SIX HUNDRED~俺の600族が最強過ぎなんだが~ (ディア)
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所持ポケモン紹介
第1話 戦闘狂カイリュー、イリア


またもや、やってしまった。新作登場。


俺の名前はシック。ちょっとどころかかなり癖のあるポケモンの所有者だ。

 

さてそんな俺はジョウト地方のフスベシティに来ていた。

 

「久しぶりだなシック」

 

俺に声をかけてきたマント姿の男。かつてカントー地方でチャンピオンになったものの四天王に成り下がった後、チャンピオンが不在になってしまった為に再びチャンピオンになったワタルさんだ。経歴は複雑だが要はポケモンリーグのトップクラスの実力者だと思ってくれればいい。

俺とワタルさんの関係は師弟関係にあたるが、俺にとってもワタルさんにとっても色々不都合が起こるのでその関係は内密だ。

 

しかしそんな彼だが中々ぶっ飛んだことをやっている。彼は彼の持つカイリューに、はかいこうせんを放つように命じるような男だ。……それだけだと普通? まあ対象がポケモンだったら普通だわな。そう、何を隠そうワタルさんは人間に向けてはかいこうせんを放つように指示したんだ。いくら極悪非道な悪人とはいえ、人間に向けてはかいこうせんを放つように指示するのは極悪非道人のそれだ。

 

もっとも最近はなりを潜め、カントー地方のチャンピオンとして活躍している。人間にはかいこうせんを放たせるようなことは一切していない。

 

「お久しぶりです。ワタルさん」

「その様子だと、また一対一の手合わせか?」

「はい。こうしないと彼女が物凄く機嫌悪くなるので」

そう言って俺は彼女を出す。彼女とは恋愛の彼女ではなく、カイリューのことだ。俺のポケモンで唯一♀である為にそう呼んでいるだけのことだ。

 

『バトル? バトルなの? ご主人!?』

 

カイリューのイリアがそう言って俺をチラ見する。そう、イリアは♀であるにも関わらずよく言えば大のバトル好き。悪く言えば戦闘狂。このイリアは元々このフスベシティで釣り上げたミニリュウを育てたんだが、その時から戦闘狂の片鱗を見せ一回でもバトルに出さないと暴れまくる困った奴だった。しかしカイリューになってからは我慢──ポケモンの技ではない──を覚えて“はかいこうせん”を自重したワタルさんのようにイリアも自重をしてくれるようになった。それでも強い敵を見ると興奮を抑えきれずにたまに出てきてしまう事もある。バトルの時は素直に言うことが聞けるのでまだマシなんだがそれでも問題児であることには違いない。

 

ちなみにイリアや俺のポケモン達は全て俺の脳内で翻訳しているにしか過ぎないが、意思疎通に支障があるわけではないので問題ない。

 

「ああ。ワタルさんと試合だ」

『うっしゃーっ! カモーン!』

 

イリアが顎をしゃくり、左手を前に伸ばして指を真っ直ぐに伸ばして掌を上に向け、4本の指を2回連続で起こす。俺が教えた挑発の方法だが彼女はそれを良いポケモンバトルの礼儀だと思っていて、毎回ポケモンバトルの時にそれをするようになってしまった。

 

「カイリュー出番だ!」

そして向こう側もイリアと同じ種族のカイリュー。しかし性別は♂でアローラで見た時のぬしポケモンを彷彿とさせるような巨体だ。……こりゃ本気か? 意外と短気な性格だなワタルさんも。

 

「いくぞカイリュー、“はかいこうせんだ”!」

いやいや、いきなりはかいこうせんかよ。カイリューの最大の強みは攻撃で、特攻は強みになるほど高くない。特殊攻撃の分野に含まれるはかいこうせんはどちらかというと意表をつく時に使うものだ。

「イリア、“まもる”」

『了解、ご主人』

イリアが腕をクロスさせ、カイリューのはかいこうせんを防ぐと次の攻撃に備えて構える。

 

「イリア、“れいとうパンチ”」

『食らいなっ!』

そして“れいとうパンチ”がカイリューに炸裂し、倒れる……かと思いきやカイリューはそれに耐えきり、きのみを食べ始めた。四倍弱点を受けて耐えるほどカイリューは強くない。となればカイリューのもうひとつの特性を考慮すると答えが浮かび上がった。

「マルチスケイルか」

マルチスケイル。体力が万全の時に発動する特性で、この特性があると受けるダメージが半減されるというものだ。イリアもこのマルチスケイルの特性だが、ワタルさんのカイリューもマルチスケイルだとは思えなかった。その理由はマルチスケイルの特性のカイリューは非常に珍しい為で、イリアがマルチスケイルのカイリューだと知った時は感激の余り発狂しそうになったくらいだ。

「正解だ。カイリュー、反撃だ!」

 

いやいや反撃しようにも“はかいこうせん”の反動のせいで反撃出来ないでしょうよ。等と思っているとカイリューがはかいこうせんの反動が想像以上に早く終わり、れいとうビームを放とうとしている。

反動が終わるのは素早さがイリアよりも早いポケモンか、優先技で先手を取るかのどちらかしかない。“れいとうビーム”は優先技ではない為、前者の答えにたどり着く。だがイリアはカイリューの中ではかなり早い方──ブリーダー曰く準速──で、ワタルさんのカイリューの素早さに負けるほど遅くはない。さっきカイリューが食べたきのみ、カムラのみが起因しているんだろう。カムラのみは食べると素早さを上げてくれるんだが体力がピンチになるまで減らないと食べてくれないという欠点もある。

 

「イリア、“しんそくだ”!」

『はいさっ!』

カイリューの方が素早さで勝っているなら優先技を使えばいいだけのこと。イリアの“しんそく”でカイリューが倒れ、戦闘不能になる。

「見事だな。よくそのカイリュー、イリアをそこまで育てたな。シック」

「ありがとうございました、ワタルさん……」

その後に続く言葉を呑み込み、俺は頭を下げる。

「よさないかシック、俺のおかげじゃない。イリアがそこまで強くなったのはお前の功績だ。誇れ」

それを悟ったワタルさんが肩に手をおいて諭す。イリアは戦闘狂で手に負えなかったのを指導して助けてくれて以来、俺はワタルさんに師事してイリアと向き合えるようになった。感謝してもし切れない。

「はい」

頭を上げるとそこには別個体のカイリューがワタルさんを背負って羽ばたいて、宙に浮いた。

「じゃあ、またポケモンリーグの舞台で会おう!」

ワタルさんはああ言っていたがポケモンリーグで会える訳がない。何故なら俺はポケモントレーナーではあるもののポケモンリーグに出禁されていて公式大会に出場出来ない。どんなに良くても無冠の帝王にしかなれない。……原点にして頂点と呼ばれるポケモントレーナーに勝ってポケモンリーグに認めて貰えれば出禁もなくなるか? とりあえずシロガネ山に向かおう。あいつの故郷だしな。




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第2話 サイボーグバンギラス、ギラギラ

シロガネ山。選ばれし猛者達だけが入ることが出来る。俺もその猛者の一人だ。ポケモンリーグに出禁になっているとは言え、このくらいの融通は効くようになっている。……な訳あるか! ポケモンリーグが危険だから近づくなと警告しているのに、出禁になっている俺が入れる訳ねえだろうが。

 

しかしシロガネ山にいる原点にして頂点のポケモントレーナー、レッドさんに会えないのかと言うと答えはノーだ。レッドはリザードンを使ってシロガネ山から降りてくることがわかった。その周期は何らかの事情があるんだろう。

 

それはともかく、俺はこいつを出す。

『何か用か? マスター』

無表情で答える3m超のバンギラスが生物とは思えないほど無機質な目で俺を見つめるこいつの名前はギラギラ。性格はサイボーグ。何故サイボーグかって? ギラギラはイリアとは違ってポケモンバトルに興味はなく、ポケモンバトルを淡々とこなすからだ。ポケモンバトルが嫌いと言うわけではなく、むしろ得意な分野で俺のポケモンの中でもエースだ。

 

図鑑のバンギラスの項目に書かれている内容である【片腕を動かしただけで山を崩し 地響きを起こす、とてつもないパワーを秘める】ってあるだろ?

地響きを起こすことは普通のバンギラスでも出来るが、片腕を動かしただけで山を崩すなんてことは雨で地面が柔くなっていない限り普通のバンギラスでもごく一部だけだ。ところがギラギラは“れいとうパンチ”でシロガネ山ではない別の山を崩してしまった。しかも一部ではなく山の半分以上がお亡くなりになってしまう悲惨な事故だったよ。

 

「ギラギラ、空を飛ぶリザードンを見かけたら撃ち落とせ。ただし俺が命令したと悟らせないようにしろ」

そう、ギラギラを出したのはレッドさんのリザードンを攻撃し、偶然当たってしまったという事故を装い近づく為だ。そんなことをしているからポケモンリーグ出禁にさせられたと思うかもしれないが、リーグ出禁のはこれが主な理由じゃない。

『了承した。だがにじマメを要求する』

ギラギラの要求も分かる。だからこそ俺はにじマメを取り出しそれをギラギラに渡した。

「一つとは言わず三個持ってけ」

『感謝する』

にじマメ三個をギラギラに渡すと、ギラギラは無表情で一つ食べ、咀嚼しながらその場を離れ、“はかいこうせん”そのものといっても疑われないような威力の“かえんほうしゃ”を吐き出した。

『完了だ』

「えっ? マジで?」

あんな遠くから見えるのかよ? しかも的確に命中出来るのか?

『あそこだ』

ギラギラが指差した先を双眼鏡で見てみると確かにリザードンがフラフラと落ちていく様子が見られた。

「よし行くぞ、ギラギラ」

『承知』

そしてにじマメをもう一つ頬張り食べながらギラギラが動いていく。一歩歩く度に地響きが起きるのはギラギラがギラギラである所以だろう。そんなことを考えながら墜落先へと向かう。そこには戦闘不能になったリザードンとボロボロになったレッドさんがいた。

 

「大丈夫ですか!?」

ギラギラに指示しておいてそれはないだろうと内心思いつつ、レッドさんに声をかける。

「……」

レッドさんは無言で頷き、返答する。……しかしレッドさんが余りにも無口でコミュニケーションが身振り手振りでしか出来ないって噂は本当だったのか。

「俺のギラギラ、バンギラスの“かえんほうしゃ”がそこにいる貴方のリザードンに直撃し、撃墜させてしまい申し訳ございません」

「……」

何故そんなことをしたのか? リザードンを回復させたレッドさんの目はそう訴えていた。

「ギラギラは強いポケモンを見るとそのポケモンに勝負を挑むんです。恐らく先ほどのかえんほうしゃも貴方のリザードンが強敵だと感じたんでしょう」

バンギラスはイリアのように戦闘狂が多く、ポケモン図鑑にもバンギラスの生態として【戦う相手を求めて山をさまよう。出会っても格下が相手だと無視して去っていく】と書かれてある位には勝負を挑む。ギラギラはそんなことはないが、こうでも説明しないと言い訳が出来ない。

「……」

レッドさんが目を合わせ、モンスターボールを手にした。それはつまり──ポケモンバトルをしようという意思表示だ。

「いいんですか?」

「……!」

コクりと頷き、レッドさんが取り出してきたのはカメックス。水タイプのポケモン。メガシンカする数少ないポケモンでもある。

かえんほうしゃを搭載していてかつ岩・悪のバンギラスじゃ相性が悪いことに違いはなく、圧倒的に不利だ。何せ他の技が変化技の“りゅうのまい”とタイプ一致の“いわなだれ”と“かみくだく”しかない。ちなみに“れいとうパンチ”は既に忘れている。

 

通常のバンギラスであれば一番のダメージソースが“かみくだく”でカメックスを倒すには最低二回以上やらなければならないのに対して向こうはきあいだまを持っていることを考えると乱数一撃──確実ではなくたまに一撃で倒すこと──の威力に加えて先制技である“アクアジェット”で止めを刺される。

 

「ギラギラ、りゅうのまい!」

『……』

バンギラスは無言でりゅうのまいを踊り、攻撃と素早さを上げていく。通常のバンギラスにこれをやらせてもカメックスを仕留められるはずもない。しかしギラギラは例外だ。

「カメックス、“きあいだま”」

予想通り、ギラギラに向けてカメックスが“きあいだま”を放つ。ちなみにバンギラスの特性である砂おこしが起こっていないのはイリアと同様にギラギラが隠れ特性の持ち主だからだ。そのせいで特殊アタッカー──“ハイドロポンプ”や“かえんほうしゃ”のような特殊技を得意とした攻撃用のポケモン──とは相性が悪い。……普通のバンギラスならな。

 

「ギラギラ、“きあいだま”を弾き飛ばせ」

『“きあいだま”を返そう』

ギラギラが尻尾をポケベースのバットのように使い、“きあいだま”をピッチャー返しする。これが通常のバンギラスとは違うところだ。通常のバンギラスなら“きあいだま”をピッチャー返しどころか弾き飛ばすことすら出来ない。弱点四倍の上に“きあいだま”の威力そのものが高いからどうしても押されてしまう。しかしギラギラには関係ない。圧倒的なレベル差でねじ伏せてしまう。

「ギラギラ、“かみくだく”」

『これで最後だ』

ギラギラがカメックスの頭をかみくだくと、カメックスが戦闘不能となりその場に倒れる。相変わらずギラギラはとんでもないな。

 

「……お疲れ、カメックス。いけ、フシギバナ」

カメックスが倒れるのを見て、今度はフシギバナを出してきた。

「ギラギラ、“かえんほうしゃ”」

『燃え尽きろ』

はかいこうせんのようなギラギラの“かえんほうしゃ”がフシギバナに襲いかかる。リザードンですら倒れたのにフシギバナで倒れない道理はない。

「フシギバナ、“ハードプラント”」

しかしそれはフシギバナに直撃すればの話だ。フシギバナの“ハードプラント”がバンギラスの“かえんほうしゃ”を半分ほど防ぐ。しかしもう半分がフシギバナに直撃して大ダメージを与えた。

「ギラギラ、“かえんほうしゃ”」

そしてもう一度“かえんほうしゃ”を指示すると、フシギバナは“ハードプラント”の反動のせいで防ぐ手立てなく倒れた。

 

「リザードン、出てこい」

レッドさんがフシギバナを収納すると、リザードンが代わりに出てくる。先ほどギラギラに“かえんほうしゃ”でやられたリザードンだな。

「ギラギラ、“いわなだれ”」

「リザードン、“そらをとぶ”!」

上手いな、“そらをとぶ”で“いわなだれ”を回避したか。流石、伝説と言われたレッドさんだ。だが、忘れたのか?

「かえんほうしゃ!」

ギラギラの“かえんほうしゃ”は俺が双眼鏡を使わないと見えない距離でも威力は衰えることなく命中するということを。まさしくサイボーグだよ。

「リザードン、“ブラストバーン”!」

そう来たか。空中から滑空して“ブラストバーン”を放ち、威力を少しでも上げる訳か。だがそれでもこちらが押しておりギラギラのダメージにはなり得ない。

「我が臣下リザードン、その真価を見せ進化せよ……!」

オレンジ色のリザードンが色違いを彷彿させるように黒く染まり、尻尾の炎と腹が青く染まり、口元には青炎が点火する。翼も大きく変化し、悪魔のような翼から切れ込みが入る。なるほどメガシンカか。先ほどまで押されていたブラストバーンが盛り返し、レッドさんの雰囲気に余裕が出来てくる。

「リザードン、“ブラストバーン”を止めてバンギラスに突っ込め!」

愚策ではない! “ブラストバーン”は“ハードプラント”同様に反動が大きい。それを克服させるための“そらをとぶ”か。そらをとんでいる状態でしかも突っ込む時間で“ブラストバーン”の反動による停止時間を稼ぐ。

「リザードン、“ドラゴンクロー”」

メガシンカした今のリザードン──リザードンXの特性は“かたいつめ”という物理技の威力を二倍にする特性だ。その上リザードンXのタイプは炎・竜。技とポケモンのタイプが一致すると威力が上がるのはもはや常識で、威力の上がったリザードンXの“ドラゴンクロー”がギラギラに直撃した。

 

金属音を響かせるとリザードンXの爪が折れた。

……ギラギラがいくらチートとはいえあそこまでチートなのは知らなかった。

『今のは攻撃ではない。攻撃とはこうするものだ』

そうギラギラが宣言すると俺はとっさにかみくだくの指示を出していた。

その指示を聞いたギラギラがリザードンXの首に“かみくだく”をやって仕留めた。

「…………」

次のポケモンはまだかとレッドさんの方を向くとレッドさんは既に白旗を上げ、降参の意思表示をしていた。

「降参ですか?」

念のため、もう一度いうが念のためそう尋ねるとレッドさんが頷き、降参したことを告げた。

 

 

 

リザードン達を回復させ、レッドさんに尋ねた。

「レッドさん、ほかにポケモンがいたのにどうして降参したんですか?」

「ギラギラを倒せる可能性があったのはあの三匹だけだった。その可能性がなくなったから降参した」

意外と饒舌に喋るな。無口だと思っていたんだがな。

「ポケモンリーグのタイトルは?」

「ありません。出禁させられていますから」

「出禁?」

「そうです。正直なところ言わせて貰うと俺はレッドさんにポケモンリーグに認められるような紹介状を書いて欲しかったんです。その為にここまで来たんですよ」

そこまで語るとレッドさんが紙を取り出し、手紙を書き始めた。いささか気になるが仕方ない

「一週間後の空の柱。そこにいる二人にこの紹介状を渡して」

「一体どのような方なんですか?」

「自分の目で確かめて」

レッドさんがリザードンに乗り、その場を去っていった。

「空の柱って……ホウエン地方か。そこにリーグの関係者がいるのか?」

俺の独り言に反応することなく、ギラギラはにじマメを頬張っていた。




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第3話 爆弾厨メタグロス、ダン

改訂 きあいのハチマキの効果について追記しました


レッドさんに紹介状を貰って俺は今、ホウエン地方の空の柱に来ている。紹介状の相手はホウエン地方チャンピオン、ダイゴさんとホウエン地方四天王、ゲンジさんの二人だった。しかしシロガネ山に篭っていると噂のあの人は一体どうやって知り合ったんだろうか。

そんな疑問を他所に俺は二人に説明する。

 

「うーん……なるほどね。僕はレッドくんの意見に賛成だけど、ゲンジさんは?」

「ワシも同じじゃ」

果たしてどういうことなのか。それを聞こうとすると二人がお互いにエースのポケモンを出してきた。

 

ダイゴさんのエース、メタグロス。鋼・超タイプのポケモンでしかも強いポケモンと言われている。しかしホウエン地方では存在しないポケモンで、メタグロスは当然ダンバルやメタングの生息地が不明だ。その為、ダイゴさんに憧れた人々がメタグロスを捕まえようとしても手に入れられず他の地方から輸入するか、他の地方でダンバルを捕まえて進化させるしかない。おそらくダイゴさんも他の地方で捕まえてきたんだろうな。

 

そしてゲンジさんが出してきたポケモン、ボーマンダ。メタグロスと並ぶ強いポケモンの一頭で並大抵のポケモンであれば一撃で屠られる。しかし一方でバンギラスに並ぶほど狂暴なポケモンでも知られており、ボーマンダを扱うには一流のポケモントレーナーでなくてはならない。それを扱えてかつ四天王の立場にいるゲンジさんは間違いなく超がつくほどの一流のポケモントレーナーだ。

 

「シックくん、僕とゲンジさんの二人を相手に対戦してもらうよ」

「ダブルバトルでですか?」

ダブルバトル。二対二のチーム戦で行うポケモンバトルだ。ポケモンそのものよりも戦略がものを言う為にシングルバトルで強くともダブルバトルで弱くては勤まらない。

「その通り。レッドが言うにはワシらは互いに一体ずつ、お主は二体使って勝ったらポケモンリーグに参加出来るように取り計らってほしいと書いてあったよ」

「ダブルバトルか……わかりました。その前にお願いがあるのですが宜しいでしょうか?」

「ん? 手加減しろとかは聞き届けられないぞ」

「そんなことじゃなく、別のことです。この後──」

そして俺は二人にあるお願いをした。

 

 

 

「わかった。その方が良さそうだね」

「うむ。チャンピオンに同じく、やってみよう」

そのお願いを二人が了承し、頷くと俺は二つのモンスターボールを手にした。

「ありがとうございます。それではいきます……!」

そしてそのモンスターボールからでてきたポケモンはメタグロスのダン、ボーマンダのマンダーだ。ダンとマンダーのニックネームは安直だって? ダンはともかく、マンダーについては反論出来ない。

 

『やっと出番かぁぁっ!』

ダンはメタグロスとは思えないほど騒がしく、俺のポケモンのなかでも問題児の一匹だ。名前の由来もとある問題を起こすからだ。

『うるさいですよ、ダンさん。公共の場ではもっとお静かに』

眼鏡が似合いそうなインテリ、マンダーがダンを注意する。

「ダン、マンダー、試合だ。気を引き締めろ!」

『やったぜ!』

ダンが素直に喜び、ゲンジさんのボーマンダとダイゴさんのメタグロスを見て笑みを浮かべた。

『やれやれ。仕方ないですね』

マンダーは素直じゃないな。嬉しいなら嬉しいと言ってくれてもいいのに。

 

「ルールを確認しようか。君対僕達の二対二の変則マルチバトル。互いに道具はポケモンに持たせたものだけを使う。交換は一切禁止。そこまではOK?」

「はい」

「それではこれよりポケモンリーグ推薦試験を開始する」

ゲンジさんがそう宣言し、俺はすぐにメガシンカの構えを取った

「マンダー、メガシンカだ」

『最上ですよ、シックさん』

マンダーがメガシンカし、姿を変える。そして向こうの二人もメガシンカをしていた。なるほどな……

 

「ボーマンダ、小僧のメタグロスに“かえんほうしゃ”!」

「マンダーいけっ!」

メガシンカしたボーマンダ──メガボーマンダが火を吹き、ダンを襲おうとするがマンダーはそれを阻止した。

『やれやれ、咄嗟に考えられる私だからよかったものの他の方々だったら止められませんでしたよ?』

「すまない……」

お叱りを受けるがそれはやむを得ない。しかしそこでボケボケしていると今度はダイゴさんがメガシンカしたメタグロス──メガメタグロスを使って攻撃してくるはずだ。それの対応が間に合わない。

「メタグロス、“じしん”だ!」

メガボーマンダもマンダーも飛行タイプなので“じしん”は効かない。となると先にダンを狩ろうって訳か。いやマンダーの決定打になる技がないのか。

「ダン、“グロウパンチ”だ」

『攻撃力アップゥゥゥっ!』

ダンがメガメタグロスに“グロウパンチ”で攻撃をして上げる。“じしん”ではダンにダメージは与えられたものの、その威力は変わらない。対してこちらはパワーアップしている。

 

そしてそのわずか数コンマ後にゲンジさんの指示が飛んできてメガボーマンダがダンに“ギガインパクト”をする。そしてダイゴさんは、“かみなりパンチ”でマンダーに攻撃するように指示した。

「マンダー、“まもる”」

マンダーにまもるをさせ“かみなりパンチ”を防ぐ。これで準備は整った。

 

ダンに攻撃が直撃し、倒れるかと思いきや、ダンに持たせていたきあいのハチマキ──持たせると、ひんしになるダメージを受けても10%の確率でHPが1残る──が効果を発揮させて耐え切ってしまう。そしてダンにあることを指示した。

「ダン、“だいばくはつ”だ」

『ヒャッハー、だいばくはつは芸術だぁぁぁっ!』

その場にいたメガボーマンダとダンは倒れ、メガメタグロスも大ダメージを受けた。残り体力2割から3割強くらいじゃないのか?

「しょ、正気か? メタグロスに“だいばくはつ”を覚えさせるなんて」

 

正気ではない。ただし俺ではなくダンだ。ダンは自力で“だいばくはつ”を覚えるほどの大の“だいばくはつ”好きで、ポケモンバトルをすると必ずと言っていいほど二回目の攻撃で“だいばくはつ”してしまう。極々稀に三回目で“だいばくはつ”をするがそんなのは滅多にあり得ない。何故なら、ダンに持たせているきあいのハチマキが必ず一回、7割くらいの確率で二回効果を発揮するのでそうしているからに過ぎない。もしきあいのハチマキを持たせていなかったら俺の指示を無視して一回目で“だいばくはつ”している。

とある研究者によると、メタグロスの特性であるクリアボディやライトメタルの特徴もないことから、メタグロスの新しい特性の一つなんじゃないのかと言われている。俺個人の意見だと、そんなものじゃなく、とにかく“だいばくはつ”しようとしてそうなったんじゃないのと、本来はライトボディであり、他のメタグロスと体重が同じなのはダンが他のメタグロスよりも二回り以上も大きいからだと個人的には推測している。

『“だいばくはつ”、最高……っ!』

とにかくそんな謎に包まれたメタグロス、ダンはダンバルの頃からだいばくはつ厨であり、“だいばくはつ”をするとこのように光悦な笑みを浮かべ瀕死になる。名前の由来も爆弾のダンから由来しているんだよ。ちなみに“だいばくはつ”を忘れさせたとしても次のバトルには思い出して“だいばくはつ”をするので無駄だと悟った。

 

「マンダー、“だいもんじ”」

『フィニッシュです』

マンダーがメガメタグロスに“だいもんじ”を放つとメガメタグロスが倒れ決着がついた。

「“だいばくはつ”はともかく、見事な試合だったよ。僕のメタグロスをああも簡単に仕留められるなんて予想外だよ」

 

ダイゴさんの言うように“だいばくはつ”はポケモンリーグでは否定されがちだ。その理由は「ポケモンを犠牲にしてまで勝ちたいのか」という批判が余りにも多いからだ。

しかしあれも立派な戦略の一つだ。だいばくはつを使われて相手が負けたらゴーストタイプや“まもる”を使わなかったトレーナー達の責任だ。“だいばくはつ”をするポケモンはトレーナーを信頼しているからこそ“だいばくはつ”をする。トレーナーはその期待に答えなきゃいけない。つまり義務であり責任なんだ。世の中には一矢報いりたくとも出来ない奴らが多くいる。そいつらに引き分けに近い敗北──ポケモンリーグの規定上、だいばくはつをしたポケモンは敗北となる──をさせれば一矢報いたことになる。何せ勝てない敵に勝とうとして相討ちになったのだからな。それを否定される筋合いは誰にもない。

 

「ありがとうございます。ダイゴさん」

「さて、ポケモンバトルにも負けてしまった事だし、ワシらは連絡しようか。ボーマンダ!」

ゲンジさんが別個体のボーマンダを取り出し、その場を去る。

「それじゃ僕も失礼するよ」

ダイゴさんもエアームドを取り出し空の柱から去っていく。……俺も準備するか。




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第4話 インテリボーマンダ、マンダー

「待って」

空の柱から飛び立とうとすると独特の衣装の女の子に話しかけられた。

「何か用か?」

これで九日十日なんてボケをするようであれば準備しなくてはならないんだが。

「さっき貴方、チャンピオン達と戦った人よね?」

「ホウエン地方のチャンピオンとその四天王とならさっき戦ったな」

「やっぱり……私の名前はヒガナ。流星の民の一族よ」

「そのヒガナが俺に何の用だ?」

「私に教えて欲しい。これからやるべきことを」

初対面の人間にそれを尋ねるのか? いやその前に流星の民の一族ってなんだよ。等と思っているとマンダーがボールから飛び出てきた。

『流星の民の一族と言えばホウエン地方の伝承に伝わっている一族ですね。彼らの役目は宇宙から飛来する侵略者を守るという使命に負われているはずですが……そんなものとは縁遠いシックさんに教えを乞うのかが不可解ですね』

マンダーはユクシーか何かに知識を与えられたボーマンダなんじゃないかと言われるほど頭が良く、このようなボーマンダとは無縁な知識もある。

 

「正確にはポケモンバトルを通して、私の進むべき道を教えて欲しい。私は流星の民の伝承者として生きてきたんだ。だけどその役目が終わって残りの人生、何をすればいいのかわからないんだ」

『そういうことですか。シックさん、ここは私にお任せ下さい』

マンダーはポケモンバトルはそんなに好きではなく、今のように自ら望んでやるのは珍しい。本来ならイリアに任せて彼女のストレスを発散させるがマンダーが自ら進んでやるとなればこちらを優先させる。

「わかった。マンダー、やってくれるな?」

『ほっほっほっ、普段ならイリアさんにお任せするのですが先程あの爆弾厨に邪魔されたせいか消化不足でしてね。流星の民相手なら良い運動になりますよ』

ダン……どんだけ迷惑をかければ気が済むんだ?

 

 

 

「それじゃいくよ……!」

ヒガナが出してきたポケモンはヌメルゴン。ナメクジのような姿で雨によってしか進化しない癖に水は複合されず、竜のみという単体タイプのポケモンだ。

 

「マンダー、メガシンカだ!」

マンダーのメガシンカによって翼が三日月を彷彿させる姿に変わっていきメガボーマンダになると、すぐさま指示を出した。

「マンダー、後はお前に任せる」

本来ならこんな指示はポケモントレーナーとして認められない。しかしマンダーの強さは俺が引き出したとしても9割弱しか力を出せない。マンダーの強さは俺の他のポケモンとは違い、その頭脳にある。

 

ところでポケモン将棋というのはご存知だろうか。ポケモン将棋とは普通の将棋とは違い、駒に強さがあることや駒を裏返して動かす点ではむしろ軍人将棋のそれと言って貰って構わないだろう。駒の強さの基準はポケモンのタイプによって決まり、相手に与えるダメージが2倍以上なら攻めた方が残り、それ未満なら攻められた方が残る。

さてそのようなポケモン将棋だが、ポケモンバトルの変わりに使われることはない。ポケモンをゲットするにはポケモンバトルで捕まえたいポケモンを弱らせることが最も重要であって、ポケモン将棋とポケモンを弱らせることは因果関係にないからだ。勿論ポケモン将棋でゲットされたポケモンは一匹を除いて皆無だ。

その一匹こそこのマンダーだ。初対面の時のマンダーは既にボーマンダで、タツベイ達のリーダーだった。タツベイのうち一頭を捕まえようとしたらマンダーが割って入り、その頃にはある程度意志疎通が出来るようになっていた為彼の提案に乗る──つまりポケモン将棋で勝負した。幸いにも俺は軍人将棋やポケモン将棋に精通していた為、マンダーに勝ってマンダーをゲットすることが出来たが、他の種目で勝てと言われたら無理だろう。

マンダーは驚くことにポケモンの知識を初め、統計学や心理学等の人間の知識も高卒の俺よりも優秀だ。しかも今年に至ってはタマムシ大学特別講師とポケモン将棋アマ九段の肩書きを得るくらいに頭が良くなっていて、俺よりも頭が良いのは確実だ。

 

スパコン並みと言われるメタグロスにしたって、チェスや将棋などの計算出来るものは出来るが人間の行動等計算出来ないものは出来ない。それをマンダーは当たり前のようにする正真正銘の怪物だ。

 

つまり何が言いたいかと言うと、マンダーはメタグロス以上の頭脳を使って攻撃を予測し、回避しまくるのでシングルバトルであればよほどの相手でない限りマンダーだけで倒してしまうし、そのよほどの相手はギラギラただ一頭のみだ。ダブルバトルになったり、トリプルバトル、ローテーションバトルになったらいくらマンダーが賢くとも他の奴らがマンダーの命令を聞かないので俺に指示を任されている。

 

「ヌメルゴン、“れいとうビーム”!」

銀色に輝く怪光線がマンダーに向け、発射されるがマンダーは紙一重で避けた。

『ダンさんの“だいばくはつ”よりも分かりやすい攻撃が私に通用するとでも?』

「ヌメルゴン、“れいとうビーム”を撃ち続けて!」

ヒガナがそう指示すると“れいとうビーム”が無数に現れ、マンダーに襲いかかる。しかしマンダーはその前に動いていた。

『さあ、これがシックさん。最高の“おんがえし”ですよ!』

マンダーの攻撃、“おんがえし”が炸裂しヌメルゴンが大ダメージを負う。

「ンゴ……」

「ヌメルゴン!?」

大ダメージどころか、ヌメルゴンが倒れヒガナがヌメルゴンをボールに収納した。

『これがレベル差という奴ですよ。流石にギラギラさんには及びませんが私もレベルは高いほうでしてね』

今日のマンダーはやたら饒舌だな。もしかしてストレス溜まっていたのか?

 

 

 

「ガチゴラス!」

『ほほう、ガチゴラスですか。ヌメルゴンといい竜タイプのポケモンを使うとは流星の民の一族らしいですね』

そんな感想はともかく、ヒガナがガチゴラスにかみくだくを指示してマンダーを襲う。しかしマンダーは口から勢いのある水を吐き出した。

『残念でしたねぇ、私はギラギラさんに勝つために“ハイドロポンプ”も搭載しているんですよ。私に限らずポケモン全体の“ハイドロポンプ”の的中率は悪いんですが、この至近距離から逃すほど私は甘くありませんよ』

その技の名前は“ハイドロポンプ”。水タイプの大技で、岩・竜のガチゴラスとは相性が良く効果は抜群に決まり、ガチゴラスが倒れた。

「ガチゴラス!」

『もっともギラギラさんにはカイリキーの“インファイト”もまともに通じませんがね』

バンギラスは格闘で4倍ダメージを負う為、普通であれば物理攻撃に優れかつ格闘タイプのカイリキーの“インファイト”どころか、マニューラの“けたぐり”を喰らえば倒れる。しかしギラギラはまさしくチートでカイリキーの“インファイト”だろうが関係なく、どんな攻撃を受けても、シグザグマが半径100m位の範囲内に寄ってきたのと同じくらい無反応だ。

 

 

 

「くっ……流石にやるね。こうなったら、とっておきの切り札を見せてあげる」

「とっておきの切り札?」

『その様子、余程の自信有りと見ましたよ』

「いけっ、ボーマンダ!」

『上等じゃおらぁっ!』

チンピラ風に出てきたボーマンダがマンダーをいかくするがマンダーは少しだけ目を見開いていた。

『おや、貴方は……利かん坊の坊やじゃないですか』

『その口調、もしかしてリーダー?』

『私のことをまだリーダーと言ってくれるのですか? 私は貴方を追放したと言うのに』

追放した? あの仲間思いのマンダーが?

『確かにあん時は恨んでいた。だけどもしリーダーが追放してくれなかったら永遠に堕落(ニート)して俺はボーマンダになれなかっただろうし、何よりも今の主人に会えなかった。感謝しているよ』

「ボーマンダ、いくよ!」

『そういうことでさ、リーダー。ボーマンダになった俺の力見せてやるよ』

『いいでしょう。そこまでいうならお相手しましょうか』

マンダーがそう覚悟を決めるとヒガナのボーマンダが変化していき、メガボーマンダへと姿を変えていく。

『これが俺と主人の絆の力だ……!』

「ボーマンダ、“ドラゴンクロー”!」

メガボーマンダがマンダーに“ドラゴンクロー”を仕掛けるがマンダーはそれを難なく避ける。

『確かに素早さや攻撃は上がった様ですが、まだ爪が甘いとしか言い様がありませんよ。“ドラゴンクロー”だけにね』

「ボーマンダ、“ドラゴンクロー”を連発!」

『おやおや、私とあろうものが二回も攻撃をしようとさせてしまうなんて……だけど、勝つのは私です』

マンダーが“りゅうせいぐん”を放ち、メガボーマンダに大ダメージを負わせた。

『流石、リーダー……強いぜ』

『当然です。日々精進しているのですからね』

メガボーマンダが倒れ、ヒガナのモンスターボールに収納される。

 

 

 

「……降参よ」

「いいのか?」

「勝ち目がないのと、自分のやりたいことが少しだけ見えてきたからね」

「なら俺は止めない」

「これだけ力の差を見せつけられて、ポケモントレーナーとして黙っていられるのは心が折れた人達だけ。私は、貴方、いやあんたに絶対に勝ってみせる! その為なら今の勝負を捨ててもいい」

「それがお前の生き甲斐か。ヒガナ」

「これまでポケモンバトルは手段でしかなかったけど、あんたに負けてようやく自分の生き甲斐がポケモンバトルだって気づかされた……もし次会う時はリーグでね」

「おい、俺は──」

俺自身がリーグに出られないことを告げようとするもヒガナがその場を去ってしまう。

 

『やれやれ、カントーのチャンプといい、あの流星の民といい、竜使いは人の話を聞かないんでしょうか?』

「かもしれないな」

マンダーの呆れた声に、俺は同意した。




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第5話 ネタの宝庫ガブリアス、ブリタ

今、最も勢いのある地方のチャンピオンといえばシンオウ地方のチャンピオン、シロナさんが有名どころだ。いくらレジェンドと呼ばれるレッドさんの紹介状があっても彼は過去の人物。リーグ管轄外の人物と言われてしまえばそれまでだ。

 

しかしシロナさんは違う。若い上に美女で今をときめくヒーローだ。それまで他の地方でも女性地方チャンピオンはいくらかいたものの、僅か一度だけのチーズチャンピオンが多く、その一度目の防衛に成功したとしても二度目で負けてしまう為に低レベルだと言われていた。

しかしシロナさんは違う。幾度も防衛し、チャンピオンとしての貫禄を見せている。そしてシンオウ地方チャンピオン防衛最高記録まで後少しだ。世間はそんな彼女をヒーローにしない理由がない。

 

その現在リーグを賑わせる彼女を一般人の前で倒したらどうだ? 俺をヒールと見なすが、それ以上に俺がポケモンリーグ公式戦に出れないことによってリーグはシックと共謀したとかそんな風に叩かれ、リーグは悪の親玉となる。

ある者(シロナファン)は【シロナに公式戦でリベンジさせろ】と。ある者(シロナアンチ)は【無冠の帝王シックに挑戦権を与えろ】と騒ぐだろう。どちらにしてもリーグが俺を認めざるを得ない状況にさせる。それが俺のやるべきことだ。……もっとも後者の無冠の帝王云々は過大評価かもしれないが。

 

「シロナさん、この度はポケモンバトルの勝負をさせて頂きありがとうございます」

頭を下げ、シロナさんに感謝の態度を示す。今回の試合は俺がダイゴさんやゲンジさんを通してシロナさんに非公式戦の試合を申し込んだということになっている。

「いいわよ。だって貴方、非公式とはいえバトルレジェンド(レッドくん)ホウエンチャンプ(ダイゴさん)に勝ったんでしょ? しかも一方的に打ち負かしたんだから興味が湧かない訳がないわ」

「そう言って頂けると助かります。ところでこの試合、今後の参考にしたいので動画にしても宜しいでしょうか?」

「私にもその動画、共有してくれたらいいわよ」

「ありがとうございます」

そして取り出したポケモンは特性鮫肌、性格ようきのガブリアス。廃人トレーナー曰く「高速物理アタッカーガブの理想体」らしい。

『やっふぅ、マネージャーさん、ようやくオイラの歌手デビューかい?』

俺のことをマネージャーと呼んでくるガブリアスのブリタ。性格がようき過ぎて歌手を希望すると公言している歌大好きポケモンだ。俺のことをマネージャーと呼んでいるのは彼のバトルや歌の舞台を選んでいるからだ。

「バトルだバトル」

『ちぇっ! バトルか。でもバトルでもいいぜ。あのパツキンねーちゃんが相手かい?』

パツキンねーちゃん……金髪のお姉さん、シロナさんのことか。

「そうだ。あいさつしろ」

『よろしくお願いしまーす!』

歌手を希望しているというだけあって、礼儀正しく頭を下げる。

「へえ、躾が出来ているじゃない。でも躾だけじゃポケモンバトルは勝てないわよ?」

 

 

 

シロナさんが最初に出してきたポケモンはミカルゲ。このミカルゲという種族はブリタの天敵とまでは言わずとも相性は悪い。霊・悪なミカルゲは弱点こそ(フェアリー)の一つだけだが、竜の弱点である妖の技を覚える訳でもなければ、氷の技を覚えるという訳でもない。

ミカルゲが相手にやけどを負わせるおにびを覚えるから相性は悪いと言える。ありとあらゆるポケモンがやけどを負うと時間が経過するごとに体力が減るだけじゃなく、物理攻撃──正確には攻撃──の威力が半分になるというものだ。しかも体力を徐々に減らしても、いたみわけを覚えている為下手な火力でいけばこちらは体力を減らされるのに向こうは回復させられてしまい手詰まりになる。みがわりとの組み合わせで更に長期戦に持ち込むことも可能だし、みちづれで巻き込むことも可能だ。とにかく色々な型のミカルゲがいてその動きは予測不可能。

 

「ブリタ、じしん!」

『了解だぁっ!』

ブリタのじしんが炸裂し、ミカルゲが大ダメージを負う……これは急所いったか?

「ミカルゲ反撃よ! シャドークロー!」

それでも残るか。ブリタもマンダーには及ばずともイリアよりもレベルは高い。そんなブリタのじしんが急所当たって耐えきるなんてレベルが高く、しかも耐久型と考えていいな。……しかしいたみわけを覚えていないのか? いたみわけを覚えていたら厄介だったんだが。

「ブリタ、シャドークローを打ち負かすようにドラゴンクロー」

『ブリケンサンバァァァッ!』

ブリタがシャドークローを打ち消し、ミカルゲもろともドラゴンクローで攻撃する。俺は今、サラッととんでもない指示を出したがそれを実行するのがブリタの強みだ。

『やったぜ、マネージャー。オイラの力見たかい?』

くるりと振り返り、俺にそう尋ねる姿はテストで100点を取ってきた子供のようだった。

「よくやったブリタ、後でポケマメだ。次も倒したらガラマメ、全員倒したらにじマメもやる」

『ギラギラの兄貴専用と言われたにじマメがオイラに……? しゃぁっ! その約束忘れないでくれよマネージャー!』

ブリタのモチベーションが上がった理由はにじマメがこのパーティの中ではギラギラ専用のポケマメだからだ。

ギラギラ以外のポケモンが俺の許可なしに手を付けようものなら伝説ポケモンの暴走すらも生ぬるく感じてしまうくらいに暴れる。というか実際ディアルガとパルキアの二匹がかりでも止められなかった。唯一口出し出来る俺も、にじマメを切らせば機嫌が悪くなってしまうので俺が許可を出すことは滅多になく、にじマメはギラギラだけに許された特権なんだよ。

その特権をブリタが一時的とはいえ、得られると聞いて、手持ちの他のポケモンが大暴れするがギラギラがそれを許さず止めた。

 

 

 

「やるわね。そのガブリアス」

「そりゃブリタはバトルも歌もいけるポケモンですから」

「でも同じガブリアス使いとして負けるわけにはいかないわよ?」

シロナさんが取り出したのはブリタと同じ種族のガブリアス。ブリタにも言えることだがこのガブリアスという種族はカイリューやボーマンダクラスの強さを秘めているだけでなく、ありとあらゆる立ち回りが出来る。

「ガブリアス、ドラゴンダイブ!」

ブリタにそれはあかん。ブリタはマンダーとは違って無意識にそれを避けることが出来る。つまりタイムラグがほとんどない。その分、ブリタに攻撃の指示を出さなければならないという欠点もある。

「ブリタ、かわせ」

ブリタがガブリアスのドラゴンダイブを皮一枚で避け、次の動作に入る。

「ガブリアス、もう一度ドラゴンダイブ!」

「ブリタ、その前にドラゴンクローだ」

『オゥレィッ!』

ブリタの掛け声と共にドラゴンクローがガブリアスに炸裂し、倒れる。

「は、速い……! それに強い……!」

「俺のブリタは同レベルのガブリアスの中でも最速だから速くて強いのは当たり前ですよ」

 

 

 

「それなら、ミロカロス出番よ!」

ミロカロスか……厄介だな。ガブリアスがエースということを考慮するとミロカロスのレベルはそれ未満と考えられるがミロカロスは耐久が高い上に特殊攻撃が得意なポケモン。しかも竜の苦手なれいとうビームを覚える。ブリタは種族としてはガブリアス、つまり竜・地だからそのダメージは四倍。通常だったら勝てる訳がない。しかし取り替えようにも逆に不利になるのは明らかな上に氷が弱点でない二匹、ダンは便りにならないし、ギラギラは動く度ににじマメが必要になる。

「ブリタいけるな?」

『任せろぃっ!』

「よし、ブリタじしんだ!」

『えいやっさ!』

ブリタが躍りながらじしんを起こし、ミロカロスにダメージを与えるが対して効いているようではない……やっぱり硬いな。

「ミロカロス、れいとうビーム!」

ミロカロスの白銀に輝くれいとうビームがブリタを襲おうとするが、ブリタはそれを避けた。

『オイラはマネージャーの持ちポケモン1のかわし屋だぜ? ダークライのダークホール三回連続で回避したオイラの前じゃこんなれいとうビーム当たらないよっ』

そういえばそんなことあったな。こいつはダークライのダークホールを三回連続で避け、とことんおちょくりまくっていたな。

「ミロカロス、れいとうビームを続けなさい!」

「ロァーっ!」

「ブリタ、隙を見たらじしんで倒せ」

『それじゃいってみようか。Shall we dance?』

れいとうビームをすぐさまかわしブリタはじしんを引き起こしてミロカロスがダメージを負い、その場で倒れた。

『しゃっ、三タテだ! 後半分!』

ブリタが三タテしたことによる歓喜の雄叫びを上げる。

 

 

「シロナさん、次のポケモンを」

「……あはっ!」

「シロナさん?」

「ここまで絶望的な状況、いつ以来かしら?」

シロナさんは笑みを浮かべ、モンスターボールからポケモンを取り出す。そいつはシンオウのポケモンルカリオだった。それを見て俺は気づいた。絶望的な状況、つまりブリタに決定打を与えられるポケモンはシロナさんの手持ちにはいない。そんな状況にも関わらず、笑っていられる。流石現役チャンピオンというだけあって心が強いな。俺やヒガナだったら勝ち筋のないポケモンバトルは避けるように降参する。それがポケモンの為であり、次のポケモンバトルに生かす。レッドさんは試練的な感じだから例外。

「ルカリオ、インファイト!」

「じしんだ!」

ブリタのじしんが炸裂し、ルカリオが一撃で倒れる。無理もない。ルカリオは格・鋼の複合タイプで鋼は地を弱点としている。タイプ一致でかつ弱点をつけられていたら一撃で落ちるだろうに。地を無効にする飛が含まれたり、ふうせんを持たせたりしていたら話は別だが。

 

 

「あと二匹でせめてそのガブリアスを仕留めてあげるわ!」

シロナさんが出してきたポケモンはシビルドン。厄介なことにこのシビルドンは弱点がない。地は鋼や毒の他に雷に唯一弱点をつけるタイプだ。しかしそれを無効にするのがふゆう持ち。雷タイプでふゆうを持っているのはクワガノンの他にシビルドン系統しかいない。クワガノンは虫タイプであり弱点はあるのにシビルドンは雷のみなので実質弱点はない。

「そんな大口叩いて負けたら大恥かくだけですよ? ブリタ、ドラゴンクロー」

その為じしん以外でダメージを与えられるドラゴンクローを指示した。

「シビルドン、げきりんよ」

……流石だ。シビルドンがそれに耐えるのもあるが、俺のヤジを受けてなおシロナさんはマンダー並みに冷静に判断し竜タイプの技げきりんを指示する。当たればブリタには効果抜群でかなりのダメージを負う。

『でもオイラ、かわし屋ですからぁぁっ! 残念!』

もうお前、芸能界いけよ。そう思わせるくらいに見事な避け方だった。

「ブリタ、もう一度ドラゴンクロー!」

『シビルドン、竜の爪斬り!』

ブリタのドラゴンクローが炸裂してシビルドンが倒れる。光の粉唯一つもっているだけでここまで回避してシロナさんを追い詰めるなんてとんでもない奴だよ。

 

 

 

「これが最後よ。トゲキッス!」

ここで飛・妖のトゲキッスだと? ブリタの攻撃二つが無効化されてしまう……いやこれならワンチャンありだな。ブリタと同レベルのトゲキッスが最速でもブリタにはその速さは敵わない。

「ブリタ、ストーンエッジ!」

「トゲキッス、マジカルシャイン」

俺とシロナさんの指示が互いに通るものの、トゲキッスがブリタよりも早く動き、技を早く発動させたのもトゲキッスだ。通常であれば最速のガブリアスがトゲキッスよりも遅くなることはあり得ない。しかしある道具を持たせるとそれは覆る。

一つはせんせいのつめだが、効果を発動するのがランダムで余りそれは期待出来ない。となればもう一つのアイテムを持たせているのだろう。

「スカーフ持ちか」

トゲキッスが早くなった理由はこだわりスカーフが原因だ。そう、こだわりスカーフを持たせたポケモンが素早く行動出来る代わりに最初に出した一つの技に固執するという癖のあるアイテムだ。まさかシロナさんがそんなアイテムを使うほどブリタに勝ちたいと思うとは予想してなかった。

『マジカルシャイン、マジ痛いマジで速い。だけどオイラはギリ無事、武士の情けだトゲキッス!』

しかしブリタの耐久力を舐めたらダメだ。ガブリアスは氷でなければある程度は耐える。ブリタも然り。耐えないとしたら余程レベル差が生じているのだろう。

「キュ……」

『にじマメゲッツ!』

ストーンエッジが炸裂し、トゲキッスが目を回し倒れるとブリタが決めポーズのしぐさをやり、俺の方へ振り向く。

『さあマネージャーさん、にじマメを!』

「ほらよ」

『あざっす!』

そしてブリタがにじマメを食べ始め、カメラを回収する前にシロナさんに挨拶した。

 

 

 

「シロナさんありがとうございました」

「完敗ね……貴方のガブリアスのブリタ、かなり育てあげられているわね。一体どうやったらそうなるのかしら?」

「そうですね……参考程度にしかなりませんが、リズムですかね。ブリタは歌や踊りが好きだからとにかくそれに合わせて動くように覚えさせました。その結果必要最小限の動きで回避することが出来るようになりましたよ」

ブリタの方を見ると『ニジマメウマー』と満足げに齧っているのが見え、余程にじマメが食いたかったのだと思わせるな。ちなみに俺個人はにじマメは好きではなく、にじマメの何が良いのかよくわからない。

「リズムね……今度試してみるわ」

「そうして下さい。ところでシロナさん、この動画のデータをそちらにお送りしましょうか?」

「よろしくお願いするわ」

そしてシロナさんに動画のデータを送った翌日、シロナさんが素人に惨敗したということを理由に地方チャンピオンを返上するというニュースが流れることになり、原因を作った俺は外国へ逃げることになった。




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第6話 おデブなサザンドラ、リック

ストックが切れました……明日以降の更新は未定です。


シロナさんの試合との後俺はイッシュ地方にやって来ていた。その理由は言うまでもなく雲隠れだ。あれから事情を知ったシロナさんはファンにあの試合の動画をシンオウ地方内で公表しただけでなくシロナさんの地方チャンピオン返上のせいでシロナさんのファンのポケモンバトルの申し込みが絶えず、俺に来たのでこうして雲隠れしているということだ。

 

『サー、少し歩くのが速すぎます』

俺の後ろで小さな足を使って着いていくポケモンはサザンドラのリック。リックは通常のサザンドラとは違い、脂肪が付きすぎて飛ぶことが出来ない為にこうして歩いて俺の後ろで着いていっている。それならモンスターボールに入れた方が良いとかそういう風に言うかもしれないが、リックを時折散歩させないと健康に悪く、ポケモンドクターからも運動させるように言われている。

「歩くのが速いんじゃなくお前が遅いだけだ。わかったら汗水流して歩け」

『サー、イエッサー……』

弱気な軍人口調で答え、渋々と歩いて脂肪を燃焼させるリック。まあリックが俺に従うのは二度目の主人である俺に捨てられたくないのが理由だろう。捨てられたところを拾ったのが俺だったってだけだ。このリックって名前もメタボリックから由来しているらしいしな。酷い話だ。

「あそこまで行ったらガラマメだ」

とは言えちゃんと褒美はやるから虐待している訳ではない。

『サー、イエッサー!』

それを聞いたリックが急に元気になり、飛びはねながら走る……飛びはねるのは、飛びはねないと走ることが出来ないからだ。

『待ってろガラマメェーっ!』

ボールのように弾けながら走る様はとても動けないからという理由で捨てられたとは思えなかった。

 

『到着しました、サー!』

「よし、ご苦労。ガラマメだ」

『ああ、旨い……! それというのも運動した後に来る塩辛さが──』

ガラマメを食べるとリックがグルメレポーターの如くすらすらと語り始める。そんな中、一つの人影──ポケモンのヒトカゲではない。あれを無理やり漢字にすると火蜥蜴だ──がうっすらと見える。そして俺の姿を認識したのであろう人影は気まずそうに去ろうとする。

 

だが逃がさない。俺はリックを回収してその人影の前に立ち塞がる。

「よう……久方振りだなアイリス」

その人影の正体は一人の少女。この少女こそが俺をリーグ出禁にしてしまった張本人、アイリスだ。

「し、シック……」

アイリスは俺がリックを連れているのを見て、竜の里から奪ったものだと勘違いし、警察に通報。それで元の持ち主が捨てたと言えばよかったんだが、元の持ち主は金目当てにリックを奪われたと主張して来た為俺はムショに放り込まれるだけでなくリーグ出禁となった。その後、リックは元の持ち主に引き取られたが勝てない、交換の対価に合わないことを理由に再び捨てられ、俺のところにやって来て俺のポケモンとして活躍するようになった。それを聞いたアイリスは俺のことを泥棒扱いしたことを謝罪したが、未だに罪悪感があるようで俺を見ると申し訳なさそうにしてしまう。

 

「まだ気にしているのか? あの事を」

「だって貴方、まだリーグ出禁なんでしょ?」

それは仕方ない。リーグは一度でも悪者になったら容赦はせず、何をしても許される傾向がある。ワタルさんが悪人に向けてカイリューにはかいこうせんをけしかけても逮捕されるどころか咎めないのはそういう背景があり、俺も冤罪とはいえ元悪人だから許して貰えない。ましてやつい最近まで悪の組織の幹部や頭が、リーグに所属していたのだから尚更だ。

「まあな……ところでアイリス、イーリスって女を知っているか?」

「誰それ?」

はて、妙だな。イッシュからカントーに帰って来たトレーナーの話だとイーリスは女性としては史上最年少のチャンピオン──男性を含めると三番目に若いチャンピオン──となり、今も現役のはずだから有名なはずだが……もう引退してしまったのか?

「イッシュ地方のチャンピオンの名前だがもう別の奴に変わったのか?」

「……イッシュの地方チャンピオンなら知っているわ」

「是非とも会わせてくれ」

即答だった。もしその紹介してくれたチャンピオンがイーリスでなくとも問題ない。俺がここに来た理由は雲隠れだけじゃなく、リーグ出禁をなくしてもらえるように呼び掛けようとしているからだ。

「わかった。彼女はソウリュウシティのソウリュウジムで待っているわ」

アイリスがソウリュウシティの街中に入っていき、それを見ていた俺はリックをモンスターボールから取り出す。

 

「リック、ソウリュウジムまでいくぞ」

『本気ですか?』

「無論、先ほどガラマメを食べたんだからその分運動しないとな」

『ヒィーッ!』

「ただし、栄養補給の時間も取るから安心しろ」

 

俺がそう告げるとリックが信じられないと言った表情で俺を見つめる。普通ダイエットをするなら食事は取らない方がいいと思っているようだが、そんなことはない。

確かに食事を少なく、運動を増やせば体重を落とせるが運動するカロリーが足りないから運動しようにも出来ないから無茶だ。

ではどうするかというと一日に数回に分けて食事をし、運動をさせ続ける。そもそも脂肪は身体の燃費しきれなかったカロリーが余分な体重として蓄積されてしまったものだ。よく減量しようと食事の回数を減らすバカがいるがそれは逆効果。食事の回数が少なくなると一回あたりの食事の量が多くなり、腹も減りやすくなる。腹が減ると次に食べる食事からカロリーを全て取る身体に変化していき、使われないカロリーは脂肪となって蓄積されてしまう。ところが数回に分け、少量の食事にすればそれがなくなり、無駄なくカロリーを消費するようになる。もっとも運動をしないと意味がなくなってしまう為に多少スパルタになってしまうのが難点だ。

 

『ほ、本当ですか、サー?』

「ああそうだ。さっさと走れ」

『サー、アイアイサー!』

リックが歓喜し、ソウリュウジムまでゴム毬のように跳ねていく。サザンドラだから飛べよ……

 

 

 

『到着!』

「よし、それじゃ入るぞ」

リックにポケマメをあげて中に入るとそこに立っていたのはガチムチの逆三角形体型の筋肉爺さん。いかにも厳格そうな雰囲気を醸し出している。

「お前がシックか?」

「そうですが」

威圧的に話かけられ、短くそう返事しか出来なかった。

「アイリスから聞いている。着いてきなさい」

間違いない……! この威圧感はチャンピオンだ。

そう思いながら、着いていった先にはポケモンバトル用のバトルステージが用意されていた。

 

「ここは本来、ソウリュウジムのジム戦で使用するステージだ。しかしアイリスにどうしてもエキシビションマッチを開催したいと言われたから貸すことにした」

「貸す?」

どういうことだ? この人がチャンピオンじゃないのか?

「そうだ。思い切りチャンピオンにその思いをぶつけてみたまえ」

そしてその老人に誘導されると再び、人影が見えてくる。ただし先ほどのアイリスとは髪型も服も違う……誰なんだ?

「待たせたわね、シック」

だがその先から聞こえてきたのは確かにアイリスの声。もしやと思い、顔を覗くとそこにはアイリスの顔があった。

「なるほどそういうことか」

それを見て俺は納得した。

「そうよ。イッシュ地方チャンピオンとはあたし──」

「チャンピオンはアイリスとは双子だったのか」

そう、アイリスと地方チャンピオンは姉妹、それも双子の関係だ。だからアイリスがコンタクトを取れたんだ。

「違うわよ! 正真正銘、貴方とさっき会ったばかりのアイリスがイッシュ地方チャンピオンよ!」

「……本当か?」

「本当よ。ねえおじーちゃん」

「そのとおり。彼女が現イッシュ地方チャンピオンのアイリスだ」

イーリスじゃないのか? いや……あり得ない話じゃない。イーリスはアイリスとも読めるから全然不思議な話ではない。

 

「なるほど……それでこのステージを用意した以上、アイリスは俺とポケモンバトルをしたいってことでいいのか?」

「ええ。あの動画を見たら誰だって戦いたくなるわ。でもあたしは貴方と戦う資格はないと思い込んでいた。あのとき許して貰えるまでは」

なるほどそれで逃げようとしていたのか。

「でも今は違うんだろ」

「ええ……アイリス個人としては貴方のポケモンとポケモンバトルを通して触れ合いたい。イッシュ地方チャンピオンとしてはシロナさんの仇を討ちたい……あたしの挑戦受けてくれるかしら?」

「良いだろう。ただし条件がある」

「条件?」

「俺が勝ったらリーグ出禁を取り消すように呼び掛けてくれ」

「勿論!」

アイリスが掛け声と共に取り出したポケモンはリックと同じ種族のサザンドラ。メタボなリックとは違って痩せており、宙に浮かんでいる。

「リック、お前の出番だ」

『サー、イリア殿の戦闘が少ないと思いますが』

「なら仕方ない。お前の運動不足の解消相手はアイリスのポケモンじゃなくギラギラに変わ──」

『サー! あの小娘のポケモン全滅させてみせましょう』

ギラギラの名前を出した途端にこれだ。ギラギラのポケモンバトルはえげつないからな。

 

「よし、準備OKだ。アイリス、やろうか」

「それじゃいくわよサザンドラ。りゅうせいぐん!」

いきなり、りゅうせいぐんかいな。

りゅうせいぐんは竜タイプの特殊技としては最高クラスで威力は強力だがその分能力が下がりデメリットも大きい。りゅうせいぐんを使う時は両刀使い──物理も特殊両方使えるポケモン──か、打ち逃げか、あるいは白いハーブという能力を落とす効果を一度だけなくす道具を持たせるかのどれかだ。

両刀使いのポケモンはボーマンダやジャラランガに適性があるが、サザンドラは特殊技が強く物理技を使う選択肢はない。となれば打ち逃げか白いハーブを持たせるかのどちらかだが、チャンピオンはほとんど打ち逃げをすることはあり得ず居座ることが多い。

「リック、受け止めろ」

『サー、イエッサー!』

俺の指示に従い、りゅうせいぐんを受け止め、リックがアイリスのサザンドラに視線を向ける。俺がリックにそう指示させた理由はリックはやたらタフネスで、レックウザのりゅうせいぐんですら三回も耐えてしまう程の耐久性があるからだ。

「リック、りゅうのはどう」

『サー! イエッサー!』

リックのりゅうのはどうがアイリスのサザンドラに炸裂し、その場に倒れる……耐久型じゃないのか?

