ジャンヌ姉妹のカルデア生活 (ねぎぎ)
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ようこそカルデアへ
オルタ視点。
ジャンヌとオルタは相部屋のイメージがあったので、なんとか理由をつけて相部屋になってもらいました。
リリィは未登場。
「サーヴァント、アヴェンジャー。召喚に応じ参上しました。……どうしました。その顔は。さ、契約書です」
ついに私はマスターのサーヴァントとしてカルデアに召喚された。驚いているマスターの顔を眺めながら、私は契約書を差し出す。
「ようこそ、ジャンヌ・オルタ。カルデアに来てくれて嬉しいよ。契約書? オルタが不利な条件になってるけどいいの?」
「これは私なりのケジメのつもりよ。それに、アンタはこれを悪用したりしないでしょ? なら問題ないわ」
こうして私はマスターと不平等な契約を自ら結んだ。
契約後、マスターがカルデアを案内すると言い、管制室や工房、食堂、レクリエーションルームなど様々な施設を紹介してくれた。時折マスターがマシュと通信をしていたので、少し意地悪をした。
「私を案内している最中に、マシュとお話なんていい度胸ね」
「ああっ、ごめんね。もう用件は終わったから」
マスターは慌てていたが、通信はもう終わりとのことなので良しとする。
最後にサーヴァントの居住スペースへと向かった。
「ここがジャンヌ・オルタの部屋だよ」
この部屋が私のカルデアでの居場所になるのかと、これからの生活に期待を膨らませながらドアを開けた。
「ようこそ、オルタ。これからよろしくお願いしますね」
ジャンヌ・ダルクが嬉しそうな笑みで私を迎えた。私はマスターを問い詰めた。
「どうして、聖女様が私の部屋にいるのよ? 返答によっては燃やすわよ!」
「ごめん、部屋の数よりサーヴァントの方が多くて相部屋をお願いしてるんだ」
「部屋がないにしても、よりにもよってなんで私と聖女様が同じ部屋なのよ?」
「それは、私からお願いしたのです。あなたが召喚されて、マシュさんがあなたを迎えてくれるサーヴァントを探していたので、ぜひ私の部屋にと」
カルデア案内中に、マシュと通信をしていたのはこういうことだったのか。大体の事情は掴めた。しかし、私は全力で拒否する。
「嫌よ!」
「そこをなんとか」
マスターが困り顔で頼んでくる。しかし、私も引き下がることが出来ない。
「なら、聖女様を追い出して私だけの部屋にしてちょうだい」
「マスター、私はオルタと同じ部屋がいいです」
「ジャンヌもこう言ってるし、マスターとしては2人に仲良くなってもらいたいんだけど」
この2人は何を言っているのだろうか? オルレアンでのことを忘れてしまったのだろうか? そんなはずはない。再び私は拒否する。
「イ・ヤ・よ!」
「ジャンヌ・オルタはマスターのいかなる指示にも従います」
マスターがぼそりと呟いた。それは、私が作った契約書の一文だった。オルレアンや贋作騒ぎで迷惑をかけた私。それでも私を必要としてくれるマスターに対する私なりの覚悟だった。だったのだが、早速後悔した。
「お願い、オルタ」
契約書を盾にして申し訳なさそうなマスター。早速利用されてしまったが、自分で決めたルールだ。私は覚悟を決めた。
「分かりました。聖女様との相部屋、我慢してあげましょう」
「ありがとう、オルタ!」
「これからよろしくお願いしますね、オルタ」
「勘違いしないでください。廊下で寝るよりマシだと思っただけです。聖女様と仲良くする気なんてこれっぽっちもないですからね」
こうして私と聖女様のカルデアでの生活が始まったのだ。
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想定外
ジャンヌとオルタは添い寝しているイメージがあったので、カルデアには想定外の状態になってもらいました。
リリィは早く登場させたい(願望)
カルデアにジャンヌ・オルタが召喚されたと聞いて、ぜひ自分と同じ部屋にして欲しいと申し出た。なぜなら、私には彼女を導く義務があるからだ。
ジャンヌ・オルタはジル・ド・レェによって作られた、本来存在するはずのない私の別側面である。彼女とはオルレアンで闘い、結局分かり合うことができないまま、別れてしまっていた。そんな彼女も贋作英霊事件でマスターと分かり合うことができたようだ。私も彼女と交流を深め、お互いを理解していきたいと思う。
