目指すは支柱!オールライト (らーめんどんぶり)
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プロローグ

相澤先生とオリ主を仲良くさせたかった。それだけ。BL展開はない。


“ヒーロー社会”

 

個性と呼ばれる超常が異常ではなくなってからもう随分たち、巷では今の社会をそう呼んだりしている。

 

ヒーローとは、個性を使って犯罪を起こす者―ヴィラン―に対抗するために組織された個性による武を用いることのできる対ヴィラン組織―ヒーロー協会―所属の戦士のことである。

 

小学生100人に聞いた好きな有名人ランキングトップ10ではイケメン俳優や国民的女優、モデル等々を凌ぎ、常にトップヒーロー達の名前が連なり、なりたい職業ランキングでは15年連続1位を記録している。

 

 

さて、これはそんな誰もが憧れるヒーローになるための学校―雄英高校―に新しく赴任した一人のヒーローのお話。

 

彼とこれから入ってくるであろう彼らが紡ぐ物語。

 

その一ページが今日、始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい、そのくそ長い導入は一体誰に向けてしゃべってんだ?」

 

「えっ!?口に出てた?」

 

「はぁ、こんなのがNo.3ヒーローなんて世も末だな…」

 

こいつはいつもそうだ。

巷ではクールでかっこいい!なんて話題になってるけれど、こういう抜けたところはなんで報道されないのかね…

 

とかなんとか言ってる隣の友人の呟きはとりあえず無視しよう、うん。

 

べ、別に巷で話題って聞いて嬉しいとかそんなんじゃないんだからね! 

 

おっと、忘れてた。

俺の名前は潜水流(くぐるみりゅう)、ヒーローやっている

俺の個性は名前通り水関係だが、水を生み出すわけでも操るわけでもない。

俺の個性は《水流》

水の流れと一体化する個性。

簡単に言うと俺自体が水になる。

例えば、海に溶け込んだり、雨になったり、川になったりする。

ただし、流れが決まっている水のみという条件付き。

この個性は当たりのようで外れ個性である。

たしかに、俺自身が海になることで津波を起こしたり、雨になって豪雨を降らしたりしてヴィラン―主に炎系の個性持ち―を無効化したり、辺りを水浸しにして電気系のヒーローのアシストをしたり、洪水や氾濫、津波の時の救助や災害を食い止めるといったヒーローらしいことができる個性なのだが、勝手に水が生まれるわけではないので場所が限られてくる。

 

都市部ではそれこそ消防のホースくらいの役にしかたたないし、施設内ではスプリンクラー以外のなににもなれないただのマネキンになっちまう。      

 

もちろん、そういう小さな仕事をバカにしているわけではないが、まだまだ新人の頃はそのせいで救えなかった命も多く、未だにそういう役立たずになってしまうのではという不安が拭えないでいる。

 

さて、さっき友人も言っていたが、俺はNo.3ヒーローらしい。

 

自分でエゴサするのはチキンの俺には無理なので、ホントにそうなのかは知らないし、自分の情報なんてほとんど見ないのでぶっちゃけ分からないが、ヒーローオタクの友人が言うのだからそうなのだろう。(適当)

 

確かに、それは光栄ではあるのだけれど俺は別にヒーローを牽引したいわけでも、オールマイトのようになりたいわけでもない。

そんなのはエンデヴァーさんに任せておけばいい。

 

あ、ちなみに俺のヒーロー名はオールライトって言うんだけど、決してオールマイトのように象徴になりたいとかじゃなくて、彼のように登場しただけで人を安心させるようなヒーローになりたいってだけね。←ここ重要

 

それに俺は自分で平和を築くんじゃなくて、平和を陰から支えたいと考えている。

目指すは平和の支柱!って書かれたハチマキ着けてるしね。

え?大黒柱じゃないのかって?ムリムリ、そんなこと言ったらエンデヴァーさんに燃やされちゃうよ。

 

こないだだってね…

 

え?無駄話はいいからさっさと物語進めろ?

 

もう、せっかちさんは嫌われるにゃん!