 

「サザンドラ戦闘不能!」

アイリスのサザンドラが戦闘不能となり老人──シャガさんがそう宣言するとアイリスが笑みを浮かべていた。

「私のサザンドラが一撃で……! お疲れ、サザンドラ」

サザンドラをしまい、アイリスが口を開く。

「リック、貴方は間違いじゃなかったわ。そこまで強くなれたのは間違いなくシックのおかげよ」

『小娘、知った口をきくな』

「こ、小娘ぇっ!?」

うん? アイリスはリックの声が聞こえるのか? だが、この様子を見ると間違いじゃなさそうだ。

『そもそも貴様があの(差別用語の為、削除されました)を同郷出身だからと言って庇ったのが原因で出会うのが遅れたんだ。もし遅れてなければ──』

「よせリック」

『しかし!』

「アイリス、リックに同情するなら次のポケモンで勝ってみせろ」

「……そうね。認めたくないけどいまのあたしにリックをどうこうと言えるわけじゃない。勝者となって言わせてもらうわ!」

アイリスが次に取り出したのはオノノクス。こいつはガブリアスのようなタフさや攻撃力、そして素早さこそないが、物理攻撃と素早さを上昇させる変化技のりゅうのまいを覚えるのと特性かたやぶりを持っているポケモンで一度積まれたら、しんそくが使えるイリアやしんかのきせき──進化前のポケモンに持たせると物理防御と特殊防御が大幅に上昇する──持ちポリゴン2などタフさに定評のあるポケモンでない限り突破することは不可能だ。

「オノノクス、りゅうのまいよ!」

「リック、りゅうのはどう!」

やはりと言うべきか、オノノクスにりゅうのまいを指示し、物理攻撃と素早さを上昇させた。その隙を逃すはずもなくりゅうのはどうを放たせ、攻撃する。しかしオノノクスは倒れない。

 

「タスキ持ちか」

タスキ持ち。きあいのタスキを持っているポケモンの略だ。きあいのタスキはきあいのハチマキと同じく攻撃を受けても耐えきる道具だ。ただしタスキはハチマキとは違い一度だけでかつ体力が満タンの状態でしか発動しない。しかしハチマキは通常発動する確率は10%で不確定要素が絡むのに対してタスキは確実に耐えてくれる。その為ダンのようにハチマキを持っているのは珍しく、タスキを持たせるトレーナーが多い。

「オノノクス、反撃ーっ! ドラゴンクロー!」

オノノクスのドラゴンクローがリックに直撃し、ダメージを負う。これでリックが通常のサザンドラであれば倒れていただろう。

『そんな程度の攻撃でどうこう出来るとでも思ったか?』

だがそれを耐えきってしまうのがリックだ。リックは特性ふゆうを失った代わりに異常なまでのタフさを身に付けている。大事なことだから何回も言わせてもらう。

そしてリックが右手にあたる頭と左手にあたる頭でオノノクスを掴む。

「オノノクス、連続でドラゴン──」

「リック、りゅうのはどう!」

アイリスの指示を途中で遮り、リックがオノノクスの全身にりゅうのはどうが直撃する。世間一般的に特殊攻撃が強いと言われるサザンドラであるリックの特殊攻撃を二度も、しかも効果抜群の特殊技を受けて無事でいられる訳がない。

「オノノクス戦闘不能!」

「……負けちゃったか。お疲れ」

アイリスがオノノクスをボールに収納し、白旗をあげる。レッドさんといい、どうしてそんなに準備がいいのかわからないところではある。

「トレーナーアイリスの降参により勝者シック」

それにしても何故シャガさんは審判をしているのか、と考えていると思い当たることがある。この試合はエキシビションマッチ、つまり公開試合だ。非公式戦ではあるが野良試合とは違って観客や審判もいる試合だ。

 

 

 

「アイリス、何故降参した?」

それにつけても謎なのが降参したことだ。レッドさんとは違いアイリスは地方チャンピオン。シロナさんのように降参しない方が当たり前だ。彼女らのポケモンにはチャンピオンのポケモンという意地があり、降参してしまえばチャンピオンという肩書きが下落してポケモン達は信頼しなくなり戦わなくなってしまう。シロナさんが降参しなかったのは主にそれが理由だ。

「あたしがイッシュ地方チャンピオンという肩書きで戦っていたなら降参なんてしなかったわ。だけど今のあたしはただのトレーナー、アイリス。あたし個人の感情で戦う訳には行かないわよ」

確かにそうだな。地方チャンピオンはすべからく負けず嫌いでないとやっていけない。しかしその負けず嫌いな性格のせいでポケモンを犠牲にしてしまう。アイリスはそれを恐れたのか。

「それに……リーグ出禁がなくなればシックと戦える機会があるからその時にリベンジさせてもらうわ」

いや、違った。アイリスは敢えて俺との全面バトルをしなかった。そうすることで未練が残り、余計に戦いたくなる。つまりモチベーションの維持させる為だけにそうしたんだ。これは中々出来ることじゃない。ポケモンとの信頼を築き上げたアイリスだからこそ出来るが他のチャンピオン、いやほとんどの連中には出来ない。それが出来るのはレッドさんくらいのものだろうな。そういった意味では次に戦う時はアイリスが一番厄介だ。

 

「なら、俺はリーグ出禁が解けるまでの間、さらに修行して強くなる。その時まで待っていろ」

リックにポケマメをやり、収納して俺は修行場を求めその場を去った。




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第7話 助平爺なヌメルゴン、ゴルメ

前回、あんなこと言ったけど更新します。

それでも未定なのは変わりありません。出来る限り早く投稿するように頑張ります。


新たな修行場を求めカロス地方にやって来た。そして俺は一人の女性と対峙していた。

 

「シックくん、他の地方チャンピオンから噂を聞いているわ」

「どんな噂ですか、カルネさん」

その対峙している女性こそ、バトルシャトーと呼ばれるバトル施設の中でも最高の爵位グランダッチェスの持ち主であり、カロスチャンプ、カルネさん。そんな彼女が俺を知っているとなると、ワタルさんの弟子であることがバレたのか、あるいはリーグ出禁解放の呼び掛けの噂だろう。

「無冠の帝王。とある事情からポケモンリーグに出場出来ず、非公式戦──プロポケモントレーナーとしての戦績に含まれないポケモンバトルのこと。主に野良試合がある──あるいは推薦試合しか出来ないけれど、その実力はワールドクラス。そう貴方は評価されているわ」

無冠の帝王って、あれ本当だったのか。どこかのネタだと思っていたんだがな。

「誰がそんなことを?」

「各地方のチャンピオン達よ」

「あの人たちか……あれ?」

「どうしたの?」

「カントー地方のワタルさんも言っていたんですか?」

「ええ。もっとも彼は、貴方がリーグ出禁になったと聞いて憤怒していたわ」

「憤怒ですか……」

「もっとも貴方じゃなく、リーグに対してよ。今すぐにでもポケモンリーグに向けてはかいこうせんを命令させそうな勢いだったから止めておいたわよ」

「師匠の暴走を止めて頂きありがとうございます」

「師匠……ワタルさんの弟子だったのね。それなら納得ね」

そうカルネさんが頷くとボールを握り、笑みを浮かべた。これから行うポケモンバトルはシングルの3対3。道具はポケモンに持たせたものだけだ。

 

 

 

「さあ私達の協奏曲を弾きましょう」

カルネさんがボールから出してきたポケモン。それはヌメルゴンだった。偶然だな。こっちもヌメルゴンなんだよ。しかし♀か……頭痛くなってきた。俺のヌメルゴンは所持しているポケモンの中でもかなり癖があるポケモンで普段は別のところに預けている。しかしだ。こいつだけを無視して修行すると色々支障が出てくるため、イリアを外してそいつを入れた。

「ゴルメ、いってこい」

出てきたのは色違いのヌメルゴンのゴルメ。特性はぬるぬると超がつくほどレアなポケモンだ。性格がまともなら見せびらかしてやりたいと思えるくらいに容姿もいい。

『げへへ、ピチピチのヌメルゴンのネーチャンを紹介してくれるのか?』

そう、俺のヌメルゴンことゴルメの性格はスケベ爺。相手が♀ポケモンなら欲情して襲いかかったこともある。その♀ポケモンってのはイリアのことで、戦闘狂のイリアがパーティから外されることに同意したのはイリアがその事を恨んでいる為だ。

「ッ!?」

カルネさんのヌメルゴンが怯え、顔をひきつらせるが、そんなことはお構い無しにゴルメは迫っていく。

『うへへ。そこのネーチャン。ワシとイイコトしようや』

そしてヌメルゴンは逃げ、ゴルメはそれを追いかける。いわばポケモン同士の追いかけっこが勝手に始まってしまった。

「ヌメルゴン、れいとうビーム!」

「ンガーッ!!」

ヌメルゴンがカルネさんの命令に従い、怒り混じりにゴルメにれいとうビームを放つ。普通の竜だったら効果は抜群で耐えきれずに倒されてしまうんだろうな。

『うひょひょ! つめたいのう。そっちがれいとうビームならこっちはみずのはどうじゃ』

ゴルメが勝手に技を繰り出し、ヌメルゴンに攻撃する。みずのはどうがヌメルゴンの足場を水浸しにする。

「おいゴルメ、勝手に技を出すな。それにやるにしても外すな」

そう、ゴルメを俺の手元に置きたくない理由は相手が♀ポケモンだと合図が始まる前に襲ってしまうからだ。きあいのハチマキを持たせなかった頃のダンも、言うことを聞かずにだいばくはつばかりしていたが、こいつはそれ以上に言うことを聞かない。

 

しかし言うことを聞かない類いのポケモンはゴルメ以外にもいくらでもいる。言うことを聞かないポケモンはすべからく賢いと評価されている。例えばフーディンなんかは図鑑だと知能指数が5000あるとされている程賢いポケモンで、フーディンに比べ知能の低いトレーナーを信頼せず言うことを聞かないことが多々ある。

ゴルメもその類いで賢い。マンダーのような賢さはなく、ただずる賢い。例えるならマンダーが全うに働く会社員だとすると、ゴルメは詐欺的商法を行う詐欺師でやり口がえげつない。その為、俺とは折り合いが付きにくく、指示に従わないことが多い。

 

『まあそう言わずに。そこの足場が濡れておるじゃろ? それにこうするとどうなるかな?』

またもや勝手にれいとうビームをヌメルゴンの足場に放ち凍らせると、ヌメルゴンの足もついでに凍ってしまいその場から動けなくなってしまった。

『さて反撃といこうかの。ここからはお主の指示に従おう』

「よしゴルメ、ヌメルゴンにみずのはどう!」

ゴルメのみずのはどうがヌメルゴンに放たれ、ヌメルゴンがダメージを負う。しかし倒れるほどではない。普通であればここでれいとうビームを放つように指示するが、折り合いをつける為に敢えてみずのはどうを放つように指示した。みずのはどうでヌメルゴンの身体を濡らし、よりれいとうビームで凍らせられるようにするのが目的だ。

『ええのう、ずぶ濡れになった♀ポケモンの姿は』

 

「ヌメルゴン、だいもんじ!」

流石に気がついたか。ヌメルゴンの身体についていた水が蒸発し始め、氷も次第に溶けていく。

「ゴルメ、りゅうのはどう!」

だがそれを許すほど甘い俺ではない。ヌメルゴンに効果抜群かつ、一番ダメージが通るりゅうのはどうを放つように指示をした。

『ほれぃっ!』

りゅうのはどうの方が当たるのが僅かに早くヌメルゴンに直撃し、ダメージを負って倒れた。

『さて、このネーチャンはワシが回復させてあげよ──』

「カルネさん、次のポケモンを」

ヌメルゴンをしまうように促すとゴルメはこちらをジト目で見る。そんな目で見たところで無駄だ。あの後お前が最低なことをしようとしていたのはわかっているんだからな。

 

 

次に出してきたポケモンはアマルルガ。タイプは岩・氷のポケモンで弱点は多く特に格闘と鋼を苦手としているポケモンだ。しかしゴルメにはその技はない。ゴルメが出来るのはみずのはどうくらいのもので、有利か不利かと言われれば不利だ。通常であれば。

「みずのはどう!」

みずのはどうを命令し、アマルルガがそれを受ける。結構なダメージを負ったらしく足元がふらつくがすぐに反撃してきた。

「アマルルガ、はかいこうせん!」

アマルルガの特性はフリーズスキンかゆきふらしのどちらかだが戦闘になったときにあられが降らないことから前者だとわかる。このフリーズスキンという特性は技のタイプが(ノーマル)の場合、氷に変えてその技の威力を上げるというものだ。ちなみにメガボーマンダのスカイスキンは無を飛に変えて技の威力を上げる特性だ。

 

そのフリーズスキンで強化されたはかいこうせん。マンダーやブリタが食らったのならば倒れてもおかしくないが、ヌメルゴンは種族として特殊防御に優れており、そのくらいならば普通に耐えきってしまう。さらにゴルメに持たせると変化技が使えなくなる代わりに特殊防御が上昇する道具とつげきチョッキを持たせており、特殊攻撃ならばリック以上の耐久を持つ。

「ゴルメ、みずのはどう!」

そしてもう一発ゴルメのみずのはどうがアマルルガに炸裂し倒れた。

 

 

 

『♂ポケモンなんかに興味はないわい! とっとと♀ポケモン連れてこんかい!』

ゴルメは見た目とバトルはいいんだけど、中身がこんなんだからどうしても迷惑極まりない老人に見えてしまう。

「ふふ……ここまで一体のポケモンで追い詰められるのは初めてよ」

何故だろう。シロナさんと被って見えてしまうんだが。

「さあ、いくわよサーナイト!」

カルネさんが取り出したポケモンは代名詞ともいえるサーナイト。超・妖のポケモンで特殊攻撃や特殊防御に優れたポケモンとして有名だ。カルネさんがこのポケモンを出すということは本気だ。

「私達の絆、見せてあげましょう……メガシンカ!」

サーナイトがメガシンカしその本領を発揮する。メガシンカしたサーナイト──メガサーナイトの特性はフェアリースキン。先ほどのアマルルガのフリーズスキン、メガボーマンダのスカイスキンと同じくタイプが無の技を妖に変化させ、威力を上げる特性だ。

「サーナイト、はかいこうせん!」

やはり繰り出して来たか。どうしてチャンピオンは、はかいこうせんだのそういう威力もリスクも高い技を選択するかね。まあ今回に限ってそれは正解な訳だが。今までのダメージを考慮すると通常のヌメルゴンであれば倒れてもおかしくない。しかしゴルメは違う。今の時点では特殊防御に関してはリック並みだ。耐えられないはずがない。

「ゴルメ、ヘドロばくだんではかいこうせんの威力を削れ!」

『当たり前じゃ!』

それでも脅威には違いはなく、ヘドロばくだんではかいこうせんの威力を削る。その結果、相殺とは言わずとも、かなりの威力が削ることができた。それというのもヘドロばくだんは毒タイプであり、フェアリースキンではかいこうせんのタイプが妖になっていた為、相性が良く削ることが出来た。もし無のままだったらゴルメは勝てなかっただろう。

 

「ゴルメ、ヘドロばくだん!」

メガサーナイトが反動で動けない今、俺はゴルメにそう指示し、攻撃する。

『ほーれほれ! エロ同人のように汚れるがええ!』

ヘドロばくだんを出すゴルメの姿はどこか輝いていた。

「っ! サーナイト! サイコキネシス!」

「ゴルメ、りゅうのはどう!」

サイコキネシスがゴルメのりゅうのはどうによって押されメガサーナイトの方にりゅうのはどうの攻撃が来るがダメージは皆無。……厄介だな。サイコキネシスは超技でヘドロばくだんと相性がよく、ヘドロばくだんで相殺することは出来ない。しかしヘドロばくだん以外の攻撃では貧弱か効果はないかのどちらかだ。

「降参よ」

さてどうしたものか……何ぃっ!?

 

 

 

「今、聞き間違えでなければ降参と聞こえたんですが?」

「ええ。こっちのサーナイトは毒状態の上に、貴方のヌメルゴンに決定打を与えられない以上勝ち目はないわ」

そうかヘドロばくだんの効果で毒状態になっていたのか。それなら勝てる訳がないな。あの後泥試合になっていたのは目に見えていたしな。

「そうですか。しかしそれならば最初にミストフィールドにすればまだ勝ち目はあったのでは?」

ミストフィールド。竜の技を半減させるだけでなく異常状態を無効化するフィールドを作り上げる技のこと、またはそのフィールドのことだ。そのフィールドの状態なら毒状態にならなかったし、なによりもりゅうのはどうの威力が半減するため別の技で反撃してもサイコキネシスに打ち負け、ダメージはこちらが通っていた。

「はかいこうせんで倒せると焦ったのよ。しかもシック君のヌメルゴンはとつげきチョッキを持たせているのなら尚更ね」

カルネさんがかいふくのくすりでサーナイトを治療しそう答える。

とつげきチョッキは特殊防御を上げる代わりに変化技を使えなくする為、まもるが使えなくなる。その状況なら誰だってはかいこうせんを撃ちたくなるな。俺だってそうする。しかしゴルメがはかいこうせんをヘドロばくだんで相殺したことによって誤算が起きた。勝てる勝負が勝てなくなってしまったと言うわけか。

「なるほど……ありがとうございました」

「ところでシック君、これからどこに行くつもり? 今シンオウ地方に行けばチャンピオンの座を狙えるわ」

「カルネさん。俺はね、チャンピオンになりたくて行動している訳じゃない。ワタルさん達との約束を守る為にリーグ出禁の解除を呼び掛けているんだ」

「約束?」

「リーグ大会で全力を尽くした戦いをしようって約束ですよ。今度、ワタルさんに聞いたら同じことをいいますよ」

「待って。シック君、貴方はどこに行くの?」

「ここ最近までポケモンバトルばかりでしたからね。アローラ地方に行って少し羽を伸ばしておきますよ」

アローラ地方はバカンスとして有名で、羽を伸ばすには最高の環境だ。

「アローラ地方って、結構バトル施設多かった気がするけど……大丈夫かしら?」

そんなカルネさんの呟きは聞こえず、俺はアローラ地方へと向かった。




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第8話 守銭奴ジャラランガ、ジャック

亀更新で申し訳ありません……これからも遅くなります。


アローラと言えばアローラ地方の挨拶になり、アローラ地方と言えば熱帯のバカンスになる。俺はその熱帯のバカンスに来ていた。

 

「よし、これで三匹目だ」

そのバカンスで俺はナマコブシ投げのバイトしていた……仕方ないだろう。にじマメ切れそうになって大慌てでにじマメを購入したら吹っ掛けられたんだから。

『おーい、こっちも三匹投げ終わったぞ』

ジャラランガのジャック。カルネさんとの試合が終わった後、ポニ島で捕まえた俺のポケモンだ。とんでもない守銭奴で金のことに関してはかなりうるさく、自らを色違いに見せかけ普通の観光客からポケモンハンターまで、ありとあらゆる変装したジャック目当ての人間から金目のものを奪っていた。

しかしその実力は野生のポケモンながらにして戦闘狂のイリアを倒し、ブリタを追い詰めたほどだ。その実力を見込んでハイパーボールやタイマーボール等で粘ったけど一向に捕まえられず、諦めていた。ゴージャスボールを見せた瞬間に自らゴージャスボールの中に入っていき捕まえることが出来た。

「それなら取り分は半々だな」

俺のセリフから分かる通り、ジャックは俺を手伝う代わりに取り分を寄越せと要求してきた。一応働いたから金はやるが守銭奴過ぎて泣けてくる。

ただ、こいつの長所は強い上にゴルメの天敵だということだ。ゴルメは色違いの隠れ特性のヌメルゴンなだけあり希少価値が高く、ジャックはそれに目をつけてゴルメの名声を利用して金儲けに走った。具体的には色違いかつ隠れ特性のヌメルゴンのぬめぬめした汗を塗ると美容効果があると噂を流してゴルメに触る度に金を収集していた。最初のうちはミニスカートの若い女も集まってゴルメも満足げだったがそのうちオバサンばかり集まりうんざりしてしまい、ゴルメは精神的にダメージを負って休養中だ。いくら助平爺でもオバサンに付きまとわれたら嫌だよな。

『よし! さあいくぞ!』

そしてジャックがグイグイ押して、金を貰うように俺を促す。

 

 

 

「──ということでバイト代!」

そして2万円貰い、ジャックに1万渡す。

『おおサンキュー。それでこそ、我が主よ!』

ジャックが歓喜し、それを収納しようとすると声をかけられた。

「ちょっとお兄さん。ポケモンにくれるんだったら僕達にそのお金ちょーだいよ」

黒ずくめで怪しい格好をした男二人がそう話しかける。このまえマンダーの部下だったヒガナのボーマンダよりもチンピラと言っていい男達が現れ、俺たちを集る。

「去れ。お前らにやる金はこの世にもあの世にも存在しない」

「寄越せってんだ!」

そいつらはジャックの懐にあった金を奪い、笑みを浮かべる。

「おい──」

『貴様ら、安楽死と即死どっちがいい?』

俺がキレる前にジャックがキレ、二人のうち金を盗った方の頭を鷲掴みにしてつるし上げる。

「グァァァっ!?」

そしてアイアンクロー。ジャラランガの握力は知らないがジャラランガのタイプは竜・闘。闘は物理攻撃に優れたポケモンが多く、カイリキーに至っては最早化け物としか言いようがないくらいのパワーを持っている。

 

「さて、どうする? このままお前達の有り金を置いて去れば見逃してやる。しかし去らないと……」

ジャックに目を合わせると、頭を鷲掴みにされた方の男の悲鳴がさらに大きくなる。

「や、やめでぐれーっ!!」

「わ、わかった! だから離してくれ!」

二人が財布を俺の足元に向けて投げる。

「よし、ジャック離してやれ」

ジャックが手を離すと、二人がその場から逃げるように立ち去っていった。

「一応、サツんところに届けてやるか」

『いやまて。警察に届ける前に慰謝料として金を抜き取っておこうじゃないか』

「ジャック、それは横領だ。余計なことでパクられたくはない」

『パク……ああ、逮捕か。そう言えばリックの件でいちゃもんつけてきたトレーナーどうなったんだ?』

「あいつか。死んだ」

『死んだ? まさか殺したのか? 殺したんだな?』

「竜の里の出身にも関わらず、竜ポケモンであるサザンドラに逃げられたから、手持ちのポケモンに信頼されなくなって裏切られて壮絶な最期を迎えたらしい」

『……とはなんとか言いつつ暗躍したんだろ?』

「さあな。俺がしたことはほとんどない。ましてや奴に害を加えた覚えはない」

 

一応、したことと言えば奴のポケモンフードに精神安定剤を混ぜただけだが。

 

何故、精神安定剤を混入させたかというと、俺が混入した精神安定剤は上がり症のポケモンに使わせる薬で緊張を緩めてくれるが、その代わり薬が効きすぎると思考が停止してトレーナーを指示を聞かなかったり、こだわり系アイテムを装備したかのように一つの技に固執したりする。道具を持たせていないのに自分のポケモンがそんな状態になったら堪ったものじゃないだろう。しかし、あいつのポケモンは虐げられていてピリピリしていて見ていられない状態だったのでリラックスさせたんだからむしろ感謝してほしいくらいだ。

 

『ほとんどって……』

「まあ、サツのところに届けるのは俺の立場上、流石に面倒だからその財布の中身をどうするかと言うと手袋をしてまず抜き取る」

 

俺はサツを信用していない。イッシュ地方の事件の際に通報したアイリスは同郷の仲間を救おうとしたからまだ分かるにしても、あいつらは第三者の立場に立たなければならないのに一方的に俺を犯人と決めつけて逮捕したアホだ。その事で名誉毀損で訴えても仕事だからという理由で棄却された世の中はぶっ飛んでいる。杜撰な捜査でこっちは逮捕されているんだから、仕事という理由では説得力皆無だというのに。そんな訳で俺はサツは当然、公共団体組織も信用できない。利用するかされるかのビジネス関係くらいにしか思っていない。

そんな歪みきっていた俺はとにかく証拠を残さず如何にしてサツを出し抜くかに命をかけており、先日の一件だってサツを出し抜いている。

 

『ふむふむ』

「そしてジャックの鱗に絡ませる」

『なるほど』

「そんで持って近くのスナバァに財布を渡す」

「更にジャックの上に乗って」

『儂に乗ってどうする?』

「退散!」

スタコラサッサとジャックと共にライドポケモンのケンタロスようにその場を去った。

 

 

 

「ここまで来ればもう安心だろう」

あれから海を渡り、山を登り、 ポニの大峡谷を越えようとしていた。

『そうだな』

「ところでジャック、気がついているか?」

『……ああ。こいつらか』

ジャックはジャラランガの種ポケモン──進化していないポケモン、または進化しないポケモンのことを指す。主に前者で使われる──ジャラコを手に握り、俺に見せる。

いつの間にか取ってきたかは知らないが、それと、縄張りに入ったせいで俺達はぬしポケモンと思われるジャラランガとジャラコ達の群れに囲まれていた。

『懐かしいのう、若造』

ぬしポケモンのジャラランガが前に現れ、歩み寄るとジャックは笑みを浮かべる。

 

『久しぶりだな爺。まだ群れの長やっていたのか』

『ほざけろくでなしが。ワイ(お前)のことを後継者として認めようとしたら旅に出た挙げ句、人間のポケモンとして暮らしとるとはどぎゃんこっちゃ。おかげでおいどんがまだ現役でやらなあかんタイ』

『あれから爺を満足させるのはいないのかよ』

『素質のみだったらワイ並みの奴らは居るタイ。せやけどワイのようにまだ殻を破れん』

「からをやぶるって……ジャックは使えるのか?」

からをやぶるはポケモンの技で物理防御や特殊防御の能力が格段に落ちる代わりに物理攻撃、特殊攻撃、素早さの3つが格段に上がる技だ。からをやぶる戦法ではタスキを持たせたパルシェンが有名だが、確かジャラランガはからをやぶるを覚えなかったはずだぞ。

『いや、からをやぶるそのものは使えん。長の言う殻の破るは、スケイルノイズを覚えることだ。儂らジャラランガはスケイルノイズを覚えて初めて一人前と認められる。ジャラランガに伝わる奥義、ブレイジングソウルビートを扱える訳だからな』

そういう事情があったのか。

「なるほど……群長」

『群長っておいどんのことか?』

「そうだ。ブレイジングソウルビートを一度見せれば一皮剥けるんじゃないのか?」

『それは確かに言えるタイ』

「じゃあ呼び出してくれ。ジャックが見本を見せる」

『儂か……』

「お前以外に誰が出来るんだ?」

『金にならないことはやりたくない』

ジャックがそう宣言してくれたので俺は遠慮なく、イリア、マンダー、ブリタ、リックをジャックに敵対するように真正面に出した。ギラギラ、ダン、ゴルメを出さないのは手持ちのポケモンが6匹までしか持てず、ダンとゴルメは留守番している。ギラギラ? 察しろ。

「やれ。ジャック。やらなければこの場にいる全員がお前に襲撃する。お前達、ジャックを倒した奴はガラマメ10個褒美としてやる」

 

『死ねやジャックぅっ!』

真っ先に襲いかかったのはリック。いつもののんびりした顔つきではなく目が座っており、サザンドラのタイプである悪・竜のポケモンそのものになっていた。食いしん坊もほどほどにしておけよ……

『ガラマメ10個に興味はないけど、さっきの借りを返させてもらうわ!』

イリアがそれに続き、冷気を纏った手を握りジャックに迫る。

『ハイ、ホウエッピー──ホウエンの平和の略、とある芸人のネタ──!』

お笑い芸人の真似をしてブリタがドラゴンクローを放つ。

『皆さんお待ちなさい! ここは大人しく様子を見てから攻めなさい!』

マンダーはまもるを使い、様子をみていた。

 

「さあ、ジャックいくぞ」

『ここまでお膳立てされちゃ仕方ないな』

Zリングをかざし、ドラゴンZと同じポーズを取る。昔島巡りしておいて大正解だったな。島キングにはならなかったが。

四匹──実質三匹による総攻撃をジャックの出したブレイジングソウルビートにより打ち消した。

「あんなのありか?」

その攻撃をくらったイリアとリックが倒れ、ブリタもタスキを使ってギリギリ耐えたが満身創痍、唯一体力に余裕があるのがマンダーだけという有り様で、如何にブレイジングソウルビートが強いかわかってしまう。そんな技だった。

『痛かった……今のは痛かったぞー!』

マンダーが珍しくキレ、荒ぶる。口からはかいこうせんを放とうとするが、それは悪手だった。

『遅いっ!』

『しまっ──』

『切腹ぅぅっ!』

ジャックがスケイルノイズで攻撃し、マンダーとブリタが倒れた。

『ブレイジングソウルビートは相手一匹以上に当たれば使ったポケモンの全ての能力が上がるZ技だ。相手がみがわりを使っても音技だから技は通る。うまく使えばこの通り相手が複数でもまとめて倒せる』

講座が終わり、歓声が上がる。

 

 

 

そしてジャラランガ達がこんな声をあげた。

『俺、この人に着いていきたい!』

『俺も!』

俺に着いていきたいって思えるのか?

『たわけたことを抜かすな!』

群長が怒りの声を露にして他のジャラランガ達を一喝するも、若いジャラランガは不満げに唸る。

『だってさっきの技Z技だからトレーナーがいないと出来ないんでしょ?』

『まあな……』

『俺もブレイジングソウルビートを使いたい。だから連れてってくれ!』

『俺も!』

 

そう言うことか。確かにブレイジングソウルビートはZ技であり、ジャラランガZとそれの発動する道具であるZリングを持っているトレーナーと一体になって初めて出来る技だ。ドラゴンZを持っているトレーナーは多くともジャラランガZを持っているポケモントレーナーは極稀で、あのワタルさんですら持っていない。俺がジャラランガZを持っているのは道中にカプ・レヒレに貰ったからに過ぎない。

 

『馬鹿者! スケイルノイズを覚えておらんワイ(貴様)等が仰山居っても迷惑なだけタイ。それだったらスケイルノイズを覚えているこいつ(ジャック)の一匹の方が良かタイ』

「そういうことだ。俺はジャラランガはジャック一匹だけで十分だ」

『でも……』

『このトレーナーはいずれ世界の王者になる。その時儂がブレイジングソウルビートを放ってジャラランガとブレイジングソウルビートの名を上げてみせる。そうなればお前達にも良いトレーナーがつくようになる』

『……わかった。だから、絶対に俺達ジャラランガの栄光を築き上げてくれ』

『おうよ』

そしてポニの大峡谷を乗り越え日輪の祭壇に着いた。そこで俺達は写真を取り、帰ることにした。

 

 

 

「なあジャック」

『ん?』

「名を上げるとは言ったけどお前は金目的だよな」

『まあな。金こそが全てな儂にとって、ゴージャスボールを持ってかつあれだけ強いポケモンを持つトレーナーはシックが初めてで、金の匂いがしたからゲットされたんだよ』

「金の匂いねぇ……」

そんな匂いあるのだろうか。ふとそんな風に思っていると何やら騒がしい。もしや、あのババア達か? だとしたら嫌な予感がするな……俺が出来ることはその場を去るしかない。幸いここは観光地で二度と来なければ良いだけの話だ。逃げ切れる!




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過去編
第9話 戦闘狂イリアとの出会い


亀更新で申し訳ありません。しかも短めです。……じ、次回は長くするから!


観光地アローラ地方から帰る道中、俺は眠りにつき、夢を見ていた。それはイリアとの出会いだった。

 

 

 

フスベシティの洞窟内で釣竿を持って俺は釣りをしていた。

「中々こないな……」

5時間釣りをしてここまで釣れたポケモンは皆無。どうやら俺の釣竿の腕前はコイキングすらも嫌われるくらい下手くそなようだ。

「……あの技を使うか」

俺は釣竿の浮を外し、糸と針のみの状態にして水中に沈める。そして水中から漂うポケモンの気配を感じ取り糸をポケモンに絡ませたら……一気に引き上げる!

 

これは故郷の爺さん婆さんが使っていた技で、どうしても釣れない場合のみに使っていた。その理由はこれは釣りではなく狩りでポケモンを捕まえるところでいうところの、ボールを使わないで捕獲するようなものらしく、釣り人から外道扱いされること間違いない技なんだが、俺に残された道はない。

釣り上げた、というよりか糸と針が絡まったポケモンは水色と白の色をした蛇のようなポケモン、ミニリュウだった。

「キュー! キュー!」

恐らく『離せ、ちくしょう!』とかそんな声だろう。しかし俺はそれを無視。絡まったミニリュウにボールを投げ、ボールの中に入れる。必死でボールから逃げようとするが俺がモンスターボールを手で握っていることもあって開くことはできない。確かに普通にミニリュウを抑えつけても暴れて逃げてしまうがモンスターボールの外から抑えつけるとモンスターボールに入っているポケモンは出ることは出来ない。つまり必ずゲットすることができてしまう。ただし、それで言うことを聞かせられるかは話は別で、力で抑えつけている訳だからむしろ聞かせられることの方が少ない。

故にゲットしている最中にボールに触れてはならないという規則がある。しかし俺はそれをガン無視。ミニリュウを外道過ぎる方法でゲットした。

 

「ミニリュウ、出てこい」

「ギュゥゥゥ!!」

出て来たミニリュウは殺意に満ち溢れ、俺と真正面に対峙する。ちなみに俺のポケモンはおらずこのミニリュウが最初に捕まえたポケモンだ。

この事態は非常にマズイ。ポケモンは人間よりも強く、ポケモンの中でも弱いとされているキャタピーですら人をぶっ飛ばすくらいの力を持っている。それ以上の力を持つミニリュウは人間を殺せるだけの力を持っており、今目の前にいる殺意溢れるミニリュウなんかは大変危険な状態だ。

 

「ミニリュウ、お前が負けたら俺に従え」

「ギュ!」

俺はそれを『構わん、だが私が勝ったら逃がせ』と解釈し拳を握る。もう一度言うが人間がポケモンと戦うことは大変危険なことであり、俺のようにミニリュウと戦うことは愚の骨頂。しかし世の中には例外もあり、俺もその類いだ。俺に釣り(物理)を教えた爺さん婆さんを含め故郷の住民はポケモン、それも最終進化のポケモンと殴り愛──誤字にあらず──をする種族だ。そんな故郷で育ったせいで並み大抵のポケモン、少なくともミニリュウ程度に遅れを取ることはない。この目の前にいるミニリュウがカイリューに一気に進化したら別の方法で勝負するだろうがそんな奇跡、いや悪夢が起こる可能性は無しに等しくその心配はない。

 

「リュヴゥゥゥッ!」

怒りに任せ、俺に突撃するミニリュウ。ミニリュウ同士ならそれでよかったかもしれないが俺は違う。そんな単調な攻撃で俺に攻撃を当てられる訳がない。

しかしクロスカウンターをしようにもミニリュウには手はない。普通にカウンターで良いと思うがそれではダメージが小さく、フィニッシュにはなり得ない。

どうしたものかと考えていると、閃いた。不意を突いた時のダメージは想像を絶する。それを思い出して俺の体は動いた。

 

「ギュッ!?」

ミニリュウの視界から突如現れるパンチ、ドラゴンフィッシュブローを放つとミニリュウが左方向へぶっ飛んだ。

「ギ……!」

最後の抵抗と言わんばかりに睨み付けるがその場で気絶してしまう。そのミニリュウをボールの中に入れポケモンセンターに預けた。

 

 

 

「ミニリュウ、お前にニックネームをつける」

『……』

大人しくしていたミニリュウがそれに無言で頷く。どうやらあんな方法で手懐けられたらしい。

「お前のニックネームはイリアだ。良い名前だろう?」

『中々良い名前じゃない』

「そうかそうか。お前も絶賛してくれて何よりだ。イリア、そう言うことだからこれからよろしくな」

『もちろんよ! だけどあんたの首隙あらば狙うから』

イリアが威嚇しながらモンスターボールの中に入る。俺とポケモンは仲間でありライバルだから威嚇されるくらいの関係でいいんだ。これからよろしく頼むぞイリア。




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第10話 ギラギラ捕獲

なんだろう……この二週間に一回の更新スピードは。だからといって再来週、投稿する予定はなく出来るだけ早く投稿する予定です。

ちなみにイリアの名前の由来はカ『イリ』ュー+アでイリアです。某ポケモン二次創作小説とは一切関係ありませんのでご了承下さい。


深夜。俺は六体のポケモンを持ち、不法侵入してシロガネ山へやって来た。

 

『ご主人、いよいよだね。あの怪獣にリベンジするの』

カイリューのイリアが真剣な表情で俺に声をかける。その当時、カイリューではなくハクリューだった彼女と俺は共にその化け物とポケモンバトルをした。しかし全くと言っていいほど手も足も出なかった。その怪獣は3m超のシロガネ山のぬしであるバンギラスだった。

 

「そうだな……」

『しかしシックさんのフィジカルから考えてシックさんの攻撃を受けて無事ですむバンギラスなんてお伽噺話にしか聞こえませんが、本当にいるのですか?』

 

そのバンギラスのことを直接知っているのは俺とイリアだけで、他の奴らは知らない。それ故恐怖が俺を襲う。

 

「そう思うのは無理もねえ。だが事実だ」

 

あの時の恐怖は忘れねえ。何せミニリュウの状態で連戦連勝しまくっていたイリアが、ハクリューに進化して更にパワーアップしたのに負けた相手だ。その際のショックもデカイ。ただ負けたなら相手がバンギラスということもあり一撃で負けても仕方ない。しかしあのバンギラスは軽めのれいとうパンチでイリアをひんしにしただけでなく、イリアの身体にくっついた氷が一週間溶けずに生死をさ迷う程だった。

 

しかも俺にも襲いかかった為、ハートブレイクショットを打ったところ、逆に俺が骨折してしまう始末だ。しかしその判断は正しくハートブレイクショットによってバンギラスが一瞬だけ怯み、逃げ延びる事が出来た。だがその代償は大きく、しばらくの間左手で生活する嵌めになり襲われた時の事が夢に未だに出てきて俺とイリアは悪夢に魘されることになった。

 

 

 

「奴のエピソードはいくらでもある。とあるポケモンマフィア団体がそいつを捕まえようとして、万全の準備で挑んだが重傷者を数多く出し失敗。一部では壊滅の原因になったとか、な」

『シロガネ山に彷徨くポケモンマフィアなんてR(ロケット)団くらいでしょう』

 

そりゃそうだ。だがこの噂は嘘とも言い切れなくはない。R団はレッドさんが一人で潰したという話が出回っているがあの人がいくら実力があろうともR団を解散させることは出来ても壊滅させることは出来ない。

何故なら前者はR団の頭領を説得すればいいが後者は正真正銘、組織としてのR団を破壊しなければならないがそれをするにはトレーナーに対する暴力が必須であり、ごく普通のポケモントレーナーであるレッドさんでは出来ない。俺を含めたグレーゾーンギリギリの闇ポケモントレーナーや、平気でトレーナーに攻撃を指示するワタルさんのようなポケモントレーナーしか出来ない訳だ。

要は綺麗事だけじゃ組織を解散させることは出来ても壊滅することは出来ないということだ。

 

『まだか……! まだだいばくはつは出来ないのか……!』

 

だいばくはつ大好きメタグロス、ダンがイラつき始めだいばくはつをしようとするが無理やりモンスターボールの中に入れて止める。特性しめりけのポケモンを捕まえられたらどれだけ良かったことか。

 

「そう急くなダン。お前は後だ」

 

ダンにやってもらうことはグロウパンチとだいばくはつで体力を削ってもらうことだ。本当ならグロウパンチを使って強化していきたいがダンの性格上二回までしか出来ない。イリアも格闘技であるばかぢからを覚えさせたがそれでも尚不安になってしまう為にダンのだいばくはつを必要とした。まだそれでも不安ありまくりなのでマンダーにハイドロポンプ、ブリタにじしん、リックとゴルメにきあいだまを搭載し、イリアのでんじはで麻痺して動けなくなったところを狙って総攻撃を仕掛け、後は逃げ回る。それがマンダーと俺が脳ミソをフル回転させ何度も議論して出てきた作戦だ。

 

 

 

「いたぞ……イリア、でんじはだ」

 

イリアはこっそりと近づき、後ろからでんじはを仕掛ける。しかし、バンギラスが後ろを振り向き、れいとうパンチを放ってきた為にイリアはでんじはを中断しそれを避けた。

 

「くそっ……マンダー、バンギラスの顔に向けてハイドロポンプ!」

『わかっています!』

 

メガシンカしたマンダーがバンギラスに向けてハイドロポンプを放つが、バンギラスの口からはかいこうせんのようなエネルギーがマンダーのハイドロポンプを裂いてマンダーの肌をカスるが、カスった場所はマンダーの肌が剥がれていた。

 

『竜に効き難いかえんほうしゃがカスっただけでこの傷とは……シックさん、貴方の言うとおりですね。過剰戦力どころか戦力不足に思えますよ』

「だから言っただろう。イリアがああして避けたのは間違いじゃない……というわけでゴルメ、てめえはこいつを持ってイリアを助けてこい」

 

俺はとつげきチョッキを取り上げ代わりにじゃくてんほけん──弱点を突かれると持っているポケモンの物理攻撃および特殊攻撃の能力をかなり引き上げる。一度使用するとなくなる──をゴルメに渡す。

 

『ワシではなくリックにした方が良いのではないのか?』

「リックだと無駄にダメージを受けすぎる。それにゴルメ、お前の特性はぬめぬめだ。れいとうパンチをくらってダウンしたとしてもバンギラスの素早さを落とす事が出来る」

『い、嫌じゃ~! あんな死地にいきとうない~っ!』

「良いから行ってこい」

 

ゴルメを蹴飛ばし──腕を掴んで投げ飛ばさないのは身体がぬめぬめしていて掴むことが出来ない──バンギラスにぶつかりぬめぬめした身体になり、動きが鈍る。……ポケモン愛護団体が知ったら訴えられそうだな。今更だけど。

 

『お、お助け~っ! ワシは物理技は放つ方も受ける方も苦手なんじゃ~!』

♀ポケモンを見かけたようにゴルメが素早く動き回り、それをバンギラスがれいとうパンチで追撃する。

「よし今だイリア。でんじは!」

『これでも喰らって大人しくしろーっ!』

バンギラスにでんじはが炸裂し、更に動きが鈍くなる。慌てるな……ここからが勝負だ。

「ブリタはじしんで、イリアはれいとうパンチで時間を稼げ! ゴルメとリックは道具交換だ」

そしてこだわりハチマキ──持たせたポケモンの物理攻撃を上昇させる代わりに技を一つしか使えなくなる道具──を持たせたブリタがバンギラスを攻撃し時間を稼がせて貰う。

 

 

 

その間に俺はゴルメからじゃくてんほけんを預ってとつげきチョッキを渡し、リックにゴルメから預かったじゃくてんほけんを渡した

 

「ダン、リックにグロウパンチだ」

『ちっ、だいばくはつじゃねえのかよ』

渋々放ったグロウパンチがリックに炸裂するが、リックは何事もないようにしていた。

『うぉぉぉぉーっ! サー! 力がみなぎって来ました!』

むしろ歓喜すらしていた。そしてその能力が上がった状態にこだわりメガネを持たせた。

『サー、きあいだまで仕留めてみせます!』

「それは何よりだ。……よしお前達、これから総攻撃を仕掛ける! 俺の合図でかかれ!」

俺がそう告げるとダンがバンギラスにグロウパンチを放ち続ける。同じくリックとゴルメはきあいだまを放ち続け、マンダーはハイドロポンプを放つ。

 

 

 

そしてその時は来た。バンギラスの身体が硬直し、俺は合図を送る。

「今だ! 全員かかれ!」

『必ず殺すと書いて必殺と読むっ!』

『くたばれデカブツ野郎!!』

『ワシのエロを邪魔した怒りただでは済まさぬぞ!』

ブリタのじしんによってバンギラスが体勢を崩し、リックとゴルメが重ね合わせたきあいだまを叩き込む。

『だいばくはつ最高ぉぉぉぉっ!』

グロウパンチによって物理攻撃の能力が爆上げになったダンがバンギラスにくっついてだいばくはつし、一面を爆風で覆う。

『これが私とご主人との全力技だぁぁっ!』

そして最後にイリアに持たせたカクトウZにより、ばかぢからが、ぜんりょくむそうげきれつけんへと変化しバンギラスの膝をつかせた。

 

 

 

しかしあのバンギラスはあくまでボクシングでいうところのダウンであり、一時的に倒れた状態でしかない。無表情なのが何よりの証拠。……あれだけやってもまだ瀕死とは程遠いのか、そう思えてしまうくらいには心が折れかけていた。

 

だがここで心が折れたら二度と勝てなくなる。それだけは絶対に避けなければならない。俺はダークボール──洞窟や夜など暗闇の中だと捕獲率が高くなるボール──を取り出しそれを立ち上がろうとするバンギラスに放つ。本当ならマスターボールが良かったんだが、マスターボールはあまりの捕獲率の良さ──捕獲率100%故に非売品でくじ引きの一等などでしか手に入れられない。他に入手する手段はそれこそ製造会社のシルフカンパニーから盗むか、コネを使って手に入れるしかない。前者は俺のポリシーに反するので却下。後者はコネがないので不可能。諦めてダークボールにした。

 

「いけっ! お願いだから捕まってくれ!」

 

これしか手段はない。ダンが倒れ、マンダーのハイドロポンプやリックとゴルメのきあいだまのPP切れ、イリアのばかぢからしか使えずそれも多数回使える訳ではない以上、戦力はがた落ちしているのは明らか。ただ祈るしかない。

イリアのようにダークボールを握って強引に捕まえるのは無しだ。あれはイリアがまだ常識範囲内だから出来たのであってこのバンギラスは常識範囲外だ。俺の手が弾け飛ぶのがオチだ。

 

「くそっ……後でにじマメでも何でもやるから捕まってくれ!」

そして永久を彷彿させるくらいに長らく続いていたボールの揺れが遂に止まった……

「……なあ、マンダー? これは捕まえた、のか?」

信じられない。これが俺の心境であり、一番の頭脳派であるマンダーに尋ねる。

『……え、ええ。間違いなくそのバンギラスは貴方のポケモンとなりました』

マンダーも同じか。気持ちはわかる。

『ようやく、勝ったのか?』

『いや勝った、勝ったぞ!』

『ワシらの勝ちじゃぁぁぁ!』

ゴルメが勝鬨を上げ、ポケモン達が大歓声をあげる。無理もない。俺も嬉しさのあまりガッツポーズをしてしまったくらいだ。……万歳っ!

 

 

 

そしてしばらくしそのバンギラスをギラギラと名付け、誰をパソコンに送るかということになった。

『ここはダンさん以外にいないでしょう。ダンさんは休養して貰わなければなりませんからね』

マンダーの意見にダン以外が満場一致でダンが送られることになった。

「それじゃギラギラ、出てこい」

『……』

「ギラギラ、これからよろしくな」

『マスター登録完了……これより貴方をマスターとする』

ギラギラが俺の手にあったにじマメを口に頬張り、返事をする。こうしてギラギラは俺のポケモンとなった。




ちょっと補足というかネタバレ。
ちなみにギラギラと主人公はイリアに続いて二番目に出会っていますが、捕まえることは出来ませんでした。その時の屈辱を晴らす為にメンバーを集めて、捕まえたのが今回のお話です。その時のメンバーはカイリュー(イリア)、メタグロス(ダン)、ボーマンダ(マンダー)、ガブリアス(ブリタ)、サザンドラ(リック)、ヌメルゴン(ゴルメ)となっています。

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第11話 爆弾厨捕獲作戦

今回はすんなり書けました。次回はネタバレしているので少し遅くなるかもしれません。

ちなみに時系列は小説内で言及されている部分について解説すると

イリア捕獲→ハクリューに進化&ギラギラと遭遇→主人公リーグ出禁&リックゲット→アローラ地方にて島巡り(今ココ!)→(以下ネタバレにより伏せます)→ギラギラ捕獲→第1話~第7話→ジャック捕獲

とこのようになります。


島巡り。アローラ地方にある文化の一つだ。

島巡りをし、試練をこなすとキャプテンや島キング・クイーンに認められ、その課題にあったタイプのZクリスタルが貰えZ技が使えるようになる。特に大試練をこなし島キング・クイーンに認められるとクリスタルだけじゃなく証が貰え、他人のポケモンでも言うことを聞き易くなり、4つの島の島キング・クイーンに認められれば全てのポケモンが言うことを聞くようになる。しかしジムとは違いポケモンリーグとは無縁でローカル文化の一つである為、ポケモンリーグから出禁されても島巡りに参加でき、ポケモンバトルを楽しめるからだ。出禁を今更になって解こうなんて思えないし、こっちから願い下げだ。冤罪だとわかっているのにリーグを出禁にするような組織は(差別的表現の為、削除されました)としか言いようがない。

 

 

 

「それで、俺に何の用事ですか? 島キングさん」

俺を料亭に呼び出したのはウラウラ島の島キングでありサツでもあるクチナシさん。この人は常にダルそうに目を半目にして猫背と冴えない中年警官だが、その実力は本物でポケモンバトルの方も四天王クラス。

「いやな、ちっと頼まれごとをしてくれねえか?」

「どんなことですか?」

「ホクラニ岳でダンバルが出没するのは知っているよな?」

「ええ」

「あそこでだいばくはつをしょっちゅう起こす厄介なダンバルがいるんだ」

「だいばくはつをしょっちゅう? 野生のダンバルが?」

そいつは妙だな。ダンバルはだいばくはつを自然に覚えない。覚えるにしても人の手が必要で、必ずと言っていいほどそのダンバルは捨てられたポケモンと考えていいだろう。

「ああ。現場近くにいたマーレインやその様子をビデオ越しに見た技専門家のククイ博士にも聞いてみたが違いねえ。奴が使ったのはだいばくはつだそうだ」

「あの二人がそう言うんですか……」

マーレインさんは鋼タイプの専門家、ククイさんはクチナシさんが説明した通りポケモンの技を研究している博士。この二人が揃えば鋼タイプのポケモンの技に関して右に出る者はいない。

「とにかく、そのダンバルがだいばくはつをトレーナーのポケモン目掛けてだいばくはつを起こすからなんとかしてもらいてえ訳だ」

「その依頼は引き受けますが、少し時間かかりますよ? そのダンバル対策に一度アーカラ島に行かなきゃいけませんし」

「わかった。早急に頼んだぜ」

クチナシさんがそう言って去るが、あれって半強制的だよな。もし引き受けなかったら「大試練受けさせない」なんて言われそうだから引き受けざるを得ない。サツの言うことはそれだけ信じられないが故の考えだが、冤罪を受けたばかりの俺がそう言う風に考えてしまうのは仕方ないかもしれない。

 

 

 

アーカラ島コニコシティ。島クイーンのライチさんやキャプテン二人が住んでいる街だ。そのうち用があるのはキャプテンの一人、スイレンだった。

 

「──と言うわけなんだよ。スイレン」

これまでの出来事を簡潔に話し、スイレンに語る。ちなみにスイレンは俺よりも年上で敬語を使って敬うべき立場だが、本人がいやがりタメ口でいいとのことでそうしている。

 

「それはまたハプニングに巻き込まれたんですね」

「そこで頼みたいんだが、捕獲用のゴルダックを貸してくれないか?」

「どうしてゴルダック──ああ、そう言うことですか。いいですよ」

「ありがとう」

スイレンが察してくれて、ネットボールを取り出す。何故、ゴルダックなのかというと、ゴルダックがさいみんじゅつを覚えるのもあるが、ゴルダックの特性の一つにしめりけと言う特性があるからで、この特性を持つポケモンがフィールド上にいるとだいばくはつ等の自らを犠牲にしてダメージを与える技を無効化してくれるというまさしく今回の為にあるような特性だ。

「ちなみにそのゴルダック、特性ノーてんきですよ」

「なっ……!」

ノーてんきはフィールド上に出ているポケモン全員がお互いに天候の状態を受けないというものだ。少なくとも今回の目的にはあっていない。

「ウソです」

またこの人の悪い癖が出た。スイレンはウソをついてからかうのが癖で嘘をしょっちゅうつく。しかし必ず嘘の時は嘘をついた直後に「ウソです」とあっさりと白状する為、信頼はされている。

「……その嘘をつく癖、止めた方が良い。嘘をつくとスイレンの魅力が半分減るぜ」

「楽しいんですけどね……シックさんが私の釣りに付き合ってくれるなら止めましょう」

「まあそのくらいで止めてくれるなら付き合おう」

クチナシさんにはちと悪いがスイレンと釣り勝負でレンタルするかどうかを賭けて勝負したと嘘をついておこう。人に嘘をつくなといっておいてこの有り様だが、俺の場合からかうのが好きなんじゃなく、方便だ。

「じゃあ行きましょう」

スイレンが背を向けて鼻歌を歌いながら釣りスポットに向かう。しかしこの時俺は忘れていた。俺の釣りのセンスは壊滅的で物理的に釣り上げるしか方法がないことを。そんなことをすればスイレンにドン引きされるのは明らかで、普通に釣り上げるしかないのだがそれも不可能。

結局その日、俺は何も釣り上げることは出来なかった。

 

 

 

そして翌日、再びウラウラ島に戻り、ホクラニ岳に来ていた。

『サー、この付近でだいばくはつを起こした形跡があります』

警察犬ならぬ警察サザンドラ──あくまで比喩表現──となったリックを連れ、そいつを探しているとリックが俺の方を向いて止まる。イリアが居れば探させたが、リーグ出禁されイリアも没収されたんだよ。イリアも俺も抵抗したが聞き遂げられず、別れることになった。あいつとは別のトレーナーに預けられたからまだマシだが、イリアを手懐けるには骨が折れるだろうな。

 

「ということは近いのか?」

『はい。そろそろかと』

 

リックがそういうならそうなんだろう。だいばくはつの特徴は自らのエネルギー全てを使って爆発させるが火薬を用いない為、大地が煤だらけになっているにも関わらず、臭いがない。俺よりも鼻が効くリックなら僅かな火薬の臭いでも嗅ぎ付ける。しかし今回はその火薬の臭いがなかったということはだいばくはつを起こしたに違いないということだ。

 

「……あそこだ」

俺が指差した方向には鼻歌らしきものを歌っているダンバル。……どうやら人がいないところだとだいばくはつしないのか?

『!』

「やべぇ、見つかった!」

『だいばくはつぅぅ!』

今にもリックに向かってだいばくはつをしそうな勢いでダンバルが突撃する。確かにクチナシさんの言うとおりだ。

「いけゴルダック!」

『え、あ、え?』

スイレンのゴルダックを出すとダンバルがだいばくはつをスカし、狼狽える。それを見ていたリックが大爆笑。ある意味だいばくはつが成功した瞬間だった。

『てめぇぇぇっ、それでも血流れているのかよぉぉぉぉっ!? だいばくはつさせろぉぉぉぉっ!!』

ダンバルがだいばくはつが出来ないことに大暴れ。砂鉄がくっつき──ダンバルが怒ると磁力が増す──ゴルダックとリックにわるあがきをした。……もしかして他に技を覚えてないのか?

「ゴルダック、さいみんじゅつ」

レンタルとはいえゴルダックのレベルは然程高くなく、俺の言うことを素直に聞いてくれる。さいみんじゅつがあっさりと成功し、モンスターボールを投げてダンバルを捕獲する。

 

 

 

「おう、シックご苦労さん」

「クチナシさん」

「しかしまあゴルダックのしめりけでだいばくはつを封じて捕獲するなんて考えたじゃないか。こいつは報酬だ」

クチナシさんが渡してきたのはポケモンに持たせる道具の一つ、きあいのハチマキ。後にこれがダンバルのだいばくはつを制御するものになるとは予測していなかった。

「じゃあな。大試練の時にまた会おうや」

クチナシさんがそういってその場を去ると上空から雄叫びが聞こえる。

 

『ご主人んんんっ!』

それはイリアの声だった。上空の見るとそこにはカイリューとなったイリアがいた。

「イリア……お前、カイリューに進化したんだな!」

『お待たせ! せっかくだから進化してきたよ!』

「しかしどうしたんだ? お前を引き取ったトレーナーは?」

『6Vの理想性格のミニリュウが生まれたから用済みだって言ったかられいとうパンチで半殺しにしたよ』

「イリア……新しい仲間を紹介する」

呆れの声を出しながら、捕まえたばかりのダンバルを紹介することにした。

『そこにいるゴルダックじゃなくて?』

イリアがリックを見ず、ゴルダックだけを見たのはリックと面識があり仲間になるとイリアも予測していたからだ。

「ゴルダックはレンタルしているポケモンだ。起きろダン!」

俺はボールから出してダンバルを起こし、そのダンバルにダンという名前を付けた。

 

『チクショォォォッ、だいばくはつさせろよぉぉぉぉっ!』

しかしそれでも尚、ダンは暴れだいばくはつをしようともがく。

『……なにこいつ?』

「だいばくはつ大好きダンバルのダンだ。今はこの通り暴れることしか出来ない」

……しかし何故こいつはだいばくはつをしたがるんだ? それを少し聞いてみると驚くべきことがわかった。

 

ダンは生まれこそホクラニ岳だがゴローニャの生息地であるホテリ山でゴローニャに育てられていた。

そんなある日のこと、ダンがポケモンハンターに見つかり追いかけられたところを、ゴローニャがだいばくはつをしポケモンハンターを屠り、命からがら助けた。それを見たダンはだいばくはつの威力に魅了され他の技を犠牲にし、自力でだいばくはつを習得した。以降、ダンはだいばくはつをしてポケモンハンター達を屠ってきたらしい。

 

理由が凄すぎて呆れのため息しか出て来ない。リックの過去が普通に見えてくる。そのくらいダンの過去は暗かった。そんなダンを捕まえてしまった俺はエーテル財団に預けるのは止めにした。本来ならエーテル財団に預けておくのがいいがだいばくはつをする癖を直そうともしないダンを預けたところで無駄だと悟ったからだ。




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第12話 対決ボーマンダ(ブレイン)

時系列まとめ

イリア捕獲
→ハクリューに進化&ギラギラと遭遇
→主人公リーグ出禁&イリアと別れる&リックゲット
→アローラ地方にて島巡り&ダン捕獲&イリアと再会する
→ホウエン地方にて観光(今ココ)
→(以下ネタバレにより伏せます)
→ギラギラ捕獲
→第1話~第7話
→ジャック捕獲


島巡りが終わり俺はホウエン地方、流星の滝にてとあるポケモンを探していた。

そのポケモンはタツベイ。後にボーマンダへと進化する種ポケモンだ。俺はカイリューとボーマンダを持つことが憧れでずっと探し求めていたし、何よりもシロガネ山の主にリベンジしたい。カイリューはイリアがすでにいる。アローラ地方でもタツベイが生息しているが、ある事情から探すことはなかったがホウエン地方は完全に観光で来ている為、時間はたっぷりある。ボーマンダがいるならボーマンダでも構わん!

 

『サー、タツベイを発見しました』

メタボを改善する為にリックを外に出して運動させていると、リックがタツベイを見つけ左手に相当する頭で指す。

「よくやったリック。後で褒美をやる」

『サー、イエッサー!』

そうと決まれば先制クイックボール! あのバンギラスを倒す為に特訓した、音すらも置き去りにするボール投球が炸裂する!

