をさせておくとしよう……)行け、レイキュバス!!』

《バトルナイザー、モンスロード!!》

 

ディオールの掛け声に合わせてバトルナイザーから音声が流れると光が飛び出すと、ジラースの目の前でレイキュバスの姿となって降り立ち地面を揺らした!

 

「ギィィイイシュウ!!ギィィイイシュウ!!」

「ギヤャーオオーーー!!」

 

両怪獣が威嚇をするように叫びながら睨み合っているのを見ると、ミラトが満足そうに叫んだ。

 

『ヒャッハホォーウ!そうこなくっちゃなぁ!!やれぇジラースゥ!!』

「ギヤャーオオーーー!!」

『迎え撃て、レイキュバス!!』

「ギィィイイシュウ!!」

 

2人のレイオニクスの号令を受け、2体の怪獣は同時に動き出した!

 

「ギヤャーオオーーー!!」

ガーッ

 

ジラースは口を開くとレイキュバスに向けて光線を吐き出す!光線はレイキュバスの体表に直撃を受けて体表で爆発を起こし、レイキュバスは数歩後退った。

 

「ギヤャーオオーーー!!」

「ギィィイイシュウ!!」

 

ジラースは更に光線を吐き出すが、直ぐに体制を立て直したレイキュバスが口から火球を放って光線に直撃させると空中で爆発を起こす。

 

「ギヤャーオオーーー!?」

『怯むな!格闘で戦え!!』

 

光線を相殺されたジラースは一瞬驚くが、ミラトは叱咤に似た命令を飛ばす。ジラースはそれを聞いてレイキュバスを睨むと、レイキュバスに接近して殴り掛かった!

 

ガギンッ

「ギヤャーオオーーー!?」

 

が、レイキュバスは背中の甲羅でそれを受け止めると、その頑丈さに拳を痛めたのかジラースは悲鳴を上げた。ディオールはその隙を見逃さず、レイキュバスに指示を飛ばす。

 

『レイキュバス、ソイツを凍らせてしまえ!』

「ギィィイイシュウ!!ギィィイイシュウ!!」

 

ディオールの命を受けたレイキュバスは赤い目を青く変えると、口から冷凍ガスが勢いよく吐き出された!ジラースはそれに反応する間もなく直撃を受けてしまい、あっという間に氷漬けになってしまった!

 

『ジ、ジラースが………!?』

『まあ、この程度だろうな………』

 

凍り付いたジラースにミラトが頭を抱えていると、ディオールが肩をすくめた。芳佳とミーナがホッと胸をなでおろしていると、ミラトはディオールを恨めしそうに睨みつけた。

 

『や、やろー………かくなる上は………!』

『レイキュバス、ソイツにトドメを………』

 

ディオールが命令をしようとしたその時、芳佳はミラトがバトルナイザーとは別の機械をどこからか取り出して操作をしている事に気が付いた。

 

「あ、あの人!!」

「え!?」

 

芳佳が声を上げるが、ミラトは機械の操作を終えたのか上空を見上げていた。

 

『ム?』

 

ディオールはミラトの不審な動きに気が付くも、その時、上空から猛スピードで落下してくるのが見えた!

 

「隕石!?」

「まさか、あの機械で………!?」

『2人とも、伏せて!!』

「「!?」」

 

それは、真っ赤に燃える隕石であった。咄嗟にディオールが叫ぶと2人の前に立ち、目の前に障壁のようなバリアを展開させた。

 

『レイキュバス!!』

「ギィィイイシュウ!!」

 

ディオールが叫ぶとレイキュバスは目を赤く光らせて、隕石に向けて火球を放った!火球は隕石に命中して落下速度を多少落とすと湖の中央に落下して、周囲に衝撃波と熱風を巻き起こした!

 

「ギィィイイシュウ!!」

「「きゃああ!!」」

『ぐ……!』

 

レイキュバスは衝撃波で吹き飛ばされるように倒れる。芳佳とミーナは悲鳴を上げるがディオールの障壁で何とか衝撃波を防ぐ。衝撃波が収まると周囲が土煙で包まれた。

 

「ケホッ、ケホッ……な、何が起きたの……?」

 

ミーナが咳き込みながら呟くとディオールは険しい顔で上を見上げる。土煙が晴れると、そこには、湖のど真ん中に多面体の巨大な隕石があった。

 

「あの隕石、自然に出来たようには見えないですね………」

『あれは……もしや『ガラダマ』か?まさか………!?』

 

芳佳が隕石を見た不自然さを口に出す中、ディオールは隕石に見覚えがあるのか目を見開いていた。レイキュバスが起き上がると、隕石の熱波で凍結が溶けたのかジラースが身を震わせていた。

 

「ギヤャーオオーーー………」

『凍結から溶けたばかりで、まだ動けないようだな………』

 

ジラースの様子を見たディオールがそう判断をする。その時、ディオールがガラダマと呼んでいた隕石が振動をしたかと思うと、表面にヒビが入り、次の瞬間には内部からボコンッと巨大なモノが飛び出した。

 

「シュー………」

 

赤いトゲのようなウロコに覆われた胴体に大きな口と潰れた鼻、長く垂れさがった骨のような3本指の手と足を持った怪獣が、まるで機械の起動音のような、とても生物の鳴き声とも呼べない音を発した。

