転生者が仮面ライダーになってヴィランしてるからちょっと殺してくる (日本人)
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プロローグ
※555以外の仮面ライダーの知識、特に平成2期の知識は壊滅的。
推しライダーがボコられる可能性あり。(中身は別物)
作者の草加への評価は異形の花々で地に落ちた。
生暖かい目で見守ってください。
やぁ、こんにちは。俺の名前は木場勇治。仮面ライダー555と型月大好きな転生者である。えっ? 痛い妄想も大概にしろ? 本名じゃないだろ?
HAHAHA! 生憎と妄想じゃない上に本名なんだわ。見た目も木場さんそっくりだし。オルフェノクにはなれないけど。死んだ記憶ない上に事故った記憶もない。転生特典なんてものもない。見た目が木場さんなだけだ。
⋯⋯どうせならオルフェノク化+オーガギアを付けてくれればいいものを。神はクソ野郎らしい。存在Xくたばっちまえ。俺まだ17(童貞)だったんだぞ。
おっと、話がそれてしまった。それで俺が前世の────つまりは
────あ、ここヒロアカの世界やん。
テレビを見れば『ヒーロー』だの『
いやもうパニックよ。「俺も個性使えんのか!!!」と興奮しまくった。ちなみに俺の今の父母の個性はそれぞれ『大翼』と『射出』。姉貴が1人いて個性は両親2人の複合型。羽を弾丸にしてブッパしまくれるらしい。かっけぇ。
これは俺も期待出来る! とか思いながら個性診断を病院で受けたのだが⋯⋯、
「⋯⋯お子さんはどうやら『無個性』の様です」
ファッ!?
いやそりゃねぇよ神様よぉ⋯⋯。
ヒロアカ転生して無個性て⋯⋯⋯。頑張ってオールマイトからワン・フォー・オール貰うか?いや、それだと緑谷が悲惨だ。なるべく原作改変はしたくないタチだし。
そこからは悲惨だった。両親2人からは「出来損ない」と言われ、学校に行けば無個性だからとイジメを受けた。ぶっちゃけ精神年齢ずっと大人だったから平気なだったけど。
唯一の味方は姉貴だけだった。俺に何かあれば心配してくれたし両親にも俺の為に反抗してくれた。オマケに美少女。血が繋がってなかったら惚れてた。
が、そんな生活が続けばひねくれても仕方ないと思う。俺は学校にも行かずに遊び歩く様になっていた。一昔前の不良かよと自分でも思ったよ。
転機が訪れたのは10歳の頃、唐突に雄英高校にはサポート科というヒーロー達の支援用にアイテムを制作している人達がいるのを思い出した。
「あ、無いなら作ればいいじゃん」
そうだよ(確信)。なんで気が付かなかったんだ。
マリー・アントワネット方式だよ! 「個性がないなら作ればいいじゃない」だ!
さらにここで俺の前世のオタ知識が覚醒。「個性を作る」という事に置いて一番簡単と思える物を必死に脳内フォルダから探し出す。で、結論。
「ライダーズギアだ⋯⋯」
そう、仮面ライダー555に登場する5つのベルト(ライオトルーパーは知らん)。ぶっちゃけ一番科学的に造られてるからこの世界でも製作が可能かもしれない。
英霊召喚という案もあるがそもそも俺程度に御しきれるとは思えない。ギルとかオジマン召喚してみろ。この世界滅びるぞ冗談抜きで。
まぁ正直な所ライダーズギア以外にするつもりはなかった。全ライダーシリーズの中で一番好きだし、正直平成2期ライダーは好きにはなれないのだ。
だってドライブなんかライダーじゃなくてドライバーじゃん!?エグゼイドなんて今までのライダー達のデザインから一番かけ離れてるじゃん!?∀か!!
仮面ライダーフォーゼのあのセリフ『宇宙キターー!!』が当時ひねくれまくっていた俺の肌に合わなかったのもある。可愛くないガキ?分かってるよんなことは。
その点555は良い。あの重厚なストーリー、魅力的なキャラクター達、何よりもシンプルながらカッコイイライダー達。最高じゃねーか。但し草加、テメーはダメだ。異形の花々で真理と結花にした事を俺は忘れてねぇからな。
おっと、また話がそれてしまった。気をつけねば。
取り敢えずは作中に登場する流体光子エネルギー『フォトンブラッド』を発見せねば。555達が変身する際に必要なエネルギーで対オルフェノク用の猛毒でもある。これが無けりゃライダーズギア製作なんぞ夢のまた夢だ。
「うしっ! やってやるぜ!!」
その日から、俺のライダーズギア製作が始まった。
────3年後
よう! 久しぶりだな。俺だ木場勇治だ。13歳になったぜ。
えっ? いきなり時間が飛びすぎ?お前何処にいるんだよ? お主は約1000日近くを詳細に説明しろと? 無茶言わんでくれや。頼むから。後俺がいるのは自作のラボだ。近所の森の中の目立たない所にある寂れた小屋を改造して作った。お陰で研究に集中出来たぜ。
さて、気になるギアの製作についてだが⋯⋯、
「ふっ、フハハハハハハハハハハハハハ!!!!ハァーーーーッハッハッハァ!!!」
おっと失礼。嬉しすぎてつい。いや完成したんだよ。ライダーズギア1号ことデルタギア。デメリットを除いて完全に原作を再現出来てる。多分。きっと。
本当に大丈夫なのかって? 言うな。俺も不安なのをテンション上げて誤魔化してるんだから。
取り敢えずは出来た経緯を説明しよう。あの日から俺はとにかく光に関する論文を調べまくった。暇さえあれば地域の図書館に入り浸り、他県に大きな資料館があると聞けば歩いてでも行った。
アホみたいに知識を詰め込んだ結果、大気中に微量のフォトンブラッドが含まれていることを発見。方法? そっちの想像に任せる。説明なんぞめんどくさい。
で、まぁそこからは早かった。ヒーロー向けのサポートアイテムをバラして組み立て、ライダーズギアの原型に当たるものを製作、そこから色々な実験を繰り返してきた結果がこのデルタギアだ。今んとこシミュレーション上なら変身できる様になってる。
「よし、早速使って⋯⋯⋯あ」
⋯⋯⋯⋯しまった。確かライダーズギアってオルフェノクの因子持ってないと変身出来なかった気が⋯⋯⋯。いやでもデルタギアは別なんだったか?でも完全に原作通りじゃないしな⋯⋯⋯。
とりま試しにやってみるか⋯⋯?
俺はデルタギアを装着、顔の横にデルタフォンを持ってくる。他のライダーズギアと違ってこいつは音声入力式なのだ。
「変身」
『Standingby』
例のイカした音声が響くと共に俺はデルタフォンをデルタムーバーに接続。その瞬間、ベルトから白いフォトンブラッドの光が広がり始めた。
『Complete』
「おおっ!」
なんだよ出来るじゃ────
『Error』
シ───────ン⋯⋯⋯
「マジかよクソっ」
マジで変身出来ないなんてな⋯⋯⋯これは完全にしくじったか?
使うにしてもオルフェノクにならないとダメってことか?
「確かオルフェノク化の方法は⋯⋯」
死んでからオルフェノクとして復活するんだっけか。他には同じオルフェノクに使徒再生してもらうか。
どうする? オルフェノク化するのを信じてワンチャンダイブ? それとも他のオルフェノク探して頼むか?
⋯⋯ベットするのは今後の人生とかリスクデカすぎだろこの賭け。てか後者に至ってはそもそもこの世界にオルフェノクいるのか?
「⋯⋯⋯⋯仕方ない、方法を探そう」
流石に落胆を隠せない。だってそうだろ? 憧れのライダーに変身できると思ったらこの仕打ちだぜ? どれだけ神様は俺の事嫌いなんだよ。紐神様連れてこいや。
が、それで諦めるほど俺の555愛は温くない。絶対に変身する方法を見つけてやるさ。
「⋯⋯⋯⋯帰るか」
万が一盗まれたら困るのでデルタギアは持って帰ろうか。俺はデルタギアを専用のアタッシュケースに収め、ラボを出る。そして俺はそのまま帰路についた
帰り道。これまた俺は神に嫌われてるらしい。とんでもないモンに遭遇しちまった。
それは俺が人気のない住宅街を家に向かってトボトボと歩いてる時の事。薄暗い路地裏から、そいつは姿を現した。
「────ん?」
「あっ⋯⋯⋯」
1目見てわかった。
その
「ははっ今日は運がいいねぇ! また獲物がよって来るなんて!」
男が右腕を引き絞る。あ、これやばい。早く逃げろ俺。そう思った時には遅かった。
「っガァ!?」
腹部に鋭い痛みが走る。恐る恐る見てみれば奴の爪が俺の腹に突き刺さっていた。あかん。めっちゃ痛い。
「が、ごほっ!?」
「ちっ、仕留め損ねちゃったよ」
男は勢い良く俺の腹から爪を引き抜く。それと同時に傷口から血が吹き出した。口からも血が溢れてくる。重要臓器をやられたらしい。不思議と俺の頭の中は冷静だった。
「ん⋯⋯、連中嗅ぎつけたかな?」
男が俺から目を離す。どうも別の方向が騒がしい。ヒーロー達が来たのだろうか。てかはよ助けてや。何しとんねん。俺もう死にそうなんだけど。
「こりゃやばいな。さっさとトンズラしようかねっと」
男は最後に俺を一瞥して嗤う。
「じゃあねクソガキ。恨むんならこんな所を出歩いていた自分を恨みなよ」
男はそれだけ言って俺に背を向ける。それと同時に俺の視界が段々と暗くなり始めた。
オイ、嘘だろ? だってまだ何もして無いんだぜ? 必死に身体を動かそうとするがピクリとも反応しない。
あ、ダメだこれ。俺────
────死んだわ。
「ふぅー、次の獲物は何処だろうなぁーっと」
いやー気分が良い。これだから
だってそうでしょ?せっかくの
僕の個性の『鉄人化』も喜んでるよ、思いっきり使ってもらって。
今の社会は本当にクソだ。ヒーローなんて連中がいるから満足に個性も使えない。生まれ持った
だから僕はこうやって力を振るうんだ。僕達は自由なんだって証明するために!」
おっと、声に出ていたらしい。気をつけないとね。
「⋯⋯⋯⋯それが、理由か」
「へ?」
後ろから声がした?僕が驚いて振り向くとそこにはさっき殺した筈のクソガキが立っている。クソガキはこちらを憤怒の形相で睨んでいた。
「あらら、生きてたの? もしかして再生系の個性? だとしたらラッキー! また君を切れるんだから!」
「⋯⋯⋯あぁ、本当、胸糞悪い」
クソガキはぶつぶつと何か言ってるが僕の耳には入らない。
「じゃ、切るね!」
僕は凶器とかした右腕を振りかぶった────
「うるせぇから少し黙れ」
────が、クソガキに受け止められる。
「は?」
何とも間抜けな声が口から漏れる。なんでこのクソガキが僕の攻撃を止めれるんだよ?
「おい、テメェ」
「あ? なんだ⋯⋯⋯よ⋯⋯」
クソガキに呼びかけられ奴の顔を見た。
⋯⋯⋯なんなんだよこれ。コイツの顔全体に変な紋様が浮かび上がってる。
「死んでろ」
奴が拳を振りかぶると同時に奴が馬のような顔をもつ灰色の化け物に変化する。反射的に飛びのこうとするが奴に掴まれていて逃げられない。
「ま、待っ────」
「待つかボケ」
奴が突き出した拳が僕の顔面に叩き込まれる。全身が宙に浮くような感覚に包まれる。その感覚から数秒後、僕の意識は闇に閉ざされた。
うん。殺っちゃったぜ☆。ついブチ切れて本気でぶん殴ってしまった。デルタギアの件でイラついてたらとんでもなくくだらん理由で殺されたんだ。これぐらいはいいだろう?
てか俺⋯⋯⋯オルフェノクになってる!?
「しかもホースオルフェノクとか⋯⋯」
マジで木場さんじゃねぇか。これは俺にオーガになれという神の啓示か!?
⋯⋯⋯んなわけねぇか。てかこの
「────おいおい! 何があったんだよ!?」
イラつきのあまり男の顔面を踏み潰そうと奴に向けて足を踏み出そうとしたらなんかまたいかにも
⋯⋯⋯⋯ならぶっ飛ばしても問題ないよな? 無いよね? よし、無いな(確定)。
俺はアタッシュケースを開き、オルフェノク化を解きながらデルタギアを装着する。
「おい、アンタ」
「ああ!? てめぇがこいつをやったのか!?」
めんどいから無視する。
「てめぇがライダーズギアの目撃者第1号だ。光栄に思いな」
「何訳のわかんねぇ事言って──」
「変身」
『Standing by』
『Complete』
デルタフォンをデルタムーバーに接続。ベルトから白いライン───フォトンストリームが全身に伸び、俺は白光に包まれる。
光が収まった時、そこには白いラインが走る黒い鎧を纏った俺────仮面ライダーデルタが、確かにそこに立っていた。
驚愕に顔を染めた目の前のクソ野郎に俺は言い放つ。
「────さぁ、お前の罪を数えろ!!」
作品違う? 気にすんな。
「クソっ、クソっクソぉっ!?」
ふざけんなよ!? ヒーロー共を撒いて漸く好き勝手出来ると思ってたのに⋯⋯なんで
「畜生が!? やられてたまるかよォ!!」
先手必勝、俺は個性の『岩石』を掌から射出する。直径1m弱の大岩は寸分たがわず奴の顔面に飛んで行った。
奴は軽く腕を振り、岩のど真ん中に拳を叩き込んだ。結果、あっさりと岩は砕け散った。
「ハァ!」
「はぁ!?」
奴と俺の口から発せられた言葉。同じ音でもそこには明確な違いが現れている。奴は軽く気合を入れただけ。
俺は攻撃がいとも簡単に防がれた事への驚愕。
奴はプラプラと軽く手を振り握ったり開いたりして感触を確かめている。
「しっかりと機能してるな。第1段階はクリアってとこか」
余裕綽々なその態度が癇に障る。怒りに任せてそのまま何発も奴に岩石を放つが、
「────ハァアアアアッ!!」
岩石を掴まれ、投げ返されて相殺され、アッパーで粉々に吹き飛ばされる。俺の個性が全く通用しない⋯!?
「身体にも馴染む⋯⋯⋯第2段階もOKだ。さて、」
奴は腰のベルトから無線機のようなものを引き抜き、それと一緒にメモリをベルト中央から取り外した。
「第3段階だ。死ぬなよ?」
『Ready』
機械音声が響くと同時に銃身が伸び、無線機が銃になった。
「Check」
『ExceedCharge』
奴の全身に張り巡らされた白いラインを同色の発光体が伝う。それが奴の左手にたどり着いた時、甲高い電子音を響かせながら銃から白い馬鹿でかい角錐が俺に向かって射出され突き刺さった。とは言え特にダメージがある訳じゃない。が、
「う、動けねぇ!?」
まるで全身に鉛がまとわりついているかのように身体が動かない。俺がもがいているうちに奴は銃を腰に収め、その場で飛び上がっていた。俺がその事に気づいて上を見あげた時には既に遅かった。
「ルシファーズ、ハンマァアアアアアア!!!!」
奴から放たれた蹴りが俺の胸に突き刺さる。薄れゆく意識の中、俺の目の前に浮かんだ
「第3段階⋯⋯⋯クリアだ」
きっかり必殺技も発動してるしオルフェノクじゃない
「いよっしっ! なら次はカイザだな」
カイザギア────仮面ライダー界屈指のド外道(と勝手に思ってる)草加雅人が変身する、仮面ライダー555における2号ライダー。普通の人間が使用すれば即死亡という別名『呪いのベルト』である。確かこいつはデルタの後に造られたやつだったか。帝王のベルトという手もあるが今の俺がアレを再現しようとすればデルタギアをバラして作り直す必要がある。それは避けたい⋯⋯⋯ならばカイザギアしかないだろう。
そのままデルタの状態で色々と考え込んでいると突如声がかかる。
「き、貴様っ!?」
「あん?」
あー⋯⋯なんだっけかコイツ。原作でのヒーロー陣営にこんなのが居た気が⋯⋯。
「貴様も仮面ライダーだな!? ここで捕らえる!!」
「へ?」
いや待てや。なんで仮面ライダーを知ってる? てか
「くっ、せめて他に誰か居れば⋯⋯⋯」
「────HAHAHA! もう大丈夫! 何故かって?」
「え?」
「あ、貴方はっ!?」
え、まってなんでアンタがそんなおもくそ拳を引き絞って、
「────私が来た!! DETROIT SMASH!!!」
「待────」
ドゴォォォォオオオオオオオ!!!! と爆音を立てて俺の胸に彼────オールマイトの拳が突き刺さる。
俺は声も出せずに吹っ飛んだ。全身を浮遊感が襲う。そのまま吹き飛び続け
なんでそんな事がわかったのかって? だって俺がいたはずの場所を強化されたライダーアイでみたらめっちゃ離れてるもん。周りも森だし。なぜぶん殴られたのかはわからんがさっさと逃げようと思いその場所を後にしたら山の中だったんだよ。オールマイトマジバケモン。
⋯⋯あ、アタッシュケースほったらかしだ。高かったんだけどなアレ。
まぁ過ぎた事は仕方ない。取り敢えずここからならラボの方が近いので一旦そっちに避難するか。
で、仕方なしにラボに戻った俺を迎えたのは⋯、
「おかえり」
「⋯⋯取り敢えず聞きたい事がいくつかある。まず第一に鍵かけてたのにどうやって入った? 第2になんでテーブルの上に料理がある? 第3、持ち込んだ覚えのないテレビとかの家電があるんだが?」
黒髪ロングのスレンダー無表情系美少女が何故か居る。テーブルの上にはめちゃくちゃ美味そうな料理が並べられている。てかそもそもここキッチンなんて無いんだけど⋯⋯。
「愛の力」
「⋯⋯まぁ万歩譲って良しとする。でもな⋯⋯」
俺はビシッと指を突きつけた。
「なんで
何故か裸エプロンのこの美少女、名を木場翼という。お察しの通り俺の姉だ。姉貴は⋯⋯⋯天然というかなんというか⋯⋯ちょっと行動が読めない。現に、ほら────
「ふみゅ⋯⋯ちゅ、チュパッ、じゅる」
「────って指を舐めるな!?」
突き出した指をそりゃあもう丁寧にペロペロと舐めてくる。この姉、自分で言うのもなんだけど俺の事が大好きすぎる。両親が俺を嫌ってる反動で俺の事好き好き大好きになってしまった残姉なのだ。俺が指を翼の口から引き抜くと唾液がツーーーと糸を引く。ヤベぇめっちゃエロい。
「ダメ?」
「ダメに決まってんだろ⋯⋯」
こんなんでも成績は常にトップクラス。良個性と整ったルックスもあって学校の人気者。でも家だと残姉ちゃん。どうしてこうなった?
「てかこのテレビどした?どう見ても最新のモデルだろ?」
俺は基本テレビを見ない。研究が忙しくてそんな暇なんぞ無かったのだ。つーわけでここんとこの社会情勢なんぞも全くわからん。
「頼んだら、買ってくれた」
「⋯⋯ちなみになんて?」
「パパ、買って? って上目遣いで言ったら買ってくれた」
「親父ェ⋯⋯」
娘にいい様に使われてんじゃねぇかオイ。
「テレビ見ながら、一緒に食べよ?」
「あーーわかった。わかったから服を着ろ。OK?」
「おーけー」
サムズアップしながら俺の前にも関わらずエプロンを脱ぎだす翼。もうちょい恥じらいを持とうや⋯⋯。
『今日夕方未明、〇〇市で新たな『仮面ライダー』が発見されました』
「ん?」
テレビから流れてきた言葉に食事の手を止める。テレビを見れば若いアナウンサーと歳食った解説っぽい男が話していた。
『また新たな仮面ライダーが現れましたね』
『その様ですね。確か今回の奴は通りすがりの
「⋯⋯⋯どういうこった?」
あのヒーローもそうだが明らかにこの世界の人間は仮面ライダーを知っている。存在する筈の無い彼らをだ。しかも口振りからしてあまりいい印象を持っていないらしい。
『そもそも仮面ライダーとは何なのですか?』
『そうですね⋯⋯彼らが初めて出現したのは25年程前の事です。突如現れた彼らは摩訶不思議な道具を使い
途中から解説のおっさんの話が全く頭に入ってこなかった。おい待て、するてーとあれか? 俺以外の転生者共は全員仮面ライダーで
────ほぉ⋯⋯⋯。成程な、俺がやるべき事はよーーーーくわかった。俺は残りのメシを一気にかき込んだ。
「翼」
「ん」
「メシ、ありがとな。美味かった」
「ん、お粗末様」
翼の言葉を聞きながら俺はラボの奥の研究室へ行く。 今の俺の顔はとんでもないことになってるだろう。自分でもわかるくらいに目と歯を剥き出しにしてキレてるもん。
(転生者共⋯⋯⋯テメェらは俺を怒らせた)
皆のヒーローたる仮面ライダーで
「ようやくこの世界で俺がやる事が決まったぜ⋯⋯」
ありがとよ神様。今ならアンタがヨボヨボの婆さんだろうがむさ苦しいおっさんだろうが喜んでキスしてやるよ。
────俺、転生者共が仮面ライダーになって
「一匹残らず根絶やしにしてやらァ⋯⋯!!」
俺は燃えたぎる憤怒に身を焦がしながら次なるギアの制作に取り掛かる。
────全ては、クソ転生者共をぶち殺す為に。
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自覚はあんまり無いけどヒーロー大好きな木場っちゃん
────俺がオールマイトにぶっ飛ばされ、他の転生者達の存在を知ってから2年。俺は来年に受験を控えた中学3年生になった。いきなり時間が飛んだのでこれまでの事をいくつか説明しようと思う。
第1に、俺は原作で緑谷出久と爆豪勝己が通っていた市立折寺中学に入学している。家から近かったのもあるが早めに原作勢と合流しておきたかったのもある。クラスが同じだったのもあり緑谷────いや、出久とは『無個性』同士仲良くしている。反対に爆豪とは仲が悪い。俺が『無個性』で、緑谷とつるんでいるのが気に入らないらしく何かと突っかかって来るのだ。まぁ1回ボコボコにしてやったんだけど。オルフェノクになったおかげで素のスペックも多少上昇してるらしい。割と瞬殺だった。ついでに言えばこの世界他にもオルフェノクが居るらしい。大体がオールマイトに叩き潰されているらしいけど。扱いとしては異形化個性の集まりで「こいつら
「────ねぇねぇ木場くん?」
「ん?どしたアリア」
「何かボーッとしてるみたいだったからね。どうかしたの?」
「ん、悪い。ちょっと考え事をな」
第2に俺に話しかけてきたこの金髪の⋯⋯⋯早い話がアルトリア顔。こいつはアリア・ペンドラゴン。俺と同じ転生者である。こいつは俺と違って転生する際に神に会っているらしく、その際に色々と転生特典を貰ったらしい。確かアルトリアの肉体と『個性』として発現した『召喚』だったか。個性名からわかる通り、英霊やその他色々なもんを召喚出来るらしい。が、召喚したモノのスペックは本人の技量に左右される様で、英霊で言えば現時点で本来の10%位しか力を発揮できないらしい。それでも俺程度なら瞬殺だけど。
このアリア。1年の頃に留学という形でこの学校に来たのだが1発で転生者とわかった。だってアルトリア顔なんてリアルにいるわけねぇじゃん。すぐ様人気のない場所に呼び出して敵対の意思が無いかの確認、ついでに協力体制を取り付けた。俺がこれから他の転生者達を始末する際に他の転生者に邪魔されたら困る。ならば協力者を作ればいいという事でこいつの存在はまさにうってつけだった。今では中々友好な関係を築けていると思う。
で、第3なのだが⋯⋯これは後で説明しよう。丁度今、第1話のあのシーンが始まる所だ。
「えー、君たちも3年、受験生という事でだ!そろそろ本格的に進路を考えて行く時期なんだが────」
先生はそこで言葉を区切って持っていた進路希望調査の紙を投げ捨てる。
「ま、皆大体ヒーロー科志望だよね」
教師の言葉と共に一斉に個性を発動させながら手を挙げる他の生徒一同。生徒の視点から見るとあっちこっちがしっちゃかめっちゃかしていて中々面白い。俺?だって無個性だし。オルフェノク化はそもそも個性じゃないし。アリアは個性使用に色々制約があるから発動していないがしっかりと手を挙げている。出久は原作通り縮こまりながらも手を挙げている。
「おーいい個性だなみんな!でも原則個性は使用禁止だから取り敢えず止めようか!」
「せんせー!俺をこんな『没個性』共と一緒にすんなよ!」
あー来たよめんどいのが。ご丁寧に机に足乗っけて不良アピール付きのツンツン頭────爆豪が声を上げる。
「俺はこんな底辺共と仲良く行ったりしねーっての」
「おいおいそりゃねーぞカツキ!!」
「うっせーモブ共黙ってろ!」
うるせぇ⋯⋯⋯。精神年齢30越えの俺としてはこんなガキ臭い騒ぎなんぞめんどくさいだけだ。悪いとは言わないがもう少し静かにしてほしい。
「そういや爆豪は雄英志望だったな」
教師のその一言でざわっ、とクラス内にざわめきが広がる。まだ続くのかこの騒ぎ。
「雄英!?偏差値79のあの!?」
「倍率もとんでもないんだろ!?」
「ハッ!テメェらモブ共と一緒にすんな!!俺はオールマイトを超えてトップヒーローになんだからな!!」
「あ、そういや緑谷と木場、ペンドラゴンも雄英志望だったか?」
オイコラ余計な事言ってんじゃねーよクソ教師ィ!頭の毛全部むしり取ってやろうかァ!?
教師の言葉に固まったクラスメイト達。次の瞬間一斉に吹き出した。
「はぁ!?ペンドラゴンさんはともかく『無個性』の緑谷と木場だぁ!?」
「無理に決まってんじゃん!勉強だけでヒーロー科入れるほど甘くねーぞー!」
「ッ!」
出久が立ち上がって反論しようとするが、
「オイコラデクゥ!」
「とわっ!?」
爆豪の『個性』で机ごと吹っ飛ばされた。てか破片がこっちまで来てんだけど。
「『無個性』のテメェがヒーロー科?夢見てんじゃねぇぞコラ!」
「ま、待ってよかっちゃん。別にそんなつもりは⋯⋯」
「本気だってか?尚悪いわアホ!」
口悪いなぁホント。さすが糞を下水で煮込んだような性格。
「テメェもだぞ馬野郎!!」
「木場だっつってんだろーがボンバーマン!!」
「大して変わんねぇよタコ!!」
「大違いだクソボケ!!」
「あァ!?やんのかコラァ!」
「殺れるもんならやってみろや!!無個性の俺にボコられたクセして随分と自信満々だなぁオイ!?」
「昔の話だろうが!!蒸し返すんじゃねぇ!!」
⋯⋯⋯まぁこの通り俺と爆豪の中はクソみたいに悪い。初めてボコった時の「ププッ、個性持ちってこの程度なの?ワロスワロスwwwwwwwww」が不味かったのかもしれない。悔しがる爆豪の姿が死ぬ程面白かったから後悔はしていないけど。
「ハッ、どうせ無個性のお前らがヒーロー科なんかに入れるワケ「何勘違いしてんだ」あ?」
「俺はヒーロー科じゃなくて『サポート科』志望だアホ。俺が研究者なのはテメェも知ってんだろが」
勘違いを指摘すると周りから納得したような声が聞こえてきた。
「あーーそういやなんか色々と作ってたな」
「昼休みとかよくヒーロー向けのサポートアイテム取り扱ってる会社について調べてたもんな」
「サポート科なら納得だな」
え?なんでヒーロー科じゃないのかって?だってサポート科の方がギアの整備費用とか安くすみそうじゃん?色々とあってそこそこ稼いでる俺だが⋯⋯この事については後で説明しよう。ま、とにかく費用削減できるなら出来るだけしときたいからな。卒業した後ヴィジランテにでもなりゃイイさ。
「⋯⋯⋯チッ」
爆豪は周りの反応に舌打ちを1つ、イラついた様子で緑谷に向かってゆく。あ、これは不味い。
「将来の為のヒーロー分析⋯⋯ねぇ」
出久の代名詞とも言えるヒーローノートを手に取り、有無を言わせず爆破する。
「なっ!?何するんだよかっちゃん!」
「うるせぇぞクソナード!テメェみたいな奴がヒーローになれるワケねーんだよ!さっさと諦めろ糞が!」
「そ、そんなのやってみないと」
「わからないってか?『無個性』で!大して強い訳でもないお前に!何が出来るってんだ!あァ!?」
オイオイ、一応原作だとノート爆破は放課後のはずだったんだが⋯⋯⋯俺が居るせいで色々とズレてんのか?
出久は完全に萎縮してしまっている。まぁ爆豪が言ってることはある意味正論だ。『力』が無いのに『力』を必要とするヒーローになりたいだなんて馬鹿げている。正直俺もそう思う。が、
「爆豪」
「あ?なんだ馬野郎」
「木場っちゃん⋯⋯?」
こいつは大前提からして間違ってんだよ。
「ヒーローになる為の条件って、なんだと思う?」
「あ?そんなもんヒーロー免許に決まって⋯」
「はい不正解」
「あァ!?テメェ何が言いてぇんだ!」
「『ヒーロー』の何たるかを知らねぇテメェが『ヒーロー』語ってんじゃねぇっつってんだカスが」
毎度毎度胸糞悪い。高々14のガキが『ヒーロー』を、
「テメェ⋯⋯」
爆豪の掌が爆ぜる。ほぉ、個性使ってやろうってか?
「いいぜ、相手してやるよ⋯」
バキリと拳を鳴らし臨戦態勢をとる。丁度いい此処でテメェには退場して、
「そこまでだ!爆豪!個性の使用は校内では禁止!木場も!爆豪を煽るんじゃない!」
「チッ⋯」
「へいへい了解っと」
ま、今はこれで良しとしますか。
あ、そうそうここ数年で起こった事の続きがまだだったな。
第3にスマートブレイン、設立しちゃいました。いや、社長社員含め俺一人なんだけどね?とあるヒーロー専門のサポートアイテムを、取り扱ってる会社⋯⋯MAXIMUM・SUPPORT・COMPANYことMSCだったっけ?そこに自作のサポートアイテム売り込んだら1発採用されちゃってな?今じゃ会社の株を7割ほど持ってるし『開発主任:スマートブレイン様』って感じになってるし。ぶっちゃけ俺の発言力が社長よりも上になってんだよね。ま、当然だけど俺は素顔は晒してない。ボイスチェンジャーを使って電話越しにMSCの人達とは話してる。名前は村上峡児を使ってる。だってスマートブレインつったら村上社長じゃん?少なくとも今社会に顔を晒すつもりは無いしな。晒すならもっとデカい機会⋯⋯雄英体育祭辺りが狙い目だと思ってる。
え?そもそも受かるのかって?舐めんな。1度した勉強は余裕だしあとは高校の応用だけだ。モーマンタイだぜ。
で、ラスト第4。ライダーズギア製作についての事。端的に言えば⋯⋯出来ちゃったよ。カイザギアとファイズギア。ぶっちゃけデルタギアがあったからそこまでの苦労は無かった。2つ合わせて1年かからなかった位だ。気になるスペックの方だが3つとも大体オリジナルの7、8割程。初期の頃が4割ちょいだったので充分な進歩だろう。オートバジンやサイドバッシャーも完成してるしほぼ再現出来たと言っていい。気になるのがフォトンブラッドの毒性だが、これについても何とか改善した。
いや〜大変だったよ。出力落とさずに毒性のみを抑制するって。それでも多少スペックは落ちてしまった。完成度が7、8割と言うのもここが原因らしい。流石に寿命には代えられないからしゃあないけど。
今現在は帝王のベルトことサイガギアとオーガギアの製作に取り掛かっているが、完成はまだまだ先になりそうだ。
さて、一段落着いたところで今の俺について説明しよう。現在、俺はサイドバッシャーにアリアを乗っけて街中を疾駆している。何故かって?例のヘドロ
「⋯⋯!⋯⋯⋯⋯!?」
「風でなんて言ってるか聞こえねぇ!もっと大きな声で喋れ!!」
「免許!!持ってないのに!!バイク乗って!平気なの!」
「こいつはバイクじゃねぇ!サポートロボだ!!」
『マスター。流石に無理があるかと』
「うっせぇ黙ってろサディー!!」
今喋ったのは俺がサイドバッシャーに搭載したAI通称『サディー』。どうせなら喋れたらなーとか思いながら作ってたらたまたまサディーが出来たから搭載してみたんだけどコイツ、中々めんどいのだ。一応俺はサイドバッシャーだけでなくオートバジンの方──当然だけどこちらもAI搭載──にも乗るんだけどこいつは俺が他のバイクに乗ると『浮気者。私とは遊びだったんですね』とか言って臍を曲げやがるから機嫌をとるのが大変なのだ。ホント、どうしてこうなったのやら⋯⋯。
「っと、そうこう言ってるうちに着いたみたいだぞ」
キキィッと音を立てながらバッシャーを停める。
おーやってるやってるヘドロ
おーおーいい感じに苦しんでやがるな。普段の行いの結果だヴァカめ。まぁ辛抱してな。もう少しでオールマイトに助けてもらえるから。
「放っておいていいの?助けた方が⋯」
「今出てったら余計面倒になるだけだ。出久とオールマイトに任せときゃ良いんだよ」
『流石マスター。相変わらずのゲスっぷりですね』
「だから黙ってろつってんだろサディー」
あまり介入して出久のワンフォーオール継承に支障をきたしたくないんだよ。こういうのは見てるのが一番さ。
「お、出久が来たぞ」
「あ、ホントだ」
出久は制止するヒーロー達の言葉も聞かずにヘドロ
「クソ⋯ナード!何で⋯⋯⋯テメェが!」
「わかんないよ!!けど!」
「君が!救けを求める顔をしてたから!」
「来た!」
「あの名シーン⋯⋯!」
おう、流石アニオタアリア。こいつ俺でも知らないようなマニアックなアニメとか網羅してんだよな。当然ヒロアカも読み込んでてこういうのは大好物だそうだ。
当然俺もこのシーンは大好きだ。チート無双系では見る事の出来ない、自らが傷つく事を厭わないヒーローらしい行動。誰かの為に命を懸けて戦えるなんてカッコよすぎるぜ。
ま、
さて、あとはオールマイトを待つばかりだな。
⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯ん?
「あれ?」
「来ない⋯⋯⋯だと?」
待て待て待て待て待て待て。オイオールマイト何してんの?早くしねぇと出久が⋯⋯!?
「邪魔なんだよクソガキィ!!」
「っやべぇ⋯!」
ヘドロ
「死⋯⋯!」
「っチィ!」
アリアが不吉な1文字を呟いた瞬間に俺はバッシャーに駆け寄っていた。サイドカー内に入れて置いたアタッシュケースを開き、中のカイザギアを腰に装着する。
「アリア!お前はここにいろ!俺が行く!」
「え!?で、でも!」
「お前の『個性』じゃ時間が掛かりすぎる!リスクはでけぇが出久が死ぬよりマシだ!サディーは待機!何かあったらすぐに駆けつけれるようにしとけ!」
『Yes,Master』
アリアに叫び、サディーに命令し、出久達の元へ走りながら変身コードを入力する。
『913 Enter』
『standingby』
「変身!」
『complete』
デルタとは違い重低音な機会音声が響き、俺の体をフォトンストリームと黄色の光が覆う。俺は野次馬とヒーロー達を飛び越えてヘドロ
「お、おいアレ!」
「か、仮面ライダーだ!」
「ちくしょう!?なんだってこんな時に!?」
後ろでゴチャゴチャ言ってるがそんな暇なんぞねぇんだ口閉じてろ!腰のカイザブレイガンにミッションメモリを挿入。ブレイガンをソードモードへ変更する。
「悪いがさっさとケリをつける!」
『Exceedcharge』
フォトンストリームを光点が伝い、右腕からブレイガンにフォトンブラッドを供給する。撃鉄を引き、拘束弾をヘドロ
「がぁっ!?う、動けっ⋯!?」
「出久!どけぇぇぇえええええ!!!」
「え、うわぁああああああああ!!!!?」
走ってくる俺の姿にパニックになってヘドロ
んじゃま、そのまま大人しくしてろよ爆豪ォ!
「カイザ────スラァァァァァッシュ!!」
高速でX字にヘドロ
「え⋯⋯は⋯⋯?」
「な、何が⋯⋯」
ぶっつけ本番だけどなんとか成功か。いやー
「無事か?」
「あ、ああ⋯⋯」
「な、なんとか⋯⋯」
爆豪がやけに大人しい!?明日は槍でも降るのか⋯⋯。いやいい事なんだけどね?違和感が凄いというか⋯。てかなんか周りが騒がしいな⋯って。
「「「⋯⋯⋯⋯」」」
oh......プロヒーロー達がジリジリ近寄ってきてやがる。倒せなくはないけどやったらやったで面倒なんだよなぁ⋯。よし、こういう時はコミュニケーションの基本!対話でなんとか⋯⋯なるといいなぁ。
「何のつもりだ、ヒーロー」
「なんのつもりだと?
「然り。この場で捕えさせて貰うぞ邪悪の権化よ」
確か⋯⋯デステゴロとシンリンカムイだったか?この状況でよくそんなこと言えるなオイ?