 

そう思われた瞬間、豪炎がクイックボールを蒸発させた……冗談だろ? あれを防ぐには先読みしてなきゃ無理だ。

『貴重な♀のタツベイを捕まえようとするなんて良い度胸しているではありませんか、人間』

「誰だ!」

『貴方の後ろですよ』

後ろを振り向くとそこには30を超えるタツベイの群れと四天王の如く仁王立ちするコモルー、そしてコモルーに囲まれたボーマンダがそこにいた。

 

 

 

「いつの間に……!」

『ホッホッホ、初めまして。私この群れの長をしているボーマンダです。名前はありませんので適当にマンダーとでもお呼び下さい』

本当にテキトーだな。安直過ぎるだろ。

「マンダー、俺はシックだ。俺はボーマンダが欲しい。しかしボーマンダは進化前のタツベイに比べ数が少なく、あのタツベイを捕まえ、育ててボーマンダにしようとしていた」

『おや、私の言葉が通じましたか。シックさん先ほど妨害した訳をお答えしましょう。先ほどのタツベイを捕まえるとこの群れに支障が出てしまいます』

 

「支障?」

『見てわかる通りこの群れのタツベイは32頭、コモルー4頭、そしてボーマンダは私1頭のみ。そのうち♂は私を含め32頭もいて♀はコモルー1頭にタツベイ4頭と♀の数があまりにも少なくなっているだけでなく、♂の生まれる割合が増加傾向にあります。先ほども仰いましたがシックさんが捕まえようとしたタツベイは♀で、彼女がいなくなると繁殖が困難を更に窮めてしまいます』

 

「要するに、群れの♀個体を捕まえるとお前達は滅亡するってことか」

『その通りですね。いずれこのままだと♂達が♀達を争うことになります。ですからそれを防ぐ為にも♀のタツベイを捕まえないで欲しいということです』

「なるほど。♂個体ならなんでも良いのか?」

『構いませんよ。皆さん前に出てきなさい!』

♂達が前に出て来て、タツベイ達が鳴き声を放つ。想像以上に騒々しいなこいつら。

 

 

 

「なあ、マンダー。捕まえるのはお前でもいいのか?」

『私を捕まえたいと? ホッホッホ、面白い冗談を仰りますね』

「いや本気だ。俺は最初に言った通りボーマンダが欲しい。特に強くて賢いボーマンダなら尚更な」

 

『強くて賢いと思える根拠は?』

「強いと思える根拠はてめえらの群れと統率力だ。コモルーの強さが異常だ。気配だけで強さがわかる。そのコモルーを統率している群れの長はそれをまとめて倒せるくらいに強くなくちゃならない。いくらボーマンダとはいえそれは無理だ。だが全員統率出来ている。つまりお前が強いってことはそれが根拠だ。少なくともアローラ地方のボーマンダは自由きままにバカンスしているからそこまで強くない」

アローラ地方でボーマンダ達を捕まえなかった理由はこれだ。アローラ地方のタツベイ達は平和ボケしすぎて素質はあれども戦闘に向かないのが多い。コモルーやボーマンダも同じで捕まえる気にはなれなかった。

『賢いと思える根拠は?』

「マンダーが賢いと思える根拠、タツベイに向けて投げたボールの軌道を読んでいたのと、こうして俺とコミュニケーションを取っていることだ。あのボールをかえんほうしゃで止めるには俺の行動を先読みしないといけない。つまり俺の思考を読んでいる証拠だ」

 

 

 

『……良いでしょう。そこまでいうなら相手になりましょう』

マンダーが取り出したのは将棋板、それもポケモン将棋用のものだ。

「ポケモン将棋か?」

『ええ。ルールを説明しようかと思っていたのですが知っているのなら話しが早い。駒の勝利判定等はコモルーとシックさんのサザンドラにしてもらいます。構いませんね?』

駒をタツベイ達が取り出し、コモルーが審判になる。

「リックか? 一応打っている仲だしな……わかった。任せた」

『サー、イエッサー!』

 

そして三時間に渡る長い戦いが終わった。勝ったのは俺だった。危なかった……あそこで闘じゃなく鋼で行ったら負けていた。

『お見事です。約束通りシックさんのポケモンとして暮らしましょう』

「意外だな。抵抗するかと思ったんだが」

リックをしまい、ボールの中に収納する。

『私がいなくなること自体はそんなに心配ありません。もうすぐ審判を勤めたコモルーがボーマンダに進化して、群れを率いるのはわかっていますから』

「とんだ策略家だな……これからよろしくなマンダー」

そんな会話をしてマンダーに向けてモンスターボールを投げると、ゲットした。

 

 

 

しかしマンダーとの勝負に集中しすぎて、忍び寄っていた気配に全く気づかなかった。だが今、その妙な気配を感じ取って上を向くと奴らは舌打ちし、鉄網を投げる。奴らの特定の組織はわからないが、違法な方法でポケモンを捕獲するポケモンハンター──ポケモンハンターの中には合法な奴もいるが十中八九違法──だというのはわかった。

「くそっ、マンダー!」

『わかってます!』

マンダーは器用にかえんほうしゃを収縮し、レーザー状にしてポケモンハンターの脇腹に風穴を開ける。流石にマンダーがかえんほうしゃをするのは予想外だが、それでもポケモンハンターの動きが鈍ったことに違いなく、マンダーはそのポケモンハンターを捕らえ足で踏みつけて身動きを止めさせる。その隙にタツベイ達にかかった鉄網を素手で掴み引きちぎり、タツベイ達を解放した。

『シックさん、貴方本当に人間ですか?』

鉄網を引きちぎった俺に対するマンダーの感想がそれだ。確かに常人ならこの網を引きちぎるなんて出来はしない。しかし俺は世間一般でいう超人と呼ばれる類いの人間であり、直径10mmくらいまでの針金で出来た鉄網ならねじって引き千切りことは容易い。そんな俺でも敵わない相手がシロガネ山の主だが、奴のぶっ飛んだエピソードは後日語ることにする。

 

「お前達、無事か?」

全員鉄網から外に出し、そう尋ねるとポケモン将棋の審判をしたコモルーが答えた。

『大丈夫でさぁ、シックの大旦那!』

「よかった。マンダーが捕まった後にお前達が被害被るとか後味悪いからな」

『そうですね。私がいなくなってから時間が空いて捕まるならともかく、私がいなくなったその瞬間を狙ってきたなら私にも責任はあります。ですのでその元凶となったハンターを渡しましょう』

マンダーがそう言ってポケモンハンターを引き渡す。

『この落とし前はでけえぞおら!』

『ワシらに逆らうとどーなるか思い知れぃっ!』

「た、助け……ぎゃぁぁぁっ!!」

コモルー達が袋叩き──ポケモンの技ではない──にして半殺しにすると、タツベイ達の内半分がコモルーに、タツベイから進化したばかりのコモルーを除いたコモルー全員がボーマンダへと進化した。

 

 

 

『リーダー、お元気で!』

『まさか全員が進化するとは思いませんでしたが、これで心置きなくシックさんについていけるものですよ』

「だな」

こうして俺はインテリボーマンダのマンダーを手に入れた。




後書きらしい後書き。
鉄網はアニメのロケット団三人組の使う網を更にパワーアップしたものだと思ってください。


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第13話 ブリタ、アイドルを目指す

時系列まとめ

イリア捕獲
→ハクリューに進化&ギラギラと遭遇
→主人公リーグ出禁&イリアと別れる&リックゲット
→アローラ地方にて島巡り&ダン捕獲&イリアと再会する
→ホウエン地方にて観光&マンダーゲット(今ココ)
→(以下ネタバレにより伏せます)
→ギラギラ捕獲
→第1話~第7話
→ジャック捕獲


俺はカイナシティの南の海岸でライブ活動をしていた。その理由はアローラ地方とホウエン地方でカツアゲした金がなくなり、トレーナーバトルをしてカツアゲしようにも俺と目を合わせたトレーナーがポケモンバトルを拒否してしまったからだ。それというのもこの付近でカツアゲし過ぎたのが原因だ。

 

この付近の強いトレーナーはジムバッチ二つか三つあたりのトレーナー、つまり自信がつき始めた頃のトレーナーが多い。島巡りで言えば二つ目の島のキャプテンの試練に挑むか、試練突破したあたりで充実している頃だ。

 

そんな時期に俺と言う化け物がいて挫折を味わってしまった。俺は島巡りを完全制覇していて全てのタイプのZクリスタルを集めており、他の地方で例えるなら殿堂入りに相当する。しかしリーグ非公認のローカル文化である為に島巡り完全制覇は他の地方では何の意味をなさない。何故ならそもそも達成している奴らが少なく俺の前に完全制覇を成した人物は数年前の話で、完全制覇した人間はアローラ地方から出ないなんてこともある。

その為島巡り完全制覇でもせいぜい、ジムバッチ一つ持っている奴くらいだと認識されている。しかもジムバッチそのものも持っていないからポケモンバトルをする側からしてみれば「田舎からやって来た絶好のカモ」だ。……いくらアローラ地方のポケモンが平和ボケしてもそんな訳ないだろうに。俺の前の完全制覇者ことカヒリ女史も四天王かその辺のクラスだが、あの人はアローラ地方出身のポケモントレーナーよりも世界最強女子プロゴルファーとして有名だからな。

 

その結果、対戦者達は俺を嘗め、バトルを挑み、敗北していった。あまりにもぼったくるのでその噂が広がり、いつしかポケモンバトルが出来ない状況になっていた。ある意味、アローラ地方の文化が認められた証拠でカヒリ女史も喜んでいるに違いないな。

 

何はともあれ最初のうちは貯まっていた金を使っていたが徐々になくなり、遂に今日金が尽き、路上ライブならぬ海岸ライブをして大成功に終わった。

 

 

 

「少し時間取らせてもいいかな?」

海岸ライブを終え、後片付けをしていると声をかけられそちらを見ると薄緑……いや青緑色の髪をした美少女がいた。俺はその少女のことはよく知っていた。彼女がこのホウエン地方でただ単純に有名人なだけで、ストーカーと言う訳でもなければ知り合いと言う訳でもない。

「どうぞ、ルチアさん」

彼女はホウエン地方の美しさコンテストマスター部門を優勝したスーパーアイドルのルチアさんだ。

「ありがとうシック君。ご存知かと思うけど私の名前はルチア。ルーちゃんって呼んでね」

「シックです。以後お見知りおきを」

挨拶の常用句を使用し、ルチアさんに自己紹介をする。

 

「それでルーちゃんさん、何かご用でしょうか?」

「ルーちゃんの後ろにさんは必要ないよ! それに敬語も止めて!」

渾身のボケをかまし、ルチアもといルーちゃんが敬語を止めるように涙声と涙目で訴えてきたので流石に止めた。

「わかったよルーちゃん」

彼女がすぐに微笑み、明るい声で返す。……謀ったな? いやルーちゃんは人気アイドルだからこのくらい出来て当たり前なのかもな。

「シック君ありがと。それでね、私がシック君に用事があるのはスカウトしたくて声をかけたの」

「スカウト? 俺にアイドルになれっていうのか?」

嫌だな。いつもTVで見るルーちゃんの服はコンテストドレスであり、俺がそれを着ることになると女装になってしまい、男女問わず阿鼻叫喚だ。誰得だよ。

「それもありだけど、コンテストライブの方だよ」

 

俺の女装が見たいとはとんだ性癖の持ち主だな。ホウエン地方が誇るアイドルがこんな性癖の持ち主だなんて知ったら全ホウエン地方の諸君がショックを受けるだろうな。まあ、それは俺を巻き込まなければ何でもいいので置いておこう。

 

俺をコンテストライブにスカウトか。悪くない。悪くないのだがコンテストライブの会場はポケモンリーグ管轄で、リーグ出禁されている俺は登録することは出来ない。

 

「ルーちゃん、悪いが俺はリーグ管轄の大会等には参加出来ないんだ。だからこうしてリーグ非公認でもやれる路上ライブを開いたって訳だ」

「え……嘘!? ということはシック君って犯罪者なの?」

「いいや俺は冤罪をかけられただけだ。冤罪こそ晴れたが、リーグは頭堅い連中ばかりでな。俺が冤罪を晴らしても出禁を解いてくれないんだよ」

「それって完全におかしいよ! 冤罪なのに、どうしてそんなことになるの?」

「さあな。何でも俺に冤罪をかけた奴がリーグ関係者と親密な関係だったらしい。そいつが濡れ衣を着せたとバレても、今度はそいつが死んだことで俺に殺人容疑がかかっているからって理由で俺のリーグ出禁を解かないようにしているらしい」

 

本当に下らないものだ。そいつはポケモンに愛されなかったから殺されたのであって、俺は一切関係ない。関係があるとしたらそのポケモン達に精神安定剤をぶちこんだことくらいで、それの痕跡の証拠すらも消してある。もし万一精神安定剤を混入したことがバレたとしても殺意はなかったことを言えば最悪でも過失致死事件──殺人なら出禁どころの話ではないが、過失致死なら罪を償えばそれで終わり。もうとっくに俺はそれを終えている──として扱われる。殺意がなかったのは事実だし、せいぜい言うことを聞かなければ良いと思っていたくらいだ。

それに冤罪をかけた奴はとっくに死んでいるんだ。死人のことをいつまでも話さず、黙って出禁を解けば良い話なのにな。

 

「それで何もなかったら、私はリーグを許せない。ファンの皆に話して──」

「やめておけ。俺の為に怒るのは嬉しいが、それはファンを利用するってことだ。下手したら俺だけじゃなくルーちゃんのアンチが出るかもしれない。バラエティーで俺の過去に触れる時にそのエピソードを話す程度でいいだろう。その方がよほど効果的だ」

擁護するなら中立的な第三者として見てくれた方が俺の敵も増えなくて済む。敵を増やす時は敵が無能な場合だ。それ以外は増やさない方が良い。何故なら無能な敵は敵陣営を弱体化させるがそれ以外の敵は敵陣営を強化するからだ。

「……そうする。だけどシック君が余りにも不憫過ぎるよ。何か出来ることないかな?」

「出来ることは──」

そう考えているとズボンの裾を引っ張られ、そちらを振り向くとここにはいない筈のフカマルがいた。

『なぁあんた、オイラのマネージャーになってくれないか?』

俺の空のボールを指差し、声をあげる。

「わ、フカマルだ。どうしてこんなところに?」

ルーちゃんがフカマルを抱えようとするが、それを止める。このフカマルは特性ごさめはだだと明らかにわかり、触れた者を傷をつけるからだ。

『いやな、オイラはここに住んでいる訳じゃないのよ。少し旅をしていたらそこのお兄さんが歌っていたから、気になって覗いたらこの人の下でライブ活動とかしてみたいって思えるようになったんだ』

「なるほどな」

「シック君、フカマルの言っていることわかるの!?」

「まあな。今の言葉を要約すると──」

それを翻訳すると信じられないのかフカマルに真意を尋ねた。

「それ本当?」

フカマルがそれに頷き、ルーちゃんがボールからポケモンを取り出す。そのポケモンはチルタリスのチルルだ。このチルルもよくTVに出るから俺もよく知っている。

「シック君、チルルが私のことをどんなことを思っているのか聞きたいな」

『最高の相棒で半身のような存在だ。今ではルチアさえいれば良いと思っている。だからルチアのことを──』

「チルル、そこまで私のことを……!」

それを伝えると泣きながら抱きつき、チルルもそれを見て抱きついた。しかし途中まで何か言っていたような気がするが気のせいだろう。

 

 

 

『なあマネージャーさん、あんたの下でコンテストライブに出てみたい。……いいだろ?』

ルチアが感涙している間にフカマルがそう言って仲間になることを要請した。フカマルか。かなり素質が高いし、いずれガブリアスになるし、あのバンギラスを倒すには丁度良いかもな。それとマネージャー呼びは強制させる。

「わかった。だが俺のポケモンは個性が強いし、コンテストライブに出られるのは暫く後だ。それでもいいのか?」

『し~んぱいないさ~!』

空のモンスターボールのボタンを押し、フカマルをゲットした。

「それじゃよろしくなブリタ」

フカマルもといブリタはモンスターボールを少しだけ揺らした。

 

 

 

「お待たせ。シック君」

「ルーちゃん、それで頼みがある」

「どんなことでもやるよ。……それこそCまで」

ボソリと言ったつもりかもしれないが俺には聞こえる。Cって何だよ。体操のウルトラCの略か? それともコンテストの略か?

「コンテストライブに着る服とか、コンテストライブに必要な物とか教えて欲しい」

「オッケー。それなら──」

その後、ルーちゃんにコンテストパス以外の物を取り揃えて貰った。ちなみにコンテスト用の服として王子様風ファッションを強く勧められたのは謎だったのは言うまでもない。




後書きらしい後書き。
当初は普通にコンテスト会場に行ってルチアにスカウトされる話でしたが、筆が進まなくなりボツにしました。
それと島巡り完全制覇の設定ですが、ほとんど独自解釈です。

追記
ルチアの動画を調べたらルチアとチルルが意思疎通が可能なシーンがあったので修正しました。


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第14話 リックと復讐とやり直し

これまでのあらすじ。

シロガネ山の主ポケモンバンギラスに敗れたシックとイリア。イッシュ地方で修行を続けていると太ったサザンドラ、リックが捨てられ、それを保護するが元の持ち主が現れ、裁判を起こし、濡れ衣を着せられたが冤罪だと世間に認められたがリーグ出禁は解除されないままであり、イリアもリックも戻ってこない。そんな状況にシックは絶望に暮れていた。


さて、俺の壮絶な人生を語るにはこいつの存在はなくてはならないものだ。

 

サザンドラのリック

 

リックそのものに罪はないが、リックの元持ち主が俺に濡れ衣を着せ、人生は大きく変わってしまった。イリアと別れ、拘置所、刑務所に行くことになり、ありもしない罪を償う毎日が続いた。そして冤罪だとわかり釈放されたが、釈放された日にポケモンリーグから告げられたのはリーグ出禁。つまりジム巡りはおろかコンテストライブにも出場出来ない。この時俺はありとあらゆるものを失って生きる気力を失っていた。

 

 

 

 

 

「ワタルさん……不肖の弟子で申し訳ありません」

ここにはいない師匠に謝り、ビルの屋上から景色を見渡し、その場から飛び降りる。

 

滑空音と共に、無重力の状態が続く。しかしそれもまもなく終わり、地面に頭から激突し鈍い音とその衝撃がその場に響いた。

 

「……この程度じゃ死ねないか」

身体はほぼ無傷。骨折どころか血も流してすらいない。やはりあのバンギラスくらいしか俺を傷つけることが出来ないのか? こんな身体に生まれてきたのが憎らしく思えてしまう。

……いや全てが憎い。全てあいつが、悪い。

「殺す……! 殺してやる」

俺に残されたものはこの超人的な体と殺意。そして精神安定剤だ。

「……いかん。感情に惑わされるな」

殺意に呑まれかけ、俺は精神安定剤で感情をコントロールする。この精神安定剤は遅効性だが気休めにはなる。奴を物理的に殺しても無駄だ。精神的、社会的に殺さないと気がすまない。

 

 

 

「俺、いやそれ以上に悲惨な目に遭えば良いのか」

一人呟き、歩いていると見覚えのある太ったサザンドラが跳ねてやって来た。

『や、やっと会えた……!』

メタボリックな体に滝汗。この特徴のサザンドラは俺の知る限り一匹しかいない。

「リックか。何故お前がここに?」

リックは一回だけ俺の手元のポケモンとしていたが、裁判を起こされ元のポケモントレーナーの元に引き渡すことになった。つまりリックの持ち主は俺を貶めたポケモントレーナーの筈だ。

『……捨てられました』

「捨てられたってまたかよ!?」

どんだけあいつリックのことが嫌いなんだ? リックって名前の由来からしてもう嫌っているのはわかっていたつもりだがあいつのリック嫌いは異常だ。

『ええ。ポケモンバトルで俊敏な動きが出来ないから負けたと言いがかりをつけてきてこの有り様です。サー、もしよろしければ俺を再びサーのポケモンにしてくれませんか?』

ここでリックを俺のポケモンにしてもあいつがまた俺を貶めるだけだし、どうしたものか。……ん?

「条件がある」

『何でしょうか?』

悪魔的な発想が閃き、リックにも協力してそれを実行することにした。

 

 

 

数週間後、俺はきのみショップでバイトしていた。そのバイトの内容は接客とポフィンやポロック等のきのみを使った菓子の実演販売。女性の心を鷲掴みにしていた。ちなみに菓子の類いは別枠で売っている。

「いたいた、あの人よ。ね、イケメンでしょ? エリカ」

「うわ、凄いイケメン……! あんなイケメンがこのお菓子作っているなんて……疑ってごめんなさい」

中には俺目当ての客もいるが、最終的に菓子目的に靡く。それまで売れなかったきのみ屋が一ヶ月も経たない内に大繁盛していた。

「お嬢様、こちらのポフィンはどうですか? こちらのポフィンは冷静な性格や控えめな性格のポケモンにオススメですよ」

着物を着た女性エリカさんにそう勧めると顔を紅潮させ、すぐに頷いた。

「じ、じゃあそれで!」

「ありがとうございます。それでナツ様はいつものでよろしいですね?」

俺にナツと呼ばせる女性だが、本当の名前はナツメという名前でポケウッドが誇る大スターだ。そんな彼女が常連となったのは俺が作っていた菓子の匂いに惹かれ、食べてみると大絶賛。彼女がその味に感動してSNSに書き込むとあっという間に売れないきのみ屋が今じゃイッシュ地方の名店だ。

「ええ。お願いね」

彼女が微笑み、俺が提案した試食コーナーにある椅子に座って待っている間にリックがやって来た。

 

 

 

「お前か……ほらお食べ」

『頂こう』

腹を空かせたリックがポケモンフードを食べ終わる。そして例の物を催促する。

「わかったよ。お前は健気な奴だよ」

リックにきのみとポフィンが入った箱を渡すとリックはそれを受け取り、その場を去っていく。

 

「店員さん、今のサザンドラは?」

エリカさんが疑問に思い、口を挟む。

「あのサザンドラは飼い主に捨てられたにも関わらず、健気に飼い主に尽くしているんですよ。私はその健気さに感動してポケットマネーで彼にきのみとポフィンを提供してあげているんです」

「あのサザンドラにそんなことが……」

「……」

エリカさんとナツメさんが気まずそうに黙る。

「さあお嬢様方、こちらをどうぞ」

「このポフィンは?」

「カロリー低め特製ポフィンです。このポフィンは通常の1/3くらいのカロリーしかありませんので3個食べても通常のポフィンと同じだけのカロリー摂取しかしませんので安心して食べられます」

「まあ……! ナツメさん、食べましょう!」

「そうね……最近、太ってきたしこういうポフィンも悪くないわ」

エリカさんとナツメさんが気まずい空気から一転。通常通りのものになった。

 

 

 

そして翌日。TVを見るとサザンドラの元のトレーナーが無残に殺されるというニュースが流れた。殺したと思われる犯人は、トレーナーのポケモン達で既に逃亡していることからトレーナーはポケモン達に虐待をしていたことがわかった。

流石に虐待しているとは思わず、物理的に殺されるとは思わなかったが何にせよ復讐は成った。納得はしていないが。

『これで任務完了です。サー』

誰もいないところでリックと二人で話し合い、俺は口を開いた。

「……なぁ、リック。俺の下に来るか?」

『もちろんです!』

「わかった。大人しく捕まれよ」

モンスターボールを投げ、リックをゲットする。

 

 

 

「やはり、本当だったのね」

信じられないものを見たと言わんばかりに常連客のナツメさんが声を震えさせていた。

「ナツメさん、何故ここに?」

「あの時……私が最初にあの店に来る前、貴方の怨念を感じたのよ」

「怨念?」

「信じられないと思うけど私はエスパー。遠くにある怨念を嗅ぎ付けることくらい訳ないわ」

「それって陰陽師とかそっちの方面なんじゃないのか?」

動揺して俺は思わずタメ口でそう尋ねてしまう。

「あくまで感じるだけよ……ねえ、一つ聞いて良いかしら?」

「何でしょう?」

「これからどうするつもり?」

「どうすると言われても、いつも通り──」

「いつも通り、あのきのみ屋で過ごしていたら、貴方は永遠にイリアに会えないわ」

「何故、イリアのことを?」

「それだけじゃない。シロガネ山のバンギラスとのリベンジやボーマンダとの出会いも無くなるわよ」

「まさか、本当にエスパーだとでも言うのか……?」

「その通り。エスパーの中でも私は主に人の未来を見ることが得意で、最低5年先の未来を見ることが出来るわ」

「なら俺はどうすればいい?」

「アローラ地方で島巡りをしなさい」

「島巡りを……?」

「そう。それをすれば貴方は全てを取り戻すチャンスが訪れる。島巡りの手続きは私がしてあげるわ」

「何故、そこまで俺のことを?」

「色々理由はあるけど、貴方のことを気に入ったから……かな?」

「ナツメさん……俺とポケモンバトルをしてくれ」

「もちろん良いわよ」

 

 

 

「リック、リーグ出禁になってからの初陣だ」

『了解しましたサー!』

リックが元は他人のポケモンであるにも関わらず俺の命令に忠実な理由はしっかりと躾をしたのもあるが、俺の指示だとポケモンバトルに勝てると言うのが大きい。それまでリックは今は亡きトレーナーの指示だとポケモンバトルで苦戦することが多く、デブになってからは一度も勝ったことがなかった。散々にも程がある。しかし俺の指示だと連戦連勝で苦手な筈の妖でも勝ってしまった。

「さあ、行くわよエーフィ」

エーフィか……予想した通り、ナツメさんは(エスパー)使いか。

『さあマスター、あたしのきんのたまに力を!』

「何、下品なこと言ってんの! さっさと行きなさい!」

顔を紅潮させるとエーフィもまた顔が変化する。ただし、光悦した表情にだが。

『ああん、もっとぉっ! あたしのはどうがやってくるわ~!』

……オカマで、ドMのエーフィなんて初めて見た。あんな神聖そうに見えるのに何でこうも残念なんだ? 人生で一番ショッキングな出来事だ。

「リック、あくのはどう」

『見るに耐えねえよ! あんなん!』

リックのあくのはどうがエーフィに襲う。しかしエーフィはそれをマジカルシャインで相殺させていた。

『あ~、すっきりした。んもう、せっかちはやーよ』

それおまいう? しかし油断ならない相手だ。ナツメさんとエーフィのあのセリフは隠語だがダミー。俺達が想像するようなものではない。

「リック、あくのはどうで押し潰せ!」

『サー、イエッサー!』

あくのはどうがさらに強まり、エーフィのマジカルシャインが徐々に押されていくとエーフィが焦り出した。

『え、そんなダメっ、あ、あ、あーっ!』

エーフィが倒れ、ナツメさんはエーフィをボールに収納し俺の元に歩み寄る。

 

 

 

「流石ね、シック君。君ならこのくらいの芸当をやってのけると思ったわ」

「いやリックの力業なんですが」

「何はともあれ、これで自信ついたでしょ? これでアローラ地方に行きなさい」

ナツメさんがアローラ行きの飛行機チケットを渡し、手に握らせる。

「それまでの間に引き継ぎや荷物をまとめておきなさいよ」

そしてナツメさんと別れ、手元のチケットを見ると一週間後に使えるファーストクラスのチケットだった為にきのみ屋でバイトをしていると、数時間後にきのみ屋でいつも通り遭遇し、丁寧に接客しておいた。




後書きらしくない後書き。
前書きのあらすじは、シックが詳しく語れない部分を三人称で語らせて頂きました。もしいらないというのであれば、感想欄だと規約違反になりかねませんのでメッセージボックスの方によろしくお願いいたします。


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第15話 クリスマスイブのヌメルゴン騒動

前書きらしい前書き
今回は文字数最多です。クリスマスでもないのにクリスマスネタを書いてしまったよ……


時系列まとめ

第9話→第14話→第11話~第13話→第15話(今回)→第10話→第1話~第8話


クリスマスイブのカロス地方。

 

俺はホウエン地方の観光が終わった後、カロス地方にいた。だが今回は観光って訳ではない。れっきとした修行の旅でクリスマスイベントに構っている暇などなかった。その修行の最中にとある事件が多発していた。

それはヌメルゴンが♀ポケモンをレイ……性的に襲う事件が多発しているらしい。被害者によると♂ポケモンがいようと構わず性的に襲う。♂ポケモンが邪魔した場合、キレて大暴れすると言った超問題児だ。俺もそのヌメルゴンの被害者でイリアがやられ、泣きべそをかいていた。

 

そして今、そのヌメルゴンを追い詰めていた。

「観念しろヌメルゴン」

『くっ……ワシの楽園もここまでか……?』

観念したようにヌメルゴンが呟く。

「そこまでだ。イリアをあんな目に遭わせた罪は重い」

『イリアちゃん。あのカイリューはイリアちゃんというのか……グフフ! あの肌は良かったのう』

ヌメルゴンがイリアの名前を出すとイリアが中に入っているモンスターボールが怯えるように震え出した。……このヌメルゴン反省の欠片もないな。

「いたぞあのヌメルゴンだ!」

声がした方向に振り向くと、工場の作業員らしき人物が俺の目の前にいるヌメルゴンに近寄る。

『くそ、バレたか!』

このヌメルゴンはそいつらのことを知っているようで、俺達の対応のそれとは違い嫌悪感がひしひしと伝わる。なにがなんでもあいつらとは関わりたく無さそうだ。

「ヌメルゴン覚──」

『やむを得ん!』

覚悟!と言おうとした瞬間、ヌメルゴンが俺の手にあるモンスターボールのスイッチを押してゲットされる。それほどまでに関わりたくない相手なのか? なら一つだけ手がある。ヌメルゴンのボールと俺の手持ちのポケモンが入っているモンスターボールとすり替え、ボール越しに命令した。

「おいそこの小僧、そのモンスターボールをよこせ」

「ほらよ」

モンスターボールを渡すと怪しそうな男達は下衆な笑みを浮かべる。

「ありがとよこいつはお礼だ。じゃあな!」

男達がそういって俺にきんのたまを渡す。後で換金しておこうか。

 

『しかしお主あんな命令をさせるとは最低じゃのう』

あんな命令とは失礼な奴だ。

「お主じゃないシックだ。最低の称号はてめえにくれてやる。それよりか尾行するぞ」

『何故じゃ?』

「あの組織をぶっ潰す。お前が潔く俺に捕まったのに対し、お前はあいつらから逃げた。つまりよほどポケモンに悪影響を与えてきた組織だ。そんな組織は潰すに限る。そうだろうゴルメ?」

『ゴルメ?』

「お前の名前だ。それよりかあの組織を潰すか潰さないかどっちか選べ。どっちみち行くが」

『随分過激じゃのう……とはいえ、あのような組織はあっちゃならんし、何よりもワシの子供達の為じゃ。着いて行こう』

ゴルメが正式に俺のポケモンになり、尾行していくとそれまで普通のヌメルゴンだったのが色違いへと変化していく。

「おい、ゴルメ。色違いだったのか?」

『これが本来のワシの姿じゃ。さっきまでペンキで奴らを誤魔化していたがワシの特性のせいで落ちてしまうわい』

「ペンキで誤魔化していたのかよ」

よくそんなもので誤魔化せたな。

 

『まあの。……ワシは他のヌメラ達とは違う色で生まれ、群れの誰からも忌み嫌われて来た。もちろん親兄弟からもな』

「野生の世界だと色違いは忌み嫌われるのか」

それが原因で色違いが突然変異の単位でしか生まれなくなったのも納得だ。

『うむ。誰にも頼れない状況の中、ワシは一人でヌメルゴンまで育ってきたんじゃよ。そんなある日のことじゃ、ワシ達の群れを見つけたポケモンハンターがワシ達を乱獲していった。一人で育ってきた故に隠密行動を取れるようになっていたワシは他のヌメルゴン達が乱獲されるのを見てこっそりと逃げ出そうとしたんじゃ。その判断が間違いだと気づかずにの』

「どうなったんだ?」

『奴らはワシの体の色とこのぬめぬめした体のヌメラを大量生産することが目的じゃった。そのために奴らは群れを乱獲したんじゃ。しかしワシが捕まったことによって捕まったヌメルゴン達が用済みになり処分させられた。ワシがいれば色が違ったり、このぬめぬめした体も受け継ぎ易いと考えたんじゃろうな……ワシがあの時逃げずに助けようと考えていれば救えたかもしれない。その後悔だけが頭から離れんのじゃ。目の前で親兄弟を殺されたのだから尚更の』

リックも大概だが、こいつはこいつで壮絶な過去を送ってやがる。

 

「ゴルメ……」

『ワシがシックの提案に乗ったのはワシの息子や娘達を失いたくないからじゃ。あ奴らはワシに似ず、色違いとやらでもなくぬめぬめした体でもない。いずれ処分されるのが目に見えておる』

「おいおい、もしかしてそのハンター達はバカなのか? 普通にポケモンとして売り飛ばせばいいだけだろうが」

尾行し、対象者達が角を曲がるとその場に止まりこっそりと耳打ちする。

『ハンター達がいうにはヌメルゴン一族の肉は珍味として知られていてそのまま売り渡すより肉塊にして売った方が儲かるらしい』

「ヤドンのしっぽみたいなものか……犯罪のオンパレードじゃねえか」

ヤドンのしっぽ。名前の通りヤドンの尻尾を切り落とした珍味で堪らない程の旨さらしいが、ポケモン愛護団体から訴えられる程非人道的な方法でしか入手出来ないのとヤドンの尻尾が再び生えてくるのに時間がかかるので生産量も少なく非常に高額な値段で売られている。ジョウト地方にてR団が野生のヤドンの尻尾を切りまくった事件があったから、取り締まりも厳しくなり今ではポケモンドクター以外は全てのポケモンを解体するのに届け出が必要になった。もちろん自分のポケモンでなくては届け出を出したとしても違法になるし、ポケモンドクターですら手術の時くらいしか許可されない。

つまり奴らは違法な手段で手に入れたポケモンを解体しようにも届け出を出せる訳がなく、無許可でやるしかないと言うことだからかなりの犯罪者であることは確かだ。

 

 

 

そうしていくうちに奴らのアジトらしき建物が見えてきた。

『やはりここか……』

「ゴルメの息子や娘がここにいるのか?」

『うむ』

「ゴルメ、お前があそこを抜け出した理由は♀ポケモンを求めたって訳ないだろう?」

『……ワシがあそこを抜け出したのはワシ一人では子供達を救えぬからじゃ。あそこにいたんじゃ何も出来ん。せめて未来のワシの子供達だけでも助かろうと抜け出して来たんじゃ』

前半はまだわかるが後半が最低だ。

「そうか。なら救うぞ、今いるお前の子供達をな」

『無論。ここまできてやらぬは男の恥じゃ!』

よし覚悟を決めたようだな。なら本気でやるか。

 

 

 

「そうと決まればイリア、マンダー!」

イリアとマンダーを外に出すとイリアがゴルメを見るやいなや嫌悪感を露にする。

『げっ、セクハラヌメルゴン……』

セクシャルハラスメント。略してセクハラ。要するに性的に嫌がらせをする行為のことだな。

『セクハラとは失礼な奴じゃな。ほんのちょっと触っただけだというのに』

『それがセクハラだっての!』

『落ち着きなさいお二人とも。それでシックさん。私達二人はこの付近を見回ればよろしいのですか?』

流石マンダー理解が早い。

「その通りだ。イリアとマンダーにはこの付近を見回ってもらいたい。本来ならイリアじゃなくブリタに任せたいがイリアがゴルメと行動するには無理だと思ったからな。ブリタとリックはゴルメと共に俺とヌメラ達の救出だ」

『な、なんじゃとぉっ!?』

『まあそうでしょうね。貴方もバカですね。イリアさんにセクハラしたばかりに一緒に行動を取れなかったのですから』

『知った口を効くなボーマンダ!』

『私が貴方のことを知った口で効こうが効かまいがこれは決定事項です。文句を言うなら私ではなくシックさんにお願いいたします』

『くっ!』

ゴルメが引き下がり、マンダーとイリアが空を飛ぶ。

『それではシックさん、グッドラックです』

『ご主人、手柄立てたら誉めてよー!』

マンダーとイリアがそれぞれ別の方向に見回り始めた。

 

 

 

「これからアジトに突撃する。ブリタ、リック話は聞いていたな?」

『もちろんでさぁマネージャーさん。こんな映画みたいな状況、ワクワクすっぞ!』

『興奮するな』

「作戦はシンプル。ポケモンを除いたあのアジトにあるもん全て破壊だ」

『マネージャーさん華がねえな。爆発バカがいないならもっとスマートにいこうぜ』

「例えば?」

『それは──』

ブリタから作戦が伝えられ、それを聞くと確かに奇襲や不意を突くには丁度良い。

「それ採用。ブリタ、行け」

『了解!』

ボールにリックとゴルメを収納するとブリタがアジトまで穴を堀り、俺はその穴を使って進んでいく。そしてアジトまでたどり着くと奥から爆発音が響き渡る。

 

 

 

「ダンの奴、上手くやったか」

俺がゴルメとすり替えたポケモンは爆弾厨のダン。あいつの命令はシンプルにモンスターボールから出されたらすぐにだいばくはつしろというものだ。万一尾行に失敗して見失った時の保証としてメタグロスのだいばくはつが目印となるようにした訳だ。やり方がえげつないかもしれないがこのやり方が俺のやり方だ。

「ダンのところに向かうぞ。ブリタ」

ブリタしか出さないのはブリタに比べ二頭の足が遅いからで俺はブリタについていけるから問題ない。

『合点でさ!』

ブリタのドラゴンダイブと並走し、だいばくはつが起こったと思われる部屋に移動する。しかしその前には立ち塞がる障害があった。その障害は黒い霧──ポケモンの技にもくろいきりという技があるがあれとは別物──でいかにも危険そうな臭いを醸し出し、このまま突っ込んだらロクなことにならないと判断しブリタを収納して止まる。

「リック、あくのはどう!」

『サー、イエッサー!』

リックを取り出しあくのはどうを放たせると黒い霧が晴れ、それまで隠れていた研究員らしき男が呻き声を上げながら横に倒れていた。

「どうした、誰にやられたんだ!?」

「あ、あいつ……」

そしてその先には幸悦に浸っていながら気絶しているダン。とった行動はただ一つ。

「証拠隠滅!」

「ぶっ!」

証拠を隠滅することだけだった。

『流石サー。自らの保身の為にクソ野郎共を殺すとはやりますね』

「いや殺してないから。記憶抹消のツボを押しただけだからな? リック」

何でこうもリックは過激なんだろうな。やっぱりあれか? ペットは飼い主に似るんだろうな。それが元か今かはわからないが。

 

 

 

全員の記憶をほどほどに消去しダンを回収するとゴルメの子供達を探す。ゴルメは子供達の場所を知らないから探すのに手間がかかり、頭が三つあるリックに臭いを嗅いで探知させることにした。

『サー、この部屋です』

リックがそういって右手の頭でその扉を指すとゴルメがパワーウィップをして扉を無理やり壊そうと足掻いた。

『くそ、ダメか。年は取りたくないもんじゃ』

「どいてろ」

『え?』

俺の右ストレートが扉をぶち壊しその部屋内に入ると今にもヌメラを始末しようと包丁を持った男が硬直して俺を凝視する。

「ば、バカな……! この扉は硬度、靱性ともにエメラルドを超えるのに……何故人間が壊せる!?」

よく硬度とか靱性とか知っているな。硬度は引っ掻いた時の傷がつくかどうかの物差しでダイヤモンドが最高ランクの10に認定されている。それに対して靱性は衝撃に対する物差しだ。ダイヤモンドは衝撃に弱い為、靱性は低い。

「それ以上の力で殴ったから何か? あんまり力込めてぶっ壊したお陰で血が出てしまったよ、どうしてくれる?」

右ストレートなんてそうそうやるものじゃないな。強いパワーと引き換えに腕に負担がかかるハードパンチャーの悲しい定めだ。

「ひ、く、来るな! 来たら殺すぞ!」

ヌメラのうち一匹を捕まえ包丁を突きつけ人質に取る。しかしそれは悪手だ。

『この世から去ねいぃっ!』

怒り狂ったゴルメのみずのはどうが炸裂し、男が気絶する。こうして見てみるとポケモンの技を喰らって無事でいられる俺が異常なんだと再度確認出来る。

 

 

 

『お主ら無事か!?』

『とーちゃん、かーちゃん達が連れてかれた!』

『何ぃっ!? ワシ達の襲撃を見越してそうしたのか?』

上手い手だ。あのどさくさ紛れにこれを見越して逃げたみたいだ。大犯罪者なのにやっていることは小物だ。

「リック、臭いは感知出来るか?」

『サー、無理言わないでください。ここにだけ臭いが充満していてとてもではありませんが探すのは不可能です』

調教モードなら「甘ったれるな! 貴様は何の為に生きている(差別的な表現の為削除されました)が!」と怒鳴り付けるが今回は違う。

「くそ、万事休すか?」

『マネージャーさん、オイラにお任せだぜ!』

ブリタがボールから勝手に出て来て、穴を堀り、俺はリックとゴルメを収納してヌメラ達を袋の中に入れる。その先に……ってこのやり取りやったな。それはともかくブリタの進んだ先にトラックがパンクして停車していた。

おそらくこのパンクもブリタがやったことだ。ブリタの特性であるさめはだは触れるだけで相手を傷つけることが出来、それは無機物でも同じだ。地上に出る際にタイヤに触れてしまったんだろうな。

『これをこうしてと……よしマネージャーさんヌメラ達だ。受け取ってくれ』

ブリタがトラックの底から穴を開け、そこから手際よくヌメラ達を救出し、袋の中に入れていく。

『これで最後だっと!』

ブリタがヌメラを渡し終えると穴から抜け出し、トラックを反転させると悲鳴が上がるがこの際無視だ。

 

 

 

「そこまでだ。悪党共」

決め台詞を放ちトラックから這い出てくる悪党達を引っ捕らえるとヌメラが袋から出て来て悪党達に父譲りのパワーウィップを放った。

『このかーちゃん達を誘拐した鬼畜めー!』

『覚悟しろー!』

「やめ、ぎゃあっ!」

どうやら母親を誘拐したことに対して怒りももっているようで、しばらくの間放っておくしかなさそうだ。

しかしそんなことをしていると、横転させたトラックと同じ種類のトラックが俺達に目掛け突っ込んできた。

「死ねおらぁぁっ!」

万全の状態ならともかく、右手が痛むこの状態で止められるか? いやヌメラ達の為にもやるしかなさそうだ。そう決意して前に出て腰を落とすと、横と上空から流星が降り注いだ。

『龍拳爆発ーっ!』

流星の一つ目の正体はブリタのドラゴンダイブ。トラックを貫通し、その動きを止めてしまった。

『月に代わってお仕置きよ!』

そして止まったトラックに止めを刺した二つ目の流星、イリア。ブリタ同様にノリノリで決めた。

「そ、そんな馬鹿な……!」

イリアとブリタに壊されたトラックが炎上し、この様子を見た俺達は全てが終わったのだと悟った。

 

 

 

その数時間後、消防や救急、警察が駆けつけ悪党達は逮捕。ヌメラ達はクリスマスプレゼントにポケモンを欲しがる子供達の下にいくことになった。

「ゴルメ、お前はどうするんだ?」

『もちろん、ワシはイリアちゃんと一緒にいるぞ』

『嫌っ、こんなセクハラ爺と一緒に居たくないわ!』

『まあお待ちなさいイリアさん。彼は戦力になります。彼ほど優れたヌメルゴンはそうはいないでしょう』

『そうじゃぞ。ワシは凄いんじゃ!』

『そんな彼を野放しにしたらどんな事態になるかわかったものではありません。実際今回もそうでしたが一々彼の暴走を止めるのに草むらに入って探すのは手間がかかります。それならばいっそのこと我々と同じようにシックさんの下にいる方が暴走を止め易いんですよ』

『でもセクハラは嫌!』

『お仕置きを設ければ良いでしょう。そういう訳ですのでゴルメさん、セクハラしたらどうなるかわかっていますね?』

『知らない、知らない、ラララーwww』

どこぞのむかつくハイエナのように歌いながら、誤魔化すゴルメにマンダーがキレた。

『……シックさん』

「おう」

ゴルメの足をローキックで蹴るとゴルメが宙で5回転半くらいしながら頭から落ちる。そしてトドメを刺すようにかえんほうしゃを放った。

『とまあこうなる訳です。ゴルメさんわかりましたね?』

『わかった……』

『それとイリアさん、もしゴルメさんがセクハラしたら全力で攻撃しても構いません』

『やった! ストレス解消用のサンドバッグが手に入った!』

酷い扱いだ。そんだけゴルメを嫌っている証拠だ。

『わ、ワシの夢が、ロマンが……』

項垂れるゴルメは結局、俺の下でポケモンとして過ごすようになった。




後書きらしい後書き。
やっぱり時系列のまとめは大切ですね。


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第16話 守銭奴との契約

時系列まとめ

イリア捕獲
→ハクリューに進化&ギラギラと遭遇
→主人公リーグ出禁&イリアと別れる&リックゲット
→アローラ地方にて島巡り&ダン捕獲&イリアと再会する
→ホウエン地方にて観光&マンダーゲット
→カロス地方にてゴルメゲット
→ギラギラ捕獲
→第1話~第7話
→ジャック捕獲

今回はジャックの捕獲した時の話です。


 二度目のアローラ地方。

 

「アローラよ、かつてない栄光を掴む為に俺は帰って来た!」

 第二の故郷でありながら観光地としてやって来た。今回の目的はバカンス。羽休めともいう。

『いや~懐かしいですねサー。この島巡りでやり直したのが昨日のことに思えます』

 サザンドラのリックがそういって思い出に浸る。

 

 ……確かに懐かしい。イリアと出会って、それからハクリューに進化して、濡れ衣を着せられイリアと別れた代わりにリックと旅をすることになったんだよな。

 

『そういやここでだいばくはつをかまそうとしたらあんたに止められたんだよな』

 アローラ地方で捕まえたダンも懐かしむとイリアもそれに続いた。

『あれから大変だったのよ。Nってゼクロム連れた人間が親切だったからここまで来れたけど、もしいなかったら元トレーナーを半殺しじゃなく殺していたわ』

「おい待てイリア。6Vが生まれたから捨てられたんじゃないのか?」

 6Vが何を示すのか不明だがおそらく素質の高いポケモンだと思われる。何なんだろうな、この6Vってのは。

『うん。ご主人と別れた後のトレーナーは私に「てめえのような言うことを聞かない弱いハクリューはいらない」って罵倒してNと交換したのよ。私はそれにぶちギレてNが寝ている間にあいつを半殺しにしてやったわ!』

 過激な奴だ。もしかして俺に似てしまったんだろうな。リックも過激だし。

「しかしN……ねえ。そんな名前をつける親はろくでもない奴に違いない」

『違いないわね。私もその名前の由来聞いてみたけど、名前書くとき一文字で済むからそう名前を付けたみたい。本人は優等生だから尚更不憫よね』

 酷い話だ。俺は【上品な】とかそんな単語の意味で名前を付けられ、親に恵まれているだけに同情してしまう。もっとも俺は上品さとはほど遠い過激な性格に育ってしまったが。まあそれがイリアと一緒にいられる理由だろうな。イリアの戦闘狂は優等生なんかが扱えるポケモンじゃない。イリアを扱うには猛々しさをも感じさせる野生の本能が必要だ。俺? 超人的なフィジカルの持ち主の時点で察しろ。

 

 

 

「それであれだな。そう、島キング達の大試練を乗り越えた後ホウエン地方でお前達に出会ったんだよな」

『また貴方とやってみたいものですよ。今度はジョウト将棋──通常の将棋に比べ駒の数が非常に多く、時間がかかる──でやりましょう。もちろん休憩なし、カゴのみもなしの条件で』

「睡眠不足で死ぬわ!」

 比較的決着のつきやすいポケモン将棋でも三時間かかったというのに、一番決着に時間がかかるジョウト将棋なんてやったら一ヶ月以上かかる。その間、寝ることは許されない。寝たら時間の関係上、負けてしまうからだ。眠りを覚ますカゴのみさえあれば睡眠も一瞬で済むが、それがないと一瞬で寝るだけでは済まなくなり寝れば敗北、起きれば睡眠不足で死んでしまうということだ。

『そんなことがあったのか……つーか、マネージャーさん、路上ライブといい、菓子作りといい何でも出来るよな? フィジカル面でもルックスでも優秀だし、弱点らしい弱点が短気で過激な性格くらいしかないと思うんだけど』

 ガブリアスのブリタがそう頷き、路上ライブのことを思い出させる。……過激なのはともかく短気と言われたのは初めてだが、それはおいておこう。

「いや釣りだけは苦手だ。実際イリアを釣り上げる時も釣りを初めてから5時間もかかった」

『釣りが苦手か……』

『思い出させないでよ……』

「俺は釣りするよりも他のことをしていればいい。この前のアローラ地方の島巡りの時にそう悟った」

 正確にはゴルダックを貸してもらうための釣りだ。ちなみにスイレンの試練はポケモンを釣り上げる過酷極まりない試練と思われたが、全てのポケモンが向こうから襲いかかってきて釣りすることなくバトルになり楽勝だった。

 

 

 

「そしてカロス地方でゴルメに出会った」

『懐かしいのう。あの時は世話になったわい』

 色違いヌメルゴンのゴルメが頭を下げる……しかしだ。それよりかやってもらいたいことがある。

「恩を感じているならスケベなところを直せ」

『嫌じゃ。エロはワシの生き甲斐じゃ! ワシの生き甲斐を無くすなんて考えられぬわい!』

「ギラギラ、やれ」

『承知』

 バンギラスのギラギラがにじマメを食べるのを止め、ゴルメの触覚を掴むとゴルメが必死にもがき、ぬめぬめした身体を利用して逃げようとするがギラギラの握力に逆らえるはずもなくじたばたするだけに終わる。

『マスターの命により、ゴルメを処する』

『ひぇぇぇっ!』

 ゴルメがギラギラに向けてきあいだまを放つが全くの無傷。無表情でゴルメを投げ飛ばしKOした。

 

 ……そう言えばギラギラはシロガネ山でゲットしたんだよな。あの時、ギラギラが全力の本気で来られたら俺達は完全に負けていた。どういうつもりか知らないがギラギラは俺を認めた。しかしギラギラと過ごしていた経験もあってかにじマメがなくなれば暴走する。しなくともかなり不機嫌になるのには違いないと予測出来る。

 

 

 

 にじマメを取り出しギラギラに渡すと残りの数が僅かとなり補充しなくてはならなくなり、手持ちに入れるだけで問題を起こしそうなゴルメとダン、それを制御できるマンダーとギラギラを置いて連れていく。

 要するに今の俺の手持ちはカイリュー(イリア)ガブリアス(ブリタ)サザンドラ(リック)の三匹だけだ。

 

『な、何故バカンスなのにこんなことを……』

 リックが身体を休めながら汗を滝のように流し続け、そう呟いた。

「しょうがないだろう。ポケモンドクターからも太りやすく痩せにくい体つきになっているのでとにかく運動をさせて代謝を良くさせるようにと口酸っぱく言われているんだから」

『サー、こんな真夏の環境で運動するなんてバカのすることです』

『暑いのは同意見だけど、ポケモンバトルに比べたらなんでもないわ』

『いやいやダンスに比べたら……』

 そして火花が飛び散る。どうして俺のポケモンはこうも騒がしいんだろうか。まあこのダンのだいばくはつやゴルメの痴漢行為に比べればじゃれあっているものだけどな。

 

『サー、あそこで何か騒がしくありませんか?』

 あそことは、もちろんこのカイリューとガブリアスのじゃれあいではない。となると一体何なんだ? その元凶らしき音に向かうと人が色違いのジャラランガを囲むようにざわめき合っていた。

「イラシャイ、イラシャイ! 今ナラ私こと色違いジャラランガの鱗、一つ6万円のトコロ5万円で売ってあげるアルヨ!」

 カタコトとはいえジャラランガが喋った!? 

『驚いたわ……ご主人やNのようにポケモンの意思疎通が出来る人間は見たことあるけど、人の言葉を話すポケモンは初めてよ』

「全くだ……」

 その呟きは周囲の声にかき消された。

「さあさあお得アルヨ! 皆買ってテ!」

 そして一人の女性観光客が鱗に手にし、口を開いた。

「ねえ、もっと安くならない?」

「アイヤー、お客さん綺麗アルネ。そんなお客さん私好きアル! 負けに負けて3万9800円にしちゃうアルヨ!」

 ジャラランガが話している女性はいたって普通の観光客でマダムという訳でも、主婦という訳でもない。美女かと言われると微妙なところだ。

「本当に!? じゃあ奮発して三枚買うわ!」

 それ故に弱いんだろうな。綺麗と言われて悪い気はしないはずだ。悪い気をするのであればそれは皮肉と受けとるか嫌味としか言いようがない。

「お客さん商売上手アルネ、特大サービスで三枚で9万9800円アルヨ!」

 三枚それを渡し観光客から10万円受け取ろうとするとサイレン音が響き、パトカーが人混みの前で止まる。パトカーから出てきた皆大好きジュンサーさんが逮捕状を取り出し口を開く。

 

「そこのジャラランガ、待ちなさい! 貴方を詐欺で逮捕します!」

 詐欺だと? てことはあの鱗本当は別のポケモンのものなのか? 

「何のことかわからないヨ。これはれっきとした私の鱗アル。言いがかりは止めて欲しいアルヨ!」

「貴方は色違いのジャラランガの鱗と偽りごく普通のジャラランガの鱗を売っているとの報告が入っていますので捜査します! アシレーヌ、ハイドロポンプ!」

 アローラ地方の初心者ポケモンの一頭であるアシマリの最終進化系アシレーヌを取り出し、ハイドロポンプを命令。ゴルメといいポケモン達はペンキを塗ることで変装するのが好きなのか? いやそれ以前にジュンサーが強引すぎる。無能な怠け者は連絡係にしろ、無能な働き者は処刑しろという諺を知らないのか? 

『くそっ、やむを得ないか』

 ジャラランガがかえんほうしゃを出し、ハイドロポンプの水を蒸発させると周囲に蒸気が漂い、ジャラランガの姿が見えなくなった……ざまあ。

「あのジャラランガ強いな」

『強いねご主人』

「イリア、やるか?」

『無論よ』

 ジャラランガの気配を探り、それを追いかけるとたどり着いたのは海。今からでも海を渡って逃亡しようとしていた。

 

 

 

「イリア、れいとうビームだ」

『おまかせ!』

 イリアのれいとうビームがジャラランガの周囲の海を凍らせ、動きを止めた。

『ちっ、しつこい奴らだ!』

 海によってペンキが剥がされたジャラランガがかえんほうしゃを放ちながら自身にまとわり付いた氷を溶かし、氷の上に立つ。

「おい、一つだけ言わせて貰うが俺は警察でもハンターでもない。ごく普通のポケモントレーナーだ」

『サーの身体能力から考えてごく普通のポケモントレーナーではなく、超人系ポケモントレーナーかと思われます』

「茶々入れるなリック。それでジャラランガ、俺の仲間にならないか?」

『儂らポケモンの言葉が通じる主人はありがたいが断る。儂は儂の信念がある』

「そう言うなよ……イリア、海に向けてれいとうビーム!」

『合点!』

 イリアのれいとうビームで周囲一面氷だったのが辺り一面凍りつき、氷上のステージが出来上がった。

 

 

 

「さて、これでまともに戦えるな」

 ジャラランガとイリアともに水の上で足をつけると、ジャラランガは水中に潜り込みイリアは空中に飛ばざるを得なくなる。イリアだけでなくカイリュー全体にも言えることだが特殊攻撃が苦手なのに対してジャラランガは万能型、つまり何でも出来る為に特殊攻撃同士の戦いだったらイリアの方が不利だ。

 故に海を凍らせ、擬似的に陸上のバトルステージを作らせそこで戦わせる。これこそがイリアの本領を発揮できる。

「イリア、げきりん!」

『どこに目ぇ付けとんじゃごらぁっ!』

 ドスの効いた声が響き、イリアがジャラランガに突撃していく。

『甘いっ!』

 しかしジャラランガがイリアのげきりんを真正面から受け止め、スカイアッパーを放つ。

『っ!?』

 スカイアッパーがイリアの脳を揺らし、ふらつかせる。……おいおい、イリアはワタルさんのカイリュー、それもマルチスケイルの特性のカイリューを倒した猛者だぞ? その攻撃を真正面から受け止めるだけでなく、脳を揺らしたとはいえ火力に乏しいスカイアッパーでイリアをふらつかせるのは相当なパワーがないと出来ない。俺のポケモンの中でもそんなことを出来るのはギラギラしかいないことから異常な強さが伺える。……あのジュンサー、運が良かったな。もしこのジャラランガが反撃してきたらなす術なく全滅し心を折られていただろう。

『トドメだ!』

『ぐうっ……!』

 ジャラランガがボディブローを撃ち、イリアを撃沈させる。

「イリア、お疲れ。ブリタ、出来る限り時間を稼げ。リックはあいつらを呼べ」

『サー、時間稼ぎだったら俺の方がいいのでは?』

 リックにモンスターボール等を渡すとリックが抗議する。

「リック、あいつは他のポケモンに比べてパワーが桁違いに高い。攻撃を受け止めて時間を稼ごうなんてしようものなら一撃で沈められる。あいつはギラギラと同じく非常識のポケモンだ」

 非常識のポケモン、人間でいうところの人外に相当する化け物だ。バケモンともいう。

『そこまで言うほどですか? サー』

「言うほどだ。さっさと行け!」

 リックをけしかけると慌ててその場から去ってブリタとジャラランガの二匹だけが氷上に立つ。

 

『もういいか?』

 ジャラランガがさきほどほじった耳くそを吹き飛ばし、声をあげる。

「待たせたな。ジャラランガ」

『構わん。どうせ時間稼ぎする前に終わる』

『嘗めているだろ……オイラのことを』

『儂は金がかかると恐ろしく強くなるんでな。覚悟した方が良いぞ』

「自分で言う──」

 言うか? と尋ねようとしたその瞬間、ジャラランガを見失ってしまった。

『ほう、やるじゃないか。儂の本気の動きについてこれたのはお前が初めてだ。ガブリアス』

『オイラの名前はガブリアスじゃない。ブリタだ。残念っ!』

 ブリタのドラゴンクローがジャラランガに炸裂するがジャラランガはそれを受け流し、涼しい顔をしていた。

 

「ブリタ、距離を取ってじしんだ」

 頭悪そうなこの指示はあまり飛ばしたくないがやむを得ない。それだけこのジャラランガが強い証拠だ。

『させるか!』

 ジャラランガがブリタの腕を掴む。ブリタの特性さめはだのお陰でジャラランガが傷つくがジャラランガの手から冷気が放たれる。それはれいとうパンチの合図だった。さすがにこれは不味い。

「ブリタ、げきりんだ」

『てめえの血の色は何色だーっ!』

 ブリタがジャラランガの顔に何度もぶつかり、ジャラランガが手を離してブリタを解放する。そして俺はその隙を見てハイパーボールを投げた。

 

『捕まるかよ!』

「まあそうだろうな」

 だがジャラランガはボールから出てしまう。これくらいは予想していた。その隙を見てブリタにラムのみを渡し混乱を治す。

『ありがたいぜマネージャーさん』

「気を緩めるな! 相手は化け物のような強さを持つポケモン略してバケモンだ! シロナさんのポケモンとは桁が違う!」

 ブリタはもっとも勢いのある地方チャンピオン、シロナさんのポケモンを6タテしているだけあってかなり強い。例えるならシロナさんのポケモンが幼稚園で一着になった奴とすればブリタは中学生チャンピオンだ。しかしこのジャラランガはジュニアもシニアも関係ないプロのチャンピオン。モノホンの本物だ。

「バケモンとは酷い言われようアル」

 人間の言葉で話すなよ。エセ外国人の話し方でシリアスな雰囲気が台無しだろうが。

 

『マネージャーさんが珍しくそう注意するってことは、マジにギラギラの兄貴の領域に達したポケモンか……』

 ブリタの目付きが変化し、俺の指示通りじしんを起こす。

『だから甘──なにっ!?』

 ジャラランガが跳び、じしんを回避するがその先には戦闘の時間が長引くほど捕獲率が高くなるタイマーボールが投げ込まれていた。そしてジャラランガは勢い良くボールのボタンを押してしまい、中へと収納されていく。ここでボールを握って無理やりゲットしようとは思わない。ブリタのような普通のポケモンならまだ良いがこのジャラランガはギラギラと同じくパワーがあってそんなことをしようものなら指が千切れてしまう。

 そんなことを考えているとジャラランガが再びボールから飛び出てしまい、また戦闘体勢になる

「危なかたヨ。出れたのは幸運だたネ」

 喋り方云々はともかく、余裕そうにしているだけマジに厄介だ。

 

 

 

「ブリタ、じしんを連発だ!」

『武勇伝、武勇伝、武勇伝でんでんででん!』

 ブリタのじしんがジャラランガの足元を揺らし、否応なしにジャラランガは跳び続けなければならない状況になる。タイマーボールで何回も捕まえようとするが、次第にジャラランガの動きが俊敏になっていく。

「そこのガブリアスは限界アル。アローラ地方特有の暑さに加え、じしんの多用、そしてげきりん。それだけやっていれば体力消耗するのは当たり前ヨ」

 そう言われ、ブリタを観察するとブリタが汗を流し、息を荒くしていた。考えてみればわかることだった。だが俺はブリタを過信し過ぎてそれを見逃した。

「なるほどな。それでも十分だ」

『何だと?』

「タイムリミットだ」

 その瞬間、遠くから放たれた熱線がジャラランガに直撃した。

 

 

 

『いった、い何が?』

「俺の最強の切り札、バンギラスのギラギラ。お前と同じ領域のポケモンだ」

 見えない距離から放たれる熱線などあいつくらいしかいない。

『まさかさっきサザンドラを行かせたのはそのバンギラスを呼ぶためだったのか?』

「バンギラスを呼ぶのは不思議でもなんでもない。当たり前のことだ」

『くそ、捕まってたまるか!』

 そしてタイマーボールの代わりにゴージャスボールを投げるとジャラランガが何故か、自らボタンを押して収納されていった。

「は?」

 どういうことだろうか。語彙力が失せてしまう程度に意味を込めて現状を理解しようとする。

 奴はゲットされるのを拒絶しており、態々俺にゲットされるメリットがない。ゴルメのように俺以外に誰かいれば話しは代わるが俺以外に周囲にはギラギラとマンダーしか存在せず、ギラギラやマンダーを見つけたならそれを把握して避けることくらいは出来たはず。はっきり言って態々捕まりにいく意味がない。どのくらいかというとリムジン種のギャロップにジョッキーが二人乗りしてその上でダブルコサックをするのと同じくらい意味がない。

 それなのに何故自ら飛び込み、捕まったのかが理解出来ず俺の頭がショートしていた。

 

 

 

「おいコラ。ジャラランガ」

 ジャラランガを問い詰める為にゴージャスボールから出す。

「ニーハオ。イヤ、コチの地方はアローラだたネ。私これから貴方のポケモンヨ、ヨロシクアル」

「シックだ。よろしく……じゃない。なんでわざと捕まったんだ?」

「長くなるから我々の言葉で話すヨ?」

「OK」

『金の匂いがしたからだ。それ以上でもそれ以下でもない。儂は硬貨を落とした音で判別出来るくらいに金が大好きでな。金持ちの象徴たるゴージャスボールを使うってことは金持ちか見栄っ張りのどちらかだ。しかしカイリューやガブリアス、バンギラス等の大型のポケモンは他のポケモンに比べ食費が嵩む。そんな状況の中、儂を捕まえるってことは金持ち以外に考えられん』

「とはいってもバイトは普通にするぞ?」

『それでも結構。一度金の匂いを感じたら金になるってわかっているからな』

 金、金、金ととにかくうるさい奴だ。ギラギラはにじマメでなんとかなるがこいつは現ナマで払わないといけないから面倒だ。

「なら、バイトお前も手伝えジャック」

 面倒とはいえ、ジャラランガことジャックは有能だ。手持ちに入れない道理がない。

『ジャックか。いいぞ、その名前。儂はこれからジャックだ!』

 気に入って何よりだ。

 