 

 

とまあ、冗談はこの辺にして。

 

そんな、アホと天才のハイブリッド(つまり普通)の俺は本日より雄英高校で講師をすることになりました。

 

なぜかは分からないんだけれど、突然家のポストに封筒が入ってて開けてみたらそう書いてありました。

 

事務所に確認は取ってないけどたぶん大丈夫だよね!

 

さて、そんじゃ、挨拶しに行きますかー!

 

「校長に会わせて」

ん?なんか、返答が帰ってこないんだが。

突然登場したからビックリしてるのかな?

まあいいや、校長来るまで座って待ちましょうかね

 

―潜水sideout―

 

―イレイザーヘッドside―

 

朝、くそ効率の悪い通勤ラッシュを避けるために早めに出発したせいでまだ眠気の残るなか、一番乗りで学校に来て、今日来るという新任の講師の出迎えとか言う必要性にかける作業に従事する。

 

それにしても一体誰が来るというのだろうか。

校長はVIPが来るから気合い入れてお出迎えしてね!

とおっしゃっていたが、どのくらいのVIPなのだろうか。

オールマイトは(これは極秘だが)現在ヴィランとの戦闘の治療とリハビリのためこの地にいないのでパス。エンデヴァーとオールライトはメディアやヒーロー協会にすら顔を出さない現場主義者だからまずないだろう。

 

そうするとやはりベストジーニストかギャングオルカ辺りが有力か。

 

確かにベストジーニストならこちらから出迎えしなければ生徒が群がって余計な時間をとられるし、ギャングオルカなら最悪警備が作動しかねない。

 

だが、まあ、まだ新進気鋭のギャングオルカに校長がVIPと言うことはないだろう。

 

てことはベストジーニストのわけだが、あいつとは仲が良い。

手の込んだおもてなしをしなくてもこっちの辛さを察して遠慮してくれるだろう。

 

そうアタリをつけたのが間違いだった…

 

突然だった。それが来たのは。

 

「校長に会わせて」

それだけいったあと彼―オールライト―は近くのベンチに座った。

 

実に簡潔。

 

いや、感心してる場合ではない。

なにが恐らくベストジーニストだ。大外れだろ。校長も嫌な言い方をしてくれたものだ。VIPどころの話じゃないだろう。流石にダメだろあの人は。

 

あの人は、オールライトさんは世界一のヒーローだ。

 

 

以下回想

「クソッタレ!こんなのどうしろって言うんだよ!」

あのとき、まだ新人で大規模災害なんて経験したことすらなかった俺は、どうしようもない現実に完全に諦観してしまっていた。

 

眼前に迫るのは高さ約12メートルの津波。既に港を侵食され、そのせいでところどころに瓦礫や車などが混じっており、頭上から何隻もの船がこちらを見下ろしている。

 

距離約100メートル。津波の速さは優に30キロを越えている為もう時間がない。

周りがパニックに陥るなか俺は必死に頭を働かせていた。

 

今回の災害においてポイントとなるのは人為的な災害だと言うこと。

原因は個性の暴走。

通報があったのは都心から100キロほど離れた離島で一人の男の子の個性が暴発しているとのことだった。

既に駐在していたヒーローや警察が向かったがあえなく返り討ちにされ、挙げ句島の建物が全壊という結果だった。

 

そこでわかったのは暴走した個性が《震動》だということ。島に生存者は一人もいないということだけだった。

 

あくまで暴走による災害のため、子供を咎める訳にもいかず、まして傷付けることなど出来ないため、事が明るみに出る前になんとか抑え込もうと都心に約150人ものヒーローが集められ、秘密裏に対応に当たることになった。

 

名だたるヒーローやサイドキックの中一人だけ場違いな俺だったが、俺には一番重要な任務がある。

俺の個性《抹消》を使って個性を打ち消すこと。

ただし、目を会わせなければいけないため危険きわまりない。

 