「邪悪?俺がしたのは
「フン、貴様の仲間達がしでかした事を忘れたか?悲しみを振りまき、罪無き一般市民を多く殺めた事を知らぬとでも?」
「仲間⋯⋯⋯?」
はははは⋯⋯⋯知らねぇとはいえ流石に許容出来ねぇぞそりゃ。
「あのゴミクズ共と俺を一緒にするな不快極まりない。『仮面ライダー』の名の重みを知らん愚者なんぞと仲間?ふざけるなよ阿呆が」
転生者共への怒りが殺気となって溢れ出し周囲に充満する。ヒーロー達は後ずさり、野次馬の中には失禁したり気絶したりする奴らも居るくらいだ。それ程までに俺は怒っていた。
「────まて!そこまでにしてもおうか!!」
「⋯⋯随分と遅い登場だなオールマイト」
「お、オールマイト!」
「もう大丈夫!私が来た!!」
「来た!じゃねぇんだよこの筋肉ダルマァ!」
一々その台詞をほざく目の前のクソゴリラに腹が立つ。居るんならさっさと爆豪助けろってんだボケが。
オールマイトは俺の罵倒に反応を返すことなく構えをとる。問答無用って訳かい?思ったよりつまらん男だな。期待外れもいいとこだ。
「相変わらず人の話を聞かない奴だな。おかげでいい迷惑だ」
「⋯?以前会った事があるのかい?生憎と初めてみるタイプだけどね」
「2年前、テメェがぶっ飛ばした黒い仮面ライダーを覚えているか?」
「あぁ、勿論⋯⋯まさか!?」
「そうだよ。アレが俺だ。ったく、
ヤレヤレと愚痴る俺の反応に汗をかき始めるオールマイト。そして恐る恐る口を開く。
「⋯⋯⋯⋯えっと、もしかして私の早とちり?」
「そうだっつってんだろバカ。脳味噌まで筋肉で出来てんのかゴリラーマン」
「流石にあそこまでタラコ唇じゃ無いよ!?」
「知ってんのかよ⋯⋯」
意外⋯⋯じゃなくて、だ。
「つー訳で今回も似たようなもんだ。たまたま見かけて、ヒーロー共が何も出来ないでいたから救けた。何か問題でもあるか?」
「いやしかし⋯⋯個性の不正使用は⋯」
「こいつは個性なんてちゃちなもんじゃねーよ。その気になりゃ誰でも造れる機械みたいなもんだ」
「そんなものが⋯⋯⋯⋯君は、一体⋯⋯?」
俺はその問に答えずに無言で背を向ける。ぶっちゃけこれ以上いたらボロが出そうだからさっさと退散したいんだよ。
「待ってくれ!君は何者なんだ!?」
「⋯⋯仮面ライダーさ────彼らの名を汚す紛い物共を始末する為に俺は居る」
「紛い物⋯⋯?どういう事だ?仮面ライダーとは
「仮面ライダーは真の意味で『ヒーロー』だよ。そこいらの世俗にまみれた紛い物と違ってな」
それだけ言って俺は彼らの元を去る。少し言いすぎたかも知れないが必要経費だ。いずれ俺の正体がバレるのは避けられない。それまでに少しでも仮面ライダーに対する印象を良くしておく必要がある。その為に必要な布石を⋯⋯予想外だったとは言え打っておけたのは僥倖だろう。
⋯⋯それにしてもオールマイトは何故遅れた?アレ程のヒーローが遅れるなんぞ考えにくいが⋯⋯。
「⋯考えても仕方ないか」
路地裏に入ったところで変身解除。ついでにバッシャーを呼び寄せる。サイドカーには相変わらずアリアが乗っていた。
「木場くん大丈夫?バレちゃったんじゃ⋯⋯」
「ま、いずれバレる事さ。気にしても仕方ないよ。それより送ってくよ。家、ここから遠いだろ?」
「うん、ありがと。でも気をつけてね?いっつも無茶するんだから⋯」
「姉貴にも散々言われてるよ」
そのままバッシャーのエンジンを吹かし、ヘルメットを被って発進する。
さて、10ヶ月後の雄英入試まで、俺も仕上げますかねぇ。
オリキャラステータス
木場勇治
容姿:555本編の木場さんが一回り若くなった感じ。本人の性格もありややワイルドな雰囲気。
性格:転生者達への怒りやかっちゃんの影響もあり荒っぽい。が、その実困っている人を放っておけない自覚無し系お人好し。要するに『優しいヤンキー』。
個性:無し
備考
・唐突にヒロアカ世界に転生した少年。
チートなんぞ無いが執念とも言える努力の結果、
ライダーズギアを製作するレベルの技術を有するまでに達した。
13歳の時に
現代の俗物的なヒーローを余り快く思っておらず、仮面ライダーや紅い弓兵、オールマイトなどの対価を求めないヒーローに憧れを抱いている。
一方で、「彼らは狂人だったからこそあの様になれた」と思っており、彼らの生き様を危険視している節がある。最も、憧れの方が強いので滅多に表に考えを出さないが。
ややオタク気質。
好きな特撮は仮面ライダー555。
好きなロボットはアラバキ。
アリア・ペンドラゴン
容姿:まんまアルトリア。
性格:現代のよくいる少女、といった風。木場とはオタク同士気が合うらしい。
個性:召喚。様々なモノを喚び出せる八百万百の上位互換個性。が、喚び出すモノが強大であればある程本人の負担が増すので英霊クラスの同時召喚は(サーヴァントの格にもよるが)2体が限度。
備考
・木場が遭遇した初めての転生者。木場が中学一年の頃に市立折寺中学に転校してきた。
本人に敵対意志は無く、寧ろ協力を申し出たこともあり木場と一緒に行動することが多い。
普段は英霊を呼び出して木場と共に稽古をつけてもらっている。
身体能力は高く、魔力放出も可能だが致命的に運動センスが無い。
結構ガチめなオタク。
好きなロボットはグレンラガン。
最近の目標はベディヴィエールに光竜滅牙槍を習得してもらうこと。
追記
・彼らがヒロアカ世界に転生した理由は好き勝手する他の転生者達の排除の為。転生者達を危険視した神が丁度いい人材を探していた所、『木場勇治』となる前の
が、うっかり転生特典を渡しそびれてしまったので急遽サポート役としてアリア・ペンドラゴンをヒロアカ世界にチートを持たせて転生させた。
尚、神は某あかいあくま並にうっかり者である。
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入学試験の日、バレた
ヘドロ
俺?俺はアリアと一緒に雄英受験の為に勉強三昧だよ。それに加えて俺はサポート科の試験に持ち込むサポートアイテムの整理、アリアは英霊の方々に鍛えられながら戦闘訓練と、休む暇なく過ごしていた。
そして今日────待ちに待った雄英受験日である。俺はアリア、出久と共に雄英の試験会場へと来ている。にしても、なぁ⋯⋯?
「デカすぎじゃね?」
「わかってはいたけどやっぱり大きいねぇ⋯」
「仮にも雄英だしこれくらいは普通だと思うけど⋯⋯」
上から俺、アリア、出久である。1人だけあんまり驚いてなかったのはそういう訳か。唯、一つだけ言わせてもらうけどな?
「試験項目に『戦闘』が含まれてるとか絶対に普通じゃないだろ」
「確かに⋯」
「オールマイトの母校だしこんなものだと思うけど⋯」
「「あぁ、成程」」
不思議と納得してしまった。確かにあんなバケモン排出してんだからこれくらい普通だわな。寧ろこの程度で大丈夫なのか心配になるくらいだ。
俺達がのんびりと雄英の馬鹿でかい試験会場の入口を眺めていると後ろから聞きたくもないクソ野郎の声が聞こえてきた。
「どけ!邪魔だテメェら!!」
「⋯⋯あぁ?朝からウザってぇ騒音がすんなァ?」
「ちょ!木場っちゃん抑えて!」
「ど、どうぞー爆豪くん」
「⋯⋯チッ!」
舌打ちしたいのはこっちだボンバーファッキューめ。朝から嫌なもん見ちまったぜ糞が。
「⋯⋯本当、爆豪くんと仲悪いね木場くん」
「寧ろあんな奴と仲良く出来る奴なんてそうそう居ねぇよ。出久もよくあんな奴と幼馴染やってるよな」
「⋯⋯えっと、かっちゃんもかっちゃんで優しい所はあるよ?」
「「ないない絶対無い」」
「そこまで言うっ!?」
だって爆豪が誰かに優しくするなんて天地がひっくり返ってもある訳ないだろ。そんな時が来たらそれこそ世界の終わりだ。
「っと、こんな所にずっと突っ立っとくのもアレだ。そろそろ俺達も行こうぜ」
「そうだね。それじゃ、試験終わりにまたね」
「おう。アリア達も頑張れよ」
「うん。木場っちゃんも頑張ってね」
「ま、精々サポート科1位を狙って頑張ってくらぁ」
そう言って俺は出久達と別れ、サポート科の試験会場へと向かった。
尚、出久と麗日との出会いを見る事が出来ない事に気づいて地味にショックだった。後でアリアに詳細教えて貰おう。
『今日は俺のライヴにようこそーーーー!!!!
エヴィバディセイヘイ!!!!?』
────シ────────ン。
沈黙が、痛過ぎる⋯⋯。てか何故にプレゼント・マイク?ヒーロー科の方の説明担当じゃ無かったのか?向こうの説明が終わったからこっちでもやってんのか?
『コイツはシヴィーーー!!!受験生のリスナー共!
今からサポート科実技試験の概要をサクッとプレゼンして行くぜ!!アーユーレディ?』
『YEAHHHHHHHHHHHHH!!!!』
シ────────────────ン。
いやもう良いから。これ以上沈黙が続いても痛々しいだけだから早く進めてくれ頼むから。
面倒な前置きから始まり、漸く概要を説明しだすプレゼント・マイク。
『内容は入試要項通り!サポート科志望のリスナー達にはこの後!!持ち込んだ自慢のアイテム達と共に模擬市街地演習を行ってもらうぜ!!!
演習場には1、2、3のPtが割り振られた仮想
演習後にはサポート科の教師に自分の作品をプレゼンして貰うぜ!!演習で実用性を示し、その後のプレゼンでそれを売り込む!!全てはリスナー達の腕に掛かってるって訳だ!!!』
サポート科志望の受験生に戦闘させる意味ある?てかこれある意味ヒーロー科より難易度高いじゃねーか。戦闘はそもそも荒事を想定してない連中からしたらだいぶキツいぞ。売り込みも、口下手な奴は厳しいだろうな。流石雄英。早速ふるいにかけてきやがったか。
『俺からは以上だ!では最後にリスナーへ我が雄英の校訓をプレゼントしよう!!
かの英雄ナポレオン・ボナパルトはこう言った!
「真の英雄とは人生の不幸を乗り越えていく者」と!!
“
それでは皆良い受難を!!!』
⋯⋯無茶苦茶だなぁ。けど、
「雄英らしいっちゃらしいのか」
思わずポツリと呟き、俺は持ち込んだアタッシュケースを持ち上げて試験会場へと向かった。
────試験会場。例の例のだだっ広い街である。周りには多種多様なアイテムを抱えたサポート科の受験生達。『個性』の影響もあるのか奇っ怪な姿をしている者も居る。
────そんな連中が皆俺を見ていた。
「⋯⋯⋯」
『フッフーン!いやーやっぱりわかる人にはわかるんですねーこの魅惑のアイアンボディが放つオーラが!!マスターももっと可愛がってくれてもっあ痛ったぁ!!?なんでフレームを殴るんですかマスター!?』
このクソうるせぇバイクが原因だよド畜生め。思わずフロントフレームをぶん殴っちまった。
「うるせぇから少し黙ってろ『マリー』。気が散る」
『ぶーぶー!折角マスターの緊張をほぐして差し上げようとしたのにー!殴るなんてあんまあだだだだだ!!?ボディをグリグリするのやめて地味に痛いっ!?』
このバイクの名称は『オートバジン』。仮面ライダー555の専用バイクで通常のバイク状態から人型ロボットへと変わるバトルモードを備えたビックリマシンだ。
で、このペチャクチャとよく喋るのがオートバジンに俺が搭載した
こいつが出来た頃はもうちっとサディーみたいに物静かだったんだが⋯⋯⋯なんでこうなったやら。
『────はいスタートー!』
⋯⋯⋯⋯⋯ん?
『どうしたどうしたぁ!?実戦にカウントなんざねぇんだよ走れ走れぇ!!!
賽は投げられてんぞぉ!!?』
「バカやってる場合じゃねぇ!行くぞマリー!!」
『はいはーい!マリーちゃん頑張っちゃいますよー!!』
プレゼント・マイクの声が響き、すぐ様バジンに跨り、発進する。他の受験生が慌てている中、俺は先頭で市街地へと躍り出た。
『目標発見ブッコロス!!』
早速出てきやがったぜ仮想
『マスター!このままじゃぶつかりますよーー!?』
「構わん轢き殺せ!!」
『ブッコロス!!ブッコロ────〖ドグシャッ〗!!』
鈍い音を立ててバジンに踏み潰される仮想
『ううぅ~~。マスター後でしっかり整備してくださいよぉ?これ痛いんですからぁ~』
「わかったわかった。じゃ、さっさと殲滅するか」
『Rady』
バジンから降りて左ハンドルにミッションメモリーを装填して引き抜く。顕になったのは赤い刀身。ファイズの武器の1つであるファイズエッジだ。
『103 Enter』
『Single Mode』
更にファイズフォンをフォンブラスター形態に変更。ベルトは付けているだけで変身はしていないが充分戦える状態だ。
「マリー。バトルモードだ」
『Battle Mode』
『りょーかいです!連中を蜂の巣にしてやります!!』
「他の受験生巻き込むなよ?」
『失礼な!そんな事しませんよ!?』
オリジナルのバジンは何度もファイズを巻き込んで攻撃してるんだよなぁ⋯⋯。
『目標補足!ブッツブス!!』
「潰されるのはお前だタコ」
近寄ってきた仮想
『さてさてさーて!マリーちゃんもいきますよーー!!』
────バラララララララララララララ!!!!
空中に飛び上がって仮想
「んじゃ、精々俺らの糧になってくれや」
俺は獰猛な笑みを張り付かせながら仮想
────雄英入試試験会場 モニター室
「どうだ今年は?」
「いやー中々の豊作だな!全体的に動きが良い」
「特にこの爆発の『個性』の受験生。
試験会場のモニター室に響く複数人の声。彼らはいずれもプロヒーローである雄英の教師陣である。いくつかの
「そう言えば、サポート科の方は────どうした?パワーローダー」
1人の教師が困惑の声を上げる。周りの教師が名指しされたヒーロー────パワーローダーを見れば、否、サポート科担当の教師達が、なんというか、困惑というか、呆れというか、とにかく変な表情をしている。
「どうした?何か問題でもあったのか?」
「いや⋯⋯⋯この受験生なんだが」
「んん?受験番号0555の⋯⋯木場勇治?この受験生がどうかしたのか?」
「⋯⋯見てみろ」
それだけ言って端の方にあるモニターを顎で示すパワーローダー。最初に言った教師がそれを見、つられて何人かが同じモニターを見る。
────数秒後、彼らは一様にサポート科担当の教師達と同じ顔をしていた。
────左手の光る剣で仮想
────空を飛びながら弾丸をバラ撒き、仮想
「なんじゃこりゃ⋯⋯」
1人が思わず零した呟きに引かれ、他の教師達も次々と同じモニターに引かれ、一様に同じ顔をする。しまいには殆どの教師が同じモニター同じ顔という状態だった。
「この受験生随分といい動きだな?これでサポート科志望なのか⋯⋯」
「てかこのロボットなんだ?仮想
「その受験生が持ち込んだサポートアイテムだよ。しかもAI搭載と来た。これは決定だな」
「ん?この受験生2年の木場翼の弟じゃないか」
「本当だ。それに⋯⋯『無個性』?」
「おいおい『無個性』でこんな動きされたら俺らの立つ瀬がねーぞ」
概ね好評価の木場。ヒーロー科でも無いのにここまで注目されるというのはある意味偉業である。
やがて、ヒーロー科の受験会場から響いた轟音に教師達は引き戻された。
「お、0Pt
「相変わらずでけぇなぁホント」
「頑張れよ受験生。真価が問われるのは────」
────ここからだ。
「────ふっ、と。これで⋯⋯何Ptだったか」
『これで102Pt!まだまだいきますよーー!!』
「⋯⋯⋯やり過ぎたか」
やっべ、バジンがいるとはいえ、ついつい俺もはっちゃけ過ぎたなこりゃ。原作でも3桁行った奴なんて居なかった筈だろうに。
「仕方ねぇ。これ以上やったら他の連中の邪魔になるな⋯⋯。マリー!もう良いから戻れ!」
『えーー!?せっかく良いとこだったのにー!』
「つべこべ抜かすな!!さっさと元に────」
────ズシン
「────あ?」
地震?にしちゃあ短いが⋯⋯。
────ズシン
『マスター。ちょっと良いですか?』
「⋯⋯⋯何だ?」
────ズシン
『私、モーレツに嫌な予感がするんですけど』
「そうか⋯⋯そりゃ奇遇だな」
────ドガァアアアアアアアアン!!!
「俺もだよド畜生ォオオオオオオオ!!?」
『どひゃぁああああ!?』
ウッソだろお前。ビル群ぶち破って0Pt
「マリー!他の受験生逃がせ!このままじゃ死人が出るぞ!!」
『ええぇぇえええええ!!?マリーちゃんも逃げたいーー!!』
「ごちゃごちゃ言ってる暇があったら急げポンコツ!!スクラップにしてやろうか!?」
『ひぃいいいいいい!!わかりましたよ!やればいいんでしょやれば!!』
他の受験生を抱え、退避していくバジン。その間も0Pt
0Pt
「マジかよクソがっ!?」
あのままじゃ潰されちまうぞ!?雄英側も見てんだろうが!?なんで止めやがらねぇ!?
『マスター!避難完了です!私達も逃げましょう!?』
「マリー!あのデカブツの目を引け!」
『なんでそんなこと言うの!?もう逃げましょうよ!?』
「奴の足元に逃げ遅れた奴が居る!救出すんぞ!」
言うやいなや全力で走り出す。瓦礫が飛んでくるがフォンブラスターで破壊し、ファイズエッジで細かい破片を切り落としながら進む。
『あぁもう!?死んだら恨みますよマスター!?』
後方で射撃音が聞こえる。0Pt
その隙に奴の足元へ潜り込み、瓦礫に挟まれた女子の元へ辿り着く。
「オイ!無事か!?」
「な、なんとか⋯⋯」
俺の問いかけに力無く、それでもハッキリ答えるサイドテールの女子。どうやら最悪の事態は避けられた様だ。
一息つきたいところだがそうもいかない。さっさと救出して逃げちまおうか。
「ふんっ!ぬぬぬぬぬぬぬぬぬ⋯⋯⋯らぁっ!!」
力技で無理矢理瓦礫を退かす。クソ重いがオルフェノク化の影響で上がっている身体能力のお陰で難なく退かす事が出来た。
「立てるか?」
「っ⋯⋯痛っつ~~⋯⋯⋯ごめん、痛くて力が入らない」
「チイッ⋯⋯しゃあねぇ、ちょっと持ってろ」
サイドテールにファイズフォンとファイズエッジを渡して抱え上げる。所謂お姫様抱っこと言う奴だ。
「ちょ!?なんでこんなっ⋯⋯!?」
「悪いが文句は受け付けねぇぞ。これが1番負担がかからねぇんだからな。
────マリー!来い!」
『やっとですかマスター!?ってマリーちゃんが命懸けで時間稼いでたのに何ラブってコメってるんですかっ!?』
「アホな事抜かしてないで逃げるぞ!!」
『Vehicle Mode』
バジンをバトルモードからビーグルモードに変更、サイドテールを抱えたまま跨る。後はコイツが勝手に運転してくれるので俺はサイドテールを抱えて落ちないように捕まっとくだけだ。
『逃げるったって何処に!?』
「デカブツが出てきたヒーロー科の試験会場に向かえ!!サポート科の連中よりゃまともな動きが出来んだろ!」
『わかりました!んじゃさっさと逃げましょう!!』
言うやいなやトップスピードで駆けるバジン。無茶苦茶なスピードだがこれでも配慮している方だ。コイツが本気なら振り落とされてる。唯でさえデカブツのお陰で荒れまくった道を走ってるんだ。なりふり構わず言ってたら耐えきれずに振り落とされてるだろう。
「オイ、サイドテール!」
「それって私の事か!?」
「お前だお前!渡した剣にメモリースティックみたいなのが刺さってんだろうからそれ抜け!」
「こ、これか?」
上手いことミッションメモリーを引き抜いたのか赤い刀身が消えていく。忘れてたが抜き身のままで持たせといたら危ないから消して正解だったな。
そのまま柄を受け取り、バジンの左ハンドルに接続する。次にミッションメモリーをフォンブラスター状態のファイズフォンに戻させて受け取る。
さて、デカブツは⋯⋯⋯ってよそ見してやがる!?
「こっち向けやデカブツゥ!!」
『106 Enter』
『Burst Mode』
フォンブラスターをバーストモードにして撃ちまくる。無茶苦茶に撃ってるので大して当たらないが、何発かは当たって奴の装甲に凹みを付ける。奴は俺を認識したのか、複眼をこっちに向け、ゆっくりと迫ってきた。
よし、上手いことこっち向いたな。
「マリー!このまま引き付けろ!」
『あぁもうAI使いの荒い!?注文多すぎです!?』
「おい!引き付けて、それからどうすんの!?」
「んなもんぶっ壊すしかねぇだろが!!」
「そんな事出来るの!?」
「俺が知るか!!」
「なんなんだよそれぇ!?」
あぁもう耳元で騒ぐなよ!?暫く走り続けていると、前の方に人影がいくつか見える。恐らく他の受験生だろう。どうやら逃げている途中のようで、他の受験生を抱えている者も見られた。
奴らの横を通って追い越し、連中の目の前に停止する。驚いた様な顔をしてるが生憎とくっちゃべっている暇はない。
「オイ!そこの⋯⋯目付きの悪いヤンキーっぽい奴!!」
「お、俺か!?」
どっかで見た事のあるヤンキーが前に出る。俺はヤンキーにサイドテールを渡した。
「コイツ連れて早く逃げろ!例のデカブツが来てんぞ!!」
行ってる間にも轟音が聞こえてくる。見れば既に300m程の距離にまでデカブツが迫ってきていた。
「急げ!!」
「わ、わかったがお前はどうするんだ!?」
「どうするか?んなもん────」
『555 Enter』
『Standingby』
ファイズフォンにコードを入力、そのまま頭上に掲げ、勢いよくベルトに挿入する。
「────ぶっ飛ばすに決まってんだろうが!
変身!!」
『Complete』
機械音声が響き、ベルトから赤いフォトンストリームが全身に延びる。赤い輝きに包まれた俺は、1拍置いて仮面ライダー555へと変身した。
「か、仮面ライダーだと!?」
「驚いてる暇があるならさっさと逃げろ!敵は待ってくれねぇぞ!!」
「っ!⋯⋯⋯すまん!!」
そう言って背を向けるヤンキー。やっと行ったかと思ったら今度は馬鹿でかい掌にガシッと捕まれる。何事かと思えば例のサイドテールが手を巨大化させて俺を掴んでいた。
「ま、待てって!?お前も一緒に⋯⋯!?」
「⋯⋯気持ちはありがてぇが答えはNoだ」
「で、でもあんな奴を無理して倒す必要なんて⋯!」
⋯⋯良い奴だなサイドテール。この状況で他人の心配出来るんだから。でもな?
「お前らヒーロー目指して
「────ヒーローは、どんな事があろうと逃げちゃいけねぇんだよ」
そうだ、彼らは────仮面ライダー達は決して逃げなかった。どんな理不尽があろうと、敵が強大だろうと、決して!
仮にもそんな彼らの力を使ってんだ!そんな俺が逃げてたまるかよ!!
「マリー!!やるぞ!!奴の気を引け!」
『ええい、こうなりゃヤケです!!?』
『Battle Mode』
再びバトルモードになって空中へと舞い上がるバジン。
俺はその間に腰のファイズポインターにミッションメモリーを装填、脚部に装着する。
『Ready』
『Exceed Charge』
ファイズフォンを開きEnter。チャージが開始され、ベルトからフォトンブラッドの光点が足のポインターへと装填される。
「マリー、合わせろ!」
『あいあいさーー!』
俺はその場で、思いっきりデカブツに向かって飛び上がる。更に目の前に割り込ませたバジンの背を蹴ってデカブツの全長よりも高く飛び上がった。
サマーソルトの動きで体勢を整えながらポインティングマーカーを射出。赤い円錐が奴の顔面に突き立ち、奴の動きが止まる。
「クリムゾンスマッシュ!!食らいやがれぇええええええええええ!!!!!」
そのまま俺はマーカーを通じて奴に全力のクリムゾンスマッシュを叩き込む。バキバキと奴の装甲が砕け、中の機械部を晒す。
「ハァアアアアアアアアアアアッッッ!!!!」
そのまま奴の顔面をぶち抜き、地面に着地する。デカブツの目の前にΦの文字が浮かび上がり、次の瞬間には奴は爆散し、粉々に砕け散った。
「⋯⋯⋯やった、か」
『し、死ぬかと思った~~~』
俺の横に降り立ち、両手を着いて疲れたアピールをするバジン。一息ついてるとこ悪いんだが⋯⋯、
「どうやらまだ終われねぇみたいだ」
『へ?』
間抜けな声を上げるマリーに顎で指し示す。その方向からは、オールマイトを先頭に雄英の教師陣がゾロゾロとこっちに向かってくるところだった。
それを見たマリーは到頭崩れ落ち、俺は面倒事の匂いに溜息をつくのだった。
「────さて、それじゃあキミについて話してもらっても良いかな?」
あの後、教師陣に囲まれた俺は目の前で変身を解除し、戦闘の意思が無いことを証明するとこのネズミ────じゃ無かった。確か雄英高校の校長の根津⋯⋯だったっけ?の所に連れてこられた。バジンとファイズギアは回収され、俺の周りに待機しているヒーロー達の一人が持っている。
「話すってのは具体的には何を?」
「そうだね⋯⋯色々あるけど、とりあえずはキミの目的、そしてこのアイテムについて。後は⋯⋯正体、かな?」
目的にギアについて、それと正体ねぇ⋯⋯。
「目的は雄英サポート科の受験。そっちは自作のサポートアイテム。正体って言われても⋯⋯プロフィールはそっちに行ってるはずだが?」
「そう、あくまで
裏の顔、あるんだろう?」
⋯⋯⋯やっぱ唯のネズミじゃねぇや。こりゃ隠し通すのは無理かね。
そう思った俺はオールマイトへと目を向ける。
「つー訳で説明頼める?オールマイト」
「⋯⋯⋯やっぱり君だったか」
「おや、オールマイト。彼とは知り合いかい?」
「はい。3年前、そして昨年私が遭遇した仮面ライダー。その正体が────」
「────俺、って訳で」
「へぇ⋯⋯それがキミの裏の顔、って訳かい」
もう1つ別の顔があるんだが別に言うことでもないので黙っておく。
「で、俺が持ち込んだあのベルトがライダーズギア3号のファイズギア。
俺が発見した新エネルギー、流体光子エネルギーフォトンブラッドをエネルギーとする対
「新エネルギー⋯⋯⋯そして3号という事は⋯」
「3年前の奴がプロトタイプの1号のデルタギア。
ヘドロの時のが2号のカイザギアだ」
「まさか学生の身でそこまでの⋯⋯⋯」
「信じ難いな⋯⋯」
周囲の教師達から声が漏れる。正直超人だらけのヒロアカ世界じゃそんな驚くような事でも無い気がするけど。
「ふむ⋯⋯⋯では何故あの姿なんだい?」
あの姿────仮面ライダーの姿の事を言っているのだろう。
「そりゃあれがコピーだからさ。オリジナルの姿を真似た、限りなく本物に近い劣化版、とでも言おうか?」
「⋯⋯⋯その口振りだとオリジナルは元からあの姿をしているのかい?」
「ああ。ちなみに言うが、世間を騒がせている仮面ライダー共も同じだ。スーツのスペックは知らんが、中身は偽物だよ」
「⋯⋯本物は彼らの様な人物ではない、と?」
(来た!)
その質問を待ってたぜネズミさんよ。俺はここぞとばかりにまくし立てる。
「たりめーだ。そもそも『仮面ライダー』ってのは
それが仮面ライダーだ。間違っても自分の欲望のままに好き勝手してる連中とは一緒にすんな」
「⋯⋯⋯そんな話は聞いたことがないがね?」
そりゃそうだ。特撮番組の中の話なんだから。しかも異世界の。だけどな、彼らが抱いていた信念は本物だ。それを『聞いたことがない』の一言でスッパリと切り捨てさせるつもりは無い。
「そりゃそうだ。彼らはいずれも大半が、仮面ライダーになった事が原因で命を落としているからな」
────ある者は身体を改造され、代償として寿命の大半を失った。
────またある者は守るべきもののために、己の存在が消え去る事を承知で仮面ライダーとして戦った。
その生涯は、まさに壮絶。俺如きでは憧れることすらおこがましい生き様。彼等の事を『男が惚れる漢』と言うのだろう。
彼らの生死は、この場においては真実ではなく、かと言って嘘でもない。というか正直関係無い。が、こうやって彼らがいかにも存在したように言えばコイツらの中では、
『仮面ライダーとは、人知れず
となってくれる。これが今の俺に出来る最適解だ。
話し終え、一息着いてみれば部屋は静寂に包まれている。この時ばかりは、常日頃から笑顔を絶やさないオールマイトですら神妙な顔つきだった。
しばらくして、沈黙していたネ⋯⋯根津が口を開いた。
「⋯⋯⋯キミは、サポート科に入ってどうするつもりだったのかな」
「まだいくつか再現しきれてないものかあるんでね。製作費用の削減と『雄英入学者』と言うハクを付けたかったってのが本音。卒業したらヴィジランテにでもなって偽ライダー共を狩るつもりだった」
あ、余計な事言っちまった。何か言われるかと思ったが根津は黙って考え込んでしまった。何を悩んでるか知らんけどさっさと帰らせて欲しいのが本音だ。
「校長」
帰っていい?と続けそうになるが自重。話しかけたのは、オールマイトだった。
そのまま根津の耳に口を寄せ、何かを囁く。ん?根津がこっちを見た?
そのままオールマイト達は二言、三言話すと唐突に笑顔で向き直った。なんかもう嫌な予感しかしないんですけど?
「木場勇治くん。我々雄英はキミを歓迎しよう!」
────唐突な合格通知。いやまあ早い事に越したことはないんだが、
「
⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯なんて?
感想、評価、誤字報告などよろしくお願いします。
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クソネズミ(校長)をぶん殴りたい木場っちゃん。テストはアリアの独壇場
────さて、あのクソネズミどうしてくれようか。
あの後、そりゃもちろん必死に抵抗したさ。俺はサポート科を受けたのであってヒーロー志望では無いのだから。
が、クソネズミと来たら「キミをサポート科にしておくのは惜しい」だの「何かあったらヒーロー科にいてくれた方が対処しやすい」だのこっちの話なんざ聞きゃあしない。腹が立ったので特性トリモチ爆弾を投げつけてやった。全身がトリモチに埋まっていた気もするが構いやしない。だってドブネズミだし(暴論)。
流石に向こうも無茶苦茶なのは自覚していたらしい。頑なにヒーロー科入りを拒む俺に代用案を出してきた。
それが『ヒーロー科とサポート科の兼科』である。普段はヒーロー科の生徒として行動し、任意でサポート科の授業や設備を使わせてもらえるそうだ。
授業なんぞはどうでもよかったので設備だけ使わせてもらうことにした。流石雄英。
まぁこんな訳で今日は雄英高校への入学初日。かねてから中の悪かったクソ両親に絶縁状を叩きつけ、ラボでの一人暮らしになった俺は意気揚々と雄英に登校しようとしていたのだが⋯、
「翼。何でここにいやがる?」
「ん、ゆーじと一緒に行きたかったから」
ビックリしたよ、イヤホント。朝起きたらベッドの中に入り込んでるんだもん。
しかも全裸で。
マジで危なかった。血が繋がってなかったら襲ってたかもしれない。翼って俺の好みどストライクな美少女だから尚更。おかげで俺の
「別にゆーじなら⋯⋯いいよ?」
「駄目に決まってんだろが実の姉弟だぞっ!?」
コテン、と首を傾げながらサラッととんでもない事を言う翼に全力のツッコミを入れる。やべ、朝の翼の裸思い出しちまって俺の
「てめ、何で俺の股間に手を伸ばす!?」
「ん、苦しそうだったから。抜い────」
「言わせねぇよ!?マジで落ち着け!すぐ収まるから!?」
「⋯⋯⋯手がダメなら口で」
「なお悪いわぁぁぁぁああああああ!!!!!!」
待って待って待って?ホントにやめよう?おい、ズボンのベルトに手をかけるなシャツを脱がせようとするなパンツをずり下ろそうとするなぁ!?
「こうなったら、実力行使」
「つばっ⋯!?やめ、んむぐうっ!?」
き、きききききききキスゥ!?つ、翼の顔が目の前に⋯⋯⋯あ、ちょっ、舌を入れるな!?ま、ホントやめ────
アッ────────!!!!!
「朝からどっと疲れた⋯⋯⋯⋯」
「あ、あははは⋯⋯⋯」
「なんと言うか⋯⋯ご愁傷様」
あの後全力で翼から逃げてからの登校。校門近くで出久やアリアと合流し、今は俺達の所属クラスの1-Aの教室へと向かっている最中だ。
疲労困憊の俺、苦笑いの出久、ニヤつきながらこちらを見ているアリアと朝っぱらからここまで独特なトリオだと自分でも思う。
てかアリアテメェコノヤロウ何ニヤついてんだコラ。
よし、後でマルタの姐さんに鉄拳聖裁してもらうからな。「ギャーーー!?」という悲鳴を無視しつつ廊下を歩いていくと『1-A』と記された教室を発見した。にしても、扉がデカい。
「うわ、でっかいドアだなぁ⋯⋯」
「異形型個性の奴とかもいるから配慮してんだろ」
「あ、なるほどね」
「あの試験を潜り抜けたエリート達か⋯⋯
怖い人達じゃないといいなぁ⋯⋯⋯」
残念だが出久や、その願いは叶わないぞ。あのクソボマーがいるからな。
俺自身あの
扉を開き、教室の中に入る。で、だ。
「机に足をかけるんじゃない!!先輩方や製作者の方々に申し訳ないとは思わないのかね!?」
「思わねーよ!!テメーどこ中だよ端役が!!」
「ボ⋯⋯⋯俺は私立聡明中学出身の飯田天哉だ」
「聡明だ~~~!?クソエリートじゃねぇか!ぶっ殺し甲斐がありそうだなぁ!!」
「ブッコロシガイだと!?君は本当にヒーロー志望か!?」
ほらいたよボンバーファッキューと
しばらく言い合ってるうちに飯田の方が俺達に気づいたらしくこちらに近寄ってきた。
「俺は私立聡明中学出身の────」
「き、聞いてたよ!僕は緑谷出久でこっちの2人が、」
「アリア・ペンドラゴンだよ!よろしくね」
「木場勇治だ」
「そうか!よろしく頼むよ!で、緑谷くん⋯⋯」
ずずいっと飯田が出久に詰め寄る。剣呑な雰囲気ではないので放っておいていいだろう。俺は───
「テメェが何で
「木場だって何度言ったらわかりやがる〇マイン!!」
「どうでもいいんだよんなことはよォ!!いいからさっさと答えろやカスが!!」
「んなもんあのドブネズミに聞きやがれ汚物製造機が!!俺だって元々はヒーロー科に来るつもりなんぞ無かったつーの!!!」
「じゃあさっさと失せろや馬刺し野郎が!!」
「出来たら苦労しないんだよウニヘッド!!」
額をカチ合わせて罵倒し合う俺と爆豪。周りは唖然としてるし出久はオロオロしている。で、アリアは相変わらずニヤついてやがる。お前マジで
「き、君達!止めないか!」
「「あぁ!?」」
仲裁に入る飯田を思わず睨みつけたら爆豪と被りやがった。畜生何でこんな奴と⋯⋯。
一瞬狼狽えた飯田だがすぐに持ち直す。クイッと眼鏡を上げ、ビシリと俺達を指さした。
「君達はヒーロー志望なのだろう?ならばヒーローに相応しい言葉遣いと態度を心掛けてだな────」
「るせぇぞクソメガネ!!黙ってろ!!」
「コイツと意見が被るのは癪だが右に同じだ。てか俺そもそもヒーロー志望じゃねぇぞ」
「な、何だって!?」
さっきも言ったじゃん聞いとけよ。俺の言葉に軽くザワつく教室。まぁヒーロー科に居るのにヒーロー志望じゃないとかナメてんのかって話だしな。
「それじゃあ君は何故ヒーロー科に来たんだ!?」
「さっきも言ったがここの校長のクソネズミに入れられたんだよ。あんのクソネズミめ足元見やがって⋯⋯⋯」
「く、クソネズミ!?」
思い出したら腹たってきたから今度校長室にマタタビ大量に送り付けてやろうと思う。
てかよく見たら出久とアリア達普通に麗日と話してんじゃねぇか羨ましい。俺だってもっと原作勢と絡みたいのに畜生め。
「────お友達ごっこがしたいのなら他所に行け」
「え?」
入口付近にいた出久が振り返る。そこには寝袋にくるまってミノムシみたいになっている無精髭の男がいた。
そう、1-Aの担任のイレイザーヘッドこと相澤消太である。てか生で見ると唯の不審者だなこの人⋯⋯。
そのままコロコロと転がりながら教室に入って来た相澤先生はゆっくりと寝袋から出て立ち上がる。
「ハイ、君達が静かになるまで8秒かかりました。君達はどうも合理性に欠けるようだ」
((((いや誰だよ!!!?))))
この時、俺とアリアを除く全員の心が一つになった気がするのは気のせいじゃないと思う。
「初めまして。担任の相澤消太だ。よろしくね」
「たっ、担任!?この人が!?」
知 っ て た。
再びザワつく教室。まぁこんな小汚いオッサンが教師とか誰も信じないだろう。前情報が無かったら俺もそうだ。迷わずに110番通報してた自信がある。
「早速だがコレに着替えてグラウンドに出てもらう」
そうして取り出したのは体操服。受け取ってみると妙に生暖かい⋯⋯⋯。オッサンの懐で温められた体操服とか嬉しくねぇ⋯⋯⋯。
「さっさとしろ。時間は限られてるんだからな」
「⋯⋯⋯出久、行こうぜ」
「あ、うん。それじゃあ麗日さんまた後でね」
「うん、また後でね!」
目の前でラブコメるな甘ったるい。腹いせに軽くからかってやろうか。
「じゃあ出久。ついでにナンパの成果を聞かせろや」
「へ!?べ、別にそんなことして無いよ!?」
「とぼけんなよ。さっきの子と随分親しげだったじゃないか」
「麗日さんには試験の時助けて貰ったから⋯⋯」
しどろもどろになる出久。反応が素直だからついからかってしまう。
⋯⋯別に女子と話してたのが羨ましかったからとかじゃないからな?本当に違うからな?
「────個性把握テストォ!!?」
グラウンドに出て唐突に告げられて誰かが叫ぶ。こんな理不尽なカリキュラムなので当然ちゃ当然なんだが。
「入学式は!?ガイダンスは!?」
「ヒーローになるならそんな事をやってる暇は無いよ」
麗日の問いをバッサリと切り捨てる相澤先生。
俺としては有難い。あのクソネズミの顔を見て冷静にいられる自信が微塵もないからな!反射的に4000万Vの新型スタンロッドをケツに叩き込んでしまうだろうと思う。
「雄英の校風は『自由』が売り文句。それは教師側もまた然りだ」
一様に?を頭の上に展開するクラスメイト一同。だからなんなんだ、といった風だ。
「これから行うのは『個性』アリの体力テストだ。ソフトボール投げを筆頭とする8種の種目、まずはコレで自分の最大限を知る。それこそがヒーローの素地を形成する合理的手段」
そこで言葉を区切り、俺に顔を向けた。
「木場。中学の頃のソフトボール投げの記録は?」
「382m」
⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯。
「すまん、もう一度言ってみてくれ」
「いやだから382m」
⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯。
「⋯⋯個性は使ってないのか?」
「生憎と俺は無個性でしてね。元々サポート科志望でしたし。
それをあのドブネズミが⋯⋯⋯⋯」
「⋯⋯取り敢えず投げてみろ」
「了解しました、っと」
円の中に入り、グルグルと肩を回す。さて、あれから結構鍛えたがどんなもんになってるかねぇ。
「んじゃまぁ────オッラァッ!!!!!!」
全力で、思いっきりソフトボールをぶん投げる。普通ソフトボール投げは曲線を描くように飛ぶモノ。が、そこはオルフェノククオリティだ。俺の場合ストレートでぶん投げた方が良く飛ぶ。
『442m』
「うしっ、こんなもんか」
「⋯⋯まぁこうやって自分自身の限界を測るわけだ」
と、そこでクラスメイト達がザワザワと騒ぎだした。
「何だコレ!すげー
「個性思いっきり使えるのか!!流石ヒーロー科!!」
「てか無個性で442mて⋯⋯⋯ホントに人間?」
オイコラそこの仏陀風耳たぶ女⋯⋯⋯⋯確か耳郎響香だったか?たしかにオルフェノクだけどキチンと俺は人間だっての失礼な。
「面白そう⋯⋯⋯か。ヒーローになる為の3年間をそんな腹積もりで過ごす気なのか?」
クラスメイトの
「よし、トータル成績が最下位の者は見込み無しとみなし、
「は、ハァアアアアアッ!?」
「そんな無茶苦茶な⋯!?」
「生徒の如何は俺達教師の
まさに理不尽。が、理不尽を覆して行くのがヒーローと言う存在だ。望んで来た訳じゃ無いが生憎と除籍されるつもりも無い。
「久々に本気、出しますか、っと」
第一種目:50m走
「────って、アリアと走るのか」
「ありゃ、嫌かな?」
嫌ってわけじゃ無いんだがな⋯⋯⋯⋯。
「
「うーん⋯⋯今日は兄貴の気分!」
「⋯⋯⋯先生。巻き込まれたくないので俺とアリアを別にしてください」
「駄目に決まってるだろう非合理的な」
「ですよねー」
俺が相澤先生と交渉し、撃沈してる間に既にアリアは召喚を開始している。
『────来たれ、光の御子よ。
呪いの朱槍を携えし最速の大英雄。
汝が御名はクランの猛犬、大いなる神の血を継ぎし太陽の末裔也!!』
「来て、
その名を唱えた瞬間、彼女を中心として赤い光が周囲に放たれる。
が、それも一瞬のことで、光が晴れた先にはそれまで居なかったはずの男が立っていた。
────青タイツに紅の槍を携えた蒼髪の男。その瞳は紅く輝いている。
どう見ても槍ニキですありがとうございました。
「────ようマスター!久々だな」
「兄貴ーー!おひさーー!!」
頼もしげな笑みを浮かべた兄貴に笑顔で抱きつくアリア。取り敢えず周りが固まってるみたいなので説明する事にする。
「アレはアリアの『個性』の『召喚』によって呼び出されたモノです。こちらが敵対行動を取らない限り無害なので安心してください」
「⋯⋯⋯内容は?」
「いわゆるオカルトの権化ですね。いくつかの制約はありますが仮令死人だろうと空想上の怪物だろうと好き勝手に呼び出す事が出来ます」
「とするとあの男もその類か?」
「名前くらいは聞いた事があるでしょう?
