防人達 (lancer008)
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人物・ソードスキル設定 ※人物のネタバレあり

ソードスキルはまだまだ追加予定。


設定

 

第1隊ランサー 補佐イェーガー

隊員

アンタレス

グレン

カムイ

クロー

 

全6名、死者0。

 

第2隊アーチャー 補佐アレウス

隊員

イーグル

アキレウス

リベルタ

ボーダー

 

全6名、死者0。

 

第3隊ライダー 補佐ストライカー

隊員

レーヴェ

メテオール

コメット

アルマ

 

全6名、死者0。

 

第4隊キャスター 補佐レクバ 死亡

隊員

ライラ 死亡

ジェイド 死亡

アルケミー 死亡

オルドル

 

全6名死者4名。

 

4話目まで4隊として活動、5話目から即応部隊へ移動。キャスター→即応第2隊隊長へ。

 

 

第5隊バーサーカー 補佐レオニダス

隊員

トーラス

ヴェヒター

ラグナ

ファング

 

全6名、死者0。

 

第6隊 アサシン 補佐シャドウ

隊員

ゴースト

アッシュ

ケイオス

サーペント

 

全6名、死者0。

 

ギルド要員

通信士

アインス 第1

トロワ 第2

カインス 第3

ラッセ 第4

5話目で4隊員配置替えに伴い、即応隊の通信士へ。

ターシュ 第5

ノース 第6

 

全6名。

 

即応

ツヴァイ

レオン

アルト

レーネ

ストライダー

トリガー

????

????

????

 

全10名

 

4話目まで10名で一つの隊、隊長ツヴァイ。

5話目より2分、第1ツヴァイ、第2キャスター

 

第1

ツヴァイ

レオン

アルト

レーネ

????

????

 

第2

キャスター

オルドル

ストライダー

トリガー

????

????

 

 

 

エクストラスキル:抜刀術

 

抜刀術単発剣技《疾風》

刀を鞘に収めた状態から横方向に振り抜く。硬直がほぼ無い。

 

抜刀術最上位単発剣技《紫電》

居合、視界におさめる全ての対象に攻撃することが可能。攻撃後、対象の後方に移動している。居合、移動速度は発動者のステータスや武器ステータス、熟練度によって変わる。

 

抜刀術最上位八連撃剣技《桜花》

刀を鞘に収めた状態で発動。任意で方向を変える事が可能。

 

 

 

ソードスキル《刀》

 

刀単発剣技《絶空》

上下左右に剣を振るう。

 

刀単発剣技《浮舟》

下からの切り上げ。対象を空中に上げる事ができ、スキルコンボの起点となる。

 

刀単発剣技《幻月》

同じモーションから上下に発動する。使用者の任意方向可。硬直時間が短い。

 

刀上位単発剣技《鬼斬》

上段の構えから一気に振り下ろす。

 

刀三連撃剣技《緋扇》

上下の連撃から最後に突きを放つ。

 

刀上位八連撃剣技《五月雨》

刀を鞘に収めた状態で発動。上下左右に振る。

 

刀突撃剣技《辻風》

刀を左腰から構えた状態で放つ居合技。刀が鞘に収まっていなくても発動可能。射程は熟練度によって違う。

 

刀重範囲攻撃剣技《旋車》

垂直にジャンプして身体を捻り、着地したと同時に周囲360度を薙ぎ払う。

 

刀重突撃《迅雷》

ヴォーパルストライクと同じ。

 

 



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始まりの日

音が消えるほどの雨が降り注ぐ。

 

 

その中で1人の絶叫した声が響く。

 

 

周りには無数の剣が落ちていた。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

あの日から全てが始まった。

 

日常が変わった。

 

歯車が狂い出した瞬間だった。

 

 

 

 

あの日、仕事仲間とともに始めたVRMMORPG"SAO"。休み中の気分転換になればと買った。

感想は“仮想世界ではなく現実にいるようだっだ”。

今まで感じた事のない体験に心を躍らせ子供のようにはしゃいだ。ただし、あの鐘が鳴るまでは………。

 

 

鐘が鳴り突然、その場にいたプレイヤーとともに始まりの街に強制転移した。回りを見るとほぼ全てのプレイヤーが転移してきていた。

それから始まったイベントムービーいや、犯行声明とも言えるホログラムは信じ難いものだった。

 

《プレイ中にHPがゼロになった場合、アインクラッドと現実世界から永久的にログアウトされる》

 

理解するまで時間はかからなかった。

 

《ゲームがクリアされればこの世界から無事にログアウトできる》

 

周辺からは説明を要求する声が上がっていたが答えは同じだった。つまり、HPがゼロになった時点で現実でも死亡ということだ。また、現実世界からの介入も永久的なログアウトに繋がる。殺り方はいたってシンプルだった。

 

高出力の電磁パルスで脳を破壊する。

 

苦しまずに死ねるてのいい点だろう。痛みと苦痛に満ちた表情をして死ぬよりかは、だがそんな事はあってはならない事だ。

 

これは完全なる無差別なテロ行為だ。

 

俺は現実世界での職業柄、こういう事案に対して対処しなければいけない組織に所属している。これも職業病の一つだろうか、既にやる事は決まっていた。

 

《全100層からなるフロアボス討伐》

 

自分1人では無理だろう。だが同じ組織に所属している仲間もいる。他のプレイヤーの中にもいるだろう。まずは仲間を集め力を付けなければならない。このゲームクリアに向けて。

 

 

 

 

 

 

現在、デスゲーム開始から1ヶ月後

 

ゲーム開始から既に1ヶ月が経ち既に2000名ものプレイヤーが死んだ。モンスターとの戦いで死亡する者、自ら命を絶つ者、この1ヶ月死者が絶えなかった。

俺はこの1ヶ月で仲間となった者たちと第1層ボス攻略会議に参加していた。その場には大勢のプレイヤーが集まっていた。途中参加だった為、ちょうどパーティーを組んでいる最中だった。正面にいたリーダー格からパーティーは組んだかと聞かれたが既に組んでいたので大丈夫だと答えた。この1ヶ月で10名の仲間が集まった。自分を入れ元からいた4名と一緒に戦闘を行ったり、意気投合した6名だ。この6名は現在、スキルを獲得するため一時パーティーを離れている。

 

リーダー格か中央にあったステージに上がり、現在元ベーターテスターが公開しているベーター時のボス情報を言おうとした時、突然、頭に角が生えているようなプレイヤーが大声を上げて何かを言い始めた。

 

「俺はキバオウ、ボス攻略前に言わせてくれや!この中に今まで死んでいった2000人に詫びを入れなきゃいれんやつがおるはずや!」

 

集まっていたプレイヤー達に向け指をさした。

 

「このゲームが始まった時、ビギナーを見捨てて自分達だけうまい狩場や弱いクエストを独り占めして自分達だけ強くなっていった。その後も他のプレイヤーは知らんぷりや!この中にもおるはずやクソみたいなベーターテスターが!そいつらに土下座さして溜め込んだアイテムやら装備を出してもらわなパーティーメンバーとして命は預けられんし預かれん!」

 

「ちっ!たかりが……。」

 

仲間の1人が呟いた。

それを聞き漏らさなかったのかキバオウはこちらを向き大声で話しはじめた。

 

「お前がベーターテスターか⁉︎よくもビギナーを見捨てくれたのう。今すぐ侘びを入れて装備を出せや!」

 

他のプレイヤーからも視線が感じられる。

 

俺は手を挙げた。

 

「すまんな。仲間の1人が間違われるような発言をして、ここにいるのは俺の仲間でビギナーだ。後で謝らせる。その前に俺からも一言言わせてくれ。お前ここに集まってるプレイヤーは一体何のために集まっていると思う?」

 

「はぁ⁉︎それはボス攻略をするためだろう。何を言うてんねん。」

 

「それを分かっていて、何で全体の士気を落とすような発言をする?」

 

少し殺気を出しながら話した。

 

「この会議はゲームクリアの為の最初の一歩だ。無下にできないことぐらいわかるだろう。それが分からないならとっとと出て行け。」

 

「何やと⁉︎、もういっぺん言ってみろや!」

 

するとそこに身長2メートルあるような大男が割って入ってきた。

 

「まあまあ、そこら辺にしたらどうだ?」

 

「何やねん、あんたは?」

 

「俺はエギル。なあキバオウさん、これ何だか分かるか?」

 

エギルという大男は腰に付いている袋から小さな手帳のような物を取り出し攻略戦に参加するプレイヤー全員に見えるよう持った。

 

「これは元ベーターテスターが露店などで無償で配っていたものだ。これにはベーター時の第1層から第9層の情報、そしてフロアボスについて書いてある。この情報を元に助かった者も多くいるはずだ。俺はこの事が言われると思っていたんだがな。」

 

そう言い元の場所に戻っていった。

 

俺はリーダー格の元に歩いていった。

 

「すまなかった。逆に士気を落としてしまったかな?」

 

「いえ、大丈夫です。そういえば途中からいらしたんで自分の名前わかりませんよね。自分、ディアベルといいます。」

 

「俺はランサー、よろしく。あっちにいるのが俺の仲間だ。さっき舌打ちしたのがライダーだ。それからアサシン、アーチャーだ。」

 

「よろしくお願いします。」

 

ディアベルは握手を求めてきたので応じた。

 

 

 

 

 

 

攻略当日

 

攻略パーティーはフロアボスがいる部屋の前に集合していた。士気は良いが何となく嫌な気配がしていた。昔からこの気配がすると何かしらの事が起こった。バディが階段で足を滑らせて落ちて骨にひびが入ったとか、演習場に行く途中、事故ったとかなどなど。

だか今回のは訳が違う。扉の向こうから死の気配を感じた。誰かが死ぬのは明白だった。

 

扉が開かれ攻略パーティーは部屋に雪崩れ込んだ。300m先にボスと取り巻きモンスターが出現した。

ボスの名は"ILL Fang The Cobalt Load(イルファング・ザ・コボルド・ロード)”、武器は見える限りだと斧とバックラー、腰にベータテスターの情報だと曲刀を装備している筈だったが腰の武器は別な物に見えた。一応、パーティーメンバーには注意するよう伝えた。

ディアベルの合図とともに攻撃が始まった。

 

 

俺のパーティーは主に取り巻きモンスター、センチネルを引きつける役目をしていた。

 

「倒しても倒してもで出来ますね。隊長。」

 

「文句は後にしろ。その前にここではランサーだ。アサシン。」

 

「へいへい。」

 

ここでボスモンスターのHPゲージがレッドに入り、持っていた斧とバックラーを投げ捨て腰に付けていた剣を取り出した。それは刀だった。

 

その瞬間、誰かが叫んだ。

 

「駄目だ!全力で後ろに飛べ!」

 

叫んでいた人を見ると中学生くらいの少年だった。ボスモンスターの方に目を向けると、何故か指揮をしていたディアベルが前に出で攻撃を行おうとしていたがボスモンスターが頭上高く飛び上がり今までにはない速さで壁を蹴り移動し始めた。そしてディアベルの真上に来ると剣を振った。そして続けざまに剣を振るいディアベルは吹っ飛んで行った。

するとさっき叫んだ少年が走って近寄り回復アイテムを渡そうとしたがディアベルは手で止めた。何かを話しているようだったがここからは遠く聞こえなかった。

ディアベルがやられたことにより攻略パーティーに動揺が走った。既に戦線は崩壊していた。

 

「全員行くぞ!攻撃パーティーを一旦下がらせる!」

 

「「「了解」」」

 

「ライダー、動けなくなった奴を頼む。アサシン、タンク系の奴らを連れて来い防衛線を張る。アーチャー、俺とお前でスイッチによる攻撃を仕掛ける。」

 

「ライダー、了解。」

 

「アサシン、了解。」

 

「俺、後衛役ですよ。」

 

「それでも格闘徽章持ちか⁉︎弱音吐いてないでさっさとやるぞ。」

 

「了解です。」

 

ソードスキルを使いボスを吹き飛ばし、その隙にアーチャーがソードスキルをぶつけていき、それを交互にやった。3回程行うとさっき叫んでた少年がパーティーとともにこちらへ向かってきた。

俺とアーチャーで呼吸を合わせボスを弾き飛ばしスイッチした。少年も攻撃を加えパーティーの1人が攻撃しようとしたところ突然、ボスモンスターが空中で剣を振るった。

間一髪のところで避けた。攻撃は羽織っていたローブに当たり破壊された。出てきたのは少年と同じくらい少女だった。

全員が驚いていた。また攻撃が再開された。徐々にではあるが確実にボスモンスターのHPか減っていた。

 

「アーチャー、準備は?」

 

「いつでも。」

 

「行くぞ!」

 

戦っていた少年がボスの攻撃を捌ききれず一撃を胴体にくらってしまい後方にいた少女にぶつかり倒れ込んだ。ボスは攻撃をくらわせようと剣を構え下に振り落とそうとした瞬間、エギルがボスの攻撃を弾き返していた。

 

「こちらアサシン、タンク系連れてきました。」

 

「ギリギリだぞ。もっと早く連れて来い。」

 

「ライダーも来ましたね。」

 

少年のパーティーが最後の攻撃を加えようと剣を構えていた。

ランサーは少年の横に立ち、

 

「俺達があいつの攻撃を全て防ぐ。お前らは遠慮なく叩き込め。」

 

「わかった。」

 

「アーチャー、アサシン左側を。俺とライダーは右側だ。いいかアイツに指一本触れされるな。」

 

「「「了解。」」」

 

ボスに向けて一直線に走っていった。ボスは攻撃させるかと言わんばかりに剣を振るい始めたが全て受け流したり弾き飛ばした。少年達の連携はさることながらこれが昨日作ったばかりのパーティーかと言わんばかりのスピードだった。

そして少年の放った一撃がボスのHPを全て削り、ボスモンスターは小さな結晶となり消えていった。

 

そしてフロア中央にフロアクリアが映し出された瞬間、歓喜が湧いた。少年は片膝をつき荒く呼吸していた。ランサーは少年に近づき、声を掛けた。

 

「大丈夫か?」

 

「ああ。」

 

話をしているとエギルとパーティーメンバーが近づいてきた。

 