しかし、ただ仲良くなるだけでは駄目だ。先輩サーヴァントの私が新米サーヴァントの彼女を導かなければ。それはさて置き、早急に話し合わなければならないことがあるのだが――
「オルタ……ちゃんと聞いていますか、オルタ?」
「だから、私はお前を無視するし、お前も私を無いものとして扱いなさいと言ってるじゃない? 聖女様」
オルタからの返事は冷たい。しかし、私は話を続ける。
「嫌です。それと私は聖女ではありません。ジャンヌと名前で呼んでください、オルタ」
まぁ、オルタもジャンヌなのですが、オルタはオルタです。
「うるさいわね、燃やすわよ!」
「ですから話を聞いてください、オルタ。私達には今解決しなければならない問題があるのです」
「もう、一体なんなのよ?」
「この部屋にはベッドが1台しかありません」
もともと1部屋に1台しかないので当然のことなのだ。カルデアに召喚される英霊がこんなに多くなるとは想定外だったのだろう。
それでも今までなんとかしてこれたのは、相部屋になるサーヴァントをジャック・ザ・リッパーとナーサリー・ライムの2人のように、マスターとマシュさんが相性の良いサーヴァント同士を上手く振り分けていたからだと思う。
「そんなの霊体化すればいいじゃない?」
「実体化と霊体化を繰り返せばマスターに負担がかかってしまいます」
「じゃあ、ベッドを私に譲りなさいよ!」
「本当はオルタに譲ってあげたいのですが、私もいつ闘いに赴くことになるか分からぬ身です。マスターのためにも万全の状態を保っておきたいのです」
マスターのためと聞いて、しばらく考えるオルタ。そして段々と顔を赤くしていく。
「……だったら、もうアンタと一緒に寝るしかないじゃない」
「ええ、私もオルタと同じ考えです」
「なんで嬉しそうなのよ」
「まぁいいじゃないですか。しばらくしたら消灯時間です。就寝の準備をしますよ、オルタ」
こうして私とオルタの共同生活1日目が終わりを迎えた。
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おやすみからおはようまで
またしてもリリィ未登場。
カルデアに召喚されて数日が経っていたが、慣れというのは怖いものであんなにも嫌だったベッドの共有、別の表現をするならば添い寝は嫌ではなくなっていた。むしろ、他のよく知らないサーヴァントと違って、気が楽だ。
それでも寝るときは極力離れているのだが、目が覚めるとなぜかいつもジャンヌの顔がすぐ側にある。というよりも抱きつかれている。
「起きなさい、聖女様。いつまで人を抱き枕にしてるのよ」
「……あぁ、オルタ。おはようございます」
「なんでいつも一緒に寝てるのに、私より起きるのが遅いのよ? あと、アンタどんだけ寝相悪いのよ」
「それは……その……」
顔を赤くして、口籠るジャンヌ。嫌な予感がする。
「オルタの寝顔が可愛いかったので、つい……」
どうやらジャンヌは私が眠った後に、特等席で私の寝顔を堪能していたらしい。
「汚らわしい、寄らないで下さい」
「ごめんなさい、オルタ。でも、私はやましいことはしていません」
「抱きついておいて、やましいことはしていないですって? アンタの言うやましいことって……」
ジャンヌが変なことを言うので、抱きつかれる以上のことを想像してしまった。私の顔も真っ赤に染まる。
「だから、変なことはしていませんって!」
「とんだ変態聖女様ね! マスターのために我慢してたけど、もう一緒に寝てあげないんだからっ」
私がそう言うと、ジャンヌが目に涙を浮かべながら語った。
「オルレアンで私達は分かり合うことができなかった。でも、今は私の隣に居てくれる。それが嬉しかったんです。しかし、私はオルタの気持ちを考えていませんでした……」
ちょっと何泣いているのよ。これじゃあ私が悪いみたいじゃない。
「分かったわよ、ここに居てあげるから泣くのをやめなさい。その代わり今度はアンタが寝顔を見せなさい。聖女様の間抜けな寝顔をたっぷり笑ってあげるわ」
これで辱めを受けさせることができると勝ち誇る私だったが、甘かった。
「分かりました。その……私が寝ている間はオルタの好きにしていいですから」
だから、どうしてそこで嬉しそうにするのよ。完全に調子が狂っているところに追撃が来る。
「オルタ……大好きです!」