 

「怪獣!?」

『やはりガラモンか!!』

「ガラモン?」

 

ディオールが忌しげに叫ぶと、芳佳が聞き返す。ミーナはメモリーディスプレイでガラモンのデータを検索すると、『アウト・オブ・ドキュメント』に記録が出てきた。

 

「レジストコード『隕石怪獣 ガラモン』、セミ人間が地球侵略のために送り込んだ、ロボット怪獣!?」

「あの見た目でロボットなんですか!?」

 

ミーナの告げたガラモンのデータに驚きの声を上げる芳佳。ガラモンはジラースと並び立ってレイキュバスと対峙していた。

 

『ヒャッハホォーウ!!ガラモンとジラースが揃えば、そんなカニごときに負けねーぜぇーーー!!』

『貴様………レイオニクスバトルにロボットを持ち込むのは御法度だろう!?』

 

自身の手持ちであるジラースとガラモンが並び立ったのを見たミラトが、勝ち誇るように叫んだ。ディオールはそんなミラトを睨みつけて怒鳴りつける。

レイオニクスバトルは怪使い獣同士の戦い、それ故にロボットの介入は違反行為である。だがミラトはディオールの怒声に臆することなく、ニヤリと笑った。

 

『ンな事知るかよぉ!!オレは勝てればそれで良いんだよぉ!!』

『貴様………!!』

「シュー………」

「ギヤャーオオーーー!!」

 

開き直ったかのようなミラトの態度にディオールは苦虫を嚙み潰したような顔になる。その時、ジラースとガラモンが鳴き声を上げてレイキュバスに襲い掛かった!

 

「動いた!!」

『………貴様のような者に、容赦は不要だな………!!』

 

静かに怒りを燃やすディオールは、バトルナイザーを天に掲げて叫んだ!

 

『行け、シルバゴン!!』

《バトルナイザー、モンスロード!!》

 

電子音と共に光が飛び出して、シルバゴンの姿を形作ってジラースとガラモンの目の前に立ちふさがる!

 

「グギュゥゥウウウウウウウウウウウ!!」

『シルバゴン、ジラースを相手しろ!レイキュバスはガラモンだ!!』

「グギュゥゥウウウウウウウウウウウ!!」

「ギィィイイシュウ!!」

『迎え撃て!ジラース!ガラモン!!』

「ギヤャーオオーーー!!」

「シュー………」

 

レイオニクスの命を受けた怪獣達は、大きく鳴き声を上げるとぶつかり合う!

 

「グギュゥゥウウウウウウウウウウウ!!」

「ギヤャーオオーーー!!」

 

シルバゴンとジラースは取っ組み合いを始める。互いに押しては押されてを繰り返して力比べになる。

 

「グギュゥゥウウウウウウウウウウウ!!」ブンッ

「ギヤャーオオーーー!?」

 

そこで、シルバゴンは相撲でいう「うっちゃり」の要領で投げ飛ばすと、ジラースは大きな水しぶきを上げて叩きつけられる!

 

 

「ギヤャーオオーーー!!」

 

ジラースは起き上がると大きく吠えてシルバゴンを睨み付け、口を開いて光線を放つ!

 

『シルバゴン、左に跳べ!』

「グギュゥゥウウウウウウウウウウウ!!」

 

ディオールの指示を聞いてシルバゴンが左に跳ぶと、シルバゴンのいた所に光線が当たって爆発を起こす。ジラースはシルバゴンに再び接近戦を挑まんと走り出した。

 

「ギヤャーオオーーー!!」

「グギュゥゥウウウウウウウウウウウ!!」

 

シルバゴンは突進してくるジラースを避けると同時に掴みかかろうとするが、その手はジラースの象徴ともいえるエリ巻きを掴み、シルバゴンの怪力と突進をするジラースの勢いが相まって、『ベリッ!』という音と共にエリ巻きがはがれてしまった!

 

「ギヤャーオオーーー!?」

「あっ………」

「エリ巻きが………」

「ギュゥ?………グギュゥゥウウウウ!?」

 

エリ巻きが剥がれて赤い傷跡を押さえて痛々しい鳴き声を上げるジラース。シルバゴンは痛がるジラースと自分が手に持ったエリ巻きを交互に見ると、「しまった!」という表情で口に手を当てた。慌てた様子でジラースに駆け寄ってエリ巻きを差し出すが、怒った様子のジラースはシルバゴンの差し出したエリ巻きを払い除けて殴り掛かった!

 

「ギャゥウ………」

「ギヤャーオオーーー!!」

 

怒るジラースに対して両手を合わせて会釈し謝罪するシルバゴン。ジラースはそんなシルバゴンに容赦なく攻撃を続けるが、シルバゴンは自慢の体力と頑丈さで耐えながら謝罪をしていた。

 

「シュー………」

「ギィィイイシュウ!!」

 

さて、シルバゴンとジラースがどこかコントじみた戦いをする一方、レイキュバスはガラモンに向けて火球を連続で発射していた。ガラモンは火球を喰らいつつもレイキュバスに接近し、手を振り上げると長い3本の指を鞭のようにしならせて打ち付けた!