 それからゴルメと顔を合わせるとジャックがすぐに拉致して商売をしてしまったのは余談である。




後書きらしい後書き。
やっぱり時系列のまとめは大切ですね。


それはそうと、感想は感想に、誤字報告は誤字に、その他聞きたいことがあればメッセージボックスにお願いいたします。また高評価やお気に入り登録、感想を送ったりすると作者のモチベーションが上がります。


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閑話

これで過去編終了です。

なお時系列まとめ

イリア捕獲
→ハクリューに進化&ギラギラと遭遇
→主人公リーグ出禁&イリアと別れる&リックゲット
→アローラ地方にて島巡り&ダン捕獲&イリアと再会する
→ホウエン地方にて観光&マンダーゲット
→カロス地方にてゴルメゲット
→ギラギラ捕獲
→第1話~第7話
→ジャック捕獲
→第8話

今回はジャックを捕獲した後と第8話の境目くらいです。


 シックがジャラランガことジャックをゲットしているその頃。ポケモンリーグ本部では無駄に天井が高く広い部屋に地方チャンピオン達四人がここに集結していた。

 

「本部長、単刀直入に申します」

 カントー・ジョウト地方のチャンピオンワタルが話を切り出し、本部長に懇願する。

「何かね?」

「数年前にポケモンリーグから追放されたシック氏のポケモンリーグ出禁処分を取消を願いたい」

「それはならん」

「何故でしょうか!? 我々だけでなく世間が認める程の実力者です」

「奴には八百長疑惑があるが? ホウエンの推薦試合も八百長をしたのではないのか?」

「ふざけないで下さい!」

 ホウエン地方のチャンピオン、ダイゴが怒鳴り声を上げた。

「僕達は全力で戦いましたし、ゲンジさんも全力で戦い敗北しました。それを否定することはホウエン地方を侮辱することになります!」

「ふん、どうだかな」

 本部長が鼻で笑い、目を細める姿にダイゴは怒りを溜める。

 

「そもそもシックの出禁処分って、ポケモン窃盗による罪によるものでしょ? その罪は冤罪だって警察も言って謝罪しているから出禁処分も取り消すべきだと思います」

 イッシュ地方チャンピオン、アイリスが口を挟み、本部長に意見する。

「それとこれとは話は別だ。奴にはポケモンを使った殺人、暴行、詐欺の疑惑がある」

「そんな疑惑が?」

 この場にいるチャンピオン達が尋ねると本部長が答える。

 

「イッシュ地方のは知っているとは思うが、かつて騒動の原因になったサザンドラのトレーナーがシックが出所した時期に所持していたポケモン達に殺されている」

「そんな事件が……」

「そして例のサザンドラはシックのポケモンとなっていた。これが殺人の疑惑だ」

「暴行の疑惑は?」

「シック氏が所持していたカイリューの元トレーナーがそのカイリューに暴行された事件だ。全治6週間の大怪我だったそうだ」

「それはもはや関係ないのでは? むしろカイリューを手綱を握れなかったそのトレーナーの責任でしょう」

「それならまだいい。問題はそのカイリューがシックの下に戻っているということだ。つまりシックの指示で暴行した可能性があるということだ」

「こじつけ過ぎでは? そもそも彼が逮捕された際にそのような指示をする暇はないと思います」

 カロス地方チャンピオン、カルネが意見すると本部長が目をそらし、話題を変えた。

「そして詐欺だ。アローラ地方でヌメルゴンの油を法外な金額で売り捌いていたという情報が入った」

 この情報に全員がどよめく。それというのもこの場には地方チャンピオンしかおらず、各自の地方の情報を中心に共有しあっていたが、アローラ地方のシックの活動の情報に関してはアローラ地方のチャンピオンがいないためにほとんど入らず、身の潔白を証明する証拠がなかった為である。

 

 

 

「これだけ疑われている以上、彼の身が潔白になるまで処分の取消は出来ない」

「疑わしきは罰せずと申します。それに倣って出禁の取消もお願いします」

「君達勘違いしてないかね?」

「どういうことですか?」

「私はね、彼の人生を狂わせたことに責任を感じている。中途半端に身の潔白が証明されてもスキャンダルになりかねない。サカキ達のようにな。シックはまだ若くそんな状況になればポケモンリーグどころではない。そうならない為に今も尚、各地方に派遣した情報活動委員に彼の身の潔白になる情報を探してもらっている」

 この場にいたチャンピオン達が納得しかけたその瞬間、ノックの音が響き渡る。

 

 

 

「入りたまえ」

「失礼します」

 そして入ってきたのはこの場にいる全員が知る三人だった。

 一人目はシンオウ地方の元チャンピオン、シロナ。

 二人目はワタルの前任者でもあり、伝説として知られるレッド。

 そして三人目がレッドに抜かれるまで地方チャンピオン最年少記録を達成したグリーンだった。

 そんな三人を憧れるように見つめるアイリスだが三人はスルーして本部長に視線を合わせる。

「君達何のようかね?」

「本部長、年貢の納め時です。横領等多数の犯罪に手を染めたことにより貴方に調査が入ります」

「何を馬鹿なことを。証拠でもあるのか? え?」

「これだ」

 グリーンが取り出したのは音声テープ。それを再生しようとすると本部長が顔を青ざめ、取り返そうとする。

「寄越せ!」

「再生スイッチお~ん」

 そしてグリーンが無情に再生スイッチを押した。

 

 

 

 再生されると二人の男の声が響く。一人は本部長の声だった。

 [本当にいいのか? こんなに貰って? ]

 [構いません。その代わりシックというトレーナーを追放処分にしてください]

 [わかったわかった。てめえの息子が殺されたという疑惑でどうにか追放しておくよ]

 [ありがとうございます、先輩]

 

 

 

「これはその、アレだ! 貰ったのは金じゃなくオボンタルトだ!」

 本部長が慌てて弁解するが弁解になっておらずどのみち賄賂を貰い、特定の個人を冷遇させたことになる。

「本部長?」

 ワタルがキレ、カイリューを取り出そうとするがレッドがそれを手で抑えた。

「……」

「了解」

 レッドに促され、グリーンが再び音声テープを再生した。

 

 

 

 [でだ。あんたに協力してもらいたいのは市長にヌメラの色違い製造の工場の建設許可を促してもらいたい]

 [対価は? ]

 [5億円、これでどうだ? ]

 [ほう、5億か。悪くないな。だが条件がある。前払いで2億円払うのと表向きはポケモン研究所になるが構わんな? ]

 [構わん。むしろその方がありがたい]

 [よし取引成立だ]

 

 

 

「これはその、あの!」

「と言うわけだ。もちろんこの他にも音声はあるし、証言もあるぜ本部長殿?」

「くそっ! 捕まってたまるか!」

 本部長が取った行動、それはポケモンを使って逃亡するという悪あがきそのものだった。

「逃がすか! 俺の弟子を嵌めた報い受けてもらう!」

 ワタルが切り札であるカイリューを出すとこの場にいる全員が切り札のポケモンを出す。

「ホウエンを侮辱した罪償ってもらうよ」

「本部長、ケジメつけないとね。私だってケジメをつけたんだし」

「ワタルさんを止めるのはやめて私も参加させてもらうわ」

 現役と引退した地方チャンピオン達が本部長を囲う。そして本部長が取った行動はポケモンを四匹出し──

 

「お前ら全員フラッシュだ!」

 フラッシュを指示し、この場にいた全員の目を眩ませることだった。

「しまっ──」

 一匹だけならまだしも四匹同時にやられては流石のチャンピオン達も対応出来ず、目が閃光にやられる。

「さらばだ! 二度と会うこともあるまい!」

 そして本部長がポケモンをバラバラに逃がし、自らもそれに乗じて逃げる。地方チャンピオン達が目が慣れた頃には既に消えていた。そこにあるのは足跡と穴を掘った形跡のみだった。

 

「……逃がしたか。だが、これでポケモンリーグの膿は絞り取れた」

 この場で追いかけても無意味と悟り、全員がポケモンを収納した。

「第三者委員会に本部長の悪行を訴えればシック君のポケモンリーグ出禁解除は確定だね。彼は元本部長に一番被害を受けていたから」

「本当によかった……これでシックの今までの人生が報われる」

「アイリスちゃん、一時期は凄く落ち込んでいたものね」

 カルネがアイリスの頭を撫でるとはにかみ、笑顔を見せた。

「でもこれからは堂々と胸はって生きていけるわ」

 そしてアイリスが見せた笑顔は憂い事が完膚なきまでに消去された爽やかな笑顔だった。

 

 そして壁を打ち砕く轟音がその場に響いた。

「え? 何今の音!?」

 動揺したのはアイリスだけではない。地方チャンピオン達が警戒しポケモンを再び出す。緊張感溢れる状況の中、その正体が露になる

 

 

 

「いや~参ったわい。訳のわからんことを抜かしていきなり襲いかかってくるから何事かと……って、お主ら何でこんなところに?」

 そこにいたのはアイリスの前任者、つまり先代イッシュ地方チャンピオンのアデクとボロカスになった本部長だった。

「それはこっちのセリフだよ。僕達はとあるポケモントレーナーのリーグ出禁処分の取消を願いに来ていたんだ」

「何故過去形なんだ?」

「そこの本部長が逃げたんですよ」

「逃げた? 何かやましいことでもあるのか」

「簡潔にいうと賄賂をしていました」

「賄賂……まあそれ自体は珍しいことでもあるまい。かくいう儂も安い菓子の差し入れ程度の賄賂なら受け取ったことはあるしな」

「ええ。賄賂と横領によって懐に入った金額が判明している範囲内でも25億円」

「最低でも25億円もか。平均生涯賃金が3億円だと考えるとかなりの量だのう……それだけこやつが切羽詰まっていたのか」

 最後は聞こえぬようにボソリと呟き、本部長を見る。

「しかしアデクさん、何故ここに?」

「ん? ああ、ちょっとポケモンリーグ本部に用事があってな。その手続きをしに来たんだが、この様子だと出来そうになさそうだ」

「手続きとは?」

「全国にある孤児院や保育園の設立及び改築。そしてその経費についての申請手続き」

「ポケモンリーグが何故孤児院を?」

「寄付じゃよ。もっとも本部長が捕まったからその話も延期になりそうじゃが」

「……もしかして、こいつは寄付金を集める為にシックを貶めていた?」

「答えろ!」

 ワタルが本部長と呼ばれた男を無理やり叩き起こすと呻き声を上げながら答えた。

「そ……うだ」

「くそが!」

「がっ!?」

 ワタルが本部長と呼ばれた男を蹴飛ばし、不機嫌なまま椅子に座り口を開いた。

 

 

 

「……それで、どうする?」

「どうとは?」

「孤児院かシック、どちらを延期させる?」

「もちろん、孤児院だよ。それ以外に考えられる?」

「私もダイゴさんと同じ!」

「というか、皆孤児院の方を延期させるわよ? シック君のリーグ出禁を延期させる理由がないし、それをすれば批判を浴びるわ」

 カルネの意見に、事情を知らないアデク以外が頷き、アデクが口を挟む

「そのシックと言うのがお主達の出禁取消を願うトレーナーなんだな?」

「はい」

「もしかしてこの動画の対戦相手か?」

 そしてアデクが電子端末を取り出し、シック対シロナの動画を見せると全員頷いた。

「お主らが全員動くのも頷けるわい。こんな実力の持ち主がポケモンリーグの孤児院支援が理由で潰されたなんて知ったら孤児院の子供達が一生後悔することになる。儂もシックの出禁解除を早急にすることに賛成だ」

「そうか……やはり俺の考えは間違いじゃなかったか。なら早急に第三者委員会に連絡する。失礼」

「ちょっと待った。その前にお主らはシックのことをどう思っておる?」

 アデクがワタルを呼び止めるとワタルから順に口を開き答えていく。

 

 

 

「俺が誇る弟子だ」

 ワタルは簡潔に答えたが、その意味は深い。しかしシックを大切にしていることは確かだった。

 

「……超えるべき壁」

 それまで頂点に立っていた伝説のポケモントレーナー、レッドが新たに壁と認めた相手。

 

「革命家」

 そうコメントしたのはダイゴ。ダンのだいばくはつの印象が悪かったものの実力は評価しておりダイゴはその一言に纏めた。

 

「リベンジしたい世界クラスのポケモントレーナー。何が何でも勝ってみせるわ」

 シックとの戦いの後、自らチャンピオンの座を降りてまで修行に励んだシロナ。よく見ると頬がやつれていることからその修行の厳しさが伺える。

 

「これまでは被害者だったけど今はライバルよ」

 シックはアイリスの通報により人生が狂い、壮絶な人生を送らざるを得なかった。リーグ出場はもちろんジムバトルすらも出来ないポケモントレーナーにしてしまった。その責任を取る為にポケモンバトルを全力で楽しませたいと思う心がアイリスを動かした。

 

「無冠の帝王、いやそれだとシック君自身の状況になるから太陽の王子と言うべきかしら。だって彼のは日の出のように活躍するんだもの」

 無冠の帝王は言わなくてもわかるが実力があるにも関わらずタイトルに縁がない人物のことを指す。しかしカルネ自身はシックのことを太陽の王子と称し、期待している。

 

「俺は会ったないからなんとも言えないけど、楽しみだ。レッドにあそこまで言わせる相手と戦いたい」

 そして最後にグリーン。グリーンもアデク同様シックと面識がない。しかしレッドから聞かされた話ではバンギラス一頭でレッドのポケモン三匹を撃破した。グリーンもバンギラスをパーティに入れている以上負けていられないという思いもあった。

 

「似たようなものばかりだな……地方チャンピオンというのは儂に似るのか、儂が地方チャンピオンだったからその考えになるのかどちらか。儂はこのシックに会って戦ってみたいんだが、どこにおるかわかるか?」

「彼なら今、アローラ地方に行っているわ」

「カルネ、何でそれを知っているの?」

「それは当然彼が言ったからよ。シロナ」

 会心のどや顔! シロナは膝をついた! 

「そうかアローラ地方か。では早速行ってくる」

「え?」

 アデクが部屋を出ると即座に空港のチケットを買いに向かった。

「な、何にせよ俺も仕事をしなければな」

 ワタルの声で我に戻りチャンピオン達はその場を去っていった。

 

 

 

 

 

 

 そんな会談が終わり、話題となったシックはというと──カプ・レヒレと話していた。

「カプ・レヒレ、俺に島キングになれって言うのか?」

 シックがジャラランガZを袋に入れながらカプ・レヒレに尋ねる。

『そう、貴方にはそれを勤めるだけの実力があります』

「冗談いうなよ。確かにここを第二の故郷と思っているが、所詮俺は余所者。ポニ島の島キングにはなり得ない」

『ウラウラ島の島キングは余所者ですが?』

「クチナシのおっさんは例外中の例外だ。それにあの人はウラウラ島に永住している状態だから島キングに任命されても不満はなかった。しかし観光客の俺が任命されたらポニ島だけじゃなく他の島キングになろうとする連中は黙ってない。島キングになった奴が皆に認められるんじゃない。皆に認められた奴が島キングになるべきなんだよ」

『では次来る時は観光客ではなく永住民でお願いします』

「絶対に今度も観光客で来てやる」

 その後、シックとカプ・レヒレの不毛な言い争いがしばらくの間続いた。




後書きらしい後書き。
やべえ、過去編終わったら書くことがない……


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世界前哨戦
第17話 カントーに帰還


ようやく書けた……オリジナル設定出て来ます


『ねえ、ご主人。ジャックは大丈夫なの?』

陸地に着きお土産を買っているとイリアが不安そうにジャックを海のど真ん中に置いてきたことを心配する。今更心配してもどうしようもないだろうに。

そもそもだ、ジャックをあそこに置いてきたのは修行の為だ。世界に通用するレベルのジャックを強くするには俺の下で修行するよりもああして野生の勘を取り戻した方が強くなれる。

「あいつのことだ。何一つ問題ない」

『いやそうは言っても流石に……』

「あそこら辺の海域は金銀財宝を積んだ宝物船が沈没したあたりだ。今頃喜んで海賊船奪ってサルベージしているだろ」

その宝物船には大概、強いポケモンがいるというのが定番、しかもそいつはジャラランガのジャックとは相性が悪い(ゴースト)タイプだ。そういう奴らを抹殺して独り占めするのがジャックだ。

『いやそっちじゃなくて、ジャックが他の財宝を狙う連中と遭遇したら相手を沈没させかねないわ。それが海賊とか野良のポケモンならいいけど国とかだったら流石にご主人も庇いきれないんじゃない?』

「……そういえばそうだった。あいつを強くさせたいあまりそれを忘れていた」

何てうっかりミス。あいつに隠密行動を教えておくべきだった。

 

「いやその考え方の時点で間違いでしょう」

俺の心を読んだ!? 艶やかなこの女性の声は何度も何度も聞いたことがある。そうだ、ポケウッドだ。ポケウッドで聞いたんだ。ポケウッドと言えばあの人しかいない。

「お久しぶりですナツさん」

カントー地方のジムリーダーにしてポケウッドの名女優、ナツメさんだ。ナツメさんではなくナツさんと呼ぶのは間違いではない。公の場でナツメさんの名前を呼ぶと大騒ぎになりかねない。

「久しぶりねシック君」

ナツメさんが微笑み、手を振るその姿はまさしく優しいお姉さんと言ったところだった。

 

 

 

「それでシック君、報告があるわ」

「報告?」

「貴方はポケモンリーグ出禁を解除されたわ。おめでとう。そしてもう一つ、シンオウ地方チャンプ推薦試合に貴方が選ばれたのよ」

「……はい?」

『やったー! おめでとうご主人!』

おいおい、どういうことだ? 推薦試合ってことは試合をするのはわかる。だがその前に着いているシンオウ地方チャンプは何だ?

「あら聞きたい?」

「ナツさん、一体それは?」

俺の予想が正しければシンオウ地方チャンプを決めるポケモンバトルの試合に招待されたってことになる。

「まさしく貴方が考えているその通りよ。シンオウ地方チャンピオンが不在の今、新たな候補として二人浮かび上がったの。そのうちの一人がシック君、貴方よ」

俺が候補の一人か。考えられるのはあのシロナさんとポケモンバトルをした時の動画か。

 

「他の候補は?」

SPR(シンオウ地方ポケモンレーティング団体)のチャンピオン、オカ。私も一度戦ったことあるけど強かったわ」

レーティング団体の地方チャンピオンがポケモンリーグの地方チャンプになって統一しようって訳か。

「そのオカはどんなポケモンを使うんだ?」

「それは私の口からは言えないわ。だけど彼がタイトルを獲得した際の動画があるからそれを参考にしたらどうかしら?」

「一理ある」

もう一人の地方チャンプがどんな奴かこの目で見極める必要があるしな。

 

 

 

「まあシック君、積もる話はヤマブキジムでしましょう。案内するわ。そのカイリューを収納して」

 

イリアを収納するとナツメさんが優しく俺の手を包み込むように握る──とても柔らかで小さな手だ。俺は手フェチじゃないがこの手を見るとナツメさんを守りたくなってしまう。何を守るかはわからないがナツメさんに握られるとそういう母性愛が出てしまう。そんなことを考えていると景色が変わり、ヤマブキシティにテレポートしたと認識出来た。

 

「……」

「どうしたナツメさん?」

「……シック君、その気になるから私のことを考えないで」

「?」

ナツメさんが顔を紅潮させ、そう呟く理由がさっぱりわからない。俺がナツメさんのことを考えるなんて当たり前のことじゃないか。

「だからっ! 考えないでって言ったでしょっ!」

いでっ! なんだ、内臓が揺れている……?

「ポケモンバトルでどうしても勝ちたい時に使う必殺技、内臓揺らしよ」

それはリアルファイトだから反則だろ……

身体の中に眠るエネルギーを使い、内臓を元の場所に戻す。この技は故郷でよく使われる技だ。身体のエネルギーを別のエネルギーに変換し循環させることで身体能力の向上や身体の異常を治すことが出来る。この変換されたエネルギーを気と呼ぶ。

「えっ、何で超能力が効かなくなっていくの?」

内臓全体を気で覆い、超能力を無効化──というか押し返している──するとナツメさんが驚愕の声を出した。

「……ナツメさん、超能力で内臓を引っ掻き回さないでくれ。気を使えば何でもないとはいえ、不意討ちにやられると結構痛むから」

「と、とにかくヤマブキジムへようこそ。そこに座って待ってて。今お菓子とお茶を持ってくるわ。洋風と和風どっちが良いかしら?」

「洋風で」

いそいそとナツメさんがその場から姿を消す。

 

……しかしレーティングの方のシンオウ地方チャンプか。オカは間違いなくポケモンバトルの経験は豊富で、様々なポケモンを使ってくることは違いない。

レーティングの地方チャンプになれる条件はリーグの地方チャンプとは違って、一定の期間内の間にレートの点数が最高者のみがなれるというものだ。このレートというのは言わば自分の持ち点で、ポケモンバトルで勝てばレートの数が増え、逆に負けると減る。つまり勝てば勝つほどレートが上昇するので上位者達はポケモンバトルをしまくる戦闘マシーンとなる。

ただし対戦回数があまりにも多く負けることもしばしばあり、最高点者、つまりこの場合なら地方チャンピオンが変わりやすいのも特徴の一つだ。それは世界でも変わらず、今のレーティング団体は群雄割拠の戦国時代と言える。

 

『ご主人、バトルする場所があるんだからそこで戦わせてよ』

『イリアさん、少しは落ち着きなさい。ジムリーダーに許可を貰わなければ話になりません』

『えーっ!?』

イリアとマンダーがモンスターボールから出て、口論し合う。

「ところでマンダー」

『何でしょう?』

「お前の指示がイリアに100%伝わると仮定してイリアがジャックを打ち負かすことは出来るか?」

『……イリアさんだけでは無理でしょう。予想以上の戦果を挙げたとしても不可能ですね』

「相性の良いお前自身でも無理か?」

『ええ。残念ながらメガシンカした状態の私のギガインパクトが炸裂する前にジャックさんのれいとうパンチでイチコロです』

「それもそうか。じゃあギラギラ以外で一番勝ち目があるのは誰だ?」

『ダンさんです』

「ダン? あの爆弾厨のメタグロスがか?」

『ダンさんはレベルこそ私達に及びませんが相性は悪くありません。私の指示が100%通れば勝てます』

「そこまで断言するか?」

『まあもっとも彼の性格上、だいばくはつをしなければわるあがきしかしなくなりますから無理ですよ』

 

マンダーがそう告げ、ボールの中に戻るのを見て俺は大人しくなったイリアをボールの中に収納する。

 

マンダーの言うことはわかるが、ダンがジャックを打ち負かすなんて想像が出来ない。想像出来るのはジャックの背中にしがみついてだいばくはつをする姿だけだ。それでよくて相討ち、悪くて犬死にだ。そんな奴が果たして百戦錬磨の猛者であるオカに対応出来るだろうか、いや出来ない。

 

これから戦う相手はチャンピオンがコロコロ変わるとはいえレーティング団体の現地方チャンピオンだ。ジムリーダーのポケモンバトルの平均が一日あたり4戦という緩い中、あいつらは15戦は当たり前にこなす。その地方の頂点相手に同じ強さのポケモンを使ってポケモンバトルで勝てるかと言われれば無理だ。ならありとあらゆる合法的な手段を使って勝つしかない。人はそれをラフプレーヤーというのだが。

 

 

 

「お待たせシック君」

ナツメさんが宙に浮かせたポットの中身をいつの間にか置かれたティーカップに注ぐ。

「さて、ポケモンリーグ出禁を解除された理由を話しましょうか」

「ぜひお願いしたい」

 

「ポケモンリーグは二つに分別されているのは知っているわね?」

NPA(地方ポケモンリーグ協会)WPA(世界ポケモンリーグ協会)のことかい?」

「それであっているわ。そのNPAの本部長──つまり幹部の一人が権力を使って貴方を無理やり出禁にさせていたわ」

 

……おいおい、そんな奴が本部長って世も末だな。俺が想像していたのはそれよりも一ランク下の幹部かと思っていたんだが。

「シック君が唖然とするのも無理ないわ。本部長は会長、副会長に次いで高い役職、つまりその組織団体のNo.3がなる役職……そんな人間が利益にもならない一人の人間の為に固執する訳がない……そう考えているでしょ?」

「ええまあ」

そこらの末端幹部あたりがやっているものだと思っていたからな。

「ところが竜の里との闇取引が明らかになって貴方はその犠牲にされていたわ」

「犠牲だと?」

そんな犠牲はリーグ出禁くらいしか……いやそれか?

「それよ。竜の里は貴方をリーグ出禁にするように取引して看板に泥を塗らないようにする代わり多額の寄付金を提供していたわ。だけど元本部長がしていたのはそれだけじゃなくヌメラ製造工場の建設にも関わっていた」

「あれに関わっていたのか!?」

思わず立ち上がり大声を出してしまう。ヌメラ製造工場とは色違いかつ隠れ特性のヌメラを大量生産する工場だ。表向きはポケモン研究所というものだったがその実態はゴルメの子供達を必要ないからという理由で殺しまくるという極悪非道な施設だ。その施設の建設に関わっていたということはゴルメの仇敵でもある。どこまでもふざけた野郎だ。

「ええ。でも貴方がそれを潰してくれたおかげで彼の悪行が明らかになった。その功績を称えてNPAは貴方の出禁を解除しただけでなくSPA(シンオウ地方ポケモンリーグ協会)の暫定チャンピオンに任命されたのよ」

「なるほど。その暫定を外すには別の団体のチャンプを負かす必要がある……ということか?」

「ええ。公式試合で何も実績を残していないシック君をいきなり地方チャンプに任命するのは問題があるらしいわ」

「それでレーティング団体の地方チャンプと戦えってことか」

「そう。貴方が勝てば正式なチャンピオン、負ければ何も残らない文字通り人生を懸けた大勝負……だけど大丈夫。貴方は私の応援があるから」

「イガミ技──イカサマのこと。この場合ナツメさんが読心術とテレパシーを使って相手の行動を先読みして教えたり、相手の腹を痛めたりすること──は止めてくれよ?」

「ふふっ」

いや微笑んでないでマジで止めてくれ。そんなことをしても嬉しくないし実力で勝てる。

 

 

 

「最後にシック君、貴方に予言するわ」

「予言?」

「まあ予言といっても占いみたいなものよ。……二日後に空港に行って茶髪を織り混ぜた赤髪を後ろに束ねた男性を呼び止めると良いことがあるわ」

やたら具体的だな。

「どの空港だよ……」

「カントー地方の空港よ。それ以外にも赤髪の男性がいるけど、茶髪を織り混ざっていないから別人だから注意して」

そんな赤髪の奴らが頻繁にいるのか? いやカントーや俺の故郷じゃ珍しいがイッシュやカロスじゃそういう髪の奴らは多かったな。とりあえず空港に行ってその男を探してみるか。




オリジナル設定解説
★NPA
・地方ポケモンリーグ協会のこと。ワタルやシロナなどの世間一般でいう地方チャンピオンはこちらのチャンピオンのことを指す

★NPR
・地方ポケモンバトルレーティング団体のこと。NPAとは違いこちらはレート戦で行われ、前期間でレートが最高だったトレーナーがチャンピオンとなる。早い話、ゲームにおけるレーティングバトルのようなシステム。


後書きらしい後書き。
やっちまったよ……オリジナル設定の盛り付けを!


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第18話 二人の赤髪

ようやく書けました。

追記:このサブタイを【第18話】から【第18話 二人の赤髪】に変更しました


ナツメさんから予言を告げられ空港にて俺は赤髪の男を探していた。

 

「確かに二人いるな、おい……」

赤髪の男は確かに二人いた。一人は元イッシュ地方チャンプのアデクさん。

 

アデクさんがチャンピオンだった頃の経歴については語るまでもないが、その後の活動について知る者はサカキほどではないにせよ少ない。カントーに来た理由が解せないがおそらく放浪の旅をしているんだろう。金はあるしな。

 

「もしかして──」

「君、どうかしたか?」

そう口を開こうとするともう一人の赤髪の男が俺に話しかけてきた。

もう一人の男は俺も知る慈善家であり、ホロキャスターを開発したフラダリラボのフラダリ。

 

フラダリは善人で困っている人々を助けたりしており、フラダリラボで稼いだ金を慈善事業に使っていた。しかしフラダリが急に姿を消すと何故かフレア団の活動は著しく低下し、今やフレア団と名乗るだけで嘲笑われるほどだ。

 

俺はその当事者じゃないから推測でしかすぎないがおそらくフレア団の長はフラダリだ。

 

フレア団と言えども所詮は組織だ。裏にはちゃんとしたスポンサーがいる。俺の見立てではロケット団やリーグ関係者と関わりがあると思っていたが金の動きがそれとは無関係で必要最低限の動きしかしてなかった。

 

しかしだ。フラダリラボとフレア団の金の動きがほぼ同時に動いていた。つまりだ、フラダリとフレア団は大きく関わっている可能性が高い。

 

フラダリの性格から考えてフレア団に投資するような人物じゃない。そもそもフレア団は頭の逝かれた宗教団体で自分達が助かれば良いという自己中な奴らだ。入団条件がリーダーにスカウトされるか500万円持ち込むかのどちらかしかない時点でお察しだ。フラダリの心境から言えばそんな奴らを抹殺したいに決まっている。

 

 

 

何故リーダーなのかという根拠は、フラダリが善人でフラダリの良心につけこみ脛をかじる奴らが絶えず、嫌気を指して世界を壊そうと考えたじゃないのかと言う推測と、フラダリが消えた途端に動きが鈍くなったのが理由だ。

 

 

善人は善い事を行う人物と書いて善人だ。行動しなければ慈善活動も出来ないから善人は行動力が高いと言える。そんな人物が歪んだらどんな行動を起こすかわかったものじゃない。他人任せにせず自ら行動しなければ気がすまないのも善人──というか慈善家の特徴だ。そんな人物が他の組織に任せるなんてことをするはずもなく自ら率先して組織を動かすに決まっている。

 

 

そしてもう一つの理由、フラダリが消えた途端にフレア団の動きが鈍くなったという点だ。フレア団は地方を代表していた犯罪組織団体だ。仮にフラダリがフレア団のリーダーでなかったらスポンサーであるフラダリがいなくとも、徐々に弱体化してじり貧するのは確かだが暫くの間活動し続けられる。地方を代表するまでに育て上げた優れたリーダーがいるのだからな。

しかしスポンサーがなくなった途端にフレア団の活動が一気に低迷し始めてしまった。そういう時に備えて別の方法で金を集めたりするのが組織としての在り方なんだがそれをしなかった。フラダリがリーダーでないとしたらいくら何でもそのリーダーはずぼら過ぎる。つまりフレア団のリーダーはフラダリである可能性が高い。

 

ロケット団はほぼ全員がサカキに忠義を誓いサカキを求めていたから一度壊滅しても復活したが、フレア団は自己中の集まり。そんな奴らがフレア団を纏めることは出来るはずもなく壊滅寸前まで追い詰められている。

 

 

 

「いや、少し考え事を。お気遣いなく」

 

そのような男とは関わりたくない。フラダリが犯罪組織のリーダーかどうか以前にまず慈善家が苦手だ。

それというのも俺はただなんとなく救える者を救う偽善者と名乗るのも躊躇う暗躍するダークヒーロー擬きの類いでしかなく、フラダリは出来る限り人々、それが例え悪党であったとしても助けようとする慈善家だ。

 

フレア団は500万円持ち込めば団員になれるという掟から悪人でもなれると言うことだ。これが普通の悪党なら金蔓くらいにしか思っていないとしか認識していただろう。しかしフラダリのような善人がリーダーだとそいつらを殺すかもしれないと考えられれば、逆に救おうとしているのではないかと勘ぐってしまう。

 

俺がそういう奴らと合わないのはそれで、悪党すらも救おうとする心が行動を読むのに邪魔だとしか言い様がなく、やりづらい。根っからの悪人処刑人だよ俺は。

 

「そうかね? 私はこういう者だ。もし何か困ったことがあったらここに連絡してくれ。それでは失礼する」

フラダリがそう告げて名刺を渡してその場を去る。その裏にはポケットがあり一万円札が折り畳まれ収納されていた。

 

 

 

「随分古典的なスカウトだ」

 

あくまでもフラダリは善人を求めているって訳か。もし良心のない小悪党やフラダリを警戒している奴らはこのまま受け取って何もなかったことにする。俺はまさしくそれだ。しかしジャックのような守銭奴あるいは極普通の一般人ならフラダリに金を返す。どちらにせよ選別しているのは確かで来ても来なくてもフラダリにとっては得にしかならない。

 

「さて行くかね」

 

俺はアデクさんの目の前に立ち、視線を合わせる。そしてこう告げた。

「ポケモントレーナー同士視線が合ったらポケモンバトル。元地方チャンプならわかりますよね?」

「地方チャンプとはいえ現役を引退した儂を知っているとは面白い奴じゃのう」

「そりゃイッシュ地方で旅していた時に否応なしに貴方のことが話題に上がりましたから」

 

「何か照れ臭いものがあるわい。太陽の王子殿」

「俺の二つ名は無冠の帝王ですよ」

アデクさんに付けられそうになった二つ名をバッサリ否定する。バトル施設を多様していたって訳でもなく、ましてや天候が快晴以外の状態で苦戦するって訳でもなければ、快晴なら圧倒的な強さを見せる訳でもない。だから太陽の王子なんて二つ名は不似合いなんだよ。

 

「カロスじゃそう呼ばれているのに知らんのか?」

「俺はまだタイトルを獲得していない。それはカロスでも同じです」

「カルネ曰く、日の出の太陽のように活躍するんだそうだ。心当たりないのか?」

…………有りすぎる、物凄く。

「その様子だとあるのか。まあシロナを倒した時点で活躍していたのは確実だからの」

アデクさんが笑い、モンスターボールを取り出す。

 

 

「いくぞ、ウルガモス!」

アデクさんが取り出したポケモンはウルガモス。虫であるにも関わらず、炎でもあるこのポケモンはかつてレーティング団体で流行り、重宝されていた。その理由はアデクさんが使っていたというのもあるが、ちょうのまいを覚えるだけでなく特性にある。

ウルガモスはほのおのからだという特性でこれを持つポケモンを物理的に攻撃すると火傷を負ってしまい時間が経過する度にダメージを負うだけでなく物理攻撃が弱くなってしまう。火傷を負う確率が100%ではないのが唯一の救いだがそれでも戦いたくないのは確かだ。

 

しかしここ最近ではファイアローと共にタマゴ孵化要員として活躍していてレーティング団体から姿を消し始めている。それと言うのもファイアローの4倍弱点であり同時にウルガモスの4倍弱点でもある岩の技を覚えるポケモンが増えたのと、妖使いが増加しているからだ。

 

何故岩の技を使うポケモンが増えたかというとそれはファイアローがあまりにも強すぎたからだ。具体的にどう強かったかは割愛させてもらうとして、ファイアロー対策に岩タイプの技を搭載して一撃で何がなんでも仕留めると意気込むトレーナーが続出。その結果、ウルガモスも巻き添えになり活躍する機会が減ってしまった。

 

そしてもう一つの理由、妖タイプの台頭により、毒や鋼といった弱点をつけるポケモンが必要になり始めたが、ウルガモスはそのどちらの技も覚えない。精々炎の弱点である草複合の妖タイプしか倒せないだろう。それならファイアローやリザードンといった高火力のポケモンやミミッキュキラーのカエンジシ──カエンジシは炎・無の二つのタイプで唯一ミミッキュの一致技を半減以下に押さえられるポケモン──の方が良い。

 

 

 

「と、なればお前しかいない──ん?」

俺がマンダーのボールに触れるとダークボールが揺れた。ダークボールの中に入っているのはギラギラのみで、それ以外俺の今の手持ちはモンスターボールの中に収納されている。

「このバトルで勝ってもにじマメは出ないぞ?」

ボールが一回だけ揺れ、それが本気だと悟った。

「よし、わかった。お前に決めたギラギラ!」

通常のバンギラスを遥かに上回る巨体の持ち主ギラギラがウルガモスの前に降臨した。

 

「それが噂に聞くバンギラスか。相手にとって不足なし! ウルガモス、ちょうのまい!」

「ギラギラ、いわなだれ」

早速ウルガモスにちょうのまいを指示してきたが、俺はギラギラのいわなだれでねじ伏せる。まさしく瞬殺だった。

「今のいわなだれ、雪崩というよりも津波じゃのう……」

アデクさんがそう抗議じみた疑問を俺に投げ掛ける。ギラギラのいわなだれは通常のいわなだれに比べ2倍以上の量があり、通常のポケモンでは逃れることが出来ない。唯一それを避けることが出来たレッドさんのリザードンが優秀だと考えさせられる。

「さあ次のポケモンは?」

「んなものないわい。儂はこのウルガモスのみと旅をしている。大体この一匹でどうにかなる」

アデクさんがげんきのかたまりを取り出し、ウルガモスを瀕死状態から正常に戻す。

 

 

 

「さて、ポケモンバトルに負けた以上儂は所持金を渡さなければいけないのだが……この通りだ」

アデクさんが財布を下に向け振るうが一円たりとも出なかった。

「しかし元地方チャンプが所持金がないから払えませんでしたという訳にもいかん。そこでこれをやろう」

アデクさんがそう言って手に渡したのは謎のアイテムだった。

 

「これは?」

「儂にも良くわからん。しかしポケモンに持たせると何か効果があるといわれている。お守り代わりにギラギラに持たせておけ」

お守りか……まあギラギラに持たせる道具はじゃくてんほけんと決めているが、こいつも持たせてみるか。

「ではな。もしそれの効果がわかったら教えてくれ」

 

アデクさんがそう言ってその場を去り、俺もこの場を去ることにした。




ネタバレ
アデクから渡されたアイテムはオリジナルのアイテムです。チート道具の一つとも言えます。

後書きらしい後書き
シック「オリジナル設定ばかりで大丈夫か?」
作者「もう手遅れだ。問題(しか)ない」
シック「問題ありすぎぃっ!」


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第19話 R団とダン

更新遅い上に焦らすようですみません……


シンオウ地方に向かう前に俺はある男と会っていた。いや遭遇してしまった

 

「君が今話題のポケモントレーナーか」

目の前にいるのは黒尽くめの中年男性でカントーの誰もが知る犯罪者だ。

 

「俺に何の用だ? 元R団のリーダー、サカキ」

「そう睨むな。私はお前を害を与えに来た訳じゃない」

じゃあ何だというのだ? そうアイコンタクトを取るとサカキが口を開く。

「私は君に礼を言わねばならない」

「礼?」

俺はサカキに何かしたかと言うと何もしておらず、むしろ初対面だから礼もクソもない。ポケモンバトルで恐喝するのか?

 

 

 

「君がイッシュ地方にいた時の話だ。R団元団員のナサオが君に助けられたと聞いた」

「R団を助けた覚えはないが?」

「ナサオは君が助けた時には既に辞めていたんだ。しかし私とは未だに接点があり、君に会えたら自分の分まで礼をして欲しいと頼まれたからな。本来であれば私と共にナサオが礼を言うべきなのだが、ブタ箱*1の中で言いたくても言えない。だからこうして私だけが君に礼を言いに来た」

「ブタ箱にいたあのおっさんか。確か囚人番号1125だっけか」

 

あのおっさん元団員だったのか。穏やかで優しかったからとてもポケモンマフィアに所属していたとは思えないんだよな。そういう奴は、不器用すぎてR団に所属することになったのか、あるいは丸くなったのかのどちらかだ。おそらくおっさんは前者だろう。

 

「思い出してくれて何よりだ。彼は優秀なポケモントレーナーで幹部候補までなった男だ。しかしある日、ポケモンバトルによる過失致死*2というポケモントレーナーにとって永遠に償っても償いきれない罪を犯してしまった」

 

だからあの時、死んだ目をしていたのか。

 

「ポケモンマフィアに限らず極道の世界において過失致死は当たり前のことだが彼は優し過ぎ、R団のような極道の世界に生きるべき人間ではなかった。ポケモンバトルが得意でもR団に入るべき人間ではなかったのだ!」

 

さらっと怖いこと言っているなこのおっさんは。過失致死は誤って殺してしまうの意味だが、こいつらにとって「過失致死=罪の軽い殺し方」としか思っていない。邪魔な存在であれば排除するのは理解出来るにしてもそれを堂々と言うあたり恐ろしい。俺だって邪魔な存在は証拠が残らないように手順を踏まえて暗殺するというのに。

 

「それにも関わらず私は彼をスカウトしてしまった! 私は彼を救うことが出来なかった……」

「サカキお前……」

「しかし私ではどうすることも出来なかった。それを君の一言で彼を立ち直らせることが出来た。だから感謝している。ありがとう」

頭を下げ、礼を言うサカキ。部下の為にここまでやる人間はそうはいない。ナサオさんはサカキの教え子なのだろうか。

 

「さて、彼から君に一句預かっている」

「一句?」

「サザンドラ 主求めて 目の前に」

人のことは言えんがあのおっさん相変わらずポケモン川柳下手くそだな。だがシンプルで率直だから言いたいことがわかる。

 

ナサオさんには俺がブタ箱に入った経緯を教えている。その理由は俺がブタ箱に入られる原因となった竜の里出身独特の臭い、いや雰囲気というべきか。それが全く感じられず、話したところで状況が変わる訳がなかったからだ。

 

さてそんなことよりこの俳句を意訳すると「貴方が捕まえたサザンドラは真の主人を求め、貴方の前に現れるでしょう」という意味になる。もうとっくに出会っていてリックを俺の持ちポケモンにしているから今更感が酷い。

 

 

 

「なら俺も一句詠もう」

そういって筆を取り出し、少し考え筆を走らせた。

「今はもう ボールを放つ 戦場(いくさば)に」

やはり微妙だが俺はセンスがないからこれくらいしか出来ないんだよな。しかし詠まない訳にはいかない。これはナサオさんだけでなくサカキにも伝えたいからだ。

 

「サカキ、俺が何故こんな俳句を作ったかわかるか?」

「何故かね?」

「それはこういうことだ」

メタグロスのダンを出し、ポケモンバトルをするように促した。

「そういうことか」

 

サカキが納得してくれて何よりだ。ナサオさんに伝える意味としては「もうサザンドラは捕まえてポケモンバトルをしていますよ」という風になるがサカキの場合だと「ポケモンバトルしようぜ!」という意味になる。

 

「ポケモントレーナー同士目があったらやることはわかっているよな?」

「良いだろう。アローラ地方でR団を復活させる前哨戦になる」

 

アローラで復活するつもりなのかよ。アローラにはスカル団という田舎チンピラくらいしかおらず対抗勢力になり得ない。むしろ吸収されるのがオチだ。

地元警察? クチナシさん以外の奴らは頼りにならん。国際警察を呼ばないとR団に対抗出来んよ。

 

「サカキ、アローラ地方に手は出させねえよ」

 

なにがなんでもここで止めなくてはアローラ地方は終わる。カプや伝説達の対策もされ、捕まえられるだろうな。

 

「なら俺を止めてみろ!」

 

そしてサカキが出したポケモンはハガネール。名前の通りタイプは鋼と進化前であるイワークの地面の複合タイプ。分かりやすくいうと鋼・地の二つのタイプだ。炎、水、闘が良く効き、物理防御の高いハガネールを倒すには特殊攻撃が良く効く。しかし闘の技で特殊攻撃であるのはきあいだまくらいしかあらず実質炎と水タイプの技に頼ることになる。

 

しかしハガネールは見た目の割に物理攻撃が微妙で弱いという訳ではないがガブリアスやカイリューのように特別強いという訳ではない。

 

「いきなりハガネールかよ」

「当然だ。かつてのシンオウ地方チャンプ、シロナを、それもガブリアス一頭のみに指示して倒した男と戦うことなると予想していたからな。もっとも手持ちは二体だけだが」

嘘を吐け。もしもの時の為に予備のポケモンを持っているだろ。そうでなければR団のリーダーなどやれるはずもない。それを口にしないのは俺の優しさだ。

「それでは始めようか」

 

 

 

「ダン、グロウパンチだ!」

『爆っ発っ!』

グロウパンチでハガネールに攻撃するが2割程度のダメージしか与えられず、ハガネールが攻撃する。

「ハガネール、じしんだ!」

タイプ一致のじしん技とはいえハガネールの攻撃力では普通のメタグロスでも8割前後削るくらいだ。

「ダン、もう一度グロウパンチ!」

『またかよっ!』

文句を言いながら、ダンがグロウパンチを放つ。仕方ないだろう。ハガネールは鋼で無のだいばくはつが効きにくいんだから。

「こっちもじしんだ!」

サカキのハガネールがダンに向けてじしんを放つ。しかしそれを予測していたダンが俺の指示を待つことなく宙に浮いていた。

 

『てめえのせいで爆発出来ねえんだから、退場しろやぁぁぁっ!』

ダンのいつもの暴走癖が始まり、グロウパンチでハガネールを攻撃する。そしてそれが決め手の一撃となりハガネールが倒れた。

 

「流石だ……あのハガネールを倒すとはそのメタグロスも鍛えているようだ。ドリュウズ、出番だ」

ドリュウズはハガネールと同じく地タイプでありながら鋼タイプの持ち主で、だいばくはつの威力を半減する。それを見たダンが口を開いた。

『あ゛あ゛あぁぁぁぁぁっ!? ふざけんなカス野郎がぁぁぁぁっ! 芸術的な爆発が出来ねえだろうがぁぁぁぁっ!! 第一てめえはブリタに対して対策してねえのかよおぉぉぉぉっ!』

 

ドリュウズを見た瞬間ダンがキレて、大暴れ。グロウパンチで何度も殴り蹂躙する。ダンは確かに爆弾厨と俺が呼んでいるほどだいばくはつが好きでどうしようもない。しかし最近は無タイプを半減以下に抑えるポケモンに対してだいばくはつを指示しないことに気がついて、そいつらに対してキレる。しかし一体でも等倍以上に効くポケモンがいれば話は変わりすぐにだいばくはつをしてしまう。

しかしダンの言うとおり、じしんを覚えるブリタを警戒しているなら鋼タイプを出す筈がない。やはり三体以上持っているな。

 

 

 

しかしそれとこれとは別でサカキが持っている──つまり、二体までしか出さないと宣言している以上、二体目であるドリュウズが戦闘不能となった為に決着が着いた。

『つまんねえことしてんじゃねえよ』

散々暴れ回ったお陰かモンスターボールに戻っていくダン。これでも大人しい方で酷いときにはトレーナーに向かってだいばくはつをしようとするからな。その時はギラギラやリックを使って止めるけど。

「流石だ。その個性の強いメタグロスを扱えるとはな」

「後半は何もしてなかったけどな。あれは勝手にやったことだ」

「そうか……そう言うことにしておこう。さらばだ。約束通りアローラ地方には手を出さん」

サカキがドリュウズを収納し、その場を去った。

 

 

 

しかしダンが暴れたことによる磁力の乱れが別世界の穴を作ることに影響したのかは不明だが、別世界のサカキ達率いるRR(レインボーロケット)団がそこから現れアローラ地方が支配されかけるのはまた別の話だ。

*1
刑務所のことをシックやマフィア団体はそう呼ぶ

*2
ポケモンバトルで誤って人にダイレクトアタックしてしまって殺してしまうこと




後書きらしい後書き
FPSハマり過ぎてポケモンやる時間がない……

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第20話 音速のジム巡り

最近この小説しか更新してねえ……


シンオウ地方にて、俺は音速を超える勢いで爆走していた。

 

「邪魔だおらぁぁぁぁっ!!」

本来いあいぎりで切るべきであろう木を手刀でぶった切り、いわくだきで砕く岩を右ストレートで粉砕し、かいりきが必要な岩をぶっ飛ばし、なみのりが必要な海は水切りの要領で走って移動していた。

 

その理由は、チャンピオンの推薦試合にはその地方のジムバッチを8個集めなければならないらしく慌てて集めているということだ。

 

本当ならシンオウ地方のジムリーダー全員纏めて相手にしたいところだがそれは掟上無理だ。ジムリーダーは基本的にそれぞれのジムで戦わないとジムバッチを渡すことが出来ないらしい。一部例外もあるが、基本的にジムリーダーはほとんどその街から出ることはなくジムのある街に向かわないと会えない。

 

だがその例外もある。修行の為に別の街のジムリーダーと切磋琢磨する場合なんかは別の街に滞在していて例外的にジムバトルをすることができる。

 

その例外というこで二人の女性ジムリーダー、スモモさんとスズナさんがマルチバトルで相手にしてくれることになった。

「ではよろしくお願いいたします!」

スモモさんとスズナさんが同時にお辞儀をし、そうハキハキと声を出す。

 

 

 

「ゴウカザル、任せましたよ!」

ゲストであるトバリジムのジムリーダー、スモモさんが取り出したポケモンはゴウカザル。ここシンオウ地方の初心者ポケモンの一匹であるヒコザルの最終進化系であり、物理特殊問わない高速アタッカーとして知られるポケモンで地方世界問わずレーティング団体では隠れ特性のバシャーモが発見されるまでの間活躍していた。

 

「マニューラ、遠慮はいらないよ!」

ここキッサキジムのジムリーダー、スズナさんが出したのはマニューラ。こいつは氷タイプとして最速の物理アタッカーであり、俺の持ちポケモンのうち三体──イリア(カイリュー)マンダー(ボーマンダ)ブリタ(ガブリアス)──の天敵とも言える存在だ。またポケモンの所持している道具を使えなくする、はたきおとすの技を使えるのでポリゴン2など道具に頼るポケモン等も天敵と見なしている。

 

このマニューラが出ている以上、イリアやマンダー、ブリタを出さずに他のポケモンに任せるのが上策だろう。特にギラギラはゴウカザルに相性こそ悪いが負けるどころか蹂躙することも可能だ。

 

「いけっマンダー、ブリタ!」

だがしかし、俺は敢えてマンダーとブリタを出した。

ブリタを出す理由は対戦相手のオカに他のポケモンを使った戦法を知られたくないからで、その相方に他のポケモンを出さずマンダーを出したのも同じ理由でマンダー以外戦法を自在に変えられる奴はいない。実際、ブリタ以外ジム戦で使用したポケモンは皆無だ。

 

『ようやく私の出番ですか』

『オイラ達のコンビは何気に初めてなのはなんでだろ~、なんでだろ~、何故だなんでだろ~!』

ブリタ、お前はそういうセリフを言わなきゃ気が済まないのかよ。

 

「あれがシロナさんのフルパーティを殲滅したガブリアス……!」

スモモさんが喉を鳴らし、手を握り奮い立てる。

「スモモ、ガブリアスよりもボーマンダを警戒して。苦手なタイプでしょ?」

「そうですね……では頼みましたよ。スズナさん」

二人が頷き、目を合わせるとスズナさんが口を開いた。

 

「もちろん! マニューラ、ガブリアスにれいとうパンチ!」

『お任せあれ!』

ブリタに向かってマニューラが冷気を放った拳を振るうが、ブリタはそれを皮一枚で避ける。

『砂糖菓子よりも甘過ぎ、リックは太り過ぎ、そしてあの世へGOGO急ぎ過ぎ!』

笑みを浮かべたブリタの行動はさらに距離を取ることだった。

「おい、何を──」

『あれでいいんですよ。シックさん』

マンダーがそういって俺に声をかけ、ブリタがいた場所に目を向けさせるとそこにはゴウカザルが君臨……いや普通にいた。

『シックさんは気づいていないようでしたがスモモさんの目を見たゴウカザルが判断して動いていたんですよ』

やはりマンダーは観察力等に関しては世界レベルだ。確かに格闘技の最中に技の名前を叫びながら攻撃するほどバカなことはないが、ポケモントレーナーのほとんどは技の名前を叫ぶことになるならその必要はないと思っていた。しかしスモモさんがそうしている以上、そうもいかず特訓する必要がある。その課題を見つけただけでも収穫だ。

 

「マンダー、メガシンカしてりゅうのまいだ! ブリタはじしん!」

『了解です』

『揺すって(これより先は諸事情により表示出来ません)』

ブリタ、それ以上はマズイからやめてくれ。

そんなことを思いながらマンダーがメガシンカしメガボーマンダとなりりゅうのまいをし、ブリタがじしんをしゴウカザルとマニューラを攻撃するがそこにはおらず代わりにジャンプしてそれを回避していた。

 

『ブリタの攻撃回避お疲れ様です』

『え、ちょっ……うぎゃぁっ!』

 

宙にいるマンダーがゴウカザルとマニューラをりゅうのまいを組み合わせた攻撃で倒す。

 

 

 

「つ、強い……! 相性の悪いゴウカザルはともかくマニューラがこうもあっさりと倒されるなんて!」

「スズナさん、やはりあのボーマンダも侮れません」

「ええ。でも勝ち目はあるわ。あの方法でね」

「あの方法ですね。わかりました」

そして出してきたポケモンはユキノオーとルカリオ。どちらも強力なポケモンだ。ユキノオーはふぶきの命中率を必中にする霰を降らす特性があり、ルカリオについては鋼タイプのゴウカザルであり、鋼に対抗出来る炎、闘、地の技がないと勝ちづらい相手だ。

 

「さあこれからよ! シック君」

「これから私達の動きについて来て下さいね!」

ユキノオーとルカリオがメガシンカせずそのまま戦闘に入る。メガシンカではないなら何だと言うんだ? マンダーを見ると頷き、予測出来たと解釈して自由にさせる。

 

「ブリタ、だいもんじ」

『汚物は消毒だーっ!』

ブリタのだいもんじがルカリオとユキノオーに炸裂。だいもんじは本来一匹にダメージを与えるがブリタのだいもんじはコンテスト用に用意しただいもんじで範囲が広く派手で相手の視野を狭くする変わりにかえんほうしゃの威力くらいしかない上にリック等の特殊攻撃に優れたポケモンに比べると火力に欠けるがルカリオとユキノオーを仕留めるには十分だ。

 

「ユキノオーふぶき!」

だが煙が晴れる前に見たものは倒れたはずのユキノオーのふぶき。ブリタに炸裂し、大ダメージを負った。

 

『相性なんぞ、そんなの関係ねえってか?』

俺達が見たもの、それは二匹がまだ耐えきり、戦闘不能になっていない姿だった。ルカリオはまだわかるにしても炎に弱いユキノオーが何故耐えきったんだ? そう思いある一つの仮説が成り立つ。

「きあいのタスキか。それも二頭ともか」

きあいのタスキを持たせるとどんな強力な一撃を受けても耐えきるという道具だ。ダンに持たせている道具きあいのハチマキとは違い、必ず発動する代わりに一度しか使用出来ない。

「正解です。シックさんのガブリアスが持っているのと同じですよ! ルカリオ、ガブリアスにはとうだんで止めを!」

スモモさんが止めを刺さんとブリタにはとうだんをルカリオに指示する。その判断は正解だ。ブリタの特性はさめはだでインファイトだとルカリオが戦闘不能になってしまう。しかし必中技かつ特殊攻撃であるはとうだんならタスキを使ったブリタの止めを刺すには持ってこいだ。

『甘いですよ。そんなことでは私に永遠に勝てません』

どこからともなくマンダーが現れ、ユキノオー、ルカリオをともに戦闘不能にした。

「嘘っ!?」

スズナさんが驚愕の声を出して目を見開く。俺も信じられん……何故マンダーが戦闘不能になるどころか傷を受けていないのか、不思議なくらいだ。

霰状態の時のふぶきは必中技でありそらをとぶ、ダイビング、あなをほる等の技で回避しない限りは絶対に当たる。しかしマンダーはそれをしないでユキノオーのふぶきを回避した。普通ならあり得ないことだ。しかしマンダーはそれをした。イガミ技──イカサマ、ズルのこと──扱いされても仕方ないことだ。

『ば、馬鹿な……私のふぶきが当たらなかった?』

『タネは簡単ですが、それを教えるとつまらないでしょう』

マンダーがユキノオーの疑問を一蹴し、どや顔で誇る。

 

後日聞いたことだが、あれのタネはブリタのだいもんじに紛れこみマンダーがだいもんじでふぶきをかき消し水蒸気を上がらせ自分を見失わせていた。

ブリタに被害が及んだのはブリタがきあいのタスキを持っていることを知っており敢えてブリタにふぶきを炸裂させ油断させるのが目的だったようだ。

 

 

 

「ふう……熱いバトルありがとう! 氷タイプが苦手な筈のボーマンダとガブリアスで勝つなんて……シロナさんのガブリアスでも無理なのに、ブリタをよっぽど鍛えているのね!」

スズナさんがブリタをべた褒めし、バッチを渡した。

「スズナさんありがとうございます」

「しかしあのボーマンダも強かで驚きました。あのボーマンダで負けたようなものですよ」

「それね。まさかあんな奇襲でやられるなんて思いもしなかったわ」

俺もだ。マンダーがあんな奇襲を使うなんて予想外もいいところだよ。そう声を出したかったが心の中にしまっておく。

「それじゃこれを受け取って下さい」

二人がポケモンをしまいバッチを渡すとスズナさんが口を開いた。

「もし今度時間あったらプライベートでバトルしてくれないかな?」

「あっズルいですよ! 私も宜しくお願いします!」

二人ともストイックだな……やはりジムリーダーなだけあってポケモンバトルに関してはそうなるんだろうな。

 

 

 

「スズナさんの要望はともかく、スモモさんの要望なら半分答えられます」

「えっ!?」

「俺の故郷では最終進化した格闘系のポケモン相手に殴り合う風習がありましてね。俺も例外ではなく殴り合って武術を会得しました。スモモさんのポケモン相手なら素手でも出来ますよ」

闘だけでなく竜でも可能だが。イリアを捕まえたのもほぼ素手だ。しかし一番やり易いのは格闘だ。あいつらは人に最も近いポケモン故に打撃系の技だけでなく関節技や絞め技等技のレパートリーが増え、対応がしやすくなるからだ。

「もしかして、その故郷って……」

「さあポケモンを出して下さい」

そして俺がブリタとマンダーを下がらせ構えると戦闘不能になっていないポケモンを出してきた。

「ではいきます!」

その後スモモさんはカイリキー、サワムラー、エルレイド、ハリテヤマの順に出すが俺の攻撃になす術なく倒されていき、遂には彼女自身が俺と対決することになる。

 

 

 

格技場に場所を移し、スモモさんと対峙する。

「手加減不要です! 全力でお願いします!」

手加減不要って言われてもな。スモモさんに与える技と言えばカイリキーにやったような関節技か、サワムラーにやったような絞め技しかないんだが。

「本気じゃありませんが全力でいきます。本気かつ全力でやると死ぬかもしれませんから」

スモモさんは格闘技をする人間だが、シャガさんのように気を自在に操れる訳ではない。シャガさんが出来ると思う根拠は気を扱えずに竜と素手で特訓なんか出来ないからだ。

話がそれたが、気を扱えないスモモさんを軽く小突くだけで気絶してしまうだろう。その為ハンデが必要であり、気を纏い攻撃することはしても極弱いデコピンだ。それでも気絶しかねない奴はいるが、スモモさんは仮にも格闘技経験者。しかも身長こそフライ級だがS(スーパー)バンダム級の筋肉量がありあの程度の攻撃で気絶する訳がない。気絶したなら格闘技の素質はないと告げる必要がある。

「っ!」

スモモさんに詰め寄り、頭に左ジャブデコピンを炸裂させようとするもスモモさんが体を反らしそれを回避する。見た目通りの軽いフットワークにSバンダムの筋肉量となれば中々厄介だ。素質はかなりあるってことだな。

「らぁっ!」

だが体反らしを逆に利用し、足を引っかけ体勢を崩させ後ろに倒すと尻餅をついた。

 

そのままスモモさんが俺の脚を絡ませようと足の代わりに腕を使い詰め寄るがそれを逆に利用し跳躍し、スモモさんに寝技の一つである横四方固めで固める。

「ふーっ、ふーっ!」

鼻息を荒くし、顔を紅潮したスモモさんが脱出を試みようとするが無理だ。そもそも寝技は敵の動きを封じ込むのに特化した技でスモモさんがどれだけ暴れても逃げられないようになっている。ましてや体格差がある以上脱出はどう頑張っても無理だ。

 

「スズナさんカウントを」

「え、あ、1、2……」

もはや柔道になっているがどうでもいいだろう。これしか勝ち目はないんだから。

「ふがーっ!」

スモモさんが足を踏み鳴らせるがスモモさんに勝ち目はない。スズナさんのカウントが徐々に10まで近づいていく。

 

 

 

「10! 勝者、シック!」

そして10まで数えさせると予想通り、俺の手を上げさせ勝利宣言させた。

「あー……負けちゃった」

「まあ柔道だとあと20秒必要でしたからワンチャンあったかもしれませんよ」

「あのままやっても勝てませんでしたよ。でも何故寝技なんですか?」

「なんとなく思い付いたのが横四方固めだったんですよ。それにスモモさんの体に痣をつける訳にはいきませんからね」

「……その割にはジャブで攻撃してきましたけどね」

流石にデコピンだとわからなかったか。あれを見切れるのは極一部の人間か実際に喰らった人間、あるいは人外かのいずれかだ。

「あれに当たったら、素質がないから格闘技を止めろと通告するつもりでしたから、避けれて安心しました」

「そうですか……」

「結構シビアね……」

「まあ格闘技の素質はあると思いますのでこれからも精進してください。今度はもっと強くなったスモモさんとやってみたいですから」

「それじゃ約束してください。私が総合格闘技で世界を獲ったら戦ってくれると」

「その時を楽しみにしてますよ。スモモさん」

「それじゃシック君。私とも約束してくれるかしら」

「何でしょうか?」

「シンオウ地方チャンプになったらここに来てくれるかな」

「それは出来ませんよ。先約がありますから」

そのスズナさんとの約束は出来ない。何故なら俺は世界チャンプになる約束をしていて一々立ち寄れるほど暇ではない。

「じゃあ連絡先を交換してメールで交換日記を始めましょう! それならいいでしょ!」

スズナさんが必死過ぎるのは何故だろう。しかし交換日記か……マンダーに聞くか。

『あくまで友達としての交換日記なら宜しいのでは? 恋人同士の交換日記は見ているだけでもイライラしますし。そんなことをする暇があるなら助平爺とまでは言わずともさっさと繁殖しろといいたくなりますからね』

それまで傍観者だったマンダーに目を合わせるとそう答えが返って来たのでそうすることにした。しかしマンダーは効率を求めるだけあってロマンチストじゃないな。そうなったのはマンダーが♀が少なくなり始めた群れの長だったからだろうか。

「それじゃ友として交換日記をしようか。俺の連絡先は──」

 

そしてスズナさんと連絡先を交換し合うとスモモさんが格闘技の世界チャンピオンになったときに連絡したいとのことでスモモさんとも交換した。俺がジムを出た後、スズナさんとスモモさんが喧嘩していたらしいが何が原因なのかさっぱりわからず最後のジムへ移動することにした。




元ネタというか解説というか言い訳
≫『あの世へGOGO急ぎ過ぎ』
≫『揺すって(これより先は諸事情により表示出来ません)』
・この二つの元ネタはアニメ版星のカービィ61話が元ネタです。歌詞もあるので著作権に触れないように替え歌──それもかなり変更して原型を留めておらず解説をしなければならないくらいです。シックの心情に「ブリタ、それ以上はマズイからやめてくれ」とあったのはシックが聞かないようにしていただけで変更されています(断言)


後書きらしい後書き
お気に入り登録1000件いった小説を書くよりも、この作品よりもお気に入り登録が多いポケモン原作の別の小説を書くよりもこの小説を書くのが楽しいってどういうことなの……?