ジャンヌが抱きつてくる。もう払い除けるのも面倒になっていた。
部屋のドアが開く――
「ノックはしたんだけど……私は何も見てないから、準備ができたら2人とも管制室に来てね」
そう言うとマスターはすぐにドアを閉め、去って行く。この後、管制室で私達は何とも言えぬ温かい目で見られたのは言うまでもない。
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クリスマスのアフターストーリー
当然リリィ視点。
これはクリスマスにトナカイさんと海に行ったあとのお話――
「トナカイさん、今度は夏に海へ連れて行ってくださいね。ジャックとナーサリーも一緒に」
「もちろんだよ、リリィ。あと、そろそろカルデアに着くから準備してね」
そう言うと、マスターはソリを降下させて行く。
カルデアに着くとマシュさんと本来の私が出迎えてくれた。挨拶が済むとマシュさんが指示を出す。
「早速ですが、先輩は医務室でバイタルのチェックを。ジャックさんとナーサリーさんはお部屋で休憩を取ってください。リリィさんはジャンヌさんのお部屋へ」
どうやら、マスターとジャック、ナーサリーとは今日はここでお別れのようだ。
「さぁ、行きましょうか。リリィ」
本来の私はそう言うと、手を差し出してくれた。私はその手を取り着いて行く。
……歩くにつれて頭がぼーっとして意識が薄れていく。
「あらあら、疲れてしまったのですね。今はゆっくり休んでください」
柔らかな感触に包まれている。寝心地がいいのでずっとこのままで居たいが、声がする。
「いつまで寝かせてるのよ? そろそろ起こしなさいよ」
「まあまあ、この子も頑張ったんですから、少しくらい寝ててもいいじゃないですか」
成長した私と本来の私の声だ。目を開ける。
「あっ、目が覚めましたか? リリィ」
「はい、本来の私。おはようございます」
「アンタ、いつまで聖女様に膝枕されてるのよ。仮にも私なら聖女様に甘えないの」
膝枕の感触が名残惜しいが、とりあえず体を起こす。
「本来の私、ここまで運んでくれたんですね。ありがとうございました。あと成長した私、カルデアに再召喚されていたんですね」
「部屋に戻って来たら、サンタの格好をした私のリリィが居るの。驚いたわ」
「まぁ、それはオルタの自業自得なんですけどね。覚えていないようでしたので説明はしました。それよりリリィも起きたことですし、本題に入りましょうか」
本題とはなんだろうと考える私。その様子を見ながら、本来の私は話を続けた。
「リリィ、あなたはもう立派な一騎の英霊です。自分のことは自分で決めなければなりません」
「そうですね、本来の私。実に論理的です」
「では早速決めてもらいましょう。貴女の部屋を……」
本来の私の話が終わる。私は相部屋の相手を決めなければならないらしい。本来の私と成長した私の部屋かジャックとナーサリーの部屋、どちらにするのかを。
そもそもカルデアはサーヴァントが大勢で暮らすことを想定されていなかったが、マスターの人柄のおかげで力を貸してくれる英霊が何人も出てきた。そこでマスターとマシュさんが部屋を上手く振り分けていたが、今回は本来の私が2人に頼んで私自身に選ぶ権利を与えてもらったらしい。
「もちろん、私達ジャンヌを選んでくれたら歓迎します。しかし、友達と過ごすことで得られるモノも多いと思います」
「私は歓迎しないわよ」
気配りができる本来の私と違って、成長した私のなんと意地悪なことか。私は答えを出す。
「決めました、この部屋にします。確かに友達と一緒に過ごすことも大切です。でも、私にはやらなければならないことがあるんです」
「それはなんですか?」
「成長した私の矯正です!」
「はぁー!?」
成長した私の嫌そうな顔を見ながら私は語る。
「本来の私は清楚しとやか可憐、正に私の理想像です。それに比べて成長した私は駄目です、全然駄目です。その投げやりな態度からは将来性が全く感じられません。私の未来の姿に相応しくないです。この部屋で私が成長した私を矯正することで本来の私に近づいてもらいます」
「アンタ、いい加減にしないと燃やすわよ!」
「まあまあ、どんな理由にせよ私達の妹が私達を選んでくれたんです。歓迎しましょうよ、オルタ」
「ふんっ、もう好きにしなさい。私は知りませんから」
「これからよろしくお願いしますね、リリィ」
こうして私、ジャンヌ・ダルク・オルタ・サンタ・リリィのカルデアでの生活が始まった。