 

「ギィィイイシュウ!!」

「シュー……」

 

3本の指がレイキュバスの体に叩きつけられ、火花が散る。だがレイキュバスは怯む事なく、ガラモンの腹部に右の大きなハサミを叩きつけた!

 

「シュー………」

『なんて怪獣だよ、チルソナイト製のガラモンの攻撃を受けてピンピンしてやがらぁ………』

 

ガラモンは熱せられたボディから蒸気を噴き出しながら後退する。その様子を見たミラトが、レイキュバスの頑丈さに舌を巻いていた。

 

「チルソナイト………」

 

ミラトの呟きを聞いた芳佳が、メモリーディスプレイを操作してガラモンのデータを見た。

ガラモンは全身の赤いウロコのような装甲にはチルソナイトと呼ばれる宇宙金属が使われており、地球上の現代兵器では破壊は不可能とされている。実際、最初に現れたガラモンはチルソナイト製のコントロール装置の電波を遮断する事で機能が停止し、侵略計画が頓挫していた。

 

『頃合いだな………レイキュバス!!』

「ギィィイイシュウ!!ギィィイイシュウ!!」

 

ディオールはガラモンの様子を見ると、レイキュバスに指示を飛ばした。レイキュバスは目を青く光らせると、ガラモンに向けて口から冷凍ガスを吐き出した!

 

「シュー………」

『無駄だ!ガラモンのボディはその程度じゃ……!?』

 

ミラトは余裕の表情でガラモンを見ていたが、ガラモンの装甲がギシギシと音を立て始めると、背中や腕にひびが入って来た!

 

『な、何だと!?』

『流石のチルソナイトも、急激な温度変化には耐えられなかったようだな!』

 

驚くミラトにディオールが叫ぶ。ディオールは頑丈なガラモンを破壊すべく、レイキュバスの冷凍と火炎を操る能力を利用して急激な温度変化で金属疲労を起こさせたのだ。

 

「シュー………」

『レイキュバス、トドメを刺せ!』

「ギィィイイシュウ!!」

 

レイキュバスはディオールの命を聞き右腕のハサミを高く掲げると、ハンマーのように振り下ろした!ハサミを叩きつけられたガラモンは装甲が粉々に砕け散り、破片が周囲に飛び散る。

 

『ガ、ガラモンが………!?』

「グギュゥゥウウウウウウウウウウウ!!」

「ギィィイイシュウ!!ギィィイイシュウ!!」

「ギヤャーオオーーー!?」

 

ガラモンが破壊されたのを目の当たりにしたミラトが愕然としていると、ジラースと戦っていたシルバゴンがジラースをはねのけると、ジラースはシルバゴンとレイキュバスに挟み撃ちにされる形となった。

 

『ま、マズイ………!!』

『これ以上続けても、貴様に勝ち目はないぞ?』

『く、くそぉ………!!』

 

ディオールの勧告に歯ぎしりをするミラト。ディオールを睨みながら手にしたバトルナイザーを握りしめるが、打つ手はないと悟ったのか、バトルナイザーを下ろした。

 

『………戻れ、ジラース。』

「ギヤャーオオーーー!!」

 

ミラトは力なくジラースに向けてバトルナイザーをかざすと、ジラースは剥がされたエリ巻きと一緒に光になって、バトルナイザーに吸い込まれていった。

 

『………ま、これに懲りたら卑怯な手は使わないで、真正面から倒せるようになる気持ちで鍛え直すことだな。』

『………チッ!わーったよ!』

 

ミラトは悔しそうに吐き捨てて背を向けると、ズカズカと歩いて行った。が、ディオールから数十メートル離れた辺りで立ち止まると、振り返って叫んだ。

 

『覚えてろよ!次会う時はテメーの怪獣2匹ともぶっ潰してやるからな!!』

『………ふっ、せいぜい期待しているよ。』

 

ミラトは叫び終えると踵を返して走り去るのを見送ると、ディオールは小さく笑って呟きながら、バトルナイザーを掲げると、自身の両腕である2体の怪獣は光となってバトルナイザーに収容された。

 

(怪獣とロボット相手に、冷静で的確な判断………あの人、指揮官としてかなり優秀かも………)

 

ミーナはディオールの的確な怪獣への指示から、彼がレイオニクスとしてかなりの実力があると感じた。ディオールは手にしたバトルナイザーに目を落としながら何か考えている様子であったが、その時、遠くの方からジェット機のエンジン音が聞こえて来た。

 

「あの音は…」

「ガンフェニックスみたいね………」

『もう追い付いてきたのか………まあ、これだけ派手に暴れればな………』

 

ディオールはこちらに向かってくるガンフェニックスを一瞥すると、小さくため息を吐いて呟いた。今から円盤に乗ってこの場から立ち去るには間に合わないと判断したのか、ディオールは逃げる素振りを見せずに肩を落とした。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

『この辺りだな………』

 

同じ頃、栃木県宇都宮市大谷町の付近まで来たボンヌイは、円盤で上空から観音像を探していた。円盤の船外カメラを使って周囲を見渡していると、谷に建てられた巨大な観音像を発見した。

 

『あれか………!!』

 

目的の観音像を見つけたボンヌイは、ほくそ笑んだ。傍らに放り出されたパンフレットには、倒れた観音像の前で戦うウルトラマン80と、怪獣ズラスイマーの写真が掲載されていた。