ケルト神話の大英雄クー・フーリン」
「本人だと?」
「正確には
まさか本人ですと言う訳にも行かないので適当にでっち上げる。
「神話上の英雄達を呼び出す場合、名を冠するに相応しい実在の人物が呼び出される事になっています」
「⋯英雄本人に最も近しい人物、という訳か」
「といってもスペックは10%前後まで落ち込んでますけどね」
どっちにしろバケモンスペックなんだけどね。
「⋯⋯まぁいい。走れ」
「結局一緒なのか⋯⋯」
「おいおい坊主、そんなに嫌うなよ?」
「アンタが一緒じゃ俺が吹き飛ばされかねないんだよ⋯⋯」
「安心しな、手加減はしてやるよ」
「安心出来ねぇ⋯⋯」
「位置につけ。始めるぞ」
相澤先生から催促されたので俺はクラウチングスタートの体勢に、兄貴は槍をしまってアリアを抱える。
「位置について⋯⋯⋯始め!」
「ッ!」
「────っと」
『0:00』
「「「「「は?」」」」」
『4:21』
兄貴から4秒遅れで俺もゴール。周りは兄貴の驚異的な記録に目が点。相澤先生ですら信じられないといった表情をしているから面白い。
「よっと、終わったぜマスター」
「やっぱ兄貴は速いねー。流石最速の英霊」
「ハッ、当然だろ?」
そこ、呑気に会話してないでこの状況何とかしてくれ。進まないから。
『7:02』
やはり出久はワンフォーオールを使わない。いや、使えない。強大すぎるパワーに肉体が耐えきれていないせいで体を壊してしまうというデメリット。残りの種目を骨折した状態で過ごす訳にもいかず、封印せざるを得ない。
⋯⋯⋯ちと早すぎる気もするが、今後の事を考えればこれが最適か。
「出久」
「あ、木場っちゃん⋯⋯」
元気が無い様子の出久。焦っている様にも感じる。そんなキミにアドバイスってな。
「出久。2Lの水を500mlのペットボトルに押し込めようとしても無駄だぞ」
「⋯え?」
分かりにくいかもしれんがあえて直接的な表現は避ける。俺としても出久には成長して欲しいからな。
「入れるなら、2Lのペットボトルにだ」
「木場っちゃん⋯?」
「あとは自分で考えろ」
さて、どうなる事やら?
第二種目:握力
『349kg』
「よし、こんなもん────」
「やっちゃえ、バーサーカー!!」
「■■■■■■■■■ーーーーー!!!!!」
────バキャバキャバキャァッ!
「⋯⋯⋯⋯」
「おいこれ3tまで測れる奴なんだけど!?」
「壊すなよ。タダじゃないんだから」
「ご、ごめんなさーい」
「■■■■■■⋯⋯⋯⋯」
第三種目:立ち幅跳び
「うおらっ!!」
『82m』
「マスター 行こう」
「よっし!哪吒ちゃんGOー!!」
『∞』
「⋯⋯⋯⋯」
第四種目:反復横跳び
「フッ!フッ!フッ!」
『217回』
「マーリンバフお願い!!」
「お任せを。夢の様に片付けよう」
「よっし、それじゃとわばァ!!?」
「うわ、足滑らせたと思ったら木に頭から⋯⋯」
「⋯⋯⋯」
第五種目:ソフトボール投げ
「いや自重しろよマジで!!!」
「えー」
何で呼び出してるのが揃いも揃って神代の英霊ばっかなんだよ!?マーリンは違うけどどっちにしろグランドじゃねーーか!!
今ならマジでこいつ一人某A国落とせると思う。これで10%ってんだから笑えない。
「なあなあ!お前らスゲーな!」
「お?」
「えっと、君は⋯⋯」
「俺は切島鋭児郎!よろしくな!」
「俺は木場勇治。こっちがアリア・ペンドラゴンだ」
「よろしく!」
ツンツン髪こと切島が話しかけてきた。断じてマイクチェックをする方ではない。
「なあ、木場って無個性なんだろ?」
「ああ」
「何でそんなに身体能力高いんだ?強化系の個性って言われた方が納得出来るんだが⋯」
「無個性の俺を『出来損ない』とかぬかしたクソ両親を見返したかったのと憧れてる人に近づきたかったから、だな」
「お、おう。なんかすまん。聞いちゃいけねぇ事聞いちまったな⋯」
「気にすんな。今じゃもう他人だからな」
なんたって顔面に手切れ金の500万と一緒に絶縁状叩きつけてやったしな。
⋯⋯+で言えば翼から貞操を死守するためと言うのもあるが。
その後も上鳴や芦戸などのメンツが話しかけてきたので互いに自己紹介する。耳郎にはさりげなく人を人外扱いした恨みがあるので耳たぶを思いっきり弄ってやった。時折艶めかし声が聞こえてドキリとしたのは内緒である。
「そうこう言ってるうちに出久の番か⋯⋯」
「あ、ホントだ」
⋯⋯マズイな、表情に余裕が無い。完全に追い詰められて思考の袋小路に陥ってる時の顔だなありゃ。周りもマズイと思っているのか、麗日や飯田も不安気な顔だ。
「緑谷くんこのままではマズイな⋯⋯」
「たりめーだろが。無個性の雑魚だぞアイツは!」
「無個性だと!?彼が入試時に何をしたのか知らんのか君は!?」
ボンバーファッキューが何か言ってるが無視。飯田も律儀に答えんで良いのに。
そして出久がボールを投げる。結果は────
『46m』
「な!?今確かに使おうと⋯!?」
「個性を
動揺する出久に告げる相澤先生。出たなヒーローとしての顔が⋯⋯!
「消した⋯⋯⋯そうか!視るだけで他人の個性を消す『個性』!!
抹消ヒーロー『イレイザー・ヘッド』!!」
説明どうも。クラスメイトの大半は知らないようなので有難いだろう。
そして相澤先生による出久への説教。そして決定的な言葉を放った。
「────緑谷出久、お前はヒーローにはなれないよ」
さて、ここからどうする出久⋯?
出久side
相澤先生に言われた事は、悔しいけれど正しい事だった。僕は所詮オールマイトの力を手に入れただけの無能。勇気と蛮勇は違うという事を改めて見せつけられた。
────オールマイトは勇気を持ったヒーロー。僕は蛮勇を振りかざす事しか出来ない約立たず。
分かってはいた。それでも直視したくなくて目を背けていた事実に、僕は押しつぶされそうだった。
「ボール投げは2回だ。早く済ませろ」
(どうする?どうするどうするどうする!?)
力の制御なんて出来ない。かといってこのままでは何も結果を残せない。
完全な詰み、諦めろ。と心の中で誰かが言う。
お前には無理だ。と誰かが罵る。
お前はヒーローにはなれない。と告げられる。
(僕は⋯⋯⋯⋯ヒーローに、なれない?)
いやだ。
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!!!
『君は、ヒーローになれる』
(オールマイトが!そう言ってくれた!!)
だからこそ僕はこんな所で終われない。終わる事が出来るはずがない。
ふと、僕の夢を応援してくれた親友の言葉が思い浮かんだ。
『オールマイトに?あんまりオススメは出来ねぇけど⋯⋯⋯でもまぁ────』
『────夢を語るお前は、すげぇカッコイイと思うよ』
「ッッッッ!!」
全身に力がみなぎるような感覚。錯覚だってのは分かってる。でも、確かに木場っちゃんの言葉に後押しされた。
『入れるなら、2Lのペットボトルにだ』
あの言葉の意味も、ようやく理解出来た。
僕はこれまで一部分にのみワンフォーオールを発動させてきた。それも100%の力を。それを僕の腕が耐えきれるはずもなくバッキバキに折れるのみだった。
要するにキャパシティオーバー。容器に収まりきれなかった。
(なら、容器を大きくすればいい!!)
右腕のみではなく、全身。赤いラインが全身に広がり、今度こそ全身に力がみなぎってきた。名付けるなら〝フルカウル〟といった所だろうか。
「S────MASHっ!!!!」
『1472m』
全身が痛い。でも骨が折れてるわけでも筋繊維が断裂している訳でもない。まだ、立ってる。
「先生⋯⋯まだ、やれます!!」
「コイツ⋯⋯⋯!」
見れば木場っちゃんが満足そうな笑みを浮かべてこちらを見ている。僕は無言のサムズアップ。木場っちゃんも返してくれた。
「どういう事だテメェ訳を言えやデクコラァ!!!」
「うわっ!?」
唐突にブチ切れたかっちゃんが襲いかかってきた。
が、相澤先生の包帯に絡め取られ、拘束される。
「んだこれ⋯っ!固ぇっ⋯!」
「ったく、何度も個性を使せるな⋯⋯
俺はドライアイなんだよ」
((((凄い個性なのにもったいない!!))))
多分この時は全員の心がひとつになっていたと、僕は思う。
side out
「これにて一件落着ってな」
どうやら上手い事行ったらしい。出久サムズアップしてきたので俺も笑顔で返しておく。
爆豪?勝手にキレて勝手に拘束された馬鹿なんぞ知るか。今はあんな奴の事なんぞ忘れて出久のフルカウル習得を祝う事にする。
で、結局長座体前屈は普通で上体起こしは94回とまあまあの結果だった。アリアもこればっかりはどうしようも無いので素直に受けていた。
ラストの持久走で、またやらかしやがったよアリアのアホ。
兄貴を再び呼び出して1:00とかアホみたいな記録をたたき出しやがった。俺は15:20。やりすぎどころじゃねぇだろオイ。
そんなこんなでテスト終了後、結果発表なのだが⋯⋯、
「ちなみに除籍は嘘な」
「「「はーーーーーーーーーー!!!!!!?」」」
数人、主に出久がスゲー顔してた。もうお前お化け屋敷やれよというレベルでスゲー顔。
ハァッと溜息を着いたのは八百万だった。
「あんなの嘘に決まってますわ⋯⋯⋯少し考えれば分かることでしょう?」
リアルお嬢様言葉キターーー!!!おっとゲフンゲフン平静を保たねば。
呆れた様に言う八百万だが残念ながら本気どころかもっとヤバかったんだよな俺ら。
「確かあの人去年1クラス丸々を1人除いて除籍にしてるぞ」
俺の一言に固まる一同。と同時に顔を青ざめる者もいる。自分達が相当ヤバかったのを理解したようだ。
ちなみに当然ながら除籍されなかった1人は翼である。ウチのねーちゃんマジTUEEEE。
放課後、全ての授業を終えた俺たちは帰路についていた。メンツは俺、アリア、出久、飯田、麗日だ。自己紹介も済ませてるので話はスムーズだった。
「デクくん凄かったよね!こう⋯⋯バビューン、て!」
「あ、うん⋯えっと」
「麗日。デクじゃなくて出久だ」
「え?でもあの爆豪て人がデクって言ってたけど」
「デクってのは出久の読みを爆豪くんがバカにして読んでるだけであだ名って訳でもないよ?」
「つまりは蔑称か」
「つーわけさ胸糞悪ぃ」
「うーん⋯でも私は好きかな。ほら「頑張れ!」って感じがして」
「デクです」
「「「緑谷(出久)くん!!!?」」」
それでいいのかお前は⋯⋯⋯。
オリキャラスペック紹介その2
木場翼
容姿:黒髪ロングのスレンダー系美少女。主人公の好みを全て備えている最強のヒロイン(てか作者の好み)。
性格:無口、という程ではないが基本無表情で感情の起伏に乏しい。が、勇治曰く、「機嫌がいい時は時たま犬の尻尾が見える」とわかりやすいらしい。
個性:銃翼
・広げると全長8m近い大きな翼を背中から生やして空中を飛び回ることが出来る。羽は弾丸として使用可能。威力はウッドチップ弾からアンチマテリアルライフルまで幅広い。
備考
・木場勇治の実の姉で、木場両親が勇治を『出来損ない』と蔑む一方で深い愛情をそそいでいた。
そのせいで勇治を一人の男性として愛しており、将来の目標は姉弟間での結婚をする為に憲法を改正すること。
雄英高校の2年生で、相澤による除籍祭りを唯一回避した猛者。並の
好きなものは木場勇治。
嫌いなものは両親。
感想、評価、誤字脱字報告お待ちしております。
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戦闘訓練だよ!自重?なにそれおいしいの?
文字数か────ゲフンゲフン、好きだからいいじゃないか。
────翌日、翼からの襲撃を躱し、クラスメイトと親睦を深め、のんびりと授業を消化して行く。
昼飯は学生食堂で食った。クックヒーロー ランチラッシュの料理が食えるとの事で、俺も食ったがすげぇ美味かった。
てか戦う料理人て⋯⋯⋯トリコ世界の住人かな?グルメ細胞持ってたりして。
いやーそれにしても楽しい。なんつーか、青春って感じがいいわ。中学ではクラスメイト連中の殆どが無個性を馬鹿にしてくるような奴ばかりだったので偏見無しに接してくれるクラスメイト連中はホントに有難い。
「なあ、そういや木場ってホントにヒーロー科志望じゃなかったのか?」
たまたま一緒に飯食ってた切島からそんな質問が飛び出す。
「そういやそんな事言ってたな」
「差し支えないならば教えて貰っても構わないか?」
同じように飯食ってた上鳴や障子からも聞かれた。恐らく皆薄々気になってはいたのだろう。別に知られて困るような事じゃないので話すことにする。
「入試の時の0Pt
「あぁ、あのバケモンロボットか」
「そりゃ覚えてるって。忘れられねぇよあんなの」
「あの時は対抗手段がなくて逃げ惑うしかなかったからな⋯⋯ヒーロー科の人間としては情けなく思ったよ」
お、障子それは個人的に好感が持てるぞ。ヒーロー的には高Ptだぜ!
「で、あれがどうかしたのか?」
「俺サポート科受験したんだけどアレブッ壊したらこっちに叩き込まれた」
「「はぁっ!?」」
「⋯⋯⋯すまん、どういう事だ?」
俺が仮面ライダーだから────なんてこんな人が多い所では言えないので適当に言っておく。
「さあな。向こうとしては使える人材を確保しておきたかったって所じゃないか?」
そう言い、ついでに学校側と交渉してサポート科と兼科させてもらっているいることを言うと、皆不思議に思いながらも納得してくれたようだ。
ま、この後バレるんだが。
昼食後、お待ちかねのあの時間がやって来る。
ヒーロー科がヒーロー科である所以の専門科目。その名も────
「わーーたーーしーーがーーー!!
普通にドアから来た!!!」
────ヒーロー基礎学。文字通りヒーローとしての基礎を学ぶ科目でありヒーロー科の醍醐味といっても過言では無い。
教壇に立つのはNO.1ヒーローのオールマイト。
あのオールマイトから直接教えて貰えるとあって、皆興奮を隠せていない。
「すげぇ⋯⋯!マジでオールマイトが先生やってるんだな⋯!!」
「しかも
「やばっ、画風違い過ぎて鳥肌立ってきた⋯⋯!!」
湧き立つ一同。かく言う俺もめちゃくちゃ興奮している。ようやくおおっぴらに動けるからと言うのもあるが何より自分の実力がどの程度なのか試したくて仕方が無い。
バトルジャンキー?何言ってんだ、俺は唯合法的にボンバーファッキューをぶん殴れるかもしれないから少し興奮してるだけだ。
「早速だが今日はコレ!『戦闘訓練』だ!!」
「戦闘⋯⋯!!」
「訓練⋯⋯!」
「そして⋯⋯⋯コチラだ!!」
クラスの壁がスライドし、中から番号の記されたボックスが迫り出してきた。
「各要望に添えた
「「「「「おおおおおおおおおおおお!!!!」」」」」
「着替えたらグラウンドβに集合だ!
形から入るってのも大事な事だぜ少年少女!!
自覚するんだ!今日、今から自分は────
────ヒーローなんだと!!!」
そう言って彼が出ていく際にチラリと目が合った。俺は安心しなと軽く笑いかける。心無しか不安そうな表情になってオールマイトは出ていった。なんでや。
「木場っちゃん?行かないの?」
「おっと、今行くぜ」
ま、気にしたら負けか。せいぜい頑張るとしますかね。
「お、木場と⋯⋯緑谷だっけか」
「うん、確か切島くんだよね?」
「おう!よろしくな!」
グラウンドに出たら早速切島が話し掛けてくる。持ち前のコミュ力で引っ込み思案の出久ともすぐに打ち解けたようだ。
「にしても緑谷、もしかしてそのマスクのツノみたいなのって⋯⋯オールマイトのアレか?」
「あ⋯⋯やっぱり分かる?」
「いやわかりやすいくらいだぞ?」
あっさりとツノの由来を看破された。まぁすげぇ分かりやすいしな。
「に比べて木場は⋯⋯マフィア?」
「言うな。自分でも分かってらぁ」
切島の言う通り俺の戦闘服は黒スーツに黒のロングコート、黒ハットに白いマフラーとどっからどう見ても完全にマフィアである。
⋯⋯いやカッコイイ感じのやつ考えたらこうなっちゃったんだよ。コートに関しては耐熱性抜群の高硬度絶縁体を素材にしてるから防御力もバッチリだしコート裏には大量のサポートアイテム仕込めるし。
ちなみに今回はカイザギア持ってきた。デルタは帝王シリーズ作る為のサンプルだから今んとこ使えないしファイズギアは追加武装の調整の為に同じく使えない。
つーわけでカイザギア。ちなみにサディーは流石に無理なので留守番。
あのやろ何が『マスターに捨てられました』だ。
そんな訳でこのコートは高性能で便利なスーパーコスチュームなのだ。決してマフィア服では無いぞ?
だから1部の女子がこちらを見て怯えた様子なのは気のせいだと思いたい。
「うんうん!!皆なかな⋯⋯⋯⋯⋯か良い
オイオールマイトてめぇ。何で俺の姿見た瞬間言葉に詰まりやがった?シバくぞ。
怖気を感じたのかブルリと身体を震わせたオールマイトだが、気を取り直して説明を始める。
「さて!始めようか有精卵共!!
今回行うのは屋内での
対人、と聞いて皆の表情が引き締まる。まさかいきなり人間を相手にするとは思ってもいなかったようだ。
「主に
オールマイトの言葉に納得したように頷くクラスメイト達。
俺?内容知ってるから聞き流してるよ。
「と、言うわけで君らにはこれから
「基礎訓練も無しに行うのかしら?」
「その基礎を知るための実践さ!
ただし、今回はぶっ壊せばOKなロボじゃないのがミソだぜ!」
カエルっぽい少女、蛙吹梅雨の疑問をきっかけに皆から質問が噴き出してきた。
「勝敗のシステムはどうなっていますか?」
「⋯ブッ潰してもイイんスか」
「また除籍とかあるんですか⋯?」
「分かれるとはどの様に分れればよろしいでしょうか!」
「このマントヤバくない?」
「んん〜〜!聖徳太子ィ!」
ペラリとメモを取り出すオールマイト。新人とはいえそれぐらい覚えとけよ⋯。
(((((カンペ⋯!!)))))
ほら皆の心の声が聞こえてんじゃねえか。
「いいかい?状況は
(((((設定アメリカンだ!!)))))
「
ヒーロー組は核の回収、または
そしてコンビ及び対戦相手は⋯⋯くじで決めるぞ!」
「適当に決めるのですか!?」
「現場だと急造でチーム組むことも少なくないらしいし、そういう事じゃないかな?」
「成程!失礼しました!」
「このクラス22人いるけどそこはどうするんスか?」
「そこは1組だけ3対3で戦ってもらう!こういうのも体験さ!」
という訳でくじを引いた結果────
A:出久 麗日
B:轟 障子
C:八百万 峰田
D:爆豪 飯田
E:青山 芦戸
F:砂藤 口田
G:俺 上鳴 耳郎
H:蛙吹 常闇
I:葉隠 尾白
J:切島 瀬呂 アリア
「マジかよ⋯⋯」
よりにもよってアリアか⋯⋯⋯手持ちのアイテムでなんとかなるか?でもパワー型の英霊呼び出されたら勝ち目ねぇしな⋯⋯核の近くで戦闘すれば大規模な攻撃を防げるか?だとすると早急に索敵する必要が⋯⋯」
「木場、ストップストップ!」
「ん、あ、悪ぃ」
ついつい思考の海に潜り込んでしまっていたようだ。気づいたら既に上鳴と耳郎が近くにいた。
「考え事か?取り敢えず自己紹介しようぜ!」
「それもそうか。
じゃ改めて、木場勇治だ。知っての通り無個性で戦闘スタイルとしては幾つかのアイテムを駆使した索敵やサポート、もしくは正面切っての肉弾戦てとこだ」
「いやそれなんでも出来るんじゃねーかよ⋯⋯
っと、俺は上鳴電気だ。個性は『帯電』、一応索敵とかもできるぜ!」
「ウチは耳郎響香。個性は『イヤホンジャック』っつってこの耳のやつ⋯」
シュルシュルと耳のプラグを伸ばしてプラプラさせる耳郎。おいやめろ、触りたくなるじゃないか。
「このプラグを相手に刺して音の衝撃を伝えたり⋯⋯
まぁ2人と同じように索敵にも使えるよ」
それぞれの個性の情報を交換し合う俺たち。にしても正直これは⋯⋯、
「「かなり強い(微妙だ)な」」
「「ん?」」
「え、これ強いの?かなり偏ってるように思えるけど」
あ、そうかこいつらアリアの個性について詳しく知らないんだったな。
「対アリアとしてはバッチリなんだよこの3人が」
「対ペンドラゴン?え、何アイツそんなにヤバいのか?」
「アイツの『召喚』で昔のガチ暗殺者呼び出されてみろ。気づいた時には首が落ちてた、なんて事も有り得るぞ」
「「うわぁ⋯」」
ドン引きの2人。だって俺がアイツならそれぐらいはするぞ?
アサ子さん喚んで半数で索敵、残り半数で奇襲を繰り返して相手を疲弊させてから呪腕先生とか爺でトドメ、とか普通にやるもん。
が、当然俺一人でも何とかなるように対策はしてる。それにこの2人がいるなら完璧だ。爺クラスでない限り何とかなるだろう。
「んじゃま、やるとしますかねぇ⋯!」
俺は静かに燃えていた。
「────てな具合に向こうは考えてると思う」
「「うわぁ⋯⋯」」
やあやあどうも、アリアだよ。なんか色々あって転生して過ごしてくうちに木場くんの相棒ポジに収まってるかと思ったら今の今まで影が薄いアリアちゃんだよ。べ、別に寂しいとか思ってないんだからねっ!?
⋯⋯コホン、一人芝居はこの辺にしてと。
今は切島くんと瀬呂くんに木場くんが考えてるであろう作戦を説明してたとこだよ。木場くんって私のこと単純って思ってるかもしれないけどこれでも頭はいいんだよ?この位はお見通しなのだー!
にしてもなんかアサ子さんの下りで既にドン引きだったよ二人とも。んー、別にこれくらいまだ優しい方だと思うけどなぁ?ケイローン先生の『THE・命懸け!君も英雄になろう講座〜〜実践編』よりはまともだよ?あの人東方もビックリの弾幕ぶちかましてくるんだから。
「と、言うわけで奇襲を仕掛けます!」
「何が、『と、言うわけ』なんだよ!?向こうに読まれてるんだろ?何で奇襲なんか⋯」
「瀬呂の言う通りだぜ。それに奇襲なんて男らしくない真似しなくても俺が正面から行って取り抑えればいいじゃねえか」
「だからこそ、だよ」
「「?」」
「わざわざ出迎える準備してくれてるんだし、少し派手に登場してやろうと思ってね」
木場くんには悪いけど、本気でやっちゃうからね?
「────次の組み合わせ!GチームがヒーローでJチームが
授業が進んでしばらくしてようやく俺たちの番になった。爆豪は出久にしてやられ、ほかのメンツもほぼ原作通りの内容だった。爆豪ざまぁ。
『訓練開始!』
「⋯始まったか。よし、耳郎は音で敵の位置を把握、上鳴は電気張って近づいてくるやつをチェックしといてくれ」
「もうやってる⋯⋯⋯⋯ん、音的に4、5階の辺りに全員いるみたい。動きてる様子は⋯⋯瀬呂のテープの音が聞こえるくらいで他に何も無いよ」
「こっちも特に何も感じないぜ。奇襲の予兆も無いな」
妙だな⋯⋯動きが小さ過ぎる。何か仕込んでやがるのか?
「なら
コートの内側に仕込んでいたモノを取り出す。
取り出したのは携帯端末。それを軽く操作すると、コート内から小さな人型が飛び出してくる。
「何コレ⋯⋯プラモか何か?」
「惜しいが外れだ。
こいつはLittle Battler eXperienceといって通称LBX。俺が開発した小型のロボットだ。
索敵・強襲・暗殺なんでも出来るぞ」
「いや暗殺て⋯」
だって作中で使われてんだもん。
あ?何でLBXなんてもん作ったのかって?そんなの俺がロボット物大好きだからに決まってんだろ。
今回使うのはみんな大好き単眼量産機のデクー。やっぱ単眼はロマンだな!
「⋯⋯⋯ん?」
────そこで気付いた。俺達の周囲を霧が囲っている。しかも既に数メートル先すら見えないぐらいに深い霧だ。
「なんだこれ⋯⋯⋯霧?」
「何でこんな所に霧なんかが⋯⋯」
────反射的に傍らの耳郎を抱き寄せてコートで覆う。
「へっ!?」
「上鳴!!全方位に放電!!」
「え、ちょ、なんで」
「いいから急げ!!
「りょ、了解!」
────バリバリバリバリバリバリ!!!
上鳴から放たれた電撃が辺りを覆い尽くす。
俺は瞬時にデクーを操作してマシンガンを乱射し、数秒後にデクーが破壊された事を端末は知らせてくれた。
やがて、上鳴の電撃が収まる。俺は恐る恐るコートから顔を出した。
「⋯⋯⋯凌げた、か?」
霧は既に霧散していた。上鳴はアホ面を晒しているが無事、こちらの被害はデクー一機で済んだようだ。
「あ、あのー⋯⋯?そろそろ離してもらえないかなーと思うんだけど⋯⋯」
「ん?あぁ、悪い」
抱えていた耳郎を解放する。若干顔が赤いが、まぁ、不可抗力なので許して欲しい。
「にしてもまさかジャックで来るかよ⋯⋯」
完全に予想外だった。よく良く考えればジャックも奇襲に特化していることを失念していた。完全に俺のミスだ。
「あの、まだウチら説明して貰ってないんだけど」
「ん、まあ平たく言うと奇襲を受けた」
「あ⋯⋯、もしかしてさっき上鳴に放電させたのって」
「接近を防ぐためにな。まさか早速デクーを破壊されるとは思わなかったが」
「あの霧は?」
「奇襲した奴の能力だよ。たしか〖
「能力って?」
「硫酸を含んでるんだよ、あの霧は。今じゃ精々塩酸程度だが全盛期の奴なら数分と掛からずに殺られてたな」
オルフェノクの俺はその限りではないが上鳴と耳郎は危なかった。
個性持ちと言えど所詮は人間、異形型でもない限り抵抗は厳しいだろう。
が、と言って何も考えていない訳じゃない。
「耳郎、奴らの動きは?」
「あ、ちょっと待って⋯⋯⋯⋯⋯⋯うん、動いてないみたい。3⋯⋯ううん、4人分の鼓動が聴こえてる」
「てことはジャックも奴らといるのか⋯」
ならば好都合だ。俺はすっかり忘れられていたウェイモードの上鳴を肩に担ぐ。
「よっと⋯⋯上鳴、少し我慢してくれよ?」
「ウェ、ウェイ⋯」
「んで、どうすんの?」
「ンなもん決まってんだろーが」
このまままごついていてもジリ貧、かと言って絡め手を仕掛ける時間も無い。ならば────
「────真正面からの突撃だ」
「────ごめんなさいおかーさん⋯⋯失敗しちゃった⋯⋯」
「んーん、全然気にしてないからへーきへーき」
目の前でしょんぼりするジャックちゃんを抱きしめる。あ゛あ゛〜〜〜癒されるんじゃあ゛〜〜〜〜。
「ふみゅ⋯⋯おかーさん、ちょっと苦しいよ?」
「んん〜〜〜もう少しこのまま⋯⋯⋯」
「「⋯⋯⋯⋯⋯いやおかしいだろ!!?」」
切島くんと瀬呂くんからツッコミが入る。でも気にしなーい!このままジャックちゃんを愛でるのだー!
あ〜〜癒しじゃ〜〜。
「だ か ら!!!今訓練中だよな!?何でお前そんなにのんびりしてんの!?もっと緊張感持てよ!!」
「いやてかその幼女だれだよ!?なんか突然どっか行ったと思ったら戻った来てるし!!なんなの!?」
「私 この子 愛で中 うるさいから 黙れ」
「せめてしっかり喋ってくれよ⋯⋯」
え〜〜〜〜めんどい。でもまあ私は優しいので説明してあげる事にする。
「この子は私が喚んだ子で名前はジャック・ザ・リッパー。おけ?」
「いや端的過ぎるわ!てかジャック・ザ・リッパーて何百年も前の殺人鬼だろ!?なんてもん呼び出してんだよ!?」
「だいじょーぶだいじょーぶ、本人じゃないし」
「そういう問題か⋯?」
型月世界の住人に突っ込んだら負け。おーけー?
そのまま和んでいると急にジャックちゃんの顔付きが変わる。そこに幼い少女の姿はなく、冷酷な殺人鬼としての顔を、彼女は出していた。
「⋯だれかきてるね」
「霧に引っかかったの?」
「うん、数は⋯⋯3人かな?1人は抱えられてるみたい」
抱えられてる⋯⋯?あ、ウェイモードの上鳴くんか。あの状態の彼は役立たずだから抱えてるのかな?
「どうした?誰か来たのか?」
「ん、木場くん達が来たみたい。ジャックちゃん、どんな感じ?」
「⋯⋯まっすぐこっちに向かってきてる。たぶん、場所がばれてる」
むう⋯⋯やっぱり弱まった
「どうすんだ?このまま待ってる訳にも行かないぞ?」
「よし、部屋の前で迎撃しようか。瀬呂くんは核に張り付いといて、切島くんと私たちで木場くん達を迎え撃とう。あ、切島くんは前衛お願いね?」
「おっしゃ、任された!」
「真正面からの戦闘か⋯⋯⋯男らしくて燃えてくるなぁ!」
おおーテンションアゲアゲだね。
「おかーさんはどうするの?」
「ん?私も出るよ?」
岸波白野や藤丸立香みたいな的確な指示は出せないけど、ね。
「私だってマスターなんだよ」
特典の恩恵である右手の令呪が、紅く輝いた────
「────見つけた!正面の扉、もう展開してる!!」
「ちっ、流石にバレるか!」
「ウェイ⋯」
ビルの5階、連中の場所を特定した俺達は奇襲を仕掛けるために霧の中奴らの部屋まで走っていた。が、既に奴らは動き出しているという。恐らくジャックに感知されたのだろう。
「っ⋯⋯、見えた!」
霧が晴れたその先、目標の扉の前には既に切島、アリア、ジャックの姿が見える。瀬呂の姿が見えないが、恐らく部屋で待機しているのだろう。
「耳郎!」
「了解!」
「ウェイ!?」
耳郎に抱えていた上鳴を投げ渡す。俺はすぐさまコートに腕を突っ込む。
「さて────」
奴らが動き出すが既に俺の手は目的のものを掴んでいる。
「────やろうか?」
「んなぁ!?」
俺がコートの中から引きずり出したのは第二次世界大戦中、ドイツ軍が使用した対戦車擲弾発射装置〖パンツァーファウスト〗。いまとなっちゃあ骨董品に過ぎないが⋯、
「壁破るにゃ充分だ!ぶちかましなァ!!」
「そ、総員退避ーー!!」
発射された弾頭がアリア達に迫る。必死の形相で回避するアリア達。遮るもののなくなった弾頭はそのまま壁に吸い込まれて行った。
────ドガァァアアアアアアアン!!!!
「⋯⋯⋯は?」
崩れた壁の向こうに呆然とする瀬呂の姿が見えた。間髪入れず傍らの上鳴を瀬呂にぶん投げる。
「上鳴、人間スタンガン!」
「ウェ、ウェェェェェェイ!!?」
放電しながら突っ込んでいく上鳴。それにぶち当たる瀬呂。
「あばばばばばびびびびびぶぶぶぶぶべべべべべ!!?」
黒焦げになって崩れ落ちる瀬呂。俺は残されたパンツァーファウストの発射台を投げ捨て、腰にカイザギアを装着する。
『Code 913 Enter』
『standingby』
「変身!」
『complete』
閃光と共にカイザに変身する。そのまま呆然とする切島を殴り飛ばした。
「らあっ!」
「ぐほぉっ!?」
「っ、ジャックちゃん!」
「うん、解体するよ」
アリアは思ったより早くたて直した。すぐさまジャックに指示を出し、自身は後方に下がる。指揮官として、正しい判断だろう。
が、今回ばかりは悪手である。
「耳郎!」
「おっけもうやってる!」
耳のコードを伸ばしてアリアの足に引っ掛け、すっ転ばせる。
「たわばっ!?」
「悪いけど、逃がさない⋯!」
「あべしっ!?」
そのまま馬乗りになり、首元に俺が渡したナイフを突きつける。
「おかーさんっ!?」
「よそ見してる暇があるのか?」
『Exceedcharge』
「グランッ、インッ、パクトォ!!」
「かっはっ!?」
体をくの字に曲げ、吹き飛んで行くジャック。壁に叩きつけられ、
「てめっ────」
「おっと、動くなよ切島ァ!こいつがどうなってもいいのか?」
起き上がってきた切島がかかってこようとするが耳郎に目配せしてナイフをチラつかせる。それだけで切島は動けなくなってしまった。
「てめぇ⋯⋯卑怯だぞ!!」
「フハハハハ!!卑怯汚いは敗者の戯言!
勝てばよかろうなのだァーーーーー!!!!」
「うわぁ⋯⋯」
(味方にまでドン引きされてる⋯⋯これじゃもうどっちが
完全に引かれてるがそんなこと知ったこっちゃ無いね!
クックックッ⋯⋯さぁてどう料理して『
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備える為にサボったら天罰食らった木場っちゃん
「ハァ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜⋯⋯⋯」
「おおう、朝から凄い溜息だね。大丈夫?」
「これが大丈夫に見えんなら眼科行った方がいいぞ」
ん?俺が落ち込んでる理由。そんなの戦闘訓練の結果の事で色々言われたからに決まってんだろ理解れよ(暴論)。
あの後八百万からそりゃもうボロクソに言われたよ。やれゴリ押しだの、仲間を投げるなんてありえないだの、子供を殴るなんてだの。
最後のは敵だからしょうがなくない?俺悪くなくない?
何よりもショックだったのが皆に口を揃えられて「もはやお前が
酷くね?確かに格好マフィアだけどそこまで言うかよ!?
当然だが俺が仮面ライダーになった事についても根掘り葉掘り聞かれた。マックで。取り敢えずクラスメイト達全員(ボンバー除く)にクソネズミ達に言ったことと同じ内容を説明しといた。あるものは驚愕し(主に女子陣)、あるものは感嘆する(切島とか常闇、障子らへん)。そしてまたあるものはその生き様に号泣する(多分何となくわかると思う)などみんな多種多様な反応を見せてくれた。たのしい。
中でも出久は別格だった。いやもう見事すぎる顔芸披露してくれたよ。何あれもはや別の作品じゃん。
爆豪?90°過ぎて150°位のツリ目で俺を睨んでからさっさと帰ってった。「
クソネズミ達にも呼び出された。まあ正体晒すって言ってなかったしな。面倒いから適当に理由付けしてさっさと帰った。相澤先生が面倒だったが「いい猫カフェ知ってますよ」と取引持ちかけたらあっさり堕ちた。やったぜ。
で、今は八百万にボロクソ言われた事を思い出して落ち込み中。訓練だったとは言え幼女殴ってるから言い訳出来ねぇんだよなぁ⋯⋯。
「ま、まぁでも訓練だったんだし!しょうがないんじゃないかな?」
出久、フォローはありがたいんだがな⋯⋯、
「あの絵ヅラ『幼女をいたぶって楽しむ全身鎧の変質者』にしか見えねーんだよなぁ⋯」
V?見せられたよ完全にヤベー奴だった俺。100人に聞いたら全員が俺が
⋯⋯⋯あぁ、女子達からの視線が痛い。完全に引かれてる通り越して攻撃対象になってんじゃねーかってレベルで睨まれてる、主に八百万とか麗日から。
⋯自重しよう。そう固く誓う俺だった。
「お前ら席付け。HR始めるぞ」
バッ!と皆が一斉に席に着く。相澤先生効果ホントすげぇよなマジで。静かになるまでコンマ1秒かかってるかも怪しいぞこれ。
「昨日の戦闘訓練お疲れ様。Vと成績は見させてもらった。爆豪」
相澤先生が爆豪の名前を呼ぶ。
「お前はもうガキみてぇなマネするな。能力あるんだからな」
「⋯⋯わかってる」
「で、今日の本題なんだが⋯」
ざわ、と色めく教室。あ、今日はこれか。
「学級委員長を決めてもらう」
「「「「「学校っぽいの来たーーーー!!!!」」」」」
「うぉっ」
「うへぇ⋯⋯わかっていても騒がしいねぇ」
辟易する俺達を他所に教室内は盛り上がっていく。
「ハイハイハイ!!俺やりたいっス!」
「リーダーやるやるーー!!」
「オイラのマニフェストは女子全員スカート膝上30cm!!」
ん?俺は挙げないのかって?やだよ面倒い。俺は現場で動く人間なんだ。アリアも右に同じ、面倒い事はなるべく避けたいんだとさ。
「静粛にしたまえ!!」
((お前が1番うるせーよ))
「
周囲からの信頼あってこその聖務!民主主義に則り、これは投票で決めるべき事だろう!!」
そう言う飯田の右手は垂直にビシリと伸ばされている。
「そびえ立ってんじゃねーか!!なぜ発案した!!?」
うん、まぁ、やりたかったんだろ?
「まだ出会って日も浅いのに信頼もクソもないわ飯田ちゃん」
「だからこそ!ここで複数票とった者が相応しいという事になるだろう!?」
ん、まあ一理あるわな。相澤先生は⋯
「時間内に決まるならなんでもいいよ」
とまあこんな感じなので結局多数決で決めることになった。そんで結果は、
「僕五票ーーーーーー!!!!??」
とまあこの通り出久。追加の2票は当然俺とアリア。だって他の連中に任せるくらいなら常識人+気心の知れてる出久に任せた方がいいだろ?
⋯⋯結局は飯田になるんだがな。
そんなこんなでHRが終わり、相澤先生も出て行った。
さて、俺も行くとしますかね。
「ん?どしたんだ木場。荷物なんかまとめて」
「帰る」
「は?」
俺の答えに素っ頓狂な声を上げる上鳴。
「いや、帰るって⋯⋯」
「この後用事があってな。それじゃ」
「お、おいっ!?」
そんな訳でスタスタと教室を後にする。なんか後ろで聞こえた気がしたが知らん。
こっちはUSJ襲撃に備えなきゃなんねぇんだからな。俺やアリアというイレギュラーがいる以上向こうが強化されている可能性も否定出来ない。
⋯⋯死人を出さない為にも悪ぃが今日はサボらせてもらう。HRの相澤先生が厄介だから出席はしたがそれ以降は無視だ。
俺はそのまま雄英を後にした────。
学校を出て駅へ向かう途中の事、何でこうも俺はついていないのか。また
「ヘイヘイヘイ!!どうしたヒーロー共!?攻撃してみろや!!」
「誰か助けてぇええ!!」
「ママァ!!こわいよぉ!!」
「連続強盗殺人犯〖僧坊ヘッドギア〗!!くっ、人質なんぞ取りやがって⋯⋯!」
「オマケに無駄に強い⋯!これじゃ手出しが出来ない⋯!」
⋯⋯⋯⋯いやマジかよオイ。No.13に出てきた
お前登場明日だろーが!?はえーーよ!?こちとら襲撃に備えなきゃなんないのに何目の前に登場してくれてんの!?
