田舎から引っ越してきた僕と個性的な人達 (知栄 砂空)
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1話 なぜか女子高に転校してしまった男の末路

どうも、初めましての方は初めまして、知栄砂空です。

……とうとう書いてしまいましたw。

はいw。

見ての通り、バンドリの小説ですw。

他の方々のバンドリ小説を読んだり、ガルパをやったりしてるうちに、僕も書きたいと思ってきまして。

……我慢できず、とうとう書いてしまいましたw。

だってバンドリ好きなんだもん!

ガルパ好きなんだもん!

小説好きなんだもん!

だったら書くしかないじゃん!

……はいすいませんw。

普通に取り乱しましたw。

というわけで、第1話スタートですw。

バンドリの小説は初めてなので、多目に見てください、お願いしますw。


僕の名前は空見楓。

 

何の変鉄もない、普通の高校2年生(に今年なった)だ。

 

……そう。

 

普通の高校2年生……のはずだったのだが。

 

……まさか、こんなことになるとは……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

楓「……そ、空見、楓、です。……よ、よろしく、お願い、します……。」

 

 

 

 

 

僕は今、自己紹介をしている(もう終わったが)。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……花咲川女子学園高校、2年A組の教室で。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……そう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この学校は、共学高でも、男子校でもない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……女子高だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……大事なことだからもう一度言おう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……女子高だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~数日前~

 

【空見家】

 

楓の父「よいしょっと。これで一通り、荷物は全部運び終えたな。」

 

荷物を置き、グッと背伸びをしたのが、僕のお父さん。

 

楓の母 「ねえお父さん、この荷物、どこに置くの?」

 

今荷物をドサッて置いたのが、僕のお母さん。

 

楓の弟「……」ピコピコ

 

運び終わったばっかのソファに座ってピコピコゲームをしてるこいつが、僕の弟。

 

そして。

 

楓「ほらよ。」ガシャン

 

楓の飼い猫「にゃ~。」

 

楓「ずっと窮屈で嫌だったろ~。でも、もう大丈夫たからな~。」

 

今僕がゲージから出してあげたのが、空見家で飼ってる猫だ。

 

……そう。

 

今日僕は、家族といっしょに田舎から引っ越してきた。

 

引っ越してきた理由は、単純にお父さんの転勤だ。

 

引っ越しすることに関して、最初はもちろんびっくりした。

 

本当にびっくりしたし、不安にもなったし、少し寂しくもなった。

 

……と、その話は置いといて。

 

……今僕には、何よりも心配していることがある。

 

それは……学校のことだ。

 

僕は県外から引っ越してきた。

 

ならば当然、前の学校から新しい学校に転校することになる。

 

新しい学校の手続きは、既にお母さんが済ませてくれたらしい。

 

しかし僕は、新しく転校する学校の名前をまだ知らない。

 

……いったい僕の新しい学校はなんて名前で、どんな学校なのか。

 

知らない人達と、うまくやっていけるのか。

 

それだけが、ただただ心配なんだ。

 

楓の母「……そういえば楓。」

 

楓「何?」

 

楓の母「これ、来週からあんたが新しく通う学校のパンフレットよ。」

 

き、来た!

 

楓「あ、ありがとう!」

 

楓の母「何時までに行けばいいのかとか、どんな学校なのかとか、それ見てきちんと確認しときなさい。」

 

楓「はーい。」

 

こ、これが、僕が新しく通う学校のパンフレット。

 

……なんか、緊張するな。

 

お母さんからは封筒にパンフレット等が入っている状態で渡されたので、丁度学校の名前は見えていない。

 

……よし、見るか。

 

僕は一度深呼吸をしてから、ゆっくりと封筒からパンフレットを取り出した。

 

そして、そのパンフレットに描いてあった学校の名前は。

 

楓「……花咲川女子学園、か。……ん?……え!?ちょ、え……じょ、女子!?」

 

僕はあることに気づき、パンフレットのページを次々めくった。

 

二、三度めくり直し、導き出されたことは。

 

楓「……ねえ、お母さん。」

 

楓の母「何?楓。私、今忙し…「この学校のことなんだけど。」あー。綺麗な学校でしょ?ここからなら普通にバスで行ける距離だから、そんな遠くもない…「これ女子高じゃん!!」……そうよ?」

 

楓「そうよ、って……。いや、僕男なんだけど!?決して女ではないんだけど!?」

 

楓の母「いいじゃない、そんな細かいこと…「全っ然細かくないよ!何で共学高じゃなくて女子高なんだよ!男子校ならまだ分かるけど、女子高はないだろ女子高は!!」……仕方ないでしょ。近くの高校がそれと羽丘女子学園しかなかったんだから。」

 

楓「は、羽丘、女子……?ま、まさかここら辺って……じょ、女子高しかないわけじゃ、ないよ…「そうよ?」……マジで言ってる?」

 

楓の母「もちろん。」

 

楓「……僕、高校行かなくていい…「何馬鹿なこと言ってんの!そんなの許すわけないでしょ!?高校はちゃんと行きなさい!来週から!ちゃんと!バスに乗って!時間通りに!分かった!?」……だ、だって…「だってじゃない!!」……はーい。」

 

~回想終了~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……というわけで、今に至る。

 

先生「えー、というわけでみんな。今日から空見くんと、仲良くしてあげてね。」

 

楓「……///」

 

先生「あら?空見くん、顔が赤いけど…「恥ずかしいんですけど……。」え?……あ、そうよね。いつまでも前に立ってるとそりゃ恥ずかしいわよね。じゃあ空見くんは……松原さんの隣に座ってちょうだい。」

 

楓「は、はい。」

 

そして僕は、クラス全員から視線を受けながら、指定された席に座った。

 

席に座った後も、先生の合図があるまで、その視線はずっと僕のほうに向けられていた。

 

……僕、注目されるの苦手なのに……。

 

ていうか、女子だらけの教室に1人だけ男がいるというこの状況、かなり恥ずかしいんですけど……。

 

……はぁ。

 

僕の高校生活、終わったな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~昼休み~

 

楓「はぁー。……疲れた。」

 

授業中、なんか知らんけど先生にめちゃくちゃ当てられたんだけど。

 

どうにか答えられる問題もあったけど、間違ったり分かんなかったりしたらなぜか笑われるし。

 

真面目にノート書いてたら、いきなり左隣の人にノート見せろって言われるし。

 

授業と授業の合間の休み時間なんか、めちゃくちゃいろんな人に質問責めされるし。

 

……僕、注目されるのは苦手だけど、女子と話すのも苦手なんだよ……。

 

……で、でも、もうこれで昼休み。

 

僕以外の人達は、いくつかのグループになってもうお昼を食べ始めている。

 

もちろん僕は1人だから、さっきみたいに注目されたり質問責めされたりする心配はない。

 

やーっと安心して1人で過ごせる時間ができ…「あ、空見くーん。ちょっといいー?」? せ、先生?

 

楓「……どうしたんですか?」

 

先生「お昼食べようとしてたところごめんね。あなたのこと、ちゃんと理事長に紹介するの忘れてて。今からいっしょに、理事長室に来てくれる?」

 

楓「……はい。いいですけど……。」

 

先生「ありがとう。ほんとにごめんね。じゃ、ちょっとついてきて。」

 

……今思えば、さっきのあの言葉はフラグだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【理事長室までの廊下】

 

楓「……」

 

生徒A「ねー、なんかこの学校に男子いるよー?」ヒソヒソ

 

生徒B「あ、そういえば私、2年A組の教室に転校生が来るって聞いたよ。」ヒソヒソ

 

楓「……」

 

生徒C「まさか、その転校生が男子だったなんてねー。」ヒソヒソ

 

生徒D「めっちゃ意外~。」ヒソヒソ

 

楓「……」

 

生徒E「あの転校生の男子、別にイケメンってわけじゃないのね。」ヒソヒソ

 

生徒F「かといってブスってわけでもないから……普通?」ヒソヒソ

 

生徒G「普通の男子がこの花咲川に転校とか、マジうけるんですけど~。」ヒソヒソ

 

楓「……」

 

めちゃくちゃヒソヒソ声が聞こえる。

 

しかも、全部僕のこと。

 

めちゃくちゃ恥ずかしいし、めちゃくちゃ怖いんですけど。

 

あと、さらっとなんかひどいこと言われた気が……。

 

先生「着いたわ、ここよ。」

 

楓「え?あ、は、はい。」

 

先生「コンコン ……失礼します。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

楓「し、失礼しましたー。」

 

……ふぅー、緊張したー。

 

理事長だもんな、この学校で一番偉いんだもんな。

 

……そりゃ緊張するわ。

 

……さて、じゃあ教室戻…プルルルル ? 電話?誰からだろう?

 

楓「……もしもし?」

 

???『お、よう楓。』

 

楓「あ、曽山。」

 

曽山牧人(そやままきと)、僕の小学校からの友達だ。

 

悪いやつでない、と思う。

 

まあでも、たびたび僕にちょっかい出してくるからなー。

 

……良いやつでもあり、悪いやつでもある、って感じかな?

 

牧人『どうだ?新しい学校は慣れたか?』

 

楓「慣れたか、って。まだ転校1日目だぞ?」

 

牧人『1日目でも、友達ぐらいは出来ただろ?』

 

楓「……いや、それが…『お前!俺がいろんな人と友達になるための極意を教えてやったのに、まだ1人も友達出来てねえとか言うんじゃねえだろうな!』……誰もがお前みたいにコミュ力あったら、僕みたいな人見知りは苦労しねえよ。」

 

牧人『……まあいい。友達はできなくても、話ぐらいはしたろ?……おいまさか、話もしてねえって言うんじゃねえだろうな!』

 

楓「その前にまず、人の話を聞けって。」

 

牧人『あ?』

 

楓「……実は僕が転校した学校、……女子高なんだよ。」ヒソヒソ

 

牧人『……は?何言ってんだお前。話せなさすぎてとうとう頭がおかしくなっか。』

 

ま、普通は信じないだろうな。

 

てかマジこいつうぜぇ。

 

……パシャ

 

これを、送信、と。ピロリン

 

牧人『ん?何だ?……、……!?』

 

楓「これで信じるか?」

 

牧人『……羨ま。』

 

楓「は?」

 

牧人『羨ましいぞてめー!!何が女子高だ!最高じゃねえか!ハーレムじゃねえか!!』

 

楓「ちょ、おま、バカ!周りに人いるんだって!聞こえるだろ!」

 

牧人『楓!俺はお前を許さねえ!手始めにまずは、クラスの連中にお前が女子高に転校したこと言いふらしてやるからな!』

 

楓「! あ、アホかお前!やめろよな!?クラスに言いふらすなんてこと、絶対やめろ…パシッ え?」

 

牧人『おい、聞いてんのか楓!止めねえのか!?言いふらすぞ!?お前のこと、本当にクラスのやつらに言いふらす…プツン ……ツー、ツー……』

 

楓「あ。」

 

???「歩きながらの携帯使用、そして校舎内の盗撮、さらに校舎内での大声を出すなどの行為、と。」

 

楓「……あ、あのー…ガシッ !?」

 

ズルズルズル

 

楓「ちょ、ちょっとあの!い、いきなり何するんです…「黙っててください。」……は、はい。」

 

……何で?

 

……どゆこと?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

楓「……ひどい目にあった。」

 

あの後僕が連れていかれた場所は、生徒会室だった。

 

そこで20分もの説教を喰らったあげく、携帯を取られてしまった。

 

ほんと誰だったんだよ、あの強引な人は。

 

……はぁ。

 

あの人のせいでお昼食べ損ねた……。

 

ああ、腹へった……。

 

???「……ねえ。」

 

お昼休み終わるまであと5分ぐらい、急いで食べれば……いや、やめとくか……。

 

???「……ねえ。ねえったら。」

 

楓「……ん?え、僕?」

 

???「他に誰がいるの?それより、さっきあんたさ、氷川さんに説教喰らったでしょ?」

 

楓「? ひ、氷川、さん?」

 

???「風紀委員の氷川紗夜さん。空見、さっき生徒会室に連れてかれたでしょ?」

 

楓「あー、う、うん。」

 

???「転校初日から災難だったねー。よりにもよって、あの人に説教されるなんて。氷川さん、何事にもすごく厳しいから。」

 

???「そうそう。真面目って言うの?うちらにはちょっと合わない感じ?」

 

???「あんたは真面目じゃないからねー。」

 

???「ちょ、それはっきり言う!?」

 

???「だってほんとのことでしょ?」

 

楓「……」

 

???「ね!松原さんもそう思うでしょ!?」

 

???「ふぇっ!?あ、えーっとー、……う、うん。」

 

楓「……」

 

この2人、元気だなー。

 

???「……!ってヤバっ!もうすぐ授業始まる!」

 

???「! ほんとだ!あの先生、めちゃくちゃ厳しいからな~。早く準備しなきゃ!」

 

……よく分からないけど、あの人は風紀委員で、氷川さんって言うらしい。

 

……てか、あの2人さっきの見てたの!?

 

……まあいいや。

 

僕も準備するかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『キーンコーンカーンコーン』

 

生徒A「おーっし授業終わったー!」

 

生徒B「ほら、早く帰ろう?」

 

生徒C「あ、私、近くで美味しそうなケーキ屋さん見つけたんだ!」

 

生徒D「さーて部活部活ー!」

 

???「空見!」

 

楓「! な、何?」

 

???「空見は部活、何入るか決めたの?」

 

楓「へ?あ、いや、僕は…「あたしはテニス部に入ってんだ。んで。」……」

 

???「私は将棋部だよ!」

 

楓「……ぼ、僕、部活は入らなくてもいいかなーって。」

 

???「え、そうなの?」

 

楓「う、うん。」

 

???「ふーん。……ま、部活に入る入らないは人それぞれだしね。それじゃあね、空見。」

 

???「また明日。」

 

楓「う、うん。」

 

……僕、あの2人に目つけられたのかなぁ?

 

……と、とにかくまずは、あの氷川さんって人に携帯を返してもらわなきゃ。

 

とは言っても、あの人が今どこにいるか知らないしなー。

 

はて、どうしたものか……。

 

先生「あ、空見くん。」

 

楓「? 先生、どうしたんですか?」

 

先生「帰るの、もう少し後にしてもらってもいいかな?」

 

楓「え、何で……」

 

先生「空見くん、この学校初めてでしょ?」

 

楓「そりゃそうですよ。当たり前じゃないですか。」

 

先生「だから、ちょっと学校を見て回ってほしくて。」

 

楓「……要するに、学校案内ですか?」

 

先生「そうそう!」

 

楓「……じゃあ、できるだけ早くお願いしま…「あ、でも、学校を案内するのは私じゃないの。」え?」

 

先生「ちょっとついてきて。」

 

楓「あ、はい。」

 

学校を案内するのは先生じゃない?

 

……じゃあ、理事長?

 

いや、まさかな。

 

あんな偉い人が、僕なんかのために学校案内なんかしなさそうだし。

 

だとしたら……他の先生か、生徒?

 

先生「ここで待ってて。」

 

あれ?

 

ここ、隣のB組だ。

 

先生「……」カクカクシカジカ

 

先生、他の生徒と何か話してるな。

 

先生「……ごめんね待たせて。今、呼んでもらったから。」

 

? 呼んでもらった?

 

先生「あ、来た。」

 

楓「? ……え!」

 

紗夜「何ですか先生。私に何か用事でも……。 ! あ、あなたは!」

 

ふ、風紀委員の、氷川、さん……。

 

……隣のクラスだったのか。

 

先生「あら、あなた達、知りあいだったの?」

 

楓「……知りあいというか、なんというか…「別に知りあいではありません。」!」

 

先生「え、そうなの?」

 

紗夜「ただ風紀を乱していたこの人を私が注意した、それだけの関係です。」

 

先生「な、なるほど。」

 

……なんか、あからさまに否定されると頭にくるな。

 

紗夜「それで先生。私に何の用ですか?私はこれから…「氷川さんには、空見くんへの学校案内を頼みたいの。」え?」

 

楓「!?」

 

先生「ほら、空見くん、今日転校初日でしょ?この学校のこと、いろいろ教えてあげたほうがいいと思って。」

 

紗夜「……し、しかし、なぜ私なんですか?学校案内なら、先生が…「私これから、会議があるのよ。大事な会議だから、欠席するわけにはいかないし。それに、氷川さん風紀委員でしょ?」っ!が、学校案内と風紀委員は関係ありま…「! もうこんな時間!会議が始まっちゃう!じゃあ氷川さん、後はよろしくね!」あ、ちょっと先生!」

 

……なんか強引な先生だなー。

 

……それより、この空気どうしよう。

 

紗夜「……はぁ。」

 

はぁ、って、ため息つきたいのはこっちだよ。

 

早く帰りたい……。

 

紗夜「……頼まれたからには仕方ありません。空見さん、でしたっけ?」

 

楓「え?あ、はい。」

 

紗夜「私についてきてください。これから、学校の様々なところを案内します。」

 

楓「……わ、分かりました。」

 

そう言って僕は、歩き始めた氷川さんについていった。

 

……あ、そうだ。

 

僕、氷川さんに用があったんだ。

 

……女子に話しかけるのは苦手だけど。

 

楓「……あ、あのー?」

 

紗夜「? 何でしょう?」

 

楓「ぼ、僕の携帯って、返して、もらえるんでしょうか?」

 

紗夜「もちろん返すつもりです。ただ、今あなたの携帯は生徒会室にあるので、返すのは学校案内の後でもいいですか?」

 

楓「あ、はい。大丈夫、です。」

 

紗夜「ありがとうございます。では、行きましょう。」

 

……氷川さんって、案外優しい人なのかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紗夜「……ここが体育館です。部活のときは、よくバスケ部が、雨の日はテニス部も使用しています。そして向こうが、部室棟です。部室棟には、卓球場、剣道場などがあり、その向こうには弓道場があるんですよ。」

 

楓「弓道場?……って、よくテレビとかで見るようなやつですか?」

 

紗夜「はい。……見てみますか?」

 

楓「え、いいんですか?」

 

紗夜「邪魔にならないように見ていれば、大丈夫ですよ。」

 

楓「そうなんですね……。じゃあ、お願いします。」

 

……氷川さんて、普通に優しいよな。

 

特別教室の使い方とか、詳しく教えてくれるし、今だって頼んでもないのに、弓道場見てみるか?って言ってくれたり。

 

……さっき氷川さんは少し嫌な人だと思ってた自分を殴りたい。

 

紗夜「着きましたよ。」

 

楓「あ、はい……ってでか!」

 

……弓道場って、実際見るとこんなにでかいの?

 

普通に体育館の半分ぐらいの大きさはある気が……。

 

弓道部員A「あ、氷川先輩!」

 

紗夜「あ、あなた達……。」

 

? 氷川さんの知りあいかな?

 

弓道部員B「氷川先輩、今日バンドの練習だったんじゃないんですか?」

 

? バンド?

 

紗夜「そのはずだったんですが、急に先生に頼まれごとをされてしまって…「この人、噂になってる空見先輩ですよね?」え?」

 

! う、噂!?

 

弓道部員A「すでに私達1年の間でも、2年生のクラスに男の人が転校してきたって話題で持ち切りですよ?ねー?」

 

弓道部員B「うん。」

 

紗夜「そ、そうなんですか。」

 

僕が転校してきたこと、もう噂になってるのかよ……。

 

弓道部員A「ところで氷川先輩、どうしてその空見先輩といっしょに?」

 

紗夜「あ、いえ、別に。」

 

弓道部員A「……はっ!……もしかして氷川先輩、もう空見先輩とそんな関…「そんなわけないでしょう!?空見さん、そろそろ行きましょう!」ですよね~。」

 

……二人が何を話してたのかは分からなかったが、僕と氷川さんは弓道場をあとにした。

 

それにしても弓道場大きかったなー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紗夜「……さて、これで一通り回りました。」

 

楓「あ、ありがとうございました。」

 

紗夜「いえ。私はただ、先生に頼まれたことをしただけですから。……この学校のこと、覚えられそうですか?」

 

楓「はい、まあ。……そういえば氷川さん、さっき、バンドの練習がどうとか言ってましたけど。」

 

紗夜「ああ、そのことですか。……私、バンドをやっているんです。」

 

楓「……バンドって、ドラムとかギターのやつですよね?」

 

紗夜「ええ、まぁ。……ちなみに、私はギター担当です。」

 

楓「へぇー。……高校生でバンドって、すごいですね。」

 

紗夜「そうですか?最近では、高校生バンドもあまり珍しくはありませんが。」

 

楓「え、そうなんですか?」

 

紗夜「はい。」

 

高校生でバンドって、珍しくないんだ……。

 

紗夜「では、私はこれで。」

 

楓「あ、はい。……その、今日はありがとうございました。」

 

紗夜「いえ。……ふふ、良い高校生活を送ってくださいね。」

 

そう言うと氷川さんは、教室棟のほうに戻っていった。

 

……氷川さん、最後笑ってた?

 

それとも、僕の気のせい?

 

……あ、そういや僕、女子と話すの苦手だけど、氷川さんとは普通に話せてたな。

 

……何でだろう?

 

生徒A「あ、ねえねえ。あの人、2年生の教室に転校してきた男子の先輩じゃない?」

 

生徒B「空見先輩でしょ?すごいよね~。ここ女子高なのに、あの人勇気あるよね。」

 

生徒A「私達1年生の間でも、流行ってる話といえばあの人の噂ばっかりだもんねー。どれ、私ちょっと話しかけてみようかな~?」

 

生徒B「え~、やめなよ~。用がないのに話しかけるのは、可哀相だよ~。」

 

……やっぱり僕のこと、噂になってるのか……。

 

噂ってことは、注目されてるってことだよな?

 

……僕、注目されんの苦手なんだけど。

 

楓「……ま、いいや。さっさと教室戻って、さっさと帰ろう。」

 

……そういや僕、なんか忘れてるような気がするんだけど。

 

……ま、気のせいか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜その頃、生徒会室では〜

 

紗夜「……空見さん、自分の携帯忘れていってますね……。」

 

???「ひ、氷川さん……。その……大丈夫、ですか?」

 

紗夜「あ、待たせてすみません、白金さん。さ、バンドの練習に行きましょう。」

 

……全く。

 

昼休みのときといい忘れ物といい。

 

空見さんには、きちんと注意しておかなければなりませんね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

生徒A「空見先輩って、どうしてこの学校に入学しようと思ったんですか!?」

 

生徒B「あ、やっぱり、いろんな女子と話したりしたかったからとかですか!?」

 

生徒C「! それ、ハーレムってやつじゃない!?」

 

生徒A「ほんとだ!じゃあ空見先輩!ハーレム目当てでこの学校に!?」

 

生徒C「いやでも、こんな普通そうな人だもん。そんなこと考えてないかもよ?」

 

生徒B「いや分かんないよ~?人は見かけによらないって言うし!じゃなきゃ、女子高に男子が転校なんてありえないから!」

 

……この学校の人達って、みんなこういう人ばっかなの?

 

あの、早く帰りたいんですけど……。

 

っていうか、この先この学校でちゃんとやっていけるのか、心配になってきた……。

 

……はぁ。

 

前の学校に戻りたい……。




まあ、少しはそれっぽく書けたかなーと。

キャラは、今回のように少しずつ出していく予定です。

なんせ、バンドリはキャラの数が多いのでw。

あ、あと作中に“生徒A”、“生徒B”などの人物が出てきましたが、その人物達が同じ人達とは限りません。

てか限らないのがほとんどです。 

というわけで、不定期投稿ですが、楽しみながら読んでいただけたら嬉しいです。


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2話 いろいろマジでヤバかった(語彙力のなさは見逃してくれ)

どうも、知栄砂空です。

昨日?一昨日?ガルパで追加されたシャルルにはまってしまい、もうYouTubeで原曲とRoseliaバージョンを100回ぐらい聞いてますw。

めちゃくちゃ盛りましたが、それぐらいシャルルにどはまりしたということですw。

特にサビの『謳って⤴謳って⤴』と『いや、嫌、嫌⤴』の部分が好きですw。

僕はボカロに関しては全くのにわかですが、ガルパでカバーが来たりすることでボカロの新しい魅力に気づけるというのは、とても嬉しいことだと思います。

現に、アスノヨゾラとかハッピーシンセサイザとかもそうでしたからw。

はい、というわけで2話スタートです(まだ2話なんか……)!


生徒A「じゃーね、空見くん。」

 

生徒B「空見くん!ばいばーい!」

 

楓「は、はぁ。」

 

……はぁ。

 

疲れた……。

 

教室ではあの2人に目をつけられ、玄関では1年生組にからかわれ、さらには外で3年生に質問責めされ。

 

……もし、こんなのが毎日続くなんてことになったら。

 

……無理、耐えらんない。

 

……よし、もう学校のこと考えるのはやめよう。

 

家帰ったら何するか、それを今考えよう。

 

うーんそうだなー。

 

家帰ったら、まずは…「ねえお母さん。今から行くショッピングモールって、昨日出来たばっかなんだよね。」ん?

 

子供の母「ええそうよ。とても広くて、あなたの好きなケーキ屋さんもあるのよ。」

 

子供「ほんと!?やったー!ケーキ屋さん楽しみだなー!」

 

……!

 

そうだ。

 

そういや僕、お母さんにおつかい頼まれてたんだった。

 

あっぶねー、忘れるところだった。

 

思い出せて良かったよ。

 

……あ。

 

確か僕、メモを……あった。

 

んーと、玉ねぎ、にんじん、じゃがいも、豚肉、カレーのルー……。

 

……これ、カレーの材料じゃん。

 

あ、そういや朝学校出るとき、お母さんが今日の夕飯はカレーだって言ってたかも。

 

……まぁいいや。

 

僕も昨日出来たばっかのショッピングモールがどんなところなのか気になるし。

 

買い物がてら、行ってみるか。

 

あの親子についていけば、そのショッピングモールに着くかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~30分後~

 

楓「……どこ?ここ。」

 

僕は確かに、あの親子についていったはずだ。

 

ちゃんとストーカーにならない程度に離れて。

 

しかしなぜか、近くにショッピングモールらしき建物は見当たらない。

 

それ以前に……どう見てもここはどっかの公園だ。

 

……何で僕、公園なんか来ちゃったんだ?

 

子供「あはは!わーい!」

 

子供の母「転ばないように気を付けてねー。」

 

! あれは、さっきの親子……!

 

……ってあれ?

 

顔が、違う……。

 

ということはまさか僕……。

 

……違う親子についてっちゃった!?

 

……と、とりあえず、学校のほうに戻ろう。

 

えーっと、確か出口は…コロコロコロ ん?

 

???「すいませーん!ちょっとボール取ってもらってもいいですかー?」

 

あの制服は、花咲川の……。

 

……よっ。ヒュン

 

???「……ガシッ ありがとうございまーす。」

 

さて、行くか…「あーー!!」え?

 

タッタッタッタ……

 

! こっちに来る!?

 

まさか、またさっきみたいにからかわれるんじゃ……。

 

???「……やっぱり!」

 

え?

 

???「みーくんみーくん!この人、今日新しく花咲川に転校してきた空見先輩だよ!」

 

???「こらはぐみ!人を指ささないの!ほんとすみません。ほら、はぐみも謝って!」

 

空見、先輩……?

 

ということは、この2人は1年生?

 

はぐみ「ねぇねぇ、空見先輩は、ここで何してたの?はぐみとみーくんはね、キャッチボールしてたんだよ。」

 

美咲「こらはぐみ!図図しいよ!」

 

楓「べ、別にいいよ。……2人は、その……仲良し、なんだね。」

 

美咲「まぁ、仲良しっていうか、バンドの付き合いっていうか。」

 

楓「バンドの付き合い?」

 

はぐみ「はぐみとみーくんはね、いっしょにバンドやってるんだよ!ちなみにはぐみはベース!」

 

美咲「あたしはまぁ……手伝い、ですかね。」

 

氷川さんだけじゃなく、この2人もバンドやってるのか。

 

やっぱり氷川さんの言う通り、高校生でバンドって珍しくないのかな?

 

はぐみ「それでそれで?空見先輩はここで何してたの?」

 

楓「え?いや……僕はただ、昨日出来たばかりのショッピングモールに向かってる途中に迷っちゃって、たまたまこの公園に来ちゃっただけだよ。」

 

美咲「? 昨日出来たばかりのショッピングモール?」

 

楓「うん。……どこにあるか、知らない?」

 

はぐみ「うーん……はぐみは、よく分からな…「あたし、知ってますよ。」!」

 

楓「え、ほんと!?」

 

美咲「はい。さっき学校出るとき、バンド仲間にもそのショッピングモールの場所聞かれましたから。」

 

楓「そうなんだ。……もしだったら、僕にも教えてくれない?」

 

美咲「はい、構いませんよ。えーっと……ここが、今いるところなんですけど。」

 

黒髪のしっかりしてそうなほうの子は、自分の携帯を使ってそのショッピングモールの場所を丁寧に教えてくれた。

 

おかげで今いるところの大体の場所や、ショッピングモールへの行き方などを知ることができた。

 

美咲「……とまぁ、こんな感じです。」

 

楓「ありがとう、ほんと助かったよ。」

 

美咲「いえ。このくらいでお役に立てたなら。」

 

はぐみ「……ところで空見先輩!どうして先輩は花咲が…グイッ ちょ、ちょっとみーくん!?」

 

美咲「さーてはぐみ、あたし達はキャッチボールに戻ろうかー。じゃあ先輩、あたし達はこれで。無事ショッピングモールに着けるといいですね。」ズルズルズル

 

はぐみ「あ~ん待ってよみーくん!せめて自己紹介だけでもー!」

 

……仲良し、なんだよな?

 

……まぁいっか。

 

道も教えてもらえたことだし、気を取り直してショッピングモールに向かおう。

 

???「……タッタッタ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜10分後〜

 

【駅前】

 

楓「あ、ここがあの子の言ってた駅前の広場か。」

 

あの子の説明だと、この広場に来れればもうショッピングモールまではあと5分くらいで着くらしい。

 

らしいけど、……おかしいな。

 

どこにもそれらしき建物は見当たらないんだけど。

 

5分くらいで着いてかつショッピングモールみたいな建物なら、大きいだろうしここから見えそうなんだけどなー。

 

うーん……。

 

……あ、そういえば。

 

 

 

 

 

美咲『駅前の広場に行ったらこういう看板があるはずです。あの広場近くの道は複雑ですから、ショッピングモールに行く際はこの看板を目印にするのがベストです。』

 

 

 

 

 

って言ってたな。

 

えーっと、看板看板……。

 

……!

 

あった、あれか。

 

……うん、鳥の絵が描いてある。

 

確かにこの看板だ。

 

……って、他にもいっぱい看板あるなー。

 

それにあの子の言う通り、道もめちゃくちゃあって複雑だし。

 

まさにあの子の言った通りだ。

 

えーっと、あとは……。

 

 

 

 

 

美咲『この看板を見つけたら次は、近くにこういう3つの分かれ道があるはずです。その中の一番細いほうの道に行ってください。最初は細くても、徐々に広くなるはずですから。』

 

 

 

 

 

3つの分かれ道か。

 

……あ、これだ。

 

……なんか、よくRPGでありそうな分かれ道だな。

 

んーと、この細いほうの道を行くんだっけ。

 

……確かに細いな。

 

それに……暗い。

 

あの子を疑ってるわけじゃないけど、ほんとにこの先にショッピングモールがあるのか心配になってきた……。

 

……ま、とりあえず行ってみるか。

 

???「……!……タッタッタ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【路地裏】

 

……確かにあの子の言う通り、徐々に進むと細かった道が広くなってきた。

 

最初は2人くらいしか並んで入れなさそうな道が、一気に5人くらい並んで入れそうな道になった。

 

なったんだけど……マジの路地裏だな。

 

田舎にはあまりこういう道はなかったし、テレビとか本とかでしか路地裏らしい路地裏というものを見たことがなかった。

 

壁にはいろんな管?パイプ?みたいなのやいろんな形の換気扇がついてて、道端には空き缶やビニールなどのごみが少しだけだけど散乱している。

 

道端には大きいバケツやカラーコーンとかが置いてあり、なぜか冷蔵庫や電子レンジなどの電化製品まで置いてある。

 

……不安しかないんですけど。

 

……って不安どころじゃないよ!

 

今僕が向かってるのは、ショッピングモールだよ!?

 

多くの人が買い物に行ったり、遊びに行ったり、多種多様な目的で利用する、あのショッピングモールだよ!?

 

そんないろんな人が利用するショッピングモールに行くのに、こんな道通るわけないよね!?

 

こんな人目のつかないような暗くて狭い場所、ショッピングモールに行くのに普通通るわけないよね!?

 

……はぁ。

 

1人ツッコミ疲れた。

 

……やっぱり僕、からかわれたんかなぁ?

 

からかわないつもりなら、こんな変な道教えるはずがない。

 

……うん、やっぱり僕、からかわれたんだ。

 

……はぁ~。

 

もう嫌だ。

 

……帰ろっかな?

 

???「……にゃ~。」

 

ん?

 

キョロキョロ……! 猫だ!

 

こんな路地裏にも、野良猫がいるのか。

 

野良猫「……にゃ。……zzz。」

 

……ね、寝た……!

 

あー、やっぱり猫は可愛いな~。

 

……そうだ。

 

猫が寝ている今がチャンス。

 

写真撮っておこ。

 

えーっと、携帯は……。ゴソゴソ

 

 

 

 

 

不良A「君、もしかして、花咲川の子?」

 

ん?

 

???「え、えっと……わ、私は……」

 

不良B「怖がらなくて大丈夫だよ。俺達、同じ高校生だし。」

 

不良C「女の子が1人こんな路地裏にいると危ないよ?」

 

声がしたほうを見てみると、花咲川の制服を着た子が、3人の男に絡まれていた。

 

……あれ?

 

あの子、どこかで見たことあるような……。

 

不良A「ねぇ、もし今暇ならさ、俺達と遊ばない?」

 

不良B「お、それいいじゃん。ねぇねぇそうしよう。」

 

???「い、いや、あの……わ、私その、用事が…「そんなのどうだっていいじゃん。今1人なんでしょ?だったら、俺達といっしょに遊んだ方がいいって。ガシッ」や、あ、あの、私……。」

 

……あれってたぶん……ナンパ、だよな?

 

ドラマとか漫画ではよく見るけど、生では初めて見た。

 

……僕がいることは、ばれてないっぽいな。

 

不良A「ほら、早く行こうぜ。」

 

???「は、離して、ください……。」

 

不良B「大丈夫だって。金なら俺達がおごるからさ。」

 

不良C「女の子1人はいろいろ危険だし。俺達といっしょにいたほうが安全だって。」

 

???「や、やめてください!わ、私はただ……」

 

不良B「な、何も泣くことないでしょ。俺達、君を危ない目にあわせないようにしようと思ってこうしてるんだぜ?」

 

不良C「ほら、早く行こうよ。こんな路地裏にずっといないでさ。」

 

???「い、いや……は、離して……。離して……ください!」

 

野良猫「にゃ!」ピュー!

 

あ……。

 

不良A「往生際の悪い子だな。大丈夫だって言ってんでしょ?ほら。」グイッ

 

???「痛っ……!」

 

不良B「俺達がいれば絶対安全だって。」

 

不良C「ほらほら、早くこんな路地裏出ようよ。」

 

楓「……」

 

???「や、やめて、ください……。離して、ください……。私……いや……。」

 

楓「……ねえ。」

 

不良A・B・C「「「ん?」」」

 

???「!」

 

楓「そ、その子、嫌がってるじゃん。……手、離してあげなよ。」

 

……あれ?

 

……何で?

 

……何で僕今、こんなことしてんだ?

 

……あ、猫が逃げちゃったからか?

 

猫が逃げちゃったから、それに対して怒ってるのか?

 

不良B「あぁ?何だお前。」

 

不良C「俺達に歯向かおうってのか?あぁ?」

 

楓「! い、いや、あの、その……」

 

……バカだ。

 

僕はほんっとにバカだ。

 

不良A「用がないんなら、さっさとどっか行け!」ドン!

 

楓「うわっ!」

 

あ、あぶなっ!

 

……ヤバ。

 

バケツ蹴飛ばすとか、これマジのやつじゃん……。

 

それに……超怖いんですけど……。

 

……逃げよっかな?

 

???「……」ビクビク

 

……でも、あの子、震えてるし、今にも泣きそうだし。

 

……できれば……助けて、あげたいし。

 

……そうだな。

 

僕が今こうしてるのは、猫が逃げたことに対して怒ったからじゃないな。

 

……よし、もう覚悟を決めよう。

 

……スッ

 

不良A「ん?」

 

楓「……そ、その子を、離せ。」

 

不良B「……はっ!そんな棒切れで戦おうってのか。」

 

不良C「いいだろう。俺達が相手になってやるよ。」ボキッ、ボキッ

 

楓「!?」

 

ど、どうしよう……。

 

もう取り返しのつかないことになっちゃった……。

 

……いいや、もう覚悟は決めたんだ。

 

お父さん、お母さん、弟、猫……そしてみんな、今までありがとう。

 

楓「……や、やってやる!」

 

不良A「ま、お前のようなへなちょこが俺達に勝てるとは思えないけどな。」

 

……短い人生だったな。

 

……さらば、僕の人生。

 

楓「……よし。やーーー!!!」

 

不良A「ふん、来い!」

 

そして僕は、木の棒切れでその男に立ち向かった。

 

勇気を出して、不良に絡まれて怖がってる、花咲川の子を、助けるために。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

でも。

 

ボキッ

 

楓「あ。」

 

……折れた。

 

不良A「おりゃあ!」

 

楓「! うわっ!」

 

ドシン!

 

いって!

 

あ、危なかった~。

 

今、ほっぺかすったよ……。

 

不良A「覚悟しろよ?このへなちょこ野郎。」ボキッ、ボキッ

 

楓「!!」

 

も、もうダメだ。

 

……やっぱり僕には、こんな男らしいこと、向いてなかったんだ……。

 

不良A「よーし!いくぜぇ!!」

 

そしてその男は、自分の拳に息を吹き掛け、……それを勢いよく振りかざした。

 

……そして、その拳は。

 

……僕の顔面向かって。

 

……当たっ、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……た。

 

……え?

 

当たった?

 

ボカッ!

 

楓「いてぇ!」

 

ふ、普通ここは当たらない展開でしょ!?

 

……い、痛い……。

 

幸い……いや、幸いではないか。

 

当たったのは鼻より上のとこだけど……マジで痛い。

 

顔面ひりひりする……。

 

不良A「さぁて、もう一発。」

 

楓「もう一発!?」

 

……お、終わりだ。

 

今のパンチをもう一発喰らったら、今度こそ確実に……死ぬ。

 

不良A「おりゃあ!」ブンッ!

 

うぅ、もうダメだ…「待って!」……え?

 

不良A・B・C「「「え?」」」

 

???「……えいっ!」

 

さっきまで絡まれていた女の子は、捕まれていた腕を振りほどき、僕のところに来た。

 

不良B「あ、おい!」

 

???「……大丈夫?」

 

楓「え?あ……うん。僕は、なんとか。」

 

まぁ、正直大丈夫ではないけど。

 

不良C「何してんの。そんなところにいたら危ないよ?」

 

???「……」

 

楓「そ、そうだよ。僕なら大丈夫だから、君は僕の後ろに隠れてて。」

 

不良A「はん!お前、言うことだけは一丁前だな!」

 

楓「うっ……。」

 

お母さんによく、『楓は口だけだ』って言われてるのを思いだした……。

 

???「……なの。」

 

楓「へ?」

 

不良A「ん?どうした?」

 

???「……は、……なの。」

 

不良A「? 聞こえねえよ。もっと大きな声で言え。」

 

楓「えっと……。き、君、いったい何を……」

 

???「……こ、この人は、

 

 

 

 

 

……私の恋人なの!」

 

不良A「……」

 

不良B「……」

 

不良C「……」

 

楓「……へ?」

 

その瞬間、この場が一気に凍りついた気がした。

 

???「/////」

 

……はい?

 

こ、恋人?

 

……誰が?

 

不良A「……え?……まさか、このへなちょこ野郎が、君の、恋人?」

 

???「/////……コク」

 

……え?

 

……え??

 

……ええええええ!?

 

不良B「……ま、マジで、言ってんの?」

 

???「/////……コク」

 

こ、この子、急に何言ってんの!?

 

こ、恋人!?

 

ぼ、僕が!?

 

……な、何でいきなり、そんなこと……。

 

???「/////……ギュッ!」

 

楓「/////!?」

 

不良A「……ま、マジ、なのか。」

 

不良B「……仕方ない。……行くか?」

 

不良C「あ、ああ。」

 

あ、ああ、い、意識、が……。

 

意識が……た、保て、ない……。

 

不良A「わ、悪かったな。……じゃ、じゃあ、俺達はこれで。」

 

不良B「……しっかし、まさかあのへなちょこ野郎があの子の恋人だったとはね。」

 

不良C「いやでも、あの場を乗り切る嘘、ということも考えられる。」

 

不良A「……いや。あんなにがっしりと抱き締めてたんだ。嘘とは考えにくい。」

 

不良C「……そっか~。」

 

……か、帰ってった。

 

……意外と、良い人達だった?

 

……ふぅ。

 

まぁ何にせよ、良かった良かった。

 

 

 

 

 

……って良くないよ!

 

……どうすりゃいいのこの状況!!

 

今僕、この子にがっしり抱き締められてるんですけど!?

 

……/////。

 

ダメだ……。

 

意識が……保てない……。

 

???「……」ギュー

 

……マジでどうすりゃいいんだろ。

 

???「……ごめん。」

 

楓「え?」

 

???「……私、急にあんなこと言って。……困らせちゃったよね。」

 

楓「……まぁ、確かに最初はびっくりしたけど。でも、もう大丈……ん?」

 

これって、水?

 

……!

 

???「……怖かった。……ものすごく、怖かったよぉ……。」

 

……そっか。

 

そうだよね。

 

僕もあの男に立ち向かうのはすごく怖かったけど……あの場で一番怖い思いをしたのは、この子なんだよな。

 

???「……怖かった。……ほんとに、怖かった……。」ギュッ

 

この子は僕を抱き締めながら、涙をこぼしている。

 

……正直、今の状態はすごく恥ずかしいけど……この子が落ち着くまで、そっとしといてあげよう。

 

そう思った。

 

……まさかショッピングモールに向かう途中で、こんなことになるとは。

 

人生って、分からないもんだなぁ。

 

……てか思ったけど、こんな状態人に見られたら、めちゃくちゃ恥ずいよね?

 

……路地裏で良かった……。

 

いや良くないけど!

 

???「……」

 

……この子、もしかして僕の隣の席の子かなぁ?

 

……落ち着いたら、後で聞いてみるか。




今回も1話完結にしようと思ったのですが、収まりきらなかったので急遽分けることにしましたw。

ショッピングモールでのあれやこれやは次回でちゃんと書きますw。

そういやまだ今回のイベントのストーリーまだ読んでないな。

早く読まなきゃw。


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3話 一日がめちゃくちゃ長く感じた日

どうも、知栄砂空です。

ガルパと初音ミクのコラボ関連で、おとといはAfterglowメンバーの描き下ろしジャケットイラスト、昨日はハロハピのジャケットイラストが公開されましたね。

今日はポピパのジャケットイラストが公開されるようで。

そこで、ハロハピのジャケットイラストに関して一言。

……猫耳花音ちゃん可愛すぎません?

今後、猫耳花音ちゃんが配布でゲットできるんですよね?

……神すぎません?

運営様神すぎません!?

……失礼、取り乱しちゃいましたw。

今日公開されるポピパのジャケットイラストも楽しみですね。

あ、あとつぐみも可愛かったな。

はい、というわけで3話スタートですw。


……あれからどれくらいの時間が経ったのだろう。

 

……っていうほど経ってはないと思うんだけど……もう5分くらいこんな感じだ。

 

こんな感じというのは……。

 

???「……」ギュッー!

 

楓「/////」

 

こんな感じだ。

 

……正直超(良い意味で)辛い。

 

もちろん僕は、女子にこんな抱き締められたことなんてないし、関わったこともほとんどない。

 

関わったことがあるとしても、たまに話しかけられて一言二言話したくらいだ。

 

……いやマジで。

 

ガチめにそれくらいしか女子と関わった記憶ないから。

 

幼稚園のときはほぼほぼ1人で遊んでたし、小学生、中学生のときはいっつも男子とつるんでいた。

 

高1の頃なんか、知ってる人が誰もいなかったから先生以外の人とはあまり話さなかった。

 

あ、でも、男子とは普通に話してたか。

 

……たまにだけど。

 

???「……ギュッ!」

 

楓「/////!!」

 

ま、まただ……。

 

たぶん、さっきの怖さをまぎらわすために、時々こうやってギュッ!てしてると思うんだけど……。

 

やっぱり、意識が///……。

 

???「……スッ」

 

あ。

 

……やっと、離してくれた。

 

ずっとあの状態だったら、僕の意識を通り越して心臓がもたなかったかも。

 

離してもらえて、嬉しいような、悲しいような……。

 

楓「……」

 

???「……」

 

野良猫「……にゃ~。……zzz。」

 

あ、猫帰ってきた。

 

楓「……」

 

???「……」

 

野良猫「zzz……」

 

……離してくれたのはいいけど……どうすりゃいいんだ、この沈黙……。

 

き、気まずい……。

 

さっきの猫が帰ってきたのはいいけど、それによってよりいっそうこの場が気まずくなった気がする……。

 

???「……」

 

……こ、声、かけたほうがいいのかな?

 

いや、流石にちょっと図図しいか。

 

あんなことがあった後、だもんな。

 

きっとまだ、心の整理もついてないだろうし。

 

……やっばり、まだそっとしといたほうが……。

 

……ん?

 

そしたら、この気まずい空間はいつまで続くんだ?

 

???「……」

 

だー僕は今どうするべきなんだよ~!!

 

声をかけるべき?

 

それともこのままそっとしとくべき?

 

あーもう分かんないよ~!!

 

???「……スッ」

 

楓「え?」

 

僕が悩んでると、この子は僕の制服の裾をそっとつまんだ。

 

???「……ありがとう。」

 

楓「え、あ……う、うん。どう、いたしまして。」

 

???「……」

 

楓「……も、もう、大丈夫なの?」

 

???「……うん。もうだいぶ、落ち着いたみたい。」

 

楓「そ、そう。良かった。」

 

ふぅ。

 

この子から切り出してくれたおかげで、なんとか気まずさはなくなったな。

 

???「……あと。」

 

楓「ん?」

 

???「……ご、ごめんなさい!」

 

楓「え?……な、何で?」

 

???「だ、だって私、急に、その……こ、恋人とか、言っちゃって///……。きゅ、急に、空見くんを抱き締めてたりして///……。」

 

楓「……あ、あー……。」

 

???「ほんとにごめんなさい!め、迷惑だったよね?」

 

楓「……ま、まぁ、びっくりはしたけ…「あの場を乗り切るためだったとはいえ、本当にごめんなさい!」そ、そんなに謝らなくても……。」

 

まぁ、やっばりそうだよね。

 

急にあの場であんなこと言うのはおかしいもん。

 

もちろん分かってたよ?

 

楓「……と、ところで僕、……名字、教えたっけ?」

 

???「え?……だ、だって空見くん、今日いろんな人に空見くん空見くんって言われてたでしょ?自己紹介もしてたし。」

 

楓「あ。……じゃあやっぱり君は、僕の隣の席の……」

 

花音「うん。……松原、花音だよ。」

 

楓「松原さん、か。……じゃ、じゃあ僕も、改めて自己紹介を。……空見楓。……よろしく。」

 

花音「うん、よろしくね。」

 

……なんか、こうやって人と面と向かって自己紹介したのって、初めてな気がする。

 

いや、絶対初めてだ。

 

楓「……それで、松原さんは、何でここに?」

 

花音「……そ、空見くんを、つけてきたの。」

 

楓「……へ?」

 

花音「ご、ごめんね!……私、実は、昨日出来たばかりのショッピングモールに行きたかったの。」

 

楓「!」

 

僕と同じだ。

 

花音「でも私、すごく方向音痴で……。せっかく友達に場所を教えてもらったのに、その場所とは逆の方向に行っちゃって……。」

 

楓「……」

 

花音「どうしようって思ってたら、偶然どこかの公園で空見くんを見かけて。」

 

楓「公園!?」

 

花音「! う、うん。」

 

まさか公園って、僕が花咲川の1年生にショッピングモールまでの道を教えてもらった、あの公園?

 

だとしたら、あの場に松原さんもにいたってこと?

 

楓「……あ、ごめん。続けて?」

 

花音「? う、うん。……そのときに、空見くんもショッピングモールに向かってるんだってことを知ったの。だから、空見くんについていけば、ショッピングモールに行けるかもって思って、公園からずっとつけてきてたんだけど……。」

 

楓「この路地裏に入った途端、ナンパに絡まれたと。」

 

花音「……うん。」

 

楓「……なんか、ごめん。」

 

花音「そんな!空見くんのせいじゃないよ!もとはと言えば、私が、ストーカーみたいなことしたから……。」

 

……大丈夫だよ松原さん。

 

さっき僕も、そのストーカーみたいなこと、してたから。

 

花音「……そ、空見くんは、この後どうするの?」

 

楓「え?……もちろん僕は、ショッピングモールに向かうよ。」

 

花音「……わ、私も、空見くんについていっていい?」

 

楓「う、うん、それは構わないけど……1つ問題が。」

 

花音「? 問題?」

 

楓「……たぶんこの道、間違いだと思う。」

 

花音「えぇ!?な、何で!?」

 

楓「だって、ショッピングモールに向かう道だよ?ショッピングモールって、いろんな人が利用する場所でしょ?そんな場所に行くのに、こんな暗くてせまい路地裏、通らないでしょ。」

 

花音「で、でも、美咲ちゃんがこの道だって教えてくれたんでしょ?きっと、美咲ちゃんがこの道を教えたのには、何かわけがあるんだよ。」

 

楓「み、美咲、ちゃん?」

 

花音「さっきの公園で、空見くんが道を教えてもらってた子だよ。」

 

楓「あ、あの子か。……へ?」

 

待てよ?

 

何で松原さんが、僕があの子に道を教えてもらったことを知ってるんだ?

 

……そっか。

 

やっぱり松原さん、あの場にいたのか。

 

楓「……松原さんは、その……美咲ちゃんって子と、仲がいいの?」

 

花音「う、うん。」

 

楓「……そっか。……分かった。」

 

花音「!」

 

楓「松原さんの言葉、信じてみるよ。考えてみれば、あの子が嘘言ってるようにも見えなかったしね。」

 

花音「……うん。ありがとう空見くん。」

 

楓「確かあの子は、この路地裏を出たところを左に曲がってどうたらって言ってたっけ。」

 

花音「左に曲がったら……確か、郵便局のところを右に曲がるんだよ。そこの道を真っ直ぐ行くと、右手にショッピングモールが見えてくるって、確か美咲ちゃん言ってたよ。」

 

楓「そうなんだ。……あのとき、松原さんも聞いてたんだ。」

 

花音「う、うん。後半のほうだけだけど。」

 

こんな心強い子がいれば、きっとショッピングモールに着けるな。

 

……今度、その美咲ちゃんって子に謝っとこ。

 

野良猫「……にゃ~。」

 

楓「お、起きた。」

 

花音「ほんとだ。おはよう。」

 

野良猫「にゃー。」

 

花音「ふふ♪またね~。」

 

楓「……じゃ、行こっか。」

 

花音「うん!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~数分後〜

 

花音「あ、空見くんあったよ、郵便局。」

 

楓「ほんとだ。ということは、ここを右に曲がればいいんだよね?」

 

花音「うん、たぶん。」

 

郵便局のところを右に曲がると、多くの店が並ぶ大通りに出た。

 

そこにはいろんな種類の店があり、飲食店、コンビニ、スーパーと、様々だ。

 

花音「駅の近くに、こんな大通りがあったんだね。」

 

僕はもちろんのこと、松原さんもここに来るのは初めてらしい。

 

楓「……確かにこういうとこなら、ショッピングモールもありそう…「あ!あった!」っていきなり!?」

 

花音「ほら、あれじゃない?空見くん。」

 

楓「ん?……あ。」

 

ズーン

 

……予想以上に、大きい。

 

……いや、こういう場所のショッピングモールだと、これくらいが普通なのかな?

 

楓「ねぇ、松原さ…「ふぇぇ、お、大きい……。」……」

 

普通じゃ、ない、のかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【ショッピングモール】

 

花音「ふぇぇ……。ひ、人もいっぱい……。」

 

楓「た、確かに……。」

 

僕と松原さんは、いよいよショッピングモールの中に入った。

 

入ったのはいいんだけど……こんなに混んでるとは思わなかったよ……。

 

やっぱり、昨日出来たばかりだから、なのかな?

 

……これ、下手したら迷子になりかねないな。

 

楓「……あれ?松原さん?」

 

おかしいな。

 

さっきまで、隣にいたはずなのに。

 

花音「ふぇぇぇぇぇ!!」

 

楓「ん?」

 

……!?

 

ま、松原さんが人混みに流されてる!?

 

楓「ま、待ってて松原さん!すぐ行くから!」

 

この人の量……マジでヤバイな……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

花音「うぅ……。ごめんね、空見くん……。」

 

楓「う、ううん。」

 

花音「……」

 

楓「……」

 

楓・花「「……/////」」

 

今の状況を簡単に説明しよう。

 

松原さんと手を繋いでる。

 

……こ、これにはちゃんと理由があるんだからね!?

 

恋人とか、そういう類いのやつじゃないからね!?

 

花音「……そ、空見くん。ほんとにごめんね?」

 

楓「べ、別に大丈夫だよ。……こうしてれば、お互いが手を離さない限り、迷子になる心配はないし。」

 

花音「そ、そうだよね。……ありがとう。」

 

と、こういうことだ。

 

あ、ちなみに、手を繋ごうって言ってきたのは松原さんだ。

 

僕には異性の人に手を繋ごうなんて言う勇気、全然ないし。

 

花音「……空見くん。」

 

楓「ん?」

 

花音「自分から手を繋ぎたいって言っておいておかしいけど……やっぱり、恥ずかしいね///。」

 

楓「……うん///。」

 

いきなり恋人って言われたり、抱き締められたりしたときも恥ずかしかったけど、今回は特に恥ずかしい。

 

……だって……。

 

ショッピングモールなんだもん!

 

周りにめちゃくちゃ見られてるもん!!

 

通行人A「あの子達、カップルかしら?」

 

通行人B「こんなところで堂々と手を繋ぐなんて、ラブラブね~。」

 

通行人C「あの女の子、超可愛いな~。」

 

通行人D「それに比べて彼氏のほう、なんか冴えないよね~。」

 

通行人E「でもあのカップル、ラブラブって感じでいいよね~。」

 

通行人F「2人して顔赤くしちゃって。可愛いな~。」

 

楓・花「「/////」」

 

……まずは、この場から抜け出そう。

 

楓「……松原さん、どこか行きたいところとか、ない?」

 

花音「え?え、えっと……それなら、喫茶店に……」

 

楓「喫茶ね、分かった。それとごめん、走るよ?」

 

花音「へ?は、走…「ダッ!」!? そ、空見くん!?」

 

通行人A「まぁあの子、彼女の手あんなに引っ張っちゃって。」

 

通行人B「あのカップル、走ってどこ行くんだろうね。」

 

通行人C「女の子をエスコートする男の子、いいね~。」

 

花音「ちょ、ちょっと空見くん/////!?」

 

楓「ごめん/////。……ちょっとだけ、我慢しててくれる/////?」

 

花音「え?」

 

楓「お願い/////。……ほんとにマジで/////。」

 

花音「……う、うん///。分かった///。」

 

……恥ずかしすぎる/////。

 

男が女の子の手を引いて、人混みをかき分けて走りながらある場所に向かうとか、何かの恋愛ドラマかよ/////。

 

……後で松原さんにちゃんと謝ろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【喫茶店】

 

楓「はぁ……はぁ……つ、着いた……。」

 

花音「……」

 

喫茶店。

 

さっき松原さんにどこか行きたいところはないか聞いたところ、行きたいと答えた場所だ。

 

もちろん僕は、喫茶店がどこにあるかなんて知らない。

 

だからここへは、途中でマップを見て喫茶店の場所がどこにあるかを確認してから来た。

 

幸い、このショッピングモールにある喫茶店ははここだけだったので、すぐ確認してすぐにここに来ることができた。

 

あ、ちなみに手はもうお互いに離した。

 

それにしても……疲れた~。

 

足が痛え~。

 

楓「……ごめんね、松原さん。」

 

花音「え?」

 

楓「いきなり、走り出したりして。疲れたよね?ほんとごめん。」

 

花音「! そ、そんな!私は大丈夫だよ!?む、むしろ私、嬉しかったよ?」

 

楓「嬉しかった?……あぁ、松原さんが行きたいって言ってた喫茶店に来れたか…「それもあるけど。」? けど?」

 

花音「空見くんがあのとき、私に行きたいところないかって声をかけてくれて、私が喫茶店に行きたいって答えた後すぐに走り出してくれたのって、私をあの場から連れ出すため、だよね?」

 

楓「……う、うん、まぁ。」

 

花音「私、周りの人達が私達を見ていろいろ言ってるとき、実はすごくパニックになってたの。あまりそのことを気づかれないようにしてたつもりだったんだけど、それでも恥ずかしさのあまり顔が熱くなって、さらには、目も回ってきちゃって。」

 

楓「……」

 

花音「もしあのとき、空見くんが声をかけてくれなかったら私、もう自分ではどうすればいいか分からなくなって、空見くんにいっぱい迷惑かけてたかもしれない。」

 

楓「……」

 

花音「だから……ありがとう。」ニコッ

 

楓「……う、うん///。」

 

……僕、女子にこんな感じでちゃんとお礼言ってもらったの、初めてな気がする。

 

いや、絶対初めてだ。

 

花音「ねえ。もしだったら、空見くんもいっしょに喫茶店に入らない?」

 

楓「え、いいの?」

 

花音「もちろん!私がおすすめの紅茶、教えてあげるよ。」

 

楓「そ、そう?……じゃあ、お言葉に甘えて。」

 

というわけで僕は、松原さんといっしょに喫茶店に入ることになった。

 

買い物は後ででもできるし、喫茶店なんてそうそう入らないもんね。

 

……あれ?

 

ていうか僕、喫茶店入ったことあるっけ?

 

……あ、ないかも。

 

じゃあ僕からすれば、初めての喫茶店ってことになるのか。

 

……高2でやっと喫茶店デビューか。

 

今更感半端ないな。

 

花音「どうしたの?空見くん。入ろう?」

 

楓「う、うん。」

 

そして僕は今更ながら、喫茶店デビューへの第一歩を踏み出したのだった。

 

カランコロン

 

店員「いらっしゃいませー!2名様ですね。こちらへどうぞ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カランコロン

 

店員「ありがとうございました。またのご来店、お待ちしております!」

 

花音「はぁ~。紅茶美味しかった~。」

 

楓「……ねぇ、ほんとに奢ってもらっちゃって良かったの?」

 

花音「うん。空見くんにちゃんとお礼、したかったし。」

 

楓「……そう。」

 

松原さん曰く、お礼=おごる、だったらしい。

 

……さっきのも入れて2回もお礼してもらっちゃったよ。

 

花音「あ、空見くん。どうだった?喫茶店。」

 

楓「え?あ、うん、良かったよ。」

 

僕が喫茶店に来るのが初めてだということは、さっき松原さんにも話した。

 

それを聞いた松原さんは、がぜん気合い(何の気合いかは分からん)が出たらしい。

 

喫茶店の中は静かで、僕と松原さんの他には4人ぐらいしか人がいなかった。

 

注文したものは、2人ともアールグレイという種類の紅茶だ。

 

僕には紅茶の種類はよく分からないが、松原さんは友達とある喫茶店でよくお茶をしているそうだ。

 

僕と松原さんが注文したアールグレイという紅茶は、ベルガモットと言われる柑橘類の果物の香りをつけたもので、松原さんも気に入っている紅茶らしい。

 

楓「あまり紅茶とか飲まないから、良い経験になったよ。」

 

花音「えへへ、良かった♪」

 

……まぁ紅茶のことは置いといて、良くない状況が1つあるんだけどね。

 

花音「……ところで、空見くん。」

 

楓「……」ゴソゴソ

 

花音「……何か、探し物?……!も、もしかして、喫茶店に何か忘れてきちゃった!?」

 

楓「……いや、喫茶店には忘れてきてないんだけど。」ゴソゴソ

 

探し物、というのは当たりかな。

 

……カバンにはない、か。

 

……マジでどこ行った?

 

花音「そ、空見くん……何が、ないの?」

 

楓「……携帯。」

 

花音「携帯……ええ!?い、いつから!?」

 

楓「分からない……。」

 

花音「と、とにかくまずは、携帯の忘れ物がないか、サービスカウンターに行って聞いてみよう?えーっとー、サービスカウンターは……。」

 

楓「松原さん、一旦落ち着いて。ていうか、1人で歩いたら迷子になるよ。」

 

……とりあえず、1から思い出してみよう。

 

学校に行く前、家では……あった。

 

次に、学校に着いてからは……まだあった。

 

じゃあ、昼休みになってからは……牧人と電話してたからあっ……た?

 

……あれ?

 

そういやあんとき、僕……。

 

……!

 

あ、ああ、あああ……。

 

花音「……空見くん、元気出して…「あああああ!!」わぁっ!」

 

楓「……思い出した。」

 

花音「び、びっくりしたぁ……。きゅ、急にどうしたの?」

 

楓「思い出したよ。携帯、どこでなくしたか。」

 

花音「! ほんと!?」

 

楓「うん。なくしたというよりは……忘れてたよ。」

 

花音「ふぇ?わ、忘れてた?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

花音「……そ、そうだったんだ。紗夜ちゃんに……。」

 

楓「うん……。」

 

僕は松原さんに、氷川さんに携帯を取られたことを話した。

 

松原さんは氷川さんと友達のようで、氷川さんがそういうことをしてるということは知ってたらしい。

 

花音「この前私、紗夜ちゃんと話したんだ。流石に、ものを没収するのは可哀相なんじゃないかって。でも、それが風紀委員としての仕事ですから、って。」

 

楓「ひ、氷川さん……。」

 

花音「あ、あはは……。」

 

……はぁ。

 

携帯は返してくれるって言われたのに、それを忘れる僕って。

 

ほんっとバカだ。

 

花音「……あ、もしもし紗夜ちゃん?」

 

楓「!」

 

花音「ごめんね、急に電話して。突然だけど、紗夜ちゃんと話したいって人がいるから、替わるね。……はい、空見くん。」

 

楓「あ、ありがとう松原さん。」

 

松原さんが氷川さんと友達で良かった~。

 

楓「……も、もしもし。」

 

紗夜『! その声、もしかして空見さんですか!?』

 

楓「は、はい。」

 

紗夜『し、しかし、なぜあなたが松原さんと……。! まさかあなた…「氷川さんが何を想像したのかは分かりませんけど、たぶんそれは断じて違いますから。」し、失礼な!私は何も、想像などしていません!』

 

……氷川さんって、こんな人だったっけ?

 

紗夜『コホン。……それでは、本題に移りましょうか。』

 

氷川さんが変な想像してなかったらもっと早く本題に入れたと思う。

 

紗夜『……携帯のことですよね?』

 

楓「は、はい。」

 

紗夜『あなたの携帯なら、生徒会室で預かっていますよ。』

 

楓「ほ、本当ですか!良かった…『空見さん。』!」

 

紗夜『今回はちゃんと自分で気づいてくれたので返しますけど、次はありませんからね。ちゃんと、自分の言ったことに責任を持つようにしてください。分かりましたか?』

 

楓「……はい。」

 

紗夜『明日の朝、生徒会室まで取りにきてください。』

 

楓「わ、分かりました。」

 

紗夜『……では、私はこれで。プツン。ツー、ツー……』

 

楓「……ふぅ。松原さん、ありがとう。」

 

花音「ううん。良かったね、空見くん。」

 

楓「うん、なんとかね。」

 

明日の朝か。

 

じゃあ、学校着いたらすぐ行くかな。

 

花音「……」

 

楓「……」

 

花音「……えーっとー……空見くんは、どこか行きたいところとか、ないの?」

 

楓「え?あー……まぁ、あるっちゃあるけど。」

 

花音「ほんと!?どこ?」

 

楓「……食品売り場。」

 

花音「食品売り場?……あ、もしかして。」

 

楓「うん。僕がこのショッピングモールに来たのは、お母さんにおつかいを頼まれたからなんだ。昨日出来たばっかのショッピングモールがどんなとこなのかってのが気になったってのもあるけど。」

 

花音「そうだったんだ。……私は、この新しく出来たショッピングモールに喫茶店があるっていうのを聞いて。今度友達といっしょに行きたいなーって思って、下見したかったんだ。」

 

楓「なるほど。……なんか、ごめん。その友達より先に、僕なんかと…「あ、謝る必要なんてないよ!空見くんがいなかったら私、ショッピングモールにすら来れなかったもん。」まぁ、それはそうだけど……。」

 

花音「……私、手伝うよ。」

 

楓「え?」

 

花音「空見くんが頼まれたっていうおつかい。私も手伝う。」

 

楓「そんな、悪いよ。おつかいくらい、1人で…「今日は私、空見くんにいっぱい助けてもらっちゃったもん。だから今度は、私が空見くんを助ける番だよ。」……」

 

花音「……///!ご、ごめん空見くん!わ、私、なんでこんな恥ずかしいこと言っちゃった…「ありがとう。」?」

 

楓「じゃあお言葉に甘えて……手伝ってもらっちゃおうかな。」

 

花音「! ……うん!」

 

そして僕と松原さんは、食品売り場へと向かった。

 

松原さんにおつかいを手伝わせるのは悪いと思ったが、ああまで言ってくれたのでそれならと思い手伝ってもらうことにした。

 

……今度、松原さんにお礼しなきゃな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【食品売り場】

 

楓「えーっと、じゃがいもじゃがいも……。」

 

花音「……あ!あったよ空見くん。」

 

楓「あ、ありがとう。」

 

花音「よし、これでじゃがいももOKだね。えーっと後は……あ、もうこれで全部だね。」

 

楓「そっか。じゃあ、これでお会計してこよう。」

 

花音「うん。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

店員「合計で、1360円です。」

 

楓「んーと……ジャラジャラジャラ」

 

店員「1360円、丁度お預かりします。……はい、レシートのお返しです。ありがとうございました。」

 

楓「ふぅ。……あ。」

 

花音「あ、空見くん。はい、袋詰めしておいたよ。」

 

楓「あ、ありがとう。」

 

花音「ちょっとは、空見くんの役に立てたかな。」

 

楓「……うん。」

 

ちょっとどころ、ではないと思う。

 

だって、豚肉とかにんじんとか、見つけたの全部松原さんだし。

 

花音「あ、そういえば空見くん、あれ。」

 

楓「? 何だろ、ガラポン?」

 

花音「なんか、この食品売り場での1000円ごとの買い物につき1回、回せるみたいだよ。」

 

楓「へぇー。あ、ということは僕、1回だけ回せるのか。」

 

花音「うん。……せっかくだから、回してみない?」

 

楓「うん、そうだね。」

 

 

 

 

 

楓「……すみませーん。これ、1回だけやりたいんですけど。」

 

スタッフ「では、レシートを見せてください。……はい、確かに。それでは、ゆっくり、1回だけ回してください。」

 

花音「空見くん。これが、当たる景品だって。」

 

楓「えーっと、何々……?」

 

……なるほど。

 

1等から5等まであるのか。

 

楓「……僕は、5等のティッシュでいいかな。」

 

花音「あはは……。でもこういうのって、あまり欲のない人に限って一番上の賞とかが当たったりするんだよね。」

 

楓「大丈夫だよ。そんな漫画みたいなこと、現実にあるわけが……」ガラガラガラ

 

 

 

 

 

コロン

 

楓「……」

 

花音「あ、銀色。」

 

スタッフ「……おめでとうございまーす!」カランコロン、カランコロン

 

あったーーー!!

 

花音「す、すごいね空見くん!ほんとに出しちゃうなんて!」

 

楓「え?あ、う、うん。……マジびっくりした……。」

 

スタッフ「銀色は2等です。2等の景品は……」

 

ドサッ!

 

楓・花「「え?」」

 

スタッフ「お米10kg分でーす!」

 

楓・花「「……!!じゅ、10kg~!?」」

 

……これ、持って帰れるかなぁ……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

花音「……空見くん、大丈夫?」

 

楓「だ、大丈夫、大丈夫……。」

 

お米10kgは僕が、カレーの材料は松原さんに持ってもらっている。

 

最初はどっちも僕が持つことも考えたが、それは流石に無理があったため、こういう形をとった。

 

にしても……やっぱ10kgは重いな……。

 

松原さんの喫茶店の下見、僕のお母さんに頼まれたおつかい、お互いの目的は果たせたので、現在はショッピングモールを出て駅前の広場に向かって歩いている。

 

楓「……わざわざ路地裏通らなくても、普通に大通りから行けるじゃん。」

 

花音「も、もしかして美咲ちゃんが教えてくれた道は、ショッピングモールへの近道だったとか?」

 

楓「……だとしたら何であの子はあんな道が近道だって知ってたんだろ。」

 

……謎だ。

 

あんな道、誰にも知られてなくてもおかしくないくらい暗いのに。

 

花音「ま、まぁでも、ああいう道もあるんだってことで、ね?」

 

……たぶんもう一生、あんな道通らないな。

 

花音「あ、駅前の広場に出たよ。」

 

楓「ふぅー。ドサッ」

 

花音「! そ、空見くん!?」

 

僕は近くの芝生にお米を置いて、そこに自分も横になった。

 

楓「疲れた~。……なんか今日は、すごいいろいろあったなー。」

 

花音「……」

 

いきなり女子高に転校して、いろんな人に話しかけられて。

 

氷川さんには、携帯取られて、放課後には学校を案内してもらって……。

 

花音「……」

 

途中の公園では2人の1年生に会って、そのうちの美咲ちゃんって子にショッピングモールへの道を教えてもらって。

 

路地裏ではナンパに絡まれてた松原さんを助けて……っていうか、逆に助けられたかも……。

 

花音「……スッ」

 

その後は、松原さんに抱き締められて、松原さんといっしょにショッピングモールに行って。

 

ショッピングモールでは、松原さんと手を繋いで、松原さんといっしょに喫茶店に入って、その後買い物に付き合ってもらって、ガラポンで2等当てて……。

 

花音「……」

 

楓「……」

 

花音「……ほんとに、いろいろあったね。」

 

楓「うん……。って松原さん!?いつの間に。」

 

花音「えへへ……。空見くん見てたら、私も寝転がりたくなっちゃって。」

 

楓「そ、そうなんだ……。」

 

花音「……」

 

楓「……おかしいよね。」

 

花音「え?」

 

楓「女子高に男が転校なんて、普通に考えたらおかしいよね。クラスの人達にも、めちゃくちゃいじられたし。」

 

花音「……」

 

楓「帰るときだって校門のとこで1年にからかわれたし、さらには3年にまで質問責めされて。……男が女子高に転校なんて、最初からおかしな話だった…「そんなことないよ!」……え?」

 

花音「あ……ご、ごめん……。」

 

楓「……松原さん?」

 

花音「……た、確かに、最初は私も、びっくりしたよ?空見くんの席が私の隣になったから、尚更……。」

 

楓「……」

 

花音「で、でも私、……空見くんがいても、不思議とおかしいとは、思わなかったかな。」

 

楓「え?」

 

花音「なんか、いつもと変わらない、普通の日常だなって思ったよ。女の子だけのクラスに、1人だけ男の子の空見くんがいても、全然浮いてるようには見えなかった。」

 

楓「……そう?」

 

花音「うん。……それにみんな、空見くんをいじってるというよりは、普通に話しかけてるように見えたよ。きっとみんな、空見くんと、仲良くなりたかったんじゃないかな?」

 

楓「……」

 

花音「……空見くんにすごく積極的に話しかけてた2人、橋山さんと浅井さんっていうんだけど、あの2人はすごく仲良しで、いつもいっしょにいるんだよ。中学のときからいっしょのクラスだったみたいで、他のみんなはクラスのムードメーカーだって言われてるみたい。」

 

楓「……何で、僕にそのことを?」

 

花音「……空見くんには、花咲川のいろんな人達と仲良くなってほしいんだ。」

 

楓「……」

 

花音「私も空見くんの仲良しづくり、手伝うよ。だから、いっしょに頑張ろう。」

 

楓「……でも僕、女子と話すの苦手だし。」

 

花音「わ、私だって、異性の人と話すのは苦手だよ?」

 

楓「注目されるのも、苦手だし。」

 

花音「わ、私も、多くの人の前に立つのは……ちょっと、苦手……。」

 

楓「国語だって、苦手だし。」

 

花音「わ、私も、国語は少し苦手……って、あれ?」

 

楓「……引っ掛かった。」

 

花音「……///!も、もう!空見くん!」

 

楓「ご、ごめんごめん。」

 

花音「もう~!」ムス~

 

楓「……スク」

 

花音「? 空見くん?」

 

楓「……じゃあ、頑張ってみようかな。仲良しづくり。」

 

花音「!」

 

楓「自信は今のとこ全然ないけど、……松原さんが、手伝ってくれるって言うなら。……少しは、頑張ってみようかなって。」

 

花音「う、うん!もちろん手伝うよ!いっしょに頑張ろう、空見くん!」

 

楓「……うん。」

 

僕は人に注目されるのが苦手だ。

 

女子と話すのも苦手。

 

だから友達なんて、男しかできなかった。

 

高1までは、ほとんど女子とは関わらなかったけど、これからは違う。

 

これからは、女子と関わらないというのは絶対に避けられない。

 

なぜなら、僕がこれから毎日通うのは、女子高だからだ。

 

まぁ、学校に行かない、とかなら別だけど。

 

とは言え、僕の頭には学校に行かないという選択肢はない。

 

今日のクラスの人達からのいじられ、じゃなくて、話しかけられたこと、1年生からのからかわれ、そして3年生からの質問責めにより、僕の花咲川の女子に対する警戒心は少しずつ強くなっていった。

 

……でも、松原さんに言われて決めた。

 

……仲良しづくりを、頑張ってみようと思う。

 

女子と話すのは苦手、注目されるのは苦手な僕だけど、……松原さんに手伝ってもらいながら、少しずつ頑張ってみようと、そう思った。

 

今までの僕からは、決して思い浮かばなかった考えだ。

 

花音「よいしょっと。……そろそろ行こっか、空見くん。」

 

楓「うん。……でも、ほんとにいいの?僕の家まで持ってってくれるなんて。」

 

花音「もちろんだよ。……その代わり、って言ったらおかしいけど……その後、私を家まで送っていってくれないかな?暗くなってきたし……迷子になりそうだから。」

 

楓「あぁ……うん、そうだよね。もちろんいいよ。」

 

花音「あ、ありがとう、空見くん。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから僕は、松原さんの前を歩いて誘導し、30分くらいかけて自分の家に向かった。

 

家に着いて松原さんがチャイムを押してくれるまでは良かったが、出てきたお母さんに僕に彼女ができたと勘違いされ、その誤解を解くのに10分くらいかかってしまった。

 

その後は、僕が松原さんを家まで送っていくという予定だったが、松原さんを家まで送っていく以前に僕は松原さんの家を知らないと、いうことに気づく、松原さんは案の定道に迷い帰り道が分からなくなる、という最悪の状況におちいってしまった。

 

結局、松原さんが家の人に電話して迎えに来てもらう、という手段を取り、松原さんは無事家に帰ることができた。

 

ちなみに僕はある程度道を覚えてたので、普通に家に帰ることができた。

 

楓「……1日がこんな長く感じたの、初めてかも。」

 

『プルルルルル、プルルルルル……。』

 

楓「ん?……あ、そっか。」

 

『プルルルルル、プルル…ガチャ』

 

楓「もしもし。」

 

花音『あ、もしもし?空見くん?』

 

楓「うん、僕だよ。」

 

帰り際、再び松原さんが僕のところに来た。

 

帰ったら僕に電話したいので、家の電話番号を教えてくれとのことだった。

 

もちろん僕はOKし、松原さんに家の電話番号を教えた。

 

そして今、松原さんから電話がかかってきた。

 

花音『ごめんね。電話したいから、急に家の電話番号教えてくれ、だなんて……。』

 

楓「いやいや、全然いいよ。」

 

花音『え、えっと……今日は、いろいろありがとね。』

 

楓「ううん、礼を言うのは僕のほうだよ。松原さんのおかげで、仲良しづくりを頑張ってみようって気になれたんだし。ありがとう、松原さん。」

 

花音『えへへ、ありがとう。……明日から、もう始めるの?』

 

楓「……うん、そのつもりかな。」

 

花音『そっか。……いっしょに頑張ろうね。』

 

楓「うん。」

 

花音『……じゃ、私、もうすぐ夕飯だから。』

 

楓「あ、僕もだ。」

 

花音『ふふ。』

 

楓「? 松原さん?」

 

花音『空見くんの携帯が帰ってきたら、空見くんの携帯の番号も教えてもらいたいな。』

 

楓「……うん。もちろんいいよ。」

 

花音『ありがとう、空見くん。……じゃーね、また明日。』

 

楓「うん、また明日。」

 

花音『……おやすみ。』

 

楓「おやすみ。……ガチャ」

 

……女子と電話なんて、初めてしたな。

 

……いっしょに頑張ろう、か。

 

楓の母「楓ー!ご飯だよー!」

 

楓「はーい!」

 

……腹へったし、行くか。




本編で楓と花音ちゃんが良い感じになっていますが、今のところ恋愛要素はなし、という方向性で考えていますw。

まぁ、今のところは、ですけどねw。

さあ~次回。

ちょっとだけネタバレしますと、あの人がめちゃくちゃ激怒しますよ~w。


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4話 教室行ったらなんか変な誤解が生まれてた

どうも、知栄砂空です。

今回のロゼリアイベの報酬のリサ姉、取り忘れましたw。

いやー……やっちまったw。

というわけで次回のイベント報酬の星3はちゃんと取ろうw。

ちなみに、予習のためYouTubeでロストワンの号哭の原曲を聞いてたら見事にはまりましたw。

はい、というわけで4話スタートですw。


【空見家 楓の部屋】

 

『……ジリリリリリ!ジリリリリリ!ジリリリリリ!』

 

 

 

 

 

楓の母「楓ー!起きなさーい!目覚まし鳴ってるでしょー!」

 

 

 

 

 

楓「うーん……『ジリリリリリ!ジリリリ…カチッ』……あと5分……。」

 

 

 

 

 

……タン、タン、タン、タン……。

 

 

 

 

 

……ん?

 

誰かが階段を上がってくる音……。

 

お母さんでも起こしに来たのかな?

 

……ガチャ

 

???「楓ー!起きろー!」

 

楓「……何だ翔真か。」

 

僕の弟、空見翔真(しょうま)。

 

僕とは4歳違いで、中1だ。

 

そして、ゲーマーだ。

 

楓「あと5分だけ寝かせてよー。」

 

……スッ

 

ん?

 

今こいつ、机からなんか取った?

 

……何か、嫌な予感が……。

 

翔真「早く起きないと、このゲームのデータ、消すぞ。」

 

楓「!? お、おいちょっと待て!消すな消すな!」

 

翔真「じゃあ今すぐ起きろ。」

 

楓「お、お前さぁ、それは流石にせこいぞ。人が苦労して苦労して、やっとここまで強くしたデータを脅しに使うなんて。ひどいにもほどが…「じゃ、消しまーす。」だー!分かった分かった!起きる起きるから!」バッ!

 

……コト

 

楓「こ、この野郎~……!」

 

翔真「はぁ、残念。昨日お前が俺のめちゃくちゃ欲しかったモンスターゲットしやがったから、データ消したら少しはすっきりすると思ったのに。……あ、マリー。」

 

マリー「にゃ~。」スリスリ

 

翔真「俺についてきてくれたのか~。お~、優しいなーお前~。」ナデナデ

 

楓「……」

 

翔真「よし、じゃあいっしょに下行こっか。」

 

……ガチャリ

 

……それともう一つ。

 

僕と同じ、大の猫好きだ。

 

楓「……起きるか。」

 

……眠。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【台所】

 

楓「……」ボー

 

楓の母「おはよう楓。ご飯、余ってるから。」

 

楓「……うん。」

 

今お母さんは、僕の弁当を作ってくれている。

 

翔真は、とっくにご飯を食べて学校に行ったらしい。

 

僕は棚から食器を取り出し、そこにご飯を盛った。

 

そして押し入れからお茶漬けの袋を取り出し、それをご飯の上にかけた後、さらにそこにお湯を入れた。

 

楓の母「楓、今日はお茶漬け食べるの?」

 

楓「うん。」

 

僕はスプーンを取り出した後、椅子に座ってお茶漬けを食べた。

 

お茶漬けは、ものの5分たらずで食べ終えた。

 

楓「ごちそうさま。……顔洗ってくる。」

 

楓の母「あ、楓。」

 

楓「ん?」

 

楓「もしだったら今度、松原さんうちに呼びなさいよ。」

 

ドガシャンッ!

 

楓の母「? 楓、何してるのよ。」

 

楓「お、お母さんが変なこと言うからでしょ!?」

 

楓の母「? 私はただ、今度松原さんをうちに呼びなって…「それが変なことなんだよ!」……」

 

楓「……とにかく、松原さんはうちには呼ばないよ。」

 

楓の母「でも楓。あんた、何もお礼しない…「するよ!するに決まってんでしょ!?」へ~、決まってるんだ。」

 

楓「っ!も、もうこの話は終わり!僕、着替えてくるから。」

 

楓の母「……もう、楓は照れ屋ねー。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕は階段を上って自分の部屋に行き、5分くらいで制服に着替えた。

 

その後は今日学校に持っていくものの確認をした。

 

楓「ふぅ。……ああは言ったものの、お礼の内容、何も考えてないんだよなー。」

 

だいたい、女子にお礼なんてしたことないし。

 

なんか、可愛いものでもあげりゃいいのかな?

 

……いいや、お礼のことはまた今度考えよう。

 

楓「……よし、これでOK。」

 

学校行こ。ガチャ

 

マリー「にゃ~。」

 

楓「あれ、部屋の前で待っててくれたの?」

 

マリー「にゃ~。」

 

楓「お前はほんとにいい子だな~。ありがとな~。」ナデナデ。

 

マリー「んにゃ。」

 

楓「じゃあマリー、行ってくるね。」トントントントン

 

マリー「……にゃぁ~。……zzz。」

 

 

 

 

 

楓の母「あ、楓。はい、お弁当。」

 

楓「ありがとう。」

 

楓の母「……」ジー

 

楓「……何?」

 

楓の母「昨日、弁当笑われなかった?」

 

楓「うん。」

 

楓の母「そう。……で、学校はどう?」

 

楓「どうって、まだ1日しか行ってないよ。」

 

楓の母「周り全員女子なんだから、何か1つくらいあるでしょ?気まずかったーとか、からかわれたーとか。」

 

楓「……まぁ、あったけど。」

 

楓の母「何があったの?」

 

楓「……いろいろ。」

 

楓の母「それじゃあ分からないじゃん。」

 

楓「言いたくないことだってあるんだよ。」

 

楓の母「! ……まさか楓、いじ…「それは大丈夫。」あ、そう。」

 

楓「……まぁ、しいて1つだけ言うとすれば。」

 

楓の母「うんうん。」

 

楓「……仲良し、作ることにした。」

 

楓の母「……え、友達じゃなくて?」

 

楓「……知らない。」ガチャ

 

楓の母「あ、ちょっと楓。」

 

楓「行ってきまーす。……ガチャリ」

 

……ふぅ。

 

たった1日で、そんなに進展するわけが……。

 

……///。

 

やめよ、できるだけ思い出さないようにしよう。

 

楓「ふわぁ~。さて、行くか。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【花咲川女子学園 校門】

 

家から学校までは、だいたい30分くらいで着いた。

 

ちなみに交通手段は、電車でもバスでもなく、歩きだ。

 

正直疲れるからバスがいい。

 

でもお金かかるからやだ。

 

ふぅ~、やっぱり歩きだな~。

 

とまぁ、それはどうでもいいとして。

 

生徒A「……」ヒソヒソ

 

生徒B「……」ヒソヒソ

 

生徒C「……」ヒソヒソ

 

生徒D「……」ヒソヒソ

 

……さっきから、道行く人にめちゃくちゃジロジロ見られてる。

 

この人達、絶対僕のこと話してるよね。

 

楓「……はぁ、慣れない……。ていうか、慣れるほうが怖いな。」

 

僕はそんな自分にしか聞こえないくらい小さい独り言を言いながら、玄関に向かった。

 

玄関に着いたら靴を履き替え、そのまま自分の教室に……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……じゃなくて、生徒会室に向かった。

 

理由はもちろん、携帯を返してもらうためだ。

 

 

 

 

 

【生徒会室】

 

氷川さん、もういるのかなぁ?

 

楓「……ソー」

 

電気はついてるみたい。

 

……よ、よし。

 

コンコン

 

???「はい。」

 

あ、この声は。

 

楓「し、失礼します。」ガラガラガラ

 

紗夜「空見さん、おはようございます。」

 

楓「お、おはようございます。……昨日は、すいませんでした。」ペコリ

 

紗夜「いえ、もういいですから。少しだけ、待っててもらえますか?」

 

楓「あ、はい。」

 

そう言うと氷川さんは、何か書いてるのを中断し、奥の方のテーブルに行って何かを探し始めた。

 

おそらく、僕の携帯を探してるのだろう。

 

……なんか、申し訳ないな。

 

紗夜「……あった、これね。」

 

お、見つかったみたいだ。

 

でも、わざわざ探すほどって……どんだけ奥に入れてたんだろう?

 

紗夜「はい、空見さん。これで間違いないですか?」

 

楓「あ、はい。大丈夫です。」

 

紗夜「これから気を付けてくださいね。またあなたが風紀を乱すようなことがあれば、そのときは…「わ、分かってますよ!」……ふふ、そうですか。」

 

これからはほんと気を付けよう。

 

うん、わりとマジで。

 

楓「じゃあ、僕はそろそろこれで。」

 

紗夜「ええ。……そういえば空見さん。」

 

楓「?」

 

紗夜「昨日は、松原さんと何してたんですか?」

 

楓「……普通に、ショッピングモールに行ってただけですよ。」

 

紗夜「ショッピングモール?それって、駅前の近くに新しく出来たというショッピングモールですか?」

 

楓「はい。」

 

紗夜「……なるほど。」

 

楓「……」

 

……まさかこの人、また昨日みたいに何か変な想像してたんじゃ……。

 

……流石にないか。

 

紗夜「……すみません。それと、もう一ついいですか?」

 

楓「? はい、何ですか?」

 

紗夜「……そのショッピングモールは、そういう類いの人達が訪れるような場所なんですか?」

 

楓「……」

 

訂正。

 

この人、してましたわ、変な想像。

 

紗夜「……やっぱり、いいです。忘れてください。」

 

この人、自分から聞いといて。

 

紗夜「では、私はまだ仕事があるので。」

 

楓「あ、じゃあ、今度こそ僕は、ここで。」

 

紗夜「……」

 

楓「し、失礼しましたー。……バタンッ」

 

……何だったんだマジで。

 

氷川さんの考えてること、全っ然分からん。

 

……まぁいっか。

 

ん?

 

楓「あれ?不在着信、何件もある。……げっ!」

 

 

 

 

 

『曽山牧人』

 

 

 

 

 

楓「ま、牧人のやつ、何回電話かけてんだよ……。」

 

……いいや。

 

後でこっちからかけよう。

 

まずは、教室に向かうかな。

 

……と、思ったんだけど。

 

生徒A「あ、あの子、昨日転校してきた空見くんだよ。」

 

生徒B「ん~。私、あいつあんま興味ないんだよね~。やっぱり男と言えばイケメンじゃん?あいつ、別にイケメンじゃないし。」

 

生徒A「まぁイケメン、ではないけど、ブサイク、でもないよね。」

 

生徒B「何て言うか、普通?」

 

生徒A「えい。」パシャリ

 

生徒B「ちょっとやめなよ~、それ盗撮だよ~?」

 

生徒A「大丈夫だって、これぐらい。グループに写真送ってっと、『話題の空見楓!盗撮成功w!』っと。」

 

生徒B「はぁ、もうどうなっても知らないよ。」

 

……めちゃくちゃ教室行きにくいんだけど。

 

……マジ、どうすりゃいいの?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【2-A 教室】

 

楓「……」ガラガラガラ

 

橋山「お、空見!おはよー!」

 

楓「! お、おはよう。……橋山、さん?」

 

橋山「お!あたしの名字、覚えてくれたんだ!」

 

楓「いや、覚えたっていうより、教えてもらっ…「おはよ、空見!」トン お、おはよう。……浅井、さん?」

 

浅井「おぉー!私の名字も覚えてくれてるー!」

 

……女子って、名字覚えただけでこんな喜ぶものなの?

 

……あ、松原さん。

 

花音「……」

 

楓「お、おはよう、松原さ……ん?」

 

花音「/////」

 

松原さん、何で顔赤くなってんだろ?

 

今日って、そんな暑かったっけ?

 

……20℃。

 

うん、普通だ。

 

生徒A「……」ニヤニヤ

 

生徒B「……」ニヤニヤ

 

生徒C「……」ニヤニヤ

 

生徒D「……」ニヤニヤ

 

……心なしか、クラスのみんなが僕のほう見てニヤニヤしてる気がする。

 

橋山「……」ニヤニヤ

 

浅井「……」ニヤニヤ

 

正直、不気味なんだけど。

 

花音「……そ、空見、くん……。」

 

楓「あ、松原さん。顔赤いけど、大丈夫なの?」

 

花音「……」

 

楓「?」

 

大丈夫、じゃ、ないのかな?

 

花音「……ごめんね。」

 

楓「え?」

 

花音「私達、みんなに変な誤解されちゃったみたい……。」

 

? 変な誤解?

 

って、いったい何のこと?

 

橋山「いやー、しっかしすごいね~空見は。」

 

楓「? すごいって、何が?」

 

浅井「転校わずか1日にして、もう彼女ができるなんてさ。」

 

楓「? ……え?……え!?か、かの、彼女!?……だ、誰に?」

 

浅井「空見に決まってんじゃん。」

 

楓「いやいやいやいや、僕に彼女なんていないよ!」

 

橋山「またまた~、とぼけちゃって~。」

 

いや、別にとぼけてるわけじゃ……。

 

浅井「もうクラスのみんなも知ってるんだよ?空見に彼女ができたことも、空見の彼女が誰なのかも。」

 

楓「いやだから、僕には彼女なんて…「隠そうとしたって無駄無駄。もうクラスのみんなにばれてんだから。」……」

 

だから、僕には彼女なんて……。

 

てかまず、何でそんな話になってんの?

 

楓「……そのことって、誰から聞いたの?」

 

橋山「ほら、こいつだよ。」

 

楓「?」

 

音羽「どうも~。宮村音羽(おとは)で~す。」

 

! い、いきなり出てきた!

 

楓「……えーっと、宮村、さん?……何で、僕に彼女がいるなんて変な情報…「全然変じゃありませんよ。だって私、見たんですもの。」……へ?見た?」

 

音羽「昨日、空見さんが、放課後ショッピングモールで、彼女と思われし人といっしょにいるのを!」

 

生徒A「……」オー!

 

生徒B「……」オー!

 

橋山「……」オー!

 

浅井「……」オー!

 

な、何でそこで歓声があがるの!?

 

ていうか、昨日僕が放課後ショッピングモールでいっしょにいた人って……。

 

音羽「空見さんはその人と喫茶店に入ったり、買い物してたり、さらには手を繋いだりしてました!」

 

生徒C「……」ワー!ワー!

 

生徒D「……」ワー!ワー!

 

音羽「しかもしかも!なんと空見さんは、その人に抱き締められていました!!」

 

生徒E「……」オー!オー!

 

生徒F「……」ヒュー!ヒュー!

 

楓「……ねぇ松原さん。まさか、変な誤解って……。」

 

花音「……コク」

 

音羽「さぁ空見さん!ここまで言われてもまだ白状しない気ですか!?」

 

……ダメだ。

 

この人は……いや、この人達は、大きな勘違いをしている。

 

確かに僕は、その人と喫茶店に入ったり、買い物したり、手を繋いだり、その人に抱き締められたりしたけど。

 

……決して、彼女ではない。

 

音羽「そろそろ自分で言ったらどうなんですか!?」

 

楓「……」

 

音羽「空見さんの彼女は、隣の席の松原……」

 

楓「だから!それは断じて違……」

 

 

 

 

 

???「へぇ、花音に彼氏ができたの。」

 

 

 

 

 

楓「……え?」

 

音羽「あ、あなたは……。」

 

……だ、誰?

 

ベージュっぽい色の髪をしたその人は、そう言うと松原さんのところに来た。

 

???「おめでとう花音。あなたに彼氏ができたなんて、親友の私としても嬉しいわ。」

 

花音「ち、違うの千聖ちゃ…「照れなくてもいいのよ。彼氏ができるなんて、とても素敵なことじゃない。」べ、別に照れてるわけじゃ……」

 

……松原さんの、友達?

 

……ていうか!

 

この人も勘違いしてるし!

 

楓「……あ、あのー、すいま…「話は聞いているわ。昨日転校してきた、空見楓さんね。」え?は、はい。」

 

千聖「始めまして。私は白鷺千聖。あなたのクラスメイトよ。」

 

楓「……は、はぁ。」

 

出会って一番最初にあいさつ……。

 

真面目な人だなぁ。

 

……あ、この人なら、話せば分かってくれるかも。

 

楓「あ、あのー、僕は…「花音みたいな彼女ができるなんて、あなたは幸せものね。」……いや、だからあの……」

 

千聖「花音も。空見さんみたいな素敵な彼氏ができて、あなたは幸せね。」

 

花音「ち、千聖ちゃん。だから、私は…「宮村さん。昨日の放課後、空見さんと花音がいっしょにショッピングモールにいたときのこと、詳しく話してもらえるかしら?」……」

 

橋山「よーし!じゃあ今日の放課後は、空見と松原さんのカップル成立を祝って、パーティーだー!」

 

浅・音・生徒A・B『『『オー!』』』

 

千聖「ふふ♪」

 

楓「……」

 

どうすりゃいいの?これ。

 

花音「ふぇぇ……。」

 

松原さんは混乱のあまり、目を回しちゃってるし。

 

白鷺さんを含めたクラスのみんなは、僕と松原さんがカップルだということを信じちゃってるし。

 

……どうにかして今日中には誤解を解かないと、この先まずいことになりかねないな。

 

千聖「空見さん。」

 

楓「あ、し、白鷺さん。」

 

千聖「……」スッ

 

楓「え?」

 

千聖「……握手よ。分からない?」

 

楓「あ、いや。……でも、何で?」

 

千聖「これから1年、共にこの教室で過ごしていくんだもの。あいさつしておかないと失礼でしょ?」

 

楓「あ……そ、そうですよね。スッ」

 

……ガシッ!

 

楓「!?」

 

い、いたたたたた!!

 

し、白鷺さん!?

 

千聖「……」ニコニコ

 

え?

 

……ど、どゆこと…「……」ガシッ! いててててて!!

 

千聖「……スッ」

 

ジ~ン

 

め、めちゃくちゃ、痛かった……。

 

骨、折れるかと思ったよ……。

 

千聖「これからよろしくね、空見さん。」ニコッ

 

楓「こ、こちらこそ……。」

 

い、痛え……。

 

まだジンジンしてるよ……。

 

 

 

 

 

千聖「……それと昼休み、屋上に来て。」ボソッ

 

楓「え?」

 

 

 

 

 

千聖「ごめんなさい宮村さん。続きをお願い。」

 

音羽「はい!それで、空見さんと松原さんはですね~……。」

 

……何だったんだろ、今の。

 

昼休みに、屋上?

 

花音「……なんか、大変なことになっちゃったね。」

 

楓「う、うん。……ごめん、松原さん。」

 

花音「! そ、空見くんのせいじゃないよ!謝るのは、私のほうだよ……。」

 

楓「……とにかく、まずはどうにかして誤解を解かなきゃね。」

 

花音「うん……。でも、どうすればいいんだろう?」

 

楓「一番良いのは説得なんだろうけど、……またさっきみたいに流されそうだし。」

 

花音「……」

 

楓「……授業中にでも、何かしら考えとくよ。」

 

花音「あ、じゃあ、私も考えるよ。」

 

楓「ありがとう、松原さん。」

 

……何か、いい方法が思い浮かぶといいけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~昼休み~

 

……何にも、思い浮かばなかった……。

 

授業中とか休み時間とか、空いてる時間にいろいろ考えたけど全然思い浮かばなかった。

 

ちなみに松原さんも、何も思い浮かばなかったらしい。

 

まぁそんなこんなで、昼休みになった。

 

橋山「はぁー!やっと昼休みだー!」

 

浅井「橋山、あんたさっきの授業でめっちゃ当てられてたねー。」

 

橋山「うっ、言い返せない……。」

 

花音「……あれ?」

 

楓「? どうしたの?」

 

花音「千聖ちゃん、さっきまでいたのに、どこ行ったんだろう?」

 

楓「白鷺さん?……あ。」

 

 

 

 

 

千聖『……それと昼休み、屋上に来て。』ボソッ

 

 

 

 

 

楓「……そういえば……。」

 

花音「空見くん?……もしかして、千聖ちゃんがどこに行ったか知ってるの?」

 

楓「……うん、たぶん。」

 

橋山「あ、ねぇ空見。」

 

楓「?」

 

橋山「白鷺さんと言えばさっき、空見に何か言ってたよね。」

 

花音「え、そうなの?」

 

橋山「さっきっつっても、朝のときだけどね。」

 

浅井「あぁ確かに言ってた!ねぇ空見、何て言われたの?」

 

楓「……別に、何でもないよ。」

 

浅井「え~!教えてくれたっていいじゃ~ん。」

 

花音「ねぇ空見くん。千聖ちゃんに、何て言われたの?」

 

楓「……松原さんも知りたいの?」

 

花音「わ、私だって、少しは、気になるもん……。」

 

橋山「ほら空見、松原さんもそう言ってるんだしさ。」

 

楓「……分かったよ。」

 

浅井「やったー!で、何て言われたの?」

 

そんなに喜ぶことかなぁ?

 

楓「……昼休みに、屋上に来てって言われた。」

 

橋・浅「「え!?」」

 

花音「……それ、ほんとに千聖ちゃんが?」

 

楓「うん。小さい声で、僕だけに聞こえるように。」

 

橋山「……空見。」

 

楓「ん?」

 

浅井「それ、絶対あれだよ。」

 

楓「? あれ?」

 

橋山「分からない?女子が男子に、昼休みに屋上に来てなんて言うのは、もうあのパターンしかないじゃん!」

 

楓「……あの、パターン……。」

 

まぁ、橋山さんが言わんとしていることはだいたい分かるけど……。

 

 

 

 

 

千聖『……』ガシッ!

 

楓『!?(い、いたたたたた!!し、白鷺さん!?)』

 

千聖『……』ニコニコ

 

楓『(え?……ど、どゆこと…『……』ガシッ! いててててて!!)』

 

 

 

 

 

……たぶん、違う気がするんだよね。

 

浅井「女子が男子を屋上に呼ぶシチュエーションと言ったら、もう告白しかないっしょ!」

 

橋山「空見には松原さんという彼女がいるのを分かっているうえで、空見を屋上に呼び出し告白とは。……白鷺さんもチャレンジャーだなー。」

 

音羽「これは修羅場の予感ですね!」

 

橋山「うおっ!宮村、いつの間に……。」

 

花音「千聖ちゃんに限って、それはないと思うけど……。」

 

まさしく、僕も松原さんと同意見だ。

 

橋山「空見!そうと決まったら早く行ってやれよ!」

 

楓「いや、そうと決まってはないと思…「いいからいいから!白鷺さん屋上で待ってるよ!」……」

 

音羽「空見さん、転校2日目にしてさっそく修羅場に遭遇!とても楽しみです!」

 

宮村さん、この状況絶対楽しんでるよね?

 

花音「……空見くん。」

 

楓「ん?」

 

花音「……気を付けてね。」

 

? 気を付ける?

 

……まぁ、いいか。

 

楓「う、うん。……じゃあ、行ってくる。」

 

橋山「頑張れよー!空見ー!」

 

浅井「よっ!転校2日目のモテ男!」

 

音羽「修羅場を期待してますよー!」

 

頑張れって言われても、何を頑張りゃいいんだよ。

 

てか、別に僕はモテないからモテ男はやめて?

 

あと、修羅場なんか期待しなくていいから。

 

僕はそう声に出してツッコみたかったが、これ以上白鷺さんを待たせたら悪いと思い、そのまま普通に屋上に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【屋上】

 

……ガチャ

 

ヒュ~~

 

あー、涼しい~。

 

屋上に来ることなんて、めったにないからなー。

 

前の学校では、屋上は自由に出入りできなかったし。

 

屋上に来たのは、小学校の授業以来かな。

 

おー、いい眺め~。

 

……ガチャ。

 

楓「あ、白鷺さん。」

 

千聖「あら、先を越されちゃったわね。」

 

楓「だ、大丈夫ですよ。僕も、ついさっき来たばっかりですから。」

 

千聖「ふふ、そう。」

 

楓「……」

 

千聖「……」

 

楓「……」

 

千聖「……」

 

……ど、どうしよう、この空気。

 

超、気まずいんですけど……。

 

楓「……」

 

千聖「……」

 

な、何か、言わないと……。

 

楓「あ、あの……白鷺、さん。」

 

千聖「……」

 

楓「ぼ、僕を屋上に呼び出して、どうし…「……」スタスタスタスタ…… え?し、白鷺さん?」

 

千聖「……」スタスタスタスタ……

 

楓「いったい、どうし…「……」ギュッ ……へ?」

 

千聖「……」

 

……え?

 

……え!?

 

……えぇぇぇぇーーーー!!??

 

ちょ、ちょちょ、ちょっと待って!?

 

お、おおお落ち着け!

 

落ち着け僕!

 

落ち着け僕!

 

すぅー、はぁ。

 

すぅー、はぁ。

 

……って落ち着けるわけねえだろぉぉぉぉーーー!!!

 

千聖「……」ギュッ

 

楓「//////////!!」

 

な、なな、何で!?

 

な、何で白鷺さんが、ぼ、僕に……。

 

……い、今の状況を説明しよう。

 

し、白鷺さんが、ぼ、僕の胸に手を当てて……よ、寄りかかってる、じょ、状態、だ……。

 

み、右手で、僕の胸に手を、あ、当てて……ひ、左手を、僕の右腰らへんのところに、手を、回して……ぼ、僕を、だ、抱き……抱き締めながら、よ、寄りかかっている……。

 

ち、ちなみに……向かい合ってる、状態だ。

 

……あーーーもう!!

 

こんな状態じゃ落ち着いて説明なんかできねえよ!!

 

……マジでどうすりゃいいの……?

 

千聖「……スッ」

 

え?

 

……て、手紙?

 

千聖「……」

 

……ぼ、僕に、受け取れってこと?

 

……ソ~……、スッ

 

……いったい、これ何の手紙……。

 

千聖「……」ギュッ

 

楓「/////!!」

 

手紙を受け取ったはいいけど……この状態じゃ、読めないんですけど……。

 

千聖「……スッ」

 

楓「あ。」

 

は、離れてくれた。

 

……嬉しいような、悲しいような……。

 

なんか複雑な気持ちだな。

 

千聖「……その手紙。」

 

楓「え?」

 

千聖「その手紙には、私のあなたに対する想いが書かれているの。」

 

楓「……僕に対する、想い?」

 

そう言うと白鷺さんは、僕のほうを向いた。

 

そして、風に揺れる髪を手で押さえながら、こう言った。

 

 

 

 

 

千聖「その手紙に書いてあることを、私のほうを見て、声に出しながら読んでほしいの。」

 

楓「///////!!」

 

 

 

 

 

い、今一瞬、胸が、キュッってなったような……。

 

千聖「お願い、空見さん。」

 

楓「//////////」

 

……こんな感じ、初めてだ……。

 

橋山さん達の言ってたことは………マジ、だったのか……?

 

楓「……わ、分かりました。」

 

……よく見るとこの手紙、ピンク色だし……ハートのシールがついてる。

 

……///。

 

これ、ガチのラブレターじゃん……。

 

……僕は緊張しながらも、丁寧にハートのシールを剥がし、中の手紙を出した。

 

楓「/////」

 

千聖「……」

 

楓「……そ、それでは……よ、読みます/////。」

 

千聖「……ええ。」

 

そして僕は、ゆっくりと手紙を開き、そこに書いてあることを、白鷺さんのほうを向いた状態で、声に出して読んだ。

 

 

 

 

 

楓「……空見さんへ。

 

 

 

 

 

私、白鷺千聖は……

 

 

 

 

 

あなたのことが……

 

 

 

 

 

ずっと……

  

 

 

 

 

ずっと前から……

 

 

 

 

 

誰よりも……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……嫌いでした。」

 

……え?

 

……き、嫌いでした?

 

千聖「……スタスタスタスタ」

 

! え!?

 

千聖「……」スタスタスタ

 

な、何何何何何!?

 

千聖「……」ドン!

 

!! ……え?

 

……これって……壁ドン!?

 

千聖「残念。この場合、逆に女が男に壁ドンしているから、逆壁ドンね。」

 

……この人今、しれっと僕の心の中読んだよね?

 

……白鷺さんて、超能力…「そんなわけないでしょう?」ニコニコ ……怖い、この人めちゃくちゃ怖い……。

 

楓「……あ、あの、いったい何だったんですか?さっきの手紙。」

 

千聖「ん?何が?」

 

楓「これ、全然、ラブレターじゃないじゃ…「あら、私はただ“手紙”と言っただけで、“ラブレター”とは一言も言ってないわよ?」……」

 

……そ、そうだったぁぁぁ!!

 

楓「じゃ、じゃあ、さっき僕に抱きついたのは…「そんなの、演技に決まってるじゃない。」え、演技?」

 

千聖「何?私があなたのことを好きだとでも思った?」

 

楓「……」

 

一瞬でも、橋山さん達の言ってたことはマジだったのか、って思った自分がバカだった。

 

千聖「私があなたをここに呼び出したのはね、話したいことがあったからよ。」

 

楓「話したい、こと?」

 

千聖「あなたと花音のことについてよ。」

 

楓「……」

 

千聖「……あら?何で黙っているの?」

 

楓「……僕が何言おうとしても、聞く耳持ってくれないじゃないですか。」

 

千聖「なるほど。……いいわ。そういうことだったら、1回だけ、聞く耳を持ってあげる。」

 

1回だけ、ね。

 

ま、僕と松原さんは付き合ってないってことを分かってもらえればいいんだし、それで十分か。

 

楓「あ、ありがとうございます。」

 

千聖「さ、遠慮なく言ってみて。」

 

楓「……その前に、いつまでこの逆壁ドンやって…「遠慮なく、言ってみて。」ニコニコ ……はい。」

 

人の笑顔がこんなに怖いって感じたの、初めてだよ……。

 

楓「……単刀直入に言います。……僕と松原さんは、付き合ってなんかいません。」

 

千聖「……」

 

楓「だから、彼氏彼女なんて関係じゃ全くないし、昨日2人でショッピングモールに行ったのだって、たまたまなんです。」

 

千聖「……花音があなたを抱き締めたり、あなたと花音がいっしょに喫茶店に入ったり、手を繋いだりしていたのは?」

 

楓「ま、松原さんが僕を抱き締めたのは、たぶん、怖さをまぎらわすためで。……て、手を繋いだのは、その、……は、はぐれないようにするためで……」

 

千聖「喫茶店は?」

 

楓「それは……松原さんが、いっしょに入ろうって誘ってくれたからで……」

 

千聖「……」

 

楓「……」

 

ど、どうしたんだろう、白鷺さん。

 

……スッ

 

あ、壁ドン、やめてくれた。

 

ということは……分かって、くれたのかな?

 

千聖「……宮村さんに聞いたわよ。」

 

楓「え?」

 

千聖「あなたが、花音を泣かしたって。」

 

楓「! ぼ、僕は松原さんを泣かしてなんていませんよ!」

 

千聖「宮村さんは、花音をナンパしていた人達が離れていった後に花音が泣いたって言ってたわよ。」

 

楓「だ、だからそれは…「……」ドン! !!」

 

千聖「どんな理由があろうと、花音を泣かせる人は私が許さないわよ?」

 

楓「……」ガクガクガク

 

ヤベェ……。

 

白鷺さん、激オコだ……。

 

千聖「……それとあなた、花音をからかったらしいじゃない?」

 

楓「! い、いやあの、それは…「からかったのよね?花音を。」ニコニコ ……はい、からかいました。」

 

ま、まぁでも僕、人をからかうことなんてめったにないし、あのときは成り行きでって感じだったし…「……」ドン! ひぃっ!

 

千聖「あなたが花音をからかうなんて、100年早いのよ?」ニコニコ

 

楓「す、すみません……。」

 

人をからかっただけで、こんなに怒られるの?

 

千聖「話は戻るけど……あなたが花音と手を繋いだとき、花音嫌がってなかった?」

 

楓「え?……いや、別に…「よーく思い出してみなさい?」……はい。」

 

うーん……。

 

別に、嫌がってはなかったと思う、けど。

 

……。

 

 

 

 

 

楓『……ねぇ、松原、さん。』

 

花音『え?』

 

楓『も、もしだったらさ……手、繋がない?』

 

花音『ふぇっ///!?』

 

楓『あ、いや、決して変な意味じゃなくて……。その……この人混みだからさ、はぐれたら大変じゃん?だから、手を繋いだほうが、はぐれなくて済むかと、思って。』

 

花音『……』

 

楓『……ごめん、嫌だったら、いい…『分かった。』え?』

 

花音『……繋ごう?手。』

 

 

 

 

 

……いや、もしかしたら、嫌がってたかもしれない……。

 

千聖「どう?思い出した?」

 

楓「……は、はい…「どうだった?」……い、嫌がってたかも、しれません。」

 

千聖「……ドン!」

 

楓「!!」

 

千聖「嫌がっていたのにあなたは、無理矢理手を繋いだの?」

 

楓「……む、無理矢理というか…「……」ドン! !?」

 

千聖「何?聞こえなかったわ。」ニコニコ

 

……いつかこのドア、壊れそ…「……」ドン! うっ!

 

千聖「今、そのことは関係ないでしょ?」ニコニコ

 

楓「はい、すみません……。」

 

もう、何も考えない方がいいかも……。

 

……スッ

 

! こ、今度こそ、やめてくれた、のかな?

 

千聖「さっきの手紙に書いてあった通り、私はあなたのことが嫌いよ。」

 

楓「……」

 

千聖「私の友達である花音を泣かして、からかって、その挙げ句嫌がってあいる花音の手を無理矢理繋ぐなんて、絶対に許せないわ。」

 

楓「……」

 

何もしゃべらない、考えない、しゃべらない、考えない……。

 

千聖「……花音の彼氏として、どうかと思うわ。」

 

え!?

 

楓「ぼ、僕と松原さんがほんとは付き合ってないってこと、分かってくれたんじゃないんですか?」

 

千聖「……そんな嘘の出任せが、私に通じるとでも思った?」

 

楓「……」

 

もうダメだ。

 

真面目そうな人だからちゃんと話せば分かってくれると思ったけど……もう諦めよう。

 

千聖「というわけで、あなたが花音の彼氏に相応しいかどうか、私が見極めさせてもらうわ。」

 

楓「へ?……どういうことですか?」

 

千聖「明日の11:30、駅前に集合。いいわね?」

 

楓「え、で、でも…「……」ドン! !」

 

千聖「い・い・わ・ね?」ニコニコ

 

楓「……はい。」

 

どうやら今の僕に、拒否権はないらしい。

 

千聖「さて、それじゃあそろそろ戻ろうかしら。」

 

楓「……」

 

千聖「ほら、空見さんも。早く戻らないと、お弁当食べる時間なくなるわよ。」

 

楓「……今行きます。」

 

明日の11:30に、駅前……。

 

まぁ学校も休みだし、特に予定とかもないけど。

 

……嫌な予感しかしない……。

 

……ガチャ

 

千聖「あら?」

 

ん?

 

千聖「こんなところで何をしているの?あなた達。」

 

橋・浅・音「「「あ。……あ、あははは……。」」」

 

千聖「……」

 

橋山さん、浅井さん、宮村さん……。

 

橋・浅・音「「「ぬ、盗み聞きしてすみませんでしたーー!!」」」ドゲザ

 

千聖「……盗み聞き、してたのね。」

 

浅井「もうー、だから私はやめようって言ったのに。」

 

橋山「だ、だって、気になるじゃん!ねぇ宮村。」

 

音羽「ご最もです!」

 

橋山さんが言い出したのか。

 

で、それに宮村さんも乗ったと。

 

この中じゃ浅井さんが一番まともか。

 

千聖「……まぁいいわ。聞かれたものは仕方ないわ。行きましょ、空見さん。」

 

楓「あ、は、はい。」

 

昼休みが終わるまであと10分か。

 

弁当食う時間、あるか…ガシッ ん?

 

橋山「空見、あんたやるねぇ!」

 

楓「? 何が?」

 

浅井「とぼけないでよ。私達、ずっとここにいたから分かるんだよ。」

 

楓「だから何が?」

 

音羽「空見さんて、気弱そうに見えて意外と大胆ですよね。」

 

……まぁ、気弱そうに見えるってのは否定しないけど。

 

楓「ほんとに、何が言いたいの?」

 

橋山「だってさ空見、あんた、

 

 

 

 

 

……壁ドンしてたでしょ?」

 

楓「……」

 

橋山「白鷺さんに屋上に呼ばれてしかもそこで壁ドンしたってことは、あんたまさか……」

 

浅井「いや、分かんないよ。壁ドンした状態で、『悪いな。俺には、2人の女から1人を選ぶことなんてできない。』みたいなことを言ったんじゃない!?」

 

橋山「おぉ!ん?待って?となるとまさか……空見は二股!?」

 

音羽「なんと!それはもう完全に修羅場じゃないですか!?」

 

……もうツッコム気にもなれないや。

 

浅井さんも、別にまともじゃなかったみたいだし。

 

千聖「あなた達?」

 

浅井「あ、白鷺さ……げっ!」

 

千聖「あんまり変なこと言ってるとあなた達、夜の学校の暗い体育館倉庫の中に閉じ込めて3日間断食兼正座させるわよ?」ニコニコ

 

橋・浅・音「「「!! ご、ごめんなさーーーい!!」」」ダー‼

 

……こ、怖え……。

 

千聖「さ、行きましょ、空見さん。」ニコッ

 

楓「……は、はい…「明日の約束、破ったらどうなるか分かってるわよね?」ニコニコ は、はい!そのことに関しましては、百も承知でございます!」

 

千聖「……ふふ、それならいいわ。」

 

……ふぅ。

 

白鷺さんには、何も逆らわない方がいいな。

 

千聖「あら花音、どうしたの?」

 

え!

 

松原さん!?

 

花音「ちょ、ちょっと空見くんにお話が……。」

 

千聖「……そう。私、先に教室に行ってるわね。」

 

花音「う、うん。」

 

千聖「どうぞ、ごゆっくり。」

 

 

 

 

 

楓「そ、それで、どうしたの?松原さん。」

 

花音「……ダメ、だったんだね。」

 

楓「……ごめん。」

 

花音「あ、謝る必要なんてないよ!……そもそも、こうなっちゃったのは私のせいだし。」

 

楓「……もう、お互い様ってことにしない?」

 

花音「……うん。」

 

楓「……じゃあ僕、先に教室に…「ま、待って!」ん?」

 

花音「……や、約束、したよね?」スッ

 

楓「? あ、あー、僕の連絡先教えるんだったね。」

 

花音「もしかして……忘れてた?」

 

楓「も、もちろん覚えてたよ?」

 

花音「ほんとに?」

 

楓「……すいません、忘れてました。」

 

花音「ふふ、嘘をつくのが苦手なんだね。」

 

楓「……ごめん。」

 

花音「いいよ。それじゃあ、はい、私の連絡先。」

 

楓「え……いいの?」

 

花音「もちろんだよ。」

 

楓「じゃ、じゃあ、……えーっと、携帯携帯……」

 

花音「……」

 

楓「あった。……はい。これ、僕の連絡先。」

 

花音「ありがとう。えーっと、……」

 

……近くない?

 

花音「……あ。ご、ごめん///。」

 

楓「いや、だ、大丈夫///。」

 

花音「うん。私はOKだよ。」

 

楓「……」

 

花音「あ、ごめん、見にくいよね。はい。」

 

楓「あ、ありがとう。」

 

女子と連絡先交換なんて、初めてだな……。

 

楓「……で、できたよ。」

 

花音「ふふ。」

 

楓「? どうしたの?」

 

花音「男の子と電話番号交換したの、初めてだから。」

 

楓「あ……そうなんだ。」

 

お互い初めて、だったんだ。

 

楓「……」

 

花音「……」

 

楓「……そろそろ、行こっか。」

 

花音「うん、そうだね。」

 

……相変わらず気まずい……けど……。

 

 

 

 

 

……白鷺さんといるときよりは、楽かも。

 

あ、そういや、牧人に電話すんの忘れてた。

 

……まぁいっか。




前回の後書きでの予告で、誰かが激怒しますよ~と言ったんですけど、……思った以上に激怒しなかった気がw。

まぁでも、笑顔で怖いこととか言われたらめちゃくちゃ怖いですよねw。

そういうのも激怒というのかは、僕には分かりませんw。

……他にあまり書くこともないので代わりにクイズを。

今回千聖さんは、本編で何回壁ドン(『ドン!』の回数)をしたでしょうw?

ちなみに、作者である僕は数えてないので分かりませんw。

まぁ、暇だったら数えてみてくださいw。


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5話 一応街を案内してもらってるってことになってるらしい

どうも、知栄砂空です。

ドリフェス10連引いたら星四は出たものの千聖さんがだぶりました。

星四だぶりはきついって……。

ちなみに今回、めちゃくちゃ長いです。

1話から4話よりもめちゃくちゃ長いです。

なぜ長くなっちゃったか、あれやこれや書いてたらこうなりました……。

飽きないで読んでいただけたら、嬉しいです……。


【空見家】

 

『……ジリリリリリ!ジリリリリリ!ジリリ…カチッ』

 

楓「……ムク」

 

……10:30。

 

時間通りだ。

 

楓「よっ、と。」

 

……ガチャ

 

ふわぁ~……。

 

……眠。

 

 

 

 

 

……ガラ

 

翔真「そう!そこそこ!……よしOK!じゃあ俺、アイテム取るぞー。」

 

楓「……おはよう。」

 

翔真「……ん?あ、楓。おはよう。」

 

楓「……またチャット?」

 

翔真「ああ……あ!おい待て!そいつは俺が倒すんだ!」

 

楓「……」

 

……パタン

 

今翔真がやってるのは、オンラインゲーム。

 

イヤホンマイクというやつで、友達とチャットしながらゲームしてるらしい。

 

正直、友達とチャットしながらゲームしてる翔真はうるさい。

 

あと余談だが、僕と翔真の部屋はめちゃくちゃ近く、歩いて4、5歩ぐらいの距離にある。

 

 

 

 

 

ガチャ……ガチャリ

 

僕は部屋に戻り、家着から出掛ける用の服に着替えた。

 

そして下に降り、居間に行った。

 

居間にあるソファの上では、マリーが寝ていた。

 

あ、起きた。

 

マリー「……にゃ~。」

 

楓「マリー、おはよう。」

 

現在家にいるのは、僕、翔真の2人とマリー1匹だ。

 

お母さんとお父さんは仕事に行っている。

 

ちなみにお母さんは15:00、お父さんは夜遅くに帰ってくる(たまに早く帰ってくることもある)。

 

楓「……あと15分で出るか。」

 

白鷺さんとの約束の時間は11:30。

 

現在は10:45。

 

場所は駅前なので、11:00に出れば丁度良いはずだ。

 

ピッ

 

……今の時間だと、どこのチャンネルもニュースばっかだな。

 

いいや、部屋行ってSNSでも見よ。

 

ピッ

 

マリー「にゃ~?」

 

楓「ん?マリーも上行きたいの?」

 

マリー「……にゃ~。」ゴロリン

 

楓「……丸くなってるマリーも可愛いな~♪携帯持ってくりゃ良かった……。」

 

そんなことを呟きながら、僕は自分の部屋に戻り、携帯に入っているSNSのアプリをひらいた。

 

そして時間になるまで、僕がフォローしてる人の猫の写真を見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜10分後〜

 

楓「……まぁ、2500円ありゃ足りるか。」

 

現在は10:55。

 

さっきまで僕は、財布の中身を確認していた。

 

そしてたった今確認が終わり、財布をバッグにしまったところだ。

 

……ガチャリ

 

 

 

 

 

 

……ガラ

 

楓「翔真、ちょっと僕出掛けてくる。」

 

翔真「ああ。……あ、そうだ。じゃあ……」

 

楓「?」

 

翔真「……」ゴソゴソ……

 

……お金?

 

翔真「はい。」

 

楓「……何、これ。」

 

翔真「これでこの本買ってくれ。」

 

そう言って翔真は、携帯のある画面を見せてきた。

 

それは、今翔真がやってるゲームの攻略本の画像だった。

 

翔真「この本さ、限定の装備がゲットできるシリアルコードが付いてくるんだよ。今ネットで、この装備がめちゃくちゃ使えるって評判なんだ。」

 

楓「ふーん。」

 

翔真「だからお願い、このお金で買ってきて。」

 

楓「……それぐらい、自分で行け…「行・け。」……はぁ、分かったよ。」

 

翔真に握り拳なんか作られてお願いされたら、もう断れねえや。

 

だって僕、喧嘩くっそ弱いもん。

 

4歳年下のこいつにだって、喧嘩で買ったこと1回もないし。

 

楓「……じゃ、行ってきます。」

 

翔真「いってらー。……あぁごめん。ちょっとチャットはずしてたわ。」

 

楓「……ったく。パタン」

 

ちなみに翔真からもらったのは1000円。

 

攻略本、これで買えるの?

 

……まぁいいや。

 

……行くか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【駅前】

 

楓「……ちょっと早かったかな?」

 

現在の時刻は11:25。

 

約束の時間まであと5分ある。

 

つまり、早く来すぎたのだ。

 

……いや、来すぎではないか。

 

たった5分だし。

 

楓「……流石に、まだ来ては……あ。」

 

 

 

 

 

千聖「……」

 

 

 

 

 

……いたよ。

 

ま、予想はしてたけどね。

 

 

 

 

 

千聖「……あら、空見さん。」

 

楓「お、おはようございます、白鷺さん。」

 

千聖「おはよう。……意外と早かったわね。」

 

楓「いえ、たまたまですよ。」

 

千聖「……そう。……それじゃあ行くわよ。」

 

楓「え?あ、はい。」

 

白鷺さん、行動が早いな。

 

……ていうか、どこに行くんだろう?

 

千聖「……」

 

……ちょっと聞いてみるか。

 

楓「……あ、あのー。」

 

千聖「何かしら?」

 

楓「こ、これから、どこに…「黙ってついてきなさい。」……はい。」

 

……白鷺さんのことだから、変なとこは行かないと思うけど。

 

……不安だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【???】

 

千聖「着いたわ。」

 

楓「え?……ここ、ですか?」

 

千聖「そうよ。……何か不満でも?」

 

楓「あ、いえ、全然。……ただ、ちょっと意外だなって。」

 

千聖「意外?……まぁ確かに、あまりこういうところは来ないわね。」

 

え?

 

……じゃあ何でここに来たの?

 

僕と白鷺さんが来た場所。

 

それは……

 

 

 

 

 

……映画館だ。

 

今僕と白鷺さんは、ショッピングモールの中にある映画館の前にいる。

 

……さっきも言った通り、意外だ。

 

白鷺さんは普段おとなしい人だから、てっきり静かな場所かに行くのかと思った……。

 

あ、ちなみにショッピングモールへは、近道じゃなくて普通の大通りから来た。

 

千聖「……これを見ましょう。」

 

楓「これ、ですか?」

 

千聖「ええ。今話題の恋愛映画みたいなの。」

 

楓「そ、そうなんですか。」

 

……なぜに恋愛映画?

 

別に恋愛ものは嫌いじゃないけど……映画館とかでは見たことないんだよな。

 

……白鷺さんはこういうジャンルが好きなのかな?

 

千聖「じゃあ私、先にチケットを買ってくるわね。」

 

楓「あ、はい。」

 

千聖「えーっと……私達は高校生だから、丁度1000円ね。」

 

楓「そうですね。」

 

千聖「……チラッ」

 

楓「……?行かないんですか?」

 

千聖「……行くわよ。スタスタスタ……」

 

? 何なんだ?

 

 

 

 

 

千聖「……お待たせ。」

 

早っ!

 

楓「は、早いですね……。」

 

千聖「そうでもないわ。これくらい普通よ。」

 

楓「ふ、普通、なんですか……。」

 

千聖「ほら、あなたも急いで買ってきてちょうだい。映画が始まっちゃうわ。」

 

楓「あ、はい。」

 

 

 

 

 

店員「……1000円丁度、お預かりいたします。……こちら、チケットになります。」

 

楓「あ、ありがとうございます。」

 

千聖「……買ったわね。それじゃあさっさと行くわよ。スタスタスタ……」

 

楓「……白鷺さん。何か怒ってま…「別に怒ってないわよ。」ニコニコ ……そ、そうですか。」

 

うん、白鷺さん絶対怒ってる。

 

僕には分かる。

 

千聖「えーっと……1番スクリーンね。ほら、早く行きましょ。」

 

楓「は、はい。」

 

……後で謝ったほうがいいのかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜2時間後〜

 

【ショッピングモール】

 

楓「……」

 

千聖「……」

 

約120分の映画が終わり、僕と白鷺さんは映画館を出て歩いていた。

 

それはいいが……この通り、2人とも無言だ。

 

そのわけはたぶん……この2人で恋愛映画を見たからだ。

 

映画自体は普通に面白かったんだけど……めちゃくちゃ気まずかった。

 

もちろん、僕と白鷺さんは隣同士の席で見た。

 

それもあって、よけいに気まずかった。

 

……おそらく、もう白鷺さんと2人で映画を見ることはないだろうな。

 

千聖「……そろそろ、ごはんを食べに行きましょうか。」

 

楓「え?」

 

……あ、今時計見て気づいたけど、もう14:00過ぎだったんだ。

 

ま、12:00頃から映画見始めたらだいたいそれぐらいの時間になるか。

 

千聖「空見さん、行くわよ。」

 

楓「! は、はい。」

 

やっぱり白鷺さん、行動が早いな。

 

見失わないよう気を付けないと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【フードコート】

 

千聖「ここね。」

 

楓「いろんな店がありますね……。」

 

昼ごはんを食べるために僕と白鷺さんが来たのは、フードコート。

 

フードコートは映画館と同じ3階でしかも意外と近くだったので、歩いて5分ぐらいで着いた。

 

そこまでは良かったんだけど……席が全然空いてない……。

 

14:00過ぎとは言えど、このくらいの時間に昼ごはんを食べる人は少なくない。

 

今僕はフードコートの真ん中辺りにいるが、周りを見渡してみても空いてる席が全然見つからない。

 

てか、松原さんと来たときもそうだったけど、普通に人が多いんだよなぁ。

 

楓「……あれ?白鷺さん?」

 

……おかしいな。

 

さっきまで隣にいたのに。

 

千聖「何してるの?空見さん。」

 

楓「! し、白鷺さん……。」

 

千聖「席ならもう取ってあるわよ。ほら、こっち。」

 

楓「え?あ、はい。」

 

……早い。

 

千聖「……ここよ。」

 

楓「ソファ、なんですね。」

 

千聖「何か不満?」

 

楓「あ、いえ全然。むしろ、僕もソファのほうがよかったですし。」

 

千聖「そう。……じゃあ私、自分の買ってくるから。荷物、見張っててもらえるかしら?」

 

楓「はい、分かりました。」

 

スタスタスタスタ……

 

……僕も財布出しとこ。

 

楓「……何食べよっかなー。」

 

周りを見渡すと、ほんとにいろんな店がある。

 

ラーメン屋さん、かつ丼屋さん、牛丼屋さん、うどん屋さん、他にも中華屋さん、アイスクリーム屋さん、パンケーキ屋さんなど、多種多様の店がある。

 

もちろん、今言ったの以外にも、多くの店がある。

 

千聖「……ただいま。」

 

楓「あ……おかえりなさい。」

 

……もう何も言わないし、驚かないぞ。

 

千聖「空見さんは、何にするか決めたの?」

 

楓「いえ、まだ考え中で……。」

 

……白鷺さんがもらってきた四角い形のベル、そこには、かつ丼屋さんの店のロゴが書いてあった。

 

白鷺さんはかつ丼か。

 

……なんか映画といいごはんといい、意外だな~。

 

千聖「……どうしたの?人のベルじっと見て。」

 

楓「あ、いえ、別に。白鷺さん、かつ丼にしたんだなーって。」

 

千聖「?」

 

楓「……じゃあ、僕も買ってきます。」スク

 

千聖「……変な人。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

楓「牛丼の並をください。」

 

店員「はい、320円になります。」

 

悩んだ末、僕は牛丼にした。

 

理由は単純に、安いしおいしいからだ。

 

店員「はい、こちら、牛丼の並でなります。」

 

楓「あ、どうも。」

 

しかも、早い。

 

店員「七味などは、ご自由にお使いください。」

 

楓「はい。」

 

七味は別に使わないから、箸とスプーンだけかな。コト

 

よし、戻るか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

千聖「……」

 

楓「……コト」

 

千聖「あら、おかえりなさい。牛丼にしたのね。」

 

楓「はい。……白鷺さんのは、まだ来てないんですか?」

 

千聖「ええ。意外と時間がかかるみたい。」

 

楓「そうなんですか。」

 

よ、っと。

 

楓「……」

 

千聖「……先、食べてていいのよ?」

 

楓「いや、なんか悪い気がして。」

 

千聖「先に食べたところで、悪いことなんて何もないわよ。早く食べないとそれ、冷めちゃうわよ?」

 

楓「大丈夫ですよ。僕、家とかでもこんなですし。」

 

千聖「こんな、って……家族全員分のごはんが出来るまで食べないってこと?」

 

楓「ごはんが出来るまでっていうよりは、家族全員のごはんをテーブルに全部並び終えて、みんなでいただきますするまで、ですかね。」

 

千聖「……」

 

楓「? 白鷺さん?」

 

千聖「……あなたって、変なところで律儀なのね。」

 

楓「へ?」

 

『ピー!ピー!ピー!ピー!』

 

楓「あ。」

 

千聖「出来たみたいね。じゃあ、取りに行ってくるわね。」

 

楓「はい。」

 

千聖「……先に食べててもいいのよ?」

 

楓「だ、だから食べませんって。」

 

千聖「ふふ、そう。スタスタスタ……」

 

……最後のってもしかして……

 

……からかわれた?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜15分後〜

 

楓「ごちそうさまでした。」

 

千聖「美味しかった?空見さん。」

 

楓「あ、はい。……白鷺さんは?」

 

千聖「私も、とても美味しかったわよ。」

 

楓「そ、そうですか。」

 

……14:30か。

 

次は、どこ行くんだろう?

 

千聖「さて、行きましょうか。」

 

楓「あ、はい。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【映画館】

 

楓「……ここ、映画館ですよね?」

 

千聖「ええ、そうよ。」

 

白鷺さんについてったら、なぜか再び映画館に来てしまった。

 

……何で?

 

どゆこと?

 

……まさか、また映画見るわけ…「そんなわけないでしょ。」で、すよね~……。

 

っていうか、今またさらっと心読まれた。

 

千聖「今から一度ここで別れて、別行動しましょ。」

 

楓「え?」

 

千聖「そして16:00頃に、またこの場所に集合。いいわね?」

 

楓「え……あ、あの、白鷺さん?」

 

千聖「何かしら?」

 

楓「あ、えっと、その……や、やっぱ、何でもないです。」

 

千聖「……そう。じゃあそういうことだから。……一応言っておくけど、時間厳守よ。」

 

楓「あ。」

 

スタスタスタ……。

 

……行っちゃった。

 

……いきなり別行動って……白鷺さんの考えてることはよく分からないな。

 

……16:00にまたここに集合ってことは、あと1時間半か。

 

……何するかなー。

 

楓「ん?」

 

『ニャンニャンフェア開催中!』

 

楓「……よし、これ見に行こう。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜PM 15:55〜

 

【映画館】

 

楓「……あ、いた。タッタッタッタ……」

 

 

 

 

 

千聖「……やっと来たわね。」

 

楓「す、すみません。待たせちゃってましたか?」

 

千聖「いえ、私も今来たとこよ。」

 

楓「え?あ、そうなんですか……。」

 

千聖「……今から行けば丁度いいわね。」

 

楓「え?」

 

千聖「行くわよ。」

 

楓「あ、ちょ、ちょっと待ってくださいよ~。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【ショッピングモール 外】

 

ザーザーザーザー……!!

 

楓「……雨。」

 

天気予報ではずっと晴れの予報だったのに……。

 

傘なんて持ってきてないよ。

 

千聖「……」

 

楓「はぁ……。」

 

千聖「……仕方ないわね。」ゴソゴソ……

 

? 白鷺さん、何探して…「……」バッ! ……え?

 

千聖「もしものことを考えて、折り畳み傘を持ってきていたのよ。」

 

楓「な、なるほど……。」

 

さ、流石白鷺さん、準備もよろしくて……。

 

千聖「ほら。」サッ

 

楓「え?」

 

千聖「入りなさいよ。」

 

楓「え……い、いいんですか?」

 

千聖「変なことを考えていないならね。」

 

楓「そ、そんなこと考えてないですよ!……でも、僕男だし、白鷺さんは…「あーもうじれったいわね。」グイッ! うわっ。」

 

千聖「……これで文句ないでしょ。」

 

楓「……は、はぁ。」

 

現在の状態を説明すると、こんな感じだ。

 

白鷺さんの傘を僕が持ち、そこに白鷺さんが入っている。

 

まぁ周りから見たら、完全に相合い傘状態だ。

 

楓「……なんか、すみません。」

 

千聖「いいのよ。じゃあ私が道案内するから、あなたはその通りに歩いてちょうだい。」

 

楓「わ、分かりました。」

 

……ヤバイ。

 

これ、めっちゃ緊張するんだけど。

 

今も緊張で、体が震えちゃってるよ……。

 

千聖「……あなた、体震えてるけど、寒いの?」

 

楓「い、いえ、寒くはないんですけど……こういうの、したことなくて……緊張して……。」

 

千聖「……すぐ慣れるわよ。」

 

楓「……そう、ですか。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜15分後〜

 

【???】

 

千聖「着いたわ、ここよ。」

 

楓「……ここは?」

 

相合い傘の中、僕と白鷺さんが着いた場所。

 

そこには、赤い屋根の建物が立っていた。

 

その建物の入口付近にはミニ黒板?みたいなのが立っていて、そこにいろいろ書いてあるということはここから離れて見ても分かった。

 

そして建物の上部には、英語で建物の名前?が書かれていた。

 

楓「……す、SPACE?」

 

……何屋さんなんだろ?

 

よく見ると、人も結構入ってるから人気みたいだし。

 

食べ物屋さんとか、かな?

 

千聖「入るわよ。」

 

楓「え?あ、はい。」

 

白鷺さんは、来たことあるっぽいな。

 

 

 

 

 

カランコロン

 

うわぁ、結構人いるな。

 

千聖「こっちよ。」

 

楓「あ、はい。タッタッタ」

 

千聖「……高校生です。」

 

???「……」

 

楓「あ、僕もです。」

 

???「600円。」

 

楓・千「「……」」サッ

 

???「……ドリンクチケット、あっちで好きなもの頼みな。」

 

千聖「ありがとうございます。」

 

楓「あ、ありがとうございます。」

 

???「……」

 

千聖「……あの人は、ここのオーナーなのよ。」

 

楓「オーナー?」

 

千聖「管理人、って言った方が分かりやすいかしら。」

 

管理人……。

 

ってことは、食べ物屋……ではなさそうだな。

 

だとすると、ここはいったい何の店なんだ?

 

???「あ!千聖ちゃんだー!」

 

楓「!」

 

千聖「? あら、日菜ちゃん。」

 

???「やぁ、千聖。」

 

千聖「薫……。なかなかに珍しい組み合わせね。」

 

日菜「ここに来る途中で偶然会ったんだー。ね、薫くん!」

 

薫「ああ。」

 

楓「……」

 

この二人、白鷺さんの知り合いかな?

 

日菜「……?……」ジー

 

……な、なんか、じーっと見られてる気がするんだけど。

 

楓「……な、何ですか?」

 

日菜「……千聖ちゃん。もしかしてこの子、千聖ちゃんの彼……むぐっ!」

 

千聖「安心して日菜ちゃん。決して、そういうのではないから。」ニコニコ

 

日菜「んー、んー……ぷはぁ。で、でも、千聖ちゃんが男の子といっしょにいるなんて…「この人はただの友達よ。」友達?」

 

千聖「そう。この人、おととい花咲川に転校してきたばかりだから、今日は私がこの街をいろいろ案内してあげてたのよ。」

 

日菜「へぇ~、そうだったんだ。」

 

……白鷺さんがちょっとテンパり気味なの、初めて見た。

 

薫「……でも千聖、花咲川は女子高だろう?女子高に男の子が転校できるのかい?」

 

千聖「え?……た、確かに。言われてみれば、そうね。」

 

楓「……」

 

千聖「……どうなの?空見さん。」

 

楓「え?ぼ、僕ですか!?」

 

千聖「他に誰がいるっていうのよ。あなたのことなんだから、あなたに聞かないと分からないでしょ?」

 

日菜「ねぇ、どうなの?」

 

薫「どうなんだい?」

 

楓「うっ……え、えーっとー……」

 

日・薫「「……」」ジー

 

ど、どうしよう……。

 

僕もそこんとこ、よく分かんないし……。

 

いったいどうしたら……。

 

……!そうだ!

 

楓「ちょ、ちょっと待っててください。」

 

千聖「?」

 

クルッ

 

楓「……」サッ!

 

えーっと、メッセージメッセージ……。

 

それでお母さんに、『今更こんなこと聞くのは変なんだけど、女子高に男が転校なんてできるの?』と。

 

よし送信!ピッ!

 

 

 

 

 

『……ピロリンッ♪』

 

きた!早い!

 

えーっと何々?

 

 

 

 

 

 

……『悪いけど、そのことに関しては何も答えられないわ』。

 

……え?何で?

 

あ、続きが……。

 

 

 

 

 

 

『大人の事情だから』。

 

……え。

 

な、何だよそれ……。

 

千聖「空見さん、もういいかしら?」

 

楓「え!?あ、えっとー、そのー……」

 

日・薫「「……」」

 

楓「……ちょ、ちょっとこれ見てください。」ヒソヒソ

 

千聖「? …… これは?」

 

楓「女子高に男が転校できるのかという質問に対する答えです。お母さんに聞きました。」ヒソヒソ

 

千聖「……これ、答えになってるの?」ヒソヒソ

 

楓「さぁ……?僕もよく分からなくて……。」ヒソヒソ

 

日菜「ねー、二人で何話してるのー?」

 

千聖「! な、何でもないわよ?」

 

……これ、どう説明すりゃいいんだろ……。

 

千聖「空見さん。」ヒソヒソ

 

楓「! は、はい。」ヒソヒソ

 

千聖「私に任せて。」ヒソヒソ

 

楓「へ?」

 

千聖「そ、そんなことより日菜ちゃん、薫。そろそろ時間じゃないかしら?」

 

日菜「え?……あー!ほんとだー!」

 

薫「ふっ。私としたことが、つい時間にルーズに…「あなたは黙っててもらえるかしら。」……ふっ、相変わらずきついね、千聖は。」

 

……え、何今の。

 

知り合い、なんだよね……?

 

日菜「というわけで日菜ちゃん、ステージのほうに向かいましょ。ほら、空見さんも。」

 

楓「あ、はい。」

 

ふぅ。

 

なんとか白鷺さんのおかげで、この話を(強制的に)終わらせることができた。

 

後でお礼言っとこ。

 

……そういや、さっきステージって言ってたよね?

 

なんかショーでもやるのかな?

 

……あ、もしかしてここは、何かの劇場とか?

 

……とにかく、中に入れば分かるか。

 

 

 

 

 

『ワーワー!!』

 

『キャーキャー!!』

 

楓「! す、すごい人……。」

 

日菜「あちゃー、もう始まっちゃったね~。」

 

薫「ふっ、構わないさ。今からじっくりとライブを堪能すればいい。」

 

楓「? ライブ?……って、何の……」

 

千聖「バンドよ。」

 

楓「バンド?」

 

千聖「ここ、SPACEは、ガールズバンドの聖地みたいなの。」

 

楓「ガールズバンド?聖地?」

 

 

 

 

 

紗夜『……私、バンドをやってるんです。』

 

 

 

 

 

はぐみ『はぐみとみーくんはね、バンドやってるんだよ!』

 

 

 

 

 

……あの人達も、ガールズバンド、なのかな?

 

てかそもそも、ガールズバンドって何なの?

 

女子高生のバンドのことを、ガールズバンドって言うの?

 

……よく分からないや。

 

千聖「はい。」

 

楓「え?」

 

千聖「今日のライブの出演者よ。」

 

楓「あ……ありがとうございます。」

 

白鷺さんから渡された携帯の画面を見ると、そこにはいろんなグループの名前が書いてあった。

 

……『GRLSLS CROWN』、『Switch Back』、『クライテリア』、『Glitter Green』……。

 

これ全部、ガールズバンド、ってこと?

 

いろんなグループがいるんだなー。

 

 

 

 

 

???「っ!」バタンッ!

 

楓「ん?」クルッ

 

薫「ああ美咲、来ないのかと思って心配したよ。」

 

美咲「お、遅れてすみません薫さん。親の買い物が結構長引いちゃって……って、え?」

 

楓「! き、君は……」

 

美咲「そ、空見先輩!?何でここに……。」

 

楓「そ、それはこっちの……ってまぁ別にいっか。ひ、久しぶり……。えっと……美咲ちゃん、だっけ?」

 

美咲「そう、ですけど……どうしてあたしの名前を?ていうか、どうして空見先輩がここに?」

 

楓「名前は、松原さんに教えてもらったんだよ。で、ここにいるのは、普通にライブを見に来ただけで……。」

 

美咲「な、なるほど……。」

 

千聖「……」

 

日菜「……」

 

薫「……」

 

美咲「……ライブ、見ましょうか。」

 

楓「そ、そうだね。」

 

……ここからは、ガールズバンドのライブを楽しむとするかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クライテリアのボーカル「さぁみんなー!まだまだ声出していくよー!」

 

 

 

 

 

『ワーワー!!』

 

『キャーキャー!!』

 

千聖「……変ね。」

 

楓「え?」

 

千聖「このタイムスケジュールだと、Glitter Greenのライブは既に終わってるはずなのよ。でも、いまだにGlitter Greenのライブは始まらない。」

 

Glitter Green……。

 

確かに、バンド紹介でまだその名前のバンドは聞いてないな……。

 

日菜「もしかして、メンバーの1人が体調崩しちゃったとか?」

 

薫「だとすると、とても心配だね。ああ、Glitter Greenのメンバーの1人が体調を崩してしまったのかと思うと、胸が苦しくなるよ。」

 

美咲「胸が苦しくなるかどうかはともかくとして、グリグリのライブがないとなると、結構みんなショック受けますよね。ここら辺では、グリグリはとても人気のあるバンドみたいですし。」

 

楓「グリグリ?」

 

美咲「あぁ、Glitter Greenの略ですよ。みんな、Glitter Greenのことをグリグリって言ってるそうです。」

 

楓「へぇー。」

 

 

 

 

 

クライテリアのボーカル「ステージ、最後までありがとう~!」

 

 

 

 

 

観客「あれ~?もう終わり~?」

 

観客「グリグリは~?」

 

日菜「え?ライブ、終わっちゃったよ?」

 

千聖「そう、みたいね。」

 

薫「やはり、グリグリのライブはなかったね。」

 

美咲「グリグリを楽しみにしてた人が、こんなにいるのに……。」

 

……ここら辺でとても人気のあるバンド、か。

 

さぞかしすごいバンドなんだろうなー。

 

……ちょっと聞いてみたかったけど、メンバーの1人が体調不良なら、仕方ないか。

 

……そろっと帰ってる人もいるし、僕もそろそろ帰…「あれ?見て、ステージの上に女の子が立ったよ。」え?

 

楓「女の子?」

 

……ほんとだ。

 

どこかのバンドのメンバーかな?

 

 

 

 

 

香澄「……こ、こんにちは!私、戸山香澄です!」

 

 

 

 

 

『『『……』』』

 

楓・千・日・薫・美『『『……』』』

 

 

 

 

 

香澄「……え、えーっとー……。」

 

 

 

 

 

千聖「……まさかあの子、何の考えもなしにステージに上がったの?」

 

薫「ふっ。まるで巣から飛び立とうとしたけれど、突然恐怖が襲いかかってきて固まってしまった小鳥のようだ。ああ、儚い。」

 

美咲「どういう例えですか、それ。」

 

日菜「あはは、やっぱ薫くんって面白〜い!」

 

楓「……」

 

 

 

 

 

香澄「……き。」

 

 

 

 

 

き?

 

 

 

 

 

香澄「きーらーきーらーひーかーるー♪おーそーらーのーほーしーよー♪」

 

 

 

 

 

……え?

 

千聖「こ、これって……。」

 

薫「きらきら星……?」

 

美咲「……何で?」

 

日菜「よく分からないけど、なんかるんっ♪ってきた♪」

 

……僕達含め、観客全員ぽかーんとしてるんだけど。

 

 

 

 

 

香澄「……ダッ!」

 

 

 

 

 

千聖「え?」

 

楓「に、逃げた?」

 

 

 

 

 

香澄「ほら、有咲もいっしょに!」

 

有咲「お、おい香澄!」

 

 

 

 

 

日菜「あ、戻ってきた。」

 

薫「どうやら今度は、1人がきらきら星を歌い、もう1人が演奏をするらしいね。」

 

美咲「あれって……カスタネット?」

 

 

 

 

 

香澄「きーらーきーらーひーかーるー♪おーそーらーのーほーしーよー♪」

 

有咲「……」

 

 

 

 

 

もう1人の人、ぽかーんとしてるけど……。

 

 

 

 

 

香澄「まーばーたーきーしーてーはー♪みーんーなーをーみーてーるー♪」

 

有咲「……はぁ。」

 

香澄「きーらーきーらーひーかーるー♪」カチッ……カチッ……カチッ……カチッ……

 

 

 

 

 

日菜「あ、カスタネットの音が入ったよ。」

 

 

 

 

 

香澄「おーそーらーのーほーしーよー♪」カチッ……カチッ……カチッ……カチッ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから数分が経過したが、相変わら1人は歌で、1人はカスタネットを使って、2人はきらきら星を演奏していた。

 

リピートも入り、いつまできらきら星をやるのかと思った矢先、もう1人の女の子がギターを持ってステージに出てきた。

 

そして……。

 

 

 

 

 

???「……」~♪

 

 

 

 

 

楓「……あの人、すごい……。」

 

千聖「あれはベースね。」

 

楓「ベース?ギターじゃないんですか?」

 

千聖「ええ。……ちなみに私も、バンドではベースをやっているのよ。」

 

楓「へぇー。……え!?」

 

 

 

 

 

香澄「きーらーきーらーひーかーるー♪」~♪~~♪♪~~♪♪

 

 

 

 

 

あ……きらきら星に、ベースの音が……。

 

 

 

 

 

香澄「おーそーらーのーほーしーよー♪」~♪~~♪♪~~♪♪

 

 

 

 

 

楓「……すごい……。こんなきらきら星、聞いたことない……。」

 

千聖「ええ……。それに、あの子のベース、なかなかのものね。」

 

 

 

 

 

???「……みんなー!お待たせー!」

 

 

 

 

 

日菜「! グリグリだ!」

 

薫「ちゃんと4人いる……体調不良じゃなかったみたいだね。」

 

美咲「とりあえず、一安心ですね。」

 

あれが、Glitter Green……。

 

……何だろう。

 

確かになんか……他のバンドと、風格が違う。

 

 

 

 

 

Glitter Greenのボーカル「りみ、よく頑張ったね。」

 

りみ「あ、ありがとう、お姉ちゃん!」

 

 

 

 

 

! あ、あの人、あのベースの子のお姉さんなの!?

 

な、なんかすごいな……。

 

 

 

 

 

Glitter Greenのボーカル「よーし!それじゃあみんなー、いっくよー!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~ライブ終了後~

 

日菜「いやー、すごかったねー!」

 

薫「最初はどうなることかと思ったが、結果良ければ全て良し、というからね。」

 

美咲「確かに。こればかりは、薫さんの言う通りだね。」

 

千聖「あれが、Glitter Greenの演奏……。私も、まだまだ頑張らなくちゃいけないわね。」

 

あの後グリグリは、あの3人とともにきらきら星を演奏した。

 

グリグリの演奏、きらきら星のアレンジバージョンはほんとにすごかったが、歌、カスタネット、ベースの3人の演奏も良かった。

 

特にベースに関しては、白鷺さんが絶賛していたほどだ。

 

白鷺さんは、『あれだけベースを弾けるということは、あの子もバンドをやっているんじゃないか』って言ってたけど、どうなんだろ……?

 

あ、ちなみにライブは、30分ぐらいで終わった。

 

千聖「どうだった?空見さん。」

 

楓「え?あ……す、すごかったです。特にGlitter Green……グリグリの演奏は、今日聞いたバンドの中で一番すごかったです。」

 

千聖「……そうよね。……Glitter Green、本当にすごいバンドだったわ。」

 

楓「……」

 

 

 

 

 

千聖『ちなみに私も、バンドではベースをやっているのよ。』

 

 

 

 

 

白鷺さんも、バンドを……。

 

氷川さんも、奥沢さんも、あのオレンジ色の髪の子も。

 

僕がこれまで会った人の中には、バンドをやってる人が4人もいる。

 

……もしかして、ここにいる2人や、あの3人、さらには松原さんまでもが、バンドを……?

 

……なーんて、そんなわけないか。

 

偶然だよね、こんなの。

 

 

 

 

 

???「あ、いた!ち、千聖ちゃーん!」

 

楓「!」

 

千聖「あら?彩ちゃん、どうしたの?」

 

彩「はぁ、はぁ……ら、ライブは!?」

 

日菜「あ、彩ちゃん。ライブならもう終わったよ?」

 

彩「えーー!!そ、そんなぁ……。」

 

千聖「来るのが遅いのよ。30分早かったら、まだGlitter Greenのライブが見れたのだけど。」

 

彩「うぅ、ライブ見たかったよ……。」

 

日菜「あはは。ドンマイ、彩ちゃん。」

 

……この人も、白鷺さん達の知り合いかな?

 

……この人も、バンドやってたりしてね。

 

ていうか、白鷺さんの知り合い多いな。

 

千聖「……それじゃあ、私達はそろそろ行くわね。」

 

彩「うん……。……あれ?千聖ちゃん、その子…「勘違いしないでね彩ちゃん。私はただ、この人に街を案内しているだけだから。」街を?……そっか。うん、分かった。」

 

千聖「? そう。なら、いいのだけど……。」

 

楓「……」

 

彩「……えーっと、空見くん、だっけ。」

 

楓「え?」

 

彩「明日はよろしくね。」

 

楓「……へ?」

 

千聖「何してるの?行くわよ。」

 

楓「あ、はい。」

 

千聖「じゃあね、日菜ちゃん、彩ちゃん、美咲ちゃん。」

 

日菜「じゃーねー。」

 

彩「また明日ね、千聖ちゃん、空見くん。」

 

美咲「さようなら。」

 

薫「またね、千聖。」

 

……何であの人、僕の名前知ってたんだろ?

 

それに、明日はよろしくって……。

 

何のことかさっぱりだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

現在の時刻は、17:45。

 

僕と白鷺さんは、SPACEを出て駅のほうに向かって歩いていた。

 

ちなみに、雨はライブ中にやんだらしい。

 

次は、どこに行くんだろう?

 

千聖「……空見さん。」

 

楓「! は、はい!」

 

千聖「あなたはどこか、行きたいところなどあったりするの?」

 

楓「え?い、行きたいところ?」

 

千聖「ええ、どこでもいいわよ。」

 

……行きたいところ、か。

 

……あ!

 

そういやあいつに買ってきてほしいって頼まれてた攻略本、まだ買ってないや。

 

楓「……それなら、ほ、本屋さんに……。」

 

千聖「本屋さん?」

 

楓「はい。弟に買ってきてほしいって言われた本があって、それを買いたいなーって。」

 

千聖「空見さん、兄弟がいたのね。」

 

楓「はい。超生意気な弟ですけど。」

 

千聖「……そう。……分かったわ、それじゃあ行きましょう。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【本屋】

 

千聖「着いたわ、ここが本屋さんよ。」

 

……こんなところに、あったんだ……。

 

千聖「入りましょ。」

 

楓「あ、はい。」

 

カランカラン

 

楓「……で、でかい……。」

 

千聖「ここの本屋さんは、この街で一番大きい本屋さんなのよ。」

 

楓「そ、そうなんですか……。」

 

この街で一番……。

 

いや、にしてもでかすぎない?

 

中にエスカレーターとかあるし。

 

2階建ての本屋なんて、初めて来た……。

 

千聖「それで、弟さんが欲しいって言っている本はどういう本なの?」

 

楓「あ、えーっと……ゲームの本、なんですけど。」

 

千聖「ゲーム?……そうね、そういう類いの本だと……下かしら。」

 

楓「降りるんですか?」

 

千聖「ええ。」

 

白鷺さんについていきエスカレーターを降りると、そこは2階よりも広くて、本もかなりの数だった。

 

この街で一番大きい本屋さんなだけあるな……。

 

千聖「こっちよ。」

 

 

 

 

 

千聖「……たぶんだけど、ここら辺にあると思うわ。」

 

楓「あ、ありがとうございます。」

 

千聖「それじゃあ私は、あそこにある雑誌売り場にいるから。」

 

楓「は、はい、分かりました。」

 

スタスタスタ……

 

……そういや白鷺さん、ここまで迷いなく歩いてたけど、場所知ってたのかな?

 

ってことは、前にも1回来たことある……?

 

……まぁいいや。

 

えーっと、攻略本攻略本……。

 

楓「……!あった!これだ。」

 

よし、あとはこれを買って……ん?

 

楓「……!このゲームの攻略本、もう出てたんだ!」

 

僕が見つけたのは、今僕が一番はまってるゲームの攻略本だった。

 

SNSを見ても全然攻略本の情報がなかったので、もう出ないのかと諦めかけていた。

 

楓「限定ダンジョンがゲットできるシリアルコード……。買うしかないな。」

 

えーっと、財布財布……あった。……パカッ

 

……あ。

 

楓「……お金が、足りない……。」

 

2500円持ってきて、まず映画で1000円使って、次に昼ごはんで320円使って、さっきSPACEで600円使って。

 

……既に2000円も使ってたのか。

 

うぅ、マジか……。

 

楓「……仕方ない、また今度買うか…「ねぇ君。」ん?」

 

知らない人「今さ、その攻略本見てた?」

 

……誰?この人。

 

楓「……はい。」

 

知らない人「ということはやっぱり、君もそのゲーム好きなんだよね?」

 

楓「まぁ……はい。」

 

知らない人「おぉ!やはりそうか!」

 

……マジで何なのこの人。

 

ちょっと怖いんだけど。

 

知らない人「俺もさ、このゲームめちゃくちゃ好きでさ。今超どはまりしてるんだよ。」

 

楓「は、はぁ……。」

 

……悪い人ではないっぽい、けど。

 

知らない人「今どこのダンジョンまで解放してる?」

 

楓「……か、神の神殿、まで。」

 

知らない人「! もうそこまで行ったの!?すげえじゃん!」

 

楓「そ、そうですか?」

 

知らない人「そこまで行ってるなら、もうベテランじゃん!」

 

楓「べ、ベテランって……。」

 

知らない人B「なぁ、何してんだ?」

 

! も、もう1人来た……。

 

知らない人A「この子すげえんだよ!もう神の神殿までいったってさ!」

 

知らない人B「マジ!?ヤバ!うわー、コツとか教えてもらいてー。」

 

知らない人A「なぁ、もしだったらさ、今から近くのファミレス行かね?」

 

楓「へ?」

 

知らない人A「そこでコツとか教えてもらいたいんだけどさ。」

 

楓「……で、でも僕今、ゲーム持ってませんし。」

 

知らない人A「ゲームなら俺とこいつのがあるから大丈夫だよ。」

 

「お、お金も、あまり持ってませんし……。」

 

知らない人B「それぐらい、俺達がおごってやるよ。」

 

楓「……そ、それに、僕…「ちょっとだけでいいからさ。お金だって、俺達がおごってやるから心配ないし。なぁ行こうぜ。」……」

 

どうしよう、めちゃくちゃ怖いんだけど……。

 

知らない人に話しかけられてしかもファミレス行かないかって誘われるとか。

 

……ヤバイ、マジで怖いんですけど……。

 

てか、こういうとき普通は断らなきゃだよね?

 

昔から、知らない人にはついていっちゃだめってよく言うし……。

 

……なんとか、断らなきゃ……。

 

楓「……す、すみません。僕、今…「あ、悪い、ちょっと電話かかってきた。」……」

 

タイミング悪すぎ……。

 

じゃ、じゃあ、もう1人の人に……。

 

楓「あ、あの…「君ってさ、どんなモンスター使ってる?」……はい?」

 

知らない人A「俺は……こんな感じなんだけど、どうすればもっと強くなれるのか教えてほしくて……」

 

楓「は、はぁ……。」

 

……ダメだ。

 

全然タイミングが合わない……。

 

早く攻略本買って、白鷺さんのとこ戻らなきゃなのに。

 

黙って逃げるのもなんか悪いし……マジでどうしよう……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~その頃、雑誌売り場では~

 

……遅い。

 

空見さん、本を買うだけでどうしてこんなに時間かかってるのかしら。

 

……はぁ、仕方ないわね。コト

 

千聖「……」スタスタスタ

 

 

 

 

 

私が教えた場所から動いていないなら、まだここにいるはずだけど。

 

千聖「……空見さん。あとどれくらい待たせれば気が済…「よしOK。というわけで行こうぜ。」?」

 

あれは……。! 空見さん!?

 

と、あの人達は……。

 

楓「い、いえ、僕はまだ、何も……。」

 

知らない人B「だから、お金のことは気にするなって。少しだけでもいいから、君と話がしたいんだよ。」

 

知らない人A「ゲームのコツとかもそうだけど、何より俺達は君と仲良くなりたいんだよ。」

 

楓「で、でも……。」

 

……女の人が男の人にナンパされるというのは分かるけど、男の人が男の人にナンパされるなんていうのは初めて見たわ……。

 

あの人達、もしかして……。

 

知らない人A「なぁ、少しぐらいいいだろ?」

 

楓「す、すみません……。僕、今日は用事が……。」

 

知らない人B「用事か。じゃあ、その用事が終わった後とかはどうだ?」

 

楓「え?」

 

知らない人B「もしだったらさ、俺と連絡先交換しようぜ。」

 

楓「え……。あ、えーっとー……。」

 

……はぁ、もう見てられないわ。スタスタスタ

 

知らない人B「なぁ、連絡先交換しようぜ。」

 

楓「……ぼ、僕…「本を買うだけでどれだけ時間かかってるのかしら?」! し、白鷺さん!」

 

知らない人B「ん?君、この子の知り合い?」

 

千聖「知り合いも何も、今日私はその人に街を案内していたんです。本屋さんに来たのも、その人が来たいと言ったからです。」

 

知らない人B「あ、そうだったんだ。」

 

知らない人A「! ねぇ。もしだったらさ、君もいっしょに行かない?ファミレス。」

 

千聖「……」

 

知らない人B「お、それいいじゃん!ねぇ君、そうしよう!人が多いほうが話も盛り上がるし!」

 

千聖「……大人のくせに、女子高校生をナンパですか。」

 

知らない人A・B「「え?」」

 

千聖「……」スタスタスタ……ガシッ

 

楓「!」

 

千聖「行きましょう、空見さん。」

 

知らない人A「! ちょ、ちょっと待ってよ!別にナンパしてるわけじゃないよ!俺はただ、君達と仲良くなりたくて。」

 

千聖「仲良くなりたいのなら、同じくらいの年齢の人と仲良くなればいいんじゃないんですか?別に高校生と仲良くする必要はないと思いますけど。」

 

知らない人A「そ、それは……。」

 

知らない人B「……」ジー……

 

千聖「……何ですか?人の顔をじっと見て。セクハラですよ?」

 

知らない人B「あ、ごめんごめん。……君の顔、どこかで見たことあるような気がしたから。」

 

千聖「……」

 

知らない人B「なぁ、この子の顔、なんか見覚えない?」

 

知らない人A「え?……うーん、言われてみれば、見覚えあるような、ないような……。」

 

楓「(ま、まさか白鷺さん、この人達とも知り合いだったり……?……いや、流石にないか。)」

 

千聖「……」

 

知らない人B「うーん、どっかで見たことあるんだよなー。10年前ぐらいに、何かで……。」

 

千聖「……元子役の白鷺千聖、って言ったら分かりますか?」

 

楓「……え?」

 

知らない人B「元子役の……」

 

知らない人A「白鷺千聖?」

 

知らない人A・B「「……!あぁ!!」」

 

千聖「……」

 

知らない人A「ま、まさか君……あの、白鷺千聖ちゃん!?」

 

知らない人B「そうだ!俺思い出したよ!確か、はぐれ剣客人情伝に出てた!」

 

楓「……はぐれ?」

 

千聖「……コホンッ!」

 

知らない人A・B「「!?」」

 

千聖「思い出せて良かったですね。それでは、私達はこれで失礼します。」グイッ

 

楓「あ。」

 

知らない人B「! ……ほ、ほんの少しだけ…「まだ何かあるんですか?」ジロッ !! な、何も、ございません……。」

 

千聖「……行くわよ、空見さん。」

 

楓「は、はい……。(白鷺さん、すごい……。)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【本屋 外】

 

カランカラン

 

楓「……」

 

千聖「……」

 

楓「……あ、あの、白鷺さん。」

 

千聖「何かしら?」

 

楓「さっきは……あ、ありがとうございました。」

 

千聖「……」

 

あ、あれ?

 

……まさか、また、怒ってる?

 

千聖「……あなた、花音を助けようとして不良達に立ち向かったんじゃないの?」

 

楓「え?……ま、まぁ、はい。」

 

千聖「そんな勇気がありながら、どうしてさっきはあんなに弱気だったのかしら?」

 

楓「……僕、苦手なんですよ。」

 

千聖「? 苦手って、何が?」

 

楓「知らない人に、話しかけられるのがです。」

 

千聖「……そんなこと言ってたら、学校の先生や生徒はどうなるのよ。」

 

楓「そういうのは、別に大丈夫なんですけど……。さっきみたいに、すごいぐいぐい話しかけてくるような大人の人は、ほんと苦手で……。こんなこと初めてだったので、尚更……。」

 

千聖「……」

 

楓「……なんか、すみません。」

 

千聖「? どうして謝るの?」

 

楓「え?……白鷺さん、怒ってるんじゃないんですか?」

 

千聖「私が怒る理由なんて、何もないわよ。」

 

……僕の、思い違いだったのか……。

 

千聖「……ふふ。」

 

楓「え?」

 

千聖「やっぱりあなたに、花音を任せるわけにはいかないわね。」

 

楓「?」

 

千聖「あら、忘れたとは言わせないわよ?言ったでしょ?あなたが花音の彼氏に相応しいかどうか、見極めさせてもらうって。」

 

楓「……あ。」

 

そういやそんなこと言ってたなこの人……。

 

楓「……そうですか。」

 

千聖「……花音の彼氏とは認めない、と言ったのに、あまりショックそうじゃないわね。」

 

だって、ショックも何も、僕は松原さんの彼氏なんかじゃないんだもん。

 

千聖「……ま、それもそうよね。

 

 

 

 

 

あなたは花音と付き合ってなんかないんだもの。」

 

楓「はは、全くその通りで……え?」

 

千聖「……」

 

楓「……し、白鷺さん?今、なんて……」

 

千聖「あなたは花音と付き合ってなんかないんだから、ショックなわけがないと言ったのよ。」

 

楓「……はぁ、やっと分かってくれたんですか。」

 

千聖「やっと?……あなた、何か勘違いしてない?」

 

楓「え?……違うんですか?」

 

千聖「私は最初から知っていたわよ。あなたが花音の彼氏じゃないってことくらい。」

 

楓「……え?……えぇ!?さ、最初からって、いったいいつから……」

 

千聖「初めてあなたに会ったときから、かしらね。」

 

楓「ほんとに一番最初じゃないですか!?……もう僕、わけが分かりませんよ……。」

 

千聖「……私も、最初花音に彼氏ができたと聞いたときは少し驚いたわ。でも、教室に入ってあなたを見て、すぐにそれはみんなの勘違いだって分かったわ。」

 

楓「? 僕を見て?」

 

千聖「ええ。こんな気弱そうな人が花音の彼氏なわけがないって、確信があったから。実際、さっきもそうだったしね。」

 

……まぁ、別にそのことに関しては否定はしないけどさ。

 

ちょっと僕のことディスってるよね、この人。

 

楓「……じゃあ、そのときに言ってくれればよかったんじゃ……」

 

千聖「もちろん、言おうとはしたわ。宮村さんに話を聞いた後にね。」

 

楓「言おうとは?……あ。」

 

 

 

 

 

千聖『……それと昼休み、屋上に来て。』ボソッ

 

 

 

 

 

楓「察しがついた?ほんとは私、あなたが花音の彼氏ではないことを確認するために、あなたを屋上に呼んだのよ。……でも、宮村さんからあんな話を聞いちゃったから。」

 

楓「あんな話?」

 

千聖「あなたが花音といっしょに、ショッピングモールに行ったときの話よ。」

 

楓「……あ。」

 

千聖「あの話を聞いてから、私の中にだんだんと怒りがこみあげてきたの。」

 

楓「……」

 

千聖「花音があなたを抱き締めたり、いっしょに喫茶店に入ったりしたことは、あなたに詳しく聞けばいいと思ったけど……あなたが花音を泣かしただの、花音をからかっただの、無理矢理に手を繋いただの聞いたときは、本当に虫酸が走ったわ。」

 

楓「……だから白鷺さんは、あんな告白みたいな演技を?」

 

千聖「ええ。あのときはあれが、あなたを問い詰めるために一番最善な方法だと思ったの。」

 

……一番最善、だったのか?

 

え、本当にあれが……?

 

千聖「……でも、あなたの話を聞いて、私の怒りはすぐにおさまった。」

 

楓「え?」

 

千聖「……あなたがそんなことをするような人には見えなくなったから。」

 

楓「……」

 

千聖「もちろん、あなたが気弱そうな人というのもあるけど……なにより、あの場であなたが嘘をつけるような人ではないってことが分かったから。」

 

楓「……白鷺さん……。」

 

千聖「もしあなたがあんな場でも嘘をつけるような人だったら……ドアの心配なんてしないでしょ?」

 

楓「……いや、あのときはほんとにドアが壊れないか心配だったので……。」

 

千聖「だいたい、普通の女子高生がドアなんか壊せるわけないでしょう?」

 

楓「……まぁ、確かによく考えればそうですけど……。でも、すぐに怒りがおさまったんなら、どうしてそのときに僕を問い詰めるのをやめてくれなかったんですか?」

 

千聖「……」

 

楓「? 白鷺さん?」

 

千聖「……ごめんなさい。あなたの反応が面白くて、つい問い詰め続けてしまったの。」

 

楓「……白鷺さんも、意外とそういう一面、あるんですね。」ボソ

 

千聖「え?」

 

楓「あ、いえ、別に。」

 

千聖「……ふふ。」

 

楓「?」

 

千聖「空見さん、今日は楽しかった?」

 

楓「え?あー……まぁ、はい、楽しかったです。」

 

千聖「そう、良かった。……ほんとは、あなたがどんな人なのかというのを知るために、一番最善な方法であろう街案内を選んだのだけれど……いつの間にか、目的を忘れて私もいっしょに楽しんでいたわ。」

 

楓「……」

 

千聖「……1つ、聞いてもいいかしら?」

 

楓「え?あ、はい。」

 

千聖「さっき私が、元子役の白鷺千聖って言ったとき、あなたはどう思ったの?」

 

楓「え?ど、どうって……。」

 

千聖「……」

 

楓「……す、すごい人なんだなぁとは、思いましたよ。」

 

千聖「……それだけ?」

 

楓「は、はい。」

 

千聖「……驚かなかったの?」

 

楓「ま、まぁ、驚きはしましたけど……白鷺さんが元子役だったってのを知っても、『へぇ、そうだったんだー。』みたいな感覚だったので……。あ、失礼だったら、すいません……。」

 

千聖「『へぇ、そうだったんだー。』みたいな感覚?」

 

楓「は、はい。」

 

千聖「……」

 

やっぱり、この表現はまずかったかなぁ?

 

千聖「……ふふ、うふふふっ。」

 

楓「? 白鷺さん?」

 

千聖「ふふふっ、ご、ごめんなさい。……そう。……じゃあ、あなたも花音と同じね。」

 

楓「え?な、何で松原さん?」

 

千聖「私が芸能人だと知ったら、みんなよそよそしくなるのが当たり前だったの。……でも、花音はそうじゃなかった。あの子は、私が芸能人だと知った後でも、普通に話しかけてくれた。私のことを、初めて友達として、“千聖ちゃん”と呼んでくれたのも、花音だったのよ。」

 

楓「……そうだったんですか。」

 

千聖「そして今あなたも、私が芸能人だと知った後でも普通に私と話してくれている。」

 

楓「……」

 

千聖「ありがとう、空見さん。

 

 

 

 

 

……いえ、楓。」

 

楓「!?」

 

千聖「ふふ、いきなり呼び方が変わったから驚いた?……いいのよ?あなたも、私への呼び方を変えても。」

 

楓「……い、いえ、それはちょっと、遠慮しときます……。女子を名前で呼ぶ勇気がないので……。」

 

千聖「そう。……じゃあ、敬語以外でしゃべる勇気ならあるかしら?」

 

楓「け、敬語以外?……あ。」

 

千聖「分かった?どういうことか。」

 

楓「は、はい……じゃなくて……うん。」

 

千聖「ふふ、正解。」

 

ずっと敬語で話してたからか、まだちょっと慣れないな……。

 

いや、ちょっとどころかこれは……。

 

千聖「じゃ、今日はこれでお開きにしましょうか。」

 

楓「そ、そうですね。」

 

千聖「……」

 

楓「? ……!じゃなかった!そ、そうだね。」

 

千聖「ニコッ ええ。」

 

楓「す、すみません……まだ、慣れなくて……。」

 

千聖「いいのよ。少しずつ慣れていけば。」

 

楓「……そ、そう……だね。」

 

今のところ、違和感しかない……。

 

千聖「……」

 

楓「……?どうしま……したの?」

 

千聖「連絡先、交換しない?」

 

楓「え……僕と、ですか?」

 

千聖「ええ。どう?」

 

楓「……まぁ、別にいいですけど。」

 

千聖「ありがとう、楓。……スッ」

 

楓「あ。ゴソゴソ……スッ」

 

えーっと、連絡先連絡先……出た。

 

千聖「はい。これ、私の連絡先。」

 

楓「あ……ありがとう。」

 

僕が先に入力する側か。

 

楓「……よし、出来た。それじゃあはい、僕の連絡先…「終わったわ。」早っ!」

 

まだこっちの連絡先見せて5秒も経ってないのに……驚異のスピードだ……。

 

千聖「それじゃ、私はそろそろ行くわね。」

 

楓「あ、はい。……じゃなくて、うん。」

 

千聖「……自分から言っておいてなんだけど……もしだったら、まだ敬語でもいいわよ……?」

 

楓「そ、そうですか?……じゃあ、そうさせてもらいます。」

 

千聖「悪かったわね、無理させて。」

 

楓「い、いえ、そんな……」

 

千聖「ふふ。……じゃあね楓。また明日、学校で。」

 

楓「……は、はい。さようなら……。」

 

千聖「ええ、さようなら。」

 

スタスタスタスタ……。

 

……行ったか。

 

……さてと、じゃあ僕も帰るかな。

 

『ピロリン♪』

 

ん?メッセージ?

 

……白鷺さんからだ。

 

何々……?

 

 

 

 

 

千聖『そういえば、1つ言い忘れたことがあったの。あなたが花音と手を繋いだというのに関する件なのだけど。あなたの言う通り、無理矢理に手を繋いではいなかったみたいね。それだけ言いたかったの』

 

 

 

 

 

……何だこれ?

 

……あ。

 

 

 

 

 

千聖『嫌がっていたのにあなたは、無理矢理手を繋いだの?』

 

 

 

 

 

そういやそんな話してたな……。

 

……あれ?

 

……!

 

やっぱり僕、嫌がってる松原さんの手を無理矢理繋いでなんかないじゃん!

 

そうだよ!

 

松原さんから手を繋ごうって言ってきたから、手を繋いだんだ。

 

いろいろあって、話がごっちゃになってたんだな……。

 

てか、わざわざそんなことメッセージで言わなくてもいいのに。

 

……ん?何だ?

 

PS?

 

 

 

 

 

千聖『そういえば、1つ言い忘れたことがあったの。あなたが花音と手を繋いだというのに関する件なのだけど。あなたの言う通り、無理矢理に手を繋いではいなかったみたいね。それだけ言いたかったの

 

 

 

 

 

PS.私とあなたは、お友達ってことでいいのかしら?』

 

 

 

 

 

白鷺さん……。

 

楓「……ポチポチポチポチ……」

 

……よし。

 

返信したし、帰るか。

 

あー腹へった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

千聖「……『ピロリン♪』! ……」

 

 

 

 

 

楓『もちろんですよ。これからもよろしくお願いします。』

 

 

 

 

 

千聖「……ふふ。こちらこそよろしく、楓。」




さて、それでは次回予告です。

ちょっとネタバレすると、次回のその次の回はお花見回です。

現実ではもう10月ですが、そこのところはあまり気にしないでください……。

というわけで次回は、お花見回の前の前日談です。


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6話 僕が学校で一番苦手なこと

どうも、知栄砂空です。

ガルパとWE GOのコラボ第2弾が発表されましたね。

それで5人の書き下ろしイラストを見て思ったんですが……千聖さんがめちゃくちゃ可愛いw。

はい、それだけが言いたかっただけですw。

というわけで6話スタートです。


【空見家 玄関】

 

楓の母「楓ー、弁当持ったー?」

 

楓「持ったー。……いってきまーす。」

 

楓の母「いってらっしゃーい。」

 

ガチャ……ガチャリ

 

……今日もいい天気だなー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【花咲川女子学園 校門】

 

先生「おはよう。」

 

楓「おはようございます。」

 

今まで気づかなかったけど、この学校でも先生が校門に立ってあいさつしてたんだ。

 

生徒A「おはよう、空見先輩。」

 

楓「お、おはよう。」

 

生徒B「おはようございます、空見さん。」

 

楓「お、おはよう、ございます。」

 

生徒C「おはよう!空見先輩!」

 

楓「あ、うん。お、おはよう……。」

 

 

 

 

 

校門くぐって学校入ってから玄関で靴履き替えて歩き出すまで、10人ぐらいにあいさつされた……。

 

みんな学年ばらばらだし、知らない人ばっかなのに。

 

……ほんと何で?

 

 

 

 

 

???「お、おはよう、空見くん。」

 

楓「? あ、松原さん。おはよう。」

 

花音「今日は空見くん、学校来るの早いんだね。」

 

楓「お母さんが早く起きろってうるさくてさ。いつも目覚ましかけてる時間より10分も早く起きたよ。」

 

花音「そうなんだ。大変だったんだね。」

 

楓「まあね。」

 

花音「……あ、そういえばさっき空見くん、いろんな人にあいさつされてたよね。」

 

楓「うっ……見られてた?」

 

花音「う、うん。」

 

楓「……そうなんだよね。転校初日の学校帰りや、その次の日の登校中もめちゃくちゃいろんな人に声かけられてさ。」

 

花音「そうだったんだ……。ふふ、空見くん、この学校じゃ有名人なんだね。」

 

楓「いや、別にそういうわけじゃ…「あ、空見先輩!おはようございまーす!」お、おはよう。……はぁ。」

 

花音「だ、大丈夫?」

 

楓「まぁ、なんとか……。」

 

花音「……あ、教室着いたよ。」ガラガラガラ。

 

橋山「あ、おはよう松原さん。お、空見もおはよう!」

 

楓・花「「お、おはよう。」」

 

朝から元気だなぁ、橋山さんは。

 

千聖「おはよう花音、楓。」

 

花音「あ、千聖ちゃん、おはよう。」

 

楓「お、おはようございます。」

 

千聖「珍しいわね。二人がいっしょに登校なんて。」

 

花音「教室に来る途中で会て、そこからいろいろ話しながら来たんだ。ね、空見くん。」

 

楓「う、うん。」

 

クラスメイト「ねぇ白鷺さん、ちょっとお願いしたいことあるんだけど、いいかな?」

 

千聖「ええ、いいわよ。……それじゃあ花音、楓、また後でね。」

 

花音「うん。」

 

楓「……」

 

花音「……誤解、解けたみたいで良かったね。」ボソッ

 

楓「うん、ほんとに……。松原さんと白鷺さんのおかげだよ。」ボソッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜昨夜〜

 

【空見家 楓の部屋】

 

楓「ふわぁ~。……眠い。」

 

『……プルルルル……プルルルル……』

 

楓「電話?こんな時間に?……と言ってもまだ20:00だけど。って白鷺さん!?」

 

『プルル…「はいもしもし。」』

 

千聖『もしもし楓?悪いわね、こんな時間に電話して。』

 

楓「い、いえ……。それで、どうかしたんですか?」

 

千聖『あなたと花音が付き合ってるという話についてだけど。』

 

楓「え?あ、はい。」

 

いきなりだな。

 

千聖『誤解、解けたわよ。』

 

楓「……へ?」

 

千聖『私は最初から、楓と花音が付き合ってないということは分かっていたけれど、クラスのみんなはまだ、楓と花音は付き合ってると思ってるでしょ?』

 

楓「……あ、そういえば。」

 

クラスの人達のこと、すっかり忘れてた……。

 

千聖『それの誤解、私が解いておいたわよ。』

 

楓「え……。ど、どうやって……」

 

千聖『簡単よ。今日私が橋山さん達と花音を呼んで、花音にあなたとショッピングモールに行ったときのことを話させたの。』

 

楓「……」

 

千聖『花音の話を聞いた橋山さん達は、すぐに自分達の思っていたことが誤解だったのだと気づいてくれたわ。あの人達、話せば意外と分かってくれるのね。』

 

楓「は、はぁ。」

 

白鷺さん、相変わらず行動が早いなー……。

 

すごいというか、なんというか……。

 

千聖『そして楓。』

 

楓「! 何ですか?」

 

千聖『私に何か、言わなきゃいけないことがあるんじゃないかしら?』

 

楓「い、言わなきゃいけないこと?……あ。し、白鷺さん、ありがとうございます。」

 

千聖『……ええ。……それじゃあ楓、また明日ね。』

 

楓「え?あ、はい。……おやすみなさい。」

 

千聖『おやすみ。プツンッ』

 

『ツー、ツー、ツー……』

 

……白鷺さんが、誤解を解いてくれた……。

 

最初のほうは怖いって思ってたけど、氷川さんと同じで意外と優しいんだよね、白鷺さんて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜現在〜

 

【花咲川女子学園 2-A教室】

 

『キーンコーンカーンコーン』

 

楓「あ、チャイム鳴った。」

 

花音「1時間目は確か、英語だったよね?」

 

楓「うん、たぶん。」

 

このとき僕は、思いもしなかった。

 

僕が学校で一番苦手なことが、1時間目、2時間目、4時間目と、午前中の授業だけで3時間もふりかかってくることを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ごめん、さっきのナレーションは、流石に大袈裟すぎた。

 

というわけで、1時間目は英語。

 

今僕は、あるいくつかの単語の意味を辞書で調べてるところだ。

 

えーっと、aspect、aspect……。

 

あった。

 

……姿、イメージ、印象。

 

へぇ、なるほど……。

 

先生「皆さん、意味は調べ終わりましたかー?」

 

『ハーイ』

 

『オワリマシター』

 

先生「じゃあ今度はペアワークをするので、隣の人とペアになってください。」

 

んーと次は……何これ?

 

ショウト?シャウト?

 

???「……くん。」

 

……あ、思い出した。

 

shoutはシャウトか。

 

えーっと、shout、shout……。

 

???「……くん!空見くん!」

 

楓「! え?よ、呼んだ?松原さん。」

 

花音「さっきからずっと呼んでたよ~。」

 

楓「そ、そうだったの?ごめん。……で、どうかしたの?」

 

花音「次ペアワークだから、机くっつけないと。」

 

楓「え?……あれ?」

 

みんな、いつの間にか机くっつけてる……。

 

あ、意味調べに夢中で気づかなかったかも……。

 

先生「空見さん、松原さん。あなた達も早くペアになって。」

 

楓「す、すみません!えーっと……」

 

花音「机を横にして、こうやって向かい合わせにくっつけるんだよ。」

 

楓「わ、分かった……。ガタン ごめんありがとう……。」

 

花音「ううん、いいよ。」

 

ペアワークか。

 

……苦手なんだよな、こういうの。

 

先生「じゃあ今からやり方を説明しますね。」

 

……そういや僕、意味調べ途中だった……。

 

えーっと……、! あった。

 

叫ぶ、大声を出す……。

 

あー、なるほど……。

 

よし、これで区切りが…「空見くん!」!

 

楓「え?」

 

花音「ほら、早くやろう。」

 

楓「……やるって、何を?」

 

花音「え……もしかして先生の話、聞いてなかった?」

 

楓「……ご、ごめん。ずっと単語の意味調べてて……。」

 

花音「……空見くん。ちゃんと先生の話は聞こうよ。」

 

楓「ごめん……次は気をつける……。そ、それで、何するって言ってたの?」

 

花音「まずは教科書を開いて。28Pだよ。」

 

楓「わ、分かった。えーっと、28P28P……。ペラペラ ここか。」

 

花音「そしたら、そのページに本文とその訳が書いてあるでしょ?ペアの人とじゃんけんをして、勝ったほうが訳を、負けたほうが本文を読むんだよ。」

 

楓「な、なるほど。分かった。」

 

こういう系のやつは、中学とか前の高校でもやったことあるな。

 

花音「じゃあまずはじゃんけんするよ。最初はグー、じゃんけんポイ。」

 

楓「……」グー

 

花音「……」チョキ

 

楓「か、勝った……。あ、じゃあ先僕が訳読むね。」

 

花音「うん。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~1時間目終了後~

 

『キーンコーンカーンコーン』

 

楓「お、終わったー……。」

 

千聖「……楓。」

 

楓「あ、白鷺さ…「さっきの見てたわよ。先生の話はちゃんと聞きなさい!流石の花音も呆れていたじゃない!」うっ……」

 

花音「わ、私は大丈夫だよ、千聖ちゃん。」

 

千聖「花音、あなたはお人好しすぎるの。こういうときにズバッと言ってあげないとダメなのよ。」

 

花音「そ、それは、分かってるんだけど……。」

 

千聖「ということで楓、分かったわね!?」

 

楓「は、はい、ごめんなさい……。」

 

スタスタスタスタ

 

楓「……え、えっと……ごめん。」

 

花音「も、もういいよ。次、気を付けようね。」

 

楓「うん……。」

 

はぁ、松原さんに迷惑かけちゃった……。

 

次は……国語か。

 

……憂鬱だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ということで、10分間の休憩を挟み2時間目の国語が始まった。

 

先生「それでは、今言った通りに机をくっつけてください。」

 

『ハーイ』

 

クラスメイトA「えーっと、私はこっちか。」

 

クラスメイトB「あぁ違う違う、あんたはそっちだって。」

 

クラスメイトC「よし、これでOKっと。」

 

……今度は、グループワークか。

 

はぁ……。

 

花音「空見くん、私達も早く机くっつけよう。」ガタン

 

楓「う、うん。」ガタン

 

 

 

 

 

同じグループの人A「では、私から発表します。ここの文は……」

 

楓「……ふわぁ~。」

 

……眠い。

 

花音「……」

 

同じグループの人A「……と、このように考えます。」

 

同じグループの人B「ありがとうございます。では、次は私が。私の考えは……」

 

楓「……」ボー

 

今日帰ったら何しようかなー……。

 

花音「……」

 

同じグループの人B「……と、これが私の考えです。」

 

同じグループの人A「ありがとうございます。それでは次、松原さんお願いします。」

 

花音「! は、はい!え、えーっとー、私は……」

 

楓「……!カキカキ」

 

えーっと、ここのボスは防御が固いから……。カキカキ

 

花音「……と、これが私の考えです。ふぇぇ、緊張した~。」

 

同じグループの人A「ありがとうございます。それでは最後、空見さんお願いします。」

 

楓「……」カキカキカキ

 

いや、違うな。これだとスキルを発動させるまでターンがかかりすぎる……。カキカキカキ

 

同じグループの人A「……あの、空見さん?」

 

楓「……!」

 

そうだ、じゃあこいつをチームに入れてさらにこのアイテムを持たせれば……!カキカキカキ

 

花音「……はぁ。……空見くん。」トントン

 

楓「え?な、何?松原さん。」

 

花音「空見くんの番だよ。」

 

楓「え?な、何が……「ん。」ユビサシ ? あ。」

 

松原さんが指差した方を見てみると、そこには黒板がありチョークで……。

 

『なぜ筆者はこのよう表現を用いているのか、その理由を自分なりに考え、グループで発表し話し合いなさい。』

 

と、書いてあった。

 

楓「……アセダラダラ」

 

同じグループの人A「どうしました?空見さん。早く考えを発表…「……ません。」はい?」

 

楓「……すみません。やってませんでした……。」

 

同じグループの人A「やってない?」

 

楓「は、はい……。ほんと、すみません……。」

 

同じグループの人A「……はぁ、分かりました。」

 

完っ全にやらかした……。

 

はぁ……。

 

花音「……空見くん。」

 

楓「え?」

 

花音「こういうグループ活動のときは、自分だけ他のことやったりしないで、ちゃんとグループでやるべきことをやらなきゃダメだよ。」

 

楓「う、うん……。ごめん……。」

 

花音「……もういいよ。」

 

だ、だんだん、松原さんが冷たくなってる気がする……。

 

……だ、だって、仕方ないじゃん。

 

こういうの、ほんとに苦手なんだもん。

 

 

 

 

 

千聖「……はぁ。全く楓は……。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2時間目の国語が終わり、再び10分間の休憩を挟んで3時間目の社会……というか日本史が始まった。

 

この授業では特に移動するようなことはなく、ただ先生の話を聞きながら板書してたらいつの間にか終わった。

 

毎回こんな感じの授業なら比較的楽なのに……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、3時間目の日本史も終わり、いよいよ昼休み前最後の授業である、数学が始まった。

 

数学か……。

 

英語、国語と、2時間続けてグループ活動だったけど、数学なら別にそういうのなさそうだし、大丈夫だ…「それでは、今配ったプリントの問題を解いてみてください。自由に立ったり机を動かしたりして、友達といっしょに解いても構いませんよ。」え?

 

クラスメイトA「ねぇ、いっしょにやろうよ。」

 

クラスメイトB「んー、そうだなー。よし、あいつといっしょにやろ。」

 

クラスメイトC「ほら、早く机くっつけて。」

 

千聖「……花音、いっしょにやりましょう?」

 

花音「千聖ちゃん。うん。いいよ。」

 

………あ、あれ?

 

僕以外みんな、誰かしらとやるの?

 

……僕だけ1人って、めっちゃ気まず……。

 

先生「……空見さんは、1人でいいの?」

 

楓「え?あ、はい。大丈夫です。」

 

先生「そ、そう。」

 

……まぁいいや。

 

こんなん1人でも解けるし、1人のほうが楽だし、さっさとやるか。

 

えーっと、まずこの問題は……。カキカキ。

 

 

 

 

 

花音「……」

 

千聖「……花音。」

 

花音「ふぇ!?な、何?千聖ちゃん。」

 

千聖「そんなに驚かなくても……。気になる?」

 

花音「……うん、ちょっとね……。」

 

千聖「……いいわよ。誘っても。」

 

花音「ほんと!?」

 

千聖「ええ。」

 

花音「ありがとう千聖ちゃん。……空見くん、もしだっ…「空見ー!こっち来なよー!」!」

 

楓「え、橋山さん?」

 

 

 

 

 

橋山「1人でやっててもつまんないでしょ?だからさ、うちらといっしょにやろうよ!」

 

 

 

 

 

楓「……うん。まぁ、いいけど……。」

 

 

 

 

 

橋山「よっしゃ!じゃあほら、机用意しといたからさ、来なよ。」

 

 

 

 

 

楓「わ、分かった。(えーっと、プリントと筆記用具を持って……。)」ガタ

 

クラスメイトD「おぉー、優しいー。」

 

クラスメイトF「橋山さんかっこいいー!」

 

クラスメイトG「よーし!あたし達も集中しよう!」

 

花音「……」

 

千聖「……先、越されちゃったわね。」

 

花音「うん……。き、気を取り直して、私達も早くやろう。」

 

千聖「……」

 

花音「……千聖ちゃん?」

 

千聖「いえ、何でもないわ。じゃあ、やりましょうか。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~4時間目終了後~

 

『キーンコーンカーンコーン』

 

先生「はーい、それじゃあ今日はここまで。机を戻したら、昼休みに入っていいよー。」

 

橋山「やっと終わったー!」

 

浅井「橋山、一人じゃ全然解けなかったね。」

 

橋山「だってムズいんだもん!空見も解けなかったよね?」

 

楓「え?」ズラー

 

浅井「……すごい。全部解けてる……!」

 

橋山「……空見。あんた、裏切ったね?」

 

楓「し、知らないよ!……ただ、数学はまぁまぁ得意だから。」

 

浅井「へぇー、意外。てっきり空見は、国語とかのほうが得意なのかと。」

 

楓「逆に国語なんかダメダメだよ。だって……」

 

 

 

 

 

花音「……」

 

千聖「花音。」

 

花音「え?」

 

千聖「あなた、さっきからずっと楓のこと見てるわよ。……もしかして、ほんとに楓のこと好きになっちゃった?」

 

花音「! べ、別にそんなんじゃないよ///!何言ってるの千聖ちゃん!」

 

千聖「ふふ、ごめんなさい。少しからかっただけよ。……花音、悩みがあるなら、私が力になるわよ。」

 

花音「……うん、ありがとう千聖ちゃん。……悩みってわけじゃないんだけど、ちょっと心配で……。」

 

千聖「心配?……楓が?」

 

花音「うん……。空見くん、これまでのグループ活動で全然積極的じゃなかったでしょ?それで、何でだろうって思って。」

 

千聖「……ただめんどくさかっただけじゃないの?」

 

花音「うーん……そうかもしれないけど……。なんか、違う気がするんだ。……たぶん、だけど。」

 

千聖「……」

 

楓「……はぁ、なんか疲れた……。」

 

花音「! そ、空見くん!(戻ってきた……!)」

 

楓「ん?どうかした?」

 

花音「う、ううん、何も。」

 

千聖「……」

 

花音「……ねぇ、もしだっ…『プルルルルル……プルルルルル……』え?」

 

楓「あ、電話だ。誰からだ……ってあいつかよ。」

 

花音「……」

 

楓「ごめん、ちょっと電話してくるね。……あれ、そういやさっき、何か言おうとしてた?」

 

花音「……ううん、何も言ってないよ。」

 

楓「そう?……じゃ、行ってくる。スタスタスタスタ」

 

花音「……はぁ。」

 

千聖「楓をお昼に誘おうとしてたのね。」

 

花音「! ど、どうして分かったの!?」

 

千聖「お弁当を手に持ちながら話しかけようとしてたから、そうじゃないかって。」

 

花音「そ、そっか。……あはは、タイミングが悪かったみたい。」

 

千聖「花音……。」

 

花音「……千聖ちゃん、彩ちゃん達のとこ、行こ。」

 

千聖「……ええ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【屋上】

 

ガチャ

 

楓「……ここでいっか。」

 

僕が電話をするために来た場所は屋上。

 

前に廊下で電話してたら氷川さんに怒られたから、ここなら誰の迷惑にもならないし、電話にはもってこいの場所だろうと思ったからだ。

 

にしてもあいつ、突然電話かけてくるよな。

 

楓「……もしもし。」

 

???『……』

 

楓「? おーい、もしもし牧人ー?」

 

牧人『……っと。』

 

楓「あ?」

 

牧人『やっっっと出てくれたな……。』

 

楓「あ……うん。」

 

なんか、声が暗え……。

 

楓「あー、最近いろいろ忙しくてさ。電話、全然出れなくて悪かったよ。」

 

牧人『……ってるよ。』

 

楓「え?何?」

 

牧人『分かってるよ。それが嘘なことぐらい……。』

 

楓「……は?」

 

牧人『あのとき俺が何かお前の気にさわることを言ったから、怒って電話に出てくれなくなったんだろ?』

 

楓「あ、あのとき?」

 

牧人『お前の転校初日の日だよ。』

 

……あ、あのときか。

 

……気にさわることなんて、言われたっけ?

 

あのとき僕は、電話してる途中で携帯取られて……あ!

 

……そういうことか。

 

牧人『だから……あのときは、ほんとご…「バカじゃねえの?お前。」へ?』

 

楓「僕、お前に気にさわることなんて言われた覚えねえし。ていうか、言われたとしても自分で自覚してるから別になんとも思わねえし。あ、でも、僕の好きなものにケチつけるとかなら別だけど。」

 

牧人『……』

 

楓「僕が最近全然電話に出れなかったのは、ちょっとあることをやらかして携帯取られてたからだよ。携帯を返してもらった後も、さっき言った通りいろいろ忙しくて電話かける時間がなかったんだよ。(まぁ、全くなかったわけじゃないけど。)」

 

牧人『……そう、だったのか。……なーんだ。普通に俺の勘違いだったのか。』

 

楓「そういうこと。」

 

牧人『じゃあもうこの話は終わりだ!で、最近どうよ?』

 

楓「切り替え早えしいきなりだな。」

 

牧人『どうだ?友達できたか?周りの環境はどうだ?何か嫌なこととかなかったか?』

 

楓「お前は保護者か!そんないっぺんに聞かなくてもちゃんと答えるよ。」

 

牧人『そうか?じゃあまずは、友達できたか?っていう質問から答えてもらおうか。』

 

楓「はいはい。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

牧人『でさ、あいつ、そのとき何したと思う?』

 

楓「何したの?」

 

牧人『余計に石1個使ってスタミナ回復させ…「あ!」ん?どした?』

 

楓「……もうすぐ昼休み、終わる。」

 

牧人『え?……あ、ほんとだ。もうすぐこっちも終わる。』

 

グ~

 

楓「……」

 

牧人『というわけで続きはまた今度な。じゃーな楓。』

 

楓「う、うん。じゃ。プツンッ……ツー、ツー……」

 

……なんだかんだ30分も話しちゃったな。

 

おかげで弁当、食えなかったし……。

 

グ~

 

楓「……はぁ。腹へった……。」

 

……教室戻るか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【2-A教室】

 

楓「……あれ?」

 

屋上から戻ってきたはいいが……なぜか教室には誰もいなく、電気もついていなかった。

 

しかも……。

 

ガチャ、ガチャ

 

教室の鍵も閉まっていた。

 

……え、どゆこと?

 

みんなどこ行ったの?

 

次って、体育じゃないよな?

 

……あれ?

 

次の時間って何だっけ……?

 

 

 

 

 

???「……!空見くん!」

 

 

 

 

 

楓「? あ、先生!あのー、教室誰もいないんですけど、次って何か…「みんなもう体育館に集まってるわよ!」へ?体育館?」

 

先生「朝のホームルームで言ったでしょ?5時間目はオリエンテーションだから、昼休みが終わったらすぐに体育館に集合って。聞いてなかったの?」

 

楓「……あ。そういやそんなこと、言ってたかも……。でも、オリエンテーションっていったい何…「いいから早く体育館に行って!もうすぐ5時間目が始まるわよ!」は、はい!ダッ!」

 

すっかり忘れてた……。

 

そういや先生言ってたな。

 

昼休みが終わった後すぐ体育館に行けって。

 

これ、間に合うかな~……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【体育館】

 

楓「はぁ、はぁ……。つ、着いた……。」

 

僕は全速力で走り、なんとか5時間目が始まる前に体育館に着くことができた。

 

着くことはできたんだけど……これ、どういう並びなんだ?

 

……ん?てかよく見るとこれ、並びじゃなくね?

 

並んでるというよりは……何人かで集まってるって感じ?

 

……やべぇ、何も分かんねえ……。

 

……いいや、端っこにでも座ってよ。スタスタ

 

 

 

 

 

???「……あー!いたー!」

 

 

 

 

 

ん?クルッ

 

……あれ?

 

あの人、確か昨日の……。

 

ピンク色の髪だから、よく覚えてる……。

 

彩「空見くん、こんなところにいたんだね。良かったー、見つかって。」

 

楓「お、同じ学校だったんだ……。」

 

彩「え?あれ、言ってなかったっけ?」

 

楓「うん、聞いてない……。」

 

彩「そ、そっか。……私ね、空見くんの隣のクラスなんだ。」

 

楓「隣?……あ、B組か。」

 

彩「うん!私が最初にそ…『キーンコーンカーンコーン』あ、チャイム鳴っちゃった!空見くん、この話はまた後で。」グイッ

 

楓「え、ちょ、ちょっと!」

 

彩「ごめんね。ちょっと走るよ!」

 

楓「は、走るって……えぇ!?」

 

……すごいスルスルと、いくつものグループの間を抜けてってるな……。

 

行き先が分かってる、ってことか……。

 

まぁそれなら納得、だけど……周りの人に、めちゃくちゃ見られてる……。

 

恥ずい……。

 

ってかこういうの、なんか既視感が……。

 

 

 

 

 

彩「みんなー、お待たせー!」

 

千聖「楓、遅いわよ。」

 

楓「え?……し、白鷺さん!?それに、松原さんと氷川さんも……。それと……」

 

???「……!こ、こん、にちは……。」

 

楓「こ、こんにちは……。」

 

まさかの新顔……。

 

彩「えへへ♪やっとこれで全員揃ったね。」

 

千聖「彩ちゃん、よく楓を見つけてこれたわね。」

 

彩「体育館の端っこのほうにいたよ。1人だけ男の子だし制服も違うから、すぐに見つけられたんだ。」

 

花音「そうだったんだ。」

 

紗夜「そういう点においては、1人だけ男の人がいるというのも、便利なものですね。」

 

花音「さ、紗夜ちゃん、それは少し、空見くんに失礼な気が……。」

 

ガヤガヤガヤ……

 

ガヤガヤガヤ……

 

ガヤガヤガヤ……

 

……みんな、それぞれ班になってたんだ。

 

て、僕は5人と班と……。

 

……知ってる人が多くて良かった……。

 

あ、そうだ。

 

楓「あの、ところで氷川さん、これから何をするんですか?」

 

紗夜「そのことに関して、もうすぐ先生方から話があると思い…「えーそれでは皆さん。ここからはオリエンテーションの時間です。」始まりましたよ。」

 

 

 

 

 

先生「まず初めに、班内で自己紹介をしてください。その後は何を話しても構いません。いろいろなことを話して、班内で交流を深め合いましょう。」

 

 

 

 

 

彩「よーし!それじゃあ、まずは自己紹介だね。」

 

楓「あ、あのー……。」

 

彩「ん?どうしたの?空見くん。」

 

楓「いまいち、状況が飲み込めないんだけど……。これは何の時間なの?」

 

彩「? 先生の言った通り、オリエンテーションだよ。」

 

楓「いや、まぁそれは分かるんだけど……」

 

千聖「彩ちゃんは少し大雑把すぎるのよ。「えぇ~!そうなの~!?」……つまり楓が言いたいのは、このオリエンテーションは何のためにあるのか、ということでしょ?」

 

楓「あ、はい。まさにそれです。」

 

花音「空見くんは先週転校してきたばかりだもんね。」

 

紗夜「知らないのも無理はありませんね。」

 

楓「?」

 

千聖「実は明日、2年生はお花見に行くのよ。」

 

楓「お、お花見……?え、それって、2年生全員でってことですか?」

 

千聖「ええ、そうよ。」

 

紗夜「今日はそのお花見のために、あらかじめ決められた班で交流を深めるための、オリエンテーションなんです。」

 

花音「お花見の会場までは班のみんなで歩いていくから、少しでも班内での交流を深めたほうがより楽しいお花見になるからね。」

 

楓「な、なるほど……。」

 

2年生全員でお花見……。

 

そんな行事があるのかこの学校には。

 

パンフレットにも書いてなかったし、初耳だ……。

 

……要は、このオリエンテーションは班の人達と仲良くなるための時間ってことね。

 

それで班の人達と交流を深めて、明日のお花見に備えると。

 

……あ、昨日あの人……ピンクの髪の人が『明日はよろしく』って言ってたのって、このことだったのか。

 

彩「空見くんへの説明も終わったことだし、今度こそ自己紹介だね!」

 

千聖「彩ちゃん、張り切ってるわね。」

 

紗夜「それでは、誰から自己紹介をしましょうか?」

 

彩「もちろんトップバッターは、空見く…「あら、こういうのは普通、言い出しっぺの人が最初なんじゃないかしら?」え?」

 

紗夜「それもそうですね。では丸山さん、お願いします。」

 

彩「わ、私?……まぁ確かに、私が言い出したんだし、それが一番といえば一番か……。」

 

千聖「それじゃあ自己紹介は、彩ちゃん、私、紗夜ちゃん、花音、燐子ちゃん、最後に楓の順番でいいわね?」

 

紗夜「ええ、構いませんよ。」

 

花音「私も、それで大丈夫だよ。」

 

燐子「わ、私も……それで、OKです。」

 

千聖「楓も、意義なしかしら?」

 

楓「あ、はい。大丈夫です。」

 

千聖「ふふ。それじゃあ彩ちゃん、トップバッターお願いね。」

 

彩「う、うん。……じゃあ、いくね。」

 

花・千・紗・燐「「「「……」」」」

 

彩「……え、えっと~……。」

 

花・千・紗・燐「「「「……」」」」

 

……あ、あれ?

 

自己紹介、しないの?

 

花・千・紗・燐「「「「……?」」」」

 

彩「……あ、あはは……。」

 

千聖「えっとー……どうしたの?彩ちゃん。」

 

彩「ご、ごめん……。いざ自己紹介しようって思ったら、緊張してきちゃって……。」

 

花音「あー、あるよねそういうこと。私も経験あるよ。」

 

彩「だよねだよね!緊張しだしちゃうと、何から言えばいいか分からなくなっちゃうの。」

 

千聖「……でも彩ちゃんの場合、いつも練習しているあれがあるじゃない。それではダメなの?」

 

彩「え……あれでいいの?」

 

千聖「ええ。あ、でも、あのビシッ!はやめてくれると助かるのわ。」ニコッ

 

彩「え?あ、うん、分かった。」

 

ビシッ?

 

やめてくれると助かるって、何で……。

 

何かの攻撃だったりするの?

 

彩「こほんっ!……じゃあ改めて、私から自己紹介やるよ!」

 

花音「頑張って、彩ちゃん。」

 

彩「ありがとう花音ちゃん♪……よーし。」

 

花・千・紗・燐「「「「……」」」」

 

楓「……」

 

 

 

 

 

彩「……まん丸お山に彩を♪丸山彩です♪」ビシッ!

 

楓「……」

 

千聖「……」

 

花音「……あ、彩ちゃん……。」

 

紗夜「丸山さん、あなたという人は……。」

 

燐子「わ、私は……良いと、思います……よ?」

 

彩「ん?……あっ!」

 

あれが……ビシッ?

 

……なんとなく白鷺さんがああ言った理由、分かったかも……。

 

花音「……」

 

紗夜「……」

 

燐子「……」

 

千聖「……誰か、この場の空気をなんとかしてくれないかしら。」

 

彩「ご、ごめん千聖ちゃ~ん!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~3分後~

 

千聖「それじゃあ、次は私ね。」

 

楓「あの、白鷺さん……。」

 

千聖「何?楓。」

 

楓「この人、どうするんですか……?」

 

彩「ブツブツブツブツ……」イジイジ

 

千聖「……大丈夫よ。すぐ元に戻るわ。」

 

楓「そ、それならいいんですけど……。」

 

花音「あはは……。あ、そうだ。ねぇ千聖ちゃん。」

 

千聖「ん?何かしら?花音。」

 

花音「ここからは名前だけじゃなくて、自分の好きな食べ物とかも言うようにしようよ。」

 

千聖「好きな食べ物?……いいわね。そうしましょう。」

 

紗夜「好きな食べ物、ですか。」

 

燐子「ちょ、ちょっと、恥ずかしい……かも。」

 

千聖「それでは始めるわね。……A組の、白鷺千聖よ。好きな食べ物は……そうね。さっぱりした味のものかしら。あ、それと紅茶や、アサイーボウルも好きよ。」

 

楓「あ、アサイーボウル?」

 

千聖「アサイースムージーが入ったボウルに、バナナやクラッカーなど、いろいろな果物を乗せたデザートのことよ。朝食としても人気で、蜂蜜をかけて食べるととても美味しいのよ。」

 

楓「へぇ~……。」

 

千聖「……楓、分かってないわね?」

 

楓「!ギクッ! い、いや、そんなことないですよ!」

 

千聖「ほんとに?……ならいいのだけど。」

 

ふぅ……。

 

……後でアサイーボウル、ネットで調べてみるか。

 

紗夜「では、次は私ですね。……B組の氷川紗夜です。好きな食べ物は……そうですね……特に、ありませんね。」

 

燐子「? でも氷川さん、確かこの前ファミレスに行ったときに、山盛りのポ…「白金さん、そのことは言わないでもらえますか?」! は、はい!すみま……せん。」

 

? ポ……何だろう?

 

山盛りの、ポ、ポ……ポテトサラダ!

 

……んなわけないか。

 

花音「つ、次は私だね。えっと、千聖ちゃんと同じA組の、松原花音です。好きな食べ物は、美味しいお菓子とケーキかな。あ、あとコーヒーと紅茶も好きだよ。」

 

紗夜「白鷺さんも松原さんも、紅茶が好きなんですね。」

 

花音「うん。この前も、2人で近くのカフェに行って、お茶してきたんだ。ね、千聖ちゃん。」

 

千聖「ええ。あのカフェの紅茶はとても美味しかったから、また今度行きたいわね。」

 

花音「うん♪」

 

千聖「そのときは、楓もいっしょにどう?」

 

楓「え、僕もですか?」

 

千聖「別に強制ではないわ。嫌ならいいのだけど…「あ、いえ……。ぼ、僕もそのカフェ、行ってみたいです。」……そう。だって、花音。」

 

花音「え?あ……こ、今度、いっしょに行こうね、空見くん!」

 

楓「う、うん。」

 

何で今、松原さんに振ったんだ?

 

紗夜「では、次は白金さんの番ですね。」

 

燐子「! は、はい……!」

 

! この中で唯一、新顔の人……。

 

千聖「燐子ちゃん、緊張しなくても大丈夫よ。」

 

燐子「は、はい。……び、B組の、白金燐子……です。す、好きな食べ物は……ホットミルク、です……。」

 

白金、さん……。

 

紗夜「ホットミルク、ですか?」

 

燐子「はい。……たくさん練習して、その後家に帰ってから疲れを癒すために飲むホットミルクは、すごく……美味しいんです。」

 

紗夜「そうなんですね。私も今度、飲んでみようかしら。」

 

燐子「あ、それなら私、おすすめのミルクがあるので……今度、氷川さんに差し上げますよ。」

 

紗夜「いいんですか?」

 

燐子「はい……。是非、それを使って、飲んでみてください。心も体も、あったまりますので……。」

 

燐子「ふふ。ありがとうございます、白金さん。」

 

花音「……それじゃあ最後は、空見くんの番だね。」

 

楓「え?……あ、そっか。」

 

千聖「自己紹介はここからが本番、と言っても過言ではないわよ。」

 

楓「え!そうなんですか!?」

 

紗夜「確かに、この自己紹介は空見さんのためにあるようなものですしね。」

 

彩「いよいよ空見くんの自己紹介!?」バッ!

 

花音「あ、彩ちゃん。もう大丈夫なの?」

 

彩「うん!心の中で100回千聖ちゃんに謝ったから、もう平気だよ!」

 

千聖「こ、心の中で、私に、100回……。」

 

花音「あはは……。」

 

彩「あ、私、紗夜ちゃんと燐子ちゃんと同じ、B組の丸山彩でーす♪好きな食べ物は、オムライスとかハンバーグみたいな洋食系かな。」

 

燐子「丸山さんも……みんなと同じように自己紹介、したかったんですね……。」

 

自己紹介は、ここからが本番……。

 

この自己紹介は僕のためにあるようなもの……。

 

……よし。

 

楓「そ、それじゃあ、始めていいですか?」

 

千聖「ええ。いつでもどうぞ。」

 

楓「……い、田舎から引っ越してきました、A組の、空見楓です。好きな食べ物は……ラーメンとか、ポテトサラダとかですかね。あ、あと、チーズケーキも好きです。」

 

千聖「……楓の言うその田舎って、どこにあるの?」

 

楓「あ、県外です。なので、この街へは新幹線で来ました。」

 

彩「そうだったんだ~。…‥あ、じゃあさ、空見くんは何か、趣味とかある?」

 

楓「趣味?」

 

彩「うん!私の場合、SN…「あら、彩ちゃんの趣味はエゴサじゃなかったかしら?」うっ……そ、それは趣味じゃなくて、いつもの日課みたいなものだから……。」

 

千聖「似たようなものでしょ?」

 

彩「……で、でも、自分のプロフィールの趣味の欄がエゴサって、なんか嫌じゃん。アイドルの趣味がエゴサって……。」

 

千聖「本当のことなんだからいいんじゃない?なんだったら、今から事務所に電話して彩ちゃんのプロフィールの趣味の欄をSNS、自撮りの研究からエゴサに変えてもらって…「それだけはダメー!千聖ちゃん、ほんっとにごめん!この通りだから~!」さて、どうしようかしらね~?」

 

紗夜「白鷺さん、さっきのこと、まだ根に持っていたんですね……。」

 

楓「……」

 

花音「? どうしたの?空見くん。」

 

楓「え?あ、いや……。さっき丸山さんが、事務所とか、アイドルとか言ってたから、ちょっと『ん?』ってなって……。」

 

花音「……あ、空見くんは、まだ知らなかったっけ。」

 

楓「?」

 

花音「彩ちゃんはね、アイドルなんだよ。」

 

楓「……へ?あ、アイドル?」

 

花音「うん。近くの芸能事務所でPastel*Palettesっていうアイドルバンドをやっていて、彩ちゃんはそこのボーカルなんだ。」

 

楓「アイドル、バンド……?アイドルのバンドって、あまり聞いたことないけど……。」

 

花音「ふふ、そうだよね。私も、Pastel*Palettesのことを知ってから、アイドルバンドっていうものがあるんだって知ったから。」

 

楓「そ、そうなんだ……。」

 

やっぱり、丸山さんも、バンドやってたんだ。

 

……Pastel*Palettesか……。

 

……いや、ていうか待って?

 

アイドル?

 

アイドルって、あの、アイドル……だよね?

 

千聖「……楓、どうしたの?」

 

楓「あ、いや……。あの、丸山さんの言うアイドルって、あのアイドルですよね……?テレビによく出ていて、バラエティ番組や歌番組とかで紹介されたり歌って踊ったりしてる、あの……。」

 

千聖「彩ちゃんはまだそこまで有名ではないけれど、まぁ、そうね。……それがどうかしたの?あ、もしかして楓って、アイドル好…「いや、そういうわけじゃなくて……。」……そういうわけじゃないのね……。」ボソッ

 

楓「白鷺さんも、元子役で……丸山さんはアイドル……。って考えたら、この学校、すごいな……って、思っちゃって……。」

 

千聖「……あぁ、そういうこと。大丈夫、じきに慣れるわよ。」

 

楓「そ、そうですかね……。」

 

千聖「そうよ。」

 

彩「……」ジー

 

千聖「……ど、どうしたの?彩ちゃん。」

 

彩「さっきから空見くんと何コソコソ話してたの?」

 

千聖「楓はアイドル好きなのか、そうじゃないのか、という話をしていたのよ。」

 

彩「ふーん……。それで、空見くんは何だって?」

 

千聖「それが、意外にも後…「わー!!そのことは言わなくてもいいじゃないですかぁ!」だって実際そう言っていたじゃない。」

 

楓「いや、それとこれとは話が……」

 

彩「そんなことより千聖ちゃん!」

 

楓・千「「そ、そんなことより……?」」

 

彩「今は空見くんの趣味について話してたのに、それがどうして私の趣味の話になるの!?」

 

千聖「……え?」

 

彩「だから!関係ない私の話をどうして空見くんの自己紹介中に持ち出したのかって聞いてるの!」

 

千聖「……し、知らないわよ。彩ちゃんが自分から自分の趣味について話し出したんじゃない。」

 

彩「エゴサの話に入ったのは千聖ちゃんのせいじゃ~ん!」

 

紗夜「いつの話をしているんですか……。」

 

燐子「私も……もうその話は終わったと、思ってました……。」

 

花音「あはは……。」

 

 

 

 

 

先生「えーそれでは、班内での自己紹介はここで区切りをつけたいと思います。」

 

 

 

 

 

彩「あー!自己紹介の時間終わっちゃったー!」

 

千聖「あなたがどうでもいいことで文句言うからでしょ?」

 

彩「ど、どうでもよくないもん!うぅ、まだ空見くんと話したいこと、いっぱいあったのに……。」ガクリ

 

楓「丸山さん……。」

 

花音「彩ちゃん、元気出して?」ポン

 

紗夜「それに、なにもこの時間が全てではないでしょう?」

 

彩「え?」

 

紗夜「この後、学校が終わってから、そして明日のお花見など、この時間でなくてもそういう時間は作れるはずです。だから、そこまで落ち込む必要はないと思います。」

 

彩「紗夜ちゃん……。」

 

燐子「だから丸山さん……元気、出してください。次は、おそらく……」

 

 

 

 

 

先生「みなさん、ここからは自由行動です。他の班の人とも交流を深め合い、いろんな人達と仲良くなってください。」

 

 

 

 

 

自由行動……。

 

……いいや、ずっとここに座ってよう。

 

花音「自由行動か……。浅井さん達のところにでも行ってみようかな。

……空見くん、行かなくていいの?」

 

楓「う、うん……。」

 

花音「うん、って……。空見くん、今ならチャンスだよ。」

 

楓「え、チャンス……?」

 

花音「そう。仲良しづくり、いろんな人と仲良くなるチャンス。」

 

楓「あ……そ、そっか。」

 

花音「私、言ったよね?空見くんの仲良しづくり、私も手伝うから、いっしょに頑張ろうって。」

 

楓「……うん。」

 

確かにあのときは、松原さんのおかげで仲良しづくりを頑張ってみようと思ったし、松原さんも手伝ってくれるって言ってたから、少し自信もついたけど……。

 

けど、今は……。

 

……はぁ、ダメだ。

 

無理……全然自信がついてこない……。

 

花音「? 空見くん?」

 

千聖「……「よし、それじゃあ私も行こうかな。千聖ちゃんも行こうよ。」! え、ええ。」

 

燐子「(……?気のせいか、周りから視線が……、!? ……プルプルプル……」

 

紗夜「? 白金さん?なぜ震えて……、!!」

 

彩「え……な、何?どういうこと?」

 

……!

 

な、何だあれ……。

 

いつの間にか、僕達の班の周りに、人が……。

 

千聖「……どうしたの?あなた達。みんなして周りを取り囲んだりして。」

 

生徒A「あたし達ね、空見と話がしたいんだ。」

 

花音「そ、空見くんと?」

 

生徒A「うん。最初この学校に男子が転校して来たって聞いたときは、いやいやおかしいだろって思ってたけど、あんたらと普通に話してる空見を見てたら、あまりそう思わなくなってさ。」

 

???「……」

 

千聖「……」

 

生徒A「それで思ったんだ。空見のこと、いろいろ知りたいなーって。」

 

生徒B「でも、なかなか話しかけるタイミングが見つからなくて。そんなとき、丁度オリエンテーションがあったんだよ。しかも自由行動!」

 

???「……」

 

彩「な、なるほど……。」

 

生徒A「このチャンスを逃すわけにはいかない!そう思っていざ話しかけに行こうとしたんだけど……。」 

 

ガヤガヤガヤ

 

ガヤガヤガヤ

 

ガヤガヤガヤ

 

生徒B「空見と話したいってやつが他にもいたみたいでさ。こんなに集まっちゃって。」

 

???「……」

 

彩「……う、噂通り、ほんとに人気者、なんだね……。」

 

楓「いや……もうここまで来ると、人気者とか関係なく普通に怖いよ……。」

 

てか、どんだけ集まってんだよ……。

 

自由行動なんだから、もっと他のいろんなとこ行けばいいじゃん……。

 

あと……なんか1人だけ、全然喋ってない人いるんだけど……。

 

何あれ、怖い……。

 

千聖「……おそらくこれは、この体育館にいる2年生の大半がここに集まっているわね。」

 

紗夜「2年生の大半……。圧がすごいわけですね。」

 

燐子「プルプルプルプル……」

 

千聖「……悪いのだけれど、とりあえず少し離れてくれないかしら?友達が怖がって……」

 

生徒B「というわけで空見、今からいろいろ話そうよ!」グイッ!

 

楓「え?ちょ、うわっ!」

 

???「……」

 

花音「あ、空見くん!」

 

千聖「……大丈夫?燐子ちゃん。」

 

燐子「は、はい……なんとか……」

 

彩「……空見くん、大丈夫かなぁ?」

 

 

 

 

 

「空見って、何でこの学校に来たの?」

 

「好きなものとかこととかあるの?」

 

「ペットとか飼ってる?」

 

「前の学校ではどんな感じだった?」

 

???「……」

 

楓「え、えっと……その……」

 

 

 

 

 

紗夜「大丈夫じゃ、なさそうですね……。」

 

千聖「ええ。」

 

燐子「た、助けたほうが、いい……ですよね?」

 

彩「そ、そうだよ!困ってたら助けてあげなきゃ!……ごめんなさい、ちょっと通し……うぐっ!」

 

花音「彩ちゃん!ど、どうしよう……これじゃあ空見くんが…「……」スッ ! ち、千聖ちゃん?」

 

千聖「すみません、少し通してください。すみません…….。」スルスルスル

 

燐子「す、すごい……。」

 

紗夜「白鷺さん、あの人混みを簡単に……。」

 

 

 

 

 

「ねぇ、あたしも空見にいろいろ質問したいよ~!」

 

「ちょっと!ちゃんと順番守ってよ!」

 

「次、私私ー!」

 

???「……」

 

ガヤガヤガヤ

 

ガヤガヤガヤ

 

ど、どうしよう……。

 

どうすればいいんだ、この状況……。

 

い、1秒でも早く、ここから逃げ出したい……けど……。

 

全員女子だし、周り囲まれてるし、逃げようにも逃げられない……。

 

それと……やっぱりあの全然喋らない人、怖い……。

 

金髪だし、制服着崩してるし、絶対ギャルじゃん……。

 

……オリエンテーションの時間が終わるまで、このまま耐えるしかないのか……ん?

 

あ、あれは……!

 

千聖「すみません、通してください。すみません。」

 

楓「し、白鷺さん!」

 

千聖「楓、行くわよ。」ガシッ

 

楓「あ……。」

 

スルスルスルスル……

 

す、すげえ……。

 

この人混みの中を、こんなスルスルと……。

 

千聖「……ボソボソ……」

 

……え?

 

 

 

 

 

千聖「……連れてきたわよ。」

 

花音「千聖ちゃん!空見くんも、大丈夫だった?」

 

千聖「ええ、何も問題なかったわ。ね、楓。」ニコッ

 

楓「え?あ……はい。」

 

……さっきのって、いったい……。

 

生徒A「ねぇちょっと!」

 

楓「!」

 

千聖「……何かしら?」

 

生徒A「何でいきなり空見を連れ出したんだよ!?あたしら、まだ話してる途中だったのに!」

 

千聖「そんなの決まってるじゃない。楓が嫌がっていたからよ。」

 

生徒A「っ!あたし達、空見が嫌がるようなことなんて、何もしてないじゃん!」

 

千聖「確かにあなた達からすれば、楓が嫌がるようなことは何もしていないかもしれない。でも、それはあなた達が勝手にそう思ってるだけでしょ?」

 

生徒A「! そ、そんなことは……。」

 

???「……」

 

千聖「まぁ、もし楓の本当の気持ちを知りたいのなら、直接本人に聞いてみることね。」

 

生徒A「え?」

 

生徒B「そ、そうか……。よし、あんたがそう言うなら……。空見!」

 

楓「!ビクッ は、はいっ!」

 

生徒A「さっきあたしらがいろいろ質問してたとき、別に嫌がってなかったよね?」

 

生徒B「ね?空見。」

 

楓「え、えっと、僕は……」

 

???「……」

 

……この状況、僕はどう答えればいい……。

 

本当のことを言うべきか、嘘のことを言うべきか……。

 

本当のことを言えば、もうさっきみたいに質問攻めされることはなくなる、思う……。

 

でも、それだと……この人達に、悪い気がする……。

 

本当に、僕と仲良くなりたくて、いろいろ質問してくれてたのなら……。

 

生徒A「おい、どうなんだよ空見!」

 

生徒B「早く答えてよ!」

 

千聖「……」

 

ま、まずい、待たせちゃってる……。

 

早く、何か言わないと……。

 

花音「空見くん……。(……私にできること、空見くんの力になれること……。何か、ないのかな……?)」

 

彩・紗・燐「「「……」」」

 

や、ヤバい……緊張で、顔や体が熱くなってきた……。

 

手汗も、すごいし……。

 

生徒A「……空見!いい加減にしろ!!」

 

花・彩・紗・燐『『『っ!?』』』ビクッ!

 

千聖「本性を表したわね……。」

 

こ、この人、こういうタイプだったのかよ……。

 

怖え……。

 

燐子「プルプルプル……」

 

紗夜「白金さん……。あなた、いい加減に…「外野は黙ってて!!」が、外野……。」

 

彩「か、花音ちゃん……」ギュッ!

 

花音「! 彩ちゃん……。(彩ちゃんも、怖いんだ……。空見くん……。)」

 

楓「ぼ、僕は、えっーと……その……え、えっと…「えっとだけじゃ分かんねえだろ!!」! す、すみません!」ビクッ!

 

千聖「……楓。」

 

楓「な、何ですか白鷺さん、こんなときに……」

 

千聖「あなたの本心は、何なの?」

 

楓「! ……」

 

生徒B「おい空見、何か言ったらどう…「うっ、うぅ……」? 空見?」

 

???「?」

 

千聖「? 楓?」

 

楓「うっ……

 

 

 

 

 

……バタンッ」

 

千・彩・紗・燐『『『!?』』』

 

生徒A・B「「え!?」

 

???「!?」

 

花音「空見くん!」ダッ!

 

楓「うっ、うぅ……」

 

ポトッ

 

花音「どうしたの空見くん!ねぇ、空見くん!」

 

楓「……お、お腹が……」

 

花音「え?」

 

楓「お腹が……い、痛い……。うっ!あぁっ!」

 

花音「空見くん!わ、分かった!今すぐ、保健室に連れてってあげるからね!……?これは……」

 

千聖「花音、楓は……?」

 

花音「それが、お腹が痛いみたいで…「ぐあっ!うっ!あぐっ!」! い、今すぐ保健室に連れて行かないと!声を出すぐらい痛がってて……」

 

千聖「わ、分かったわ。彩ちゃん、紗夜ちゃん、燐子ちゃん、いっしょに手伝ってもらえる?」

 

彩「う、うん!」

 

紗夜「わ、分かりました。」

 

燐子「コク」

 

花音「あ、それと千聖ちゃん、これ……」

 

千聖「これは……薬?」

 

花音「空見くんの近くに落ちてて……。もしかして、空見くん……」

 

千聖「……とりあえず、これは私が預かっておくわ。まずは楓を運ぶことが先決よ。」

 

花音「千聖ちゃん……う、うん!そうだね!」

 

生徒A「……な、なぁ、あたしもいっしょに…「必要ないわ。」……」

 

千聖「……でも、そうね。1つだけ頼むことがあるとしたら……このことを、先生達に知らせてくれるかしら?私達を取り囲んでいるせいで、今ここで何が起きているか、先生達からは見えないだろうから。」

 

生徒A「! ……わ、分かった!行くよ!」

 

生徒B「う、うん!」

 

???「……空見……。」

 

千聖「……それじゃあみんな、行くわよ。」

 

彩・紗・燐「「「コクリ」」」

 

花音「空見くん、ちょっとだけ我慢しててね。」

 

楓「う、うん……。」

 

千聖「楓……。はぁ……。」

 

紗夜「……?白鷺さん?」




突然ですが、空見以外のオリキャラの話し方とかがまたあまり定まってないんですよねw。

そこら辺はなんとか、身近にいる人とかを参考にできればなーとは思ってるんですが……。

というわけで次回は、超超超超超~季節はずれのお花見回ですw。

本編は春、現実は秋、ということで、まぁまだ正反対ではないんですがw。

できれば現実で冬になる頃には本編で夏に行きたいんですが……おそらく無理ですねw。

夏までの話数とか考えると、普通に無理があるw……。


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7話 女子と始めて口喧嘩したし、僕のメンタルが弱いということも改めて分かった

どうも、知栄砂空です。

これは、諸事情のため以前投稿した7話を消し、それのタイトルを変えて再び投稿したものです。

もちろん、本文(話の内容)は一切変えておりませんのて、読む分には何も問題ありません。

ですので、深くは考えずにお読みください。


【体育館 外】

 

花音「よいしょ……よいしょ……。」

 

千聖「……花音、本当に1人で大丈夫?」

 

花音「う、うん、大丈夫だよ。よいしょ……よいしょ……。」

 

彩「……空見くん、大丈夫かな……?」

 

燐子「心配、ですね……。」

 

紗夜「……」

 

 

 

 

 

千聖『楓……。はぁ……。』

 

 

 

 

 

紗夜「(白鷺さん、どうしてさっきはため息なんて……。空見さんがお腹を痛がっているというのに……。)」

 

花音「……きゃあっ!」

 

彩・紗・燐「「「!」」」

 

千聖「花音!」ガシッ!

 

花音「……あ、危なかった~。ありがとう、千聖ちゃん。」

 

千聖「え、ええ。……ねぇ、かの…「ごめんね空見くん。大丈夫?痛みとか、強くなってない?」……」

 

楓「う、うん、大丈夫……。」

 

花音「そっか、良かった~。」

 

楓「……ま、松原さん。」

 

花音「? どうしたの?」

 

楓「さっきよりは、痛みも和らいだみたいだし……別に、保健室まで行かなくても…「ダメだよ!」!」

 

花音「今は大丈夫でも、後からまた痛くなることがあるんだよ。そういうのを防ぐためにも、保健室に行って先生に看てもらわなきゃ。」

 

楓「そ、そう?」

 

花音「うん!」

 

楓「……分かった。」

 

千聖「(……この空気じゃ、流石に言い出せないわね……。いったいどうすれば……。)」

 

彩「……花音ちゃん。もしだったら、私が空見くんを…「ありがとう彩ちゃん。でも、大丈夫だよ。」で、でもさっき、つまずいて転びそうになってたし…「それはただ単に、私が不注意だっただけだから。」……」

 

……どうしよう、もうすぐ保健室に着いちゃうよ……。

 

白鷺さんも、今回ばかりは悩んでるみたいだし……。

 

うぅ、松原さんの優しさが辛い……。

 

どうすればいいんだ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

グ~

 

!?

 

花音「え?」

 

彩「……何?今の音……。」

 

グ~

 

燐子「! また……。」

 

……/////。

 

紗夜「近いですね。それもかなり。」

 

や、ヤバイ……ここにきて昼ごはんを食べ損ねた反動が……。

 

何でよりにもよって今鳴るんだよ……。

 

グ~!

 

彩「! またこの音だよ!」

 

花音「……なんか、さっきよりも大きくなっているような……?」

 

千聖「……まさかとは思うけど……」

 

あーもう!!

 

止まれ止まれ止まれ~!!ギュウ、ギュウ

 

紗夜「……

 

 

 

 

 

お腹が、鳴った音?」

 

花・彩・燐「「「え?」」」

 

楓「ギクッ!」

 

紗夜「……さっきの、グ~という音……お腹が鳴ったときの音に、似てませんか?」

 

……グ~!

 

彩「また、この音だ。」

 

千聖「……確かに言われてみれば、少し似ている気もするわね。チラッ」

 

楓「……!?」

 

ば、バレてる……!

 

千聖「……ねぇ彩ちゃん。今日、…「私みんなといっしょにちゃんとお昼食べてたよね!?」まだ何も言ってないわよ……。だったら、いっしょにお昼を食べていた私、彩ちゃん、花音、紗夜ちゃん、燐子ちゃんは除外するとして、残るは……」

 

花・彩・紗・燐『『『……ジー』』』

 

楓「……ダラダラダラ」

 

紗夜「……空見さん。今日、お昼食べましたか?」

 

楓「も、もちろん、ちゃんと食べまし…グ~! ……」

 

彩「……い、今、空見くんのお腹のところから、聞こえたような……。」

 

紗夜「……もう一度聞きます。今日空見さんは、お昼を食べたんですか?食べなかったんですか?」

 

楓「……食べません、でした。」

 

花・千・彩・燐『『『……』』』

 

紗夜「……はぁ。あなたという人は……。」

 

花音「……で、でも、さっきのグ~っていう音の正体が空見くんのお腹の音だったって分かったから、これで安心して保健室に……って、あれ?」

 

千聖「……まずいわね。」ボソッ

 

彩・紗・紗「「「……」」」

 

え?

 

何?この空気……。

 

彩「……ねぇ、空見くん。もしかして、お腹が痛くなった原因って……。」

 

……あれ?

 

もしかして僕……何か誤解されてる!?

 

紗夜「だとすると空見さんは、お昼を何も食べなかったことにより発生した急激な空腹が、急激なお腹の痛みに変わり、あんな大袈裟な事態を招いた、ということですか?」

 

楓「あ、いや、空腹でお腹が痛くなったわけでは……」

 

彩「じゃあ何で?」

 

楓「な、何でって、そりゃあ……だから、ただ普通に、お腹が痛くなっただけで……。」

 

紗夜「……怪しいですね。」

 

楓「! ほ、本当ですって!信じてくだ…グ~! ……」

 

紗夜「……」

 

……ヤベぇ。

 

お腹の音、めちゃくちゃ恥ずかしいんだけど……。

 

……!?

 

千聖「?(楓?)」

 

紗夜「どうしたんですか?空見さん。」

 

楓「あ、いや、その……急に、お腹が……、! い、痛い……。」

 

花音「だ、大丈夫?空見くん。しっかり……!」サッ

 

彩・燐「「……」」

 

紗夜「……あなた、やはり…「だから違いますって!」何が違うというんですか!現に今あなたは、空腹のせいでお腹が痛くなったでしょ!」

 

楓「い、今お腹が鳴ったのは、ほんとにたまたまで……。お腹が痛くなったのも、たまたま…「偶然がそんな二度も重なるはずないでしょ!」でもほんとにたまたまなんですって……、! い、痛い……。」

 

花音「空見くん、無理しないで……。紗夜ちゃんも、刺激しちゃダメ。とにかく今は、先に保健室へ…グ~! !」

 

楓「! い、痛ぇ……。」

 

千聖「……花音、私も手伝うわ。」

 

花音「ありがとう千聖ちゃん。空見くん、すぐ保健室に…「保健室に行っても意味ないですよ、松原さん。」さ、紗夜ちゃん?」

 

紗夜「はぁ……。さっきまであなたの心配をしていた私がバカだったわ。」

 

楓「え?」

 

千聖「……」

 

紗夜「どうせさっきのオリエンテーションもめんどくさかったから、空腹でお腹が痛くなったと偽るために、わざとお昼を抜いたんでしょう?そして予定通り、さっきの時間にお腹が痛くなったという大袈裟な演技をし、ここまで運んでもらった。違いますか?」

 

花音「紗夜ちゃん!」

 

紗夜「どうなんですか?空見さん。」

 

楓「…….ち、違うも何も、僕はそんなこと1mmも…「白鷺さんから聞きましたよ。1時間目と2時間目、グループ活動があったみたいじゃないですか。そこであなたは、同じ班の人と協力しようとせずに、1人だけ他のことをしていた。」……」

 

花音「さ、紗夜ちゃん。もうそこら辺で…「さっきのオリエンテーションだって、グループ活動の一環ですからね。おそらくあなたは、グループ活動が嫌いなのでしょう?だからさっき私が言ったことを実行し、ここまで運んでもらった後に痛みが和らいだと言って私達を騙し……その後どうするつもりだったのかは知りませんが、おおかた、何かしら嘘をついて1人になり、そこから単独行動をするつも…「いい加減にしてくださいよ!」……」! 空見、くん?」

 

楓「そんなの、氷川さんの勝手な推測じゃないですか!人の心を読めるわけでもないのに、よくそんな堂々とでたらめなことを言えますね!?」

 

紗夜「でたらめって、何が…「1、2時間目のグループ活動で、僕が1人別のことをしていたというのはほんとのことですよ。でも、その後のことは全部、氷川さんが勝手に想像して作った、作り話じゃないですか!」……確かにそれは、私の作り話かもしれない。でも、さっきあなたは、お腹が鳴った後にお腹が痛くなった。それはまぎれもない事実…「氷川さんも頑固な人ですね!?だからさっきのはたまたまだと言ってるじゃないですか!」ふっ、どうだか。」

 

花音「ね、ねぇ2人とも、喧嘩は…「「松原さんは黙ってて(ください)!!」」! ご、ごめん……。」

 

彩「空見くん……。」

 

燐子「氷川さん……。」

 

千聖「……」

 

楓「どうして僕の言うこと信じてくれないんですか!」

 

紗夜「あなたが本当のことを言ってくれないから、信じたくても信じられないのよ!」

 

楓「だから!ただ普通にお腹が痛くなっただけって言ってる…「それが怪しいのよ!ただ普通にお腹が痛くなっただけなら、どうしてさっきお腹が鳴った後にお腹が痛くなったりしたのよ!」何度も言ってる通り、あれはたまたま…「あなたそればっかりじゃない!」ほんとなんだから仕方ないでしょ!」

 

彩「ど、どうしよう、これじゃきりがないよ……。」

 

花音「……」

 

千聖「……スッ」

 

燐子「! し、白鷺、さん?」

 

紗夜「もう本当のことを言ったらどうなんですか?オリエンテーションの時間がめんどくさかったから、わざとお昼を抜き空腹で腹痛になったと偽って、ここまで運んでもらった後に単独行動を…「いい加減にしなさい!!」っ!?」

 

花音「!?」

 

彩「ち、千聖ちゃん!?」

 

千聖「紗夜ちゃん!あなた風紀委員でしょ!?そんな人が、こんな場所で大声出していいわけ?」

 

紗夜「! そ、それは…「楓の話を最後まで聞かなかったり、自分で作り話を作ってみたり、自分の都合のいいように話を進めて、何が楽しいわけ!?」……」

 

楓「……し、白鷺さ…「あなたもあなたよ!」!?」

 

千聖「相手が間違って言っていることを否定し続ければいいってものじゃないでしょ!?本当のことを言いたいのなら、はっきり言いなさい!」

 

楓「で、でも僕は、ちゃんと言おうと…「言おうとするだけじゃダメなのよ!言わなきゃダメなの!ちゃんと自分の口ではっきりと!分かる!?キレる力はあるのに、そういう力はないのね!」……」

 

彩「ち、千聖ちゃん。少し、言い過ぎじゃ…「いいのよ。これくらい言わないと、2人は分からないだろうから。」……でも千聖ちゃん。今の、結構効いたみたいだよ?」

 

楓・紗「「……」」ズーン……

 

千聖「……はぁ、自業自得よ。」

 

 

 

 

 

???「……あ!いた!おーい!」

 

 

 

 

 

燐子「!」ビクッ!

 

彩「! どうしたの?燐子ちゃ……、ん?」

 

千聖「あら、橋山さんに浅井さん。」

 

彩「? 千聖ちゃんの知りあい?」

 

千聖「ええ。この2人は、私と花音、楓のクラスメイトなの。それにしても、どうしてここに?」

 

橋山「空見が心配で、体育館を抜け出してきたんだよ。」

 

千聖「そうだったのね。……ところで、宮村さんはいっしょじゃないのかしら?」

 

浅井「あー、宮村なら……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜数分前〜

 

【体育館】

 

橋山『……よし、今のうちだ。』

 

浅井『うん。ほら、行くよ宮村。』

 

音羽『分かってますよ〜。』

 

楓のクラスメイトA『ねぇ先生!恋ばなしてよ!』

 

音羽『……」ピクッ

 

先生『な、何よいきなり。』

 

楓のクラスメイトA『なんか暇だから、それなら先生の恋ばな聞こうかなーって。』

 

先生『そんな理由で……今はオリエンテーションの…『みんなー!先生が恋ばなしてくれるってー!』ちょ、ちょっと!』

 

楓のクラスメイトB『うそー!恋ばなー!?」

 

楓のクラスメイトC『しかも先生のー!?』

 

楓のクラスメイトD『聞きたい聞きたーい!』

 

楓のクラスメイトE『私も私もー!』

 

音羽『その話、私も興味あります!』

 

橋山『あ、おい宮村!』

 

宮村『お二人は先に行っててください。私も後から行きますから!』

 

浅井『え、え~?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

浅井「……というわけなんだよ。」

 

花・彩「「……」」

 

千聖「み、宮村さんらしいわね……。」

 

浅井「まぁ、宮村だからねー。……それよりさ、白鷺さん。……空見と氷川さん、大丈夫なの?」

 

楓・紗「「……」」ズーン

 

橋山「! ひ、氷川さん!?どうしてここに……。てか空見!大丈夫か!?」

 

彩「あ、悪いけど今は、そっとしといてあげて?」

 

橋山「え、でも、空見が…「楓なら、もう大丈夫よ。お腹も、すっかり痛くなくなったみたい。」そ、そうなの?……じゃあ、何なの?あれ。」

 

楓・紗「「……」」ズーン

 

彩「まぁ、いろいろあって……。ね、花音ちゃん。」

 

花音「……」

 

彩「……花音ちゃん?」

 

花音「……え?あ、う、うん。」

 

彩「?(花音、ちゃん?)」

 

浅井「……とまぁ、それはそれとして。

 

 

 

 

 

……あんたはどうしてそんなところに隠れてるの?」

 

燐子「! あ、え、えっと……その……。」

 

橋山「あー、そういやさっきから松原さんの後ろに隠れてたね。」

 

千聖「大丈夫よ燐子ちゃん。この二人は、私と花音の友達だから。」

 

燐子「は、はぁ……。」

 

浅井「……ねぇ。」

 

燐子「!」ビクッ!

 

美菜「私、浅井美菜。さっきは、あんたなんて言ってごめんね。」

 

燐子「……い、いえ……。」

 

美菜「別に私、怖くないから安心して。どっちかと言うと、こいつのほうが怖いから。」

 

橋山「ちょ、浅井!?それどういう意味!?」

 

美菜「あはは、ごめんごめん。……私さ、あなたと友達になりたいんだ。」

 

燐子「私と……友達に……?」

 

美菜「うん。空見、松原さん、白鷺さんとは友達だから……あとは丸山さんと、氷川さんと……あなた。」

 

彩「美菜ちゃん……。」

 

燐子「……」

 

千聖「……燐子ちゃん。」ポン

 

燐子「!」

 

千聖「コク」

 

燐子「……え、えっと……私、白金、燐子と……言います。」

 

美菜「白金さんって言うんだね。……ねぇ白金さん。私と、友達になってくれる?」

 

燐子「……は、はい。」

 

美菜「やった!ありがと、白金さん。」

 

燐子「い、いえ……。こ、これから……よろしく、お願い「もう、固いって!」そ、そう、ですか?」

 

彩「……美菜ちゃん、すごい……。」

 

橋山「あいつ、昔からああでさ。誰とでもすぐ友達になろうとするんだ。」

 

彩「そうなんだ。」

 

千聖「てっきり私、こういうのは橋山さんのほうが得意だと思っていたわ。」

 

橋山「あたしなんか全然。……一番最初に空見に話しかけたのだって、あいつだったしさ。」

 

千聖「え、そうだったの?」

 

橋山「うん。ね、松原さん。」

 

花音「……」

 

橋山「……ねぇ。松原さん、何か考え事してるみたいだけど、何かあったの?」ヒソヒソ

 

彩「それが、私にも分からなくて……。さっき呼んだときも、あんな感じだったんだ。」ヒソヒソ

 

千聖「……」

 

美菜「……ちょっと私、松原さんとあの二人に声かけてくるね。」

 

燐子「は、はい。」

 

 

 

 

 

楓・紗「「……「ばぁ!」!? うわっ(きゃっ)!」」

 

美菜「……そんなに驚かなくても。」

 

紗夜「きゅ、急に今みたいなことをされたら、誰だって驚きますよ!」

 

楓「び、びっくりした~……って、あれ?何で浅井さんが?」

 

美菜「橋山もいるよ。」

 

楓「え?クルッ あ、ほんとだ。」

 

彩「紗夜ちゃん、大丈夫?」

 

紗夜「丸山さん……。 はぁ……私としたことが、取り乱しすぎました……。」

 

燐子「氷川さん、立てますか?」

 

紗夜「白金さん……。ええ、ありがとう。」

 

……はぁ。

 

久しぶりにあんな大声出したよ。

 

流石にあそこまで白鷺さんに言われたら、メンタルが……。

 

あれ?

 

何か、目から水が……。ゴシゴシ

 

……僕って、メンタル弱いんだな。

 

美菜「さて、次は。……松原さん。」ポン

 

花音「!? うわっ!び、びっくりした~。」

 

美菜「(空見と同じ反応……。)さっきからどうしたの?何か悩み事?」

 

花音「え?あ……う、ううん、何でもないの。」

 

美菜「……ほんとに?」

 

花音「う、うん。ほんとに、大丈夫だよ。」

 

美菜「……そっか。ならいいけど。」

 

? 松原さん?

 

千聖「……さてと。それじゃあみんな、そろそろ体育館に戻るわよ。」

 

彩「え、でも千聖ちゃん、まだ空見くんの謎の腹痛のことが…「彩ちゃん。」!」

 

千聖「……戻るわよ。」ニコッ

 

彩「は、はい……。(千聖ちゃん、何で怒ってるの〜……?)」

 

橋山「よし、あたしらも行くぞ、空見。って、何で泣いてんの?」

 

楓「! ゴシゴシ……べ、別に泣いてなんかないよ。」

 

橋山「(いや、今思いっきり目こすってたし……。)」

 

美菜「白金さん、いっしょに行こ。」

 

燐子「! は、はい。」

 

紗夜「……白鷺さん。」

 

千聖「? どうしたの?紗夜ちゃん。」

 

紗夜「一つだけ、聞きたいことがあるのですが。」

 

千聖「何かしら?」

 

紗夜「……体育館を出るとき、空見さんがお腹を痛がっていたというのに、どうしてあなたはため息なんかついてたんですか?まぁ、その腹痛が本当なのかどうかは定かではありませんが。」

 

千聖「……見られていたのね。」

 

紗夜「ええ……。」

 

千聖「あれは……単純に、あきれていたのよ。」

 

紗夜「あきれていた?空見さんにですか?」

 

千聖「ええ。」

 

紗夜「……それは、やはり…「紗夜ちゃーん、千聖ちゃーん。早くー!」!」

 

千聖「今行くわー。……彩ちゃんが呼んでるわ。私達も行きましょ、紗夜ちゃん。」

 

紗夜「……わ、分かりました。」

 

花音「(……さっき私、ずっとおどおどしてるだけで……二人の喧嘩、全然止められなかった……。やっぱり、千聖ちゃんはすごいなぁ。あの喧嘩を、あんな一言だけで終わらせちゃうんだもん……。はぁ……。私も、千聖ちゃんみたいになれたらなぁ……。)」

 

千聖「……花音?行くわよ?」

 

花音「ふぇ?あ、う、うん。今行くよ。」

 

千聖「……」

 

……さっきからどうしたんだろ?

 

松原さん……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜翌日〜

 

【空見家】

 

『……ジリリリリリ!ジリリリリ…カチッ ……』

 

楓「……ムクリ」

 

……うぅ、寒っ、トイレトイレ。

 

 

 

 

 

ふぅ、スッキリした。

 

それから、制服に着替えて……あ、顔洗うの忘れた。

 

 

 

 

 

楓「……」トントントントン

 

楓の母「あ、楓おはよう。」

 

楓「おはよう。」

 

えーっとー……。ガサゴソ

 

お、あった。

 

今日の朝ごはんはジャムパン。

 

ちゃんと座ってと。

 

楓「いただきまーす。パクッ」

 

……ジャムパンうめえ。

 

楓の母「楓、弁当ここに置いといたから、忘れないでね。」

 

楓「はーい。パクッ」

 

楓の母「じゃ、行ってきまーす。」

 

楓「いってらっしゃーい。パクッ」

 

……今日はお母さん早番なんだな。

 

どうりで翔真がいないわけだ。パクッ

 

……ふぅ、美味しかった。

 

楓「ごちそうさま。」

 

さて、学校行くか。

 

楓「……「にゃ~。」! おはようマリー。」

 

マリー「にゃ~ん♪」スリスリ

 

楓「あ、ちょっとスリスリしないでよ。制服に毛が付いちゃう…「にゃ〜?」……うん、いいよスリスリして。」

 

はぁ、上からコロコロ取ってくるか。

 

 

 

 

 

やっと毛全部取れた……。

 

マリー「にゃ~。」

 

楓「もう制服にスリスリしないでよ……って言ってるそばからスリスリするなって!」サッ!

 

マリー「にゃ~?」

 

楓「っ!……じゃ、じゃあ僕、学校行ってくるからね。」

 

マリー「にゃ!」

 

ったく、上目遣いは反則だろ……。ガチャ

 

……あ、曇ってる。……ガチャリ。

 

……えーっと、"今日の天気予報"で検索っと。

 

何々……?