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クリスマスのアフターストーリー2
ちなみに寝るときはTシャツ(BusterとArts)着ている設定。
ジャンヌは自分も妹達と同じBusterにしたいと思っている。
聖杯に私の復活を願ったジル・ド・レェ。しかし、その願いが叶わないと知ると、理想のジャンヌの誕生を願った。そうして産まれたのが、ジャンヌ・オルタだ。そのオルタが若返りの薬を飲むことでジャンヌ・ダルク・オルタ・リリィが誕生した。
元を辿れば私なので、こんなことを思ってしまうのはおかしなことかもしれませんが……リリィ、かわいいです。
「なにニヤニヤしてるのよ、気持ち悪いわね」
「リリィが素直で、優しくて、かわいいなと思っていました。あっ、もちろんオルタもやさぐれかわいいですよ」
「私が美少女なのは言うまでもないし、リリィも元が私なので当然かわいいに決まっています。美少女2人と一緒に過ごせることに感謝なさい。あと、やさぐれは余計です」
それを言えば、オルタは私を元にしているので私も美少女になってしまうのですが、それは言わないでおきましょう。
「もちろん感謝していますよ。生前の私は故郷も家族も置いて来てしまった。そんな私に妹が2人も増えて、妹達も人理を守る仲間としてカルデアで暮らしている。貴女達が一緒に居てくれるだけで私は幸せなんです」
「ふんっ、感謝してるならなんでもいいわ」
ドアが開く――
「ただいま戻りました。大人の私達」
朝から何処かへ出掛けていたリリィが帰って来ました。
「お帰りなさい、リリィ。何処へ行っていたのですか?」
「クリスマスは終わってしまいましたが、サンタとして大人の私達にもプレゼントを渡さなければと思い、準備をしてきました」
と言い、袋からプレゼントを取り出すリリィ。なんて良い子なんでしょう。
「まずは、成長した私にはノートとペンです。成長した私は文字の練習を頑張っているので……成長した私、何で顔真っ赤にして怒ってるんですか?」
「どうしてアンタがそれを知ってるのよ。それに、事もあろうにコイツの前で言わなくても……」
「私はあなただからわーかーるーんーでーすー。それに本来の私は、成長した私が文字の練習をしていることを知っていますよ」
確かに、私はオルタが文字の練習をしていることには気づいていました。
「私に隠しているようだったので、何も言わずに見守っていたのですが……オルタ?」
「とっ、とりあえず、このノートとペンは貰ってあげるわよ。あと、このことは他言無用よ」
とても恥ずかしかったらしく、あたふたするオルタ。そんなオルタもかわいいです。
「次は、本来の私です」
いよいよ私です。一体何をプレゼントしてもらえるのでしょうか。
「その……プレゼントは私です!」
予想外でした。きょとんとしている私にリリィは話を続けます。
「本来の私は無欲過ぎるので、何をプレゼントすれば喜んでもらえるか、私には分からなかったんです。そこで、サンタお師匠様に相談しました。お師匠様は私の存在こそが、本来の私にとって最高のプレゼントであると言ってくれました」
サンタ師匠、すなわち天草四郎時貞。その場しのぎのサンタだったはずですが、的確なアドバイスです。
「ありがとうございます、リリィ。貴女はとても素敵なプレゼントです」
私は嬉しさのあまり、リリィを抱きしめていました。
「喜んでもらえて嬉しいです。でも、自分がプレゼントというのは恋人達のすることだとジャックとナーサリーに聞きました。ですので……」
その夜――
「では本来の私、失礼します」
リリィが優しく私の頰にキスをしてくれました。
「ではリリィ、お返しです」
私もリリィの頰にキスをしました。そうです、おやすみのキスをプレゼントしてもらいました。
「アンタ達、私も隣で寝てるんだから、イチャついてるんじゃないわよ」
「ついでに寂しそうな、成長した私にもキスしてあげましょう」
「えっ」
不意を突かれたオルタ。微笑ましい光景です。
「さぁ、成長した私。キスしてあげたので私にもキスしてください」
「イ・ヤ・よ」
「あのオルタ、でしたら私に……」
「アンタはもっと嫌に決まってるでしょう! それだったらリリィのほうがまだマシよ」
そう言うと、オルタはリリィの頬にキスをしました。
「さぁ、もう寝るわよ」