いやイレギュラー起こるのは予想してたよ?でもお前噛ませじゃん!本編関係無いじゃん!?出てくんなよマジで!
「⋯⋯無視してさっさと帰ろう」
俺は群がる野次馬の間をすり抜けながら歩く。周りの人たちは幸い、と言っていいのか分からんが
────が、どうも神は俺をこの1件に関わらせたいらしい。
「へっ、見せしめだァ!このガキの頭捻り潰したらァ!!」
僧坊ヘッドギアが抱えていた家族の内、未だ10に満たないだろう少女の頭を掴んだ。そのまま見える様に持ち上げる。奴が、ゆっくりと力を込めていくのが分かった。
「い⋯⋯痛い⋯⋯!痛いよぅ⋯⋯!」
「やめてぇ!!?私はどうなってもいいからその子だけはぁ!!?」
「ウルセェ!恨むんなら役たたずのヒーロー共を恨みなァ!!」
そのまま奴がグッ、と拳を握り込み────
「────巫山戯んなよゴミクズが」
「あ?」
気付けば、俺の右手にはホースオルフェノクの剣が握られている。そして俺自身もオルフェノク体へと変身していた。
そして俺の腕の中、そこには僧坊ヘッドギアに今にも殺されようとしていた少女が抱えられてる。
「お馬さん⋯⋯?」
少女のか細い、されど生命力を感じさせる声が聞こえた。どうやら命に別状は無いようだ。
────プツリ。後ろから、音がした。
次の瞬間、僧坊ヘッドギアの左腕が付け根から落ち、傷口から勢いよく血が噴き出し始めた。
「ぎっ、ぎゃああああああああああ!!!!?」
「⋯⋯チッ、やっちまったか」
関わらないでスルーするつもりだったのについてないな。
僧坊ヘッドギアは痛みのあまり残っていた人質夫婦を手放している。ゴロゴロと転がる僧坊ヘッドギアを蹴り飛ばし腰を抜かしている夫婦に少女を差し出す。
「ほら、さっさと連れて逃げな」
「ひ、ひぃいいいいいいいい!?」
夫だろう男性は俺から少女をひったくって女性と共に逃げて行く。
⋯⋯今の俺の姿は化け物だ。仕方ないとはいえ今の反応は堪える。
「彼らもこんな気持ちだったのかねぇ⋯?」
っと、思いを馳せてる場合じゃないな。僧坊ヘッドギアは残った右手で傷口を抑えながらこちらを睨んでいる。
「て、てめぇ〖灰色の怪物〗か!?何で同じ
「⋯⋯風評被害だっつーの」
別にオルフェノク全員が
「てめぇが気に入らねぇからぶっ飛ばす。それだけだ」
「く、くそがァあ!!」
激昂しながら殴り掛かってくる僧坊ヘッドギア。俺はその腕を躱し、腹に拳を叩き込む。
「おっ、ごぉえ゛!?」
「おっ、らぁっ!!」
「ぎぶぇ゛え゛!?」
そのまま前蹴りを食らわし、吹き飛ばす。僧坊ヘッドギアは奇声を上げながら吹っ飛び、地面を擦りながら5mほど進んでようやく止まった。
「さて、このまま⋯⋯っ!?」
奴にトドメを刺そうと近付こうとしたら背中に強い衝撃が走る。反射的に前に飛んで勢いを殺した。振り返ると、数人のヒーロー達がこちらに敵意を向けながら睨んでいた。そのうちの一人────バスターヒーロー エアジェットの銃口から煙が立ち上っている。どうやら奴に撃たれた様だ。
⋯なんか前にも見た光景だな。
「⋯なんのつもりだヒーロー」
これも前に言った気がする。で、連中の反応も見たようなもんだった。
「お前〖灰色の怪物〗だろ?だったら確保一択だろうがよ」
「化け物が⋯!
「⋯⋯⋯良くもまぁペラペラペラペラ口が回るなぁオイ?」
ズシリ、と空気が重くなる。もちろん原因は俺。ここまで好き勝手言われりゃ聖人でもキレるだろうよ。
「テメェらはあのガキが殺されようとしている時何やってた?」
「何を────「質問に答えろ」」
「2度は言わねぇぞ⋯⋯⋯テメェらは、何を、やっていた?」
「それは⋯⋯⋯」
1人のヒーローが悔しげに顔を俯かせた。
「そうだ、ただ見ていただけだ」
そこで言葉を区切る。俺が言いたいのはこれだけだ。
「ヒーローの癖して何やってんだテメェらはァ!!!」
ビリビリと空気が震える。俺の冷静な部分は「俺こんなに大声出たんだなー」とか呑気な事考えてる。
が、俺のブチ切れた部分はヒーローどもをボロクソにこき下ろしていた。
「テメェらはヒーローだよなァ!!?それが人質が殺されようとしてるのを黙って見てるだァ?
────巫山戯んじゃねぇぞォ!!!」
「そ、それは他にも人質が居たから」
「テメェらのその脳味噌は飾りかァ!?高所からエアジェットが奇襲を仕掛けて陽動、パワー型のデステゴロやMt.レディが押さえ込んで他の奴らで人質救出、その程度も思いつかねぇのか!!!」
あまりの馬鹿さ加減に呆れ返る。コイツらは馬鹿正直に正面から戦う以外の方法を知らねぇのか?
自分達の“人数”と“多様性”を生かしきれてねぇこんな連中がプロヒーロー名乗ってるとはな⋯⋯。
あぁ、本当に────
「ムカつくなぁオイ⋯!」
そりゃ俺だってコイツらの存在する理屈は理解してるさ。いかに俗物的でクソだろうと
だがな、理屈がわかっていてもそれを感情で受け止める事が出来るかと聞かれるとそれは別だ。
コイツらは存在そのものが『ヒーローという存在』への侮辱と言ってもいい。叶うならここで一人残らずブチ殺したいぐらいだ。
「ぎぃ⋯⋯この馬野郎がぁ!!?」
ッ!?僧坊ヘッドギアの野郎が起き上がってやがる!?奴はズボンのポケットから注射器のような物を取り出す。そしてなんの躊躇いもなくそれを首に突き刺した。
「ぎ、あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」
ボコボコと奴の筋肉が肥大化する。切り落とした腕が再生し、肩口あたりから第三、第四の腕が生え、まるで阿修羅の様な姿へと変貌する。
「『トリガー』か⋯⋯ッ!」
トリガー────正式名称を
が、当然違法薬物である。現在は裏のチンピラ共を中心に出回っている。
本来トリガーは弱い個性の一般人を
答えは簡単────
「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!!」
────手の付けられない化け物になる。
僧坊ヘッドギア────の成れの果て────は巨大化しそのサイズは5m近い。パワーも比べ物にならないだろう。さらに理性を失っている。
状況は、最悪だ。
「テメェら逃げろおおおおおおおお!!!」
「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!」
「「「「「うわあああああああああああ!!!?」」」」」
僧坊ヘッドギアは辺りにやたらめったら拳を振り下ろし始める。アスファルトが砕け、逃げ惑う市民の上に降り注ぐ。
「テメェ⋯⋯!止めろやァ!!」
剣を両手で握り、飛び上がって思いっきり奴の肩に振り下ろす。が、
「斬れねぇ⋯⋯!!」
肥大化した奴の分厚い筋肉に阻まれて受け止められた。
チラリと奴の顔を見れば目が合った。
────ニタリ、と笑ったような気がした。
「しま────」
次の瞬間、俺は殴り飛ばされてビルに叩きつけられていた。
「がああああああ!!?」
俺はそのままビルを突き破り、人気のない裏路地に転がり落ちた。
「痛ってぇ⋯⋯あんの野郎⋯⋯!!」
ヤクまで持ってたのは予想外だった。原作ではどうか知らんがあのままでは確実に不味い。
他のヒーロー達は戦力としては数えられない。人質がいたとはいえ素の状態ですら手も足も出ないのだから足でまといになるだけだろう。
⋯⋯ならやるしかない、か。
俺は懐からカイザフォンを取り出す。ダイヤルを入力、サディーへと繋ぐ。ピピッ、と電子音がなりサディーの声が聞こえてきた。
『マスター、なんの御用でしょうか。今は授業中の筈ですが』
「無駄口を叩いてるヒマは無い。今から状況だけ説明する。
『オールマイト達に任せておけばいいのでは?』
「⋯⋯もう一般市民に被害が出始めてる。連中待ってたら死人が出ちまう」
『⋯⋯⋯了解しました。今すぐ急行します』
「助かる」
────それからものの5分でサディーは俺の元に辿り着く。俺はサイドカー内のケースからベルトを取り出し、腰に装着する。
『Code 913 Enter』
『standingby』
『マスター、本当によろしいので?』
「たりめーだ。今更後に引けるかよ。それに────」
「────ここで逃げたら、俺は二度と仮面ライダーの名を背負えなくなっちまう」
今の俺は、紛い物と言えど仮面ライダーだ。それが逃げる?それこそ彼らへの冒涜だ。
だから俺は逃げない。絶対に。
『⋯⋯Yes.Master.アナタの御心の侭に』
「そりゃどーも⋯⋯⋯変身!」
『complete』
『了解しました。戦闘形態へ移行します』
『Battle mode』
俺はバッシャーに跨り、それと同時にバッシャーはバトルモードへと変形する。
「行くぞサディー⋯⋯殲滅する!」
『Yes.Sir』
俺達は、空へと飛び上がった。
「ゲゲゲゲゲゲゲゲ!!!」
「うわぁぁぁぁぁぁぁあああああ!!!!?」
「逃げろぉおぉぉおおおおお!!!!」
────もっと悲鳴を、血を、快楽を、と。
自分の思うがままに力を奮い、誰かを傷つける快感を得たいが為に暴れる典型的な
さて、次はどんなふうに殺してやろうか。そんな事を考えながら自分の邪魔をする
心地いい、とその悲鳴は新たな快感を求める欲求へと変わる。彼は更なる快楽を求めようと拳を振り上げ────
「させるかよボケェェエエエエエエエエ!!!」
────何か、巨大なモノに吹き飛ばされた。
「ブ、ガァッ!!!!?」
悲鳴をあげながら地面と熱烈なベーゼを交わすハメになる。お陰で欠片ほども理性の残ってない彼は一気に噴火した。自身を攻撃した敵対者を屠ろうと顔を上げる。
が、遅い。
────既に銃口、否、
「フォトンバルカン、shoot!!」
『Fire』
────ドラララララララララララララララ!!!
「ガエエエエエエエッ!?」
変わった機械の塊に跨る仮面ライダーの言葉と共に放たれる大量の光弾。それが彼の全身をやたらめったら打ち据えて行く。
やめてくれ、そう懇願するように絶叫を上げるが仮面ライダーには届かなかったようだ。
「エグザップバスター、Burst!!」
『Fullopen、Fire』
機械の左腕(?)からナニカが煙を上げて射出された。それは白煙で尾を引きながら彼へと迫りそして────
「ギ、ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア!!!!!」
────着弾。
爆発による閃光と煙で彼の姿が隠れる。煙が晴れたそこには、血に塗れた身体を揺らしながら、それでも未だに立つ彼がいた。その瞳には憤怒。楽しみを邪魔され、自らに傷を負わせた敵対者を決して許すまいという思いが、彼の脳内を占めていた。
「ァ゛、ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!」
目の前のコイツを殺す。それだけを胸に振りかぶった剛拳は────
「とっとと寝てろクソ
────仮面ライダーがハンドルを右にきったと同時に振るわれた機械の拳に吹き飛ばされる事で、その行き場を失った。
彼はそのまま地面に倒れ込み、意識を失ったのかそれ以上立ち上がる事は無かった。
仮面ライダーはそのまま機械に跨ったまま、大きく跳躍し、唖然とする市民やヒーロー達の前から姿を消した。
────尚、この事件については
翌日、その仮面ライダーの正体たる少年がとあるネズミに説教を受けていたのは誰も知らない────
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USJ──初めてのクソ転生者
だって男の子だもん。
僧坊ヘッドギアというイレギュラーに遭遇し、クソネズミとスマートブレイン社長村上峡児としてのツテを使って俺がいたことを揉み消した翌日。
⋯⋯⋯分かってはいたけど戦ってばっかだなぁヒロアカ世界。でも僧坊ヘッドギアのは仕方ないと声高に言わせて欲しい。オールマイトやエンデヴァーらトップヒーロー達は別の事件で手が離せなかったらしい上、援軍が来る気配も無かったんだからな。
さて、今日は待ちに待ったUSJ襲撃当日。今日の為にわざわざ学校サボって準備してきたので準備は万全である。
それにしてもUSJ⋯⋯⋯USA⋯⋯⋯IS〇A⋯⋯うっ、頭が⋯⋯。
「今日のヒーロー基礎学は俺、オールマイトに加えもう1人の教師で見ることになった。
行うのは
「レスキューか⋯⋯今回も大変そうだな」
「でもヒーローの本分だぜ?むしろ腕が鳴るぜ!」
「ケロ、水難なら私の独壇場ね」
教壇に立つ相澤先生がそう告げる。生徒達はそれぞれ不安を口にする者、やる気を見せる者など様々だ。
「今回はコスチュームの着用は自由だ。訓練所はバスに乗って行く。時間は有限だ、合理的にな。以上だ」
⋯⋯⋯俺に出来るのは死者を1人も出さない事、そして敵が強化されてない事を祈るばかりである。
「こういうタイプだったかくそう!!」
「意味なかったねー」
飯田が無駄に気合いを出して空回りし、芦戸か無自覚に傷口を抉ってくバス内。ちなみに俺の隣は上鳴と最近影が薄いアリア。まあ普通だ。
「木場くん?なんか失礼な事考えてない?」
「⋯⋯気の所為だろ」
何でこういう時、女って感がいいんだろう。結構ドキッとするからやめて欲しい。
「貴方の個性、オールマイトに似てるわね」
「え、えぇ!?」
あ、出久が蛙吹に話しかけられてる。モテるなぁあいつ。なんか無自覚に女何人か落としてそうなんだが(偏見)。
「そ、そうかな!?でも、その、僕のはえーとその」
「まてよ、オールマイトは怪我なんかしねえよ。似て非なるモンだろ」
落ち着け出久動揺し過ぎだ。そんな態度じゃ何かありますって言ってるようなもんだぞ。そして切島ナイスフォローだ。ボロが出る前で良かった。
「しっかしシンプルな増強型の個性はいいよな!派手で出来ることが多いし!
俺の『硬化』は対人戦じゃ強えけどどうも地味なんだよなー。特に応用法もねぇし」
「応用⋯⋯⋯だったら木場っちゃんに聞いた方がいいよ。そういうの考えるの得意だし」
出久がそう言うと俺に視線が集まった。え、ここで俺?
「木場、そうなのか?」
「いや⋯、別に得意ってわけでもないが」
「なんか思いつく事があんなら教えてくれねえか?俺そういうの考えるの苦手なんだよ」
硬化の応用法ねぇ⋯⋯。
「切島、とりあえず個性見せてくれ」
「?おう、いいぞ」
そう言って硬化した腕を差し出してくる。ん⋯⋯⋯これ皮膚が硬くなってるわけじゃねぇな。どっちかっつったら⋯⋯鉄分か?てことは⋯⋯あーそういう事か。
「切島、お前自分の個性についてどの程度把握してる?」
「把握⋯⋯つっても硬くなるぐらいしかわかんねぇな」
「ん、まぁ普通分かるわけねぇから仕方ねぇか」
「どういう事だ?」
「お前の個性を詳細に言えば『体内の鉄分を使って身体に硬度や粘度を操作可能な金属を生み出す個性』だ。副次効果として体内に大量の鉄分を蓄積できる、ってとこか」
「お、おお?」
「き、木場っちゃんそれって⋯⋯」
本人はよく分かってないみたいだが出久はこの個性の凶悪さに気付いた様だ。
「そうだ、上手く扱えば刀剣類や鎧をほぼ無制限に生み出せる」
「しかも粘度を操作して打撃系統の攻撃を無効化できる⋯相手に向かって射出すれば拘束も⋯!」
「鼻っから斬撃系統も効かないし敵の攻撃に合わせて体から金属の刃でも突き出しゃカウンターし放題だ」
「熱とかの絡め手には弱いけどそれを差し置いても強い⋯⋯」
「早い話、物理攻撃が効かない
詳細に説明してやったしこれなら切島でも理解出来るだろ。
「あー、つまり⋯⋯どういう事だ?」
訂正、こいつなんも分かってねぇ⋯!
「要するに切島の個性は体内の鉄分から金属を造れてそれを操れる、って事でしょ?」
「あ、あぁ!成程な!芦戸サンキュー!分かりやすかったぜ!」
「おまっ!丁寧に説明してやったのにそれはねぇだろ!?」
「正直二人して何言ってるのか分からなかったわ」
「ひでぇ⋯⋯」
「そ、そんなに分かりにくいかな⋯⋯?」
ショックを受ける俺と出久。え、大分噛み砕いたよ?それで分かりにくいって俺ってもしかして教えるの下手?
「い、いやそんなハズは⋯」
「じゃあ馬鹿な上鳴くんでも分かるように上鳴くんの個性の応用法をどうぞ!」
「しれっとディスられた!?」
上鳴か⋯⋯うん、こいつなら大丈夫だろ。
「電撃系統の個性はやれる事が多いからな。電磁浮遊、プラズマ操作、
「ぷ、ぷらず⋯⋯れーるが⋯、何?」
「すまん、こいつが理解出来る単語が思いつかん」
「ごめん、そもそも馬鹿な上鳴くんが理解出来る訳ないよね」
「え、何、俺が悪いのか!?」
「おい、そろそろ着くぞ。いい加減にしとけ」
⋯⋯うし、切り替えていきますか。
バスから降りて演習場内に入る。
「すっげーー!!USJかよ!?」
「火事、水難、土砂災害その他諸々。あらゆる事故や災害を想定してつくられた演習場。
その名も
(((((ホントにUSJだった!!!)))))
宇宙服を着たヒーロー13号がここの担当教師だ。個性は『ブラックホール』。ぶっちゃけ作中でもトップクラスにチートな能力である。
ん、なんかヒソヒソ話してるな⋯⋯⋯あ、オールマイトか。確か限界ギリギリまで活動して顔出せなかったんだった。
「えーでは始める前にお小言を1つ2つ⋯⋯3つ4つ⋯」
(((((増える⋯⋯)))))
「皆さんご存知だとは思いますが僕の個性は『ブラックホール』。どんなものだろうと吸い込んでチリにしてしまいます」
「それで災害から人を救い上げてるんですよね」
出久の言葉にすごい勢いで首を縦に降る麗日。ファンなんだっけか。その言葉に首肯する13号先生。「しかし」と続ける。
「一歩間違えば簡単に人を殺せる力です。皆さんの中にもそういった個性を持つ人がいるでしょう。
今の社会、資格制度によって個性を管理していますがそれでも人を容易に殺せる行き過ぎた力を個々が有している事に変わりはありません」
知っている。が、思わず13号先生の言葉に聞き入る。
「オールマイト先生の授業で各々が自身の個性の危険性、そしてそれを他人に向ける危うさを理解したと思います。この授業では誰かを傷つけるのではなく、誰かを助ける為に個性を使い、どう活用するかを学んで欲しいと思っています」
彼のように自らの力の危険性を理解している者は希少だ。一般人、
「以上、ご清聴ありがとうございました」
気付けば自然と拍手が漏れていた。現代のヒーローもなかなか捨てたもんじゃない、と彼を見ていると思えてくる。
────視界に、異物が入り込んだ。
黒いモヤの様なモノ。ゆっくりと広がるそれから現れた────途方もない悪意。
「全員一塊になって動くな!!13号!生徒達を守れ!!」
教師達、そして原作を知っている俺とアリア以外は状況を理解しておらず動けないでいた。
そんな中────俺は1人で前に出た。
「っ!?待て!木場!!」
待ってる訳には行かなくなった。手マンこと死柄木弔、これはいい。ワープゲートの黒霧、これも問題無い。連中の切り札の脳無────
(ここで来るかよイレギュラー!!)
だが、予想はしていた。だからこそ用意していた。俺はコートの中から
「は⋯⋯」
「くらいやがれクソ
M134 通称ミニガン。毎分2000発という脅威の連射力を誇る化け物。それが、
────バララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララ!!!!!!!!
弾丸は一応ゴムステン弾。それでも当たり所が悪ければ死ぬだろう。が、脳無二体相手に加減なんぞしてる余裕は無い。下手すりゃこっちが殺られるのだから。
⋯⋯そのまま二、三分程打ち続けただろうか。カラカラと銃身が空回りを始める。弾切れだ。
俺はそのままミニガンとマント内に仕込んでおいた弾倉を投げ捨てる。連中は────健在だった。
「⋯⋯⋯あっぶな。イキナリゲームオーバーなんて笑えない⋯」
その目を見て────怖気が走った。原作の脳無では無い、赤銅色の脳無だ。アレは他の脳無の様な操り人形では無い。ヤツは俺を見て、“
思わず後ろに後ずさる。それ程までに奴の視線が悍ましかった。
「⋯⋯⋯今は何も言わん。下がれ」
肩に手を置かれた。相澤先生だ。
「他の奴らには指示を出しておいた。お前も逃げろ」
「⋯⋯駄目です。相澤先生の個性じゃ相性が悪過ぎる。せめて俺だけでも援護します」
「それこそ駄目に決まっている。お前は“子供”で、俺は“大人”だ。大人には子供を守る義務がある。分かったらさっさと行け」
なおも食い下がろうとするが後ろに引っ張られた。13号先生だった。個性で俺を引き付けたようだ。
「今は相澤先生に任せましょう。さぁ皆さん避難を!」
「⋯⋯クソっ!!」
不味い、このままでは確実に相澤先生は死ぬ。勝ち目なんぞある訳が無い。助けに行こうにも13号先生が邪魔をする。ここに来て味方に邪魔されるとは思わなかった。
「────させませんよ」
避難する13号先生達の進行方向に立ち塞がる黒いモヤ。黒霧だ。
「はじめまして雄英高校の皆さん。我々は
────平和の象徴に息絶えて頂きたいと思っての事でして。
平和の象徴、つまりはオールマイト。この国の最強のヒーローを、殺す。黒霧はそう言った。生徒達は驚愕に包まれる。
「しかし妙ですねぇ⋯⋯先日頂いたカリキュラムではここにオールマイトが居るはずなのですが⋯⋯」
そんな生徒達を他所に呑気に喋る黒霧。そこに、いち早く立ち直った切島と爆豪がせまる。
爆破と硬化した拳が迫る。黒霧は慌てる様子もなくそれを回避した。
「危ない危ない⋯⋯そう、生徒と言えど優秀な金の卵、か。なら────散らして、嬲り、殺す」
「ダメだ!二人とも退きなさい!!」
13号先生は射線に爆豪達が被っていて攻撃出来ない。かく言う俺も為す術が無い。
────黒の奔流に、俺達は何も出来ず呑み込まれた。
「う、おおお!?」
霧が晴れると目の前には地面。咄嗟に受身を取って顔面ダイブだけは回避する。
「うわっ!?」
「きゃっ!」
「ヘブっ!?」
他に飛ばされたのは耳郎、八百万、上鳴か⋯⋯。上鳴が顔面ダイブしてるのはいいとして、だ。
「キシシッ!お前らァ!獲物が来たぞぉ!」
この
俺はカイザフォンからサディーに連絡を入れる。特に時間も掛からず繋がった。
『マスター、例の
「察しが良くて助かる。お前はUSJ外に
『マリーはどうします?』
「アイツはセントラル広場に向かわせろ。戦力不足でかなりピンチだ」
『了解しました。マスターは?』
「俺は山岳エリアに居る。余裕があるなら助けに来てくれ」
『任務了解。命令を遂行します』
「キシシッ。なんだ?家族への連絡でも済ませたのか?」
「上鳴、お前の個性で連絡着くか?」
「ダメだ、全く繋がらねえ」
「恐らくジャミング系統の個性持ちがいるのかと思われます」
「つまりはウチらだけで何とかするしかないと⋯」
「まあ何とかなるだろ」
「お、おいおいなんでそんなに余裕なんだよ!?」
「見た感じ三下のチンピラばかりだ。俺達なら充分倒せる」
「⋯どっちにしろ戦うしかありませんわ」
『Code 913 Enter』
『standingby』
「そういうこった。変身!」
『Complete』
俺が変身するとザワりと
「お前らは3人で背を向けあって戦え。そうすりゃ隙も最低限で済む。八百万は2人のために武器創ってやれ。特に上鳴は長期戦に向かねぇからな」
「分かりました!木場さんは!?」
「自前のモンで充分だ!」
言うやいなや俺は動揺している
「ギャブゥ!?」
あっさりと他を巻き込んで吹っ飛んでいったそいつから隣の大柄な異形型
ふむ、他の連中含め武器持ちが多いな。俺はミッションメモリを引き抜いてブレイガンに挿入、ブレイガンをソードモードに変更する。
「どうした?かかって来いよ」
「ナメてんのかガキィ!!」
ハンマー持ちがハンマーを振り下ろす。それを横に躱してフォトンブラッドの弾丸を叩き込み、後ろから近寄ってきた鳥
「ハッ!隙だらけだ!!」
「お前がな」
態々声掛けてたら奇襲の意味がねぇじゃねぇか。ご丁寧にテンプレな奇襲を仕掛けてくれたモヒカンゴリラに回し蹴りを叩き込んで
うん、やっぱり大した事ねぇな。
「このまま全員始末して早く救援に────」
────ビビビッと虫の羽音の様な音が後方で聞こえた。
「っ!」
反射的にその場にしゃがんで後ろからせまるナニカを回避する。それを好機と踏んだのか
ナニカが向かった方向を見れば────羽音の正体らしきカブト虫型の機械を手に持った男が立っている。その腰には、見覚えのあるベルトが巻かれていた。
「おま⋯⋯えは!」
「よォ兄弟。早速で悪いが────死んでもらうぜ」
男が、カブト虫────カブトゼクターをベルトにセットする。
「変身」
『HENSIN』
鋼色の装甲が男を包む。間違いない。ああ、間違いないとも。こいつは俺が探していた者の一人────転生者だ。
男は更にゼクターを操作。その動作に見覚えのある俺は咄嗟に叫んだ。
「全員伏せろォ!!」
その言葉に反応出来たのは、上鳴達や数人の
「キャストオフ」
『CAST OFF』
その言葉と共に奴の装甲が弾け飛ぶ用にパージされる。俺の叫びに反応出来なかった者達────全員が
『CHANGE BEETLE』
「へぇ、避けたのかよ。やるじゃん」
「そう言うお前は味方だろうと容赦無しかよ。えぇ?」
「ハッ、こんなゴミ共が味方?んなわけねぇだろ精々が捨て駒だっつの。つまんねえ冗談はよせよ兄弟」
「誰がテメェなんぞと兄弟だ?反吐が出るぜゴミ野郎が」
「オイオイつれないねぇ」
おちゃらけた態度に腹が立つがぐっと堪える。こいつには、聞かなければならない。
「1つ、聞かせろ」
「あん?」
これだけは、聞かなければならないのだ。
────正直、仮面ライダーの力を使って
「お前は、なんで仮面ライダーの力を使っているにも関わらず
「⋯⋯なんだよ、そんな事か」
誰もが“ヒーロー”としても仮面ライダーを愛している。そう思っていた、否、思いたかった俺の希望は────
「楽しいからに決まってんじゃん?」
────あっさりと打ち砕かれた。
「こんなすっげぇ力があるんだぜ?そりゃ好き勝手に使いたいと思うだろ?てかあるんだから使わなきゃ損じゃん」
⋯人間、極限まで怒りが溜まると一周まわって冷静になるという事をこの時俺は学んだ。腸はとうの昔に煮えくり返っている。それでも思考は不自然なくらいクリアだった。
「⋯⋯お前の言いたい事はよく分かったよ。俺から言う事は一つだけだ」
「お、なになに?なんか面白い事?」
冷静な心の奥底で、ドロドロとして怒りのマグマが噴火寸前まで煮えたぎって居る。俺はそれを────
「死に晒せクソ転生者」
────目の前のゴミに向けて一気に解き放った。
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VS偽カブト1 そして王は目覚める
「死に晒せクソ転生者」
奴────偽カブトの言葉を聞き怒り心頭の俺は奴に向けてブレイガンを腰だめに構えて撃つ。西部劇などの抜き撃ち、それの予備動作を極限まで無くした高速の射撃術。確実に当てるつもりで放ったそれは、しかし、奴が軽く首を捻る事によって躱された。
「おっと、危ねぇ危ねぇ。いきなりはないんじゃないか?」
「黙れカスが。これ以上テメェと問答するつもりは微塵もねぇ。だからよ────」
地面を蹴って奴に迫る。
「とっとと死ねやぁ!!」
「はっ、やなこった!」
首目がけて振り下ろされる黄の刀身をダガーで受け止める偽カブト。そのまま鍔迫り合いに持ち込むつもりなのかダガーに力を込める。
生憎とパワーで負けてる相手に馬鹿正直に向かって行くつもりは無いので奴の腹を蹴った反動で距離をとった。
「っ、とと。オイオイ少しは手加減してくれよ?」
「余裕で反応出来てた癖して何抜かしてやがる」
「あ、わかった?」
⋯⋯認めたくはないが目の前の偽カブトのスペックは高い。カブトが、と言うのではなくカブトの中身がだ。
仮面ライダーカブトは昭和における仮面ライダーストロンガー、つまりは平成における“最強”を意識してデザインされたライダーだ。本体スペック自体はあまり高くない。オリジナルカイザとほぼ同じである。
が、コイツの恐ろしい部分はここではない。
まず仮面ライダーの必殺技として1番有名なライダーキック。食らえば最後、
もう1つが『クロックアップ』。早い話が自身の高速化。
これが尋常じゃなく速い。ファイズのアクセルフォームなどを始めとする歴代高速フォーム、もしくはロボライダーやイクサなどの動体視力に優れたライダー達でもない限り対応は難しい。ただし体への負担はめちゃくちゃ大きいが。
⋯⋯多分1号とか3号なら余裕で対応出来るんだろうけど。
前置きが長くなったが手っ取り早く言うとカブト自体はかなりピーキーでノーマルスペックの一般人では扱いきれない代物だという事だ。つまり、中身もオリジナルの天道総司並のスペックを持っている可能性が高い。
ともかく、こちらがやる事は一つだけだ。早い話、
「何もさせないまま倒す!!」
ブレイガンによる射撃で奴が技を使う暇を与えない。そのまま接近するが奴もただ手をこまねいている訳では無い。奴はダガーを投擲してきた。
「あらよっと!」
「っチィ!」
間一髪弾き飛ばす。クルクルと空中で回るダガーを飛んでキャッチし、奴はそのままこちらに振り下ろしてきた。ガキッと硬質な音を立てて刃はブレイガンの刀身に阻まれる。
「お、防いじゃう?ならもっといこうか!」
「ガッ、ハァッ!?」
「き、木場ぁ!?」
偽カブトはそのまま空中でくるりと回り、蹴りを放つ。ダガーに気を取られていた俺はその蹴りをモロに食らってしまった。俺は吹き飛ばされて地面に転がった。上鳴の心配したような声に答えてやりたいが生憎とそんな暇は無い。
「まだまだいくよん!」
「クッ⋯!」
「⋯シッ!」
「うおっちょあぶなぁ!?」
1度ブレイガンから手を離して裏拳を繰り出す。大袈裟に声を上げて仰け反りながらたたらを踏むそいつに足刀蹴りを叩き込む。しかし浅い。どうやら背後に飛んで威力を殺した様だ。
「おっほほ!やるじゃんやるじゃん!もっと楽しもうぜ!」
「チッ、無駄にスペックの高い奴だ!」
「なんと言っても天道総司の肉体ですから!」
「聞いてねえよクソッタレが!」
思った通り奴の体は天道総司の物の様だ。天道自身生身で怪人と戦える化け物スペックの持ち主だ。さらに注意が必要だろう。
「今度はこっちからいくよん!」
「くぉっ⋯!?」
ボクシングのジャブ気味に放たれた拳をギリギリで躱す。俺の首の真横を通って行ったそれを掴み、一本背負いの要領で投げようとするも、
「ところがぎっちょん!」
「ぐっ⋯!」
偽カブトは俺の首に腕を回してチョークスリーパーを掛けてくる。否、仮面ライダーのスペックでそんなものを食らえば確実に草加の様に首をへし折られる。
「させっ⋯⋯るかっ⋯!」
「ぶへっ!?」
ブレイガンを俺の顔の後ろに向けてそこにあるであろう奴の顔面に叩き込む。奴も驚いた様で軽く後ずさった。
────好機!
「フッ!」
「わわっ!?」
袈裟斬り気味に振られた刀身はダガーで受け止められる。そこで一旦メモリを引き抜いた。
「おわわっ!?」
押し返そうとダガーに力を込めていたのであろう。奴はあっさりと体勢を崩した。その隙を逃さず奴に銃撃を撃ち込みまくる。
「う、おおおおお!?」
これには奴も余裕を崩し、声に焦りの色が混じり始めた。俺は更に奴を追撃する。
右のボディーブロー。奴が思わず蹲ると頭を抱えて右膝。それを何発も。ムエタイで言う“首相撲”の体勢だ。
奴はそれをクロスガードで防ぎ、何とか顔への一撃は阻止している。好都合。俺は奴と組んでそのまま、
「ブレーンバスタァァァア!!」
「ぐおっ、ほぉっ!?」
全力のブレーンバスター。無様な声を上げて地面に叩きつけられる奴にトドメを刺そうと拳を振りかぶる。
「っらぁっ!!」
「がっ!!?」
顎に衝撃。目の前がチカチカする。たたらを踏んで後ずさり、膝をつく俺を偽カブトは悠然と見下ろしている。
「かぁ〜〜〜!なんだよ、思ったより強えーじゃん!!聞いてないんですけど!?」
まるで餓鬼のような癇癪を起こす偽カブトを見ながら、俺は今何が起こったのか冷静に分析していた。
(いくらなんでも起き上がるまでが速すぎる⋯⋯!クロックアップを使う動作も無かった⋯⋯⋯別の転生特典か?だとすると何だ?反射神経の強化?クソっ、分からねぇ⋯!!)
「ああもうくそっ!!おい!雑魚野郎!」
「⋯あ?」
偽カブトから声が掛かり、俺は思考の海から浮上する。奴は相当カッカしているようで、先程までの余裕そうな態度は微塵も見受けられなかった。
「遊びはお終いだ!!これでぶっ殺してやるよ!!」
『ONE TOW THREE』
そう言うとゼクターのボタンを押し始める。ケリを付けるつもりの様だ。
「⋯チィ、やるしかねぇか」
『Ready』
ポインターにメモリを挿入し右脚に装着。カイザフォンを開いてEnterを押す。
『Exceed charge』
ギアから光点がポインターに流れ込み、それを確認して瞬時に飛び上がった。
「ライダーキック!!死ねよオラァ!!」
『RIDER KICK』
奴の体を紫電が伝い、それが奴の右足に流れ込んだ。俺はポインターを射出して奴に向けて狙いを定める。
「ゴルドスマッシュ!!死ぬのはテメェだぁぁあああああ!!!!!」
黄金の矢となって奴に向けて突き進む俺。思いっきり振られる奴の右脚。それが、ぶつかり合う。
「ぐ、おおおおおおおお!!!」
────拮抗。2つの巨大なエネルギーがぶつかり合い、辺りにその余波が撒き散らされる。
「うわっ!危ねぇ!」
「上鳴!?」
「下がって!でないと巻き込まれますわよ!!」
誰かの声が聞こえた気がしたが構っている暇は無い。今は、目の前のコイツを倒す事だけを⋯⋯!!
────ふと、気付いた。
(おかしい⋯⋯なんでコイツには焦る様子が見受けられない?)
偽カブトは何事かをブツブツと呟き別の事に気を取られているかの様だ。にもかかわらず奴の蹴りは全く衰える様子が無い。いや、寧ろ────
(馬鹿な⋯⋯
有り得ない。俺の蹴りはゆっくりと、しかし確実に押し返されている。そんな事があるはずが無い。確かに俺のライダーズギアはオリジナルには及ばないがそれでも他のライダーに一方的に押し返されるほど弱くは無い。
「────もういいや」
そこで奴が口を開く。その声音は、まるで玩具に飽きた子供の様だった。
「何をっ⋯⋯!?」
「死んでいいよ」
────瞬間、足に触れていた奴の右脚の感触が消失する。
「何────」
何が起こった。そう言う前に
「がっっっ、ハァッッッ!?」
「「木場ぁ!!?」」
「木場さん!?」
3人の悲鳴のような声が聞こえる。何だ、何が起こった⋯⋯⋯!?
「あーあ、こんなカス野郎に特典使っちまうなんてなー。もったいねぇ」
「とく、てん⋯⋯だと?」
奴が放った単語に反応すると奴は聞いてもいないのにベラベラと喋り始めた。
「そうそう!俺が貰った特典はこのカブトゼクターと『常時発動型のクロックアップ』さ!すげぇだろ?」
「ん、だよそのクソチートは⋯⋯⋯!!」
ファイズで言えば制限無しのアクセルフォーム。原作ですら精々数分が限界のクロックアップを無制限に、しかも常時発動型?それはつまり────
「手加減っ⋯!してやがったのかっ⋯⋯!?」
「は?当たり前じゃん。カイザみたいなクソザコナメクジ相手に本気とか恥ずいもん」
「ハッ⋯⋯、それが、あのザマかよっ⋯?ダッセぇなぁお前⋯⋯!」
「ちっ!黙れよカスが!!」
「ごっ、ほぉっ!!」
先程蹴られた部分にもう一度蹴りを叩き込まれて上鳴達の所まで吹っ飛ばされる。しかもその際にベルトが外れ、変身が解除されてしまった。
「木場さん!?大丈夫ですか!?」
八百万が俺に駆け寄り、抱き起こしてくれる。俺はと言うと「クソッタレが⋯⋯!」と悪態をつくぐらいしか出来ない。奴を見れば俺以外は楽勝という余裕の表れなのか、既に変身を解除している。
ニヤニヤといやらしい笑みを浮かべてこちらに近寄って来る奴の前に、上鳴と耳郎が立ち塞がる。
「んん〜?何だよお前ら。野郎には興味無いから退けよ」
「ウチは女だ!ていうかここでそう言われて素直にどくならヒーロー科になんか来てない⋯!」
「木場が頑張ってくれたんだ!だから次は俺達がやる番だぜ!!」
「⋯⋯あー、そういうのいいからさ。退けよ」
「「どかねぇ(ない)!!」」
「じゃあ死ね」
奴────翌々見れば中々天道総司に似ていた────偽天道は一瞬で上鳴に近寄って、そのまま拳を叩き込んだ。
「お゛っ!?」
「おらよっ!!」
そのまま蹴りをくらい、声を上げる間もなく吹き飛ばされて大岩に叩きつけられる上鳴。耳郎はその隙にプラグを差し込もうとするが逆に掴まれて引っ張られる。
「うわっ!?」
「てめぇも⋯⋯だっ!!」
「っうあ゛ぁ゛!?」
引っ張られた耳郎は膝を腹に叩き込まれてノックダウン。蚊の鳴くような声を絞り出しながら倒れ込んだ。
「に⋯⋯⋯げ⋯、て⋯⋯⋯」
「さーてと、お楽しみタイムと行きますか♪」
奴は八百万に抱えられている俺の胸倉を掴んで投げ捨てる。俺は既に声を上げる気力も無く、されるがままだった。
────負けた。偽物に。
奴はチートを持っていた。だから何だ?それが何の理由になる?
俺はあの日、偽物の仮面ライダー達を倒して、彼らの名誉を挽回することを誓った。その結果がこのザマだ。
力を好き勝手振るうクズに叩き潰され、仲間を傷つけられ、気付けばボロ雑巾の様に打ち捨てられている。
チートなど言い訳にならない。俺は、あの日の彼らへの誓いを果たせずに、あっさりと敗北した。
────情けない⋯⋯!!