 

『今日の天気は、降水確率80%。午後から雨が降るでしょう。』

 

……マジですか。

 

傘持ってこ。

 

降水確率80%って……お花見出来んのかなぁ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【花咲川女子学園 2-A】

 

花音「……はぁ。」

 

ガラガラガラ

 

花音「あ、おはよう千聖ちゃん。」

 

千聖「おはよう、花音。……それで、あなたはこの教室で何をしているのかしら?彩ちゃん。」

 

彩「あ、千聖ちゃん。おはよう……。」

 

……心なしか、元気がないような……。

 

花音「彩ちゃん、朝からずっとこんな感じなんだ……。」

 

ふむ……。

 

千聖「……空、曇ってるわね。」

 

彩「あぁもう!言わないでよ~!」

 

彩ちゃんはそう言いながら、両手で両耳をふさいだ。

 

なぜ今、彩ちゃんがこんな感じなのか。

 

それは、聞かなくてもだいたい分かった。

 

千聖「……そういえば、今日の降水確率は80%、午後からは雨が降ると言ってたわね。」

 

彩「え!そうなの!?」

 

千聖「ええ。」

 

彩「そ、そんな〜……。」

 

花音「あ、そこまでは知らなかったんだ……。」

 

千聖「それと、強風警報も出ていたわね。」

 

花音「さらに追い討ち!?」

 

彩「強風まで!?……うっ、うう……」

 

あ……少し、やりすぎたかしら……。

 

 

 

 

 

楓「ふわぁ~。」

 

花音「あ、空見くん。おはよう。」

 

楓「松原さん、おはよ…「空見く~ん!」ガバッ! うわっ!ま、丸山さん!?何で!?」

 

彩「千聖ちゃんがいじめるんだよ~!」

 

千聖「え?し、白鷺さん?」

 

千聖「……私はただ、本当のことを言っただけよ。」

 

楓「?」

 

花音「うーん……どっちも間違ったことは言ってないけど……。」

 

ごめんなさい彩ちゃん。

 

今のは、私が悪かったわ。

 

……それにしても、よりによって今日がこんな天気なんてね。

 

……お花見、私も楽しみにしていたのだけれどね。

 

楓「ま、丸山さん///……そろそろ、離してくれない……?」

 

彩「うぅ、千聖ちゃんが、千聖ちゃんが……。」

 

楓「(か、完全に、抱きつかれてる///……。)」

 

……はぁ。

 

全くもう……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜HR終了後〜

 

『キーンコーンカーンコーン』

 

先生「はい、それでは今日のHRは終わり。この後はみんなお待ちかねのお花見だけど、予報ではこの後雨が降るみたいだから、みんな、気をつけて目的地に向かうように。」

 

『『『『ハーイ』』』

 

先生「それじゃあ、解散。」

 

クラスメイトA「ねぇ、いっしょに行こー。」

 

クラスメイトB「いいよー。あ、じゃああの子も誘おっか。」

 

クラスメイトC「予報では雨って言ってたのに、お花見はあるんだね。」

 

クラスメイトD「うち、雨具持ってきたよ。」

 

クラスメイトE「あ、私も傘持ってきた。」

 

ワイワイガヤガヤ

 

ワイワイガヤガヤ

 

ワイワイガヤガヤ

 

……とうとうこの時がやってきた。

 

体育館での1時間ほどの集会、そして15分ほどのHRを経て、次は待ちに待ったお花見だ。

 

現在の時刻は10:30。

 

ここから1時間……はかからない程度って言ってたかな。

 

歩いてお花見の会場である"花美ヶ丘公園"という場所に向かう。

 

……なんか、小学校でたまにあった遠足を思い出すよな。

 

あのときはバスだったけど、今では歩きってのが、成長というか……流れを感じる……。

 

橋山「それじゃあ空見、あたし達は先に行くよ。」

 

楓「あ、橋山さん……うん。」

 

美菜「松原さんと白鷺さんも、後でね。」

 

花音「うん!」

 

千聖「お互い、無事に着けるといいわね。」

 

音羽「白鷺さん、それフラグですよ……?」

 

美菜「まぁまぁ。……今のがフラグにならないことを信じて、お互い有意義なお花見にしよう。」

 

楓・花・千「「「うん(ええ)。」」」

 

音羽「それでは、行って参ります!」

 

橋山「じゃーなー。」フリフリ

 

花音「3人とも、いってらっしゃい!」フリフリ

 

千聖「気をつけてねー。」フリフリ

 

美菜「分かってるー!……空見、後でいっしょにお花見、楽しもうねー!」フリフリ

 

楓「うん!後で!」フリフリ

 

 

 

 

 

千聖「……行っちゃったわね。」

 

花音「うん……。よし!それじゃあ、私達も行こっか。」

 

千聖「ええ。もう学校には戻って来ないから、荷物を置いていかないよう気をつけないと。特に楓。」

 

楓「だ、大丈夫ですよ。ロッカーも机の中も、ちゃんとこうやって手を入れて確認を……ん?」

 

花音「? どうしたの?空見くん。」

 

楓「……なんか、ノートが入ってる……。今日は机に何も入れてないはずなんだけど……スッ」

 

『2-A 学級日誌』

 

花音「あ……。」

 

千聖「そういえば楓、今日日直だったわね。」

 

楓「……わ、忘れてたああああ!!!」

 

花音「……で、でも、今日はお花見だし、明日の朝に提出でも…「急いで教務室行って先生に出してくる!!」ダッ! あ!そ、空見くん!」

 

タタタタ……

 

千聖「最後まで聞かずに飛び出していったわね……。」

 

花音「あはは……だねー……。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【職員室】

 

はぁ……はぁ……つ、着いた……。

 

……コンコン

 

楓「失礼します。」ガラ

 

先生「うわっ。」

 

楓「! す、すいません!」

 

先生「いや、俺もごめん……ってあれ?君は確か、新しく転校してきた……」

 

楓「あ、空見楓です。あの、美澤先生いますか?」

 

先生「あぁ、美澤先生なら、あそこに座ってるよ。」

 

楓「あ、ありがとうございます。」

 

僕達の……2-Aのクラスの担任である美澤先生は、窓側の席に座って何か業務をしていた。

 

忙しそうだけど、渡さないとだもんな……。

 

話しかけざるを得ない……。

 

ていうか、地味に教務室来たの初めてなんだよなー。

 

初日に連れられて行ったのは、理事長室だったし。

 

楓「……あの、美澤先生。」

 

美澤先生「きゃっ!」

 

楓「!?」

 

美澤先生「そ、空見くん……。いきなり呼ばれたからびっくりしたわ……。」

 

楓「す、すみません……。」

 

まさかそこまで驚かれるとは……。

 

美澤先生「あ、いや、謝らなくていいのよ……?それより、私に用があったんでしょ?」

 

楓「あ、はい。えっと、これを渡しに来ました。」

 

美澤先生「あ、日誌!そういえば今日は空見くんが日直だったわね。わざわざありがとう。……今からお花見なんだし、明日の朝でもよかったのよ?」

 

楓「え!?そ、そうなんですか!?」

 

美澤先生「まぁ、もう今更だし、早いに越したことはないからいいんだけどね。」

 

……先に言って欲しかった……。

 

楓「……じゃあ、僕はこれで…「空見くん。」? 何ですか?」

 

美澤先生「この学校には慣れた?」

 

楓「……慣れた、って言ったら、嘘になりますね……。」

 

美澤先生「そ、そう……。そ、そりゃそうよね。女子高に男の子が1人だけだもの、慣れるほうがおかしいわよね。」

 

楓「……でも、仲良しになれそうな人なら出来ましたよ。」

 

美澤先生「な、仲良し?」

 

楓「はい。」

 

美澤先生「仲良し……仲良し……。」

 

……あれ?

 

僕、何か変なこと言ったかな?

 

美澤先生「……ねぇ空見くん。それって、友達じゃダメなの?」

 

楓「へ?」

 

美澤先生「仲良しじゃなくて、友達。なるなら、友達のほうがいいんじゃない?」

 

楓「……でも、仲良しも友達も似たようなもん…「全然違うわよ。」……」

 

美澤先生「……ま、いいわ。この話はまた後日ということで。みんなもう出発し始めてるから、空見くんもそろっと準備して行きなさい。私も、この仕事を終わらせたら向かうから。」

 

楓「わ、分かりました。……それじゃあ、日誌お願いします。」

 

美澤先生「はい、確かに預かりました。」

 

 

 

 

 

楓「失礼しましたー。……ガラ」

 

……はぁ。

 

……。

 

 

 

 

 

『仲良しじゃなくて、友達。なるなら、友達のほうがいいんじゃない?』

 

 

 

 

 

なんか、この前お母さんにも似たようなこと言われた気がする……。

 

……別に、仲良しも友達も似たようなもんでしょ。

 

……いいや、とりあえず教室戻ろう。

 

松原さんと白鷺さんも、待たせちゃってるだろうし……。

 

 

 

 

 

???「そ、空見さん……!?」

 

 

 

 

 

楓「え?クルッ ……!!ひ、氷川さん!?と、白金さん……。」

 

燐子「こ、こんにちは……。」

 

楓「あ、こ、こんにちは。」

 

紗夜「……」

 

な、何で氷川さんがここに……。

 

……き、気まずい……。

 

燐子「あ……えっと…「じゃ、じゃあ僕は、先に教室戻ってるんで。」! あ……。」

 

楓「は、早く戻って、準備しなきゃ…「待っていてください。」……え?」

 

紗夜「私と白金さんの用事が終わるまで、そこで待っていてください。」

 

燐子「ひ、氷川さん……?」

 

楓「……で、でも…「いいですね?」……わ、分かりました……。」

 

燐子「……「行きましょう、白金さん。」あ、は、はい。」

 

紗夜「コンコン……失礼します。」ガラ

 

燐子「し、失礼、します。」

 

……あそこまで圧かけられたら、断りたくても断れないよ……。

 

……仕方ない、ここら辺で待つか。




今更ですが、バンドリ二期の7話の予告がYouTubeに更新されましたね。

あの予告には、いろいろやられましたw。

まず開幕、ベッドの上で寝転がりながら携帯見てる紗夜さんにやられ、途中のちさかののツーショットでやられ、終始猫犬しりとりをやってる友希那さんと紗夜さんとそれに割って入ってきたリサ姉にやられ。

そして7話目にしてやっと、RAISE A SUILENのメンバー全員が1話の中で出てくると。

……もう既に神回の予感しかしないんですがw。

明日の7話も、リアタイで見るしかないですわw。


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8話 全てはこの一瞬の出来事から始まった

どうも、知栄砂空です。

これも前回の7話同様、以前投稿したものを消し、それのタイトルを変えて再び投稿したものです。

詳しい理由は前回の前書きに書いてあるので、知りたい方はそちらをご覧ください。

という話はおいといて。

TwitterでガルパとJINSの書き下ろしコラボイラストが公開されましたね。

……はぁ。

やっぱあのシルエットは花音ちゃんだったか。

まぁTwitterでみんな予想してたから、そうなのかなとは思ってたけど。

……運営さん。

あのめちゃくちゃ超絶可愛すぎるメガネ花音ちゃん。

……ちゃんとカード配布してくれるんですよね!?

WEGOコラボのときは2回とも配布してくれたから、今回ももちろん配布してくれますよね!?

信じてますよ!?運営さん!

てか、紗夜さんも来るとは予想してなかったw。

メガネ花音ちゃんとメガネ紗夜さん……いいなw。


【花咲川女子学園 廊下】

 

楓「……」

 

紗夜「……」

 

燐子「……」

 

……どうしよう。

 

……気まずすぎる……。

 

現在僕と氷川さんと白金さんは、右に氷川さん、真ん中に白金さん、左に僕、という感じで横に並んで歩いている。

 

昨日のあの1件があってから、僕と氷川さんの間には不穏な空気が流れている。

 

そのことは、今ここにいる白金さんはもちろん、松原さんや白鷺さん、丸山さんも薄々感じ取っているはずだ。

 

燐子「……ひ、氷川さん。そろそろ、空…「雨、降らないといいわね、白金さん。」え?は、はぁ……。」

 

紗夜「……」

 

燐子「……そ……空見さんも、氷…「いざお花見するぞっていうときは、晴れてるといいんだけど……。」……そ、そうですね。」

 

楓「……」

 

燐子「(……はぁ。こんなとき、あの人だったら……。)」

 

……てか氷川さん、さっきは圧までかけて待ってろって言ったくせに、いまだに何も言ってこないんだが?

 

それどころか、氷川さんと白金さんが用事終わって教務室から出てから今まで、僕も目も合わせようとしないんだが??

 

何なの?

 

じゃあ何のための『用事が終わるまで、そこで待っていてください。』だったの?

 

もしかしなくても僕、ただたぶらかされただけ?

 

……そう思ったら、なんかだんだん腹立ってきた……。

 

……あぁもうやめよやめよこんなこと考えるの。

 

はぁ……。

 

……お、いろいろ考え事してたら2-A見えてきた……ってあれ?

 

教室、電気ついてない……。

 

あ、よく見たら隣の2-Bも……。

 

……みんな、もう行ったのか。

 

あれ?でもそしたら、松原さんと白鷺さんと丸山さんは……。

 

 

 

 

 

???「あ、帰ってきたよ!」

 

 

 

 

 

楓「!」

 

花音「あ、お帰り。空見くん、紗夜ちゃん、燐子ちゃん。」

 

千聖「3人とも、お疲れ様。」

 

2人ともいないと思ったら、電気が消えた2-Aの教室から出てきた……。

 

楓「あ、あれ?……まだ、教室にいたの……?」

 

花音「? うん、もちろん。何で?」

 

楓「いや、だって……電気、消えてたから……」

 

千聖「わざと消したのよ。教室に3人しかいないのに、ずっと電気点けてたらもったいないでしょ?」

 

楓「あ……確かに……。ん?3人?」

 

彩「ちょっと空見くん!私もいること忘れないでよ〜!」

 

楓「丸山さん!い、いや、別に忘れてたわけじゃ……」

 

紗夜「……丸山さんは隣の教室にいると思った。」

 

楓・彩「「!」」

 

紗夜「そんなところですか?」

 

楓「……はい。」

 

そんなところも何も、一字一句合ってる……。

 

彩「え……そうなの?」

 

楓「うん……。」

 

彩「……っ〜〜///!!ご、ごめん空見くん!私早とちりしちゃった〜///!」

 

楓「だ、大丈夫だよ丸山さん。大丈夫だから落ち着いて……」

 

燐子「氷川さん……。」

 

紗夜「……何ですか?白金さん。」

 

燐子「ふふっ……いえ、何でも。」

 

紗夜「?」

 

花音「日誌、先生に渡せた?」

 

楓「う、うん、バッチリだよ。」

 

花音「ふふ、そっか。」

 

彩「……よ、よーし!それじゃあみんな集まったというわけで、私達も花美ヶ丘公園に向かってしゅっぱーつ!」

 

千聖「お、復活したわね、彩ちゃん。」

 

燐子「は、張り切ってますね……丸山さん。」

 

紗夜「よほど楽しみだったんですね、お花見が。」

 

彩「えへへ……。それもあるけど、みんなでいっしょに歩いてお花見会場に行くのが楽しみだから、ってのもあるんだよ。もちろん、その後のお花見をみんなでするのも、すごく楽しみ!」

 

花音「"みんなと"っていう部分が重要ってことだね。」

 

彩「そう!まさにそういうことだよ花音ちゃん!」

 

紗夜「……ふふっ。そんなふうに言ってもらえるなんて……嬉しい限りです。」

 

燐子「はい、ほんとに……。」

 

千聖「彩ちゃんらしいわね。」

 

丸山さん、なんとか元気出たみたい。

 

このままのテンションで、お花見までいければいいけど……。

 

……あぁ!

 

楓「いけね!荷物、教室に置いたままだっ…「これのこと?」え?あ……。」

 

千聖「そうなるだろうと思って、準備しておいてあげたわよ。」

 

楓「あ、ありがとうございます……。」

 

千聖「紗夜ちゃんと燐子ちゃんみたいに、荷物を持って行けば手間が省けたのよ。まぁもう今更だけど。」

 

楓「あ、確かに……。」

 

花音「まぁまぁ千聖ちゃん……。」

 

千聖「さっ、私達も早く行くわよ。……それとドア、ちゃんと閉めなさいよ。」

 

楓「あ、はい。……ガラガラガラ」

 

花音「……ガラガラガラ」

 

楓「あ、ありがとう松原さん。」

 

花音「ううん、いいよ。」

 

楓「……今日、ちゃんと花見できるかな?」

 

花音「うーん、どうだろ……。でも、天気予報は外れることもあるから、もしかしたら、ね?」

 

楓「あぁ、そっか。……外れるといいね。」

 

花音「うん……。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

学校を出て歩き始めてから、20分ぐらいが経った。

 

現在の時刻は11:00過ぎくらい。

 

今僕達は、大きな橋を渡っている。

 

橋の下には大きな川が流れており、川沿いで釣りをしている人もいれば、川の向こうでボートに乗っている人もいる。

 

彩「うわ~!綺麗な川だね~!」

 

千聖「彩ちゃん、そんなに身を乗り出したら危ないわよ。」

 

彩「大丈夫だよー。あ、見て!魚がいたよ!」

 

燐子「魚……。いっぱい……いますね、氷川さん。」

 

紗夜「ええ、そうね。こんなところに、このような場所があったなんて、知らなかったわ。」

 

彩「あ、釣りをしてるおじさんが手振ってくれた!おーい!」

 

千聖「ちょっと彩ちゃん!……はぁ、全くもう。」

 

彩「あ!今度は魚が跳ねた!あ、こっちにも!……!そうだ!この光景を写真に撮って、あとでSNSにあげよっと♪」

 

丸山さんは、教室を出てからずっと、こんな風にしゃべりっぱなしだ。

 

他の3人は、丸山さんの話に相づちを打ったり、何かコメントしてあげたりしている。

 

たまに3人のほうから話題を出したりもしているようだ。

 

ちなみに僕と松原さんは、4人の後ろをついていくような形で歩いている。

 

もちろん僕達も話したりするが、松原さんはほぼ話しかけてくれる側で、僕はほぼ話しかけられる側だ。

 

花音「ふふ。楽しそうだね、彩ちゃん。」

 

楓「うん。」

 

……はい、これで1つの会話終わり。

 

ご覧の通り、丸山さん達と比べて僕と松原さんの会話は極端に短い。

 

なぜかって?

 

……だって、話すことがないんだもん。

 

まぁ、ショッピングモールに行ったときはいろいろあったけど。

 

こういう場だと、話すことが何にもないんだよ。

 

さっき、話す内容を頑張って考えて話しかけてみたんだけど。

 

 

 

 

 

楓『……まだ、曇ってるね。』

 

花音『そう、だね。』

 

楓『……』

 

花音『……』

 

 

 

 

 

こんなんで会話終了だもん。

 

……丸山さんて、すごいね。

 

 

 

 

 

……ポタ

 

ん?

 

今なんか、水が落ちてきたような……。

 

 

 

 

 

ポタ……ポタ……

 

 

 

 

 

……ザー……!!!!

 

あ、降ってきちゃった……。

 

彩「わぁ~!雨が降ってきた~!」アタフタ

 

千聖「彩ちゃん、雨が降ったぐらいで騒がないの。ほら、私の傘に入りなさい。」バサッ!

 

彩「あ、ありがとう千聖ちゃん!」サッ

 

紗夜「雨、やっぱり降ってきてしまいましたね。」バサッ!

 

燐子「……す、すみません、氷川さん……。」

 

紗夜「? 白金さん、傘は……あ……。」

 

燐子「傘……入れてもらえませんか?……教室に、忘れてきて……しまって。」

 

紗夜「ふふっ。ええ、もちろん。……白金さんでも、忘れ物をするなんてことがあるのね。」

 

楓「よっ、と。」バサッ!

 

傘持ってきといて良かった~。

 

……あれ?

 

楓「ふぇぇ~。」

 

楓「……松原さん、傘は?」

 

花音「え?あ、えっと……実は、家に忘れてきちゃって……。」

 

楓「そ、そうなんだ……。」

 

花音「も、もし迷惑じゃなかったら……空見くんの傘に、入れてもらえないかな?」

 

松原さんは、少し目をそらしながらそう僕に言った。

 

そう言ったときの松原さんは少し顔を赤らめているようにも見えて……。

 

なぜ松原さんがこんな反応をしているのか、僕にはすぐに分かった。

 

楓「も、もちろん!はい。」サッ

 

花音「あ、ありがとう。」

 

そして松原さんは、僕の右隣に入った。

 

花音「……なんかこういうの、緊張、するね。」

 

楓「う、うん。」

 

楓・花「「……///。」」

 

やっぱり、慣れない……。

 

相合い傘状態は、この前の白鷺さんに続いて2回目だけど……。

 

気のせいか、前より緊張感が増している気がする……。

 

花音「……///。」

 

松原さん、さっきからずっと黙ったままだな……。

 

……他のみんなは、どうしてる……。チラッ

 

彩・千・紗・燐『『『……』』』ジー

 

……気のせいかな?

 

なんかみんなの視線が、冷たい気がする……。

 

僕、何もしてないよ?

 

彩「(空見くんと相合い傘……。私もあれをすれば、もっと空見くんと仲良くなれるかな?)」

 

千聖「(楓はやっぱり、こういうシチュエーションに弱いのね。ま、それは花音も同じみたいだけど。)」

 

紗夜「……」

 

燐子「(松原さん……。だ、大胆……です///。)」

 

それにしても、雨降るの早かったなー。

 

予報では午後からって言ってたのに……。

 

……もう、会場に着いてる人いるのかな?

 

お花見の会場である、花美ヶ丘公園に。

 

千聖「えーっと、次はこの道を……」ピラッ

 

そういえば、さっきから白鷺さんが見てるあれって……。

 

花音「どうしたの?空見くん。」

 

楓「あ、いや……今白鷺さんが見てるあれってさ……」

 

花音「あれは、地図だよ?」

 

楓「地図?」

 

千聖「うん。今私達が向かってる、花美ヶ丘公園までの地図。ガサゴソ……ほら、これ。今朝みんなに配られて……。空見くんも持ってるよね?」

 

楓「……アセダラダラ」

 

花音「え、空見くん?……もしかして……」

 

千聖「花音、どうしたの?何かあった?」

 

花音「あ、ううん、私じゃなくて……チラッ」

 

千聖「? 楓?」

 

楓「……あの、僕……地図……」

 

千聖「地図?……まさかあなた……。」

 

楓「……教室に、忘れてきちゃいました……。」

 

千聖「……はぁ、やっぱり……。全く、普段からきちんとしていない証拠よ。」

 

楓「すみません……。」

 

花音「……あれ?でも確か、空見くんの荷物って……」

 

楓「え?……あ、そういえば……」

 

彩「何々?どうしたの?」

 

 

 

 

 

楓『いけね!荷物、教室に置いたままだっ…『これのこと?』え?あ……。』

 

千聖『そうなるだろうと思って、準備しておいてあげたわよ。』

 

楓『あ、ありがとうございます……。』

 

 

 

 

 

楓「……僕の荷物って、白鷺さんが準備してくれたんじゃ……チラッ」

 

千聖「……」

 

紗夜「そうなんですか?」

 

燐子「優しい、ですね……。」

 

花音「……千聖ちゃん……。」

 

千聖「……コホンッ。ま、まぁ、誰にでも失敗はあるわよね……。」

 

楓・花「「……」」

 

千聖「……み、みんなはちゃんと持ってきているわよね?この地図。」ピラッ

 

楓・花「「逃げた(ね)……。」」

 

紗夜「はい、もちろんです。」スッ

 

燐子「私も……ちゃんと、あります。」サッ

 

彩「……」

 

千聖「……彩ちゃんは?」

 

彩「あ、あはは……忘れてきちゃった……。」

 

千聖「……」

 

彩「あ……ご、ごめ…「つ、次は気をつけましょうね、彩ちゃん。」!? う、うん……。」

 

楓「こういうパターンもあるんだ……。」

 

花音「まぁ、今回は流石に……ね?」

 

今回は自分にも落ち度があったため、同じく地図を忘れてきてしまった丸山さんを責められない白鷺さんであった。

 

珍しいこともあるもんだ……。

 

千聖「さ、さぁ、気を取り直して進みましょう。集合時間も遅くても12:00までと決められているのだから、のんびりはしていられないわよ。」

 

12:00まで……。

 

まだ50分以上あるし、流石にそれまでには着くだろう。

 

……よほどのことがない限りは。

 

 

 

 

 

……が、今思えば、この言葉はフラグだった。

 

 

 

 

 

ビュッーーー!!!

 

千聖「きゃっ!な、何よいきなり!」

 

紗夜「くっ……!?きゃっ!」

 

彩「……うわっ!」

 

突然とてつもない強風が吹き、そのせいでこの場にいる6人が一斉に目をつぶった。

 

ビュッーーー!!!

 

……ヒュ--!!

 

……ヒュ~!

 

……ヒュ~。

 

……。

 

……全て、ほんの一瞬の出来事だった。

 

強風が去り、僕達は目を開けた。

 

その目には、吹き飛ばされてぼろぼろになって落ちている3つの傘と、吹き飛ばされたうえに雨に濡れてぐしゃぐしゃになって落ちている4枚の地図が映っていた。

 

彩「……ど、どうしよう……。」

 

千聖「嘘、でしょ?」

 

花音「そ、そんな……地図が……。」

 

燐子「こんな……ぐしゃぐしゃに……。」

 

紗夜「……」

 

みんなが口々に、自分の思ったことを告げた。

 

花音「……」

 

僕も何か言おうと思ったが、あまりに突然の出来事に、言葉が出なかった。

 

花音「……空見くん。」

 

楓「……!」

 

花音「どうしよう……。」

 

松原さんは、目に涙を浮かべながら、僕のほうを見た。

 

その瞬間、僕の胸が急に痛くなった。

 

……こんなことになるなんて、誰も予想できないよ……。

 

楓・花・千・彩・紗・燐『『『……』』』

 

その後は、誰も言葉を発さなかった。

 

いや、発せなかったというべきか。

 

……僕達は、ぼろぼろ、ぐしゃぐしゃになって落ちている傘と地図を、ただ雨に濡れながら見つめることしかできなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~その頃、花美ヶ丘公園では~

 

ザーー!!

 

ザーー!!

 

ザーー!!

 

橋山「……はぁ。全然止む気配ないなー。」

 

音羽「そうですねー。」

 

現在私と橋山と宮村は、公園内のテラスにいる。

 

もうここへは何班か到着しているが、外はこの通り大雨が降っている。

 

今、既に公園に到着している班は、みんなこのテラスに入って待機中だ。

 

橋山「てか雨、さっきより強くなってね?」

 

音羽「確かに。これじゃ雨というより、大雨ですね。」

 

生徒A「お待たせー。」

 

生徒B「みんなの分の飲み物も、買ってきたよー。」

 

橋山「お、サンキュー。」

 

この2人は、私達と同じ班の子だ。

 

どうやら、トイレに行ったついでに私達の分の飲み物もいっしょに買ってきてくれたらしい。

 

生徒A「橋山さんはコンポタ、宮村さんはコーヒー、浅井さんはココアでいいんだよね。」

 

橋山「うん。ありがとね、2人とも。」

 

生徒B「いいっていいって。」

 

生徒A「ねぇ、いろいろ話そうよ。せっかく同じ班になったんだから、仲良くなりたいし。」

 

橋山「おー、賛成!」

 

音羽「私もです!」

 

美菜「……」

 

生徒A「……浅井さん。さっきから何も喋んないけど、どうかしたの?」

 

美菜「え?あ、いや、別に。」

 

橋山「浅井~、さては、空見のこと考えてたな~?」

 

美菜「うん、考えてた。」

 

音羽「即答、ですか……。」

 

生徒B「ねぇねぇ。……浅井さんってもしかしてさ、……空見さんと、これ、なんじゃないの?」

 

ハートマーク……。

 

美菜「んなわけないでしょ。空見はただの友達だよ。」

 

生徒B「え~、ほんとに~?」

 

美菜「……はぁ、携帯で連絡がとれればなー。」

 

生徒B「無視!?」

 

橋山「あ、それな~。ったく何だよ先生、お花見を楽しむために、今日1日は先生達が携帯を預かりますって。」

 

音羽「ご最もです!この世の中、携帯がないといろいろ不便ですもんね。私が先生に聞いてみたところ、今日1日携帯は、職員室の金庫の中にしまっておくそうですよ。」

 

橋山「マジ!?うわー、ないわー。」

 

美菜「……それとこの公園までの道、めちゃくちゃ複雑だったよね。」

 

生徒A「そうそう!私も浅井さんと同じこと思ってた!だって見てよこれ!」バッ!

 

橋山「おー、めちゃくちゃ書き込んでるじゃん。」

 

生徒A「まずが分かりにくいんだよね、この地図。1つの道がめっちゃ細いし、建物や道の名前とかめちゃくちゃ細かく書いてあるけど、小さくて読みづらいし。ほんと、誰が作ったんだよこんな地図、って感じ。」

 

生徒B「先生なら、学校から公園までの道に矢印でも引いといてくれりゃいいのに、道は先生の言ったことをメモしとけ、なんてさ。ひどいにもほどがあるよね。」

 

生徒A「私はなんとか聞き取って矢印書き込んだから大丈夫だったけどさ。さっきいろんなやつに聞いてみたら、やっぱり聞き取れなかったやつが多かったみたいだよ。」

 

生徒B「だって道順言ったの、あのじじいだよ?もう60過ぎの。声はちっちゃいし、言葉は途切れ途切れだし。授業中ちょっとしゃべったぐらいで怒鳴るし、授業中じゃなくても廊下をちょっと走ったぐらいでめちゃくちゃ怒鳴るし。」

 

生徒A「ほんとあのじじい、みんなからの嫌われ者だよね。私もあいつ、大っ嫌い!」

 

あの先生、ボロくそ言われてるじゃん。

 

まぁ私も、聞きりにくかったってのだけは、否定しないけど。

 

橋山「てか、いきなりどうしたん?浅井。」

 

美菜「いや、別に。」

 

ただ、ちょっとだけ嫌な予感がしたんだよね。

 

……私の気のせいかもしれないけど。

 

……さっ、ココア飲も。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

千聖「はぁ……はぁ……ひとまず、あそこで雨宿りさせてもらいましょ。」

 

そう言って白鷺さんが指差したのは、何かの建物の屋根。

 

それを見た僕達は、すぐにその屋根の下へ走っていった。

 

彩「……あ~あ、すごい濡れちゃったよ……。」

 

紗夜「でも、これでなんとか、雨宿りする場所は確保できたわね。」

 

燐子「……くしゅんっ!はっ!す、すみません///。」

 

千聖「いいのよ。それより大丈夫?燐子ちゃん。」

 

燐子「は、はい。少し、冷えるだけですので……。」

 

千聖「少し冷えるだけって……それ全然大丈夫じゃないじゃない。」

 

花音「……くしゅんっ!」

 

紗夜「! ま、松原さんまで……!」

 

花音「わ、私も、大丈夫だから。……くしゅんっ!さ、寒い……。」

 

楓「……」

 

どうやら松原さんも、大丈夫ではないようだ。

 

まぁ、それもそのはずだ。

 

さっきまで普通の雨だったものが、今では大雨。

 

そのせいでみんな、上から下まで全部びしょ濡れだ。

 

しかも運が悪いことに、今は冷風が吹いている。

 

雨に濡れているうえに、冷風が当たる。

 

春にも関わらず、驚異的な寒さだ。

 

……地獄と言ってもいいぐらいの。

 

彩「うぅ、手袋欲しいよぉ……。」プルプルプル

 

紗夜「我慢してください、丸山さん。寒いのは、みんな同じなんですから。」プルプルプル

 

彩「そ、そんなこと言ったって~。」プルプルプル

 

燐子「か、カイロが、欲しい……です。」プルプルプル

 

千聖「ごめんなさい。あいにく、カイロは持ってないのよ。」プルプルプル

 

燐子「! べ、別に、白鷺さんが謝ることじゃ……。」プルプルプル

 

花音「さ、寒いよ……。空見くん……。」プルプルプル

 

楓「う、うん……うっ、寒っ!」プルプルプル

 

だ、ダメだ……。

 

このままじゃ、マジでヤバイかも……。

 

何か……何か、ないか……、あ!

 

楓「そうだ!ゴソゴソ……」

 

花音「? 空見くん、ど、どうしたの?」プルプルプル

 

楓「……!あった!」サッ!

 

彩「空見くん、それは?」

 

楓「あったかいお茶だよ。朝お母さんが、弁当といっしょに置いといてくれたんだ。いらないと思ったけど、持ってきて正解だったよ。」

 

僕がカバンから取り出したのは、ごく普通の黒い水筒だ。

 

さっきも言った通り、実は今日の朝、お母さんが弁当といっしょに置いといてくれたのだ。

 

いらないとは思ったが、せっかく用意してくれたので弁当といっしょにカバンに入れて持ってきていた。

 

その結果、今まさにお母さんが用意してくれた水筒が役に立つときがきたということだ。

 

楓「松原さん。これ、みんなで回し飲みしようよ。」

 

花音「え?……でも、いいの?」

 

楓「もちろん。あったかいお茶でも飲めば、少しは寒くなくなると思うし。どうですか?白鷺さん。」

 

千聖「……確かに、楓の言う通りね。じゃあ最初に楓が飲んで、次は花音、その次は私、というふうに、順番に飲むことにしましょう。」

 

楓「あ、僕は一番最後でいいですよ。」

 

紗夜「!?」

 

花音「? どうしたの?紗夜ちゃん。」

 

紗夜「へ?あ、いや、別に……。」

 

燐子「(氷川、さん?)」

 

千聖「え?いや、でも…「僕は一番最後でいいですから。先にみんなで、好きなだけ飲んでください。」……そ、そう?」

 

楓「はい。あ、でも、僕の分ちゃんと残しといてくださいよ?」

 

千聖「ええ、それはもちろん。じゃあ、お言葉に甘えさせてもらおうかしら。ね、花音。」

 

花音「ふぇ?あ、う、うん、そうだね。」

 

楓「じゃあ、はい。松原さん。」

 

花音「あ、うん。ありがとう。」

 

紗夜「(……みんな、今の空見さんの言葉で、何にも気づいてないのかしら?)」

 

千聖「……」

 

燐子「……」

 

彩「……花音ちゃん、飲まないの?」

 

花音「え?あ、う、ううん、飲むよ?……じゃ、じゃあ空見くん、いただきます。」

 

楓「? うん。」

 

花音「……ゴクゴクゴク……」

 

楓「……」

 

花音「……はぁ、美味しかった。」

 

千聖「どう?花音。少しはあったまった?」

 

花音「うん。じゃあはい。次、千聖ちゃん。」

 

千聖「ありがとう、花音。それじゃあ、頂くわね、楓。」

 

楓「は、はい。(松原さんも白鷺さんも、いちいち断りなんか入れないでそのまま飲めばいいのに。)」

 

千聖「……」ゴクゴクゴク……

 

楓「……」

 

千聖「……ふぅ、やっぱり暖かいものを飲むと、体があったまるわね。はい、燐子ちゃん。」

 

燐子「あ、ありがとうございます。……ゴクゴクゴク……」

 

紗夜「(……白金さんも、気づいていないみたいね……。どうしてみんな、気づかないのかしら。)」

 

燐子「……ふぅ、あったまりました。では次は、丸山さん、ですね。」

 

彩「ありがとう、燐子ちゃん♪いただきまーす♪ゴクゴクゴク……」

 

燐子「……」

 

ゴクゴクゴク……

 

紗夜「……」

 

ゴクゴクゴク……

 

……ん?

 

花・千「「(……彩ちゃん、ちょっと飲みすぎじゃない(かな?)かしら。)」」

 

彩「……ぷはぁ!美味しかった!はい、紗夜ちゃん。」

 

紗夜「! え、ええ。」

 

彩「紗夜ちゃん。ゴクッていっちゃっていいよ、ゴクッて。」

 

紗夜「ご、ゴクッ、ですか?」

 

千聖「紗夜ちゃん。彩ちゃんの言うことは聞かなくてけっこうよ。」

 

彩「え~!千聖ちゃんひどいよ~!」

 

その前に、ゴクッていったら僕の分がなくなっちゃうような……。

 

まぁ、氷川さんだから大丈夫か。

 

紗夜「(ご、ゴクッ……。! だ、ダメですダメです!この後、空見さんがこれを飲むんですから。……かと言って、ここで飲まなかったら……。)」

 

楓「……氷川さん、飲まないんですか?」

 

紗夜「! い、いえ、もちろん飲みます。」

 

楓「そ、そう、ですか。」

 

紗夜「(は、早く飲まないと……。で、でも、これを飲んだら……空見さんと、か……か……関、接…「あら?あなた達、ここで何してるの?」!!)ゴクゴクゴク……!!」

 

千聖「! も、もしかして、この建物の中の人ですか?」

 

???「え、ええ、そうだけど……。」

 

紗夜「……ぷはぁ!はぁ、はぁ、はぁ……。」

 

彩「おぉ……。紗夜ちゃん、ゴクッっていったね~。」

 

スッ

 

彩「あ、空見くんに渡してってこと?はい、空見くん。」

 

楓「あ、わざわざありがとう、丸山さん。……あれ?」

 

花音「? どうしたの?空見くん。」

 

僕は渡された水筒に違和感を感じ、ふたが開いた状態で水筒を逆さまにしてみた。

 

が……。

 

花音「!? そ、空見くん!?何を…「ない。」……え?」

 

楓「お茶が……ない。」

 

花音「え?」

 

花・彩「「えぇぇぇ~~~!?」」

 

燐子「……チラッ」

 

千聖「……紗夜ちゃん。まさかとはおもうけど……。」

 

紗夜「し、知らないわ///。」プイッ

 

???「……!もしかしてあなた達、ここで雨宿りしてるの?」

 

千聖「まぁ、はい……。……!す、すみません!勝手に、雨宿りなんかして……。」

 

???「あぁいや、別にいいのよ。……それより、雨宿りするなら、中に入らない?」

 

千聖「え?」

 

僕の分の、お茶が……。

 

飲みたかった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【建物の中】

 

彩「う~、あったか~い!」

 

???「今エアコンつけたからね。あ、カバンはそこら辺の机に置いといて大丈夫よ。」

 

千聖「ありがとうございます。」

 

佳子「いいわよ、礼なんて。あ、私はこの公民館の館長をしている、大塚(おおつか)佳子。気安く佳子って呼んでいいからね。」

 

僕達が雨宿りさせてもらっていた何かの建物の正体は、この地域の公民館だった。

 

これはさっき、大塚さんが教えてくれたことだが、実は屋根の上とか建物の外壁に、大きく“公民館”と書いてあったらしい。

 

雨宿りに夢中で全っ然気づかなかったよ……。

 

佳子「その制服ってことは、あなた達、花咲川女子学園の生徒ね?」

 

千聖「はい。私達、これからお花見に行くところだったんです。」

 

佳子「お花見?こんな大雨の中?」

 

千聖「あ、えっとそれは……「お、お花見の会場である花美ヶ丘に公園向かってる途中に……雨が、降ってきてしまって。」! あ、ありがとう、燐子ちゃん。」ボソッ

 

燐子「い、いえ。」ボソッ

 

佳子「そうだったの。花美ヶ丘公園に……。あ、でも、傘をさせば良かったんじゃ……」

 

千聖「それが、無理なんです。」

 

佳子「無理?どうして?」

 

千聖「あれ、見てください。」

 

佳子「? ……あ……。」

 

千聖「突然の強風で、3本もあった傘が3本とも一瞬でぼろぼろになってしまって……。」

 

彩「先生達に連絡を取ろうにも、携帯は今学校にあるので、それも無理だし……。」

 

紗夜「花美ヶ丘公園までの地図があったのですが、それもぐしゃぐしゃになってしまって。道を覚えておけばよかったのですが、それも難しいような複雑な地図だったもので……。」

 

佳子「絶体絶命、ってわけね。」

 

彩・千・紗・燐『『『はい……。』』』

 

花音「……くしゅんっ!」

 

楓「! 大丈夫?松原さん。」

 

花音「う、うん。中に入って、少しあったかくなったのはいいけど、制服とか髪は濡れたままだから……。」

 

楓「あ、そっか……。」

 

佳子「……よし!」

 

紗夜「! な、何ですか、突然……。」

 

佳子「あなた達、お風呂、入りたくない?」

 

彩「え?……まぁ、入れれば、入りたいですけど。」

 

佳子「この公民館ね、お風呂があるのよ。もちろんお金はかかるんだけど。……でも、今日はサービス♪ただでお風呂に入れてあげるわ♪」

 

彩「! ほ、ほんとですか!?」

 

佳子「ほんとほんと♪あ、でも、このことは、みんな以外には内緒にね。」

 

彩「はーい!」

 

紗夜「大塚さん。お風呂に入れてもらえるというのはすごくありがたいのですが、本来お金のかかるものをただで、というのは…「いいのいいの。もしばれても、私が怒られるだけだから。」そ、それなら尚更…「そんな固いこと言わずに。お風呂に入ればさっぱりするわよ~。」……」

 

彩「ほら、紗夜ちゃん、佳子さんもそう言ってるんだし。」

 

紗夜「……しかし……。」

 

花音「紗夜ちゃん。」ガシッ!

 

紗夜「? 松原、さん?」

 

花音「入ろう!」キラキラシタメ。

 

紗夜「うっ……わ、分かったわよ……。」

 

花音「ほんと!?ありがとう紗夜ちゃん!」

 

彩「やったね、花音ちゃん!」

 

花音「うん!」

 

千聖「紗夜ちゃん……。」

 

燐子「だ、大丈夫、ですか?」

 

紗夜「え、ええ……。(松原さんにあんなキラキラした目で頼まれたら、断りたくても断れないわ……。)ハァ」

 

……松原さんって、そんなにお風呂好きだったの?

 

佳子「決まりね。じゃあさっそく、お風呂に案内するわね。」

 

彩「ありがとうございます!花音ちゃん、千聖ちゃん、行こ!」

 

花音「うん!」

 

千聖「ええ。」

 

彩「ほら、紗夜ちゃんと燐子ちゃんも早く!」

 

紗夜「え、ええ。……では白金さん、行きましょうか。」

 

燐子「は、はい。」

 

……僕、どうすればいいんだろ?

 

このまま、ここで待ってりゃいいのか…「空見くんも早くー!」「あ、今行くー!」……行っていいんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【公民館 お風呂前】

 

佳子「ほら、ここよ。」

 

彩「うわ~、なんか本格的!」

 

僕達は階段を上り、2階にあるお風呂に案内された。

 

入口が2つに分かれていて、それぞれ“男湯”、“女湯”と書かれたのれんがついている。

 

ちなみに男湯は青、女湯は赤ののれんだ。

 

千聖「でも、公民館にお風呂があるなんて、珍しいわね。」

 

彩「あ、確かに。」

 

佳子「実は去年まで、この公民館にお風呂なんてなかったのよ。」

 

紗夜「そうだったんですか?」

 

佳子「ええ。でもある日、公民館の隣の工事現場で工事をしてた人達が、偶然温泉を掘り当ててね。」

 

彩「温泉を堀り当てた!?」

 

千聖「しかも偶然!?」

 

花音「し、信じられない……。」

 

佳子「ほんとの話よ。で、工事の人がこの温泉どうしようって言ってたところを、私が頼んで、この公民館のお風呂に使わせてくださいって頼んだわけ。」

 

紗夜「そうだったんですか……。でも、工事の人達は、よくOKしてくれましたね。」

 

佳子「私も最初は無理かな~と思ったんだけど、ダメ元で聞いてみたの。そしたらまさかのあっさりOK。いやー、あのときはほんとびっくりしたな~。」

 

燐子「そ、そんなにあっさり……だったんですか?」

 

佳子「そうよ。あぁ良いよ~、みたいなノリで。」

 

燐子「か、軽い、ですね……。」

 

佳子「はい、この話はこれでおしまい!そろそろ、お風呂に入りたくてうずうずしてる子もいるみたいだしね。」

 

うずうずしてる子?

 

……あ。

 

彩「……」ウズウズ

 

丸山さんか。

 

佳子「じゃあ、私から少し、説明をさせてもらうわね。まずタオルなんだけど、1人2つまで使っていいからね。ドライヤーも自由に使ってOKだけど、数は限られてるから順番に使ってね。で、あとは……、! そうそう!みんなの制服!」

 

紗夜「制服が、どうかしたんですか?」

 

佳子「みんな、制服が濡れたままじゃ嫌でしょ?だから、みんながお風呂に入ってる間に、私が乾かしておこうと思ってるんだけど、どうかな?」

 

彩「! いいんですか!?」

 

佳子「ええもちろん!」

 

紗夜「……」

 

佳子「……紗夜ちゃん、だっけ?また何か言いたそうね?」

 

紗夜「……ただでお風呂に入らせていただくうえに、制服まで乾かしてもらうなんて、流石に悪いと思うのですが…「全然そんなことないって。いろんな人達の手助けをするのが、公民館の館長である私の仕事だもの。」で、ですが……」

 

千聖「紗夜ちゃん。佳子さんは、私達のためを思ってこう言ってくれてるのよ。だったら、その気持ちをありがたく受け止めないと。」

 

彩「千聖ちゃんの言う通りだよ、紗夜ちゃん。」

 

紗夜「……」

 

燐子「氷川さん。」

 

紗夜「……分かりました。では、お言葉に甘えさせていただきます。」

 

佳子「ふふ♪任せといて!それじゃあみんな、ゆっくりして行ってね。」

 

彩「はーい!行こ!花音ちゃん!」

 

花音「うん!」

 

千聖「2人とも、走ったら危ないわよ、って聞いてないか。私達も行きましょ。」

 

紗夜「はい。」

 

燐子「え、ええ。」

 

楓「……」

 

佳子「……君は入りに行かないの?お風呂。」

 

楓「え?あ、いや。……あ、あの、さっきの、制服を乾かしてくれるという件なんですが……」

 

佳子「? うん?」

 

楓「僕のは……いいです。」

 

佳子「え、何で?」

 

楓「いや、だって……僕、男ですし。」

 

佳子「あぁ、それなら心配ないわ。ちゃんとここには、男の従業員もいるから。」

 

楓「そうなんですか?……それなら、いいんですけど。」

 

佳子「そういうことだから、君も早く入った入った。」グイグイ

 

楓「わ、分かりましたから押さないでくださいよ。……じゃあ、行ってきます。」

 

佳子「はい、いってらっしゃーい。」

 

……お花見に行くはずが、途中で予想外のトラブルに見舞われて。

 

その後も雨宿りしたり公民館に入れてもらったりして、気づいたらお風呂に入ろうとしている。

 

……今日って僕達、何しに来たんだっけ?

 

……まぁいいか。

 

せっかくただでお風呂に入れてもらえるんだ。

 

ゆっくりあったまろ。




メガネ花音ちゃんとメガネ紗夜さんもヤバイんですけど、去年のバレンタインガチャの復刻も明日くるんですよね。

……ゆきにゃさん欲しいから引こうかなw。

流石にドリフェスはまだこないよな。

……こないと願いたいw。


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9話 公民館で嫌いなものに遭遇した

どうも、知栄砂空です。

バレンタイン限定ストーリーで、花音ちゃん出ないかなーと思ってたらほんとに出てくれたのでびっくりしましたw。

で、よく見たら、今回のバレンタイン限定ストーリーはドラム組メインだってことに気づきましたw。

……はい、それだけですw。


【女湯 お風呂場】

 

彩「うわ~!広~い!あ!すごいよ千聖ちゃん、声が響くよ!」

 

千聖「こら彩ちゃん、大声出さないの。」

 

紗夜「それと、広いわけではありませんよ。今この場には私達しかいないため、広く感じるだけです。声が響くのも、そのためです。」

 

彩「わ、分かってるよ~。」

 

燐子「いわゆる……貸し切り状態……ですね。」

 

花音「こんな広いお風呂を貸し切りなんて、ちょっと贅沢だよね。」

 

彩「えへへ♪じゃあお先に…「待って彩ちゃん。」え?」

 

千聖「お風呂に入る前に、やるべきことがあるでしょ?」

 

彩「やるべきこと?……準備体操?」

 

千聖「それは海やプールに入る前でしょ。」

 

彩「じゃあ……牛乳を飲む?」

 

千聖「それはお風呂に入った後。」

 

彩「うーん……あ、分かった!お風呂に飛び込み…「彩ちゃん、これは大喜利じゃないのよ?」ご、ごめんなさい……。(千聖ちゃんの笑顔、怖い……。)」

 

千聖「はぁ、掛け湯でしょ。掛け湯。」

 

彩「掛け湯?……あ!そうだそうだ、掛け湯だ!」

 

花音「彩ちゃん、思い出したみたいだ…「~♪」バシャーン! って、もう掛け湯してる!?」

 

彩「~♪」バシャーン!……バシャーン!

 

千聖「こういうときだけ早いのよね、彩ちゃんは。……花音、私達もしましょっか。」

 

花音「うん、そうだね。」

 

彩「……よし、掛け湯終わり♪じゃあ今度こそ、お先に~♪」

 

燐子「あ、ひ、氷川さん、私達も。」

 

紗夜「……!え、ええ。」

 

燐子「(? 氷川、さん?)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彩「はぁ~、気持ちいい~。」

 

花音「あったか~い。」

 

千聖「ふふ。2人とも、極楽そうね。」

 

燐子「今までの疲れが……一気に……とれますね。」

 

紗夜「ここまで、いろいろ大変でしたものね。」

 

彩「……それにしても、意外だったな~。」

 

花音「? 何が?」

 

彩「花音ちゃんが、そんなにお風呂に入りたかったなんてさ。」

 

花音「え、私?」

 

紗夜「それは、私も思いました。」

 

 

 

 

 

『紗夜ちゃん!ガシッ!……入ろう!キラキラシタメ。』

 

 

 

 

 

紗夜「と、すごく目を輝かせながら言ってましたから。」

 

花音「……そういえば、そんなこと、言ったかも///。」

 

燐子「自覚……なかったんですか?」

 

花音「べ、別に、そういうわけじゃないけど……。」

 

千聖「花音?」

 

花音「……だ、だって、あったまりたい気分だったんだもん。髪も制服も濡れちゃってて、ちょっと寒かったから。……そしたら、空見くんが心配してくれて、そのうち乾くって言ってくれたんだけど……。」

 

千聖「……はぁ。」

 

彩「え、千聖ちゃん!?どうしてため息なんか…「楓はデリカシーがないと思っただけよ。」へ?空見くん?」

 

千聖「だってそうでしょ?髪や制服が濡れて寒がってる花音に、そのうち乾く、なんて。デリカシーがないにも程があるわ。後で、ちゃんと楓に注意しとかなくちゃ。」

 

花音「だ、大丈夫だよ千聖ちゃん。別に気にしてないし…「安心して花音。楓には、私からきつーく注意しといてあげるから。」だ、だから大丈夫だよ~。」

 

紗夜「……空見、さん?」

 

花・千・彩・燐「(あ!)」

 

紗夜「……」

 

燐子「(ひ、氷川さん……お、怒ってる……。)」

 

花音「(わ、忘れてた……。)」

 

千聖「(今紗夜ちゃんの前で、楓の話は禁句だったわ……。)」

 

彩「(ど、どうしよう~。紗夜ちゃん、怒らせちゃったかな?)」

 

紗夜「……はぁ。」

 

花・千・彩・燐「……え?」

 

紗夜「……?皆さん、どうかしたのですか?」

 

彩「へ?あ、いや。……どうして紗夜ちゃんが、ため息なんかついてるんだろうと思って。」

 

紗夜「……私がため息ついちゃいけないんですか?」

 

彩「ち、違うの!えっと、そういうんじゃなくて…「あの、氷川さん。……怒ってるんじゃ、ないんですか?」! ほっ。」

 

紗夜「怒ってる?私が?……なぜあなた達がそのように感じたのかは分かりませんが、私は何も怒ってなどいませんよ?」

 

花・彩「そ、そう、なの?」

 

千・燐「……」

 

紗夜「? はい。」

 

燐子「……!あの、すみません……。もう1つ、いいですか?」

 

紗夜「? ええ。」

 

燐子「さっき氷川さん、……何か、考え事を……していませんでしたか?」

 

花・彩・千「!」

 

紗夜「! 白金さん、なぜそのことを…「す、すみません!さっき、氷川さんを呼んだとき、……一瞬、氷川さんの反応が……遅れた気が……したので。」……そう、ですか。……鋭いんですね、白金さん。」

 

燐子「た、たまたま……です。」

 

彩「……紗夜ちゃん、考え事をしてたって、何か悩んでることでもあるの?」

 

紗夜「悩んでる、というわけではないんですが。……空見さんのことで、少し。」

 

千・彩・燐「!」

 

花音「! 空見くんの!?」

 

紗夜「松原さん、なぜそんなに驚くんですか?」

 

花音「え?あ、ご、ごめん。……てっきり私、紗夜ちゃんは昨日のことを引きずって、あまり空見くんのことを考えないようにしてるんだと思ったから……。」

 

紗夜「……その逆ですよ。」

 

花音「え?」

 

紗夜「昨日のことを、日菜に話したんです。そしたら、私の方から謝ったほうがいいと言われて…「ちょっと待って紗夜ちゃん。」?」

 

千聖「どうして、日菜ちゃんに話したの?」

 

紗夜「どうしてって……日菜の考えを、聞きたかったから…「紗夜ちゃん。」……はい。」

 

千聖「そういうことは、あまり他人に話さない方がいいの。他の人の意見を聞くのも、確かに大切よ。でも、昨日のあの一件は、明らかに紗夜ちゃんのほうが悪いじゃない。」

 

紗夜「……」

 

千聖「そんなことくらい、人に聞かなくても分かることでしょ?」

 

彩「……ち、千聖ちゃん、その言い方は、ちょっと…「いえ、いいんです丸山さん。本当のことですから。」……紗夜ちゃん。」

 

紗夜「……白鷺さんの言う通り、自分が悪いというのは分かっているつもりです。……ただ、それじゃあ自分はどうすればいいのか、それがよく分からなくて。……もちろん、謝らなきゃいけないということは分かっているんですが、異性の人と喧嘩したというのは、初めてのことだったもので……。」

 

千聖「……それを聞いて、安心したわ。」

 

紗夜「え?」

 

千聖「お風呂から出たら、楓に謝りにいきましょう。私もいっしょにいてあげるから。」

 

紗夜「! ……いえ、大丈夫です。これは私の問題なのですから、それに白鷺さんを巻き込むわけには…「私もいっしょにいるよ、紗夜ちゃん。」え?」

 

彩「1人よりも2人、2人よりも3人、3人よりも4人だよ、紗夜ちゃん。」

 

燐子「私たちも、……氷川さんの力に……ならせてください。」

 

紗夜「松原さん、丸山さん、白金さんまで。……分かりました。皆さん、ありがとうございます。」

 

千聖「ふふ、いいえ。」

 

彩「あ!見て!サウナがあるよ!」

 

花音「あ、ほんとだ。」

 

彩「ねぇねぇ、みんなで行ってみようよ。」

 

花音「ふぇぇ、今から~?」

 

千聖「彩ちゃん、サウナは暑いわよ?」

 

彩「大丈夫!だったら千聖ちゃん、勝負しよう!どっちが長くサウナにいれるか勝負!」

 

千聖「いえ、私は遠慮しておく…「それなら私が相手になりましょう。」え、さ、紗夜ちゃん。」

 

彩「よーし!負けないよ紗夜ちゃん!」

 

紗夜「臨むところです。」

 

バチバチバチ

 

紗夜「ひ、氷川さん……。」

 

花音「ふぇぇ、だ、大丈夫かなぁ?」

 

千聖「紗夜ちゃんは大丈夫そうだけど、……問題は彩ちゃんね。……のぼせないといいのだけど。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―男湯 脱衣場―

 

楓「はぁ~、いい湯だった……ってうわっ!」

 

「お、丁度出たな。お前の制服、ここ置いとくからな。」

 

楓「あ、はい、ありがとうございます。」

 

び、びっくりした~。

 

風呂から出たら、いきなりいるんだもん。

 

いるならいるって、言ってくれりゃいいのに……。

 

てか、ほんとに男の人の従業員いたんだ。

 

楓「……制服、ちゃんと乾いてる。」

 

それに、……なんかいい匂いもする。

 

乾かす前に、洗濯でもしてくれたのかな?

 

って、そんなことより今は着替える方が先か。

 

タオル巻いといてよかった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

楓「ふぅ~。」

 

佳子「あ、お帰り。えっとー、空見くん、だったわよね?」

 

楓「あ、はい。」

 

佳子「どうだった?うちのお風呂、ゆっくりできた?」

 

楓「はい、とても。すごくあったまったし、すごく気持ち良かったです。」

 

佳子「そう、それは良かったわ。あ、制服なんだけどね、ついでに洗濯もしといたわよ。すごく良い匂いがするでしょ?」

 

楓「(あ、やっぱりか。)はい。風呂に入れてもらったうえに洗濯までしてくれて、ほんとにありがとうございます。」ペコリ

 

佳子「お、大袈裟よ。そんなお辞儀なんてしなくてもいいって。」

 

楓「……キョロキョロ」

 

佳子「? どうしたの?」

 

楓「あ、いや……あの人がいないなーっと思って。」

 

佳子「あの人?……あぁ、川浪くんのことね。」

 

楓「川浪、さん?」

 

佳子「川浪篤司くん。この公民館で働いてる、唯一の男従業員よ。」

 

楓「唯一の!?……てことは、他は全員女の人……」

 

佳子「ええ、そうよ。」

 

……僕と同じだ。

 

佳子「そういえば私、ずっと気になってたんだけど。」

 

楓「?」

 

佳子「花咲川って、女子高よね?……空見くんは男の子なのに、どうして女子高に通ってるの?」

 

楓「……それが、ここら辺の地域には、高校が女子高しかないみたいで。」

 

佳子「?」

 

楓「あ、僕、引っ越してきたんです。県外の田舎から。」

 

佳子「……あ、そういうこと。」

 

楓「え?」

 

佳子「なんとなく察したわ。」

 

楓「あ……ありがとうございます。」

 

 

 

 

 

篤司「大塚館長ー!」タタタタ

 

 

 

 

 

……!

 

あ、あの人は確か……川浪さん。

 

佳子「川浪くん!もう、どこ行ってたのよ~!」

 

あ、この人も川浪さんがどこに行ったのか知らなかったんだ。

 

篤司「どこって、一階ですよ一階。」

 

佳子「一階のどこよ。」

 

篤司「え?い、一階の、入口のところで…「そこで何をしてたの?」あーもう!詳しい話は後!」

 

佳子「な、なに怒ってんのよ。」

 

篤司「そんな根掘り葉掘り聞かれたらきりがないでしょ!」

 

佳子「うっ、わ、悪かったわよ。……ところであなた、どうしてそんなに急いで…「それも後!」グイッ ! ちょっと川浪くん!?」

 

篤司「とにかく!いっしょに来てください!」グイッ!

 

佳子「わ、分かった分かったから!その前に手離しなさいよ!」

 

楓「あ、ちょっと川浪さ……行っちゃった。」

 

はぁ、なんなんだよいったい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―女湯 脱衣場―

 

パタパタパタ

 

パタパタパタ

 

パタパタパタ

 

パタパタパタ

 

「う~、あ、暑い……。」

 

花音「ど、どうしよう千聖ちゃん!扇いでも扇いでも暑いって……。」パタパタパタ

 

千聖「大丈夫よ花音、そのまま続けて。……燐子ちゃん、もうひと頑張りできる?」パタパタパタ

 

燐子「はぁ……はぁ……は、はい!」パタパタパタ

 

千聖「花音、疲れたなら、少し休んでてもいいのよ?」

 

花音「……ううん。私だけ休むなんて、そんなことできないよ。だから私も、もうちょっと頑張るよ!」パタパタパタパタ

 

燐子「松原さん……。わ……私も!」パタパタパタパタ

 

千聖「(花音、燐子ちゃん。……私も、二人の頑張りを見習わなくちゃね。)」

 

「あ、暑い……。み、水……。」

 

花音「えいっ!えいっ!もうちょっと……だからね。えいっ!えいっ!」バサッ!バサッ!バサッ!バサッ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

花音「はぁ……はぁ……も、もうダメ~。」

 

千聖「花音、よく頑張ったわね。燐子ちゃんもお疲れ様。」

 

燐子「う、うちわを……全力であおぐと……こ、こんなに、疲れるんですね……。」

 

「みんな~!お水もらってきたよ~!」

 

千聖「ありがとう。はい、お水よ。」

 

ゴクゴクゴク

 

千聖「……どう?」

 

「……ふぅ。……美味しい、です。」

 

千聖「ふふ、それは良かったわ。」

 

「……皆さん、ご迷惑をおかけして、本当にすみませんでした。」

 

千聖「さ、紗夜ちゃん。そんな大袈裟な謝り方しなくてもいいよ。」

 

紗夜「し、しかし…「花音ちゃんの言う通りだよ!」……丸山さん。」

 

彩「それに、……もとはといえば、私がサウナに入ろうなんて言ったからだし……。」

 

紗夜「! そ、それを言うなら、私も、自分から丸山さんの相手になるなんて言ったから…「ストップ!」!」

 

彩「ち、千聖ちゃん?」

 

千聖「そんなことより、私びっくりしたわよ。てっきり彩ちゃんがのぼせると思ったのに、それがまさかの紗夜ちゃんだったんだもの。」

 

彩「えへへ、意外だったでしょう。」

 

燐子「氷川さん……開始三分で、のぼせてしまっていましたしね。」

 

紗夜「……相手が丸山さんだと思って、油断しました。」

 

彩「ちょっと紗夜ちゃん!それどういう意味!?……ま、いいや。私、サウナには少し自信があるんだ♪」

 

千聖「そう。……じゃあ彩ちゃん、今度は私と勝負しましょうか。」

 

千綾「え?千聖ちゃんと?……そ、それはちょっと、遠慮しとこうかな~?」

 

千聖「どうして?私とだと、何か問題でも?」

 

彩「い、いや、そういうわけじゃないけど…「じゃあ勝負しましょうよ。今。」ニコニコ な、なんか怖いよ?千聖ちゃん……って今!?」

 

千聖「ふふ♪なんて、冗談よ♪さ、着替えましょう、彩ちゃん。」

 

彩「……千聖ちゃんの冗談は、冗談に聞こえないよ……。」

 

千聖ちゃんが話題を変えたおかげで、雰囲気が良くなった。

 

……やっぱりすごいな、千聖ちゃん。

 

燐子「氷川さん、着替えるの……早いですね。」

 

紗夜「のぼせたうえ、風邪を引く、なんてことになりたくないだけよ。」

 

彩「あ、……この制服、いい匂い♪」

 

燐子「大塚さん……洗濯も、してくれたみたいですね。」

 

紗夜「後で、お礼を言わなくてはいけませんね。」

 

彩「うん、そうだね。」

 

花音「……ねぇ、千聖ちゃん。」

 

千聖「何?花音。」

 

花音「……ううん。やっぱり、何でもない。」

 

千聖「? ……そう、ならいいのだけど。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彩「んー!気持ち良かった~!」

 

千聖「紗夜ちゃん、次からは、ああいう無茶はしないようにね。」

 

紗夜「はい、気を付けます。」

 

燐子「松原さん……ご機嫌、ですね。」

 

花音「そう?……お風呂に入って、さっぱりしたからかな。」

 

 

 

 

 

楓「……」

 

 

 

 

 

彩「うーん。やっぱりお風呂に入った後は、牛乳とか飲みたいよね~。……あ、空見くんだ!」

 

紗夜「!」ビクッ!

 

千聖「……紗夜ちゃん。」

 

紗夜「……だ、大丈夫です、白鷺さん。少し、びっくりしただけですので。」

 

彩「おーい!空見くーん!」タッタッタ

 

 

 

 

 

楓「? ……あ、丸山さん。それにみんなも。」

 

千聖「楓、どうだった?」

 

楓「どうって、普通に気持ち良かったですよ。」

 

千聖「そう。」

 

紗夜「……」

 

千聖「……ねぇ楓、紗夜…「あ、大塚さんなら、さっき川浪さんに呼ばれて一階のほうに行きましたよ。」そ、そう……。」

 

花・彩「(? 川浪さんって、誰?)」

 

燐子「……空見さん。」

 

楓「ん?何?白金さん。」

 

燐子「……どうして、……どうしてそんなに、氷川さんのことを避けるんですか!」

 

紗夜「!?」

 

楓「……」

 

花・彩「「(り、燐子ちゃん!?)」」

 

千聖「(直球でいったわね……。)」

 

楓「……別に、避けてなんか…「避けてます!」……」

 

燐子「今朝私が氷川さんの名前を言おうとしたときも、その後に松原さんが氷川さんの名前を言おうとしたときも。今だって、氷川さんの名前を言おうとした瞬間、即座に話題を変えたじゃないですか!」

 

楓「……」

 

燐子「それって、氷川さんを避けてるってことじゃない…「白金さん。」!」

 

紗夜「ありがとうございます。……後は、私が自分の口から言いますから。」

 

燐子「ひ、氷川さん。……すみません……。」

 

花・千・彩「「「(……あんな燐子ちゃん、初めて見た(わ)かも。)」」」

 

紗夜「……空見さん。」

 

楓「……何ですか。」

 

紗夜「……話を、聞いてくれますか?」

 

楓「……」

 

紗夜「……」

 

花・彩「「(頑張れ、紗夜ちゃん。)」」

 

千・燐「「(頑張って(ください)、紗夜ちゃん(氷川さん)。)」」

 

紗夜「……空見さん。」

 

楓「……」

 

紗夜「……私は、……私は、あなたにあ…「空見くーん!」!? ……」

 

楓「あ、大塚さん。」

 

花・千・燐「「「……」」」

 

彩「(佳子さん、タイミング悪すぎ……。)」

 

佳子「あ、みんなもいっしょだったのね!」

 

千聖「佳子さん、そんなにあわててどうし…「お願いみんな!すぐ一階に来てくれる!?」? 何かあったんですか?」

 

佳子「詳しい話は後!今はとにかく人手が欲しいの!だからお願い!」

 

千聖「……よく分かりませんが、分かりました。」

 

彩「え、千聖ちゃん、それどっち…「行くわよ、みんな。」……」

 

佳子「! あ、ありがとう千聖ちゃん!」

 

花音「……行こう、空見くん。」

 

楓「あ、うん。」

 

紗夜「……」

 

燐子「……氷川さん……私達も。」

 

紗夜「……ええ。」

 

……何だろう。

 

ものすごく、嫌な予感がする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ワイワイガヤガヤ

 

ワイワイガヤガヤ

 

「あなた達!静かにしなさい!あーもう!そんなところで遊ばないの!」

 

「ちょっとそこ!走らない!ってかそこ!喧嘩もしない!っておい!それ触っちゃダメなやつだから!」

 

……嫌な予感、的中……。

 

花音「ふぇぇ!?ど、どうしよう……。えっと、えっと~……。」アタフタ

 

千聖「少し落ち着いて、花音。」

 

彩「えっと……えっと、こういうときは……。」アタフタ

 

千聖「彩ちゃんも落ち着きなさい!」

 

燐子「あ、あわわわ……。」

 

紗夜「白金さん!?目を回さないでください!しっかりして!」

 

 

 

 

 

篤司「……!大塚館長!それにみんなも!」タッタッタ

 

あ、川浪さん。

 

彩「? 佳子さん、あの人は?」

 

佳子「ここの従業員の、川浪篤司くんよ。」

 

花音「(あ、さっき空見くんが言ってた。この人が川浪さんだったんだ。)」

 

佳子「川浪くん、だいぶ苦戦してるようね。」

 

篤司「苦戦なんてもんじゃないですよ。みんな、全然言うこと聞いてくれないんですから。あまり来ないような場所だからかはしゃいじゃって、先生でもあんな感じですよ。」

 

 

 

 

 

「あなた達!喧嘩しないの!ってこら!そんなとこ上ったら危ないでしょ!」

 

 

 

 

 

千聖「先生?」

 

篤司「鈴木先生。保育士で、花美ヶ丘保育園であの子達の先生をやってるらしい。さっきまでここら辺をみんなで散歩してたらしいんだけど、突然雨が降ってきたからこの公民館に雨宿りしに来たんだそうだ。」

 

……あのちびっこ達、保育園の子達だったんだ。

 

千聖「何にせよ、まずはあの子達を静かにさせるのが先決ですね。」

 

彩「え?あ、そ、そっか。よーし、……み、みんなー!周りの人の迷惑になるから、騒いじゃダメだよー!」

 

紗夜「皆さん、ここは公共の場ですので、静かに…ドン! きゃっ!」

 

燐子「! 氷川さん!」

 

紗夜「こらあなた!走ったら危ないでしょ!」

 

「! ……う……うう……。」

 

紗夜「?」

 

花・彩・燐「「「(あ。)」」」

 

千聖「(やってしまったわね、紗夜ちゃん。)」

 

紗夜「う……うう……うわーーん!!」

 

紗夜「! ご、ごめんなさい!泣かすつもりはなかったのよ?……えっと、ど、どうしたら……」オロオロ

 

彩「! ……チョンチョン」

 

「うう……。……?」

 

彩「いないいない……ばぁ!」

 

「……ふふ、あはは♪」

 

燐子「な、泣き止んだ……。」

 

花音「彩ちゃん、すごい……。」

 

紗夜「……」ポカーン

 

彩「大丈夫?紗夜ちゃん。」

 

紗夜! 「ま、丸山さん……はぁ、ダメですね、私。」

 

彩「! そ、そんなこと…「ねぇ~、遊ぼ~?」え?あ、いや、でも……」

 

「いいな~。」

 

「僕もお姉ちゃんと遊びたい~。」

 

「私も~。」

 

「お姉ちゃん、私とも遊んで~。」

 

彩「え、え~?ど、どうしよ~?」

 

花音「す、すごい人気だね、彩ちゃん。」

 

燐子「だ……大丈夫ですか?氷川さん。」

 

紗夜「……」

 

燐子「わ……私も手伝います。……だから……いっしょに、が、頑張りましょう。」

 

千聖「燐子ちゃん……。」

 

紗夜「……しかし、私には…「み、みんなー、あの水色の髪のお姉ちゃんが、みんなといっしょに遊びたいんだって~。」! ま、丸山さん!?突然何を……」

 

彩「(紗夜ちゃん、みんなと仲良くなるチャンスだよ。)」ウインク

 

紗夜「!(……そうね。これは、丸山さんが私にくれたチャンス。……だったら、私のやるべきことは一つ。)」

 

彩「(頑張って、紗夜ちゃん!)」

 

紗夜「み、みなさん。今から、私といっしょに遊びましょう。」

 

「えー。」

 

「このお姉ちゃん、怖いからやだ~。」

 

紗夜「……え?」

 

「水色のお姉ちゃんじゃなくて、ピンクのお姉ちゃんがいいー。」

 

「ねぇー、遊ぼー。」

 

彩「み、みんな、私じゃなくて、紗夜ちゃんと……。」

 

紗夜「……」ズーン!

 

彩「あぁ~!紗夜ちゃんが隅っこに~!」

 

千聖「……完全に落ち込んじゃったわね、紗夜ちゃん。」

 

燐子「ひ、氷川さん……。」

 

「ねーえー、遊ぼー?」

 

「お姉ちゃ~ん。」

 

彩「……よ、よーし!じゃあみんな、彩お姉ちゃんといっしょに遊ぼー!」

 

『ワーイ!』

 

『ヤッター!』

 

紗夜「……」ズーン!

 

彩「(うぅ、ごめんね、紗夜ちゃん……!)」

 

花音「……わ、私達も手伝おっか。千聖ちゃん、燐子ちゃん、空見くん、って、あれ?空見くん。」

 

楓「……」

 

花音「あ。タッタッタ」

 

……はぁ。

 

花音「空見くん。」ポン

 

楓「うわっ!って、松原さんか。」

 

花音「そ、そんなに驚かなくても……。ねぇ、空見くんもいっしょに手伝ってくれる?」

 

楓「手伝うって、何を?」

 

花音「何って……あの子達の相手をしてあげるんだよ。」

 

楓「……ううん、僕はいいよ。」

 

花音「え?……いいって、どういう…「さっきから、ちょっとお腹が痛くてさ。だから、僕は向こうで休んでるよ。」え?そ、そうなの?」

 

千聖「……」

 

楓「う、うん。だから、僕は手伝えな…「私、薬持ってるわよ。」スッ !」

 

楓「千聖ちゃん、それって……」

 

千聖「お腹が痛くなったときに飲む薬よ。まぁ簡単に言えば痛み止めね。はい、花音。」

 

花音「あ、ありがとう。……空見くん、はい。これ飲めば、一時的にかもしれないけど、お腹治るよ?」

 

楓「あ、いや、その……。」

 

千聖「……」

 

花音「どうしたの?空見くん。はい。」

 

楓「えっと、その……ごめん!ダッ!」

 

花音「え!?あ、ちょっと空見くん!」

 

千聖「……」

 

花音「……何で?お腹、痛かったんじゃなかったの……?」

 

千聖「(……飲めるわけないわよね。お腹が痛かったっていうのは……嘘だもの。)」

 

花音「……ごめん、千聖ちゃん。これ、返すよ。」

 

千聖「ええ。」

 

花音「……」

 

千聖「行きましょ、花音。」

 

花音「……うん。(空見くん、何で……。)」

 

燐子「……あ、ま、松原さ…「燐子ちゃん。」……」

 

千聖「花音なら、大丈夫だから。」

 

燐子「……そう、ですか。」

 

篤司「……あいつ、空見楓、だったっけな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

楓「……はぁ。」

 

 

 

 

 

『う、うん。だから、僕は手伝えな…『私、薬持ってるわよ。』スッ !』

 

 

 

 

 

楓「……流石、白鷺さんは鋭いなぁ。」

 

「手伝うのが嫌だから嘘をつくなんて、意外と悪(わる)なんだなお前。」

 

楓「! か、川浪さん!?……僕、別に嘘なんか…「いーや、確かにあれは嘘をついてるときの顔だった。俺の目はそう簡単にごまかされないぞ。」……」

 

篤司「……何であんな嘘ついたんだ?」

 

楓「……だって、嘘も方便と言うじゃないですか…「あんなのは嘘も方便でもなんでもねえ!」!」ビクッ!

 

篤司「……お前はあのちびっこ達の相手をするのがめんどくさかったから、あんな嘘をついてあの場から逃げようとした、違うか?」

 

楓「……」

 

篤司「……俺と同じだな。」

 

楓「え?」

 

篤司「俺も昔、ああいうちびっこ、いや、ガキの相手をするのが嫌で、嘘をついて逃げだそうとしたことがあった。そしたらお前と同じで、近くにいた女子にすぐその嘘を見破られて、そのうえめちゃくちゃ怒られた。」

 

楓「……」

 

篤司「お前も同じなんだろ?ああいうガキが、嫌いなんだろ。」

 

楓「……公民館の人が、ガキとか言っていいんですか?」

 

篤司「そんなこたぁどうでもいいんだよ。で、どうなんだ?」

 

楓「……はい。」

 

篤司「はいだけじゃ分からねえだろ。」

 

楓「……嫌いです。その……ああいう、ガキが。」

 

篤司「最初からそう言えよ。ほら。」ポイ。

 

楓「え?あ、おっと。あ、ありがとうございます。」

 

あ、ココアだ。

 

あったけー。

 

篤司「ナイスキャッチ。丁度そこにベンチがあるから、座って飲もうぜ。」

 

楓「は、はい。」

 

プシュ

 

ゴクゴクゴク……。

 

楓「……美味しい。」

 

プシュ

 

ゴクゴクゴク……。

 

篤司「ぷはぁっ!美味え!」

 

楓「……」ゴクゴクゴク

 

篤司「……さっきも言ったけど、俺も昔ああいうガキが嫌いだった。だから、お前の気持ちはよく分かるよ。」

 

楓「……後で、ちゃんと謝っときます。」

 

篤司「あぁ、そうだな。……しょうがねえんだよ。人には必ず、好き嫌い、得意不得意があるからさ。」

 

楓「……」

 

篤司「でも俺は、頑張って子供嫌いを克服したぞ。」

 

楓「え?」

 

篤司「とは言っても、嫌いから苦手になっただけだけどな。」

 

楓「嫌いから、苦手……?」

 

篤司「いい機会だ。お前にも教えといてやるよ。」

 

楓「?」

 

篤司「……”嫌いじゃなく、苦手になればいい。”」

 

楓「……」

 

篤司「これは、俺が常にいつも大切にしている言葉だ。昔、ある人から聞いた言葉なんだけどな。」

 

楓「どういう……ことですか?その……嫌いじゃなく、苦手になればいいって。」

 

篤司「言葉通りの意味さ。」

 

楓「?」

 

篤司「嫌いじゃなく、苦手になればいい。今はあるものが嫌いだけど、頑張ってそれを克服して、苦手くらいにはなればいい。ほら、よく言うだろ?苦手だけど、嫌いじゃないって。それと同じさ。」

 

楓「……つまり、ああいうガキも、嫌いじゃなく苦手になればいいと。」

 

篤司「そういうことだ。俺はそうやって、“得意”ぐらいにはなった。」

 

楓「得意?苦手じゃなくてですか?」

 

篤司「さっきの言葉には続きがあるんだよ。……“苦手じゃなく、得意にする。得意じゃなく、好きになる。”」

 

楓「……」

 

篤司「当たり前のことかもしれないけど、これが意外と難しいんだ。俺、ガキのことを“嫌い”から“得意”になるまで、20年ぐらいかかったからな。」

 

楓「に、20年……。」

 

篤司「でも、お前はまだ高校生だ。この言葉を有言実行するチャンスはいくらでもある。」

 

楓「……」

 

篤司「……」

 

楓「……僕にも……。」

 

篤司「ん?」

 

楓「……僕にも、できますか?“嫌い”から、“好き”になること。」

 

篤司「……さぁな。それはお前の努力次第だ。……言っておくが、“嫌い”から“好き”になるまでそうとう大変だぞ?三ステップ踏まないといけないからな。特に“嫌い”から“苦手”になるまでが一番大変だ。」

 

楓「え、一番最初が大変なんですか?」

 

篤司「ああ。」

 

楓「……」

 

篤司「自信なくなったか?」

 

楓「……はい。」

 

篤司「……別に、一つのことにこだわらなくていいんだ。」

 

楓「え?」

 

篤司「さっきも言ったが、人には必ず、好き嫌い、得意不得意がある。その中で、自分が今一番得意にしたい、好きになりたい!ってものに焦点を当てて、それを少しずつ克服していけばいいんだ。まぁ中には、それらが全くないって人もいるだろうがな。」

 

楓「……自分が今一番、得意にしたい、好きになりたいもの……!」

 

 

 

 

 

花音『私も空見くんの仲良しづくり、手伝うよ。だから、いっしょに頑張ろう。』

 

 

 

 

 

楓「……仲良しづくり。」

 

篤司「仲良しづくり?……だいぶハードルが高そうな言葉だな。」

 

楓「……男の僕が女子高に転校なんて、最初からおかしな話だったんだって思ってるとき、ある子が言ってくれたんです。僕が女子高にいても、全然変じゃなかった。むしろ、いつもと変わらない普通の日常だったって。」

 

篤司「……」

 

楓「クラスの人にはいじられ、一年生、さらには三年生にまでからかわれてると思ってた僕に、ほんとはみんな、僕と仲良くなりたかったんじゃないかって。僕にいろんな人と仲良くなってほしいから、クラスのある人達の紹介をしてくれたりもして。そして最後には、仲良しづくりを手伝ってくれるとも言ってくれて。……あの子のおかげで、自信はないけど頑張ってみよう、って思うことができたんです。」

 

篤司「……」

 

楓「その次の日、僕は勇気を出して教えてもらった二人にあいさつしたんです。そしたらちゃんとそ応えてくれて。それが嬉しくて、これなら仲良しづくり、頑張れるかもという自信が、そのときはついたんです。・・・でもある日、他の人と本屋さんに行ったとき、三人ぐらいの男の人達に絡まれて。その次の日は、他のクラスのいろんな人達にめちゃくちゃ質問攻めされて……。」

 

篤司「仲良しづくりを頑張ろうという自信が、なくなったのか。」

 

楓「……はい。」

 

篤司「……お前が仲良しづくりを得意にしたい、好きになりたいと思った経緯はよく分かった。で?今はどうしたいんだ?」

 

楓「……今は……」

 

 

 

 

 

楓『お、おはよう。……橋山、さん?』

 

橋山『お!あたしの名字、覚えてくれたんだ!』

 

楓『いや、覚えたっていうより、教えてもらった…『おはよ、空見!』ポン お、おはよう。……浅井、さん?』

 

浅井『おぉー!私の名字も覚えてくれてるー!』

 

 

 

 

 

音羽『どうも~。宮村音羽で~す。』

 

 

 

 

 

燐子『! ……こ、こん、にちは……。』

 

 

 

 

 

彩『空見くん、こんなところにいたんだね。良かったー、見つかって。』

 

 

 

 

 

千聖『ありがとう、空見さん。……いや、楓。』

 

 

 

 

 

花音『空見くんには、花咲川のいろんな人達と仲良くなってほしいんだ。』

 

 

 

 

 

美澤先生『あなたは今、その七人と仲良しになりたいと思ってるの?』

 

 

 

 

 

楓「……違う。」

 

篤司「ん?」

 

 

 

 

 

紗夜『……ふふ、良い学校生活を送ってくださいね。』

 

 

 

 

 

楓「七人じゃない。……橋山さん、浅井さん、宮村さん、白金さん、丸山さん、白鷺さん、松原さん、そして氷川さん。……僕は今、この八人と、仲良しになりたいと思ってます。」

 

篤司「……そうか。」

 

楓「そのために、まずは氷川さんと仲直りしないと。」

 

篤司「仲直り?……お前、その氷川って子と喧嘩してんのか。」

 

楓「はい、まぁ。」

 

篤司「……よし分かった!」

 

楓「え?」

 

篤司「俺がその子と仲直りするきっかけを作ってやるよ。」

 

楓「きっかけ?」

 

篤司「ああ。物事何でも、順序ってもんが大切なんだ。俺がうまく仲直りルートを考えて、お前はその通りに動いて…「いや、いいです。」そうか、そうだよな……って、え!?」

 

楓「やっぱりこういうのは、自分の力でやんないとダメな気がするので。だから、すいません。」

 

篤司「……いや、お前の言う通りだ。そうだ、そうだよな!よし!じゃあそろそろ、みんなのとこへ戻るか。」

 

篤司「はい。あ、その前に、このカン捨ててきてもいいですか?」

 

楓「あ、それなら、ついでに俺の分も捨ててきてくれよ。」

 

楓「あ、はい。タッタッタッタ」

 

篤司「サンキューな。」

 

 

 

 

 

ガコン

 

よし。

 

……あれ?何か落ちてる……。

 

何だろう、これ。ヒョイ

 

……ん?

 

この形、なんか見覚えあるような……。

 

 

 

 

 

篤司「おーい空見ー。もういいかー?」

 

楓「あ、はーい。」

 

まぁいいや。

 

後で白鷺さんにでも聞いてみよ。




バレンタイン限定ストーリーで花音ちゃんが出てテンションが上がったので、バレンタイン復刻ガチャを回すためにエピソードを見ながらスター集めしてたら、衝撃の事実を知りました。

……花音ちゃん弟いたんかwww。

前のハロハピイベ(ハロハピメンバーが薫さんのうちに泊まりに行くやつ)の報酬でもらえためちゃくちゃ可愛い星2花音ちゃんのメモリアルエピソードにて、その衝撃の事実を知りました。

マジか、まさか花音ちゃんに弟がいたとは。

……小説のネタに使えそうw。

いつか、花音ちゃんの弟に関するイベントかなんか来ないかなー。

あ、ちなみにバレンタイン復刻ガチャは、星4の限定リサ姉出ましたw。

……ゆきにゃさん出なかった……。


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10話 子供達の相手と楽器探し

どうも、知栄砂空です。

バンドリ二期七話見ましたよ!(見てからもう三日経ってるけどw)

まだ見てない人がいるかもしれないので、ネタバレは控えます。

が、二つだけ言わせてください。

……ちさかのと紗夜さん可愛かったw。

そして、

……あれ今後のネタで使おうと思ってたのにw。


花音「……!空見くん!川浪さん!」

 

篤司「よっ、連れてきたぜ。」

 

楓「あ、松原さ…「もうどこ行ってたの!?いきなり飛び出すから心配したんだよ!」……ご、ごめん。」

 

心配、してくれたんだ。

 

花音「お腹はもう大丈夫なの?」

 

楓「あ……あぁ、うん。もうすっかり治…グイッ 痛たたたた!」

 

花音「ち、千聖ちゃん!?」

 

千聖「あなた、よくその顔で戻ってこれたわね?」ググググ

 

楓「す、すみません。ほんと、反省してま…「何について反省しているのかしら?」グイッ いてててて!こ、子供の相手をするのが嫌で、腹が痛いと、嘘をついたことです……。」

 

花音「ふ、二人とも、どうしたの?」

 

千聖「何でもないのよ、花音。」ニコッ

 

花音「? そう、なの?」

 

千聖「……グイッ!」

 

楓「っ!?な、何で?正直に、言ったのに……」

 

千聖「正直すぎるのよ!」グイッ‼

 

楓「うわっ!ほ、ほんと、マジで痛いんで……そ、そろそろ、やめてもらえると、助か…「じゃあ今後一切、私の前で嘘をつかないと誓う?」グイッ! うあっ!ち、誓います誓います!一生誓います!」

 

千聖「……ならいいわ。スッ」

 

っ!はぁ……はぁ……。ジーン

 

め、めちゃくちゃ痛かった……。ジーン。

 

耳、腫れたかも……。ジーン

 

うぅ、耳がジーンとする……。

 

花音「ち、千聖、ちゃん?」

 

篤司「ど、ドSすぎる……。」ボソッ

 

千聖「……川浪さん、何か言いました?」ジロッ

 

篤司「! い、いえ、何も……。」

 

千聖「……そうですか。」ニコッ

 

篤司「(い、今の女子って怖え……。)」

 

 

 

 

 

???「た、ただいま~。」フラフラ

 

花音「あ、お帰り……って彩ちゃん!?大丈夫!?」

 

彩「う、うん……大丈夫大丈……フラッ」

 

花音「あ、彩ちゃん!?ガシッ!」

 

彩「あ、ありがとう花音ちゃん……。つ、疲れた~……。」

 

千聖「疲れるのも無理ないわ。ずっとあの子達の相手をしていたんだもの。誰かさんがどこか行ってる間もずっとね。」ジトー

 

楓「……すみません。」ボソッ

 

花音「ごめんね彩ちゃん。私達がうまくあの子達の相手をしてあげられなかったせいで、ずっと任せきりにしちゃって。」

 

彩「だ、大丈夫だよ……。これくらい、平気だから……。」

 

楓「……そ、そういえば、氷川さんって……」

 

彩「あ、紗夜ちゃんなら、もうすっかり立ち直って、今は燐子ちゃんといっしょに、頑張って子供達の相手をしてくれてるよ。」

 

楓「そう、なんだ……。」

 

篤司「それにしても、子供って元気だよなー。もう30分ぐらい、あんな感じではしゃいでるし。」

 

 

 

 

 

???「……あ!いた!」

 

篤司「あ、大塚館長…「今までどこ行ってたのよ!手が空いてるなら、早く手伝ってちょうだい!」! は、はい!」タッタッタ

 

花音「川浪さんも大変だね……。」

 

彩「あはは……。……?ねぇ空見くん、その手に持ってるもの、何?」

 

花・千「え?」

 

楓「え?あ、これ?さっき、向こうの方で拾ったんだ。なんか見覚えあるような気はするんだけど、なかなか思い出せなくって。」

 

花音「……!千聖ちゃん、これって……。」

 

千聖「ええ、間違いないわ。」

 

楓「え、何?間違いないって、何が…「楓、これはピックよ。」ピック?」

 

彩「ほら、ギターやベースを弾くときとかに使う道具だよ。」

 

千聖「SPACEへライブを見に行ったとき、バンドの人達がこれを使って、ギターやベースを弾いてたでしょ?」

 

楓「……!あぁあれか!……あれ?でも、だったら何で、ギターやベースを弾くときに使うピックが、あんなところに落ちてたんだろ?」

 

千聖「……楓、そのピックが落ちてたところに案内して。」

 

楓「え?白鷺さん、いきなりどうし…「いいから案内して!」! わ、分かりました!」

 

千聖「花音、今すぐ佳子さんと紗夜ちゃんを呼んできてもらえるかしら?」

 

! 氷川さん!?

 

花音「え?……う、うん、分かった。」タッタッタ

 

これは……仲直りするチャンス……なのか?

 

千聖「それと彩ちゃん、あなたにお願いがあるの。」

 

彩「お願い?私に?」

 

千聖「ええ。……彩ちゃんには、ここで燐子ちゃんのサポートをしてもらいたいの。」

 

彩「! 私、いっしょに行っちゃダメなの!?」

 

千聖「べ、別にそういうわけじゃないのよ?……ただ、これは彩ちゃんにしか頼めないことだから。」

 

彩「え……私にしか、頼めない……?」

 

花音「千聖ちゃーん、呼んできたよー。」

 

佳子「もう、どうしたのよこんなときに。」

 

千聖「すみません佳子さん。館長である佳子さんでないと、了承をいただけないので。」

 

佳子「了承?」

 

紗夜「白鷺さん、いきなり呼び出してどうしたのですか?」

 

千聖「紗夜ちゃんもごめんなさい。これは、あなたにも関係のあるものだから。」スッ

 

紗夜「これは……ピック?なぜこんなところに……」

 

千聖「二人とも、詳しいことは後で話します。じゃあ楓、早速だけど、案内してくれる?」

 

楓「あ、はい。」

 

佳子「案内?って、どこに?」

 

花音「たぶん、ついて行けば、分かると思います。そうだよね、千聖ちゃん。」

 

千聖「ええ。」

 

佳子「そ、そう……。」

 

彩「あ、待って千聖ちゃん。」

 

千聖「? どうしたの?」

 

彩「私にしか頼めないって、どういうこと?何で私"しか"なの?」

 

千聖「……少し考えれば分かることよ。」

 

彩「?」

 

千聖「まぁ、あなたは自覚していないみたいだから、それが分かるまで時間はかかるだろうけど。」

 

彩「自覚?分かるまで?」

 

花音「千聖ちゃん、どうしたの?」

 

千聖「何でもないわ。……じゃあ彩ちゃん、後は頼んだわよ。」

 

彩「あ、千聖ちゃん……行っちゃった。(……私にしか頼めない理由、か。……何なんだろ、いったい。)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー楓・花・千・紗sideー

 

楓「えっと……確か、ここら辺にピックが落ちてたんです。」

 

千聖「それ、ちょっと私に見せてくれる?」

 

楓「あ、はい。」

 

紗夜「……どうしてこんなところに、こんなものが落ちてたのかしら。」

 

千聖「……キョキョロ」

 

花音「? 千聖ちゃん、何を探して…「あったわ!タッタッタ」ち、千聖ちゃん!?」

 

楓「……あ。」

 

紗夜「こんなところに、ドアが……。」

 

佳子「ここは倉庫よ。」

 

楓「え?」

 

佳子「今は使わなくなった部屋を、倉庫として使っているの。」

 

楓「へぇー。……あれ?このドア、少し開いてる。」

 

千聖「あら、ほんと。誰かが閉め忘れたのかしら?」

 

紗夜「……」

 

……今氷川さんは、僕の隣にいる。

 

仲直りするなら今か。

 

……でも、タイミング的になんかな~。

 

紗夜「……」

 

千聖「佳子さん。」

 

佳子「何?」

 

千聖「このドア、開けてみてもいいですか?」

 

佳子「え?……まぁ、それは別に構わないけど。でも、どうして?」

 

千聖「私の勘が正しければおそらく、この倉庫には“あるもの”がしまってあるはずなんです。」

 

佳子「あるもの?」

 

千聖「それは……楽器です。」

 

楓・紗・佳「!」

 

花音「楽器が、この倉庫に?」

 

千聖「ええ、たぶんね。」

 

紗夜「……!だから白鷺さんは、私を……」

 

千聖「流石、紗夜ちゃんは察しがいいわね。その通りよ。ピックがあったなら、おそらく“あれ”もあるはずだから。」

 

佳子「……それで、その楽器を見つけてどうするの?」

 

千聖「もちろん、ライブをするんです。」

 

花・紗「! ら、ライブ!?」

 

佳子「ライブ?……この公民館で?」

 

ち「はい。」

 

え、ライブってもしかして、バンドの?

 

でも、確かバンドって、四つ楽器が必要なんだよね?

 

ギターとベースと、ドラムとキーボードだっけ。

 

……まさか白鷺さん、この倉庫からその四つの楽器を見つけ出すつもりなの?

 

千聖「佳子さん、もし楽器を見つけることができたら、それを使ってライブをさせてもらえませんか?」

 

佳子「うーん、まぁそれは別にいいんだけど……」

 

楓・花「(いいんだ……。)」

 

佳子「……あ!ならホールを使うといいわ!」

 

千聖「ホール?」

 

佳子「向こうの廊下に出ると、隣の館へ行く用の連絡通路があるのよ。」

 

紗夜「この公民館、隣の館なんてあったのですか?」

 

佳子「え、気づかなかった?」

 

紗夜「はい、全く。」

 

佳子「あ、あはは、全くか……。」

 

千聖「つまり、その連絡通路を渡って隣の別館へ行き、そこにあるホールでならライブをしてもいい、ということですか?」

 

佳子「そういうこと。」

 

千聖「……分かりました。ありがとうございます、佳子さん。」

 

佳子「いいのよそれくらい。ホールへは、後で川浪くんに案内させるから。……じゃ、頑張ってね。」

 

楓「え?手伝ってくれないん…「楓。」?」

 

千聖「楽器を使ってライブをするのは、私達なのよ。それならもちろん、その楽器を探すのも私達でしょ?」

 

楓「……そう、ですか。」

 

佳子「……じゃあ、私行くわね。……ライブ、楽しみにしてるわ。」

 

千聖「ありがとうございます。」

 

花音「あ、ありがとうございます。」

 

……まだ探してすらないのに、見つかったときのことを見越してライブの許可をもらうとは。

 

流石白鷺さん……。

 

花音「……ねぇ千聖ちゃん。ライブ、本当にするの?」

 

千聖「ええ。それを子供達に見せれば、少しは落ち着いてくれると思うの。」

 

紗夜「しかし、仮にギターが見つかったとしても、他の楽器も見つけられるという保証はありませんよ?」

 

千聖「大丈夫、たぶんあるわ。」

 

紗夜「……どうして、そう言い切れるのですか?」

 

千聖「だって、……ほら。」ガチャ

 

紗夜「! 白鷺さん、ちょっと待っ…きゃあっ!」

 

ドンガラガッシャーン‼

 

楓「! うわぁっ!」

 

花音「ふぇぇぇぇ!く、崩れる~!」

 

ガッシャーン‼

 

……ドサッ

 

……お、おさまった。

 

まるで雪崩みたいだったな……。

 

花音「……ぐちゃぐちゃになっちゃった……。」

 

千聖「きっとこの倉庫、長い間放置してたのね。」

 

紗夜「……そのようですね。」

 

花音「? 紗夜ちゃん、それは?」

 

紗夜「この倉庫の担当表のようですね。」

 

た、担当表……。

 

いっしょに崩れ落ちてきたのか……。

 

紗夜「……空見さん、見ますか?」スッ

 

楓「え?あ……じゃ、じゃあ……」

 

紗夜「……」

 

……って、ほぼ担当あの人じゃん!

 

えーっと、最後に倉庫を確認した日は……きょ、去年の十二月!?

 

……あの人、流石に放置しすぎじゃない?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー彩・燐・佳・篤sideー

 

佳子「……くしゅんっ!」

 

篤司「風邪ですか?大塚館長。」

 

佳子「風邪、ではないと思うんだけど……。誰かに噂されてるのかしらね。」

 

篤司「体調管理には気を付けてくださいよ?……それで、さっきの話に戻しますけど、俺が空見達を、ホールまで案内してやればいいんですっけ?」

 

佳子「(正確には“千聖ちゃん”達なんだけど。)ええ。……お願いできる?」

 

篤司「はい、もちろん。」

 

 

 

 

 

彩「……あはは。」

 

「! 笑った!やった勝ったー!」

 

彩「あ、……えへへ、負けちゃった♪」

 

「彩ちゃん彩ちゃん、次僕とやろ!」

 

「ダメだよ、私が順番先だったんだから。」

 

「え~!僕も彩ちゃんとにらめっこしたい~!」

 

「ダメだってば~!」

 

「にらめっこ~!」

 

彩「あぁもう、喧嘩はダメ~!……しょうがないな~。じゃあ二人とも、四人でやろっか。」

 

「四人?」

 

彩「うん。燐子ちゃ……じゃなくて、燐子お姉ちゃんもいっしょに。」

 

燐子「!?」

 

「ほんと!?やったー!みんなでにらめっこだー!」

 

彩「じゃあ私、呼んでくるから。ちょっと待っててね。」

 

燐子「……」

 

彩「燐子ちゃん、行こ。」

 

燐子「……すごいですね、丸山さんは。」

 

彩「え?」

 

燐子「あの子達を……あんなに、楽しませることがてきて……。」

 

彩「そんなことないよ。もう、大袈裟だな~燐子ちゃんは。」

 

燐子「そんなこと……ありますよ。……言ったら失礼ですけど、今あの子達とうまく……コミュニケーションをとれているのは、丸山さん……だけなんですから。」

 

彩「え?……私、だけ?」

 

燐子「私や氷川さん、松原さんと白鷺さんも……子供の扱いに慣れていないせいか、すごく……戸惑っちゃって。花美ヶ丘保育園の先生……鈴木先生、でしたっけ。あの人や大塚さん、川浪さんも……子供達を静かにさせるのが、精一杯みたいで。……でも、丸山さんだけは。……子供達が喧嘩してたら、ちゃんと止めて。……遊びたいって言ってきたときは、ちゃんと遊んであげて。……揉めてるときは、真っ先にそれを止めたうえで、揉めなくなるような解決策を……すぐに考える。」

 

彩「……」

 

燐子「当たり前のことかもしれないですけど……恥ずかしながら、私達には……その当たり前のことが、できなくて……。だから……丸山さんは、すごいと思います。」

 

彩「……」

 

 

 

 

 

千聖『べ、別にそういうわけじゃないのよ?……ただ、これは彩ちゃんにしか頼めないことだから。』

 

 

 

 

 

彩『私にしか頼めないって、どういうこと?何で私"しか"なの?』

 

千聖『……少し考えれば分かることよ。まぁ、あなたは自覚していないみたいだから、それが分かるまで時間はかかるだろうけど。』

 

 

 

 

 

……そうか、そういうことだったんだ。

 

だから千聖ちゃんは、あんなことを。

 

……確かに私、そんな自覚なかったな。

 

彩「……ありがとう、燐子ちゃん。」ボソッ

 

燐子「え?……何か、言いました?」

 

彩「ううん、何も♪それじゃあ行こっか、燐子ちゃん。」

 

燐子「? ……はい。」

 

やっと分かったよ千聖ちゃん。

 

千聖ちゃんが私にしか頼めないって言った理由が。

 

彩「……燐子ちゃん。これから私が、燐子ちゃんをサポートするよ。」

 

燐子「え?……サポート、ですか?」

 

彩「うん。燐子ちゃんが私みたいに、あの子達とうまくコミュニケーションをとることができるように、ね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー楓・花・千・紗sideー

 

花音「……!千聖ちゃん!これ見て!」

 

千聖「どうしたの?かの……あ。」

 

花音「スティック!これ、ドラムのスティックだよ!」

 

千聖「……ええ。」

 

紗夜「! 松原さん、こちらの方にもありましたよ。」

 

花音「ほんと!?……すごい。見て千聖ちゃん!ちゃんと二本揃ってる!」

 

千聖「……さっきこのドアの隙間から、僅かだけど、スティックが落ちているのが見えたの。」

 

紗夜「だから白鷺さんは、しっかり“ある”と言い切れたんですね。」

 

千聖「しっかりではないわよ。たぶんと言ったでしょ?」

 

花音「……私、もしかしたらほんとに楽器見つかるかもって。このスティックを見て思えてきたよ。」

 

千・紗「……」

 

花音「頑張って楽器見つけよう!千聖ちゃん!紗夜ちゃん!空見くん!そして、みんなでライブしよう!」

 

千聖「花音……ええ、もちろんよ。」

 

紗夜「そうと決まったら、早速楽器探し、始めましょうか。」

 

ドラムのスティックか。

 

ドラムと、ピックを使うギター、ベースはもう見つかるもんだと仮定して、あとはキーボードか。

 

でもこの倉庫、特別大きいってわけでもないみたいだし。

 

まだちょっと、ほんとに見つかるのかという不安はあるよな。

 

千聖「それじゃあ楓。」

 

楓「? 何ですか?」

 

千聖「今から、あなたにうってつけの仕事を頼みたいのだけど、いいかしら。」

 

楓「僕にうってつけの仕事?……まぁ、役に立てるなら、何でもいいですけど。」

 

千聖「ありがとう。それで、あなたに頼みたいことっていうのはね……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー彩・燐・佳・篤sideー

 

篤司「えっと、これは可、これは不可と。これは……不可……いや、可かな?」

 

佳子「ごめんね川浪くん。本来は私の仕事なのに、手伝ってもらっちゃって。」

 

篤司「いえ。こういう機会じゃないと、このような仕事はあまりできませんし。」

 

佳子「そう、よね。……鈴木先生もごめんなさい。」

 

鈴木先生「あ、いえ、私は全然。」

 

篤司「それにしても大塚館長、いつの間にこんなに仕事溜まってたんですか。」

 

佳子「……ごめんなさい、いつもの癖で……。」

 

鈴木先生「癖?」

 

佳子「この人、一つのことに集中すると、それに夢中になって他のことが手付かずになってしまうことが多々あって。その結果、仕事を溜めちゃうっていうことがしばしば。」

 

鈴木先生「な、なるほど……。」

 

篤司「まぁそのことに関して話すと長くな…「そ、そんなことより!仕事よ仕事!」で、ですよね。」

 

鈴木先生「? ……それにしてもあの二人、すごいですね。」

 

佳子「え、燐子ちゃんと彩ちゃんのこと?」

 

鈴木先生「はい。……はぁ。」

 

篤司「どうしたんですか?鈴木先生。ため息なんかついて。」

 

鈴木先生「いえ。……ただ、私先生なのに、子供達に何もしてあげられないなって思って。」

 

篤司「……でもさっき、鈴木先生だって頑張って…「それでも……子供達は、私じゃなく、あのピンクの髪の……彩ちゃんの言うことを聞いてた。」……」

 

鈴木先生「私の先生としての力が、足りなかった証拠ですよ。」

 

佳・篤「……」

 

 

 

 

 

燐子「……よし。お、折れたよ……鶴。」

 

「わぁー!鶴だー!」

 

「すごーい!」

 

燐子「じゃあ、今度は……みんな、で折ってみようか。」

 

「やったー!」

 

「鶴折るー!」

 

燐子「ふふふ♪」

 

彩「(燐子ちゃん、もうあんなに子供達と仲良くなってる♪)」

 

燐子「あ、あの……丸山さんも、いっしょに……折りませんか?」

 

彩「え?私?」

 

「そーだよ!」

 

「彩ちゃんもいっしょに折ろーよ!」

 

彩「……うん、そうだね。じゃあ、私も混ぜてもらおうかな♪」

 

「やったー!」

 

「彩ちゃんもいっしょだー!」

 

燐子「ふふ♪良かったね、みんな。」

 

彩「……燐子ちゃん。」

 

燐子「? 何ですか?」

 

彩「今、どう?」

 

燐子「今は……楽しい。……すごく、楽しいです♪」

 

 

 

 

 

鈴木先生「……」

 

佳子「(……鈴木先生は、今ここで私の仕事を手伝うべき人間じゃないわね。)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー楓・花・千・紗ー

 

楓「うっ、お、重い……。」

 

花音「が、頑張って、空見くん。」

 

千聖「あなた、それでも男なの?」

 

楓「……」

 

い、今の白鷺さんの煽り……ちょっと、カチンてきたな……。

 

てか……ま、マジ重い……。

 

な、何が入ってんだよ、これ……。

 

……っ!?グラッ

 

楓「うわっ!」

 

花音「! 空見くん!」

 

ガシッ!

 

楓「え?」

 

紗夜「私もいっしょに持ちますよ。」

 

楓「……氷川、さん。」

 

千聖「ナイスフォローよ、紗夜ちゃん。」

 

紗夜「空見さん、このままゆっくり置きますよ。」

 

楓「は、はい。」

 

紗夜「……」ソー

 

楓「……」ソー

 

……ストン

 

楓「……ふぅー、重かったー……。」ドサッ

 

紗夜「……」

 

千聖「お疲れ様、楓。やっぱり力仕事は、男の子のほうが最適ね。」

 

楓「氷川さんにも、手伝ってもらいましたけどね。」

 

僕が頼まれた仕事。

 

それはご覧の通り、荷物運びだ。

 

まぁ確かに、力仕事は男のほうがいいかもしれないけど。

 

……僕にはあまり向いてないみたい。

 

紗夜「この重いダンボールには、いったい何が入っているのかしら?」

 

花音「開けて……みようか。千聖ちゃん、いい?」

 

千聖「ええ。」

 

花音「じゃあ、開けるよ。……えいっ!」パカッ

 

千・紗「……!これは……」

 

楓「……キーボード?」

 

花音「千聖ちゃん!」

 

千聖「一つ目の楽器、見つかったわね。」

 

……まさか、キーボードが一番最初に見つかるとは。

 

花音「燐子ちゃん、呼んできたほうがいいかな?」

 

千聖「いえ、まだいいわ。楽器が全て見つかって、ホールに案内してもらうために川浪さんを呼びに行くとき、いっしょに呼んできましょ。」

 

楓「……何で白金さん?」

 

紗夜「白金さんが、キーボードをやっているからです。」

 

楓「え、白金さんが?」

 

紗夜「はい。白金さんは、私と同じRoseliaというバンドで、キーボードを弾いてるんです。」

 

楓「ロゼリア?……え、氷川さんと同じ!?」

 

紗夜「はい。」

 

……そっか、そういうのもあるのか。

 

あ、そういえば……。

 

 

 

 

 

はぐみ『はぐみとみーくんはね、いっしょにバンドやってるんだよ!』

 

 

 

 

 

あの子も、そんなこと言ってたな。

 

……白鷺さんと丸山さんもいっしょにバンドやってる、ってのもあり得るのかな?

 

花音「よい……しょっと。」ドサッ

 

楓「! 松原さん、いつの間に……」

 

千聖「花音、言ってくれれば、私手伝った…「千聖ちゃん、ちょっとこれ、持ってみて?」? え、ええ。」

 

紗夜「このダンボールも、なかなか大きいですね。」

 

千聖「……!この重さ……」

 

花音「気づいた?千聖ちゃん。」

 

千聖「ええ。……パカッ」

 

……スッ

 

楓「!」

 

紗夜「それは……ベースですね。」

 

千聖「花音、よく見つけたわね。」

 

花音「前に、はぐみちゃんのベースを持ったことがあって。そのときの感覚が残ってたのかな。これを持ったときすぐに、あ、これはベースかも、って思ったんだ。」

 

千聖「そうだったの。」

 

紗夜「お手柄ですね、松原さん。」

 

花音「えへへ♪」

 

千聖「……ねぇ三人とも。少しだけ、試し弾きしてみてもいいかしら?」

 

紗夜「試し弾き、ですか?」

 

花音「うん、私は全然大丈夫だよ。空見くんは?」

 

楓「え?あ、うん。僕も、大丈夫です。」

 

花音「紗夜ちゃんは?」

 

紗夜「ええ、私も構いませんよ。」

 

千聖「ありがとう。……じゃあ、さっそく始めさせてもらうわね。」

 

楓・花・紗「……」

 

『……ジャ~ン!』

 

おぉ。

 

『ジャ~ン、ジャジャンジャンジャジャンジャンジャン……。』

 

花・紗「……」

 

す、すげぇ……。

 

『ジャジャンジャンジャジャン……ジャ~ン!!』

 

花・紗「……パチパチパチパチ……!!」

 

楓「……あ。パチパチパチパチ……」

 

花音「千聖ちゃん、すごく良かったよ!」

 

千聖「ふふ、ありがとう花音。」

 

紗夜「私も、早くギターを見つけなくては。」

 

楓「……」

 

花音「千聖ちゃんの演奏、すごかったね、空見く……ん?」

 

……ライブで聞くのと近くで聞くのとじゃ、全然違うんだ。

 

白鷺さんのベース……めちゃくちゃかっこよかった。

 

千聖「どうだった?楓。」

 

楓「……え?あ、はい。超すごかったです。……白鷺さんはすごいですね。高校生で芸能人なうえに、ベースまで弾けるなんて。」

 

千聖「……一つ、抜けてるわよ?」

 

楓「え?」

 

千聖「私はパスパレ……いや、Pastel*Palettesというバンドで、ベースをやっているの。」

 

楓「Pastel*Palettes……って、え?」

 

 

 

 

 

花音『近くの芸能事務所でPastel*Palettesっていうアイドルバンドをやっていて、彩ちゃんはそこのボーカルなんだ。』

 

 

 

 

 

楓「……丸山さんと同じ、アイドルバンド?」

 

千聖「ええ。」

 

楓「……あれ?でも白鷺さんって、アイドルじゃなくて、芸能人じゃ…「Pastel*Palettesは、芸能事務所に所属している、私と彩ちゃんを含めた五人で結成しているのよ。」! ぜ、全員が、芸能事務所に……!?」

 

千聖「もちろん、私と彩ちゃん以外の三人も高校生よ。」

 

楓「……」ボーゼン

 

芸能事務所に所属してる五人がアイドルバンドをやってて、しかもその五人全員が高校生って……。

 

……Pastel*Palettesって、ほんとはものすごいバンドなんじゃ……。

 

花音「……ねぇ千聖ちゃん。空見くん、さっきからおかしくない?」

 

千聖「大丈夫よ、そのうち戻るわ。それよりも今は、残りの楽器よ。」

 

紗夜「そうですね。では空見さん、楽器探し、再開しますよ。」

 

芸能事務所って言うぐらいだから、超有名だったりするのかな?

 

いや、まだそこまでではないのか……?

 

紗夜「……空見さん。」ポン

 

楓「え?クルッ」

 

紗夜「再開、しますよ。」

 

楓「……あ、は、はい。」

 

あれ?

 

氷川さん、何か怒ってる……?

 

……気のせい、か。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー彩・燐・佳・篤・鈴sideー

 

佳子「ほら、鈴木先生、頑張って!」

 

鈴木先生「ちょ、ちょっと待ってくださいよ~!まだ、心の準備が…「そんなのいらないわよ。先生なら、当たって砕けろよ。」砕けたらダメなんですよ~!」

 

 

 

 

 

彩「……どうしたんだろ?佳子さん。」

 

燐子「さ、さぁ……?」

 

篤司「鈴木先生に自信を持たせるんだとさ。」

 

燐子「! か、川浪……さん。」

 

彩「自信、ですか?」

 

篤司「ああ。そのためにはまず、子供達と距離を縮ませることが大切だってことで、今あんな感じになってるんだけど……。」

 

彩「……逆効果、ですよね?」

 

篤司「だよな。俺もそう思う。」

 

「ねぇ彩ちゃん、まだ~?」

 

「燐子お姉ちゃんも早く遊ぼうよ~。」

 

燐子「あ……ご、ごめんねみんな。も、もうちょっとだけ……待っていられるかな?」

 

「……あとどれぐらい?」

 

燐子「どれぐらい?え、えっと……そうだなー……」

 

彩「じゃあ、みんながもう一匹ずつ鶴を折り終えるまで!」

 

燐子「! 丸山、さん……。」

 

彩「どう?みんな、鶴を折りながら待っててもらえるかな?」

 

「……分かった!」

 

「鶴折って待ってる!」

 

「僕も!」

 

「私も!」

 

彩「ふふ、ありがとうみんな。」

 

燐子「……丸山さん、ありがとう……ございます。」

 

彩「ううん。……それにしても燐子ちゃんは、かなり子供達との距離が縮まったね。」

 

燐子「……丸山さんの、おかげですよ。」

 

篤司「……!そうだ!二人が鈴木先生をサポートしてやればいいんじゃないか?」

 

彩「え?」

 

燐子「私達が、鈴木先生をサポート……ですか?」

 

篤司「ああ。きっと二人なら、鈴木先生の力になれるはずだ。」

 

彩「……燐子ちゃんのサポートは出来たけど、鈴木先生は……」

 

燐子「……」

 

彩「あまり話したことないし、ていうか、ほぼ初対面だし……。私達に、出来るのか…「やります!」!」

 

燐子「丸山さんは……私に、子供達とふれあうことの楽しさを……教えてくれました。だから今度は……私が鈴木先生に、そのことを教える番……です。」

 

彩「燐子ちゃん……。うん、そうだね。」

 

燐子「丸山さん、いっしょに……頑張りましょう!」

 

彩「うん!頑張ろう、燐子ちゃん!」

 

 

 

 

 

佳子「鈴木先生、ここで逃げたらダメですよ~!」グイグイ

 

鈴木先生「で、でも~!」

 

燐子「……す、鈴木先生!」

 

佳子「! 燐子ちゃん。彩ちゃんも、どうしたの?」

 

彩「私達、鈴木先生に教えたいことがあるんです。」

 

鈴木先生「……私に、教えたいこと?」

 

燐子「はい。それは……」

 

篤司「……じゃあ俺は、空見達のところにでも行ってく…「あなたは机で仕事の続きよ。」ガシッ ですよねー……。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー楓・花・千・紗ー

 

楓「よっ、と。」ドサッ

 

千聖「ベースが入ってたダンボールと、同じ大きさね。……紗夜ちゃん、開けてみてくれる?」

 

紗夜「ええ。……パカッ」

 

……スッ

 

花音「! 紗夜ちゃん!それ……!」

 

紗夜「ええ。……ギター、ですね。」

 

これで、キーボード、ベース、ギターと、三つ目か。

 

……意外と、見つかるもんなんだな……。

 

千聖「あとは、花音のドラムだけね。」

 

花音「“私の”ではないんだけどね。」

 

楓「……」

 

紗夜「? 空見さん?何か浮かない顔をしていますが、どうかしたのですか?」

 

楓「え?べ、別に、浮かない顔なんてしてな…「花音もバンドをやっているのか、あるいは、やっているのではないか、と聞きたいんでしょ?」!」

 

花音「え?そうなの?空見くん。」

 

楓「……う、うん、まぁ。」

 

紗夜「……空見さんって、意外と知りたがりやなんですね。」

 

楓「! べ、別にそういうんじゃ…「うん、私もやってるよ、バンド。」え?」

 

花音「ハロー、ハッピーワールド!略してハロハピっていうバンドでね、ドラムをやってるんだ。前に会ったはぐみちゃんと美咲ちゃんも、同じハロハピのメンバーなんだよ。」

 

花音「! あの二人も、松原さんと同じバンドだったんだ。」

 

千聖「? 楓、あなた、いつはぐみちゃんと美咲ちゃんに会ったの?」

 

楓「あ、えっと……話すと長くなるので、いずれ話します。」

 

千聖「……そう。」

 

そっか。

 

やっぱり松原さんもバンドを……。

 

丸山さんはボーカル、氷川さんはギター、白鷺さんはベース、白金さんはキーボード、そして松原さんはドラム。

 

……この五人で、ライブをやるということか。

 

花音「……じゃあ私、さっそく探してみるね。」

 

千聖「あ、待って花音、私も手伝うわ。」

 

ギターもベースもキーボードも見つかったんだし、ドラムもたぶん見つかるよな。

 

紗夜「……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

花音 「……ない。」

 

千聖「おかしいわね。大きいダンボールに関しては、全部中身を見たのだけど……。」

 

楓「だ、大丈夫ですか?白鷺さん。」

 

千聖「楓、あなたもいっしょに探してちょうだい。」

 

楓「あ、は、はい。」

 

ガサゴソガサゴソ

 

ガサゴソガサゴソ

 

花音「……」

 

ガサゴソガサゴソ

 

ガサゴソガサゴソ

 

千聖「……」

 

楓「……どうですか?」

 

千聖「……ないわね。楓、そっちはどう?」

 

楓「ない、です。えっと、こっちは……ない。」

 

千聖「おかしいわね。スティックが二本ともあったのなら、ドラム本体も絶対あると思うのだけど。」

 

花音「……」

 

紗夜「白鷺さん、空見さん、私も手伝います。」

 

千聖「ええ、助かるわ、紗夜ちゃん。」

 

ガサゴソガサゴソ

 

ガサゴソガサゴソ

 

ガサゴソガサゴソ

 

……ない。

 

……ない。

 

……ない。

 

……おいおい、マジでないぞドラム。

 

ギターとベースとキーボードが見つかったから、ドラムも絶対すぐ見つかると思ったのに。

 

……やっぱ、そんなに甘くないのか……。

 

花音「……もういいよ、みんな。」

 

千聖「! 花音、大丈夫よ。きっと見つかるから。」

 

花音「ううん、これだけ探しても見つからないってことは……たぶん、そういうことなんだよ。」

 

千聖「……花音。」

 

紗夜「し、しかし、松原さ…「ありがとうみんな。……ライブは、みんなだけでやってくれるかな。」……」

 

楓「……」

 

……ドサッ!

 

……ドサッ!

 

千聖「! ちょっと楓!?」

 

紗夜「な、何をしてるのですか!?空見さん!」

 

楓「もしかしたら、もっと奥のほうに埋まってるのかもしれないですし。小さいものとかをどかしていけば、見つかるかもと思って。」

 

千・紗「……」

 

花音「空見くん……。」

 

千聖「……私もやるわ。」」

 

花音「え、千聖ちゃ…「私も手伝います。」さ、紗夜ちゃんまで……。」

 

楓「……」ドサッ!……ドサッ!

 

千・紗「……」ドサッ。……ドサッ。

 

花音「みんな……。……ん?……あ、これ、倉庫の担当表だ。えっと、最後に倉庫を確認したのは……佳子さんだ!……そっか。もしかしたら佳子さんなら、何か知ってるかも。チラッ」

 

楓「……」ドサッ!……ドサッ!

 

千・紗「……」ドサッ。……ドサッ。

 

「……よし。ダッ!」




ていうか、やっとこさ10話目ですねw。

……ヤバイな。

ストーリー的にも進展なさすぎるし。

いろいろマジでヤベエなw。

……とにかくまずは、公民館編終わらせようw。(もはやお花見編じゃなくなってるって言うねw)


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11話 秘密の多い公民館ホール

どうも、知栄砂空です。

とうとう来ちゃいましたね。

バンドリとローソンのコラボキャンペーン第3弾!

今回はベース組ということで、りみりんと千聖さんは確定かな。

リサ姉はちょっと考え中w。

ドラム組まだかな~w。


ー彩・燐・佳・篤・鈴sideー

 

鈴木先生「自分の、得意なもの?」

 

彩「はい。まずはそれを子供達に見せて、興味を示させるんです。」

 

鈴木先生「興味を示させる……。二人は、どんなものを見せたの?」

 

燐子「私は……鶴を、折ってあげました。そしたらみんな……すぐに、興味を持って……くれたんです。」

 

鈴木先生「鶴を……大雑把に言うと、折り紙か。彩ちゃんは?」

 

彩「私は……見せた、っていうよりは、偶然そういう形になっちゃったって感じで。」

 

鈴木先生「偶然そういう形になっちゃった?……どういうこと?」

 

彩「あ、えっと……さっきあることがきっかけで、あの子が泣いちゃって。でも、私がいないいないばぁってやってあげたら、笑って、泣き止んでくれたんです。それからは、にらめっことか、遊び歌で、子供達と遊んであげてました。」

 

鈴木先生「そうだったんだ。……そっか、そういう見せ方もあるんだ。……私の、得意なもの、か。」

 

「ねぇねぇ、これなぁに?」

 

彩・燐・鈴「?」

 

佳子「これはけん玉って言うのよ。こっちはお手玉で、こっちがヨーヨー。」

 

「へぇ~。……スッ」

 

彩「(あ、けん玉を取った。)」

 

「……えいっ!……ブラ~ン」

 

燐子「(あぁ……失敗、しちゃった……。)」

 

「うーん、難しいな~。」

 

佳子「(難しいわよね、けん玉。この子の気持ち、すごく分かるわ。)」

 

鈴木先生「……スッ」

 

彩・燐・佳「(! 鈴木先生?)」

 

鈴木先生「大輝くん。そのけん玉、ちょっとだけ先生に貸してくれるかな?」

 

彩「(あ、あの子、大輝くんって言うんだ。)」

 

大輝「? うん、いいよ。」

 

鈴木先生「ありがとう。」

 

彩「(……鈴木先生、もしかして……。)」

 

鈴木先生「……トン」

 

大輝「おー!」

 

鈴木先生「……」トン、トン、トン、トン

 

大輝「! すごいすごい!」

 

佳子「先生上手!」

 

鈴木先生「まだまだ。」トン、トン、トン、トン……トントントントン……

 

彩・燐・佳子「(! は、早くなった……。)」

 

鈴木先生「……」トントントントン……

 

「うわー!早ーい!」

 

「すげえ!先生すげえ!」

 

鈴木先生「……」トントントントン……、スポ

 

彩・燐・佳「……」

 

鈴木先生「ふぅ~。……『パチパチパチ‼︎』!」

 

「すごかったー!」

 

「早かったー!」

 

「先生超かっこよかったよ!」

 

鈴木先生「……そ、そう?」

 

「ねぇ先生、僕にもけん玉教えて!」

 

「私も!」

 

「僕もけん玉やりたい!」

 

鈴木先生「み、みんな……。うん、分かった!じゃあ先生といっしょに、けん玉で遊びましょっか。」

 

『ワーイ!』

 

『やったー!』

 

燐子「……あれが……鈴木先生の、得意なもの……。」

 

彩「これで先生も、子供達との距離、ぐんと縮まりそうだね。」

 

佳子「(やったわね、鈴木先生。)」

 

 

 

 

 

???「……!彩ちゃん!燐子ちゃん!」

 

彩・燐「? ……!!花音ちゃん(松原さん)!?」

 

花音「はぁ……はぁ……。」

 

彩「だ、大丈夫!?花音ちゃん!」

 

花音「はぁ……はぁ……う、うん、なんとか……。」

 

燐子「そんなに息切れするまで……走ってくるなんて……。いったい、どうしたんですか?」

 

花音「……キョロキョロ……!い、いた!スッ」

 

彩「あ、花音ちゃん。」

 

花音「……か、佳子、さん……。」

 

佳子「え?……!花音ちゃん!?ど、どうしたの!?そんなに息切れして!」

 

花音「わ、私……佳子さんに、聞きたいことがあって……。急いで、ここまで走って……きました……。」

 

佳子「……そこまでして聞きたいことって、いったい…「その前にまず、これを……」? ……!!あーーーー!!!」

 

篤司「!? な、何だ!?」ガバッ!

 

彩「(あ、川浪さん。なんか静かだと思ったら寝てたんだ……。)」

 

佳子「川浪くん!あった!あったわよ!」

 

篤司「お、大塚館長……あったって何が…「その前に。ギューッ!」いててて!」

 

佳子「仕事中に居眠りするなんて、いい度胸ね。」ギューッ!

 

篤司「す、すみませんすみません!もう居眠りなんてしませんから!……あたっ!はぁ、痛かった~。」

 

佳子「話戻すけど……これ、あったわよ!」

 

篤司「……!これ、倉庫の担当表じゃないですか!どこにあったんですか!?」

 

佳子「え?あ、えっとそれは……どこにあったの?花音ちゃん。」

 

花音「あ、倉庫の中です。千聖ちゃんが倉庫のドアをガラッって開けたとき、崩れてきたものの中に紛れてたんです。」

 

佳子「だって!」

 

彩・燐「(倉庫?千聖ちゃん(白鷺さん)が開けた?)」

 

篤司「へぇ〜。……えーっと、最後に倉庫を担当したのは……大塚館長。」

 

佳子「……え?」

 

篤司「しかも、最後に倉庫確認をしたのは……去年の十二月。」

 

佳子「……あれ?」

 

彩・燐「……」

 

佳子「も、もしかして、あの倉庫閉め忘れてたのも……私?」

 

彩・燐「……」

 

篤司「……大塚館ちょ…「も、申し訳ありませんでしたー!」……はぁ。大塚館長、少しは自分の仕事に責任を持ってくださいよ。そもそもあなたは……」クドクドクド

 

佳子「(か、川浪くんのお説教が始まっちゃった……。)」

 

彩「……これじゃあ、どっちが館長か分からないね。」

 

燐子「そう……ですね。」

 

篤司「ていうか、まず大塚館長には……」クドクドクド

 

佳子「(こ、これ、いつ終わるの~!?)」

 

花音「……!あ、あの!佳子さん!」

 

佳子「え?あ……川浪くん、ちょっとタイム!」

 

篤司「え、ちょっと大塚館長、まだ話は終わって…「ごめんね花音ちゃん。えっと、私に聞きたいことがあるんだっけ?」……まぁいっか。」

 

花音「は、はい。……その……ど、ドラム、どこにあるか知りませんか?」

 

佳子「え?ドラムって、ライブで使う、あのドラム?」

 

花音「はい。……ギターとベースとキーボードは見つかったんですけど、ドラムだけは、まだ……」

 

彩「……ねぇ、花音ちゃん。さっきから、何の話してるの?」

 

花音「あ、ごめん彩ちゃん、詳しいことは後で話すから。……それで佳子さん、分かりませんか?ドラムのある場所。」

 

佳子「うーん……残念だけど、分からないわね。」

 

花音「……そうですか。」

 

佳子「でも、あてならあるわよ。」

 

花音「? あて?」

 

佳子「ホールの中にある倉庫。そこになら、もしかしたらだけど、あるかもしれないわ。ドラム。」

 

花音「! ほんとです…「ただ、あの倉庫は……いや、自分の目で見て確かめてもらったほうが早いわね。」?」

 

佳子「川浪くん。」

 

篤司「え?」

 

彩「(あ、今度はちゃんと仕事してる。)」

 

佳子「出番よ。」

 

篤司「出番?……あ、そうだった。はい、分かりました。……えーっと、松原、だっけ?」

 

花音「あ、はい。」

 

篤司「松原、ホールまでの案内は、俺に任せとけ。」

 

花音「あ、ありがとうございます、川浪さん。」

 

彩・燐「……」

 

花音「彩ちゃんと燐子ちゃんも。」

 

彩・燐「え?」

 

花音「いっしょに行こ。千聖ちゃん達も待ってるよ。」

 

彩「……でも、私達…「大丈夫。」! 鈴木先生。」

 

鈴木先生「子供達なら、私に任せて。」

 

彩・燐「「鈴木先生……はい!」

 

花音「……二人とも、何かあったんですか?」

 

篤司「まぁ、ちょっとな。」

 

「ねぇ、いっしょに遊ぼー?」

 

彩・燐「(あ、大塚館長。)」

 

「先生、けん玉すっごく上手なんだよ!」

 

佳子「え、わ、私!?でも、私仕事が…「ねぇやろーよー!」「けん玉楽しいよー。」「ねーえー。」え、え~!?」

 

鈴木先生「ふふ。人気ですね、大塚館長。」

 

佳子「ちょ、鈴木先生、笑ってないで助けてちょうだい~。」

 

燐子「だ、大丈夫……ですか?」

 

彩「佳子さんも、子供達に人気だね。」

 

花音「人気、なのかな……?」

 

篤司「よし、じゃあ行くぞ。えーっと、松原、丸山、白金。」

 

花・彩・燐「はい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー楓・千・紗sideー

 

楓「……ダメだー!」

 

千聖「楓、そんなところで寝転がったら汚れるわよ。」

 

……やっぱりない。

 

このままじゃ、松原さんだけ不在のライブになっちゃう…「千聖ちゃーん!紗夜ちゃーん!空見くーん!」! 丸山さん、白金さんと川浪さんも。

 

……あれ?

 

何で松原さんもいるの?

 

千聖「花音!?あなた、どこに行ってたの?」

 

花音「ちょっと、佳子さんのところにね。」

 

紗夜「白金さんと川浪さんは、どうしてここに?」

 

篤司「館長命令でな。お前らをホールに案内することになったんだ。」

 

千聖「あ……そういえば、そんなこと言ってたわね。」ボソッ

 

篤司「? 何か言っ…「言ってません。」そ、そうか。」

 

燐子「私は……松原さんに、いっしょにホールへ行こうと、誘われたので。」

 

紗夜「そうだったんですか。」

 

彩「……みんな、私のこと忘れてない?」

 

千聖「あら彩ちゃん、あなたも来た…「私に対してだけちょっとひどくない!?」そ、そんなことないわよ。……それで?分かったのかしら?あなたにしかできないこと。」

 

彩「うん!それはもうばっちり!」

 

千聖「彩ちゃんにしては、大した自信ね。」

 

彩「えへへ、後で証拠を見せてあげるよ。」

 

千聖「そう、楽しみにしてるわ。」

 

篤司「お、これがさっき松原の言ってた“楽器”か。」

 

彩「! すごい!ギター、ベース。キーボードもあるよ、燐子ちゃん。」

 

燐子「は、はい。……いったい、どこにこんなに楽器が……「この倉庫の中よ。」倉庫……あ。」

 

 

 

 

 

花音『あ、倉庫の中です。千聖ちゃんが倉庫のドアをガラッって開けたとき、崩れてきたものの中に紛れてたんです。』

 

 

 

 

 

燐子「(松原さんの言ってた倉庫って……これのこと、だったんだ。)」

 

彩「これを使って、みんなでライブするんだね。」

 

千聖「ええ。……あら?私、彩ちゃんにライブのこと言ったかしら…「さっきここに来るとき、花音ちゃんに教えてもらったんだ。」そうだったの。」

 

彩「ね、燐子ちゃん。」

 

燐子「はい。」

 

彩「……?あれ?何か、足りないような……」

 

燐子「……ドラム。」

 

彩「! そうだドラムだ!千聖ちゃん、ドラムってどこに…「見つからなかったの。」え?」

 

紗夜「何度も探したのですが、あったのはこの二本のスティックだけ。本体のほうは、この倉庫にはなかったんです。」

 

彩「そう、なんだ。……あ。」

 

 

 

 

 

花音『ギターとベースとキーボードは見つかったんですけど、ドラムだけは、まだ……』

 

 

 

 

 

彩「(花音ちゃんの言ってたあれは、そういうことだったんだ。)」

 

花音「でも、あてはあるって、佳子さんが言ってたよ。」

 

千聖「? 花音、どういうこと?」

 

花音「さっき、佳子さんのところに行ってたって言ったでしょ?そのときに教えてもらったんだ。ホールの中にある倉庫なら、ドラム、あるかもしれないって。」

 

紗夜「松原さん、それはほんとですか!?」

 

花音「うん。」

 

千聖「ホールの中にも、倉庫が……」

 

花音「あ、でも。」

 

千・紗「?」

 

花音「佳子さんが言うには、その倉庫、何かあるみたいなんだ。自分の目で見て確かめてもらったほうが早いって、その何かは教えてくれなかったんだけど。」

 

千聖「……そうなの。」

 

篤司「何か、か。……幽霊でもいたりしてな。」

 

彩「ちょ、やめてくださいよ川浪さん。」

 

千聖「あら、怖いの?彩ちゃん。」

 

彩「! そ、そんなことないよ。ね、燐子ちゃん。」

 

燐子「え!?あ、えっと……は、はい。」

 

幽霊ね~。

 

……そんなの、いるわけ…「幽霊なんているわけないでしょう?変なこと言ってないで、早くホールに行くわよ。」……初めて氷川さんと意見があった。

 

紗夜「川浪さんも、急に変なこと言い出さないでください。」

 

篤司「いや、俺はただ、場を和ませようと…「そんな暇があるなら、早くホールに案内してください!」! は、はい!」

 

花・千・燐「……」

 

彩「は、ははは……」

 

……氷川さん、強っ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー公民館B館 ホール前ー

 

篤司「……よし、開いたぞ。」カチャ、ギー

 

彩「……入って、いいですか?」

 

篤司「ああ。」

 

彩「ありがとうございます!……うわーー!!」

 

燐子「ひ、広い……。」

 

千聖「まさか公民館のとなりに、こんなに大きなホールがあったなんて。」

 

花音「全然気づかなかったね。」

 

篤司「ほら、空見も入れよ。」

 

楓「あ、はい。」

 

……うわっ、結構広いし大きいな。

 

公民館のホールだから、学校の教室ぐらいの大きさかと思ったけど、それ以上だな。

 

……あ、なんかこのホールのつくり見おぼえあると思ったら、前の学校にあった講堂か。

 

って丸山さん、もうステージの上いるし。

 

篤司「どうした?空見。」

 

楓「あ、いえ。ちょっと、前の学校のことを思い出して。」

 

篤司「前の学校?」

 

楓「僕、一週間前に県外の田舎から引っ越してきたんです。」

 

篤司「そうだったのか。一週間前って、結構最近だな。」

 

楓「はい。……だから、それまではまだ、違う学校に通ってたんです。」

 

篤司「そっか、そりゃそうだよな。……で、このホールを見てたら、その前の学校での楽しい思い出をいろいろ思い出したと。」

 

楓「……」

 

篤司「? 空見?」

 

楓「……え?あ、ま、まぁはい、そんなところです。」

 

篤司「……「川浪さーん!」? 何だー?」

 

彩「燐子ちゃんが音を出してみたいそうなんですけど、いいですかー?」

 

篤司「おー、大丈夫だぞー。」

 

彩「ありがとうございまーす!大丈夫だって、燐子ちゃん。」

 

燐子「あ、ありがとう……ございます。丸山さん。」

 

楓「……ほら、お前も行ってこい、空見。」

 

篤司「え?何で僕…「いいから。」ドン うわっ!……は、はい。」

 

タッタッタッタ

 

篤司「……」

 

 

 

 

 

彩「! 空見くん!」

 

花音「どうしたの?」

 

楓「あ、いや……白金さんが、キーボード弾くって言うからさ。」

 

千聖「つまり、燐子ちゃんのキーボードを弾いてるところを見たいと、そういうことね。」

 

楓「え?あー……まぁ、そんなとこです。」

 

紗夜「……では白金さん、お願いします。」

 

燐子「は、はい!……」

 

楓・花・千・彩・紗「……」

 

燐子「……い、行きます!……〜♪」

 

楓「!」

 

燐子「……」~♪ ~~♪♪ ~♪

 

……綺麗な音……。

 

燐子「……」~~♪♪ ~♪ ~♪

 

楓・花・千・彩・紗「……」

 

燐子「……ふぅ。……「パチパチパチパチ‼︎」 !」

 

花音「え?」

 

パチパチパチパチ‼︎

 

千聖「楓……。」

 

楓「……え?……あれ?拍手してたの、僕だけ?」

 

紗夜「そう、みたいね。」

 

楓「……///。」

 

紗夜「? 空見さん、顔赤いですが…「き、気のせいですよ!」そ、そう、ですか。」

 

うぅ、恥ずい……。

 

めちゃくちゃ恥ずいよ……。

 

彩「……ふふ。」

 

花音「あ、彩ちゃん!?」

 

彩「空見くんって、可愛いんだね♪」

 

千聖「ちょ、彩ちゃん、楓に聞こえる…「もう手遅れみたいですよ。」え?」

 

楓「……」ズーン

 

彩「あ、あれ?」

 

千聖「いつかの紗夜ちゃん状態になってるわね……。」

 

紗夜「! そ、そのことは忘れてください///!」

 

花・燐「そ、空見(さん)くん、大丈…「花音、燐子ちゃん、今はそっとしといてあげましょう。」え、で、でも……」

 

彩「……私、後で謝ったほうがいいのかな?」

 

千聖「それは大丈夫よ、彩ちゃん。」

 

彩「そ、そう?」

 

楓「……」ズーン

 

篤司「ははは、ドンマイ空見。」

 

彩「あ、川浪さん。」

 

千聖「川浪さん、それで、倉庫のほうを…「分かってる分かってる。ほら、ちゃんと鍵もらってきたから。」……鍵、あったんですか。」

 

篤司「えーっと、それで倉庫はどこにあるんだ……?」

 

燐子「……!こ、これじゃ……ないでしょうか。」

 

篤司「ん?お、ぽいな。でかしたぞ、白金。」

 

千聖「……花音の話では、この倉庫に“何かある”らしいけど。」

 

花音「……特に、変わったところはなさそうだね。」

 

彩「変わったとすれば、少しドアが大きいくらいだけど……」

 

紗夜「ホールの倉庫と考えると、妥当な大きさのドアですね。」

 

篤司「まぁまぁ、詮索はそこら辺に。今開けてみるからよ。ガチャ」

 

花・千・彩・紗・燐「……」

 

カチャ、カチャカチャ、……ガチャ

 

花・千・彩・紗・燐「!」

 

篤司「おしっ。……開けるか?松原。」

 

花音「え、私、ですか?」

 

篤司「ああ。」

 

花音「……じゃ、じゃあ。」

 

彩「なんか、ドキドキするね。」

 

燐子「ほ、ほんとにいたら……どうしましょう……。ゆ、幽霊……。」

 

紗夜「幽霊なんているわけないでしょ?」

 

花音「……」

 

千聖「……大丈夫?花音。もしだったら、私が代わりに…「ううん、大丈夫だよ、千聖ちゃん。」そ、そう?」

 

花音「じゃあ、開けるよ。」

 

千聖「ええ。……あ、ちょっと待って花音。」

 

花音「?」

 

楓「……「楓。」……白鷺さん。」

 

千聖「いつまでそうやってめそめそしてるのよ。」

 

楓「べ、別に僕、めそめそなんか…「男なら、シャキッとしなさいシャキッと。」……は、はい。」

 

花音「(千聖ちゃん……。)」

 

千聖「ほら、こっち来なさい。」グイッ

 

スタスタスタ

 

千聖「……いいわよ、花音。」

 

花音「う、うん。……じゃあ、今度こそ開けるよ?」

 

楓・彩・燐「 ……ゴクリ」

 

千・紗・篤「……」

 

花音「……えいっ!」バンッ!

 

 

 

 

 

楓・千・彩・紗・燐・篤「……?」

 

花音「ど、どう?みんな。」

 

千聖「……花音。目、開けてみて。」

 

花音「え?あ、うん。……あれ?……真っ暗、だね?」

 

紗夜「ただ単に、電気が点いてないだけじゃないですか?」

 

花・彩・燐「あ。」

 

あ、なるほど。

 

じゃあ……。

 

楓・花・千・彩・紗・燐「……」ジー……

 

篤司「……あーもう分かったよ!俺が点けりゃいいんだろ!?」

 

ま、そうなるよね。

 

篤司「電気電気……お、あった。パチ」

 

彩「あ、点いた。……え?」

 

花・紗・燐・篤「!?」

 

千聖「嘘、でしょ……?」

 

……マジかよ、これ……。

 

 

 

 

 

楓・花・千・彩・紗・燐・篤「(……で、でかい……。)」

 

それに、広い……。

 

いや、これはマジ、冗談抜きにでかすぎるだろ……。

 

……ここ、倉庫だよね?

 

ショッピングモールとかみたいなああいうでかい店の倉庫じゃなくて、普通の公民館にある普通のホールの普通の倉庫だよね?

 

……コンビニぐらいの大きさと広さあるんですけど。

 

いや、下手したらそれ以上かも……。

 

花音「お、大きい……。」

 

千聖「隣の館にあった倉庫なんて、比べものにならないわね……。」

 

紗夜「これは、流石に予想外でした……。」

 

燐子「大塚さんが言っていたのは……“何か”がある、というわけじゃなくて……」

 

彩「ものすごく広い……ってことだったんだ。」

 

花音「……ごめんね。私が勝手に、何かがある、って解釈しちゃってて。」

 

燐子「ま、松原さんが謝ることじゃ……ないですよ。」

 

篤司「このものすごくでかくて広い倉庫の中から、ドラムを探せって言うのかよ。……鬼畜だな。」

 

彩「で、でも、やらなきゃ。だよね、花音ちゃん。」

 

花音「……う、うん。」

 

千聖「……そうね、彩ちゃんの言う通りだわ。」

 

紗夜「ええ。みんなで手分けして探しましょう。」

 

燐子「は、はい。」

 

篤司「よし、じゃあ俺も手伝うぞ!」

 

千聖「ありがとうございます、川浪さん。」

 

彩「よーし!頑張って花音ちゃんのドラム、見つけるぞー!」

 

千・紗・燐・篤「オー!」

 

花音「みんな……。」

 

楓「……」

 

花音「……よし!空見くん、私達も頑張ろう!」

 

楓「松原さん……うん、そうだね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彩「……とは言ったものの、どこから手をつければいいんだろ?」

 

千聖「中に入ってみると、ますます広く感じるわね。」

 

篤司「感じるんじゃなくて、実際そうなんだけどな。」

 

燐「物が……いっぱい、ありますね。」

 

花音「う、うん。」

 

……いや、これはいっぱいどころじゃないと思う。

 

例えるならそう、ゴミ屋敷みたいになってる。

 

いや、これかなりガチで。

 

紗夜「向こうの倉庫に担当者がいたのなら、ここの倉庫にも担当者がいるはずですよね?」

 

彩「あ、確かにそうだね。川浪さん、何か知って…「大塚館長だ。」え?」

 

篤司「倉庫の担当者、あの担当表に名前が書いてある人は、向こうの倉庫とこの倉庫、二つの倉庫を確認しなきゃいけないんだ。」

 

燐子「そう……なんですか。」

 

紗夜「ということは、この倉庫の担当者は、向こうの倉庫の担当者でもあった佳子さん……。」

 

花・千・彩「……」

 

マジか……。

 

篤司「……ピ、ポ、パ、ポ……」

 

ん?

 

篤司「……プルルルル……プルルルル……」

 

彩「? 川浪さん、電話です…「あ、佳子さん?」!」

 

楓・花・千・彩・紗・燐「(! お、大塚さん(佳子さん)……。)」

 

佳子『あら川浪くん、いったいどうし…「単刀直入にお聞きします。ホールの倉庫のこのガラクタの山は何ですか。」ギクッ!』

 

篤司「前にこの倉庫の確認をしたの、大塚館長ですよね?大塚館長なら、このガラクタの山のこと、何か知ってるんじゃないですか?」

 

佳子『……い、言わなきゃ、ダ…「ダメです!」……わ、分かったわよ。……実は……』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

篤司「……なるほど、そういうことですか。ありがとうございます。プツンッ」

 

彩「……川浪さん。」

 

篤司「分かったぞ。なぜこの倉庫がこんな状態なのか。」

 

千聖「それで、大塚さんは何て?」

 

篤司「……フリマ用らしい。」

 

花・千・彩・紗・燐「……え?」

 

ふ、フリマ?

 

篤司「あぁ、フリマってのは、フリーマーケットの略な。」

 

紗夜「そ、それは分かりますけど……。」

 

花音「ど、どういうことですか?」

 

篤司「ここにあるもの全部、今度公民館主催のフリーマーケットで出品するんだと。」

 

紗夜「こ、公民館主催の、フリーマーケット……?」

 

燐子「ここにあるもの……全部出品……?」

 

楓「……マジですか?」

 

篤司「マジ……らしい。」

 

楓「……え。」

 

楓・花・彩「えーーー!?」

 

紗・燐「……」アゼン

 

花音「こ、ここにあるもの全部って……。」

 

千聖「数えきれないくらいの品数よ?これ。」

 

彩「佳子さん、こんなにいっぱいのガラク……じゃなかった。もの、どこから集めてきたんだろう?」

 

篤司「なんか、ここら辺の近所回って集めたらしいぞ。時には近所だけじゃなく、向こうの駅前の方にも行ったらしい。」

 

紗夜「え、駅前の方にも!?」

 

燐子「大塚さん……すごい、です。」

 

篤司「ったく大塚館長、いつの間にこんなの集めてたんだよ。」

 

このガラクタの山、あの人が全部集めたってことなのかな?

 

……だとしたらすげえな。

 

彩「……」

 

花音「どうしたの?彩ちゃん。暗い顔して。」

 

彩「このいっぱいのものが何なのかは分かったよ。……でも。」

 

花音「でも?」

 

彩「……どこから手をつけようか。」

 

楓・花・千・紗・燐「……」

 

篤司「……そんなの決まってんだろ。」ズカズカ

 

花音「え、川浪さん!?」

 

篤司「片っ端から探せばいいんだよ。そうすれば、いつか見つかる。」

 

花音「か、片っ端からって、そんな無鉄砲な…「いや、そうとも限らないわよ。」え!?」

 

千聖「みんなでやみくもに探したところで、ドラムなんて見つかりっこないわ。こんなに大きくて広い倉庫なら尚更ね。それだったら、川浪さんの言う通り、隅から探していったほうが得策だと思う。」

 

紗夜「そ、それは、そうですが……「氷川さん。」白金さん?」

 

燐子「白鷺さんの……言う通りだと、思います。」

 

紗夜「白金さんまで……はぁ、分かりました。……片っ端から探していきましょう。」

 

篤司「おぉ!サンキュー氷川…「さっきから思っていたのですが、名字で呼ぶのやめてもらえますか?」え?……じゃあ、どう呼べば…「名前で呼べばいいでしょ!?」な、何でそんなに怒ってんだよ……。」

 

彩「(紗夜ちゃんも、ずっと名字で呼ばれてるの、不満だったんだね……。)」

 

燐子「(氷川さん……川浪さんにだけは、当たりがすごく……強いような……。)」

 

篤司「じゃ、じゃあ……紗夜?」

 

紗夜「……」

 

篤司「……や、やっぱり、ダ…「空見さん達のことも、名前で呼んでください。」え?……まぁ、空見だけな…「空見さん“達”も、名前で呼んでください。」……はい。」

 

千聖「(さ、紗夜ちゃん……。)」

 

花音「(館長である佳子さんを叱れる川浪さんが、あんな簡単に……。)」

 

篤司「(はぁ、女の子を名前で呼ぶのって、結構勇気いるんだぞ?俺みたいなやつは特に。)……じゃあみんな、手分けしてドラムを探すぞ。……楓……花音……彩……千聖……燐子。」

 

紗夜「……」

 

楓・花・千・彩・燐「(……名前の呼び方が、ぎこちない……。)」

 

篤司「……」

 

彩「あ、ねぇ千聖ちゃん、どういうふうに手分けする?」

 

千聖「うーん、そうねぇー……。」

 

篤司「あ、なら俺が…「ここの隅のところは、私と白金さんがやります。松原さんと空見さんはそこの隅を、丸山さんと白鷺さんはそっちを、川浪さんはそこの隅をお願いします。」……あの~、紗夜さん?」

 

楓・花・千・彩・燐「……」

 

紗夜「では白金さん、さっそく始めましょうか。」

 

燐子「は、はい……!」

 

篤司「……なぁ、かえ…「空見さん。この人の言うことなんて、聞かなくていいですからね。」「え?は、はぁ……。」……」

 

彩「……わ、私達もやろっか。」

 

千聖「そ、そうね。」

 

篤司「……なぁ、花音、俺一……松原さん、絶対にドラム、見つけましょう。」「え?あ、う、うん。」……」

 

花音「……よし、頑張ろう空見くん。」

 

楓「う、うん。」

 

篤司「……俺、泣いていいかな?」

 

お気の毒に、川浪さん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彩「……ない。……ない!……ない~!」

 

千聖「彩ちゃん、同じところばかり探しても意味ないわよ?」

 

彩「だって~……他のところは全部探したんだも~ん!」

 

 

 

 

 

燐子「……ありませんね。」

 

紗夜「ええ。隙間や箱の中などの細かいところも探したんですが……」

 

燐子「ドラムらしきものは……見当たりませんね。」

 

 

 

 

 

花音「……空見くん、どう?」

 

楓「……ないや。松原さんのほうは?」

 

花音「ううん、私も。」

 

楓「そっか……。」

 

篤司「……」

 

楓「……あのー、川浪さんのほうは、どう……!?」

 

篤司「……」ズーン

 

楓「く、暗っ……。」

 

花音「か、川浪さん、元気出してください。」

 

篤司「あぁ、俺なら大丈夫だから、心配すんな……。」ズーン

 

花音「……絶対、大丈夫じゃないよね。」

 

楓「う、うん。」

 

しっかし、ほんと広いな。

 

まるでコンビニの中にいるみたいだ。

 

……なんかこのまま探してたら、日が暮れそう。

 

楓「……「! 見て!千聖ちゃん!」!」

 

 

 

 

 

千聖「どうしたの?彩ちゃん。……!これは……。」

 

 

 

 

 

花音「? 彩ちゃんと千聖ちゃん、何か見つけたみたいだね。」

 

楓「ドラム、ではなさそうだけど……」

 

花音「私達も行ってみよう。」

 

楓「あ、うん。」

 

 

 

 

 

千聖「……紗夜ちゃん、ちょっと。」

 

紗夜「何ですか?白鷺さん。ドラムを見つけたわけではなさそうですが……。」

 

千聖「とにかく、これを見て。」

 

紗夜「? ……!白鷺さん、これは?」

 

千聖「分からない。どうやら、彩ちゃんが見つけたらしいのだけど……。」

 

彩「ここら辺のをどかしてたら、出てきたんだ。」

 

燐子「……隠し扉、みたいですね。」

 

彩・千・紗「!」

 

楓・花「か、隠し扉!?」

 

燐子「! い、いや、私はただ……か、隠し扉に見えると、言っただけで……。」

 

千聖「……確かに、燐子ちゃんの言う通りかもしれないわね。」

 

燐子「え?」

 

彩「え、千聖ちゃん。それって、ほんとに隠し扉かもしれないってこと?」

 

千聖「その可能性は高いわね。」

 

紗夜「し、しかし、仮にこれが隠し扉なら、これを開けるための取っ手のようなものがあるはずでは?」

 

彩「あ、そっか。」

 

燐子「……ありませんね。取っ手のようなもの……。」

 

篤司「……」

 

花音「床についてるってことは、地下に行けるのかな?」

 

楓「うん、たぶん。……松原さん、行ってみたいの?」

 

花音「ふぇ!?い、いや、そういうわけじゃないけど……」

 

彩「でも、気になりはするよね。」

 

花音「……う、うん。それは……する。」

 

にしても、倉庫のこんな隅っこにに隠し扉か。

 

……もし本当に、あの隠し扉の先が地下に繋がってるんだとしたら、中はどうなってるんだろう?

 

……あれ?

 

でも、隠し扉の上にものが置いてあったってことは、全然使われてなかったってことだよな。

 

……なんか嫌な予感してきたぞ?

 

彩「……気になるな~、隠し扉の下。」

 

千聖「そうは言っても、開けられなきゃ意味がないわ。」

 

紗夜「白鷺さんの言う通りです。こんなものに惑わされず、私達はドラムを探すことだけを考え…「あの噂は本当だったのか。」え?」

 

彩「川浪さん、あの噂って?」

 

篤司「前に聞いたんだよ。ホールにある倉庫には、地下に通じる隠し扉があるって。」

 

紗夜「……そんなの、ただの噂…「確かここら辺に……」川浪さん!人の話は最後まで…ガコン え?」

 

篤司「千聖、彩、紗夜、危ないからどいてろ。」

 

彩・千「は、はい。」サッ

 

紗夜「……サッ」

 

……ギー……

 

花・彩・千・紗・燐「!?」

 

マジか……。

 

ギー……ガコン!

 

千・彩・紗・燐「……」

 

花音「そ、空見くん、これ……。」

 

楓「う、うん。」

 

……隠し扉が開いて、

 

……階段が出てきた。

 

……何、この漫画やアニメとかでよく見る機械仕掛け的なやつ。

 

……てか、誰が作ったの、これ。




次回はライブまでいける!

いける!……はず……。

てか公民館編がこんな長引くとは思わなかった……。


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12話 仲直り、と同時に仲良しにも

どうも、知栄砂空です。

まず最初に謝っておきます。

・・・ライブまで行けませんでしたw。

ライブシーンを楽しみにしていた方(いたか分かんないけど)、ほんとにすみません。

はぁ、行けると思ったんだけどなー・・・。

で、でも!

次回は必ず!

絶対にライブシーンに入れるはずです!

今回はほんとのほんとのほんとです!

あ、あと、・・・次回で公民館編を終わらせたいです。

そこだけは期待しないでください・・・。

みんなって文字数とか気にしてるのかなぁ?


「あの噂は本当だったのか。」

 

「え?」

 

「川浪さん、あの噂って?」

 

「前に聞いたんだよ。ホールにある倉庫には、地下に通じる隠し扉があるって。」

 

「・・・そんなの、ただの噂…「確かここら辺に…」川浪さん!人の話は最後まで…「・・・」ガコン。 え?」

 

「千聖、彩、紗夜、危ないからどいてろ。」

 

「「は、はい。」」サッ。

 

「・・・サッ。」

 

『ギー・・・。』

 

「「「「「!」」」」」

 

・・・マジか。

 

『ギー・・・、ガコン!』

 

「「「「・・・」」」」

 

「そ、空見くん、これ。」

 

「う、うん。」

 

・・・隠し扉が開いて、

 

・・・階段が出てきた。

 

・・・何、この漫画やアニメとかでよく見る機械仕掛け的なやつ。

 

・・・てか、誰が作ったの、これ。

 

「す、すごい・・・。」

 

「川浪さん、どうやったのですか?」

 

「ほら、これだよ。」

 

「それは・・・「スイッチだよ。」!」

 

「スイッチ?」

 

「この壁のくぼみが、隠し扉を明け閉めするスイッチになってるんだ。このくぼみを押し出すと、どこかでスイッチが入って、隠し扉が出てくるっていう仕組みだ。」

 

「「「「・・・」」」」

 

やけに詳しいな、川浪さん。

 

・・・まさか、あの隠し扉を作ったのって・・・。

 

「川浪さん、なぜそんなに詳しいんですか?」

 

「ん?あぁ、ホールの倉庫に隠し扉があるって噂を流してた人に聞いたんだよ。」

 

「噂を流してた人?」

 

「最初聞いたときは、そんな隠し扉あるわけないって思ってたから、彩がこれを見つけたときはマジびっくりしたよ。」

 

「えへへ。」

 

「・・・しかし、今はドラムを探してるんですよ?隠し扉が開いたからと言って、何に…「私行ってみたい!」え!?」

 

「だって隠し扉の下だよ!地下だよ!絶対何かあるよ!」

 

「・・・丸山さん、ですから今私達は…「彩ちゃん、入りたい気持ちは分かるけど、それには館長である佳子さんに許可を取らなきゃ…「許可なんて取らなくていいよ」え?」・・・」

 

「許可なんていらない。この隠し扉のことは、秘密にしときゃいいんだ。」

 

「ひ、秘密って、川浪さ…「なぁに、もしものときは俺がなんとかするさ。」・・・そう、ですか。」

 

「・・・仕方ありませんね。川浪さん達は放っておいて、私達…「私も少し、気になります。・・・隠し扉。」! 白金さんまで!?」

 

「だよねだよね!気になるよね!」

 

「! は、はい。」

 

「・・・」

 

「紗夜ちゃん。・・・私も、少し気になる、かな。」

 

「・・・しかし松原さん、ドラムは…「大丈夫だよ。ちょっとだけ降りて見たら、すぐドラム探しに戻るから。」・・・」

 

「・・・ひ、氷川さんも、いっしょに行ってみませんか?地下。」

 

「空見さん・・・。」

 

「も、もしかしたら、もしかしたらですけど、・・・ドラム、地下にあるかもしれないですし。」

 

「! そっか。そのことは私、考えてなかったよ。」

 

「・・・分かりました。」

 

「! 紗夜ちゃん!」

 

「少しだけですよ?ま、もし、空見さんの言うように、本当に地下にドラムがあったとしたら、話は別ですが。」

 

「は、はぁ・・・。」

 

「話はまとまったみたいだな。」

 

「はい!」

 

「は、はい。」

 

「よし、じゃあ行く…「川浪さん、あなたは大塚さんのところに行ってきてください。」・・・え?」

 

「隠し扉のこと、きちんと大塚さんに言っておくべきです。あの人は一応この公民館の館長なんですから。」

 

「(い、一応って、紗夜ちゃん・・・。)」

 

「だ、だから、それは別に大丈夫だって。・・・それに俺も、地下見たい…「つべこべ言わずに行ってきてください!」・・・何で紗夜は、俺にだけそんな当たり強…「一回言って分からないようなら、もう一度、今度は“大きな”声で、言ってあげましょうか?」だー分かったよ!行けばいいんだろ行けば!」ダッ!

 

「「「「「・・・」」」」」

 

「・・・では、行きましょうか。」

 

・・・氷川さんが、だんだん館長に見えてきた・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぇぇ、く、暗い・・・。」

 

「ほとんど何も見えませんね。」

 

「みんな、あまりその場から動かないで。」

 

「皆さん、・・・ど、どこに・・・?」

 

「燐子ちゃん、私はここだよ。」

 

・・・マジでめちゃくちゃ暗いな。

 

松原さん達の姿が全然見えないもん。

 

まずは、電気を探さなきゃ。

 

えーっと、電気電気・・・。テサグリテサグリ。

 

「・・・なんか、いかにも“地下”って感じだね。」

 

「ええ。ここがどんな部屋なのか、ますます気になるわね。」

 

・・・お、これか?パチ。

 

「! 電気が点いた!」

 

「っ!空見さんが、点けてくれたんですか?」  

 

「は、はい。」

 

「・・・ありがとう、楓。でも、さっきのような暗闇で歩き回るのは危ないから、あまりその場から動かないほうがいいわよ?」ニコ。

 

「・・・き、気を付けます。」

 

出た、白鷺さんの怖い笑顔・・・。

 

「! こ、これは・・・?」

 

「「・・・」」

 

「上に比べると、・・・意外と綺麗ね。」

 

「というより、・・・ものがあまりありませんね。」

 

「た、確かに・・・。」

 

部屋の広さは、・・・上の倉庫の二分の一ぐらいか。

 

・・・なんか黒い機械置いてあるし、何冊か本も積んである。

 

ものが全くないってわけじゃないけど、上の倉庫と比べたら雲泥の差だな。

 

「・・・ドラム、ないね。花音ちゃん、空見くん。」

 

「・・・うん。」

 

・・・やっぱり、ないか。

 

・・・ん?

 

「皆さん、上に戻りましょう。」

 

「え?で、でも紗夜ちゃん、もしかしたら…「彩ちゃん。」! 花音ちゃん。」

 

「いいの、そういう約束だったから。・・・行こ。」

 

「「・・・」」

 

「花音、ちゃん・・・。」

 

「・・・何してるんですか?空見さん。行きますよ。」

 

「・・・」

 

「空見、くん?」

 

「あ、待って、花音。」

 

「ちょっと、松原さん!白鷺さん!・・・全く。」

 

「「(どうしたんだろう?空見くん(さん))」」

 

「・・・「何かあったの?空見くん。」あ、松原さん、白鷺さんも。」

 

「・・・!花音、これ、ドラムじゃない!?」

 

「え?・・・あ!ほんとだ!」

 

「「「(! 今白鷺さん(千聖ちゃん)、ドラムって言いました(言った)?)」」」

 

「あ、やっぱりこれ、ドラムだったん…「すごいよ空見くん!どうやって見つけたの!?」ちょ、松原さん!?手!手///!」

 

「「「「・・・」」」」

 

「え?あ、ご、ごめん///。つい嬉しくって・・・。」

 

「い、いや・・・。」

 

「「「「・・・」」」」

 

「そ、それで、・・・どうやって見つけたの?ドラム。」

 

「た、たまたまだよ。部屋を見渡してたら、この黒い機械の後ろにちらっとドラムのこの部分が見えたんだ。それで何だろうと思って見てみたら、本当にドラムだったんだよ。」

 

「そうだったんだ。・・・たまたまでもすごいよ。ありがとう、空見くん。」

 

「あぁ、・・・うん。」

 

「紗夜ちゃん!ドラム見つかったよ!この地下で!」

 

「・・・ええ。」

 

「彩ちゃん、燐子ちゃん!これでライブできるよ!」

 

「「・・・うん(はい)。」」

 

「・・・嬉しそうね、花音。」

 

「え?そう、かな?えへへ。」

 

「・・・」

 

『ありがとうみんな。・・・ライブは、みんなだけでやってくれるかな。』

 

・・・あんなこと言ってたけど、やっぱり松原さん、ライブやりたかったんだ。

 

「空見くん、ドラム、一緒に持っていってくれるかな?」

 

「うん、いいよ。」

 

「ありがとう。」  

 

「じゃあ空見くんは、この部分をお願い。」

 

「うん、分かった。」

 

「・・・それじゃあ、私達も行きましょ。」

 

「え?でも、二人を手伝わなくてい…「楓と花音なら大丈夫よ。」そ、そう?」

 

「・・・氷川さん、私達も、行きましょう。・・・氷川さん?」

 

「・・・すみません。先に行っててもらえますか?」

 

「・・・わ、分かりました。」

 

「(・・・氷川さん?)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・」

 

この部屋の大きさ、端に置かれている二つの黒い機材、・・・そして、何冊にも積み重ねられているこの本。

 

・・・もしかすると、この部屋は…「氷川さん?」「きゃっ!」

 

「うわっ!」

 

「・・・そ、空見さん!いるならいるとちゃんと言ってください!びっくりするじゃないですか!」

 

「す、すいません・・・。(僕もびっくりした~。)」

 

「・・・空見さん、松原さんを手伝っていたんじゃないんですか?」

 

「手伝いましたよ。でもその後、松原さんに・・・」

 

『・・・紗夜ちゃん、先に行っててって言ってたけど、どうしたんだろう?』

 

『何か、考え事とかあるんじゃないの?』

 

『・・・心配だな。・・・空見くん、悪いけど、ちょっと見てきてもらえないかな?』

 

『え、・・・でも、僕今…『こっちは大丈夫だから、気にしないで。』・・・そう。・・・分かった。』

 

「・・・という感じで、僕が見てくることになったんです。」

 

「そうだったんですか。松原さんが・・・。」

 

「・・・大丈夫、なんですか?」

 

「大丈夫も何も、私は心配されるようなことは一切していませんよ。」

 

「え?そうなんですか?」

 

「ええ。・・・ただ、この部屋のことについて少し考え事をしていたんです。」

 

「この部屋の?」

 

「・・・おそらくここは、以前バンドの練習場所として使われていた部屋なんです。」

 

「! バンドの練習場所!?」

 

「ええ。・・・これを見てください。」

 

「・・・黒い何かの機械、ですよね?」

 

「いえ、もっとよく見てください。」

 

「? ・・・あれ?・・・これ、スピーカーですか?」

 

「そうです。」

 

「(この黒い機械、スピーカーだったんだ・・・。)」

 

「それと、これも見てください。」スッ。

 

「・・・本、ですよね?なぜかこんなにいっぱい積み重ねられてますけど。」

 

「・・・ここ、読んでみてください。」

 

「あ、はい。えーっと?・・・『開催間近!FUTURE WORLD FES.特集号!!』。・・・FUTURE WORLD FES. ?」

 

「毎年開催されている、大きなフェスのことです。」

 

「大きな、フェス?」

 

「FUTURE WORLD FES. は、ただのフェスではないんです。コンテストで入賞、いや、優勝して、初めてFUTURE WORLD FES. のステージに立つことができるんです。」

 

「は、はぁ。(コンテスト・・・、予選みたいなものかな?)」

 

「他にもいろいろな雑誌があるので、読んでみてください。」

 

「わ、分かりました。・・・『満を持して結成!その名も“Powerfuling!”!!』、『今年注目のバンド、Angel Beat特集!!』、『わずか一年で解散!?超人気バンド、スカイライズに密着!』。・・・全部、バンド関係ですね。」

 

「・・・この部屋にはドラムがあったうえに、こんなにも多くのバンドに関する雑誌が積み重ねられていた。さらにこの二つのスピーカー、そしてこの部屋の大きさ。・・・つまり・・・」

 

「以前何かのバンドが、ここを練習場所として使ってた、ってことですか?」

 

「ええ、おそらく。それなら、この公民館内でギターとベース、キーボード、ドラムが見つかったのにも、辻褄が合います。」

 

「た、確かに・・・。」

 

「・・・」

 

「・・・」

 

「空見くん。」

 

「うわぁ!「!?」って、松原さん!?もう、脅かさないでよ~。」

 

「べ、別に脅かしたつもりは・・・。」

 

「松原さん、なぜここに?」

 

「二人の帰りが遅いから、心配で見に来たんだよ。」

 

「そうだったんですか。・・・私はただ、この部屋のことについて考え事をしていただけですよ。」

 

「この部屋の?でも、何で…「詳しいことは、後で皆さんといっしょにお話します。」わ、分かった。・・・じゃあ紗夜ちゃん、空見くん。いっしょにホールのところに戻ろう。」

 

「あ、うん。」

 

「・・・」 

 

「・・・紗夜ちゃんも行こう。」

 

「え?あ、え、ええ。」

 

「?(氷川さん?)」

 

・・・本当に、このまま行っていいの?

 

・・・もし言うのなら、今のこの状況が一番ベスト。

 

今を逃したら、次は・・・。

 

・・・っ!

 

「待ってください。」

 

「「え?」」

 

「・・・空見さん、今このときこの場を借りて、あなたに言っておくべきことがあります。」

 

「ぼ、僕に、ですか?」

 

「はい。」

 

「(・・・!紗夜ちゃん、もしかして・・・)

 

「(・・・僕、何か怒られるようなことしたかな~?)」

 

「・・・ごめんなさい!」

 

「・・・へ?」 

 

「(やっぱり、紗夜ちゃん・・・)」

 

「空見さんの意見も聞かず、自分の勝手な想像で話を作って、空見さんを責め立てた。」

 

「(・・・あ、昨日のことか。・・・!そうだ、今なら・・・)」

 

「本当に悪かったと思っています。・・・空見さん、ごめ…「すいませんでした!」・・・え?」

 

「え?(そ、空見くん?)」

 

「白金さんの言う通りです。氷川さんのことを考えないようにと思って、みんなが氷川さんの話題を出そうとしたとき、それを無視して即座に話題を変えて。」

 

「「(白金さん(燐子ちゃん)の?・・・!)」」

 

『・・・どうして、・・・どうしてそんなに、氷川さんのことを避けるんですか!』

 

「「(あのときのことね(だ)。)」」

 

「ほんと、すいませんでした!」

 

「・・・空見さん、別に私は…「僕、川浪さんと話してて気づいたんです。氷川さんと仲直りするには、まず氷川さんと仲良しにならなきゃって。」・・・な、仲良し?」

 

「(! ・・・空見くん。)」

 

「だから、その、えっと、・・・ぼ、僕と、仲良しになってください!」サッ!

 

「「・・・え?」」

 

「・・・」

 

「(そ、空見くん・・・。)」

 

「(その手の、指し出し方は・・・。)」

 

「・・・」

 

「(・・・ふふ。)」

 

「(! さ、紗夜ちゃん?)」

 

「(・・・やっぱり、ダメ、か。)」

 

「顔を上げてください、空見さん。」

 

「!」

 

「・・・私も空見さんも、考えていることは同じだったんですね。」

 

「え?」

 

「・・・」サッ。

 

「? 氷川さん、これは…「仲直り、そして、仲良しの印の握手です。」! ひ、氷川さん・・・。ガシッ。」

 

「これからも、よろしくお願いしますね。」

 

「は、はい、こちらこそ。」

 

「ふふ♪良かったね、二人とも。」

 

「「はい(うん)。」」

 

・・・無事に仲直りすることができた。

 

・・・あとは、ライブね。

 

「花音!まだ時間かかりそうー?」

 

「! ううん!もう大丈夫だよー!すぐ行くね千聖ちゃん!」

 

「? 松原さん、いったいどうし…「ごめん、話は後で。とにかく早く行こう紗夜ちゃん!彩ちゃん達が待ってるよ!」ガシッ! 「!? ちょ、ちょっと松原さん///!?きゅ、急に腕掴まないでよ///!」・・・え、ええ。」

 

松原さん、いったい何を考えて・・・。

 

! いけない、電気消しとかなくっちゃ。パチ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・!来た!」

 

「みんなー!遅くなってごめんねー!」

 

「ううん、全然大丈夫だよ。」

 

「あれ?丸山さん、マイク持ってる・・・」

 

「それに、白鷺さんと白金さんも、何かを待っているような・・・」

 

「実はね、さっき千聖ちゃんが・・・」

 

『・・・私、ちょっと二人の様子見て…『花音。』? 何?千聖ちゃん。』

 

『紗夜ちゃんが戻ってきたら、みんなで少し練習したいと思っているのだけど。』

 

『練習?』

 

『私達、それぞれ違うバンドでやっているから、この五人で演奏するのは初めてでしょ?ライブ前に、少しだけ五人で合わせる練習をしておきたいの。』

 

『あ、そっか。うん、分かった。じゃあそう紗夜ちゃんに伝えとくね。』

 

『ええ、お願い。』

 

「・・・というわけなんだ。」

 

「なるほど。・・・確かに、白鷺さんの言う通りですね。」

 

「花音。あなた、ここに来る前に紗夜ちゃんに伝えなかったの?」

 

「ご、ごめん。他のことに夢中で、すっかり忘れてて・・・。」

 

「松原さんも、・・・そういうこと、あるんですね。」

 

「・・・まぁいいわ。というわけで紗夜ちゃん、早速で悪いんだけど、スタンバイできる?」

 

「はい、もちろんです。」・・・スッ。

 

「・・・それで、花音ちゃんはいつまで空見くんの腕を?」

 

「え?・・・!ご、ごめん空見くん///!わざとじゃないんだよ///!?」

 

「わ、分かってるよ///。」

 

「花音、いける?」

 

「も、もちろん大丈夫だよ!」タッタッタ。

 

・・・ボーカル、丸山さん。ギター、氷川さん。ベース、白鷺さん。ドラム、松原さん。キーボード、白金さん。

 

・・・この五人で、ライブをやるんだ。

 

「・・・ねぇ、千聖ちゃん。」

 

「何?花音。」

 

「みんなと合わせる前に、少しだけ、紗夜ちゃんといっしょに音出してみてもいいかな?」

 

「わ、私もですか?」

 

「う、うん。だってほら、千聖ちゃんと燐子ちゃんはちょっと音出ししてたけど、私と紗夜ちゃんはしてないでしょ?」

 

「確かにそうね。・・・紗夜ちゃん、いいかしら?」

 

「・・・分かりました。やりましょう、松原さん。」

 

「あ、ありがとう紗夜ちゃん。」

 

「では、早速いきますよ。」

 

「う、うん!」

 

「では。・・・」ジャ~ン。

 

「・・・」

 

「・・・」ジャ~ンジャ~ン、ジャンジャンジャジャン。ジャ~ンジャ~ン、ジャンジャンジャジャン。

 

「・・・」

 

「「・・・」」ジャンジャンジャン、ジャンジャンジャジャン。ドン、・・・ドン、・・・ドン、・・・チャ~ン!

 

「!(二人の音が、合わさった。)」

 

「「・・・」」ジャ~ン、ジャジャン、ジャ~ン。ドン、チャン、ドンドンドドン。ジャ~ン、ジャンジャンジャジャン。

 

「・・・」

 

「「・・・」」ドドドドドン(ジャジャジャジャジャン)。

 

「・・・」

 

「「・・・」」・・・ドン、チャ~ン。ジャジャン。

 

「・・・」

 

「「「・・・」」」

 

「・・・紗夜ちゃん!」

 

「ええ。初めてにしては、うまくセッションできていたと思います。」

 

「すごいよ二人とも!息ぴったり!」パチパチパチ!

 

「初めて合わせてここまでの完成度、すごいわ二人とも。」パチパチパチ!

 

「五人で合わせたら、・・・きっと、今よりもすごい音に、なると思います。」パチパチパチ!

 

「うん、私もそう思う。空見くんはどうだった?・・・空見くん?」

 

・・・白鷺さんと白金さんが、それぞれ一人で演奏したときもすごくて感動したのに、・・・二人がいっしょに演奏すると、それ以上にすごくて、感動して、トリハダが立って、・・・とにかくヤバかった。

 

「・・・この楓の顔、言葉を失うくらい凄かったって顔ね。」

 

「え!千聖ちゃん分かるの!?」

 

「いいえ、私が勝手にそう思っただけよ。」

 

「え?あ、そう、なの?」

 

「あはは・・・」

 

「「・・・ふふ。」」

 

「・・・そうだわ。みんな、ちょっと聞いてくれる?」

 

「? 何々?」

 

「私、あることを思い付いたのよ。それは、・・・」ゴニョゴョゴョ・・・。

 

「・・・はっ!一瞬放心状態になってた。・・・ん?」

 

「・・・」ゴニョゴョゴョ・・・。

 

「・・・うん!それいい!」

 

「私も、面白いと、思います。」

 

「私も賛成。紗夜ちゃんは?」

 

「もちろん、私もです。」

 

・・・白鷺さん達、何をこそこそと話してるんだ?

 

「楓。」

 

「! は、はい!」

 

「・・・そうねぇ。・・・2:00頃からにしましょうか。」

 

「・・・白鷺さん、何の話…「みんなもそれでいいわよね?」「「「「うん(ええ)。」」」」・・・?」

 

「楓、今の時刻は?」

 

「え?あ、えっと、・・・1:45ぐらいですかね。」

 

「ライブは、2:00から始めようと思うのだけど、どうかしら?」

 

「2:00?・・・あと15分しかありませんけど、大丈夫なんですか?」

 

「ええ。みんなもそれで大丈夫って言ってくれてるもの。」

 

「「「「・・・」」」」コク。 

 

「・・・なら、いいんですけ…「それで、楓にお願いがあるの。」? お願い?」

 

「楓には、一回エントランスのほうにいる佳子さん達のところに戻ってもらって、2:00近くになったら、みんなをこのホールに来るよう誘導してほしいの。」

 

「僕が?・・・!みんなってことは、ガ…じゃなくて、子供達もってことですか!?」

 

「もちろん。」

 

「・・・いや、でも僕…「大丈夫だよ!空見くんなら!」ま、丸山さん、いつの間に・・・」

 

「ほら、空見くん、早く行ってあげて。子供達が待ってるよ。」グイグイ。

 

「ちょ、分かった、分かったから。押さないでよ、丸山さん。」

 

「「「「・・・」」」」

 

「・・・はぁ。じゃあ、行ってきま…「空見くん。」ん?」

 

「頑張って。空見くんならきっと、子供達とも仲良しになれるよ。」

 

「・・・うん。・・・ありがとう。」

 

「「「「「・・・」」」」」

 

「・・・じゃあ改めて、行ってきます。」タッタッタ。

 

「「「「・・・」」」」

 

「・・・行ったわね。」

 

「では、早速始めましょうか。」

 

「まずは、全員で合わせるところから、ですね。」

 

「あ、じゃあ私、声出しもかねてリズム取るね。」

 

「ええ、お願い彩ちゃん。」

 

「・・・」

 

「・・・楓が心配?」

 

「・・・うん、ちょっとね。・・・でも、空見くんならきっと大丈夫だよ。紗夜ちゃんと仲直りできたし、仲良しにもなれたんだもん。」

 

「それは、楓が自分からしたのかしら?」

 

「うん。最初は紗夜ちゃんが謝る側だったんだけど、途中からは空見くんが自分から謝る側になって。こうやって手を出しながら、仲良しになってくださいって。」

 

「・・・なんか、よく漫画やアニメなどで見るようなお願いのしかたね。」

 

「ふふ、だよね。私も、それは思っちゃった。」

 

「・・・でも、楓なりに頑張ったのね。」

 

「・・・うん。」

 

「花音ちゃん、千聖ちゃん。練習始めるよ。」

 

「ええ、今行くわ。・・・花音、頑張った楓に、私達の最高の音をプレゼントしてあげましょう。」

 

「うん、そうだね。(私達の最高の音、か。・・・よし!空見くんを驚かせられるように、練習、頑張ろう!)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・」

 

『ほら、空見くん、早く行ってあげて。子供達が待ってるよ。』グイグイ。

 

・・・別に、今行かなくてもいいと思うんだけど。

 

2:00からなら、その五分前ぐらいに呼びに行けばいいと思うんだ。

 

・・・戻るか?

 

いや、戻ったら白鷺さんに怒られそうで怖い。

 

・・・はぁ。

 

白鷺さん達の練習、見たかったんだけどなー。

 

「「・・・!楓(空見くん)!」」

 

「あ、川浪さん、大塚さん。」

 

いつの間にかエントランス着いてたわ。

 

「あ、君が空見くんだね?」

 

「あ、はい。えっと確か、・・・鈴木先生、でしたっけ。」

 

「覚えててくれたんだ。」

 

「ま、まぁ、はい。(たまたま思い出せただけだけど・・・)」

 

「先生遊ぼー!」

 

「分かった分かった。ちょっと待っててね。」

 

「・・・」

 

「空見くん、子供達の相手をしに来てくれたの?」

 

「え?あ、えっと、・・・まぁ、そんなとこです。」

 

「やっぱり!いやー助かるよ。私と大塚館長だけじゃ、人手が足りなくて。」

 

「? あの、川浪さんは?」

 

「川浪さんは、ほら。」

 

「・・・あ。」

 

「ほら川浪くん、手、止まってるわよ。」

 

「! は、はい!すみません!」

 

「(・・・なるほどね。)」

 

「ねーえー、こっち来てよー。」

 

「ごめんね、すぐに行くから。じゃあ空見くんも、この子達の相手、よろしくね。」

 

「え?あ、ちょっと!・・・はぁ。」

 

マジかよ。  

 

・・・まぁでも2:00までだから、あと10分もないだろ。

 

10分ぐらい、適当にやってればすぐだよな。

 

えーっと、時計は・・・、お、あった。

 

・・・ん?

 

・・・あれ?

 

・・・は?

 

・・・え!?トコトコトコ。

 

・・・え、これ、え、・・・何で!?

 

『楓、今の時刻は?』

 

『え?あ、えっと、・・・1:45ぐらいですかね。』

 

・・・確かにあのときは、まだ1:45だった。

 

なのに・・・。

 

・・・なのに、何でこの時計、

 

・・・まだ1:30なの!?

 

え?

 

まさか、時間が巻き戻ったの!?

 

・・・なんて馬鹿な話はあるわけないし。

 

・・・!

 

そうだ!

 

僕今日時計してるんだった!

 

いやーいつも忘れるんだよね~。

 

えーっと、時計時計、

 

・・・あれ?

 

・・・あれ、あれあれあれ!?

 

・・・時計が、ない・・・。

 

・・・あ。

 

・・・お風呂に入る前に外したから、

 

・・・どっかに置きっぱなしだ。

 

・・・マジか。ガクリ。

 

「! ちょっと空見くん、どうしたの!?」

 

「あ、大塚さん。・・・今って、何時ですか?」

 

「え?・・・1:31だけど。」

 

「あの時計、合ってます?」

 

「もちろんよ。だってあの時計、昨日電池変えたばっかりだもの。」

 

「・・・そうなんですか。」

 

・・・ということはつまり、・・・ホールの時計が、15分ぐらい早く進んでるってことか。

 

あれ?待てよ?

 

ということは、・・・白鷺さん達、15分早くライブを始めちゃうんじゃ。

 

・・・い、今すぐ止めに行かないと!ダッ!

 

「! 空見くん危ない!」

 

「え?「・・・」ドン! うわっ!」

 

「・・・」

 

「もう、何だよ。・・・ん?・・・!や、ヤバ。」

 

「・・・うぅ、・・・うぅ、ううう。」

 

「あ、え、えっと、その、・・・ご、ごめ…「うわーーーん!!」うっ!」

 

「あーあ、空見くん泣かせちゃった。」

 

うぅ、しくじった・・・。

 

う、うるさい・・・。

 

「大丈夫?大輝くん。」

 

「うぅ、痛いよ・・・。うぅ、うわーーん!」

 

「え、えっと、その、ご、ごめん。悪気はなかったんだけど…「うわーーん!!うぅ、うわーーん!!」・・・」

 

・・・はぁ、やっぱり僕、子供は苦手だよ。

 

・・・どうしよ、この状況。

 

「・・・」




ガルパのスペシャルセット3回ガチャ一回だけ引いたらで星四つぐみ当たりました。

嬉しかったんですけど、・・・欲を言うならお菓子教室の星四のつぐみが欲しかった…。(今回出たのはガールズアンソロジーのやつ)

エピソードでさよつぐ見たかったです…。(最近お菓子教室のイベストを初めて全話見てさよつぐもいいなと思ってきました。)


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13話 “嫌い”からの変化、そしてライブへ

どうも、知栄砂空です。

今回で、公民館編ラストです!

いやー長かったw。

思ってた3倍ぐらい長かったw。

途中で前中後編スタイルから一話ずつのスタイルに変えたりもしましたけど、結果そのほうが書きやすかったのでまぁ良しとしましょうw。

タイトルにもありますが、今回はライブシーンもあります。

頑張って書きましたが、まぁ、・・・はい、僕にはこれが限界でしたw。

あと、最後のほうの雑さは否めませんが、そこはご了承ください…。

というわけで、公民館編ラスト、どうぞ。


-エントランスー

 

・・・はぁ、やっぱり僕、子供は苦手だよ。

 

・・・どうしよ、この状況。

 

「・・・」

 

「ほらほら大輝くん、泣かないで。先生といっしょに遊びましょう。」

 

「うぅ、・・・」

 

「(ほっ。良かった、泣き止んでくれた。)」

 

「・・・うわーーん!!」

 

「(そ、そんなぁ~。)よ、よーしよし、泣かない泣かない。」ナデナデ。

 

・・・僕がここに来た意味って・・・。

 

「楓!」

 

「! か、川浪さん・・・」

 

「目の前のことから逃げようとするな!男だろ!」

 

「・・・」

 

「楓、もしあの泣いてる子が花音だったら、お前はどうする?」

 

「な、何で松原さんが出てくるんですか!」

 

「例えばの話だよ!さぁ、どうする楓。」

 

「ど、どうするってそりゃあ、・・・な、泣き止ます?」

 

「どうやって?」

 

「ど、どうやって?・・・えーっと、うーんとー・・・」

 

「・・・俺だったらこうするな。」スタスタスタ。

 

「え?あ、川浪さん。」

 

「・・・大輝くん、だっけか?」

 

「うぅ、・・・?」

 

「川浪さん?いったい何を・・・?」

 

「まぁ見てろって。・・・今俺は、手に何も持ってないよな?」

 

「・・・うん。」

 

「よし。じゃあまず、手をこういうふうに一回組んで、・・・そしたらある呪文を一回唱えるぞ。何がいい?」

 

「え、・・・僕が、決めていいの?」

 

「おう、何でもいいぞ。」

 

「何でも・・・」

 

「「・・・」」

 

「・・・じゃ、じゃあ、ハッピーシュート!がいい!」

 

「「・・・え?」」

 

「は、ハッピー、シュート?・・・何だそれ?」

 

「知らないのー?ハッピーレンジャーの必殺技だよー。」

 

「ハッピー、レンジャー?」

 

「あ、それ、私知ってます。前に幼稚園のお昼休みのときに、何人かの子がそのハッピーレンジャー?をテレビで見ていたので。」

 

「そ、そうなんですか。」

 

「ねぇ、ハッピーシュート!ってやって!もちろん、こうやってポーズもつけて!」シャキーン!

 

「ぽ、ポーズも!?・・・い、いやー、それは・・・」

 

「ダメ?」ウワメヅカイ。

 

「・・・わ、分かった!やってやる!」

 

「やったー!」

 

「・・・大輝くん、もう、泣き止んでるよね?」

 

・・・川浪さん、チョロくね?

 

「よ、よし、じゃあ呪文をかけるぞ。・・・は、ハッピーシュート!」シャキーン!

 

「「・・・」」

 

「うわー!かっこいいー!」

 

「・・・か、川浪、くん?」

 

「(・・・今、俺の中の何かが一瞬にして崩れ落ちた気がした。)」ガクリ。

 

「それでそれで?呪文をかけるとどうなるの?」

 

「え?あぁ、すると、・・・ジャジャーン!」

 

「「!」」

 

「うわぁー!」

 

「キャンディーが出てきました!」

 

「すごいすごーい!ねぇ、どうやったの!?」

 

「それは秘密だ。ほら、やるよ。」

 

「いいの!?やったー!ありがとう!」

 

「あ、ありがとうございます川浪さん!」

 

「いいんですよ、これくらい。」

 

「・・・」

 

「・・・という感じだ。」

 

「・・・川浪さんって、マジックができたんですね。」

 

「マジックっていうほどのものでもねえよ。ただ、俺がお前に言いたかったのは、こういう感じの自分の得意なものを見せれば、もしさっきみたいに泣き出しちゃったとしても、すぐ泣き止んでああいうふうに喜んでくれるってことだ。」

 

「あの子、川浪さんがキャンディーを出す前にもう泣き止んでましたけどね。」

 

「うっ、・・・と、とにかくお前も、自分の得意なものを見せればいいってことだ。」

 

「・・・ありませんよ。僕に得意なものなんて。」

 

「! べ、別に、必ずしも得意なものじゃなきゃいけないなんてことはないんだ。彩だって、いないいないばぁで泣いてしまった子を泣き止ましてたし、遊び歌とかで子供達と遊んであげてた。燐子は、折り紙で子供達と遊んであげてたんだ。」

 

「(丸山さんと、白金さんが・・・)」

 

「分かったら、さっさと行ってやってやれ!」ドカ!

 

「うわぁ!」ドサッ!

 

「あ。」

 

「川浪さん!いきなり蹴らないでくださいよ!」

 

「わ、悪(わり)ぃ・・・」

 

「もう、・・・ん?」

 

「・・・」

 

「(こ、この子は確か、・・・大輝くん、だっけ?)」

 

「・・・」

 

「・・・ど、どうし…「・・・」ピュー! ・・・」

 

「あーあ、嫌われちゃったな。」

 

「・・・」

 

・・・何だろう。

 

別に子供に嫌われる分にはどうってことないんだけど、・・・なんか頭にくるな。

 

・・・はぁ、やっぱ白鷺さん達のとこ戻ろっかな。スク。

 

「・・・!あ!」ピュー!

 

「え?」

 

な、何で戻ってきたの?

 

しかも走って。

 

え、何で?

 

僕のこと、嫌いだったんじゃ…「超グレートハイパードラゴンのキーホルダーだ!」え?

 

「かっこいいー!いいなー、超グレートハイパードラゴンのキーホルダー。」

 

・・・あ、そういやポケットに入れてたの忘れてた。

 

さっき蹴られたときに、転んだはずみで落としちゃったのか。

 

・・・てかあの子、超グレートハイパードラゴン知ってるんだ。

 

「ご、ごめん、それ、返し…「お兄ちゃんもガチンコモンスターズやってるの!?」え?・・・ま、まぁ、うん。」

 

も?ってことは、この子も・・・。

 

「やっぱり!ねぇ、何のモンスターが好き!?僕は断然、この超グレートハイパードラゴンかなー。すごく強くてかっこいいし、僕がガチモンで初めて進化させたモンスターだし!」

 

「・・・ぼ、僕はそうだなー、・・・ブレイブビースト、かな。」

 

「ブレイブビースト!僕も好きだよ!もしブレイブビーストがほんとにいたら、すごいもふもふで気持ち良さそうだなーって、いっつも思うんだ。」

 

「! そ、そうなんだよ!ブレイブビーストはすごく強いってのもあるけど、それと同時にすごく可愛いんだよ!なんか、ネコ科って感じがしてさ!」

 

「分かる!あ、ネコ科って言えば、ニャンガールも可愛いよね!」

 

「いやあれはマジ可愛いすぎ!僕が猫好きだからかな、なんか猫耳がついてるキャラって惹かれるんだよね~。」

 

「お兄ちゃん猫好きなの!?僕もだよ!あのね、僕ね、・・・」

 

「・・・だ、大輝くん?」

 

「か、楓?」

 

「あ!それからそれから…「ねぇ、大輝くん。何の話してるの?」ガチンコモンスターズだよ!」

 

「! それ、俺もやってる!」

 

「私も!」

 

「僕も!」

 

「(! ・・・まさか、ここにいる子達、みんなガチモンやってたなんて。驚きだな・・・。)」

 

「そうだ!みんなもいっしょに、お兄ちゃんとガチモンの話しよーよ!」

 

「いいの!?」

 

「やったー!」

 

「俺、キングナイト持ってるぜ!」

 

「私、アクアフェアリー持ってる!」

 

「そ、そうなんだ。・・・へぇー、すごいね。」

 

・・・みんな、ガチモン好きなんだな。

 

「・・・ったく、あるじゃねえか。得意なもの。」

 

「川浪くん。」ガシッ。

 

「あ。」

 

「そろそろ、仕事に戻ってくれないかしら?」

 

「は、はい!ただいま!」ダッ!

 

「あ、大塚館長。」

 

「大輝くん、楽しそうですね。」

 

「・・・はい。あんな大輝くん、初めてみたかもしれません。」

 

「(・・・空見くんと大輝くん、意外と合ってるのかもしれないわね。)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え!ガチモンの攻略本、もう出てたの!?」

 

「うん。前に本屋に行ったときにたまたま見つけて、よし買おう!って思って財布開けたら、お金全然なくてさ。」

 

「買えなかったの?」

 

「・・・残念ながら。」

 

「そりゃあ、災難だったね。よーし!じゃあ今日帰ったら、お母さんに買ってってお願いしようっと。」

 

「買ってもらえるといいね。」

 

「大丈夫。絶対買ってもらえるから。」

 

「え?・・・そ、そう、なんだ。」

 

絶対買ってもらえる?

 

・・・どういうこと?

 

「あ、ねぇお兄ちゃん。」

 

「ん?」

 

「さっきの、超グレートハイパードラゴンのキーホルダー。」

 

「あぁ、これ?」

 

「・・・」

 

「・・・もしかして、欲しいの?」

 

「うん。」

 

「(正直だな。・・・)・・・いいよ。」スッ。

 

「! ほんと!?」

 

「うん。その代わり、大切にしてね。」

 

「うん!僕これ、一生の宝物にする!」

 

「べ、別にそこまでじゃなくても…「ううん、もう決めたもん!」・・・そ。」

 

「うわぁ、いいなー。」

 

「かっこいいー!」

 

「私も欲しいなー。」

 

「ダメだよ!これは僕の一生の宝物にするの!」

 

・・・まぁ、ガチモンのことでこんなに楽しく、熱く話せたの、久しぶりだったし。

 

その、お礼みたいなもんで、ね。

 

・・・ん?

 

・・・あ、・・・あぁ。

 

「・・・あーーー!!」

 

「「「!」」」

 

「ど、どうしたのお兄ちゃん?いきなり大きな声出し…「忘れてたー!」へ?忘れてた?」

 

「おい楓、いきなりどうし…「川浪さん!今すぐみんなに、ホールへ行くよう呼びかけてください!」ほ、ホールに?」

 

「ライブが2:00からなの、すっかり忘れてました!」

 

「え、2:00からって、・・・もう五分過ぎてんじゃねえか!」  

 

「だから慌ててるんですよー!」

 

「空見くんちょっと落ち着いて。いったいどうし…「とにかく!ホールに向かってください!」え?ホールに?」

 

「鈴木先生も、子供達を連れてホールに向かってください!」

 

「ホール?って、え?何のこと?」

 

あーもう~!

 

ガチモンの話に夢中ですっかり忘れてた~!

 

きっと今頃白鷺さん達、めちゃくちゃ怒ってる・・・。

 

「おい楓!」

 

「?」

 

「要するに、ここにいるみんなを、今すぐホールへ誘導すればいいんだな?」

 

「は、はい!そういうことです!」

 

「よし分かった!俺はみんなをホールへ誘導するから、楓は早くあいつらのところに戻れ!」

 

「あ、ありがとうございます川浪さん!」ダッ!

 

「あ、ねぇお兄ちゃん、どこ行く…「今からホールですごいもん見せてやるよ!白鷺さん達が!」え?あ、お兄ちゃん!」

 

「みんな!今詳しく説明してる時間はないんだ。俺が誘導するから、みんなついてきてくれ。」

 

「ちょっと川浪くん、どういう…「今は俺の指示にしたがってください!」・・・わ、分かったわよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーホールー

 

はぁ、はぁ、はぁ、はぁ。

 

「・・・」・・・バタン!

 

「「! 楓(空見くん)!」」

 

「す、す、すいません。はぁ、はぁ、・・・お、おく、遅れちゃって。はぁ、はぁ、・・・」

 

「だ、大丈夫!?空見くん!」

 

「だ、大丈夫。はぁ、はぁ、・・・は、走って、疲れた、だけだから。はぁ、はぁ。」

 

「空見さん、遅刻してまで、何をやっていたんですか。」

 

「す、すいません。・・・ちょ、ちょっと、いろいろと。」

 

「・・・ほんとに、大丈夫、ですか?」

 

「う、うん。・・・い、今、川浪さんが、みんなを連れてきて、くれます。」

 

「・・・そう。」

 

「(・・・ヤバい。白鷺さん、めちゃくちゃ怒ってる・・・。)」

 

「「「「・・・」」」」

 

「(・・・いや、白鷺さんだけじゃなく、みんな、怒ってる・・・?)」

 

「・・・楓。」

 

「・・・」

 

「・・・お疲れ様。」

 

「・・・え?」

 

「・・・何よ、え?って。」

 

「え、いや、だって、・・・怒ってるんじゃ、ないんですか?」

 

「・・・あなた、思い込みが激しいわよ?」スタスタスタ。

 

「「「・・・」」」スタスタスタ。

 

「(・・・あれ?)」

 

「・・・誰も怒ってなんかないよ、空見くん。」

 

「ま、松原さん。」

 

「仲良しに、なれたんだよね。子供達と。」

 

「!」

 

「だから遅れてきたんでしょ?」

 

「・・・仲良しになれたかどうかって言われたら、微妙なところだけど、・・・もしかして白鷺さん、そのことを知ってて、僕にお疲れ様って・・・」

 

「ううん、知ってたんじゃなくて、信じてたんだよ。」

 

「え?」

 

「空見くんはきっと、子供達と仲良しになれる。そう信じてた。彩ちゃんも紗夜ちゃんも隣子ちゃんも、私も、そして千聖ちゃんも。」

 

「・・・」

 

「だから私達、すっごく練習したんだ。空見くんに、私達の最高の音をプレゼントするために。」

 

「・・・松原さ…「着いたー!」! あ、川浪さん。」

 

「・・・楽器、ほんとに全部見つかったのね。」

 

「へぇー、この公民館、ホールなんてあったんですね。」

 

「すごーい!何あれー!」

 

「ちょっと見てこよー!」  

 

「あ、おいみんな!」

 

「! ちょ、ちょっと待って!」

 

「「「「!」」」」

 

「(空見くん?)」

 

「え?」

 

「どうしたの?お兄ちゃん。」

 

「もうすぐ、松原さん達がライブを披露してくれるんだ。だから、みんなはここに座っててくれるかな?」

 

「え~!」

 

「僕もあれ触りたい~!」

 

「うーん、どう言えば分かってくれるかな~?」

 

「・・・お兄ちゃん、あれって楽器でしょ?」

 

「え?あ、うん、そうだよ。大輝くん、知ってるんだ。」

 

「うん。前にお父さんとお母さんとお兄ちゃんと僕で、あれと似たような楽器で演奏してるのを見に行ったことがあるんだ。あと、僕のことは大輝でいいよ。」

 

「そうなんだ。・・・大輝が見に行ったもの、今から始まるものは、ライブって言うんだ。」

 

「ライブ?」

 

「うん。ライブは、座って静かに見るものだから、そこの椅子に座って、ライブが始まるまで待っててくれるかな?」

 

「・・・うん、分かった!」

 

「よし、・・・みんなもお願いできるかな?」

 

「・・・分かった!」

 

「ライブ、始まるまで待ってるー!」

 

「ありがとう。・・・ふぅ、良かった~。」

 

「「「「・・・」」」」

 

「・・・」

 

「えっと、僕は・・・「楓。」?」

 

「ちゃんと、嫌いから苦手になれたじゃねえか。いや、苦手じゃなく、得意にまでなっちゃってるか?」

 

「まだ得意ではないですよ。・・・でもまぁ、苦手、では、・・・なくなった、かも?」

 

「・・・とにかく!」バシ!

 

「いて。」

 

「・・・頑張ったじゃねえか。」

 

「・・・はい。」  

 

「・・・空見くん、なんだか嬉しそう。」

 

「ふふ、確かに。」

 

「空見さん、子供嫌いを克服できたみたいで、良かったです。」

 

「ええ、私もそう思います。」

 

「・・・」

 

「よし。それじゃあ花音、始めるわよ。・・・花音?」

 

「・・・え?あ、・・・う、うん!」

 

「・・・ふふ。」

 

僕は、・・・ここら辺にでも座ってりゃいいかな。ドサッ。

 

「・・・空見さんも座りましたよ。」

 

「・・・いいわよ、彩ちゃん。」

 

「よ、よーし。」

 

「頑張って、彩ちゃん。」

 

「ファイト、です。」

 

「ありがとう、みんな。・・・スー、ハー。スー、ハー。」

 

「「「「・・・」」」」

 

「・・・み、皆さん!今日はライブを見に来てくださって、ありがとうございましゅ…あ。」

 

「「「・・・」」」

 

「ねぇ先生、今噛んだよね。」

 

「ありがとうございましゅって。」

 

「あはは、彩ちゃん面白ーい!」 

 

『あはは・・・』

 

「「「・・・」」」

 

「噛んだわね。」

 

「・・・///!うぅ、あんなに練習したのに~/////!」

 

「(・・・ドンマイ、丸山さん。)」

 

「丸山さん、気にしないでください。」

 

「子供達が、待ってますよ。」

 

「頑張って、彩ちゃん。」

 

「・・・う、うん。」

 

「・・・」

 

「え、えっと、・・・ふ、普段私達は、それぞれ違うバンドで活動しています。しかし偶然にも、私達は弾いている楽器がそれぞれ違うのです。」

 

「「「「・・・」」」」

 

「今日はそんな五人で、ライブをすることにしました。最初は子供達を落ち着かせるためのライブの予定でした。でも、だんだんそれは違うんじゃないかと思ってきて、・・・今日のライブは、私達の最高の音を聞いて、みんなに喜んでもらいたい、楽しんでもらいたい、そんな思いを込めたライブです。」

 

「「「・・・」」」

 

「(丸山さん・・・。)」

 

「そ、それでは聞いてください。きらきら星。」

 

「(え、きらきら星!?)」

 

「・・・きーらーきーらーひーかーるー♪おーそーらーのーほーしーよー♪」

 

「(きらきら星、・・・白鷺さんとSPACEに行ったときに聞いた曲だ。)」

 

「・・・」コツ。コツ。コツコツコツコツ。

 

「きーらーきーらーひーかーるー♪おーそーらーのーほーしーよー♪」ジャ~ン、ジャ~ン、ジャ~ン、ジャ~ン。

 

「(これって。)」

 

「(きらきら星、か。)」

 

「まーばーたーきーしーてーはー♪みーんーなーをーみーてーるー♪」~♪~♪~♪~♪

 

「(きらきら星に楽器の演奏が入ると、こんなにも曲の印象が変わるのね。)」

 

「きーらーきーらーひーかーるー♪おーそーらーのーほーしーよー♪」ドン、・・・ドン、・・・ドン、・・・チャ~ン。

 

「ねぇ、これって、きらきら星?」

 

「なんか、すごいね。」

 

「みーんーなーのーうーたーがー♪とーどーくーとーいーいーなー♪」ジャ~ン、ジャ~ン、ジャジャ~ン、ジャ~ン。

 

「・・・これが、ライブ・・・」

 

「・・・空見くん!」

 

「え?」

 

「空見くんもいっしょに演奏しよう!」

 

「え?・・・!僕も!?」

 

「うん!」

 

「で、でも、僕、楽器なんか、まともに演奏したことな…「大丈夫だよ!」ま、丸山さん、今歌ってない…「みんながバックで演奏してくれてるから問題ないよ。」・・・そもそも、演奏するしない以前に楽器がない…「それなら見つけたよ!じゃーん!タンバリン!」・・・マジか。」

 

「ほら空見くん!ステージに上がって上がって♪」

 

「うわっ!ほ、ほんとにやるの~?」

 

「もちろん!はい、タンバリン。」

 

「あ、・・・ありがと。」

 

「いくよ!空見くん!」

 

「ま、マジでやんの~?」

 

「マジだよ!」

 

・・・どうしよ。

 

「きーらーきーらーひーかーるー♪おーそーらーのーほーしーよー♪」ジャ~ン、ジャ~ン、ジャ~ン、ジャジャ~ン。

 

「空見くん、いっしょに演奏しよ!」

 

「ま、松原さん・・・。」

 

「まーばーたーきーしーてーはー♪みーんーなーをーみーてーるー♪」ドン、チャ~ンドン、チャ~ンドン、チャ~ンドン。

 

「空見さん、私達とセッションしましょう。」

 

「ひ、氷川さん・・・。」

 

「きーらーきーらーひーかーるー♪おーそーらーのーほーしーよー♪」ジャ~ン、ジャ~ン、ジャ~ン、ジャ~ン。

 

「楓、恥ずかしがらなくていいのよ。」

 

「し、白鷺さん・・・。」

 

「みーんーなーのーうーたーがー♪とーどーくーとーいーいーなー♪」シャジャ~ン、ジャ~ン、ジャジャ~ン、ジャ~ン。

 

「空見さん、・・・大丈夫です。」

 

「し、白金さんまで・・・。」

 

「きーらーきーらーひーかーるー♪おーそーらーのーほーしーよー♪」~♪~♪~~♪~♪

 

「空見くん!いっしょに!」

 

「丸山さん・・・。・・・わ、分かった。こうなったら、やってやる!」

 

「まーばーたーきーしーてーはー♪みーんーなーをーみーてーるー♪」パン、チャラ~ンパン、チャラ~ンパン、チャラ~ンパン、チャラ~ン。

 

「(楓の音も、加わった。)」

 

「(頑張って、空見くん。)」

 

「きーらーきーらーひーかーるー♪おーそーらーのーほーしーよー♪」パン、チャラ~ンパン、チャラ~ンパン、チャラ~ンパン、チャラ~ン。

 

「(すごい、こんなきらきら星、初めて聞いた・・・。)」

 

「お兄ちゃーん!かっこいいよー!」

 

「みーんーなーのーうーたーがー♪とーどーくーとーいーいーなー♪」パン、チャラ~ンパン、チャラ~ンパン、チャラ~ンパン、チャラ~ン。

 

「いよいよ最後だよ、空見くん。」

 

「しっかり決めてちょうだい、楓。」

 

「空見さん、最後まで気を引き締めて。」

 

「頑張ってください、空見さん。」

 

「ラスト、いくよ!空見くん!」

 

「う、うん!」

 

「・・・きーらーきーらーひーかーるー♪」」パン。チャラ~ン。パン。チャラ~ン。

 

「「「「・・・」」」」

 

「おーそーらーのーほーしーよー♪」パン。チャラ~ン。パン。・・・チャラ~ン。 

 

「「「「・・・」」」」

 

「「「・・・」」」

 

・・・お、終わっ…「・・・」パチパチパチパチ!! !

 

「すごい!すごかったよお兄ちゃん!他のみんなもすごかった!」パチパチパチパチ!!

 

「すごかったぞ楓。」パチパチパチパチ。

 

「私、感動しちゃった。」パチパチパチパチ。

 

「お疲れ、空見くん。そしてみんなも、お疲れ。」パチパチパチパチ。

 

「すごかったー!」パチパチパチパチ。

 

「面白かったー!」パチパチパチパチ。

 

「また聞きたーい!」パチパチパチパチ。

 

「ライブ最高!」パチパチパチパチ。

 

「・・・」

 

「・・・」

 

僕と丸山さんはゆっくりと顔を見合せ、

 

「・・・えへ(はは)♪」

 

二人で静かに笑い合った。

 

僕が演奏に加わるというハプニング?もあったが、最後は川浪さんや大塚さん、鈴木先生、子供達から大歓声を浴び、公民館ライブは静かに幕を閉じたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーエントランスー

 

「ライブすごかったー!」

 

「きらきら星、すごく良かったー!」

 

「演奏、超かっこよかったよ!」

 

「ライブ、見てて楽しかったー!」

 

「ふふ、ありがとうみんな。」

 

「花音、あっという間に子供達に大人気ね。」

 

「そういう千聖ちゃんもね。」

 

「・・・ふふ、そうね。」

 

「水色の髪のお姉ちゃん!すごくかっこよかったよ!」

 

「あ、ありがとう。」

 

「ふふ、良かったですね、水色の髪のお姉ちゃん。」

 

「ちゃ、茶化さないでください///!」

 

「まさか、バンドのライブできらきら星を聞くことになるとはな。」

 

「でも、意外とバンドの演奏と合ってたわよね、きらきら星。」

 

「千聖ちゃんのアイデアなんです。子供達に楽しんでもらうためのライブだから、みんなが知っているような曲がいいんじゃないかって。」

 

「そうだったんだ。」

 

「ということは、白鷺さんがきらきら星を提案したの?」

 

「ううん、提案したのは紗夜ちゃんだよ。」

 

「え、氷川さん?」

 

「紗夜ちゃんが、この前日…あ、紗夜ちゃんの妹さんが、きらきら星を口ずさんでるのを思い出したんだって。」

 

「へぇー。(氷川さん、妹がいるんだ。)」

 

「それはそうと楓、お前のタンバリン、良かったぞー。」

 

「いやでも、僕はただ、普通にタンバリンを叩いてただけで…「普通じゃないでしょ?ちゃんと彩ちゃんの歌に合わせて叩いてたじゃない。」ま、まぁ、そう、なんですけど・・・」

 

「彩ちゃんの歌声も可愛いかったよ。動画で撮りたかったくらい♪」

 

「そんな、大袈裟ですよ・・・。」

 

「あ、そうだ。・・・楓ー。」

 

「白鷺さん、どうしたんですか?」

 

「はい、これ。」スッ。

 

「? ・・・!これ、僕の腕時計じゃないですか!?何で白鷺さんが!?」

 

「お風呂の前にある休憩所に置いてあったから、私が代わりに持ってたのよ。なかなか渡すタイミングがなかったけど、そのおかげで役に立ったから良かったわ。」

 

「役に?僕の時計がですか?」

 

「ええ。これがなかったら、ホールの時計が15分もずれいることに気がつかなかったもの。」

 

「そうだったんですか。・・・って、え?気づいてたんですか!?」

 

「ええ。花音と紗夜ちゃんがいっしょにセッションしたあたりからね。」

 

「・・・だったらそのときに教えてくれりゃ良かったじゃないですか~。そしたら白鷺さん達が15分早くライブを始めちゃうんじゃないかなんて心配、しなくても良かったのに。」

 

「あら、そんな心配してくれてたの?ふふ、ありがとね、楓。」

 

「・・・てか、僕にみんなを呼びに来させるの、別に30分前じゃなくて五分前ぐらいでも良かったんじゃないですか?」

 

「それだと、あなたを驚かせられないじゃない。」

 

「へ?お、驚かせる?」

 

「花音と紗夜ちゃんのセッションのとき、あなた、すごく驚いていたでしょ?」

 

「ま、まぁ、はい。」 

 

「だから今度は、彩ちゃんと私達四人の演奏で、あなたを驚かせようと思ったのよ。だからあなたに練習を見せることのないよう、五分前ではなく30分前に、あなたをここに来させた。」

 

「・・・なるほど、そういうことだったんですか。」

 

「まぁでも、途中からあなたも演奏することになっちゃったから、実際あなたが驚いてくれたのかどうかは分からなかったけど。」

 

「・・・僕、演奏することに夢中で、みんなの演奏をじっくりと聞くことはできませんでした。・・・でも、ステージに上がった途端、この人達の演奏はすごい。身体中がしびれて、熱くなって。うまく言葉にできないんですけど、とにかく本当にすごい演奏だってことが、感覚が、伝わってきました。」

 

「・・・そう。・・・ふふ。」

 

「? 白鷺さん?」

 

「あなたって、本当に正直よね。」

 

「え?」

 

「! 見て千聖ちゃん!空、すっごく晴れてるよ!」

 

「ほんとね。さっきはあんな土砂降りだったのに。」

 

「きっと、私達のライブが、お天道様にも届いたんだね。」

 

「・・・ふふ。」

 

「え?」

 

「松原さん、面白いことを言うんですね。」

 

「えぇ!?ち、違うの~?」

 

「いえ、花音が言うのなら、そうなんじゃないかしら?ふふ・・・。」

 

「ふぇぇ、みんな笑わないでよ~///!」

 

「・・・」

 

「あなたって、本当に正直よね。」

 

「・・・そう、なのかなぁ?ただ思ったことを、口に出して言っただけなんだけど。・・・ま、いっか。」

 

「・・・あ。」

 

「? どうしたの?彩ちゃ…「あーーー!!!」! な、何よ、いきなり大きな声出して!」

 

「お花見!」

 

「「「「「・・・え?」」」」」

 

「私達、花美ヶ丘公園へお花見に行く途中だったんだよ!」

 

「「「「「・・・!」」」」」

 

「そ、そうだったわ・・・」

 

「完全に忘れてましたね・・・」

 

「はい・・・」

 

「空見くん、覚えてた?」 

 

「ううん、僕もすっかり忘れてた・・・」

 

公民館でいろんなことがあったから、お花見のこと頭からすっぽりと抜け落ちてたよ・・・。

 

てか、今2:30か。

 

・・・もうみんな、お花見終わって帰ってきてる頃だろうなー。

 

「・・・楓。」

 

「え?「ほらよ。」パシッ。 うわっ。か、川浪さん?」

 

「行ってこい、花美ヶ丘公園へ。」

 

「・・・川浪さん。」

 

「はい、みんなの荷物も持ってきたわよ。」

 

「あ、ありがとうございます。」

 

「「「「ありがとうございます。」」」」

 

「あ、でも私達、花美ヶ丘公園までの道が…「大丈夫よ。」?」

 

「この公民館を出て、右のほうにずーっと進んでいげは、花美ヶ丘公園の看板が出てくるわ。あとは、そこに書いてある通りに道を進んでいけぱいいだけ。」

 

「な、なるほど。・・・ありがとうございます。」

 

「え~、もう行っちゃうの~?」

 

「もっと遊びたい~!」

 

「ごめんねみんな、私達、行かなきゃ。」

 

「また会えるときがあったら、・・・そのときはまた、みんなで折り紙しようね。」

 

「うぅ、彩ちゃ~ん・・・」

 

「燐子お姉ちゃ~ん・・・」

 

「紗夜。」

 

「・・・何ですか。」

 

「・・・ごめん。」

 

「・・・私、あなたから謝られるようなこと、何もしていませんよ?」

 

「なんとなく謝っとい…「あなたはしばらく黙っててもらえますか?」・・・やっぱり俺にだけは当たり強い・・・」

 

「ははは・・・「花音ちゃん。」? 佳子さん?」

 

「あなたのドラムを見て、久しぶりに昔のことを思い出したわ。」

 

「え?」

 

「これからもバンド活動、頑張ってね。」

 

「・・・は、はい!」

 

「・・・「楓。」!」

 

「俺が教えてやったこと、忘れるんじゃないぞ。」

 

「・・・はい!」

 

「・・・じゃあみんな、行きましょうか。」

 

「「「「「うん(はい)。」」」」」

 

「・・・短い時間でしたが、お世話になりました。」

 

「元気でね、みんな。」

 

「彩ちゃん、燐子ちゃん。」

 

「「! 鈴木先生。」」

 

「私、頑張るね。」

 

「「・・・鈴木先生。」」

 

「またねー、彩ちゃ~ん!燐子お姉ちゃ~ん!」

 

「またいっしょに遊ぼうね~!」

 

「うぅ、みんな・・・。うん!またね~!みんな~!」

 

「彩ちゃん、何も泣くことないでしょう?」

 

「みんな、元気でね。」

 

「じゃーなー!紗夜ー!」

 

「お、大声で名前を叫ばないでください!」

 

「楓お兄ちゃ~ん!」

 

「! 大輝。」

 

「またいっしょに、ガチモンの話、しよーねー!あと、楓お兄ちゃんからもらった超グレートハイパードラゴンのキーホルダー、大切にするからねー!」

 

「・・・おう!」

 

『じゃーねー!』

 

『元気でねー!』

 

『またなー!』

 

「・・・公民館、いろいろあったね。」

 

「そうですね。」

 

「うぅ、みんな・・・。」

 

「彩ちゃん、まだ泣いてるの?」

 

「寂しいんですね、子供達が。・・・私もです。」

 

・・・この公民館で、いろいろなことを学んだな。

 

・・・いい思い出に、なったかも。

 

「・・・確か、この道をずっと真っ直ぐ行けばいいんでしたよね?」

 

「佳子さんの言っていた道が正しければ、そのはずよ。」

 

「・・・よーし!花美ヶ丘公園まで、競争だー!」ダッ!

 

「ふぇぇ、い、いきなり~!?」

 

「丸山さん、復活、ですね。」

 

「は、走るの~!?」

 

「ほらほらみんな!早く早くー!」

 

「あ、彩ちゃん、ちょっと待って!」

 

「白鷺さん、大丈夫ですか?」

 

「無理、しないでくださいね。」

 

はぁ、はぁ、・・・丸山さん、は、早い・・・。

 

「空見くん。」

 

「あ、松原、さん。」

 

「いっしょに、行かない?」

 

「・・・うん。」

 

松原さんも、走るの苦手みたい。

 

「・・・彩ちゃん、楽しそうだよね。」

 

「うん。」

 

「・・・お先に♪」ポン。

 

「! ちょ、松原さん!?いっしょに行こうって言ったじゃん!」

 

「空見くん、私と競争だよ。どっちが先に公園に着けるか。」

 

「もぅー!いっしょに行かないかって言いだしたの松原さんじゃ~ん!」

 

「ふふ、負けないよ、空見くん♪」

 

・・・そっちがその気なら、僕だってやってやる。

 

「絶対僕が勝つ!」

 

大塚さん、川浪さん、鈴木先生、そして子供達に別れをつげ、公民館を後にした僕達。

 

大塚さんに教えてもらった道を、おいかけっこをしながら進み、お花見会場である花美ヶ丘公園を目指すのだった。




別れのシーンって、意外と難しいんですよね~。

はい、というわけで次回は、正真正銘のお花見回です。

ここだけの話、僕はこのお花見回を書きたくて、バンドリの小説を書き始めたんですよねw。

あの書き下ろしイラストを見て、あることをずっと思い続け、・・・それなら僕があの書き下ろしイラストの完全版(的なやつ)を書いてやろうと、そう思ったのがこのバンドリの小説を書き始めたきっかけです。

それが、次回のお花見回です!

まぁ、察しの方はお気づきでしょうw。

それでは次回の更新まで、しばし待たれよっ(あこちゃん風に言ってみましたw)。


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14話 お花見がしたい、ただそれだけ

今回のガチャ、エクセレント・チョイスガチャ。

・・・10連で新規花音ちゃん出ました!!

よっしゃーーーー!!!

Twitterとインスタの両方でツイート、投稿してしまうほどめちゃくちゃ嬉しかったですw。

どうも、知栄砂空です。

では、お花見回スタートです。


「・・・!みんな!着いたよ!花美ヶ丘公園!」

 

「・・・結構広い公園なんですね。」

 

「はい。それに、・・・すごく、綺麗です。」

 

「花美ヶ丘、というだけあるわね。」  

 

・・・2:30ちょっと過ぎか。

 

25分ぐらいに公民館を出てこの時間に着いたってことは、・・・意外と公民館から近かったんだな。

 

いてて・・・。

 

「大丈夫?空見くん。」

 

「う、うん、大丈夫。」

 

結局公園へは、歩きで来た。

 

なぜなら、・・・松原さんとかけっこを始めた瞬間、僕がこけたからだ。

 

・・・もう一度言おう。

 

僕がこけたからだ。

 

・・・しかも盛大に、何もないようなところで。

 

・・・はぁ、つい調子に乗っちゃった。

 

こけた瞬間、めちゃくちゃ恥ずかったんだけど・・・。

 

こけたのなんて何年かぶりだし、見られたのが松原さん達だから尚更。

 

・・・まぁ要は、僕がこけたことにより、白鷺さんの案で走って行くのはやっぱりやめようという話になり、こうして歩きで来ることになった、ということだ。

 

ちなみにこけたとき血も出て結構痛かったので、今は松原さんに肩を貸してもらいながら歩いている。

 

・・・情けなさすぎる。

 

「・・・みんな、どこにいるのかなぁ?」

 

「親子連れの人達や子供達などはいっぱいいますが・・・」

 

「制服を着ている人は、・・・見当たりませんね。」

 

「・・・みんな、もう帰っちゃったのかしら。」

 

「「・・・」」

 

僕達が学校を出てから、もう三時間半も経ってるんだもんなー。

 

・・・公民館でいろいろ過ごしてるうちに、もうみんなとっくに着いて、とっくにお花見しながら昼ごはん食べて、とっくに帰ったんだろうな。

 

・・・はぁ。

 

「・・・あ。」

 

「どうしたの?彩ちゃん。」

 

「あんなところに、テラスがあるよ。」

 

「! ほんとだ。」

 

「おそらく、この公園を利用している人達の、休憩所みたいなところね。」

 

「・・・行ってみませんか?テラス。」

 

「「「「「え?」」」」」

 

「ずっとここでじっとしているわけにも行きませんし、・・・せっかく公園に来たんですから、観光代わり、とは言えないかもしれませんけど、その・・・」

 

「「「「「・・・」」」」」

 

「も、もしかしたら、皆さん、あのテラスの中にいるのかも、しれませんし。・・・」

 

「・・・そうね。燐子ちゃんの言う通りだわ。」

 

「!」

 

「本来の目的地は、この花美ヶ丘公園だもの。公園に少し入ってじゃあ帰ろうなんて、道を教えてくれた佳子さんにも申し訳ないわ。それに・・・」

 

「みんなもう帰っちゃったんじゃないかって決めつけるのは、良くないよね。燐子ちゃんの言うように、もしかしたらテラスにみんないるのかもしれないし。」

 

「行きましょうか、テラス。」

 

「・・・」

 

「ありがとう、燐子ちゃん。」

 

「! ・・・い、いえ///。」

 

「・・・」

 

「・・・?どうしたの?空見くん。行くよ?」

 

「え?あ、あぁうん。」タッタッタ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「「「・・・」」」」」」ガー。

 

「・・・!丸山さん!?」

 

「! あなたは確か、・・・誰だっけ?」

 

「浅井だよ!浅井美菜!」

 

「あ~そうそう、美菜ちゃ…「・・・」ガバッ! え?」

 

「「「「!?」」」」

 

「み、美菜、ちゃん?」

 

「もう、どこ行ってたの!?すっっっごく心配したんだよ!?」

 

「ご、ごめん。ちょっと、トラブル?にあっちゃって。」

 

「白鷺さんも!氷川さんも!白金さんも!松原さんも!空見も!・・・」

 

「ちょっと美菜ちゃん、大丈…「うわーーーーん!!」み、美菜ちゃん!?どうして泣いてるの!?」

 

「良かった~~!!みんな無事で良かったよ~~!!うわ~~~ん!!」

 

「・・・美菜ちゃん。」

 

「ったく大袈裟なんだよ浅井は。」

 

「! 橋山さん。」

 

「ど、どうも、氷川さん。・・・ほら浅井、丸山さんから離れなって。」

 

「うぅ、良かった、良かったよ~・・・。」

 

「分かったから、もう泣くなって。」

 

「・・・」

 

「こいつ、今はこんなんだけど、さっきまではめちゃくちゃクールぶって座ってたんよ?こーんな感じでさ。」

 

「そ、そうなんだ。」

 

「丸山さん達を見つけた途端、こんなに泣きわめくなんて。相当心配だったんだな、丸山さん達のこと。」

 

「・・・」

 

「うぅ、ううう・・・」

 

「ほら、もう泣くなって。・・・いつまでも泣いてたら、・・・あたしが、・・・もらい泣き、しちゃうじゃん。・・・うぅ、ううう・・・」

 

「・・・二人とも。」

 

「白金さんの言う通り、いましたね、テラスに。」

 

「は、はい。・・・良かった、です。」

 

橋山さんも浅井さんも、泣くほど心配してくれてたんだ。

 

「空見くん。」

 

「ん?」

 

「良かったね。」

 

「・・・うん。」

 

「二人とも、そろそろ泣き止んで。」

 

「浅井さん、私のハンカチ、使ってください。」

 

「うぅ、ありがとう、白金さん・・・。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ひとまず、椅子に座りましょうか。」

 

「うん。」

 

「そうですね。」

 

「・・・ねぇ浅井さ…、・・・美菜ちゃん。」

 

「何?」

 

「・・・他のみんなは、いないの?」

 

『・・・』ガラーン。

 

「そういえばこのテラス、・・・静かだね。」

 

「さっきまでは大雨が降ってたから、人もいっぱいいたんだけど・・・」 

 

「雨が止んで晴れたから、みんな外に出たのね。どうりでこんな静かなわけだわ。」

 

「! このテラス、お店もあるんですね。」

 

「ちっちゃい喫茶店だけどね。人もいるっちゃいるんだけど・・・」

 

「まぁ、・・・喫茶店、ですからね。」

 

「「「「「「「・・・」」」」」」」

 

「・・・!み、美菜ちゃん、みんなは?」

 

「え?」

 

「他のみんなはいないの?花咲川のみんな。」

 

「あぁ。・・・みんななら、鷹崎先生のある提案で、先に帰ってったよ。」

 

「・・・やっぱり、みんな帰っちゃったんだ。」

 

「待って。・・・ある提案?」

 

「う、うん。」

 

「鷹崎先生、・・・確か、C組の担任でしたよね?」

 

「はい、確か。」

 

鷹崎先生、・・・どの先生か全然分からん。

 

「美菜ちゃん、そのことについて、詳しく話してもらえないかしら。」

 

「え?あ・・・」

 

「・・・」

 

「? 橋山、さん?」

 

「・・・話さなきゃ、ダメ?」

 

「・・・ご、ごめんね。話しづらいことなら、無理に話さなくても…「いいえ、話してちょうだい。」! 千聖ちゃん!」

 

「私達に話しづらい、つまり、私達に関係する何かがあった、ということでしょ?」

 

「「・・・」」

 

「え?」

 

「白鷺さん、それっていったい・・・」

 

「話してちょうだい、二人とも。それがどんな内容であったとしても、私達はそれをちゃんと受け入れるから。そうでしょ?みんな。」

 

「「「「・・・うん(ええ・はい)。」」」」

 

「楓も、そうよね?」

 

「は、はい。」

 

「・・・」

 

「・・・分かった。」

 

「! 浅井!」

 

「黙ってたって、何の得にもならないよ。・・・私達が、ずっとそのことを引きずらなきゃならなくなるだけ。」

 

「・・・」

 

「(・・・二人とも、何があったんだろう・・・?)」

 

「・・・分かった、話すよ。」

 

「ありがとう、橋山さん。」

 

「・・・実は・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-1時間前-

 

私と橋山が、ただ静かに、ぼーっとしながら座ってるときだった。

 

「・・・鷹崎先生。」

 

あ、あの二人は確か、C組の・・・。

 

「何だ?」

 

「私達、いつになったら帰れるんですか?」

 

「「!」」

 

「もうここに来て二時間くらい経つし、お腹も空いたし・・・。」

 

「・・・私達だけでも、帰って…「何自分勝手なこと言ってんだよ!」!」

 

「ちょ、橋山!」

 

「お腹が空いてるのなんて、みんな同じなんだよ。・・・でも、まだ…「何!?まだ待ってろって言うの!?」っ!」

 

「私達はもう充分待ったよ!携帯もない、外にも出れないこんな状態で、二時間も!ずっとこのテラスの中で!でももう限界!」

 

「そ、そんなの、た…「ただのわがまま!?ああそうだよ!わがままだよ!・・・ていうかあんた、いっちょまえに私を叱ってるけどさ、あんたのクラスの班のせいでこうなってんだよ!?」! ・・・」

 

・・・あいつ。

 

「分かってんの!?あんたのクラスの班のせいで、こっちは二時間も待たされてんの!ちゃんとそういう自覚あん…「空見達は悪くない!」ガタッ! !」

 

「え、浅井?」

 

「こんな大雨なんだもん。きっと何か、トラブルがあったんだよ。ここに来れないような何かが・・・。」

 

「・・・浅井。」

 

「・・・そんなの、私達の知ったこっちゃないもん。」

 

「! こ、こいつ~!」

 

「ちょ、ちょっとあなた達…「・・・」スッ。 え?鷹崎、先生?」

 

「・・・」ガタッ。

 

「・・・な、何ですか?」

 

「私達を、怒鳴るんですか?」

 

「・・・いいぞ。」

 

「「え?」」

 

「帰りたきゃ帰っていいぞ。」

 

「「! ・・・」」

 

「・・・勘違いするな。今のは叱ったわけではない。」

 

「「?」」

 

「お前ら全員聞けーー!!」

 

『?』

 

鷹崎先生、いったい何を・・・?

 

「今日のお花見は、急遽中止とする!」

 

『!?』

 

「「え!?」」

 

「各自、気をつけて帰るように!・・・」

 

「ちょ、ちょっと鷹崎先生!今のどういうことですか!?」

 

「どうって、言葉通りの意味ですよ美澤先生。お花見は急遽中止。」

 

「ま、まだ一班到着してないんですよ!?それなのに、中止って…「だからですよ。」え?」

 

「これだけ待っても到着しないということは、その子の言う通り、何かトラブルに遭った可能性が高いということです。だから、今日は一旦みんなを帰して、ちゃんとそのことを学校側に連絡したほうがいい、そう俺は考えたんですよ。」

 

「・・・で、でも、それだけじゃ…「それだけじゃ、何の解決にもならない、ですか?」! は、はい。」

 

「確かにその通りです。でも見てください。ご覧の通り、外は大雨、風も強い。こんな中で一つの班を探すのは、とても危険です。」

 

「・・・ですが・・・「高校生なんですから、きっとどこか雨宿りできるところを見つけて、そこで天気がよくなるまで待機してますよ。」・・・」

 

「そういうわけだからお前ら、今日はもう帰れ。まだ外は大雨だから、気をつけてな。」

 

「は、はい。・・・行こっか。」

 

「うん。」

 

「・・・なぁお前ら。」

 

「え?」

 

「あたし達、ですか?」

 

「そうだ。悪いが、さっき俺が言ったこと、あいつらに伝えといてくれねえか?」

 

「わ、私達が、ですか?」

 

「ああ。じゃ、頼んだぞ。」

 

「! 鷹崎先生、どこへ…「決まってるでしょ、学校へ戻るんですよ。」あ、・・・で、では、私も。」

 

「・・・どうする?浅井。」

 

「・・・今は、素直に言われたことをやろう。私はこっち側のみんなに伝えるから、橋山はそっちをお願い。」

 

「わ、分かった。」

 

「・・・みんなー!ちょっと聞いてー!」

 

「・・・」

 

『こんな大雨なんだもん!きっと何か、トラブルがあったんだよ。このテラスに着けなくなるような・・・。』

 

『・・・そんなの、私達の知ったこっちゃないもん。』

 

「(・・・自分達以外はどうだっていい、そういう思考なんだ、あの二人は。・・・)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・ということがあったんだよ。」

 

「「「「「・・・」」」」」

 

「そう、そんなことがあったの。」

 

「ごめん。今ので、気分を悪くさせちゃったんなら、謝る…「いいのよ。ちゃんと受け入れるって言ったでしょ?」・・・うん。」

 

「・・・ねぇ。」

 

「「?」」

 

「何で二人は、帰らなかったの?」

 

「「「「!」」」」

 

「「え?」」

 

「帰ろうと思えば、二人とも帰れたわけでしょ?それなのにどうして二人は、帰らないで待っててくれたの?」

 

「「・・・」」

 

「彩ちゃん、その言い方は失礼…「いいよ、白鷺さん。」・・・美菜、ちゃん?」

 

「・・・じゃあ逆に、どうして丸山さん達はここに来たの?」

 

「え?」

 

「集合予定時間から二時間くらい経っちゃってるし、今から公園に行っても誰もいないかもしれない、そう思ってたんじゃないの?」

 

「そ、それは・・・」

 

「・・・さっき言ったね。私達は、帰ろうと思えば帰れたって。・・・それなら丸山さん達も、帰ろうと思えば帰れたんじゃないの?」

 

「! ・・・」

 

・・・ブーメランだ。

 

「それなのに、どうして帰らなかったの?何で公園なんかに来たの?どうしてテラスなんかに来…「お花見が・・・」・・・」

 

「・・・お花見が、したかったから。・・・花音ちゃん、千聖ちゃん、紗夜ちゃん、燐子ちゃん、そして空見くん。そこに私を入れたこの六人で、お花見がしたかったから。・・・だから私は、・・・いや、私達は、ここに…「私達も同じだよ。」え?」

 

「私達の班、私と橋山以外はみんな帰っちゃったけど、・・・やっぱり、お花見したいもん。先生はああ言ってたけど、もしかしたら来るかもしれない。もし来たら、私達も混ぜてもらって、いっしょにお花見したい。そう思ったから、私達はここで待ってたんだ。丸山さん達が来てくれるのを信じて。」

 

「・・・」

 

「? 彩ちゃん、どうし…「うわ~ん!美菜ちゃ~ん!」ガバッ! あ、彩ちゃん!?」

 

「よしよし、泣かないで、丸山さん。」

 

「うぅ、ごめん・・・。私、あんな失礼なこと言っちゃって、ほんとに、ほんとに、うぅ、ううう…「分かってるよ。ほら、もう泣かないで。みんな見てるよ。」うぅ、美菜ちゃ~ん・・・。」

 

「もう、彩ちゃんったら。」

 

「・・・美菜ちゃんと橋山さん、そして私達。みんな、同じ気持ちだったってことだよね。」

 

「ええ。」

 

「良かったです。丸山さんと浅井さんが、・・・仲直り、できて。」

 

「・・・宮村がいれば、もっと良かったんだけどな。」

 

「仕方ないよ。宮村、3:00から用事があるって言ってたし。よしよし、丸山さん。」

 

「「「! ・・・」」」

 

あの人、いつもこの二人といっしょにいるから、どうしてここにいないんだろうと思ってたけど、そういうことだったんだ。

 

・・・用事がある人を、無理矢理引き止めたりなんてできないもんね。

 

「「・・・」」

 

・・・なんか寂しそうだな、浅井さんと橋山さん。

 

「・・・はぁ、あいつともお花見したかったなー。」

 

「私達の班で一番お花見楽しみにしてたの、意外にも宮村だったもんね。」

 

「・・・宮村、今頃何して…「呼びました?」ヒョコ。 ! うわあっ!」

 

「み、宮村!?」

 

「「「「「「!」」」」」」

 

「お、お前、帰ったんじゃ、なかったの?」

 

「へ?」

 

「用事があるからって言って、帰ってったじゃん。」

 

「あぁ、それならすっぽかしました♪」

 

「す、すっぽかした?」

 

「はい♪そこまで大事な用でもなかったので。」

 

「そ、そう、なんだ・・・。」

 

「ところで、どうしてそんなに声が震えてるんですか?」

 

「び、びっくりしたんだよ。とっくに帰ったと思ったら、いきなり出てくるんだもん。」

 

「ほんと、心臓に悪いよ・・・」

 

「あはは・・・、すいません。」

 

「・・・千聖ちゃん、あの子は?」

 

「宮村音羽ちゃんよ。美菜ちゃんや橋山さんと仲がいいの。」

 

「てっきり、あの二人以外は帰ったのだとばかり思ってました・・・。」

 

「それは、私と千聖ちゃん、空見くんも同じだよ。だから、突然ヒョコって出てきたときはびっくりしちゃった。ね、空見くん。」

 

「う、うん。」

 

「浅井さん達も、・・・すごく、驚いてましたね。」

 

まぁ、あんなおどかしかた(本人はおどかしたつもりないっぽいけど)されたら、誰だってびっくりす…「空見さん。」ヒョコ。 わぁっ!」

 

「「「!」」」

 

「? 空見さん?」

 

・・・ほんと、心臓に悪すぎ・・・。

 

「ど、どうしたの?音羽ちゃん。」

 

「あ、そうですそうです。私、皆さんに見せたいものがあるんです。」

 

「見せたいもの?私達に?」

 

「はい!お二人にも、そのように伝えたところです。」

 

「そう、なの。」

 

「というわけで皆さん、各自荷物を持ってついてきてください!」

 

「と、唐突ね。」

 

「・・・なんか、やけに張り切ってるな、宮村。」

 

「きっと、張り切るくらいお花見が楽しみだったんだよ。そうでしょ?」

 

「うーん、それもありますけど。・・・ま、行ってみてのお楽しみですよ♪」

 

「お楽しみ?」

 

「ほらほら、空見さん達も早くついてきてください。」

 

「あ、う、うん。」タッ。

 

「私達に見せたいもの、・・・何なんでしょう?」

 

「うーん、・・・綺麗な景色とか?」

 

「彩ちゃんにしては、まともな考えね。」

 

「千聖ちゃん。それ、どういう意味?」

 

「なんか、ドキドキするね。」

 

「私も、少し、楽しみです。」

 

「ほらほら!早くついてきてください!」ダッ!

 

「あ、おい!いきなり走り出すなよ!」

 

「待ってよ~!宮村~!」

 

「「「「・・・」」」」

 

「わ、私達は歩いて行こう?空見くん。」

 

「う、うん。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「宮村~、まだ~?」

 

「もうちょっとですよ~。」

 

テラスを出て、宮村さんについていきながら歩くこと10分。

 

この通り、まだ目的地には着いてない(らしい)。

 

「・・・ねぇ音羽ちゃん、あとどれくらい?」

 

「だからもうちょっとですって。」

 

「宮村さん、もう少し具体的にお願いします。」

 

「・・・たぶん、もうすぐ、です。」

 

「「「「「・・・」」」」」

 

はぁ、ダメだこりゃ。

 

・・・てか思ったけど、ここら辺木々ばっかだな。

 

花という花が一つもない。

 

これじゃあ花美ヶ丘じゃなくて、木々ヶ丘だな。

 

はは、ははは・・・。

 

・・・くだらねぇ。

 

・・・はぁ、いつ宮村さんの言う目的地に着くんだろう。

 

いや、それ以前に、着けるのかすら不安だ。

 

・・・言っちゃ悪いけど宮村さん。

 

・・・これ、完全に…「! あった!ありました!」え!?

 

「「「「「「「「!」」」」」」」」

 

「ほら、見てください!」

 

宮村さんがそう言うと、僕達は一斉に宮村さんの指差した方向を見た。

 

するとそこには、目を奪われるほど美しく、言葉を失うほど綺麗な、ある光景が広がっていた。

 

「「「「「「「「・・・」」」」」」」」

 

「どうです?すごいでしょ。」

 

「・・・ええ、そうね。」

 

「すごい・・・、ほんとにすごいよ!」

 

「・・・綺麗ですね、氷川さん。」

 

「ええ、ほんとに。」

 

「こんなところが、あったんだね。」

 

「・・・うん。」

 

語彙力も失うほど、美しく綺麗な、ある光景。

 

それは、何本もの桜の木だった。

 

しかも、全ての桜が満開に咲いている。

 

これまで通ってきた道には、桜の木なんて一本もなかったのに。

 

・・・さっき宮村さんが言ってた、“もうすぐ”というのは本当だったらしい。

 

・・・ごめん、宮村さん。

 

「・・・あれ?」

 

「どうしたの?美菜ちゃん。」

 

「あの桜の木の下、誰かいない?」

 

「え?」

 

「・・・」

 

「! ほんとだ!」

 

「よく見ると、敷物らしきものも敷いてありますね。」

 

「敷物らしきじゃなくて、敷物、なんじゃないかな・・・?」

 

「・・・あの人、一人、ですね。」

 

「・・・俗に言う、ぼっちお花見というやつか。」

 

「橋山、そういうことは、可愛そうだから言わないであげようよ。」

 

僕達以外にもちゃんといたんだ、お花見してる人。

 

・・・って、あれ?

 

「? ・・・あれって、制服、ですよね?」

 

「「「「「え!?」」」」」

 

「確かに、制服に見えるわね。・・・あの色はもしかして、花咲川の・・・」

 

「私、ちょっと行ってくる!」ダッ!

 

「あ、彩ちゃん!・・・行っちゃった。」

 

・・・やっぱりあの人、花咲川の人だよね。

 

帰らなかったの、浅井さん達だけじゃなかったんだ。

 

「私達も行きましょうか。」

 

「うん。」

 

「そうですね。」

 

「「「「「「「・・・」」」」」」」

 

「「・・・」」

 

「彩ちゃん。」

 

「あ、みんな。・・・」

 

「どうしたんですか?そんな暗い顔をして。」

 

「それが・・・」

 

「・・・」

 

「(? この人、どこかで・・・)」

 

「あ、あなたの名前、教えてくれると嬉しいな。」

 

「・・・」

 

「じゃ、じゃあ、何組か、だけでも教えてくれると・・・」

 

「・・・」

 

「・・・この通り。」ショボン。

 

「なるほど、そういうことね。」

 

「全部、無視、か。」ボソッ。

 

「ちょっと橋山!」ヒソ。

 

しかしこの人、なんかすごいな。

 

・・・一言で言うなら、ギャル?

 

髪の色も、よく漫画とかで出てくるような金髪だし、ロングの髪もすごいギャル感あるし。

 

・・・この人、あれだ。

 

白鷺さんみたいな、怒るとめちゃくちゃ怖いタイプの人だ。

 

少し、離れて…「・・・」パキッ。 げっ、なんか踏んだ。

 

「! ・・・」スッ。

 

「「「「「「「!」」」」」」」

 

ってなんだ木の棒か。

 

そういやここら辺、木の棒とかマツボックリとかめちゃくちゃ落ちて…「ねぇ。」え?

 

「・・・」

 

「!?」

 

こ、この人、いつの間に僕の後ろに・・・。

 

・・・これじゃ、逃げたくても逃げらんないじゃん。

 

「・・・」

 

「・・・えっと、・・・ぼ、僕に、何かよ…「ごめん。」・・・え?」

 

「「「「「「「!?」」」」」」」

 

「私があんなことをしたせいで、空見は腹痛に・・・。ほんと、ごめん。」

 

「・・・ご、ごめん、全然話が見えないんだけど。」

 

「(・・・!まさか、それって・・・。)」

 

「さっちゃん、空見さん困ってるよ?ちゃんと1から説明しないと。」

 

「・・・」

 

「へ?」

 

「「さ、さっちゃん?」」

 

「「「「?」」」」

 

「お、音羽ちゃん。あなた、この子と知り合いなの?」

 

「知り合いも何も、さっちゃんは私の友達ですよ。」

 

「え?」

 

「そ、そうだったんだ・・・。」

 

「はい。それに皆さん、一回さっちゃんと会ったことあるんですよ?」

 

「!」

 

「ど、どういう、こと?」

 

「昨日のオリエンテーションで、空見さんにしつこく絡んできた人、覚えてますか?」

 

「僕にしつこく、絡んできた人・・・?」

 

『あたし達ね、空見と話がしたいんだ。』

 

『というわけで空見、今からいろいろ話そうよ!』

 

「「・・・あの人か(ね)。」」

 

あのときは、ほんとに大変だったなー。

 

ま、白鷺さんのおかげでなんとかあの場から抜け出すことはできたんだけど。

 

「音羽ちゃん、それがどうかしたの?」

 

「それ、この子です。」

 

「「「「「「「「・・・え?」」」」」」」」

 

「菊池沙谷加。この子が、昨日空見さんにしつこく絡んできた、あの人です。」

 

「「「「「「「・・・」」」」」」」

 

「(菊池沙谷加?・・・!思い出したわ!確かこの子、去年私と同じクラスだった・・・)」

 

「・・・つ、つまり、昨日の人とその子は、同一人物、ということ?」

 

「はい!」

 

「・・・」

 

「・・・え?」

 

「「「「えぇ~~~~!!??」」」」  

 

・・・マジ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「花音、こんな感じでどうかしら。」バサッ。

 

「うん、良いと思うよ。」

 

「丸山さんの敷物、大きいですね。」

 

「えへへ、すごいでしょ~♪最大五人まで座れるんだよ。うわっ!」バサッ!

 

「風、強いですね。敷くの、手伝いますよ。」

 

「橋山さんの敷物、可愛いですね。」

 

「え?そ、そう?」

 

「橋山、意外と可愛いもの好きだもんね。ぬいぐるみとか、アクセサリーとか集めてるし。」

 

「ちょ、ちょっと浅井!」

 

「ふふ。橋山さん、可愛いですね~。」

 

「宮村も茶化すな!ていうか、無駄話してないでさっさと敷くの手伝う!」

 

「はいはい。」

 

橋山さんが可愛いもの好きだったなんて、意外だ。

 

・・・猫とかも、好きなのかな?

 

「こら空見!ぼーっとしてないで手動かす!」

 

「! ご、ごめん。」

 

今僕達は、敷物を敷いている(まぁもうすぐ敷き終わるんだけど)。

 

流石に全員分敷くのは大変だし、時間もかかるので、浅井さんの提案によるじゃんけんの結果、松原さん、丸山さん、橋山さんの敷物を使うことになった。

 

もちろん最初から敷いてくれていた菊池さんの敷物は、そのままいっしょに使わせてもらうつもりだ。

 

「できた~!」

 

「では、さっそくお花見を始めましょうか。」

 

「あたし達も敷けたよー!」

 

「白金さん、弁当見せあいっこしよ!」

 

「は、はい。」

 

「おぉー!氷川さんのお弁当、可愛いですね~。」

 

「か、勝手に見ないでください///!」

 

「・・・」ポカーン。

 

「沙谷加ちゃんも、いっしょにお弁当の見せあいっこ、しよう?」

 

「! ・・・で、でも、私は…「じゃじゃーん。」・・・か、可愛い。」

 

「えへへ、ありがとう。このお弁当、私の手作りなんだ。特に頑張ったのがこのクラゲで、クラゲがふわふわってしてるところをイメージしながら・・・」

 

・・・なんか、すごい熱く語ってる。

 

松原さんって、クラゲ好きなのかな?

 

「空見くんのお弁当も、見てみたいな。」

 

「え?あ、ぼ、僕?」

 

「うん。」

 

「ま、まぁいいけど・・・」

 

僕の弁当、ごくごく普通の弁当なんだよな。ガサゴソ。

 

冷凍食品のやつとか、惣菜とかを半分入れて、あとの半分はご飯を詰めるだけっていう。ガサゴソ。

 

まぁ、たまに違うのもあるけど。ガサゴソ。

 

・・・あれ?

 

「どうしたの?空見くん。」

 

あれ?あれ?あれあれあれあれ??ガサゴソ。

 

「そ、空見、くん?」

 

・・・ヤバい。

 

・・・これ、完全にまずったわ。

 

「・・・ない。」

 

「え?」

 

「・・・弁当、家に置いてきた。」

 

「「・・・えぇ~~~!!??」」




はい、お花見回次回に続きますw。

別にお花見回が一話完結とは言ってませんのでw。

みなさんは今年、お花見行きましたか?

僕は家族といっしょに行きました。

桜、満開で綺麗だったなー。

・・・お花見花音ちゃん欲しい…。


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15話 見た目はギャルでも中身は普通の女子高生

どうも、知栄砂空です。

ガルパに春擬きカバーキターーー!!!

最近俺ガイル見終わったばかりだから、めっちゃタイムリー!

恋愛裁判も聞いたことなかったから聞いてみたけど、めちゃくちゃ良い曲!(ボカロに関してはにわかです)

前から知ってはいたんですけど、ボカロ曲って題名が曲名になってる本があるんですよね。

恋愛裁判を試し読みしてみたらめっちゃ面白かったので、今度探してみようかな。(←ライトノベル系を買ったことすらない人)


「ど、どうしたの花音!?」

 

「さっちゃん、何かあった?」

 

「あ、いや、私達は、何もないんだけど。」

 

「・・・そ、空見が。」

 

「空見くんが、どうかしたの?」

 

「空見くん、・・・お弁当、忘れてきちゃったみたいで。」

 

「! そうなの!?」

 

「空見、それほんと!?」

 

「・・・うん。」

 

「しかし空見さん、水筒は持ってきていましたよね?」

 

「水筒だけ持ってきて、・・・弁当は、かばんに入れ忘れたみたいで・・・。」

 

「・・・全く、ちゃんと確認しないからそういうことになるのよ。」

 

「・・・ご最もです。」

 

白鷺さんの言う通りだ。

 

家を出るときに、かばんの中身を確認する。

 

いつもしていることをし忘れた…、いや、しなかったから、弁当を忘れるなんて失態を。

 

・・・はぁ。

 

今日は昼ごはん抜きか。

 

ま、一食食べなくても別に大丈「・・・」グ~。 あ。

 

「はぁ、昨日のことを忘れたの?あなたが昼ごはんを食べなかったせいで、昨日はあんなことになったんでしょ?一食くらい食べなくてもいいや、なんて、バカな考えはもうやめなさい。」

 

そ、そうだった・・・。

 

「す、すいません・・・。」

 

「・・・あんなこと?昼ごはんを食べなかったせい?」

 

「あ、そっか、沙谷加ちゃんは知らないんだよね。」

 

「?」

 

「・・・これは、私達が楓を保健室に連れていこうと、体育館を出た後の話なのだけど・・・」

 

「え?ちょ、白鷺さん?それ、今話すんですか?」

 

「ええ。沙谷加ちゃんには、知っておいてもらったほうがいいでしょ?」

 

「そ、それはそうですけど、でも、これを話し出したら結構長くなるっていうか…「別に長い話を聞くのは嫌いじゃないから大丈夫。」そ、そう、なの?」

 

「・・・」クル。

 

「氷川さん?どうして、後ろを向…「察してください。」! は、はい。」

 

そして白鷺さんは、菊池さんに昨日の出来事を話し始めた。

 

その間、氷川さんはずっと後ろを向いていた。

 

詳しい事情を知らない橋山さん、浅井さん、宮村さんは、興味津々で聞いていた。

 

菊池さんに関しても、興味津々ではあったが、めちゃくちゃ真面目に白鷺さんの話を聞いていた。

 

その間僕はというと、・・・氷川さんと同じく、ずっと後ろを向いていたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『空見って、何でこの学校に来たの?』

 

『好きなものとかこととかあるの?』

 

『ペットとか飼ってる?』

 

『前の学校ではどんな感じだった?』

 

『え、えーっと、そのー・・・。』

 

『・・・すごく、しどろもどろになってるわね。』

 

『た、助けてあげたほうが、いいんでしょうか?』

 

『そ、そうだよ!困ってたら助けてあげなきゃ!・・・すいませーん、ちょっと通し…うぐっ!』

 

『彩ちゃん!ど、どうしよう。これじゃあ空見くんが…『・・・』スッ。 ! ち、千聖ちゃん?』

 

『すみません、少し通してください。すみません。』

 

『・・・す、すごい。』

 

『白鷺さん、あの人混みを簡単に・・・。』

 

『ねぇ、あたしも空見にいろいろ質問したいよ~!』

 

『ちょっと!ちゃんと順番守ってよ!』

 

『次、私私ー!』

 

・・・ど、どうしよう。

 

・・・全員女子だから、逃げようにも逃げられないし。

 

・・・はぁ。

 

この時間が終わるまで、このまま耐えるしか…ん?