こうして、またカルデアでの1日が終わりました。きっといつかはオルタとも……
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魔力供給
ゲストにイリヤとクロ。
「魔力供給の時間よ、イリヤ」
「うぅ、本当にカルデアから賄われている魔力だけじゃ足りないの?」
「それとこれとは別腹よ。まぁ、イリヤが嫌ならマスターから直接……」
「それは絶対駄目ぇー。分かったわよ、早く済ませてよね」
「いただきまーす」
大変です、私より小さな女の子達がキスしています。私も大人の私達とおやすみのキスをしますが、それは頰です。リリィの私には刺激が強過ぎて声を出すこともできないです。
「ご馳走さま。ところであなた、誰?」
「えっ、誰かいるの?」
私の存在に気付いていたようです。気付いているのにあんな濃厚なキスをするなんて。とりあえず、自己紹介をします。
「私はジャンヌ・ダルク・オルタ・サンタ・リリィです。ジャックとナーサリーと遊ぶ約束をしていたんですが、部屋を間違えてしまったみたいです。お邪魔しました」
「ちょっと待ってください。サンタさん、誤解です。私の話を聞いてください」
流れで退出しようとしたら呼び止められてしまいました。
「私はイリヤスフィール・フォン・アインツベルン。イリヤって呼んでください」
「私はクロエ・フォン・アインツベルン。クロでいいわ」
2人が自己紹介をしてくれました。同じ顔に、同じ名前。きっと2人は姉妹なんでしょう。
「イリヤさんに、クロさんですね。それで誤解とは?」
「今、私達がしていたことは必要なことなんです! 決して変なことではないんです」
あまりにも堂々とした姉妹愛。びっくりです。
「ちょっとイリヤ。サンタさん、余計に誤解してるわよ。私から説明してあげるわ」
――2人の関係を説明してもらいました。
「なるほど。クロさんにとっては、イリヤさんからの魔力供給は必要不可欠なんですね」
「誤解が解けてよかったです」
「いえいえ、元々部屋を間違えた私が悪いんです。それでは、今度こそお邪魔しました」
部屋を後にします。誤解はありましたが、2人と仲良くなれて良かったです。
――夜になりました。私もそろそろ寝なくては。ただ、今ふと疑問に思ったことがあり、それが段々と疑問から不安になっていくのでした。
「どうしました、リリィ?」
「実は今日、イリヤさんとクロさんに会って……」
本来の私に今日見たことを話しました。
「それで部屋を後にしたんですが、大人の私達は魔力供給しなくていいんですか? 本来の私から魔力を貰わないと、成長した私は消えちゃうんじゃないですか?」
イリヤさんとクロさん。本来の私と成長した私。同じ関係性ではないですが、不安になってしまったのです。
「オルタから魔力供給が必要とは聞いていませんが……」
「きっと本来の私に借りを作りたくなくて、無理をしているんです」
「確かにあり得ることですね。リリィ、少しいいですか」
先に寝ている成長した私はそのままにして、私と本来の私は行動に移りました。
「リリィ、その恥ずかしいので少し外で待っていてくれますか?」
「はい。素直になれない成長した私を助けてください」
――外で待っていると、成長した私の悲鳴が聞こえてきました。部屋に入ります。
「この変態聖女! 寝込みを襲うなんて許されると思っているの?」
「オルタ、これには事情が……」
本来の私が怒られて泣きそうになっています。早く誤解を解かなければ。
「違うんです、成長した私。成長した私が消えないように、私からお願いしたんです」
私は事情を説明します。
「ふーん。それで私が消えると思ったのね。ところでリリィ、アンタは魔力供給必要なの?」
「私はカルデアから賄われている魔力で充分です。あっ」
そうです。成長した私よりもあり得ない存在である私が魔力供給を必要としていないのです。成長した私も必要ないのでしょう。
「今回のことは許してあげるわ。それと……」
「オルタ、最後が聞き取れなかったんですが」
「何も言ってません。さぁ、寝るわよ」
こうして、またカルデアでの1日が終わりました。成長した私は、ありがとうと言っていた気がしますが、きっと私の聞き間違いでしょう。
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報復の時は来た!