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第21話 地方チャンプ決定

シンオウ地方でバッチを8個集め滞りなくSPA(シンオウ地方ポケモンリーグ協会)チャンピオン推薦試合をすることになった。その試合の形式は道具持ちありの三対三のシングルバトルだ。

 

「さあいくぞブリタ!」

「いけ、マニューラ! れいとうパンチだ!」

 

マニューラ……やはりというべきか、SPRチャンプはブリタに対しての対策を取っている。マニューラにれいとうパンチ覚えさせることで氷タイプに特に弱いポケモンに弱点を突かせることが出来るだけでなく、必ずといっていいほど一撃で仕留められる。

 

『マニューラ。竜タイプの弱点をつけるれいとうパンチを最高威力かつ最速で出せるポケモンって言うじゃなーい?』

マニューラが突撃しているにも関わらず、ブリタは余裕そうに構える。そしてマニューラが攻撃するとそこにブリタの姿はなかった。

『何っ!?』

『でもオイラ回避率9割超えですからぁぁぁっ! 残念! アイアンテール切りっ!』

マニューラの弱点でもあり、(フェアリー)の弱点を突く鋼タイプの攻撃技、アイアンテールが炸裂しマニューラが倒れる。

 

『はい次っ!』

「くそっ、あんな避け方有りかよ!」

それはごもっともだ。俺も相手側だったらそう呟き、キレてしまうだろう。

「ミミッキュ! 出番だ!」

出やがったな。竜使いの天敵が。

 

さてここでミミッキュの解説をしようか。ミミッキュはレーティング団体で一番使われているポケモンだ。その理由は特性とタイプ、そして技があまりにも強いからでありレーティング団体にいる奴らは必ずといっていいほど育成しており、対策ポケモンまで育成している。

そんなミミッキュの特性は一度だけいかなる攻撃──ただしかたやぶり等の特性を無効にするものは除く──を0にするという特性だ。この特性のおかげで積む、要するに変化技でミミッキュの攻撃力を爆発的に上げたり、きあいのタスキを持たせて二度以上耐えたりすることが出来るので長らくこのミミッキュはレーティング団体には認められなかったが、長年ガブリアスがレーティング団体のトレーナー所持ポケモン率一位として君臨する為にその対策としてようやく認められたポケモンだ。

しかしミミッキュの技が強力であるのは違いなく、みちづれを覚えるだけでなくアローラ地方では専用のZ技があるのも特徴だ。またタイプが霊・妖な為に無、闘、竜の三タイプを無効にする恐ろしいポケモンだ。こいつのせいでバランスが狂ったといっていいだろう。

 

「ブリタ、じしんだ!」

『オイラの心を揺さぶって見せろよぉぉぉっ!』

ミミッキュ相手に竜の技は通じない。となればアイアンテールかじしんのどちらかになるが、アイアンテールは命中率に不安があり命中率に不安のないじしんを選択するのは当たり前だった。

「いくぞミミッキュ!」

『了解!』

おいおい、相手もZ技使いかよ! わざわざ俺を倒す為だけにアローラの島巡りをやって来たっていうのか?

「これが俺達の全力技、ぽかぽかフレンドタイムだ!」

Z技は避ける事の出来ない必中技だ。ブリタもその例に漏れず、ぽかぽかフレンドタイムに直撃し、大ダメージを負う。

『このブリタ、死ぬものか!』

きあいのタスキを持たせて大正解だ。もし持たせてなかったら戦闘不能になっていた。

 

「ブリタ、アイアンテールだ」

ブリタのじしんは確かに命中率に不安はない。しかし今回に限りアイアンテールを選択した理由はミミッキュの弱点である鋼タイプの高威力の技であり、威力が倍増し、一撃で仕留められる。じしんだとこうもいかずじしんで攻撃するよりも効率がいいからだ。

『まるで将棋だな、おい!』

いや将棋は関係ねえだろ。それともアレか? マンダーに揉まれた影響が出てきたのか? ブリタがより強くなるには主体的に考え、より効率的に動かなければならない。その為将棋を通して先読み──予想を立て対策を打たせるようにした。将棋の腕は俺よりもマンダーの方が上でブリタの指導相手はいつもマンダーが務めていて、将棋と聞いてマンダーの顔が思い浮かぶのは必然のことだった。

『二体ゲッツ!』

ブリタが決めポーズをし、観客達を盛り上がらせる。推薦試合とはいえ、地方チャンプを決める試合だ。観客達がいるのは当たり前でリーグもそこから金を集めている……ジャックみたいな奴め!

 

「粉持ちじゃなくてタスキ持ちかよ。いくらなんでもあの判定おかしいだろ……カイリュー! お前にすべて任せた!」

『任せろいっ!』

ブリタの前に現れたカイリュー。ワタルさんのカイリューがそうであるようにおそらくこのカイリューもそのマルチスケイルだろ。そうでなきゃカイリューなんて出す訳がなく、他のポケモンにした方が強い。

「ブリタ、げきりん!」

『今のオイラは激おこプンプン丸だせ!』

「カイリュー、りゅうのまい!」

ブリタはいつでも仕留められるって自信でもあるのか? だがブリタは必中技でない限り避けてしまうぞ。

 

「カイリュー、つばめがえし!」

なるほど必中技を持っていたか。余程ブリタの対策をしていたんだろう。シロナさんだけでなくジムの公式試合を研究しつくしたんだろうな。しかし奴のミスを挙げるとすれば最初にミミッキュを出すべきだった。

『切腹ぅぅぅっ!』

「ブリタお疲れ様」

ブリタは対策されながらも三体目まで引き出したんだ。誇るべきだ。普通対策されていたらそのポケモンは必ずといっていいほど負ける。ところがブリタは負けるどころか二体まで倒し、しかも次に繋いでくれた。優秀以外の何者でもない。

 

 

 

「出てこい、ダン!」

『うひっ、ウヒヒヒィッ!』

ここしばらくだいばくはつをしてなかったせいか禁断症状が現れ、瞳孔が完全に開いていた。

『な、なんだこのメタグロスは!?』

カイリューがそれに後退りするほどドン引きし狼狽える。その姿は見ていて笑みを浮かべてしまうものだった。

「カイリュー、ほのおのパンチだ」

『ええいくそっ!』

ほのおのパンチがダンに炸裂し、ダメージを負うがそれは単なる挑発──ポケモンの技にあらず──でしかなかった。

 

「ダン。カイリューをつかんでだいばくはつ」

『ヒャッハー!!』

ダンがカイリューにしがみつき笑みを浮かべ、体を点滅し始めた。それを見たカイリューが必死にもがき暴れ、拘束を解こうとするがどうあがいても離れないように掴んでいるから無駄だ。

『バカ、やめ──』

『世界の、だぁぁぁいばくはつぅぅぅっ!!』

ダンがだいばくはつを起こし、相手の一体に止めを刺して決着が着いた。

 

『だいばくはつ……最高ぉっ……!』

顔を光悦させながら痙攣させるダンの姿に観客達はドン引きし、ブーイングの声が飛び散る……俺に。

「ふざけるな!」

「爆発オチなんてサイテー!」

「ポケモンバトルを何だと思ってる!」

「イケメンだからってやっていいことと悪いこともわからないの!?」

何を言われようとも痛くも痒くもない。俺はあくまでも悪役の道を進むと決めているのだから。そもそもだいばくはつを使うことの何が悪い? ダンが望んでやっていることだし、そこまで批判されるようなことでもないのだが。

 

 

 

批判されまくっても近づいてくる奴はいる。インタビューとカメラマン等マスコミ関係者だ。

「それでは新チャンピオンにインタビューをしたいと思います! 新チャンピオン、何か一言!」

「この試合は前哨戦でしかありません。前哨戦で勝つのは当たり前のことです」

「と言いますと?」

「SPAチャンプの座を返上し、WPA(世界ポケモンリーグ協会)のチャンピオンの椅子を座りに参ろうかと」

 

そのことに唖然とし、騒然とするマスコミ関係者達。WPAに挑戦することは遥かに過酷な道であり、鬼門とされている。特に世界チャンプを一人も輩出していないシンオウ地方では、WPAのことを魔界と呼ぶこともある。

 

「本気ですか!?」

「本気も本気。いつまで王様気取りでいるつもりだって、特攻してやりますよ。魔界にいる魔王にね」

「魔王……」

「それに丁度いいんですよ。あの魔王は快挙を成し遂げようとしている」

「……っ!」

 

気づいたか。魔王こと世界チャンプは世界防衛記録を叩き出そうとしている。その記録をもし俺が撃ち破ったら、ヒール以外の何者でもない。

 

「シロナ氏といい、オカといい、ジンクスを味方につけた私という壁を越えることは出来なかった。偉業殺しなんですよ私は。それならいっそのこと、世界チャンプの防衛記録を阻止しようと思い、WPAに挑戦することに決めました」

それで決めたことは全くの嘘だが、それ以外は事実として残っている。シロナさんの防衛記録更新、オカは史上初のSPA・SPR統一王者を目指していた。しかしそれは俺がどちらも防止してしまった。

 

「もしかして……本当にやりかねないか……?」

「いや傲慢過ぎる……」

「予言しましょう。世界チャンプの悪夢起きると」

俺の予言に周囲が動揺の声を上がると共に、俺は席を離れる。

「では詳しいことはまた後日」

 

 

 

控え室に入るとそこにはナツメさんが椅子に座っていた。

「シンオウ地方チャンプ獲得おめでとう、シック君」

「どうもナツメさん」

「しかし大胆ね。あんなえげつない勝ち方の上にWPAに挑戦するなんて……大胆さで言えばカントーでもいないわ」

「だいばくはつはダンが望んだことだ。ああしないと禁断症状が出て暴れてしまう。WPAに挑戦するのはジャック──ジャラランガと約束してしまったからな。俺が世界チャンプになって世界チャンプのポケモンにしてやるって」

「シック君……」

「じゃあな。ナツメさん、今度会う時は世界チャンプになった時だ」

 

俺の二つ名が【無冠の帝王】から【偉業殺し】となったのはそれからだった。……いつぞやに言われた【太陽の王子】はどこに行ったんだろうな。まあ【偉業殺し】の名前の方が事実だから好きだけど。




後書きらしい後書き
実をいうとこの話は当初第19話として投稿する予定でした。しかし書いているうちに他の話を挟んだ方が筆が進みそうだと感じて、このようになりました。

それでは恒例の。

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修行編
第22話 倫理観の違い


遅くなりましたが明けましておめでとうございます。

またもや出番なしのジャック……ジャックの出番の時はその出番がある回の前書きに書きます。


『あと少し……あと少しで、食い放題……』

ふらつきながらも下山するリック。シンオウ地方チャンプを返上してから俺達は修行の旅に出ていた。リックは見ての通りダイエット。こいつは瞬発力のあるデブだが体力がない。タフネスさがあるんだからそれさえ改善すれば最強クラスのサザンドラになり得る。

『今日は梅干し、レモン、グレープフルーツを食いまくるんだ……!』

リックは意外にもすっぱいものが好きなんだっけか。その代わり辛い物が苦手で焼き肉に出てくるキムチは必ずといっていいほど残す。

 

そう言えば俺のポケモンって好みが結構バラバラなんだよな。

好みをまとめるとこうだ。

辛い物 イリア、ダン

すっぱい物 リック

渋い物 マンダー

苦い物 ゴルメ

甘い物 ブリタ

その他 ギラギラ(にじマメ)、ジャック(不明)

 

ギラギラはにじマメが好物過ぎて他の食べ物に関してはわからないし、ジャックはお金は大好きだけど食べ物に関しては無頓着だ。腹に溜まればそれでいい風潮がある。

実際、ジャックは俺と出会う前まではフードファイターとしても金を稼ぎながら食事していて、アローラ地方各地の大食いチャレンジを廃業させまくっていてバイキング店では出禁になっている。金もない八方塞がりな状況でジャックはどう暮らしていたかというとコンビニなどで出る生ゴミを漁っていたそうだ。

『到着っ! さあ、行きましょうサー!』

リックが下山するとそれまでの動きが嘘のようにジャンプしながらバイキングレストランへ向かう。その先にあったのはうざい演説だった。

 

 

 

「──という訳で、ポケモンを解放し、ポケモン達を幸せにさせるべきなのです!」

 

すげえうぜえ。

語彙力がなくなってしまう程度に俺はその演説を聞いてうんざりしていた。

 

それもそのはず、この爺は過激なポケモン愛護団体を騙ったエゴイストだ。エゴイスト扱いは酷いと思うかもしれないが、言っていることはまさしくエゴイストのそれで不愉快極まりない。ポケモンを解放すれば幸せになれるなどというのは全くの嘘で、幸せになれるなどというそんな戯れ言を信じるのは脳の中身がお花畑な連中か精神的に弱っている奴らだけだ。

「リック、かえんほうしゃ」

そんな弱みにつけこむ爺につい、リックにかえんほうしゃを小さな声で命じてしまった。ワタルさんのこと言えないな。

 

 

 

「ぎゃーっ!?」

「なんだ!?」

「だいもんじだ!」

爺がだいもんじを喰らって火が飛び散るを見て野次馬達が騒然とする。

「リック、なみのりで打ち消せ!」

『こっちはてめえのせいで昼飯食えないからイライラしてんだよぉぉぉっ!』

リックがなみのりし飛び散った火を無理やり揉み消すと爺がずぶ濡れになり鬼の形相に変化していくがお構い無しに俺は前に出る。

「攻撃しましたね?」

「攻撃なんざ知らねえな。むしろ俺は鎮火するように指示したんだ。そのことに感謝してもらいたいくらいだ」

「皆さん聞きましたか! この男は私に攻撃をしたのです。こんな狂暴なトレーナーのポケモンは不幸に違いありません! このようなトレーナーこそポケモンを解放するべきなのです!」

「さっきから聞いていりゃポケモンを幸せにするならポケモンを解放しろだと? ポケモンの幸せはトレーナーから離れない限りそこにあるんだ。むしろ逃がす方がポケモンにしてみりゃ不幸なんだよ。それに解放したらしたでこんな風に襲われることだってあり得るんだ」

「だからといってポケモンを使って人間を攻撃していいという理由にはなり得ません!」

「生憎だが今のは俺の指示じゃない。こいつが勝手にやったことだ」

 

そもそも俺が指示したのはかえんほうしゃであってだいもんじではない。リックが勝手にだいもんじを放っただけのことである。しかしその事について俺は言わず、放置することで敢えて「サザンドラ(リック)が主人である俺の為に攻撃した」と誤解させる。

 

「そもそもポケモンは何も言わずとも自分達でトレーナーを選ぶことを知らねえのか? 一度ポケモンが中に入ったモンスターボールからポケモンが飛び出て逃げるのもそうだが、トレーナーを選ぶポケモンで有名なのが竜だ」

 

俺の意見に野次馬達がざわめき、隣と話し合う。その空気に便乗し、俺はそれを続ける。

 

「過激な例だとイッシュ地方の竜の里の出身トレーナーが不相応な竜を手にして殺された事件だ。ポケモン達は放っておいても自らトレーナーを選ぶんだからポケモンを解放しようなんてほざいてもポケモン達からしてみれば迷惑にしかならねえよ。なあ、リック?」

『サー、イエッサー。全く以てその通りでございます!』

「肯定してくれて何よりだ。リック」

 

 

 

「うるさい! 私の邪魔をしてくれた罪、償ってもらおうか!」

爺がそういって取り出してきたポケモン、それは皮肉にもリックと同じ種族であるサザンドラ。だが肥え太っているリックとは違い、痩せこけているだけでなく無数の傷痕が見られ如何にも虐待されている様子だった。

「サザンドラ、だいもんじだ!」

「リック、だいもんじ」

サザンドラ同士のだいもんじ対決。どちらが上か言うまでもなくリックが当然の如く勝ち、爺のサザンドラが倒れた。

「ば、ばかな……! こっちはいのちのたまを持たせているのだぞ!?」

 

いのちのたま。持たせると持たせたポケモンの体力が削る代わりに物理、特殊攻撃の威力が増加する道具だ。体力を削るということから人々から忌み嫌われ、それを使うトレーナーはだいばくはつを指示する俺同様に批判の声が上がる。

 

しかし俺はいのちのたまに関して批判するよりも、そんなものまで持たせていてリックに抗うことすら出来ないようにしたサザンドラを使うなと批判してやりたい。サザンドラは竜でありプライドも高く、扱いづらいのはわかるが余りにも実戦慣れしていない上に鍛えてすらいない。これだけ短気なら揉め事の一つや二つ普通に起こしてポケモンバトルを何度も繰り返して強くなるはずだが、あまりにも弱い。

 

 

 

「ざまあねえな~」

「き、貴様ぁっ!」

悪巧みをした上に最後は時代劇のサムライに切り捨てられそうな悪人面で俺が挑発すると爺がすぐにデスカーンを取り出す。馬鹿だ。サザンドラですら手も足も出ないというのにデスカーンを取り出すなんて蛮勇以外の何者でもない。ある意味尊敬する。予想通り、腹を空かしイラついているリックに瞬殺される。

 

「ポケモンを虐待した上に弱いポケモンにしてなぁ…………お前、腹切れ」

「腹切れだと? この私、ゲーチスに腹切れだと!? ふざけるなぁっ!」

爺、もといゲーチスが顔を真っ赤に染め、次のポケモンを取り出す。

 

「出でよ、ゼクロム!」

そのポケモンはイッシュ地方の伝説のポケモン、ゼクロム。イッシュ地方のもう一つの伝説ポケモンレシラムと対立するポケモンでタイプは竜&雷と意外とメジャーなものだ。

 

「フハハハ! これがイッシュ地方に伝わる伝説ポケモンゼクロムだ! 貴様のような小僧相手に使うには少々もったいないが裁きを下すには丁度良い! いけ、ゼクロム!」

『うるさい』

俺ではなくゲーチスに天罰下り、雷が直撃するとゲーチスは倒れた。

「な、ぜだ? ゼクロム、私はお前の主人だぞ」

『黙れ。我を捕まえた若造ならともかく貴様を主人と認める要素はどこにもない』

ゼクロムがそう言ってゲーチスを雷で気絶──最初死んだかと思ったがしぶとく生きていた。たいした奴だ──させる。まあそうだよな。伝説と呼ばれるポケモン達は普通の竜以上にプライドが高い。こんなポケモンを虐待している爺に言うことを聞くはずもないか。

「因果応報、自業自得。ポケモンを解放する立場になれてよかったじゃねえかゲーチス」

手を合わせ、ゲーチスの冥福を祈ろう。こいつにはイライラすることはあっても殺意までは芽生えなかった。

 

『さて……あの若造を探しに行く前に少し気晴らしに暴れるか』

「おい、ゼクロム。てめえの好きにさせねえよ」

『そこの人間、我の声を聞き取れるのか?』

「当たり前だ。それでゼクロム、この馬鹿はともかく、俺達はお前に対して無害だ。むしろお前が主人と認めたトレーナーを探すのを手伝おう」

『悪くない。その方が効率的で時間も短縮出来る……だが断る』

 

 

「何?」

『我は一度こうだと決めたらやり遂げる主義だ。コロコロ意見を変えるのは嫌いだ』

「そうかよ……やれリック!」

『サー、イエッサー!』

リックのりゅうのはどうがゼクロムに炸裂し、ダメージを与える。何故リックのままにしたかというとリックは伝説のポケモンの一頭であるレックウザを撃破しているからだ。俺は一度だけレックウザ使いと戦ったことがある。その時出したポケモンがリックでレックウザのりゅうせいぐんを二度受けながらもレックウザを倒した。しかしそいつはレックウザを六体も所持しており、二体目のレックウザのりゅうせいぐんをくらいながら半分以上ダメージを与え倒れた。残りはギラギラが蹂躙しレックウザ使いを涙目にさせた。

 

 

『驚いたぞ……今の攻撃はあのレシラムと並ぶほどだった』

ダメージこそ与えたがゼクロムはいまだ健在。今度はゼクロムがらいげきを放ちリックにダメージを与えた。

『こんなものレックウザのりゅうせいぐんに比べれば何でもないわぁぁぁっ!』

それはごもっともだ。それ以上の攻撃がギラギラの攻撃なんだよなぁ……

「リック、とどめだ! りゅうせいぐん!」

『これで勝つ!』

『こんな、技ごとき、こんな技ごときぃっ!』

ゼクロムが必死に耐えるが無駄だ。鍛え上げたリックのりゅうせいぐんは特殊防御に優れたゴルメですらギリギリ耐えるくらいしか出来ない。ゼクロムが耐えられるはずもなくその場に倒れた。

 

 

 

「すげえ……! 伝説のポケモンに勝っちまいやがった!」

「しかも顔もよく見るとイケメンだし、ポケモンバトルも強いなんて最高じゃない!」

野次馬達が騒然とし、俺に駆け寄り問い詰めようとするが俺はそれを無視してバイキングレストランの中に入ってリック達に食事をさせた。どうせあの試合を見たらどん引きするだろうしな。




後書きらしい後書き
というわけでリックの性格はずぶといです。
ちなみに好物が判明しているなかで予想を当てるのが最も難しいと思われるのがマンダーで、逆に当てやすいのはブリタなのでヒントを探して見てください。

それでは恒例の。

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第23話 ゼクロムの持ち主

何故かゴルメの回は長くなる……次回、ジャックの出番です

尚、ネタバレ
今回はナチュラル・ハルモニア・グロピウスが出てきます。


修行の旅、ついでにゼクロムの真の主人探しにマンダーを使って情報収集させ、代わりにゴルメがパーティーに加わった。

 

「イリア、出てこい」

イリアを出すとそこにはゴルメが腕を広げていた。

『ねえご主人、こいつ何?』

あまりにもその存在を認識したくないのかイリアがゴルメを指差した。

「イリア、ゴルメ。これから修行を行う」

『修行?』

『修行とは、お主のようにほのおのパンチを鳥状に変えたり、れいとうビームを同時に10本放つようにすることか?』

「お前達にそんなムチャをさせるように見えるか?」

 

そんな曲芸じみたことが出来るのは俺のポケモンの中でブリタとマンダーだけしか出来ないだろう。それをこいつらに強要しても意味がないし、何よりも時間の無駄だ。

 

 

 

『え? もしかして本当に出来るのか?』

 

そうでなければブリタが俺に着いていく訳ねえだろうが。詳しいことは省くが流石にだいばくはつやみちづれなど自分が死ぬことを前提とする技やへんしん等の専用技は無理だが、俺はほぼ全てのポケモンの技を使える。もちろん指示を出すとかそういう意味ではなく物理的に使えると言う意味でだ。

 

『セクハラ爺、知らないの? ご主人はほとんどのポケモンの技を使えるわよ。私にれいとうパンチを教えたのも実際に使って見せたしね』

 

しかし俺はポケモンの技よりも普通に殴る方が好みで、技を使う時は主にダンとゴルメ以外のポケモンに教える時だけだ。

 

『……改めて思うんじゃが、本当に人間か?』

俺だけじゃなく故郷の皆に聞かせてやりたい言葉だ。ポケモンの技を使えるのは俺だけじゃなく、故郷の皆が使える。だから普通の人間がそれを使えない時はショックを受け、普通に殴るのが好きなこともありそっちはなるべく自重した。

『少なくともあんたのセクハラよりもマシよ』

それは俺を嫌がる要素だってことだぞ、イリア。

 

 

 

「さて、イリアにゴルメ。お前達を呼び出したのは他でもない。お前達で模擬戦をやってもらう」

『こいつと戦うの絶対嫌なんだけど!』

イリアがゴルメと戦うことに嫌悪感を示し、顔を顰める。

『イリアちゃん、そんなこと言わずワシとポケモンバトルしようではないか! グフフッ!』

こいつがいうとポケモンバトルのワードが卑猥な言葉にしか聞こえない。

『こんなセクハラ爺は嫌ぁーっ!』

俺だって嫌だよ。見た目は完璧なのに何で性格がこんなセクハラ爺なのか納得がいかないくらいだ。

 

「今回、俺がゴルメに指示するからイリアは自分で立ち回ってゴルメを仕留めてみせろ」

『ワシが倒れること前提!?』

「ゴルメが俺の言うことを聞けば倒れることは前提にならなくなる」

俺がゴルメを指示する理由、それはゴルメが一番言うことを聞かないからでそれを改善させなくてはならないからだ。その為にイリアをフリーにさせ、俺の指示がどれだけ正しいかわからせる。

『そんなことをせんでも──』

「ちなみに俺の指示聞かなかったらギラギラのかえんほうしゃの刑だ」

『ぐぅぅぅぅ……クソ! わかったわい!』

ギラギラのかえんほうしゃを食らうのがそんなに嫌なのか、ゴルメがうめき声を上げながら了承した。

 

 

 

「それじゃ始める!」

『うおっしゃぁっ!』

りゅうのまいをして素早さと物理攻撃の威力を向上させるイリア。俺の指示を毎回聞いているだけあって流石に自分の立ち回りも理解しているな。

「ゴルメ、パワーウィップの応用でイリアを絡ませろ」

『ワシ、そういうの大好き!』

一瞬で助平な顔になったゴルメが角を使ってイリアを絡ませた。ゴルメはこういうことに関しては天才的な才能を持つからな。

『離せ! 離さないとマンダーに言いつけるわよ!』

『残念、これはシック公認のポケモンバトルじゃ! 言いつけたところでどうにもならんよ』

どっちが正義でどっちが悪かわからんな。両方竜だけど。

 

「ゴルメ、れいとうビームだ」

『うひょひょ、ほ~れ、ほ~れ、ここが気持ちいいのか?』

「……ギラギラ、ゴルメにかえんほう──」

『さあて! ふざけてないでやろうかの!』

ゴルメが大慌てでれいとうビームを放つとイリアがダメージを受けた。

『この、爺がぁっ!』

れいとうパンチを応用し、イリアが腕に冷気を纏わせた状態でゴルメの角を掴み凍らせ始めた。

 

「ゴルメ、絶対離すな! だいもんじでダメージを与えろ!」

『痛いが仕方ない、喰らえ!』

イリアにだいもんじを放ち、ゴルメの角に張り付いていた氷がだいもんじの炎によって融点に達したお陰で水に変化していく。

『それじゃこっちはこれよ!』

今度イリアが出した技はかみなりパンチ。しかしパンチするのではなくそれを先ほどと同様応用し、電気をゴルメに流す。

『痺れるぅぅぅっ! イリアちゃんの電マで快楽に溺れそうじゃぁぁぁっ!』

それは電動マッサージじゃないだろう。そんな突っ込みはさておき、電気と来たか。イリアの奴、本当に立ち回りがうまいな。もし今イリアが野生のポケモンとして出てきたらブリタやマンダーを使っていただろう。

 

「ゴルメ、ヘドロばくだんで毒にさせろ!」

『すまん、痺れて動けぬ……!』

くそ、タイミングが悪い!

『脳ミソぶちまけろぉっ!』

イリアにしては過激な発言だが、それだけゴルメを憎んでいるのだろう。

「ゴルメ、何が何でも放て!」

『クソッタレぇぇっ!』

ゴルメが吐き出したヘドロばくだんがイリアの顔面に炸裂するが腕で防がれてしまった。

 

「ゴルメ、すまない……」

『いや、ワシらの勝ちじゃ』

「それはどういう──」

意味だ? と尋ねようとしたところでイリアを見るとイリアの両腕と顔の一部がヘドロばくだんの粘液がトリモチのように絡み、身動きが取れなくなっていた。人間でいうところの茶巾縛りのような状態だ。

『くそ、離れないっ!』

『ヘドロばくだん、粘度マシマシ気に入って貰えたかの?』

ヘドロばくだんをえげつない技にしやがって。あんな粘着性のあるヘドロばくだんは避けるしか手段はない。しかも避けたところで地面に設置されるから引っかかないようにそれを意識しざるを得ない。

「ゴルメ、れいとうビームでトドメをさせ」

『了解じゃぁぁぁっ!』

ゴルメのれいとうビームが炸裂し、イリアがその場に倒れた。

 

 

 

その後、ポケセンでイリアについていたヘドロばくだんを引き離してもらうとマンダーが帰って来た。

『シックさん、ただいま見つけました』

マンダーがそう言って背中に乗せてきたのは青さのある緑髪に帽子を被った青年。それを見たイリアが口を開いた。

『やっぱり貴方だったのね? N』

 

N、N……ああ、イリアを俺の手元に戻してくれたあのトレーナーか。そういえばゼクロム使いとか言っていたな。

 

「やあイリアちゃん、久しぶりだね」

キザなセリフを普通に吐くなこいつは。

「はじめまして、貴方のゼクロムをお預かりしているシックと申します。イリアから自らを解放して下さったことを聞きました。その件に関しては感謝の言葉しかありません」

「そんな堅くならなくていいよ。僕は僕の正義の為にやったんだから」

「ありがとうございます」

「しかし本当にポケモンの言葉がわかるんだね……僕以外にポケモンの言葉がわかる人間を見るのは初めてだよ」

「そうでもありませんよ。カントーのジムリーダーの超能力者やホウエン地方のアイドルはポケモンの言葉が理解出来るみたいですよ」

「それは是非とも会ってみたい。機会があればそちらに向かってみたいな」

「我々のようなポケモンの言葉を話せるのは滅多にいないだけに、余計にでしょうね」

「ところでゼクロムはどこにいるのかな?」

「こちらです」

 

そして案内した場所には機嫌の悪いゼクロムが仁王立ちしていた。

 

『N、遅いではないか』

「ごめんね。でもこうして吹っ切れたよ」

「お二人に一体何が?」

『それは我から話そう。Nは自分の正義が本当に正しいものかわからなくなり、正義の象徴たる我を別のトレーナーに預け、旅をしていたのだ。全くそんなことをせずともいいというのに。とにかくそんな我だがそのトレーナーごとゲーチスに捕らわれ、我はゲーチスのポケモンとして組み込まれた』

「そう。ゲーチスはトレーナーごと捕まえてゼクロムを手にして、プラズマ団の活動を再開し始めたんだ。それを止めるべく虱潰しに活動を止めていたんだけど彼らの勢いは凄まじく止めることは出来なかった。ゼクロムを取り返そうにもいつもゲーチスは消えるし、取り返そうにも取り返せなかったんだ」

それは何とも言えないな。しかし虱潰しと言えばマンダーはイリアの話をずっと覚えていたから虱潰しせずにこんなに早く見つけられたのか?

 

『しかし何故、ゲーチスと関わりがあるのですか? 聞いている限りではプラズマ団とは何の縁もなさそうに聞こえますが』

「ゲーチスは僕の父親なんだ」

「あんな奴が父親なのか?」

だとしたらNって名前もあのクソ爺がつけたのか? Nといい、サザンドラといい虐待してそんなに楽しいのか?

「うん、僕はあの人にプラズマ団の長として振る舞うように育てられたんだ。その頃かな? 僕とイリアが出会ったのも」

『そうね……』

 

イリアとNが懐かしんでいるとゴルメが口を挟む。

『しかし愚かな父親じゃのう。世の中には親の顔を見せることなく、死んでしまう子供もいるというのに……』

「ゴルメ、それは──」

お前のことを言っているのか? その言葉を呑み込み、話を続けさせる。

 

 

 

『人に限らず心ある者は子供達を喪う悲しみがある。しかしゲーチスは力を求めるあまり心を置き去りにした……のうゼクロム、お主はかつて力を求めた兄の味方をしたそうではないか』

 

力を求めた兄。イッシュ地方の神話のことだな。イッシュ地方の神話は二人の兄弟が心か力かどちらが大切かでポケモンを巻き込んで大喧嘩したというものだ。

力を求めたのが兄、心を求めたのが弟で二人はそれぞれ秘密兵器と言わんばかりにゼクロムとレシラムを取り出し、ポケモンバトル。勝ったのはレシラムつまり弟側で、心を大切にする方が強いから心を大切にしなさいという教訓をイッシュ地方の人々は受ける。そのはずなのだが、一番問題を起こすのはイッシュ地方の連中である。何とも嘆かわしいものだ。

『それが何だというのだ?』

『皮肉なものじゃのう。力を求める父親はお主には認められず代わりにお主が認めたのは心を求める息子だというのだからの』

『……ふん、貴様にはわかるまい』

「そうなのかい? ゼクロム」

『力だけでは敵わぬことはレシラムと戦った時に薄々気づいていた。そしてゲーチスの時に確信し、あいつを切り捨てただけのこと』

「それで僕を主人と認めたんだね」

『一応だがな。しかしレシラム達に勝つには力と心だけでは足りぬ。太ったサザンドラごときに我が負けたのだからな』

『それは知じゃよ』

マンダーじゃなくゴルメがそんなことを言うなんて珍しいな。

『知?』

「つまり頭を使えってことです。そのポケモンに合わせた技や立ち回りを考えなきゃ強くなれません」

『まあそういうことじゃ。レシラムとやらに地力で勝っても勝負に負けるのはそれしか考えられぬよ』

俺の言葉に付け足すようにゴルメがそう〆る。

 

 

「うん……そうだね、彼女は力なくとも心と知があったから僕に勝った。もっと君のことや他のポケモンのことを知らなくちゃいけない」

彼女ねぇ、つまりそのレシラム使いは女か。

『ならワシと勝負しよう。ポケモンバトルではなくワシが使う技を4つ全て当ててみろ。全て当てることが出来たらワシの負けじゃ』

「む、難しいな……」

『それが即座に頭に浮かばないと永遠にお主のライバルには敵わないぞ』

しかし珍しいこともあるものだ。あのゴルメがこんなに積極的に関わるなんて。

 

 

 

「ドラゴンクロー、かえんほうしゃ、10まんボルト、なみのりかな?」

『全部外れじゃ。論外』

「じゃあ一体どんな技を?」

『正解はヘドロばくだん、だいもんじ、れいとうビーム、パワーウィップじゃ』

「一つも合ってない!?」

「何故それを搭載したのか、その理由は自分で考えてくれ」

俺がそう言って突き放すと少しNが考え込んで口を開いた。

 

「パワーウィップに関しては予測出来なくても仕方ないけど、他の三つに関しては予測が可能。そもそも特殊防御に優れたヌメルゴンを出す状況は限られていて物理攻撃に優れた竜とは相性が悪く、ドラゴンクローやりゅうのはどうを搭載して中途半端な火力にするよりも弱点の多い竜にれいとうビームを搭載して攻撃した方が強いからかな?」

「かえんほうしゃを搭載しない理由は?」

俺が意地悪でそう尋ねると即答だった。

「かえんほうしゃよりもだいもんじを搭載するのは中途半端な威力で攻撃するよりも多少命中率に不安があっても威力がある攻撃の方が倒しやすく、特に鋼対策をしたい場合はそうする」

「じゃあ10万ボルトとなみのりを搭載しない理由は?」

「10万ボルトとなみのりを搭載しない理由。10万ボルトやなみのりは共に特性で無効化されるタイプの技の一つでもあり、水・地のポケモンに弱いということ。そこでパワーウィップ。パワーウィップは草の技でそんな草を弱点とするポケモンにはかなり強く出れる」

「ヘドロばくだんを搭載する意味は?」

「妖対策としか思えない。妖のポケモンは鋼を兼ね備えたクチート等を除きほとんどのポケモンが毒を弱点に持っている。その鋼もだいもんじで対策している」

ほぼ正解。ちゃんと考えれば出来るじゃないか。それにも関わらずレシラム使いに負けたってそのレシラム使いがよっぽど強かったんだろうな。

 

 

 

「しかしこうして考えてみると、やっぱり上には上がいるって考えさせられるよ」

『N……』

「何度か負けたことはあってもこれほどまでに清々しい負けは初めてだよ」

『負けに清々しさもクソもない。負けは負けだ。それを受け入れずどれだけ抗うか──』

「さあ行こうか、ゼクロム。ゲーチスからゼクロムを取り戻した今、プラズマ団は活動を停止しざるを得ない。あの娘達と勝負しにいくなら今しかない」

『ふん、良いだろう。貴様がどれだけ抗うか、このゼクロムが見極めてくれん』




後書きらしい後書き
Nの初期設定の名前はナチュラル・ハルモニア・グロピウスというくっそ長い名前ですのでちゃんと登場しました。しかしこの作品のNの名前はNとしています。何でかって? 面倒だからだよ!

それでは恒例の。

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第24話 サルページ修行の成果

ゴルメの回もそうですがジャックの回も長くなる傾向があって草ww
……すみません。遅れた理由にすらなっていませんね。


ホウエン地方、カイナシティ。かつてブリタと出会ったこの街だが、ブリタと出会ったときよりも遥かに賑わっていた。

「なんだこりゃ……?」

『ピカンと来たぜ! オイラの推測じゃルーちゃんがカイナシティでコンテストトレーナーをスカウトしていると見た!』

「そう言えばコンテストの服貰ったのに全然コンテストに参加してなかったな。せっかくだしブリタ、コンテストに参加するか?」

ここで着なきゃルーちゃんことホウエン地方のアイドルのルチアに貰った服がゴミになるしな。

『待ってやした!』

 

そしてコンテスト会場に向かい、出場するとコンテスト会場は信じられないほどガラガラで空いている席の方が多かったほどだ。しかし俺が初出場とは思えない点差で優勝してしまった為か人が戻り、コンテスト終盤には席が9割以上埋まっていた。

『うつくしさコンテストぉ~っ優勝ゲッツ!』

決めポーズでブリタがはしゃぎ写真撮影を終えると、そこに待っていたのは地味な格好をしたルーちゃんだった。

 

「シック君、おめでとう」

「それはブリタに言ってくれ」

「ブリタ、凄かったよ。次も凄いアピール期待しているから」

『へへっ、オイラ誉められた!』

「ところでシック君、今港で人間の言葉を話せるポケモンがいるらしいんだけど見に行かない?」

人間の言葉を話せるポケモンか。コンテスト会場の様子を見る限り、そいつが話題を呼んでいたから人が来なかったかもしれないな。

「よし行こう」

「それじゃ案内するよ。着いてきて!」

そしてルーちゃんに案内されるとそこには見たことのあるジャラランガが黄金片手に商売していた。

 

 

 

「さあさあイラシャイイラシャイ! どれもこれも幻の沈没船からサルページした宝物アルヨ!」

「ほらあそこで商売しているジャラランガが路上販売しているの。私もいろんなポケモンと関わってきたけどあんなポケモン初めて見た……って何で頭を抱えているの?」

「あれは俺のポケモンだ」

「ええっ!?」

「修行がてらに金銀財宝を積んだ沈没船があると思われる海域で、金にがめついジャック──あのジャラランガにサルページさせたんだ。世俗慣れし過ぎたあいつに野生の本能を呼び覚ますための修行だったんだが……あの様だ」

「うん、何となく言いたいことは察したよ」

それは何よりだ。

 

「おいジャック」

客がいなくなったところでジャックに声をかけるとポケモン語で答えた。

『おおシック。随分と見ない間に成長したじゃないか』

「お前、それはどうしたんだ?」

『サルページして得た宝物だ』

「いやお前らしくないな。もっと高く売り付けるはずだが」

『儂もそうしたかったんだが、ここにあるのはオークションに出して売れ残った余り物だ。高く売り付けようにも売り付けられない。サルページしたのは事実なんだが、どうも売れなくてな。こうしてバザーで売り飛ばしているって訳だ』

「オークションって……本当に世俗慣れしているんだね」

『それでどちらさんだい?』

それを聞かれたルーちゃんが辺りを見回し、ジャックに耳打ちする

「私、ルチアよ。こう見えて地方アイドルだからこっそり変装して………………しているの」

やはり小さい声なだけあって僅かに聞こえない部分がある。

『なるほどな。隅に置けない奴だな、お前は!』

高笑いしながらジャックが俺の肩を叩く。何がそんなに気に入ったんだろうか。

 

 

 

「ルーちゃん」

「何、シック君?」

「面白いことを考えたんだけど、ルーちゃんさえ良ければやろうと思うんだけいいかい?」

『なに? まさかあの伝説のビビリダマビリヤードをする気か!?』

 

ビビリダマビリヤード

その競技は通常のビリヤードのナインボールとほぼ同じだが、異なるのはカラーボールがビビリダマ及びマルマインになっていて白球やテーブルがそれに合わせたサイズになっているという点だ。

 

ビビリダマ達を寝かせた状態でビビリダマを突き奥深くまで穴を掘ったポケットに入れるとビビリダマ達が大爆発を起こし花火が打ち上がる。

 

しかしあまりにもビビリダマやマルマインがじばくやだいはくはつするのと、ポケモン愛護団体が喧しい為に現在では禁止されている競技で、伝説の競技の一つとも言える。

 

「するか、んなもん!」

当然、ジャックに対する答えはノーだ。いくら俺が気狂いだとしてもそこまでではない。それにだいはくはつはダンで見飽きている。

「え、違うの!?」

「!?」

俺がルーちゃんの方を見るとルーちゃんが専用のキューを持って、ビビリダマビリヤードを今すぐにやろうと言わんばかりだった。

 

 

 

「そんな訳ないだろうが。ましてやあれは場所を取りすぎる」

「それもそうだね」

『じゃあ一体何をするんだ?』

「ルーちゃん、ちょっといいか?」

「へぁっ!? ちょ……息が耳に……」

俺がルーちゃんに耳打ちするとルーちゃんが耳まで顔を紅潮させて心拍数を上昇させるが、それよりも優先すべきことがある。

 

「ルーちゃん、大丈夫か?」

「だ、大丈夫っ」

「それじゃ言うぞ」

俺が耳打ちした内容は、至ってシンプルなものだ。しかしそれはルーちゃんの仕事にも関わってくる可能性があり、考えすぎかもしれないが営業妨害で事務所に訴えられかねない。

「どうだ。ルーちゃんさえ良ければやるぞ」

「うん、良いよ。でもその代わりシック君」

「どうした?」

「今日、私と一緒に晩御飯一緒にして」

『それってもしかして──』

「もちろん良いぞ。なんなら回らない寿司屋で奢ってやるぞ」

ジャックが何か言おうとしたがそれを遮るうに俺が気前よく答えた。

『そこはムード的に高級レストランにしておけよ』

いや対して変わらないだろう。空気は俺は読んでいるぞ。

「うん。わかった」

ほらな。嫌がってないだろ?

『いや、そんなどや顔されてもな。はっきり言うぞ。ルーちゃんはお前のこと──』

「ジャック、それ以上言わないで」

『……儂に泣きついても知らんぞ』

さて、俺は超カイナ寿司の予約をしておかないとな。

 

 

 

数時間後、そこには多くの観客が大歓声をあげていた。

「うおぉぉぉぉっ!」

「いいぞーっ、ルチアちゃーん!」

「シック君イケメンーっ!」

ルーちゃんと同時に観客の方へ投げキッスをすると更に盛り上がる。

「さて、前座の路上ライブも終わりましたことですし、そろそろメインディッシュに移りたいと思います! 皆さんよろしいですか!?」

「いいともーっ!!」

「それではご鑑賞下さい、ルチアとシックのコンテスト式ポケモンバトルの勝負を!」

 

通常のポケモンバトルは時間制限こそ存在するが、それは意味をなさず相手が倒れるまで戦う為にポケモンの怪我も多い。その為、ポケモン愛護団体が立ち上がり、ポケモンバトルをしないように呼び掛けるが却ってポケモンバトルをある程度しなければポケモン達のストレスの元になりポケモン達の負担になってしまう。

そこで考案されたのがコンテスト式ポケモンバトルの原型だ。通常のポケモンバトルを点数制度を導入しただけでなく時間制限を更に厳しくし、ポケモンが倒れないようにした。

そしてよりポケモンを魅せる為に技の評価をするようにしたのがコンテスト式ポケモンバトルだ。

 

『さて、貴様らが何分持ちこたえられるか楽しみだ』

ジャックがルーちゃんのチルルに加え、ブリタとマンダーを挑発する。

『ホッホッホッ……チルルさん、ブリタさん、わかっていますね?』

マンダーのコメカミに青筋が浮かび上がり、チルルとブリタに合図を促す。

『いつでも行ける』

『無論だ』

ブリタとチルルがマンダーに答え、頷くとポケモンバトルが始まった。

 

 

 

「いくぞジャック!  スケイルノイズ!」

早速、ジャラランガ専用の技であるスケイルノイズを使い、先制攻撃を放つ。

『Flame thrower 点火!』

『仕方ありませんね!』

「チルル、ハイパーボイス!」

『俺の芸術聞きやがれ!』

コンテスト用に鍛えたブリタのだいもんじ、マンダーのハイドロポンプ、そしてメガシンカし、メガチルタリスとなったチルルのハイパーボイスがスケイルノイズを相殺しようとする。

『くっ……私達とて鍛えていたのに関わらず、この様ですか……流石にやりますね』

しかしそれでも相殺するには威力が足らず、三匹にダメージを与えた。

 

「す、すげえっ! 何だ今の技!?」

「あのチルルのハイパーボイスでも打ち消せないなんて……」

このホウエン地方ではジャラランガは見かける種族ではない。故にそれだけでも希少価値があり、その専用技を見たとなってはその場が騒然とするのは当たり前のことだった。

『ルチアさん。私の声が聞こえますか? ジャックさんの弱点は飛、竜、妖、氷です。ブリタさんが竜の技、チルルさんが妖の技、私が飛の技を使えば彼の弱点をつけます。ルチアさん、貴女の合図で一斉に攻撃します』

「うん、わかった。皆私の声に合わせて」

『了解だ、確かに命令を受け取った』

受け取るのは構わないが声が聞こえているぞお前ら。

 

でもまあ一斉に攻撃するのは悪い点じゃない。避けることがままならぬまま大ダメージを負うだけでなくド派手で見栄えも良くコンテストにふさわしい技となる。

 

「チルル、はかいこうせん!」

『了解だ!』

『よしオイラが援護する!』

 

特性でタイプが妖になったはかいこうせんとそれに合わせてブリタがドラゴンダイブがジャックに襲いかかり、このままではどちらの攻撃が当たると推測される。となれば俺が出す指示は一つ。

 

「ジャックまもる」

『断る!』

 

ジャックが命令に逆らってブリタの攻撃を避け、チルルのはかいこうせんをかえんほうしゃで打ち消した。「おい指示くらい聞けよ」と口に出そうとしたがあることに気がつく。

チルルとブリタの猛攻はあったがマンダーの攻撃がない。それはつまり俺がまもるを指示することを見越してタイミングをずらしたということだ。まもるにはタイムラグがあり、一度使うと隙が出来上がりその間致命的なダメージを負う。

 

『流石ですねジャックさん。ですがその首貰いますよ!』

 

切れ味抜群のつばめがえしがジャックに襲いかかる。回避率9割を超えるブリタですら避けることが不可能なその技を出されジャックの取った行動、それはまもるだった。

まもるを行ったことによりマンダーの攻撃が防がれ、弾かれる。

「ソンナ程度デ私倒セる訳ナイヨ!」

そしてまもるから解放されたジャックがマンダーを掴み、パイルドライバーを編み出した。

 

いやいや、ちょっと待て。パイルドライバーなんてものはポケモンの技にないぞ。あれはプロレス技であってポケモンの技として認められてない。よしんば認められたとしても闘でマンダーとは相性が悪い。

それにも関わらずマンダーが戦闘不能となり目を回す。あの知将たるマンダーが一番最初に沈むなんて初めてじゃないのか?

 

『うぉぉぉぉっ! マンダーぁぁぁぁっ!』

 

ブリタが涙を流し、暴走。げきりんを出し、ジャックを襲う。それに合わせてルーちゃんがチルルに指示を出そうにもチルルがはかいこうせんの反動を受けているために技を出せない。

 

『だから分かりやすいんだよ』

ジャックがブリタの顔面にれいとうパンチを炸裂させようとするがブリタは本能で皮一枚で横に避けた。

 

『何っ!?』

『マンダーの仇じゃぁぁっ!』

『むぅんっ!』

 

その瞬間ジャックの身体の気がブリタの攻撃する一点に集中するのを感じ取り、ブリタのげきりんを防いだ。

 

『オイラのげきりんが防がれた……!? 嘘だ嘘だ嘘だぁぁぁぁっ!』

『うるさい』

 

ブリタが混乱したところにれいとうパンチの一撃。回避率9割と言えども混乱してしまえば回避率も下がるし、何よりもブリタに避ける気がなかった。

 

 

 

「サア、後一匹アルヨ」

「チルル、マジカルシャイン!」

『無駄だ』

「ジャック、れいとうパンチ」

 

チルルのマジカルシャインを難なく避けたジャックがチルルに詰め寄り、れいとうパンチを一撃喰らわせた。通常であればメガチルタリスは竜・妖である為にタイプ不一致のれいとうパンチ程度なら耐える。

しかしそれはジャックやギラギラのような化けモンなら違う。マンダー以下通常のポケモンの常識は通用しない。

 

『ぐあっ……!』

チルルがジャックのれいとうパンチを喰らい氷付けになり戦闘不能に陥る。

「チルル!」

「勝負ありだ」

コンテスト式のポケモンバトルと言えどもKOはあり倒れたらそれまでだ。

「シック君素敵ーっ!」

「くたばりやがれ! クソシック!」

俺の宣言と共に鳴り響くのは俺のファンの歓声とルーちゃんのファンによるブーイングだ。

少し止めさせるか。チルルにげんきのかたまりを渡し、回復させるとマンダー、ブリタと次々に復活させる。

 

 

 

「これにて今日のゲリラコンテストライブを終わりたいと思います。もしまたゲリラライブを開催することになったら私のホームページやSNSでお知らせします!」

「それではお気をつけてお帰りください!」

ゲリラライブが終わりそうアナウンスすると観客達が帰り、二人きりになる。

 

「やっぱりシック君強いね」

「そりゃ当然だ。元がつくとはいえシンオウ地方のチャンプに輝いた上に今も成長している真っ最中だ。KOで負けたら恥以外の何者でもない」

「それもそうだね。コンテスト式なら勝てると思ったんだけどそんなに甘くなかったね」

「そんなものだ。ところでルーちゃん」

「何?」

「ジャックがマンダーに繰り出したパイルドライバーはコンテストの技として使えそうか?」

「元々魅せる格闘技で有名なプロレス技だし、改良すればいけるんじゃないかな?」

「そうか……それじゃ、ルーちゃん行こうか」

「さあ負けた腹いせに一杯食べるよーっ!」

とても負けたようには見えない笑顔でルーちゃんがそう叫び、拳を上げる。やはり寿司が好きなのか?

『だから違うと思うぞ』

(エスパー)でもないのに心の中を読むなよジャック。




後書きらしい後書き
毎回思うんだけとジャックの回の話は長くなる上に投稿が遅くなりますね。その理由はバトルツリーのダブルバトルで50連勝の立役者がジャラランガで、思い入れがあるだけに長くなってしまいます。ヌメルゴン? あいつはヌメラの時のポケリフレが可愛いから……

それでは恒例の。

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第25話 水と妖精竜と600族

更新が滞りました。今回は前回よりも長いので許して下さい


 ホウエン地方、ルネシティ。

 

 ダイビングやそらをとぶなどの特殊な手段でしかいけないその街に俺はルーちゃんと一緒に来ていた。

 

「おじさん!」

 

 ルチアがおじさんと呼ぶその男はルネシティのジムリーダー、ミクリさんだ。ミクリさんはコンテストでも名を挙げているがポケモンバトルの強さは有名でホウエン地方ではダイゴさんに次ぐ実力者だ。

 

「ルチア、元気にしていたか?」

 

「うん、元気も元気。おじさんは?」

 

「勿論元気だ。ところでルチア、その男はなんだ?」

 

「ボーイフレンドのシック君だよ」

 

「どうもご紹介にお預かりましたシックです。ミクリさん」

 

「ぼ……」

 

「ぼ?」

 

「ボーイフレンドだとぉぉぉっ!?」

 

 ルネシティが揺れるほど絶叫し、ミクリさんが俺をゴミを見る目で見つめる。

 

 

 

 

 

「許さん、おじさんは許しませんよ! そんなクソみたいな男と付き合うなんて絶対に許しません!」

 

「おじさん、ひどい! シック君が何をしたって言うの!?」

 

「こいつはだいばくはつを顔一つ変えることなく使うような奴だ。そんな奴をボーイフレンドにすることなんておじさんが許しません!」

 

 そういえばダンがだいばくはつを使った試合は公式試合だから見ているのか。

 

「シック君の作戦だよ。そうでしょ?」

 

「まあそう言われればそうだ」

 

「ほう、なら何故ボーマンダを出さなかった? ホウエン地方チャンプを破ったボーマンダならそんなことをしなくても勝てただろう」

 

「ボーマンダを出さなかったのはガブリアスと同じく氷を弱点としている為そもそもパーティの中に入れなかったんですよ」

 

 竜に氷は相性が悪い。それこそ炎や水等の氷を半減するタイプを複合していない限り負ける。相手がブリタ対策に氷タイプの技を持っているのは明らかでそれ故にマンダーは出せなかった。

 

 

 

「それでは残りの一匹はなんだと言うんだ?」

 

「バンギラス。ジャラランガを除いた私のポケモンが総掛かりで戦っても勝てないポケモンを切り札にしていたんですよ」

 

「なら何故そのバンギラスを出さなかった?」

 

「バンギラスを出す時は非常事態か、バンギラスの気が向いたときくらいです。そうでもしないとポケモン図鑑に記述されている通り、地図を書き直す事態になりますからね」

 

「……地図を書き直す?」

 

「ええ。ポケモン図鑑のほとんどが誇張されていますのはご存知でしょう。しかし世の中には本当にそれを実現してしまうポケモンがいます。私のバンギラスもその類いです」

 

 

 

 俺のポケモンの中で図鑑通りに再現しているのはギラギラの他にダンだ。メタグロスはスパコン並みの演算能力があると言われているがそれは正しく、理数系に関してはタマムシ大学の准教授でもあるマンダーを軽々と凌ぎ、本人がその気になれば全ての攻撃を予測することも可能であり、だいばくはつさえしなければギラギラやジャックと同じく化けモン──世界クラスのポケモンになっていただろう。

 

 

 

「それに私がだいばくはつを指示した理由はメタグロスがだいばくはつをしないとストレスを抱えるんですよ。マルマインと同じくね」

 

 何を言っているんだと言わんばかりにミクリとルーちゃんが俺を見つめる。

 

「あのメタグロスは特殊な環境で生きてきたポケモンなんですよ。育ての親の生きざまに憧れてだいばくはつをするようになったんです。それ以降だいばくはつをしないとストレスが溜まる性格になってしまったんです」

 

「……まさかマルマインの他にそんなポケモンがいるとは」

 

 ミクリさんが頷いて、納得する。

 

 

 

 

 

「だが、これとそれと話しは別だ! こんな男と付き合うなんて姉さんが許しても私が許さん!」

 

「おじさんどうして!? 顔も性格も良いし歌や料理、ポケモンバトルも出来る超優良物件だよ」

 

「だからこそだ。こういう男は大体浮気する」

 

「うっ……」

 

「いずれ捨てられるのは目に見えている。だから付き合うのはよしなさい」

 

 

 

 何故かミクリさんの中では俺とルーちゃんが夫婦になることを前提にしているが、俺とルーちゃんの関係は友人だ。それ以上の関係ではない。

 

 それに浮気する=片方を捨てるという発想自体が古い。世の中には一夫多妻(ハーレム)という言葉があり、一人の男が多人数の女を愛することも可能だ。仮に俺とルーちゃんが夫婦で、俺が浮気したとしてもルーちゃんを愛していれば捨てたことにはならない。

 

 ただしその場合ルーちゃんが許すかどうかはまた別の話だから、浮気をするならそれなりの覚悟が必要だ。

 

 

 

 

 

 しかし俺はハーレムは認めても逆ハーレムは認めない。これは俺が逆ハーレムに嫌悪感を抱くからという理由ではない。むしろ全員がハッピーならそれでもいいくらいだ。しかし逆ハーレムは男の数が多いほど不幸になり易く、俺が逆ハーレムを認めないのはそこにある。

 

 

 

 男が一人だけも女が複数人いれば女の数だけ子供も同時に作れるが、男が複数人いても女が一人だけなら一回の出産に対してどんなに多くても十人を超えて出産に成功することはない。また双子以上の出産は母体に負担がかかりすぎ、死ぬ可能性も上昇する。

 

 

 

 それだけじゃなく、一卵性、二卵性問わず双子になる確率は1/70で二卵性のみだとそれよりも確率が低いのは明らかだ。逆ハーレムで男三人の血を引いた子供を同時に作ろうとするなら人工受精するしかない。

 

 

 

 しかし医者はバカではなくむしろ天才の集まりで本人以上に体にどれだけ負担がかかるかも理解している。それ故に人工受精は原則一人の子供を作らせることしか許していない。

 

 

 

 そう言った背景から俺は逆ハーレムを反対しているだけであり、それほど逆ハーレムには嫌悪感はない。

 

 

 

 

 

「シック君が捨てるなんてあり得ないよ!」

 

「どうしても付き合うと言うなら私の屍を越えていけ」

 

 ミクリさんがミロカロスをボールから取り出し、戦闘体勢を取る。

 

「おじさん……」

 

 ルーちゃんが切ない目でチルルを取り出した。

 

「いくぞ、ルチア!」

 

 ミクリさんとルーちゃんのポケモンバトル。どちらもコンテスト優勝者であり、ポケモントレーナーでもあるこの二人の対決に水を差せる者は誰もいない。

 

 

 

 ただ一人俺を除いては。

 

 

 

 

 

「随分と卑怯な真似をしてくれるじゃねえか」

 

 声を被せるとミクリさんが俺を睨み付ける。

 

「何だと?」

 

「シンオウ地方チャンプに敵わないからといってか弱い女の子を虐めるのがジムリーダーなのか?」

 

 自分のことは棚に上げておいてほざく俺だが、ミクリさんのやっていることは俺と同等以下だ。

 

「虐めるだと? ルチアはトレーナーとしても優秀だ。バッチも8個集めている」

 

「俺が言いたいのはそう言うことじゃない。これはルーちゃんだけの問題じゃなく、俺の問題でもあるんだ。俺を黙らせなきゃ口出し出来る権利はねえってことだよ」

 

「つまり私と戦えと?」

 

「ただ戦ってもつまらねえ。俺はバンギラスやジャラランガ以外の一匹のみ、ルーちゃんはチルルのみで相手をしてやる。そっちは六匹(フルパーティ)でもいいぜ」

 

「ちょっとシック君!」

 

「俺がいるんだ。心配いらねえさ」

 

 俺がそう言って黙らせるとルーちゃんが顔を隠すように頷くとミクリさんの血管が切れる音がその場に響き、ミロカロスがボールに収納される。

 

「良いだろう……そこまでいうなら覚悟しておくことだな」

 

 地を這うようなドスの効いた低音ボイスがルーちゃんの顔を青ざめさせる。

 

「望み通りフルパーティで相手してやる!」

 

 そしてミクリさんはポケモンを三体同時に出してきた。

 

 

 

 

 

 トリプルバトルかよ。こっちは二体しかいないのにえげつないことをしやがる。いくら俺が煽ったとはいえやり過ぎじゃないか? などという感想は置いておこう。

 

 

 

 ミクリさんは水タイプをエキスパートタイプとしており、出してきたポケモンは三体ともに、ニョロトノ、マリルリ、ルンパッパは水タイプだ。

 

 それにニョロトノの特性で雨が降り始めたこととルンパッパを入れていることから雨パと呼ばれる雨を活用したパーティ編成だと推測される。

 

 

 

 

 

 それに対して俺が出したポケモン、それはイリアだった。

 

 

 

『久しぶりのバトルーっ!』

 

 雄叫びを上げ、次の瞬間には顎をしゃくり、左手を前に伸ばして指を真っ直ぐに伸ばして掌を上に向け、4本の指を2回連続で起こしてミクリさんを挑発する。

 

 

 

「やはりお前のようなポケモントレーナーにルチアと付き合う権利はないっ! マリルリれいとうパンチ、ニョロトノとルンパッパはれいとうビームだ」

 

 ミクリさんの指示が一斉にポケモン達に伝わり、一斉にイリアに攻撃する。

 

「イリア、左上方向に避けてマリルリにかみなりパンチ」

 

『了解!』

 

 イリアが俺の指示通りに従うとれいとうビームとれいとうパンチを皮一枚で避けマリルリにかみなりパンチが炸裂し、マリルリを一撃で仕留めた。

 

 

 

『ざっとこんなもんね! 次はあんた達の番よ!』

 

「チルル、いくよ!」

 

『おうっ!』

 

 イリアがチルルとルーちゃんに呼び掛けるとそれに応え、ルーちゃんがチルルをメガシンカさせて指示を出す。

 

「ニョロトノにめざめるパワー!」

 

『喰らえおらぁっ!』

 

 チルルの電気を纏っためざめるパワーがニョロトノに炸裂し、その場に倒れた。……弱すぎじゃないか? 