そう、このメンバーはいわば俺を守るための壁として集められたメンバーだ。

島の外壁を囲み、パワーで震動を食い止める武闘派ヒーロー達と俺を守るためにバリアとなってくれる防御個性のヒーローたち、そしてせめて住民の亡骸だけでも回収しようと駆り出された救助ヒーローたち。

まさしくヒーロー総動員での任務だった。

 

 

だが、事態は既に手遅れだった。

 

個性が少年を蝕み、意識のない少年の個性だけがずっと暴走していた。目を会わせることなど不可能だった。

 

港まで後退させられながらも津波に幾度となく風穴を開けて時間稼ぎを試みたものの水には無意味で。

氷結させようとしても震動で破壊させられ。

壁を作ろうとしても、海上では強くなりすぎた波は抑えきれなかった。

 

誰もが絶望した。もう終わったと思った。

 

きっとこのままいけば都心も危ないだろう。残念ながら俺の知る限りこの個性に対応しきれるヒーローはいない。そう、オールマイトやエンデヴァーでさえも。

 

この個性が暴走を終えるそのときまで、絶え間なく殺戮が繰り返されるのだ。

そう、思っていた

 

 

 

 

「ごめん、遅れた」

 

驚くほどやわらかな声が耳元を駆け抜ける。

突然目の前に現れたのは和服に身を包んだ一人の男。

真っ黒な羽織に達筆で“流”と書かれていたのを鮮明に覚えている。

 

決して大きいとは言えない彼の小さな背中はそのとき周りにいた誰よりも大きく見えた。

 

そして…

 

彼は水に消えた。

 

なにがどうなっているのか分からなかった。

突然目の前に現れたと思ったら突然消えたのだから。

 

だが、数瞬後、津波がぱたりと止んだ。

それどころか、船や車があるべき場所へと返されていく。

車と共に陸に水が上がったかと思うと跡すら残さず引いていく。

 

夢だと思った。はじめて目の当たりにしたその光景は衝撃的で、幻想的だった。

 

全てがあるべき場所へ返り、落ち着いたころ、彼が再び現れた。

 

周りも俺も神を崇めるかのように礼を言ったよ。それこそ顔中水浸しにして。

すると彼が口を開く。

俺らは英雄の言葉を待った。

何を言われるのだろう。きっと腑抜けだと怒られるのだろう。そう思った。

 

「ヒーローが泣いてどうする。そんなことよりもやるべき事があるだろう。」

そういって俺の頭を撫でてくれた。

とてもびっくりしたが、俺よりも温かくて俺よりも小さな手がとても大きく感じた。

 

「だが、よく頑張った。命の危機を前にして誰も逃げ出さなかった。君たちは素晴らしいヒーローたちだったぞ。」

その言葉で再び泣いてしまった。

泣くなんて無駄なことはしないはずだった。自分はこんなに人間味溢れた人間ではないと思ってた。

だけど、あの人の前で俺はただの子供だった。

 

そしてあの日、もう二度と泣かないと誓った。

彼を支えたいと思った。

 

 

俺の人生で唯一の憧れ、それが彼、《水神》オールライトだ。

 

回想終わり

 

と、まあ長い回想に浸ってしまったが、こうしてはいられない。

すぐに出迎えにいこう。

 

あれ?てことは新しい講師ってオールライトってことか?

 

「マジかよ」

この時俺は久しぶりに、笑った

 

 

―イレイザーヘッドsideout―

 

 

 

―再び潜水side―

 

「いやぁ、まさか本当に来てくれるとはね。助かるよオールライト。ダメ元でも声をかけてみるものだね。」

なにやら機嫌の良いイレイザーヘッドに案内され校長室にやって来た。

 

「ありがとうございます。お久しぶりですね会長。」

 

「おいおい、もう僕は会長じゃないさ。今はここ、雄英高校の校長だよ。」

 

「そうですね、失礼しました」

会長?とイレイザーヘッドの呟きが聞こえる。

 

「ああ、そうだ。相澤くんは知らなかったよね。僕は彼が新人だったころのヒーロー協会の会長をしていたんだよ。昔の話だけどね」

俺が説明するより早く校長が説明した。

 

ホントにあのときはお世話になったものだ

 

特に大規模火災のときなんかは…

 

え?プロローグが長すぎだから早く進めって?