 

『すみません、通してください。すみません。』

 

『! 白鷺さん!』

 

『楓、行くわよ。』ガシッ。

 

『え、行くってどこへ…『黙ってついてきなさい。』・・・はい。』

 

『・・・』スルスルスル。

 

す、すげえ。

 

この人混みの中をこんなスルスルと抜けるなんて。

 

『・・・楓、これを。』スッ。

 

え?

 

・・・何だろ、この紙。

 

『読んで。』ボソッ。

 

『! は、はい。・・・え?これは・・・?』

 

『《窮地に陥ったときの対処法》

 ・お腹がすごく痛くなった演技をする      (そのときが来るまで継続)    』 

 

『・・・何ですか?これ。』ボソッ。

 

『いいから。とにかく今は、そこに書いてある通りのことをして。』ボソッ。

 

・・・無茶ぶりすぎるでしょ、それ。

 

『・・・連れてきたわよ。』

 

『千聖ちゃん!大丈夫だった?』

 

『ええ、何も問題なかったわ。そうでしょ?楓。』ニコッ。

 

『え?あ、はい。』

 

問題、なかったわけじゃないけど・・・。

 

・・・いいや、よく分かんないけど、やるだけやってみよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あんな短い時間で、そんなことがあったんだ。」

 

「うん。最初はその紙の意味が全然分からなくて、ほんと大変だったよ。」

 

「でも、白鷺さん。そんな紙、いつの間に、書いていたんですか?」

 

あ、それ、僕も気になってたんだよな。

 

「書いたのではないわ。もらったのよ。」

 

「「「「「え?」」」」」

 

「あるドラマの撮影のときに、小道具として渡されたのよ。でも、返すのを忘れてしまって・・・。学校が終わった後、事務所に返しに行こうと思ってポケットに入れといたのだけど、そういうものが、意外なところで役に立つものなのね。」

 

「「「「「・・・」」」」」

 

「? どうしたの?みんな。」

 

まぁ、ツッコミどころはいろいろあるけど、・・・白鷺さんてすごいね。

 

「それで楓。」

 

「え?あ、何ですか?」

 

「さっきも言った通り、事務所に返さないといけないから、その紙を返してほしいのだけど。」

 

「は、はい、分かりました。」

 

「・・・」

 

「えっとー・・・(確か、制服のポケットに・・・、! あった、これだ。)」スッ。

 

「!(楓のことだから、どうせないんじゃないかと思っていたけれど、・・・少しは成長したのね。)」

 

「はい、白鷺さん。」

 

『・・・』グチャ~。

 

「「「「!」」」」

 

「・・・」

 

「あ、あれって、もしかして・・・」

 

「もしかしなくても、そうですよね。」

 

「・・・楓、これは?」

 

「え?だから紙ですよ。白鷺さんに渡されたか…「全く私が渡した紙の形には見えないのだけど。」え?・・・あれ?」

 

『・・・』グチャ~。

 

「・・・な、何で?・・・あ。」

 

『みんながお風呂に入ってる間に、私が乾かしておこうと思ってるんだけど、どうかな?』

 

「あ、・・・あ、ああ、あああ・・・。」

 

「・・・」ゴゴゴ…。

 

「!(さ、殺気を感じる!?)」

 

「・・・千聖ちゃん、すごい怒ってる・・・。」

 

「こ、怖い、です・・・。」

 

「・・・えっと、あの、これは、その…「か・え・で?」ポン。 !(ひいっ!)」

 

「分かって、いるわよね♪」ニコッ。

 

「・・・はい。」ズーン。

 

「「「「・・・」」」」

 

「・・・よく分かんないけど、つまり空見の腹痛は、私のせいじゃなかった、ってこと?」

 

「ええ。あれは楓の、呆れるほど下手で、何の心もこもってないいわば最低最悪の演技だったのよ。」

 

「!グサッ! !グサッ! !グサッ!・・・」

 

「・・・そう。」

 

「・・・空見のやつ、ボロクソ言われてんじゃん。」

 

「まぁ、状況が状況だからね。」

 

『・・・体育館を出るとき、空見さんがお腹を痛がっていたというのに、どうしてあなたはため息なんかついてたんですか?』

 

『あれは、・・・単純に、あきれてたのよ。』

 

「(あれは、そういうことだったのね。)」

 

「・・・ねぇ、沙谷加ちゃん。」

 

「! な、何?」

 

「私、沙谷加ちゃんの話も聞きたいな。」

 

「私の話?」

 

「うん。こう言っちゃ失礼かもしれないけど、沙谷加ちゃん、昨日とはまるで雰囲気が違うでしょ?さっきからずっと思ってたんだ。何でだろうって。 」

 

「・・・そ、それは・・・」

 

「それに、沙谷加ちゃんが帰らないでいてくれた理由も知りたい。」

 

「帰らないでいてくれた理由って、・・・私は、ただ…「私。」?」

 

「沙谷加ちゃんのこと、いろいろ知りたい。好きなものとか、嫌いなものとか、趣味とか、えっと・・・、あ!好きなアイドルとか!」

 

「・・・アイドル?」

 

「ふふ。」

 

「彩ちゃん・・・。」

 

「そういうのをいっぱい共有して、それで、・・・沙谷加ちゃんと、友達になりたいんだ。」

 

「・・・私が、こんな見た目でも?」

 

「え?」

 

「分からない?ほら、髪とかこんな長くて、金髪で。・・・見た目、ギャルっぽいじゃん。」

 

「ぎゃ、ギャル?」

 

「そう。だから、・・・怖そうだなとか、思わ…「思わないよ。」え?」

 

「沙谷加ちゃんが怖そうだなんて、全然思ってない。むしろ、可愛いと思ってるよ。」

 

「! か、かわ…///!」

 

「さっき、花音ちゃんにお弁当を見せてもらってたでしょ?そのときの沙谷加ちゃん、顔がすごくキラキラしてたよ。」

 

「わ、私が?」

 

「うん、沙谷加ちゃんが。」

 

「・・・」

 

「私は、そんな沙谷加ちゃんと友達になりたい。それだけだよ。」

 

「・・・」

 

「ここにいるみんなも、そう思っているはずよ。」

 

「! ここにいる、みんなも・・・?」

 

「「「「「「・・・」」」」」」コク。

 

「・・・そっか、そうなんだ。・・・ふふ。」

 

「? 沙谷加ちゃん?」

 

「ごめん。私、面と向かって友達になりたいなんて言われたの、初めてだったから、嬉しくって。」

 

「・・・」

 

「「「「「「「「・・・」」」」」」」」

 

「さっちゃん・・・。」

 

「丸山さん、だっけ?」

 

「え?あ、うん。」

 

「改めて、私からお願い。・・・私と、友達になってください。」

 

「! ・・・うん!もちろん!」ギュッ!

 

「わっ!(は、初めて、人に手握られた・・・///。)」

 

「・・・これで、良かった、のかな?」

 

「ええ、たぶん。・・・」

 

「あ、そうだ。ちょっといい?丸山さん。」

 

「? うん。」

 

「・・・」

 

・・・はぁ。

 

完全に謝るタイミング逃した・・・。

 

いつどうやって謝ればいいん…「空見。」!

 

「あ、き、菊池さん。」

 

「・・・」

 

「・・・ど、どうし…「昨日はほんとにごめん。」え?」

 

「「「「「「「!」」」」」」」

 

「・・・」

 

「な、何で謝るの?そのことについてはもう、解決…「確かに、空見の腹痛は私のせいじゃなく、空見自身の演技だったってことは分かった。でも、・・・その原因を作ったのは、間違いなく私。」・・・」

 

「丸山さん、さっき聞いたよね。何で昨日と雰囲気が全然違うんだろうって。」

 

「! う、うん。」

 

「・・・空見に話しかけるためだよ。」

 

「「「「「「「!」」」」」」」

 

「・・・」

 

「ぼ、僕に?」

 

「私、昔からこんな見た目でさ。そのせいで、友達は全然いなかったの。まぁいたっちゃいたけど、それが友達って言えるか言えないかって言われたら、・・・たぶん、後者だった。」

 

「「「「「「「「「・・・」」」」」」」」」

 

「昨日、私の後ろをついてきてたあの集団いたじゃん?あの人達みんな、勝手に私についてきてただけなんだよね。この高校に入学してから、なぜか私の周りにだんだん人が集まってくるようになって。最初は、みんな私と友達になりたいのかな、って思ってた。・・・でも、違った。ただあの人達は、・・・あいつらは、私のこの見た目がかっこいいと思ったからついてきてただけ。いわば子分みたいなものだったんだよ。別に、友達になりたいからとか、そういうのでは全然なかった。私とあいつらの関係は、ただの親分子分の関係だったんだよ。」

 

「「「「「「「「「・・・」」」」」」」」」

 

「それでも私は、誰かと友達になりたいって、心の底で思ってたの。そんなときだった。A組に、男子が転校してくるって話を聞いたのは。」

 

「!」

 

「チャンスだと思った。男子とは、関わったことが全然なかったから、仲良くなるチャンスだって。だから私は、音羽やクラスのやつらに相談した。転校してくる男子に、怖がらせないで話しかけられる方法を。そしたら、ウィッグをつけてみれば、とか、話し方を変えてみれば、とか、いろいろ教えてくれた。」

 

「・・・それが、昨日のあの沙谷加ちゃんだったのね。」

 

「うん。昨日の私が、いつもと雰囲気を変えた私で、今の私が、いつもの素の私。」

 

「・・・」

 

「雰囲気を変えれば、空見と仲良くなれると思った。・・・今思えばそんなの、安易すぎる考えだったんだよね。男子と関わったことがなかったとは言え、初対面の人にあんなぐいぐい迫るなんて。・・・人の気持ちを考えることもできないなんて、仲良くなる以前の問題だよね。」

 

「「・・・」」

 

「「「「「「「・・・」」」」」」」

 

「・・・中には、昨日みたいに迫られても、冷静に対処したり、すぐに打ち解けて仲良くできる人もいる。でも、楓はそうじゃない。」

 

「・・・うん。・・・空見には、ほんとに悪いことをしちゃったな。」

 

「・・・べ、別にもういいよ。菊池さんの気持ちは、十分伝わ…「ううん、ダメ。空見が良くても、私が嫌なの。」・・・」

 

「だから、・・・もう一度謝らせて。・・・空見、ほんとにごめん。」

 

「・・・」

 

・・・なんか僕今日、謝られてばっかだな。

 

「・・・」グ~。

 

あ。

 

「「「「「「「「!」」」」」」」」

 

「!」

 

「・・・/////。」

 

ヤバ、恥ず///。

 

こんなときにお腹鳴るとか、めちゃくちゃ恥ず///。

 

「・・・そういえば空見、お弁当忘れたんだっけ。」

 

「・・・う、うん。」

 

「・・・」・・・ガサゴソ。

 

菊池さん、何を探して…「・・・」パカ。 あ、弁当か。

 

・・・弁当見ると、またお腹鳴りそうで怖い・・・。

 

「・・・「これ、私の手作りなんだ。」え?あ、そ、そう、なんだ。」

 

手作りか。

 

・・・僕の弁当は、手作りなのお母さんの作ってくれる玉子焼きぐらいしかないな。

 

あとは、お父さんが作ってくれたカレーとか鍋か。

 

「(・・・!は、橋山!出すなら今だよ!)」コソコソ。

 

「(そ、そうか!よし!)」コソコソ。

 

あと手作りと言えば・・・、! オムライスだ!

 

お母さんのオムライス、意外と美味しいんだよな~。

 

「「・・・そ、空見!もしだった…「はい、空見。」スッ。 え?」」

 

「「「「「「!」」」」」」

 

「え?」

 

「私の弁当、少し分けてあげるよ。」

 

「! い、いいよ別に。そんなの悪いし、別に大丈夫だ…「・・・」グ~。 ・・・///(何で今鳴るんだよ~///!)」

 

「・・・お腹、空いてるんでしょ?」

 

「・・・」

 

「・・・それとも。」

 

「え?」

 

「「!」」

 

「こうやって、食べさせてもらったほうがいい?」ズイッ。

 

「! べ、別にそういうわけじゃ///!(き、菊池さん顔近いって///!)」

 

「「「「「「・・・」」」」」」ジトー。

 

「「・・・」」プチッ。(何かが切れる音)

 

「・・・!」

 

「「・・・」」ゴゴゴゴ…。

 

「(き、気のせいでしょうか。何か橋山さんと浅井さんから、黒いオーラが出ているような・・・。)」

 

「だから、別に僕は…ん?」

 

「「・・・」」ゴゴゴゴ…。

 

・・・何か、橋山さんと浅井さんににらまれてる気がする。

 

・・・あれ?

 

僕何かした?

 

「!(ふ、二人が、沙谷加ちゃんのことをにらみつけてる!?え、何で!?・・・よ、よく分かんないけど、とにかく沙谷加ちゃんを助けなくちゃ!)」

 

「あはは、もう冗談だって~。空見の顔、めちゃくちゃ赤くなって…「沙谷加ちゃん!いっしょに桜見に行こ!」グイッ! え?あ、ちょっと丸山さん!?」

 

「「「「「「・・・」」」」」」ポカーン。

 

・・・丸山さん?

 

え、何?

 

どゆこと?

 

「(そっか、その手がありました!ありがとうございます丸山さん!)橋山さん、浅井さん、私達も桜見に行きましょ!」

 

「「・・・」」

 

「さ、桜でも見れば、少しは気分転換になると思いますよ?」

 

「・・・そーだね。」

 

「! 橋山さ…「気分転換気分転換。」へ?」

 

「桜見に行こー桜。」

 

「あ、浅井さ…「楽しみだなー桜。」! ちょ、ちょっと待ってくださいよ~!」

 

「「「「「・・・」」」」」

 

ぼ、棒読み・・・。

 

って、え?

 

橋山さん達まで!?

 

「・・・きゅ、急にどうしたんだろう、みんな。」

 

「さ、さぁ・・・。」

 

「全く、あの人達は。」

 

「・・・」

 

・・・はぁ。

 

もう何が何だか・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・」グ~。

 

・・・はぁ、腹へった。

 

・・・お茶でも飲むか。

 

えーっと、・・・あった。

 

・・・あれ?

 

ない。

 

何で?

 

・・・あ。

 

・・・そういや、公民館の屋根で雨宿りしてるとき、みんなで飲んだんだ。

 

てかあのとき、僕だけ飲めてないし。

 

・・・はぁ、最悪。

 

・・・もう帰りた…「はい。」・・・え?

 

「・・・」

 

「し、白鷺、さん・・・。」

 

「私のお弁当、少し分けてあげるわよ。」

 

「・・・で、でも…「何?いらないの?それなら別にいい…「す、すいませんすいません!いりますいります!」・・・ふふ。」?」

 

「あなたがさっきから私と目を合わせないのは、私が怒っていると思っているからでしょ?」

 

「! そ、それは…「正直に言いなさい。」・・・はい、そうです。」

 

「「「・・・」」」

 

「・・・いいわよ。」

 

「へ?」

 

「さっきの紙の件、一旦許してあげる。」

 

「! ま、マジです…「言っておくけど、勘違いしないでね。」!」

 

「私は、“一旦許す”と言っただけ。その意味を、よーく噛み締めておいて。」

 

「・・・は、はい。」

 

こ、怖え・・・。

 

「・・・なんてね♪」

 

「へ?」

 

「・・・はい。これ、楓の分よ。」

 

「あ、・・・ありがとう、ございます。」

 

白鷺さんは、自分の弁当箱の蓋をお皿代わりにして、そこに白ご飯とサラダを入れてくれた。

 

僕、人から弁当分けてもらうの初めてだな。

 

「空見さん。よろしければ、私のもどうぞ。」パカ。

 

「!」

 

「あ、空見くん、私のもどうぞ。」

 

「わ、私のも、・・・どうぞ。」

 

・・・まさか、氷川さんと松原さん、白金さんからももらえるとは思わなかった・・・。

 

ちなみに氷川さんは(なぜかにんじんが入ってない)きんぴらごぼうを、松原さんは玉子焼き(二つ)を、白金さんはプチトマト(三つ)をくれた。

 

「・・・」

 

「? どうしたの?かえ…「本当にありがとうございます!」ドゲザ。 ! ちょ、ちょっと楓、大げさよ///。」

 

「このご恩は、いつかきっとお返ししますので!」

 

「べ、別に大丈夫だよ~。」

 

「空見さん、顔をあげてください!」

 

「ほんとのほんとに、ありがとうございます!」

 

「そ、空見さん・・・。」

 

土下座するほど嬉しいとは、まさにこのことだ…「今すぐそれをやめないと、食べ物没収するわよ。」!バッ!

 

「・・・す、すいません。つい、調子にのりすぎました・・・。」

 

「・・・ふふ。分かればいいのよ。」

 

「ほら、顔をあげて、空見くん。いっしょにお弁当食べよう?」

 

「・・・うん。ありがとう、松原さん。」

 

「丸山さん達、いつ戻ってくるんでしょうか?」

 

「心配ないわよ紗夜ちゃん。もう少しすれば帰ってくるわ、彩ちゃんなら。」

 

「(? どうして、丸山さんだけ・・・?)」

 

「それじゃあみんな、彩ちゃんには悪いけど、先にお花見、始めてましょうか。」

 

あ、待たないんだ・・・。

 

「・・・楓も、もう食べてていいのよ?」

 

「あ、はい。それじゃあ・・・」

 

うーん、どれから食べようかな・・・。

 

うん、やっぱりまずは、白ご飯からかな。

 

よし、じゃあいただきまー…、・・・ん?

 

・・・あ。

 

「? 空見さん、どうして固まっているんですか?」

 

「! もしかして、どこか体の具合が悪いとか!?」

 

「いや、別にそういうわけじゃなくて・・・」

 

「じゃあ何なの?」

 

「・・・箸、ですよね?」

 

「「「え?」」」

 

「うん。・・・いざ食べようと思っても、箸がないから食べれなくて。」

 

「・・・はぁ、それならそうと早く言えばいいのに。」

 

「具合が悪いわけじゃなかったんだね、良かった~。」

 

「紛らわしいことしないでください。」

 

・・・これ、僕が悪いの?

 

「はい、空見さん。」

 

「ん?・・・あ。」

 

「私、お弁当のときはいつも、予備に二つ箸を持ち歩いてるんです。なので、もしだったら一本、使ってください。」

 

「あ、ありがとう、白金さん。」

 

「燐子ちゃん、気が利くのね。」

 

「た、たまたま、です///。」

 

「良かったね、空見くん。」

 

「うん。」

 

よし、これで箸も無事ゲット。

 

これでようやく食べれるな。

 

というわけで、いただきま…「おーい!みんなー!」え?

 

「! 彩ちゃん!」

 

「お帰り彩ちゃん。桜、どうだ…「・・・」パタン。 あ、彩ちゃん!?大丈夫!?」

 

「つ、疲れた~・・・。」

 

・・・確かに白鷺さんの言う通り、丸山さん“は”戻ってきたな。

 

「どうしたのですか?丸山さん。」

 

「何が、あったんですか?」

 

「て、テラスのところから、ずっと、走って、きたから、・・・つ、疲れて、はぁ、はぁ・・・」

 

「わ、私、お水くんで…「だ、大丈夫だよ、花音ちゃん。」そ、そう?」

 

「・・・丸山さん、他の四人は、いったい・・・」

 

「あ、美菜ちゃん達なら、テラスにいるよ。」

 

「テラスに?」

 

「なんかね、美菜ちゃんと橋山さん、音羽ちゃんと沙谷加ちゃんの四人で、ガールズトークするんだって。」

 

「ガールズ、トーク?」

 

「うん。四人だけで話したいことがあるから、って言ってたよ。」  

 

「四人だけで、話したいこと・・・?」

 

「! も、もしかして美菜ちゃん達、喧嘩しちゃったんじゃ…「それはないよ。」え?」

 

「どうして、そう言い切れるんですか?」

 

「だってみんな、すごく楽しそうな顔してたもん。沙谷加ちゃんだけ、なぜか顔が赤くなってたけど。」

 

「「「「・・・」」」」

 

「だからたぶん、喧嘩なんかじゃないよ。心配しなくても、大丈夫だと思う。そうでしょ?千聖ちゃん。」

 

「・・・ええ、そうね。」

 

「・・・」グ~。

 

「「「「「!」」」」」

 

「あ。・・・///。」

 

「彩ちゃん・・・。」

 

「あ、あはは・・・。お腹すいちゃった。走ってきたからかな。」

 

「・・・お花見、しましょうか。」

 

「そうですね。」

 

「私も、お腹すいちゃったかも。」

 

「ずっと、しゃべってばかりでしたしね。」

 

「よ、よーし!じゃあさっそくみんなで、お弁当食べ…じゃなかった、お花見しよー!」  

 

「「「「「・・・」」」」」

 

「・・・あれ?」

 

「・・・彩ちゃん、無理して言い直さなくてもいいのよ?」

 

「丸山さんが言いたいことは、よく分かってますから。」

 

「早く食べたいんだよね、彩ちゃん。」

 

「みんなで“お弁当”、食べましょう。丸山さん。」

 

「もう~///!みんなしてからかわないでよ~///!」

 

完全に丸山さんを煽ってる・・・。

 

「ほら!空見くんも“お花見”、始めるよ!」

 

「! う、うん。」

 

ま、丸山さん、涙目になりながら怒ってる・・・。

 

相当恥ずかしかった、のかな・・・?

 

「うぅ・・・。」




次回でお花見回完結!・・・だと思います。

今月中には終わらせたいなー。


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16話 お花見で仲良し以上の関係に

どうも、知栄砂空です。

もうお花見の時期なんてとうに過ぎ、今は梅雨の時期ですねw。  

時が経つのって早い……。(更新が遅いだけ)




千聖「彩ちゃん、そろそろ機嫌直して?」

 

彩「……」

 

千聖「今度、ファミレスでハンバーグおごってあげるから、ね?」

 

彩「ほんとに?」

 

千聖「ええ。なんなら、オムライスもいっしょにおごってあげるわ。」

 

彩「……じゃあ許してあげる。」

 

楓・花・紗・燐「(丸山さん(彩ちゃん)、チョロい(です・ですね)……。)」 

 

彩「……あれ?空見くん、それ……」

 

楓「ん?あぁ、これ?丸山さんが桜見に行ってるときに、白鷺さん達がくれたんだよ。結局菊池さんから弁当、分けてもらえなかったからさ。(分けてもらえなかったというよりは、分けてもらい損ねたって感じだけど。)」  

 

彩「そうだったんだ。……じゃあ私からは、このハンバーグをあげるね。お弁当用だから、少し小さいけど。」スッ

 

彩「ハンバーグ!?え、いいの?これ、丸山さんの弁当のメイン的なやつっぽいけど。」

 

彩「うん、空見くんのためだもん。ハンバーグの1つや2つ、どうってことないよ。あ、もしだったらハンバーグ、もう1個い…「だ、大丈夫だよ。ありがとね、丸山さん。」うん!」

 

花・紗「(! あの彩ちゃん(丸山さん)が、ハンバーグを……)」

 

千聖「(私達と食べてるときでも、ハンバーグだけは絶対にあげたり交換したりしないのに……。)」

 

燐子「(空見さん、……すごい……です。)」

 

おぉ……。  

 

白鷺さんたちがくれた弁当に、ハンバーグも追加された……。

 

なんか、みんなから弁当を分けてもらうと、不思議と贅沢な気分になるな。

 

彩「いっただっきまーす!」パクッ

 

! 丸山さん食べるの早っ!

 

ん?

 

あ、そうでもない、のか?

 

彩「ん~!ハンバーグ美味しい~!」

 

千聖「ふふ、そのセリフと嬉しそうな顔、いつもの彩ちゃんね。」

 

花音「……彩ちゃんのお弁当ね、いつもハンバーグが入ってるんだよ。」

 

楓「え、そうなの?」

 

彩「だって美味しいんだもん♪」

 

……丸山さんは、ハンバーグが好き、なのかな?

 

さっきも、白鷺さんがおごるとかなんとか言ってたし。

 

千聖「ほら、楓も食べなさいよ。」

 

楓「え?あ、はい。……それじゃあ、いただきます。パクッ」

 

花音「あ。」

 

モグモグモグ

 

楓「……!この玉子焼きうまっ!」

 

花音「……そ、そう?」

 

楓「うん。お母さんが作ってくれる玉子焼きの10倍はうまいよ。」

 

花音「///!そ、それは言い過ぎだよ~///!(……でも、私が作った玉子焼き、そんなに美味しかったんだ。……えへへ♪なんか、嬉しいな。)」

 

紗夜「……嬉しそうですね、松原さん。」

 

彩「うん。」

 

千聖「自分が初めて作ったものを、美味しいと言ってもらえたんだもの。嬉しいはずよ。」

 

楓「(え、あの玉子焼き、手作りだったの……?)……白鷺さんは、松原さんの玉子焼きが手作りだってこと、知っていたんですか?」

 

千聖「ええ、まぁ。……」

 

 

 

 

 

~4時間前~

 

ー2-A 教室ー

 

彩「ねぇねぇ、2人は今日、どんなお弁当にしたの?」

 

花音「と、唐突だね、彩ちゃん。」

 

千聖「突然どうしたの?」

 

彩「いやぁ、だってほら、今日ってお花見でしょ?2人とも、何かお弁当のバージョンアップとかしてないのかなーって。」

 

花音「お弁当のバージョンアップって……」

 

千聖「なかなかのパワーワードね……。」

 

彩「私はね、ハンバーグが1個から2個になったんだよ!」

 

千聖「……」

 

花音「そ、そうなんだ。良かったね、彩ちゃん。」

 

彩「うん!……それでそれで?2人はどんなバージョンアップしたの?」

 

千聖「私は何も変わってないわよ。いつもと同じような、普通のお弁当よ。」

 

彩「そうなの?……じゃあ、花音ちゃんは?」

 

花音「え、私?」

 

彩「バージョンアップ、してない…「花音もあまり変わってないわよね。バージョンアップなんて言ってるの、彩ちゃんくらいよ?」そ、そんなの分からないじゃん!」

 

花音「ふ、2人とも、喧嘩はダメだよ~。」

 

彩「ね、どうなの?花音ちゃん。」

 

千聖「バージョンアップなんてしてないわよね?花音。」

 

花音「え、えっと、私は……」オロオロ

 

千・彩「どうなの!?花音(ちゃん)!」

 

花音「(ふぇぇ、ど、どうすればいいの~?……!そうだ、そういえば私……。)……た、た……」

 

千・彩「「た?」」

 

花音「……た、玉子焼き、……今日の、自分で作ったの。」

 

千聖「!」

 

彩「それって、手作りってこと?」

 

花音「う、うん。……せっかくのお弁当だし、少しだけでも、お弁当の気分を変えてみようかなって。何にしようかなーって考えてたら、お母さんが毎日玉子焼きを作ってくれてることを思い出したから、今日は自分で作ってみようかなって思ったんだ。」

 

千・彩「「……」」

 

花音「バージョンアップ?とはちょっと違うかもしれないけど、彩ちゃんみたいに、お花見だから少し気分を変えたいっていう気持ちは、私も分かるよ。」

 

彩「……負けた。」ガクッ

 

花音「! あ、彩ちゃん!?」

 

千聖「花音、あなたは流石ね。」ポン

 

花音「千聖ちゃん!?ふ、2人とも、どうしちゃったの~!?」

 

~回想 終~

 

 

 

 

 

千聖「……ふふ。」

 

紗夜「? 白鷺さん?」

 

千聖「ごめんなさい。少し、思い出し笑いをしてしまって。」

 

紗夜「い、いえ。」

 

白鷺さん達、何の話してるんだろ?

 

……まぁいっか。パクッ

 

あ、プチトマトも美味え。

 

……ヒュ~~!!

 

彩「うっ、か、風が強いね。」

 

燐子「そう……ですね。」

 

千聖「みんな、物が飛ばないように気をつけて。」

 

えーっと、荷物荷物。

 

ヒュ~……

 

燐子「……風、落ちついて……きましたね。」

 

よし、荷物で守っとけば、風が吹いても大丈…ビュ~~!! うっ!さ、寒っ!

 

彩「あぁ!また吹いてきた~!」

 

花音「さ、さっきよりも、風が、強い……。……きゃあっ!」

 

千聖「花音!大丈夫!?」

 

花音「う、うん、大丈夫だよ。ちょっと、びっくりしただけだから。」

 

だ、大丈夫、だよね?

 

この荷物の壁で、守れる…バサッ! え?

 

花音「あぁ!お弁当の風呂敷が!」

 

! ま、まずい!ダッ!

 

千聖「! ちょ、ちょっと楓!?」

 

花音「空見くん!私も行くよ!」ダッ!

 

千聖「花音!もう~!」ダッ!

 

彩「ち、千聖ちゃん、私も…「彩ちゃん達は、ここで荷物を見張ってて。」え、でも…「絶対に動いてはダメよ、いいわね?彩ちゃん。」……わ、分かった。」

 

紗夜「白鷺さん、空見さん達をお願いします。」

 

燐子「荷物は、……私達が、責任を持って……守りますので。」

 

千聖「ええ、頼んだわよ。紗夜ちゃん、燐子ちゃん。」タタタタ……!!

 

彩「……私だけ、何もない……。」ガクリ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

えっと、風呂敷風呂敷……。

 

……!あった!

 

って、え?

 

……マジで?

 

花音「はぁ、はぁ、……そ、空見く~ん!」

 

楓「あ、松原さん。白鷺さんも。」

 

千聖「ふ、風呂敷は、はぁ、はぁ、……あったの?」

 

楓「まぁ、あったはあったんですけど……」

 

花・千「?」

 

楓「あれです。」ユビサシ

 

花・千「……!う、嘘(でしょ……?)……。」

 

2人が驚くのも無理はない。

 

なぜなら松原さんの風呂敷は、運悪く木のところに、しかも結構高い位置に引っ掛かってしまったのだから。

 

花音「どうしよう……。あれ、取れるのかな……?」

 

千聖「……楓。」

 

楓「? はい。」

 

千聖「取ってきてちょうだい。」

 

楓「……はい?」

 

千聖「あなたでも、これくらいの木なら登れるでしょ?」

 

楓「……」

 

千聖「……まさか、登れないの?」

 

楓「……それ以前に、木登りすらしたことないです。」

 

千聖「……あなた、ほんとに男…「男全員が木登りしたことあるなんて思わないでください。」わ、悪かったわよ。」

 

花音「えいっ!ピョン!……えいっ!ピョン!」

 

千聖「……か、花音?何やってるの?」

 

花音「え?いや……、ジャンプすれば、届くかなって思って。」

 

千聖「……そ、そう。(可愛い……。)」

 

花音「よし、もう一回!えいっ!ピョン!……えいっ!ピョン!」

 

……なんか松原さん、子どもみたい。

 

花音「うぅ、やっぱり届かない……。」

 

千聖「げ、元気出して、花音。あなたの頑張りは、十分伝わったわ。」

 

うーん、何か長いものでもあれば、届くかもしれないんだけど……。

 

……ん?

 

……!

 

あった!

 

そういや長いものあった!

 

ダッ!

 

千聖「ちょっと楓!?どこ行くのよ!?」

 

楓「ちょっとあるものを取ってきます!」

 

千聖「あ、あるもの?」

 

花音「?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

楓「……持ってきました!」

 

花音「! 空見くん、それって……」

 

僕が持ってきたもの、それは、……傘だ。

 

そう。

 

朝の強風で地図とともにボロボロになってしまった、あの傘だ。

 

実は公民館で雨宿りさせてもらってるとき、大塚さんがボロボロになった傘を処分してくれると言ってくれていた。

 

だが、それは流石に悪いと思い、自分たちで処分すると言って断り、そのまま家まで持って帰ることにしたのだ。

 

ちなみにその自分たちというのは、僕、白鷺さん、氷川さんのことだ。

 

おっと、そろそろ話を戻そう。 

 

千聖「楓の言ったあるものって、傘のことだったのね。あなたにしては、気が利くじゃない。」

 

楓「あ、ありがとうござい…「お礼はいいから、早くそれを使って風呂敷を取ってちょうだい。」あ、はい。」

 

花音「……」

 

えーっと、取っ手で風呂敷を引っ掛かければいいから、傘の先端の部分を持って。

 

……よ、っと。

 

うっ、くっ、……と、届かん……。

 

花音「(頑張って、空見くん。)」

 

千聖「……」

 

はぁ、もうちょっと身長が高ければなぁ。

 

この、くそ、と、届けぇ……。

 

楓「……はぁ、ダメだ……。ごめん松原さん。届かなかったや。」

 

花音「う、ううん、いいの。よし、じゃあ次の手を考え…「それならもう思い付いたわ。」え?」

 

おぉ、マジか。

 

流石白鷺さん。

 

千聖「これには楓、あなたの協力が必要なのだけど、お願いできるかしら?」

 

楓「僕、ですか?それは全然構わないですけど…「じゃあ楓、そこに四つん這いになってもらえる?」え?よ、四つん這い?」

 

千聖「ええ。」

 

楓「……いったい何する気で…「いいから早く四つん這いになりなさい!」は、はい!……」

 

花音「あ、私傘持つよ。」

 

楓「あ、ありがとう松原さん。」

 

四つん這いって……、えっと、こう、かな。

 

千聖「では、少し失礼するわね。」

 

へ?

 

失礼って……うっ!

 

花音「!」

 

千聖「楓、もう少し体を起こして。」

 

楓「……は、はい。」

 

白鷺さんは、靴を脱いで四つん這いしてる僕の背中に乗った。

 

……この体制、体力のない僕には、かなり、きつい……。

 

花音「だ、大丈夫?空見くん?」

 

楓「う、うん、大丈夫……。」

 

千聖「楓、辛いとは思うけど、少しだけ我慢しててちょうだいね。」

 

楓「わ、分かってますよ……。」

 

僕の協力が必要って、こういうことだったのか。

 

乗るなら乗るって、せめて一言ぐらいは言って欲しかった……。

 

千聖「それじゃあ花音、傘を貸してもらえる?」

 

花音「あ、うん。はい。」

 

千聖「ありがとう。……えいっ!……えいっ!」

 

花音「! もうちょっとだよ、千聖ちゃん!」

 

千聖「も、もう、少しで、……と、届、く……。」

 

ガサッ

 

花音「届いた!」

 

千聖「後はこれを、こっち側に動かせば……、! 取れた!花音、お願い!」

 

花音「う、うん!……えいっ!」

 

パシッ

 

と、取ったか?

 

花音「! やった!やったよ千聖ちゃん!キャッチでき…「きゃっ!」フラッ ! 千聖ちゃん!」

 

楓「!?」

 

白鷺さん、風呂敷を取るために上半身を動かしたことで、バランスが…ドスッ! え?

 

ピョン

 

花音「あ。」

 

楓「! うわっ!ドサッ!」

 

花音「空見くん!」

 

楓「うぅ、いたたたた……。」

 

花音「空見くん、大丈夫!?」

 

楓「う、うん、なんとか……。(あの一瞬に、傘を地面にぶっ刺してバランスを保ちながら飛び降りるとは……。流石白鷺さん……。)」

 

千聖「ご、ごめんなさい楓、怪我とかしてない?」

 

楓「だ、大丈夫ですよ。(ちょっと肘と膝を擦りむいちゃったけど。)それより、松原さんの風呂敷が取れて良かったです。」

 

千聖「ええ。でもこういうときって、身長が低いとちょっと不便よね。少し楓が羨ましいわ。」

 

楓「いや、僕も身長は低いほうですよ。」

 

花音「……空見くん、千聖ちゃん。」

 

楓・千聖「?」

 

花音「……ありがとう♪」

 

千聖「……ええ。」

 

楓「……」

 

千聖「……ドンッ!」

 

楓「いて。……!……う、うん。」

 

花音「……」

 

千聖「それじゃあ、みんな心配しているだろうし、そろそろ戻りましょうか。」

 

楓「そうですね。」

 

花音「……」

 

楓「……?松原さん?」

 

花音「……」

 

楓「あのー、松原さん?」

 

花音「……」

 

楓「……ま、松原さ…「花音、どうしたの?」あ。」

 

花音「え?あ、ううん、何でもないよ?」

 

千聖「そう?……具合が悪くなったりしたら、すぐ言うのよ。」

 

花音「う、うん。」

 

楓「……」

 

花音「……はぁ。」

 

楓「……松原さん。」

 

花音「何?空見く…「何でもなく、ないよね?」……」

 

楓「……」

 

花音「……何で、そう思うの?」

 

楓「……松原さん、昨日からときどき様子がおかしかったっていうか、元気がなかったでしょ?それを見て、もしかしてと思ったんだけど。」

 

花音「! ……」

 

楓「……あ、で、でも、本当に何もないなら、そのほうが良いんだけ…「気づいてたんだ。」え?あ、……う、うん。」

 

花音「……いつから?」

 

楓「……オリエンテーションの後半、白鷺さんが僕を助けてくれた後ぐらい、かな。」

 

花音「そんなに、前から……。」

 

楓「う、うん……。」

 

花音「……」

 

楓「……」

 

……き、気不味い空気になっちゃった……。

 

……僕のせい、だよね?

 

余計なこと、しなきゃよかったかな……?

 

花音「……空見くんはさ、……千聖ちゃんのこと、どう思ってる?」

 

楓「え?」

 

千聖「!(か、花音!?)」

 

楓「し、白鷺さんの、こと?」

 

花音「……」コク

 

楓「……ど、どう思ってるかって、言われても……」

 

花音「……」

 

千聖「か、花音?あなた、何を考えて…「千聖ちゃんはちょっと黙ってて。」! ……ご、ごめんなさい。」

 

楓「……白鷺さんの、こと……」

 

千聖「(……どうして花音は、私のことをどう思ってるか、なんて質問を楓に……)」

 

花音「……」

 

楓「……すごい人だなって、思ってるかな。」

 

千聖「(え?)」

 

花音「……」

 

楓「最初は怖い人だなって思ったけど、町を案内してもらってるうちに、だんだんそんな考えなくなってきてさ。……映画館、ライブハウス、本屋さんなど、いろいろなところに連れていってくれて。特に本屋さんでは、大人の人達に絡まれてた僕を助けてくれて。……あのときの白鷺さん、すごくかっこよかったなぁ。」

 

花音「……そんなことが、あったんだ。」

 

千聖「……お、大袈裟よ///、それくらいで…「それだけじゃありませんよ。」え?」

 

楓「昨日だって、大勢の女子たちに囲まれて困ってる僕を助けてくれたし。さっきだって、弁当を忘れてきた僕に、自分のお弁当を分けてくれたじゃないですか。……って、気づいたら僕、白鷺さんに助けられてばっかりのような……」

 

花音「……」

 

楓「まぁ話をまとめると、白鷺さんは優しくて、かっこよくて、すごいってことですよ。」

 

千聖「……そ、そんなに褒めたって、何も出ないわよ///?」

 

楓「へ?」

 

千聖「っ!な、何でもないわよ///!」

 

楓「!?(何で白鷺さん怒ってんの!?……僕、何か変なこと言ったかな?)……あ、えっと、こんな感じで、いいのかな?語彙力、めちゃくちゃなさすぎるけど。」

 

花音「……」

 

楓「……あれ?松原、さん?」

 

千聖「……花音?」

 

花音「え?あ、……う、うん。」

 

千聖「……」

 

楓「……なんか、まずかった、かな?」

 

花音「う、ううん、そういうわけじゃ、ないんだけど……。……そっか、やっぱりそうだよね。」

 

楓「え?」

 

千聖「何のこと?花音。」

 

花音「やっぱり空見くんも、千聖ちゃんのこと、すごいと思うよね。」

 

楓「……」

 

千聖「か、花音?」

 

花音「さっき空見くんが言ったこと以外にも、空見くんと紗夜ちゃんが喧嘩しちゃったときや、突然の強風や土砂降りでみんなが不安になってるとき、紗夜ちゃんがお風呂で溺れちゃったときだって、千聖ちゃんは誰よりも早く考えて、閃いて、動いて、そして結果を良い方向に持っていこうと努力して、……空見くんの言う通り、それがほんとに、かっこよくて。」

 

千聖「……」

 

花音「それに比べて私は、……空見くんが囲まれてるときも、空見くんと紗夜ちゃんが喧嘩してるときも、ただ見てることしかできなくて。行かなきゃ、助けなきゃ、って思ってはいても、足が全然動かなくて。なんとか状況を良くしなきゃって思っていても、何にも考えが思い浮かばなくって。……ううん、動かなかったんじゃなくて、……動こうとしなかった。考えが出なかったんじゃなくて、……考えようとしなかった。……こんなことで千聖ちゃんみたいになりたいだなんて、……おかしいよね。」

 

千聖「……花音。」

 

……そっか。

 

だから松原さん、昨日のあのときからずっと元気がなかったのか。

 

花音「閃くこともできなければ、すぐ考えて動くっていうこともできない。……千聖ちゃんと比べたら、私は…「比べる必要なんて、ないんじゃないかな。」え?」

 

千聖「……」

 

楓「白鷺さんは白鷺さんだし、松原さんは松原さんだもん。人によって得意不得意があるのはしょうがな…「しょうがなくなんかないよ!」!」

 

花音「……千聖ちゃんだけじゃないよ。紗夜ちゃんや燐子ちゃん、彩ちゃんだって、みんな私にないものを持ってる。それぞれの人柄や才能を生かして、周りの人達を笑顔にして。……私にはそういうの、何もないから……。」

 

千聖「……」

 

楓「……でも、松原さんだって、松原さんにしかないものを持ってるじゃん。」

 

花音「! わ、私が?」

 

楓「うん。……そのおかげで僕は、仲良しづくりを頑張ろうって、苦手から得意にしようって思うことができたんだから。」

 

花音「……」 

 

楓「それだけじゃないよ。いっしょにショッピングモールに行ったとき、買い物に付き合ってくれたり、公民館でお腹が痛いって嘘ついて逃げ出した後、川浪さんといっしょに帰ってきたとき真っ先に心配してくれたり。……仲良しづくりを提案してくれたのだって、松原さんだったじゃん。」

 

花音「……」

 

楓「松原さんにしかないもの、……うまくは言えないけど、たぶん、そういうことだと思う。」

 

花音「……」

 

楓「ごめん、そういうことってどういうこと?ってなるよね。……自分で言ってて、無責任だなぁっていうのは、自覚して…「そんなことないよ。」え?」

 

楓「……私にしかないもの、か。……見つかるかな、いつか。」

 

楓「! ……うん。見つけられるよきっと、松原さんなら。」 

 

千聖「……花音の新しい目標ね。」

 

楓「千聖ちゃん……。……うん!」

 

……良かった、松原さん、元気になったみた…コツン ……え?

 

……松原さんに、げんこつされた(全然痛くないけど)。

 

……何で?

 

花音「お腹が痛いっていうの、嘘だったんだね。」

 

楓「!(そ、そのことか~!)……ご、ごめん。」

 

花音「……」

 

……松原さん、お、怒ってる……?

 

花音「……許してほしい?」

 

楓「え?」

 

花音「……」

 

楓「……う、うん。」

 

花音「じゃあ今度、私のお願いを一つ聞いてくれるなら、許してあげてもいいよ。」

 

楓「お、お願い?」

 

花音「うん。」

 

楓「……ま、まぁ、それぐらいなら全ぜ…「じゃあ決まりだね♪」ニコッ ! う、うん……。」

 

何だろう、今の松原さんの笑顔、どこか既視感を感じるような……。チラ

 

千聖「……?」

 

楓「!サッ!」

 

千聖「……」

 

楓「じゃ、じゃあ僕、先に丸山さん達のとこ、戻って…「ちょっと待って。」!ギクッ」

 

 

千聖「楓あなた、さっき私のことチラ見したわよね?忘れたとは言わせないわよ。」

 

楓「……」

 

千聖「……楓、なんとか言いな…ピュー! ! こら!待ちなさい!ちょっと楓!楓!……はぁ。」

 

花音「ふふ、なんか千聖ちゃん、お母さんみたい♪」  

 

千聖「……例え花音でも、今の冗談は聞き捨てならないわね?」ニコッ

 

花音「!! ご、ごめん千聖ちゃん!冗談、冗談だよ!」

千聖「いいわ、許してあげる。」

 

楓「……あ、ありがとう。ふぅ、……やっぱり優しいね、千聖ちゃんは。」

 

千聖「花音にそう言ってもらえると、嬉しいわ。」

 

花音「……それじゃあ、私達も戻ろ…「花音。」え?」

 

千聖「……」

 

花音「……千聖ちゃん?どうし…「約束して。」え、約束?」

 

千聖「またさっきみたいな悩みができたら、1人で抱え込んだりしないで、すぐ私に相談すること。」

 

花音「……「花音のあんな顔、私、見たくないから。」!」

 

千聖「……」

 

花音「(千聖ちゃん、すごく真剣な表情してる……。そんなに私のこと、心配してくれてたんだ。……)」

 

千聖「……「分かったよ。」!」

 

花音「また悩みができたら、そのときはちゃんと、千聖ちゃんに相談する。もう千聖ちゃんに、心配かけないようにするから。」

 

千聖「花音……。……ええ、お願い。」

 

花音「じゃあ最後にもう1つ、私の悩み、聞いてくれる?」

 

千聖「!…… ええ。」

 

花音「……結局空見くん、最後まで私のことは、すごいって言ってくれなかった。」

 

千聖「……」

 

「でも、そんなことで落ち込んでちゃダメなんだよね。すごいって言ってもらえなかったのなら、言ってもらえるように自分を変えればいい。……私にしかないもの、それを見つけることができれば、空見くんにすごいって言ってもらえることができると思うの。」

 

千聖「ええ、そうね。」

 

花音「だから、千聖ちゃん、……「花音にしかないもの、それは1つとは限らないわ。」え?」

 

千聖「だから、……これからいっしょに見つけていきましょう。花音にしかないもの、みんなが驚くくらいいっぱい見つけて、楓をびっくりさせるの。」

 

花音「空見くんを、びっくりさせる……。私に、できるかな?」

 

千聖「ええ、花音ならきっとできる。私が保証するわ。」

 

花音「……じゃあ、保証してもらおうかな♪」

 

千聖「ふふ♪お安いご用よ。」

 

花音「……えへへ♪」

 

千聖「うふふ♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紗夜「……遅い。」

 

楓「ひ、氷川さん。たぶん、もう少しで来…「あなたがそう言ってもう3分経ったじゃないですか!」……か、カップラーメンができます…「ふざけてるんですか!?」す、すみません!」

 

彩「まぁまぁ紗夜ちゃん、ちょっと落ち着いて。今度、ポテトの割引クーポンあげるからさ。」

 

紗夜「っ!……し、仕方ないですね。」

 

え、あれ?

 

何で、ポテトの割引クーポンで落ち着いたの?

 

……もしかして氷川さんって、案外チョロい?

 

燐子「……!き、来ました!」

 

「おーい!みんなー!」

 

「花音ちゃん!千聖ちゃん!」

 

「遅いですよ二人とも、風呂敷を取るのにどれだけ時間を…「ご、ごめん紗夜ちゃん。今度ポテトの割引クーポンあげるから、それで許してもらえないかな?」っ!・・・わ、分かりました。」

 

・・・またポテトの割引クーポン。

 

・・・やっぱ氷川さん、ほんとはチョロいな?

 

「二人が無事で、・・・ほんとに、良かったです。」

 

「ごめんなさい、心配かけたみたいね。」

 

「そうだよ千聖ちゃん!」

 

「え?ど、どうしたの?彩ちゃ…「私達、すごく心配したんだよ!ずっと帰ってこないから、何か事件にでも巻き込まれたんじゃないかって思ったりもして・・・」そ、そう・・・。」

 

「だから千聖ちゃん!」

 

「・・・」

 

「「「「・・・」」」」

 

「・・・今度おごってもらうハンバーグ、普通のじゃなくてプレミアムのやつをおごってね!」

 

・・・え?

 

「「「「「・・・」」」」」

 

「分かった!?」

 

「え、ええ。」

 

・・・丸山さん、そんなにハンバーグが好きなんかい。

 

『ヒュ~。』

 

「あ~、気持ちいい風~。」

 

「これまでは、強い風が多かったもんね。」

 

「そういえば、そうだったわね。」

 

「! 見て!桜が!」

 

「・・・綺麗ですね。」

 

「風に揺られて、桜が舞って。・・・なんか、お花見って感じ、しますね。」

 

「今まで、お花見からかけ離れてることばかりだったもんね。」

 

「ふふ、確かに。」

 

・・・今日一日だけで、いろいろなことがあったな。

 

全ての事の発端は、強風が吹いて土砂降りが降ったところから始まって。

 

ただ公民館で雨宿りさせてもらうだけのつもりが、最終的には(白鷺さん達が)ライブをすることになるなんて。

 

「・・・ねぇみんな。」

 

「「「?」」」

 

「何?彩ちゃん。」

 

「今日の出来事で、一番心に残ったことって何?」

 

「今日の出来事で・・・」

 

「一番心に残ったこと・・・?」

 

「・・・私は、・・・子供達と、折り紙をしたこと、ですかね。」

 

「あのときの燐子ちゃん、とても楽しそうだったよね。」

 

「折り紙、・・・楽しかったです。」

 

『・・・よし。折れたよ、鶴。』

 

『わぁー!鶴だー!』

 

『すごーい!』

 

『じゃあ今度は、みんなで折ってみようか。』

 

『やったー!』

 

『鶴折るー!』

 

『ふふふ。』

 

「・・・私は、空見さんと仲直りできたことですね。」

 

「え、僕、ですか?」

 

「ええ。・・・」

 

『・・・私も空見さんも、考えていることは同じだったんですね。』

 

『え?』

 

『・・・』サッ。

 

『? 氷川さん、これは…『仲直り、そして、仲良しの印の握手です。』! ひ、氷川さん・・・。ガシッ。』

 

『これからも、よろしくお願いしますね。』

 

『は、はい、こちらこそ。』

 

「私は、・・・公民館の屋根で、雨宿りをしたことかしらね。」

 

「! い、意外だね、千聖ちゃん。」

 

「そう?・・・あの雨宿りは、いろんな意味で忘れられない雨宿りになったもの。」

 

『・・・あ~あ、すごい濡れちゃったよ。』

 

『でも、これでなんとか、雨宿りする場所は確保できたわね。』

 

『・・・くしゅんっ!は!・・・す、すみません///。』

 

『いいのよ。それより大丈夫?燐子ちゃん。』

 

『え、ええまぁ。少し、冷えるだけですので。』

 

『少し冷えるだけって、それ全然大丈夫じゃないじゃない。』

 

『・・・くしゅんっ!』

 

『! ま、松原さんまで。』

 

『わ、私も、大丈夫だから。・・・くしゅんっ!さ、寒い・・・。』

 

「私は、そうだなー、・・・お風呂、かな。」

 

「松原さん、すごくお風呂に入りたがってましたもんね。」

 

「う、うん・・・。」

 

『ほら、紗夜ちゃん、佳子さんもそう言ってるんだし。』

 

『・・・でも。』

 

『紗夜ちゃん。』ガシッ!

 

『? 松原、さん?』

 

『え?・・・!ま、松原さん!?いつの間に?』

 

『入ろう!』キラキラシタメ。

 

『うっ、・・・わ、分かったわよ。』

 

『ほんと!?ありがとう紗夜ちゃん!』

 

『やったね、花音ちゃん!』

 

『うん!』

 

「私は、・・・やっぱり、ライブかな。」

 

「みんなに喜んでもらえたみたいで、良かったわよね。」

 

「うん!・・・またいつか、公民館ライブ、やりたいなぁ。今度は、パスパレのみんなで!」

 

「・・・ええ。・・・いつか、ね。」

 

『え、えっと、・・・ふ、普段私達は、それぞれ違うバンドで活動しています。しかし偶然にも、私達は弾いている楽器がそれぞれ違うのです。』

 

『『『『・・・』』』』

 

『今日はそんな五人で、ライブをすることにしました。最初は子供達を落ち着かせるためのライブの予定でした。でも、だんだんそれは違うんじゃないかと思ってきて、・・・今日のライブは、私達の最高の音を聞いて、みんなに喜んでもらいたい、楽しんでもらいたい、そんな思いを込めたライブです。』

 

『『『・・・』』』 

 

『(丸山さん・・・。)』

 

『そ、それでは聞いてください。きらきら星。』

 

「・・・空見くんは?」

 

「え?」

 

「空見くんは何?今日の出来事で、一番心に残ったこと。」

 

「僕?・・・うーん・・・」

 

「「「「「・・・」」」」」

 

「・・・浅井さん達が、待っててくれたこと、かな。」

 

『『『『『『・・・』』』』』』ガー。

 

『・・・!丸山さん!?』

 

『! あなたは確か、・・・誰だっけ?』

 

『浅井だよ!浅井美菜!』

 

『あ~そうそう、美菜ちゃ…『・・・』ガバッ! え?』

 

『『『『!?』』』』

 

『み、美菜、ちゃん?』

 

『もう、どこ行ってたの!?すっっっごく心配したんだよ!?』

 

『ご、ごめん。ちょっと、トラブル?にあっちゃって。』

 

『白鷺さんも!氷川さんも!白金さんも!松原さんも!空見も!・・・』

 

『ちょっと美菜ちゃん、大丈…『うわーーーーん!!』み、美菜ちゃん!?どうして泣いてるの!?』

 

『良かった~~!!みんな無事で良かったよ~~!!うわ~~~ん!!』

 

『・・・美菜ちゃん。』

 

『ったく大袈裟なんだよ浅井は。』

 

『! 橋山さん。』

 

『ど、どうも、氷川さん。・・・ほら浅井、丸山さんから離れなって。』

 

『うぅ、良かった、良かったよ~・・・。』

 

『分かったから、もう泣くなって。』

 

『・・・』

 

『こいつ、今はこんなんだけど、さっきまではめちゃくちゃクールぶって座ってたんよ?こーんな感じでさ。』

 

『そ、そうなんだ。』

 

『丸山さん達を見つけた途端、こんなに泣きわめくなんて。相当心配だったんだな、丸山さん達のこと。』

 

『・・・』

 

『うぅ、ううう・・・』

 

『ほら、もう泣くなって。・・・いつまでも泣いてたら、・・・あたしが、・・・もらい泣き、しちゃうじゃん。・・・うぅ、ううう・・・』

 

『・・・二人とも。』

 

『白金さんの言う通り、いましたね、テラスに。』

 

『は、はい。・・・良かった、です。』

 

「・・・浅井さん達、ほんとに戻ってくるのでしょうか?」

 

「「「「・・・「戻ってくると、思います。」!」」」」

 

「浅井さんは、その、・・・友達、ですから。・・・友達の言葉は、・・・ちゃんと最後まで、信じたい、です。」

 

「・・・そうよね。」

 

「もし仮に戻ってこなかったとしても、私達が迎えに行ってあげればいいもんね。」

 

「うん。」

 

・・・友達、か。

 

・・・そういや浅井さん達に、まだ仲良し申請してないな。

 

・・・戻ってきたら、ダメ元でしてみるか。

 

「振り替えってみたら、ほんとにいろんなことがあったんだね。」

 

「「「「・・・」」」」

 

「悲しいことや苦しいこと、寂しいことや嬉しいこと、いろいろあったけど、・・・良い思い出になったよね。」

 

「うん、そうだね。」

 

「今日は、忘れられない一日になったわね。」

 

「また、行きたいですね。・・・公民館。」

 

「それと、この公園にも。」

 

「・・・グ~。 あ!・・・///」

 

「ふふ、ずっとお話してたから、お昼を食べるのを忘れてたわね。」

 

「そ、そうだよ!今日はお花見なんだから、桜を見るだけじゃなくて、ちゃんとお昼も…「彩ちゃんの場合は、ただお昼を食べたいだけでしょ?」! ち、違うもーん///!」

 

「ふふふ・・・『ヒラ、ヒラ、ヒラ。』 あ、桜が。」

 

『・・・ピト。』

 

「「「!」」」

 

「? どうしたの?千聖ちゃん。」

 

「ふふ、彩ちゃん、頭に桜が♪」

 

「え、ほんと?」

 

「ええ、今取るわね。」スッ。

 

「氷川さん、・・・頭に桜がついてます。」

 

「! わ、私もですか!?・・・すみません、取ってもらってもいいですか?」

 

「はい、もちろんです。」スッ。

 

・・・桜って、そんなにうまく頭に乗るようなもんなのかな?  

 

「ねぇ、空見くん。」 

 

「ん?何、松原さん?」

 

「頭に桜、ついてるよ。」

 

「え、僕も!?ど、とこだ!?とこだ桜!えーっと、えーっと・・・」

 

「・・・わ、私、取ろうか?」

 

「え?・・・い、いいの?」

 

「? うん、全然構わないけど。」 

 

「・・・じゃあ、・・・お願い、します。」

 

「う、うん。・・・スッ。」

 

「「「「・・・」」」」

 

「・・・///」

 

「・・・はい、取れたよ。」

 

「あ、ありがとう・・・。」

 

「? 空見くん?」

 

「・・・花音って、意外と大胆よね。」

 

「ふぇ?」

 

「・・・」

 

「・・・はっ!・・・//////!ご、ごご、ごめんね空見くん!私、その、き、気づかなくて///!」

 

「い、いや、別に、だ、大丈夫、だよ///。」

 

「「「「・・・」」」」

 

「白鷺さーん!松原さーん!みんなー!」

 

「! あ、美菜ちゃん!」

 

「遅いですよ、浅井さん、橋山さん、宮村さん、菊地さん。私達がどれだけ待ったと思ってるんですか。」

 

「いやーごめんごめん、以外と話が長引いちゃって。な、沙谷加!」

 

「! う、うん。」

 

「・・・菊地さん、少し顔、・・・赤くないですか?」

 

「! そ、そんなこと、・・・ない、よ・・・///。」

 

「・・・ねぇ音羽ちゃん。」

 

「何ですか?白鷺さん。」

 

「ガールズトークをしてるって彩ちゃんから聞いたけど、どんなことを話してたの?」

 

「・・・い、言えません。」

 

「言えない?それはどうし…「すみません、この場でそれを言うのは、ちょっと・・・。」・・・」

 

「・・・ねぇ、沙谷加ちゃ…「! な、何でもない!何でもないから~/////!」・・・え?」

 

「ガールズトーク、楽しかったよね、浅井♪」

 

「うん♪ね、音羽。」

 

「え?あ、そ、そう、ですね。あは、あははは・・・」

 

「「「「(・・・ガールズトークで、何があったんだろう(あったのかしら)。」」」」

 

「・・・!空見!」ポン。

 

「! あ、浅井、さん。」

 

「どう?昼ごはん食べれた?」

 

「あ、う、うん。白鷺さん達から弁当を分けてもらって、それで。」

 

「ふーん。・・・良かったね♪」

 

「? う、うん。」 

 

何だろう。

 

今の浅井さんの“良かったね”に対して、少し違和感を感じたような・・・。

 

・・・ってそんなことより!

 

浅井さん達が帰ってきたら、友達申請してみようって決めたんだよ!

 

・・・よ、よし。

 

・・・っと、その前に。

 

「・・・松原さん。」

 

「な、何?空見くん。」

 

「僕、・・・浅井さん達と仲良しになる。」 

 

「え?」

 

「浅井さんと、橋山さんと、宮村さんと、菊地さんと。あと、うまくいけば、白鷺さん達とも。」

 

「・・・」

 

「なれるか分かんないけど、でも、氷川さんとなれたんだもん。・・・仲良しになってくださいって、ダメ元で言ってみるよ。まぁ、それでダメだっ…「なれるよ!空見くんなら!」え?」

 

「空見くんならきっと、美菜ちゃん達と仲良しに、ううん、・・・仲良し以上の関係になれるよ。」

 

「仲良し以上の、関係?」

 

「うん!だから頑張って、空見くん。私、側で見守ってるから。」

 

「・・・ありがとう松原さん。・・・よし。・・・あ、浅井さん!」

 

「ん?何、空見?」

 

「・・・僕、その、・・・」

 

「?」

 

「・・・あ、浅井さんに、いや、浅井さん達に、お願いがあるんです。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『僕、・・・浅井さん達と仲良しになる。』

 

空見くんが、どうしてこのことを私に言ったのかは分からない。

 

でも、私思うんだ。

 

・・・空見くんならきっと、私達のバンド友達全員と仲良しになれる。

 

だって空見くん、そのことを私に言う前に、もう既に美菜ちゃん達と仲良しになってたもん。

 

美菜ちゃん達だけじゃない、私や千聖ちゃん、彩ちゃん、燐子ちゃんとも。

 

空見くんは気づいてなかったと思うけど、私達からしたら、空見くんはもう仲良しになってたんだよ。

 

・・・って、あのとき空見くんに言ってあげたかったなぁ。

 

でも、もう言わなくても大丈夫だよね。

 

・・・頑張ったね、空見くん。

 

そして、・・・これからも“友達”として、よろしくね。




-おまけ-

「・・・」ジー。

「? どうしたんですか白鷺さん?そんなにじっとタイトルの部分見つめて。」

「・・・1話からのタイトル係、ずっとあなただったわよね?」

「え?あ、そうですけど。それがどうかしたんですか?」

「いえ、何でもないわ。」

「? なら、いいんですけど。」

「(・・・8話から12話のタイトルに関しては、変えておく必要があるわね。)」

※マジで変えます。


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17話 芸能人がいっぱいいるとこ

どうも、水着イラストの花音ちゃんを見て昇天しかけた知栄砂空です。

いつの間にか7月になってましたね。

今年の七夕イベは誰なんだろう。

あ、ちなみに今回は千聖さん回です。


『キーンコーンカーンコーン』

 

生徒A「終わったー!」

 

生徒B「ねぇ、今日いっしょに帰ろー!」

 

生徒C「ちょっと見てよこれ、マジヤバくない!?」

 

生徒D「あ、これあたし知ってるよ。確か最近出来たばかりの店で、毎日毎日行列が絶えないんだってさ。」

 

生徒E「今からカラオケ行くやつ、手挙げてー!」

 

生徒C・D「「はーい!」」

 

生徒A「カラオケ!?私も行きたい!」

 

生徒B「あ、あたしもあたしもー。」

 

HR終了のチャイムが鳴って放課後になった途端、クラスの大半がワイワイ状態と化した。

 

その外見はまさに、今時の女子高生という感じだ。

 

この今時の女子高生(以下JK)が集まっている場に、1人だけ混じっている男が、僕だ。

 

橋山「じゃーねー空見。」

 

美菜「また明日ねー。」

 

楓「あ、うん、じゃー…「ちょっと待ってくださいよ~!橋山さん!浅井さん!」「ごめんごめん。」「軽いジョークだよ、宮村。」……」

 

……よくよく考えると、僕ってものすごい場にいるんだよな。  

 

……///。

 

慣れない……いや、こんなの慣れるわけがない……。    

 

こんなJKがいっぱいいる場に、男が1人だもん、慣れるほうがおかしい……。

 

僕はそんなことを考えながら、机に顔を伏せた。

 

花音「! ど、どうしたの!?空見くん!」

 

え?

 

花音「もしかして、具合でも悪いの!?ふぇぇ、ど、どうしよう……。」

 

楓「……」

 

花音「そ、そうだ!保健室、保健室に行こ、空見くん!私が連れていって…「大丈夫だよ。」ふぇ?」

 

千聖「花音、何をそんなに騒いでるの?」

 

花音「あ、千聖ちゃん。その、空見くんが、具合悪いみたい…「だから大丈夫だって、松原さん。」ほ、ほんと?」

 

千聖「……まさか楓、あなた、花音に何か…「してませんよ何も!」……言ってみただけよ。何をそんなにむきになってるのかしら?」

 

楓「!(こ、この人は~!)」

 

花音「……ふふ。」

 

楓「?」

 

千聖「か、花音?どうしたの?」

 

花音「なんか、2人を見てると和むなぁって。」

 

楓・千「「……そ、そう?……え?」」

 

花音「ふふ。うん、とっても♪」

 

……JKが大勢いる場は慣れないけど。

 

千聖「和むといえば……私は花音、あなたを見ているときが、一番和むわね。」

 

花音「え?どういうこと?千聖ちゃん。」

 

千聖「そのままの意味よ。」

 

花音「え~?教えてよ千聖ちゃ~ん。」

 

千聖「教えない♪」

 

花音「もう、千聖ちゃんの意地悪~。」

 

……この2人と、松原さんと白鷺さんといっしょにいるときのこの場は、いつか慣れるかもしれないな。

 

楓「……じゃあ僕は、そろそろ帰…ガシッ ん?」

 

千聖「……」ニコニコ

 

楓「……あのー、白鷺さん?この手は…「まさか、このまま帰るなんて言わないわよね?」……あの、怖いんですけど。」

 

花音「じゃ、じゃあ私、帰るね?」

 

楓「え?ちょ、松原さん!?助けてくれないの!?」

 

楓「が、頑張ってね、空見くん。ダッ!」

 

楓「頑張って!?え、何、どういう…「忘れたとは言わせないわよ?」へ?」

 

千聖「言ったでしょ?昨日、『勘違いしないで。私はただ、“一旦許す”と言っただけ。その意味を、よーく噛み締めておいて。』って。」

 

楓「……」

 

あー、そういやそんなこと、言われた…グイッ! うわっ!

 

千聖「というわけで行くわよ。」

 

楓「え?い、行くって、どこに…「いいから黙ってついてきなさい。」……」

 

何で?

 

何で白鷺さんは、いつも行き場所を教えてくれないんだ?

 

いやまぁ、怒ってるからってのもあると思うけど……行き先ぐらいは教えてくれてもいいんじゃ…「楓、少し黙っててもらえるかしら?」「! す、すみません。」……はぁ。

 

白鷺さんに逆らうと怖いし、黙ってついてくか。

 

……ところで白鷺さんの心読む能力ほんとに何なの?

 

芸能人特有の何かなの?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~20分後~

 

千聖「着いたわ。」

 

白鷺さんに引っ張られながら歩くこと20分。

 

僕が連れてこられた場所は……ん?

 

どこだ?ここ。

 

……マンション、じゃ、ないよな?

 

……ビル?

 

だとしたら……何の?

 

千聖「入るわよ、かえ…「あの、白鷺さん。」何?」

 

楓「ここって、ビル、ですよね?」

 

千聖「ええ、そうよ。」

 

楓「(あ、合ってた。)サラリーマンとかが働いてる、あのビ…「そういうのとは、少し違うわね。」え?」

 

そういうのとは、少し違う?

 

サラリーマンとかが働いてるわけじゃないってことか……?

 

楓「白鷺さん、それ、どういう意…「入れば分かるわよ。」は、はぁ。」

 

入れば分かる、か。

 

まぁ、確かにそうだけど。

 

……内心めちゃくちゃ怖え。

 

白鷺さんのことだから、そんなヤバいビルじゃないとは思うけど。

 

……うん、ただただ怖い。

 

千聖「いつまでボーッとしてるのよ。さっさと行くわよ。」ガシッ

 

楓「! ちょ、ちょっと白鷺さん!?僕まだ、心の準備が…「そんなのどうだっていいわよ。」僕にはどうでも良くないんですよ~!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【謎のビル エントランス】

 

楓「……」

 

千聖「どう?この建物が何のビルなのか、だいたい想像ついた?」  

 

エントランス……。

 

カウンターがあり、その近くにはソファーやイスがある。

 

自販機もあるし、タバコを吸うところもある。

 

その向かい側にはロッカーがあって、鍵のついてるものとついてないものがある。

 

他には傘おき、冷水機、テレビ、更には観葉植物も置いてあり、まぁごく普通のエントランスだ。

 

うん、ごく普通のエントランス。

 

……エントランス自体はね。

 

千聖「ちょっと楓、聞いてる?」

 

楓「え?」

 

「・・・聞いてなかったわね。」

 

「き、聞いてましたよちゃんと!ただ、少しだけ、考え事をしてまして・・・」

 

「考え事?何か、気になることでもあった?」

 

「は、はい、まぁ。」

 

「そう。・・・言ってみて。」

 

「・・・一言で言いますね?」

 

「ええ、構わないわ。」

 

「・・・僕の記憶違いじゃなければあの人、よくテレビや映画に出たり、雑誌とかネットとかでもちょくちょく話題になってる気がするんですよ。あの人とかあの人とかも、映画の予告とかでよく見るし・・・。あ、すいません、一言じゃ無理でした。」

 

「なるほど。・・・つまり、何が言いたいの?」

 

「・・・ここ、普通のビルじゃないですよね?」

 

「というと?」

 

「このビルは、白鷺さんに深く関係している何か、だと思うんですけ…「その何かって何?」え?いや、そこまでは、分かりませんけど・・・」  

 

「・・・はぁ。」

 

え、何でため息?

 

「そこまで分かってるなら、答えはもう出てるでしょうに・・・」

 

「え、あ、・・・なんか、すいませ…「いいわよ謝らなくても。」・・・」

 

「・・・芸能事務所よ。」

 

「え?」

 

「だから、芸能事務所。ほら、行くわよ。」

 

「! ちょ、ちょっと待ってくださいよ~!」

 

芸能事務所、・・・確か、Pastel*Palettes、だっけ。

 

白鷺さんと丸山さんを含めた、そのアイドルバンドの五人が所属してるとこ。

 

そりゃ、テレビとかでよく見るような人達がいるわけだ。

 

芸能事務所って、一言で言うと芸能人がいっぱいいるとこだもんな。

 

・・・あれ?

 

僕ってもしかして、結構すごいところに来ちゃった?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「確か、ここら辺のはずだけど・・・」キョロキョロ。

 

さ、流石芸能事務所、中がめちゃくちゃ広い・・・。

 

なんかいっぱい歩いたから、自分が今何階にいるのかも分かんなくなっちゃったよ・・・。

 

何階かは分かんないけど、ここがなんかの部屋だってことだけは分かる。

 

・・・ところで白鷺さんは、何でさっきからキョロキョロしてるんだろ?

 

誰かと待ち合わせでもしてんのかな?  

 

てか僕、まだこの芸能事務所に連れてこられた理由も知らないんだよな。

 

ここに来る前に何度か聞こうとしたけど、全部はぐらかされたし。

 

たぶん今聞いたとしても、教えてくれないんだろうなぁ。

 

・・・あれ?

 

そういえば・・・。

 

「あの、白鷺さん。」

 

「何?楓。」

 

「今ふと思ったんですけど、僕のような一般人が、普通に芸能事務所に入ったりできるんですか?」

 

「ええ、そこは問題ないわ。事前にアポを取っておけばね。」

 

「はぁ、アポを・・・、ん?あれ、でも僕、アポなんか取って…「私が代わりに取ったのよ。」あ、なるほど。」

 

「・・・いたいた!白鷺さーん!」タッタッタ。

 

「!」ビクッ!

 

「あ、小杉さん、こんにちは。お忙しいところを呼び出してしまって、すみません。」

 

「いやいや全然、気にしないでよ。・・・それで、その子が白鷺さんの言ってた・・・」

 

「はい、友達の空見楓さんです。」

 

「ど、どうも。」

 

この人が、白鷺さんの待ち合わせ相手、かな。

 

「・・・男の子だったんだね。」

 

「へ?」

 

「白鷺さんの友達っていうから、てっきり女の子かと思ってたよ。」

 

「失礼ですね。私にも、男友達くらいいますよ。」

 

「そ、そうだよね。ごめんごめん。・・・」ジー。

 

「・・・あの、何ですか。」

 

「い、いや、なんでもないよ。」

 

? 何だ?この人。

 

「(スキャンダルじみたことになりそうと思ったら、空見くんには悪いけど、即刻帰ってもらおう。)」

 

「白鷺さん、この人誰ですか?」

 

「あ、ごめんなさい、紹介が遅れたわね。この人は小道具担当の小杉さん。ドラマの撮影のときに必要な小道具を整備、管理してくれている人よ。」

 

「小道具・・・、ん?」

 

『あるドラマの撮影のときに、小道具として渡されたのよ。でも、返すのを忘れてしまって・・・。』

 

『私は、“一旦許す”と言っただけ。その意味を、よーく噛み締めておいて。』

 

まさか、今日僕が芸能事務所に連れてこられたのって・・・。

 

「小道具担当って、よく簡単な仕事だと思われがちなんだけど、実際はすごく大変な仕事なんだよ。ものを運ぶときは壊さないように気を付けなきゃいけないし、ものをセッティングするときもカメラの位置を確認しながら配置しなくちゃいけない。特に大変なのは…「小杉さ ん、一旦そこで話をやめてもらってもいいですか?」あ、ご、ごめん。つい熱く語りだしちゃったよ・・・」

 

「い、いえ。えっと、・・・勉強に、なりました。」

 

「ほんと!?それは良かった。じゃあまた今度この話を…「あ、いえ、大丈夫です。」え、そう?」

 

・・・まぁ、悪い人ではないっぽい、けど。

 

・・・こういうのは見た目で判断しちゃダメなんだよな。

 

「小杉さん、私達、そろそろ本題に入りたいんですけど・・・」

 

「あ、そ、そうだよね。ごめん白鷺さん。」

 

「「・・・」」

 

「えっと、確か本題というのは、白鷺さんが返し忘れたっていう小道具のことだよね?」

 

「!」

 

「はい。」

 

・・・やっぱ思った通りだった。

 

だから白鷺さんは、僕を芸能事務所に連れてきたんだ。

 

小道具の紙をぐしゃぐしゃにしてしまったことを、小道具担当である小杉さんに謝らせるために。

 

「というわけで楓、さっそくだけど、例のものを出してちょうだい。まさか、忘れたなんて言わな…「・・・」スッ。・・・なんだ、ちゃんとあるじゃない。」

 

僕、忘れたなんて一言も言ってませんけどね。

 

「! 白鷺さん、それ、まさか・・・」

 

「ごめんなさい、小杉さ…「すみませんでした!」え?」

 

「これ、実は白鷺さんが返し忘れたっていう、小道具の紙なんです。」スッ。

 

「(か、楓・・・?)」

 

「う、嘘だろ?・・・ど、どうして、そんな、くしゃくしゃに?」

 

「実はおととい、学校であることに巻き込まれちゃって。そのときに、白鷺さんにこれを渡されたんです。そのおかげで、なんとかそのときは事なきを得たんですけど。・・・その渡された紙を白鷺さんに返すのを忘れてたうえ、制服のポケットに入れたまま洗濯に出しちゃって。そのせいで、その、こんな、くしゃくしゃに・・・。」

 

「・・・」

 

「だ、だから、その、・・・す、すみま…「ごめんなさい!」へ?」

 

「確かに楓はその紙、いや、小道具をくしゃくしゃにしてしまった張本人です。でも、そうなってしまった原因は私です。私が小杉さんに小道具であるその紙を返し忘れてしまったうえ、緊急事態とはいえ返さなくてはいけない大事な小道具を楓に渡してしまったから。・・・だから、・・・楓を責めるようなことは、あまりしないでください!お願いします!」

 

「(し、白鷺さん・・・。)」

 

「・・・」

 

「・・・楓。」

 

「え?・・・!は、はい。」

 

「・・・「「小杉さん。」」?」

 

「「ほんとに、・・・すみませんでした!」」

 

「・・・」

 

僕も白鷺さんも、言いたいことは全部言ったはずだ。

 

正直、白鷺さんも謝り始めたのにはびっくりしたけど、・・・僕のこともちゃんと、考えてくれてたんだ。

 

「・・・「大丈夫だよ、白鷺さん。僕は怒ったりしないし、空見くんを責めたりもしないから。」! ほ、ほんとですか?」

 

「うん。・・・でも、白鷺さんがそこまで彼のことを心配してるなんて、少し意外だな。」

 

「そ、そうですか?私はただ、友達が自分のせいで怒られてるのを見たくなかったから、あのように言っただけで…「まぁなんにせよ、そんな紙きれ一枚のことで怒ることはないから安心して。」は、はぁ。・・・って、え!?こ、小杉さん、今なんて?」

 

「え?・・・安心し…「その前です!」・・・そんな紙きれ一枚のことで…「それです!」・・・白鷺、さん?」

 

「あ、あの、白鷺さん?いったいどうし…「どういうことですか、紙きれ一枚って。」!(こ、この感じ。・・・今は、話しかけないほうがいいかも・・・。)」

 

「この紙は、大事な小道具じゃなかったんですか!?」

 

「な、何でそんなに怒ってんの?白鷺さ…「いいから答えてください!」・・・」

 

し、白鷺さんがここまで熱くなるのは珍しいな。

 

「えーっと、・・・そもそも僕、その紙が“大事な”小道具とは、一言も言ってないんだよ?」

 

「・・・」

 

「(しゃ、喋らない・・・、話を続けろってことか?)そ、空見くん、それ、ちょっと貸してもらえるかな。」

 

「あ、はい。」スッ。

 

「ありがとう。・・・これさ、一応小道具として扱ってるけど、どこにでもあるようなごく普通の紙なんだよ。だから、なくなったらなくなったでまた作ればいいし、汚れたら汚れたでまた作ればいい。正直な話、この小道具、いや、この紙は、ものすごく大事ってわけでもないんだよ。」

 

「・・・」

 

「・・・えっと、一応話しておくべきことは、全部話したつもり…「つまり?」え?あ、・・・」

 

小杉さんも大変だな、いろんな意味で。

 

「つまりは、まぁ、・・・こんな小道具と呼べるのかすらも分からないような紙のことで、そこまで責任感じながら謝らなくてもよかったってことを…「分かりました。ありがとうございます、小杉さん。」え?あ、・・・うん。」

 

「行くわよ、楓。」

 

「へ?いや、でも…「いいから。」は、はい・・・。」

 

「(・・・僕、何か白鷺さんの気にさわるようなこと言ったかな?・・・「小杉さん。」「え?」)」

 

「・・・」

 

「あ、な、何かな?空見くん。」

 

「ずっと気になってたことなんですけど、・・・その紙、何の撮影で使ったやつなんですか?」

 

「え、何の撮影で使ったか?」

 

「はい。白鷺さんに渡されたときから、ずっと気になってて。あ、でもこういうのって、やっぱ企業秘密みたいな感じで、教えてもらえ…「まぁ一言で言うと、逃げるときかな。」・・・はい?」

 

「簡単に説明すると、まずそのドラマには臆病な高校生の男の子が出てくるんだけど、あるとき大勢の不良に絡まれるんだよ。で、その男の子がどうしようどうしようってなってたときに、その男の子の友達の女の子が助けてくれるわけ。で、その女の子は男の子の腕を掴みながらその不良で溢れた人混みをするすると抜けていくんだけど、そこで女の子が男の子に渡すのがこの紙。」

 

「・・・」

 

「でまぁその後はなんやかんや起きて、その男の子は突然お腹が痛いってわめき出すんだよ。でも、本当にお腹が痛いわけじゃなくてね。そう、なぜ男の子が突然お腹痛いってわめき出したのか、そのカギがずばりこのか…「も、もういいです。分かりました。」え、でも、まだ最後まで言ってな…「そんなに言うと、ドラマのネタバレとかになりそうですし。」・・・あーー!!そうだったーー!!」

 

「と、というわけで、僕もう行きますね。」

 

「え?あ、ちょっと空見く…「い、いろいろありがとうございました。」あ、・・・うん。」

 

「・・・ペコリ。」

 

「(あ、ちゃんとお辞儀はしてくれるんだ、白鷺さん。)き、気をつけて帰るんだよ。」

 

「ほら、さっさと行くわよ楓。」グイッ!

 

「わっ!し、白鷺さん、何をそんなに怒って…「別に怒ってなんかないわよ。」・・・(絶対怒ってる・・・。)」

 

「(・・・スキャンダルになりそうだったらとか、いろいろ考えてたけど、・・・なんか、大丈夫な気がしてきた。まぁ、白鷺さんだもんな。そういうところは、きちんと考えてるだろう。空見くんも、あの感じじゃ問題なさそうだし。・・・なんか空見くんって、”臆病な高校生の男の子“に似てるよね。って、それはちょっと失礼か。あ、そういや、これ、どうしよう・・・。後で捨てとくか。)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

現在僕と白鷺さんは、ある部屋を出たところの近くにあったソファに腰かけている。

 

しかし良かったな。

 

あの紙、そんなたいしたものじゃなかったみたいで。

 

小道具っていうから、どれだけ怒られるんだろうとか思ってたけど、・・・いろいろあるんだなぁ。

 

ていうか、白鷺さんがなんか機嫌悪くなりだしたのって、小杉さんがあの紙のことを説明し終わったとこぐらいだよね?

 

何であのとき、白鷺さん機嫌悪くなったんだろ?

 

とまぁ、そういうことは置いといて。

 

・・・最後の小杉さんの話、すげぇデジャヴを感じたんだけど?

 

あの話って、・・・もしかしなくても、あれだよね?

 

・・・こんな偶然、そうあるものじゃないぞ?

 

あれ、白鷺さんはまさか、このことを知ってて、僕にあの紙を…「楓。」!

 

「は、はい!何でしょう!?」

 

「・・・ごめんなさいね。」

 

「え?」

 

「私があんなことを言ったせいで、あなたに妙な緊張をさせてしまったみたいで。」

 

「べ、別に大丈夫ですよ。まぁ、確かに最初は緊張しましたけど、・・・白鷺さんのおかげで、後半からは緊張もとけましたし。」

 

「私の?」

 

「白鷺さん、言ってくれてたじゃないですか。僕のことを責めないであげてくれって。」

 

「っ!だ、だからそれは、自分のせいであなたが怒られてるのを見るのが嫌だったから…「それでも僕、嬉しかったです。」・・・」

 

「ありがとうございます、白鷺さん。」

 

「・・・あなたって、変なところ律儀よね。」

 

「へ?」

 

「はぁ、なんか無駄に疲れたわ。」

 

「え、白鷺さん、む、無駄って…「小道具と呼べるのかすらも分からないようなものなら、あんなに本気で謝らなきゃ良かったわ。」あ、そのこと、ですか。」

 

「あの手の小道具は初めて使ったから、最初返し忘れたことに気づいたときはどうしようって思ったけれど、・・・次からは、使い終わったらくしゃくしゃにしてゴミ箱に即捨てることにしましょうかしらね。」

 

「は、ははは・・・」

 

無駄に疲れたって、別に僕といたからってわけじゃなかったのか。  

 

ふぅ、良かった。

 

・・・てか白鷺さん、やっぱそのことで怒ってたんじゃん。

 

「思ってたことを口に出したらスッキリしたわ。どう?楓。もしだったら、帰りにどこか寄って…「あー!千聖ちゃんだー!」え?」

 

ん?

 

この声、なんか聞いたことあるような・・・?

 

「あら、日菜ちゃん。」

 

「やっほー千聖ちゃん。ん?ってあーー!君、SPACEにいた子じゃーん!」

 

SPACE?

 

・・・あ、思い出した!

 

この人、あのときSPACEにいた人だ。

 

なんか、白鷺さんの知り合いみたいだけど。

 

「・・・」ジー。

 

「ど、どうしたの?日菜ちゃん。」

 

「・・・やっぱりこの子って、千聖ちゃんの…「違うわよ?」えー、でも二回もいっしょにいるんじゃ…「いい加減にしないと、例え日菜ちゃんでも怒るわよ。」んー、まぁいいや。」

 

いや軽いなこの人。

 

「そういえば、日菜ちゃんはどうしてここに?今日はパスパレの練習は休みだったはずだけど。」

 

ん?

 

パスパレ?

 

今白鷺さん、パスパレって言った?

 

「いやーそれがさ、昨日うっかりスタジオに忘れ物しちゃってさー。おねーちゃんに怒られちゃったから、取りに来たんだ。」

 

「そうだったの。忘れ物って、何を忘れたの?」

 

「教科書だよ。」

 

「教科書?あぁ、そういえば昨日、彩ちゃんと何か話してたわね。」

 

「彩ちゃんが、今度勉強教えて欲しいって頼んできたから、それなら今教えてあげるって言って教えてあげたんだ。でも彩ちゃん、あたしの教え方じゃ分からなかったみたいでさ。」

 

「・・・ちなみに日菜ちゃんは、どういうふうに教えたの?」

 

「え?どういうふうって、普通にここをギュンッてやって、そしたらシュパーンってやって、最後にドーン!ってやったら出来るよって教えただけだよ?」

 

「・・・相変わらずね、日菜ちゃん。・・・彩ちゃんには、今度私が教えてあげることにするわ。」

 

・・・擬音ばっかで、何言ってんのかさっぱり分からない・・・。

 

「それでそれで?千聖ちゃん達は何してたの?」

 

「え?い、いや、そんな大したことじゃないわよ。」

 

「え~、気になるじゃ~ん、教えてよ~。」

 

「教えてあげてもいいけど、今話すとそれなりの時間がかかるのよ。」

 

「そうなの?んー、じゃあまた今度でいいや。」

 

「ええ、そうしてもらえると助かるわ。」

 

「それじゃあ千聖ちゃん、あたし行くね。」

 

「ええ、また明日ね。」

 

「うん、また明日ー。」タッタッタ。

 

・・・なんか、よく分からん人だったな。

 

途中丸山さんの名前も出てたけど、丸山さんとも知り合いなのか。

 

てかさ、白鷺さんがパスパレの練習がどうとか言ってたんだよね。

 

スタジオでどうたらこうたらとも言ってたし、・・・もしかしてあの人・・・。

 

ん?

 

てか待って?

 

あの人、戻ってきてない!?

 

「ひ、日菜ちゃん!?どうしたの?スタジオに行ったんじゃなかったの?」

 

「いやーそれがさ、あることを忘れてて。」

 

「あること?」

 

「君の名前、そういえば聞いてなかったなって。」

 

「え、僕?」

 

「うん。名前、なんてゆーの?」

 

「・・・そ、空見、楓だけ…「やっぱり!」え?」

 

「あたしの思った通りだよ!君があの空見くんなんだね。」

 

「え、あ、え?お、思った通り?あの?」

 

「ほらほら、早く出して!」サッ!

 

「・・・出してって、何を…「携帯だよー、決まってんじゃん。」き、決まってる、の?・・・スッ。」

 

「じゃ、ちょっと貸してねー。」パシ。

 

「へ?あ、ちょ、僕の携帯!」

 

「んーと、ここをこうして、・・・よしOK !はい、ありがとう!」

 

「あ・・・。」

 

「それじゃあ千聖ちゃん、空見くん、今度こそじゃーねー!」ピュー!

 

・・・な、何だったんだ、マジで。

 

「だ、大丈夫?楓。」

 

「は、はい。・・・あ。」

 

・・・あの人、あの数秒で電話番号交換してある。

 

いろいろやべえな、あの人。

 

「・・・なんか、ごめんなさいね。」

 

「! い、いえ、別に白鷺さんが謝ることじゃないですよ。」

 

「・・・」ジー。

 

「・・・な、何ですか。人の携帯の画面じっと見て。」サッ。

 

「三人か。」

 

「へ?」

 

「楓が最近電話番号を交換した女の子の数よ。」

 

「・・・ああ、松原さんと白鷺さんと、あとさっきのあのひ…「日菜ちゃんよ。」ひ、日菜、さん、ですね。」

 

「意外と、彩ちゃん達とは交換してないのね。」

 

「いや、それが普通だと思いますけど。」

 

「普通?どうして?」

 

「いやだって、そんなほいほい女子と電話番号の交換なんてしないでしょ?」

 

「・・・そういう、ものなの?」

 

「まぁ、人によってはそういうやつもいますけど、僕は決してそういうタイプじゃないので。」

 

「・・・ま、楓の性格じゃ普通は女の子と電話番号の交換なんて無理よね。」

 

「・・・地味にひどいこと言いますね。」

 

「傷ついた?」

 

「いえ、別に。自分がこんな性格だってのは自分がよく分かってるんで。」

 

「・・・なんか、ごめんなさい。」

 

「いや、別に謝らなくてもいいですって。」

 

・・・女子と電話番号の交換なんて、一生ないと思ってたんだけどな。

 

人生分かんないものだなぁ。

 

『ピロリン♪』

 

「!」

 

「え、メール?誰から…って、日菜さん!?」

 

「さっき別れたばかりなのに、もうメール?」

 

「えーっと、何々?・・・『次の日曜日、予定空けといてね!詳しいことは今度またメールで知らせるから!千聖ちゃんとのデート、楽しんできてね!それじゃーね、空見くん!』・・・はぁ、この人は…って、げっ!」

 

「・・・」ゴゴゴゴゴ・・・。

 

し、白鷺さんから、なんか、ヤバいオーラが・・・。

 

この人、なに白鷺さんに喧嘩売ってんだよ・・・。

 

「・・・ふぅ。」

 

あ、おさまった。

 

「日菜ちゃんのことは後で考えるとして、・・・楓。」

 

「は、はい。」

 

「さっきも言おうとしたのだけど、もしだったら帰り、どこか寄っ…『ピロリン♪』「わっ!またメール!?」・・・」

 

ったく、今度は誰から…あ、お母さんだ。

 

何々?

 

『今日は外食に行くから早く帰ってきて。』

 

おぉマジで!?

 

今日外食なんだ!

 

よっしゃー!

 

「・・・楓、今度は誰から?」

 

「あ、お母さんです。今日は外食だから、すぐ帰ってこいって。」

 

「そう。・・・じゃあ楓、もう帰るの?」

 

「まぁ、すぐ帰ってこいって言われてますし、そうですね。」

 

「・・・そう。」

 

「? どうかしました?」

 

「どうかしたように見える?」

 

「え?あ、まぁ。」

 

「・・・いいわ。じゃあ帰りましょう。」スタスタスタ。

 

「え?あ、ちょっと白鷺さん!?今のどういうことですか!?」

 

「何もないわよ。」

 

「・・・何もないわけないと思うんだけど。ていうか、待ってくださいよー!」

 

「(・・・はぁ。何でこうタイミングが悪いのかしら。)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここからは、一人で帰れるわね?」

 

「はい、大丈夫です。・・・白鷺さん、ほんとに何もないんですか?」

 

「ほんとに何もないわよ。あなた、少ししつこいわよ。」

 

「えぇ?(僕、ただ心配してるだけなのに・・・。)」

 

「・・・じゃーね楓、また明日。」クル。

 

「あ、・・・は、はぁ。」

 

・・・ちょっと、冷たかったかしら。

 

・・・謝ったほうがいい、かしら。

 

「・・・か、かえ…「白鷺さんすいません!」きゃっ!」

 

「え?」

 

「あ、危ないじゃない!急に出てこないでよ!」

 

「えぇ?す、すいま…「あと。」?」

 

「謝るときも、すいませんじゃなくてごめんなさいでいいから。私達、クラスメイトでしょ?」

 

「そう、ですか。・・・じゃあ、ごめ…「別に謝られることなんて何もないわよ。」いや、でも・・・」

 

「・・・じゃああなた、何に対して悪いと思ってるの?」

 

「え?あ、えっと、白鷺さんを驚かしちゃったことと、なぜか白鷺さんの機嫌を悪くさせちゃったこと、ですかね。」

 

「・・・」

 

「・・・外食のこと、断りました。」

 

「! ど、どうして?」

 

「白鷺さん、僕を何かに誘おうとしたんですよね?」

 

「・・・き、気づいてたの?」

 

「誰だって気づきますよ。芸能事務所でも、僕を誘おうとしたところをあの人…日菜さんに邪魔されてましたし。」

 

「! ・・・」

 

「それで、白鷺さん、僕を、何に誘おうと…「行くわよ。」ガシッ! え?」

 

「あ、もちろんどこへ行くかは…「行ってみてのお楽しみ、ですよね?」・・・分かってるじゃない。」

 

「(・・・ほんとは外食行きたかったけど、あのままじゃなんか気まずかったし。・・・良かったんだよな、これで。)」

 

・・・楓って、のんびりしているようで、実は周りのことをちゃんと見てるのよね。

 

だから花音の元気がなかったことも、私が楓を誘おうとしていたことも、この子は見抜いてた。

 

最初に会ったときは、ほんとに気弱そうで、頼りなさそうで、・・・言い方悪いけど、頭も悪そうで。

 

まるで、ドラマに出てくる“臆病な高校生の男の子”のリアル版みたいだなって思ってた。

 

・・・でも、人って見かけによらないものよね。

 

確かに楓は、見てて呆れたりすることが多々あるけど、・・・いざというときになると、彼は私を驚かせるほどの行動力を見せてくれる。

 

「・・・あの、白鷺さん。」

 

「何?楓。」

 

「腕、そろそろ離してくれませんかね?結構人通りの多い場所に出たので・・・」

 

「恥ずかしいの?」

 

「え?あ、えっと、・・・まぁ、はい///。」

 

「・・・嫌よ。」

 

「えぇ!?な、何でですか!?」

 

「特に理由はないわ。」

 

「ちょ、白鷺さん!?理由はないって、何言って…「それとも楓は、腕を捕まれるより手を繋がれたほうがいい?」!? ・・・こ、このままで、いいです。」

 

「・・・そう。」

 

「・・・///」

 

・・・ふふ、これからの楓の成長が楽しみね。

 

「!(な、何だ?今一瞬、寒気がしたような・・・。気のせい、なのか?)」

 

「楓、もう少しペースあげるわよ。」

 

「え?わっ!ちょ、いきなりはびっくりしますって~!」




-おまけ-

「! いつの間にか8話から12話のタイトルが変わってる!?え?何で!?」

「・・・」

※それぞれ以下のように変えました

8話:『たぶんこうなったの全部先生のせいだわ』
  →『全てはこの一瞬の出来事から始まった』

9話:『僕って、苦手なものとか嫌いなもの多くない?』→『公民館で嫌いなものに遭遇した』

10話:『なんか〇〇探し始まった』
→『子供達の相手と楽器探し』

11話:『この建物、いろいろありすぎる・・・。』
→『秘密の多い公民館ホール』

12話:『やっといろいろ進展してきた(と思いたい)』
→『仲直り、と同時に仲良しにも』


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18話 同じタイプの二人=気が合う(のかもしれない)

どうも、知栄砂空です。

・・・特に何もないのでさっそく本編をどうぞ!

今回は、・・・あの人が、メインの回、ですよ。


『キーンコーンカーンコーン』

 

「お、チャイム鳴ったな。というわけで授業終わりー、机戻せー。」

 

「ねぇ、次の授業何だっけ?」ガタ

 

「確か英語。」ガタ

 

「いっしょに手洗いに行こー。いっぱい書いたから手が汚れちゃって。」

 

「いいよー。」

 

や、やっと終わった。

 

やっぱ班活動は苦手だ……。

 

えーっと、次は英語か。

 

……いいや、準備はあとでしよう。

 

さて、読むぞー。スッ

 

花音「……」

 

「・・・」

 

「・・・空見くん、最近よくその本読んでるよね。」

 

「え?」

 

「好きなの?本読むの。」

 

「あ、まぁ、うん。・・・松原さんは、本読んだりしないの?」

 

「うーん、最近はあまり読んでないかな。」

 

「そ、そっか。・・・」

 

「・・・」

 

僕が本読むのに集中したいからってのもあるけど、・・・相変わらず会話少ねー。

 

まぁ主に僕のせいだけど。

 

だって話すにしても話題がねーんだもん!

 

少しは会話が続くように心がけようとは思ってるものの、話題が思いつかないんだもん!

 

仕方ないでしょ!こればっかりは…「あら楓、その本・・・」ん?

 

「あ、千聖ちゃん。」

 

「知ってるんですか?これ。」

 

「ええ。確か、三年くらい前に実写映画化されたシリーズよね。」

 

「え、そうな…「そうなんですよ!」え?」

 

「この本、お母さんにおすすめされて貸してもらったんですけど、いざ読んだらめちゃくちゃ面白くて!全部で何巻あるかは知らないんですけど、面白すぎて一ヶ月でもう三巻までいっちゃったんですよ!」

 

「・・・それは、早い、のかしら?」

 

「お母さんは、早いって言ってましたよ。」

 

「まぁ、感性は人それぞれだもんね。・・・ところで、空見くんがそんなに楽しそうに話すの、珍しいよね。」

 

「え?」

 

「珍しい、というか、初めて見たわ。なるほど、楓はそういうタイプなのね。」

 

そういうタイプ?

 

ってどういうタイプだ? 

 

・・・とは言いつつも、まぁだいたい察しはつくけど。

 

「何何ー?何の話してんのー?」

 

「あ、浅井さん。」

 

「楓が読んでいる本の話をしてたのよ。」

 

「本?・・・へぇ~、意外。空見って本読むんだ。」

 

「そ、そりゃ読むよ。人間だもん。」

 

「あぁごめんごめん、そういう意味で言ったわけじゃないんだよ。ってあー!本で思い出した!」

 

「ちょっと、いきなり大きな声出さないでちょうだい。」

 

「本の返却日、昨日だったの忘れてた・・・。」

 

「み、美菜ちゃんも、本読むんだね。」

 

「前までは全然だったんだけどね。宮村にある本をおすすめされて、それではまったんだ。」

 

「返却日が過ぎちゃったのなら、昼休みになったらすぐ返しに行かないとダメよ。もちろん、カウンターの人にそのことを謝ってね。」

 

「わ、分かってるよ~。」

 

「・・・この学校にも、図書館があったの?」

 

「「「え!?」」」

 

「?」

 

「まさか楓、知らなかったの?」

 

「紗夜ちゃんが、空見くんに学校案内をしてあげたって言ってたけど、そのときに案内してもらわなかったの?」

 

「・・・いや?図書館なんか案内されてないよ?」

 

「「・・・」」

 

「・・・氷川さんでも、忘れることがあるんだね。」

 

そっか、この学校にも図書館があったのか。

 

まぁ、図書館がない学校なんてないか。

 

「・・・行ってみたいな、図書館。」ボソッ。

 

「「「え?」」」

 

「え?・・・あ、もしかして今の、声に出てた?」

 

「え、ええ。」

 

「はっきりと出てたよ。」

 

「図書館に行ってみたいって。」

 

・・・なんか僕って、ときどきこういうことあるよな。

 

「それならさ空見、昼休み、いっしょに行かない?」

 

「え?」

 

「図書館、行ってみたいんでしょ?」

 

「い、いいの?」

 

「もちろん!私も最近行き始めたばっかだけど、少しぐらいなら案内もできるし。」

 

「それに今日は、あの子も。」

 

「あ、そっか。確か今日だったよね、当番。」

 

? 白鷺さんと松原さん、何の話してんだ?

 

「よし!そうと決まったら、さっそく…「の前にもう一時間あるのだけど、忘れてないわよね?」うぅ、英語嫌い・・・。」

 

あ、浅井さん、英語苦手なんだ・・・。

 

・・・ていうか、本全然読めなかったわ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『キーンコーンカーンコーン。』

 

「はい、それじゃあ授業終わり。昼休みに入ってよし。」

 

ふぅ、やっと終わった。

 

ってあれ、僕さっきも似たようなこと言ってなかったっけ?

 

「ごめんね、空見くん。次は、ちゃんと最後まで読めるように頑張るから・・・。」

 

「あ、うん。」

 

英語の授業の最後のほうは、隣の席の人と本文を読み合うというものだった。

 

僕はちゃんと最後まで読めたが、松原さんは途中で時間切れ(授業終了)になってしまった。

 

うーん、松原さんが読み始めたのは授業が終わるまでもう30秒もないぐらいのときだったから、読めなくてもしょうがないと思うんだけど。

 

真面目なんだな、松原さん。

 

「空見ー!図書館行こー!」

 

「あ、浅井さん。え、もう?」

 

「もちろん!あ、弁当なら、図書館から戻ってきた後で食べるから大丈夫だよ。」

 

「そ、そうなんだ。・・・!」

 

な、何だ?

 

今一瞬、背筋が凍りつくような何かが…「楓。」!

 

この人だー!

 

背筋が凍りつくような何かの正体は白鷺さんだー!

 

「まさかあなた、お昼を食べずに図書館へ…「だ、大丈夫ですよ白鷺さん!図書館から戻ってきたらすぐ食べますから!」とか言って、気づいたら昼休みが終わってて結局食べれなかったというオチでしょ?」

 

「き、気を付けます!そこはちゃんと気を付けますから!」

 

「・・・じゃあ、約束して。」 

 

「へ?」

 

「10分以内に図書館から戻ってきなさい。いいわね?」

 

「10分以内?・・・ちょっとそれは、厳しいような…「いいわね?」ニコニコ。! は、はい!分かりました!」

 

「・・・じゃ、じゃあ空見、行こうか。」

 

「う、うん。」

 

「・・・ち、千聖ちゃん。10分以内は、流石に早すぎるんじゃ…「そんなこと言ってたら、お昼を食べる時間がなくなっちゃうでしょ?」あ、・・・まぁ、そうだけど。」

 

「もし約束を守れなかったらどうなるか、・・・分かっているわよね?楓♪」

 

「! ち、千聖ちゃんの顔、笑ってるはずなのに、怖い・・・。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・」

 

・・・気まずい。

 

なぜかというと、・・・浅井さんが全っ然しゃべらないから。

 

いつもの浅井さんなら、もっとこう、グイグイ話しかけてくるようなイメージなんだけど(さっきもそうだったし)、・・・教室出てから、ずっと黙ったままだ。

 

しかも浅井さん、・・・ちょっと震えてない?

 

まるで、何かに怯えてるような・・・。

 

「・・・ね、ねぇ、空見。」

 

あ、やっとしゃべった。

 

「何?浅井さん。」

 

「・・・白鷺さんてさ、・・・いつも、あんな怖いの?」

 

「へ?・・・何で白鷺さん?」

 

「何でって、そりゃあ、・・・ほら、あれだよ。さっきの白鷺さんの。」

 

あれ?

 

あれなんて言われても、何のことか全然…『いいわね?』あ、察したわ。

 

「あれね。あのときの白鷺さんね。僕を脅迫してるときの…「やめて!言わないで!」・・・え?」

 

「・・・」ガクガク。  

 

・・・なーるほど。

 

もしかしなくても、これはあれだな。

 

トラウマになってんな。

 

さっきの白鷺さんの怖い笑いが。

 

え、でもあれだけで?

 

あれだけでトラウマになる?

 

・・・もしかして浅井さんって、意外とこ…「それ以上言ったらどうなるか、分かってるよね?」!

 

う、嘘だろ!?

 

まさか、浅井さんまでもが、心を読む能力を?

 

とまぁ、冗談は置いといて。

 

・・・浅井さんの意外な一面が明らかになったな。

 

あ。

 

そんなこんなで歩いてたらたぶん着いた。

 

「浅井さん、図書館って、ここ?」

 

「見れば分かるよね。見るからに本いっぱい並んでるし、どう見ても図書館だよね。」

 

・・・あれ?

 

なんか浅井さん、口調が…「このこと橋山と宮村に言ったら許さないから。もし言ったら空見、あんた、こうだからね?」ビシッ! ・・・怖い。

 

浅井さんがいつもの10倍怖い。

 

何、今のビシッ!って。

 

首のところをビシッ!って、見るからにあれのやつじゃん。

 

・・・この怖さ、白鷺さんといい勝負だわ。

 

「ほら、早く入って。」

 

「え、僕から入るの?まぁいいけどさ。・・・」ガラガラガラ。

 

「っ!ビクッ!」サッ!

 

「あれ?白金さん。」

 

「え?あ、・・・空見、さん。」スッ。

 

「私もいるよ!」

 

「! 浅井、さん。」

 

「今日は、白金さんが当番だったんだね。」

 

「は、はい。」

 

ん?当番?

 

・・・そういや白鷺さんと松原さんが、そんな会話をしてたような・・・。

 

「・・・もしかして空見、知らなかったの?」

 

「え?何が?」

 

「白金さんが図書委員だってこと。」

 

「白金さんが、図書委員?・・・えぇ!?そ、そうだったの!?」 

 

「!」

 

「そ、そんなに驚くことないじゃん・・・。ほら、白金さんもびっくりしてるよ。」

 

「え?あ、ご、ごめん白金さん。」

 

「い、いえ・・・。」

 

いやぁ、しかし驚いたなぁ。

 

まさか白金さんが図書委員だったなんて。

 

・・・こう言っちゃ失礼だけど、白金さんって委員会とかそういうのに入ってるイメージなかったから、ほんとびっくりしたよ。

 

うん、自分で言っててもめちゃくちゃ失礼なこと言ってるなって思うわ。 

 

「ってそうだそうだ!白金さん、これ、返し忘れてた本!」

 

「え?あ、これ。・・・浅井さんが、借りていたんですね。」

 

「うん。読み終わったのは借りてから三日後ぐらいだったんだけど、返すのが昨日だったってことをすっかり忘れてて・・・」

 

「そうだったんですか。・・・次は、気をつけて、くださいね?」

 

「はーい。」

 

「・・・」ジー。

 

「・・・あの、空見さん。何か?」

 

「え?あ、ごめん。・・・えっと、その本・・・」

 

「これ、ですか?・・・これは、今私が読んでる本、です。」

 

「さっき私達が図書館に入ってくる前、それ真剣に読んでたもんね。」

 

「! ば、ばれてた・・・。」

 

「ん?どしたの?白金さん。」

 

「! い、いえ!何でも、・・・ありま、せん。」

 

「んー?まぁいいや。」

 

「・・・白金さんって、ミステリー系、好きなの?」

 

「え?」

 

「え、何で?空見。」

 

「いやだって、白金さんが読んでたっていうその本、ミステリー系の本だからさ。好きなのかなって。」

 

「あ、ほんとだ!え、そうなの!?白金さん!」

 

「! は、はい、まぁ。・・・好きといえば、好き、です。」

 

ほんとグイグイいくな浅井さんは。

 

最初僕に話しかけてきたときも、こんな感じだったっけ。

 

「へぇー。じゃあさ、白金さん。ミステリー系のやつで、何かおすすめってない?」

 

「お、おすすめ、ですか?」

 

「うん!さっきのは宮村におすすめされた本だったから、白金さんのおすすめの本も読んでみたい…ってあああーーーー!!!」

 

「!」ビクッ!

 

「ちょ、浅井さん!ここ図書館だよ!?僕と浅井さんと白金さんしかいないからって、そんな大声出…「そんな悠長なこと言ってる場合じゃないでしょ!」え、えぇ?」

 

「見てよ時計!もう五分経ってる!」

 

「へ?・・・あぁ、白鷺さんの10分以内で帰ってこいって話ね。」

 

「あの人のことだからきっと、『あなたは五分前行動もできないのかしら?』とか言いそうじゃん!」

 

「そ、そうか…「そうだよ!とにかく、私は戻る!空見も早く戻ってきたほうがいいよ!死にたくなかったらね!あ、というわけでじゃーね白金さん。」ピュー! ・・・」

 

「・・・」

 

は、早っ。

 

・・・開いた口がふさがらないとは、まさにこのことだな。

 

ていうか浅井さん、どんだけ白鷺さんのこと怖いんだよ。

 

まぁ確かに白鷺さんは怖いときは怖いけど、・・・あんな怖がるか?

 

「・・・そ、空見さんは、・・・行かなくて、いいんですか?」

 

「え?あぁ・・・、うん。僕はもう少し、図書館にいるよ。どこにどんな本があるかとか、見ておきたいから。」

 

「そう、ですか。・・・じゃ、じゃあ、私が図書館を、・・・案内、します。」

 

「え、いいの?白金さん、当番だったんじゃ…「今なら、人も来なさそうですし、・・・大丈夫、です。それに、・・・空見さんとしゃべる、いい機会、ですから。」え?・・・そ、そう。」

 

「・・・///!ち、違います!私決して、そういう意味で、言ったわけじゃ…「わ、分かってるって。あまり僕と話したことがないからって意味でしょ?」・・・は、はい。」

 

・・・確かに、僕と白金さんって、あまり話したことないんだよな。

 

最初会ったときなんて、オリエンテーションのときだし。

 

その後だって、まぁ、いろいろあったし。

 

まともに話したことと言えば、・・・僕が氷川さんを避けてるって、白金さんに追及されたとき。

 

・・・やめよやめよこんな話。

 

もう解決したことなんだし、あまり思い出したくない。

 

・・・どうやら僕は、白金さんとの会話があまりにもなさすぎるらしい。

 

いやまぁ、僕みたいなやつは女子との会話がないのなんて普通のことなんだけど。  

 

あれ?

 

そうでもない、のか?

 

「あのー、・・・空見、さん?」

 

「! あ、ごめん白金さん。ちょっと考え事をしてて。」

 

「考え事?・・・大丈夫、なんで…「大丈夫大丈夫。言われてみれば僕と白金さんって、ちゃんと話したことないなーって思ってただけだよ。」そう、だったんですか。・・・で、では、図書館を案内、しますね?」

 

「お、お願い、します。」

 

あー、何だろう。

 

この変な緊張感。

 

図書館を案内してもらうだけなのに、なぜかめちゃくちゃ緊張する。

 

「・・・」

 

あ、・・・分かった、白金さんも緊張してるからだ。

 

だから僕もつられて緊張してるのか。 

 

「あ、あの、白金さん?」

 

「は、はい!」

 

「・・・そんなに緊張しなくても、いいんじゃない?」

 

「そ、そう、なんですけど、・・・この場に、空見さんと二人だけって思うと、・・・すごく、意識しちゃって。」

 

・・・まぁ、僕男だからね。

 

普通女子高に男なんていないからね。

 

それが普通だよね。

 

「わ、分かった。じゃあいいよ、別に緊張したままでも。」

 

「え?」

 

「白金さんの気持ちは、僕も分かるしさ。僕がこの学校に転校してきたばっかのときも、今の白金さんと同じ気持ちだったもん。」

 

「・・・」

 

とは言っても、まだ一週間ぐらいしか経ってないけどね。

 

普通こういうセリフって、漫画とかだと何ヵ月か経った後とかに言うことが多いよね。

 

ってあれ?

 

白金さんが黙っちゃった。

 

・・・僕のせい、かな?

 

僕が緊張しなくていいんじゃないかとか、余計なことを言ったから?

 

・・・サー。(血の気の引く音)

 

「ご、ごめん白金さん!僕が余計なことを言ったから…「わ、私、頑張ります。」へ?」

 

「空見さんと二人だけの状態でも、・・・緊張しないように、頑張ります。そのためにはまず、・・・呼び方やしゃべり方を、空見さんや浅井さんに合わせないと。」

 

「えーっとー、・・・白金さーん?」

 

なんか、白金さんに変なスイッチが入っちゃったみたい?

 

「空見さん…じゃなかった。えーっと、・・・そ、空見、くん。」

 

「え?あ、は、はい。」

 

「い、今から私が、・・・図書館を、案内し…す、する、ね?」

 

「・・・お願い、します。」

 

なんか知らんけど、緊張がより高まってしまった気がする・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えっと、・・・ここが、歴史や地理などの本が置いてある場所で、こっちが、・・・文学の本が置いてある場所で…だよ。」

 

「は、はぁ。」

 

「それで、さっき私が読んでたミステリー系の本は、・・・ここの棚にありま…あるよ。」

 

「そ、そうなんだ。」

 

「・・・空見さん。・・・やっぱり、私の案内じゃ、分かりにくかったですか?・・・!じゃなかった!えっと、わ、分かりにくかった、かな?空見、くん。」

 

「い、いや、そういうわけじゃないんだけど。」

 

こういうときは、思ったことははっきり言った方がいいのだろうか。

 

でも、それを言っちゃったら僕は、・・・こんなに頑張ってる白金さんを、傷つけてしまうことになるんじゃ・・・。

 

あーもう!

 

こういうときどうすりゃいいんだよ~!

 

「・・・空見、さん?」

 

「・・・やっぱり、その呼ばれ方のほうがしっくりくるな。」

 

「え?」

 

「え?・・・!ご、ごめん!今のなし!今言ったことは忘れて…「やっぱり、そう、ですか?」え?」

 

「私のこの口調、・・・変、ですか?」

 

「い、いや、変ではないけど…「けど?」っ!・・・」

 

・・・決めた。

 

正直に言おう。

 

今の白金さんの頑張りを否定することになるかもしれないけど、それなりの覚悟で、正直に。

 

「・・・変ではない、けど、・・・やっぱり、前の丁寧語のほうが、白金さんっぽいっていうか、合ってる気がする。」

 

「・・・」

 

「僕や浅井さんに合わせようと頑張ってるのは、すごい伝わってくるんだよ。でも、それだとさ、・・・白金さんの緊張が、より高まっていく一方でしょ?」

 

「!」

 

「白金さんも、気づいてるんじゃないの?」

 

「・・・」

 

「このやり方だと、緊張はなくなってプラスになるどころか、より大きくなってマイナスになる…「じゃあ。」・・・」

 

「じゃあ私は、どうすれば…「変えなきゃいいんだよ。」・・・え?」

 

「変えなきゃいいんだよ。呼び方も話し方も変えないで、前と同じように呼んだり話したりすれば。・・・確かにこの場に僕と二人きりってのは、ハードルが高すぎて緊張せざるを得ないよね。つい最近まで、この学校には女子しかいなかったわけだし。」

 

「・・・」

 

「呼び方話し方を変えてまで緊張するぐらいなら、変えないで緊張するほうが、まだ楽だと思うよ。」

 

「・・・で、でも、私は…「さっき白金さんの読んでた本さ、僕も読んだことあるんだ。」え?」

 

「ていうか、今読んでる。」

 

「・・・これのこと、ですか?」

 

「そうそれ。めちゃくちゃ面白いよね、その本。現代版のシャーロックホームズっていうのかな。」

 

「わ、分かります!特に私が好きなのは、主人公がホームズ側じゃなくてワトソン側っていうところです。一巻で主人公は、ホームズ的ポジションの先輩に無理矢理探偵部に入部させられるんですよね。」

 

「そうそう!先輩は常に成績学年トップの超優等生で、頭も冴えて閃きもすごいんだけど、主人公は成績は中の中でスポーツはからっきし、頭は冴えないし閃きもないっていう、先輩とは正反対の性格なんだけど、超がつくほどの幸運体質なんだよね。」

 

「はい!逆に先輩は超がつくほどの不運体質なんですよね。そんな全てが真反対の二人が、いくつもの困難や苦難を乗り越えて次から次へと起こる事件を解決していく。一つの巻に四話くらい収録されていて、難しい漢字には振り仮名がついているし、ところどころ絵とかもあるのですごく読みやすいんですよね。」

 

「うんうん。こうしていろいろ話してると、映画化された理由が分かる気がするね。」

 

「そうですね。」

 

「・・・で、どう?」

 

「どうって、何がですか?」

 

「緊張、解けた?」

 

「え?・・・!あ、・・・いつの間にか緊張、解けてる・・・。」

 

「白金さんも、僕と同じだったんだね。」

 

「?」

 

「自分の好きなもののことになると、つい夢中になって熱く語りたくなるタイプ。白鷺さんが言ってたんだ。僕はそういうタイプなんだ、って。たぶん、白金さんもそうなんじゃないかな。」

 

「私が、・・・ふふ。確かに、そうかも、しれませんね。・・・あの、空見さん。」

 

「ん?」

 

「もう一度私に、・・・図書館の案内、させてくれませんか?今度は図書委員ではなく、・・・同じ本好きの友達として。」

 

「白金さん・・・。うん、分かった。じゃあ、お願い、しようかな。」

 

「あ、ありがとうございます!わ、私、頑張ります!」

 

「だから、そんなに緊張しなくてもいいって・・・」

 

「! す、すみません!・・・ふふふ。」

 

同じ本好きの友達か。

 

・・・そんなの、今までいなかったな。

 

というか、女子の友達なんてのがそもそもいなかったしできなかったしね。  

 

・・・この学校に転校してくるまでは。

 

「それではまず、この棚から紹介しますね。・・・二回目、ですけど。」

 

「いいよいいよ。・・・お願いします、白金さん。」

 

「・・・はい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そしてここが、文庫本が置いてある棚です。って、さっきも説明しましたから分かりますよね。私と空見さんが好きなこの本も、この棚に…「あった!」は、早いですね・・・」  

 

「へぇー、もうこんなに出てたんだ。・・・最新は、14巻か。・・・ん?ってもう14巻まであるじゃん!すごっ!」

 

「結構人気な作品なので、この本を図書館に入れてほしいとリクエストする人が多かったんです。11巻以降は、リクエストがなくても最新巻が出るたびに入れるようにしていると、司書の先生が言ってました。」

 

「そうだったんだ。・・・じゃあ今度からは、わざわざお母さんに借りなくてもここで借りればいいのか。」

 

「図書館は基本いつでも空いてますから、気軽に借りに来て大丈夫ですよ。」

 

「そっか。ありがとね、白金さん。」

 

「い、いえ。」

 

いつでも、か。

 

・・・借りに来るとしたら、昼休みかな。

 

あれ?

 

でも僕、貸し出しカードどうしたっけ?

 

・・・ヤバい、どうしたか全然覚えてない・・・。

 

家帰ったら探そ。

 

「・・・こんにちはー。」ガラガラガラ。

 

「!」ビクッ!

 

「ん?あ、美澤先生。」

 

「そ、空見くん?え、どうしてここに・・・」

 

「どうしてって、今昼休みですよ?別にいてもおかしくないと思いますけど。」

 

「あ、そういえばそうね。」

 

「・・・」

 

「それで、先生は何で図書館に?」

 

「本を借りに来たのよ。」

 

「本を?・・・先生でも本借りたりするんですね。」

 

「当たり前でしょ。図書館は生徒専用の場所じゃないのよ。・・・えーっと、図書委員の人は・・・「わ、私、です。」ん?あぁ!あなた!」

 

「! な、何ですか?」

 

「確かオリエンテーションのとき空見くんと同じ班だった、えーっと・・・、白金さん!白金燐子さんね!へぇ、あなた図書委員だったのね。」

 

「ま、まぁ、はい。」

 

「それじゃあさっそくで悪いんだけど白金さん、本の貸し出し、お願いできる?」スッ。

 

「あ、はい!」

 

「・・・」

 

「・・・」ピッ、・・・ピッ。

 

「・・・」

 

「・・・カチャカチャカチャ、…ポン。ど、どうぞ。」スッ。

 

「ありがとう。」

 

おぉ、流石図書委員、めちゃくちゃ手際いいな・・・。

 

「あ、そうだ空見くん。」

 

「何ですか?」

 

「この前聞き忘れてたんだけど、空見くんは何かやらないの?」

 

「何か?」

 

「部活とか、委員会とか、そういうのよ。」

 

「あぁ、・・・え、今からでも入れるんですか?」

 

「ええ。本当はダメなんだけど、空見くんは転校してきたでしょ?だから、特別に、ってことで。」

 

「なるほど。」

 

「・・・あ、あの、空見さん。」

 

「? どしたの?白金さん。」

 

「え、えっと、その・・・」

 

「?」

 

「・・・す、すみません。やっぱり、何でも、ないです。」

 

「そ、そう?」

 

「・・・」

 

「話、戻していいかしら?」

 

「あ、すいません。大丈夫です。」

 

「んっん!・・・それで?空見くんは何か、やりたい部活とか委員会とか、あったりしない?なかったら、別にいいんだけ…「じゃあ。」! うん?」

 

「じゃあ僕は、図書委員がやりたいです。」

 

「!」

 

「図書委員?・・・なんか、意外ね。ボソッ。」

 

「ん?何か言いました?」

 

「! う、ううん?何でもないの、何でもないから。ごめん、気にしないで。」

 

「は、はぁ・・・。(先生の慌て方よ・・・。)」

 

「・・・分かった。じゃあそういうことで、顧問の先生に伝えとくわね。何かあったらまた連絡するから、そのつもりでね。」

 

「あ、はい、お願いします。・・・えっと、ほんとにこんなんで、図書委員会に入れたことになるんですか?」

 

「なるわよ。少しは先生を信用しなさいよ。」

 

「いや、別に信用してないわけでは…「じゃ、私はそろそろ職員室に戻るから。四時間目に遅れないようにね、空見くん、白金さん。」は、はぁ。」

 

「・・・」ガラガラガラ、…ガタン。

 

「「・・・」」

  

・・・心配だな。

 

ま、ちゃんと入ったことになってるなら、後から委員会の集まりとかあるだろうし、そのときに連絡がくるか。

 

もしこなかったら、・・・うん、そのときは先生が悪い。

 

「・・・あの、空見さん。」

 

「ん?どうしたの?白金さん。」

 

「・・・どうして、・・・図書委員会に入ろうと、思ったんですか?」

 

「へ?ど、どうしてって・・・」

 

「・・・」

 

「・・・単純に、本が好きだからだけど。」

 

「え?」

 

「小学校、中学校のときも、それを理由に図書委員をやってたからさ。何か変かな?」

 

「! い、いえ!全然変なんかじゃ、ありません。」

 

「そ、そう。」

 

「(・・・本が好きだから、それだけの理由で、図書委員に。・・・そっか。空見さん“も”、そうなんだ。)」

 

「あのー、白金さん?」

 

「私達って、やっぱり同じタイプなんですね。」

 

「へ?・・・あ、う、うん。え、急にどうしたの?」

 

「何でもありません、こっちの話ですよ。」

 

「そ、そう、ですか・・・。」

 

「・・・これから、図書委員、・・・いっしょに、頑張りましょうね。」

 

「・・・うん。」

 

「~~♪」

 

白金さん、鼻歌歌ってる。

 

・・・なんか良いことでもあったのか?

 

『キーンコーンカーンコーン。』

 

「あ、昼休み、終わりましたね。」

 

「う、うん。」

 

お、もうこんな時間か。

 

なんかあっという間だったな。

 

・・・ん?

 

こんな時間?

 

昼休み終わり?

 

・・・あ。

 

・・・あ、あぁ!!

 

「では空見さん、教室のほうへ、戻り…「ああああーーーー!!!!」!ビクッ! そ、空見、さん?」

 

「・・・忘れてた。」

 

「え?・・・あ。」

 

ヤバい、10分以内に帰ってこいって話、すっかり忘れてた・・・。

 

どうしよう…、白鷺さんに怒られる。

 

いや、きっと怒られるどころの話じゃないぞ?

 

・・・ヤバい、これは本当にヤバい。

 

どうなるのか、全然想像がつかん。

 

・・・僕、今日死ぬかも。

 

いや、冗談じゃなく、わりとマジで。

 

・・・はぁ、今日が僕の命日か。

 

「・・・空見さん、行きましょう。」

 

「いや、ごめん白金さん。流石に今回ばかりは、僕も逃げないとヤバ…「・・・」ギュッ! ・・・////!?」

 

「//////。」

 

何何何何何!!??

 

急にどうしたの白金さん!! 

 

「ちょ、あの、白金さん/////!?・・・何で、その、・・・手なんか、つないで…「わ、私も!」へ?」

 

「・・・私も、いっしょに、・・・謝ります、から///。・・・あの、だから、・・・こうやって手を握れば、少しは気が楽になるかと、思いまして、それで・・・/////。」

 

「・・・えっと、そんな、無理しなくても…「無理なんかしていません!」・・・そ、そう?」

 

・・・絶対無理してるよね白金さん。

 

てか、手つなぐとか聞いてないんだけど/////!!??

 

白金さんってこんな人だっけ!!??

 

「/////。」

 

・・・でも、きっとこれが、白金さんなりの優しさなんだよな。

 

・・・手をつながれたときは、正直びっくりしたし、恥ずかしかったけど。

 

・・・今だけは、甘えさせてもらおうかな。

 

「・・・分かったよ、白金さん。・・・行こう。」

 

「・・・は、はい!」

 

「あ、でも、教室行ったら流石に離し…「も、もちろんです!」・・・ですよね。」

 

ふぅ。

 

今この場に僕と白金さんしかいないっていうのが幸いだったな。

 

こんなとこ、もし誰かに見られたら、・・・うん、恥ずかしいどころの話じゃないな。(松原さんと手を繋いだときはめちゃくちゃいろんな人に見られてたけどね。)

 

・・・よし、じゃあ行こう。

 

白鷺さんのところへ…「あ、空見くん、まだ図書館にいたん、だ、・・・ね?」・・・え?

 

「ま、まま、松原、さ、さん!?ど、どうして!?」

 

「え?あ、えっと、空見くんの帰りが遅いから、様子を見に来たんだけど、・・・何で空見くんと燐子ちゃん、その、・・・手、繋いでるの?」

 

「ち、違うんだよ松原さん!これは、あの、その…「何が違うのかしら?楓?」!!」

 

・・・終わった。

 

やっぱり今日が、僕の命日だったんだ。    

 

はは、ははは。

 

・・・短い人生だったな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この後僕と白金さんがどうなったかは、・・・まぁ、今のところはご想像におまかせします。

 

あ、でも一言だけ言わせて?

 

・・・白金さんマジありがとう。




りんりん回、どんなのにしようかと考えてたらふと思い出しました。

そうだ!りんりんは図書委員だった!と。

よって今回はりんりん×図書館回にしました。

さて、次回はまんまるお山の彩回です。(意味不明)


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19話 結果的に楽しかったからいいけどやっぱりあのときは顔から炎が出るほど恥ずかった

どうも、知栄砂空です。

最近暑い日が続きますね~。

もう完全夏だな……。

さぁ、夏と言えば水着イベ。

水着イベと言えば今日から始まるパスパレイベ!

今日から始まると言えばドリフェス!!

フェス限花音ちゃんを当てるべく、溜めた5000個のスターをぶっぱなす時がきたようだ!

……最悪星四一枚ぐらいは出てほしい・・・。


赤やピンク、水色などの明るい色で可愛らしくデコレーションされている壁。

 

この店の真ん中に並び立っている、とてつもなく多くの種類のスイーツやデザート。

 

そして……。

 

「次はどれ食べよっかな~?」

 

「この店、すごく可愛いよね~!」パシャッ、パシャッ

 

「じゃあ撮るよー!はい、チーズ!」

 

……周りを見渡してもほぼ女子しかいない。

 

男がいるとすれば……。

 

「ほら、お前の分、取ってきてやったぞ。」

 

「うわ~!ありがとう!」

 

「い、いいよ、自分で食べるから。」

 

「そんなこと言わずに、ほら口開けて?あーん。」

 

……もう言わなくても分かるだろ?

 

……何でだ?

 

何でこんな異空間に、僕はいるんだ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~時はさかのぼること1時間前~

 

ー校門前ー

 

「空見先輩またねー!」

 

「今度は好きな動物同士で語り合いましょー!」

 

楓「う、うん、またねー。……はぁ。」

 

疲れた……。

 

知らない女子と話すのって、マジ体力使うな……。

 

ていうか、よくあんな気軽に話しかけられるよな。

 

そこはちょっと尊敬するわ。

 

「よっ、空見。」

 

ん?この声は……。

 

楓「あ、橋山さん。」

 

橋山「ねぇ。空見ってさ、いつも一年にあんな感じで話しかけられてんの?」

 

楓「うん。……たまに、三年生にも話しかけられるけど。」

 

橋山「マジ!?へぇ~、空見って人気者なんだな~。」

 

楓「人気者って……。」

 

橋山「あ、そういやさっき浅井から聞いたぞ?お前、白金さんと手繋いでたんだって?」

 

楓「!? な、何でそのことを!?」

 

橋山「白鷺さんが浅井に教えてやったみたいだよ?」

 

白鷺さん……。

 

はぁ、やっぱりあの人か。

 

橋山「いやぁ、しっかし度胸あるねぇ空見。気弱そうに見えるけど、根はちゃんと男なんだな。」

 

楓「いや、あの橋山さん、誤解なんだよ。手を繋いだのには、理由が…「おい橋山!早く戻ってこい!」!?」

 

橋山「ヤバっ!早く行かないと怒られる!あ、じゃああたしそろそろ行くね。じゃーなー空見!」ダッ!

 

……そういや橋山さんって、テニス部だったっけ。 

 

……あのジャージ見るまで忘れてたなんて、口が裂けても言えないな。

 

てかあの先生、見た目めっちゃ怖え。

 

「あ!空見くーん!」

 

楓「ん?あ。」

 

今度は丸山さんか。

 

彩「空見くん、今帰り?」

 

楓「うん、まぁ。……丸山さんは、何か急ぎの用事?」

 

彩「え、何で?」

 

楓「いや、だって丸山さん、こうして立ち止まってる今でもその場で小走りしてるし。」

 

彩「へ?……あ、ほんとだ。」

 

ま、まさかの無自覚……。

 

彩「あ、じゃあ私、そろそろ行くね。」

 

楓「う、うん。じゃあ…「じゃーねー空見くん!」ダッ! ……じゃ、じゃーねー。」

 

……よし、じゃあ僕も帰ろ……ん?

 

何だこれ?ヒョイ

 

……スイーツバイキング、ご招待券?

 

……何でだろ。

 

なんかこれ、すごい見覚えある気がする……。

 

ま、気のせいか。

 

でもおかしいな。

 

さっきまでこんなの、落ちてなかったはずだけど。

 

……「その招待券、丸山さんのじゃないですか?」!

 

楓「み、宮村さん……。え、これ、丸山さんのなの?」

 

音羽「はい、おそらく。」

 

なるほど。

 

どうりでさっきまで落ちてなかったものが落ちてるわけだ。

 

ん?待てよ?

 

これが丸山さんのものだとなると……早く届けなきゃじゃん!

 

えっと、確か丸山さんは、校門を出て右のほうに行ったよな。

 

音羽「うーん、しかし羨ましいですね丸山さん。女子なら誰もが憧れるスイーツバイキングの店の招待券を持ってるなんて。どこから入手したのかは分かりませんが、機会があればぜひ、スイーツバイキングに行ったときの感想を聞いてみたいものです。あ、でも丸山さんがスイーツバイキングの店に入るには、空見さんが無事招待券を届けてあげないとなんですよね。というわけで空見さん、一秒でも早く、その招待券を丸山さんに届けて……、って、あれ?……空見さん?……あれ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

楓「はぁ、はぁ、はぁ……。えーっと、丸山さん丸山さん……。」タタタタ

 

まだそんな遠くに行ってないなら、ここら辺にいそうだけど……、……!いた! 

 

彩「……」アセアセ

 

なんか、すごい困ってるっぽい……。

 

早くこれ、届けてあげるか。タッタッタ

 

 

 

 

 

彩「えーっと、えーっとー……」

 

「あの、お客様。そろそろ次のお客様を…「もう少し!もう少しだけ待ってください!すぐ、すぐに見つけますから!」と、言われましても……」

 

彩「うぅ、どこ行ったの~?私の招待券~!」

 

楓「ま、丸山さん。」

 

彩「! そ、空見くん!?え?ど、どうしてここに…「丸山さんの言ってる招待券って、これのこと?」スッ ……あーー!!これ、私の招待券!!え、どうして!?何で空見くんが私の招待券を持ってるの!?」

 

楓「拾ったんだよ、校門の前で。ほら、さっき丸山さん、急いでる途中で僕と話してたでしょ?」

 

彩「う、うん。……まさかそのときに?」

 

楓「たぶんね。丸山さん、急いで校門を出たから、そのときに落としたんじゃないかな?」

 

彩「……そっか、あのときに……。」  

 

楓「……?あれ?えーっと、丸山さ…「ありがとう空見くん!」ギュッ! うわっ!ちょ、ま、丸山さん///!?」

 

彩「私、もしこのまま見つからなかったらどうしようって思って……。もうほんと泣いちゃいそうで……。」

 

楓「……丸山さん。」

 

彩「だから、空見くんがこれを出してくれたとき、ほんとに嬉しかった。ほんとに……う、嬉しくて……うぅ……。」

 

楓「ちょ、泣かないでよ丸山さん。ほら、みんな見てるし、それに、……こ、こんなところで抱きつかれたら、は、恥ずかしいよ///。」

 

彩「……だから、ありがとう。」

 

楓「うん、それは分かったから。とにかく今は、離してもらえると、助か…「……」ギュー! うっ!ちょ、あの、丸山さん、く、苦しい…」

 

彩「ありがとう空見くん!ほんとのほんとのほんとのほんっとーにありがとう!!空見くんは、私の命の恩人だよ!」ギュー!

 

楓「い、命って、それは流石に、言い過ぎだって。ていうか、ほんと、マジで離して、死ぬ、ほんと死ぬから……」

 

彩「え?」スッ

 

や、やっと離してもらえた……。ガクッ

 

彩「! ご、ごめん空見くん!大丈夫!?」

 

楓「……」チーン

 

彩「ちょっと空見くん!何かしゃべってよ~!空見く~ん!!」

 

「……あのー、お客様?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……くん。……きて。」

 

う、うーん?

 

「……きて。……起きてよ、空見くん。」

 

楓「……ま、丸山、さん?」

 

彩「! 良かった~!気がついたんだね!」

 

……あ、そっか。

 

僕気絶してたのか。

 

……ん?

 

楓「えーっとー、……どこ?ここ?」

 

彩「お店の中だよ。」

 

楓「店の中?あ、スイーツバイキングの……」

 

彩「入口のところにいたさっきの男の人いたでしょ?あの人が、あの後私達をスタッフルームに連れてきてくれたんだ。」

 

楓「な、なるほど。」

 

……あの人には迷惑かけたし(主に丸山さんが)、後で謝っておくか。

 

「ガチャ あ、起きたみたいだね。」

 

楓「! は、はい。……」

 

「? ……あぁ、僕のことなら心配しないで大丈夫だよ。丁度他の人と交代する時間だったし。」

 

楓「……す、すいませんでした。」

 

「え?」

 

彩「! い、いきなりどうしたの空見くん!?」

 

楓「……どうしたも何も、もともとは丸山さんのせいでしょ?」

 

彩「へ?」

 

楓「丸山さんがあんなとこで急に抱きついたりするから、この人や並んでた人達に迷惑が…「わ、分かってるよ!そこのところは、ちゃんと私も反省してるから~!」……」

 

彩「えーっと、そのー、……ごめんなさい。」

 

「いいっていいって。気にしないで。」

 

彩「! あ、ありがとうございます。」

 

楓「……じゃあそろそろ、僕は…「え!空見くん帰っちゃうの!?」だって僕、丸山さんに招待券を渡しに来ただけだし。」

 

彩「うっ、ま、まぁそうだけど……そうだ!空見くんもいっしょにスイーツバイキング行こうよ!」

 

楓「僕も?……でも、どうやって?」

 

彩「へ?あ、えーっと、それは……」

 

楓「……」

 

「……」

 

彩「……あ、あの、この券で空見くんもいっしょに入るってことは…「悪いけど、それは無理なんだ。これは、お一人様用のご招待券だからね。」そ、そう、ですよね。」

 

楓「……」

 

「……まぁ、招待券がもう一枚、もしくは二人用のペア券があれば、話は別だけどね。」

 

「招待券がもう一枚か。……」

 

……あいにくだが、僕は招待券なんて持っていない。

 

見覚えがあるのは確かだが、たぶんCMや雑誌とかで見たのだろう。

 

というわけでやっぱり僕は、ここら辺で帰らせてもら…「ん?」え?

 

彩「ん~?」ジー

 

楓「……えーっとー、何?丸山さん。」

 

彩「……」ジー

 

ちょ、え、待って?

 

……え!?

 

いやいやいやいやマジで待って!?

 

彩「……」ジー

 

何で!?

 

何で丸山さん、さっきから僕のほうをじーっと見つめてくるの!?

 

それともう一つ、さっきから僕が一歩下がると丸山さんが一歩近づいてくるの繰り返しなんだけど!?

 

何!?

 

僕今追い詰められてるの!?

 

どこぞのアニメやドラマだよ!!

 

「……」

 

あの人も見てないで助けてくれりゃいいのにさ!!

 

何で突っ立ったままぼーっとしてんだよ!!

 

・・・!

 

し、しまった、壁が……!

 

彩「……」ジー

 

ど、どうしよう……。

 

もうこれ以上後ろには下がれない……。

 

……ここは、覚悟したほうがいいのか。

 

ん?

 

何の覚悟かって?

 

そんなもん僕が知るか!!

 

いいか!?

 

人にはな、よく分かんなくても覚悟しなきゃいけないときってもんがあるんだよ!!(謎理論)

 

で、そのよく分かんなくても覚悟しなきゃいけないときが、まさに今なんだ…「えいっ!」サッ! ……へ?

 

彩「やった!取れた!」

 

……え?

 

……何?どゆこと?

 

彩「これ、見てください!」

 

「! これは、スイーツバイキングの招待券!まさか、この子も持ってたなんて。」

 

へ?

 

招待券を持ってた?

 

僕が?

 

……何で、僕が招待券を……ん?

 

……ってああーーー!!!

 

思い出したーー!!

 

彩「……くん、空見くん!」

 

楓「え?あ、ご、ごめん、何?」

 

彩「招待券、あったよ!空見くんの!」

 

楓「……よく、見つけたね。」

 

彩「さっきふと空見くんのほうを見たら、空見くんの制服のポケットから見覚えのある紙が少しだけはみ出てるのが見えたんだ。で、それをよく見たらスイーツバイキングの招待券だってことに気づいたから、空見くんの隙をついてサッとポケットから招待券を抜き取ったってわけだよ♪」

 

楓「そう、だったんだ。」

 

あれ、僕の隙をつくための作戦みたいなものだったのか。

 

……隙をつくんなら、あれよりもっといい方法あっただろ……。

 

まぁ、僕は何も思い付かないけど。

 

彩「というわけで空見くん!いっしょにスイーツバイキング、行けるね!」

 

楓「……うん、そうだね。」

 

「よし、じゃあそろそろ僕も接客モードに戻るか。ボソッ ……では、これからお席へご案内します。こちらへどうぞ。ガチャ」

 

彩「ありがとうございます!」

 

この人、後半ほぼ空気だったよな。

 

まぁ、本来はこうやって普通に仕事してる人だし、しょうがないか。(しょうがないのか?)

 

彩「えへへ♪楽しみだね、空見くん!」

 

楓「う、うん。」

 

ま、せっかくの機会だ。

 

スイーツバイキング、楽しむかな。

 

……まさかお母さんにもらった招待券を使うことになるとは、朝の時点では思いもしなかったな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

赤やピンク、水色などの明るい色で可愛らしくデコレーションされている壁。

 

この店の真ん中に並び立っている、とてつもなく多くの種類のスイーツやデザート。

 

そして……。

 

「次はどれ食べよっかな~?」

 

「この店、すごく可愛いよね~!」パシャッ、パシャッ

 

「じゃあ撮るよー!はい、チーズ!」

 

……周りを見渡してもほぼ女子しかいない。

 

男がいるとすれば……。

 

「ほら、お前の分、取ってきてやったぞ。」

 

「うわ~!ありがとう!」

 

「い、いいよ、自分で食べるから。」

 

「そんなこと言わずに、ほら口開けて?あーん。」

 

……もう言わなくても分かるだろ?

 

……何でだ?

 

何でこんな異空間に、僕はいるんだ?

 

 

 

 

 

……いやマジでどうして!?

 

何でこんな周りが女子orカップルだらけのこの席に僕達がいるの!?

 

いや、女子だけならまぁまだ許せる。

 

だって学校が既にそうだもん。

 

だが、……カップルはダメだろカップルは!!

 

何だ!?

 

僕と丸山さんがカップルに見えたのか!?  

 

……うーん、まぁそれなら仕方ないか……ってなるか!!

 

自慢じゃないが、僕は結構周りをちゃんと見てるから知ってるんだぞ!!

 

「普通の席とカップル席がありますが、どちらにしますか?」

 

「断然普通の席で!あ、出来れば女の子のいるほうの席に…「男が多く座っている席のほうでお願いします。」っておいーー!!お前には男のロマンというものが…「お前少し黙ってろ。」なんだとこのやろーー!!」

 

「普通の席とカップル席がありますが、どちらにしますか?」  

 

「へぇー、選べるんだ。どっちにする?」

 

「もちろん!カップル席で!」

 

「せ、攻めるね……。」

 

「だって私達、カップルだもん!カップル席に座るのは当たり前でしょ?」

 

どうやらこの店では、お客さんを席に案内するときに必ず、普通の席とカップル席どちらがいいか、というのを聞いているらしい。

 

だが!

 

僕と丸山さんが案内されたときは、そんなこと一言も聞かれてない!

 

普通に何事もなかったかのようにカップル席に案内してそのまま仕事に戻っていった!

 

……完全に確信犯だろこれ!!

 

あ、ちなみに僕達をこの席に案内しやがったのは、スタッフルームで休ませてくれたあの男の人だ。

 

……あの人やりがったなーー!!

 

僕と丸山さんじゃなかったら即クレームものだぞ!?

 

……そういえば、さっきまで座ってたはずの丸山さんの姿が見えないけど……。

 

……どこ行ったんだ?

 

彩「ただいまーー!!」

 

楓「あ、おかえり丸山さん。どこ行って…「見てよこれ!」え?」

 

彩「シュークリーム、アイスクリームに、ケーキにゼリー!どれもすっごく美味しそうでしょ?」

 

楓「う、うん。……ていうか、取ってくるの早…「他にも、エクレア、パフェ、クレープ、あ、わたあめもあったっけ。もうね、すごいんだよ!ほんと言い尽くせないほどいろんな種類のスイーツやデザートがあって!一日じゃ全部食べきれないくらいなんだよ!」……そ、そうなんだ……。」

 

え?

 

丸山さん、今日一日で全部食べる気だったの?

 

彩「空見くんも早く取ってきたほうがいいよ。食べたいのがなくなっちゃうよ?」

 

楓「う、うん、そうだね。ガタ ……じゃあ、行ってくるよ。」

 

彩「いってらっしゃーい!」

 

……まぁ、丸山さん楽しそうだし、今回は丸山さんに免じて許してやろう。

 

だが!

 

次こんなことしたら、絶対に許さねえからな!!

 

覚悟しとけよ!!

 

僕と丸山さんをあんな席に案内した男の人!!

 

まぁこんなこと言っても、相手は大人だからこっちは何もできないけどな!!

 

……悔しい……。

 

……!!

 

い、今通りすがった人、チーズケーキ取ってなかった!?

 

いや、取ってた。

 

あの色、形、大きさ、あれは絶対チーズケーキだった!

 

……よし、決めた。

 

まずはチーズケーキを取ってくるぞ!

 

えーっと、ケーキの場所は……あった!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彩「あー、んっ。ん~♪美味しい~♪あ、空見くん、おかえり。」

 

楓「ただいまー。」

 

……丸山さん、早く取ってきたわりには食べるの遅くない?

 

味わって食べてるからなのかな?

 

彩「空見くんも、いっぱい取ってきたね。」

 

楓「うん、まあね。」  

 

紹介しよう。

 

僕が取ってきたものは、チーズケーキ(×2)、ごま団子(×2)、バニラアイス、ストロベリーアイス、いちご、みかんの缶詰め、プチシュークリーム(×2)の計七種類だ。

 

まさかいちごとかぶどうのような果物まであるとは思わなかった……。

 

流石スイーツバイキング……。

 

パシャッ!

 

ん?

 

彩「パシャッ!……パシャッ!」

 

楓「……何やってんの?丸山さん。」

 

彩「え?あ、ごめん!断りもなく、勝手に撮っちゃって……」

 

楓「いや、それは別にいいんだけど、……それ、全部撮るの?」

 

彩「あ、ううん、別に全部撮ってるわけじゃないよ。」

 

楓「え?」

 

彩「……ほら、見て。」ズイッ

 

楓「!?(ち、近い///……。)」

 

彩「撮る角度によって、ものの見えかたが違うでしょ?いろんな角度から撮って、一番よく撮れたなっていうものを、こうやってSNSにあげて……って、空見くん聞いてる?」

 

楓「き、聞いてる聞いてる、大丈夫。え、えっと、つまり丸山さんは、SNS にあげるために写真を撮ってるってこと?」

 

彩「うーん、まぁ簡単に言えばそういうこと!」

 

楓「ま、丸山さんが写真を撮ってる理由は分かったよ。というわけで、早くそっち側の席へ戻ってくれると助か…「そうだ!空見くんもいっしょに写真撮ろうよ!」へ?」

 

え、写真?

 

僕もいっしょに撮る?

 

……待てよ?

 

いっしょにってことは……まさか…「空見くん、ちょっとこっち側に来てくれる?」ん?

 

彩「流石に空見くんのほうの席だと狭いから……。私のほうの席なら、ソファだから広いし二人分座れるよ。」

 

楓「……い、いや、丸山さん、僕は…「ほら、早く来てよ空見くん。いっしょに撮ろうよ!」……」

 

丸山さん、気づいてないのかな?

 

この席で、男女が、並んで、いっしょに写真を撮るって、……それ完全にカップルじゃん……。

 

……無理無理無理無理無理!!

 

丸山さんには悪いけど、ここは断ろう。

 

うん、そうしよう。

 

というわけで、言うぞ!

 

楓「……ま、丸山さん。あの……流石に、この席で、二人で写真を撮るのは…「ダメ、かな?」ウワメヅカイ ……うん、分かった。撮ろう、写真。二人で。」

 

楓「やったー!ありがとう空見くん!」

 

……無理だ。

 

あんな上目遣いされたら、断るのが無理だ。

 

……だーー僕の意気地無し!!

 

彩「空見くん、早くソファに来てよ。」

 

楓「う、うん。」

 

よ、よし、だったらもう最後の手段。

 

……無心になろう。

 

無心になれば、……いける!

 

……たぶん。

 

楓「よっ、と。」

 

彩「……もうちょっと、こっち側に寄れないかな?」

 

楓「えーっと、このぐらい?」

 

彩「……」

 

よし、いい感じだ。

 

ちなみに今僕が動いたのは、1㎝ぐらいだ。

 

……ズイッ

 

え?

 

ピタ

 

/////!!??

 

彩「これくらい近づけばいい…「ちょ、ちょちょ、ちょっと、ちょっと待って丸山さん/////!!」? 何?」

 

楓「な、何って……/////。……い、今の、この、状況、わ、わ、分か、分かってる、の/////?」

 

彩「うん。」

 

楓「……」

 

説明しよう。

 

……くっついてる。

 

ん?どういう意味かって?

 

そのままの意味だよ。

 

くっついてる。

 

……そう。

 

……くっついてんだよ/////!!

 

今僕と丸山さんは/////!!

 

ピッタリと/////!!

 

体をくっつけてんだよ/////!!

 

あ、言っとくけど変な意味じゃねえからな!!

 

変なこと想像したやつは正直に名乗り出ろ!!

 

僕がぶっ飛ばしてやるから!!

 

 

 

 

 

全てを説明しよう。

 

……僕が1㎝だけ動いた後、丸山さんが突然ピタッてくっついてきたんだよ。

 

その瞬間めちゃくちゃぴっくりして、反射的に離れようとしたんだけど、丸山さんが携帯を持ってないほうの手で僕の腰のところをガシッて逃げられないように押さえつけててさ。

 

……もう諦めたよね。

 

僕が諦めたって分かったのか、丸山さんは押さえつけるのをやめてくれたけどさ。

 

もう仕方ないからそのままくっつかれたまま写真撮ったよね。

 

丸山さんに言われて二人でピースしながら。

 

……で、更にはよ。

 

その一部始終を周りに座っている人とか店員さんにめちゃくちゃガン見されてたから、恥ずかしさ超絶倍増だったよね。

 

もう穴があったら入りたいのを通り越して、地球の反対側まで真っ逆さまに落ちていきたい気分だったわ。

 

あ、ちなみに僕は、ピタッとくっつかれてから写真を撮るまで、顔が異常に赤かったそうだ。

 

そりゃそうだ。

 

男が女子にいきなりピタッてくっつかれたら、誰だって顔なんか赤くなるわ。

 

ん?

 

赤くならないやつもいるって?

 

知らねえよそんなの!!(なぜか逆ギレ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ご来店ありがとうございましたー!またのお越しをお待ちしております!」

 

彩「あー美味しかった!ね、空見くん!」

 

楓「う、うん……。」

 

疲れた。

 

もう今日はほんとにいろんな意味で疲れた。

 

家に帰ったら即寝よう。

 

うん、そうしよう。

 

彩「……なんか、ごめんね?」

 

楓「え?」

 

彩「私のわがままに付き合ってもらっちゃって。スイーツバイキングに行こうって誘ったのも私で、いっしょに写真を撮ろうって言ったのも私だし。……恥ずかしかったんだよね?いっしょに写真撮るとき。」

 

楓「! ……き、気づいてたの?」

 

彩「私もそこまでバカじゃないもん。……あのとき空見くん、顔すごく真っ赤になってたよね。」

 

楓「! だ、だって、あのときはほんとに…「分かってるよ。」……」

 

彩「……ごめん。なんか、無理させちゃったみたいで。」

 

楓「い、いや、別に無理なんて……」

 

彩「……」

 

楓「あ、……。……え、えっと、その、丸山さん。」

 

彩「ん?」

 

楓「変なこと、聞いてもいい?」

 

彩「……うん。」

 

楓「何で、……僕といっしょに写真を撮ろうって思ったの?」

 

彩「……」

 

……ヤベ、黙っちゃった。

 

……変な質問すぎるよな。

 

何でいっしょに写真を撮りたかったのか、なんて。

 

彩「……思い出を。」

 

楓「え?」

 

彩「空見くんとの思い出を、作りたかったから。」

 

楓「……僕との、思い出?」

 

彩「……」

 

……また、黙っちゃった。

 

……僕との思い出を、作りたかったから。

 

……そんなこと言われたの、初めてだな。

 

彩「……」

 

楓「……あ、ありがとう。」

 

彩「え?」

 

楓「スイーツバイキングに、誘ってくれて。まぁ、最初あんな席に案内されたときや丸山さんにいっしょに写真撮ろうって言われたときは、ほんとにびっくりして、緊張して、恥ずかしくて。丸山さんにくっつかれたときなんか、自分の体温が急激に上がったり全身震えたりで、もう顔から炎が出そうなくらいにヤバかったけど、……スイーツやデザートとかは美味しかったし、丸山さんと話してるときも、楽しかった。」

 

彩「……」

 

楓「いろいろあったスイーツバイキングだったけど、……結果的に楽しめたし、良い思い出にも、なったと思う。」

 

彩「……ほんと?」

 

楓「うん。……だからさ、丸山さ…「えへへ♪」?」

 

彩「そんなこと言ってもらえると、なんか嬉しいな♪」

 

……丸山さん。

 

彩「スイーツバイキング、また行きたいな~。あ!今度はパスパレのメンバーや、花音ちゃん達といっしょに行きたいな!もちろん、空見くんは強制参加で……」

 

……良かった、いつもの丸山さんだ。

 

……松原さんとかと比べると、丸山さんは元気っ子って感じがするんだよね。

 

だからかな。

 

丸山さんは落ち込んでるときより、こういうふうに元気にしてるときのほうが合ってる気がする。

 

てか、今丸山さん、僕は強制参加だとかなんとか言わなかった?

 

『ピロリン♪』

 

楓「ん?メール?」

 

彩「? 何々?どうしたの?」

 

楓「あ、ううん、何でもないよ。ただメールが来ただけ……って、あ、日菜さんからか。」

 

彩「日菜ちゃん!?」

 

楓「! な、何で、そんなに驚いてんの?」

 

彩「い、いやぁ、空見くんが日菜ちゃんと知り合いだったのが、ちょっと意外で……」

 

……そんなに?

 

彩「それで?メールには何て書いてあるの?」

 

「え?あ、えーっと……って何で丸山さんが……」

 

彩「いいからいいから。ほら、早く見せてよ。」ズイッ

 

楓「(! だ、だから近いんだって///!丸山さんはもうちょっと距離感ってものを…「空見くん、早く早く。」……はぁ。)えーっと、何々?……『今週の日曜日、駅前の広場に集合ね!時間は……10:00ぐらいでいいかな。じゃあ、そういうことでお願いね!遅れないでよ~?』……へ?」

 

え、何、どゆこと?

 

日曜日?

 

駅前の広場に集合?

 

……あー、そういやあの人、今週の日曜は予定空けといてくれって言ってたな。

 

……行かないとまずいかな?

 

……よし。

 

楓「えっと、……例のメールだけど、僕に行かないという選択肢は…『ピロリン♪』え?また日菜さん?……!」

 

『ちなみに、来れない、もしくは来ないなんて選択肢はないからね。もし来なかったら、……お楽しみに♪』

 

……怖い。

 

……こんな脅し受けたら、行くしかないじゃん。

 

彩「……」

 

楓「……あのー、丸山さん。どうかした?」

 

彩「え?あ、ううん、何でも?」

 

楓「……そう?」

 

彩「……ううん、やっぱ何でもあるかな。」

 

楓「え、どっちな…「空見くん!」! は、はい!」

 

彩「私と、……電話番号交換してください!」サッ!

 

楓「……へ?」

 

彩「……」

 

楓「……い、いいけど…「やったー!ありがとう!」う、うん。」

 

彩「じゃあ空見くん、ちょっと携帯貸して?」

 

楓「あ、うん。……はい。」

 

彩「ありがと♪~~♪」

 

……これで四人目、か。

 

白鷺さんに言われてから、ついついそのことを意識するようになってしまった……。

 

知り合いでまだ交換してないのは、氷川さんと白金さんか。

 

……って、そんなのいちいち気にするなって!

 

ん?何?

 

男は気にするのが普通だって?

 

僕の中では普通じゃないの!

 

彩「はい、できたよ。」スッ

 

楓「あ、……うん。」

 

彩「……ねぇ、空見くん。」

 

楓「ん?何?」

 

彩「日曜日さ、……私もいっしょに、行っていいかな?」

 

楓「え、丸山さんも?……いい、と思うけど、一応日菜さんに聞いて…「なんてね♪」へ?」

 

彩「冗談だよ。私その日、千聖ちゃんと約束があるんだ。」

 

楓「え、……じゃあ、何で…「あ、じゃあ私、帰り道こっちだから!」え?いや、ちょ、え!?」

 

彩「じゃーねー空見くん!また学校でねー!」

 

楓「……う、うん。……じゃ、じゃーねー。」

 

……丸山さんって、あんな人だったっけ?

 

……まぁいいや。

 

それにしてもいきなりだったなぁ。

 

冗談のこととかも含めて、いきなりでびっくりしたよ。

 

……日曜日か。

 

僕この日、一日中ゲーム三昧する予定だったんだけどな。

 

ま、それはまた今度でいっか。

 

行かないとなんかヤバそうだし。

 

……スイーツバイキングのチーズケーキ、美味しかったなぁ。

 

……よし、じゃあ僕も帰ろう。

 

家帰ったら何しようかなぁ?

 

イベント周回?

 

あ、溜まってた音楽番組見るのもいいな。

 

……!

 

何この子!めっちゃ可愛い!!

 

……よし。

 

家に帰ったらすること、猫の可愛い動画鑑賞に決まりだな。

 

さて、そうと決まったら早く帰ろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彩「……」

 

 

 

 

 

彩『……ズイッ ……ピタ』

 

彩「……流石に、ちょっと大胆すぎたかな?……ううん、空見くんと仲良くなるためだもん。ピタッてくっつくのなんて、どうってことないよ!……それにしてもこの写真の空見くん、顔がひきつってるな~。ま、仕方ないか。……今度はちゃんと、笑顔で撮れるといいなぁ。」




タイトル多分今まででダントツに長いw。

まぁでも、ギリギリ三段にならなくて良かったですw。

もうお察しの方もいると思いますが、今回の彩ちゃん回と前回のりんりん回は同じ日の出来事です。

まぁだから何だって話ですけどね。

さて、次回は話の最後のほうにも出てきた(出てきたって言えるのかw?)あのキャラの回です。

夏休み期間なのでもうちょっと頑張って更新頻度をあげたいです…。


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20話 楽しいことや嬉しいことなら何でもるんっ♪てなる説

どうも、この回に戸惑ってて全っ然夏休みに投稿できなかった知栄砂空です。

若干タイトル詐欺になってるかも?です。(下手したら若干いらない…)




唐突だが、僕は今駅前の広場にいる。

 

今日は日曜日。

 

空も晴れていて、広場近くは多くの人で賑わっている。

 

ではここで問題。デデン!

 

そんな日に、僕はなぜここにいるのでしょう。

 

・・・答えは簡単。

 

今日のこの時間この場所に来いと、昨日日菜さんからメールが来たからだ。

 

・・・ここだけの話、ほんとは来たくなかった…。

 

だって、今日は一日ゲーム三昧する予定だったんだもん!

 

でもさ、・・・あんな脅しかけられたらさ、・・・来るしかないよね。

 

『もし来なかったら、・・・お楽しみに♪』

 

!ブルッ! お、思い出しただけでも寒気がする…。

 

怖い、マジで脅し怖い・・・。

 

「おーい!空見くーん!」

 

! き、来た!

 

実際に会うのは芸能事務所に行ったときだから・・・、三日ぶりぐらいか。

 

ほんと、何であのとき、それまでほぼ関わりがなかった僕と番号交換したのか、謎だよな。

 

・・・ってそうだそうだ。

 

あいさつぐらいはちゃんとしないとな。

 

「お、おはよう、日菜さ…、・・・ん?」

 

・・・あれ?

 

・・・おかしいな。

 

今僕の目には、本来この場にいるはずのない人の姿が見えるんだけど。

 

僕、目は良い方なんだけどな。

 

「! ちょっと日菜!?どうして空見さんがいるのよ!?」

 

「そんなの、空見くんも呼んだからに決まってんじゃん!」

 

「聞いてないわよそんなの!」

 

「だって教えてないもん。サプライズだよおねーちゃん♪るんっ♪ってきたでしょ?」

 

「はぁ、頭が痛くなりそうだわ・・・。」

 

・・・僕も頭痛くなりそう・・・。

 

だって情報量が多すぎるんだもん・・・。

 

まず、何で本来ここにいるはずのない人、氷川さんがここにいるのか。

 

日菜さん曰く、サプライズらしい。

 

・・・サプライズ、ねー。

 

・・・何とも言えん。

 

続いて、日菜さんが言ったある言葉。

 

・・・“おねーちゃん”。

 

・・・どうやら日菜さんと氷川さんは、姉妹だったらしい。

 

なるほど。

 

どうりで最初日菜さんに会ったとき、誰かに似てると思ったわけだ。

 

・・・姉妹ってことは、日菜さんは一年生?

 

ま、そのことは別にあとででいいや。

 

そして最後。

 

・・・るん♪って何?

 

「すみません空見さん。うちの日菜がご迷惑をおかけしてしまったみたいで・・・」

 

「い、いや、別に迷惑ってわけでは…「それじゃあおねーちゃん、空見くん。ある場所へレッツゴー!」ちょ、待ちなさい日菜!その前にちゃんと空見さんに謝って…ってこら!日菜!待ちなさいってば!」

 

「・・・」

 

はぁ、先が思いやられそう・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「空見さん、本当にごめんなさい。」

 

「いや、もういいですって氷川さん。」

 

どこかに向かって歩きだしたはいいんだけど、さっきからめちゃくちゃ氷川さんに謝られてる・・・。

 

僕はもういいって言ってるのに・・・、氷川さん、どんだけ真面目なんだよ。

 

いや、これは真面目と言うより、・・・律儀?

 

「おねーちゃーん!空見くーん!早く早くー!」

 

「日菜、そんなに急ぐ必要ないでしょう?」

 

「だって楽しみなんだもーん!」

 

「・・・はぁ。全くあの子は、空見さんに迷惑をかけていることを自覚してないのかしら。」

 

「だから別に迷惑じゃないですって。氷川さん、もうこの話やめましょう。」

 

「し、しかし…「いつまでもそんなこと引きずってたら、楽しめるもんも楽しめませんよ。」・・・」

 

「まぁ、これから行くところが楽しむところなのかどうなのかってのは、僕には何も分かりませんが。」

 

「え?」

 

「へ?」

 

ん?

 

僕今、何か変なこと言った?

 

「・・・空見さん。まさかとは思いますけど、・・・これから行く場所、日菜に聞かされてないなんてことは・・・」

 

あ、・・・ヤベ。

 

これやったな。

 

やっちまったな。

 

「・・・聞かされて、ないです。」

 

嘘ついてバレて怒られるのが嫌だから正直に言ったけど、・・・たぶんこれ、地雷踏んだな。

 

「・・・空見さん、少し失礼します。日菜!ちょっと来なさい!」

 

「ん?何ー?おねーちゃん。」

 

「あなた、空見さんに博物館に行くこと、言ってなかったの!?」

 

「うん、言ってないよ。」

 

「言ってないよ、じゃないわよ!あなた、どこまで空見さんに迷惑をかければ…「そんなことで怒らないでよおねーちゃん。これも空見くんへのサプライズだよ、サ・プ・ラ・イ・ズ♪」そんなサプライズ誰も嬉しくないわよ!」

 

「え~!空見くん、嬉しくないの!?女の子が男の子にサプライズだよ!?ふつーるんっ♪ってくるでしょ!」

 

「くるわけないでしょ!変なこと言ってないで、早く空見さんに謝りなさい!」

 

「るんっ♪は変なことじゃないもん!あたし、絶対謝らないからね!」

 

「へぇ~そう。だったら私、もう日菜のお出かけになんか付き合ってあげないから。」

 

「う~!だ、だったらあたしも、おねーちゃんのにんじん食べてあげたり、ポテト買っても分けてあげたりしないから!」

 

「! ・・・ひ、日菜。あなた、それは少し、卑怯よ・・・。」

 

・・・何だこれ。

 

・・・コント?

 

姉妹コントでもやってんのか?これ。

 

てか、行き先博物館なんだ。

 

・・・博物館なんて行くの、何年ぶりだろ。

 

「いいから!早く空見さんに謝りなさい!」

 

「嫌だ!あたし、絶っっっ対に謝らないからね!あ、あとるんっ♪が変なことだっていうの、訂正してよ!じゃないとこの前ゲットしたポテトの半額クーポン、おねーちゃんに分けてあげないから!」

 

「は、半額クーポン!?・・・だ、だったら私も、空見さんに謝らないのだったら、もういっしょにテレビ見てあげないわよ!」

 

まだやってる・・・。

 

いつ終わるんだよ、この姉妹コント・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「着いたーー!!」

 

姉妹コントは、あれからかれこれ五分ぐらい続いた。

 

・・・長え。   

 

ちなみに五分続いた姉妹コントは、僕が終わらせた。

 

どうやって終わらせたかと言うと、・・・こんな流れで終わらせた。

 

 

  氷川さんと日菜さんが姉妹コントしてる。

          ↓       

      そこに僕が割って入る。

          ↓ 

「喧嘩をこれ以上続けるようだったら、僕は今すぐ家に帰りますよ。」と言う。

          ↓     

それを聞いた二人は姉妹コントをやめ黙り混む。

          ↓  

数秒後、ならもう喧嘩はやめると息ぴったりに口を揃えて僕に告げ姉妹コント終演。

 

 

 

という流れによって、無事姉妹コントという名の喧嘩を終わらせることができた。

 

正直、何であの一言だけで終わらせられたのか不思議でしょうがないが、解決したのでまぁ良しとした。

 

ほんと、何で終わわせられたんだろうな。

 

僕のあの言葉に不思議な力でも宿っていたのだろうか。 

 

・・・というまぁ何の面白みもないバカな冗談は置いといて、なんやかんやあったがなんとか目的地である博物館に着いたらしい。

 

「着いたー!」

 

「・・・懐かしいわね、ここ。」

 

「え?」

 

「いえ、何でもありませ…「二人とも早く早くー!」・・・行きましょうか。」

 

「あ、はい。」

 

聞き間違いじゃなければ、今氷川さん、“懐かしい”って言ってたよな。

 

ということは、この二人は前にもここに来たことがあるのか。

 

「・・・ばぁっ!」

 

「うわっ!」

 

「あはは♪引っ掛かった引っ掛かったー!」

 

「・・・」

 

「日菜!いきなり脅かしたりしたら危ないでしょ!空見さんに謝りなさい!」

 

「大丈夫だよこれくらい。ね、空見くん。」

 

「そういう問題じゃないでしょ!」

 

「・・・」

 

・・・氷川さんの言う通りだよ日菜さん。

 

階段で脅かすのはマジやめて。

 

ほんと落ちて怪我でもしたら洒落になんないから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「わぁ~!全然変わってないね!おねーちゃん!」

 

「ええ、そうね。」

 

日菜の言う通り、中は全然変わってないわね。

 

売店、プラネタリウム、地図置き場、天井にぶらさがっているロケットやロボット、生物などの模型、全てが当時のままだわ。

 

・・・最後にここに来たのは、小四のときくらいかしら。

 

ということは、七年ぶりね。

 

七年…。

 

・・・長いような、短いような・・・。

 

「おねーちゃん?さっきから黙ってるけど、どうしたの?」

 

「・・・別に、どうもしてないわ。ただ、ここが懐かしいと思っただけよ。」

 

「! そうでしょそうでしょ!えへへ、嬉しいな~。おねーちゃんもこの博物館のこと、覚えててくれてたんだ。」

 

「覚えてるに決まってるでしょ?失礼ね。」

 

「おねーちゃん・・・。えへへ、なんか、るんっ♪ってきたかも♪」

 

「またそれ?・・・あなたのそのるんっ♪が何なのか、私には理解しがたいわ。」

 

「え~!るんっ♪はるんっ♪だよ~!」

 

「・・・そんなことより日菜、空見さんは?」

 

「む~!話そらした~!・・・空見くんなら、ほら、あそこに。」

 

「あそこ?・・・あ、いた。」

 

「・・・」

 

「・・・」

 

「? おねーちゃん?」

 

「・・・「空見さん。」! あ、氷川さん。」

 

「・・・どうですか?ここ。」

 

「? どう、って?」

 

「天井や壁、中央に飾られているモニュメントなど、このエントランスのいろんなものを眺めていたでしょう?」

 

「! み、見てたんですか?」

 

「ず、ずっとではないですよ?日菜に言われて空見さんがここにいるのに気づいてからなので、ほんの数秒程度です。」

 

「な、なるほど。」

 

「・・・それで、質問の答えのほうは…」

 

「あ、す、すいません。えーっと、・・・懐かしい、です。」

 

「懐かしい?・・・!空見さん、ここに来たことがあるんですか…「違いますよ、そういうんじゃなくて…」? どういうことですか?」

 

「博物館自体に来るのが久しぶりって意味です。・・・引っ越してくる前に住んでたとこにも、博物館があって。たまに友達や家族といっしょに行ってたんです。」

 

「そうだったんですか。」

 

「最後に博物館に行ったのが確か小六のときだから…、・・・五年ぶりですかね、博物館に来るのは。」

 

「なるほど…。」

 

「だから、その、・・・楽しみです。」

 

「え?」

 

「久々の博物館、しかも昔行ったとことは違うところなので。そういうところに行くと、なんかワクワクするんですよね。」

 

「空見さん・・・。」

 

楽しみ、か。

 

・・・ふふ、確かに。

 

「おねーちゃん、空見くん!最初はあそこ行こ!」グイッ!

 

「! ちょ、ちょっと日菜!?急に引っ張ったらびっくりするでしょ!」

 

「空見くんも、早く着いてこないとおいてっちゃうよ~!」

 

「えぇ!?ちょ、ちょっと待ってよ~!」

 

「ひ、日菜!館内で走ったら他の人の迷惑に…「さぁ二人とも、宇宙館のほうへ、レッツゴー!」こら日菜!言うことを聞きなさい!」

 

もう、日菜ったら///。

 

走ったり大きな声出したり、他にも人がいるのに恥ずかしいわよ///。

 

「・・・」

 

それに比べて、空見さんはちゃんと歩いてるわね。

 

全く、日菜には空見さんを見習ってほしいわ。

 

「あれ?空見くん、何で歩いてるの?」

 

「え?いや何でって、ここが博物館だから。」

 

「? ・・・あ、そっか。楽しみすぎて忘れてたよ。」

 

忘れてた!?

 

・・・普通はそんな常識忘れないわよ・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おねーちゃん!見て見て、この模型!」

 

「・・・この模型、まだあったのね。」

 

「こっち側から、水星、金星、地球、火星、木星、土星、天王星、海王星、冥王星。で、最初に戻ってこの一番大っきいのが太陽!」

 

「・・・昔来たときも、その言葉をまるで呪文のように繰り返し言ってたわよね。」

 

「うん!・・・こっち側から、・・・」

 

ふふ、日菜、楽しそうね。

 

・・・そういえば、空見さんは、・・・あ。

 

「・・・」

 

いたわ。

 

あれは…、・・・宇宙クイズね。

 

「ねぇ、おねーちゃん聞いてる?・・・!あー!宇宙クイズだー!」

 

「あ、ちょっと!・・・はぁ。日菜ったらまた…」

 

「・・・「空見くーん!それいっしょにやろー!」! ひ、日菜さん!?いつの間に…」

 

「それでは問題!」デデン! 

 

「い、いきなり!?」

 

・・・そういえば空見さんって、日菜のことは名前で呼んでいるのね。

 

いつも松原さんや白金さんを呼ぶときは名字なのに。

 

・・・まぁおそらく、私と日菜への呼び方を区別するためだとは思うけど。

 

「んーと、・・・②番?」

 

「ぶぶー。正解は③番でしたー!空見くん、もっと宇宙のこと、勉強したほうがいいよー?」

 

「そ、そう、だね。」

 

・・・昔私も、あんな感じで日菜にいきなりクイズを出されてたっけ。

 

「おねーちゃんもやろーよー!宇宙クイズー!」

 

「・・・ええ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おー!次はロボット館かー!」

 

「ロボット館って名前だけあって、いろんなロボットがあるんだな・・・。」

 

「・・・昔に来たときよりも、ロボットの数が増えてるわね。」

 

「え、そうなんですか?」

 

「ええ。ざっと見る限り、・・・だいたい10台くらいは増えているかと。」

 

「じゅ、10台!?・・・すごい、ですね。」

 

「わぁー!見て見ておねーちゃん!このロボット、じゃんけんが出来るんだよ!」

 

「日菜、はしゃぎすぎないの。」

 

「ねぇ、おねーちゃんもじゃんけんしてみてよ。」

 

「え、私?・・・まぁ、いいけど…」

 

じゃんけんとは言っても、ほんとにするんじゃなくて、ロボット側が出そうと思ったやつを画面に映し出すだけみたいだけど。

 

まぁ、それでもすごいっちゃすごいよね。

 

『サイショハグー、ジャンケン…』

 

「・・・」パー。

 

『チョキ。』

 

「あ。」

 

「あちゃー。おねーちゃん、負けちゃったねー。」

 

「な、なかなかやるわね、このロボット。もう一回よ。」

 

・・・あれ?

 

氷川さんって、意外と負けず嫌い?

 

『にゃーん♪』

 

ん?

 

にゃーん?

 

『にゃーん、にゃーん♪』

 

え、何これ。

 

・・・よくテレビとかで見る、ペットロボットってやつ?

 

それの猫バージョンってこと?

 

『にゃーん♪スリスリ。』

 

・・・え、待って?

 

この猫ロボット、めっちゃ可愛いんだけど。

 

いや、うちのマリーのほうが可愛いんだけど、・・・ロボットにしては、めちゃくちゃ可愛いなおい。

 

・・・撫でたら喜ぶのかな?

 

「・・・スッ。ナデナデ。」

 

『にゃーん♪』スリスリ。

 

!!

 

ちょ、ちょっと待って?

 

何この猫ロボット、めちゃくちゃ可愛いんだけど!?ナデナデ。

 

『にゃー、にゃー♪』

 

・・・ペットロボット、なめてたわ。ナデナデ。

 

実際見るとこんな可愛いのか~。

 

・・・い、いや、うちのマリーのほうが可愛いけどね!?

 

「空見くーん、何して…、ってあーー!!ペットロボットだーー!!」

 

「空見さん。それは、猫ですか?」

 

「あ、はい。・・・さわってみます?」

 

「え、いいんですか?」

 

「もちろんです。…どうぞ。スッ。」

 

「あ、ありがとうございます。・・・ナデナデ。」

 

『にゃーん♪』

 

「! ・・・か、可愛い。」

 

「ですよね~。」

 

「おねーちゃん、あたしにもさわらせてー?」

 

「ええ、いいわよ。」

 

「わーい!・・・ナデナデ。」

 

『にゃー、にゃー♪』

 

「おー、鳴いたー。ペットロボットって、案外可愛いんだねー。」

 

「そうね。・・・ところで、犬は、いないのかしら?」

 

「うーん。さっき周り見てみたけど、犬のペットロボはいないっぽかったよ?」

 

「そ、そう。・・・」

 

? なんか氷川さん、落ち込んでね?

 

・・・気のせいか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あはははは!!おねーちゃん何それ!すごく面白い!!あは、あはははは!!お、お腹痛いよ、おねーちゃん。」

 

「そ、そんなに笑うことないでしょ///!?」

 

何で日菜さんがこんな爆笑してるのかを説明しよう。

 

あの後、僕達は不思議館ってところに来たんだよ。

 

メビウスの輪とか、錯視図とかってあるじゃん?

 

そういう目の錯覚で絵とか図形が不思議な感じに見えたりするやつとか、近くで見たり離れて見たりすると物が大きくなったり小さくなったりするやつとか。

 

語彙力なさすぎる説明で申し訳ないけど、まぁそういう類いのものが集まってるのが、この不思議館らしい。

 

で、今氷川さんと日菜さんは不思議な鏡の前にいて…あ、不思議な鏡ってのは、自分が近づいたり離れたりすることで鏡に映ってる自分の姿がいろんなふうに変わるってやつね。

 

その鏡の前に氷川さんが立って近づいたり離れたりして、それによって鏡に映ってる氷川さんのいろんなふうに変わってる姿を見て、日菜さんが爆笑してるというわけだ。

 

・・・ふぅ。

 

説明分かりにくかったらごめん。

 

「あははははは、あー面白かった!・・・いっぱい笑ったら、なんかお腹空いてきちゃった。」

 

・・・確かに、僕もちょっとお腹すいたかも。

 

えーっと今は、・・・あ、もう12:00過ぎてたのか。

 

「よーし!いっぱい楽しんだところで、お昼にしよー!おねーちゃん、空見くん!あたしについてきてー!」

 

「あ、日菜さん、ちょっと待ってよ。」

 

あの人、行動が早いなー。

 

さて、じゃあ僕も行くかな。

 

・・・ん?

 

氷川さん、何で立ち止まってんだ?

 

「・・・」

 

「・・・あのー、氷川さん?」

 

「! す、すみません。つい、ボーッとしてました。」

 

「氷川さんが、ボーッと…。・・・珍しい、ですね。」

 

「そ、そうですか?」

 

「はい。・・・どうかしたんですか?」

 

「い、いえ、大丈夫です。・・・ただ、日菜が。」

 

「日菜さんが?」

 

「日菜が、すごく楽しそうにしてるので、それを見て、少し、微笑ましくなって…」

 

「・・・氷川さん、日菜さんのことが大好きなんですね。」

 

「なっ!ち、違います///!好きとか、そういうのではなくて…「じゃあ嫌いなんですか?」! べ、別に、嫌いってわけでも///・・・」

 

「?」

 

「・・・と、とにかく!まずは昼ごはんです。ほら、空見さん、早く日菜についていってください!グイグイ。」

 

「ちょ、押さないでくださいよ。分かりました、分かりましたから。」

 

「・・・おねーちゃんと空見くん、ほんと仲良いなー。いつも家で空見くんのことを話してるだけあるや。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おぉ、いろいろある…。」

 

日菜さんに案内されて来たレストランは、この階(すなわち二階)にあった。

 

オーダーは食券制らしく、メニューは博物館のレストランとは思えないほどいろいろあった。

 

・・・正直、なめてた。

 

「うーん、・・・よし!あたしナポリタンにしよーっと!ピッ。」

 

日菜さん、決めるの早いな…。

 

こんなにいっぱいあるのに迷わないものなのか。

 

「空見くんは何にする?」

 

「え?あ、えーっとそうだなー。」

 

ちなみに、僕はまだ迷い中だ。

 

・・・決まらん。

 

何にしようかな~?

 

ラーメンも美味そうだし、ハンバーグも美味そう…。

 

いや、ここはあえて和食系でいくのもいいな・・・。

 

あーーもうマジで迷う!!

 

「そ、空見さん。」

 

「え?な、何ですか?」

 

「もしまだ迷っているのであれば、私から先に買ってもいいですか?」

 

「…あぁ、はい、いいですよ。」

 

「すみません。」

 

氷川さんは、何にするんだろう?

 

・・・!

 

カレーか。

 

カレーも美味そうだな~。

 

ん?

 

もう一つ、何か買うのか?

 

・・・え、ポテト?

 

しかも大盛り!?

 

・・・か、カレーに、ポテトって…。

 

合う、のかな?

 

「・・・はっ!ち、違うんです空見さん!このポテトは、みんなでシェアしようと思って買っただけで、決して、私が食べたかったからってわけでは・・・」

 

「・・・」

 

「・・・!ど、どうぞ、空見さん。」

 

「あ、ど、どうも。」

 

・・・なるほど。

 

氷川さんはポテトが好きなのか。

 

お花見のときも、怒ってるときに丸山さんからポテトの割引券もらったらなぜかすぐ落ち着いてたもんな。

 

・・・しかし、氷川さんがポテト好きだったとは、意外だったなぁ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん~♪このナポリタン美味し~♪ねぇねぇ、おねーちゃんのカレーもちょうだい!」

 

「もう、一口だけよ?」

 

「わーい!」

 

・・・この二人、ほんと仲いいな。

 

うちとは大違いだ。

 

氷川さん、さっきはあんなこと言ってたけど、やっぱほんとは日菜さんのこと好きだろ。

 

あ、ちなみに僕は、結局ラーメンにした。

 

いやー、やっぱラーメンってさ、美味しいじゃん?

 

こういうとこのラーメンってどんなんだろうって、ラーメン好きからしたら気になるわけよ。

 

あ、ちなみにここのラーメンは普通に美味しかったぞ?

 

「おねーちゃんおねーちゃん!お昼食べ終わったらさ、プラネタリウム行こうよ!」

 

「プラネタリウム?いいけど、チケットは買ってあるの?」

 

「ううんまだ。でも、別にあとで買っても大丈夫かなーって。」

 

「あなた、そういうのは事前に買っておいたほうが…「ちょっと水組んでくるー!」! ちょっと日菜!話はちゃんと最後まで…、・・・はぁ。」

 

ほんと、日菜さんって氷川さんと対照的だよな。

 

「? てか日菜さん、ドリンク買わなかったの?」

 

「買ったみたいですけど、食べる前にすでに全部飲んじゃったみたいで…」

 

「あぁ、・・・なるほど。」

 

「空見さんは、ドリンク、何にしたんですか?」

 

「僕ですか?僕はミルクティーです。」

 

「ミルクティー・・・」

 

「ちなみに、氷川さんは?」

 

「え?あ、私は、カフェオレを。」

 

「カフェオレ、なるほど。」

 

「・・・」ジー。

 

・・・ん?

 

氷川さん、何をそんなに見つめて…、・・・僕のミルクティー?

 

・・・あ、そういうことか。

 

「・・・氷川さん。」

 

「はい、何でしょう。」

 

「もしだったらミルクティー、一口飲みます?」

 

「・・・へ?」

 

「ん?」

 

「・・・////!い、いいですよ別に///!」

 

「え、でもさっき、僕のミルクティーをじーっと見つめて…「そ、それは、その、飲みたい、とかではなく、単純にどんな味がするのか、気になっただけで…。」? それを飲みたいって言うんじゃ…「だから違いますって///!」!(な、何で怒ってるんだ~?)」

 

「空見くん。それ、間接キスだよ?」

 

「え?」

 

「ひ、日菜!?い、いつからそこに!?」

 

「さっきからずっといたよー。それより空見くん、そのミルクティー、さっきごくごく飲んでたでしょ?」

 

「う、うん。」

 

「そんな状態のミルクティーをおねーちゃんに一口あげる、なんて、間接キスしよーって言ってるようなもん…「ひ、日菜!!もういいから///!!」・・・」

 

「間接、キス?」

 

「・・・そ、空見さん。」

 

「はい?」

 

「お花見の日、公民館で雨宿りしていたのを覚えてますか?」

 

「え?は、はい、もちろん覚えてますけど。」

 

「あのとき空見さん、自分のお茶をみんなに分けてくれていましたよね。」

 

「はい。…それがどうかしたんですか?」

 

「あのとき空見さん、自分は最後でいいと言って、白鷺さんに渡したじゃないですか。」

 

「渡しましたね。」

 

「そのことで、ずっと、考えていたんです。」

 

「?」

 

「空見さんがあんな行動をとったのって、・・・い、今みたいに、その、・・・か、・・・か、・・・間、接…「空見くん、みんなと間接キスしようとしてたんだー。」!! ひ、日菜///!!」

 

「へ?みんなと、間接、キス?」

 

「・・・あ、あの、空見、さん。」

 

「・・・、・・・///、//////!!」

 

「あ、空見くん、顔赤くなってる~♪」

 

「ち、ちち、ち、違、違う、違うんですよ氷川さん/////!!ぼ、僕は、別に、そ、そそ、そんな、そんなことを、思っていたわけでは、全然、なくて/////…」

 

「・・・」

 

「あ、あのとき、僕が最後でいいって言ったのは、単純に、先にみんなに飲ませてあげようという、・・・じ、自分で言うのは、ちょっとおかしいんですけど、その、・・・僕の、良心で…。ひ、日菜さんの言ったようなことは、ほんとに全然、マジで決して思ってなくて…。えっと、だから、その、・・・ご、ごめんなさい!!」

 

「・・・」

 

「空見くん、みんなに見られてるよ?大丈夫だって。誰も間接キスぐらいで怒ったりしな…「・・・」ガシッ! ん?」

 

「日菜?」

 

「何?おねーちゃ…、!?」

 

「・・・」ゴゴゴゴゴ……。

 

「!! お、おねー、ちゃん・・・。」

 

「あとで覚えてなさいよ?」

 

「!! ・・・」

 

「・・・ふぅ。空見さん、顔をあげてください。」

 

「・・・ひ、氷川、さん。」

 

「・・・信じますよ。」

 

「え?」

 

「今空見さんが言ったこと、信じます。」

 

「! ほ、ほんとですか!?」

 

「ええ。・・・ただ。」

 

「ただ?」

 

「・・・今回のように誤解を招くようなことがないよう、今後は気をつけてくださいね?」

 

「は、はい!分かってます!」

 

「・・・それで、その…」

 

「?」

 

「・・・ミルクティー、私にも、分けてもらえませんか?」

 

「! ひ、氷川さん、あの、それは…「もちろん、コップに分けてもらう形で!」あ、そ、そう、ですよね。分かってます、分かってました。」

 

き、気をつけよう。

 

今後はマジで、いろいろ気をつけよう。

 

・・・てか!

 

ラーメン食べないとのびちゃうじゃん!

 

早く食べないと…、ってああああ!!

 

もうのびてるーーー!!!

 

「・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

昼ごはんを食べ終わった後、僕達は日菜さんの提案でプラネタリウムに…。

 

 

 

 

 

 

・・・じゃなくて、博物館を出たところだ。

 

ん?

 

何でプラネタリウムに行かなかったのかって?

 

それは、僕じゃなく日菜さんに聞いてくれよ。

 

ま、聞いても教えてくれないだろうけど。

 

「・・・日菜、ほんとにプラネタリウム、行かなくて良かったの?」

 

「うん。もう充分楽しんだし、今日はもういいかなって。」

 

「そ、そう。」

 

昼ごはんを食べ終わったぐらいのときから、もうずっと日菜さんはこんな感じだ。

 

まぁ一言で言うなら、・・・元気がない。

 

博物館に向かってるときとか、宇宙館やロボット館にいたときは元気だったのに、今はその真逆だ。

 

・・・まるで、昨日の丸山さんみたい。

 

「空見くん、今日は楽しかった?」

 

「え?」

 

「博物館。いっぱい楽しめた?空見くん。」

 

「・・・う、うん、まぁ。」

 

「そっか。それなら良かった♪」

 

「・・・」

 

「・・・ね、ねぇ、日菜さん。」

 

「ん?」

 

「プラネタリウム、ほんとに良かったの?あんなに行きたがってたのに。」

 

「だから大丈夫だって。あたし、今日はおねーちゃんと空見くんといっぱい遊べて楽しかったし。それに、・・・」

 

「それに?」

 

「・・・ううん、何でもない。ほら、早く帰…「日菜。」え?」

 

「ひ、氷川さん?」

 

「言いたいことがあるなら、はっきり言いなさい。そんなの、あなたらしくないわよ。」

 

「・・・な、何言ってんの?おねーちゃん。あたしは何も、言いたいことなんか…「私が気づいてないとでも思ってたの?私はあなたの姉なのよ?」・・・」

 

・・・はぁ、言うしかないか。

 

「・・・昼ごはんのときのこと、気にしてるんでしょ?」

 

「!」

 

「図星みたいね。」

 

「・・・べ、別に、そんなこと…「あのことなら、全然気にしてないから。」え?」

 

「あれは気がつかなかった僕が悪いし、日菜さんはほんとのことを教えてくれただけ。」

 

「で、でも…「あのとき日菜さんが言ってくれなきゃ、僕全然気づかなかったし。」・・・」

 

「だから、日菜さんは全然悪くないよ。氷川さんも、そういうことで分かってくれますよね?」

 

「・・・し、しかし空見さん、そうは言っても、あのときの日菜の発言のせいで周りに座ってた人達や私、空見さんに迷惑がかかったのは、紛れもない事実…「そうかもしれませんけど。・・・日菜さんも悪気があって言ったわけじゃないですし、そのことはもういいかなって。」・・・空見さん、少し軽すぎませんか?」

 

「軽くていいんですよ。氷川さんは迷惑がかかったって言いましたけど、僕からしたらそんな大したことじゃないですし、怒るほどのことでもないですから。まぁ最初あの言葉を聞いたとき、びっくりはしましたけど。」

 

「・・・」

 

「というわけだから日菜さん。昼ごはんのときのことは、別に気にしてないから。あ、もちろん氷川さんもね。」

 

「! ちょ、空見さん!?」

 

「ほんと?おねーちゃん。」

 

「! わ、私は、その、えっと…」

 

「・・・」

 

「・・・はぁ、分かったわよ。空見さんに免じて、今回だけは許してあげるわ。」

 

「ほ、ほんと!?じゃあ今度、またいっしょにお出かけしたり、ファミレス行ったりしてくれる!?」

 

「! え、ええ。」

 

「やったーー!!空見くん、ありがと!!」

 

「う、うん。」

 

「・・・空見さん。あなた、ちょっと日菜に甘すぎるのでは?」ボソッ。

 

「これでいいんですよ。日菜さんが元気になったから、それで。」

 

「え?」

 

「ん?僕、なんか変なこと言いました?」

 

「・・・い、いえ。」

 

「空見くん!ガシッ!これからいっしょにショッピングモール行こうよ!」

 

「へ?うわっ!ちょ、ちょっと日菜さん!?」

 

「(・・・まさか空見さん、日菜に元気を出させるためだけに、今のようなことを……?てっきり私は、日菜が二度とあんなことをしないように注意をしてるのかと……。いや、考えてみたら、注意しているような言葉を一つも言ってないわ。・・・空見さんって、ときどき何考えてるのか分かんなくなるわね。)」

 

「おねーちゃんも早く早くー!」

 

「(・・・次から空見さんに注意を任せるのはやめたほうがいいかもしれないわね。って、ほんとに今からショッピングモールに行く気なの?・・・はぁ、まぁいいけど。タッタッタ。)」




どうしてこうなった…。

ただ僕は、博物館で楽しんでるさよひなを書きたかっただけなのに…。(一部楽しんでる描写もありましたが)

何でだ、何でだああああ!!!

・・・よし。

今度さよひな書くときは、さよひなメイン楓サブって感じで書くことにしよう。(今回もそのつもりだったんですがね……)

うん、そうしよう。


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21話 悩み、迷い、イライラ、苦しみ

どうも、知栄砂空です。

お気に入り登録者様が200人を越えていました!

回りから見たら少ねーと思うかもしれませんが、僕からしたらすごくすごく嬉しいことです!

書き始めた当時は、50人越えてたらいいなーと思ってる程度だったのでw。(ガチです)

これを言うと図々しいと思われるかもしれませんが、言います!

少しでもいいので、感想、アドバイスなどを書いてくださるとめちゃくちゃ嬉しいです。

今後の小説の参考になったり、普通に読んでるだけでもものすごく嬉しく感じたりして、とても励みになります。

まだまだ未熟ですが、今後も本小説兼知栄砂空をどうぞよろしくお願いします!(ちょっと大袈裟すぎたかw)


~朝~

 

ー空見家ー

 

楓「ふわぁ~、……眠い。」

 

現在の時刻は朝の7:50。

 

僕は今朝ごはんであるパンを食べている。

 

ちなみに(いちご)ジャムパンだ。

 

ジャムパンってマジ美味いよな。

 

数多くあるパンの種類の中でもダントツで好きだわ。

 

ジャムパン最高ジャムパンマジ神。

 

楓の母「それじゃあ楓、私そろそろ家出るから。戸締まり、ちゃんとしといてよ?」

 

楓「分かってるよ。」

 

楓の母「……あ、そういえば楓。」

 

楓「ん?」

 

楓の母「松原さんに、ちゃんとお礼したの?」

 

楓「……」スルッ、……ベチャ

 

楓の母「! ちょ、ちょっと楓!?ジャムパン!ジャムパン落ちた…「……」スッ ……それ、どうすんのよ……。」

 

楓「……パクッ」

 

楓の母「た、食べるの……?落ちたのに……?」

 

楓「3秒ルールって言葉があるでしょ。」

 

楓の母「あー、あったわねそんなの。」

 

楓「……」

 

楓の母「……じゃ、じゃあ、お母さん行くから。」

 

楓「いってらっしゃーい。」

 

……ガチャ

 

楓「……パクッ」

 

お母さんが家を出た後も、僕はぼーっとしながらパンを食べた。

 

その後歯磨き、電気の確認、戸締まりをしているときも、僕は終始ぼーっとしていた。

 

僕がぼーっとしてる時間は、お母さんにさっきのことを言われてから学校の教室に着くまで、およそ30分間続いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

教室に入ると、いろいろな会話が聞こえてくる。

 

おはよう、などの挨拶とか、今日の1時間目は何か、とか、朝ごはんは何食べたか、昨日家に帰った後何をしたのかとか。

 

他愛のないような話が、聞こうとしなくても自然と耳に入ってくる。

 

そんな女子達の会話をよそに、僕は今ある悩みを抱えている。

 

机に突っ伏して頭を抱えながら、今朝お母さんに言われたことを思い出してみた。

 

 

 

 

 

楓の母『松原さんに、ちゃんとお礼したの?』

 

 

 

 

 

……忘れてた。

 

……完っっっ全に忘れてたああああ!!!!

 

どうしよう!?

 

お礼何も考えてないよ!!

 

いや、まぁ一応は考えてたんだよ?

 

考えてたんだけど、……ほら、最近いろいろあったじゃん?

 

そのいろいろのインパクトが強すぎて、その考えてたのを忘れちゃって……。

 

って結局忘れてんじゃん!!

 

花音「おはよう、空見くん。」

 

楓「うおっ!!」

 

花音「ふぇっ!?」

 

楓「あ……、ご、ごめん松原さん。」

 

花音「う、ううん。私も、なんかごめん……。」

 

ヤベェ、本人登場しちゃったよ……。

 

花音「……空見くん、さっき頭抱えてたけど、何か悩み事?」

 

楓「! う、うん、まぁ、……悩みっちゃ悩みだね。」

 

花音「そっか。……も、もしだったら私、相談に…「大丈夫だよ、そんな大したことじゃないから。」で、でも……」

 

楓「! そ、そんなことより松原さん、丸山さんが呼んでるよ。」

 

花音「え?」クルッ

 

彩「……」ジー

 

花音「ほ、ほんとだ……。」

 

呼んでるというよりは、見つめてるって感じだったけどね。

 

たぶん僕と話してるのを邪魔しないようにしてたんだろうけど、……そんなにじーっと見つめなくてもね……。

 

正直ちょっと怖かったし。

 

まぁどっちにしろ松原さんに用があるみたいだったから、今ので正解だったのかな。

 

花音「……じゃあ私、ちょっと行ってくるね。」

 

楓「うん。」

 

……ふぅ。

 

ここで丸山さんが来てくれたのは、不幸中の幸いだったな。

 

いや、まぁ不幸は言い過ぎだけどさ。

 

……松原さんにはあんなこと言ったけど、実際は大したことじゃなくないんだよなぁ。

 

松原さんが相談にのってくれるって言ってくれようとしたのは嬉しかった。

 

でも、流石にそれは無理だよ。

 

だって僕が悩んでるのって、松原さん本人のことなんだもん。

 

……松原さんには悪いことしちゃったかもしれない。

 

悩みが解決したら、あとで謝っておこう。

 

……よし!

 

気持ちを切り替えて、松原さんへのお礼を考えるぞー!

 

 

 

 

 

彩「それでね、その後千聖ちゃんにすっごく怒られて……。……花音ちゃん?」

 

花音「……え?あ、ごめん彩ちゃん。何?」

 

彩「どうしたの?花音ちゃん。さっきから、元気がないような…「だ、大丈夫だよ、彩ちゃん。えっと、話、続けて?」……う、うん。」

 

花音「……」

 

 

 

 

 

うーん、お礼、お礼……。

 

どんなものがいいんだろうな~……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~1時間目~

 

先生「えー、ではグループになって、話し合いを始めてください。」

 

ガタガタガタ

 

ガタガタガタ

 

 

 

 

 

生徒「……それでは、話し合いを始めたいと思います。まず、空見さん。」

 

んーーー、お礼、お礼……。

 

どういうのがいいんだろう……。

 

お礼なんて人に送ったことないし、送る相手ってのが松原さんなんだよなぁ……。

 

生徒「あのー、空見さん?」

 

……よし。

 

こうなったらまずは、女子が好きそうなものを思い付くだけ書いていってみよう。

 

松原さんも女子だし、もしかしたらその中から何かいいヒントが見つかるかもしれない。

 

そうと決まれば、……えっと、他の人に見られないように筆入れで隠してと。

 

生徒「あ、あのー。」

 

んー、女子の好きそうなもの、女子の好きそうなもの……。

 

! 閃いた。

 

えーっと、服、アクセサリー、バッグ、と。

 

……ファッション系で固めるなら、帽子とかもあるのかな?

 

生徒「……さん。……空見さん!ダンッ!」

 

楓「! え!?何!?え?誰か呼んだ!?」

 

生徒「……あなた、またですか。」ハァ。

 

楓「え?ま、また?え、何、どゆこと?」

 

花音「……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~昼休み~

 

楓「うーん、これも違う……。あ、じゃあこれは……、いや、これもなんかなー……。」

 

美菜「……空見、お昼食べないの?」

 

楓「え?あ、うん、大丈夫。ちゃんと食べるから。」

 

橋山「てかさ、さっきから何見てんの?」ズイ

 

楓「ちょ!み、見ないでよ!」

 

橋山「えぇ?いいじゃ~ん。ちょっとぐらい見せ…「絶っっっ対にダメ!」……へぇ、そう。……いいよじゃあ。ガタッ」

 

美菜「ちょっと橋山、どこ行く…「沙也加のとこ!」……橋山。」

 

楓「……」

 

美菜「……空見。今の言い方は、ちょっときつかったんじゃない?」

 

楓「別に僕は、人に見られたくないものを見せてって言われたから嫌だって言っただけだもん。」

 

美菜「人に見られたくないなら、わざわざそんなものを学校で見なきゃいい…「今じゃなきゃダメなんだもん。」え?」

 

楓「今じゃなきゃ、絶対にダメだから。……時間もないし。」

 

美菜「……空見って、たまに変なこと言ったり考えてたりするよね。……その今じゃなきゃダメなやつって、やらしいサイトとかでは…「それ以上言ったらほんとに怒る。てかキレる。」ごめんごめん、冗談だよ。空見がそんなことするやつじゃないってことぐらい、ちゃんと分かってるから。安心しなよ。」

 

楓「……」

 

美菜「……今じゃなきゃダメ、ね。」

 

 

 

 

 

千聖「それでね花音、次の日曜日に、そのカフェに……。……花音?」

 

花音「……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~5時間目 体育~

 

先生「じゃあ今から2人組になって、練習始めろー。」

 

……今日って体育の先生出張だから、体育から保健になったはずだよな?

 

それなのに、……何で普通に体育なんだよ!!

 

あ!?出張が突然なくなった!?

 

知るかそんなの!!

 

てか普通そんな急に出張なくなったりするか!?

 

おかしいだろ!!

 

体育なんかやめて保健にしろ保健に!!

 

こっちは時間がねえんだよ!!

 

お礼の品考えさせろや!!

 

音羽「空見さん、いっしょにやりましょ!」

 

楓「ん?あ、宮村さん。」

 

音羽「まだペアになってませんよね?」

 

楓「う、うん。」

 

音羽「じゃあ丁度良かったです!やりましょ!いっしょに!」

 

楓「……うん、いいよ。」

 

まぁいいや。

 

10分経ったら他のペアの人達との交代によって休憩が入るから、そのときにお礼の品を何にするか考えてよう。

 

音羽「それじゃあ空見さん、いきますよー!」

 

楓「……」コク。

 

音羽「……それ!バコッ!」

 

うわっ、宮村さんサーブうまっ。

 

……打ち返せるかなぁ?

 

楓「……よっ、と。ボコッ!」

 

おぉ、上手くトス上げれた。

 

……まぐれだけど。

 

音羽「空見さんも上手いですねー!」

 

いや、まぐれなんだけどね。

 

音羽「じゃあ次、空見さんのサーブですよー!」

 

楓「分かってるよー!」

 

サーブねー。

 

えーっと、確か宮村さんはこんな感じで上に上げて……。

 

音羽「……」

 

こんな感じで、打ってた、はず!バッ!

 

 

 

 

 

スカッ

 

 

 

 

 

音羽「……へ?」

 

ん?

 

……あ。

 

……ミスった。

 

音羽「……ど、ドンマイですよ空見さん!こんなこともありますって!」

 

……やっぱり体育なんかやめて、教室で1人お礼のこと考えてたい……。

 

 

 

 

 

千聖「いくわよー花音!……花音?」

 

花音「……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~放課後~

 

キーンコーンカーンコーン

 

生徒A「よし帰ろー!」

 

生徒B「ねぇ、帰りファミレスよってこーよ!」

 

生徒A「お、さんせー!」

 

あっという間に放課後になっちゃった……。

 

……あーくそっ!

 

何も思い付かなかったよ!

 

美菜「空見、じゃーね。」

 

楓「あ、浅井さん、……うん。」

 

美菜「ほら、橋山も。」

 

橋山「……ふんっ。」

 

音羽「橋山さん、まだ昼休みのこと引きずってるんですか?あ、空見さん、さようなら。」

 

楓「う、うん。」

 

……僕は悪くない。

 

僕はただ、嫌なことを嫌と言っただけ。

 

うん、僕は悪くない。

 

千聖「それじゃあ花音、また明日ね。」

 

花音「うん、じゃーね千聖ちゃん。」

 

千聖「……」ジー

 

……なんだ?

 

なんか、視線を感じる……。

 

千聖「……」ジー

 

楓「……な、何ですか、白鷺さん。」

 

千聖「……別に?何でもないわよ。」

 

何でもなくて人のことじーっと見つめるか普通。

 

千聖「じゃーね、楓、また明日。」

 

楓「は、はい、さようなら。」

 

……ふぅ。

 

……あれ?

 

てか今日、みんな帰るの早くね?

 

教室の中、もう5人ぐらいしかいな……あ、3人も帰ってった。

 

……ん?待てよ?

 

楓「……ソー」

 

花音「……」カキカキカキ

 

楓「!」

 

ま、まさか今僕、教室で、松原さんと、2人っきり!?

 

……気まずいにも程があんだろ……。

 

朝のことがあったから、尚更……。

 

花音「……」カキカキカキ

 

そっか、今日の日直は松原さんだったのか。

 

……僕は授業中にこっそり書いたりして放課後になったらすぐに渡しに行ったけど、松原さんは真面目だから、休み時間などを使って書いてたんだろうな。

 

今松原さんが書いてるのは、……“今日の1日を振り替えって”の欄か。

 

(先生独自のルールで)ページの一番下まで書かなきゃいけないから、最低でも25行書かないとだし、かつ一日を振り替えってなんて言われてもそんなすぐにスラスラ書けるわけないし、クラスの大半にはこの欄は不評なんだよな。

 

氷川さんの話だと、隣のB組はページの一番下まで書かなきゃなんて制限ないし、“今日の一日を振り替えって”なんて欄もないらしいから、めちゃくちゃ楽そうだよなぁ。

 

……それにしてもスゲェな松原さん。

 

振り返りの欄、めちゃくちゃスラスラ書いてるよ。

 

ペンを口元にあてて何かを考えるような仕草がところどころ何回かあるけど、その度に何か思い付いたような表情をしながらスラスラ書いてる。

 

流石松原さん、って感じだよな。

 

うわっ、もうすぐ終わるじゃん。

 

花音「……」ピタッ

 

あれ?

 

字を書いてる手が止まった。

 

どうしたんだろう?

 

花音「……空見くん、さっきからずっと私のこと見てるよね。」

 

楓「え?……///!ご、ごめん!」

 

花音「何で謝るの?」

 

楓「いや、その、えっと、……松原さんのことを見てたのは、日誌スラスラ書いてるなーって思ってただけで……。け、決して、松原さんの思ってるような感じで見てたんじゃなくて、それで、えっと……」

 

花音「……」

 

ど、どうしよ……。

 

パニクって、自分でも何を言いたいのか分からなくなってきてる……。

 

花音「……」

 

こ、こうなったら!

 

楓「ガタッ! ご、ごめん、僕、そろそろ帰るから。」

 

花音「……」

 

うっ、……お、怒ってる、のか?

 

で、でも、……今は、その、お礼のこととかも考えたいし……。

 

……や、やむを得ない状況なんだ!

 

楓「じゃ、じゃあね松原さん!……じ、じっと見たりして、ごめ…「待って!」!」

 

花音「……座って。」

 

楓「……あ、あの、松原さ…「座って!」は、はい!」

 

……やっぱり、怒ってた……。

 

これじゃあ、帰れない……。

 

花音「……空見くん。」

 

楓「は、はい……。」

 

花音「……私、今日の空見くんの様子、ずっと見てた。」

 

楓「え?」

 

花音「授業のときも、昼休みのときも、HRのときも、ずっと。」

 

楓「……ま、松原さん。それ、どういう…「空見くんのことを見てて思ったの。」……」

 

花音「……苦しんでるって。」

 

楓「!」

 

花音「今日の空見くんは、いつもと様子が全然違った。国語の授業のときは、前にも似たようなことがあったけど、昼休みのとき、いつもより口調が荒くなってた。体育のときだって、休憩中に落ち込んでるように見えた空見くんを心配してくれた人達のことを遠ざけてた、っていうか、後半のほうは怒鳴ってたし、HRのときも心配してくれた他の子のことを無視してた。……すごく悩んでて、迷ってて、イライラしてて、……見方を変えると、苦しんでるようにも見えた。それが、私から見た、今日の空見くん。」

 

楓「……」

 

苦しんでた。

 

僕が。

 

……確かに、そうだったかも。

 

自分がいくら悩んでも、迷っても、何にも分かんなくて、思い付かなくて、焦って、そのことでイライラしてた感情を、関係のない人にぶつけて。

 

……最悪だな、今日の僕。

 

今までで、一番最低だ。

 

花音「……空見くん。」

 

楓「……」

 

花音「そういうときは、1人で抱え込んだりしないで、すぐ友達とかに相談してほしい。」

 

楓「……友、達……。」

 

花音「そうだよ。友達なら誰でもいい。他のクラスの子でもいいんだよ。沙也加ちゃん、紗夜ちゃん、彩ちゃん、燐子ちゃん。このクラスにも、美菜ちゃん、橋山さん、音羽ちゃん、千聖ちゃん。そして、……隣に、……すぐそばには、私だっている。」

 

楓「……」

 

花音「……約束して、空見くん。」

 

楓「え?」

 

花音「これからは、悩みができたら1人で抱え込んだりしないで、すぐさっき私が挙げた友達に相談すること。」

 

楓「……「今日みたいに苦しんでる空見くん、私、見たくないから。」……松原、さん。」

 

花音「……約束、してくれる?」

 

楓「……その悩んでることが、相談したその人のことでも?」

 

花音「え?」

 

楓「……」

 

花音「……うん。……むしろ、そうしてほしい。」

 

楓「……そっか。……分かった。」

 

花音「!」

 

楓「分かったよ、松原さん。約束する。……ごめん。」

 

花音「……」

 

楓「朝、せっかく松原さんが相談にのってくれるって行ったのに、僕変な意地張っちゃって。そのせいで、橋山さん、他の人にまでも迷惑かけて。ほんと、ごめん。」

 

花音「……橋山さんと他の人達のことは、私じゃなくて、ちゃんと本人達に謝ったほうがいいよ。」

 

楓「あ、そ、そうだよね。……明日にでも、謝っておくか。」

 

花音「うん。正直に言えば、きっと橋山さん達も許してくれるよ。」

 

楓「そう、だね。……」

 

花音「……」

 

楓「……それで、あの、その、……ま、松原、さん。」

 

花音「何?空見くん。」

 

楓「ま、松原に、その、……お、お願いが、あって…「リラックスだよ、空見くん。ほら、深呼吸深呼吸。」! う、うん。」

 

花音「もう1回、お願い。」

 

楓「わ、分かった。……すぅ、はぁ。すぅ、はぁ。……僕、松原さんに、その、……お願いが、あって……」

 

花音「うん、聞くよ。」

 

楓「……相談に、のってほしいんだよ。……松原さんに関する、ことなんだけど。」

 

花音「私に?」

 

楓「う、うん。……いい、かな?」

 

花音「……うん!もちろん♪」

 

楓「! ……あ、ありがとう、松原さん。」

 

花音「頑張ったね、空見くん。良くできました♪ナデナデ」

 

楓「/////!?ちょ、ちょっと、ま、松原さん/////!?」

 

花音「ん?……、……!!サッ! ご、ごご、ごめん空見くん/////!!つ、つい、手が///……」

 

楓「い、いや///……。」

 

花音「////」

 

楓「////」

 

花音「……そ、それじゃあ、ほ、本題に、は、入ろう、か。」

 

楓「そ、そそ、そう、だね。」

 

び、ビックリした……。

 

あぁ、まだ心臓がバクバクする……。

 

松原さんって、たまに不意討ちかましてくるよな。

 

……マジで心臓飛び出るかと思った……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

楓「……というわけなんだよ。」

 

花音「……えーっと、話をまとめると、つまり空見くんは、私へのお礼について悩んでた、ってこと?」

 

楓「うん。」

 

花音「なるほど。……お礼、か。……あの日のお礼なら、むしろ私が空見くんに何かしたいくらいなんだけど……」

 

楓「ま、松原さんは大丈夫だよ。ていうかほら、松原さんからのお礼なら、喫茶店で僕にお茶おごってくれたのがあるじゃん。」

 

花音「でも、正直あれだけじゃ、お礼としてはちょっと欠けてるかなって…「そんなことないよ!お茶めちゃくちゃ美味しかったし。」そ、そう?」

 

楓「うん。……というわけだから松原さん、何か欲しいものとかってない?バッグとか、洋服とか。僕に出せるぐらいのものならなんでも…「そういうのは、別に大丈夫かな。」そ、そう……。」

 

花音「……空見くん。お礼ってね、必ずしもものじゃなきゃいけないなんてことはないんだよ?」

 

楓「え?」

 

花音「どこかに連れていってあげたり、何かをしてあげたり。そういうのも、立派なお礼になるんじゃないかな。」

 

楓「な、なるほど……。じゃ、じゃあ、松原さん。どこか、行きたいところとかって、ない?」

 

花音「行きたいところ?うーん、そうだなー。……商店街、とかかな。」

 

楓「商店街?」

 

花音「うん。学校の近くにあるんだけど、空見くん、行ったことある?」

 

楓「商店街……。……ううん、ない。ていうか、商店街があること自体初めて知った……。」

 

花音「そっか。……じゃあ決まりだね。」

 

楓「え?」

 

花音「私が、その商店街を案内してあげるよ。」

 

楓「案内?……嬉しいけど、でもそれって、松原さんへのお礼にはならないんじゃ…「商店街で空見くんが私にいろいろおごってくれるっていう解釈なら、私へのお礼になるんじゃないかな。」そ、そう、なのかな?」

 

花音「……本当は、私がただ商店街を案内したいだけなんだけど。」ボソッ

 

楓「ん?何か言った?」

 

花音「ううん、何も?」

 

松原さんに何かおごるっていう解釈なら、松原さんへのお礼になる、か。

 

……なーんか腑に落ちない気はするけど、松原さんがいいならいっか。

 

花音「空見くん。私、もうすぐで日誌書き終わるんだけど……」

 

楓「? ……あ、そ、そっか。あ、じゃあ僕、ここで本でも読みながら待ってるよ。終わったら、教えてくれるかな?」

 

花音「うん。ありがと♪空見くん。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

花音「失礼しましたー。」

 

あれから10分後、松原さんは無事日誌を提出することができた。

 

ん?

 

なぜ日誌を書き始めてから提出するまで10分もかかったのかって?

 

……まぁ、そこは察してくれ。

 

10分もかかった主な原因は松原さんだから。

 

本当ならもう終わりかけだったから、1分ありゃ書き終わってたはずなんだけど。

 

……それなのに10分もかかった理由、もうあれしかないだろ?

 

花音「空見くん。」

 

楓「あ、松原さん。何?」

 

花音「実は、……もう1つだけ、待っててほしいことがあるんだけど…」

 

楓「もう1つ?うん、構わないけど…「ほんと!?ありがとう空見くん!」う、うん。」

 

花音「それじゃあ行こっか、空見くん。」

 

楓「え?行くって、どこへ?」

 

花音「着いてくれば分かるよ。」

 

楓「?」

 

よく分かんないけど、とりあえず松原さんに着いていこう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

花音「着いたよ。」

 

楓「えーっと、……ここは?」

 

花音「部室だよ。」

 

楓「部室?って何の?」

 

花音「茶道部だよ。」

 

茶道部……、そういやそんなのもあったな。

 

この学校のパンフレットで見たわ。

 

花音「私、今から部活があるんだ。それで空見くんには、部活が終わるまで待っててほしくて。」

 

楓「そうだったんだ。」

 

へぇ、松原さんって茶道部だったんだ。

 

確かに、なんかそれっぽいかも。

 

花音「それじゃあ空見くん、行ってくるね。」

 

楓「うん。あ、部活、頑張って。」

 

花音「うん。ありがと、空見くん。……すみません、遅くなりました!」

 

……あ、いつ部活終わるのか聞くの忘れてた。

 

……まぁいっか。

 

えーっと、……お、あそこでいっか。

 

スタスタスタ……

 

……よいしょ、っと。

 

ここに座って本でも読んでれば、時間が経つのなんてすぐだろ。

 

さて、何ページ読めるかな~。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全っっっ然読めなかった……。

 

なぜか。

 

近くを通りかかった人達がめちゃくちゃ話しかけてきたからだ。

 

……疲れた。

 

あと怖かった……。

 

だって全員知らない人なんだもん!

 

まぁ知ってる人もいたけど、そんな人はほんと少数でほぼほぼ知らない人だったんだもん!

 

おかげで4、5ページも読めなかったよ……。

 

……はぁ。

 

花音「あ、おーい!空見くーん!」

 

あ、松原さん。

 

そっか、部活終わったのか。

 

……ん?

 

なんか、もう1人、来てない?

 

花音「ごめんね、1時間近く待たせちゃって。」

 

楓「うん、まぁそれはいいんだけど……」

 

???「……」ジー

 

楓「……松原さん。さっきから僕のほうをじーっと見てるこの人は、いったい……」

 

花音「あ、この子は私と同じ茶道部の、若宮イヴちゃんだよ。1年生なんだ。」

 

楓「そう、なんだ。」

 

イヴ「……」ジー

 

楓「……あのー、僕の顔に何かついてます?」

 

イヴ「……」ジー

 

楓「えーっと、……若宮、さん?」

 

花音「ご、ごめんね空見くん。空見くんに会ってみたいって言ってたから連れてきてみたんだけど、まだちょっと緊張しちゃってるみたい。」

 

楓「い、いや、大丈夫だよ。」

 

イヴ「……カエデさん、でしたっけ?」

 

楓・花「!」

 

や、やっとしゃべった。

 

楓「う、うん。」

 

イヴ「……カエデさんは、カノンさんとは恋仲なんですか?」

 

楓「……へ?」

 

「///!な、なな、何を言ってるの!?イヴちゃん///!」

 

イヴ「カエデさんとカノンさん、とても仲良さそうにしていたので。」

 

花音「も、もちろん、仲は良いけど……。でも、恋仲なんて関係じゃないよ。ね、空見くん。」

 

楓「……え?あ、う、うん。」

 

花音「? 空見くん?今の間は、いったい…「い、いや、別に深い意味はないって。ただ、若宮さんの言った、恋仲?って言葉が、ちょっと、あの、……聞き慣れない、言葉だったから……。」あ、そ、そっか、そういうことか。そうだよね。恋仲って言葉は、あまり聞かないよね。」

 

イヴ「? そうなんですか?」

 

花音「う、うん。そういう意味で使う言葉なら、恋仲より、その、……こ、恋人、って言うほうが多いかな。」 

 

イヴ「はぁ、なるほど。……「も、もちろん私と空見くんは、恋人って関係でもないからね?ただの友達、仲の良い友達ってだけだから。」……つまりお2人は、とても仲が良い、ということですね!」

 

花音「そ、そういうこと……。……ふぅ。」

 

松原さん、今の説明で完全に疲れきってる……。

 

花音「……あ、と、ところでイヴちゃん、そろそろ行かなきゃじゃない?」

 

イヴ「え?……!そうでした!」

 

? 何か用事でもあんのかな?

 

イヴ「それではカノンさん、カエデさん、私はここで。」

 

花音「うん。またね、イヴちゃん。」

 

楓「ま、またね。」

 

イヴ「はい!また!タッタッタ……」

 

花音「……なんか、いろいろごめんね、空見くん。」

 

楓「い、いや、いいよ別に。……活発な子、だったね。」

 

花音「うん。イヴちゃんって、すごく元気で明るい子で、とてもしっかり屋さんなんだよ。」

 

楓「へぇー。……良い後輩、なんだね。」

 

花音「うん♪」

 

まぁ僕には、後輩なんてできたためしないけどね。

 

花音「……それじゃ、私達も行こっか。商店街。」

 

楓「そうだね。……ほんとに、案内してもらうことが、松原さんへのお礼でいいの?」

 

花音「うん。私は、それがいいの。」

 

楓「……分かった。……じゃあ、お願いします。」

 

花音「はい、お願いされました♪」

 

それから僕と松原さんは、学校を出て商店街へと向かい始めた。(僕が松原さんについていく感じで)

 

んーと、確か今僕の財布には、1500円ぐらい入ってたよな。

 

1500円……。

 

……それぐらいありゃ足りるか。

 

……商店街、何気楽しみだな。

 

いや、何気じゃなく、結構、かな。




はい、というわけで次回は商店街回です!

やっとここまで来た……。

まぁ、ネタ自体はまだまだ思いついてんのいっぱいあるんですけどねw。

まずはなんとか商店街回までは書きたいなーと思ってたので、ほんとにやっとって感じです。

商店街回の次はあれやってその次はあれ編でその次があの回でって感じで、めちゃくちゃ思いついてはいるんですが、そこまでいくのにどれぐらいかかることやらw……。

年内になんとか、5バンド25人全員出せたらいいなとは思ってます。

まぁ、……超不定期更新代表(自称)の僕なので、期待どうのこうのは、皆さんにお任せします……。

でもこれだけは胸をはって言えます。

……頑張りますw!


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22話 商店街で初めて会う人達

どうも、知栄砂空です。

今回は、このシリーズに初登場のキャラがいっぱい出ます。(まぁ前回も一人だけ出ましたが)

しかもそのキャラ達には、ある共通点があります。

まぁその答えは後々分かるのですが……、暇潰し程度に考えてみてくださいw。


【商店街】

 

花音「着いたよ、空見くん。」

 

楓「おー。」

 

ここが商店街かー。

 

本物の商店街、初めて見た……。

 

いろんな店が並んでて、ショッピングモールとはまた違った感じだな。

 

ん?

 

……めちゃくちゃ良い匂いがする。

 

何だろうこの匂い……。

 

分かんないけど、とてもうまそうな匂いだってことは分かる。

 

花音「……気になる?この匂い。」

 

楓「え?……う、うん。」

 

花音「ふふ。じゃあまずは、この良い匂いのするお店に行ってみよっか。」

 

楓「! ……うん。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【商店街 北沢精肉店】

 

???「……!あ、かのちゃん先輩!と、空見先輩!」

 

楓「ん?……あれ?君って…「こんばんは、はぐみちゃん。」……!」

 

そうだ思い出した。

 

今松原さんが“はぐみちゃん”と呼んだこの子、美咲ちゃ……美咲さんといっしょにキャッチボールしてたあの子だ。

 

はぐみ「空見先輩、もしかしてうちのコロッケ買いに来てくれたの!?」

 

この特徴ある声に明るいオレンジ色の髪、間違いない、あのときの子だ。

 

って、ん?

 

コロッケ?

 

はぐみ「今なら、コロッケ揚げたてですっごく美味しいよ!」

 

楓「コロッケ、揚げたて?……あ!このうまそうな匂いってコロッケだったのか!」

 

花音「うん、空見くん正解♪」

 

はぐみ「空見先輩空見先輩、今ならコロッケ1個54円のところを、もう1つおまけして2個で54円にしてあげるよ!」

 

楓「え、安っ!あ、……でも、いいの?」

 

はぐみ「いいのいいの!気にしないでよ!」

 

楓「そっか。……なら、はい。スッ」

 

はぐみ「54円、丁度お預かりします。……はい、空見先輩。」

 

楓「ありがとう。えっと……」

 

花音「……あ、名字は北沢だよ。北沢はぐみちゃん。」ボソッ

 

楓「あ、き、北沢さん。」

 

はぐみ「うん!こちらこそ!」

 

こちらこそ?

 

……何でかは知らないけど、まぁいいや。

 

楓「あれ?松原さんはいらないの?コロッケ。」

 

花音「ん?ううん、私もいるよ。」

 

楓「え、じゃあ、買わないの?」

 

花音「買うよ、もちろん。……ジー」

 

ん?

 

……あ!

 

そっか、そういうことか。

 

楓「……ごめん北沢さん。コロッケ、もう2ついい?」

 

はぐみ「もちろん!……はい!」

 

楓「ありがとう。……じゃ、ちょっとはじっこ行って食うか。」

 

花音「そうだね。はぐみちゃん、またね。」

 

はぐみ「ばいばーいかのちゃん先輩、空見先輩!今度いっしょにキャッチボールやろーねー!」

 

楓「え?あ、うん。」

 

キャッチボールねー。

 

……めちゃくちゃ苦手なやつだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

楓「はい、松原さん。」

 

花音「ありがとう空見くん。」

 

楓「……よく見たらあれ、肉屋さんだったんだ。」

 

花音「そうだよ。北沢精肉店。この店のコロッケがとっても美味しいんだ~。」

 

楓「商店街に入った途端コロッケの良い匂いがしたもんね。てか2個で54円って、めちゃくちゃ安いな。」

 

花音「おまけしてくれたはぐみちゃんには、あとでお礼言わなきゃね。」

 

楓「うん。……それじゃ、いただきまーす。パクッ」

 

花音「……どう?」

 

楓「……!うっま!!」

 

花音「でしょ?あー、ん。ん~♪美味しい♪」

 

楓「このコロッケ、今度から夕飯のおかずにしてもらおうかな?」

 

花音「ふふ。空見くん、すっかりこのコロッケの虜になっちゃったね。」

 

楓「あー、……うん、まぁね。」

 

虜、っていう表現はちょっと違うかもしれないけど……、まぁ、実際美味しくて好きなコロッケだったからいっか。

 

 

 

 

 

???「あら、花音じゃない!」

 

 

 

 

 

花音「あ、こころちゃん。」

 

ん?

 

また、松原さんの知り合いの人かな?

 

こころ「……もしかして彼が、花音の言ってた“空見”かしら?」

 

花音「うん、そうだよ。」

 

楓「……ねぇ松原さん、この人は…「あたし、弦巻こころよ!あなたの名前も教えてくれるかしら?」え?あ、……そ、空見楓、です……。」

 

こころ「空見楓……。なら楓ね!」ガシッ!

 

楓「え!?」

 

花音「!?」

 

こころ「楓、私あなたのこと、もっといろいろ知りたいわ!」

 

楓「し、知りたい!?ちょ、それ、ど、どういう…「ま、待って、こころちゃん!」!」

 

花音「今空見くんは、私とお出かけ中なの。だから、その話は今度にしてもらえると…「それなら、私もいっしょに行くわ!」ふぇぇ!?」

 

……今の、久しぶりに聞いたかも。

 

こころ「それじゃあ花音、楓、行きましょ!どこがいいかしらね?うーん、……とりあえず、まずは私の家に……

 

 

 

 

 

???「こころー。」

 

 

 

 

 

! ミッシェル!やっぱりここにいたのね!」

 

へ?

 

み、ミッシェル?

 

って誰?

 

こころ「そうだわ!ミッシェル、あなたもいっしょに…「今からあたしといっしょに、この子達を笑顔にするのを手伝ってくれるかな?」笑顔にする手伝い?ええ、もちろんいいわよ!……!そうだわ!それなら2人にも…「2人は大事な用があるみたいだから、ちょっとそれは難しいかなー。」大事な用?そうなの?2人とも。」

 

花音「! う、うん。ね、空見くん。」

 

楓「そ、そう!大事な用、すっごく大事な用なんだよ。」

 

こころ「そう……。なら仕方ないわね。分かったわ!それじゃあ楓、あなたの話は、また後日聞かせてもらうってことでいいかしら!」

 

楓「ご、後日!?……ま、まぁ、うん、いいよ。」

 

こころ「ありがとう楓、楽しみにしてるわ。ミッシェル!それじゃあさっそく、みんなを笑顔にするわよ!」

 

ミッシェル「よ、よーし。じゃあまずは、この子達にこの風船を配って笑顔にしよー。」

 

こころ「分かったわ!」

 

ミッシェル「……2人とも、今です。行ってください。」ボソッ

 

花音「あ、ありがとう、みさ……ミッシェル。」

 

ミッシェル「? い、いえ。」

 

花音「行こ!空見くん!」

 

楓「う、うん。」

 

タッタッタッタ……

 

 

 

 

 

ミッシェル「……何で今、呼び方をあたしの名前からミッシェルに変えたんだろう?……まいっか。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

花音「はぁ、はぁ、こ、ここまで来れば、大丈夫、かな。」

 

楓「はぁ、はぁ、……べ、別に、走って逃げる必要は、なかったんじゃ……。あの着ぐるみの人、ミッシェル、だっけ?あの人が、僕達の事情を説明してくれてたし。」

 

花音「そ、そうだね。えへへ、ちょっと焦っちゃったかも。」

 

それにしても、まさか着ぐるみ着てる人に助けられるなんてな。

 

ミッシェルか。

 

……クマ、ってことでいいのかな?あれは。

 

花音「……空見くん。」

 

楓「ん?」

 

花音「あの、ミッシェルの中の人、誰か気づいた?」

 

楓「え?……え、松原さん、知ってんの?」

 

花音「う、うん。」

 

楓「……気づいた?って僕に聞くってことは、僕の知ってる人?」

 

花音「そうだよ。」

 

楓「……ごめん、さっぱり分からない……。」

 

花音「そっか。……それならいいんだ。」

 

楓「え、いいの!?」

 

花音「うん。空見くんがミッシェルの中の人が誰なのか分かる日は、きっといつか来るから。」

 

楓「そ、そう……。」

 

なんか、今の松原さん、カッコよかったな……。

 

花音「走ったから、ちょっと喉乾いちゃったかも。」

 

楓「あ、それは僕もかも。」

 

花音「近くに、私もよく行く喫茶店があるんだ。そこに行ってみない?」

 

楓「喫茶店?……うん、行ってみたい。」

 

花音「ふふ、じゃあ行こっか。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【商店街 羽沢珈琲店】

 

『closed』

 

花音「あ、あれ?」

 

楓「クローズド……、今日はやってないってことか。」

 

花音「おかしいなぁ、いつもならやってるはずなんだけど……。」

 

楓「まぁ、やってないんじゃ仕方ないよね。」

 

花音「……なんか、ごめんね、空見くん。」

 

花音「い、いや、別に謝らなくてもいいって。……ん?」

 

花音「? どうしたの?空見くん。」

 

楓「あ、いや、……あの店が、ちょっと気になって。」ユビサシ

 

花音「あの店?……あ。」

 

窓から少し見えてるあれって、……パン、だよな?

 

ということは、パン屋さんだよな?あれ。

 

……気になる。

 

めっちゃ気になる。

 

花音「……行ってみる?」

 

楓「! い、いいの?」

 

花音「もちろん!」

 

楓「あ、ありがとう松原さん。」

 

あそこのパン屋さんは、どんなパンが売ってるんだろ?

 

楽しみだな~。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【商店街 山吹ベーカリー】

 

カランコロン

 

???「あ、いらっしゃいませ~。」

 

花音「空見くんって、パン好きなの?」

 

楓「うん、好きだよ。」

 

???「あれ、花咲川の制服……。」

 

楓「ん?」

 

???「ってことは、……あなたが空見先輩ですか?」

 

楓「う、うん、そうだけど……。先輩ってことは、花咲川の、1年生?」

 

沙綾「はい。私、山吹沙綾っていいます。その隣の人は……もしかして彼…「ち、違うよ!」え?あ、そうなんですか?なんか、すみません……。」

 

花音「あ、いや、その、……わ、私も、急に大きな声出したりして、ごめんね?えっと、私、空見くんと同じクラスの、松原花音。……お、お店の手伝い、大変そうだね。」

 

沙綾「いえ、そうでもないですよ。いつもやってることですし、慣れると意外と楽しいですよ♪」

 

花音「そ、そうなんだ。」

 

楓「……松原さん、パン、選ばない?」

 

花音「え?」

 

沙綾「あ、それなら私、おすすめのパン紹介しますよ。今はお客さん、先輩達だけですし。」

 

花音「あ、ありがとう、山吹さん。」

 

花音「2人とも……。なんか、ごめんね?あと、ありがとう♪」

 

楓・沙「ううん(いえ)。……え?」

 

花音「ふふ♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~10分後~

 

沙綾「あんぱんに、フレンチトースト、メロンパン、ソーセージロール、オレンジジュース、合計5点で、750円ですね。」

 

楓「んー、……じゃあ1000円で。」

 

沙綾「1000円、お預かりします。……はい、250円のお釣りです。どうぞ。」

 

楓「ありがとう。」

 

花音「沙綾ちゃん。おすすめのパン、いろいろと教えてくれてありがとね。」

 

沙綾「いえいえ。あ、ところでさっき、近くに座って食べれるところはないのかって話してましたよね?それなら商店街を出て少し行ったところに公園があるので、そこがいいかと。」

 

花音「あ、そっか。あの公園だね。」

 

沙綾「はい。あそこならベンチやゴミ箱もあるので、休憩しながら何か食べるのにはもってこいですよ。」

 

楓「そうなんだ。……山吹さん、ほんと、いろいろとありがとね。」

 

沙綾「……なんか、空見先輩が学校で人気者の理由が分かった気がします。」

 

楓「いや、だから僕は、人気者とかそういうんじゃ…「あ、お客さん。いらっしゃいませ~。」……ま、いっか。」

 

花音「沙綾ちゃん。私達、そろそろ行くね。」

 

沙綾「はい。先輩達といろんな話ができて、とても楽しかったです。」

 

花音「私もだよ。あ、もしだったら今度、連絡先交換しない?」

 

沙綾「いいんですか!?ぜひお願いします!」

 

……なるほど、こうやって知り合いは増えていくのか。

 

まぁ僕には、自分から連絡先を交換しようなんて言う勇気はないけどね。

 

沙綾「空見先輩も。」

 

楓「え?」

 

沙綾「連絡先の交換、今度お願いしますね。」

 

楓「あ、う、うん。」

 

花音「それじゃあね、沙綾ちゃん。」

 

沙綾「はい。空見先輩も、また。」

 

楓「うん。またね、山吹さん。」

 

カランコロン 

 

沙綾「……ありがとうございましたー!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

花音「沙綾ちゃん、とても良い子だったね。」

 

楓「うん……。」

 

花音「? 空見くん?」

 

楓「……良かったの?松原さん。」

 

花音「え?何が?」

 

楓「パンとジュース、奢らなくて。」

 

花音「あ、……うん。」

 

楓「あ、って、まさか忘れてた?僕が松原さんに奢るっていうの。」

 

花音「べ、別に、忘れてたわけじゃないよ?ただ、沙綾ちゃんとのお話が楽しくて、ちょっとそのことが頭から離れてたっていうか……」

 

それを、忘れてたというのでは?

 

楓「……僕、まだコロッケしか奢ってあげられてないよ?しかも54円の。一応これは松原さんへのお礼なんだから、もっとたかってくれても…「分かったよ。うん、分かったから。ほら、空見くん、早く公園行って、パン食べよう?」ちょ、松原さん、急に押さないでよ。」

 

 

 

 

 

???「……!あー!空見先輩だー!」

 

 

 

 

 

楓「へ?」

 

???「あ、おい香澄!」

 

???「香澄ちゃん、急に走ったら危ないよ!?」

 

あれ?

 

あの人達、どっかで……。

 

え、てか、この距離の中、そんなスピードでこっちに走ってきたりしたら……!

 

 

 

 

 

沙綾「~♪あれ?香澄達だ。……!ちょ、香澄!危ないって!そんな走ったら空見先輩に……。あーもう!ダッ!」

 

カランコロン

 

 

 

 

 

???「おい香澄!!ぶつかるから止まれって!!」

 

香澄「急には止まれないよ~!!」

 

???「バカだろお前!!」

 

楓「ちょ、ちょちょ、ちょっと待…「空見先輩!早くよけてください!」山吹さん!?そ、そんなこと言ったって……うわっ!」

 

 

 

 

 

ドンッ!!

 

 

 

 

 

花・沙・?・?「!!」

 

花音「そ、空見くん!」

 

?・?「香澄(ちゃん)!」

 

沙綾「香澄!空見先輩!」

 

???「……ん?これ、どうしたの?何で香澄が倒れてるの?」

 

沙綾「花園さん!こんなときに何やって……」

 

???「コロッケ食べてた。」

 

???「こ、コロッケ!?……花園さん、マイペースにも程があんだろ……。」

 

沙綾「と、とにかく、空見先輩を運ばないと!市ヶ谷さん、香澄起こすの手伝って!」

 

???「! お、おう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【公園】

 

楓「う、うう……」

 

花音「! 空見くん!目、覚めた?」

 

楓「うーん……。……松原、さん?あれ、僕は確か……」

 

花音「山吹ベーカリーの前で1年生の子にぶつかっちゃって、気を失ってたんだよ。だからその場にいた子達に、空見くんを公園に運ぶのを手伝ってもらったの。」

 

楓「そ、そう、だったんだ。う~、まだ頭がクラクラする……。」

 

花音「すごいぶつかりかただったからね。具合が良くなるまで、こうやって寝てたほうがいいよ。」

 

楓「そう、だね。じゃあ、そうさせてもらうよ。……ところでこの枕、すごい気持ちいいんだけど、どこにあったの?」

 

花音「ふぇ!?……///、そ、それは///……」

 

楓「まさか、公園に枕があるはずないよね。ということは……わざわざ買ってきてくれたの?」

 

花音「……う、うん。まぁ、そんなとこ。」

 

楓「……?なんか松原さん、様子が変じゃない?さっきからなんだか言葉が途切れ途切れだし…「そ、そんなことないよ!言葉が途切れ途切れなのは、その、……ほ、ほら、今日ってすごく暑いでしょ?そのせいであまり口が回らなくて……。だから言葉がちょっと途切れ途切れなんだよ。聞き取りにくくて、ごめんね?空見くん。」……な、なるほど。まぁ、別にいいけど。……今日ってそんなに暑かったっけな?」

 

花音「/////」

 

沙綾「あのー、空見、先輩?」

 

楓「ん?あ、山吹さん。店の手伝いは大丈夫なの?」

 

沙綾「え、ええ、まぁ。」

 

楓「そう。……ありがとね山吹さん。さっき、わざわざ店から出て、僕に向かってよけろって叫んでくれたでしょ?」

 

沙綾「そ、それくらい、どうってことないですよ。たまたま、空見先輩と香澄がぶつかりそうになってたのを見かけただけですし。」

 

楓「あ、そうだ。そういや、僕とぶつかった子って、どこにいるの?」

 

沙綾「あ、ちゃんといますよ。……ほら、香澄。」

 

香澄「……」

 

楓「……!思い出した!君確か、SPACEできらきら星歌ってた……」

 

香澄「え、あのとき、来てくれてたんですか!?」

 

楓「うん。確か、そのツインテールの子がカスタネット、その隣のショットカットの子がベースを演奏してたよね。」

 

?・?「!」

 

香澄「はい!あのときの演奏、すごくキラキラしてましたよね!有咲のカスタネットも、りみりんのベースも!あ、あと、グリグリの人達もすごくかっこよくて…「香澄。お前、そんな話よりまずは言うことあるだろ。」あ、そうだった。」

 

楓「?」

 

香澄「えっと……、空見先輩!ぶつかっちゃって、ごめんなさい!」

 

楓「……」

 

有咲「……おい香澄。お前が悪いんだから、もう少し丁寧に…「大丈夫だよ。」え、だ、大丈夫なんですか?」

 

楓「えっと……君、名前は…「! 私、戸山香澄です!ギターやってます!えっと、私小さい頃、星の鼓動を聞いたことが…「それ今関係ねーだろ!」え~!だって自己紹介でしょ?」……星の鼓動?」

 

有咲「あ、えっと、私は、市ヶ谷有紗です。まぁ、……キーボード、やってます。」

 

りみ「わ、私、牛込りみです。べ、ベース、やってます。」

 

たえ「花園たえです。香澄と同じく、ギターやってます。」

 

沙綾「……花園さん。自己紹介しながら、何やってんの?」

 

たえ「棒倒し。」

 

有咲「自己紹介しながらすることじゃねえだろ!てか小学生か!」

 

花音「に、賑やかな子達だね……。」

 

香澄「はい!私達、とっても仲良しなんです!あ、あと私達、バンドやってるんです!」

 

楓「バンド?君達もやってるんだ。」

 

香澄「はい!……!“も”ってことは、もしかして空見先輩も…「あ、いや、僕じゃなくて、僕の友達がね。」そうなんですか。空見先輩の友達のバンドか~。見てみたいな~。」

 

有咲「おい香澄。話が脱線してるけど、一応今これは香澄と空見先輩がぶつかったことに関しての話し合いだからな?」

 

楓「話し合いって……。ちょっと大袈裟だよ。」

 

香澄「あ、忘れてた。」

 

有咲「忘れんな!」

 

えーっと、戸山さんに、市ヶ谷さん、牛込さん、花園さんか。

 

たぶん、みんな1年生、だよな。

 

……1年生って結構、元気な子が多い気がする。

 

とくに戸山さん。

 

まぁ、それは別にいいとして……。

 

たえ「……」ジー

 

楓「……あのー、花園、さん?僕の顔に、なんかついてる?」

 

たえ「いえ、何も。」

 

楓「じゃあ、……アザとか、ついてたり…「いえ、それも大丈夫です。」そ、そう……。」

 

……。

 

な、何だこの子……。

 

りみ「おたえちゃん、空見先輩が困ってるよ?」

 

有咲「何かあるんなら言えよ、花園さん。」

 

たえ「……じゃあ、空見先輩。一つ聞いてもいいですか?」 

 

楓「え?あ、うん、いいけど……」

 

 

 

 

 

たえ「その枕、気持ちいいですか?」

 

 

 

 

 

楓「……へ?」

 

花・り・有・沙「!!」

 

楓「ま、枕?」

 

たえ「はい、気持ちいいですか?」

 

沙綾「は、花園さん、その質問は、ちょっと……」

 

たえ「え?何か変だった?」

 

花音「/////」

 

有咲「いや、変っていうか、何て言うか、……なぁ、牛込さん。」

 

りみ「あ、あはは……。」

 

たえ「……」

 

楓「? ……うん、気持ちいいよ。」

 

り・有・沙「(! い、言っちゃった……。)」

 

花音「/////」

 

たえ「おぉ、やっぱり。」

 

楓「えっと、それが、どうしたの?」

 

たえ「いえ、ただ純粋な気になっただけです。」

 

花音「そ、そう、なの……?」

 

花園さんって、なんか不思議な人だな。

 

……それにしてもこの枕、ほんと気持ちいいな。

 

すげえ柔らかいし、なんか落ち着くし。

 

そうだなぁ、まるで…「私も今度、有咲に膝枕してもらおうっと。」「するわけねーだろ!」そう、まるで膝枕のような感触……ん?

 

り・沙「有咲ちゃん(市ヶ谷さん)!」

 

有咲「え?……あ、ヤベ。」

 

楓「……」

 

 

 

 

 

香澄「あー!倒れちゃった……。おたえ、棒倒しって難しいねー。」

 

たえ「そうでしょ?あ、香澄、勝負する?」

 

香澄「する!」

 

 

 

 

 

有沙「あ、えーっとー……、空見、先輩?」

 

すげえ柔らかい……、なんか落ち着く……、膝枕……。

 

……え?

 

……え!?

 

……ま、まま、まさか、ぼ、僕、い、いい、今……。

 

沙綾「い、市ヶ谷さん、牛込さん、そろそろ行こうか。」

 

有沙「え?」

 

りみ「沙綾ちゃん?行くってどこへ…「どこって、山吹ベーカリーに決まってるじゃん。ほら、早く行くよ牛込さん。」きゃっ!ちょ、ちょっと沙綾ちゃん!?」

 

有沙「(なるほど、そういうことか。)香澄、花園さん、行くぞ。」

 

香澄「? 有咲、行くってどこへ…「だから山吹ベーカリーだっつってんだろ!ちゃんと話聞いてろ!」山吹ベーカリー!?行く行く!」

 

たえ「あ、私も私もー。」

 

楓「え?いや、ちょ、あの……え!?」

 

沙綾「では空見先輩、松原先輩、また。」

 

有沙「い、いろいろ、ご迷惑おかけしました。っておい!お前らもなんか一言言え!」

 

香澄「空見先輩、さようなら!はぁ~、さーやんちのパン、楽しみだなぁ~。」

 

たえ「うさぎパンとかあるのかな?」

 

楓「……」

 

りみ「そ、空見先輩!さ、さようなら!」

 

タッタッタッタ……

 

 

 

 

 

……こうして牛込さんも、僕の視界から消えていった。

 

……僕と松原さんは、この場に2人きりの状態になってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~数分後~

 

楓「……」

 

花音「……」

 

牛込さん達が公園を出てから、1分は経っただろうか。

 

あれから僕と松原さんは一言も発さず、ずっと黙ったままだ。

 

だが、その状態ももう、数秒後には解かれることになる。

 

楓・花「……ま、松原さん(そ、空見くん)。……あ。……」

 

ま、まさかの同時……。

 

楓・花「……お、お先に、どうぞ。……!?」

 

また!?

 

今の、結構な確率だぞ?たぶん。

 

花音「……そ、空見、くん。」

 

楓「! は、はい……。」

 

あ、今度は大丈夫だった。

 

花音「先、言っても、いい、かな?」

 

楓「う、うん。」

 

花音「! ……ありがとう。」

 

楓「……」

 

花音「……ごめんね、空見くん。」

 

楓「!?」

 

花音「私、空見くんに嘘ついてた。」

 

楓「う、嘘?」

 

花音「うん。……実は空見くんが今寝てるの、……枕じゃ、ないんだ。だから、わざわざ買ってきたっていうのも、……嘘なの。……それと、言葉が途切れ途切れだった理由。……あれも、全部嘘。今日は暑くなんてないし、口もちゃんと回る。だから、言葉が途切れ途切れだったのには、別に、理由があって……。」

 

楓「……」

 

花音「……空見くんも、もう分かってると思うけど、

 

 

 

 

 

……今空見くんが寝てるのはね、

 

 

 

 

 

……私の、膝なの。」

 

 

 

 

 

……な、なるほど。

 

嘘ついてたって、そういうことか。

 

そんなこと、わざわざ謝らなくても、いいのに。

 

 

 

 

 

花音『今空見くんが寝てるのはね、……私の、膝なの。』

 

 

 

 

 

ま、まぁ、要は、あれだよね。

 

漫画とかで、カップルが耳かきとか、休むときとかによくやってる、あれ、だよね。

 

まぁ、松原さんから直接聞かされる前から、花園さんのせい?おかげ?で、分かってはいたんだけどさ。

 

分かってたん、だけど……。

 

……、……///、/////。

 

だーくそー///!!

 

緊張と恥ずかしさと気まずさで顔と体が熱いーー///!!

 

……はぁ。

 

何言われるか分かってたとは言え、実際に本人からそれを聞いたら……、……///、/////。

 

あーもう///!!

 

初めて松原さんに抱き締められたとき以上に意識が保てないよーー/////!!

 

花音「空見くんはずっと、私の膝の上に寝てたんだよ。……膝枕、って言うのかな。沙綾ちゃん達がいる前だったから、寝ている空見くんを膝にのせるのは、ちょっと恥ずかしかったけど、……でも、空見くんを安静にさせるには、これしかないと思って。」

 

……松原さん、なんかすごい落ち着いてるな。

 

……もしかして膝枕してる側って、恥ずかしいとか気まずいとかあまりないのかな?

 

いや、そんなはずないと思うんだけどなぁ。

 

松原さんがすごいのか、ただ単に僕がおかしいのか。

 

花音「……空見くん。」

 

楓「! は、はい///!!」

 

花音「頭、もう痛くない?」

 

楓「え?あ、……うん。それは、もう治ったみたい。」

 

花音「そっか、良かった。」

 

楓「……」

 

花音「……」

 

……正直、こっちは全然良くないんだよなぁ。

 

いや、まぁ良くなくはないんだけど、はたから見たらちょっと良くない状況というか……、いや、その場合は良いのか?

 

……ヤバい。

 

ずっと膝枕されてるせいで頭が全然回んなくなってきた……。

 

花音「……」

 

……ところでこの膝枕、いつまで続くんだろう?

 

いや、別に僕がもういいよって言って上体起こせばすぐ解決する話なんだけどさ。

 

……なんか、そういうの、申し訳ないじゃん?

 

花音「空見くん。」

 

楓「! な、何!?」

 

花音「……気持ちいい?」

 

楓「……へ?」

 

花音「膝枕、気持ちいい?」

 

楓「……///」

 

えっとー、……こういうときって、どう答えればいいんですかね?

 

普通にうんって答える?

 

いや、無理。

 

……恥ずかしくてそんなの言えるわけがない///。

 

ん?

 

最初のほうバリバリ気持ちいいって言ってただろって?

 

そのときはそのとき、今は今だ!

 

花音「……もし気持ちいいのなら、いつまでもこうしてていいよ。」

 

楓「え?……いや、松原さん、何言って…「私、男の子に膝枕なんてするの初めてだったから、……正直最初は、ちょっと抵抗あったんだ。」……」

 

まぁ、普通はそうだよね。

 

花音「でもね、……空見くんだから。」

 

楓「……え?」

 

花音「空見くんだから、まぁ、いいかなって。」

 

ぼ、僕、だから?

 

……え、それ、いったいどういう意味?

 

花音「私、空見くんがもういいって言うまで、ずっと膝枕してるよ。」

 

へ?

 

僕が、もういいって言うまで?

 

……それ、何時間後の話だよ……。

 

だからそんなの、松原さんに申し訳なくって言えないんだって!

 

……はぁ、僕のいくじなし……。

 

ヘタレって言うなら勝手に言ってろ。

 

そんなこと、本人である僕が一番良く知ってるから……。

 

楓「……『~♪』!?」

 

花音「あ、ごめん空見くん。誰かから電話かかってきたみたい。出てもいいかな?」

 

楓「電話?……!あ、う、うん、全然いいよ。」

 

さっきの音、着メロだったのか……。

 

び、びっくりした……。

 

花音「あ、彩ちゃん。……もしもし?」

 

電話の相手は、丸山さんか。

 

花音「え?うん、……、……!?え!?う、嘘でしょ!?」

 

……へ?

 

え、何?

 

どうしたの?

 

「うん、……うん。……、……!!……い、いた……。」

 

? いた?

 

……いったい、何がいたって……ん?