 

 

 

 

 

つづく




第四十四話です。

・ディオールはバルタン星人だけど、グア軍団のバルタン軍団とは無関係。バルタン星人が複数派閥に分かれています。

・ここでようやく、ディオールとアトールによるレイオニクスの説明。別の場所で同じ説明するって描写はよくあるので。ウイミイは意外と面倒見がいい感じですね。

・命の概念がないバルタン星人。今回はこれが肝になると思います。

・ボンヌイの目的はズラスイマー。観音像がなかったら80先生でも勝てなかった強豪怪獣なので、レイオニクスとしては是非とも手に入れたい怪獣になるだろうと思ってチョイスしました。

・セミ人間ミラト登場。「バルタン星人VSセミ人間やりたいなー→セミ人間といえばガラモンだよな→ガラモンってロボットだから、レイオニクスバトルではNGじゃん→怪獣負けそうになったらロボット出してくる卑怯者にしよう」って感じで話決めて、そこからヒャッハー系の不良キャラになりました。ジラースは映像作品で最近出てきたけど、やはり出番少ないので出してみました。エリ巻き剥がしちゃって慌てるシルバゴンはお気に入り。

・次回は遂にボンヌイとの直接対決になります。

では、また次回。


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第四十五話 最強の遺伝子

第四十五話 最強の遺伝子

 

宇宙忍者 バルタン星人ディオール

宇宙狩人(ハンター) クール星人ボンヌイ

八つ切り怪獣 グロンケン

ムチ腕怪獣 ズラスイマー

登場

 

 

 

 

 

「ミーナ!」

「宮藤!大丈夫か!?」

「バルクホルンさん………」

 

ガンフェニックスとともについてきていた美緒とバルクホルンが、芳佳とミーナに駆け寄って来た。リュウとミライはガンフェニックスから飛び降りると、トライガーショットを構え、ディオールに警戒を向けつつ、ミーナと芳佳の側に駆け寄った。ディオールは人間態で両手を上げて「敵意はない」事を示すが、2人は警戒を解かなかった。

 

「ミーナ、怪我は?」

「大丈夫よ。彼、ああ見えて紳士だったから。」

 

美緒に聞かれて、ミーナは笑って答えた。リュウは2人の無事を確認すると、ディオールに向けて話しかけた。

 

「悪いが、デートはこれでお開きにしてもらうぞ。」

「………まあ、こんな状況じゃあね。またの機会にさせてもらうよ。」

 

ディオールは肩をすくめて答えたが、少し残念そうにしていた。リュウはそんな彼の様子を訝しんだが、とりあえずこちらに攻撃してくる気はないようなのでそこは安心である。一方、美緒はミーナと芳佳に事情を説明していた。

 

「レイオニクスが、観音像に封印された怪獣を狙って!?」

「ああ。今、平和観音像の方へはシャーリー達が向かっている。ちょうどここは平和観音像から近い位置にある。ストライカーも持ってきているが、2人とも出動出来るか?」

 

美緒から事情を聴いた2人は顔を見合わせると、小さく頷いた。

 

「………分かりました。私も行きます!」

「私も、と言いたいところだけど、着替えが無いから………」

「それなら、ガンウィンガーの複座に乗ってくれ。そこから指揮を執ってもらえれば問題ない。」

「分かりました。」

 

ミーナはリュウの指示に頷くと、芳佳はストライカーと銃器を受け取り、ミーナはガンフェニックスの後部座席に搭乗すると、全機一斉に垂直離陸をして行った。ディオールはそれを黙ったまま見送ると、自身の円盤に向かって歩いて行った。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

ミーナ達が湖から飛び立った頃、シャーリー、ルッキーニ、直枝、クルピンスキーを引き連れたガンブースターとXIGファイターEXⅡ、ガッツイーグルαスペリオル、テックスピナーは、平和観音像まで数千メートルの地点まで到達していた。

 

「あの怪獣は、まだ現れていないようだな………」

「今の内に、観音像の前に陣取って防衛線を張ろう。」

 

ガンブースターを駆るコウジが指示を出すと、一同は飛行速度を上げて観音像へ向かおうとした。

 

「グォオッ!グォオッ!」

「!?」「何!?」

 

だがその時、観音像とGUYS達の間に光が出現したかと思うと、それは全身に丸鋸を持った怪獣・グロンケンとなって地面に降り立った!グロンケンは平和観音像に狙いを定めると、のっしのっしと観音像に向かって歩き出した。

 

「グォオッ!グォオッ!」

「マズい!アイツ、観音像を壊すつもりだ!」

「させるか!!」

 

グロンケンが観音像に辿り着く前に倒そうと、ガンブースターはグロンケンの背中に向けてアルタードブレイザーを放ち、背中で爆発を起こした!