シェイクスピアが百合おじさんになってしまった。
思い返して見ると、寝込みをジャンヌに襲われ続けている。
ジャンヌは私とリリィを妹として見ている。そして、妹達に対する愛情がハグという形で現れてしまうらしい。リリィは喜んでいるが、もちろん私は抵抗している。しかし、寝ている間は無防備で起きると抱き枕にされている。正直、もう慣れてしまっているのだが……
「慣れては駄目だと思うのよね。そもそもやられっぱなしというのが、アベンジャーとしてどうかと思うのよ」
「別にいいじゃないですか。私としては、本来の私の包容力を見習ってほしいぐらいですけど。こんなことを言うために私を食堂まで呼び出したんですか?」
リリィは相変わらずジャンヌよりの意見しか言わない。本当に私のリリィなのだろうかと思う。
「アンタ、いつも聖女様にぴったりくっついてるから弱点ぐらい知ってるんじゃないの? 少しは協力しなさいよ」
「拒否します。もう私は部屋に戻りますね。あと、プリンご馳走様でした」
プリン分ぐらい協力してくれてもいいでしょうに。どうやら不毛だったようだ。私もそろそろ部屋に戻ろう。
「話は聞かせてもらいましたぞ! ぜひ吾輩に貴女の復讐劇を執筆させていただきたい!」
シェイクスピアめ、私とリリィの会話を盗み聞きしていたらしい。とても胡散臭いが、なぜかジャンヌに対して有効な気がする。
「まぁ、話だけは聞いてあげましょう」
それから数日が経った。リリィはちびっ子達の部屋でお泊りをしている。私は食堂で時間を潰し、ジャンヌが寝た頃合いを見て部屋に戻る。
シェイクスピアの言葉を思い出す。
「寝ている間に嫌なことをされても、された相手は寝ているのだから何も感じない。それは仕掛けた者の自己満足に過ぎないのです。逆に、寝ている間に相手が喜ぶことをする。自分が寝ている間に嬉しいことがあったと知れば、相手は起きた時にとても悔しいと感じるでしょう!」
確かにその通りだと思う。だから、私はジャンヌが喜びそうなことをする。
「まず抱き枕になってもらいましょうか。いつも私を抱き枕にしてるんですから当然です」
そして、起きた時に自分が抱き枕にされていたと知ったらどんな悔しい顔をするのか、楽しませてもらいましょう。
「ふふっ、呑気に眠ってるわね。アンタは今かわいい妹のオルタちゃんに抱き枕にされているのよ」
ジャンヌをぎゅっと抱きしめる。悔しいことに、すごく抱き心地が良い。加えて、寝顔がすごくかわいい。当然だ、私と同じ顔なのだから。
「次は名前を呼んであげましょうか」
以前から聖女ではなくジャンヌと呼んで欲しいと言われていたが、恥ずかしくて本人には言えない。だが、眠っている今なら言える。
「ジャンヌ……お姉ちゃん……」
流石にサービスし過ぎた。恥ずかしくて顔が真っ赤になる。
急にジャンヌが抱きつき返してきた。目を覚ましたのか、と冷やっとしたが寝ぼけているようだ。
「オルタ……大好き……です……」
そう寝言を残し、そのまま動かなくなる。困った、脱出できない。
結局、そのまま朝を迎えてしまった。
「オルタ、おはようございます。近いですね」
「ようやく目を覚ましたわね、聖女様。アンタが寝ている間に、なにがあったか教えてあげましょう」
いよいよ、仕上げだ。寝ている間に私から抱きついたこと、ジャンヌと呼んだことを教えて悔しい思いをさせる。
「どうしました、オルタ? なにがあったんですか?」
言えない、言えるわけないじゃない。恥ずかし過ぎる。
慌てて部屋を出る。私の行き先は決まっている。この結末を予測していた者、どう転んでも面白いと予想していた者、シェイクスピアを許しては置けない。