 

 

 

 

 

「……ギャラドス、ミロカロス出番だ」

 

 

 

 ギャラドスとミロカロスをボールから取り出す。ミロカロスが出てくることは予想していたがギャラドスは予想外だ。

 

 

 

 ギャラドスはコイキングを進化させたポケモンで、ギャラドスに進化させるまでが大変だが進化させた後は頼もしいの一言に尽きる。

 

 しかしギャラドスのタイプは水・飛で雷をよく通すポケモンでもあり、イリアのかみなりパンチやチルルのめざめるパワーと相性が悪い。それなら雷を無効化する水・地のナマズン等を出した方が良い。

 

 

 

「イリア、ギャラドスにかみなり──」

 

「戻れ、ギャラドス! いけっ、ラグラージ」

 

 俺がかみなりパンチを指示する前にミクリさんがギャラドスを即座に戻してラグラージを出す。

 

「しまった……!」

 

 ここまであからさまだと水・地のポケモンであるラグラージを出すとは予想外だった。だがそれを嘲笑うかの如く、ミクリさんが笑みを浮かべた。

 

『ぬぁぁぁっ! 気合いでミロカロスに当ててやるっ!』

 

 カイリュー特有の小さな羽を使い、イリアが進路方向を無理やりねじ曲げようとしてたが曲がり切れない。当たり前だ。

 

『ちょいさーっ!』

 

 その為ラグラージを蹴り飛ばして進路を無理やり変えてミロカロスに攻撃するという手段に出る。

 

『成敗っ!』

 

『ギャァァァッ!!』

 

 蹴り飛ばされたラグラージはほぼ無傷であるものの、かみなりパンチが急所に直撃したミロカロスが倒れる。

 

 

 

「は、反則だ!」

 

 

 

 確かに防御に特化したミロカロスをギャラドスのいかくによって弱体化したカイリューのかみなりパンチで仕留めるには最低でも三発入れなければならない。ところがイリアはそれをたった一撃で成し遂げた。反則と言いたくなるのもわからないでもない。

 

 

 

 だがなそれはポケモンバトルに熟練している俺だからこそわかることであってルーちゃんはわかっていない。イリアが途中で軌道変更したことが反則だと言っているようなものだ。

 

 

 

「反則もクソもポケモンが勝手に判断したことだ。文句を言われる筋合いはない」

 

 それにコンテストマスターがそれくらいのことで目くじらを立てるなよ。器小さいと思われるぞ。

 

「チルル、ルンパッパにつばめがえし!」

 

 その隙をついてルーちゃんがルンパッパにつばめがえしをしてダメージを与えるがルンパッパを沈めることは出来なかった。

 

 

 

 

 

「出て来いギャラドス! りゅうのまいだ!」

 

 その攻撃が終わった途端、ギャラドスが君臨し、りゅうのまいを発動させる。

 

「させねえ。イリア、ギャラドスにかみなりパンチ!」

 

『今度こそくたばれ!』

 

 ギャラドスがりゅうのまいをするのと同時にイリアがかみなりパンチを直撃させるも威力が足りず、仕留めきるまでには至らなかった。

 

「チルル、ギャラドスにめざめるパワー!」

 

 しかしギャラドスのいかくの影響を受けるのは物理攻撃だけでめざめるパワーは特殊攻撃だ。その影響を受けない。故にギャラドスが戦闘不能になるのは当然のことだった。

 

「時は来た! ラグラージ、真の力を見せろ!」

 

 パワー型のラグラージが姿を変え、より重厚に、より堅固になったメガラグラージとなった

 

「ラグラージ、カイリューにれいとうパンチだ」

 

『かぁっ!』

 

 特性すいすいの力を得たメガラグラージがイリアに一瞬で詰め寄り、イリアの腹にれいとうパンチを直撃させる。

 

『冷たっ!』

 

 イリアは軽く言うが、実際には大ダメージなのは明らかだ。カイリューの特性、マルチスケイルがなければ戦闘不能になっていた。

 

 

 

 それ故にミクリさんの次の指示が手に取るようにわかる。

 

「ルンパッパ、カイリューにれいとうパンチだ!」

 

「イリア、左に避けろ!」

 

 それは余っていたルンパッパにれいとうパンチを指示することだ。それを見透していたかのようにすぐさま指示を出し、避けさせる。

 

『あらっ!?』

 

『残念でした』

 

 ルンパッパの顔が驚愕に染まり、避けたイリアがルンパッパをチルルの元へ蹴り飛ばす。

 

「ルーちゃん、後は頼んだぜ」

 

「了解! チルル、ルンパッパにつばめがえし!」

 

 それを察してルーちゃんがつばめがえしを指示してルンパッパを仕留めた。

 

 

 

 

 

「ここまでは予想通り……だが! ここから先は絶対に通さん!」

 

 ここまで追い込まれることを想定していたのか? だがどうやったところで詰んでいる。

 

「お前はもう詰んでいる」

 

「戯れ言を! ラグラージ、カイリューにれいとうパンチだ!」

 

 予想通り、メガラグラージがイリアに襲いかかり冷気を纏った拳が迫る。

 

「イリア、まもる」

 

『はいはい』

 

 イリアがまもるを出すとラグラージの拳は阻まれてしまう。その好機を逃すルーちゃんじゃない。

 

「チルル、はかいこうせん」

 

『これが俺達の力だ、ミクリ!』

 

 メガチルタリスのはかいこうせんが直撃するがそれでは決定打にはならず、耐えきってしまう。しかしそれすらも予想通りだ。

 

「ラグラージ、カイリューにもう一度れいとうパンチだ! 今度はまもるが使えない以上確実に当たる!」

 

「果たしてどうかな?」

 

「何っ!?」

 

 イリアがそれを避けると、ミクリさんの顔が先ほどのルンパッパのように驚愕に染まる。

 

 マンダーやブリタに劣るものの、イリアもポケモンの技を見切る能力があり、三度も同じ技を出されて軌道を見切れないポケモンじゃない。

 

 

 

「イリア、げきりんだ」

 

『この勝負絶対に負けられないのよぉぉぉっ!』

 

 そしてイリアのげきりんが直撃しメガラグラージが地にひれ伏し、戦闘不能となる。

 

 

 

 

 

「……仕方ない。二人の交際を認める」

 

「よし」

 

「そうと決まれば、早速姉さんに報告しなくてはな! 婚約者が決まったと!」

 

 は? 婚約者ってなんだ、婚約者って!? 

 

「おい、ちょっと待──」

 

 それを止める間もなく、ミクリさんが別のポケモンでそらをとぶで姿を消してしまった。

 

「なあルーちゃん、俺とルーちゃんは友達だよな?」

 

「私達の関係はガールフレンドとボーイフレンドだよ」

 

 だから友達だよな? 一体どうしてこうなった。ミクリさんは何故婚約者なんてぶっ飛んだ発想をするのか、ホウエン地方から出てもその答えは出なかった。




解説
ミクリの本気のポケモンはミロカロスとギャラドス、ラグラージの三体だけで、それ以外の三匹は本気ではありませんでした。シック達が勝てたのはそれが主な要因です。

それでは恒例の。

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第26話 伝説VS無敵

文章整形機能はともかく、改行が難しい……ほどほどにしないと不自然に空いてしまいますし、だからと言ってやらないと読み辛いですしね。
とまあ、試行錯誤した結果が今回の話です。


「いいかお前達。これから世界戦に向けて技を覚えた上でそれらを昇華してもらう」

 

 この場にはいないジャックを除いた俺のポケモンにそう指示すると全員が頷いた。

 

『例えばシックさんのように全ての指かられいとうビームを放出したりすることですか?』

 

「そうだ」

 

 マンダーの質問に俺が頷くとゴルメが口を開く。

 

 

 

『つまりどういうことじゃ?』

 

「ゴルメ、要するに自分が覚えられる技を改良しろってことだ」

 

『なるほどの……ならこれならどうじゃ!』

 

 

 

 ゴルメがれいとうビームを拡散させ地面を凍りつかせる。氷のステージを作るためだけに特化させたと言う訳か。

 

 

 

「で、それが何の役に立つ?」

 

『氷というのは摩擦がほとんどない。つまり氷の上で下手に動こうものなら滑ってまともに動けまいよ。飛を除いた物理攻撃型のポケモン相手にはちょうど良かろう?』

 

 

 

「ゴルメ、お前は何もわかっていない」

 

『え?』

 

 

 

『当たり前ですよ。マグマッグといった炎タイプのポケモンが氷を自然と溶かしてしまう可能性があります。またフィールドに慣れてしまえばどうということはありません。むしろ摩擦ゼロということを利用して変則的な動きをするでしょう』

 

 

 

 マンダーの解説する通りだ。これから戦う相手は世界クラスの化けモンばかりだ。そんな奴を相手にフィールドを凍らせた程度で有利になるとは思えない。

 

 

 

『うっ……』

 

『しかし欠点だけ述べましたがこの技は使えないこともありません。シングルよりもダブルで活躍出来る技で相手の動きを封じるのに多いに役立ちます』

 

『そうじゃろうそうじゃろう!』

 

『しかし牽制の役にしか立たないのは事実で他の技も考えておいた方が良いですよ、ゴルメさん』

 

『マンダー、それだけワシの技を批評するなら考えているのじゃろうな?』

 

 

 

 確かにゴルメの言うとおり批評ばかりでは意味がない。マンダーの意見も聞こう。

 

 

 

『私ですか。ふむ……私の弱点をつくれいとうビームを搭載しているポケモンの多くは水、その次に無となります。れいとうビームの威力を増大させる氷もいなくはないのですが、かえんほうしゃやだいもんじの餌食になりますので水と複合タイプのポケモンを用いる場合が多数です』

 

「それで?」

 

『となればかみなりのキバを改良するしかないでしょう。現状、かみなりのキバの威力はそう優れたものではありません。飛半減及び雷等倍の相手にメガシンカした時のすてみタックルに比べ劣り、使いどころがありません。しかしかみなりのキバをこのように改良することで出来ますよっ!』

 

『ぎゃーっ!?』

 

 ゴルメに噛みつき、その牙から電気を流すマンダー。どこか殺意じみたものを感じるが意外と短気なマンダーを怒らせたゴルメの自業自得としか言い様がない。

 

『シビレ……ビレ……』

 

『このようにしっかりと神経系まで電気を流すことで通常よりも麻痺させることが出来ます』

 

 

 

 ゴルメが痺れているのを横目に解説するマンダー。急所を知り尽くしているマンダーの頭脳あってこそのかみなりのキバという訳か。

 

 

 

「マンダー、よくわかった。だがドリュウズやハガネールはどうする気だ?」

 

『その時はだいもんじで燃やしてしまえば問題ありませんよ。あくまでこのかみなりのキバはギャラドスなどの雷に極端に弱いポケモンに対して使うもので優先順位は低いんですよ』

 

「それはそうか」

 

『麻痺状態にする確率も約9倍に膨れ上がっており襷潰しにもなります』

 

 正確には意味は違うがきあいのタスキを持っている相手を効率よく無効化するという意味では合っているな。麻痺して行動が出来なくなればそれまでたし、おまけに体力まで削れる。これ以上ないまでに技として優秀だ。

 

 

 

『やるじゃんマンダー。マネージャーさん、オイラの技も見てくれよ』

 

「いいだろう」

 

『ドラゴンフィッシュブロー!』

 

 俺がかつてイリアを捕まえる時に放ったドラゴンフィッシュブローがブリタに宿り、未だに痺れているゴルメに炸裂させた。

 

『何でワシだけこういう役目なんじゃーっ!?』

 

 それはゴルメだからとしか言い様がない。

 

『どうだい? ドラゴンクローを応用した技なんだが無や悪、鋼、氷にもしっかり効くぜ』

 

 

 

 無や悪、氷はともかく鋼に効く? そりゃ妙な話だな。鋼は竜タイプの攻撃を弱める力がある。しかしブリタのいうことが正しければその逆が起こっていることになり、矛盾が生まれる。

 

 だが氷タイプの技の威力を弱める水タイプのポケモンに有効打を与えるフリーズドライのような例もある。こいつはそれを自力で編み出したのか? 

 

 

 

「ブリタ、確かにドラゴンフィッシュブローは優れた技だがドラゴンクローを応用している以上、竜の技であることに違いなく(フェアリー)相手だと不利だ」

 

『そりゃそうだけどもマネージャーさん、逆に言えばこのドラゴンフィッシュブローだけで竜、氷、鋼、無、悪の対策が出来るんだぞ? 他の技を考えずにこれ一つだけで大体の敵を屠れるんだぜ』

 

 

 

 む……確かに。鋼のポケモンは物理防御が高い傾向にある上にじしんがあるから鋼対策の役割が被るが他はそうでもないから有難い。

 

 デメリットだらけだが高威力のげきりんか、範囲が広いが威力はやや高めのドラゴンフィッシュブローか……迷うところではある。

 

 

 

 

 

 

 

 そんな風に悩んでいると後ろから気配が近づき、そちらを見るとどこかで見たようなトレーナーがそこにいた。

 

「やっと会えたぞ……シック!」

 

 やはり知り合いだったか。しかし顔は覚えていても名前が出てこないな。

 

「誰だ?」

 

 だから単刀直入にそう尋ねた。それしか名前を知る方法がないからな。

 

「僕を覚えていないというのか!?」

 

 顎が外れそうなまでに口を開くその青年に俺は首を傾げる

 

「会ったことはあるのは覚えているが名前を忘れた」

 

「なっ──」

 

「たしかタービンだっけか?」

 

「違う! 僕はタクト、伝説ポケモン使いのタクトだ!」

 

「伝説ポケモン使い? そんな奴だっけか?」

 

 

 

 俺は公式戦こそ通常のトレーナーよりも少ないが、野良試合の数は年間500を超えていて一日一回以上は戦っていて日常茶飯事だ。倒した相手の名前などほとんど覚えていない。

 

 それこそレックウザ愛好家というキャラが濃すぎる奴か。トレーナーとして優れた奴しか覚えていない。

 

 

 

 そのことを言わずともタクト君の顔は真っ赤に染まり激昂した。

 

 

 

 

 

 

 

「ふざけるな!」

 

「ふざけていない。お前は俺に名前を覚えさせるにはインパクトが足りなさすぎた。それだけのことだ」

 

 そもそもだ。伝説ポケモン使いを自称する奴はいくらでもいる。しかし悲しいかな、レックウザ6匹のトレーナーの様に俺のポケモンを一体以上倒す様なトレーナーは極稀で、むしろトレーナーとしての力量が足りない奴らの集まりだ。

 

 

 

 そりゃギラギラやジャックのように世界クラスのポケモンならともかく、それ以外のポケモン相手に勝てないってどういうことだよ。こいつら相手なら対策すれば一応勝てないことはない。実際レーティング団体のチャンプもブリタを倒してみせたし。

 

 

 

「で、そのタクトがリベンジしに来たのか? 悪いが今日は特訓しているから相手にしてやれないぞ」

 

「何故カロスの地方チャンプが君のことを太陽の王子と呼ぶか教えてやろうか?」

 

「何?」

 

「確かに君は王子と呼べるほど顔は整っているが前に太陽が付く戦い方はしていない。それに何故彼女が太陽の王子と呼ぶか、その理由気にならないのか?」

 

 

 

 

 

 

 

 太陽の王子

 

 

 

 確かに俺がそう呼ばれるのか、未だに疑問だ。確かに人よりも顔は整っていると自覚があるが、それは見た目だけで実際の性格は凡人そのもの……いやポケモンバトルでえげつない戦い方をしている以上王子と言うよりも悪魔そのものだし、よしんば王子と呼ばれる理由があったとしても王子の前に太陽がつく理由がない。

 

 

 

 カルネさんが太陽の日の出のように活躍していると吹聴しているが果たしてそれが真実なのか怪しいところだ。

 

 

 

 

 

 

 

「聞くだけ聞く。だが──」

 

『ねえご主人、殺っていい? 殺っていいんでしょ? 殺るわよ!』

 

 アホの子になったイリアが興奮しながら俺の肩を掴んで身体を揺らす。

 

「イリア、こいつはリックに負けた敗北者だ。リックと違って弱い者虐めをするのは趣味じゃないだろ?」

 

『リックに負けるほど弱いのこいつ?』

 

『その俺に負け越している癖にそんな減らず口を叩けるのはどこのどいつだ?』

 

 

 

 リックが弱い者虐めを否定しないのは、ポケモンバトルでサザンドラという種族はどうしても弱い(相性が良い)奴にはとことん強く出れるが、強い(相性が悪い)奴には弱く、まさしく弱い者虐めをする為に生まれてきたような種族だと自覚しているからだ。

 

 

 

 それ故に当初はサザンドラの苦手な妖タイプを目にしただけで、ふくよかな体型からは想像と出来ない程のスピードでボールの中に逃げてしまうような性格だった。

 

 

 

 

 

 

 

「弱い者虐めだと? さっきから黙って聞いていれば好き勝手言ってくれるね」

 

「それが何か? 仮にも伝説と呼ばれるポケモンを使って勝てないどころか6タテされるなんて俺は夢でも見ているのか?」

 

「……っ!」

 

 

 

 俺の指摘に言葉もなくすタクト。仮にも向こうは伝説と呼ばれるポケモンを使っている。それにも関わらず勝てないということはポケモントレーナーが戦犯と呼べるような指示を出しているか、対戦相手が悪すぎたかのどちらか、あるいは両方だ。

 

 

 

 伝説ポケモンの中で強力な専用技を持つ場合、それさえ対策していればどうとでもなる。特にダークライは挑発してしまえばそこらにいる高速特殊アタッカーと変わりない。むしろ技の範囲が狭まったことを考えるとカモだ。

 

 

 

 逆にそれを持たない場合は普通のポケモンよりもほんの僅かな誤差程度の強さのポケモンでしかない。

 

 

 

 しかしそれも使い手次第ではその僅かな差も大きな差となり、蹂躙することも出来る。伝説ポケモンは扱い辛い一方で、極めれば最強になり得る存在とも言える。

 

「俺は世界を相手にする。地方チャンプにもなれなかったお前に俺と戦うことで得られるメリットはあるのか?」

 

「ある。僕がチャンプ以外で勝った男として名誉が刻める」

 

「下らん」

 

「下らないだと! 未来の伝説の地方チャンプに向かって──」

 

「俺は名誉の為に世界に挑むのではない。約束を果たす。ただそれだけの為に挑戦する」

 

 

 

 結局俺の原点はそこだ。頂点に立ってワタルさん達と戦うことに意味がある。小山に登って終わりのこいつとは目指すものが違う。

 

 

 

「約束とは?」

 

「それを話す必要はない。それを話したら二度と会わないのであれば話は別だが」

 

「詮索は止すよ。僕がしたいのは君へのリベンジだからね」

 

「余程俺と戦いたいのか……」

 

 面倒臭い奴だ、と口に出すのを控える代わりに次の言葉を発した。

 

 

 

 

 

 

 

「どうしてもポケモンバトルをしたいなら条件がある」

 

「何だい?」

 

「俺の条件についてはこのポケモンバトルでお前が負けた時に話す」

 

「なっ──」

 

 タクトが俺のあまりの言い分に絶句する。ここで俺が条件について話さない理由はタクトが奮起してしまう場合が多いにあるからだ。敢えて秘密にすることでプレッシャーを与えることが出来、思考力が落ちて俺の勝率も上がる。もうこの時点でポケモンバトルは始まっているんだよ。

 

 

 

 

 

 

 

「さあどうする?」

 

「良いだろう。行けっ、カイオーガ!」

 

 タクトがいきなり取り出してきたポケモンはカイオーガ。それもゲンシカイキしたカイオーガだ。このゲンシカイキしたカイオーガ──以下カイオーガ表記──は特性が炎を無効化させるフィールドにし、雨を半永続的に降らせるはじまりのうみというものだ。

 

 この状態のカイオーガに対抗出来るのは──その瞬間、ダークボールから身長3m程のポケモンが現れた。

 

『偶には動いて運動不足を解消しなければならない。マスター、今回に限り無償でこのトレーナーを潰すが構わんな?』

 

「物理的に仕留めるのは止めろよギラギラ」

 

 

 

 

 

『了承した』

 

 ギラギラがそれを了承し、りゅうのまいをしながらカイオーガを視界に捕らえる。

 

「はっ、何をしている。カイオーガ、なみのりだ!」

 

『余の攻撃を喰らうがいい!』

 

 カイオーガの攻撃がギラギラに直撃せず、既にギラギラは次の攻撃態勢を取っていた。

 

『逝け』

 

 ただ一言、そう告げたギラギラがれいとうパンチをカイオーガに直撃させるとカイオーガの全身が凍りついただけでなくフィールドも氷になっていた。

 

 

 

 

 

 

 

「本気だなこりゃ」

 

 ギラギラは普段回避せず攻撃を受け止め、防御する。その理由は大抵の攻撃を受け止めてもギラギラにしてみれば蚊に刺されたようなものだからだ。今回のカイオーガのなみのりもギラギラからしてみればたいしたものではない。

 

 

 

 しかしギラギラが本気を出したらブリタのように皮一枚で避けることも出来、今回のようになみのりが届かない範囲内まで避けた訳だ。

 

 

 

 何故ギラギラが本気を出したのかわからない。気まぐれなのかもしれないし、もしかしたらタクトのポケモンの強さを感じ取ったのかもしれない。

 

 だがギラギラが本気を出した以上、前回より蹂躙されるのは確かだ。

 

 

 

 

 

 

 

「グラードン、いってこい!」

 

 今度はゲンシカイキしたグラードンが君臨し戦闘不能となったカイオーガの氷が溶け、タクトが律儀にカイオーガをしまう。

 

「ギラギラ、いわなだれ」

 

『承知』

 

 文字通りギラギラのいわなだれがグラードンを押し潰す……それしか言い様がない。タクトのポケモンの無事を祈るしかない。

 

 

 

 

 

 

 

 それからタクトはミュウツーだのアルセウスだのと様々なポケモンを出してきたが相手はあのギラギラだ。相手が悪すぎる。

 

「もう降参しろよ、それ以上やるとポケモンが泣くぜ?」

 

 そう警告をしたが、奴はまだ余裕綽々としており、まるでそれまでが前座と言わんばかりに不敵な笑みを浮かべていた。

 

「降参しないよ。最後に出すポケモンは君の手持ちじゃ絶対に勝てないポケモンだ」

 

「勿体振らずはよ出せ」

 

「これで君のポケモンは全滅だ! 行けっミカルゲ」

 

 タクトが出してきたポケモン、ミカルゲは霊・悪の複合タイプで弱点が妖一つしかないが、伝説ではなく飛び抜けて強いと言うわけでもない。

 

 何故タクトがそんなポケモンを使うんだ? いや最後の切り札と言っていたことから奴にも伝説使いとしてのプライドがあったのか。とにかくあのミカルゲには何か隠された秘密があるのかもしれない。

 

「ギラギラ、かえんほうしゃ」

 

「無駄だ!」

 

 タクトがそう叫ぶものの、ミカルゲがギラギラのかえんほうしゃを直撃し文字通り音速で吹き飛ばされた。

 

 

 

 

 

 

 

「……そんな、バカな!」

 

 唖然としていたタクトが叫び声を上げ膝を付く。

 

「何故勝てると思った?」

 

「僕のミカルゲの特性はどのミカルゲとも違うふしぎなまもりだ。つまり妖以外の攻撃やかたやぶり等の特性以外の攻撃を受け付けない。君のポケモンは全て両者でないから勝利を確信したんだ」

 

 

 

 

 

「だからこそ余計に君のバンギラスが何故僕のミカルゲを倒したその場理由が解せない。答えてくれ!」

 

「そのミカルゲがふしぎなまもりではない特性になったのか、あるいはギラギラがふしぎなまもりを突破出来る力を身につけたかのどちらかだ。詳細は俺もわからない」

 

 

 

 尚、この後ギラギラに持たせた道具を専門家に尋ねたところ、この道具を持たせると特性をかたやぶりに変える効果があり後者であったことを知ることになる。

 

 

 

 

 

 

 

「でだ、俺に負けた以上お前は俺の言うことを聞く必要がある」

 

「うっ」

 

「お前の手持ちのポケモン全て逃がせ。伝説ポケモンってのは一ヶ所に集まるべきものじゃない。集まれば世界の秩序を乱し得るからだ」

 

「そんなこと──」

 

「呑めないよな? まあそうだろうとも。さっきまでそうさせようと考えていたんだが、そうもいかなくなった」

 

「え?」

 

「しかしそれを止める主な理由はミカルゲだ」

 

「ミカルゲが主な理由?」

 

「ミュウツーやアルセウス等の伝説ポケモンを逃がした程度ならまだマシだがミカルゲはタマゴが確認されている。いつしかふしぎなまもり持ちのミカルゲが増殖し、ポケモンリーグにふしぎなまもり持ちのミカルゲを持たなければならない日が来ることになる」

 

「それはそうだが──」

 

「まだ気づかないのか? ふしぎなまもり持ちでないミカルゲはどうなるか、わかるよな?」

 

「それ、は」

 

「ケロマツやアチャモ達がプラズマ団を半壊させた二の舞になりかねないということだ」

 

 

 

 

 

 

 

 プラズマ団はかつてはポケモンを解放するという目的で作られた宗教団体であり、世界規模のテロリスト集団でもあった。

 

 

 

 だが特別な特性でないアチャモやケロマツ等のポケモン達は、捨てた人間よりも捨てさせるように誘導したプラズマ団を憎み、プラズマ団の資金源等を強盗し、力を奪っていった。

 

 

 

 それ以降プラズマ団は衰退し、エーテル財団のモデルとまでなった組織の面影はどこにもなくただのテロリスト集団へとなり下がったと言うわけだ。

 

 

 

 それに加えてミカルゲも人間を憎むようになったら手がつけられなくなる。

 

 アチャモやケロマツと言ったポケモンは霊が複合されなかっただけマシだがミカルゲは霊・悪だ。

 

 呪いやその類いで弱らされる可能性が大いにあり、それまで病院で治せたものが治せなくなる。

 

 

 

 

 

 

 

「それだけ聞ければ後はわかるな?」

 

「……」

 

 それにタクトが素直に頷く。

 

「俺の条件はそのミカルゲを公式戦で使うな。以上だ」

 

「逃がさずに保護しろとかそんな条件にしなくてよかったのかい?」

 

「そいつを逃がそうが保護しようがお前の責任だ。俺には関係ない」

 

「ソルガレオとルナアーラ」

 

 それだけ告げ、背を向け歩き始めるとタクトの声が響いた。

 

 

 

 

 

 

 

「あん?」

 

「この二匹はアルセウスやミュウツーを捕まえた僕の力を持ってしても捕まえることが出来なかった。その理由は君の出生にある」

 

 カプの奴らは捕まえたのかよ。アローラ地方の住民と距離が近いとはいえあいつらも伝説だからな。

 

 だがそれよりも気になることがある。

 

 

 

「俺の出生だと?」

 

 

 

 俺の出生は物心ついた頃には既に両親が死んでいた為に不明だ。故郷の爺さん婆さんの元に預けられた孤児と言うことがわかっているだけだ。

 

 しかしそれをこいつが知っているということはソルガレオとルナアーラに何か隠された秘密があり、それが俺のルーツにも繋がるということだ。

 

 

 

「君の出生と太陽の王子と呼ばれる由縁、それはアローラ地方にある。もし気になるならそこに行きたまえ」

 

「そうかよ」

 

 そう返事を返したものの、俺の行き先は既に決まっていた。




後書きらしい後書き
この第26話限定でアンケートを行います。話には関係ありませんが今回の文字の見やすさに関するごく簡単なアンケートですのでご協力お願いします!

それでは恒例の。

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第27話 爆弾厨の因縁の相手

前話のタイトルを「第26話」から「第26話 伝説VS無敵」変更しました


 俺のルーツを辿る為にアローラ地方のマリエ図書館に向かうとそこはチンピラどもがたむろしていた。

 

「何だてめえは!」

 

「俺達がスカル団だと知ってのことスカ!」

 

「知るかカス」

 

「な、何を!?」

 

 俺の左手を飛びかかってきたチンピラその一の顔に伸ばして鼻を人差し指の第一関節と第二関節の間の部分と親指で挟み込み、鼻梁に親指の先を突き立てるようにしながら左回りに180度捻る。するとチンピラその一がケンタロスが鼻輪を捻られたかのように身体を地面に転がし、鼻を抑える。

 

「ざまあねえな~」

 

 チンピラその一が鼻血を出している姿をゲラゲラと笑う。笑う理由など至って単純で、こいつら(悪党)が粋がっていたところを痛みに悶え苦しむ姿に変わる瞬間が面白いからだ。

 

「スカル団だがカスカス団だかホネホネ団だが知らねえが、何の関係もねえ人様に迷惑をかけてなぁ……どうなるかわかっているんだろうな?」

 

「ぎゃぶっ!」

 

 ごく普通に、手加減した状態で顔を殴るとチンピラその二が縦に一回転しながらぶっ飛び、口が利けなくなる。

 

 流石にこれだけやっておけば恐慌状態に陥り、撤退するだろう……そう考えていた時期が俺にもあった。

 

 

 

「何をてこずっている?」

 

 突如乱入してきた黒尽くめの男が現れ、チンピラどもに声をかけるとチンピラどもが復活し、一筋の希望の光を見つけたようにすがる。

 

「あっ、先生!」

 

「それがこいつが邪魔をしてきたんでスカら!」

 

「わざとらしく語尾にスカをつけるな……紛らわしい」

 

「そんなことよりも先生、この暴力トレーナーをなんとかして下さい!」

 

「図書館に鼻血垂らすんじゃねえ!」

 

「みぎっ!」

 

 鼻血を垂らしたアホの顔を踏みつけ、気絶させる。

 

 

 

「くくく……どうやらお前は図書館が大好きなようだ。どうだ? 表に出てポケモンバトルで決着を着けようじゃないか、図書館をむやみやたらと荒らされても困るだろう?」

 

「……いいだろう」

 

 俺が奴の提案に乗った理由は奴がここでポケモンを出して暴れたら共犯にされかねないからだ。

 

 

 

「さて準備はいいな?」

 

「勿論だ」

 

 俺が出すポケモンは戦闘狂のイリアではない。俺が出すポケモンはメタグロスのダンだ。

 

『……ようやく会えたな。親父達の事を忘れたとは言わせねえ』

 

 いつもなら爆発、爆発と喧しいこの上ないダンが静かに怒りを露にし、目の前にいるポケモントレーナーを睨む。

 

 それもそのはず、こいつはダンの育ての親であるゴローニャ達の仇であるポケモンハンターだからだ。

 

 こいつがダンの育ての親であるゴローニャの仇だと知ったのは、つい先程であり爆弾厨であるこいつが珍しく収納されているボールを揺らし戦闘の意思を露にし、事情を聞いた俺はそれを承諾した。

 

 

 

「いけ、ギルガルド!」

 

 取り出してきたポケモン、ギルガルドはタマゴでヒトツキとして生まれる、所謂通常のポケモンだがかなり特殊なポケモンでもある。

 

 何故特殊かというとギルガルドがバトルスイッチという特性を持っており、ギルガルドが攻撃すると超攻撃型であるブレードフォルムに、ギルガルド専用の技であるキングシールドを使うことによって超防御型であるシールドフォルムに変化し、それを使いこなせば攻撃、防御両方こなせる究極のポケモンとなりうる存在だ。

 

 そんなギルガルドにメタグロスは勝てるかと言えばノーだ。ギルガルドのタイプは(ゴースト)・鋼に対してメタグロスは鋼・(エスパー)だ。

 

 メタグロスが覚える技の中で与えられるダメージの中で決定打を出せる技はじしんくらいしかあらず、ほとんどないのに対してギルガルドはタイプ一致のシャドーボールがある。

 

 普通ならイリアやブリタに入れ換えるのだが、これはダンの戦いだ。部外者が口を出す道理はない。

 

 

 

『ギルガルドだろうが、カビゴンだろうが関係ない。このバトル、だいばくはつは使わねえ』

 

 だいばくはつを使わない……なんて素敵な言葉の響きだろう。出来れば毎日ダンの口から聞きたい言葉だ。

 

「ギルガルド、シャドーボール!」

 

『……!』

 

 ギルガルドがダンに向けてシャドーボールを放つとダンが口を開き笑みを浮かべた。

 

『シック、修行の成果が上がったのはあんたのポケモン全員だ。今、その力を見せてやるよ』

 

 ダンがそう告げるとシャドーボールをサイコキネシスやねんりきといった超能力を応用し、シャドーボールをギルガルドの元に返す。

 

「避けろギルガルド」

 

『……』

 

 ギルガルドの感情はないのか了解と言った言葉も発せずに無言で避ける。

 

『甘えよ!』

 

『……ッ!』

 

 だがそれを避けた直後、シャドーボールが急転換し、ギルガルドに直撃し、ヨレつく。今のギルガルドは避けることで精一杯でキングシールドをしなかった、いや出来なかったというべきか。

 

 それ故に超攻撃型であるブレードフォルムでシャドーボールを受けたんだ。大ダメージは免れない。

 

「タフな奴だ。ダン、とどめのじしんだ」

 

『死に晒せぇっ!』

 

「キングシールドだ!」

 

 ダンがリックのように口調が荒くなりながら、ギルガルドにとどめのじしんを放つとギルガルドがキングシールドをしており、じしんのダメージは無効化されていた。

 

『命拾いしたな』

 

 ただ一言、そう告げるダンはどこか皮が向けていた。

 

 その後ギルガルドは逆転することなく普通にダンに止めをさされ、戦闘不能になる。

 

 

 

「いけ、ヨワシ」

 

 次はヨワシか。単体では全ポケモンの中で最弱とまで言われるほど弱いが、ある程度レベルが上がりしかも体力が有り余っているとどこからともなくヨワシが集まりむれたすがたになる。

 

 奴が姿を表した瞬間、ヨワシが即座にむれたすがた──以下群れヨワシ──に変化したことから相当強いヨワシだとうかがえる。

 

 そんな群れヨワシの特徴はある程度体力が減ると元のヨワシに戻り、物理特殊問わず攻撃と防御と言ったステータスが下降する──ヨワシが群れヨワシになっても体力や素早さは変化しない──といったところだろうか。

 

「ダン、かみなりパンチだ」

 

『おらぁっ!』

 

 群れヨワシにかみなりパンチが直撃する。当然と言えば当然だ。群れヨワシはポケモンの中であまりにも巨体過ぎる。あれ以上の巨体で避けることが出来るのは本気になったギラギラくらいのもので他はいないだろう。それに群れヨワシそのものの素早さが低いこともあってまともに動くことも出来ない。

 

 だからといって、群れヨワシが倒れる訳でもなければ群れヨワシが通常のヨワシに戻る訳でもない。

 

「その程度の攻撃でどうこう出来る訳じゃない。ヨワシ、ハイドロポンプだ」

 

 そう、群れヨワシの特徴は物理特殊問わず攻撃と防御がかなり優れており並大抵のポケモンでは太刀打ち出来ない。

 

「メタグロス、かみなりパンチの電気をサイコキネシスに乗せてヨワシに喰らわせろ」

 

 ではどうするか? ヨワシ、群れヨワシは共に体力がないという弱点があり、防御を突破してしまえばいい。

 

『うぎゃぁぁぁっ!』

 

 電気のサイコキネシスを喰らった群れヨワシが悲鳴を上げ、暴れまわるがそれは収まることを知らず、群れヨワシは次第に群れをなくしていき、遂にヨワシが単体となり戦闘不能になる。

 

 

 

「……ふん、どうやらここまでのようだ。今回は花を持たせるがいずれ勝負することになる。そのときに決着を着けよう」

 

 戦闘不能になったヨワシをボールに収納するとハンターがそう告げ、エアームドを取り出しライドするとはるか彼方へと消えていく。

 

 それを見たチンピラどもが危険を感じ取ったコラッタのように図書館から逃亡していった。

 

『クソが!』

 

 ここでそらをとぶをし(空気を蹴っ)て、追いかけても良かったが、おそらく奴の手持ちにエアームドを除いて空を飛べるポケモンはいない。いたとしても万全の状態では戦えない。そんな状況でポケモンバトルをしてもダンが不完全燃焼に終わるだけだ。

 

 ダンもそれをわかっていたのか宙に浮くことをせず、地面が抉るほど地団駄を踏み鳴らし怒りを表していた。

 

 

 

 

 

「それじゃ事情聴取はこれで終わりだ。シック、お疲れさん」

 

 警察官としてのクチナシさんが俺の事情聴取を終え、仕事に戻る。

 

「図書館はアセロラのお気に入りなんだ。そこを守ってくれたことに感謝するぜ。ありがとよ」

 

 最後にクチナシさんがそう口にして、別の場所に向かう……恐らくだがハンターが移動したと思われる場所に向かったんだろう。

 

 

 

「シック、クチナシのおじさんの事情聴取は何て聞かれた?」

 

 クチナシさんがいなくなると同時に、やや赤みがある紫の髪の少女アセロラが口を開いた。

 

「ん? 犯人の特徴とかそんな感じだ」

 

「それじゃクチナシのおじさんはシックのことを怪しんでないみたいだね」

 

「まあ俺はラフプレーはするが反則はしない人間だからな。クチナシさんもその事を知っているから犯人とは思われなかったんだろう」

 

「もしクチナシのおじさんがシックのことを逮捕しようとしたら私が弁護してあげようと思ったけど杞憂で良かった」

 

 アセロラ……お前弁護士の資格持っているのか? 

 

「ところでアセロラ、聞きたいことがあるんだが」

 

「何?」

 

「この地方に纏わる伝承が書かれている本はあるか?」

 

「伝承の本なら向こうだけど何か調べているの?」

 

「何でも俺の御先祖様がアローラ地方の伝説ポケモンと関わっていたらしい。今回はそれを調べに来た」

 

「御先祖様か……そう言えばシックってポケモンの言葉が理解出来るんだよね?」

 

「まあな。言葉だけじゃなく技も出来るぞ」

 

 身体のエネルギーを消費して威力を最小限に抑えたたつまきを発生させるとそこらにあった埃を舞い上げ回転させる。

 

「それなら伝承の本を見終わった後にカプ・レヒレに会ったらどう? カプ・レヒレは一番謎に包まれているけど他のカプに比べたら知識とか豊富なはずだよ」

 

 仮にも神と呼ばれるポケモンに対してサラッと酷いことを言っているな。それも仕方ない話でカプ・レヒレ以外は問題児だらけだ。

 

 カプ・コケコはイリアと同じく戦闘狂であり短気な性格だ。しかもその癖怒った理由も忘れるという有り様で、とても昔のことをついて語れるとは思えない。

 

 カプ・テテフは良くも悪くも自然だ。恵みを与える一方で、無邪気さが目立ち残酷な性格も併せ持っている。こいつに話を聞こうものなら心臓を差し出せくらいのことを言うだろう……てか前に言われた。

 

 カプ・ブルルはクチナシさんにものぐさを二倍にして暴力を加えて真面目さを減らしたポケモンだ。簡単に言えば話を真面目に聞く気もないし無理やりやろうものならポケモンバトル待ったなしだ。勝っても負けても話を聞かないのはお察し出来る。

 

 しかしカプ・レヒレは俺に対して島キングになれとうるさいが他の奴ら(カプ)よりか話を聞いてくれる稀有な存在であり、常識のあるポケモンだ。

 

「そうか。なら本を読み終えたらポニ島に行くとしよう。アセロラ、お前も行くか?」

 

「魅力的な提案だけど遠慮しておく。その代わり今度この街にある料亭で一品奢って」

 

「わかった。それじゃアセロラ、また今度な」

 

 そうしてアセロラと別れ、伝承の本を読みポニ島へ向かう。その最中にゴージャスボールの中にいるジャックに『無自覚主人公やってんじゃねえよ』と呟かれたが無視した。




後書きらしい後書き
前回のアンケートの結果によると見易いとのことでしたがより良い作品の為に再びアンケートをとります。話には関係ありませんが今回の文字の見やすさに関するごく簡単なアンケートですのでご協力お願いします!

それでは恒例の。

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第28話 王と王子

改行はこれでばっちりなはず……それはともかく本編とうぞ


『お久しぶりですね、シック。今回は観光客として来たわけではなさそうですね』

 

「永住民になる為の手続きをしに来た訳でもないぞ」

 

 永住民になったらそれこそ島キングを断る理由が薄くなる。俺の他にポニ島の島キング候補がマトモなら押し付けてやるんだが、唯一俺の他に候補に上がっている先代島キングの孫は若すぎて話にならない。

 

『ではバトルツリーという施設で戦いに来たのですか?』

 

「いや俺の出生を辿りに来た」

 

『どうやらその時が来てしまいましたか』

 

「ああ。俺が不自然に思ったのはレヒレ、島キングになるように俺に言ってきたことだ。島巡りを終えたとはいえアローラ地方から出た人間に対して島キングになれというのはいくら何でも異常だ」

 

 

 

『それの何処が不自然なのですか?』

 

「島キングになるには人々から認められる必要があり、島を出た裏切り者は原則認められない。それにも関わらず認められる絶対的な要素が俺にあるからこそ、俺を島キングにしようとしたんじゃないのか?」

 

 

 

『半分当たりですね』

 

「あ?」

 

『貴方の能力は人外のそれですが生物学上は人間です』

 

「それが何か?」

 

『貴方の両親、というよりも私が話すのはそれよりもはるか遠い先祖です。かつてこのアローラ地方は今でいう島キングに相当する朝の王、昼の王、夕の王、夜の王と呼ばれる四人の兄弟がこの地方を治め、私達カプ一族を敬っていました』

 

「レヒレ、今も敬られているのに何故過去形なんだ?」

 

『昼の王はある事件を境にカプ一族を敬わなくなりました。その事件は貴方達人間がUB(ウルトラビースト)と呼ぶポケモン達がアローラ地方を攻撃したことです』

 

「UB……」

 

『UBはいずれも強力なポケモン達で、数が多いこともあり、カプ一族が手も足も出なくなるほどの戦力を持っていました。しかし昼の王と夜の王が二頭のUBを従えたことにより状況が変わってきました』

 

「それがソルガレオとルナアーラか」

 

『はい。ソルガレオとルナアーラの二頭を従えた王達はカプ一族達と共に他のUBを撃退し平穏を戻しました』

 

「それまでの話ならいい話じゃないか」

 

『しかし昼の王はその時点で無力だったカプ一族に失望していたのか、カプ一族の代わりにソルガレオとルナアーラを神として崇めるようになりました』

 

「まあ無理もない話だ」

 

『それに対して他の王はこれまで通り我々カプ一族を神として敬い、昼の王と他の王との対立が深まりました』

 

「おいおい、それじゃイッシュ地方の伝説とほぼ同じじゃないか」

 

 ソルガレオ達の存在そのものは知っていたが、その話は初耳だ。

 

『イッシュ地方の伝説はどうかは知りませんが、王達の対立によりソルガレオとルナアーラも対立し、ソルガレオは昼の王に、ルナアーラは三人の王とカプ一族を味方につけて、互いに戦い、そして引き分けました』

 

「引き分けた?」

 

『どちらかと言うと共通の敵が現れて停戦したと言うべきですね。その現れた共通の敵は黒いポリゴンを形を変えたような敵でした。ソルガレオとルナアーラの二頭のうち一体を取り込んだことによって光輝く竜へと変化したそうです』

 

「光輝く竜……まさかこいつのことか?」

 

 紙を取り出し、図書館で見たかがやき様を描いてそれを見せるとレヒレが目を見開く。

 

『……間違いありません! カプ一族の伝承に伝わる竜の特徴とほぼ同じです!』

 

 

 

「こいつは俺のルーツを辿る際に図書館で調べたら出てきたポケモン。ソルガレオやルナアーラを取り込むとカプ一族やソルガレオやルナアーラの片割れと共に戦える程の力を持っていたが、その力を制し切れずに暴走した。その為二人の王が協力してそのポケモンを封じた……って所か?」

 

『そうです。それ以降、昼の王はソルガレオとルナアーラの二頭の信仰こそ捨てませんでしたがカプ一族を再び敬うようになったのです』

 

「しかし他の王はソルガレオとルナアーラに対して信仰しなかったんじゃないのか?」

 

『確かに彼ら自身は二頭に対して信仰しませんでしたが、二頭とカプ一族に対して信仰するように呼び掛けました。今のアローラ地方の信仰の対象になったのは彼自身の力と言っても過言ではありませんよ』

 

 

 

「なるほどな。だがその王達が俺と何の関係があるんだ?」

 

『シック、貴方に関係するのは昼の王の方です』

 

「昼の王?」

 

『そう、昼の王はソルガレオとルナアーラのみを信仰させようとしたせいで数多くの犠牲者を出してしまったことを気にかけて、このアローラ地方では死に等しい島流しを自ら受け、消息を断ちました。数多くのカプ一族をはじめとした皆が死んだと思い込んでいました……貴方がここに来るまでは』

 

「俺か?」

 

『今の貴方と同じく昼の王は他の王と違い、ポケモンの技を扱える数少ない人間でした。そして貴方も同様に扱える。これだけでも昼の王の子孫と自称することが出来ます』

 

「それは仕方ないことだ。俺の故郷にもポケモンの技が扱える奴はいた」

 

 そうでなければ闘タイプのポケモン達と殴り合えるかよ。

 

『その故郷の人間は昼の王の子孫です。その中でもシック、貴方は最も血が濃く受け継がれており、蘇らせた王達に貴方の姿を見せたところ、間違いなく昼の王の直系の子孫だと断言していました』

 

 そういえばレヒレは故人を条件付きとはいえ蘇らせることが出来るポケモンだったな。それ故に人前では滅多に姿を現さないが、俺には真っ先に会いに来る。その理由が昼の王の直系の子孫という理由だから恐れ入ったよ。

 

「なるほどな……しかし解せんな」

 

『何がですか?』

 

「俺が周囲から太陽の王子と呼ばれる所以だ。俺が昼の王の子孫なのはわかったが、太陽がつく理由がない」

 

 結局それなんだよな。俺が知りたいのは太陽の部分なんだ。王子云々はどうでもいい。

 

『昼の王が王子だった頃、彼は太陽の王子と呼ばれていました。おそらく貴方をそう呼んだ人間は昼の王のことを文献か何かで知り、昼の王の再来という意味でそう呼んだのでしょう』

 

「そういうことか……ようやく、謎が解けた」

 

 しかしその文献を読んだ奴はどこにいるんだ? 

 

 少なくともそいつはアローラ地方の人間ではない。アローラ地方の住民は他の地方に行きたがらない保守的な人間が多く、アローラから外に出てもそれを話すようなことはしない。そんなことをすれば田舎丸出しだしな。

 

 

 

 などと考えていると後ろから人の気配を感じ取った俺は後ろを振り向き、ボールを構える。

 

やはり似ておる。あの兄者に

 

 誉められていることはニュアンスでわかるがポケモンの言葉でもない言語を話されてもわかるかよ。

 

「……と、この言語では通じぬか。流石、兄者の子孫だ。そういう気配を探る能力も長けているな」

 

 アセロラと同じ髪色をした老人が現れ、俺をそう評価する。

 

『……まさか貴方は夜の王ですか?』

 

「如何にも。夜の王ザクロである」

 

 真面目に働いている時のクチナシさんと同じくらいの威圧感を醸し出す一方でアセロラ以上に(ゴースト)タイプ使い特有の不気味な雰囲気を醸し出すザクロ老。

 

『私が呼び寄せた訳でもない貴方が何故ここに?』

 

「兄者の子孫がどのような者か確認しにきただけだ」

 

『……いや、理由よりもどうやってここに来たのですか?』

 

「生前儂は霊使いだったからな。一時的に蘇るくらいは容易いものだ。ポケモン達の力を借りたお陰で霊タイプのポケモンだけでなくカプ・レヒレの言葉も理解出来るようになれたのは誤算だったが」

 

 いや容易くねえよ。容易く出来たら全員が霊使いになる。昼の王も超人だがこの夜の王も超人だ。

 

「さて兄者の子孫よ。世界一のポケモントレーナーとなって戦友達と再び合間見えることを望んでいることは知っている」

 

「何故そのことを?」

 

「お主に取り憑いている背後霊から事情を聞かせて貰った」

 

すまんな、シック。でもこれもお前の為なんだ

 

 後ろを振り返り、みやぶるを使うと何か見えるが、先ほどのザクロ老と同じ言語で喋っている為かニュアンスで謝っているのがわかる程度でしかない。

 

「兄者はソルガレオを従え、我らと対等に戦ってみせた」

 

 我ら、ね。島キングに相当する奴ら三人をまとめて相手にして引き分けた昼の王がいかれた強さを持っていたことがわかる。

 

「しかし旅立った兄者が名を上げることが出来なかった以上、世界には兄者以上のトレーナーがおり、少なくとも兄者を超えなければ世界一にはなれぬ」

 

 いや旅立ったって……島流しじゃなかったのかよ。などと突っ込んでも話の腰を折るだけだ。俺と同じかそれ以上の身体能力を持つ昼の王は島流し=旅立ちなんだろうな。

 

 

 

「兄者と対等に戦った我らに勝って世界一のポケモントレーナーになれる可能性があることを証明せよ」

 

 そしてザクロ老の手元に現れたボールからポケモンが出でる。そのポケモンは月と夜をモチーフにしたようなポケモンであり、霊・超の伝説のポケモン、ルナアーラだ。

 

「マンダー、いけ」

 

『伝説狩りは私の管轄ではないのですが、最近戦っていませんし良いでしょう』

 

 そういえばそうだな。マンダーは頭脳派であり、伝説などの力任せに戦うポケモンを相手にすることはほとんどない。マンダーにとって力任せに戦う伝説ポケモンは絶好のカモでしかなく、相手にする価値すらないからだ。

 

 しかしこのザクロ老は島キングに相当する立場の人間だったんだ。つまり四天王クラスであることは明白であり、それも歴代最強と言われた昼の王と互角に戦ったことを踏まえると地方チャンプと同格と言われてもおかしな話ではない。

 

 そのチャンプと同格の奴が伝説ポケモンを使うとなれば、イリアやダン、リック、ゴルメじゃ避けるのが遅すぎて分が悪い。ギラギラやジャックは火力がありすぎて一撃で終わっていたなんてことはしょっちゅうあり、話にならない。

 

 そうなるとブリタとマンダーだけだが、後者を選択した理由はただ一つ。マンダーが一番技を進化させる可能性が高いからだ。

 

「マンダー、成長したお前の本気見せてみろ」

 

『無論ですよ』

 

 マンダーがメガボーマンダにメガシンカし、りゅうのまいをする。そしてそれと同時にりゅうのまいから発生した風がマンダーの吐き出した炎で覆われ、りゅうのまいが炎竜の舞に進化した。……うん、自分でも何言っているのかわからねえし、センスもねえな。

 

『そんな炎の竜巻程度で怖がるとでも思ったのか? あいにくだが私は特殊攻撃が得意だ。火傷狙いなら近距離バカのソルガレオにすることだな』

 

「ルナアーラ、シャドーボールだ」

 

『いくぞ、下郎!』

 

 そしてルナアーラのシャドーボールがマンダーがいるであろう炎に目掛け放つが、そこにマンダーはいない。

 

 

 

『ほっほっほっ。私を下郎呼ばわりとはやはり伝説ポケモンなだけあって傲慢ですね。だから私の動きを見抜けない』

 

「マンダー、だいもんじだ」

 

 マンダーの口から吐き出された炎はだいもんじとは名ばかりの十文字の炎。しかも炎タイプが折々出す青い炎をレーザー状にして吐き出すとルナアーラに直撃し、よろめく。

 

『くっ……下郎の癖に、中々やるじゃないか』

 

『まだ言いますか。貴女がタフネスなのは認めますが後一撃で貴女を仕留められる自信がこちらにはありますよ』

 

 その根拠は一体どこから来るんだ? などとこの時は考えていた。マンダーから後に聞かされることだがルナアーラはマルチスケイルの上位互換の特性により受けるダメージが半減されていただけにしか過ぎず、ダメージを受けた後は半減されることはない。それ故の根拠だそうだ。

 

「マンダー、止めを刺せ。やり方は任せる」

 

 根拠がわからずともマンダーがそう言うのなら後一撃で止めを刺せると確信した。というか俺はいつでもマンダーに任せてもいいくらいには信頼している。

 

 それをしないのはマンダーに任せきりだと他の奴らが言うことを効かなくなるからだ。特にダンやゴルメに悪影響を及ぼす。

 

『それでは過去の遺物には消えて貰いましょうか』

 

 そしてマンダーのレーザー状のだいもんじがルナアーラに炸裂し、ルナアーラの姿が消えていく。

 

おのれ……この私がソルガレオでもなく、あの訳のわからぬ生物でもない、ボーマンダに負けるとは……これが地方を超えた世界の実力だというのか

 

『井の中のニョロモ、大海のホエルオー知らず。地方の伝説よりも強いポケモンはいくらでもいますよ。付け加えるなら私よりも強いポケモンもいます』

 

何を……!? 