「ぐ⋯⋯⋯うぅっ⋯⋯!!」
あまりの情けなさに涙が溢れてくる。13歳でライダーズギアの制作に成功し、スマートブレインを15歳で立ち上げ、更には難関高校の雄英にすら合格した。世間的には鬼才、天才と呼ばれる様な事を成し遂げ、天狗になっていた。それが招いたのは無様な敗北。今も仲間が傷つけられようとしている。
俺は残り少ない力を振り絞って偽天道達の方へ声を発そうとする。せめて、八百万だけでも逃がそうと────
「き、きゃあっ!?な、何をっ⋯!?」
「何って、負け組の女がされる事なんて1つしかないっしょ?」
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯は?」
間抜けな声が盛れる。偽天道は八百万に覆いかぶさって、彼女を組み敷いていた。その目は、情欲に溢れている。
(おい、嘘だろ⋯?いくらなんでもそんな事⋯⋯?)
この期に及んで俺はそんな考えを巡らす。そんな考えも布を引き裂く音で粉々にされた。
「嫌っ!?やめて下さい!!」
「そう言われて誰がやめるかよ!」
「痛っ⋯!やめて!触らないで!!」
「おほほっ♪やわらけ〜!」
奴は八百万のコスチュームを引き裂き、顕になった彼女の柔肉に指を埋めている。八百万は必死に抵抗している。その反応を楽しんでいた偽天道。が、やがて鬱陶しくなったのか八百万の顔を平手で叩いて黙らせようとする。
パチン、と高い音が響き渡る。
「うるせぇんだよ!!お前は黙って俺に犯されてれば良いんだよ!!」
「ひっ⋯⋯!」
偽天道の大声に萎縮し、小さく悲鳴をあげる八百万。その反応を見て舌なめずりをする偽天道。
俺は────限界だった。
「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」
とっくに限界を迎えていた肉体にムチを打ち、無理矢理動かす。全身が痛むがそれを誤魔化すように雄叫びを上げた。偽天道がこちらを振り返る。俺は既に駆け出し、偽天道の顔面に拳を叩き込んでいた。
「ぷげらっ!?」
奇妙な声を上げて無様に吹き飛んでいく偽天道。いい気味だ。
「き、木場さん⋯?」
八百万の声に答えることは無く、俺はコートを脱いで八百万にかける。流石にこのまま放置して置く訳には行かない。
「あ、ありがとうございます⋯」
「て、んめぇ!?よくも俺の顔にぃ!!?」
偽天道が起き上がってくる。俺のパンチで顔はなかなか面白いことになっていた。
「ハッ、中々の不細工ヅラだ。ゴリラにならモテそうだなぁ偽物さんよォ?」
「ふ、ふざけんなぁ!!?もう少しでお楽しみだったのによォ!!」
「⋯⋯⋯
それは────
「こっちのセリフだクソ野郎ォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!」
ビリビリと空気を震わす咆哮と共にオルフェノク体へと変身する。よく見れば鎧の端々がいつもと違う。“激情態”というヤツだろうか。
────だがそんな事はどうでもいい。
コイツの肉体は、どこで調達したかは知らないが天道総司そのもの。それで八百万を陵辱しようとしたのだ。そして、それを成し遂げる為に使ったのもライダーの力。
────許す訳には、行かない。
「へ、変身!」
俺のオルフェノク体への変貌に焦ったのか慌てて変身する偽天道。今度は始めからライダー形態である。
普段の俺なら使い分けも出来るのかと呑気に考える所だが生憎と今の俺の頭は目の前の
「あああああああああああああ!!!」
「う、おおぁ!?」
疾走態へと肉体を変貌させながら奴に向けて剣を振るう。振り下ろされたそれを奴は転がって回避する。その姿は隙だらけだった。
「ぜェりゃあ!!」
「アガッ!?」
返す刀で切り上げ、ぶっ飛ばす。奴は空中で手足をジタバタさせながら崖下へと落ちていった。
俺は奴を追いかける為に崖から飛び降りる。確実に、奴の息の根を止める為に。
────エントランス広場・水難ゾーン中間の水辺
僕、緑谷出久は慢心していた。蛙すっ⋯⋯梅雨ちゃんと峰田くんと共に何人もの
思ってしまった、というより思い込んでしまったのだ。自分達の力が
────そんな僕達の思いは、あっさりと打ち砕かれた。
水辺から顔を出し、ゆっくりと広場の方向を伺う。目の前に飛び込んで来た光景を、信じたくなかった。
相澤先生が、倒れていた。黒い脳味噌丸出しの
「なっ⋯⋯」
「相澤先生が⋯⋯」
「お、オイィ!!?どうすんだよ緑谷ぁ!?」
驚愕の声を上げる僕、呆然と声を漏らす梅雨ちゃん、慌てる峰田くん。三者三様の反応だが根底にある考えは同じだ。
『プロヒーローが敗北した相手に自分達が勝てる訳がない』
この時漸く理解した。僕達に当てられたのは所詮捨て駒に過ぎないチンピラ
(不味い不味い不味い不味い不味い不味い不味い不味い不味い不味い!?どうする!?逃げる?ダメだ、下手に動いたらバレる!それに相澤先生を助けないと!?でもどうやって!?今出ていっても殺されるだけだ!?)
焦りで思考が纏まらない。どうすればいい?この場での最適解は?無事に切り抜けられる方法は?
考え込んでいると
「死柄木弔。生徒の1人に逃げられました。もうすぐプロヒーロー達が駆けつけて来ます。ここは撤退するのが良策かと」
「ハァ?ゲートの外周りには見張りが居たハズだろ。そいつらは何やってんだ」
「それが皆ノビていまして⋯⋯誰がやったのかは分かりませんが同士討ちでもしたのかと」
「ハァ⋯⋯んだよそれっ⋯⋯!アイツら全員崩してやろうか⋯⋯!」
手塗れ
「帰るぞ」
こんな大事件を引き起こした張本人とは思えないほど気軽な声で、そう言った。
「か、かえる?アイツ今帰るって言ったのか!?」
「ケロ、私にもそう聞こえたわ」
⋯⋯⋯おかしい。これだけの事をしてあっさり引き下がる?いくらなんでも不自然だ。峰田くんは喜んでいるが梅雨ちゃんは僕と同じ考えなのか険しい表情を崩さずにいる。
「けどまぁ帰る前に────平和の象徴の矜恃を少しでもへし折って帰ろうか」
ゾッとする様な目を此方に向ける手塗れ
場所がバレていた────!?
「殺れ、2号」
────一瞬後に、赤銅色の
「よせぇええええええええ!!?」
全身にフルカウルを展開する暇も惜しい。僕は右腕だけにワンフォーオールを発動して思いっきり赤銅色
拳を奮った際の風圧で水面がさざ波を立てる。
(オールマイトの力の、100%を、耐えた?)
信じられなかった。あの、NO.1ヒーロー オールマイトの一撃を耐える事が出来る存在かいるなんて。そうして惚けている僕は、
「────!」
「あ゛?」
音も無く振り下ろされた拳に叩き潰され、僕は地面へとめり込んだ。
「────!────!?」
声が出ない。代わりに溢れてくる血に、呼吸すら困難な状態だった。
────あれ、ぼく⋯⋯しぬ?
きゅうげきにちをうしなったせいかあたまがまわらない。だんだんしかいもくらくなってきた。うでもうごかない。
「う⋯⋯⋯あ゛ぁ⋯!?」
「お゛っ⋯⋯⋯じにだくっ⋯⋯!?」
つゆちゃんとみねたくんがう゛ぃらんにくびをしめらている。ふたりともくるしそうだ。たすけなくちゃ。でもからだもうごかない。まえもみえない。ああ────
────しんじゃった。
────これは、何時の記憶だろう。
周りは炎に囲まれている。瓦礫が崩れ、誰のものともしれない血が点々と、時にはベッタリとそこら中に付着している。
そんな中を歩く1人の子供。多分、僕。10歳くらいだろうか。母さんとはぐれて、涙目になりながら必死に出口を探している。
キョロキョロと辺りを見回す
────結論から言えば僕は助かった。
全身を粉砕骨折、更には大火傷。あらゆる治癒個性での治療を施して尚、死は覚悟しておいた方がいいと言われた程の重症だった僕は、割とあっさり回復した。
まさに奇跡、
────死ぬ間際に死にかけた記憶を見るなんて、変わった走馬燈だ。
そんな事を、どこか達観して考えていると、声が聞こえた。
『────立て』
「────え?」
『立つのだ。王たる資格を持つ者よ』
「王?何を言って⋯?」
『良いのか』
「え⋯⋯」
『貴様が立たねば、カエルの娘も阿呆な小僧も死ぬぞ?』
「っ!?」
しぬ⋯⋯⋯死ぬ?梅雨ちゃんと峰田くんが?
「と、止めなきゃ⋯⋯⋯でも、どうやって⋯⋯」
『王としての力を振るうが良い。未だ完全なる覚醒とは行かぬが木っ端程度なら葬れよう』
「王としての⋯⋯力⋯⋯」
『然り。人間がオルフェノク⋯⋯⋯貴様らで言えば灰色の怪物と呼ぶ者達、その王が有する力だ。
さぁ、立つがいい。貴様に死なれる訳には行かんのだ』
「っ⋯⋯!?待って!貴方は!?それに灰色の怪物って⋯!?」
僕の疑問に答える声は無かった。
────そして僕の意識は闇に飲まれた。
────変化は突然だった。
「あ゛っ⋯⋯⋯?」
「う゛ぁっ⋯?」
蛙吹梅雨と峰田実両名は突然自身の喉を圧迫していた万力の様な力が消失した事を認識した。何故、という思いがよぎるが身体は生命維持の為の酸素を欲している。考えを巡らす前に貪る様な呼吸を余儀なくされた。
しばらく、と言っても数十秒程だろう。彼らが目にしたのは────
────赤銅色の
「え⋯⋯なに、が⋯⋯?」
「そ、それより緑谷は⋯⋯⋯?」
峰田の言葉にハッとなる蛙吹。そうだ、今はそんな事はどうでもいい。早く緑谷を連れて離脱しなければ。
そう判断して先程までの緑谷が赤銅色に叩き潰された場所を向く。
────そこには、血溜まり以外何も残っていなかった。
「え⋯⋯⋯?」
あるべきはずの緑谷の肉体が、そこには無い。一瞬粉々に砕かれたのかという考えが起きるがそんなはずは無い。自分達が首を絞められている時点で間違いなく彼の肉体は残っていた。
では何処に?それは目の前の灰色のナニカの背中が物語っていた。
赤黒い背中。灰色の全身の中で唯一色がついている場所。それが示すのは、つまり、
「緑谷ちゃん⋯⋯なの⋯⋯?」
この灰色のナニカが緑谷出久本人だという事だ。背中に付着しているのは倒れている際についた血液だろう。
峰田も蛙吹の言うことを理解したのか絶句している。
そんな灰色と相対する赤銅色は────震えていた。
武者震い?否、それは
『あ゛あ゛あ゛ア゛ア゛ア゛A゛A゛A゛■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ーーーーーーーー!!!!!』
声にならない、雄叫び。怒り、憎しみ、悲しみ、様々な感情が綯い交ぜになった、咆哮。
────異界の地にて、怪物の王が降臨した。
まさかの緑谷アークオルフェノク化。詳細はそのうち。
キャラ説明
・偽天道
見た目:天道総司まんま。でも目が三下並に汚い。
性格:クズ。これ以上何を語れと?
個性:無し
備考
・クソ転生者1号。仮面ライダーカブトの力を使って
赤銅色の
見た目:赤銅色の皮膚とオークみたいな歪んだ顔。
性格:黒い脳無こと脳無1号はただの人形の様だったがこちらは本能に近いレベルとはいえ意志を宿している。ちなみにベースは残虐性抜群の殺人鬼タイプ
個性:1号とほぼ同じ。
備考
・イレギュラーの脳無。通称2号。ぶっちゃけほぼ1号と同じ。が、まだ何か秘密がある様で⋯⋯?
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VS偽カブト2 赤き閃光再び
「おっかしいなぁ⋯⋯⋯峰田ってこんな頭良さげだっけ?」
ネタ多し。注意せよ。
────USJ 火災エリア
「ひぎゃああああああああああああああああ!!!?」
「ぐぎゃっへ!?た、たすけ⋯⋯ぶぇ!?」
「お、お前ヒーロー科の生徒だろぉ!?なんでこんな事⋯⋯お゛っ!?」
「うーん、なんでって言われてもねぇ⋯⋯⋯」
たった今大剣によって肉塊に変えられた
「私ってさ、ゴミとか見ると捨て置けないタイプの人間でね?貴方らみたいなのを見ると片付けたくなるんだよねぇ」
まるで道端の石ころを見るような目で自分達を見るアリアに愕然とする
そんな彼らを見て、アリアはフッと笑い、
「────てゆーのは建前でね?」
ぐしゃり、とまた1人潰された。自らに死の危険が迫る中、
「木場くん────ああ、私のクラスメイトの事ね、なかなかカッコイイんだよ?
彼、誰かを助けるためなら
また、1人。
「転生して、ず──────っと心細かった時に出会って、私みたいなオタクにも優しくしてくれて、
まぁ色々お世話になったからさ、多少は負担背負ってあげたいんだよ」
また、1人。
「自分の行いがヒーローらしくないってのは重々承知してるよ?でもさ、彼を傷付ける要因になるなら私も全力で排除するぐらいの覚悟はあるんだよ」
また、1人。
「えーと、こういう時なんて言うんだっけ⋯⋯⋯⋯⋯あー⋯⋯⋯うー⋯⋯⋯あ、そうだったそうだった」
また、1人。そんな惨劇の中アリアは淡々と言い放つ。
「眼には眼を、歯には歯を、
悪には悪を、ってね。
というわけで────やっちゃえ、バーサーカー」
「■■■■■■■■■■■■■ーーーーーー!!!!!!」
主の声に答え、
「うーん、グロい。こりゃ人払いの結界張っといて正解だったな。尾白くんも気絶してるし目撃者もナシ、と。
うん、あとは死体の始末だけだしさっさと終わらそうか」
────数分後にはその場所にはアリア、そして気絶した尾白しか生命体は存在しなかった。警察はたまたま
────山岳エリア 崖下
「────オラオラオラオラァ!!さっきまでの威勢はどうしたゴミ野郎がぁ!!」
「ぎっ!?こ、この野郎!?」
俺の持つ剣が振るわれる度に偽カブトは吹き飛び、その赤い装甲から火花が散る。奴は無様に吹っ飛び、起き上がろうとする度にまた吹き飛ばされる。奴は必死に身体を捻って躱そうとするが遅い。その場でクルリと半回転し後脚で思いっきり蹴り飛ばした。
「ぐおっほぉっ!?」
「⋯⋯⋯弱ぇな」
最初こそ天道総司の肉体スペックと戦闘センスによって苦戦を強いられたがこうして見ると隙だらけな上、動きに無駄が多い。戦いの才能こそある様だがそれこそ才能とライダーとしての性能に頼ってきたのだろう。
突然だが俺は努力無しのチートの類いが嫌いだ。ああいう主人公は大体が無双してハーレム築くワンパターンの展開だが、まあ戦いを経験したことも無いのに強い事強い事。そんなチート系のキャラクターを努力系のキャラがぶちのめしたりすると最高にスカッとしたのは今でも覚えてる。
ん?何が言いたいのかって?早い話、
「こ、殺してやる!!」
おっと、少しボーッとしていた様だ。気付けば偽カブトは起き上がっており、三下のセリフと共にこちらへ襲い掛かってくる。奴は俺が剣を振り上げた所で、
「クロックアップ!」
驚異的なスピードで一気に俺の視界から消える。やはり速い。仮面ライダー達の中でもトップクラスのスピードは伊達ではない、が。
「相手が悪かったな」
俺の後方、死角から放たれた拳を上半身だけ振り返って受け止める。奴にとっては完璧な一撃だったのだろう、止められた事がとてもショックだったのか驚愕している様だった。
「っ!?な、何で防いで⋯っ!?」
「さあな、お前が遅せぇんじゃねェか?」
「ふ、ふざけんなよっ!?そんな事があってたまるかぁ!!」
さて、さっきも言ったがクロックアップは全ライダー達からしてもトップクラスのスピードを誇る。そんなスピードで放たれた攻撃を何故見切り、止められたのか?
────ぶっちゃけ俺にもよく分からん。
555本編の1話を見りゃわかると思うが、あの時木場さんはなんというか、時間停止というか時間停滞というか、ともかくそれに近い能力を発揮していた。以前俺も出来るのかな?と試して見た結果難無く成功。原理とかは一切不明だがともかくこのクロックアップに近い現象を使い奴の攻撃を止めたのだ。停滞能力が無けりゃクロックアップはただ速いだけ、素でアクセルフォーム並、と迄は行かないがそれでもかなりのスピードを有するホースオルフェノクの敵ではない。
⋯⋯⋯といっても負担が無い訳でもない。いい加減終わりにしようか。
俺は拳を掴まれたまま喚き散らす奴をそのまま地面に叩きつける。
「ウッ、ラァ!!」
「ごほっ!?」
肺の中を空気が押し出されて苦悶の声を上げる奴の胸の中心目掛けて、俺は剣を深々と突き立てた。
「あがっ!?」
バキバキと音を立てて装甲を砕き、剣先が奴の心臓へと到達する。間髪入れずに俺は剣を介してオルフェノクエネルギーを流し込んだ。
「あ゛っ、あ゛あ゛っ!?」
暴れて剣を引き抜こうと躍起になる偽カブト。俺は両の前足で奴の方を抑え、一気に踏み砕く。
それがトドメになったのだろう、奴の全身を覆っていた装甲は光と共に消え去り、後には灰色の肌を晒す偽天道だけが残った。俺は剣を引き抜く。奴は既に灰化寸前、放っておいても直ぐに息絶えるだろう。が、灰化なんかで死なせるつもりは毛頭ない。万が一、こいつがオルフェノクとして復活しても困るのできっちりトドメを刺しておく。
俺は人型形態に戻り、剣を消して奴の首を掴みあげる。偽天道は既に声も出せないほどに灰化が進行している。それでも目を見れば何が言いたいのかは何となくわかった。
────助けてくれ。
奴の目は確かにそう俺に訴え掛けていた。もっとも、
「死ね」
そんなつもりは微塵も無いが。
ゴキリ、と鈍い音を立てて奴の首が折れる。当然だが俺がへし折った。そのまま奴を投げ捨てると、数十秒もしない内に奴の身体は完全に灰と化して消え失せた。
「⋯⋯⋯終わった、か」
そう一人心地る。厄介な相手だった。この調子だと他の糞転生者共も何かしらのチートを持っていると見るべきか⋯⋯。
「⋯⋯⋯ん?」
虫の羽音がする。もしやと思って偽天道の成れの果てを見ればカブトゼクターが羽根を広げて飛び去るところだった。
「本物の天道総司の元に帰ったって事かね」
だとしたら行幸だ。ゼクターの始末に困っていた所だったんだ。俺は灰の中のゼクターの飛び去ったベルトを思いっきり踏み潰し、破壊する。これで仮にゼクターが発見されても何者かに利用される事は無いだろう。
「さてと、さっさと他の奴らを助けに────」
ガクリ、と膝が折れる。
「────ありっ?」
そのまま前のめりに倒れ込んでしまった。段々と意識が消えて行くのを感じる。戦闘で無茶をしたつもりは無いが、俺の肉体は既に限界だったらしい。
「クソっ⋯⋯⋯ま⋯だ⋯⋯残っ⋯⋯⋯て⋯⋯⋯」
俺の脳裏に浮かんでいたのは出久達とイレギュラーの赤銅色の脳無。せめてもと、アイツらの無事を祈りながら俺の意識は途絶えた。
────セントラル広場
山岳エリアで決着が着いた頃、ここでも戦いは終局を迎えようとしていた。広場に立つのは
「ハァーッ⋯⋯⋯ハァーッ⋯⋯⋯⋯手こずらせやがってこのバッタ野郎が⋯⋯⋯⋯!」
「ええ、本当に⋯⋯⋯!生徒の中に灰色の怪物が混じっているなんて完全に予想外でした⋯⋯っ!」
そして
「クソっ⋯!
「落ち着いてください死柄木弔。ともかく今はこの怪物とあの生徒達、そしてイレイザーヘッドを始末する事が先決です。オールマイト抹殺は叶いませんでしたがそれでも充分な戦果でしょう」
「⋯⋯⋯チッ。そうだな、今回はしょうがない。だからそいつをさっさと始末しろ。1号、2号、やれ」
「「!」」
「⋯⋯⋯GIGAAAA!!」
死柄木の言葉に反応して脳無達は緑谷に迫る。緑谷は獣のような雄叫びをあげてそれを迎撃した。
「緑谷ちゃん⋯⋯⋯」
「緑谷⋯⋯どうしちまったんだよっ!?」
訳が分からなかった。突如目の前で自分達を庇って緑谷が2号に叩き潰され瀕死の重症を負った、と思ったら突如巷で噂の灰色の怪物になって自分達を助け出し、今脳無達と拳を交えている。
その戦い方もどこか気弱な雰囲気だった緑谷とは思えない程の苛烈な戦い方。相手の肉を抉り、骨を砕き、臓器を潰す。もっとも、やった傍から脳無達の肉体は再生していっているので大したダメージにはなっていない様だが。
最初こそその様な戦い方で脳無たちを追い詰めていった。が、あの死柄木・黒霧の2人が戦いに加わると一気に動きが鈍った。決定的なタイミングでトドメを刺さず、少しでも敵が離れる素振りを見せたらその敵に攻撃を集中させる。まるで押し留めるような戦い方に、蛙吹はようやく合点がいった。
「私たちを⋯⋯守っているの⋯?緑谷ちゃん⋯」
「ど、どう言う事だよ!?」
「緑谷ちゃんは⋯⋯多分あんな姿になって半ば無意識になっても私たちを守ろうとしているのよ。さっきから
「⋯⋯ッ!あんな姿になってまで俺達を守ろうって言うのかよ⋯⋯緑谷⋯っ!!
なぁ蛙吹!俺達が邪魔になってるんだったら早く逃げようぜ!ちょうど相澤先生もいるしよ!」
「ダメよ峰田ちゃん、素人の私達が動かしたら相澤先生が危険だわ。それに下手に動いたらそれこそ緑谷ちゃんの邪魔になっちゃう」
「くぅ⋯⋯っ!!俺達は見てることしか出来ないってのかよ⋯⋯!」
「悔しいけど⋯⋯そう言う事ね」
何も出来ない悔しさから思わず歯噛みする2人。その間も緑谷は脳無達の攻撃を受けて消耗していく。そしてとうとう2号の拳が緑谷の腹に突き刺さった。
「UUUGAAAAaaaぁぁぁあああああああああああああああああっ!!!」
「っ、緑谷ちゃんっ、!」
「お、おい緑谷!大丈夫か!?」
「あ⋯⋯、あすっ、っ雨ちゃんと、峰田くん⋯⋯」
「良かった⋯何時もの緑谷ちゃんだわ」
「お、おお!戻ったんだな!?」
吹き飛ばされた衝撃でオルフェノク体が解けてしまった緑谷。傷一つないその姿に安堵する蛙吹達。が、脅威が去った訳では無い。
「⋯⋯⋯仲間の無事を確認して安堵する、か。いいね、とてもヒーローらしくて吐き気がする
殺れ、2号」
それは絶望を告げる声。振り返った時にはもう遅い、既に2号はこちらに迫っていて────
『待てえええええええええええええええええええええええええええい!!』
突如響き渡る大声に
「何だ!?何処にいる!?」
『フッフッフッ⋯⋯⋯どこを見ている!私はここだァ!!』
声の方向を一同が振り向く。そこには全身を金属光沢で覆われた鋼の巨人が立っている。これまた
「だ、誰だお前はっ!!」
『私の名を知りたいか?良いだろう、ならば教えてやる⋯!』
その場で素早く構えをとる。その次に起こった出来事を、彼らは一生忘れる事が出来ないだろう。
『天が呼ぶ!地が呼ぶ!人が呼ぶ!悪を倒せと私を呼ぶ!!聞けい悪人共!
────私は正義の魔法使い、魔法少女プリティマリーちゃんでーーす!!!』
「「「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯」」」
「えぇ⋯⋯⋯いや⋯⋯⋯⋯、無いわぁ⋯⋯⋯」
『そんな!!?タイミングを見計って万全の態勢で披露した必殺の名乗りなのに!!?』
何気なく呟かれた峰田の言葉にショックを受ける巨人ことマリー。無駄に感情豊かなAIである。
「って、タイミング見計らってたってそんな暇があるなら助けろよ!?」
『だって第一印象って大切じゃないですか?』
「少なくとも俺らからの第一印象は最悪だよ!?てか誰だよ!?」
『そんな馬鹿な!?そして私は木場勇治に作られたハイパーロボットです!』
「木場の!?てかなんだその自己紹介!?」
目の前で繰り広げられる謎の漫才。黒霧がチョイチョイと死柄木の脇腹を肘で着く。それでようやく正気に戻った死柄木は目の前の訳の分からん巨人を破壊する為に脳無に命令を出す。
「1号・2号、その意味不明なデカブツを潰せ!!」
その命令に、まず先んじてマリー達の近くに居た2号が動き出す。2号はマリーに向かって拳を引き絞り、一気に解き放った。
が、マリーはそれを見もせずに躱し、
『鉄山靠!!』
2号に背中を向けた体当たりをぶち当てる。2号は壁に向かって吹き飛び、瓦礫に埋もれて動かなくなった。
「⋯⋯⋯⋯は?」
それは誰の声だったか、唖然とする死柄木達にマリーは淡々と告げる。
『言い忘れてましたけど、私はかーなーり強いですから、覚悟してかかってきてくださいね?』
「ぐっ!1号ォ!!殺れぇ!そいつをぶち殺せぇ!!!」
「⋯!」
太い両腕から放たれるラッシュ。ストレート、フック、ボディ、アッパーと様々な角度から放たれるその剛腕をマリーは、
『無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァーーーーッ!!!!』
同じ様にラッシュで弾き返す。というかむしろ押してる。1号の右腕を左拳で弾き飛ばし、そのままの勢いで拳は1号の腹に突き刺さる。ぐらり、と1号の体が揺れ体勢が崩れる。そして1号が体勢を立て直す暇もなくマリーの拳が降り注ぐ。
『無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァーーーッ』
拳が放たれる度に1号の体勢が崩れていく。やがて膝をつき、拳の勢いで地面に埋まり始める。やがて一際大きく拳を振りかぶったマリーがそれを叩きつけた瞬間、大きな衝撃と共に砂煙が舞う。
「くっ⋯⋯ゴホッゴホッ、どうなってる黒霧!?」
「ダメです死柄木弔!この視界では何も────っ!?」
フッ、と自分達を影が覆う。怖気を感じた死柄木達は反射的に後方へ跳んだ。その直後、
「ロードローラーだぁぁぁぁあああああ!!!!!」
上空から
「⋯⋯っんだよそれっ!?」
上を見れば何故か空を飛んでいるマリー。マリーはゆっくりと浮遊し、緑谷達の近くへ降り立った。
「お、おい!?あんなもん何処から持ってきたんだよ!?」
『ちょっと近くの工事現場から拝借して来ました!』
「お前が遅れたの絶対それのせいだろ!?」
『な、なんの事やら〜。ぴゅ〜、ぴゅー』
「口笛吹けてないよ⋯⋯」
「嘘が下手ね」
『助けたハズなのにっ辛辣!?』
こんな状況に呑気にくっちゃべっている緑谷達の姿に酷い苛立ちを覚える。ガリガリと首筋を掻きむしる死柄木。その目は明らかに普通ではない、俗に言う『イッちゃってる』状態だった。
「殺す⋯!殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す!!!」
「お、落ち着いてください死柄木弔。ここは撤退を」
「こんな有様で今更引けるか!!集めた連中は全滅、脳無は2体ともやられてこっちの戦果はイレイザーヘッドを寄って集ってボコッただけだぞ!?せめて奴等だけでも殺らねぇと先生に笑われる⋯⋯!!」
酷く殺気走りながら緑谷達を睨む死柄木。今にも彼らに向かって駆け出しそうな彼を止めたのは、
「────GYAGYAGYAGYAGYAGYAGYAGYAGYAGYAGYAGYA!!!!!」
「っ、今度は何だ!?」
声の震源地は2号が埋もれていた瓦礫の山の中。声の1拍後に瓦礫が吹き飛び、ソレは現れた。
灰色の体と虎を模した鎧、2号よりもスマートなフォルムをしており何処か歴戦の戦士を感じさせる見た目。灰色の────いや、虎型のオルフェノク、言うなれば〝タイガーオルフェノク〟がそこには居た。
突然のことに酷く動揺する一同。中でも精神的に不安定になっていた死柄木は酷かった。
「クソがっ!どうなってる!?なんだよアイツ!2号はどうしたんだよ!?こうなったら先生に頼んで他の脳無を「失礼します、死柄木弔」っ、黒霧!?」
死柄木の身体を黒いモヤが覆う。黒霧の仕業だ。憤慨する死柄木に黒霧は淡々と返す。
「これ以上は危険です。時期にプロヒーロー達も到着する。放っておけばあの個体が他の生徒達を始末してくれるでしょう。
我々は撤退して次に備えるべきかと」
「⋯⋯⋯あぁ、そうだな。今日は引こう」
そう言って死柄木は緑谷達に目を向ける。
「もし生きてたら────次は必ず殺してやる」
そのまま2人は黒モヤに飲まれて消えていった。後に残されたのはタイガーオルフェノク、そして満身創痍の緑谷達とマリー。タイガーオルフェノクは緑谷達に狙いを定めたのかゆっくりと迫ってくる。
「一難去ってまた一難所かしら」
「で、でも俺達にゃこのデカいのがいるんだ!何とかなるって!」
『デカいのって⋯⋯⋯あの、期待されてるとこ悪いんですけど』
「へ?」
『さっきの戦闘で無茶しすぎたみたいで⋯⋯⋯もう1mmもボディが動きません☆』
「はぁあぁあああああああ!!?」
『いやー調子乗りすぎちゃいましたねー』
「ましたねー、じゃねーよ!!どうすんだよ俺あんなバケモンと戦えるような力ねぇぞ!!?」
こんな時までふざけるマリーに怒鳴る峰田。そんな2人(?)を見て立ち上がろうとするものが居た。緑谷だ。
「僕が時間を稼ぐ⋯!2人は相澤先生を⋯!」
「ダメよ!」
自分が囮になると言う緑谷に蛙吹が縋り付く。その目には涙が浮かんでいる。
「緑谷ちゃん、さっき私を庇って死にかけたわ。こんな所に置いていったら今度こそ死んじゃうわ!」
「っ、でも誰かが残らなきゃみんな死ぬ!だった1番〝個性〟が戦闘向きな僕が適任だ。だから僕が」
「だったら私が残るわ」
「⋯えっ?」
「へっ?蛙吹何言って⋯」
「緑谷ちゃんは怪我人、峰田ちゃんは戦闘じゃない。だったら異形型の〝個性〟で身体能力も高い私が適任だわ」
「そんな事をしたら梅雨ちゃんが!?」
「緑谷ちゃんを見捨てて助かるよりはマシよ。分かったら早く逃げて」
それだけ言ってタイガーオルフェノクに向かって行く蛙吹。それを追いかけようと駆け出す緑谷。が、途中で峰田に阻まれる。
「っ!?峰田くん離して⋯!早くしないと梅雨ちゃんが⋯!」
「ダメだっ!お前を行かせたら今度こそ死んじまう!!」
「でも梅雨ちゃんが!!」
「蛙吹ならきっとプロヒーロー達が到着するまで持ち堪えられる!だから俺達に出来るのはアイツの邪魔をしない様にする事だけだ!」
『あのー、ちょっと良いですか?』
押し問答をする2人にマリーが声をかける。
『あれ、どう考えても持ちませんよね?』
そう言いながらマリーが見る方向に緑谷達も目を向ける。
────蛙吹が、血を流しながら倒れていた。
「っゆちゃん!!!」
「嘘だろおい!!?」
『あー⋯⋯やっぱり無理ですよねぇ。普通の人間がオルフェノクに立ち向かおうだなんて無謀もいい所ですもん』
既にタイガーオルフェノクは蛙吹に目も向けずに此方に歩いてきている。どうやって蛙吹を助けるか、峰田や相澤をどうするか、そもそも相手になるのか、様々な考えが緑谷の頭を駆け抜ける。峰田は震えており、マリーは『んー』とか『あー』とか何事かをブツブツと呟いている。やがて緑谷が死ぬ気でタイガーオルフェノクを止めようと立ち向かおうとした時だった。
『────緑谷さん、でしたっけ?』
「え?う、うん。そうだけど⋯⋯」
突如マリーが声を掛けてきた。その声音(?)は不自然なほど落ち着いている。
『私の腰辺りにアタッシュケースが取り付けられてるはずです。それ取ってください』
「わ、分かったよ⋯」
不可解に思いながらも緑谷はマリーの腰辺りをまさぐる。やがてそれらしき物を発見し、そのアタッシュケースに示されているロゴに驚愕した。
「SMART BRAIN⋯⋯スマートブレイン!?あの謎の開発企業の!?」
『それについての説明は後にします。中に入っているベルトを腰につけてください』
「ベルト⋯?これの事?」
ケースを開けるとなにやら様々な機械が詰まっており、中心に変わった形状のベルトが収まっている。言われた通りにそれを身につける。
『中にガラケー型のケータイがある筈です。それを』
マリーが言うガラケー。既に何百年も前の骨董品だ。物珍しさを感じながらそれを手に取る。
『変身コードは555。入力してEnterを押してください』
「こ、こう?」
『Code 555 Enter』
『Standingby』
「うわっ!?」
フォンフォンフォン、とケータイから電子音が鳴り響く。驚く緑谷に対し、マリーはヤケに冷静だ。訳の分からない緑谷は軽くパニックだった。
『それを上に掲げて「変身っ!」って言ってからベルトに勢いよく挿入してください』
「そ、それいるの!?ていうかなんなのこれ!?」
『様式美です!やれば分かるんでとりあえずやってください!』
「あぁもう!へ、変身っ!」
『Complete』
「う、うわぁあああ!?」
瞬間、赤い閃光が周囲に放たれる。峰田は思わず悲鳴を上げ、何処と無くマリーは満足そうな雰囲気だ。タイガーオルフェノクは警戒しているのか歩みを止める。
やがて、光が晴れる。
そこには、黒いボディに銀色の
「え、えぇ!?こ、これって?えええ!?どうなってるの!?」
『その鎧の名は〝ファイズ〟。オルフェノク⋯⋯貴方達が〝灰色の怪物〟と呼んでいる者を倒す事が出来る鎧です』
「た、倒す⋯⋯?それにオルフェノク⋯って」
先程の夢を思い出して軽く動揺する緑谷。気付かずにマリーは続ける。
『私もファイズが作られた詳しい経緯とかは知りませんので。とりあえずそれならあのオルフェノクを倒す事が出来ます』
「っ!」
倒せる、そう聞いて体が引き締まったような錯覚に陥る。この場に置いての最適解、あのオルフェノクの撃破、それが出来る力が手に入った。ならば、
「僕が、やる⋯⋯!」
タイガーオルフェノクを真正面に捉える。
「僕が⋯⋯助ける!!」
一直線に、緑谷は駆け出した。
────数分後 セントラル広場
「────1-A委員長飯田天哉!ただ今戻りました!!」
「────もう大丈夫、私達が来た!!」
USJの扉をぶち破って飯田とオールマイト他雄英の教師を務めるプロヒーロー達が到着した。
「せ、せんせええええええええええええええ!!!」
彼らを迎えたのは峰田の雄叫び。オールマイトは峰田の元へ降り立つ。涙と鼻水でグシャグシャになった顔を、そっと抱き締めた。
「すまない、峰田少年。我々が遅れたせいで⋯⋯」
オールマイトが顔を向けた方向には重症の相澤、13号、蛙吹、木場の手当をする1-Aの生徒達。その中に、自身が後継者と見定めた少年はいなかった。
「⋯緑谷少年は?」
最悪の場合が頭に浮かび上がり、それを必死に打ち消しながら峰田に聞く。
「ひっ、ひっぐ、みどりやがぁ⋯!お、おれのせいでぇ!!」
「峰田少年落ち着いて!緑谷少年に何があったんだい?」
「ひぎっ、み、みどりやがぁ────」
「────
それは、最悪の報せだった。
黒アリア、(首の折れる音)、ツッコ峰田、ディオマリー緑谷ファイズと色々ぶち込みすぎた気がする⋯⋯。いいよね?いい⋯⋯⋯よね?
オールマイトが遅れた理由は次辺りで明かされるかも。出久についても同様。
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ヒーローとしての覚悟とは
結果、思った以上に長くなってしまった⋯⋯。そして変かも知れない。ごめんなさい。
────東京都内某所
「クソっ、話が違うぞ先生ェ⋯!」
時は
彼の気持ちは分からないでもない。オールマイトを殺害する為に万全の体制で望んだ今回の作戦、それを数人の生徒にぶち壊されたのだ。
ワープゲートから出て早々に馬鹿みたいな量の弾幕に晒され、イレイザーヘッドを倒したと思ったら灰色の怪物に変貌した生徒の1人に苦戦させられ、挙句の果てに訳の分からないロボットに脳無1号が倒されてしまった。
しかも脳無2号まで灰色の怪物へと変貌してしまった。こんな滅茶苦茶な状況にも関わらずオールマイトは現れなかった。一体どうなってるんだ、訳が分からない。
『違う、かい?確かにオールマイトが弱体化しているとは言ったが仮にも平和の象徴、そう簡単に倒せる程甘くはないと言っていたはずだよ、弔』
〝先生〟と呼ばれた人物の声がモニターの液晶越しに聞こえる。状況を知っている者からすれば何を言ってるんだと言いたいくらいに的外れな返答だった。
「違う⋯違うぞ先生⋯!オールマイトにやられたんじゃない⋯!」
『⋯⋯まさか生徒に?それ程までに優秀という事なのかい?』
「優秀とかそんなんじゃない⋯っ!」
『⋯?』
ヒステリックに叫ぶ死柄木の返答は要領を得ない。代わりに状況を話し始めたのは黒霧だ。
「USJ内の通信設備を無力化、内部に侵入した所までは問題ありませんでした。
⋯しかしワープゲートから出たと同時に生徒の1人に攻撃を受けまして⋯⋯、これで多数のチンピラ
『⋯⋯⋯それは、どういう事だい?』
訳の分からない、といった声音の〝先生〟。荒唐無稽、とまでは行かないがそれでも真実とは思い難い話。
いくら超人社会とはいえそんな事が現実に起こりうるのか?と黎明期から長らく超人社会に巣食っていた〝先生〟は思う。初期のヒーロー達が誕生した頃からこの世界に生きてきた彼ですらそんな事は経験した事が無かった。
『────少し、いいだろうか』
と、モニターから〝先生〟とは違う別の男の声音が聞こえてきた。声からして20〜30程の成人男性だろう。
『なんだい、ドクター?随分と急じゃないか』
〝ドクター〟と呼ばれた男は特に感情を見せない声で続ける。
『衛星を使って撮影したUSJ内の映像だ。死柄木達の戦いぶりを見たいだろうと思って撮っておいた。ついでに目を付けて置いた方がいいと思った生徒のピックアップもな』
『おお、それは有難いね。助かるよ、ドクター』
『構わん、それよりも内容が問題だ。私も先程確認したが流石に予想外だった』
画面の向こうでガサガサと何かを弄る様な音がする。やがて息を呑む様な音が聞こえ、それから暫くして〝先生〟は口を開いた。
『弔、黒霧。君達は集めたチンピラ達の中に〝仮面ライダー〟がいた事を把握していたかい?』
「は?」
「まさか⋯⋯」
「おいおい、てことは〝2人〟も仮面ライダーがいたのか?あの場に?」
『いや、〝3人〟だ。チンピラの方に居たライダーは雄英側のもう1人のライダーに殺られた』
死柄木の間違いを淡々と修正する。絶句する死柄木達。一体自分らは何と戦っていて何が敵だったんだろうか。自分達の状況があまりに
そんな中で口を開いたのはやはり〝先生〟だった。
『ドクター、彼らの素性は分かっているのかい?』
『勿論だとも、
まず縮れ毛の少年が緑谷出久。特に秘密も何も無い平凡な家庭の生まれの無個性。そして恐らく
『この少年がオールマイトの後継?確かなのかい?』
『先程も言ったがこの少年は〝無個性〟だ。表向きは遅咲きの〝個性〟となっているが虚偽だろう。そして彼の戦闘スタイルはオールマイトに酷似している。状況から見ても間違いあるまい』
『そうか⋯⋯⋯他の2人は?』
『少年の方は
『へぇ、この歳でか。それは凄いな』
『しかもその会社は
『何⋯?あのSMARTBRAINの?という事は彼が例の村上峡児か?』
『どうもそうらしい。未だに信じ難い事だが』
『⋯⋯⋯少女の方は?』
『名は
『殺しに一切躊躇が無く、経歴は不明⋯⋯⋯
裏の人間か?』
『さぁな。分かっている事は1つ、下手に彼女を嗅ぎ回れば命は無い。という事だ』
『これが今年の雄英⋯⋯と言うワケか』
なんなんだこの異色の経歴は、見通しが甘かったと言わざるを得ない。確かに警戒はしていた。あのエンデヴァーやインゲニウムの身内が居ると聞いてかなりの人数を集めて事に当たらせた。にもかかわらず結果は惨敗だった。村上峡児こと木場勇治は言わずもがな、緑谷出久とアリア・ペンドラゴン両名のようなダークホースが居る事に気付けなかったのは自分の落ち度だった。
これだけならまだ良い。いや、良くはないが許せない事は無かった。問題は脳無だ。
『ドクター、脳無達の調整は君に任せていたはずだが?』
『ああ、確かに。態々貴方の〝個性〟を使って完璧な無菌室を作り出し、細心の注意を払って作り上げた代物だ』
『それがどうして灰色の怪物などになるんだい?』
『さあな』
〝先生〟からの問いをバッサリ切り捨てるドクター。
『そもそも奴らが何故発生するのか、何が目的なのかもサッパリ分かっていない。私の
ドクターの言葉に考え込む〝先生〟。今後の事を考えているのか、そのまま数十分は言葉を発さなかった。ちなみに死柄木達は既にバーの席で酒を飲んでいる。当然だがヤケ酒である。
『弔』
「⋯⋯なんだよ」
〝先生〟からの呼びかけに不貞腐れた様に答える死柄木。酒が入っているせいもあって顔が少し赤かった。この子供っぽい性格を何とかしなければな、と思いながら〝先生〟は言う。
『今回はハッキリ言って運が悪かっただけだ。何処かの破戒僧も言っていたがこういう悪い出来事は所詮〝間が悪かった〟だけだ。
いいかい死柄木弔。君には力がある、今回の一件を糧にして君は更に成長出来るハズだ。
我々〝悪〟の存在を知らしめるためのシンボルとして、
「⋯⋯そうだ、そうだよな。今回はあくまで偶然上手く行かなかっただけ、うん、なら問題ないよな⋯次頑張ればいいんだから⋯」
〝先生〟の言葉を聞き、酒の力もあって気分が上昇方向に乗ってきた死柄木。黒霧は無言、内心ではこの
『⋯⋯相変わらず扇動が上手いな』
ポツリとドクターが呟くと同時に扉が開く様な音が聞こえる。画面の向こうでドクターが退出する所の様だ。
『おや、もう帰るのかい?』
『やられた分の脳無の補充と彼らの身辺調査を進めたい。死柄木への教育は私の管轄外なのでね』
『それもそうか。じゃあまたその内に。次はもっと良い報告を待っているよ────』
『────ドクターフレンズ』
────雄英高校 保健室
「⋯⋯う、⋯あ⋯⋯?」
ここは、何処だろう?目が覚めると、目の前には真っ白な清潔感のある天井。
「知らない天井だ⋯⋯」
「何を言ってるんだい緑谷少年⋯⋯」
何となく言わなければならない様な気がした。てかオールマイト!?