「お疲れ様」

 

「見事な剣技だった。この勝利はあんたのものだ」

 

他のプレイヤーも讃えた。

 

すると奥の方から、

 

「なんでや!なんでディアベルはんを見殺しにしたんや!」

 

声の主はキバオウだった。

少年が答えた。

 

「見殺し?」

 

「そやろうが!自分はボスの使う技知っといたんやろうが!最初っからあの情報伝えっといたらディアベルはんは死なずに済んだんや!」

 

プレイヤー達が騒めく、そしてプレイヤーの1人が他のプレイヤー達に向けて叫んだ。

 

「あいつきっと元ベータテスターだ。だからボスの攻撃パターンも全部知ってたんや。知ってて隠してたんだ!」

 

続けて

 

「他にいるんだろうベータテスターどもが出て来いよ!」

 

プレイヤー達がざわつき始めた。

 

「なら問おう!今ここで元ベータテスターが出てきたらどうするつもりだ?また昨日の攻略会議と同じ事を要求するのか。」

 

突然、ランサーが話し始めた。

 

「ああ、そうだ。それに今すぐ謝って死んでもらう。死んだディアベルさんのために。」

 

「それでディアベルが喜ぶとでも。」

 

「そうだ!元ベータテスターを殺せと叫んでいるに違いない。」

 

ランサーは溜息をついた。そして周りにいる者しか聞こえない声で、

 

「死人に口なし。」

 

ランサーのパーティーメンバーを除いて聞こえた者はランサーの方向いた。

 

「あの時、理由はどうあれディアベルは1人でボスに挑んだ。それは覚悟があったからだ。戦う覚悟がだ!お前らに覚悟は無いのか!既にこれはゲームじゃない、実戦だ!ここは戦場!犠牲者を他人のせいにするなら今すぐここから出て行け!」

 

続けて、少年の方に身体を向けた。

 

「少年、ディアベルは最後に何て言ってた?」

 

「“皆んなの為に”」

 

「“皆んなの為に”か………。指揮官らしい言葉だな。」

 

「それが何だったいうんだ!」

 

「分からないのか!ディアベルはこの少年に“頼む”と告げたんだ。全員を引っ張ってクリアしろと。その意味がわからないならもう一度考え直すことだな。」

 

ランサーはパーティーメンバーを率いて次の階層への階段へと向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第49層

 

「ランサー、引っ越し終わったぞ。」

 

「了解。机の配置とかは任せたぞキャスター。」

 

「了解です。さっきアサシン、第4分隊連れてどっか行きましたよ。」

 

「ああ!あいつ、サボりやがって。」

 

「ランサーもそろそろ時間じゃ無いのか?」

 

「やべ⁉︎すまん、行ってくる。何かあれば連絡をくれ。」

 

「了解です。」

 

 

デスゲーム開始から1年と数ヶ月が経ち攻略は第74層まで進んだ。

 

俺は仲間とともにギルドを立ち上げた。

 

 

《桜花》

 

 



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分岐点

第48層 リンダース

 

ランサーは注文していた品を受け取りにある武具店に来ていた。

表札には《リズベット武具店》と書かれていた。ここの店主は女性で明るい方であり、そして腕が立つ。一部の攻略組の行きつけともなっている。

ランサー自身も攻略組にいる知り合いから紹介され通っている。

 

「注文していた品を取り来たんだが?」

 

「出来てますよ。全部で53本ですね。」

 

「すまないな。これだけの量、3日で作れだなんて。」

 

「いえいえ、このぐらい新しく剣を打つよりは楽なもんですよ。」

 

「そうか。なら、これ今回の代金な。」

 

「毎度あり。」

 

ランサーはアイテムストレージに受け取った品を入れ店を出た。

 

 

 

 

 

第50層 アルゲート

 

ランサーはここで情報屋から情報を買っていた。相手は情報屋の中で最も信頼できるプレイヤー、アルゴだった。

 

「これといった新しい情報は無えゼ。」

 

「“ラフコフ”の拠点は?」

 

「そんな危ない情報は取り扱ってないヨ。大体、わざわざPK集団に近づくプレイヤーはいないゼ。アンタラ以外にはネ。」

 

「また情報が入ったら頼む。」

 

ランサーはその場を去り、ギルドへと戻った。

 

 

 

 

 

ギルドでは全員が着席してランサーの帰りを待っていた。

ランサーがギルドに着くと

 

「遅いぞ、ランサー。全員集まってるぞ。」

 

「すまない。遅れた。では、ギルドの引越し祝いをする前に全員に頼みかある。」

 

ランサーはアイテムストレージを開きテーブルの上に先程の武具店で作ってもらったアイテムを出した。それは何の変哲も無い普通の洋風の長剣だった。

 

「この剣の名前は、《剣士の墓標》これに名前を登録しとけば、もし死んだ時にこれがお前らの墓となり、そしてお前達がこの城で生きた証ともなる。この先、戦いは熾烈を極めるが、こいつを使わない事を願う!」

 

ギルド《桜花》は、マッピングを主な任務とし他にボス攻略、対人戦闘、中層プレイヤーの指導・護衛などをしている。マッピングについては階層によって4日から6日ほどで全て終わらせボス攻略に関しては他ギルドとの合同になる為、どうしても時間がかかってしまう。

 

「ランサー、俺たち全員、武者装備ですけど何で刀ではないんですか?」

 

アサシンが聞いた。

 

「これしか作れなかったんだ。我慢してくれ。」

 

「まあ良いですけど。」

 

ここでアーチャーが、

 

「話も終わりましたね。では、これより引っ越し祝いと新メンバーの交流会を始めます。いつもだったらここでギルド長から話があるのですが既に長々と話したので乾杯したいと思います。」

 

「乾杯!」

 

「「「乾杯!」」」

 

飲み会が始まった。周りでは飲み比べが始まったりし、ギルドハウス内はドンチャン騒ぎになっていた。そんな中、ランサーは1人外に出ていた。

 

「アルゴ、どうしたこんな時間に?」

 

現在の時刻は午後11時になろうとしていた。

 

「この情報は1時間後に全プレイヤーに知れ渡る情報だゼ。ラフコフの首領“PoH”が大々的に殺人ギルドを作ったてことが報じられるヨ。」

 

「そうか。」

 

「あまり驚いてないようダナ。」

 

「当たり前だろ。この情報は3ヶ月前から知ってるんだ。攻略組や関連ギルドに警告はしてきたが無視されたよ。」

 

「なら他にいい情報あるんだロウ、売ってくれヨ。」

 

「構成人数は3ヶ月前で100人以上、現在は未確認だが300人を超えている。ここから先は機密事項だ。それに優秀な情報屋は失いたくないからな。」

 

「勿体ぶらずに言ってくれヨ。」

 

「はぁ〜〜〜〜。知りすぎは危険だ。それにお前のように1人でいるやつは特にな。」

 

「わかったヨ。じゃあ失礼するヨ。」

 

アルゴはその場を去っていった。ランサーはギルドハウスの中に戻りアサシンに声を掛けた。

 

「アサシン、一個分隊を率いてラフコフの情報収集にあたってくれ。人選は任せる。緊急の場合、全メンバーに向けてメッセージを。」

 

「了解。今から1時間後に出ます。軍への偵察はどうしますか?」

 

「シンカーから今のところ急な連絡はない。当分は大丈夫だろう。もしもの時は俺とライダーで動く。」

 

「ライダーということは例のスキルを?」

 

「そうだ。外部には絶対に漏らすな。」

 

「了解です。それでは失礼します。」

 

 

 

 

 

 

 

それから約4ヶ月が過ぎた。

 

攻略は進み、現在は73層まで到達したが、中層ではラフコフによるプレイヤーの殺害が、日が経つにつれて増えていった。そのためギルド《桜花》は中層プレイヤー、一部の攻略組の要請でラフコフの討伐を行っていた。

 

 

 

そんな中、ある事件が起こった。

 

 

 

「オペレーター、キャスターの帰投時刻が過ぎているぞ!どうなっている⁉︎」

 

ランサーが叫んだ。キャスターの隊が帰投時刻になっても帰って来てなかった。ギルド《桜花》では1つの隊に1人のオペレーターが付きリアルタイムで情報のやり取りをしている。現在、6つの隊が在籍し、各自の任務にあたっている。

 

「オペレーター、何か連絡は来ているか?」

 

返答がなかった。

アーチャーが近づいていき顔を見ると放心状態になっていた。直ぐさま身体を揺さぶり気付かせた。

 

「レン、答えろ!キャスターたちは、どこにいる!」

 

「言えません。」

 

「答えろ!」

 

アーチャーは、レンの胸ぐらを掴み上げた。

 

「言えません!言ったらあいつが。」

 

ランサーがレンの近くに行き

 

「何があった?」

 

何も話そうとはしなかった。ランサーは剣を抜き、レンに向けた。

 

「答えろ。何があった?」

 

レンはランサーの殺気に怯んだのか、少しずつ話し始めた。

 

「こことは別のギルドに入っている親友がラフコフに捕まったんです。」

 

詳しく話を聞くと回りにいた殆どの者が耳を疑った。

 

この事件は2週間前まで遡る。

その日、レンは親友と他3名のプレイヤーとともに30層の迷宮区にいた。モンスターの狩りも終わり、ホームに戻ろうと思っている矢先、約30人のラフコフに襲われた。反撃はしたものの数の暴力で直ぐに制圧されてしまった。その際、親友と3名のプレイヤーがラフコフに人質にされ、解放条件に《桜花》の幹部を指定した場所に連れて来いというものだった。

レンは事前の任務内容を変更し指定されていた場所に行くようキャスターたちに通達した。

 

 

 

ランサーは剣を鞘に戻し、もう一度レンに問いた。

 

「キャスターたちは今どこだ?」

 

「55層の迷宮区、中央部です。」

 

ランサーは全員に指示を飛ばした。

 

「今出ている中で一番近い隊は⁉︎」

 

「バーサーカーです。」

 

「直ぐに向かわせろ!アーチャー、俺とともに55層に向かうぞ。各隊準備!ライダー、ここの防衛を頼む。ラフコフの姿を見たら直ぐにに拘束しろ!」

 

 

「「「了解!」」」

 

全員が動き出そうとした時、オペレーターの1人が声を上げた。

 

「聖龍連合から緊急要請!」

 

別のオペレーターからも

 

「KoBからもです!」

 

ギルドメンバーの1人が呟いた。

 

「テロかよ…………。」

 

 

 

 

 

 

ランサーとアーチャーは自分が受け持つ隊を連れてキャスターの元へと向かった。他ギルドからの応援要請が入っていたもののキャスター達の救出が最優先任務とし急ぎ現場へと向かっていた。道中のモンスターは全て無視した。

 

構っている余裕など無かった。オペレーターからの報告では既に3名が戦死、残りの3名は現在も戦闘中、敵の数は不明。他の攻略組からの応援も期待出来ない状態だった。

迷宮区中央部に近くとレッドプレイヤーに遭遇した。数は5。ランサー達を見つけると不気味な笑みを浮かべ持っていた剣を向けてきた。

 

「警告しま……………。」

 

アーチャーが話し終わる前に隣に居たランサーが刀を抜きスキルを発動し、目にも留まらぬ速さでレッドプレイヤー達の後ろに立っていた。ランサーが刀を鞘に戻した瞬間、レッドプレイヤー達の首が地面に落ちHPが全損し光のエフェクトになり消えていった。

 

「行くぞ。」

 

「了解!お前らいつまで惚けてる!続け!」

 

「「「了解!」」」

 

「アーチャー、あれが例のスキルか?」

 

アーチャーの補佐を担当しているアレウスが聞いた。

 

「そうだ。エクストラスキル《抜刀術》。刀スキル熟練度を2000以上にすると解放されるスキルだ。しかも今放ったスキルは抜刀術最上位単発剣技《紫電》、視界に収める全ての対象を攻撃することが出来る。」

 

「あの速さはシステムアシストによるものですか?」

 

「それもあるが自身のステータスも加えられている。」

 

しばらくしてレッドプレイヤーの集団と出くわした。全員が一斉に抜刀した。レッドプレイヤーの集団の中からリーダーらしき人物が出てきた。

 

「これはこれは、《桜花》の皆さん。もう少しで終わる所なので待って頂けませんかね?」

 

“PoH”では無かった。

 

「何がだ?」

 

ランサーが聞き返した。

 

「あちらの決着がつくまでですかね。」

 

僅かな隙間から今もなお、必死に戦っているキャスターの姿が見えた。

 

「そうか。アーチャー、行くぞ。」

 

「了解。」

 

ランサーとアーチャーは刀を両手で持ち切先を相手に向け刃先を上に向け頭部右側に構え、“霞の構え”をした。

 

「全員続け。」

 

言葉と同時に霞の構えから剣道の突きを思わせるように刀を動かすと刀身が光りソードスキルのエフェクトが発生した。

単発重突撃《迅雷》、片手剣ソードスキルにある単発重攻撃《ヴォーパルストライク》の刀バージョン。

 

ランサーとアーチャーは2人同時に飛び出し道を塞いでいたレッドプレイヤーを次々と吹き飛ばした。その後ろから部下が続き一気になだれ込んだ。

 

「キャスター、大丈夫か⁉︎」

 

「すいません。部下を失いました。」

 

「謝るのは後だ。ここから脱出するぞ!」

 

「おいおい、この人数からどうやって逃げるんだよ。」

 

1人のレッドプレイヤーが笑いながら話した。

 

「既に退路を経ったんだ。てめらは袋の鼠だよ。」

 

周りのレッドプレイヤーも不気味な笑みを浮かべ武器を取り出し少しずつ近づいてきた。そんな時、通ってきた道から歓声が上がった。すると大剣を手にした大男が左右に剣を振りながらこちらに向かってきていた。

 

「バーサーカー、只今到着しました。」

 

「遅いんだよ。」

 

アーチャーが答えた。

 

「アーチャー、キャスター達を連れて撤退しろ。殿は俺の隊がする。」

 

「絶対に帰ってきて下さいね。“あの時”みたいな事はごめんですよ。」

 

「わかってる。行け!」

 

「第2隊、ここから撤退する行くぞ!」

 