「吼え立てよ、我が憤怒」
その日、私はカルデアが記録している宝具威力の最大値を更新したのだった。
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ジャンヌ姉妹のルルハワ生活
夏イベントのとあるループ回という設定です。
ちなみに、マスターは心はおじさんのぐだ子という設定です。
前回のループでも私達は優勝できなかった。またルルハワでの7日間が始まる。しかし、ループを重ねるごとに私達は優勝に近づいてる。今度こそジャンヌの作ったあの本を超えて見せる。
ピンポーンと、部屋のチャイムが鳴る。私以外の連中は取材だったり、息抜きに泳ぎに行っているので私が対応するしかない。
「オルター、お姉ちゃんですよ」
「誰が姉よ。って、勝手に入って来るんじゃないわよ」
この部屋にジャンヌが来るのは今回が初めてだ。どうしてこの部屋が分かったのだろうかと考えていると、ジャンヌがそれを読み取ったように答えた。
「海でマスター達と会ったんです。そして、オルタが部屋に1人でいると聞いたので、姉妹の絆を深めるべく押し掛けました」
マスター、恨むわよ。これまでのループでジャンヌがいつもよりもお姉ちゃんモードになっていることは分かっている。そんなジャンヌと2人きりにされるとは先が思いやられる。
「なに、じーっと見てるのよ」
「オルタの水着姿、かわいいですね」
「ふん、当たり前でしょ。アンタはあざといのよ。メガネとか必要ないでしょ」
「そこは素直にかわいいと言って欲しいのですが。まぁオルタが素直じゃないのは知っていますから、褒めてもらったと思っておきましょう」
実際のところ、ジャンヌの水着姿はかわいい。競泳水着にメガネという組み合わせも反則だが、それを着ているのがジャンヌなのだ。かわいくないはずがない。せっかくなので漫画の資料になってもらいましょう。
「アンタ、ここに遊びに来るくらい余裕があるなら、私の漫画に協力しなさいよ」
「ええ、もちろん。そのつもりで来ましたよ。なにをすればいいですか?」
「モデルよ。私が指示するポーズでその競泳水着を描かせなさい」
ジャンヌにいろいろなポーズをとらせて、それを私が絵に残す。まぁ資料としては充分描いたし、そろそろ終わりにしようとジャンヌの顔を見るとすごく赤くなっている。
「どうしたのよ、赤くなっちゃって」
「オルタが悪いんですよ。私はベッドの上ですごく際どいポーズをとらされて、オルタにずっと見つめられていたんですよ。恥ずかしいです」
確かに思い当たる節がある。夢中で描いていたからその時はあまり気にしていなかったが、思い返してみるとこっちも恥ずかしい。
「恥ずかしいなら、なんで言わないのよ」
「オルタが真剣に私を描いてくれるのが嬉しくて、声がかけられなかったんです」
そんな顔をして、そんなことを言われたらこっちまで変な気分になるじゃない。
「オルタ、責任取ってくれますよね」
とどめを刺された。気がついたら私はジャンヌを抱きしめていた。
どれくらい時間が経っただろうか。ジャンヌを抱きしめた後は、疲れていたのもあってすぐに眠ってしまった。
マスターの書き置きに気づく。
「刑部姫の部屋にいるから、起きたら呼んでね。お幸せに」
こんなことになったのは、きっと夏のせいだ。今回のループだけはマスターと私の記憶も消えないだろうかと、ジャンヌの寝顔を見ながら思った。
「妹の苦労も知らず、アンタは幸せそうに寝てるわね。お姉ちゃん」
夏イベントはジャンヌ姉妹推しならニヤニヤが止まらない内容だったのでは?