 

 ルナアーラの姿が完全に消え、ザクロ老が笑みを浮かべて両腕を上げた。

 

 

 

「こうもあっさりとルナアーラを倒すとは……兄者とてもう少し手こずるというのに大したものだ」

 

「降参か?」

 

「うむ。兄者はソルガレオとの絆で我らのルナアーラと対抗したがお主は違う。鍛え上げたボーマンダで倒してみせただけでなく、采配も任せる程にボーマンダとの信頼もある。その点ではポケモンを信用しきれなかった兄者を既に超えている。後は経験を積むだけで世界一のポケモントレーナーになるだろう。無力な儂から言えることはそれだけだ」

 

 地方から出なかったから説得力に欠けるが、この夜の王も島キング以上の実力者だ。パワーアップしたマンダーだったから相手が悪かっただけで、地方チャンプ位の実力はあった様に感じられた。

 

「さらばだ。我ら兄弟はお主のことを見守っているぞ」

 

 夜の王ザクロ老が消え、天へと還っていった。

 

 

 

『シック、私は貴方を応援していますが、同時に貴方を島キングに迎えたいと思っているのも事実です。それ故に提案があります』

 

「……言ってみろ」

 

『もし貴方が3年経過してもWPAの世界チャンプになれなかったらすっぱりと諦め、島キングになることを提案します』

 

「下らん、だがその提案に乗ろう」

 

『……提案した私が言うのもなんですが、本当によろしいのですか?』

 

「無論だ。レヒレ、良いことを教えてやる。世界チャンプになる人間はなろうとしてなるんじゃなく自然と世界チャンプになる。そういう運命の下に生まれているんだ。3年経ってもなれなかったら俺はそこまでの器だったってことだ」

 

『器ですか……』

 

「そうだ。無論努力と言ったものでその器は広げられるが限界はある。世界チャンプになるかどうかはもう既に決まっている」

 

 ポケモンを鍛えるブリーダーとしての能力、ポケモンの能力に合わせた戦略、そして運。それらの総合力が世界一になれば世界チャンプになれる。ただそれだけのことだ。

 

『3年後、貴方が島キングにならないように祈っていますよ』

 

 レヒレに背を向け手を降って別れを告げたその日、俺はWPA(世界ポケモンリーグ協会)に登録した。




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WPA編
第29話 世界初戦


お待たせしました。ご久しぶりです。


 WPA(世界ポケモンリーグ協会)

 

 その団体に選手として登録するには条件が満たすことで登録出来る。

 

 その条件は地方チャンプになった者、殿堂入りした者、そしてWPAが用意したポケモントレーナーに勝つことのいずれかを満たすこと──所謂推薦枠だ。

 

 しかし最後のWPAが用意したポケモントレーナーに勝ったとしてもランキング最下位からスタートすることになり、世界チャンプになる可能性は前例が無いわけではないが少なく、大体の歴代の世界チャンプは地方チャンプか殿堂入りの枠で登録して成り上がった。

 

 そしてこの俺もその枠で登録していたが、相手はそれではない。

 

 俺のデビュー戦の相手の名前はコチョウ。WPA戦で10戦10勝、それも殿堂入り枠の相手に7戦7勝。今最もWPAで話題になっている推薦枠の女性として名を上げている。

 

 何故そんな相手とWPAでは無名に近い俺が戦えるかというと、地方チャンプ枠で登録した俺の方がランキングが上であり、コチョウからしてみれば絶好のカモでしかない。ましてや地方チャンプの試合は問い合わせれば映像を寄越してくれるので尚更だ。

 

 それ故に不利になる為にランキングが上に来る訳だが、ほとんどの場合勝ってしまう。その理由はWPAに登録した地方チャンプは経験が豊富で対策されていようとも戦略で捩じ伏せることが出来るからだ。

 

 しかし俺は全く逆で公式試合はジム戦と地方チャンプの一試合──つまり9試合しかやっておらず、しかも同じポケモンばかり使う。対戦相手のコチョウからしてみれば絶好のカモだ。大事なことだから二回言わせて貰った。

 

 

 

 

 

「さあ行くぞブリタ」

 

 だがそれでも俺は公式戦で最も出されたポケモン──ブリタを出す。ブリタ対策を更に対策していることを証明してみせる。それがポケモントレーナーとしての力量が問われるところだ。

 

『おうよ、マネージャーさん』

 

 マネージャーか。確かに俺はお前にポケモンバトルのマネジメントしているがコンテストのマネジメントはほとんどしていない。いい加減コンテストの方もやっておかねえとな。

 

「さあいってらっしゃい、キュウコン」

 

『お任せください!』

 

 アローラ地方のキュウコンか。氷タイプであり、ゆきふらしの特性を持つ個体も稀に存在する。今回はそのゆきふらしの特性のようでブリタの持ちものが襷ならそれを潰してきただろう。

 

 

 

 

 

「小賢しいことをしてくれるな。ブリタ、アイアンテールだ」

 

『全くでさぁ。脳ミソぶちまけろぉっ!』

 

 ブリタのアイアンテールが炸裂し、キュウコンにダメージが与えられるが、それでも倒れない。パワーアップしたブリタ相手に耐えられる理由は襷以外に考えられない。

 

「キュウコンふぶき!」

 

『貴方にとってのしねしねこうせんは、このふぶきよーっ!』

 

 しねしねこうせんとはなんぞや。などと突っ込みを入れたかったが霰の上にふぶきというコンビネーションはブリタにとってまずい。ブリタは必中技以外は避けることは出来るが逆に言えば必中技は避けられないということであり、天候が霰の時にふぶきは必中技となる。

 

『クリームよりも甘いぜ』

 

 しかしブリタはそれを避けた。……もう一度いう。ブリタが霰の状態でふぶきを避けた。

 

「え?」

 

『嘘でしょ!?』

 

 嘘ではない。パワーアップしたブリタは例え必中技であっても避けてしまうようになった。

 

 これまでブリタは天性によるもので先読みしていたが、マンダーが理屈でそれをしていたのを見て学習して避けることに関しては世界の名だたる化け物ポケモン……所謂化けモンに並ぶ程になった

 

「トドメだブリタ。アイアンテール」

 

『カッチカッチやで』

 

『うぎゃーっ!!』

 

 キュウコンが悲鳴をあげて倒れると同時に今度はオニゴーリを出してきた。すぐに立ち直れるあたりコチョウのメンタルが強い証拠だ。

 

 

 

 

 

「オニゴーリか。厄介な奴だな」

 

 オニゴーリはアイスボティという特性で、この特性は霰の時体力を微量程度回復するものであり、あのキュウコンがゆきふらしの特性で霰を降らした影響で体力を回復出来るようになっているという訳だ。

 

 しかしそれ以上にオニゴーリが厄介な特性を持っている場合がある。それはムラっけという特性でボールから出してから時間が経過すると、ある能力が一段階下がる代わりに他の能力が二段階上がるといったものだ。

 

『マネージャーさんどうするんだい?』

 

「アイアンテールだ」

 

「オニゴーリ、まもる」

 

 となれば攻撃しかない。前者後者問わずこれが正解だ。もし前者であればアイアンテールを防がずに別の行動をする。しかしまもるを選んだということは間違いなくこのオニゴーリはムラっけ持ちだ。

 

 

 

 

 

「ブリタ、もう一度アイアンテール」

 

「オニゴーリ、みがわり」

 

 恐らく素早さが上がったであろうオニゴーリがブリタのアイアンテールがあたる前にみがわりを出して攻撃を回避する。そのみがわりはすぐに消えてしまった。

 

 そしてコチョウがオニゴーリにまもる、みがわりの指示を数回するといよいよオニゴーリがみがわりを出せなくなるまで体力が減る。

 

「オニゴーリ、ぜったいれいど」

 

『当たれぇぇぇっ!』

 

 よりによってぜったいれいどを選ぶとは……愚かにも程がある。必中技となったふぶきですら当たらないのにぜったいれいどが当たる要素などあるはずもない。

 

「ブリタ、アイアンテール」

 

 そんなぜったいれいどが当たるはずもなくオニゴーリにアイアンテールが炸裂し、オニゴーリが倒れた。

 

 

 

「くっ……運も実力のうちって訳ね。普通なら物理防御が上がるのに……いけっ、ケッキング」

 

『ぶっ殺す!』

 

 コチョウが愚痴りながらも血気盛んなケッキングを出し、戦闘体制を取る。

 

「ブリタ、じしん」

 

『殺そ、殺そ、輪になって殺そ!』

 

 ブリタがハイテンション気味にじしんを出すと笑みを浮かべたコチョウがそこにいた。

 

「ケッキング、みがわり!」

 

 ケッキングがみがわりをしたと同時に俺は勝利を確定した。

 

「ブリタじしん」

 

『オイラの怒りのパワー思い知れーっ!』

 

 ブリタの攻撃によりケッキングのみがわりが消え、目の前には的になったケッキングがいる。

 

「ケッキング、れいとうパンチ」

 

 特性なまけで動けないはずのケッキングが動き、れいとうパンチがブリタに飛んで来た。

 

『な、なんだと……!?』

 

 ブリタが倒れ、ケッキングに勝ち星が上がる。ケッキングといえば特性のなまけで一度動いたらしばらく時間がかかる。しかしこのケッキングはそうではなかった。ミクルのみ*1を食べ、不意討ち気味なこともあってブリタを倒してしまった。

 

 

 

「さあここからが本番よ」

 

「いけダン」

 

 俺がダンを出した理由はシンオウ地方チャンプの推薦試合の時に使ったからであり、

 

「なっ、ケッキングまもる!」

 

 コチョウがダンを見た瞬間にだいばくはつを恐れてまもるを指示する。しかしそれはダンを警戒しすぎた故の判断だ。

 

「甘いぜ。ダン、グロウパンチ」

 

『クカカカ……!』

 

「あっ!?」

 

「さあ覚悟してもらおうか、ダン。だいばくはつ!」

 

『ま、待て! こんな神聖な試合でだいばくはつをすればブーイングが起こる。だからだいばくはつは──』

 

『世界の、だぁぁぁいばくはつぅぅぅっ!』

 

 だいばくはつから逃れようとするケッキングを拘束するとともにダンが光悦の笑みを浮かべるとともにだいばくはつを起こすと互いに戦闘不能になる。

 

 

 

 このケッキングは特性がなまけではなく別の特性、かるわざの下位互換にあたるもので持ち物を持たせた状態で持ち物を失わない限り素早さが格段に落ちてしまい、トリックルームやまもるを使っても後攻になるものだと聞かされた。

 

 ケッキングがグロウパンチをまもるで防げたのはケッキングがきのみを食べたから持ち物を失ったからこそ出来たということだな。

 

 

 

 そして試合が終わるとともに周囲が騒然とする。それもちろん歓喜の声──

 

「ふざけるな!」

 

「爆発オチなんてサイテー!」

 

「ポケモンバトルを何だと思ってる!」

 

「イケメンだからってやっていいことと悪いこともわからないの!?」

 

 やはりブーイングが酷かった。試合内容も魅せ試合じゃないから尚更か。こうして俺のWPAの初戦はブーイングに包まれる勝利に終わった。

*1
体力が1/4まで減るとそれを食べて一度だけ命中率が1.2倍上げるきのみ




アンケートのご協力お願いします!アンケートは8世代で登場した600族ドラパルトを主人公の手持ちに加えるかどうかのものです。アンケートの答えは感想欄には投稿しないようにお願いします。

ちなみにコチョウ(相手のトレーナー)のケッキングのこの特性はオリジナル設定です。あったらいいな程度に出しました。

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第30話 悪いデブと弱い者虐め

タイトルまんまです……


 リックといえばデブだが他のトレーナーに育てられればエースになれたサザンドラだ。しかしそうはならかった。身体が重過ぎて飛べず特性がふゆうではなくなってしまったのと俊敏に動けなくなってしまった為に元のトレーナーから捨てられてしまった。

 

 それでも俺が鍛え上げたことにより鈍足耐久特殊アタッカーとして活躍出来るようになったがエースにはなれない。それどころか俺のポケモンの中では弱い方だろう。

 

 だがそれは相性の悪さが悪いだけであって、自分よりも格下相手なら徹底的に勝ち続けられる……ようは弱い者苛めが得意な奴だ。

 

 

 

『無駄無駄ぁっ! 貴様ら如き雑魚どもがレックウザ二体倒した俺に倒す術などないわーっ!』

 

『うわぁぁぁっ!?』

 

『助けてくれぇぇっ!!』

 

 次のWPAの会場であるガラル地方にて何十ものポケモンの屍を積み上げていくリック。圧倒的に格下ならともかく少し格下の相手だとイリアやゴルメでは出来ない。しかしリックは勝てて蹂躙するか勝てないかの二択……つまり一対多数の試合ならブリタやマンダーに匹敵する力の持ち主だ。

 

 

 

 あの試合の後、俺はヘイトを集めまくったせいか何度も襲撃され闇討ちされている。

 

 最初のうちは返り討ちにして警察に通報したものの襲撃した奴らは釈放、俺は厳重注意を食らった為に警察には通報出来ない状況だ。どこからどうみても向こうに過失があるのに俺に厳重注意とか無能にも程がある。

 

 それを好機と見たヘイトの連中は数を集めて俺に襲撃を仕掛けた訳だ。一人二人くらいなら撒いて相手にしないのだがこうも囲まれると流石に相手にしざるを得ない。

 

 それならいっそのことここで片付けて恐怖という恐怖を骨の髄まで染み込ませ二度と闇討ちや襲撃を止めさせるしかない。

 

 

 

『貴様ら雑魚は俺に歯向かうんじゃなく俺に蹂躙される為にあるってことをその体で思い知れいっ!』

 

 割りと最低なことを言っているが仕方ないことだ。リックの気の短さは赤ん坊の小指よりも短い。それ故に過激な発言も多々漏れてしまうのは当たり前のことだ。

 

「ち、ちくしょう! サザンドラがいるなんて聞いてないぞ!」

 

「そりゃ出してないからな。ちなみにいっておくが、このサザンドラは俺のポケモンの中でも弱い方だ。この場でサザンドラがやられたとしてもWPAの試合に影響は出ない」

 

『ポケモンセンターで回復も出来るしな』

 

 ちなみに俺のポケモンの中で最強はギラギラ、次点にジャック、後はマンダーとブリタが並んでその他が僅差で残りのメンバーだ。今のところリックが頭抜けているが状況次第でひっくり返る。

 

 

 

 それから暫くすると向こうから俺と同じように屍を作るポケモントレーナーを発見する。

 

「どうもはじめまして。ガラル地方チャンプのダンデと申します。そちらは元シンオウ地方チャンプのシックさんで間違いないでしょうか?」

 

「ええ。よくご存知で」

 

「貴方は良くも悪くも有名人ですからね」

 

 良くも悪くも有名人ね。今の俺は悪名しかない状態だ。それこそシロナさんに6タテしたことなど霞まれる程には悪名高い。それを踏まえた上で良くも悪くもというのは俺をしっかりとポケモントレーナーとして見ている証拠だ。

 

「ここに何の用ですか?」

 

「事態の収拾を図りに来たんですよ。数年前に殲滅した組織がこうも彷徨いていると治安の乱れに繋がりかねませんしね」

 

 確かにな。ギンガ団やプラズマ団らしき人物がちらほら紛れている。

 

「ほら散れ。今ならまだ見逃してやるから」

 

「う……」

 

 うめき声を上げながらも撤退し、その場を去っていく悪党共。見ていて哀愁漂うが今回に関しては自業自得としか言い様がない。

 

 

 

「……貴方と戦ったコチョウはこのガラル地方、そしてスパイクタウンを代表するポケモントレーナーだった。ジムチャレンジを終えた後、俺……無敗のガラル地方チャンプ、ダンデを最も追い詰めた後WPAの選手として活躍していました。俺がガラルの守護神ならば彼女は世界に旅立った英雄でした」

 

「その英雄を私がラフプレー当然の試合で打ち負かしたからヘイトが貯まってこのような行動に移したと」

 

「ええ。俺個人としてはだいばくはつなどラフプレーでもなんでもありません。むしろポケモンを犠牲にしてまで勝つ執着心は称えるべきものだと思います」

 

 おにびですらエグい手段として嫌悪されるのに、だいばくはつを見て嫌悪感を剥き出しにしないどころか称賛するとは他の地方のチャンプ達とは異色だ。

 

「なるほど」

 

「それにあのケッキングにトドメを刺すならそのサザンドラでも出来たはずにも関わらず、貴方はそれをしなかった。つまり批判されてでも隠したい切り札がそこにあるということと、決定打がそれ以外になかったかのどちらか……いやどちらもですかね?」

 

「よく気がつきましたね」

 

 ダンデさんの言うとおり、俺はあの試合に切り札とも言えるギラギラを所持していた。

 

「やはりですか。そのポケモンは伝説ポケモン──」

 

『ちげーよ。ギラギラと古カビのついた伝説と一緒にするんじゃねえ。俺でも伝説を倒せるんだ。その俺が何匹いようと手も足も出ない相手、それがギラギラなんだ』

 

 リックが抗議の声を上げるがリックの声がわからないダンデさんは首を傾げるだけだ。

 

「何を言っているか詳しくはわかりませんが、どうやら違うとだけはニュアンスでは理解出来ます。まあ俺がそれを知ったところで他人に話す訳でもありませんし、知る必要もない。この話は終わりましょうか」

 

「そうしましょうか」

 

 

 

「ところでシックさん、貴方は何故このガラルに?」

 

「次の対戦相手コヒノがガラルで試合を希望した為ここに来ました。正確にはコヒノのスポンサーがごねてガラルにしたのですが」

 

 ポケモントレーナーは通常、スポンサーがついて金を稼ぐがガラルは特にその傾向が顕著で、目の前にいるダンデさんのマントは広告が敷き詰められている。

 

 

 

「そういうことでしたか。ところでシックさん、ダイマックスというのはご存知ですか?」

 

「動画で知っていますが直接は見たことがありません」

 

「なら直接その目で知っておく必要があります。おそらくコヒノはダイマックスを使ってくるでしょう」

 

 なるほどその手があったか。ガラル地方においてダイマックスはメジャーなもので、他の地方でいうところのメガシンカに相当するものだ。それを実戦もなしに使うのは愚策としか言い様がない。

 

「しかしそれだと依怙贔屓になるのでは?」

 

GPA(ガラル地方ポケモンリーグ協会)にはエキシビションマッチとして公開することによって依怙贔屓をなくします。それにシックさん、ルールを知らないで対策されないよりもルールを知った上で対策された方が良いでしょう?」

 

 ブリタやマンダーは対策されても戦略次第でどうとなってしまうので問題はない。ギラギラやジャックはもう何も考えることなくただひたすら蹂躙すればいいだけだ。しかし他の面子は違い、役割分担をしなければならない。……いや対して問題でもないか。こいつらに集中する余りブリタやマンダーのマークを無くすには丁度良い。

 

「さて、あそこでダイマックス込みのポケモンバトルをやりましょうか」

 

 そして俺はその施設──GRA本部にて無観客のエキシビションマッチを行うことになった。

 

 

 

「俺はいつかこの日を来るのを待っていました。何せ貴方は対策されていないとはいえたった一頭のガブリアスで地方チャンプのポケモン6匹全て倒した傑物。そんな相手と戦えるこの日程楽しみにしていたことはありません……行きます!」

 

 ダンデが取り出したポケモン、それはギルガルドだ。ギルガルドと言えばダンの仇でもあるポケモンハンターが所持していた攻守共に優れたポケモンだ。戦略次第では伝説ポケモンをも凌ぐ。

 

「さあリック、お前の力を見せてやれ」

 

『サー、イエッサー!』

 

 

 

 それからリックはギルガルドをはじめとしたダンデさんのポケモンを蹂躙する。その中には俺が旅してきた中で見かけたことのないポケモンも存在したが関係ないと言わんばかりにリックが一撃で仕留めてみせる。

 

 

 

「想像以上の強さだ……!」

 

『井の中のニョロモ大海のホエルオー知らずってのはまさしくこいつの為にあるようなもんだな!』

 

 そう高笑いするリックはまさしく悪の鏡そのものだ。もしこいつが人間になったらデブの悪役貴族そのものの姿になっているだろうな。

 

「リザードン、このサザンドラにお前の力を見せてやれ!」

 

『了解だ!』

 

 ダンデさんが場に現れたリザードンを一度しまうとモンスターボールが巨大化し、それを後方に投げると姿を変えたリザードンが巨大化して現れた。

 

「これがダイマックス……!」

 

「正確にはこのリザードンの姿はダイマックスではなくキョダイマックスした姿ですけれども、後で教えます……リザードン、ダイジェット!」

 

 リザードンのダイジェットとやらがリックに炸裂する。並大抵のポケモンであれば倒れていただろう。

 

『何なんだ今のは?』

 

 だがまるで効かない。当たり前と言えば当たり前だ。今のリックはパワーアップし、ミミッキュのぽかぽかフレンドタイムすらも大したダメージにならない。リザードンのダイジェットを受けた程度ではノーダメージ当然だろう。

 

「リック、あくのはどう!」

 

『特別に良いものを見せてやる! 構いませんね、サー?』

 

「いいだろう」

 

 リックが笑みを浮かべるとリックの三つの口からあくのはどうが重ね合わさってより巨大な波となりリザードンを襲う。

 

『なっ……! こんなもの……!』

 

『去ね。それが今のお前に出来ることだ』

 

 そして更に強くするとリザードンがあくのはどうに押され元の姿に戻るとともに小さくなり倒れた。

 

 

 

「流石ですね。俺が手も足も出ずに負けました。完敗です」

 

「私も勉強になる勝負でしたよ」

 

 期待外れだった──と口に出すべきか迷ったが皮肉でそう返すとそれを素直に受け止めたダンデさんが笑みを浮かべる。

 

「俺は久しぶりにわくわくしています。貴方のような傑物でもまだ成長するとかという期待と、貴方という目標を見つけてしまった興奮のせいでね」

 

「なら貴方とまた合間見えましょう。もし強くなったと確信した時、その時はガラル地方チャンプの称号を返上してWPAに登録して下さい。WPAのチャンプとして相手になりますよ」

 

「望むところです。それはそうと先程の試合のキョダイマックスについてですが──」

 

 それからダイマックスとキョダイマックスについてダンデさんから教わり、ガラル地方の特性を掴むことが出来た。

 

 

 

 余談だがこのエキシビションマッチは、ダンデさんが完敗した為にスポンサーが離れることを恐れたGRAが公開することはなかったもののダンデの家に保管され戒めとして封印されることになった為に、次の対戦相手のコヒノの目に届くことはなく対策はいつも通りブリタ対策であったのでジャックで3タテしておいた。




前回までのドラパルトが手持ちになるかどうかのアンケートは100票入った時点で終了させて頂きました。ご投票した皆様ありがとうございます!次々回にはその結果を発表させて頂くと同時にドラパルトがどうなるかお楽しみ下さいますようお願い致します。


ちなみに余談ですが当初この話はダンデではなくネズが相手になる予定で、リックが最初に蹂躙した相手もエール団を含めた集まりでした。しかしエール団がマリィを応援する為に主人公達を妨害していただけなのでエール団にする理由も弱く、ネズも対戦相手になる必要がなくなりました。よって代わりにその対応がなれているであろうダンデに変わりました。


それはそうと感想は感想に、誤字報告は誤字に、その他聞きたいことがあればメッセージボックスにお願いいたします。また高評価やお気に入り登録、感想を送ったりすると作者のモチベーションが上がります!


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第31話 がさつ系毒使い元アイドル

作者は600族の中でお世話になったのはガブリアス、ボーマンダ、ジャラランガです。
尚、8世代ではそのうち二頭はリストラされ現状使えないという有り様……次回の大型アップデートで使えますから良いんですけどね。ドラパルトもいますし!(半ギレ)


『ご主人、行かないで……行かないでよ……!』

 

『愚かなる者共を駆除しなければならぬ以上マスターの側では不都合。さらばだ』

 

『これが俺の最終兵器だ。こいつを使えば二度と復活することはねえがあいつを殺るには仕方ねえ……あばよ、シック』

 

『ようやくたどり着きましたよ……何故、だいばくはつやじばく、そしていのちのたまが敬遠されるのかをね……』

 

『オイラはもう踊れない、その身体……ってか? 冗談もよしてくれや、マネージャーさんよ……なぁ、そうだと言ってくれ!』

 

『……サー、俺は決めました。俺が動けない時はひんしか死んだ時のみと。それ以外は僅かでも動いて救ってみせます。こんなことが二度と起きないように……!』

 

『のう、シック。ワシは子供達を救えなかった。愛する妻達も救えなかった。だからこそワシはその分の愛を他の♀ポケモンにやるのじゃ……!』

 

『涙一滴の価値はダイヤモンド1カラットに匹敵する。それを捨てた儂はその分金を稼ぐしかない』

 

 

 

「うるせえぞてめえら!」

 

 寝ぼけた状態でシャドークローを放つと何故か手応えがあり、辺りを見回すと先ほどとは違う景色──海があり、そこにはゲンガーが目を回していた。

 

「てめえのせいでひどい夢を見たもんだ。揃いも揃ってしんみりとした夢にしやがって」

 

 全く、せっかくダンデさん以上に伝説を残している元チャンプがいると言われているヨロイ島に来たというのにどうしてこんなふざけた夢を見なきゃいけないんだ。

 

『やめんかシック』

 

 死体蹴りをやると、何故かゴルメが出て来て俺の前に立ちふさがる。

 

 

 

「てめえ、何のつもりだ?」

 

『こやつには♀ポケモンへの謝罪をさせるからな。シックにやらせると半殺しでは済まなそうじゃから止めたのよ』

 

「で本音は?」

 

『もちろんシックへの仕返──げふぅっ!』

 

「アホめ」

 

 本当に残念な奴だ。見た目だけはコンテストでも最高評価を得られるほどに優れているのに性格がコレだからな。

 

「全く面倒臭い奴を連れてきたもんだな」

 

 ゲンガーという種族はかつて最強霊タイプとして名前を馳せたポケモンでアタッカーもできればサポートも出来る奴だ。

 

 

 

 俺が前に戦ったゲンガーは強く、さいみんじゅつからのあくむで仕留めようとする奴でイリアを戦闘不能にさせる程だった。

 

 

 

 それだけにゲンガーに対しては強く警戒していたが俺のポケモンは精強で、ブリタやマンダーは回避するし、ギラギラとジャックは寝たとしても一瞬で起きてしまう。ゴルメに至ってはそもそもあくむすらみない。こいつらの前じゃあのゲンガーに比べて弱いゲンガーなどただのサンドバッグでしかない。

 

『助……けて……』

 

「俺に悪夢を見せただけでなく今度は命乞いとはふてぶてしい奴だ」

 

 ゲンガーの足を掴み投げ飛ばそうとするとゴルメがそれを止めた。

 

『シック、そやつはワシの親友なんじゃよ。だから見逃してくれ』

 

「何?」

 

 この♀のゲンガーとゴルメが親友? あり得んだろ。こいつは──いやこれ以上偏見で見るのはよそう。

 

 

 

 それから所持ポケモン達を出して事情を聞いてみた。

 

『ワシがヌメラの頃、親兄弟に疎まれ誰にも頼ることなく一人で育ってきた。そんな時ワシはこやつと出会ったんじゃ』

 

『そう言えばてめえはヌメルゴンになるまで野生育ちだったんだな』

 

『その通りじゃリック。ワシが作った住み処に手負いのこやつが寝ておったんじゃ。いつもなら溶かしてワシの養分にしておくのじゃがこやつも一人で頑張っていたと思うと何故か手が出せなかったんじゃ』

 

 さらりと恐ろしいことを言っているがそれは気にしたら負けだ。

 

「流石の女好きのお前でも竜なしの霊タイプには手を出せないみたいだな?」

 

『茶化すでないわ……とにかくワシはこやつの怪我が治るまで保護し、時に話相手となり面倒を見てきた。それをしていくうちに友情が芽生え、親友となったんじゃよ』

 

「話相手で芽生えた友情か。確かに孤独な過去を持つお前ならあり得ない話じゃないな」

 

『うむ。そしてワシらは別れ、互いに別々の道を歩んだ……そして後はシックの知る通りじゃ』

 

 

 

「なるほどな。ところで聞きたいんだが、このヨロイ島で一番強いトレーナーはどこにいる?」

 

『私の知る限りだと、このヨロイ島で一番強いポケモントレーナーは道場にいるわよ』

 

 ゲンガーが質問に答え、その場所に行こうとするとゲンガーが何故か付いていく。

 

「何故俺に付いていく?」

 

『もちろん仕返──ギャッ!?』

 

「やはりお前はゴルメの親友だよ」

 

『それはどういう意味じゃ!』

 

 そっくりそのままの意味だよ。

 

 

 

 なんだかんだ言いつつもゲンガーを連れてその道場に行くとピンク髪の女性が何故か俺を見るやいなや気まずそうに顔を伏せる。

 

「どうしましたか?」

 

「なんでもないわよ。だからほっといてちょうだィ」

 

 この独特の喋り方はどこかで聞いたことがあるが、記憶の彼方に消えているせいか思い出せない。

 

「ほっといてっていってんだろォ。イケメン野郎ゥ」

 

 思い出す為に顔をじっと見つめていると顔を反らされてしまう。はてさてどうしたものか──などと悩んでいるとゲンガーが目を覚まして呟く。

 

『見つけた……』

 

「あ?」

 

『見つけたぞクララ!』

 

 憎悪の声がその場に響いてゲンガーがその女性──クララさんに襲いかかり、その名前を聞いた俺はクララさんのことを思い出した。

 

「ヤドン、ねんり──」

 

「止めろ」

 

『うぎゃぁっ!』

 

 シャドーボールでゲンガーを止めるとクララさんはすでにヤドンを出して構えていた。

 

 

 

「そんなのありィ?」

 

「ありです。それよりもかつてアイドルをしていたクララさんですよね?」

 

「え、マジぃ!? あたしのこと覚えてんのォ!?」

 

 口元を手で抑え、驚愕するクララさん。

 

「覚えていますよ。アイドルCD購入の童貞を奪ったのは貴女のCD【クララにクラクラァ】ですからね」

 

 ブタ箱にぶちこまれる前、俺はリックをダイエットさせる為にエクササイズ用の曲を探していた。しかし市販のCDではどれもこれもリックのエクササイズ用には合わずデビューしたてのアイドルのオリジナルソングしかなかった。

 

 その中で最も適したものがクララさんのデビュー曲だった訳ですぐに購入し、エクササイズをさせ10kgも痩せさせることが出来た。

 

 しかしその後俺がブタ箱にぶちこまれ、CDも没収されクララさんのCDが売れなかったこともあり手元になく二度とそのエクササイズは出来ない。

 

「それって本当ゥ!?」

 

「もちろんです。ところで──」

 

『サー、こいつからCDを貰うなんてことは絶対に止めてくれ! 絶対に!』

 

 リックがボールから出て来て言葉を遮り、抗議するがそれがお前の為だと言うのはトレーナーの心ポケモン知らずにも程がある。

 

 

 

『らしくないのう……シックに忠実なお主がそこまで否定するなど』

 

『サーはあれをダイエットエクササイズしていると思っているが、あれはエクササイズじゃなくてほろびのうただ。……瀕死になっては生き返り、生き返っては瀕死になる……もう嫌だ! あんな思いをするのは! あれでやつれて10kgも体重が減ったんだぞ!

 

『そ、そこまでか? 第一お主はそれでも着いてきたんじゃろう?』

 

『それしか強くなる手段はなかったんだ。出来ることなら代われ。代われば俺の気持ちもわかるし、何よりも♀ポケモンをお(性的表現の為、削除されました)す元気もなくなり、お前以外全員ハッピーになるんだ。お前も無駄な贅肉を落とせるかもしれないぞ!

 

『絶対嫌じゃ。それにワシのパーフェクトボディに贅肉などないっ!』

 

 

 

「ところでクララさんはこのゲンガーと面識は?」

 

「ないわよォ? だってあたしが持っているのは──」

 

『ふざけないで! 私とジム巡りをしたのはつい最近じゃない!』

 

「おくびょうで頼りないゴーストよ。こんな血気盛んなゲンガーは知らないわ」

 

 ゲンガーの発言が正しければクララさんのポケモンで違いないがクララさんはそうでないと否定している。だとするとゲンガーは──

 

「クララさん、ゴーストに何も言わずに他のトレーナーと交換しましたね?」

 

「まぁそうだけどォ?」

 

「ゴーストは他のトレーナーと交換するとゲンガーに進化する。それがわからない貴女じゃないでしょう」

 

「かわらずのいしを持たせた上で交換したはずなんだけどォ?」

 

『かわらずのいしはマニューラにはたきおとすではたきおとされたのを覚えていないの!?』

 

「そのかわらずのいしをゴーストが既に持っていなかったとしたら進化しますよ」

 

 一々翻訳するのも面倒だな。こうなれば強引にゲンガーとクララさんを納得させるか。

 

 

 

「クララさん、そのゲンガーを使って自分のヌメルゴンとポケモンバトルしましょう」

 

『私はこいつに復讐したいんだぞ! それなのにこいつの指示を聞くなんて思うのか!?』

 

「無理よォ。このゲンガーが私の言うことを聞く訳ないじゃん」

 

 がさつな喋り方になり、青筋を立てる。

 

「目が合ったらポケモンバトル。それは常識でしょう? 何が何でもしてもらいますよ……ゴルメ、うまくやれば♀ポケモンを紹介してやる。ヤレ」

 

『うひょーっ! そうと決まれば覚悟するゾイ!』

 

 ゴルメがゲンガーとクララさんに向けてりゅうのはどうを放ち、攻撃する。

 

「ちょっとォ、ふざけるのも大概にしやがれ!」

 

『ゴルメ、私のことを親友と言ったのにその親友を売るの!?』

 

『ワシは♀ポケモンの為なら悪魔に魂を売り渡す。ただし悪魔に売る魂はワシ以外の魂じゃがなぁっ!』

 

『主従共々最低っ!』

 

 最低と言われるのは慣れている。何故ならダンのだいばくはつが道徳に反するもので、いつもそれを使って批判されているからだ。なのでこの程度の批判は痛くも痒くもない。

 

 

 

「こうなりゃ仕方ねェな……ヤドン、みらいよち!」

 

 クララさんがゲンガーを庇うようにヤドンを取り出し、みらいよちを指示する。みらいよちということは──そういうことか。

 

「ゴルメ、あまごい」

 

『舐めプかい……まあ仕方あるまい。この程度の舐めプで勝てぬ程ワシは弱くないわい!』

 

 あまごいをして雨を降らせるとそれを見たクララさんが笑みを浮かべていた。

 

「あまごいなんて何を考えているのか知らないけど、その隙に色々とさせて貰うわよォ? ヤドン、サイコキネシス!」

 

『ワシにギラギラとジャック以外の特殊攻撃は効かんゾイ!』

 

 ヤドンのサイコキネシスをものともせずゴルメがみずのはどうを放つとゲンガーがシャドーボールでその威力を弱めた。

 

 

 

「ゲンガー、貴女……」

 

『勘違いしないでよ。私はあの裏切り者をぶっ飛ばしたいんだから協力するだけよ』

 

「使えるものは使うけど文句ないよねェ?」

 

「ヤドンを出して文句を言わなかった時点でゲンガーを使っても文句はありませんよ」

 

「そぉぅ? 流石、WPAの選手は違うなぁっ! ヤドン、サイコキネシス! ゲンガー、ほろびのうた!」

 

『ほろびのうたなんて歌わせぬわいっ!』

 

 ゴルメが独断でゲンガーにみずのはどうを放ち、ゲンガーのほろびのうたを阻止しようとするがゲンガーの方が速く動き、ほろびのうたが全員に響く。

 

『くっ、思ったよりもやりおるわい!』

 

 それでもゲンガーを仕留めるあたり流石としか言い様がないが──いや、それ以上に厄介なことをしてくれている。

 

「そろそろ時間よォ?」

 

 クララさんがそう呟くとゴルメが初めて膝をついた。

 

 ゴルメが膝をついた理由、それはみらいよちだ。いくら特殊防御に優れているゴルメと言えども膝をつけるダメージを負うのは珍しいことではない。

 

『シックよ、こやつ相当な腕前じゃ。本気でいかせて貰うぞ』

 

 クララさんを本当の敵と認めたゴルメが二本の角とそれぞれの指先から冷気を放つ。するヤドンが凍ってしまい動けなくなってしまう。

 

「嘘ォっ!?」

 

『お主相手なら動けぬ相手でも油断はせんよ……』

 

 ゴルメが身体から電気を纏い、それを両手の掌に球状に収縮させ重ね合わせるとエネルギーを貯めまくった電気の玉が姿を現す。

 

『ワシがここまで本気でやれた相手はお主が初めてじゃよ。誇れ』

 

 ゴルメの掌をヤドンに向けるとヤドンに電気の光線が襲いかかり、ヤドンが戦闘不能となる。

 

 

 

 それからクララさんはヤドンとゲンガーを手当てをして話し始める。

 

「流石ね……あたし程度じゃ敵わないわァ」

 

「いや、ポケモンを鍛えれば貴女はジムリーダーになれるでしょう。それだけ貴女のポケモンの指揮する能力は巧みなものだった」

 

 舐めプとかそう言ったのも背景にあるが、実際クララさんはトレーナーとして優秀だ。しかしジムリーダーとなるには今一つ華がない。

 

「お世辞でも嬉しいけどォ、そう言った特訓とか苦手なんだけど」

 

「まあ楽して強くなりたいなら自分と相性の悪い相手と一日一回以上戦うことですね。最悪勝てなくても経験になります」

 

「一日一回……」

 

「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶと言います。しかしこの歴史とは他人の経験のことで経験は自らの経験と定義されます。他人のポケモンバトルを見るだけでも糧となりますがそれが出来るのは極一部の人間でほとんどの人間は自分自身がポケモンバトルをしなければ糧になりません」

 

「そっかぁ……あたしは凡人だからポケモンバトルをして強くなれと?」

 

「私も凡人ですよ。私は7つの地方で毎日がポケモンバトルの日々でした。それをしていくうちに太陽の王子と呼ばれる程強くなりました。美容と同じく手間は掛かっても後で楽になるので少なくとも一日一回やりましょう」

 

「それもそうねェ……考えてみるわ。ありがとね、シック」

 

 クララさんがゲンガーを連れていきその場から去り、俺は道場に行き伝説の元チャンプ、マスタードさんに会ったがバトルするには弟子入りしなくてはならずそれが嫌だった俺は会話だけ済ましてその場を去った。

 

 

 

 尚その数日後、俺はガラルに観光しに来たルーちゃんに問い詰められるがそれはまた別の話だ。




ヨロイ島アップデートに加え、作者の誕生日なので投稿させて頂きました。次回から少し駆け足で展開が進みますが相変わらず投稿ペースは遅いです。それでも応援して頂けるのなら何卒宜しくお願いします。

尚、現在アンケートをとっています。次々回までに宜しくお願いします。なお読者の皆様がクロスしたいという場合は活動報告(https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=242169&uid=22654)の方にクロスしたい作品の名前の記載をお願いします

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第32話 最強の守銭奴VS最速の母竜

アンケートについて連絡します。
アンケートの内容ですが出さなくて良いを下回る選択肢は例外を除いてカットします。
その例外は読者の皆様の作品の選択肢ですが肝心のクロスさせたい作品が不明なのでそう言った場合もカットします。

そういうわけで前回から始めたアンケートで読者の皆様の作品を選んだ方は活動報告の方にクロスさせたい作品を記載してくださいますようお願いします。


「シック君」

 

「なんだルーちゃん」

 

「えへへ、何でもない。呼んだだけ!」

 

 ルーちゃんが笑顔でそう答え、普通であれは鬱陶しさを感じるが不思議と不快ではない。この感じは反抗期が終わり進化したハクリューの時のイリアによく似ているからだろうな。

 

『このバカップル達め……砂糖を吐き出させる気か?』

 

「ジャック、吐くのは技だけにしておけよ?」

 

『誰のせいでこうなっていると……ん?』

 

「どうした?」

 

『シック、あそこにお望みのポケモンがいる』

 

「本当だ。よし行くかルーちゃん」

 

「えっ、あの距離見えるの? 視力2.0の私でも見えないんだけど」

 

「ルーちゃん、俺の視力は7.2だ。あの位なら十分に見える。旅に出る以前は23.5あったが海水に目をやられてかなり落ちたんだ」

 

 こっちでは1.0以下だが俺の故郷の人間なら10以下だと視力が悪いとされ、眼鏡といった視力矯正が必要になる。その基準は昼間に天体観測が出来なくなってしまうからだ。

 

「いや落ちて尚その視力って十分なんじゃ……」

 

「裸眼で昼でも宇宙に住むレックウザの観測が出来たんだがな。おかげで趣味だったレックウザ観測が出来なくなってしまった」

 

「レックウザ観測って、それは夜間でしかも望遠鏡必須の趣味でしょ? それを昼間でやっていたの?」

 

「まあな。お陰でレックウザの動きを熟知出来たし竜タイプの育て方も理解出来たから悪い趣味ではなかった」

 

 それでも欲しかったのはボーマンダだがな。レックウザは確かに伝説の中でも攻撃はトップクラスに強いがその分、伝説とは思えない程脆くしかも遅い為その弱点をつかれる。オノノクスを二刀流にしたようなものだ。その点ボーマンダは(以下略)

 

「シック君の強さって超人染みた視力から来ていたってことだね!」

 

「かもな。ルーちゃん、ちょっと失礼」

 

 ルーちゃんの背中と膝を両手で支えながら抱えるとルーちゃんの顔が真っ赤になる。

 

「しっかり捕まってくれよ」

 

「う、うん……って、本当に速いぃぃぃぃーっ!」

 

 目を回しながらもルーちゃんがしっかりとしがみつきドップラー効果を残す声を響かせる。

 

 

 

「よしジャックいくか」

 

 目を回しているルーちゃんを横に置いてジャックに話かけるとジャックが渋る。

 

『しかし金にならぬことはやる気せんのだがな……』

 

「わかったわかった。ドラパルトを捕まえたらきんのたまを20個やる」

 

『何っ!? シック、それは本当かぁっ!』

 

 物凄い勢いで振り向き、それが真実であるか確かめる。

 

「くれてやるよ。嘘はつかねえ」

 

『上等じゃぁぁぁっ! ドラパルト出てこいやっ!』

 

 ジャックが発奮し、鱗を鳴らし周りにいた二匹のドラメシヤを捕まえた。

 

『くくく、貴様らを捕まえてドラパルトに進化させればドラパルトを捕まえたということ他ならない──』

 

『そうはさせません!』

 

 ドラメシヤを最終進化させたポケモン──ドラパルトが現れる。

 

『来たなドラパルト。早速だが退場して貰おうか!』

 

 

 

 ドラゴンクローの派生技、ドラゴンフィッシュブロー*1を放つ。このドラゴンフィッシュブローは竜技でありながら妖に無効化されることはなく半減程度のダメージを与えるだけでなく鋼や岩、氷、無に大ダメージを与える技だ。ジュラルドンやガチゴラスなどは一撃で仕留めてしまう程に強力な技と言えば分かりやすいだろうか。

 

 竜・霊であるドラパルトにも大ダメージを与えることに違いなくドラパルトに直撃した──そのはずだった。

 

『遅いですよ』

 

 残像を残しジャックのドラゴンフィッシュブローは空振りに終わりドラパルトの手にはジャックが握っていたはずのドラメシヤがおり、ジャックから取り返されたものだと推測出来る。

 

『な、何だと……!?』

 

「一体何があった……!?」

 

 このドラパルトという種族は、種族としてかなり優秀で、特に素早さが突出しておりその速さは卵で産まれるポケモンとしてはテッカニン、アギルダーについで速くしかも物理特殊問わない攻撃が備わっているのだから質が悪い。

 

 だがこれほどまでに速いのは俺でも初めてだ。何せかるわざによって素早さが増したアギルダーですら目で追えたジャックや俺ですらこのドラパルトの姿を見失った。つまりこのドラパルトはアギルダーよりも速い……という訳ではないにせよそれと同等以上であることは確かだ。

 

 

 

「小賢しいことを……! ジャック、本気で行くぞ」

 

『おう』

 

 ドラパルトを捉える為に本気を出す。こうなるとマンダーですら対応が不可能でそれが出来るのはギラギラとブリタくらいしかいない。

 

 そしてジャックがドラパルトを捕らえに行くがそれでも尚避けられ翻弄され攻撃が当たらない。

 

『奴の動きが速すぎるな……いくら儂でもこれは難しいな』

 

「確かに目でしか追えない程速いな……」

 

「それすらも出来ない私ってまだまだだな……」

 

 

 

 こいつを仕留める方法は動きを制限させた上でその動きを予測するしかない。……それまでだったらな。

 

「ジャック、ブレイジングソウルビートに代わる新しい技見せてやれ」

 

『言われずともやるわい!』

 

 体力を削る代わりに全ての能力を上げるソウルビートを繰り出すとドラパルトを捉えた。

 

『素早い奴よ。じゃが捕まえてしまえばこっちのもんよ!』

 

『貴方達、行きなさい』

 

『ヤッホー!』

 

『ぶっ殺ーすっ!』

 

 ドラパルトに住んでいるドラメシヤがマッハを超えてジャックに襲う。それにしてもこのドラメシヤは大家(ドラパルト)に似ずやたら過激なのは謎だ。

 

『甘いわっ!』

 

 通常のジャックやギラギラ以外の他のポケモンであればあれを捕まえるどころか避けることも出来なかっただろうが今のジャックは違う。

 

 それが出来てしまう程にパワーアップしている。

 

 

 

『さあよくもやってくれたな?』

 

 ジャックがドラパルトの首後ろに回り込みドラゴンフィッシュブローを放つ。

 

『……!』

 

 ドラパルトが影の中に潜り込み、ジャックの拘束とドラゴンフィッシュブローから逃れる。

 

「う、上手い……!」

 

 ルーちゃんが感心するが俺の中ではまだ小手調べでしかない。

 

 それはドラパルトも同じで、かげぶんしんを用いてドラメシヤを放つドラゴンアローを使ってくる。

 

 端から見れば無数のドラメシヤがジャックを囲むように突撃しているとしか見えず、コンテストトレーナーのルーちゃんが感心するのは当たり前だった。

 

『小賢しい奴よ!』

 

 その分身のドラメシヤを打ち落とすがそれも本物ではない。

 

「ジャック、地面に向かってドラゴンフィッシュブローだ」

 

『そういうことか!』

 

 地面を殴ると地面が割れ砂ぼこりと無数の岩が宙を舞う。

 

 そうなればドラパルトはドラメシヤを放つドラゴンアローを使うことが出来ない。

 

 もし使えばドラメシヤが岩にぶつかり続け威力が軽減するだけでなくドラメシヤ自身の体力を消耗することになる。

 

 

 

 ではドラパルトはどうするかというとこのまま影に潜り込んだ状態で何か別のことをするか、ゴーストダイブをするかのどちらかだ。

 

『ほらどうした。ドラゴンアローなんて捨てて速くかかってこいよ。それともあれか? 他のドラメシヤがどうなってもいいのか?』

 

『悲しいです……貴方というポケモンは』

 

 ドラパルトがいつの間にかジャックの背後を掴み、口元にエネルギーを溜めそれが何なのか理解してしまった。

 

「ジャック、スケイルショット!」

 

 スケイルショットは5回に分ける連続攻撃だが、ジャックは俺の意図を読み取りショットガンの散弾のように一度にやるようにした。

 

 この至近距離なら滅茶苦茶に放っても全て当たる。

 

 

 

 そして轟音がその場に響き、砂ぼこりが更に舞い上がり、ジャックとドラパルトが大ダメージを負った状態で姿を表した。

 

「凄い……! ジャックが強いのは知っていたけどこれほどなんて……!」

 

 そういえばルーちゃんはジャックと戦ったことがあったな。

 

 ブリタとマンダーを貸してかつ、チルルと共闘させてもジャックには勝てなかったな。

 

「まだジャックは氷山の一角を見せただけしかない。ジャック、追加で300万円だ!」

 

『なんだと!?』

 

 その瞬間、ジャックの動きが俊敏、いや光速となりドラパルトに迫る。相変わらず金、特に現金が絡むと強くなるな。

 

 

 

『やりますね……ですが、私はまだ6割程度のスピードしか出していません!』

 

 ドラパルトも加速し、更にスピードが上がる。ここまでいくともはや俺の目でも追いかけることが出来ない。

 

「シック君、今何が起きているの?」

 

「俺でも推測でしかわからない。ドラパルトがドラゴンアローを、ジャックがドラゴンフィッシュブローを繰り出しているが互いに二頭ともそれを避けている」

 

 目で見えないのなら気配とかそんなもので感じるしかない。

 

 

 

『鬱陶しい! 儂の金儲けの邪魔をするなっ!』

 

『金、金、金と貴方にはそれしかありませんか。貴方は実に俗にまみれた悲しいポケモンです。その俗を取り払ってあげますよ』

 

『うるせえ、安全地帯で温もりを知った状態で育ったてめえらに過酷な環境で育った儂の気持ちが分かる訳がねえ。金があれば旨いもんに辿り着けるし、暮らしも良くなる!』

 

 そういえば毎日がジャラコの生態は修行僧の如く、修行ばかりで飯もまともなものを食えない上に雨宿りも出来ない苛烈な環境で育っている。

 

 衣食住の内二つ──残りの一つ衣はポケモン自体必要としないから全部が整っていない。 普通だったら発狂してもおかしくなくジャックが反発してこんな性格になる訳だ。

 

『黙りなさい。欲に溺れるということが愚かであることがわからないのですか? 欲に溺れた者はいずれ身を滅ぼします。それを防ぐ為にも私が貴方の煩悩を打ち払い清く正しいジャラランガにしてあげます』

 

 なんだこの真面目なポケモンは。俺のポケモンの中でも比較的真面目なマンダーでもそんなことは言わないというのに……こいつが入ったらゴルメやダンの態度も軟化するか? 

 

『儂の生き方にケチをつけるな。儂を導くよりも俗にまみれるということがどういうことか知ることだな!』

 

 そして二頭が再び視界に映らなくなる。そして上を見るとそこにはドラパルトとジャックが互いに空中戦を繰り広げていた。

 

 

 

「お、降りて来ない……」

 

 ルーちゃんが目を点にして唖然とする。宙に浮いているドラパルトはともかく如何にも陸上型の竜であるジャックが空中戦を繰り広げられるのには理由がある。

 

 ドードリオが空を飛べるのは空中で空気を蹴っているからだと言われていてジャックはそれを実行しているだけだが、とんでもない話で聞く人が聞けば発狂するだろう。

 

『キリがねえ!』

 

 互いに避けまくる為攻撃が当たらずイラついたジャックがついに特攻する。

 

『短気は損気です。もう少し長い目で見ることも大切です』

 

 ドラパルトは冷静にそう返し距離を開きドラゴンアローをする。かげぶんしんによってつくられた無数のドラメシヤがジャックを襲いかかる。

 

『この時を待っていた!』

 

 ジャックは正確に二匹のドラメシヤを捕まえて、共に気絶させる。

 

 

 

『な、何故捕まえることが出来たんですか?』

 

『お前の気配は誤魔化せてもドラメシヤの気配は誤魔化せねえ。ドラメシヤの視線が儂に突き刺さってきたからな。ならそれを辿れば自然と捕まえることが出来るということだ』

 

『くっ……確かにその強さは認めましょう。しかし貴方には足りないものがある。情熱、思想、理念、頭脳、気品、優雅さ、勤勉さ。そして何よりも、速さが足りない!

 

(金に対する)情熱と(金絡みの)頭脳、(金儲けの)勤勉さはあるとは思うがそれは突っ込んでいいのだろうか。

 

 などと現実逃避に考えてしまうのはドラパルトが余りにも速く、気配すらも置き去りにしてジャックの背後を取ってしまったからだろう。

 

『がっ!?』

 

 ジャックが背後から攻撃され陸に落ちた。

 

 

 

『おいシック、あいつガチで強いぞ。儂がここまでやられたのはギラギラ以来だ。なんか隠し事してないか?』

 

 立ち上がったジャックが流石に疑いの声を出し、俺に隠し事をしているか尋ねる。

 

「あのドラパルトはダイマックスした色違いのゼラオラ、ミュウツー二頭相手にたった一頭で撃退したポケモンだ」

 

 通常であれば色違いが特に強いという訳ではないが、ダイマックスしたゼラオラとミュウツーは例外で別次元の強さを持ちそれぞれがジャックと同格と思えば良いだろう。

 

 それを二頭まとめて撃退したドラパルトがいると聞いて俺はそいつを捕まえる為にやって来た訳だ。

 

『通りで本気になっても勝てない訳だ……300万円でも割に合わん』

 

「割に合わないと思うがやれ」

 

『そうやってまたふっかけるんですか? 良い度胸です──なっ!?』

 

 油断したドラパルトがジャックに捕まりジャックがタクシージャックの如く俺に要求してきた。

 

『さあシック、このまま拘束して欲しくば500万円よこせ。それか儂の代わりにギラギラにするかどちらかを選べ!』

 

『貴方が屈する必要はありません。貴方が屈したらこのジャラランガは永久に調子に乗ります。それをするくらいなら私を捕まえて下さい!』

 

 こんな形で捕まるのは不本意だろう。せめてもの情けだ。ゴージャスボールでも出して──

 

「させないアル!」

 

 ジャックがゴージャスボールを弾いて抵抗する。

 

『600万円寄越さないと捕まえさせんわ!』

 

「地味に値上げをするな!」

 

『シックさんと言いましたね。私の脱出の手伝いをしてくれれば、脱出した時にボールを投げてくれれば貴方のポケモンになることを誓いましょう』

 

『騙されるなシック、こいつは騙して逃げる気だ!』

 

 ジャックの言い分も分かるがドラパルトを信頼してしまう。それだけ真面目な奴だと理解している。普通であればドラパルトを信頼するだろう。俺も金を無駄に使いたくない。

 

「ジャック、600万円くらいならくれてやる! だからなんとしてでも逃がすな!」

 

 フレンドボールを投げ、ドラパルトがその中に一時的に入るとジャックがボールを握りして拘束する。そしてボールの揺れが収まりドラパルトをゲットした。

 

 

 

 

 

「シック君おめでとう。でもあんなこと言って大丈夫なの?」

 

「まあな。しばらくの間貧乏生活を送ることになりそうだがなんとかなる」

 

「それなら私の家に来ない? 私の家で暮らせば──」

 

「馬鹿を言うなよ。一般人とアイドルが同棲するなんてことマスコミの絶好のネタだ。俺はともかくルーちゃんが晒し者になるのは我慢出来ない」

 

『かーっ、砂糖しか出ねえぜ!』

 

 ジャックが顔を顰めるとドラパルトがボールから出る。

 

『微笑ましい光景じゃないですか。もしシックさんがルーちゃんさんと結婚出来たらその時は盛大に祝いましょう』

 

 俺とルーちゃんが結婚か。

 

 ヒール上等のポケモントレーナーと人気アイドルは釣り合わないよな。俺の周りで俺と釣り合う女性はシロナさんは考古学者だし、カルネさんは人気女優だ。

 

 ナツメさんも悪役という共通点があるがポケウッド人気女優であるから不釣り合いなんだよな。

 

 そうなるとあのチンチクリンのアイリスしかいないんだが、あいつと結婚しても気まずい思いしかなく結婚は人生の墓場と言うがまさしくその通りになるな。……いや格闘仲間だとスモモさん、交換日記を書いている仲ではスズナさんがいたな。あの二人はジムリーダーだからなんとか釣り合いそうだ。

 

 

 

「それならシック君、一度だけルーちゃんじゃなく【お前、愛しているぞ】って言ってみて」

 

『はいはい糖分吐き出すにはどうすればいいかね。儂はこんな甘ったるいのは嫌いだ』

 

 ジャックが何かほざいているがルーちゃんがそういうならしてみるか。

 

「お前、愛しているぞ」

 

「~っ!」

 

 声にならない悲鳴を出し後ろを向いて鼻血をとっさに抑えるルーちゃん。熱中症にでもなったか? 

 

『どうせシックのことだ。このルチアの奇行を熱中症かなんかと勘違いしているんだろう』

 

 違うのか? などと思っているとジャックがルーちゃんを連れていき、残された俺とドラパルトでニックネームを決めることにした。

 

 

 

「ドラパルト、お前のニックネームを決めたいんだが何か同族で呼ばれていた名前はあるのか?」

 

『マザー、ママ、ゴッド、エンプレス、グル……そんなところですね』

 

「何かその中で気に入ったものはあるのか?」

 

『ママですね。私はドラメシヤ達の母でありますがマザーというには少々大げさすぎるのでママが気に入っています』

 

「なら少しアレンジしてドラママはどうだろうか」

 

『良い名前ですね。由来は何でしょうか?』

 

「ドラゴン達の母、だからドラママ」

 

『まぁ……確かに母性を発揮させたい私にとってとてもしっくり来る名前です』

 

「そういうことだからよろしくなドラママ」

 

『これからよろしくお願いねシック』

 

 早速ドラママが母性を出して手を握り、その場から離れて先ほどまで倒れていたドラメシヤを回収する。

 

 そしてそれと同時にジャックと話終えたルーちゃんが声をかけてきた。

 

「シック君、いいかな?」

 

「どうした?」

 

「もしシック君がWPAの世界チャンプになったら重要な話があるの。それまでの間誰とも婚約したり結婚したりしないでよ?」

 

「……? まあその程度なら約束出来るが」

 

「本当!? じゃあ私これで帰るから約束守ってね!」

 

 そう言ってルーちゃんが走り去り、WPAに向けてのモチベーションが上がる。何せドラパルトのドラママがパーティに加わったからな。

 

『どうせWPAのことしか頭にないんだろうな……この(なまく)らは』

 

 ジャックの呟きはスルーしておこう。こいつの呟きは訳がわからんからな。

*1
竜と格闘のダメージ判定がどちらか有利な方に傾くオリジナル技




現在アンケートをとっています。次回までに宜しくお願いします。なお読者の皆様がクロスしたいという場合は活動報告
(https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=242169&uid=22654)の方にクロスしたい作品の名前をお願いします

それはそうと感想は感想に、誤字報告は誤字に、その他聞きたいことがあればメッセージボックスにお願いいたします。また高評価やお気に入り登録、感想を送ったりすると作者のモチベーションが上がります!


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第33話 WPA編ラスト、そして……

アンケートの結果を発表します!
アニポケとクロスを希望するに投票したのが一番多く、次にポケスペ、そしてクロスしないでいいが三番目。四番目が読者の皆様の小説となりましたが活動報告に来たのが一人だけという有り様で
作者のもう一つのポケモン原作、大森林(https://syosetu.org/novel/99531/)は一票と散々たるものでした。お気に入り数、感想数ともに大森林の方が高いのに……解せぬ

この結果からアニポケ→ポケスペ→その他とさせていただきます。番外編はちょくちょく入れる方針で。……うん、完全に完結するまで5年はかかるな(絶望)
そういうことですのでこれからもよろしくお願いいたします。


 そして数ヵ月後。俺は無敗のまま連戦連勝の街道を歩み続け、WPAの世界チャンプに挑戦状を送りつけた。

 

 

 

 WPAの世界チャンプ、それはかつてレッドさんが持っていた称号だがレッドさんは2年しか防衛出来なかった。その理由が目の前にいる男によるもので、レッドさんに勝って以降この目の前の男、ヒビキは勝利し続けていてその記録は歴代1位タイに並び魔王と呼ばれている。俺に勝てば歴代1位の記録更新となる訳だ。

 

 以前俺はレッドさんと戦ったことがあるがあれは本気のメンバーじゃない。本気のメンバーをTV越しに一度だけ見たことがあるがギラギラと同格レベルまで鍛え上げられていた。流石に急所の命中率はギラギラには敵わないが攻めや守り、スピード全てがギラギラを上回り、指示もかなりキレていた。

 

 そんなレッドさんが敗北したのは全盛期から離れたからだと言われていて俺が会った時にはもはや生ける屍となっていた。もし全盛期の頃のレッドさんと対戦していたなら俺が負けていただろう。

 

 

 

『マスター、どうやら相手はバンギラス、ルギア、アルセウスの三頭を出してくるようです』

 

「何故わかる?」

 

『WPA世界チャンプの息使い、脈拍、そして視線ありとあらゆるものがこの三体を選んでいると予想されます』

 

「マンダー、ダン、お前も同じ意見か?」

 

 頭脳担当の二人に尋ねると頷いた。

 

『間違いなくそうですね』

 

『そうだ。だから俺を出してだいばく──』

 

 ダンが口を開くやいなやだいばくはつをしようとするので問答無用で収納する。

 

「なら編成は決まった。お前達行けるな?」

 

 俺が三頭を選ぶとダン以外の面子が納得してボールの中に入る。

 

「ジャック、行ってこい」

 

「行けっバンギラス」

 

 ギラギラと同じサイズのバンギラスとジャックがその場に君臨した。……ちと噛み合い過ぎたな。

 

 

 

 

 

「戻れバンギラス!」

 

「戻れジャック!」

 

 俺とヒビキが同時にボールに収納させるとヒビキが驚愕し、顔をひきつらせるがそれも一瞬ですぐにボールを手にしてポケモンを出した。

 

 

 

「頼んだアルセウス」

 

「ドラママ行けっ!」

 

 ドラママことドラパルトを出しアルセウスに対峙させる。

 

「ドラママ、あやしいひかり!」

 

『汝、迷えよ。迷い迷い果てた先にあるのは正しき道也』

 

 ドラママが如何にも宗教染みた堅苦しい言葉を発しながらアルセウスにあやしいひかりを向ける。

 

「アルセウス!」

 

『敵は、誰だ。私か、それともこの人間達なのか!?』

 

 あやしいひかりで混乱しないのはマイペースなどの特性だ。アルセウスはそれに該当せず普通に混乱する。アルセウスもそうだが伝説系はあやしいひかりを喰らったら回復する手段がほとんどなく、こういった搦め手に弱くアルセウスが自傷ダメージを負う。故にヒビキに残された手段は二つしかない。

 

 

 

 アルセウスを引かせ別のポケモン──ルギアかバンギラスに変える。これが一番手っ取り早く解決する。特にバンギラスに変えてしまえばドラパルトの弱点をつける。

 

 しかしジャックを見せている為に下手にバンギラスを出そうものならジャックの餌食となると予想している。かと言ってルギアだとタイプ一致でジャックに弱点はつけてもドラパルトの弱点をつけない。ここは読みがものを言う。

 

 

 

「アルセウス戻れ」

 

 ドラママを引かせない理由はアルセウスと引くと予測したという理由もあるがそれが主な理由ではない。

 

 ドラママの道具はこだわりスカーフで持たせると素早さが速くなる代わりに一つの技しか使えなくなるというものだ。

 

 つまりあやしいひかりを永遠と使い続けてしまい攻撃手段がなく万一アルセウスを引かせなかったら危なかったがその心配はない。

 

 ここでヒビキはバンギラスを出さざるを得ない。ルギアを出そうにも俺の手持ちにはバンギラスとドラパルトがおり相性が悪い。

 

 しかもドラパルトは場に出ている。俺がルギアを出すことを予想していてダイマックスしてダイホロウでルギアを仕留められる可能性もあり、リスクが高すぎる。だからこそ最もリスクが少なくダイホロウの被害も抑えられるバンギラスを出す。俺はそう読んでいた為、ドラママをダイマックスさせ、指示を出した。

 

「ルギア、出番だ!」

 

「いくぞ、ドラママ。ダイワームだ」

 

 ダイワームがルギアに炸裂し、ルギアの特殊攻撃の能力が下がる。

 

 

 

 俺の読みが外れた理由、ヒビキが歴戦のポケモントレーナーというのもある。しかしアルセウスは一度自傷していて次に攻撃する確率は51%*1と高い。

 

 それにも関わらず引いたのはアルセウスもこだわりスカーフを持っているからで、あやしいひかりを永遠と続けることはないと読んでいたからだ。

 

 だがそれだけではダイマックスをする可能性も否定出来ないはずだ。ダイマックスをすればこだわりスカーフの効果も消えてしまい、ダイマックス技を出してダイマックスが終わった後も改めて別の技も出せるようになる。

 

 それを覆す理由──それはルギアの特性マルチスケイルにある。イリアの特性と同じだがルギアの場合は飛・超タイプであり2倍弱点しか存在せず、マルチスケイル持ちのカイリューは氷で4倍弱点を取られても同格の相手では倒れないことから、ルギアの耐久は高いと言えるだろう。

 

 しかしここはルギアにするべきじゃなかった。

 

 

 

『南無三っ!』

 

 ダイワームがルギアに炸裂するとルギアの特殊攻撃の能力が下がる。ルギアは物理攻撃を得意としていない。バンギラスやアルセウスならともかく、特殊攻撃を得意としているルギアにとってダイワームの効果は致命的なものだ。それにも関わらずルギアを出したということは何か起点となるものがあるんだろう。そうでなければ意味がない。

 

 などと思っているとルギアがたべのこしを食べ体力を回復している。なるほどな。

 

「ドラママ、ダイホロウ」

 

「ルギア、そらをとぶ」

 

 ルギアがそらをとぶを実行する前にダイホロウが直撃するがそれでも瀕死にはならずそらをとぶを実行されてしまう。

 

「ドラママ、ダイウォール」

 

 このままだとルギアのそらをとぶが直撃し、ダメージを負ってしまうだけに終わる。それならばダイウォールで防ぐしかない。

 

「これでダイマックスの効果は消えたぞ」

 

 ヒビキの言葉の通りダイマックスの効果が消えてしまいドラママが元のサイズに戻る。

 

「それがどうした。ドラママ、ドラゴンアロー」

 

 ドラママが顔の翼の中にいるドラメシヤを放ちドラゴンアローを実行するとルギアが倒れる。ルギアの役割はダイマックスを消費させる為の物だったのか? 

 

「割りと不味い展開じゃないのか? 魔王さんよ」

 

「かもな。だがそれで諦める俺じゃねえよ。アルセウス、あくうせつだん!」

 

 ヒビキがアルセウスをとりだし指示を出す。しかし俺はドラママを引っ込めた後で代わりにいたのはバンギラスのギラギラだ。

 

 

 

「そういうことかよ……アルセウスきあいだま!」

 

「ギラギラ戻れ。ドラママ行けっ!」

 

 きあいだまがギラギラに何故か当たるがギラギラはびくともせず、アルセウスの行動は無駄に終わる。これでこだわり系の道具でないことが確定する。

 

『やれやれまたですか。いいですかシックさん。あまり依存し過ぎると──後にしましょうか。覚えておいて下さいね』

 

 それから説教されそうになったがドラママが空気を読んだこともあってかそれは回避される。

 

「さあ魔王ヒビキ、どうする? あくうせつだんを撃つか、それともきあいだまを撃つか。だが俺はそれを予測してやるぜ。なんて言ったって俺は背後霊がついているからな。お前の動きくらいは予想出来る」

 

まあそういうことだ。ワシがついているからにはこのシックに勝つすべなどない

 

 レヒレ曰くこの背後霊は俺の叔父に当たる人物で親父とともに俺を庇って死んだらしい。考古学者でありながらポケモントレーナーとしても優秀で故郷では太古の言語──夜の王ザクロが使っていた言語を唯一扱える人物で死んだ影響でその言語しか喋れなくなったそうだ。

 

 

 

「くっ……背後霊なんて反則じゃないのか?」

 

 俺もそう思う。どこぞの名家の落ちこぼれエスパーが癇癪起こしてリアルファイトに持ち込むのと同じくらい反則でありチートだ。何せこの背後霊は俺にしか見えていない上に心霊現象を明らかにするシルフスコープすらも透かしてしまい、証拠が上がらない。

 

魔王(ラスボス)に立ち向かう勇者は一人じゃない。勇者は皆の力を合わせて戦うんだ」

 

「名言らしいことを言っているが、やっていることは最低だ」

 

「証拠は状況証拠しか上がらねえよ……もっとも今回はこの背後霊に頼ることはいないから安心しろ」

 

そりゃないぜシック。なあワシにはお前とそう年が離れていない娘がいるんだ。親のワシがいうのもなんだが、かなりかわいいぞ。娘を紹介するから考えてくれぬか

 

 ニュアンスでこの叔父貴が説得しているように──というかモロに説得しに来ているが無視だ。ルーちゃんに婚約したり結婚したりするなと言われているからな。

 

 などと思っていると叔父貴から美少女の画像と年齢が頭に送られる……というかこいつ本当に俺と近い年か? 童顔なのと小柄なのが相まって10歳かそこらにしか見えない。

 

ほら、これがワシの娘のロベリアだ。ワシに似ずかわいいだろ? 

 

 確かに見た目通りの年齢ならルーちゃんを越えるだろう。しかしこいつの場合、成長する見込みがないから合法ロリでもいけるロリコンしか反応しないぞ。

 

「さて背後霊がごちゃごちゃうるさいし、再開といこうか」

 

「今度は背後霊を邪魔者扱いかよ……まあその方が都合がいいからいいけどな」

 

あくまでもワシを遠ざけるというのだな? ならばシック、ワシの呪いを受けてみろ

 

『させませんよ』

 

 こだわりスカーフを一旦俺に渡したドラママが背後霊を止める

 

何をする!?