「「「了解!」」」

 

アーチャー達はキャスターとともにバーサーカーの元へ向かった。ランサーはアーチャーを見送ると、

 

「アンタレス、グレン右翼、カムイ、クロー左翼、イェーガー、俺と中央。逃げる者は追うな、向かってくる者は容赦するな。」

 

「「「了解!」」」

 

双方、抜剣し向かっていった。

 

戦いは数時間続いた。後半になるとレッドプレイヤー達のほとんどが逃げていった。ランサー達、第1隊はオレンジプレイヤーになっていた。

 

「ランサーさん、いつかはレッドプレイヤーになりますね。俺ら。」

 

「その時は圏外にでもギルドを移転するさ。」

 

戦闘が終了しギルドへと戻っていった。

ただ、このままだと圏内には入れないのでカーソルを緑に戻すクエストを行なってからギルドへと向かった。

 

ギルドへ戻ると全員が待機していた。戦死は4名、事実上、第4隊は壊滅した。

 

ランサーは見える位置に立った。

 

「(まさかこんなに早くこの剣を使うことになるとはな。)仲間が死んだ。《ラフコフ》は俺たちそして、攻略組を狙って攻撃を仕掛けてきた。敵は強大だ。だが、俺たちは負けない。何があってもだ!ギルド《桜花》はこれより殺人ギルド《ラフィン・コフィン》との全面戦争に入る。この戦争はこのゲームクリアにも影響するだろう。だがそれよりも俺たちはあのテロリストどもから国民を守る義務がある。全員、覚悟を決めろ!もし、戦いたくない者はこのギルドを出ていってもらっていい。強制はしない、俺からは以上だ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日 第22層北東エリア

 

大きな湖の前に《桜花》に所属している者達が整列していた。

 

「全員、敬礼!」

 

敬礼をしている者達の前には4本の《剣士の墓標》が建てられていた。それには昨日の戦闘で戦死した者達の名前が刻まれていた。

 

 

 

「現実世界に戻ったらちゃんと墓参りに行くから今はこれで我慢してくれ。」

 

「隊長、KoBから出頭要請が来ていますが?」

 

「わかった。第1隊を連れていく。今日は全員に休暇を与えろ、絶対に迷宮へは行かせるな。」

 

「了解です。」

 

 

 

 



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逃亡者

「第2と第3は今すぐ出ろ!」

 

「他の分隊は即応待機!」

 

 

 

遡ること4時間前

 

ランサーは第1分隊を連れ血盟騎士団《Kinghts of blood》略してKoBの本部がある第55層グランザムに来ていた。

KoBは、《桜花》と同じく中規模ギルドでありながら攻略組の中ではトップクラスの実力を持つ。その中でもユニークスキル《神聖剣》を持つ団長ヒースクリフ、《閃光》の異名を持つ副団長のアスナである。ランサー自身も何度か副団長のアスナと手合わせをしたが勝てたのは一度だけだった。

 

ランサーは歩いていると黒のレザーコートを着ている少年がいた。

 

「久しぶりだな《黒の剣士》。」

 

少年はランサーの方に振り向いた。

 

「ランサー、久しぶり56層の会議以来だな。出頭要請でも来たのか?」

 

「当たりだ。今回ばかりは俺からも報告する事があるからな。」

 

《黒の剣士》の異名を持つプレイヤー、キリト。名前の通り全身黒ずくめで、最前線で戦うソロプレイヤーである。ランサーが初めて出会ったのは第1層ボス攻略時で、それからは何度か迷宮区で出会うことがあった。

 

ランサーはキリトとともにKoBに向かった。

KoBギルドハウスに入ろうとした時、ランサーは第1分隊のメンバーに指示を出した。

 

「イェーガーは俺とともに中へ、他は2人1組となって街を散策、何でもいいから情報を仕入れろ。もしつけられていると分かった時は気付いていない振りをして俺か幹部に報告しろ。」

 

「「「了解。」」」

 

「あと喧嘩だけは起こすなよ。また聖竜連合とやったなんてなったら最悪だからな。」

 

「「「了解。」」」

 

第1分隊はその場で一時解散し、ランサーはキリトとイェーガーを連れギルドハウスに入った。KoB団員に案内され室内に入ると多くの攻略組ギルド、プレイヤーが集まっていた。

その中に見知った、いや《桜花》が監視対象にしているギルドがいた。多くのプレイヤーから軍と呼ばれ第1層はじまりの街に拠点を置くギルド、その名はアインクラッド解放軍《Aincrad Liberation Force》。

第25層まで攻略組として最前線で戦って来たが第25層ボス攻略で偽情報を流され壊滅した。また主力を失ったことにより攻略組から離脱、現在はゲームクリアよりも組織強化を重視している。

イェーガーがランサーに話しかけた。

 

「何故、“軍”がここに。」

 

「一応、呼ばれたんだろう。あれでも1番でかいギルドだからな。ちょっと待て…………。アサシンから連絡が入った。」

 

ランサーはアサシンから送られたメッセージを読み出した。すると、

 

「イェーガー、今すぐ第1分隊を召集しろ。」

 

「どうしました?」

 

「KoBの中に《笑う棺桶》の内通者がいる。」

 

※《笑う棺桶》=ラフコフ

 

「どいつですか?」

 

「まだこの中にはいない。プレイヤー名は———だ。」

 

「了解です。第1隊はギルド前にて即応待機、こちらが動くのと合わせます。」

 

「わかった。相手には気付かれるな。」

 

話をしていると扉が開きKoBの幹部が入ってきた。先頭をで入って来たのは団長のヒースクリフではなく、副長のアスナだった。ランサーはアスナの顔を見た瞬間、顔を歪ませた。

理由は第56層フィールドボス討伐会議にあった。当時、攻略会議を仕切っていたのはアスナの立案は、圏外にあるNPCの村までフィールドボスを誘い出し、ボスがNPCに攻撃している間にこちらが攻撃をするといったものだった。これに意を唱えたのがランサーとキリトである。

 

キリトは、

 

「NPCは単なる石や木のオブジェクトとは違う。」

 

ランサーはキリトと同意見だった。それに付け加えてランサーは、

 

「毎日、俺たちと会話してるんだ。それがクエストだろうがなかろうとそいつらを餌にして俺たちは楽してボスを倒すか。攻略組で最初の汚点だな。」

 

続けて、

 

「フィールドボスがいる地形は全て把握している。布陣しようにも場所は狭く戦いづらい。たが、今後この地形よりも酷い場所で戦闘をしなければいけない時、どうやって戦うきだ。」

 

ランサーは強い口調で聞いた。

 

「それは、………………。」

 

アスナは少し考え黙り込んでしまった。

 

「本当はお前たちの団長がやるべきことなんだがな。今、出ている以外で作戦がないなら、今回は《桜花》だけでやらせてもらう。全員の考えが一致しないなか戦闘を行うのは自殺行為に等しい。いいか、副団長殿?」

 

「いいわ。」

 

「イェーガー、全隊に非常呼集。今から3時間後に攻撃開始。」

 

「了解。」

 

この会議から3時間後、予告通りに《桜花》は攻撃を開始、無事討伐した。フィールドボスがいた地形は狭く、いったいどのように討伐されたかは当事者以外分かっていない。

 

 

 

アスナは今回、召集をかけた理由を話し始めた。だが、理由はその場にいた全員が分かっていた。先日、同時多発的に起こった攻略組に対しての攻撃である。被害は合わせて10名にのぼり、1番被害が大きかったのは《桜花》だった。

ここでアスナはランサーに対して報告を求めた。

 

「《桜花》は先日、第55層にて殺人ギルド《笑う棺桶》による攻撃を受けた。当時、採取活動を行なっていた1パーティー6名の内、4名が死亡。」

 

「ラフコフの人数は?」

 

「約50名程だ。」

 

「「「50名⁉︎」」」

 

その場にいた全員から驚きの声が上がった。騒つき始めた。

 

「その50名はどうしたんですか?」

 

アスナは恐る恐る聞いた。

 

「11名は拘束し黒鉄宮へ、29名を殺害、他は逃亡中。現在、捜索中。」

 

場が静まりかえった。

 

「殺したのか⁉︎」

 

ランサーは声が聞こえた方を見ると声を発していたのは軍の者だった。

 

「そうだ。だったら何だ?」

 

「だったらて……………。人の命を何だと思ってるんだ!相手だって人だ、モンスターじゃないんだぞ!」

 

「なら、あいつらが俺の仲間を殺したのはどうなんだ?」

 

「…………………。」

 

「どうなんだ!」

 

ランサーは声を荒げた。ランサーは軍の者に近付こうとしたがイェーガーに止められた。

場が静まり返っている中、扉が勢いよく開いた。入って来たのはKoB団員だった。この時、ランサーとイェーガーは大きく目を見開いた。

 

「大変です!迷宮区に入っていたパーティーから救援要請です。多数のレッドプレイヤーの襲撃を受けたそうです。」

 

「ストラーフ、それは本当なの⁉︎」

 

アスナが聞き返した。

 

「本当です!」

 

「今すぐ助けに行きます!この中で一緒に来れる方は…………。」

 

アスナが場にいる攻略組に対し応援を求めている時、別の扉から2名のプレイヤーが飛び込んで来て、左手で鞘を持ち、右手で刀の柄を握りいつでも抜刀できる状態でランサーとイェーガーの後ろについた。《桜花》以外の者たちは何が起こっているのか分からず疑問の声を上げていた。その疑問に答える為、ランサーがその団員に向け数歩歩き出し話しかけた。

 

「まさか自分から現れてくれるとはな。」

 

ストラーフは何を言っているのか分からない顔をした。

 

「あの時いた全員の顔は覚えている。逃げた者の内、9名の名前は判明したが残りの1名は分からずじまいだった。そんな時、出頭要請でここに向かっている最中ある情報が入った。血盟騎士団の中にラフコフと通じている者がいると、そこで部下を連れ張らせてみれば思わぬ者が釣れたものだな。」

 

ストラーフは突然、その場で狂った様に笑い出した。全員が有り得ないという顔をした。アスナは信じられないという顔をしストラーフを見た。

 

「あ〜〜あ、どじったな。あの人、こいつらが来ること分かってて退団したんだな。酷い上司だね〜〜。そう思わない皆さん。」

 

ストラーフは顔を歪ませ笑いながら話した。イェーガーはランサーの後ろからストラーフに話しかけた。

 

「今すぐ情報を渡せば黒鉄宮送りで許してやる。もし抜剣などの抵抗を見せた場合、斬る。」

 

「僕が簡単に情報を渡すとても?」

 

ストラーフは装備していた剣を抜いた。

 

「黒鉄宮で暮らすよりだったら殺し合いをした方がマシだね。でも攻略組、相手だと数分もてばいい方かな?まあ、死ぬ前に何人かは道連れ決定だね!」

 

ストラーフは突然、持っていた剣を近くにいたKoB団員に斬り下ろした。ここにいた全員が思ったここは圏内、HPが削れることはないと。だが、《桜花》だけは違っていた。

 

ランサーは直ぐに抜刀しストラーフの腕を切り落とした。

 

全員が驚愕の表情を浮かべた。

圏内で絶対に減る筈のないHPが半分まで落ちていた。ストラーフは絶叫した。自分の腕が切り落とされ、それに伴う痛みが発生していたからだ。

ペインアブソーバ(痛覚吸収システム)はデスゲームが始まる前までは1番安全で痛くないmaxのレベル10になっていたがゲームが始まった瞬間、確定的な数字は分かっていないものの予想ではレベル5からレベル3まで落ちている。これほどまでにレベルが下がっていると現実世界にある自分の身体には影響がないもののゲーム世界での痛みは本物と近くなる。

 

イェーガーの後ろにいたグレンとカムイは直ぐにストラーフの元へ行き拘束した。

 

「ストラーフ、どうする?今すぐ回復結晶を使えば命は助かるが。」

 

ランサーが問いかけた。そこにKoBの団員が割って入った。

 

「これは拷問行為だぞ!非人道的だ!」

 

その声と同時に周りからも多数の非難の声がランサーに向けられたがランサーは無視し続けた。

 

「現在の構成人数、アジトの場所、今計画されている襲撃の日時、これを話してくれればヒールを使ってやる。どうする?」

 

「……………現在は………500人。アジト…は日によって違うからわからない……。襲撃は今日…………。」

 

「どこを襲撃する?」

 

「……《桜花》…のアサシンと………その部下です。」

 

「分かった情報提供ありがとう。」

 

その瞬間、ランサーはストラーフの顔を殴り気絶させた後、ヒールを使った。

 

「イェーガー、今すぐ第2と第3をアサシンと第6隊員の元へと向かわせろ。敵は例のスキルを既に入手していると全てのメンバーに通達を。第4を今すぐKoB前に向かわせろ。」

 

「既に到着しています。」

 

「なら受け渡しをするぞ。カムイ、グレンそいつを運び出せ。」

 

「「了解。」」

 

運びだそうとした時、アスナが叫んだ。

 

「待ちなさい!ストラーフをどうするき⁉︎」

 

「黒鉄宮に入れるだけだ。」

 

「そんな権限、貴方には無いわ。その権限を持つのはこのギルドの団長のみ!今すぐストラーフを降ろしなさい!」

 

「ランサー、アスナの言う通りだ。降ろすんだ。」

 

後ろにいたキリトがいつの間にかアスナの右側に来ていた。キリトは自身の右手を柄にかけていた。アスナは装備していたレイピアを抜きランサーに向けていた。

ランサーは周りを見た。怒りや微かな殺気を感じた。

 

「これではどっちが悪者か分からないな。グレン、カムイそいつを降ろしてやれ。イェーガー、悪いが第1を引き連れ、第4と合流しすぐにアサシンと第6がいる方へ向かえ。すぐに追いつく。」

 

「了解です。カムイ、グレン行くぞ!」

 

「「了解。」」

 

イェーガーは部屋の中にいたグレンとカムイを連れ退室した。ランサーは部屋に残った。

 

「血盟騎士団副団長《閃光》のアスナ、迷いがあるなら剣を抜くな。そうじゃないと死ぬぞ。」

 

続けて、

 

「キリト、お前もだ。ストラーフを降ろした瞬間、気を緩め過ぎだ。」

 