 

「グォオッ!?」

 

光線を受けたグロンケンは背後のガンマシン達に気付くと、両手の丸鋸を回転させ、ガンマシン達に襲い掛かろうとした。

 

「グォオッ………!」

 

しかし、1歩踏み出したかと思うとすぐに踵を返して再度観音像に向かって歩き出した。

 

「あ、アイツまたこっちを無視して……!!」

「ヤツの目的はあくまでズラスイマーだ。俺達の事は無視してでも、観音像を破壊しようというわけか!」

 

グロンケンの行動に憤慨するシャーリー。一方でアスカは、グロンケンとそれを操るレイオニクスの目的を推測し、呟いた。

 

「マズい!グロンケンが観音像に辿り着くぞ!」

「させるか!!」

 

グロンケンが平和観音像まであと数百メートルまで近づいていたため、速度を上げてグロンケンを追い越すと、正面からグロンケンに向けて砲撃を行った!

 

「グォオッ!!グォオッ!」

「今だ!集中砲火するぞ!!」

「G.I.G.!!」「「「「了解!!」」」」

 

攻撃を受けて周囲や体表で爆発が起こり、グロンケンは怯んで立ち止まった。その隙を見逃さず、アスカは集中砲火を提案し、全員がグロンケンに狙いを定めた。しかし、引き金を引く寸前に何もない上空から無数の光線がガンブースターとガッツイーグルαスペリオルに向けて降り注ぐ!

 

「うおおおおお!?」

 

咄嗟に操縦桿を傾けて回避行動を取って直撃は避けられたが、光線はなおも降り注いでくる。その間にグロンケンは再び観音像に向かって行く。

 

「や、やろう………!!」

 

光線を避けつつもグロンケンが再度動き始めたのを見た直枝が悪態をついた。ちょうどその時、ガンフェニックスと美緒らウィッチが現場に到着をすると、現状を目の当たりにして声を上げた。

 

「グロンケンを確認!!」

「グロンケンは俺たちに任せて、みんなは攻撃してくる宇宙人をどうにかしてくれ!!」

「分かった!」

 

リュウの指示でガンフェニックスはグロンケンの前方を飛び、ウィッチ達は光線に苦戦するガンブースターとガッツイーグルの援護に向かった。

 

「まずは、この光線をどうにかしないと……」

「この光線、どこから………?」

 

ミーナと美緒は光線が降ってくる上空を見上げるが、光線は何もない場所から、しかも複数の箇所からランダムに降ってきていた。美緒は眼帯をずらして『魔眼』を発動させて上空を見ると、上空には3枚の羽のようなものが付いたプロペラのような円盤と、3つの円盤がパイプで繋がったような小型円盤数機が、透明な状態で飛んでいるのを見つけた。

 

「見つけた!右15度!」

「分かった!!ガンフェニックス、スプリット!!」

 

リュウはガンフェニックスをガンウィンガーとガンローダーに分離させると、美緒の指示した地点に向けて攻撃をしかける!

 

「ウィングレッドブラスター!!」

「バリアブルパルサー!!」

 

ガンウィンガーとガンローダーの熱線とビームが上空で『()()』に着弾したのか、何もない場所で火花が散ったかと思うと透明になっていた円盤が姿を現した!

 

「円盤を発見!」

「あれはクール星人の円盤です!」

 

円盤を見たミライが声を上げる。円盤は羽の一部から煙を上げているが飛行には支障がない様子であった。すると、円盤の方から通信が入って来た。

 

『地球人ども、邪魔をするんじゃあない!』

「クール星人!!」

『クール星人のボンヌイだ。私の目的は、あくまでもこの先のカンノン像に眠るズラスイマーだ!それを邪魔するのを許す気はないぞ!』

「何を勝手な事を!!」

 

クール星人ボンヌイの言い様に美緒は怒りを露わにする。だが、ボンヌイはそれを無視して攻撃を再開してきた。

 

 

 

 

 

「グォオッ!!グォオッ!」

 

一方、グロンケンの元に向かった直枝たちは、グロンケンの背中に向けて機関銃を掃射、グロンケンは観音像まであと一歩という地点にまで差し掛かっていたが、背中へのダメージに耐えられずに悶えながら立ち止まった。

 

「グォオッ!グォオッ!」

「今だ!!一斉攻撃!!」

 

コウジが全員にそう指示を出して一斉にグロンケンに照準を合わせた。

 

ゴウッ

「!?」「何!?」

 

だが、引き金が引かれようとしたその瞬間、突如真下の地面から炎が噴き出してガンブースターたちに向けて襲いかかってきた!ガンブースターはとっさに回避行動を取ったが、避けきれずに炎が翼を掠めて黒い焦げ跡を作り上げた。

 

「な、何だ!?」

「地面から炎が……!!」

 

いきなりの事態に直枝とシャーリーは驚きの声を上げた。炎が止まったので見下ろしてみれば、地面に穴が開いており、そこから炎が噴き出した事が推測できた。

 

「地中に怪獣が潜んでいたのか!?」

「グロンケン以外に、別の怪獣を従えていたのか……!?」

「グォオッ!!グォオッ!!」

 

どうやら、ボンヌイは既に他の怪獣を地中に潜ませていたようだ。先ほどの炎で一同が怯んだ隙にグロンケンは再び平和観音像に向けて歩き始めていた。

 

「グォオッ!グォオッ!」

「しまった!」

「させるか!!」

 

グロンケンを追いかけようとするが、再び火炎が地面から噴き出して阻んだ。直枝たちは火炎を回避してグロンケンを追うが、今度は地面から鞭のようなものが飛び出してきた!

