BLEACH〜空座町の死神代行少女と多重世界〜 (桂ヒナギク)
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地獄先生編 第01話:その少女、死神

 私の名は北神(きたがみ) 聡美(さとみ)。どこにでもいる高校生だ。霊媒能力があること以外は。

「ちょっとあんたたち!」

 私は通りがかりに、交通事故で亡くなった男性への供物(くもつ)を荒らしている不良の男子たちに怒鳴りつけた。

「なんだ、てめえ?」

「供物を荒らすんじゃないわよ!」

「なんだと、こら?」

 不良の一人に胸ぐらを掴まれる。

 私はそいつの股間に膝蹴りを叩き込んでやった。

「うっ!」

 胸ぐらを手放し、激痛に悶える男A。

「岡田!」

 もう一人の仲間が、「てめえ!」と、私に向かって拳を突き出してくるので、ダックで(かわ)して、その体勢から手首を掴んで背負い投げを浴びせた。

「ぐはっ!」

 吐血するB。

 Cは怯えて膝が震えていた。

 私は横で浮いている精悍(せいかん)な顔立ちをした男の霊を指差し、「あんたたち、この人に謝んな!」と、怒声を浴びせる。

「ひ、ひえ!?」

「す、すみませんでした!」

 不良たちは逃げて行った。

「あなた、よく見たらイケメンね」

「そうお?」

「もし生きてたら、子ども産んであげてもよかったわ」

 冗談を言ってみる。

「とりま、速く成仏するのよ。今度、お花持ってきてあげる」

 私はそう言って、その場を後にする。

「ただいまー」

 家に帰り着き、ドアを開けた。

「お姉ちゃん、おかえり」

 と、出迎えるのは、小学生の弟である康太(こうた)だった。

「お姉ちゃん、僕お腹が空いたよ」

「うん。じゃあ、晩ご飯でも用意しようかしらね」

 私はここ、北神家で弟の康太と二人暮らしをしている。

 炊事、洗濯、掃除等の家事は私が全て行っている。

 母は康太が産まれてすぐ、原因不明の謎の死を遂げ、父親は警察官をやっている。

「お姉ちゃん?」

「うん?」

「どうしたの? ぼーっとして」

「ああ、ごめん」

 靴を脱ぎ、洗面所で手を洗い、すぐに食事の準備をした。

「いただきまーす」

 出来上がった料理を、康太が食べ始める。

{ホロウ……ホロウ……}

 私の腰についている死神代行証が、(ホロウ)という悪霊の出現を知らせる。

 説明がまだだった。

 私はこの街、空座町(からくらちょう)で死神代行をやっている。

 死神というのは、死を遂げて現世を彷徨う霊の成仏を手助けしたり、虚を浄化したりする職業だ。

 本来は尸魂界(ソウル・ソサエティ)という所謂(いわゆる)あの世から死神が派遣されて仕事を行うのだが、それでは間に合わない場合もあるため、現世に駐在する死神代行がその職務を全うすることがある。

「康太、ちょっと出かけるね。代わりにこいつおいてくから、言うこと聞くのよ」

 私は飴玉状の小さな玉を飲み込んだ。

 すると、私の体が肉体から飛び出し、死覇装(しはくしょう)と言う黒装束を纏った霊体となった。

 元の体には、改造魂魄(モッド・ソウル)のカイの人格が現れる。

「カイ、頼むよ」

「ごゆっくりー」

 私は家を飛び出した。

 霊的パワーを先ほどの事故現場から感じた。

 私は事故現場へ急いだ。

「ひええええ!」

 事故現場へ着くと、先ほどの男が虚に襲われていた。

 私は斬魄刀(ざんぱくとう)と言う大刀を手に、虚の攻撃から男をかばった。

「来たか、死神」

「お前は?」

「これから俺に食われるお前に教えても意味はない」

「なるほどね。お前は私を(おび)き出すためにこの霊を襲っていたってわけか。とんだ食わせ物ね」

だけど……──と、私は続ける。「お生憎(あいにく)、私を食べても、まずくて口に合わないわよ!」

 私は大刀を振るった。

 ぶん回される斬魄刀を軽々と躱す虚。

 しまった! 勢いよく振りすぎた!

 隙を突かれ、殴りつけられた。

「きゃあ!」

 私は吹っ飛び、ブロック塀に背中からぶつかった。

 体勢を立て直し、瞬歩(しゅんぽ)と言う走法で虚の頭上に回り込む。

「消えた?」

「どこを見てんのよ!」

 虚が上を見た刹那、振り下ろした斬魄刀が、その体を真っ二つに切り裂く。

「ぎょええええ!」

 虚は除霊された。

「お嬢さん、もしかしてさっきの?」

 私は振り返る。

「私、死神なの」

「死神!? まさか僕を連れて行くのかい?」

「連れて行かないよ。送るのさ」

「送る?」

魂葬(こんそう)……って言ってね、成仏させるのよ」

「そうか。じゃあ速くやってくれ。もうあんな思いはしたくない」

 私は、斬魄刀の(つか)を、霊の額に当てがう。

 すると、霊は成仏して尸魂界に送られた。

 



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第02話:霊媒師ドン・観音寺のそれは逆効果だ

 霊を魂葬した私は、(おもむろ)に家路に就く。

 道中、テレビ局のクルーが、霊媒師のドン・観音寺(かんおんじ)と言う男が除霊をしようとしているところを撮影していた。

 見えていないわね。

 観音寺は金属のステッキで、地縛霊の胸の(あな)を広げようとしている。

 やば!