アスナは我に返り団員に声をかけストラーフを別室へと連れて行かせた。ランサーは、

 

「お前達に言っとく。人を斬る覚悟が無ければ対人戦闘を行うな。戦場での迷いは自分の死に直結する。」

 

そう言うとランサーは部屋を出てアサシンがいる所へと向かった。アサシンは第40層にてラフコフの調査を行なっている。ランサーは転移門を使い第40層に着くとラフコフが待ち構えていた。イェーガー達は既に迷宮区へと入っていた為、ランサーはラフコフの狙いに気付いた。

 

「俺も舐められたもんだな。たった数十人で俺を殺そうなどと。」

 

ランサーは右手で柄を握った瞬間、1番遠くにいたラフコフメンバーに向かって《紫電》を発動し首から上を切り落とした。続けて近くにいた者を《絶空》にて斬り伏せ、近づいてきた敵の剣をはらい上げ胸に突き刺し、敵を盾がわりにし今度は3人に向かって投げナイフを投げた。ここまでの時間はたった1分だった。

それでもラフコフはランサーに向かって攻撃を仕掛けた。

 

 

 

 

 

この戦闘の後、ランサーはアサシンと第1分隊とも合流しギルドハウスに戻った。

この戦闘での被害はゼロ。対してラフコフ側は37名が死亡した。

 



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訓練

 

「全員集まったな。訓練内容はソードスキル無しでの対人戦闘、これからの戦いは対人戦闘が主になっていく。ソードスキルを使用すると数秒間だけだが硬直が発生する。もし俺が敵だったらその隙を狙い確実に仕留める。その隙を防ぐため今回は全員に集まってもらった。」

 

今、《桜花》が集まっているのはギルドハウス内にある修練所である。この修練場は100人が一斉に模擬戦を出来るほど広い。普段は基礎体力向上やソードスキルによる《剣技連携》が殆どである。

 

「今回教えるのは、剣道にある基本の技だ。これから教える技を戦闘の際に応用してもらいたい。技は、払い技、返し技、すり上げ技、鍔迫り合い、抜き胴だ。だいたいの技は戦闘中に行っていると思うが今回はより無駄が無い動きを教える。」

 

ランサーが訓練内容を話すと後ろに立っていたアーチャーが前に出て、

 

「訓練をする前に剣道有段者は前の方に集合。他は現在、装備している木刀に自分が普段装備している剣の情報を入力し隊ごとに待機。質問が無ければ休憩したのち訓練を始めます。」

 

休憩に入るとアーチャーの周りには有段者が集まり、訓練の再確認をし誰がどこの担当をするかの振り分けを行なっていた。

 

 

休憩が終わり、まず始めにランサーとアーチャーで模擬戦を行う事になった。アーチャーが仕掛け側で刀単発剣技《絶空》を受けて側のランサーに縦振りで放ち、ランサーはそれを刀身で受け流し一気に前に出て、刀の切先をアーチャーの首元に向けた。

周りからは驚きの声が上がった。

ランサーは、

 

「まあ、このような感じでやってもらう。わからないことや質問があったら直ぐに指導官に聞け。絶対にわからないままにするな。」

 

「「「了解。」」」

 

ランサーは後ろに下がり後のことはアーチャーに引き継いだ。修練場を後にしようとした時、ライダーから呼び止められた。

 

「ランサー、客だぜ。」

 

「誰だ?」

 

「《黒の剣士》と《閃光》だ。待合室に案内しといた。」

 

「わかった。」

 

ランサーは待合室に向かった。

 

 

 

待合室の扉を開けると椅子に腰をかけたキリトとアスナがいた。

 

「こちらを訪ねて来るとは珍しいな、何の用だ?」

 

アスナが、

 

「謝罪と抗議に来ました。」

 

「抗議ねえ。」

 

「こちらの不手際で団員の中に“ラフコフ”のメンバーが入り情報が漏れていたことがわかりました。この度は申し訳ございませんでした。」

 

「前置きはいいから本題に入ろう。1番は謝罪ではなく抗議だろう。ここに来た理由は。」

 

「では、何故団員の中に“ラフコフ”のメンバーがいるとわかっていながら黙っていたのですか?連絡を貰えればこちらで対処することも可能でした。」

 

「その連絡をしたら何処からか情報が漏れる可能性がある。もしかしたら俺たちの中にも血盟騎士団の幹部の中にもラフコフの内通者がいるかもしれない。それを防ぐ為に敢えて連絡を入れてないだけだ。」

 

ランサーは続けて、

 

「先日の件に参加していたメンバーも聞かされたのは直前だ。それなのに情報が漏れた。どうしてだと思う?」

 

アスナは少し考えて話し始めた。

 

「そちらにも内通者がいるということですか?」

 

「そうだ。こちらも調査を始めているが内通者を突き止めるのは、ほぼ困難だ。誰かを疑い始めたら、きりが無いからな。」

 

「では放置すると?」

 

「そこまでは言ってない。その時が来たら捕まえるだけだ。」

 

ここで今まで話しを聞いていたキリトが話し始めた。

 

「ランサー、あの会議で行なった尋問の事何だが一部の攻略組から「《桜花》も“ラフコフ”の仲間ではないのか?」ていう声が上がり始めている。」

 

「あれは反省している。俺もやり過ぎた、すまない。」

 

「それと圏内での………。」

 

「HP減少か?」

 

キリトは頷いた。

 

「いつかは知れ渡る事だから先に教えておくが、この情報は《桜花》において第一級機密事項にあたる。お前達も時が来るまでは黙っててくれ。」

 

ランサーは前置きをして話し始めた。

 

「あれは第1クォーターポイント、第25層の主街区から北東に8キロの地点にいるあるNPC剣士からのクエストで取得可能なスキルだ。取得すれば圏内だろうと人を殺めることが出来る。俺たちが最初に見つけたのは第70層が攻略されてから1ヶ月後の事だ。うちの第3分隊がある鉱石を探しに第25層に向かい捜索中に偶然、森の中にただひたすら剣を振るうNPCがいた。分隊長が話し掛けると突然そのNPCがその分隊と同じ人数まで分裂し切り掛かってきた。直ぐに応戦し幸い死亡者は出なかったもののその時の分隊長の話しだと自分のステータス値をほぼ倍にしたやつと戦っているみたいだったと聞いている。実際の所、その通りだったがな。」

 

「んでその時、取得したのがそのスキルだったと。」

 

「そうだ。スキル名は“覚悟”。俺はそのNPCと対峙した時、“死ぬ覚悟がない者は来るな。誰かを護る為に殺す覚悟が無い者は今すぐ立ち去れ。”と言われた気がした。」

 

「ラフコフもそのスキルを持っているのか?」

 

「情報では名前は違うが内容は同じのを取得している。ラフコフのメンバー全員がな。まだ表だった行動はしてないが警戒は必要だ。」

 

「ランサー、俺をその場所まで案内してもらえないか?」

 

「駄目だ。相手はモンスターじゃない自分自身だ。対人戦闘を殆どやった事がないお前が行っても死ぬだけだ。それに覚悟はあるのか?もしもの為に取得しておくのはいいが覚悟が無いやつが持っていても無意味だ。」

 

「ならラフコフが襲撃して来たらどうすればいいんだ⁉︎」

 

「何も取るなとは言ってない。覚悟を決めろと言ってるんだ。」

 

アスナが何とかキリトを落ち着かせようとした時、部屋にあった時計から11時半を告げる音が鳴った。

 

「もうこんな時間か、お前ら飯まだだろう食ってけ。」

 

アスナが、

 

「良いんですか?」

 

「ああ。今から作るんで少し時間がかかるがな。」

 

「えっ⁉︎もしかして全員分作るんですか?」

 

「ああ。いつもは外食なんだが今日は全員、ギルドにいるからな。」

 

「私が作っても良いですか?」

 

「いいよ。食材は地下に保管されているから好きなだけ使ってくれ」

 

「キリトくんは食材運びお願いね。」

 

「え?何回往復しないといけ……………。」

 

「キリトくんお願いね。」

 

キリトは苦い顔をして急いで首を縦に振った。そして一部始終を見ていたランサーは、アスナから出ていた殺気を感じ立っていた。

この時、ランサーの顔は少し引きつっていた。

 

保管所の扉を開けると多くの食材が所狭しに並んでいた。

キリトは肉が保管されている方へと足を進め、ある食材を発見した時、

 

「ランサー⁉︎これ、どうした?」

 

「何々?」

 

アスナがキリトの側に行き食材名を確認した瞬間、驚愕の声を上げた。

 

「ちょっ!ランサー、これどうしたの?それにこの数!」

 

「ああ。ラグー・ラピッドかこの前、探索に出た時に群れに遭遇してな狩ったまではよかったんだが調理しようにも熟練度が足りなくて出来なかったんだ。売ろうにも知り合いはいないし。」

 

「使っても?」

 

「構わない。存分に使ってくれ。」

 

「なら決まりね。私とランサーで調理するから。キリトくんはこれとこれ、急いで取ってきてね。出来るだけ多く、お願いね。」

 

「アーチャー、隊を連れてキリトの手伝いを頼む。」

 

キリトは心の中で思った。

 

 

 

 

 

 

40分後

 

ギルドハウス内にある食堂に全員が集まり食事を始めた。メインとして出されたのは“ラグー・ラピッド”のシチューだ。《閃光》のアスナが作った料理という事もあって飛ぶように売れたが、皆が1番美味いと言ったのは魚と一緒に出てきた“醤油”だった。

日本人には、これだと言わんばかりの調味料の一つだ。すぐにランサーはアスナのところに行き売ってくれと頼んだ。アスナからの返事は条件付きでの了承だった。その条件は材料との交換だった。アスナ自身も迷宮区攻略やギルドの仕事で忙しいからである。

ランサーもそれに同意した。食堂では昼食から一転して宴に変わり、どんちゃん騒ぎになっていた。

ランサーは、

 

「午後からも訓練があるから遅れずにな。」

 

そう言い残し1人外に向かった。

 

外に出たランサーは懐から煙草を取り出し口にくわえようとした時、後ろから人の気配を感じ咄嗟に構えたが後ろにいたのはキリトだった。

 

「隠蔽スキル、それなりに高いと思ったんだけどな。」

 

「用件は?」

 

「ひとつ手合わせお願い出来ないか。もし、ランサーに勝ったら例のスキルを取りに行っても構わないんだろう。」

 

「理にかなってるな。だが、ただ俺に勝てたからといってその時もそうであるとは限らない。一戦だけ付き合ってやる。」

 

キリトはランサーにデュエルを申し込んだ。モードは《初撃決着》、相手のHPを一撃でイエローゾーンまで落とす事が出来たら勝利することが出来るモードである。

ランサーはキリトから5mの位置で刀を抜き上段の構えをとった。キリトも剣を構え、デュエルスタートのカウントダウンが始まる。

 

その場に静寂が訪れる。

 

カウントダウンがゼロになった瞬間、キリトは大きく前に出てランサーに対し上段突進技《ソニックリープ》で攻撃を開始した。ランサーの方は剣にライトエフェクトがなっていたが上段の構えで動かずにいた。キリトの切っ先がランサーから1mの付近に到達した時、ランサーが動いた。

 

構えていた刀を一気に振り下し、キリトの左半身を切り裂いた。

 

キリトは何が起こったのか分からなかった。気づいたら左半身を切り裂かれていたからだ。キリトのHPは3分の1まで減少し出血ダメージのマークが出ていた。

ランサーは刀を鞘に収めヒールをキリトに投げつけた。

 

「回復しろ。」

 

キリトは回復結晶を手に取りやっとのおもいで回復した。

 

「わかったか、これが対人戦と対モンスター戦との違いだ。」

 

ランサーは少しおいて、

 

「これでもまだ、あのスキルが欲しいと言うならこっちで稽古をつけてやる。命の保証は出来ないがな。」

 

ランサーはその場を去ろうとした時、キリトが声を上げた。

 

「やる。このままで終われるか。」

 

ランサーはキリトの目を見て、

 

「時間が惜しい今からやるぞ。アサシンいるか?」

 

「はい。」

 

「第3、4隊に召集命令。その他の隊も待機。即応は………。」

 

「即応の10名のうち2名はこれより護衛任務の為いません。第6隊も情報収集任務に就く為、無理です。」

 

「即応はそのまま待機。」

 

「場所は修練場で?」

 

「そうだ。アサシン、キリトを案内してくれ。」

 

「わかりました。」

 

アサシンはキリトを連れ修練場へと向かった。

ランサーも後を追った。

 

 

 

ランサーは幹部を全員集め話しをしていた。

 

「最初は第4隊から頼む。次から第3、5、2、1で行く。」

 

「わかりました。これより第4隊は準備に入ります。」

 

「頼む。他の隊も準備してくれ。」

 

「「「了解。」」」

 

ランサーはキリトの方へと向かった。

キリトはアスナと話しをしていた。

 

「キリト、準備は?」

 

「大丈夫だ。ただ…………。」

 

「ただ?」

 

「私も参加させて下さい。」

 

アスナが会話の中に入ってきた。

ランサーは理由を聞こうとしたがアスナの目を見た瞬間、動きが止まり目を瞑った。そして目を開き、

 

「わかった。ただし手加減はしない。」

 

ランサーはを2人を見ながら、

 

「勝ち抜き戦だ。第1隊から第5隊までの全隊員と戦ってもらう。最後に俺を倒して稽古は終了。モードは《初撃決着》、一つの隊毎に5分の休憩を取る。その間に回復を行なってくれ。質問は?」

 

アスナが手を上げた。

 

「休憩に入る前にレッドゾーンになったら……。」

 

ランサーはアスナの言葉を遮り、

 

「続行だ。レッドゾーンは戦闘になればザラだ。特に新兵はな。言い忘れていた事だが、始める前に遺言を残してもらう。」

 

アスナは唖然としていた。

 

「辞めるなら今だ。」

 

「いえ、やります。」

 

「なら最初はキリトからだ。キリトが勝ったらアスナがキリトの相手と戦ってくれ。開始は5分後、何か必要な物があったら、そこにいる通信士に言ってくれ直ぐに用意する。」

 