 

 

 

 

 

彩「……ヒョコ」

 

 

 

 

 

楓「え?……え!?」

 

花音「あ、彩、ちゃん……。」

 

彩「……そ、空見くん、花音ちゃん。……こ、こんにちは……。」

 

楓・花「……ま、丸山さん(彩ちゃん)……。どうして、ここに……」

 

彩「たまたま、散歩してたら、偶然2人を見かけて……。……それより、空見くん、それ……」

 

楓「え?」

 

彩「花音ちゃんに、……膝枕、してもらってるの?」

 

楓「……」

 

このとき、僕の思考は完全に停止した。

 

もう何も考えずに、ただじっとしていた。

 

1mmも動かず、ただじっと、松原さんの膝枕の上で、何も考えずに寝ていた。

 

僕が覚えているのは、これだけだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

知り合いに見られた……。

 

松原さんに膝枕されてるところを……。

 

しかも丸山さんに……。

 

僕が家に帰った後、そのことが頭の中でずっとグルグルしていた。

 

グルグルしてて、まともにご飯も食べれず、寝ることもできず、翌朝になっても起きることができず、朝ごはんも食べれず、そして遅刻した。

 

……皆のもの。

 

今日から僕のことは、

 

……ヘタレと呼べ。




ただ商店街でいろんなキャラに会うだけの回のはずが、どうしてこうなった…。

ということが僕の小説ではたびたびありますが、まぁ気にしないでくださいw。 

結果ちゃんと小説として成り立っている(はずな)ので。

ガルパでとうとう待ちに待ったFULLバージョン(最初は二重の虹)が追加されるらしいですが、HARDもフルコンできないようなくぞ雑魚の僕には、NORMALをやりまくる未来しか見えませんw。


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23話 先輩のライブ、後輩の姉へのリスペクト

どうも、知栄砂空です。

今回から、「・・・」の部分を「……」のように変えることにしました。

ガルパのストーリーとかを見ると全部こっち基準だし、こっちのほうが文字数も少なくなるので。

なお、過去の回もこのように変えるかは未定です。

もし変わってたら、あ、こいつ過去のやつも変えたんだな、程度に思ってくださいw。


楓「はい、どうぞ。」

 

生徒A「ありがとうございます。」

 

現在は昼休み。

 

僕は今、図書館でカウンターの仕事をしている。

 

この前の図書委員の集まりで、僕は先生にカウンター係に任命、というか、お願いされたのだ。

 

係は4つあり、本当はやりたい係を自分で決められるのだが、僕はわがままみたいな感じで図書委員に入れてもらったようなもんだ。

 

だがら係のことは、先生に任せようと思った、そしたらカウンターの係になったというわけだ。

 

カウンター係の仕事は、主に貸し出しや返却だ。

 

それに加え、この学校では入館者数、貸し出し者数を調べているらしい。

 

あと、予約のあれやこれや。

 

これは、……うーんまぁ今度でいいや。

 

そしてもう1つ、……本の返却だ。

 

おっと、返却と言ってもさっき言ってたほうの返却じゃないぞ。

 

本をピッてやって返却された状態にした後にその本をもとあった場所(棚)に戻す方の返却(以後返却Ⅱ)だ。

 

これまでの学校では、それは本を返却した生徒が自らやっていたが、この学校では生徒ではなくカウンター係がやるらしい。

 

まぁそれならまだいい。

 

それをカウンター係がやるということはどういうことか。

 

……そう。

 

カウンター係というものは、さっきも言った通り本の貸し出しや返却、入館者数や貸し出し者数を調べたりしなくてはならない。

 

そしてその本の返却Ⅱは、それらの仕事がない合間にやらなくてはならない。

 

……もうお分かりだろうか。

 

そう、大変なのだ。

 

もし図書館が混んでて、貸し出しや返却をする人がめちゃくちゃいたら、返却Ⅱの本がどんどん溜まっていく。

 

しまいには昼休み残り5分の間に10冊以上もの本を返却Ⅱしなくてはならなくなるということも、あり得なくはないのだ。

 

そしてそれが大変な理由はもう1つある。

 

図書館の入館者数。

 

これはその名の通り、図書館に入館した人の数のことだ。

 

つまり、ただ図書館に本を読みに来ただけ、勉強しに来ただけという人も、入館者数に含まれるのだ。

 

そう、もう一つの返却Ⅱが大変な理由は、返却Ⅱをしている間に人がいっぱい来てしまうことがあるというリスクがあるからだ。

 

流石に返却Ⅱをしながら入館者数=正の字を数えるのは無理があるし、図書館の入り口が見えないところで返却Ⅱをしていれば、もう言わずもがなだ。

 

ふぅ、すっかり話してしまったな。

 

まぁ、という2つの理由から、返却Ⅱはカウンター係の中でも一番大変な仕事と言えるだろう。

 

あ、ちなみに今僕は、まさに丁度その返却Ⅱをやっているところだ。

 

僕がただ話してるだけだと思ったら大間違いだ。

 

今僕は図書委員のカウンター係をしてるんだぞ?

 

ちゃんと話ながら仕事してるに決まってんだろ。

 

ガラガラガラ

 

???「……!」

 

えーっと、この本は、……ここ、この本は…、………ここか。

 

???「……」

 

んで、この本がここ、そんでこの本が…、……ん?

 

……ん?んん!?

 

この本、番号がないぞ!?

 

おかしいなぁ、貸し出しできる本には必ず背表紙に番号がついてるはずなんだけど……。

 

ん~……。

 

???「……」

 

楓「番号、番号……。マジでないぞ?これ、本当に貸し出しできるやつなのか?うーん……「その本はカバーがリバーシブルになってるから、カバーを取ってみれば番号が出てくるはずだよ。」? リバーシブル?」

 

……!

 

ほんとだ!

 

へぇー、こんな本もあるんだ。

 

で?リバーシブルってことは、このカバーを裏返しにすれば……、お、あった!

 

楓「おぉ、マジであった。教えてくれて、ありがとうございま……す?」

 

???「ふふ、どうしたしまして。」

 

……あれ?

 

この人、なんか見覚えがあるような……。

 

???「君が、みんなの言ってた、空見楓くんだよね?」

 

楓「み、みんな?」

 

???「私のクラスね、いまだに空見くんのことで話題が持ちきりなんだよ。流石に何週間もその話を聞いてたら、私もちょっと気になっちゃって。クラスで一番よく空見くんのことを話してる子に聞いたら、今日の昼休みに図書委員の仕事やってるって教えてくれて。丁度返さなきゃいけない本もあったし、それならと思って来てみたの。」

 

楓「……」

 

???「で、来てみたらなんか困ってるみたいだったから、私が助け船を出してあげたんだけど……。……助け船というより、ほぼ答えだったね。」

 

楓「は、はぁ……。」

 

今の話に1箇所、めちゃくちゃツッコみたいところがあったけど、まぁいいや。

 

……てかやっぱりこの人、なんか見覚えがあるんだよなぁ。

 

いや、見覚えというよりは、……聞き覚え、か?

 

???「空見くん。」

 

楓「? 何ですか?」

 

???「本の貸し出し、お願いできる?」

 

楓「あ、はい。それは、もちろん。」

 

???「ありがとう♪うーん、どれ借りよっかな~?……空見くんのおすすめの本とかってある?」

 

楓「お、おすすめの本、ですか?」

 

???「うん。もしあったら、教えてほしいな。」

 

楓「はぁ……。分かりました。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~5分後~

 

楓「それで、この本の面白いところはですね……」

 

???「うん、……うん、なるほど~。それでそれで?」

 

楓「いや、この後のこと話しちゃうとネタバレになるので、気になるのなら自分で借りることをおすすめ…キーンコーンカーンコーン え!もう昼休み終わり!?」

 

???「あちゃー、時間切れになっちゃったねー。」

 

……結局、昼休みが終わるまで、約30分間この人に本紹介してたのか。

 

一応委員会の仕事中だったんだけど…、……まぁ、誰も来なかったからいいけどさ。

 

???「じゃあ私は、この本の続き気になるし、借りて教室戻ろうかな。」

 

楓「え、それ、借りてくれるんですか?」

 

???「もちろん!空見くんのあらすじ紹介がとても上手だったから、続きが気になっちゃって。」

 

楓「……」

 

???「というわけで空見くん、貸し出し、お願いします♪」

 

楓「あ、は、はい!ガサゴソ」

 

???「……」

 

楓「……」

 

ピッ

 

……ポン

 

楓「……ど、どうぞ。」

 

???「ありがとう。……それじゃあ私、教室戻るから。」

 

楓「あ、じゃあ僕も……「空見くん。」? はい?」

 

???「……もしだったら今日、ライブ見に来てよ。」

 

楓「え?……あ、あの…「じゃあね、空見くん。」あ、ちょ、ちょっと待って…、……行っちゃった。」

 

……今日の、ライブ?

 

ライブ、ライブ……、……。

 

……!!

 

そうだ思い出した!

 

あの人確か、白鷺さんとSPACE行ったときに遅れてやって来た……。

 

 

 

 

 

???『りみ、よく頑張ったね。』

 

???『よーし!じゃあみんなー、いっくよー!』

 

 

 

 

 

Glitter Greenの、ボーカル(確かギターもやってた)の人だ。

 

ん?待てよ?

 

ということは僕、……結構すごい人に会っちゃった?

 

……てか、それ以前にさ。

 

……あの人この学校の生徒だったのーー!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『キーンコーンカーンコーン』

 

さてと、HRも終わったし、帰るか。

 

花音「空見くん、帰るの?」

 

楓「うん、じゃー…「空見くん。」?」

 

花音「えっとー、……こ、これ……」

 

楓「? これって……、本、だよね?」

 

花音「うん。……あのね、実はこれ、……図書館の本なの。」

 

楓「え、図書館の?」

 

花音「実は、昨日が返却日なの、忘れちゃってて……。それで……」

 

あ、そういうことか。

 

楓「じゃあ僕、帰りに返しとくよ。」

 

花音「ほんと?ありがとう空見くん。それと、ごめんね。」

 

楓「いやいや。……でも、珍しいね、松原さんが忘れることがあるなんて。」

 

花音「わ、私だって忘れちゃうことくらいあるよ!」

 

楓「そ、そんなむきにならなくても……」

 

花音「! ……べ、別に私、むきになってなんか…「それじゃあね、松原さん。また明日。」! う、うん、また明日。……はぁ。私って、そんなしっかり者に見えるのかなぁ?」

 

千聖「花音、帰りましょ。」

 

花音「あ、千聖ちゃん。うん。」

 

千聖「……花音、あなた、また何か楓に変なこと言われたの?」

 

花音「ふぇぇ!?ち、違うよ!変なことなんか言われてないよ…。……ただ……」

 

千聖「ただ?」

 

花音「……空見くんには、私が、しっかり者に見えてる、みたいで…。……でも、私って、空見くんの思ってるほど、しっかり者じゃ、ないから…「確かにそうね。」え?」

 

千聖「花音はしっかり者よ。授業もちゃんと受けてるし、日直の仕事だって最後までぬかりなくこなしてる、困ってる人がいたらすぐ助けてあげたり、みんなが気づかないようなことも自分から進んでやったり、それから…「千聖ちゃん、褒めすぎだよ~。」ふふ、これ以上挙げるときりがないわね。」

 

花音「もう~。」

 

千聖「……それに比べて楓は、……」クドクドクド

 

花音「(あ、これ、長くなるやつだ。……それにしても千聖ちゃん、そんなにいつも、私のことを見ててくれてるんだ。……えへへ、なんか、嬉しいな♪)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『チョコを使った美味しいデザート100選』

 

へぇ、松原さんって、こういうの読むんだ。

 

チョコ好きなのかな?

 

お、図書館着いた。

 

楓「……」ガラガラガラ

 

???「そ、そうですか。……いえ、大丈夫です。」

 

あれ?

 

……あの子は、確か……。

 

りみ「あ、ありがとうございました。……!そ、空見先輩!?」

 

楓「こ、こんちには、牛込さん……。」

 

りみ「えっと、空見先輩、どうしてここに…「いや、僕はただ、本を返しに来ただけだよ。」そ、そうなんですか。……ん?……!あーー!!」

 

楓「! な、何!?どしたの!?」

 

りみ「その本、私が予約してた本!」

 

楓「え?あ、これ?」

 

りみ「それ、ずっと予約してたんですけど、3週間経ってもまだ返却されてないって言うから、もう半ば諦めてたんです。まさか、空見先輩が持ってたなんて……」

 

楓「(厳密に言やぁ、持ってたのは僕じゃなくて松原さんなんだけど……。ん?)って、3週間!?……確か本を借りれるのは2週間だから、誰かが1週間多く借りてたということか?……いや、流石に松原さんなわけないか。」

 

りみ「空見先輩。」

 

楓「え?あ、ご、ごめん、何?」

 

りみ「その本、私が借りても、いいですか?」

 

楓「あ、うん、もちろん。予約してた人とそうでない人なら、優先すべきは予約してた人だしね。」

 

りみ「あ、ありがとうございま…「でもその前に。」? ……あ、返却。」

 

楓「そ。ちょっと待っててね。」

 

りみ「わ、分かりました。」

 

まさか、松原さんから返してきてほしいって頼まれた本が、牛込さんが予約してる本だったとは。

 

これ、結構すごい偶然だよな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

りみ「あ、ありがとうございました、空見先輩。」

 

楓「うん。……それより、良かったね。ずっと予約してた本を借りることができて。」

 

りみ「はい。私、チョコが好きで、チョコを使った料理、というか、デザートを見るのも好きなんです。いつか私も、こういうの作ってみたいなぁって思いながら見るのが、とても楽しみです。」

 

楓「そう、なんだ。(牛込さんも、チョコ好き、なんだな。)」

 

りみ「……ジー」シ

 

楓「……な、何?牛込さん。僕の顔に、なんかついてる?」

 

りみ「あ、い、いえ、そういうわけじゃ、ないん、ですけど……」

 

楓「?」

 

りみ「……あ、あの、空見先輩。」

 

楓「……は、はい。」

 

りみ「……あ、あの後、どう、なりましたか?」

 

楓「? あの後?」

 

りみ「あ、あの後はあの後ですよ。ほら、昨日の、……ひ、膝枕の…「別になんともないよ!」え!?」

 

楓「あ、いや、ごめん。えっと、……うん、そう。あの後は別に、何もなかったよ。」

 

りみ「そう、なんですか?」

 

楓「うん。たまたま、友達が公園の前を通ってさ、そのときにすぐやめたから。」

 

りみ「は、はぁ。」

 

間違ってはない、間違ってはない、……はず。

 

……あ、そうだ。

 

楓「えっと、ところでさ、牛込さん。」

 

りみ「? はい。」

 

楓「Glitter Greenの、ボーカルの人、いるじゃん?」

 

りみ「あ、それ、私のお姉ちゃんです。」

 

楓「あ、やっぱりそうなんだ。」

 

りみ「やっぱり?……私そのこと、空見先輩に話してましたっけ?」

 

楓「いや、話してもらったんじゃなくて、たまたま知った、的な感じだよ。」

 

りみ「たまたま?」

 

楓「あのさ、この前牛込さん、SPACEでライブ、でいいのかな?してたでしょ?戸山さんと市ヶ谷さんといっしょに。」

 

りみ「あ、はい。」

 

楓「そのときにさ、牛込さんが言ってたじゃん。その、Glitter Greenのボーカルの人のことを、お姉ちゃんってさ。覚えてる?」

 

りみ「え?……あ、そ、そういえば///。」

 

楓「そのときに、まぁ、知ったんだよ。」

 

りみ「あ、あのときは、その、お姉ちゃんが無事ライブに間に合ったことが嬉しくて……。つい、あんな大勢の前で、……い、今思うと、恥ずかしい///。」

 

楓「あ、……な、なんか、ごめん。」

 

りみ「い、いえ、いいんです……。もう、過ぎたことですし……。」

 

楓「そ、そう……。……そ、それでさ、僕、昼休みに牛込さんのお姉さんと会ったんだよ。」

 

りみ「! そうだったんですか!?」

 

楓「うん、図書館でね。で、そのときに言われたんだよ。もしだったら今日、ライブ見に来てくれって。」

 

りみ「そ、そうなんです!今日SPACEで、またグリグリのライブがあるんです!丁度私、行こうと思ってたところなんです。」

 

楓「あ、そうだったんだ。」

 

そっか、やっぱライブってそういうことだったのか。

 

りみ「……あ、あの、空見先輩。」

 

楓「ん?」

 

りみ「も、もし、迷惑じゃなかったら、その、……ライブ、いっしょに行きませんか?」

 

楓「え?……い、いいの?」

 

りみ「は、はい!空見先輩が、良ければ。」

 

楓「いや、僕は全然良いよ。むしろ、そっちのほうがいいぐらい。」

 

りみ「へ?」

 

楓「え?僕、なんか変なこと言った?」

 

りみ「……い、いえ……///。」

 

楓「? そう?」

 

いっしょに行けば、SPACEへの道も覚えられるし、1人で行くよりもいろいろと楽だから、一石二鳥って意味だったんだけどな。

 

なんか変な意味に聞こえたかな?

 

りみ「……じゃ、じゃあ、空見先輩。さっそく、SPACEのほうに、向かいましょうか。」

 

楓「そ、そうだね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

楓「へぇー。蔵でライブだから、”クライブ”か。そりゃまた、斬新なライブだね。」

 

りみ「はい。斬新で、とても楽しかったです。今度またクライブやるときは、空見先輩にも来てほしいです。」

 

楓「僕も?……うん、そうだね。楽しみにしてるよ。」

 

りみ「はい、楽しみにしててください。……あ、空見先輩着きましたよ、SPACE。」

 

楓「あ、ほんとだ。話してたらすぐだったね。……お、あれは。」

 

僕の目についたのは、建物の前に置いてあるミニ黒板だ。

 

そこには、今日のライブに出演するバンドの名前が描かれている。

 

……Glitter Green以外、みんな知らないバンドだな。

 

りみ「空見先輩、入りましょう。」

 

楓「あ、うん。」

 

カランコロン

 

楓「おぉ、結構人いるなぁ。」

 

りみ「SPACEでライブがある日は、いつもこれくらい混んでるんですよ。」

 

楓「そうなんだ。」

 

……ん?

 

いつも?

 

……もしかして牛込さんって、ここの常連?

 

楓「ねぇ、もしかして牛込さんって……って、あれ?」

 

……牛込さん?

 

……あれ?

 

牛込さん、どこ行ったんだ?

 

りみ「……空見先ぱーい。」

 

あ、いた。

 

楓「良かったー。急にいなくなるからどうしたのかと…「はい、これ。」え?……これって……」

 

りみ「ドリンクチケットですよ。さ、何か飲み物頼んで…「ちょ、ちょっと待って?」?」

 

楓「もしかして、僕の分のお金……、牛込さんが?」

 

りみ「? はい、私が払いましたけど……」

 

……さっき一瞬いなくなったのはそういうことかー!

 

楓「ご、ごめん牛込さん!今お金払うから!えーっと、確か高校生は…「い、いいですよ別に!」で、でも……」

 

りみ「わ、私が予約してた本を、持ってきてくれたお礼です。」

 

楓「いや、でも、そんなちっぽけなことで…「いいから!私に払わせてください!」! ……は、はい。」

 

ぼ、僕のほうが一応年上なのに……。

 

ていうか、あの本はもともと松原さんが持ってたやつなんだけど……。

 

……。

 

りみ「ドリンク、何にしようかな~?」

 

……僕も、ドリンク選ぼ。

 

えーっと、オレンジジュースオレンジジュース……、……ん?

 

???「はい、ありがとうございます。……次のお客様どうぞーって、あ、りみ、それに空見先輩も。」

 

りみ「おたえちゃん、こんにちは。」

 

楓「……花園さん?何してんの?こんなところで。」

 

たえ「バイトです。」

 

楓「バイト?花園さん、SPACEでバイトしてるんだ。」

 

たえ「言ってませんでしたっけ?」

 

楓「うん、初耳だよ……。」

 

たえ「そうでしたか。……それでりみ、空見先輩、ドリンクはもう決まりましたか?」

 

あ、もうその話は終わったんだ。

 

りみ「あ、それじゃあ私は、烏龍茶で。」

 

たえ「空見先輩は?」

 

楓「あ、えっと、僕はオレンジジュースを……」

 

たえ「オレンジ……」

 

りみ「ジュース?」

 

……へ?

 

僕、なんか変なこと言いました?

 

たえ「……空見さんって、意外と可愛いの選ぶんですね。」

 

楓「え?……か、可愛いって、僕はただオレンジジュースが好きだから…「はい、烏龍茶とオレンジジュース、お待たせしましたー。」……」

 

りみ「ありがとう、おたえちゃん。」

 

たえ「はい、空見先輩。」

 

楓「あ、ありがとう。」

 

たえ「……ライブ、楽しんできてくださいね。」ボソッ

 

楓「!?」ビクッ!

 

たえ「……ふふ♪」

 

りみ「? 空見先輩、どうかしましたか?」

 

楓「い、いや、何でも、ない……。」

 

……花園さんの考えてること、ほんとに分からない……。

 

今だって、その、……み、耳打ち?

 

何でいきなりそんなことをしたのか……。

 

……ほんとに、分からない……。

 

たえ「あ、りみ、空見先輩、もうライブが始まるみたいですよ。」

 

りみ「あ、ほんとだ。それじゃあおたえちゃん、私達行くね。」

 

たえ「うん。またね、りみ。」

 

りみ「うん。また明日、学校でね。行きましょう、空見先輩。」

 

楓「う、うん……。」

 

たえ「(……耳打ちしただけであんなに動揺するなんて。空見先輩って、面白い人だなぁ。)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ワー!ワー!

 

す、すごい熱狂……。

 

りみ「グリグリは確か、最後のトリですね。」

 

楓「トリかぁ。……じゃあそれまでは、他のバンドの曲を堪能するとしようか……、って、牛込さん?それ、何?」

 

りみ「え?何って、サイリウムですけど。」

 

楓「いやまぁ、それは分かるんだけど……。……あ、もしかして、グリグリの応援、的な?」

 

りみ「的な、じゃなくて、そうなんですよ!」

 

楓「あぁ、……そう。」

 

牛込さん、グリグリのライブ来るとき、いっつもサイリウム持ってきてんのかな?

 

りみ「はい。」

 

楓「え?な、何?」

 

りみ「空見先輩の分のサイリウムですよ。これでいっしょにグリグリを応援しましょう!」

 

楓「は、はぁ……。」

 

さては牛込さん、結構グリグリのガチファンだな?

 

まぁ、お姉さんがいるから当たり前っちゃ当たり前なのかもしれないけど。

 

「それじゃあ1曲目!いっくよーー!!」

 

お、始まった。

 

全然知らないバンドだけど、ま、そこはノリで楽しみますか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今回のライブは、次のバンドでラストとなります!ラストはもちろん、Glitter Green!!」

 

りみ「! 来た!グリグリの番ですよ!空見先輩!」

 

楓「う、うん。」

 

りみの姉「……SPACE!!遊ぶ準備は出来てますかー!!」

 

ワー!ワー!

 

ヒューヒュー!

 

! す、すげぇ……。

 

これ、今日のライブで一番盛り上がってるんじゃ……。

 

りみ「お姉ちゃーーん!!」

 

うおっ!

 

牛込さん、ガチじゃん。

 

りみ「ほら、空見先輩も!」

 

楓「ぼ、僕も?いや、でもちょっと恥ず…「恥ずかしがらなくても大丈夫ですって。周りもこんな感じですから。」……。」

 

りみ「ほら早く!空見先輩!」

 

楓「……い、イエーイ……」

 

こんなこと、1人だったら絶対しない……。

 

りみの姉「(! あれは、空見くんとりみ。ライブ、2人で来てくれたんだ。……ふふ、後でお礼言っとかないとね。)それでは聞いてください!!『Don't be afraid!』!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『探してた♪ハジけた色の夢♪』

 

……すごい。

 

グリグリオンリーのライブ、初めて見たけど、……すげぇカッコいい……。

 

白鷺さんと来たときは、戸山さんと市ヶ谷さんと牛込さんwithグリグリって感じだったから、本当のグリグリのライブってわけじゃなかったんだよな。

 

グリグリオンリーのライブ、いつか見てみたいなぁとは思ってたけど、まさかこんな早く見れるとは……。

 

マジ牛込さんに感謝だな。

 

……にしても、ほんとカッケーなぁ。

 

たまにやる音楽番組とかでいろんなバンドの曲を聞いてきたけど、それに負けず劣らず…、いや、もはやこっちのほうが良いんじゃないかってぐらいのかっこよさなんだよな。

 

なんか、こう、……聞いてると、体にビリッて稲妻が走ったり、落ち込んでるときや悲しんでるときに聞いたらすごく元気が出たり、……そうだな、あとは……。

 

 

 

 

 

『あのときの演奏、すごくキラキラしてましたよね!』

 

 

 

 

 

そう、キラキラ。 

 

稲妻が走ったり、元気が出たり、キラキラしたり。

 

きっと、グリグリの、Glitter Greenの曲は、聞いてる人達をそんな感じにさせてくれるんだよな。

 

僕も含めて。

 

……ヤバい、自分で言ってて(言ってない)なんか恥ずかしくなってきた……。

 

カッコ、つけすぎたかな?

 

 

 

 

 

『Don't be afraid!掴め!強く!初めてのこの高鳴りは♪』

 

 

 

 

 

お、サビに入ったっぽいな。

 

牛込さん、盛り上がってんだろうな~……、って、あれ?

 

りみ「……」

 

……なんか、浮かない顔してる。

 

……どうしたんだろ、何かあったのかな?

 

りみ「……?空見先輩、どうかしたんですか?」

 

楓「え?あ、いや。……そ、それはこっちのセリフだよ。」

 

りみ「え?」

 

楓「いや、さ。……牛込さん、なんか浮かない顔してたから、何かあったのかなって思って。」

 

りみ「あぁ、……いえ、何もありませんよ。大丈夫です。」

 

楓「そ、そう……。ならいいんだ…「空見先輩。」ん?」

 

りみ「どう思います?お姉ちゃんのこと。」

 

楓「え?ど、どうって、えっと…「カッコいいですよね。」あ、……うん。カッコいい、僕もそう思うよ。」

 

りみ「……私、お姉ちゃんになりたいんです。」

 

楓「……へ?」

 

りみ「……!ちゃ、ちゃう!そうじゃなくて、えっと、お、お姉ちゃんみたいになりたいって意味で、それで……」

 

楓「わ、分かった、分かったから、ちょっと落ち着いて。」

 

てか今牛込さん、ちゃうって言った?

 

……気のせい?

 

いや、たぶん気のせい、ではないな。

 

りみ「す、すいません。すぅ、はぁ、すぅ、はぁ。……えっと、……私、お姉ちゃんみたいになりたいんです。」

 

楓「お姉さん、みたいに?」

 

りみ「はい。お姉ちゃんのような、カッコいいベーシストに。あ、お姉ちゃんはギター、私はベースと、担当楽器は違うんですけど、私のベース、お姉ちゃんからもらったもので、だから、えっと、その…「だ、大丈夫。言いたいことはだいたい分かったから。」え?そ、そう、ですか?」

 

……さっきまでは、年上であるはずの僕が圧倒されるほどグリグリガチ勢みたいな感じだったのに……。

 

もしかしたらこれが、牛込さんの素、なのかもな。

 

 

 

 

 

『恋をしたみたいだ♪』

 

 

 

 

 

りみ「!」

 

楓「あ、もしかして、もうすぐ終わり?」

 

りみ「は、はい。今のアウトロの演奏で、この曲は終わりです。」

 

楓「そっか。……じゃ、最後はしっかり応援しないとね。」

 

りみ「……は、はい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

りみの姉「今回のライブのトリをやらせていただきました!せーのっ!」

 

Glitter Green「Glitter Greenでした!!」

 

ワー!ワー!

 

りみの姉「みんなー!またねー!!」

 

グリグリサイコウーー!!

 

マタライブクルネーー!!

 

楓「……終わっちゃったね。」

 

りみ「はい。でも、めーっちゃ楽しかったです!やっぱりグリグリは、最高のバンドです!」

 

楓「最高のバンド、か。……良いよね、自分にそういうのがあるって。」

 

りみ「空見先輩には、ないんですか?自分が思う、最高のバンド。」

 

楓「僕は、バンドに関してはまだ全然詳しくないから。今日のライブや前に白鷺さんと来たときのライブに出てたバンドも、正直Glitter Greenしか分からないし。友達がバンドやってるみたいなんだけど、そのバンドの詳細とかはあまり知らないし。」

 

りみ「そうなんですか。……見つかるといいですね。自分が思う、最高のバンド。」

 

楓「うん、そうだね。」

 

 

 

 

 

りみの姉「りみー!空見くーん!」

 

りみ「あ、お姉ちゃん!」

 

りみの姉「まさか、2人で来てくれるなんて思わなかったよ。空見くんがりみを誘ってくれたの?」

 

楓「いえ、その逆です。」

 

りみの姉「逆?ってことは、りみが空見くんを?」

 

りみ「う、うん。」

 

りみの姉「へぇ~。やるじゃんりみ~。」

 

りみ「そ、そんなんじゃないよ、お姉ちゃん///!」

 

楓「……」

 

りみの姉「空見くん、どうだった?私達、Glitter Greenのライブは。」

 

楓「あ、はい。それはもう、すごく良かったです。あと、とても、カッコよかったです。」

 

りみの姉「そう、ありがとう♪」

 

???「ゆりー、あなたも片付け手伝ってー。」

 

ゆり「今行くー!じゃありみ、また家でね。」

 

りみ「うん!」

 

ゆり「空見くんは学校で、ね。」

 

楓「は、はい。」

 

???「ゆりー、早くー!」

 

ゆり「今行くってばー!それじゃあね、二人とも、気をつけて帰るんだよ。」

 

りみ「うん。」

 

楓「あ、あの!」

 

ゆり「ん?」

 

楓「……またライブ、見に来てもいいですか?」

 

りみ「! もちろん!大歓迎だよ!あ、もしだったらりみ、私達のライブの日程、空見くんにメールで送っときなよ。」

 

りみ「え?で、でも私、空見先輩の連絡先持ってな…「交換すればいいじゃん。」そ、そうだけど~。」

 

……また、女子の連絡先が一つ増えるのか。

 

ゆり「うーん。じゃ、私が自分とりみの連絡先を教えるよ。それならいいでしょ?」

 

りみ「お姉ちゃんが?……まぁ、それなら、いいけど。」

 

え?

 

自分と、牛込さんの?

 

ってことは、……2人ってこと!?

 

ゆり「それじゃあさっそく…「ゆーりー?」ギクッ!……せ、生徒会長……。」

 

え!?

 

この人生徒会長だったの!?

 

生徒会長「こういうときだけ生徒会長呼びするのやめて。……ゆり、あなたにはお説教が必要…「すぐやる!すぐやるから~!」……」

 

楓「……」

 

りみ「お、お姉ちゃん///。」

 

生徒会長「……会うのは初めてね、空見楓くん。」

 

楓「! は、はい!」

 

生徒会長「どう?学校には慣れた?」

 

楓「あ、はい。最初よりは、まぁ、少し。」

 

生徒会長「そう。……良かった。」

 

楓「へ?」

 

生徒会長「空見くん、何か困ったことがあったら、いつでも私に相談してね。……はい、これ。」

 

楓「? あの、これは…「私とゆりの連絡先よ。」! い、いいんですか!?そんなの勝手に……」

 

生徒会長「大丈夫よこれくらい。それとも、一度に2人の先輩の連絡先をもらうことに、何か問題でも?」

 

楓「いや、問題とかそういうんじゃ…「じゃあ決まりね。はい。」……は、はぁ。」

 

生徒会長「それじゃ、私はそろそろ楽屋に戻らなくちゃだから。」

 

楓「あ、えっと、……あ、ありがとうございます。」

 

生徒会長「うん。じゃあね、空見くん、りみちゃん。」

 

りみ「さ、さようなら!」

 

……生徒会長が、グリグリのメンバーだったなんて。

 

てか、生徒会長の連絡先なんかもらっちゃったよ……。

 

これ、登録しといていいもんなのかなぁ?

 

オーナー「あんた達、用が済んだんならさっさと出な!」

 

! こ、この人は確か、オーナー、さん……。

 

楓「は、早く出よう、牛込さん。」

 

りみ「は、はい。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの後牛込さんとは、SPACEの前で別れた。

 

別れる前に少し話をしてたが、そのときの牛込さん曰く、都合が合ったらまたいっしょにグリグリのライブ見に来ましょう、だそうだ。

 

……最高のバンドか~。

 

グリグリのライブ見たら、白鷺さん達がやってるバンド、えーっと、『Pastel*Palettes』、『ハロー、ハッピーワールド!』、『Roselia』だっけ?

 

その3つのバンドのライブも見たくなってきたな。

 

今度見せてもらえるか聞いてみようかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ちなみに生徒会長からもらった連絡先、そのままにしとくのももったいないと思ったので一応登録しといた。

 

そしたら牛込さんのお姉さんの連絡先を登録した1分後に即効牛込さんの連絡先が送られてきた。

 

仕事が早いお姉さんだこと……。




FILE LIVE見に行きたい……。

でも金がない……。

あ、でも10月になればおこづかい復活するわ。

というわけでFILE LIVEはハロハピの色紙が入場者特典になってる週にでも行こうかな。


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24話 二人+αの七番勝負

どうも、知栄砂空です。

めちゃくちゃ大きな台風が近づいてるということで、ちょっと怖いなーと思ってる今日この頃です……。

……以上!


【空見家 楓の部屋】

 

それは、昨日の夜の出来事だった。

 

夕飯を食べ終わって自分の部屋に戻った後、“それ”は突然来た。

 

『……プルルルル……プルルルル……』

 

楓「ん?電話?」

 

僕が部屋に入って布団の上に座ったとき、タイミングよく電話がかかってきた。

 

誰からだろうと思い、充電してあった携帯の画面を見てみると……。

 

楓「……え?」

 

そこに映ってたのは、知らない番号だった。

 

名前のところにも『無名』としかかいてなく、完全に知らない人からの電話だった。

 

楓「……」

 

僕は、その着信を拒否した。

 

拒否してから携帯を置き、漫画を読もうと本棚に手を伸ばし…『プルルルル……』「え、また?」……漫画を取ろうと思ったら、再度電話がかかってきた。

 

さっきとは違う番号かもしれないので、一応確認してみた。

 

が……。

 

楓「……またかよ。」

 

案の定、同じ番号からだった。

 

もちろんまた着信拒否して、改めて漫画を取ろうと…『プルルルル……』だからなんなんだよこの番号!!

 

もーうぜえなぁマジで!!

 

僕は心の中でキレた。

 

そして、決めた。

 

着信拒否されながらももう3回もかけてきたということは、どういうことか分かるか?

 

……そう。

 

こいつは、この番号のやつは、きっとまたかけてくるはずだ。

 

でば、僕はいったい何を決めたのか。

 

……なぁに、簡単なことだ。

 

次電話がかかってきたら、今度は着信拒否せずにちゃんと電話に出る。

 

ただ、普通に電話に出るわけではない。

 

そうした途端、いくつかの暴言をありったけ一気に吐きまくってやるのだ。

 

そうやって精神的に追い詰めながら、知らない人から、しかも何回もかかってきたことで生まれた怒りを、嫌というほどぶつけてやる。

 

年上?年下?そんなの関係ない。

 

知らない人からの電話ほど怖いものはない。

 

そのことを、身をもって味わえさせてやるのだ。

 

『……プルルルル……』

 

! 来た!

 

さぁ覚悟しろ、知らない人!

 

知らない人からの電話、そこで一気に浴びせられる暴言に、恐怖に、おののくがいい!!

 

 

 

 

 

『松原さん』

 

……あれ?

 

……松原さん、だ。

 

……なんか、一気に力が抜けた……。

 

……まぁいいや。

 

電話、出るか。

 

楓「……もしもし。」

 

花音『あ、空見くん。良かったぁ、出てくれて。』

 

楓「(良かった?)……何か、僕に頼みたい事でもあったの?」 

 

花音『え?何で?』

 

楓「いや、だって松原さん、出てくれて良かったって言ったから……。」

 

花音『あぁ、それね。……うん、まぁ、似たようなものかな。』

 

楓「似たような?……何の話?」

 

花音『えっと、……私の前にも、3回くらい、誰かから電話がかかってこなかった?』

 

楓「え?……うん、かかってきたけど……。……って、え?何で知ってるの!?」

 

花音『そ、それは……』

 

楓「……」

 

花音『……と、とにかく!空見くん!』

 

楓「は、はい!」

 

花音『次その子から電話かかってきたときは、ちゃんと出てね。』

 

花音「え、いや、でも…『分かった!?』は、はい分かりました!」

 

花音『……じゃあ、そういうわけだから……。……切るね、空見くん。』

 

楓「え?いや、ちょっと待…『おやすみ。』……お、おやすみ……。」

 

プツン

 

……切れた。

 

……。

 

……次またさっきのやつから電話がかかってきたら、そのときはちゃんと出る。

 

……はぁ。

 

僕の暴言計画が……。

 

『……プルルルル……』

 

うわっ!

 

こ、今度は、誰だ……、! き、来た!

 

『無名』

 

……これ、出ても大丈夫なやつなのかなぁ?

 

……、……、……大丈夫なほうに、賭けてみるか。

 

怖い、めちゃくちゃ怖いけど、……松原さんが、出ろって言うんだもん。

 

きっと、大丈夫、だよね?

 

……よ、よし。

 

……で、では、いざ行かん!

 

そして僕は、『無名』とついた人からの電話に、おそるおそる出た。

 

果たして、僕に着信拒否されながらもめげずに3回もかけてきた、たぶん松原さんの知り合いでなのであろう『無名』の人の正体とは!

 

楓「も、もしもし?」

 

 

 

 

 

???『……はぁ、やっと出てくれましたか。』

 

ん?

 

……なんか、聞き覚えがあるぞ?

 

そう、この声は確か、僕にショッピングモールへの道を教えてくれた……。

 

美咲『空見先輩、あたしです。奥沢美咲。分かりますか?』

 

そうそう、奥沢美咲……え?

 

奥沢……さん?

 

……。

 

楓「……えっと、もしかして、さっき僕に3回も電話かけてきたのって…『あたしですよ。流石のあたしもどんどんいらいらしてきて、3回目に着信拒否されたときなんか、もうほんと空見先輩をぶん殴ってやりたいくらいでした。』……」

 

……僕はどうやら、もう少しでとんでもない大失態をおかしてしまうところだったらしい。

 

今回はなんとか失態で済んだものの、もし暴言計画を実行していたら、今頃どうなっていたことか……。

 

楓「……ごめん、奥沢さん。」

 

美咲『もういいですよ。花音さんに聞いたら、どうやら悪気があってやったわけじゃない、って分かりましたし。』

 

楓「……」

 

美咲『それで空見先輩、あたしが電話したのは、先輩にお願いが…「何でも。」へ?』

 

楓「何でもお申し付けください。奥沢様。」

 

美咲『……明日あなたを公衆の面前でボッコボコにぶん殴ってもいい…「ごめんなさいごめんなさい!!ほんとすいませんでしたー!」……はぁ。それで、あたしがお願いしたいことというのはですね……』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~翌日~

 

【遊園地】

 

ワイワイガヤガヤ

 

香澄「わーい!遊園地だー!」

 

こころ「みんな、とびっきりの笑顔ね!香澄!」

 

香澄「そうだね~。あ!こころん、まずはあれ乗ろ!」

 

こころ「いいわね!乗りましょう!」

 

美咲「2人とも、楽しみなのは分かるけど走らないの!」

 

香澄「はーい。……!見てこころん!美味しそうなホットドック売ってるよ!」

 

有咲「香澄!言ったそばから走るんじゃねー!」

 

楓「これは、確かに大変だ……。」

 

ここは遊園地。

 

とは言ってもただの遊園地ではなく、定期的にいろんな場所を回りながら経営している、移動遊園地というやつだ。

 

今日はその移動遊園地に、市ヶ谷さんと奥沢さん、戸山さん、弦巻さんと来ている。

 

まぁ、僕は“付き添い”という立ち位置だが。

 

美咲「空見先輩、今日は来てくれてありがとうございます。」

 

楓「え?あ、うん。」

 

美咲「あたし達でこころと戸山さんの2人を、しかもこんな広いところで面倒見るのは流石に大変なので。ね、市ヶ谷さん。」

 

有咲「あ、うん。空見先輩、今日は1日、よろしくお願いします。」

 

楓「そ、そんなかしこまらなくてもいいって。」

 

奥沢さんは最初、松原さんについてきてもらう予定だったらしい。

 

しかし松原さんは用事があったためそれができなかった。

 

そこで松原さんは僕についてきてもらうのはどうかという案を出し、奥沢さんに僕の電話番号を教え、そして昨日の夜の出来事に至ったらしい。

 

美咲「しかし空見先輩、知らない番号からの電話には絶対出ないって、どんだけ怖がりなんですか……。」

 

楓「だ、だって、それで電話に出た結果ヤバい人達にお金用事しろって脅されるなんてことがあったら…「あるわけないでしょそんなこと。ドラマの見すぎですよ。」……た、確かにその例えは大げさすぎたけどさ。で、でも、やっぱり知らない人って怖いじゃん!」

 

美咲「分かりましたから。ほら、こころ達追いかけますよ。」

 

楓「え?」

 

有咲「こら香澄!ちょっと待てって!」

 

こころ「香澄、あたし、あのポップコーンが食べたいわ!」

 

香澄「いいねぇ!じゃあポップコーンも買いに行こう!」

 

有咲「あーもう!2人とも、うろちょろすんなー!」

 

楓「……」

 

美咲「空見先輩、今悟っても遅いですよ。」

 

……あの2人の付き添い、軽い感じでOKしたけど。

 

めちゃくちゃ骨折れそう……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

香澄「第1回!みんなでゴーカート勝負ー!」

 

こころ「イェーイ!」

 

楓・美・有「……」

 

香澄「ゴーカートは3人乗りだから、3人と2人に分かれて勝負だよ!」

 

こころ「それじゃああたしは、美咲と組むわ!」

 

美咲「いや、別にあたし、やるとは言ってないんだけど……」

 

香澄「よーし!有咲、頑張ろうね!」

 

有咲「なんで私がお前と組む前提なんだよ!」

 

……じゃあ僕は、隅っこのほうで待って…「空見先輩はどっちがいいですか?」……ん?

 

楓「え?い、いや、僕は隅っこのほうで待ってるから…「そんなこと言わずに、楓もいっしょに遊びましょう!」……いや、僕はいいって…ポン ?」

 

美咲「空見先輩、こうなってしまったこころには、逆らわない方がいいです。」

 

楓「……手慣れてるんだね。」

 

美咲「まぁ、結構長い付き合いですから。」

 

香澄「というわけで空見先輩、どっちに乗りますか?私と有咲のほうか、こころんと美咲ちゃんのほうか。」

 

有咲「だから、私は別にやらな…「まぁまぁ、市ヶ谷さん。ここは諦めよう。」お、奥沢さん……。……はぁ。」

 

え、何、僕が決めるの?

 

戸山さんのほうか、弦巻さんのほうかを?

 

……なんかゲームでありそうな展開……。

 

美咲「……もし決められないなら、公平に決めましょうか。」

 

香澄「公平に?」

 

こころ「どういうこと?美咲。」

 

美咲「公平に決めるっていったらあれしかないでしょ、じゃんけん。」

 

楓・香・こ・有「……あ~。」

 

香澄「よーし!じゃあ有咲、任せた!」

 

有咲「はぁ!?何で私なんだよ!」

 

こころ「美咲、絶対に勝ってちょうだい!」

 

美咲「向こうが市ヶ谷さんとなると、やっぱりこっちはあたしだよね……。」

 

有咲「な、なぁ奥沢さん。別に私は負けでいいから、じゃんけんなんてくだらないこと…「何言ってるの有咲!絶対勝たなきゃ!」だったらお前がじゃんけんすりゃいいだろ!」

 

楓「……はぁ。もう何でもいいから早く決めてよ……。」

 

美・有「あ、ご、ごめんなさい……。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

香澄「ゴーカート対決は~、私達の勝利~!イェーイ!」

 

有咲「あぁ~、疲れた~……。」

 

楓「だ、大丈夫?市ヶ谷さん。」

 

有咲「は、はい、なんとか……。」

 

結局じゃんけんは市ヶ谷さんと奥沢さんがした。

 

その結果僕は戸山さん達のほうに乗ることになり、ゴーカート対決はご覧の通り、こっちの勝ちということになった。

 

勝ったはいいけど戸山さん、車ぶつけすぎ……。

 

こころ「うーん、負けちゃったわね~。でも、楽しかったわ!」

 

美咲「こころはただ座って運転してるあたしに指示してるだけだったけどね。」

 

こころ「香澄!今度はどんな勝負をしようかしら!」

 

香澄「うーん、そうだなぁ~。」

 

いつの間にか勝負になってるし。

 

……ま、楽しそうならいっか。

 

有咲「あ~、それなら次私はパス。」

 

香澄「え~!どうして有咲~?もっと勝負しよ…「お前のへなちょこな運転のせいで疲れたんだよ!」へ、へなちょこ……。」

 

こころ「香澄!次はあれに行きましょう!」

 

香澄「ん?……げっ!お、お化け屋敷……?」

 

こころ「すっごく面白そうだわ!美咲、行くわよ!」

 

美咲「あ、ちょっとこころ!」

 

香澄「うぅ、ま、待ってよ~!」

 

楓・有「……」

 

ほんと、元気だなぁ弦巻さん。

 

有咲「……空見先輩は行かないんですか?」

 

楓「うん。……僕は、市ヶ谷さんのことを見てなきゃいけないから。」

 

有咲「え///!?」

 

楓「ほら、一応僕、先輩、だからさ。後輩の面倒を見るのって、先輩の仕事でしょ?まぁ、先輩って言われるほど偉い訳じゃないけどさ。」

 

有咲「……空見先輩。」

 

楓「このことは、後で奥沢さんに伝えとくから。とりあえず、どこか座れるところに移動しよう。」

 

有咲「……そう、ですね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

楓「……」

 

有咲「……」

 

……どうしよう。

 

カッコつけて先輩ぶったはいいものの、……この後どうすりゃいいんだ?

 

奥沢さんに昨日電話で、『自分が先輩であるという自覚を持って、あたし達一年生の保護者代わりをしてください。』と、なぜか上から目線に言われたから、ちょっと先輩感を出してみたんだけど、……合わねぇ。

 

僕にあんな先輩ぶったしゃべり方、合わないにもほどがあるよ……。

 

うぅ、気まずすぎる……。

 

有咲「……空見先輩。」

 

楓「! な、何?」

 

有咲「……この前の、あの人って……」

 

楓「え?」

 

有咲「あの、水色の髪の、……空見先輩が、その、……ひ、膝枕、してもらってた人って…「違うよ!」え?」

 

楓「松原さんは、その、彼女とかそういうんじゃ、全然ないから!ただの友達、友達だから!」

 

有咲「は、はぁ……。」

 

楓「ほんとだよ!ほんとだからね!?むきになって言ってるように聞こえるかもしれないけど、マジでほんとに違うから!」

 

有咲「……」

 

楓「……あ、えっと、その、……なんか、ごめん。」

 

有咲「……はは。」

 

楓「へ?」

 

有咲「花園さんと山吹さんの言う通りだ。空見先輩って、面白い人ですね。」

 

楓「……」

 

最近、よく面白い人って言われるの、ほんと何で?

 

僕ってそんなに変な人?

 

……まぁ半分は自覚してるけどさ。

 

有咲「私、あんまり友達とこういうとこ来たことないんですよね。」

 

楓「え?」

 

有咲「ていうか、こういうところ自体にくることがそんなないんですけど。」

 

楓「……うん、僕もそうだよ。」

 

有咲「……だから、こういうとこってどうやって楽しめばいいのか、よく分からなくて。弦巻さんと奥沢さんに会ったのも、今日が初めてで、ちゃんと話せる相手も香澄しかいないし。」

 

楓「今日が初めて?って、え、どういうこと?」

 

有咲「香澄のやつ、昨日唐突に遊園地行こうって言いだしたんですよ。私は最初絶対行かねぇって言ったんですけど、香澄がどうしてもどうしてもって何回も泣きついてくるもんだから、仕方なくOKしたんです。で、2人だけで行くのかって聞いたら、あと2人来るって言うじゃないですか。山吹さんと牛込さんでも来るのかなと思って聞こうとしたら、誰が来るかは秘密って言われて。教えろって言ったんですけど、少し落ち着けって牛込さんに止められて。で、この通りですよ。」

 

楓「……それはまぁ、なんというか、……災難?だったね。」

 

有咲「香澄のやつ、ほんと何考えてんのか分からないんですよ。最初の頃なんて来るなって言ってんのにしょっちゅう私の家来るし、何かあるとすぐ抱きついてくるし、クライブのときだって、花園さんは敵だったはずなのになぜかいっしょにライブすることになってたし。」

 

楓「……」

 

有咲「いつもいつもあいつに振り回されてばっかで、ほんと、嫌になりますよ。」

 

楓「……市ヶ谷さんは、戸山さんのことが好きなんだね。」

 

有咲「は?」

 

楓「あ。」

 

有咲「……、……///!///!!そ、そんなわけねぇだろ///!!べ、別に、香澄のことなんか、好きでもなんでもねぇっつーの!!」

 

楓「……ご、ごめん。」

 

有咲「……!ご、ごめんなさい空見先輩!私、先輩に向かって失礼なことを…「い、いいって別にそんなこと。僕も悪かったと思ってるから。」い、いや、空見先輩より私のほうが…「有咲ー!たっだいまー!」ガバッ! うわっ!こ、こら香澄!いきなり抱きつくなー!!」

 

……市ヶ谷さんと戸山さんって、仲良いんだな~。

 

美咲「空見先輩、いないと思ったらこんなとこにいたんですね。」

 

楓「あ、ごめん奥沢さん。メールで送ろうと思ってたの忘れてて……」

 

美咲「いいですよ別に。」

 

楓「それにしても、早かったね。帰ってくるの。」

 

美咲「あー、まぁいろいろありまして。」

 

楓「?」

 

こころ「お化け屋敷対決は、あたしの勝ちね!」

 

香澄「むぅ~、次は負けないからね!こころん!」

 

こころ「ええ、私も勝ちを譲る気はないわ!」

 

あ、勝ったの弦巻さんなんだ。

 

てか、お化け屋敷でどうやって勝負したんだろ?

 

香澄「じゃあ次はねー、……!こころん!大食い勝負はどう?」

 

こころ「いいわね!負けないわよ、ね、美咲。」

 

美咲「え、あたしもやるの?」

 

香澄「有咲!頑張ろうね!」

 

有咲「大食い勝負なんてやるか!ってかいい加減離せ!」

 

……市ヶ谷さん、まんざらでもない顔してるけどな~。

 

ひょっとしてあれか?

 

市ヶ谷さんってもしかして、ツンデレってやつか?

 

有咲「……何ニヤニヤしてるんですか空見先輩!見てないでこいつひっぺがすの手伝ってくださいよ!」

 

楓「えぇ?僕~?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

香澄「いやー、良い勝負だねぇこころん。」

 

こころ「ええ。とても楽しい勝負だわ!」

 

楓・美・有「はぁ……はぁ……はぁ……。」

 

香澄「ここまでゴーカート、お化け屋敷、大食い、コーヒーカップ、アトラクション(輪投げやピンボールなど)、ジェットコースターと勝負してきて、3対3か~。」

 

こころ「次で勝負が決まりそうね!最後の勝負にふさわしい場所はどこかしら?」

 

はぁ……はぁ……あ、あの2人、どこにそんな体力が……。

 

美咲「空見先輩、あの、……い、いろいろと、すいません。」

 

楓「い、いや、大丈夫だよ。それにしてもあの二人、すごいよね。あんなに遊んだのに、まだ勝負する体力が残ってるなんて。」

 

有・美「それが、こころ(香澄)の長所なんで。……え?」

 

長所、ねー。

 

香澄「じゃあ最後の勝負は、空見先輩に決めてもらう?」

 

へ?

 

こころ「いいわね!楓、あなたが勝負を考えてちょうだい!」

 

……え?

 

ぼ、僕が、勝負を考える?

 

しかも最後の?

 

……無茶ぶりすぎん?

 

美咲「あー、空見先輩、別に考えなくてもいいですよ。」

 

楓「え?」

 

有咲「空見先輩はただの付き添いだしな。」

 

香澄「え~!いいじゃん有咲のけち~!」

 

有咲「空見先輩が困るから言ってんだよ!」

 

……ただの、付き添い……。

 

美咲「? 空見先輩、どうしました?」

 

楓「……わ、分かった。」

 

美咲「え?……分かったって、何が…「勝負、……最後の勝負、僕が考えるよ。」! い、いいですよ空見先輩。わざとこころの口車に乗せられなくても…「てか、もう決めた。」え、え~?」

 

楓「最後の勝負にふさわしい場所、それは。」

 

香・こ「それは?」

 

有・美「……」

 

楓「……ここだ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヒヒーン!

 

ワン!ワンワン!

 

美咲「……こ、ここって……」

 

有咲「ふれあい広場、だよな?」

 

香澄「わぁ~!可愛い~!」

 

こころ「こんにちは、うさぎさん!あたしはこころよ!」

 

美咲「こころ、勝手に行かないの。」

 

楓「このふれあい広場で、一番なつかれた人の勝ち。何の動物になつかれても構わない。えさやりOK撫でるのOK、小動物は抱くのもOK。でも他の人の妨害をするのは禁止。」

 

美咲「そ、空見先輩、よくそんな勝負、あんな短時間で思い付きましたね……。」

 

楓「僕だってその気になればすぐひらめくんだよ。」

 

香澄「面白そう!よーし、頑張ろ!有咲!」

 

有咲「はいはい。」

 

こころ「美咲!あたし達も負けないわよ!」

 

美咲「分かったから、ルール違反しないの。勝負の前に動物を触るのはルール違反だよ。」

 

楓「……じゃ、じゃあ、準備はいい?」

 

香澄「待って。」

 

有咲「なんだよ香澄。」

 

香澄「空見先輩がチームに入ってません。」

 

楓「いや、今回僕はパスするよ。」

 

香澄「え~!いっしょにやりましょうよ、空見先ぱ…「それ以上先輩に迷惑かけたら私はこの勝負降りるからな。」え~!……うぅ、分かった。」……よし。」むぅ~。」

 

楓「あ、ありがとう、市ヶ谷さん。」

 

有咲「いえ。」

 

楓「……では改めて。両チームとも、準備はいい?」

 

香澄「うん!」

 

こころ「OKよ!」

 

楓「それじゃあ最終対決、どちらが多く動物になつかれるか対決、……スタート!」

 

香澄「よーし!負けないよこころん!」

 

こころ「私もよ!香澄!」

 

美咲「……空見先輩、意外とノリノリだね。」

 

有咲「ああ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

香澄「う~、君可愛いね~!あ、そうだ、君にえさあけるよ。はい。……!食べた!この子えさ食べたよ!」

 

有咲「ひ、羊って、触んの初めてだなー。……触っても、大丈夫なんかなぁ?」

 

こころ「見て、美咲!この子、頭まで上ってきたわ!」

 

美咲「それは、ルール上、問題ない、のかな……?」

 

……戸山さんチームも弦巻さんチームも、いい勝負だな。

 

これは、どっちが勝ってもおかしくないかも。

 

「クウ〜ン。」

 

楓「ん?……!」

 

な、なんだこの子!

 

柴犬、かな?

 

……か、可愛すぎる……。

 

このつぶらな瞳にもふもふの毛、猫も可愛いけど、犬もめちゃくちゃ可愛いな~。

 

「アオン!」

 

楓「お?お前は、……トイプーか。う~、お前も可愛いな~!っておわっ!」

 

何かと思ったら、ラブラドールか。

 

やっぱでかいな~。

 

それに可愛い……。

 

犬ってしょっちゅう鳴いてうるさいイメージだったけど、ふれあうとこんな可愛い生き物だったんだなぁ。

 

美咲「……うわぁ。」

 

こころ「どうしたの?美咲。」

 

美咲「見てよあれ。」

 

こころ「? ……まぁ!すごいわ楓!まるで犬使いね!」

 

有咲「おぉ、すげえな空見先輩。めちゃくちゃなつかれてんじゃん。」

 

香澄「あーん!何で誰も近寄ってきてくれないの~!」

 

楓「お?お前も撫でてほしいのか、よしよし。ってお前も?もう、甘えん坊だなぁ、お前らは。……うわっ!い、いきなりなめたらびっくりするって……ってうわっ!や、やめろって、おい、お前ら!」

 

有咲「……なんかあれ、ヤバくね?」

 

美咲「そ、空見先輩!?」

 

楓「ちょ、待って、ほ、ほんとに、無理だから。お、おい、待てって、そんなにいっぱいは無理だって~!」

 

だ、誰か、誰か助けて~~!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

楓「はぁ……はぁ……はぁ。」

 

美咲「だ、大丈夫、ですか?空見先輩。」

 

楓「な、なんとか……。」

 

有咲「しっかし驚きましたよ。空見先輩って、犬にあんななつかれるような人だったんですね。」

 

楓「いやぁ、僕もびっくりだよ……。」

 

犬に好かれるのは嬉しいけど、いっぺんにあんな大勢来られるのはねぇ。

 

……まぁでも、悪くなかったかも……。

 

普通にみんなめちゃくちゃ可愛かったし。

 

香・こ「……はぁ。」

 

美咲「で?2人はどうしてそんな落ち込んでるわけ?」

 

香澄「だって、勝負つかなかったんだもん。」

 

こころ「せっかく楓が面白い勝負を思い付いてくれたのに、残念だわ。」

 

有咲「いや、あれは事故みたいなもんだったし、勝負どころじゃなかったからしょうがなかったっちゃしょうがなかった、っていうか……」

 

香・こ「……」ズーン

 

有咲「あー、こりゃマジで落ち込んでんなー。」

 

美咲「戸山さんはともかく、こころもだもんね。相当残念だったんだ。」

 

楓「……」

 

こういうとき、どういう言葉をかけてあげればいいんだろう。

 

先輩として、何か僕にできることはないものか……。

 

ピンポンパンポーン

 

楓「ん?」

 

『本遊園地は、まもなく閉園のお時間となります。まだ園内に残っている方は、……』

 

美咲「あ、もう終わりみたいですね。」

 

有咲「まぁ、それなりには楽しめたんじゃね?」

 

ヤベェな。

 

早く、何か思い付かないと。

 

何か、2人を元気付けられる方法を。

 

美咲「2人とも、いつまでも落ち込んでないで早く行くよ。」

 

有咲「ここから入口まで、結構あるんだからな。」

 

ん?

 

……、……、……!

 

閃いた!

 

なんか、今日の僕冴えてるなぁ。

 

楓「ふ、2人とも。」

 

香・こ「?」

 

楓「僕たった今、新しい勝負思い付いたんだけど、……やる?」

 

香澄「新しい、勝負?」

 

こころ「あたしも香澄も、笑顔になれる勝負なのかしら?」

 

楓「た、たぶん、なれると、思う。……ほんとに、たぶんだけど。」

 

美咲「ちなみに、それはどういう勝負なんですか?」

 

楓「……ここから入口まで競走して、先に入口に着いたほうの勝ち。まぁ、単純にかけっこだね。」

 

有咲「か、かけっこって……」

 

美咲「徒競走って言い方のほうがよくありません?」

 

……言葉がかけっこしか出てこなかったんだもん。

 

香澄「徒競走……。」

 

こころ「先に入口に着いたほうの勝ち……。」

 

楓「……どう、かな?今なら人も少ないから、あまり迷惑はかけないと思うし。それに2人とも、よく走ってたから、走るの好きなのかと思って。」

 

香・こ「……」

 

有咲「……おい香澄、なんか言え…「燃えるね。」え?」

 

こころ「ええ、とても楽しい勝負になりそうだわ!」

 

美咲「こ、こころ?」

 

香澄「こころん!これが本当に最後の勝負だよ!」

 

こころ「香澄!あたしも全力で勝ちに行くわよ!」

 

有咲「……この2人、めちゃくちゃ燃えてる……。」

 

美咲「空見先輩って、この2人をやる気にさせるのほんと上手いよね……。」

 

……もしかして僕って、こういうの考える才能あるのか?

 

香澄「空見先輩!勝負開始の合図、お願いします!」

 

楓「あ、う、うん。」

 

こころ「楓!あなたは本当にすごいわ!あたしといっしょに、世界を笑顔にしましょう!」

 

楓「せ、世界!?……い、いや、遠慮しとくよ……。」

 

美咲「……空見先輩って、何であんなに好かれるんだろう?」

 

有咲「! お、奥沢さん、そ、それ…「あぁ、大丈夫、そういう意味じゃないから。あくまで友達としてって意味だから。」あ、そ、そうだよな。あはは……」

 

美咲「……」

 

有咲「……でも、私には分かったぞ。空見先輩が、いろんな人から好かれる理由。」

 

美咲「え、市ヶ谷さん、それほんと?」

 

有咲「ああ。……ま、教えないけどな。」

 

美咲「……自分で考えて答えを出せってこと?」

 

有咲「そういうこと。」

 

楓「そ、それじゃあいくよ。……位置に、ついて。」

 

香・こ「……」

 

有咲「お、始まるぞ。」

 

美咲「……うん、そうだね。」

 

楓「よーい、……ドン!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この2人の勝敗がどうなったかは、ご想像にお任せしよう。

 

け、決してめんどくさくなったとかじゃないぞ?

 

ここでどっちが勝ったかなんて言うと面白くないだろ?

 

そういうことだ。

 

あ、そういえば、遊園地を出て帰るとき、市ヶ谷さんに連絡先聞かれたな。

 

また女子の連絡先が増えた……。

 

この町に転校してきてからいろんな人と連絡先を交換する機会が増えたけど、それが全部女子って……。

 

……嬉しいんだけど、なんか、変な気持ち……。




ハロウィンイベントやり忘れた……。

りみりん報酬だったのに……。

……まぁいいや。

今回の報酬のりみりん、交換所にくるのはいつになることやら……。


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25話 兄弟を持つといろいろ大変

どうも、知栄砂空です。

ガルパとリゼロがコラボするらしいですね。

僕はリゼロに関しては完全に無知(エミリアとかの名前を知ってるぐらい)なのですが、もし紗夜さんがコラボガシャで星三か星四で出たら。

……引かざるを得なくなりそうですw。


【空見家 楓の部屋】

 

楓「zzz……。」

 

 

 

 

 

???「……ガチャ」

 

楓「zzz……。」

 

???「……起きろ。」ガバッ!

 

楓「うっ!い、いきなり何すんだよ。てか今何時?」

 

???「今丁度9:00だよ。今日はいっしょに予約してたゲーム買いに行くっつったろ。いいからさっさと起きて着替えて下来い。」

 

楓「……四つも年下のくせに偉そうに。」ボソッ

 

???「何か言ったか?」バキッ、ボキッ

 

楓「! な、何も!?」

 

???「……、……ガチャリ」

 

……ふぅ。

 

……眠。

 

……二度寝しようか…ガチャ !?

 

???「寝たら殺す。」

 

楓「……すいません。」

 

???「……ガチャリ」 

 

……翔真怖い。

 

中一に怯える高二って……。

 

……着替えて早く下行こ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【空見家 台所】

 

楓「ふわぁ~。……おはよー。」

 

翔真「おはよう。ほら、お前の分出来てるぞ。」

 

楓「あ、ありがとう。」

 

朝ごはんは、翔真が作ってくれたトーストとスクランブルエッグか。

 

……スクランブルエッグうまそ。

 

楓「翔真はもう食べ…「食べた。」そ。……いただきまーす。」

 

……うん。

 

普通に美味い。

 

こいつ、将来コックになりゃいいのに。(※楓はスクランブルエッグを作れるというだけで料理が出来ると思ってます)

 

翔真「……ケチャップかけねえの?」

 

楓「え?……あ、なんか足りないと思ったらケチャップか。」

 

えーっと、ケチャップケチャップ……あった。

 

翔真「……スタスタスタ」

 

楓「どこ行くの?」

 

翔真「二階。」

 

……あー、ん。

 

……美味い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【空見家 翔真の部屋】

 

ガラッ

 

翔真「……」ピコピコ……

 

相変わらず、翔真は自分の部屋でゲームをしていた。

 

しかしチャットはしてないようだ。

 

楓「……お前、今日何時に起きたの?」

 

翔真「6:00。それから8:30までずっとゲームしてた。」

 

楓「早くね?てか、朝もゲームしてたのかよ。」

 

翔真「あぁそうそう。今日お母さん早番だったよ。お父さんはいつも通りだけど。」

 

楓「ふーん。」

 

お母さんが早番のときは、帰りがいつもより早い。

 

逆に遅番のときは、帰りがいつもより遅くなる。

 

じゃあ今日はお母さん、15:00頃には帰ってくるんかな?

 

楓「ところで、いつ出るの?」

 

翔真「お前の準備が終わり次第。」

 

楓「……もう終わってるんだけど。」

 

翔真「あ、そうだったん。じゃあちょっと待ってて。これだけやらせて。」ピコピコ……

 

楓「……早くしろよな。」

 

翔真「おう。」

 

マリー「にゃ~。」

 

楓「あれ、おはようマリー。今までどこにいたんだよ。」

 

マリー「にゃ~?」

 

楓「……まぁいいや。いっしょに下行こっか。」

 

マリー「にゃ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【空見家 リビング】

 

……ドンドンドンドン!

 

やっと降りてきた……。

 

翔真「おまたせー。」

 

楓「遅えよ翔真。お前に待ってろって言われてから10分も経ってんだぞ?」

 

翔真「悪い悪い。ちょっとあるエリアに手こずってて。あ、マリー!」

 

マリー「にゃっ!……にゃにゃ!にゃ~……にゃっ!」

 

翔真「俺にも貸せ。」パシッ

 

楓「あ、おい!……ったく。」

 

猫じゃらしとられた……。

 

僕が遊んであげてたのに。

 

翔真「よっ!ほっ!とっ!はっ!」

 

マリー「にゃっ!にゃっ!……にゃにゃっ!」

 

……まぁ、マリーが可愛いからいっか。

 

……ってそうじゃなくて!

 

楓「ほら、そろそろ行くぞ。」

 

翔真「うん。」

 

楓「……行くって。」

 

翔真「分かってるって。」

 

楓「……おい。」

 

翔真「先に外出て待ってて。」

 

楓「……はぁ。」

 

ほんと、翔真には呆れるわ。

 

スタスタスタ……。

 

 

 

 

 

楓「……ちゃんと鍵閉めて来いよー!」

 

翔真「おうー!」

 

……あとどれぐらい待てばいいんだか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【道中】

 

楓「ちゃんと予約票持った?」

 

翔真「は?お前に預けただろ?」

 

楓「え?……あ、そっか。」

 

翔真「それよりさ、お前に買ってきてもらった攻略本のやつ、めちゃくちゃ強えんだよ。そのせいであの攻略本、売り切れ続出らしいぞ。」

 

楓「へー。」

 

あの日は、ほんといろいろ大変だったなー。

 

楓「……そういやお前、最近どう?」

 

翔真「? 何、最近って。」

 

楓「いや、ほら、その……いろいろだよ。例えば……ほら、部活とか。」

 

翔真「あぁ、ちゃんとやってるよ。」

 

楓「ふーん。……”ちゃんと“、やってるんだ。」

 

翔真「なんだよその腹立つ言い方は。」

 

楓「いやぁ、お前のことだから、すぐやめるんじゃないかと思ってたからさ。友達に誘われたからテニス部に入ったとか、最初聞いたときは馬鹿かこいつ、僕と同じで運動嫌いなこいつだぞ?絶対続くわけねえってずっと思ってたし。」

 

翔真「……そろそろ殴るぞ?」

 

楓「だってほんとのことだし。」

 

翔真「お前じゃあるめぇし、そんなすぐに部活やめるわけねえだろ。」

 

楓「うん、まぁ、そうだな。」

 

翔真「……ほら、見えてきたぞ。」

 

楓「ん?……あの赤い屋根のやつ?」

 

翔真「そ。俺が最近行きつけのゲーム屋。」  

 

楓「へぇー。……

 

 

 

 

 

……ん?……は?……はぁ!?で、でっか!!」

 

翔真「そうだろ?俺も最初見たときはびっくりしたよ。ゲーム関連の店ってだけで三階建て。」

 

楓「三階……。お前、どうやってこんな店見つけたの?」

 

翔真「普通に友達から教えてもらっただけだけど。」

 

楓「え?あ、そう、なの。」

 

翔真「ほら、さっさと入るぞ。」

 

楓「あ、うん。」

 

……“ゲーム好きのゲーム好きによるゲーム好きのための店”。

 

……店名長っ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【ゲーム好きのゲーム好きによ…(以下ゲーム店)】

 

楓「……あれ?」

 

『……』ワイワイガヤガヤ……

 

楓「ゲーム屋なのに、ゲーセン?」

 

翔真「店名に"ゲーム好きのための店"ってあったろ。だったら、ゲーセンだって当然あるに決まってんだろ。」

 

楓「そ、そう、なんだ。……あ、あんなところに地図が。タッタッタ」

 

えーっと、一階がゲーセンで、二階がゲーム売り場、三階が中古屋か。

 

……1フロアがめちゃくちゃでけぇ。

 

翔真「おい楓、早く行くぞ。」グイッ

 

楓「いてっ!おい翔真、分かったから服引っ張んな!伸びる!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【ゲーム店 二階】

 

翔真「ここが二階だ。」

 

楓「おー……。」

 

スゲーな。

 

端から端までゲームだらけ……。

 

あ、ここ攻略本も売ってんのか。

 

そりゃでかいわけ……って待て。

 

……それでもこんなにゲーム関連のものがあるもんなのか?

 

……僕は翔真みたいなゲーマーじゃないから分からん。

 

翔真「おい楓、お前がいないとゲーム買えねえんだぞ。」

 

楓「わ、分かってるって。タッタッタ……」

 

 

 

 

 

楓「……ほら、予約票…パシッ ……」

 

翔真「じゃ、行ってくる。」

 

……はぁ。

 

あいつがゲーム買ってる間、ガチモンの攻略本でも探すか。

 

……にしても、ほんとゲーム関連しかないんだな、ここ。

 

ん?

 

……あ、そっか。 

 

オセロとかのボードゲーム、ウノなどのカードゲームとかも全部含むのか。

 

……そりゃあでかいわけだ。

 

よし、着いたぞ攻略本コーナー。

 

えーっと、ガチモンガチモン……。

 

……あ。

 

これ、翔真が今買ってるゲームの攻略本。

 

へぇ、初日からもう出てるんだ。

 

……持ってってあいつに見せてやろ。

 

 

 

 

 

楓・???「「スッ……え?」」

 

あ、ヤベ、他の人とかぶっちゃった。

 

楓「す、すいません。先にどうぞ。」

 

???「い、いえ、そちらこそお先に……って、え?」

 

楓「ん?……あっ!!」

 

 

 

 

 

翔真「おーい楓ー、ゲーム買えたぞー。予約特典も無事もらえ…「「山吹さん!!(空見先輩!?)」」あ?……誰だ?あの人。」

 

 

 

 

 

ま、まさか、こんなとこで山吹さんと遭遇するとは……。

 

ん?でも山吹さんがゲームって……なんか、想像つかないような…「ねーちゃーん!ゲーム買えたぜー!」え?

 

???「? ねーちゃん、その人は?」

 

沙綾「じゅ、純!?あ、えっとこの人はね、うちの学校の先輩で…「分かった彼氏だ!」そ、そんなんじゃないって///!!」

 

……山吹さんも、弟がいたんだ。

 

沙綾「ほ、ほら、それよりあったよ、純の探してた攻略本。これのことでしょ?」

 

純「! ほんとだ!ねーちゃんサンキュー!」

 

翔真「!? おい楓!聞いてねえぞ!このゲーム攻略本出てたのかよ!?」

 

楓「いや、僕も初めて知って…「お前もこのゲーム買ったの!?」え?」

 

翔真「え?……う、うん。」

 

純「なぁ、プレイキャラ何使う予定?俺ボクサー使うつもり。」

 

翔真「ボクサー?……それも考えてたんだけど、やっぱり俺はスナイパーかなー。」

 

純「スナイパー?銃が好きなの?」

 

翔真「いや、スナイパーだと遠距離攻撃が強くなるから対戦とかで使いやすいんだよ。デメリットは後ろからの攻撃に弱いことだけど、予約特典のアルティメットスコープを使えば360度全方向を見渡すことができるから、スナイパーとの相性抜群なんだ!」

 

純「おぉ!そういうのちゃんと考えてんのかー。スゲー!」

 

翔真「いや、これぐらいは基本だよ。」

 

 

 

 

 

沙綾「……あの子、空見先輩の弟、ですか?」

 

楓「うん。……ちなみに中一。」

 

 

 

 

 

純「なぁ!俺にこのゲームの秘訣を伝授してくれよ!」

 

翔真「ひ、秘訣?伝授?……いや、俺なんかに教えられることは何もねえし。それに第一、ゲーム機がないし……。」

 

楓「あ、ゲーム機なら持ってるよ。」

 

翔真「はぁ!?何でだよ!」

 

楓「いや、ゲーム買った後どっかでやるんじゃないかと思って、一応持ってきといた…「人のゲーム機勝手に持ってくんな!」……うん、それは、悪かった。」

 

純「じゃあ決まりだな!さっそく俺んち行こうぜ!」

 

楓・沙・翔「!?」

 

沙綾「ちょ、ちょっと待って純!何でうちなの!?」

 

純「え?ダメ?」

 

沙綾「いや、ダメっていうか、その……。……!ほ、ほら、確か一階に休憩スペースがあったじゃん?そこでやれば…「やだ。うちでやる。もう決めた。」え~?」

 

翔真「……なぁ楓、俺、どうすればいい?」

 

楓「し、知らん。僕は何も知らん。」

 

沙綾「うーん……。……!そうだお母さん!うちお母さんがいるから、騒いだらダメ…「お母さん今日お父さんといっしょに出かけるって言ってたぞ?」え?……!わ、忘れてた……。」

 

楓・翔「……」

 

純「というわけで俺んちでやろうぜ!えっと……」

 

翔真「……翔真。」

 

純「翔真!このゲームの秘訣を、俺に伝授してくれ!いや、してください!」

 

翔真「……」

 

純「頼む!この通り!」

 

翔真「……」

 

純「この前ガチモンで当てたダークシャドウナイトPB(プロミネンスバーニング)やるから!」

 

翔真「よし分かった!今すぐ行こう!」

 

楓「マジかよお前!?」

 

翔真「あぁマジだ!俺がめっっっっっっっっちゃ欲しかったプロミネンスバーニングをくれるっていうんだ。行かない手はないだろ!」

 

楓「いや、でも翔真。この子の家に行くってことは、その……や、山吹さんの家に行くってことに、なって…「お前の事情なんて知らねえよ。よし、じゃあさっそく行こうぜ!俺がこのゲームの秘訣を、これでもかってくらい叩き込んでやる!」……」

 

純「よろしくお願いします!師匠!」

 

……ど、どうしよう……。

 

楓「や、山吹さん、この二人、どうすれば…「もうこうなったら覚悟を決めましょう。」へ?」

 

沙綾「空見先輩!ガシッ!」

 

楓「! や、山吹、さん?」

 

沙綾「私は覚悟を決めました。だから空見先輩も、覚悟を決めてください!」

 

楓「……」

 

山吹さんが言わんとしてることは分かるけど……覚悟ってのは、流石に大げさじゃ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【山吹ベーカリー】

 

純「ここが俺んちだぜ!」

 

翔真「……パン屋さん、なんだ。」

 

純「もしだったら後でお土産に買っていけよ。それよりまずはゲーム開封だ!」

 

翔真「あ、ちょっと待て!俺も開ける!」

 

カランコロン♪

 

 

 

 

 

楓「……山吹さん、本当にごめん。」

 

沙綾「そんな、いいですって。私のほうこそ、うちの純がすいません。」

 

……それにしてもまさか、弟と二人で山吹さんの家に来ることになるとは。

 

まぁあいつは全然意識してないみたいだけど、僕と山吹さんからしたら、……ねぇ。

 

沙綾「……ず、すっと立ってるのも難ですし、とにかく今は、うちに入りませんか?」

 

楓「……でも、ほんとにい…「だから覚悟を決めましょうって。」グイグイ 分かった、分かったから押さないでよ。」

 

カランコロン♪

 

おぉ、やっぱりここのパンはうまそ…「翔真!早く部屋行ってゲームやるぞ!」「お、おう!」……あいつ、パンに全く興味ないな。

 

沙綾「純!ゲームするのはいいけど、私の部屋でやらないでよ?」

 

純「分かってる!ちゃんとリビングでやるよ!」

 

楓「……翔真も、人の家なんだからくれぐれも失礼な態度は…「分かってるっつーの。」……それならいいけど。」

 

沙綾「ほら、空見先輩も早く入ってください。」

 

楓「う、うん。……ねぇ、山吹さん。」

 

沙綾「何ですか?」

 

楓「今日は、パン屋さん休みなの?」

 

沙綾「はい、今日は定休日なんです。あれ?私、扉に『closed』の看板かけてませんでしたっけ?」

 

楓「え?あー……ごめん、気づかなかった……。」

 

沙綾「いえ、別にいいですよ。……では、私達は部屋に行きましょうか。」

 

楓「あ、うん。」

 

……部屋って、翔真達がゲームするっていうリビングかな?

 

……ん?

 

あれ?

 

楓「あー、や、山吹さん?」

 

沙綾「どうしました?空見先輩。」

 

楓「翔真達が行ったの、向こうだけど……。に、二階?」

 

沙綾「はい。私の部屋、二階ですから。」

 

……へ?

 

え、……え?

 

僕、山吹さんの部屋に案内されんの?

 

……ん?

 

……んーー!?

 

楓「あ、えっと……その、山吹さん?」

 

沙綾「もう、何度も何ですか?」

 

楓「翔真達と同じ、リビングでいいんじゃない?山吹さんの部屋っていうのは、その、僕的にも、山吹さん的にもなんかなーって…「リビングじゃ純達の邪魔になっちゃいますし、私ももう覚悟を決めましたから。」いや、覚悟とか、そういうんじゃなくて…「いいから部屋に着くまで黙っててください!」は、はい!」

 

……山吹さんって、怒らせたら意外と怖い人、なのかな……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【山吹家 沙綾の部屋】

 

沙綾「……ここが、私の部屋です。」ガチャ

 

楓「お、お邪魔しまーす……。」

 

こ、ここが、山吹さんの、部屋……。

 

……じょ、女子の部屋なんて来たの、初めてだよ……。

 

沙綾「私、お菓子とジュース持ってくるんで、空見先輩は座布団に座って待っててください。」

 

楓「わ、分かった。」

 

……ガチャ

 

……座布団、これか。  

 

いいのかな?座って。

 

……座って待ってろって言ってたから、たぶん、いいん、だよな?

 

……し、失礼しまーす。

 

……はぁ。

 

座布団に座るだけで、こんな緊張しなきゃいけないなんて……。

 

……にしても、綺麗だなぁこの部屋。

 

僕の汚い部屋とは大違いだ。

 

……ん?

 

あれは……写真か。

 

……流石に、勝手に見るのは、まずい、よな?

 

……うぅ、で、でも、ちょっと気になるなー。

 

……す、少しだけなら、……いい、か?

 

……よ、よし。

 

…………す、少しだけ、少しだけ……って、ん?

 

この写真に写ってる山吹さんの前にあるのって……ドラム、だよな?

 

……山吹さん、ドラムやってたんだ。

 

 

 

 

 

……ガチャ

 

! ヤベっ!サッ!

 

沙綾「お待たせしてしまってすいません、空見先輩。」

 

楓「ぜ、全然大丈夫だよ。気にしないで。」

 

沙綾「探してみたんですけど、うち、お菓子ないみたいで……。パン、でもいいですか?」

 

楓「も、もちろん!む、むしろ僕、パンのほうがいいかも、なんて。」

 

沙綾「そうですか。よかったです。」

 

ふぅ。

 

よかった、僕が勝手に写真を見たことはばれてないみたいだ。

 

……ん?

 

???「……」ジー……

 

楓「……あー、山吹さん?」

 

沙綾「何ですか?」

 

楓「その……後ろにいる子って……」

 

沙綾「あぁ、この子は妹の紗南です。ほら、紗南もあいさつして。」

 

紗南「……こ、こんにちは。」

 

楓「あ、こ、こちらこそ、こんにちは。」

 

山吹さん、弟だけじゃなく妹もいたんだ。

 

二人もきょうだいがいるって、大変だろうな~。

 

紗南「……お姉ちゃん。」

 

楓「ん?どうしたの?紗南。」

 

紗南「……紗南、友達と遊びに行ってくるね。」

 

楓「え?遊びにって、今から…ピュー! あ、ちょっと紗南!」

 

楓「……弟も元気だけど、妹のほうも、元気だね。」

 

沙綾「あ、あはは……。そうみたい、ですね。」

 

楓「……」

 

沙綾「……」

 

楓「……あ、えっと、……パン、もらっていい?」

 

沙綾「は、はい、どうぞ。」

 

……スッ

 

うまそー。

 

あー、ん。

 

……ん?

 

んー!

 

楓「うまっ!」

 

沙綾「それ、新作なんですよ。」

 

楓「そうなんだ。……これ、めちゃくちゃうまいよ。中のはちみつがちょうどいい甘さで、パンに降りかかってる粉も中のはちみつとマッチしてて……。」

 

沙綾「べ、べた褒めですね……。……そんなに美味しかったですか?これ。」

 

楓「美味しかったなんてもんじゃないよ。超!美味しかった!」

 

沙綾「ふふ、何ですかそれ~。」

 

楓「これ、もう売ってるの?」

 

沙綾「いえ、販売開始は明日からの予定です。」

 

楓「じゃあ明日、学校帰りに買いに来ようかな。」

 

沙綾「もしだったら、今日もう買っていきますか?」

 

楓「え、いいの?」

 

沙綾「はい。特別ですからね?」

 

楓「あ、ありがとう、山吹さん。」 

 

いやぁ、販売開始前に買えるとは、ラッキーだなぁ。

 

明日の朝ごはんにでも食べようっと。

 

純「ねーちゃんねーちゃん!」ガチャ

 

沙綾「純!?ど、どうしたの?」

 

純「充電器ちょうだい。確かねーちゃんの部屋にあるはずだから。」

 

沙綾「充電器?……そんなの、私の部屋にはないけど?」

 

純「そんなことねぇって。前にここでゲームしてたときに忘れてそれっきりだから、絶対あるはずなんだよ。」

 

沙綾「そ、そんなこと言われても……。」

 

楓「……!ねぇ、もしかして充電器って、これのこと?」

 

沙綾「え?」

 

純「! あった!ほらねーちゃん、やっぱ充電器あったじゃん!」

 

沙綾「……」

 

純「サンキューな、翔真のねーちゃん。ガチャ」

 

楓「……」

 

沙綾「……あ、ありがとうございます。空見先輩。」

 

楓「え?あ……うん。」

 

沙綾「まさか、ベッドの下に落ちてたなんて……。全然気づきませんでした……。」

 

楓「そ、それが普通だと思うよ?片付けとかしない限り、ベッドの下なんて見ないことが多いだろうし。」

 

沙綾「……確かに、そうかもしれませんね。」

 

……今の、ちゃんとフォローになってたかな?

 

沙綾「……あの。」

 

楓「ん?」

 

沙綾「空見先輩も、ゲームとか、やるんですか?」

 

楓「僕?……うん、まぁ、するよ。」

 

沙綾「そうですか。」

 

楓「……えっと、何で?」

 

沙綾「あ、いえ。ただ、ふと気になっただけで。」

 

楓「そ、そう……。」

 

……あ、あれ?

 

何だろう、この空気。

 

……まずい、非常にまずい。

 

このままじゃ、気まずいゾーンに入っちまう……。

 

な、何かしゃべらないと。

 

で、でも、何を?

 

何をしゃべればいいんだ!?

 

えっと、えーっとー…「空見先輩。」! 

 

楓「は、はい!」

 

沙綾「……」

 

楓「……?や、山吹、さん?」

 

沙綾「……今度。」

 

楓「え?」

 

沙綾「今度いっしょに、ゲームやりましょうね。」

 

楓「……へ?げ、ゲーム?」

 

沙綾「はい。いつもゲームしてる純を見てたら、私もやってみたくなっちゃって。今日行ったゲーム屋さんの一階、ゲームコーナーだったじゃないですか。だから、今度そこで、空見先輩とゲームやりたいなって思って。」

 

楓「そ、そっか。……うん。僕で良ければ、いつでもいいよ。」

 

沙綾「ふふ、ありがとうございます。空見先輩♪」

 

一時はどうなることかと思ったけど……。

 

ふぅ、気まずいゾーンに入らなくてよかった……。

 

……パン食べよ。

 

沙綾「あ、そういえば空見先輩?」

 

楓「ん?」

 

沙綾「そこに飾ってある写真、見ましたよね?」

 

楓「!」ギクッ!

 

沙綾「やっぱり。分かりやすいですね、空見先輩は。」

 

楓「……な、何で?」

 

沙綾「? ……あー。パンとジュース持ってきたとき、空見先輩がサッて動いたのが見えたので。」

 

ば、バレてた……。

 

楓「……ご、ごめん!勝手に人んちの写真見るのはまずいって思ったんだけど、どうしても気になっちゃって。えっと、だから、その……ご、ごめん!」

 

沙綾「……ふふ。」

 

楓「?」

 

沙綾「別に怒ってませんよ。写真を見られるようなところに置いとくのが悪いんですから。」

 

楓「……ほ、ほんと?」

 

沙綾「はい。」

 

よ、良かったぁ~。

 

バレてたって分かったときはマジで焦ったよ……。

 

山吹さんが優しい人でよかった……。

 

沙綾「……ちなみに私、ドラムなんてやってませんよ?」

 

楓「へ?」

 

沙綾「ここに写ってるの、友達のドラムなんです。友達が、私とドラムをいっしょに撮ったら絶対合うって言って、遊びで撮った写真なんです、これ。」

 

楓「そ、そうだったの?」

 

沙綾「はい。だから私は、別にドラムをやってたわけではありませんよ。」

 

楓「そ、そうなんだ。」

 

ま、まさか、僕がこの写真を見て思ってたことも見抜くなんて……。

 

あ、でも今のは誰でも思うか。

 

沙綾「それより空見先輩、このパン、どれくらい持っていきます?」

 

楓「え?あ、うーん……お任せって、あり?」

 

沙綾「はい、大丈夫です。」

 

楓「あ、じゃあお任せで。」

 

沙綾「分かりました。今持ってきますね。」

 

楓「ありがとう。」

 

……ガチャ

 

 

 

 

 

沙綾「……空見先輩、すみません。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

純「翔真!今日はありがとな!すっげー楽しかった!」

 

翔真「おう!俺も楽しかった!またやろうな!」

 

純「ああ!」

 

沙綾「……空見先輩、今日はほんとにありがとうございました。」

 

楓「いや、礼を言うのはこっちだよ。このパン、まさかただでくれるなんて思わなかったからさ。」

 

沙綾「そのパンを食べた人は、私の家族を除いて空見先輩が初ですよ。」

 

楓「じゃあ、また食べるときはちゃんと味わって食べるよ。」

 

沙綾「はい、お願いします♪」

 

翔真「よし、じゃあ行くぞ、楓。」

 

楓「あ、ちょっと待ってよ。」

 

純「じゃーなー!翔真ー!」

 

翔真「おうー!」

 

沙綾「空見先輩!また学校で!」

 

楓「うん!また!」

 

タッタッタッタ……

 

 

 

 

 

純「……行っちゃった。」

 

沙綾「あれぇ?もしかして純、寂しいの?」

 

純「! ち、違えよ!は、早く家入ってゲームの続きやろうっと。」

 

沙綾「ふふ、素直じゃないんだから。」

 

……ま、それは私も同じか。

 

……よし。

 

お父さんとお母さんが帰ってきたときに、パン作りの下ごしらえでもしますか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【帰り道】

 

翔真「……で?どうだったん?」

 

楓「どうって、何が?」

 

翔真「純のお姉さん。楓のガールフレンドなん…「そ、そんなんじゃないって!」ほんとかぁ?」

 

楓「ほんとだよ!山吹さんは、その、えっと……。……!こ、後輩!ただの後輩だから!」

 

翔真「でも、先輩と後輩が付き合うってのも、最近じゃ珍しくない…「だから!僕と山吹さんはそんなんじゃないってば!」……ま、俺にはどうでもいいことだけどさ。」

 

楓「どうでもいいなら聞くな!」




あと二話、あと二話だけ付き合ってください……。



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26話 後輩からの急な誘い

どうも、知栄砂空です。

Huluでのリゼロの配信が今月の30日までなので早く見なきゃと焦ってはいるものの見る時間がなかなかとれません。

てかイベントやらなきゃ……。

紗夜さんとリサ姉とらなきゃ……。


たえ「私と付き合ってください。」

 

楓「……」

 

『『『……』』』

 

花音「……お、おたえ、ちゃん?」

 

千聖「か、楓?」

 

現在僕は、1-Aの前にいる。

 

……とまぁ、そんなことはどうでもいいか。

 

みんなが気になるのは、今の花園さんの言葉だろう。

 

……では、説明しよう。

 

時は遡ること数分前……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜数分前〜

 

【花咲川女子学園 2-A教室】

 

花音「空見くん。今日のお昼ごはん、いっしょに食べない?」

 

と、松原さんにお昼に誘われたのが始まりだった。

 

楓「え……。でも、いいの?」

 

花音「もちろん!ね、千聖ちゃん。」

 

千聖「ええ。」

 

楓「(松原さんと白鷺さんとお昼ごはんか。……お花見のとき以来だな。)」

 

千聖「何ぼーっとしているの、楓。さっさと机くっつけなさい。」

 

楓「! は、はい!」

 

ガタンッ

 

ガタンッ

 

花音「……えへへ♪」

 

千聖「どうしたの?花音。」

 

花音「教室でこうして三人で机くっつけてお昼ごはん食べるのって、初めてだなって思って♪」

 

千聖「……ええ、そうね。」

 

楓「(パカッ おぉ、今日のお弁当はオムライスか。うまそー。あ、でもこのオムライス、確か中にグリーンピースが……。)」

 

花音「……?」

 

千聖「花音、座らないの?」

 

花音「あ、ごめん千聖ちゃん。お母さんから電話がきちゃって。ちょっと電話してきてもいい?」

 

千聖「いいわよ。」

 

花音「ありがとう。……タッタッタ」

 

楓「……」

 

千聖「……オムライス、好きなの?」

 

楓「え?あ、いや、別にそういうわけじゃないんですけど。たまたま今日が、オムライスだっただけで。」

 

千聖「ふーん。」

 

楓「……あ、あの、白鷺さん。何か、怒ってます?」

 

千聖「あら、そう見える?」

 

楓「じゃ、若干……。」

 

千聖「若干、ねぇ。……あなたも言うようになったじゃない。」

 

楓「そ、それは、どうも…「別に褒めてはないけど。」うっ……。」

 

千聖「……花音ね、ずっと楓といっしょにお昼を食べたがってたのよ。」

 

楓「え?」

 

千聖「オリエンテーションの時くらいから、ずっと言ってたわ。楓といっしょにお昼ごはんを食べたい、今日こそは楓をお昼に誘うんだって。」

 

楓「……」

 

千聖「それなのにあなたは、橋山さん達と先にお昼ごはんを食べ始めちゃったり、花音が誘おうと思ったら教室にいなかったりするし。」

 

楓「あ、えっと、それは…「言い訳はいいのよ!」! す、すいません……。」

 

千聖「とにかく楓。あなたは今日から、ここでお昼を食べなさい。私と花音と三人で。」

 

楓「で、でも、橋山さん達にはなんて言えば…「そんなこと自分で考えなさいよ!」は、はい!(……な、なんか今日の白鷺さん、やけにいらいらしてるなぁ。)」

 

『……プルルルル、プルルルル……』

 

楓「ん?」

 

千聖「何?あなたも電話?」

 

楓「は、はい、そうみたいです。……牛込さんからだ。」

 

千聖「牛込さん?」

 

楓「あとで説明しますよ。……もしもし?」

 

りみ『あ、空見先輩。こんにちは。』

 

楓「こんにちは。それで、どうしたの?牛込さん。」

 

りみ『すみません、実は……』

 

楓「……え?今すぐ1-Aの前まで来てほしい?」

 

千聖「!」  

 

りみ『はい。えっと、おたえちゃんが、空見先輩に用があるって。』

 

楓「花園さんが?……うん、分かった。」

 

りみ『わざわざすみません。』

 

楓「いや、いいよ。じゃ、すぐ行くから待ってて。」

 

りみ『はい、お願いします。では。プツンッ』

 

楓「……花園さんが用、か。」

 

千聖「あなた、いつの間に一年生の子達と交流してたのよ。」

 

楓「いや、交流ってほどでもないんですけど。まぁ、いろいろあって。……それじゃあ僕、ちょっといってきます。」

 

千聖「あ、ちょっと楓!待ちなさい!」

 

 

 

 

 

花音「……!空見くん!?え、どこ行くの!?」

 

千聖「花音、あなたもいっしょに来て。」

 

花音「ふぇぇ!?な、何がどうなってるの~!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

という感じで1-A前に呼び出され、そこで待ち構えていた花園さんに先程の告白を受け、今に至る。

 

楓「……え、えっと、花園さん?それはいったい、どういう意味で…「そのままの意味です。私と付き合ってください。」……」

 

……付き合って、ください。

 

……これはいったい、どっちの意味なんだ?

 

千聖「ちょ、ちょっとあなた!」

 

花音「あ、千聖ちゃん!」

 

千聖「何考えてるの!?こんな人がいっぱいいる中で告白なんて、あなた本気で言ってるの!?」

 

たえ「まぁ、どちらかというと本気ですね。」

 

千聖「どちらかというとって……。……そんな甘い気持ちで告白されても、誰もOKしないと思うけれど。」

 

たえ「私は空見先輩に言っているんです。他の人になんて告白しないし、甘い気持ちで言っているわけでもありません。だいいち、先輩には関係ないことだと思いますが。」

 

千聖「そ、それは……」

 

あ、あの白鷺さんが、押し負けてる……。

 

て、てか、まだどっちの意味の付き合ってくださいなのか分からないのに、どうしてそんなむきに……。

 

たえ「それで空見先輩。手始めに今日の放課後、いっしょにデートしてほしいんですけど。」

 

楓「で、デート!?しかも、今日の放課後って……。ていうか僕、まだ何も返事してな…「それじゃ、お願いしますね。あ、帰りのHRが終わったらまたここに来てください。では。」あ、ちょっと花園さん!まだ話は終わって……」

 

千聖「……」

 

花音「……空見、くん。」

 

楓「……」

 

沙綾「りみ、私達も教室戻ろう。」

 

りみ「沙綾ちゃん。……うん。」

 

……で、デート……。

 

面と向かってこの言葉を言われたのは初めてだけど……これ、完全にこっちの意味の付き合ってくださいだ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【2-A教室】

 

楓「……」

 

千聖「……」

 

花音「……」

 

楓「……あ、あのー、松原、さん?」

 

花音「……」

 

楓「……えっと、し、白鷺、さん?」

 

千聖「……」

 

……はぁ。

 

二人とも、さっきからずっとこんな感じだよ。

 

……。

 

 

 

 

 

『HRが終わった後、また1-Aの前に来てください。デートなんですから、もちろん帰るのもいっしょでないと。』

 

 

 

 

 

……花園さん、何を考えてんだか。

 

花・千「「……」」ガタッ

 

楓「え?」

 

花・千「「……」」

 

楓「え、ちょ……二人とも、どこに…「どこでもいいでしょう?」!!」

 

や、ヤバイ……。

 

白鷺さんの、声のトーンが……。

 

花音「空見くん。」

 

楓「!」

 

花音「すぐ帰ってくるから、待っててね。」

 

楓「……う、うん。」

 

ま、松原さんは普通だ。

 

……ちょ、ちょっと安心したよ。

 

『ピロリン♪』

 

楓「ん?」

 

メール……誰からだろう?

 

……!

 

 

 

 

 

たえ『もし来なかったらどうなるか、……分かってますよね?』

 

 

 

 

 

……何でだ?

 

何で花園さんから、メールが……。

 

考えられることはただ一つ、……誰かが僕の番号を花園さんに教えたんだ。

 

いや、まぁそれは別にいいんだけどさ。

 

……この文面、なんかすんげえデジャヴを感じる……。

 

何?こういう脅し系のメール最近流行ってんの?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜放課後〜

 

【1-A教室前】

 

楓「……」

 

「ねぇ、どうして空見先輩が一年生の教室の前にいるの?」

 

「知らないの?今日の昼休み、ここら辺で公開告白があったじゃん。」

 

「あ、私それ見たよ。確か、花園さん、だっけ?告白したの。」

 

「すごいよね~、こんなところで、しかも大勢の生徒の前で告白だなんて。」

 

「もうすごいを通り越して、尊敬に値するレベルだよね。」

 

「流石にそれは言い過ぎなんじゃない?」

 

……ああいうのって、わざと聞こえるようにしてしゃべってんのかな?

 

女子というのはよく分からん……。

 

たえ「空見先輩。」

 

楓「! は、花園、さん。」

 

たえ「そんなに驚かなくても。」

 

楓「いや、別に、驚いたわけじゃ…「それじゃあ帰りましょっか。」……う、うん。」

 

たえ「……」

 

楓「……ね、ねぇ、花園さん。」

 

たえ「何ですか?」

 

楓「……ぼ、僕と付き合ってくださいって、その……ほ、本気なの?」

 

たえ「本気ですよ。」

 

楓「そ、即答……。」

 

たえ「本気じゃなきゃ、わざわざ先輩のこと自分の教室の前に呼んだりなんてしませんって。」

 

楓「……そ、そっか。」

 

たえ「時間はたっぷりあるんです。今日はとことん付き合ってもらいますよ。」

 

楓「う、うん……。」

 

き、緊張と不安が、半々……。

 

たえ「……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【???】

 

楓「……ねぇ、花園さん。どこまで行くの?」

 

たえ「もうすぐ着きますよ。」

 

楓「いや、そういうことじゃなくてさ。」

 

……どこだよ、ここ。

 

花園さんについてきたはいいけど、回りは全部知らない住宅街、知らない道、知らない景色ばっか。

 

自分が今どこにいるのかも全く見当つかない。

 

……どこに連れてかれるんだろ、僕。

 

たえ「着きました、ここです。」

 

着いた!?

 

おぉ、まさかの言った矢先に着くという……。

 

楓「……ここ?」

 

たえ「はい、ここです。」

 

……公園、か。

 

意外と普通のとこだな。

 

たえ「さ、入って待ってましょう。」

 

楓「あ、うん。……ん?待ってましょう?」

 

え、今の、どういう意味?

 

たえ「……」

 

……どうせ聞いても答えてくれなそうだから、聞かないでおこう。

 

 

 

 

 

……ふーん、ほんとに普通の公園なんだなー。

 

水道があったり、ベンチがあったり、池があったり。

 

子どももいっぱいいて、いろんなことして遊んでる。

 

他にも学生や家族連れの人達、若い人から高齢の人までいて、みんなそれぞれ散歩したりベンチに座ったりなどしてくつろいでいる。

 

……こういう光景って、なんか見てて和むなぁ。

 

 

 

 

 

「ねぇお母さん、クレープ買って~。」

 

 

 

 

 

クレープ? 

 

……へぇ~、食べ物の移動販売もやってるんだ。

 

……ん?

 

……んん!?

 

 

 

 

 

「わーい!ありがとうお母さん!」

 

「落とさないように気を付けるのよ。」

 

 

 

 

 

……あの親子、どこかで……。

 

…………!!

 

そうだあのときだ!

 

僕がショッピングモールに向かってる親子だと思ってついていったら、なぜか間違って別の親子についていっちゃったときの、あの。

 

まさか、また公園であの親子を見かけることになるとは。

 

……そっか。

 

なんか初めて来た感じがしないなと思ったら、ここ奥沢さんと北沢さんに初めて会ったときのあの公園だったのか。

 

そのときに奥沢さんにショッピングモールへの道を教えてもらって、……その後はいろいろあったなー。   

 

たえ「はい。」ズイッ

 

楓「うわっ、花園さん。……え、これ、クレープ?」

 

たえ「いっしょに食べましょう。」

 

楓「あ、ありがとう。……あ、でもお金…「いいですよ。私の奢りです。」お、奢り……。」

 

一応デート(のはず)なのに、女子に奢ってもらう僕って……。

 

たえ「……食べないんですか?」

 

楓「いや、ちゃんと食べる……って早っ!」

 

たえ「?」

 

この子、食べるの早すぎでしょ。

 

もう半分いってんじゃん。

 

……僕も、食べるか。

 

上手く食べれるかなぁ?

 

……あー、ん。

 

……あ、うまい。

 

たえ「どうですか?」

 

楓「美味しい……。これ、何味なの?」

 

たえ「オレンジクレープです。空見先輩、SPACEでオレンジジュース頼んでたから、好きなのかと思って。」

 

楓「あぁ、なるほどね。……確かに、これ好きかも。」

 

たえ「ちなみに、私のはもっちりクレープです。生地がすごくもちもちしてて美味しいんですよ。」

 

楓「へぇ~。」

 

たえ「一口食べます?」

 

楓「え、いいの?」

 

たえ「もちろん。」

 

楓「ありがとう。じゃあ…「あーん。」……あの、花園さん?」

 

たえ「男女で食べ物を分け合うってなったら、あーんですよ。」

 

楓「あ……う、うん、そうだよね。そうなんだよね。それは、まぁ、分かってはいるんだけど、さ。……人いっぱいいるし、恥ずかしいっていうか…「えいっ。」!? ん!んん~!!」

 

たえ「どうですか?」

 

楓「んぐっ!……お、美味しい……。」

 

たえ「ですよね。」

 

び、びっくりしたぁ。

 

いきなり口の中つっこむんだもん……。

 

……花園さんって、そういうの気にしないんだ。

 

たえ「空見先輩のもくださいよ。」

 

楓「僕の?うん、いいけど…パクッ うわっ!」

 

たえ「……ん~、美味しい~♪」

 

……はは、ははは、ほんとすげぇなこの子……。

 

たえ「……そろそろかな。」

 

楓「? 何のこと?」

 

 

 

 

 

???「……おたえー!空見先ぱーい!」

 

 

 

 

 

ん?この声は……あ、北沢さん。

 

たえ「はぐみ、時間通りだったね。」

 

はぐみ「ちょっと遅れそうだったから、学校からここまで走ってきたよ!」

 

楓「へ?学校からここまで?……え、マジ?」

 

はぐみ「うん!」

 

学校からここまでって、結構距離あるよな?

 

……この子もすげぇな。

 

……あれ、そういえば。

 

楓「北沢さん、どうしてここに?」

 

はぐみ「おたえに誘われたんだよ!いっしょにキャッチボールやらないかって。」

 

楓「花園さんに?え、キャッチボール?」

 

はぐみ「そうだよ!空見先輩もいっしょって言うから、はぐみ、すごくすっごく楽しみで!ちょっと遅れそうだったってのもあるけど、学校終わったらすぐ家帰って、グローブ三つとボールを持ってすぐ家出て、そしてこの公園まで、ずっと走って…「ちょ、ちょっと待って、北沢さん。」? どうしたの?空見先輩。」

 

楓「……花園さん。」

 

たえ「何ですか?」

 

楓「……もしかしてこの公園に来たのって、北沢さんとキャッチボールをするため?」

 

たえ「はい。」

 

楓「じゃあ……デート、っていうのは?」

 

たえ「だからさっきまでデートしてたじゃないですか。」

 

楓「……そういうこと?」

 

たえ「そういうことです。あぁ、昼休みに付き合ってくださいって言ったのも、キャッチボールに付き合ってほしいって意味で言ったんですけど、気づきました?」

 

楓「……あ。……そっか、そういうことだったのか。」

 

たえ「はい、そういうことです♪」

 

……なるほどね。

 

僕はまんまと、花園さんの策略に乗せられてたってわけか。

 

昼休みのときの告白も、放課後のデートも、北沢さんとキャッチボールをするための、……嘘。

 

はぐみ「はい、おたえ。」

 

たえ「ありがとうはぐみ。すごい、本当に人数分あるんだ。」

 

はぐみ「小さい頃、家族でよくやってたからね。家族分持ってるんだよ。それで、これが空見先輩の分。」

 

たえ「私が渡すよ。」

 

はぐみ「そう?ありがとう、おたえ。」

 

たえ「……はい。これ、空見先輩の分です。」

 

楓「……」

 

たえ「……もしかして空見先輩、怒ってます?」

 

楓「……いや、別に。」

 

たえ「……」

 

はぐみ「おたえー、早くキャッチボールやろ…「ごめんはぐみ。私ちょっと、空見先輩と話してくる。」話?」

 

たえ「すぐ終わるから、ちょっと待ってて。」

 

はぐみ「……分かった!」

 

たえ「ついてきてください、空見先輩。」

 

楓「……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

楓「……」

 

たえ「綺麗ですよね、この池。ほら、鯉がいっぱいいるんですよ。」

 

楓「……」

 

たえ「……いつまで黙ってるんですか?空見先輩。いい加減何か言ってくださいよ。」

 

楓「……」

 

たえ「……分かりました。もういいです。」

 

楓「……」

 

たえ「……デート、楽しかったですか?」

 

楓「……」

 

たえ「公園に向かってる道での会話や、さっきのクレープ。時間は短かったですけど、……空見先輩的には、どうでした?」

 

楓「……あんなの、デートなんて…「言いますよ。」え?」

 

たえ「男子と女子がいっしょに歩いてたら、それはもうデートなんです。だからこの前の松原先輩との商店街も、りみとのライブも、さっきのクレープも。……全部同じデートなんです。」

 

香澄「……じゃあ僕は、……花咲川に転校してから、何回もデートをしてたってこと?」

 

たえ「空見先輩がそんなに女子と歩いてたのなら……そうなんだと思います。」

 

楓「……で、でも、僕は…「デートじゃないと思いたい。」!?」

 

たえ「それでいいんじゃないですか?解釈なんて、人それぞれなんですから。これは普通のお出かけ、これはデートっていうふうに、空見先輩も勝手に解釈しちゃえばいいんだと思います。」

 

楓「……勝手に、解釈……?」

 

たえ「今のを踏まえてもう一度聞きます。……さっきのデート、楽しかったですか?」

 

楓「……」

 

たえ「……」

 

楓「……うん、楽しかった。さっきのは、僕的に、……お出かけじゃなく、デートって解釈したい、かな。」

 

たえ「……空見先輩をからかうのは、いろいろ大変だな~。」

 

楓「? からかう?」

 

たえ「私、付き合ってくださいとか、放課後デートしましょうとか、先輩をからかうつもりで言ったんですよ?」

 

楓「……か、からかう、つもりで……?」

 

たえ「でも、今の会話で、空見先輩をからかうにはいろいろ考えなきゃなんだってことが分かりました。」

 

楓「その前に、まずからかわないでほしいんだけど。あと、からかうにしても言っていいことと悪いことがあると思う。」

 

たえ「まぁ、今回は確かに悪かったです。まさか、あんなに本気で信じ込むとは思わなかったですから。」

 

楓「誰だってあんな場面であんなこと言われたら、普通に告白だって思うよ。」

 

たえ「それがからかうってことなんですよ。」

 

楓「だからからかわないでよ!」

 

たえ「……ほんと、空見先輩って面白い人ですよね。」

 

楓「はぁ、何で結局そうなる…「はぐみのところまで競走ですよ。よーいドン!」いきなりすぎるよ!てか僕、キャッチボールするなんて一言も言ってないし!」

 

たえ「やらないんですか?」

 

楓「……や、やるよ!楽しみにしてくれてる北沢さんにも悪いし!」

 

たえ「……今度空見先輩に、何か埋め合わせでもするかな。」ボソッ

 

楓「? 何か言った?」

 

たえ「何も言ってませんよ。ていうか何で止まってるんですか?競走って言いましたよね?」

 

楓「花園さんも今止まってたじゃん!もぅ~!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はぐみ「あ!二人ともおかえり~!」

 

たえ「ごめんねはぐみ、遅くなっちゃった。」

 

はぐみ「全然大丈夫だよ!それよりおたえ、何で空見先輩、こんなに疲れてるの?」

 

たえ「さぁ?」

 

楓「はぁ……はぁ……は、花園さんって、意外と、……体力……あるんだ。はぁ……はぁ……はぁ……あー疲れたぁー。ドサッ!」

 

はぐみ「そ、空見先輩!大丈夫!?」

 

楓「大丈夫、じゃ、ない……。」

 

はぐみ「え~!ど、どど、どうしよ…「はぐみ、水ある?」水?……!そっか!……あった。空見先輩はい!お水だよ!」

 

楓「あ、ありがとう。……ゴクゴクゴク……ふぅ、生き返ったぁ。」

 

たえ「もう平気?」

 

楓「うん、まぁさっきよりは。」

 

はぐみ「良かったぁ、空見先輩が元気になって。」

 

楓「ごめんね北沢さん、心配かけたみたいで。」

 

はぐみ「ううん全然!はぐみは大丈夫だよ!」

 

たえ「……空見先輩、キャッチボール、できそうですか?」

 

はぐみ「! そうだよ空見先輩!キャッチボールやろうよ!」

 

楓「走って疲れてただけだから、できることはできるけど、……一つだけ言わせて?」

 

た・は「「何(ですか)?」」

 

楓「僕、キャッチボール下手だよ。」

 

はぐみ「下手って、どういうふうに?」

 

楓「ボールをそんな遠くまで投げれないし、グローブでボールを取るなんてのもほぼほぼやったことないし。」

 

はぐみ「もし上手くできなかったら、はぐみがその都度教えるよ。」

 

楓「……たぶん二人とも、僕の下手っぷりにうんざりする…「「それはない!」」え?

 

はぐみ「それはないよ、空見先輩。」

 

たえ「そんなことをするのは、他人かいじめっこくらいだよ。」

 

楓「……ふ、二人は、その……ぼ、僕の…「「友達でしょ?」」! ……うん、そうだね。」

 

はぐみ「よーし!そうと決まったら、さっそく向こうの空いてるところでキャッチボールだー!ダーッ」

 

楓「……」

 

たえ「……何してるんですか?空見先輩。行きますよ。」

 

楓「あ、うん。」

 

北沢さん、元気だなー。

 

なんか、丸山さんとかと気が合いそう。

 

……なるほどね。

 

一年生だから後輩だと思ってたけど、友達だったのか。

 

じゃ、これからもそう解釈しようかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はぐみ「行きますよー!……えいっ!」

 

楓「……うわっ!あ、ご、ごめん!」

 

たえ「……空見先輩、ほんとにキャッチボール下手なんだ。」

 

楓「……ふぅ。よし、次は僕か。……えいっ!」

 

たえ「え?」

 

楓「あ、曲がっちゃった……。ごめん、花園さん。」

 

たえ「……い、いえ。」

 

はぐみ「ドンマイだよ!空見先輩!」

 

たえ「……空見先輩って、私やはぐみが思ってる以上に、スポーツ下手?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜翌日〜

 

「あ、空見先輩、おはようございます。」

 

「おはようございます。」

 

楓「う、うん、おはよう。」

 

登校時、僕はいつものように一年生にあいさつされながら教室に向かったが、みんな昨日の花園さんの告白については何も触れてこなかった。

 

いや、触れる必要が無くなったというべきか。

 

昨日のあの一件、なんと花園さんが、あの告白は嘘、二ヶ月遅れのエイプリルフールだ、と、みんなに説明したらしいのだ。

 

最初そのことを聞いたときは、そんなので信じるわけないと思ったが、……なぜかみんな普通に信じたらしい。

 

二ヶ月遅れのエイプリルフールなんてのでなぜみんな信じたのかは謎だが、まぁ結果的にこの件は丸くおさまってくれたのでよしとした。

 

そしてもう一つ、びっくりしたことがあった。

 

 

 

 

 

花音『空見くん、数学のこの問題なんだけど、解き方とか分かるかな?』

 

楓『うん、分かるよ。これはこの数字をここに代入して……』

 

花音『……解けた!空見くん、ありがとう。』

 

千聖『楓って、数学"だけ"は得意よね。』

 

花音『千聖ちゃんも、分かんないところがあったら空見くんに教えてもらうといいよ。空見くんの教え方、すごく分かりやすかったから。』

 

楓『いや、そうでもないと思うけど……。』

 

千聖『……ならさっそく、この問題の解き方を教えてもらおうかしら。』

 

楓『え?あ、は、はい。これは……』

 

 

 

 

 

……昨日と比べて、二人の対応が明らかに違ったのだ。

 

あの告白の後、なぜか急によそよそしくなり、昼ごはんの途中にどこかへ行ってしまった白鷺さんと松原さん。

 

僕はてっきり怒ってる(理由は知らないが)のかと思ったが、そんなことは全然なく。

 

むしろ、あのことはなかったかのように普通に接している。

 

いつもと同じ感じに戻ったのはすごく嬉しいのだが、……なんかスッキリしない。

 

女子は考えが変わりやすいというが、二人もそういうことなのか否か。

 

まぁ、理由を知りたければ聞くのが一番良いのだが、……やめておこう。

 

これも、朝の一年生と同じ、花園さんの言った二ヶ月遅れのエイプリルフールというのを信じた、というふうに解釈しておこう。

 

……ほんと、女子って分からんな。




あと一話、あと一話でやっと……。


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27話 ジューンブライドと新たな可能性の兆し

どうも、知栄砂空です。

半年遅れのジューンブライドです、はい。

……という話はおいといて。

ついにかおちさ幼少期イベがきましたね。

まぁそれはいいんだけど、……さよひな幼少期イベはいつくるんだ……。


-芸能事務所 会議室-

 

「ではもう一度確認ですが、来週のこの時間に撮影開始、ということでよろしいんですよね?」

 

「ええ。若宮さんも、それで問題ありませんよね。」

 

「はい!よろしくお願いします!」

 

「6月ということでジューンブライド、花嫁をテーマにした撮影ですか……。本事務所では、また新しい試みですね。」

 

「衣装、というより、ドレスですね。そちらのほうもこちらで管理していますので、事務所側は何の準備も必要ございません。まぁ強いて言うなら、若宮さんのコンディションのほうを…「大丈夫です!」ん?」

 

「チサトさんに、体調管理はいつもしっかりしておくこと、と言われているので、コンディションのほうは心配ありません!」

 

「はは、それは心強いですね。」

 

「……若宮さん、そろそろ練習の時間では?」

 

「! ほんとです!では、私はここで失礼…「あ、ちょっと待ってください。」?」

 

「一つ、私から提案があるのですが、いいですか?」

 

「提案、ですか?」

 

「はい。今回の撮影はジューンブライド、花嫁をテーマにということですが、……そこにもう一つ、何か新鮮味を出してみませんか?」

 

「新鮮味?」

 

「具体的には、どういう……?」

 

「それはまだ決まっておりませんが、まだ時間はあります。そこで、若宮さんにお願いが。」

 

「お願い、私にですか?」

 

「ジューンブライド、そこにもう一つ付け加えられる新鮮味。この一週間、それをじっくり考えてみてくれませんか?」

 

「一週間で……。」

 

「……すみません。一週間あるとは言え、彼女はモデル兼アイドルなんです。Pastel*Palettesの方もありますし、新鮮味というのはない方向で…「分かりました!」!」

 

「この一週間で、その新鮮味、ですか?考えてみます!」

 

「わ、若宮さん。そうは言っても時間が…「時間ならあります!」……ですが……」

 

「私、挑戦してみたいんです!ジューンブライドの撮影、そこに加わる新たな可能性。それを見つけ出すことができれば、今後のパスパレの活動ももっと大きなものになると思うんです!」

 

「……若宮さん。」

 

「パスパレの活動にも、モデルの仕事にも支障はきたしません!だから…「分かりました。」! マネージャーさん!」

 

「そこまで言うのなら、仕方ありません。私もいっしょに考えます。新たな可能性、必ず見つけましょう。」

 

「……はい!」

 

「ありがとうございます、若宮さん。……では、私はこれで失礼します。素晴らしい答えを待ってますよ、若宮さん。」

 

「はい!絶対に見つけてみせます!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-翌日-

 

「ジューンブライド、ですか。」

 

「うん。来週、うちの事務所でジューンブライドにちなんだ撮影をするんだって。イヴちゃん、すごく張り切ってたよ。」

 

「そうだったんですか。……それで、さっきの質問ですが。」

 

「あ、そうそう。それでイヴちゃんね、そのジューンブライドに、もう一つ何か、新鮮味を出してみないかって、向こうの人に言われたんだって。マネージャーさんは最初乗り気じゃなかったみたいなんだけど、イヴちゃんの熱意に負けていっしょに考えてくれるって言ってくれたみたい。」

 

「つまり、その新鮮味というのを考えるのが、今の若宮さんの課題ということですか。」

 

「簡単に言えばそういうことかな。あ、あとイヴちゃん、新たな可能性、とも言ってたよ。」

 

「新たな可能性、ですか。……その課題の答えは、今回の撮影に限るものではないのかもしれませんね。」

 

「? どういうこと?紗夜ちゃん。」

 

「私に聞くより、直接本人に聞いた方が早いと思いますよ。」

 

「そっか。……じゃあ、後でイヴちゃんに聞いてみようかな。あー、ん。ん~♪美味しい~♪」

 

「(……丸山さん、美味しそうに食べるわね。)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「リンコさん!」

 

「は、……はい。」

 

現在僕と白金さんは、図書館で図書委員の仕事中。

 

今日はあまり人が来ないみたいなので、僕と白金さんは本を読んでいた。

 

そこに若宮さんが来て、……という状況だ。

 

「ジューンブライドに関係する本って、ありますか?」

 

「ジューンブライド、ですか?」

 

ジューンブライドっていやぁ、六月に結婚すると幸せが訪れるっていうあれか。

 

どうして若宮さんがそんな本を……。

 

……いや、まさか。

 

……うん、まさかな。

 

「し、調べてみるので、少し、待っててください。カタカタカタ」

 

おぉ、白金さん、キーボード打つの早っ。

 

「お久しぶりです!カエデさん!」

 

「あ、う、うん、久しぶり。」

 

「カエデさん。もしカエデさんが、ジューンブライドにもう一つ何かを付け加えるとしたら、何を加えますか?」

 

「へ?……ジューンブライドに、もう一つ何かを付け加える?」

 

「はい!えっと、新鮮味のようなものです!」

 

「新鮮味?……難しい質問だなー。」

 

ジューンブライド、六月に結婚、そこに何かを付け加える?

 

新鮮味っていうことは、ありきたりなものじゃダメってことだよな。

 

うーん、……うーん、……うーーん……。

 

……そもそも、ジューンブライドに何かを付け加える必要があるのか?

 

てか、どこからそんな話が出てきたの?

 

「……!ありました!」

 

あるんだ!

 

ジューンブライドに関する本なんて、図書館にあるんだ。

 

高校の図書館、恐るべし……。

 

「えーっと……、……!ありました、これです。」

 

「あー、僕取ろうか?」

 

「大丈夫、です。……自分で、取れま…グラッ ! きゃっ!」

 

「白金さん!」

 

『ドシンッ!』

 

「! だ、大丈夫ですか!?二人とも!」

 

「は、はい。……私は、なんとか。」

 

「……白金さん。あの、……悪いんだけど、どいてくれない?」

 

「! す、すみません!」

 

「ふぅー、びっくりした~。……いたたたた。」

 

落ちる白金さんの背中を支えようとしたら、落ちる勢いに負けてそのまま背中からバタンッ!だもんな。

 

背中は痛いわ足も痛いわ。

 

はぁ、まさか図書館で怪我することになるとは。

 

「そ、空見さん。あの、その、……だ、大丈…「大丈夫大丈夫。」ほっ、よ、良かったです。」

 

「……これが、ジューンブライドに関する本?」

 

「は、はい。たぶんそれで、……間違いないと、思います。」

 

「はい、若宮さん。」

 

「ありがとうございます。カエデさん、リンコさん。」

 

「今、貸し出しの準備をしますね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ありがとうございます!では、私はこれで!」

 

「あ、……ど、どういたしまして。」

 

「若宮さん、なんかすごい急いでる様子だったな。」

 

「そうですね。……『キーンコーンカーンコーン』!」

 

「あ、鳴った。」

 

「昼休み、終わりましたね。」

 

「結局、昼休みに図書館来たのは若宮さんを入れて三人か。」

 

「そんなものですよ。」

 

「じゃ、僕達も教室戻ろっか。」

 

「はい。」

 

えーっと、確か次の授業は……。

 

……理科、

 

うわっ、だっる。

 

……寝てよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-三日後-

 

「~~♪……よしっ!」

 

「彩ちゃん、今日もいい感じだね~。」

 

「えへへ、そうかな?」

 

「でも、だからと言って気を抜いてはダメよ。」

 

「分かってるよ、千聖ちゃん。」

 

「……彩さん、絶好調ですね。よーし、ジブン達も頑張りましょう!イヴさ……」

 

「……楽器、……いや、これはジューンブライドと関係ない。……他には……」

 

「……えーっと、イヴ、さん?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーさらに翌日ー

 

「……」

 

「……ちゃん。……ヴちゃん。……イヴちゃんったら!」

 

「! え?あ。な、何ですか?チサトさん。」

 

「さっきからずっと呼んでたのに、気づかないなんてイヴちゃんらしくないわね。」

 

「そ、そうだったんですか?すみません……。」

 

「別に、怒ってるわけじゃないのよ?……イヴちゃん、ここ最近様子が変よね。」

 

「! そ、そんなこと…「みんな言ってるわよ?」え?」

 

「花音も日菜ちゃんも、麻弥ちゃんも、イヴちゃんの様子が変だって。部活や練習のときはなんともないのに、それ以外のときのイヴちゃんは、どこか悩んでるような顔つきだって。」

 

「……」

 

「イヴちゃん、何か悩みがあるのだったら、私に聞かせてくれないかしら?」

 

「……でも、これは……」

 

「無理にとは言わないわ。……でもそのほうが、一人で背負いこんで思い悩んでるときより、ずっと気持ちが楽になると思うの。」

 

「……」

 

「私達、同じパスパレの仲間でしょ?」

 

「! ……そう、ですよね。……チサトさんは、私の大切なパスパレの仲間です。分かりました!今の私の悩み、全てチサトさんにお話します!」

 

「イヴちゃん……。……ふふ、ありがと。」

 

「……それで、今の私の、悩みというのは……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-そして、撮影当日-

 

「みんなに集まってもらったのは、他でもないわ。」

 

「「「「……」」」」

 

「今日はイヴちゃんの、ジューンブライド、花嫁をテーマにした撮影当日。今ここで、それに付け加えられる新鮮味、新たな可能性の答えを、みんなで見つけてあげましょう。」

 

「チサトさん、なんかカッコいいです!あ、それとみなさん、私のために集まってくれて、ありがとうございます。」

 

ここは屋上。

 

白鷺さんが今言ったように、ジューンブライドに付け加えられる新鮮味、そして新たな可能性、というのを考えるために、僕達はここに呼び出されたらしい。

 

ちなみに集まったのは、氷川さん、白金さん、若宮さん、僕の四人だ。

 

幸い僕達の他には誰もいないので、人目を気にしたりする必要はない。

 

ないんだけど、……グ~

 

腹へった……。

 

「でも、意外です。……氷川さん、こういう話し合いにはあまり興味ない人だと思ってました。」

 

「少し、気になることがあったので。」

 

しかし、花嫁をテーマにした撮影か……。

 

まさか若宮さんが、モデルの人だったなんてな。

 

しかも芸能事務所の。

 

……この学校、すげえ人多くね?

 

芸能人とか、芸能人とか、芸能人とか。

 

三人も芸能人がいる学校なんて、そうそうないんじゃないの?

 

「撮影は四時から。それまでにみんなで協力して、ジューンブライドに付け加えられる新鮮味、新たな可能性を見つけ出すのよ。いいわね?楓。」

 

「なんで僕に振るんですか……。」

 

「あなたが一番、退屈そうな顔をしてたからよ。」

 

「そんな顔してませんよ!」

 

「……まぁいいわ。それじゃあイヴちゃん、まず最初に、現時点であなたが考えた新鮮味を、私も含めて、みんなに教えてもらえるかしら?」

 

「はい!……私はこの一週間、ずっと考えていました。図書館から本を借りたり、友人に聞いたり、自分でインターネットを使って調べたり、あらゆる方法を駆使して。」

 

「「「「……」」」」

 

「その結果見事、一つだけ、これしかない!というものを見つけ出すことに成功しました!」

 

「一つだけ……。」

 

「これしかない、というもの……。」

 

「それはいったい……」

 

「何なの?イヴちゃん。」

 

「ふっふっふ。……そう!私が見つけ出した、これしかない!ジューンブライドに付け加えられる新鮮味は!」

 

「「「「……ゴクリ」」」

 

「ズバリ!……ブシドーです!」

 

「「「「……え?」」」」

 

……ん? 

 

え、何? 

 

武士道?

 

「ジューンブライド+ブシドー!これこそ、私が見つけ出した新鮮味!新たな可能性なんです!」

 

「……あ、新たな可能性、というよりは……」

 

「若宮さんが、常に追い求めているもの、ですよね?」

 

「まぁ、イヴちゃんらしい答えではあるけど……。」

 

武士道、……って何だっけ?

 

武士道……、武士、道……、武士の道……、武士を目指す人の心構えみたいなやつ?

 

それが、……若宮さんらしいの?

 

……ダメだ、全く話についていけん……。

 

「……でも、少し違う気がするんですよね。」

 

「え?」

 

「私が求めている新鮮味、新たな可能性とは、なにか違うような……。」

 

「イヴちゃんが求めている……?」

 

「それって、どういうものなの?」

 

「パスパレの活動を、もっと大きなものにしてくれる何か、です!」

 

「!」

 

「パスパレの活動を……」

 

「もっと大きなものにしてくれる何か……。」

 

「……パス、パレ?」

 

「イヴちゃんもパスパレのメンバーなのよ。担当楽器はキーボード。」

 

「そ、そうだったんですか。」

 

若宮さんが、パスパ…、Pastel*Palettes……。

 

……すごいな、いろいろと。

 

「……イヴちゃん、そんなことを考えてくれていたのね。」

 

「! ……な、なにか、まずかった、です…「いいえ違うの。その逆よ。」逆?」

 

「それなら尚更、答えを見つけださないとね。」

 

「ち、チサトさん……。」

 

「話を聞いていたら、ますます興味が出てきました。若宮さんのいう、新たな可能性というものに。……必ず見つけましょう。」

 

「サヨさん!」

 

「Pastel*Palettesの活動を、もっと大きなものにするための答え探し、……私にも、手伝わせてください。」

 

「リンコさん!……ありがとうございます!とても頼もしいです!」

 

「私からもお礼を言わせてちょうだい。紗夜ちゃん、燐子ちゃん、ありがとう。」

 

「いいえ、白鷺さん。お礼を言うのはまだ早いですよ。」

 

「答えを見つけてから、……ですよね。」

 

「ふふ、そうね。……では最初に、みんなそれぞれ意見を出しあいましょう。まずは、……楓。」

 

「! ぼ、僕ですか!?」

 

「だってあなた、全然話に入ってこないんだもの。ほら、早く何か意見出して。」

 

「そ、そんなこと、急に言われても……。」

 

白鷺さん、無茶ぶりにも程があるだろ……。

 

話に入ってこないから先に意見出せって……、僕こういうの苦手なのに……。

 

「……空見さん。思い付かなかったら、私から先に…「ダメよ、燐子ちゃん。」! し、白鷺さん……。」

 

「ほら楓、早く意見を出して。時間は限られているのよ。」

 

くそ~、鬼畜だろ白鷺さん。

 

意見、……意見!?

 

うー……、……何か、何かないか……?

 

……。

 

『ジューンブライドに関係する本って、ありますか?』

 

! そうだ本だ!

 

「わ、若宮さん。」

 

「何ですか?」

 

「確か先週、ジューンブライドに関する本を借りたよね?」

 

「はい、借りました。それが何か?」

 

「そこに、どんなことが書いてあった?」

 

「どんなこと、ですか?」

 

「「空見さん?」」

 

「……」

 

「何でもいいんだ。あ、なんだったら読んでるときに心に残った一文とかでもいいよ。」

 

「心に残った一文……。……!思い出しました!」

 

「ほんと!?」

 

「はい!私が読んでるときに心に残った一文というと確か、……“六月に結婚した男女には、幸福が訪れると言われている。”です!」

 

「なるほど。……やっぱりジューンブライドといえばそれだよね。」

 

「楓。あなた、何が言いたいの?」

 

「こういうのってさ、難しく考えず、根本的なところから考えてみればいいんだよ。」

 

「根本的なところ?」

 

「うん。若宮さんが言うには、芸能事務所でのジューンブライド、花嫁をテーマにした撮影は初めてなんでしょ?」

 

「はい、そう言っていました。」

 

「ならたぶん、簡単なのでいいんだよ。新鮮味とは言ってるけどさ、事務所でジューンブライドにちなんだ撮影をするというのがそもそも新鮮味なんだし。」

 

「! なるほど!その考えは思い付きませんでした。」

 

「だから、何でもいいんだと思う。最初にそのことを聞いたときは、ありきたりなものじゃダメなんだろうなって思ってたけど、若宮さんの話を聞いてそんなことないって気づいた。こういうのを考える中で大切なのは、たぶん、ありきたりなものから考えるってことなんだと思う。」

 

「ありきたりなもの……。」

 

「難しく考えずに、根本的なところから一つずつアイデアを拾っていけば、きっといつか、その答えにたどり着くよ。」

 

「根本的なところから一つずつ……。……カエデさんなら、どんなアイデアを拾っていきますか?」

 

「え、僕?……まぁ僕だったら、単純に六月、結婚、男女、幸福って言葉を並べていって、その中であ、これいいかもって思ったものを一つ取りあげて、そこからどんなことができるかってのを頭の中に思い浮かべていくかな。」

 

「「「……」」」

 

「なるほど。……ちなみに、カエデさんが一つ言葉を取り上げるとしたら、何ですか?」

 

「……幸福、かな。これなら、いろいろと案も浮かんできそうだから。」

 

「幸福、ですか。……」

 

……「空見さん。」ん?

 

「何ですか?氷川さん。」

 

「あなたは、……ほんとに凄い人ですね。」

 

「え?な、何がですか?」

 

「何が、とは言わないけど、私も凄いと思うわ。あなたのそういうとこ。」

 

「私も、……空見さんの凄さ、尊敬、します。」

 

「え?……え?」  

 

「(私達の意見を出すまでもないくらい、分かりやすく、まとめられた空見さんの意見。……空見さんの隠れた才能の一部が、垣間見れた気がします。)」

 

……僕、何かしたかな?

 

白鷺さんに意見言えって言われたから、なんとか絞り出してそれを若宮さんに意見として提供しただけなんだけど……。

 

いや、提供って言い方は図々しいというか、お前何様だよって感じだからやめたほうがいいか。

 

「……分かりました!」

 

「「「!」」」

 

「ジューンブライドに付け加えられる新鮮味、それは、……男の人です!」

 

「……男の、人?」

 

「はい!この答えは、さっきカエデさんが言ってくれた、“男女”から導きました!」

 

「どういう、こと?」

 

「つまり、今回の撮影は私ともう一人、二人でやるということです!男女二人で!」

 

「……し、しかし若宮さん、若宮さんといっしょに撮影を行える人なんて…「リンコさん、ここにいるじゃないですか。」え?」

 

「……あの、まさか若宮さん、あなた……。」

 

「い、イヴちゃん、はやまってはダメよ……?」

 

「カエデさん!」

 

「! な、何…「……」ガシッ! へ?」

 

「今日一日だけ、私の殿方になってください!」

 

「「「(や、やっぱり……。)」」」

 

「……え?……と、殿、方?」

 

「はい!お願いします!」

 

「……あー、えっと、若宮さん。」

 

「何ですか?」

 

「その、殿方?って、何だっけ?」

 

「分かりやすく言うと、婿です。」

 

「む、婿……?」

 

「はい!つまり、……空見さんには今日一日だけ、私の花婿になってほしいんです!」

 

「「「……」」」

 

「花、婿……。」

 

「はい!」

 

……へ?

 

……え、……え!?

 

……ええええええ!!??

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー芸能事務所 撮影スペースー

 

「今日の撮影、よろしくお願いします!」

 

「う、うん。こちらこそ、よろしく。」

 

「……」

 

「……と、ところで若宮さん。隣にいるその子は、いったい…「新たな可能性です!」……へ?」

 

「この人が、ジューンブライドに付け加えられる新鮮味、また、パスパレをもっと大きなものにするための新たな可能性なんです!」

 

「……は、はぁ……。」

 

……何で僕が、こんなところに……。

 

完全に場違いだろこれ……。

 

 

 

 

 

 

「空見くんが、ジューンブライドに付け加えられる新鮮味?」

 

「一応、もう少し考えてみない?って念は押してみたんだけど、これしかない!って言って聞かなくて……」

 

「イヴちゃんがなんか悩んでたのって、このことだったんだ~。」

 

「……あの人が、皆さんの言っていた、空見楓さん、ですか。」

 

「そういえば麻弥ちゃんは、直接楓を見るのは初めてだったわね。」

 

「はい。」

 

「空見くんって、すっごく面白いんだよ!この前もおねーちゃんが言ってたんだけど…「こーら、日菜ちゃん。うるさくしないの。撮影の邪魔になっちゃうでしょ。」あ、ごめんごめん。」

 

「……空見くん、大丈夫かな?」

 

 

 

 

 

 

「……お待たせしました!」

 

「……!?え、……ま、マジ?」

 

五分くらい待ってると、若宮さんが帰ってきた。

 

……白いウェディングドレスを身にまとって。

 

「うわぁ……!」

 

「どうですか?皆さん。」

 

「すごく綺麗だよ、イヴちゃん!本物の花嫁さんみたい!」

 

「とても似合ってるわよ。」

 

「そのドレス、すごいるんっ♪てくるよ!」

 

「こういうイヴさんって、なんか新鮮ですね。とても素敵だと思います!」

 

「ありがとうございます。……カエデさん、どうですか?」

 

「! ぼ、僕にも、振るんだ……。」

 

「当然です!」

 

……こ、これ、本物?

 

マジもんの、本物のウェディングドレスなの?

 

……ヤバイな。

 

テレビとかでなら見たことあるけど、こうして目の前で見ると、……迫力、というか、……ものすごく、神々しい……。

 

ウェディングドレスって、これくらい間近で見ると、こんな破壊力高いものだったのか……。

 

「カエデさん?」ズイッ

 

「! わあっ!」

 

「え?……カエデ、さん?」

 

「(ヤベ!)ち、違うんだよ若宮さん!あの、気づいたら顔が近くにあったから、それでびっくりしただけで……」

 

「……そんなに私、似合ってませんか?」

 

「だ、だから違うって…っ!……」

 

「……そ、空見くん?」

 

「すぅ、はぁ、すぅ、はぁ。……よし。」

 

「……」

 

「……に、似合ってるよ、若宮さん。……ものすごく、神々しくて。」

 

「ほ。本当ですか?」

 

「う、うん、ほんとに。」

 

「……えへへ、ありがとうございます!……「若宮さーん、そろそろ撮影始めますよー。」はーい!それでは皆さん、いってきます!」

 

「……楓にも、人を褒めるということができるのね。」

 

「できますよそれくらい…「私とデートしたときは褒めてくれなかったのに?」だからそれは…って、へ?デート?」

 

「ええ。したでしょ?デート。あの日、私結構真剣に服のコーデしたのに、楓全然褒めてくれないから、楓はそういう人なのだと…「ちょ、ちょっと待ってください!あれはその、デートというか、ただ町を案内してもらってただけじゃ…「それがデートなんでしょ?」え、……そ、そう、なんですか?」ええ。みんなもそう思うわよね?」

 

「うん、あれはデートだね。」

 

「私も、千聖ちゃんに話を聞いただけだけど、デートの部類には入ると思うよ。」

 

「ジブンも、二人と同意見です。」

 

……満場一致かい。

 

てか、最後の眼鏡をかけた人は誰?

 

「あ、自己紹介が遅れました。ジブン、Pastel*Paletteでドラムをしています、大和麻弥といいます。」

 

「あ、えっと、空見楓です。」

 

「空見さんのことは、皆さんから話を聞いていますよ。とても面白い方のようで。」

 

「お、面白い?……」チラッ。

 

「「「……」」」

 

ったく、この人達は……。

 

「それはそうと空見さん、後ろでスタッフさん達が呼んでますよ?」

 

「え?……ほんとだ。何だろう?」

 

「では空見さん、また後で。」

 

「え、あ、は、はい。また。タッタッタ」

 

僕に用……。

 

……嫌な予感はしないけど、心配だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい、じゃあ若宮さん、ここで一つ新鮮味を出してみようか。」

 

「はい!」

 

「空見くん、遅いなぁ。」

 

「きっと、メイクや衣装で戸惑ってるんでしょう。」

 

「でも空見くんって、別にメイクいらないと思うんだけどなー。」

 

「あ、メイク係の人達が帰ってきましたよ。」

 

「お、お待たせしました!空見楓さんのメイク、終わりました!」

 

「あ、空見く…!」

 

「う、嘘……。」

 

「おぉー、これは……。」

 

「メイク係さん、恐るべし、ですね……。」

 

「……」

 

「カエデさん!すごくカッコいいです!」

 

「あ、ありがとう……。」

 

まさか、マジで僕も撮影することになるとは……。

 

うぅ、着なれねぇ……。

 

タキシードを用意してるなんて、あのカメラマン、こうなることを予想してたのか?

 

「……すごい。」

 

「え?」

 

「すごいよ空見くん!空見くんも、本物の花婿さんみたい!」

 

「そ、そう?ってか近い近い!」

 

「イヴちゃんのもいいけど、こっちのもるんっ♪てくるかも!」

 

「要は、どっちも似合ってるということですよね。」

 

「るんっ♪て、汎用性高いな……。……?あれ、白鷺さん?」

 

「? チサトさん?どうかしましたか?」

 

「……え?あ、ご、ごめんなさい。ついぼうっとしていたわ。」

 

「あれれ~?もしかして千聖ちゃん、タキシード姿の空見くんに見とれちゃってた~?」

 

「そ、そんなわけないでしょ!?変なこと言わないで!」

 

「あはは、千聖ちゃんが怒った~。」

 

「笑い事じゃないわよ!私は本当に……」

 

「……し、白鷺さん……。」

 

「……たぶん千聖ちゃんは、ちゃんと空見くんのこと、似合ってると思ってくれたよ。」

 

「そう、かな。……ていうか、僕そんな似合ってる?自分では、あまりそうは思わないような…「千聖ちゃんが似合うって言ってるんだもん。間違いないよ!」……本当にそう思ってるかは謎だけどね。」

 

「若宮さん、空見さん、撮影始めますよ!」

 

「はーい!ではカエデさん、行きましょう!」

 

「あ、うん。……それじゃあ、行ってくる。」

 

「うん、頑張ってね。」

 

「頑張る要素あるかなぁ?……僕、ほんとに来てよかったのかな?花婿役なら、芸能事務所の中にいる誰かしらの男の人を連れてくれば…「イヴちゃんが、空見くんがいいって言ったんだよ。」まぁ、そうだけどさ……。」

 

「大丈夫だよ。空見くんなら、きっと。」

 

「……それ、何に対しての大丈夫なの?」

 

「カエデさーん!早くー!」

 

「ごめん今行くー!……丸山さん、じゃ。タッタッタ」

 

「……大丈夫だよ。大丈夫だから、自信持って、頑張って。ね、空見くん。」

 

「いい?日菜ちゃん。ものにはね、言っていいことと悪いことがあるの。あなたはもっとそういうところを……」ガミガミ

 

「あーあ、いつの間にか、千聖ちゃんのお説教始まっちゃってる……。って、千聖ちゃーん!もう撮影始まるから静かにー!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー数日後ー

 

「これが、若宮さんの花嫁衣装……。」

 

「イヴちゃん綺麗~。」

 

「まるで、……本物の、花嫁さんみたいです。」

 

「ふふ、やはりみんな、感想が似てしまうのね。」

 

「仕方ないよ。だってほんとに綺麗で、ほんとに花嫁さんみたいだもん。」

 

「……どの写真のイヴちゃんも、とても良い笑顔だね。」

 

「若宮さんの気持ちが、写真からでも伝わってくるような気がします。」 

 

あの撮影から何日か後に、そのとき撮影した写真が載った本の見本が届いたらしい。

 

丸山さんと氷川さんと白金さんと松原さんと白鷺さんは、ここ、二年B組の教室(の僕の席の周り)で、若宮さんの写真が載ったページを見ながらワイワイ話している。

 

ちなみに僕はというと、……自分の席に座って落ち込んでいる。   

 

「……はぁ。楓、いつまでそうしてる気?」

 

「何でこうなったのかは、今日私がスタッフさんに聞いてみるから、ね。」

 

「……男なのに。……僕はれっきとした、男なのに……。」

 

「しかし丸山さん、若宮さんの立場を考えたら、どうしてこうなったのか、だいたい想像つきませんか?」

 

「え?……紗夜ちゃん、分かるの?」

 

「想像ですが、おそらくそれで間違いないと思います。白鷺さん達も、もう分かってるみたいですし。」

 

「え、そうなの!?」

 

「ええ、もちろん。」

 

「私も、なんとなくは。」

 

「騒ぎにならないためには、……こうするしか、ないですよね?」

 

「騒ぎ……?……どういうこと?」

 

「スキャンダルよ。」

 

「スキャン、ダル?」

 

「イヴちゃんはもちろん、私や彩ちゃん、日菜ちゃんと麻弥ちゃんもアイドルでしょ?そんな人達と一般人である楓がいっしょにいるところを、ファンの人達が見たら……」

 

「! そっか!そういうことか!」

 

「理解してくれたみたいで良かったわ。」

 

「流石に私も、そこまで言われれば分かるよ~。」

 

……つまり、こういうことだ。

 

僕も最初は、丸山さんが持ってきた見本本をいっしょに見ていた。

 

僕と若宮さんがいっしょに写ってる写真は、若宮さんの写真が載っているページの左下にあった。

 

その写真事態はよかったのだ。

 

問題は、……その写真の横の説明だ。

 

説明には、こう書いてあった。

 

『空出南恵加(そらでみえか)(16)

○×□高校。モデルとして活動中。

若宮イヴさんと仲が良いらしく、若宮さん自身が花婿役に彼女を選出した。』

 

……もうお分かりだろうか。

 

この写真に若宮さんといっしょに写ってるのは僕だが、事務所の人達の意向により僕ではない誰かということにされた。

 

おそらく、白鷺さんの言う通りスキャンダルになることを防ぐための対策だとは思うが、……こうするんだったら、せめて連絡の一つぐらいはしてほしかった……。

 

ていうか誰だよ空出南恵加って。  

 

そらみかえでを並べ替えただけじゃねえか。 

 

まぁ、流石に完全に名前を変えるのはちょっと、みたいな話になってこうしたんだろうけど、……はぁ、なんかなー……。

 

あんなに緊張しながら撮ったのに、それが全部水の泡になった感じ……。

 

……はぁ~……。

 

「よく見たら、空見くんの顔もなんか女の子っぽいね。」

 

「あのときは気づかなかったけど、おそらく、写真に写ったときに女の子に見えるようなメイクをしていたんでしょうね。」

 

「プロの人って、やっぱり凄いんだね。」

 

「空見さん、……元気、出してください。」

 

「空見さんは男の子なのですから、もっとシャキッとしてください。」

 

「……」

 

「……紗夜ちゃん、もしかしてそれ、フォローのつもり?」

 

「え?あ、いや、……はい。まぁ、似たようなものですね。」

 

「それ、……フォローになってないと思うわよ?」

 

「え、……そ、そう、ですか……。」

 

そらみかえで、そらでみえか、そらみかえで、そらでみえか……。

 

……なんか僕が二人いるみたいでやだ……。

 

「……あれ?」

 

「どうしたの?彩ちゃん。」

 

「今回イヴちゃんが見つけた答え、ジューンブライドに付け加えられる新鮮味、新たな可能性。これって、空見くんのことなんだよね?」

 

「ええ、若宮さんはそう言ってましたけど。」

 

「でも、こうも言ってたよね?新たな可能性、その答えを見つけることができれば、パスパレの活動ももっと大きなものになるって。」

 

「あ、……そういえば。」

 

「つまり空見くんが、パスパレの活動をもっと大きなものにしてくれる何か、ってことだよね?」

 

「「「「……あ。」」」」

 

「……これって、どういう意味何だろう?」

 

「「「「……」」」」

 

……よし決めた。

 

もう、絶対にモデルの撮影は引き受けない。

 

うん、そうしよう。




終わった。

……やっと終わったー!

これで、






……これで次回から、文化祭回に入れる!


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28話 文化祭についての話し合い

どうも、知栄砂空です。

そして2020年、明けましておめでとうございます。

今年も変わらず気長にやっていくので、よろしくお願いいたします。

というわけで、今回から文化祭編突入です。

文化祭編といえば、僕が一番最初に見たバンドリのアニメがたまたまSTAR BEATの回でした。

STAR BEAT、良い曲ですよねー。


『キーンコーンカーンコーン』

 

六時間目終了のチャイムが鳴った。

 

いつもなら、

 

「よし帰ろー!」

 

「帰りどこ寄ってくー?」

 

「あ、そういや昨日さー。」

 

というような会話が、あちらこちらから聞こえてくる。

 

僕も帰りの支度をして、何事もなければまっすぐ家に帰るだろう。  

 

しかし、今日はそうはできない。

 

それはなぜか。

 

そう、なぜなら…「あと二週間で文化祭かー。なんか早いね。」……松原さんに先に言われちゃった。

 

千聖「そうね。花音は、何がしたいとかあるの?」

 

花音「うーん……。私は、みんなで楽しめるものなら何でもいいかな。千聖ちゃんは?」

 

千聖「私も、花音と同意見よ。楓は、何かしたいことあったりするの?」

 

やっぱり回ってきた。

 

楓「僕も、二人と同じ、ですかね。」

 

まぁ、文化祭楽しんだことなんてほぼほぼないけど。

 

『キーンコーンカーンコーン』

 

千聖「あら、チャイム鳴っちゃったわね。それじゃあ花音、私、席に戻るわね。」

 

花音「うん。」

 

……もう答えは出てしまったが、一応説明しておこう。

 

次の七時間目、またの名をLHRというが、この時間は文化祭についての話し合いをすることになっているのだ。

 

松原さんが言ったように、気づけばもうあと二週間で文化祭。

 

時間が経つのって早いなー。

 

ガラガラガラ

 

お、そんなことを考えていると先生が来たようだ。

 

美澤先生「みんないるわよね?……よし、それじゃあ朝話した通り、これから文化祭についての話し合いをするわよ。まずは、実行委員を決めなきゃね。」

 

美菜「はい!」

 

美澤先生「はい、浅井さん。」

 

美菜「私、実行委員長やりたいです!」

 

楓「!」

 

オー!!

 

マジカアサイー

 

マサカノリッコウホー!

 

美澤先生「実行委員長?……いいけど、ほんとに…「全然いいです!私にやらせてください!お願いします!」……と、言ってるけど、異論はない?」

 

クラス全員「……」パチパチパチ……

 

美澤先生「ないみたいね。分かったわ。じゃあ浅井さん、実行委員長よろしく。」

 

美菜「頑張ります!」

 

 

 

 

 

楓「……す、すげー。」

 

花音「すぐ、決まっちゃったね。実行委員長。」

 

楓「実行委員長に立候補なんて、浅井さんやる気あるなー。」

 

花音「美菜ちゃんは、こういう行事とかには積極的に取り組むタイプだから。」

 

楓「あー、……なんかぽい。」

 

実行委員長、まさかの十秒もかからずに決まったよ。

 

こりゃあ、副実行委員もすぐ決まりそうだな。

 

美澤先生「それじゃあ浅井さん。さっそくだけど司会、頼めるかしら?」

 

美菜「分かりました!」

 

スタスタスタ

 

美菜「……改めて、2年A組の実行委員長になりました、浅井美菜です!よろしくお願いします!」

 

パチパチパチ……!!

 

音羽「浅井さん、頑張ってください!」

 

橋山「頼りにしてるぞー浅井ー!」

 

美菜「? 何言ってんの?橋山は副実行委員だよ?」

 

ん?

 

橋山「はぁ!?ちょ、どういうことだよそれ!」

 

美菜「どうしたもこうしたもないよ。私達、いつもいっしょにこういう係の仕事をこなしてきたじゃん。」

 

橋山「いや、まぁそうだけどさ。……と、とにかく、今回私はパス!」

 

浅井さんと橋山さん、いつもいっしょにこういう行事を……。

 

仲良いんだなーこの二人。

 

美菜「もぅ、今日の橋山はつれないなー。……!そうだ空見!空見はどう?副実行委員。」

 

楓「え!?ぼ、僕!?」

 

美菜「そう空見!転校して来たからこの学校の文化祭初めてでしょ?だから、その記念に副実行委員、どうかな?」

 

楓「いや、ちょ、ちょっと待ってよ。記念って……。てかそれより、僕副実行委員なんて全然無理だよ!」

 

美菜「大丈夫だよ、そんな大変な仕事じゃないから。万が一大変な仕事だとしても、空見は男だからなんとか…「いいえ、ダメね。」え?」

 

楓「へ?」

 

花音「ち、千聖ちゃん?」

 

千聖「楓に、副実行委員なんて大役は、絶対無理だわ。」

 

花音「……」

 

楓「た、大役って……。」

 

美菜「え、えーっとー、……白鷺さん、その根拠は?」

 

千聖「多すぎるから、ここで言うときりがないわ。でも、あえて言うならそうね。……めんどくさがりなところかしら。」

 

楓「め、めんどくさがり……。」

 

花音「……」

 

ま、まぁ、間違っては、ないけど……。

 

千聖「そういうわけだから、楓が副実行委員になることは却下よ。」

 

美菜「……で、でも、白鷺さん。そういうのは、ちゃんと本人に聞いた方が…「はぁ、分かった。」え?」

 

千聖「きりがないから言わないでおこうかと思ったけど、納得してないのなら仕方がないわよね。」

 

……白鷺さん、何をする気だ?

 

美菜「いや、あの、白鷺さん?分かったって、何が…「まず楓は騙されやすいの。」……は、はぁ。」

 

千聖「副実行委員は、会計の仕事をしなきゃいけない。それでもし楓が、お金を騙し取られたりしたら、実行委員長のあなたが責任を取らなくちゃいけないのよ。」

 

花音「……」

 

……なんか、嫌な予感が…「あと、楓は細かいことに気づかない。」うっ。

 

千聖「作業をしているときなどに、細かく小さなミスに気づけないようじゃ、副実行委員はやっていけないわ。他にもあるわよ。楓はものを断るのが苦手なの。あ、断るのが苦手というよりは、気が弱くて言い返せないって感じね。だからぐいぐい来るような人に頼まれごとをされたら、嫌でも絶対引き受けてしまう。あと、物忘れもひどいわ。前にそれで、私の大事なものをダメにしてしまったことがあるもの。それから、自分の意見をすぐに言えない、決断が遅い、自分の嫌なことはとことん嫌、物事をテキパキとできない、他には…「分かった。うん、もう分かったよ白鷺さん。」そう?」

 

美菜「うん。身に沁みるほど分かったから、もう言わないであげて、ね?」

 

千聖「身に沁みるって、少し使い方が違う気が…「そんなことはいいの!」……よくはないと思うのだけど。」

 

音羽「だ、大丈夫ですか?空見さん。」

 

楓「……」チーン

 

橋山「おーい空見ー、大丈夫ー?」

 

美菜「うーん、空見がダメとなると、……やっぱり副実行委員は橋山…「だから私は嫌だって。」だよねー……。」

 

音羽「……白鷺さんは、副実行委員、やらないんですか?」

 

千聖「残念だけど、私は無理ね。仕事や、事務所のこととかあるから、毎日来れるとは限らないもの。そういう宮村さんはどうなの?」

 

音羽「いえ、私はこういう役職には向いてないですから。」

 

千聖「……そう。」

 

美菜「うーん、困ったなー。このままじゃ副実行委員が決まらない……。誰も立候補者がいないなら、最悪推薦で人を選ぶしか……。」

 

 

 

 

 

花音「空見くん、大丈夫?そろそろ元気出して?」

 

楓「ま、まさか、あんなボロクソに言われるとは、思わなかった……。」

 

花音「わ、私も、……あれはちょっと、言い過ぎかなとは思った。……千聖ちゃんにはあとで私が言っておくよ。」

 

楓「だ、大丈夫だよ。ああいうのは、言われ慣れてるから。」

 

花音「そういう問題じゃないよ!」

 

楓「! ……えっと、なんか怒ってる?松原さん。」

 

花音「え?あ、……う、うん。少し、怒ってる、かも。」

 

美菜「えー、みなさん。このままじゃらちがあかないので、副実行委員は推薦で決めたいと思います。」

 

楓・花「!」

 

エー!

 

ヤダナー。

 

ワタシスイセンサレチャッタラドウシヨー。

 

楓「推薦か。……ま、僕が推薦されることはないだろうから、本でも読んでようかな。」

 

花音「……空見くん。」

 

 

 

 

 

『楓に、副実行委員なんて大役は、絶対無理だわ。』

 

 

 

 

 

花音「……例え千聖ちゃんでも、あの言い方はひどいよ。空見くん、まだ何もやってないのに、“絶対無理”なんて言われて。……」

 

美菜「それでは、推薦を始めます。副実行委員にはこの人がふさわしい、という人がいたら、何人でもいいので挙げてください。その中から多数決で票の多かった人に…「はい!」はい、松原さん。」

 

楓「! 松原さん?」

 

千聖「え、花音?」

 

 

 

 

 

花音「……私、……副実行委員に、立候補します!」

 

 

 

 

 

楓・千「!」

 

美菜「え、……ほ、ほんと?松原さん。」

 

花音「うん。私、副実行委員、やるよ。」

 

美菜「……分かった。ありがとう、松原さん。みなさん!異論はありませんか?」

 

クラス全員「……パチパチパチ」

 

美菜「ないみたいなので、副実行委員は松原さんに決定です。」

 

パチパチパチ……!!

 

楓「……ま、松原、さん?」

 

花音「空見くん。私、頑張るから。」

 

花音「え?あ、……うん。」

 

千聖「花音が、副実行委員……。どうして、いきなり……。」

 

美菜「じゃあ松原さん。さっそくだけど、書記頼める?」

 

花音「うん、任せて!空見くん、行ってくるね。」

 

楓「う、うん。」

 

スタスタスタ

 

美澤先生「……珍しいわね。あなたが、こういう役職に就くなんて。」

 

花音「はい。自分でも、そう思います。……でも、立候補したからには、しっかり最後までやり遂げます!」

 

美澤先生「え、ええ。頑張ってね、松原さん。」

 

花音「はい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

美菜「そ、それでは!実行委員と副実行委員が決まったところで、いよいよこのクラスの出し物を決めていきたいと思います!何か意見のある人は挙手をお願いします!」

 

生徒A「はい!」

 

美菜「はいそこ!」

 

生徒A「私、カフェやりたいです!」

 

生徒B「あ、私はお化け屋敷!」

 

生徒C「模擬店を出したーい!」

 

生徒D「劇やろ劇!」

 

美菜「はいはい、みんな落ち着いて!松原さん、大丈夫?」

 

花音「ふぇぇ、えーっと、えーっとー……」

 

 

 

 

 

……松原さん、ほんとに大丈夫なのかなぁ?

 

……にしても、何で突然松原さんが副実行委員に……。

 

それに、さっきの……。

 

 

 

 

 

『空見くん。私、頑張るから。』

 

 

 

 

 

……何でわざわざ、僕にあんなことを……。

 

……「何を考えているのかしら?」!

 

楓「え?え、し、白鷺さん!?どうして松原さんの席に……」

 

千聖「どうでもいいでしょ、そんなこと。」

 

楓「いや、どうでもよくは、ない気が…「そんなことより、あなたに聞きたいことがあるのだけれど。」聞きたいこと?」

 

千聖「……花音が副実行委員に立候補したことについてよ。あなた、花音に何か吹き込んだんじゃないの?」

 

楓「! そ、そんなことしてませんよ!そもそも、何で僕がそんなことしなきゃいけないんですか!」

 

千聖「……そうよね。」

 

あ、あれ?

 

意外と、素直に意見を受け入れた。

 

千聖「……あの子、普段はみんなの前に立って何かをする、なんてタイプじゃないから、不思議なのよ。どうしてそんな花音が、副実行委員に立候補なんてしたのか。」

 

楓「あぁ、……それは僕も、思いました。」

 

千聖「きっと花音には、何か理由があるはずなのよ。副実行委員に立候補するに至った、ある理由が。」

 

楓「理由、ですか……。」

 

千聖「……」

 

楓「……」

 

……さっき松原さんが僕に言ったこと、もしかしてあれが、副実行委員に立候補したことと何か関係があるのかな?

 

……って、考えすぎか。

 

楓「……単純に、やりたい、やってみたいって思っただけなんじゃないですか?ほら、自分はみんなの前に立って何かをする、なんてタイプじゃないから、そういう自分を変えたいと思って立候補した、とか。」

 

千聖「確かに、そうも考えられるけど……」

 

楓「理由云々はひとまず置いといて、今は副実行委員になった松原さんを、友達である僕達が応援してあげることが、大事なんじゃないですか?」

 

千聖「……ええ、それもそうね。……あなた、たまには良いこと言うじゃない。」

 

楓「たまにはって……、まぁ、間違ってはいませんけど……。」

 

 

 

 

 

美菜「おぉ、結構いろんな案が出てきたねー。松原さん、お疲れ様。」

 

花音「う、うん……。」

 

美菜「みんなー、出し物は、この中から決めるってことでいいですか?」

 

ハーイ!

 

ソレデイイデース

 

おぉ、結構いろんな候補があるな……。

 

えーっと?

 

カフェ、お化け屋敷、劇に、ジェットコースター、屋台、ミュージカル、等々……。

 

……ジェットコースターって何?

 

どうやって作んの?

 

ていうか、劇とミュージカルっていっしょじゃダメなの?

 

千聖「楓は何にするの?」

 

楓「え、僕ですか?……いやー、どれもあんまり……」

 

美菜「じゃあこれから多数決を取りまーす!一人一回は必ず手を挙げること!いいねー?」

 

楓「……」

 

花音「ほら、一人一回は必ず手を挙げろですって。何でもいいから早く決めてしまいなさいよ。」

 

楓「……じゃあ、無難にカフェとかにでもしとくかな。」

 

花音「カフェ、ね。……なら私は劇にしようかしら。」

 

楓「え、劇?」

 

花音「ええ、劇よ。悪い?」

 

楓「い、いえ、そういうわけでは…「それでは始めます!まず、カフェがいいと思う人ー!」! あ、挙げよう。ビシッ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

美菜「えー、多数決の結果、2-Aの出し物は過半数を越えた劇に決定しました!」

 

イェーイ!

 

ガンバルゾー!

 

楓「……マジか。」

 

千聖「多数決って、ほんと残酷よね。何があろうと数の多いほうが必ず選ばれてしまうんだもの。」

 

楓「……嫌みですか?それ。」

 

千聖「あら、私は事実を言ってるだけよ。」

 

うー、白鷺さんって、ときどきこういう嫌みっぽいこと言うよなー。

 

はぁ、劇かー。

 

みんな、そんなに劇やりたいのか?

 

……いいや、僕は裏方にでも回ってよ。

 

美菜「このクラスの出し物が劇に決まったってことで、それについての詳しい概要を決めよう…っと思ったけど、時間的に無理そうだなー。」

 

花音「そうだね。……先生、今日の話し合いは、ここで区切りをつけたほうがいいですよね?」

 

美澤先生「そうね。……出し物が決まって盛り上がってるとこ悪いけど、今日はここら辺で切り上げて…「ちょっと待ってください!」! ど、どうしたの?宮村さん。」

 

音羽「詳しい概要を決めるのは無理でも、劇の内容なら残りの時間でも決められると思います。」

 

美澤先生「内容を?……でも宮村さん、内容を決めるのにも、結構時間が…「大丈夫です!もう内容、というよりテーマですね。それは決まっておりますので!」決まってる?それ、どういうこと?」

 

花音「……音羽ちゃんにはもう、劇の内容についての案がある、ってこと?」

 

音羽「そういうことです!」

 

美菜「へぇ、気になるな~。宮村、その案っての、言ってみてよ。」

 

音羽「分かりました!それはズバリ、

 

 

 

 

 

……恋愛ものです!」

 

楓・花・千以外「……」

 

花音「……」

 

千聖「……」

 

楓「……え?」

 

『『『……れ、恋愛ものーー!?』』』

 

音羽「はい!私、今回のクラスの出し物の劇では、ぜひ恋愛ものをやりたいんです!もちろん、童話などではなく、オリジナルの話で!」

 

楓「……」

 

千聖「……」

 

美菜「ち、ちなみに宮村、その理由は……」

 

音羽「もちろん、私が恋愛もの好きだからです!」

 

……お、大雑把な理由だなー……。

 

……文化祭の出し物でやる劇って、だいたい童話系が多いよな?

 

オリジナルって、あまりないような……。

 

……宮村さんを否定するわけじゃないけど、文化祭の出し物で恋愛もの、しかもオリジナルの話で劇って、ちょっと邪道感が…「いいじゃん。」へ?

 

生徒A「いいじゃんオリジナルの話で恋愛もの!宮村!あたしそれやりたい!」

 

生徒B「私も賛成!なんか面白そうだし!」

 

生徒C「それにこのクラスには、恋愛ものにぴったりな人材がいるし!」

 

ワイワイガヤガヤ

 

楓「……あれ?」

 

千聖「みんな、なんかノリノリね……。」

 

美菜「先生、どうですか?宮村の意見。」

 

美澤先生「うーん、オリジナルの話で恋愛ものの劇、ねー。……うん!すごく面白そう!」

 

え~!?

 

ちょ、先生!?

 

美菜「よし!それじゃあ決まり!このクラスの出し物は、オリジナルの話で恋愛ものの劇に決定!!」

 

イェーイ!

 

フーフー!

 

楓「……ま、マジか。」

 

千聖「流石にこれは、私も予想外だわ……。」

 

美澤先生「……うん、丁度いいくらいね。浅井さん、松原さん、話し合いを進めてくれてありがとう。今からHRするから、各自席に戻ってくれる?」

 

美菜「はーい。行こ、松原さん。」

 

花音「う、うん。」

 

千聖「……それじゃあ楓、私は自分の席に戻るわね。」

 

楓「は、はぁ。」

 

……まだポカーンってなってる……。

 

花音「……ただいま、空見くん。」

 

楓「あ、お、お帰り。」

 

花音「……」

 

楓「……」

 

……今回の文化祭は、いつも以上にやる気出なさそう……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【花咲川女子学園 中庭】

 

彩「へぇ~、オリジナルの話で恋愛ものの劇か~。すごく面白そう!」

 

千聖「彩ちゃんたら、人事だと思って。あのね彩ちゃん、オリジナルの話でしかも恋愛ものの劇って、文化祭では結構邪道なのよ?オリジナルだから、話も自分達で考えなくちゃだし、登場人物や設定なども、全部自分達で考えなきゃなのよ。それがどれだけ大変なことか…「分かった、分かったから千聖ちゃん、ちょっと落ち着いて?」……はぁ、ほんとに分かってるのかしら。」

 

花音「あー、えっと、紗夜ちゃんのクラスは、出し物何をするの?」

 

紗夜「私達は、模擬店をすることになりました。」

 

花音「模擬店かぁ。私達のクラスでも候補に出たよ。ね、空見くん。」

 

楓「う、うん。」

 

紗夜「輪投げや射的、わたあめやクレープ屋さんなど、お祭りであるような店を、六種類ほど出すそうです。」

 

千聖「そうなの。そっちも面白そうね。」

 

燐子「ただ……あと二週間なので、……それまでに、準備が間に合うかどうか……」

 

花音「うん、それは私達も同じだよ。」

 

千聖「私達だけじゃなく、おそらく全クラスそうだと思うわよ。明日くらいから、本格的に準備に入ったほうがいいかもしれないわね。」

 

彩「でも千聖ちゃん達のクラスは、オリジナルの話の劇なんだよね。設定とか話の内容とかも決めないとだから、私達より忙しくなりそう……。」

 

千聖「そうなのよねー。……でも、やるからにはちゃんとしたものを作るつもりよ。」

 

彩「え、設定とかそういうのって、千聖ちゃんが考えるの?」

 

千聖「ち、違うわよ。“私が”じゃなくて、“私達が”という意味よ。」

 

楓「……」

 

花音「……空見くん、さっきからぼうっとして、どうしたの?」

 

楓「え?あぁ、……最近、この六人で集まることが増えたなーって。」

 

花音「あ、……うん、そうだね。」

 

楓「学校来た後の朝とか、昼休みとか、放課後とか。教室や屋上、ときには中庭で、この六人で集まって話をする機会が、いつからか増えたなーって思って。」

 

花音「……たぶんそのいつからかは、お花見のときだよね。」

 

楓「うん、僕もそう思う。」

 

花音「……私は楽しいよ。みんなで仲良くおしゃべりできて。空見くんは、どう?」

 

楓「……うん。僕もまぁ、楽しい、かな。」

 

花音「ふふ、良かった。……ねぇ、空見くん。」

 

楓「ん?」

 

花音「今度、いっしょに水族館に行きたいな。」

 

楓「水族館?」

 

花音「うん。どうかな?」

 

楓「……」

 

水族館……。

 

……水族館って、いくらくらいかかるっけ?

 

ていうか、ここら辺に水族館なんてあるんだ。

 

花音「と言っても、空見くんに拒否権はないけどね。」

 

楓「え!何で!?」

 

花音「忘れた?お花見のとき、私のお願いを一つ聞いてくれるって、言ったよね?」

 

楓「へ?……そんなこと、僕……」

 

……、……、……あ!

 

 

 

 

 

花音『じゃあ今度、私のお願いを一つ聞いてくれるなら、許してあげてもいいよ。』

 

楓『お、お願い?』

 

花音『うん。』

 

楓『ま、まぁ、それぐらいなら全ぜ…『じゃあ決まりだね♪』ニコッ ! う、うん……。』

 

 

 

 

 

楓「……そういえば、言った。」

 

花音「思い出した?」

 

楓「う、うん。」

 

花音「じゃあ決まりだね♪」

 

……ま、これぐらいいっか。

 

もしお金足りなかったら、お母さんにおこづかい前借りしよ。

 

紗夜「……もうこんな時間。みなさん、そろそろ帰りましょう。」

 

彩「そうだね。私達も、これから事務所行かなきゃだし。」

 

千聖「今日は、Roseliaは練習ないのよね?」

 

紗夜「はい。なので今日は、家に帰ったら部屋で自主練しようかと思っています。しかし、どうして白鷺さんがそのことを……?」

 

千聖「日菜ちゃんが言ってたからよ。」

 

紗夜「……なるほど、だいたい分かりました。」

 

彩「花音ちゃん、空見くん!途中までいっしょに帰ろう!」

 

花音「! うん!行こ、空見くん。」

 

楓「あ、うん。」

 

燐子「……!あ、あの、空見さん。」

 

楓「何?白金さん。」

 

燐子「明日、昼休みに図書委員の集まりがあるので、忘れないでくださいね。」

 

楓「あ、そうなんだ。うん、分かった。……明日のことなら、別に明日言ってもよかったんじゃ……」

 

燐子「えっと、それは、……事前に言っておいたほうが、忘れにくいと思ったので……」

 

楓「そ、そう。……ありがとう。」

 

彩「燐子ちゃん、空見くん、早くー!」

 

楓「早っ!?丸山さん、いつの間に……」

 

燐子「ふふ。……行きましょうか、空見さん。」

 

楓「うん。」

 

明日の昼休み、図書委員の集まりかー。

 

忘れないようにしないとな。




最近になって今更予約投稿というものを知りました。

予約投稿って、めっちゃ便利ですね。


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29話 “もう”、じゃなくて、“まだ”

どうも、知栄砂空です。

このタイトルの意味は、今回の話を最後まで読むと分かります。
 
ほんと、そのままの意味です。


ー2-A教室ー

 

楓「ふわぁ~。」ガラガラガラ

 

花音「あ、空見くん、おはよう。」

 

楓「おはよう、松原さん。ん?」

 

橋・音「! ササッ!」

 

楓「……あのー。僕の席で、何やってんの?」

 

橋山「な、何もやってないよ?ねぇ宮村。」

 

音羽「はい!空見さんにはまだ、関係のないことですので!」

 

楓「は、はぁ……。」

 

……もしかして、文化祭関係?

 

まぁ、実行委員の仕事なら、確かに僕には関係ないか。

 

千聖「あなた達。まさかとは思うけど、何か変なこと企んでたりしないでしょうね?」

 

橋山「し、してないよ。やだなー白鷺さん。」

 

音羽「さ、もうすぐHRが始まりますよ。早く席につきましょう。」

 

タタタ……

 

楓・花・千「……」

 

千聖「……怪しいわね。あなた達もそう思うでしょ?花音、楓。」

 

花音「う、うん。」

 

楓「まぁ、はい。」

 

あんな動揺のしかた、怪しさ以外のなにものでもないよな……。

 

千聖「……いいわ。とりあえず、様子を見ましょう。もしものことがあった場合は、私がきちんと言っておくわ。」

 

花音「そのときは、お手柔らかにしてあげてね……。」

 

千聖「そうね、……考えておくわ。じゃ、また後でね。」

 

花音「うん、また後で。」

 

楓「……ていうか、何で僕の席でやってたの?もぅ、ゴミとかちゃんと捨てといてよ。パッパッ」

 

花音「空見くん。」

 

楓「ん?」

 

花音「今日はお昼、いっしょに食べれないよね?」

 

楓「え?……あ、そっか。図書委員の集まりがあるんだ。ごめん松原さん。」

 

花音「そんな、いいよ謝らなくて。みんなも知ってるから。」

 

楓「明日なら、たぶんいっしょに食べれるよ。」

 

花音「“明日以降”じゃなくて?」

 

楓「あ、……うん、そうだね。」

 

『キーンコーンカーンコーン』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~昼休み~

 

【花咲川女子学園 図書館】

 

「……みんな集まりましたね。それではこれより、図書委員会を始めます。お願いします。」

 

『『『お願いします。』』』

 

「……今回集まってもらったのは他でもない、文化祭についてです。図書委員会は毎年、各自おすすめの本を選び、その選んだ本の紹介をこの紙に自由に書き、それらを展示するという企画を実施しています。ですが、今回は少し方針を変えていきたいと思っています。」

 

「方針?」

 

「どういうこと?」

 

昼休みが始まってから10分後に全員が集まり、先生が全員集まったのを確認するとすぐに委員会が始まった。

 

今みんなの前に立ってしゃべっているのは、3年生の企画・運営係の人だ。

 

名前は覚えていないが、氷川さんみたいな真面目な人だってことだけは覚えてる。

 

「あの、具体的には、どういうふうに……?」

 

「いくつかのジャンル別に別れて、それぞれその別れたジャンルの本を読んで紹介するんです。」

 

『『『!』』』

 

「それはまた……新しい試みですね。」

 

「いくつのジャンルにするか、それはまだ決めていませんが、それぞれ2人ずつくらいに別れてもらおうかと思ってます。」

 

「なるほどー。」

 

「それは面白そうなアイディアだね。」

 

「それじゃあ私は、恋愛ものにしようかな~。」

 

 

 

 

 

楓「それぞれのジャンル別かー。……じゃあ僕は、ミステリー系かな。白金さんは?」

 

燐子「私も……ミステリー系に……しようかと。」

 

楓「そうなんだ。じゃあ同じだね。」

 

燐子「はい。……同じジャンルなので……やりやすいと……思います。」

 

 

 

 

 

「……皆さん、誰が”自分の好きなジャンル“と言いました?」

 

楓・燐「へ(え)?」

 

「え、違うの?」

 

「自分の好きなジャンルを選んじゃダメなの?」

 

「それを今から説明します。そのために集まってもらったのですから。」

 

楓・燐「……」

 

『『『……』』』

 

「……くじ引きです。」

 

『『『……え?』』』

 

「何のジャンルの本を紹介してもらうかは、くじ引きで決めたいと思います。」

 

「……え?」

 

『『『えええええーーー!!??』』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~委員会終了後~

 

『次回の集まりは未定です。が、みなさん、自分が何のジャンルの本を紹介することになるのか、期待と不安を膨らませながら待っていてください。』

 

 

 

 

 

楓「……あんなこと言われたって、不安しか残らないよ……。」

 

委員会は5分もかからず終わった。

 

今僕は、白金さんといっしょに教室へ戻っている途中なのだが、……あの人の言葉が頭から離れん……。

 

燐子「びっくり……しました。とても真面目な人なので、……失礼かもしれませんけど、そういう斬新な企画を思い付くような人ではないと……思ってましたから……。」

 

楓「斬新、ねー。……白金さんはどう思う?あの企画。」

 

燐子「……私は、面白いと思います。」

 

楓「え!?」

 

燐子「あの人が言っていたのをまとめると、……図書委員全員がくじを引き、それぞれがその引いたジャンルに別れる。ジャンルがいくつあるかは分かりませんが、それぞれ2人ずつくらいと言っていたので、……5、6ジャンルくらいでしょうか。そして、それぞれに分かれた2人が、その担当のジャンルの本を読み、紹介を紙に書き、展示する。……紹介を紙に書いて展示するという部分は、従来のやり方と同じですね。」

 

楓「……怖くないの?」 

 

燐子「怖い?」

 

楓「白金さんは、自分の担当するジャンルが何になるか、不安で怖くなったりしないの?」

 

燐子「……不安にはなりますけど、怖くはないです。確かに、ホラーだと怖く感じるかもしれませんが、それは全部本なので。くじで自分の紹介する本のジャンルを決める、私はこの企画は面白いと思いますし、楽しみです。どんな本になるか、どんな本に出会えるのか。今から考えただけでもワクワクします!……はっ!す、すみません、空見さん。私ばっかり、……しゃべって……しまって。」

 

楓「いや、いいよ。……白金さんってさ。」

 

燐子「?」

 

楓「本当に本が好きなんだね。」

 

燐子「……はい!」

 

白金さんの話聞いてたら、僕も考えが変わってきたかも。

 

どんな本になるか、どんな本に出会えるか、か。

 

……確かにそう考えたら、楽しみで、ワクワクするかも。

 

まぁ、不安な気持ちは変わらないけど……。

 

 

 

 

 

彩「……!あ、空見くん!燐子ちゃん!お帰り!」

 

 

 

 

 

楓「? 何で丸山さんが、A組から?」

 

燐子「さ、さぁ……?」

 

 

 

 

 

彩「2人とも早く、こっちこっち!」

 

楓「……丸山さん、どうしてA組に……って、氷川さん!?」

 

紗夜「お疲れ様です。空見さん、白金さん。」

 

……何が、どうなってんの?

 

……ん?キョロキョロ

 

楓「あれ、松原さんがいない……。」

 

千聖「花音なら、実行委員の集まりに行ったわよ。」

 

楓「実行委員の?」

 

千聖「ええ。美菜ちゃんといっしょにね。」

 

楓「あ、そうなんですか。……」

 

 

 

 

 

千聖『花音ね、ずっと楓といっしょにお昼を食べたがってたのよ。オリエンテーションの日くらいから、ずっと言ってたわ。楓といっしょにお昼ごはんを食べたい。今日こそは楓をお昼に誘うんだって。』

 

 

 

 

 

花音『今日はお昼、いっしょに食べれないよね?』

 

 

 

 

 

……文化祭準備期間だから、松原さんと昼ごはん食べる機会、減っちゃうかもな。

 

燐子「あの……それで、皆さんはどうして、ここに……?」

 

千聖「彩ちゃんが、みんなでお昼を食べたいそうよ。」

 

楓・燐「……」

 

彩「ちょっと2人ともー!何そのリアクション!」

 

楓「ご、ごめん。……なんとなく、そんな気がしたからさ。」

 

彩「? どういうこと?」

 

千聖「彩ちゃんは平常運転で安心って意味よ。」

 

彩「え?……そ、それは、どう受け止めればいいんだろう……。」

 

紗夜「普通に受け止めればいいんじゃないですか?それは、白鷺さんなりの誉め言葉なんでしょう?」

 

彩「え、そうなの?千聖ちゃん。」

 

千聖「……ご想像にお任せするわ。」

 

彩「えー!何それー!」

 

燐子「ふふ、今日も賑やかですね。」

 

楓「うん。……賑やかなのは、いいことなんだけど……。」

 

グ~

 

千・彩・紗・燐「!」

 

そろそろ腹へった……。

 

燐子「……空見さんも、平常運転ですね……。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【花咲川女子学園 中庭】

 

彩「ん~!気持ちいい~♪」

 

紗夜「晴れていて良かったですね。」

 

燐子「気温も……丁度いいです。」

 

千聖「中庭でお昼……。花音がいないのが、ますます悔やまれるわ。」

 

楓「そう、ですね。」

 

丸山さんの提案で、僕達は中庭でお昼を食べることになった。

 

まだ昼休みなのでそれなりに人もいて、中には鬼ごっこで遊んでいる人達や、ギターを弾いている人もいる。

 

……ん?

 

ギター?

 

 

 

 

 

香澄「……あ!空見先輩!」

 

りみ「え、どこどこ?……あ、ほんとだ。」

 

たえ「おーい!空見先ぱーい!」

 

有咲「ちょ、香澄待てって!空見先輩はいいけど、他の人達が……」

 

沙綾「まぁまぁ落ち着いて、市ヶ谷さん。」

 

 

 

 

 

楓「……」

 

彩「? 空見くん、あの子達と知り合いなの?」

 

楓「いや、まぁ、知り合いというか、なんというか……」

 

燐子「空見さんの人脈……広い……ですね。」

 

紗夜「あの人も、ギターを……」

 

千聖「紗夜ちゃんは、そこなのね……。」

 

 

 

 

 

香澄「空見先ぱーい!こっちこっちー!早く来てくださーい!」

 

有咲「香澄!先輩に迷惑だって!」

 

 

 

 

 

楓「……どうすりゃいいんだろ。」

 

千聖「行ってあげればいいんじゃない?」

 

楓「でも、みんなはそれで……

 

 

 

 

 

香澄「先輩達も来てくださーい!」

 

有咲「だー香澄!!お前ほんとマジ黙れえ!」

 

 

 

 

 

……。」

 

紗夜「……行きましょうか。」

 

楓「……なんか、すみません。」

 

彩「あ、謝らなくていいよ。それに、人数は多いほうがいいし。ね、千聖ちゃん、燐子ちゃん。」

 

燐子「は、はぁ……。」

 

千聖「まぁ、それはそうだけど……。」

 

楓「……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

たえ「奇遇ですね、空見先輩。ほら、座って座って。」

 

りみ「先輩達も、もしだったらここに座ってください。」

 

千聖「ごめんなさい。……私達なんかが、お邪魔してもよかったの?」

 

香澄「全然大丈夫です!むしろ大歓迎です!ね、さーや!」

 

沙綾「うん。……先輩達、香澄の言う通りですよ。」

 

千聖「……じゃあ、お言葉に甘えさせてもらうわね。……あなた達は、みんな1年生?」

 

沙綾「はい。……あれ?松原先輩は、いっしょじゃないんですか?」

 

千聖「花音は、実行委員の集まりのほうに顔を出してるの。」

 

沙綾「あ、……そう、なんですか。」

 

香澄「ねぇみんな、せっかく先輩達がいるんだし、自己紹介しない?」

 

たえ「賛成!」

 

りみ「じ、自己紹介?……2年生相手だと、ちょっと緊張するかも……」

 

たえ「私、花園たえ。ギターやってます。」

 

有咲「自己紹介の仕方が唐突すぎんだろ!」

 

彩「あはは……、面白い子達だね。」

 

香澄「私、戸山香澄です!ここにいるみんなで、バンド組んでます!ギターボーカルやってます!」

 

え、バンド?

 

しかもここにいるみんなで?

 

……は、初耳だ……。

 

彩「へぇー、あなたもボーカルやってるんだ。」

 

香澄「あなた“も”ってことは、先輩も!?」

 

彩「うん。私、丸山彩。よろしくね、えっと、香澄ちゃん、でいいのかな?」

 

香澄「はい!」

 

彩「じゃあ次は、……千聖ちゃん!」

 

千聖「私?……白鷺千聖よ。私は彩ちゃんと同じバンドで、ベースをやっているわ。」

 

りみ「! べ、ベース……」

 

千聖「あなた、Glitter Greenの牛込ゆりさんの妹さんよね?香澄ちゃん達といっしょにステージに上がって演奏してるとこ、見てたわよ?」

 

りみ「そうだったんですか!?……」

 

千聖「そ、そんなにかしこまらないで?……あなたの演奏、とても良かったわ。迷惑じゃなければ今度、またあなたの演奏を聞いてみたいのだけれど。」

 

りみ「め、迷惑だなんてそんな!……あ、ありがとうございます!えっと、私、牛込りみっていいます!」

 

千聖「ふふ、よろしくね、りみちゃん。」

 

りみ「は、はい!」

 

香澄「りみりん、肩ガッチガチだよ?」

 

りみ「だ、だって、緊張するんだもん……。」

 

有咲「白鷺千聖……ってもしかして、あの天才子役の!?」

 

千聖「天才ではないけれど、まぁ、もと子役の、ね。」

 

沙綾「白鷺先輩、芸能人だったんですか……。」

 

楓「……」  

 

香澄「……すごい。」

 

彩「? 香澄ちゃん?」

 

香澄「すごいです!そんな人が同じ学校にいて、しかもバンドもやってるなんて!私、今度白鷺先輩のバンドのライブ、見てみたいです!」

 

千聖「……」

 

香澄「……あれ?」

 

有咲「香澄、お前のせいで白鷺先輩固まっちゃった…「ふふ。ありがとう、香澄ちゃん。」!」

 

千聖「あなたも、あのときステージにいたわよね?確か、カスタネットを演奏してた……」

 

有咲「! あ、あれは、香澄に無理矢理付き合わされて…「え~?でも楽しかったでしょ~?」べ、別に、楽しくなんか……」

 

楓「……」

 

たえ「市ヶ谷有咲、キーボードやってます。」

 

有咲「っておいこらおたえ!勝手に私の自己紹介するな!」

 

千聖「……香澄ちゃんの言っていたここにいるみんなって、この1年生5人のことでいいのかしら?」

 

沙綾「あ、いえ、私はバンドはやってなくて……」

 

りみ「香澄ちゃんと私と、おたえちゃんと有咲ちゃんの4人です。」

 

千聖「そうなの?」

 

あ、そうなんだ。

 

てっきり、山吹さんもバンドやってるのかと……。

 

 

 

 

 

沙綾『ここに写ってるの、友達のドラムなんです。友達が、私とドラムをいっしょに撮ったら絶対合うって言って、遊びで撮った写真なんです、これ。』

 

 

 

 

 

……今思えば、普通遊びであんな写真撮るかな~?

 

千聖「自己紹介を続けましょうか。それじゃあ次、燐子ちゃん。」

 

燐子「は、はい!えっと……し、白金……燐子です。……キーボード……やってます。」

 

有咲「キーボード……!」

 

燐子「あ、……お、同じ……ですね。」

 

有咲「そ、そうですね……。」

 

沙綾「良かったね、市ヶ谷さん。同じキーボード仲間がいて。」

 

有咲「……ま、まぁな。」

 

香澄「有咲、もしかして照れてる~?」

 

有咲「て、照れてねーよ別に///!」

 

香澄「そのわりには顔赤いよ~?」

 

有咲「あーもううるせーうるせーうるせー///!!」

 

彩「えーっとー、あと自己紹介してないのは……

 

紗・沙「私ですね(私だね)。……え?」

 

あ、……か、かぶっちゃったね。」

 

沙綾「……お、お先にどうぞ。」

 

紗夜「そうですか?では。……氷川紗夜です。花園さん、でしたっけ?その人と同じ、ギターをやっています。」

 

たえ「ギター……氷川先輩も。」

 

紗夜「花園さん。……もう一度、弾いてみてもらえないでしょうか?」

 

たえ「え?」

 

紗夜「さっきの音を、さっき弾いていた花園さんの音を、もう一度聞いてみたいんです。」

 

たえ「……分かりました。」

 

楓・千・彩・燐・香・り・有・沙「……」

 

たえ「……!」

 

『~♪』

 

楓「!」

 

『~♪~~♪♪』

 

紗夜「……」

 

彩「うわぁ~……」

 

香澄「おたえカッコいい!」

 

『~~♪♪~♪~~~♪♪♪』

 

紗夜「これが、花園さんの音……。」

 

『~~~♪♪♪~~♪♪

 

……~♪』

 

『『『……』』』

 

たえ「……ふぅ、こんな感じですかね。」

 

パチパチパチパチ……!!

 

彩「すごいカッコよかったよ!えっと……たえちゃん!」

 

千聖「素晴らしい演奏だったわ。」

 

たえ「ありがとうございます。」

 

紗夜「……」

 

たえ「どうでしたか?氷川さん。」

 

紗夜「……ええ、とても素晴らしく、気持ちのいい演奏でした。……花園さん。もしよろしければ今度、一緒にセッションしてみませんか?」

 

たえ「セッション……。」

 

千聖「すごいじゃないたえちゃん。紗夜ちゃんからセッションのお誘いをもらうなんて。」

 

香澄「おたえ!」

 

たえ「……はい。そのときは、よろしくお願いします。」

 

紗夜「ええ、こちらこそ。」

 

沙綾「……じゃあ、最後は私だね。」

 

香澄「よっ!待ってました!」

 

沙綾「香澄大袈裟。……山吹沙綾です。バンドはやってませんけど、みんなとは仲良くさせてもらってます。」

 

楓「沙綾んちのパン、すごく美味しいんですよ。」

 

千聖「パン?……もしかして、商店街にある山吹ベーカリーの……」

 

沙綾「あ、はい、そうです。」

 

紗夜「知ってるんですか?白鷺さん。」

 

千聖「花音が、たまに買ってきてくれるのよ。この店のパン、美味しいから食べてみてって。」

 

楓「松原さんが……」

 

千聖「バンドの仲間にもたまにお裾分けしてるのだけど、みんな美味しいって言って喜んでくれるのよ。ね、彩ちゃん。」

 

彩「うん!」

 

沙綾「そうなんですか。ありがとうございます!」

 

彩「パンの話してたら私、その店に行ってみたくなっちゃった。ねぇ千聖ちゃん、今度いっしょに行こうよ!」

 

千聖「ええ、いいわよ。時間があったらね。」

 

紗夜「……これでみんな、一通り自己紹介を終えました…「まだです!」え?」

 

たえ「そうです。まだ空見先輩が残ってますよ。」

 

楓「! え、ぼ、僕!?」

 

燐子「あ、確かに。」

 

楓「いや納得しないでよ白金さん!別に僕のことはみんな知ってるんだし、今更自己紹介なんてしたって…「でも、空見くん以外みんなやってるよ?」っ!で、でもそれは……」

 

千聖「いいじゃない楓、やってあげれば。」

 

楓「いや、でも…「私も、空見先輩に自己紹介、してもらいたいです。」え、う、牛込さん……。」

 

有咲「私も、りみに賛成。」

 

香澄「おぉ、珍しく有咲が真っ先に賛成を……。」

 

沙綾「じゃあ、私も。」ニコッ

 

楓「山吹さんまで……。」

 

千聖「どうする?楓。9対1よ。」

 

じゅ、9対1……。

 

あ、厚が強い……。

 

楓「……分かりました。しますよ、自己紹介。」

 

香澄「やったー!」

 

たえ「自己紹介のトリだー。」

 

楓「……そ、空見楓です。えっと、好きなことは、読書と、……ゲームをすること、です。」

 

香澄「はい!好きな食べ物は何ですか!?」

 

楓「え?す、好きな食べ物……。ラーメンとか、焼きそばとか。あとは、ポテトサラダとか、チーズケーキとか、かな。」

 

たえ「好きな本のジャンルは、何ですか?」

 

楓「ジャンル?……ミステリー系、とか……」

 

沙綾「どんなゲームが好きなんですか?」

 

楓「どんなゲーム?……そうだなー。パズルゲームとか……あ、音ゲーも少しやるかな。」

 

りみ「あ、あの!好きなパンの種類とかって、ありますか?」

 

楓「パンの種類か~。これはもう、迷わずジャムパン。朝ごはんは毎日それだよ。」

 

香澄「はい先輩!もう1個いいですか!?えっとー、どんな質問にしようかなー?」

 

有咲「いやそこは考えとけよ!」

 

楓「ま、まだやるの~?」

 

たえ「当然ですよ。空見先輩って、恋人いたことあるんですか?」

 

楓「こ、恋人!?」

 

香澄「あ、思い付いた!今まででキラキラドキドキしたことって何ですか?」

 

有咲「大雑把すぎるだろ!」

 

りみ「す、好きな動物は何ですか?」

 

有沙「あ、えっと……休みに外出するならどこに行きますか?」

 

たえ「今まで何人の人を好きになったことが……」

 

楓「え?あ、えっと、その、あー、うー、……こ、この質問攻めいつ終わるんだよーー!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『キーンコーンカーンコーン』

 

香澄「さようならー!先輩達ー!」

 

有咲「香澄、お前もうちょっといい言い方なかったのか?」

 

たえ「またいっしょにデートしましょうねー、空見先輩。」

 

りみ「お、おたえちゃん!?」

 

沙綾「花園さん、空見先輩をからかわないの。」

 

 

 

 

 

楓「はぁ、疲れた……。」

 

彩「面白い子達だったね、千聖ちゃん。」

 

千聖「まぁね。楓、あなたいつの間にあの子達と仲良くなったのよ。」

 

楓「い、いろいろありまして……。」

 

燐子「そ、そういえば……後半のあの人達の……空見さんへの質問攻め……すごかったですね。」

 

紗夜「そうですね。……あれは、オリエンテーションのときのことを思い出しました。」

 

彩「あー、あれか~。」

 

千聖「沙谷加ちゃんと、沙谷加ちゃんのクラスの子達からのあれね。」

 

楓「あのときの菊地さん達は、……ほんとに、怖かったです。」

 

千聖「あんな大人数で、楓1人を囲んでものね。」

 

楓「あれは、……マジでトラウマ級でしたよ……。」

 

紗夜「確か丸山さんは、今でも菊地さんと連絡を取り合っているんですよね?」

 

彩「うん!この前も、いっしょに喫茶店へケーキ食べに行ったばっかで……あ。」

 

千聖「へぇ、ケーキを?」

 

彩「! ち、違うの千聖ちゃん!あの、ケーキとはいっても、これくらい、ほんのこれくらいで…「彩ちゃん?」ひぃっ!」

 

千聖「あとでお説教ね♪」ニコッ

 

彩「……うぅ、は、はい……。」

 

……し、白鷺さん、怖え……。

 

燐子「……ふふ。」

 

紗夜「どうしたんですか?白金さん。」

 

燐子「さっきの自己紹介、楽しかったなと思って。」

 

紗夜「楽しかった?」

 

燐子「はい。……そのオリエンテーションのときも、自己紹介したの、覚えてますか?」

 

楓「!」

 

彩「覚えてる!覚えてるよ燐子ちゃん!」

 

千聖「彩ちゃんのせいで、一瞬場が静まりかえったあれね。」

 

彩「もぅ~!それは思い出させないでよ~!」

 

あぁ、そういやあのときも自己紹介したっけな。

 

菊地さんの一件のせいで忘れてた……。

 

紗夜「あのときは、松原さんもいて、6人で自己紹介をしたんですよね。」

 

千聖「ええ。あのときはまだ、私達も楓のことをまだあまり知らなくて。」

 

彩「体育館の隅で体育座りしてた空見くんを、私がみんなのところへ連れていってあげたんだよね。」

 

千聖「隅で体育座り?そうだったの?楓。」

 

楓「は、はい……。丸山さんに手を引いて連れてってもらったんですけど、周り全員女子だし、まだ学校に慣れてないのもあって、みんなの視線が痛く、恥ずかしかったのを覚えてます……。」

 

彩「あはは……、あのときはごめんね。私も急いでたから、つい手を……」

 

楓「いや、もう1ヶ月も前のことだし、いいよ。」

 

彩「! ……1ヶ月、か。」

 

紗夜「? どうかしたんですか?白鷺さん。」

 

千聖「……確かに。楓がこの学校に転校してきてから、もう1ヶ月なのよね。」

 

紗・燐「!」

 

ん?

 

何だ?

 

なんか一瞬、空気が変わったような……。

 

彩「……そう考えると、早いね。1ヶ月って。」

 

紗夜「公民館ライブやお花見も、つい最近やったような感覚ですが……」

 

燐子「早い……ですよね。……時が経つのって。」

 

……あのー。

 

ちょ、ちょっと待って?

 

ど、どうしたの?

 

何があったの!?

 

え、何でいきなりこんな空気になってんの!?

 

……うぅ、苦手なんだよなぁこういうの……。

 

なんか気まずくて、今すぐにでもこの場を離れたいくらい、この空気が苦手なんだよな……。

 

千聖「……でもみんな、こうも言えるのよ?」

 

彩・紗・燐「?」

 

え?

 

千聖「もう1ヶ月だけど、……“まだ”1ヶ月、ってね。」

 

紗・燐「!」

 

楓・彩「し、白鷺さん(ち、千聖ちゃん)……。え?」

 

千聖「ふふふ♪被っちゃったわね。」

 

紗夜「……まだ、1ヶ月、ですか。」

 

燐子「確かに……そうですね。」

 

千聖「そうよ。楓が来てから、まだ1ヶ月しか経ってないの。これから何が起こるのか、どんな未来が待っているのか。それは誰にも分からない。」

 

楓「な、なんか、話がすごい大袈裟になってきてません?」

 

千聖「それくらいの心構えで、この先を過ごしていきましょうってことよ。」

 

彩「そのためにまずは、2週間後に迫ってきた文化祭だね!」

 

千聖「ええ。やらなきゃいけないことは山ほどあるわ。特に私達のクラスは、今から準備しても間に合わないかもしれないくらい。」

 

楓「! え、白鷺さん、それ、マジですか……。」

 

千聖「大マジよ。だから、クラス全員で力を合わせて、死ぬ気で準備しなきゃ、楽しい文化祭を迎えることはできない。」

 

楓「……白鷺さんって、意外と文化祭楽しみなんですね。」

 

千聖「! そ、そういうのは今はいいの!とにかく、私が言いたいのは……」

 

彩「みんなで楽しい文化祭にしよう!ってことだね!」

 

千聖「……え、ええ。まぁ、彩ちゃんの言う通りよ。」

 

紗夜「楽しい文化祭、ですか。」

 

燐子「氷川さん。私……やりたいです。……楽しい……文化祭。」

 

紗夜「……ええ、そうね。……やってみますか、死ぬ気で。」

 

彩「私、この文化祭で、最高の思い出を作りたい!空見くんが転校してきてから初めての文化祭、空見くんとも、みんなとも!」

 

千聖「……と、みんなは言っているけど、あなたはどうなの?楓。」

 

楓「! ……ぼ、僕は……」

 

……文化祭なんて、楽しいと思ったことは一度もない。

 

いつも1人だったし、クラスの出し物もほとんど手伝ったことないし、何よりこういう行事が好きじゃないし。

 

……でも。

 

楓「……少しなら、僕も、……頑張って、みようかな。」

 

彩「空見くん!」

 

千聖「よく言ったわ、楓。そのためにもまずは、午後の話し合いよ。できれば今日で、劇のストーリー、登場人物、配役くらいは決めておきたいところだけど。……まぁそれは、宮村さん達次第ね。今日の朝から、ずっとそれについて話し合っていたから。」

 

楓「! やっぱり朝のやつって、劇についての話し合いだったんですか!?」

 

千聖「ええ、おそらくね。」

 

彩「……すごいなぁ千聖ちゃん、もうそんなとこまで考えてるんだ。」

 

紗夜「白鷺さん達に負けていられませんね。私も、やるからには全力で挑みます。」

 

彩「いや、紗夜ちゃん、これ別に勝負じゃないからね?全力で挑む必要ないからね?あ、でも、準備には全力で挑まないとか。」

 

燐子「忙しく……なりそうですね。」

 

白鷺さん、いつからそんな文化祭にやる気に……。

 

いや、もしかしたら白鷺さんって、こういう行事ごとには燃えるタイプだったりして……。

 

……まぁいいや。

 

……頑張るって言っちゃったからには、それなりに頑張らないとな。

 

彩「千聖ちゃんのクラスの劇、楽しみだなぁ。」

 

千聖「楽しみって、まだストーリーも決めてないのよ?」

 

紗夜「模擬店、何を出しましょうか……。」

 

燐子「文化祭ならではの模擬店を出せたら……面白そう……ですよね。」

 

……なんか、この人達となら。

 

……この文化祭を、本当にいい思い出にできそうな気がする。

 

なんとなく、だけど。

 

……そんな気がする。




3期のEDでちさかの(ちさかの……でいいんだよな?あれは……。)とさよひなが見れて嬉しかったです。


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30話 いっしょに帰るということ

どうも、知栄砂空です。

『Step×Step!』が神曲すぎてヤバイです。

六花ちゃんのことを思い浮かべて歌詞を聞きとりながら聞いたら涙が出てきそうでした……。




【花咲川女子学園 2-A 教室】

 

美菜「えーそれでは今日も、文化祭についての話し合いをしていきたいと思います。」

 

クラスメイトA「浅井さん、もうちょっと砕けた話し方でいいよ。」

 

クラスメイトB「私達、同じA組の仲間でしょ?」

 

美菜「そ、そう?じゃあ、お言葉に甘えて。……こほんっ!それじゃあ今日も、文化祭についての話し合いをやってくよー!」

 

『『『……』』』

 

美菜「え?え、何、この空気。」

 

花音「あ、あはは……」

 

 

 

 

 

楓「……僕的には、あの話し方のほうが浅井さんに合ってる気がするな。」

 

千聖「ええ、そうね。」

 

楓「って、またここにいるんですか、白鷺さん。」

 

千聖「何か問題でも?」

 

楓「いえ、特に、ないです……。」

 

余計なことは言わない方が身のためだもんな。

 

……ん?

 

花音「……!……ニコッ」

 

楓「!」

 

ふと浅井さんのほうを見たら、その隣にいる松原さんと目が合った。

 

僕と白鷺さんのやり取りを見てなのか、松原さんは僕に向かって静かに笑いかけてくれた。

 

……そういえば今日、朝のとき以来あまり話してないな。

 

昼休みの後はすぐこの文化祭の話し合いだったから、中庭から帰ってきた後も話したりしてないし。

 

やっぱ、実行委員って大変なのか。

 

 

 

 

 

美菜「それじゃあさっそくだけど、みんなに重大発表があるんだ!」

 

クラスメイトC「重大発表?」

 

クラスメイトD「何それ~。」

 

楓「重大発表?何だろう……?」

 

千聖「……」

 

美菜「それはー、……ジャーン!サッ!」

 

クラス全員「!!」

 

美菜「劇の台本、完成しましたー!」

 

オー!!

 

スゴーイ!!

 

モウデキタノー!?

 

楓「劇の、台本……。」

 

千聖「やっぱりね。」

 

楓「昨日話し合いで劇をするって決めたばっかだから、……一日で完成させたってこと!?……スゲーな。」

 

千聖「仕事が早いのは良いことだけど、問題は内容ね。」

 

楓「内容?」

 

千聖「クラス全員が納得する内容じゃないと、また書き直しになってしまうかもしれないでしょ?もしそれがずっと続いたら……」

 

楓「……間に合わなく、なっちゃう。」

 

千聖「そういうことよ。」

 

美菜「じゃあこれをクラス全員分刷ってきたから、今から配るねー。」

 

楓「え、クラス全員分もう刷ってきたの!?」

 

千聖「さ、流石にそこまでは予測できなかったわ……。」

 

美菜「松原さん、配るの手伝ってくれる?」

 

花音「う、うん。」

 

美菜「少し時間とるから、ちょっと読んでみて?それで何か意見があったら、出してくれると助かるな。」

 

 

 

 

 

クラスメイトE「……はい。」

 

楓「あ、ど、どうも。」

 

千聖「……結構厚いわね。もしかしたら浅井さん達、意外と本格的な劇を考えているのかも。」

 

楓「た、確かに、それは一理ありますね……。」

 

しかも、それに加えて恋愛ものだろ?

 

……嫌な予感がしないでもない、けど、……まぁ、読んでみるか。ペラッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~5分後~

 

美菜「うん、そろそろいいかな。みんなー、どうだったー?」

 

『『『……』』』

 

美菜「……あれ?」

 

楓「これは、……なんというか……」

 

千聖「劇というよりは……1つのドラマね、これ。」

 

美菜「! そうなんだよ白鷺さん!」

 

千聖「え?」

 

美菜「今回台本を書くにあたって、一番意識したのはそこ!“劇”っていう固定観念にとらわれずに、1つの“ドラマ”として描く。これが、この台本を書くにあたって一番意識したとこ!」

 

クラスメイトF「1つの、ドラマとして……」

 

クラスメイトG「なんかそれ、いいかも。」

 

クラスメイトH「うん!それに面白そう!」

 

美菜「ふっふっふ。今回は劇であって劇ではない。そう!ドラマなんだよ!みんながよくテレビや映画で見てるあの!」

 

花音「み、美菜ちゃん、すごくテンション、高いね……。」

 

美菜「そりゃ高くなるよ!ドラマだよドラマ!しかも恋愛ものの!それを私達でやるんだよ!もうどんな作品になるか、楽しみでしょうがないよ!」

 

 

 

 

 

楓「……もうこれ、劇じゃないじゃん。」

 

千聖「……」

 

橋山「よっ、空見。」

 

楓「あ、橋山さん。」

 

橋山「浅井のやつ、すごい張り切ってるよな~。」

 

楓「……去年も、あんな感じだったの?」

 

橋山「まぁね。でも、去年よりはテンション高いかな。」

 

楓「え、そうなの?」

 

橋山「今はああ言ってるけど、浅井ってあまり、劇みたいなの好きじゃないんだよ。そういうのよりは、隣のクラスがやるようは模擬店とか、お化け屋敷みたいなのが好きで……」

 

楓「そうだったの?……じゃあ、何で……」

 

橋山「たぶん、空見がいるからじゃないかな。」

 

楓「……え、僕?」

 

橋山「空見が転校してきてからあいつ、すごく楽しそうなんだよ。暇があると空見の話ばっかするし、空見にちょっかい出しに行くし。」

 

楓「あ、……たまにちょっかい出しにくるの、そういうことか……。」

 

橋山「ここだけの話、浅井のやつ、ああ見えて空見が転校してくるまで友達あたしくらいしかいなかったんだよ?」

 

楓「! そうなの!?」

 

橋山「ちょ、声がでかいって!……こういう行事とかでは、率先してなんとか長とかに立候補してみんなをまとめるんだけど、それ以外ではからっきし。あたし以外とはほぼほぼ話さないし、遠慮もしがちだし。」

 

楓「で、でも、浅井さんが橋山さん以外の人達とも話してるの、よく見るよ?」

 

橋山「空見を見て、少しずつ努力しようと頑張ってるんだよきっと。」

 

楓「僕を見て、って……。僕もたいして他の人と話してなんかないのに、何で……。」

 

橋山「……そういう無意識なところに、ひかれたんじゃないかな?」

 

楓「へ?」

 

橋山「じゃ、あたしそろそろ席戻るわ。じゃーね空見。」

 

楓「……う、うん。」

 

……無意識?

 

……って、何が?

 

……まぁいいや。

 

それにしてもあの浅井さんが、僕が転校してくるまで橋山さんしか友達がいなかったなんて。

 

信じられないなぁ。

 

美菜「というわけで、これから配役を決めたいと思いまーす!」

 

配役!?

 

え、もうそんな話になってたの!?

 

美菜「じゃあまず、この主人公男Aとヒロインの女Aだけど。……ジー」

 

……ん?

 

何だ?

 

なんか、視線がこっち向いてるような……。

 

気のせい、かな?

 

美菜「ふふ♪ニコッ そーらみ♪と、松原さん♪頼んだよ♪」

 

楓・花「え(ふぇ)?」

 

頼んだよ?

 

……え?

 

え、あの、その、え、えーっとー、……え!?

 

……はぁ!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『キーンコーンカーンコーン』

 

千聖「花音、帰りましょ……って、……大丈夫?二人とも。」

 

楓・花「……大丈夫じゃ、ないよ(です)。……はぁ~。」

 

千聖「楓はともかくとして、花音がそんな長いため息つくなんて、珍しいわね。」

 

花音「もぅ~!千聖ちゃん!何で断ってくれなかったの!?」

 

楓「そうですよ!いつもなら、楓なんかこの役に合うわけがないから却下よ、とか言うのに!」

 

千聖「そ、そうかしら?」

 

楓「そうですよ!」

 

僕と松原さんが何でこんなに怒ってるのか。

 

それは、さっきの話し合いのせいだ。

 

……今回の演劇(さっき白鷺さんが今回の出し物は劇というよりは演劇に近いと教えてくれた)の主人公である男Aと、そのヒロインである女A。

 

……なんと満場一致で、

 

……僕と松原さんに決まってしまったのだ。

 

……いや何でだよ!?

 

嫌だよ!やりたくねえよ!

 

何で僕が主人公なんだよ!

 

そりゃあ男が僕だけってのはあると思うけど。

 

だとしてもだよ!?

 

浅井さんとか橋山さんがやりゃあいいじゃん!

 

そこは無理に男=男にしなくてもよかったじゃん!

 

……みたいなことは言ったんだけど、1VS30以上で勝てるわけないよね。

 

てか、何で白鷺さんも何も言わなかったの!?

 

いつもなら絶対、僕にはこんな役合わないって真っ先に反対するじゃん!

 

それなのに白鷺さん、

 

 

 

 

 

千聖『いいんじゃないかしら?楓で。』

 

 

 

 

 

なんて言うし!

 

何!?

 

白鷺さんキャラ変わったの!?

 

いったいどうなってんだよ!

 

え!?おい!!

 

楓「絶対無理ですよ!僕に恋愛ものの主人公なんて!」

 

千聖「そんなこと言ったって、決まっちゃったものは仕方ないでしょ?」

 

楓「いや、決まったっていっても、別に僕はいいとは一言も…「満場一致で決まったのよ?多数決みたいなものなのだから、あなたがとやかく言う義理はないわ。」そ、そんな~……」

 

あーもうくっそーー!!

 

……うぅ、多数決め、なんて残酷な決め方なんだ……。

 

花音「……私、ヒロイン役なんて無理だよぉ……。」

 

千聖「大丈夫よ。花音なら絶対できるわ。」

 

花音「できないよ!……ていうか、どうして私なの!?私じゃなくても、千聖ちゃんや美菜ちゃん、橋山さんや音羽ちゃんがやれば…「花音!ガシッ!」!」

 

千聖「楓のヒロイン役に合うのは、あなたしかいないの!クラスのみんながそう思ってるわ。大丈夫!私がしっかりサポートするから!ね?」

 

花音「……で、でも~……」

 

千聖「花音、あなたは楓のヒロイン役、嫌?」

 

楓「!?」

 

いや白鷺さん言い方!!

 

花音「ふぇ!?い、いや、えっと、……別に、い、嫌ってわけではないけど、その、なんというか、……す、少し、恥ずかしい、っていうか……」

 

千聖「……恥ずかしい?」

 

花音「う、うん。」

 

千聖「……楓に膝枕しておいて、ヒロイン役が恥ずかしいの?」

 

楓「///!?」

 

花音「ち、千聖ちゃん///!?ど、どうしてそれを……」

 

千聖「彩ちゃんから聞いたのよ。」

 

花音「あ、彩ちゃんに?……あ。」

 

……そういえば見られてたんだっけな。

 

あの後はほんとひどかった。

 

ご飯も食べれず、寝れず、次の日も起きれず、食べれず、あげくのはてに遅刻して。

 

……膝枕なんて、僕みたいなヘタレはされるもんじゃないって、見に染みるほど分かったっけ……。

 

花音「そ、そっか。……///。千聖ちゃん、知ってたんだ。私が空見くんに、……ひ、膝枕、してあげたこと///。」

 

千聖「ええ。」

 

……丸山さん、そういうことは黙ってくれればいいのに。    

 

僕もあのときめちゃくちゃ恥ずかしかったから、あまり人に知られたくないんだよな……。

 

特に氷川さんとかに知られたら、……どうなるか分かったもんじゃない……。

 

千聖「膝枕に比べれば、ヒロイン役なんてどうってことないでしょ?」

 

花音「そ、そんなことないもん!……ひ、ヒロイン役なら、千聖ちゃんのほうが、合ってると思うけど。ボソッ」

 

楓「……!」

 

し、白鷺さんの回りに、なんかどす黒いオーラみたいなものが……。

 

千聖「今のは、例え花音でも聞き捨てならないわね?」

 

花音「! ち、千聖ちゃん!?な、何で、そんなに、怒って…「私と楓なんかが釣り合うわけないでしょ!?」ふぇぇぇぇ!?」  

 

……珍しい光景だ。

 

松原さんが白鷺さんに、説教されてる……。

 

……僕と白鷺さんが釣り合わないなら、僕と松原さんも釣り合わないと思うんだけど。

 

そこのところは、どうなんだろう……?

 

千聖「いい?花音。この際だから、あなたにもきっちり教えておくわ。」

 

花音「ふぇぇ……!?そ、空見く~ん!」

 

……ごめん松原さん。

 

こうなった白鷺さんを止めることは、僕にはできないよ。

 

だって、……止められたためしがないんだもん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

花音「じゃ、じゃーね、空見くん。」

 

千聖「また明日ね、楓。」

 

楓「ま、また明日。……はぁ。」

 

あの後、なぜか僕も怒られた……。

 

何だよ、何でだよ、僕がいったい何をしたっていうんだよ。

 

……たまに白鷺さんの考えてることが分からなくなるんだよなー。

 

はぁ、それに慣れちゃった自分がすごい……。

 

……帰るか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……はぁ。

 

僕が劇の主役、かぁ。

 

そんなの、できるわけが……。

 

楓「……ん?」

 

教務室の前にいるのって、……牛込さん?

 

りみ「失礼しましたー。……!」

 

あ、気づいた。

 

いや、気づかれたというべきか。

 

りみ「……こ、こんちには、空見先輩。」

 

楓「こんちには。……日直だったんだ。」

 

りみ「はい。他のみんなは、宿題があるからって、先に帰りました。」

 

楓「そうなんだ。……じゃあ、僕もこれで…「あ、あの!」ん?」

 

りみ「もし迷惑じゃなかったら、その、……いっしょに、帰りませんか?」

 

楓「え?」

 

りみ「あ、いや、その、……い、いつもみんなと帰ってるから、一人で帰るのは、ちょっと寂しいなーって思って、それで……」

 

楓「……」

 

りみ「……へ、変ですよね。高校生が、一人で帰るのは寂しいなんて…「い、いや。」?」

 

楓「別に僕は、……そうは、思わないけど……」

 

りみ「……」

 

楓「……い、いいよ。それなら、……いっしょに、帰ろっか。」

 

りみ「……あ、ありがとうございます!」

 

楓「ど、どういたしまして。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

楓「……」

 

りみ「……」

 

さっきは、牛込さんがあんなこと言ってたからかわいそうだなと思ってああ言ったけど、……これで、よかったのかな?

 

今はお互い無言でただ歩いてるだけだけど、……この状態、いつまで続くんだろう……。

 

りみ「……あ、あの、空見先輩。」

 

楓「! な、何?」

 

りみ「空見先輩のクラスは、文化祭、何やるんですか?」

 

楓「文化祭?……僕のクラスは、……演劇、でいいのかな?」

 

りみ「演劇!?……すごいですね。」

 

楓「正直、あんまり気は進まないんだけど、多数決で決まっちゃって……」

 

りみ「そうなんですか。」

 

楓「……牛込さんのクラスは、何をやるの?」

 

りみ「私のクラスは、カフェをすることになったんです。」

 

楓「カフェ?」

 

りみ「はい。1-Aのカフェ、略して“1A(いちエー)カフェ”です。」

 

楓「いちえーカフェ?……斬新な名前だね。」

 

りみ「え?あ、いや、別に名前とかではなくて、香澄ちゃんがそう言ってたから、みんなそう呼んでるだけで、だから…「わ、分かったよ。分かったから、ちょっと落ち着いて。」! ご、ごめんなさい!私ったら、テンパっちゃって……」

 

楓「い、いいよいいよ。」

 

そっか、カフェか。

 

僕のクラスでも、一応候補で出てたっけ。

 

りみ「……あの……」

 

楓「ん?」

 

りみ「演劇って、どんなことをするんですか?」

 

楓「ど、どんなこと?」

 

りみ「はい。」

 

……ど、どうしよう。

 

ここは、素直に言うべきなのか?

 

いやでも、これを言ってもし引かれたりしたら……。

 

……は、ないか。

 

うん、流石にそれなはい。

 

じゃあいいや。

 

素直に言おう。

 

楓「……れ、恋愛もの。」

 

りみ「れ、恋愛!?」

 

楓「うん。しかもオリジナルの……」

 

りみ「お、オリジナルの、恋愛もの……」

 

……あれ?

 

待って?まさかこれ、若干引いてる?

 

え、マジ?

 

……やっぱ言わなきゃよかったかも……。

 

りみ「……すごいです。」

 

楓「え?」

 

りみ「すごいです!恋愛ものの、しかもオリジナルの演劇。すごくハードルが高そうですけど、空見先輩達がやったらきっと、とてもいい劇になりそうです!私、応援します!」

 

楓「そ、それはどうも、……ありがとう。」

 

い、意外と絶賛だった……。

 

やっぱ女子ってみんな、恋愛ものが好きな傾向があるのか?

 

りみ「そういえば、こうして空見先輩といっしょに帰るのは、お姉ちゃんのライブを見に行ったとき以来ですね。」

 

楓「いや、でもそのときは、ライブを見に行くためにいっしょにSPACEに向かってただけであって、それがいっしょに帰ったことには…「なりますよ!」え、……なるの?」

 

りみ「はい。……まさか空見先輩、今までもそういう思考で……」

 

楓「……う、うん。だから、学校からこうして女子と帰るのは、牛込さんが初めてだと思ってて……。え、それじゃあ、松原さんとショッピングモールに行ったときも、商店街を案内してもらったときも、いっしょに帰ったってことになるの?」

 

りみ「……たぶん、なると思います、けど。」

 

……あ、マジですか。

 

……じゃあ僕、女子と帰るの、これが初めてじゃないじゃん。

 

あ、そうなんだ、そうだったんだ。

 

……花咲川、恐るべし……。

 

りみ「……あ、空見先輩。私、ちょっと寄りたいところがあるんですけど、いいですか?」

 

楓「え?あ、うん。……!」

 

い、いつの間にか、商店街に着いてた……。

 

歩いたり話したり考えたりしてるのに夢中で、気づかなかったよ。

 

りみ「ここです!」

 

楓「……あ、山吹ベーカリー。」

 

りみ「ここも、松原先輩に案内してもらったんでしたっけ。」

 

楓「うん、まぁ。」

 

その後、普通に家に招かれてもいるけどね……。

 

カランコロン

 

沙綾「いらっしゃいま……あ、牛込さん!空見先輩も!」

 

りみ「こんばんは、沙綾ちゃん。チョココロネ、まだある?」

 

沙綾「もっちろん!空見先輩も、何か買っていきます?」

 

楓「あ、うん。じゃあ、メロンパンとジャムパンと……。! し、新商品!?……気になる……。」

 

沙綾「あはは、じっくりどうぞ。」

 

……新商品、明太エッグパン。

 

……めちゃくちゃ旨そう……。

 

よし、買おう!

 

沙綾の父「沙綾ー!出来立てのパン、持ってってくれー!」

 

沙綾「はーい!」

 

あれは、……山吹さんのお父さんか。

 

ん?

 

今山吹さんが持ってるパンって……。

 

りみ「……あれ?沙綾ちゃん、そのパンって……」

 

沙綾「ん?あぁこれ、うちのもう一つの新商品!とは言っても、数日前に出たやつだけどね。……買っていきます?空見先輩。」

 

楓「え?あぁ、……うん、じゃあ買ってこうかな。」

 

沙綾「……はい、一つでいいですよね?」

 

楓「うん。ありがとう、山吹さん。」

 

りみ「……空見先輩は知ってたんですか?そのパン。」

 

楓「ん?あ、うん。だってこのパンは、僕が……!」

 

りみ「空見先輩が、……何ですか?」

 

楓「う、ううん、何でもない……。」

 

危ない危ない。

 

あやうく前に山吹さんの家に来たことをしゃべるところだった。

 

そういうのは、あまり知られたくないからなぁ。

 

沙綾「この前うちに空見先輩が来たとき、おやつがわりに出したのが、このパンだったんだよ。」

 

楓「!? ちょ、ちょっと!や、山吹さん!?」

 

りみ「沙綾ちゃんの、家に?……空見先輩が?」

 

沙綾「うん。その日は丁度このパンの発売予定日前日だったんだ。空見先輩にもお客さんにもすごく好評で、売り切れ続出になるくらいの人気パンになったんだ。」

 

りみ「そう、だったんだ。……ジー」

 

楓「……な、何?牛込さん。」

 

りみ「いえ、別に……。」

 

……何でだ。

 

何で山吹さん、そのこと言っちゃうんだよ……。

 

あれか?天然なのか?

 

おかげで牛込さんが素っ気ない感じになっちゃってるし。

 

……これ、僕のせいじゃない、よな?

 

楓「……ち、ちなみに山吹さん。そのパンの名前って、何なの?」

 

沙綾「KAEDEです。」

 

りみ「!」

 

楓「……へ?」

 

沙綾「ローマ字で、“KA、E、DE”です。」

 

楓「か、かえで?……えっと、僕の名前と、同じなの?」

 

沙綾「はい。」

 

楓「……ちなみに、何でか聞いても…「企業秘密です♪」……そ、そう。」

 

りみ「……沙綾ちゃん、私もそのパン、一つもらえるかな?」

 

沙綾「OK。……はい、どうぞ。」

 

りみ「ありがとう。それじゃあ、お会計お願いしてもいい?」

 

沙綾「もちろん!」

 

楓「……あ、あの、牛込…「沙綾ちゃんちのチョココロネ、ほんと美味しいよね~。」「もう、いつも言ってるじゃんそれ。」……」

 

今僕、無視された?

 

……いやまぁ、女子に無視されるのなんて別にどうも思わないけど。

 

……牛込さんだからかな?

 

なんかすげぇショック……。

 

沙綾「空見先輩、どうぞ。」

 

楓「え?あ、うん。」

 

山吹さん、会計早っ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カランコロン

 

りみ「じゃーねー、沙綾ちゃん!」

 

沙綾「うん、また明日ー。」

 

なんだかんだ、500円以上使っちゃったな。

 

……まぁいっか。

 

りみ「……」スタスタスタ

 

ん?

 

……スタスタスタ

 

りみ「……」スタスタスタスタ

 

うっ、……スタスタスタスタ

 

りみ「……」スタスタスタスタスタスタ

 

楓「……ね、ねぇ、牛込さん。なんか歩くの、早くない?」

 

りみ「……」

 

……完っ全に無視されてる……。

 

え、何で?

 

僕、何か悪いことした?

 

……って言って謝ると、また白鷺さんになんか言われるんだよなぁ。

 

まぁ今白鷺さんいないけど。

 

……ん?

 

楓「あれ?……ここって……」

 

ワーイ!

 

コンドハボクガオニダー!

 

ワー!

 

……松原さんに膝枕してもらってた、公園……。

 

りみ「……」

 

楓「も、もしかして、ここでパン食べるの?」

 

りみ「……」

 

楓「……ねぇ牛込さん。なんか言ってよ。」

 

りみ「……」

 

楓「僕、何か気にさわることしたんなら謝るから…「ちょっと黙っててください!」! ご、ごめんなさい……。」

 

後輩に敬語で謝る僕って……。

 

……うぅ、泣きてぇ……。

 

りみ「……スッ」

 

あ、このベンチは……。

 

りみ「……どうぞ。」

 

楓「へ?」

 

りみ「ど・う・ぞ。」

 

楓「は、はい……。スッ」

 

これ以上怒らせると何があるか分かったもんじゃないので、素直に言われた通り牛込さんの隣に座った。

 

このベンチ、……松原さんに膝枕してもらってたとこだ。

 

牛込さん、こんなとこに座って何を考えて…「横になってください。」……ん?

 

楓「え?……今、何て…「早く、ここに、横に、なって、ください。」……い、いや、横になるスペースなんてどこに…「こ・こ・に、横になってください!」……」

 

今牛込さんは、自分の膝を叩きながらそう言っている。

 

つまり、どういうことか分かるか?

 

……なぜか知らんけど、僕を膝枕しようとしている。

 

……ちょっと待て一旦落ち着け。

 

……牛込さん、いったいどうした?

 

楓「いや、でも、それは流石に…「早くしてください!」……」

 

流石に僕も、言うときは言うぞ?

 

りみ「何してるんですか空見先輩!早くここに横に…「嫌だよ。」!」

 

楓「牛込さん一年生でしょ?僕は二年生。理由もないのに、僕が牛込さんに膝枕してもらうなんてできないよ。」

 

りみ「! だ、誰が膝枕って…「自分の膝叩いてここに座ってくださいなんて、膝枕以外の何でもないだろ!」!」

 

楓「とにかく、お前が何を言おうと、僕はそこに横になんかならねぇからな。膝枕ごっこがしたきゃ、友達とやれ友達と。戸山さんとか山吹さんとかいるだろ。」

 

りみ「……」

 

楓「ったく、何考えてんだよほんとに。時と場合を考えろ。」ボソッ

 

りみ「……ご、ごめん、なさい。」

 

楓「……!」

 

……ヤベ。

 

今僕、たぶん言っちゃダメなことを言っちゃったことに気づいた。

 

……どうしよ。 

 

あんまり女子の前では、このしゃべりかたしないようにしてたのに。 

 

ついかっとなって……。

 

りみ「……わ、私、そろそろ帰ります。」

 

楓「え?あ、ちょっと牛込さん!」

 

りみ「さようなら。……タッタッタッタ!」

 

あ……。

 

……ヤバい、やっちゃった。

 

楓「……くそっ。まさか、こんなところでやらかすなんて……。」

 

……最低だ、僕。

 

一年生に向かって、あんな……。

 

しかも、牛込さんに。

 

……ほんっと、最低だ。

 

最低最悪の馬鹿野郎だ、僕は……。




ゲキクロの花音ちゃんが可愛すぎるのは分かります。

だって推しですから。

でも、これだけ言わせてください。

……3期で花音ちゃんいつ出てきてくれるの(泣)……。


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31話 ぐちゃぐちゃの気持ち

今回からあいさつをやめたいと思います。

理由?

なんとなくです。

もう一度言います。

なんとなくです。


美菜「よーし!それじゃあ今日から、本格的に劇の練習に入ってこー!」

 

『オー!』

 

花音「ど、どうしよう……。緊張、してきた……。」

 

千聖「花音、これはまだ練習なのよ?しかも1回目の。」

 

花音「そ、それは分かってるけどぉ……。でも緊張するの~。」

 

千聖「大丈夫よ。もしものときは、私が助けてあげるから。ね、楓。」

 

楓「……」

 

花音「……空見、くん?」

 

楓「……」

 

 

 

 

 

りみ『……わ、私、そろそろ帰ります。』

 

楓『え?あ、ちょっと牛込さん!』

 

りみ『さようなら。……タッタッタッタ!』

 

 

 

 

 

……僕は、……何てことをしちゃったんだ。

 

千聖「ちょっと楓、どうしたの?さっきからずっとそんな調子じゃない。」

 

花音「空見くん、具合でも悪いの?」

 

楓「……いや、そういうわけじゃ、ないけど……」

 

千聖「だったらもっとシャキッとしなさいよシャキッと。男でしょ?」

 

楓「……」

 

千聖「……もう。」

 

美菜「どうしたの?2人とも。」

 

花音「美菜ちゃん……。空見くんが、なんか元気ないみたいで。」

 

千聖「楓がこんなんじゃ、劇の練習なんて出来ないわ。」

 

美菜「えぇ!?それは困るよ~。ちょっと空見、ほら立って、練習始めるから。」

 

楓「……」

 

美菜「……ダメだ、全然反応しない……。」

 

千聖「楓、早く立ちなさい!もう決まった役なんだから、今更決めこいてもしょうがないでしょう!?」

 

楓「……」

 

千聖「あなた、今自分がみんなに迷惑かけてるって分かってるの!?」

 

花音「千聖ちゃん、ちょっと落ち着いて……。」

 

橋山「……ねぇ空見、何か悩みがあるならさ、あたし達が聞くから。」

 

音羽「私達なら、いつでも相談にのりますよ?」

 

楓「……」

 

ネェマダ~?

 

ハヤクレンシュウハジメタインダケド~

 

美菜「! ご、ごめんみんな、もう少し、もう少しだけ待ってて。……空見!お願いだからさ、まずは練習しよ?ね?」

 

楓「……」

 

美菜「ワンシーンだけでもいいからさ、今日はそれだけ練習してあとはもういいからさ。」

 

楓「……」

 

美菜「……ねぇ空見、いい加減にしないと、例え私でも怒…「分かった。」え?」

 

花音「分かったって、何が?千聖ちゃん。」

 

千聖「楓、もういいからあなたはさっさと帰って。」

 

花・美・橋・音「!?」

 

千聖「主人公の配役は、誰か違う人にしましょう。女子が男の役をやっても、何も問題ないのだし。」

 

美菜「ちょ、ちょっと待ってよ白鷺さん。主人公役は空見しかいないって、この前みんなで…「こんなやる気のかけらも感じられないような男は放っとけばいいのよ。ほら、早く帰って。そして二度と顔を見せないでちょうだい。」! し、白鷺さん……。」

 

花音「ち、千聖ちゃん!それはあまりにもひどすぎるよ!例え千聖ちゃんでも、そんなこと、私許せ…「時間がないのよ!!」!ビクッ!」

 

千聖「もう文化祭まで2週間を切ってるの!その意味が分かる?……今日から毎日、休みの日も潰して死ぬ気で練習するくらいじゃないと、文化祭にはとうてい間に合わない。それなのにこの男は何!?自分の配役が気に入らないからっていじけて、みんなに迷惑かけて、いったい何様のつもりよ!」

 

楓「……違う。」

 

花音「え?」

 

千聖「ドラマの撮影だって同じよ!限られた時間の中で、1日に撮らなきゃいけないシーンだっていくつもある。スタッフさん達が必死に考えてくれたスケジュールや台本を使って、私達は必死に自分の演じる役を練習しなきゃいけないのに、そんなときにこんなのがいたらどう!?そんなの答えは1つ、邪魔なのよ!こんなのがそんな大事な場にいたら、邪魔なだけなのよ!!」

 

楓「……から、違うって。」

 

花音「……」

 

千聖「あなたみたいなのがここにいると、目障り、邪魔なだけなのよ!だから、さっさと私達の前から消えて!そして二度と私達の前に現れないで!!……ほら、さっさと消えて!消えなさいよ!!私の言ってる言葉が分からないの!?」

 

花音「千聖ちゃん!いい加減に…

 

 

 

 

 

「だから違うっつってんだろ!!」

 

 

 

 

 

!?」

 

千・美・橋・音「!?」

 

『!!』

 

楓「さっきから聞いてたら邪魔だの消えろだの、何度も同じ言葉を繰り返してるだけじゃねえか!うるせえんだよ!僕はさっきから違うって言ってんだ!少しは聞く耳持てよ!……はぁ、はぁ。」

 

千聖「……な、何よ。そんなの、ただの逆ギ…「あぁそうだよ!逆ギレだよ!逆ギレして何が悪いんだよ!人の言うことに聞く耳も持とうとしないお前が悪いんだろうが!僕は別に自分の役に不満なわけじゃねえし、練習が面倒くさく思ってるわけでもねえのに。何が邪魔、消えろだよ、ふざけんじゃねえ!!」……」

 

楓「人の話も聞こうとしないお前に、そんなこと言われる筋合いねえんだよ!!あ?あげくのはてには自分が女優だからってドラマの撮影話なんか出しやがって、意味分かんねえんだよ!人に邪魔だの消えろだの言うんだったらな、まずは他人の話に耳を…「意味分からないのはあなたのほうよ!!ダッ!」!」

 

美菜「! ちょ、白鷺さん!」

 

橋山「待って浅井!あたしも行く!」

 

音羽「わ、私も行きます!」

 

楓「……はぁ、……はぁ、……はぁ。」

 

花音「……」

 

生徒A「……わ、私達も帰ろっか。」

 

生徒B「そうだね。今日は練習ないみたいだし。」

 

生徒C「よーし!それじゃあこれからみんなでカラオケ行こう!」

 

『オー!』

 

 

 

 

 

……タッタッタッタ

 

彩「花音ちゃん!空見くん!」

 

紗夜「何があったんです……か?」

 

燐子「……松原さんと、空見さん、だけ……?」

 

楓・花「……」

 

彩「……ね、ねぇ、花音ちゃん。千聖ちゃん達がA組を飛び出していったんだけど、何かあった…「ごめん彩ちゃん。」え?」

 

花音「私達だけにして?」

 

彩「……で、でも…「お願い。」! ……わ、分かったよ。……行こ、紗夜ちゃん、燐子ちゃん。」

 

紗夜「し、しかし…「私達は、私達のことに集中しよう。」っ!……」

 

彩「ね、燐子ちゃん。」

 

燐子「……はい。」

 

彩「……お邪魔してごめんね。」

 

花音「……」

 

楓「……」

 

……そして教室は、僕と松原さんの2人だけになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~30分後~

 

花音「……」

 

楓「……」

 

花音「……あ、あ……、……」

 

楓「……」

 

花音「……あ、あの!……そ、空…「ごめん。」え?」

 

楓「……」

 

花音「……な、何が?」

 

楓「……言わなくても分かるでしょ?……さっき僕、白鷺さんにあんなこと……」

 

花音「あ、あれは、……ち、千聖ちゃんが悪いよ!空見くんにあんなひどいこと言うなんて。例え千聖ちゃんでも私、そんなの絶対許せない!」

 

楓「……松原さんでも、怒ることがあるんだね。」

 

花音「わ、私だって怒るときは怒るよ!空見くんだって、ほら、……その、さっき、……怒ってた、でしょ?」

 

楓「あそこまでいっちゃったら、もう怒るなんてもんじゃないけどね。」

 

花音「……」

 

楓「……はぁ。久しぶりだなぁ、あんなに大声出してキレたのは。」

 

花音「……空見くん。」

 

楓「ん?」

 

花音「教えてくれないかな?空見くんに、何があったのか。」

 

楓「……」

 

花音「何か、理由があったんでしょ?あそこまで怒ったのには。そうじゃなきゃ、あんな空見くん、……いつもなら、あり得ないよ。」

 

楓「……」

 

花音「空見くんが今胸に抱えてるもの、全て受け止めるから。嫌なこと、辛いこと、悲しいこと、悔しいこと、どんなことでも私、聞き流したりしない。しっかりと、空見くんの目の前で、今の空見くんの気持ちを、受け止めるから。」

 

楓「……」

 

花音「空見くん。」ガシッ

 

楓「……いいよ。」

 

花音「え?」

 

楓「別に、受け止めてもらわなくてもいい。」

 

花音「! な、何で?どうして、そんなこと…「これは僕の問題なんだよ!」!?」

 

楓「自分の問題は、自分で解決する。……別に松原さんの力を借りなくても、自分でなんとかするよ。」

 

花音「ちょ、ちょっと待ってよ。自分でなんとかって、どうやって…「それを今から考えるんだよ!」っ!……」

 

楓「……じゃあ、僕は行く…「じゃあ……」?」

 

花音「じゃあ、千聖ちゃんのことはどうするの?」

 

楓「……そ、それは…「千聖ちゃんにあんなこと言って、その結果泣きながら教室を出ていっちゃった千聖ちゃんを、空見くんはどうにかできるの?美菜ちゃん、浅井さん、音羽ちゃんや、クラスのみんなに迷惑をかけたのは、さっきあんなことをした空見くんなのに、その空見くんがどうにかできるの?」……」

 

花音「……前に約束したよね?悩みがあったら、すぐ私に相談してって。ううん、私じゃなくても、さっき私が言った3人、千聖ちゃん、C組の沙谷加ちゃん、隣のクラスにだって、彩ちゃん、紗夜ちゃん、燐子ちゃんがいるし、今の空見くんには1年生の子にも知り合いがいっぱいいるでしょ?」

 

楓「……」

 

花音「でも今日、空見くんは約束を守ってくれなかった。そのせいで、千聖ちゃんを泣かせて、みんなに迷惑をかけて……

 

 

 

 

 

……私を、傷つけて。」

 

楓「! ぼ、僕、松原さんを傷つけてなんか……!?」

 

花音「……」

 

な、泣いてる……?

 

……どうして?

 

……どうして、松原さんが泣いてるんだよ……?

 

楓「な、何で?僕、松原さんに何もしてな…「そう、何もしてないんだよ。」え?」

 

花音「空見くんは、私に何もしてない、しなかった。ううん、してくれなかったんだよ。だから私は、それが悲しくて、寂しくて、……悔しくて、……つ、辛く……て……」

 

楓「……ま、松原さん……」

 

花音「……私、帰るね。」

 

楓「! ちょ、ちょっと待って…「空見くん。」……」

 

花音「……空見くんは今何をするべきなのか、……じっくり考えてほしい。そしてその答えを、……私に聞かせてほしい。」

 

楓「……」

 

花音「……ばいばい、空見くん。」

 

楓「……松原、さん。」

 

……今、何をすべきか。

 

……そんなの、いくつもある……。

 

……どうすれば、いいんだよ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-2ーB 教室-

 

生徒A「……よし!今日の準備はここまで!明日また頑張ろー!」

 

『オー!』

 

彩「……「丸山さん、私達はお先に失礼しますね。」あ、紗夜ちゃん、燐子ちゃん。そっか、2人はこの後Roseliaの練習があるんだよね。」

 

燐子「はい。……すみません。丸山さんに……後片付けを任せる形に……なってしまって。」

 

彩「ううん、全然大丈夫だよ!練習頑張ってね、2人とも!」

 

紗夜「ありがとうございます。では。」

 

燐子「さようなら、丸山さん。」

 

彩「うん!じゃーねー!……よし、私も後片付け頑張ろう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彩「ふぅー。」

 

生徒A「丸山さん、あとは私達でやっておくから、帰っても大丈夫だよ。」

 

生徒B「アイドルの丸山さんに、遅くまで残らせるわけにはいかないからね。」

 

彩「え?で、でも…「この後もアイドルの仕事があるんでしょ?だったら後片付けなんかより、そっちを優先してよ!」「そうそう!こいつの言う通り!」あ、うぅ……」

 

生徒A・B・C「ね、丸山さん!」キラキラシタメ

 

彩「……う、うん、分かった。じゃあ、そうさせてもらおうかな♪……よいしょっと。」

 

生徒A「じゃーね、丸山さん!」

 

生徒B「お仕事、頑張ってね!」

 

生徒C「応援してるから!」

 

彩「あ、ありがとう。じゃーね。」

 

……私今日、お仕事はないんだけどな……。

 

……あ、A組。

 

……まだ誰かいるのかな?

 

……ちょっと、覗いてみようかな?

 

……ヒョコ

 

楓「……」

 

彩「! 空見くん!」

 

楓「! え?ま、丸山さん!?」

 

彩「あ、……ご、ごめん。もう誰もいないと思って見たら、空見くんがいたから、びっくりして、その、だから……」

 

楓「……」

 

彩「……あ、あはは……。」

 

楓「え、……ど、どうしたの……?」

 

彩「な、なんでもないよ?なんでも。……あ、そ、空見くんは、ここで何してたの?」

 

楓「……別に。ただ、ぼうっとしてただけだよ。」

 

彩「そ、そうなんだ。ぼうっと……」

 

楓「……僕もそろそろ帰るかな。ガタッ」

 

彩「! あ……」

 

楓「じゃーね、丸山さん。」

 

彩「え、あ……。……」

 

 

 

 

 

花音『ごめん彩ちゃん。……私達だけにして?』

 

 

 

 

 

千聖『意味分からないのはあなたのほうよ!!ダッ!』

 

 

 

 

 

……びっくりした。

 

文化祭の準備をしてたら、突然千聖ちゃんの大きな声がしたから。

 

ふと窓のほうを見たら、どこかに走っていく千聖ちゃんが見えたから。

 

そのときの千聖ちゃんが、……泣いてたから。

 

空見くんと千聖ちゃんが何か言い争いをしてたのは分かってた。

 

だから、ほんとだったら止めに行きたかった。

 

でも、紗夜ちゃんと燐子ちゃんが。

 

 

 

 

 

彩『私、ちょっと見てく…『待ってください!』紗夜ちゃん?』

 

紗夜『少し、様子を見ましょう。』

 

彩『……でも…『丸山さん。……氷川さんの言う通りだと……思います。』……分かった。』

 

 

 

 

 

2人に言われた通り、そのときは様子を見た。

 

でも、その数秒後、千聖ちゃんは……。

 

……知りたい。

 

何で、あんな言い争いが起きたのか。

 

何で、千聖ちゃんがあんな行動をとったのか。

 

何で、……空見くんは、教室で1人、

 

 

 

 

 

……泣いていたのか。

 

彩「……ダッ!」

 

そう思った瞬間、私の体は走り出していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彩「……ま、待って!!」

 

楓「! ……丸山、さん?」

 

空見くんは、丁度校門を出たあたりのところにいた。

 

走っていたところを呼び止めたため、急いで帰ろうとしていたのだろうと推測できる。

 

彩「……空見くん、ぼうっとしてたわけじゃないよね?」

 

楓「え?」

 

彩「教室で。さっきはただぼうっとしてただけって言ってたけど、あれ嘘だよね?」

 

楓「……そんなこと…「目のところについてる涙のあとが、その証拠だよ。」!!」

 

彩「……泣いてたんだよね?1人で教室で。涙のあとが見えるってことは、だいぶ長い時間。」

 

楓「……」

 

彩「……何があったのか、私に話してくれないかな?」

 

楓「! ……」

 

彩「私、知りたいの。さっきのあの短時間の中で、空見くん達に何が起きてたのか。」

 

楓「……丸山さんも、松原さんと同じだ。」

 

彩「え?」

 

楓「松原さんも同じこと言ってたよ。何があったのか話してくれって。……」

 

彩「……そ、空…「話したところで何になるんだよ!!」え?」

 

楓「これは全て僕の問題なんだ!僕の問題は、僕自信で解決する!松原さんはそんなこと無理だって言ってたけど、知るかよそんなこと!勝手に無理だって決めつけんな!!なんとかするよ!なんとかしなきゃいけねえんだよ!!」

 

彩「……」

 

楓「もし話せば、それがイコール解決になんのか?なるわけねえだろ!話しても話さなくても、結果は同じなんだよ!!迷惑をかけたのは僕だ、僕だけだ!僕が起こした問題は、僕が、僕1人が!解決しなきゃいけないことなんだよ!!誰の助けもいらない、1人でやんなきゃ。……1人でやんなきゃ、意味がないんだよ!!」

 

彩「……」

 

楓「何で……。何で自分の問題を自分で解決するって言っただけなのに、松原さんが泣くんだよ。僕が松原さんを傷つけた?そんなことした覚えないのに。……どうして。どうしてみんな、そんなに僕のことを否定するんだよ……。」

 

彩「……」

 

楓「……」

 

彩「……ねぇ、空…「あ、そっか。……そうだ、そうだった。」え?」

 

楓「忘れてたよ、昔を。そうなんだよな、そのはずなんだ。……僕と松原さん達は、所詮そういう関係だったんだ。」

 

彩「……!」

 

楓「お花見に行って、それからいろいろあって、つい舞い上がってたよ。……僕と松原さん達は別に、友達なんかじゃ…

 

 

 

 

 

「ダメ!!!」

 

 

 

 

 

!?」

 

彩「……それ以上は言っちゃダメだよ!!ううん、言わないで。」

 

楓「……でも、ほんとのこと…「違うよ!!」……」

 

彩「私達は友達、それがほんとのことなんだよ。……そうじゃなくなんか、絶対、ないんだよ……。」

 

楓「……丸山さんもかよ。」

 

彩「え?」

 

楓「何でだよ。……松原さんに続いて、何で、丸山さんまで泣…「当たり前だよそんなの!!ダッ!」?」

 

 

 

 

 

彩「……」ギュッ!

 

楓「!?」

 

 

 

 

 

彩「友達だもん!!花音ちゃんも私も、ううん、紗夜ちゃんも、燐子ちゃんも、そして、千聖ちゃんも。香澄ちゃん達1年生も、みんな。空見くんの友達なんだもん!!」

 

楓「……友達だからって、そんな…「そんなことある!」……」

 

彩「友達だから、空見くんの助けになりたいし、力になりたい。友達だから、空見くんの悩みも、問題も、いっしょに考えたい、解決したい。友達だから、空見くんの気持ちも、思いも、全部共有したい。花音ちゃんも私も、そう思ってる。」

 

楓「……」

 

彩「でも、空見くんがそれを否定しようとするから。私達を遠ざけようとするから。何でもかんでも1人で抱え込もうとして、私達を頼ってくれない、……私達を信じてくれないから、それが悲しくて、辛くて、寂しくて、……泣いちゃうんだよ。」

 

楓「……松原さんも、同じようなこと言ってた……。」

 

彩「空見くんは今自暴自棄になってる。自分がこれからどうすればいいか分からなくて、焦って、怖くて。気持ちがぐちゃぐちゃになってて、自分を見失ってるんだよ。……今の空見くんじゃ、自分で自分の問題を解決なんて、絶対無理だよ。」

 

楓「! ……じゃあ、どうすれば…「簡単だよ。」?」

 

彩「私達を頼ればいいんだよ。自分だけの問題を、友達の私達にも共有して。これからどうすればいいのか、何をすればいいのか、いっしょに考えていこうよ。」

 

楓「……」

 

彩「確かに空見くんの言った通り、何があったか話したところで、それがイコール解決にはならない。そんなの当たり前だよ。だって、その解決に至るまでの過程がないんだもん。」

 

楓「……過程……」

 

彩「だから、……その過程の部分を、私達にも手伝わせてほしい。私達を頼ってほしい。私達を、……信じてほしい。」

 

楓「……でも、僕、……さっき丸山さんに、あんなこと…「そんなの関係ないよ。まぁ、いつもの口調と違った空見くんは、ちょっと……、ううん、ものすごく怖かったけど、……ちゃんと受け入れるよ。いつもの空見くんも、ものすごく怖い空見くんも。」……」

 

彩「だから、……お願い。私達に、空見くんの今抱えてるもの全てを解決するための、お手伝いをさせてほしい。」  

 

楓「……何で?」 

 

彩「え?」

 

楓「何で丸山さんは、こんな自分も見失うほど自暴自棄になるような僕に、そこまでしてくれるの?」

 

彩「だって、……知ってるもん。」

 

楓「知ってる?」

 

彩「うん。私、本当の空見くんを知ってるもん。同じクラスじゃないけど、オリエンテーション、公民館ライブ、お花見、スイーツバイキング、いっしょにいろんなとこに行って、いっしょにいろんなことを経験していく中で、私なりの、私の中の空見くんが分かってきたから。」

 

楓「丸山さんの中の、……僕?」

 

彩「私、知ってるよ。空見くんは、本当はすごく優しいんだって。スイーツバイキングのとき、私のわがままにいろいろと付き合ってくれたし、お花見のときだって、花音ちゃんのお弁当の風呂敷が風に飛ばされちゃったとき、真っ先に取りに行ってくれてたり、あと、公民館ライブ!あのときも、私のわがままだったけど、いっしょにステージに上がってくれて、いっしょに演奏もしてくれて。あのときは、本当に楽しかったなぁ。」

 

楓「……」

 

彩「あと空見くん、すごくシャイだよね。スイーツバイキングに行っていっしょに写真撮ったとき、空見くんすごく恥ずかしがってたもん♪お花見のとき沙谷加ちゃんにお弁当を食べさせてもらいそうになったときも、顔赤くしてたし、花音ちゃんに膝枕してもらってた空見くんを私が見つけたときも、お弁当を食べさせてもらいそうになったとき以上に顔を真っ赤にしてたし♪空見くんはちょっと嫌かもしれないけど、そんなシャイになってるときの空見くん、すごく可愛いんだよね♪」

 

楓「……」

 

彩「うーんと、あとはねー……、ん?って、空見くん!?な、何で泣いてるの!?」

 

楓「え?……あ、あれ?いつの間に……。ど、どうしよう、涙が止まらない……。どうすれば、……いいんだよ……。」

 

彩「……空見くん。」

 

楓「……だ、だって、丸山さんが僕をそんな風に思ってくれてたなんて、思わなかったんだもん。その、なんていうか、えっと、……優しいって言ってくれたのが、その、……う、嬉しくて……。あぁもう!次から次へと涙が出てくるよ~!もう~!」

 

彩「……やっぱり、空見くんは優しいね。」

 

楓「も、もうやめてよ。優しいって思ってくれてるのは嬉しいんだけど、その、……は、恥ずかしいから……。うぅ、くそ~!」

 

彩「ごめんごめん。もう言わないから、そろそろ泣き止んでよ。ほら、よしよし。ナデナデ」

 

楓「こ、子ども扱いしないでよ~!」

 

彩「ふふ♪ほんと可愛いね、空見くんって♪」

 

楓「もう~!丸山さ~ん!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彩「落ち着いた?」

 

楓「……うん。」

 

くっそ……。

 

恥ずい、恥ずすぎる……。

 

女子の、しかも知り合い、しかも丸山さんの目の前であんなに泣くなんて……。

 

穴があったら入りたいぐらいじゃ済まねえよ……。

 

彩「空見くん。」

 

楓「ん?」

 

彩「今から花音ちゃんのところ行こ!」

 

楓「へ?……!!えぇ!!ま、松原さんのところに!?……な、何で……?」

 

彩「空見くんの気持ちを伝えに行くんだよ!しっかり伝えれば、きっと花音ちゃんも分かってくれるよ!」

 

楓「気持ちを伝えに、松原さんのところに……。い、今?」

 

彩「今!」

 

楓「……む……」

 

彩「む?」

 

楓「無理!!」

 

彩「えぇ!!な、何で!?」

 

楓「何でって、……だ、だって、気持ちの整理とか、心の準備とか、いろいろ大事だし……。そ、それに僕、今のままじゃうまく伝えられる自信、ないし……。」

 

彩「……なんか空見くん、前より引っ込み思案になってない?」

 

楓「そもそも僕はこういう性格だったんだよ!……だけど、花咲川に転校してきて、いろんな人と関わるようになって、だんだん、自分の性格が、よく分からなくなってきて……。」

 

彩「……」

 

楓「あまり積極的じゃないし、人と話すのは苦手だし、自分から行動を起こそうとはしないし、めんどくさがりやだし……。」

 

彩「でも、私達とは普通に話して…「丸山さん達とは、まぁ、ほぼ毎日話してるし、少しずつ慣れてはきているけど……。初めて会った人とか、あまり話さない人とかと話すと、ちょっと……。緊張して、体が震えるぐらいだし……。」……」

 

楓「だから、その、……今は、まだ、松原さんには…「分かった!」え?」

 

ガシッ!

 

! な、何だ!?

 

と、突然丸山さんが、ぼ、僕の、手を、握ってきた……。

 

楓「い、いきなり、何…「明日、朝の9時に、駅前集合ね!」……はい?」

 

彩「良かったぁ、今週が3連休で。パスパレの練習も夜からだから、朝と昼は空いてるし…「ちょ、ちょっと待って丸山さん!」ん?どうしたの?」

 

楓「いや、どうしたの?じゃなくて、さっきから何の話してるの?」

 

彩「……空見くんには秘密♪」

 

楓「へ?……!いやだから、ちょっと待ってってば!」

 

彩「私、この後パスパレの練習があるから、そろそろ行くね!じゃあ明日、朝9時に駅前集合ね!忘れないで来てよ?」

 

楓「だから何で…「じゃーね空見くん、また明日!ばいばーい!」ちょ、丸山さーーーん!!」

 

 

 

 

 

……行っちゃった。

 

……はぁ、何だったんだよ全く。

 

……朝9時に駅前?

 

……なんか似たようなデジャヴを感じるな。

 

……はぁ、帰ろ。




3周年でドリフェスが来るってのは予想してましたよ。

でもね、





……2週目フェス限花音ちゃん来るなんて誰が予想できるんだよおおおお!!!

可愛すぎるだろこのやろおおおお!!!

誰だあれは!!

天使か!?天使なのか!?

そうだ!あれは天使だ!

いや、天使の上の上の上の上のそのまた上を行く超超超超超最強大天使様だ!!!