僕が横になっているベッドの隣にはオールマイトが
「ここは雄英の保健室さ。見覚えがあるだろう?」
「そう言えば戦闘訓練で怪我した時に来たような⋯⋯」
確かによく見れば見覚えのある診察台、リカバリーガール仕様の小さな椅子などよくよく見ればここは雄英の保健室だ。
「でも何でこんな所に?」
「⋯その事だが少年、USJでの出来事を覚えているかい?」
「USJ⋯」
そうだ、僕達は救助訓練を行う為にUSJに行って、そこで
えっと⋯⋯、そうだ、確か2号とか呼ばれてたもう一体の脳ミソ丸出し
「思い出して来たかい?」
「はい⋯、そして僕がまたやられちゃって⋯⋯それであのマリーとかいう人が
それで、どうなった?おかしい、確かにその後何かが起こった記憶はある。なのに思い出せない。
「⋯⋯ショックのあまり記憶を閉ざしてしまったのか」
「オールマイト⋯?」
血色の悪い顔色をさらに青白くしてオールマイトが俯く。よく見れば体が小さく震えていた。
「⋯⋯緑谷少年、これから話すのは君にとってかなりショッキングな内容だ。それでも君には⋯⋯この話を聞く義務がある」
────ドクン。
心臓が早鐘を打ち始める。聞かなければならない。オールマイトはそう言った。
「君は────」
やめてください、聞きたくない。本能的にそう叫びたくなる。それでも僕の口からはヒューヒューと掠れたような声が漏れるだけだ。
「
やめて、言うな、言わないでくれ、やめろ、やめろ、やめろ、やめろ、やめろ、やめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろ!!!!
「────殺してしまったんだ」
「────ぁ」
殺した、ころ⋯⋯した?僕が?誰を?
────赤い閃光を放つ鎧。ソレを纏った僕がハンドル型の光剣を引き抜く。
────腰のベルトに取り付けられたケータイを開きEnterを押す。
────輝きを増した光剣を振りかぶり、
「あ、ああああ⋯⋯!!」
────確かに、灰色の怪物と化した
────光剣を降り切った僕の後ろで、
────後には、灰の山しか残らなかった。
「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」
現実だった。思い出した。殺した。僕が殺した。
ヒーローを目指していたはずが、僕はただの人殺しに成り下がった。
────僕はヒーローになれない。
この日程、強く思った日はない。いや、正確にはなっては
まずワンフォーオールを返さなくちゃ。その後雄英を退学して⋯⋯親に迷惑を掛けないようにさっさと死ぬのもいいかもしれない。
「オールマイト⋯⋯」
────お返しします。そう言おうとした時だった。
「────出久っ!!!!」
彼が────木場勇治が入って来たのは。
「なんて顔してやがる⋯⋯!」
今にも死にそうな、と言うより死人そのものと言った方が近い。それ程までに顔色の悪い出久。そして
「木場っちゃん⋯⋯!?どうして⋯⋯」
「目ェ覚めたらお前が
驚いたなんてもんじゃない。目覚めたら警察関係者に事情聴取されて、皆の安否を聞いたら急に歯切れがわるくなったもんで仕方なく
出久が
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯」
「⋯出久?」
俺の問いかけに無言で俯く出久。いや、そんな、有り得ねぇだろ?
「おいふざけんなよ!?お前が殺しなんぞ出来るハズがねぇ!⋯⋯そうか!誰か庇ってんだろ!?それこそ爆豪辺りを「木場少年!そこまでだ!!」っ⋯オールマイト!お前もお前だ!何処で油売ってやがった!?」
「っ!?い、いや⋯⋯私はオールマイトでは⋯」
「とっくにネタは上がってんだよ〝八木俊典〟!!テメェが出久にワンフォーオールを渡した事もなァ!!!」
あえて本名で呼ぶ事で逃げ場を無くす。出久も驚き顔だ。観念したのか静かに口を開く。
「⋯⋯何処で知った?」
「今はそんな事どうでもいい。言ってみろやオールマイト。何で、テメェは、あの時USJに現れなかった?」
活動限界のことは知っている。だがそれでもおかしい。少なくとも俺が偽天道を始末した時にはたどり着いていてもおかしくなかった。いくらなんでも遅すぎるのだ。
「テメェがオールフォーワンとの戦いで活動時間が限られてるのは知ってる。だとしても遅すぎるんだよ」
「⋯⋯⋯これを見たまえ」
そう言ってシャツをめくるオールマイト。確かに傷はある。ただし原作よりも
「オールフォーワンと、
動揺を隠し、務めて冷静に聞く。何故誰と聞いたのか?それは明らかに傷口が不自然だからだ。まるで1度治った傷をもう一度抉ったかの様な、と言えばわかるだろうか。
「⋯⋯オールフォーワンを倒してから数年後の事だ」
やがてポツリとオールマイトは話し始める。それは、俺がこの世界において感じ続けていたオールマイトに対しての違和感の正体だった。
「あの日、私はいつもの様に通報を受け
────その時だ、襲撃を受けたのは」
「襲撃⋯⋯?アンタ程の実力者がアッサリ奇襲を受けたのか?」
「流石に私も信じられなかったよ。まるで瞬間移動⋯⋯と言うよりまるで
────朦朧とする意識の中、奴が名乗った名前だけは鮮明に覚えているよ」
オールマイト程の実力者を、簡単に倒す?そんな実力を持った人間そうそう居るはずが無い。それこそオールフォーワン、もしくは〝他の世界の存在〟でも無い限り。その結論が、答えだった。
「その人物の名は〝クロノス〟。世間を度々騒がせている仮面ライダーの1人だ」
────轟音。
⋯⋯反射的に壁を殴ってしまった。俺の拳がある所から蜘蛛の巣状にヒビが広がる。パラパラと細かい破片が零れる中、俺は怒りがマグマの如く煮えたぎっているのを感じていた。
「何処まで俺をイラつかせりゃ気が済むんだ糞野郎共がァ⋯⋯ッ!!!」
なんてことは無い、鼻から全て奴らが原因だったのだ。クソ転生者が余計な事をしたせいで原作が崩壊した。いや、そんな事はどうでもいい。俺の、俺の最高の
そんな時でも、オールマイトは冷静だった。その姿を見て頭が冷える。
「⋯悪ぃ、取り乱した。それで、それがあんたが遅れた理由か?」
「あぁ、既に私の活動時間は1時間も無い⋯⋯。緑谷少年に力を渡した事でそれも急速に縮まってしまっている」
「⋯⋯⋯そう、か。とりあえずは理解した。納得はしてねぇがな」
「すまない⋯⋯」
「俺に謝られても困るんだよ。
⋯⋯それで?出久が
「いや、緑谷少年も居るしここでは不味い。場所を変え「待ってください、オールマイト」⋯⋯少年?」
「僕の夢を笑わないで、ずっと応援してくれた木場っちゃんだからこそ、僕自身が言います。話させてください」
そうして出久はポツポツと語り出した。チンピラ達を倒した事、相澤先生と蛙吹を助けようとして重傷を負ったこと、その後オルフェノクの王がどうとか聞いてオルフェノクになって戦って、マリーに助けられたと思ったら赤銅色の脳無がオルフェノクになって、ファイズを使ってそのオルフェノクを────殺した。
「木場っちゃん、僕は────」
言い終わらないうちに、俺はオールマイトの胸倉を掴みあげていた。
「え、き、木場っちゃん!?」
「⋯⋯⋯オールマイト。今の人類の平均寿命はいくつか知ってるか?」
「⋯⋯〝個性〟の影響もあって、確か男女共に90代だったと記憶しているが⋯」
「60年だ」
「60⋯?一体なんの「テメェらプロが遅れたせいで出久から奪った時間の数だ!!!」」
頭では理解している、この事態は俺が予め雄英側に伝えておけば起こらなかったかもしれない事態だ。都合のいい怒りだってのは分かってる。俺の油断が招いた事、それでも全てが終わってから現場に辿り着いた
「⋯⋯オルフェノク、テメェらで言う灰色の怪物のってのは極端な言い方をすれば〝新人類〟だ」
「新人類⋯⋯?彼らが?」
「そうだ。特定のトリガーを切っ掛けに全身の細胞が急速に進化、例外を除き自身の心の奥底にある〝戦う姿〟に自身を変化させ、個性持ちを圧倒する程のパワーをもつ、人間だ」
「特定のトリガー⋯?」
「〝死〟だ」
「「っ!?」」
「何らかの要因で死んだ人間が、たまたまオルフェノクとして生き返る事がある。もしくはオルフェノクに殺された人間が生き返ってオルフェノクになる事がある。前者はオリジナルと呼ばれてその多くが高い戦闘能力を保持している。ちなみに俺は前者、高い身体能力はその恩恵だ」
ここで2人が驚いた顔をする。まさかのカミングアウトに衝撃を隠せないようだ。
「それで急激な〝進化〟ということが問題だ」
「⋯?それだけ聞けばただのパワーアップに聞こえるが」
「1度死んだ人間を生き返らせるほどの再生力を持つ細胞への進化だぞ?それが数分の内に行われるんだ。結果、細胞は急速な劣化を始め、長くても20年ほどで完全に機能を停止する」
「停止とは⋯⋯まさか!?」
「そう完全な〝死〟だ」
既に頭はパンク寸前だろう。が、まだまだ話さなければならない事は多い。
「そして俺が持っているライダーズギア、あれのオリジナルは元々オルフェノクの王を守る為に開発された鎧だ。それ故に基本はオルフェノクにしか使えねえ」
「王⋯⋯それってもしかして⋯⋯」
「信じ難いが⋯⋯⋯そうだ、お前だよ出久。お前がこの世界における今代の王、アークオルフェノクって事だ」
「アークオルフェノク⋯⋯」
────九死に一生を得た子供。それがアークオルフェノクの適性者。恐らく過去に何らかの要因で死にかけた事がある出久は、今回の件で瀕死の重傷を負った。焦ったのはアークオルフェノクの意識、原作で鈴木照夫の意識を乗っ取った存在だ。本来アークオルフェノクは他のオルフェノクを喰らって覚醒する。が、宿主が瀕死、さらに覚醒しようにもエネルギーが足りない。そこで出久の中にあった代替エネルギー、ほぼ間違いなくワンフォーオールをオルフェノクの代わりとして吸収、覚醒したのだろう。
「出久。個性は使えるか?」
「え?うん、多分⋯⋯⋯あれ?」
軽く握り拳をつくって、〝個性〟を発動しようとした出久。しかし何も起こらない。
「あ、あれ⋯⋯なんで?」
「⋯⋯⋯とりあえず仮説だが」
俺は先程の仮説を話す。するとどうだ、みるみるうちに顔が青くなっていく2人。
「そ、そそそそそれじゃあワンフォーオールは失われたと!?」
「ほぼ間違いなくな」
「⋯⋯⋯⋯⋯」
「いかん緑谷少年大丈夫か!?魂が抜けているぞ!?」
⋯⋯⋯そう言えば胸倉掴みあげたままだったな。こんなコントみたいなもん見せられれば気も抜ける。俺はオールマイトの胸倉を離し、近くの椅子に腰掛けた。
「出久、お前はどうしたい?」
「どうしたいって⋯⋯」
「お前は
「⋯⋯程度ってなんだよ!!?」
出久がベッドから飛び出して俺の胸倉を掴む。その顔は怒りか、悲しみか、色々なものが綯い交ぜになった顔だった。
「人を⋯⋯人を殺したんだよ!?犯罪者とはいえ人を!!」
「俺も殺したよ。オルフェノクの力を使ってな」
「え⋯⋯」
「木場少年!?どういうことだ!?」
「例の偽ライダーがチンピラ共に紛れてやがってな。八百万辺りから聞いてねぇのか?よりにもよって八百万を犯そうとしやがった。だから殺した」
「そんな⋯⋯⋯何でそんな簡単に人を殺せるんだよ!?」
「奴が、許せなかったから。それだけだ」
「木場少年⋯⋯キミは犯罪を犯しているという自覚があるのか⋯!?」
「殺し如きであーだこーだ言ってるからテメェらは進歩しねぇんだよカスが!!」
反射的叫んでしまう。この世界の人間は〝ヒーロー〟という存在を意識しすぎているせいで殺しへの躊躇いが大きい(
「ヒーローによる
「⋯⋯だが!そうだとしても!
「他人の痛みを知ろうともしないクズ共だ。殺して何が悪い?『生活のため』だとか『仕方なかった』なんてほざく奴もいる。だけどな、どんな形であれ人を傷付ける事に〝仕方ない〟なんてねぇんだよ⋯!!」
そこまで言い切って一息つく。俺の言葉に絶句しているオールマイトを無視して出久に問いかけた。
「出久。お前には選択肢がある」
「⋯⋯⋯選択肢?」
「1つは『今回の事を一切合切忘れて普通に過ごす』。もう1つは『殺しの咎を背負って生きていく』。俺としては1つ目がオススメだ」
「忘れるって⋯⋯⋯そんな事出来るはずがないじゃないか!」
「なら、咎を背負うか?殺しの咎を」
「っ!?」
出久⋯⋯⋯ここがお前の分岐点だ。
僕は⋯⋯⋯どうすればいい?
即ち忘れるか、背負うか。忘れるなんて出来るはずがない。殺し────人の命を終わらせてしまった。そんな重い罪を忘れるなんて出来ない。背負う────僕なんかに、背負えるのか?あの
情けない事に僕は、そんな内心を、親友にぶつけてしまった。
「そんなっ⋯⋯⋯簡単に言うなよ!!」
「⋯⋯⋯」
「緑谷少年⋯⋯⋯」
木場っちゃんは無言。オールマイトが静かに僕の名を呟いたのが聞こえた。
「あの
────その全てを僕は奪ったんだ!!」
「お前がアイツを殺していなければ蛙吹や峰田、相澤先生も死んでいたぞ?第一アイツは改造人間だ。もう二度と元の姿には戻れない」
「だからなんだよっ!?それでもっ!もしかしたら元に戻れたかもしれないだろっ!?相澤先生達が助かったのだって結果論だ!あの時僕一人が残って足止めしておけばあの
「⋯⋯テメェそれこそオールマイトにでもなったつもりか?お前如きがンなこと出来るわけねぇだろうが!!」
「わかんないじゃないか!!もしかしたら本当にそうなったかもしれないだろ!!?」
「たらればの話なんぞ聞いてんじゃねぇんだよ!!」
「このわからず屋!!!」
「どっちが!!!」
いつの間にか互いに胸倉を掴みあって叫んでいた。僕が言えば木場っちゃんが言い返す。木場っちゃんが言えば僕が言い返す。それの繰り返し。
いつしか話しは
「だいたい木場っちゃんはいつもそうだ!!天才肌でなんでも出来るからってそれを他人にも押し付けて!!」
「ああ!?なーにが天才肌だボケが!俺の身体能力はオルフェノク化の影響だし頭に関しては純粋な努力の結晶だバーカ!!出久だってヒーローのことに関しては人の事言えねぇだろ!!語り始めたと思ったら丸一日中話し続けやがって!!」
「聞いてもいないアイテムのシステムの話を延々と続ける木場っちゃんよりはマシだ!!それに成績は僕の方が上だ!!バカはそっちだろバーカ!!」
「んだとこのっ⋯!バーカ!!バーカ!!」
「なにをっ⋯!バーカ!!バーカ!!」
「「バーカ!!バーカ!!バーカ!!バーカ!!バーカ!!バーカ!!バーカ!!バーカ!!バーカ!!バーカ!!バーカ!!バーカ!!バーカ!!バーカ!!バーカ!!バーカ!!バーカ!!バーカ!!」」
この時は、忘れるだとか背負うだとかどうでも良くて、純粋に木場っちゃんにムカついていた。僕は、いろんな意味で僕に近しくて、それでいてあらゆる面で僕の先を行っていた木場っちゃんに嫉妬していたんだと思う。そして多分、ヒーローへの思いを素直に晒しきれなかった木場っちゃんも、そう言う意味では僕に嫉妬していたんだろう。まるで子供の様にバカバカ言い合った僕らは、しばらくして漸く止まった。お互いに息を切らせながら。ぜぇぜぇ、と息を漏らしながらも罵倒を止めなかった結果だ。
「ふ、2人とも⋯?とりあえず落ち着こうか⋯?ね?ね?」
オールマイトはなんというか、反応に困ったように話しかけて来た。
僕達はゆっくりと息を落ち着かせ、そして呼吸が整ってから顔を合わせる。
「出久、もう一度聞く。お前は、どうしたい?」
「⋯木場っちゃんは、どうすればいいと思うの?」
「⋯あ?」
「僕は罪を背負える程強くない。だけど忘れられるほど図太くもない。
────ねぇ、木場っちゃん。僕は、どうするのが正解なんだと思う?」
卑怯な質問だと思う。こんな問いを問いかけられても困るだけだとわかっている。でもそんな事を問われた木場っちゃんは────笑った。
「⋯⋯こいつは俺の好きな漫画のキャラが言ってたことなんだがな」
「え、ま、漫画?」
思わず面食らう。何でここで漫画の話?
「とりあえず聞け。曰く、〝大切なのはどうすればいいかじゃない、どうしたいかだ〟ってな。こんな状況で漫画の台詞に頼るのもどうかと思うんだが⋯⋯まァ気にすんな」
「大切なのは⋯⋯どうしたいか」
「そうだ、出久。お前はどうしたい?」
僕は、僕は────!
「さっきも言ったけど、僕は背負えるほど強くも無いし、忘れられるほど図太くもない」
「⋯⋯ああ」
「でも⋯⋯⋯、いずれ背負える程強くなれる日まで────この罪は、引きずってでも持っていく」
「それが、答えか」
「うん」
情けないけど、これが僕の精一杯の選択。弱い僕なりの、僕が出来ることだ。
「⋯⋯なら俺が言うことは何も無いよ」
そう言って椅子から立つ木場っちゃん。そのまま背を向けて保健室から出ようと────
「⋯⋯⋯ハッ!?ちょ!?待つんだ木場少年!!」
────瞬時にマッスルフォームになったオールマイトに捕まった。
「⋯⋯チッ、なんだよ良い感じで終わろうとしてたのに」
「だからといって君が敵のライダーを殺した件についてはチャラになった訳ではないからな!?」
「バカ、第一俺と出久は罪に問われねぇよ」
「「⋯⋯⋯へっ?」」
間抜けな声が2つ。僕とオールマイトだ。木場っちゃんはマジで気付いてなかったのかと声を漏らし、呆れ顔で説明してくれた。
「俺達は未成年かつヒーロー資格を持っていない。で、
「「つまり?」」
「────今回の件はただの正当防衛の結果、ということで処理される可能性が高い。
────な?警察さんよ」
「⋯⋯気付かれてたか」
木場っちゃんが扉の方へ声を掛けると、特徴の薄い顔のコートを羽織った男性が入って来た。
「つ、塚内くん!?」
「え、知り合い何ですかオールマイト?」
「昔から仲のいい刑事だよ。色々世話になったんだ」
「やぁ、久しぶりオールマイト。そして2人は初めましてだな。警視庁の塚内直正だ」
「ど、どうも⋯⋯」
「ウッス。で?どこから聞いてたんすか?」
「うーん、ぶっちゃけ最初から最後まで?」
「⋯⋯俺と出久の言い合いも見てたんすか?趣味悪いですよ」
「ハッハッハ、いやー若いって良いねぇ」
「誤魔化すんじゃねぇよ」
あ、結構早く敬語が崩れた。基本大体の人にはタメ口だからこれでも持った方だろうけど。
「てことはオルフェノクの下りも聞いてたのか?」
「うん、まあね」
「じゃあ話は早い。警察経由でオルフェノクの情報をマスコミにリークしてくれ。台本は俺が書く」
「おや、それはまたどうして?」
「あのなぁ⋯⋯今後やむをえずオルフェノクの力を使う度に灰色の怪物だのなんだの言われるのが面倒なんだよ。加えて出久は今個性が使えない。使える様にして置くのは当然だろ?」
「ふむ⋯⋯僕としては賛成だけど、上がなんというかねぇ」
「⋯⋯⋯チッ、面倒だがウチの会社から圧力を掛けておく。それで素通りすんだろ」
「会社⋯?キミはどこかの企業に所属しているのかい?」
「企業⋯⋯あーー、そういやUSJにアタッシュケースが転がってなかったか?ロゴ入りの」
「アタッシュケース⋯⋯⋯あああれか。確かアタッシュケースとメカメカしいベルトが現場に落ちていて、サディーと名乗るバイクが例のマリー諸共回収して行ったって聞いてるけど?」
「んーー⋯⋯、じゃいいや。そのうち分かるから今は知らんでもいいだろ」
「えー、そう言わずに教えてくれよ」
「えーじゃねーんだよえーじゃ⋯⋯。それで結局どうなんだよ。俺達の件は?」
「んー⋯、多分無かったことにされるんじゃない?今回の件は雄英側としても警察側としても隠したい大失態だろうしね」
「流石大人汚い」
「君が言えたことじゃない気がするけどね、ハッハッハ!」
「⋯⋯笑う様なことか?」
なんというか、その、
「先程の騒ぎが嘘みたいだねぇ⋯」
「ですね⋯」
オールマイトの呟きに苦笑しながら返す。ある意味木場っちゃんらしく、ある意味僕らしいのかも知れない。
────僕は、罪を背負う程の強さを持っていない。だから、
(強く、なろう)
それが、僕のしたい事なのだから。
ドクターフレンズは当然原作のドクターとは別人。連想ゲームで遡っていけば彼の言う〝上〟の正体が分かるかも。
例の名言は鉄のラインバレルから引用。大好き過ぎて出してしまったのだ⋯⋯。
感想、評価、誤字脱字報告よろしくお願いします。
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ドキッ☆拳だらけの猛特訓!〜(命が)ポロリもあるよ!〜
いい案浮かばなくて割と無理矢理。人間関係の修復どうすっかね⋯⋯⋯。
さて、そんなこんなでUSJ襲撃から2日後、てか今。今日も俺と出久、そしてアリアのいつもの3人での登校だ。で、今扉の前にいるんだが、
「ほ、本当に大丈夫かなぁ⋯⋯?」
うん、まぁあんな事があり顔を合わせづらい訳ですよ。主に出久。俺と違ってバッチリ
「うぃーす、おはよーさん」ガラッ
「ちょっ!?」
「相変わらずのマイペースだねぇ⋯」
このままじゃ埒が明かないので迷わず行くんだが。出久の困惑したような声とアリアのブーメランを背に受けながら教室に入る。皆は俺達を見てポカンとしていた。
「おう、皆元気そうじゃ「木場ぁぁあああああああああああ!!!!」うおっ!?」
普通に声掛けたら上鳴が飛びついてきたァっ!?
「フンっ!」
「ふぼっ!?」
「「「「あっ⋯」」」」
「あ」
⋯⋯やべぇ。いきなりすっ飛んで来るもんだから反射的に殴っちまった。上鳴は俺のアッパーカットを顎に受け綺麗に吹っ飛んでいった。そのままピクリとも動かない。え、うそ、死んだ?
「いきなり何しやがんだよオイイイイ!?」
あ、生きてた。
「いやいきなり野郎が飛びついてきたらそりゃ殴るだろ?」
「なんだよそれっ!?こっちは心配してやってんのに!?」
「心配?俺なんかやったか?」
「お前が俺と耳郎がやられた後あの仮面ライダーぶっ飛ばして追いかけてったって言われりゃそりゃ心配するだろーが!?しかも昏睡状態で発見されたって聞きゃ尚更だっつーの!!」
「いや⋯⋯すまん、ぶっちゃけ疲れきって寝てただけなんだ」
「何そのオチ!?」
うん、なんかいつもの上鳴で安心したわ。で、出久の方は⋯、
「うおおおおおおおおおおおおお!!!?緑谷ァ!すまねぇええええええええええええ!!!!!!」
「ちょ、峰田くん!?落ち着いて────」
「俺がっ!俺が不甲斐ないせいでえええええええ!!!!?」
「いや、だから────」
「いっそ殴ってくれっ!!頼むぅぅぅぅぅうううううう!!!!」
「話を────」
「お願いだ緑谷ァああああああああア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!!!!」
「はいちょっと黙ろうか?」
「────クェッ?」
⋯⋯すげぇ。予備動作を一切感じさせない流れる様な動きからの背後からの締め上げとは⋯⋯。一瞬で峰田の首を絞め上げやがったよ⋯⋯。てか人が出しちゃいけない類いの声が峰田から⋯⋯。
「────!?────!────!!??」
「あ、あのアリアさん?峰田くんの顔が段々不味い感じになってるよ!?」
「んー、そろそろ落ち着いたかな?」
「────んぐはぁっ!?はぁ⋯はぁ⋯⋯⋯⋯み、緑谷⋯⋯」
「み、峰田くんもう喋らなくていいから⋯!?」
「ちっぱいも中々乙なもん────ぶぎゅるっ!?」
あぁうん、こっちもいつもの峰田だわ。そしてアリア、腹が立つのは分かるがそろそろ止めてやれ。峯田の首は360°も回らんぞ。
「⋯⋯今度から押し付けないようにしなくちゃ」
「それ以前に『しない』っていう選択肢は無いんだね⋯⋯っとわ!?」
お、蛙吹が出久に抱き着いた。おーおー赤くなってるなってる、トマトみたいだな。
「あ、あああああああああすっ、ゆちゃん!?」
「⋯⋯良かったわ、本当に生きててくれて⋯⋯」
そう言う蛙吹の目からはポロポロと涙が零れていた。
「私達を守るために大怪我して⋯っ、私達を守るために矢面に立って戦って⋯っ、起きてから意識不明って聞いた時は、死んじゃうかもって⋯っ!不安で、不安で⋯!!」
「梅雨ちゃん⋯⋯でも、僕は」
「⋯⋯知ってるわ、アナタがあの
「なら、何で⋯?」
⋯⋯そりゃ当然の疑問だろうさ。大して付き合いも長くねぇ相手にここまで心配されるんだから。ましてや自分はどんな事情があれど人殺し。ここまで親身になる必要が無い。
「────アナタに、救われたんだもの」
蛙吹の答えは、それだけだった。たった一言のシンプルな回答。しかし、それが全てだった。
「僕に⋯救われた?」
「どんな形であれアナタは私達を救ったわ。誰がなんと言おうとその事実は変わらないもの。アナタの味方をする理由はそれだけで充分よ」
「梅雨ちゃん⋯⋯」
⋯⋯あー、うん。良い雰囲気作ってるとこ悪いんだけどな?
「二人共、周り」
「え」
「⋯⋯あ」
「「「「「「(無言のニマニマ)」」」」」」
「ほぁああああああああああああああっ!!?」
「ッ、ッッ〜〜〜〜〜〜///!!?」
皆の微笑ましいものを見るかのような視線に耐えきれず飛び退く2人。今更ながらに自分が何をしてたのかを理解した蛙吹は真っ赤になって俯いている。かわいい。
「出久、式には呼べよ?」
「式っ!?ききききききき気が早いよ木場っちゃんっ!?」
「ほう?『早い』って事はそのうち呼んでくれるのか?」
「「ッッッ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!?」」
やばい楽しい。てかシリアスな空気どこ行った?もっとこう、重苦しくて心が痛くなる展開を想像してたんだけど。
「⋯⋯何やってるお前ら」
ってそうこうしてる内に相澤先生ミイラVer.キターーーっ!?
「あ、相澤先生!?もう大丈夫なんですか!?」
「その事についてはいい。てかはよ席につけ」
「は、はい!」
⋯⋯なんかなぁなぁで終わっちまったな。後で話とかねぇと。
「さて、とりあえずは
あー、やっぱ呼ばれるよな。間違いなくあの件だろう。
「⋯⋯はい」
「ウィッス」
「お前らは自分がやった事の重大さを理解しているか?」
「⋯⋯はい」
「生憎と反省も後悔もしてません」
「⋯⋯ほう?」
「き、木場っちゃん⋯」
「俺があの場で行動を起こさなけりゃ八百万達がどんな目に遭ってたかなんざ想像つく。ついでに言えば下手に野放しにしてりゃ余計に死人が増えていた可能性が高い。だから殺しただけだ」
────ざわり、と教室にどよめきが広がる。相澤先生はそれを一睨みで沈めると俺に向き直った。
「お前は、それが人としての論理に外れた行為だということは理解しているのか?」
「論理?そんな大衆が決めた
「だが事実、世間的にはその様な事をしなくてもヒーロー達は人を救っているが?」
「アングラヒーロー・イレイザーヘッドともあろう者が何を言ってやがる?
光ある所に闇がある。これはある意味どんな世界、どんな次元であれ共通の事情だ。表向き、人々から喝采を浴びるヒーローがいれば、裏で救いようがない
どんな綺麗な世界も、必ず汚い部分が存在する。目の前にいるのはそんな場所に居た人間だ。俺の言う事もわかっているのだろう。
「⋯お前何者だ?その年で何故裏の事情にそれ程詳しい?」
「さぁな。二週間後にでもわかるさ」
それだけ言って席に着く。出久はどうすればいいか解らずかなりオロオロしていたが相澤先生に言われて席に着いた。
「さて、話がズレたが⋯⋯〝雄英体育祭〟が迫っている」
「「「「「っ!」」」」」
あり?何で皆静か⋯ってあんな話すりゃこんなテンションになるわな。
「せ、先生⋯」
そして原作に無かっはずの出来事。上鳴が手を挙げていた。
「なんだ」
「その、仮にも俺達
上鳴の言葉に頷く者が数名。予想していた事態だったのだろう相澤先生は淀みなく答えた。
「その点は抜かりない。例年の5倍以上の警備体制を敷いている。あの襲撃があったからこそ雄英は健在、という事を示すのが目的だ。それにプロにスカウトされる為の絶好の好機だぞ?言い方は悪いが
「そう⋯⋯すか。分かりました⋯」
「それで、だ。今も言ったが雄英体育祭はお前達がプロに気に入られる為の3回しかない絶好の機会だ。ヒーローを志すなら乗り越えていけ。以上だ」
そう言ってHRを締めくくる相澤先生。さて、俺はどう説明するかね?
「その、木場。さっきの話だけどよ⋯」
「ん、まぁ何となく察しはついてると思うが殺ったのはあのクソ野郎だよ」
HRが終わり、いの一番に話しかけてきたのは上鳴。俺はそれに、あくまでもなんて事は無いように答える。
「俺らの、せいか?俺らがあっさりやられてお前の足引っ張っちまったから⋯⋯」
「あぁ、違う違う。元々殺すつもりだったしな」
遠巻きにこちらを見ている面子が目を見張ったのが見えた。上鳴は信じられないと言いたげな面持ちだ。
「上鳴。お前の⋯⋯そうだな、命よりも大切な、とは言わんが最も大切にしてる信念や誇り⋯⋯そういったものが目の前で穢されてたらどうする?」
「大切な⋯⋯⋯って言われても⋯⋯⋯、殴っちまうとかか?」
「そういう事だ。あのクソは俺の目の前で俺の憧れを穢し、誇りを踏みにじった。それこそ殺したいほどの憎悪を抱いてすらいたよ。事実殺したんだが」
そう言って俺は他のクラスメイトに目を向ける。
「お前らも覚えとけよ。何かを守りたいなら自分の何かを捨てなきゃならねぇ。俺はそれが殺しへの躊躇いだったってだけだ」
────放課後
「⋯⋯うるせぇ」
「教室の外が騒がしいねぇ」
クソみたいに辛気臭い空気の中(全部俺のせいなんだが)で今日の授業を消化した放課後。教室の外がザワザワとすんげぇ騒がしい。そういや雄英体育祭前にこんなシーンあったなぁ。『実戦知らねえガキが何ほざいてんだカスwww』とか思いながら見てたのが懐かしいわ。
「あれあれぇ?
「おい何か来たぞ」
「確か⋯物間寧人だっけ?」
「ああ、あのウザイやつね」
物間寧人────ヒーロー科B組においてのリーダー的存在だったやつ。何かとA組こと原作メイン勢を目の敵にしており、ハッキリ言って好きになれないタイプのキャラだった。こいつの煽りがまぁウザイ事ウザイ事。実際受けてたら殴ってたと思う。
「ホントさぁ?良いよねぇA組は。他クラスよりも多めに授業受けられて。入学式も担任公認でサボりとは恐れ入ったよ!どれだけ神経図太いんだろうね?」
それ俺らじゃなくて
「挙句の果てに
「アリア、そろそろキレてもいいか?」
「うーん、もうちょい待って。ボロ出してからコテンパンに論破したいから」
えーマジかよ。今でも拳が出ないように必死に抑えてんのに。
「さっきからさぁ⋯⋯何で誰も何も言わないんだ?そんな陰気な雰囲気漂わせてさぁ⋯⋯。はぁ⋯⋯何?
────次の瞬間にはA組クラス内は文字通り爆ぜていた。
「⋯⋯え」
発生源その1は当然ながら俺。この糞があまりにも舐め腐った事を抜かしやがるもんだから思わず机を殴ってぶっ壊しちまった。
「⋯⋯黙れよ」
そして発生源その2は出久。あいつの足から蜘蛛の巣状に床にヒビが広がっていた。出久は普段決して発することの無い、低い声を発しながら物間の胸倉を掴み、持ち上げる。
「う、わぁ、ああ⋯っ!?」
「何も知らない癖に⋯⋯簡単に死んだとか言うな⋯っ!!」
「⋯⋯出久、そこまでにしとけ」
先に出久がブチ切れたお陰で頭が冷えた。俺は呆然とする皆をそのままに出久を止める。出久は何か言いたげだったが、俺が「下ろしてやれ」と言うと素直に物間を下ろした。俺は青い顔をしている物間に顔を近づける。
「良かったな、お前の近くに居たのが出久で」
「⋯は、な、な、にを」
「俺ならテメェの頭を砕いてた自信がある」
サァーッと物間の顔から血の気が引いていく。自分がやっていた事の危うさを理解したようだ。
「生憎とな、俺達が切り抜けたのは襲撃じゃなくて
それだけ言って物間をクラス外の連中に押し付ける。ああ全く、今日は本当にクソみたいな日だ。
「⋯⋯⋯?」
ふと視線を感じ外の連中を見やる。目の下のクマが酷い、ボサボサの紫髪の男と目が合った。
「⋯⋯⋯」
何故かは分からない。でも、そいつからは────
────木場宅 私有地
「────つー訳で特訓だ!」
「いやどうゆう訳!?」
ん?今どこに居るかって?上見ろ上、俺の家の私有地の森だよ。なんでそんなもん持ってるのか?特に使い道も無いバカでかい土地を研究用に買い取ったんだよ。お陰でライダーズギア製作は誰にも見られること無く極秘に行えたぜ。
「いやな?雄英体育祭があるわけだろ?ならそれに向けて特訓しようかなって」
「だからって学校帰りに攫うように連れて来なくても⋯⋯」
「自分で作っといてなんだけどクラス内の空気に耐えきれませんでした、ハイ」
「完全に自業自得じゃないかっ!?」
いや、ね?メンタルとか色々もう、ね?戸惑いと恐怖となんか色々混ざった複雑な感情向けられ続けてヤバかった訳ですよ。主に俺が。そこで特訓をダシにして出久を連れ出した、てのもあるが1番の目的は別にある。
「お前の特訓だよ出久」
「僕の?」
「ああ、お前はオルフェノクに覚醒した。が、その影響でワンフォーオールが使えなくなった、ここまではいいな?」
「うん⋯⋯、あ、そう言えば木場っちゃんってどこでオールマイトの秘密の事知ったの?ヒーロー業界でも一部の人しか知らないらしいんだけど⋯⋯」
「ん、それを説明する為にも先ずはこれを見てくれ」
そう言って俺は持ってきた2つのアタッシュケースに刻まれているロゴを出久に見せる。
「!それ⋯⋯SMARTBRAIN社の?」
「詳しくは言えないが俺はそこの関係者でな。諸事情あってこいつのスーツアクターをやってる」
「スーツ⋯⋯てことはまさか?」
「そうだ、お前がオルフェノクを倒した時に使ったアレも同じ代物だ」
それを聞いて苦い顔をする出久。思い出したくは無いだろうが説明する為にも避けては通れないので我慢してもらう。
「で、だ。そんなツテもあってヒーロー業界の裏には詳しくてな。オールマイトの事や昼間の始末屋の件もここで知った」
オールマイトの事は初めから知っていだが始末屋関連の事は本当に会社関連の付き合いで初めて知った。予想はしていなかった訳じゃないが流石に驚いたもんである。リアルでダークヒーローが居るとかマジかよ、って感じだった。
「話を戻すぞ────俺が使ってるのもそうだがお前が使ったスーツとオルフェノクには密接な関係があるんだ。なんだと思う?」
「⋯⋯対オルフェノク、もしくはそれに準ずる量産出来るパワードスーツ?」
へぇ、鼻からその考えが出るなんてやるじゃないか。それもある意味正しい使い方だ。
「使い方としては決して間違いでは無いが⋯⋯不正解だ。
正確にはオルフェノクの王────つまりアークオルフェノクを守る為の鎧、それがオリジナルのライダーズギアの使用目的だ」
「王を⋯⋯守る?アークオルフェノクって戦闘能力はさほど高くはないの?」
「いや、寧ろ全オルフェノク中最強と言っても過言じゃない程のオルフェノクだ。⋯⋯ここからは俺の仮説なんだが、恐らくアークオルフェノクの特異性故に覚醒前の王を守る必要があるんだろうさ」
「他のオルフェノクに何か影響を及ぼす力ってこと?」
「流石、頭の回転が早いな。
⋯アークオルフェノクは他のオルフェノクを〝不死〟にする力を持っているんだ」
「ふ⋯⋯し⋯⋯⋯不死!?」
「どういう原理でどうなるのかは俺も知らん。分かっているのは人間としての姿を捨てて不死になるってだけだ」
原作でも描写されてる様子は無いしパラロスではそもそもアークオルフェノクが影も形も無い。
「と言ってもお前がアークオルフェノク本来の力を有しているのかは分からん。そもそも本来アークオルフェノクは他のオルフェノクを喰らい吸収して覚醒するんだ。お前のソレはワンフォーオールを代替エネルギーとして強制的に覚醒しただけだからな。そもそもアークオルフェノクと言えるのかすら怪しい」
「⋯⋯つまりは僕がアークオルフェノクとして覚醒したのはイレギュラーが重なった結果って事?」
「ん、そう言う事だ。だけどイレギュラーだからって使いこなせないのはいただけない」
「だからこその特訓⋯⋯て事なの?」
「そう言う事⋯⋯⋯ま、とりあえずこれはお前に預けとくよ」
そう言って俺はアタッシュケースを出久に差し出す。中身はファイズギアである。最初出久は?を顔に浮かべていたが中を見ると険しい顔つきになる。
「これ⋯⋯あの時の」
「お前が使ったっていうファイズギアだ。全ライダーズギア中でも出力は最も低いがその分アタッチメントなどの武装が豊富なテクニック型のスーツ。コイツをお前に任せたい」
「何で⋯僕に?」
「言ったろ、〝王を守る鎧〟だってな。それに狭い屋内や人の多い広場じゃオルフェノクとしての力は振るいにくい⋯⋯⋯だからそいつはリミッター兼護身用の武器ってとこだ」
後ぶっちゃけオルフェノクにしか使えないので使わずに腐らせて置くくらいなら信用出来るやつに扱ってもらう方が良いしな。
⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯さて、そろそろかな?