ランサーはキャスターの方へと歩いていき何かを話した後、即応隊の元へと行った。

 

「レオン、何かあれば直ぐに連絡をくれ。念のためアサシン達第6隊も周辺で活動している。」

 

「わかりました。護衛対象についたら一度連絡を入れます。では即応隊所属レオン並びにアルトこれより護衛任務に着きます。」

 

「よろしく頼む。」

 

 

 

 

 

 

 

 

5分後、

 

修練場の中心にはキリトと第4隊所属オルドルが立っていた。双方、抜刀しいつでも戦える状態だった。

カウントダウンが開始され、その場の空気が変わった。修練場にいた全員が2人を見ていた。カウントダウンがゼロになりデュエルが開始された。

 

 

 

 

 

それから数時間後

 

現在、キリトは第5隊まで行き、アスナはキリトを追い越し第2隊隊長アーチャーと殺り合っていた。

 

「アーチャーも苦戦しているようですね。」

 

ランサーに対しライダーが話し掛けてきた。

 

「そうだな。予想以上の速さだ。感想は?」

 

「剣が全く見えません。それに感じとしてはあの人に似ています。だからあの時、理由を聞かず許可を出したんでしょう?」

 

「そうだ。」

 

「化けますよ。あの娘は。」

 

「なあライダー、もしあいつらが俺に勝ったらあの称号与えようと思うんだがどうだ?」

 

「実戦を経験し生き残ったら考えます。」

 

「そうだな。」

 

ランサーとライダーが話しをしているとアスナとアーチャーの戦闘が終わった。勝ったのはアスナだった。アスナの表情からは疲労が見てとれた。キリトの方はこれからバーサーカーと戦うところで顔色を全く変えず戦闘を行なっていた。それを見ていたランサーは何かあると思い警戒した。

 

 

 

 

アスナの休憩が終わりランサー率いる第1隊との戦闘が始まり、キリトはバーサーカーとのデュエルが終わり休憩をしていた。そこにアーチャーが近づいて行った。

 

「キリト、第2隊の奴とのデュエルは免除するから俺とやってしまおうぜ。」

 

キリトは驚いた顔をしていた。アーチャーは続けて、

 

「俺の“二刀流”とお前の“二刀流”どちらが強いか?」

 

「何でその事を?」

 

「優秀な情報屋から仕入れたんだ。遠慮はいらない。ぶっつけ本番で使うよりだったら練習しといた方がいいんじゃないか?」

 

「わかりました。周りの口止めはお願いします。」

 

「わかってる。」

 

アーチャーはキリトから少し離れ、装備していた刀を抜いた。キリトも2本目の剣を装備し抜剣し数秒後、デュエルが始まった。

 

キリトとアーチャーの戦闘はどのデュエルよりも激しかった。剣と剣がぶつかるたびに火花が散り全員がそのデュエルを観ていた。そんな中、ランサーはアスナの戦闘を観ていた。

 

「(抜刀術を使っても厳しいか、最初の一撃で決めなければ勝てないな。)」

 

ランサーは少し考えた後、キリトを見た。

 

「(隠していたのは二刀流か、アーチャーがどれだけついていけるか見ものだな。)」

 

ランサーは装備を変えようと装備画面を開いた時、アスナとのデュエルを終えたアンタレスが声を掛けてきた。

 

「ランサーさん、次お願いします。」

 

「もう3人は?」

 

「グレンとカムイは注文していた装備品の受領へ、イェーガーさんは現実世界での親の命日だとかで先日作った墓へ墓参りに行きました。」

 

「ああ、そうだったな。完全に忘れてた。アーチャーとキリトのデュエルが終わったらここにいる全員に2人のスキルについての緘口令を。」

 

「了解しました。」

 

ランサーはアスナの元へ向かった。アスナは持っていたレイピアを地面に突き刺し、杖代わりにしてランサーが来るのを待っていた。

 

「さあ、始めようか。」

 

アスナは無言でレイピアを構えた。ランサーは柄に手を添え、いつでも抜ける状態に構えた。

 

無言のまま時が流れる。

 

観ている側からは数秒だが、対峙している2人の感覚では物凄い時間が経っていた。約20秒による沈黙はランサーの攻撃で破られた。ランサーは抜刀術最上位単発剣技《紫電》をアスナの首元に向け放ち、アスナは右斜め前方向に身体を動かしランサーに向け細剣単発剣技《リニアー》を放った。

2人は最初に立っていた位置が逆になり、残心を取っていた。するとランサーが持っていた刀にひびが入り真っ二つに折れ、全損状態になり光のエフェクトとなり消えた。ランサーは後ろに振り返るとアスナを見た。アスナは今まで張っていた緊張の糸が切れ倒れそうになったが間一髪でランサーが受け止めた。

ランサーは小さな声で、

 

「よくやった。」

 

少し置いて、

 

「何ぼっさとしている⁉︎担架だ!」

 

我に返ったキャスターが部下を引き連れランサーの元へ向かった。

 

「相当疲れたんでしょう気絶してるだけです。来客用の宿舎に運びます。」

 

「頼む。」

 

キャスターは部下と協力してアスナを担架に乗せ宿舎に運んでいった。

ランサーは今も続いているキリトとアーチャーのデュエルに眼を向けた。どちらとも徐々にではあるがHPが減りはじめていた。制限時間は残り5分をきっていた。ランサーはもっと近くで見ようと場所を移動しようとした時、左後ろにライダーが立っていた。

 

「どうした?」

 

「護衛部隊より連絡です。無事に目的地に到着との事です。」

 

「そうか。アサシンからは?」

 

「いえ、何も。」

 

「わかった。」

 

 

 

 

 

 

残り数十秒になっても勝負が決まらなかった。後は、どちらかのHPが多いほうが勝ちとなる。ランサーはこれほどまでに勝負が決まらないとは思っても見なかった。

 

「(さあ、どうなるかな。)」

 

カウントがゼロになりデュエルを終了する音が鳴った。勝ったのは僅かな差でキリトだった。ランサーはアーチャーの元へと行き、

 

「どうだった?」

 

「強いですね。背筋がヒヤリとする時が多々ありました。《閃光》もそうでしたけど、こいつも中々やりますね。」

 

「わかった、ゆっくり休め。キリト、休憩が終わったら第1隊とやってもらう。色々あって2人しかいないから同時にやってもらうがいいか?」

 

「構わない。さっさとやろうぜ。」

 

「その意気だ。アンタレス、クロー準備しろ。」

 

「「了解。」」

 

デュエルのカウントダウンが始まる。

キリトは二刀流から片手剣に戻していた。片手剣の良いところは片方の手に盾を持ってる事、そうすれば1対多数の戦いも出来るがキリトは違う。極限まで身軽にし瞬発力を最高値まで上げたその姿勢はソロとして導き出した答えなのだろう。

だが、ランサーの見解は違った。アーチャーからは相手が2人以上なら二刀流の方が戦いやすいと聞いていたからだ。乱戦になれば、ほぼ全方向から剣が向かってくる。その多数の剣をさばくには明らかに一本では手が足りないからだ。2本ならば一本で防御をしもう1本で攻撃でき、また2本同時攻撃する事も可能だからだ。これらを踏まえれば今回のデュエルは二刀流を使用した方が断然、戦いやすい。

 

デュエル開始のカウントダウンが開始され、ランサーはまた時間がかかるだろうと思い休もうとしたがその考えは直ぐに打ち消された。カウントがゼロになった瞬間、キリトは現在いた位置からアンタレス、クローの後方3メートルの位置に動いていた。アンタレスとクローのHPは半分以下まで減少し勝負が着いた。

 

ランサーは今のキリトの動きを見てある答えを出した。形や仕様が異なる剣で“二刀流”というスキルが存在するようにランサーが得意とする剣技《紫電》が片手剣でも似たような剣技としてあるということ。

ランサーはその真意を確かめるべく新たに装備した刀の鞘に手を掛け、キリトにデュエルを申し込んだ。キリトはそれ承諾しランサーに体を向け剣を構えた。

カウントダウンがゼロになった瞬間、ランサーとキリトは同時に動き剣を振った。甲高い音が修練場に響き渡り、音源では火花が散った。周りにいる者達は何が起こったのかわからなかった。唯一、わかっていたのはアーチャーだけだった。だがアーチャー自身もこの速さには驚いていた。

 

「(俺の時とは比べものにならない速さだ。もしかしたらランサーの《紫電》よりも早いかもしれない。)」

 

ランサーとキリトの長い残心が終わり、互いに向き直った。ランサーは刀を上段に構え、キリトが仕掛けてくるのを待った。キリトはそれに応じるかのように剣を構え、仕掛けた。ランサーはキリトと初めてやったデュエルで使用した剣技、刀上位単発剣技《鬼斬》をキリトに向けて放ったが0.1秒遅くキリトの斬撃がランサーの身体を貫いた。

周囲から驚きの声が上がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これで取りに行っても構わないだろう、ランサー?」

 

キリトは壁にもたれかかっているランサーに話し掛けた。

 

「ああ、構わない。ひとつ教えてくれ最初に使用した剣技あれは何だ?」

 

「使うのは始めてなんだが、片手剣単発重突進剣技《シデン》だったかな。さっきデュエルが終わって確認してみたら解放されてたんだ。」

 

ランサーは口元に笑みを浮かべ、

 

「じゃあ、俺が使った剣技を教えとく。最初に使ったのは抜刀術最上位単発剣技《紫電》、最後に使ったのが刀上位単発剣技《鬼斬》だ。」

 

キリトは驚いた顔をしていた。何故なら二刀流の他に剣技もあったからだ。

 

「俺も聞いて、びっくりだよ。」

 

ランサーが答えた。続けて、

 

「キリト、用心しろ。最悪の場合、ラフコフにもその剣技を取得している者がいるかも…………じゃないな。いるだな。キリト程の瞬発力は無いかもしれないが気をつけろよ。」

 

「わかった。そういえばアスナは?」

 

「流石に疲れたみたいでな別の部屋で寝ている。お前も泊まってけ、帰路に襲われたらひとたまりもないぞ。」

 

「ならお言葉に甘えて。」

 

キリトはキャスターに連れられ部屋に案内されていった。

ランサーも自室に戻ろうとした時、後ろから声をかけられた。振り返るとアーチャーとライダー、バーサーカーが立っていた。

アーチャーが、

 

「最後の最後、手抜きましたね?」

 

続けてライダーが、

 

「他の奴らは気が付いてなかったみたいですけど、補佐クラスは全員気付いてましたよ。」

 

ランサーが溜息をついて、

 

「バレたか。」

 

「あんな遅い振り久しぶりに見ましたよ。」

 

「でどうだったんですか、太刀筋は?」

 

バーサーカーが聞いた。

 

「及第点てところかな。もっと実戦を積めばここにいる誰よりも良くなる。」

 

「次が楽しみですね。」

 

「ああ。」

 

 



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異変

キリトとアスナが模擬戦を行なってから一週間が経ったある日の朝、ギルドハウス内にある食堂はいつも通り賑わっていた。

そんな中、通信室にランサーとアーチャー、即応のツヴァイ、第1分隊担当通信員アインスがいた。そして通信室の中は空気が張りつめていた。

理由は護衛任務を行っていた2名からの定時報告がある時間から途絶えていたからだ。通信が途絶えたのは4時間前の午前3時。当時、担当になっていた通信員は夜中であり忘れてしまっているのだと思いランサー達幹部クラスには報告を入れなかった。事態が動いたのはその1時間後、1時間経ってもなお連絡が来ないことから何んらかの事態が発生したと考え、今に至っている。

 

状況確認の為、アサシンの隊から2名が護衛目標が滞在している地点へと向かっていた。

何故、2名だけしか動いていないかというと現在の状況が確認されない限り、変に多数の人員を割くと緊急の事態に対応出来なくなる可能性があるからだ。また少数の人数で動き《笑う棺桶》の待ち伏せや挟撃に合う可能性もあるからだ。

 

 

同時刻

 

第6隊所属、ゴーストとケイオスは護衛目標がいると思われる第1層“はじまりの街”に来ていた。

 

「現在地はここ。目標まで残り2ブロックです。」

 

ケイオスはゴーストに現在地を報告したがゴーストは何か落ち着きがなかった。

 

「静か過ぎる。」

 

「えっ⁉︎」

 

「いつもなら軍の奴らが数人単位で歩いてる筈なんだが人っ子一人いない。しかもNPCもだ。どうなってるんだ?」

 

ゴーストの言う通り、露店には必ず1人のNPCが必ずいる筈だがそのNPCすらもいなかった。

ゴーストはケイオスに向けて、

 

「現状をギルドに報告。」

 

「はい。」

 

ケイオスの報告が終わると目標地点へと移動を開始した。

 

 

 

近づくにつれゴーストとケイオスは多くの人の気配を感じ始めた。建物の影に隠れながら目標地点を覗きこもうとした時、怒鳴り声が聞こえてきた。

 

「シスターさんよ!いい加減出て来てくれねえかな⁉︎」

 

怒鳴り声を上げてた男は扉を力強く蹴っていた。その周りにも多くの人がいた。

 

「何でこんなところに軍が?」

 

「ケイオス、建物に隠れながら見やすい位置に移動するぞ。」

 

「了解。」

 

移動すると破城槌を持った軍の者たちが教会の扉に体当たりをしている最中だった。見た限り軍の者たちは30人程で全員が教会の正面にいた。

ゴーストは何処からか教会に侵入出来るところがないかと探すと裏口を発見した。

ゴーストは裏口に近づき取手を掴み引いてみると扉が開いた。すぐにケイオスを呼び中に入った。

 

「ケイオス、ドアを見張れ。軍の者が近づいて来たら鍵を閉めろ。俺はもう少し奥へ行ってみる。」

 

「了解。報告は?」

 

「頼む。」

 

ゴーストは奥へと進んだ。

ゴーストは聞き耳スキルを使い耳を澄ますと多数の呻き声と子供のすすり泣く声が聞こえてきた。公会堂がある部屋の扉を少し開け中を覗くと壁際にプレイヤーが仰向けの状態で寝ていた。子供は10〜17人ほど部屋の端でかたまって座っていた。奥にある扉からは何かが、ぶつかる大きな音がなっていた。先程、軍が使っていた破城槌が扉にぶつかっている音だった。