……いつもの如く、当てられる気がしません……。

バレンタイン復刻花音ちゃん、新規花音ちゃんと連チャン来て花音ちゃん推しを殺しにかかってたのに、更に新規フェス限で2週目花音ちゃんですか。

……ほんとに花音ちゃん推しを殺しにかかってんな、運営さん……。


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32話 彩のお出かけ大作戦(一日目)

突然ですが、皆さんはガルパの神様はいると思いますか?(←何言ってんだこいつ)

僕ですか?

僕は、





……いると思います。

てかいます!!

絶対います!!!

なぜならガルパの神様は、今回の周年、まだ4日しか経ってないのにも関わらず、僕に数々の恵みを与えてくれたからです!!

僕はこの場を借りて言いたい!

ガルパの神様!!

本当に本当に、ありがとうございます!!!





※主はガルパ病という病気にかかっております。3周年という期間が過ぎればこの病気は自然に治ると思います。それまで温かい目で見守ってあげてください。
                  by 空見楓


~翌日~

 

【駅前】

 

 

 

 

 

彩『じゃあ明日、朝9時に駅前集合ね!』

 

 

 

 

 

と、昨日丸山さんに言われたので、その通りにここに来た。

 

9時に間に合うように家を出たけど、……早く着きすぎちゃったみたいだ。

 

現在は8:50。

 

まだ時間まで10分もある……。

 

……てか考えてみたら、駅前での待ち合わせって累計3回目なんだよね。

 

1回目は白鷺さん、で、2回目は日菜さん(と氷川さん)。

 

……ん~、何なんだろうなーこれは。

 

普通のお出かけなのか、……はたまたデートなのか。

 

まぁお出かけならお出かけ、デートじゃないならデートじゃないで別にいいんだけど。

 

昨日あんなことがあっての今日だからなー。

 

……まぁ、丸山さんなりに何か考えがあるんだろ。

 

あぁ~、あと10分暇だなー。

 

 

 

 

 

???「……そ、空見さん。」

 

楓「ん?クル ……!!し、白金さん!?と、氷川さんまで!?」

 

紗夜「こんにちは、空見さん。それとすみません、少し待たせてしまいましたね。」

 

楓「! い、いや、全然、待ってませんよ。僕も今、ここに来たばかりですし……。じゃなくて!な、何で2人が、ここに……?」

 

燐子「? 丸山さんから……聞いていないのですか?」

 

楓「へ?な、何で、丸山さん?」

 

燐子「……氷川さん。もしかして、丸山さん……」

 

紗夜「ええ。おそらく、そういうことでしょうね。」

 

楓「??」

 

な、何だ?

 

いったい、何が起きてるっていうんだ?

 

丸山さんを待ってたら、なぜか白金さんと氷川さんが……。

 

……あれ?

 

なんかこれも、デジャヴ的な何かを感じるぞ?

 

 

 

 

 

彩「はぁ、はぁ、はぁ……ご、ごめん遅くなって!」

 

 

 

 

 

楓・紗・燐「!」

 

彩「はぁ、はぁ……。……み、みんな、もう集まってたんだ。ま、待ち合わせ時刻まであと5分もあるのに、はぁ、はぁ、……は、早いね。」

 

楓・紗・燐「……」

 

彩「ふぅー、走ってきたから疲れちゃった。ちょっとあそこの自販機で飲み物買ってくるね。タッタッタ……」

 

楓・紗・燐「……」

 

燐子「……ひ、氷川さん。」

 

紗夜「はぁ、もういいわ。丸山さんを見てたら怒る気が失せたわ……。」

 

あ、やっぱり怒るつもりだったんだ、氷川さん。

 

彩「はい、空見くん。」

 

楓「え?」

 

彩「空見くんの分だよ。」

 

楓「あ、……ありがとう。」

 

ん?

 

あ、これ、コーラだ……。

 

彩「燐子ちゃんと紗夜ちゃんも♪」

 

燐子「! ど、どうも……。」

 

紗夜「あ、ありがとうございます。……これ、いくらでしたか?」

 

彩「! そんな、いいよ。私の奢りってことにしといてよ。」

 

紗夜「し、しかし…「いいったらいいの。ほんと、紗夜ちゃんは真面目だね。」……」

 

氷川さんと白金さんはミルクティーだ。

 

いいなー……。

 

あ、そうだ。

 

楓「……ねぇ、丸山さん。」

 

彩「ん?」

 

楓「何で、氷川さんと白金さんが、ここに?」

 

紗・燐「!」

 

彩「え、……何か、まずか…「いやいや、そういうんじゃなくて!えっと、……び、びっくりしたし、それに、この2人も来るなら、事前に言っといてくれればよかったのにって思って……。」……あー、いやー、そんな深い理由はないんだよね。」

 

楓「?」

 

彩「単純に、空見くんを驚かせたかったから、かな。ほら、前に空見くん、日菜ちゃんにお出かけに誘われてたでしょ?」

 

楓「う、うん。」

 

彩「そのときの話、日菜ちゃんや紗夜ちゃんから聞かせてもらったんだけど、私もそういうことやってみたいなーって思って。」

 

楓「そういうこと?……ってどういうこと?」

 

彩「サプライズだよ。」

 

楓「サプライズ?……あ。……うん、なんとなく察した。」

 

彩「ほんと?良かった~♪」

 

そこ、喜ぶとこかな……。

 

紗夜「……丸山さん、日菜がいろいろ、すみません。」

 

彩「あ、謝らなくていいよ~。日菜ちゃんのおかげで、このサプライズができて、無事成功もできたんだから。」

 

まぁ、びっくりしたという意味では成功だわな。

 

燐子「あの、空見……さん。」

 

楓「? どうしたの?白金さん。」

 

燐子「……大丈夫……ですか?」

 

楓「え?……何のこと?」

 

燐子「あ、いえ。……大丈夫なら、いいんです。……」

 

? 僕、白金さんに何か心配されるようなことしたかな?

 

彩「よーし!それじゃあみんな揃ったところで、さっそくしゅっぱーつ!」

 

楓「出発って……。え、どこ行くの?」

 

彩「それは着いてからのお楽しみ♪」

 

楓・紗・燐「……」

 

まぁ丸山さんのことだから、変なところではないと思うけど……。

 

ってあれ?

 

なんか、このセリフもデジャヴ感が……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彩「着いた!ここだよ!」

 

燐子「……ここって……」

 

紗夜「……ゲーム好きの、ゲーム好きによる、ゲーム好きのための店?……長い店名ですね。」

 

彩「今日はみんなで、このお店でおもいっきり遊びたいなって思って!」

 

楓「……」

 

紗夜「私は構いませんが……、白金さんのほうは…「私ここ、来たことあります。」! そ、そうなのですか!?」

 

へぇ、意外だ。

 

白金さんもここに来たことが……。

 

燐子「はい。あこちゃんと、週に2回のペースで。」

 

紗夜「結構来てるじゃないですか!?……ちなみに、最近来たのは、いつなんですか?」

 

燐子「一昨日です。」

 

楓・彩・紗「……」

 

マジか……。

 

彩「……そ、それじゃあ、燐子ちゃんも楽しめるように、他のところにしたほうがいいか…「いえ、大丈夫です。」え?」

 

燐子「この店の1階にあるゲームセンター、そこにはレトロなものからハイテクなものまで、様々な種類のゲームがあり、数も多いため、一日で全てを遊びきるのは困難なんです。」

 

紗夜「え、そ、そうな…「さらにクレーンゲームに関しては、毎日毎日、来るたびに景品の品揃えや操作方法がランダムで変わるので、いつ来ても楽しめ、飽きない工夫がなされているんです。」……な、なるほど。」

 

彩「す、すごいね燐子ちゃん……。このお店のことを、熟知してるんだ……。」

 

燐子「ゲームセンターに関しては、ですけどね。」

 

紗「は、はぁ……。」

 

燐子「……///!って、す、すみません!私、その……また、悪いくせが……」

 

彩「う、ううん?全然!謝ることないよ!」

 

紗夜「そ、そうですよ。白金さんの話を聞いて、少し興味が出てきましたし。」

 

楓「……」

 

久しぶりに見たな、あんな白金さん。

 

本だけじゃなく、ゲームセンターのことでもああなるんだ。

 

彩「……ねぇ燐子ちゃん!」

 

燐子「は、はい!」

 

彩「このゲームセンターでさ、燐子ちゃんのおすすめのゲームって何?」

 

燐子「わ、私のおすすめ……ですか?」

 

彩「うん!」

 

燐子「そ、そうですね……。最近では、シューティングゲームや……筐体型のパズルゲームに夢中……ですかね……。」

 

彩「ふむふむ、なるほど……。じゃあ、そこに案内してくれないかな?」

 

燐子「え?」

 

彩「さっき私、言ったでしょ?今日はここでおもいっきり遊びたいって。だから、燐子ちゃんもおもいっきり遊ぼうよ!」

 

燐子「……」

 

彩「それに、さっきこのゲームセンターのことを説明してる燐子ちゃん、すごくカッコよかったよ!」

 

燐子「! ……丸山さん……。あ、ありがとう……ございます。」

 

彩「えへへ……。よし!それじゃあ行こ!」

 

燐子「は、はい!」

 

彩「紗夜ちゃんと空見くんもほら、早く!」

 

紗夜「! ちょっと丸山さん!店の中で走らないでください!……はぁ、全く。」

 

楓「全然、聞いてませんね……。」

 

紗夜「ああいうところ、まるで日菜だわ。」

 

あぁ……、うん、分かる気がする……。

 

紗夜「……ふふっ、私達も行きましょうか、空見さん。」

 

楓「そ、そうですね。」

 

今氷川さん、笑った。

 

……氷川さんも楽しみなんだな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紗夜「これがその……、シューティングゲーム、ですか?」

 

燐子「は、はい。」

 

彩「すご~い!それになんかカッコいい!ね、空見くん。」

 

楓「う、うん。」

 

燐子「このゲームは、画面が3D仕様になっているため、このメガネをつけながらプレイするんです。」

 

彩「へぇ、3Dか~。」

 

燐子「試しに、まず私が一回だけやってみますね。」

 

紗夜「お、お願いします。」

 

燐子「それでは。」

 

チャリン

 

『~♪』

 

彩「! 始まった!」

 

燐子「……」スッ、スッ、スッ……

 

彩「え、えーっとー……、あれ?」

 

紗夜「し、白金、さん?」

 

燐子「……」ポチッ、ポチッ、ポチッ……

 

ど、動作が早すぎて、何がどうなってるのか、分からない……。

 

いろいろと、ボタン押したり、画面をスクロールしたり……、お金を入れた後、カードみたいなのもセットしてたような……。

 

燐子「……いきます。」

 

楓・彩・紗「! ……ゴクリ」

 

『……3、2、1。Go。』

 

バキュンバキュンバキュン!!

 

ドゥルルルル!!

 

楓・彩・紗「!?」

 

燐子「……」

 

バキュンバキュン!!

 

ドカンドカン!……ドッカーン!!

 

楓・彩・紗「……」

 

す、スゲー……。

 

紗夜「な、何が、どうなっているの……?」

 

彩「えっとー、燐子ちゃん、だよね?」

 

燐子「……」

 

バキュン!バキュンバキュン!!

 

ドゥルルルル!!

 

ドカアアアン!!!

 

彩「燐子ちゃん、本当のスナイパーみたい……。」

 

紗夜「おそらく、画面右上の数字が大きいほど、すごいということなんですよね……?一、十、百、千、万……。5、50億!?」

 

……白金さん、僕達がいること、絶対忘れてるよね……。

 

バキュン!バキュンバキュン!!

 

ドゥルルルル!!

 

燐子「……♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

燐子「皆さん……。本当に……すみませんでした……。」

 

彩「も、もういいよ、燐子ちゃん。私達も、楽しんでる燐子ちゃんが見れて楽しかったし。」

 

紗夜「そうですよ。白金さんが謝ることではありません。」

 

あの後、僕と氷川さんと丸山さんはシューティングゲームをすることができなかった。

 

なぜなら、いつの間にか白金さんの周りに多くのギャラリーが集まってしまっていたからだ。

 

ゲームが終わり、やっとそれに気づいた白金さんは、顔を真っ赤にしてこの休憩スペースのほうに走って行ってしまった。

 

僕達も白金さんを追いかけ、ここにやって来た。

 

という経緯で今に至る。

 

燐子「私がゲームに夢中になりすぎてしまったせいで、あんなことに……。氷川さん達にゲームを紹介するつもりが……普通に楽しんでしまいました……。」

 

あれ、一応紹介してるつもりだったんだ……。

 

彩「それでいいんだよ、燐子ちゃん。」

 

燐子「丸山さん……?」

 

彩「私が言ったこと、覚えてる?」

 

燐子「……みんなで、おもいっきり遊ぶ……。」

 

彩「そう!さっき燐子ちゃん、おもいっきり遊んでたじゃん、それでいいんだよ!」

 

燐子「……しかし、“みんな”じゃなきゃ意味がないんじゃ…「そんなことないよ。」え?」

 

彩「みんなで遊んで楽しめたら、それはもちろんいいよ。でも、それだけじゃなくて、1人1人がそれぞれやりたいことをやって楽しむってのも、大事なんじゃないかな。」

 

燐子「! ……」

 

彩「そう、さっきの燐子ちゃんみたいにね!」

 

楓・紗「「……」」

 

燐子「……そう、なんですね。……丸山さん、ありがとう……ございます。」

 

彩「ううん、いいよお礼なんて。それより燐子ちゃん!私、ここに来る途中に気になるゲームがあった…グ~ あ。……///。」

 

燐子「ふふっ。その前に、お昼ごはん……ですね。」

 

彩「そ、そうだね///。あはは、恥ずかしいな~///。」

 

紗夜「全く、丸山さんったら。」

 

楓「確かに、お腹空きましたね。」

 

紗夜「丁度そこに券売機があるので、2人ずつ、自分の食べたいものを買ってきましょう。」

 

彩「じゃあ燐子ちゃん、いっしょに行こ!」

 

燐子「はい。……氷川さん達は、それでもいいですか?」

 

紗夜「ええ、構いませんよ。」

 

楓「僕も大丈夫。」

 

燐子「では、行きましょうか、丸山さん。」

 

彩「うん!」

 

タッタッタ……

 

紗夜「……しかし、ゲーム屋さんなのに飲食スペースがあるなんて。すごいお店ですね、ここは。」

 

楓「ですね。」

 

僕は何食おっかなー?

 

ラーメンとかあるのかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彩「わぁ~!美味しそう~!」

 

燐子「丸山さんは、……オムライスに……したんですね。」

 

彩「オムライスは私の大好物だからね!燐子ちゃんはスパゲッティにしたんだ。」

 

燐子「はい。たらこのスパゲッティです。」

 

彩「紗夜ちゃんは、お蕎麦と……、ポテト?」

 

楓「しかも山盛り……。」

 

紗夜「こ、これは、皆さんでシェアして食べようと思って、頼んだんです///!決して、私が食べたくて頼んだわけではありません///!」

 

彩・燐「……」

 

……前に博物館に行ったときも、同じようなこと言ってなかった?(20話参照)

 

紗夜「……そ、空見さんは、ラーメンにしたんですね。」

 

楓「え?あぁ、はい。」

 

うぅ、結局またラーメンにしちゃったよ……。

 

たまには違うのにしようと思ったのに、“限定”って文字を見つけちゃって……。

 

気づいたらラーメンのボタンを押してた……。

 

無意識って怖いな。

 

ま、美味しそうだからいいんだけど。

 

彩「よーし!それじゃあみんな、食べようか!せーのっ、いただきまーす!」

 

楓・紗・燐「い、いただきます……///。」

 

丸山さん……。

 

小学生じゃないんだからさ……。

 

うわぁ、めちゃくちゃ周りに笑われてる……。

 

……食べずら。

 

 

 

 

 

???「……あれは……。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

燐子「いいですか?氷川さん。こういうのはまず、狙いの景品をがっしり掴むように、アームの位置を調整するのが大事なんです。幸いこの台は簡単な設定で、広範囲にアームを動かせてかつ掴めやすくなっているので、コツを掴めば氷川さんでもすぐ取れると思います。」

 

紗夜「な、なるほど……。では、やってみます。チャリン」

 

燐子「が、頑張って……ください。」

 

紗夜「がっしり掴むように、アームを調整……。」

 

燐子「……」

 

紗夜「……ここら辺、ですかね?」

 

燐子「いいと思ったら、ボタンを押してください。」

 

紗夜「わ、分かりました。……はっ!ポチ」

 

ウィーン……

 

紗・燐「……ゴクリ」

 

……ガシッ!

 

紗夜「! 掴みました!」

 

燐子「気を緩めてはいけません……。」

 

紗夜「え?……それはいったい、どういう……」

 

……ポト

 

紗「あぁ!」

 

燐子「こういうことです。」

 

紗夜「……な、なるほど。クレーンゲームというのは、こういう罠があるんですね。」

 

燐子「はい……。でも氷川さん、初めてにしては上手いほうですよ。この調子だと、早い段階でゲットできそうです。」

 

紗夜「そうですね。……もう1回、やってみます!」

 

燐子「頑張ってください!氷川さん!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彩「もう少し……、もう少しだよ!」

 

……ポト

 

楓・彩「あぁ!」

 

落ちちゃった……。

 

彩「おしい……。もうちょっとだったのにね、空見くん。」

 

楓「うん。……やっぱり、ぬいぐるみは難しいなぁ。」

 

お昼ご飯を食べた後は、近くにあったクレーンゲームで遊ぶことになった。

 

見ての通り、氷川さんと白金さん、丸山さんと僕の2人ずつに分かれてやっている。

 

このように分かれたのは、氷川さんが犬のぬいぐるみを見つけ、その直後に丸山さんがこの猫のぬいぐるみを見つけたのが始まりだ。

 

後は、……察してくれ。

 

にしても、このぬいぐるみ、全然取れん……。

 

まぁ僕自体、クレーンゲームが上手いってわけじゃないし。(むしろ下手)

 

この台は簡単な設定になってるみたいだから、もしかしたらと思ったんだけど、……やっぱ現実そんな甘くないか。

 

彩「空見くん!次、私がやってみるよ!」

 

楓「うん。頑張って、丸山さん。」

 

……残金、1000円。

 

……金足りっかなぁ?

 

 

 

 

 

???「あ、やっぱり空見だ。」

 

楓「え?」

 

???「よっ、空見、彩。」

 

楓・彩「! 菊地さん(沙谷加ちゃん)!」

 

沙谷加「珍しいね、二人がゲーセンにいるの。」

 

楓「あー、まぁ、初めてだからね、丸山さんと来たの。」

 

き、菊地さん……。

 

学校以外で会ったのは初めてかも。

 

あ、相変わらずの見た目のギャル感……。

 

彩「ていうか沙谷加ちゃん!今日用事あったんじゃなかったの!?」

 

沙谷加「ん?あったよ。てか今やってる。」

 

楓・彩「?」

 

沙谷加「彩に誘われる前、もう既にクラスのやつに誘われててさ。断るのも悪いと思って、こっちを優先したんだよ。」

 

彩「あぁ、なるほど。用事ってそういう……」

 

楓「もしかして菊地さんも、今日丸山さんに誘われてたの?」

 

沙谷加「そうだよ。もしクラスのやつに誘われてなかったら、秒でいっしょに行きたいって言ってたよ。……でもまさか、お互い同じゲーセンに来てたなんてね。」

 

彩「うん、私もびっくりだよ。」

 

沙谷加「これも運命ってやつかな?」

 

彩「あはは、そうかも♪」

 

楓「……やっぱり2人は、あれから仲良いんだ。」

 

沙谷加「もちろん!最近はよく、いっしょに登下校したり、いっしょにお昼食べたりしてるし。ね、彩。」

 

彩「うん!休みの日もいっしょに買い物行ったり遊びに行ったりしてるくらい仲が良いんだよ!沙谷加ちゃん、ほんとに良い子だし!」

 

沙谷加「ちょ、褒めても何も出ないよ///?」

 

彩「いいでしょ?ほんとのことなんだから♪」

 

お、思ってた以上に仲良かったんだ、この2人……。

 

いっしょにお昼か。

 

……僕も、最近はあの2人といっしょにお昼食べるときが多かったな。

 

沙谷加「彩は、空見と二人で来てるの?」

 

彩「ううん、他に紗夜ちゃんと燐子ちゃんがいるよ。今は別々に分かれて遊んでるんだ。」

 

沙谷加「そうなんだ。……ねぇ。当分の時間さ、私も混ぜてもらっていい?」

 

彩「え?でも、沙谷加ちゃんには沙谷加ちゃんの…「いっしょに来てるの、あいつらなんだよ。ほら、お花見のときに話した、私についてきてる子分みたいな。」あ、……そっか、そういうことか。」

 

楓「……まだその人達のこと、その、……嫌い、なんだね。」

 

彩「ちょっと、空見…「いいよ、ほんとのことだから。」……」

 

沙谷加「だってあいつら、いまだに暇があれば私についてきてるんだよ?まるであたしら子分です、みたいな感じでさ?……はぁ。もう疲れるわ嫌だわ、できればさっさと縁切りたいまであるし……。」

 

彩「そういうの、嫌だって素直に言えば…「あいつらの性格上、そう言っても簡単に引き下がったりしないよ。」そ、そうなんだ……。」

 

沙谷加「……く、暗い話はここくらいにして、まずは遊ぼうよ!彩、このクレーンゲームしようとしてたんでしょ?」

 

彩「う、うん!この台は設定が簡単みたいだから、私にも出来るかなって。」

 

沙谷加「頑張れ彩!応援してるぞ!」

 

彩「えへへ……。ありがとう、沙谷加ちゃん♪」

 

……見た目はギャルで怖そうなんだけど、根は本当に優しいんだよね。

 

……いつかその子分?みないな人達と菊地さん、和解できるような日が来るのかなぁ。

 

彩「……あぁ!うぅ、またダメだった……。」

 

沙谷加「惜しいよ彩、あと1秒落ちるのが遅かったら絶対取れてたよ!」

 

彩「ありがとう、沙谷加ちゃん……。空見くん!後は頼んだよ!」

 

楓「え?あ、うん。」

 

沙谷加「空見!彩のかたき、ちゃんと取ってね!」

 

楓「かたきって……。てかそれ、プレッシャー高いなぁ。チャリン」

 

彩「いけー!頑張れ空見くん!」

 

沙谷加「男を見せるときだよ!空見!」

 

男を見せる、ね。

 

はは、ははは……。

 

ウィーン……

 

彩・沙谷加「……」

 

楓「……えっと、ここかな。ダンッ!」

 

ウィーン……

 

……ガシッ!

 

彩・沙谷加「掴んだ!」

 

楓「よーし、そのままそのまま……」

 

 

 

 

 

ウィーン……

 

 

 

 

 

彩・沙谷加「……いけ。」

 

楓「……」

 

 

 

 

 

ウィーン……

 

 

 

 

 

彩・沙谷加「……いけ。」

 

楓「……」

 

 

 

 

 

ウィーン……

 

 

 

 

 

彩・沙谷加「……いけえええーーー!!!」

 

この2人、いつまでもテンション高いな~……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

沙谷加「~♪」

 

楓「……」ズーン

 

彩「あはは……」

 

結論から言おう。

 

……猫のぬいぐるみは、取れなかった。

 

……くっそーー!!

 

なんだよ声の振動で落ちるって!!

 

おかしいだろ!!

 

漫画じゃねえんだからさ!!

 

……まぁ、声出したの丸山さんと菊地さんだから、悪いのはどっちかというとあの2人なんだけど……。

 

そのことは言わないでおこう。

 

……はぁ、ことごとく決められない男だな僕は……。

 

ちなみにぬいぐるみは僕が取れなかっただけで、取ったは取った。

 

菊地さんが。

 

しかも一発で。

 

……よって菊地さんはご機嫌、僕は落ち込んでいて、丸山さんは苦笑いしている、というわけだ。

 

……もう当分クレーンゲームはやらん。

 

楓「……」

 

彩「空見くん、そろそろ元気出して?」

 

楓「いや、別に元気がないわけじゃ、……ない、……けど。」

 

彩「その謎の間が全てを物語ってるよ~!」

 

沙谷加「……」

 

楓「はぁ……。」

 

彩「元気出して~!空見く~ん!」

 

沙谷加「……はい。」

 

楓「ん?」

 

沙谷加「あげる。」

 

楓「へ?……あげるって、何を…「これを。」これを……、って、このぬいぐるみを!?」

 

沙谷加「だからそう言ってるじゃん。」

 

楓「な、何で!?それを取ったのは菊地さ…「別に私、欲しいわけじゃなかったし。その、……空見落ち込んでるから、これあげれば元気になるかと思って。」……」

 

彩「沙谷加ちゃん……。……沙谷加ちゃんの言う通りだよ!空見くん、そのぬいぐるみ、もらってあげ…「じゃあ丸山さんがもらってよ。」えぇ!?な、何で私!?」

 

楓「だってそれを見つけたの、丸山さんじゃん。それを見つけて可愛いな~、欲しいな~って言ってたし、もらうなら丸山さんがもらうべきだよ。」

 

彩「いや、でも、沙谷加ちゃんはこれをあげれば空見くんが元気になるって…「僕ならもう大丈夫だよ。もともと落ち込んでなんかなかったし、元気なら全然あるから。」……で、でも、私は……」

 

沙谷加「あーーもぅ!!」

 

楓・彩「!?」

 

沙谷加「じゃんけん!二人でじゃんけんして!」

 

彩「え?」

 

楓「じゃん、けん?……何で?」

 

沙谷加「じゃんけんして買った方に、このぬいぐるみをプレゼント、これで決まり!」

 

楓「ちょ、ちょっと菊地さん、勝手に決めない…「ほらほらいくよー、じゃんけん……」あーもぅ!分かったよ!こうなったらいくよ、丸山さん!」

 

彩「えぇ!?ほ、ほんとにやるの~!?」

 

沙谷加「やらなきゃいつまで経ってもこの話終わらないでしょ!?」

 

彩「うっ、……そ、そうだね。……分かった。じゃあ、いくよ!空見くん!」

 

楓「よーしこい!」

 

沙谷加「それじゃあ始めるよ、二人とも構えて!」

 

楓・彩「(……じゃんけんに構えなんかいるのかなぁ?)」

 

沙谷加「じゃんけん、……始め!」

 

楓・彩「……じゃーんけん、

 

 

 

 

 

……ポン!!」

 

 

 

 

 

楓:チョキ

 

 

 

 

 

彩:グー

 

 

 

 

 

楓・彩「あ……。」

 

沙谷加「はい!この勝負、彩の勝ち!というわけでこのぬいぐるみは、彩にプレゼント~!」

 

彩「あ、……ありがとう。……ごめん空見くん、勝っちゃった……。」

 

楓「いや、何で謝るの……。」

 

彩「な、何で?えっと、それは、その、……沙谷加ちゃん、何で?」

 

沙谷加「知らないよ……。」

 

彩「……」

 

沙谷加「……」

 

楓「……」

 

 

 

 

 

楓・彩・沙谷加「……ぷっ、あははははは!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

燐子「氷川さん。どうでしたか?もぐらたたきは。」

 

紗夜「ええ、とてもやりがいのあるゲームでした。次々に飛び出すもぐらをひたすら叩く、それだけ聞けば何の変哲もない単純なものですが、実際にやってみるとこれが思った以上に難しい。白金さんに教えてもらったものは、時間が経つにつれもぐらの出てくるスピードも早くなる。それらをいかに素早く、多く叩けるか。もぐらたたき、反射神経を鍛えるにはもってこいの、とても奥深いゲームだわ。」

 

燐子「そ……そんなに、ですか?」

 

紗夜「……あら?あれは……」

 

燐子「! 丸山さん達ですね。あれは、リズムに合わせて太鼓を叩くゲームですね。」

 

紗夜「なるほど、リズムに合わせて……。じゃなくて!白金さん、私が言いたいのは空見さんの隣にいる人のことです!」

 

燐子「空見さんの隣に……?……!あの人は確か、……菊地さん、でしたっけ?どうしてあの人がここに……」

 

 

 

 

 

彩「? ……!あ、紗夜ちゃん!燐子ちゃん!」

 

沙谷加「え?……あ、ほんと…ってあー!フルコンとぎれたー!」

 

楓「目を離すからだよ、菊地さん……。」

 

 

 

 

 

紗・燐「……」

 

 

 

 

 

彩「おーい!二人もおいでよー!」

 

 

 

 

 

燐子「……い、行きますか、氷川さん。」

 

紗夜「そ、そうね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彩「あー遊んだー!」

 

燐子「氷川さん。レースゲーム、……とても上手……でしたね。」

 

紗夜「白金さんこそ、流石経験者なだけあって、見事なバンドルさばきでしたよ。」

 

沙谷加「? メールだ。……あー!忘れてたー!」

 

彩「! ど、どうしたの!?沙谷加ちゃん!」

 

沙谷加「あいつらと来てたの、忘れてた。」

 

彩「え?……!そうだよ!沙谷加ちゃん、他の友達と来てたんだよ!」

 

沙谷加「いっけない。あれからだいぶ時間経っちゃたからそろそろ戻らないと。それじゃあね、彩、空見!楽しかったよ!」

 

彩「私もだよ、沙谷加ちゃん!」

 

楓「ぼ、僕も……。」

 

沙谷加「白金さんと氷川さんも、いろいろありがとうね!」

 

燐子「い、いえ。」

 

紗夜「ええ。」

 

沙谷加「じゃあねみんなー!また学校で!タッタッタ」

 

彩「うん!またねー!」

 

……あ、もうこんな時間だったんだ。

 

結構遊んでたんだなー。

 

紗夜「……はぁ。」

 

燐子「どうしたんですか?氷川さん。」

 

紗夜「え?……な、何でもありませんよ。」

 

燐子「? そう……ですか……。」

 

彩「……私達も帰ろっか。」

 

楓「うん、そうだね。」

 

彩「2人も、いいかな?」

 

紗夜「あ、はい。私は大丈夫です。」

 

燐子「私も、問題……ありません。」

 

彩「えへへ♪それじゃあ、行こっか。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彩「うーーん、楽しかったー!」

 

紗夜「確かに。たまにはこういうところで遊のもいいかもしれませんね。」

 

燐子「今度は、……Roseliaのみんなとも……来たいです。」

 

紗夜「そうですね。……では白金さん、行きましょうか。」

 

燐子「はい。」

 

彩「そっか、2人はこれから練習なんだっけ。」

 

紗夜「ええ。」

 

燐子「1回氷川さんの家に……ギターを取りに行ってから、……スタジオに向かうつもり……なんです。」

 

彩「そうなんだ。……じゃあ、次会うのは学校だね。」

 

紗夜「はい。丸山さん、今日はありがとうございました。」

 

彩「ううん、こちらこそありがとうだよ。今日は二人と遊べてとても楽しかった!」

 

燐子「ふふ、私もです。」

 

紗夜「では丸山さん、私達はこれで。」

 

彩「うん、また学校でね!」

 

紗夜「ええ、それでは。」

 

彩「……またねー!」

 

2人はこの後バンドの練習があるのか。

 

遊んだ後なのに、すごいなー。

 

……Roselia、どんなバンドなんだろう。

 

彩「……それじゃ、私も行こっかな。」

 

楓「? 丸山さんも、何かあるの?」

 

彩「私もこれからレッスンがあるんだ。」

 

楓「レッスン……?あ、そっか。そういえば丸山さんもバンドやってるんだっけ。」

 

彩「うん。」

 

すごいなぁみんな。

 

……ていうか、僕の周りみんなバンドやってるんだなぁ。

 

彩「空見くん。」

 

楓「ん?」

 

彩「今日、楽しかった?」

 

楓「……うん。楽しかったよ、すごく。」

 

彩「そっか、……良かった。」

 

楓「……てか、そのぬいぐるみも、レッスンに持っていくの?」

 

彩「え?あ……。う、うん、そう、なるね……。」

 

楓「日菜さん達にそれ何~?とか言われそうだね。」

 

彩「あはは、確かに♪(そこは千聖ちゃんの名前じゃないんだ……。)」

 

楓「……」

 

彩「……ねぇ空見くん。」

 

楓「ん?」

 

彩「お願いが、あるんだけど……」

 

楓「お願い?……まぁ、僕にできることなら、何でも……」

 

彩「明日も、同じ時間に駅前で待ち合わせ、いいかな?」

 

楓「……え?……!あ、明日も!?」

 

彩「うん!まぁもっと言っちゃえば、明日と明後日、なんだけど……」

 

楓「あ、明後日も……?」

 

彩「う、うん。……ダメかな?」

 

楓「……」

 

彩「……なんてね♪」

 

楓「え?」

 

彩「悪いよね、3日続けてなんて。まるで私が空見くんのお休みを奪っちゃってるみたいだし。」

 

楓「……」

 

彩「ごめんね空見くん。今のは忘れて…「いいよ。」え?」

 

楓「……どうせ明日明後日も暇だし、……待ち合わせ、いいよ。」

 

彩「……ほ、ほんとに?」

 

楓「う、うん。……男に二言はないよ。」

 

彩「……えへへ。」

 

楓「?」

 

彩「ありがと、空見くん♪」ウワメヅカイ

 

楓「!ドキッ ……う、うん///。」

 

い、今の丸山さん……。

 

なんか、……可愛くて、ドキッとした……。

 

……って何考えてんだ僕は!!

 

って似たようなくだりお花見のときもやった!!

 

彩「じゃあ空見くん、私行くね!」

 

楓「……!う、うん。」

 

彩「……」

 

楓「? 丸山さん?」

 

彩「空見くん!」

 

楓「!」ビクッ

 

彩「今日はとっっっても楽しかったよ!このぬいぐるみも、頑張って取ろうとしてくれたこと、すっごく嬉しかった!」

 

楓「……」

 

彩「だから、……今日は本当にありがとう!!」

 

丸山さん……。

 

楓「……うん。僕も、すごく楽しかっ…「明日のサプライズも楽しみにしててねー!」……へ?」

 

彩「じゃーねー空見くん!また明日ー!」

 

楓「え?いや、ちょ、あの、……え!?」

 

……行っちゃった。

 

……え?

 

いや、あの、ちょっと待って?

 

最後の、その、……サプライズって……。

 

いったい、どういう……。

 

……な、何を考えてるんだ?

 

丸山さんは……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彩「……」

 

……明日は。

 

……明日はもっと。

 

……うん。

 

明日はもっと、今日以上に、空見くんを楽しませるんだ!




こういう回を書くときの僕の悪い癖
            :前置きが長い

だと思うのですが、……皆さんはどう思います?

……次はそうならないよう心がけよう。

あ、ちなみにですが、現在1話から順に少しずつ手直しをしているところです。

この小説を書き初めてから1年以上が過ぎ、形式や考えがいろいろと変わってきたので、それに合わせようと思いそのようにしています。(てかいつの間に1年経ってたんだ……)

たいしたことではありませんが、まぁそうなんですね、程度に思っていただければいいです。

はい、お知らせと言うほどのものでもないお知らせでした。

あ、あと言い忘れてました。

さよひな誕生日おめでとう!!


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33話 彩のお出かけ大作戦(二日目)

モニカの初イベント最高でした。

今後もモニカといろんなキャラの絡みがいっぱい見たいなー。

あ、一応謝っときます。

更新めちゃくちゃ遅れました。

すみません……。


楓「……」

 

今回は前置きはなしだ。

 

駅前、9時、待ち合わせ、5分前、この4つだけで察してくれ。

 

そして今日は、……もう丸山さんが着いている。

 

それはつまり、……サプライズの正体も明かされているということだ。

 

そう、ずばり、その正体とは!

 

 

 

 

 

彩「リサちゃんのコーデ、とっても可愛いね!」

 

リサ「そう?ありがと♪彩もその服、似合ってるよ~。」

 

日菜「ねぇひまりちゃん、なんかおすすめのケーキ屋さんってある?今度おねーちゃんに買って帰ってあげたくってさー。」

 

ひまり「もちろんありますよ日菜先輩!このひまりちゃんに任せてください!」

 

丸山さんと日菜さんと、……あとお2人は誰?

 

その2人のうちの1人は菊地さん同様見た目めっちゃギャルっぽいし。

 

……全くの初顔なんですけど……。

 

彩「よーし!それじゃあ今日も元気に、レッツゴー!」

 

日・リ・ひ「オー!」

 

うん、昨日に比べてテンポがいいのは良いことだ。

 

しかし、今日のお出かけ、

 

 

 

 

 

……不安しかない……。

 

あ、ちなみに今日はショッピングモールへ行くそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~数分後~

 

日菜「でさー、そのときの彩ちゃんが面白くってさー!」

 

彩「ちょっと日菜ちゃん!その話は恥ずかしいからやめてって言ったじゃん///!」

 

リサ「まぁまぁ、誰にも言わないからさ。ね、ひまり。」

 

ひまり「はい!私も誰にも言いませんよ、彩先輩!」

 

彩「そういう問題じゃなくて~!」

 

……現在、この4人が並んで歩いてるところを、僕が後ろからついて歩いているって状態だ。

 

端から見たら完全にストーカーだが、誤解しないでほしい。

 

僕がこうして歩いているのは話に入れないからだ。

 

いや、入りたくないと言ったほうが正しいか。

 

……だって女子4人が楽しく話してるところに男が割って入ってきたらどうよ?

 

迷惑だし気持ち悪がられるし絶対引かれるだろ。

 

ん?

 

漫画とかではそうしてるやつもいる?

 

これは漫画じゃねえんだよ!

 

仮に現実にいたとしてもそれができるやつはコミュ力の塊でできてるようなやつなんだよ!

 

彩「あ、ほ、ほら、みんな着いたよ!」

 

日菜「あ~、今彩ちゃん、話そらしたね~?」

 

彩「そ、そんなことないよ?」

 

リサ「あはは、面白いなー彩は。」

 

彩「わ、笑わないでよリサちゃん!」

 

ひまり「まぁまぁ彩先輩、あとでおすすめのケーキ屋さん紹介しますから、押さえて押さえて。」

 

彩「! ……べ、別に、怒ってるわけじゃないもん……。」

 

リサ「ほらほら、拗ねない拗ねない。」

 

彩「拗ねてもないもん!」

 

日菜「相変わらず彩ちゃんは面白いね~!」

 

彩「もう~!みんなして私をいじめる~!」プンプン

 

楓「……」

 

……ん?

 

何?

 

ただハブられてるだけじゃないかって?

 

……うん、そうかもね。

 

……ま、まぁ、丸山さんに限ってそれはないかもしれないけど……。

 

……その可能性はあるわ。

 

彩「もう!……ほら!みんな行くよ!」

 

丸山さん、いじられすぎて怒ってるよ……。

 

彩「空見くんも!早く行くよ!」

 

楓「! う、うん。」

 

あ、良かった。

 

忘れられてなかった。  

 

……うん、ちょっと元気出たわ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

楓「……」

 

リ・ひ「……」ジー

 

日菜「ん~!このポテト美味しい~♪」

 

彩「ひ、日菜ちゃん……。」

 

……説明しよう。

 

ここは喫茶店。

 

僕は見た目ギャルの人ともう1人の知らない人と向かい合わせで座っている。

 

隣の席では丸山さんと日菜さんが向かい合わせで座っており、ご覧の通り日菜さんはポテトを食べている。

 

説明以上!

 

楓「……えっとー、それで丸山さん。これはいったい、どういう状況……?」

 

彩「ふ、2人が、空見くんと話したいんだって。ね、ひまりちゃん、リサちゃん。」

 

リサ「そういうこと~♪」

 

ひまり「ほ、ほんとに男の人なんだ……。」

 

楓「ぼ、僕と、話を……。」

 

日菜「彩ちゃん、ポテト食べないの?」

 

彩「え?あー……じゃあ、もらおうかな。……ん!美味しい!」

 

日菜「でしょ~!」

 

日菜さんは相変わらずマイペース……。

 

楓「……えっとー、……話、って言っても、何を話せばいいの?」

 

リサ「そうだなー。……まずはやっばり、自己紹介かな。」

 

ひまり「で、では!私からいきますね!」

 

というわけで始まりました、自己紹介タイム。

 

……自己紹介すんの、久しぶりじゃね?

 

ひまり「私、上原ひまりといいます!羽丘女子学園、1年です!」

 

日菜「おー、元気いいねーひまりちゃん。」

 

楓「……上原、さん?」

 

ひまり「は、はい!」

 

……羽丘女子学園……?

 

どっかで聞いたことある名前だけど、どこだったけなー?

 

ひまり「あ、あのー。」

 

楓「ん?」

 

ひまり「空見先輩、でしたっけ?」

 

楓「……!そ、そうだ、ごめん!僕も自己紹介しなきゃだったね!……そ、そう、空見楓。花咲川女子学園の2年生、……で、いいのかな?」

 

なんか自分で女子高だって言うの、恥ずいな……。

 

ひまり「……」ジー

 

楓「……?え、な、何?」

 

ひまり「……やっぱりあなたが、あの……」

 

楓「?」

 

ひまり「……空出南恵加さん、なんですね。」

 

楓「!?」

 

リサ「え?」

 

彩「あ……。」

 

日菜「~♪」

 

ひまり「……あ、あれ?……私、何か変なこと、言いました?」

 

楓「うぅ、ううう……」アタマカカエコミ

 

ひまり「って空見先輩!?ど、どうしたんですか!?」

 

彩「ご、ごめんひまりちゃん。そのことは、空見くんにとって、ちょっとトラウマなの。」

 

ひまり「トラ……。そ、そうだったんですか……。す、すみません!私、知らなくて!」

 

楓「い、いいよ。大丈夫、大丈夫……。」

 

まさか、ここでその話題が出るとは思わなかった……。

 

あの写真は、僕にとっては黒歴史だから、あまり思い出したくないんだよな……。

 

リサ「……空出南恵加って、誰?」

 

ひまり「知らないんですか!?リサ先輩!空出南恵加っていうのは、空見先輩の……」

 

楓「頼むからもうその話はやめて~~!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リサ「それじゃ、次はアタシだね。今井リサ、同じく羽丘女子学園の、学年は2年だよ。」

 

楓「あ、……同い年、だったんだ。」

 

リサ「? うん。え、空見はアタシがいくつに見えたの?」

 

楓「てっきり年上かと……」

 

リサ「え~!アタシってそんな大人に見える~?」

 

……見える……。

 

彩「(見えるよね。)」

 

ひまり「(見えますね。)」

 

日菜「(ん~!ポテト美味しい~!おかわり頼もっかな~?)」

 

リサ「……まぁいいや。ねぇ空見、1つ、どうしても気になることがあるんだけどさ。」

 

楓「ん?何?」ゴクゴク

 

リサ「……ぶっちゃけ空見って、誰のことが好きなの?」

 

ブー!!

 

彩・ひ「!」

 

日菜「え、何々?どうしたの?」

 

楓「げほっ、げほっ!」

 

リサ「ちょ、空見!大丈夫!?」

 

彩「空見くん!しっかりして~!」

 

楓「だ、大丈夫……。ちょっと、びっくりした、だけだから……。」

 

リサ「え、……アタシ、そんなにびっくりするようなこと、言った?」

 

彩「い、言ったよ!」

 

リサ「! あ、彩?」

 

彩「誰でもあんなこと突然言われたらびっくりするよ!……だ、誰のことが、……す、好きなのか、なんて言われたら……」

 

ひまり「そうですよ!」

 

リサ「……あ、あはは、ごめんごめん。まさかここまでびっくりされるとは思わなくてさ。」

 

……この街に来てからあんなこと聞かれたの、初めてだよ。

 

……うん、何気に初めてなんだよな……。

 

リサ「え、でもさ、気にならない?空見の好きな人。」

 

彩「! ……まぁ、それは、……ちょっとは、気になるけど……」

 

ひまり「わ、私も気になります!」

 

楓「ちょ、ちょっと待ってよ!僕には好きな人なんか…「おねーちゃん!」……え?」

 

彩「え?」

 

リ・ひ「ひ、ヒナ(日菜先輩)?」

 

日菜「空見くんの好きな人は、おねーちゃんだよ!」

 

彩・リ・ひ「……え?……!!えええーーーー!!??」

 

楓「いやいや何でそうなるの日菜さん!?」

 

日菜「だっておねーちゃんと空見くんは、お互いに間接キスした仲だよ?」

 

リサ「! か、間接、キス///……。」

 

ひまり「そ、空見先輩、大胆///……。」

 

彩「そ、そうだったんだ……。」

 

楓「ち、違うよ!違う違う違う違う!!僕は別に氷川さんのこと、好きなわけじゃ…「え、おねーちゃんのこと、嫌いなの……?」! い、いや、嫌い、っていうわけでも…「じゃあやっぱり好きなんだ!」だからそういうんじゃないって!もう日菜さん!!」

 

この後、僕達は店員さんに注意されてしまい、店を出ることになった。

 

あ、別に強制退店したり出禁になったわけじゃないからね?

 

……はぁ。

 

これだから好きな人どうのこうのの話は好きじゃないんだよ……。

 

特に、日菜さんの前ではもうしたくない……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

楓「ごめん……。僕のせいで、店に迷惑を……。」

 

リサ「いいっていいって。あんな話題を振ったアタシも悪いし。」

 

楓「でも、今井さんは話題を振っただけだし……。あんな大声を出した僕のほうが…「ストップ!」!」

 

彩「もうその話はここでおしまい!せっかくショッピングモールに遊びに来たんだよ?いつまでもそれ引きずってたら、楽しめるものも楽しめないよ。」

 

ひまり「おー……。彩先輩、カッコいいです!」

 

彩「えへへ……。」

 

日菜「ステージの上ではいつも噛み噛みだけどねー。」

 

彩「うっ。グサッ ひ、日菜ちゃん、その話題を振らないで~。」

 

そういや丸山さん、公民館ライブのときも噛んでたな……。

 

リサ「あはは、相変わらず面白いねー彩は。」

 

彩「うぅ、リサちゃんまで~。」

 

ひまり「ドンマイです、彩先輩。」

 

彩「フォローになってない気がするんだけど……。」

 

リサ「さてと、じゃあ、これからどうしようか。」

 

ひまり「私、お昼ご飯食べたいです!」

 

リサ「お、いいね~♪彩は?」

 

彩「そ、それじゃあ、私もお昼……。」

 

リサ「もう、元気出しなって。じゃあヒナは?さっき喫茶店でポテト食べてたけど……」

 

日菜「あたしもいいよー。」

 

リサ「そっか。……それじゃあ最後に、空見はどう?」

 

楓「え?あ……うん。僕も、昼ごはん、食べたいかな。」

 

リサ「よーし。じゃあ決まり!フードコートへレッツゴー!」

 

日・ひ「オー!」

 

 

 

 

 

彩「……」

 

楓「……丸山さん、大丈夫?」

 

彩「う、うん、まぁ。」

 

楓「……で、でもさ、歌ってるときの丸山さんは、すごくいきいきしていて、カッコいいと思うよ。」

 

彩「……空見くん?」

 

楓「噛むことなんて、誰だってあるんだしさ。丸山さんの歌を聞けば、ステージで噛んだことなんて忘れるよ。公民館ライブのときもそうだったし。」

 

彩「……」

 

楓「だから、まぁ、その、……だ、大丈夫だよ。」

 

うん、我ながら慰めるの下手だな。

 

彩「……あ、ありがとう~!」ガバッ!

 

楓「うわっ!ちょ、ま、丸山さん!」

 

彩「そんなこと言ってくれるの、空見くんだけだよ~!」ギュ~!

 

楓「ちょ、や、やめてよ丸山さん///!見られてる!いろんな人に見られてるから///~!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彩「……本当にごめんなさい……。」

 

楓「い、いや。……もういいよ、丸山さん……。」

 

日菜「彩ちゃん、さっき言ってたことと違うよ?」

 

リサ「まぁ、あんなギュッて抱き締めてたらね~。」

 

ひまり「しかもあんな多くの人の前で……。」

 

彩「わ~ん!その話を蒸し返さないで~!」

 

楓「……と、とりあえず、お昼食べよう?丸山さん。」

 

彩「ぐすっ。う、うん……。」

 

リサ「……よし。じゃあアタシらも食べよっか。」

 

ひまり「はい!」

 

日菜「いっただっきま~す!」

 

……ん、このカツ丼旨っ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リサ「いやー、美味しかったねー。」

 

ひまり「はい!とても!」

 

彩「空見くんのカツ丼、すごく美味しかったよ!」

 

楓「丸山さんが頼んだスパゲッティも、美味しかったよ。」

 

リサ「……ねぇ、2人ってさ。」

 

楓「ん?」

 

彩「何?リサちゃん。」

 

リサ「……ううん、やっぱいいや。」

 

楓・彩「?」

 

リサ「(またさっきみたいなことになりかねないから、今言うのはやめておこうかな。)」

 

日菜「リサちー、どこ行くー?」

 

リサ「ん?あー、そうだな~。……ジー」

 

楓「……?えっとー、何?今井さん。」

 

リサ「……よし!じゃあ服屋さんに行こー!」

 

楓「え?」

 

リサ「アタシが、空見に合う服をコーディネートしてあげるよ♪」

 

楓「こ、コーディネート?」

 

日菜「なんか面白そー!」

 

ひまり「リサ先輩に任せておけば、もう間違いないですよ!」

 

楓「そ、そうなの?」

 

彩「そうだよ。私もこの前、リサちゃんに服をコーディネートしてもらってそれを一色買ったんだけど、千聖ちゃんがすごく良いって褒めてくれたんだよ!あの千聖ちゃんがだよ!」

 

楓「そ、そうなんだ。し、白鷺さんが……」

 

リサ「どう?空見。今なら特別に、タダでコーディネートしてあげるよ♪」

 

楓「え!お金取るの!?」

 

日菜「リサちーったら、人が悪いなー。」

 

楓「え?」

 

リサ「なんてね。冗談冗談♪今後もお金なんて取らないから安心して♪」

 

楓「な、なんだ……。」

 

リサ「それで?どうする?空見。」

 

……服をコーディネートかぁ。

 

……正直あまり興味ないけど、ここで断ったら流石に悪いし。

 

楓「……お金ないからコーディネートしてもらった服を買うことはできないけど、それでもいい?」

 

リサ「全然!むしろ、それら全部を買ったら、お金なんかすぐなくなっちゃうよ。」

 

楓「そ、そうだよね……。」

 

リサ「それじゃあ決まりだね。うーん、そうだなー。……!よし!じゃああの店にしよう!」

 

楓「日菜さんも、今井さんにコーディネートしてもらったことあるの?」

 

日菜「あるよー。リサちーってね、ほんとすごいんだよー。この前だって……」

 

ひまり「……あの、大丈夫ですか?彩先輩。」

 

彩「リサちゃんにコーディネートしてもらった服を全部買った私って……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-服屋さん-

 

リサ「んー……。」ジー

 

楓「……」

 

リサ「んー……。」ジー

 

楓「……///サッ」

 

リサ「あ~!もう、動かないでって言ったじゃん。」

 

楓「だ、だって、……今井さん、ずっと僕のこと見てるから……。」

 

リサ「……なるほど~。」

 

楓「?」

 

リサ「じっと見つめられて、アタシのこと意識しちゃったわけか~。」

 

楓「! ち、違うよ///!そんなんじゃ…「なーんて、分かってるよ。冗談冗談♪」……冗談って、今井さん……。」

 

リサ「まぁこれで、どんな服が空見に合うのかがだいたい分かったことだし。さっそくコーディネート開始~♪」オー

 

楓「お、オー?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シャー

 

リサ「おー!いいじゃんいいじゃん!似合ってる!」

 

楓「そ、そう?」

 

リサ「うんうん!やっぱ空見って、こういう可愛い系の服似合うよ~。」

 

楓「うーん……。ちょっと、色が地味な気も…「いやいや、このくらいが良いんだって。」そう、なの?」

 

リサ「その服にあとは、このパーカーを合わせて……。……うん!めちゃめちゃ良い感じ!」

 

楓「は、はぁ……。」

 

 

 

 

 

日菜「彩ちゃんのコーディネートは、あたしがしてあげるねー。」ゴソゴソ

 

彩「ありがとう日菜ちゃん!日菜ちゃんの選ぶ洋服、楽しみだな…「お、これるんっ♪てきた!よし!これに決めた!」! は、早いね、日菜ちゃん。」

 

日菜「はい!これ、着てみて!」

 

彩「う、うん。……どんな服を選んでくれたんだろう。シャー」ワクワク

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シャー

 

リサ「おー!似合う似合う!カッコいいよ空見ー!」

 

楓「そ、そう?」

 

リサ「空見って、可愛い系だけじゃなくてカッコいい系もいけるんだね~。」

 

楓「あ、ありがとう。……あ、この服、ドクロがかいてある。」

 

リサ「そのドクロが、かっこよさのポイントだよ♪」

 

楓「へぇ~。……確かに、ちょっとカッコいいかも。」

 

リサ「あはは、気に入ってくれたみたいで嬉しいよ~。」

 

 

 

 

 

シャー

 

彩「ど、どう?日菜ちゃん。」

 

日菜「おー!いいじゃん彩ちゃん!ばっちりだよ~!」

 

彩「えへへ、ありがとう。……ねぇ、日菜ちゃん。」

 

日菜「ん?なーにー?」

 

彩「1つだけ、気になることがあるんだけど……」

 

日菜「気になること?」

 

彩「この服、……後ろのハートが半分だけなのは何で?」

 

日菜「何でって、ただの柄だよ~。気にしない気にしない♪」

 

彩「そ、そう?……なら、いいけど。」

 

 

 

 

 

ひまり「……リサ先ぱーい!日菜先ぱーい!」タッタッタ

 

リサ「ひまり、お帰り。アタシの言った服は持ってきてくれた?」

 

ひまり「ばっちりです!あ、あと日菜先輩、はいこれ。」

 

日菜「ありがとー。」

 

リサ「? ヒナ、その服は?」

 

日菜「いいからいいから。空見くん、次はこれ着てみてー。」

 

楓「え?……いい、けど…「よーし!じゃあはい!」わっ、あ、ありがとう。……シャー」

 

リサ「……でも、珍しいねー。ヒナがコーディネートなんて。」

 

日菜「えへへ~。」

 

彩「日菜ちゃーん、次の洋服は?」

 

日菜「あ、彩ちゃんはちょっと待っててね。」

 

彩「え~?……もう。」

 

 

 

 

 

 

シャー

 

楓「日菜さん、着てみた、けど。」

 

日菜「おー!空見くんも似合ってるー!」

 

彩「あれ?空見くんと私、お揃いじゃない?」

 

楓「へ?……あ、ほんとだ。同じ服……」

 

日菜「ほらほら2人とも!突っ立ってないで早く出てきて!」グイグイ

 

彩「ちょ、ちょっと日菜ちゃん!」

 

楓「な、何なの急に~。」

 

日菜「ほら、そしたら並んで並んで。」

 

彩「?」

 

楓「日菜さん、ほんとに何なの?」

 

日菜「いいからいいから。ほら、クルッて。」

 

リサ「……あ。」

 

ひまり「そういうこと、ですか。」

 

楓「……ねぇ丸山さん、日菜さんは、いったい何を……」

 

彩「ごめん、私にも分からない……。」

 

パシャッ!

 

楓・彩「!」

 

日菜「よーし、撮れたー!」

 

彩「ちょ、ちょっと日菜ちゃん!?」

 

楓「何!?今何したの!?」

 

日菜「見たい~?……ほら!」

 

楓・彩「……!?ちょ、何これ~!?」

 

日菜「見ての通りだよ。題名はそうだなー。……“ハートで繋がった2人”!うん!我ながらるんっ♪てくる題名!」

 

楓・彩「すぐ消して///!!」

 

ひまり「ひ、日菜先輩……」

 

リサ「完全にカップルの人向けの服だね……」

 

日菜「え~?せっかくるんっ♪てくる写真が撮れたのに…「「全然るんっ♪てしない!!」」あはは、2人とも声が揃ってる~。面白~い。」

 

楓・彩「面白くない!!いいから今すぐ消して!!日菜ちゃん(さん)!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日菜「いやー、楽しかったー!」

 

ひまり「流石リサ先輩です!リサ先輩の選んだ服、全部とても良かったです!」

 

リサ「え~?そこまで褒められたら照れちゃうな~。」

 

楓・彩「……つ、疲れた……。」

 

日菜「もう2人とも、あれくらいでだらしないなー。」

 

楓・彩「誰のせいだと思ってんの!!」

 

日菜「あはは、また揃った~。」

 

彩「……これは、紗夜ちゃんに報告だね。」ボソッ

 

楓「そうだね、丸山さん。」ボソッ

 

日菜さんの悪ノリに付き合わされた後も、今井さんのコーディネートは続いた。

 

そうだなー。

 

……だいたい、1時間くらい……いや、それ以上かかったかなぁ?

 

……長かった。

 

今井さんには悪いけど、めちゃくちゃ長くて正直しんどかった……。

 

女子って服選ぶとき、いつもこれくらい時間かかんのかな?

 

僕はいつもお母さんに買ってもらってるから、そういうのよく分かんないけど。

 

……当分コーディネートしてもらうのはいいや。

 

リサ「……あ、もうこんな時間かー。」

 

ひまり「どうしたんですか?リサ先輩。」

 

リサ「1時間後に、Roseliaの練習があるんだよねー。だから、もうそろそろ帰ったほうがいいかなーって。」

 

! ろ、Roselia!?

 

ひまり「そ、そうなんですか。……って、昨日も練習ありませんでしたっけ?」

 

リサ「うん。友希那、最近張り切っててさー。あ、友希那っていうのは、アタシの幼なじみね。練習もここ最近は毎日あって…「毎日!?それは大変すぎますよ!友希那先輩に相談したほうがいいんじゃないんですか!?」うーん……、やめとく。」

 

ひまり「な、何で……」

 

リサ「毎日は確かにちょっと大変だけど、……楽しいんだよね、バンドの練習。」

 

ひまり「……」

 

リサ「紗夜も、燐子も、あこも、みんな同じ気持ちだと思うから。まぁ、紗夜はそうかちょっと分かんないけどね。……ひまりも、Afterglow、楽しいでしょ?」

 

ひまり「! そ、それはもちろん!」

 

リサ「それと同じ。アタシも、Roselia好きだから。」

 

ひまり「……そう、ですね。なんか、すみませんでした!」

 

リサ「いいっていいって。」

 

楓「……」

 

彩「……空見くん?」

 

楓「! ま、丸山さん。」

 

日菜「あ、もしかして空見くん、リサちーのこと気になったり…「してない!」え~即答~?」

 

楓「……いや、今の2人の会話が、ちょっと気になってさ。」

 

彩「会話?」

 

楓「今井さんがRoseliaだっていうのにもビックリしたけど、あと、……あと、もう1つ…「Afterglow?」そうそれ!」

 

彩「それがどうかした?」

 

楓「……今井さん、ここ最近毎日練習してるって言ってたから、……すごいなって思って。」

 

リ・ひ「……」

 

楓「好きなことに、そうやって毎日打ち込めるって、すごいと思う。……僕、そういうのないから。」

 

彩「……空見くん、好きなこと、ないの?」

 

楓「ゲームとかぐらいしか……。でもそんなの、今井さんとかに比べたら…「いいんじゃない?」え?」

 

彩「ひ、日菜ちゃん?」

 

日菜「好きなことなんて、何でもいいんじゃない?誰に迷惑かけるわけでもないんだしさ。」

 

リ・ひ「……」

 

日菜「ちなみにあたしは、おねーちゃんが大好きだから、毎日おねーちゃんといろんな話してるよー!」

 

彩「え……。」

 

日菜「? 何?彩ちゃん。え……って。」

 

彩「ぱ、パスパレは……?パスパレの練習は、好きじゃ…「何変なこと言ってんの?パスパレも好きだよ、あたし。」……ほっ、よ、良かった~。」

 

楓「……」

 

日菜「……!そうだ!」

 

彩「え、ど、どうしたの?日菜ちゃん。」

 

日菜「空見くん。今度、パスパレの練習見に来てよ!」

 

楓「え?」

 

彩「! な、何言ってるの日菜ちゃん!?」

 

日菜「え?何って、今後パスパレ練習見に来てって…「そういうことじゃなくて~!」? ちゃんと言ってくれないと分かんないよ、彩ちゃん。」

 

楓「そ、それは、ちょっと無理じゃない?」

 

日菜「え、何で?」

 

楓「いや、だって、パスパレの練習って芸能事務所でやってるんでしょ?一般人が芸能事務所に入るのすら普段無理なのに、そのうえアイドルであるパスパレの練習を見学なんて…「でも空見くん、芸能事務所来たことあるじゃん。」うっ、そ、それは、そうなんだけどさ……。」

 

日菜「あたし、ちょっとスタッフさんに聞いてみるねー。」

 

楓・彩「ちょ、ちょっと待ってー!」

 

日菜「えーっとー……」

 

リ・ひ「3人とも、何してんの……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日菜「じゃあ約束だよ!今度絶対千聖ちゃんに聞いといてね!」

 

彩「わ、分かったから~。」

 

日菜「あ、もしだったら今日の練習のときでも…「それはダメー!」もう、わがままだなー彩ちゃんは。」

 

リサ「空見、今日は楽しかったよ♪」

 

楓「そ、それはどうも……。」

 

ひまり「空見先輩!今度は私のおすすめのスイーツ屋さんに行きましょう!」

 

楓「う、うん、ありがとう。」

 

彩「あ、もう行くの?リサちゃん、ひまりちゃん。」

 

リサ「うん。今日は誘ってくれてありがとね、彩。」

 

ひまり「ありがとうございます!」

 

彩「ううん、今日は楽しかったよ。また遊ぼうね。」

 

ひまり「はい!」

 

リサ「じゃーねー。ヒナも、また明日。」

 

日菜「またねー、リサちー、ひまりちゃーん。」

 

ひまり「さようならー。」

 

彩「……それじゃあ日菜ちゃん、私達も行こっか。」

 

日菜「そうだね。じゃーね、空見くん。」

 

楓「う、うん。」

 

日菜「パスパレの件、考えといてよー!」

 

彩「日菜ちゃん!それは千聖ちゃんとスタッフさんに聞いてから!」

 

日菜「はーい。」

 

彩「あ、空見くん、またねー。」

 

楓「う、うん、また。……」

 

……なんか最後、丸山さんだけちょっと雑な気が……。

 

まぁいいか。

 

……なんか、昨日とはうってかわって、今日は意外とあっさり解散だったな。

 

……べ、別に、根にもってるとかじゃねえし!

 

って、こんなこと言ったら僕がツンデレみたいに思われるわ。

 

……やめたやめた。

 

こんなこと考えるのはやめて、家に帰ってゲームしよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんてことを思いながら家帰ってゲームして夕飯食って風呂入って部屋で漫画読んでたら丸山さんから電話がかかってきた。

 

楓「丸山さん?……こんな時間に何だろう?……もしも…『ごめんね空見くーーーん!!!』キーン !!??」

 

彩『今日の別れ際の私、すごい雑だったよね!?ほんとにごめんね空見くん。私も分かってはいたんだけど、日菜ちゃんもいっしょにいたもんだからあまり大々的な別れかたができなくて。……って、空見くん?聞いてる?』

 

……み、耳が……。

 

……耳が、キーンとする……。

 

楓「……だ、大丈夫、だよ、丸山、さん。」

 

彩『……そう?』

 

まぁ、完全に大丈夫ではないけど……。

 

彩『あ、それで、えーっと、……とにかくごめん…「そのことはもういいから。」え、いいの?』

 

楓「うん、大丈夫。別に怒ったりしてないから、うん。」

 

彩『そっか。……えへへ、良かった。』

 

ちょっと雑な気がしたのは、間違いじゃなかったんだ。

 

彩『あ、それでね、空見くん。明日のことなんだけど……』

 

楓「? ……あ、そっか。明日も、だもんね。」

 

彩『う、うん。……あの、ほんとに、ごめ…「だから大丈夫だって。それ以上謝ると電話切るよ?」え~!?ちょ、待って!分かった!もう謝らない!謝らないから~!』

 

楓「じょ、冗談だよ……。」

 

彩『え?……も、もう~///!!』

 

楓「……それで、明日がどうしたの?」

 

彩『あ、う、うん。……えっと、明日はね、11:30でもいいかなって。』

 

楓「11:30……?あ、待ち合わせ?」

 

彩『うん。』

 

楓「まぁ、それは全然構わないけど…『ほんと!?ありがとう空見くん!』う、うん。」

 

彩『あ、えっと、それとさ。』

 

楓「?」

 

彩『今日は、その、……どうだった?』

 

楓「どうだったって……?あ。」

 

彩『……』

 

楓「……うん、楽しかったよ。」

 

彩『ほ、ほんと?』

 

楓「ほんとだよ。まぁ、いろいろあったけど、……でも、あれはあれで楽しかったなって。」

 

彩『……そ、そっか。』

 

楓「……丸山さんは?」

 

彩『え?』

 

楓「丸山さんは、どうだったの?」

 

彩『わ、私は、……ひ、日菜ちゃんの悪ノリがなかったら、楽しかったかな。』

 

楓「あ、やっぱりそこなんだ。」

 

彩『当たり前だよ~!今日の練習のときなんて…「あーはいはい、その話は明日聞くよ。」むぅ~、他人事だと思って~。』

 

楓「いや、他人事っていうか、僕も被害者だったんだけど……。って、まぁいいや。」

 

彩『……ふふ、ふふふ……』

 

楓「? どうしたの?」

 

彩『ううん。ただ、明日が楽しみだなーって思って。』

 

楓「……丸山さん。」

 

彩『じゃあ、今日はこれで、ほんとのほんとに解散にしよっか。』

 

楓「うん。」

 

彩『また明日ね、空見くん。』

 

楓「また明日。……サプライズ、やっぱりあるの?」

 

彩『え?あー、……それは明日のお楽しみ♪』

 

楓「お、お楽しみ……『というわけで空見くん、じゃーね。』! う、うん、じゃーね。ま、また明日。」

 

彩『また明日♪……おやすみ。』

 

楓「お、おやすみ。……プツン」

 

……さてと、明日の準備するか。

 

……明日は、丸山さんの他に誰が来るのやら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ツー、ツー、ツー……

 

彩「……」

 

 

 

 

 

楓『……サプライズ、やっぱりあるの?』

 

 

 

 

 

……サプライズ、か。

 

……これも、ある意味サプライズ、だよね?

 

……よし!

 

明日は、昨日と今日以上に頑張らなきゃ!

 

やるぞー!




もう文化祭編の面影なくなってる気がするけど、一応文化祭編です。

文化祭当日は……、まだ少しお待ちください。



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34話 彩のお出かけ大作戦(三日目)

今回から、セリフの前に名前をつけることにしました。

???「……」
 ↑   ↑
 キ  セリフ
 ャ
 ラの名前

こういう感じです。

今までのやつもこのように直していく(というか付け足す?)つもりです。

ていうか最近こういう改良(改良されてるのか?)が多いですが、それは読んでくれている方にはもちろん、自分で読み返す際にも少しでも見やすくするためです。

上記のことと合わせて二つ、そのようにご理解お願いします。


現在の時刻は、11:20。

 

一昨日、昨日と待ち合わせ時刻は9:00だったが、なぜか今日は2時間半後のこの時間……。

 

もちろん疑問に思ったが、丸山さんのことだし、何かしら考えがあるのだろうと思い、あえて理由は聞かなかった。

 

一昨日は氷川さんと白金さん、昨日は今井さんと日菜さんと上原さんの登場という予期せぬ事態(丸山さん曰くサプライズ)が起きたが、果たして、今日はどうなのだろうか。

 

……まぁ普通に考えて、一昨日昨日と来れば今日も誰かしら来るだろうな。

 

……僕の知ってる人なのか、僕の知らない人なのか。

 

それは、丸山さんにしか分からない……。

 

 

 

 

 

彩「……!おーい!空見くーん!」

 

来た!

 

……さて、今日のサプライズとやらは、いったい誰が来たのだろう……か?

 

彩「ごめんね、待ったかな?」

 

楓「……え?い、いや、待ってはない、けど……」

 

彩「もぅ、そこは、ううん、僕も今来たところ、でしょ?」

 

楓「え、あ、……はい。」

 

……あれ?

 

丸山さん、だけ?

 

……あ、遅れてくるのか。

 

そっか、今日はそういうパターンで…「誰も来ないよ?」「……え?」

 

彩「たぶん、後から遅れて誰か来るんだろうなーって思ってるんだろうけど、はずれ。今日は私1人だよ。」

 

楓「……そ、そう、なの?」

 

彩「うん。」

 

楓「……あ、で、でも、昨日電話で、今日もサプライズあるって…「あー、……えっと、そのことなんだけどね?」?」

 

彩「……ま、また誰か来るのかと思ったら、実は3日目は私1人だったーっていうサプライズ、なんだ、けど……」

 

楓「……へ?」

 

彩「……だ、ダメかな?そういうんじゃ……」

 

楓「……あ、そ、そっか、そういうことか。い、いやー、また丸山さんにしてやられたなー。この手のサプライズだとは、思わなかったよー。」

 

彩「空見くん……。……えへへ、ありがと♪」

 

……なるほど、そういうオチか。

 

これは、まぁ、……うん、ある意味サプライズだな。

 

彩「えっと、……それでさ、空見くん。」

 

楓「ん?」

 

クルン♪

 

楓「……」

 

彩「……どう、かな?」

 

楓「……え?」

 

彩「え?……だ、だから、……」

 

クルン♪

 

楓「……」

 

彩「……ど、どう?」

 

楓「……どうって、何が?」

 

彩「! ……きょ、今日の私の服装!」

 

楓「服……。! あ、そういうこと!」

 

彩「それ以外にないでしょ!」

 

楓「ごめんごめん、全然気づかなくて……。えっと、今日の丸山さんの服装……。」

 

彩「……」

 

楓「……えっと、そうだな。……その帽子、似合ってる、かな。」

 

彩「ほんと?」

 

楓「う、うん。んーと、何て言うの?……深々と被ってる感じが、なんか、良いっていうか……」

 

彩「……それ、褒めてるの?」

 

楓「だ、だって、人の服を褒めたことなんてないから、どういうことを言えばいいのか…「分かったよ。」え?」

 

彩「要するに、似合ってる、ってことでしょ?」

 

楓「……うん。そういうこと、だけど…「じゃあいいよそれで。」! い、いいの?」

 

彩「うん。……私、お腹空いちゃった!」

 

楓「あ、……うん、確かに…ガシッ! !」

 

彩「おすすめのお店があるんだ!そこでお昼食べようよ!」タッタッタ

 

楓「ちょ、ま、丸山さん!?それはいいけど、別に走らなくてもよくない!?」

 

3日目は、丸山さんと2人でお出かけというのがサプライズだったようだ。

 

それと心なしか、一昨日や昨日よりも一段と張り切ってるように見える。

 

……今日の丸山さんは、いつもとちょっと違う。

 

そんな気がする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カランコロン

 

店員「いらっしゃいませ。何人でのご来店でしょうか?」

 

彩「2人です!」

 

店員「かしこまりました。それでは、お席にご案内します。」

 

彩「お願いします!」

 

楓「……」

 

なんか、高級そうな店だなぁ……。

 

ここが、丸山さんのおすすめの店か。

 

……お金足りっかな……。

 

店員「……こちらのお席でよろしいでしょうか?」

 

彩「はい!大丈夫です!」

 

店員「かしこまりました。それでは、こちらがメニューとなります。ご注文がお決まりになりましたらそちらのベルでお申し付けください。ごゆっくりどうぞ。ペコリ」

 

彩「ありがとうございます!」

 

楓「あ、ありがとうございます。」

 

彩「……窓側かー。良い席だね、ここ。」

 

楓「う、うん。」

 

やっぱり丸山さん、一昨日昨日とは張り切りかたが違うなー。

 

彩「この店ね、最近オープンしたばかりなんだよ。」

 

楓「え、そうなの?」

 

彩「うん。だから、ずっと来てみたかったの。」

 

楓「ふーん。……どうりで綺麗なわけだ。ボソッ」

 

彩「っと、話はこのくらいにして、まずは一旦メニュー見よっか。」

 

楓「そうだね。……よっ、と。……ピラッ」

 

彩「うわぁ~!どれも美味そう~!」

 

楓「た、確かに……」

 

結構メニュー充実してるんだなぁ。

 

最初入ったときは高級そうな店かと思ったけど、案外そうでもないんだなー。

 

……!

 

こ、これは……!

 

彩「……私は、トマトと魚介のスープパスタにしようかな。」

 

楓「え、丸山さんもパスタ?」

 

彩「も?ってことは、空見くんも?

 

楓「! あ、いや、その、……ぱ、パスタもいいなーって思ってただけだよ。」

 

彩「ふーん……。」

 

……女子の前でこれを食べるのは、ちょっと気が引けるよなー。

 

……ここは、もうちょっと無難なやつを……。

 

彩「……えいっ!」スッ

 

楓「あ!ちょっと!」

 

彩「……さっきから空見くんが気になってるのって、これのこと?」

 

楓「! ……ち、違う、よ?」

 

彩「ほんとに?」

 

楓「ほ、ほんとだよ。」

 

彩「……千聖ちゃんに誓って?」

 

楓「白鷺さん!?いや、白鷺さんには嘘は通じないから……って、丸山さん!」

 

彩「あはは、ごめんごめん。……でも、大丈夫だよ。」

 

楓「え?」

 

彩「私は別に気にしないよ。遠慮なんかしないで、自分の頼みたいものを頼みなよ。」

 

楓「……丸山さん。」

 

彩「それで、どうするの?空見くん。これ、頼むの?頼まないの?」

 

楓「……た、頼む!頼みたい!だって食べてみたいもん!これを一目見たときから、もう食べたいって思って…「分かったよ、分かったから落ち着いて。」あ、……ご、ごめん。」

 

彩「それじゃあ、ベル鳴らすね。」

 

ピンポーン

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

店員「お待たせいたしました。トマトと魚介のスープパスタと、ペペロンチーノでございます。」

 

! う、旨そおおお!!

 

店員「注文された品は以上でよろしかったでしょうか?」

 

楓「あ、はい。」

 

店員「それでは伝票はここに置かせていただきますね。ごゆっくりどうぞ。ペコリ」

 

彩「……良かったね、空見くん。」

 

楓「え?あ、う、うん。」

 

彩「そっかぁ。空見くん、ペペロンチーノが好きだったんだ。」

 

楓「うん。もう昔から好きなんだよね。お母さんの話だと、3歳ぐらいからもう食べてたみたい。」

 

彩「3歳から!?す、すごいね。」

 

楓「すごいのかなぁ?自分ではよく分からないけど……。って、早く食べよう丸山さん!」

 

彩「うん、そうだね。……それじゃ……」

 

楓・彩「……いただきまーす!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カランコロン

 

店員「ありがとうございましたー!またのご来店をお待ちしております。」

 

彩「うーん、美味しかったー!」

 

楓「ほんとにねー。……あのペペロンチーノ、また食べたいなぁ。」

 

彩「じゃあ今度は、花音ちゃん達も連れていっしょに来ようよ!」

 

楓「かの……、……う、うん、そうだね。」

 

彩「……」

 

次来たときは、大盛り頼もっかなー。

 

確か+150円で大盛りにできるんだよね。

 

あんな美味しいペペロンチーノの大盛りをたった150円追加するだけで食べれるなんて、最高だよほんと。

 

彩「……ねぇ空見くん。」

 

楓「ん?」

 

彩「今からさ、何ヵ所か付き合ってくれないかな?」

 

楓「何ヵ所か?って、どういうこと?」

 

彩「私、どうしても空見くんと行きたい場所が何ヵ所かあって……。それで、空見くんさえよければ、今からでもそこに行きたいんだけど……」

 

楓「行きたい場所……。まぁ、僕は全然いいよ。」

 

彩「ほんと!?ありがとう空見くん!」

 

楓「いやいや。……それで?丸山さんの行きたい場所って、どこなの?」

 

彩「それは、行ってみてのお楽しみだよ♪それじゃあ、私が空見くんと行きたい場所、1ヶ所目に向けて、しゅっぱ~つ!」

 

楓「え?……お、オ~?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彩「一ヶ所目は、ここだよ!」

 

楓「ここって確か、……SPACE。」

 

彩「覚えてる?オリエンテーションの前の日、ここで私と初めて会ったこと?」

 

楓「そりゃあ、もちろん覚えてるよ。あのとき丸山さん、ライブが終わった後に来ちゃったんだよね。」

 

彩「あ、あのときは、時間をその、……勘違い、しちゃって……」

 

そっか。

 

考えてみれば、あれが僕と丸山さんの初対面だったのか。

 

彩「と、とにかく!早く入ろう!今日は時間もちゃんとチェックしてきたから、あのときみたいなヘマはしないよ!」

 

楓「そ、そう……。」

 

彩「あー!その気のない返事、信じてないでしょ!」

 

楓「いや、別に信じるとか信じないとかそういうんじゃ…「いい!?空見くん!私だってやるときはやるんだよ!今日のお出かけプランだって、徹夜してずーっと考えてたし!」いや、だから……って、え?お出かけプラン?」

 

彩「今日空見くんには、いつもポンコツな丸山彩じゃなくて、しっかりものの丸山彩を見せてやるんだからね!」グイッ!

 

楓「痛っ。きゅ、急に腕を引っ張らないでよ~。」

 

丸山さん、言うほどいつもポンコツだっけ?

 

 

 

 

 

カランコロン

 

彩「うわー!人がいっぱいだー!」

 

楓「ま、丸山さん、そりゃあ…

 

 

 

 

 

「もうすぐライブだからね。当たり前だよ。」

 

 

 

 

 

……え?」

 

彩「へ?……あ、そっか。あは、あはは……。……え?」

 

……やっぱ丸山さんって、ポンコツだったのかな……?

 

って、それより!

 

楓「あ、あの、こ、こんにちは……。」

 

彩「! え、あ、……そ、空見くん、この人誰?ボソッ」

 

楓「オーナーだよ。SPACEの。」ボソッ

 

彩「お、オーナー!?」

 

オーナー「……」

 

彩「す、すみません!えっと、私、丸や…「丸山彩、Pastel*Palettesのボーカル。」え?」

 

オーナー「知ってるよ、あんたのことはちゃんとね。」

 

彩「……あ、ありがとう、ございます……。」

 

オーナー「……あんたは、前にもここに来ていたあの若造だね。」

 

楓「わ、若……。まぁ、はい。」

 

オーナー「あんたぐらいの年の男はあまりここを訪れないからね。来るたびに監視してたんだよ。」

 

彩「来るたびにって……、空見くん、そんなにいっぱいここに来てるの!?それに監視って、何か悪いことでも…「悪いことなんかしてないし、ここ来たのはまだ3回目だよ!」……そ、そうなの?(3回目?)」

 

お、オーナーめ~。

 

言い方が紛らわしいんだよ……。

 

オーナー「……ま、いいさ。ライブまでまだ時間がある。それまでこれでドリンクでも飲んでな。おっと、お金はちゃんと払ってもらうよ。」

 

楓・彩「あ、ありがとうございます……。えっと……」

 

……チャリン

 

オーナー「合わせて1200円、確かに。……スタスタスタ」

 

楓・彩「……」」

 

 

 

 

 

彩「……さっきのオーナーさん、何だったんだろう?」

 

楓「さぁ……?」

 

あの人の性格からして、からかうため、なんて可愛いものではないはずだ。

 

……ただ単に、僕を監視してるってのを伝えにきただけ?

 

てか、何で監視?

 

もっといい言い方なかったの?

 

 

 

 

 

???「あ、空見先輩、彩先輩。」

 

彩「! たえちゃん!たえちゃんもライブ見に来たの?」

 

たえ「違いますよ。私はほら、これです。」

 

彩「これ?……あ、もしかして。」

 

楓「花園さんは、ここでバイトしてるんだよ。」

 

彩「そうだったんだ。知らなかったな~。」

 

たえ「……」ジー

 

楓「な、何?花園さん。」

 

たえ「空見先輩、今日は彩先輩とデートですか?」

 

彩「!! で、デート///……。」

 

楓「そ、そんなんじゃないってば!ってか今日はって何!?今日はって!?」

 

たえ「だって空見先輩、他にも私を含めたいろんな人とデートしてますし、この前SPACEに来たときはりみと…「デートなんかしてないから!!そんなんじゃないから!ただのお出かけだから!!」……」

 

彩「! この前?りみちゃん?」

 

たえ「……」

 

楓「……えっと、花園さん?突然黙ってどうし…「飲み物は何にしますか?」いや突然話題変えないでよ!」おー、ナイスツッコミー。」パチパチパチ 拍手しなくていいから!」

 

彩「……さっきの3回目って、そういうことだったんだ。」

 

たえ「それで、飲み物は何にしますか?」

 

楓「……オレン…「オレンジジュースですね。」まだ全部言ってないって!」? 今日は違うのなんですか?」え?あ、えっと、……お、オレンジ、ジュースで……。」

 

彩「そっか。空見くん、千聖ちゃんと来たとき以外にもここに来てたんだ。……」

 

たえ「(やっぱり空見先輩をからかうのは楽しいな~。)彩先輩は、飲み物何にしますか?……?彩先輩?」

 

彩「……」

 

たえ「……輩、……彩先輩。」

 

彩「……え?」

 

たえ「さっきから呼んでるんですけど、何かありました?」

 

彩「え?……あ、う、ううん?何でもないよ?あ、そ、それじゃあ私も、オレンジジュースにしようかなー。」……かしこまりました。」

 

? 丸山さん?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~ライブ終了後~

 

ー外ー

 

彩「空見くん、まだかなー?……あ!」

 

楓「はぁ、はぁ、お、お待たせ~。」

 

彩「お帰り空見くん!大丈夫だよ、そんなに待ってないから。」

 

楓「そう?はぁ、はぁ、な、なら、良いけど……」

 

彩「ねぇ、それよりさ、早く聞かせてよ。」

 

楓「聞かせてって、何を?」

 

彩「もう、とぼけないでよ~。ライブの後、Glitter Greenのゆりさんに呼ばれて、何か話してたんでしょ?それで私、その話が終わるまでこうして外で待ってたんだから。」

 

楓「あぁ、……まぁ、そうだね。」

 

彩「ねぇねぇ、何話してたの?聞かせてよ~。」

 

楓「いや、そんなたいしたことじゃないよ。……ただ、ライブ楽しんでくれた?みたいなことを聞かれただけで……」

 

彩「全然たいしたことじゃないじゃん!いいな~、私も聞かれたかったな~。」

 

楓「……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-数分前-

 

楓「え、牛込さんが?」

 

ゆり「うん……。ライブにも全然来ないし、最近はずっと部屋に閉じこもってばっかだし。あんなりみ、見たことなくて……。」

 

楓「……」

 

ゆり「空見くん、何か心当たりない?りみ、今みたいになる前はよく空見くんの話を…「すみません。僕は何も、知りません。」……そっか。」

 

楓「……」

 

ゆり「……分かった。ごめんね引き留めちゃって。りみのことは、姉の私がなんとかしてみる。」

 

楓「……」

 

ゆり「ライブ、見に来てくれてありがとね。タッタッタ」

 

楓「……僕の、くそ野郎……。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……ほんとにくそ野郎だ。

 

僕は嘘をついた。

 

牛込さんがそんなになったのは僕のせいなのに、何も知らないなんて、嘘を……。

 

……謝りたい。

 

牛込さんに謝りたいけど、でも、どうすれば……。

 

彩「……くん。……空見くん!」

 

楓「! え?」

 

彩「大丈夫?なんか、顔色悪いよ?さっきから何度も呼んでたのに気づかなかったし。」

 

楓「あ、……ご、ごめん。ちょっと、めまいがしただけだよ。」

 

彩「めまい?……それじゃ、どこかに座って休…「大丈夫だよ。」え、でも……」

 

楓「大丈夫だから。うん、気にしないで。」

 

彩「……空見くん……。」

 

楓「……えっと、それでさ、丸山さんの行きたい場所って、SPACEだけ?」

 

彩「え?い、いや、もう1ヶ所、あるけど…「じゃあ早くそこに行こう。」……」

 

楓「ほら、どうしたの?丸山さん。早く行かないと、日が暮れ…「空見くん、何か無理してない?」! ……」

 

彩「さっきから空見くん、変だよ?ゆりさんと話したって辺りから…「だからほんとに大丈夫だって!!」!」

 

楓「僕は何も無理してないし、変でもない!いつも通りだよ!」

 

彩「……いつも、通り……。」

 

楓「そうだよ!僕はいつも通り…「いつも通りの空見くんは、そんな悲しそうな声出さないよ!!」! え?」

 

彩「はぁ、……はぁ、……」

 

楓「……か、悲しそうな声って……、僕が?」

 

彩「そうだよ!!……声だけじゃないよ?目も、冷静さを失ってるし、感情も高ぶってて、落ち着きがなくなってる。」

 

楓「……」

 

彩「私にはそんな空見くん、……いつも通りなんて、到底思えないよ。」

 

……そんな……。

 

そんなこと言ったって……、これが、僕だし……。

 

自分では、いつも通りしゃべってるつもりで……、別に、悲しそうな声なんか……。

 

楓「……しょうがねえだろ。」

 

彩「!(きた……。)」

 

楓「分かんねえんだよ!!どうすりゃいいか!!自分が何をすべきなのか、何をすればいいのか、うまくまとまんねえんだよ!!」

 

彩「……(こらえろ……、こらえろ、私……。)」

 

楓「自分が悪いのは分かってる!自分のせいでこうなったのも分かってる!!自分がなんとかしなきゃいけないのも分かってる!!!……でも、分かんねえんだよ。考えれば考えるほど、頭がごちゃごちゃしてきて、……自分では、どうすることもできないんじゃないかって、思えてきて……」

 

彩「……」

 

楓「……僕のせいで、みんなバラバラになった。だから、その責任を取らなきゃいけない。……でも、無理だよ。僕みたいな馬鹿の頭じゃ、そんな多くの責任を1人で解決するなんて……」

 

彩「……何で?」

 

楓「?」

 

彩「何で1人で解決しようとしてるの?自分のせいでこうなったから?自分1人が責任を負わなきゃいけないと思ったから?」

 

楓「……それは…「その考え自体が間違ってる!!」!」

 

彩「1人が無理なら、2人でやればいいじゃん!人を頼ればいいじゃん!何でそんなことも分かんないの!?」

 

楓「……ま、丸や…「そのための友達じゃん!!そのために、私達がいるんじゃん!!」……」

 

彩「……私、この前も同じようなこと言ったよね?……それなのに、空見くんにはそれが何1つ響かなかったんだ。」

 

楓「! ち、違…「違わない!!」!」

 

彩「さっきの空見くんが、その証拠だよ。」

 

楓「……」

 

彩「……もう、うんざりなんだよ。」

 

楓「!」

 

彩「空見くんのその、1人でなんとかしなきゃいけない精神、いい加減聞きあきたよ。」

 

楓「そ、そんな、丸山…「だから私、決めたの。」……」

 

彩「……これは、2日前から、もう決めていたこと。」

 

楓「2日前って……、! お、お出かけ!?」

 

彩「そ。厳密には、その前日の夜に。」

 

楓「……き、決めたって、何を……?」

 

彩「……それはね?」

 

楓「……」

 

彩「……空見くんに、

 

 

 

 

 

……ある景色を見せること。」

 

楓「……え?……うわっ!グイッ!」

 

彩「……」タッタッタッタ

 

楓「ちょ、ちょっと丸山さん!?そ、そんなに走って、ど、どこに…「いいからそのままついてきて!!」……は、はい……。」

 

彩「(私が空見くんにできること、それは、

 

 

 

 

 

……もう一度、ちゃんと空見くんと友達になること。そのために一番最適な場所は、……あそこしかない!)」タッタッタッタ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー???ー

 

彩「はぁ、……はぁ、……はぁ。」

 

楓「はぁ、はぁ、……つ、疲れた……。」

 

も、もう、ダメ……。

 

あ、歩けな、い……。パタリ

 

彩「ご、ごめん、空見、くん。はぁ、はぁ、……ちょっと、飛ばしすぎちゃった、かも……。」

 

楓「ちょ、ちょっとどころじゃ、……はぁ、はぁ、な、ないよ……。」

 

ま、マジで……。

 

……し、死ぬかと、思った……。

 

彩「……で、でも、……つ、着いたよ。」

 

楓「着いたって、……ど、どこに……。……! こ、ここって……」

 

彩「……そう。……花美ヶ丘公園だよ。」

 

……公民館ライブの後に来た、あの日の本当の目的地。

 

菊地さんと初めて会って(厳密には初めてじゃない)、みんなでお花見をした場所、……花美ヶ丘公園。

 

……もしかしてここが、丸山さんの来たかった場所……。

 

彩「と言っても、まだここがゴールじゃないんだけどね。」

 

楓「え、そうなの?」

 

彩「うん。……立てる?スッ」

 

楓「……ギュッ あ、ありがとう。」

 

彩「それじゃあ、私についてきてね。」

 

楓「う、うん。……」

 

彩「……」スタスタスタ

 

楓「……あ、あのー。」

 

彩「ん?なーに?」

 

楓「……ごめん。やっぱ、何でもない。」

 

彩「そうなの?もう、空見くんったら。」

 

楓「……」

 

……手、繋いだままなんだけど、……いいのかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彩「今度こそ着いたー!」

 

楓「……ここは……」

 

あのとき僕達が、宮村さんに案内されて来た、お花見をした本当の場所。

 

桜の木……は流石にもう6月だから咲いてないけど、……間違いない、ここだ。

 

この公園の奥にある、めちゃくちゃ大きな木。

 

この木の下で、僕達はお花見をしたんだ。

 

彩「懐かしいなぁ。ここでのお花見。」

 

楓「うん……。もう、2ヶ月も前のことなんだよね。」

 

彩「違うよ空見くん。もう2ヶ月じゃなくて、まだ2ヶ月、だよ。」

 

楓「……うん、そうだね。」

 

丸山さんがこの場所に来たかった理由、なんとなく分かる気がするな。

 

彩「……ねぇ、空見くん。」

 

楓「ん?」

 

彩「私、……空見くんに、お願いがあるの。」

 

楓「お願い?」

 

彩「うん。……聞いてくれる?」

 

楓「……う、うん。別に、構わないけど。」

 

彩「ありがとう。……すぅ、はぁ……。」

 

楓「? えーっとー、丸山さん?」

 

彩「すぅ、はぁ、すぅ、はぁ、……よし!」

 

楓「丸山さん、何で突然深呼吸なんか…「空見くん!」は、はい!」

 

彩「……」

 

楓「……」

 

彩「……わ、私と、……そ、その……」

 

楓「……」

 

彩「……わ、私と……

 

 

 

 

 

……と、友達に、なってください!サッ!」

 

楓「……へ?」

 

彩「……」

 

楓「……えっと、丸山さん?いったい、何を…「なんてね♪」……??」

 

彩「……これ、いざやると、なんかすごく、恥ずかしいね///。」

 

楓「……ね、ねぇ、丸山さん。今のって、いったい……」

 

彩「分からない?空見くんも、やったことあるでしょ?」

 

楓「え、僕も?」

 

彩「うん♪」

 

楓「……僕が、今のを……。うーん、……!も、もしかして!」

 

彩「思い出した?……そう、お花見のとき、空見くんが私達に向けてやった、友達申請だよ♪」

 

楓「……げ、厳密に言えば、仲良し申請なんだけど……」

 

彩「あの後みんなにそれなら友達でいいってツッコまれたんだから、友達申請でいいじゃん♪」

 

楓「う、うん……。ねぇ、僕、本当にあんな感じだった?」

 

彩「うん。」

 

……そう、なんだ。

 

……そうだなー。

 

なんというか、その、……恥ずいな。

 

僕こんな恥ずいこと、2回もやってたのか……。

 

彩「……それで?」

 

楓「え?」

 

彩「返事、くれないの?」

 

楓「へ、返事?……いや、返事も何も、僕と丸山さんはもう…「ほんとに?」へ?」

 

彩「ほんとに、そう思ってる?」

 

楓「も、もちろん。思ってる…「だったら。」……」

 

彩「……頼ってよ。」

 

楓「……丸山、さん。」

 

彩「私のことを友達だと思うなら、友達だと思ってくれるなら、……空見くんのこと、手伝わせてよ。もっと、私を頼ってよ!」

 

楓「……うん。……ごめん、丸山さん。」

 

彩「ううん。分かってくれたのなら、もういいよ。……それとさ、空見くん。」

 

楓「? 何?」

 

彩「空見くん、言ってたよね。人と話すのが苦手だって。初めて会った人やあまり話さない人と話すと、緊張して体が震えるって。」

 

楓「う、うん。」

 

彩「それは違うよ、空見くん。」

 

楓「え?……何で、そんなことを…「だって、見てたもん。」見てた?」

 

彩「紗夜ちゃんと燐子ちゃん、沙谷加ちゃん、日菜ちゃんやリサちゃん、ひまりちゃんとだって、いつも通りの感じで話してたじゃん。あまり話さない人とも、初めて会った人とも、私達と話すときみたいに、普通に話してたじゃん。」

 

楓「!! ……も、もしかして丸山さん、昨日一昨日のサプライズであの人達を呼んだのは、それを証明するため……」

 

彩「えへへ……。3日間に渡る、私のお出かけ作戦。長かったけど、なんとか上手くいった、ってことでいいのかな。」  

 

楓「……はは、ははは。丸山さん、策士だなぁ。」

 

彩「もう、笑い事じゃないよ~。ほんとに大変だったんだからね~?」

 

つまり僕は、この3日間、まんまと丸山さんの策にしてやられたってわけか。

 

……僕なんかのために、ここまでしてくれるなんて……。

 

楓「……ねぇ、丸山さん。」

 

彩「ん?何、空見くん?」

 

楓「僕、……みんなに謝りたい。」

 

彩「……」

 

楓「今回僕は、いろんな人に迷惑をかけた。白鷺さんから始まって、浅井さん、橋山さん、宮村さん、クラスのみんなに、松原さんに、ゆりさんにも。そして、……丸山さん。」

 

彩「!」

 

楓「まずは丸山さんに謝りたい。……丸山さん、本当にごめん!」

 

彩「そ、そんな!私は別に迷惑なんて…「それと。」?」

 

楓「……ありがとう。」

 

彩「……空見くん。」

 

楓「僕、ようやく決心がついたよ。まずは、……白鷺さんに謝りたい。」

 

彩「千聖ちゃんか。……最初から強敵だね。」

 

楓「強敵って……。でも、覚悟はできてる。何を言われようと、僕は……。」

 

彩「……」

 

楓「……お願い丸山さん。僕の罪滅ぼしを、手伝ってほしい。」

 

彩「罪滅ぼしは、ちょっと大袈裟だけど……。でも、もちろんだよ!」

 

楓「ありがとう。……本当にありがとう、丸山さん。」

 

謝らなければいけないのは、全部で七人。

 

それプラス、クラスのみんな。

 

……前の僕なら、絶対無理だって諦めてたけど、今回は丸山がいっしょだ。

 

……大丈夫、やれる!

 

彩「よーし!頑張ろう空見くん!まずは千聖ちゃんだー!」

 

楓「オー!」




花音ちゃんお誕生日おめでとう!!

誕生日限定のエリア会話がちさかのだったのでめちゃくちゃ嬉しかったです。


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35話 本心と本心

たまにハーメルンやpixivでちさかのの小説を読みながらいつか僕もこういう百合百合なやつ書いてみたいなーと思ってる今日この頃です。


『さっきから聞いてたら邪魔だの消えろだの、何度も同じ言葉を繰り返してるだけじゃねえか!うるせえんだよ!僕はさっきから違うって言ってんだ!少しは聞く耳持てよ!』

 

 

 

 

 

……うるさい。

 

 

 

 

 

『逆ギレして何が悪いんだよ!人の言うことに聞く耳も持とうとしないお前が悪いんだろうが!僕は別に自分の役に不満なわけじゃねえし、練習が面倒くさく思ってるわけでもねえのに。何が邪魔、消えろだよ、ふざけんじゃねえ!!』

 

 

 

 

 

……うるさい、うるさいうるさい!

 

 

 

 

 

『人の話も聞こうとしないお前に、そんなこと言われる筋合いねえんだよ!!あ?あげくのはてには自分が女優だからってドラマの撮影話なんか出しやがって、意味分かんねえんだよ!人に邪魔だの消えろだの言うんだったらな、まずは他人の話に耳を……』

 

 

 

 

 

うるさいって言ってんのよ!!

 

『!?』

 

……もう耳障りなのよ!!あなたの声は!!

 

なによ、人の気も知らないで、暴言ばかり並べて、キレるだけキレて。

 

……もうあなたの声なんて聞きたくない、顔なんて見たくないのに、どうして……。

 

……どうしてあなたは、そうやってたびたび私の脳裏を横切ってくるの?

 

ほんと、イライラする……。

 

……イライラするのよ!!

 

今はあなたのことなんて、微塵も思い出したくないの。

 

……お願いだから、私の頭から離れて。

 

……お願いだから、私の脳裏から出てって!!

 

 

 

 

 

「……ちゃん。……千聖ちゃん。」

 

千聖「はぁ、はぁ、……!え?」

 

スタッフ一同『……』

 

千聖「……あ。……いや、その……」

 

日菜「千聖ちゃん、さっきから変だよ?一人でずっと変な動きして。」

 

千聖「……ご、ごめんなさい。私としたことが、つい集中力が乱れていたわ。」

 

いけない。

 

私ったら、こんなときに何を……。

 

……しっかり、しっかりするのよ、白鷺千聖。

 

私が今、やるべきことは何?

 

千聖「……えっと、次は、今人気急上昇中のペットショップでの収録ですよね?」

 

スタッフ「え?あ……、まぁ、そうですけど……」

 

千聖「? どうしたんですか?何か問題でも?」

 

日菜「千聖ちゃん、そのペットショップに着いてから、もう十分も経ってるんだよ?」

 

千聖「え?……じゅ、十分?」

 

スタッフ一同『……』

 

日菜「うん。今みんな、千聖ちゃん待ちなんだよ。」

 

千聖「……ご、ごめんなさい!今すぐ準備します!」

 

スタッフ「い、いえ、急がなくて大丈夫…「そんなわけにはいきませんよ!」……は、はぁ。」

 

日菜「でも、珍しいねー。千聖ちゃんがボーッとするなんて…「準備できたわ!いくわよ日菜ちゃん!」グイッ! うわっ、千聖ちゃん、急だなぁ。」

 

白鷺千聖、仕事に切り替えるのよ、そして集中するの。

 

あの人のことなんか忘れて、今は仕事に、……このロケに、全神経を集中させるのよ。

 

日菜「千聖ちゃん、心なしか張り切ってるねー。」

 

千聖「私のせいでみなさんにご迷惑をおかけしてしまったんだもの。てきぱきと動いて、遅れを取り戻さなきゃ。日菜ちゃん、あなたも協力してちょうだい。」

 

日菜「はーい。」

 

カメラマン「それではいきまーす。5、4、3、……」

 

 

 

 

 

……ブー、ブー、ブー……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~楓&彩side~

 

-喫茶店-

 

楓「……一応、メールは送ってみたけど……」

 

彩「あとは、千聖ちゃんがそれに気づいてくれるかどうか、だね。」

 

楓「うん。……」

 

彩「……空見くん?」

 

楓「……白鷺さん、ちゃんとメール、見てくれるかな?」

 

彩「……大丈夫だよ。」

 

楓「大丈夫って……、その自信、どこから…「私、見たもん。」……見たって、何を?」

 

彩「昨日と一昨日、事務所でパスパレのレッスンがあったんだけど、……千聖ちゃん、そのレッスンの合間に、ある写真を見てたんだよ。」

 

楓「ある写真?」

 

彩「うん。何だと思う?」

 

楓「……さ、さぁ……。」

 

彩「……みんなでお花見に行ったときの写真だよ。」

 

楓「え?」

 

彩「しかも千聖ちゃん、その写真の空見くんの部分だけを拡大して見てたんだよ。」

 

楓「僕の部分、だけ?」

 

彩「だから、……きっと千聖ちゃんも、空見くんと仲直りしたいって思ってるはずだよ。」

 

楓「……でも、それだけで…「千聖ちゃんを信じよう。」ガシッ! !」

 

彩「……」

 

……そんな熱い目で見られたら、……信じるしかないじゃん。

 

楓「……分かったよ。」

 

彩「ありがとう、空見くん。」

 

楓「ところで丸山さん、……どうして白鷺さんがその写真を見たって分かるの?」

 

彩「え?そりゃあ、千聖ちゃんが写真を見てるのをこっそりと……あ!」

 

楓「……白鷺さんにバレたら、怒られるね。」

 

彩「……あ、あはは、大丈夫大丈夫。バレやしないよ、……たぶん。」

 

楓「……はぁ。」

 

絶対、いつかバレるな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~千聖&日菜side~

 

-ロケ地-

 

「これで、今日の収録はおしまいになります。お疲れ様でしたー。」

 

日菜「んー、終わったー!」

 

千聖「日菜ちゃん、あなたはもっと自分がアイドルであるという自覚を…「もう、そんな固いこと言わないの。ほら、早くバス乗ろバス。」……はぁ。」

 

ほんと、日菜ちゃんは相変わらずね。

 

……これで、今日の仕事は終わり。

 

帰ったら、……まずはお風呂かしらね。

 

日菜「? 千聖ちゃん、千聖ちゃんの携帯、ランプがついてるよ。」

 

千聖「え?……あら、ほんと。これはメールの着信ね。」

 

こんな時間に誰から……。

 

……花音かしら?

 

日菜「……ジー」

 

千聖「ちょっと日菜ちゃん、勝手に人の携帯を覗かない…「あー!空見くんだー!」え?」

 

……う、嘘……。

 

何で、楓が……。

 

……メールの内容は……。

 

 

 

 

 

『今から、駅前にある喫茶店に来れますか?

 そこで話をしたいです。         楓』

 

 

 

 

 

千聖「……」

 

日菜「シンプルな文章だねー。話?って何だろう?」

 

千聖「……スッスッスッ」

 

日菜「! 千聖ちゃん、入力早いねー。……え?」

 

千聖「……これで送信っと…「ちょっと待って!」何?日菜ちゃん。」

 

日菜「何?“あなたにする話はない“って。空見くんの話、聞かなくていいの?」

 

千聖「……いいのよ。それに私、今はあの人のことなんて考えたく…「えー!気になるじゃーん!ねぇ行こーよー。」何で日菜ちゃんも行く前提になってるのよ。嫌よ、わざわざこんな人の話を聞きに行くなんて。」

 

日菜「千聖ちゃん、その“話”っての、気にならないの?」

 

千聖「気にならないわ。ほら、分かったら早く離れて。返信のメールを送信しなきゃだから。」

 

日菜「……それってもしかして、彩ちゃんが言ってた、”学校の出来事”に関係ある話だったりする?」

 

千聖「! ど、どうして日菜ちゃんが、そのことを…「彩ちゃんが教えてくれたんだよ。」……彩ちゃん、またお説教かしらね。」

 

日菜「……行こうよ千聖ちゃん。ううん、行くべきだよ。」

 

千聖「行かないわよ。別に話なんて気にならないし、何より会いたくな…「千聖ちゃん!」ガシッ! ! ひ、日菜ちゃん?」

 

日菜「絶対に行った方がいい!じゃないと千聖ちゃん、この先一生後悔することになるよ!」

 

千聖「……そ、そんなこと……。だいたい、どうして日菜ちゃんに口を出されなきゃいけないの?これは私の…「千聖ちゃんだけの問題じゃない!」っ!ちょっと、こんなところで大きな声出したら……」

 

日菜「千聖ちゃんも空見くんも、あたしの友達だから、あたしの問題でもあるんだよ!」

 

千聖「……わけが分からないわよ、日菜ちゃ…「だって空見くんは、あたし達パスパレのこれからの活動をもっと大きなものにしてくれる何か、いわば新たな可能性なんでしょ?」……」

 

スタッフ「? 何です氷川さん?その、新たな可能性って…「スタッフさん達には関係ありません。」えぇ……。白鷺さん、辛辣……。」

 

千聖「……日菜ちゃん、それはあなたの主観でしかないの。楓はそんな大層な人物じゃ…「あたしだけじゃないよ!彩ちゃんもイヴちゃんも、麻弥ちゃんも思ってることだもん!」……だから何よ。」

 

日菜「空見くんと千聖ちゃんがこのまま仲直りできなかったら、……その可能性の実現は、なくなっちゃう。……だから…「日菜ちゃんに何が分かるって言うの!?」!?」

 

千聖「あなたは彩ちゃんから話を聞いただけなんでしょ!?実際にその場にいたわけでもないあなたが、いちいち勝手なこと言わないで!!」

 

日菜「……」

 

スタッフ「ちょ、ちょっと白鷺さん、流石にそれ以上は…「あなたは黙っててください!」! す、すみません!」

 

千聖「はぁ、はぁ、はぁ……」

 

日菜「……言いたいことはそれだけ?」

 

千聖「え?」

 

日菜「彩ちゃんから聞いたよ。空見くんに対して邪魔とか消えろとか、いっぱいひどいことを言ってたって。」

 

千聖「そ、それは、……楓が、ずっと黙ってたから……」

 

日菜「ずっと黙ってたから、イライラしたから、そんなことを言ったんだ。」

 

千聖「……」

 

日菜「……千聖ちゃんはそうやって、あたし達の仲も悪くするつもりなんだ。」

 

千聖「! ち、違う!私、そんなつもりじゃ…「でも、させないよ。」……え?」

 

日菜「あたし、これからもずっと、千聖ちゃんの友達でいたいから、……パスパレの、大事な仲間でいたいから。」

 

千聖「ひ、日菜、ちゃん。……さ、さっきは、その、……ごめん…「謝るのは、あたしじゃないでしょ?」え?」

 

日菜「あたしじゃなくて、……空見くん、でしょ?」

 

千聖「! ……そ、それとこれとは、話が別…「千聖ちゃんさ、昨日と一昨日のパスパレの練習の合間、空見くんの写真見てたでしょ。」! な、何で、そのことを……」

 

日菜「彩ちゃんといっしょに見てたからね。」

 

千聖「あ、彩ちゃんと?……はぁ。彩ちゃんには、あとでお説教ね。」

 

日菜「千聖ちゃん、……表ではひどいこと言ったつもりだけど、心の奥では思ってるんじゃないの?空見くんと仲直りしたい、これからも空見くんと、大切な友達でいたいって。」

 

千聖「……そんなこと、あるわけ…「じゃあ何であのとき、空見くんの写真を見ながら、ため息なんかついてたの!?」え!」

 

日菜「気づいてないとでも思った?彩ちゃんは見逃してたとしても、あたしはずっと見てたから分かるんだよ!写真を見てるときの千聖ちゃん、すごく悲しそうな顔しながらため息ついてた!」

 

千聖「……」

 

日菜「言い返さないってことは、……図星なんだね。」

 

千聖「……あなたはいったい、何がしたいの?わざわざ私と楓の問題に踏み込んで。」

 

日菜「あたしはただ、千聖ちゃんと空見くんに仲直りしてほしいだけだよ。それ以上でも、それ以下でもない。」

 

千聖「……それ以上でもない、っていうのは、嘘ね?」

 

日菜「……えへへ♪」

 

千聖「……はぁ。私の負けよ。分かった、楓と仲直りするわ。」

 

日菜「ほんと!?」

 

千聖「ええ。……まさか、あなたに論破される日が来るなんてね。」

 

日菜「え~、それどういう意味~?」

 

千聖「さて、そうと決まったら楓に返信しないと。」

 

日菜「ね~え~!さっきのこと、どういう意味なの~?」

 

千聖「もう、何でもないわよ。」

 

日菜「何でもないわけないでしょ~!ねぇ教えてよ~!」

 

千聖「私はメールを打つので忙しいの。自分で考えなさい。」

 

日菜「ぶ~!千聖ちゃんのけち~。」

 

千聖「……」

 

確かに、日菜ちゃんの言う通りだ。

 

私は心の奥底では、楓と仲直りしたいと思っているし、この先もずっと友達でいたいとも思っている。

 

でも、だからと言って、……素直に仲直りする気はない。

 

これは、私のプライドでもなんでもなくて……。

 

……仲直りするかしないかは、今の楓の気持ちを聞いて判断する。

 

……なんてね。

 

ほんとは、ただ純粋に、今の楓の気持ちを聞きたいという、私のわがままなのだけれど。

 

千聖「……」スッスッス……ピロン♪

 

これでOK、と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~楓&彩side~

 

楓「……『ピロリン♪』! 返事来た!」

 

彩「ほんと!?見せて見せて!」

 

楓「ちょ、ちょっと待って。えーっとー、……これだ!……」

 

 

 

 

 

『分かりました。

 20分で着くと思うので、そこで待っていてください。

 それと、日菜ちゃんもいっしょに連れていきます。 

                      千聖』

 

 

 

 

 

楓「え?ひ、日菜さんも?な、何で?」

 

彩「……あ!そういえば!」

 

楓「え、何?」

 

彩「今日千聖ちゃん、日菜ちゃんといっしょにロケがあるんだった。」

 

楓「ロケ?……いや、そうだとしても、何で日菜さんがいっしょに来ることになるの……?この話に、日菜さんは、……言いにくいけど、あまり関係ないんじゃ……」

 

彩「うーん……。……あ!」

 

楓「こ、今度は何?」

 

彩「そういえば私、日菜ちゃんにこのこと話しちゃったんだ。」

 

楓「え?……!?こ、このことってまさか、……僕が白鷺さんと言い合いになったってこと!?」

 

彩「う、うん……。」

 

楓「う、う、……嘘でしょ~!?」

 

彩「ほ、ほんとだよ。……勝手に話しちゃったことは、その、ごめん……。」

 

楓「……ま、マジかよ~……。」

 

こういうことは、むやみに人に話すものでもないと思うんだけどな~。

 

……はぁ、まぁいっか。

 

言っちゃったもんは仕方ないし、たぶん丸山さんも悪気があって言ったわけじゃなさそうだし。

 

彩「……で、でもさ、空見くん。」

 

楓「ん?」

 

彩「こういうのって、たいてい第三者の意見が必要だって言うよね?」

 

楓「……そんなこと、言う…「薫さんから借りて読んだ本に書いてあったの!」薫……、え、誰?」

 

彩「だから、勝手に話しちゃったことは謝るけど、そのおかげで第三者の意見が聞けるって考えたら、日菜ちゃんに話したの、悪くはなかったんじゃないかなって思うんだ。」

 

楓「……つ、つまり、丸山さんは何を…「あれ?でも私が日菜ちゃんに教えたんだから、第三者は日菜ちゃんじゃなくて私……?いやでも、私は一応その現場にいたし、直接的に関わっていないのは日菜ちゃんだからやっぱり日菜ちゃんが第三者……?うぅ、分からなくなってきたよ~。」……」

 

そもそもこの話に、第三者も第四者もいらないと思うんだけど……。

 

……それにしても白鷺さん、どうして日菜さんを連れてくるだなんて……。

 

おそらく日菜さんが“いっしょに行きたい”って言ったんだろうけど、あの人なら“これは私達の問題だから”、みたいなことを言ってついてくるのを阻止しそうなのに……。

 

うーん……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……カランコロン

 

楓&彩「!!」

 

日菜「……あ!いたー!」

 

彩「日菜ちゃん!ほんとに来たんだ……。」

 

日菜「ぶー。なんかそれ、ほんとは来てほしくなかったーみたいな言い草だよー?」

 

彩「そ、そんなことないよ!?ね、空見くん。」

 

楓「(え!そこ、僕に振るの……?)う、うん。」

 

日菜「ふーん……。んじゃまぁ、そういうことにしといてあげようかな。」

 

楓「は、ははは……。」

 

 

 

 

 

???「人を呼び出しておいて無視なんて、随分といいご身分ね、楓。」

 

 

 

 

 

! ……。

 

千聖「……」

 

楓「し、白鷺、さん……。」

 

千聖「それにしてもびっくりだわ。まさか、彩ちゃんといっしょだったなんて。」

 

彩「うっ……。」

 

ヤベェ……。

 

白鷺さんが喋り出しただけで、一気に空気が変わった……。

 

千聖「楓からあのメールが送られてきた時点でおかしいとは思ったけど、……そういうことだったのね。」

 

楓&彩「!!」

 

日菜「そういうことって?」

 

千聖「おおかた、彩ちゃんが楓を呼び出して、私と仲直りするよう説得し、それに応じた楓が仲直りすることを決心して、まずは私に謝るためにあのメールを送ったってところかしら?」

 

楓&彩「(ほ、ほぼほぼ当たってる……!)」

 

日菜「すごーい!千聖ちゃん、まるで名探偵だね!」

 

千聖「少し考えれば分かることよ。」

 

楓&彩「(いや、少し考えただけじゃ普通そこまで考えつかないよ……。)」

 

千聖「それで?……これからどうするつもり?」

 

楓「え?」

 

千聖「今から直球に謝りでもするの?悪いけど、それなら私はすぐにでも帰らせてもらうわ。そんな簡単に仲直りできるなんて思ってる人に、話すことなんて何もないから。」

 

楓「べ、別に僕、そんなことは…「じゃあどうするの?」そ、それは……」

 

千聖「あのね楓、私だって好きでここに来てるわけじゃないの。仕事で疲れて、今すぐにでも帰ってシャワーを浴びたい気分なの。それをあとにしてわざわざ来てあげてるの。」

 

楓「……」

 

千聖「……何?突然こんなぐちぐち言われると思ってなかったから言い返せないの?」

 

楓「……そういう、わけじゃ…「そういうわけだから何も言い返せないんでしょ!?」……」

 

彩「ち、千聖ちゃん、ここ喫茶店だから…「あのときみたいに、反論してみなさいよ!あのときと同じように、キレて何か言い返してみなさいよ!!」! ……」

 

日菜「……」

 

千聖「はぁ、はぁ、……これだけ言って、まだ黙ってるつもり?」

 

楓「……ん。」

 

彩&日菜「?」

 

千聖「何?聞こえないんだけど。喋るときはもっとはっきり…「ごめん、白鷺さん。」! ……それは、何に対してのごめんなの?」

 

楓「ずっと考えてたんだ。白鷺さんと、どうすれば仲直りできるのか。……普通の方法じゃ仲直りなんかできないだろうってことは分かってた。だから、普通じゃない、別の方法で、白鷺さんと仲直りする方法を、ずっと探してたんだ。だから、白鷺さんがずっと喋ってるとき、何も言い返せなかった。……ほんと、ごめん。」

 

彩「! ……空見、くん?」

 

日菜「へぇー……。」

 

千聖「……」

 

楓「……ここじゃ店の人に迷惑だよ、白鷺さん。」

 

千聖「そうね。……じゃあ、場所を変えましょう。」

 

楓「うん。」

 

日菜「……どうなるんだろうね、これ。」

 

彩「う、うん……。」

 

楓「……」

 

千聖「……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-公園-

 

彩&日菜「……」

 

千聖「ここなら、誰にも迷惑はかからないわ。」

 

楓「こんなところに、公園があったんだ……。」

 

千聖「さっきの喫茶店へは、花音とも来たことがあるの。その帰りによくこの公園でお話してるのよ。」

 

楓「ふーん……。」

 

千聖「……」

 

楓「……」

 

彩「……ひ、日菜ちゃん!空気が、空気が重すぎるよぉ!」ヒソヒソ

 

日菜「大丈夫大丈夫。すぐに慣れるって!」

 

彩「慣れる気がしないよ~!」

 

千聖「……それじゃあ、聞かせてもらえるかしら?ずっと考えてたっていう、普通じゃない別の方法で、私と仲直りする方法を。」

 

楓「……」

 

千聖「……?楓?どうして黙ってるのよ。」

 

楓「……」

 

千聖「……まさかあなた、私をからかってるの?だとしたら、……ものすごく腹立だしいわよ。」

 

楓「……別に、からかってるわけじゃないよ。……ただ。」

 

千聖「ただ?」

 

楓「……考え事をしてただけだよ。」

 

千聖「!」

 

スタスタスタ

 

彩&日菜「あ!」

 

ガッ!

 

楓「うっ!」

 

千聖「バカにするのもいい加減にして!!そこまでして私を怒らせたいわけ!?」

 

彩「千聖ちゃん!ダメだよ!」

 

千聖「離して彩ちゃん!私はこのバカでグズな男がどうしても許せないのよ!」

 

日菜「……」

 

楓「……いい加減にするのはどっちだよ。」

 

彩&千聖「え?」

 

日菜「……ふふ。」

 

楓「仲直りしたいなら、……仲直りしたいって言えよ!!」

 

千聖「!」

 

彩「え?……そ、空見くん?」

 

楓「さっきからベラベラベラベラ心にもないようなこと喋りやがって。バレバレなんだよ、お前が思ってるようなことなんか。」

 

千聖「……」

 

……スッ

 

楓「けほっ!けほっ!……はぁ、はぁ……」

 

彩「え?……え?ど、どういう、こと?」

 

日菜「……ぷっ、あはははは!!」

 

彩「! ひ、日菜ちゃん!?もう、何がどうなってるの~!?」

 

千聖「……楓。あなた、何言って…「白鷺さんも僕と同じなんでしょ?」……」

 

楓「仲直りしたい、これからもずっと友達でいたいって、心の底から思ってるんでしょ?」

 

千聖「……だ、だからそれは…「それは?……何?」……そ、それは……」

 

楓「……本心、なんでしょ?」

 

彩「! そ、そうなの?千聖ちゃん。」

 

千聖「ち、違う!私は…「じゃなきゃ、わざわざこんな公園まで来ないもんね。」! ……」

 

彩「え、ひ、日菜ちゃん?」

 

日菜「今すぐにでも帰ってシャワー浴びたいなんて言っておいて、喫茶店からそこそこ距離のあるこの公園まで来るってことは、そもそもすぐ帰る気なんてないってことだよね。」

 

彩「え、……え?」

 

千聖「……」

 

日菜「あんなにいっぱい空見くんを罵倒してたのは、空見くんの本心を聞き出したかったからでしょ?でもそれが、逆に自分の本心を空見くんに暴露される形になってしまった。」

 

彩「日菜ちゃんは、いったいどっちの味方なの……?」

 

千聖「……」

 

楓「……白鷺さん。」

 

千聖「……ええ、そうよ。」

 

楓「え?」

 

千聖「日菜ちゃんの言う通りよ!あなたの今の気持ちが知りたかったから、本心を聞き出したかったから、わざとあなたのことを罵倒し続けた!」

 

楓「……」

 

千聖「あなたの言う通り、私も仲直りしたいと思ってた。これからもずっと、あなたとは友達でいたいと思ってた。」

 

楓「……」

 

千聖「これが私の本心よ。どう?これで満足?」

 

楓「……」

 

彩「……空見、くん?」

 

日菜「……」

 

楓「……良かった。」

 

千聖「え?」

 

楓「白鷺さんも、そう思っててくれて。……正直、怖かった。」

 

千聖「……」

 

楓「白鷺さんの思ってることと言ってることの差が激しかったから、ほんとにそう思ってくれてるのかって、不安で不安で……。」

 

千聖「ちょっと、……楓?」

 

楓「やっぱり、……ダメだね。少しは慣れてると思ったけど、全然、……慣れてなかった。」

 

彩「空見くん……。もしかして、泣いてる?」

 

楓「……あんなに罵倒を浴びて、正直、すごく辛かったよ。辛かったし、怖くもあった。……それなりに覚悟はしてたけど、……あれほどとは、思わなかったから……。」

 

千聖「そ、それは……、……確かに、少し言い過ぎたかも、しれないわね。」

 

楓「ありがとう。……ほんとに、ありがとう。」

 

千聖「もう、何よ。泣きながら言われても、説得力ない…「こんな僕でも、……友達でいたいと、思ってくれて……。」! ……」

 

彩&日菜「……」

 

千聖「……それは、こっちのセリフよ。」

 

楓「!」

 

千聖「こんな私を、あなたは友達として受け入れてくれた。芸能人だからって特別扱いせずに、一人の友達として、……白鷺千聖という、一人の女の子として、あなたは接してくれていた。そのことに、ずっと感謝していたの。」

 

楓「……」

 

千聖「あなたのような男の人は、あなたが初めてだった。……ねぇ聞いて。あなたはときどき、私を驚かせるほどの行動力を発揮することがあるの。」

 

楓「僕が……、そんなことを……?」

 

千聖「ええ。……そしてあなたには、人を引きつける何かがある。……おとなしくて、気弱で、頭が悪くて、お人好しで。そんなあなたにも、一つだけ、魅力的なものがあるとしたら、それは…「千聖ちゃん!ちょっとターイム!」え?」

 

日菜「空見くん、さっきより泣いてるー。」

 

楓「うぅ、……うっ、うう……」

 

千聖「……な、何で?」

 

彩「嬉し泣きなのか、悲し泣きなのか、分からないね……。」

 

日菜「あはは。空見くん、彩ちゃんみたーい!」

 

彩「ちょ、日菜ちゃん!それどういう意味!?」

 

千聖「確かに、彩ちゃん感が否めないわね。」

 

彩「千聖ちゃんまで!?もう~!何なの二人して~!」

 

楓「うっ、うぅ……」

 

この前楓、自分はメンタルが弱いって言っていたけれど、……確かに、その通りかもしれないわね……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

千聖「……落ち着いた?楓。」

 

楓「う、うん……。」

 

日菜「空見くんの泣き顔、面白かったな~。」

 

楓「///!ひ、日菜さん!その話は忘れてよ///!」

 

日菜「えぇ~?そんなこと言われても、当分は忘れられないと思うよ~。」

 

楓「そ、そんな~……。」

 

彩「まぁまぁ、空見くん。」

 

楓「何がまぁまぁなの丸山さん……。」

 

千聖「ふふふ♪」

 

楓「……ねぇ、白鷺さん。」

 

千聖「何?楓。」

 

楓「この前は、……ほんとにごめん。僕のせいで、数少ない文化祭の準備を1時間も無駄にして……。」

 

千聖「いいのよ。あれは私のせいでもあるのだし。おあいこということにしておきましょう。」

 

楓「おあいこ……。」

 

千聖「ええ。どう?」

 

楓「……うん、分かった。」

 

彩「! そうじゃん!」

 

楓&千聖「!」

 

日菜「何何?どうしたの?」

 

彩「考えてみたら、文化祭までもう2週間もないじゃん!」

 

千聖「ええ、そうよ。」

 

楓「うん。」

 

彩「何で2人ともそんな冷静なの!?」

 

千聖「別に冷静なわけではないわよ。」

 

楓「そんなこと言ったって、今日何ができるってわけじゃないでしょ?」

 

彩「……まぁ、そう、だけど……」

 

千聖「でも、明日からは死ぬ気でやらなきゃね、楓。」

 

楓「うん、そうだね。」

 

彩「……」

 

日菜「なんか2人とも、より仲良くなったんじゃない?雨降って地固まるってやつ~?」

 

千聖「ふふ、そうかもしれないわね。」

 

彩「……」

 

なんか千聖ちゃん、空見くんに甘くなった?

 

花音ちゃんに甘いのは知ってるけど、空見くんにも……?

 

……気のせい、かな?

 

グ~

 

彩&千聖&日菜「?」

 

楓「あ……///。」

 

千聖「……楓。あなた、またなの?」

 

楓「ご、ごめん///。おかしいなぁ、ちゃんと昼ごはん食べたんだけどなぁ。足りなかったのかなー?」

 

千聖「……楓、行くわよ。」グイッ

 

楓「え?行くって、どこへ?」

 

千聖「美味しいものを食べによ。お腹、空いたんでしょ?私が美味しい料理の店、連れてってあげるから。」

 

楓「美味しい料理の店……。い、いいの?」

 

千聖「いいのよ。ほら、分かったらさっさと行くわよ。」

 

楓「……うん!ありがとう、白鷺さん!」

 

千聖「……いいえ///。」

 

……気のせいじゃ、ないかも。

 

やっぱり千聖ちゃん、空見くんに対して甘くなってる……。

 

日菜「千聖ちゃーん!あたしも行くー!」

 

千聖「ええ、もちろんよ。……ほら、彩ちゃんも、行くわよ。」

 

彩「……え?あ、う、うん!タッタッタ」

 

ま、いっか♪

 

千聖ちゃんと空見くん、無事仲直りできたみたいだし。

 

一件落着かな♪




次回からは本格的に文化祭準備編です。

やっとか……って感じですけどすみません。

やっとです……。


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36話 戻りつつある雰囲気

今日初めてパスパレカバーの『Q&Aリサイタル』聞いたんですよ。

いやー。

……めちゃめちゃ可愛かったです。


~翌日~

 

-2ーA 教室-

 

楓「ふわぁ~。」ガラガラガラ

 

彩「あ、空見くん!おはよう!」

 

楓「丸山さん、おはよう。白鷺さんも、おはよう。」

 

千聖「ええ、おはよう、楓。」

 

……松原さんは、まだ来てないのか。

 

ていうか丸山さん、最近当たり前のようにこっちの教室いるよね?

 

まぁ別にいいんだけど。

 

でも、……座りたいから僕の席からはどいてほしいかな。

 

「……そ、空見……」

 

楓「! あ、浅井さん、それに、橋山さん、宮村さんも……。」

 

美菜・橋山・音羽「……」

 

楓「……」

 

……ポン

 

楓「!」

 

千聖「楓。」

 

彩「空見くん。」

 

白鷺さん、丸山さん……。

 

……よ、よし!

 

楓「……あ、あの!」

 

美菜・橋山・音羽「!」

 

楓「えっと、……その……」

 

美菜・橋山・音羽「……」

 

千聖「……」

 

彩「(……がんばれ、空見くん!)」

 

楓「……っ!こ、この前は、ごめん!」

 

美菜・橋山・音羽「!」

 

クラスのみんな「!」

 

楓「僕のせいで、劇の練習、できなくて……。みんなに、迷惑かけて……。」

 

美菜・橋山・音羽「……」

 

クラスのみんな「……」

 

楓「もう絶対、あんなことしないから。もう迷惑、かけないから。だから、……今日からちゃんと、劇の練習、始めていけたらいいなと、思っ、て……。」

 

千聖・彩「楓(空見くん)……。」

 

美菜・橋山・音羽「……」

 

クラスのみんな「……」

 

楓「僕が言うのも変だけど、その、……もう文化祭まで、あまり時間ないから、みんなに協力してほしくて……。あんなことがあったから、みんな僕のこと、やなやつ、自分勝手なやつとか思ってるんだろうけど、それでも…「そんなこと思ってないよ。」え?」

 

橋山「そーそ。」

 

音羽「浅井さんの言う通りです。」

 

楓「……えっと、どういう、こと?」

 

美菜「空見が教室来る前にね、実は私達、白鷺さんから聞いてたんだ。」

 

楓「聞いてたって……、まさか、そのときのこと!?」

 

美菜「うん。空見があんなになった理由も、白鷺さんが教室を飛び出していった理由も、全部。ここにいるみんな、ちゃんと覚えてもらったよ。」

 

クラスのみんな「……コク。」

 

楓「……ま、マジ?」

 

橋山「だから、そのときのことはもう気にしなくていいよ。」

 

音羽「ちなみに昨日のことも、ちゃーんと教えてもらいましたから♪」

 

楓「昨日のこと、って……、まさか白鷺さん!?」

 

千聖「……」

 

彩「あ、あはは……」

 

楓「……ねぇ。もしかして今日丸山さんと白鷺さんって、いっしょに学校来たの?」

 

彩「え?うん、そうだよ。」

 

楓「じゃあ白鷺さんがみんなにそのことを説明してるとき、丸山さんもその場にいたってことだよね?」

 

彩「……うん、そうだね。」

 

楓「……だったら僕、さっきあんな頭下げて謝んなくてもよかったじゃん!!」

 

千聖「あら、そんなことないわよ。」

 

美菜「そうだよ空見。さっきので空見の悪かったって気持ち、ちゃんと伝わったから。」

 

橋山「今日から練習、しっかり頑張っていこうよ。」

 

楓「浅井さん……、橋山さん……。」

 

音羽「ちなみに、あーんな話や、こーんな話も教えてもらいましたよ?」

 

楓「!? ちょ、何その言い方!白鷺さん!みんなに何話したの!?」

 

千聖「……さてと、私は一時間目の準備をしておこうかしら。」

 

楓「話をそらさないでよ!ねぇ!あーんな話やこーんな話って、いったい何を話したの!?白鷺さん!ねぇったら~!」

 

 

 

 

 

橋山「……ねぇ、浅井。」

 

美菜「ん?」

 

橋山「今さらだけどさ、空見のやつ、白鷺さんに敬語じゃなくなってるよね?」

 

美菜「あ。……そういやそうだね。」

 

音羽「それだけ、距離が縮まったってことですかね?」

 

美菜「……うん、そうかも。」

 

 

 

 

 

楓「白鷺さん!ねぇ白鷺さんったら!」

 

千聖「あなたもしつこいわね!もういいでしょそのことは!」

 

楓「よくない!いいから教えてよ!」

 

 

 

 

 

橋山「……あれ、縮まってる、のか?」

 

美菜「た、たぶん……。」

 

音羽「まぁ、喧嘩するほど仲が良いと言いますしね。」

 

 

 

 

 

千聖「彩ちゃん!このいつまでもへばりついているお邪魔虫をどうにかして!」

 

楓「お邪魔虫ってなんだよお邪魔虫って!」

 

千聖「今のあなたのことよ!」

 

彩「ど、どうすればいいんだろう、これ……。って、二人とも~!教室で走り回っちゃダメだよ~!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

美澤先生「それじゃあこれから、HRを始めるわよ。」

 

楓「……」

 

松原さん、結局来なかったな……。

 

松原さんが休みなんて珍しい……。

 

何かあったのかな?

 

……!

 

も、もしかして、この前のことが関係してるんじゃ!

 

だとしたら、……ヤバい。

 

すぐ謝らなきゃ!

 

美菜「先生。HRの前に、聞きたいことがあるんですけどー。」

 

美澤先生「何?浅井さん。」

 

美菜「松原さんって、今日休みなんですか?」

 

! 浅井さんナイス!

 

美澤先生「あぁ、そのことね。……松原さんなら、今日は風邪で休みよ。」

 

千聖「風邪!?」ガタッ!

 

楓「!」

 

美菜「!」

 

クラスのみんな「!」

 

美澤先生「!」

 

千聖「先生。花音が風邪で休みって、ほんとなんですか?」

 

美澤先生「え、……ええ。」

 

千聖「……花音。」

 

美澤先生「あー、し、白鷺さん?早くHRを始めたいから、座ってもらえるかしら?」

 

千聖「……!あ、す、すみません。」

 

白鷺さんが、あんなに取り乱すなんて。

 

まぁ白鷺さんと松原さん、仲良いもんなー。

 

……にしても、風邪かー。

 

風邪なら、この前のこととは関係なさそうだけど。

 

……でもま、心配なことには変わりないよな。

 

美澤先生「それではまず、今日の連絡から。最初に、授業変更についてだけど……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~昼休み~

 

-中庭-

 

彩「え~!風邪でお休み~!?」

 

千聖「ええ、そうみたい。」

 

彩「そうだったんだ……。」

 

紗夜「朝から見ないとは思っていましたが……」

 

燐子「お休み……だったなんて……。」

 

千聖「はぁ……。憂鬱だわ……。」 

 

彩「ち、千聖ちゃん、元気出して?」

 

こんな落ち込んでる白鷺さん、初めて見た……。

 

よっぽど松原さんが休みってのがショックだったんだ。

 

……ん?

 

ちょっと待てよ?

 

松原さんが休みってことは……。

 

楓「ねぇ、白鷺さん。」

 

千聖「何?楓……。」

 

うわっ、テンション低っ。

 

楓「ま、松原さんが休みってことは、……劇の準備、どうなるんだろう?」

 

千聖「どうって、そりゃ花音がいないんだから、主役がいないも同然……ん?……って!準備ができないじゃない!劇のヒロインはあの子なのよ!?」

 

あ、気づいてなかったんだ。

 

千聖「ちょっと待って?……!そうよあの子、副実行委員もやってるじゃない!どうするのよ!」

 

楓「いや、僕に聞かれても……」

 

彩「千聖ちゃん、落ち着いて……。」

 

千聖「これが落ち着いていられると思う!?ヒロイン役で、しかも副実行委員!B組の実権は、あの子が握ってると言っても過言ではないのよ!?」

 

彩「え、えぇ~?」

 

千聖「花音がいなくてただでさえ憂鬱なのに、劇に支障が出ることにも気づいてしまったら。……もう、終わりよ。」

 

紗夜「いつもの白鷺さんらしくありませんね。」

 

燐子「こんな白鷺さん。……見たことないです。」

 

なんか、白鷺さんが白鷺さんじゃないみたい……。

 

松原さんがいないだけでこんなになるなんて。

 

いつものキリッとした白鷺さんはどこへ行ったんだか……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-2ーA 教室-

 

美菜「それじゃあ今日から、本格的に劇の準備、やってこー!」

 

オー!

 

美菜「……とその前に。」

 

クラスのみんな「?」

 

美菜「みんなも知っての通り、松原さんは風邪で休み。つまり、今この場にはこの劇のヒロインがいないということ。というわけで!」

 

あ、これはあれだ。

 

美菜「松原さんが復帰するまでのヒロインの代役を、今ここで決めちゃいたいと思いまーす!」

 

イェーイ!

 

フーフー!

 

まぁ、そうなるよね。

 

千聖「……」

 

で、白鷺さんは当たり前のように松原さんの席に座ってると。

 

……さっきからずっと無言だけど。

 

美菜「それじゃあ単刀直入に聞くよー?……ヒロイン役、やりたい人ー!」

 

クラスのみんな「……」

 

楓「……」

 

千聖「……」

 

橋山・音羽「……」

 

シーン……。

 

美菜「……ま、こうなるよねー。」

 

ヒロイン役……。

 

もう一人の主役だもんなー。

 

誰もやりたがらないのは当然っちゃ当然か。

 

美菜「誰も立候補者がいないとなると、……推薦、になっちゃうけど……。みんな、それでもいい?」

 

クラスのみんな「……」

 

橋山「いい、けど……」

 

音羽「推薦となると、……適役なのは、一人しかいません、よね。」

 

ジー……。

 

ん?

 

みんなの視線が集まってるのって……。

 

! ま、まさか!

 

千聖「……私?」

 

美菜「やっぱりこうなっちゃったかー。……ごめん白鷺さん!松原さんが復帰するまで、ヒロイン役の代役、やってもらえないかな?」

 

千聖「私が……、花音の代わりを?」

 

美菜「うん!」

 

千聖「……」

 

美菜「お願い!松原さんがいない今、この劇のヒロイン役を演じることができるのは、白鷺さんしかいないの!」

 

音羽「浅井さんの言う通りです!」

 

橋山「この劇、絶対に成功させたいんだよ!みんなもそう思うよね!?」

 

クラスの人A「私も白鷺さんが良いと思う!」

 

クラスの人B「私も賛成!」

 

クラスの人C「空見くんと松原さんもいいけど、私的には空見くんと白鷺さんの組み合わせも結構良いと思うんだよねー。」

 

クラスの人D「あー!それ分かるー!」

 

千聖「……」

 

楓「……ダラダラダラ……」

 

ヤバい……。

 

これ、絶対怒るやつだ……。

 

前松原さんに説教したときみたいに、めちゃくちゃ怒鳴り散らすパターンだ……。

 

千聖「……」

 

美菜「……ねぇ、白鷺さん?」

 

橋山「あのー、何か一言だけでも、喋ってもらえると、嬉しいんだけど……」

 

音羽「もしかして、白鷺さん、……怒ってます?」

 

だ、ダメだよ浅井さん、橋山さん、宮村さん……。

 

それ以上何か言ったら、白鷺さんの怒りが爆発して、取り返しのつかないことに……。

 

……ならないかもしれないけど、白鷺さんのことだから、きっと何かある。

 

……はぁ。

 

また白鷺さんの長い説教が始まるのか。

 

ま、説教はされ慣れてるからいいけど……。(よくないしされ慣れてるのもおかしい。)

 

千聖「……いいわよ。」

 

ほらね。

 

予想通り、白鷺さんの第一声は「嫌よ。」じゃなくて、「いいわよ。」だった……って、え?

 

美菜「! し、白鷺さん!今……!」

 

千聖「分かったわ。花音の代役、引き受けてあげる。」

 

……え?

 

……え!?

 

楓「ええええええ!!??」

 

美菜・橋山・音羽「!?」

 

クラスのみんな「!?」

 

千聖「ちょっと何よ楓。隣にいるんだから、いきなり大きな声出さないでちょうだい。」

 

楓「え、あ、いや、……だ、だって、白鷺さん……い、今、分か、分かった、って……」

 

千聖「ええ、言ったわよ。それが何か?」

 

楓「……お、怒って、ないんですか?」

 

千聖「どうして私が怒らなければいけないのよ。」

 

楓「だ、だって、この前、松原さんに、あんなに……」

 

千聖「花音が何?」

 

楓「あ、えっと、その、……や、やっぱ、何でも、ありません……。」

 

千聖「……そう?ならいいけど。」

 

美菜・橋山・音羽・クラスのみんな「(敬語に戻った……。)」

 

……おかしい。

 

この前は松原さんが似たようなことを言って、それに対してあんなに怒ってたのに。

 

白鷺さんが、あの松原さんにだよ?

 

あの松原さんに説教するほどだったのに、……今日は普通に素直。

 

……白鷺さん、どうしちゃったんだ?

 

……松原さんが休んだショックで、頭がおかしくなっちゃった?

 

千聖「……楓。」

 

楓「え?」

 

千聖「それ以上バカなこと考えたら、ぶん殴るわよ?」

 

楓「!」

 

ひ、久々に、心読まれた……。

 

楓「す、すみません……。」

 

千聖「……いいわよ。」

 

ん?

 

……今、許してもらえたの?

 

素直に謝ったから?

 

うーん……。

 

美菜「と、というわけで!松原さんが学校に復帰するまでのヒロイン役代理は、白鷺さんに決定しましたー!みんなー!白鷺さんに拍手ー!」

 

ワーワー!

 

パチパチパチパチ!!

 

……き、決まっちゃった……。

 

千聖「……よろしくね、楓。」

 

楓「へ?あ、……はい。」

 

……白鷺さん、ちょっと優しくなった?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

千聖「あなたのことが、ずっと好きだったの。あの頃から、ずっと……。」

 

楓「……」

 

千聖「だから、……お願い。」ガシッ!

 

楓「!?」

 

クラスのみんな「!?」

 

千聖「……私と、付き合ってもらえませんか?」

 

クラスのみんな「……」

 

楓「……」

 

千聖「……?どうしたのよ楓、次、あなたのセリフでしょ?」

 

楓「……え?あ、ご、ごめん。えっと……」 

 

 

 

 

 

美菜「さ、流石白鷺さんだ……。」

 

橋山「この短時間で、もう役に入り込んでる……。」

 

音羽「恐るべしです、白鷺さん……。」

 

 

 

 

 

楓「……ほ、ほんとに、僕で、いい…「ダメ。」へ?」

 

千聖「全然ダメよ楓。棒読みだし、感情がこもってないわ。」

 

楓「……だ、だって…「だってもへったくりもない!」!ビクッ!」

 

千聖「いい?本番まで二週間もないのよ?それまでにあなたが完璧にしなきゃいけない課題はいくつもある。今のもそうだし、さっきの演技、オリエンテーションのときと全く変わってないじゃない!」

 

楓「そ、そんなこと言われても…「言い訳しないの!」……」

 

千聖「あなたが課題を完璧にこなすことができるようになるまで、私がみっちり指導してあげるから。休む時間はないと思いなさい?逃げたりしたら承知しないわよ?」

 

楓「そ、そんな~……」

 

 

 

 

 

美菜「うわ~、白鷺さんの指導、キツそう……。」

 

橋山「でもさ、逆に考えれば白鷺さん、空見に付きっきりで教えてあげるってことだよね?」

 

音羽「そう考えると、……優しい、んですかね?」

 

美菜「どうなんだろうねー……。」

 

 

 

 

 

千聖「違うわよ!ここはただ振り向くんじゃなくて、実際に何か起こったって、ものすごく焦ったような顔をしながら振り向くの!ちなみにそのときの感情は……」

 

楓「えぇ?えっと、えーっとー……」

 

前言撤回、白鷺さんは全然優しくなんかなってなかった。

 

めちゃくちゃスパルタだし、怖いし。

 

……やっぱり、白鷺さんは白鷺さんだったわ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

美澤先生「あら、もうこんな時間……!みんなー!今日の準備はここまでにしましょー!」

 

橋山「え!もうそんな時間!?」

 

美菜「もくもくと作業してると、あっという間だね~。」

 

音羽「机、戻しましょうか。」

 

千聖「……仕方ない、今日はここまでよ。」

 

楓「や、やっと終わった~……。」

 

千聖「何安心してるのよ。今日やったところは、劇の中のほんの一部なんだからね?」

 

楓「い、一部……。うぅ~……。」

 

きつい、きつすぎる……。

 

こんなのを毎日やってたら、体がもたないよ……。

 

ネェー!コノアツガミ、ドコニカタヅケテオケバイイー?

 

ロッカーノウエトカデイインジャナーイ?

 

ウッ、オ、オモイ……。

 

ア-モウムリシナイデ、ワタシモモツカラ~。

 

……それにしてもみんな、すごいやる気だなー。

 

あのときは結局僕のせいで何もしなかったとはいえ、みんな準備のことなんて気にも留めなかったのに。

 

千聖「あなたよ。」

 

楓「え?」

 

千聖「あなたが、みんなの考えを変えたのよ。」

 

楓「僕が……。……そう、なのかな?」

 

千聖「ええ。今日のあなたのあんな謝罪を見れば、誰だって…「わー!その話はもういいでしょー!」……ふふ♪」

 

もう~、白鷺さんめ~!

 

……ん?

 

楓「ねぇ白鷺さん、そのプリント……」

 

千聖「これ?花音のよ。お見舞いのついでに、渡してあげようと思って。」

 

楓「あ、そっか。……お見舞いかー。」

 

僕も、行ったほうがいいかな?

 

……いや、考えなくても答えは出てるな。

 

楓「白鷺さん!松原さんのお見舞い、僕も…「ダメよ。」即答!?」

 

千聖「当たり前でしょ!?ダメに決まってるでしょ!」

 

楓「な、何で!?松原さんにも言いたいことあるのに…「それは花音が無事学校に来れるようになったら言いなさい!」で、でも……」

 

千聖「とにかく!ダメなものはダメ!あなたはまず、自分の演技を磨くことだけに集中しなさい。」

 

楓「……あの、せめて、僕が松原さんのお見舞いに行っちゃダメな理由だけでも…「あなたそれ、ほんとに言われないと分からないの?」……う、うん。」

 

美菜・橋山「(空見のやつ、マジか……。)」

 

音羽「(マジですか……。)」

 

クラスのみんな「(マジかよ……。)」

 

千聖「……はぁ。ほんと、あなたといると頭が痛くなるわ……。」

 

楓「……なんか、ごめん……。」

 

千聖「いい?あなたが花音のお見舞いに行くということはつまり……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

美菜・橋山「またねー、白鷺さーん。」

 

音羽「また明日ですー。」

 

千聖「ええ。また明日、頑張りましょうね。ニコッ」

 

楓「……」

 

美菜「ほら、空見もちゃんとあいさつしなよ。」

 

橋山「ほっときなって浅井。」

 

美菜「空見さんにはしっかりと、自分の失言を反省してもらいましょう。」

 

そうだよね。

 

僕が松原さんのお見舞いに行くということは、すなわち松原さんの家に行くってことだよね。

 

それを堂々とみんなの前で言う僕って……。

 

……バカだ。

 

僕は大バカだ……。

 

橋山「……さて、それじゃああたし達も帰ろっか。」

 

美菜「そうだね。」

 

音羽「浅井さん橋山さん!帰りにクレープ食べて帰りましょうよ!」

 

美菜「お、いいね宮村!ナイスアイディア!」

 

橋山「クレープかー。なんか久しぶりだなー。」

 

音羽「私、おすすめのお店があるんですよ!なんとですねー!……」

 

楓「……」

 

美澤先生「……」

 

楓「……」

 

美澤先生「……ねぇ、空見くん?いつまでそうしてるの?」

 

楓「……」

 

美澤先生「もうみんな、帰ったわよ……?」

 

楓「……え?」

 

キョロキョロ

 

……ほんとだ。

 

楓「……じゃあ、僕もそろそろ帰ります。」

 

美澤先生「え、ええ。気をつけて、帰ってね?」

 

楓「さようなら、先生。」

 

美澤先生「さ、さようなら……。(……さっきのこと、そんなに気に病むことなのかしら……。)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

楓「……はぁ。」

 

ほんと、僕ってバカだよなぁ。

 

松原さんと話すってことに気を取られてて、お見舞いに行く=松原さんの家に行くということに気がつかないなんて。

 

普通に考えたら、男が女子の家に行きたいって言ってるようなもんだもんな。

 

付き合ってもないのにそういうことをあんな大勢の前で言う僕って、相当ヤバいやつだな……。

 

……家帰ったら、ゲームでもして気分を紛らわそ。

 

……ん?

 

りみ「……」

 

! あ、あれは、牛込さん……!

 

……ひ、久しぶりに見たな……。

 

……そうだ。

 

全ての発端は、牛込さんの件から始まったんだ。

 

牛込さんに僕があんなことを言ったから、白鷺さんに、松原さんに、丸山さんに、そしてクラスのみんなにも迷惑がかかって……。

 

……僕が一番最初に謝るべきだったのは、牛込だったんだよな。

 

……よし。

 

ここで見つけたのも何かの縁。

 

牛込さんに謝って、仲直りして、ああなってしまった経緯を話しつつ、牛込さんとも仲良しに……。

 

……クル

 

あ。

 

りみ「……!」

 

み、見つかっちゃった……。

 

りみ「……ダッ!」

 

や、ヤベ!

 

楓「ま、待って!牛込さん!」

 

りみ「……」

 

楓「あの、僕、牛込さんに謝りたいんだ。……その、立ち話も難だし、どこか座れるところで…「あなたと話すことなんて何もありません。では。」! ちょ、ちょっと待っ……」

 

りみ「……」タッタッタッタ……

 

……い、行っちゃった。

 

……やっぱり、そう簡単にはいかないか。

 

……牛込さんとも仲直り、できるかなぁ?

 

……せめて、文化祭の前までは、できたらいいな……。

 

楓「……さて、帰るか。」




次回はちさかの回です。

もう一度言います。

ちさかの回です。


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37話 お見舞い to 花音

お待たせしました!(待ってない)

ちさかの回です!

花音ちゃんの家へお見舞いに行く千聖さんの話。

どうぞご堪能あれ!


【松原家 花音の部屋】

 

チュンチュン

 

花音「……うぅ、うーん……。」

 

朝だ。

 

……起きないと。

 

起きて、学校に行く準備、しないと。ムクリ

 

ヨロッ

 

あ、あれ? 

 

……何か、変……。

 

体が、思うように動かない……あ……。クラッ

 

ボフンッ!

 

花音「……」

 

歩こうとしたら体がよろけ、ベッドに倒れてしまった。

 

……何で?

 

どうして?

 

私、どうして、こんな……。

 

ガチャ

 

花音の母「花音?そろそろ起きないと……って、何してるの?」

 

花音「あ、いや、その、これは……。」

 

花音の母「?」

 

花音「……歩こうとしたら、何か、クラッとして……。気づいたら、ベッドの上に倒れちゃってて。」

 

花音の母「クラッと?そういえば、花音の顔……。ごめん、ちょっといい?」

 

花音「う、うん。」

 

花音の母「……ピト。! すごい熱!」

 

花音「え?」

 

花音の母「花音、すごい熱よ!?いったいどうして……?昨日、何か思い当たるようなことした?」

 

花音「お、思い当たるようなこと?……ううん、特に。昨日は、ただひたすら、劇の練習をしてただけで……」

 

花音の母「劇?……あ、もしかして、文化祭の?」

 

花音「うん……。」

 

花音の母「……きっと、原因はそれね。」

 

花音「? どういう、こと?」

 

花音の母「頑張りすぎたのよ。ただひたすらってことは、結構長時間練習してたんでしょ?」

 

花音「うん。昨日だけじゃなくて、一昨日も、その前の日も。」

 

花音の母「そんなにやったら、疲れも出てくるはずよ。……分かった。学校にはお母さんが電話しておくから、花音はぐっすり休みなさい。」

 

花音「! だ、大丈夫だよ、これくらい。今日はみんなと、劇の打ち合わせもしなきゃだし…「花音。」! お母、さん?」

 

花音の母「文化祭が大切なのは分かるけど、お母さんはそれ以上に、花音のことが大切だし、心配なの。だからお願い。今日は無理しないで、ゆっくり休んで。」

 

花音「……お母、さん……。」

 

花音の母「分かった?」

 

花音「……うん、分かった。わがまま言って、ごめんなさい。」

 

花音の母「いいのよ。……それじゃあ、お母さんは学校に電話してくるから。後で風邪薬と冷えピタ、持ってきてあげるからね。」

 

花音「うん……。ありがとう、お母さん。」

 

花音の母「ううん。じゃあ、また後でね、花音。」

 

ガチャリ

 

……そっか、風邪か。

 

……風邪なんてひいたの、いつぶりだろ?

 

あ、でもそういえば、中等部のとき、一回だけ風邪ひいたことがあるっけ。

 

そのときは確か、千聖ちゃんがお見舞いに来てくれたんだよね。

 

あの頃はまだ、千聖ちゃんと会ったばかりで……。

 

……ふふっ♪

 

懐かしいなぁ……。

 

……zzz。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~数時間後~

 

zzz……。

 

zzz……。

 

……パチッ

 

花音「……うーん……。」ムクリ

 

……いったいどれくらい寝ていたのだろう?

 

目が覚めた私は額に手を当てる。

 

……熱、下がってる……?

 

……今なら、歩いてもよろけたりしないかも。

 

そう思った私は、ベッドから降りて机の上の時計を確認する。

 

……13:30……。

 

私、6時間以上も寝てたんだ……。

 

……お腹、空いたな。

 

……台所行こ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【松原家 台所】

 

花音「あー、ん。」

 

モグモグ……。

 

うん、美味しい。

 

今日のお昼ごはんは、トーストとスクランブルエッグ、サラダと牛乳だ。

 

お昼ごはんというより、朝ごはんに近い。

 

ちなみにお母さんはこの時間仕事に行っており、今家には私1人だ。

 

1人で食べるお昼ごはん、……なんだか、不思議な感じだ。

 

花音「……今頃、みんな何してるのかなぁ?」

 

やっぱりお昼は、自分を除いた5人で食べているのだろうか。

 

自分が休んだことを、みんなはどう思っているのだろうか。

 

自分がいなくても、劇の練習はするのだろうか。

 

そんな風な疑問が、頭にどんどん浮かんでくる。

 

その中でも、一番気になったものが……。

 

……“劇”。

 

……今なら。

 

……熱が下がって、朝の時よりは動けるようになった今なら、大丈夫かもしれない。

 

……できるかもしれない。

 

花音「……よし。グッ!」

 

お昼ごはんを食べ終わり、歯磨きをした後、私はすぐに2階の自分の部屋へと向かった。

 

そして、あるものを手に取り、1人あることを始めた。

 

……みんなに、遅れをとらないために。

 

私は今、自分のできることをやろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~再び数時間後~

 

【松原家 リビング】

 

花音「……はぁ……はぁ……はぁ……」

 

だ、だいぶ、良い感じに……演技できるようには、なってきた気が、する……。

 

あとは、……だ、誰か、練習相手を……。

 

……うっ。クラッ

 

花音「……えへへ。少し無理、……しすぎちゃった、かな。」

 

と、とりあえず、一旦休もう……。

 

水、水を……。フラ~

 

 

 

 

 

『ピンポーン』

 

花音「!」

 

え!?

 

も、もしかしてお母さん、もう帰ってきたの!?

 

いつもはもっと遅い時間のはずなのに……。

 

……あ、でも、そっか。

 

私が風邪ひいてるから、早く帰ってきてくれたのか。

 

……あれ?

 

でももしお母さんだったら、チャイムなんて鳴らさないよね?

 

自分の家なんだし、私がいること知ってるはずだから、鍵なんてかけないだろうし……。

 

じゃあ、いったい誰……

 

『ピンポーン』

 

! いけない!待たせちゃってる!

 

と、とにかく今は、ドアを開けないと……。

 

……ピタッ

 

……ふ、不審者とかだったらどうしよう……。

 

……な、ないか。

 

大丈夫だよね、きっと。

 

あ、そうだ、宅配便だ。

 

うん、きっとそうだよ、宅配便だよ。

 

……うぅ、で、でも、もしかしたらって場合もあるし……。

 

ふぇぇ~、頭がぐるぐるするよ~……。

 

『ピンポーン……ピンポーン』

 

 

 

 

 

???「……花音、いないのかしら?」

 

 

 

 

 

! そ、その声は……!

 

タッタッタ…….

 

……ガチャ!

 

花音「千聖ちゃん!」

 

千聖「! か、花音!?良かった~、ちゃんといたのね。」

 

花音「ご、ごめんね?その、開けるの、遅くなっちゃって……」

 

千聖「いいのよ。それと、私のほうこそごめんなさい。」

 

花音「え?」

 

千聖「ちゃんと花音に伝えておけばよかったわね。今からお見舞いに行くって。」

 

花音「だ、大丈夫だよそれくらい。」

 

千聖「ふふ、ありがと。……でも、安心したわ。」

 

花音「ふぇ?」

 

千聖「花音のことだから、不審者が来たと思って心配してるかもと思ったけれど、そんなことなかったみたいね。」

 

花音「! ……」

 

千聖「……あら?どうしたの花音?……もしかして、図星だった?」

 

花音「……///」

 

千聖「……な、なんか、ごめん……

 

 

 

 

 

ギュッ! 

 

 

 

 

 

……え?か、花音?」

 

花音「……来てくれたのが、千聖ちゃんで良かった///。」グスッ

 

千聖「……もう、花音ったら。恥ずかしがってるのか泣いているのか、どっちなのよ。」

 

花音「グスッ……どっちもだよ///……。」

 

千聖「どっちもって……。でも、あなたらしいわね。」

 

花音「えへへ……。」

 

クラッ

 

千聖「え?」

 

花音「!」

 

千聖「ちょっと、かの…「はぁ、はぁ……」!?」

 

花音「はぁ、はぁ、はぁ……」

 

千聖「花音!?しっかりして花音!?」

 

花音「……ち、千聖、ちゃん……。わ、私……」

 

千聖「大丈夫よ花音!すぐに私が部屋へ連れていくから!」

 

花音「……あ、ありが、と、う……。」

 

千聖「花音!?大丈夫!?しっかりして!!しっかりするのよ!!花音ーーー!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【松原家 花音の部屋】

 

千聖「ほんとにごめんなさい、花音。」

 

花音「い、いいんだよ。悪いのは、安静にしてなかった私なんだから……。」

 

千聖「でも私は、あなたがこんなになるまで体調が悪かったのにも気づかず、わざわざ玄関まで来させたり、玄関であんな長時間話を……」

 

花音「そんな長時間でも、ないと思うけど……。」

 

千聖「とにかく、こうなってしまった責任は私にもあるの。……本当に、ごめんなさい。」

 

花音「もう謝らないでよ、千聖ちゃん。千聖ちゃんの気持ちは、十分伝わったよ。」

 

千聖「……花音……。」

 

……落ち込んでる千聖ちゃん、可愛い……。

 

って、こんなときに何考えてるの私!!ブンブン!

 

千聖「どうしたの?花音。やっぱり、怒って…「ち、違うよ!?違うの!ただ、その、……あ、暑いから、首でもふって暑さを紛らわそうと……」暑い……。! わ、私、替えの冷えピタ持ってくるわ!花音、ちょっと待ってて!」

 

花音「え!?あ、ひ、冷えピタなら、台所のテーブルの上にあると…「分かったわ!」……」

 

……あんなに焦ってる千聖ちゃん、久しぶりに見たなぁ。

 

それだけ、私のことを大切に思ってくれてるってことなのかな?

 

……ふふっ、なんてね。

 

……それにしても、千聖ちゃんが来てくれたときは嬉しかったな~。

 

結構本気で不審者かもって思っちゃってたから、千聖ちゃんの顔を見た途端、嬉しくてほんとに泣いちゃいそうで、涙をこらえるの大変だったんだよね。

 

まぁ、結局泣いちゃったんだけど。

 

……ガチャ! 

 

千聖「花音、持ってきたわよ!」

 

花音「あ、ありがとう千聖ちゃ……って、箱ごと持ってきたの!?」

 

千聖「ええ。いちいち1枚ずつ持ってくるより、箱ごと持ってきたほうが楽でしょ?」 

 

花音「ま、まぁ、そうだけど……」

 

千聖「それじゃあ花音、貼るわよ。」

 

花音「ふぇぇ!?じ、自分で貼るよぉ……。」

 

千聖「病人はじっとしてなさい。ほら、動かないで。」

 

花音「うぅ……、は、はい……。」

 

なんか、恥ずかしい///……。

 

……でも、やっぱり千聖ちゃんは、優しいなぁ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

千聖「……」ピト

 

花音「……」

 

千聖「……熱、下がってきたみたいね。」

 

花音「ほんと!?良かった~。」

 

千聖「この調子なら、今日の夜くらいには治りそうね。」

 

花音「夜か~。じゃあ明日から、また学校に…「それはまだ分からないわ。」え?」

 

千聖「温度の変わり目が激しい時期だし、明日になってまた熱が上がってしまうということも起こりうるでしょ?だから、まだ安心はできないわ。」

 

花音「そ、そんな~……。」

 

千聖「まぁ、あくまで可能性の話だけどね。」

 

花音「それはそうだけど~……」

 

千聖「……」

 

花音「うぅ……。……!そうだ。ねぇ、千聖ちゃん。」

 

千聖「何?花音。」

 

花音「今日、学校どうだった?劇の練習、やった?」

 

千聖「学校の様子は普通だったわよ。劇の練習も、ちゃんとやったわ。」

 

花音「そうなんだ。……ねぇ。」

 

千聖「ん?」

 

花音「空見くん、どうだった?……ちゃんと練習、してた?」

 

千聖「気になるの?」

 

花音「う、うん、まぁ……。だって、あんなことがあったんだし……。」

 

千聖「……大丈夫よ。楓とはもう、仲直りしたから。」

 

花音「! ほんと!?ガバッ!」

 

千聖「ちょっと花音、いきなり起き上がらないの。」

 

花音「あ……。ご、ごめん///……。」

 

千聖「花音はほんとに、楓のことが好きなのね。」

 

花音「! ち、違うよ///!好きとかじゃなくて、その、……単純に、空見くんは友達だから……。気になって……。」

 

千聖「……そうね。楓は友達、私もそうよ。」

 

花音「え?」

 

千聖「今回の騒動を経て、私も、楓は大事な友達なんだと、改めて気づくことができたの。」

 

花音「千聖ちゃん……。うん、そうだね。空見くんは、私達の大事な友達!」

 

千聖「ええ。」

 

……そっか。

 

千聖ちゃんと空見くん、仲直りできたんだ。

 

……できれば、千聖ちゃんと仲直りする前に、私に一度話してほしかったけど、……仲直りできたなら、いっか。

 

千聖「……せっかくだから、花音に少し愚痴を聞いてもらおうかしら。」

 

花音「え?……ぐ、愚痴?」

 

千聖「ええ。楓についてのね。」

 

花音「ふぇぇ!?空見くんとは、仲直りしたんじゃないの!?」

 

千聖「それとこれとは話が別よ。私の話したいのは、楓の演技についての愚痴よ。」

 

花音「空見くんの、演技?……あ。(察し)」

 

もしかして……。

 

空見くんの演技についての愚痴って……。

 

千聖「楓にはもっと、自分は主人公なんだという自覚を持ってほしいわね。セリフも棒読みだし、演技も下の下の下だし、しゃべりながらするしぐさもまるでなってない。それに加えて……」クドクド

 

やっぱり、こうなっちゃうよね……。

 

お花見のときに1回演技についての愚痴は聞いたけど、どうして千聖ちゃん、空見くんの演技に関してこんなに厳しいんだろう……。

 

やっぱり、千聖ちゃん自信が女優だから、っことかな?

 

……まぁそれはいいとして、この愚痴、いつまで続くんだろう……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

花音「へぇ、千聖ちゃんが私の代役を……。」

 

千聖「ええ。楓1人でやっても練習にならないからって、美菜ちゃんに相談して代役を急遽選ぶことにしたの。」

 

花音「それで、千聖ちゃんが推薦されちゃったと……」

 

千聖「あら、よく分かったわね。」

 

花音「話の流れ的に、そうなったのかなぁって。」

 

千聖「まぁ、誰だってそう思うわよね。そう、当然立候補する人はいなくて、みんなの推薦で私が代役になったの。」

 

花音「……でも私、代役が千聖ちゃんで良かったなって思うよ。」

 

千聖「え?」

 

花音「千聖ちゃんなら、私の代わりをしっかり努めてくれる、……千聖ちゃんになら、私の役を託せるって、そう思う…「花音。」ふぇ?」

 

千聖「私を信じてくれるのは嬉しいけれど、託すのはダメよ。今回の劇の主役は、楓と私じゃなくて、楓と花音なんだから。」

 

花音「……う、うん、そうだね。」

 

千聖「……」

 

花音「……あ、そ、そうだ千聖ちゃん。私、千聖ちゃんにお願いがあるの。」

 

千聖「お願い?……いいわよ。何でも言って。」

 

花音「あのね、私、この休み中、ずっと1人で役の練習をやってたんだ。」

 

千聖「役の練習を、ずっと1人で?……そりゃあ、疲れも出るわけだわ。」

 

花音「あはは……。」

 

千聖「呼んでくれたらいつでも手伝ったのに、どうして1人で練習なんか……。」

 

花音「だって、……あんなことがあった後だったし、千聖ちゃんには迷惑かなと…「あなたからの頼みが迷惑だなんて思ったこと、一度もないわよ。」……うん、それは、分かってるんだけど……」

 

千聖「……まぁいいわ。それで、話を戻すけど、お願いって?」

 

花音「あ、うん。えっと、お願いっていうのはね……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

千聖「もう、僕のことなんてほっといてよ。誰に嫌われようと、◯◯さんの知ったことじゃ…「そんなことない!」!」

 

花音「そんなこと、ないよ……。私以外にも、◯◯くんが嫌われるのを望んでない人、いっぱいいるんだよ?」

 

千聖「そんなのありえないよ。だって僕は…「何で?」え?」

 

花音「何でそんなに、自分のことを責めるの?◯◯くんは悪くない。悪いのは、あの人達なのに……。」

 

千聖「……」

 

花音「ねぇ、何か言ってよ!」

 

千聖「……◯◯さんには、僕の気持ちなんて、何1つ、分からな……

 

 

 

 

 

ギュッ!

 

 

 

 

!?」

 

花音「……分かるよ。」

 

千聖「……◯、◯◯さん、いったい、何を…「◯◯くんの気持ちなら、私がよく知ってる。」……」

 

花音「だって◯◯くんは、昔からそうだったもん。昔から、何1つ変わってない。……昔からの、私の、……」

 

千聖「……」

 

花音「……分からないわけがないよ。だって私、……◯◯くんのこと、昔から、ずっとずっと好きだったんだもん。ギュッ」

 

千聖「……///」

 

 

 

 

 

花音「……ふぅ。えっと、どうかな?千聖ちゃん。」

 

千聖「///」

 

花音「? 千聖ちゃん?どうしたの?顔赤いよ?」

 

千聖「……え///?あ、……ご、ごめんなさい///。……わ、私としたことが、つい、ぼうっとしてしまっていたわ……。」

 

花音「? う、うん……。」

 

……まだ、心臓がバクバクしてる……。

 

まさか花音の演技に、こんなに、ドキドキさせられるなんて……。

 

……/////!!

 

あぁもう!!

 

花音の顔まともに見れないじゃない///!!

 

花音「……私の演技、そんなに、ダメだった?」

 

千聖「! ち、違うの!違うのよ花音!あなたの演技、とっても良かったわ!まるで、……まるで……。……そう!映画の俳優さんレベルの演技だったわ!」

 

花音「ふぇぇ!?は、俳優さん!?そ、それはちょっと、大げさじゃ、ないかなぁ?」

 

千聖「そんなことないわよ!花音、もう少し自分に、自信を持ちなさい?」

 

花音「……自信、かぁ。」

 

千聖「そう、自信。」

 

花音「……分かった。うん、ありがとう、千聖ちゃん。……そうだよね、千聖ちゃんが良かったって言ってくれてるんだもんね。うん、なんか自信、出てきたかも!」

 

千聖「その調子よ、花音。」

 

花音「あ、でも、千聖ちゃんの演技も凄かったなぁ。」

 

千聖「え、私?」

 

花音「うん。だって、男の子の役なのに、千聖ちゃん、全然違和感なく演じてたんだもん。流石、女優さんだね。」

 

千聖「……ふふ♪ありがとう、花音。」

 

花音「えへへ♪」

 

花音……。

 

私の言葉に嘘はない。

 

花音の演技は、冗談抜きで素晴らしいものだった。

 

もしあの演技を多くの観客の前で演じていれば、その観客全員が、花音の演技に惹き付けられるだろう。

 

あそこまでの演技力を身に付けるには、かなりの練習が必要だ。

 

この休み中、この子は朝から晩まで、長い時間ずっと練習をしていたのだろう。

 

……花音。

 

そうまでして、あなたを駆り立てるものは何なの?

 

花音「このシーンのときは、もっと切なく……。手の動きはこう……、いや、こうかなぁ?」

 

千聖「……花音、あなたは一応病人なのよ。そろそろ寝なさい。」

 

花音「あ、待って千聖ちゃん。ここのシーンの動きを確認してからでもいい?」

 

千聖「でも、あなたは…「お願い千聖ちゃん!ここだけだから!」……もぅ、仕方ないわね。」

 

花音「千聖ちゃん!」

 

千聖「そのシーンだけだからね?そこの確認が終わったら、速やかに寝るのよ?」

 

花音「はーい。」

 

ほんと、私は花音に甘すぎるわね。




個人的には千聖さんが花音ちゃんに甘える感じのちさかのが好きです。


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38話 実行委員としての役目

みなさん、お久しぶりです……。

前の投稿から、約1ヶ月ぶりの投稿です……。

いろいろ忙しく、1ヶ月も更新できなかったこと、ほんとにすみませんでした。(ただの言い訳)

ネタやメモらはずっととっていたのですが、それを文章にするという時間があまりなく……。

というような話を続けるとただの言い訳になるのでもうやめておきます。

文化祭本番回まで、あとどれくらいだろう……。

おそらく、あと2、3話くらいで入れると思います。

文化祭本番回を楽しみにしている方(いるのかな……?)、もう少しお待ちを……。  


~昼休み~

 

僕、空見楓は今、ある決戦の場に来ている。

 

もちろん他の人もいるし、中には白金さんもいる。

 

てか隣だし。

 

今日この時間にここに来たのは他でもない、……名前の通り、決戦に来たためだ。

 

この決戦によって、今後の僕のあれの方向性が決まる。

 

???「それではみなさん、準備はよろしいですか?」

 

他の生徒「……」

 

燐子「……」

 

楓「……ゴクリ」

 

???「では、……一年生から順に、引いていってください。」

 

さぁ、いよいよ始まるぞ。

 

今後のあれの方向性に関わる、運命の戦いが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ワイワイガヤガヤ

 

楓「……」

 

燐子「……」

 

図書委員の先輩「というわけで、あなた達は“恋愛”のジャンルの本の紹介文をお願いします。選ぶ本は個人に任せますので、必ず文化祭前には提出をしてください。」

 

楓・燐子「は、はい……。」

 

……マジか。

 

……負けた。

 

僕は、決戦に、負けたんだ……。

 

燐子「……恋愛……ですか……。」

 

楓「僕は、負けた……。決戦に、負けた……。」

 

燐子「な、何を、言ってるんですか……?」

 

楓「……ていうかさ、やっぱりくじって不公平だと思うんだよね。」

 

燐子「……」

 

楓「こういうのってやっぱり、自分の好きなものを紹介したほうがいいと思うんだよ。自分の好きじゃないものを紹介したって、相手にそのものの良さを伝えることはできないと思うんだけど、白金さんはどう……」

 

燐子「……」

 

楓「……あのー、白金さん?聞いてる?」

 

燐子「私は……このままでもいいと……思います。」

 

楓「!?」

 

燐子「今回のジャンル決めをこのような方針にしたのは、みんなの選んだ本のジャンルが偏らないようにするため。」

 

楓「え、……そうだったの?」

 

燐子「はい、おそらく。……なので、先輩が決めたことを、悪く言うのは……」

 

楓「っ!べ、別に、悪く言っているわけじゃ……」

 

燐子「そういうわけじゃなくても、周りにはそう思われているかもしれないんです。」

 

楓「……」

 

燐子「私は、先輩の決めたことを、……“恋愛”のジャンルというものに、挑戦してみようと思います。空見さんは、どうしますか?」

 

楓「……うん。……僕も、やってみるよ。」

 

燐子「! ありがとうございます。いっしょに……頑張りましょう。」

 

楓「う、うん……。」

 

燐子「? どうかしたんですか?」

 

楓「え?い、いや……。白金さんって、怒ると怖いんだなって思って。」

 

燐子「え?……わ、私、怒ってなんかいました?」

 

楓「あれはー……、僕から見ると、怒ってる感じ、だったかな?」

 

燐子「そ、そうですか。……なんか、ごめん…「いや、謝ることないよ。」え?」

 

楓「確かにさっきのは僕が悪かった。ちょっと言い過ぎたよ。ごめん、白金さん。……あと、ありがとう。」

 

燐子「……いえ。分かってくれたのなら……もういいです。」

 

楓「“恋愛”のジャンルの本の紹介文、いっしょに頑張ろう!」

 

燐子「は、はい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~放課後~

 

千聖「違うわよ!ここはもっと明るく!そしてセリフはちゃんとハキハキと喋ること!」

 

楓「あ、明日、僕に勉強を…「それじゃあ全然聞こえないの!いい?あなたは主役なの!主役のあなたがボソボソとセリフを喋ってたら、見てもらう人に失礼なの!分かる!?」わ、分かってますけど~!」

 

 

 

 

 

橋山「あ、相変わらずだなぁ、白鷺さん。」

 

音羽「私、主役じゃなくてよかったです……。」

 

橋山「私だったら、あんなスパルタ指導を毎日受けてたら、だんだん辛くなる一方だと思う……。って考えると、あれを毎日受けても平気でいられる空見ってすごいなぁ。」

 

音羽「平気、なんでしょうか……。」

 

コンコン

 

彩「失礼しまーす。」ガラガラガラ

 

千聖「あら、彩ちゃん?どうしたの?」

 

彩「千聖ちゃん!うん、ちょっと、道具を借りようと思ってね。二人は、劇の練習?」

 

千聖「ええ。私が指導してあげてるのよ。楓1人じゃとても見せられるような演技にならないから。」

 

楓「ま、マジできついんだよ、白鷺さんのスパルタ指導……。」

 

彩「あはは……。お気の毒に……。」

 

千聖「道具なら、あの子達が持っているはずよ。」

 

彩「ありがとう、千聖ちゃん。お互い、準備頑張ろうね!」

 

千聖「ええ、もちろんそのつもりよ。」

 

タッタッタ……

 

千聖「……さて、続き、やるわよ。」

 

楓「ちょ、ちょっと待って……。あ、あの、休憩、とかは……」

 

千聖「今したでしょ?」

 

楓「今の休憩だったの!?」

 

 

 

 

 

生徒A「はい、テープとはさみね。」

 

彩「ありがとう。ごめんね、そっちも忙しいはずなのに。」

 

生徒B「いいっていいって。クラスは違えど、文化祭を成功させたいって気持ちは、みんないっしょでしょ?」

 

彩「文化祭を成功……。うん!そうだね!」

 

生徒A「お、良いこと言うじゃーん。このこのー。」

 

生徒B「えへへ~。」

 

キョロキョロ

 

彩「……ねぇ、美菜ちゃんはいないの?」

 

生徒A「美菜?」

 

生徒B「あぁ、美菜なら……」 

 

 

 

 

 

美菜「た、ただいま~……」

 

 

 

 

 

生徒A・B「あ、来た。」

 

橋山・音羽「浅井(さん)!」

 

彩「み、美菜、ちゃん?」

 

千聖「ちょっと、大丈夫?」

 

美菜「だ、大丈夫大丈夫……。あ……。クラッ」

 

楓「! 浅井さん!」

 

ガシッ

 

楓・橋・音・彩「え?」

 

千聖「ちょっと、全然大丈夫じゃないじゃない!」

 

美菜「あ、あはは、ごめんごめん……。」

 

楓・彩・橋・音「さ、流石白鷺さん(千聖ちゃん)……。」

 

千聖「ほら、少しここで休んでいなさい。」

 

美菜「で、でも、文化祭の準備が…「あなた、花音の代わりに副実行委員と実行委員、2人分の仕事をしているんでしょ?そんなの、疲れが出て当たり前よ。」……白鷺さんにはバレてたか。」

 

千聖「あなたを見てれば分かるわよ。」

 

美菜「……松原さんの代わりに、私が頑張らなきゃ。そう思ったら、休んでなんかいられなくて…「そうは言っても、あなたまで倒れちゃったら元も子もないでしょ?」……ごもっともです。」

 

千聖「……はぁ。後で、実行委員の仕事、教えてちょうだい。私がいっしょに手伝ってあげるから。」

 

美菜「! そんな、悪い…「大丈夫よ。楓もいっしょに手伝うから。」え?」

 

楓「ちょ、ちょっと白鷺さん!?別に僕は何も…「手伝うわよね?楓?」ニコニコ ……は、はい。手伝わせて、いただきます……。」

 

彩・橋・音「(で、出た……。千聖ちゃん(白鷺さん)の怖い笑顔……。)」

 

千聖「というわけだから、ね?」

 

美菜「……白鷺さん……。うん、分かった。……ありがと。」

 

千聖「いいえ。」

 

 

 

 

 

橋山「……空見。なんか、ドンマイ。」

 

音羽「ドンマイです。」

 

彩「……でも千聖ちゃん、前と比べて、明らかに空見くんと接する機会が増えてるよね。」

 

音羽「え、そうですかねぇ?」

 

彩「きっとそうだよ!それに、より空見くんと仲良くなろうとしてる感じもするし!」

 

橋山「そ、そうかぁ?」

 

彩「そうなんだよ!うん、絶対にそう!私には分かる!」

 

橋・音「は、はぁ……。」

 

ガラガラガラ

 

紗夜「失礼します。」

 

楓「あれ、氷川さん?」

 

千聖「どうしたの?紗夜ちゃんまで。」

 

紗夜「いえ、このクラスに、丸山さんが来ていないかと……」

 

彩「あーー!!忘れてたーー!!」

 

楓・千・橋・美・音「……」

 

紗夜「丸山さん、あなたという人は……」

 

彩「ごめん紗夜ちゃん!今戻るから!」

 

紗夜「みんなかんかんですよ?行ったっきり戻って来ないと。また白鷺さんや空見さん達とおしゃべりしているのかと……」

 

彩「わぁーーん!!ごめんなさーーい!!」

 

千聖「……全く、彩ちゃんは……。」

 

楓「丸山さん、相変わらずだね……。」

 

紗夜「白鷺さん、空見さん。丸山さんが、ご迷惑をおかけしました。」

 

楓・千「いえ、いいのよ(いいんですよ)。もう慣れてるから(慣れてますから)。」

 

橋山「……白鷺さん、いつも苦労してるんだろうなぁ。」

 

音羽「同じことを思いましたよ、橋山さん。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー1-A教室ー

 

ワイワイガヤガヤ

 

香澄「うーん……、うーん……。」

 

沙綾「苦戦してるみたいだね、香澄。手伝おうか?」

 

香澄「大丈夫!これは私がやるって決めたんだもん!最後まで頑張るよ!」

 

沙綾「最後までって……、文化祭前日まで考える気?」

 

香澄「え?あー、……それまでにはなんとか!」

 

沙綾「ふふ、頑張れ、香澄。」

 

クラスメイト「山吹さーん。もし手空いてたら、ちょっとこっち手伝ってくれる?」

 

沙綾「了解ー。……あ。」

 

 

 

 

 

りみ「……」

 

たえ「りみ、手、止まってる。」

 

りみ「……」

 

たえ「……あ、チョココロネ。」

 

りみ「え!?チョココロネ!?どこ?どこ?」

 

たえ「なーんて。冗談だよ、りみ。」

 

りみ「え?……な、なーんだ、冗談か。」

 

たえ「りみ、どうしたの?さっきから作業、全然進んでないよ。」

 

りみ「……ご、ごめん。ちょっと、ぼーっとしちゃってた。」

 

たえ「ほんとに大丈夫?もしだったら今度、SPACEの無料ドリンクチケットあげるよ。」

 

りみ「あ、ありがとう、おたえちゃん。……」

 

 

 

 

 

沙綾「……」

 

クラスメイト「山吹さーん、早くー。」

 

沙綾「! ごめーん、今行くー。タッタッタ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

香澄「え?りみりん?」

 

沙綾「うん。」

 

香澄「うーん……。別に、いつも通りだと思うけど?」

 

沙綾「そう、かなぁ?」

 

たえ「ううん、あれはいつものりみじゃないよ。」

 

香澄「え?」

 

たえ「さっき私、りみといっしょに作業してたんだけど、全然手が進んでなかったの。まるで、何か考え事をしているようだった。」

 

香澄「りみりんが、考え事を……。」

 

沙綾「……もしかしたら、何か悩みがある、とか?」

 

香澄「悩み!?それは大変だ!私、今すぐりみりんに…「待ってよ香澄、まだそうと決まった訳じゃないでしょ?」で、でも……」

 

沙綾「……香澄、花園さん。牛込さんのことは、私に任せてもらえないかな?」

 

香澄「え?さーやに?」

 

沙綾「うん。」

 

たえ「何か、心当たりがあるの?」

 

沙綾「まぁ、そんなとこ。」

 

たえ「……分かった。」

 

香澄「さーや、それなら私も…「香澄達は、文化祭に集中して。ライブもやるんでしょ?」う、うん。」

 

沙綾「私はライブには出ないし、家の用事で早く帰らなきゃだから、今牛込さんと話すには私が一番適役でしょ?」

 

たえ「確かに。りみも最近、家の用事があるって言って早く帰ってる。」

 

香澄「……分かった!じゃありみりんのことは、さーやに任せるね!」

 

沙綾「OK!」

 

香澄「私とおたえは、2人の分まで、文化祭の準備を頑張ろう!」

 

たえ「オー!」

 

沙綾「ふふ♪……」

 

 

 

 

 

りみ「じゃあ私、今日も家の用事があるから……」

 

クラスメイトA「あ、もうそんな時間か。」

 

クラスメイトB「OK。またね、牛込さん。」

 

りみ「うん、またね。」

 

 

 

 

 

沙綾「……さてと。それじゃあ香澄達のために、一肌脱ぎますか。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー校門前ー

 

りみ「……」

 

 

 

 

 

楓『ったく、何考えてんだよほんとに。時と場合を考えろ。』ボソッ

 

 

 

 

 

りみ「……はぁ。バカだなぁ、私。」

 

???「牛込さーん!」

 

りみ「! こ、この声は……」

 

沙綾「えいっ!」ギュッ!

 

りみ「きゃっ!ちょ、ちょっと沙綾ちゃん!?」

 

沙綾「やっと追い付いたー。」

 

りみ「い、いきなりどうしたの?抱きついたりなんかして。」

 

沙綾「んー、……香澄のまね?」

 

りみ「え?」

 

沙綾「なーんてね。……ねぇ牛込さん、今日はいっしょに帰らない?」

 

りみ「い、いっしょに?」

 

沙綾「うん。お邪魔じゃなければ、だけど。」

 

りみ「お、お邪魔だなんてそんな!もちろん!もちろんいいよ!」

 

沙綾「ふふ、ありがと♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

りみ「……」

 

沙綾「……」

 

あれから、全然会話できてないなぁ。

 

香澄達に任せてって言ったからには、絶対なんとかしたいけど……。

 

やっぱりこういうのは、向こうから何か言ってくるのを待った方がいいよね。

 

りみ「……さ、沙綾ちゃん。」

 

来た!

 

沙綾「ん?何?」

 

りみ「最近、……空見先輩とは、どう?」

 

沙綾「空見先輩?……ううん、特に何もないかな。」

 

りみ「そ、そっか。……」

 

……今ので確信した。

 

牛込さんの元気がない理由はやっぱり、空見先輩絡み。

 

そして、空見先輩絡みで考えられることは……。

 

沙綾「……牛込さん。」

 

りみ「?」

 

沙綾「牛込さんが最近元気ないのって、空見先輩が関係してるでしょ。」

 

りみ「!」

 

沙綾「そしてその発端は、……この前、牛込さんと空見先輩が2人でやまぶきベーカリーに来た日。」

 

りみ「……さ、沙綾ちゃん。いったい、何言って…「その翌日から、牛込さんの様子がおかしかった。ううん、やまぶきベーカリーにいるときから、もう少しおかしかったんだよ。」……」

 

沙綾「気づいてないとでも思った?あんなに優しい牛込さんが、空見先輩を無視するなんて。よっぽどのことがない限り、あり得ないからね。」

 

りみ「……違う。空見先輩は、別に関係なくて…「じゃあ何であのとき、空見先輩から逃げたの?」!」

 

沙綾「空見先輩、言ってたじゃん。牛込さんに謝りたいって。」

 

りみ「ど、どうして沙綾ちゃんがそれを……。まさか、見てたの?」

 

沙綾「いや、あれは、たまたま通りかかって……。って今はそんなの関係なくて!……何があったのかは、私は知らない。でも、牛込さんにあそこまで言わせるくらい、嫌なことがあったんでしょ?」

 

りみ「……」

 

沙綾「正直、そんなことを空見先輩がするとは思えないけど……。でも、あのときはっきり空見先輩は、牛込さんに謝りたいって言ってた。……牛込さん。何があったのか、もしだったら、私に話してみてくれないかな?」

 

りみ「……そうしようとするのは、沙綾ちゃんの本心?それとも、香澄ちゃんやおたえちゃんのため?」

 

沙綾「! もちろん、私の本心だよ。それを聞いて、もし空見先輩が本当に牛込さんに何か嫌なことをしたのなら、私はあの人を許さない。すぐにでも牛込さんといっしょに空見先輩のところへ行って、今すぐ謝ってって…「そんな必要、ないよ。」え?」

 

りみ「だって、悪いのは私なんだから。」

 

沙綾「う、牛込さん、何言って…「これは私の問題なの!部外者の沙綾ちゃんが、私に口出ししないで!ダッ!」あ!ちょっと牛込さん!」 

 

……はぁ、ダメだったか。

 

……部外者、か。

 

まぁ、確かにその通りだけど。

 

一応あの場には私もいたわけだし。

 

それに、……友達だし。

 

……これは、もう1人のほうに詳しく話を聞いた方が良さそうだな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー牛込家ー

 

コンコン

 

ゆり「りみ、入るよ?」

 

りみ「……」

 

ゆり「……」

 

ガチャ

 

ゆり「……何かあったの?りみ。」

 

りみ「別に、何も。」

 

ゆり「何もないわけないでしょ?りみってば、数日前からこんな感じなんだよ?家に帰ってくるのも、なんだか早いし。文化祭の準備、あるんでしょ?」

 

りみ「……」

 

ゆり「……ねぇりみ?お姉ちゃんに相談、してくれたりしないかな?」

 

りみ「……」

 

ゆり「……ダメ、か。珍しいよね、りみがここまで頑固になるの。……ということは、何か特別なことがあってそうなった、ってことかな?」

 

りみ「特別なことなんて、そんな簡単なものじゃないもん。」

 

ゆり「(図星か。)ま、りみが話したくないって言うなら、私もそこまで詮索はしないよ。でも、……そういうのは、早めに解決しないと一生後悔することになるよ。」

 

……ガチャリ

 

りみ「……」

 

早めに解決しないと、一生後悔……。

 

……。

 

りみ「……私、どうすればいいのか、分からないよ……。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~翌日~

 

ー2-A教室ー

 

クラス全員「ええええええ!!??」

 

橋山「こ、このクラスの出し物を……」

 

音羽「教室じゃなく、体育館で……」

 

千聖「しかもみんなが出し物や出店を出してるときじゃなくて……」

 

楓「最後のステージライブのときに全校生徒の前でやる!?」

 

美菜「そ、そう……。」

 

クラスメイトA「う、嘘ぉ……。」

 

クラスメイトB「マジ……?」

 

クラスメイトC「全校生徒の前で、うちらの劇をやるの……?」

 

クラスメイトD「きっつ~……。」

 

千聖「……美菜ちゃん、あなたねぇ。ガシッ!」

 

美菜「ひぃっ!」

 

千聖「何てことしてくれたのよ!!」

 

美菜「ご、ごめんなさ~い!!」

 

橋山「白鷺さんがあんなに怒るなんて……」

 

音羽「まぁ白鷺さんはいいとしても、問題は……」

 

楓「……」ズーン

 

橋山「おぉ……、思い切り沈んでる……。」

 

無理だ……、全校生徒の前でなんて、絶対に無理だ……。

 

死ぬ……、ほんとに死ぬ……、命が持たない……。

 

処刑だ……、公開処刑だ……。

 

楓「……」ブツブツ……

 

音羽「なんか、ブツブツ言ってますよ……?」

 

橋山「まぁ、これが普通の反応だわな。」

 

千聖「はぁ……。いい?美菜ちゃん。私が怒ってるのは、どうして私達の劇をステージライブでやることにしたか、じゃなくて、どうしてそれを私達に相談しなかったのか、ということよ。」

 

美菜「う、うん……。」

 

千聖「あなたは実行委員、いわば私達のリーダーなの。リーダーが無鉄砲に動いて物事を決めてたら、それを信じてついていってる人達からも、いつか信用が消えてしまうことだってあるのよ。」

 

美菜「……」

 

千聖「もう決まってしまったものは仕方ないわ。これからは、ステージで全校生徒に見せる、見せられる劇をすることを心がけて、練習していくわよ。」

 

美菜「……白鷺さん。……ごめん。」

 

千聖「美菜ちゃん。謝るのは、私だけじゃないはずよ。」

 

美菜「うん、分かってる。……みんな。」

 

クラス全員「……」

 

美菜「私、実行委員なのに、みんなに何も相談しないで、勝手にステージで劇をやるって決めて、……ほんとにごめん。」

 

クラスメイトA「……もういいよ、美菜ちゃん。」

 

クラスメイトB「白鷺さんの言う通り、決まっちゃったものは仕方ないし、これからはポジティブに考えていこうよ。」

 

美菜「? ポジティブに……?」

 

クラスメイトC「全校生徒に見せるってことは、私達の努力をみんなに見てもらえるってことでしょ?それってすっごいわくわくするじゃん!」

 

クラスメイトD「あんたは昔から目立ちたがりやだからね~。」

 

美菜「……」

 

千聖「みんなも、やる気になってくれたみたいね。」

 

橋山「浅井、2-Aの凄さ、みんなに見せてやろうよ。」

 

美菜「橋山……。」

 

音羽「こういう機会をもらえることなんて滅多にありませんから、むしろラッキーですよこれは!」

 

美菜「宮村……。」

 

楓「無理だ……、絶対無理だ……。全校生徒の前でなんて……、そんなの……」ブツブツ……

 

千聖「楓はいつまでそうやってるのよ。」

 

楓「! し、白鷺さん……」

 

千聖「みんなを見なさい。ポジティブに考えて、前に進もうとしているのよ。それなのにあなたは何?いつまでもブツブツブツブツ……。それでも男!?」

 

楓「だ、だって、全校生徒の前ですよ!?しかも僕は主役!そんなの、プレッシャー高すぎますよ!!」

 

千聖「そのプレッシャーを乗り越えるのが、今のあなたの役目なのよ!」

 

楓「意味分かりませんよ!」

 

 

 

 

 

橋山「空見の説得は、まだまだ時間がかかりそうだな……。」

 

音羽「そうですね……。」

 

美菜「空見、ほんと、ごめん……。」

 

橋山「……てかさ。これ、また前みたいなことになったりしない?」

 

音羽「あ……。確かに、あり得ます……。」

 

美菜「あの2人なら、大丈夫だと思うよ。だって、喧嘩するほど仲が良いって言うし。」

 

橋・音「まぁ、そうだけどさ(そうですけど)……。」

 

 

 

 

 

千聖「分からないのなら、ちゃんと分かるようになりなさい!!あなた、それでも主役なんでしょ!?」

 

楓「さっきから白鷺さんの言ってることが意味分からないって言ってるんですよ!」

 

千聖「それを理解できるようになることが、将来では求められるのよ!覚えておきなさい!」

 

楓「話が脱線してるじゃないですか!!」




最近、弟もガルパにはまったらしいです。

……はい、それだけです。

初音ミクコラボ楽しみだなぁ。

あとたぶん来るであろう復刻の星4花音ちゃん!(俳句のやつ)

絶対当てるぞーー!!


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39話 悩み

過去一でタイトルが短い……。

まぁ、これもシンプルイズベストということで。




今、僕は怒っている。

 

いや、怒っているわけではないが、……ちょっといらいらしている。

 

……だってさ!

 

白鷺さん、言ってることめちゃくちゃなんだもん!

 

劇を体育館でやるのに抵抗あるって話をしてたのに、突然将来の話になるんだもん!

 

意味不明じゃん!

 

流石にそこは僕もいらいらしたよ!

 

……はぁ。

 

体育館で劇か。

 

……絶っっっっ対無理だ。

 

プレッシャーが高すぎる……。

 

あ、そうだ。

 

プレッシャーを乗り越えるのが主役の役目、とも言われたんだ。

 

……主役って、そんなんだっけ……?

 

まぁとりあえず僕が言いたいのは、体育館で劇をやることに対して僕は反対だってこと。

 

……白鷺さんのことだから分かってくれなさそうだけど。

 

……ん?

 

ワイワイガヤガヤ

 

あ、商店街。

 

……そういや、あのとき以来行ってないな。

 

松原さんに、いろいろ案内してもらったんだっけ。

 

まぁその後あんなことがあったけど……。

 

……牛込さんに初めて会ったのも、あの日だったっけ。

 

……あのときは、こんなことになるとは思わなかったなぁ。

 

ま、当然か。

 

 

 

 

 

???「……!いた!空見先輩!」

 

 

 

 

 

え?クルッ

 

沙綾「はぁ、……はぁ……。」

 

楓「や、山吹さん!」

 

 

 

 

 

???「あ、空見くん!」

 

 

 

 

 

ん?クルッ

 

ゆり「丁度いいところで会ったね。」

 

楓「ゆ、ゆりさん!?え、ど、どういうこと!?」

 

ゆり「どういうこと、なんて言われても……」

 

沙綾「私はただ……」

 

沙・ゆ「空見先輩(くん)を探してただけで……。え?」

 

……え、……僕、2人に探されてたの?

 

何それ怖い……。

 

沙・ゆ「……と、とにかく、話があるから(ので)、ちょっとこっち来て(ください)!」グイッ!

 

楓「え!ええええ!?」

 

ま、マジでどういうことぉぉぉ!!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー近くの公園ー

 

楓「……」

 

沙・ゆ「ご、ごめん(なさい)……。空見先輩(くん)……。」

 

楓「い、いえ……。」

 

突然公園に連れて来たことに対してか、2人に謝られた。

 

まぁ、うん、……正直怖かった。

 

楓「……そ、それで、さっき僕を探してたって言ってましたけど、あれはいったい……」

 

ゆり「そうだよ!私、1つ空見くんに聞いておきたいことがあるの!」ズイッ!

 

沙綾「私も、空見先輩に聞きたいことがあります!」ズイッ!

 

楓「……そ、それは分かったから、早く本題に入ってよ……。」

 

2人とも怖いんだってば……。

 

沙綾「では。」

 

ゆり「単刀直入に聞くね。」

 

楓「……は、はい。」ゴクリ

 

 

 

 

 

沙・ゆ「……牛込さん(りみ)に何したんですか(したの)!?」」

 

 

 

 

 

楓「……え?」

 

沙綾「牛込さんですよ!」

 

ゆり「あの子、最近全然元気ないんだよ!」

 

沙綾「牛込さんと話した結果、どうやら空見先輩が何かしたらしいということが分かって……」

 

ゆり「前まであの子、空見くんの話ばかりしてたんだよ!それが最近になって突然なくなったってことは……」

 

楓「え、えっと、その、……2人とも、ちょっと落ち着……」

 

沙・ゆ「牛込さん(りみ)と何があったのか、あらいざらい話してもらいますよ(もらうからね)!!」

 

楓「……わ、分かりました……。」

 

僕は2人の圧に負け、牛込さんと何があったのか、正直に話すことにした。

 

怒られるのか呆れられるのか、果たしてどっちなのだろうか……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

楓「……と、いうわけなんです。」

 

沙綾「……」

 

ゆり「……」

 

楓「……あ、あの、2人とも?」

 

ゆり「……どうしてりみが最近ああなのか、よーく分かったよ。」

 

楓「!」

 

沙綾「牛込さんがあんなこと言うのも、納得しました。」

 

楓「!!」

 

や、やっぱり、前者のほうだったか……。

 

まぁ、そりゃそうだよな。

 

山吹さんはクラスメイト、ゆりさんはお姉さんだもんな。

 

本当に謝んなきゃいけないのは牛込さんだけど、……2人にも、謝っておく必要があるな。

 

楓「……山吹さん、ゆりさん。本当に、ごめん…「どっちもどっちですね(だね)……。」……え?」

 

あ、あれ?

 

なんか、思ってたのと違う……。

 

ゆり「りみが突然膝枕させてほしいって言ったのは、空見くんを困らせることになるからりみが悪いけど……」

 

沙綾「それに対して怒るのは分かるけど、そこまで強く言う必要はありませんよね……。」

 

楓「うぐっ!」

 

沙綾「女の子にそんなひどいこと言ったら、誰だって傷つきますよ。」

 

ゆり「りみも、何で突然膝枕なんか……。私とかなら分かるけど、空見くんは男の子なのに……。」

 

楓「……」

 

沙綾「……やっぱり手っ取り早いのは、お互いが謝る、ということですよね。」

 

ゆり「そうだよね。それが一番だよ。」

 

楓「で、でも、僕…「前に謝ろうとしたら逃げられた、ですよね?」! な、何で知ってるの!?」

 

沙綾「あのとき見てましたから。(偶然通りかかっただけだけど。)」

 

楓「見てたの!?」

 

マジか。

 

全然気づかなかった……。

 

ゆり「なるほどねー。逃げられる、か。」

 

楓「は、はい。……たぶん牛込さん、僕と話したくないんですよね……。次会っても、またすぐ逃げられるだろうし……。もう、どうすればいいか……。」

 

ゆり「うーん……。……よし!じゃあ、私に任せて!」

 

楓「え?」

 

沙綾「何か、考えがあるんですか?」

 

ゆり「ううん、これから考えるの。空見くん。私が、りみと謝る機会を作ってあげるよ!」

 

楓「ゆりさん……。」

 

ゆり「大丈夫!先輩を信じて!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー翌日ー

 

楓「おぉ~……。」

 

燐子「ここ、たまに1人で来るんですけど、……雰囲気も良くて……お気に入りの……場所なんです。」

 

放課後、僕と白金さんは地域の図書館に来ていた。

 

目的は、昨日のくじ引きで“恋愛”のジャンルの本を紹介することになり、その本を何にするか決めるためだ。

 

学校の図書館でもいいんじゃないかと提案したのだが、白金さん曰く、ここのほうが本の種類が多いから、とのことだ。

 

燐子「えーっと、“恋愛”のジャンルの本がある場所は……」キョロキョロ

 

楓「……あ、このフロアにあるみたいだよ。」

 

燐子「! ほんとだ。空見さん、ありがとうございます。」

 

楓「いやいや。」

 

燐子「それでは、行きましょう。」

 

楓「うん。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

楓「お、おぉ~……。」

 

燐子「い、いっぱい、ありますね……。」

 

これ全部、恋愛系の本なのか……。

 

予想はしてたけど、まさかそれ以上とは……。

 

燐子「……」ブルブルブル

 

楓「? どうしたの?白金さん。大丈夫。」

 

燐子「は、はい。……ただ、その……」

 

楓「?」

 

燐子「こういうコーナーに来たの、……私、初めてなので……。緊張……しちゃって……。」

 

楓「あ。……な、なるほど……。」

 

確かに、分かるかも……。

 

普通はこんなコーナー見ないから、通りすがったりしても何も思わないけど、いざこうやって目の前に立ってみると……。

 

……これは、緊張するわ……。

 

特に、恋愛に無縁な僕はね……。

 

燐子「ど、どれから見ればいいのか……分からない……。」

 

さて、これは困ったぞ。

 

こんなに大量の本の中から、1冊だけ紹介する用の本を選ばなくてはならない。

 

……鬼畜じゃん。

 

燐子「えーっと、えーっと~……」

 

白金さん、頭混乱しすぎて目回しちゃってるよ……。

 

うぅ、僕もめまい起きそう……。

 

恋愛小説、恐るべし……。

 

 

 

 

 

???「……あら?あなた達……。」

 

 

 

 

 

楓・燐「!?」

 

そ、その声は……、まさか……!クルッ

 

楓・燐「ひ、氷川さん!」

 

紗夜「! な、何ですか?突然大きな声出して。そもそも、ここは図書館なので、大きな声は厳禁ですよ?」

 

楓・燐「! す、すみません……。」

 

紗夜「はぁ、まぁいいですけど。……それで、あなた達はどうしてここに?」

 

燐子「じ、実は……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紗夜「……なるほど。図書委員の企画で、本の紹介を……」

 

燐子「私達、……こんなに、“恋愛”のジャンルの本があるの……知らなくて……。」

 

楓「どの本を選べばいいのか分からなくて、困ってたんです……。」

 

紗夜「そういうことでしたか。……分かりました。」

 

楓・燐「え?」

 

分かったって、何が……。

 

紗夜「あなた達、それぞれ好きなものは何ですか?」

 

楓「え?」

 

燐子「好きなもの……ですか?」

 

紗夜「ええ。何でも構いませんので、1つ挙げてみてください。」

 

突然、好きなものって……。

 

氷川さん、何を考えてるんだ?

 

燐子「……わ、私は、……え、NFOが、好き……です。」

 

楓「……え、エヌ、エフ……、何?」

 

燐子「NFO……です。」

 

NFO……。

 

聞いたことあるような、ないような……。

 

紗夜「続いて、空見さん。」

 

楓「え!?ちょ、待ってください!まだ何も考えが…「ゆっくり考えて大丈夫ですよ。」え?あ、……そう、ですか。」

 

じゃあ、お言葉に甘えてゆっくり考えよう。

 

とは言っても、ゆっくりすぎない程度に。

 

うーん、好きなもの……、好きなものか……。

 

いろいろあるけど、迷うなぁ。

 

紗・燐「……」

 

ゲームも好きだし、本を読むのも好きだしなぁ。

 

食べ物でいうとペペロンチーノ、チーズケーキ、ポテトサラダ……。

 

他にもいろいろあるけど。

 

紗・燐「……」

 

……うん。

 

やっぱり胸張ってこれが一番好きって言えるのは、あれしかないな。

 

楓「思いつきました。」

 

紗夜「では、教えていただけますか?空見さんの好きなものを。」

 

楓「はい。僕の好きなものは……

 

 

 

 

 

……猫です!」

 

紗・燐「……え?」

 

楓「いろいろ迷ったんですけど、やっぱり自分で胸張ってこれが一番好きって言えるのは、猫だなと思ったので。」

 

紗夜「……ね、猫、ですか……。」

 

楓「はい!」

 

燐子「こんな偶然って……あるんですね。」

 

楓「? 何のこと?」

 

燐子「! い、いえ、何でも……ありません。」

 

紗夜「こほんっ!と、とにかく、これで2人の好きなものは分かりました。後は私に任せてください。」

 

楓「は、はぁ……。」  

 

? 猫が一番好きって、なんか変だったかな?

 

でも、それは紛れもない事実なんだし、別に何もおかしくないよな。

 

しかし、後は任せてって……。

 

氷川さん、どうするつもりなんだろう?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

楓「ありがとうございます。……タッタッタ」

 

燐子「……「お待たせー。」! い、いえ、大丈夫です。」

 

紗夜「私が薦めておいて言うのも難なんですが、ほんとにそんなに借りて大丈夫なんですか?」

 

楓「はい。」

 

燐子「氷川さんが、私達のために……探してくれた本なので、……読めるものは、全部……読んでおきたくて。」

 

紗夜「……ふふ、そうですか。返却期限を過ぎないように、気をつけてくださいね。」

 

燐子「は、はい。」

 

僕達が借りたのは、それぞれ“猫”と“ゲーム”が好きな主人公が出てくる本だ。

 

さっき氷川さんが僕達に好きなものを聞いたのは、“自分の好きなもの”がテーマになっている作品なら気軽に読めるのではないか、と考えたからだそうだ。

 

氷川さんはそれを提案してくれたうえに、それに当てはまる本を何冊か探し出してくれた。

 

僕と白金さんは、その中から気になる本を3~5冊ぐらい借りることにした。

 

そうして今に至るというわけだ。

 

紗夜「それでは、私はこれで……。」

 

燐子「え、……もう、行くんですか?」

 

紗夜「私にも、探している本があるので。」

 

楓「! じゃあ、僕も手伝いますよ。」

 

燐子「わ、私も、手伝います!」

 

紗夜「ありがとうございます。ですが、私は1人で大丈夫ですので。お気持ちだけ受け取っておきますね。」

 

楓「……そう、ですか。」

 

紗夜「本の紹介文、頑張ってください。応援してますよ。」

 

スタスタスタ……

 

燐子「行ってしまい……ましたね。」

 

楓「うん……。」

 

氷川さんも、何か本を探しているのか。

 

本当ならこれを見つけてくれたお礼に手伝いたかったけど、あんなこと言われちゃったらなー。

 

……ま、氷川さんには氷川さんの事情があるってことか。

 

楓「僕達も行こっか、白金さん。」

 

燐子「! は、はい。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

白金さんとは、図書館の前で別れた。

 

この後バンドの練習があるらしい。

 

バンド……。

 

確か“Roselia”、だっけ。

 

……あれ?

 

そういや、氷川さんも“Roselia”じゃなかったっけ?

 

後から氷川さんも行くのかな?

 

……プルルルルル、プルルルルル……

 

ん?電話?

 

……え!?

 

なんと、携帯の画面に表示されていた名前は……。

 

 

 

 

 

『松原さん』

 

楓「ま、松原さん!?」

 

ど、どうして松原さんが……。

 

いやまぁ、電話がかかってくること自体は変じゃないんだけど……。

 

……僕、あのときから松原さんとしゃべってないからさ。(31話参照)

 

なんか、その、……ちょっと、気まずい、んだよね……。

 

プルルルルル、プルルルルル……

 

……かと言って、出ないわけにもいかないし……。

 

うーん……。

 

プルルルルル、プルルルルル、プルルルルル……

 

楓「……」

 

プルルルルル、プルルルルル、プルル…ピッ

 

楓「……も、もしもし。」

 

花音『あ、もしもし空見くん?良かったぁ、繋がって。』

 

楓「な、なんか、ごめん……。」

 

花音『ううん、大丈夫だよ。』

 

松原さんの声、久しぶりに聞いた……。

 

楓「あ、あの、先生から、風邪ひいたって聞いたけど……」

 

花音『あぁ、うん。でも、大丈夫だよ。今はもう、すっかり治ったから。もうすぐ、学校にも復帰していいだろうって、千聖ちゃんも言ってくれたし。』

 

楓「そう、なんだ。」

 

花音『……ねぇ、空見くん。』

 

楓「ん?」

 

花音『私の思い違いならいいんだけど、……空見くん、ちょっと変じゃない?』

 

楓「え!?」

 

花音『なんか、前の空見くんより、若干元気がないっていうか……』

 

楓「だ、大丈夫だよ。僕はいつも通り、元気だよ。」

 

花音『……そう?』

 

楓「そうそう!元気元気。」

 

花音『……嘘。』

 

楓「へ?」

 

花音『やっぱり変だよ、空見くん。』

 

楓「……べ、別に僕は、何も…『丁度よかったよ。』え?……丁度よかったって、何が……」

 

花音『ねぇ空見くん。』

 

楓「! は、はい。」

 

花音『今からさ、少し話さない?……実際に会ってさ。』

 

楓「え、……え?ど、どういう、こと?」

 

花音『言葉通りの意味だよ。商店街を出たところの近くにある公園分かるよね?私が、その、……空見くんに、……ひ、膝枕、したとこ///……』

 

楓「! わ、分かる!あの公園だよね!?うん、分かるよ!」

 

花音『……ふふ、少し落ち着いて。』

 

楓「……ご、ごめん……。」

 

確かに今の僕、ちょっと変かも……。

 

花音『今から5分後に、その公園で待ち合わせ。……いいかな?』

 

楓「う、うん。全然、大丈夫……。」

 

花音『えへへ、ありがと。……じゃあ、後でね。』

 

楓「うん、あ、後で……。」

 

……ピッ

 

……はぁ。

 

……なんだろう。

 

久しぶりに話したからか、すごい緊張した……。

 

しゃべってるとき体震えてたし、それ以前にまともにしゃべれてなかったし……。

 

……先が思いやられる……。

 

……行くか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~5分後~

 

ー公園ー

 

つ、着いた……。

 

……だ、誰も、いないな……。

 

……松原さん、ほんとに来るのかな?

 

……何で僕、こんなに緊張してるんだろう……。

 

ただ久しぶりに、松原さんと会って話すだけなのに……。

 

……。

 

 

 

 

 

???「久しぶりだね、空見くん。」

 

 

 

 

 

楓「!」

 

き、来た……!クル

 

花音「?」

 

ま、松原さん……。

 

楓「う、うん、久しぶり……。」

 

花音「……」

 

楓「……」

 

花音「……と、とりあえず、座ろっか。」

 

楓「そ、そうだね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

花音「……」

 

楓「……」

 

ベンチに座ったはいいが、……さっきからお互い何も話さず、黙ったままだ。

 

僕が自分から話しかければいいだけのことなのだが、それはちょっと、なんか……、……に、苦手、っていうか、なんというか……。

 

花音「……千聖ちゃんから聞いたよ?」

 

楓「!」

 

よ、よかった……。

 

向こうから話しかけてくれた……。

 

花音「仲直り、できたんだって?」

 

楓「……う、うん、まぁね。」

 

花音「……」

 

楓「……」

 

花音「……そ、そうだ。ねぇ、最近練習どう?上手くいってる?」

 

楓「え?あー、うん、まぁね。……僕に関しては、最近は白鷺さんのスパルタ指導を受けてるだけだけど。」

 

花音「あ……、そういえば千聖ちゃん言ってたっけ。」

 

楓「これが思った以上にキツくてね……。」

 

花音「そうなんだ。」

 

楓「うん、流石白鷺さんだよ……。」

 

花音「……」

 

楓「……」

 

花音「……やっぱり空見くん、変だよ。」

 

楓「え?」

 

花音「実際に会って、確信したよ。」

 

楓「ちょ、え?い、いきなり、何を…「空見くん。」!」

 

花音「私の目を見て。」

 

楓「……え?ま、松原さん?」

 

花音「いいから、言う通りにして。」

 

楓「! ……は、はい。」

 

花音「私の目をじっと見て。」

 

楓「……」

 

花音「そう、そのまままっすぐ……。」

 

楓「……///」

 

ま、松原さん……?

 

い、いきなり、どうしちゃったの……?

 

花音「……」ジー

 

か、顔が、近い///……。

 

花音「……もしかして空見くん、……あのときのこと、引きずってる?」

 

楓「!?」

 

花音「その反応は、図星だね。」

 

楓「あ、あのときのことって…「とぼけないで。」……」

 

花音「自分でも分かってるんでしょ?」

 

楓「……」

 

花音「……確かにこうして空見くんと会うのはあの日以来だから、ちょっと気まずいのは分かるよ。でも、……そのことをいつまでも引きずってたら、話せるものも話せないよ。私、空見くんと話したいこと、いっぱいあるんだよ?」

 

楓「……」

 

花音「! またそうやって目をそらす!空見くん、話してるときはちゃんと私の目を見てよ。前はこうやって話してるとき、ちゃんと目と目を見ながら話をしてくれてたじゃん。」

 

楓「……」

 

花音「……ねぇ、空見くん?」

 

楓「……」

 

どうしよう……。

 

まともに松原さんの顔、見れない……。

 

なぜかすごく緊張して、体も震えてるし……。

 

ほんと僕、どうしちゃったんだろう……。

 

花音「……」

 

 

 

 

 

ギュッ!

 

……え?

 

花音「……」

 

楓「……」

 

……へ?

 

え?ちょ、……え?

 

……え!?

 

……//////!!

えええええええ/////!!??

 

楓「ちょ、ちょちょ、ちょ、ちょっと///!?ま、ま、まつ、ま、松原さん///!?」

 

花音「……」

 

楓「ちょっと!?何か言ってよ松原さん!!ねぇ!今僕、何で松原さんに、その、……だ、だ、だき、……だ、抱きしめられて…「静かに。」……あ、はい。」

 

花音「そのまま静かに、呼吸を整えて。」

 

……こ、呼吸を……。

 

花音「何も考えずに、気持ちを落ち着かせて。」

 

何も考えずに、気持ちを落ち着かせる……。

 

って無理があるだろ!!

 

こんな状態で、気持ちなんか落ち着かせられるわけが…「空見くん。」え?

 

花音「いろいろ抱えてるものがあるんだよね。私には分かるよ。」

 

楓「! ……」

 

花音「千聖ちゃんと、みんなと仲直りできたからって、全てが解決したわけじゃない。そうだよね?」

 

楓「……う、うん。」

 

花音「しかも、そこにまた新たな問題が乗っかってきた。」

 

楓「……うん。」

 

花音「……悩みが、あるんだよね?」

 

楓「……うん……!」

 

 

 

 

 

花音『約束して、空見くん。これからは、悩みができたら1人で抱え込んだりしないで、すぐさっき私が挙げた友達に相談すること。』

 

 

 

 

 

花音『……約束、してくれる?』

 

 

 

 

 

……言うんだ。

 

今度はちゃんと、自分から……!

 

楓「……ま、松原さん!」

 

花音「……」

 

楓「……また、……そ、相談に、のってほしい、んだけど……」

 

花音「……」

 

楓「ご、ごめん!あの、僕、馬鹿だし、世間知らずだから、人に教えてもらったり助けてもらったりしないと、1人じゃ何にもできないことが多くて……」

 

花音「……」

 

楓「だから、その、……これからも、頼ってばかりになっちゃうと思う……。で、でも!分からないことやできないことがあっても、自分1人で解決することができるように頑張るから!人に頼ってばかりにならないように頑張るから!だから…「分かった。」……へ?」

 

花音「分かったよ。……今の話で、ちゃんと知ることができた。今まで抱えてた、空見くんの気持ち。」

 

楓「……」

 

花音「どんどん頼ってよ、空見くん。できないことや分からないことがあったら、私達で、ううん、みんなで乗り越えていこう。」

 

楓「……松原、さん……。」

 

花音「私も千聖ちゃんも、彩ちゃんや紗夜ちゃん、燐子ちゃんも、みーんな、空見くんの味方だよ。」

 

楓「……うん、……うん!」

 

花音「もう、泣かないでよ空見くん。」サスサス

 

楓「だ、だって~……」

 

花音「(……戻った。やっといつもの空見くんに、戻ってくれた。)」

 

楓「うぅ、くそ~、泣き止めよ……。早く僕、泣き止めよ~……。」

 

花音「……空見くん。」

 

楓「……な、何?」

 

花音「今度はちゃんと、自分から言えたね。」

 

楓「……うん。……ありがとう、松原さん。」

 

花音「……ううん。……こちらこそ、ありがとうだよ。ボソッ」

 

楓「え?……今、何か言った?」

 

花音「ううん、何も言ってないよ。」

 

楓「……そう?」

 

花音「うん♪……それじゃあ今度は、“今”抱えてる悩みを、教えてもらおうかな。」

 

楓「あ、……うん。実は……」

 

 

 

 

 

花音「(これからは私が、……ううん、“私達”が、空見くんの支えになるんだ……!)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー翌日ー

 

美菜「よーし!みんなやるよー!」

 

橋山「張り切ってんねー浅井。」

 

音羽「まさか、体育館を貸しきって練習することになるとは。」

 

美菜「気合い入るよね!ね!白鷺さん!」

 

千聖「え、ええ、そうね。(顔が近い……。)」

 

美菜「最初で最後かと思われるこの体育館練習!みんなー!今日は本番のつもりで、いくよー!」

 

『オー!!』

 

千聖「……みんな、気合い入ってるわね。」

 

楓「そうだね。これは、僕も負けてられないなー。」

 

千聖「楓もやる気ね。今日のあなた、一段と頼もしく見えるわよ。」

 

楓「え、そう?」

 

千聖「ええ。何があったのかは知らないけど、やる気があるのはいいことよ。」

 

なんて、実は花音から事のいきさつを全部聞いているから、何があったのかは全て知っているのだけれど。

 

美菜「よーし、それじゃあさっそく始めるよー!みんな、定位置に立ってー。」

 

楓「よし、行く…「楓。」?」

 

千聖「……今までの練習のせいかを、私に見せてちょうだい。」

 

楓「……はい!」

 

千聖「……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~昨日の夜~

 

千聖「え?楓を?」

 

花音『うん。千聖ちゃんにも、お願いできないかな?』

 

千聖「……あなたまさか、知り合い全員にその提案を伝えているの?」

 

花音『うん、そのつもり。まだ千聖ちゃんにしか伝えてないけど、この後も…「ちょっと待ちなさい、花音。」ふぇ?』

 

千聖「……私も手伝うわよ。」

 

花音『! い、いいよ、これは私の…「楓はあなただけの友達じゃない。」!』

 

千聖「花音、あなたのその提案には賛成よ。だからこそ、私も手伝いたいの。……いいかしら?」

 

花音『……うん、分かった。じゃあ、お願いしようかな♪』

 

千聖「ええ、喜んで。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

花音の提案は、……”私達が、楓の支えになること“。

 

話は全て、昨日の花音との電話で把握した。

 

それを聞いて私は、二つ返事でその提案にのった。

 

……楓は、私達の大切な友達。

 

それを気づかせてくれた楓に、私ができること。

 

……そばで見守り、支えになってあげること。

 

楓「白鷺さん?どうしたの?」

 

千聖「……いえ、何でもないわ。」

 

音羽「……白鷺さん、笑ってます?」

 

千聖「気のせいよ。……さぁ、始めましょ、美菜ちゃん。」

 

美菜「OK!空見も、準備OK?」

 

楓「いいよ、大丈夫。」

 

美菜「よーし!それじゃあ、練習……、始め!」

 

 

 

 

 

まさか、今更気づくなんてね。

 

楓を好きなのは、花音だけじゃない。

 

 

 

 

 

……私も、いつの間にか楓を好きになっていた。

 

……なんて、花音に言ったら怒るかしら?




次回で40話か。

……長かったw。

てか浴衣花音ちゃんはいつ来るの!?

来たらすぐに、コツコツ溜め続けたスター10000個を一気にぶっ放す!


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40話 こんな時間まで学校に残ったの初めて

お待たせしました!

記念すべき、40話です!

……更新遅すぎて年内に1期編終わんのか心配になってきた……。

これぐらいの超激遅更新ペースが今後も続くと思いますが、どうか温かく見守ってくださると嬉しいです。

……なんか対策考えよっかな?


楓「いってきまーす!」

 

楓の母「い、いってらっしゃーい……。」

 

翔真「珍しいね、楓が俺より先に出るなんて。」

 

楓の母「そ、そうね……。」

 

 

 

 

 

僕は今、学校に向かっている。

 

しかも走って。

 

……正直眠いし、走ると疲れるから歩きたいし、もっとのんびり学校行きたい……。

 

だが、今の僕には、“のんびり”という言葉は許されないんだ。

 

なぜなら……。

 

 

 

 

 

『楓へ

 

 今すぐ学校に来なさい。

 

 あなたの驚くことが待ってるわよ。』

 

 

 

 

 

というメールが、さっき白鷺さんから届いたからだ。

 

僕は無視して二度寝しようと思ったんだけど、……その後すぐかかってきた電話で一気に目が覚めたよね……。

 

ほんとあの人、エスパーかなんかなの?

 

あの人を怒らせるとマジで怖いから、まぁそのことを知ってる僕は急いで飛び起きて支度して歯磨いて家を出たよね。

 

……走りたくねぇ……。

 

けど怒らせると怖いから行かなきゃ……。

 

……まさか、白鷺さんに怯えながら登校する日が来るとはね。

 

夢にも思わなかったわ……。

 

ピロリン♪

 

ん?

 

またメール……。

 

げっ! 

 

 

 

 

 

『無駄なこと考える暇があるなら急いで来なさい!!』

 

 

 

 

 

もうーーーーー!!!!

 

ほんと何なんだよあの人はあああああ!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-学校-

 

はぁ、はぁ、はぁ……。

 

もう、……い、一生分の体力を、はぁ、はぁ、……つ、使った気が、……す、する……。

 

ま、マジで、……し、死ぬ……。

 

……や、やっと着いた……。

 

教室までの道のり……、はぁ、はぁ、……な、長かったなー……。

 

……ガラガラガラ

 

美菜「! 空見!」

 

橋山「早かったねー来るの!」

 

楓「お、おはよう……。」  

 

はぁ、はぁ、……え、えっと、白鷺さんは、どこに…「お疲れ様、空見くん。」「あ、し、白鷺さん……。あ、ありがと……え?」……ん? 

 

空見……“くん”?

 

……丸山さん?

 

は、このクラスじゃないし……。

 

クラスの人?

 

……は、橋山さんと浅井さんと宮村さん以外親しくないし……。

 

……じゃあ、いったい……。

 

千聖「楓、顔上げてみて。」

 

楓「か、顔を?」

 

……言われた通り、手を差し出されたほうにゆっくり顔を向ける。

 

ゆっくり、ゆっくり……。

 

楓「……、……、……!!」

 

 

 

 

 

花音「空見くん、久しぶり。……でも、ないか。」

 

 

 

 

 

楓「ま、まま、……松原さん!?な、何で!?」

 

千聖「何でって、学校に来たからに決まってるでしょ?」

 

楓「え……、が、学校に……?」

 

花音「昨日、お母さんが明日には学校に行っていいだろうって言ってくれてね。張り切って、いつもより早く学校に来ちゃったんだ。」

 

楓「……」

 

千聖「私達が学校に来たときに、花音が提案したのよ。楓をびっくりさせたいって。」

 

楓「ま、松原さんが、僕を……」

 

花音「……迷惑、だったかな?」

 

楓「! ぜ、全然全然!あ、えっと、……その……」

 

花音「? 空見くん?」

 

千聖「……」

 

楓「……が、学校での松原さんとは、久しぶり、だね。」

 

花音「……うん!」

 

白鷺さんがメールで言ってた“驚くこと”とは、松原さんが学校に来たことだった。

 

他の人からしたら普通のことなんだろうけど、……確かに、驚いたわ。

 

松原さん、祝学校復帰、って感じか。

 

って、それは流石に大袈裟か。

 

花音「空見くん。」

 

楓「え?」

 

花音「練習、頑張ろうね!」

 

楓「……うん、そうだね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~昼休み~

 

-中庭-

 

彩「花音ちゃ~ん!」ガバッ!

 

花音「わっ!あ、彩ちゃん!?」

 

彩「うぅ、花音ちゃ~ん!花音ちゃんがいない間、寂しかったよ~!」

 

千聖「ちょっと大袈裟じゃないの?彩ちゃん。」

 

彩「そんなことないよ!千聖ちゃんだって、花音がいなくて憂鬱だわ~って言って、落ち込んでたじゃん。」

 

千聖「なっ///!そ、そういう彩ちゃんだって、そんな寂しそうな素振り見せてなかったじゃない!」

 

彩「みんなの知らないところで寂しそうって思ってたもん!」

 

花音「2人とも、喧嘩はダメだよ~!」

 

アーダコーダアーダコーダ

 

紗夜「……はぁ、全くこの2人は……」

 

燐子「こ、こういうのも、……なんか、久しぶり……ですね。」

 

楓「そう、だね……。」

 

最近は実行委員の集まりで松原さんがいないことも多かったし、この6人で集まっての昼ごはんはより久しぶりだよな。

 

あむっ。

 

お、このオムレツ美味しい。

 

花音「あ、そういえば……」

 

千聖「? どうしたの?花音。」

 

花音「ごめんね、千聖ちゃん。私が休んでる間、副実行委員の仕事、千聖ちゃんに任せっきりで。」

 

千聖「ふふ、いいのよ、そんなことで謝らなくても。私がやりたくてやったのだし、楓も手伝ってくれたし。」

 

花音「えっ、空見くんも?」

 

楓「う、うん。」

 

千聖「楓がいることで、とても仕事がはかどったのよ。やってと言って頼んだものは全部やってくれたし、私が言わなくてもその都度必要なものを用意してくれたりね。」

 

花・彩「え……?」

 

紗・燐「……」

 

千聖「ほんと、楓はよく手伝ってくれたわ。ほんとにありがとうね、楓。」

 

楓「は、はぁ……。」

 

彩「(それは、ただの使い走りっていうんじゃ……。)」

 

紗夜「(相変わらず空見さん、いいように使われていますね……。)」

 

燐子「(これも、仲の良い証拠……なのかな……?)」

 

花音「……く、苦労してたんだね、空見くん……。」

 

楓「まぁね……。」

 

白鷺さんのいいように使われるのはもう慣れっこだけど(そもそもそうなるのがもうおかしい)……、そろそろ限度ってものを考えてほしい……。

 

ほんとあのときは動きすぎて死ぬかと思ったもん……。

 

千聖「? みんな、突然黙ってどうしたの?お昼、早く食べないと終わっちゃうわよ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~放課後~

 

-2-A教室-

 

美菜「よーし!やるぞー!」

 

クラスのみんな「オー!!」

 

 

 

 

 

花音「美菜ちゃん、張り切ってるね。」

 

楓「まぁ、明日が本番だからね。」

 

花音「そうなんだよね。……私、気づかなくて、朝空見くんに、満面の笑みで練習頑張ろうって言っちゃった……。」

 

楓「だ、大丈夫だよ!そんなの僕、気にしてないし。それに、ほら、最後の練習とはいっても、頑張ろうっていうのには変わりないし……」

 

千聖「そうよ花音。」

 

楓「!」

 

花音「千聖ちゃん……。」

 

千聖「明日は本番。そして、本番前の練習は、今日が最後。この意味が分かる?花音。」

 

花音「……う、うん。」

 

千聖「……練習は本番のように、本番は練習のように。」

 

楓「?」

 

花音「! それは、紗夜ちゃんの……」

 

千聖「そう、紗夜ちゃんがいつも言っている言葉よ。」

 

 

 

 

 

-2-B教室-

 

紗夜「くしゅんっ!」

 

燐子「氷川さん、風邪……ですか?」

 

紗夜「い、いえ、そういうわけじゃ、ないと思うけれど……」

 

彩「体調管理には気を付けてね。明日は文化祭本番なんだから。」

 

紗・燐「……」

 

彩「? どうしたの?え、私、何か変なこと言った?」

 

燐子「い、いえ……」

 

紗夜「まさか、丸山さんからそのような心配をされるとは、思いませんでした……。」

 

彩「ちょっと!それどういう意味!?」

 

紗夜「でも、……そうですね。気を付けます。」

 

 

 

 

 

-再び2-A教室-

 

千聖「今の状況が、ぴったりこの言葉に当てはまるでしょ?」

 

花音「……あ。」

 

千聖「今日の練習は、本番のように緊張感を高めて演技をする。明日の本番では、練習のように少し気持ちを軽くして演技をする。……今まであなたは、疲れが溜まって体調を崩してしまうほど、1人で必死に頑張って練習してきたんでしょ?なら大丈夫よ。」

 

花音「千聖ちゃん……。」

 

楓「……僕も、さ。」

 

花音「?」

 

楓「ずっと白鷺さんに演技を指導してもらってたんだけど、ほんと、キツくてさ。全然上手くいかなくて、心が折れそうになることもあったけど、でも、……なんとか、ここまで頑張ってきたんだ。自分で言うのも何だけど……。」

 

花音「……」

 

千聖「……」

 

楓「たぶん、僕がこうして頑張ってこれたのは、……ずっと付きっきりで指導してくれた、白鷺さんと、……僕に元気をくれた、松原さんのおかげなんだよ。」

 

花音「……」

 

楓「あのとき悩みを聞いてもらって、アドバイスをくれて、応援してくれて。……あのことがあったから、ここまで頑張ってこれた。白鷺さんのキツい指導についていくことができたんだ。」

 

花音「……空見くん……。」

 

千聖「……確かにあなたの演技は、最初の頃と比べたら格段に良くなったわ。正直、私の想像以上だった。」

 

楓「白鷺さん……。」

 

千聖「今のあなた達なら、きっと大丈夫。明日の本番も、絶対成功するわ。私はそう信じてる。」

 

楓・花「白鷺さん(千聖ちゃん)……。」

 

千聖「……なんて、少し、気恥ずかしいわね///。」

 

花音「ううん、全然そんなことないよ。」

 

楓「白鷺さんの言葉を聞いて、ますますやる気がでてきたよ。」

 

千聖「……ふふ。成長したわね、楓。」ボソッ

 

楓「え?」

 

美菜「さー松原さん!白鷺さん!空見!練習始めるから、そろそろ位置についてー!」

 

花音「あ、はーい!」

 

千聖「それじゃあいくわよ、2人とも。」

 

楓「はい!」

 

花音「本番前最後の練習、気合い入れていこう!」

 

楓・花・千「オー!!」

 

……さっき白鷺さん、何か言った?

 

よく聞こえなかったんだけど……。

 

花音「空見くーん、早く位置についてー。」

 

楓「あ、うん!」

 

……まぁいっか。

 

……よし!

 

最後の練習、頑張るか!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

楓「……」

 

花音「……」

 

千聖「……」

 

美菜「カーット!」パンッ!

 

橋山「……い……」

 

音羽「い?」

 

橋山「いいじゃんいいじゃん!最高だったよ2人とも!」

 

花音「そ、そう、かな?」

 

千聖「橋山ちゃんの言う通りよ。あなた、あの後も私に黙ってこっそり練習していたでしょ。」

 

花音「えへへ……。」

 

千聖「もう、花音ったら。」

 

楓「つ、疲れた~。ドサッ」

 

さっき白鷺さんが言ってたことを参考にしてやってみたけど、なかなか、難しいもんだなぁ。

 

千聖「はい、楓。」

 

楓「あ、……ありがとう。……ゴクゴクゴク」

 

千聖「……あなたの演技も、とても良かったわよ。」

 

楓「そう?」

 

千聖「ええ。……まぁ、私にはとうてい及ばないけれど。」

 

楓「そりゃあ、本物の女優さんなんだから、及ばないのなんて当たり前だよ。」

 

千聖「……」

 

楓「……?白鷺さん。」

 

千聖「でも、あの頃と比べたら、見違えるほど成長したわよ、あなた。」

 

楓「……」

 

千聖「本番でも、その気持ちを大切にするのよ。」

 

楓「……うん、分かってるよ。」

 

あの頃……。

 

お花見前日の、オリエンテーションのとき。

 

……別に、演技を磨くつもりはなかったけど、劇をやるって決まっちゃったから、仕方なく練習してたけど……。

 

それが、白鷺さんに褒められるまでになるとは。

 

……頑張ったな、僕。

 

音羽「リハーサルも終わったところで、いよいよ準備も大詰めですね!」

 

美菜「そうだね!よーし、ここからは作業の時間!みんな!張り切っていこー!!」

 

クラスのみんな「オー!!」

 

 

 

 

 

楓「相変わらず、テンション高いな浅井さん……。」

 

花音「なんか今の、川柳?みたいだね。」

 

千聖「2ヶ所も字余りしてるのだけれどね。」

 

花音「あはは……。厳しいね、千聖ちゃんは。」

 

楓「別に、意識したわけじゃないし……。」

 

 

 

 

 

美菜「ほらほらそこの3人組!イチャイチャしてる暇があるなら手伝う!本番は明日なんだよ!」

 

楓・花・千「い、イチャイチャなんかしてない(わ)よ!」

 

橋山「そのわりには息ぴったりだけどな……。」

 

音羽「ですね……。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~2時間後~

 

あれからずっと、僕達は劇で使う小道具やセットの準備をしていた。

 

とは言っても主に色塗りや接着作業だが、これがほんとに大変だ。

 

色塗りは慎重にやらないといけないし、接着は少しでもずれると直すのが困難だからだ。

 

なぜ接着を直すのが困難かって?

 

だって、……でけえんだもん。

 

いや、ちっちゃい小道具の接着ならいいんだよ?

 

でもセットってさ、めちゃくちゃでかいじゃん。

 

それに体育館のステージの上まで持ってかなきゃいけないから1人じゃ絶対無理だし。

 

だって重いから。

 

そんなのを接着しなきゃいけないから、とても繊細な作業が必要なわけよ。

 

……うん、準備ってマジ大変だわ。

 

千聖「花音、そっちの端、押さえててくれる?」

 

花音「うん……!」

 

千聖「楓はそっちの端ね。」

 

楓「うん。」

 

このように、接着作業は3人がかりでやっている。

 

色塗りはまだ残っている人達がやってくれている。

 

あ、ちなみに浅井さん達は先に帰った。

 

というより、白鷺さんが帰らせた。

 

白鷺さん曰く、浅井さんは実行委員なんだから、しっかり体を休めろとのこと。

 

よって今教室に残ってるのは、僕と白鷺さんと松原さん、それといっしょに手伝ってくれてる人数名(3、4人くらい)だ。

 

……と、思ったのだが。

 

生徒A「あの、白鷺さん。」

 

千聖「? 何?どうしたの?」

 

生徒A「私、もう帰らなくちゃいけない時間になっちゃって……」

 

生徒B「実は、私も……」

 

生徒C「あたしも……」

 

生徒D「私も、そろそろ帰らなきゃ……」

 

……マジか。

 

いっしょに手伝ってくれてた人達が、一気に4人いなくなるとなると……、あとは3人で、準備を終わらせなければならない。

 

……白鷺さんは、何て言うんだろう……。

 

千聖「……」

 

花音「千聖ちゃん……。」

 

千聖「……そう、分かったわ。」

 

生徒A「……ご、ごめ…「安心して。」え?」

 

千聖「私はあなた達のことを、そんなふうには思ってないわ。今までだって、あなた達4人で協力しながら準備を手伝ってくれていたでしょ?」

 

生徒B「! ……み、見てたの?」

 

生徒C「私達、結構隅の方にいるグループだから、てっきり気づかれてないのかと……」

 

生徒D「うん……。」

 

千聖「そんなわけないじゃない。あなた達も含めて、2-Aなんだから。ね?」

 

花音「そうだよ。みんな同じ、このクラスの仲間だよ。」

 

生徒A「松原さん、白鷺さん……。」

 

生徒B「あ、ありがとう……。」

 

生徒C「それじゃあ、……私達、行くね。」

 

生徒D「ほんと、ごめん。」

 

千聖「いいのよ。後のことは、私達に任せて。」

 

花音「じゃーね、みんな。気をつけて帰ってね。」

 

生徒A・B・C・D「……ペコリ」

 

スタスタスタスタ……

 

花音「……3人に、なっちゃったね。」

 

千聖「ええ。……ここから、もうちょっとペースを早めるわよ。いい?花音。」

 

花音「が、頑張る!」

 

楓「……」

 

千聖「……楓、いつまでそこでぼうっとしてるの?」

 

楓「……え?」

 

花音「千聖ちゃんが、ペースを早めるって。」

 

千聖「それとも、楓ももう帰りたくなった?」

 

楓「え?……い、いや、そういうわけじゃ……」

 

千聖「ならそんなとこにいないでこっちに来なさい。」

 

楓「……う、うん、分かった。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~さらに1時間後~

 

千聖「楓、慎重に。慎重にいくのよ?」

 

楓「わ、分かってるよ……。」

 

花音「頑張って!2人とも!」

 

……ペタッ

 

千聖「よし!いったわね。」

 

楓「あとは、こことここをくっつければ……」

 

花音「……あの、ちょっといい?」

 

楓「?」

 

千聖「どうしたの?花音。」

 

花音「その作業、……私も、いっしょにいい?」

 

千聖「別に構わないけど……。でも、これだけよ?」

 

花音「うん、それでいいんだ。」

 

楓「どういうこと?」

 

花音「……それをくっつけたら、文化祭の準備は、一通り終わりでしょ?」

 

千聖「ええ、そうね。」

 

花音「だから、その、……終わりの接着作業は、私達3人でやりたいなって……」

 

楓「!」

 

花音「ダメ、かな?」

 

千聖「……なるほど。あなたらしい考えね。」

 

花音「! じゃあ……」

 

千聖「ええ、やりましょ。最後は3人で。楓もいいでしょ?」

 

楓「うん、もちろん。」

 

花音「えへへ♪ありがとう、千聖ちゃん♪空見くん♪」

 

千聖「それじゃあ花音は、この真ん中の部分を持ってくれる?」

 

花音「うん!」

 

文化祭準備の終わりを、この3人でか。

 

……なんか寂しい気もするけど、ま、これはこれでいっか。

 

花音「これで3人、みんな持ったね。」

 

楓・千「うん(ええ)。」

 

花音「それじゃあ、……いくよ!」

 

楓・花・千「せーの……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

楓「うわっ、暗いな~。」

 

千聖「もう8時近いもの。当然よ。」

 

花音「一応お母さんに連絡はしたけど……、なんか、悪いなぁ。」

 

千聖「花音なんて可愛いものよ。私なんか、仕事がある日は11時を過ぎちゃう場合もあるのよ。」

 

花音「そ、そうだよね……。」

 

じゅ、11時……。

 

流石、女優……。

 

花音「あ、でも今日は千聖ちゃん、お仕事ないんだよね?」

 

千聖「ええ、ないわよ。だからさっき言ったんじゃない。いっしょに帰りましょうって。」

 

花音「……うん、そうだったね。えへへ♪」

 

さっき白鷺さんも言った通り、現在の時刻は7:48と8時近い。

 

外も暗く、白鷺さん曰く、

 

 

 

 

 

千聖『こんな暗い道を花音1人で歩かせるわけにはいかないわ。』

 

 

 

 

 

とのことだったので、こうして3人で帰ることになった。

 

ん?僕?

 

……気にするな、いつものことだ。

 

千聖「どうしたの?楓。早く行くわよ。」

 

楓「あ、うん。」

 

シュワ~シュワ~コオリノダイヤニユレナガラソット♪

 

楓「ん?」

 

花音「電話……。この着信音って……」

 

千聖「私ね。」

 

楓「え!?」

 

千聖「え、って何よ。」

 

楓「い、いや、別に、何も……」

 

千聖「……花音。悪いけど、ちょっと待っててもらえるかしら?」

 

花音「うん、いいよ。」

 

千聖「ありがとう。……タッタッタ」

 

……白鷺さんの着信音が歌って、なんか意外だなー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

楓「……」

 

花音「……ねぇ、空見くん。」

 

楓「ん?何?松原さん。」

 

花音「……明日、なんだよね。……文化祭。」

 

楓「あぁ、……うん。」

 

花音「なんか、……あっという間だったな。」

 

楓「松原さんは何日か休んでたから、尚更、だよね?」

 

花音「うん……。」

 

楓「……」

 

松原さん、ほんとは、みんなといっしょに練習や準備したかったんだろうな。

 

確か白鷺さんの話だと、練習のしすぎで疲れが出て、風邪を引いたって……。

 

……僕があんな迷惑をかけなければ、松原さんは……。

 

……。

 

櫂「……あ、あの、松原さん。……ほ、本当に、ごめ…「でも、良かったな。」え?」

 

花音「この3人で、準備を終わらせることができて。」

 

楓「……」

 

花音「本当は、クラスのみんなでいっしょに終わらせることができればよかったんだけど……。そんなに上手くはいかないよね……。」

 

まぁ、用事があったり、門限があったりする人もいるからな。

 

……あれ?

 

高校生でも門限ってあるのかな?

 

……ある、よな?

 

……ないのか?

 

……知らん。

 

花音「えっと……、聞いてる?」

 

楓「! た、大丈夫!ちゃんと聞いてるよ!そうだよね、用事があったり門限があったりする人がいるから、全員でってのはなかなか難しいよね。」

 

花音「……う、うん。」

 

思ってたこと、そのまま言っちゃったけど……。

 

いいよな、別に。

 

花音「……だから、良かった。」

 

楓「……」

 

花音「そんな中、空見くん、千聖ちゃんの3人で、準備を終わらせることができたんだもん。もしかしたら千聖ちゃん、お仕事があったかもしれないのに、それもなかったし。」

 

楓「あ、そっか。」

 

花音「……明日の文化祭、みんなで楽しもうね。」

 

楓「……うん。」

 

 

 

 

 

千聖「……」

 

花音「あ!千聖ちゃん!タッタッタ」

 

千聖「……あら、花音。」

 

花音「? どうしたの?千聖ちゃん。なんか、元気がないような……」

 

千聖「そんなことないわよ。……ただ、残念なお知らせが1つあるの。」

 

楓「残念なお知らせ?」

 

千聖「……いっしょに、帰れなくなってしまったの。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

花音「……」

 

楓「……」

 

現在僕と松原さんは、2人で帰りの道を歩いていた。

 

なぜ2人なのか。

 

それは、とても単純な理由だ。

 

花音「……仕方ないよね。スタッフさんからの呼び出しなんて、無視するわけにはいかないもん。」

 

楓「そう、だね……。」

 

仕事……、なのかどうかは知らないが、急遽事務所の人に呼ばれたため、いっしょに帰ることができなくなった。

 

というのが、今2人で帰ってる理由だ。

 

楓「……すごいよね、白鷺さん。学生と仕事を両立なんて。実際、すごく大変そうだし。」

 

花音「……」

 

楓「しかも、それに加えてアイドルもやってるんでしょ?二足のわらじならぬ、三足のわらじだよね。……改めて考えると、やっぱ白鷺さんってすごい人なんだなぁ。」

 

花音「……私は、空見くんもすごいと思うんだけどなぁ。」ボソッ

 

楓「? 何か言った?松原さん。」

 

花音「ううん、何も言ってないよ。そうだよね、千聖ちゃんはすごいよね。」

 

楓「……う、うん。」

 

花音「でも、そのことは千聖ちゃんには言わないであげて?」

 

楓「え、なん…「お願い。」……わ、分かった。」

 

別に言わないし、言うつもりもないけど……。

 

松原さんに真面目な顔して言われたらそりゃあ……、ねぇ?

 

花音「……なんか、暗くなっちゃったね。……た、楽しい話、しよっか!」

 

楓「そ、そうだね。」

 

花音「え、えっと、えーっとー……」

 

楓「……そんなに、考え込まなくても、いいんじゃない?」

 

花音「ふぇ?」

 

楓「楽しい話でしょ?なら、そんな深く考えないで、頭にパッと思い浮かんだことをそのまま話せばいいと思うんだけど。」

 

花音「頭に、パッと……。」

 

楓「……って、ごめん。なんか偉そうなこと言って。……や、やっぱいいや。松原さんの話したいことを話せば…「分かった。」へ?」

 

花音「思い浮かんだよ、頭にパッと。」

 

楓「え、……マジ?」

 

花音「空見くん。」

 

楓「! な、何?」

 

花音「……文化祭、楽しみ?」

 

楓「……え?」

 

ぶ、文化祭?

 

楽しみか?

 

……それが、楽しい話……?

 

花音「ごめんね。でも、これが、空見くんに言われて一番最初に頭にパッと浮かんだことだから。どうしても、聞いておきたくて。」

 

楓「……」

 

……以前の僕なら、確実に、100%、こう言っていた。

 

 

 

 

 

『全然。』

 

 

 

 

 

……と。

 

しかし、今は違う。

 

その考えは、180度、ってわけではないけど、……まぁ、60度ぐらい、変わったかな。

 

残りの120度は、……まぁ、いろいろだ。

 

楓「……チラッ」

 

花音「……?」

 

……松原はもちろん、白鷺さん、丸山さん、そして、クラスのみんなにも、いっぱい迷惑かけた。

 

これまで文化祭というものは、準備も含めて適当にやり過ごしてしたのに、今回はそれができなかった。

 

……いや、違う。

 

やらなかったんだ。

 

僕がいつもみたいに、適当にやり過ごそうとしなかったんだ。

 

さて、それなぜか。

 

……まぁ、もう分かりきってることなんだけどね。

 

花音「空見くん、どうしたの?さっきからずっと黙って……。! 私の質問、そんなに難しか…「違うよ。ちょっと、いろいろ考え事をしてただけ。」……そう?」

 

楓「……松原さん。」

 

花音「?」

 

まさか僕が、こんな言葉を言う日が来るなんてな。

 

1週間ぐらいまでは全く思いもしなかった。

 

……こんなことを思えたのは、松原さん達のおかげ、だよな。

 

……ちなみにこれは、嘘じゃなく、本心だ。

 

……たぶんな。

 

 

 

 

 

楓「……楽しもうね、文化祭。」  

 

花音「! ……うん!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……そして、夜は明け……。

 

 

 

 

 

……ついに、その日が……。

 

 

 

 

 

……やってきた。




あ、そういえば、とうとうお気に入り登録者が300人を超えました!

いつも応援してくださってる方々、本当にありがとうございます!

こんな日本語もド下手で誤字が多くて更新するのも超超超激遅の僕なんかの小説を読んでお気に入りにしてくださってる方が300人もいるなんて、本当に嬉しい限りです!!

これからも、本小説を、よろしくお願いいたします!

……次の目標は400人かな。


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41話 文化祭を楽しもう(1年生編)

とうとう今回から、文化祭回本番です!

いやー、……何ヵ月かかったんだろうw。


【花咲川女子学園 2-A】

 

「宮村さーん、そっち持ってー。」

 

音羽「分かりましたー。」

 

 

 

 

 

「この椅子はあの教室で、あの椅子は向こうの教室ね。」

 

橋山「はいよ。」

 

 

 

 

 

「うっ、くっ、うぅ……うわぁっ!」

 

美菜「お、っと。大丈夫?」

 

「あ、ありがとう浅井さん……。」

 

美菜「1人で持つのは大変だから、いっしょに持とう。」

 

「あ、それ運ぶの?私も手伝うよ。」

 

「私も私もー。」

 

「みんな……。……ありがとう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

花音「このセリフのところは、もっと感情を強めにしたほうがいいかな?」

 

千聖「ええ、そのほうがいいかもしれないわね。逆にこっちのセリフのときは、ちょっと感情をおさえめにしたほうがいいと思うのだけれど……」

 

花音「うーん……そうだね。そのほうがいいかも。」

 

「あ、あのー、白鷺さん。」

 

千聖「? どうしたの?」

 

「わ、私……ここのセリフ、強めに言うっていうのが、ちょっと、苦手で……」

 

千聖「ここのセリフって、どこのセリフ?……なるほど、このセリフね。確かにここは重要な場面だから、ちょっと強い感じのほうがリアリティが出るわね。でも、あなたの性格上、それは少し難しいと……」

 

「はい……。すみません……。こんな、文化祭本番を前にして、こんな相談を……」

 

千聖「気にしないで。勇気を出して聞きに来てくれたこと、私は嬉しく思うわ。そうね……。劇までまだ時間はあるから、私といっしょに対策を考えましょうか。」

 

「! は、はい!あ、ありがとうございます!では、またあとで!」

 

千聖「ええ、あとでね。」

 

花音「……千聖ちゃん、優しいね。」

 

千聖「そう?別に普通よ。」

 

花音「普通、か。……ふふ、そうだよね。」

 

千聖「何よ花音。どうしたの?」

 

花音「なんでもないよ♪」

 

 

 

 

 

美菜「あ、もうこんな時間……。みんなー!そろそろ体育館に向かうよー!」

 

 

 

 

 

千聖「もうそんな時間なのね。花音、私達も行きましょ。」

 

花音「う、うん。……まだかなー?」キョロキョロ

 

千聖「間に合うように来ると言ったのに来ないあの人が悪いのよ。放っといて、先に行ってましょ?」

 

花音「……そ、そうだ…

 

 

 

 

 

「ま、松原さーーーん!!!」

 

 

 

 

 

!!」

 

千聖「……やっと来たわね。」

 

花音「空見くん!」

 

楓「はぁ、はぁ、はぁ、……つ、疲れた……。ま、間に合ったってことで、……い、いいの、かな?」

 

花音「うん!もちろん♪」

 

千聖「お疲れ様。朝早くから大変だったわね。」

 

楓「ま、まぁね……。」

 

花音「走って来て疲れてるでしょ?無理に急がないで、ゆっくり行こ?」

 

楓「う、うん……。」

 

 

 

 

 

彩「……!空見くん!千聖ちゃん!花音ちゃん!」

 

千聖「あ、彩ちゃん!?こんなところで何をしているの?……彩ちゃんのクラスの人達は、どこに……」

 

燐子「他の人達はみんな、既に体育館に向かったのですが……」

 

紗夜「どうしても空見さん達と行きたいと言うので、仕方なくここで待ってたんです……。」

 

花音「そ、そうだったんだ……。」

 

彩「えへへ……。」

 

楓「別に、先に行ってくれてもよかったのに……。」

 

彩「そんなわけにはいかないよ!せっかくの文化祭だもん!みんなで一歩を踏み出したいじゃん!」

 

千聖「一歩って……何の一歩よ。」

 

彩「もちろん、初めての文化祭への一歩だよ!」

 

花音「初めての、文化祭?……あ。」

 

燐子「な、なるほど……。」

 

紗夜「そういうことですか。」

 

千聖「こればかりは、彩ちゃんに同意見ね。」

 

楓「? え、どういうこと?」

 

彩「さ、行こ行こ!」

 

千聖「早く行かないと、開会式に遅れてしまうわ。」

 

紗夜「クラスの人達も、待たせてしまっていますしね。」

 

燐子「そ、そう……ですよね。い……急がないと。」

 

楓「……ねぇ。丸山さんの言う一歩って、いったい何の…ガシッ! え?」

 

花音「空見くん、行こう。」

 

楓「いや、でも…「そのうち分かるから。ね?」……う、うん……。」

 

ごめんね、空見くん。

 

彩ちゃんの言う一歩。

 

残念ながら、私の口からは教えられないの。

 

でも、今日の文化祭の中で、いつかきっと、分かるときがくるから。

 

だからそれまで……。

 

それまでは……。

 

 

 

 

 

……いっしょに、文化祭をとことん楽しもう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【花咲川女子学園 体育館】

 

司会者「……それではこれから、花咲川女子学園文化祭、開会式を始めます。生徒会長、ステージに登壇をお願いします。」

 

生徒会長「はい。……」

 

 

 

 

 

あ、生徒会長。

 

……そういや連絡先もらったはいいけど、登録してから何も音沙汰ないな。

 

まぁ、それが普通なんだろうけど。

 

千聖「……あの生徒会長、Glitter Greenのキーボードの人よね。」

 

楓「え!」

 

千聖「何よ。え、って。」

 

楓「い、いや……。気づいて……いたんですか?」

 

千聖「ええ。あなたとライブを見に行ったときから気づいていたわよ。」

 

ま、マジか……。

 

流石白鷺さん……。

 

 

 

 

 

生徒会長「……ただいまより、花咲川女子学園、文化祭を開始することを、ここに宣言します。」

 

ワーワー!!