「出久、それ付けろ」
「へ?何でまた?」
「良いから早くしとけ」
言いながらカイザギアを装着する。それを見て出久も疑問を顔に貼り付けながらファイズギアを装着する。
『Code 913 Enter』
『Code 555 Enter』
『Standingby』
「変身」
「へ、変身!」
『Complete』
俺達をそれぞれ二色の閃光が包み、カイザとファイズへと変える。何でこんなことを?と皆思ってることだろう。その理由なんだが──────
────ヒュン!ヒュンヒュン!
「────っと来なすったか!!」
「へ?っとほぁあああああああ!!?」
風きり音が聞こえ、それを脳が認識する前にその場から飛び退く。出久は動かなかったがその場でヘンテコポーズを取りながら何とか
「なっ、なななな何がっ!?」
「あー⋯⋯⋯オカンの仕業か。こりゃヤベェな」
「お、オカンって!?てか何この剣!?」
「────そりゃお前、木場の坊主に頼まれた修行の一環さ」
突如聞こえてきた声と共に、森の奥から浅黒い肌の上裸マッチョが現れた。
「げっ!?ベオのおっさん!!」
「よう坊主!聞いたぜ、なんでもダチを鍛えるついでに自分も思いっきり厳しく鍛えて欲しいんだってな?」
「アリアァァああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」
あんの野郎!?確かに出久の修行がてら俺も鍛えたいから誰か呼んでくれとは言ったがなんで
「ちょ、ま、木、場、っ、ちゃあああああああああぁぁぁん!!?
助けてぇええぇぇえええええ!!?」
って、出久の周りが剣山みたいになってる!?オカンまで張り切り過ぎだろ!!!
「出久!!」
「木場っちゃん!!」
「死ぬなよ!!」
「木場っちゃん!!?」
「さて、木場の坊主は純粋に戦闘能力の向上、向こうの坊主はおる⋯⋯おるふぇのく?とやらの体とファイズに慣れるのを最優先⋯⋯だったか?」
ベオのおっさんことベオウルフはバキバキと拳を鳴らしながらすんげぇイイ笑顔で近づいてくる。まって、待って待って待って。何でオーラ纏ってんの?それ明らかに
「要するに俺がお前を殴って蹴って、それにお前が反撃すりゃいいだけの話さ。簡単だろ?
んじゃまぁ⋯⋯⋯行くぜオラァァァァァアアアアアアアアア!!!!!」
「あんぎゃあああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁあああぁぁぁ!!!!!!!?」
この時、俺の頭の中はひとつの事でいっぱいだった。
────あ と で あ り あ ぶ っ こ ろ す
結局この後夜中までしごかれたそうな────
木場っちゃんの自宅説明。
・外から見れば町外れの森の中にポツンと立っているボロ小屋。中は様々な研究開発用のスパコンなどで満たされており、最低限の私室以外は何も無い────筈が翼の手によりいつの間にかリビングとキッチンが出来ていた。というか軽く家自体が作り替えられてた。ねーちゃんのスペックが高すぎて笑う。
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動き出すSMARTBRAIN 体育祭への仕込み
遅れた理由はテストだったり無駄に延期を繰り返した体育大会だったりしますが⋯⋯、まぁ、はい、Arkのモバイル版にドハマリしてました、はい。
ウチの拠点ぶち壊してくれたスピノ許すまじ。
そんなこんなでようやくの投稿。ではではどうぞ。
────東京都内 MAXICIMAM・SUPPUORT・COMPANY本社ビル 会見会場
「────この度、我がMSCはSMARTBRAIN社に吸収合併される事が決定致しました」
マスコミ関係者を集め発表されたその情報は、日本どころか世界中に衝撃を与えるものだった。
MSC────正式名称をMAXICIMAM・SUPPORT・COMPANY。この会社はの始まりは丁度100年前、『ヒーロー』という概念が黎明期をえて漸く大衆へと定着してきた時期に創業された、未だ個性持ちへの差別が残る当時としては珍しい『ヒーローのサポート』を経営理念とした会社だった。
創業者は当時ヒーローに助けられた経験を持つ獅子金源治氏。彼は幼い頃ヒーローに救われた経験があり、後年、彼はヒーローの助けになりたい一心で会社を設立したのだと語った。
そして現在、社長は3代目の獅子金字源氏。身長2mを越す巨漢である。彼は元プロヒーローであり、その豊富な経験を生かし先代と先々代が築いた会社を更に盛り立て、海外進出を果たし、ついにはMSCを『日本一のサポートアイテム会社』と呼ばれる迄に成長させた男である。
そんな男の口から放たれた言葉なのだ、人々を震撼させたのも無理は無いだろう。
「そっ、それは御社がSMARTBRAIN社の傘下に入るということですか!?」
「いえ、先程も言いました通り〝吸収合併〟です。MSCは本日より消滅し、従業員達はSMARTBRAIN社預かりとなります。その後どうするかは彼ら次第ですが」
記者の言葉を淡々と訂正する獅子金氏。そう、あくまでも吸収合併、下に着く訳では無いのだ。
では彼らが言うSMARTBRAIN社とは何か?
────SMARTBRAIN。それはほんの数年前までは、MSCに自社のアイテムを売り込んで来ただけ零細企業だった。持ち込まれたアイテムの名は『トリモチランチャー』。極限まで圧縮されたトリモチを
その性質上、弾丸の小さいセメントガンは対象を拘束するのにある程度弾丸を撃ち込まなければならない。対してトリモチランチャーは1発で大型の
これを採用しないほど、獅子金氏は馬鹿ではない。即座に採用通知をSB社に送り、今後もアイテムを自社で開発して欲しいとまでわざわざ自ら電話で言った程だ。電話に応対したのはSB社の社長にして唯一の従業員の村上峡児という男だった。彼は今後もアイテムをMSCで開発する事を約束、今までにない数多くのアイテムを開発し、僅か半年でMSCの開発部長にまでは上り詰めた。それと同時に瞬く間にMSCの重役へと上り詰めたSB社は業界内外を問わず一躍有名になったのだ。
────そこからだ、おかしくなったのは。先ず時間が経つにつれMSCの商品が売れなくなった。正確にはSB社が開発したもの以外が売れなくなったのだ。原因は純粋な性能差、そしてアイテムの多様性。MSCは村上峡児という男一人に、技術も独創性も劣っていた。村上本人に悪気は無いだろう(断言してもいいが無い)。ただ彼はMSCを利用して高みへと登ろうとしただけだ。その結果がこれだった。
会社自体に傷はない。ただ社の技術者達はそうでは無かった。打倒村上峡児を掲げ、敗れ、村上峡児と自分達の差に絶望して社を去るものが後を絶たなかった。気付けば社の株も7割以上を村上個人が所有しており、村上本人の発言力は社長である獅子金すら上回っていたのだ。
最早、MSCはこの時点で事実上の壊滅だったと言っても過言ではない。外側は今まで以上に立派に、内側は村上という腫瘍によって食い荒らされていたのだ。
────と、まあ村上峡児について散々に言った訳だが、獅子金本人は村上の事を嫌っている訳では無い。より優れたものが大衆に好まれるのは当然の事、自社を去った技術者達については〝その程度〟あったことに寧ろ失望している程だ。
技術者達の多くは、『自分たちも誰かを救いたい』と語ってこの社に入った者達だ。誰かの助けるために、自分の技術を使いたい、と。
それがあっさりと辞めて行って閉まったことに酷く失望し、落胆した。
────お前達の思いはその程度だったのか。
これが獅子金の偽らざる本心である。彼はこの先、SB社の更なる発展を祈り、自社のコネクションと勢力を全てSB社に受け継がせんとこの場を設けたのだ。
「何故唐突に合併などを!?」
「御社を去った技術者達からは『社長は騙されている!』とのコメントがありますがそこの所は!?」
「社長自身は今後どうするのでしょうか!!?」
「最早この国にMSCは必要無いと判断した迄、SB社は今後のサポート業界を背負ってゆけると判断し、この結論に達しました。技術者達に関しては所詮負け犬の遠吠えですので無視して構いません。私自身ですか?そうですね、どこかのんびり出来る場所で余生を────」
『────悪いが待ってもらえるかね?』
そんな声が会見場に響き渡った。
「⋯⋯む?」
ざわめく記者達を押し退けその男は姿を現した。
黒い仮面に黒スーツ。ボイスチェンジャーで声質を変えているようで、体格から男と分かる。男はやれやれと大袈裟な身振り手振りで周りの視線を集めていた。
『獅子金氏、いくらなんでも急過ぎだ。ウチに連絡が来たと思ったら数日後には記者会見だなんて無茶をしないでくれたまえよ』
「む⋯⋯⋯貴方は、村上氏か?」
『ああ、こうして会うのは初めてだね、初めましてだ獅子金氏。私がSMARTBRAIN社社長の村上峡児だ。と言ってもビジネスネームだから本名じゃないんだが⋯⋯⋯まぁそこはどうでもいいか』
ザワり、再びマスコミがどよめく。村上峡児、その名を持つ人物は知名度と反して全く姿を知られていなかった。本人が秘密主義者なのか、誰も姿を見たことが無く、MSCの人間とのやり取りもボイスチェンジャー付きで電話での応対というのだから徹底している。そんな人物が表に現れた。一体どういうつもりなのか。
『さて、何でこんな暴挙に出たんだい?別に態々吸収合併なんてする必要無いじゃないか』
「貴方はそうかもしれんが此方は納得出来んのだ。ハッキリ言ってここ数年の我が社の利益は全てSB社⋯⋯⋯いや、村上氏、貴方がもたらしたものだ。我々は貴方のお零れを貰いながら生きながらえるなど御免だ。それぐらいならばさっさと受け渡してしまった方がいい」
『⋯⋯⋯間違いなく混乱が起きるがどうするつもりだい?株主達への説明とか、主に僕だけど』
「さあな、SB社に全て引き継いでしまったので私は知らん」
『強かな⋯⋯』
ニヤリと笑いながら言う獅子金に眉を顰める村上。彼の言い口は責任放棄と取れる、が、実際の所村上への意趣返しのようなものだということは分かる。散々意図せずともしてやられたのだ、これぐらいは許せ、とでも言うかのように村上を見下ろす。が、当然ながら村上がただ言われたい放題の男だと思うことなかれ、豪速球を放たれればピッチャー返しで跳ね返す。そういう男なのだ、村上は。
『ふむ、獅子金氏。先程従業員は『SB社預かり』と言ったな?』
「それが何か?言っておくが全員クビに出来ると思うなよ?そんな事をすればバッシングは避けられん」
『獅子金氏。SB社は僕一人の会社だ。当然会計部長や開発部長も僕一人しかいないから僕が兼任するしかない』
「それが?」
『つまり僕は『人事部長』でもあるのだよ』
「なっ⋯!⋯⋯そ⋯⋯れは⋯⋯!」
しまった、と獅子金は悟った。村上が言う従業員は平社員から重役、更には旧社長も含まれている────!
『という訳で命令だ。獅子金字源。君をSB社副社長兼人事部長(仮)に任命する。会社の経営と人事は君に一任するのでヨロシク』
「は⋯⋯⋯」
まて、それは詰まり⋯⋯、
「⋯⋯トップがすげ代わっただけなのでは?」
『そうとも言うね。ハッハッハッ!』
記者の一人の呟きに、何がおかしいのか笑い声をあげる村上。獅子金含めこの場にいる人間は全員ポカンである。
『ぶっちゃけると僕経営とか出来ないから獅子金氏に居なくなられると困るんだよね。てなワケでこれからもヨロシクね〝副社長〟?』
「⋯⋯⋯全く、私の負けだ〝社長〟。これからは部下としてだが宜しく頼む」
苦笑しながら村上と握手を交わす獅子金。経営に関しては村上の上を行く獅子金だが悪だくみという点では村上が1枚も2枚も上手であった。
『さて、んじゃこの場を借りてウチの会社からも発表だ。塚内くんカモン!』
「────ハイハイ、それじゃ失礼するよ」
村上の声に続いて現れたのはトレンチコート姿の男、警察官の塚内直正警部である。
「塚内くん?」
「ご無沙汰してます獅子金さん。それとも『キングレオ』とお呼びしましょうか?」
「⋯⋯止めてくれ、小っ恥ずかしくてかなわん」
現役時代の名で呼ばれるのは勘弁して欲しいとばかりに顔を顰める獅子金。今年五十路真っ只中の男にとっては少年時代の若気の至りで付けたヒーロー名はキツイ様だ。
『旧交を温めるのもいいけど俺時間推してるからはよしてくんない塚内くん?』
(⋯⋯⋯俺?)
「そう焦りなさんなって⋯⋯⋯じゃ、変身っ、と」
おもむろにトレンチコートを脱ぎ捨てる塚内。彼の腰に巻かれた機械的なベルトが露わになる。そのまま塚内がベルトのレバーを倒し、彼は光に包まれた。
「むっ⋯⋯!?」
「なっ、なんだなんだ!?」
「何が起こってんだ!?」
『これが我が社の新商品、『ライオトルーパー』だよ』
やがて光が収まる。そこに居たのは
『ライオトルーパーは端的に言えばただのパワードスーツです。しかしその恩恵は並の増強系個性を上回り、なおかつ繊細な作業も可能とする緻密性。そして圧倒的な量産性をウリにした我が社の新商品。お値段税込50万4980円ですのでぜひお買い求めを!』
「ライオトルーパー⋯⋯⋯しかしこれは⋯⋯」
『ふふ、まるで『仮面ライダー』ですか?』
「⋯⋯⋯そうだ」
自身の言葉を引き継いで言った村上の言葉を獅子金は肯定する。目の前の鎧の戦士の姿は一般的に言われる仮面ライダー達に酷似していたのだ。
『気にする事はありません。今世間を騒がせているのは所詮偽物ですので』
「偽物⋯⋯だと?それは────」
「それはどういう事でしょうか!?」
一人の記者が獅子金の言葉を遮り食い気味に村上に迫る。それをキッカケに他の記者も次々と村上の元へと集った。
『おっとっと、まぁ落ち着いて』
「仮面ライダー達が偽物とはどういう事でしょうか!!?彼らが偽物ならば本物は何処に!?」
「偽物だとして彼らはどこから現れたのでしょうか!?」
「彼らと同時期に出現が確認された〝灰色の怪物〟については何かご存知で!?」
「ハイ、ストップ。灰色云々に関しても今から説明するからちょーっと落ち着こうか」
村上に迫る記者達を塚内が押し留める。流石の記者達も警官に言われてしまえば引き下がざるを得なかった。渋々村上から離れる記者達を確認し、一つ咳払いをしてから村上は語り始めた。
『コホン⋯⋯、では、先ず『仮面ライダー』という存在の、始まりから話しましょうか────』
────村上の語る言葉は、仮面ライダーの歴史そのもの出会った。
かつて、超常黎明期以前の事、具体的にいえば昭和、平成の時代、仮面ライダー達が主に確認されたのはその時期の事です。そもそもの始まりは世界征服を企む悪の組織『ショッカー』達がある男を捕らえ、自分達の戦力にする為に改造手術を施したのが全ての始まりでした。
言っておきますが悪の組織と言っても子供が言うような生易しいもんじゃあない。邪魔する者は全て始末し、現代から見てもオーバーテクノロジーな技術を保有する正真正銘の悪の組織、それがショッカーです。
⋯⋯話がそれましたね、それでそのショッカーに捕えられた男『本郷猛』が始まりにして最強の仮面ライダー、
『仮面ライダー1号』です。彼自身IQ600なんて言う馬鹿げた知能と様々な武術の段持ちなんて言うリアルチート男でしたしそれでショッカーに狙われたんでしょうね。
おっと、また逸れてしまった。
仮面ライダー1号こと本郷はショッカーに立ち向かい、時に傷付き、また仲間を得ながら戦い続け、ついにはショッカーを壊滅まで追い込みました。
⋯⋯これで終われば良かったんですがね、その後もショッカーの残党は度々名を変えて現れ、その度に仮面ライダー達に殲滅され続け、昭和の終焉とともに完全に壊滅させられました。言葉にしてみると単純ですがお忘れ無く、ショッカーの企みにより何千何万という人々が犠牲になっています。
そして時は流れ平成、ショッカーが滅び平和になったかと思いきや今度は別の連中が現れます。
ええ、言葉にするのもはばかられるクズ共ですよあの異形共は。目の前にいたらブチ殺してやりたいぐらいには嫌いです、ハイ。
⋯⋯⋯ん?何ですか?⋯⋯⋯⋯『未確認生命体事件』?過去起こった事件でそれらしいものをリストアップしたらその事件が出てきたと?へぇ⋯⋯⋯⋯⋯⋯ホゥ⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯。
ん、ああ失礼、少し考え込んでしまいました。鋭いですね、その通り、未確認生命体事件がその一例、平成で最初に仮面ライダーによって解決された事件です。
この事件後も度々似たような連中が現れ、その度に仮面ライダーによって殲滅されて来ました。その後、平成から年号が変わると同時に仮面ライダー達は姿を消します。元々表には出ない人間でしたからね、記録も残っておらず彼らの即先を辿るのは実質不可能でした。その後は皆さんご存知の超常黎明期です。
⋯⋯⋯うん?ああそうそう、『灰色の怪物』についてでしたね。まぁ単純に言えば彼らは『新人類』です。ネアンデルタール人とクロマニョン人見たいなんもんですよ。スペック的にはあちらがクロマニョンですがね。彼らは我々旧人類が死亡する事で生まれます。
ん?だから死亡ですよ死亡。deathですよ。いや別にギャグでもなんでもなくてですね、我々旧人類の死亡と同時に極一部の適正者だけが灰色の怪物として復活するんですよ。
私は彼らの事を『オルフェノク』と呼んでいます。名前の元ネタはオルフェウスとエノクです。まぁどうでもいい事なんで割愛しますね。
彼らは通常の人間態の他に動植物をモチーフにした戦闘形態へと変身することが出来ます。姿に関してはその者が根底で思い描いている〝戦う姿〟がオルフェノクとしての姿に重なります。別人でもオルフェノクとしては同個体なんて結構ザラにありますけどコレのせいですね。それに個性の有無は関係無しに発生する様ですしぶっちゃけ台風とかと同じ自然現象なんでどうしようもないですし。
まぁ結局の所世間で暴れてる連中はそこらのチンピラ共と変わりないんでボコってOKですんでヨロシク。
発生の原因?さぁ?ただ、件の偽ライダー共が現れたのと同時期に出現したのを考えると
────とまあこんな所ですかね?私からは以上です。あ、それと近々私の正体も色々公表する予定ですので、それじゃ副社長&塚内くん後はヨロシク!
─────さて、さっさと抜けて来た訳だが⋯⋯⋯『未確認生命体事件』だと⋯⋯?
⋯⋯という事は此処はクウガの世界なのか?だとすると警察関係者に情報が出回ってないのが気になるが⋯⋯⋯。
何れにしろ調べる必要がありそうだ⋯⋯⋯。
ライオトルーパー塚内専用機
・ガンダムと同じトリコロールカラーの塚内直正専用機。一般機よりも20%ほど性能が高い。オルフェノクの件を発表する際、協力の謝礼であり、スーツアクターとして性能評価を依頼した。
武装は一般機と同様だが、右腰部に装備されたホルスターはリボルバー型のフォトンブラスターが収まっている。警察官である塚内ならではの仕様である。
今回のクロスオーバー発明品
機動戦士ガンダムシリーズ より
・トリモチランチャー
名称は色々あるが要するにトリモチブッパするアレ。
多分原作通り。その内出るかも。
コードギアス反逆のルルーシュ より
・ゼロ型ボイスチェンジャー付仮面
原作通り。多分もう出ない。
トリコ より
・GTロボ
なんにも言ってないけど作中の村上は遠隔操作のロボット。本体は英霊勢の扱きにより緑谷共々ダウン中。
性能は原作通り。味覚機能はぶっちゃけ役に立たない。多分もう出ない。
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開幕!雄英体育祭!!
久々に投稿します。
なんか二回投稿してたみたい。感想欄での報告ありがとうございますm(_ _)m。
雄英体育祭当日。遂に、この日がやってきた。
周りを見れば緊張している者、闘志を燃やす者、冷然と構える者と様々である。
⋯⋯俺は、やはり皆に距離を置かれている。あの様な事を言えば当然だろう。が、やはり寂しいものだと感じてしまう。
出久はと言えば此方も皆に距離を⋯⋯⋯と言うより1人で静かに精神統一している。麗日や蛙吹が話したそうにしているが出久の集中っぷりに話し掛け辛い様だ。
⋯⋯⋯ん、しゃーないか。なんとなく、お節介だと分かっているが後押ししてやりたくなった。俺は出久に近付き、軽く話し掛けた。
「よォ出久。調子はどうだ?」
「⋯⋯あ、木場っちゃん」
「集中してるとこ悪いな。で、どうだ?
これはオルフェノクとしての身体に慣れたか、という意味だ。覚醒当初は俺も高スペックな身体に振り回されたのはいい思い出だ。
「うん。エミヤさんのお陰で慣れたというか⋯⋯⋯慣れざるを得なかったというか⋯⋯⋯。
ともかくフルカウルを使った時の感覚と同じ感じだったから慣れるの自体は早かったよ」
⋯⋯そりゃ剣の雨に降られりゃ慣れざるを得んよな。遠い目をしている出久を憐れに思うがそれと同時に軽く驚く。エミヤの助けがあったとは云え、二週間程度で慣れる程アークオルフェノクのスペックは低くはない。
⋯⋯⋯本来の覚醒と手順が違うせいでパワーダウンしてんのか?まぁ、それもあるのだろうが特筆すべきは出久の順応性だろう。原作では出久は努力型、対比して爆豪は天才型として描かれていたが俺からしたら出久も充分才能の塊だと思う。
っと、話がズレてしまった。本来の目的に戻らにゃ。
「────緑谷、木場。少し良いか?」
「ん?」
「轟くん⋯?どうしたの?」
話し掛けてきたのは轟だった。何気に初めて話したかもしれん。
「お前らが
おおう⋯⋯、まさかいきなりぶっ込んでくるとは思わんかったぞ⋯⋯。コイツの中に気まずいとかは無いんだろうか⋯。
「ただ
「⋯⋯それで何が言いたい?まさか俺と出久を褒めるために来た訳じゃねーんだろ?」
「勝つぞ、お前らには、必ず」
────ザワり、とざわめきが広がる。事実、轟はこのクラスではトップクラスの強さを誇ると認知されている。
クラス内での暫定最強からの宣戦布告という訳だ⋯⋯!
「⋯⋯轟くんにそう言ってもらえるのは、正直光栄だと思う」
でも、と出久は続ける。
「僕だって、本気でトップを狙ってる。他の科の人達もトップを狙ってる人だって居るだろうと思う。誰にも譲るつもりなんて無い────!」
だから────
「────僕も本気で獲りに行く!!」
これが出久也の、クラス全体への宣戦布告。今日ばかりは皆がライバル、俺も例外では無い。誰もが狙っているであろう頂点を────本気で獲りに行くと出久は行っているのだ。
「お、おいおい⋯⋯何もそんな喧嘩腰にならなくても」
「いや、轟達の言う通りだと思う」
「う、上鳴?」
轟達を諌め用とする切島とは逆に、その意見は正しいと声を上げたのは以外にも上鳴だった。
「木場」
「⋯⋯おう」
「俺は⋯⋯いや、俺だけじゃなくて耳郎や八百万もそうだったけどさ⋯⋯、
USJの時、全く役に立たなくて
「んな事気にするような事じゃ「そうじゃねぇんだ!!」」
気にするなと言おうとするとそれは上鳴の声に遮られる。見れば顔を俯かせ、握られた拳は小さく震えていた。
「考えちまうんだよ、もしあの時自分がもっと強かったらって⋯⋯!もっと強けりゃお前があんな事する必要無かったかもしれねぇって⋯!!
────それだけじゃねぇ⋯!
俺は⋯⋯俺達を守ったお前を⋯!感謝する訳でもなく、恐れて避けちまった!!
悔しくて⋯⋯情けなくて⋯⋯!でもどうすりゃいいか分からなくて⋯⋯!そんな弱い自分が嫌で嫌で仕方なかった!!
だから⋯⋯⋯だからこそ俺は!木場、お前に宣戦布告する。弱い自分と決別するために⋯⋯⋯何かあった時にダチを守れると証明する為に⋯⋯!」
それは、上鳴電気という男の決意表明。それまでの自分を捨て、新しい自分に変わる為の、意思の表れだった。
「⋯⋯悪ぃ、所詮自己満足に過ぎねぇ事は分かってる。でも、でも言わずには居られなかった⋯⋯」
「ん、俺はいいと思うぜ」
「木場⋯」
「誰がどう言おうがそれがお前なりの
それだけ言って俺は上鳴達に背を向け入場口へ向かう。そろそろ、始まりだ。
「俺も俺で、
────雄英体育祭が今始まる。
『さぁさぁよくも集まったなァテメェらァ!!!エヴィバディセイヘイ!!?』
『『『『yokosoーーーーー!!!』』』』
『コイツァはイイ!お前らも準備は出来てる様だなぁァ!?
本日はテメェらが待ちに望んだ雄英体育祭!!我こそはと有精卵共がシノギを削る年に一度の大!バトル!!』
『どうせアレだろ!?テメェらの目当てはコイツらダルォ!?
『ヒーロー科ァ!1-Aだろォォォォォ!!!?』
「⋯⋯るっさ!」
「マイクだし毎年こんなもんだろ」
「てか人すご⋯」
「大人数に見られている中でも自身の最大限のパフォーマンスを発揮出来るか⋯⋯⋯これもまたヒーローとしての素養を身につける一環なのだろうな」
この状況で軽口を叩き合える我がクラスは或る意味大物らしい。俺、出久、アリア、爆豪、轟、上鳴、耳郎、八百万、麗日、蛙吹、峰田は軽口を叩く様子もなく唯、前だけを見すえている。コラそこ、峰田くん頭打った?とか言っちゃいけません。
『続いてヒーロー科B組ィ!そして普通科C・D・E組、サポート科F・G・H、経営科I・J・Kの登場だァ!!』
俺達に続き続々と他のクラスが入場してくる。
⋯おっと、先日のバカをB組にて発見、すげー顔でこっち睨んでら。ニッコリとした満面の笑みで返しておく。何が気に入らんのかさらにすげー顔になってるわ。
ふと、それとは別に視線を感じた。何かと思って視線を辿ればそこは普通科。ボサボサ髪のクマの酷い生徒が此方を見ていた。⋯⋯⋯アイツ、確か原作キャラだ。確か心操人使とか言ったか。個性は『洗脳』と中々に注意か必要な奴だと記憶している。原作では宣戦布告を噛ましてくれたが今回は俺と出久がぶち壊してしまったので特に会う機会もなかったな。
まぁ特に関わる機会も無いだろうと視線を外した。
────これが大きな間違いだったと分かるのはずっと後の話。
「さァ、選手宣誓と行きましょうか!!」
そう言って台に立つのは18禁ヒーロー『ミッドナイト』。アレだ、元の世界で言うキューテ〇ーハニー枠な人だ。
「⋯18禁なのに高校に居ていいものか」
常闇の静かなツッコミには誰も触れなかった。多分全員が思ってる事だと思う。
「静かにしなさい!
選手宣誓!1-Aヒーロー・サポート兼科、木場勇治!!」
「は⋯」
「へぇ!?」
「⋯⋯あぁ?」
周りの反応は驚いていてたり、イラついていてり(当然ながらボンバ(以下省略)。
俺といえば前々から知らされていたので問題は無い。
⋯⋯だって全科の入試で総合一位が俺だったんだよ。校長曰く前代未聞らしいがこちらとしちゃ好都合なので文句はなかった。
『おい、兼科ってどうゆう事だ⋯?』
『そんな特例聞いたことないぞ⋯⋯』
『木場って、もしかして昨年の優勝者の弟か⋯⋯?』
観客席からもざわめきが上がる中、俺は静かに台上へと上がる。
────さぁ、ここからは俺のターンだ。
『ご紹介に預かった、諸事情でヒーロー科とサポート科を兼科する事になった木場勇治だ。本来ならさっさと宣誓する所なんだが、まぁ、少し俺の雑談に付き合ってもらいたい』
この行為自体は誰にも咎められもしないし以外にも思わない。この程度の事は毎年よくやる事だ。良くも悪くもヒーロー科の人間は我が強い。軽いトークなどは当たり前の事だった。
『さて、大前提として言わせてもらう────』
────俺は『無個性』だ。
何の気無しに、極々普通に放たれたその言葉は、会場をザワめかせるのに充分だった。
『以外か?ヒーロー科の人間が全て有個性だと思ったか?残念、普段
何が言いたいのかわからない者も居ると思うので単刀直入に言うぞ?
────調子に乗ってるんじゃねぇぞカス共が』
『テメェらはやれ『出来損ない』だの『生まれる価値のなかったゴミ』だのと俺を罵ってくれたな?
あぁ、気にすんな。ただ無個性だからといって親にネグレクトくらって周りから精神的、肉体的に悪質な虐め受け続けた餓鬼の独り言だ。話は続けるがな。
で?テメェらは何やってる?地方の平凡な学校で満足して?平社員で満足して?テメェらがつまらない所で満足してるその間に俺はここまで登りつめたぞ糞共』
『第一戦闘にクソの役にも立たねぇゴミみたいな個性持ちでもプロヒーローやってる奴なんざごまんといるんだよボケが。戦闘にクソの役にも立たない個性持ちがプロになれんなら当然無個性の俺でもヒーローになれるよな?出来損ないでもこうして上に立てるよな?お陰でテメェらクソみてぇな人生に比べりゃ随分とマトモな生活送らせてもらってらぁ』
『第一有個性だからって何が偉いってんだ?
「おい何だよアイツの言い草⋯」
「いくらなんでもプロを馬鹿にし過ぎだろうが⋯⋯!」
「入試一位だからって調子乗り過ぎだろうが⋯!」
『あ?何だ?俺の言ったことに不満があんのか?
そういう事はなぁ────俺みたいな化け物を出さないようにしてから言えよ』
姿が、変わる。平凡な人としての姿は、2mを越える馬の姿をした怪物へと変貌を遂げていた。
オルフェノク────別名灰色の怪物と呼ばれていた姿であった。
途端悲鳴が観客席から飛び出す。1部のプロヒーローは戦闘態勢に移るものもいる程だった。
『おいおい何だ?俺がオルフェノクだから排除しようってか?あーやだやだ、無知な奴らの相手は辛いねェ』
「うわー⋯⋯。木場くん相当イラついてるなぁ⋯」
「煽るのを辞めない所を見ると寧ろ手を出させようとしてるみたいだね⋯⋯」
「ふ、二人とも冷静過ぎひん!?このままじゃ木場くん大変な事になるで!?」
「だいじょーぶだいじょーぶ、木場くんならそこらの木っ端ヒーロー程度片手で潰せるから」
「そういう問題じゃないんだけどなぁ⋯⋯」
なんて事ないように言うアリアとに苦笑する出久。麗日含め、周りは2人が妙に冷静な事を不可解に思うも、特に追求することなく木場へと視線を向けた。
『言っとくが俺がこうなったのは全部テメェらヒーロー(笑)のせいだからな?三年前の『鉄人事件』。知らねぇ奴もすくねぇだろうよ』
「『鉄人事件』⋯⋯⋯。確か金属を身に纏う個性の
『殺害された13人の中にカウントされちゃいねぇが俺も被害者の内の一人だ。例の鉄人に腹カッ捌かれてオルフェノクとして生き返ったのさ』
『羨ましいと思うか?一部の連中はそう思うんだろうよ。有個性連中を上回る圧倒的なパワーとスピード。世間で暴れ回ってる連中も大半がこの力を振るいたいって思ったんだろうよ。
だがな、代償が無いとでも思ったか?今分かってるだけでも俺達オルフェノクの寿命は最大でも20年に満たねぇ。俺も下手すりゃ後10年程度でお陀仏さ』
『そんな事をなんで知ってるか?おいおい、ここまでくりゃわかりそうなもんだがね。ああそうさ────────俺が村上峡児だ』
少年は厳かに告げる。それと同時に、彼の頭上に
「あ、アレってまさか!?」
「冗談だろおい!?」
「ゆ、ゆゆゆ、ゆ」
『紹介しよう、我社の新作『
「「「UFOだぁーーーーー!!!!??」」」
UFO。未確認飛行物体とも呼ばれるそれは何百年も前から人類を虜にしてきた謎の存在。それを模した輸送船だと彼は言った。よく見ればSMARTBRAINのロゴがデカデカと貼られている。
『改めまして自己紹介と行こう。俺の名は木場勇治。世間じゃ村上峡児としての名の方が有名か?今後とも我社の製品をご贔屓にな』
「ウソだろおい!?」
「木場が⋯⋯村上峡児?」
「お、おい緑谷!知ってたのか!?」
「本人はSB社の関係者だとは言ってたけど⋯⋯⋯まさか社長本人だなんて⋯」
『さて、俺がこんな場所で名を明かしたのには理由がある。つってもシンプルなもんさ────権力が欲しい。』
『俗だと思ったか?俺もそう思うさ。
だがな、権力があれば今現在のクソみたいなこの国を変えられる、少なくとも俺はそう思ってる。』
『今のヒーローには正当防衛によるものだろうと
『早い話、権力がありゃ国の中枢に潜り込めるんだよ。後は金さ。今も昔も政治家連中が腐ってんのは変わりない。現に汚職の証拠いくつか持ってるしな。あ、コレ後でマスコミに流しとくな。
で、だ。俺は金は手に入れた。名声も手に入れた。人脈も充分ある。後は国に潜り込めるだけの権力だ。
いつまで経っても中途半端で止まってるこの国を変える。夢物語だと笑いたきゃ笑え。笑ってんのは現状を変えるだけの勇気も意思もねぇカスだ。本気で目指してるからこそ、俺はここに居る』
『そして全国の
下向くな!上を向いて胸を張れ!!そして笑ってくる連中に中指立ててこう言ってやれ!!
『俺はお前らと違って特別な力なんぞ無くても歩いて行ける』と!!!弱者に甘んじるな!牙をむいて爪を遂げ!!愚者を超える意志を持て!!!』
『覚悟のある奴だけ
『選手宣誓は以上だ。長話に付き合ってくれて感謝する』
────雄英体育祭、開幕
言いたい事言わせてスッキリ。
警察が殺ってもOKなのにヒーローがダメとかどんな理屈だよと思う。原作でもそうだけど無個性故に化け物見たいな力持った連中に迫害される世界自体がイカレてると思う。寧ろ出久よく自殺しなかったなってレベル。親も気付けよ。
マハトマ1号
・名前は某マハトマ夫人から。見た目は完全なアダムスキー型の円盤UFO。核融合炉を搭載しており半永久的な稼働が可能。
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障害物競走でIT'S SHOWTIME!!
英文は某菌類の翻訳機能を使っています。間違いがあったら申し訳ありません。
会話が多めです。なんか自然とこうなってました。
「さ、さァ!宣誓が終わった所で早速第1種目行くわよ!!毎年ここで多くの生徒が
────障害物競走────
「まァ予想通りってとこか」
「その他大勢を振るい落とすには丁度良いだろうしねぇ。上位の大半はヒーロー科の人だろうし、注意すべきはB組の人って感じだね」
ミッドナイトの宣言に合わせてゲートが開く。俺はベルトの準備をしながら、アリアは特に気負う素振りも無く軽いストレッチを行っていた。俺達の会話が聞こえた周りの普通科やサポート科の面子が睨んで来るが、事実なので仕方が無いと思う。悔しいならば実力で示すしか無いのだ。ブツクサ言うぐらいなら
「⋯⋯⋯始まるな」
「だね」
頭上のランプが1つ、点灯する。
「今日は誰で行くんだ?」
「メドゥーサ。この競技空から行った方が速そうだし」
2つ。
「そうか⋯⋯⋯負けねぇぞ」
「もち。私だって負けるつもりはないよ」
3つ。スタートだ。
周りが一斉に走り出す中、俺達は俺達はただ────
『Code 315 Enter』
「来たれ蛇髪の禍津女。神の傲慢により呪い受けしその身、天を駆ける白き翼と共に舞い降りよ」
「HENSIN!」
「出番だよ、メドゥーサ!!」
────
『ヘイヘイヘイ!此処からは俺が実況だァ!!
解説ミイラマンアーユーレディ!?』
『お前が無理矢理呼んだんだろうが⋯』
『さァ始まったぞ第1種目ゥ!3つのエリアからなるコースを個性を駆使して駆け抜けろ!!怪我は自己責任で頼むぜェ!?』
『聞けよ』
『おおっとぉ!?そうこう言ってる内に一躍トップに躍り出たのはァ!?』
「冷てえーーーー!!?何だこれ!?」
「畜生凍った!?動けねぇ!」
「あのやろぉぉおおおおお!!!?」
先頭集団、走り出そうとした面々の手足が凍りつき動きを妨げる。その集団から1人、飛び出す影があった。
『1-A轟焦凍ォ!!先頭集団を凍りつかせ一躍トップに躍り出たァ!!』
「悪ぃな」
駄目押しで後方に5m程の氷壁を展開。後続の進行を妨害する。
『おいおいマジか!アレいいのか!?』
『コースさえ守れば
『さすが自由の雄英!ルールも自由だなァ!
て、後続の連中に動きがあるみたいだぜ!?』
「そう上手く行くと思うなよ半分野郎!!」
「君一人には行かせないよ轟くん!!」
爆炎が、鉄拳が氷壁をぶち破る。そこから飛び出してきたのは2人の男。
『出たァーーーーー!!!壁をぶっ飛ばして現れたのは1-A爆豪!!そして同じく緑谷!!2人に続き飛び出してきたのは1-Aの面々!早くもクラス内でシノギを削るぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!』
「そう上手くは行かねぇか」
「轟ィ!お前一人にいいカッコはさせねゾブらぁ!!?」
頭のもぎもぎを毟りとり轟に投げつけようとする峰田を機械の拳が吹っ飛ばす。
「入試に出たっつぅ仮想敵か」
その正体は無数の仮想
地面を揺らしながら現れる0Pt仮想敵エグゼキューター。10や20で効かない数を持って生徒達に迫る。
『早速第一関門だ!!手始めに無数のロボ祭り!!