うるさいなぁ、全く。

 

「これから潜水くんには雄英の講師として生徒に実技を教えてもらおうと思うんだけど、意見や要望はあるかい?」

 

「いえ、特にないですね」

 

「わかった。じゃあとりあえず朝の職員会議で紹介したいと思うからそれまでに相澤くんに学校案内をお願いするよ」

 

てことで、今は校舎を回ってきたところなんだが、広い!迷子になるわ。

 

トイレの場所だけは覚えたぜ!

 

さて、そろそろ朝の職員会議だ。緊張するなぁ。

 

 

―会議室―

 

「今日から新しく就任した講師を紹介するよ。」

 

「えー、今日から講師として赴任したオールライトです。教鞭とった経験はないので至らない点も多いと思いますがよろしくお願いします」

とまあ、無難に挨拶をした。

 

 

その後は驚かれたり、質問攻めにされたりと色々騒がしかったけどなんとかやれそうだ。

 

「…と。さて、これで今日の会議は終わり、解散!」

校長の言葉のあと教師陣はみんなクラスへと向かう。

 

俺が担当するのは3年生。

内容は実践訓練とUSJでの救助訓練だ。

おっと、朝のホームルームが始まる急がなくては!

 

 

 

 

 

 

「はじめまして!今日から実技を担当することになったオールライトだ。これからよろしく」

 

 

こうして、俺の高校(講師)生活が始まった。




主人公が和服なのは単純に後ろ姿がかっこいいからという作者の趣味


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第1話 彼と私の過去と未来

漫画を読み返してたら、色々わかんなくなってしまったので、オリジナル展開に移行しますた。
とりあえず今回は前編なのでキャラクターを出してみるといった意味合いくらいしかないスカスカなお話です。すいません。


【号外】《水神》オールライト雄英講師赴任!

 

オールライトのニュースは新聞をなんと二面も使って大々的に取り上げられ、テレビでは民放一斉生放送でオールライト赴任記者会見が報道されるという記録的な騒動となった。

 

この異常なメディアの食いつきに対し専門家は

「これまで“あの映像”以外メディアに露出せず、ヒーロー協会の表彰式にすら顔を出さなかった彼がまさかの雄英校長と笑顔で握手。もちろん珍しさもあるだろうが、映像では見られなかった彼の素顔が見れるというのもこの騒ぎの原因の一端でしょう。」

と、語っている。

 

一方、会見でオールライト本人はこう語っている。

Q.赴任を決めた理由は?

「えー、今回雄英講師としての赴任を決めたのは、今のうちに見てみたかったからというのがまず一点」

 

「そしてやはり、このままにするのは不味いのではという懸念が決め手になりましたね。」

Q.講師としての意気込みは?

「意気込みですか?そうですね、ヒーローにとって一番大切なのは僕が思うに民衆の描くヒーローの理想に近づくことだと思っているので、生徒と 直接触れあうことでそれを少しでも感じられたらいいなと思います」

 

また、会見でオールライト氏は辛辣なコメントも残している。

ヒーロー活動の引退を考えていると言うわけではない?という質問にたいし、

「ヒーロー活動?そりゃやめるわけにはいきませんよ。(若手ヒーローたちは)まだまだてんでダメですからね。まあ、何年ヒーローやってるんだって話ですけどね。」

 

このコメントに対しプロヒーローたちは

 

エンデヴァー「うむ、最もである。最近の若手は腑抜けが多い。だが、まあ、俺自身No.2と言われていても彼のストイックさには及ばないからな。精進しようと思う。まあ、本当に精進しなければいけないのはどこかに消えたNo.1だと思うがな」

 

イレイザーヘッド「正直、教師陣としてはプレッシャーもある。メディア嫌いの彼がわざわざ会見を開いてまで後進育成に携わるということは遠回しに俺たちの力不足と言われてるようなものだしな。だが、彼が鍛えるこれからの世代には期待しても良いかなとは思っている。」

 

ギャングオルカ「若手の自分としては不甲斐ないの一言につきる。だが、いつまでも言われるままでいるわけにはいかない。いつか必ず越えてやる」

 

と、コメントしている。

 

街頭インタビューでは…

Q.オールライト赴任に対してどう思いますか?