 

ヒューヒュー!!

 

 

 

 

 

楓「……え、これで始まった……んですか?」

 

千聖「ええ。」

 

花音「うん!」

 

楓「……意外と、あっさりした始まり方、なんだな……。」

 

千聖「どこの文化祭も、こういう感じでしょ?」

 

楓「そう、なのかなぁ?」

 

 

 

 

 

生徒会長「皆さん、今年の文化祭も、思いっきり楽しんでください。」

 

イェーイ!!

 

タノシムゾブンカサイ!!

 

フーフー!!

 

 

 

 

 

楓「……ほんとに、始まったんだ……。」

 

と、いうわけで、とうとう花咲川女子学園の文化祭が始まった(らしい)。

 

後に松原さん達から聞いたことなのだが、開会式が始まるまでの時間に出し物の最後の確認や微調整を行い、時間になったら体育館へ集合、開会式が始まると、生徒会長がステージに上がり、文化祭開始を宣言するとその時点でもう文化祭が始まる、というのがいつもの流れらしい。

 

いやー、あまりにもあっさりした始まり方でびっくりしたよ。

 

前の学校ではあの後にステージパフォーマンスとかいろいろあって、そういうのが終わってから文化祭開始だったからさ。

 

んで、文化祭が始まったら自分の仕事が始まるまでどこかしらにこもってゲームをいじってる、というのが僕の中でのいつもの流れだったけど、……今回はそういうわけにはいかないもんな。

 

花音「空見くん、何してるの?」

 

千聖「早く来ないと置いていくわよ?」

 

おっといけね、松原さん達と回る約束をしてたんだ。

 

……僕が、他の人と文化祭を回ることになるなんて……。

 

何年ぶりだよおい……。

 

楓「ごめん、今行く。」

 

さてと。

 

……じゃあ、行きますか!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

香澄「……あ!来た!おーい!先ぱーい!」

 

千聖「そんな大げさに手振らなくても見えてるわよ。」

 

たえ「お、来ましたね、空見先輩。」

 

楓「や、やぁ、花園さん……。」

 

りみ「……」

 

花音「……りみちゃん、どうしたの?なんか、元気ない?」

 

りみ「え?あ、いや、……だ、大丈夫です。」

 

花音「そう、なの?」

 

楓「……」

 

りみ「! ……ササッ!」

 

……明らかに、避けられてる……。

 

……で、でも、これも今だけの辛抱だ。

 

平常心、平常心だ僕……!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【花咲川女子学園 1-A教室】

 

香澄「それでは改めて……」

 

1-Aのみんな「1Aカフェへ、ようこそ!!」

 

花音「か、歓迎、されてるね……。」

 

千聖「だけど、少し、恥ずかしいわ……。」

 

楓「は、ははは……」

 

白鷺さんと同意見……。

 

他にもお客さんがいる中で僕達だけが歓迎されると、なんか、すげえ恥ずかしい……。

 

イヴ「こちら、メニューになります!」

 

はぐみ「注文が決まったら呼んでね!」

 

花音「イヴちゃん!はぐみちゃん!」

 

千聖「そういえば、あなた達も香澄ちゃん達と同じクラスだったわね。」

 

え、そうだったんだ。

 

初耳。

 

はぐみ「かのちゃん先輩!実はね、このメニューの中に1つ、イヴちんが考えたメニューがあるんだよ!」

 

花音「え、そうなの!?」

 

イヴ「はい!どれだか分かりますか?」

 

千聖「そうね~。」

 

……ん?

 

なんか、1つだけ変わった名前のメニューがあるぞ?

 

……ブシドー、ジュース?

 

……あ(察し)。

 

香澄「正解は~、ブシドージュースです!」

 

イヴ「か、カスミさん!どうして答え言っちゃうんですか~!」

 

香澄「ご、ごめ~ん。」

 

千聖「ふふ、イヴちゃんらしいメニューね。……それじゃあ、それを1つ、もらおうかしら。」

 

花音「じゃあ、私もそれにしようかな。」

 

イヴ「! ありがとうございます!ブシドージュース2つ、ご注文承りました!」

 

花音「……空見くんは何にするの?」

 

楓「うーん……。考え中……。」

 

出たよ、僕の悪い癖。

 

だって、こんなに種類があったら、普通迷うじゃん?

 

若宮さんのブシドージュース?でもいい気はするけど……、うーん、迷うなー……。

 

たえ「パンダのラテアートカフェオレはどうですか?」

 

楓「うわっ!」

 

は、花園さん、いつの間に横に……。

 

楓「ら、ラテアートカフェオレ?」

 

たえ「はい。この日のために練習したんです。どうですか?」

 

千聖「たえちゃん、やけにグイグイいくわね……。」

 

楓「……う、うん。じゃあ、それにしよう、かな。」

 

たえ「毎度あり~。」

 

……ああまで言われたら、頼まざるを得ないよね。

 

まぁ、ラテアートってのも気になりはするし、いっか。

 

……あれ?キョロキョロ

 

……そういえば……。

 

楓「ねぇ、北沢さん。」

 

はぐみ「ん?なぁに?空見先輩。」

 

楓「さっきから思ってたんだけど、山吹さんって、いないの?確か、このクラスだよね?」

 

はぐみ「あぁ、それがね、はぐみも詳しくは分からないんだ。」

 

楓「え?」

 

はぐみ「はぐみもさっきかーくん達に聞いてみたんだけど、さーやなら大丈夫だよって。」

 

楓「山吹さんなら、大丈夫?」

 

はぐみ「うん。」

 

山吹さんなら大丈夫……。

 

どういう意味だ……?

 

りみ「……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

千聖「ごちそうさま。とても美味しかったわ。」

 

香澄「そう言っていただけて、嬉しいです!」

 

イヴ「私もです!」

 

花音「はぐみちゃん、たえちゃん、これからも頑張ってね。」

 

たえ「はい。ありがとうございます。」

 

はぐみ「かのちゃん先輩のクラスの演劇、絶対見に行くからね!」

 

りみ「……」

 

楓「あ、あの、牛込さん。……ラテアートカフェオレ、美味しかったよ。」

 

りみ「……ありがとうございます。」

 

あれ?

 

今度は無視されなかった……。

 

……言ってみるもんだな。

 

千聖「では、私達行くわね。」

 

香澄「演劇!絶対絶対見に行きます!」

 

千聖「だから、あなたは声が大きいのよ。」

 

花音「まぁまぁ、千聖ちゃん。……?空見くん、大丈夫?」

 

楓「うん、大丈夫。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

千聖「……ここね。」

 

花音「このクラスでは、何をやってるんだろう?」

 

千聖「ここに書いてあるわ。えーっと……参加型舞台、『金のガチョウ』だそうよ。」

 

花音「参加型舞台か~。面白そう!」

 

千聖「入りましょうか。」

 

花音「うん!行こう、空見くん。」

 

楓「あ、うん。」

 

 

 

 

 

【花咲川女子学園 1-B】

 

千聖「……どうやら、今まさにやっている途中みたいね。」

 

花音「うん……。うわぁ、いっぱい人がいるよ。」

 

千聖「ほんとね、はぐれないよう気をつけないと。」

 

……見た感じ、あの人はいなさそうだけど……。

 

ほんとにこのクラスで合ってるんだよな?

 

でも、戸山さんがあんな自信持って言うんだから、ここ、なんだろうな。

 

花音「! 見て、千聖ちゃん。真ん中にいるお姫様、すごく可愛いよ。」

 

千聖「ええ、そうね。……あら?」

 

ん?

 

どうしたんだ?白鷺さん。

 

……ん?

 

んーー??

 

……真ん中にいる、お姫様の役の人って、まさか……。

 

白鷺「その、まさかね。」

 

 

 

 

 

有咲「……」

 

 

 

 

 

今のところ、まだ僕達には気づいてないみたい。

 

……それにしても、市ヶ谷さんがお姫様の役かー。

 

……なんか、意外だなぁ。

 

 

 

 

 

有咲「……?……!?」

 

 

 

 

 

楓「あ。」

 

 

 

 

 

有咲「……、……///、……/////!!」

 

 

 

 

 

き、気づかれちゃった……。

 

千聖「まずいわね。……花音、楓、出るわよ。」

 

楓「え?」

 

花音「で、でも私達、まだ入ったばかり…「いいから。大事にならないうちに、早く出るのよ。」だ、大事?」

 

……確かに、これはちょっとまずいな。

 

あの格好をしてる市ヶ谷さんがこっそり見に来てた僕達に気づいたら、……絶対こうなる。

 

千聖「2人とも!早く出るわよ!」

 

花音「ふぇぇ!な、何でぇ!?」

 

楓「……」

 

 

 

 

 

有咲「な、なな、ななな、……何であの3人がここにいるんだよーーー////!!??」

 

 

 

 

 

や、やっぱり……。

 

市ヶ谷さん、なんか、ごめん……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

花音「有咲ちゃんのクラスの劇、もうちょっと見ていたかったなぁ。」

 

千聖「ほんとにごめんなさい花音。この埋め合わせは、いつかきっと…「し、しなくていいよ?このくらいで。」そう?」

 

もうちょっと見ていたかった、かぁ。

 

まぁ、市ヶ谷さん似合ってたしね、お姫様。

 

本人に言ったら絶対ああなりそうだけど。

 

……あれ?

 

あそこにいるのって……。

 

花音「……!美咲ちゃん!」

 

美咲「あ、花音さん。どうも。」ペコリ

 

千聖「ここに座っていることを考えると、美咲ちゃんは受付係といったところかしら?」

 

美咲「白鷺先輩、空見先輩も。おはようございます。はい、そうなんです。クラスの人から、受付係をやってほしいって頼まれまして。」

 

空見「そうなんだ。」

 

花音「美咲ちゃんのクラスは……マジックショー?」

 

美咲「はい……。」

 

千聖「……なんか、元気ないわね。」

 

美咲「マジックショーをやりたいって言い出したのが、こころなもんで……。」

 

楓・花・千「あ……。(察し)」

 

こころ「美咲ー!もうすぐ次のマジックショーが……ってあら!楓じゃない!花音と千聖もいっしょなのね!」

 

楓「あ、弦巻さ…「丁度よかったわ!これからあたし達のマジックショーが始まるの!楓達も見ていってちょうだい!」あ、あぁ……。」

 

美咲「こころ、空見先輩困ってるでしょ。すみません。こころの言うことは、無視して大丈夫ですので。」

 

花音「……でも私、こころちゃんのマジックショー、気になるかも。」

 

美咲「え?」

 

千聖「確かに。私も少し、興味があるわ。」

 

美咲「いや、あの、ちょ、ちょっと待って…「空見くんはどう?」「僕?……うん、まぁ。気にはなるかな。」空見先輩まで!?」

 

こころ「決まりね!というわけで美咲!3人の受付、お願いね!」

 

美咲「……はぁ。分かりましたよ。それでは花音さん、白鷺先輩、空見先輩。ここに名前を書いてから教室にどうぞ……。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【花咲川女子学園 1-C】

 

ワイワイガヤガヤ

 

花音「有咲ちゃんのクラスもいっぱいいたけど、ここもいっぱいだね。」

 

千聖「そうね。(若干、こっちのほうが人が多いかしら。)」

 

マジックショーかぁ。 

 

こうして実際に目で見るのは初めてだから、楽しみだなー。

 

てか、弦巻さんってマジックできたんだ。

 

マジックができる人って、なんかすごいって思うよね。

 

千聖「……始まるみたいよ。」

 

 

 

 

 

こころ「みんなー!今日はあたし達のマジックショーへようこそ!あたし達の華麗なマジックで、ここにいるみーんなを笑顔にしてあげるわ!」

 

 

 

 

 

パチパチパチ……‼︎

 

花音「カッコいいよー!こころちゃーん!」パチパチパチ

 

千聖「ふふ。花音ったら、まるでこころちゃんのファンね。」

 

弦巻さんのマジック……。

 

果たして、どんなものが繰り広げられるんだろうか……。

 

 

 

 

 

こころ「それじゃあいくわよー!……それ!」

 

ブワッ!

 

楓・花・千「!?」

 

クルックー

 

クルックー

 

こころ「……いらっしゃい!ハトさん達!」

 

オー!

 

スゴーイ!

 

パチパチパチ

 

 

 

 

花音「す、すごい……。」

 

千聖「こころちゃん、ほんとにマジック、できたのね……。」

 

は、ハトがいっぱい……。

 

これが、マジック……。

 

 

 

 

 

こころ「さぁ!この調子でどんどんいくわよー!それー!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

弦巻さんのマジックショーは、思ってたよりも全然クオリティが高くて、終始観客を驚かせていた。

 

最初のハトはもちろん、トランプを使ったマジック、帽子からいろんな旗を出すマジック、さらには物を出現させるマジック、出現させたものをさらに浮かせるマジックなど、初歩的なものから高度なものまで、あらゆる種類のマジックが披露された。

 

いや、ほんとマジですごすぎるんだが……。

 

もう最初から最後まで、ずっと歓声の嵐だったし……。

 

あ、ちなみにマジックは、弦巻さん以外の人も披露していた。

 

まぁそりゃそうだよね。

 

これって一応“クラス”の出し物だもんね。

 

弦巻さんだけのマジックショーをやっちゃったら“弦巻さん”の出し物になっちゃうもんね。

 

あ、あと、たぶん手伝いとか補助とかの役割だと思うんだけど、……度々出てきた謎の黒い服の人はいったい誰?

 

 

 

 

 

こころ「それじゃあ次が、最後のマジックよー!楽しい時間が終わるのは名残惜しいけど、そんなのを忘れてしまうくらい、ビッグなマジックを見せてあげるわ!」

 

イェーイ!

 

タノシミー!

 

 

 

 

 

花音「ビッグなマジックかぁ。どんなのだろうね?」

 

千聖「こころちゃんのマジックだもの。良い意味で予想を裏切ってくれるはずよ。」

 

予想を裏切る、か。

 

確かに弦巻さんのマジックには、終始驚かされてばかりだった。

 

果たして、どんなマジックがくるか……。

 

 

 

 

 

こころ「まず用意するのは、この大きな箱!これに魔法の呪文を唱えれば、みんなが笑顔になるような、とびっきり最高のサプライズが待っているの!」

 

とびっきり最高のサプライズ……?

 

今までもまぁサプライズ続きだったけど、それ以上のものってこと?

 

こころ「それじゃあいくわよー!……ハピネスっ!ハピィーマジカルっ♪」

 

ブワァンッ!

 

楓・花・千「うわっ(きゃあっ)!」

 

こ、この煙……。

 

最初のハトのときより、すごい……。

 

あ、ちなみにこの煙、人間には全く害のないものらしい。

 

そういうとこはちゃんとしてるのね。

 

ナンダナンダ??

 

スゴイケムリ……

 

イッタイドンナサプライズガ……

 

……ん?

 

なんか煙の中から、人影が見えるような……。

 

……あれ?

 

人……、じゃなくね!?

 

千聖「あ、あの影って……」

 

花音「も、もしかして……」

 

 

 

 

 

こころ「みんなを笑顔にする、とびっきりで最高のサプライズは……」

 

ドーン!

 

楓・花・千「!!」

 

ミッシェル「ど、どうもー。みんな大好きミッシェルだよー。」

 

こころ「ミッシェルでしたー!」

 

ワー!!

 

スゴーイ!!

 

ホンモノノミッシェルダー!!

 

ミッシェルー!!

 

花音「……み、美咲、ちゃん?」

 

千聖「そう来るのね……。」

 

……あ、あれって確か、前に商店街にいた……。

 

え、あの着ぐるみって、商店街のものじゃないの?

 

いいの?

 

こんな、学校なんかに持ってきちゃって……。

 

……ちゃんと許可、もらってんの?

 

ていうか、意外と人気だな、あのクマ……。

 

こころ「見てミッシェル!あなたを見て、こーんなにたくさんの人が笑顔になってるわ!」

 

ミッシェル「おー、ほんとだー。嬉しいなー。……ん?」

 

楓・花・千「……」

 

ミッシェル「(……はぁ。これがあるから見られたくなかったんだけどなー……。)」

 

こころ「ミッシェル!あなた、本っ当に最高よ!」ギュッ!

 

ミッシェル「うわっ!く、苦しいよこころー。」

 

最後の最後にクマ登場……。

 

これは、誰も予想できんわ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

花音「これで1年生は一通り回った、よね?」

 

千聖「ええ。クラスによっていろいろな出し物があって、面白かったわ。」

 

花音「そうだね。こころちゃんのクラスは、特にすごかったな……。」

 

千聖「そうね……。まさかのミッシェル登場なんて。ふふ、こころちゃんならではよね。」

 

花音「ふふ、確かに♪……みんなの頑張りに答えるために、私達も頑張らなきゃだ…グ~ ……え?……この音って、もしかして……」

 

千聖「はぁ……。楓、またなの?」

 

楓「……、……す、すみません///。」

 

花音「あ、でも、もうそんな時間かも。」

 

千聖「12:13……。まぁそうだけど……。」

 

花音「それじゃあ千聖ちゃん、空見くん。丁度いい時間だし、お昼買いに行こうよ。今なら他のクラスの子達が屋台や模擬店を出してるはずだから、それを買ってどこかで食べよう?」

 

千聖「なるほどね……。せっかくの文化祭だし、そうしましょうか。楓、それで文句ないわよね?」

 

楓「う、うん。」

 

花音「決まりだね。それじゃあ行こっか♪」

 

というわけで僕達は、お昼を食べに行くことになった。

 

……お金、持ってきてないんだけどね。




やっと来ました文化祭編(本番)!

ここまで来るのにどれだけかかってんだこの野郎と思いますが、全くその通りでございますw。

文化祭編では花咲川のキャラがオールスターで登場(全員とは言ってない)するので、そこのところも楽しんで読んでくださると嬉しいです、

今回がタイトルの通り1年生なので、次回は……、もうお分かりですよね?


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42話 文化祭を楽しもう(2年生編)

皆さん、お久しぶりです。

約1ヶ月ぶりですかねw。

まぁだからと言って特に言うこともないので、本編をどうぞ。


【花咲川女子学園 中庭】

 

花音「うわぁ~、いろんな屋台があるねー。」

 

千聖「今回の文化祭では、クラスの子たちだけじゃなく、地域の人たちもボランティアで出してくれているそうよ。」

 

花音「そうなんだ。だからこんなにいろいろな屋台があるんだね。」

 

……ヤバい。

 

今になってお金持ってこなかったの後悔してる……。

 

だって、めちゃくちゃ美味しそうな屋台がいっぱいあるんだもん……。

 

焼きそばとか、わたあめとか、トルネードポテトとか、さらにはラーメンもあるし、……文化祭の屋台のレベルって、こんな高かったっけ?

 

花音「! 見て見て千聖ちゃん、お弁当まで売ってるよ!」

 

千聖「あら、ほんとね。」

 

花音「“生徒が考えた、バランスのとれたお弁当”だって!美味しそう!」

 

千聖「じゃあ、お昼ご飯はそれにしましょうか。」

 

花音「うん、そうだね。」

 

生徒が考えた、バランスのとれたお弁当……。

 

超うまそー……。

 

しかも350円って、めっちゃお手頃価格だし。

 

ほんと、今日の文化祭に限ってはお金持ってこなかったの悔やまれるわ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

花音「お待たせ、空見くん。」

 

千聖「ごめんなさいね。結構並んでいたから、思ったより時間がかかってしまって。」

 

楓「いやいや、大丈夫だよ。」

 

松原さんと白鷺さんがお弁当を買いに行ってる間、僕は外にある休憩スペースで待っていた。

 

ちなみにこの休憩スペースも、今日の文化祭のために生徒が何人かで作った場所らしい。

 

花音「でもびっくりしたよ。空見くんが、お昼を持ってきてたなんて。」

 

千聖「てっきり、私たちみたいに屋台で何か買って食べるのかと思っていたわ。」

 

楓「ご、ごめん。屋台があるなんて、知らなかったから……」

 

花音「ち、違うの!別に、それを否定したわけじゃないんだよ!?」

 

楓「だ、大丈夫だよ。それは十分、分かってるから……。」

 

千聖「そういえばそうだったわね。楓は今年転校してきたばかりだから、この学校の文化祭は初めてだったわね。」

 

花音「私たちも最初は、自分たちでお弁当を持ってきてたもんね。それが最近は、屋台で買って食べるようになって……」

 

千聖「最近と言っても、去年からなのだけどね。」  

 

花音「あ、そうだっけ。」

 

千聖「ええ、確かそうよ。」

 

なるほど……。

 

じゃあ僕も来年からは、屋台でお昼を買って食べることにするか。

 

千聖「……それじゃあ2人とも。話はそれくらいにして。そろそろ食べましょうか。」

 

花音「うん、そうだね。」

 

楓「うん。」

 

さてと、今日のお弁当は何かな~?パカッ

 

お、これは……。

 

花音「すごい!空見くんのお弁当、カレーだ!」

 

千聖「他にも唐揚げや玉子焼き、ソーセージ、ミニトマトやサラダなどの野菜も入ってて、とても豪華で美味しそうね。」

 

楓「いやいや、カレー以外はいつも通りだよ。豪華なんてそんな大袈裟…「そんなすごいお弁当を作ってくれるなんて、とても優しいお母さんなんだね。」……う、うん、まぁね。」

 

ま、すごいって思ってくれてるならそれでいっか。

 

楓「それで、2人はどんなお弁当にしたの?」

 

花音「私はこれだよ。……ジャジャーン♪パカッ」

 

楓「それは……、ハンバーグ?」

 

花音「正解♪」

 

おぉ、結構でかいハンバーグだ。

 

絶対美味しいだろこれ。

 

千聖「次は私ね。私はこれにしたわ。パカッ」

 

楓「白鷺さんのは……そば?」

 

千聖「ええ、そうよ。」

 

花音「そばの入ったお弁当を学校で食べるって、ちょっと不思議な感じだね。」

 

千聖「ふふ、確かに。それは分かるかもしれないわ。」

 

……去年向こうの高校にいたとき、そば弁当あったんだよなぁ。

 

ほんとにそばだけの弁当で、他の人に驚かれたのを覚えてる……。

 

千聖「さぁ、話はこれくらいにして。まずはお昼を食べましょう。もっと話したいことはいっぱいあるだろうけど、時間はまだたっぷりあるわ。お昼を食べた後にでも、ゆっくりお話しましょ。」

 

花音「千聖ちゃん……。うん、そうだね。」

 

楓「うぅ、お腹へった……。」

 

花音「ふふ♪じゃあ食べよっか、2人共♪」

 

千聖「ええ。それじゃあ……」

 

楓・花・千「いただきます。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

花音「空見くん、大丈夫?」

 

楓「だ、大丈夫……。うぅ、死ぬかと思った……。」

 

千聖「急いで食べるからよ。もう、世話がやけるわね。」

 

楓「すみません……。」

 

何で2人に心配されるような状態になってるのか。

 

それはご飯中にさかのぼる……。

 

……と言っても原因は単純だけどね。

 

僕が急いで弁当をかきこんだせいで喉に詰まったというまぁなんともアホな理由だ。

 

なぜか今日はお茶を忘れてしまい、飲み込むための水がなくて死ぬかと思ったが、幸いなことに白鷺さんが水筒を持ってきてくれていて、その水を飲んだおかげでなんとか一命をとりとめた。

 

いやほんと……マジで死ぬかと思ったわ。(大事なことだから3回言った)

 

白鷺さんは僕の命の恩人だ……。

 

花音「でもほんと良かったぁ。千聖ちゃんが水筒を持ってきてくれていて。」

 

千聖「ほんとにたまたまなのよ。実はこの水筒は妹のもので、妹が学校に持っていくはずだったのだけど、朝突然いらなくなったって言うから、仕方なく私が持っていくことにしたの。それがまさか、こんなところで役に立つなんて。」

 

楓「妹?……白鷺さんって、妹がいるの?」

 

千聖「ええそうよ。何か問題でも?」

 

楓「い、いや、別にそういうわけじゃ……」

 

花音「まぁまぁ……。とりあえず、沙谷加ちゃんのクラスに行こうよ。」

 

千聖「そうね。楓、行けそう?」

 

楓「う、うん。それは全然、大丈夫。」

 

松原さんの話で言った通り、これから僕たちは菊地さんのクラスに行くことになった。

 

その理由が、さっき僕が喉に詰まらせたことにも繋がってくるのだ。

 

まぁそれは、後々話すことにしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【花咲川女子学園 2-C教室】

 

ガヤガヤガヤ

 

ガヤガヤガヤ

 

花音「お客さん、いっぱいいるね。」

 

千聖「そうね……。」

 

さて、そろそろ僕たちがここに来た理由を話すとするか。

 

そう、あれは、お昼を食べているときのことだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~30分前~

 

【花咲川女子学園 中庭】

 

花音「美味しいね、千聖ちゃん。」

 

千聖「ええ。」

 

花音「空見くんはどう?美味しい?」

 

楓「……え?あ、うん、美味しいよ。」

 

花音「そっか。……3人でお弁当食べるの、なんか久しぶりな気がするなぁ。」

 

千聖「確かに。”3人で“、食べるのは久しぶりね。」

 

そうだったかなぁ?

 

……あまり覚えてない……。

 

花音「えへへ♪……あれ?」

 

千聖「どうしたの?花音。」

 

花音「あそこにいるのって……美菜ちゃんたち、だよね?」

 

千聖「……あら、ほんとね。」

 

 

 

 

 

美菜「……!」

 

 

 

 

 

楓「あ、こっちに気づいた。」

 

美菜「空見ー!松原さんに白鷺さんもー!」タッタッタ……

 

千聖「やはりあなたたちは、3人で回ってたのね。」

 

橋山「まぁね。私たち、仲良いから。」

 

音羽「行動するとき私たちは、ほぼほぼいっしょです!」

 

花音「仲良いのは、とても良いことだよね。」

 

美菜「でもそれを言うなら、松原さんたちだって仲良いでしょ?」

 

花音「うん!それはもちろん♪ね、千聖ちゃん、空見くん。」

 

千聖「花音の言う通りよ。」

 

楓「……うん。僕も、そう思う。」

 

美菜「……あ、そうだ。松原さんたちさ、後で菊地のクラスに行ってみなよ。」

 

花音「沙谷加ちゃんの?」

 

美菜「そ。きっと驚くよ~?」

 

橋山「確かに、あれは驚くね。」

 

音羽「私たちもさっき行きましたけど、凄かったですよ!」

 

千聖「凄かった……。それは気になるわね。」

 

花音「それじゃあ、お昼ご飯食べたら沙谷加ちゃんのクラスに行ってみよっか。」

 

千聖「ええ、そうしましょうか。」

 

美菜「菊地のやつ、松原さんたちが来たらきっと喜ぶよ。」

 

橋山「うん、それは間違いない!」

 

音羽「実際、松原さんたちにも来てほしいと言ってましたもんね。」

 

美菜「あぁ、言ってた言ってた。……じゃあ、私たちはそろそろ行くね。」

 

花音「うん。ありがとね、美菜ちゃん。2人もありがとう。」

 

美菜「いえいえ。」

 

橋山「それじゃあ松原さん、白鷺さん、空見、菊地によろしく。」

 

音羽「次は、演劇で会いましょう。」

 

千聖「ええ。また後で。」

 

花音「……行っちゃったね。」

 

菊地さんのクラスかー。

 

どんな出し物なんだろう……。

 

千聖「さて、この後の予定も決まったことだし、急いでお昼を食べちゃいましょうか。」

 

花音「うん!」

 

……あれ?

 

もしかしてこのままのペースで食べ進めたら……僕が一番遅くなる?

 

……!

 

い、急いで食べないと!

 

千聖「……!ちょっと楓?そんなに急いで食べたら、喉に……」

 

楓「……ん!?んー!んーんー!!」

 

花音「空見くん!?」

 

千聖「はぁ、言ったそばから……」

 

楓「んー!んーんー!!んー!!」

 

花音「し、しっかりして空見くん!空見くーーん!!」

 

~回想終了~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……と、こんなことがあったのだ。 

 

花音「沙谷加ちゃんはどこにいるのかな?」

 

千聖「近くにいる人に聞いてみましょうか。えーっとー……」

 

 

 

 

 

???「……!空見!」

 

花・千聖「!」

 

楓「え?……!き、菊地さん!」

 

沙谷加「来てくれたんだ!松原さんと白鷺さんもいっしょなんだね。」

 

花音「うん!美菜ちゃんたちに、沙谷加ちゃんのクラスが凄かったって聞いて、気になって来ちゃった♪」

 

沙谷加「そうだったんだ。ありがとう、松原さん。」

 

千聖「こんなにたくさんのお客さんがいるということは、それだけあなたのクラスの出し物が盛り上がってるということよね。」

 

沙谷加「あー、……まぁ、確かに盛り上がってはいたんだけど……」

 

花音「盛り上がってはいた?」

 

楓「どうして、過去形?」

 

沙谷加「実は……ちょっとトラブルが、ね?」

 

千聖「トラブル?」

 

沙谷加「……」

 

ガシッ!

 

花・千「え?」

 

沙谷加「お願い2人共!力を貸して!」

 

花音「え?……ええええ!?」

 

千聖「力を貸してって……。ど、どういうことよ。」

 

沙谷加「わけは後で説明するから!早くこっちへ!」

 

花音「ふぇぇ!?」

 

千聖「ちょっと、沙谷加ちゃん!」

 

楓「……」

 

沙谷加「ごめん空見、このクラスへは、また後で来てよ。今はちょっと準備で忙しいからさ。じゃ、そういうことでお願いね!」

 

楓「……」

 

……よく分からん間に、僕は1人になってしまった。

 

……これからどうしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

楓「ふぅー。」

 

菊地さんのクラスにいた人たちが言うには、30分後ぐらいに次の出し物が始まるらしい。

 

それまで何をしているか。

 

……まぁ妥当なのは他のクラスの出し物を見に行くことなんだけど……、1人で行くのは、ちょっとな……。

 

……あれ?

 

そういえばここ、C組だよな?

 

ということは、隣は…「あ!空見くんだ!タタタ……」え?

 

彩「もしかして、私たちのクラスを見に来てくれたの!?」ズイッ

 

楓「ま、丸山さん!?い、いや、その、えっと……」

 

やっぱり、B組だったか。

 

ていうか、丸山さんの圧がすごい……。

 

紗夜「何をしているんですか丸山さん。空見さんが困っているでしょう?」

 

あ、氷川さん。

 

彩「さ、紗夜ちゃん!?え、えっと、これはその、サボってるんじゃなくて……」

 

紗夜「こんにちは、空見さん。どうですか?文化祭巡りのほうは。」

 

彩「え、無視……?」

 

楓「あ、はい。午前中に1年生のところに行って、たった今菊地さんのクラスに行ったばかりです。まぁ、菊地さんのクラスは何かトラブルが起きちゃったみたいなので、30分後ぐらいにまた行く予定ですけど。」

 

紗夜「そうだったんですか。ところで、松原さんと白鷺さんはいっしょではなかったんですか?」

 

楓「それが、菊地さんに手伝ってほしいって連れていかれて、そのまま……」

 

紗夜「は、はぁ……。」

 

彩「じゃあ、2人とはまた後で合流だね。」

 

楓「そ、そうだね。」

 

紗夜「分かりました。……あの、空見さん、もしよかったら、今から私たちのクラスのほうを見て行きませんか?」

 

楓「確か氷川さんたちのクラスは……屋台、でしたっけ?」

 

彩「惜しいよ空見くん!正解は模擬店!射的とかボールすくいとか、お祭りであるような屋台がいっぱいあるんだよ!」

 

……いや、屋台じゃん。

 

っていうツッコミはしないほうがいいのかな?

 

紗夜「丸山さん、屋台って言っていますよ?」

 

彩「あれ?」

 

と思ったら氷川さんが言った……。

 

彩「まぁいっか♪というわけで空見くん!私たちのクラスに遊びに来てよ!絶対楽しいから!」

 

楓「うん……。じゃあ、そうしようかな。」

 

彩「やったー♪そうと決まったら早く行こう!ガシッ!」

 

楓「ちょ、腕を掴まなくても自分で行くって!」

 

紗夜「ふふ、丸山さんったら。」

 

ま、他のクラスが無理でも……。

 

丸山さんのクラスなら、1人でも大丈夫だよな。

 

松原さんと白鷺さんには悪いけど、B組の模擬店、楽しんでくるか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【花咲川女子学園 2-B】

 

燐子「あ、ありがとう……ございました。……ふぅ。……「燐子ちゃーん!お待たせー!」! 丸山さん!」

 

紗夜「すみません白金さん、しばらく1人で任せてしまって。」

 

燐子「い、いえ、大丈夫……です。あ、空見さん。」

 

楓「こんにちは、白金さん。」

 

燐子「こ、こんにちは……。あの、松原さんと白鷺さんは、いっしょでは、ないんですか?」

 

彩「そのことは、後で私から話すよ。とりあえず今は、空見くんに私たちの模擬店を楽しんでもらおう!」

 

燐子「丸山さん……。わ、分かりました。」

 

紗夜「では改めて。こほんっ。……空見さん、私たちB組の模擬店へ、ようこそ。」

 

彩「あ~!紗夜ちゃん、それ私のセリフ~!」

 

紗夜「ふふ、早い者勝ちですよ。」

 

意外と、氷川さんもノリノリだな……。

 

てか今更だけど、このクラスの人たちはみんな法被を着てるんだな。

 

中には丸山さんみたいに、はちまきをしてる人もいるし。

 

ほんとのお祭りって感じだな。

 

彩「! あ、空見くん気づいた?この法被!」ジャーン

 

楓「! う、うん、まぁ。」

 

彩「クラスみんなで話し合って、これを手作りしてみんなで着ようってことになったんだ!ほら、後ろには名前も書いてあるんだよ!」

 

楓「名前?あ、ほんとだ。……!」

 

名前の他にもいろいろ書いてある……。

 

これはおそらく……、クラスのみんなからのメッセージ。

 

“文化祭頑張ろう”とか、“精一杯楽しもう”とかのメッセージを、クラスで手作りした服とかに手書きで書くという、運動会や文化祭でよくあるやつだ。

 

楓「……」

 

紗夜「……?どうしたんですか?空見さん。」

 

楓「! い、いえ、何でも、ありません……。」

 

紗夜「そう、ですか……?」

 

彩「それじゃあ空見くん、さっそく、私たちの屋台の遊んでってよ!」

 

楓「あ、そ、そうだね。えっと、これって、全部無料でできるの?」

 

彩「ううん?1回10円だよ。」

 

楓「え?」

 

彩「うん?」

 

紗夜「?」

 

楓「……1回、10円?」

 

彩「? うん。」

 

紗夜「……あの、まさかとは思いますが、空見さん……。」

 

楓「……」

 

彩「え……?そ、空見、くん……?」

 

楓「……今日お金、持ってきてない……。」

 

彩「……え……」

 

紗夜「はぁ、やっぱり……。」

 

彩「ええええええ!!??」

 

楓「ご、ごめん……。」

 

お昼のときは弁当があったから良かったけど、まさかここでお金が必要になるとは……。

 

はぁ……。

 

燐子「……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

楓「丸山さん、氷川さん、白金さん、ほんとにごめん……。」

 

彩「もういいって空見くん。えっと……来年!そう、来年ちゃんと持ってくればいいんだよ!」

 

楓「来年……。」

 

紗夜「それは流石に、気が早すぎるのでは……?」

 

燐子「来年……。どうなってるのか、全く想像……つきませんね。」

 

現在僕と丸山さんと氷川さんと白金は、ある場所に向かっている。

 

3人とも、あとの仕事は任せて、とクラスの人たちに言われたため、今は休憩時間となっている。

 

そして、僕たちが向かっているある場所というのは…「着いた!図書館!」……そう、図書館だ。

 

紗夜「この学校の図書館、久しぶりに来るわね。」

 

彩「私は初めてかな。」

 

燐子「……あ、あの……。やっぱり、図書館はあとにしたほうが…「ダーメ、今見るの♪」うぅ……。」

 

楓「だ、大丈夫?白金さん。」  

 

燐子「大丈夫じゃ……ないです……。わ、私たちの本の紹介、本当に、……う、上手く、できたでしょうか……。」

 

楓「……う、うん、たぶん。」

 

紗夜「……白金さ…「あ、これじゃない?紗夜ちゃん!」!」

 

楓・燐「!」

 

丸山さん見つけんの早っ!

 

彩「へぇー、これが2人の選んだ本……。」

 

紗夜「……なるほど。そうきましたか。」

 

楓・燐「……」

 

僕と白金さんが最終的に選んだのは、猫が好きな主人公が登場する本でも、ゲームが好きな主人公が登場する本でもない。

 

純粋な、ごく普通の恋愛小説だ。

 

まぁ、一部分を除いてはだけど。

 

彩「タイムトラベルして過去に飛んじゃった女の子が、そこで出会った男の子に恋しちゃうお話かー。……すっっっごく面白そう!」

 

紗夜「猫でもゲームでもなく、タイムトラベルものでくるとは……。予想外でした。」

 

燐子「す、すみません氷川さん……。せっかく……おすすめして、もらったのに……。」

 

紗夜「謝る必要なんてありませんよ。あなたたち自身が決めた、あなたたちのこの本の紹介、とても良いと思います。」

 

彩「うん!私も良いと思った!」

 

楓「氷川さん、丸山さん……。」

 

紗夜「人から薦めてもらったものをそのまま紹介するのもいいですが、それに頼らずに自分たち自身で決めたものを紹介するほうが、よりそのものの良さが伝わってくるものです。あなたたちのこの選択は、素晴らしかったと思いますよ。」

 

燐子「あ、ありがとう……ございます。」

 

彩「私、今度この本、借りて読んでみようかな~。」

 

紗夜「私も、この本に興味が出てきました。」

 

楓「……上手くいったね、白金さん。」

 

燐子「は、はい。」

 

本の紹介。

 

大変だったけど、なんとか第1関門クリアって感じか。

 

あとは……。

 

彩「……!みんな、そろそろ30分だよ!沙谷加ちゃんのクラスに行こう!」

 

楓「え?……でも、他の人たちの紹介見てな…「あ、そうだった!う~、……あ、後で見に来よう!だから今は、とりあえず沙谷加ちゃんのとこに行かないと!」……う、うん。」

 

紗夜「ちょっと丸山さん!校内を走らないでください!丸山さん!」

 

楓「……」

 

燐子「わ、私たちも……行きましょうか。」

 

楓「そ、そうだね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【花咲川女子学園 2-C】

 

彩「はぁ、はぁ、……ぎ、ギリギリ間に合った~。」

 

紗夜「はぁ、はぁ、……ま、丸山さん、本来ならあなた、生徒指導の対象になっているんですからね。」

 

彩「あ、あはは……。ごめんね、今回だけだから。」

 

紗夜「笑い事じゃありませんよ全く……。」

 

生徒指導……?

 

……あ、そういやこの人、風紀委員だったわ。

 

燐子「はぁ、はぁ、はぁ……」

 

楓「だ、大丈夫?白金さん。」

 

燐子「……そういう空見さんこそ、大丈夫……ですか?」

 

楓「ぼ、僕は全然、大丈……夫……」フラッ

 

紗夜「!ガシッ 空見さん、しっかりしてください!」

 

楓「氷川さん……、す、すみません……。」

 

紗夜「いえ、大丈夫ですよ。始まるまでまだ少し時間があると思うので、近くの壁に寄りかかっているといいかもしれません。そうするだけでも、だいぶ違うと思うので。」

 

楓「そうですか……。じゃあ、そうさせてもらいます……。」ヨロヨロ

 

燐子「空見さん、私より……疲れてる……。」

 

彩「……私のせい、だよね?」

 

紗夜「そう思うなら、後で謝っておいたほうがいいですよ。」

 

彩「……うん。」

 

 

 

 

 

はぁ、はぁ、はぁ……。

 

ここなら奥の方だし、人の邪魔にもならないな。

 

ふぅー、マジで疲れた……。

 

4人の中で一番体力ないよな僕って……。 

 

 

 

 

 

???「あれ?空見くん?」

 

楓「え?」

 

花音「……」

 

楓「ま、松原さん!?と、白鷺さんも……」

 

千聖「あなた、こんなところで何してるの?」

 

楓「あー、……まぁ、いろいろありまして……」

 

千聖「いろいろ、ねぇ。」

 

そういや松原さんと白鷺さん、ここで手伝ってるんだっけ。

 

花音「空見くん、ちゃんと来てくれたんだね。」

 

楓「もちろん。あ、丸山さん達もいるよ。」

 

花音「ほんと!?嬉しいなぁ。……でも、ちょっと恥ずかしいかも……」

 

楓「? 恥ずかしいって、何が?」

 

千聖「そのうち分かるわ。」

 

楓「え?」

 

花音「……」

 

千聖「……」

 

楓「……?」

 

千聖「……それじゃあ、私たちはまだ準備があるから行くわね。」

 

楓「え?あ、あの……」

 

花音「また後でね、空見くん。」

 

楓「あ、えっと……、う、うん。」

 

……いや、今の謎の間は何だったの?

 

それに恥ずかしいって、いったい何が……。

 

ていうか、……帰るの早すぎない?

 

あ、でもそれは、手伝いがあるからしょうがないのか。

 

……なんかもう、疲れ取れたわ。

 

丸山さんたちのとこ戻ろ。




今後の3章はマジで期待しかない。

あともしモニカがクリスマスイベでかつましろちゃんが星4で来たら僕死ぬよ?

もちろん、超絶最高的な意味で。


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43話 文化祭を楽しもう(番外編)

年内に文化祭編終了は、このペースだと無理な気がしてきた……。

……でも、なんとかいけるように頑張ります!


【花咲川女子学園 2-C】

 

楓「……」

 

彩「……!空見くん!」

 

紗夜「もう大丈夫なのですか?」

 

楓「あ、はい、まぁ。」

 

燐子「……?どうか……しましたか?」

 

楓「あ、いや……。ちょっと、松原さんと白鷺さんに会ってさ。」

 

紗夜「松原さんと白鷺さんに?」

 

楓「はい。2人とも、準備で忙しいみたいで、一言二言しか話してませんけど。」

 

紗夜「そうなんですか。」

 

彩「……あ、あの!空見くん!」

 

楓「! え、何?丸山さん。」

 

彩「えっと、ご、ごめんなさい!ここに来るとき私、すごい急いで走ってきちゃって……。ついてきてる空見くんのこと、考えないで……。」

 

楓「……あ、そういうこと?い、いや、別にそれぐらいいいよ。」

 

彩「でも、私…「確かにめちゃくちゃ疲れたけど、もう大丈夫だから。それに、こういうのはもう、慣れてるから。」……へ?」

 

燐子「慣れてる……?」

 

紗夜「空見さん、そういう問題ではないと思うのですが……。」

 

本当は慣れるほうがおかしいんだろうけど、実際その通りなんだもん、しょうがないよね。

 

……しょうがなくない?

 

あ、そう……。

 

 

 

 

 

パチンッ

 

楓・紗・燐「!」

 

彩「わ!暗くなった!」

 

電気が消えた……。

 

もう始まるってことか。

 

あ、カーテンの後ろから誰か出てきた。

 

 

 

 

 

司会者「皆さん!本日は2-Cのミニファッションショーを見に来てくださり、ありがとうございます!先ほどトラブルが起きてしまったため、開演時間が長引いてしまい、本当に申し訳ございませんでした!」

 

 

 

 

 

彩「あ、あの子……」

 

紗夜「知り合いですか?」

 

彩「あ、いや、そういうわけじゃないけど……。」

 

燐子「……」

 

彩「……そ、そんなことよりもほら!ファッションショーに集中しようよ!」

 

紗夜「え?……そ、そうですね。」

 

燐子「わ、分かりました。」

 

楓「?」

 

彩「(……沙谷加ちゃんがクラスで一番嫌ってるのがあの子だなんて、今の状況じゃ絶対言えないよ……。)」

 

 

 

 

 

司会者「そのお詫び、ってわけじゃないけど、今回は特別に、2人のスペシャルゲストに出演してもらうことになりましたー!」

 

ワーワー!  

 

スペシャルゲストー?

 

タノシミー!

 

 

 

 

 

彩「スペシャルゲスト?」

 

紗夜「しかも2人……。まさかね。」

 

 

 

 

 

司会者「それではさっそく登場してもらいましょう!スペシャルゲストの~~?……

 

 

 

 

 

……白鷺千聖さんと、松原花音さんでーす!」

 

 

 

 

 

楓・彩・紗「!?」

 

燐子「そのまさか……でしたね。」

 

 

 

 

 

……ファサ~(カーテンの開く音)

 

千聖「……」

 

キャー!!

 

シラサギサンカワイイー!

 

ワーワー!!

 

花音「///」

 

フー!

 

マツバラサンモカワイイヨー!

 

フタリトモサイコウー!!

 

 

 

 

 

彩「あ、あれが……千聖、ちゃん?」

 

紗夜「まるでモデルのような身のこなしですね……。」

 

彩「そして花音ちゃんは……すごく、綺麗……。」

 

燐子「はい……。あの衣装……松原さんに……とても似合ってます……。」

 

……す、すげぇ……。

 

あんな白鷺さんと松原さん、初めて見た……。

 

白鷺さんは、ベレー帽をかぶり、髪型は三つ編みになっていて、あれは……ニット、って言うのかな?を着て、ミニスカートを履いている。  

 

私服の白鷺さんは、街を案内してもらったときやこの前喫茶店で会ったときに見たことあるけど(35話参照)……あんな格好の白鷺さんは初めて見た……。

 

対して松原さんは、白鷺さんのような洋服ではなく、白金さんの言う衣装だ。

 

髪型は白鷺さんと同じく三つ編みになっていて、衣装には白いバラがプリントされており、胸と腰のところにはイチゴとイチゴの花?が飾りつけられている。

 

スカートには大きなピンクのリボンがついていて、……なんというか、……可愛い。

 

 

 

 

 

花音「ふぇぇ、やっぱりこれ、すごく恥ずかしいよぉ~///。」

 

千聖「もっと自信持って、花音。その衣装、花音にとても似合ってるわ。」

 

花音「うぅ、ほ、ほんと?」

 

千聖「ほんとよ。私が花音のことで嘘ついたことある?」

 

花音「……ない、……気がする。」

 

千聖「ちょ、花音!そこは肯定してくれる流れでしょ?」

 

花音「あはは、確かに。」

 

千聖「確かにって、もう花音~。……なんて、ふふ♪」

 

花音「えへへ♪」

 

花・千「あはは(うふふ)♪」

 

千聖「……花音。今日のあなた、本当に綺麗よ。私が保証するわ。」

 

花音「千聖ちゃん……。……えへへ♪ありがとう♪千聖ちゃんも、すごく可愛いよ。」

 

千聖「ふふ、ありがとう♪花音♪」

 

 

 

 

 

彩「? 2人とも、何を話してるんだろう?」

 

紗夜「ここからでは、よく聞こえませんね。」

 

燐子「しかし、よく見ると2人とも……笑って……ますね。」

 

彩「あ、……言われてみれば、確かに……。」

 

楓「……」

 

 

 

 

 

千聖「花音、せっかくこういう機会をもらったのだから、やるからには最後まで楽しみましょう。」

 

花音「うん!今回限りの、2人だけのファッションショーだね!」

 

千聖「2人だけの……。ええ、そうね。」

 

花・千「(……空見くん(楓)、見てくれてるかなぁ?(見てくれているかしら?))」

 

 

 

 

 

楓「……」

 

 

 

 

 

花・千「……」クルッ

 

 

 

 

 

楓「?」

 

 

 

 

 

花・千「……」パチンッ

 

 

 

 

 

楓「////!?」ドキッ!

 

い、今の……う、うい、ウインク……?

 

き、気のせいか?

 

なんか今の……ぼ、僕のほうを見て、……や、やった、ような……。

 

……ま、まぁ、僕の思い違いかもしれないけど……。

 

彩「ねぇ、空見くん。」

 

楓「……え?」

 

彩「今花音ちゃんと千聖ちゃん、ウインクしたよね?空見くんのほう見て。」

 

楓「……そ、そうなの?」

 

彩「うん。私には、そう見えたよ。」

 

……やっぱり、そうだったんだ。

 

思い違いじゃ、なかった……。

 

……でもまさか、2人同時にしてたなんてな。

 

片方しか見てなかったから、気づかなかった。

 

……すごく、可愛かったな。

 

……///。

 

彩「……空見くん、顔赤いよ?」

 

楓「え///?う、嘘///!?」

 

彩「嘘じゃないよ。まぁでも、あの2人からウインクなんかされたら、顔が赤くなっちゃうのも無理ないよね。空見くん、男の子だし。」

 

楓「……まぁ、そ、そうだね。」

 

……おかしい。

 

何で僕、こんなドキドキしてるんだ……?

 

女子にウインクというものを初めてされたからか?

 

……分からん。

 

今の僕の気持ちが、分からん……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彩「いやー、花音ちゃんも千聖ちゃんも、すごく可愛かったね!」

 

紗夜「そうですね。2人とも、とても似合っていました。」

 

燐子「これからの衣装の……参考にも、なりました。……空見さんは……どうでした?」

 

楓「……え?あ、あぁ僕?……うん、まぁ、良かったよ……。」

 

彩「空見くん、2人にウインクされてたもんね。」

 

燐子「! う、ウインク……ですか?」

 

紗夜「そ、そうなんですか?」

 

楓「ちょ、丸山さん!?」

 

彩「それに空見くん、顔赤くなってたし。」

 

楓「丸山さん///!?」

 

紗夜「……空見さん。まさか、そんな人だったなんて……」

 

燐子「意外……です。」

 

楓「そんな人ってどういう人ですか!?そういう言い方は誤解を生むからやめてくれ…「何の話?」うわぁっ!」

 

花音「きゃっ!」

 

彩「あ、花音ちゃん!千聖ちゃんも!」

 

楓「……な、何だ、松原さんたちか……。」

 

千聖「何だとは何よ。」

 

い、今のは心臓に悪い、悪すぎる……。

 

マジで飛び出すかと思ったもん……。

 

花音「び、びっくりしたよ~。空見くんが突然大きな声出すから、それにつられて私も大きな声出しちゃった……。」

 

楓「そりゃあ、突然話しかけられたらびっくりするよ……。」

 

花音「ご、ごめんね。」

 

楓「いや、まぁいいけど。」

 

千聖「……それで?あなたたちは、何について話していたのかしら?」

 

彩「あぁ、実は…「だあああ!!何でもない!何でもないよ!」え、空見くん?」

 

千聖「何でもないわけないでしょ。さっき現に何か話し…「ど、どうでもいい話だよ!えーっと……。……!つ、次はどこへ行こうかなーって、話してただけだよ。ほら、ステージ発表まで、まだ時間あるでしょ?」……まぁ、そうだけど……」

 

紗夜「確かに、まだ時間はありますね。」

 

燐子「次……ですか。……どこ行きましょう……?」

 

楓「そ、それは……。」

 

花音「この後のこと、何も考えてなかったね……。」

 

千聖「いっそのこと、もう体育館に行くという選択肢はあるけれど……」

 

彩「でも、まだちょっと早いよね……。」

 

花・千・彩・紗・燐「うーん……。」

 

……なんとか、話をそらすことはできたけど……。

 

それはそれで、また新たな問題ができてしまった……。

 

うーん、どうしたもんか……。

 

 

 

 

 

???「あ、いたいた!おーい!空見くーん!」

 

楓「ん?

 

 

 

 

 

……あれ、ゆりさん?」

 

花・千・彩・紗・燐「え?」

 

ゆり「探したよー空見くん。」

 

楓「え、そうなんですか?……でも、まだあれまでは時間が…「違う違う、あれじゃないよ。」? じゃあいったい何で……」

 

彩「あ、あの!」

 

楓・ゆ「?」

 

彩「……も、もしかして、……グリグリのゆりさん、ですか?」

 

ゆり「う、うん。もしかしなくても、私はGlitter Greenの牛込ゆりだけど……。」

 

彩「……」

 

千聖「……えっと、彩ちゃん?いったいどうし…「すごい!」え?」

 

彩「すごいよ千聖ちゃん!あのゆりさんが、グリグリのゆりさんが、まさかこの学校の生徒だったなんて!私、ほんとにびっくりだよ!!ねぇ、みんなもそう思わない!?」

 

花・千・紗・燐「……」

 

彩「……って、あれ?」

 

千聖「……彩ちゃん、知らなかったのね……。」

 

彩「え?え、何?どういうこと?」

 

紗夜「Glitter Greenの方々がこの学校の生徒だということは、噂で耳にしていましたが……」

 

燐子「まさか……こうして、実際に校内で……会えるなんて……。」

 

彩「……もしかしてみんな……知ってたの?」

 

花音「私も、実は千聖ちゃんから聞いてたんだ。それも、結構前から……。」

 

彩「……じゃあ、この中で知らなかったの……、私だけ……?」

 

千聖「可哀想ではあるけど、……そう、なるわね……。」

 

彩「……そ、そんな~……。」

 

楓・花・千・紗・燐「……なんか、ごめん(なさい)(すみません)……。」

 

ゆり「……えーっとー、……とりあえず私も、謝ったほうがいい、のかな……?」

 

いや、ゆりさんが謝る必要はないと思います……。

 

……たぶん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【花咲川女子学園 2-A】

 

ゆり「そっか~。ステージ発表のプログラムにあった演劇って、空見くん達のクラスだったんだ~。」

 

楓「はい。……言ってませんでしたっけ?」

 

ゆり「聞いてないよ全然~。でもそっか、演劇か~。……うん、絶対観に行くよ!頑張ってね、みんな!」

 

花・千「あ、ありがとうございます。」

 

彩「……ねぇ、空見くん。」

 

楓「ん?」

 

彩「この教室って、入っても大丈夫なの?」

 

楓「うん。朝先生が、ここも休憩スペースとして使っていいって言ってたから。」

 

彩「そうなんだ……。」

 

紗夜「しかし、そのわりには私たち以外誰もいませんね。」

 

燐子「みんな……、外のほうの休憩スペースに……行ったんでしょうか?」

 

千聖「でも、私たちの前に誰かが使っていたというのは、間違いないわね。」

 

楓「え?」

 

花音「どういうこと?千聖ちゃん。」

 

千聖「ほら、見て。ロッカーの上に置かれてるいくつかのお弁当袋。朝見たときと、配置が変わっているでしょ?」

 

彩「そ、そうなの?空見くん。」

 

楓「……いや、全然分からない……。」

 

花音「でも確かに、言われてみれば、そうだった気も……。」

 

楓「え、マジで……?」

 

千聖「流石花音ね。楓、あなたはもう少し、周りを観察するということを覚えたほうがいいわよ。」

 

楓「は、はぁ……。」

 

周りを観察……。

 

お母さんと同じようなこと言われた……。

 

ゆり「……なんか千聖ちゃんって、空見くんのお母さんみたいだね。」

 

楓・彩・紗・燐「え?」

 

花「!?」

 

千聖「……私が、楓のお母さん、ですか?」

 

ゆり「うん♪」

   

……まぁお母さんと白鷺さんとじゃ、白鷺さんのほうが断然怖いけど。

 

……てか何だろう?

 

この感じ、とても嫌な予感が……。

 

花音「あ、あの、……そ、空見くん。」

 

楓「ん?」

 

花音「……」チサトノホウユビサシ

 

楓「え?……いや、まさかそんな……。!!」

 

千聖「……」ゴゴゴゴゴ

 

彩・紗・燐「!!」

 

……これは、考えなくても分かる。

 

……ヤベえやつだ、これ。

 

嫌な予感、まさかの的中……。

 

ゆり「(……あれ?なんか、空気変わった?)」

 

花音「……そ、空見くん。」

 

楓「こ、今度は何?」

 

と、とにかく今は、1秒でも早くここから逃げたい……。

 

花音「じ、実は私、……同じことを、千聖ちゃんに言ったことがあって……」

 

楓「え?お、同じこと?……ってことはもしかして……」

 

花音「……コク」

 

まさかの松原さんが戦犯だったのかよ!! 

 

花音「そのときは、謝ったらすぐ許してくれたんだけど……。今回は……」

 

あー、……終わったわ。

 

これはもう、……死を覚悟するしかないかもしれん。

 

彩「ち、千聖ちゃんが、いつも以上に怖い……。」

 

紗夜「オーラが、凄まじいです……。」

 

燐子「……」ブルブルブル

 

千聖「……ゆりさん。」

 

楓・花・彩・紗・燐「!!」

 

ゆり「ん?どうしたの?」

 

千聖「……さっき、私のことを、……楓のお母さんみたい、と言いましたよね?」

 

ゆり「……う、うん。……何か、まずかった?」

 

千聖「……いえ。そういうわけでは、ないですけど……」

 

花音「(千聖ちゃん!踏みとどまって~!)」

 

彩「(ゆりさん逃げて!それか謝って!)」

 

紗夜「(お、落ち着いてください、白鷺さん!)」

 

燐子「(……)」ブルブルブル

 

千聖「……」

 

ゆり「……?」

 

ゆ、ゆりさーーーん!!!

 

 

 

 

 

千聖「……ふふ、流石にお母さんは大袈裟ですよ。」

 

 

 

 

 

楓「……あ、あれ?」

 

花・彩・紗・燐「?」

 

ゆり「え、そう?」

 

千聖「楓は少し世間知らずなところがあるので、私が見ていてあげなくちゃダメなんです。」

 

ゆり「……えーっとー、それがお母さんみたいって…「だから、それは大袈裟ですよ。友達として、当たり前のことをしているまでです。」……そ、そう、なんだ。」

 

楓・花・彩・紗・燐「……」ポカーン

 

千聖「あら?みんなどうしたの?突然石のように固まって。」

 

彩「……い、いやー……」

 

紗夜「特に意味はない、のですが……」

 

燐子「しいて言えば、……驚いたというか……安心したというか……」

 

花音「い、意外だったね、空見くん……。」ボソッ

 

楓「う、うん……。」

 

千聖「?」

 

てっきりまた怒ると思ったんだけど……。

 

白鷺さん、前と比べて少し丸くなったってことかな?

 

ゆり「……!そ、そうだ!」

 

楓・花・千・彩・紗・燐「?」

 

ゆり「みんなこれからさ、私のクラスに来ない?」

 

千聖「ゆりさんのクラス、ですか?」

 

ゆり「そ!みんなにぜひ入ってもらいたいものがあるんだ~。」

 

花音「私たちに、入ってもらいたいもの?」

 

彩「入る……って、もしかして……」

 

紗夜「そのまさか、でしょうね。」

 

燐子「……」ブルブルブル

 

……そのまさかって……。

 

いったい何のこと?

 

ゆり「分かってない子が1人いるみたいだけど……、ま、着いてくれば分かるよ。」

 

花・千・彩・紗・燐「……」

 

楓「……え?」

 

え、何?

 

分かってないの、僕だけなの?

 

……マジ?

 

え、みんなもう分かってんの?

 

……マジかよ。

 

ゆり「それじゃあ私のクラスへ、レッツゴー!」

 

てか、ゆりさんテンション高えな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

???「う゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」

 

楓・花・紗・燐「!?」

 

彩「うわぁぁぁ!!」ギュー!!

 

千聖「きゃっ!ちょ、ちょっと彩ちゃん、苦しいわよ。」

 

燐子「ひ、氷川さん……!この人、顔から……血が……!」

 

紗夜「落ち着いてください、白金さん。」

 

???「実は私、……今朝車にひかれたの。」

 

花音「ふぇぇ!?」

 

楓「す、すぐ病院行かないとじゃ……って、あれ?」

 

彩「ど、どうしたの……?空見くん……。」

 

丸山さん、腰抜けちゃってる……。

 

楓「……この人、生徒会長、だよね?」

 

花・彩・紗・燐「え!?」

 

千聖「ええ、どこからどう見ても、生徒会長よ。」

 

ゆり「ピンポンピンポーン♪2人とも大正解♪」

 

花・彩・紗・燐「えぇぇぇ!!」

 

生徒会長「どう?みんな。私、迫真の演技だったでしょ?」

 

彩「は、迫真の演技すぎるよ~……。」ヘタヘタ

 

花音「私も、ちょっと怖かったかも……。」

 

紗夜「流石、生徒会長ですね。」

 

燐子「……」

 

ゆり「彩ちゃんなんか、腰抜かしてたもんね~。」

 

彩「ちょ、ゆりさ~ん!」

 

生徒会長「ふふ♪……みんな、私たちが作ったお化け屋敷、楽しんでいってね。」

 

彩「え?……お化け、屋敷……?」

 

楓・花・千・紗・燐「……ジー」

 

 

 

 

 

『お化け屋敷』

 

 

 

 

 

彩「う、嘘でしょぉぉぉぉ!!??」

 

まぁ、血糊垂らした生徒会長が出てきた時点でなんとなく察してたよね……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

6人で同時に入るとギュウギュウになってしまうため、お化け屋敷へは次の組み合わせで入ることになった。

 

1番目:紗夜、燐子

 

2番目:千聖、彩

 

3番目:楓、花音

 

燐子「そ、それでは、……い、いってきます。」プルプルプル

 

紗夜「白金さん、体が震えてますよ……?」

 

彩「が、頑張ってね、燐子ちゃん。」

 

燐子「は、はい。すぅ、はぁ、すぅ、はぁ。……よし。だ、大丈夫……です。」

 

紗夜「それでは、行きましょう。」

 

 

 

 

 

千聖「燐子ちゃん、大丈夫かしら……。」

 

彩「……そろそろ、私達の番……かな?」

 

ゆり「うん、紗夜ちゃん達が入って30秒経ったよ。彩ちゃん、千聖ちゃん、行っておいで。」

 

彩「! ……ね、ねぇ、お化け屋敷って、さっきの生徒会長みたいなのが、いっぱいいるんだよね……?」

 

花音「え?う、うん、たぶん……。」

 

彩「……うぅ、千聖ちゃーん!!」ダキッ!

 

千聖「もう、しっかりしなさいよ彩ちゃん。あなたは私達Pastel*Palettesのリーダーでしょ?」

 

彩「今はそれ関係ないよー!うぅ、生徒会長みたいなのがたくさん……。うぅ……。」

 

千聖「……はぁ。分かったわよ。」

 

彩「え?」

 

千聖「ほら。」スッ

 

彩「……えーっと、手?」

 

千聖「私が手を繋いでいてあげるわよ。それなら怖くないでしょ?」

 

彩「! ……う、うん!」

 

ゆり「ふふ♪それじゃあ2人とも、いってらっしゃい。」

 

彩「いってきます!千聖ちゃん、行こ!」ギュッ!

 

千聖「もう、彩ちゃんったら。」

 

 

 

 

 

ゆり「……さぁ、最後は君達だね。」

 

楓「は、はい。」

 

花音「……ゴクリ」

 

楓「……それじゃあ松原さん、行こ…ギュッ! え?」

 

花音「///」

 

楓「……えっと、松原さん?この手は…「私も、ちょっと、怖いから///。……手、繋いで行きたいなって、思って///。」……そ、そう///。」

 

ゆり「(おー、花音ちゃん大胆~♪)」

 

楓「……よ、よし。じゃあ、行こっか。」

 

花音「う、うん!」

 

ギュッ!

 

楓「///!」

 

ま、松原さん、ちょっと強く握りすぎじゃない///?

 

……手汗、大丈夫かな///……。

 

ゆり「……それじゃあ最後の2人も、いってらっしゃ~い。」

 

楓・花「い、いってきます///。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

花音「……く、暗いね、空見くん……。」

 

楓「う、うん……。」

 

い、意外と……いや、めちゃくちゃちゃんとしてるお化け屋敷だ。

 

光が一切漏れておらす、辺りはほんとに暗い。

 

かろうじて松原さんや道が見えている程度だ。

 

だが、この暗さで進むのは危険とのことで、お化け屋敷に入る前には1グループに1つ懐中電灯が渡されている。

 

懐中電灯を照らしているおかげで、進むべき道のルートや、どこに壁があるかなどが分かるのだ。

 

ちなみに、その懐中電灯は僕が持っている。

 

楓「学校のお化け屋敷なんてってずっと思ってたけど、実際はこんなリアルなんだなー……。」

 

花音「え?……空見くん、学校の文化祭でお化け屋敷入ったことないの?」

 

楓「え?あ、……うん、まぁ。」

 

花音「……じゃあ、これが初めての学校でのお化け屋敷ってことになるんだね。」

 

楓「あー、まぁ、そうなるね。」

 

花音「……そっか。これが、初めての……」

 

楓「? 松原さん、何か言っ……

 

 

 

 

 

???「う゛か゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」

 

!?」

 

 

 

 

 

楓・花音「うわああああ(きゃああああ)!!」

 

花音「こ、怖いよ空見くん!!」

 

楓「こ、こっち!こっちに逃げよう!」

 

い、いきなりあんな脅かしかたされたら、誰だって驚く……

 

???「おーまーえーたーちー……」

 

楓「へ?」

 

???「こーこーでー……

 

 

 

 

な゛に゛し゛て゛る゛う゛う゛う゛う゛!!」

 

楓・花音「うわああああ(きゃああああ)!!」 

 

な、何でこんな連続で出てくるんだよおおおお!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後も、僕と松原さんは集中砲火を浴びるかのように脅かされた。

 

 

 

 

 

???「う゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」

 

楓・花音「うわああああ(きゃああああ)!!」 

 

 

 

 

 

???「か゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」

 

楓・花音「うわああああ(きゃああああ)!!」 

 

 

 

 

 

???「ま゛あ゛あ゛あ゛て゛え゛え゛え゛え゛!!」

 

楓・花音「うわああああ(きゃああああ)!!」 

 

 

 

 

 

???「わ゛る゛い゛こ゛い゛ね゛か゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」

 

楓・花音「うわああああ(きゃああああ)!!」 

 

 

 

 

 

???「う゛う゛ら゛あ゛め゛え゛し゛い゛や゛あ゛!!」

 

楓・花音「うわああああ(きゃああああ)!!」

 

 

 

 

 

もう驚きまくって、声がかれるかと思ったわ。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彩「……あ!帰ってきた!」

 

楓・花「……」

 

千聖「花音!大丈夫だった!?」

 

花音「ち、千聖ちゃん……。私、もう、……疲れ……ちゃった。パタリ」

 

千聖「!? 花音!?しっかりして!花音!かのおおおおん!!」 

 

ゆり「おぉ……。千聖ちゃん、迫真の演技……。」

 

紗夜「そんな呑気なことを言っている場合ですか!」

 

燐子「空見さん!しっかり……しっかりしてください!」

 

楓「……」チーン

 

ゆり「あちゃー、これは完全に伸びてるねー……。」

 

彩「空見くんも花音ちゃんも、しっかりしてえええ!!」

 

 

 

 

 

この出来事が原因で、ゆりさんのクラスのお化け屋敷は後日、“魔のお化け屋敷”という名前をつけられ、数々の人に恐れられることとなった。   




さよひなって、どうしてあんなに神なんだろう……。

1年間で、どれだけのスターが貯まるかなぁ?(さよひなどちらも当てられなかった民)


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44話 ポピパ on the stage!!

今年最後の更新です!!

……1ヵ月に1話ってマジでヤバいと思うんですよね。

だから来年は、まずは月3更新を目標にしていこうと思います……。(今年の目標もそんなんだった気がする……)

まぁとにかくまずは……。





文化祭回あと1話頑張ります!!


【花咲川女子学園 ???】

 

???「……くん!……して……」

 

……んうぅ、うーん?

 

???「……くん!……きて!空見くん!」

 

……ま、松原、さん?

 

花音「! 空見くん!大丈夫!?空見くん!」

 

楓「……、……!ガバッ!」

 

花音「わっ!」

 

楓「……あれ?僕、いったい何を……」

 

花音「空見くん……。良かったぁ~。」

 

千聖「気を失ってたのよ、あなた。」

 

楓「気を……。……あ!そうだ僕、ゆりさんのクラスのお化け屋敷に入って……」

 

思った以上に怖くて……いや、怖くはなかったな。

 

……脅かされまくったんだ。

 

脅かされまくって、びっくりしすぎて……。

 

……気を失って、今に至るって感じか。

 

あれ?そういやここって……。キョロキョロ

 

楓「A組……?また戻ってきたの……?」

 

紗夜「私が、丸山さんといっしょに運んだんです。」

 

楓「氷川さんと丸山さんが?」

 

彩「こんな風に、肩にかついでね。いやぁ、やっぱり空見くん、男の子だね。結構重かったもん。」

 

楓「は、はは……。……あ、そういや、ゆりさんは……」

 

燐子「ゆりさんは……生徒会長といっしょに、体育館のほうに……向かいました。あ、それと私達、……ゆりさんから伝言を……預かっているんですが……」

 

楓「伝言?」

 

燐子「はい。……

 

 

 

 

 

ゆり『ちょっとやり過ぎちゃったかな……。ごめんね、空見くん。』

 

 

 

 

 

……だそうです。」

 

楓「そ、そっか。……教えてくれてありがとう、白金さん。」

 

燐子「いえ。」

 

彩「……でも良かったよ。空見くんも松原さんもなんともなくて。」

 

ん?

 

千聖「全くその通りよ。花音のこと、とても心配したんだからね?」 

 

花音「あはは……。ご迷惑おかけしました……。」

 

楓「……松原さんも、気を失ってたんですか?」ボソッ

 

紗夜「ええ。その間、道行く人に変な目で見られて、いろいろ大変だったんですよ。」ボソボソ

 

楓「……なんか、その、……すみません。」ボソボソ

 

 

 

 

 

『ピンポンパンポーン♪』

 

 

 

 

 

楓・花・千・彩・紗・燐「!」

 

 

 

 

 

『まもなく、ステージ発表が始まります。ご観覧される生徒は、体育館にお集まりください。なお、ステージに出られる生徒は、ステージわきの待機所にお集まりください。繰り返します。もうすぐ……』

 

 

 

 

 

楓・彩「え!?もうそんな時間なの!?」

 

千聖「楓はともかくとして、彩ちゃんはいっしょに時計見てたでしょ……。」

 

花音「と、とにかく、急がないと!」

 

燐子「は、はい。……でも、今一番急がないとなのは……」

 

紗夜「……」ピューー!!

 

千聖「ちょ、ちょっと紗夜ちゃん!?廊下を走ったらダメなんじゃなかったの!?」

 

彩「い、いつもと、立場が逆……。」

 

花音「紗夜ちゃん、あんなに急いでどうしたんだろう?」

 

燐子「……」

 

 

 

 

 

紗夜『白金さん。このことは、丸山さん達には内緒にしていてくれませんか?』

 

燐子『え?ど、どうして……ですか?』  

 

紗夜『……』

 

燐子『……ひ、氷川……さん?』

 

紗夜『……ま、丸山さん達を、び、びっくり、させたいので///……。』

 

 

 

 

 

燐子「……ふふ♪」

 

楓「……さん。……白金さん。」

 

燐子「! は、はい!」

 

楓「! そ、そんなに驚かなくても……」

 

燐子「す、すみません……。えっと、……ど……どうしたんですか?」

 

楓「あぁ、うん。えっと、白金さん、氷川さんから何か聞いてないかなって思って。」

 

燐子「! ……い、いえ。私は……何も……。」

 

楓「そう……。ならいいんだけど。」

 

燐子「……ほっ。……バレないようにしないと。」

 

千聖「……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【花咲川女子学園 体育館】

 

ワイワイガヤガヤ

 

ワイワイガヤガヤ

 

彩「うわー!いっぱいいるー!」

 

千聖「これだけの人が、ステージ発表を見に来ているということよ。」

 

花音「わ、私達の演劇も、これくらいの人が見るのかな……?ふぇぇ、緊張するよぉ……。」

 

千聖「もう、花音ったら。今緊張してどうするのよ。」

 

花音「だ、だって~。」

 

燐子「プログラムによると……空見さん達の演劇は、このライブの次ですね。」

 

楓「うん……。」

 

へぇ~、ステージ発表、バンドのライブもあるんだ。

 

……“CHiSPA”、“Poppin'Party”かぁ。

 

どんなバンドなんだろう……。

 

『プルルルルル、プルルルルル……』

 

燐子「!」

 

楓「あ、ごめん白金さん。僕のだよ。」

 

燐子「そ、そうだったんですか……。隣にいたものですから、びっくり……しました。」

 

楓「ほんとごめん。ちょっと、向こう行って電話してくるよ。」

 

燐子「は、はい。」

 

 

 

 

 

彩「それにしても紗夜ちゃん、大丈夫かなぁ?急な用事が入って、ステージ発表いっしょに見れないって、さっき連絡が来たけど……」

 

花音「ちょっと、心配だよね。」

 

千聖「……」

 

花音「……あれ?燐子ちゃん、空見くんは?」

 

千聖「え?楓?……そういえば、いないわね。」

 

彩「さっきまで、燐子ちゃんの隣にいたよね?」

 

燐子「あの、実は…『ピロリン♪』? メール?いったい誰から……。!?」

 

花音「え?ど、どうしたの?燐子ちゃん。」

 

彩「もしかして、迷惑メールだった!?」

 

千聖「……燐子ちゃん、まさかとは思うけど、……楓じゃあ、ないわよね?」

 

花・彩「え!」

 

燐子「……はい。その、まさか……です。」スッ

 

花・千・彩「ジー……!?」

 

 

 

 

 

『ちょっと急な用事ができたからステージ発表いっしょに見れなくなった。松原さん達にもそう伝えておいて。』

 

 

 

 

 

彩「空見くんも~!?」

 

花音「急な用事って、いったい何なんだろう……。」

 

千聖「……」

 

燐子「……あのー、白鷺……さん?」

 

千聖「燐子ちゃん、彩ちゃんと花音をお願いね。」

 

燐子「え?」

 

彩「! え?千聖ちゃんどこ行くの!?もうすぐステージ発表始ま…「私も、急な用事ができたのよ。」ちょっと、千聖ちゃ~ん!!」

 

花音「……今日のみんな、ほんとに、どうしちゃったんだろう……。」

 

燐子「……心配……ですね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【花咲川女子学園 校舎裏】

 

楓「はぁ、はぁ、はぁ……。ここら辺の、はずだけど……。」

 

 

 

 

 

???「おーい!空見くーん!」

 

 

 

 

 

楓「! いた!」タタタ……

 

 

 

 

 

ゆり「お疲れ、空見くん。」

 

楓「はぁ、はぁ、は、はい。」

 

???「空見先輩!」

 

楓「え?……!と、戸山さん!?花園さんと、市ヶ谷さんも……。え、何で……」

 

香澄「それどころじゃないんですよ!」

 

たえ「りみがいないんです!」

 

楓「え?」

 

有咲「……私達、ゆりさんから全部聞きました。」

 

楓「! ゆ、ゆりさん……?」

 

ゆり「ごめんね。私がここに来たときには、もうりみがいなくて……。どうしようって思ってたら、香澄ちゃん達が来て、それで……」

 

楓「……だいたい、分かりました。」

 

有咲「空見先輩。」

 

楓「……」

 

有咲「言いたいことは、山ほどあります。」

 

山ほど……。

 

……そうだよな。

 

牛込さんは、市ヶ谷さん達の大事な友達。

 

そんな子に僕があんなことしたって聞いたら、そりゃ怒るよな。

 

……うん。

 

何を言われてもいい、覚悟はできている。

 

楓「……うん。」

 

香澄「あ、有咲!」

 

たえ「空見先輩も、悪気があったわけじゃ…「でも!」!」

 

! え?

 

有咲「……今は、りみを見つけるのが先です。」

 

楓「! い、市ヶ谷さん……。」

 

有咲「か、勘違いしないでください!別に、空見先輩を許したわけでは、全然、ないんで……。」

 

ゆり「……有咲ちゃんって、もしかしてツンデレ?」

 

有咲「なっ!ち、違いますよ///!」

 

香澄「もう、やっぱり有咲は有咲だね~。」

 

有咲「え~いくっつくなうっとうしい///!!」

 

たえ「私も、ほっぺすりすり~。」

 

有咲「だあああもうやめろおおおお!!香澄いい!!おたえええ!!」

 

ゆり「ふふふ♪」

 

……やっぱり市ヶ谷さんって、ツンデレなんだ。

 

ゆり「よし、それじゃあ空見くん、みんな。手分けして、りみを捜そう!」

 

香・た「はい!」

 

有咲「いいからお前らは早く離れろ~!!」

 

楓「……良い友達を持ってるね、市ヶ谷さんは。」

 

有咲「なっ///!……そ、空見先輩もだろ、それは。」ボソッ

 

楓「え?なんか言っ…「言ってません!ほら、早くりみを捜しますよ!!」! は、はい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

話し合いの結果(話し合いというほどでもないけど)、僕、ゆりさんと戸山さん、花園さんと市ヶ谷さんの三手に分かれて探すことになった。

 

ちなみに、なぜさっき僕は校舎裏のほうに向かっていたのか、それは後々話すとしよう。

 

……さて、まずはどこを捜すかだな。

 

うーん……。

 

……そうだな。

 

とりあえず、牛込さんが行きそうなところを片っ端から捜してみるか。

 

となると最初は……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【ゆり・香澄side】

 

ゆり「りみー!りみー!」

 

香澄「りみりーん!どこにいるのー!?」

 

シーン

 

ゆり「……なんて、大声だしても出てこないよね、普通。」

 

香澄「……りみりん……。」

 

ゆり「……ねぇ、香澄ちゃん。」

 

香澄「? 何ですか?」

 

ゆり「香澄ちゃんは、空見くんのこと、どう思ってるの?」

 

香澄「空見先輩、ですか?」

 

ゆり「うん。」

 

香澄「……空見先輩は、本当に真面目で、優しい先輩だなって思ってます。遊園地に行ったときも、私達のことをしっかり見守ってくれてたし、遊ぶときはいっしょに遊んでくれたし……。あ、あとあと!さっき私達のクラスにも来てくれたんですよ!おたえがパンダのラテアートカフェオレをすごい薦めてて、それで…「わ、分かったよ。その話は、まだ今度にしよう。」! す、すみません!つい、話がはずんじゃって……。」

 

ゆり「……そっか。真面目で優しい先輩、か。」

 

香澄「はい!……あ、も、もちろん!ゆりさんもですよ!?ゆりさんはグリグリのリーダーだし、ギター上手いし、歌も上手だし……」

 

ゆり「あはは、大丈夫だよ。香澄ちゃんの気持ちはちゃんと伝わってるから。」

 

香澄「……ゆ、ゆりさん……。」

 

ゆり「……それじゃあ、もう1つ、質問してもいいかな?」

 

香澄「もう1つ?」

 

ゆり「さっきの話を聞いて、どう思った?」

 

香澄「さっきの……。……あ!」

 

ゆり「……」

 

香澄「……びっくり、しました。私達の知らない間に、そんなことがあったなんて……。」

 

ゆり「……」

 

香澄「……私、りみりんの抱えてた悩みに、気づいてあげられなかった。もし気づいてたら、相談にのってあげることができたのに……。」

 

ゆり「……そのことを聞いて、空見くんのことを…「嫌いになんてなりません!」……」

 

香澄「空見先輩がそうしたのにはきっと、何が理由があるはずだから!あんな優しくて、後輩思いの人が、理由なしにそんなことを言うはずがありません!」

 

ゆり「……そっか。」

 

香澄「……!す、すみません、私、こんな生意気なこと…「いいんだよ、全然。」……」

 

ゆり「……じゃあ、尚更りみを見つけなくちゃね。早く香澄ちゃん達の音楽、聴きたいし♪」

 

香澄「! ……は、はい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【たえ・有咲side】

 

たえ「ねぇ有咲。」

 

有咲「ん、何?」

 

たえ「有咲ってさ、空見先輩のこと好きなの?」

 

ズルッ

 

バタンッ!

 

たえ「! 有咲、大丈夫?今すごい音したけど……」

 

有咲「いたたた……。お、おたえがいきなり変なこと言うからだろ!?」

 

たえ「? 私はただ、空見先輩のこと好きなの?って聞いただけ…「それが変なことなんだよ!!」……そうかなー?」

 

有咲「ったく……。変なこと言う暇があったら、しっかり捜せよな?」

 

たえ「……私は空見先輩のこと好きだよ。」

 

バタンッ!

 

たえ「! 大丈夫有咲!?今日なんか変だよ?」

 

有咲「お、お前!!絶対わざとやってんだろ!!」

 

たえ「え、何を?」

 

有咲「ああああ~~~!!!ったくこのド天然があああ!!」

 

たえ「?」

 

有咲「空見先輩のことだよ!!さっきからその、……空見先輩のこと、す、……す、好き///……だのなんだの!!ほんと何なんださっきから!!」

 

たえ「……だってほんとのことだし。」

 

有咲「ほ、ほんとのことって、お前……。……よくそんな、堂々と言えるよな……。」

 

たえ「だってほんとのことだし。」

 

有咲「2回も言わなくていいだろ!!」

 

たえ「それで?有咲は?」

 

有咲「はぁ、はぁ、……え?私?」

 

たえ「うん。空見先輩のこと、好き?」

 

有咲「なっ///!べ、べ、別に、そ、そそ、そんなんじゃ…「じゃあ嫌い?」ち、違うって!空見先輩のことは嫌いじゃないけど、別に、その、……お、男として、好きっていうのとは、また別で……」

 

たえ「男?……!まさか有咲、1人の男の子として空見先輩のことが…「だああかああらああ!!違うって言ってんだろおおおお!!!……って、ん?」? どうかした?有咲。」

 

有咲「……もしかしてお前、空見先輩のことが好きって、……その、……お、男として、じゃなかったのか?」

 

たえ「……うん、違うよ?」

 

有咲「え……。じゃあ、何で……」

 

たえ「空見先輩、面白いから。すごくからかいがいがあって、これが全然飽きないんだ。からかって、いろんな表情をする空見先輩、すごく面白いんだよ。だから好きなんだ。」

 

有咲「……」

 

たえ「? どうしたの?有咲。口ポカーンって開けて。」

 

有咲「……なんか、私だけ変に驚いて……バカみたいじゃねえか。こんなんじゃ、まるで香澄だよ。」ボソッ

 

たえ「え?何か言った?有咲。」

 

有咲「何でもねえよ。ほら、さっさとりみ捜しに行くぞ。早くしねえと、私達の出番始まっちまうよ。」

 

たえ「……うん、そうだね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【花咲川女子学園 体育館】

 

『続いては、弓道部による、スペシャルパフォーマンスです!』

 

花・彩「弓道部!?」

 

燐子「! が、頑張ってください。」

 

 

 

 

 

弓道部員A「……」

 

弓道部員B「……」

 

弓道部員C「……」

 

弓道部員D「……」

 

紗夜「……」

 

 

 

 

 

彩「あ!紗夜ちゃんが出てきたよ!」

 

 

 

 

 

紗夜「……皆さん、今まで練習してきた成果を、思う存分発揮してください。」ボソッ

 

弓道部員A・B・C・D「はい!」

 

紗夜「それでは、……参ります!」

 

 

 

 

 

そうして、紗夜ちゃん達弓道部の、スペシャルパフォーマンスが始まった。

 

パフォーマンスはとてもカッコよくて、弓道のルールをよく知らない私でも見入ってしまうほどだった。

 

他の弓道部員の子達も凄かったけど、特に紗夜ちゃん!

 

私達とお話したり、お弁当を食べたり、また、Roseliaとして演奏している紗夜ちゃんとも違う、弓道部としての紗夜ちゃん。

 

カッコいいのはもちろんなんだけど、……美しい、……凛々しい。

 

弓道部の紗夜ちゃんには、そんな感じの言葉が一番合うような気がする。

 

花音「わぁ……。」

 

燐子「……すごい……。」

 

花音ちゃんも燐子ちゃんも、もちろん私も。

 

弓道部のスペシャルパフォーマンス中は、紗夜ちゃんにずっと見とれちゃってたんだ♪

 

あ、もちろん、他の子達も凄いと思ってるよ。

 

とても練習したんだなぁって、見ているだけで伝わってくるもん。

 

……紗夜ちゃんの急な用事って、これのことだったんだ。

 

別に隠さなくてもいいのにー。

 

あ、もしかして紗夜ちゃん、私達を驚かせるために……?

 

……そう考えたら、私達を驚かせるためにこのことを秘密にしてた紗夜ちゃん、なんか可愛いなぁ♪

 

……空見くんと千聖ちゃんも、いっしょに見れたら良かったんだけどなぁ。

 

急な用事、かぁ。

 

……この後のバンドの子達のライブは、いっしょに見れるといいんだけど……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【楓side】

 

はぁ、はぁ、はぁ……。

 

……ど、どこにもいない……。

 

中庭、図書館、教室、屋上。

 

いろんな場所を捜したけど、牛込さんの姿は全然見当たらず……。

 

はぁ、はぁ、……まさか、逃げられるとは思わなかった……。

 

ま、そりゃそうだよな。

 

突然校舎裏で待ってろ、なんて言われたら、怖くて逃げ出したくもなるか。

 

特に、今の牛込さんは。

 

はぁ……。

 

……どーすりゃいいんだほんと……。

 

……どこか、他に牛込さんが行きそうなところはないもんか。

 

考えろ、考えるんだ楓。

 

今までの牛込さんとの会話から、何かを導きだすんだ。

 

 

 

 

 

りみ『わ、私、牛込りみです。べ、ベース、やってます。』

 

 

 

 

 

りみ『私、チョコが好きで、チョコを使った料理、というか、デザートを見るのも好きなんです。いつか私も、こういうの作ってみたいなぁって思いながら見るのが、とても楽しみです。』

 

 

 

 

 

りみ『も、もし、迷惑じゃなかったら、その、……ライブ、いっしょに行きませんか?』

 

 

 

 

もっと、もっと思い出すんだ。

 

牛込さんとの会話を。

 

牛込さんの言葉を。

 

 

 

 

 

りみ『め、迷惑だなんてそんな!……あ、ありがとうございます!えっと、私、牛込りみっていいます!』

 

 

 

 

 

りみ『あ、いや、その、……い、いつもみんなと帰ってるから、1人で帰るのは、ちょっと寂しいなーって思って、それで……』

 

 

 

 

 

りみ『すごいです!恋愛ものの、しかもオリジナルの演劇。すごくハードルが高そうですけど、空見先輩達がやったらきっと、とてもいい劇になりそうです!私、応援します!』

 

 

 

 

 

りみ『こんばんは、沙綾ちゃん。チョココロネ、まだある?』

 

 

 

 

 

りみ『横になってください。』

 

楓『え?……今、何て…『早く、ここに、横に、なって、ください。』……い、いや、横になるスペースなんてどこに…『こ・こ・に、横になってください!』……』 

 

 

 

 

 

楓「! ……」

 

 

 

 

 

楓『自分の膝叩いてここに座ってくださいなんて、膝枕以外の何でもないだろ!』

 

 

 

 

 

楓『とにかく、お前が何を言おうと、僕はそこに横になんかならねぇからな。膝枕ごっこがしたきゃ、友達とやれ友達と。戸山さんとか山吹さんとかいるだろ。』

 

 

 

 

 

楓『ったく、何考えてんだよほんとに。時と場合を考えろ。』ボソッ

 

 

 

 

 

……僕が、あんなことを言わなければ……。

 

もっと優しく言ってあげれば、今頃、こんなことには……。

 

……、……、……。

 

 

 

 

 

……いや。

 

今はそんなことを悔やむより、牛込さんを見つける方が先だ。

 

何か、何かを忘れているはずなんだ。

 

牛込さんとした会話の中にある、一番重要そうなことを。

 

思い出せ、思い出せ……!

 

……、……、……。

 

……!!

 

 

 

 

 

りみ『……私、お姉ちゃんになりたいんです。』

 

 

 

 

 

りみ『! ちゃ、ちゃう!そうじゃなくて、えっと、お、お姉ちゃんみたいになりたいって意味で、それで……』

 

 

 

 

 

……そうだ。

 

いっしょにSPACEのライブに行ったときに、牛込さん言ってた。

 

 

 

 

 

りみ『……私、お姉ちゃんみたいになりたいんです。』

 

楓『お姉さん、みたいに?』

 

りみ『はい。お姉ちゃんのような、カッコいいベーシストに。あ、お姉ちゃんはギター、私はベースと、担当楽器は違うんですけど、私のベース、お姉ちゃんからもらったもので、だから、えっと、その…『だ、大丈夫。言いたいことはだいたい分かったから。』え?そ、そう、ですか?』

 

 

 

 

 

……お姉ちゃんみたいに、ゆりさんみたいになりたいって、言ってたっけな。

 

ゆりさん……。

 

……!

 

そうだ!

 

まだあの教室に、行ってなかった!

 

もう、この場所にかけるしかない。

 

……よし!ダッ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【花咲川女子学園 ???】

 

りみ「……」

 

 

 

 

 

りみ『これは私の問題なの!部外者の沙綾ちゃんが、私に口出ししないで!ダッ!』

 

沙綾『あ!ちょっと牛込さん!』

 

 

 

 

 

ゆり『珍しいよね、りみがここまで頑固になるの。……ということは、何か特別なことがあってそうなった、ってことかな?』

 

りみ『特別なことなんて、そんな簡単なものじゃないもん。』

 

 

 

 

 

りみ「……」

 

 

 

 

 

楓『あの、僕、牛込さんに謝りたいんだ。……その、立ち話も難だし、どこか座れるところで……』

 

りみ『あなたと話すことなんて何もありません。では。』

 

楓『! ちょ、ちょっと待っ……』

 

タッタッタッタ……

 

 

 

 

 

……私、いつまでこんなこと……。

 

これからライブがあるのに、……こんなときに、いろいろ思い出しちゃって……。

 

……あの出来事から逃げ続けてる自分が、嫌になって、……こんなところに、逃げてきちゃって……。

 

……もう、嫌だよ……。

 

こんな気持ち、もう……。

 

 

 

 

 

???「いた!!」

 

 

 

 

 

りみ「!?」

 

???「はぁ、はぁ、はぁ、……良かった、思ったとおりだったよ。」

 

りみ「……空見、先輩……。どうして、ここに……。」

 

楓「いろいろ思い出しまくって、最終的にここにたどり着いたんだ。ちょっとかけだったけど、……“ゆりさんの教室”で合ってて良かったよ。」

 

りみ「……」

 

楓「……いっしょに戻ろう。戸山さん達が待ってるよ。」

 

りみ「……無理です。」

 

楓「な、何で…「今のこんな気持ちじゃ、ステージになんて上がれません!!」……ステージ……?」

 

……ごめん、香澄ちゃん、おたえちゃん、有沙ちゃん。

 

今日のために、あんなに練習したのに。

 

……こんなぐちゃぐちゃな気持ちじゃ、ステージに立ったってまともな演奏なんかできない。

 

空回りして、音がずれて、演奏が演奏じゃなくなって。

 

最終的に、みんなに迷惑をかけるのがオチだ。

 

……やっぱり私は、お姉ちゃんみたいには……。

 

楓「牛込さん!」

 

りみ「!」

 

楓「……」

 

りみ「……な、何ですか、突然……。」

 

楓「……ごめん!!」

 

りみ「!?」

 

楓「僕、牛込さんにあんなひどいこと言って、……ほんとに、くそ野郎だなって思った。1年生に、あれくらいのことで怒鳴るなんて。大人気ないとかそういう以前に、最低な行為だっ…「何で!!」……」

 

りみ「何で空見先輩が謝るんですか!?悪いのは、明らかに私のほう…「いいんだよ!」!?」

 

楓「牛込さんはまだ1年生だもん。分かんないことや間違えちゃうことなんていくらでもあるよ。」 

 

りみ「! それは、空見先輩も同じ…「そう、同じだよ。」え……?」

 

楓「僕は牛込さんより1つ上の2年生だけど、馬鹿だから分かんないことや間違えることもいっぱいあるし、そのせいで世間知らずって言われることもしばしばだよ。」

 

りみ「……いったい、何が言いたいんですか。」

 

楓「僕も牛込さんも、まだまだ成長途中ってことだよ。」

 

りみ「成長、途中……。」

 

楓「牛込さんが何で突然あんなことを言ったのかは分からないけど、それは牛込さんも同じだったんじゃないの?自分でも何でそんなことを言ったのか分からない。そんな気持ちだったんじゃないの?」

 

りみ「……」

 

楓「僕もそうだよ。何で牛込さんにあんなひどいことを言ってしまったのか、言ってる途中は全然分からなかった。てか気づかなかった。……牛込さんも、最初あれを言われたときは何で自分がそんなことを言われてるのか分からなかったでしょ?」

 

りみ「……コク」

 

楓「でも、お互い言った後、言われた後、どうして自分がそうしたのか、されたのか、気づくことができた。そうでしょ?」

 

りみ「……まぁ、はい。」

 

楓「それが、成長に繋がるんだよ。自分で気づくことができることで、一歩成長する。そして今も。……お互いがお互いを許しあうことで、また一歩成長する。それでいいと思う。」

 

りみ「……」

 

楓「だから、……ごめん。……牛込さんに許してもらえるまで、僕は何度でも謝り続け…「いいですよ。」!」

 

りみ「……別に、……許します。」

 

楓「……牛込さ…「それなら。」ん?」

 

りみ「お互いを許しあうことで成長するなら、私も空見先輩に許してもらう必要がありますよね?」

 

楓「あ……。……うん、確かに、そうだね。」

 

りみ「空見先輩、……本当に、すみませんでした。」

 

楓「ううん、大丈夫。」

 

りみ「……許すって、言ってくださいよ。」

 

楓「え?……あ、そっか。じゃあ、……うん、許すよ。」

 

りみ「……ありがとう、ございます。」

 

楓「……これで、気持ちはすっきりした?」

 

りみ「……若干。」

 

楓「若干!?え、まだダメなの!?」

 

りみ「……」

 

楓「……えっと、……何が、ダメだった?」

 

りみ「……空見先輩。次は、私の話を聞いてください。」

 

楓「え?……あぁ、うん。」

 

りみ「空見先輩。私……」

 

楓「……」

 

りみ「……私、

 

 

 

 

 

……空見先輩のこと、好きです。」

 

楓「……え?」

 

りみ「……」

 

楓「……え?……え、えっと、あの、牛込、さん?……好きって、え?……冗談、だよ…「先輩として。」……ん?」

 

りみ「私、……先輩として、空見先輩のことが好きです。」

 

楓「……せ、せん、先、輩?」

 

りみ「はい。」

 

楓「……あ、あ、えっと、……その、う、うし…「空見先輩の真面目なところ、優しいところ、素直なところ、たまに見せる可愛らしいところや、ちょっと不器用なところも、全部含めて尊敬しています。」……そ、尊敬……」

 

りみ「私、空見先輩みたいな、優しい先輩になりたいんです。だから、……これからも、後輩として、よろしくお願いします!」

 

楓「あ、えっと、その、……ま、まぁ、うん。」

 

りみ「……これが、私の言いたかったことです。」

 

楓「……は、はぁ。」

 

りみ「ふぅ、緊張したぁ。……でも、これで気持ちが楽になりました。」

 

楓「そ、それは、……良かった、ね。」

 

りみ「空見先輩。私達のステージ、しっかり見ていてくださいね!」

 

楓「……う、うん。」

 

りみ「それでは、……行ってきます!」

 

タッタッタッタ……

 

楓「……い、いってらっしゃーい……。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

牛込さんが行った後も、僕は数秒ボーっとしていた。

 

楓「……い、いったい、何だったんだ……?」

 

 

 

 

 

???「あなた、あんな話もできるのね。」

 

 

 

 

 

楓「え?クルッ ……!し、白鷺さん!?」

 

千聖「ごめんなさい。盗み聞きするつもりはなかったのだけれど、たまたまあなたを見つけたからつけていったら、りみちゃんと話していたから、そのまま最後まで……」

 

楓「いやガッツリ盗み聞きしてるじゃないですか!?」

 

千聖「たまたま場に居合わせちゃったのよ。」

 

楓「いや、だからそれを盗み聞きって言うんじゃ…「それにしても、まさか楓が告白されるなんてね。」……あれ、告白って言うんですか?」

 

千聖「言うわよ。りみちゃんが自分の思いを告げたのだから。」

 

楓「……でも、なんか腑に落ちないんですよね。」

 

千聖「先輩として好き、ってところが?」

 

楓「はい、まぁ。」

 

千聖「……あなた、珍しく冷静ね。」

 

楓「だって、流れるような告白でしたから。」

 

千聖「まぁ、……確かにそうね。りみちゃん、まるで嵐のようだったものね。本人の性格とは裏腹だったわ。」

 

楓「そもそも、告白なんてものを初めてされて、しかもそれがさっきのでしたから、あまり実感がわかなくて……」

 

千聖「……あなた、たえちゃんに付き合ってくださいって告白されてたじゃない。」

 

楓「あれはノーカンですよ!結局花園さんの悪ふざけだったんですから!」

 

千聖「あなた、言い方というものがあるでしょ……。」

 

楓「あ。……と、とにかく!僕が言いたいのは、牛込さんとは今までどおりの接し方でいいのかどうかってことなんです!」

 

千聖「いいんじゃないの?今までどおりで。」

 

楓「いや即答……。」

 

千聖「りみちゃんがどういう意図で“先輩として好き”って言ったのかは分からないけど、……おそらく、“友達として好き”と同じ意味だととらえておけば問題ないはずよ。」

 

楓「友達として好き……。なるほど……。」

 

千聖「どう?少しはもやもやが晴れた?」

 

楓「……はい。今ので、だいぶ晴れました。」

 

千聖「だいぶ……。そ、そう。」

 

そっか。

 

友達として好き、か。

 

……そういう考えなら納得だ。

 

楓「僕、体育館に戻ります。戻って、牛込さんのステージを見ないと。」

 

千聖「……そうね。私もすぐに行くわ。」

 

楓「はい!白鷺さん、ありがとうございます!」ダッ!

 

タッタッタッタ……

 

 

 

 

 

千聖「……相変わらずね、楓は。」

 

……私も、あなたが好きよ、楓。

 

……友達、いや、親友としてね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【花咲川女子学園 体育館】

 

楓「はぁ、はぁ、はぁ……」

 

 

 

 

 

彩「……!空見くん!!」

 

花・紗・燐「!!」

 

 

 

 

 

楓「あ、ま、丸山さん。はぁ、はぁ……」

 

花音「空見くん!大丈夫!?すごい息切れしてるよ!?」

 

楓「だ、大丈夫、大丈夫……。」

 

今日は、めちゃくちゃ走り回ったな……。

 

紗夜「空見さん。」

 

楓「あれ、氷川さん?用事はもういいんですか?」

 

紗夜「あ、はい。先ほど終わらせてきました。」

 

楓「そうなんですか。」

 

燐子「あ、あの……空見さん。……し、白鷺さんは……」

 

楓「あ、あぁ、白鷺さんなら…「ここにいるわよ。」!?」

 

彩「千聖ちゃん!」

 

花音「千聖ちゃんも用事、やっと終わったんだね。」

 

千聖「! え、えぇ、まぁ……。(花音には後で、本当のことを話しておいたほうがいいわね……。)」

 

楓「白鷺さん、いつの間に……」

 

千聖「それより、ライブは大丈夫?間に合ったの?」

 

楓「! そうだ!ライブ!牛込さん達のライブ!」

 

紗夜「ライブなら……」

 

燐子「たった今、始まるところです。」

 

楓「! よ、良かったぁ、間に合ったぁ。」

 

花音「空見くん、そんなに見たかったんだね、香澄ちゃん達のライブ。」

 

彩「そりゃあ、香澄ちゃん達のライブだもん。応援したくなるよね!」

 

……戸山さん、花園さん、市ヶ谷さん、そして、……牛込さん。

 

ライブ、頑張れ。

 

 

 

 

 

りみ「(みんなに、そして、……空見先輩に、楽しんでもらえるような演奏をするんだ!)」

 

香澄「それでは、最初の曲、行きます!……『私の心はチョココロネ』!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戸山さん達のライブ、初めて見たけど、とても良かった。

 

この場にいる生徒全員が盛り上がってて、もちろん丸山さん達も、戸山さん達のライブを楽しんでた。

 

もちろん、それは僕も同じだ。

 

牛込さんも、さっきまでの落ち込んでる姿が嘘のように、ライブを楽しんでいた。

 

グリグリとは、また違うライブ。

 

これが、戸山さん達のライブなんだ。

 

文化祭でのみんなのライブ、これは、一生心に残るものになるだろうと、そう思った。

 

……ただ、1点を除いては。

 

 

 

 

 

……と、思っているときだった。

 

 

 

 

 

香澄「……聞いてください。」

 

ガラガラガラ

 

香澄「!」

 

 

 

 

 

楓「!」

 

あ、あれって……!

 

 

 

 

 

沙綾「……」

 

 

 

 

 

ザワザワザワ

 

ザワザワザワ

 

花音「さ、沙綾ちゃん!?」

 

彩「え?何?どういうこと!?」

 

千・紗「……やっぱりね。」

 

燐子「……2人は、……分かって……いたんですか?」

 

千・紗「いえ、なんとなく、そんな気がしただけよ(です)。」

 

 

 

 

 

香澄「さーや!」

 

たえ「沙綾!」

 

りみ「沙綾ちゃん!」

 

有咲「(……やっと来たか。)」

 

沙綾「……お待たせ、香澄。」

 

香澄「……来てくれたんだね。」

 

沙綾「……ふふ♪」

 

 

 

 

 

……まさか、山吹さんが来るなんて。

 

……やっぱり山吹さん、ドラムやってたんだ。

 

あの写真、遊びで撮ったなんて、変だと思ったんだよね。

 

 

 

 

 

りみ「……沙綾ちゃん。」

 

沙綾「その様子だと、仲直りできたみたいだね。」

 

りみ「……うん!……ありがとう、沙綾ちゃん。」

 

沙綾「そのお礼は、後に取っておいて。今は……これでしょ♪」

 

りみ「うん!頑張ろうね!」

 

 

 

 

 

彩「沙綾ちゃんを入れてのライブなんて、すごいサプライズだよ!ね、花音ちゃん!」

 

花音「うん。……そっか、沙綾ちゃんもドラムやってたんだ。」

 

千聖「あなたとお揃いね、花音。」

 

花音「……うん!」

 

燐子「氷川さん……。」

 

紗夜「あの子達のライブから得られるもの、私は、それを見つけたいと思います。」

 

燐子「……私も、……手伝います。」

 

戸山さん、牛込さん、花園さん、市ヶ谷さんに加え、山吹さんを入れた5人のライブ。

 

きっと、さっきよりも盛り上がるライブになるはずだ。

 

 

 

 

 

沙綾「……いつでも。」

 

香澄「うん。……お待たせしました。……聞いてください。……『STAR BEAT!~ホシノコドウ~』!」




今年はいろいろありましたね。  
 
いや、もういろいろありすぎましたよ。

主にコ○ナのせいで。

まだマスクや手洗いうがいなど、感染予防をする日々が続きそうですが、コ○ナが撲滅するその日まで、僕達は感染しないよう引き続き感染予防をしっかり行っていきましょう!

こんなやつが何上から目線に偉そうなこと言ってんだと思いますが、上記のことを1人でも多く続けていけば、いつかきっと、またいつもの平和な日常が訪れるはずです!

その日がくるまで、お互い頑張っていきましょう!!

では、よいお年を!!


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45話 2-A on the stage!!(前編)

今更ですが……。

新年明けまして、おめでとうございます!

今年もよろしくお願い申し上げます!

というわけで、新年一発目の投稿です!

今年の目標はズバリ、月3更新!

1ヶ月に3本投稿できるように、今年は頑張っていきたいと思っています。

あと、1つすみません。

……今回の1話じゃ収まらなかったので、2話構成になってしまいました。

マジですみません……。


香澄『私達5人で!』

 

香・た・り・有・沙『Poppin'Partyです!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

楓「……」

 

「……くん、……くん!」

 

楓「……」

 

「……くん!……空見くん!」

 

楓「! え?」

 

花音「や、やっと気づいた~。」

 

千聖「あなた、何ぼうっとしてるのよ。もうすぐ本番なのよ?」

 

楓「本番……。あ、そっか。うん、そう、そうだよね。ごめん。」

 

千聖「……分かれば、いいけど。」

 

 

 

 

 

「白鷺さーん、ちょっとこれ手伝ってー。」

 

千聖「! ええ、今行くわ。花音、ちょっとこの場を離れるわね。」

 

花音「うん。」

 

楓「……」

 

花音「……ねぇ空見くん、何かあった?もしかして、具合悪いとか…「あ、いや、大丈夫。全然、そういうんじゃないから。」そう、なの?」

 

楓「うん。……たださ。」

 

花音「ただ?」

 

楓「……戸山さん達のライブ、凄かったなって思って。」

 

花音「香澄ちゃん達の……。うん、そうだよね。」

 

楓「何だろう、普通の凄いとは違うんだよ。グリグリのときとはまた違う感じの凄いで、えーっと……そうだな、何て言うんだろう……。」

 

花音「……引き込まれる?」

 

楓「そうそれ!聞いてると、戸山さん達の世界に引き込まれるというか、……なんか不思議な感じがするんだよ。初めて聞いたはずなのに、初めて聞いた気がしない……。すごく良い曲だったってのもあるし、演奏が良かったってのもあるし……。……ダメだ、上手く言葉にできない……。」

 

花音「……」

 

楓「……?松原さん?」

 

花音「! あ、ごめん、ちょっとぼうっとしちゃって。」

 

楓「珍しいね、松原さんが。」

 

花音「……その、普通の凄いとは違う凄いが何なのか、それは、空見くんじゃないと分からないよ。」

 

楓「うん……。でも、これだっていう感想がなかなか思い付かなくて……」

 

花音「……でもね。私、これだけは言えるよ。」

 

楓「?」

 

花音「空見くん、好きなんだよ、きっと。香澄ちゃん達のバンドが。」

 

楓「……バンドが……好き……。……!」

 

 

 

 

 

りみ『空見先輩には、ないんですか?自分が思う、最高のバンド。』

 

 

 

 

 

楓「……もしかしたら最高のバンドって、そうやって決まるのか……。」

 

花音「空見くん?」

 

楓「……ねぇ松原さん。」

 

花音「ん?」

 

楓「僕、他のバンドの曲も、聞いてみたくなった。」

 

花音「! ……」

 

楓「氷川さん達のバンド、丸山さん達のバンド……。あと確か、松原さんもやってるんだよね?……みんな聞きたい。聞いてみたくなっちゃった。」

 

花音「……いつか。」

 

楓「?」

 

花音「いつか絶対、聞かせてあげる。私達、ハローハッピーワールド!のライブを。」

 

楓「ハローハッピーワールド!……」

 

花音「って、なんか上から目線になっちゃったね、ごめん…「ううん、全然。……楽しみにしてるよ。」……うん。」

 

 

 

 

 

千聖「楓ー、花音ー、そろそろ始まるわよー。」

 

 

 

 

 

楓・花「はーい!」

 

花音「……それじゃあ空見くん、行こっか。」

 

楓「うん。……頑張ろう、松原さん。」

 

花音「うん!」

 

いよいよ、僕達2-Aの演劇が始まる。

 

いろいろあったけど、できることは全部やったつもりだ。

 

上手くいかなかったところも、何度も何度も練習してきたし、白鷺さんのスパルタ指導も耐えた。

 

すぅ……はぁ……。

 

……よし。

 

……絶っっっっ対に!

 

成功させるんだ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー観客席sideー

 

「……!いたいた!彩先ぱーい!」

 

彩「! あ!香澄ちゃん!みんな!」

 

 

 

 

 

りみ「はぁ……はぁ……ま、間に合いましたか?」

 

彩「うん!全然大丈夫だよ!」

 

紗夜「今は準備をしているようなので、もう少しで始まると思いますよ。」

 

香澄「そうなんですか。良かったぁ~。」

 

有咲「ったく、香澄が早く行かないと始まっちゃうって急かすから、無駄な体力使っちゃったじゃねーかよ。」

 

沙綾「まぁまぁ、そのおかげで間に合ったんだし。」

 

たえ「空見先輩達の劇、私も出たかったなー。」

 

有咲「いや出たかったのかよ!!私ら違うクラスだぞ!?」

 

彩「あはは……。……でも、そうだねー。」

 

燐子「丸山さん?……どうか……しましたか?」

 

彩「たえちゃんの言う通り、空見くん達といっしょに劇に出れたら、楽しかったんだろうなーって。えへへ、つい私も思っちゃった。」

 

香・た・り・有・沙・燐「……」

 

紗夜「しかし、空見さん達の演劇は、確か恋愛ものなんですよね?仮に出れたとしても、あなた達にはハードルが高いんじゃ……」

 

彩「うっ……。そ、そこは~……なんとか根性で乗り切る!」

 

紗・燐「こ、根性……?」

 

沙綾「あはは、なんか香澄みたいですね、それ。」

 

りみ「私も、それは思っちゃったかな。」

 

香澄「え!?私、そんなこと言うかな?」

 

有咲「お前なら、言いかねないかもなー。」

 

香澄「え~、そうなの~?」

 

彩「あはは……。」

 

パッ!

 

たえ「! 暗くなった!」

 

沙綾「いよいよ始まるんだね。」

 

りみ「な、なんか、私までドキドキしてきちゃった……。」

 

香澄「う~、楽しみ~!」

 

有咲「演劇なんだから、静かに見ろよな静かに。」

 

燐子「だ……大丈夫……でしょうか……。」

 

紗夜「ええ。あの人達なら、きっと……。」

 

彩「……」

 

頑張って、空見くん、千聖ちゃん、花音ちゃん、みんな。 

 

 

 

 

 

『これより、2-A演劇、『他人と友達と親友と……』を開演いたします。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  2-A  演劇『他人と友達と親友と……』前編

 

〈配役〉

・主人公:空見楓

・ヒロインA:松原花音

・ヒロインB:白鷺千聖

・クラスメイトA:橋山りか

・クラスメイトB:宮村音羽

・ナレーション:浅井美菜

・先生:上記以外の生徒

 

※劇中に出てくる人名、地名はフィクションです

※下記は全て演劇の内容です。本編とは全く関係ありません。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

美菜(ナレーション)『ここは、花ノ川学園。この街、つくし町の中央に位置する、ごく普通の高校である。……夏休みが終わり、2学期も始まろうとしている今日(こんにち)、この学校に、1人の転校生がやってくる。』

 

 

 

 

 

先生「それじゃあさっそくだけど、このクラスの転校生を紹介するわね。君、教室に入ってきなさい。」

 

ザワザワザワ(効果音)

 

ザワザワザワ(効果音)

 

カノン(ヒロインA)「……」

 

チサト(ヒロインB)「……」

 

 

 

 

 

ガラッ

 

???「……」

 

チサト「……っ!」

 

カノン「(! 転校生って、男の子だったんだ……。)」

 

???「……」

 

先生「……えっとー……自己紹介、してくれる?」

 

カエデ(主人公)「……空見、カエデです。」

 

ザワザワザワ

 

ザワザワザワ

 

カノン「(……え、それだけ……?)」

 

先生「……あ、ありがとう。えっと、それじゃあ空見くんは……松原さんの隣に座ってもらおうかな?」

 

カノン「! わ、私ですか!?」

 

先生「ええ。空見くんに、この学校のこと、いろいろ教えてあげてね。」

 

カノン「……は、はい……。」

 

カエデ「……」

 

カノン「……えっと、そ、空見くん。よ、よろしくね。」ボソボソ

 

カエデ「……」

 

カノン「(え……。……む、無視、された……?)」

 

チサト「……」

 

先生「そ、それじゃあ、転校生の紹介も終わったところで、授業に入るわね。みんな、教科書を出して……」

 

 

 

 

 

美菜『2学期の初めという、珍しいタイミングで転校してきた、空見カエデ。自己紹介は一言で、隣の席になった松原さんからのあいさつも無視。不穏な空気が流れる中、空見カエデはクラスの人達と仲良くしていけるのだろうか……。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~放課後~

 

『キーンコーンカーンコーン』

 

カエデ「……ガタッ」

 

カノン「! あ、あの!」

 

カエデ「?」

 

カノン「……そ、空見……くん?」

 

カエデ「……」

 

カノン「えっと……。……が、学校案内とかって、大丈夫?」

 

カエデ「……どういうこと?」

 

カノン「え?あ……そ、そうだよね。いきなり言われても、何のことか分からないよね。ご、ごめん……。」

 

カエデ「……じゃあ僕、帰るから。」

 

カノン「あ、ちょっと待っ…「学校案内は、別にしてもらわなくて大丈夫だから。」え?」

 

カエデ「……じゃ。」

 

カノン「! ちょっと、空見くん!……行っちゃった……。(……私、嫌われてるのかなぁ?はぁ、先生があんなこと言わなければなぁ……。)」

 

 

 

 

 

~2時間前~

 

ー教務室ー

 

カノン「えぇ!?私が、空見くんに!?」

 

空見「ええ。松原さん、席隣だし、学級委員もやってるから、適任かなって思ったんだけど。」

 

カノン「……で、でも私、あまり男の子とは話さないし……。」

 

先生「話し合いとかだと、積極的に話してたじゃない。」

 

カノン「そ、それは、大事な話し合いだったからで……。もともと学級委員も、友達や先生に勧められたから引き受けただけだし……。」

 

先生「でも松原さん、頑張ってるじゃん。クラスのために、人一倍努力してると思う。」

 

カノン「……そう、でしょうか……。」

 

先生「そうだよ。もっと自信を持って、松原さん。」

 

カノン「……はい。……あ、ありがとう、ございます///……。」

 

先生「いいっていいって。……それで、松原さん。さっきの話なんだけど……引き受けて、くれるかな?」

 

カノン「……は、はい!私、やってみます!」

 

 

 

 

 

カノン「……私が、空見くんのサポート係かぁ。あのときは先生に言われたことが嬉しくて、やりますって言っちゃったけど……。はぁ……。難航しそうだなぁ、空見くんのサポート係……。」

 

チサト「……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~それからというもの~

 

カノン「あの、空見く……

 

カエデ「……」スー

 

あ……。……」

 

 

 

 

 

先生「それじゃあ次は……ここを読んでもらおうかな。」

 

カエデ「……!」

 

コロン

 

カノン「!(あ、空見くんのシャーペンが……。)ヒョイ」

 

カエデ「……」

 

カノン「はい、空見く…「……」スッ あ……。(……お礼も、言われないなんて……。)」

 

 

 

 

 

カノン「そ、空見くん!」

 

カエデ「! ……何?」

 

カノン「!……あ、えっと……その……」

 

カエデ「……用がないなら、行っていい?」

 

カノン「え?あ、ごめ……もうちょっと待っ…「松原さーん、ちょっといいー?」! う、うん!今行くからちょっと……あ!」

 

カエデ「……」スタスタスタ……

 

カノン「……はぁ。また、ダメだった……。」

 

 

 

 

 

美菜『それから松原さんは、毎日毎日、空見くんに話しかけてコミュニケーションをとろうと日々奮闘しているが、なかなか思うようにいかない。松原さんが話しかけても、空見くんはスルー。ようやく相手にされたかと思えば、声が小さかったりしどろもどろになったり、失敗の連続。そんな日々が、まるまる1ヵ月も続いたのであった。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~1ヵ月後~

 

ー教室ー

 

カノン「はぁ~……。」

 

リカ(クラスメイトA)「松原さんにしては、珍しく長いため息だね。」

 

オトハ(クラスメイトB)「大丈夫?最近元気ないみたいだけど……」

 

カノン「う、うん、大丈夫。元気なら、全然あるから。」

 

リカ「そう?なんか心配だなぁ。」

 

オトハ「ふっふっふ……。」

 

リカ「ちょ、何?その不気味な笑い……。」

 

カノン「オトハちゃん、ちょっと怖いよ……?」

 

オトハ「松原さん。」

 

カノン「! は、はい。」

 

オトハ「私はずっと、この1ヵ月間のあなたの行動をじっくり観察してきたのだよ。」

 

カノン「え……?」キョトン

 

リカ「まーた変なキャラ出てきたよ……。」

 

オトハ「松原さん。あなたは何か悩み事をしている。そうだね?」

 

カノン「悩み事……。まぁ、端的に言うと、そうだね。」

 

リカ「え!そうだったの!?松原さん、悩んでたの!?」

 

オトハ「(逆にどうしてリカは気づかないんだ……。)こほんっ!ズバリ、その松原さんの悩みとは……。」

 

リカ「悩みとは?」

 

カノン「……」

 

オトハ「……そう!……恋の悩み。ボソッ」

 

カノン「……え?」

 

リカ「!? 恋!?松原さんが恋!?」

 

カノン「え?え!?ち、違うよ!?」

 

オトハ「え~?だって松原さん、ここ最近ずっと空見くんに話しかけてたじゃん。それって、空見くんに恋してるってことじゃないの?」

 

リカ「しかも相手は空見くん!?」

 

カノン「違う違う!!違うの!!確かに空見くんのことで悩んではいるけど、恋とかそういうんじゃ全然ないの!!」

 

オトハ「え~そうなの?」

 

カノン「何でオトハちゃんはちょっと残念そうなの!?」  

 

リカ「でもそっかぁ、空見くんかぁ。……いつも無口でクールだけど、私からの空見くんへの印象は、恋とかじゃないかなぁ。」

 

カノン「私も違うよ!」

 

リカ「空見くんってさ、いつも何考えてるか分からない、ミステリアス系男子って感じだよね。」

 

オトハ「そうそう!私もそれは思ってる!空見くんが転校してきてから1ヵ月は経ったけど、先生以外と話してるところ、見たことないもん。」

 

リカ「あ、確かに。」

 

カノン「……」

 

オトハ「……?松原さん?」

 

カノン「……でもね、私。……空見くんは、そんなにひどい人ではないと思うんだ。」

 

リカ「……」

 

オトハ「ま、まぁ私も、ひどいとは思ってないけどさー。」

 

リカ「……要はさ、これから仲良くなっていけばいいってことだよ。」

 

オトハ「お、リカ良いこと言う~。」

 

カノン「仲良く、か。……なれると、いいんだけどな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~放課後~

 

カノン「はぁ、はぁ、はぁ……。私ったら、教室に宿題のプリント忘れるなんて……。もう、誰も教室になんかいないよね。」

 

 

 

 

 

???「だから、そういうことを言ってるんじゃないの!」

 

カノン「! え?この声って、確か……」

 

 

 

 

 

カエデ「……別に、あんたには関係ないだろ。」

 

???「あるわよ!確かに私は、あなたとは友達じゃないかもしれない。……でも、クラスメイトよ!ただの他人じゃないのよ!」

 

カエデ「あんたが僕のことを知ってたとしても、僕はあんたのことを何一つ知らない!つまり僕とあんたは赤の他人なんだよ!」

 

 

 

 

 

カノン「……どうして、空見くんと白鷺さんが、言い合いに……。それに他人って、いったい……」

 

 

 

 

 

カエデ「もう、僕のことはほっといてくれ!」ダッ!

 

チサト「ちょっと!話はまだ……。……はぁ。」

 

 

 

 

 

カエデ「……!あ、あんたは……!」

 

カノン「! ……ご、ごめん。盗み聞きつもりじゃ……」 

  

カエデ「……っ!ダッ!」

 

カノン「あ、ちょっと空見くん!」

 

 

 

 

 

チサト「! 何!?誰かいるの!?」

 

 

 

 

 

カノン「!(し、しまった!)」

 

 

 

 

 

チサト「誰!?そこにいるのは……って、あなたは……」

 

カノン「……ご、ごめん、白鷺さん。盗み聞きつもりじゃ、なかったんだけど……。」

 

チサト「……松原さん。」

 

カノン「……ねぇ。さっきの話、どういう…「あなたには関係のないことよ。」……か、関係なくないよ。だって私……」

 

チサト「あなたと話すことは、何もないわ。さよなら。」

 

カノン「あ、ちょっと待って!白鷺さん!」

 

タッタッタッタ……

 

カノン「……白鷺さん……。」

 

 

 

 

 

チサト『!確かに私は、あなたとは友達じゃないかもしれない。……でも、クラスメイトよ!ただの他人じゃないのよ!』

 

カエデ『あんたが僕のことを知ってたとしても、僕はあんたのことを何一つ知らない!つまり僕とあんたは赤の他人なんだよ!』

 

 

 

 

 

カノン「……あの2人、いったいどういう……」

 

 

 

 

 

美菜『白鷺さんと空見くんの口論を目撃してしまった松原さん。2人に気づかれてしまった松原さんが声をかける暇もなく、空見くんと白鷺さんはその場を後にし走り去ってしまう。この出来事は、松原さん、空見くん、白鷺さんの3人に、何かしらの影響を及ぼしていくことになるのだろうか……。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~翌日~

 

カノン「……ふわぁ~。なんか、昨日歯眠れなかったな~。……まぁその原因、うすうす分かってはいるんだけど……。」

 

ガラッ

 

???「!?」

 

カノン「早く日直の仕事やらなきゃ……って、あれ?……白鷺、さん?」

 

チサト「……」

 

カノン「えっと……どうして、白鷺さんが…「日直だからよ。」え?……あ。」

 

『日直:松原カノン、白鷺チサト』

 

カノン「ほ、ほんとだ……。ごめん、私、気づかなくて……」

 

チサト「いいわよ、別に。」

 

カノン「……」

 

チサト「……」ケシケシ

 

カノン「……あ、えっと、黒板消すの、私も手伝お…「大丈夫よ。1人でできるから。」そ、そっか。(……白鷺さんって、あまり話したことないから、ちょっと怖いんだよなぁ。昨日あんなことがあった後だし、なおさら……。)」

 

チサト「……松原さん。」

 

カノン「! な、何?」

 

チサト「暇なら、そこの花瓶の水、取り替えて来てくれないかしら?」

 

カノン「……う、うん、分かった!」

 

タッタッタ

 

チサト「……あ、あと!」

 

カノン「?」

 

チサト「……昨日は……少し、言い過ぎたわ。……ごめんなさい。」

 

カノン「……あ、う、ううん?いいよ全然。気にしてないから、大丈夫。」

 

チサト「そ、そう。」

 

カノン「うん!……私、お花の水、取り替えてくるね!」

 

チサト「え、ええ、お願い。」

 

 

 

 

 

カノン「えぇ!?白鷺さんと空見くんって、同じ中学だったの!?」

 

チサト「ええ。……そんなに驚くこと?」

 

カノン「そ、そりゃあ驚くよ~。じゃあ、空見くんが転校してきたとき、ちょっと嬉しかったり?」

 

チサト「いえ、そんなことは全く。」

 

カノン「え、えぇ……。」

 

チサト「……松原さんだったら、嬉しい?」

 

カノン「え?」

 

チサト「もし松原さんと昔同じ学校だった人が転校して来たら、松原さんはどう思う?嬉しい?嬉しくない?」

 

カノン「私だったら、かぁ。うーん……」

 

チサト「……」

 

カノン「……嬉しい、かな。」

 

チサト「何で?」

 

カノン「な、何で?うーん……何でかなー?」  

 

チサト「あなた、理由も無しに嬉しいって言ったの……?」

 

カノン「ち、違うよ。理由なら、ちゃんとあるの。……だって、昔たくさんの楽しい思い出をいっしょにつくった子と、久しぶりに再開できるんだよ。それって、すごく嬉しいことじゃない?私だったら、嬉しくて、喜んで、……またいっしょに、楽しい思い出づくりをしようって、そう言うかな。」

 

チサト「……」

 

カノン「……?えっと……白鷺さん?」

 

チサト「……ふふ、ふふふ……。」

 

カノン「えぇ!?な、何で笑うの!?」

 

チサト「ふふ、ご、ごめんなさい。あ、あなたが、ふふふ、お、思ってたよりも、変な人だったから、ふふ、おかしくて、はは、あははは……。」 

 

カノン「へ、変な人///……。そ、そんなに笑わなくてもいいじゃん!!」  

 

チサト「だ、だから、ごめんなさいって。ふふ、ふふふ……。」

 

カノン「もぅ~!謝るならまず笑うのをやめてよ~!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カノン「(あのときの出来事がきっかけで、私と白鷺さ……ううん、チサトちゃんは、2人で過ごす日が多くなりました。例えば……)」

 

 

 

 

 

~お昼を食べるとき~

 

カノン「チサトちゃん。もし良かったら、お昼、いっしょに食べない?」

 

チサト「私と?……ええ、いいわよ。」

 

カノン「うわぁ!チサトちゃんのお弁当、すっごく綺麗!」

 

チサト「そんなことないわよ。松原さんのお弁当も、とても素敵よ。」

 

カノン「えへへ、ありがとう。えっとね、この卵焼きは、お母さんに教えてもらいながら作ったんだけど……」

 

チサト「……」

 

 

 

 

 

~図書館に行ったときや~

 

カノン「! あった!あったよチサトちゃん!」

 

チサト「良かったわね、松原さん。その本は……料理の本?」

 

カノン「うん。私、自分でお料理をすることが好きなんだ。休みの日は、私が夕飯を作ることもあるんだよ。」

 

チサト「そうなの。……松原さんの作る料理、きっと美味しいでしょうね。」

 

カノン「そ、そんなことないよぉ。」

 

チサト「そんなことあるわよ。もっと自分に自信を持ちなさい?」

 

カノン「自信、か。……うん、そうだよね。ありがとう、チサトちゃん。」

 

チサト「……いいえ。」

 

 

 

 

 

~お話してるとき~

 

カノン「昨日ね、夜に突然リカちゃんから電話が来たんだ。何の用かなぁと思って電話に出たんだけど、……何の用だったと思う?」

 

チサト「さぁ、何かしら……?」

 

カノン「なんとね?……英語検定の1級を取ったんだって!」

 

チサト「まぁ、凄いじゃない!」

 

カノン「でしょ!?私嬉しくて、思わず泣いちゃいそうだったもん……。」

 

チサト「(……この子は、他の子のことを自分のことのように喜べて……)」

 

 

 

 

 

~廊下を歩いてるときも~

 

カノン「それでね、今度いっしょに…「わぁっ!!」!」

 

バサァッ

 

先生「あぁ!プリントが……」

 

カノン「だ、大丈夫ですか?私も拾うの手伝います。」

 

先生「あ、ありがとう、悪いね。」

 

チサト「……これで、全部ですか?」

 

先生「あぁ、全部だ。いやぁ助かったよ!2人とも、本当にありがとう!」

 

カノン「いえ。あ、もしだったら私、プリント運ぶの手伝いますよ。」

 

先生「おぉほんとか。悪いねぇ、何から何まで。」

 

チサト「(困っている人がいたらすぐ助けてあげられるという気遣いができて……)」

 

 

 

 

 

~日直の仕事をしているときだって~

 

カノン「……チサトちゃん。」

 

チサト「なぁに?松原さん。」

 

カノン「あと1ヵ月で、クリスマスだね。」

 

チサト「クリスマス……。もうそんな時期なのね。」

 

カノン「楽しみだよね、クリスマス。」

 

チサト「楽しみ?……サンタさんからのプレゼント?」

 

カノン「ち、違うよ///。だってクリスマスって、聖なる夜でしょ?街にはクリスマスツリーやイルミネーションがいっばいついて、きっととても綺麗になるんだろうなぁって。」

 

チサト「……ふふ、相変わらず変な人。」

 

カノン「えぇ~。変じゃないよ~。」

 

チサト「……ねぇ、松原さん。」

 

カノン「ん?」

 

チサト「前からずっと聞きたかったのだけど、……どうして私を呼ぶとき、“白鷺さん”じゃなくて、“チサトちゃん”なの?」

 

カノン「……え?」キョトン

 

チサト「……私、何か変なこと言ったかしら?」

 

カノン「何でって……だってそりゃあ、友達だからに決まってるよ。」

 

チサト「友、達……?私が?」

 

カノン「もちろん!……もしかしてチサトちゃん、これまでもずっと私のこと、友達だと思ってくれな…「そ、そんなことないわよ!そんなこと、思ってるわけないじゃない!」……そっか。……えへへ。その言葉が聞けて、安心したな。」

 

チサト「……///。もう、松原さんったら///。」

 

カノン「ねぇチサトちゃん?」

 

チサト「今度は何?」

 

カノン「私のこと、名前で呼んでよ。」

 

チサト「……え?い、いきなり何を…「だって、友達同士なのに、片方が名前で片方が名字じゃおかしいでしょ?だから、ね?」ね?って、あなたねぇ……。」  

 

カノン「ダメ……かな?」

 

チサト「……良いに決まってるでしょ?……カノン。」

 

カノン「! ……チサトちゃん!ギュッ!」

 

チサト「きゃっ///!ちょ、急に抱きつかれたらびっくりするじゃない……。」

 

カノン「チサトちゃん!大好き!!」

 

チサト「///!……私も、大好きよ。カノン。」

 

カノン「えへへ///……。」

 

チサト「(……相変わらず頭はお花畑で、恥ずかしいこともさらっと言っちゃうカノンだけど、……今は私の、大切な友達。……この学校で、カノンに会えて良かったって、心の底からそう思うわ。)」

 

 

 

 

 

カノン「(どんなときでも、私達はいっしょにいました。もう今では、かなりの大親友になっていると思います。チサトちゃんは、どう思ってくれてるのかな?……まさか最初にチサトちゃんと同じクラスになったときは、ここまで仲良くなれるなんて思っていなかった。何で私、チサトちゃんがあんなに可愛くて優しい女の子だったってことに、もっと早く気づかなかったんだろう?……ありがとう、チサトちゃん。チサトちゃんは、私の最高の友達だよ。)」

 

 

 

 

 

美菜『白鷺さんと松原さん。この2人の出会いは、友達を超え、大親友となるほどまでに大きなものだった。……しかしこのとき、松原さんは忘れていた。白鷺さんと同じくらいに大きなものがもう1つ、自分の身近にあったことを……。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  2-A  演劇『他人と友達と親友と……』前編

                       

                       終演

 

 

 

 

 

『これより、10分間の休憩に入ります。休憩時間終了後、2-A生徒達の準備が終わり次第、演劇『他人と友達と親友と……』後編を開演いたします。』




こんなに登場しない主人公なんているんか?

てか今のとこ完全に主人公花音ちゃんでヒロイン千聖さやん。

……って思いながら書いてましたw。


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46話 2-A on the stage!!(中編)

すみませんでした……。

後編で終わらせようと思いましたが、無理でした……。

まさかこんな長い話になるとは思わなかった……。

ですので、もう1話だけお付き合い願います。

あと1話あれば終わらせられる……はずなので……。


彩「……」

 

紗夜「……はっ!わ、私ったら、固まってしまっていました……。……?丸山さん?」

 

彩「……」

 

紗夜「……あの、丸山さん、もう終わりましたよ?丸山さん。……丸山さん!」

 

燐子「全然……反応しませんね……。」

 

紗夜「ええ。全く、どうしたものか……。」

 

休憩時間に入り、数分が経った。

 

……!?

 

もう数分経ったの!?

 

……丸山さんもだけど、さっき気がついた私も大概ね……。

 

ちなみに戸山さん達1年生組は、お腹が空いた、喉が渇いたと言って、体育館を出ていった。

 

固まったまま、よくそのことに気づいたわね私……。

 

彩「……はっ!あ、あれ?紗夜ちゃん、燐子ちゃん……。って、香澄ちゃん達はどこ!?」

 

! ようやく丸山さんも気がついたようね。

 

紗夜「戸山さん達は、先ほど体育館を出ていきましたよ。お腹が空いたようです。」

 

彩「あ、そう……なんだ。」

 

紗夜「……大丈夫ですか?丸山さん。」

 

彩「う、うん、大丈夫だよ。」

 

燐子「丸山さん……すごく真剣に……見てましたね。」

 

彩「あはは……。面白くて、つい真剣になっちゃった……。」

 

紗夜「ふふ、気持ちは分かりますよ。私も、丸山さんと同じですから。」

 

彩「紗夜ちゃんも?」

 

紗夜「ええ。……松原さんと白鷺さん、まるで、本当に別の世界の2人を見ているようでした。」

 

彩「だよねー。いつもはとても仲の良い2人だから、劇中で千聖ちゃんが花音ちゃんに冷たくしてた場面は、ちょっと心にグサッてきたよ……。」

 

紗夜「そうですね。……しかし、それ以上にグサッときたのは……」

 

彩・燐「空見くん(さん)……。」

 

紗夜「出演時間は2人に比べると少なかったですが、……あれだけでも、心にくるものがありましたね。」

 

彩「うん……。演劇とはいえ、見ていてちょっと悲しかったもん……。早く、いつもの3人みたいな関係に戻ってくれるといいな~。」

 

燐子「(一応恋愛ものだから……それ以上の関係に……なりそうだけど……。)」  

 

 

 

 

 

香澄「彩先ぱーい!紗夜先ぱーい!燐子先ぱーい!」

 

 

 

 

 

彩「! 香澄ちゃん!みんな!おかえり!」

 

りみ「彩先輩。これ、彩先輩のです。」

 

彩「あ、ありがとう……。あ、じゃあ今お金渡す…「い、いいですいいです、大丈夫ですよ。」でも、なんか悪いし……」

 

沙綾「遠慮しなくて大丈夫ですよ。」

 

たえ「もらえるものは、もらっておいてください。」

 

有咲「それ、もうちょっと良い言い方なかったのか……?」

 

彩「……分かった。じゃあ、ありがたくもらうね♪」

 

りみ「は、はい!」

 

香澄「というわけで、紗夜先輩と燐子先輩にもどうぞ!」

 

紗夜「す、すみません。」

 

燐子「あ、ありがとう……ございます。」

 

パッ!

 

彩・紗・燐・香・た・り・有・沙「!」

 

 

 

 

 

『まもなく、2-A演劇、『他人と友達と親友と……』後編を開演いたします。』

 

 

 

 

 

燐子「後編……始まりますね。」

 

紗夜「ええ……。」ゴクリ

 

彩「……ゴクリ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  2-A  演劇『他人と友達と親友と……』後編

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

美菜「ある日、日直同士になった2人は、そのときの話をきっかけに、徐々に交流を深めつつ、今ではとても仲の良い親友となった。この日も、2人は仲良くいっしょに帰っていたのだが……。」

 

 

 

 

 

ー雑貨屋さんー

 

カノン「わぁー!見て、チサトちゃん!このキーホルダー、すごく可愛いよ!」

 

チサト「あら、ほんとね。へぇ、このキーホルダー、色ちがいがあるのね。」

 

カノン「あ、ほんとだ。……ねぇ、チサトちゃ…「分かってるわよ。」え?」

 

チサト「このキーホルダーを、お揃いで買おうって言いたいんでしょ?」

 

カノン「いいの!?」

 

チサト「もちろんよ。……カノンには……この色が似合いそうね。」

 

カノン「じゃあチサトちゃんには……これとか合いそうだよ。」

 

チサト「ふふ、ありがとうカノン。」

 

カノン「ううん、私の方こそありがとうだよ。じゃあこれ、いっしょに買ってこよう?」

 

チサト「ええ。」

 

 

 

 

 

「ありがとうございましたー!」

 

カノン「えへへ、嬉しいなぁ。」

 

チサト「良かったわね、カノン。」

 

カノン「うん!えーっと……次はどこに行こうか…『ドガシャンッ!!』!?」

 

チサト「!?」

 

カノン「……い、今……ものすごい音、したよね?」

 

チサト「ええ……。今の音、どこから……『ドガシャンッ!!』!」

 

カノン「また!」

 

チサト「……こっちよ!」ダッ!

 

カノン「あ!待ってよ、チサトちゃん!」タタタ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カノン「うぅ……暗い……。」

 

チサト「確かにここら辺から音が聞こえたような気がしたのだけれど……」

 

 

 

 

 

???「うぅ……はぁ……。」

 

 

 

 

 

カノン「!? な、何!?今の!」

 

チサト「……声、ね。……そこに誰かいるの!?」

 

カノン「! ち、チサトちゃん!?」

 

 

 

 

 

???「! その声は……」

 

カノン「……え?今のって……」

 

チサト「……!!何でこんなところにあなたが……

 

 

 

 

 

カエデ!!」

 

カノン「え!?空見くん!?(あれ?……今チサトちゃん、空見くんのこと、名前で……)」

 

カエデ「……何で、あんたらがここに……」

 

チサト「それはこっちのセリフよ!そんなボロボロで、いったい何があったのよ!」

 

カエデ「……別に、何でもないよ。」

 

カノン「そ、空見くん!」

 

カエデ「……」

 

カノン「さっきのすごい音って、空見くんだったの?」

 

カエデ「……だったら何だよ。」

 

カノン「え?あ、えっと……だ、大丈夫かなって思って。ほんとにすごい音だったから、怪我とかしてないかなって……」

 

カエデ「……大丈夫だよ。こんなの、ほっときゃ治…っ!」

 

カノン「! やっぱり、怪我してるじゃん!」

 

カエデ「このぐらい、何てこと…「ダメだよ!」!」

 

チサト「か、カノン?」

 

カノン「空見くん、怪我見せて。」

 

カエデ「……だから、大丈…「見せて!!」……分かったよ。」

 

チサト「……カノン、そんな声出すことあるのね……。」

 

カノン「……!すごい怪我!普通じゃこんなのできないよ……。」

 

カエデ「……」

 

チサト「……よく見たら、カバンも投げ出されてるわね。中身もだいぶ飛び出て散らかってるみたい……。……!あなたまさか……!」

 

カエデ「……」

 

カノン「……空見くん。」

 

カエデ「……何?」

 

カノン「私、1回こうやって、ちゃんと話したかったんだよ?空見くん、いつも私のこと避けるから。」

 

カエデ「……」

 

カノン「……何で避けてたの?私のこと。」

 

カエデ「……別に、理由なんかない。」

 

カノン「ないわけないよ。人は何をするときにも、必ず1つは理由があるものなんだから。」

 

カエデ「……」

 

カノン「何か悩みでもあるの?それだったら、私聞くよ?」

 

カエデ「……」

 

カノン「あ、もしかして人見知りとか?……それだったら、今までごめんね。あんなに話しかけたりして……。でも、これからは大丈夫だから。私が、空見くんの友…「カノン、そこまで。」え?」

 

チサト「……カエデ、立てる?」

 

カエデ「……あぁ。」

 

カノン「え……っと……。チサトちゃ…「ごめんなさいカノン。今日はもう帰るわ。」……」

 

チサト「カエデ、行きましょう。」

 

カエデ「別に僕、1人で…「そんな怪我で無理しないの。ほら、肩貸してあげるから。」……」

 

カノン「……」

 

チサト「じゃあねカノン、また明日。……今日は楽しかったわ。ありがとう。」

 

カノン「あ……。……」

 

 

 

 

 

美菜「暗い路地裏に、1人ぽつんと取り残されてしまった松原さん。突然の出来事に、呆然と佇むことしかできない。白鷺さんと空見カエデ、この2人の関係は、いったい……。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~翌日~

 

カノン「……」

 

 

 

 

 

カノン『あ、もしかして人見知りとか?……それだったら、今までごめんね。あんなに話しかけたりして……。でも、これからは大丈夫だから。私が、空見くんの友…『カノン、そこまで。』え?』

 

チサト『……カエデ、立てる?』

 

カエデ『……あぁ。』

 

カノン『え……っと……。チサトちゃ…『ごめんなさいカノン。今日はもう帰るわ。』……』

 

 

 

 

 

カノン「……空見くんのあの怪我、普通じゃなかった。カバンも投げ出されてて、すごくボロボロになってて……。昨日あれから何があったのか、チサトちゃんに連絡しても誤魔化されるだけで全然教えてくれないし。……何で、私だけ……。私だって……私だって……!」

 

 

 

 

 

???「いい加減にしなさいよ!あなた、いつまでそうやって維持張ってる気!?」

 

???「うるさいなぁ、そんなの僕の勝手だろ!」

 

 

 

 

 

カノン「! この声は……!」

 

タッタッタ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー屋上ー

 

カノン「屋上、開いてたんだ……。何で、こんなところで……。」

 

 

 

 

 

チサト「私、あなたの考えてること、さっぱり分からない!」

 

カエデ「分かってもらわなくて結構だよ。」

 

チサト「……ねぇカエデ。どうしてあなたはこの学校に来たの?しかもこんな時期に。……あなたはいったい、ここで何がしたいの?……ねぇ、答えてカエ……」

 

カエデ「うるさいな!あんたには関係のないことだ…「関係あるわよ!」……っ!?」

 

チサト「関係なら……あるわよ……。」

 

 

 

 

 

カノン「! チサトちゃん、泣いてるの……?」

 

 

 

 

 

カエデ「……スタスタスタ」

 

チサト「ちょ、待ってよ!」

 

カエデ「……」

 

チサト「……待ちなさいよ……。話はまだ……終わって……」

 

カエデ「……もう、僕には関わるな。スタスタスタ」

 

 

 

 

 

カノン「(! 見つかるっ!)サッ!」

 

カエデ「……」スタスタスタ

 

カノン「(……ふぅ。危なかったぁ~。って、それどころじゃないんだ!……)」

 

 

 

 

 

チサト「……何よ。あなたのことなんて……この学校じゃ、私しか知らないのに……。私にしか、相談にのることできないのに……。なのに……なのに…「チサトちゃん!!」!? え!?」

 

カノン「……」

 

チサト「か、カノン!?……ど、どうして?何であなたが、こんなところに……。」

 

カノン「ごめんチサトちゃん。……でも、泣いてるチサトちゃんを、放っとくなんて、できなかったから。」

 

チサト「! ……バカね、泣いてなんかないわよ。これは、ただのあくび…「さっきの話、あくびなんて1回もしてなかった!」……」

 

カノン「……ねぇ、教えてくれないかな?チサトちゃんと空見くん、いったいどういう関係なの?話を聞く限りだと……ただ同じ中学だった、ってわけじゃないよね?」

 

チサト「……」

 

カノン「私、チサトちゃんの力になりたい。大切な友達だから、いっしょに悩んであげたい。助けてあげたい。……お節介に思われるかもしれないけど、昔に、そうしていくって、決めたから。」

 

チサト「昔……?」

 

カノン「うん。……私、小さい頃はね、すごく引っ込み思案で、人見知りで……友達を作るのが、苦手だったの。他の子に話しかけるのが怖くて、話しかけられたとしても、どう話せばいいのか分からなくて、固まっちゃって……。昔の私は全然、今みたい、学級委員としてみんなの前に立つようなことは、できなかった。」

 

チサト「……」

 

カノン「でも、そんなときにね、背中を押してくれた子がいたの。」

 

チサト「!」

 

 

 

 

 

???『自分から動きだなきゃ、何も始まらないぞ?』

 

カノン『で、でも……』

 

???『でももだってもないよ。友達、作りたいんだろ?だったら、一歩を踏み出さなきゃ。勇気を出して、自分からドーン!と真正面からぶつかれば、きっと道は見えてくる!』

 

カノン『ぶつかっちゃったら、怪我させちゃうよ……。』

 

???『え?あ、いや、そういうことじゃなくてだな……。……と、とにかく、それくらいの気持ちで話しかけろってことだよ!』

 

カノン『……』

 

???『な?僕も手伝うからさ。いっしょにやってみよう?』

 

カノン『……う、うん。』

 

 

 

 

 

カノン「……その子のおかげで、私は勇気を出して、自分から友達になりたいって言うことができた。その子からもらった勇気は、その後もずっとこの胸の中にあって……。そして今も、それはちゃんとここに残ってる。」

 

チサト「……」

 

カノン「あの子のあの言葉があったから、今の私がある。そんなことを、ときどき、ふと思うんだ。」

 

チサト「……とても、真っ直ぐな子だったのね、その子は。」

 

カノン「うん、すっごく。……だからね、私もその子みたいになりたいって、自分の気持ちに真っ直ぐな人になりたいって思ってるんだ。」

 

チサト「……もう、なれてると思うわよ。」

 

カノン「! そう、かなぁ?あはは、それだったら、嬉しいなぁ。」

 

チサト「……いいわよ。」

 

カノン「え?」

 

チサト「話してあげる。私とカエデのこと、そして、昨日何があったのか。」

 

カノン「ほ、ほんと!?」

 

チサト「本当よ。親友のこんな素敵な話を聞いちゃったら、私も隠し事なんてしてられないでしょ?」

 

カノン「うーん、そういうものかなぁ?」

 

チサト「そういうものなのよ。」

 

カノン「……うん、チサトちゃんが言うなら、きっとそうなんだね。」

 

チサト「……今から話すことを聞いても、何も怒らないでね?」

 

カノン「お、怒らないよ~。」

 

チサト「そう?ならいいのだけど。……まず、私とカエデの関係性から、単刀直入に説明するわね。」

 

カノン「う、うん!」

 

チサト「……私とカエデは……

 

 

 

 

 

……昔、付き合ってたの。」

 

 

 

 

 

カノン「……え?」

 

チサト「そうねぇ……。3ヵ月くらい付き合ってたかしら。周りの人からは、恋人って思われることもしばしばだったわ。まぁ、実際そうだったんだけどね。」 

 

カノン「……」

 

チサト「付き合い始めたきっかけ……は、この話には関係ないから省くわね。そう、あれは、雪がちらほら降り積もり、街はイルミネーションやツリーで彩られていた……ホワイトクリスマスの日だった。」

 

 

 

 

 

~2年前 クリスマス~

 

私達は学校が終わった放課後、いつものようにショッピングをしたりゲームセンターで遊んだりしていたの。

 

その日はクリスマスだったのもあって、私達の他にも多くのカップルがいたわ。

 

チサト「あら、このぬいぐるみ、すごく可愛い……。」

 

カエデ「……じゃあ、取ってやるよ。」

 

チサト「! い、いいわよ。この配置を見るに、なかなか取れなさそう…「いいからいいから。僕に任せといて。」……わ、分かった。」

 

チャリン♪

 

カエデ「見てろよ~。すぐに取ってやるからな~。」

 

チサト「無理しないでいいからね?もし取れなくても、もう1回もう1回ってなったら、それこそ沼にはまって……」

 

ポトッ

 

チサト「……え?」

 

カエデ「よっしゃ取れたぁ!」

 

チサト「……う、嘘……。」

 

カエデ「はい。」

 

チサト「……あ、ありがと。」

 

カエデ「言ったろ?僕に任せろって。」

 

チサト「……ええ。でも、驚いたわ。まさかあなたに、そんな特技があったなんて。」

 

カエデ「あはは、昔からよくこういうゲームしてるからかな。いつの間にかここまで上達しちゃって。」

 

チサト「……ふふ。」

 

カエデ「え?今、何で笑ったの?」

 

チサト「何でもないわよ。……このぬいぐるみ、大切にする。ただのぬいぐるみじゃない、あなたが私のために取ってくれた、世界で1つのぬいぐるみだもの。」 

 

カエデ「///!!」ドキュンッ!!

 

チサト「ふふふ♪」スリスリ

 

カエデ「……やっぱり、可愛いなぁ。」

 

カエデと過ごす時間は、とても楽しくて……。

 

あの頃の私には、かけがえのない、どれも楽しい思い出だったの。

 

……あの人達と会うまでは。

 

チサト「もう!何であそこであんなこと言うのよ///!」

 

カエデ「ごめん、つい本音が出ちゃって……。」

 

チサト「! ……もう、そういうとこよ、ほんと///。」

 

カエデ「あはは……「よー、久しぶりじゃねーか。」! ……!?な、何で、お前らが……。」

 

チサト「? え、何?この人達……。カエデの知り合い?」

 

カエデ「……」

 

不良(リーダー)「知り合いだよなぁ、俺達。」

 

カエデ「……何でここにお前らがいるんだ。」

 

不良(リ)「なぁに、たまたま散歩してただけだよ。なぁ?」

 

不良(子分)「おう!」

 

カエデ「……そっか。用がないなら、僕達は行く…「ちょっと待てよ。」ポン ……」

 

不良(リ)「……ちょっとばかし、面かせよ。」

 

カエデ「……嫌だと言ったら?」

 

不良(リ)「そうだなぁ……。そこのかわい子ちゃんと、遊ばせてもらおうか。」

 

ジリ、ジリ。

 

不良(子)「えへへ、俺達と遊ぼうぜ。」

 

チサト「! ちょっと、来ないで!来ないで…「分かった!」!」

 

カエデ「……ついてってやるから、その子には手を出すな。」

 

不良(リ)「……交渉成立だ。お前ら!行くぞ!」

 

不良(子)「へい!」

 

カエデ「……」

 

チサト「! ちょっとカエデ!どこに…「お前は、先に帰っててくれ。」で、でも…「僕なら大丈夫だから。」……」

 

カエデ「……」  

 

チサト「……カエデ……。」

 

そのままカエデは、数人の不良といっしょに、どこかへ姿を消した。

 

『僕なら大丈夫だから。』

 

あの言葉が言葉通りの意味とは思えなかった私は、家に帰った後、何度も何度も電話した。

 

それでも繋がらなかったら、何通もメールを送った。

 

迷惑だと思われてもいい。

 

今は早く、カエデの無事を確認したい。

 

その日の夜はその一心で、必死に電話やメールを何回も何回もしたのを覚えてる。

 

結局その日は、電話にもメールにも、カエデからの返事は一切来なかった。

 

とても心配だったが、明日にはきっと何か聞くことができるだろう。

 

その期待を胸に、私はその日、眠りについた。

 

しかし、その期待は裏切られることになる。

 

……次の日、カエデは学校に来なかったのだ。

 

その日だけじゃない。

 

この次の日も、そのまた次の日も、カエデは学校に来なかった。

 

いや、来なくなったと言うべきか。

 

私は、様々な感情が入り交じった気持ちを胸に、カエデの手がかりを探し続けた。

 

先生に聞き、友達に聞き、カエデのアルバイト仲間に聞き、カエデの両親に聞き……。

 

そんな日々が2週間近く続いたある日、先生から衝撃の言葉を告げられた。

 

……カエデは、学校を辞めた。

 

……一瞬、何を言われたのか分かんなかった。

 

気持ちが落ち着かず、整理ができず、目の前が真っ暗になった。

 

あのクリスマスの日、何があったのか知らないまま、カエデは学校から姿を消した。

 

……私は、何もかもを失ったような気分に陥った。

 

あんなに好きだった人と、あんな別れ方をして、しかもそれがあの人を見た最後の日で、しまいには同じ学校からもいなくなって。

 

……私の好きだったあの人は、もうここにはいない。

 

その言葉だけが、私の中でぐるぐるぐるぐる流れていた。

 

 

 

 

 

チサト「……」

 

カノン「……」

 

チサト「どうだった?」

 

カノン「……」

 

チサト「……?カノン?」

 

カノン「……チサトちゃんは……」

 

チサト「?」

 

カノン「チサトちゃんは……空見くんと、仲直りしたい?」

 

チサト「仲直り?」

 

カノン「うん。」

 

チサト「……違うわね。仲直り以前に、私達は喧嘩なんかしてないもの。しいて言うなら、……もう一度、あのときの関係に戻りたい。」

 

カノン「……やっぱり、そう言うよね。チサトちゃんなら。」

 

チサト「そのために私は、さっきみたいにカエデから聞き出そうとしているの。あのクリスマスの日、何があったのか。どうして何も返事をくれなかったのか。どうして突然、学校を辞めてしまったのか。私はその全てを知りたいの。」

 

カノン「……」

 

チサト「……話は、ここまでにしましょう。もうすぐ授業も始まるしね。」

 

カノン「……うん。」

 

チサト「……?先に行ってるわよ、カノン。」

 

カノン「うん……。」

 

チサト「……」

 

スタスタスタ

 

カノン「……」

 

 

 

 

 

カエデ『ついてってやるから、その子には手を出すな。』

 

 

 

 

 

カノン「……まさか……空見くんが、あのときの……。……とにかく、私が今やるべきことは1つ。……空見くんと話をして、……あのとき何があったのか、絶対に聞き出してみせる。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~数日後~

 

ー街中ー

 

カノン「うわぁ~。イルミネーションや飾り付けがいっぱい!そっか、もうすぐクリスマスだもんね。クリスマス……。……」

 

 

 

 

 

チサト『そう、あれは、雪がちらほら降り積もり、街はイルミネーションやツリーで彩られていた……ホワイトクリスマスの日だった。』

 

 

 

 

 

カノン「……丁度2年前くらいに、チサトちゃんの話してくれた出来事が起こったんだ。学校も終わって、冬休みに入っちゃったけど……何とかして、空見くんと話せないかなぁ?……!チサトちゃんなら、空見くんの連絡先知ってるかも!よーし、それじゃあさっそく、チサトちゃんに……!!サッ!」

 

 

 

 

 

不良(リ・子)「へへへ……。」

 

カエデ「……」

 

 

 

 

 

カノン「……あれは、空見くん……と、あの人達はいったい……。……ゴクリ よ、よし。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

不良(リ)「……よし、ここら辺でいいだろ。おらっ!ドンッ!」

 

カエデ「うわっ!」ドサッ!

 

不良(子)「よーし、じゃあ今日も、一思いにいたぶってやるか。」ボキッ、ボキッ

 

不良(子1)「よっしゃー!」

 

不良(子2)「やるぜー!」

 

カエデ「……なぁ。」

 

不良(リ)「あ?何だぁ?まさか、今更文句なんて言うんじゃあねえだろうなぁ?」

 

カエデ「文句なんて言わないよ。……あんたらさ、ずっとそうやって人のことをいたぶり続けてきてもう2年になるけど、何が楽しいわけ?」

 

不良(リ)「うるせぇ!」ドカッ!

 

カエデ「うっ!」ズキッ!

 

不良(リ)「いいかよく聞け。」(首根っこをつかんで)

 

カエデ「……」

 

不良(リ)「俺達は、てめえのそういう態度が気に入らねえから、こうやっていたぶって、やってんだ……よ!!」ブンッ!

 

ドカッ!!

 

カエデ「ぐはっ!」

 

不良(リ)「よし!やれお前ら!」

 

不良(子1)「うおおおお!!」

 

不良(子2)「やってやるぜえええ!!」

 

 

 

 

 

カノン「……ひ、ひどい……。何で……?何であの人達は、あんなに、空見くんを……。た、助けなきゃっ!……!で、でも、私が止めに入ったところで、あの人達は……。」

 

 

 

 

 

不良(子1)「ギャハハハハハ!!」

 

不良(子2)「このやろ!!このやろ!!」

 

ドカッ!バキッ!

 

カエデ「ぐはっ!……おえっ!」

 

不良(リ)「ははははは!!その調子だ!もっとだ!もっと痛め付けてやれ!!」

 

 

 

 

 

???「こら!そこで何をしている!!」

 

 

 

 

 

不良(子1・2)「!?」

 

不良(リ)「あ、あれはまさか……サツか!?何で、こんなところに……」

 

不良(子1)「そんなことより、早く逃げましょうよ!」

 

不良(子2)「捕まるとヤバいですって!」

 

不良(リ)「そ、それもそうだな。……てめえ、サツなんか呼びやがって……。次会ったときを覚えてろよ?次はそうだな……。そろそろ殺ってもいいかもしれねえなぁ。」

 

カエデ「……」

 

警官「おい待て!止まれ!止まるんだ!!」

 

不良(リ)「へっ!止まれと言われて止まるやつがいるかよ!!」

 

ダッダッダッダ!!

 

ダッダッダッダ!!

 

カエデ「……「空見くん!!」!?」

 

カノン「大丈夫!?しっかりして!!」

 

カエデ「あ、あんたは……!ま、まさか、警察を呼んだのは、あんたか……!?」

 

カノン「そんなこと今はどうでもいいよ!とにかく怪我の手当てしないと!……ひどい、前よりもかなりボロボロになってる……。」

 

カエデ「……」

 

カノン「この前も、あの人達にやられてたんだね。だから、普通じゃできないようか傷が、いくつも……。」

  

カエデ「……こんなの、どうってこと…「もうそんなこと言わないで!!」!?」

 

カノン「もっと、自分の体を大切にしてよ!!こんなボロボロの空見くん、もう見たくないよ!!」

 

カエデ「……何で、あんたが泣いて……」

 

カノン「……」

 

カエデ「……はぁ。もういい、勝手にしろ。」

 

カノン「うん、勝手にする。……ありがと。」

 

カエデ「……」




「ONE OF US」のジャケット、あれはエモすぎる……。


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47話 2-A on the stage!!(後編)

今年も有言実行ならず……。

ああいうのはむやみに口に出して言う(言ってない)ものじゃないんだなと思いつつ反省はしております……。

いつの間にかバンドリの日ももう明日に迫ってきてるし、4周年も迫ってきてるし、いよいよヤバイなこれは……。


カノン「……」

 

カエデ「……っ!」

 

カノン「! ご、ごめんね?沁みるよね?あともうちょっとで終わるから、我慢してね。」

 

カエデ「……」

 

カノン「……よし。もういいよ。」

 

カエデ「……あ、ありがとう。」

 

カノン「ふふ、どういたしまして。」

 

カエデ「……スク っ!いててて……」

 

カノン「だ、ダメだよまだ動いちゃ!応急処置をしただけだから、完全に痛みがひいたわけじゃないんだよ?」

 

カエデ「……はぁ。ドサッ」

 

カノン「……」

 

カエデ「……帰らないのかよ。」

 

カノン「このまま空見くんを置いて帰るなんてできないよ。空見くんの怪我が回復するまで、私もここにいる。」

 

カエデ「……それも、学級委員の仕事だから?」

 

カノン「ううん、違う。同じクラスメイトとして、空見くんことが心配だから。」

 

カエデ「……同じクラスメイト、か。」  

 

カノン「……ねぇ、空見くん。」

 

カエデ「ん?」

 

カノン「中学のとき、チサトちゃんと同じ学校、だったんだよね?」

 

カエデ「! ……あいつ、ベラベラと……」

 

カノン「ち、違うの!チサトちゃんが自分から言ったんじゃなくて、私が2人のことを知りたいって頼んだから、教えてくれただけで……」

 

カエデ「……」

 

カノン「えっと……ごめん。だから、……2人が付き合ってたってことも、チサトちゃんから、聞いた……。」

 

カエデ「……どうして……」

 

カノン「え?」

 

カエデ「どうしてあんたは、そこまでして僕とチサトのことを……。僕達のことなんて、あんたには何も…「だって!」……」

 

カノン「……だって、……空見くんと、仲良くなりたいから。空見くんが転校してきてからずっと、空見くんは私のことを避けてたし、チサトちゃんと2人で話してるところも、何回か見ちゃったし……。とにかく、空見くんともっと仲良くなりたいの!せっかく同じクラスメイトになれたのに、全然話さないなんて、その……もったいないよ!」

 

カエデ「……余計なお世話だよ。」

 

カノン「!? そ、そんな……」

 

カエデ「……ずっと不思議に思ってた。」

 

カノン「え?」

 

カエデ「どうしてこの人は、ずっと話しかけ続けるんだろうって。こんな頑なに避けようとしてるのに、何で諦めないんだろうって。」

 

カノン「だ、だからそれは……」

 

カエデ「……まるで、昔の自分を見てるようだった。」ボソッ

 

カノン「……え?」

 

カエデ「……!い、いや、何でもない。……じゃあ、僕はそろそろ行くよ。」

 

カノン「! ま、まだちゃんと歩けるまで回復は…「こんなのどうってことないよ。家帰って寝れば、少しは痛みもひくだろうし。」で、でも……」

 

カエデ「怪我の手当てをしてくれたのには、素直に礼を言うよ。でも、……これからは、僕には関わらない方がいい。そうあいつにも言っといてくれ。」

 

カノン「そ、そんな、空見く…『プルルルルル!プルルルルル!』!?」

 

カエデ「……」

 

カノン「電話……。チサトちゃんからだ。……」

 

カエデ「……出ればいいだろ。」

 

カノン「……でも、空見く…「僕のことはいいんだよ。」……」

 

カエデ「……ほら、早く出ろよ。」

 

カノン「……コク。……も、もしもし?チサトちゃん?」

 

カエデ「……ふんっ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー学校 屋上ー

 

カノン「……」

 

 

 

 

 

カノン『もしもし?チサトちゃん?どうしたの?』

 

チサト『カノン……あなたに、話したいことがあるの。』

 

カノン『え……?』

 

チサト『今から、学校の屋上に来て。』

 

カノン『い、今から!?しかも学校の屋上って……いったい何で…プツンッ ……きれた……。』

 

 

 

 

 

カノン「……」

 

ガチャ

 

チサト「! カノン、来てくれたのね。」

 

カノン「屋上なんて、勝手に入って大丈夫なの?しかも今冬休み中なのに。」

 

チサト「バレなきゃいいのよ、バレなきゃ。」

 

カノン「そういう問題じゃあ、ないと思うけど……」

 

チサト「まぁまぁ、私とあなたの仲でしょ?」

 

カノン「……」

 

チサト「と、そんな話はいいのよ。……このことは、あなたには言っておいたほうがいいと思って。」

 

カノン「このこと?」

 

チサト「ええ、早くそのことを言っておきたかったから、わざわざあなたをここに呼んだの。」

 

カノン「……私、全然話が見えないんだけど……」

 

チサト「……カノン。……私ね?

 

 

 

 

 

……カエデに告白する。」

 

 

 

 

 

カノン「……え?」

 

チサト「……」

 

カノン「……え、えっと……チサトちゃん?今、なんて……」

 

チサト「言葉通りの意味よ。私は今度、カエデに告白するわ。そう、……3日後に迫った、クリスマスの日に。」

 

カノン「……クリスマスに……告白……。」

 

チサト「ええ。……やっぱり私、諦めきれない。昔にあんなことがあったせいで、恋人関係は自然消滅しちゃったけど、今からなら、またやり直せると思うの。……カエデと付き合うようになってから、本当に毎日が楽しかった。たぶん……いや、きっと、今までの中で一番。あのときの関係を、また取り戻したい。あのときの楽しかった日々を、また過ごしたい。そう考えたら、もう告白しかないって思った。……私とカエデの事情を知っているカノンには、一応話しておこうと思ったの。ごめんなさいね?突然呼び出したりして。せっかくの休日だったのに、悪いことし…「私ね?」……え?」

 

カノン「さっき私、空見くんと会ったの。」

 

チサト「!? か、カエデと!?」

 

カノン「お母さんに頼まれたものを買いに出かけてたら、偶然空見くんを見かけて。……そこには、空見くんの他にも、怖そうな人達が3人くらいいた。」

 

チサト「! あ、あなた、まさか……」

 

カノン「いじめられてたよ、空見くん。何度も何度も殴られて、蹴られて……。地面に突き飛ばしたり、投げられたり、踏まれたりもしてた。……怖そうな3人が、1人の空見くんにだよ?」

 

チサト「……」

 

カノン「ひどかった。……ううん、あれはひどいなんてものじゃない。1人に対して、あんなことを、しかも3人がかりでやるなんて。……人として最低だよ。」

 

チサト「……ねぇ、カノ…「あのときもそうだったんだよね?」え?」

 

カノン「私とチサトちゃんの2人で、雑貨屋さんに行った日。あのときに見つけたボロボロの空見くん。……あのときも、あんなひどいことをされてたんだ。」

 

チサト「……」

 

カノン「あのときチサトちゃん、空見くんに何があったのか、分かってるような口振りだったよね。……知ってたんだ、チサトちゃんは。結構な頻度で、空見くんがいじめられてたこと。」

 

チサト「……カノン、それには訳が…「聞きたくない!!」!」

 

カノン「何で?何で私にはそのことを教えてくれなかったの?空見くんとチサトちゃんが付き合ってたっていう話をした時に、何でそのことは話してくれなかったの?」

 

チサト「……そんなこと、話すべきではないと思ったのよ。」

 

カノン「話すべきではないと思った?……チサトちゃんなら、いずれこうなることは分かってたはずだよね?」

 

チサト「……」

  

カノン「だって、明らかに不自然だったもん。あんな怪我、普通に転んだりしただけでできるようなもんじゃない。そんなの私でも分かることぐらい、チサトちゃんなら気づいてるはずだよね!?」

 

チサト「……あなたに、余計な心配をかけたくなか…「全然余計じゃないよ!!」……!か、カノン?」

 

カノン「……!ゴシゴシ……」

 

チサト「……」

 

カノン「……ごめん、チサトちゃん。私行くね?」

 

チサト「! か、カノ…「告白、上手くいくといいね。……ダッ!」あ……。……」

 

 

 

 

 

カノン「はぁ……はぁ……はぁ……。……私、何してるんだろ……。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~3日後 クリスマス~

 

 

 

 

 

『お前、親がいないんだってな。』

 

『可哀想だな~。これから先、ずっと1人なんてよ~。』

 

『それ、絶対可哀想に思ってないっしょw~。』

 

 

 

 

 

『あの子の親、殺人した挙げ句自殺したんですって。』

 

『えぇ、そうなの!?』

 

『殺人した親の子なんて、近づきたくないよね。』

 

『うんうん。』

 

 

 

 

 

『お前、殺人鬼の息子らしいじゃん?』

 

『えっ、マジで!?じゃああの噂は本当だったのか!?』

 

『おうマジマジ。というわけでお前、今後一切、俺達に近づくんじゃねえぞ?俺達も殺人鬼の仲間だって思われたら、迷惑だからな。』

 

『そうだそうだ。』

 

 

 

 

 

『おら立てよ!殺人鬼!』ドカッ!

 

『お前みたいなやつを、こうして俺達が構ってやってるんだから、ありがたく思え……よ!』バキッ!

 

『ぎゃはははは!!いい気味だ!』

 

『おらっ!ドカッ!……おらっ!!バキッ!』

 

 

 

 

 

ー街中ー

 

カエデ「……はぁ。何で今更こんなことを思い出すんだ……。」

 

 

 

 

 

チサト『明日の12:00、大きなクリスマスツリーが飾られてる場所に来て。あなたなら、これだけで分かるはずよ。』

 

 

 

 

 

カエデ「……あいつが何を考えてんのか知らないけど、さっさと用事済ませて帰ろ。」  

 

 

 

 

 

「おい、どこへ行く?」

 

カエデ「! ……はぁ。またお前か。」

 

不良(リ)「てめぇ、俺に向かってお前とはいい度胸だなぁ?」

 

カエデ「悪いけど、今日は用事があるんだ。あれならまた今度に…「はいそうですかで、俺達が帰ると思うか?」……」

 

不良(子1)「いいから黙って、俺達についてこい!」

 

不良(子2)「お前に拒否権なんてねえんだからな!」

 

カエデ「……それはできない。」

 

不良(リ)「!?」

 

不良(子1・2)「なっ!」

 

カエデ「これから行く用事は、とてもはずせない用事でな。だから今日は、お前らに付き合ってやる時間はないんだ。」

 

不良(リ)「て、てめぇ……。なめた口聞きやがって!!おい!お前ら!!」

 

不良(子1・2)「へい!」

 

ガシッ!

 

カエデ「! お、おい!いきなり何する…ドコッ!! うっ!がはっ、けほけほっ!」

 

不良(リ)「よし!連れてけ!」

 

不良(子1・2)「了解!アニキ!」

 

カエデ「……くそっ。結局、こうなる運命か、僕は……。」

 

 

 

 

 

ー路地裏ー

 

ドコッ!!

 

カエデ「がはっ!」

 

不良(リ)「今日はいつも以上にいたぶってやるよ。なんてったって、一度俺達の誘いを断ったんだからなぁ。」

 

不良(子1)「覚悟しろ~?」

 

不良(子2)「今日のアニキはいつもより数倍お怒りだぞ~?」

 

カエデ「……たった数倍か。」

 

不良(リ)「……何?」

 

カエデ「たった数倍怒ってるからって、周りのやつがいばり散らしてんじゃねーよ。」

 

不良(子1)「て、てめー!!」

 

不良(子2)「言わせておけばー!!」

 

不良(リ)「待て。」

 

不良(子1・2)「! あ、アニキ……?」

 

不良(リ)「……こいつをいつも以上にいたぶるだけじゃあ、満足しねぇ。そうだなぁ。……二度と動けない体にでもしてやるか。」

 

不良(子1)「!! あ、アニキ……」

 

不良(子2)「ほ、本気で言ってるんですか……」

 

不良(リ」「あぁ、……本気だ。」

 

カエデ「……」

 

不良(リ)「……おい。何か言い残しすことはあるか。」

 

カエデ「……別に?」

 

不良(子1)「いいのか?ほんとに。」

 

不良(子2)「二度と動けない、喋れない体になるんだぞ?」

 

カエデ「いいって言ってんだろ。……もう、いろいろどうでもよくなった。好きなようにしてくれ。」

 

不良(リ)「ほぅ、それはいい心がけだ。……なら遠慮なく、やらせてもらおうか。」バキッ、ボキッ

 

不良(子1)「いっちゃってくださいアニキ!」

 

不良(子2)「マジになったアニキは、もう誰にも止められないぜ!」

 

カエデ「……」

 

不良(リ)「それじゃ、……さよならだ。空見カエデええええ!!!」

 

カエデ「(……もう、ほんとどうでもいい。これまでろくな人生送ってないし、これからも同じ人生を歩むなら、いっそのこと動けない体になるほうがマシだ。……僕はそっと目を閉じて、何も考えようにし、その場に座り込んだまま、じっ……と時が動くのを待った。)」

 

 

 

 

 

「待って!!」

 

 

 

 

 

カエデ「!?」

 

不良(リ)「!?」ピタッ

 

不良(子1・2)「な、何だ!?」

 

カエデ「(なぜか、時はすぐに動き出した。それはなぜか。……なぜかこの場に、いるはずのない人がいたからだ。)あ、あんたは……!!」

 

カノン「……」

 

不良(リ)「……は、はは、ははは……。あーはっはっはっはっは!!何だぁ!誰かと思えば女じゃねえか!!」

 

不良(子1)「しかも結構可愛いですよアニキ!」

 

不良(子2)「どうしたんだい?こんなところにいたら危ないよぉ?」

 

カノン「っ……!……そ、空見くんから、離れて!」

 

不良(子1)「ん?何だって?声が震えててよく聞こえないなー。」

 

カノン「っ!……」

 

不良2「ほらほら、こっちおいでー。俺達が可愛がってあげるからさぁ。」

 

カノン「ひっ!」

 

不良(リ)「やめろ。」

 

不良(子1)「え~?何でですか?アニキ。」

 

不良(子2)「こんな可愛い子、めったにお目にかかれないですよ~?」

 

不良(リ)「おい、女。」

 

カノン「! ……な、何?」

 

カエデ「そいつのそばに行ってもいいぞ。」

 

カノン「え……?」

 

不良(子1)「! どうしてですかアニキ!」

 

不良(子2)「いったい何を考えて……」

 

不良(リ)「お前らは1回黙ってろ!!」

 

不良(子1・2)「ひぃっ!す、すみません!!」

 

カノン「……」

 

不良(リ)「さぁ、そいつのそばに行くのか、行かないのか。さっさと決めろ。俺は待たされるのが一番嫌いなんだ。」

 

カノン「……ダッ!」

 

カエデ「あ、あんた、何でこんなところに…ギュッ! !?」

 

不良(リ)「!!」

 

不良(子1・2)「おぉ~。」

 

カノン「ごめんね?来るのが遅くなっちゃって。私、空見くんのサポート係なのに、この3ヵ月間、何にもしてあげられなかった。」

 

カエデ「さ、サポート係?来るのが遅くって……。もう、何が何だか……」

 

カノン「空見くんが転校してきたばかりの頃にね?先生に言われたの。空見くん、この学校のこと、まだよく知らないみたいだから、空見くんの手助け……サポート係をしてあげてくれないかって。」

 

カエデ「……だからあんなに何度も何度も話しかけようとしてたのか。」

 

カノン「う、うん……。」

 

カエデ「あの先生、余計なことを……。とりあえず、いいからあんたは逃げろ。」

 

カノン「嫌だ。」

 

カエデ「! な、何でだよ!前も言ったけど、僕のことはどうでも…「どうでも良くない!」! ……チサトと同じで、強情な女だなぁ。」

 

カノン「……」

 

カエデ「……ったく、何で来たんだよ。」

 

カノン「空見くんを、助けたかったから。」

 

カエデ「余計なお世話だ!いいからさっさと離れろ!」

 

カノン「嫌だ!」

 

カノン「っ!……お前、いい加減にしないと殴る…「殴ってみなよ。」!?」

 

カノン「いいよ、殴って。ほら、顔でもどこでも、好きなところを殴ってみなよ。」

 

カエデ「……そ、それは……」

 

カノン「……殴れないよね。だって空見くん、喧嘩なんてできないし、やったことないもん。」

 

カエデ「え……?」

 

カノン「……」

 

カエデ「……あ、あんた……。何でそれを……」

 

カノン「何で?……だって私、

 

 

 

 

 

……昔、空見くんと友達だったから。」

 

カエデ「……は?僕とあんたが、友達だった……?」

 

カノン「うん。」

 

不良(リ)「おいてめえら!無視してイチャついてんじゃねえぞ!!」

 

カエ・カノ「!」

 

不良(子1)「俺達の前でイチャイチャを見せつけるなんて、いい度胸だなぁ!!」

 

不良(子2)「覚悟、できてんだろうなぁ?」

 

カエデ「……おい、いいからあんたは早く逃げろ。ここにいると危ない。今なら、謝ればお前だけなら逃げさせてくれるかもしれない。」

 

カノン「……」

 

カエデ「俺ならともかく、あんたは女だ。……不良の相手なんて、俺みたいなやつがしてりゃいい…「女だから、何?」え?」

 

カノン「……」スッ

 

カエデ「! お、おい、何を……」

 

カノン「男とか女とか関係ない!」

 

カエデ「!」

 

カノン「……私は空見くんのサポート係で、……友達だから……!」

 

バッ!

 

不良(リ)「!」

 

不良(子1・2)「!」

 

カノン「……空見くんは、私が守る!」

 

カエデ「……あんた……。」

 

不良(リ)「……」

 

不良(子1・2)「……ぷっ、わーはっはっはっは!!だっせーー!!男が女に守られてやがる!!」

 

カノン「笑わないで!!」キッ!

 

不良(子1)「おー怖い怖い。」

 

不良(子2)「そんなににらむなよ。……2人まとめて、遊んでやるからよ。」

 

不良(子1・2)「あーっはっはっはっは!!」

 

カエ・カノ「……」

 

不良(リ)「おい。」

 

不良(子1・2)「!!」

 

不良(リ)「お前らだけで勝手に話をすすめてんじゃねーよ。」

 

不良(子1・2)「す、すみませんアニキ!!」

 

不良(リ)「……お前、女のくせに良い度胸してんじゃねえか。」

 

カノン「! こ、来ないで!」

 

不良(リ)「……しかし残念だったなぁ。俺に歯向かうなんてことをしなければ、……こいつと同じように、いたぶられずに済んだのによぉ。」

 

カノン「! ……」

 

不良(リ)「どうした?足が震えてるぞ?まさか、今更怖くなったのか?」

 

カノン「……そ、そんなこと……」

 

不良(リ)「ふっ、安心しろ。俺は男だろうと女だろうと容赦しない。……たっぷりと、痛めつけてやるからよ。」

 

カノン「……」

 

カエデ「……おい、まだ間に合う。早くどこか遠くへ…「いや、もう遅い。」何?……!」

 

不良(子1)「へへへ……。」

 

不良(子2)「ははは……。」

 

カエデ「(囲まれてる……。くそっ、こいつら本気で僕達を……。)」

 

不良(リ)「さぁお嬢ちゃん、空見、最後に言い残すことはないか?」

 

カエデ「……ある。」

 

不良(リ)「何だ、言ってみろ。」

 

カエデ「……この人を、……この人だけは、見逃してやってくれ。」

 

カノン「!」

 

不良(リ)「それはできねぇ。」

 

カエデ「! ……頼む。」

 

不良(リ)「ダメだ。」

 

カエデ「頼む!」

 

不良(リ)「ダメだ!」

 

カエデ「……頼む!!この通りだ!!」バッ!

 

カノン「そ、空見くん……!」

 

不良(子1)「はははは!こいつついに土下座しやがったよ!!」

 

不良(子2)「女の前で土下座なんて、ダっせー!!」

 

カエデ「……頼む……。この人だけは、見逃してくれ……。」

 

不良(リー)「……」

 

ガッ!

 

カエデ「うっ!」

 

カノン「! ちょっと、何を……」

 

不良(リ)「うらぁっ!」ドカッ!

 

カエデ「ぐはっ!」

 

カノン「空見くん!!」

 

カエデ「げほっ!ごほっ!」

 

不良(リ)「舐めてんじゃねえぞガキ!!俺はなぁ、そういう甘っちょろいことを言うやつが大っっっ嫌いなんだ!!」

 

カノン「空見くん、空見くんしっかり!」

 

カエデ「げほっ!げほっ!……はぁ、はぁ……。」

 

カノン「……ひどい。」

 

不良(リ)「あ?」

 

カノン「1人の男の子を、まるで自分の遊び道具のように扱って、こんなボロボロになるまで痛めつけて。……こんなことをして、何が楽しいの!?」

 

不良(リ)「何って、今こうしてるのが楽しいんだよ。」

 

カノン「っ!」

 

不良(リ)「自分の遊び道具のように?あぁそうだ、こいつは俺の遊び道具だ。遊び道具兼、ストレス発散器だ。こいつを痛めつけることで、俺は十分な快楽を得ている。」

 

カノン「……」

 

不良(リ)「どうした?もう何も言い返さないのか?はっ!まさか、今頃俺に怖じ気づいたか?残念、もう遅い。今からこのゴミもお嬢ちゃんも、俺の遊び道具になって…「最低。」……あ?」

 

カエデ「お、おい……や、やめろ……。それ以上……刺激……するな……。」

 

カノン「世の中に、あなたみたいな最低な人間がいるなんて、夢にも思わなかった。空見くんがゴミ?……私からしてみれば、あなたのようないじめの対象を自分の快楽の道具としか思ってないような人のほうが、よっぽどゴミに見えるよ。ううん、それ以下だよ。あなたみたいな人は、……この世の中に生まれてくるべきじゃなかった。」

 

不良(リ)「……言いたいことはそれだけか?」

 

カノン「私はあなたを、絶対に許さない。死んでも一生恨み続けるから。あなたが死んで、地獄に落ちて、一生かけても償えないような罰を受けるまで、ずっと恨み続けるから。」

 

カエデ「……」

 

不良(リ)「……いい加減、そのおしゃべりも聞きあきた。」

 

カノン「……」

 

カエデ「……!は、早く!早くここから逃げ……

 

ギュッ!

 

!?」

 

カノン「……空見くんは、私が守るから。空見くんを、絶対このまま離したりしないから。」

 

カエデ「……松原、カノン……。」

 

不良(リ)「2人まとめて、死ねええええ!!!」

 

カノン「っ!」ギュッ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カノン「……?」

 

カエデ「……え?」

 

カノン「(いったい……どうなったの……?私達は今、何を……)」

 

 

 

 

 

……ン、……ン!!

 

 

 

 

 

カノン「(! この声は……。いったいどこから……?何かすごく、聞き覚えのあるような……。)」

 

 

 

 

 

……ン!!……ノン!!……起きて……ノン!!

 

……お願いカノン!!目を覚まして!!

 

カノン!!!

 

 

 

 

 

カノン「……!チ……チサト……ちゃん?」

 

チサト「!! ……か、カノン……?」

 

カノン「……えっとー、私はいったい、何を…「カノオオオオン!!」うわぁっ!」

 

チサト「良かった、本当に良かった……。カノン……、カノン……。」ギュー!

 

カノン「く、苦しいよチサトちゃん……。それより、私、いったい何を……。」

 

チサト「……気を失ってたのよ、あなた。」

 

カノン「え、気を……?」

 

チサト「ええ。そこにいる、カエデを抱きしめながらね。」

 

カノン「カエデ……。……!!そうだ空見くん!!空見くんは!?空見くんは無事…「大丈夫、カエデは無事よ。ほら。」え?……!!」

 

 

 

 

 

カエデ「……いててて。」

 

リカ「こーら、動かないの。消毒しにくいでしょ?」

 

カエデ「だって……」

 

リカ「だってもひったくりもないの。ほら、沁みるよー。」

 

カエデ「いたっ!……いちちち。」

 

 

 

 

 

カノン「……そ、空見くん!!」

 

カエデ「え?うわっ!」

 

リカ「きゃっ!ま、松原さん!?」

 

カノン「空見くん……。空見くん……。」  

 

カエデ「な、何泣いてんだよ……。死んだわけでもないのに……。」

 

カノン「だから嬉しいんだよ……。良かった……ほんとに、ほんとに……。無事で、ほんとに……。うっ、うぅ……。」

 

カエデ「……はぁ。」

 

チサト「全く、カノンに泣きつかれるなんて、妬いてしまうわ。」

 

カエデ「チサト……。これ、どうにかしてくれよ。」

 

チサト「知らないわよ。カノンはあなたに泣きついてるんだから、あなたが自分でなんとかしなさい。」

 

チサト「自分でなんとかって……。……」

 

カノン「良かった……良かったよぉ……。」

 

カエデ「……はぁ。」

 

リカ「モテモテだね、空見くん。」

 

カエデ「そんなんじゃないって。……早く離れてくんないかなー?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カノン「(あの後、空見くんは事情聴取のために警察へと連れてかれた。本人は不満そうだったけど、流石に警察の人からの頼みは断れるはずもなく……。ちなみに私も事情聴取の対象だったが、空見くんが気をきかせて自分だけでいいと言ってくれたため、私が警察へ行くことはなかった。……もしあのまま不良に殴られていたら、私と空見くんはどうなっていただろう。もしかしたら、……本当に死んでしまっていたのだろうか。そんなことを考えると、すごく怖くて、今でも震えてしまう。今思えば、何で私はあんなことをしたのだろう。空見くんを守りたかったからとは言え、あんな危険なことを……。もしチサトちゃんが警察を呼んでくれていなかったら……。そんなこと、もう二度と考えたくない。あの事件も、あの人達のことも、もう一生考えたくない。だけど、……本当に、空見くんが無事で良かった。空見くんもだけど、私も。)」

 

 

 

 

 

~???~

 

カノン「チサトちゃん、ほんとにいいの?」

 

チサト「いいのよ。あの人とお似合いなのは私じゃない、あなたなの。」

 

カノン「でも……チサトちゃん、あの頃のように戻りたいって、あんなに……」

 

チサト「それはもう過去のことよ。それに、……決めたの。これからは未来に向かって、大切な親友のことを応援していこうって。」

 

カノン「チサトちゃん……。」

 

チサト「さぁ、行って。今が絶好のチャンスなんだから。気分が変わらないうちに、早く。」

 

カノン「……う、うん!……それじゃあ、行ってくる!」

 

タッタッタ

 

チサト「いってらっしゃい。……悔しいけど、あの人とお似合いなのは私じゃない。あの人の隣にいるべき人間、それはカノン、あなたしかいないの。……ほんと、悔しいけどね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カエデ「僕の親は人殺しなんだ!殺人鬼なんだ!!そんな親の子になんて、誰も近づきたくないだろ!!」

 

カノン「……」

 

カエデ「親が殺人鬼だから、誰からも嫌われる。僕に近づいた人は同じく嫌われて、しかもいじめの対象になってしまう。このまえの不良だって、そんな僕に目をつけてからずっと、僕や僕に近づいた人をいたぶってきた。だから嫌なんだ。他の人に近づかれるのが……。僕が受けてきたのと、同じ運命をたどることになるから。」

 

カノン「……」

 

カエデ「……だからあんたも、もう僕には関わるな。チサトやクラスの人達にも、そう言っといて…「嫌だ。」……」

 

カノン「そんなの、絶対に嫌だ。空見くんは友達だから。これからも関わるし、これからもいっぱい話しかけるし、近づく。」

 

カエデ「……何で。……何で僕の言うことを聞いてくれないんだ!あんたも僕みたいな運命をたどることになってもいいのか!?」

 

カノン「そんな運命にはならないよ!ううん、私がさせない。もしこれから空見くんにひどいことを言ったりしたりするような人が出てきたら、私が空見くんを守る!」

 

カエデ「っ!……」

 

カノン「だからお願い、私の話を聞いてほしい。これは、空見くんにしか話せないことなの。」

 

カエデ「……もういい。」

 

カノン「……私、空見くんと再会できて嬉しかった。最初転校してきたときは、全然気づかなかったけど、チサトちゃんとある話をしてるときに気づいたの。あのとき、私に声をかけてくれたのは、空見くんだったんだって。」

 

カエデ「……もういいって。」

 

カノン「昔私に声をかけてくれたのが空見くんだって気づいたとき、嬉しさよりも、感謝を伝えたいっていう気持ちのほうが大きかったんだ。今の私があるのは、あのとき空見くんが、私に一歩を踏み出す勇気をくれたからだから。……そのときの言葉があったから、これまで頑張ってこれたの。だから空見くん、……あのときは、本当にありが…「もういいって言ってるだろ!!」!?」

 

カエデ「はぁ、はぁ、はぁ……」

 

カノン「……」

 

カエデ「……今の僕は、そんな人間じゃない。……ただの嫌われものなんだ。」

 

カノン「……」

 

カエデ「もう、僕のことはほっといてくれ。誰に嫌われようと、松原さんの知ったことじゃ…「そんなことない!」!」

 

カノン「そんなこと、ないよ……。私以外にも、空見くんが嫌われるのを望んでない人、いっぱいいるんだよ?」

 

カエデ「そんなのありえないよ。だって僕は…「何で?」え?」

 

カノン「何でそんなに、自分のことを責めるの?空見くんは悪くない。悪いのは、あの人達なのに……。」

 

カエデ「……」

 

カノン「ねぇ、何か言ってよ!」

 

カエデ「……松原さんには、僕の気持ちなんて、何1つ、分からな……

 

 

 

 

 

ギュッ!

 

 

 

 

!?」

 

カノン「……分かるよ。」

 

カエデ「……分かるって、何を根拠に…「空見くんの気持ちなら、私がよく知ってる。」……」

 

カノン「だって空見くんは、昔からそうだったもん。昔から、何1つ変わってない。……昔からの、私の、……」

 

カエデ「……」

 

カノン「……分からないわけがないよ。だって私、……空見くんのこと、昔から、ずっとずっと好きだったんだもん。ギュッ」

 

カエデ「……そんなの、でたらめだ。」

 

カノン「でたらめじゃないよ。あの言葉のおかげで、今の私がある。空見くんがあのとき言ってくれなかったら、まだ私、全然前に進めてなかった。」

 

カエデ「……」

 

カノン「きっと私は、あのときから空見くんのことが好きだったんだと思う。……ううん、好きだった。今なら、そう断言できる。」

 

カエデ「……」

 

カノン「これからは私が、空見くんのことを守るから。誰にも、空見くんのことを嫌いだなんて言わせない。空見くんはとても素敵な人なんだって、私が何度も何度も説明して、納得させる。」

 

カエデ「……」

 

カノン「多少強引になっちゃうかもしれないけど、……それくらい私は、空見くんのこと、大切に思ってるから。」

 

カエデ「……どうして、そこまで……」

 

カノン「もちろん、……私、空見くんのこと、大好きだから。」

 

カエデ「……///」

 

カノン「……?もしかしたて空見くん、顔赤い?」

 

カエデ「! ち、違うよ///!これはただ単に、その……あ、暑いからだよ///!」

 

カノン「え~?今冬なのに~?」

 

カエデ「……冬でも、暑いときはあるだろ。」

 

カノン「ふふっ♪……ねぇ、空見くん。」

 

カエデ「……?」

 

カノン「あなたのことが、ずっと好きだったの。あの頃から、ずっと……。」

 

カエデ「……」

 

カノン「だから、……お願い。」ガシッ!

 

カエデ「……」

 

カノン「……私と、付き合ってもらえませんか?」

 

カエデ「……まぁ、僕で良ければ///……」

 

カノン「……えへへ、ありがと♪空見くん♪」

 

カエデ「……///」

 

 

 

 

 

美菜『こうして松原さんと空見カエデは、はれて恋人同士になったのでした。これからどんな困難が待ち受けていようと、2人の愛の力で、全てを乗り越えていくことでしょう……。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  2-A  演劇『他人と友達と親友と……』後編

                       

                       終演




文化祭回、もう1話くらい続きそうです……。

くどいようでマジですいません……。


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48話 文化祭終了、そして打ち上げ

あと4日で4周年か~。

……ガシャ何回そう……。

ましろちゃんもいるし誕生日さよひなもいるし、なんてったって花音ちゃんがいるし。

……スターが足りん……。


美菜『こうして松原さんと空見カエデは、はれて恋人同士になったのでした。これからどんな困難が待ち受けていようと、2人の愛の力で、全てを乗り越えていくことでしょう……。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  2-A  演劇『他人と友達と親友と……』後編

                       

                       終演

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……パチ、パチ、パチ、パチ……。

 

 

 

 

 

……パチパチパチパチ!

 

パチパチパチパチパチパチパチ!!

 

パチパチパチパチパチパチパチパチ!!!

 

楓「……」

 

花音「すごい数の……拍手……」

 

『2-Aの皆さん!前に出てきてください!』

 

楓・花「え?」

 

 

 

 

 

千聖「……ほら花音、行くわよ。」

 

花音「ち、千聖ちゃん!?わぁっ!」

 

橋山「空見も早く早く♪」

 

音羽「みんな待ってますよ?」

 

美菜「ほら、急いで急いで~。」

 

楓「わっ!ちょ、押さないでよ~。」

 

『それでは!素晴らしい演劇を見せてくれた2-Aの皆さんに、もう一度、華麗な拍手を!』

 

パチパチパチパチ!!

 

パチパチパチパチ!!

 

パチパチパチパチ!!

 

パチパチパチパチ!!

 

楓「……」

 

千聖「何ぼーっとしてるのよ、楓。」

 

楓「し、白鷺さん。……いや……なんかいまいち、実感がわかなくて……」

 

花音「私も……。」

 

橋山「どういうこと?」

 

楓「どういう……。うーん……何て言うんだろう……。」

 

花音「……本当に私達が、みんなに拍手されるくらいのものを披露できたのか、みたいな?」

 

楓「そう!それだ!」

 

音羽「……実際拍手されてるんだから、できたんじゃないですか?」

 

千聖「それに花音は、ハロハピとして何度もこういう場に立ち会っているでしょ?」

 

花音「うん……。それは、そうなんだけど……。」

 

美菜「……2人は、難しく考えすぎなんじゃないの?」

 

花音「難しく……。うん、そうなのかもしれない。……でも、いつもは演奏とかで拍手をもらったりしてるけど、今回は演劇っていう、今までになかったもので……」

 

楓「……本当に拍手されるくらいのことをやれたのか、自信が持てなくて……」

 

橋山「……自信、ねー……」

 

音羽「簡単といえば簡単、難しいといえば難しい問題ですね……。」

 

美菜「空見と松原さんらしい問題だねー。」

 

千聖「……2人とも。」

 

楓・花「? 白鷺さん(千聖ちゃん)?」

 

千聖「もっと、自分達を誇ってもいいのよ。あなた達は、普通ではやることのない、とてもレベルの高いものを、最後までやりきったのだから。」

 

花音「千聖ちゃん……。」

 

千聖「女優の仕事をしている私から見ても、あなた達の演技はとても素晴らしいものだった。特に楓、最初はダメダメの大根役者だったのに、私の厳しいスパルタ指導を乗り越えて、今では数多くの高度な演技を自分のものにしている。……もちろん花音もよ。他の人から見たら演技とは思えないくらい迫真な演技を、あなたはこの演劇の中で、何度も何度もやってのけた。そう、私も圧倒されるくらいね。」

 

橋・音・美「(自分の指導がスパルタで厳しいっていう自覚はあったんだ(あったんですね)……。)」

 

楓・花「……」

 

千聖「ほんとに、あなた達はよくやったわ。……頑張ったわね、楓、花音。」

 

花音「……うぅ、ち、千聖ちゃん……。」

 

楓「……」

 

花音「千聖ちゃーーーーん!!」ガバッ!

 

千聖「よしよし、よく頑張ったわね、花音。」ナデナデ

 

楓「……」

 

橋山「……?空見、もしかして、あんたも泣いてる?」

 

楓「っ!な、泣いてない!」

 

美菜「うっそだー♪涙目になってるよー?」

 

楓「み、見ないでよ!」ダッ!

 

音羽「あ!逃げました!」

 

橋山「こら待て空見ー!」

 

美菜「ほんと、空見は面白いねー。」

 

いつかの生徒A・B・C・D「……」

 

千聖「……あなた達も、ほんとにすごかったわ。あんな演技、たぶん私にはできないわ。」

 

いつかの生徒A・B・C・D「! そ、そんなこと……」

 

千聖「そんなことあるわよ。まるで、本物の不良みたいだったもの。……4人とも、本当にお疲れ様。」

 

いつかの生徒A・B・C・D「……あ、ありがとうございます!」

 

『あー……。これ、どうやって締めればいいんでしょう……?』

 

美菜「うーん……。ま、適当に締めとけばいいんじゃない?」

 

『て、適当って……』

 

 

 

 

 

……こうして、長いようで短かった、楓が転校してきてからの初めての文化祭は、終わりを迎えることとなった、

 

文化祭が開催されるまでの過程で、トラブルもいろいろあったけど、なんとか乗り越えて、こうして悔いなしに文化祭を終えられることになるというのは、嬉しいけれど、ちょっぴり寂しさもある。

 

でもそれは、私も含め、みんなの協力や助け合いがあったからこそ。

 

……こんなに文化祭が終わるのが名残惜しいと思ったのは、いつぶりだろうか。

 

……次の文化祭は来年。

 

果たして来年は、どんな出来事が待ち受けているのか。

 

まだ全然想像もつかないけど、それを今からとても楽しみにしている自分がいる。

 

……ふふ♪

 

ほんとに、いろいろあった文化祭だったわね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~翌日~

 

【???】

 

美菜「それじゃあいくよー!!昨日の文化祭の成功を祝して、みんなでー……」

 

『『『『『かんぱーい!!!』』』』』

 

 

 

 

 

楓「か、かんぱーい……」

 

彩「これだけいると、乾杯の声も迫力あるねー……。」

 

花音「あはは……」

 

今日はみんなで、昨日の文化祭の打ち上げパーティーの日だ。

 

司会者は浅井さん。

 

こんな多くの人の前で緊張もせずまとめられるというのは、流石浅井さんといったところだ。

 

……めっちゃ上から目線な感じで言ってるのは許してくれ……。

 

燐子「……」プルプルプル

 

紗夜「大丈夫ですか?白金さん。やはり、来ないほうが良かったのでは……?」

 

燐子「い……いえ……。私も、2-Bの一員ですから……打ち上げには、絶対に来るべきだと……思いますから……。」

 

紗夜「それはいい心がけだと思いますが、……隠れてばかりでは意味がないような……」

 

……まぁ、白金さんが隠れて震えるのも無理はない。

 

今この場は、本当に人が多いのだ。

 

そうだなー。

 

……50人くらいはいるのかな?

 

……うん、普通に考えて打ち上げパーティーに来る人数じゃないよね。

 

それは最初僕も思った。

 

だいいち、そんなに多くの人が集まれる場所なんてあるわけない、数時間前の僕ならそう思っただろう。

 

でもそれが、……まさかのあったんだよ……。

 

それは…「楓ー!」ん?あ、この場所を提供してくれた人。

 

花音「あ、こころちゃん。」

 

こころ「すごいわね楓!あなた、こーんなにいっぱいの知り合いがいたのね!」

 

楓「いや、全員が全員知り合いってわけじゃ…「弦巻さーん!」あ、浅井さん。」

 

美菜「弦巻さん!この場所を提供してくれて、ほんとにありがとね!」

 

こころ「いえ、礼なんていいのよ。あたしも、みーんなが笑顔になれるこんな楽しいイベントを考えた美菜のこと、すごいと思ってるわ!」

 

美菜「大袈裟だよー。私はただ、みんなで文化祭の打ち上げパーティーがやりたかった、それだけだよ。」

 

千聖「……すごいわね美菜ちゃん。もうこころちゃんとあんなに仲良くなってる。」

 

楓「うん、そうだね……。」

 

そう、50人もの人が集まれるような広くて大きい場所、それは……。

 

 

 

 

 

……弦巻さんの家だ。

 

いや、これはもう家じゃない。

 

……豪邸だ。

 

漫画とかでよくお金持ちの人が住んでるような、めちゃくちゃでかい豪邸だ。

 

最初この豪邸を見て中に入ったときはびっくりしたよ。

 

いや、びっくりの上の上をいったね。

 

……まさか弦巻さんが、こんなお嬢様だったなんて……。

 

庭も言葉では言い表せないくらい広いし、外にはリムジン?ポルシェ?のような高級車が何台も停まってるし、メイドとか、執事とか、あと……あれは……黒のスーツ?を着た人が何人もいるし、今いるこの部屋も、ものすんっっっっっごい広いし。

 

……まぁ一言で言うと、ヤバい。

 

花音「ねぇ空見くん。」

 

楓「? 何?松原さん。」

 

花音「料理、いっしょに取りに行かない?」

 

楓「料理……。あ、そっか。うん、じゃあ……」

 

千聖「花音、楓、私もいっしょに行っていいかしら?」

 

花音「千聖ちゃん。うん、もちろん♪空見くんもいいよね?」

 

楓「ここでダメなんて言ったら、白鷺さんに何されるか分かったもんじゃないよ。」

 

千聖「あら、言うようになったじゃない。」

 

楓「まぁ、これぐらいはね……。」

 

花音「まぁまぁ2人とも……。ほら、早く料理取りに行こう。」

 

楓・千聖「うん(ええ)。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

楓「うわぁ……。すっげー……。」

 

驚きのあまり、そんな語彙力の欠片もないような言葉しか出てこんかった……。

 

打ち上げ“パーティー”と言うくらいだから、食べ物もそれなりに用意しているのだろう。

 

なんて思ったのもつかの間。

 

用意されていたのはそれなりの食べ物ではなく、まるでバイキングかのようにズラーっと並んだ、めちゃくちゃ旨そうな料理だった。

 

いったい何種類くらいあるのだろう。

 

……100?

 

いや、それ以上あるだろ……ってくらいの料理の数だった。

 

しかも全部高そうだし全部旨そうだし。

 

……ほんと何者なんだ、弦巻さんって……。

 

千聖「楓、取らないの?」

 

楓「え?あ……そ、そうだね。早く取ろう。えっと、何にしようかなー……。」

 

うーん……。

 

これだけあるとやっぱ迷うよなー。

 

まーた迷い症が出るよこれは。

 

……ん?

 

あれは……ポテトサラダ!

 

しかもめちゃくちゃ旨そう!

 

よし! 

 

一発目はあれに決めた!

 

……、……ポテトサラダ、もーら…スカッ ……あれ?

 

おたまは……?

 

……ん?

 

あ!! 

 

沙谷加「ん?」

 

楓「……」

 

沙谷加「……あ、ごめん。もしかして狙ってた?」

 

楓「……い、いや、いいよ。次来るのを待つから……。」

 

沙谷加「そう?なんかごめんね空見、じゃ。」

 

……まさか、菊地さんに先を越されるとは。

 

仕方ない、ポテトサラダは後にして今は他の…「空見様。」へ?……さ、様?

 

楓「……えーっとー……僕、ですか?」

 

「はい。ポテトサラダ、ご用意いたしました。」

 

楓「? いや、ポテトサラダはさっき菊地さんが取ってって……ってえぇ!?」

 

ドーン!!

 

ふ、復活してる……。

 

しかも、ドーンと山盛りで……。

 

いつの間に用意したんだよ……。

 

まさかこれも、弦巻家特有の何かなのか?

 

「あの、空見様。ポテトサラダは……」

 

楓「! あ、えっと……あ、ありがとうございます!」

 

「いえ、こちらこそ。では、また困ったことがありましたらいつでもお呼びください。」

 

スタスタスタ……

 

楓「……何だったんだ、今の……。」

 

???「今の、黒服の人ですよね?」

 

楓「うわぁっ!」

 

???「!? な、何かありました!?」

 

楓「……って何だ、奥沢さんか。」

 

美咲「え?……あ、あたしに対して驚いてたんですね。」

 

楓「う、うん。……ごめん。」

 

美咲「いえいえ、いきなり話しかけたあたしも悪いですし。」

 

楓「……あ、ねぇ奥沢さん。さっきの、黒服の人って?」

 

美咲「(ちゃんと聞こえてたんだ……。)さっきの人のことですよ。黒服だったでしょ?」

 

楓「まぁ、そうだけど……。スーツというか、黒服というか……」

 

美咲「あたし達はみんな、総称して黒服の人って呼んでるんです。」

 

楓「そ、そうなんだ。……みんな?」

 

美咲「あー、ハロハピのみんなのことですよ。」

 

楓「あ、なるほどね。……ん?」

 

美咲「? どうしたんですか?」

 

楓「い、いや、別に……」

 

ハロハピのみんなが総称して黒服の人と呼んでる……。

 

でも確か、ハロハピって松原さんと奥沢さんと北沢さんの3人だよな?

 

で、黒服の人ってたぶん、この家、弦巻さんの家の人なんだよな?

 

……ただハロハピのみんなと黒服の人が仲良いだけ?

 

……もしかして、弦巻さんって……。

 

いやでも、そんな偶然あるわけが……。

 

楓「……」ブツブツ

 

美咲「……「あ、美咲ちゃん。」! 花音さん。と、白鷺さんも。」

 

花音「空見くんといっしょだったんだね。……?空見くん、何してるの?」

 

美咲「さぁ……。何か考え事をしてるみたいですけど……。」

 

千聖「楓のことだから、どうせまたくだらない考え事なんでしょうね。」

 

美咲「は、ははは……。(相変わらず白鷺さんは空見先輩に当たり強いなー……。)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

楓「あー、ん。……!旨っ!」

 

花音「流石、こころちゃんの家の料理だね。」

 

美咲「超一流のシェフが作ってるって言ってましたからね。」

 

超一流のシェフか……。

 

そりゃあ旨いわけだな。

 

あむっ。

 

モグモグ……ヤバい、マジで旨すぎる……。

 

語彙力無くすわこれ。

 

あ、ちなみに白鷺さんは丸山さんを探しに行ったらしい。

 

 

 

 

 

???「……!いた!空見先ぱーい!」

 

 

 

 

 

楓「? あ、戸山さん。それに他のみんなも。」

 

香澄「いやぁやっと見つけたよ。ずっと探してたんですよ~。」

 

楓「え、そうなの?」

 

香澄「はい!ぜひ、昨日の演劇についていろいろ話を聞きたくて!」

 

楓「あぁ……そゆこと……。」

 

後から丸山さんに教えてもらって知ったけど、あの演劇、戸山さん達も見てくれてたんだっけ。

 

沙綾「すみません。香澄がどうしてもって聞かなくて……。」

 

楓「あ、ううん、大丈夫だよ。」

 

たえ「空見先輩、私のレタスと先輩のハンバーグ、交換しませんか?」

 

有咲「お前はもっと関心を持てよ……。てか!そんな交換絶対成立しねぇから!」

 

うーん、あの2人は平常運転だなー。

 

てかレタスとハンバーグを交換て……。

 

千聖「ただいま花音。」

 

あ、白鷺さん帰ってきた。

 

花音「あ、千聖ちゃん。……えっと……彩ちゃん、どうしたの?」

 

彩「うぅ、聞いてよ花音ちゃ~ん。デザート食べてたら、千聖ちゃんがすごく怖い顔して怒ってきて~……」

 

千聖「あなたが加減しないでバクバク食べてるからでしょ?私達はアイドルなの。ちゃんと健康には気を配らないと。」

 

彩「そうだけど~……。今日だけは見逃してくれたっていいじゃ~ん……。」

 

千聖「ダーメーよ。」

 

彩「うぅ、デザートぉ……。」

 

丸山さんは相変わらずだな……。

 

彩「……、! あ、香澄ちゃん!」

 

香澄「こんにちは、彩先輩!……!そうだ!彩先輩も聞きます?昨日の演劇についての話!」

 

彩「うん!聞きたい聞きたい!」

 

千聖「? 何かあったの?」

 

美咲「まぁ……はい。」

 

花音「えっと、実は……」

 

 

 

 

 

???「あ、あの!!」

 

 

 

 

 

楓・花・千・美「?」

 

香澄「あ、りみりん!」

 

たえ「やっと来た。」

 

あ、そっか。

 

誰かいないと思ったら牛込さんだったんだ。

 

沙綾「遅かったね、牛込さん。」

 

有咲「いったい何して…「そ、空見先輩!」え?」

 

楓「? 僕?」

 

りみ「……」

 

ガシッ!

 

楓「え?」

 

花・千・美・有・沙「!?」

 

りみ「それと……」

 

ガシッ!

 

沙綾「え、私!?」

 

香・た「!?」

 

りみ「二人とも、ちょっと来てください!」ダッ!

 

楓「わっ!ちょっと牛込さん!?いったいどこに……う、牛込さーーーん!!」

 

沙綾「な、何で私までー!?」

 

 

 

 

 

美咲「……い、行っちゃいましたね。」

 

千聖「どうしたのかしら、りみちゃん……。」

 

花音「さぁ……?」

 

彩「だ、大丈夫かな?」

 

香澄「りみりーん!?いきなりどこ行くのー!?」

 

たえ「沙綾も連れて、どうしたんだろう?」

 

有咲「もう、何が何だか……。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【弦巻家 庭】

 

りみ「はぁ、はぁ、はぁ……つ、着いた……。」

 

楓「はぁ、はぁ、はぁ、……」

 

沙綾「……だ、大丈夫ですか?空見先輩。」

 

楓「う、うん、まぁ……。はぁ、はぁ、……」

 

ほんと、毎度毎度……こうやって腕掴まれながら走るってのは、体力が……す、すごい、持ってかれるよ……。

 

まぁ、普通はこんなこと……頻繁には、ないんだろうけど……。

 

なんか転校してきてからは……こういうことが多くなったよね、なぜか……。

 

……てか、何で山吹さんは全然息切れしてないの?

 

……楽器?

 

楽器やってる人は、みんなこれくらい走っただけじゃ息切れなんてしないってこと?

 

いやでも、それなら牛込さんとか松原さんだって楽器やってるし……。

 

……分からん。

 

りみ「お姉ちゃーん、連れてきたよー。」

 

? お姉ちゃん?

 

ってことはもしかして……。

 

ゆり「ありがとうりみ。呼んできてくれたのは嬉しいんだけど……わざわざ走らなくてもよかったじゃない……?」

 

りみ「つ、つい……。」

 

楓「……やっぱり、ゆりさん……。」

 

ゆり「ごめんね空見くん、疲れたでしょ?」

 

楓「はい、だいぶ……。」

 

りみ「ご、ごめんなさい空見先輩!私、急がないとって思って、つい走ってきちゃって……」

 

楓「いやいや、大丈夫だよこれくらい。」

 

ゆり「沙綾ちゃんもごめんね。」

 

沙綾「いえ、私も大丈夫ですよ。」

 

なるほど……。

 

話から察するに、ゆりさんが牛込さんに僕と山吹さんを呼んできてほしいと頼んだ、ということか……。

 

……用が何かは分かんないけど、わざわざ外に出なくてもよかったんじゃないかな?

 

ゆり「空見くん、沙綾ちゃん。二人を呼んだのは、お礼を言いたかったからなの。」

 

楓「お礼、ですか?」

 

沙綾「私達、お礼を言われるほどのことは何も……」

 

ゆり「ううん、そんなことない。二人がいなかったら、りみはきっと、自分の殻に閉じこもってばかりだった。二人のおかげで、りみは自分の中にあったもやもやした感情を整理することができた。姉として、私は二人に、ちゃんとお礼を言いたいの。だから、……ありがとう。」

 

沙綾「そ、そんな……」

 

楓「大袈裟ですよ、ゆりさ…「大袈裟じゃないです。」え?」

 

りみ「……お姉ちゃんの言うとおり、二人がいなかったら、昨日のライブは成功できなかった。……沙綾ちゃん、ライブ、来てくれて本当にありがとう。」

 

沙綾「……牛込さん……。」

 

りみ「そして空見先輩。……私の抱えてた気持ち、……自分でもよく分からなかった気持ちに気づかせてくれて、ありがとうございます。」

 

楓「……牛込さん……。」

 

ゆり「……本当に、二人には感謝してる。……これからも、りみをよろしくね。」

 

楓・沙「……はい!」

 

りみ「じゃあ私からも。……これからも、お姉ちゃんをよろしくね♪」

 

ゆり「!? ちょ、ちょっとりみぃ!?」

 

沙綾「ふふ♪うん、もちろん♪」

 

楓「分かってるよ、牛込さん。」

 

ゆり「うぅ、なんか恥ずかしいな~……。」

 

牛込さんとの、何日間かのギクシャクした関係。

 

これで、ひとまずは解決ってところか。

 

……これからは、何か言うときにちゃんと考えてしゃべるようにしなきゃな。

 

また今回のようなことが起こらないように……。

 

 

 

 

 

香澄「……!いた!りみりーん!さーやー!」

 

りみ「か、香澄ちゃん!?」

 

沙綾「わざわざ探しに来てくれたの?中で待っててもらってよかったのに。」

 

香澄「突然りみりんが空見先輩とさーやを連れていっちゃうから、私すっごく心配したんだよ?」

 

りみ「ごめんね、香澄ちゃん。」

 

香澄「ううん、もう大丈夫!二人とも、戻って打ち上げパーティーの続きやろ!黒服の人が、チョココロネいーっぱい用意してくれてたし!」

 

りみ「チョココロネ!?やったー!」

 

沙綾「あはは、良かったね、牛込さん。」

 

りみ「……ねぇ、沙綾ちゃん。」

 

沙綾「ん?」

 

りみ「私のこと、……名前で呼んでほしいな。そのほうが、もっと仲良くなれる気がするんだ。」

 

沙綾「……うん、分かった。じゃあ……りみりん♪」

 

りみ「! ……うん♪」

 

香澄「よーし!それじゃあみんなのところへ戻ろう!ゆりさんと空見先輩も、早く来てくださいねー!」

 

……仲良いんだなぁ、あの三人。

 

ゆり「……それじゃ、私達も行こっか、空見くん。」

 

楓「あ、はい。」

 

でもまぁ、今は僕にもいるか。

 

あれくらい……とまでいくのかは分かんないけど、仲の良い友達が。

 

……『プルルルル……』ん?電話?

 

……あ、松原さん。

 

楓「……もしもし?」

 

花音『あ、空見くん?もうすぐビンゴ大会が始まるんだって。だから、早く戻ってきて?』

 

楓「ビンゴ大会?うん、分かった。すぐ戻るよ。」

 

花音『うん、待ってるからね。』

 

『プツン、……ツー、ツー……』

 

……よし、行くか。




これでほんとのほんとに文化祭回終了です!

次回からはまた普通の日常回(のつもり)です!

文化祭が終了、ということは……?


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49話 どうやら今日は七夕祭りというものがあるらしい

さよひな誕生日おめでとうーーーー!!!

石がないので、とりあえずピンズ欲しさに紗夜さんガチャと日菜ちゃんガチャそれぞれ10連ずつ引きました。

まぁ……10連じゃ出ないわなw。

よし、花音ちゃんガチャまで石貯めるか。


【空見家 楓の部屋】

 

……ガチャ

 

???「……」

 

楓「zzz……。」

 

???「……」

 

ピョンッ

 

???「……にゃ~。」

 

楓「zzz……。」

 

???「……にゃ~。にゃ~。にゃ~。」

 

楓「うーん……?うるさいなぁ、朝っぱらから……」

 

???「! にゃー!にゃっ、にゃっ、にゃっ……」フミフミ

 

楓「……って、マリーじゃねえか。」

 

マリー「にゃ~ん?」

 

楓「……あぁ、僕のことを起こしに来てくれたのか。ありがと、マリー。」

 

マリー「にゃ~♪」

 

楓「はいはい。起きるからちょっとどいててねー。」

 

……なんだよ、まだ7:30じゃんか。

 

……まぁいいか。

 

たまには早起きしよ。

 

 

 

 

 

と、今日の一日はマリーに起こされる形で始まった。

 

いつもは目覚ましで起きるのだが、たまにマリーが起こしに来てくれることがあるのだ。

 

その日はいつも、今日は何か良いことがありそうだ、と思いながら起きている。

 

なんせ愛猫が起こしに来てくれるんだ。

 

良いことないわけがないだろ?

 

……という話は置いといて。

 

今日の朝の過ごし方もいつも通りだ。

 

起きて、トイレ行って、顔洗って、ご飯食べて、歯磨いて、部屋戻って、着替えて……あ。

 

楓「あっぶね、そういや今日から夏服だった。えーっと、夏服夏服……どこにしまったっけな~?」

 

ガサゴソ……

 

楓「……!あった!こんな奥にしまってたのか。」

 

そう、今日から冬服から夏服になるのだ。

 

……と言っても、だから何だ?って話なんだけど。

 

僕にとっては、初の花咲川の夏服での登校なんだよな。

 

……いざ着てみると、いつもとちょっと感じ変わるもんだなぁ。

 

まだ若干肌寒いけど、もう7月だし、じきに暑くなって丁度よくなるだろう。 

 

よし、それじゃ学校行きますか。

 

8:05、僕は家を出て学校に向かって歩き始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~20分後~

 

【花咲川女子学園】

 

ふぅ、着いたー。

 

やっぱ音楽聞きながらだと、歩くのも早く感じるなー。

 

……当たり前だけど、みーんな夏服なんだな。

 

まぁだから何だって話なんだけど。

 

……周りが全員女子なこの状況に慣れてしまった自分が怖いわ。

 

よし、教室行こ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【花咲川女子学園 2-A教室】

 

ガラガラガラ

 

楓「……」

 

彩「あ、空見くん!」

 

楓「! ま、丸山さん……。」

 

彩「おはよう!」

 

楓「お、おはよう……。」

 

彩「? 空見くん、なんか元気ない?」

 

楓「いや、元気なくはないけど……。丸山さん、最近いつもこの教室にいるなーって思って。」

 

彩「そりゃあ、ここは私の第二の教室だもん♪」

 

楓「だ、第二の……?」

 

彩「うん!」

 

……あいつも、似たようなこと言ってたっけな。

 

ここは俺の第二の家だーって。

 

……あ。

 

花音「あはは……。……!」

 

楓「あ、松原さん、おはよう……。」

 

花音「うん、おはよう。」

 

目が合ったら、あいさつしないとだよな。

 

彩「空見くん!」

 

楓「ん?」

 

クルンッ♪  

 

彩「……どう?」

 

楓「……どう、って?」

 

彩「だ、だから、これだよ。」

 

クルンッ♪

 

彩「……これ!」

 

楓「……いや、これって言われても、何が……ん?」

 

待てよ?

 

丸山さんが指差してるのは……、……!!

 

あ!

 

あ~!!

 

楓「夏服!」

 

彩「そう!もう、もっと早く気づいてよ~。」

 

楓「ごめんごめん。」

 

さっきまで夏服のこと考えてたのに、何でここに来たとたん忘れるのか……。

 

楓「……で、夏服が何?」

 

花・彩「え……?」

 

楓「ん?……え?」

 

……僕、何か変なこと言いました?

 

???「彩ちゃんは、夏服が似合ってるかどうかというのを聞きたかったのよ。」

 

楓「!?」

 

花音「あ、千聖ちゃん。おはよう。」

 

千聖「おはよう、花音。」

 

び、びっくりした~。

 

白鷺さんだったのか……。

 

千聖「楓、あなたは本当に鈍感ね。」

 

楓「ご、ごめん……。」

 

千聖「謝るのは私じゃなくて、彩ちゃんでしょ?」

 

彩「え!?」

 

楓「そ、そっか。……丸山さん、ごめ…「い、いいよ別に謝らなくても~!」そ、そう?」

 

千聖「そういうわけにはいかないでしょ。あなた、似合ってるって言ってほしかったんじゃないの?」

 

え、そうなの?

 

彩「そ、そうだけど~。……でも、もうい…「似合ってる。」……え?」

 

花・千「え?」

 

楓「……に、似合ってると思うよ?……夏服。」

 

花・千「……」

 

彩「……そ、そう?……えへへ♪ありがとう、空見くん。」

 

楓「う、うん。」

 

これで良かった、のか?

 

……私服ならまぁ分かるけど、制服って似合ってるって言われて嬉しいものなのか?

 

彩「……あ、そうだ空見くん。さっき、花音ちゃんと話してたことなんだけどね?」

 

楓「え? う、うん。」

 

急に話変わったな。

 

彩「千聖ちゃんもいるなら、丁度いいや。今日ね、商店街のところで七夕祭りがあるんだ!」

 

楓「七夕祭り?」

 

彩「うん!今日は7月7日、七夕でしょ?」

 

楓「……あ、そっか。」

 

忘れてた。

 

そういや今日、七夕だった。

 

そっか、だから翔真のやつ、今日は限定イベントをクリアして限定アイテムゲットするぞーって張り切ってたのか。

 

……七夕の限定アイテムって、あまり強そうな感じしないけど。

 

まぁ、七夕限定だから取っておきたいってのもあるんかな。

 

彩「……くん。……くん、聞いてる?」

 

楓「え?あ、ごめん。ちょっと考え事してた。」

 

彩「もうー。……じゃあ、話を戻すね。今日、七夕祭りがある、ってとこまでは話したよね?」

 

楓「うん。」

 

彩「そこで、空見くんに提案があるんだ。」

 

楓「提案?」

 

彩「そ!提案!」

 

花音「簡単に言うとね?みんなでいっしょに、七夕祭りに行かない?って誘おうとしてたんだ。」

 

彩「ちょ、ちょっと花音ちゃん!何で先言っちゃうの~!?」

 

花音「ごめん、なんか長くなりそうだったから……。」

 

まぁ、それは僕も思った。

 

……しかし、七夕祭りかー。

 

彩「んー……、まぁいいや。というわけで空見くん、七夕祭り、私達といっしょに行かない?」

 

……これで行かないって行ったら、悲しむんだろうなー。

 

まぁ断る理由も、行けない理由もないからそんなこと言わないけど。

 

せっかく誘ってくれてるんだから、その厚意に甘えさせてもらう他ないよね。

 

楓「うん、僕で良ければ。」

 

彩「ほんとに!?やったー!やったね花音ちゃん!空見くん、いっしょに行ってくれるって!」

 

花音「ふふ♪良かったね、彩ちゃん。」

 

彩「うん!はぁ、もしかしたら断られるんじゃないかって思ってたから、これで一安心だよ~。」

 

楓「そ、そんなに……?」

 

花音「……彩ちゃん、文化祭が終わってから張り切ってるんだよ。これから先も、みんなでたくさん、いろんな思い出作るんだって。」ヒソヒソ

 

楓「思い出……。」

 

……そういやスイーツバイキングに行ったときも、同じこと言ってたっけ。

 

千聖「喜んでいるところ悪いけど、私は行けないわよ。」

 

え?

 

彩「えぇ!?何で~!?」

 

千聖「お仕事があるのよ、放課後に。だから、七夕祭りへは彩ちゃんと花音と楓の三人で行ってきて?」

 

花音「お仕事かぁ。……なら、仕方ないよ。ね、彩ちゃん。」

 

彩「……う、うん。」

 

……丸山さん……。

 

千聖「……気を落とさないの。七夕祭りで、思い出たくさん作るんでしょ?」

 

彩「! ……う、うん!」

 

楓・花「……」

 

千聖「彩ちゃん。私の分まで、きっちり楽しんでくるのよ。……明日なら、七夕祭りの話、いくらでも聞いてあげるから。」

 

彩「ほんと!?……うん、分かった!楽しんでくる!」

 

千聖「あ、それともう二つ。」

 

彩「? 二つ?」

 

千聖「紗夜ちゃんと燐子ちゃんも、それぞれ日菜ちゃん、あこちゃんと行くらしいから、いっしょには行けないみたいよ。」

 

彩「あ、そうなんだ。分かった。ありがとね、千聖ちゃん。」

 

千聖「そしてもう一つ。……もうすぐHR始まるわよ?」

 

彩「え?……!あーほんとだ!!急いで戻らなきゃっ!!じゃーね空見くん、花音ちゃん。また後で!」ダッ!

 

楓・花「……う、うん。」

 

千聖「……二人も、早く席についたほうがいいわよ。」

 

花「! そ、そうだね。行こっか、空見くん。」

 

楓「う、うん。」

 

流石白鷺さん、よく観察してるな~。

 

花・千「……」

 

……ん?

 

二人とも、何で止まってるんだ?

 

早く座らないとHRが…「空見くん(楓)。」え?

 

花・千「……」

 

……えーっとー、もしかして……。

 

楓「……ふ、二人も似合ってるよ。その、夏服。」

 

花・千「! ……」

 

……あれ?

 

違った?

 

花音「……ありがと、空見くん♪」

 

千聖「ありがとう、楓。」

 

……違っては、なかったみたい。

 

……女子って、よー分からんなー……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~放課後~

 

【花咲川女子学園 図書室】

 

「これで、本日の図書委員会を終わります。ありがとうございました。」

 

『ありがとうございました!!』

 

 

 

 

 

楓「ふぅ、終わったー。」

 

燐子「今日は……いつもより、お話が……長かった……ですね。」

 

楓「うん……。まぁ、文化祭が終わったり、夏休みにも図書委員の仕事があったりで、連絡も多かったのは分かるけど……もう少しゆっくり、手短に話してくれてもよかったんじゃないかなぁ?」

 

燐子「そうですね。……流石に今日は……私も……少し、疲れました……。」

 

僕と白金さんが話している通り、今日の図書委員会はいつもより話が多く、時間も長かった。

 

いつもはだいたい10分もかからず終わるのだが、今日はなんと30分。

 

……いや長すぎん?

 

いつもより20分オーバーて……。

 

燐子「……あの……」

 

楓「? 何?白金さん。」

 

燐子「丸山さんから聞いたんですけど……空見さんも……七夕祭り……行くんですよね?」

 

楓「あぁ、うん、そうだよ。丸山さんに誘われて、僕と松原さんの三人で。……それがどうかした?」

 

燐子「い、いえ。どう、というわけではないんですけど……その……えっと……」

 

楓「……あ、そういえば白金さんも行くんでしょ?七夕祭り。えーっとー……誰だっけ……。」

 

燐子「! あ、あこちゃん……です。」

 

楓「そうそうその人!……その、あこちゃん?って、白金さんの友達?」

 

燐子「は、はい。あこちゃんは、とても優しくて、可愛くて、……私といっしょで、ゲームが好きで……。」

 

楓「ゲーム……。あ、そういやゲームセンターに行ったとき、クレーンゲームとかシューティングゲームとか、すごい上手だったね。そっか、白金さんはゲームセンターが好きってわけじゃなくて、ゲームそのものが好きなのか。」

 

燐子「は、はい……。」

 

楓「なんか、意外だなぁ。」

 

燐子「! い、意外……ですか……?」

 

楓「! ち、違う違う!そういう意味じゃなくてね!なんというか……その……人は見かけによらないんだなっていうか、意外な特技を持ってるっていうか……ってあれ?これさっきも言ったっけ?」

 

燐子「……ふふ♪」

 

楓「え?」

 

燐子「大丈夫……ですよ。空見さんの言いたいことは、……ちゃんと……分かってますから。」

 

楓「……そ、そう?」

 

燐子「はい。」

 

……今は白金さんだから良いけど、テンパったら自分で何言ってるか分からなくなる癖、早く直さないとな。

 

てか、これ癖なのか?

 

燐子「では、私はそろそろ……行きますね。」

 

楓「え?あ、うん。」

 

燐子「七夕祭り……お互い楽しみましょうね。」

 

楓「そ、そうだね。……あ、もし会ったら、そのときはまぁ……よろしく。」

 

燐子「ペコリ……」

 

……さてと、僕も教室に置いてきた荷物取りに行くか。

 

はぁ、HR終わった直後に先生に呼ばれなきゃ、二度手間にならずに済んだのに……。

 

あのとき教務室まで荷物持って行けばよかった……。

 

まぁ委員会が始まる時間を5分遅く勘違いしてた僕も僕だけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

楓「はぁ……。」

 

荷物取りに行ったまではよかったけど、まさかそこで先生に会って手伝わされるとは……。

 

まぁ別に手伝わされるのはいいんだけどさ。

 

……教室から教務室まで四往復って何よ……。

 

腰がイカれると思ったわ……。

 

あーいててて……。

 

 

 

 

 

???「あ、空見先輩!」

 

 

 

 

 

楓「ん?あ。」

 

タタタタ……

 

楓「牛込さん。珍しいね、こんな時間に。って、僕が言えることじゃな…「やっと見つけました……。はぁ、はぁ……。」え?」

 

やっと見つけた……って、僕を?

 

りみ「空見先輩……。いったい、どこに行ってたんですか……。」

 

楓「どこ、って言われても……まぁ、いろいろ?」

 

りみ「いろいろ……ですか。」

 

楓「う、うん。」

 

りみ「……」

 

な、なんか牛込さん、顔怖くない?

 

もしかして……怒ってたり、する?

 

りみ「……空見先輩。」

 

楓「は、はい!」

 

りみ「図書室へは、行きましたか?」

 

楓「え?……と、図書し…「行きました?」い、行った行った!行きました!」

 

やっぱり牛込さん怒ってんじゃねーか!!

 

何で??

 

僕また何かしたの??

 

りみ「……じゃあ次、教室には行きましたか?」

 

楓「教室……って、どこの…「空見先輩のです。」あ、はい、行きました。」

 

りみ「では次、……教務室には行きました?」

 

楓「あ、はい。先ほど行ってまいりました。」

 

りみ「……」

 

楓「……」

 

僕、いったい牛込さんに何をしたのでしょう……。

 

記憶にないけど、怒ってるってことは……たぶん、無意識に何かしたんでしょーね……。

 

りみ「そして最後、……再び教室に行き…「行きました。そして今丁度帰るところでございます。」……」

 

楓「……」

 

りみ「……あの。」

 

楓「はい、何でございましょう。」

 

りみ「……早くその変な口調をやめないと、そろそろ怒りますよ?」

 

楓「……え?」

 

りみ「? 何ですか?え?って……」

 

楓「い、いや、……牛込さん、もうとっくに怒ってんじゃないの?」

 

りみ「? 何で私が空見先輩を怒らきゃいけないんですか?」

 

楓「……あれ?」

 

りみ「え?」

 

……どうやらまた、僕の勘違いだったようだ。

 

……でもさ、誰だっていきなりあの声のトーンであんなこと聞かれたら、怒ってるんじゃないかって思うよね?

 

え、思わない?

 

……あ、そ……。

 

楓「……ごめん、何でもない。僕が勝手な思い込みしちゃっただけだから、今のは忘れて。」

 

りみ「は、はぁ……。」

 

楓「にしても、……さっきのはいったい何だったの?」

 

りみ「……少し、確認をしたくて……」

 

楓「確認?って何の……」

 

りみ「私が、空見先輩とすれ違いになってることのです。」

 

楓「すれ違い……?……も、もしかして……僕のこと、ずっと探してた?」

 

りみ「……」コク

 

……うん、なるほどそういうことか。

 

やっと今の状況が読めたぞ。

 

りみ「空見先輩に用事があったので教室のほうへ行ったら、文化祭で演劇のナレーションをしていた人に空見先輩は図書室へ行ったと言われて……」

 

浅井さんか。

 

りみ「次に図書室に行ったら、燐子先輩に空見先輩は教室へ行ったと言われて……」

 

白金さんまだいたんだ。

 

りみ「なので教室に行ったら、今度は四人いた中の一人に先生といっしょに教務室に行ったと……」

 

四人……?

 

……あ、文化祭準備最終日に僕と松原さんと白鷺さんを除いて最後に帰ったあの四人か。

 

あの人達の不良の演技、マジでヤバかったな~。

 

りみ「で、教務室に行ったら先生にまた教室へ行ったって……。それから数回教室と教務室とを行き来するはめに……」

 

あぁ……。

 

牛込さん、ドンマイすぎる……。

 

りみ「何回目かの教務室に行ったら空見先輩の担任らしき先生がいたので聞いてみたら、また教室に行ったって……。……はぁ。」

 

あ、とうとうため息つかれた。

 

りみ「……で、仕方なくまた教室に向かおうとしたら、……やっと、やっとタイミング良く空見先輩と会えたと、そういうわけです。」

 

楓「……なんか、いろいろお疲れ様。」

 

りみ「まさか、こんなに空見先輩に会うのに苦労するとは思いませんでした……。」

 

うん、そんな話、アニメや漫画でもなけりゃ確率は全然低いはずなのに、まさか現実で聞くとは思わなかったから、すごいびっくりだよ。

 

もう奇跡的な確率でしょこれ。

 

楓「……それで、どうして僕を探してたの?」

 

りみ「あ、そうだ。えっと……その……」

 

楓「?」

 

りみ「……そ、空見先輩!」

 

楓「! う、うん。」

 

りみ「わ……私といっしょに、……七夕祭りに、行きませんか!?」

 

楓「……七夕祭り?」

 

りみ「は、はい!」

 

楓「……」

 

りみ「……」

 

楓「……どうしよう……。」

 

りみ「!! ……そ、そうですよね。いきなり言われても、予定とかあったりするだろうし……。すみません、このことは忘れて…「ねぇ牛込さん。」……はい。」

 

楓「丸山さん達もいっしょじゃダメかな?」

 

りみ「え……?……どうして、彩先輩が……」

 

楓「実は朝、丸山さんと松原さんにも誘われてるんだよ、七夕祭り。だから、牛込さんが良ければ、みんなでいっしょに行くってのもアリだと思うんだけど……」

 

りみ「……」

 

楓「牛込さん?」

 

りみ「! は、はい!全然大丈夫です!……でも、二人ともOKしてくれるかどうか……」

 

楓「大丈夫。あの二人なら絶対良いって言ってくれるよ。ちょっと待ってて、今二人にメールするから。」

 

りみ「はい、お願いします!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【丸山家 彩の部屋】

 

彩「~♪~~♪」

 

『ピロリン♪』

 

彩「? メール?あ、空見くんからだ!えーっと何々~?……わぁ、そうなんだ♪ふふっ♪もちろん返事は……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【松原家 花音の部屋】

 

花音「うーん、うーん……」

 

花音の母「さっきから何を探してるの?」

 

花音「うん、実は…『ピロリン♪』!」

 

花音の母「あら、メールが来たみたいよ。相手は……、! ……空見…「ひ、人のスマホ勝手に見ないでよ~!」えぇ~?冷たいわね~。」

 

花音「もう、お母さんったら。……なるほど、そういうことか。うん、私もいっしょに行きたいな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【花咲川女子学園】

 

楓「……!もう来た!えーっと……」

 

りみ「ど、どうでした?空見先輩。」

 

楓「……うん。二人とも、大歓迎だってさ。」

 

りみ「ほ、ほんとですか!?あ、ありがとうございます空見先輩!」

 

楓「いやいや、礼なら、後で二人に言ってよ。」

 

りみ「あ、そうですね。えへへ……。」

 

これで七夕祭りへは、松原さん、丸山さん、牛込さんと行くことになるのか。

 

……。

 

楓「ねぇ、牛込さん。」

 

りみ「何ですか?」

 

楓「一年生が牛込さんだけって、ちょっと心細くない?」

 

りみ「……心細くない、って言ったら、嘘になります。……でも、空見先輩がいるので大丈夫です。」

 

楓「え?僕?」

 

りみ「それに、一年生が私だけっていっても、花音先輩と彩先輩ですから、何も心配することはありませんし。」

 

楓「あぁ、まぁ、そうだね。」

 

りみ「だから、全然大丈夫です!……では私、早く家に帰って準備しなきゃなので、お先に失礼します。」

 

楓「あ、う、うん。気をつけて……あ。」

 

りみ「? どうしました?」

 

……これ、言ったほうがいいのかな?

 

いやでも、あのときは二人から視線を感じたからあぁ言っただけだし……。

 

うーん……。

 

りみ「……空見先輩?」

 

楓「……牛込さん。」

 

りみ「! は、はい。」

 

楓「……その夏服、似合ってるよ。」

 

りみ「え!?」

 

! その反応は……!

 

やっぱり、まずかったか……。

 

りみ「……あ、ありがとうございます!」

 

楓「え?」

 

りみ「空見先輩の夏服も、カッコいいですよ!……では、私はお先に失礼します。」

 

タッタッタ……

 

楓「あ……。」

 

行っちゃった。

 

……僕の夏服もカッコいい、か。

 

……そうかなぁ?

 

『ピロリン♪』

 

ん?メールだ。

 

……あれ、松原さんと丸山さんからだ。

 

いったいどうしたんだろう?

 

 

 

 

 

『そういえば空見くんの夏服も、とても似合っててカッコよかったよ!あとね、空見くんと初めての七夕祭り、今からすっっっごく楽しみなんだ!!楽しい思い出、いーーーっぱい作ろうね!!           彩』

 

 

 

 

 

『言い忘れてたことがあったから、メールで伝えるね?

……空見くんも似合ってたよ、夏服。ごめんね、これだけは伝えておきたくて。さっきは似合ってるって言ってくれてありがとう。七夕祭り、楽しみだね♪  花音』

 

 

 

 

 

……どっちも似たようなメール……。

 

え、そんなに僕の夏服似合ってるかな?

 

ていうか、みんな制服に敏感なんだなぁ。

 

……まぁ、僕も七夕祭りは楽しみだから、早く家帰って準備しよっかな。




やっと来週携帯を変えられる……。

これで快適にガルパができるようになってくれればいいんだけど……。(そういや今回のドリフェスは麻弥さん祭りだったなー。)


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50話 楽しんで、トラブって、願って

最近はポケモンの過去作をやるのにハマってます。

ということは置いといて、4月初投稿です!

ゆったりゆったり書いてる(打ってる?)ので、話がめちゃくちゃガチくそ進みませんが、そこはまぁ、温かい目で見てくださいw。

あ、あと余談ですがAndroidからiPhoneに変えました。


【空見家】

 

楓「ただいまー。」

 

翔真「おう、お帰り。」

 

楓「あ、翔真。ただいま。」

 

タタタタ……

 

翔真「……何急いでんの?」

 

楓「今から友達と七夕祭り行ってくるから、その用意。」

 

 

 

 

 

翔真「七夕……。あぁ、そういや今日七夕か。……ん?楓が、七夕祭り?友達と?……、……!?楓が友達と七夕祭り!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~17:30~

 

【空見家 楓の部屋】

 

集合は、確か18:00って言ってたよな。

 

時間まであと30分。

 

……なんとか間に合うだろ。

 

まずは着替えて、それからバッグ用意して、持ち物入れて……おっと、財布も忘れないようにしないとな。

 

……あ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

楓の母「えぇ!?楓が友達と七夕祭り!?」

 

翔真「うん。あの楓がだよ?……とうとう楓も、そういうことをする友達ができたか。」

 

楓の母「でもあの子、これまでも何度か友達と出かけてたみたいよ。」

 

翔真「それ去年だろ?しかも友達っていっても一人だ…「いいえ?今の高校に行き始めてからよ。」……マジか。」

 

楓の母「あの子も、今の生活になるにつれて少しずつ成長してるのね。」

 

翔真「……まぁ、そうだね。」

 

楓の母「……じゃああの子、今日は友達と食べて帰ってくるのかしら。」 

 

翔真「うーん……どうだろ。」

 

楓の母「今からあの子のところに行って聞いて…「お母さん。」!?」

 

翔真「!? い、いたのかよ楓!」

 

楓「いや、今来たばっかだけど……。それはそうと、お母さんにお願いがあるんだけど。」

 

楓の母「な、何……?」

 

翔真「(俺より驚いてる……。)」

 

楓「お金、くれない?」

 

楓の母「え?お金?」

 

楓「うん。……手持ちのお金だけじゃ、足りなそうで……。あ、えっと、実はこれから友達と…「七夕祭り行くんでしょ?」! な、何でそのことを……!」

 

楓の母「翔真から聞いたのよ。……えーっと、2000円くらいあげれば足りる?」

 

楓「……う、うん、たぶん。」

 

楓の母「……無駄遣いしないようにしなさいよ?」

 

楓「分かってるって。……ありがとう、お母さん。」

 

楓の母「どういたしまして。」

 

楓「よし……!」

 

タタタタ……

 

翔真「……普通にあげるんだね。いつもなら、またおこづかい全部使ったの?みたいな感じで怒るのに。」

 

楓の母「友達と出かけるっていうときは、普通にあげるわよ。」

 

翔真「ふーん。……さて、俺は友達とチャットしながら七夕限定クエストでもやろっかなー。」

 

楓の母「……そう、普通にあげるわよ。だって私、……あの子のお母さんだもの。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

楓「行ってきまーす!」

 

楓の母「いってらっしゃい、気をつけてねー?」

 

楓「はーい!」

 

……17:50。

 

まぁ、ギリギリ間に合うかな。

 

にしてもお母さん、今日は何事もなくお金くれたな。

 

いつもなら、もうおこづかい全部使ったのか、みたいな感じで怒るのに。

 

……帰ったら、何か手伝いとかしたほうがいいかな?

 

まぁいっか。

 

とりあえず、集合場所まで行くか。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~15分後~

 

はぁ、はぁ、はぁ……。

 

時間配分ミスった……。

 

予定では10分で着く計算だったのに、まさかの道が工事中で遠回りするはめになり5分オーバー。

 

うーん、工事中だったなら仕方ないって思うけど、でも、うーん……。

 

こうなることも考慮してもうちょっと余裕を持って出るべきだった……。

 

お、やっと着いた。

 

楓「はぁ、はぁ、はぁ……。」

 

彩「うん、それでね……って、空見くん!?」

 

花音「ふぇぇ!?もしかして、走ってきたの!?」

 

りみ「そこにベンチがあるので、座って休んでください!」

 

楓「あ、ありがとう……。」

 

みんなのことだもん、もうとっくに着いてるよね。

 

はぁ、疲れた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彩「でも良かったよ~。空見くん、もしかしたら来てくれないんじゃないかって思っちゃった。」

 

楓「ごめん、僕が遅刻したばっかりに……。」

 

花音「そんな、謝ることないよ!」

 

りみ「いつもの道が工事で通れなかったんじゃ、仕方ないですよ。」

 

彩「そうそう!りみちゃんの言う通りだよ!」

 

楓「……」

 

三人とも、めっっちゃフォローしてくれるじゃん……。

 

花音「だから空見くん、元気出して?」

 

りみ「いつまでも落ち込んでたら、楽しめるものも楽しめませんよ?」

 

彩「お祭りなんだから、明るい気持ちで行こうよ!ね、空見くん。」

 

楓「……明るい気持ち、か。」

 

彩「そ!明るい気持ち!」

 

楓「……うん、そうだね。分かった。もう落ち込まないようにする。……よし、気持ちを明るく、気持ちを明るく……。」

 

彩「その調子だよ、空見くん!」

 

花・り「ふふふっ♪」

 

……ほんとこの三人と白金さんは、純粋に優しいよね。

 

白鷺さんや氷川さんも優しくはあるけど、たまに厳しいときがあるし。

 

……もう、文化祭前のときみたいないざござは、起こさないようにしたいな。

 

てか起こさない。

 

うん、絶対もう起こさない。

 

今固く決心した。

 

彩「あ!見えてきたよ!」

 

? 見えてきたって、何が……。

 

楓「!! す、すごい……。」

 

 

 

 

 

【商店街】

 

ワイワイガヤガヤ

 

ワイワイガヤガヤ 

 

ワイワイガヤガヤ

 

ワイワイガヤガヤ

 

 

 

 

 

花音「ふぇぇ、人がいっぱい~……。」

 

りみ「はぐれないように気を付けなきゃですね。」

 

この商店街、こんな混むことあるんだ。

 

でも、何であんなに混んで…「ち、違うよ二人とも~!」え?

 

花・り「え?」

 

彩「いや、まぁ別に違くはないんだけど……。人がいっぱいではぐれないようにしなきゃいけないのもそうなんだけど……。私が見てほしかったのはあれだよ!ビシッ!」

 

楓・花・り「? ……あ。」

 

あ、あれは……。

 

たくさんの、短冊……。

 

花音「綺麗……。」

 

りみ「そっか。七夕だから、みんなあの短冊に願い事を書いてるんだ。」

 

彩「みんなの短冊を笹の葉に吊るしてるから、色がカラフルで、しかも飾り付けもされてて……。これぞ七夕、って感じだよね。」

 

あの人混みは、みんな七夕祭りに来た人達だったのか。

 

そういや祭りの場所までは聞いてなかったっけな。

 

まさか商店街でやるとは……。

 

そりゃあこんな人混みができるわけだ。

 

……にしても、確かに綺麗だなぁ。

 

商店街のあちこちに飾り付けされた笹の葉が並んでいて、そこには色とりどりの短冊が笹の葉いっぱいに吊るされている。

 

もちろん祭りなので屋台もあり、家族、友達同士、カップルなど、いろんな人で賑わっている。

 

……こういう祭りとかで人がいっぱいいて賑わってる光景、昔から好きなんだよなぁ。

 

彩「……」

 

花音「どうしたの?彩ちゃん。なんか浮かない顔してるよ?」

 

彩「あ、うん……。……結構、着物を着てる人、いるなって思って。」

 

花音「着物……?」

 

りみ「……あ、確かに。」

 

着物か。

 

……言われてみれば、結構着てる人多いな。

 

まぁお祭りっちゃお祭りだから、当然なのかもしれないけど。

 

でも着物って聞くと、やっぱ夏のお祭りとかのほうがしっくり来るよな。

 

彩「……私達も、着物で来ればよかったかな?」

 

花音「そ、そんなことないよ。彩ちゃんの私服、とても可愛いよ?」

 

彩「そ、それを言うなら、花音ちゃんの私服も……りみちゃんの私服だって、女の子っぽくてすっごく可愛いよ!」

 

りみ「! そ、そんなこと///……。」

 

アーダコーダアーダコーダ

 

……何でこの三人、言い合ってるの?

 

着物の話をしてたはずが、どうして私服に……。

 

彩「じゃあそれを言ったら、空見くんの私服はどうなの!?」

 

花・り「!?」

 

楓「え?」

 

彩「私達の私服が可愛いなら、空見くんの私服はカッコいいになるはずだよ!なんてったって空見くんは男の子だもん!」

 

……なんか、話が脱線してきてない?

 

僕の私服とか、どうでもいいと思うんだけど……。

 

楓「あ、あの、三人とも、もうそのくらいで…「で、でも、今は空見くんは関係ないよ!」「関係あるよ!友達じゃん!」「理由になってないと思うんですけど……。」……」

 

ダメだこりゃ。 

 

……私服、ねー。

 

……あ、そういえば僕、私服の松原さんと牛込さんを見るのは初めてだな。

 

丸山さんはまぁ、あのときに三日間も連続で出かけたから四回目だけど。(ちなみにその四回とも全部違う服なんだよね。)

 

……って、そんなこと今はどうでもいっか。

 

彩「だから!私が言いたいのは……」

 

花音「それは絶対違うと思うよ!だって……」

 

りみ「年下の私から言われてもらいますと、二人とも……」

 

……いつ終わるんだ、この言い合い……。

 

そろそろ、周りの人にすごい見られるようになって恥ずかしくなってきたし。

 

……ここは、僕が止めるしかないのか。

 

でも、どうやって止めれば……。

 

……あ、そうだ。

 

彩「もぅー!二人とも頑固だなー!だから私は…「ね、ねぇみんな。」?」

 

花音「そ、空見くん?」

 

りみ「すみません空見先輩。今私達、とても大事な話を…「うん、分かってる。分かってるけど……その前に一つだけ言わせて。」? 一つ、ですか……?」

 

彩「空見くん、いったい何を……。」

 

楓「……三人とも、引き分けってことでいいんじゃない?ほら……その……三人とも、似合ってて、可愛い……んだからさ。」

 

花・彩・り「……」

 

……あ、あれ?

 

……もしかして、褒める作戦、失敗だった……?

 

花音「……可愛い?……そ、そう、かな///……?」

 

ん?

 

りみ「……ほんとに、可愛いと思いますか?この服。」

 

楓「え?……う、うん。牛込さんらしいと思うけど……」

 

りみ「わ、私らしい///……。」

 

……なんか、雰囲気変わったな。

 

……作戦、成功か?

 

彩「……えへへ♪」

 

楓「え?」

 

彩「ありがとう、空見くん。私、すっごく嬉しいよ!」

 

楓「……う、うん。それなら、いいんだけど……」

 

彩「はぁ。……なんかもう、言い合う気分じゃなくなっちゃった。」

 

花音「うん、私も。」

 

りみ「ふふっ、そうですね。」

 

彩「……よし!じゃあ夏!夏祭りのときは、みんな揃って着物で来よう!もちろん、空見くんも!」

 

楓「え!?ぼ、僕も!?」

 

花音「空見くんの着物……。……うん!絶対似合うと思う!」

 

りみ「私も、空見先輩が着物を着てる姿、見てみたいです!」

 

楓「ま、マジか……。」

 

彩「ふふふっ♪じゃあ、着物の楽しみは夏までとっとくとして、今はみんなで七夕祭りを楽しもう!」

 

花音「うん、そうだね!」

 

りみ「楽しんでる途中で、知り合いにも会えたらいいですよね。」

 

彩「あ、確かに!紗夜ちゃんも燐子ちゃんも、来るって言ってたもんね!」

 

花音「ハロハピのみんなも、来てるのかなぁ?」

 

りみ「香澄ちゃん達は、絶対に来る!って言ってましたよ。」

 

……よく分かんないけど、上手くいったみたいだ。

 

やっぱり、褒めるって手段はこういうときに最適なんだな。

 

これからも似たような言い合いが起きたときは、この手段が使えそうだ。

 

まぁでも……。

 

……褒めるとなんか照れくさくなっちゃうから、あまりしたくない手段ではあるけど。

 

……いいや、最後の手段ということで留めておこう。

 

でもさ、一つだけいい?