 

『全く貴方という人は……背後霊なら大人しく守護霊となって主人であるシックさんを守りなさい。ましてや貴方がシックさんの叔父であるなら尚更です!』

 

くそ、シック! そいつはアルセウスに──」

 

『黙りなさい。これは神聖なポケモンバトルです。貴方が妨害することによってシックさんが反則負けになったらどうするんですか? その浅はかな考えを正す必要があります……いざ!』

 

「あー、すまないがチャンピオン。少し背後霊とドラママの間でトラブル発生だ。バトルを一旦中断するから待ってくれ」

 

「わかった。審判、チャレンジャーが一時中断を申請し俺はそれを受諾したので一時中断させてもらう!」

 

「わかりました。WPAの規則に違反しない限りポケモンを自由にし、チャレンジャーが良ければ再開する!」

 

 異例とも言える処置に観客達がざわめく。そしてドラママが背後霊たる叔父貴と戦闘すると次第に本気を出した叔父貴の姿が顕になりドラママとガチバトルが始まる。それを読んでいた審判は一体何者なんだろうか。

 

 

 

 

 

 それから数分後、当初こそ叔父貴が優勢に戦うがドラママが搦め手で叔父貴を嵌めて拘束した。

 

おのれ……だがなにがなんでもロベリアとあって貰うぞ

 

『さてお待たせしましたね』

 

 ドラママがそういってこだわりスカーフを持ち、再開を促す。

 

「チャンピオン、待たせたな。審判ポケモンバトルを再開する」

 

「よし、それでは試合再開!」

 

「しかしよかったのか? お前のドラパルトの動きはもう読んでいる上に道具もわかっている……それに対してそのドラパルトはさっきので体力を消耗している」

 

「問題なしだ。それにもう俺はこの状況から勝利の方程式を描いている。これは慢心じゃなく、お前の立場なら俺は降参するだろう」

 

「降参? ねごとはポケモンに覚えさせてから言え! アルセウス、あくうせつだん!」

 

「ドラママ、ドラゴンアロー!」

 

 何故ドラママにスカーフを持たせたかその理由がわからないようだな。

 

 普通ならあやしいひかりを搭載した最速ドラパルトなどスカーフで持たせるものじゃなく、ダイマックスを無駄遣いと言われても仕方ないだろう。あやしいひかりを最速で使うなら特性いたずらごころのポケモンでやるのが一番理想である以上、スカーフドラパルトに搭載する必要がどこにもない。

 

 だがドラママだと話しは別だ。ドラママは能力の上昇なしで能力を上げたジャックと互角に戦え、特に素早さに関しては俺ですら目で追えない。そのドラママがスカーフを持ったらどうなるかなんて予想は誰にも出来ない。

 

 

 

『ぐぁっ!?』

 

『さあ続けますよ! 創造神(アルセウス)

 

『ぐっ、がっ! おのれぇっ!』

 

 アルセウスが抵抗しあくうせつだんで攻撃するもその場にドラママはおらず死角に回り込んでいた。

 

「アルセウス、左だ!」

 

『ここかっ!』

 

 ヒビキが指示してアルセウスが死角にいるドラママを攻撃しようとするがそこにいなかった。

 

「超人の俺ですら気配で追うしかないんだ。毛が生えた程度の並みの人間がドラママを捉えられるはずがないんだよ」

 

「くそっ、アルセウス気配で追うんだ!」

 

『バカを言うな。気配で追ったとしても、そいつは既にいな──がはっ!?』

 

 それからドラママはずっと俺のターン状態にするとアルセウスが倒れる。

 

『まだまだだ!』

 

「諦めの悪い奴だ」

 

『ヒビキも私も諦めが悪いんでな……だがおかげで攻略法が閃いた!』

 

 地面をきあいだまで岩を舞わせるとドラママの動きが鈍くなる。

 

『やはりな。超高速で動いているドラパルトは止まることが出来ない。それ故に岩を舞わせることでダメージを負い、スピードを落とすことになる。そのスピードさえなければ平凡な竜だ!』

 

「アルセウス、あくうせつだん!」

 

 アルセウスのあくうせつだんがドラママに直撃し、深いダメージを負ったドラママが倒れ──

 

『諦めが悪いのは私もですよ……説諭っ!』

 

 最後のとびだすなかみと言わんばかりにドラママがドラゴンアローを放つとアルセウスが力尽きた。

 

「ドラパルト、アルセウス共に戦闘不能! 両者は次のポケモンを──」

 

 俺はジャック、ヒビキはバンギラスを出しており既に戦闘態勢に入っていた。

 

 

 

 それからのバトルは一方的なものだった。ジャックがブレイジングソウルビートを放ち、インファイトでバンギラスを仕留めるというシンプルなものだった。

 

 確かにヒビキの使うバンギラスは強いがギラギラよりも少し格が劣る程度で、ギラギラを相手に互角に戦えるジャックの敵ではなかった。

 

 

 

「新世界チャンプ誕生ーっ! 勝ったのはシンオウ地方のシックだっ! 太陽の王子から最強の王者となりました!」

 

 沸き上がる大歓声。これがいつもならブーイングの嵐だが今回はだいばくはつを使わなかったからこうなったのか。複雑なものだ。

 

「さあ新世界チャンプ、何か一言お願いします」

 

「一言じゃ足りない。世界チャンプになったこの瞬間。師匠、そしてライバル達にようやく胸張って勝負が出来る……それを思うだけで感無量です」

 

「ありがとうございました。それでは──」

 

 それから俺は流されるままに表彰され、トロフィーを授かるとずらかる。

 

 

 

 

 

 その三ヶ月後、師匠達とトーナメント戦を行い約束を果たした俺の腕にはウェディングドレス姿のルーちゃんがお姫様抱っこで幸せそうに笑みを浮かべていた。

 

「シック君、これからどうするの?」

 

「結婚したからって世界チャンプ返上はしない。むしろ生涯現役でやり続ける気だ」

 

「じゃあサポートしてあげるね。私の素敵な旦那様」

 

「頼むぞ。明後日には俺の従姉妹のロベリアがポケモンを受け取りに来るから対応してくれよ?」

 

「うん。でもナツメさんや他の人に悪いことしちゃったかな?」

 

「気にするな。ここはお前の特等席だ」

 

 そう言うとナツメさんが頷き肯定する。ナツメさんは俺がこうなる未来を予測していたらしい。

 

 しかしナツメさん曰く、俺に一目惚れしていたそうで何度も葛藤し、ルーちゃん──ルチアに嫉妬していたそうだ。しかしそのわだかまりはルチアとポケモンバトルをして解消され納得したそうだ。

 

「さあルチア、いこうか」

 

「もちろん旦那様!」

 

 俺がドラママ、ルチアがチルルを出しその上に乗りパレードを行う。

 

『しかしパレードポケモン役がドラパルトの私でよかったんですか?』

 

「お前の進化前のドロンチはせわやきポケモンだろ。それにお前自身も世話焼きだから縁起がいいんだよ」

 

『そういうことですか。納得しました』

 

 こうして俺はルーちゃんことルチアと結婚し幸せな家庭を築き上げた。俺とルチアが絡む度に、ジャックが『砂糖はイヤだ……』と顔を顰めるのはご愛嬌だ。

*1
正確には一回目または二回目のどちらかで攻撃出来る確率




と言うわけで一度完結です。こんなグダグダな完結の仕方はイヤだ?他のポケモン達はどうなった?もっとバトルシーンが欲しい?いやルチアとの砂糖大噴火シーンが欲しい?他のヒロインと結ばれたルートを見せろ?そういう時こそあの活動報告(https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=242169&uid=22654)の出番だよ。そちらにこの小説に関するリクエストがあれば記載お願いいたします。もしくはアンケートでも可。

ちなみにちょくちょく名前が出てきたロベリアについてですがシックの背後霊、つまり叔父の娘でシックからすれば従姉妹に当たります。彼女の話も番外編で出すかもしれません。その話が好評であれば彼女が主人公の小説も書くかもしれませんのでその時はよろしくお願いいたします。


それでは本編最後となりますが、感想は感想に、誤字報告は誤字に、その他聞きたいことがあればメッセージボックスにお願いいたします。また高評価やお気に入り登録、感想を送ったりすると番外編等に使う作者のモチベーションが上がります

追記
混乱した際に自傷する確率を訂正しました。昔であれば半々だったのですが、今は3割であり本文の確率は75ではなく51%です。


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番外編と言う名のオマケ
登場人物まとめ


完結したのでとりあえず出しておこうかと。不評なら活動報告に転載します。

正確にはシック及びヒロイン、そしてシックのポケモンの一覧ですね。その為ワタルとかは載っていません。何故かって?現在のアンケートの状況を見ればわかる!


 シック

 

 我らが主人公。恋愛に関しては鈍感なテンプレ主人公。イケメンであることももちろんテンプレ。ポケモンバトったり踊ったり、リアルファイトの方が得意だったりクッキングしたりと万能過ぎてテンプレ。しかし釣りが苦手だったり短気な性格も人間味があるテンプレ主人公。テンプレ要素が詰め込みすぎてテンプレ。テンプレの為のテンプレによるテンプレ。

 

 ……語彙力がなくなり始めたので真面目にやります。

 

 幼少の頃に両親と叔父を失い、闘タイプと殴り愛をする習慣のある親戚筋の老人夫婦に預けられた。その結果ポケモンの技をほとんど使えるようになっただけでなく身体能力も超人染みたものとなった。尚、まだこの時はポケモンとの会話は出来ておらずそれに目覚めるのはイリアことミニリュウと旅をしている最中に目覚めたものだった。またその後、当時グリーンに敗れる前のチャンピオンだったワタルに弟子入りし竜タイプの扱いを習得した。

 

 そしてイリアと共に旅をしている最中でギラギラと戦い敗北、その上リックの元トレーナーに嵌められ刑務所に入られる。

 

 出所後はリックの元トレーナーに復讐し、リックを仲間に入れ、イリアを取り戻し、ダンやマンダーといったシックのポケモンの面子を集めギラギラに挑戦し、仲間に引き込んだ。

 

 その後ジャックやドラママを捕まえWPAに挑戦し、WPAの世界チャンプとなりそれまで戦ってきたトレーナーを集めてトーナメントを開催した。一応正規ルートはルチアだが、ヒロイン次第で変わる。

 

 後、ボーマンダ愛好家でありマンダーを信頼しているのはそれが原因。

 

 裏話

 

 名前の由来は上品を意味するシック……ではなく600族の使い手ということから、600を英語にしたsix-hundredが由来。ちなみにこの世界ではたくさんを意味する数は八百万ではなく六百万となっている。

 

 

 

 

 

 メインヒロイン

 

 

 

 

 

 ルチア

 

 シックを見た瞬間一目惚れしたチョロイン。そして一途ながらビ(何故か血の痕跡があり読めない)シックの正妻にしてメインヒロインでありこの世で一番愛されている存在に違いない。何せ正規ルートではルチアのルートなのだから

 

 裏話

 

 連載当初はヒロインなんてものは存在せず、シックが600族のポケモンを使って無双するだけの短編小説を合わせたものだったが、話を円滑にさせる為に登場させ現在に至る。そういったメインヒロインという意味ではルチアが該当する。

 

 

 

 

 

 ナツメ

 

 復讐を終えたシックにアローラの島巡りを提案し、シックの腐る未来から救った賢妻ポジのヒロイン。一目惚れのルチアとは違い話数を重ねる内に惹かれ、照れ隠しにシックに念力を使ったりと暴力系の属性も兼ね備え、見事メインヒロインの一人に昇格した。しかし正規の未来ではルチアであることから身を引き結婚した二人を祝福している。

 

 裏話

 

 ナツメ登場当初はただのアドバイザーというポジションだったが、書いている内にヒロインとして書いたら案外楽しくなりこうなってしまった。しかし後悔はしていない。

 

 

 

 

 

 サブヒロイン

 

 

 

 

 

 シロナ

 

 チャンピオンになった当初、シロナは容姿端麗なこともあり男達から言い寄られ迷惑していた為「好みは自分よりポケモンバトルが強い人」と公言し男を避けていた。しかしシックにポケモンバトルで敗北し、インターネットで公開しかなり遠回しにシックに告白する。

 

 ……というのがシロナルートの最初の文。

 

 地方チャンプでありながら考古学者であり文武両道で完璧に見えるが自生活が出来ない、優柔不断な一面が見られる人間味のあるチャンピオン。また何気にシックのポケモンリーグ復帰に一番貢献したのはシロナである。

 

 裏話

 

 一応サブヒロインであるが、彼女の場合名脇役のそれに近く、ポケモンリーグ関係で困ったら彼女を動かせば大体解決するという便利なキャラ。おかげで作者の中でかなり助かっている。

 

 

 

 

 

 アイリス

 

 イッシュ地方の現チャンピオンであり、シックを濡れ衣を着せた少女。信頼していた同郷のトレーナーに裏切られ何もかも信頼出来なくなっていた。またそれによりシックに罪悪感を感じ会わないように徹底していたが成り行きでバトルし、わだかまりを解消するがリックからは目の敵にされ命を狙われている。

 

 裏話

 

 ちなみにこれでも原作寄りの性格でありアニポケ寄りの性格であったらイリアやリックを引き取った上に返そうともせず開き直ってしまい、ヘイトが凄まじくなるので止めたエピソードがある。もしアンチ・ヘイトタグを使う時はこのアイリスがアニポケ寄りの性格になった時かもしれない。

 

 

 

 

 

 スモモ

 

 シンオウ地方のジムリーダーの一人。闘タイプの使い手であり毎日ポケモンとの鍛練は欠かさずリアルファイトも得意とするが、共にシックには敵わず敗北。それ以降彼女は一度に5匹のポケモンを使って特訓しSバンダム級の世界チャンピオン戦までたどり着いた。

 

 裏話

 

 丁度ジムリーダー巡りでマンダーの回だった為、スズナと一緒に登場させダブルバトルでブリタを無理やり出させる為にスモモを出した。その為、スモモはスズナのオマケみたいな部分がありその罪悪感を消す為に話の後半でリアルファイトさせた。

 

 

 

 

 

 スズナ

 

 シンオウ地方のジムリーダーの一人。氷タイプの使い手でありシンオウ地方のジムリーダーのNo.2の実力の持ち主で、シンオウ地方のジムリーダー同士で全員が戦ったらNo.1のジムリーダー以外全勝してしまう程には強い。シックとは交換日記をする仲でルチアと婚約したと発表した日は日記の一部が濡れていたらしい。

 

 裏話

 

 マンダーの回だったのでブリタを除外させる為に登場させたが後半がスモモメインになってしまったので反省している。

 

 

 

 

 

 その他

 

 エリカ

 

 カントー地方のジムリーダーの一人だがナツメの会話相手として一回出て来ただけでほぼモブキャラ。特に裏話もなし。

 

 

 

 

 

 ロベリア

 

 最後の方に名前が出て来たオリジナルトレーナーであり作者の次のポケモン作品の主人公になるかもしれないポケモントレーナー。

 

 シックの従妹にあたるが母親諸とも行方不明になり背後霊となったロベリアの父しかその行方は知らず、シックの故郷では存在すらも消されていて、ロベリアもシックのことを親戚とは知らず憧れのポケモントレーナーとして見ていた。

 

 しかしシックが背後霊となったロベリアの父親とコミュニケーションを取れるようになりロベリアはシックと出会え、とあるポケモンを譲渡してもらう。名前の由来はもちろん植物のロベリア。

 

 裏話

 

 ロベリアの設定を考え始めたのはこの小説が始まる前からでシックかロベリアか迷った結果シックになった。シックにポケモンを貰う時点で察する方もいますが、ロベリアがどんなポケモンを使うかはその時までお待ち下さい。

 

 

 

 

 

 シックのポケモン一覧

 

 

 

 

 

 イリア

 

 種族 カイリュー

 

 名前の由来 (カ)イリ(ュー)+ア

 

 一人称 私

 

 シックへの呼び名 ご主人

 

 モチーフ ダイワスカーレット(アホの子)

 

 出会い

 

 詳しくは第9話参照。

 

 ミニリュウの時にシックに釣られてリアルファイトでボコされ捕まった。ハクリューになった時に反抗期が到来し、ギラギラを捕まえる際に言うことを聞かずボコボコにされるがシックが庇ったことを切欠に反抗期が終わりデレデレになる。その後、シックと別れた後は別のトレーナーのところでバトルをしていたが捨てられ逆上しそのトレーナーを半殺しにしてNの協力の下、シックのポケモンに戻る。

 

 裏話

 

 モチーフがダイワスカーレット(アホの子)と記述している通り、脳筋となった。そもそもダイワスカーレットとは競走馬であり、12戦12連対の上に牝馬ながらにして有馬記念制覇という頭のおかしいことをやっているが、騎手曰く「バカだから言うことを聞く」とのことで従順な馬。その癖先走るのだからアホの子としか言いようがない。その上強いのだから愛すべきバカという存在である。尚、信じられないことだが競馬界にはダイワスカーレットが霞む程のキャラが濃い奴がいる。

 

 

 

 

 

 ギラギラ

 

 種族 バンギラス

 

 名前の由来 (バン)ギラ(ス)×2

 

 一人称 不明

 

 シックへの呼び名 マスター

 

 モチーフ サイボーグ

 

 出会い

 

 捕まえた経緯は第10話参照。

 

 シロガネ山でバンギラスの状態でシックと出会ったがその時から強く、いつも通り侵入者を撃退するべくシックと戦うがハクリューが言うことを聞かないのにも関わらず、シックが見捨てずに庇ったことやその際に落としたにじマメに免じてシック達を見逃す。

 

 それ以降はにじマメを求め、人を襲うようになるが、ある日R団の残党を狩ったところ警察等の喜ばれにじマメを送られて以降はぬしポケモンとして君臨するがいつまで経ってもにじマメは送られず、諦めていたところをシックと再会し毎日にじマメを食べられるという待遇に食い付きシックのポケモンとなった。

 

 その後も作中最強キャラ──というか理不尽最終兵器枠としてシックが常に側に置いている。例外といえば第16話において離れた時くらいだけで後はパーティにいる。

 

 裏話

 

 本来であればモチーフのサイボーグらしくカタカナ表記でやるつもりだったが見辛くなるので止めて現在のように武人のような喋り方となった。

 

 また忘れているかもしれないのでギラギラが現在持っている道具は特性をかたやぶりに変えるオリ道具。ふしぎなまもりミカルゲのように詰む相手の対策の為に出したエピソードがある。

 

 

 

 

 

 ダン

 

 種族 メタグロス

 

 名前の由来 (バク)ダン

 

 一人称 俺

 

 シックへの呼び名 シック

 

 モチーフ 爆発、マルマイン

 

 出会い

 

 詳しくは第11話参照。

 

 アローラ地方で生まれたメタグロス。生まれた時点で既に両親は死んでおり代わりに、アローラゴローニャ一族に育てられ、他の種族だからといって迫害されず幸せな生活を送っていた。しかしポケモンハンター達にアローラゴローニャ一族もろとも襲撃され、育ての親のアローラゴローニャ達がポケモンハンター達と刺し違え命からがら助かる。その際にショックを受けてしまったのかだいばくはつをすることで生き様を魅せられると思い込んでしまい、自力でだいばくはつを覚えポケモン達にだいばくはつを炸裂させ、迷惑をかけていたところをシックが捕獲した。

 

 尚、WPA戦編の最中にポケモンハンターとの因縁に決着をつけており以降は素直に言うことを聞くようになったが、それでもだいばくはつが好きなことには変わりなく止めを刺すときは必ず使う。

 

 裏話

 

 マルマインといった自爆系キャラだが実を言うと一番最初に性格が固定したキャラ。その上今では語られていないが、きあいのハチマキで確実に二回は耐えられるきあいのハチマキに愛されたポケモンであり幾度なくハチマキに助けられた。ただこいつメインの話になると話が思い浮かばずR団やポケモンハンター関係といった内容になってしまうのが作者の悩み。

 

 

 

 

 

 マンダー

 

 種族 ボーマンダ

 

 名前の由来 (ボー)マンダ+ー

 

 一人称 私

 

 シックへの呼び名 シックさん

 

 モチーフ 宇宙の帝王

 

 出会い

 

 詳しくは第12話参照。

 

 流星の滝で♀のタツベイを捕まえようとしたところを止めたのがシックとの出会い。シックは特にボーマンダにはこだわりがありアローラ地方にボーマンダがいるにも関わらずホウエン地方で厳選するほどで、その結果マンダーが最も優れた個体と判断し引き抜きする。とある条件をこなしたシックがポケモンハンターの存在に気付き、網にかかったコモルー達を救い出しマンダーはそれを恩に感じ、シックをトレーナーとして信頼している。

 

 裏話

 

 モチーフが宇宙の帝王ということではあるが口調がほとんどであり狂暴さはほとんど見せない。しかし作者の中ではCVはやはり宇宙の帝王そのものでイメージしていて比較的書きやすいポケモンである。

 

 

 

 

 

 ブリタ

 

 種族 ガブリアス

 

 名前の由来 (ガ)ブリ(アス)+太

 

 一人称 オイラ

 

 シックへの呼び名 マネージャーさん

 

 モチーフ アイドル、芸人、ダンサー

 

 出会い

 

 詳しくは第13話参照。

 

 ホウエン地方にて砂浴びをしていたところシックが路上ライブを行っていたところを見かけ、それに魅力され、シックのポケモンとなる。余りにも短いのでエピソードを。

 

 ブリタは捕獲された直後シックの修行により通常のフカマルでは覚えられないげきりんやじしんなど多数の技を覚えただけでなくダンスや歌なども師事しほとんどの技を避けられるようになった。つまり本人の素質もあるだろうがブリタの回避率はシックによって作られたものである。

 

 裏話

 

 ガブリアスの理想性格個体と言えば6V陽気ガブということでこのような性格になった。その為、モチーフはほぼ後付けで特に決まっていない。尚、ダンスが好きだからという理由でりゅうのまいを覚えたり、歌が好きだからという理由でほろびのうたも覚えることが可能という裏設定がある。

 

 

 

 

 

 リック

 

 種族 サザンドラ

 

 名前の由来 (メタボ)リック

 

 一人称 俺

 

 シックへの呼び名 サー

 

 モチーフ 軍人

 

 出会い

 

 詳しくは第14話参照。

 

 元々は他人のポケモンで余りにも動きが鈍いのと大喰らいだからという理由で追放されていたところをシックが保護し、捕まえる。シックやイリアとのトレーニングによりリックが素早く動けなくとも立ち回れるバトルスタイルを確立し、連戦連勝を続ける。

 

 それを快く思わない元のトレーナーがシックをリックを奪ったポケモンハンターとして通報する。当初は相手にされなかったがそのトレーナーを信頼していたアイリスの証言によりシックは刑務所に行かされ、元のトレーナーに戻される。

 

 しかし元のトレーナーの下で活躍出来るはずもなく連敗を重ね、また見捨てられたところを出所したシックが保護し、シックの協力の下、元のトレーナーを間接的に殺し自由を得て改めてシックのポケモンとなった。

 

 裏話

 

 リックのリックはメタボリックのリックという名前の由来通りデブにさせた理由は、作者の使うサザンドラは耐久よりのサザンドラであり、もしサザンドラの種族値が耐久よりで特性があついしぼうだったらどうなるだろうかという疑問から。

 

 ちなみに通常のサザンドラのAとSの種族値を入れ換えた状態で出ていたらガブ以上に無駄が一切ない上に、ガブリアスキラーとなっていて4倍弱点なので第7世代以降もカプ系といったフェアリーも出さなかっただろう……逆にサザンドラが強すぎて出すかもしれないが。

 

 

 

 

 

 ゴルメ

 

 種族 ヌメルゴン

 

 名前の由来 (ヌ)メルゴ(ン)→ゴルメ

 

 一人称 ワシ

 

 シックへの呼び名 シック

 

 モチーフ スケベ爺、DDD、etc.

 

 出会い

 

 詳しくは第15話参照。

 

 色違いかつ隠れ特性という世界でも数匹しかいないヌメルゴン。

 

 ダンとは違い生まれた当初から親兄弟からも迫害され一人で生活し幸せとは程遠い生活を送っていた。しかし自力でヌメルゴンまで成長しポケモンハンター達に誘拐され工場で無理やり種付けをされる内に子供に愛着が湧き、子供を連れ出して逃げ出そうとしたが生まれてきた子供は既に殺され一人で脱走。

 

 脱走している最中に♀ポケモンと性行為を迫り自分の子供を作ろうとしたところをシックとポケモンハンター達に見つかりシックのポケモンとなる。

 

 その後生まれていた自分の子供達やその母親達を救出しシックを信頼し、シックのポケモンのままでいることに決めた。

 

 裏話

 

 モチーフの中にDDDが記述されているように作者の中では某声優がスケベ爺を演じているイメージで書いている。マンダー以上にキャラがブレないから脇役としては書きやすく楽と言えば楽。ただそれ以上にゴルメの回になるとシリアスかつ文字数が長くなるのでゴルメ回は結構頭を抱える。

 

 

 

 

 

 ジャック

 

 種族 ジャラランガ

 

 名前の由来 ジャ(ラランガ)+ック

 

 一人称 儂

 

 シックへの呼び名 シック

 

 モチーフ 破天荒警察官

 

 出会い

 

 詳しくは第16話参照。

 

 一族の掟に従い、旅に出て修行するが大喰らいで途中で分けてもらったきのみがなくなり、ゴミ箱を漁るホームレス当然の生活をしていたところ人間の金を使うことで贅沢が出来ると知りそれまで食以外に関しては厳格な性格だったのが豹変し、金を稼ぐなら手段を選ばなくなり詐欺行為までするようになってしまった。その詐欺行為がバレてジュンサーから逃げるところをシックが発見し、イリアやブリタ、ギラギラを駆使して捕まえる。

 

 裏話

 

 ジャランゴの鱗はフライパン等に加工されるという図鑑説明から、ジャラランガが自ら鱗を売っても可笑しくないという発想に至り、モチーフが破天荒警察官となった。守銭奴で破天荒警察官な為に作者の再現が難しく書くのに手間がかかるポケモンである。

 

 

 

 

 

 ドラママ

 

 種族 ドラパルト

 

 名前の由来 ドラ(パルト)+ママ、ドラ(メシヤ達の)(ママ)

 

 一人称 私

 

 シックへの呼び名 シックさん

 

 モチーフ 幻想郷の住職さん(南無三南無三言っちゃう人)

 

 出会い

 

 詳しくは第32話参照。

 

 ドラパルトやその系統の種族は世話好きでドラママは特にその傾向が強く、ドラメシヤを守る為にダイマックスしたミュウツーやゼラオラを同時に相手して勝つ程度に強くなった。

 

 しかしジャックの卑劣な手によりシックのポケモンとなるが、シックのポケモン達を更正することに生き甲斐を感じているのか特に不満はない模様。ドラママ曰く『手のかかるポケモンほど可愛いもの』とのこと。

 

 裏話

 

 シックのポケモンの中では一番キャラがブレているが、それもこれも幻想郷の住職さん(南無三南無三言っちゃう人)が悪い。ドラママのセリフを書く度に「南無三!」という声が妄想で聞こえ、キャラがブレまくるから一番書くのが難しいポケモン。何故その人物をモチーフにしかというとドラパルトやドロンチは世話好きであり、世話好きかつ強烈なキャラといえばその人だったからという理由である。

 

 ちなみにドラママに住むドラメシヤは勇敢だったり意地っ張りだったりとAが向上する性格でドラゴンアローのみ威力が上がる裏設定がある。




活動報告(https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=242169&uid=22654)にこの小説に関するリクエストがあれば記載お願いいたします。もしくはアンケートでも可。


それではオマケ要素最初の感想は感想に、誤字報告は誤字に、その他聞きたいことがあればメッセージボックスにお願いいたします。また高評価やお気に入り登録、感想を送ったりすると番外編等に使う作者のモチベーションが上がります


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第34話 やっちまった歴史改変

番外編ということで前書きも番外編っぽくオススメコーナーを設置しました。

作者のオススメコーナー

バトルタワーで剣盾のレンタルチーム「テクいぐみ」を使ってみた感想がジュラとジャラのコンビが強すぎる。
ジュラでステロ、両壁貼って自主退場しジャラがソウルビートでゴリ押しするという相手がNPCだからこそ出来る脳死戦法。

実際対戦となったらこうはいかないのですが両壁を貼ることによってジャラの生存率を高め、ステロで交代してきた相手の体力を削り襷潰しも出来ます。

尚、ステロを捨てるとジュラの上位互換にクレッフィが来ます。少なくとも一度以上は壁を貼れますし、てっていこうせんで自主退場も出来るのでこいつもオススメします。

というわけでステロ両壁が出来るポケモン、ジュラルドンと強力な積み技を持つジャラランガをオススメしました。


 俺は現在荒ぶっていた。

 

「無人島を開拓して住民一万人を超え、ポケモンジムやその他諸々の設備を設置してようやくポケモンリーグ設立まで出来たというのに……あのクソセレビィがぁぁぁっ!」

 

 その理由はセレビィにある。住民となったセレビィの野郎が何をトチ狂ったのか俺を拉致し別の世界に移動させやがった。何故別の世界かわかるかというとR団が壊滅していないだけでなく、俺自身がこの世界に存在しないからだ。R団が壊滅していない過去に戻ったのであれば俺が存在していれば説明がつくがそうではない。俺やレッドさんが存在しない世界──それも過去に飛ばされたと見ていいだろう。

 

 

 

 しばらく自然を荒らしまくって冷静になる。

 

『それでシックさん、どうなさるつもりですか?』

 

「あのセレビィを捕まえて元の世界に戻してもらう。それが出来なければジラーチを捕まえて元の世界に戻してもらう」

 

『後者の方が難しいような気がしますが、まあその方針で行動しますか』

 

「幸いにもあの馬鹿三匹はドラママに預けているから元の世界に戻っても安心出来るが早めに戻らないとドラママの負担がデカいからな」

 

 馬鹿三匹──ダンとゴルメ、ジャックの三匹のことだ。あの三匹は俺のポケモンの中でも言うことを聞かない。ダンは止めにだいばくはつ、ゴルメは♀ポケモンに色目を使う、ジャックは守銭奴過ぎて詐欺行為に走る。あいつらを止めるにはギラギラかドラママのどちらかしかおらず、ギラギラはにじマメがなければ動かない上にドラママが世話焼きなので消去法でドラママが面倒を見ることになった。

 

『それじゃ早速バトル出来る施設にいかない? こういうのは優れたポケモントレーナーが知っている可能性が高いわ』

 

『イリアさん、貴女がポケモンバトル大好きなのはわかりますがタマムシ大学の関係者に聞いたらどうでしょうか? セレビィの生態について知っているかもしれません』

 

「イリアの言いたいこともわかるが、マンダーの言うこともわかる。じゃあタマムシ大学の関係者かつ優れたポケモントレーナーに会いに行けばいい」

 

『それが妥当なところですね。では早速──』

 

 マンダーが翼を広げようとした瞬間、マンダーとイリアに網がかかり、その網の先にはニャースの気球があった。

 

 

 

『な、何よこれ!?』

 

 イリアが冷気を纏わせ網を引っ張るが網は引きちぎれず、イリアが暴れる。……カイリューの中でもパワーが最高クラスのイリアが引きちぎれない網を作るとは大した奴だ。

 

「だーはっはっはっ!」

 

「何だこの不愉快な笑い声は」

 

 不愉快な笑い声と共に現れたのは白服のR団の服装をした二人組とニャースが気球に乗って現れる。

 

「何だこの不愉快な笑い声は、と聞かれたら」

 

「答えて上げ──ぎゃーっ!」

 

 奴らの口上に一切付き合う気などなく、木の棒を投げて気球に穴を開け、落とす。

 

「ちょっとぉっ! 人が口上を述べている時に攻撃するなんて反則よ!」

 

「そうだそうだ!」

 

「黙れ。そもそも他人のポケモンを奪うような輩に反則だの倫理観がないだのと言われたくない」

 

 そう言ってポケモン達にかかった網を引きちぎる。

 

『シックさん、相変わらず人間辞めていますね……』

 

『ホントホント』

 

「なっ──それは100ギャラドスが暴れても壊れない特殊合金で出来た網だぞ!?」

 

 マンダー達とR団の男が何か言っているがスルーし、指示を出した。それに100ギャラドスってギャラドス100匹分のことか?

 

「知るか。マンダー、イリア、こいつらを世界の果てまで飛ばせ」

 

 マンダーが笑みを浮かべ、答える。

 

『とりあえずくたばって反省していなさい』

 

『空の彼方まで飛んでけーっ!』

 

 レーザー状になったかえんほうしゃとれいとうパンチがバカ達に直撃するとぶっ飛んでいった。

 

「口上すら言わせて貰えないなんてやな感じーっ!」

 

 奴らが遠い空のお星様になり、イリア達と共に捕らえられていたポケモン達が俺の目の前に寄る。

 

『助けてくれてありがとう。いつもあのR団に狙われているんだ』

 

「ピカチュウーっ!」

 

 ピカチュウがそう言って頭を下げるとピカチュウを呼ぶ声が響き、そちらに振り向くと帽子を被った少年が駆け寄ってきた。

 

『これが僕の相棒サトシさ』

 

 ピカチュウがその少年を紹介するとサトシ少年が頭を下げた。

 

 

 

「ピカチュウ達を助けて頂きありがとうございました!」

 

「いやいやR団の仕業となれば協力するのが当たり前だ」

 

『サーのR団嫌いは相変わらずだな』

 

 リックが勝手に出て来て呆れ声を出す。

 

『R団に何かあったの?』

 

『まあ、R団というよりも悪の組織が嫌いなだけだ。サー曰く──』

 

 リックが余計な話をしているが放っておくか。

 

 

 

「ところであいつらに捕まったポケモンはそれだけか?」

 

「あ、はい。これで全員です」

 

「過去に捕まったポケモンとかはいないか?」

 

「俺はともかく、他のトレーナーはわからないです」

 

「そうか。なら早めに潰すか」

 

「へっ?」

 

「悪の組織は早い内に潰さないと湧いてくるからな」

 

 経営難とかそういった事情にさせない限り奴らは規模を巨大化させていく。レッドさんは経営難を無自覚のうちに引き起こし、R団を解散させた。……もっともこの世界ではレッドさんはいないから俺が代わりに潰すしかない。

 

「でもR団のリーダーがどこにいるかわからないんですよ? 俺達に絡んでくるのはいつもあの三人だし」

 

「問題ない」

 

 そう言って俺はこの場を去り、イリアとリックを収納するとマンダーを使ってトキワジムへと向かう。その理由は奴がいるからだ。

 

 

 

 トキワジムにつきマンダーを収納する代わりにイリアを出す。

 

「イリア、れいとうパンチだ!」

 

『よっしゃぁっ! ぶち壊すわよ!』

 

 イリアがはしゃぎ、トキワジムの壁という名前のドアを開くとそこにいたのは奴──サカキではない。それどころかポケモンであり人ですらなかった。

 

「何者だ?」

 

 そのポケモン──ミュウツーが尋ねるとイリアが勝手に口を開く。

 

『あんたがR団のボスね! さあ、さっさとポケモンを出し──痛い痛いっ! 止めてご主人! それは痛いから!』

 

 涙目で懇願してきたイリアを離すとイリアが『汚されちゃったわ……』などとほざく。だいぶブリタに似てきたな……

 

 そんなやり取りを見ていたミュウツーが呆れた視線を送ってきた。

 

「サカキと会いに来た。お前には興味はない」

 

 

 

 サカキはR団のリーダーであり、そしてここのジムリーダーでもある。サカキがいなくなってR団を解散させても復活してしまうので意味がないが、解散以外の方法を取らせれば逆に営利団体に生まれ変わり、社会に貢献出来るはずだ。

 

 その為に会いに来たのにミュウツーしかいないとはトキワジムの警備はザルにも程がある。こいつ一匹でどうにかなるほど甘くない。

 

 

 

「お前には興味がない? ならば私は何の為に生まれてきた!?」

 

「知らん。ついでに言っておくが人間やポケモンは何の為に生まれてきたなんて疑問に思う奴はほとんどいない。考えるだけ哲学の時間になるだけだ」

 

 

 

 哲学の時間=考え過ぎによる時間の無駄という意味だ。俺は哲学者というのはあまり好きになれない。何故なら考えるだけ無駄で正しいと言えないことも多数ある。

 

 例えば数学にも当てはまるがツボツボとガブリアスが一緒にレースをしたとすると圧倒的にガブリアスが勝つ。しかしツボツボがハンデを貰って100m先の地点からスタートすると、数学者はガブリアスのスピードとゴールの場所次第では追い抜けるというが哲学者は常にツボツボが前にいるためゴールの場所に関わらず絶対に追い付けないという。

 

 数学者の意見は正しく、ゴールの場所及びツボツボ、ガブリアスのスピード次第では抜いてしまうのが正しい。

 

 つまり哲学ってのは無駄になってしまう可能性が高い学問であり、哲学の時間=考え過ぎによる時間の無駄と言えてしまう。

 

 

 

「ならば私がすべきことは何なのだ?」

 

「何か目標を一つ作れ。そしてその目標を超えるようにしろ。もっとも世界征服だったりする場合は止めるがな」

 

「……貴様、いやお前の名は?」

 

「俺の名前はシック。全ポケモントレーナーの頂点に立つ男だ」

 

 強ち間違いではない。何故なら俺はWPA世界チャンプでありポケモントレーナーとしての頂点に立っていることに違いない。

 

「なるほどそのカイリューの強さも頷けるな」

 

『ほら私が弱い訳じゃないのよ!』

 

「調子に乗るなイリア。調子に乗ってリックどころかゴルメに負けたのを忘れたのか?」

 

『うっ、黒歴史を掘り返さないでよ……』

 

「お前程のカイリューでも勝てない奴がいるのか?」

 

『あれは、ちょっと油断しただけだから! その気になればボコボコに出来るから!』

 

「そのちょっとでボコボコにされたんだから反省しろ」

 

『ご主人が厳しい……』

 

「それにイリア、お前がどう立ち回っても勝てない相手はいるだろう。マンダーとかブリタとかあと世界最強の三匹(ギラギラ、ジャック、ドラママ)とか」

 

 マンダーとブリタには避けられるし、あの三匹に至っては遊ばれていてサンドバッグにしかならない。

 

『ご主人は私のこと嫌いなの? いい加減にしないと泣くわよ!』

 

 涙目で迫るイリアに流石に手を上げて降参する。

 

「あー、もう泣くな。その代わりこいつとポケモンバトルで汚名返上してみせろ」

 

「なっ、勝手なことを抜かす──」

 

『ご主人太っ腹!』

 

 機嫌を直したイリアが顎をしゃくり、左手を前に伸ばして指を真っ直ぐに伸ばして掌を上に向け、4本の指を2回連続で起こす。それを見たミュウツーが青筋を立ててれいとうビームを放つ。……それにしてもこれを教えたのは俺とはいえ、挑発に乗る奴が多すぎないか? 

 

『やったわ! これで大義名分が得られる!』

 

 れいとうビームを避けたイリアが実に嬉しそうに笑みを浮かべミュウツーに接近する。

 

「なっ……速──」

 

『おらぁぁぁっ!』

 

 イリアのれいとうパンチによってミュウツーが凍てつき、戦闘が出来なくなる。

 

「さてどこにいるか教えて貰おうか」

 

 ミュウツーの身体──正確にはミュウツーに張り付いている氷に触れ読心する。これはナツメさんに教わった読心術で、ナツメさんなどのエスパーや俺の故郷の人間なら他人に身体を触れることで読心することが出来る訳だ。これを使ってサカキの居場所を探すとある景色が見える。

 

 

 

「なるほどな。ご苦労!」

 

 ほのおのパンチの要領で手に熱気を纏わせ、氷を溶かしていく。

 

「くっ……化け物どもめ……」

 

 ミュウツーがイリアのパンチを受けたダメージに悶絶としながらそう呟く。

 

「それでお前はどうする? お前のような脳筋ポケモンがここにいたところで利用されるだけだろう? ポケモンのクローンでも造るのか?」

 

「……何故それがわかる!?」

 

「未来予知だ。知り合いのエスパー程ではないにせよ、このくらいなら出来る」

 

 だがその未来予知は俺が関わらなければ起こった世界*1だ。俺が関わってしまった以上この未来予知は外れ、別のものになった。

 

「貴様、本当に人間か?」

 

「人間であるがご先祖様はどうかは知らん」

 

 俺の先祖にあたる、かつて島キングだった昼の王は俺と同じくポケモンの技を使えたらしい。ということはおそらく昼の王の先祖は全ての技を使えるポケモン、ミュウである可能性も否定出来ない。

 

 

 

『ドラママってこのミュウツーの色違いを倒したんでしょ? 私のワンパンでやられる雑魚の色違いが私よりも強いって想像出来ないわ』

 

「くっ……そこまで私の同類は強いのか?」

 

『強いよ。というか伝説ポケモンと呼ばれる癖にあんたが弱すぎなだけ』

 

「伝説?」

 

「伝説ポケモンとは生息地不明かつタマゴ未発見かつ、化石から復元されていない超レアポケモンのことだ。総じてそのポケモン達は強い。一部の大会では強すぎるから伝説ポケモンが出禁になっている程だ」

 

 まあ流石に世界レベルになってくると出禁される伝説ポケモンでも勝てない奴らばかりなのでその条件はない。

 

「それで、私に期待していたという訳か」

 

『期待外れも良いところだけどね。本当に』

 

「……ならば、私はお前についていくとしよう。それで何かやるべきことがわかるかもしれないしな」

 

『よっ、流石ご主人。伝説キラー!』

 

 

 

 伝説キラーと言われても俺は伝説ポケモンなんて使う気にはなれない。

 

 あれは将棋でいうなら龍王や龍馬のようなもので素人はそれらを好むが、中級者だと金や銀、玄人だと歩を好むようになる。

 

 何故なら龍王や龍馬は動く範囲が余りにも広く逆に行動が読めてしまい駆け引きにならないからだ。

 

 ちなみに俺はポケモンバトルにおいては中級者の傾向にあり、龍王や龍馬の立場にあるギラギラやジャック、ドラママを使わず金銀の立場にあるブリタやマンダーを好んで使う。

 

 歩も使うことがあるが相手の実力を測る為に使うことが多くガチの試合では滅多に使わない。イリアがこれを聞いたらクーデターを起こしそうなものだがギラギラに制圧される以上何も言えない。

 

 

 

「まあリックの運動くらいにはなるだろうな」

 

 リックがそれを聞いてリックが収納されているボールが揺れる。全く、運動不足も程々にしないと脂肪で動けなくなって死亡するぞ。

 

「……下らんギャグだ」

 

 ミュウツーがボソッと呟き、俺はそれを見逃さなかった。

 

「ブリタ、この堅物にお前のギャグを教えてやれ」

 

『了解でさあ。マネージャーさん』

 

「は? おい何を──」

 

『さあ行こうか。オイラのギャグの素晴らしさがわかるまで語ろうか』

 

 その後ミュウツーがブリタにギャグの素晴らしさを教えられ、堅物だったミュウツーが帽子を反対方向にかぶりサングラスをかけラジカセ担いでラップを刻むようなチャラ男になってしまったのは余談だ。

*1
ミュウツーの逆襲




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第35話 英雄の卵との触れ合い

作者のオススメコーナー

今回は作者が作ったチョッキ搭載フルアタキョダイフシギバナをオススメします。え?チョッキ搭載とフルアタは同じ意味だから同時にいらないって?細かいことはいいんだよ!

技構成
ハードプランド
ギガドレイン
ヘドロばくだん
じならし

性格ひかえめ(準速60族超、ようりょくそ効果発動で最速145族と同速調整)
H124
A0
B28
C252
D4
S100

チョッキ枠が埋まらなかったらこいつを入れてみた。もちろんひでり等でサポートも必要になるが結構硬く、キョダイマックス出来ればキッスも怖くない。


「ヘイ、朝だぜ。浅い深い問わず、目を開けないといびきでいびって、イリアには贔屓しちまうぜコノヤローバカヤロー」

 

 もはや誰だこいつと言わんばかりに豹変したミュウツーが俺を叩き起こす。

 

「うるせえ」

 

 余りのうるささにミュウツー(目覚まし時計)をぶん殴り、身体を起こす。

 

「……はっ!? 私は一体何を?」

 

「ブリタに洗脳され過ぎてラッパーになっていたんだ。どうやらその様子だと元に戻ったようだな」

 

「そうだぜロックなシック。おデブなサザンドラはリック!」

 

『どうやらまだ洗脳されているようですが?』

 

 リックがボールから飛び出し、ミュウツーにその牙を向ける。

 

「ほっとけ。余りにもうるさかったら殴って直す」

 

「それは壊れたTVの直し方、イーブイはポケモンセンターで治療、この俺もポケモンセンターで治してクレメンス!」

 

『本当にブリタに似てしまって……可哀想に』

 

『ホントホント』

 

 リックとイリアが頷くとミュウツーはまだラップを刻んでいた。

 

 

 

 それからカントー地方を散策していると、R団の被害者の少年に出会った。

 

「おや、君は……」

 

「あの時の!?」

 

「サトシ知り合い?」

 

 その少年は前回会った時とは違い俺よりも年下になっているカスミさんとタケシさんと同行していた。

 

「この前ピカチュウが連れ去られた時に助けてくれた人なんだ。この前はありがとうございます」

 

「構わない。それよりもまだR団はいるのか?」

 

「ええ、ほぼ毎日あの三人組に遭遇しまして……」

 

「なるほどな。俺の名前はシック。ちょっとポケモンバトルに自信のあるトレーナーだ」

 

『シックさん、嘘は止めましょう。自信があるどころか誇っていいくらいの実績の持ち主でしょう貴方は』

 

 マンダーの意見は尤もだが、この世界での実績はなきに等しい。だからこうして表現するしかない。

 

 

 

「私が誰だか知っているか? ミュウの睫毛の三つ毛から生まれたミュウツー。こう見えてマジ伝説ポケモン略してマジモン。マジレジギガスはマジワロスw」

 

「下手くそ過ぎるわ!」

 

 あまりにも下手くそ過ぎるのでどついて止めるとミュウツーが黙った。

 

「俺、マサラタウンのサトシ!」

 

「ハナダシティのカスミよ」

 

 向こうの世界のカスミさんは彼氏と付き合っては別れての連続を繰り返す恋愛クイーンだったがこっちじゃ男の扱い方を知らないお転婆のようだ。

 

「ニビジムのタケシです。よろしくお願いします」

 

 年長者たるタケシが一番まともだ。まあ向こうのタケシさんも実直な性格で知られているからその影響もあるんだろうな。

 

 そんな中、考え事をしていると腹の音を鳴らしたサトシが顔を赤く染めた。

 

「ははは……タケシ、飯にしないか?」

 

「そうだな。どうです? もしよければシックさんもご一緒にどうですか?」

 

「手伝おうか。俺はプロではないにせよ自炊していたから手伝えるぞ」

 

「それではシチューでも作りましょうか」

 

 タケシの言葉に従い、俺はシチュー作りを手伝った。

 

 

 

 

 

「ご馳走さまでした」

 

 サトシ、カスミがそう礼を言って皿を重ねる。

 

「それにしてもシックさん、自炊していただけあって流石に美味しかったですよ」

 

「いやいやタケシこそ、その年齢でそれだけ料理が美味いなんて驚きだ。プロにでもなるつもりか?」

 

「弟や妹達を育てるのに必要な技術ですからね。料理をやっていくうちに上手くなりました。ところでデザートのポフィンというのは?」

 

「俺がバイトしていた時に作っていた品物だ。きのみを使うんだが人だけじゃなく人間も食べられるぞ」

 

「なるほど。どうりで料理が美味い訳です」

 

 タケシと料理雑談を続けながら皿を洗う。ちなみにサトシとカスミの二人が手伝わないのは皿を割るからだそうだ。ミュウツーが手伝わないのも同じ理由だ。

 

 その数分後、サトシがモンスターボール片手に俺に話しかけてくる。

 

「シックさん、俺とポケモンバトルしませんか?」

 

「いいぞ」

 

 特に断る理由もないし、それを快諾する。

 

「やった! それじゃ早速やりましょうか!」

 

 そしてその直後、ミュウツーに網がかかる。

 

 

 

「だーっはっはっはっ!」

 

 ミュウツーを捕らえた網の先にいたのは先日のR団の団員達だった。先日と違うところは気球ではなく巨大ロボットに乗っている点だろうか。

 

 そのミュウツーごと網をロボットが回収すると奴らが窓ごしに姿を表す。

 

 

 

「またお前達か」

 

「またお前達かと聞かれたら」

 

「答えてあげ──うわっ、こら攻撃するな!」

 

 もうこいつらの口上なんぞどうでもいい。さっさと攻撃するに限る。

 

「だが残念だニャー! その程度の攻撃なら衝撃はあっても傷は負わないように設計されているニャ!」

 

『いやその程度の攻撃って、シックさんの攻撃はギラギラさんを除いた私達の攻撃よりも強いんですよ? それを僅か一日で克服するようなロボットを用意するなんてこの世界のR団はインフレでも起きているんですか?』

 

 確かにマンダーの言うとおりだ。いくら世界征服を目指しているとはいえそんなものを作っているのならとっくに世界征服は終わっているはずだ。

 

 

 

「そんなことよりもこのポケモンは貰っていくわよ」

 

「何せサカキ様の元から逃げ出したポケモンなんだからな。元の場所に連れていくのは当然のことだ!」

 

 やはりサカキがR団のボスか。これで奴の居場所を探るのもありだ。

 

「おのれぃっ!」

 

 ミュウツーが素に戻り、内側からきあいだまを放つがロボットは傷を負うどころか衝撃すらも受けてなかった。どれだけ貧弱なんだ……

 

 

 

「ピカチュウ、10万ボルトだ!」

 

『喰らえーっ!』

 

 サトシのピカチュウが10万ボルトを放つが全くと言って良いほどダメージは与えられていない。前言撤回しよう。ミュウツーが弱すぎるのではない。

 

「だーっはっはっ! ジャリボーイのピカチュウ対策に何もしてないと思ってか!」

 

「それならヒトデマン! ハイドロポンプよ!」

 

 カスミの出したヒトデマンのハイドロポンプがロボットを襲うが全くの無傷だった。

 

「雷は当然のこと、防水、防火、防寒、防エスパー、ありとあらゆる耐性があるんだニャー!」

 

「この巨大ロボットに敵う奴なんていやしないのよ!」

 

 小賢しい真似をしやがる。とはいえ攻略方法が無い訳ではない。あの巨大ロボットは確かに厄介だが、傷ほど衝撃は緩和されない。ということは俺以上の攻撃なら壊すことが可能な訳だ。

 

「ギラギラ、頼めるか?」

 

 ギラギラが無言で飛び出し頷く。そして次の瞬間、レーザーがロボットの片足を削り取っていった。

 

 

 

「うわぁぁぁっ!?」

 

 バランスを崩し悲鳴をあげていく三人組。それもそうだろう。初見でギラギラのパワーを予測出来る奴などこの世に存在しない。

 

「ニャース、なんとかしなさい!」

 

「そんなことを言われても無理ニャ!」

 

 騒然とする三人にギラギラは不機嫌そうな顔を見せ、もう片足を削る。

 

 

 

 その隙を逃す訳もなく、俺は飛び出しロボットに向かっていく。

 

「いつか決めるぜ稲妻シュート!」

 

 そう言いながら両足をもがれたロボットを蹴り、ミュウツーを脱走させて空の彼方へ飛ばしていく。

 

「ポケモンに負けるのはまだわかるけど!」

 

「人間に負けるだなんて!」

 

「こんなのってやな感じーっ!」

 

 奴らが見えなくなったところでマンダーが一言呟く。

 

『貴方方はむしろギラギラさんを出させただけでも名誉なことですよ。シックさんに本気を出させたということですからね』

 

 ギラギラは俺のエース、それも余程のことが出さない切り札だ。その切り札を出したということがどれだけ名誉なことか。マンダーがそう呟くのは当たり前のことだった。

 

 そして三人を見るとサトシか羨望の目で見ており、そして残り二人はドン引きしていた。

 

「もう違う世界の住民よね……」

 

「というかあれだけの蹴りで骨とか折れないのか?」

 

 二人がこそこそと話しているが全部聞こえているからな。確かに違う世界の住民ではあるが。

 

「さて、やろうかサトシ」

 

「はいっ!」

 

 

 

 ルールはシンプルに二対二のシングルバトル。

 

「よしイリア、お前の出番だ」

 

「いきなりカイリュー!?」

 

 イリアを一体目に出すと全員が驚き騒然とする。

 

「いや、あのバンギラスに比べれば大したことじゃないのか?」

 

「確かに言えているけど……」

 

 二人が話し合っているがサトシにはそんなことはお構い無しだ。

 

「ピカチュウ、君に決めた!」

 

 サトシが出したポケモンはボールから常に出ているピカチュウであり、その信頼の高さは前回拐われたことを抜きにしても一目瞭然だ。

 

「さあバトル開始だ」

 

 

 

「ピカチュウ、10万ボルト!」

 

 ピカチュウに10万ボルトの指示を出し、それを喰らうイリア。だがあの程度の攻撃でイリアが動じることもなくむしろ挑発すらしてみせた。

 

『ねえ、ピカチュウ。あんたの10万ボルトって電気マッサージなの? おかげで肩こりが消えたわ』

 

『あ゛ぁっ?』

 

「イリア避けろ」

 

 ピカチュウが10万ボルトを放つ前に指示を出すとイリアが避け、更に続ける。

 

『こんな予測可能な10万ボルト、うちのパーティの中で鈍いリックでも避けられるわよ』

 

「イリア、ピカチュウに10万ボルトだ」

 

『10万ボルトってのはね、こうやるのよ!』

 

 ピカチュウがイリアの10万ボルトを喰らい、倒れこむ。

 

「そ、そんな……あのピカチュウが一撃でやられた……!」

 

「あのカイリュー、相当強いぞ」

 

 強いも何も──ってそうだった。俺が戦ってきた相手は地方に帰ればチャンピオンになれる、なった奴らばかりだ。そいつらを基準にしてみればイリアは平均レベルでしないが、サトシくらいの年齢のトレーナーからしてみればラスボスみたいなものだ。

 

『ピカチュウ。貴方は聞いていないでしょうけど、私ごときの10万ボルトで気絶しているようじゃご主人達に勝てないわよ』

 

 イリアがそう嘶き、こっちに振り向く。

 

『という訳でご主人、私手加減苦手だから次のポケモンが出て来た時にオーバーキルしかねないからボールに戻っていい?』

 

「良いだろう」

 

『こんなつまらない戦いは初めてよ』

 

 イリアが戦闘に関して失望するのは初めてだ。しかしそうなるとあいつしか──

 

『マスター、このギラギラがやろう』

 

「……いいのか?」

 

 俺はマンダーに任せる気でギラギラに任せる気はなかった。何故ならマンダーは詰め将棋のように追い詰めていく頭脳派であり、サトシのようなまだ若い少年に頭脳戦の大切さを学ばせるには絶好の相手だからだ。

 

 ギラギラは基礎能力か非常に高く、基礎を磨くという意味では優秀だ。しかしイリアのように力任せにごり押しになってしまう可能性もなくはない。その上、にじマメを要求してくるから尚更だ。

 

『あのサトシという少年は英雄の器、それも大器晩成の大器だ。今はイリアにも手も足も出ないがいずれこのギラギラと並び立てる可能性がある。それを育むのもこのギラギラの役目である』

 

「わかった。よし、ギラギラいってこい」

 

「それならこっちはリザードンだ!」

 

 ギラギラが前に出てくるとサトシはリザードンを出してきた。

 

 

 

 ……本当に英雄の器なのか? 俺が不思議に思うのは無理もない。バンギラスであるギラギラにリザードンの攻撃はほとんど通らないがギラギラはリザードンに岩タイプの技を使えば一撃で瀕死になってしまう。

 

 つまりリザードンにとってバンギラスは相性が絶望的なまでに悪い存在だ。それにも関わらず出した理由が解せない。

 

「ギラギラ、お前に任せる」

 

『承知』

 

 再びサイボーグと化したギラギラがサトシのリザードンを無機質な目付きで見るとリザードンが威嚇した。

 

『何ガンつけてやがる?』

 

『……計算完了。これより任務に遂行する』

 

 ギラギラが一瞬でリザードンに詰め寄り、かなり弱めのれいとうパンチを放つ。

 

『ぐぁっ!?』

 

 手加減しているとはいえリザードンにとっては致命傷。動きが鈍くなってしまう。

 

『クソっ、ふざけやがって!』

 

 リザードンが勝手にかえんほうしゃを放つが、ギラギラはそれを見越してフィールドの土を砕き砂の壁を作り上げていた。

 

 

 

「リザードン、地面に向けてかえんほうしゃだ!」

 

『やだ!』

 

 リザードンが命令を無視し、ギラギラに向けてかえんほうしゃを放つ。これはサトシの育て方が相当悪いな。初心者用のポケモンの最終進化系をここまで言うことを聞かせられないのはトレーナーが無能な証拠であり、リザードンも相性の悪さを理解していないということはサトシ自身も相性を考慮していない傾向がある。

 

『わからないのか? 先ほどこの砂の壁で攻撃を防がれたことが』

 

 砂の壁によってかえんほうしゃは防がれ、突破出来ないかに思われた。

 

『何度も同じミスをすると思うかよ』

 

 リザードンが放ったかえんほうしゃは砂の壁を突き破り、炎がギラギラを包む。

 

『確かに攻撃に成功するという意味ではミスはしていない。しかしダメージを与える手段としてはミスだ』

 

 炎の中からギラギラが飛び出し、なみのりを放つ。

 

 

 

「リザードン、空を飛んでからちきゅうなげだ!」

 

 サトシの指示と共にリザードンがなみのりを避けギラギラに迫る。

 

 なるほどな、ギラギラのダメージソースはそれか。だがリザードンのスピードでは避けられる。何せ俺ですら見失う程のスピードを出す相手に戦っているのだから余裕で目に追えるスピードを出すリザードンではノロマに見えるだろうな。

 

 しかしギラギラは敢えて動かずリザードンに捕まった。

 

『もうてめえは終わりだ! 俺の切り札で倒れない奴はいねえ!』

 

 それは勘違いにも程がある。可哀想な奴だ。

 

 等と思っているとリザードンが宙を舞い、勢いに任せギラギラを投げる。そしてその瞬間、ギラギラの口からかえんほうしゃが放たれちきゅうなげは勢いがつかずそれどころかリザードンのところまで戻って来た。

 

『何だとっ!?』

 

『惜しかったな。雑魚相手ならそれは通用するが世界戦平均以上の実力になるとこの程度であれば避けられる』

 

 ギラギラのかみなりパンチがリザードンに炸裂し、リザードンが墜落する。

 

「リザードン!」

 

『回復したとしてもしばらくの間そのリザードンは痺れたままだ。それまでの間そのリザードンのリハビリに付き合うことだ』

 

 ギラギラの言葉を翻訳し、そう告げる。

 

「ミュウツー、サトシのリザードンが強くなるまで稽古してやれ」

 

「なっ──」

 

「断るとは言わせない。俺に着いていったところで為すべきことは限られている。それだったら──」

 

 ──英雄の側にいた方が余程有意義だ。

 

「サトシがヒーロー? もしなれなかったらオトシマエつけるぜ」

 

「それだけの価値はある。それに俺はお前とは違って帰るべき場所がある。だから一緒に着いていくことは出来ない」

 

 俺はこの世界の住民ではなく、ミュウツーを連れていく訳にはいかない。ミュウツーはこの世界で生きるべきなんだ

 

「それもそうだ。アイスソーダ!」

 

「と言うわけだ。サトシ。ミュウツーのことを任せたぞ」

 

「え?」

 

「納得がいかないだろうがサトシ。お前には義務がある。その義務の為にミュウツーを側に置いておく必要があるんだ」

 

「シックさん、義務ってなんですか?」

 

「英雄になる為の義務だ」

 

 伝説ポケモンの所有者=英雄ではない。それだったらレックウザマニアのあいつや自称伝説使いのタクトは英雄になっている。

 

 しかしその逆、英雄は伝説ポケモンの所有者であることは間違いない。何故なら英雄になるには巨大な事件等を解決する必要があり、それには伝説ポケモンを使わなければ解決出来ないからだ。

 

 つまり伝説ポケモンは謎解きの鍵であり、伝説使いはその鍵を多く持っているだけの存在でしかなく、英雄は事件を解決する為に持っているようなものだ。

 

「英雄になる為の義務ってどういうことなんですか?」

 

「サトシ。これから先お前は様々な困難が待ち受け、ミュウツーと同類のポケモンと関わりを持つことでその困難を解決していくことになる。ミュウツーと関わることでそいつらがどんな奴か知っておけば苦労しない。言ってみれば俺のおせっかいという奴だ」

 

「おせっかい……でもそれならシックさんだって可能性はあるんじゃ」

 

「俺は生憎だがもう伝説ポケモンとの関わりに慣れた。それだけだ」

 

 未来予知でサトシがミュウツーと関わる姿を見ている。ギラギラの言葉がなければサトシを英雄の器として見れなかったがミュウツーと関わりを持つことで何か変わるかもしれない。

 

 それに本当にサトシが英雄の器ならセレビィ探しでサトシと遭遇することになるだろう。その時までにサトシの成長が見られれば上等だ。

 

 

 

 こうして異世界で出会ったサトシとのファーストバトルは圧勝に終わった。




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