その名もロボ・インフェルノ!!ヒーロー科の面々はお久しぶり!その他の奴らは初めまして!どっちにしろ邪魔な事には変わりねぇ!ぶっ飛ばして駆け抜けなぁ!!』
『⋯⋯⋯⋯おい』
「一般入試の仮想敵⋯⋯⋯どうせならもっと凄ぇもん用意してもらいてぇもんだ」
────クソ親父が見てんだからよ。
腕の一振。たったそれだけでエグゼキューターが複数体、纏めて凍りつく。
圧倒的。その言葉が相応しい光景だ。
「今だ!あいつが止めた隙に!」
「やめとけ。体制が不安定な時に凍らせたから────」
倒れるぞ。そう言おうとした轟の口が止まる。彼が見たのはエグゼキューターが倒れ込む光景では無い。
エグゼキューターが
「悪ぃけど、こんな所で立ち止まってる訳には行かねぇんだ!!」
上鳴電気。彼の腕の一振とともに浮遊する機械群は爆散、
そのまま紫電を纏い、上鳴は人間の限界を遥かに超えた速度で轟に向かい駆け出した。
「っち!」
焦ったのか、轟は足元に氷を重ね加速する。ここで轟は、上鳴を確かな驚異として認識した。
『おいおいおいおい!!?ここでスパーキングボーイ上鳴!どうやったのか知らねぇが仮想敵を一気に吹き飛ばしやがったァ!!?更に轟に一気に迫る!焦る轟も一気に加速!レースは早くも白熱だァ!』
『上鳴のは電磁浮遊の応用だろう。浮かせて、内部を強力な電磁石にして外部の反磁性を強めた結果だろう。あの異様な速度は筋繊維に電気信号を通して無理矢理リミットを外したからか⋯⋯⋯。
あいつはこう言った応用が苦手だったハズだが⋯⋯磨けば変わるものだな。
てか⋯⋯⋯おい』
『解説サンクスイレイザー!さてさて他の面々はァ!?』
所変わって緑谷出久。彼も既にロボ・インフェルノへと辿り着いていた。親友に火をつけられ、加えて開始前の上鳴の言葉。そこに、弱気だったかの日の少年の姿は無かった。
「負けてられないのは僕も同じだ!だから────」
バチバチと音を立てて彼の右手に白光が集う。それは直径50cmほどの光球となり、激しいエネルギーを放っている。
「邪魔を、するなァああああああああぁぁぁ!!!」
右腕を大きく振りかぶりぶん投げられた光球。それはエグゼキューターの頭部に直撃、バキバキと音を立ててエグゼキューターの顔面を粉砕した。
それに続き、続々とロボ群を抜けていくA組一同。実戦を経験していない者としている者の差が、ここで明確になった。
『HAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHA!!!イレイザーマジかどうなってんだお前のクラス!?圧倒的じゃねぇか!?』
『チンピラ程度とはいえ、仮にも
⋯⋯⋯だから、オイ』
『アン?どしたイレイザー?』
『
『お?そういや⋯⋯⋯居ねぇな?』
「⋯⋯木場っちゃん?」
プレゼント・マイクとイレイザーヘッド。二人の会話が耳に入り、ふと疑問を覚えるA組。
おかしい、あれ程の事を言っておいて、実力的に考えてはあの二人が先頭集団に居ない?
「ありえない」
誰が言ったか、その言葉はA組の総意を表していた。
『一体どこに《チョンチョン》⋯⋯お?』
『おい、どうし⋯⋯⋯た⋯⋯⋯』
肩をつつかれ、後ろを振り向くマイク。つられるイレイザー。そして絶句。そこに居たのは鉄人。否、オートバジンとそれに搭載された高性能AIのマリーである。
『突然失礼します。ちょーっとマスターに頼まれちゃいましてねぇ』
『おま、ここ実況席⋯⋯』
『あ、ちなみにマスター達は
『上⋯⋯⋯?』
その瞬間、生徒も、教師も、観客も、全員が同じ様に空を見上げる。
────居た。ふと、誰かが零した声。やがて無数の視線は1つ、否2つを捉える。
二つの
「いぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃいやぁぁあぁあっほぉぉぉぉぉぉぉおおおお!!!!!」
「マスター、もう少し静かに⋯⋯⋯」
「
「あの、木場さんは何故英語に⋯⋯」
片や、翼を生やした白馬に跨るグラマラスな紫髪の美女。片や、背中のブースターバックパックで空を飛ぶ白騎士。ついでの美女の背後に捕まってめちゃくちゃハイテンションなアリア・ペンドラゴン。
『Why!?なんだありゃあ!?』
『まさか⋯⋯⋯
『Yes!!詳しくはコチラの紙に』
そう言ってマイクにメモ用紙を渡すマリー。
『Huh?何何⋯⋯ライダーズギア番外・帝王シリーズ、『天のベルト サイガ』?』
『おいちょっ『ハイハイ!専用バックパック『フライングアタッカー』を装備した空戦使用のギアでSB社最新モデルとなってます!操縦桿には連射式のフォトンブラスターが内蔵されており、更に引き抜く事でトンファーブレードとして使用も可能!地上戦にもある程度対応出来るスペックとなっております!!
このフライングアタッカー、既にライオトルーパー仕様のモノが販売されており、ライオトルーパー本体と同時購入する事によってお値段税込24万9800円のところ、大幅に値下げして14万9800円となっております!!ぜひお買い求めを!!!』
『何勝手に商品説明始めてんだオイ。そしてなんだその家電製品見たいな値段は』
『コイツはシヴィーー!!なんかよくわかんねぇがアガってきたぜオイ!?天空から現れた木場とペンドラゴン、二人してロボ群に迫るーーー!!?てか結局あのボインのねーちゃん誰だ!?』
『お前はもう少し口を慎め』
「メドゥーサ!突っ切って!!」
「かしこまりましたマスター。
では────
『!!!』
ペガサスが嘶き、ロボ群に突っ込んで行く。あわや激突するかと思いきや、急制動からの高速の上下左右移動。ロボ群は彼女らに触れる事も叶わず、あっさりと突破される。
「き、木場くー⋯うっぷ!?さ、先に⋯⋯⋯ヴぉっ⋯⋯行って⋯⋯⋯ヴォエっ!?」
「マスター!?ちょ、やめてください吐かないで!?」
無茶な起動の結果か、自分の真後ろで『キラキラ』を噴出しようとしている主に焦るメドゥーサ。気配を察して「やべえ!?」と思い振り落とそうと暴れるペガサス。
「あ、待ってちょっと暴れないで出る出る出る出る出る出る⋯⋯⋯」
「マスター!!?ちょっとそこらの林に降りますからもう少しだけ耐えて下さい!!?」
『⋯⋯⋯⋯何やってんだアイツら?』
『知るか』
「
奇しくもマイクと同じ事を呟く木場。アイツらはこの光景が全国のお茶の間に放送されている事を理解しているのだろうか。理解していないのだろうなと思いながら目の前のロボ群に向かっていく。
「
『Exceedcharge』
「Cobalt smash!!」
エグゼキューターに足を向け、すぐさまEnter。脚部に光点が流れ込むと同時にブースターで威力が上がった飛び蹴りを喰らわす。砕ける装甲、飛び散るオイル。他のエグゼキューター達も巻き込まれ、ロボ群の壁に穴が空いた。
『HMMMMMMMMMMMMMMM!!!!』
雄叫びを上げ、高速で穴を抜ける木場。その光景に火をつけられ、A組もまた加速する。
『おいおいすげぇな突破に5秒も掛かってねぇぞ!?そしてA組ィ!?連中燃えてやがんのか更に早くなってんぞ!?お前どういう教育してんだイレイザー!!』
『知るか。アイツらが勝手に火ィつけあってるだけだろ』
『とか言いつつも内心じゃ教え子が活躍してるのが嬉しくてたまらないんでしょー?』
『⋯⋯⋯お前なんでまだ解説席にいるんだよ』
『べっつにいいじゃないですかー。ただ宣伝終わったら自由にしていいって言われてるからここに居るだけですし?せっかくだからちょこっと解説手伝って上げようかなーって』
『HAHAHA!いいじゃねぇかイレイザー!Heyメタリックガール!!解説の準備はAre you ready?』
『出来てるよ⋯⋯。なんつってなんつってーー!!
もちろんOKモーマンタイ!!』
『という訳で飛び入り参加だリスナー共!こっからはもっと激しくイクぜオイ!!?』
『⋯⋯⋯なんなんだコイツらは』
「⋯⋯
第二関門へと進む最中、思わずマリーに向かって毒を吐く木場。スクラップにするか
『さァ現在の順位は轟、爆豪、緑谷の3人が先頭争い!それに1歩遅れて上鳴!後ろから飯田、常闇、瀬呂も続き、それを木場が猛追するゥ!!
そして見えてきたぜ第二関門!!その名も『ザ・フォール』!!落ちればアウト!!それが嫌なら這いずれや!!』
『一歩間違えば奈落の底!!それが嫌ならトカゲプレイ!!ビビり共は帰ってママのオッパイ吸ってな!!て事ですね!!』
『Yeah!!』
『コイツらは⋯⋯⋯』
「後ろに道作っちまうが⋯⋯⋯仕方ねぇか」
轟は氷で橋を作り、自身はその上を通過。
「ハッ、俺には関係ねェー!!!」
爆豪は爆破で空を飛ぶ。
「僕もッツ!?」
ゴウッ、と空気を裂くような音が響く。音源は、木場。あの僅かな時間でここまで迫って来たのだ。
「
『木場っちゃん!?」
「
そう言い残して轟達に向かい飛び去る。思わず固まってしまった出久。それを抜き去る者が居た。
「に、がさねぇぞ木場あああああああああ!!!」
「なっ、上鳴くん!?」
身体中に黒いナニカを纏い、木場を追って飛ぶ上鳴だ。
黒いソレが幾分か舞い、出久の頬に付着する。それを拭い取り確かめて見れば、それ自体は何処にでもあるものだった。
「砂鉄⋯⋯⋯。
っ、まさか電磁力で砂鉄を身にまとってそれを浮遊させて飛んでるのか!?」
凄い、と素直に思う。USJ以前の彼は、少なくとも電気を纏う、電気を放つ以外の事は出来なかったハズだ。それがどうだ。以前とは見違え、繊細なコントロール力を手に入れている。
────否が応でも火がつくというものだ。
(オルフェノク化はまだ使わない。アレは隠し球、こんな序盤で使っていいものじゃない。でも今の状態だと追い付けるかどうかは微妙だ。体力の問題もあるし
「一部分だけ使えばいい────!」
出久の、太股の半ばから下部。それが灰色の異形のソレへと変化する。更に、脚部より僅かに漏れ出る緑の輝き。誰にも気づかれず、しかしそれによりただでさえ強大な脚力は爆発的に増大する。全身にOFAを満たすフルカウル。それと真逆の発送によるそれを、出久は一気に解き放った。
「────う、お、お、お、おおおおおおお!!!」
爆発。思わず全員が振り返る程の轟音が轟いた。
「緑谷⋯⋯!」
「ちぃっ、クソデクがぁ!!」
驚愕する轟。苛立ちを募らせる爆豪。そのまま出久は木場と上鳴を一気に抜き去る。
「
信じられない現象に目を見開く木場。上鳴は言葉も出ない。それでもすぐ様目の前を見据え、速度を上げる。
『シヴィーー!!上位五人のデットヒートォ!!抜かれた緑谷、ここで隠し球か、一気に抜き返すぅぅぅぅぅううううう!!!』
『抜き返された御二方も再度加速!緑谷選手を追い掛けるぅうううううう!!!!
って、ここで第二関門が終了だぁ!』
『順位は轟と爆豪が同率!!それを目指し緑谷が猛、突、進ーーーーー!!!!』
「うっ、らぁああああああああああああ!!!」
「ッ!!」
「んのっ、ちっくしょうがああああああぁぁぁ!!!」
『並んだーーーーー!!!』
『そしてそれを────』
「おおおおおおおおおおおおおおお!!」
「⋯⋯⋯なっ」
「クソデク⋯⋯⋯っ!」
『『抜いたーーーーーーー!!!!!』』
『もう俺要らないだろ』
3歩だ。たった3歩で出久はトップに躍り出た。1歩目で『ザ・フォール』を越え、2歩目で轟と爆豪に並び、3歩目で抜き去る。圧倒的という他無かった。
(僕だって負けられない!負ける訳には行かないんだ!!)
思い浮かぶのは体育祭前、師であるオールマイトに言われた言葉だ。
────OFAが消えたと言っても、君が私の後継者であることには変わりない。
────私は、君が次世代の象徴に成り得ると確信している。だから、
────『君が来た!!』ってことを、世の中にしら閉めてほしい!!
現平和の象徴オールマイトその人に、自身が象徴足り得ると言われた。彼に憧れた身としてはこれ程ない賛辞。その期待を背負う自分は────
「負けられないんだああああああぁぁぁああああああぁぁぁ!!!!」
4歩目。それは第三関門の地雷原を飛び越えた。
5歩目。既に後続の姿は見えなくなっていた。
────スタジアム内。その場に辿り着いていた。
『『『『『『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおまおおお!!!!』』』』』』
『HAーーーーーHAHAHAHAHA!!!おいお前ら信じられるか!!?1-A緑谷出久!!圧・倒・的!!第二関門、第三関門をひとっ飛び!!圧倒的すぎる速さでゴーーールイン!!喜べマスコミ!!お前ら好みの展開だァ!!』
『2位は現在轟焦凍選手!!その姿は今だ第三関門に差し掛かったばかり!!!2位以下にに圧倒的な差をつけて、緑谷選手が帰ってきたァ!!ほらマスコミもっと撮って!!仮ですけど我社の社員なんだからもっとアップで!!』
『オイまてなんだそれは』
『かくかくしかじか!!以上!!』
『わかるか』
『まぁ色々ありまして社長直々にスカウトしたんですよ。給料もしっかり払ってますから大丈夫ですって』
『そういう問題か⋯?』
その後、出久から遅れること5分弱。次々に後続の面々がゴールインし始めた。それから遅れることさらに5分後。
「セーーーーーフ!!」
「本当もう⋯⋯⋯勘弁してくださいよマスター⋯⋯⋯」
どっかへ行っていたアリアがゴール。これにて第二種目へと進む面子が出揃った。
1:緑谷出久
2:轟焦凍
3:爆豪勝己
4:木場勇治
5:上鳴電気
6:塩崎茨
7:骨抜柔造
8:飯田天哉
9:常闇踏陰
10:瀬呂範太
11:切島鋭児郎
12:鉄哲徹鐵
13:尾白猿尾
14:泡瀬洋雪
15:蛙吹梅雨
16:障子目蔵
17:砂藤力道
18:麗日お茶子
19:八百万百
20:耳郎響香
21:心操人使
22:芦戸三奈
23:口田甲司
24:回原旋
25:円場硬成
26:凡戸固次郎
27:柳レイ子
28:拳藤一佳
29:宍田獣郎太
30:黒色支配
31:小大唯
32:鱗飛竜
33:庄田二連撃
34:小森希乃子
35:角取ポニー
36:物間寧人
37:葉隠透
38:取蔭切菜
39:峰田実
40:発目明
41:青山優雅
42:アリア・ペンドラゴン
────これにて第1種目、決着。
話の都合上、鎌切尖・吹出漫我両名には脱落して頂く事に。ちなみにB組他、全クラス22名になっています。ご都合主義で申し訳ない。
感想評価、誤字脱字報告お待ちしております。
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木場戦?いや、騎馬戦!
そしてFGOでのガチャ。紅閻魔が出たと思ったら3時間後ぐらいに邪ンヌが来てくれた。
「俺死ぬんやなかろうか⋯⋯」
でも二人とも可愛い(´ ∀ `)。
「以上、本選への通過は上位42名よ!落ちちゃった人も安心なさい。まだまだ見せ場はあるわよ!
そして本番はここから!取材陣やスカウト目的の面々も白熱してくるわ!!気張りなさいよ!!
────という訳で次の競技はコレよ!!」
『騎馬戦』とモニターにデカデカと表示される。軽くざわめきが起こる。急なチーム競技へのシフトチェンジへの戸惑いを隠せない。
「木場戦?」
「くふっ!?」
「次言ったら叩き潰すからな腐れ葡萄。そして笑ってんじゃねぇよ麗日オイ」
「じ、冗談だって!?」
「ごめん⋯つい⋯⋯ぷふっ!」
「それにしても騎馬戦⋯⋯勝敗はどのように決まるのかしら」
「ルールはシンプルよ。参加者は2~4人からなるチームを組んで騎馬を作ってもらうわ!メンバーは自由、同じクラスでも他クラスでもOKよ!メンバー全員には下から5Ptづつ得点が与えられて全員の合計Ptが騎馬のポイントになるわ!」
「なるほど⋯⋯高得点の者程狙われやすくなる訳か」
「下から5Ptづつ⋯⋯てことは1位が210Pt⋯⋯。
デカい差がある訳でも無いな⋯⋯」
「うえっ⋯、順位がしたなら高得点の人と組むかどうかしないと厳しいルールじゃん」
「ノンノン!!2位までは5Ptづつ。しかーし!トップに与えられる点数は────いっせんまん!!」
「いっせんまん⋯⋯⋯1000万Pt?」
「え⋯⋯⋯。マジでか?」
「トップてことは⋯⋯」
ぐるり、と音が聞こえそうな勢いで周りが一斉に緑谷の方を振り向く。同情の視線もあれば殺気すら感じられる視線もある。緑谷にはそれらが獲物を狙う肉食動物の視線に感じられた。
(これが⋯⋯
所詮は刹那的なトップ。これで結果が決まる訳でも無い。それにも関わらず、
「制限時間は15分。チームを組んだら合計Ptの書かれたハチマキを首から上に巻くこと。取るほど管理は面倒になるわよ!
更には騎馬が崩れようとハチマキを全て失おうともアウトにはならないということよ!」
「つまりは10以上の騎馬が常にフィールドに存在し続けると⋯⋯」
「1000万といい弱者の為の救済措置ということか⋯⋯」
「個性アリの残虐ファイトとはいえあくまでも騎馬戦!悪質な崩し目的の攻撃は1発アウト!退場となるわ!上に行けるのは上位4組、しっかり考えなさいな!!
それではこれよりチーム決めのスタートよ!」
「ちょっといいかな?」
「⋯⋯なんだ?」
「一緒に組んでもらっていいかな
「出久、組むぞ」
「うん、頑強な木場っちゃんなら前騎馬に最適だ。欲を言えば両サイドに砂藤くんと切島くんが欲しいけど⋯⋯」
「直接的な防御力は高ぇが搦手には弱ぇな。それだったら対応力の高い八百万の方がいい⋯⋯つっても轟のとこに取られてんな」
「あ⋯⋯本当だ」
既に轟組は轟を筆頭に八百万、上鳴、飯田の面子で組んでしまっていた。その他の面々も次々と組み終わっている。てかアリアの奴なんで心操の所にいるんだ?まさか洗脳に⋯⋯⋯かかってねぇな。笑い返してきた。
⋯自分から?確かに確実に上がるならピッタリだと思うが。
「デクくん一緒に組も!」
「う、麗日さん?いいの?絶対に狙われると思うけど⋯⋯」
「木場くんもいるし下手な騎馬より勝率高いし!ガン逃げすれば確実やし!
何より仲良い人とやった方がいいやん!」
「⋯⋯ありがとう麗日さん」
アリアに気を取られてたらいつの間にか麗日がメンバー入りしてた。個性的にはパワー型の俺とは相性がいいので大歓迎なので問題は無いだろう。この3人で組もうかと思っているといそいそと俺に近寄ってきた奴がいた。
「村上社長!是非組みませんか!?」
「あ?お前は⋯⋯」
「私サポート科の発目明と申します!有り体にいえば貴方に私のベイビー達を売り込みに来ました!!」
わーいド直球。
「あけすけだなオイ⋯⋯。なんだ、将来的に
「えぇそうです!現在注目度No.1のSB社!!そこの社長の貴方にベイビー達を気に入ってもらえれば必然的に私のベイビーの注目度No.1!更には予選1位の人もいるから尚更注目されるじゃないですか!!」
「隠さねぇな⋯⋯。使えるんだろうな?」
「勿論!性能は保証します!」
「よし⋯⋯出久!!」
「聞こえてたよ!なら布陣は────」
「ならここで────」
「それならこのベイビーが────」
(あかん、ついていけへん────!?)
結局、麗日が置いてけぼりになっていたのに気づいたのは制限時間ギリギリだった。なんか申し訳ない。
『さぁさぁタイムアップだ!!チーム決めの時間を終え、今フィールドに12組の騎馬が出揃ったァ!』
『見た所大体が同じクラスで組んでますねー』
『そりゃある程度互いの個性の性質について理解し合ってるからな。同じクラスで組んだ方が勝率は高いだろ。
で、いつまでいるんだお前』
『まーまーいいじゃないですか』
『イレイザーあまり細かいこと気にしてっとハゲるぞ?』
『なんでお前らそんなに息合ってるんだよ』
『『そりゃ面白いから』』
『⋯⋯⋯もういいか』
(((諦めんなよイレイザー!!?)))
実況席の面々の暴走が止まらぬ中、良識ある人々は殆ど同じ考えだった。
『よっしゃオマエら鬨の声を上げな!血で血を洗う関ヶ原!!
今、開!!幕!!』
「麗日さん!」
「はいっ!」
「発目さん!」
「フフフッ!オッケーです!」
「木場っちゃん!!」
「おう、何時でも行けるぜ」
「よろしく!!」
────騎馬戦 開幕
『START!!』
『さァ始まったぜ第2競技騎馬戦!開幕早々緑谷の騎馬に他の騎馬が向かって行くゥ!』
『A組葉隠チーム、B組鉄哲チームが緑谷チームに迫る!!早くも
「ん?お前⋯⋯」
B組の騎手、確か入試で見たヤンキーっぽい奴だ。向こうも俺に気づいた様で、少し微妙な顔をしている。
「入試の時は世話になってこの前は物間が世話をかけた!!心苦しいがやらせてもらうぞ!!」
「気にすんなよ、全力で掛かってきなぁ!!」
「骨抜!」
「ケッ!」
ズブリと全身が沈む感覚。下を見れば地面がぬかるんだ様になり、足が膝下まで沈んでいる。確かB組の推薦入学者の骨抜の個性『柔化』。触れたものを柔らかくする個性だ。
「出久、バックパック!」
「もうやってる!」
発目のアイテムの一つであるブースターバックパックを点火。麗日の個性で重さを消し、ゆっくりと騎馬が浮上を始める。
「やらせない!!」
「っぐぁ!?」
────ヴォン!
「っ、何だ!?」
「オーノーベイビーが!?」
音が響いたと思ったらバックパックが木っ端微塵に吹っ飛ばされていた。衝撃は出久にも通っている様で顔を顰めている。
今の攻撃
バックパックを破壊され、浮力を失った俺達は再び沈んて行く。
「不可視⋯⋯不可視⋯⋯⋯見えない衝撃⋯⋯空気を伝っている⋯?」
だとするならば────。
「木場っちゃん、耳郎さんだ!」
「────そういう事!!木場!ウチらもアンタに挑ませてもらう!!」
気づいた時には既に遅く、既に耳郎・砂糖・甲田・葉隠からなる騎馬が迫っている。どうやら砂糖の個性で無理矢理ぬかるみ擬きを突破して来たらしい。
「あかん、囲まれた!?」
麗日の悲鳴で今の状況を理解する。前門のB組、後門の葉隠チーム。なりふり構っている状況じゃない。明らかに原作よりもハードになっていた。
「麗日、重さ消せ!発目はバランサー用意!」
「う、うん!」
「イエッサー!オートバランサー展開用意!」
「出久!」
「了解、
俺と同じ考えを出久も考えていたのか、既にその手にはアークオルフェノクが扱う能力の一つであるエネルギー弾が。出久のソレは本家には及ばないものの汎用性に優れていた。
「ダメージは限界まで減らしてエネルギーの波動だけで吹き飛ばす!!」
エネルギー弾は俺の足元、つまり俺達の騎馬の真下に叩き込まれた。それは狙い通り柔らかくなった土を吹き飛ばし、骨抜の個性の及んでいない地面が露わになった。
「な、しまっ」
「確り捕まっとけよオラァアアアアアアアアアア!!!」
麗日の個性で重さを消し、事実上麗日一人分の重さとなった騎馬は、俺の跳躍により宙を舞った。無茶苦茶な体制で飛んだので当然バランスは崩れるがそれは発目のバランサーでカバーする。
「着地すんぞ、クッション!」
「了解!」
着地も発目のクッションブーツで難なくこなす。これで少なくとも多少は距離を取れた。
『フゥーーーー!!始まったばっかだってのに早くも混戦!
各所で争奪戦が勃発、まさに関ヶ原!!』
『緑谷チームだけでなく轟チームや爆豪チームなども狙われてますね。出る杭は打たれるってところですね』
(((解説より解説っぽい!!)))
『⋯⋯帰っていいか?』
((((アンタがいなくなったらツッコミがいなくなっちまうから頑張って!!))))
イレイザーヘッド、最早空気である。
「オラ、行くぜ緑谷、木場!」
「あ?峰田────って騎手どこだ!?」
峰田の声がした方を見ればいるのは障子ただ1人。その背中はまっさらだ。
────ヒュッ!!
「────っ!」
空を切る音がした。嫌な予感を察したのか、思いっきり身を攀じる出久。そのまま手を振り回し、透明なナニカを掴んだ。
「っけろ!」
「あすっ、ゆちゃんか!」
「ひゃひゅがねみどりひゃちゃん」
障子の背中から現れたのは蛙吹だった。いや、正確には蛙吹の頭が出てきた。口から伸びた長い舌は出久に掴まれている。喋りにくいのだろう、微妙に聞き取りにくい。
「なんで透明になってやがる!?」
「〝保護色〟だ!捕食者から身を守る為の習性!」
「なんで服まで透明になってんだよ!?」
「だっへ私、ひまひゃだきゃだもの」
「「「はっ?」」」
ひまひゃだきゃ────今裸?その言葉に思わず間抜けな声を上げた俺達(発目は動揺していなかった。女としてどうなんだろうか)。出久は思わず舌を離してしまう。
「スキありよ」
「つぅあっ!?」
────ヒュヒュン!
再び透明になり、こちらに遅い来る不可視の攻撃。障子自身更に接近してきているので攻撃の感覚はさらに短くなる。出久は何とかハチマキは死守しているものの、反撃できるような状態ではない。
さらに────
「っぐ!」
「オウッ!?なんですかコレは!?」
「これ⋯⋯峰田くんの〝もぎもぎ〟!」
「大正解だぜオマエらァ!!」
そう言って峰田が顔を出したのは障子の服の中から。首元からニュっと顔が生えてきた。
「服の中!?アリなのかそれ!?」
『アリよ!』
ミッドナイト審議は瞬きの間に可決された。普通なら考えつかないような作戦だ。その特性上騎馬の顔が確実に塞がるが、障子の〝複製腕〟なら眼もコピーが可能。つまり本体の視界が塞がる程度なんて事ない。現にギョロギョロとした眼が複数こちらを向いている。
そうこうしている間にも周りはもぎもぎで覆われ、足の踏み場がみるみる無くなる。騎馬として複数人固まっている俺達には致命的だ。その点単独馬の障子はある程度自由に動けるのでこの程度では歯牙にもかけない。早くも絶体絶命である。
「ちっ、出久!眼だけ
「────眼⋯⋯⋯、っそうか偏光視!!」
虫の瞳────複眼と呼ばれるそれには『光の波』を捉える機能があると言う。蛙吹の〝保護色〟はどちらかと言えば光の波を歪めて透明になっている様に思える。ならば偏光視を持つ虫の複眼なら────あ。
「やっべ、出久スト「ふぉおお!!?」遅かったか!」
顔を赤くして思いっきり仰け反る出久。舌が来ていたのだろう、頭上で風切り音がした。仰け反ったお陰で回避出来たようだが。運がいいんだか悪いんだか⋯⋯いや、いいのか?
なにせ
光の波を見れるんだからそりゃ当然歪められた光の波の所に何があるのかも見えるわな。
「蛙吹ー見えてんぞーー」
「なァにィッッッッ!!!!??」
「っ!!」
真っ先に反応したのは峰田。顔を出して障子の背中側を覗いている。続いて聞こえたのは羞恥の声。蛙吹の声だろう。
「って、動揺してる間に撤退だ!!二人ともブーツ脱げ!」
「くっ、背に腹は帰られませんか!」
「えっちょ、デクくんどしたん!?」
「出久、どうだった?」
「ぴ、ピンク色で生えてなかっ、て何言わせるのさ!!?」
「〜〜〜〜〜ッッッ!!!!」
「ご、ごめん梅雨ちゃん!!わざとじゃなくて、その、全部木場っちゃんの差し金なんだ!!」
「いや仕方ねぇだろ!?ああでもしなきゃ攻撃見きれなかったんだから!てか役得だろ!!」
「倫理的に問題ありまくりだよっ!?」
「み、見たのか緑谷!?ゆ、
「うわぁ⋯⋯峰田くん血涙流しとる」
「ほら皆さん!モタモタしてるうちに敵が来てますよ!」
この時、この中で1番まともだったのが発目という驚愕の事実だった。
『おうおう、なかなかテクニカルなプレーが出てんなぁ!
にしても狙われやがるぜ緑谷チーム!』
『やはり1000万の存在が大きいですね。皆次への切符を手に入れようと必死です』
『それじゃあ、ここで現在の保持Ptを見てみようか!!現在────あら?』
1:緑谷チーム 1000万335Pt
2:物間チーム 1345Pt
3:鉄哲チーム 1275Pt
4:轟チーム 690Pt
5:拳藤チーム 660Pt
6:鱗チーム 0Pt
7:爆豪チーム 0Pt
8:小大チーム 0Pt
9:角取チーム 0Pt
10:峰田チーム 0Pt
11:心操チーム 0Pt
12:葉隠チーム 0Pt
『なんか緑谷チーム以外パッとしませんねぇA組』
『てか爆豪ォ!?どうしたお前!?』
「単純だよ、A組」
「あ?」
目の前の騎馬に気を取られていた爆豪は、己のハチマキが失われた事を理解するのに数瞬要した。自他ともに認める実力者である彼が有するその高すぎるプライドが認識を拒否したのかもしれない。が、目の前の光景がハチマキを奪われたということを否が応でも理解させてくる。
「テ⋯⋯メェコラ返しやがれ殺すぞ!!」
「ちょ、落ち着け爆豪!」
「あーヤダヤダこれだから野蛮人は。先日の件と言いホント、ヒーロー科を名乗らないで欲しいなァ恥ずかしいから」
「あぁ!?」
「気に入らないことがあったらそうやって凄んで暴力に訴えて⋯⋯⋯ガキじゃないんだからもう少し考えたら?あ、そう言えば君ってヘドロ
物間がセリフを言い終わる前に彼の顔面に爆破を放つ爆豪。額には青筋が浮かび、その手からは感情に呼応するように絶え間なく爆破が漏れ出していた。
「何も知らねぇ素人がデけぇ口叩いてんじゃねぇクソが!!鳥顔!」
「うむ、既に全て回収し終えた」
「こんなカス共ほっといてサッサと1000万行くぞクソ髪!!」
「マジか!?今のままでも次に行けんだぞ!?」
「馬鹿かテメェらは!オレが取るのは完膚無きまでの1位なんだよ!!
こんな程度で満足してられっか!!」
「おおおお!!アツいな爆豪!!よっしゃ、行くぜ瀬呂、常闇!」
「影響受けやすすぎだろ!?」
「致し方無し。情熱の漢は止められん」
哀れ物間。煽るだけ煽っておいて瞬殺である。
これが切っ掛けだったのか、状況は大きく動いた。
所変わって緑谷チーム事俺達のチーム。向こうでは物間とかいうアホが爆豪に瞬殺されていた。俺達はと言うと、
「で、まぁ来るよなぁ⋯⋯」
「⋯⋯⋯轟くん」
俺達に立ちはだかる最強の壁・轟チーム。この競技最大の敵。
「そろそろ、奪らせてもらう」
轟の瞳は本人の右半身と同じく、凍える様な冷気を発していた。
『状況が動いた!!物間、あっさり爆豪により瞬殺!!
中央付近では緑谷チームと轟チームが対峙!それを囲む様に複数のチームが迫るーー!!!』
『イヤホント、何がやりたかったんでしょうね物間くん。噛ませ犬でももうちょっと粘りますよ』
物間フルボッコである。そんな中イレイザーと言えば、
『⋯⋯⋯(*_ _)zzZ』
⋯⋯⋯とっくに夢の中であった。
「上鳴、放電準備。八百万は絶縁頼む」
「既に出来てますわ!」
「あぁ、行くぜ!!」
────バリバリバリバリバリバリ!!
上鳴を中心に電撃が放たれる。その中心たる轟チームの面々は上鳴以外全身を絶縁シートで覆っていた。故に無傷。しかし周りはそうはいかない。近寄ってきた騎馬はほぼ全員がその餌食となる。俺達も例に漏れず食らってしまった。
「ぐ、おおお!?」
「ま、ずい!
「────!」
出久の声に反応した時には既に遅く、八百万が用意したのであろう棒を伝って氷が地面を走り、大半の騎馬の足を凍りつかせている。轟チームは俺達に向かって駆け出し、次いでとばかりに拳藤チームのハチマキをかっさらって行った。
「貰ってくぞ」
「あ、俺らのハチマキ!」
「ちくしょうやられた!?」
これにより轟チームは2位に上昇する。が、奴らはそんなものには興味無いと言わんばかりに俺達の元へ一直線に迫って来た。
「⋯⋯お前ら動けるか?」
「ごめん、足は凍っとるし身体も痺れてまともに動かへん⋯」
「お、同じくです社長⋯⋯」
「出久は?」
「なん、とか。木場っちゃんは?」
「俺も正直やべぇ。痺れきってまともに動けん。多分、4割出せれば良い方かもしれねぇ」
不味いなんてもんじゃない。競技中ピンチは何度もあったがこれ程じゃなかった。身体はマトモに動かせず、多少の距離逃げても氷結に追いつかれる。どうする?時間は残り1分程度。ハッキリ言って絶望的な時間。今の俺達では1分すら厳しい。
────俺達が必死に考えを巡らす中、1人だけ迷わず動いた者がいた。そう、
「────ウチが、やる!!」
────
「うっわー⋯⋯⋯完全に凍っちゃってる⋯⋯」
「スマン葉隠⋯⋯⋯もう⋯⋯眠い⋯⋯」
「⋯⋯⋯!⋯!⋯⋯!?」←『ごめん、氷壊せない』的な事を言っている。
こちらは葉隠チーム。漂うのは諦めの雰囲気だった。葉隠・甲田は破壊力のある攻撃を持たず砂糖・耳郎は既にかなり消耗している。純粋に、逆転が不可能だと悟ってしまった面々は既に諦めきっていた。ただ1人────耳郎響香を覗いて。
「⋯⋯皆、耳塞いで」
「え?響香ちゃん?」
「⋯⋯⋯!」←『何をする気なの耳郎さん?』的な事を言っている。
「⋯⋯一か八か、最後の勝負に出る。上手く行けば、1000万取れるかもしれない」
「そんな奥の手があったの!?ならなんで⋯⋯」
「ごめん。1発切りの隠し玉だったから。一発撃ったらもう撃てないと思う。それに⋯⋯⋯正直成功確率は凄く低いと思う」
それでも────
「────ウチを信じてくれる?」
「────持っちろん!!友達を信じるのは当たり前じゃん!」
「⋯⋯!」←全力で首を縦に降っている。
「おーう⋯⋯⋯とりあえず⋯⋯⋯眠い⋯⋯」
「砂糖も限界、時間も無い。これが正真正銘の一発勝負⋯!!」
「おっけ!私達はどうすればいいの?」
「耳塞いで、何時でも行ける様に構えといて」
「了解!」
「頼むよ⋯⋯」
そう言って耳郎は自身の喉にイヤホン=ジャックを突き刺す。同時に、限界まで息を吸い込見始める。その行動は誰にも見られず、轟達に皆が注目しており、完全に意識外に置かれていた。
────それが、勝敗を分けた。
『ハートボイススプレッシャー』
────────────────!!!!
「「「「────ッ!!!!!!」」」」
耳郎の口から放たれた〝声〟。限界まで増幅した心音と共に指向性を持って緑谷・轟両チームへと放たれた。その余波だけでも大地が割れ、遠く離れた観客すらも耳を塞ぎ、近くのチームの人間は崩れ落ちた。
それをモロに食らった両チームは全員がフラフラとマトモに立てない状態であった。
「と⋯⋯⋯お⋯る!!」
「うん!奪るよ1000万!!!」
多大な負荷をかけたからか、喉部分は内出血を起こし、喀血が口から溢れ出す。それでも尚、
勝利への執念のみを瞳に宿して。
しかし、執念ならこの男────木場勇治も負けてはいなかった。音の衝撃で脳を揺さぶられ、平衡感覚を失って意識すら朦朧とする中、彼が立っていられたのは執念によるものだろう。彼は気づいていないが、麗日・発目両名は気絶しており、緑谷は木場よりも重症。戦えるような状態ではない。
(負ける?こんな所で?)
冗談じゃないと心中で吐き捨てる。何もなせず、己の目的の一端すら見ずに敗北するなど許されない。
(世界を、変える)
怪物と呼びたければ呼べばいい、人でなしと罵りたければ罵ればいい、ただ己の
「────負け、れねぇんだよオオオオオオオ!!!!」
それはほぼ無意識の行動であった。耳郎によって砕かれた氷から足を引き抜き、思いきり高く振り上げ振り下ろす、地面への全力の
「う、わわわわわわわわわっ!!?」
砕けた地面に足を取られ、バランスを崩す葉隠チーム。反撃は、完全に静止された。
そしてここで────
『タイムアッーーーーーーーーーープ!!!熾烈を極めた15分間の激戦!!それを制したのは緑谷チーム!!見事1000万を守り切ったーーーー!!』
『ちょっとちょっとイレイザーさん、ほら起きて』
『⋯⋯⋯終わったのか?』
『ええはい。ほらしっかり座って。寝袋から出てください』
『なんか隣で介護が始まってんが気にせずに結果発表と行くぜ!!
まず第1位!!1000万を確りとキープ!緑谷チーム!!』
「あ⋯⋯⋯らら⋯?」
「うっ⋯⋯⋯頭痛い⋯⋯⋯」
「勝った⋯⋯の?」
「⋯⋯あぁ、勝ったんだな」
『第2位!!こちらも高Ptをキープ!轟チーム!!』
「負けた⋯⋯か」
「クソッ⋯⋯やられた⋯」
「まさか耳郎さんにあんな隠し玉があるなんて⋯⋯⋯」
「⋯⋯⋯⋯!」
ギリッ、と無言で拳を握りしめる轟。その顔は憤怒、そして悔しさで染まっている。
『そして3位!1時はどうなる事かと思ったぜ、物間チームを瞬殺した爆豪チーム!!』
「クソがッ!!!!!!!!」
「うあー⋯⋯アタマいてぇ」
「同じく⋯⋯」
「ぐむぅ⋯⋯まさに泰山鳴動、驚天動地」
『オレモアタマイタイ⋯⋯』
『4位!てつて────ってアラァ!?心操チーム!?いつのまに!?』
『いや気づいとけよ⋯』
『ぶっちゃけ緑谷チームと轟チームに夢中で全然見てませんでしたからね』
「⋯⋯なぁ、大丈夫かコイツら?」
「平気でしょ⋯⋯⋯多分」
「────」←魔術で心操の分まで振動を流され食らった庄田
「────」←魔術でアリアの分まで振動を流されて食らった尾白
『なんか色々あったっぽいなぁ⋯⋯。まぁいいさ!!これにて騎馬戦は閉幕!1時間程昼休憩挟んで午後の部だ!確りメシと回復済ませとけよ!!』
────騎馬戦閉幕。
会話がどうしても多くなる。難しいのぉ⋯⋯。
原作見返したら何故か鱗飛竜がつけてるハチマキが70⋯⋯宍田と組んでるんだから3桁は超えてるはずなんだが⋯⋯⋯。めちゃくちゃ戸惑った。
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