ゴーストはケイオスの元へと戻ろうと思ったら矢先、聞いたことがある声がしてきた。

 

「もうどのくらい持ち堪えられますか?」

 

「もって4時間です。ただ今のペースならです。」

 

レオンの声だった。

ゴーストは回りに脅威がないか確認しゆっくりと扉を開けた。そして、レオンの元へ近づいていった。するともう数メートルのところでレオンが気付き装備していた刀を抜きゴーストへ向けた。

 

「レオン、俺だ。第6隊所属のゴーストだ。」

 

「お前か!なら報告が届いてたんだな。他は何処に?」

 

「来たのは俺とケイオスだけだ。すまないがレオンからの報告は届いていない。これは一体、どういう状況だ?」

 

レオンは驚いた顔をし、黙ってしまったが少しずつ話し始めた。

 

 

 

異変が起こったのは最後の通信から約30分後。アルトとともに交代で警備にあたっていたところ街の中から多数の悲鳴が聞こえだした。すぐに街の状況を確認しようと教会を出ようとした時、遠くから約10人程の軍の者たちが歩いてきた。軍の者たちは抜刀した状態で教会に近付いてきた為、レオンは警告を促した。

 

「軍の者たちに通告する。こちらはギルド《桜花》即応隊所属レオンだ。直ぐにこの場から去ってもらいたい。」

 

すると先頭に立っていた者が

 

「私はアインクラッド解放軍、ブランケ大尉だ。私たちはその協会に住んでいるプレイヤー《サーシャ》に用がある。今すぐに引き渡してもらいたい。」

 

「それは出来ない。そのプレイヤーは我々の護衛対象だ。」

 

「何故だ⁉︎その者には《笑う棺桶》との繋がりがあるとして、先日の攻略会議で拘束すると決まったばかりではないか?」

 

「攻略会議だと?会議があったとは聞いていない。」

 

「埒が開かん。そいつらともども拘束せよ!」

 

その言葉を放った瞬間、レオンとアルトは抜刀した。アルトはいつでもソードスキルを発動出来る状態で構えた。

 

「もう一度、勧告する。今すぐこの場から去れ!さもなくば斬る!」

 

ブランケはレオンの覇気に怯み後退りを始めた。レオンはこのまま退いてくれることを願ったが、それは一瞬にして崩された。

ブランケが3歩後ろに下がった時、突然、ブランケの後ろから剣が突き刺された。そして後ろにいた男が笑い声が上げ、周りにいた男達からも上がった。

レオンは突然の事に驚いていたが直ぐに正気を取り戻したがアルトは硬直したままだった。

 

「アルト、しっかりしろ!警戒を怠るな!」

 

「は、はい!」

 

笑い声が止みブランケの後ろにいた男が剣を突き刺したままブランケに向かって話し始めた。

 

「ブランケさんよ、あんた鈍いんだよ。」

 

「ケイ……ン、何の……つもりだ……?」

 

「別にただ、あんたにはここで死んでもらうだけだ。そうすればあの人のシナリオどうりだ。そうだまた質問されるの面倒くさいから見せてしまおう!」

 

ケインは腕に着けている鎧を外しブランケに見せた。その腕に描かれていたのは殺人ギルド《笑う棺桶》のエンブレムだった。このことにレオンとアルトも衝撃を受けた。

 

「何でこんなところにラフコフが⁉︎」

 

レオンが言うとケインは、

 

「答える義理なんてないぜ。どうせアンタもすぐに死ぬんだからな。」

 

レオンはケインの殺気を感じとり、すぐにアルトに退がるよう指示するがアルトは固まり恐怖に怯えていた。

 

「アルト!下がれ!」

 

レオンはもう一度促すとアルトはやっと我に返り協会の方へ走っていった。レオンも刀を構えながら少しずつ教会の方へ退き始めたがケインと周りにいた者はそれを見逃さなかった。

 

「おいおい退がるのかよ?」

 

「ああ、多勢に無勢だからな。こういう時は逃げるが勝ちだよ。」

 

レオンが答えた。

 

「まあ、アンタと殺ったらこっちもただじゃ済まなそうだからね。代わりと言っちゃあなんだけどあいつの命、貰うわ。」

 

ケインが不適な笑みを浮かべ言い放った。

レオンはすぐに振り向いたが間に合わなかった。

ケイン達の後ろから多数の矢が飛んでいきアルトに命中した。レオンはすぐにアルトの元へ駆け寄った。

 

「アルト!おい、返事しろ⁉︎」

 

「レオンさん、すみませんいつも足手纏いで。」

 

「今、解毒結晶を使う。」

 

アルトのHPゲージは矢によるダメージと矢に付加させられていた“毒”により減少し続けていた。

レオンは解毒結晶を使ったが解毒されなかった。

 

「無駄無駄。その結晶じゃ無理だよ。」

 

ケインがレオンに近づきながら話し始めた。

 

「その毒はなあ。今まで周知されている“毒”じゃないんだよ。今までのやつよりも数倍のダメージ量を与える。しかも解毒結晶の材料は俺たちのアジトでしかとれない。もうどういう意味だか分かるよな?」

 

ケインは装備していた剣を抜剣し、レオンの目の前まで来ていた。

 

「黙れ………。」

 

「えぇ?何だって?」

 

「黙れと言っている!」

 

レオンは抜刀術単発剣技《疾風》を発動しケインの首を飛ばした。

 

「アルトすまない。俺がもっと早く命令を出していればこんな事には。」

 

「今まで迷惑をかけていた付けが回ったんです。一つお願いしていいですか?」

 

「ああ。」

 

「家内にすまないと伝えて下さい。」

 

「わかった。必ず伝える。」

 

アルトのHPが0になると身体が発光し大小様々な光のエフェクトとなり消えていった。

レオンはその場に座り込んだまま目を閉じ何かを呟いた。そしてゆっくりと立ち上がり《笑う棺桶》の方に振り向いた。

 

「1人も逃がさない。」

 

レオンはそういうと抜刀術最上位単発剣技《紫電》を発動し正面にいた2人を斬り、《幻月》、《浮舟》、《絶空》の順に次々と斬り伏せていった。最後に《五月雨》を発動し残った敵を殺害した。

レオンは抜刀したまま立ち尽くした。

そしてレオンは倒れているブランケを起こし教会に連れていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今に至る。

 

「そのブランケてのはどこにいる?」

 

ゴーストが聞いた。

 

「あそこに寝ているのだ。麻痺系の毒をやられたようだ。」

 

「解毒結晶は?」

 

レオンは首を横に振った。

 

「他の人達は?」

 

「はじまりの街に留まっていたプレイヤー達だ。俺が戦っている姿を見て助けを求めてきたんだがな。他にも《笑う棺桶》の奴らがいたみたいでな矢による範囲攻撃を食らってなこの様だ。」

 

「軍の幹部は?」

 

「わからない。」

 

「そうですか。」

 

「ゴーストすまないがケイオスとともに一時離脱して応援を呼んで来てくれないか?」

 

「転移結晶は使わなかったのか?あれがあればすぐに…………」

 

レオンは首を振り、

 

「転移結晶は使えなかった。一度使ったんだが現在地から半径20メートルの地点に飛ばされるだけだった。ただ、お前がここに来たってことは転移門は使えたんだろう。」

 

「ああ。だがここでこんな事が起こっているという情報は一切入ってきていない。」

 

ゴーストは少し考え、

 

「上からは来れるが下からは行けないてことか。なら残された手段は1つだけ。」

 

「そうだ。第1層ボスモンスター部屋から第2層に上がるしかない。ゴースト、お前達に頼みたい。」

 

ゴーストは驚いた顔をした。

 

「ここにはケガ人や子供もいる俺たちだけで守るのは不可能だ。応援が来るまでここはもたないだろう。それでも出来るだけ早く頼む。」

 

ゴーストはレオンからの強い意志を感じたが、

 

「それは無理な提案だな。俺とケイオスもここに来るまで3時間は掛かっている。もしここから脱出するとしたら倍の時間がかかる。」

 

「それなら、どうしろと⁉︎」

 

「レオン、貴方が行ってくれ。貴方はアサシンさんの直属の元部下で実戦経験もある。俺もケイオスも名前の通り偵察所属なんだがこの世界では前衛の方が戦いやすい。ここの情報をランサーさん達に伝えてくれ、応援が来るまで俺とケイオスでここを支える。多分、俺達からの連絡も言っていない筈だ。」

 

ゴーストはアイテムバックから外套を出しレオンに渡した。

 

「こいつは現在確認されている中で一番、隠蔽と隠密が高い。索敵スキルの熟練度が2000以上無ければ絶対に探知されない。」

 

レオンは少し沈黙し、

 

「わかった。帰ったら奢らせろ。」

 

「了解。楽しみにしてるよ。」

 

レオンは外套を羽織り裏口から外に出て第1層ボス部屋まで向かった。そしてゴーストはケイオスを呼び、

 

「ケイオス、応援が来るまでここを死守する。」

 

「了解。弓は使っても?」

 

「どんどん使え、俺の分の矢もやる。」

 

「了解。」

 

ケイオスは教会の2階に上がり窓を少し開け、弓を構え、下で破城槌を持った軍の者達に狙いを付け放った。

放った矢は鎧と鎧の隙間に命中し軍の者は悲鳴を上げた。ケイオスは続けて矢を放った。すると軍の者達が盾を構えながら後ろに下がり出した。ケイオスは少し間を置きながら矢を射続け軍を数百メートル程後退させた。

ゴーストは趣味で熟練度を上げていた大工スキルを使いテーブルなどを分解し、分解してできた材料アイテムを使い扉の修理を始めた。

 

「これで少しは稼げるか。」

 

ゴーストは小さな声で呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

一方は、《桜花》ギルドハウスでは待機命令が出されていた。偵察として送った2名からの連絡も無く、無駄な時間だけが過ぎていった。そんな中、一部の隊が慌ただしく動き始めた。

 

「ライダー、自分の隊と即応第1隊を連れて第1層の※※※※※※※へと向かい直ぐにでも出れるよう準備しろ。情報が入り次第、我々も向かう。」

 

ランサーが言った。

 

「わかりました。一応、全員分準備しときます。」

 

「頼む。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数十分後、レオンは街の外れまで来ていた。周りを観察し周囲に人がいないことを確認し街道へと出ようとした時、街道にある壁の方から誰かが泣いている声がした。

レオンは刀に手を掛け恐る恐る覗いた。そこにいたのは子供だった。レオンはすぐに近づき何があったのか聞いた。

 

「大丈夫か、怪我は無いか?」

 

子供は泣きながら話し始めた。

 

「お兄ちゃんが……………………。」

 

子供は指をさしレオンはその方向を見た。

 

そこには1本のアニールブレードが転がっていた。

 

「僕を逃がそうとして………………。それで…………。」

 

「いいもう話さなくて。」

 

レオンは子供を抱きしめた。

子供が泣き止むのを待って、

 

「ここにいたら君も危ないから移動しなければいけない。分かるな?」

 

子供は頷いた。

 

「良し!なら背中に乗って。」

 

レオンは子供を背負いボス部屋へと向かい出した。

 

「まだ名前聞いてなかったな。俺はレオン、君は?」

 

「ツバサ。」

 

「ツバサくんか、わかった。」

 

レオンは進み続けボス部屋まであと少しの所で突然止まり、周りを観察し始めた。そして咄嗟にしゃがみ、草むらに隠れた。

 

「ねえ、どうしたの?」

 

レオンは無言のままツバサを地面に下ろし着ていた外套を脱いだ。レオンはツバサに話し掛けながら外套を着せた。

 

「この先にツバサくんを襲った人達の仲間が隠れている。俺が先に行って囮になるからその隙にボス部屋を通って第2層に行ってくれ。」

 

「えっ⁉︎一緒に行ってくれないの?」

 

「一緒に行きたいのはやまやま何だが数が多い。突破は無理だ。」

 

「1人じゃ怖いよ。それにお兄ちゃんを襲った人達がまだいたら。」

 

レオンはツバサの頭を撫で、

 

「泣くな。大丈夫だ、全て俺が遠くへ連れていく。そしたら門をくぐるといい。」

 

続けて

 

「ツバサ、頼みがあるんだ。」

 

レオンがツバサにあるアイテムを渡した。それは転移結晶だった。レオンはゴーストからケイオスを通じて第2層までは転移結晶が使えることを教えられていた。これは教会の中に潜んでいるであろう敵に知られないようにするためだった。

 

「この結晶を使って第61層セルムブルクに行ってある2人を見つけて俺の事を伝えてほしい。」

 

「どんな人?」

 

「1人は全身黒ずくめの男で、もう1人は女性で白に赤い線が入っている服を着て腰に剣を差している。」

 

「わかった。セルムブルクでいいんだよね?」

 

「ああ、そうだ。」

 

レオンが立ち上がり待ち構えているであろう《笑う棺桶》の元へ向かおうとした時、

 

「また会えるよね?」

 

「会えるさ。」

 

レオンは走った。

 

「(18人くらいか。あの時よりはいいか。)」

 

ある程度、進むと立ち止まった。

 

「出てこい《笑う棺桶》!てめえらがいる事は分かってるんだ!」

 

すると、草むらや木の陰から多くの《笑う棺桶》に所属するプレイヤーが現れた。

 

「どうも、こ。」

 

レオンは1人の《笑う棺桶》の男が名乗る前に《紫電》を使い、その男の首をはね飛ばした。

 

「すまないな。急いでるんで名前を聞いてる暇はないんだ。」

 

レオンは自分がこれから応援を呼びに行くふりをした。少しでもレオンに注意を引かせ、ツバサのことを勘付かれないようするためだ。

レオンは刀を握り直し一番遠くにいる敵から倒し、少しでも門から遠ざけるよう仕向いた。

 

「(行ったか。)」

 

ツバサがボス部屋に入って行ったことを確認するとレオンは近くにいる敵に斬りかかり休むことなくソードスキルを発動していった。

 

 

 

 

 

 

「(頼んだぞ。)」

 

 

 

 

 