 

……こういうとこで知り合いに会うと、ちょっと気まずくなるの僕だけ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして僕達は、七夕祭りの屋台巡り兼短冊観賞をすることにした。

 

夏祭りのような大きい祭りではないので、それに比べたら屋台の数は少なめだが、しっかりお祭りとして成り立つくらいの屋台は揃っている。

 

それと、道の所々に飾ってある短冊。

 

何百、何千もの短冊がズラリと吊るされており、これらがあることで七夕感がより強く演出させられているのは間違いないだろう。

 

短冊には一枚一枚、いろんな人の願いが込められている。

 

それらを見ながら屋台を巡るというのが、この七夕祭りの楽しみかたなのだろうと、僕は思う。

 

 

 

 

 

グ~

 

彩「あ///。……あはは……。私、ちょっとお腹すいちゃったかも。」

 

りみ「それじゃ、屋台に行って食べ物を買ってきましょうよ。」

 

花音「休憩所もあるみたいだから、そこで座って食べようか。」

 

彩「うん、そうしよう!そうと決まったらまずは、食べ物屋台探しだー!」

 

りみ「オー!」

 

花音「お、オー?」

 

 

 

 

 

……まぁ、まずは腹ごしらえだな。

 

……焼きそば食べたいなぁ。

 

にしても、……ほんとに人多いなぁ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彩「よーく狙ってねー、花音ちゃん。」

 

花音「う、うん。……え、えい!パシュッ!」

 

……コトン

 

花・彩「倒れた!!」

 

「おめでとうお嬢ちゃん達。ほれ、景品のぬいぐるみだよ。」

 

花音「あ、ありがとうございます。」

 

彩「すごいよ花音ちゃん!まさか一回で景品をゲットしちゃうなんて!」

 

花音「た、たまたまだよ~。……でも、嬉しいな♪」

 

 

 

 

 

りみ「えいっ!」

 

楓「また!?え、もうそれ何個目……?」

 

りみ「えーっとー……6個目ですかね。」

 

楓「6……。ま、マジかよ……。」

 

りみ「ヨーヨーつりのコツは、狙いをさざめたら一気に引き上げる、です。」

 

さっきからずっとそれやってるんだけどなー……。

 

楓「でも、牛込さんのは……ここまでくると、もう才能だよね。」

 

本気出せば、ここにあるヨーヨー全部すくいそうだもん。

 

 

 

 

 

彩「……!あ、紗夜ちゃん!」

 

紗夜「! ま、丸山さん!?それに松原さんも……」

 

日菜「やっほー彩ちゃん。花音ちゃんも久しぶり~♪」

 

花音「うん、久しぶり♪」

 

日菜「ね?私の言う通りだったでしょ?」

 

紗夜「え、ええ……。」

 

彩「? 何の話?」

 

紗夜「えっと、実は……」

 

 

 

 

 

???「あ……あの……!」

 

楓「ん?あ……白金さん!」

 

燐子「こんばんは……。まさか……会えるとは、思いませんでした……。」

 

楓「この人混みだもんね。偶然ってすごいな~。」

 

りみ「あこちゃん、こんばんは。」

 

あこ「こんばんは、りみりん!それと……」

 

っ!

 

な、何やら、視線を感じる……。

 

楓「……えっと、この人が白金さんの言ってた……」

 

燐子「あ、あこちゃんです。宇田川あこちゃん。」

 

楓「宇田川さん、か。」

 

りみ「二人は、初対面なんですか?」

 

楓・あ「うん……。」

 

人と話す中で、初対面ほど緊張することはないよな……。

 

あこ「……あ、あこ、空見先輩のこと、いっぱい聞きました。りんりんや紗夜さん、リサ姉さんからも。」

 

楓「そ、そうなんだ……。」

 

燐・り「……」

 

あこ「……えっと、……ゲーム、好きなんですか?」

 

楓「へ?……ゲーム?……う、うん、まぁ、好きだけど。」

 

あこ「! だ、だったら今度、……あこ達と、ゲームしに行きましょう!」

 

燐・り「!」

 

楓「……げ、ゲームを?」

 

あこ「はい!」

 

楓「……う、うん。まぁ、いいけど…「約束しましたよ!しましたからね!忘れないでくださいよ!」わ、分かってるよ……。」

 

燐子「……あ、あこちゃん。今のは、少し…「りんりん、そろそろ行こう!」グイッ! ちょ、ちょっと……あこちゃん……!」

 

楓・り「……」

 

燐子「ふ、二人とも……さ、さようなら。ま、待ってよあこちゃ~ん……!」

 

……何だったんだ、いったい……。

 

りみ「……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彩「はぁ〜。楽しいなー七夕祭り。」

 

りみ「そうですね〜。」

 

……お金、こんな持って来なくてもよかったかも。

 

お祭りだから、結構使うと思ってたけど、現状1000円も使ってない……。

 

……貯めとくか。

 

彩「どう?空見くん。」

 

楓「え?」

 

りみ「七夕祭り、楽しめてますか?」

 

楓「あぁ。……うん、バッチリ楽しめてるよ。」

 

彩「ほんと?にしては、あまり浮かない顔してるような……」

 

楓「いや、これはちょっと、考え事をしてたからで……。大丈夫、ほんとにちゃんと楽しんでるから。」

 

彩「……うん、大丈夫!嘘をついてる目じゃないから、本当だね!」

 

え……目?

 

……いつもと変わんない目をしてるつもりだけど、そうなの?

 

彩「ね、花音ちゃんもそう思うよね!」クルッ

 

ワイワイガヤガヤ

 

ワイワイガヤガヤ

 

彩「……?花音ちゃん?」

 

え?クルッ

 

りみ「そういえば……さっきから話してるの、私達だけのような……」

 

彩「え……?……そ、そんな……嘘、だよね……?」

 

りみ「……!か、花音先輩!花音先輩!!」

 

ワイワイガヤガヤ

 

ワイワイガヤガヤ

 

お、おい……。

 

嘘だろ……?

 

彩「か、花音ちゃん!花音ちゃん!!花音ちゃーーん!!」

 

ワイワイガヤガヤ

 

ワイワイガヤガヤ

 

……ダメだ。

 

人が多すぎて、声がかき消されてる……。

 

よし、こうなったら一か八か……。

 

彩「……どうしよう、私のせいだ……。私が花音ちゃんを見てなかったから…「待って丸山さん!」……空見くん?」

 

楓「今松原さんに電話かけてみるから!」

 

『……プルルルルル、プルルルルル、プルルルルル……。』

 

頼む、松原さん、出てくれ……!

 

この騒がしい中厳しいとは思うけど……運良く気づいてくれ……!

 

『プルルルルル、プルルルルル、プルルルルル……。』

 

『プルルルルル、プルルルルル、プルルルルル……。』

 

楓「……」

 

彩「そ、空見くん……。」

 

楓「……ダメだ、全然つながらない……。」

 

りみ「やっぱり、この人の数だから……」

 

彩「……!探そう!みんなで探せば、きっと…「ダメだよ、丸山さん。」でも!」

 

りみ「空見先輩の言う通りですよ。この人混みの中、手分けして探したとしても、すぐ見つかるかどうか……。」

 

楓「悔しいけど、それはちょっと無謀だよ……。それに、僕達三人もはぐれちゃう可能性があるし。」

 

彩「……でも……このまま花音ちゃんを放っておくことなんてできないよ!今頃きっと、寂しがってると思う……。それに花音ちゃん、方向音痴だから、尚更……。」

 

りみ「……」

 

……そっか。

 

そういえば松原さん、方向音痴だった……。

 

……くそっ、こんなとき、白鷺さんなら……。

 

 

 

 

 

???「あ!空見先輩!彩先輩に、りみりんも!」

 

楓・彩・り「!?」

 

たえ「やっと会えた。」

 

有咲「ま、マジで見つけやがった……。」

 

沙綾「ね?香澄の言う通りだったでしょ?」

 

戸山さん、花園さん、市ヶ谷さん、山吹さん……。

 

そういえば牛込さんが来るって言ってたな。

 

しかし、何でこんなときに……。

 

タイミングが良いのか悪いのか……。

 

香澄「? どうしたんですか?空見先輩。私の顔に何かついてます?」

 

彩「……うっ、うぅ……」

 

りみ「みんな〜……」

 

有咲「お、おいりみ!?彩先輩も!どうして泣いて……」

 

彩「うわぁ〜ん!!香澄ちゃ〜〜ん!!」ガバッ!

 

香澄「うわぁ!ちょ、ちょっと彩先輩!?」

 

りみ「さ、沙綾ちゃ〜ん!!」ダキッ!

 

沙綾「うわっ、ど、どうしたのりみりん!?何で泣いてるの!?」

 

……ん?

 

待てよ?

 

……、……そうだ、この人数なら……!

 

たえ「……空見先輩、これはいったいどういう……、 ? 空見先輩?」

 

楓「……」

 

有咲「あ、あの……空見先ぱ…「花園さんと市ヶ谷さんに、お願いがあるんだけど、いい?」え?」

 

たえ「お願いって……急にどうし…「大事なことなんだ。」! ……分かりました。」

 

有咲「お、おいおたえ、分かったって何が…「ちょっと有咲は黙ってて。」! ……わ、分かった。なんか、ごめん。」

 

たえ「……それで、大事なお願いって何ですか?」

 

楓「……丸山さんや牛込さん、みんなを連れて、休憩所に行っててほしいんだ。」

 

彩・り「!!」

 

たえ「休憩所……ですか?」

 

楓「うん。そして、そこから一歩も離れないでほしいんだ。絶対に、何があっても。」

 

たえ「絶対に、何があっても……」

 

楓「最悪休憩所の中なら、移動してもいいよ。水飲み場やトイレもあるしね。でも、休憩所から離れるのだけは、……絶対に、避けてほしい。」

 

たえ「……分かりました。」

 

彩「ねぇ空見くん!いったいどうするつもり!?」

 

りみ「まさか、一人で花音先輩を探しに行く気じゃ……」

 

楓「……じゃあ、頼んだよ花園さん、市ヶ谷さん。」

 

たえ「はい。……空見先輩との約束、絶対に守り抜いてみせます。」

 

有咲「……」

 

たえ「……有咲。」

 

有咲「……分かりました。……何をするつもりかは知らないですけど、気をつけてくださいね。」

 

楓「うん。……よし。」

 

ダッ!

 

タタタタ……

 

彩「! 空見く…「ダメです!」離して、離してよたえちゃん!私もいっしょに行く!」

 

りみ「おたえちゃん、有咲ちゃん、お願い!私達もいっしょに行かせて?」

 

有咲「……悪いなりみ。空見先輩のあんな真剣な顔を見せられたら……理由が分かんなくても引き受けなきゃいけない気がしたんだ。」

 

香澄「……ねぇさーや、もしかしてこれ、結構ヤバい状況?」

 

沙綾「うん。もしかしなくても、ヤバい状況だよ。」

 

たえ「(空見先輩との約束……絶対に守り抜く!)」

 

有咲「(空見先輩。こいつらのことは、私らに任せてください。)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

楓「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、……」

 

くっそ、カッコつけてああ言ったものの、どこを探しゃいいんだ……。

 

一番いいのは、大声で呼びまくることなんだろうけど……流石にそれは、ちょっと恥ずかしいし……。

 

なんてこと言ってる場合じゃないのは分かってんだけど!!

 

うー……あぁもう!

 

やっぱ片っ端から探していくしかねえか!

 

大丈夫、絶対に見つかる……いや、見つける!

 

タタタタ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

花音「……」

 

ワイワイガヤガヤ

 

ワイワイガヤガヤ

 

花音「……みんな……どこにいるの……?」

 

ドンッ!

 

花音「きゃっ!」

 

「危ねえなぁ!気をつけろ!!」

 

花音「す、すみません!……」

 

ワイワイガヤガヤ

 

ワイワイガヤガヤ

 

ワイワイガヤガヤ

 

……さっきよりも、人が多くなってる気がする……。

 

さっきから何度も電話してるけど繋がらないし、いろんな人に彩ちゃん達のことを聞いても知らないの一点張りだし……。

 

……いったい、どうすれば……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

楓「す、すみません、通してください!……すみません……すみません、そこ通して……」

 

はぁ、はぁ、はぁ、……。

 

ダメだ、全然見つからない……。

 

やっぱり、一人でこの広い会場を探すのは無理があったか……。

 

……いや、みんなで探してバラバラになるより、一人でひたすら探すほうがマシだ。

 

そのためにみんなを休憩所に行かせたんだから。

 

……まさかこの短期間に、二人も探すことになるとは思わなかったな。

 

一人目は牛込さん。

 

文化祭で突然いなくなってしまった牛込さんを、ゆりさんの教室で見つけたんだ。

 

そして今回。

 

はぐれてしまった松原さんを、今……。

 

……そうだ、牛込さんを探したときのことを思い出すんだ。

 

あのときは確か、これまでの牛込さんの言動を遡って、そこからヒントを導き出した。

 

そのときみたいに今回も、これまでの松原さんの言動を遡ってヒントを導き出せば……。

 

思い出せ……思い出せ……。

 

これまでの松原さんの言動を、一から遡って思い出せ……。

 

そこから何か、ヒントを……ヒントを……。

 

 

 

 

 

「おぉ、お前は!」

 

楓「! え?」

 

「こっちこっち、ほら。」

 

楓「……!あ、あなたは……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

花音「いたたた……」

 

うぅ、やっぱり、履き慣れないくつなんて履いてくるんじゃなかった……。

 

……はぁ。

 

……はぐれたりしなかったら、今頃みんなで夕ごはん食べて、もうちょっとお祭りを回ってって、楽しんでたんだろうなー。

 

なのに、……私のせいで、こんなことになって……。

 

……うぅ……ごめん、みんな……。

 

私の……私の、せいで……楽しいお祭りが、こんな……こんな……。

 

うぅ……うっ、うぅ……。

 

 

 

 

 

???「松原さん!!」

 

 

 

 

 

花音「!?」

 

……今の……声って……。

 

タタタタ……

 

 

 

 

 

楓「松原さん!!」

 

花音「!!」

 

楓「はぁ……はぁ……や、やっと見つけた……。」

 

花音「……そ、空見……くん……?」

 

楓「良かった……。見つかってほんとに良かったよ……。」

 

花音「……」

 

楓「……さぁ、戻ろう松原さん。みんなが待って……

 

 

 

 

 

ガバッ!!

 

楓「!?」

 

花音「空見くん……空見くん!!」

 

 

 

 

 

ドサッ!

 

楓「……ま、松原、さん?」

 

花音「……私、もうみんなと会えないのかと思った……。空見くんと、みんなと……もうこのままお祭りを楽しめないんじゃないかと思った……。だから……だから……」

 

楓「……ごめんね。僕がもっと、松原さんのことを注意深く見てあげてれば……。」

 

花音「! それは違っ…スッ !!」

 

ナデナデ

 

楓「……ほんと、ごめん。」

 

花音「……うぅ……ううう……」

 

楓「(……これも、松原さんがずっと持ってたぬいぐるみのおかげだな。)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彩「……ねぇ、まだ?まだ空見くんは帰って来ないの?」

 

有咲「だーもう!一回落ち着いてくださいって!さっきからずっとそればっかじゃないですか!」

 

彩「だって〜!」

 

たえ「有咲、もう少しの辛抱。」

 

有咲「もう少しっつってもよー。はぁ、あとどれくらい待てばいいんだか……。」

 

りみ「……!!彩先輩!あれ!」

 

香・た・有・沙「……!!」

 

彩「え?……!あ!!」

 

 

 

 

 

楓・花「……」

 

 

 

 

 

たえ「帰って来た……。」

 

彩「……」ワナワナ

 

楓「ただいま、みんな。」

 

花音「みんな、本当にごめ…「花音ちゃーーーん!!!」ガバッ!! わぁっ!」

 

パッ

 

楓「あ。」

 

彩「花音ちゃんごめんね!!私の……私のせいで……」

 

花音「あ、彩ちゃんのせいじゃないよ!と、とりあえず落ち着いて?ね?」

 

楓「……「空見先輩!」! 牛込さん。」

 

りみ「……お帰りなさい。」

 

楓「あ、うん、ただいま。」

 

たえ「空見先輩、どうやって花音先輩を見つけたんですか?」

 

香澄「それ!私も気になります!」

 

楓「あぁ、それは……射的のおじさんと、そのぬいぐるみのおかげだよ。」

 

花音「ぬいぐるみって、これ?」

 

楓「うん。」

 

沙綾「それに……」

 

有咲「射的のおじさんって……」

 

彩「……!もしかしてあの人!?」

 

楓「そ、たぶん丸山さんが思い付いた人で合ってるよ。」

 

 

 

 

 

〜30分前〜

 

思い出せ……思い出せ……。

 

これまでの松原さんの言動を、一から遡って思い出せ……。

 

そこから何か、ヒントを……ヒントを……。

 

 

 

 

 

「おぉ、お前は!」

 

楓「! え?」

 

「こっちこっち、ほら。」

 

楓「……!あ、あなたは……!」

 

「おぉやっぱそうだ。お嬢ちゃん達といっしょにいた冴えない坊主じゃねえか!」

 

楓「さ、冴えないって……。」

 

冴えなそうならまだ分かるのに……会ってそうそう失礼な人だな……。

 

この人はさっき松原さんと丸山さんがやっていた射的の屋台の人だ。

 

見た目はいかついが、根は優しい……のかな?たぷん。

 

……一か八か、この人にも聞いてみるか。

 

楓「あの、ちょっと聞きたいことがあるんですけど……」

 

「ん?何だ?」

 

楓「ここら辺で、さっきここで射的をやってた水色髪の女の子、見ませんでしたか?この屋台でとったぬいぐるみを持ってるはずなんですけど……。」

 

「……それって、さっき俺が言ってたお嬢ちゃんか?」

 

楓「は、はい、そうです!」

 

「うーん……」

 

楓「……」

 

やっぱり、ダメか……。

 

「……そのお嬢ちゃんなら、さっき見かけた気がしたなぁ。」

 

楓「! ほ、ほんとですか!?」

 

「お、おう……。お前、そんな大きい声も出せるんだな。」

 

楓「あ……。す、すみません……。」

 

「いや、謝るこたぁねえよ。男なら、大きな声出して当たり前だからな!」

 

楓「は、はぁ……。」

 

「俺の見間違いじゃねえなら、さっきここを通って、向こうのほうに行ったはずだぜ。なんか、悲しそうな表情をしてたが……って、お前さてははぐれたのか!!」

 

楓「(今頃気づいたんだ……。)あ、ありがとうございます!行ってみます!」ダッ!

 

「……頑張れよ、坊主。」

 

〜回想 終了〜

 

 

 

 

 

沙綾「そんなことがあったんですね。」

 

彩「あのおじさんが……」

 

楓「教えてもらった通りの方向に行ったら、木の幹のところに座ってる松原さんを見つけたんだ。ほんと、あの人には感謝してもしきれないよ。」

 

花音「……後で射的のおじさんにも、お礼言いに行こうかな。」

 

彩「そのときは、私もいっしょに行くね。」

 

花音「うん、ありがとう彩ちゃん♪」

 

……一時はどうなることかと思ったけど、無事に見つかって良かった。

 

射的のおじさんにも感謝だけど、みんなを引き止めてくれていた花園さんと市ヶ谷さんにも感謝だな。

 

お礼言わないと。

 

たえ「りみ、後でわたあめ買いに行こう。」

 

有咲「お前、まだ食べる気なのか…「花園さん、市ヶ谷さん。」! そ、空見先輩!」

 

楓「ありがとね。みんなを引き止めてくれていて。ほんと、助かったよ。」

 

有咲「そんな……それだけのことでお礼なんて…「それだけのことが大事だったから、それをやり遂げてくれた二人には感謝してるんだよ。」……」

 

たえ「……。」

 

楓「だから、……本当にありがとう。」ペコリ

 

有咲「わ、分かりましたから!何も頭まで下げなくても…「空見先輩。」!」

 

楓「ん?」

 

たえ「一つ、お願いがあります。」

 

有咲「お、おいおたえ、それは…「大丈夫だよ、市ヶ谷さん。」でも!」

 

楓「花園さんは僕のお願いを聞いてくれた。だから花園さんには、僕にお願いをする権利がある。」

 

有咲「そ、それはそうかもしれませんけど…「有咲も、何かお願い聞いてもらったら?」え!?い、いいよ私は!」

 

香澄「いいじゃん有咲〜。聞いてもらいなよ〜。」

 

有咲「香澄、お前まで……!」

 

沙綾「まぁ、たまにはいいんじゃない?空見先輩は数少ない、有咲が心を許せる先輩なんだし。」

 

有咲「お、おい沙綾!その言い方はいろいろと誤解を…「その通りだよ有咲ちゃん!」へ?あ、彩先輩?」

 

彩「有咲ちゃんは後輩なんだから、先輩に甘えてもいいんだよ。」

 

花音「空見くんに甘えてる有咲ちゃん、私見てみたいな〜。」

 

有咲「か、花音先輩!だからその言い方はいろいろと誤解が〜!」

 

……なんか、聞いてるこっちが恥ずかしくなってきた///。

 

楓「と、とりあえず、花園さんのお願いのほうを、聞かせてもらってもいい?」

 

たえ「え?あ、はい。」

 

有咲「ふぅ、とりあえず助かった……。」

 

りみ「有咲ちゃん、なんかすごく疲れてない?」

 

有咲「あぁ、実際今のですっげー疲れた……。」

 

たえ「私のお願いは……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

たえ「あ、ここです空見先輩。」

 

楓「へぇ、こんなところがあったんだ。」

 

僕が連れてきてもらった場所。

 

ここでは、自分のお願い事を短冊に書いて、吊るすことができるらしい。

 

そっか、商店街中に吊るされてたのはここでいろんな人が書いた短冊だったのか。

 

あ、ちなみに今、僕達(僕+松原さん+丸山さん+牛込さん)と戸山さん達は、いっしょに行動している。

 

彩「お願い事……今年はどんなのにしようかな〜。」

 

花音「去年は彩ちゃん、確か可愛いアイドルになれますようにって書いたんだよね。」

 

彩「あれ、そうだったっけ?」

 

花音「そうだよ〜。」

 

松原さんと丸山さんは、去年も七夕祭りに来てたのか。

 

可愛いアイドルになれますように……か。

 

……あれ?

 

もう叶ってね?

 

たえ「空見先輩、早く書きましょう。」

 

楓「あ、う、うん。」

 

えーっと、短冊の色は何にしようかなー?

 

……青にすっか。

 

あとは、油性ペン油性ペン、と。

 

沙綾「香澄はお願い事、何にするの?」

 

香澄「もちろん!私はこれだよ!」

 

りみ「ふふっ、まぁ、そうなっちゃうよね。」

 

有咲「こんなこと、わざわざ短冊に書くほどじゃねえ気もするけどな。」

 

香澄「そんなことないよ!こうやってお願いすれば、織姫と彦星も、私達のことを頑張れって言って応援してくれるかもしれないじゃない?」

 

沙綾「あはは、香澄らしいね。」

 

楓「……」

 

たえ「……できた。」

 

香澄「ねぇ!この短冊、みんな同じ場所に飾ろう!」

 

沙綾「お、いいねそれ!」

 

りみ「私も賛成!」

 

有咲「おいおい、それは流石に近すぎねえか?」

 

たえ「ううん、これでいいと思う。」

 

香澄「……よし、OK!」

 

たえ「……空見先輩。私のお願い、聞いてくれますか?」

 

楓「うん、もちろんだよ。絶対に行く。」

 

花園さんのお願い、それは。

 

 

 

 

 

……SPACEでのポピパのライブを見に来てほしい。

 

とのことだった。

 

どうやらSPACEは、今月いっぱいでなくなってしまうらしい。

 

僕はあそこに、二、三回くらいしか行ってないけど、……そのおかげで、バンドの良さに気づけた。

 

グリグリの演奏を聞いて、感動して、震えて。

 

周りの人達がほぼみんなバンドをやってると聞いたときは驚いたけど、……それと同時に、そのバンドはどんな演奏をするんだろうと、考えるようになって。

 

……あのとき白鷺さんにSPACEに連れて行ってもらってなかったら、こんな気持ちにはなってなかったと思う。

 

てか絶対なってなかった。

 

……戸山さん達は、オーディションに合格し、SPACEのステージで演奏することを目標にしているらしい。

 

そのライブを見に来てほしいというのが、花園さんのお願いというわけだ。

 

香澄「よーし!明日からまた練習、頑張ろー!!」

 

た・り・沙「おー!!」

 

有咲「お、おー!」

 

楓「……」

 

花音「……香澄ちゃん達、オーディション受かるといいね。」

 

楓「松原さん。……うん。」

 

彩「でもまさか、SPACEがなくなっちゃうなんて……。千聖ちゃんは、このこと知ってるのかなぁ?」

 

白鷺さんのことだから、知ってそうではある……。

 

彩「私も空見くんと同じで、あそこへは二、三回くらいしか行ったことないけど……なくなるって聞くと、やっぱり寂しくなるよね。」

 

楓「そうだね。……でも、だからこそ、戸山さん達にはオーディションに合格してほしい。それで、SPACEのステージに立ったポピパの演奏を見てみたい。」

 

彩「……うん、そうだよね。空見くんの言う通りだよ!よーし!私も香澄ちゃん達を応援するぞー!おーい、香澄ちゃーん!」

 

花音「ふふっ♪彩ちゃんったら。」

 

……あ、そうだ。

 

まだお願い、書いてなかったんだった。

 

うーん……何かあるかなー?

 

うーん……うーん……。

 

花音「空見くん、大丈夫?」

 

楓「え?あ、うん、大丈夫大丈夫。松原さんは、短冊書き終わったの?」

 

花音「うん。今年のお願い事は、これにしたよ。」

 

楓「……"これからもみんなと仲良くいられますように"。……松原さんらしいね。」

 

花音「えへへ……。」

 

松原さんのお願い、すごく良いな〜。

 

僕も同じにしようかなー?

 

いやでも、それじゃあパクリになっちゃうしなー。

 

うーん……どうしたものか……。 

 

花音「……ここだけの話なんだけどね?」

 

楓「ん?」

 

花音「私と彩ちゃん、本当は今日、バイトの日だったんだ。」

 

楓「え、バイト?……松原さん、バイトやってたの?」

 

花音「うん。あれ?言ってなかったっけ?」

 

楓「初耳……。」

 

花音「そっか。……なんかごめんね?」

 

楓「い、いや、全然……。え、それで、どうして今日、バイト行かなかったの?」

 

花音「店長さんに無理言って、急遽休みにしてもらったの。」

 

楓「無理言って……?」

 

花音「うん。今年の七夕祭りは、絶対に、どうしてもいっしょに行きたい人がいるんです、って。何回も頭を下げてお願いしたんだ。こんなこと初めてだったから、店長さん困惑してたな〜。」

 

楓「……どうしても、いっしょに行きたい人?」

 

花音「……空見くんのことだよ。」

 

楓「!!」

 

花音「……。」

 

楓「……///。」

 

ぼ、僕が、どうしてもいっしょに行きたい人だった……?

 

……ま、まぁ、確かに丸山さん、思い出を作りたいって言ってたから、そういう意味ではないと思うんだけど……。

 

こうして面と向かって言われると……。

 

……やっぱりなんか……恥ずかしいな///……。

 

花音「……空…「花音ちゃーん!花音ちゃんもおいでよー!」! う、うん!じゃあ私、ちょっと行ってくるね。」

 

楓「え?あ、ちょっと!……行っちゃったか。」

 

……ふ、深く……深く考えない様にしよう。

 

うん、そうしよう。

 

よ、よーし、お願い事、今はお願い事を考えよう。

 

さて、何にしようか……あ。

 

……今、思い付いた。

 

……よし。

 

今年の僕のお願い事は、これにしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕は短冊に、秒で思い付いたお願い事を書き、近くの笹に吊るした。 

 

これはお願い事でもあり、目標でもある。

 

このお願い事兼目標を達成できたとき僕は、……今とは全く違う自分に生まれ変われている。

 

そう願いたい。

 

りみ「空見先輩は、お願い事、何にしたんですか?」

 

楓「秘密だよ。」

 

彩「えぇ〜?そんなこと言わないで教えてよ〜。」

 

楓「だから秘密だってば。」

 

花音「私も空見くんのお願い、気になるな〜。」

 

楓「……絶対、教えないからね?」

 

 

 

 

 

"積極的な自分になれますように"。




iPhoneに変えたことでやっと音ゲー反応しないストレスから解放されました。

良かった……マジで良かった……。

これでもうイライラしながら音ゲーをしないで済む……。


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51話 勉強会をすることになっちゃった

明日は花音ちゃんの誕生日ですが、明日はたぶん投稿できないので代わりに今日言わせていただきます。

……花音ちゃん!!

お誕生日おめでとうーーー!!!

誕生日限定の花音ちゃん、30連で当たるかなー?

当たるといいなー。

てか当てたい。


【市ヶ谷家 ???】

 

『ジャ~ン……』

 

たえ「……どうでした?」

 

楓「うん。良かった……と思うよ?」

 

たえ「思う……ってことは、まだ全然ってことですよね。分かりました。もっと練習します。」

 

楓「え?い、いや、そういう意味じゃないんだけど……」

 

有咲「こうなったおたえは、もう誰にも止められませんよ。」

 

楓「そ、そうなの?」

 

たえ「……」

 

……めちゃくちゃ真剣な顔してる……。

 

それだけ一生懸命ってことか。

 

……あ、ちなみに今僕は、蔵にいる。

 

……ん?

 

いやだから、蔵だよ蔵。

 

ものとかをしまったりするあの蔵。

 

……いやまぁ、本当は僕が一番どうして自分がここにいるのかを知りたいんだけどね……。

 

結論から言うと、……花園さんに連れて来られました。

 

今日はたまたまお互い日直だったらしく、僕が日誌を先生に渡しに行くときに偶然花園さんと会って……。

 

日誌を渡し終えていざ帰ろうと教務室を出た瞬間に……。

 

 

 

 

 

〜二時間前〜

 

【花咲川女子学園 教務室】

 

さて、日誌も渡したし、帰るか。

 

……何か嫌な予感がするのは、きっと気のせい…ガシッ! ……。

 

たえ「……」

 

楓「……あの、花園さん?これはいったい、どういう…「空見先輩、確保ー。」いや、だから何で…「私といっしょに来てください。」そ、その前に話を…「まずは空見先輩の教室にカバンを取りに行きましょう。」……はぁ、分かったよ……。」

 

〜回想 終了〜

 

 

 

 

 

……と、いうことがあったのだ。

 

ちなみに僕がここに来たとき、他のみんなは驚いていた。

 

いや知らせてなかったんかい!

 

って言いたかったけど、……まぁ結果論だよね。

 

戸山さんはともかく、山吹さんと牛込さんはなぜか受け入れ早かったし。

 

市ヶ谷さんは花園さんに対して結構ツッコんだりしてたけど。

 

……このバンド、きちんとまともなの市ヶ谷さんだけなのでは……?

 

香澄「いいな〜おたえ。よーし!私も練習…「香澄はその前に勉強だ。」え〜!少しくらいいいじゃ〜ん!」

 

有咲「その少しが命取りになるんだよ!ほら、つべこべ言ってないでさっさとやる!」

 

香澄「ぶー、有咲のけちー。」

 

りみ「おたえちゃんが今日昼休みとかの空いた時間にいっぱい勉強してたのは、このためだったんだね。」

 

沙綾「それで有咲に練習の許可をもらうなんて、相当気合いが入ってるんだね。」

 

楓「……」

 

有咲「だから違えって。ここはこの数字を使って……」

 

香澄「うぅ、有咲スパルタ〜。」

 

有咲「言うほどスパルタじゃねえだろ!」

 

りみ「沙綾ちゃん、この問題の解き方分かる?」

 

沙綾「どれどれ?あぁ、これはね……」

 

『ジャ~ン……』

 

たえ「……まだだ。こんなんじゃ、合格なんて全然……」

 

楓「……ねぇ、市ヶ谷さん。」

 

有咲「何ですか?空見先輩。」

 

楓「……僕、場違いじゃない?」

 

有咲「場違いだなんて、そんな…「そんなことありません!」うおっ、りみ、びっくりした〜。」

 

りみ「あ、……ご、ごめん……。」

 

沙綾「大丈夫だよ、謝らなくても。私も、別に場違いだなんて思ってませんよ。もちろん、香澄も。」

 

香澄「うーん……これはこうで、ここはこうなってるから……」

 

楓「……そ、そっか。」

 

……にしても、ここでみんなは練習してるのかー。

 

確か、蔵で練習だから蔵練、だっけ。

 

ここなら音漏れとか、気にしなくて済みそうだもんな。

 

……それはそれとして。

 

沙綾「……」カリカリ

 

りみ「……」カリカリ

 

香澄「う〜……有咲〜!!」

 

有咲「だ〜!急に抱きつくな〜!!」

 

みんな、すごい勉強してるな。

 

普通に宿題とかなのかな?

 

有咲「……あれ?おかしいな〜。」

 

りみ「どうしたの?有咲ちゃん。」

 

有咲「いや、ちょっとテスト範囲の紙が見当たらなくてさ……」

 

りみ「それなら、私のやつ見る?はい。」

 

有咲「お、サンキューりみ。」

 

ん?テスト?

 

……いやいやまさか。

 

……まさか、な?

 

楓「あ、あの、市ヶ谷さん……。」

 

有咲「ん?何ですか?」

 

楓「まさか……まさかとは思うけどさ、……近々、テストあったりとか……しないよね?」

 

有咲「……いや、ありますよ?」

 

楓「へ……?」

 

沙綾「丁度一週間後に、期末テストがあるので、それの勉強をしてるんです。」

 

楓「……」

 

香澄「? 空見先輩、顔真っ青ですけど、どうしたんですか?」

 

有咲「……まさかとは思うけど、空見先輩……」

 

……忘れてた。

 

……完っ全に忘れてた。

 

楓「……来週テストあるの忘れてたーーー!!!」

 

たえ「? 空見先輩?」

 

有咲「……やっぱりか。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜翌日〜

 

【花咲川女子学園 2-A】

 

千聖「ええそうよ。来週、期末テストがあるわ。まさか、忘れてた、なんて言わないわよね?」

 

楓「……終わった。」ゴン!

 

花音「ふぇぇ!?そ、空見くん、今すごい音したけど、大丈夫!?」

 

……痛い……。

 

千聖「全く、ほんとあなたには呆れるわ……。」

 

花音「そ、空見くん。今からでも遅くないから、いっしょに勉強頑張ろう?一週間頑張れば、赤点は流石に…「花音、その考え方は甘いわよ。」え?」

 

千聖「楓。あなた、苦手な教科は何?」

 

楓「……す、数学と英語以外……」

 

花音「ってことはえーっと、国語と理科と社会と……あ。」

 

千聖「気づいたようね、花音。」

 

花音「う、うん……。」

 

千聖「今回の期末テストは、いつもより範囲が広い。特にその三つの分野はいつもより難易度が高く、たった一週間頑張っただけの勉強じゃ赤点回避には程遠い。それがどういうことか。……ここからは、言わなくても分かるわよね?」

 

楓「……」

 

花音「そ、空見くん……。」

 

千聖「! ……まさかあなた、諦めるつもりじゃないでしょうね?」

 

ギクッ!

 

花音「! そうなの!?空見くん!」

 

楓「い、いや……僕は、別に…「別に、何?」!?」

 

千聖「……」ニコニコ

 

花音「ち、千聖ちゃん……?目が、笑ってないよ……?」

 

め、めちゃくちゃ……怒ってる……。

 

……これまでもずっとノー勉でやってきたから、今回もそれでいこうと思った、なんて言ったら、怒り爆発するんだろうな……。

 

千聖「へぇ〜。これまでもずっとノー勉だったの。」

 

楓「!?」

 

ひ、久々に心読まれた!?

 

千聖「へぇ、そう。今回もそれで乗り切ろうとしてたの。ふーん……」

 

楓「……ま、まま、松原さん。ど、どうしよう……って、松原さん?」

 

花音「あ……ああ、あああ……」ガクガクブルブル

 

……マジか。

 

千聖「か・え・で?」ゴゴゴゴゴ

 

楓「ひぃっ!!」

 

まずい……。

 

今回のは非常にまずい……。

 

僕、今度こそ死ぬかも……。

 

千聖「楓?……

 

 

 

 

 

……するわよ。」

 

楓「……え?」

 

花音「……するって、何を?」.

 

千聖「もちろん、……

 

 

 

 

 

……勉強会よ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜放課後〜

 

紗夜「なるほど、勉強会ですか。」

 

燐子「私は、勉強会……とても、良いと……思います。」

 

花音「彩ちゃんはどう?」

 

彩「……え?あ、う、うん。私も、良いと思うよ。」

 

花音「だって、千聖ちゃん。」

 

千聖「決まりね。それで、さっそく今日から始めようと思うのだけれど……」

 

……てっきり、白鷺さんとマンツーマンでやるのかと思ったけど……。

 

まぁ、うん、普通に考えればそうだよね。

 

勉強"会"だもんね。みんなで集まってやるものだよね。

 

ふぅ。

 

……たぶんこれでスパルタ演技指導みたいなことは免れたよな……。

 

……あ、そうだ。

 

楓「……なんか丸山さん、元気ない?」

 

彩「え?う、ううん、そんなことないよ?」

 

楓「そう?ならいいけど。」

 

さっきの会話、丸山さんだけ浮かない顔してたから何かあったのかなって思ったけど、僕の思い違いか……。

 

花音「ねぇ空見くん。」

 

楓「え?あ、何?」

 

花音「何か良い場所ないかな?」

 

楓「場所?って何の……ってあぁ、勉強会か。」

 

花音「今みんなで思い付いた場所を出し合ってるんだけど、なかなか決まらなくて……」

 

楓「……場所も何も、普通に教室とかでいいんじゃない?」

 

千聖「周りを見渡してみなさいよ。」

 

楓「え?……キョロキョロ」

 

 

 

 

 

「えーっと、ここはこうなって……」

 

「あーもう!この問題全然分からないよー!」

 

「だからね、これを代入すればこうなるから……」

 

「すごーい!そんか難しい問題をスラスラ解けるなんてー!」

 

「今回のテスト、ダメかも……」

 

 

 

 

 

楓「い、いつの間に……」

 

千聖「人がいっぱいいて、とても集中できそうにないわ。」

 

楓「うーん……あ!じゃあ図書館とかは?図書館で勉強してるところ、よく漫画とかで見るじゃん!」

 

燐子「それも考えたんですけど……勉強を教え合ってるときに、うるさくなって……迷惑をかけてしまうかもしれないということで、却下に……」

 

楓「えぇ……。な、なら、うるさくしなきゃいいんじゃ…「それに、六人もいたら幅を取りすぎてしまって、それも他の人に迷惑になりかねないわ。」あ……な、なるほど……。」

 

それは一里ある……。

 

じゃあ、図書館もダメか……。  

 

あとは……どこがあるかな……。  

 

紗夜「……!……あの、少しいいですか?」

 

千聖「どうしたの?紗夜ちゃん。」

 

紗夜「羽沢さんの店はどうでしょう。この前羽沢さんが、そこにAftergrowの皆さんで集まって勉強をした、という話をしていたことを思い出したのですが……」

 

千聖「つぐみちゃんの店か。それは良い考えね。」

 

楓「……羽沢さんの店、って……?」

 

花音「この前商店街に行ったときに、羽沢珈琲店っていうお店があったの覚えてる?」

 

楓「羽沢珈琲店……。あ、あの閉まってた店か。」

 

花音「うん。」

 

千聖「それじゃあ紗夜ちゃん。悪いけど、つぐみちゃんに連絡をとってもらえないかしら?」

 

紗夜「ええ、構いませんよ。少し待っててください。」

 

羽沢珈琲店か。

 

あのときは定休日で入れなかったんだよなぁ。

 

今日は大丈夫だといいけど……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紗夜「……いえ、こちらこそ、突然すみませんでした。ええ、それではまた。」

 

千聖「……紗夜ちゃん。」

 

紗夜「すみません白鷺さん。今日は貸し切りの予約があるらしく、今からそれの準備をするとのことで……。

 

千聖「いえ、いいのよ。貸し切りなら仕方ないわ。」

 

貸し切り……。

 

こんな偶然あるんだな……。

 

って、今日も入れなかったな。

 

燐子「また……振り出しに、戻ってしまいましたね……。」

 

千聖「ええ。……なかなか見つからないものね、勉強会の場所って。」

 

彩「……ね、ねぇ、千聖ちゃん。」

 

! 今まで全然喋らなかった丸山さんがついに!

 

……でも、何でずっと喋らなかったんだろう?

 

やっぱり元気の問題かな?

 

千聖「何?彩ちゃん。何か良い案でもひらめいた?」

 

彩「いや、そういうわけじゃないんだけど……さ。……あの……その……」

 

千聖「……?彩ちゃん、はっきり言ってくれなきゃ分からないわよ。」

 

彩「そ、そうだよね。……すぅ……はぁ……。」

 

何のための深呼吸?

 

彩「……単刀直入に言うね、千聖ちゃん。」

 

千聖「ええ。」

 

彩「勉強会、やめにし…「ダメよ。」えぇ!?そ、即答……。」

 

……丸山さん?

 

千聖「ダメに決まってるでしょそんなの。やると決めたからにはきっちりやるわよ。テストまで、あと一週間しかないんだから。」

 

彩「うぅ、そんなぁ〜……」

 

……もしかして、丸山さんが元気なかった理由って……。

 

花音「……!じゃ、じゃあ、誰かの家でやるっていうのはどうかな?」

 

千聖「それも良い考えだとは思うけれど……みんなの家に六人入れる部屋があるか、というのが問題なのよね……。」

 

花音「あ、そっか。」

 

燐子「六人……ですか……。」

 

紗夜「残念ですが、私の部屋にはそのようなスペースはないですね……。」

 

花音「私も、六人が入るには少しせまいかな……。」

 

燐子「私の部屋も……機材など置いてあるので……」

 

千聖「六人ともなると、それなりの広さが必要だものね。私の部屋も、そこまでの広さはないわね。……楓……じゃなくて、彩ちゃんはどう?」

 

……今僕、スルーされた?

 

え、何で?

 

最初から期待してないからってこと?

 

……まぁ、いいけどさ。

 

彩「私も……ちょっと難しいかな……。」

 

千聖「そうよね……。……どうしましょう。このままじゃ、全然勉強に手がつけられないわ。」

 

そうだ。

 

まだ勉強にすら手が出せてないんだ。

 

うーん……。

 

どこかないか?

 

広くて、他の人に迷惑がかからずに、勉強を教え合えるかつ集中できるような場所……。

 

その全てに当てはまるベストな勉強場所……。

 

どこか……どこかに……。

 

彩「……!そうだ!あそこなら……!」

 

楓・花・紗・燐「!?」

 

千聖「あ、彩ちゃん……?」

 

彩「みんな!私について来て!」ダッ!

 

千聖「えぇ!?ちょっと彩ちゃん、あなたどこへ…「いいから早く!」……な、何なのよ全く。」

 

楓「……」ポカーン

 

彩「……ほら!空見くんも早く!ガシッ!」

 

楓「え?うわぁっ!?ちょ、だからいきなり腕引っ張るのはやめってってば〜!!」

 

燐子「……」

 

紗夜「……わ、私達も行きましょう、白金さん。」

 

燐子「! は……はい!」

 

花音「ふぇぇ〜!み、みんな待ってよ〜!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜30分後〜

 

【???】

 

彩「着いたよ!」

 

楓「も、もう、ダメ……。パタリ」

 

彩「空見くん!?しっかりして!空見くん!」

 

燐子「はぁ……はぁ……はぁ……」

 

紗夜「お疲れ様です白金さん。少し休んでください。」

 

燐子「す……すみません……。」

 

千聖「歩いたら30分以上かかるような道を、休憩なしで走り続けたんだもの。疲れるのは当たり前よ。」

 

花音「千聖ちゃんはすごいね……。はぁ……はぁ……全然、疲れが出てないもん……。」

 

千聖「アイドルをやっていくにあたって、体力づくりも欠かせないのよ。」

 

体力……づくりか……。

 

僕とは一生無縁の言葉だな……。

 

 

 

 

 

???「……!み、みんな大丈夫!?」

 

! この声は……。

 

彩「あ!久しぶりです!佳子さん!」

 

佳子「言ってくれれば、迎えに行ったのに。ほら、早く中に入って休んで。」

 

彩「ありがとうございます!空見くん、行こう。」

 

楓「う、うん……。」

 

紗夜「私達も行きましょう。白金さん、歩けますか?」

 

燐子「は……はい。」

 

花音「……それじゃあ千聖ちゃん、行こっか。」

 

千聖「ええ。……って、逆でしょ普通!?」

 

花音「? 何が?」

 

千聖「……い、いえ、何でもないわ。」

 

花音「そう?ほら、早く早く。」

 

千聖「(疲れてるのは花音のはずなのに……。……ふふ♪花音も変わったわね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【花美ヶ丘公民館 ロビー】

 

楓「……ぷはぁ!生き返る〜。」

 

千聖「あなた、おじさん臭いわよ……。」

 

花音「あはは……。」

 

仕方ないでしょ。

 

ほんとに死にそうなくらい辛かったんだから。

 

……それにしても、またここに来ることになるとはな。

 

花美ヶ丘公民館。

 

以前学校の行事でお花見に行ったときに、訳あって訪れた場所だ。

 

あのときは……まぁ、うん。

 

いろいろ大変だった。

 

今回ここに来たのは、もちろん、勉強会のためだ。

 

勉強会の場所をどこにしようか悩んでいる時に、丸山さんがふと公民館を思いつき、アポなしでここに来たが、実はここに向かっている途中で、大塚さんに電話で勉強会の許可をとっていたらしい。

 

あのときの電話はそういうことだったのか、と納得したが、……よく走りながら、しかも片手で僕の腕を掴みながら電話できたな……。

 

結構大変だと思うんだけど、その電話の仕方……。

 

燐子「ゴクゴクゴク……ふぅ。」

 

紗夜「落ち着きましたか?」

 

燐子「は……はい。」

 

彩「燐子ちゃん、本当にごめんね?」

 

燐子「い、いえ。疲れもだいぶなくなったので……もう、大丈夫ですよ。」

 

篤司「にしても、お前らの学校からここまで結構距離あるのに、よく走って来たよな。」

 

彩「えへへ……。」

 

佳子「みんなー、ちょっと来てもらえるー?」

 

楓・花・千・彩・紗・燐「! はーい(はい)!」

 

 

 

 

 

佳子「ここで良ければ、自由に使ってちょうだい。今日は人もあまりいないから、誰の邪魔にもならないはずよ。」

 

千聖「ありがとうございます。……それと、急だったのに、本当にすみません。」

 

彩「あ、す、すみません……。」

 

佳子「いいのいいの、どうせ暇だったし。それに、ここは公民館よ。いろんな人がいろいろな用途で使用する場所なんだから、あなた達も遠慮しないで勉強会をしてちょうだい。ね?」

 

花音「佳子さん……。」

 

篤司「大塚館長はそこの事務室にいるから、何かあったらいつでも声をかけろに行くんだぞ?」

 

佳子「何偉そうに言ってんのよ。あなたはとっとと、自分の仕事に戻りなさい。」

 

篤司「冷たいなぁ、ちょっとぐらいい…「早く戻りなさい。」……へいへい。」

 

彩「……なんか、千聖ちゃんみたい。」ボソッ

 

千聖「誰が私みたいだって?」ニコニコ

 

彩「! な、何でもない!何でもないよ!?」

 

紗夜「バレバレですよ、丸山さん……。」

 

楓「……確かに、似てる……。」

 

燐子「空見さんまで……。」

 

千聖「彩ちゃんと楓は、後でちょっと話をしましょう。」ニコニコ

 

楓・彩「!! ……え、笑顔が怖い……。」

 

佳子「ふふっ♪……それじゃあ、私は事務室に戻るわ。みんな、勉強頑張ってね。」

 

楓・花・千・彩・紗・燐「はい!」

 

千聖「とその前に、楓と彩ちゃんはこっちへいらっしゃい。」

 

楓・彩「……」

 

花音「ほ、ほどほどにね、千聖ちゃん……。」

 

白鷺さんのお説教は、あれから30分も続いた。

 

勉強時間、30分縮んだよ……。

 

 

 

 

 

……と思ったら、まさかの勉強しながらの説教だったので僕も丸山さんもびっくりしたよね。

 

流石白鷺さん、ちゃんと考えてたんだな……。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして、公民館での僕達の勉強会が始まった。

 

しかも白鷺さんが大塚さんに許可をとり、テストまでの一週間、みんなで公民館に集まって勉強会をすることになった。

 

……正直、正直に言うぞ?

 

……正直、すっげーめんどくさい……。

 

でも、それを言うとまた白鷺さんの長ーーーいお説教を聞かされることになるので、この言葉は心の奥底にしまっておこう。

 

一週間、ずっと勉強会か……。

 

……はぁ、ま、頑張るしかないか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜勉強会三日目 昼休み〜

 

【花咲川女子学園 図書館】

 

『ありがとうございましたー!』

 

 

 

 

 

楓「結構長引いたなー。」

 

燐子「そう……ですね。」

 

楓「それにしても、POPかー。白金さんは、去年もこういうことやったの?」

 

燐子「はい、やりましたよ。……去年は確か……人と猫の物語にした気が……します。」

 

楓「へぇ、面白そうだな〜。」

 

燐子「……よかったら今度、その本、貸しましょうか?」

 

楓「え、いいの?てか、白金さんの本だったんだ。」

 

燐子「はい……。ある時本屋さんに立ち寄ったら、"今注目されている本"という見出しで……大きく紹介されていたので……気になって、買ってみたんです。そしたら、その本がすごく面白くて……。その時も、丁度くらいの時期だったので……せっかくならと思い、POPの題材にしたんです。……!って、す、すみません!長々とお話し……してしまって……。」

 

楓「ううん全然。むしろ、その本をますます読みたい気持ちになったよ。」

 

燐子「……そ、そう、ですか?あ……ありがとう、ございます。」

 

ほんと、本のことになるとすごい喋るよな。

 

ま、それだけ本が好きってことなんだろうけど。

 

にしても猫と人の物語か……。

 

絶対面白いやつじゃん。

 

燐子「……それじゃあ、帰りましょうか。」

 

楓「あ、うん、そうだね。」

 

今日は勉強会はなしだ。

 

……たぶん。

 

まぁ、その理由を手短に話そう。

 

放課後に図書委員があるという連絡をもらったのが、なんと帰りのHRだったのだ。

 

なのでここへは、白鷺さんに図書委員があると言ってから急いで来た。

 

僕がそれを言った直後、白鷺さんが何か言ってたような気がしたが、急いでたのでよく分からなかった。

 

と、いうわけで、図書委員会も思いのほか長引いたのもあって、今日はたぶん勉強会はなしだろうと思ったわけだ。

 

……いや、決して勉強会がめんどくさいからそう言ってるんじゃないぞ?

 

ほんとだぞ?

 

「ねぇ、白金さん。」

 

燐子「! は……はい。……な……何でしょう……。」

 

ん?

 

「図書館の外に、白金さんと空見くんを探してる人がいるよ?」

 

燐子「わ、私を……ですか?……わ、分かり……ました。あ、ありがとうござい……ます……。」

 

……白金さんと、僕を?

 

……いや、まさか……な。

 

燐子「……空見さん。」

 

楓「う、うん、聞いてたよ。」

 

燐子「……い、行ってみましょうか。」

 

楓「うん……。」

 

白金さんと僕を探してる人……。

 

思い当たる人が一人しかいないんだが……。

 

頼む、僕の予想に反してくれ……。

 

 

 

 

 

千聖「お疲れ様、楓、燐子ちゃん。」

 

楓「……」

 

燐子「し、白鷺さん……どうしたんですか?」

 

千聖「どうしたって……迎えに来たのよ、二人を。ほら、勉強会よ。」

 

燐子「勉強会……休みでは、なかったんですね。」

 

千聖「休み?」

 

燐子「空見さんがさっき、今日は勉強会はないんじゃないかと言っていたので……ちゃんとあることが分かって、安心しました。」

 

楓「……へぇー、楓が……。」

 

ギクッ!

 

……ま、まずい……。

 

楓「……じゃ、じゃあ白金さん、白鷺さんも来たことだし、僕達もみんなのところに…「待ちなさい、楓。」うっ……」

 

千聖「話……聞かせてもらえるかしら?」

 

楓「……は、はい。」

 

やはり、白鷺さんと勉強会からは逃げられないようだ……。

 

はぁ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜勉強会六日目〜

 

【花美ヶ丘公民館 ロビー】

 

楓「……ダメだ、全然覚えられない……。」

 

千聖「諦めないの、楓。覚えられないのなら、覚えられる工夫をすればいいのよ。」

 

楓「覚えられる工夫……。」

 

花音「千聖ちゃんの言う通りだよ。例えば、この用語。……こんな感じに語呂合わせすれば、覚えやすいんじゃないかな。」

 

楓「あ、なるほど……。よくこんな語呂合わせ思いついたね、松原さん。」

 

花音「えへへ……。」

 

千聖「さて楓、その用語を覚えたところで、次の問題よ。」

 

楓「え……ちょっと白鷺さん、ペース早くない?」

 

千聖「何言ってるのよ。テストまであと三日もないのよ?これくらいのペースで進めないと、赤点回避には程遠いわ。」.

 

花音「もうちょっとだから、頑張ろう、空見くん。」

 

楓「う、うん……。」

 

きつい……。

 

丸山さんも、苦戦してるみたいだな。

 

 

 

 

 

彩「うーん……。どうしても計算が合わない……。」

 

紗夜「……」

 

彩「……ねぇ紗夜ちゃん、そろそろ答えを教えてくれても…「ダメです。やり方は教えたのですから、あとは自分で計算して答えを導いてください。」そ、そんなこと言われても〜!うぅ……どうして計算が合わないの〜!?」

 

 

 

 

 

……計算問題をやってるのか。

 

まぁ、高校の数学は一気に難しくなるからなぁ。

 

花音「ち、千聖ちゃん、これじゃあ彩ちゃんが可哀想だよ。ちょっと助けてあげたほうが…「花音、それでは彩ちゃんのためにならないわ。自分であれこれ考えて、正解を導き出すことに意味があるの。」そ、そんな……。」

 

白鷺さんもそうだけど、氷川さんも結構厳しいなー。 

 

丸山さんを助けてはあげたいけど、白鷺さんの言うことも一里ある……。

 

うーん……難しいなー。

 

 

 

 

 

彩「うーん……うーん……。」

 

紗夜「……」

 

彩「……チラッ」

 

紗夜「っ! め、目配せしてもダメです!」

 

彩「ちぇっ。……あぁもう!分かんないよ〜!」

 

紗夜「(……この程度の問題に、こんな時間をかけるなんて。これじゃあテストで赤点回避なんて……。)丸山さん、あな…「丸山さん……ちょっと、いいですか?」! し、白金さん?」

 

彩「? どうしたの?燐子ちゃん。」

 

燐子「丸山さんは……その問題を、難しく……考え過ぎている気がするんです。」

 

彩「難しく考え過ぎてる?」

 

紗夜「ちょ、ちょっと白金さ…「待って、紗夜ちゃん。」し、白鷺さん?」

 

燐子「はい。……今、図に書いて説明しますね。」

 

 

 

 

 

楓・花・千・紗「……」

 

燐子「……と、いう感じです。では丸山さん、その問題……解いてみて、ください。」

 

彩「う、うん!……」

 

燐子「……」

 

彩「……!できた!できたよ燐子ちゃん!!」

 

燐子「ふふ、おめでとうございます、丸山さん。」

 

彩「ありがとう燐子ちゃん!燐子ちゃんの教え方、すごく分かりやすかったよ!えっとねー、例えば……」

 

燐子「そ、そんなに褒めないでください……。は、恥ずかしい……ですから///。」

 

……いや、白金さんの教え方、マジ上手かったな。

 

すごく分かりやすかったし、ワンチャン先生よりも上手いんじゃ……。

 

千聖「燐子ちゃんは、彩ちゃんの計算がどうして合わないのか、どういうふうに解けば答えが導き出せるのかを、文字や図を用いて、簡単に説明しただけ。実際に解いて答えを出したのは、彩ちゃんよ。」

 

紗夜「……正直、驚きました。私の説明では全然だったのに、白金さんが説明したら、途端に……」

 

千聖「それは単純に、紗夜ちゃんの教え方の問題ね。」

 

楓・花「!?」

 

紗夜「私の……教え方……」

 

は、はっきり言っちゃったよこの人〜!

 

千聖「解き方の説明や順序は問題ないわ。でも、問題があるのは、そのやり方ね。」

 

紗夜「やり方……」

 

千聖「そう、例えば燐子ちゃんは……」

 

……なんか長くなりそうだな……。

 

チョンチョン

 

ん?クルッ

 

楓「どうしたの?松原さん。」

 

花音「勉強、二人で続けよう?」ヒソヒソ

 

楓「……でも、白鷺さんが…「千聖ちゃん達なら大丈夫だよ。それに、さっきの問題、まだ説明途中だったから。」大丈夫って、何が……」

 

花音「大丈夫ったら、大丈夫なの!ほら、早くやろう?」

 

楓「……う、うん。」

 

よく分かんないけど……まぁ、松原さんが大丈夫って言ってんならいっか。

 

よし、とりあえず僕は、理科と社会を頑張って覚えるか。

 

……覚えられる気しないけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……そして、ついにその日は来た。

 

 

 

 

 

〜テスト当日〜

 

【花咲川女子学園 2-A】

 

楓「……」キョウカショジー

 

彩「えっとー……空見くん?」

 

花音「不安だから、もう一度忘れそうなところを見返してるんだって。」

 

燐子「な……なるほど。」

 

千聖「テスト前の詰め込み過ぎはあまりよくないと思うのだけれど。」

 

紗夜「私も同感です。」

 

彩「で、でも、ちょっと確認するくらいならいいでしょ?ね?」

 

千聖「……あなたがこの教室に入って来てからずっとノートを見ているのは、私の幻覚か何かかしら?」

 

彩「ぎくっ!あ、あはは……」

 

千・紗「はぁ、全くもう……。」

 

 

 

 

 

『キーンコーンカーンコーン』

 

燐子「! ちゃ、チャイムが……鳴りました。」

 

紗夜「では、私達はそろそろ戻りますね。……丸山さん、行きますよ。」

 

彩「……え!?あ、う、うん!じゃあまた後でね!空見くん、千聖ちゃん、花音ちゃん!」

 

千聖「ええ、また後で。」

 

花音「頑張ってね、みんな。」

 

楓「……」

 

千聖「……それじゃあ、私も自分の席に戻るわね。」

 

花音「うん。お互い頑張ろうね、千聖ちゃん。」

 

千聖「ええ。」

 

楓「……」

 

花音「……空見くん、もう時間だよ。」

 

楓「……」

 

花音「? ねぇ、空見…「ダメだ〜!!」!?ビクッ!」

 

ダメだ……何度見返しても全然覚えられた気がしない……。

 

絶対テスト中に頭からぶっとぶ気がする……。

 

楓「はぁ……。終わった……。」

 

花音「……大丈夫だよ、空見くん。」

 

楓「松原さん……?」

 

花音「なんだかんだ言いつつも空見くん、ここまで頑張ってきたじゃん。その頑張りは絶対、無駄にはならないよ。」

 

楓「……」

 

花音「私達と勉強したところを思い出して。どうしても分かんないところは、分かんなくていい。とにかく、答えをできるだけうめる。それを目標に頑張ろう。ね?」

 

楓「……う、うん。」

 

 

 

 

 

「それではまず、答案用紙を配ります。机の上のものは……」

 

 

 

 

 

楓「! い、いよいよか……。」

 

花音「……空見くん。」ボソッ

 

楓「?」

 

花音「ファイト!」ボソッ

 

楓「……う、うん!」グッ!

 

僕は今日、生まれて初めて、テストを本気で頑張ろうと思った。

 

……いやマジで。




今更ですが、『約束』。

二回見に行きましたが神でした。

一回目なんてもう十回ぐらいぼろっぼろ号泣してました。

そして弟に若干引かれました。

……いやあれは誰でも号泣するでしょうがああああ!!

てかあと二つも今年バンドリの映画あるとか神じゃん!!

とうとうましろちゃんがアニメで動いてる姿をしかも大スクリーンで見れるのかー。

マジ心臓持つかなー?(YouTubeで公開されたフィルムライブセカンドステージの予告のましろちゃんが髪を耳にかけてるシーン見て心臓撃ち抜かれかけました)


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52話 テスト終了!果たして結果は……。

今日からローソンとバンドリのキャンペーンが始まりますね!

とうとうRASとモニカが登場ということで、とりあえずうちはましろちゃんをゲットかな。

あとはラングドシャが買えるかどうか……。


〜そして、放課後〜

 

【花咲川女子学園 2-A】

 

花音「終わった〜。空見くん、どうだっ……」

 

楓「……」ドヨーン

 

花音「って空見くん!?大丈夫!?」

 

楓「……テスト……疲れた……。」

 

たぶん、いや、おそらく今まで生きてきた中でいっっっっっっちばん体力使ったわ。

 

マジ、頭の全神経使ったもん。

 

あ、ヤバい、テストのこと考え出したらまた疲労が……。

 

花音「空見くん!起きてよ空見くん!空見くーーん!!「さっきから何騒いでるのよ。」! 千聖ちゃん!」

 

千聖「……何してるの?あなた。」

 

楓「あ、いや……ちょっと休憩を……」

 

花音「空見くん!大丈夫なの!?」

 

楓「え?あ、うん……。」

 

別に死んだわけでも怪我したわけでもないしね……。

 

ただマジですっごい疲れてただけで…「それじゃあ、行きましょうか。」ん?

 

楓「白鷺さん、行くってどこへ?」

 

千聖「決まってるじゃない。花美ヶ丘公民館よ。」

 

楓「……何で?」

 

花音「! 空見くん、それは…「へぇ〜……。」ひぃっ!」

 

!? な、何だ……?

 

急に雲行きが怪しく……。

 

千聖「本当に覚えていないのかしら?楓。」

 

楓「覚えて……って、いったい何を…「そ、空見くん!」え?」

 

花音「は、早く、思い出したほうがいいよ……。ほら、あれだよ……。」

 

楓「あれ?そんなこと言われても、何がなんだか……」

 

花音「頑張って思い出してよ!ほら、昨日帰るときに、千聖ちゃんが言ってとでしょ!?」

 

楓「白鷺さんが?……昨日帰るとき……」

 

昨日は確か、勉強会最終日……。

 

朝から夕方ぐらいまでやって、帰りはみんなでファミレス行って……。

 

……ん?

 

そういや帰りに、白鷺さん何か言ってたような……。

 

何だったっけ……。

 

花音「は、早くしないと……千聖ちゃんが……。」オロオロ

 

千聖「……」ゴゴゴゴゴ

 

何だっけ……何を言ってたんだって……。

 

うーん……うーーーん……。

 

 

 

 

 

彩「空見くん、花音ちゃん、千聖ちゃん!早くお礼言いに行こう!」

 

 

 

 

 

楓「!! お礼だ!!」ガタッ!

 

花・千「!」

 

彩「え?」

 

紗・燐「そ、空見さん?」

 

クラス全員「……」

 

楓「……あ。……す、すみません///。」

 

恥っっっっず///!!!

 

バカか!?

 

僕はバカなのか!?

 

……うん、バカだな。

 

……ああああああ!!!アタマカカエコミ

 

花音「……そ、空見くん……。」

 

千聖「ちゃんと思い出したようね。」

 

彩「えっとー……何があったの?」

 

千聖「何もないわよ。」

 

紗夜「空見さん、クラス全員から注目を浴びていましたね。」

 

燐子「私だったら……恥ずかしすぎて、に……逃げちゃうかも……。」

 

千聖「……はぁ、自業自得よ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜30分後〜

 

【花美ヶ丘公民館】

 

篤司「おー、来たなお前ら!」

 

彩「川浪さん、こんにちは!」

 

篤司「おう!みんな、ゆっくりしていけよー。」

 

紗夜「まぁ、はい、ほどほどに……。」

 

篤司「ところで……楓はいったいどうしたんだ?」

 

楓「うぅ……ううう……」アタマカカエコミ

  

千聖「気にしないでください。それより、佳子さんはいますか?」

 

篤司「え?あ、あぁ、向こうで仕事を…「呼んできてもらう事はできますか?」……まぁ、大丈夫だとは思うが…「ではお願いします。」あ、あぁ、構わないけど……楓は…「お願いします。」……わ、分かった。」

 

花音「……空見くん、まだ思い出しちゃう、かな?」

 

燐子「……!あ、あの、空見さん。」

 

楓「……ん?」

 

燐子「この前、本屋さんに行ったら……空見さんが好きそうな本が、売ってたんです。なので、その……もしだったら今度、いっしょに……行ってみませんか?」

 

楓「本屋さん……?」

 

燐子「はい。……空見さんが良ければ、ですけど。」

 

楓「! う、うん、僕なら全然大丈夫だよ。じゃあ今度、いっしょに行こっか、本屋さん。」

 

燐子「は、はい!あ、ありがとう……ございます。」

 

楓「ううん、こちらこそ。」

 

楓「……千聖ちゃん。空見くん、もう大丈夫みたいだよ。」

 

千聖「……ええ、そのようね。」

 

僕が好きそうな本かー。

 

どんなのなんだろう?

 

やっぱミステリー系かな?いや、もしかしたら猫関連かも……。

 

 

 

 

 

佳子「みんなお待たせー。」

 

! あ、大塚さん。

 

そういや白鷺さんが川浪さんに呼びに行けみたいなこと言ってたっけ。

 

彩「佳子さん!こんにちは!」

 

佳子「こんにちは。みんな、テストはもう終わったの?」

 

花音「はい、なんとか。」

 

千聖「私達、今日は佳子さんにお礼を言いに来たんです。」

 

佳子「え?お、お礼?」

 

千聖「はい。……佳子さん。この一週間、この公民館を勉強会のために使わせてくださって、ありがとうございました。」

 

楓・花・彩・紗・燐「ありがとうございました!」

 

佳子「! そ、そんな……いいのにお礼なんて……。」

 

千聖「いえ。毎日遅くまで使わせていただいたので、佳子さんにはとても感謝してるんです。おかげで充実した勉強会になりましたし、みんな以前よりも様々な知識を得ることができましたから。」

 

紗夜「勉強会、とても良い経験でした。……もし、大塚さん達が迷惑でないのなら、今後もこういう機会のときにこの公民館を使わせていただきたいのですが…「全然全然!迷惑なんて、そんなの気にしないで!」い、いえ、気にはします……。」

 

佳子「こほんっ!……これからも、好きなときにこの公民館を使ってくれて構わないわよ。なんなら、休みとかならここで泊まることも…「そ、そこまでは流石にいいです。」そ、そう?」

 

花音「へぇ、この公民館、宿泊施設も兼ねてるんだ。」

 

篤司「あぁ。夏休みなんかは、週に4組くらい、宿泊者が来ることもあるんだぜ。」

 

……宿泊施設にお風呂、中もこんなに広くて別の棟にはホールもある。

 

本当汎用性高いなこの公民館……。

 

千聖「……そ、それで佳子さん。さっそくで悪いんですけど、今からここで自己採点をしたいのですが……。」

 

彩「!?」

 

え、自己採点……?

 

佳子「ええ、もちろん構わないわよ。いつもの席を使って。川浪くん。」

 

篤司「は、はい!」

 

彩「……あ、あの、千聖ちゃん?」

 

千聖「何?彩ちゃん。」

 

彩「自己採点って……私聞いてないんだけど……。今日はお礼を言いに来るだけじゃなかったの?」

 

千聖「誰もそんなこと言ってないわよ。私はただ、お礼を言いに行くと言っただけだもの。」

 

彩「……そ、そんな〜!」

 

楓「ま、マジかよ……。」

 

紗夜「……あなた達は、本当に勉強が嫌いなんですね。」

 

彩「ち、違うよ!別に、勉強が嫌いってわけじゃ……ないんだけど……。」

 

楓「……好きってわけでも、ない?」

 

彩「そう!それだよ!ねぇ、空見くんは?」

 

楓「僕は……どちらかと言うと、嫌い、かな……。」

 

彩「あー、まぁそれが普通だよね……。」

 

花音「……あ、あのー、二人とも?」

 

燐子「し、白鷺さんが……。」

 

楓・彩「? 白鷺さん(千聖ちゃん)がどうかした……!?」

 

千聖「……」ゴゴゴゴゴ

 

あ、ああ……あああ……。

 

彩「ち、ち、ち、ちさ、千聖、ちゃん……?」

 

千聖「あなた達?」

 

楓・彩「ひぃっ!!」

 

千聖「つべこべ言ってないで……さっさと始めるわよ?」

 

楓・彩「は、はい〜!!すみませんでした〜!!」

 

 

 

 

 

篤司「……おーしみんなー、お茶とお菓子持ってきたぞー……って、……え?これ、どういう状況?」

 

千聖「いい!?二人とも!……」ガミガミガミ

 

楓・彩「はい……はい……。」セイザ

 

花音「あ、あはは……。」

 

燐子「……」プルプルプル

 

紗夜「はぁ……。」

 

佳子「……川浪くん、悪いけど、お茶とお菓子はまた後で持ってきてもらえる?」

 

篤司「え……あ、はい。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

千聖「……ふぅ。花音、どうだった?」

 

花音「うん……あ、上がってる!千聖ちゃん!前より点数上がってるよ!」

 

千聖「まぁ!すごいじゃない花音。」

 

花音「これも、勉強会のおかげだね♪」

 

千聖「……やっぱり、やって良かったわね。」

 

花音「うん!」

 

 

 

 

 

燐子「……はぁ。」

 

紗夜「どうしました?白金さん。」

 

燐子「自己採点……してみたんですけど……あ、あまり、前と変わってなくて……」

 

紗夜「そうですか……。しかし、今回のテストは前より難しくなっていました。そんな中で前と同じくらいの点数をキープできたことは、素直に喜んでいいと思いますよ。」

 

燐子「……そう、なんですか……?」

 

紗夜「ええ。もちろん、より高い点数をとれたほうが、モチベーションとしては上がるでしょう。でも、高い点数をとることにこだわる必要はありません。自分がどれくらい理解できたのか。どこが分かって、どこが分からなかったのか。テストを見直した上で、それらを重要視して考えることも、とても大切なことだと、私は思います。」

 

燐子「……」

 

紗夜「白金さん。私で良ければ、分からなかったところや間違えてしまったところ、教えますよ?」

 

燐子「! ……お、お願いします!」

 

紗夜「ふふ、喜んで。」

 

 

 

 

 

千聖「……それで?問題のあなた達はどうだったのかしら?」

 

彩「も、問題って……」

 

楓「あー……まぁまぁ?」

 

千聖「もっと具体的に言いなさい。」

 

楓「ぐ、具体的に……」

 

い、言いたくねぇ……。

 

言うと怒られるから言いたくねぇ……。

 

紗夜「? 丸山さん、どうしてその問題用紙、裏なんですか?」

 

彩「え?あ、いや、これは……」

 

楓「ほ、ほら、あれだよ!自己採点終わって、よし終わったーってなって、裏にしたんだよ。ね、丸山さん。」

 

彩「そ、そうそう!」

 

燐子「でも……わざわざ裏にする必要、ないと思うんですけど……」

 

彩「! そ、そう?別にそういう人、普通にいると思うよ?」

 

千聖「……ペンは?」

 

楓・彩「え?」

 

千聖「あなた達、どうしてペンを出してないの?」

 

楓「……ぺ、ペンなら出してるよ?ほら…「シャーペンじゃなくて、ボールペンよ。色つきのボールペン。」……」

 

花音「……もしかして二人とも……出さないんじゃなくて、出せないの?」

 

楓・彩「!!」ギクッ!!

 

紗夜「……なるほど、そういうことですか。それなら問題用紙を裏にしていることも、ボールペンを出していないことにもつじつまが合います。」

 

彩「つ、つじつまって、何の…「あなた達。……問題用紙に答え、書いてないんでしょ。」!!」ギクギクッ!!

 

紗夜「……図星、ですね。」

 

彩「……だ、だって〜!」

 

千聖「はぁ。そりゃあ自己採点出来ないわけよね。」

 

楓「だ、だいたい、白鷺さんが事前に自己採点するって言ってくれれば、問題用紙にも答え書いたのに……」

 

千聖「言わなくても普通書くでしょ!?テストの後は自己採点するというのが普通なのよ!」

 

楓「自己採点なんて先生に言われたときにしかやってないよ!」

 

千聖「何の自慢よ!」

 

花音「お、落ち着いてよ二人とも〜。」

 

燐子「こんなところで、喧嘩は……」

 

紗夜「……確かに、空見さんの言うことも一里あるわ。」

 

楓・彩・花・燐「!」

 

千聖「さ、紗夜ちゃん……?」

 

紗夜「白鷺さん。空見さんと丸山さんには、今日ここへお礼を言いに来るということしか言ってませんでしたよね。」

 

千聖「……え、ええ。」

 

紗夜「そのため、二人はその後テストの自己採点をすることを知らず、そもそも自己採点すらしていなかった。……こうなることを、あなたなら少しは予測できたはずです。」

 

千聖「っ!……」

 

花音「千聖ちゃん……。」

 

紗夜「……ですが空見さん、丸山さん。あなた達も、今から言うことをよく覚えておいてください。」

 

楓・彩「……」

 

紗夜「自己採点を、あなたは先生に言われたときにしかやってないと言っていましたが、それは間違いです。テストの後に自己採点をすることで、自分がどういう問題が分からなかったのか、どうしてその答えになるのかを、先生から返される前に自分で確認して調べたりすることができるんです。テストがいつ返ってくるかなんて、先生次第ですから分かりませんしね。」

 

楓・彩「……」

 

紗夜「そうすることによって、自分の考える力、調べる力が身に付いていくんです。なので、自己採点をするというのはとても大事なことなんですよ。」

 

楓・彩「……は、はい(う、うん)。」

 

紗夜「……白鷺さんも空見さんも、合っているようでどこか間違えているところがある。互いにそれを分かりあったうえで、それそれの正解、間違いを共有し、どちらにも属さないような難しいことは、互いに助け合いながら答えを見つける。それが、友達というものなのだと、私は思います。……この意味が、分かりますよね?」

 

楓・千「……」

 

燐子「氷川……さん……。」

 

紗夜「……もう、あんな些細なことで仲違いするのは嫌だから。」ボソッ

 

花音「? 紗夜ちゃん?……あ!」

 

楓「……あ、あの、白鷺……さん。」

 

千聖「……何?」

 

花音「そっか。きっと空見くんと千聖ちゃんを、前の自分と重ねてるんだ。オリエンテーションのときの、自分に。」

 

楓「……ご、ごめん。……その、さっき僕が言ったこと…「いいわよ。」……え?」

 

千聖「紗夜ちゃんの言った通り、私にも非があるもの。だから、……ごめんなさい。」ペコリ

 

楓「! い、いや、別に頭まで下げなくても……」

 

彩「……紗夜ちゃん、ありがとう。」

 

紗夜「? どうして丸山さんが、お礼を……?」

 

花音「私からもお礼言わせて?ありがとう、紗夜ちゃん。」

 

燐子「な、なら……私も……。あ、ありがとう、ございます。」

 

紗夜「///。も、もういいですよ。それ以上は……は、恥ずかしいですから///。」

 

花・彩・燐「ふふっ♪」

 

 

 

 

 

篤司「おーい。お茶とお菓子、持ってきたぞー……って、ん?……なんか、さっきより雰囲気良くなった?」

 

彩「はい!さっき以上に!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜同日〜

 

【市ヶ谷家 蔵】

 

香澄「!! ……よし!」

 

りみ「出来た……。香澄ちゃん!今の!」

 

香澄「りみりんも……りみりんも感じた!?」

 

りみ「もちろんだよ!みんなもだよね!」

 

たえ「うん!最後の合わせ、すごく上手くいった!」

 

沙綾「今の、今日一凄かったよね。有咲もそう思うでしょ?」

 

有咲「あ、ああ……。」

 

香澄「? どうしたの?有咲。」

 

有咲「あ、いや。……これなら、ワンチャンいけるのか……?」

 

香澄「え?」

 

有咲「今の演奏なら……オーディション合格、ワンチャンあるんじゃねーか……?いや、これはマジでいけるぞ!」

 

りみ「あ、有咲ちゃん、なんか燃えてる……。」

 

沙綾「あはは、確かに。有咲の言う通りかもね。……でも、オーディションはそんなに甘くない。だよね、おたえ。」

 

たえ「うん……。」

 

香澄「……もう一回やろう!」

 

た・り・沙・有「!」

 

香澄「私達が納得いくまで、何度も、何度でも!明日のために、SPACEのために、そして……みんなのために!弾いて弾いて弾いて、どんどん弾こう!」

 

有咲「おいおい香澄、そんなにやったら体ぶっ壊れるぞ。」

 

香澄「だから、それくらいの気持ちでやろうってこと!……空見先輩にも聞かせたいもんね、私達の演奏。」

 

り・沙・有「! ……」

 

たえ「……うん。だって、約束したから。」

 

沙綾「……よし!じゃあもう一回、みんなで合わせようか。ううん、みんなの納得がいくまで!」

 

有咲「こりゃー、いつ寝れるか分かったもんじゃねえなー。……よーし、やってやろうじゃねえか!」

 

りみ「私も!……もっと頑張る!」

 

香澄「みんな……。……よーし!じゃあ行くよー!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜翌日〜

 

【花咲川女子学園 2-A】

 

今日の僕は憂鬱だ。

 

なぜなら……

 

 

 

 

 

……この後、テストが返ってくるからだ、

 

てか、テストやった次の日にもう返却って、めちゃくちゃ早くない?

 

前の学校では、ニ週間返されなかったことだってあったのに。

 

しかも全教科一気に返ってくるんでしょ?

 

はぁ……。

 

憂鬱だ……。

 

花音「おはよう、空見くん。」

 

楓「あ、松原さん、おはよう……。」

 

花音「? なんか、元気ない?」

 

楓「テストが返ってくるんだもん……。元気なんて出ないよ……。」

 

花音「あー……。で、でも、きっと大丈夫だよ。あんなに勉強したんだし!」

 

楓「……まぁ、そうだけど……」

 

勉強した……けど……。

 

まぁ数学と英語はいいとして……残りの三教科だよなー……。

 

国語はめちゃくちゃ苦手な古文あるし、理科は化学とか生物……社会は……あー考えたくない……。

 

花音「……空見くん。」

 

楓「ん?」

 

花音「大丈夫だよ。……きっと大丈夫。だって、あんなに頑張ってたもん。その頑張りは、絶対良い方向へ繋がるよ。」

 

楓「……松原さん。」

 

花音「……なんてね。えへへ……自分で言っておいて言うのもなんだけど、ちょっと恥ずかしいね///。」

 

楓「……ありがとう、松原さん。ちょっと、元気出たかも。」

 

花音「ほんと?良かったぁ。」

 

……なんか僕、いっつも松原さんに元気づけられてる気がする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜昼休み〜

 

【花咲川女子学園 中庭】

 

千聖「……さて、みんな集まったわね。」

 

楓・花・彩・紗・燐「……」

 

千聖「それじゃあさっそくだけど……花音から時計回りに発表していきましょう。」

 

花音「うん……。えっと、私は……」

 

松原さんから時計回りか……。

 

あ、ちなみに座ってる位置はこんな感じだ。↓

 

 

 

 

 

    千聖  紗夜

 

花音          燐子

 

楓 彩

 

 

 

 

 

……はぁ、僕が最後か……。

 

花音「……はい。」

 

千聖「……!前より上がってるじゃない花音!」

 

花音「えへへ……そうなんだ。やっぱり、みんなで勉強会をしたおかげかな?」

 

前より上がった、か。

 

流石松原さんだな。

 

千聖「それじゃ、次は私ね。私は……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

燐子「やっぱり私は……変わらず、でした。」

 

紗夜「気を落とさないでください、白金さん。次、またいっしょに頑張りましょう。」

 

燐子「は、はい。お願い……します。」

 

松原さん、白鷺さん、氷川さん、白金さんと、四人の発表が終わった。

 

残るは二人、……僕と丸山さんだ。

 

千聖「さてと、次は問題の二人だけど……」

 

楓・彩「……」ズーン

 

千聖「……これは、見るからに問題ありね……。」

 

花音「そ、空見くん、彩ちゃん。元気出して、ね?」

 

彩「……元気なんか出ないよ……。」

 

花音「え?」

 

楓「……同じく……。」

 

紗夜「そ、空見さん……?」

 

どうやら僕も丸山さんも、同じ問題を抱えているらしい。

 

こうなったら、……正直に言うしかない。

 

どうせ言わなくてもバレるんだ。

 

燐子「あ、あの……二人と…「「すみません。」」!?」

 

楓「……僕は……」

 

彩「私は……」

 

花・千・紗・燐「……」

 

楓・彩「……

 

 

 

 

 

……赤点をとっちゃいましたーー!!!」

 

花・紗・燐「……え?」

 

千聖「やっぱり……。」

 

彩「うぅ……ごめんみんな〜……。私、頑張ったんだけど……。」

 

楓「国語だけ……しかもあと二点とれてたら……。」

 

楓・彩「……はぁ〜。」

 

花・紗・燐「……あ〜……。そういうこと(です)か……。」

 

彩「そういうことって……何を想像してたの?」

 

花音「い、いやー……」

 

紗夜「私はもっと……重大なことかと……」

 

燐子「深く考えすぎました……。」

 

彩「い、いやいや!私達からしたら十分重大なことだよ!ね、空見くん!」

 

楓「う、うん!」

 

千聖「とーにーかーく!」

 

楓・彩「!」

 

千聖「これからあなた達がやらなくてはいけないことはただ一つ。」

 

楓・彩「……」

 

千聖「……夏休み、きちんと補習に行って追試で必ず合格しなさい!次のテストのための勉強はそれからよ!」

 

楓・彩「は、はーい……。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜放課後〜

 

【花咲川女子学園 2-A】

 

千聖「それじゃあね、楓、花音。また明日。」

 

花音「うん、また明日。」

 

楓「じゃーねー。」

 

花音「……それじゃ、私達も帰ろっか。」

 

楓「そうだね。……『プルルルルル!プルルルルル!』!!」

 

花音「これって……空見くんのスマホ?」

 

『プルルルルル!プルルルルル!』

 

楓「うん、そうみたい。ちょっと向こう行って電話して…「あ、別にいいよ。ここで電話しても。」え、そ、そう?」

 

花音「うん!」

 

楓「……じゃあ、そうするよ。えっと……もしもし…『あ、空見くん!今どこ!?』え……ゆ、ゆりさん?」

 

花音「!」

 

楓「今は……まだ教室ですけど…『何してるの!?早く行かないと始まっちゃうよ!』え?始まるって、何がですか?」

 

ゆら『何って……ポピパのオーディションに決まってるでしょ!』

 

楓「ぽ、ポピパのオーディション?」

 

ゆら『……その反応ってことはもしかして……りみから聞かされてない?』

 

楓「いや、まぁ、オーディションがあるってことは聞いたんですけど……」

 

ゆり『じゃあそれが今日だってことは知らないんだ。』

 

楓「え、今日?……今日!?え、きょ、今日ポピパのオーディションがあるんですか!?」

 

ゆり『そ。今日のオーディションでSPACEのライブに出れるかが決まるの。』

 

楓「……」

 

花音「ね、ねぇ、ポピパのオーディションって、もしかして……」

 

楓「……うん。今日あるみたい。しかも、早く行かないと始まっちゃうって言ってるから、たぶん……もうすぐ始まる……。」

 

花音「そう、なんだ……。」

 

ゆり『もしかして、松原さんもいっしょなの?」

 

楓「はい、まぁ。」

 

花音「……空見くん、行こう。」

 

楓「え?」

 

花音「……」

 

楓「……うん、そうだね。……ゆりさん、今どこにいますか?今から僕と松原さんも、そこに行きます。」

 

ゆり『! うん、分かった。私達は今、商店街の隣にある小さな公園にいるよ。』

 

楓「公園……。分かりました。じゃあ今から、松原さんとそこに…「空見くん。」ん?」

 

花音「もうすぐオーディションが始まっちゃうんでしょ?だったら、もうお互いSPACEに向かったほうがいいと思うんだけど……。」

 

楓「あ……確かに。よし、じゃあゆりさんにそれでもいいか聞…『聞こえたよ。』! それじゃあ……」

 

ゆり『うん。私達はこれからSPACEに向かう。だから二人も、できるだけ早く来てね。』

 

楓「わ、分かりました!」

 

ゆり『ふふっ。……じゃあ、後でね。プツン』

 

楓「……」

 

花音「空見くん!」

 

楓「……うん、行こう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【SPACE】

 

カランカラン

 

「あ、いらっしゃい……って、ゆりちゃん!?みんなも!」

 

ゆり「はぁ、はぁ……お、オーディションは……」

 

「え?……あぁ、ポピパちゃん達のね。それなら……ほら。」

 

ゆり「……!」

 

七菜「もう、始まってる……。」

 

ゆり「……りみ、みんな、頑張って……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【SPACE オーディション会場】

 

香澄「きょ、今日は、よろしくお願いします!」

 

た・り・沙・有「よろしくお願いします!」

 

オーナー「……」

 

有咲「……や、ヤベえな、この緊張感……。」

 

りみ「何か甘いもの食べたい……。」

 

たえ「食べよ、いっぱい。空見先輩もいっしょに。」

 

有咲「全部終わったらな。」

 

香澄「……」

 

オーナー「……」

 

沙綾「……香澄。」

 

香澄「……よし。みんな、円陣やろ!」

 

有咲「お、おう。」

 

たえ「有咲、頑張ろ。」

 

りみ「大丈夫……大丈夫……。」

 

沙綾「ここにきて、私も緊張してきた〜……。」

 

香澄「……頑張ろうね、さーや、みんな。」

 

た・り・有・沙「……うん(おう)!」

 

香澄「いくよ!ポピパ〜〜〜〜!!!!」

 

Poppin'Party「オーーー!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【SPACE】

 

……カランカラン‼︎

 

楓「はぁ……はぁ……はぁ……」

 

花音「はぁ……はぁ……はぁ……」

 

や……やっと、着いた……。

 

はぁ、はぁ……と、途中の道でおばあさんの荷物持ちを手伝ってたら……はぁ、はぁ、お……遅く、なっちゃった……。

 

花音「はぁ、はぁ、……!そ、空見くん、あれ!」

 

楓「え?……!」

 

ゆりさん達が座っているところの上辺りに、一つのモニターがある。

 

そこには、オーディションを受けているポピパのみんなの姿があった。

 

ん?

 

あれは……もしかして、終わったのか?

 

楓「あ、あの、ゆりさん。……オーディション、どうなったんですか?」

 

恐る恐る聞いてみたが、ゆりさんの反応は……。

 

……!?

 

ゆり「……」

 

な、泣いてる……!?

 

え……いや、まさか……。

 

花音「……じゃ、じゃあ、みんなは……」

 

……オーディション……ダメ、だったのか……?

 

……そんな……。

 

……。

 

楓「……スッ」

 

花音「……空見くん、それは……」

 

楓「みんなで七夕祭りに行った日からずっと、花園さん、僕にみんなの練習風景を写真で送ってきてたんだ。毎日毎日、同じような時間に何枚も。たまに動画も送られてきたりしてさ。」

 

花音「……」

 

楓「これ見ただけでも、相当頑張ってたんだなってのが分かる。実際に見なくても、この写真や動画から、みんながどれだけ熱心に練習して努力してきたのか。……すごく、伝わってくる。」

 

花音「……うん。私も、伝わる。」

 

楓「なのに……なのに……。」

 

……SPACEに立ったポピパのライブ、……見てみたかったな……。

 

 

 

 

 

バタンッ!!

 

楓・花「!?」

 

香澄「! そ、空見先輩?何で……」

 

た・り・有・沙「……」

 

楓「……みんな……」

 

オーナー「……」

 

楓「……えっと、その……。……お、オーディション、……ほんとに、残念……

 

 

 

 

 

タッタッタッタ……

 

ガバッ!!

 

楓「……え?」

 

たえ「……やりましたよ、空見先輩。」

 

 

 

 

 

うわっ!ドサッ

 

いてててて……は、花園さん……?

 

たえ「オーディション……合格しました……。」

 

楓「え?……ご、合格?……え?」

 

花音「? え……ダメだったんじゃ、なかったの……?」

 

ゆり「誰もダメだったなんて言ってないでしょ?」

 

花音「そ、それはそうですけど……。! じゃあ、さっき泣いてたのって……」

 

ゆり「嬉し泣きだよ、嬉し泣き♪」

 

楓「嬉し泣き……。そういうことだったのか……。」

 

沙綾「それにしても、どうして空見先輩がここに?私達、空見先輩にオーディションの日は教えてなかったはずじゃ……」

 

ゆり「私が教えたんだよ。」

 

七菜「本当はみんな、空見くんにも応援してほしかったんでしょ?」

 

香・り・沙・有「……」

 

たえ「……空見先輩には、SPACEのステージに立った私達を、見て欲しかったから……」

 

花園さん、あのときの約束を、そんなに大事に……。

 

楓「……花園さん。」

 

たえ「?」

 

楓「オーディション合格、本当におめでとう。もちろん、みんなも。」

 

香澄「……う、うぅ……」

 

楓「え?ちょ、戸山さ…「空見先ぱーーーーい!!」ガバッ!! うわっ!」

 

花音「そ、空見くん!?大丈夫!?」

 

楓「いてててて……」

 

……ギュッ

 

楓「え?」

 

りみ「……う、うぅ……」

 

楓「……う、牛込さん?」

 

ゆり「もうちょっとだけ、そうさせてあげなよ。」

 

楓「ゆ、ゆりさん……。」

 

ゆり「きっとみんな、心の中で空見くんを支えにして頑張ってたんだと思う。だから、ね?もうちょっとだけ。」

 

楓「……まぁ、それはいいんですけど……」

 

香・た・り「……」ギュ~‼︎

 

楓「……流石に、三人は苦しい……。」

 

有咲「……」

 

沙綾「有咲も、羨ましかったら入って行っていいんだよ?」

 

有咲「はぁ!?べ、別に、羨ましくなんかねーし……。」

 

沙綾「顔、赤いよ?」

 

有咲「こ、これは、オーディションに合格したから、嬉しくて……。あぁもう見るなーー///!!」

 

沙綾「ふふっ、素直じゃないんだから♪」

 

オーナー「お前達、イチャイチャするんならどっか他のとこでやんな。

 

楓「い、イチャイチャって……そんなんじゃないですよ!」

 

オーナー「分かってるよ。」

 

楓「へ?」

 

オーナー「だから……今回だけは許してやる。」

 

楓「……」

 

まぁ、悪い人ではないんだよな、この人。

 

……でも……ちょっと視線が痛いから、そろそろ離れてくれないかなぁ?

 

たえ「……空見先輩。」

 

楓「ん?」

 

たえ「ライブ、楽しみにしててください,。」

 

楓「……うん。楽しみにしてるよ。」

 

香澄「よーし!次はいよいよSPACEでライブだー!」

 

りみ「楽しみだね!香澄ちゃん、おたえちゃん。」

 

沙綾「……私達も、いっしょに抱きついとく?」

 

有咲「!? わ、私は絶対行かねーからな///!?」

 

沙綾「あはは……冗談だって。」

 

花音「……」

 

……とりあえず、良かった……のかな。

 

……それはそうと、そろそろ離れてほしいんだけどなぁ……。

 

香澄「そうだみんな!これからお祝いパーティーしようよ!」

 

たえ「いいねそれ!賛成!」

 

りみ「空見先輩も、いいですよね?」

 

楓「え?あぁ……まぁ、うん。」

 

有咲「おいおい、空見先輩困ってんぞ?」

 

沙綾「花音先輩もいっしょにしますよね?お祝いパーティー。」

 

花音「……え?あ、う、うん!」

 

たえ「よっ……と。じゃあ行きましょう、空見先輩。」

 

りみ「お祝いパーティー、どこでしようか?」

 

香澄「やっぱり蔵じゃない!?」

 

有咲「まぁ、そうなるよな。」

 

沙綾「嬉しそうだね、有咲。」

 

有咲「ち、違っ!別に、そんなんじゃ、ねえし///……」

 

……あ、歩きにくい……。

 

やっと離れてくれたと思ったら、右腕を花園さんが、左腕を牛込さんが組んで歩き出したから、あまり変わらず……。

 

……まぁ、今日くらいはいっか。

 

花音「……」

 

楓「? 松原さん、どうしたの?」

 

花音「……何でも?」

 

楓「え……?」

 

……僕、何か怒られるようなことした?

 

た・り「〜♪」

 

花音「……」




おそらく、いやたぶん絶対、次回で一期編終了です!

と言っても一期編とかそういうのはないんですが、ちょいちょいアニメ一期の話が入ってるということで、くくりとしてはまぁ一期編です。

これまで長かった、いや長すぎた。

全てほ僕の責任です、はい。

というわけで、次回は一期編最終回です!(物語自体はまだ終わりません。もうちょっと、ほんのちょびーっとだけ続きます。[ドラ○ンボール風])


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53話 一学期最終日!すれ違っちゃった

すみません……。

一話におさまりませんでした……w。

なので一期編最終回は二つに分けます。

楽しみにしてくださっていた方々、本当にすみません……。

次回は、本当の本っっっ当に一期編最終回です!


【空見家】

 

〜AM 7:30〜

 

楓の母「楓ー!そろそろ起きなさーい!かえ…「起きてるよ。」え?クルッ」

 

楓「おはよう。」

 

楓の母「お、おはよう……。」

 

楓「? じゃあ僕着替えてくるから、その袋に入ってるパン出しといて。」

 

楓の母「う、うん、分かった。」

 

翔真「……珍しいな。楓が俺より先に起きるなんて。」

 

楓の母「ええ……。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……なんか今日は、いつもより早く目が覚めた。

 

理由は特にないが……しいて言うなら、今日が終業式だから、かな。

 

でも変だなー。

 

今までは、終業式だから早起き、みたいな習慣はなかったのに。

 

……ま、いっか。

 

とりあえず着替え終わったし、下行ってご飯たべよ。

 

???「にゃ〜。」

 

楓「! あ、マリー!おはよう!」

 

マリー「にゃ〜ん♪」スリスリ

 

楓「あぁ分かった分かった。すぐ下降りるから。」

 

マリー「にゃん♪トコトコ」

 

楓「……はぁ、やっぱマリーは可愛いな〜。……猫好き同士、気軽に話せる人はいないもんかね〜。……なんてね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

楓「いってきまーす。」

 

楓の母「いってらっしゃい、気をつけてねー。」

 

 

 

 

 

【空見家 玄関前】

 

楓「ふわぁ〜……。」

 

そういや昨日、猫動画見てたら寝落ちしたんだっけ。

 

あ、今日早く目が覚めたのはそのせいかもな。

 

……眠い。

 

けど、放課後までには眠気をなくしておきたいな。

 

なんてったって今日の放課後は……

 

ん?

 

花音「……」

 

……松原さんだ。

 

こんなところで珍しいな。

 

誰か待ってんのかな?

 

花音「……!」

 

あ、こっちに気づいた。

 

そしてこっちに向かってくる。

 

……え、こっち?

 

花音「空見くん、おはよう。」

 

楓「お、おはよう……。珍しいね、こんなところで。」

 

花音「う、うん。……ちょっと、空見くんと話したいことがあって。」

 

楓「僕と?……あ、もしかして……」

 

花音「! そう!」

 

楓・花「「今日の放課後のことでしょ?(昨日のパーティーのことで話したくて……。)……え?」」

 

楓「……昨日の、パーティー?」

 

花音「う、うん。」

 

てっきり、あのことについて話したいんだなって思ったけど、違うのか。

 

昨日か……。

 

あの後は確か市ヶ谷さんの蔵に行って、みんなでオーディション合格パーティーをして、ポピパのミニライブを見て……。

 

松原さんも普通に楽しんでたし、話すことなんてなさそうだけど。

 

あ、もしかして……本当は気まずかった、とか?

 

……そんなことないか。

 

これまでも松原さんとポピパのみんなはたびたび交流あったし。

 

うーん……予想つかんなー。

 

花音「……くん。……空見くん!」

 

楓「! あ、ご、ごめん。ちょっと考え事してた……。」

 

花音「……それって……ポピパのみんなのこと?」

 

楓「へ?」

 

花音「……」

 

楓「……いや、別に。」

 

花音「……そう。」

 

……もしかして僕、また知らないうちに、松原さん怒らせちゃった?

 

花音「大丈夫だよ。別に怒ってるわけじゃないから。」

 

楓「! そ、そう……。」

 

ヤベぇ……僕の考えてることを読まれてることに、もう何も思わなくなってきてる……。

 

これは慣れなのか、僕の頭がバグってるのか、はたまた……。

 

花音「……そ、それでね?空見くん。」

 

楓「……え?あ、うん。」

 

花音「わ、私が空見くんに話したいことっていうのは……そ、空見くんは、ポピパのみんなのこと、どう…『プルルルルル!』え?」

 

楓「あ、電話だ……。ごめん松原さん、たぶんすぐ終わるから、ここで待っててくれる?」

 

花音「……」

 

楓「えーっと……あ、花園さんか。もしもし?」タッタッタ……

 

花音「……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜五分後〜

 

楓「うん、分かってる。……うん、じゃあまた後で。じゃーね。……ふぅ。」

 

結構長電話だったな……。

 

もう、花園さんってば、今日のこと忘れてなんかないって。

 

にしても、あんなに楽しそうに話すなんて……ほんとに嬉しかったんだな、オーディション合格。

 

……っていけねいけね、五分も松原さん待たせちゃってるよ。

 

怒ってないといいけど……。

 

 

 

 

 

花音「……」

 

楓「お待たせー松原さん。ごめんね、長電話しちゃって。」

 

花音「……」

 

楓「それじゃあ、そろそろ学校行こうか。ん?でも、何か忘れてるような……」

 

花音「……」

 

楓「……!!そうだ話!松原さんの話したいこと、ちゃんと聞いてなかったね。……あ、そうだ。それなら学校まで歩きながら聞くよ。それなら話も聞けて学校にも向かえて、一石二…「いい。」え?」

 

花音「もういいよ、話なんて。」

 

楓「え?……え、ちょ、松原さん?」

 

花音「……」スタスタスタ……

 

楓「ちょ、ちょっとどうしたの?松原さん。いいって……さっきあんなに話したがって…「たえちゃんとの話のほうが楽しいんでしょ?ならずっと話してれば?」な、何でそこで花園さんが……」

 

……!ま、まさか……。

 

…‥そっか、だから松原さん、怒ってるんだ。

 

ここは、しっかり謝らないと……。

 

楓「……ごめん松原さん!」

 

花音「……」

 

楓「僕、松原さんの気持ち、ちゃんと考えてなかった……。」

 

花音「! ……空見くん……。」

 

楓「そうだよね。ちゃんと言わなきゃ、伝わらないもんね。」

 

花音「!! そ、空見くん、それって……」

 

楓「うん。僕……

 

 

 

 

 

……花園さんと長電話して松原さんを待たせちゃったこと、しっかり謝ってなかった。」

 

花音「……ふぇ?」

 

楓「そうだよね。五分も待たせてたのに、あんな軽い謝り方されたら、怒るのは当たり前だよ。」

 

花音「……」

 

楓「本当にごめん!これからはなるべく、長電話しないように心がけるから!もう長い時間待たせたりしないから!」

 

花音「……空見くんの……」

 

楓「え?」

 

花音「空見くんの……空見くんの……

 

 

 

 

 

……空見くんのバカーーーーー!!!!!」

 

ダッ!

 

タタタタタ……

 

楓「……え?」

 

……何で、謝ってるのに、怒られたの……?

 

しかも、僕にバカって……。

 

……なんか松原さんにバカって言われんの、すげえ傷つくな……。

 

……はぁ、学校行くか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【花咲川女子学園 2-A】

 

千聖「……」

 

楓「……」ズーン

 

千聖「どうしたのよ楓、さっきから元気ないじゃない。花音も、隣のクラスに行ってしまったみたいだし。」

 

楓「……別に、何も……」

 

千聖「何もないわけないでしょ。あなたはともかく、花音が私にあいさつしてすぐ隣のクラスに、しかも逃げるようにして向かうなんて、今までなかったもの。」

 

流石、よく見てんな……。

 

千聖「……ちょっと耳かして。」

 

楓「へ?」

 

千聖「いいから!」グイッ

 

楓「うわっ///!」

 

ち、近い近い///!!

 

千聖「何があったのかは知らないけれど、早めに仲直りしたほうがいいわよ。あの子もあなたも、いつまでもこのままは嫌だろうし、今日の放課後には例のこともある。喧嘩したまま行きたくはないでしょ?」

 

楓「ま、まぁ……それは、ご最も……」

 

千聖「……忠告はしておいたからね。後はあなた達次第よ。」

 

楓「あ、し、白鷺さん……。」

 

自分の席に戻っちゃった。

 

……仲直りも何も、別に喧嘩してるわけじゃないんだけどなぁ。

 

言ってしまえば僕は被害者で、松原さんから一方的にバカって言われただけで……。

 

……とりあえず、後でタイミング見つけて話してみるか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【花咲川女子学園 2-B】

 

彩「たぶんそれ、ヤキモチだと思うよ?」

 

花音「や、ヤキモチ……?」

 

彩「うん。だって、花音ちゃんが何か話そうとしたらたえちゃんから空見くんの携帯に電話がかかってきて、それを聞いた途端に心がもやもやしたんでしょ?だったらきっとそうだよ!」

 

花音「……で、でも私……空見くんに、ヤキモチなんて……」

 

燐子「私は、可愛いと思いますよ。犬……みたいで。」

 

花音「い、犬!?」

 

彩「犬かぁ……。花音ちゃんなら、猫も合いそうだよね!」

 

花音「もう!二人とも、こっちは真剣なんだよ!」

 

彩「あはは、ごめんごめん……。」

 

紗夜「……話を聞いていて思ったことが一つあるのですが、よろしいでしょうか?」

 

花音「? うん、いいよ。」

 

紗夜「松原さんは、空見さんのことが好きなんですか?」

 

花音「……ふぇ?」

 

紗夜「……」

 

花音「……え?……/////!!えぇ〜〜〜〜/////!!??」

 

『『『!?』』』

 

「な、何今の!?」

 

「松原さんの……悲鳴?」

 

紗夜「! ま、松原さん、皆さん見てますから!」

 

彩「と、とりあえず、一旦教室出よ!?ね?」

 

燐子「そ、そう……ですね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【花咲川女子学園 体育館】

 

〜終業式〜

 

楓「……」

 

 

 

 

 

〜終業式が始まる前〜

 

……ん?

 

花音「……」

 

! 松原さん!

 

……よ、よし。

 

楓「……あ、あの、松原さ…「! ピューッ!」あ……。」

 

に、逃げられた……。

 

……つ、次こそ……!

 

 

 

 

 

それからというもの、タイミング良く松原さんを見かけることが何度かあり、その度に話しかけようとしたのだが……。

 

楓「あ、松原さ…「ピューッ!」うっ……こ、今度こそ!」

 

 

 

 

 

花音「……「松原さーん!」!? キョロキョロ……!サッ!」

 

楓「え?」

 

「うわっ、どうしたの?松原さん。突然後ろに隠れたりなんかして。」

 

楓「(……や、やられた……。僕が初対面の人に話しかけられないのを良いことに……。)」

 

花音「……」

 

 

 

 

 

花音「……」

 

楓「……」ソー

 

今松原さんは一人、近くには誰もいない。

 

今が……絶好のチャンス!

 

楓「ま、松原さ…「空見くん。」ポン え?」

 

げっ、せ、先生〜?

 

美澤先生「ちょっと頼みたいことがあるんだけど、今時間いい?」

 

楓「い、今ですか?えっと〜……」

 

千聖「……!花音。」

 

花音「あ、千聖ちゃん。」

 

! ちょ、ちょっと〜!

 

白鷺さ〜ん!?

 

……ダメだ、全然こっちに気付いてない……。

 

はぁ……。

 

〜回想 終了〜

 

 

 

 

 

タイミングは何度かあったものの、運が悪くて終業式開始前に松原さんと話すことは出来なかった。

 

終業式が終わればHRで先生が話をし、連絡をして、それも終わったらすぐ帰り。

 

あれは16:00からだったはずだから、それまでには仲直りしておきたい。(別に喧嘩したわけじゃないけど)

 

前もって一時間前くらいに行くことを考えると……早めに話したほうがいいな。

 

となるとやはり……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

花音「……」

 

 

 

 

 

〜終業式が始まる前〜

 

ガチャ

 

彩「ん〜!気持ちいい〜!」

 

燐子「屋上なんて……初めて、来ました。」

 

紗夜「私もです。……さて。」

 

花音「……」

 

彩「……花音ちゃん、大丈夫?」

 

花音「ふぇ!?う、うん、大丈夫……大丈夫だよ。」

 

彩「……やっぱり、紗夜ちゃんがあんなこと言うから……」

 

紗夜「わ、私のせいですか!?」

 

燐子「……」

 

紗夜「っ!……た、確かに考えてみれば、あの発言は少々軽率だったかもしれません……。松原さん、すみませんでした。」

 

花音「! あ、謝らなくていいよ!ほんとに……ほんとに大丈夫だから……」

 

うん、そう。

 

本当に何ともない。

 

大丈夫。

 

大丈夫なはず……なのに……。

 

……何だろう、このもやもや……。

 

彩「でも私……空見くん好きだな。」

 

花・紗・燐「!?」

 

紗夜「ま、丸山、さん……?それはいったい、どういう……」

 

……何で、紗夜ちゃんが動揺してるんだろう?

 

彩「だって、楽しいんだもん、空見くんといると。」

 

紗夜「え?」

 

燐子「楽しい……ですか?」

 

彩「うん。何て言うんだろう……。面白くもあるし、可愛くもあるし……たまにカッコいいなーって思うところもあったり……。」

 

紗夜「は、はぁ……。」

 

彩「あとは……あ!優しい!えっとねー、それから……」

 

花・紗・燐「……」

 

彩「……と、とにかく!空見くんには良いところがいーっぱいあるんだよ!だから好きなんだ!」

 

紗夜「……なるほど、そういうことですか。」

 

花音「え?」

 

紗夜「そういう意味では、私も空見さんのことは好きですよ。」

 

花音「!?」

 

燐子「私も……同じです。」

 

花音「!!??」

 

彩「なーんだ、結局みんな空見くんのこと好きなんだね♪あ、千聖ちゃんもこの前、いつの間にか私は、空見くんのことを好きになっていたんだなって言ってたよ。」

 

花音「ち、千聖ちゃんまで!?……わ、わたし以外、みんな……」

 

紗夜「……」

 

そ、そうだったんだ。

 

みんな、空見くんのことを……。

 

……それなのに、私は……。

 

紗夜「……あの、松原さん。」

 

花音「……」

 

紗夜「誤解を招かねないので、一応言っておきますが、……私達はあくまで、"友達"として、空見さんのことを好きだと言っているだけですからね?」

 

花音「……ふぇ?……友達と、して……?」

 

紗夜「はい。ただの他人ではない友達。共に助け合い、支え合っている仲間。そして、互いに本音をぶつけ合ったり、自分の抱えている悩みや想いを、互いにさらけ出すことができる親友として、私達は空見さんのことが好きなのだと、そう言っているんです。それ以上でも、以下でもありません。松原さん、あなたの思っている好きとは意味が異なりますが、あなたも私達と同じ考えのはずです。」

 

花音「……親友として、好き……。」

 

紗夜「一番最初の話に戻りますね。……丸山さんの言う通り、あなたは空見さんにヤキモチを焼いているんだと思います。Poppin'Partyの皆さんに空見さんを取られたと……それが、あなたの心のモヤモヤの正体です。」

 

花音「……」

 

紗夜「ですがあなたは、一つ大事なことを忘れています。」

 

花音「? 大事な、こと?」

 

紗夜「はい。……あなたは、この場にいる誰よりも、そして、Poppin'Partyの皆さんの誰よりも長く、空見さんといっしょにいた時間が長いはずです。」

 

花音「! ……そ、そう、なのかな?」

 

紗夜「少なくとも、私はそう思いますよ。」

 

花音「……そっか。……えへへ♪なんかそう言われると、嬉しいな♪」

 

紗夜「……では、話を戻しますね?私、考えてみたんです。あなたと空見さんが仲直りするために、まず一つ、やらなくてはならないことを。それは……」

 

〜回想 終了〜

 

 

 

 

 

……二人きりで、話す。

 

……普通のことだけど、仲直りするなら、それが一番良いのかも。

 

バカって言っちゃったのは私だし、謝らなくちゃいけないのは分かってる。

 

分かってる、けど……話す勇気が……。

 

あれから空見くん、何度も私に話しかけようとしてくれてるのに、つい避けちゃって……。

 

……たぶん、避けちゃってる理由は……。

 

……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

終業式は30分くらいで終わった。

 

後はそれぞれのクラスのHRで先生が話をし、連絡し、それが終わったら帰りだ。

 

一学期が終わり、明日から夏休みに突入する。

 

……でもその前に、なんとかして松原さんと話をしなければ。

 

できれば帰る前に。

 

……ん?

 

花音「……」

 

! 松原さん!?

 

えーっと、HRが始まるまであと……15分か。

 

よし、チャンスだ。

 

話しかけて、どこか邪魔されないようなところに誘導して、それで話そう。

 

……大丈夫、大丈夫。

 

三度目の正直ならぬ、四度目の正直!

 

楓「……ま、松原さん!」

 

花音「! そ、空見、くん……。」

 

楓「あ、あの……実は、話が……あるんだけど……」

 

花音「……ダッ!」

 

楓「! 待って!」

 

花音「……」

 

楓「……お願いだから、話を聞いてよ。」

 

花音「……」

 

 

 

 

 

千聖「……楓、今度こそしっかりやりなさいよ。」ソー……

 

 

 

 

 

彩「……花音ちゃん、大丈夫かなぁ?」ソー……

 

燐子「心配……ですね。」ソー……

 

紗夜「……」ソー……

 

 

 

 

 

花音「……話?」

 

楓「うん……。僕、松原さんと話がしたくて。……朝のことで。」

 

花音「! ……」

 

花音「……教えてほしいんだ。朝、何で松原さん、あんなこと言ったのか。……僕、また怒らせて…「違うよ!!」え?」

 

花音「あれは……ただの、私の……」

 

楓「松原さんの?」

 

 

 

 

 

千聖「花音……あんな大きな声出すなんて……。」

 

 

 

 

 

彩「空見くんが、あんな積極的に……」

 

燐子「それに対して松原さんは……」

 

紗夜「……」

 

 

 

 

 

楓「松原さんの……何?」

 

花音「……ううん、何でもない。」

 

楓「何でも……なくないでしょ?だって、あんな大きな声出して。……松原さん、僕に何か言いたいことがあるんじゃないの?」

 

花音「!!」

 

楓「その反応……図星だね。」

 

 

 

 

 

千聖「……まるで、二人の立場が逆転したみたい……。」

 

 

 

 

 

彩「空見くんが、花音ちゃんに見えて……花音ちゃんが、空見くんに見える……。」

 

燐子「氷川さん、さっきから黙ってますけど……どうかしたんですか?」

 

紗夜「……いえ。何でもな…「でねー、そのとき音羽がー。」!?」

 

 

 

 

 

千聖「(あれは……りかちゃんに美菜ちゃんに、音羽ちゃん!)」

 

 

 

 

 

紗夜「(こっちに向かってくる……ということは……!)」

 

 

 

 

 

美菜「……あれ?空見じゃん。」

 

音羽「松原さんも……こんなところで何してるんですか?」

 

楓・花「え?」

 

りか「丁度いいや!二人とも、ちょっと付き合ってよ!」

 

楓・花「……え?」

 

 

 

 

 

千聖「(ま、まずいわ……恐れていたことが現実になろうとしている……。)」

 

 

 

 

 

紗夜「(このままじゃやっと二人きりになれた空見さんと松原さんのチャンスが……)」

 

 

 

 

 

千・紗「(ここは、なんとしても阻止しなければ!)」

 

 

 

 

 

楓「いや、ごめん、ちょっと今は……」

 

りか「? でも二人とも、さっきからそこでぼうっと突っ立ってるだけだよ?」

 

楓「うっ……ま、まぁそうなんだけど、でも……」

 

花音「いいよ。」

 

楓「!?」

 

花音「私達も丁度話し終えたところだから、りかちゃん達に付き合うよ。」

 

花音「ちょ、松原さん!?何言って……」

 

 

 

 

 

彩「空見くんの言う通りだよ!花音ちゃん、何で……」

 

燐子「い、いい……いったい……どうすれば……。ひ、氷川さん……?氷川、さん?」

 

彩「え?……!?燐子ちゃん、あれ!」

 

燐子「あれ?……!!ひ、氷川さん!?と……白鷺さんも!?」

 

 

 

 

 

りか「あれ、どうしたの?白鷺さん、氷川さん。」

 

千・紗「……」

 

楓「(え、氷川さん……?いったいどこから……。)」

 

花音「(千聖ちゃん……何で……?)」

 

千聖「ごめんなさい三人とも、二人は今、とても大事な話をしているの。」

 

紗夜「申し訳ありませんが、この二人への用ならまた後でにしてもらえませんか?」

 

美菜「(こ、この二人、いったいどこから出てきたの……?)」

 

音羽「(全く、出てくるところが見えなかったのですが……)」

 

りか「大事な話?いやでも、ここに突っ立ってるだけだった…「「お願い(します)!!」」!? ……」

 

 

 

 

 

彩・燐「紗夜ちゃん(氷川さん)……。」

 

 

 

 

 

りか「……頭下げてお願いなんて言われたら、断れるものも断れないよね。ま、別に断る気もなかったけど。」

 

千・紗「りかちゃん(橋山さん)……。」

 

りか「空見、松原さん!」

 

楓・花「!」

 

りか「みんな期待してんだからね!バッチリ決めちゃってよ!グッ!」

 

楓・花「……え?」

 

りか「ほら、行くよ。二人とも」

 

美・音「う、うん(は、はい)。」

 

楓・花「……決めるって、何を……?って、あれ?」

 

楓「(し、白鷺さん……?)」キョロキョロ

 

花音「(どこ行っちゃったの?紗夜ちゃん……。)」キョロキョロ

 

 

 

 

 

千聖「ふぅ、ひとまずはこれで安心ね。」

 

紗夜「ええ。あとは二人がしっかり話せるかどうか……。」

 

彩「……あのー、二人とも?」

 

燐子「もしかして……仕組んで、ました?」

 

千・紗「……?何を?」

 

彩・燐「(あ、これ、本当に何もなかった顔だ……。)」

 

 

 

 

 

楓「……な、何だったんだろうね、いったい……。」

 

花音「……」

 

 

 

 

 

千聖『ごめんなさい三人とも、二人は今、とても大事な話をしているの。』

 

紗夜『申し訳ありませんが、この二人への用ならまた後でにしてもらえませんか?』

 

 

 

 

 

千・紗『お願い(します)!!』

 

 

 

 

 

……私達のために、頭まで下げてくれた。

 

……ちゃんと話そう。

 

いつまでも逃げてないで、面と向かって。

 

空見くんと……話すんだ。

 

花音「……そ、空見くん。」

 

楓「!」

 

 

 

 

 

彩「! 花音ちゃんが、自分から……!」

 

千・紗「……」

 

 

 

 

 

花音「あ、あの……私……」

 

楓「……」

 

頑張れ……頑張れ私!

 

大丈夫、もう決めたんだもん。

 

空見くんから……話から逃げないって。

 

早く、早く言わなきゃ……。

 

……でも、何て言えば……。

 

楓「……」

 

言いたいことは分かってるのに、何て言えばいいのか分からない……。

 

言おうとしても、その直前で言葉を飲み込んじゃって……。

 

私が……私が言いたいのは……。

 

 

 

 

 

彩「頑張って!……頑張って花音ちゃん!」

 

燐子「あと……少し、です。」

 

千・紗「……」

 

 

 

 

 

楓「……」

 

早く言わなきゃ!

 

空見くんが待ってる!

 

でも、言葉が見つからない……。

 

私の言いたいこと、思ってること、それを空見くんに伝えなきゃ……。

 

私は……私は……。

 

 

 

 

 

千聖「……花音!」

 

彩・燐「!?」

 

紗夜「し、白鷺さん!?」

 

 

 

 

 

花音「! ち、千聖ちゃん……。」

 

千聖「今思ってることを、そのまま伝える。そんなことしなくてもいいのよ!」

 

花音「え……?」

 

千聖「言葉が見つからない。何て言えばいいのか分からない。何か言わなきゃ、相手をいつまでも待たせるわけにはいかない。……そんなことずっと考えていても、いろんな感情が混ざり合って、自分が辛くなるだけよ。それならいっそのこと、楽しいことだけを考えて、それを相手に伝えたほうが何倍もいいわ!」

 

花音「……楽しいことだけを……」

 

 

 

 

 

彩「千聖ちゃんの言ってること、分かるような、分からないような……」

 

燐子「私は……少し、分かる気がします。」

 

紗夜「……ふふ、白鷺さんったら。」

 

 

 

 

 

花音「……楽しいこと……楽しい……。……!!」

 

千聖「何か、思いついたようね。」

 

楓「……ねぇ松原さん。白鷺さん、さっきから何を…「空見くん!」!」

 

花音「……聞いてほしいことがあるの。」

 

楓「……う、うん。」

 

 

 

 

 

花音「……水族館。」

 

楓「……へ?」

 

花音「水族館行こ!夏休みに!」

 

楓「す、水族館?」

 

花音「うん!空見くんと、二人で行きたい!いいかな?」

 

楓「……う、うん。それは別に、構わないけ…「あとあと、夏祭りにも行きたい!」え……?」

 

花音「海にも行きたいし、キャンプも行きたいし、あとは……あ、夏休みの宿題もやらないとだね。いっしょにやろう!それから……」

 

楓「ちょ、ちょっと待って松原さん。いきなり何の話を…「私ね、この夏休み、空見くんといーっぱい楽しいことしたいの!」……」

 

花音「今言ったこと以外にも、いろんな楽しいことを……。もちろん、空見くんだけじゃないよ。千聖ちゃんや彩ちゃん、紗夜ちゃん、燐子ちゃん、ハロハピのみんなや、ポピパのみんな、いろんな人と、いろんなことをして、いーっぱい思い出を作りたいの!……それが、私の今考える、楽しいこと。」

 

楓「……」

 

花音「いいかな?千聖ちゃん。」

 

千聖「……ええ、もちろんよ。あ、でも、お仕事もきっとあるだろうから、スケジュールをしっかり確認して予定を立てなくちゃいけないわね……。」

 

花音「あ、そうだね。」

 

千聖「あなた達の意見は?」クルッ

 

楓・花「え?」

 

 

 

 

 

彩「……え、えへへ……」

 

紗・燐「……」

 

 

 

 

 

楓・花「ま、丸山さん(あ、彩ちゃん)に白金さん(燐子ちゃん)!?何で!?」

 

彩「ご、ごめん、覗き見するつもりなかったんだけど……」

 

紗夜「あなた達のことを、ずっと見守っていたんです。」

 

彩「ちょっと紗夜ちゃん!?」

 

楓「(む、矛盾が生じてる……。)」

 

燐子「し、心配だったんです……。空見さんと……松原さんが……。」

 

紗夜「覗き見するような真似をしてしまい、すみませんでした。」

 

彩「あのー……紗夜ちゃん……?」

 

花音「だ、大丈夫だよ紗夜ちゃん。それに、紗夜ちゃん達のおかげで、こうして話すことができたんだから。」

 

楓「(確かに。もしあのとき白鷺さんと氷川さんが来てなかったら、今頃橋山さん達と何かしてたはずだもんな。)」

 

彩「そ、それはそうと花音ちゃん、さっきの夏休みの話なんだけど……」

 

花音「?」

 

彩「……私も、すっっっごく楽しみだよ!!」

 

花音「! あ、彩ちゃん……。」

 

彩「夏休みだもん!思いっきり楽しんで、たっっくさん思い出作りたいよね!」

 

燐子「そう……ですね。」

 

紗夜「ですが、勉強の方も疎かになってはいけませんよ。」

 

千聖「もちろん、お仕事もね。」

 

彩「わ、分かってるよ〜。」

 

……これで、良かったんだ。

 

確かにさっきの私……心の中がこんがらがっちゃってて、辛かったのかも。

 

……また、千聖ちゃんに助けられちゃったな。

 

 

 

 

 

???「あら、あなた達。」

 

楓「! み、美澤先生!」

 

美澤先生「仲が良いのは微笑ましいことだけど、みんな時間大丈夫?」

 

花・千・彩・紗・燐「え?」

 

美澤先生「ほら。」ユビサシ

 

楓「……!?もうこんな時間だったの!?」

 

彩「えーっと……あと30秒くらいしかないよ!?」

 

紗夜「と、とにかく急ぎましょう!」

 

燐子「ひ、氷川さん……ま、待って……ください……。」

 

千聖「……何してるの?花音も早く…「千聖ちゃん。」え?」

 

花音「……私、いつか絶対、空見くんに伝えてみせるよ。私も……空見くんのことが好きだって。」

 

千聖「……ええ。そのときは、また応援するわ。」

 

花音「うん、ありがと。……よし!じゃあ教室戻ろう!最後のHRが始まっちゃう!」

 

千聖「ええ!」

 

タッタッタッタッタッタ……

 

 

 

 

 

美澤先生「……出来れば、廊下は走らないでねー。」




最近なんか覚醒して、フルコンできなかったHARDをバンバンフルコンできるようになりました。

EXPART?

……むずいんですもん。

まだ21か22しかフルコンできません……。

でもいつか、25とか26をクリアできるようにはなりたいなー。

てかSong I am.マジ楽しみ。


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54話 SPACEラストライブ!楽しんじゃった!!

なんとかギリギリ六月最後に、一期編ラストを投稿することができました……。

明日から七月。

またとある事情で忙しくなるので、きりのいいとこで投稿できてほんと良かった……。

あ、ちなみに前回と今回のタイトル、完全にあれを意識してます、はい。

まぁ、一期と言えばこのタイトルですよねw。

意外と好きだったんだけどなーこのタイトルの付け方。


キーンコーンカーンコーン

 

〜放課後〜

 

タタタタ……

 

彩「空見くん、花音ちゃん、千聖ちゃん!行こう!」

 

紗夜「丸山さん、始まるのは16:00からなので、まだ時間があります。まずは家に帰って、着替えて準備をし、それからまた集合したほうがいいかと……」

 

彩「あー……それもそうだね。じゃあそうしよっか!」

 

燐子「……?空見さん達、どうしたんでしょう……?」

 

彩・紗「え?」

 

燐子「み、見てください。心なしか、ぐったりしているような……」

 

 

 

 

 

楓・花「……」

 

千聖「二人とも、しっかりしなさいよ。もうすぐ彩ちゃん達来ちゃう…「千聖ちゃん!」あら、噂をすればね。」

 

彩「空見くんと花音ちゃん、どうしたの!?」

 

燐子「まさか、お腹が痛くなったんじゃ…「違うわよ。」え?」

 

千聖「これはただ……疲れてるだけよ。」

 

紗夜「つ、疲れ……ですか?」

 

千聖「ええ。」

 

楓「……な、なんとかHRには間に合って、無事終わったんだけど……」

 

花音「少し早く終わって、チャイムが鳴るまで帰る支度をして待ってたら、突然みんなが周りを囲み始めて……」

 

楓「そしたらなぜかみんな拍手し始めて……」

 

花音「みんなしておめでとう、お幸せに、って……」

 

彩・紗・燐「……」

 

千聖「ほんと、静かにさせるのが大変だったわよ。」

 

彩・紗・燐「(それの原因、絶対さっきの(ね)だ……。)」

 

 

 

 

 

???「空見先ぱーい!」

 

楓「? あ、戸山さん。他のみんなも。」

 

花音「!」

 

香澄「空見先輩も、今から帰るとこですか?」

 

楓「も、ってことは、みんなも?」

 

たえ「はい。」

 

りみ「一度有咲ちゃん家の蔵に行って、準備をしてくるんです。」

 

彩「そうなんだー。」

 

香澄「それで空見先輩!途中までいっしょに帰りませんか!?」

 

楓「え?」

 

有咲「お、おい香澄!話が違うだろ!?ちょっと会いに行くって言ったじゃねーか!」

 

香澄「だ、だって〜……」

 

花音「……」

 

紗夜「……松原さん、大丈夫ですか?」ボソッ

 

花音「……うん、大丈夫。もう、もやもやしてないよ。」

 

紗夜「……そうですか。」ボソッ

 

沙綾「すみません空見先輩、すぐ連れて行きますから。」

 

楓「う、うん。」

 

香澄「え〜?さーやまで……」

 

有咲「別にいいだろ?また後で会うんだから。」

 

彩「……香澄ちゃん。」

 

香澄「?」

 

彩「ライブ、楽しみにしてる!最前列でしっかり応援するから、香澄ちゃん達もライブの準備、頑張って!お互い、中途半端は嫌でしょ?」

 

香澄「彩先輩……。……はい!みんな、応援してくれる先輩達、そして、ライブに来てくれる人達のためにも、あと三時間!最後の仕上げ頑張ろう!」

 

た・り・沙・有「おー!!」

 

香澄「それじゃあ空見先輩!彩先輩!他の先輩方も!また後で、SPACEで!」タッタッタ……

 

有咲「あ、おい香澄!待てって〜!」タッタッタ……

 

りみ「ろ、廊下は走っちゃダメだよ〜?」

 

沙綾「あはは……。もう、みんな騒ぎすぎ〜。」

 

たえ「さーやん家のパン、ライブ前にも後にも食べたいな〜。」

 

 

 

 

 

燐子「……相変わらず、ポピパの皆さんは仲良し……ですね。」

 

紗夜「そうですね。風紀委員がここにいるというのに……」

 

そういやこの人風紀委員だったな……。

 

彩「でも、賑やかでいいじゃん!ハロハピのみんなも、こんな感じでしょ?」

 

花音「う、うん、まぁね……。(ポピパより賑やかかも……。)」

 

千聖「それじゃあ、私達も帰りましょうか。」

 

彩「あ、千聖ちゃん、その事なんだけど…「家に帰ったら着替えて準備をして、またみんなで集合、でしょ?」! ……うん♪」.

 

千聖「そういうことなのだけれど……どうかしら?楓、花音。」

 

楓「もちろんOKだよ。」

 

花音「私も大丈夫だよ、」

 

千聖「だそうよ、彩ちゃん。」

 

彩「やった♪紗夜ちゃん、ありがとう!」

 

紗夜「い、いえ……。」

 

燐子「氷川さん……顔、赤いです。」

 

紗夜「///!こ、これは、その……あ、暑くて赤くなっているだけです///!」

 

彩「あ〜、紗夜ちゃん照れてる〜。」

 

紗夜「て、照れてません///!!」

 

花音「……ところで、その集合場所はどうするの?」

 

彩・紗・燐「あ……。」

 

千聖「考えて、なかったのね……。」

 

SPACE……じゃダメなのかな?

 

彩「そ、それじゃあ今から、集合場所の候補をみんなで出し合おう!」

 

あ、マジ?

 

こりゃあ、帰るのにまだまだ時間がかかりそうだな……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー空見家ー

 

楓「ただいまー。」

 

楓の母「あ、お帰りー。」

 

楓「この後僕、ちょっと出かけてくるから。」

 

楓の母「そう。……松原さんと?」

 

楓「うん、まぁ。たぶん夕飯までには帰ってくるから。」

 

楓の母「分かった。……あ、今日の夕飯は、外食だから。」

 

楓「え、そうなの?」

 

楓の母「ええ。楓と翔真の好きなところに連れてってあげるって、お父さんが言ってたわよ。」

 

楓「マジか。……分かった。ありがとね、お母さん。」

 

タタタタ……

 

楓の母「お礼なら後でお父さんに言いなさいよー。」

 

……そう、今日は外食に日になったの。

 

しかも行くところは、楓と翔真の好きなところ。

 

……今日くらいは、いつもより高いものを頼んでも許すつもり。

 

だって今日は、

 

 

 

 

 

……空見家の、最後の晩餐になるのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜1時間後〜

 

ー???ー

 

……ちょっと早く来すぎたかな?

 

集合時間まであと10分もある。

 

……うん、早すぎたわ。

 

にしても、わざわざこんなところを待ち合わせにするとはな……。

 

まぁ、じゃんけんで決まったことだから文句も何も言わないけど。

 

???「あ、空見くーん!」

 

楓「……あ、松原さん……と、白鷺さんも。」

 

花音「早いね、空見くん。まだ時間まで10分あるのに。」

 

千聖「集合5分前に来ようと思ったら、思いの外早く着きすぎてしまった、ってところかしら?」

 

楓「ま、まぁね。」

 

完璧に当たってる……。

 

楓「丸山さん達は、いっしょじゃないんだね。」

 

花音「彩ちゃんは、紗夜ちゃんと燐子ちゃんといっしょに来るって言ってたよ。」

 

楓「そっか。」

 

やっぱり、あのとき仲直りして良かったな。

 

普通に話せるというのがこんなに嬉しいなんて……。

 

???「おーい!みんなー!」

 

千聖「あら、丁度勝者のご到着よ。」

 

勝者って……。

 

まぁ、間違ってはないか。

 

彩「みんな、来るの早いねー。集合時間まであと10分もあるよ?」

 

楓・花・千「……」

 

彩「? どうしたの?三人とも。」

 

花音「う、ううん……ただ、同じような会話、二度目だなーって。」

 

彩「え、そうなの……?」

 

細かく言えば、僕も最初同じこと思ったから三度目だよ……。

 

ん?

 

楓「氷川さん、その黒いのって……」

 

紗夜「あぁ、これですか?ギターですよ。」

 

楓「ギター……。あ、もしかして……!」

 

紗夜「ええ。私達Roseliaも、SPACEのラストライブに出るんです。」

 

燐子「こんな機会はめったにありませんから……Roseliaとして、悔いのない演奏をするつもりです。」

 

彩「そっか……。」

 

千聖「応援してるわ、二人とも。」

 

花音「頑張ってね、紗夜ちゃん、燐子ちゃん。」

 

紗・燐「はい!」

 

そっか。

 

今日のライブ、Roseliaも出るのか。

 

これは、16:00からのラストライブが俄然楽しみになってきたぞ。

 

まぁでも……それと同時に、寂しさもあるんだけどね。

 

 

 

 

 

???「お、みんなもう集まってんなー。」

 

???「うーん……この服、ちょっと地味だったかしら?」

 

???「いや、そんなもんだと思いますよ。」

 

 

 

 

 

花・千・紗・燐「? ……!?」

 

な、何で……?

 

 

 

 

 

……何で、川浪さん達が、ここに……。

 

彩「私が呼んだんだよ。」

 

楓「え?」

 

千聖「……なるほど。だから待ち合わせ場所をここにしたのね。すぐに川浪さんと佳子さんと合流できるように。」

 

彩「えへへ……。」

 

あ、そういうことか。

 

だから待ち合わせ場所……

 

 

 

 

 

……この花美ヶ丘公民館の前だったんだ。

 

でもまさか、丸山さんがじゃんけん一人勝ちするとはな……。

 

あれは僕含めて一同びっくりしたわ……。

 

篤司「あぁそうだ。彩、今日は俺達を誘ってくれてありがとな。」

 

彩「そんな……いいですよお礼なんて。」

 

佳子「そうよ。川浪くんにはお礼なんて言わなくても…「ちょっと大塚館長!それどういう意味ですか!?」別に?そのままの意味よ。」

 

ワーワーギャーギャー

 

彩「……やっぱり佳子さんと川浪さんって、仲良いよね〜。」

 

花音「喧嘩するほど仲が良いっていうもんね。」

 

喧嘩するほど……ってほどの喧嘩でもない気がするけど。

 

でもまぁ、仲は良いっちゃいいのか。

 

……ふと思ったけど、大塚さんって結構若いよな。

 

20代か、いってても30代くらいかな……?

 

それなのに公民館の館長って……何気すごくない?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーSPACEー

 

彩「SPACEに到ちゃーく!」

 

花音「まだ開演まで30分もあるのに、結構人来てるんだね。」

 

篤司「そりゃあ、ラストライブだからな。」

 

佳子「SPACEがなくなる……。そう思うと、寂しくなるわね。」

 

???「おや、お前達。」

 

! この声は……!

 

佳・篤「オーナー!」

 

楓「え?」

 

オーナー「あんた達の顔、久々に見たよ。今日はいったいどうしたんだい?」

 

篤司「どうしたって……ライブを見に来たに決まってるじゃないですか!」

 

佳子「手取り足取り教えてもらった恩師の経営するライブハウスがなくなるなんて聞いたら、飛んでこないわけないじゃないですか!」

 

オーナー「よしな。私はもう、そんなお世辞を言われるようなガラじゃないよ。」

 

佳・篤「お世辞じゃありません!!」

 

彩「……あ、あのー……」

 

オーナー「何だい?」

 

彩「ひぃっ!」

 

驚きすぎたよ丸山さん……。

 

千聖「オーナーと佳子さん達って、どういう関係なんですか?」

 

おー。

 

流石白鷺さん、全くビビってない。

 

佳子「さっきも言った通り、オーナーは私達の恩師なのよ。」

 

篤司「昔大塚館長とバンド組んでたときに、オーナーにいろいろと教えてもら…「え〜〜!?」な、何だよ……。」

 

彩「佳子さんと川浪さんって、バンドやってたんですか!?」

 

篤司「あ、ああ。俺達の他にも三人いてな。あのときは楽しかったなー。」

 

佳子「川浪くん、よくリズムが乱れてるって、オーナーに何度も怒られてたものね。」

 

篤司「うぐっ……そ、そのことを蒸し返さないでくださいよ〜。」

 

花・千・彩・紗・燐「……」

 

ま、まさかこの二人が、バンドを……。

 

……ほんと僕の周りって、バンドやってる人しかいないよな……。

 

オーナー「館長って……あんた今何かやってんのかい?」

 

佳子「あ、はい!私今、ある公民館の館長をやっているんです!」

 

オーナー「公民館の館長?……あんたがかい?」

 

佳子「ちょっと〜、何ですか今の間は〜!」

 

オーナー「そりゃあ、毎回毎回遅刻はするし、自分の物も整理しないでほったらかし、そんなだらしない生活をするようなあんたが館長なんて…「そ、それ以上はやめてください〜!!」自業自得だろ……。」

 

花・千・彩・紗・燐「……」

 

なんか、想像できる……。

 

篤司「……もしだったら、先、入ってるか?」

 

千聖「ええ、そうします。行きましょう、みんな。」

 

花・彩・燐「う、うん(は、はい)。」

 

紗夜「……」

 

楓「……氷川さん?」

 

紗夜「! す、すみません。行きましょうか。」

 

楓「は、はい。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゆり「あ!空見くん!」

 

楓「! ゆ、ゆりさん!?どうして……って、そっか。牛込さんがライブに出るから…「実は、それだけじゃないんだ。」え?」

 

紗夜「Glitter Greenもライブに出るんですよね?」

 

ゆり「当ったり〜♪」

 

楓「! ま、マジですか……!」

 

千聖「……楓、嬉しそうじゃない?顔がにやけてるわよ?」

 

楓「え!?」

 

嘘!?

 

今、そんな顔に出てた!?パッ、パッ、パッ

 

彩「空見くん、何してるの?」

 

楓「へ?」

 

花音「大丈夫だよ、空見くん。顔、にやけてなんかなかったから。」ボソッ

 

楓「! そ、そうなの!?……ジトー」

 

千聖「……ふふ♪」

 

し、白鷺さんめ〜!!

 

ゆり「Roseliaも出るんでしょ?ラストライブ。」

 

紗夜「はい。今日は、よろしくお願いします。」

 

ゆり「ううん、私のほうこそ、よろしくね。」

 

紗夜「……それでは白金さん、私達も準備をしてきましょうか。」

 

燐子「はい、そうです…「お、いたいた〜。」! い、今井さん。」

 

リサ「そろそろ来る頃かなーと思って、待ってたんだー。お、空見じゃん!あの日ぶりだね〜!」

 

楓「う、うん。」

 

……今井さんが着てるの……衣装かな?

 

……めっちゃ似合ってる……。

 

これを、氷川さんと白金さんも着るのか……。

 

花音「空見くん、リサちゃんと知り合いだったの?」

 

楓「あ、うん……まぁちょっとね。」

 

リサ「……それで?どうなの?空見。」ヒソヒソ

 

楓「どうって、何が?」

 

リサ「もう、とぼけちゃって〜。ほらあれだよ〜。……紗夜と、最近どうなの?」ヒソヒソ

 

楓「氷川さん?」

 

紗夜「? 私が何か?」

 

氷川さん……氷川さん?

 

何で急に氷川さんが……。

 

氷川さんと、最近どうかって?

 

……ん?

 

……、……んー?

 

花音「あ、あのー、空見、くん?」

 

彩「(……!も、もしかして……)」

 

楓「……あ。……!……!!い、今井さん!?」

 

リサ「あ、思い出した?」

 

楓「だから僕と氷川さんはそんな関係じゃないって、あれほど説明したよね!?」

 

リサ「あ、あはは〜。ごめんごめん。空見の反応が面白くてついね。」

 

紗夜「あ、あのー。そんな関係とは、いったいどういう…「何でもありません!」……で、ですが…「ほんとに何でもありませんので!!」……そ、そこまで言うのなら……」

 

楓「はぁ……はぁ……僕、ちょっと外の空気吸ってきますね。」

 

千聖「で、でも楓、ライブ、もうすぐで…「それまでにはちゃんと戻りますから!」そ、そう……。」

 

スタスタスタスタ……

 

花・千・彩・紗・燐・リ「……」

 

篤司「いやー悪い悪い。思ったより話が長引いちゃって…スタスタスタスタ ん?楓?」

 

彩「……リサちゃん、後で謝っておいたほうがいいよ?」ボソボソ

 

リサ「そ、そだね〜……。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

楓「……はぁ。」

 

あの話はなくなったと思ったのに、また蒸し返してくるんだもんな。

 

……ったくもー。

 

楓「ほんと、今井さんは……」

 

 

 

 

 

???「リサがどうかしたの?」

 

楓「え?」

 

???「……」

 

……!

 

や、ヤベっ、もしかして今の、声に出てた……?

 

???「……どうしてそんなに挙動不審になってるのよ。気持ち悪いわよ?」

 

き、気持ち悪い……。

 

まぁ、そりゃ……そっか。

 

楓「す、すみません……。ちょっと、嫌なことがあったもので……」

 

???「.……」

 

……なんか、この人怖えな……。

 

目つきもそうだけど……何か、オーラが……。

 

まるで最初の白鷺さんを見てるみたいだ……。

 

???「……」

 

……怖いからもう戻ろう。

 

今井さんのことはもういいや……。

 

???「……嫌なことがあったら、歌を歌え。」

 

楓「え?」

 

???「そうすれば、気持ちは自然と楽になる。……私のお父さんが、昔掛けてくれた言葉よ。」

 

楓「……」

 

???「……それじゃ、私は行くわね。」

 

楓「! あ、ちょっと…「悪いけど、みんなが待ってるの。」……」

 

???「……でも、最後にこれだけ伝えておくわ。……もし、それでも気持ちが変わらなかったら……私の歌を聞いていって。」

 

楓「……歌……?」

 

???「じゃあね。」

 

楓「……」

 

……誰だったんだろ、今の人……。

 

歌って言ってたから、もしかしてあの人もこのライブに……。

 

……!!

 

ってあーー!!

 

もうライブ始まってるーー!?

 

やっベ、早く行かなきゃ!!

 

タッタッタッタ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バンッ!

 

花音「! 空見くん!」

 

千聖「あなた、さっきライブまでには戻ると言ったわよね?なのにこれはいったいどうい…「それはマジでごめん!」……あのねー、謝れば何でも済むと思って……」

 

楓「ねぇ白鷺さん、今日のライブの出演者って、何かに載ってたりする!?」

 

千聖「え?……そ、それならたぶん、サイトに載ってると…「それ見せて!」な、何言ってるのよ!その前にまだ話が…「はい、空見くん。」彩ちゃん!?」

 

楓「あ、ありがとう丸山さん!」

 

千聖「ちょっと彩ちゃん!どういうつも…「まぁまぁ千聖ちゃん、落ちついて。空見くんにはきっと、何か考えがあるんだよ。」……」

 

えーっと、ライブの出演者ライブの出演者……あった!

 

……Glitter Green、CHiSP、Roselia、Poppin'Party、その他三つのバンド……。

 

この中に、あの人が……。

 

 

 

 

 

???『もし、それでも気持ちが変わらなかったら……私の歌を聞いていって。』

 

 

 

 

 

あの人の歌……聞いてみたい。

 

あの言葉を聞いたときに、ふとそう思った。

 

……自分の歌を聞け。

 

そんなことを言うってことは、自分の歌う歌にそれくらいの自信があるということ。

 

……って、どっかで聞いたことがある。

 

……あれ?

 

どこで聞いたんだっけ……?

 

『ワー‼︎』

 

楓「!?」

 

千聖「いつまでそれ見てるのよ、楓。」

 

花音「もう1バンド、終わっちゃったよ?」

 

楓「え、もう終わったの!?」

 

彩「うん。次で二バンド目だよ。」

 

……マジか。

 

じゃあ、サイト見ながらあの人がどのバンドにいるのか考える、なんて時間はなさそうだな……。

 

だったらやることはただ一つ……。

 

普通にライブを楽しむ!

 

そうしてればいつか、歌ってるあの人を見つけることもできるだろう。

 

ライブを楽しめて、あの人も見つけれて、一石二鳥だ。

 

さぁというわけで、今日はとことん楽しむぞー!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「コーヒーくださーい。」

 

「私オレンジジュースー。」

 

「バニラ味のアイス一つー。」

 

「んー、よし。じゃあコーラ二つとココアとメロンソーダ一つずつ、あとは……」

 

楓「はい、どうぞ!……オレンジジュースと……バニラどうぞ!で、えっと……コーラ二つの、ココアとメロンソーダを……」

 

 

 

 

 

「お疲れ、空見くん。少し休んでいいよ。」

 

楓「は、はい……。」

 

ゴクゴクゴク……

 

……あ〜、カフェオレうめえ〜。

 

……でもさ。

 

……何で僕、こんなとこで涼しげにカフェオレ飲んでるんだろ……?

 

 

 

 

 

……いやそれはこっちが聞きたいよ!!

 

だってねえ!!

 

聞いてよ!?

 

二つ目のバンドのライブをいざ楽しむぞってなった途端にさ!!

 

何か知らない人から急に"ちょっと来て"って外に連れ出されてさ!?

 

何事かと思えば人手が少ないからお店手伝ってって……。

 

……何で僕だったの?

 

ねぇ、ほんとマジで何で僕だったの!?

 

おかげで二つくらいバンド見れなかったんだけど!?

 

もぅ、流石の僕も今回ばかりはほんとに……はぁ……。

 

まぁほんとに大変だったみたいで、断る暇もなかったから、その場の成り行きで最後まで手伝ったけどさ?

 

……最初から最後まで、見たかったなー……。

 

「ごめんね空見くん、ライブ中だったのに、突然呼び出して。」

 

楓「あ……いえ……。」

 

呼び出されたっていうか、強制的に連れて来られたんだけど……。

 

「でも、今すぐ向かえばまだ二バンドくらいなら見れるだろうから、早く行っておいで。」

 

楓「は、はぁ……。」

 

上から目線だなぁ……。

 

なんかほんとに腹立つ……。

 

ここまで腹立ったのはいつぶりだろうって思うくらい腹立つ……。

 

……まぁいいや。

 

そんなの、言われなくてもすぐに行くつもりだよ。

 

……ほんと、この人のことはマジで嫌いになったわ……。

 

まぁもう二度と会うことはないだろうから別にいいけど。

 

「……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ギー……

 

花・千「! そ、空見くん(か、楓)!」

 

彩「空見くんどこ行ってたの!?さっきから全然姿が見えないから心配…「その話は後にして。もう二度と考えたくないから。」え?」

 

花音「……な、何かあったのかな?空見くん。」

 

千聖「さぁ……。でも、しゃべる早さや声のトーンから察するに、あまり踏み込んで欲しくない話題であることは確かね。」

 

彩「……じゃ、じゃあ、これだけ聞かせて?……私達といっしょにライブ、楽しんでくれる?」

 

花・千「……」

 

楓「……もちろんだよ。だって、そのためにここに来たんだもん。何組かのバンドのライブは見れなかったけど、今から全力で楽しむつもり!」

 

彩「空見くん……。じゃあ、はい!」

 

楓「え?……これって…「サイリウムだよ!」そ、それは分かるけど……持ってきてたの?」

 

彩「うん。でも、私じゃなく、佳子さんがね。」

 

楓「大塚さんが……」

 

佳子「やっぱり、ライブといえばサイリウムでしょ?」

 

篤司「大塚館長、こういうときのために事務室の自分のデスクの引き出しに常備してるんだよ。」

 

佳子「ちょっと川浪くん!余計なことは言わなくていいの!」

 

花・彩「あはは……」

 

……サイリウムか。

 

久々に持ったな、これ。

 

確か、牛込さんと二人で見に来たとき以来か。

 

 

 

 

 

「さぁ!いよいよ次が最後のバンドだよー!SPACEラストライブ、トリを飾ってくれるのは〜……?」

 

 

 

 

 

楓「!!」

 

千聖「いよいよね。」

 

花・彩「が、頑張って、みんな……。」

 

篤司「次が、さっきオーナーの言ってた……」

 

佳子「最後の、オーディション合格者……。」 

 

 

 

 

 

「Poppin'Party!!」

 

 

 

 

 

『ワーワー‼︎』

 

『イェーイ‼︎』

 

『フーフー‼︎』

 

! す、すごい歓声……。

 

これは、プレッシャー高いだろうなぁ……。

 

……!出てきた!

 

 

 

 

 

 

 

たえ「……!空見先輩!」

 

りみ「ちゃんと、来てくれたんだ……。」

 

沙綾「ほら二人とも、いつまでも立ち止まらないの。」

 

有咲「早く準備するぞ。」

 

た・り「! う、うん。」

 

香澄「……すぅ……はぁ……すぅ……はぁ……」

 

沙綾「……よし。香澄、いつでもいいよ。」

 

た・り・有「……コク」

 

香澄「……うん。……」

 

た・り・沙・有「……」

 

香澄「……せーのっ!」

 

Poppin'Party「Poppin'Partyです!!」

 

 

 

 

 

『ワーワー‼︎』

 

『ポピパー!』

 

『ガンバレー!』

 

花音「す、すごい……。」

 

千聖「それだけ、期待されてるということよ。あの子達が。」

 

彩「香澄ちゃん達、大丈夫かなぁ?」

 

佳・篤「……」

 

 

 

 

 

香澄「たくさんの声援、ありがとうございます!……初めましての人は初めまして!ギターボーカル、戸山香澄です!」

 

たえ「リードギター、花園たえです。」

 

りみ「ベース、牛込りみです。」

 

沙綾「ドラム、山吹沙綾です。」

 

有咲「キーボード、市ヶ谷有咲です。」

 

香澄「バンドを始めて、だいたい二ヶ月です!」

 

沙綾「え?」

 

香澄「え?……あれ?違った?」

 

沙綾「五人集まったのはそうだけど、もっと前からじゃん?」

 

たえ「クライブより前?」

 

有咲「香澄がバンドバンド言い出したの四月の終わりだから、約三ヶ月じゃね?」

 

香澄「そっか〜!じゃあ、三ヶ月くらいです!」

 

 

 

 

 

『アハハハハ!』

 

『ポピパオモシローイ!』

 

『カワイイヨー!』

 

花音「な、何ていうか……独特、だね?」

 

千聖「あら、ハロハピもそんな感じじゃない?」

 

花音「うーん……ハロハピとは、またちょっと違うかな。」

 

彩「面白いね、香澄ちゃん達。」アハハ

 

楓「うん。」

 

それに……すごく楽しそうだ。

 

……そういや、氷川さんと白金さんは、まだなのかな?

 

 

 

 

 

りみ「……香澄ちゃんが、私達を誘ってくれたんです。」

 

有咲「引きずりこまれたっていうか……」

 

香澄「えっ?」

 

沙綾「うん、あれはね〜……」

 

香澄「ええっ!?」

 

沙綾「……なーんて、嘘♪」

 

香澄「嘘ー!?び、びっくりしたー……。」

 

沙綾「……ずっと、バンドやりたかった。」

 

りみ「私も……ずっと叶わないと思ってた。」

 

有咲「無理かなって思うときもあったけどねー。」

 

たえ「でも今、みんなで立ってる。」

 

香澄「……うん。……絶対ここでライブしたい。その夢が今……叶いました!」

 

 

 

 

 

彩「香澄ちゃん……。」

 

花音「ポピパのみんなも、いろいろあったんだ……。」

 

千聖「そうみたいね。私達と同じでいろいろ……。」

 

楓「……」

 

 

 

 

 

香澄「今日は、ここにいるみんなで、最高にキラキラドキドキしたいです!よろしくお願いします!」

 

た・り・沙・有「よろしくお願いします!」

 

香澄「……聞いてください。『夢みるSunflower』!」

 

……〜♪

 

〜〜♪♪

 

 

 

 

 

花音「……すごく、良い曲……。」

 

千聖「そうね……。」

 

楓「……「す、すみません、遅くなりました!」! ひ、氷川さん、白金さん!」

 

燐子「ぎ、ギリギリ……ま、間に合いましたね……。」

 

……二人が着てるの、今井さんと同じ、Roseliaの衣装か。

 

なんか……カッコいい……。

 

千聖「他のみんなはどうしたの?」

 

紗夜「別の場所で、この演奏を聞いているはずです。」

 

千聖「そう。」

 

燐子「それにしてもこの曲……すごく、良い曲です。」

 

紗夜「そうですね。Sunflower……ひまわりですか。」

 

彩「これからの季節にふさわしい曲だよね。」

 

そっか……ひまわりか。

 

……明日から、夏休みだもんな〜。

 

まぁ、最初の数日間は補習なんだけどね……。

 

 

 

 

 

『あつめてゆっくり背伸びしている〜♪

 明日を夢見るひまわりのように〜♪』

 

 

 

 

 

『ワーワー‼︎』

 

『ポピパー!』

 

『サイコウー!』

 

花音「……」

 

楓「……あ、あのさ、松原さん。」

 

花音「? 何?空見くん。」

 

楓「僕……松原さんのバンドの演奏、聞いてみたい。」

 

花音「! ……それって、ハロハピの、ってこと?」

 

楓「うん。……今日、せっかくSPACEのラストライブだったのに、まともに見れたバンド、二つくらいしかなかったから。」

 

あの人も、結局見つけられなかったし。

 

楓「その代わりってわけじゃないんだけど……ポピパやグリグリ以外のライブも見てみたいなって。Roseliaも、見れなかったし……。」

 

花音「……うん、分かった!じゃあ今度、こころちゃん達に相談してみるよ!」

 

楓「! ほ、ほんと!?」

 

花音「もちろん!」

 

楓「ありがとう、松原さん!」

 

花音「ううん、こちらこそ……あ。」

 

楓「ん?」

 

花音「……ううん、何でもない。」

 

楓「え……でも今、何か言いかけたような…「気のせいだよ気のせい。ほら、ポピパのライブ、もう終盤だよ。」いや、あの……松原さん?」

 

うーん……絶対何か言いかけたような気がしたんだけど……。

 

ま、いっか。

 

 

 

 

 

『両手をひろげて♪高く強く熱く遠く♪

 でも(けど)たぶん

 まだ伝えきれないな♪』

 

 

 

 

 

……ポピパのみんな、楽しそうに演奏してるなぁ。

 

このライブを、ずっと楽しみにしてたんだもんね。

 

グリグリとかRoseliaとか、他のバンドの演奏を見れなかったのは残念だけど……ポピパのライブを見たら、別にいいやって思っちゃった。

 

またいつか、その二つのバンドのライブを見れるときがあったら、そのときは……最初から最後まで、しっかり目に焼き付けたいな。

 

 

 

 

 

佳子「……あの子達が、SPACEのステージに、最後に立ったバンド……。」

 

篤司「Poppin'Partyか。……きっと良いバンドになるよ、あいつらは。」

 

オーナー「そりゃあ、あたしが認めたバンドだからね。」

 

佳子「……ふふ♪」

 

篤司「へへ♪」

 

オーナー「……全く。変わってないね、お前達は。」

 

 

 

 

 

香澄「はぁ……はぁ……せーのっ!」

 

Poppin'Party「ありがとうございました!!」

 

パチパチパチパチパチ……‼︎

 

パチパチパチパチパチ……‼︎

 

『ワーワー‼︎』

 

『ポピパー!』

 

『サイコウー!』

 

『カッコヨカッター!』

 

Poppin'Party「……私達、Poppin'Partyです!」

 

香澄「絶対また、ライブします!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こうしてSPACEラストライブは、トリであるPoppin'Partyのライブを最後に、幕を閉じた。

 

それと同時に、このSPACEも……。

 

思いがけないトラブルがあり、グリグリもRoseliaも見れず、一番最初のバンドと次のバンドの途中まで……そしてポピパのライブしか見ることができなかったが、僕は十分満足している。

 

なぜなら、この"SPACE"で、"ポピパ"のライブを見ることができたのだから。

 

……ポピパのみんなに向けて贈られる、盛大な拍手……そして、飛び交う声援、多数の賞賛の声。

 

このライブは、Poppin'Partyの中で、絶対に忘れることのない思い出の溢れるライブとして、歴史に刻まれることだろう。

 

もちろん、僕の中にも既に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー空見家ー

 

楓「ただいまー!」

 

いやー、それにしても最高のライブだったなー。

 

もうライブ中ずーっと鳥肌が止まらなかったもん。

 

……また、ああいうライブ見たいなー。

 

楓の母「……!楓、帰ってたの?」

 

楓「? うん。僕、さっきただいまって言ったよね?」

 

楓の母「そ、そうなの?ごめん、聞こえなかった……。」

 

楓「あ、そう。」

 

ガチャ

 

楓の父「……」

 

楓「あ、お父さん……。」

 

帰ってきてたんだ。

 

珍しいな、こんな時間に。

 

楓の父「……楓。」

 

楓「ん?」

 

楓の父「お父さんとお母さんから、お前に言わなくてはならないことがある。」

 

楓の母「!」

 

楓「え?……何なの?急に改まって。」

 

楓の父「楓……落ち着いて聞いて欲しい。」

 

楓「……」

 

楓の父「……お父さんとお母さんな?……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……この家を、出ることになった。」

 

楓「……ん?」

 

楓の母「お父さん……私達、ほんとに……」

 

楓の父「……」

 

楓「……え、えーっとー……いきなり何言ってんの?」

 

楓の父「だから楓。……翔真とともに、この家を頼んだぞ。」

 

楓「……はい?……へ?……ど、どゆこと??」

 

 

 

 

 

お父さんの言っていることを理解するのに、二時間くらいかかった。

 

いや、ほんとガチで。

 

……え、何?

 

……結局、僕はどうなるの……?




というわけで、次回からはとうとう夏休み編です!

いやー、ここまで長かったw。

夏休み編ではあーんな話やこーんな話とかを書きたいなーとずっと考えていたので、期待して待っててくださると嬉しいです!

あ、あとちなみになんですが、Song I am.見に行きましたよ。

いやー……良かった。

あれはほんっっっとに良い映画だった。

マジで特典なしでもいいからもう一回見に行きたい。(たぶん行く)

てか今年はほんとバンドリイヤーですよね。

映画あるしswich版出るしその他もろもろあるしで、マジバンドリと無縁な日なんてないくらいじゃないですかw?


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55話 夏休み突入!数日は補習……。

ついに今日15:00からRoselia三章ですね!

昨日二回目のSong I am.の見に行って来たばっかりなので、丁度良いというか、タイムリーというかw。

あ、ちなみに色紙はりんりんでした。

約束のときもりんりんだったので、まさかのりんりんコンプw。

運が良いのか悪いのか……。

いや、これは運が良いほうだな、うん、絶対そうだw。


〜AM 9:00〜

 

『……ジリリリ…「カチ」……』

 

……。

 

……起きるか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

楓「あー、ん。……旨っ。」

 

やっぱこの店のジャムパンは旨いな。

 

今度また買ってこよ。

 

……あ、そうだ。

 

帰りにスーパー行ってめんま買ってこないと。

 

あと……惣菜もちょっと欲しいな。

 

自分で料理できないからインスタントやカップ麺作るか冷凍食品買うか、はたまたコンビニ弁当やおにぎり買うかになるけど……まぁいいよね。

 

一つ気をつけないとなのは、お金がいっぱいあるからって使いすぎず、できるだけ節約していくってことだよな。

 

まぁ……うん、たぶんなんとかなる……と思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ふわ〜あ……。

 

はぁ、めんどくさいなー。

 

ま、行かなきゃ下手したら留年になるから、行かないわけにはいかないけど。

 

えーっと、忘れ物はないよな……。

 

筆入れ、教科書、ノート、ファイル、財布、その他もろもろ……うん、大丈夫だな。

 

よし、行くか。

 

……行きたくないけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー外ー

 

うぅ……暑い……。

 

今日から夏休みなのは分かるけど、流石に暑すぎない……?

 

これ絶対30℃あるだろ……。

 

あーなんか冷たいもの食べるか飲むかしたい……。

 

……ん?

 

あ、あんなところに自販機が……。

 

……何か買って行こ。

 

何かしら飲まないと、この暑さは耐えられない……。

 

 

 

 

 

うーん……どれにしようかなー?

 

やっぱりいつも通りココアかカフェオレ……たまにオレンジジュースもいいなー。

 

うーん……迷う……。

 

 

 

 

 

「みゃーん?」

 

ん?

 

みゃーん?

 

……!!

 

「みゃーん。」

 

ね、猫!?

 

こんなところにもいたのか……。

 

首輪付けてないし……たぶん野良猫だよな。

 

「みゃーん?」

 

……撫でたい。

 

めちゃくちゃ撫でたい……。

 

でも、撫でたら逃げられるかな?

 

「みゃーん……みゃーん!」

 

ぐはっ!

 

か、可愛い……。

 

……も、もう、逃げられてもいい……。

 

ええいこうなりゃ考えるより行動だ!

 

そーっと、そーっと……今だ!

 

ピトッ

 

楓「ん?」

 

「みゃーん♪」スリスリ

 

……。

 

 

 

 

 

……ぐほぁっ!!

 

げほっ、ごほっ……や、ヤバイ……。

 

めちゃくちゃガチくそ最強級に可愛いんだが??

 

いや、こんなんされたら普通死ぬでしょ。

 

野良猫が自分から手にスリッてしてくれたんだよ?

 

メロメロにならんわけがないやんこんなんさー……。

 

「みゃーん♪」スリスリ

 

……マジで可愛い……。

 

このままずっと撫でていたい……。

 

もう補習なんかどうでもよくなるわこんなん……。

 

……ん?

 

補習?

 

……!

 

……!!

 

あーーー!!!

 

補習ーーー!!!

 

完っっ全に忘れてた!!

 

ヤバイ!急がないと欠席になっちゃう!!

 

くそー……名残惜しいけど、これも留年しないためだ。

 

ごめん!!スッ……

 

「みゃー……?」

 

か、悲しそうな顔してるーー!!

 

あー行きたくねー!!

 

けど補習がー!!

 

「……みゃん。」

 

あ……。

 

行っちゃった……。

 

……はぁ、仕方ない……。

 

補習行くか……。

 

……帰りに来たらまだいるかな?

 

……いるといいなー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜AM 9:57〜

 

はぁ……はぁ……はぁ……ぎ、ギリギリ、間に合いそう……。

 

……ん?

 

校門前に誰かいる……?

 

 

 

 

 

???「……!空見くん遅いよ!」

 

 

 

 

 

あ、丸山さんだったのか……。

 

え、遅い?

 

まぁ確かに道草食ってて遅くなっちゃったけど……ってあーー!!

 

彩「もぅー!昨日ここで待ち合わせしようって言ったのに、10分も待たせてー!」

 

楓「ご、ごめん……。そんなに待っても来なかったんなら、先に行ってれば良かったのに。」

 

彩「……またそんなこと言うー!」

 

楓「え?ま、また?」

 

彩「じゃあ聞くけど、もし空見くんが私の立場だったら、空見くんは先に行くの?」

 

楓「え……僕が、丸山さんの立場……」

 

ということはつまり、僕が丸山さんを待ってて、10分経っても来なかったら先に行くのかどうか……ってことか。

 

うーん……。

 

楓「……行かない、か…『キーンコーンカーンコーン』え?」

 

彩「あぁ!チャイム鳴っちゃった!ほら、急ぐよ空見くん!」グイッ

 

楓「う、うん!」

 

最後まで言えなかったじゃん……。

 

彩「……ふふ♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

楓「ま、間に合った〜……。」

 

ほんとギリギリだったな……。

 

あ、ちなみに丸山さんは補習の科目が違うため、別の教室に行っている。

 

まぁ別の教室と言っても、隣の教室なんだけどね。

 

はぁ……とうとう補習かー。

 

だるい……。

 

せっかくの夏休みなのに……。

 

家で寝てたい……。

 

???「あれ?空見じゃん。」

 

ん?

 

……あ。

 

楓「菊池さん……。」

 

沙也加「久しぶりだね、空見!」

 

楓「ひ、久しぶり……。ここにいるってことは、菊池さんも補習?」

 

沙也加「そうなんだよ〜。はぁ、今回は真面目に勉強したつもりなんだけどな〜……。」

 

楓「あー……まぁ、ドンマイ。」

 

ガラッ!

 

「ほらお前ら、席につけー。補習始めるぞー。」

 

沙也加「あ、先生来た。それじゃあね空見、お互い頑張ろう!」

 

楓「あ、うん。」

 

菊池さんは……おぉ、一番前の席だ。

 

自分からあの席にしたのかな?

 

この補習は別に席は指定されてないから、僕みたいに一番後ろに座ることも可能なんだけど……やる気あるんだなぁ菊池さん。

 

「それではこれから補習を始める。プリントを配るから、後ろに回せー。」

 

あ、そういう系?

 

ノートいらなかったじゃん……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「この訳は間違えやすいから、ちゃんと復習しておくように。あ、ここ最終日のテストに出るぞー。」

 

……補習が始まって30分が経った。

 

……退屈だ。

 

先生の話だと、補習最終日にテストをやり、そのテストが満点だったら、赤点はなしになるらしい、

 

もちろん、最初に絶対満点取れ、なんて言われてマジか……ってなったけど、どうやら補習でやったプリントの問題がそのまま出るらしいので、テスト直前にそれを全部覚えれば満点は確実にとれる。

 

なので別に直前に覚えればいいやと思った僕は、こうして退屈そうに話を聞いてるというわけだ。

 

だってほら、僕以外の人も、めっちゃ退屈そうにしてるもん。

 

隣の人に至っては、隠れてスマホいじってるし。

 

みんなやる気ないんだなー。

 

……まぁそんな中、一人だけ超真面目に先生の話を聞いている人がいるんだけど。

 

「よし、じゃあこの話はここで終わり。何か質問は…「はい!」お、何だ菊池?」

 

沙也加「えーっと、この部分の訳し方が、ちょっと分からなくて……」

 

……すげえな。

 

先生に質問までしてるし、めちゃくちゃ真面目じゃん。

 

なんか、この中だと普通に優等生って感じ。

 

沙也加「はい……はい……あ、なるほど!先生、ありがとうございます!」

 

「お、おう……頑張れよ、菊池。」

 

沙也加「はい、頑張ります!」

 

菊池さんの真面目さに、先生もちょっと引いてるじゃん……。

 

あんな優等生っぽいのに、どうして赤点なんてとったんだろう?

 

不思議だ……。

 

「よし、じゃあ二枚目のプリントを出せー。」

 

あ、えーっと、二枚目二枚目……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし、今日の補習はここまで。あと二日こんな感じでやって、その次の日はテストだからな。しっかり覚えとけよー。……バタン」

 

……あぁ〜!

 

終わった〜!

 

……と言ってもまだ一日目だけど。

 

はぁ〜……。

 

こんなのがあと二日も続くのか……。

 

憂鬱だ……。

 

沙也加「何しょげた顔してんの、空見。」

 

楓「……菊池さんは嫌じゃないの?補習。」

 

沙也加「私?うーん……別に嫌じゃないよ。そりゃあ赤点とったのはショックだけど、そのおかげで普通の人より多く先生の授業が受けれてるんだもん。」

 

楓「……」

 

ぽ、ポジティブすぎる……。

 

って言おうと思ったけど、ポジティブの域超えてない?

 

僕だからまぁいいけど、他の人ならたぶん……引いてる、と思う。

 

沙也加「じゃ、私家帰って勉強しなきゃだから。じゃーね空見、また明日!」

 

楓「え?あ……ま、また明日……。」

 

……知らなかった……。

 

菊池さんが、あんな真面目でポジティブな人だったなんて……。

 

あんなバリバリギャルの見た目してるのに……。

 

てか、あの格好やめないのかな?

 

「あの、空見くん。」

 

楓「! え?」

 

え……だ、誰……?

 

「丸山さんが、呼んでるよ?」

 

楓「へ?ま、丸山さん?……チラッ あ。」

 

こっちに向かってめちゃくちゃ手振ってる……。

 

そっか、この人そのことを教えてくれたのか。

 

楓「あ、ありがとう。タッタッタ……」

 

「う、うん。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜帰り道〜

 

彩「え〜!沙也加ちゃんが〜!?」

 

楓「うん。すごく真面目に勉強してたよ。先生にも質問してたし……家に帰ってからも勉強するみたい。」

 

彩「へぇー……。沙也加ちゃんって、すごいんだね。」

 

楓「ほんと、すごいよね。」

 

そんなこと、余程の勉強好きかほんとにヤバイと思ってる人くらいしかしないよな。

 

……え、そうだよね?

 

彩「私も、テストが近い日とかはそれするけど、補習だと流石にそこまではしないかな……。まぁ私の場合、勉強しても赤点とっちゃったんだけど……。」

……う、うん、そうだよね。

 

補習では流石にそこまでしないよね。

 

良かった良かった、僕が合ってた。

 

……僕はテスト近くでも先生に質問したり家帰って勉強したりはしないけど……。

 

なんてことを白鷺さんや氷川さんに言ったら、めちゃくちゃ怒られるんだろうな……。

 

彩「でもそっかー。沙也加ちゃん来てたんだー。……明日ちゃんとあいさつしようっと♪」

 

丸山さんと菊池さん、仲良いんだもんなー。

 

……あ、この場所は……。

 

彩「……それじゃあ私、こっちだから。」

 

楓「え?あ……うん。」

 

彩「じゃーね空見くん!また明日!明日はちゃんと早く来てよー?」

 

楓「分かってるよー。」

 

……思いがけないグッドタイミングだな。

 

この場所に来たということは……もしかしたら、あの子が……!

 

今朝は急がなきゃだったからやむなく諦めたけど、今ならそんなの関係ない。

 

急いでもないし、諦めなきゃいけない理由もない。

 

まさにベストなタイミング!

 

そう!それが今!

 

……よし、では行くか。

 

あの超キュートでめちゃくちゃガチくそ可愛い猫ちゃんがいるあの場所へ!

 

いざ行かん!!

 

 

 

 

 

……ん?

 

と思ったら……誰か、先客がいる……?

 

「みゃー♪」

 

???「ふふっ♪」

 

……女の……人?

 

ていうか、あの後ろ姿……何か見覚えがあるような……。

 

それも、つい最近……。

 

「……!みゃー!」

 

???「! ちょ、ちょっと、どうしたの?」

 

楓「あ……。」

 

???「……え?」

 

 

 

 

 

楓「……」

 

???「……」

 

ば、バレた……。

 

……って、ん?

 

あの人……。

 

???「……ど、どうして、あなたが……」

 

……!

 

あーー!!

 

楓「こ、この前、SPACEの前にいた……!」

 

???「……ダッ!」

 

楓「え?」

 

え、ちょ……逃げた!?

 

楓「ちょ、ちょっと待ってくださいよ!何で逃げるんですか!」

 

???「……こ、このことは……」

 

楓「え?」

 

???「……このことは……誰にも、言わないで。」

 

楓「……こ、このことって?」

 

???「! ……」

 

スタスタスタスタ……

 

え、いや何何何何何!?

 

???「だ、だから、その……」

 

楓「……もしかして、その猫と遊んでたこ…「それよ!」ビシッ! うわっ!クラッ……ザッ!」

 

あ、危ねー……。

 

なんとか踏み留まった……。

 

楓「……いや、でも僕、それ以前に、あなたが誰かも、知らないんですけど……」

 

???「……そうなの?」

 

楓「そ、そうですよ。だって、昨日あのときちょこっと話したくらいじゃないですか。」

 

???「……確かに、そうだったわね。」

 

な、何なんだこの人……。

 

「みゃーん♪」スリスリ

 

楓「ん?」

 

???「……随分懐いているのね、あなたに。」

 

楓「い、いやぁ、僕も今朝会ったばかりなんですけどね……。」

 

???「け、今朝?……もしかしてあなた、ここに何度も通っていたわけじゃないの?」

 

楓「? はい。今日の朝、初めて会いましたけど……って、何度も?」

 

???「! わ、忘れてちょうだい。」

 

楓「……」

 

さてはこの人、どこか抜けてるな?

 

「みゃー?」

 

……な、撫でたい……。

 

……撫でてもいいかな?

 

???「……撫でればいいじゃない。」

 

楓「え?」

 

???「今あなた、この子を撫でたそうか顔していたわよ。」

 

……何でこの人、そういうところは気づくんだ……。

 

楓「で、でも……撫でたら、逃げちゃいそうだし……」

 

???「そんなの、撫でてみなきゃ分からないでしょう?大事なのはあなたの理論じゃなくて、この子の気持ちなのよ。見なさい、この子の顔を。」

 

楓「……チラッ」

 

「みゃーん?」キラキラシタメ

 

うぐっ!

 

……だ、ダメだ……。

 

可愛すぎて……死ぬ……。

 

???「……はぁ。ならばこうしましょう。まずは私が撫でるわ。それで逃げなかったら、次はあなたが撫でなさい。いいわね?」

 

楓「……もし、逃げられたら?」

 

???「……そ、そのときはそのときよ。」

 

楓「……」

 

???「と、とにかく、いいわね?」

 

楓「まぁ……はい。」

 

.???「それじゃあ、まずは私から……」

 

ソー……

 

「みゃーん?」

 

???「……」

 

楓「……」

 

 

 

 

 

……ナデナデ

 

???「!!」

 

「みゃ〜ん♪」ゴロゴロゴロ

 

に、逃げない……。

 

それどころか、ゴロゴロ言ってる……。

 

……人に、慣れてるのか?

 

楓「……じゃあ、僕も撫でます。てか撫でさせてください。」

 

人が大丈夫って分かったら、もう容赦は無用だ。

 

撫でたい。

 

めちゃくちゃ撫でたい。

 

だから撫でる、それだけだ。

 

もうさっきの約束関係なく、遠慮なく撫でさせてもらおう。

 

……って、さっきの僕の言葉聞こえたかな?

 

もう一回、言ったほうがいいか?

 

楓「あ、あのー、僕にも撫でさせてください。」

 

???「……」ナデナデ

 

楓「あのー……聞こえてます?」

 

???「……」ナデナデ

 

……ダメだ。

 

絶対聞こえてない……。

 

楓「……もしかして、あなたも撫でたかった、とか?」

 

???「! ……え、ええそうよ。悪い?」

 

あ、今のは聞こえるんだ。

 

楓「い、いや、全然。……猫、好きなんですね。」

 

???「……別に、好きじゃないわ。」

 

楓「え……?いやでも、さっき撫でたかったって…「動物を見たら撫でたくなるのが人間の本能でしょ?」ほ、本能……?」

 

うーん……間違ってない気はするけど、そうじゃない人もいっぱいいるからなー。

 

???「……」ナデナデ

 

楓「……あなた、猫好きですよね。」

 

???「好きじゃないわ。」

 

楓「心に誓って?」

 

???「ええ。」

 

楓「友達や家族に誓っても?」

 

???「もちろん。」

 

楓「この子に誓ってもですか?」

 

???「当然……え?こ、この子……?」

 

楓「はい。」

 

???「……」

 

……あれ?

 

も、もしかして……怒らせちゃった?

 

……ヤバイかも。

 

???「……あなたねー……」

 

! こ、声のトーンが低い!?

 

これヤバイやつだ……!!

 

楓「ご、ごめんなさい!調子に乗り…「誓えるわけないでしょう!?」……ん?」

 

???「こんなにつぶらな瞳で、こんなに撫でさせてくれて、こんなに可愛くて、こんなに人懐っこくて……。そんな何もかもが満点なこの子に、そんなこと誓えるわけないでしょう!?」

 

楓「……は、はぁ……。」

 

うん、分かった。

 

なんとなく分かった。

 

この人がどういう人なのか。

 

「みゃ〜ん♪」スリスリ

 

???「ええ、分かってるわよ。ナデナデ」

 

……この人、かなりの猫好きだわ。

 

猫バカとまではいかないけど、かなりの。

 

楓「……僕とあなたって、似てるのかもしれないですね。」

 

???「は?……あなた、何言って…「猫好きなところが。」っ!だ、だから私は……」

 

楓「別にいいと思いますよ、隠さなくても。」

 

???「……でも、私は……」

 

楓「……正直言うと僕、話し相手が欲しかったんです。同じ趣味同士で話せる相手が。」

 

???「……」

 

楓「それもちろん、猫にも言えることで……。だから僕、あなたが同じ猫好きなんだなって分かって……ちょっと、嬉しくて///。……でもやっぱり、気持ち悪いですよね。女子と男が二人で、猫の話で盛り上がるなんて……。」

 

???「……確かにそうね。おかしいと思うわ。」

 

楓「! ……で、ですよ…「あなたのその考えが。」え?」

 

???「どうしてそれが気持ち悪いと思うの?あなた、実際に話したことがあるの?」

 

楓「……いや、別に…「ないでしょ?そういう思い込みは、自分が本当にその場面に直面してからにしなさい。分かったわね?」……は、はい。」

 

何で僕、怒られてんだ……?

 

???「……じゃ、そろそろ私は行くわ。」

 

楓「え?」

 

???「何?まだ私に話したいことでもあるの?」

 

楓「あ……いや、別にそういうわけじゃ……」

 

???「なら、もう行くわね。」

 

楓「……は、はい。」

 

やっぱ、調子に乗ってあんなこと言わなきゃ良かったかな……。

 

???「……また明日も、ここに来ようかしら。」

 

楓「え?」

 

???「……何?今私、独り言を言っただけだけれど。」

 

楓「ひ、独り言……。あ、そう……ですか。」

 

???「……それじゃあね。」

 

スタスタスタスタ……

 

……行っちゃった。

 

……独り言、ね。

 

にしては、随分大きな独り言だったけど。

 

「みゃ〜……。」

 

あ、起きた。

 

僕とあの人が話してる間に、眠っちゃってたんだよな。

 

まぁ寝てるところも可愛かったけど。

 

「みゃ〜……みゃんっ!」ダッ!

 

楓「あ!」

 

ま、マジかよ……。

 

……まぁ、猫は気まぐれだからな〜……。

 

……って、僕またあの子撫でられなかったじゃん!!

 

てかあの人の名前聞いてねえし!!

 

……明日も、ここ来るかなー?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

???「……」

 

リサ「……あ、おーい!友希那ー!」

 

友希那「! リサ、おはよう。」

 

リサ「おはよう♪って、もうお昼だけどね〜。いっしょにスタジオ行こ♪」

 

友希那「ええ、そうね。」

 

リサ「〜♪……あれ?もしかして友希那、何か良いことあった?」

 

友希那「? なぜそう思うの?」

 

リサ「いやさ、友希那の顔、ちょっとにやけてるから。」

 

友希那「! ……に、にやけてなんかいないわ。」

 

リサ「え〜嘘だ〜♪にやけてるよ〜♪」

 

友希那「別ににやけてないわ。」

 

リサ「え〜?絶対にやけてるって〜。」

 

友希那「私はにやけてないわ。そんなことより、早くスタジオに向かいましょう。」

 

リサ「……もう、友希那ってばほんと頑固なんだから♪」




今回から、夏休み編スタートです!

何話くらいになるか分かりませんが、まぁ自分のペースでコツコツ書いていけたらなと思いますw。


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56話 めんどくさい補習の時間、楽しい猫と一人との時間

思ったんですけど、アニメだと友希那さんの猫好き度は控えめですよね。

アプリやガルパピコではめちゃくちゃ全面に出てますけどw。

いやー、Roselia三章も最高でしたよ!

弟なんか2000位以内をとってましたw。

弟よ、よく頑張ったw。

MVも楽曲も最高で、やっぱ最近、僕の中でRoseliaがブームになってますわw。

そういや『約束』と『Song I am.』って、円盤出るんですかね?

個人的には出てほしいです。(みんなそうかw)


〜AM 9:45〜

 

彩「……」

 

今日は補習二日目。

 

今私は、ある友達と待ち合わせをしている。

 

昨日も同じくらいの時間にここで待っていたが、そのときは時間ギリギリまで来なかった。

 

果たして、今日は時間通りに来るのだろうか……。

 

「……おーい、丸山さーん!」

 

! き、来た……!

 

彩「空見くん!今日は時間通りだったね!」

 

楓「うん、まぁね。(あの公園寄らなきゃ、普通にこの時間に着くんだな……。)」

 

彩「……よし!じゃあ早く教室行こ!沙也加ちゃんにもあいさつしたいし!」

 

楓「あ、ちょっと待ってよ〜。」

 

私の大事な友達……いや、親友の空見くん!

 

一人では辛いことも、この子といっしょなら……。

 

よーし!

 

今日も頑張るぞー!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彩「あ、沙也加ちゃん!本当にいた!」

 

沙也加「あ、彩!?どうしてここに……?」

 

彩「あ、あはは〜……実は、私も補習になっちゃって……」

 

沙也加「……なんか、意外だね。」

 

彩「自分では、頑張ったつもりなんだけどね〜。」

 

……相変わらず、菊池さんは勉強……。

 

ほんとすごいな……。

 

この教室で勉強してんの、菊池さんだけじゃん。

 

……もしかして将来、めちゃくちゃ頭良い大学に行こうとしてる、とか?

 

だとしたらまぁ、辻褄は合うか。

 

彩「あ、もう戻ったほうがいいかな。じゃーね沙也加ちゃん。……あ、今日もしだったらいっしょに帰ろうよ!」

 

沙也加「うん、OK!」

 

彩「お互い頑張ろうね、沙也加ちゃん、空見くん!」

 

タッタッタ

 

楓「……」

 

沙也加「……空見、昨日のとこちゃんと理解できてる?」

 

楓「え?あ〜……でも先生、補習でやったプリントの問題をそのまま出すって言ってたから、テスト直前に一気に覚えればいけるかなって。」

 

沙也加「あ……まぁ、そうだね。……」

 

楓「……」

 

沙也加「……もうそろそろ先生来るよ。ほら、空見も早く席に座りなよ。」

 

楓「え?あ……うん。」

 

何だったんだ、今の間は……。

 

……まぁでも、これだけは分かる。

 

たぶん僕、呆れられたな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし、今日の補習はここまで。さっき配った宿題は、明日までにやってくるように。」

 

……宿題あるなんて聞いてない……。

 

まぁ教科書に答え載ってるからいいけど……めんどくさい……。

 

タッタッタッタ

 

彩「沙也加ちゃん!帰ろう!」

 

「こら丸山、廊下は走るな。」

 

彩「あ、ご、ごめんなさい……。」

 

白鷺さんか氷川さんがいたら絶対説教始まってた。

 

沙也加「彩、そんな急いで来なくても……」

 

彩「だって早くいっしょに帰りたかったんだもん!あ、空見くんもいっしょに…「あ、ごめん。僕、この後寄りたいところがあるから……」あ、そうなんだ……。分かった!じゃあ空見くん、また明日ね!」

 

楓「うん、また明日。」

 

 

 

 

 

彩「あれ?沙也加ちゃん、ちょっと背伸びた?」

 

沙也加「気のせいだよ。彩も、アイドルは順調?」

 

彩「もちろん!あ、でも最近ね、千聖ちゃんが……」

 

 

 

 

 

ほんと仲良いなあの二人。

 

……さて、僕も向かうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー公園ー

 

いろいろあって気づかなかったけど、ここよく見たら公園だったんだな。

 

確かに見渡したらいくつか遊具があるし、ベンチや水飲み場なども置いてある。

 

それに自販機も二つ……ってそうだ!

 

タッタッタッタ

 

うーん……よし!

 

ピッ

 

……ガコンッ!

 

やっぱ暑いときは冷たいココアだよな〜。

 

なんだかんだ、昨日買い忘れたからな……。

 

プシュッ

 

ゴクゴクゴク……

 

……うん、美味い!

 

アイスココア最高!

 

 

 

 

 

「あら、もう来ていたのね。」

 

ん?クルッ

 

あ、猫好きの人!

 

友希那「……今、何か失礼なこと思わなかった?」

 

楓「え?いや、何も……」

 

友希那「……そう。」

 

失礼なこと……?

 

何も思ってないよな……。

 

ただ猫好きの人って思っただけで……。

 

友希那「……言っておくけど私、別に猫が好きなわけじゃないから。」

 

楓「え?」

 

友希那「……」

 

楓「……あー……はい。」

 

そういやそういう設定だったな。

 

「みゃん♪」

 

友希那「!」

 

楓「あ、昨日の……」

 

友希那「クロ。」

 

楓「そう、クロ……ってえ!?」

 

友希那「よしよし。」ナデナデ

 

クロ?「みゃ〜♪」

 

楓「……あのー、そのクロって、いったい誰…「この子の名前よ。」……な、名前……」

 

この人、勝手に野良猫に名前つけちゃった……。

 

楓「そ、その名前って、いったいいつから…「今よ。」今!?」

 

クロ「みゃ〜♪」ゴロゴロ

 

友希那「ふふっ。」

 

楓「……今ってその、たった今ですか?」

 

友希那「だからそう言ってるでしょう?」

 

……野良猫に名前つけるとか……。

 

マジの猫好きだな……。

 

もう好きですって言えばいいのに。

 

クロ「みゃ〜ん♪」

 

友希那「あなた、ほんとに可愛いわね。……」

 

楓「……」

 

友希那「……あなたも、撫でる?」

 

楓「え!?……い、いいんですか?」

 

友希那「え、ええ。……どうぞ。」

 

楓「あ、ありがとうございます……。」

 

と、とうとう、撫でれるのか……。

 

もう一生撫でれないかと思った……。

 

友希那「……撫でないの?」

 

楓「! な、撫でます撫でます!」

 

……よ、よーし……。

 

クロ「? みゃ〜?」

 

そーっと……そーっと……。

 

友希那「……」

 

楓「……」

 

ソー……

 

 

 

 

 

……ナデナデ

 

楓「!」

 

クロ「みゃ〜♪」

 

……な、撫でれた……。

 

友希那「ふふ、良かったじゃない。クロも喜んで……!?ちょ、ちょっと!どうして泣いているのよ!?」

 

楓「え?……あ、あれ?いつの間に……」

 

友希那「……あなた、泣くほど嬉しかったの?」

 

楓「なんか……そう、みたいですね……。」ゴシゴシ

 

友希那「……あなた、余程猫が好きなのね。」

 

いや、あなたもだいぶだけどね?

 

クロ「みゃ〜……」

 

楓「! あ、ごめん。ナデナデ」

 

クロ「みゃ〜ん♪」

 

……か、可愛いすぎる……。

 

天使じゃん……。

 

何この可愛い生き物……天使じゃん……。

 

楓「〜♪」ナデナデ

 

クロ「みゃ〜♪」

 

か、可愛い……!

 

友希那「……」

 

楓「〜♪」ナデナデ

 

クロ「みゃ〜ん♪」ゴロゴロゴロ

 

か、可愛いすぎる……!

 

友希那「……」

 

楓「〜♪」

 

クロ「みゃ〜♪みゃ〜ん♪」ゴロン、ゴロン

 

か、可愛いすぎて……死にそう……。

 

友希那「……あなた、慣れてるのね。」

 

楓「え?」

 

友希那「その子との接し方よ。まるで、毎日猫に触ってるかのような手つきで……」

 

楓「あぁ……僕、猫を飼ってるんですよ。」

 

友希那「! そ、そうなの?」

 

楓「はい。一匹だけなんですけど、すごく人っ懐っこくて、良い子で、しかも可愛いくって。まだ飼って一年くらいなんですけど、それでも結構慣れてきたんですよ。だからですかね。この子と接するときも、家と同じようにしてるから……。」

 

友希那「そ、そうだったのね。」

 

クロ「みゃ〜ん、みゃ〜ん♪」

 

楓「お前、ほんと人に慣れてるな〜。」

 

友希那「……」

 

楓「ほれほれほれほれ〜。」ナデナデ

 

クロ「みゃ♪みゃ〜♪」

 

楓「お腹撫でられるの好きなのか〜。」

 

友希那「……あ、あの…『ピロリン♪』!」

 

楓「? メールですか?」

 

友希那「え、ええ、そうみたい。……」

 

楓「……あ、ごめんな。ナデナデ」

 

クロ「みゃ〜……」

 

楓「なんだ、眠くなってきてるじゃんか。」

 

友希那「……ごめんなさい。私、もう行くわね。」

 

楓「え?あ、はい……。」

 

友希那「クロ、またね。」

 

クロ「スク みゃー。タッタッタッタ」

 

楓「あ……。」

 

友希那「……あの子、言葉が分かるのかしら。」

 

楓「さぁ……。もしかしたら、何か感じ取ってるんだと思います。」

 

友希那「感じ取ってる……。」

 

楓「……じゃ、僕ももう行きます。」

 

友希那「ええ。……また明日。」

 

楓「はい、また明日。」

 

友希那「……スタスタスタスタ」

 

……また明日、か。

 

……よし、早く帰ってマリーに会おう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜翌日〜

 

ー花咲川女子学園 補習教室ー

 

「よーし、明日はいよいよテストだ。お前ら、しっかり勉強しておけよー。」

 

沙也加「明日はとうとうテストか。……よし、彩を迎えに…スタスタスタ ? 空見?」

 

楓「あ、菊池さん。じゃーね。」

 

沙也加「う、うん、じゃー……そんなに急いで、何か用事でもあるの?」

 

楓「ん?あー……まぁ、用事っちゃ用事だね。じゃ。」

 

沙也加「あ。……早っ。」

 

 

 

 

 

彩「〜♪あ、空見く…「丸山さん、また明日。」え?……ま、また明日……」

 

タッタッタッタ

 

彩「……「彩、丁度良かった。帰ろう。」! 沙也加ちゃん!う、うん。……ねぇ沙也加ちゃん、空見くんから何か聞いてる?」

 

沙也加「あー……何か、用事があるみたいだよ。」

 

彩「用事?……そうなんだ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー公園ー

 

着いたー!

 

えーっと、クロとあの人は…「遅かったわね。」え?

 

友希那「……」ナデナデ

 

クロ「zzz……」

 

楓「……いや、学校終わってすぐ走ってきたんですけど……」

 

友希那「? 学校に行ってたの?」

 

楓「あ、言ってませんでしたっけ?」

 

友希那「聞いてないわ。」

 

楓「そ、そうですか。……ていうか、いつ来たんですか……?」

 

友希那「10分ほど前よ。」

 

楓「じゅ、10分……」

 

早くない?

 

友希那「早くクロに会いたかったのよ。」ナデナデ

 

楓「……まぁ、僕もそうですけど。」

 

クロ「zzz……」

 

ね、寝てる……。

 

可愛い……。

 

友希那「かばん、そこのベンチに置いてきたら?」

 

楓「あ、はい。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クロ「zzz……」

 

楓「……ぐっすり、寝てますね。」

 

友希那「ええ。……とても可愛いわ。」

 

楓「……写真って、撮っても大丈夫ですかね?」

 

友希那「写真?あ……どう、かしら?もしかしたら起きてしまうかも……」

 

楓「大丈夫ですよ。音無しにして撮りますから。」

 

友希那「そ、そう。なら、大丈夫だと思うわ。」

 

楓「ありがとうございます。……」

 

えーっと、音無し音無し……これか。

 

うーん……縦?いや、横のほうがいいかな?

 

……うん、横だな。

 

友希那「……」

 

……こんな、感じかな……。

 

……よし、今だ。パシャ

 

友希那「ど、どう?」

 

楓「たぶん、ちゃんと撮れたと思います。……見ます?」

 

友希那「ええ。」

 

楓「……」

 

友希那「……か、可愛い///。」

 

楓「ですよねー。」

 

友希那「……私も、撮ってみようかしら。」

 

楓「お、良いと思いますよ。今なら寝てるし、一番撮りやすいと思います。」

 

友希那「でも私……あまり写真というものを撮ったことがなくて……」

 

楓「え、そうなんですか?」

 

友希那「ええ……。」

 

うーん、どうしよう……。

 

写真の撮り方教えてあげたいけど、僕も教えられるほど上手いわけじゃないし……。

 

それに何より、女子……女の人にものを教えるってことをしたことがないし……。

 

友希那「……」

 

……よし。

 

できる範囲で、教えてみるか。

 

楓「……あ、あの!」

 

友希那「?」

 

楓「も、もしだったら……僕が、教えましょうか?その……写真の、撮り方……」

 

友希那「あなたが?」

 

楓「あ、いや、僕も決して上手ってわけじゃないんですけど……困ってるなら、助けてあげたいなと、思って……」

 

友希那「……」

 

……やっぱり、無理か。

 

まぁ、誰からも僕に教えてもらいたくなんて…「じゃあ、お願いするわ。」……え?

 

楓「え……?い、いいんですか?僕でも。」

 

友希那「そんなこと言っても、今この場にはあなたしかいないじゃない。それに……私もクロの写真、撮りたいし///……」

 

楓「……分かりました。上手く教えられるかは分かりませんが、できるだけ良い写真が撮れるように頑張りましょう。」

 

友希那「……できるだけ、なんて目指さないわ。」

 

楓「へ?」

 

友希那「やるからには、納得のいく最高の一枚を撮るわ。それが撮れるまで、あなたには何時間かかっても付き合ってもらうから。」

 

楓「……ま、マジですか……。」

 

友希那「ええ。」

 

 

 

 

 

楓「……あ、でも、いつもならもうそろそろ帰る時間に…「この後、バンドの練習があるの。だから昨日、一昨日と、このくらいの時間に帰っていたのよ。でも今日は休み。だから問題はないわ。」あ、そうですか……。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜二時間後〜

 

クロ「zzz……」

 

友希那「っ!パシャ ……ど、どうかしら?」

 

楓「うーん……さっきよりは上手く撮れたんですけど、まだちょっとバランスが……」

 

友希那「バランスね。分かったわ。」

 

楓「……あのー、もう終わりにしません?正直、バランスなんて加工すればどうにでもなりますし、あれから二時間経ってますし…「やめないわ。言ったでしょ?納得のいく最高の一枚を撮れるまで何時間でも付き合ってもらうって。」で、でも、最悪加工すれば……」

 

友希那「私は、ありのままのクロを撮りたいの!」

 

楓「!」

 

クロ「! みゃっ!」タッ!

 

友希那「っ!あ、クロ……」

 

ダーッ!

 

友希那「……」

 

に、逃げちゃった……。

 

……ソー

 

楓「……あ、あのー…「帰るわ。」帰……ってえぇ!?」

 

友希那「……」スタスタスタスタ

 

楓「ちょ、ちょっと待ってくださいよ!まだクロの写真、全然撮れて…「クロは逃げてしまった。だからもう写真は撮れないわ。」ま、また戻ってきてくれるかもしれないじゃないですか!」

 

友希那「……猫は、そんな単純じゃないの。特にクロのような野良猫はね。」

 

楓「そ、それは、そうですけど……」

 

友希那「……もしクロが帰ってきたら、謝っておいて。突然大きな声を出してしまってごめんなさいと。」

 

楓「っ!だ、だったら、自分がクロが戻ってくるまで待ってれば……」

 

友希那「……」

 

楓「……そ、それに僕も、……あなたに一つ、謝りたいこと、ありますし……」

 

友希那「……あなたに謝られることなんて、何も……」

 

 

 

 

 

クロ「みゃー。」

 

友希那「!?」

 

楓「く、クロ!」

 

ちゃ、ちゃんと戻ってきた……。

 

しかもこんなに早く……!

 

友希那「……クロ……」

 

クロ「みゃ〜。……スリスリ」

 

友希那「!?」

 

足に、スリスリしてる……。

 

羨まし……じゃなくて、やっぱりクロ、この人のこと気に入っちゃったんだな。」

 

クロ「みゃ〜♪」スリスリ

 

友希那「///〜〜!!く、クロ///……。」

 

いや、めちゃくちゃメロメロじゃんこの人。

 

……超羨まし……じゃなくて!

 

この人も、相当クロのこと大好きだよな。

 

友希那「……クロ。」

 

クロ「みゃ?」

 

友希那「さっきは、突然大きな声を出してごめんなさい。びっくりしたわよね?反省しているわ……。」

 

クロ「みゃー……」

 

友希那「だから、……もう一度だけ、撮らせてほしい。あなたのことを。」

 

クロ「みゃ〜?」

 

楓「……」

 

友希那「あなたの可愛い姿を、一枚でもいいから写真に納めたい、納めてみたいの。だから……もう一度だけ、あなたを撮るチャンスが欲しいの。」

 

クロ「みゃ〜……みゃん!」

 

友希那「! ……ありがとう、クロ。」

 

……これ、傍から見ると猫に話しかけてるヤバい人に見えるんかな……?

 

てかクロ、この人の言ってること分かってんの?

 

それに今の会話、めちゃくちゃ良い感じになってる感あるけど、要はただこの人がクロの写真撮りたいだけだよね??

 

……ツッコミどころが多すぎるけど……クロが可愛いからいいや。

 

友希那「……それで?」

 

楓「え?」

 

友希那「あなたが私に謝たいことって、いったい何なの?」

 

楓「あ……そ、それは……」

 

友希那「……」

 

楓「……もうやめないかとか、加工すればいいんじゃないかとか……あなたの考えを否定するようなことを言って、すみませんでした。あの発言は、ちょっと軽率すぎました。ほんとに、すみません……。」

 

友希那「……そのことなら、もういいわよ。少し意地を張ったり大きな声を出したり、私にも少なからず否はあるもの。」

 

楓「あ……ありがとうございま…「その代わり。」?」

 

友希那「クロの可愛い写真が撮れるまで、たっぷり付き合ってもらうわよ。」

 

楓「……はい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜二時間後〜

 

カシャッ!

 

友希那「……」

 

クロ「zzz……」

 

楓「今の、すごく良く撮れたんじゃないですか?」

 

友希那「え、ええ。確認してみるわ。」

 

楓「……」

 

友希那「……!!こ、これを……私が、撮ったの?」

 

楓「そうですよ。あなたが一人で、自分の力で撮ったんです。」

 

友希那「……」

 

楓「……それで、どうだったんですか?」

 

友希那「……ええ。すごく、可愛いわ。私の中で、一番、納得のいく一枚が撮れた……。」

 

楓「それは良かったです。……ふぅ。」

 

つ、疲れた……。

 

てかめちゃくちゃ暑い……。

 

友希那「……」

 

……!!

 

あれからもう四時間も経ってたの!?

 

マジか……。

 

……いや、四時間経ってるのに気づかずずっと写真撮ってた僕とあの人もすげえな。

 

まぁおかげで、結構良い写真いっぱい撮れたし。

 

これはアルバム整理がはかどる…ピト !?

 

楓「わっ!?」

 

友・ク「!」

 

楓「……って何だ、缶か……。」

 

友希那「そ、そんなに驚かなくてもいいじゃない。」

 

楓「いや、いきなり冷たい缶当てられたらびっくりしないほうがおかしいですよ。」

 

あーあ、クロが起きちゃった。

 

クロ「みゃー……」

 

友希那「……コーヒーで良かったかしら?」

 

楓「え?あ、はい。……あ、ありがとうございます。」

 

友希那「別に……。ただのお礼よ。」

 

楓「へ?」

 

友希那「……私、座ってるわね。」

 

楓「……」

 

照れてんのかな?

 

……あ、そういやこれ、お金返したほうがいいのかな?

 

いやでも、お礼って言ってたし……。

 

……一応聞いてみよ。

 

 

 

 

 

友希那「ゴクゴクゴク……ふぅ。……「あ、あのー。」? 何かしら。」

 

楓「これのお金って……返したほうが…「いらないわ。言ったでしょ?お礼だって。」で、ですよねー……。」

 

友希那「……どうしてそんなことを聞きに来たの?」

 

楓「ど、どうしてって……一応、聞いたほうがいいかなと思っただけですけど……」

 

友希那「……そ、それだけ?」

 

楓「はい、それだけです。」

 

友希那「……ふふ。」

 

楓「?」

 

友希那「あなたってば、律儀な人ね。私のバンドのメンバーにもいるわ、あなたみたいな人。」

 

楓「あ、そうなんですか。」

 

律儀ねー……。

 

楓「……僕の友達にもいますよ、律儀な人。」

 

友希那「そうなのね。……」

 

楓「……ゴクゴクゴク……」

 

……っ!

 

あ、甘い……。

 

まぁでも、このくらいのコーヒーほうが飲みやすくて好きだな。

 

友希那「……ねぇ。立ち話も難でしょうし、隣に…「みゃんっ!」スタッ !!」

 

楓「あ。」

 

クロが、この人の膝の上に……。

 

いいなぁ……。

 

クロ「みゃー♪」

 

友希那「っ///!!か、可愛い///……!」

 

すっげーメロメロになってる……。

 

まぁ僕も人のこと言えないけど。

 

友希那「〜♪」

 

ほんと、めちゃくちゃ嬉しそうだな。

 

ここまで猫好きな人に会ったのは、家族を除いて生まれて初めてかもな。

 

……疲れたし暑いけど、楽しかったからいっか。

 

ゴクゴクゴク……。

 

甘っ……。

 

けど美味しいな。

 




友希那さん×猫はベストマッチ!

異論は認めますw。

友希那さんと猫の絡みを描くのは楽しいんですけど、キャラ崩壊してないか、それだけが心配だなぁw。

まぁガルパピコで結構キャラ崩壊的なものはしてるから、今更かw。

今月、あと一話くらいは投稿できるといいなぁと思う今日この頃……。


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57話 補習終了!の後に起きた偶然の出会いと告白

モニカ出演はえっっっっっっらい先になりそうと思いながら今回のイベストを読んでましたw。

いやー、毎度のごとく神イベストで、特に最後のあの演出はエモさ全開でしたね!

あと今回もましろちゃんが可愛い。

マジブルームブルームのましろちゃんが欲しいです。(なぜかサブでは持ってんだよな……。)


〜AM 9:00〜

 

『……ジリリリ…「カチ」……』

 

……ん〜!

 

……眠い。

 

「にゃ〜。」

 

楓「! おはよう、マリー。今日も可愛いな。」

 

……スタッ

 

マリー「にゃ〜ん♪」スリスリ

 

楓「あー分かった分かった。ご飯な?すぐ起きるよ。」

 

マリー「にゃん!」

 

楓「ったくもー。……」

 

 

 

 

 

〜昨日〜

 

楓『……じゃあ、僕そろそろ帰りま…『ちょっと。』?』

 

友希那『……今度、あなたの家のにゃー……猫にも、会ってみたいのだけど。』

 

楓『僕の家の猫、ですか?』

 

友希那『ええ。』

 

楓『……ま、まぁ、別に良い……ですけど……』

 

友希那『ほんとね?男に二言はないわね?』

 

楓『に、二ご……ま、まぁ……はい。あ、でも……』

 

友希那『でも、何?』

 

楓『……あ、いや……何でも、ありません……。』

 

友希那『……変な人ね。』

 

〜回想終了〜

 

 

 

 

 

……あの人、分かって言ったのかなぁ?

 

マリーに会うってことは……僕の家に、上がるってこと……。

 

……女子なんか、家に上げたことないのに……。

 

マリー「にゃー、にゃー……」

 

楓「! あ、ごめんマリー。じゃあ、いっしょに下行こうな。」

 

マリー「にゃー!ストン」

 

テトテトテト

 

……マリー自身は人見知りとかしないから大丈夫なんだけどな。

 

はぁ、どうしたもんか……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……よし、ばっちり。

 

たぶんこれで満点はとれる。

 

とれる……けど、一応ちゃんと持っててテスト前にもう一度見るか。

 

ふぅー、やっとめんどくさい補習も今日で終わりだ。

 

……そういやあの人とは、補習初日に初めて会ったんだよな。

 

結局あの人の名前、まだ聞けてないな……。

 

もしだったら今日、聞いてみるか。

 

……失礼、かな?

 

いや、そんなことないか。

 

マリー「にゃー!」

 

楓「ん?どうしたマリー?」

 

マリー「にゃっ、にゃー!」

 

楓「だから何だって……ん?」

 

現在の時刻 AM 9:45

 

……!!??

 

あーーーー!!!

 

のんびりしすぎたーーーー!!!

 

ヤッベえ!!

 

走って行かないと間に合わないーー!!

 

マリー「にゃー?」

 

マリーはこのことを教えてくれてたのか!!

 

頭良すぎんだろあいつ!!

 

楓「じゃあマリー、行ってくるな!!……あ、時間ヤバいの教えてくれてありがとう!!あーくそ遅刻するーーー!!!」

 

マリー「……にゃーん?」ナニガナンダカワカラナイカオ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー花咲川女子学園 補習教室ー

 

「……よし。じゃあそろそろテストを配るぞー。」

 

沙也加「先生。空見がまだ来てないんですけど……。」

 

「あー空見か。……まぁ来ないやつが悪い。」.

 

沙也加「……」

 

「というわけだ。それじゃあテストを…『ガラッ!!』!?」

 

楓「はぁ……はぁ……はぁ……」

 

沙也加「空見!」ガタッ!

 

楓「はぁ……はぁ……ぎ、ギリギリ、間に合った……」

 

「お、お疲れ……。じゃなくてほら、早く席に着け。テストを始めるぞ。」

 

楓「は、は〜い……。」

 

沙也加「……すごい汗だくだけど、走って来たの?」ボソボソ

 

楓「走らないと……ま、間に合わなかったから……」ボソボソ

 

沙也加「ま、まぁ、そりゃそうだよね。……お疲れ。」ポン

 

楓「あ、ありがと……。」

 

「それじゃあ、配られた人から名前を書いて始めていいぞ。終わったら私に提出して、帰って良し。」

 

ま、満点とれるか……危うい、かも……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜15分後〜

 

お、終わった〜!

 

「空見、終わったか。」

 

楓「は、はい……。」

 

「お疲れ。じゃあほら、さっさと提出しろ。」

 

楓「はい。ガタッ」

 

「……空見お前なー、もっと時間に余裕を持って行動しろよ?テストの日なんか尚更だ。テストの日に遅刻なんかしたら受けれないで即0点だからな。」

 

楓「は、はい……すみません……。」

 

「まぁ今日のところは許してやる。次から気をつけろよ?では、帰って良し。」

 

楓「さ、さようなら……。」

 

「おう。」

 

 

 

 

 

 

ガラガラガラ……ピシャン

 

楓「……はぁ。」

 

???「空見、くん?」

 

楓「! あ、丸山さん。」

 

彩「聞いたよ?テスト、ギリギリだったんだって?」

 

楓「あー……今日はたまたま、寝坊しちゃって……」

 

彩「……ねぇ、今日はいっしょに帰…「ごめん。今日もちょっと用事があって……」あ……そうなんだ。」

 

楓「ほんとごめんね。せっかく誘ってくれてるのに。」

 

彩「う、ううん?用事があるなら、仕方ないよね。」

 

楓「じゃ、そういうわけだから。またね。」

 

彩「うん、ばいばい。」

 

タッタッタ

 

 

 

 

 

彩「……じゃあ、帰ろっか。沙也加ちゃん。」

 

沙也加「……いいの?彩。」

 

彩「うん……。」

 

沙也加「……彩ってさ。」

 

彩「ん?」

 

沙也加「空見のこと、どう思ってるの?どうして彩は、そんなに空見といっしょに帰ることにこだわるの?」

 

彩「……」

 

沙也加「彩。」

 

彩「……私は……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー公園ー

 

よし、着いた。

 

……でも、今日はいつもより早いからな〜。

 

あの人が来るまでもうちょっとかかりそうだな……。

 

……それに、クロの姿も見当たらない。キョロキョロ

 

……え、待つの?

 

こんな暑い中、あの人が来るまで約10分も……?

 

……さすがにそれはやだな。

 

どっかにコンビニとかないかなー?

 

……こういうときはネットで調べよう。

 

えーっと……近くのコンビニ……っと。

 

お、出てきた出てきた。

 

……!

 

ここから徒歩二分のとこにあるじゃん!

 

よし、さっそく行こう!

 

……ついでに昼ごはんも買おうかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜約二分後〜

 

お、ここか。

 

こんなとこにコンビニがあったなんて、知らなかったな〜。

 

さて、入るか。

 

ガー

 

???「! いらっしゃいませ〜。」

 

???「ませ〜。」

 

あー、涼しいー。

 

生き返るー。

 

???「ってあぁーー!!」

 

! え?な、何?

 

僕何かした……って、え?

 

リサ「空見!」

 

楓「い、今井さん!?」

 

???「ほほ〜う、この人が空見先輩ですか〜。」

 

……で、もう一人は……誰?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リサ「いやぁ〜、まさかこんなところで会うなんてね〜。偶然偶然♪」

 

楓「まさか、今井さんのバイト先だったとは……」

 

リサ「このコンビニ時給良いし、従業員の人達も店長含めてみんな優しいから、結構気に入ってるんだよね〜。あ、ちなみにさっきアタシといた子は、青葉モカ。羽丘の一年生で、アタシの後輩♪」

 

楓「な、なるほど……。チラッ」

 

モカ「どうも〜。」ペコリ

 

楓「ど、どうも。」ペコリ

 

リサ「もう、硬いなー空見は。」バシッ!

 

楓「いてっ!ちょ、いきなり叩かないでよ!」

 

リサ「ごめんごめん♪」

 

……絶対ごめんって思ってないな。

 

ちなみに今、今井さんは普通に僕と話してるが、ちゃんと仕事もいっしょにしている。

 

品出しをしながら、僕と話をしているのだ。

 

普通なら僕と仕事をしながら話すというのはいいのか?と思うが、今は他のお客さんがあまりいないため、別にいいらしい。

 

そういうとこは、ゆるいんだな……。

 

リサ「ねぇ、空見聞いてる?」

 

楓「え?あ、ごめん。何?」

 

リサ「もうー。今日はもうお昼食べたの?って、今聞いたじゃん。」

 

楓「あー……お、お昼は、まだなんだよね。だから、このコンビニで買って行こうかと…「お、そうなんだ。じゃあ丁度良いね♪」え?丁度良いって、何が……?」

 

リサ「ほら、今アタシ、お弁当の品出しやってるじゃん?」

 

楓「う、うん。」

 

リサ「この中からアタシが、おすすめのお弁当を紹介したいと思ってるんだけど、どうかな?」

 

楓「お、おすすめの……?でも今井さん、今仕事中…「大丈夫だって。今はお客さん少ないし、ここはお姉さんに任せなさいって♪」……そ、それなら……お願い、しようかな。」

 

リサ「OK♪えーっと、じゃあまずはねー……」

 

 

 

 

 

モカ「……ふむふむ。なるほどですな〜。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜10分後〜

 

楓「うーん……。」

 

リサ「空見、まだ迷ってるの……?」

 

楓「だって、どれも美味しそうで……」

 

リサ「……「リサさーん。応援頼みまーす。」! 分かった!今行く!……ちょっとごめんね、空見。」

 

楓「え、あ……ごめん?」

 

……何で謝ったのかは分からないけど、仕事は優先しないとだもんな。

 

それにしても……どうしたもんか……。

 

焼肉弁当、ピラフ、パスタ、バンバーグ弁当、ラーメン、ビビンバ丼、ドリア……。

 

どれにしようか、ほんと迷う……。

 

……はぁ。

 

またいつもの迷い癖が……。

 

 

 

 

 

リサ「ありがとうございましたー。」

 

モカ「ましたー。」

 

リサ「……」

 

モカ「空見先輩、さっきからずーっとあんな感じですよね〜。」

 

リサ「うん……。つい張り切りすぎて、いっぱいおすすめしちゃったアタシも悪いけど、まさかあそこまで迷うとは思わなかったな〜……。」

 

モカ「このお店のお弁当は、どれも美味しいですからね〜。」

 

リサ「そうだよね〜。」

 

モカ「……リサ先輩〜。」

 

リサ「ん?」

 

モカ「今度は、あたしが行ってきていいですか〜?」

 

リサ「? モカ?」

 

 

 

 

 

……ダメだ、全っ然決まらん……。

 

本音を言うと全部食べたいけど……弁当だから、一気に買っても何日も置いとけないんだよな。

 

せめて一日二日くらい……。

 

うーん……マジでどうしたもん…「空見先輩〜。」!!

 

モカ「おっと、そんなに驚かないでくださいよ〜。」

 

楓「い、いや、急に声かけられたら誰だって驚くよ……。」

 

モカ「そういうものですか〜?……まぁいいや。」

 

この子は、さっき今井さんが言ってた、青葉さん……か。

 

モカ「まだ決まらなそうですか〜?」

 

楓「え?あ……うん。僕、こういうのいつも迷っちゃう人だから……」

 

モカ「……じゃあ、今日はハンバーグ弁当にして、明日は焼肉弁当、っていうふうにすればいいんじゃないですか〜?」

 

楓「え?」

 

モカ「そうしたほうが、毎日も楽しみにもなりますし〜。モカちゃんも、今日はこのパン、明日はあのパンにしようって、いつも考えてますよ〜。」

 

楓「……でも、それじゃあ……毎日このコンビニに来ることになっちゃって、二人の仕事の迷惑に…「そんなことないですよ〜。」……」

 

リサ「モカの言う通りだよ。」

 

楓「い、今井さん……。あの、レジの方は…「店長が気を利かしてくれて、友達のとこ行ってきなって♪」そ、そうなんだ……。」

 

リサ「毎日同じコンビニに通う人なんて、今時大勢いるよ?アタシ達も、全然迷惑じゃないし、むしろ大歓迎だよ♪……まぁ、毎日お弁当を買うっていうのは、金銭的に、ちょっと難しいかもだけど……」

 

楓「……大丈夫だよ。お金には、全然余裕があるから。」

 

リサ「そ、そうなの?」

 

楓「じゃあ……明日も、ここに来ていいかな?今日はこのハンバーグ弁当を買って、明日は焼肉弁当を買おうかなって。……マジで、毎日通うことになりそうだけど……」

 

リサ「うん、もちろん!じゃあアタシとモカも、気合い入れて接客するね!」

 

モカ「モカちゃん頑張っちゃいま〜す。」

 

楓「接客に限らず、気合いは入れたほうがいいと思うよ……?」

 

リサ「あはは、分かってるって〜。」

 

モカ「それじゃあ空見先輩、お会計しますか〜?」

 

楓「あ、ごめん。もうちょっと見て行っていいかな?飲み物とか、他の商品も気になるから。」

 

モカ「承知しました〜。」

 

リサ「あはは……。じゃあ空見、アタシとモカ、レジに戻ってるね。ゆっくりして行ってよ♪」

 

楓「うん。ありがとね、二人とも。」

 

……さてと、あの人には何がいいかなー?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リサ「合計で、1540円になりま〜す♪」

 

モカ「箸は何膳お付けしますか〜?」

 

楓「うーん……じゃあ、二膳お願い。」

 

モカ「かしこまりました〜。」

 

リサ「空見、お弁当二つも食べるんだ?意外と食いしん坊なんだね〜♪」

 

楓「あ、いや、もう一つは僕のじゃなくて、別の人にあげようと思って。」

 

モカ「優しいんですね〜、空見先輩。」

 

リサ「兄弟とか、そういう感じ?」

 

楓「あー……うん、まぁそう。」

 

リサ「ふーん……そっか。はい、460円のお釣りのなります♪」

 

楓「あ、ありがとう。」

 

モカ「空見先輩、どうぞ。」

 

楓「ありがとう、青葉さん。……じゃあ、明日また来るね?」

 

リサ「うん♪待ってるよ。」

 

モカ「明日のご来店もお待ちしてま〜す。」

 

楓「う、うん。……じゃーね、二人とも。頑張って。」

 

リ・モ「うん(は〜い。)♪」

 

……あの人のお弁当、これで良かったかな?

 

てか、そもそももらってくれるのか?

 

……なんか今になって、不安になって…ドンッ! !?

 

楓「うわっ!」

 

「! す、すみません!」

 

楓「あ、いえ。僕のほうこそ、すみません。」

 

「い、急いでいたもので、つい……。! あ、あの、もしだったらこのチラシを…「あ、す、すみません。僕も急いでるので……。し、失礼します!ダッ!」あ……。」

 

あ、危ねぇ危ねぇ……。

 

ああいうのって、絶対宗教の勧誘とかだもんな。

 

捕まったら面倒だ。

 

とりあえず、早くあの公園に向かおう。

 

僕の予想が正しければ、たぶんもうあそこには……。タッタッタッタ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー公園ー

 

タッタッタッタ……

 

友希那「! ……遅いわよ。」

 

楓「す、すみません!ちょっと寄り道してて……」

 

友希那「寄り道……?……あなた、その袋は……?」

 

楓「あぁこれ、ついさっきコンビニで買って来たお昼ご飯です。」

 

友希那「お昼……。寄り道って、そういうことだったのね。」

 

楓「それでお昼なんですが……ついでに、あなたの分も買って来たんですけど……」

 

友希那「え、私の?」

 

楓「はい。えっと……このパスタと、コーヒーを……」

 

友希那「……」

 

楓「自分の分だけ買うってのも、どうかと思って、ついでに……。もしだったら、後で食べませんか……?その、あなたが良ければ、ですけど……」

 

友希那「……」

 

楓「……」

 

な、何だろ、この謎の緊張感……。

 

友希那「……いくら?」

 

楓「へ?」

 

友希那「そのお弁当、いくらだったの?」

 

楓「い、いくら……?……!い、いりませんよお金なんて!」

 

友希那「そういうわけにもいかないでしょう?きちんとお金は返すわ…「こ、コーヒー!昨日のコーヒーのお礼ですよ!」それとお弁当が釣り合うわけないでしょう!?」

 

……確かに。

 

友希那「それでいくらなの?そのお弁当は。」

 

楓「ほ、ほんとにいいですって!こ、これは、日頃の感謝の気持ちでもあるんですから!」

 

友希那「そ、それを言うなら、私だってあなたには感謝してるわよ!昨日だってクロの写真を撮るのに何時間も付き合ってくれたり、何より私はあなたと……」

 

楓「僕はあなたと……」

 

楓・友「こうして猫の話ができて嬉しいんですよ(嬉しいのよ)!それも含めて感謝を……!……え?」

 

楓「……」

 

友希那「……」

 

楓・友「……///。」

 

なんか僕、今すごく恥ずかしいことを言っちゃった気がする……。

 

友希那「(私今、ものすごく恥ずかしいことを言ってしまった気がするわ……。)」

 

……ヒョコ

 

クロ「みゃー!」

 

楓・友「! く、クロ!……え?」

 

クロ「……みゃ〜?」

 

楓「……」

 

友希那「……そ、そのお弁当……」

 

楓「え?」

 

友希那「ありがたく……もらうわ。……後で、いっしょに食べましょ。」

 

楓「……は、はい。……ありがとう……ございます。」

 

クロ「……みゃ〜ん♪」ゴローン

 

友希那「……クロと、遊びましょうか。」

 

楓「そう、ですね。」

 

クロ「みゃっ!みゃーん!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クロ「みゃ〜♪みゃ〜ん♪」ゴロゴロ

 

楓「すげぇゴロゴロ言ってんなー。」ナデナデ

 

友希那「……ガサゴソ」

 

はぁー……幸せー。

 

マジこの時間のために補習を頑張ったと言っても過言ではないなー。

 

友希那「……!あったわ。」

 

楓「? それって……猫用のおやつ、ですか?」

 

友希那「ええ。ここに来る前に、ペットショップで買って来たのよ。」

 

楓「へぇ〜……。」

 

クロ「! みゃ〜♪」キラキラシタメ

 

楓「うおっ、めちゃくちゃ興味津々。」

 

友希那「気に入ってくれるといいのだけれど……はい、どうぞ。」

 

クロ「みゃ〜!……」パクッ、パクッ

 

楓「……」

 

友希那「……」

 

楓・友「(か、可愛い///……。)」

 

クロ「……みゃー♪」

 

楓「お、美味しかったみたいですね。」

 

友希那「そ、そうね。……あなたも、あげてみる?」

 

楓「え!……いいんですか?」

 

友希那「え、ええ。別に構わないわよ。」

 

楓「じゃ、じゃあ……お願いします。」

 

友希那「そ、それじゃあ……はい。パッ、パッ」

 

楓「ありがとうございます。……はい、どうぞ。」

 

クロ「みゃ〜♪パクッ、パクッ……」

 

て、手から食べてくれてる……。

 

か、可愛いすぎんだろこれ〜〜!!!

 

友希那「……あなたって、よく表情が顔に出るわよね。」

 

楓「へ?……そうですか?」

 

友希那「ええ。自分で気づいていないの?」

 

楓「……でも、それを言うなら、あなただってよく顔に出てる気がしますけど……」

 

友希那「! わ、私はあなたと違って、表情が顔に出るなんてめったに…「はい。」スッ ちょ、ちょっと何を……ってあなた、まだ全部あげてないじゃない!」

 

クロ「みゃ〜。」

 

友希那「え?……あ、はい、クロ。」

 

クロ「みゃん♪パクッ、パクッ」

 

友希那「///〜〜!!」

 

楓「……やっぱ顔に出てるじゃん。」

 

友希那「……は!……///!!」グッ!グッ!

 

楓「!? ちょ、痛い痛い!足踏んづけないでくださいよ!痛い、痛いですって!」

 

クロ「パクッ、パクッ……みゃ〜♪」

 

友希那「……このおやつ、喜んでくれたみたいで良かったわ。」

 

楓「そ、そうですね……。」ジーン……

 

痛え……。

 

まだヒリヒリする……。

 

クロ「……みゃ〜……」

 

友希那「? 眠いの?クロ。」

 

楓「そうみたい、ですね。」

 

クロ「……んみゃー……」

 

友希那「ふふ、寝ていいわよ。私達はずっとここにいるから。」

 

クロ「みゃ〜……♪……ゴロン」

 

楓「……寝ちゃいましたね。」

 

友希那「ええ。……また、写真を撮ろうかしら。」

 

楓「あ、良いですね。じゃあ僕も……。」

 

ほんと、幸せな時間だ。

 

野良猫と触れ合えて、同じ猫好きの人と猫についてしゃべれて……。

 

夏の暑さなんて吹き飛ぶくらい、最高に楽しい時間。

 

 

 

 

 

……でも、この時間がずっと続くことは、なかった。

 

それは、写真を撮ろうと僕とこの人が携帯を取り出したときのことだった……。

 

 

 

 

 

「タイ!!」

 

 

 

 

 

楓・友「!?」

 

クロ「! みゃっ!?」

 

あ、あの人は……?

 

……さっき、コンビニを出るときにぶつかった……。

 

い、いや、てかそれより……タイって……。

 

「やっと……やっと見つけた……。タイ……タイーーー!!!」

 

クロ?「みゃっ!みゃー!!」ダダダダ……‼︎

 

友希那「クロ!?どこへ行くの!?クロ!!」

 

……な、何が、どうなってんだ……?

 

どうしてクロは、逃げ出して……。

 

それに、クロをタイって呼んでるこの人は、いったい……。




補習回(という名の友希那さん×猫回)は終了!しましたが、もう一話続きますw。

もちろんそれが終わっても友希那さん×猫の絡みはいずれどっかで書きたいと思ってるので楽しみにしていてください!

それ以外にも書きたいネタがいくつかあるんですよねー。

果たして夏休み編は何話とかかるのだろうかw……。


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58話 友希那とクロ

お待たせしました!

八月に入ってようやく一本目……。

いつの間にかオリンピックも終わってるし、相変わらずの……って感じですが、今月は夏休みなので、ちょっといつもより頑張りたい気持ちではいます。

あ、今更ですが、フェス現ましろちゃん、無事40連で当てることができました!!

さらに初期フェス限紗夜さんが出たり、水着チュチュと水着パレオが揃ったりで、過去最高のドリフェスでした!!

ましろちゃん!出てくれて本当にありがとう!!!


それは、写真を撮ろうと僕とこの人が携帯を取り出したときのことだった……。

 

 

 

 

 

「タイ!!」

 

 

 

 

 

楓・友「!?」

 

クロ「! みゃっ!?」

 

あ、あの人は……?

 

……さっき、コンビニを出るときにぶつかった……。

 

い、いや、てかそれより……タイって……。

 

「やっと……やっと見つけた……。タイ……タイーーー!!!」

 

クロ?「みゃっ!みゃー!!」ダダダダ……‼︎

 

友希那「クロ!?どこへ行くの!?クロ!!」

 

……な、何が、どうなってんだ……?

 

どうしてクロは、逃げ出して……。

 

それに、クロをタイって呼んでるこの人は、いったい……。

 

「……タイ……。」

 

友希那「……あなた、どういうつもり?気持ち良さそうに寝ていたところを邪魔するなんて、非常識だと思わないの?」

 

楓「ちょ、ちょっと!この人は大人ですよ!?」

 

友希那「そんなの関係ないわ。私は今、クロの眠りを阻害したこの人に対して、無性に腹が立っているの。」

 

「……クロ……。」

 

楓「……あ、あの……」

 

「……クロという名前は、あなたがつけたの?」

 

楓「え?あ、いや、つけたのは僕ではなくて、この人です。」

 

友希那「……」

 

楓「そう、あなたが……。良い名前ね。」

 

友希那「……それで私の気が収まるとでも?」

 

「……寝ているところを邪魔しちゃったのは謝るわ。でも……一つ、言わせてほしい。」

 

楓・友「……」

 

「あの子は……あなた達の言うクロは……

 

 

 

 

 

……もともとは、私の飼い猫なの。」

 

楓「!!」

 

友希那「……」

 

「これを見てもらえる?」

 

あ……さっきの、宗教勧誘の……!じゃ、じゃない!?

 

このチラシは……!

 

 

 

 

 

『黒猫を探しています。

 

見かけた方は○○○までご連絡ください。』

 

 

 

 

 

友希那「……」

 

楓「宗教勧誘じゃ、なかったんだ……。」

 

「あの子はタイ。もともと野良猫だったのを、私が保護したの。それから何ヶ月かいっしょに暮らして……この前夫の仕事の都合で引っ越すことが決まったんだけど、その話をした矢先に庭から逃げ出しちゃって、それっきり……」

 

楓「……そうだったんですか……。」

 

友希那「……」

 

「その日からずっと、このチラシを配り歩いていたの。いろんなところに貼らせてもらったりもしてね。」

 

楓「チラシを……。……!じゃあ、さっきコンビニに来てたのは……」

 

「そう、貼らせてほしいってお願いしに行ったの。」

 

楓「……なんか、すみません……。」

 

「いいのいいの。知らなかったんだもの、しょうがないことでしょう?」

 

楓「……」

 

この人はそう言ってるけど、僕は全然納得いってない。

 

しょうがなかった……そんなの言い訳だ。

 

知らなかったとは言えあんな態度をとってしまったことに、ものすごく後ろめたさを感じている。

 

だから僕は……。

 

楓「……あの、僕、クロ……タイを探すの、手伝います。」

 

友希那「!」

 

「ほ、ほんと?」

 

楓「はい。クロ……タイの体格から考えて、まだそんな遠くには行ってないはずですし、手分けして探せばすぐ見つけられると思うんです。」

 

「……そうね。じゃあ、お願いするわ。」

 

楓「は、はい!じゃあ、さっそく…「あと……」?」

 

「クロでいいわよ。そっちのほうが呼び慣れてるんでしょ?」

 

楓「あ……まぁ、はい。」

 

「それじゃあ私は、向こうのほうを探すから、あなた達はそっちのほうをお願い。」

 

楓「分かりました。」

 

友希那「……」

 

タッタッタッタ……

 

楓「……僕達も行きましょう。」

 

友希那「……」

 

楓「あの……行かないんですか?」

 

友希那「……言っておくけど、私はクロを探しに行くだけよ。」

 

楓「え?」

 

友希那「決して、あの人の猫を探すわけじゃないから。」

 

楓「……」

 

友希那「……それじゃ、行くわよ。」

 

楓「は、はぁ……。」

 

それは、同じ意味なんじゃ……。

 

……とにかく、今はクロを見つけるのが先だ。

 

無事見つかるといいけど……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

楓「クロー。……クロー、どこだー?……クロー……。」

 

友希那「……」

 

……なんて、やみくもに呼んでも出てこないよな猫は。

 

……それより。

 

友希那「……」

 

楓「……あの、さっきからどうしたんですか?」

 

友希那「! く、クロなら、ちゃんと探してるわよ?」

 

楓「違いますよ。あなたの様子、さっきからおかしいですよね?」

 

友希那「っ!……」

 

楓「……やっぱり、あの人の言ってることが…「分かってるのよ!」!」

 

友希那「……もうあの子は、クロじゃないって。あの人の言う、タイなんだって。……あの子は……野良猫じゃ、ないんだって……。」

 

楓「……」

 

友希那「……あの人がクロのことをタイって呼んだときから、薄々感じてはいたわ。だって、タイって呼ばれた瞬間、クロの目が変わったんだもの。あの目は……自分の家族にしか向けない目だった。」

 

この人、そんな前から気づいて……。

 

それに、クロのこと、そこまでよく見てたんだ……。

 

友希那「でも、クロは逃げた。自分の家族が探しに来てくれたにも関わらず。なぜだと思う?……私は、あの人の話を聞いて、すぐ分かったわ。」

 

楓「……帰りたく、なかった?」

 

友希那「ええ、おそらく。どうしてかは分からないけど……たぶんクロには、クロなりの理由があるんだと思う。」

 

楓「クロなりの、理由……」

 

友希那「……それはともかくとして、クロの眠りを阻害したことに腹が立ったのはほんとよ。私だって、気持ちよく寝てたところを大声で起こされたりしたら、本気で怒るもの。あなただってそうでしょ?」

 

楓「ま、まぁ……」

 

友希那「だから私は、あの人を許すつもりはない。……でも、あなたには誤解してほしくなかった。」

 

楓「え?」

 

友希那「クロの飼い主が見つかった、そのことに対して少し悲しいのは事実だけど、怒っているわけじゃないから。いじけてもないし、ましてやそれが嫌だと思ってるわけでもない。……あなただけには、そのような誤解をしてほしくなかった。それだけよ。」

 

楓「……」

 

友希那「……さ、クロを探すわよ。早く見つけて、あの人に返してあげなきゃいけないもの。」

 

楓「……強いですね、あなたは。」

 

友希那「? 何か言ったかしら?」

 

楓「……いえ、何も。……よし。じゃあこっちも手分けしましょう。」

 

友希那「手分け……?」

 

楓「はい。僕はこっちを、あなたはそっちを探してください。30分後に、またここで落ち合いましょう。」

 

友希那「……ええ、分かったわ。」

 

楓「では、僕は向こうに。タッタッタッタ」

 

友希那「……バカね。別に私は強くなんてないわよ。……でも、無理にでも強くしていなくちゃ、この世界で生きていくことはできないもの。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

友希那「……クロー?どこ行っちゃったのー?……大丈夫よー、怖くないから、出ておいでー?」

 

……あの人がいたら、こんな探し方はできないわね。

 

でも、いなくなったにゃーんちゃんを探すには、この手が一番有効なはずだから。

 

……クロは、絶対に私が、見つけ出す……!

 

友希那「……クロー?美味しいご飯もあるわよー。大丈夫、もうあの人はいないから……怖くないから出ておいでー。クロー。」

 

……ガサガサ

 

! 今、そこの茂みが動いた……?

 

クロ……!?

 

友希那「クロ……?ねぇ、そこにいるのはクロなの?」

 

ガサガサ……ガサガサ……

 

……な、何かいる……。

 

仮にあれがクロではないとしても、何か、他の生物が……。

 

ガサガサ……ガサガサ……

 

友希那「……」

 

ガサガサ……ガサガサ……

 

友希那「……」

 

ガサガサ、ガサガサ……ガサゴソ

 

友希那「!」

 

「にゃー。」

 

ね、猫……!?

 

この近所に、クロ以外の猫がいたなんて……。

 

……か、可愛い///……。

 

……!フンブンブン!

 

なんて言ってる場合じゃないわ。

 

クロを見つけないと……。

 

「にゃー。……ゴロン」

 

友希那「っ!……な、名残惜しいけど……これもクロのため……。にゃーんちゃん、ごめんなさい!タッタッタ」

 

「にゃ?……にゃー……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はぁ……はぁ……はぁ……。

 

クロのやつ……どこ行ったんだ……。

 

まだちっちゃいから、そんな遠くには行けないはずなのに……。

 

子猫だからって……なめちゃダメってことか……。

 

「……!あなた!」

 

ん?……あ!

 

楓「あの、そっちはどうでした?」

 

友希那「.ダメだったわ……。にゃーんちゃ……クロ以外の猫はいたけれど。」

 

楓「クロ以外の?」

 

友希那「……あ、あなたはどうだったの?」

 

楓「それが……僕も有力な情報な何も……」

 

友希那「そう……。」

 

楓「……そういえばいつの間にか、またここに戻ってたんですね。」

 

友希那「え?……あぁ、そうね。」

 

ということは、いずれあの人もここに……。

 

友希那「……クロに、会いたい。」

 

楓「え?」

 

友希那「え?……///!な、何でもないわ///!」

 

楓「……そうですよね。」

 

友希那「?」

 

楓「あの人の猫だったから探してるってのもあるんですけど、それとは関係なしに、ただ純粋にクロに会いたいですよね。こんなお別れなんて、嫌ですもん。お別れするならせめて、一目会ってあいさつをしてからお別れしたい。……ですよね。」

 

友希那「……ええ。」

 

……クロ……ほんとにどこに行ったんだ……。

 

他の野良猫に襲われたり、人に捕まったりしてなけりゃいいけど……。

 

保護されてるならそれでいいんだけど……。

 

いや良くないか。

 

保護されててもその家が分からなきゃ意味ないもんな。

 

……でも、たぶん僕以上に、この人のほうがクロのことを…「二人ともー!」!

 

クロの飼い主さん!

 

やっぱり来た!

 

友希那「どうだったの?そっちには、クロは…「いたわ!」!!」

 

楓「! いたんですか!?」

 

「ええ!……でも、怒ってるのか怯えてるのか……いくら声をかけても出てきてくれないのよ。返事もしてくれないし……」

 

楓「出てこない……?」

 

友希那「今すぐ、クロのいる場所に案内して。」

 

「! わ、分かった!……こっちよ!」

 

友希那「……何をぼさっと突っ立ってるの?早く行くわよ。」

 

楓「あ、は、はい!」

 

クロ、どうか無事でいろよ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ここよ!」

 

ここは……路地裏?

 

こんなところに、クロが……?

 

友希那「この路地裏に入って行ったということ?」

 

「ええ……。」

 

友希那「……行くわよ。」

 

 

 

 

 

うわぁ……ほんとにザ・路地裏って感じだな。

 

……なんか、最初に松原さんと会ったときのことを思い出すな。

 

まぁ路地裏違いだけど。

 

友希那「ここに、ほんとにクロがいるの……?」

 

「さっきはちゃんといたのよ?……もしかしたらもう、移動してるかもしれないけど……」

 

友希那「……」

 

楓「……「みゃー……」!?」

 

友希那「! 今の声!!」

 

やっぱり、ここにクロがいる……!

 

でもどこに……。

 

「タイー!どこー?タイー…「悪いけど、少し静かにしてもらえるかしら?」っ!ご、ごめんなさい……。」

 

友希那「……」

 

楓「……」

 

「……」

 

クロ「……みゃー。」

 

友希那「この声は……こっちよ!」

 

……すげーな、今の一瞬で位置を……。

 

「……」

 

友希那「クロー?いるんでしょ?怖くないから出ておいでー?」

 

クロ「……みゃー。」

 

友希那「! クロ!」

 

楓「いた!」

 

クロ「みゃー……。……!?」

 

「た、タイ…「みゃー!!」あ、タイ!」

 

友希那「あ……。」

 

楓「また、奥に戻っちゃった……。」

 

「ご、ごめんなさい……。」

 

友希那「……どうやらクロは、あなたに怯えてるみたいね。」

 

「!?」

 

楓「! ちょ、ちょっと、この人が気に入らないからって、何もそこまで言わなくても…「そういうつもりで言ったわけじゃないわよ。」じゃあ何で……」

 

友希那「言ったでしょ?クロには何か、帰りたくない、クロなりの理由があるって。」

 

楓「まぁ、言いましたけど……」

 

友希那「その原因はたぶん……あなたよ。」

 

「っ!……」

 

楓「……じゃあ、その根拠は何なんですか?」

 

友希那「それを今から聞くのよ。……あなた、最近心当たりないの?」

 

「心当たり……って言われても……」

 

友希那「何でもいいの。クロが嫌がるようなことをした、とか、最近クロの様子がおかしかった、とか、あとは……環境が変わった、とか。」

 

楓「……」

 

「嫌がるようなこと……様子がおかしい……環境……。……あ……」

 

友希那「何かあるのね?」

 

「……引っ越し……。」

 

楓・友「……え?」

 

「……そうよ、引っ越しよ。明日九州のほうに、夫の仕事の都合で引っ越すことになってるのよ。もしかして、それに何か関係が……」

 

楓「……九州……。」

 

「……!準備!そうよ準備よ!引っ越しの準備をしてたら、突然逃げ出して……。そのまま、家の外に……」

 

楓「……じゃあ、クロが逃げている理由って……」

 

友希那「……」

 

「.……!もしかしてタイは、引っ越すのが嫌で、逃げてたの……?」

 

クロ「……みゃー。」

 

楓「……なるほどな。」

 

友希那「……」

 

「……だ、大丈夫よタイ。引っ越してこことは全く違う町に行くのは怖いけど、すぐに慣れるわ。だから、ね?いっしょに帰りましょう?」

 

クロ「……みゃ。」プイッ

 

「……タイ……。」

 

これは……難しい問題だな……。

 

動物はもちろん、人間も元いた環境から新しい環境に慣れるのには抵抗があるし、時間もかかる。

 

前に僕がそうだったように。

 

ずっと暮らしていたこの地から離れるということは、すごく不安だし、辛くて、悲しいし、寂しい……。

 

きっとクロも、そうなのだろう。

 

僕も同じ気持ちだったから、クロの気持ちはよく分かる、

 

友希那「……スッ」

 

楓「? あの、何を……」

 

友希那「クロ、私の話を聞いてくれる?」

 

クロ「……」

 

友希那「私は……あなたと離れたくない。」

 

楓「……」

 

「……」

 

友希那「二週間前、この公園であなたと出会ったのよね。あのときの衝撃は、忘れもしないわ。」

 

「! 丁度、タイが逃げ出した日……。」

 

二週間前……。

 

そんな前に出会ってたのか、あの二人……。

 

友希那「出会ったときからとても人懐っこくて、あなたから私のほうへ駆け寄ってきてくれたのよね。……嬉しかった……本当に嬉しかったわ。スリッてしてくれたり、撫でさせてくれたり、撫でろと言わんばかりにお腹を見せたり……。ふふっ。……本当に、嬉しかったし、楽しかった。あなたも、そう思ってくれていたら、嬉しいのだけれど……。」

 

クロ「……みゃ、みゃ〜……」

 

楓「! 出てきた!」

 

友希那「……ナデナデ」

 

「……」

 

クロ「……みゃ〜♪」

 

友希那「……クロという名前も、あなたが黒いからという理由で私がつけた、安直な名前だけど……気に入ってくれているのよね。」ナデナデ

 

クロ「みゃ〜〜♪♪」ゴロゴロ

 

す、すごいゴロゴロ言ってる……。

 

友希那「……でもね、……"タイ"。」

 

クロ「みゃっ!?」

 

楓「!?」

 

「!?」

 

友希那「あなたには、きちんと変えるべき場所があるの。野良猫の時間はもう卒業。だから、……私達とも、もう……」

 

クロ「みゃー!!」

 

友希那「!?」

 

クロ「みゃー!みゃっ、みゃみゃーみゃみゃみゃみゃ!!みゃみゃみ…「わがまま言わないの!!」!!」

 

友希那「……あなたはタイなの。クロじゃないのよ……。それにあなたにはちゃんと……いっしょに暮らしている人が……家族がいるの。だから、もう家出なんてやめて、自分の帰るべきところに帰るのよ。ソー……」

 

クロ「! みゃっ!ガリッ!」

 

楓「あ!」

 

「あ!」

 

友希那「痛っ!……ジワ~」

 

楓「あ、あの……手から、血が……」

 

クロ「みゃっ……みゃー……」

 

友希那「……っ!ガシッ!」

 

クロ「みゃっ!?みゃー!みゃー!!」

 

楓「ちょ、ちょっと!今の状態でいきなり抱っこは……」

 

友希那「暴れないの!!」

 

クロ「みゃっ……」

 

友希那「……

 

 

 

 

 

……ギュッ」

 

クロ「!? ……みゃー……」

 

友希那「私だって、本当は寂しいのよ。あなたと別れるなんて嫌だ。もういっそのこと、私があなたを飼ってあげたいくらいよ。……でも、あなたにはあなたの帰るべき場所があるの。家族がいるの。だから……あなたとは、これでお別れよ。」

 

クロ「……みゃー……グッ」

 

友希那「大丈夫よ。私達なんかより、あなたの家族といたほうが、絶対幸せになれるわ。だって、少なくとも何ヶ月かは、いっしょに暮らしていたんだもの。そうでしょ?」

 

「……ええ。」

 

友希那「あなたと過ごしたこのかけがえのない時間は、私の中でとても大きなものとなった。おかげで、猫について話せる、数少ない友人もできた。」

 

楓「! ……」

 

友希那「クロ。……今まで……本当にありがとう。私に、安らぎと、喜びと……儚さと、尊さと……一生忘れることのない、時間と、思い出をくれて。」

 

クロ「……みゃー、みゃーん……!グッ!」

 

友希那「ダメよ。あなたは元いた場所に戻るの。……あなたとは、もう二度と会うことは出来ないかもしれないけど……私達との思い出は、どこへ行っても、覚えている限り、この胸の中に残り続けるわ。だからあなたも……前を向くのよ。」

 

クロ「……みゃーん……パッ」

 

友希那「……良い子ね。……はい。」

 

「……」

 

友希那「受け取らないの?あなたの飼い猫でしょ?」

 

「……でも……この子は、私より…「何言ってるのよ。」?」

 

友希那「タイはちゃんと、前を向こうとしているわ。だからあなたは.、それを正面から受け止めてあげるべきではないの?それが、……一つの命を預かった、飼い主としての務めでしょ?」

 

「! ……飼い主としての、務め……。……っ!」

 

友希那「……スッ」

 

「……おいで、タイ。」

 

タイ「……みゃっ。」

 

「……うん。確かに、タイは受け取ったわ。」

 

友希那「……」

 

楓「……あ、あの…「二人には、本当に迷惑をかけてしまったわね。」! い、いえ、そんな……。あ、く、クロ……じゃなかった。タイと、仲良く。」

 

「ええ、ありがとう。……あなたも、本当にありがとう。」

 

友希那「……別に。当然のことをしただけよ。」

 

「……明日にはもう九州に引っ越さなきゃだから、次会えるときはいつになるか分からないけど……機会があれば、いずれまた会いましょう。そのときは、ちゃんとタイも連れてくるわ。」

 

楓「は、はい!」

 

友希那「……」

 

「……それじゃあ、引っ越しの準備もあるから、私達は行くわね。」

 

楓「……はい。……タイ、またな。ナデナデ」

 

クロ「みゃ〜……。」

 

「……あなたはいいの?タイのこと、撫でなくて。」

 

友希那「……私は別にいいわ。さっき抱っこしたし。」

 

「……分かった。……それじゃあね、二人とも。」

 

楓「はい。……あの……お元気で。」

 

「ええ、あなた達も。……元気でね。」

 

そう言うとその人は、タイを抱えたまま、この路地裏を出て右に曲がっていった。

 

路地裏を抜けた後追いかけようとも思ったが、そうはせず、その場でじっとすることにした。

 

……するとそれから20秒後くらい、猫好きの人は何も言わず、静かにどこかへ歩き始めた。

 

少し心配だったため、僕も後からついて行くことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

楓「……」

 

友希那「……」

 

ここはいつもの公園。

 

僕とこの人がクロと遊んでいた公園だ。

 

楓「……あ、あの……」

 

友希那「……」

 

さっきからこの人は、ベンチに座って黙ったままだ。

 

よほど、クロとの別れが辛かったのだろう。

 

僕も辛かったが、この人と僕とではクロと接していた日数が違う。

 

僕は四日間だけだが、この人は二週間もいっしょにいたのだ。

 

僕の何倍も、この人のほうが辛いはずだ。

 

友希那「……私は……」

 

! ……。

 

友希那「私は……猫が好きよ。」

 

楓「……え?」

 

友希那「今まであなたには、嘘をついていたわ。でも、さっきのような出来事があった以上、もう隠す必要はない。私は……猫が好きなの。」

 

楓「……は、はぁ……?」

 

……あ、そういえば……。

 

 

 

 

 

楓『猫、好きなんですね。』

 

友希那『……別に、好きじゃないわ。』

 

 

 

 

 

……まだその設定、続いてたんだ……。

 

この人が猫が好きなことなんて、もう分かりきってたことなんだけどな……。

 

友希那「それから……それ。」

 

楓「ん?あ、お弁当ですか?」

 

友希那「ええ。……もらっても、いいかしら?」

 

楓「あぁ、はい。全然いいですよ。てか、そのために買ってきたんですから。ゴソゴソ」

 

友希那「……そうだったわね。……ありがとう。」

 

楓「え?」

 

友希那「っ!な、何でもないわ///!」

 

楓「? ……はい、どうぞ。」

 

友希那「ありがとう。……コンビニのお弁当なんて、初めて食べるわ。」

 

楓「え、そうなんですか?」

 

友希那「ええ。こういうのは、あまり食べないほうだから。」

 

楓「あ、そうなんですか……。」

 

友希那「じゃあ……いただきます。」

 

楓「あ、はい。」

 

ちなみに買ってきたパスタは、僕のもこの人のも和風パスタだ。

 

ハンバーグ弁当にしようとも思ったが……僕だけ違うのってのもなんかなーと思い、結局同じのにした。

 

友希那「……!……美味しい。」

 

楓「ほんとですか?良かったー。」

 

どうやら、この人の口に合ったみたいだ。

 

友希那「……」

 

楓「……?どうかしましたか?」

 

友希那「……でも……少し、しょっぱいわね。」

 

楓「え!?しょ、しょっぱい!?」

 

ま、マジ?

 

ちょ、ちょっと食べてみよう。

 

……あ、いただきます。

 

あむ……モグモグモグ……。

 

……別に、しょっぱくはないけどなぁ。

 

楓「うーん……別にしょっぱくはないような……。……!」

 

友希那「……ポロッ」

 

……なるほどな。

 

そういうことか。

 

楓「……コーヒーで、口直ししましょうか。」

 

友希那「……ええ。……そうね。」

 

飲み物でも飲めば、少しは気持ちが落ち着くだろう。

 

……やっぱり、ちょっと寂しいよなー。

 

たった四日間会っただけだけど……なんか、それ以上にいっしょにいた気がするんだよなー。

 

……いつかまた、会えるといい…「ちょっとあなた!」!?

 

楓「え?な、何です…「これブラックコーヒーじゃない!」え……だ、だって、昨日飲んでたから、それでいいかなって……」

 

友希那「昨日私が飲んでたのは、ブラックじゃなくて甘……!……」

 

楓「? 甘?」

 

友希那「……な、何でもないわ。」

 

え……な、何?

 

どういうこと?

 

……あ。

 

……もしかして……そういうこと?

 

楓「……なんか、意外ですね。」

 

友希那「……わ、悪い!?」

 

楓「いや……人間誰しも、苦手はあるものですから。僕にも、あなたにも。」

 

友希那「……スマホ。」

 

楓「へ?」

 

友希那「スマホを出してちょうだい。持っているわよね?」

 

楓「……まぁ、持ってますけど…「それなら出して、今すぐに。」わ、分かりました……。」

 

……あれ?

 

この流れって、まさか……。

 

友希那「……連絡先を、交換しましょう。」

 

ですよねー。

 

……ん?

 

でも、何か久しぶりな気がするなー。

 

楓「えーっとー……これか。」

 

友希那「……」

 

楓「……あのー、どうしました?」

 

友希那「……やり方を、忘れてしまったわ。」

 

楓「……マジですか。」

 

この人、弱点多くない?

 

なんか、心配になってくる……。

 

 

 

 

 

楓「……はい、たぶんこれで出来たと思います。」

 

友希那「あ、ありがとう。……」

 

……"友希那"?

 

……な、何て読むんだ……?

 

と、とも……き……?

 

友希那「……友希那(ゆきな)よ。」

 

楓「へ?」

 

友希那「友希那(ゆきな)。それが私の名前。」

 

楓「は、はぁ……。……あ、あのー……」

 

友希那「何?」

 

楓「名字って、設定してないんですか?」

 

友希那「? そんなの、名前だけで十分でしょ?」

 

楓「……そ、そうですか……。」

 

……ま、いっか。

 

ほんとは名字で呼びたいけど……聞くのも失礼だろうし。

 

友希那「……では、改めてよろしく。……楓。」

 

楓「あ、こ、こちらこそ。……ゆ、友希那さん。」

 

友希那「……ええ。」

 

こうしてまた一人、僕のスマホに連絡先が追加された。

 

……なんか久しぶりだな、こういう感じ。




最近、YouTubeのバンドリ公式がRoseliaやパスパレ、ハロハピなどの曲をフルであげていることに気付きました。

公式神か……??


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59話 友希那、楓の家へ、いざ参らん

皆さん、お久しぶりです。

こっちの世界の知栄砂空です。

なかなか続きが書けず、日々悩んでいたらいつの間にか別のシリーズを書いてしまっていて、二ヶ月前にやっと続きが思いついたので"よし、続き書こう!"とはなったものの、勉強だの他のことだのでなかなか時間がとれず、ちまちま書いていたらこんな時期になってしまいました。

見返してみたら、最後の更新からもう半年以上経っていて、自分でもびっくりしました。

たぶん、おそらく、もうこのシリーズを読んでいる人はいないでしょうが、あるときふと読み返してみたら……自分で言うのも難なんですが、意外と面白かったんです。

思えばこのシリーズも、もう一つのシリーズも、全て自己満で描き始めたものでした。

久しぶりに読んでみたら、意外と面白いな……これを未完で終わらせるのは、もったいないな……と思い、半年以上経った今、更新を再開することにしました。

もともと終わらせるつもりもなかったんですが……これだけ間が空くとは思わなかったので……。

僕の自己満で書いている本シリーズを、少しでも見てくださっている方……相変わらず不定期にはなりますが、今後もどうぞ、よろしくお願いいたします。


【コンビニ】

 

楓「うーん……。」

 

 

 

 

 

モカ「相変わらず悩んでますなー。」

 

リサ「まさか、あれからほんとに毎日通ってくれるなんてね〜。それだけ、このコンビニを気に入ってくれたってことかな〜♪」

 

モカ「お弁当で悩む空見先輩、もはや名物と化してきそうですねー。」

 

 

 

 

 

なんかコソコソ聞こえるけど……気づかないふりしとこ。

 

しっかしどうしたもんかな〜?