私は止まりませんでした。
画像フォルダはジャンヌとオルタのスクショでいっぱいになり、時間に余裕があればシナリオを読み返すというジャンヌ沼。
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ジャンヌ姉妹のルルハワ生活2
ルルハワループから抜け出せない。
サバ☆フェスに参加するためにルルハワに来たのですが、マスターやオルタも同じホテルに宿泊しているとマリーから聞きました。マスターとは早速ロビーで遭遇しました。そして、オルタが1人で部屋に残っているという話を聞いたので遊びに行きます。
「オルター、お姉ちゃんですよ」
「誰が姉よ。って、勝手に入って来るんじゃないわよ」
オルタは今日もツンツンしていてかわいいです。
「オルタ、お姉ちゃんと遊びましょう」
「イ・ヤ・よ! それに今、同人誌を作るので忙しいからアンタの相手をしてる暇はないの」
マスターから聞いた通りです。オルタはサバ☆フェス優勝を目指して同人誌を作っている。しかし、いいアイデアが出ずにずっと部屋に籠っていて、遊びに誘っても外に出ないと。
「それは知っています。私はマスターからオルタの息抜き、遊び相手を頼まれて来たんです」
「マスターめ、余計なことをしてくれたわね」
余計なことではありません。姉妹仲良く遊んでおいで、というマスターの粋な計らいです。
「行き詰まって焦る気持ちも分かりますが、気分転換した方がいいアイデアが出やすいですよ」
「でも、時間が足りないの」
「私も同人誌作りを手伝ってあげますから大丈夫です。だから、一緒に海に行きましょう」
「分かったわよ。その代わりちゃんと手伝いなさいよ。たっぷりこき使ってやるんだから」
一緒に遊んでくれる上にたっぷりこき使ってくれるだなんて……オルタ、それはお姉ちゃんにとってのご褒美ですよ。
こうして、オルタと私は海に来ました。
「オルタ、遊ぶ前にオイルを塗り合いっこしましょう」
「塗り合いっこって言い方は気になるけど、オイルは塗らないとね。言っておくけど、手が滑ったはナシよ」
そう言いながら、オルタはうつ伏せになりました。私はオルタにオイルを塗るために準備をします。まず私自身にオイルを垂らして……
「大丈夫です、オルタ。手を滑らせるなんてドジしませんよ」
私はオルタに覆い被さり、全身を使ってオルタにオイルを塗ります。
「ちょっと、なにしてんのよ」
「だから、塗り合いっこです。オルタも私にオイルを塗ってください」
「破廉恥よ」
オルタが照れています。
「姉妹だから恥ずべきことはなにもありません。それに、このために人気のない場所を選んだんですから」
私がそう言うとオルタはしばらく俯いてしまいました。
「もう我慢できないわ」
突然、オルタが私を跳ね除けました。
「アンタにそんなことされたら、誰でもドキドキしちゃうじゃない。私だってドキッとするわよ」
聞いているこっちがドキドキしました。
「大丈夫ですよ、オルタとリリィにしかしませんから」
「リリィには刺激が強過ぎるからダメよ」
そう言いながら、オルタが抱きついてきました。
「オルタ、内緒ですよ」
私はオルタの唇を奪ってしまいました。
「バカ、誰にも言わないわよ」
と言いながら、オルタからもお返しが。
楽しい時間はあっという間に過ぎるもので、気づくと作業に戻らないといけない時間になってしまいました。
部屋に戻るとオルタは早速作業に取り掛かりました。
「今夜は帰さないし、眠らせないわよ」
「えっ、そんな大胆な」
「違うわよ。たっぷりこき使ってやるって言ったじゃない。さぁ、早く手伝いなさい」
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