 

50代女性「やっぱ一番は安心ですかね。あの若さでこれだけの功績を残してる彼が後進育成してくれるならこれからも安泰かな、と」

 

40代女性「上の息子が雄英なんですけど、正直雄英の先生方って前線で戦われてる方が少ないから不安だったんです。でも、オールライトがいるなら安心ですね」

 

10代男性「やっぱり、唯一無二の経験を伝えられるってことは大きいと思いますね。ただ、前線から彼が外れてしまって良いのかなと言う不安はありますけど…」

 

多くの人が期待を膨らませるなか、若手ヒーローたちの実力不足に不安を隠しきれないでいる人も少なくはない。

 

果たして、オールライト氏の赴任が吉とでるか凶とでるか、注目である。 

 

 

 

…は?

たまたま立ち寄ったコンビニで雑誌を読んでいたんだが、意味がわからん。

うん、見なかったことにしよう。

そう言って雑誌を戻す。

 

 

なぜか知らないけど勘違いされてる(困惑)

ていうか今後のヒーロー活動の質問の回答部分、(若手ヒーローたちは)じゃねえよ!

(俺が)だわ!勝手にコメントに変えんなよ!めっちゃ感じ悪いじゃん

 

まあ、誤解されてしまったのは仕方ない。これから変えていけばいいよね!

 

 

さて、まずは生徒たちから印象を変えてかないとな!

 

 

―雄英高校3年生合同実践訓練―

スナイプ先生に頼んで3年生合同実技授業を丸1日させてもらうことになった。

 

「えー、それじゃこれから1日全部使って実践訓練するわけだけど…」

ここで少しためる。生徒たちはなにやら輝かしい目で見てくるが、残念ながら期待するようなものではないぞ君たち。

 

「個性の使用は禁止とする!」

明らかに落胆する生徒達。

仕方ないじゃん!君たちが個性使ったら俺なんか一撃で沈んじゃうでしょ!

「今日は素の状態での格闘訓練から始める」

 

おいそこ!えー、とかつまんな、とか言うなよ。

 

「おい、お前ら、なめてやがるな。」

ちょっとプロぶってみよう。

めっちゃびびっとる。わろた

「よしいいだろう。個性使っても良いから俺に一発食らわせてみろ。もちろん何人がかりでもいいぞ」

はい、おわった。俺そんなに強くないです。嘘つきましたありがとうございましたー。

 

「いえ!喜んで格闘訓練させていただきます!」

助かった!物分かりのいい生徒でよかったー!

 

「よし、それじゃまず、一人ずつ型から極めていく。武術において型は何よりも先に身に付けるもの。地味だからといって侮るなよ」

とまぁ、型を小一時間ほどで極めさせていく。いや、別に型しか出来ないとかそんなんじゃないから!

次は、

「よし、それじゃ次は腰に重りを着けてやってみろ。二人一組で重心がどこへどのくらい動いているか確認しながら修正していけよー」

なんか、重りがあったから適当に言ってみた。でも指導の仕方とか知らないから生徒に丸投げするわ。

「先生!これになんの意味があるのですか?」

やめて!意味なんかないから!