 

お弁当の種類が豊富すぎて、毎回毎回悩んじゃうよ……。

 

……クロの件から三日、僕は毎日こうしてこのコンビニに通っている。

 

たぶん、夏休み中ずっと通うことになりそう……。

 

だって、本当に商品の種類が豊富で、どれも美味しそうなんだもん。

 

しかも、今井さん情報によると中旬頃には新商品や期間限定商品が出るらしいから、それも気になるし……。

 

って、それよりも今は、今日の昼ごはん選ばないとだよな。

 

うぅ……迷うなぁ……。

 

『ピロリン♪』

 

ん?

 

今のはメッセージの……。

 

いったい誰から……。

 

……いや、長っ……。

 

えーっと……。

 

……え?

 

えぇぇぇ!!??

 

 

 

 

 

モカ「? 空見先輩、なんかスマホ見て驚いてるような……。」

 

リサ「ほんとだ。どうしたんだろう……って、え!こっち来る!?」

 

モカ「さっきまであんなに迷ってたのに……。」

 

楓「……お、お会計、お願いします……。」

 

リサ「お、OK〜。モカ、袋詰めお願い。」

 

モカ「分かりましたー。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リサ「はい。300円のお釣りだよ。」

 

楓「ありがとう。えーっと……」

 

リサ「……さっきからそんなに急いで、何かあったの?」

 

楓「う、うん、まぁね。ちょっと、友達に呼ばれちゃって……。」

 

リサ「友達……。! 分かった!花音だ!」

 

楓「ま、まぁそんなとこ。あ、じゃあ僕行くね!今日もありがとう!タッ」

 

リサ「! う、うん。」

 

モカ「またのお越しをー。」

 

リサ「……花音、じゃないのかな?」

 

モカ「気になりますー?」

 

リサ「うん……まぁ、ちょっとね。でも、今は仕事中だし。明日にでも聞いてみよっかな〜。」

 

モカ「お、それはいいですねー。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【公園】

 

はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、……。

 

つ、着いた……。

 

ど、どれくらい待たせちゃったんだろう……。

 

ていうか、ほんとにいるのか……あ。

 

普通にいたわ。

 

 

 

 

 

友希那「……」

 

 

 

 

 

ベンチに座り、何やらスマホを見ているようだ。

 

こっちにはまだ気づいてない……。

 

となると、気づかれないように背後に回るべきか、素直に正面からいくか。

 

……いや、断然後者だろ。

 

知らなかったとは言え、人を待たせてるんだから……。

 

……行くか。

 

 

 

 

 

友希那「……ふふ♪…「あのー……。」!? あ、あなた、いつからそこに……?」

 

楓「いや、今来たばっかですよ。」

 

友希那「……そ、そう。」

 

楓「……あ、お、遅くなってすみません……。ちょっとコンビニで買い物してたもので……。」

 

友希那「いえ、そんなに待ってないから大丈夫よ。」

 

楓「そ、そうですか……。」

 

なら、いいか……。

 

しかし、こうして会うのは三日ぶりか。

 

久しぶりのような、そうでもないような……。

 

友希那「……いつまでそこに突っ立ってるのよ。」

 

楓「え?」

 

友希那「座りなさいよ。ここに。」ポンポン

 

楓「あ……じゃあ、はい。」

 

端の方に座ってたのはそういうことだったのか……。

 

楓「よっ、と。」

 

友希那「……また、何か買ってきたの?」

 

楓「あ、はい。今日の昼ごはんを……あ。」

 

友希那「どうしたの?」

 

楓「……友希那さんの分、買ってくるの忘れてました……。」

 

友希那「べ、別にいいわよそんなの……。だいたい、あなたは私に呼び出されてここに来たんでしょう?だったら、私に何か礼をする、なんて義理はあなたにはないはずよ。」

 

楓「……まぁ、それはそうですけど……」

 

コンビニで昼ごはんを選んでるときにきたメッセージ。

 

それは友希那さんからで、こんな長文だった。

 

 

 

 

 

友希那『突然でごめんなさい。今私は、あの公園にいるの。一人ベンチに座りながら、クロの写真を見たり、あの日のことを思い出したりしながら……。そのとき、ふと思ったの。そういえば楓は、"猫を飼っている"と言っていた、と。……私が何を言いたいか、あとは分かるわよね?もしあなたの都合が良ければ、あの公園に来て。』

 

 

 

 

 

……まぁ、長文だよな。

 

普通に一言二言でいいのに……。

 

……言われてみれば確かに、急いでて友希那さんの分を選ぶ暇なんてなかったな。

 

この人が食べたのかどうかってのも、改めて考えたら分からないし。

 

……余計なお世話だったかもしれん。

 

楓「……」

 

友希那「……クロ、元気にしているかしらね。」

 

楓「! ……きっと、あの人達と楽しく暮らしてますよ。」

 

友希那「そう、願いたいわね。」

 

……今思えば、不思議な出会いだったなぁ。

 

補習初日、学校に向かってる途中で会って……補習が終わった後その場所に向かったら、友希那さんと会って……それから四日間、クロと遊んだり、クロの写真を撮ったり、クロの飼い主が現れたり……。

 

……貴重な経験だったかもなぁ。

 

友希那「……さて、そろそろ行きましょうか。」

 

楓「? 行くって、どこへ……?」

 

友希那「何を言っているの?メッセージ、送ったでしょう?」

 

楓「メッセージ……。あ。」

 

 

 

 

 

『そういえば楓は、"猫を飼っている"と言っていた、と。……私が何を言いたいか、あとは分かるわよね?』

 

 

 

 

 

あー……あれ、本気だったんだ。

 

いや、でも……。

 

楓「で、でも、それはちょっと、まずいんじゃ……」

 

友希那「何がまずいのよ。私はただ、あなたが飼っているというにゃーんちゃ……猫に会いたいだけよ。」

 

楓「いや、だからそのための過程がまずいんですって……」

 

この人、気づいてないのか?

 

いや、気づいてるけど、それに関して何も思ってないのか……。

 

友希那「ほら、さっさと行くわよ。早くあなたの家に案内してちょうだい。」

 

楓「……はぁ。分かりましたよ……。」

 

腹をくくるしかないのか……。

 

幸い、今日は翔真はいないけど……。

 

楓「うーん……。」

 

友希那「……それと、もう一つ。」

 

楓「今度は何ですか……?」

 

友希那「あなたの家に行く前に、……コンビニ、寄ってちょうだい。」

 

楓「コンビニ?……って、僕がさっきも行ってたコンビニですか?」

 

友希那「コク」

 

楓「いいですけど……何で…「秘密よ。」そ、そうですか……。」

 

……仕方ない。

 

黙って友希那さんの案内役を全うするか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【芸能事務所 スタジオ】

 

「はい!OKでーす!Pastel✽Palettesの皆さん、15分の休憩に入ってくださーい!」

 

日菜「いやー、面白かったー!」

 

麻弥「何も面白くないですよー!日菜さんのおかげで、恥かいちゃいましたよ〜!」

 

日菜「まぁまぁ。みんな笑ってたし、スタジオも大盛り上がりだったし、結果オーライだよ♪」

 

麻弥「全然良くないです〜!!」

 

イヴ「マヤさん!私、感動しました!マヤさんのアイス十段重ねチャレンジ、絶対に諦めないというブシドーの心を感じました!!私も見習って、いつか跳び箱十五段チャレンジに……」

 

麻弥「見習わなくていいですって〜!!」

 

日菜「あはは、何それ〜、すごく面白そう〜!」

 

 

 

 

 

千聖「……彩ちゃん。何?話って。」

 

彩「……」

 

千聖「さっきのミスなら、気にすることないわよ?いや、ミスというか、あれは……。……そう!彩ちゃんの真剣さが伝わってきて、とても良かった…「空見くんの、ことなんだけど……。」……楓の?」

 

彩「うん……。」

 

千聖「……楓と、何かあったの?」

 

彩「何かあった……わけじゃないんだけど……。ちょっと、気になることがあって……。」

 

千聖「……そういえば彩ちゃん、前まで補習に行ってたのよね。」

 

彩「うん。空見くんと、あと沙也加ちゃんもいたから、苦ではなかったけど……」

 

千聖「けど?」

 

彩「……」

 

千聖「……彩ちゃん。黙っているだけじゃ、何も伝わらないわよ?」

 

彩「ごめん……。実は私も、よく分からなくて……」

 

千聖「分からない……?……あなたは、自分でも分からないことを相談しようとしたの?」

 

彩「ち、違うの!空見くんのことで思うことがあるのは確かなの!でも……それが何なのか、はっきりしてなくて……。あーもう何なんだろ!このもやもやした気持ち!」

 

千聖「……ちなみにそのもやもやは、前の花音のときと同じもやもやなの?」

 

彩「え?」

 

千聖「花音が、たえちゃんにヤキモチをやいてたときよ。」

 

彩「……あー。……ううん、あのときとは、少し、違う気がする……。ヤキモチとかではないんだけど……うーん、何なんだろう……。」

 

千聖「……はぁ。分かったわ。じゃあ、あなたがそのもやもやした気持ちを感じるようになったきっかけを教えてちょうだい。」

 

彩「きっかけ……。」

 

千聖「話から読み取るに……彩ちゃんがそれを感じるようになったのは補習のときからだと思うの。だから、補習のときのことを詳しく話してくれれば、そのもやもやが何なのか。何がきっかけなのか。いっしょに考えることができるはずよ。」

 

彩「そっか……。うん、分かった!あ……話長くなって、休憩時間終わっちゃうかもしれないけど……」

 

千聖「構わないわ。休憩時間より、友達の悩みのほうが大切だもの。」

 

彩「千聖ちゃん……。……よし。じゃあ、一から話すね?」

 

千聖「ええ、お願い。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【空見家】

 

友希那「……ここが、あなたの家……。」

 

楓「……」

 

ついに、着いてしまった……。

 

マリーに会うということは……すなわち、僕の家に入るということ。

 

そのことについてどう思ってるのか聞こうと思ったけど、なかなか聞けず、今に至ってしまった。

 

くそ……僕のいくじなし……。

 

友希那「"空見"……。……空見?」

 

楓「何ですか?」

 

友希那「……いえ、何でもないわ。(どこかで聞いたことあるような気がするのだけれど……きっと気のせいね。)」

 

楓「……あの、最後に確認なんですけど、ほんとに入る…「くどいわよ。」……すみません。」

 

たぶんこの人……分かってるな。

 

分かってるけど、猫に会いたい欲が優先されてるから、そういう気持ちは一切ないという……。

 

いや、猫パワー強っ……。

 

楓「……でも友希那さん。僕もこういうの初めてなので、ちょっと心の準備を…「そんなものいらないわ。ほら、早く入って。」いや、でも……」

 

友希那「楓!」

 

楓「!?」

 

友希那「……いくわよ。」

 

楓「……は、はい……。」

 

……もう、腹をくくろう。

 

……ほんと、翔真やお母さんがいなくて良かった……。

 

友希那「……」

 

 

 

 

 

ガチャ

 

楓「ただいまー。」

 

友希那「お邪魔します……。」

 

あ、ちゃんとあいさつはするのね。

 

 

 

 

 

???「みゃ〜ん!」

 

 

 

 

 

友希那「!?」

 

お、この声は。

 

 

 

 

 

タン……タン……タン……

 

マリー「……みゃ〜ん♪」

 

楓「ただいま、マリー。」

 

マリー「みゃ〜みゃ〜♪」

 

友希那「……」

 

楓「よ、っと。……友希那さん。こいつが家の愛猫、マリーです。」

 

マリー「みゃー?」

 

友希那「……」

 

楓「……?友希那さん?」

 

さっきまであんなに会いたがってたのに、全く応答がない……。

 

マリーじゃお気に召さなかったのか……?

 

……なんて、そんなことあるわけないよな。

 

うん、100%ありえない。

 

家の可愛い可愛いマリーがお気に召さないなんてことは、天池がひっくり返ってもありえない。

 

友希那「……な……」

 

楓「な?」

 

友希那「……撫でても……いいかしら……。」

 

楓「あ、はい。ほら、友希那さんに撫でてもらえ。」

 

マリー「みゃー!」

 

友希那「……ゴクリ……ソー……」

 

マリー「……」

 

楓「……」

 

……フサ

 

友希那「!!……ナデナデ」

 

マリー「みゃ〜ん♪」

 

楓「こいつ、撫でられるのが大好きなんですよ。」

 

友希那「そ、そうなのね……。……」ナデナデ……

 

……ゴロゴロゴロ

 

友希那「!!」

 

楓「お、ゴロゴロ言い出したな。」

 

友希那「……本当に、嬉しいのね……。」

 

マリー「みゃー……」

 

楓「って、うっとりし始めてるじゃねえかお前。」

 

友希那「ふふ、眠いのね。」

 

楓「そうみたいです……。僕、マリーをベッドに寝かせてきます。」

 

友希那「私も行くわ。」

 

楓「いやでも、寝かせに行くだけですし…「私もこの子の寝顔、みたいもの。」……そ、そうですか。」

 

やっぱり、家上がるんか……。

 

もしかしたら、玄関だけでやり過ごせるかもと思ったんだけど……。

 

楓「それじゃあ……どうぞ。」

 

友希那「ええ……。」

 

とうとう、僕の家に女子が……。

 

め、めちゃくちゃ緊張する……。

 

楓「……」

 

友希那「……」

 

周りから見たら(周り誰もいないけど)、マリーを抱いてる僕に、友希那さんが着いてくるという、至ってシンプルな光景だ。

 

しかし僕自身は、……めちゃくちゃ緊張してます。

 

大事なことだから二回言ったけど……ほんとそうなのよ……。

 

僕の部屋にあるマリーのベッドにマリーを置いてくる、ただそれだけなのに、後ろに友希那さんがいることを意識しちゃうと、どうも……。

 

しかも、お互い無言だから尚更……。

 

……ん?

 

ちょっと待てよ?

 

友希那「! ちょっと何よ、いきなり立ち止まらないで…「あの、友希那さん。」……何かしら?」

 

楓「……やっぱり、待っててもらえますか?」

 

友希那「嫌よ。ここまで来て、どうして今更…「僕の部屋にあるんですよ!マリーのベッド!」……楓の、部屋?」

 

楓「はい……。」

 

友希那「……」

 

楓「……流石に、僕の部屋に入れるわけにはいかないので……友希那さんには、ここで待っててもらえると…「構わないわ。」……へ?」

 

友希那「構わないって言っているの。あなたの部屋?そんなの関係ないわ。私はただ、マリーの寝顔が見たい…「僕が嫌なんですよ!」!」

 

楓「……女子を家にあげることすらも初めてだったのに……そのうえ自分の部屋にもなんて……。……緊張するどころの話じゃねえよ……。」

 

友希那「……はぁ、分かったわよ。」

 

楓「! ゆ、友希那さん……分かってくれ…「その代わり!」ビシッ! ! そ、その代わり……?」

 

友希那「マリーの寝顔を、しっかり写真に撮ってきなさい。それで今日のところは我慢してあげるわ。」

 

楓「マリーの写真……。はい、分かりました!友希那さんが満足できる写真を、いくつか撮ってきます!」

 

友希那「え、ええ、お願い。」

 

楓「それじゃあ友希那さんは……そこのリビングにでも座っててください。」

 

友希那「分かったわ。」

 

楓「よーし、いくぞマリー。」

 

マリー「みゃーん……。」

 

タンタンタンタン……

 

友希那「……はぁ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜15分後〜

 

【空見家 リビング】

 

ガチャ

 

楓「すみません!遅くなりました!」

 

友希那「……いえ、大丈夫よ。それより、写真は?」

 

楓「それはもうバッチリ!ざっと30枚ぐらい撮ってきましたよ!」

 

友希那「さ、30枚!?……そんなに、撮ったの……?」

 

楓「いやぁ〜、なかなか納得いく写真が撮れなくて……。気づいたら、15分も経ってました。」

 

友希那「……ふふ。」

 

楓「え?」

 

友希那「あなた、相当の猫バカね。」

 

楓「……友希那さんに言われたくないですよ。」

 

友希那「わ、私は別に、そこまでじゃ…「猫のこと、"にゃーんちゃん"って呼んでるのにですか?」!! な、何のことかしら?私にはさっぱりよ。」

 

楓「毎回毎回言い直してますけど、あんなの誰だって気付きますよ……?」

 

友希那「っ!……しょ、証拠は?証拠はどこにあるのよ!」

 

楓「しょ、証拠……?」

 

友希那「そうよ!そこまで言うなら、ちゃんと証拠があるんでしょうね!」

 

楓「……」

 

友希那「……な、何黙ってるのよ。」

 

……スッ

 

楓「……」

 

友希那「……何で人のこと無視してスマホいじってるのよ……。」

 

楓「……サッ」

 

友希那「……何よ、これ。」

 

楓「見りゃ分かるでしょう?犬ですよ。」

 

友希那「……その写真と、今の話とどういう関係が…スッ !! にゃ、にゃーんちゃ……はっ!?」

 

楓「……」

 

友希那「……き、気のせいよ!私はそんな言葉、言った覚えない…スッ !! こ、このにゃーんちゃん、なんて可愛いの……?……!?」

 

楓「……今、言いましたね。」

 

友希那「……///!!」

 

楓「それが証拠です。……意外と早くボロが出ましたね。なんか、あっさりだった…「楓……?」はい?……!?」

 

友希那「……」ゴゴゴゴゴ……‼︎

 

楓「あ……あ、ああ……」

 

友希那「その記憶……消しなさい。……今すぐに!!」

 

楓「そ、そんな無茶言われても〜……。」

 

友希那「そう、消せないの……。だったら……

 

 

 

 

 

……私が消してあげるわ!!」

 

楓「!! ちょ、ちょっと友希那さん!!落ち着いてください!!」

 

友希那「待ちなさい楓!!すぐ楽にしてあげるから!!」

 

楓「うわっ!ちょ、どっから持ってきたんですかその木刀!?」

 

友希那「そこら辺に落ちてたわよ!!はっ!ヒュンッ!」

 

楓「そんなのあり〜!?うわっ!っぶねえ〜……。って友希那さん!!そんなの振り回さないでください〜!!」

 

友希那「安全に振り回してるから問題ないわよ!!ふんっ!ヒュンッ!」

 

楓「大ありですよ!!うおっ!?」

 

友希那「ちっ、ちょこまかと……」

 

楓「だ、誰か助けて〜〜!!」

 

友希那「待ちなさい!!楓〜〜!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ピンポーン』

 

 

 

 

 

楓・友「「!」」

 

……い、今のって……。

 

翔真?じゃあ、ないよな。

 

あいつだったら、わざわざチャイムなんて鳴らさないだろうし……。

 

 

 

 

 

『……ピンポーン』

 

 

 

 

 

友希那「……出ないの?」

 

楓「え……出ても、いいんですか?」

 

友希那「何でそんなこと聞くのよ。あなたの家でしょ?」

 

……まぁ、それもそうか。

 

じゃあ……出てみるか。

 

楓「それじゃあ、ちょっと行ってきます。」

 

友希那「ええ。」

 

近所の人かな?

 

それとも、宅配便……?

 

でも、頼んだ覚えないしな……。

 

お母さんとお父さんも、この時期に物なんて頼むわけないし……。

 

ま、出でみりゃ分かるか。

 

『ピンポーン』

 

楓「はーい。」

 

ガチャ

 

 

 

 

 

???「よっ、楓!久しぶりだな!」

 

楓「……え?」

 

???「え?って……俺だよ俺!お前の大親友の!」

 

……僕の、大親友……。

 

……はて、そんなのいたっけ?

 

???「お、お前……マジで忘れたのかよ……?」

 

楓「……とりあえず、今日は帰ってくんない?」

 

???「いきなり!?俺、向こうからはるばると来たんだぞ!?一人で来るの大変だったけど、それでも頑張ってなんとか来たんだぞ!?それなのに帰れなんて言うのか!?大親友の名前も忘れてよ!!」

 

楓「うっ、近い近い……。いや、あの、今日はほんとに、無理なんだよ……。明日とかなら、また来ていいからさ……。」

 

???「何で無理なのかちゃんと話してくれるまで帰らねえからな!!」

 

楓「ま、マジかよ……。」

 

 

 

 

 

友希那「楓?騒がしいようだけれど、何かあったの?」

 

 

 

 

 

楓「!?」

 

???「ん?今の声、誰だ…「何でも!何でもねえよ!とにかく!頼むから今日は帰ってくれ!今すぐに!!」いや、そんなこと言われても、帰る場所が……」

 

楓「僕が金やるから、ホテルでもどこでも泊まりゃいいだろ!?ほんと頼む!頼むから今日は帰ってくれ!明日ならいくらでも話聞くからさ!な?牧人!」

 

牧人「!! お、お前……名前、やっぱ忘れてなかったんじゃねえかああああ!!」

 

楓「だあああうるせえええ!!そして抱きつくな気色悪い!!分かったらさっさとここから離れて…「あなた、何してるのよ……。」!!」

 

牧人「え……?……だ、誰……?」

 

友希那「? あなたこそ、誰よ。」

 

楓「お、終わった……。」ガクッ

 

友希那「……」

 

牧人「……って、お……おお……女ぁ!?お、お前……何で自分の家に女連れ込んで……ってか、彼女いた……」

 

楓「だから帰れって言ったんだこんちきしょおおおお!!!こうなることが分かってたからなああああ!!!こんのバカ牧人がああああ!!!」

 

牧人「おいてめえ楓!これはいったいどういうことだ!!おい楓!!」

 

友希那「……

 

 

 

 

 

……バカが増えたわね。」




"Band life with…"。

なんて神コンテンツなんだ……。

そしてガルパ5周年!

おめでとうございます!!


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60話 久しぶりの再会、曽山牧人

さよひな誕生日おめでとうーーー!!!

6周年の大型アップデートで学年が一つ上がり、予想してた大学編(一部キャラ)バンドリがとうとう来るということで、これからどんな展開になっていくのか、とても楽しみです!!

そしてモニカに単独アニメキターーー!!!

約束、Song I am.、フィルムライブ2、ぽぴドリ、5周年アニメと、神アニメ&映画が続いてきてからのモニカ単独アニメだから、もう期待しかない!!

これでとうとう僕の中で密かに生まれてたモニカアニメ不遇説が解消されるのか……。

他にもいろんな発表があったけど、とりあえず今言えることは……





……バンドリは神!!!!!!


【空見家 リビング】

 

友希那「……」

 

牧人「……」

 

楓「……誰から何を、説明しようか……。」

 

友・牧「「とりあえず、この人が誰なのかを、説明してもらおうじゃないの(じゃねえか)。」」

 

楓「……ま、そうなるか。」

 

突然家に来訪してきた、謎の男……

 

 

 

 

じゃなくて、小学校からの友人である曽山牧人。

 

最近全然連絡がこないと思ったら、まさか向こうから来るとは……。

 

しかも友希那さんが家に来ている今日に限って……。

 

タイミングが悪すぎるだろ……。

 

楓「……まず友希那さん。こいつは俺の小学校からの友達の曽山牧人です。」

 

友希那「小学校からの……」

 

楓「実は僕、今年の4月に引っ越してきたんです。……県外の田舎から。」

 

友希那「引っ越して……。そうだったのね。」

 

楓「はい。」

 

友希那「……小学校からの友達ということは、それなりに親しい仲、ということよね?」

 

楓「まぁ、そうですね。いっしょに遊んだり、話したり……学校でもいっしょに行動することが多くて、係や委員会も同じ担当になったり、時には相談にのってもらうこともあったりして……。いろいろと、助けてもらうことも多かったです。」

 

友希那「そう……。……喧嘩は、しなかったのかしら?」

 

楓「もちろん、何回かありますよ。それもほとんどどうでもいいことで。……でも、そういうときは、いつもこいつから先に謝りに来てくれて……。『これは僕が悪いな……』って思ったことも、全部ですよ?」

 

友希那「そ、そうなの……。」

 

楓「はい。だよな?牧人。……牧人?」

 

牧人「……」

 

そういやこいつ、さっきから全く口出してないよな。

 

今もなぜか俯いてるし。

 

楓「おい牧人、お前どうし……って、何ニヤけてんだよ……。」

 

牧人「だ、だってお前!俺のいる前で、あんな恥ずかしいこと言うから……。そ、それ聞いてる俺の気持ちも考えろよな!?」

 

楓「……あ、照れてんのか。」

 

牧人「あんなの目の前で聞かされたら、恥ずかしいし照れるに決まってんだろうが///!!」

 

楓「お前って、昔からそういう女々しいとこあるよな。」

 

牧人「悪いかよ!」

 

楓「……別に?」

 

牧人「……つ、次はあんたの番だぞ!?何で女が楓の家にいるのかも含めて、全部話してもらう…「今のは、聞き捨てならないわね?」!?」

 

こいつ、度胸あんな〜……。

 

友希那さん相手に、"あんた"とか"女"とか……。

 

友希那「初対面の相手に向かって"あんた"なんて、失礼ではないのかしら?」

 

牧人「え、あ、いや……」

 

友希那「"女"もそうよ。別に私は構わないけど……もう少し言い方に気をつけたほうがいいわよ?曽山牧人さん?」

 

牧人「……す、すみません……。以後、気をつけます……。」

 

あ、あの牧人が、押されてる……。

 

流石、友希那さんだ……。

 

友希那「ふぅ。……私は湊友希那。羽丘女子高等学校の二年生よ。」

 

牧人「は、羽丘……?」

 

楓「花咲川の近くにある、もう一つの女子高だよ。」

 

牧人「あぁ、なるほどな。」

 

友希那「私がこの家にいるのは、楓が飼っている猫に会うため。それ以上の理由も、以下の理由もないわ。」

 

牧人「猫……。ああ、マリーのことか。……ん?てことはあん…ギロッ! じゃなくって、友希那さんは、猫が好きなんですか?」

 

友希那「別に、好きではないわ。」

 

牧人「? じゃあ何で…「猫というものに、少し興味があっただけよ。」きょ、興味……。」

 

……牧人には、自分が猫が大好きなことは言わないのか。

 

ま、最初はそのことをあんなに隠してたくらいだし、牧人に限らず、あまり知られたくないんだろうな。

 

友希那「……と、これでいいのかしら?」

 

牧人「……も、もう一つ、いいですか?」

 

友希那「何?」

 

牧人「楓と友希那さんは……付き合って…「「そんなわけないだろ(でしょ)!!」」そ、そこまで否定しなくても……。」

 

友希那「っ!……私としたことが、ついムキになってしまったわ。」

 

楓「ぼ、僕もです……。」

 

牧人「……しっかしびっくりだなー。向こうだと女子と全く縁のなかったお前が、今では自分の家に招いてるだなんて。」

 

楓「い、言っとくけどな牧人!僕が自分の家に女子を入れたのは、友希那さんだけだからな!?しかも今日初めて入れたんだからな!?それも半ば強引に言われて!!」

 

友希那「ちょっと、半ば強引って何よ!」

 

楓「だ、だってほんとのことじゃないですか!」

 

牧人「……変わったな、お前。」

 

楓「え?」

 

牧人「……よし!じゃあそろそろ、本題に移るとするか!」

 

楓「ほ、本題?」

 

牧人「おう!俺が今日、田舎からはるばるここに来た理由だ!」

 

楓「……!そ、そうだよ!一番重要じゃんかそれが!ってか、何で僕の家知ってんだよ!?」

 

牧人「まぁ待て。それも含めて全部話すからよ。」

 

い、一番気になってたことを聞きそびれてた……。

 

今日突然、牧人に家に来た理由、また、どうして牧人は僕の新しい家を知っていたのか。

 

……しかもこいつ、確か一人で来たって言ってたよな……?

 

……あそこからここまで、一人で……。

 

すげえ行動力……。

 

牧人「こほんっ。……俺が今日、突然お前の家に来た理由、それは……

 

 

 

 

 

グ~……

 

友希那「!」

 

牧人「え……何だ?今の音……。」

 

楓「……ごめん。僕のお腹が鳴った音……。」

 

ズコーッ!

 

牧人「な、何だよそれ……。」

 

友希那「(大袈裟な転び方ね……。)そういえば、昼ごはんまだだったわね。」

 

牧人「お、そうだったのか。なら丁度いいな。」

 

楓「丁度いい?」

 

牧人「俺、ここに来る前に、コンビニで昼飯買ってきたんだよ。お前の家でいっしょに食おうと思ってな。」

 

友希那「あら、奇遇ね。私もよ。」

 

牧人「ま、マジですか……。」

 

……さっきコンビニに寄ってたのは、そういうことだったのか。

 

牧人「よし!話の続きは、昼ごはんを食べながらするか!楓、お前の昼飯はあるのか?」

 

楓「う、うん。」

 

牧人「友希那さんも、それで…「構わないわよ。」んじゃあ決まり!」

 

というわけで、僕、友希那さん、牧人の三人で、それぞれコンビニで買った昼ごはんを食べることにした。

 

あ……マリーも呼んてくるか。

 

そろそろあいつもお腹空いた頃だろうし……。

 

……ん?

 

 

 

 

 

タン……タン……タン……。

 

友希那「! 楓、この音って……。」

 

楓「はい。たぶん、そうです。」

 

タイミングばっちりだな。

 

マリー「……にゃ〜。」

 

牧人「お、マリーじゃねえか。久しぶりだな。」

 

マリー「……にゃっ。」プイッ

 

牧人「あ、相変わらずだなおい……。」

 

友希那「……マリーはこの人のことが嫌いなの?」ボソッ

 

楓「嫌い、ってわけではないと思うんですけど……昔からこうなんです。ほら、おいでマリー。」

 

マリー「にゃ〜ん♪」ピョンッ

 

楓「よっ、と。すぐご飯の用意するからな〜。」

 

マリー「にゃ〜♪」

 

友希那「……すごい懐きよう……。」

 

牧人「羨ましいんですか?」

 

友希那「……別に。」

 

牧人「……おーい楓、友希那さんが羨ま…ギュッ! 痛っ!」

 

楓「? 何か言ったか?牧人。」

 

友希那「何でもないわ。さ、私達も昼ごはんの用意するわよ。」

 

牧人「は、はい……。」

 

友希那「……次はないわよ?」

 

牧人「ゾ~……。き、気をつけます……。」

 

楓「?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

楓「はい、マリー。」コト

 

マリー「にゃー♪パクパクパク……」

 

楓「……じゃ、僕達も食べましょうか。」

 

友希那「ええ。」

 

牧人「三人共コンビニ弁当だなんて、すごい偶然だよな。」

 

楓「そ、そうだな……。」

 

友希那「……」

.

偶然なのは、牧人だけなんだよなぁ……。

 

なんて、こいつには言えない……。

 

友希那「さ、食べるわよ。楓、合図を。」

 

楓「あ、合図?……あぁ、そういうことか。」

 

牧人「バシッと決めてくれよ?」

 

楓「そんな大袈裟なことしねえって。……では、いただきます。」

 

友・牧「「いただきます。」」

 

さっき牧人が言った通り、お昼は三人共、コンビニ弁当だ。

 

僕は友希那さんに会う前に急いで買ったカツ丼、友希那さんは家に来る前に寄って買ったそば、牧人は友希那さんと同じく家に来る前に寄って買ったらしいオムライスと、それこそ偶然にも、丼もの、麺、洋食と、それぞれ違う種類の弁当を選んでおり、牧人に至っては既に二口目を頬張ろうとしている。

 

友希那「……!美味しい。」

 

楓「……んー!旨っ!」

 

牧人「旨すぎて、どんどんご飯が進むな!」

 

牧人の言う通り、ほんとにめちゃくちゃ美味しい。

 

それは友希那さんも同じ様で、黙々とそばをすすっている。

 

これはマジで、毎日通い続けちゃうな。

 

マリー「……にゃ〜。」

 

友希那「……マリーも、満足そうね。」

 

楓「今日のご飯、いつもよりちょこっと良いやつにしてますから。満足してもらわないとこっちが困りますよ。」

 

友希那「そうだったのね。……良かったわね、マリー。」

 

マリー「にゃ〜ん♪」

 

楓「……あ、そうだ。それで牧人。今日お前が、向こうからわざわざ僕の家に来た理由なんだけど……」

 

牧人「! おうそうだった!飯が旨すぎて忘れるところだった!」

 

楓「忘れんなよ……。」

 

てかこいつ、もう食べ終わりそうじゃねえか。

 

早すぎんだろ……。

 

牧人「それじゃあ改めて、本題に入るとするか。……単刀直入に言うぞ?」

 

楓「ああ。」

 

友希那「……ねぇ、二人とも。」

 

牧人「? 友希那さん?」

 

友希那「口を挟むようで悪いのだけれど……私、席を外した方がいいのかしら?」

 

楓「……いや、それは別に…「その必要はありませんよ。」……」

 

牧人「正直言うと、友希那さんにはあまり関係のない話かもしれませんが……聞く分には、全然問題ありませんよ。」

 

楓「……おい牧人。お前、もうちょっと言い方ってもんを考えろよ……。」

 

牧人「え?……あ!ご、ごめんなさ…「いいわよ、別に。」え?」

 

友希那「私に関係ないというのは、事実だもの。もともとあなたは、楓に会いに来たのだからね。私は部外者、予想外の人物なのだから。」

 

楓「……お、怒ってます?友希那さん。」

 

友希那「別に怒ってないわ。」

 

楓・牧「「(絶対怒ってる……。)」」

 

牧人「……じゃ、じゃあ、単刀直入に言うからな?しっかり聞いとけよ?」

 

楓「あ、ああ。」

 

友希那「……」

 

牧人「俺が今日、突然お前の家に来た理由、それは……」

 

楓「……」

 

友希那「……」

 

牧人「……

 

 

 

 

 

……一度お前に、帰ってきてほしいからだ。あの田舎へ。」

 

楓「……え?」

 

友希那「……?」

 

牧人「……」

 

楓「……つまり、帰省してほしい、ってことか?」

 

牧人「そう!それだ!帰省!お前には一度、田舎に帰省してほしいんだ!」

 

楓「……帰省か。」

 

友希那「ちょ、ちょっと待ってちょうだい。」

 

牧人「? どうしたんですか?友希那さん。」

 

友希那「帰省……つまり、一度この町を離れる、ということよね?」

 

楓「まぁ、そういうことですね。」

 

友希那「……」

 

牧人「……もしかして友希那さん。楓が向こうに行ったら、寂しいとか…「そんなわけないでしょう!?」! そ、そこまでムキにならなくても……」

 

楓「……き、帰省とは言っても、一泊二日くらいで帰…「三、四日。」……え?」

 

牧人「少なくとも、三、四日は向こうに滞在してほしい。」

 

楓「してほしいって……。それじゃまるで、誰かに頼まれたかのような言い方じゃねえか……。」

 

牧人「……」

 

友希那「三、四日……。」

 

楓「……まぁ、いいけどさ。で?いつ帰省してほしいんだ?明後日とか、しあさってとかか?」

 

牧人「まぁ、そのくらいだな。大丈夫か?」

 

楓「ああ、全然。……でも、確かに良い機会かもな。」

 

牧人「そうだろそうだろ!きっとあいつらも、そしてお前のばあちゃんも喜ぶぞ!」

 

楓「……おばあちゃんか。」

 

牧人「へ?」

 

楓「おばあちゃんに何か言われたんだろ。だから突然家に来て帰省しろなんて……。」

 

牧人「……ば、バレたか……。」

 

友希那「……その帰省先には、あなたの祖母がいるの?」

 

楓「はい。もともと暮らしてた家の近くに、おばあちゃん家があるんです。そこに。」

 

友希那「そう……。」

 

牧人「……一昨日くらいに、お前のばあちゃんが家に来てな?お前のことを聞いてきたんだよ。楓は元気か?しっかりやれてるのか?ってな。」

 

友希那「心配、してるのね。」

 

牧人「楓のやつ、ばあちゃん子なんですよ。昔から自分家よりばあちゃん家で生活することが多かったし、学校の行き帰りも出発先や帰宅先は必ずばあちゃん家、夜寝るときだって、自分家よりばあちゃん家で寝るほうが断然多かったですし…「もういいだろ牧人、恥ずかしいからやめろって……。」おっと、悪い楓。」

 

楓「絶対悪いって思ってないだろ……。」

 

牧人「それで俺、じゃあ今度楓を連れてくる、って言っちゃってさ。」

 

楓「お前……。僕に何かしらの用事があったらどうするつもりだったんだよ……。」

 

牧人「そのときはそのときだ。でもお前、基本用事なんてないだろ?バイトもしたことねえし。」

 

楓「いや、今日絶賛用事中だったんだが?」

 

牧人「……あ。」

 

友希那「……」

 

牧人「……きょ、今日は別にいいんだよ!明後日とかはないよな?な?」

 

楓「……ない。」

 

牧人「だろ!?」

 

楓「だろ!?じゃねえよ!!……ったく、ほんとお前ってやつは……」

 

牧人「まぁまぁ。とりあえず、帰省するって用事ができて良かったじゃねえか。」

 

楓「無理矢理つくらされた用事だけどな。……別にいいけど。」

 

友希那「……ねぇ、楓。」

 

楓「? 何ですか?友希那さん。」

 

友希那「マリーも、いっしょに行くのかしら?その帰省先へ。」

 

楓・牧「「……あ。」」

 

友希那「? 何よ、その"あ。"って……」

 

牧人「……しまった。」

 

楓「ああ、これは盲点だった……。」

 

友希那「ちょっと、どういうことよ。分かるように説明してちょうだい。マリーを連れて行くことに、何か問題があるの?」

 

牧人「……問題しかねえよな。」

 

楓「ああ……。」

 

友希那「?」

 

マリー「……んにゃ……?」

 

あ、起きた。

 

……悪いなマリー。

 

ほんとに忘れてた、お前のこと。

 

さて……どうしたもんか……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【芸能事務所 スタジオ】

 

「今回の収録は、これにて全て終了です!Pastel✽Palettesの皆さん、ありがとうございました!」

 

Pastel✽Palettes『『『ありがとうございました!!』』』

 

 

 

 

 

日菜「いやー、楽しかったねー!」

 

麻弥「な、なんとか終わりました……。」

 

日菜「まさか麻弥ちゃん、最後のクイズであんな逆転劇見せちゃうなんてね〜。流石の私も驚いたよ!」

 

麻弥「う、運が良かっただけですよ〜。」

 

イヴ「そんなことはありません!運も実力のうちと言いますし、これは紛れもなく、マヤさんの努力の賜物です!」

 

麻弥「イヴさん……。フヘヘ、ありがとうございます!」

 

日菜「ねー、二人もるんっ♪てきたよね〜!」

 

彩「……」

 

千聖「……え?あ、ごめんなさい。もう一度言ってもらえるかしら?」

 

日菜「……」

 

イヴ「さっきの収録で、マヤさんがすごかったと、話してたんです!」

 

麻弥「べ、別にすごくないですよ〜。」

 

千聖「そうだったの。……私も、あのときの麻弥ちゃんを見て、見習いたいと思ったわ。」

 

麻弥「そんな……恐れ多いですよ〜……。」

 

彩「……」

 

日菜「……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【芸能事務所 レッスンスタジオ】

 

千聖「それじゃあ私は、これで失礼するわね。」

 

麻弥「はい!お疲れ様でした!」

 

イヴ「お疲れ様です!」

 

千聖「ええ、お疲れ様。」

 

 

 

 

 

彩「……じゃあ、私もそろそろ帰ろうかな。」

 

麻弥「? 珍しいですね。いつもなら、一人残って練習していくのに……」

 

彩「うん……。ちょっと、用事があってね。」

 

イヴ「用事……それなら仕方がありませんね。」

 

麻弥「後片付けは、ジブン達でやっておきますから。」

 

彩「なんか、ごめんね?」

 

日菜「大丈夫大丈夫!あたし達はいいから、早く帰ってその用事を済ませなよ!」

 

彩「日菜ちゃん……。うん、ありがとう。……よいしょっと。じゃあまたね!日菜ちゃん、麻弥ちゃん、イヴちゃん!」

 

麻・イ「「はい!」」

 

日菜「まったねー!」

 

タタタタ……

 

日菜「……ふーん……。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彩「……はぁ。……「その顔、ファンの人達の前では見せちゃダメよ?」!クルッ ち、千聖ちゃん!」

 

声がしたほうを振り向くと、そこには、壁に寄りかかりながら腕を組んでいる千聖ちゃんがいた。

 

千聖ちゃんのその格好も、ファンの人に見られたらダメだと思うんだけど……。

 

でも……流石千聖ちゃん、様になっててカッコいいな……。

 

千聖「……きっと、あなたは私を追ってくるだろうと思っていたわ。だから、こうして待っていたの。」

 

彩「……」

 

千聖「それに、話はまだ終わっていないもの。」

 

彩「……でも、全部話し…「そう、全部話してもらった。……でも、それで終わりじゃないでしょう?あのときは丁度休憩時間が終わってしまったから言わなかっただけ、そうよね?」……」

 

千聖「話を聞いた、そしてその原因が何なのかいっしょに考えた、最終的にこうなのではないかと、私の見解を述べた。あなたは頷き、それで相談は終わり。……違うでしょ?その続きを、あなたは求めているんでしょう?」

 

彩「……だって、そこまで千聖ちゃんには、迷惑かけられないし…「バカね。」……」

 

千聖「迷惑なら、もう何度もかけられてるわよ。」

 

彩「そ、そんな何度もかけてな…「かけてるわよ。」……そ、そうなんだ……。」

 

千聖「……でも、嫌だと思ったことは、一度もないわ。」

 

彩「! ……千聖ちゃん……。」

 

千聖「今回も、最後の最後まで、あなたの迷惑に付き合うわ。何でも言ってちょうだい、彩ちゃん。」

 

彩「……うん……うん!」

 

千聖「もう、それくらいで泣かないの。」サスサス

 

彩「えへへ……。千聖ちゃん、ありがとう!」

 

やっぱり千聖ちゃんは、私の大切な仲間で、親友で……。

 

……よーし!

 

彩「これから羽沢珈琲店に行って、作戦会議だー!」




最近初めて、Spotifyという無料で数多の音楽が聴ける神アプリがあることを知りました。

月額払わなくても音楽聴き放題って……そんな神アプリがほんとにあっていいんですか……。




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61話 マリーの行方やいかに

今日から去年の『ガールズバンドライフ!PLUS ガチャ』の復興が……。

限定ましろちゃんの復刻ガチャが来ちまうよぉ……。

……まぁとりあえず10連引きます。

それでダメなら諦めて、花音ちゃん誕生日ガチャまで石貯めます。

頼むからそれまでに僕のガチャ欲を沸き立たせるようなガチャは来ないでくれ……。


【コンビニ】

 

リサ「そっか〜、じゃあ一旦、その田舎に帰っちゃうんだ。」

 

楓「うん。だから当分、コンビニには来れないと思う。」

 

リサ「大丈夫大丈夫!今丁度夏休みなんだし、帰っておばあちゃんに元気な姿見せてあげなよ!」

 

楓「……うん。ありがとう、今井さん。それとさ、一つ気になってたんだけど……

 

 

 

 

 

……何で、ここにいるの……?見た感じそれ、私服っぽいし……。」

 

リサ「あぁ、今日バイト休みだからさ。ちなみにモカは、バンドの練習。」

 

楓「そ、そう……。」

 

あの人も、バンドしてるのね……。

 

確か、今井さんもだよな?

 

しかも氷川さんと白金さんと同じ、Roselia……。

 

じゃなくって!

 

楓「いや、バイト休みなら、どうしてここに……」

 

リサ「お昼を買いに来たんだよ。」

 

楓「お、お昼……?……でも、それなら別の場所で…「アタシも、ここのお弁当が好きなんだ〜。それとも何〜?お姉さんがいっしょじゃ不満かな〜?」べ、別にそういうわけじゃ……」

 

リサ「……!空見、これオススメだよ♪」

 

楓「ち、チンジャオロース弁当……。確かに美味しそう……。」

 

リサ「でしょ〜?さて、アタシも選ぼっかな〜。」

 

……ほんとに、ただここのコンビニの弁当が好きなだけなのか?

 

……何だ、じゃあ単なる僕の思い違いか。

 

楓「それじゃあ僕は、このチンジャオロース弁当にしようかな。」

 

リサ「お、オススメ選んでくれるんだ♪」

 

僕「うん。じゃ、僕先に買ってくるね。」

 

リサ「OK♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガー

 

楓「今井さんも、僕と同じのにしたんだ?」

 

リサ「うん♪なんか人に薦めたら、アタシも食べたくなっちゃって♪」

 

楓「そっか。……じゃあ、僕家こっちだから。今日はありがとね、また今度…「空見♪」ガシッ へ?」

 

リサ「この後用事とかないんならさ、あの公園寄ってこうよ。お昼もそこで食べてさ。」

 

……なんか、雲行きが怪しくなってきたぞ?

 

楓「い、いや、帰省の準備とかしないとだし、今日はもう…「アタシ、いつか空見とゆっくり話がしたいと思ってたんだよね〜。」そ、そうなの……?」

 

リサ「そ♪だから……ね?行こう?」

 

楓「……あの、今井さん。」

 

リサ「ん?」

 

楓「まさかとは思うけど……それが目的で、コンビニで待ち伏せしてたとかじゃ、ないよね?」

 

リサ「……」

 

楓「……」

 

リサ「……

 

 

 

 

 

……てへ♪」

 

や、やっぱり……。

 

リサ「空見は、アタシと話するの、嫌?」

 

楓「いや、別に嫌とかじゃないんだけど……」

 

リサ「けど?」

 

楓「……

 

 

 

 

 

……さっきから、あの店員さんの視線が痛くて……」

 

リサ「え?……あー……。」

 

それは、僕がいつものようにコンビニにお昼ごはんを買いに来たときのことだ。

 

なぜか店の前に私服の今井さんが立っていた。

 

僕が声をかける前に向こうが気づき、そのまま今井さんに先導されて店の中へ。

 

そこまではまぁいい。

 

問題はその後だ。

 

店に入った直後、何処からか殺気を感じた。

 

それでなんとなくレジの方を見ると、腕組みして仁王立ちをしながらこっちをじーっと見ている人がいた。

 

今井さんは気にすることなく弁当売り場に向かったが、僕はそれを気にしないことなどできなかった。

 

だって……めちゃくちゃ目線で追いかけてくるんだもん……。

 

僕が動く方動く方へ、じーっと、監視でもするように……。

 

それも、まるでロボットのように首を動かしながら……。

 

それは今も現在進行形で続いており、店の中からこちらをじーっと見ている。

 

……いや、マジで怖すぎるんだけど……。

 

リサ「あの人、このコンビニの店長だよ。」

 

楓「て、店長!?……何で、店長が僕のことを、監視でもするかのように……。僕、何も悪いことしてないよ?」

 

リサ「うーん……。それが、アタシもよく分からなくてさー。心当たりがあるとすれば……昨日店長に、空見のことを話したときかな?」

 

楓「……僕の、ことを……?」

 

リサ「うん。たまたまモカと、空見のことを話してたら、それを偶然店長が聞いてたみたいでね。空見のことを聞かれたんだ。"空見はどんな子なんだ?"、"アタシとはどういう関係なんだ?"ってね。」

 

楓「……」

 

リサ「で、『空見はただの友達です』って答えたら、『そっか……』って一言だけ呟いて、店の奥の方に行っちゃったんだよ。1分くらい経ったら、帰ってきたけどね。」

 

楓「……」

 

心当たりも何も……絶対それじゃん!!

 

何で!?

 

何でそれで僕が監視されなきゃいけないの!?

 

ただの友達ならそれでいいじゃん!!

 

それで『そっか……』→監視の流れが分からないんだけど!?

 

リサ「……もしかしたらアタシ達、ほんとはそれ以上の関係なのに、"ただの友達って嘘ついた"って思われてるのかも♪」

 

楓「え……?それ、どういう意味……?」

 

リサ「こういう意味♪」

 

ダキッ

 

楓「!? ちょ、ちょっと今井さん///!?」

 

な、何で急に、腕にしがみついて///……。

 

……ん?

 

 

 

 

 

店長「……」ゴゴゴゴゴ……‼︎

 

 

 

 

 

楓「!? い、今井さん今井さん!!店長!店長が見てるから!!」

 

リサ「あはは、やっぱりそういうことか〜♪」

 

楓「今井さん!?……もう〜!」

 

パシッ

 

リサ「あ……。」

 

楓「……その……ごめん。」

 

リサ「……もう、何で謝ってんの!」バシッ!

 

楓「痛っ!ちょ、今井さん!」

 

リサ「ごめんごめん♪は〜、空見をからかうのは楽しいな〜♪」

 

楓「……」

 

く、くっそ〜……。

 

リサ「大丈夫だよ。店長には、アタシから話しておくから。」

 

楓「……ちゃんと誤解解いといてよ?マジ、命に関わりそうだから……。」

 

リサ「もう、大袈裟だなぁ空見は。……それじゃあそろそろ、公園に行こうか。」

 

楓「……う、うん。」

 

こういうとこ、やっぱギャルだな……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【公園】

 

……思ったけど、マジで最近コンビニと公園しか行ってないな……。

 

リサ「うわぁー!美味しそう〜!」

 

楓「だ、だね。」

 

僕と今井さんは、あのベンチに座っている。

 

ここにいると……クロのことを思い出すよなぁ……。

 

リサ「ねぇ、空見。」

 

楓「ん?」

 

リサ「空見ってさ、猫好きなの?」

 

楓「……え?」

 

え……何?

 

今、心読まれた……?

 

リサ「だから猫だよ。好きなの?」

 

楓「……な、何で……?」

 

リサ「空見のスマホの待ち受け、猫になってたからさ。だから、好きなのかなー?って。」

 

楓「す、スマホの画面……?」

 

な、何で今井さんが、そんなこと知ってんだ……?

 

僕、スマホの待ち受けなんて、見せたことないのに……。

 

……まさか今井さんって、エスパー……?

 

リサ「で、どうなの?猫、好きなの?」

 

楓「……う、うん。」

 

リサ「……あはは、やっぱりそっか〜♪」

 

え……?

 

何で、あはは……?

 

リサ「いやさ、アタシの友達にも、すっごく猫が好きな子がいてさ。その子の待ち受けも猫だから、もしかしたらって思ってね。そっか、やっぱりか〜。じゃあ空見とあの子、気が合いそうだな〜。」

 

楓「そ、そうなんだ……。」

 

リサ「うん!あ、今度アタシ、その子に空見と会ってくれるよう相談してみるから、OKだったら会ってあげてよ!」

 

楓「い、いいよそんな……。猫好きだからって、気が合うとは限らないし…「大丈夫だって♪お姉さんに任せなさい!」……」

 

ややこしいことになったな……。

 

今井さんの友達となると……やっぱり、ギャルだろうな……。

 

菊池さんや今井さんのおかげで、少しはギャルに対して耐性がついたとは言え、それが初対面の人だったら、たぶん無理……。

 

いや、たぶんじゃなくて絶対……。

 

……友希那さんと今井さんじゃ、気なんて全然合わなそうだよな。

 

性格も正反対だし……。

 

……そうだ、丁度猫の話題になったのなら……。

 

楓「あの、今井さん。」

 

リサ「ん?何?空見。」パクパク

 

いつの間にか弁当食べてる……。

 

僕も食おう。

 

楓「……さっきコンビニで、田舎に帰るって言ったじゃん?」

 

リサ「うん。」

 

楓「それに関して、一つ問題があるんだけど……。」

 

リサ「問題……。何何?お姉さんに話してごらんなさい。」

 

楓「……僕さ、猫飼ってるんだよ。今の家に。」

 

今更だが、僕が田舎から引っ越してきたことについては、コンビニで弁当を選んでるときに会話済みだ。

 

リサ「うんうん。」

 

楓「僕が田舎に帰るということは、もちろん、家族もいっしょにってことなんだけど……。その猫は、連れて行けなくて……。」

 

リサ「それって、家から出たがらないとか、そういうの?」

 

楓「ううん。……田舎の、おばあちゃんの家に行くんだけど……

 

 

 

 

 

……おばあちゃん、猫アレルギーで……。」

 

リサ「あ〜……。」

 

楓「前に住んでた家は、とっくに取り壊されたし、隠して連れて行くにしても、たぶんすぐ見つかるだろうし……。それで、今すごい悩んでて……」

 

リサ「なるほど……。それは問題だね……。」

 

ちなみに僕がマリーと出会ったのは、去年の夏頃だ。

 

空き地に捨てられてたのを、僕が見つけて保護した。

 

家族も猫を飼うことに賛成し、おばあちゃん家から数百メートル離れた前に住んでた家で飼い始めた。

 

みんな可愛がっていて、家族で手分けしてお世話をしていたが、おばあちゃんには、猫を飼ったということを秘密にしていた。

 

昔、おばあちゃんも猫を飼っていたが、そのときに猫アレルギーを持っていることが発覚し、それ以来、猫に関する話題は一切しなくなった。

 

よっぽど、自分が猫アレルギーだったことがショックだったのだろう。

 

田舎を出るときも、おばあちゃんやその他大勢の人達が見送ってくれたが、マリーを先にこっちに運んでくることで、猫を飼ったという事実を隠すことに成功した。

 

楓「ペットホテルみたいなところで預けてもらうことも考えたんだけど……まだ一才だし、三、四日間も預けるのは可哀想だなと思って……。」

 

リサ「一才か……。確かにその年齢だと、猫ちゃんにとっても可哀想だし、預けるほうにとっても不安だよね……。」

 

楓「うん……。」

 

昨日、マリーを連れて行けないという事実に気づいたとき、牧人や友希那さんも、その解決策についていっしょに考えてくれた。

 

しかし、これだ!というような良いアイデアは何も思いつかなかったのだ。

 

このままだと、ペットホテル行きになってしまう……。

 

リサ「……チラッ」

 

楓「はぁ……どうしたもんか……。」

 

リサ「……アタシさ、いいこと思いついたかも。」

 

楓「え!ほんと!?」

 

リサ「う、うん。……ただ……」

 

楓「?」

 

リサ「それには……空見もアタシも、心の準備?みたいなものが必要っていうか……」

 

楓「と、とりあえず、それ教えてよ!マリーの一大事に関わることなんだ!」

 

リサ「い、一大事って……ちょっと大袈裟じゃ……。えっと、マリー?」

 

楓「あ……ご、ごめん。マリーっていうのは、飼ってる猫の名前で……」

 

リサ「……その子のこと、本当に好きなんだね。」

 

楓「も、もちろんだよ!大事な家族だもん!」

 

リサ「あはは、そうだよね〜。……そっか、じゃあこれは、責任重大だ。」

 

楓「? 今井さん?」

 

リサ「……アタシの考えた案っていうのはね……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【空見家】

 

楓「ただいまー……。」

 

なんかいろいろ疲れた……。

 

……ん?

 

この靴って、もしかして……。

 

 

 

 

 

???「お帰りなさい、楓。」

 

楓「……何でいるんですか、友希那さん……。」

 

友希那「……たまたまよ。」

 

楓「たまたまで家来ないでしょう!?」

 

牧人「ナイスツッコミ、楓。」

 

楓「牧人!お前何勝手に友希那さん家に入れてんだ!」

 

牧人「仕方ないだろ。友希那さんの圧が強…ギュウッ! 痛っ!」

 

友希那「……マリーに関しての解決策を思いついたから、伝えに来たのよ。」

 

楓「そ、そうですか……。」

 

前者は、聞かなかったことにしよう……。

 

ってか、解決策を思いついた?

 

楓「あ、あの、友希那さん。今の言葉、本当ですか?」

 

友希那「ええ、本当よ。……楓に黙って来たのは悪かったけれど、電話より、実際に会って話したほうが、気持ちが伝わりやすいと思ったから。」

 

楓「は、はぁ……。(気持ち?)」

 

マリー「……にゃ〜。」

 

楓「お、マリー、ただい…ヒョイ え?」

 

友希那「本当にお利口さんね、マリーは。」

 

マリー「にゃ〜♪」

 

ゆ、友希那さんが、マリーを抱っこしてる……。

 

僕でもマリーの抱っこに慣らすのに三日はかかったのに、この人はそれを一日で……。

 

友希那「さ、早く楓もこっち来なさい。私の思いついた解決策を、教えてあげるわ。」

 

楓「……」

 

何で僕の家なのに、友希那さんが先導してんだよ……。

 

まぁ、いいけどさ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

楓「はぁ!?友達を連れてきてほしい!?」

 

牧人「ああ……。昼頃に、明後日くらいにそっち行けそうって電話したら、『この前言ってた楓の友達って、どれくらいいるの?』って聞かれたから……『結構いるみたいだぜ。なんなら連れて来てやるよ。』って、つい言っちまって……。」

 

楓「……何やってんだよお前……。」

 

牧人「わ、悪い……。」

 

僕がいない間に、そんなことになっていたとは……。

 

ていうか、こいつもバカだろ……。

 

何だよ、『連れて来てやるよ。』って……『結構いるみたいだぜ。』だけでいいだろ……。

 

牧人「いや、ほんっとにすまん……。で、でも、問題が増えたわけじゃあねえぞ?マリーの問題は、友希那さんが良い解決策を…「そういう問題じゃねえだろ!!」……だ、だよな……。」

 

楓「ったく……。? ところで友希那さんは?」

 

牧人「そこ。」ユビサシ

 

楓「ん?……あ。」

 

 

 

 

 

フリフリフリ……

 

マリー「にゃ!……にゃ!にゃにゃ!……んにゃ!」

 

友希那「ふふ、良い調子よ、マリー。(可愛い……。可愛すぎるわ……。)」

 

 

 

 

 

楓「……あんな猫じゃらし、うちにあったかな?」

 

牧人「ここに来るときに、友希那さんが買ってきたらしい。」

 

楓「な、なるほど……。」

 

てかもう、猫好きなこと、牧人に隠してないじゃん……。

 

……二人とも楽しそうでなによりだけど、友希那さんの解決策を聞きたいから、ちょっとやめさせてくるか。

 

……心痛むけど。

 

楓「……あの、友希那さん。」

 

友希那「何?今私、忙しいの。悪いけれど、後にしてもらえるかしら。」

 

……自分から家に来たくせに……。

 

楓「で、でも、マリーに関わる重要なことですし……。あいつのせいでうまれてしまった新たな問題もどうにかしないとですし……。」

 

友希那「……」

 

楓「そ、その遊びなら、後ででも出来るじゃないですか。今はそんなことより、こっちの問題を…「そんなこと?」ギロッ! !!じょ、冗談!冗談です!」

 

牧人「地雷を踏んでどうする……。」

 

……どうすればいいんだ……。

 

友希那「……でも、そうね。私の案が通れば、この遊びも含めて、マリーと接する時間が増える。」ボソボソ

 

楓「? 友希那さん?」

 

友希那「……いいわ。私の考えた案を、教えてあげる。」

 

牧人「!」

 

楓「! 本当ですか!?」

 

友希那「ええ。……ものすごく悩んだわ。本当にそれでいいのか、楓に納得してもらえる方法なのか、と。」

 

楓「ぼ、僕に?」

 

友希那「……でも、決めた。もしこれでダメなら、また別の案を考えるまで。だから……言うわ。」

 

牧人「……」

 

楓「……」

 

友希那「……あなた達が向こうに行っている間、マリーをどうするか。それについて、私が考えた案というのは……。」




YouTubeにあがってたショート動画の『fly with the night』リリース記念メッセージNG集のあまねすが可愛すぎました。

5月のRoseliaライブまでお金貯めようと思ってたのですが、それを見て決めました。

やはり『fly with the night』は買います。

お金がないので通常版ですが、絶対『fly with the night』は買います、買わせていただきます。





だってあんな可愛い動画見せられたら買うしかないやろおおおおお!!!!!


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62話 集え、帰省同行者達

最近やっと暖かくなってきましたね。(むしろちょっと暑いぐらい?)

僕的には、今くらいの温度が一番丁度いいです。

弟は部屋が暑い暑いって言って嘆いてますけど……。


【空見家 台所】

 

楓「ふわぁ〜……。」

 

翔真「おはよう楓。」

 

楓「ああ、おはよう翔真……って、何食ってんの?」

 

翔真「何って、朝ごはんだよ朝ごはん。」

 

楓「朝ごはん?……あぁ、トーストか。」

 

牧人「お前も翔真に頼めば焼いてもらえるぞ?あむっ……ん〜!美味え〜!」

 

楓「……じゃあ、そうしてもらうよ。」

 

翔真「はいよ。何枚?」

 

楓「二枚。」

 

翔真「OK。」

 

……僕と翔真と牧人の三人で過ごす、奇妙な朝ごはん。(奇妙な理由は紛れもなく牧人)

 

しかし、それも今日までだ。

 

明日、僕達三人は田舎に帰省する。

 

……まぁ、三人だけではないかもしれないが。

 

楓「……牛乳取って。」

 

翔真「ん。」

 

楓「ありがとう。……トクトクトク……」

 

牧人「楓、次俺にも。」

 

楓「ああ。」

 

牧人「しっかし悪かったな、楓、翔真。いきなり家に押しかけて来ちまったうえに、泊まらせてまでくれてよ。」

 

楓「お前が泊まらせろって言ったんだろうが。金やるからどこかホテルにでも泊まれって言ったのに…「ホテル代を親友からもらうなんて、そんなバカな真似できるか!お前それ、いろんなやつに言いふらしたりしたら、友達なくすぞ!?いや、友達どころか信用すらも……。」……まだお前にしか言ってねえよ。」

 

翔真「お前そんなこと言ったのか?……引くわー。」

 

楓「うるせえな!もう言わねえよ!」

 

牧人「当たり前だ!!」

 

楓「っ!?な、何で牧人が怒ってんだよ。」

 

牧人「親友として、お前の将来を心配してやってんだろうが!転校したときの友達を作る極意、誰が教えてやったと思ってんだ!」

 

楓「……別に、頼んでねえし…「とにかく!金の話は家族や俺以外の他人には絶対するな!分かったか!!」わ、分かったよ……。」

 

牧人「分かればいいんだ。あむっ……もぐもぐ……」

 

楓「……「楓。トースト、とっくに焼けてるぞ。」! あ、サンキュー翔真。」

 

……ほんと、悪いやつではないんだよな。

 

むしろ良いやつだけど……。

 

マリー「にゃー。」

 

楓「! あ、ごめんマリー。お前のご飯まだだったな。今用意するから、良い子で待ってろよ?」

 

マリー「にゃ〜ん♪」

 

翔真「……ほんと、マリーって可愛いよなぁ……。」

 

牧人「……お前らってほんと、兄弟そろって猫バカだよな……。」

 

楓「もう、分かってるってマリー。ほんと可愛いなぁお前は〜。」ナデナデ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜二時間後〜

 

楓「じゃあ、僕と牧人出かけてくるから。明日の準備、今のうちにしとけよ?」

 

翔真「分かってるよ。な〜、マリ〜。」

 

マリー「にゃ〜♪」

 

……ほんとに分かってんのか?こいつ。

 

マリーを抱いてるところを見せびらかしやがって……。

 

牧人「よし。んじゃあ、行くか。行ってくるな、翔真。」

 

翔真「おう、いってらー。」

 

楓「行ってきまーす。」

 

さてと。

 

じゃ、行きますか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

牧人「……ところでよ、楓。」

 

楓「ん?」

 

牧人「マリーの件……本当にあれでいいのか?」

 

楓「……うん。大丈夫、友希那さんは信用できる人だから。」

 

牧人「とは言うけど、まだ会って一週間も経ってないんだろ?それに、あの目つきの鋭さ。……あれは、完全にこっちを見下してる目だ。何を命令されるか、分かったもんじゃねえぞ?」

 

楓「それはお前が余計なこといくつも言うからだろ……。ああ見えて優しいんだぞ?あの人は。」

 

牧人「……まぁ、マリーに向けてる目だけは、優しさしかねえな。」

 

それね……。

 

牧人とマリーへ接し方は、雲泥の差だもんな……。

 

牧人「……やめよやめよこんな話。それよりさ、お前の言う"友達"との待ち合わせ場所は、まだなのか?」

 

楓「いや、あとちょっとで着くぞ。この商店街を抜けたら、もうすぐだ。」

 

牧人「へぇ〜、こんなとこに商店街があるのか〜。……"山吹ベーカリー"とか、お前好きそうだよな。」

 

楓「好きだぞ。なんならもう何回か食べてる。」

 

牧人「そうなのか。……ちゃんと利用してんだな。」

 

楓「その言い方は、いろいろと誤解を招くからやめろよ……。」

 

牧人「悪い悪い。……お、あんなとこに公園があるぞ?」

 

楓「あぁ。……あそこだよ。待ち合わせ場所。」

 

牧人「え、そうなのか!?もうすぐじゃねえか!!」

 

楓「だからそう言ってんだろ……。」

 

牧人「よーし!じゃあ俺、先に行って見てこようっと!」タッタッタ……

 

楓「!? あ、おい!ちょっと待てバカ!」

 

何でそう考えもなしに行っちゃうかなー……?

 

ったく、どうなっても知らねえぞ?僕は。

 

 

 

 

 

【公園】

 

ワイワイガヤガヤ……

 

燐子「はい。それで、そのとき私が装備したアイテムが……

 

 

 

 

 

牧人「おー!あんたらが楓の友達かー!」

 

 

 

 

 

!? え……?」

 

紗夜「い、いきなり何なんですか!?あなたは!」

 

牧人「あぁ、悪い悪い。俺、楓の親友の曽山牧人。楓の友達がいるって言うから、来てみたん……だけ……ど……」

 

彩「……」

 

千聖「……」

 

花音「……」

 

牧人「……な、何だよ、その人を突き刺すような目……。」

 

千聖「あなたが楓の友達?……そんな嘘を言いに、わざわざ私達に声をかけたのかしら?」

 

牧人「え……?う、嘘……?」

 

彩「なんか、この人怖いよ……花音ちゃん……。……?花音ちゃん?」

 

花音「……」ガクガクガク……

 

千聖「! 花音!」

 

紗夜「どうしたんですか!?松原さん!」

 

花音「ご、ごめん……。ちょっと……思い出しちゃって……。」

 

千聖「思い出す……?……!まさか、あの日のことを……!」

 

牧人「……あ、あのー…「あなたは少し黙っててちょうだい!!」!? ……」

 

 

 

 

 

楓「……ふぅ、着いた着いた。牧人、お前余計なこと言ってな…「空見くん!タッタッタ……」え?あ、松原さ……ってわぁっ!」

 

ガバッ!

 

彩・紗・燐・牧「!!」

 

千聖「か、花音……。」

 

楓「え、何!?いきなりどうしたの!?」

 

花音「あ、あの……あの、人が……」

 

楓「あの人?クルッ、……。」

 

牧人「……よ、よぉ、楓。」

 

楓「……お前、もうじっとしてろ。そして喋るな。」

 

牧人「な、何でだよ!?俺、別に何も……」

 

楓「松原さんが"この人"って言って指差したのがお前なんだなら、お前しかいねえだろ!!」

 

彩・紗・燐「……」

 

千聖「……ど、どういうこと……?」

 

 

 

 

 

日菜「あ、おーい!みんなー!……って、何してるの?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

千聖「……なるほどね。ようやく話が見えたわ。」

 

紗夜「つまり、その帰省先に、私達もいっしょに連れて行きたい、ということですね?」

 

楓「まぁ……簡単に言えば、そうです。」

 

彩「だから昨日、突然グループのメッセージで『明後日から三、四日ほど、用事がない人いますか?』って……。」

 

花音「珍しい書き方だったから、びっくりしたよね。」

 

楓「ごめん……あれくらいしか思いつかなくて……。」

 

千聖「別に謝ることじゃないわ。……むしろ謝るべきなのは……ジー」

 

牧人「……お、俺?」

 

千聖「あなた以外誰がいるの?」

 

紗夜「そもそもこの話は、あなたが蒔いた種なのでしょう?」

 

千聖「この話だけじゃないわ。さっきあなたがこの公園に来てから、燐子ちゃんずっとあの状態なの。」

 

燐子「……」ブルブルブル……

 

楓「……」

 

紗夜「松原さんも、あなたが来た直後に、突然あの記憶を思い出し、震えてしまっている。」

 

花音「……」

 

彩「よしよし……。」サスサス

 

牧人「そ、そんなこと、言われても……。」

 

千聖「言い訳は無用よ。」

 

紗夜「とりあえず、今の話も含めて、あなたがしたことに対して。」

 

千・紗「きっちり、謝罪をしてもらい…「ちょっと待ってくださいよ。」!!」

 

牧人「か、楓……。」

 

楓「確かに、お前がおばあちゃんに余計なことを言わなけりゃ、今日みんなをここに集める必要はなかった。それに関しては、お前が悪い。」

 

牧人「……」

 

楓「でも、……白金さんがさっきからこうしてるのと、松原さんがあのときを思い出して震えてるのは、別にこいつのせいじゃない。」

 

千聖「! な、何でよ!」

 

紗夜「その人が来た直後に、二人は今の状態になったのよ!?なのになぜ……」

 

楓「だって、こいつは知らなかったんですもん。白金さんがこういうタイプの人間が苦手なことも、松原さんが前にナンパに絡まれたことも。」

 

牧人「!」

 

紗夜「そ、それはそうかもしれませんが……」

 

千聖「……そんなの、ただの言い訳にしかならないわ。大事なのは、今こうなっているという事実だけ…「その事実を、こいつは意図なく、間接的に、たまたま引き起こしちゃっただけだって言ってるんですよ!!ほら、見てください!」……!」

 

牧人「……」

 

楓「……今の話を聞いて、こいつなりに反省してるんですよ。すぐに謝ることができなかったのも、なぜ自分がこんなに追い詰められているのかが、分かんなかったから。……それと。」

 

千・紗「……」

 

日菜「千聖ちゃんとおねーちゃんが責めてたせいで、謝るタイミングがなかった、ってことでしょ?」

 

楓「……うん、そういうこと。」

 

千・紗「! ……」

 

牧人「……すみません。」

 

千・紗「……」

 

牧人「俺、あんたら……皆さんの事情、何も知らないとは言え、突然、あんな話しかけ方、して……。本当、すみませんでした……。」

 

千聖「……わ、私も、少し、言いすぎたわ。……ごめんなさい。」

 

紗夜「私も、すみません……。友人のためとは言え、熱くなりすぎてしまったわ……。」

 

楓「……よし。これでひとまず、仲直りですね。」

 

花音「……彩ちゃん、もう、大丈夫だよ。」

 

彩「ほ、ほんと?」

 

花音「うん。……」

 

牧人「……「曽山くん、だっけ?」! は、はい……。」

 

花音「ふふ、敬語じゃなくていいよ。私達、同い年でしょ?」

 

牧人「……はい……じゃなくて、ああ……。」

 

花音「ごめんね。私が勝手に気を動転させちゃったせいで、曽山くんに迷惑かけちゃって。」

 

牧人「! そ、そんなこと…「でも、分かってたよ。」え?」

 

花音「……空見くんのお友達だもん。だから、絶対悪い人ではないって。」

 

牧人「……」

 

燐子「……わ、私も……です。」

 

牧人「!」

 

燐子「突然のことで……びっくり、したんですけど……。この人は、空見さんのお友達なんだと、心に何度も、言い聞かせながら……さっきの話を、聞いていたら……。意外と、優しい人なのかなって……少しずつ、思えてきて……。」

 

牧人「い、意外と……。」

 

楓「ぷっ、くっ……くっ…「笑うな!」わ、悪い悪い……。」

 

燐子「でも、それもそのはず、ですよね。……空見さんの、お友達、なのですから……。」

 

牧人「……」

 

彩「……ねぇ、曽山くん。田舎にいたときの空見くんの話、聞かせてよ!」

 

日菜「あ!それ、あたしも気になる〜!」

 

牧人「か、楓が向こうにいたときの話?そ、そうだな〜……。」

 

楓「いやいやいや!そんな話しなくていいって!今はまず、ここにいるみんながいっしょに田舎に行くのかどうかをだな……」

 

 

 

 

 

千聖「……「千聖ちゃんも、いっしょに話聞こうよ!」……花音。」

 

花音「? どうしたの?」

 

千聖「……ごめんなさい。」

 

花音「もう、私にまで謝らないでよ。ほら、紗夜ちゃんと燐子ちゃんも行こうよ!」

 

千聖「きゃっ!わ、分かったわよ。分かったから押さないでちょうだい、花音〜!」

 

燐子「……ふふ♪氷川さん、行きましょう……。」

 

紗夜「……ええ。……空見さん。あなたは本当に、私達の……」

 

燐子「……?何か、言いました?」

 

紗夜「いえ、何も言ってませんよ♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日菜「え〜!おねーちゃん行かないの〜?」

 

紗夜「仕方ないでしょう?……すみません空見さん。その日は、先にRoseliaの練習が決まっていて……」

 

楓「そんな、謝らないでくださいよ。全然いいですって。」

 

燐子「私達の分まで、皆さんで楽しんできてください。」

 

千聖「ええ。あなた達も頑張ってね。」

 

牧人「……じゃあいっしょに田舎へ行くのは、花音さん、千聖さん、彩さん、日菜さんの四人、ってことでいいのか?」

 

彩「うん、そうなるね。」

 

千聖「あなただけここに残ってもいいのよ?」

 

牧人「俺がいないと意味ないでしょ!」

 

……先程からずっと気になってたであろう、日菜さんについて説明しよう。

 

僕は昨日、僕、松原さん、白鷺さん、丸山さん、氷川さん、白金さんの計六人で構成された、『花咲川 二年』のグループに『明後日から三、四日ほど、用事がない人いますか?』と、メッセージを送った。

 

結構すぐ、遅くても二、三分後には全員の既読がついたのだが、そのときに日菜さんも、氷川さんといっしょにそのメッセージが送られた画面を見ていたらしい。

 

それを見て『面白そう!』と呟き(氷川さん曰く)、このメッセージに関する話し合いに自分も参加すると言い、今日、集合場所であるこの公園に来た、というわけのようだ。

 

……まぁなんとも日菜さんらしい……。

 

日菜「よし!ここにいるみんなの動向は決まったことだし、次のところに行こう!」

 

彩「次のところ?」

 

千聖「どういうこと?日菜ちゃん。」

 

日菜「ふっふっふー。あたしだって、ただ指を咥えて見ていたわけじゃないんだよ?」

 

紗夜「……何を企んでるのよ、あなたは……。」

 

日菜「企んでるなんて、人聞き悪いなぁ。こんな面白そうなビッグイベント、ここにいるみんなだけで楽しむなんて、もったいないでしょ?だから、他のみんなにも教えてあげたんだよ!」

 

楓「ビッグイベントって……。」

 

牧人「ただ帰省するだけだぞ……?」

 

花音「他のみんなって……」

 

燐子「もしかして……」

 

日菜「まぁまぁ、慌てない慌てない。……ここからは、あたしに着いてきてね!」

 

……"他のみんな"……。

 

考えられるのは、ここにいない、あのバンドの五人……。

 

それか、松原さんが属している、あのバンドの人達……。

 

たぶん、その二択……だと思う……。

 

流石に僕が知らない人ではないだろ。

 

……と、思いたいけどなぁ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【弦巻家】

 

牧人「……なぁ、楓。」

 

楓「何も言うな。お前の気持ちは分かる。僕も最初は同じ反応だった。」

 

千聖「ここに来るのは二回目だけれど……やはり大きいわね……。」

 

紗夜「流石、松原さんは何回も来てるだけありますね。」

 

日菜「これを見て驚いてないの、花音ちゃんだけだもんねー。」

 

花音「あはは……。やっぱり、慣れ、なのかな?」

 

彩「慣れでもすごいと思うよ?花音ちゃん。」

 

燐子「まるで……お城、ですよね。」

 

松原さんを除いた、七人全員が同じ反応……。

 

牧人に関しては、初めてだから分かる。

 

でも、僕、白鷺さん、丸山さん、氷川さん、白金さんは、前に一度来ている。

 

にも関わらず、この反応だ。

 

あの日菜さんも、驚いてるからな。

 

だって、そりゃそうよ。

 

ここ、家なんだぞ?

 

普通の住宅街にあり、僕達の知り合いが住んでいる家なんだぞ?

 

なのにこんな……お屋敷?お城?のような家と、どれくらい広いんだ……くらいのこの庭。

 

……何回来ても驚かないわけがない……。

 

絶対三回目とか四回目とかに来ても、今と同じ反応をすると思う……。

 

いや、絶対する……。

 

だから。

 

……それに慣れてる松原さんはすげえや……。

 

花音「……そ、それじゃあみんな、行こうか。」

 

さっきまで日菜さんが先陣を切ってたのに、今では松原さんが先陣を切っている……。

 

……何だろう、松原さんのこの強者感。

 

牧人「なぁ、楓。」

 

楓「ん?」

 

牧人「花音さんって、何者だよ……。」

 

楓「いや、ただの人間だよ……。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ピンポーン』

 

……ガチャ

 

黒服「お待ちしておりました、松原様。そして皆様。」

 

牧人「!?」

 

花音「こ、こんにちは。」

 

黒服「お話はこころ様から伺っております。どうぞ、お入りください。」

 

花音「お邪魔します……。」

 

『お、お邪魔しま(ー)す……。』

 

牧人「……」

 

牧人が何を言いたいのか、考えなくても分かる……。

 

 

 

 

 

こころ「みんな!よく来たわね!!」

 

日菜「こころちゃん、やっほー!」

 

はぐみ「かのちゃん先輩!?用事があったんじゃ……」

 

花音「それが、意外と早く終わったんだ。」

 

千聖「……なるほどね。」

 

花音「ふぇ?な、何?千聖ちゃん。」

 

千聖「いえ、何もないわよ。(ハロハピの会議より、こっちを優先してくれたのね……。)」

 

りみ「そ、空見先輩!?それに、皆さんも……」

 

香澄「なんか久しぶりです!」

 

彩「香澄ちゃん、みんな!うん!久しぶり♪」

 

楓「ポピパのみんなもいたのか……。まさかのどっちも……。」

 

紗夜「? ……ハロハピとポピパがいっしょにいるなんて、珍しいわね。」

 

たえ「ハロハピの会議に、ポピパも参加しないかって、こころに誘われたんです。」

 

沙綾「そしたら、香澄が二つ返事でOKしちゃって……。」

 

有咲「私らに相談もしないでな。」

 

香澄「だからごめんってば〜!」

 

薫「まさか、こんなにたくさんの子猫ちゃん達が集まるとは……。ふふふ、楽しい会議になりそうだ。」

 

美咲「ほんと、毎度毎度うちのこころがすみません……。」

 

燐子「い、いえ……。」

 

日菜「これだけいると、一気に賑やかになるねー!」

 

 

 

 

 

牧人「……」

 

楓「……おーい牧人、大丈夫かー?」

 

こころ「あら?あなた、初めて見る顔ね。」

 

牧人「え!あ、いや……」

 

……牧人?

 

 

 

 

 

有咲「……!!って、よく見たら誰だあの人!?」

 

たえ「……転校生?」

 

沙綾「で、でも、うちにもう一人転校生が来るなんて話、聞いたことないよ?」

 

美咲「たぶん、そういうんではないと思うけど……ほんとに誰?」

 

香澄「はい!私、戸山香澄と言います!昔、ホシノコドウを聞いたことがあって…「誰も聞いてねえから!!ってか何してんだ香澄!!」え?だって、まずは自己紹介したほうがいいかなーって。」

 

牧人「ほ、ホシノ……?」

 

はぐみ「……はいはーい!北沢はぐみだよ!はぐみとこころんとかのちゃん先輩と薫くんとミッシェルの五人で、バンドやってるんだ!」

 

……ん?

 

五人?

 

しかも、弦巻さんと……み、ミッシェル?

 

あれ?

 

奥沢さんは?

 

薫「私は瀬田薫だ。ハロハピではギターを担当しているよ。」

 

それにこの人、どこかで……。

 

牧人「え、えっと……。」

 

りみ「……もしかして……空見先輩の友達、とか?」

 

楓・花・千・彩・紗・燐「!!」

 

日菜「おー。」

 

な、ナイス牛込さん!

 

楓「そ、そう!そうなんだよ!牛込さんの言う通り!」

 

りみ「!」

 

楓「ちゃんと紹介するよ。……僕の友達の、曽山牧人。わざわざ田舎から、帰省してほしいって言いに来るくらい行動力がすげえやつで、見た目はチャラそうだけど、根はちゃんと優しいんだ。」

 

牧人「……紹介してもらって言うのも難なんだが、見た目チャラいって何だよ。どこもチャラくねえだろ。」

 

楓「あー……雰囲気?」

 

牧人「雰囲気!?」

 

楓「まぁまぁ落ち着けって……。っていうことだから、別に怪しくも何ともないよこいつは。だから安心して。……たまに、余計なこと言ったりするけど。」

 

牧人「お前さては喧嘩売ってんな!?」

 

楓「ほんとのことだろうが!!」

 

紗夜「右に同じです。」

 

牧人「ちょ、ちょっと紗夜さ〜ん!」

 

……こんなもんか。

 

しかし牛込さん、察しがいいなー。

 

"知り合い"じゃなくて、"友達''って見抜くなんて……。

 

香澄「……田舎?帰省?」

 

ん?

 

りみ「……え、どういうことですか!?空見先輩!」

 

たえ「帰省って、帰るってことだよね?」

 

香澄「空見先輩どこかに行っちゃうの〜!?」

 

有咲「お前ら少し落ち着けーー!!」

 

楓「……」

 

千聖「肝心なところ、説明し忘れてるわよ。」

 

楓「……そうでした。」

 

ここに来た理由と結びつけて、ちゃんと説明しないとだよな。

 

……よし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

香澄「はいはーい!私行きたいです!」

 

こころ「あたしも行きたいわ!」

 

有・美「言うと思ったよ……。」

 

香澄「ねーねー、みんなも行こうよ〜!」

 

沙綾「行きたいのはやまやまなんだけど、お店のことがあるから、今回はパスかな……。」

 

たえ「私も、バイトがある……。」

 

香澄「そっか〜……。じゃありみりんは?」

 

りみ「わ、私!?……私は……チラッ」

 

楓「?」

 

りみ「……たぶん、大丈夫だと、思う……。」

 

香澄「やった〜!じゃあ決定!ポピパは、私と有咲とりみりんが行きまーす!」

 

有咲「ちょ、ちょっと待て!私は別に行くとは…「有咲も、何か用事があるの?」うぇ!?あ、えっと……な、ない、けど……」

 

香澄「じゃあ決まりだね!」

 

有咲「だから何でそうなるんだよーー!!」

 

楓「……三人、増えたな……。」

 

牧人「そ、そうなのか?」

 

こころ「みんなも行きましょう!花音は行くのよね?」

 

花音「う、うん。」

 

香澄「ハロハピもいっしょなら、きっとすっごく楽しいよ!はぐ〜、行こうよ〜!」

 

はぐみ「……ごめんねかーくん。はぐみ、とーちゃんに今週はお店の手伝いに専念するって約束してて……」

 

香澄「あ……そうなんだ……。」

 

薫「悪いがこころ、今回は私もパスだ。既に公演がいくつか決まっていてね。楽しみにしてくれている子猫ちゃん達を、悲しませるわけにはいかな…「そうね。その方がいいと思うわよ。」ニコッ ふっ、相変わらずだね、千聖は……。」

 

 

 

 

 

楓「……あの、白鷺さん。」

 

千聖「何?楓。」

 

楓「えっと……あの、瀬田さん?なんですけど……」

 

千聖「薫がどうかしたの?」

 

楓「僕、あの人のこと、どっかで見たことあるような気がするんですけど……」

 

千聖「……気のせいじゃないかしら。」

 

楓「え、気のせい……?」

 

千聖「ええ。似たような人を、歩いてるときにでも見かけたのよ、きっと。」

 

楓「は、はぁ……。」

 

気のせい、か……。

 

まぁ、そうかもしれない…「え〜?覚えてないの?空見くん。」!

 

楓「ひ、日菜さん。え?どういうこと?」

 

日菜「ほら、グリグリのライブのときにいたじゃん。あたしといっしょにさ。」

 

楓「グリグリのライブ……。……!思い出した!あのときか!」

 

白鷺さんに街を案内してもらったときだ!!

 

そうだ、SPACEに行ったとき、確かに日菜さんといっしょにいた……。

 

千聖「……」

 

はぁ、すっきりした。

 

そっかそっか、あのときだったか。

 

……しかし、弦巻さんもハロハピの一人だったとは。

 

瀬田さんも、ということは……松原さん、弦巻さん、北沢さん、瀬田さん、奥沢さんの五人で、ハロハピなんだな。

 

うーん……ポピパといいパスパレといいハロハピといい、身内のバンドはグリグリを除いてだいたい五人みたいだな。

 

……となると、Roseliaも氷川さん、白金さん以外にあと二人いるってことか?

 

……「……で!……楓!」!

 

楓「え?」

 

牧人「え?じゃねえよ。さっきから呼んでただろ。」

 

楓「ご、ごめん。ちょっと考え事しててさ。」

 

牧人「いっしょに田舎に行く人達が決まったんだ。確認してくれ。」

 

楓「僕が?……もとはお前の問題なんだから、お前が…「そのことに関しては俺の責任だけど、この場からしたら俺は部外者だろ!」まぁそうだけど……お前の紹介もしたんだし…「頼むよ楓!この通りだ!」……はぁ。分かったよ。」

 

牧人「サンキュー!流石親友だ!」

 

楓「ったく。……えーっと、じゃあ、僕達といっしょに田舎に行くのは……、!? く、クマ!?」

 

はぐみ「クマじゃないよ!ミッシェルだよ!」

 

楓「え?あ、ごめん……。み、ミッシェル……どうして、ここに……。」

 

こころ「ミッシェルは、あたし達のバンドメンバーだからよ!ミッシェルも、楓達といっしょに行くのよ!」

 

楓「え……そうなの?」

 

ミッシェル「そ、そうなんだ〜。あ、あと、美咲ちゃんもね〜。」

 

楓「奥沢さんも……。? って、奥沢さんは?」

 

薫「美咲は今、黒服の人達と話をしているらしい。」

 

花音「た、たぶん、もう少ししたら戻って来ると思うよ?」

 

楓「そうなの?……なら、いいか。」

 

……ミッシェル、か。

 

ただの商店街の着ぐるみ、ってわけじゃなさそうだな……。

 

……てか、中誰入ってんの?

 

……あと、よく考えたら着ぐるみがいっしょに行くって何?

 

それってつまり、着ぐるみの中の人ってことだよね?

 

……ん〜……?

 

花音「……空見くん、なんか困ってるみたい……。」ボソボソ

 

ミッシェル「空見さんには、あたしがミッシェルだってこと、早めに話した方が良さそうですね。」ボソボソ

 

牧人「楓、細かいことは後でだ!気を取り直して、ほら!」

 

楓「……分かってるよ。……えーっと、僕達といっしょに田舎に行く人は……。」

 

牧人「……」

 

一同『……』

 

楓「……松原さん、丸山さん、白鷺さん、日菜さん、戸山さん、牛込さん、市ヶ谷さん、弦巻さん、奥沢さん、ミッシェル……の、十人、でいいんだよね?」

 

花音「……う、うん!」

 

ミッシェル「問題ない……と思うよ〜。」

 

……今、謎の間、なかった?

 

気のせい?

 

香澄「楽しみだね〜有咲〜♪」

 

有咲「だ〜!くっつくな〜!」

 

彩「麻弥ちゃんとイヴちゃんも、いっしょに行けたらな〜。」

 

千聖「仕方ないわよ。二人は仕事があるのだから。」

 

日菜「二人の分まで楽しもー!彩ちゃん!」

 

りみ「! そうだ!お姉ちゃんにメッセージ送っとかないと!」

 

こころ「楽しい旅行になりそうね!」

 

楓「……なぁ、牧人。」

 

牧人「ん?」

 

楓「田舎に帰るの……明日じゃなくて明後日でもいいか?」

 

牧人「……ああ。後でばあちゃんに電話しとくよ。」

 

旅行、か。

 

……まぁ、そうなるのかな。

 

……ん?

 

 

 

 

 

黒服1「……」コソコソコソ

 

黒服2「……」コソコソコソ

 

黒服3「……」コソコソコソ

 

 

 

 

 

……何やってんだ?あの人達。

 

たえ「空見先輩も、ハロハピポピパ会議に参加しましょうよー。」

 

楓「え?は、ハロハピポピパ会議?」

 

日菜「ねぇねぇ!その会議、あたし達も参加していーい?」

 

こころ「ええ、もちろんよ!」

 

はぐみ「なら、ハロハピポピパ会議じゃなくて、ハロハピポピパパスパレRoselia会議だね!」

 

有咲「バンド名をくっつけただけじゃねーか!」

 

沙綾「あはは……。まぁ、いいんじゃない?グレートアップ!的な感じで。」

 

薫「ふっ、4バンドによる、とても賑やかな会議になりそうじゃないか。ああ、儚い……。」

 

花音「は、儚い……かなー?」

 

千聖「花音、深く考えなくていいわよ……。」

 

紗夜「しかし、会議とは言っても、何について話すんですか?」

 

香澄「いろいろです!あ、せっかくだから、空見先輩の帰省先に行った後のことを話し合おうよ!」

 

りみ「あ、それいいかも!」

 

燐子「だ、だとしたら私達……場違い……なんじゃ……」

 

ミッシェル「そんなことないですよ。ま、暇つぶしだと思って、付き合ってあげてください。」

 

花音「空見くん。あと、曽山くんも。こっちおいでよ。」

 

楓「……うん、分かった!ほら、行くぞ牧人。」

 

牧人「……お前、ほんと変わったよな。」

 

楓「だから何がだよ。ほら、早く来いって。」

 

牧人「はいはい。」




とうとう次回から旅行回!というか帰省回というか……。

まぁどっちもですねw。

長年考えていたネタなので、いつも以上に気合い入れて書いていきたいと思います!


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63話 みんなの見送り、そして僕達は小旅行へ

この前ある中古屋に行ったら、Roseliaのリサ姉以外の寝そべりが売っててびっくりしました。

バンドリの寝そべり自体、中古屋でもあまり見かけないので、まぁまぁレアですよね。(僕だけかな?)

ちなみにそのときは、弟が紗夜さんだけ買ってました。


〜AM 10:15〜

 

【駅 ホーム】

 

香澄「あっちゃ〜〜ん!」

 

明日香「やめてよお姉ちゃん!恥ずかしい!」

 

沙綾「ふふ♪……私達の分まで、楽しんで来てね。」

 

たえ「お土産、待ってるね。」

 

有咲「相変わらずお前は……。」

 

りみ「うん!いーっぱいお土産買ってくるね♪」

 

明日香「有咲さん、りみさん。お姉ちゃんのこと、よろしくお願いします。」

 

香澄「ちょ、あっちゃん!?」

 

有咲「おう、任せとけ!香澄のことは、あたしがきっっちり監視しておくからな。」

 

香澄「何で私ってこんな信用ないの〜……?」

 

明日香「心配なんだよお姉ちゃんが!」

 

りみ「あはは……。」

 

 

 

 

 

楓「あの人が、戸山さんの妹……。」

 

千聖「香澄ちゃんより、しっかりしてそうね……。」

 

イヴ「カエデさんの故郷、私も行ってみたかったです……。」

 

麻弥「仕方ありませんよ。その分ジブン達は、お仕事を頑張りましょう。」

 

彩「麻弥ちゃん、イヴちゃん。忙しいのに、お見送りありがとう!」

 

イヴ「仲間の旅立ちを見送るのは、武士の務めですから!」

 

日菜「さっすがイヴちゃん!よっ、日本一〜!」

 

麻弥「それは少し、大袈裟な気が…「いいのいいの!こういうのは大袈裟なくらいが丁度いいんだって!」そういうものですか〜……?」

 

 

 

 

 

こころ「それじゃあ薫、はぐみ!行ってくるわね!」

 

薫「ああ、子猫ちゃん達の旅立ちほど、儚いものはないよ。まさに、儚い……。」

 

牧人「あんた、それ言いたいだけじゃねえのか?」

 

はぐみ「あれ?ねぇみーくん、ミッシェルはどこ?」

 

美咲「あー……ミッシェルなら、先に向こう行ってるって。」

 

はぐみ「そうなの!?流石ミッシェル!行動が早いね!……でもミッシェル、空見先輩の帰省先への行き方、よく分かったね。」

 

こころ「きっと、何か超能力を使ったのよ!ミッシェルなら有得るわ!」

 

はぐみ「超能力か〜!すごいな〜……。」

 

花音「……これ、大丈夫?美咲ちゃん……。」ボソボソ

 

美咲「あたしも、今のは少し言いすぎたかもと思いました……。」ボソボソ

 

黒服「こころ様、お席の準備が整いました。」

 

こころ「ほんと!?よーし!それじゃあみんな、行くわよー!」

 

美咲「こころー!ホームでは走らないー!」

 

 

 

 

 

楓「……何で黒服の人がここにいるんだ?」

 

花音「こころちゃんあるところに、黒服の人ありって感じだから……。」

 

楓「そうなんだ……。」

 

まるで執事だな……。

 

いや、執事より上なのか……?

 

ガシッ!

 

ん?

 

楓「何だよ、翔真…「ちょっとこっち来い!」うわっ!」

 

花音「……あの子が……空見くんの、弟?」

 

 

 

 

 

楓「ったく、どうしたんだ…「どうしたはこっちのセリフだ!!」!」

 

翔真「聞いてねえぞ!!俺達以外の人がみんな……女子だなんて!!」

 

楓「そ、そうだったっけ?ちゃんと前に友達もいっしょに行くって言った…「"友達"だけで、それが女友達だなんて誰が分かるか!!」……ご、ごめんて。」

 

翔真「しかもこんな……9人もいるなんて……。先が思いやられる……。」

 

楓「……緊張する?」

 

翔真「ったり前だ!!……しかしお前に、こんなにいっぱい女友達がいたとはな……。田舎に住んでたときは、牧人くらいしかいなかったじゃねえか。」

 

楓「まぁ、そうだけど……。いろいろあって、いつの間にか、な。」

 

翔真「……確かに、牧人の言う通りかもな。」

 

楓「? 何がだよ。」

 

翔真「いや、別に…「わぁ〜!君が空見先輩の弟くん!?」!?」

 

たえ「まだ中一なんだっけ。可愛いね〜。」

 

翔真「な、何でそれを……」

 

沙綾「ごめんね、私が言っちゃった♪」

 

翔真「じゅ、純のお姉さん!?」

 

日菜「空見くんの弟かー。きっと君も面白いんだろうな〜。」

 

香澄「ねぇねぇ!名前は何で言うの?」

 

たえ「家での空見先輩はどんな感じ?」

 

日菜「あ、それあたしも気になるー!」

 

翔真「な、名前?楓?えっと、えっーとー……」

 

 

 

 

 

楓「……あんな翔真、初めて見た……。」

 

牧人「流石の翔真も、この場の空気には耐えられなかったか。」

 

楓「それに関しては、お前に一理あるな……。」

 

あいつとは長年兄弟やってるけど、こんなところで弟の新たな一面を知ることになるとはな。

 

……そういう意味では、なかなか面白い小旅行になりそうな気はするな……。

 

牧人「……そういや楓。」

 

楓「ん?」

 

牧人「マリー……ほんとに大丈夫なのか?」

 

楓「ああ。……うん、大丈夫だよ、あの人ならきっと。」

 

……いや、あの人"達"なら、きっとな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜2時間前〜

 

【空見家】

 

楓「……それじゃあ今日と明日の二日間、マリーをよろしくお願いします。」

 

友希那「ええ。責任を持って、面倒を見るわ。あなたが書いてくれた、このメモを見ながらね。」

 

楓「そうしてくれると、嬉しいです。」

 

翔真「……なぁ楓。本当にこの人に、マリーと俺らの家を預けるのか?言っちゃ悪いけど……他人だろ?」

 

友希那「……そ…「他人じゃねえよ。友達……って言うにはまだ早いかもしれないけど、仲良しくらいにはなってっから。」! ……」

 

翔真「何だよそれ……。」

 

牧人「まぁまぁ。……友希那さんは信用できる。俺が保証するさ。」

 

翔真「……」

 

友希那「……私は、あなたにどう思われようが構わない。確かにあなたから見れば赤の他人だし、信用も薄い。さらに言えば、不審者にもなりうる。」

 

翔真「! だ、誰も、そこまでは言ってな…「でも、今から言うことだけは信じてほしい。」?」

 

友希那「……この二日間、私は絶対に、この家を守り抜いてみせるわ。」

 

翔真「……」ポカーン……

 

牧人「……ちょっと、大袈裟じゃね?」ボソボソ

 

楓「ま、まぁ、いいんじゃねえか……?」ボソボソ

 

翔真「……ふっ、何だよそれ。」

 

友希那「……///。少し、オーバーすぎたかしら……。」

 

楓・牧「(あ、自覚あったんだ。)」

 

翔真「……分かりました。じゃあ俺達が向こう行ってる間、マリーとこの家、頼みましたよ。」

 

友希那「! ……ええ、もちろんよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜1日前〜

 

【公園】

 

リサ「はぁ〜、バイト疲れた〜!」

 

楓「お疲れ様、今井さん。」

 

リサ「ありがと、空見♪……そういや、明日か。」

 

楓「? ……あ、うん。」

 

リサ「……寂しく、なるなぁ。」ボソッ

 

楓「え?」

 

リサ「ううん、何でもない!それよりさ、本当に二日間でいいの?」

 

楓「うん。明日と明後日はお手伝いさんが来るから、今井さんはその次の日とそのまた次の日に来てくれれば。」

 

リサ「言葉だと、ちょっと分かりづらいね〜……。でも、理解はできてるから、大丈夫だよ!」

 

楓「そ、そっか。」

 

リサ「いやー、なんか今から緊張してきたよ〜。男の子の家なんて、生まれてこの方、一度も行ったことないからね〜。」

 

楓「……や、やっぱり、今からでも家に…「それは大丈夫!初めて空見の家に行ったときの、初見の反応を楽しみたいからね♪」そ、そう……。(こういう変なプライドは、やっぱりギャルだなぁ……。)」

 

リサ「家までの地図ももらったし、マリーちゃんのお世話に関するメモももらった!あ〜、しあさってが楽しみだなぁ〜♪」

 

楓「……本当に、緊張してる?」

 

リサ「してるしてる♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜現在〜

 

【駅 ホーム】

 

???「……で。……おい、楓!」

 

楓「! え?あ、牧人?」

 

牧人「何ぼーっとしてんだよ。もうみんな、新幹線に乗り込んじまったぞ?」

 

楓「え、そうなの!?いけね、早く行かないと!」

 

牧人「ったく……。」

 

楓「みんないつの間に…「空見先輩!」?クルッ」

 

た・沙・イ・は「いってらっしゃ〜い!!」

 

薫「二人とも、良い旅を……。」

 

麻弥「右に同じです!」

 

楓「……うん。行ってきます!」

 

牧人「……ふっ。」

 

 

 

 

 

【新幹線 車内】

 

楓「……ここが……僕達の、席?」

 

牧人「らしいな……。」

 

新幹線に乗り込んだ直後、待っててくれた松原さんに連れられてきたのは、……

 

 

 

 

 

……一両を貸し切っての超プレミアムクラス級の席だった。

 

いや、もうこれ、席というより……部屋だろ……。

 

香澄「あむあむ……。……!空見先輩!曽山先輩も!」

 

楓「戸山さん……。これ、どういうこと?ていうか、何食べてんの……。」

 

香澄「見ての通り、お菓子ですよ!ほら、テーブルの上のお皿に、いーっぱい!」

 

……テーブルも長えなおい。

 

いやそんなことより!

 

新幹線にこんな席があるなんて、聞いたことないぞ!?

 

長いテーブルがあって、その近くには同じく長いソファ。

 

冷蔵庫や水道などもあり、さらに本棚やテレビ、ゲームの機械まである。

 

たぶん、それ以外にもいろいろ揃っているのだろう……。

 

全て説明するとキリがないので割愛するが、これだけはまとめて言える。

 

 

 

 

 

……もう新幹線じゃねえじゃん!!

 

もう一つの部屋だよこれ!!

 

てかまず、どうしてこうなった!?

 

チョンチョン

 

楓「ん?何だよ牧人。」

 

牧人「あ、あの人達……。」

 

楓「あ?あの人達ってだ……れ……。」

 

 

 

 

 

黒服1「……」

 

黒服2「……」

 

黒服3「……」

 

 

 

 

 

……やっぱあんたらかあああ!!!

 

うすうす予想はしてたけど!!

 

やっぱりかあああ!!!

 

何!?

 

1両をまるまる貸し切ってそれをこんな部屋みたいにしたの!?

 

そんなこと、例え黒服さんでも許されるかどうか……。

 

……ん?

 

何だ、あのフリップ……。

 

牧人「あ、あの人達、突然フリップなんか見せてきたぞ……?」

 

しかも、なんか書いてある……。

 

……『ご安心を。この車両は弦巻家所有のものです。』

 

『車掌さんや駅員さんに許可をもらい、特別にこの新幹線と連結させていただきました。』

 

『私達が用意した特別な車両で、快適な新幹線ライフをお送りください。』……。

 

……いや新幹線ライフって何……?

 

新幹線で生活とか、アニメや漫画でも聞いたことないよ……。

 

まぁ、勝手に改造した、とかじゃなかったのは、一安心だけどさ。

 

……あの人達、ほんとヤベェな……。

 

彩「あ、空見くん、曽山くん。」

 

楓「丸山さん。……なんか、すごい席になっちゃったね。いや、もうここまできたら、席ではないか……。」

 

彩「あはは……。」

 

千聖「ほんと、あの人達には毎回毎回驚かされるわ。」

 

毎回……。

 

もしかしたら、今後もこういうことがたびたび……『ピロリン♪』ん?

 

楓「メッセージ?」

 

彩「私もだよ。」

 

千聖「どうやら、グループからのメッセージのようね。」

 

グループ……ということは……。

 

紗夜『気をつけて行ってきてくださいね。』

 

燐子『思い出話、楽しみにしてます♪( ^∀^)』

 

楓「二人とも……。」

 

千聖「Roseliaの練習で、忙しいだろうに……。」

 

この二人は、見送りには来なかった。

 

しかし、それにはしっかりとした理由がある。

 

今月末にライブがあるため、ここ最近は朝早くからRoseliaの練習をしているらしく、今日も9:00からあったために、見送りに顔を出すことができなかった。

 

このことは事前に教えられていたので、分かっていたことだが、まさかメッセージをくれるとはな……。

 

彩「本当は、紗夜ちゃんと燐子ちゃんも行きたかったんだろうなぁ。」

 

千聖「……ええ、きっとね。」

 

楓「……次あるRoseliaのライブは、絶っっっ対見に行く。」

 

彩「うん、私もだよ!」

 

千聖「そのためにはまず、お仕事が入っているか確認したり、パスパレの練習スケジュールの調整をしたりしなくてはいけないわね。」

 

彩「そうだね!……今度こそ、Roseliaのライブ、いっしょに見ようね!空見くん!」

 

楓「うん!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【スタジオ】

 

……『ピロリン♪』

 

紗夜「! 返信が来たわ。」

 

燐子「……ふふ♪より、頑張らなきゃという気持ちが……強まりますね。」

 

紗夜「ええ、そうね。完璧な演奏を聞いてもらうためにも、もっと上を目指さければ。」

 

友希那「みんな、休憩はここくらいにして、続きを始めるわよ。」

 

リサ「OK〜♪……ん?紗夜と燐子、なんか嬉しそうじゃない?」

 

紗夜「いえ、そんなことないですよ。」

 

燐子「さぁ、早く練習に戻りましょう。」

 

あこ「おー!りんりんがいつも以上にやる気だ〜!」

 

友希那「やる気があるのは、とても良いことよ。でも、それが逆に裏目に出るなんてことがないように、気をつけてちょうだい。」

 

燐子「は、はい!」

 

紗夜「頑張りましょう、白金さん。」

 

リサ「なんか、紗夜もいつにも増してやる気じゃない?」

 

紗夜「ふふ、そうかもしれませんね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【新幹線 弦巻車】

 

『……まもなく、◯◯新幹線、新潟行きが発車いたします。』

 

牧人「お、やっとか。」

 

楓「結構待ったなー。」

 

翔真「……」

 

楓「……珍しいな。お前がじっと外見るなんて。」

 

翔真「バカにしてんのか?」

 

楓「い、いや、そういうわけじゃないけど……。」

 

翔真「……非日常だなーって思ってさ。」

 

牧人「非日常?」

 

翔真「引っ越してきたばかりのときは、まだ普通の日常だったのに、今はこうして、楓の友達といっしょに一つの場にいる。」

 

楓「……それの、どこが非日常なんだよ。」

 

翔真「だってどう考えてもおかしいだろ!!個人が所有する車両を特別に連結させてもらって、そこに乗って田舎に帰る!?しかも自分の兄の友達といっしょに!?こんなことが普通の日常にあるわけねえだろ!!」

 

楓「……まぁ……確かに、そうだな。」

 

翔真「最初牧人から、田舎に一度帰ってきてほしいって言われたときは、別にどうも思わなかったよ。俺もおばあちゃんには久しぶりに会いたかったから、二つ返事で承諾した。……でもその後、楓の友達もいっしょに行くことになったって聞いたとき。……正直嫌な予感はしてたよ。その予感は見事的中し、友達の人数も、思ってた倍多くて……。しかも、全員女子……。」

 

楓「……」

 

翔真「……こんなこと、引っ越してくる前は、想像もしなかったことだろ?」

 

楓「……あぁ、そうだな。」

 

牧人「……確かに、翔真にとっては非日常かもな。まだお前、中一だしな。」

 

翔真「? 何だよ、その俺に"とっては"って。お前らは違うのかよ。」

 

牧人「いや、俺もお前の言ってることは分かる。……でも……チラッ」

 

 

 

 

 

楓「トランプ?」

 

彩「うん!みんなでやらない?」

 

こころ「楽しそうね!あたしはやるわ!」

 

りみ「空見先輩も、やりますよね?」

 

楓「……うん。じゃあ、やろうかな。」

 

 

 

 

 

牧人「……あいつにとっては、それは違うみたいだな。」

 

翔真「……」

 

牧人「……それはそうと翔真。お前は学校、どうなんだ?」

 

翔真「俺?……まぁ、ぼちぼちだよ。」

 

翔真「それじゃ分かんねえだろ。もっと詳しく教え…「曽山くん。」え?」

 

花音「曽山くんも、いっしょにやらない?トランプ。」

 

日菜「翔真くんもやろーよ!」

 

翔真「い、いや、別に俺は…「そんなこと言わずにやろーぜ翔真!」……」

 

香澄「みんなで遊ぶの、とても楽しいよ!ほら、行こう!」

 

翔真「……わ、分かりました。」

 

 

 

 

 

有咲「……これ、絶対私達も誘われるパターンだな……。」

 

美咲「あたし達も行こっか、市ヶ谷さん。」

 

有咲「そうだな。……白鷺先輩も、行きます?」

 

千聖「ええ、もちろんよ。」

 

 

 

 

 

僕達がトランプを始める直前、ついに新幹線が動き出した。

 

ふと窓の外を見ると、山吹さん達が手を振ってくれていたので、トランプのカードを持ちながら、または一度テーブルに置いてからなどして、各々手を振り返した。

 

丸山さんや日菜さん、戸山さん、弦巻さんは、それと同時に『いってきまーす!』と言っていたが、そういうのって、窓越しに聞こえるものなのだろうか……。

 

ても、あれか?

 

聞こえなくても、口の形でなんとなく分かるものなのか……?

 

……とまぁ、そんな話はさておきだ。

 

僕、翔真、牧人、そして10人の友達や後輩と言った、当初の予定にはなかった人数での小旅行。

 

心配や不安はあるが、……もちろん、楽しみな気持ちもある。

 

こんな人数で、しかも友達と旅行なんて、したことなかったから……。

 

……向こうで暮らす、三、四日間。

 

とても有意義で、楽しくて、忘れられない……良い思い出がいっぱい残るような、そんな小旅行にしたいな。




ついに次回!

楓の故郷、◯◯へ!


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64話 帰ってきた!僕の"元"地元、『いなか』!

次のコラボは、東京リベンジャーズですか。

なるほど……。

……ガルパのコラボ、僕が見たことないアニメとコラボしがちなんですよね。(リゼロのみ見た)

そろそろ知ってるアニメとコラボしてほしいなーとは思うんですけど、あれモニカ以降もやるんですかね……?


【新幹線 弦巻車】

 

香澄「あ!ちょ、ちょっと待ってよ有咲〜!」

 

有咲「待てるか!」

 

美咲「うわっ!っと!い、市ヶ谷さん早っ!」

 

翔真「……」カチャカチャカチャ……

 

 

 

 

 

牧人「流石翔真、やっぱ上手えな〜。」

 

楓「奥沢さんも、意外とすごいぞ……?」

 

こころ「頑張ってー!美咲ー!」

 

 

 

 

 

翔真「……よし、ここだ!」

 

香澄「あ!あ〜〜!!」

 

有咲「っしゃゴール!って奥沢さんに負けてる!?」

 

美咲「ふぅ、危なかった〜。」

 

 

 

 

 

花音「す、すごい接戦だったね……。」

 

りみ「一位が翔真くん、二位が美咲ちゃんで、三位が有咲ちゃん、四位が香澄ちゃんか〜。」

 

日菜「面白かったねー!じゃあ次!次あたしやる!」

 

翔真達がやってたのは、レースゲームだ。

 

結果は牛込さんの言った通りで、流石はゲーマー翔真、と言った感じだ。

 

しかし、市ヶ谷さんと奥沢さんもすごかったな……。

 

戸山さんはまぁ……うん……ドンマイ。

 

 

 

 

 

香澄「はぁ……負けちゃった……。」

 

りみ「で、でも、惜しかったよ?香澄ちゃん。」

 

香澄「うぅ、りみり〜ん!!」ダキッ!

 

日菜「翔真くん!次はあたしと勝負しよ!」

 

翔真「臨むところですよ。」

 

香澄「そうだ!りみりん、仇をとってよ!」

 

りみ「えぇ!?わ、私!?」

 

美咲「こころ、次やる?」

 

こころ「やるわ!」

 

 

 

 

 

牧人「次の対戦カードは翔真、日菜さん、りみちゃん、こころちゃんの四人だな。」

 

楓「対戦カードって……。」

 

花音「次の四人も、頑張って〜!」

 

楓「そういや、松原さんは立候補しなかったんだね。」

 

花音「立候補?……あぁ、うん。私、ああいうゲームって、あまりやったことなくて……」

 

楓「そうなんだ。……後で空いたら、いっしょにやってみる?」

 

花音「え……いいの?」

 

楓「うん。翔真ほどゲームが得意なわけじゃないけど、基礎とかなら、僕でも教えられるから。」

 

花音「そっか。……うん!じゃあ、お願いしようかな♪」

 

楓「う、うん。」

 

牧人「……あの二人は、見ないのか?」

 

 

 

 

 

千聖「……今は、特になんともないのよね?」

 

彩「う、うん。今は、大丈夫……。」

 

千聖「そう……。楓と二人きりのときに、何かしらの変化があるということかしら?」

 

彩「二人きり、か……。」

 

千聖「……まぁ、何か変化を感じたら、またそのときに言ってちょうだい。三、四日という、短いようで長い期間で、しかも今回は楓絡みの小旅行。可能性は大いにあるもの。……その答えを見つけるためというのも、私達がこの小旅行に参加した理由の一つなのだし。」

 

彩「……そう、だよね。……私、頑張るよ!」

 

千聖「もう、頑張るって、いったい何を頑張るのよ……。」

 

彩「え?あ……その答えを見つけるために、頑張る……?」

 

千聖「……ふふふ♪相変わらずね、彩ちゃんは。」

 

 

 

 

 

タッタッタ

 

花音「彩ちゃん、千聖ちゃん。後でいっしょにあれやろう!」

 

千聖「花音。あれって、みんながやっているレースゲームのこと?」

 

花音「うん。空見くんが、遊び方を教えてくれるんだって。」

 

彩「空見くんが?」

 

花音「そう!空見くんが!だから、二人もやろう!」

 

千聖「……なんか、嬉しそうね?」

 

花音「え?そう見える?」

 

彩「うん、見える……。」

 

花音「……そっか。……うん、嬉しいよ!」

 

千聖「……ふふ♪」

 

花音「? ち、千聖ちゃん……?」

 

千聖「いいわよ。やりましょうか、花音。」

 

彩「私も!私もやりたい!」

 

花音「やった!じゃあそれまで、いっしょに翔真くん達のプレイを見てよう♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜30分後〜

 

花音「! 勝った!空見くんに勝った!」

 

千聖「すごいわ花音!やったわね!」

 

楓「ま、マジか……。」

 

彩「うぅ……またビリ……。」

 

操作方法とかギミックとかコツとかをいろいろ教えた後、何回か実践で勝負した。

 

毎回一位は僕で、他の三人はずっと二位、三位、四位を争っていたのだが、今、四回目くらいかな?

 

とうとう松原さんが、僕を抜いて一位になった。

 

千聖「最終ラップの中盤で、花音がアイテムでスピードアップしてからの展開、すごい白熱したわね。楓も花音もお互いに引けをとらず、どっちが勝つか読めない状況の中、最後の最後で再び花音がスピードアップのアイテムを引いて、そこから一気に逆転。本当に良い勝負だったわ。」

 

花音「ありがとう千聖ちゃん。……こういうゲーム、本当に久しぶりにやったけど、こんなに熱くなるものなんだね。」

 

楓「まぁね。……それで、丸山さんはいつまで落ち込んでるの……?」

 

彩「……だって、四回中、三回もビリだったんだもん……。」

 

千聖「元気出しなさいよ彩ちゃん。悔しいのは分かるけど、今は花音の祝福を…「それじゃあ、もう一回やろうよ。」え、もう一回?」

 

花音「うん、もう一回。……ううん。もう一回とは言わず、二人が一位になるまで!……って、流石にそれは長いか。」

 

楓「……まぁ、そうなるといつまでかかるか分から…「それだよ!」え?」

 

彩「花音ちゃんナイスアイデア!千聖ちゃん!私と千聖ちゃん、どっちも一位になるまでやろう!」

 

千聖「どっちもって……私はいいわよ。」

 

彩「そんなこと言わずにさ〜!いっしょに一位になろうよ〜!」

 

 

 

 

 

黒服「……皆さま、そろそろ目的地に到着いたしますので、ご降車の準備をお願いします。」

 

 

 

 

 

彩「! もう!?」

 

花音「い、意外と早かったね。」

 

千聖「……彩ちゃん。残念だけど、勝負はまた今度ね。」

 

彩「……うん。」

 

楓「……か、帰りは?」

 

花・彩「え?」

 

千聖「?」

 

楓「帰りの新幹線。帰りも、もしかしたらこれに乗るかもしれない。そうだとしたら、帰りのときに、またこれをやればいいんじゃない?」

 

千聖「でも、もしかしたらでしょ?違ったら…「いいえ。本車両は連結式なので、帰りの新幹線に再び連結させてもらえば、再びこの車両に乗ってゲームをすることができますよ。」そ、そうなんですか……。」

 

彩「流石黒服さん!」

 

黒服「……というわけで丸山様、白鷺様、松原様、空見様。ご降車の準備を、お願い申し上げます。」ペコリ

 

花音「は、はい!」

 

彩「それじゃあ千聖ちゃん!帰りの新幹線でね!」

 

千聖「……全く、仕方ないわね。」

 

楓「……じゃ、電源切るよー。」

 

花音「うん。……もうすぐ、着くんだね。」

 

楓「4月の中頃に引っ越したから……丁度4ヶ月ぶりかな。」

 

花音「4ヶ月かー。……短いような、長いような……だね。」

 

楓「ほんとにね。」

 

花音「……お母さん達も、来れたら良かったのにね。」

 

楓「まぁ、仕方ないよ。二人とも、急な出張が入って、当分家に帰ってこないんだから。」

 

花音「そう……だよね。」

 

 

 

 

 

翔真「……」

 

牧人「……なぁ翔真。」

 

翔真「ん?」

 

牧人「お前らの母さんと父さんの急な出張っての……嘘だろ。」

 

翔真「……何でそう思うんだ?」

 

牧人「父さんはまぁ分かるけど、母さんは出張するような仕事してないだろ。それに……」

 

翔真「それに?」

 

牧人「……楓に、ホテルに泊まらせるお金があるなんて、到底思えない。」

 

翔真「……」

 

牧人「となると答えはただ一つ。……何らかの理由でお前らの父さんと母さんは、長い期間家を留守にすることになった。だから、その間お前と楓が生活していくためのお金を、楓に預けた。違うか?」

 

翔真「……そうだけど、それが=出張じゃないとは…「たかが出張で、ホテルに泊まらせる余裕があるほどのお金を、自分の子に預けるわけねえだろ!!それにさっきも言ったが、お前らの母さんは出張するような仕事してねえだろ!!」……声がでけえよ……。」

 

日菜「何何ー?何な話してるのー?」

 

牧人「! い、いや?別に、何もねーよ?」

 

日菜「えーほんとに〜?大きな声で何か言ってたじゃーん。お金がどうとか…「ひ、日菜さんには関係ねーって!ほ、ほら翔真!俺達も降りる準備するぞ!」「分かった、分かったってば……。」……ちぇっ、つまんないの。」

 

牧人「……今話してたことは、みんなには内緒な?話せば、面倒なことになりかねない……。」

 

翔真「何だよ、面倒なことって。」

 

牧人「まぁ……主に質問攻めだな。とにかく、分かったな?」

 

翔真「……分かった。」

 

 

 

 

 

千聖「……」

 

花音「よし、片付けおしまい♪千聖ちゃん、席に座ろ……千聖ちゃん?」

 

千聖「……!え、ええ、そうね。座りましょうか。」

 

花音「? うん!」

 

楓「(……まさか翔真のやつ、牧人に余計なことを……。)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜5分後〜

 

黒服「お待たせいたしました。無事、目的地に御到着でございます。」

 

 

 

 

香澄「よーし!私一番に降りるー!」

 

こころ「ならあたしは二番ね!」

 

有・美「おい(ちょっと)二人とも!車内で走るなぁ(走らない)!」

 

りみ「香澄ちゃん、待って〜。」

 

日菜「あはは、みんな元気だね〜。」

 

 

 

 

 

楓「黒服の人、まるでアナウンスだね……。」

 

花音「あはは……。」

 

千聖「みんな、忘れ物はない?」

 

彩「……!トランプ!トランプがない!」

 

千聖「それなら、私が拾っといてあげたわよ。」

 

彩「え!?あ、ありがとう千聖ちゃん!」

 

千聖「全くもう……。」

 

花音「ふふ。良かったね、彩ちゃん♪」

 

楓「……あぁ!お土産置いてきたー!」ピューッ!

 

花音「そ、空見くん……。」

 

千聖「はぁ……。」

 

 

 

 

 

牧人「四日ぶりに戻ってきたぜー!」

 

翔真「いや、まだ車内だろ。」

 

牧人「こういうのは気持ちが大事なんだよ!」

 

翔真「意味が分からん……。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【???駅 ホーム】

 

香澄「あ、暑い……。」

 

有咲「確かにこれは……結構な暑さだな……。」

 

こころ「夏って感じがするわね!」

 

美咲「まぁ、実際夏なんだけどね?」

 

りみ「でも、香澄ちゃんの言うことも分かるよ。……ミッシェル着てなくて良かったね、美咲ちゃん。」ボソッ

 

美咲「ほんと、あれ着てたら今頃地獄だ…「ところで、ミッシェルはどこにいるのかしら?」!!」

 

黒服「……奥澤様、ちょっとこちらへ。」

 

美咲「え……?」

 

 

 

 

 

楓「こ、この町、こんなに暑かったか……?」

 

牧人「なんか今年は、全体的に猛暑が続くらしいぞ……。」

 

楓「嘘だろおい……。」

 

花音「大丈夫?彩ちゃん。」

 

彩「暑い〜……。水飲みたい〜……。」

 

千聖「わがまま言わないの。」

 

翔真「……あの。」

 

彩「?」

 

翔真「これ、いります?」

 

彩「水!私にくれるの!?」

 

翔真「はい。俺、もう一本持ってるので。」

 

彩「ありがとう!翔真くんは私の命の恩人だよぉ〜。」

 

千聖「大袈裟よ、彩ちゃん。」

 

楓「……お前、よく水なんか持ってたな。」

 

翔真「車内に、冷蔵庫あったろ?そこに入ってたんだよ。黒服の人に聞いたら、好きなだけ持ってっていいって言われたからさ。」

 

楓「……あー、なるほどな。」

 

花音「……」

 

楓「……?どうしたの?松原さん。」

 

花音「空見くん、あれ……。」ユビサシ

 

楓「ん?……看板が、どうかしたの?」

 

花音「あの、"伊那日"って……。」

 

楓「あれ、この町の地名だよ。"伊那日"って書いて、"いなか"って読むんだ。」

 

花音「そ、そうなんだ……。」

 

千聖「伊那日……。あの字、どこかで見たことあるような……。」

 

牧人「おい楓。」

 

楓「ん?何だよ牧人。」

 

牧人「着いたらまず、すること、あるだろ?」

 

楓「すること?何だよそれ。」

 

牧人「友達を地元に呼んだら、普通するだろ、あれ。」ユビサシ

 

楓「"元"地元な。あれって、いったい何のこ……」

 

 

 

 

 

『ようこそ!伊那日へ!!』

 

 

 

 

 

楓「……いや、別にしなくていいだろ。てか、普通はしねえよ。」

 

牧人「いいだろ今日くらい。俺の蒔いた種とは言え、連れてきたのはみんな楓の友達や後輩なんだからよ。おーい!みんな注目ー!」

 

香・り・こ・美・日「?」

 

彩「え、何?」

 

翔真「?」

 

楓「ちょ!お前なぁ!」

 

花音「どうしたの?空見くん。」

 

楓「い、いや、別に…「楓が、何か言いたいことあるってさ。」おい牧人ぉ!!」

 

千聖「そうなの?楓。」

 

牧人「一言だけ!一言だけバシッと言えば終わるからよ。これも思い出だぜ?」

 

楓「……」

 

牧人「今回だけ!今回だけだから!な?」

 

楓「……はぁ。ったく分かったよ……。……み、みんな!」

 

香・り・こ・美・日「……」

 

彩・翔「……」

 

花・千「……」

 

牧人「……」

 

楓「……よ……よ……

 

 

 

 

 

……よ、ようこそ、伊那日へ!」

 

香・り・こ・美・日「……」

 

彩・翔「……」

 

花・千「……」

 

楓「……おい牧人。どうすんだ、この空気。」

 

牧人「……ぷっ、くっ、くくく……」

 

楓「(……こいつ、後でぶん殴る……。)」

 

 

 

 

 

花音「……空見くん。」

 

楓「! ま、松原さん……。ごめん、今のは……」

 

花音「……

 

 

 

 

 

……数日間、お世話になります!」ペコリ

 

楓「!!」

 

香澄「わ、私も!お世話になります!」ペコリ

 

こころ「ペコリ」

 

有・美「ペコリ」

 

日菜「……るんっ♪ってきた!ペコリ」

 

彩「わ、私も!ペコリ」

 

千聖「……ふふ♪ペコリ」

 

楓「……み、みんな……。」

 

花音「……楽しい旅行にしようね♪空見くん!」

 

楓「……うん!」

 

 

 

 

 

牧人「……言ってみるもんだなぁ。」

 

翔真「こいつ、ほんとに楓か……?」

 

 

 

 

 

彩「……よし!あいさつも済んだことだし、さっそく空見くんのおばあちゃん家に行こう!」

 

千聖「ここからだと、どれくらいで着くのかしら?」

 

楓「そうですねー……。バスと歩きで、だいたい30分くらいですかね。」

 

香澄「おぉ!近い!」

 

有咲「いや、近くはねえだろ……。」

 

美咲「そのバスって、どこから乗るんですか?」

 

牧人「駅のとこだよ。ここから歩いて5分とかからないとこだ。」

 

りみ「め、めーっちゃ近い……。」

 

日菜「それじゃあ早く行こうよ!」

 

こころ「そうね!楓、道案内をお願い!」

 

楓「う、うん。」

 

翔真「ちゃんとできるのか?お前に。」

 

楓「バカにすんな!それぐらいできるわ!」

 

花音「まぁまぁ、空見くん。」

 

ついに、僕と翔真の"元"地元、伊那日(いなか)に到着した。

 

ここから5分歩いたところにあるバス停でバスに乗り、そこに15分乗って降りた後、そこから5〜8分ほど歩いたところに、これから行く目的地、おばあちゃん家がある。

 

おっと、その前に連絡しとくか。

 

……、……、……よし。

 

楓「それじゃあみんな、出発するよ。」

 

みんな「うん(ええ・おう)!」

 

……道案内がてら、久々の伊那日の町を堪能するか。

 

みんなも、いろいろ気になってるみたいだしな。




今週終わったらライブ今週終わったらライブ今週終わったらライブ今週終わったらライブ今週終わったらライブ……。


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65話 ミッシェル、満を辞して(?)登場!

今回のイベントのりんりんと瑠維さんの星四イラスト、エグすぎません……?

特に特訓前……あれは人によっては死人が出ますよ!


楓「着いた、ここだよ。」

 

無事、おばあちゃん家へ行くために乗るバスの乗り場に案内することができた。

 

流石に4ヶ月じゃ忘れないわな。

 

彩「次のバスは……5分後だね。」

 

日菜「5分か〜。まぁまぁあるね〜。」

 

香澄「はい空見先輩!バスが来るまで、そこら辺を見てきてもいいですか!?」

 

楓「別にいいけど……乗り遅れないように気をつけてね?」

 

香澄「分かってます!有咲、りみりん、行こ!」

 

りみ「えぇ!?」

 

有咲「わ、私も行くのかよぉ!?」

 

さっきまであんな暑がってたのに、もう元気になってる……。

 

花音「……」キョロキョロ……

 

楓「? どうしたの?松原さん。」

 

花音「うん……。美咲ちゃんが、見当たらなくて……。」

 

楓「奥沢さん?……言われてみれば……」

 

千聖「珍しいわね、美咲ちゃんが何も言わずいなくなるなんて。」

 

花音「うん……。」

 

楓「……僕、探してこようか?」

 

花音「! それなら、私も…「大丈夫だよ、僕一人で。それに、ここら辺のことは、僕が一番よく知ってるしね。」……」

 

 

 

 

 

牧人「……俺もよく知ってるっつーの。」

 

翔真「張り合わんでいいから。……ん?」

 

牧人「どうした?翔真。」

 

翔真「あそこに見えるの……何?」

 

牧人「あ?……え、何だ、あれ……。」

 

 

 

 

 

楓「それじゃあ、行ってくるね。」

 

花音「うん……。あの、気をつけ…「ねぇ花音、あれ……。」ふぇ?……!あ、あの形って!」

 

楓「ん?」

 

彩・日「? ……あ、あれは……」

 

 

 

 

 

ミッシェル「みんなー、お待たせー。」

 

こころ「ミッシェル!!」

 

み、ミッシェル……?

 

……あ、そういや黒服の人が言ってたな。

 

ミッシェルは現地で合流するって……。

 

翔真「お、おい楓……。」

 

楓「ん?」

 

翔真「何だよあれ……。クマか……?あんなイメージキャラクター、伊那日にいたか?」

 

楓「いや、あれはイメージキャラクターじゃなくて…「ミッシェルよ!!」!」

 

翔真「み、ミッシェル、ですか?」

 

こころ「ええ!ミッシェルは、あたし達と同じハロハピのメンバーで……」

 

翔真「……こりゃあ、長引きそうだな。」

 

彩「ねぇミッシェル、……熱く、ないの?」

 

ミッシェル「は、はい。中にクーラーがついてて、とても涼しいです……。」

 

花音「く、クーラーがついてるの!?」

 

日菜「あはは!何それ面白〜い!」

 

千聖「そんな笑うほど面白いことでもないと思うけれど……」

 

なるほど、道理で……。

 

ミッシェルの中の人が心配だったけど、クーラーがついてるならな。

 

……クーラーがついてる着ぐるみ?

 

……よくよく考えると、何だその着ぐるみ……。

 

って、こんなことしてる場合じゃなかった!!

 

楓「と、とりあえず僕は、奥沢さん探してくるね!牧人、みんなを頼んだ!」

 

牧人「え?あ、ああ。気をつけて……って、行っちまった。」

 

ミッシェル「? 今空見先輩、あたしを探してくるって言いませんでした?」

 

花音「え?……!そ、そうだよ!美咲ちゃんはここにいるから、探しに行かなくてもいいんだよ!」

 

牧人「え、どういうことだ?」

 

千聖「このミッシェルの中身は、美咲ちゃんなのよ。」

 

牧人「……え!そうなのか…「ジロッ」……そうなん、ですか。」

 

花音「でも空見くん、そのことを知らないから、ミッシェルとは別人だと思ってる美咲ちゃんを探しに……」

 

彩「い、急いで連れ戻しに行かなきゃ!」

 

千聖「そうね。そうこうしているうちに、バスが来てしまうかもしれない…「あ、バス来た。」!?」

 

彩「そ、そんな!?」

 

花音「……私、探してく…「スッ」? 美咲、ちゃん?」

 

ミッシェル「空見先輩は、あたしに任せてください。花音さん達は、先にバスに乗って目的地に向かってください。」

 

花音「で、でも…「どっちにしろ、ミッシェルのままじゃバスには乗れませんし。あたし達なら、後で黒服の人の車で追いつきますから。」……」

 

 

 

 

 

こころ「ミッシェルー!花音ー!みんなー!早くバスに乗りましょうー!」

 

翔真「み、ミッシェルも乗るんですか!?」

 

 

 

 

 

ミッシェル「黒服の人もついてますし、大丈夫ですよ。だから……状況説明やこころの面倒、お願いします。」

 

花音「……」

 

千聖「……行きましょう、花音。」

 

彩「私達は、私達のできることをやろう!」

 

日菜「お〜、彩ちゃんカッコいい〜!」

 

彩「そ、そうかな?えへへ……。」

 

牧人「……花音さん、美咲ちゃんを信じましょう。それに、楓も大丈夫です。もともと住んでた場所ですし、何かあったら連絡しますよ、あいつなら。」

 

花音「……分かった。……美咲ちゃん。空見くんと、香澄ちゃん達を頼んだよ。」

 

ミッシェル「え、何で戸山さんの名前が……?……そういえばポピパの三人、見当たらないな……。」

 

千聖「悪いけど、考えるのは後よ。とにかく今は、その四人の捜索を優先してちょうだい。」

 

ミッシェル「そ、捜索って……」

 

彩「ミッシェル……じゃなくって美咲ちゃん!頼んだよ!」

 

日菜「状況報告は、スマホのメッセージでしてね!」

 

ミッシェル「は、はぁ……。」

 

牧人「! ヤベェ!バスを待たせちまってる!みんな、早く行くぞ!」

 

花音「わ、分かった!それじゃあ美咲ちゃん、また後でね!」

 

タッタッタッタ……

 

ミッシェル「ま、また後で……。」

 

 

 

 

 

『……それでは、◯◯行き、発車しまーす。』

 

 

 

 

 

ミッシェル「……なんか、しょっぱなから責任重大だなー。」

 

黒服1「奥沢様。戸山様達と空見様は、どちらもこっちの道を行かれました。」

 

ミッシェル「そ、そうなんですか。」

 

黒服2「私共、全力で奥沢様をサポートいたしますので、困ったことがあれば何なりとお申し付けください。」

 

ミッシェル「あ、ありがとうございます……。(まぁ、この人達がついてるなら、なんとかなるか。……さてと。それじゃあ行きますか。)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

香澄「え〜!美咲ちゃんが〜!?」

 

楓「うん。だから、戸山さん達も手伝ってくれないかな?」

 

有咲「それは、別にいいですけど……。」

 

りみ「バスの時間は、大丈夫なんですか?」

 

楓「……たぶん、もう出発してると思う……。」

 

香澄「そうですか……。で、でも!美咲ちゃんがいないんじゃ、バスに間に合ったとしても、乗るわけにはいかないですよね!美咲ちゃん一人を置いていくなんてできないし!ね、有咲!」

 

有咲「! お、おう。……香澄にしては、まともなこと言うじゃん。」

 

香澄「だって友達の危機だよ!?まともにもなるよ!」

 

楓「それじゃあ、いつもはまともじゃないような言い方だけど……。」

 

香澄「そ、そんなことありませんよ!よーし!それじゃあ美咲ちゃん捜索隊、出動!」

 

有咲「何だよそれ……。」

 

りみ「少し、大袈裟じゃないかな……?」

 

香澄「それくらいの気持ちで探そうってこと!はら、早く行くよ!」

 

楓「あ、ちょっと待って!バラバラじゃなくて、いっしょに行動したほうが……ん?」

 

りみ「……?どうしました?空見先輩。」

 

楓「……あれって……」

 

りみ「あれ?……!」

 

香澄「どうしたのーりみりーん!早く美咲ちゃん探しに行こうよー!」

 

有咲「……二人とも、なんか向こう側見てねえか?」

 

香澄「え?……よく見たら、なんか見える……。」

 

 

 

 

 

楓「……あの形、まさか……。」

 

りみ「空見先輩!あれ、ミッシェルですよ!」

 

 

 

 

 

ミッシェル「……い!……おーい!」

 

 

 

 

 

香澄「ミッシェル!ミッシェルだー!」ダーッ!

 

有咲「あ、おい香澄!ったく、忙しいやつだな……。」

 

 

 

 

 

楓「な、何で……?」

 

ミッシェル「ふぅ……。探したよみんなー。」

 

りみ「良かった〜!無事だったんだね、美……じゃなくて、ミッシェル!」

 

ミッシェル「う、うん、まぁねー。」

 

香澄「良かった〜!ほんとに良かったよ〜!心配したんだからね〜!」

 

ミッシェル「あー……ご、ごめん。」

 

楓「……戸山さん達、ミッシェルのこと探してたの?」

 

りみ「え?」

 

香澄「? だって透哉先輩、ミッシェルは美さ……むぐっ!」

 

楓「?」

 

有咲「いいか香澄!空見先輩はミッシェルの正体が奥沢さんだってこと、知らないんだよ!」ヒソヒソ

 

香澄「えぇ!そうだったの!?」ヒソヒソ

 

楓「市ヶ谷さん?戸山さん?」

 

りみ「ふ、二人のことは気にしないでください。それより、ミッシェルが無事にこっちに着いて本当に良かったです!」

 

楓「う、うん、そうだね。……でも、まだ美咲ちゃんが…「あー、美咲ちゃんなら、ついさっき、こころ達のところに戻ったって、連絡が来ましたよ。」え!?そ、そうなの……?」

 

ミッシェル「は、はい。」

 

楓「マジか……。まさかの入れ違い……。」

 

有咲「……ナイス、奥沢さん。」ボソッ

 

ミッシェル「まぁ、あたしが話をややこしくしちゃったみたいなものだからね……。」ボソボソ

 

楓「……ところで、何でミッシェルはこっちに?」

 

ミッシェル「え?」

 

楓「他のみんなといっしょに、バスに乗らなかったの?」

 

ミッシェル「あ、いや……く、クマは、バスに乗っちゃダメって言われまして。あはは……。」

 

楓「……確かに。普通はそうなるか。」

 

りみ「い、今ので納得しちゃうんだ……。」

 

有咲「まぁ、バスに乗るクマなんて、聞いたことねえしな。……着ぐるみだけど。」

 

香澄「……じゃあ、ミッシェルは空見先輩のおばあちゃん家に、どうやって向かえばいいの?」

 

有咲「え?」

 

りみ「……そういえば……。」

 

楓「……歩きだと、一時間くらいか…「あー、それならあたし、裏ルート知ってますよ。」え?」

 

りみ「裏、ルート?」

 

ミッシェル「うん。バスを待たないで、空見先輩のおばあちゃん家に行くための、裏ルート。」

 

香澄「何それ!なんだかワクワクするね!」

 

有咲「危ないやつとかじゃないだろうな……?」

 

ミッシェル「大丈夫だよ!それは断じて、ないから!」

 

楓「……ちょっと怖いけど、気にはなるなぁ。……何なの?その裏ルートって。」

 

ミッシェル「はい、それはですね……。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜その頃、千聖達は〜

 

【バス 車内】

 

『……ピロリン♪』

 

彩「来た!空見くん、何て!?」

 

千聖「ちょっと落ち着きなさい彩ちゃん。えーっと……このバス停で降りるそうよ。」

 

花音「そこで落ち合いましょう、だって。ということは、美咲ちゃん、無事合流できたんだね。」

 

千聖「そうみたいね。……全く楓ったら、こんなところで心配かけさせないでちょうだい。」ボソボソ

 

彩「? 何か言った?千聖ちゃん。」

 

千聖「いえ、何も言ってないわよ。」

 

 

 

 

 

こころ「今頃美咲とミッシェル、何してるのかしら?」

 

日菜「さぁ……?あ、空見くん達と観光でもしてるんじゃない?あたし達を差し置いて……。」

 

こころ「まぁそうなの?だったら後で、あたし達も観光に連れて行ってもらいましょう!」

 

日菜「あ〜!それいいかも〜!」

 

 

 

 

 

牧人「……観光か……。」

 

彩「そうだ曽山くん!後でこの町を案内してよ!」

 

牧人「! あ、案内って……こんなど田舎を……?」

 

彩「うん!」

 

牧人「……でも、大して案内するとこなんかねえし…「何でもいいんだよ。私達は、空見くん達が住んでたこの町を知りたいんだもん。」……」

 

千聖「花音の言う通りよ。田舎かどうかなんて関係ない。大事なのは……その町に何があるか、よ。」

 

日菜「お〜!千聖ちゃんカッコいい〜!」

 

こころ「それじゃあ翔真!牧人!この町の案内役、頼んだわよ!」

 

翔真「お、俺もなのか……。」

 

牧人「……俺達じゃなくて、楓のほうが…「やるわよね?」……はい。(この人の笑顔マジ怖え……。)」

 

彩「じゃあ決まりだね!伊那日観光、楽しみだな〜!」

 

牧人「……なんか伊那日観光って、語呂いいな。」

 

翔真「確かに……。」

 

千聖「(……この景色、やはり見覚えがある……。雑誌で見たのか、いつしか来たことがあるのか……。)」

 

花音「……千聖ちゃん?」




このペースだと、伊那日編何話ぐらいになるんだろう……。


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66話 ついに到着!おばあちゃん家!

この回を書いてるときに来た今回のイベントでりみりんが、実は私も昔はおばあちゃん子だった、って言ってましたね。

なんたる偶然……。


【???】

 

……これが、ミッシェルの言う、裏ルートか。

 

香澄「うわぁ〜!見て見て有咲、りみりん!すごく綺麗な景色だよ!」

 

りみ「ほんとだ〜!」

 

有咲「緑がいっぱい……。田舎ならではの景色だよな。」

 

楓「……まさか、黒服の人が運転してくれる車で移動するとは。」

 

ミッシェル「しかもこれ、弦巻家のものですからね。用意周到すぎますよ……。」

 

いつの間に持ってきてたんだ……。

 

でも、これならミッシェルも乗れるし、遅れも取り戻せるしで、一石二鳥なのかな。

 

楓「あ、ここを右に曲がってください。」

 

黒服「了解しました。」

 

ミッシェル「……道案内しなきゃいけないってのが、少し手間ですけどね。」

 

楓「まぁでも、これくらいなら……。」

 

あと今日僕、道案内する機会多いな……。

 

それも当然っちゃ当然なんだけど。

 

香澄「あ、そうだ。ねぇ空見先輩!」

 

楓「ん?」

 

香澄「空見先輩のおばあちゃんって、どんな人なんですか?」

 

楓「ぼ、僕のおばあちゃん?」

 

香澄「はい!最初空見先輩のおばあちゃんの家に行くって聞いて、ふと有咲のおばあちゃんを思い出したので!」

 

有咲「おい香澄!今うちのばあちゃんの話はいいだろ!?」

 

楓「な、何で戸山さんが、市ヶ谷さんのおばあちゃんの……?」

 

りみ「いつも香澄ちゃん、有咲ちゃん家に寄ってから学校に来るんです。そのときによく、有咲ちゃんのおばあちゃんの作ってくれた朝ごはんを、有咲ちゃんと二人で食べてるらしくて。」

 

楓「へぇ〜……。」

 

香澄「それでどんな人なんですか?空見先輩のおばあちゃんって。」

 

有咲「ていうか香澄!普通に考えてそれは少し失礼な質問じゃ…「いや、いいよ全然。」そ、そうですか……?」

 

楓「……僕のおばあちゃんは、とてもアクティブだよ。よく歩いて散歩に行ったり買い物に行ったりしてるし、家族で出かけたときも一人だけ歩くの速いし、翔真なんかおばあちゃんから蹴り方とか余計なこと教えてもらったせいで、僕と喧嘩するときはいつも圧勝、特にあの蹴り技は……マジでヤバい……。あと、いつも夕飯を作ってくれてたんだけど、それもとても美味しくて、あと物知りだし、頭もいいし、それから……」

 

ミッシェル「……市ヶ谷さんに負けず劣らずの、おばあちゃん子だね。」

 

有咲「わ、私は別に、そんなんじゃ…「え!有咲おばあちゃんのこと嫌いなの!?」なっ!き、嫌いじゃねーよ!むしろ好……、!!」

 

香澄「好……何ー?」ニヤニヤ

 

有咲「っ〜〜///!あーもううるせぇーー///!!」

 

りみ「ふふっ♪」

 

楓「昔僕が家族と出かけてはぐれちゃったときも、真っ先に探しに来てくれて……さらにその後…「わ、分かりました空見さん。一旦、一旦この話終わりにしましょう。」え、そう?」

 

りみ「(空見先輩も、ノリノリで話してたんだ……。)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜その頃、千聖達は〜

 

花音「……!千聖ちゃん、次じゃない?私達が降りるバス停。」

 

千聖「ええ、そうみたいね。……あら?」

 

彩「どうしたの?千聖ちゃん。」

 

千聖「……楓達も、今向かっているそうよ。」

 

彩「そうなの!?良かったぁ。」

 

牧人「良かったって、何がだ?」

 

彩「もちろん、無事に合流できそうだからだよ。万が一のことってあるじゃん?」

 

牧人「まぁ、そうだけど……。」

 

千聖「彩ちゃんは、楓のことが好きだものね。」

 

牧人「え!?」

 

彩「も、もちろん、友達としてだよ!?って、それは千聖ちゃんも同じでしょ!?」

 

千聖「ふふふっ♪」

 

彩「笑って誤魔化さないでよぉ!」

 

牧人「……」

 

日菜「ちょっとー?その話は聞き捨てならないな〜。空見くんはおねーちゃんのことが好きなんだよ〜。」

 

牧人「え!?」

 

こころ「あら、あたしも楓のことは好きよ!面白いもの!」

 

牧人「え、え……えぇ!?」

 

花音「み、みんな、曽山くんが困ってるからそこまでにしてあげてね……?」

 

翔真「(……あいつ、いつの間にこんなモテモテに……。)」

 

 

 

 

 

バスの運転手「……青春してるなぁ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【バス停】

 

日菜「じゃあ次千聖ちゃん!パスパレの"れ"!」

 

千聖「"れ"、ね。れ……れ……冷蔵庫。」

 

彩「冷蔵庫だから、"こ"、か。こー……、! こあら!」

 

花音「ら……ら……らっこ!」

 

こころ「また"こ"、ね!うーん……心!」

 

日菜「自分の名前?」

 

こころ「いいえ?心よ!この胸の中にある、心!」

 

牧人「おしゃれだなぁ。」

 

花音「次、曽山くんだよ。」

 

牧人「あ、そっか。"ろ"、か。ろ……ろ……」

 

翔真「……ギブアップか?」

 

牧人「んなわけねえだろ!"ろ"、だろ?うーん……。……!ろうそくだ!」

 

翔真「くつ。」

 

牧人「……早えな。」

 

翔真「いや、これぐらい普通だろ。」

 

千聖「なら次は"つ"、ね。つー……「先ぱーい!!」タッタッタッタ ! ……やっと来たわね。」

 

牧・翔「! 楓!」

 

花・彩「! 空見くーん!みんなー!」

 

 

 

 

 

香澄「やっと着いたー!」

 

日菜「あはは、お疲れ〜。」

 

ミッシェル「た、ただいま、戻りました……。」

 

こころ「おかえりなさい!ミッシェル!」

 

有咲「か、香澄……お前、速いっての……。」

 

千聖「だ、大丈夫?有咲ちゃん。」

 

りみ「め、めっちゃ疲れた〜……。」

 

彩「め、めっちゃ?」

 

 

 

 

 

楓「はぁ……はぁ……はぁ……つ、疲れた〜!」.

 

花音「お帰り、空見くん。」

 

楓「た、ただいま……。そ、そういや今日、めちゃくちゃ暑いの忘れてた……。」

 

花音「そ、そういえば……。」

 

楓「走って来たから、尚更……。」

 

花音「……あ、私うちわ持ってるんだった。もしだったら、仰いであげようか?」

 

楓「え?何で、うちわを……?あ、家から持ってき…「ううん。電車の中にうちわ置き場があって、黒服の人がご自由にどうぞって言ってたから、一応もらっておいたんだ。」あ……なるほど。」

 

黒服の人も弦巻車も、万能すぎるでしょ……。

 

花音「というわけで……はい。バサッ、バサッ」

 

楓「! す、涼しい〜……。」

 

花音「ふふっ、良かったぁ。」バサッ、バサッ

 

楓「ありがとう、松原さん。」

 

花音「ううん、全然いいよ。」バサッ、バサッ

 

 

 

 

 

牧人「……松原さんも、楓のことが好きなのか。しかし……あれは本当に友達としてなのか?」

 

翔真「俺に聞くなよ。知りたきゃ、自分で聞きに行きゃいいだろ。」

 

牧人「……いや、やめとく。」

 

翔真「何なんだよ……。」

 

彩「……」

 

千聖「私も、仰いであげようかしら?」

 

彩「へ?あ、ううん、私は大丈夫。……よいしょっと。そろそろ、出発する準備しないとだよね。おーい、空見くーん!」

 

千聖「……彩ちゃん今、胸を押さえてた……わよね?」

 

 

 

 

 

りみ「……私も、仰いであげに…「有咲〜!暑い〜!」!」

 

有咲「あーもう抱きつくなー!ますます暑くなるー!」

 

りみ「ふ、二人とも、大丈夫?私が仰いであげるね?……それっ。バサッ、バサッ」

 

香澄「! 涼しい〜!ありがとうりみりーん!」

 

有咲「助かるよ、りみ。」

 

りみ「全然、お安い御用だよ。……」バサッ、バサッ

 

 

 

 

 

ミッシェル「……りみ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

楓「……よし。じゃあそろそろ、おばあちゃん家に向かおうか。」

 

花音「うん!」

 

こころ「あら?……ミッシェルがいないわ。」

 

美咲「どうしたの?こころ。」

 

こころ「あ、美咲。ミッシェルがまたいなくなってしまったの。どこ行ったか分かるかしら?」

 

美咲「あー……ミッシェルなら、ボランティア活動に行ったよ。」

 

有咲「ぶふっ!」

 

香澄「あ、有咲!?大丈夫!?」

 

有咲「だ、大丈夫大丈夫……。(ツッコむな……ツッコんだら負けだ……。)」

 

こころ「まぁそうなの!だったらあたしも…「あたし達は空見先輩のおばあちゃんの家に行くんでしょ。……ミッシェルなら、一人で大丈夫って言ってたよ。ある程度方がついたら、また合流するって。」そうなのね……。」

 

千聖「(ボランティア活動……。)」

 

彩「(もう……何でもありになってきてるような……。)」

 

牧人「……いやいや、普通そんなこと信じ…「分かったわ!じゃあミッシェルが帰ってきたときのために、あたしがとびっきりのプレゼントを用意しておくわ!」えぇ!?」

 

美咲「ぷ、プレゼント……?」

 

こころ「ええそうよ!ボランティア活動を頑張ったミッシェルに、贈り物をするの!美咲と花音も手伝ってくれるかしら?」

 

花音「ふぇ?あ、えっと、私は……チラッ」

 

美咲「……うん、分かった、手伝うから。とりあえず、空見先輩のおばあちゃんの家に向かおぅ。」

 

花音「(な、何もかもを諦めたような顔……!)……な、なら、私も手伝うよ。素敵な贈り物をあげようね、こころちゃん。」

 

こころ「決まりね!そうと決まったら楓、早く行きましょう!」

 

楓「う、うん……。」

 

牧人「……ま、マジか……。」

 

日菜「あはは、それがこころちゃんだもん。」

 

楓「……にしても、ここら辺でボランティア活動なんかしてたかなぁ?」

 

美咲「!」

 

花音「え、ないの……?」

 

楓「うーん、聞いたことないなー。」

 

美咲「……」ダラダラダラ

 

牧人「(お、流石の楓も今の強引な嘘には……)」

 

楓「……でも、僕と翔真が向こうに引っ越した後に、新しくできたのかも。だとしたらミッシェル、偉いよなぁ。」

 

牧人「(嘘だろおおおお!!??)」

 

花音「……そ、そうだね。」

 

美咲「ほっ……。」

 

りみ「空見先輩、意外と鈍感なんだなぁ。」ボソボソ

 

翔真「やっぱあいつ、バカだな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜7分後〜

 

楓「……やっと、着いた〜!」

 

 

 

 

 

【楓のおばあちゃん家】

 

彩「ここが、空見くんのおばあちゃん家……。」

 

花音「……!花が植えてある!」

 

千聖「あら、ほんとね。」

 

楓「おばあちゃん、花を育てるのも趣味なんですよ。

 

花音「へぇ〜。どれも綺麗だな〜。」

 

……約四ヶ月ぶりか。

 

外観から分かる、良き古き家……庭に植えられた、数種類の花……開くとガラガラガラと鳴る引戸のドア……何もかも変わってない。

 

小さい頃から、自分の家以上に行き来してたおばあちゃん家。

 

ここでおばあちゃんに勉強を教えてもらってたし、牧人とも遊んでた。

 

夕飯もいつもここで食べ、小さい頃は寝泊まりもこの家で……大晦日も、この家で家族で過ごしたなぁ。

 

……そんな、365日、この家にいないことがなかったと言っても過言ではない僕が、ここを離れて四ヶ月ほど。

 

……正直、寂しくなかったと言えば嘘になる。

 

ここに帰りたいと思ったときもあったし、おばあちゃんに会いたいと思うことも……なくはなかった。

 

……元気にしてるかな、おばあちゃん。

 

牧人「楓、入らねえのか?」

 

楓「……いや、入るよ。」

 

翔真「んじゃ、先行くぞ。」

 

楓「あ、おい待て翔真!僕が先だ!」

 

有咲「……何張り合ってんだ?」

 

りみ「きっと嬉しいんだよ。おばあちゃんの家に来れて。」

 

香澄「その気持ち、私も分かるな〜。」

 

こころ「あたしもよ!」

 

美咲「……まぁ来たかった場所に来れてテンション上がっちゃう気持ちは、あたしも分かるかな。」

 

日菜「あたしは、おねーちゃんとならどこへ行ったって嬉しいよ!」

 

 

 

 

 

ガラガラガラ

 

楓・翔「ただいまー!」

 

 

 

 

 

スタスタスタ

 

楓の祖母「楓!翔真!お帰りー!元気にしてたかい?」

 

楓「うん、元気だよ。おばあちゃんのほうは?」

 

楓の祖母「私ももちろん、元気だよ。翔真、新しい学校はどうだい?」

 

翔真「まぁ……楽しんでるよ。」

 

楓の祖母「そうかいそうかい。……それで君達が、楓のお友達だね?」

 

牧人「ちょっとばあちゃん!俺のことは無視かよ!?」

 

楓の祖母「おぉ牧人、忘れてたわけじゃないんだよ。ただ、楓のお友達に先に目が行っちゃったもんで……」

 

牧人「(絶対忘れてた……。)」

 

花・彩・千「……」

 

香・り「……」

 

有咲「げ、元気なばあちゃんだな〜……。」

 

こころ「あら、とても良いことじゃない!」

 

日菜「最もだね〜。」

 

美咲「あはは……。」

 

楓の祖母「改めてみんな、遠いところからわざわざお疲れ様。」

 

彩「! い、いえ!あ、あの、本日はお日柄もよく、とてもご隆盛のことと…「彩ちゃん、少し黙ってようか……。」え?」

 

千聖「空見さんのお婆さま、本日はお招きいただいて、ありがとうございます。」ペコリ

 

楓の祖母「いえいえ。まさか楓の友達に、こんな礼儀の良い子がいるなんてねぇ。」

 

楓「ちょっと、僕も礼儀良いでしょ?」

 

楓の祖母「そうだけど、この子は楓以上だよ。」

 

楓「……そ、そう……。」

 

牧人「ははは、ドンマイ楓。」

 

千聖「……「でも、お嬢ちゃん。そんなにかしこまらなくてもいいんだよ。」……え?」

 

楓の祖母「君のことだよ、お嬢ちゃん。」

 

千聖「お、お嬢ちゃんって……私はそんな…「さぁさぁみんな、入った入った。ひとまず、涼しい部屋でゆっくりお休み。」……」

 

彩「ち、千聖ちゃんが、押し負けた……。」

 

花音「空見くんのおばあちゃん、すごい……。」

 

楓「……あ、み、みんな。遠慮せず、中に入って。」

 

こころ「じゃあ、お邪魔するわね!楓!おばあちゃん!」

 

美咲「ちょ、こころ!」

 

楓の祖母「いいんだよ。ほら、みんなも入りな。」

 

香澄「それじゃあ……お邪魔しまーす!」

 

りみ「ほら、有咲ちゃんも行こう?お、お邪魔します……。」

 

有咲「お、お邪魔しまーす……。」

 

日菜「千聖ちゃん、あたし達も入ろうよ!」

 

千聖「……え、ええ。」

 

楓「……なんか、ごめんね。」

 

千聖「! ち、違うのよ!別に、謝られるようなことじゃないの。……ただ、少しびっくりしただけだから。」

 

彩「でも意外だなぁ。千聖ちゃんって、ああいう呼ばれ方慣れてると思ったよ。」

 

千聖「彩ちゃん、それはどういう意味かしら?」

 

彩「! い、いや!特に、深い意味はないんだけど……」

 

千聖「ならどういう意味があるのかしら?」

 

彩「うっ……ご、ごめんなさーい!!」

 

牧人「……俺達も入ろうぜ、楓。」

 

楓「あ、うん。翔真……って、あれ?」

 

花音「翔真くんなら、もう中に入ったよ。」

 

楓「え……いつの間に……」

 

日菜「空見くん、花音ちゃん。先に中入っててよ。あたしは彩ちゃんと千聖ちゃんと行くからさ。」

 

花音「わ、分かった。二人をよろしくね、日菜ちゃん。……空見くん。」

 

楓「うん。……

 

 

 

 

 

……ただいまー。」

 

花音「お、お邪魔しまーす……。」

 

 

 

 

 

……ここを離れて4ヶ月しか経ってないから、当然っちゃ当然だけど、何も変わってないな〜。

 

いや、むしろ変わってたらそれはそれでヤバいか。

 

花音「良い家だねー。」

 

楓「そう?ありがとう。」

 

花音「なんか、ほんとに、おばあちゃんの家って感じで……。あ、も、もちろん!良い意味でだよ!」

 

楓「だ、大丈夫、分かってるって。」

 

松原さんが言いたいことは、手に取るように分かる。

 

なんせ、これまでの人生の半分くらいをこの家で過ごしていたのだから。

 

……と言っても、まだ高校生だけど。

 

花音「……?なんか、騒がしいね?」

 

楓「あそこは、居間だね。弦巻さん達が、何か話してるんじゃない?」

 

花音「たぶん、そうだろうけど……こころちゃん達以外の声も、聞こえるような……。」

 

楓「え?」

 

何それ怖……。

 

……って、ん?

 

この声……もしかして……。

 

ガラッ

 

???「おー楓、お帰りー。」

 

???「お帰りなさい。」

 

楓「た、ただいま……。」

 

???「翔真、もう一回やるか?腕相撲。」

 

翔真「もういいよ、腕が痛えもん……。」

 

???「悪いわねぇ、この子と遊んでもらっちゃって。」

 

牧人「い、いえ、大丈夫ですよ。」

 

???「牧人、ゲーム、ゲームしようぜ。」

 

???「それなら、お父さんも入れてくれよ。」

 

……親戚大集合じゃねえか。

 

千聖「びっくりしたわよ。おばあさんに連れられてこの部屋に入ったら、こんなに人がいるんですもの。」

 

彩「まさか空見くんのおばあちゃんが、こんなに大家族だったなんて……。」

 

楓「あ、いや、この人達は……」

 

???「帰ってきたんだ。」

 

花音「! い、いつの間に……?」

 

楓「……いきなり後ろから現れたら、びっくりするじゃん。」

 

???「ずっとここにいたよ。別に驚かしたつもりないけど。」

 

有咲「な、なんかこの人、怖えな……。」ボソッ

 

りみ「う、うん……。」

 

???「ジロッ」

 

り・有「ひぃっ!」

 

香澄「……私、戸山香澄!あなたは?」

 

???「……ふんっ。」

 

香澄「あ……行っちゃった……。」

 

有咲「お、お前、コミュ力すげえな……。」

 

楓の祖母「ごめんねぇ。悪い子じゃないんだよ、あの子。」

 

香澄「……はい。なんか、そんな気がします。」

 

りみ「香澄ちゃん……。」

 

こころ「……あたし、良いこと思いついたわ!」

 

美咲「あ、なんか嫌な予感がする……。」

 

楓「……」

 

???「この子達が、楓の友達か〜。」

 

???「しかも全員女の子だなんて、やるじゃんか楓〜。」

 

日菜「空見くん、大人気だねー。」

 

楓「いや、これは人気とかじゃなくてね……。」

 

楓の祖母「みーんな、楓の親戚なんだよ。」

 

花音「! み、みんな……ですか……?」

 

……流石にこれだけ集まると、多いし、狭いな……。

 

楓の祖母「……今日は、表でお昼にしようかね。」




このペースだと、伊那日編何話かかるんだろう……。


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67話 親戚大集結

こっちはめちゃくちゃ久しぶりの投稿ですね。

とりあえず二年生編は確実に終わらせますので、そこはご安心を。

と言ってもあとどれくらいかかるか分かりませんが……。




【おばあちゃん家 庭】

 

楓の祖母「今日は天気も良いし人数も多い。だから、今日のお昼は庭で。たまにはこういうのもいいだろ?楓。」

 

楓「うん。それに、流石に中でこの人数は狭いもんね……。」

 

今いる人数は、まず松原さん、白鷺さん、丸山さん、日菜さん、戸山さん、牛込さん、市ヶ谷さん、弦巻さん、奥沢さん、そして僕と翔真と牧人で、12人。

 

さらにおばあちゃんと、その他親戚が7人いて、8人。

 

よって、合計20人だ。

 

……うん、多いね。

 

学校の1クラス分くらいの人数だね、これ。

 

おばあちゃん家が広いから良かったけど、普通の一軒家とかだったらマジでぎゅうぎゅうだったな……。

 

千聖「庭も広いのね……。」

 

花音「こういうところでいっぱい人が集まってお昼を食べるのって、なんか素敵だよね。」

 

彩「うん!それにすごく美味しそう〜!」

 

おばあちゃん家に到着したとき、既に昼ご飯が食べれる状態になっていた。

 

僕達が着く時間に合わせて、おばあちゃんと他のみんなが、昼ご飯の準備をしてくれていたらしい。

 

しかし、急遽庭で食べることになったので、みんなで手分けしてご飯を運んだりテーブルや椅子を運んだりした。

 

15分程かかり、ようやく僕達は着席することができた。

 

今ここには5つの丸テーブルがあり、それぞれ4人ずつに分かれて座っている。

 

ちなみに組み合わせは、1つが僕、松原さん、白鷺さん、丸山さん、1つが日菜さん、戸山さん、弦巻さん、奥澤さん、1つが牛込さん、市ヶ谷さん、翔真、牧人で、もう2つがおばあちゃんとその他親戚だ。

 

基本1人に1つ、自分のご飯が並べられているが、その他のおかずやオードブル、寿司などは、別に長テーブルに置かれていて、いつでも自分で取りに行けるバイキング形式になっている。

 

香澄「この感じ、まるでキャンプみたいだよね!」

 

こころ「ええ!とても楽しいわ!」

 

日菜「分かるよ〜その気持ち。なんか、るるるるんっ♪てするよね!」

 

美咲「出た、日菜さん独特の言葉。」

 

なるほど、キャンプか。

 

……確かに、っぽいな。

 

翔真「久しぶりだな〜、おばあちゃんの手料理。」

 

有咲「ばあちゃんの手料理ほど、美味しいものはないからな〜。」

 

牧人「有咲ちゃんのばあちゃんも、料理するんだ。」

 

りみ「はい。有咲ちゃんの場合は、いつも朝に…「べ、別に今言わなくてもいいだろ!」えへへ、ごめんごめん。」

 

……そろそろ、腹減ったな〜。

 

いただきますのあいさつ、牧人にお願いし…「おい楓!」……嫌な予感。

 

楓「何だよ、牧人。」

 

牧人「乾杯のあいさつ、お前に任せ…「絶対に嫌だ。」何でだよ!?」

 

楓「何でも何も、僕はもとから大勢の前に立って何かをするってのが苦手なんだよ!」

 

楓の祖母「まぁまぁそんなこと言わずに。今日の主役は楓とそのお友達なんだからさ。代表して楓がやるべきだよ。」

 

楓「ちょ、おばあちゃんまで!?」

 

???「そうだぞ楓ー!」

 

???「男見せろー!」

 

???「頑張って〜!」

 

???「バシッとカッコよく決めちゃいなさい!」

 

???「お友達に良いとこ見せろよー!」

 

???「行けー楓ー!」

 

???「……」

 

千聖「……だそうよ。どうする?楓。」

 

楓「……」

 

花音「頑張って、空見くん!」

 

彩「駅でのやつを思い出して!」

 

楓「……はぁ。分かったよ……。牧人、後で覚えてろよ……?」

 

牧人「流石は俺の親友だ!」

 

それは別に関係ないだろ……。

 

あいつ、今度一回ぶん殴ってやろうかな。

 

……てか、乾杯のあいさつって何すりゃいいの?

 

普通に、かんぱーいでいいのか?

 

楓「……え、えっとー……」スクッ

 

『……』

 

楓「……か、乾ぱ…「の前に何か一言言えよー!」うるっせえな!調子のんなよ牧人殴んぞ!!」

 

翔真「めちゃくちゃキレられてんじゃねえか。」

 

牧人「大丈夫だってこれくらい。」

 

……よし決めた。

 

あいつ後で一発殴る。

 

楓「……一言、一言か……。」

 

牧人「(でもなんだかんだ言って、考えてはくれるんだよなぁ。)」

 

……全然思いつかん……。

 

何だよ乾杯のあいさつって……。

 

結婚式とかの披露宴じゃあるまえし……。

 

……もう、普通に乾杯だけでい…「スクッ」え?」

 

千聖「皆さん、今日は空見さん達だけでなく、私達まで呼んでくださって、本当にありがとうございます。今日から四日間お世話になるにあたり、皆さんと素晴らしい時間を共有できるよう、日々過ごしていきたいと考えております。短い滞在期間ではありますが、少しでも早く皆さんのことやこの町のことを知っていけたらと思っているので、どうぞよろしくお願いいたします。」

 

『……』

 

白鷺さん……。

 

……ん?

 

 

パチ、パチ、パチ……。

 

 

 

 

 

パチパチパチパチ‼︎

 

パチパチパチパチ‼︎

 

パチパチパチパチ‼︎

 

す、すげえ……。

 

千聖「楓。」ボソッ

 

楓「え?……あ。スッ ……そ、それでは……。

 

 

 

 

 

……か、かんぱーい!!」

 

『かんぱーい!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

みんなで乾杯をした後、まずは普通に昼ご飯を食べた。

 

もちろん普通に食べるのではなく、団欒しながらの昼ご飯だ。

 

そしてある程度食べ終わった後、親戚達の自己紹介が始まった。

 

三郎「じゃあまずは俺から。こほんっ!……俺は高木三郎。楓の父ちゃんの兄だ。まぁ、気軽に三郎おじさんとでも呼んでくれ。」

 

恵美「私はこの人の妻の恵美よ。そしてこっちの大きいのが息子の裕也。」

 

裕也「大きいって……。まぁ間違ってはないけど……。」

 

楓「裕也さんは、柔道をやってるんだよ。」

 

彩「柔道……。そっか、だからさっき翔真くん、腕相撲で負けてたんだ。」

 

裕也「それに柔道が関係あるかは分からないけどな……。」

 

 

 

 

 

陽子「じゃあ次は私達ね。私は楓くんのお母さんの妹の、大原陽子。そしてこっちが夫の拓海で、この子が息子の空。」

 

拓海「よろしくな、みんな。」

 

空「……」

 

陽子「どうしたの?空。後ろに隠れたりして。」

 

拓海「女の子がいっぱいいるから、恥ずかしがってんじゃねえか?」

 

空「そ、そんなこと!……ねぇよ。」

 

香澄「か、可愛い〜!空く〜ん!」ダキッ!

 

空「!? ちょ、やめろって///!」

 

有咲「だから香澄!お前誰にでも抱きつく癖やめろって!」

 

拓海「お、空モテモテだな〜。」

 

陽子「からかわないの。バシッ」

 

拓海「いてっ。」

 

 

 

 

 

???「……」

 

こころ「どうしてあなたは、笑顔じゃないの?」

 

???「!?」ビクッ!

 

美咲「ちょっとこころ!いきなりはびっくりするって!」

 

???「……な、何ですか?」

 

こころ「今はこーんなに楽しい時間なのに、あなただけ笑顔じゃないから、声をかけたの。何か、理由があるのかしら?」

 

???「……部外者には、関係ないです。」

 

美咲「ぶ、部外……。」

 

こころ「関係なくないわ。同じ場所にいるってことは、もうその時点で部外者ではないもの!みーんなが同じ場所で、同じ瞬間を分かち合う、とても素敵な関係なのよ!」

 

美咲「理屈は分かんないけど……良いことは言ってる……のかな?」

 

???「……何それ。ガタンッ」

 

香澄「!」

 

???「もう話しかけて来ないで。スタスタスタ……」

 

楓の祖母「あ、早希ちゃん!」

 

香澄「……早希、ちゃん……。」

 

こころ「……」

 

美咲「……ど、ドンマイ、ここ…「あたし、絶対にあの子を笑顔にしてみせるわ!」! ぜ、全然折れてない……。まぁ、そっちのほうがこころらしいか。」

 

 

 

 

 

楓「……あ、そういえば白鷺さん。」

 

千聖「何かしら?」

 

楓「さっきは……ありがとう。僕、何も言葉が出てこなくて……」

 

千聖「いいのよ。私もみんなにお礼を言う機会が欲しかったから、丁度良かったわ。」

 

楓「……そっか。」

 

香澄「あの、空見先輩。」

 

楓「! 戸山さん、どうかしたの?」

 

香澄「えっと……早希ちゃん?のことなんですけど……。」

 

楓「あ……。」

 

香澄「……あの子、どうして一人でいるのかなぁって。こころんと喋ってたみたいなんですけど、気づいたら、あっちのほうに、走って行っちゃって……。」

 

楓「……分かった。僕が連れ戻してくるよ。」

 

香澄「! ち、違うんです!連れ戻してほしいわけじゃなくて、あの子のことを、教えてほしいなぁって…「僕も、ちょっと話したいことがあるから。あいつのことは、後で話すよ。」……わ、分かりました。」

 

楓「じゃあ、ちょっと行ってくるね。タッタッタッタ」

 

千聖「……あいつ……?」

 

 

 

 

 

花音「……空見くん?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戸山さんの話だと、こっちのほうに走って来たらしいけど……。

 

……あ、いた。

 

早希「……」

 

あいつ、いつもどっか行ったっと思ったら花見てるんだよな……。

 

楓「……おい。」

 

早希「! な、何?」

 

楓「何、じゃねえだろ。聞いたぞ、弦巻さんから逃げたって。感じ悪いだろ。ほら、戻れよ。」

 

早希「……やだ。」

 

楓「はぁ、言うと思ったよ……。」

 

早希「……何で。」

 

楓「ん?」

 

早希「何でわざわざ追いかけてきたの。私とあんたは、ただの他人じゃん。」

 

楓「そうだけど……一応僕とお前は……」

 

 

 

 

 

花音「……ついてきちゃった……。悪いことだって分かってはいるけど……あの子のことも、気になるし……。」

 

 

 

 

 

楓「兄妹だろ。」

 

 

 

 

 

花音「……え?」

 

 

 

 

 

早希「……はぁ。何で私、あんたなんかと兄妹になっちゃったんだろう。」

 

楓「仕方ねえだろ。僕も当時はびっくりしたけど……。」

 

 

 

 

 

花音「……きょ、兄妹?あの子と、空見くんが……?……でも、空見くんの兄弟は、翔真くんだけじゃ……」

 

 

 

 

 

楓「……とりあえず、戻れよ。おばあちゃん達もきっと心配してるし。」

 

早希「……分かった。……でも、あんたに言われたからじゃないから。おばあちゃんのために…「あぁ分かった分かった。」……そういうとこ、ほんとムカつく。」

 

楓「僕も、お前の態度にはたびたびイライラしてるよ。」

 

早希「……最後に一つだけ。」

 

楓「あ?何だよ。」

 

早希「……あの女達は、あんたの何なの?」

 

 

 

 

 

花音「!」

 

 

 

 

 

楓「お前……もうちょい言い方ってもんを…「さっさと答えて。何なの?」……別に、ただの友達だよ。」

 

 

 

 

 

花音「……」

 

 

 

 

 

早希「ほんとに?」

 

楓「ほんとだよ。……てか、何でお前がそんなこと気にすんだよ。」

 

早希「……別に。スタスタスタ」

 

楓「……はぁ〜。ほんっと分からんやつ……。」スタスタスタ

 

 

 

 

 

花音「……空見くんとあの子が、兄妹……。みんなには、黙っておいたほうがいいかな……。……ううん、迷う必要なんてないよね。もともと盗み聞きなんてよくないことだし……このことは、自分の心の中だけに留めておこう。……!って、早く戻らないと!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

楓の祖母「……あ、早希ちゃん!心配したんだよ?」

 

早希「ごめん……。」

 

楓「……」

 

千聖「お帰り楓。ねぇ、花音を見なかった?」

 

楓「え、松原さん?さぁ……僕ずっとこいつといたから……」

 

香澄「あ、あの……早希ちゃん。」

 

楓「!」

 

早希「何ですか?」

 

香澄「早希ちゃんのこと、おばあちゃんから聞いたの。……まだ、中学生なんだね。」

 

早希「……悪い?」

 

香澄「違う違う!そういうんじゃなくて!……私達と、少し話さない?」

 

早希「話すことなんて、何もな…「私達にはあるの!早希ちゃんと仲良くなりたい!」……仲良くって……」

 

こころ「香澄!あたしもこの子と仲良くなりたいわ!あたし達も入れてちょうだい!」

 

香澄「こころん……!うん、もちろん!」

 

早希「! ま、また出てきた……。」

 

有咲「こいつは、一度言い出したらもう止められねえぞ?」

 

美咲「同じく、こころもね。……って、あたし"達"!?」

 

こころ「ええ、美咲もよ!」

 

有咲「……ソ~……」

 

香澄「どこ行くの?有咲。」ガシッ

 

有咲「うっ……やっぱ私もか……。」

 

早希「……」

 

香澄「早希ちゃんお願い!少しだけ、少しだけでもいいから!」

 

こころ「絶ーー対に!あなたを笑顔にしてみせるわ!」

 

早希「……はぁ、もう勝手にして。」

 

 

 

 

 

千聖「……離れて、良かったの?」

 

楓「うん。そのほうがいいと思う。……しかし、あいつが折れるとは。流石戸山さんと弦巻さんだな……。」

 

千聖「……さっき、私もおばあさんの話を聞いていたのだけれど……。昔はあんな性格じゃなかったみたいね。」

 

楓「まぁね。」

 

千聖「……あの子と楓は、どういう関係なの?」

 

楓「……ただの親戚だよ。」

 

千聖「もっと具体的によ。三郎さんは、楓のお父さんのお兄さんである、というようにら具体的に説明してちょうだい。」

 

楓「……あいつは…「空見くーん!千聖ちゃーん!」え?」

 

千聖「花音!あなた、さっきまでどこに行ってたのよ!」

 

花音「ごめんね。ちょっとお手洗いに……。」

 

千聖「そ、そうだったの……。心配するから、事前に言っておいてちょうだいね。」

 

花音「うん、次から気をつけるよ。」

 

千聖「……というわけで楓、さっきの話の続き…「みんなー!デザートができたよー!」!?」

 

楓「あ!松原さん、白鷺さん、デザートが来たって!食べに行こう!」

 

千聖「あ、ちょっと楓!……全く。」

 

花音「何の話をしてたの?」

 

千聖「……楓に、あの子のことを詳しく教えてもらおうと思ったのだけれど、流されたわ。」

 

花音「! そ、そうなんだ……。」

 

千聖「まぁいいわ。後でまた聞くから。……花音、私達も行きましょう。」

 

花音「う、うん。(……ごめんね、千聖ちゃん。)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

三郎「へぇ〜、君達はバンドをやっているのか。」

 

日菜「そうなんだよ〜。バンドはバンドでもアイドルバンドで、彩ちゃんと千聖ちゃんと……今日はいないけど麻弥ちゃんとイヴちゃんって子と5人で、Pastel*Palettesとして活動してるんだー。」

 

恵美「まぁ、アイドルなの〜。裕也、アイドルだって。あなた、アイドル好きでしょ?」

 

裕也「まぁ、好きだけど……」

 

彩「そうなんですね!裕也さんは、誰が好きなんですか?」

 

裕也「今は、『Lights』が好きだな。前は、『Marmalade』のあゆみ…「あゆみさん!?」!?」

 

彩「そ、それ本当ですか!?」

 

裕也「ほ、本当だよ……。びっくりしたなぁ。」

 

彩「そ、そっかぁ……。裕也さんも、あゆみさんが……。」

 

裕也「?」

 

千聖「あゆみさんは、彩ちゃんの憧れのアイドルだったんです。でも、Marmaladeが解散するというニュースを知って……。」

 

裕也「あぁ……。」

 

彩「でも私、あゆみさんと約束したから!あゆみさんを超えるアイドルになるって!」

 

裕也「あのあゆみさんを、超える……。」

 

千聖「ふふっ、そうね。」

 

裕也「……?待てよ?約束したってことは……お前あゆみさんに会ったのか!?」

 

彩「え?あ、はい。Marmaladeの解散ライブのときに、楽屋で…「しかも解散ライブで!?う、羨ましすぎんだろぉぉぉ!!」あ、あはは……。」

 

千聖「……」

 

日菜「あはは、裕也さん泣いちゃってるじゃーん。」

 

恵美「相変わらずね、この子は。」

 

三郎「だな。」

 

 

 

 

 

空「バンド?」

 

こころ「そうよ!あたしと花音と美咲、あとここにはいないけれど、ミッシェルとはぐみと薫の6人で、ハロー!ハッピーワールド!として、世界を笑顔にするために日々活動しているのよ!」

 

空「世界を笑顔に……。」

 

拓海「それはまた大きく出たな〜。」

 

陽子「その……話の中に出てきた、ミッシェルって?」

 

こころ「DJをやってくれている、クマよ!」

 

陽子「く、クマ……?」

 

空「すげぇ、クマがバンドやってるんだ。」

 

こころ「そう、すごいの!それからミッシェルはね……」

 

美咲「……えっと、クマはクマでも、着ぐるみです。中には、あたしが入ってて……」

 

陽子「え?……あ、そういうことね。」

 

拓海「でも着ぐるみなら、いつかバレるんじゃ……」

 

美咲「それがバレないんですよね……。恐ろしいほどに……。」

 

花音「一回美咲ちゃんがミッシェルの着ぐるみを脱いだ時があったけど、そのときもバレなかったもんね。それどころか、美咲ちゃんとミッシェルが入れ替わっちゃった〜って、パニックになっちゃって……。」

 

拓海「ま、マジか……。」

 

陽子「ふふっ、面白い子達なのね。」

 

美咲「はは、ははは……。」

 

こころ「決めたわ!今からあなたに、あたし達のライブを見せてあげる!それで、今以上にあなたを笑顔にしてあげるわ!」

 

空「マジ!?うわ〜楽しみ〜!」

 

美咲「って、いつの間にかすごい話になってるんですけど!?」

 

花音「こ、こころちゃ〜ん、今ライブをするのは流石に……。」

 

こころ「あらそう?だったら、あたし達が帰るまでには必ずやるわ!」

 

美咲「まぁ、それなら……って良くないから!」

 

陽子「ふふっ♪本当に面白い子達ね♪」

 

拓海「ああ、そうだな。」

 

 

 

 

 

早希「Poppin'Party?」

 

香澄「そう!略してポピパ!可愛いでしょ?」

 

早希「変なの。」

 

香澄「ガーン……!」

 

りみ「か、香澄ちゃん、しっかり!」

 

有咲「思った以上に直球だな……。」

 

楓「こら早希!戸山さんに謝れ!」

 

早希「ふんっ!」

 

楓「はぁ……。ごめん戸山さん、大切なバンド名に……。」

 

香澄「だ、大丈夫ですよ。空見先輩が謝ることじゃ……。」

 

早希「……」

 

有咲「あー……早希ちゃん、だっけ?空見先輩とはどういう関係なんだ?」

 

早希「赤の他人。」

 

有咲「え?……そうなの…「親戚親戚!ただの親戚だよ!」は、はぁ。」

 

りみ「えーっと……早希ちゃんは、私達といっしょにいるの、嫌?」

 

早希「……別に、そういうわけじゃ…「嫌じゃないの!?」!」

 

有咲「おわっ、香澄復活した……。」

 

早希「あ、あんたは嫌い!しつこい!」

 

香澄「そ、そんな〜!」

 

有咲「ストレートだな……。」

 

香澄「私、嫌われた……。しつこいって……。」

 

りみ「香澄ちゃん……。」

 

楓「……おい早希、いい加減に…「空見先輩。」え?」

 

有咲「……なぁ、早希ちゃん。」

 

早希「……何。」

 

有咲「私さ、早希ちゃんの気持ち、分かるよ。」

 

早希「……」

 

有咲「自分のテリトリーに入られるのが嫌ってことだろ?その気持ち、すっげー分かる。私も昔はそうだったからさ。」

 

楓「……」

 

有咲「蔵で香澄に会って、それからランダムスター目的でいろいろ……。人ん家で飯は食うし、勝手にバンドに誘うし、勝手に付き纏うし……めちゃくちゃうぜーって思ってた。」

 

りみ「……」

 

有咲「でも……いつからか、気にならなくなった。気づけば、それが日常になっててさ。バンドを組んで、ライブして、文化祭のライブでそれが5人になって……みんなでお昼食べたり、お花見したり、練習したり、バイトしたり、ライブハウスでオーディション受けたり、それに合格してみんなで喜んだり、おたえの家に泊まったり……。SPACEで最初で最後のライブをしたときも、すっげー楽しくてさ。昔は一人でいるのが気楽だった私が、ポピパの5人でいることに楽しさや嬉しさを覚えて……。はっ!」

 

香・り「「へぇー……。」」ニヤニヤ

 

有咲「ち、違っ……今のはその……テンションが、何というか、おかしくなって///……」

 

香澄「有咲ーーー!!!」

 

有咲「だーー引っ付くなーー!!ただでさえ熱いんだから離れろ!!香澄ーー!!」

 

早希「……何やってんの。」

 

りみ「ふふっ♪」

 

香澄「有咲〜♪大好き〜♪」

 

有咲「あーもう離れろ〜!!離れろって〜〜///!!」

 

楓「……要はお前も、いつまでも意地張ってないでちゃんと会話しろってことだよ。」

 

早希「何であんたが偉そうに……」

 

楓「僕もちゃんと会話してきたから、今みたいに友達がいっぱいいるんだよ!」

 

早希「どうせ向こうがグイグイ来る系だったから、仕方なくそうなったんでしょ?」

 

楓「お、お前なー…「違うよ。」! 牛込さん。」

 

早希「え?」

 

りみ「空見先輩は、ちゃんと努力してきたんだよ。楽しむ時は楽しんで、困ったときは支え合って。些細なことがきっかけで喧嘩しちゃうこともあったけど、話し合って、意見をぶつけ合って、最後には仲直りして。そうやって頑張ってきたから、今の空見先輩があるんだよ。」

 

早希「……」

 

りみ「花音先輩や千聖先輩よりは、いっしょにいた時間は短いけど……それでも、短いなりに空見先輩のことは分かっているつもり。だから……

 

 

 

 

 

……だから、私の好きな空見先輩のことを、そんな風に言うのはやめて。」

 

早希「!?」

 

香澄「……ん?」

 

有咲「……は?」

 

楓「……え?」

 

楓・香・有「「「……えええええ!!??」」」

 

りみ「……」

 

早希「……」

 

 

 

 

 

楓の祖母「みんな、仲良しだね〜。」

 

牧人「早希だけは相変わらずだけどな……。」

 

翔真「(楓のやつ、マジか……。)」




リアルだと来年の三月に大学行くかもしれないキャラがいるというのにこの時空ではまだ最高が高二と……。

いろいろとヤバいですがまだ当分この時空は続きます。


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68話 みんなと親戚と楽しい時間

お久しぶりの投稿になります、はい。

とうとう僕の地域でも雪が積もり始めて……やっと12月って実感が湧いてきましたね。


【おばあちゃん家】

 

空「おりゃあ!ここだあ!」

 

彩「あー!ちょっと待って!待ってええ!!」

 

『1P WIN!!』

 

空「おっしゃ勝ったー!」

 

牧人「相変わらず強いなー空は。」

 

彩「ま、また負けた〜……。」

 

日菜「あはは!彩ちゃん、これで3連敗だよ?」

 

彩「うぅ〜……。」

 

空「今の俺は無敵だー!」

 

日菜「よーし空くん、次はあたしと勝負だよ!」

 

空「臨むところだ!」

 

牧人「次は日菜さんとの勝負か。これは面白くなりそうだ。」

 

彩「日菜ちゃん、頑張って私の仇とってね!」

 

日菜「え〜?どうしよっかな〜。」

 

 

 

 

 

美咲「まさか、黒服の人がゲームを持ってきてくれるなんて……。」

 

裕也「マジでびっくりしたぞ。何なんだよ、あの人達……。」

 

美咲「あー……あまり気にしないで大丈夫です。」

 

裕也「そう言われるとますます気になるんだが……。」

 

翔真「大丈夫だ裕也、じきに慣れる。……たぶん。」

 

香澄「裕也さん!次裕也さんの番ですよ!」

 

裕也「え?あ、悪い。えーっと……じゃあこれだ!バッ!……マジか。」

 

有咲「(あの顔、絶対ババ引いた……。)」

 

裕也「……よし、いいぞ。引け。」

 

こころ「うーん……じゃあこれにするわ!バッ!」

 

裕也「あ!」

 

こころ「やったわ!あがりよ!」

 

有咲「マジか!」

 

翔真「は、早っ。」

 

香澄「すごーいこころん!」

 

美咲「こころが一抜けか〜。」

 

 

 

 

 

楓「ゲームとトランプかー。」

 

千聖「楓も、遊んできていいのよ。」

 

楓「いやいや、そういうわけにはいかないよ。」

 

楓の祖母「お嬢ちゃんの言う通りだよ、楓。三郎や陽子さんも手伝ってくれてるから、人手は足りてるんだ。今日くらいはみんなと遊んできたらどうだい?」

 

千聖「あの、おばあ様?できれば、お嬢ちゃんはやめてもらえると…「ふぇぇ、玉ねぎが目に染みるよ〜。」! 花音、大丈夫!?」

 

楓「……いや、やっぱ手伝うよ。もう習慣づいちゃってることだし、向こうは今いいところみたいだから、邪魔はしたくないし。」

 

楓の祖母「そう……。ありがとうね、楓。」

 

楓「ううん。えっと次は…「空見先輩、ちょっとこっち手伝ってくれますか?」牛込さん。うん、いいよ。」

 

楓の祖母「……「このお皿、もう持っていきますね。」! 陽子さん。あぁ、お願いね。」

 

三郎「なぁ母さん。これ、どう盛りつけたほうがいいかな?」

 

楓の祖母「ん?そうだねぇ。これは……」

 

恵美「気をつけてくださいよ?絶対落としちゃダメですからね?」

 

拓海「わ、分かってますって……。」

 

楓の祖母「……ほんと、賑やかになったねぇ。」

 

 

 

 

 

楓「……よし、これでOKっと。」

 

りみ「ありがとうございます!空見先輩!」

 

楓「どういたしまして。それじゃあ、向こう持ってこ…「空見先輩。」ん?」

 

りみ「……あの……さっきは、すみませんでした!」

 

楓「……えーっと……何のこと?」

 

りみ「な……さ、早希ちゃんに……空見先輩の親戚なのに、あんなことを…「あぁ、大丈夫大丈夫。別に気にしてないよ。」で、でも!」

 

楓「たぶん、あいつも気にしてないんじゃないかな?まぁ、びっくりはしたけどね。そんなことより、早くこれ持っていこうよ。」

 

りみ「……はい。(……やっぱり空見先輩、早希ちゃんに対してだけちょっと冷たい気がする……。親戚なのに、どうしてここまで差が……。)」

 

 

 

 

 

楓「……それはそうと、どこ行ったんだあいつ。もうすぐ夕飯だってのに、手伝いもしないで。……まぁいいか。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【おばあちゃん家 庭】

 

早希「……」

 

『……おかけになった電話は、現在電波の届かないところに……』

 

早希「やっぱり出ない……。お父さんもお母さんも、いったいどこにいるの……?……」

 

 

 

 

 

『私とあんたは、ただの他人じゃん。」

 

 

 

 

 

『はぁ。何で私、あんたなんかと兄妹になっちゃったんだろう。」

 

 

 

 

 

『あの女達は、あんたの何なの?』

 

 

 

 

 

『……別に、ただの友達だよ。」

 

 

 

 

 

早希「……はぁ〜……。……私、何であんなこと言っちゃったんだろう……。言い方きつすぎだし、そもそもあんなこと思ってないし。……あの人達にも、いつか謝らないとな……。……この先、どう接していけば……。

 

 

 

 

 

……楓にい。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【おばあちゃん家 居間】

 

空「それで俺、運良くアイテムをゲットできてさ。一気に超グレート技を当ててフィニッシュ!彩姉ちゃんにも日菜姉ちゃんにも勝ったんだぜ!」

 

陽子「そうだったの。すごいわね〜空。」

 

彩「コテンパンにやられちゃいましたよ……。」

 

日菜「いやぁ、惜しいとこまでいったんだけとなぁ。」

 

拓海「うちの空を舐めたらアカンでぇ〜。」

 

牧人「何で関西弁……?」

 

美咲「何回かやったけど、全部こころの一人勝ちだったね……。」

 

こころ「とても楽しかったわよね!」

 

裕也「一人勝ちというか、運が良いというか……」

 

三郎「トランプか〜。もう何年もやってないなー。」

 

香澄「じゃあ後で、いっしょにやりますか!?あ、恵美さんも!」

 

有咲「ま、マジかよ……。」

 

恵美「いいの?なら、私達も混ぜてもらおうかしら。」

 

翔真「子ども相手に本気出さないでくださいよ?」

 

楓「……改めてこうして見ると、人多いな……。」

 

花音「でも、こういうのも賑やかでいいよね。」

 

千聖「この賑やかさは……こころちゃんの家での、文化祭の打ち上げを思い出すわね。」

 

楓「あ……確かに。」

 

りみ「文化祭……懐かしいなぁ。」

 

空「何何ー?ぶんかさいってー?」

 

楓「!」

 

千聖「あら、聞こえちゃったかしら。」

 

彩「私達の学校でね、この前文化祭っていうお祭りがあったんだよ!食べ物屋さんとかお化け屋敷とか、楽しいのがいっぱいあるんだ!」

 

空「へー……。俺、そのぶんかさいってお祭りの話、もっと聞きたい!」

 

拓海「お、珍しいなぁ。空がゲーム以外のことに興味を……むぐっ!」

 

陽子「あなた、余計なこと言わないの。」

 

空「? 彩姉ちゃん、ぶんかさいの話、もっと聞かせてー!」

 

彩「うん、もちろんいいよ!あ、それなら香澄ちゃん達もいっしょに話そうよ!」

 

空「香澄姉ちゃん?」

 

香澄「私はね、ライブしたんだよ!ここにいるりみりんと有咲と、ここにはいないけどおたえと沙綾の五人で…「おい香澄、早えって。」え?」

 

空「ライブ……?ここにいない……?」

 

香澄「! ご、ごめんごめん!もうちょっと分かりやすく説明するね!えーっと……」

 

 

 

 

 

楓「……なんかごめんね、おばあちゃん。夕飯なのに、全然……」

 

楓の祖母「いいんだよ。みんなが楽しそうならそれで。」

 

楓「いや、でも…「とりあえず、先にご飯食べない?」! さ、早希!?」

 

早希「……空くんも、お腹空いたでしょ?」

 

空「え?……あ、そういえば……。じゃあまずいただきますして、それから話聞くよ!」

 

彩「うん、そうだね、そうしよっか♪」

 

こころ「早希、帰ってきたのね!」

 

早希「……まぁ。」

 

楓「お前、今までどこに…「小言は後で聞くから、まずはご飯食べさせて。」……」

 

美咲「(相変わらずの対応……。)」

 

空「それじゃあみんな、手を合わせて!」

 

楓「え、これ僕もやるの……?」

 

千聖「やるのよ。ほら。」

 

楓「わ、分かったよ。」

 

空「……いただきます!!」

 

『『『いただきます!!』』』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜20:00〜

 

【おばあちゃん家 玄関】

 

三郎「それじゃあ母さん、俺達は帰るよ。」

 

楓の祖母「気をつけて帰りなね。」

 

恵美「はい、ありがとうございます。」

 

裕也「空、寝ちゃいましたね。」

 

拓海「ああ。いっぱい遊んだし、話したし、疲れちゃったんだろう。空も、今日はいつも以上に楽しかったと思うぞ。」

 

空「zzz……。」

 

陽子「ふふふ♪可愛い寝顔ね、空。」

 

彩「陽子さん。」

 

陽子「ん?どうしたの?彩ちゃん。」

 

彩「あの……ありがとうございます。」

 

陽子「! そん…「礼を言うのは、俺達のほうだよ。」……」

 

拓海「きっと俺達がいて、最初はびっくりしたと思うんだ。楓の親戚が、こんなにいるなんてーって。……でも君達は、そんなこと気にしないかのように、いっしょにご飯食べたり、遊んだり、話したり……。空もだけど、俺達も楽しかったよ。」

 

彩「拓海さん……。」

 

拓海「楓、お前の友達、みんな良い子だよな。この子達とお前が話してるところ、たびたび見てたけど……とても良い顔してたぜ。きっと、新しい学校でもそうなんだろうなって思えたし……何より、お前が元気そうで良かったよ。」

 

楓「……ありがとうございます。」

 

陽子「……こう見えてうちの旦那ね、とても寂しがりやで、心配性なのよ。だから突然、こんなこと言い出したのよ。」ヒソヒソ

 

花音「そ、そうなんですね……。」

 

陽子「あなた、早く空を布団で寝かせてあげましょう。もうこんな時間だし、冷えるわよ。」

 

拓海「あ、そうだな。……じゃあ、俺達はそろそろ帰るよ。またな、楓、みんな。」

 

陽子「お母さんも、またね。」

 

楓の祖母「また、いつでも遊びに来なよ。」

 

陽子「うん。」

 

三郎「じゃあな、みんな。」

 

恵美「またね。」

 

裕也「楽しかったぜ。」

 

香澄「私達も、楽しかったです!」

 

こころ「今度は、ミッシェルも連れてくるわね!」

 

彩「さようなら〜!」

 

 

 

 

 

千聖「……行っちゃったわね。」

 

花音「うん……。」

 

有咲「……なんだかんだ、私も楽しかった、かな。」

 

りみ「ふふ、私もだよ♪」

 

美咲「ミッシェルのこと、忘れてなかったか……。」

 

日菜「ま、こころちゃんだからね〜。」

 

楓「……んで?お前らは帰らねえのか?」

 

牧・早「……」

 

香澄「! 早希ちゃん!まだ帰らないなら、私とお話…「おばあちゃん。お風呂、先もらってもいい?」あ……。」

 

楓の祖母「ああ、構わないよ。」

 

早希「ありがとね。……スタスタスタ」

 

香澄「……」

 

有咲「あまり気にすんなよ、香澄。」ポン

 

香澄「……うん。」

 

牧人「……俺、ちょっと見たいテレビがあるから見てくるわ。」

 

楓「へ……?今かよ。」

 

牧人「ああ、どうしても見たいやつなんだ。悪いな。スタスタスタ……」

 

こころ「……なんか早希も牧人も、元気ないわねぇ。」

 

日菜「……」

 

美咲「それじゃあ……あたし達はどうしよっか。」

 

彩「お風呂は今早希ちゃんが入ってるから……。あ!皿洗いしないとだ!」

 

花音「あ、そっか。ご飯食べて少し話した後に、みんな帰る用意を始めたんだもんね。それじゃあ彩ちゃん、いっしょにお皿…「大丈夫だよ。」え?」

 

楓の祖母「皿洗いは私と牧人でやっておくから、みんなはお風呂に入ってきな。」

 

彩「でも、今牧人くんは、テレビを見に…「叩き起こして無理やり手伝わせるから大丈夫さ。」……は、はぁ……。」

 

千聖「しかし、おばあ様。今お風呂は早希ちゃんが入っているので、その間私達もお皿を……」

 

楓の祖母「お風呂なら、銭湯があるよ。」

 

『『『せ、銭湯?』』』

 

楓「……あ、そういやあったな。」

 

楓の祖母「ここから20分くらい歩いたところに、私の知り合いがやってる銭湯があるんだよ。いつもはもう閉まってるんだけど、私が電話すれば開けてくれるから、そこにみんなで行って入ってきな。」

 

花音「そんな、悪いです…「いいんだよ。君達みたいな若いお客さんが、遠慮なんてするもんじゃないよ。」……」

 

楓の祖母「それに、今から行けば貸し切り状態だよ。今日は楓の親戚がいっぱいいて疲れたろ。君達だけで行って、お風呂にゆっくりつかって休んできなさい。」

 

千聖「……分かりました。」

 

花音「! 千聖ちゃん!」

 

千聖「花音、ここはおばあ様のご厚意に甘えましょう。伊那日まで長時間移動して、楓の親戚と会って、いっぱいお話をして……疲れがないと言ったら、嘘になるもの。みんなもそうでしょ?」

 

『『『……』』』

 

彩「……あはは、そうかも……。」

 

千聖「楓はどう?」

 

楓「……まぁ、確かに。僕も、ちょっと疲れた、かな。」

 

千聖「ふふ。……花音も、いいわよね?」

 

花音「……そう、だね。千聖ちゃんが言うなら、私も……おばあちゃんのお言葉に、甘えさせてもらおうかな。」

 

千聖「ありがとう、花音。みんなはどう?」

 

こころ「みんなでお風呂、とても楽しそうね!」

 

美咲「つまりは、あたし達の貸切ってことですよね……?」

 

日菜「すごいすごーい!贅沢だねー!」

 

有咲「でも、やっぱちょっと悪い気も……。」

 

香澄「大丈夫だって!花音先輩もOKしたんだし、有咲も行こ!」

 

りみ「こんな機会、めったにないしね。」

 

彩「……賛成みたいだね。」

 

千聖「ええ。……ちなみに、あなたはどうするの?」

 

翔真「ギクッ! ば、バレてました……?」

 

千聖「気配を隠そうと楓の後ろに隠れていたみたいだけど、私の目は誤魔化せないわよ。」

 

翔真「す、鋭え……。」

 

楓「まぁ、白鷺さんだからな。で、どうする翔真?お前もいっしょに行くか?」

 

翔真「……いや、俺はいいよ。おばあちゃん家の風呂に入…「え〜?いっしょに行こうよ翔真くーん!」!!」

 

有咲「おい香澄、無理に誘うのは…「だって、空見先輩の弟くんだよ?昔の空見先輩の話とか、頼めばしてくれそうじゃない?」昔のって……」

 

花・彩・り「「「!」」」

 

楓「ちょ、ちょっと戸山さん、それは…「それは面白そうね!翔真、あなたもいっしょに行きましょう!」つ、弦巻さん!?」

 

日菜「あたしも、空見くんの昔話聞きたーい!」

 

花・彩・り「「「わ、私も気になる!……え?」」」

 

翔真「……いや、でも、牧人ならともかく、俺は…「行ってきたらいいよ、翔真。」お、おばあちゃんまで……。」

 

楓の祖母「もし楓とこの子達だけで行くとなると、楓は一人で風呂に入ることになっちゃうよ。それは流石に寂しいだろ?楓。」

 

楓「え?……いやぁ、公民館のお風呂に入らせてもらったときも一人だったし、別に……」

 

香・り・有「「「(こ、公民館?)」」」

 

日・こ・美「「「(何のことだろう(かしら)……?)」」」

 

楓の祖母「それに、だいいち翔真。」

 

翔真「ん?」

 

楓の祖母「お前、大の風呂好きだったろ?」

 

翔真「!!」

 

香澄「そうなの!?なら決まりだね!行こ、翔真くん!ガシッ!」

 

翔真「ちょ、ちょっと待っ…「おばあちゃんナイス♪ありがとー!」ひ、日菜さん、待って……」

 

美咲「……連行されていっちゃった。」

 

有咲「だな……。っておい香澄!風呂道具忘れてるぞ!」

 

こころ「花音!あたし達も行きましょう!」

 

花音「う、うん!あ、その前にお風呂の道具持ってかないとだよ。」

 

彩「パジャマも、いっしょに持って行っていいんじゃない?夜で貸し切りだし、道もあまり人いないと思うんだけど……」

 

千聖「……そうかもしれないわね。みんな!お風呂の道具とパジャマを忘れないでね!あと、夜は冷えるから、上着も持って行くように!」

 

『『『はーい!』』』

 

楓の祖母「お嬢ちゃん、まるでみんなのリーダーだね。」

 

千聖「そんな大層なものじゃないですよ。それと、できれば私のことをお嬢ちゃんと呼ぶのは…「それじゃあ私は、銭湯に電話をかけてこようかね。」……」

 

りみ「……あの、空見先輩。」

 

楓「ん?何、牛込さん。」

 

りみ「さっきさらっと言ってた……公民館って、何のことですか?」

 

楓「あぁ、別にそんな大したことじゃ……いや、大したことか?……」

 

りみ「そ、空見先輩?」

 

楓「……まぁ、後でゆっくり話してあげるよ。」

 

りみ「あ、ありがとうございます。」

 

千聖「……」

 

花音「また今度、みんなで行きたいね。」

 

千聖「花音……。ええ、そうね。」

 

楓の祖母「みんなー。知り合いから、銭湯の貸し切りの許可もらったよー。」

 

楓「ありがとう、おばあちゃん。……よし、じゃあ準備も終わったし、行こうか。」

 

りみ「はい!」

 

花音「ふふ、楽しみだなぁ。」

 

千聖「いつにも増してうきうきね。」

 

花音「え、そう見える?」

 

千聖「ええ。」

 

花音「えへへ……。」

 

楓「……じゃあ、行ってくるね、おばあちゃん。」

 

楓の祖母「いってらっしゃい。みんなも気をつけてね。」

 

花・千・り「「「はい!」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【おばあちゃん家 居間】

 

牧人「あー、疲れた〜……。あの量を二人は鬼畜すぎる……。ん?」

 

早希「……」

 

牧人「……よぉ、早希。」

 

早希「! ま、牧人……さん。」

 

牧人「お前と二人きりって、珍しいよな。」

 

早希「……」

 

牧人「……楓達、あの銭湯行ったらしいぜ。」

 

早希「! そ、そうですか……。」

 

牧人「……お前も、素直じゃないよなぁ。」

 

早希「……うるさいです。」

 

牧人「いつまでそうやって、私は兄なんて好きじゃありませんキャラ演じるつもりだ?楓の友達とも、本心ではちゃんと話したいって思ってるんだろ?」

 

早希「……」

 

牧人「まぁ、楓も楓の友達も、そのことには全く気づいてねえみたいだから、お前にとっては都合がいいんだろうけど。」

 

早希「……私だって、素直になりたいですよ。でも……でも……」

 

牧人「……ゆっくり考えりゃいいさ。」

 

早希「え?」

 

牧人「楓と楓の友達が帰るまで、あと四日ある。それまでどうするべきか、じっくり考えてみるといい。お前のその事情を唯一知ってる、俺という心強い存在もいるわけだしさ。」

 

早希「……自分で心強いとか言っちゃうんですか?」

 

牧人「い、いいだろこれくらい。俺はカッコつけなんだよ。」

 

早希「自分でカッコつけとか言うのも、ダサいですよ。」

 

牧人「だ、ダサ……」

 

早希「ふふ。……ありがとうございます、牧人さん。私、一晩考えてみます。」

 

牧人「……お、おう。」

 

早希「では、おやすみなさい。」

 

牧人「お、おやすみ……。」

 

……そろそろ、帰るか。

 

おっと、その前に楓のばあちゃんにあいさつしていかなくちゃな。




伊那日編も長くなりそうだな……。


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69話 銭湯でゆっくりと

めちゃくちゃ久しぶりに、こっちの世界に帰還しました、知栄砂空です。

いろいろ考えて、ここまでは書こう、と目処を立てたので、そこまでなんとか頑張りたいと思います。

今までの傾向からして何年かかるか分かりませんが……気長に温かい目で見守っていてください。

よろしくお願いします。


〜PM 08:10〜

 

【おばあちゃん家〜銭湯 道中】

 

日菜「見て見てこころちゃん!星がすっごく綺麗!」

 

こころ「ほんとね〜!満点の星空だわー!」

 

千聖「二人とも、夜遅いんだから、もう少し声のトーンを下げて。」

 

花音「でも、二人がはしゃぎたくなる気持ちも分かるよ。本当に綺麗な夜空だもん。」

 

千聖「それは……そうだけど……。」

 

星……。

 

確かに伊那日は、星がよく見える。

 

なんせ田舎なのだから。

 

……今のはだじゃれじゃないぞ。

 

名前が名前だから、そういう風に聞こえてしまうだけだ。

 

香澄「……」

 

有咲「香澄、さっきからなにぼうっとしてるんだよ?」

 

香澄「……星見てたら、有咲と出会ったときのこと、思い出しちゃって。」

 

美咲「市ヶ谷さん?」

 

有咲「なっ……!?」

 

彩「何何?どうしたのー?」

 

香澄「私、星のおかげで、有咲とランダムスターに出会えたんです!」

 

彩「星のおかげ……?」

 

香澄「はい!道歩いてたら、たまたま壁に貼ってある星のシールを見つけて…「ストップ香澄!」えぇ〜?これからがいいとこなのに〜。」

 

有咲「そんな話、恥ずかしいからしなくていいだろ!?それより今は、銭湯に…「私はその話、ロマンティックで好きだけどな〜。」り、りみまで……。」

 

彩「ロマンティック……。二人って、そんな素敵な出会いだったんだ!!」

 

美咲「あ、彩先輩にまで、火が……」

 

香澄「はい!私にとってはかけがえのない…「マジで恥ずかしいからやめろー///!香澄いい!!」え〜もったいないじゃ〜ん!」

 

彩「そうだよ有咲ちゃん!もったいないよ!」

 

有咲「うぅ……奥澤さん!なんとかしてくれ〜!」

 

美咲「えぇ!?え、あー……市ヶ谷さん嫌がってるし、その辺で…「美咲ちゃんも、香澄ちゃんと有咲ちゃんの馴れ初め話、気にならない!?」……まぁ、気にならないと言えば、嘘になりますけど……」

 

有咲「奥澤さん!?」

 

りみ「美咲ちゃんも、私達の味方だね!」

 

美咲「え?いや、あたしは……。(あ、ダメだもう遅い。市ヶ谷さんが裏切ったなって顔してる……。)」

 

 

 

 

 

千聖「……あなた達、それ以上は…「お、落ち着いて千聖ちゃん。今日くらいは大目に見てあげよ?ね?」……でも、近所迷惑に……」

 

楓「大丈夫だよ、白鷺さん。」

 

千聖「! 楓……?」

 

楓「銭湯に行くまでの道はだいたい田んぼばかりだから、人にはあまり会わないし、夜なら尚更。もし会ったとしても、賑やかだねーって言ってくれるような優しい人達ばかりだから、そこまで過敏にならなくても大丈夫だよ。じゃなきゃ、夜に花火なんてできな……。!!」

 

翔真「! おい楓……!」

 

千聖「……花火?」

 

楓「あ、いや……何でもないよ。」

 

千聖「……夜に花火をするのね?」

 

楓「い、いや……。きょ、今日じゃないよ?今日じゃないけど、おばあちゃんが、みんなのためにって花火を…「みんなで花火やるの!?」! ひ、日菜さん!」

 

翔真「あちゃー……。」

 

こころ「それは楽しそうね!楓、それはお風呂に行った後にするってことでいいのかしら?」

 

楓「いやいや、流石に違うよ。……違うと、思うけど……」

 

花音「みんなで花火かぁ。楽しそうだね、千聖ちゃん。」

 

千聖「ええ、そうね。」

 

しまった……。

 

おばあちゃんに、『みんなには内緒にしてて』って言われてたのに……。

 

翔真「……楓の馬鹿野郎。」

 

楓「し、仕方ねぇだろ。あそこまで勘付かれじゃ……」

 

日菜「ねぇねぇ空見くん!花火いつやるの!?やっぱりこころちゃんの言う通り、お風呂の後!?」キラキラシタメ

 

楓「だ、だからそれは、僕にも……」

 

花音「……私も花火、楽しみだなぁ。」ボソッ

 

楓「ま、松原さんまで!?だから今日やるかどうかは、僕にも分からないんだってば〜〜!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【銭湯】

 

楓「や、やっと着いた……。」

 

結局花火の話は、今日か明日のどちらかにやろうということで落ち着いた。

 

しかし、"やりたいね"とかじゃなく、"やろう"なので、確実にこちら側からおばあちゃんに花火の話を切り出さなくてはならなくなってしまった。

 

ごめんねおばあちゃん、みんなには内緒にしようって話だったのに、いつの間にかこんなことに……。

 

翔真「……落ち込みすぎじゃね?」

 

楓「だって……「空見くん。」ん?」

 

花音「銭湯の扉を開けるの、お願いできないかな?」

 

楓「? いや、電気ついてるし鍵も開いてるから、普通に入れば…「楓。」白鷺さん?」

 

千聖「私達は、無理言って銭湯を開けてもらっている身なの。あなたからしたら普通なのかもしれないけど、私達からしたら感謝より罪悪感が勝ってしまうの。」

 

楓「……いや、弦巻さんもかめちゃめちゃ後ろでワクワクした目を…「罪悪感が、勝ってしまうのよ。」ニコニコ ……はい。」

 

千聖「というわけで楓、あなたに先導をお願いするわ。」

 

楓「りょ、了解しました。」

 

翔真「……何で突然敬…「しっ、黙ってろ。」……弱みでも握られてんのか?お前。」

 

楓「はぁ……。」

 

ガラガラガラ

 

楓「……こんばんはー。」

 

 

 

 

 

???「よく来たね、楓くん。翔真くんも久しぶり!お、後ろの子達が、明美さんの言ってた、楓くんの友達だね。」

 

楓「はい、まぁ。」

 

翔真「久しぶりです。」

 

『『『(……わ、若い……!)』』』

 

???「……」ジー

 

楓「ど、どうしたんですか?」

 

???「……可愛い。」

 

『『『!』』』

 

楓「へ?」

 

???「こーんな可愛い子達が楓くんの友達なんて……楓くんやるじゃーん。このこの〜。」

 

楓「ちょ、やめてくださいよ。そういうんじゃないですって。」

 

彩「……てっきりおばあちゃんの友達って言うから、同じくらいの年齢なのかと思ったけど……佳子さんより、ちょっと歳上くらい、かな?」

 

千聖「に、見えるわよね。」

 

楓「っていうか晶さん、早くお風呂に……」

 

晶「あ、そうだったそうだった。……改めて、この銭湯を経営している、楓くんのおばあちゃんの友達の孫の晶(あきら)です!」

 

楓「……なんか、ややこしくない?」

 

晶「え、そう?」

 

翔真「めちゃくちゃややこしい。」

 

りみ「えーっと……空見先輩のおばあちゃんの友達っていうのは……」

 

晶「あ、私のおじいちゃんだよ。普段はおじいちゃんと私の二人で番台をしてるんだ。今は営業時間外だから、私が応対してるけどね。」

 

有・美「そ、それはほんとに、すみません……。」

 

晶「あーいいっていいって。私もどんな子が来るのか楽しみだったしね。さ、立ち話はここでおしまい!みんな、さっそくお風呂入っちゃって!」

 

花音「は、はい。えっと……あ、ありがとうございます。」

 

『『『ありがとうございます!』』』

 

晶「ん〜♪すごい礼儀正しいし可愛いし!こんな素敵な子達と友達なんて、羨ましすぎるぞ楓くん〜。」

 

楓「あ、晶さん……。流石にそろそろうざいです……。」

 

有咲「……なんか、香澄みたいだな。」

 

香澄「え?私?」

 

りみ「あはは……。」

 

 

 

 

 

晶「男湯はそっちで、女湯がこっちね。楓くん、覗いたりしたらダメだぞー?」

 

楓「そんなことしないよ!!」

 

翔真「大丈夫ですよ晶さん、こいつにそんな度胸ないですから。」

 

日菜「うわぁ、ほんとに貸し切りなんだねー。」

 

彩「なんか、ちょっと悪いことしてる気分になるね。」

 

花音「ふふ、そうだね♪」

 

こころ「ミッシェルも、連れて来てあげたかったわ。」

 

美咲「し、仕方ないって。この時間だと、たぶん寝てるだろうし。」

 

りみ「……それ以前にミッシェルって、お風呂入れるのかな?」ボソボソ

 

美咲「さ、さぁ……?」

 

晶「何かあったら、いつでも呼んで。私はここにいるからさ。」

 

香澄「はい!ありがとうございます!」

 

晶「お、君のその髪型、可愛いね。猫耳にしてるの?」

 

香澄「えへへ〜。実はこれ、星なんですよ♪」

 

晶「え、そうなんだ!?」

 

翔真「お、俺もずっと猫耳だと……。」

 

有咲「正直、星には見えませんよね?」

 

晶「……いや。言われてみれば、星にも見える……気がする!」

 

翔・有「「ま、マジ(ですか……。)……?」」

 

楓「……「何を見ているの?」! し、白鷺さん……。時計だよ。今から入って、何時頃出ようかなぁって考えてて。」

 

千聖「そうだったのね。……30分〜1時間の間、だと少し大雑把かしら。」

 

楓「うーん……。それなら、1時間にする?だいたい1時間を目安に、みんなあがるようにする。」

 

千聖「いいじゃない。ではそうしましょう。みんなにも、後でしっかり伝えておくわね。」

 

楓「うん。ありがとう、白鷺さん。」

 

彩「〜♪あ、そうだ、空見く…「そうだそうだ、ここの牛乳がすごく美味しいんだよ。普通の牛乳の他にも、コーヒー牛乳やフルーツ牛乳があって……」「それは楽しみね。牛乳くらいなら、晶さんに頼めば売ってくれそうだし、後でみんなで飲んでみましょうか。」あ……。ズキッ」

 

花音「彩ちゃん、早くお風呂に……。? 彩ちゃん?」

 

彩「(……何で今、このもやもやが……。さっきまで、何ともなかったのに……。)」

 

花音「……彩、ちゃん?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【銭湯 女湯】

 

こころ「日菜!美咲!露天風呂に行くわよー!」

 

日菜「お、いいねー!行こう行こう!」

 

美咲「二人とも!走ったら危ないって!」

 

 

 

 

 

香澄「有咲、洗ってあげるよ!」

 

有咲「いや、大丈夫。お前はお前の体洗…「えいっ!」わっ!お、おい香澄!大丈夫って言っただろ!!」

 

香澄「それじゃありみりんは、私の背中ね〜。」

 

りみ「OK♪」

 

有咲「り、りみまで……。って何なんだこの状況は〜〜!!」

 

 

 

 

 

花音「……有咲ちゃんの背中を香澄ちゃんが洗って、その背中をりみちゃんが洗ってる……。」

 

千聖「まるで電車ごっこね……。」

 

花音「電車ごっこ……。ふふ、可愛い表現だね。」

 

千聖「……バカにしてない?花音。」

 

花音「全然バカにしてないよ。可愛いよ。」

 

千聖「……そう。」

 

彩「……」ブクブクブク

 

千聖「ちょっと彩ちゃん、貸し切りだからってそんなはしたないことしないの。仮にもアイドルでしょ?あなた。」

 

彩「仮なんかじゃなく、私はれっきとしたアイドルだよ!」バシャーン!

 

千聖「!? あ、彩ちゃん!いきなり立ち上がらないの!」

 

花音「とりあえず座って、ね?」

 

彩「……もう。」

 

千聖「それはこっちのセリフよ。全く、あなたはもう少しアイドルであるという自覚を…「千聖ちゃん、ストップだよ。」か、花音?」

 

彩「……「ねぇ、彩ちゃん。何か、悩み事してたりしない?」!ギクッ!」

 

千聖「悩み事?……そうなの?彩ちゃん。」

 

彩「い、いやー……その……」

 

花音「彩ちゃん。」

 

彩「……な、悩み事とは言っても、いまだに自分でもよく分からないことだし……」

 

千聖「(自分でもよく分からないこと?)……もしかしてそれって、楓のこと?」

 

彩「!!」ギクギクッ!!

 

花音「え、空見くん?」

 

千聖「……図星みたいね。」

 

彩「……やっぱり、千聖ちゃんにはすぐバレちゃうな〜。」

 

千聖「あなたが分かりやすいヒントを出すからよ。」

 

花音「もしかして、空見くんと何かあったの?まさか喧嘩とか…「ううん!全然そういうのじゃないよ!空見くんとはずっと仲の良い友達のままだから、そこは問題なし!」そ、それならいいけど……。」

 

千聖「そういえば、花音にはこのこと話していなかったわね。」

 

彩「うーん……。花音ちゃんにも話したほうが、より早く、解決の糸口につながるかなぁ?」

 

花音「わ、私も、彩ちゃんの力になれるよう協力するよ!」

 

千聖「……だそうよ、彩ちゃん。」

 

彩「……分かった!じゃあ、花音ちゃんにも話すね。実は……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【銭湯 男湯】

 

楓「……」

 

翔真「……」

 

……風呂に入り出して、10分くらい経ったか。

 

先に20分程で頭と体を洗ったため、残りは入浴タイムだ。

 

白鷺さんとの相談の末1時間を目安にあがることとしたため、それまではあと30分ある。

 

……暇だし、地味に長え……。

 

別に風呂は嫌いじゃないし、むしろこういう銭湯は好きな方だが……それと長風呂かどうかは別だ。

 

僕の場合、頭と体を洗う時間を含めないと、入浴タイムはだいたい10〜15分だ。

 

それは普通のお風呂と銭湯とで変わらない。

 

なので、あと5分くらいしたら丁度いいのだ。

 

……しかし、こいつと……翔真と入っているときはその丁度いい時間も無意味と化す。

 

普段こいつは眼鏡かコンタクトをしているのだが、当然風呂や銭湯のときははずしている。

 

それによって、目がいつもより見えにくくなっているのだ。

 

つまりそれだとどうなるか。

 

……銭湯だと、湯気だったり広かったりで尚更視界が悪くなる。

 

ある程度なら見えるが、壁の上のほうにある時計などだとほぼ見えない。

 

そこで、僕の出番というわけだ。

 

翔真は僕と違って長風呂だから、時間を気にせず入っている。(家だと1時間半〜2時間くらい)

 

それ故に、さっき白鷺さんと決めた目安の時間まで、あとどれくらい入っていられるか、の確認をする必要がある。

 

そのため僕が、ときおりこいつに時間を教える必要がある。

 

……つまり僕は、必然的に丁度いい入浴時間を超えて風呂に入ることになる。

 

……こいつと銭湯に来ると、いつも長風呂になるから、のぼせてきちゃうんだよな……。

 

そのため、最後の5分くらいは風呂から出て椅子にずっと座っていることも少なくない。

 

……今日も、そうなるのだろうか……。

 

翔真「……なぁ、楓。」

 

楓「! な、何?」

 

翔真「……あの人達に、あのことは言わないのか?」

 

楓「……何だよ、あのことって。」

 

翔真「あのことはあのことだよ。ほら……俺達家族の秘密……っていうか……」

 

楓「秘密って、お前なぁ……。まぁ、言いたいことは分かったけど。」

 

翔真「……それで、どうすんだよ?」

 

楓「もちろん言わねえよ。言うわけねえだろ。まずが、そう軽々しく人に話すことじゃないしな。」

 

翔真「……それもそうか。」

 

楓「てか、何で翔真は突然そんなこと聞いたんだよ。」

 

翔真「……別に。お前ならもしかして言うのかなーって。」

 

楓「? 何だよそれ。」

 

翔真「……とにかく、この話は終わり!俺もう出るから。」

 

楓「え、もう出んのか!?まだ時間あるぞ!?」

 

翔真「今日は早く上がりたい気分なんだよ。」

 

……あいつが、長風呂しないなんて……。

 

今日は雪が降るな……。

 

……しかし、翔真はどうしてあんなことを……。

 

あいつがいきなりあんな話するなんて、珍しいよな……。

 

……まぁいいか。

 

あいつが何考えてるか分からないなんてことは、長年兄やってればザラだし、なんとなく思い出したかなんかしたから、いきなりあんなことを聞いたんだろう。

 

そう勝手に解釈しておこう、うん。

 

……いつもならもう上がるけど、今日はもう少しだけ入ってるか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【銭湯 女湯】

 

花音「……それってやっぱり、ヤキモチ、じゃなくて?」

 

彩「うん……ヤキモチとはちょっと、違う感じがする……。」

 

千聖「やはり、花音もそう思うわよね。でも、本人はそうじゃないと言っている。……なかなかに難しい問題ね。」

 

花音「……補習のときは、『いっしょに帰ろう』って言って誘ったけど、用事があるからと断られて、そのときに"もやっ"と……。そしてさっき、空見くんに話しかけようとしたときに他の子と喋っている空見くんを見て、"もやっ"と……。見事に、空見くん絡みだね……。」

 

彩「あはは……って、笑い事じゃないか……。」

 

千聖「……そもそも、事象がまた二つしかないというのが、問題なのかもしれないわね。」

 

彩「! ど、どういうこと?」

 

千聖「二回の出来事だけじゃ、これじゃないか、そういうことじゃないか、なんてはっきりとは言えないということよ。つまり……」

 

花・彩「「つまり……?」」

 

千聖「……言い方が少し悪いけど、その彩ちゃんが"もやっ"とする経験を、増やすしかない。」

 

彩「……経験を、増やす……。」

 

花音「で、でも、そんな簡単に増やせるものじゃないんじゃないかな……。これって、気持ちや感情に現れるものだから、増やそうと思って増やせるものじゃ…「もちろん、分かっているわ。だから……その逆をすればいい。」逆を……?」

 

千聖「彩ちゃん。この伊那日にいる間、あなたは他のみんなより楓と多く行動を共にしなさい。」

 

彩「え……?」

 

花音「!」

 

千聖「二つしかない事象、そのどちらにも当てはまるものとして、"楓が離れた場合に彩ちゃんの心がもやっとする"のだと、私は考えた。だったら、その逆の行動をとればいい。楓といっしょにいる機会を増やせば、あなたがもやっとする瞬間は減少する。そう思わない?」

 

彩「……まぁ、確かに……。」

 

千聖「それでも、何かのはずみで"もやっ"とすることがあったら、すぐに私に知らせなさい。いわば、これは検証よ。」

 

彩「検証……。」

 

千聖「私と花音も協力して、楓と彩ちゃんが二人になれる機会を作るわ。みんなで行動するときも、極力二人を近くにしたり、楓と彩ちゃん+誰々というふうに、三人だったり四人だったりで行動してもらったり、そのときそのときによって状況は変えるつもりよ。」

 

彩「……じゃあ私は、ずっと空見くんの近くにいるってことを意識して、残りの日数を過ごせばいいんだね?」

 

千聖「ええ。フォローは私達に任せて。ね、花音。」

 

花音「……」

 

彩「……花音ちゃん?」

 

花音「……え?あ……う、うん!頑張る!だから、彩ちゃんも頑張って!」

 

彩「あ、ありがとう……。でも私、ずっと空見くんと行動なんて、できるかな……。私、アイドルだし、もしかしたらってことも……」

 

千聖「大丈夫よ。その場合も、全力でフォローするから。それに……辛くなったら、いつでも言って。私達も、彩ちゃんに無理はさせたくないから。」

 

彩「……うん、分かった。でも、たぶん……ていうか絶対、辛くはないと思う。だって……空見くんだもん。空見くんといっしょにいて辛かったことなんて……今まで一度もないから!」

 

千聖「……そうね。あなたは楓と喧嘩したことないし、いざござを起こしたこともない……。彩ちゃんなら、心配いらないわよね。」

 

彩「う、うん!(喧嘩……に近しいことなら、したことあるけどね……。)」

 

千聖「それじゃあ彩ちゃん。明日から、作戦決行よ。」

 

彩「うん!私、頑張る!……じゃなくて、楽しむ!だって、せっかくの小旅行だもん!」

 

千聖「小旅行……。ふふっ♪ええ、そうね。」

 

花音「……「花音ちゃん!いっしょに背中流しっこしよう!」! あ、彩ちゃん……!」

 

千聖「行ってきたら?花音。私はここで待ってるから。」

 

彩「え〜?千聖ちゃんもいっしょにしようよ〜。」

 

千聖「私はもう少しあったまってから行くわ。」

 

花音「……あはは……。(……気のせい、だよね……。)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

チュンチュン

 

〜翌日 AM 7:30〜

 

【おばあちゃん家 楓達が寝ている寝室】

 

楓「……パチ」

 

……今、何時だ……?

 

……7:30……。

 

なんか、目早く覚めちゃったな……。

 

楓「……チラッ」

 

翔真「zzz……。」

 

花・彩「「zzz……。」」

 

り・有「「zzz……。」」

 

みんなはまだ、ぐっすり寝てるか……。

 

この状況と昨日銭湯から帰ってきた後の出来事を説明するのは後でにするとして、……せっかくだし、起きるか。

 

 

 

 

 

……ジャー……

 

……ガチャ

 

楓「ふわぁ〜……。」

 

やっぱまだ眠いかも……。

 

あと一時間くらい寝…「おや、楓。」!

 

楓「お、おばあちゃん!お、おはよう……。」

 

楓のおばあちゃん「おはよう。早起きだねぇ。」

 

楓「た、たまたま、目が覚めちゃって……。おばあちゃんも早いね。」

 

楓のおばあちゃん「私はいつも6:00起きだからね。これくらい普通だよ。」

 

楓「ろ、6:00……。」

 

そういやおばあちゃんって、いつも早起きしてたっけ……。

 

この家泊まるの五年ぶりぐらいだから、忘れてた……。

 

楓のおばあちゃん「……そういえば、もうあそこには行ったのかい?」

 

楓「え?」

 

楓のおばあちゃん「あそこだよあそこ。ほら……毎月このくらいの日付になると行ってただろ?」

 

楓「……!!そ、そうだった!」

 

楓のおばあちゃん「忘れてたのかい……。なら早く行ってあげな。楓が来てくれるのを待ってるよ。」

 

楓「……うん。」

 

そうだ……いつも僕、毎月中旬ぐらいになるといつもあそこに行ってたんだ……。

 

久しぶりに帰ってきてから、いろいろあって、すっかり忘れてた……。

 

……忘れてたって知ったら、怒るかな……。

 

……よし。

 

早起きしたし、そのことも思い出したし、さっそく行くか。

 

そうと決まったら、用意用意……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

楓「それじゃあおばあちゃん、行ってきます。」

 

楓のおばあちゃん「はい、いってらっしゃい。……?一人で行くのかい?」

 

楓「え、うん。」

 

楓のおばあちゃん「翔真も呼んであげたら?」

 

楓「……あいつはいいよ。ぐっすり寝てるとこ起こすと、機嫌悪いし。」

 

楓のおばあちゃん「そう。……じゃあ、私は朝ごはんの用意してるから、おばあちゃんも元気だよって言っといてくれ。」

 

楓「分かった。じゃ、行ってくるね。」

 

楓のおばあちゃん「気をつけてね。」

 

楓「はーい。」

 

 

 

 

 

うっ、今日も暑いなぁ……。

 

帰りにスーパーでも寄ってアイスかなんか買うか……。

 

えーっと、確かあそこへの道は……あ、こっちか。

 

……久しぶりに行くな。

 

……よし。




とりあえず100話目標にまず頑張ります。


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70話 家族のカタチ

あけましておめでとうございます。(遅えわ)

2024年初投稿です。

今年は何話投稿できるか分かりませんが……できるだけ多く投稿したいと思っています。

何年かかっても、絶対完結させるつもりですので。

というわけで、今年もよろしくお願いいたします。


【???】

 

……着いた。

 

キョロキョロ……まぁ、流石にこんな朝っぱらから人はいないか。

 

えーっと、確か場所は……。

 

ああ行って、こう行って……いいや、とりあえず歩けば思い出すだろう。

 

 

 

 

 

えっと、確かここを目印にしてて……。

 

ここを曲がってそのまま真っ直ぐ行くと、左手に……。

 

……あった!

 

良かった、ちゃんと覚えてた……。

 

……いや、逆に忘れるほうがヤバいか。

 

……引っ越しした日以来か、ここに来るのは。

 

 

 

 

 

『空見家之墓』

 

 

 

 

 

楓「……久しぶり。最近来れなくてごめん。この町から引っ越したから、毎月来れなくなっちゃって……。でも、今後も来れるときはちゃんと来るから。……どうしようかな。朝だから誰もいないし……ちょっと話そうかな。主に、引っ越した後のことを。」

 

……やっぱ、翔真のやつを叩き起こしてでも連れてくるべきだったかも……。

 

あいつも、話したいこといっぱいあっただろうし。

 

楓「……翔真は、また後日連れてくるよ。……えっと、とりあえず何から話そうかな……。いろいろ話したいことはあるんだけど……まぁ、順番に話すか。今年の4月から、花咲川学園ってとこに転校したんだけど、これがまさかの女子高でさ。最初は僕もびっくりして、早くも学校行くの嫌になるかもって思ったんだけど、意外とそんなことなくてさ。実は初日からいろいろあって……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

???「……?あの子は……。」

 

 

 

 

 

楓「それでさ、お花見のはずがまさかの公民館でライブ!ってなっちゃってさ。もう漫画やアニメもびっくりの超展開でしょ?でも、みんなすごいやる気で……」

 

 

 

 

 

???「……そうか、あの子も私と同じように……。少し様子を見よう。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜30分後〜

 

楓「文化祭の後のSPACEラストライブも、すごく盛り上がってさー。ちょっとアクシデントがあって、ある人のライブが観れなかったってのはあるんだけど……でも、それも最後のPoppin'Partyのライブで全部吹き飛んだかな。あの頃は、僕がバンドにハマるなんて……って思ってたけど……今では正直、ハマっちゃってるよ。……お父さんのバンド、しっかり見とけば良かったな……。……!ってもう30分も話してるの!?そろそろ、松原さん達も起きてる頃かな……。ごめんね、僕もう行くよ。まだ話途中だけど、また翔真を連れて来たときに、続き話すね。」

 

時間が経つのって、ほんとあっという間だよなぁ。

 

最後にちゃんとお参りして……。

 

楓「……」

 

…………よし、行くか。

 

楓「じゃあ、行くね。……また来るよ、お父さん、お母さん。」

 

 

 

 

 

うわっ、気づいたらめちゃくちゃ電話来てる!

 

松原さんからもだけど、白鷺さんからすごい数……。

 

急いで戻らないと……「やあ。」?

 

???「……」

 

楓「……え、っと……」

 

???「流石に覚えてないか。最後に会ったのは、お葬式のときだからね。」

 

楓「お葬式の……。あ、そういえばいたような……いなかったような……。」

 

???「大丈夫だよ、無理に思い出さなくても。」

 

楓「……すみません……。」

 

???「……私も、君のお父さんとお母さんのお墓参りに来たんだ。そしたら二人と話してる君を見つけたから、それが終わるまで待っていようと思って…「あ、あのときいたんですか!?」あ、ああ。……まずかったかな?」

 

楓「べ、別に、そういうわけじゃ……。ただ……独り言を、聞かれていたのが……」

 

???「独り言じゃないよ。」

 

楓「え?」

 

???「君はただ、お父さんとお母さんと話していただけだろう?だから、独り言ではないよ。」

 

楓「……ありがとう、ございます……。」

 

???「ははは、いやいや。……それにしても、大きくなったね。私にも君と同じくらいの歳の娘がいるんだが、娘よりも大きい気がするよ。」

 

楓「は、はぁ……。」

 

???「ごめん、帰るところだったんだよね。呼び止めて悪かったよ。」

 

楓「い、いえ!それは全然、大丈夫です……。あの、お墓参り、よろしくお願いします!」

 

???「……ああ。君も、気をつけて帰るんだよ。」

 

楓「は、はい!」

 

???「……本当に大きくなったね。空見、楓くん。お父さんも、きっと喜んでるよ。……そろそろ、私も会いに行くとするか。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

楓達が伊那日にいる間、愛猫マリーのいる楓の家はどうなっているのか……。

 

時は、1日前に遡る……。

 

 

 

 

 

〜1日前 AM 8:15〜

 

【空見家 外】

 

楓「じゃーなーマリー!友希那さんの言うことちゃんと聞くんだぞー!」

 

翔真「マリー!絶対、絶っっ対帰ってくるから、良い子で待っててなー!」

 

牧人「お前、それフラグだぞ……?」

 

 

 

 

 

友希那「……いってらっしゃい、楓、翔真、牧人。」

 

マリー「にゃー!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【空見家】

 

友希那「行っちゃったわね、マリー。」

 

マリー「にゃー……にゃっ!ピョン」

 

友希那「あ、マリー?」

 

スタッ

 

マリー「にゃ〜♪」

 

友希那「!?ズッキュウウウン‼︎ ど、どうしたのよ、足にスリスリなんてしちゃって……」

 

マリー「にゃー……にゃ〜ん♪」

 

か、可愛すぎる……。

 

可愛すぎて、歩けないわ……。

 

……今日はこのままずっと、その場で立っているしか……あ、でもそれは流石に無理だわ。

 

この後Roseliaの練習があるから……。

 

マリー「にゃー?にゃー……」

 

……マリーの言葉が分かれば、一歩を踏み出せるのに……。

 

ネコ語翻訳機みたいなの、早く発明されないかしら……。

 

……!

 

そうだわ、こういうときのためのメモじゃない。

 

マリーのお世話の仕方が書いてあるこのメモなら、このスリスリの意味も……。

 

……"ご飯のおねだり"か、"撫でて欲しい時"にするサイン……。

 

ご飯はさっきあげたって楓が言っていたから……きっとこれは後者ね。

 

逃げないように、そっと腰を下ろして……。

 

友希那「もしかして、ずっと撫でて欲しかったの?こんな風に……」ナデナデ

 

マリー「にゃ〜♪」

 

友希那「ふふっ、正解みたいね。」

 

……そういえばクロも、一回私の足にスリスリしてくたことがあったわね。

 

……元気にしているかしら……。

 

マリー「……にゃー?」

 

友希那「! ごめんなさい、撫でる力が弱まってたわね。ほら、これくらいでどう?」ナデナデ、ナデナデ

 

マリー「にゃ〜♪にゃー……♪」

 

友希那「ふふ、リラックスモードね。」

 

もう、可愛すぎてこのまま何時間でも撫で続けていられる気がするわ……。

 

まぁ、この後Roseliaの……(以下略)。

 

……それにしても……。キョロキョロ

 

……、……、……私が提案したこととは言え、本当に楓の家で留守番を任されることになるなんて……。

 

確かに、最初入ったときは少し緊張したけれど、2回目はそこまでではなかった。(何でも2回目のほうがやりやすいと言うものね。)

 

そして今日(と明日)、3回目で私は留守番を……。

 

……自分で提案しておいて言うのもあれだけど、段階を飛ばしすぎじゃないかしら……?

 

いや、でも案外そうでも……「zzz……。」! こ、この寝息は……!

 

マリー「zzz……。」

 

ね、寝ている!

 

マリーが寝ているわ!

 

しかも、私に撫でられたまま!

 

……もう段階とかどうでもよくなってきたわ。

 

今私がやるべきこと、それは……このままマリーを起こさないよう、しゃがみながら撫で続けてあげること。

 

そうすることで、リラックスしながら質の良い睡眠をとることができる……はず!

 

マリーのためなら、何分でも、何時間でも撫で続けてみせるわ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜AM 9:15〜

 

【CiRCLE】

 

紗夜「……何か言うことはありますか?」

 

友希那「……だ、誰にでもこういうことはあ…「それでいけるとお思いで?」……」

 

リサ「ま、まぁまぁ紗夜、友希那も悪気は…「あなたはいつもそう言って、湊さんを甘やかしているでしょうが、私はそうはいきませんよ。例え湊さんであろうと、守るべきことは守ってもらわなければ。」うっ、正論……。」

 

紗夜「湊さん。こういうときに言わなければいけないこと、ありますよね?」

 

友希那「……わ、悪かっ…「湊さん?」……ごめん、なさい……。」

 

あこ「紗夜さんに正座させられて叱られる友希那さん、初めて見た……。」

 

燐子「たぶん、そんなピンポイントな状況、後にも先にも今回だけだと思うよ……?」

 

紗夜「はい、言えましたね。そしたら次です。……どうして遅れたのですか?」

 

友希那「……い、言えないわ……。」

 

紗夜「言えない?なぜです?」

 

友希那「……」

 

言えない……言えるわけないわ……。

 

マリーを撫でていたら、練習の時間である9:00を過ぎてしまっていたなんて……。

 

完全に私のせいだということは認めるけど……マリーのことは、こんな状況でも、絶対に言えない……。

 

紗夜「……言いなさい、湊さん。」

 

友希那「嫌よ……。」

 

紗夜「あなたに嫌なんていう権利はありません。言いなさい!」

 

友希那「断固拒否するわ。」

 

紗夜「言い方を変えればいいってもんじゃ…「紗夜、ストップ。」い、今井さん!話はまだ……」

 

リサ「友希那がここまで言いたくないのには、何か理由があるんでしょ?」

 

友希那「! ええ、そうよ。」

 

リサ「じゃあ仕方ないや。この話はこれでおしま…「ちょっと待ってください今井さん!仕方ないで済む問題じゃ……」誰にでも一つや二つ、知られたくない秘密があるものだよ〜?それはもちろん、紗夜にも……ね?」

 

紗夜「うっ……。」

 

リサ「そもそも、友希那が練習に遅刻なんて、めったにないことだもんね。……一応聞くけど、野良猫と遊んでたからってことは…「そんなことは決してないわ!」……うん、分かった♪」

 

そう、野良のにゃーんちゃんと遊んでなんていない。

 

野良のにゃーんちゃんとは。

 

嘘は言ってないわ。

 

リサ「というわけだから紗夜、この話はおしまいにして、練習に入ろう。あ、その前に友希那は、一応みんなにもう一回謝ってね。」

 

紗夜「……分かりました。」

 

友希那「わ、分かったわ。……みんな、今日は遅れてしまって、ごめんなさい。」ペコリ

 

紗夜「……次は気をつけてくださいよ。」

 

あこ「あこは、全然気にしてないので大丈夫です!」

 

燐子「遅れてしまった分、練習……頑張りましょう。」

 

リサ「だってさ、友希那。」

 

友希那「……ありがとう、みんな。それじゃあさっそく、練習始めるわよ。みんな、位置について。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜PM 18:30〜

 

【空見家】

 

ガチャ

 

友希那「ふぅ。今日も、有意義な練習だったわ。」

 

 

 

 

 

???「にゃー!」

 

タタタタ……

 

 

 

 

 

友希那「! 今の声!そしてこの足音は……」

 

マリー「にゃ〜ん!」

 

やっぱりマリーね!

 

友希那「ふふ、ただいまマリー。お出迎えしてくれるなんて、とても良い子ね。」ナデナデ

 

マリー「にゃ〜♪」

 

……にゃーんちゃんにただいまと言え、お出迎えしてもらえる生活。

 

楓は、こんな幸せな生活を何日、何ヶ月と送っていたのね。

 

……そう思うと、だんだん妬けてくるわ。

 

友希那「さっきコンビニでお弁当買ってきたから、今日の夕飯はいっしょに食べましょうね。」

 

マリー「にゃーん!」スリスリ

 

友希那「ふふふ、こーら、歩けないわよ。」

 

……まるで、本当にマリーの飼い主になったみたい……。

 

でも、これも今日も明日でおしまい。

 

明後日としあさってはお手伝いさんが来るものね。

 

……ずっと思っていたけれど、お手伝いさんを呼べるなんて、楓の家は相当お金持ちよね。

 

この前だって、曽山さんにホテルのお金を渡そうとしていたみたいだし。

 

友希那「……楓、楽しんでいるかしらね。」

 

マリー「にゃー?」

 

帰省……。

 

どこに、誰と行くか、詳しくは聞いていないけど、確か親は出張で行けないって言ってたわよね……。

 

だから今いっしょに行っているのは、楓の弟と曽山さん。

 

それと、楓の友達……。

 

……そういえば、友達って曽山さん以外にどんな人がいるのかしら?

 

……思えば私、楓にそこのところ何も聞いていないわね。

 

どこから引っ越してきたのか、学校はどこなのか、どんな友達がいるのか、普段学校ではどうなのか……好きな食べ物や、好きなこと、好きな音楽など、そんな他愛もない話も、したことない。

 

……こうして思い返してみると、私、楓のこと何も知らないのね……。

 

何も知らないのに、家に上がってマリーの面倒を見るために留守番をしている……。

 

……ふっ、我ながらおかしな話ね。

 

マリー「にゃー、にゃー。」

 

友希那「! ご、ごめんなさいマリー。……そうね。少し早いけど、ご飯にしましょうか。待ってて、すぐ用意してあげるから。」

 

マリー「にゃ〜♪」

 

友希那「ふふ、分かってるわよ。」

 

おかしな話、おかしな関係……。

 

……やめましょう、こんなこと考えるの。

 

私は今日と明日、マリーの面倒を見がてら、留守番をする。

 

ただそれだけ。

 

それが、今の私の使命。

 

楓のため、そしてマリーのために、その使命を全うするのよ、湊友希那。

 

友希那「マリー。今夜、そして明日もよろしく。」

 

マリー「にゃー?……にゃん!」

 

友希那「ふふ、良い返事ね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、時は翌日、楓がお墓から帰ってきた時間へ……。

 

【楓のおばあちゃん家 居間】

 

花音「本当に心配したんだよ?起きたら空見くんがいなくて……。おばあちゃんに聞こうと思ったら、おばあちゃんもいなくて……。」

 

彩「もう家中探しちゃったよ!とにかく、無事で良かった〜!」

 

楓「いや、そんな大袈裟な…「あなたが連絡の一つでもしておかないから、そんな大袈裟なことになるのよ!」えぇ〜……。」

 

彩「でも、今のは千聖ちゃんに一理あるよ。黙っていなくなるなら、せめてメッセージくらいしてほしかったな。」

 

楓「……ご、ごめん……。」

 

日菜「あはは、朝からさっそく怒られてるねー空見くん。」

 

りみ「それにしても、空見先輩のおばあちゃんはいったいどこに……」

 

楓「うーん……もしかしたら、買い物に行ったのかも。」

 

有咲「か、買い物、ですか?こんな朝っぱらから?」

 

楓「うん。おばあちゃん、買い物は朝か昼に行く派だから。たぶん車乗って、スーパーか何かに行ってるんじゃないかな?」

 

香澄「しかも車で!?」

 

有咲「ほ、ほんとにアクティブだな空見先輩のばーちゃん……。」

 

 

 

 

 

早希「ふわぁ〜。朝から何の騒ぎ?眠れないんだけど……。」

 

 

 

 

 

楓「げっ、起きたのか……。」

 

早希「"げっ"て何?"げっ"て。私が起きてちゃ悪いの?」

 

楓「いや、別にそういうわけじゃ……」

 

こころ「おはよう早希!」

 

早希「! っくりしたぁ〜。まだ起きたばっかなんですから大きな声出さないでくださいよ。」

 

楓「おい早希!弦巻さんに失礼…「大丈夫よ楓!」え?そ、そう……?」

 

こころ「ねぇ早希。これからあたし達と、楽しいことしましょう!」

 

早希「楽しいこと?」

 

こころ「ええ!」

 

花音「こころちゃん……?」

 

千聖「何をする気なのかしら……。」

 

早希「……それ、断っても…「その名も、楓の町案内よ!」……え?」

 

楓「!? え、ちょ、弦巻さん!?僕聞いてないんだけど……!?」

 

こころ「楓にこの町を案内してもらいながら、みんなでいろんなところを散歩するの!どう?楽しそうでしょ?」

 

早希「……別に私、ここら辺は…「それ私も賛成!」え?」

 

香澄「ナイスアイデアだよこころん!みんなでいろいろお話ししながら歩けば、絶対楽しいし、距離も縮まるよね!」

 

こころ「ええ!きっと楽しい時間になるわ!」

 

美咲「あー、こころになんか火がついちゃった……。」

 

千聖「それなら、曽山さんと翔真くんも呼びましょうか。あの2人にも、町案内を頼んでいたところだから、丁度いいわ。」

 

楓「え、そうなの……?じゃあ僕は…「もちろん楓もやるのよ。」ニコッ ですよねー……。」

 

彩「町案内……つまり伊那日観光だよね!私も行きたい!」

 

りみ「私も、空見先輩が生まれ育った町にどんなものがあるのか、いろいろ見てみたいです!有咲ちゃんも行こう!」

 

有咲「……まぁ、これは間違いなく全員行く流れだからな……。」

 

日菜「じゃああたし、寝てる曽山くんと翔真くん起こしてくるねー!」

 

千聖「あ、ちょっと待っ……もう、日菜ちゃんったら。」

 

早希「ちょ、ちょっと待って!私はまだ行くなんて…「早希ちゃん!」!」

 

彩・千「「花音(ちゃん)……?」」

 

花音「……私、この町のこと、もっといろいろ知りたい。そして……空見くんや、早希ちゃんのことも。」

 

楓「!」

 

早希「……な、何言って…「早希ちゃんがどうしてみんなのことを嫌ってるのかは分からない……。でも、なんとなく早希ちゃんは……みんなと仲良くしたい、そう思ってる気がするの。」なっ……変なこと言わないで!私は別に……」

 

花音「引っ越した後の空見くんのこと、知りたくない?」

 

早希「え……?」

 

花音「私や……みんなと会って……本当にいろんなことがあったんだ。空見くんのあんな一面や、こんな一面も見れて……。すごく、思い出に残ってる。」

 

早希「……何、脅しのつもり?悪いけどそんなもの、私には何も…「じゃあ、空見くんが花咲川っていう女子校に転校してきた日のことも、知らなくていいんだね。」!? は?じょ、女子校!?転校!?」

 

楓「……松原さん、いったい何の話を……」

 

彩「……」

 

花音「……その反応、もしかして知らなかったの?」

 

早希「……何で……?どういうこと……?女子校に転校って、そんなの、許されるわけ……。」

 

花音「……ま、早希ちゃんにはどうでもいいことか。ごめんね、今の話は忘れて?」

 

早希「!」

 

花音「空見くん。早希ちゃんは行かないみたいだから、私達で…「待って。」……」

 

早希「……行く。」

 

花音「……何?聞こえない…「私も行くっつってんの!!……別に、あんたに唆されたからじゃないから!!ちょっと外の空気を吸いたくなっただけだから!!」……そっか。」

 

楓「え……お前、行くの…「だから行くってば!」……嫌なら無理に来なくても……」

 

早希「嫌じゃない!!行くったら行くの!!」

 

楓「えぇ〜……?」

 

彩「……花音ちゃん、どんな魔法使ったんだろう?」

 

香澄「……よく分かりませんけど、これで早希ちゃんを説得できました!よーし、頑張って話すぞー!」

 

有咲「ほどほどになー。」

 

日菜「2人呼んできたよー!」

 

牧人「うぅ、寒っ……。朝はやっぱ冷えるなぁ……。」

 

翔真「同感……。」

 

楓「……なんか、ドンマイ……。」

 

千聖「……そ、それじゃあ、10分後に出発しましょう。各自身支度の準備を整えたら、またこの居間に集合よ。」

 

『『『はーい!』』』

 

香澄「何待って行こうかなー?」

 

こころ「あたし、ミッシェルを呼んでくるわ!」

 

美咲「(ヤバ!)えーとえーっと…「ミッシェル、外の庭に準備しております。(小声)」……いつも本当にご苦労様です。」

 

日菜「ていうか2人とも、寝癖すごいよー!」

 

牧人「誰のせいだと思ってるんすか。」

 

翔真「寝てたい……。」

 

りみ「いろんな写真撮って、お姉ちゃんやおたえちゃんと沙綾ちゃんに送ってあげようよ。」

 

有咲「おぉ、いいんじゃね?」

 

彩「ねぇねぇ花音ちゃん。どうやって早希ちゃんを説得したの?」

 

花音「え?うーん……内緒♪」

 

彩「え〜!気になるよ〜!」

 

花音「ふふ、気が向いたら教えてあげるね……よし、それじゃあ私も…「ちょっと。」? なぁに?早希ちゃん。」

 

早希「……さっきので私、あんたのこと超嫌いになったから。」

 

花音「……それを言うためだけにわざわざ呼び止めたの?」

 

早希「っ!!あんた……ほ、ほんとに、このっ……!!」

 

千聖「(……花音と早希ちゃんだけ、みんなのとき以上にバチバチしてる気がするわ……。)」

 

花音「(やっぱり思ったとおり……。鎌をかけて正解だったな。……ちょっと心苦しいけど、でも……私は知りたい。空見くんと早希ちゃん、2人の本当の関係を。)」

 

 

 

 

 

早希『何でわざわざ追いかけてきたの。私とあんたは、ただの他人じゃん。』

 

楓『そうだけど……一応僕とお前は……兄妹だろ。』

 

 

 

 

 

早希『……はぁ。何で私、あんたなんかと兄妹になっちゃったんだろう。』

 

楓『仕方ねえだろ。僕も当時はびっくりしたけど……。』

 

 

 

 

 

 

花音「(そのためなら私は……例え、早希ちゃんに嫌われても……)」

 

楓「……松原さん?」




ドリフェスは安定のドブフェス……ではなく、持ってない星四が結構出ました。

個人的には初期星四の瑠維さんが一番嬉しかったですね。(あとつくしちゃんだけで初期星四モニカ揃う……。)


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