 

「にゃあッ!?」

「3匹目だと!?」

 

3匹目の怪獣の出現に驚く間もなく、今度は地面から白い糸が飛び出して、ガンローダーをとらえてしまった!

 

「うおっ!?」

「コウジさん!!」

「アイツ、何匹怪獣を従えてんだ!?」

「くっ、これでは迂闊に攻撃が出来ない……!」

 

地中に潜む怪獣によって、直枝たちは足止めを食らう羽目になってしまった。糸はクルピンスキーが機関銃で切断できたが、その間にグロンケンは、とうとう平和観音像のすぐ近くまでやってきていた。

 

「グォオッ!グォオッ!」

「しまった………!!」

 

グロンケンが右手の丸鋸を回転させて手を観音像に伸ばしたのを見てシャーリーは慌てるが、地中からの攻撃が激しくてグロンケンに近づけない。そして、ついにグロンケンの右手が観音像に届こうとした……

 

「ちくしょぉー!ダイナァアアアアアア!!」

 

その時、グロンケンが平和観音像の元にまでたどり着いた事に気付いたアスカがリーフラッシャーを掲げると光に包まれてガッツイーグルから光が飛び出し、グロンケンの頭上でウルトラマンダイナの姿となってグロンケンに飛び蹴りをお見舞いした!

 

「グォオッ!?」

「ダイナ!!」

『ゼヤァッ!!』

 

グロンケンを蹴り飛ばして観音像から遠ざけたダイナは、着地と同時に構えを取ってグロンケンと向き合った。

 

ダイナの出現にシャーリーが声を弾ませる。ダイナはシャーリーたちの方を見ると、『ここは任せろ。』と言うかのように小さく頷き、起き上がったグロンケンに向き直るとファイティングポーズを取った。

 

「グォオッ!グォオッ!」

「シュアッ!」

 

ダイナは丸鋸を開店させながら腕を振るうグロンケンの攻撃をかわしつつ、隙を見てはパンチやキックを叩き込む。グロンケンは本当なら主人であるボンヌイの命令通りに観音像を壊さねばならないのだが、目の前のウルトラマンがそれを許してくれない。

 

「グォオッ!グォオッ!」

「デェアッ!」

 

ダイナは向かってくる丸鋸をかわしつつ、カウンターで蹴りやパンチを繰り出してダメージを与えていく。その時、ガンウィンガーからの攻撃を掻い潜っていたボン縫いは、グロンケンがウルトラマンと戦っているのを見ると、少しイラついたように呟いた。

 

『ええいウルトラマンめ、余計な真似を……援護に向かえ!!』

 

ボンヌイがそういうと、地中に潜んでいた怪獣がその場から移動をし始めた。一方、ダイナはグロンケンの丸鋸を体を反らせて回避すると、そのままグロンケンの腹部に蹴りを叩き込む。

 

『デェアッ!!』

「グォオッ!?」

 

後退ったグロンケンが怯むと、ダイナは好機とばかりに腕を組もうとした。

 

ボゴンッ

『グァアッ!?』

 

しかしその時、ダイナの足元の地面から怪獣の頭部が飛び出したかと思うと、ダイナの右足に噛みついてきた!ダイナが見下ろすと、そこにはとがった口と頭に3本の角が生えた怪獣の頭があり、地面に空いた穴から長い首を伸ばしていた。

ダイナは足から怪獣を振りほどこうとしたが、今度は背後の地面から右手の一部が鞭のようになった顔のない怪獣が現れて、ダイナの首に鞭を絡ませた!

 

『グァアッ!?』

「ダイナ!!」

 

鞭で首を絞められて苦しむダイナを見たシャーリーが、思わず声を上げる。ダイナは鞭を振りほどこうと首の鞭を摑んだが、その隙にグロンケンはダイナの横を素通りして観音像に向かっていく。ダイナはそれに気づいて腕を伸ばすが、足に噛みついていた怪獣が口を話すと、その口から火炎を吐き出し、ダイナに火炎を浴びせた!

 

『グァアアアアアッ!!』

「ギュィイーーーッ!!」

 

炎を浴びたダイナは悲鳴を上げて後退り、更に背後の怪獣は締める力を強めてダイナを苦しめる!

 

「ダイナが!?」

「あの怪獣は………!!」

 

ダイナを苦しめる怪獣を見たリュウが思わず声を出した。その名前を出そうとした瞬間、ダイナの元にシャーリー達が駆けつけて怪獣の頭部に向けて銃撃を開始した!

 

「ギュィイーーーッ!?」

 

銃撃を受けて頭部で火花が散ると、怪獣は長い首をのけ反らせた。その時、頭部が痛みに苦しむのと連動するように、もう一体の怪獣が痛みに悶えるように身体をくねらせた。

 

「な、何だ?」

 

シャーリーが不思議に思っていると、ダイナの首から鞭が外れる。怪獣から解放されたダイナは地面から頭を出している3本角の怪獣を睨むと、両手で掴んで引っ張り出した。

 

「ギュィイーーーッ!!」

『!?』

「なッ………!?」

「ええ!?何だあれ!?」

 

だが、引っ張り出した怪獣の姿を見て、一同は驚愕した。長い首を持った怪獣は、何と『首の根元から先』がなく、首だけの怪獣だったのだ!