「バカ、たぶんこれはやられる練習だよ。重りなんかつけたら重心が乱れるだろ?常にしっかりとした地面で戦うとは限らないんだ。不安定な場所で戦うときのためにやってるんじゃないかな」

と、一人の男子生徒がフォローしてくれる。

へー、言われてみればそうかもね。

「そいつの言う通りだ。それが終わったら自分と同じくらいの強さの人とペアを組んで出来るだけ長く組手してみよう」

その間に次のやつ考えるから、とは口が避けても言えないけど。

 

結局、何も思い付かないまま終わりましたけどね。

しゃーないのでそろそろ直接教えます、はい。

「さて、そろそろ俺と戦闘していくぞ。これからは頭じゃなくて体に染み込ませるようにするからアドバイスはしないからな。見てるやつらは自分で大事だと思ったところはメモしておけよー」

それっぽいことを言ってみたが単純に指導が出来ないだけですはい。

所詮校長の頼みを断る勇気が持てなかったから講師になっただけなので。

すまんな子供達よ。

 

 

 

 

 

「よし、じゃあこれで終わり!希望者は明日までに各自問題点をノートに列挙して来い。俺が対策を作って指導するからな。」

俺だって一応プロだ。それくらいのことは出来る。

ただ、脳がコンパクトだから問題点を一つずつ解決することしかできないってだけ。

嘘じゃないぞ!個人練習ならちゃんと指導できるからな!

 

 

 

あ、でも夏休みって確か合同だったような…

 

 

 

 

 

 

そうだ、合宿にいこう。(丸投げ)

―潜水sideout―

 

―会議室―

「どう思うみんな。オールライト先生の授業」

オールライトには内緒で様子を伺っていた教師陣が講評を始める。

 

「俺は、効率的で良いと思いますよ。生徒同士で教え合うのは自己練習にも活かされるのでね」(イレイザーヘッド)

 

「オレハ、問題点ヲ列挙サセルノガイイト思ッタゾ。生徒ノ自主性ノ尊重ダケデナク、教師ノサポートモ良クデキテイル。」

(エクトプラズム)

 

「流石はナンバースリィィィイ!!って感じだったな。指導もそうだが一番はあの格闘センスだろ!才能マンかよ!」

(プレゼントマイク)

 

「私はあの重りが鬼畜だと思ったわ。だってあれ30キロもあるのよ?それを女子にもさせるなんて…うふふ、私と気が合うかもしれないわね」(ミッドナイト)

 

「僕はやはり救助ヒーローとして活動してるとは思えないほどの身のこなしに圧巻しましたね。あれだけの強さなら個性を使った授業は補助をつけないといけないかもしれませんよ」

(13号)

 

「うん、みんなの評価も良いみたいだね。それから、オールライトの個性使用は緊急時以外禁止って協会と政府から要請が出てるからね気にしなくていいよ。」

 

「個性使用禁止要請!」

前代未聞の要請に耳を疑う教師陣

「うん、彼の個性《水流》は我々の手に終えるレベルではないと判断したみたいでね。生徒の安全保証のために使用禁止要請が出たんだよ。」

なにやら、また盛大な勘違いをされているようだが、彼の個性はただ流水と一体化することだけである。

しかし、端から見れば突然消えたかと思った瞬間水が生きているかのように動き出すので海神ポセイドンのように思われている。ちなみに《水神》の由来はそこからである。

 

そんな盛大な勘違いを受け、大物認定された彼だが、自身のことをなにも知らない為そもそも自分が救助ヒーローだと思われていることすらわかっていないのである。

実のところ彼自身は自分は戦闘ヒーローだと思っているため、なんとも哀れな話である。

 

「とりあえず、オールライトくんの実力もわかったことだし、3年生担当の先生方はよろしく頼むよ。では、解散!」

 

―校長side―

「《水神》オールライトね。きみは一体なにものなんだい?」

 

皆が部屋を出ていったあと、一人でそんなことを呟いてみる。

人間を越えた頭脳ですら底が分からない存在。脅威じゃないわけがない。

分からない。ずっとそうだ。あの津波の時から。

あの日、僕は初めて人間に恐怖した。

 

「まあ、いいか。再び僕のもとへきたんだ。今度こそ君の正体を暴いて見せるよ。潜水流」

彼を見つけ視線を凝らす。視線の先の彼はこちらを向いて、ただ無表情に、笑っていた…

 

―校長sideout―

 

 

―潜水side―

 

「合宿?」

 

「はい、やはりより実践的な経験値は実地でしか得られないと思うので。」

合宿の受け入れをしてくれているというヒーローのところへやって来た。

 

「いえ、合宿に来てくださるのは嬉しいですけど、受け入れ先、ホントにわたしたちのところでいいんですか?」

そうは言われても、合宿先ここしかないし…

 

「あ、ごめんなさい。今の時期からの申し込みだと受け入れ先ここしかないってことですよね。すみませんわたし嬉しくて勘違いしちゃいました。」

心読まれてた…はい、ありがとうございました!