 

 

 



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救出1

ツバサは無我夢中で走り回った。レオンから言われた2人を見つけるため。そしてようやく見つけ向かおうとした時、右足に激痛が走った。見ると矢が刺さっていた。後ろを見ると建物の上で弓を構えている者が見えた。ツバサは泣き出しそうになったがぐっと堪えその2人に向けて助けを求めて、

 

「お姉ちゃん、助けて!」

 

呼ばれた女性はツバサの方を振り向いた。最初は戸惑っていたが直ぐにツバサの元へ駆け寄ろうとしていたがツバサの耳には風を切るような音がしていた。

もう無理だと思ったその時、ツバサは死を覚悟したが矢は来なかった。まだ10メートル以上も離れていたのにもかかわらずその女性は腰に着けていた細剣を抜きツバサの後ろに立っていた。少し遅れて女性の隣にいた黒ずくめの男性もツバサを庇うようにして立っていた。

女性は男性に向けて指示を出した。

 

「逃げるよ、キリトくん。」

 

「分かった。俺が殿になるからアスナはその子と一緒に逃げてくれ。」

 

「場所、覚えてる?」

 

「大丈夫だ。」

 

レオンがツバサに会うよにと頼んだのはキリトとアスナだった。レオンは即応に所属していながらも自身のスキルアップの為、アサシンの元へと出向き共に任務を遂行していた。任務時にたまたま見かけ、アスナの家が第61層セルムブルクにあるのを知っていた。アスナはツバサを背負い自身の家へ向かって走り出した。

 

キリトは背負っていた片手剣を抜き構えた。周囲の建物を確認すると他にも数名いることがわかった。

 

「さて、どうしようかな。」

 

キリトは片手剣を構えながらどう仕掛けようか考えていると正面から矢が飛んできた。咄嗟に左側に避けるとそれを狙ったかのように今度は後ろから矢が飛んできた。キリトは片手剣を使い矢を弾いた。

 

「ここは逃げるが勝ちかな。」

 

キリトは回れ右をしながら片手剣を鞘に納め走り出した。相手に場所を突き止められないよう出鱈目に走りアスナの家へと向かった。

 

 

 

 

 

アスナは自宅に着くと回復結晶を使いツバサのHPを回復させた。そこに息を切らしながらキリトが入ってきた。

 

「キリトくん、追っては?」

 

「大丈夫だと思う。出鱈目に走って来たからな。それよりも………。」

 

キリトはツバサに近づき、

 

「名前は?」

 

「ツバサ。」

 

「なあツバサ、何でアスナに声を掛けたんだ?」

 

「それはレオンお兄ちゃんが探してくれって頼んだから。」

 

「レオン?」

 

キリトとアスナはレオンという名に覚えが無かった。キリトは別の質問をした。

 

「ツバサは何処から来た?」

 

「はじまりの街から。」

 

「そこで何かあったのか?」

 

「軍の人たちが突然、他の人たちに襲いかかってきて、その時にお兄ちゃんが………。」

 

ツバサは泣き出しそうになった。

アスナは近づき泣き出しそうになったツバサを宥めた。

 

「どうするキリトくん?」

 

「軍かぁ。ちょっとランサーに聞いてみる。ランサーなら何か情報持ってる筈だ。」

 

キリトはランサーにメッセージを送った。

 

 

 

 

 

 

 

 

《桜花》ギルドハウス内、第1隊室

 

ランサーは装備の点検を行っていた。武士風の防具を身につけ、各種の投擲武器を右腰に着けていた。最後に刀に分類されている打刀と脇差を左腰に着けた時、突然キリトからメッセージが届いた。メッセージを開き、中身を確認すると机に置いてあった兜を掴み、すぐに通信室へと向かった。

通信室に駆け込んで来たランサーを見て中にいた人員は驚いていた。

 

「ランサー、どうした?」

 

アーチャーが声をかけたがランサーはアインスの元へと向かい。

 

「アインス、第6隊を第61層セルムブルクへ。“閃光”の家へと向かわせろ。アーチャー、第2隊から2人借りるぞ。」

 

「了解。」

 

「借りるのはいいがどうした?」

 

「キリトからの連絡だ。ある子どもをセルムブルクで保護したそうだ。その際、その子どもが弓で攻撃を受けたと。それにレオンに助けられたと話しているとの事だ。」

 

「おい!それって⁉︎」

 

「お前が考えている通りだ。アイツらだ!」

 

ランサーは部下を引き連れて転移門へと向かった。その頃、アサシンが率いる第6隊は既に現地入りし周辺の安全確保や敵の殲滅を行なっていた。

 

「アサシンより各員へ、現状を報告しろ。」

 

「異常なし。」

 

「こちらアッシュ、2名殺った。」

 

「こっちは1人だ。」

 

「了解した。各員、警戒を続行せよ。(半分は逃げたか、あるいは何処かに潜んでいるかだな。)」

 

 

 

 

 

 

ランサーは部下を引き連れセルムブルクの街中を大急ぎで走っていた。

 

「アサシン、周辺は?」

 

「確保した。周囲に敵はいない。」

 

「わかった。」

 

ランサーはアスナの家に着き玄関の扉をノックした。キリトが応対し家に入った。

家に入るとランサーはツバサを見つけキリトが聞いたことと同じことを聞いた。

 

「ツバサよく頑張った。後は俺たちに任せろ。」

 

「レオンお兄ちゃんは…………。」

 

「大丈夫だ。必ず連れ帰る。」

 

ランサーはツバサの頭に手を置き撫でた。

 

「キリト、アスナ、ツバサを連れてこっちのギルドハウスに来い。事態が落ち着くまで俺たちが護衛する。」

 

キリトとアスナはともに頷き。

 

「わかった。」

 

「アサシン、戻るぞ。回廊結晶を使う降りてこい。」

 

「了解、と言いたいところですが敵です。数は10。転移門方面から接近中。」

 

「どのくらいで片付く?」

 

「先に行ったほうがいいと思ういますが?」

 

「お前ならその程度、簡単に倒せるだろう。こちらも援護する。」

 

「了解。」

 

「外に出るぞ。アンタレス、グレン、3人の護衛を、他は弓を構えろ。アサシンの援護だ。」

 

「「「了解。」」」

 

 

 

 

 

アサシンは人混みを掻き分けながら敵に近づき腕部に装備してある仕込み方のブレードで敵の心臓を貫いた。HPがゼロになるのはそう長くは無かった。ゼロになるのを確認しブレードを抜いた。

アサシンは自分にしか聞こえない声で、

 

「これで4人目。」

 

アサシンは他の6人を見た。真っ直ぐランサーたちがいる方向へと向かっていた。

 

「アサシン、射線を確保したい。出来るか?」

 

「簡単です。」

 

アサシンは何かを空中に投げた。その瞬間、眩しい光と耳をつんざく音が響き渡った。多くの人がその場に止まりしゃがみ込んだ。一部は条件反射で装備していた盾を構えた。その中にその光や音に臆することなく歩んで来る者がいた。

 

「射てぇ!」

 

ランサーが合図を出した。6本の矢が確実に相手の心臓目掛けて進み命中した。

 

「アサシン、仕留めろ。」

 

アサシンは無言で敵の息の根を確実に止めた。

アサシンはランサーと合流し回廊結晶にてギルドハウスへと戻った。ギルドハウスに着くとランサーはすぐに通信室へと向かい、

 

「全隊に出撃準備を掛けろ。第5隊はハウス防衛、他は第1層へ向かう。」

 

各オペレーターは各々が担当している隊へと一斉に連絡を取り始めた。

 

「13:00に修練場集合、装備は各々のに任せる。ただし、戦闘が長期かする可能性が多い為、メイン武器を2本装備、それ以外は各自にて装備せよ。」

 

ランサーは全隊に伝えることを言うと通信室を後にし武器庫へと向かった。武器庫に着くと各隊長がランサーを待っていた。

 

「何を取り出す気ですか?」

 

アーチャーは続けてランサーに言った。

 

「言っときますが“あれ”は無しですよ。あれは最悪です。」

 

ランサーは、

 

「あんなもの取り出したら終わりだよ。取り出すのは弓と矢にそれとお前らの刀だけだ。」

 

ランサーは武器庫を開け、棚に置いてある刀を取り始めた。

 

「隊長、俺には“物干し竿”で。」

 

「バーサーカー、ここでは隊長と呼ぶのはやめろ。」

 

「いいじゃないですか。俺たちしかいないんですから。」

 

ランサーは大きな溜息をついた。そして自分が使う刀を取り出し装備した。

 

「他はいつもと同じだな。」

 

アーチャーとキャスターに刀を渡し終えるとアサシンが武器庫に入ってきた。

 

「アサシンは?」

 

「俺はこいつがあるからいいです。」

 

アサシンはそう言うと両腕に装備されていた籠手を見せた。その※籠手には小型の剣が収められており使用時に剣を勢いよく出し対象に悟られないうちに攻撃することが可能だ。

※アサシン・クリードに出てくるアサシンブレードと全く同じ。

 

「アサシン、先に行って情報を収集しろ。」

 

「了解。人選は?」

 

「任せる。即応から何名か引き抜いても構わない。」

 

「では先に出ます。」

 

アサシンは即応が待機している部屋へとより2名ほど連れ、第6隊とともに第1層へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

13:00

 

「バーサーカー、ここは任せたぞ。」

 

「了解!」

 

ランサーは回廊結晶を使い、第1隊、第2隊、即応とともに第1層へと向かった。

第1層に着くとライダーたち第3隊が待っていた。

 

「準備は?」

 

「完了です。」

 

「良し。第2、第3隊は第1隊とともに教会へと向かう。即応はレオンの捜索へ向かえ、発見次第連絡を。尚、敵対勢力以外への攻撃を禁ずる。ただし、こちらに向けて武器を向けた者に関しては各自の判断で対象せよ。」

 

「この中で騎乗スキル持ってない奴はいるか?」

 

ライダーが全員に聞いた。

全員が持っていると答えた。

 

「なら、各自騎乗してくれ。馬は外に準備している。」

 

ランサーは騎乗したツヴァイに話し掛けた。

 

「深追いはするな。レオンを確保後、直ぐにギルドハウスへ戻れ。こちらからの要請が掛かあるまでは待機しろ。」

 

「了解。必ずレオンを見つけます。」

 

「頼んだ。」

 

目標へと出発した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その数十分後、教会では

 

 

 

「ケイオス!10時方向から敵増援だ!」

 

「了解!」

 

ケイオスはすぐに弓を構え複数の矢を同時に放った。3人に矢が当たりその場に崩れ落ちた。ゴーストは教会の外で敵に斬りかかっていた。

教会の扉は既に壊れ、敵が侵入しようとしていた。

 

「(クソ!救援はまだか!)」

 

ゴーストは心の中で悪態をついた。

 

「ケイオス!残弾数は⁉︎」

 

「残り20!」

 

「(このままでは………。)」

 

「おいおい、もう終わりか〜?」

 

軍の1人がゴーストに話し掛けてきた。すると周りからも、

 

「さっさと降伏してしまえよ。すぐに楽にしてやるぜえ。」

 

大きな笑いが上がった。

だが、ゴーストの怒声がそれを打ち消した。

 

「ふざけるな!俺たちの使命はここにいる人たちを守ることだ!例え、腕が斬り落とされようが刀が折れようが守り続ける!」

 

「そうか。」

 

ゴーストの正面に立っていた軍の男が右手を挙げた。すると周辺の建物の上に弓を構えた数十人を超えるプレイヤーが姿を現した。

 

ゴーストはあまりの多さに一瞬硬直した。

 

「だったら死ねよ。」

 

男が右手を降ろした。

そして数十人を超えるプレイヤーがゴーストに向けて矢を放った。

ケイオスはすぐに装備画面から大盾を呼び出しゴーストの元へと向かおうとしたが、ゴーストはそれを止めた。

 

「ケイオス、来るな!」

 

ケイオスは足を止めた。

 

「俺は大丈夫だ!その盾で教会の入り口を固めろ!一本も通すな!」

 

「了解!!」

 

ゴーストは刀を構え、矢が自身に命中するものだけを叩き落とした。だが矢は雨のように降り続け1本、また1本とゴーストの身体に刺さり始めた。ケイオスもまた必至に盾を構え続けた。盾には既に30本をも超える矢が刺さり耐久値を減らし続けていた。

そして、矢の雨が終わるとゴーストの身体には5本の矢が刺さっていた。ケイオスが構えていた盾は既に壊れ、ケイオスの身体にも2本の矢が刺さっていた。

 

「もう終わりか?お前らの攻撃も大したことないな。」

 

ゴーストは男に向け言った。

男は攻撃命令を出した後、勝ち誇っていたような顔をしていたがその顔は“ありえない”といった顔に満ち溢れていた。

 

「なら、これで最後だ!死ね!!」

 

男の周りにいた者たちはゴーストに斬りかかった。ゴーストは既にHPの3分の2を失くし、刀を振るう力も残っていなかった。

 

「(ここまでか…………。)」

 

ゴーストは目を閉じ、死を覚悟した。

 

 

だが、いくら待っても相手の剣が自身にあたることはなかった。目を開けてみると斬りかかってきていた者の首には1本の矢が刺さっていた。ゴーストは飛んできたであろう方向を見ると複数の騎馬が向かってきているのが見えた。それと同時に地面から重い振動が伝わってきた。

軍の者たちは何が起きているかわからず呆然としていた。その数秒後、我に返った指揮官と思われる男が周りの者に対して指示を出し始めた。

 

「てめえら!何、ぼうっとしている!さっさと動け!」

 

やっと軍の者たちが動き始めたがそれは遅すぎた。一騎の騎馬が突出し位置に着こうとしていた軍の者を右手に持っていた刀で真っ二つに斬り裂いた。それと同時に後方から複数の矢が相手に向かって行き急所に命中した。ある者は一瞬でHPが全損し、ある者は僅か10%が残る程度だった。その騎馬はゴーストの前に行き、騎乗していた者が降りゴーストに駆け寄った。

 

「ゴースト、大丈夫か⁈」

 

「ラン………サー…………さん………。」

 

「まだ生きてるな。回復結晶を使うぞ。」

 