 

「ギュィイーーーッ!!」

『ゥアッ!?』

 

首だけの怪獣はダイナの手から離れると、後ろにいたもう1体の元に飛んで行く。もう1体も穴からはい出てくると、こちらは顔がなく、足と足の間に丸いくぼみを持っていた。首だけの怪獣はそのくぼみに首の根元を収め、1体の怪獣となった!

 

「ギュィイーーーッ!!ギュィイーーーッ!!」

「1体になった………いや、元々1体の怪獣だったのか!?」

 

それは、とても奇妙な姿をした怪獣であった。4足歩行の怪獣の後ろ脚が腕になっていると言えば、分かりやすいであろうか。頭のない2足歩行の怪獣の足と足の間から、長い首を持った頭部を生やした怪獣であったのだ!

 

「あれは、『ムカデンダー』という怪獣のようだな。頭と胴体を分離させても動ける怪獣らしい……」

「頭と胴体を分離できる怪獣を地中に潜ませて、複数体の怪獣がいるかのように見せかけていたのか!頭良いなオイ!!」

「ギュィイーーーッ!!」

 

メモリーディスプレイで目の前の怪獣を検索したシャーリーが、ドキュメントZATから『百足怪獣 ムカデンダー』の情報を読み上げる。それを聞いた直枝がボンヌイの作戦に気付いて悪態をつくが、その間にグロンケンは平和観音像のすぐ近くまでやってきていた。

 

「グォオッ!グォオッ!」

『!!、まずい!!』

 

ダイナは急いでグロンケンの方に向かおうとするが、ムカデンダーが口から火炎放射を放ってダイナの足を止める。ダイナが火炎放射に怯んで足を止める間に、ムカデンダーはグロンケンに悪態をつくが、その間にグロンケンは平和観音像のすぐ近くまでやってきていた。

 

「グォオッ!グォオッ!」

『!!まずい!!』

 

ダイナは急いでグロンケンの方に向かおうとするが、ムカデンダーが口から火炎放射を放ってダイナの足を止める。ダイナが火炎放射に怯んで足を止める間に、ムカデンダーはグロンケンに向かっていくウィッチたちに向けて鞭をふるってきた!

 

「きゃあ!?」

「ヤロ~、何が何でもグロンケンの邪魔はさせない気か!!」

 

鞭を掻い潜りながら、直枝がボンヌイの思惑に気付いて悪態をつく。鞭を避けながら銃撃を行うが、ムカデンダーは首を分離させてダイナに噛みつき、胴体の方は鞭でウィッチやガンブースターを攻撃して、グロンケンの邪魔をさせないようにしていた。更に、ボンヌイの駆る円盤の上部が開いて小型円盤が追加で10機以上発進すると、円盤はグロンケンに向かうウィッチたちに向けて攻撃を開始した!

 

「うわっ!?」

「円盤が!?」

 

小型円盤の攻撃によりウィッチやガンブースターはグロンケンに近づけず、その隙にムカデンダーの胴体は頭と連携してダイナに向けて糸を吐き出して、ダイナをがんじがらめに縛り上げた!

 

『グゥウ………ッ!?』

「ダイナ!!」

 

身動きが取れなくなってダイナが呻く。ムカデンダーはダイナが動けないのを確認すると、ガンブースターに標的を定めると再度頭を分離し、高速で噛みつかんと飛んで行く!

 

「ギュィイーーーッ!!」

「うぉおお!?」

 

ガンブースターはムカデンダーの噛みつき攻撃をかわすが、そこに胴体の鞭攻撃が襲いかかる!

 

バヂンッ

「うわああ!!」

 

咄嗟の事でコウジは回避が間に合わず、ガンブースターのエンジン部に鞭の一撃を受けてしまい、ガンブースターはエンジンから炎と黒煙を噴き出して高度を下げ始めてしまった!

 

「コウジさん!!」

「くぅッ………ガンブースター、イジェクション!!」

 

コウジはガンブースターからガンスピーダーを分離させて脱出、ガンローダーは黒煙を上げながら墜落していった。その時、グロンケンは観音像の目の前まで来ると、ついに回転する右手の丸鋸を観音像に振り下ろした!

 

「グォオッ!グォオッ!」

「マズイ!!」

『いいぞグロンケン!そのままカンノン像を真っ二つにしてしまえ!!』

「グォオッ!グォオッ!」

 

グロンケンが観音像に刃を入れ始めたのを見たボンヌイが歓喜の声を上げる。グロンケンは堅い大谷石をものともせずに観音像にどんどん刃を入れていく。

 

「早くグロンケンを止めないと!」

 

ミライはガンウィンガー内で毒づき、左腕を構えてメビウスブレスを出現させて変身をしようとするが、小型円盤の攻撃が激しく、変身がままならない。ダイナもムカデンダーの糸を引きちぎろうとするが、強靭なうえに段々と力が抜けて行くようにも感じ、うまく力が入らない。

 

ムカデンダーの吐く糸には毒が含まれている。ダイナはその毒によって、じわじわと体力を削られていたのだ。

 

『グゥウ………ッ』

「ギュィイーーーッ!!」

 

ムカデンダーはそんなダイナにとどめを刺さんとばかりに、炎をダイナに吐き出して攻撃する!