 

 

ん?うれしい?聞き間違いかな。うん、きっとそうだ。

「えっと、まずじゃあ自己紹介しますね。私たちはワイルド・ワイルド・プッシーキャッツっていう新人の救助ヒーローなんですけど…」

 

「ああ、最近話題の四人組ヒーローたちか。」

そうか、この人が…

それは嬉しいことを聞いた。

このヒーロー競争率の高い第三世代のなかで唯一仲違いすることなくチームで活躍しているヒーロー。

チームでの連携、山岳救助のノウハウと自然環境下での戦闘、海を拠点に活動する俺とはおよそ対極にいる彼らからなら生徒達もさらなる成長が見込めるだろう。

 

「わたしのこと知ってるんですか!?というか、ホントに私たちでいいんですか?」

目をキラキラさせながら女の子―マンダレイというらしい―が顔を近づけてくる。かわいすぎかよ!

 

「まあ、活躍している後輩だからな。名前くらいは知っている。君たちならいい(生徒の)相手になりそうだからな。むしろ光栄だよ」

そういって頭を下げたあと顔をあげると、やんわりとした笑顔で見つめてくる彼女と目があってしまう。

 

かわいすぎかよ!

 

「ん?どーした?」

 

「い、いえ!なんでもないですよ。みんなにはわたしから伝えておきますね。それじゃ、また」

行ってしまった。なんか見覚えある子だから名前でも聞こうと思ったんだけどな…

 

ま、いっか。かわいかったし。十分満足しますた

 

さて、合宿の準備をしなくては!

―マンダレイside―

 

ヒーローとして活動を始めてからもうそろそろで三年になる。

最初の一年こそ、ヒーローを名乗るのもこっぱずかしいほど仕事がなかったり、たまに来る雑用という激務で体を壊したりしていたが三年経つ頃にはもうすっかり激変した。

とはいえ個人事務所を構えるわたしにとって一番辛いのは事務仕事である。

なにせ、わたししか事務が出来ないんだもの。

事務の仕事と言うのはわたしが想像していた以上に地味で、さらにそんな日に限って特にヒーローの仕事もないため、退屈な日々を過ごしていた。

とはいっても、暇潰しにヒーロー科の合宿を上から見るのは案外楽しいもので、私も昔はこの高校にいたんだなぁ。と、ついつい懐古してしまう。

そしてそれと同時にもうあの頃には戻れないんだなと勝手に落ち込んでしまうのだけれど。

 

しかし、今年、私にはとても嬉しい事件が起きた。

 

そう。ヒーロー科時代の憧れの人、オールライトの雄英講師赴任である。

 

そしてその人物は今目の前にいる。

最初はもしかしたら覚えてるかなとも思ったけど、あの目があったときの表情で覚えていないとわかった。既視感はあるみたいだけれど、詳細は微塵も覚えてはいないみたい。

 

でも、それでいい。私にはそれで十分。たとえ近づくことがもうできなくても、憧れの人がすぐ近くにいてくれているのだから…

 

さて、彼がどうして私の憧れの人なのかを説明するにはまず、私の過去を知ってもらわなければいけない。

 

これは、私と、彼の、とある事件のときのお話。

新聞やメディアでは語られることのなかった、誰も知らない彼の活躍。

私と彼の小さな秘密…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もう大丈夫僕がいる!」

 

 

 

 

 

 

私を救ってくれたヒーローの物語

 

 

第1話 英雄~彼と私の、過去と未来~前編



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