「ケ…イ…………オス…….は?」

 

「大丈夫だ。矢は刺さっているがあの程度なら軽傷だ。」

 

「よか……った。レオンは?」

 

「無事だ。ギルドハウスにて休息をとっている。」

 

「これで……ゆっくり…休めます。」

 

ゴーストは極度の緊張が解け眠ったように気絶してしまった。

 

「ライダー、第3隊でゴーストとケイオス、現在確認出来ているプレイヤーを連れて第55層グランザムにある《KoB》のギルドハウスに向かえ。“閃光”に無理を言って他の攻略系ギルドに集結してもらっている。この惨状を伝えろ。」

 

「了解。ランサーはどうするんだ?」

 

「他にプレイヤーがいないか捜索する。3時間後には戻る。」

 

「わかりました。」

 

「第1、第2、集合しろ!」

 

「これより現在も生存していると思われるプレイヤーの捜索を開始する。グレン、カムイ、アレウス、リベルタ、ボーダーは俺と。他はアーチャーと動け。2時間後に現在地集合、もし敵プレイヤーと遭遇、不利と判断した場合、俺か即応にすぐに連絡しろ。」

 

「「「了解!」」」

 

「質問は?」

 

アーチャーは全体を見渡し、

 

「無し。」

 

アーチャーの返答と同時に全員が動き出した。

 

 

 

 

 

 

ランサーとアーチャーは家の部屋という部屋を全て見て回っていた。そんな時、偵察に出ていたアサシンからランサーとアーチャーに向けて連絡が入った。

 

「軍の幹部を確認。場所は黒鉄宮前の噴水広場。シンカーとその補佐も確認。ただし敵の数は100人以上、《笑う棺桶》の姿も確認。」

 

「了解した。敵プレイヤーの動向を監視せよ。」

 

「了解。」

 

アーチャーが聞いた。

 

「ランサー、どうする?」

 

「一時中断だ。軍の幹部の確保を最優先とする。」

 

「罠の可能性は?」

 

「完全に罠だろうな。それでも今は情報がほしい。」

 

「生存者はどうするきだ?」

 

「即応がもうすぐ合流予定だ。それから再開してくれ。」

 

「レオンは見つかったのか?」

 

「先程、ツヴァイから連絡が入った。レオンの死亡を確認。《剣士の墓標》を回収次第合流すると。」

 

「そうですか。ゴーストには何と言うんですか?」

 

「後で考える。隊を元に戻すぞ。第2隊はここで即応と合流次第、捜索を再開。ただし、こちらが目標を確保次第、直ぐに捜索を中断し撤退を開始しろ。」

 

「了解。」

 

「第1隊、行くぞ!」

 

ランサーたちは黒鉄宮へと向かった。途中、アサシンと合流し目標が見える場所へと向かった。

 

「ランサー、見えるか?」

 

「ああ、見えた。シンカー、ユリエール、キバオウ、その他に4名か。」

 

ランサーとアサシンは建物の裏から目標を見ていた。

 

「どうしますか?」

 

第1隊補佐のイェーガーがランサーに聞いた。

 

「突撃するか?」

 

「ご冗談を。」

 

「だよな。」

 

ランサーは腕を組みながら考えた。

 

「(陽動をかけないと無理だな。)」

 

「アサシン、第1隊と第6隊で全員を確保出来るか?」

 

「出来るが、誰かが陽動をかけない限り難しいぞ。」

 

「ああ、陽動はかける。俺がな。」

 

「なら頼む。人選は?」

 

「俺だけで充分だ。」

 

「わか…………。え⁈もう一回言ってくれないか?上手く聞き取れなかった。」

 

「だから俺1人で陽動をする。」

 

「馬鹿言ってんじゃねえよ!報告聞いてたのかよ⁉︎相手は100人以上だぞ!」

 

「馬鹿!声がデケエわ!」

 

「2人とも静かに!」

 

イェーガーが止めに入り、何とか収まった。

 

「せめて、第2隊から援護してもらえ。まだ捜索活動中なんだろう?」

 

「ああ、今即応とともに行っている最中だ。」

 

アサシンはランサーと話している最中、何かに気付き話すのをやめた。そして、大きな溜息をついた。

 

「アーチャーには俺が話しをつけておく。だから思う存分やってくれ。目標は必ず確保する。」

 

「頼む。」

 

ランサーはそう言うとゆっくりと敵プレイヤーの元へと歩み出した。

 

「アサシンさん、ランサーさんだけでは死にに行くようなものですよ。」

 

「いいんだ。あれで。」

 

アサシンはイェーガーに向けて言った。

 

「ですが⁉︎」

 

「ああでもしないとアイツの怒りは収まらないからな。さあて、俺たちも動くぞ。第1隊はここから見て奥にいる4名、第6隊は残りの3名を確保する。確保次第、すぐに離脱する。質問は?」

 

全員が首を横に振り、

 

「行くぞ!」

 



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救出2

 

ランサーは向かってくる敵に対し刀を振り続けた。

1人、また1人とHPが全損していき、その場から消えていく。

 

「何やってるんだ!相手は1人だぞ!」

 

「死ねぇ!!」

 

ランサーは刀剣技《五月雨》と《浮舟》を交互に使いながら斬りつけていく。

ランサーはふと人質がいる方を見るとアサシンの第6隊と第1隊が敵に気づかれないように人質を解放していた。

 

「(もう少しか。)」

 

ランサーは思った。

少しでも注意を引き続ける為、《迅雷》を繰り出し敵を吹き飛ばした。

 

「何だ!こいつは⁉︎」

 

「この化け物が‼︎」

 

ランサーは剣を振りがぶってきた敵を《絶空》を使い一刀両断した。

するとアサシンから連絡が入った。

 

「こちら人質を全員確保。現在、第2隊と合流中。20秒後に第2隊の援護射撃を行います。」

 

「了解。」

 

ランサーは刀を納刀し構えた。そして抜刀術重範囲剣技《烈山》を繰り出し周囲にいた敵を上半身と下半身に一刀両断した。

その直後、第2隊からの援護射撃が入り多数の弓矢がランサーの周囲にいた敵に命中した。ランサーは敵が怯んだ隙を逃さず、一気にその場から第2隊がいる方へと走った。

 

 

 

第2隊がいる地点では馬車が用意されランサーを除く全員が乗っていた。

 

「第2隊は射続けろ!1人たりとも敵を近づけさせるな!アサシン、先に脱出しろ!ランサーは俺たちが連れて行く!」

 

アーチャーが叫んだ。

 

「わかった!」

 

アサシンが乗っている馬車は第1層ボス部屋へと向けて走り出した。

 

「ランサー、こっちだ!」

 

ランサーは馬車に飛び乗りすぐに馬車を走らせた。

 

「アーチャー、状況は?」

 

「人質は全て確保。こちらの被害0。そちらは?」

 

「問題無い。」

 

 

 

 

 

 

 

 

ランサー達はグランザムに着き《KoB》のギルトハウスにてシーカーとキバオウから話しを聞いていた。

 

「シーカー、そいつに見覚えはないんだな。」

 

「ああ、無い。」

 

「わかった。ここで休んでろ。後は俺達が片付ける。」

 

ランサーが部屋を出ようとした時、

 

「ランサー、仲間を助けてくれ。」

 

「任せろ。」

 

ランサーは部屋を出た。部屋の前にはアーチャーが立っていた。

 

「どうだった?」

 

「内容はそちらが聞いていた事と同じです。」

 

「そうか。各隊と攻略組の集結状況は?」

 

「全隊、集合完了。攻略組はもう20分てところですかね。」

 

「わかった。集合が完了次第、ブリーフィングを始める。」

 

「了解しました。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

KoBギルドハウスにある会議室。そこには《桜花》と主要な攻略組が集まっていた。暫くすると2人の男が入ってきた。それはランサーとアーチャーだった。ランサーはアーチャーとともに部屋の正面にあるボードを使って何故、攻略組全員を呼び出したのか話し始めた。

 

「では時間が無いので概要を説明する。尚、質問や意見などは説明後に受け付ける。」

 

ランサーがそう言うとアーチャーはボードに第1層はじめりの街:主街区の地図を張った。

 

「現在、《笑う棺桶》がはじまりの街を占拠。主街区において殺戮を続けている。構成員は約150名、軍またプレイヤーに変装しているのもいる。そこで我々は、はじまりの街に残っているプレイヤーの救出ならびに敵の殱滅を行う。プレイヤーの救出については攻略組で手分けして行なってもらいたい。尚、転移結晶などの移動アイテムは第1層では使用できない。質問は?」

 

攻略組の何人からか手が上がった。

 

「何で転移結晶が使えないんだ?」

 

「こちらもまだ詳しい理由は分からない。何らかのイベントが発生、またはシステムの不具合などが考えられる。それと転移門も使用出来ない。」

 

「第1層まで行くには?」

 

「第1層ボス部屋を通る。そこから我々が用意した馬車に乗って、はじまりの街に移動する。」

 

「いつ開始するんだ?」

 

「今から40分後。貴官達なら30分もあれば準備出来るだろう。集結場所は第1層ボス部屋。」

 

攻略組は準備の為、一時解散した。

 

 

 

部屋には《桜花》のメンバーが残っていた。

ランサーは部屋にいる全メンバーに向けて話した。

 

「我々はこれより第1層ボス部屋、ならびにその周辺の確保に向かう。交戦規定は自由、捕虜は捕るな。」

 

「その場で切り捨てろと?」

 

「いや、無力化すればそれで良い。捕虜が多くなる程、撤退時に割かなければならない人員が増える。それに降参したと見せかけて戦闘となり戦死者が出るのは許容出来ない。他に質問は?」

 

ランサーは全員を見渡した。

 

「全員、生きて帰るぞ。行くぞ!!」

 

ランサーは兜を被り、面頬を付けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

第2層

 

第1層ボス部屋に繋がる道には《笑う棺桶》のメンバーが使っていたであろう武器が多数転がっていた。

 

「ランサー、第1層ボス部屋とその周辺を確保した。」

 

「数は?」

 

「30人から40人程だ。内2名が逃走、他は殺害した。こちらの被害は無し。」

 

「わかった。引き続き警戒を頼む。」

 

「了解。」

 

ランサー達、第1隊は第1層ボス部屋へと向かう道で攻略組が来るのを待っていた。すると足音を鳴らしながら重装備で歩いてくる集団がいた。

ランサーは集団の先頭にいたプレイヤーに話し掛けた。

 

「一番乗りは《聖竜連合》か。」

 

「早く来すぎてしまったか?」

 

「いや、時間通りだ。それにしてもよくこれだけの人数集められたな。」

 

「上の連中と話しはつけてきた。《桜花》ギルドハウスに20人、こっちに30人だ。」

 

「それは有難い。なあ、エリック戻ってくる気は無いか?」

 

「すまんがあれはもう懲り懲りだ。」

 

「そうだな。このまま真っ直ぐ行ってくれ、ライダーが馬車の準備をしている。」

 

エリック達、聖竜連合のプレイヤーはライダーの元へ向かった。その後、他の攻略組プレイヤーが続々と集まり始めた。

それから10分後、ランサーはもうこれ以上、時間的にも来ないだろうと思い、第1層ボス部屋に向かおうとした時、隣にいたアンタレスがランサーを呼び止めた。

ランサーが振り返ると遠くからキリトが歩いて来ていた。ランサーは一瞬驚いた表情をしたが直ぐにいつもの冷静な表情に戻しキリトに話しかけた。

 

「遅かったなキリト。」

 

「いろいろ準備しててな。」

 

そう言ってキリトは第1層ボス部屋へと向かっていった。ランサーとアンタレスも第1層ボス部屋へと向かった。

ランサーがボス部屋に入ると攻略組は馬車への乗車を始めていた。ランサーはキリトとアスナを呼んだ。

 

「引き返すなら今だぞ。」

 

「ランサー、何を言って……」

 

ランサーはアスナの言葉を手で制した。

 

「お前達はまだ子供だ。副団長だから、攻略組だからと言ってわざわざ行く必要は無い。この先の相手はモンスターでは無い。人間だ。」

 

ランサーは続けて、

 

「いくら俺達が護衛にあたると言っても完全に出来るわけではない。それに敵の数はこちらの倍、攻略組にも戦闘を行なってもらうことになるかもしれんし最悪の場合、戦死も覚悟してもらう。」

 

「ランサー、俺はここまでソロでやってきた。そしていつも死と隣り合わせだった。だから敵が人であろうと覚悟は出来てるよ。」

 

キリトは言った。

 

「ええ、私もよ。副団長だからと今までのラフコフ討伐戦に参加してきたわけでは無いわ。全て自分の意思で此処に来てるの。こんなの間違ってるから……。」

 

アスナも続けて言った。

 

ランサーは2人の言葉を聞き、大きな溜息をついた。

 

「わかった。ただし無茶はするなよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ランサー、出撃準備完了した。」

 

ライダーが言った。

 

「わかった。」

 

「全隊、出撃!!」

 

ライダーが叫んだ。

 

全員から雄叫びが上がり、全速力で駆けていった。

 

 

 

十数分後、《桜花》と攻略組は“はじまりの街”に到達。戦闘の開始は、《桜花》の騎兵突撃で始まった。

 

「突撃隊形、横隊2列!」

 

「突撃‼︎」

 

ランサーは叫んだ。

第5隊を除く戦闘員、計36騎が“はじまりの街”に布陣していた《笑う棺桶》に向けて突撃した。

《笑う棺桶》のメンバーはこの時を待っていましたと言わんばかりに奇声を発し始め、迎撃態勢をとったが、ライダーはこの時、ある条件下で発動する剣技を使って《笑う棺桶》の陣形を大きく崩して突破した。

それは馬に騎乗した時のみ発動する《槍騎兵》というスキルだ。このスキルを使用し槍騎兵突撃剣技を行うと同様に騎乗しているパーティーメンバーとギルドメンバーにもこの剣技が発動される。その為、ライダー単体で突撃剣技を行うよりも威力は倍増した。

 

「止まるな!このまま主街区に向かう!」

 

《桜花》と攻略組の合同部隊はこの日、初めて対人の大規模戦へと突入した。

 



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