 

『グァアアアッ!?』

「ダイナ!!」

「グォオッ!グォオッ!」

 

ダイナが炎に苦しむ中、グロンケンはついに観音像を真っ二つにしてしまい、観音像の上半身が大きな音を立てて地面に落下した!

 

「ああっ!!」

「観音像が………!!」

「グォオッ!グォオッ!」

 

観音像っが切断されてしまった事に芳佳と美緒が思わず悲痛な声を上げる。グロンケンは勝ち誇ったように吠えると勢いよく振り返るようにして観音像の下半分に尻尾を振るい、尻尾の一撃で観音像を吹っ飛ばしてしまった!

 

「ああっ!!」

「間に合わなかったか………!」

 

飛んで行った観音像が地面に倒れるのを見た芳佳が悲鳴を上げ、美緒が悔しげに呻く。苦しむダイナのカラータイマーが点滅を開始したその時、地面が揺れ始めていることに気が付いた。

 

『さあズラスイマーよ、目覚めるのだあッ!!』

 

ボンヌイがそう叫んだ瞬間、観音像のあった場所から勢い良く怪獣が飛び出してきた!

 

「ギュゥーイィーーー!!ギュゥーイィーーー!!」

「あれがズラスイマーか………!!」

 

地面から飛び出して来た頭頂に蛇の頭のような器官、顎にヒゲのようなものが生え、左腕が鞭のようになった怪獣、『ムチ腕怪獣 ズラスイマー』は地上に降り立つと、高らかに吠える。ズラスイマーの出現にボンヌイが歓喜し、グロンケンとムカデンダーも同調してか喜ぶ素振りを見せた。

 

「ギュゥーイィーーー!!」

 

ズラスイマーは両腕を振るい鳴き声を上げたかと思うと、近くにいたグロンケンに向けて左腕の鞭状の腕を叩きつけて来た!

 

「グォオッ!?」

「ギュゥーイィーーー!!」

「何だと!?」

 

ズラスイマーがグロンケンに攻撃した事に驚愕する直枝。小型円盤の攻撃を回避していたリュウはそれを見て口を開いた。

 

「流石に起きたばかりだし、起こした奴に従うって訳にはいかないんだろうな………」

「ギュゥーイィーーーッ!!」

 

ズラスイマーはグロンケンに鞭を叩きつけ続ける。グロンケンがそれに耐えていると、ボンヌイはムカデンダーに指示を出した。

 

『ムカデンダー、ズラスイマーを押さえつけろ!』

「ギュィイーーーッ!!」

 

ムカデンダーはズラスイマーの鞭めがけて自身の鞭をふるうと互いの鞭が絡まって動けなくなる。

 

「ギュゥーイィーーーッ!!」

「ギュィイーーーッ!!」」

 

ズラスイマーは鞭を封じられて怒ったように吠えると左腕の鞭を引っ張って解こうとするが、ムカデンダーも負けじと鞭を引っ張って解かせない。

 

「ギュィイーーーッ!!」

「ギュゥーイィーーーッ!!」

 

鞭を引っ張り合うズラスイマーとムカデンダー。その隙にグロンケンは立ち上がると、両脚と尻尾を使ってジャンプをすると、その勢いに任せてドロップキックをズラスイマーにお見舞いした!

 

「ギュゥーイィーーーッ!?」

「グォオッ!グォオッ!」

 

ムカデンダーに鞭を引っ張られていたズラスイマーは、グロンケンのドロップキックを受けて大きく吹っ飛ばされる。ムカデンダーはズラスイマーから鞭を外すと、口から糸を吐き出してズラスイマーを縛り上げた。

 

「ギュゥーイィーーーッ!!」

『いいぞ、そのまま動けないようにしろ!』

「ギュィイーーーッ!!」

 

ボンヌイの指示にムカデンダーは頷き、ズラスイマーを縛り上げる。ボンヌイはガンマシンを小型円盤に任せて縛り上げられたズラスイマーに円盤で向かうと、バトルナイザーをズラスイマーに向けた。すると、バトルナイザーから光が飛び出してズラスイマーに飛んで行きズラスイマーを光が包み込んだ。

 

「ギュゥーイィーーー………」

 

ズラスイマーはボンヌイのバトルナイザーの光に包まれると、その光に導かれるようにバトルナイザーの中に吸い込まれていく。ズラスイマーを吸い込んだバトルナイザーを見たボンヌイは、満足そうに頷いた。

 

『ふふふ……これでズラスイマーは、私のものだぁ!!』

「そ、そんな………!」

 

ボンヌイはバトルナイザーを高く掲げて高笑いをした。

 

 

 

 

 

つづく




第四十五話です。

・平和観音像防衛線回。クール星人らしく透明化や小型無人円盤を駆使したり、怪獣を上手く使ったりして意外と頭使う回になりました。

・ボンヌイの手持ち2体目はムカデンダー。ムカデンダーの特性なら地中で分離して何匹もいるように見せかける事が出来ると思い、頭脳派のボンヌイには丁度いいと思って選びました。

・ついに目覚めたズラスイマー。手に入れるには弱らせたり動き止めたりするのはお約束。

では、次回をお楽しみに。


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