 私は観音寺の元に駆け出し、「それやめて!」と、叫んだ。

 だが、時すでに遅し。観音寺は霊の胸の孔を完全に開いてしまった。

 霊が消滅する。

「え?」

 私は目を疑った。

 浄霊……できたのか、疑問符。

「おやー? Youも霊だな?」

 と、観音寺が私を見て言う。

「私は霊じゃない。死神よ。それより、あんたの除霊方法って……」

 その時、廃屋の屋上に、虚が構築された。

「なんだ? あの胸に孔の開いた仮面の霊は」

 さっきのは浄霊じゃなかったのだ。

「多分、あんたが霊の胸の孔を開けたから虚として再構築されたのよ」

「虚?」

「悪霊ってことよ」

「そんな……私のやり方は間違っていたのか……」

「今はそれより、あいつを潰すのが先決」

 私は屋上へと飛び上がった。

「キシャアアアア!」

 虚が襲いかかってきた。

 私は虚の攻撃を斬魄刀で受け止める。

「くっ!」

 その攻撃は意外にも重く、私は()()ってしまった。

 そこへ追い打ちの引っ掻き攻撃。

 死覇装が切り裂かれ、肩から血が噴き出す。

「痛えんだよ、このやろう!」

 私は虚の脳天に斬魄刀を突き刺そうとするが、仮面が硬すぎて奥まで刺さらなかった。

「え?」

 そのことに戸惑っていると、虚に殴り飛ばされ、その際に斬魄刀が手から離れてしまった。

 虚の仮面に斬魄刀が刺さったままのところは、フランケンシュタインを彷彿させているようだった。

「私の剣返せ」

 瞬歩で間合いを詰め、斬魄刀を引っこ抜く。

「脳天がダメなら首よ!」

 私は瞬歩で背後に回り込む。

 虚は私の姿を見失い、驚き戸惑っている。

「こっち!」

 私は虚の首を切り落とした。

 虚は光の粒子となり天へ昇って行った。

「You、やるな」

 観音寺が屋上に上がってきた。

「悪霊を片付けちまうなんて。よし、入門試験は合格だ」

「なんの試験よ?」

「今日からYouは私の一番弟子だ!」

「ならないわよ!」

「で? Youは死神らしいが、まさか私の魂を刈りにきたわけじゃないだろうな?」

「そんなことしないわよ」

 めんどいやつと関わってしまった。

「じゃあ何しに来たんだ?」

「帰る途中だったのよ」

「帰る?」

「私は死神をやっている人間で、家に帰るところだったのよ」

「死神って地獄の使い魔じゃないの?」

「違います」

 帰ろう。

 私は家に向かって一直線に飛び立った。

 後ろで観音寺がなんか言っていたが、気にせず帰路に就いた。

 



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第03話:虚に殺された少女

 その日、目を覚ました私は、いつも通り康太を小学校に送り、空座第一高校へ登校する。

「おはよう!」

 教室に入る。

 すると、クラスメイトが私の肩を見ながら言う。

「おは……って、北神さん、その肩どうしたの!?」

「ああ、これ? ちょっと通り魔にやられちゃって」

「そう言うレベルじゃないでしょ!? かなり深いし、痛そうだよ!?」

「大丈夫。ちゃんと黒崎医院で治療受けたから」

「何針縫ったの?」

「十針」

「うわあ………」

「あれ? 黒崎と言えば、彼は?」

 私は黒崎(くろさき) 一護(いちご)の席を見た。

「黒崎くんなら今日は休みだよ」

「え?」

「お母さんの命日で、墓参りに行くんだって」

 黒崎くん、霊力大きいから狙われなきゃいいけど……。

「ふーん……」

 私は席に着く。

 ……。

 …………。

 ………………。

 お昼休み、私は食堂でご飯を食べていた。

 魚と野菜を使った定番のメニューだ。

 ご飯を食べ終わる。

 私は食器を返却口に置くと、食堂を出た。

「ん?」

 教室へ戻る途中、校庭に一人(たたず)む女子生徒の姿が。

「あれは……」

 霊だった。

 私は校庭に出ると、女子生徒の霊に駆け寄った。

「どうしたの?」

「あなた、私が見えるの? みんな私に気づいてくれなくて。でも、よかった。気づいてくれる子がいて」

「見えるわ。あなたはこんなところで何してるの?」

「私ね、屋上から落ちちゃったの」

「え?」

「校舎の裏。ついて来て」

 私は女子生徒と校舎裏に同行した。

 そこには地面に横たわる女子生徒の死体。

「なんで落ちたの?」

「誰かに押された気がして、そしたらフェンスが外れて……」

 私は屋上を見上げた。

 確かにフェンスが外れていた。

「先生に伝えてくる」

 私は職員室へ行き、事故のことを説明し、校舎裏に教師と同伴した。

「可哀想に……」

 教師が合掌する。

「しかし、誰がこんないたずらを」

 教師は屋上の外れたフェンスを見る。

「先生、警察呼ばないの?」

「ああ、そうだな」

 教師は電話をかけに行った。

 その後、警察が来て事件を調べる。

 その中には、私の父の姿もあった。

「お父さん、お疲れ様」

「おお、聡美か」

「どんな感じなの?」

「詳しいことは言えんが、殺人の可能性がある」

 誰かに押されたのは間違いないのか。

「フェンスが外されてたの?」

「うん、まあ……」

「あ、仕事の邪魔してごめんね。速く解決してね」

 私はそう言って、現場を離れる。

 亡くなった霊が私について来た。

「あなた、成仏しなさい。じゃないと悪霊になってしまうわ」

「悪霊? 私が?」

「そう。胸に鎖がついてるでしょ? それは因果の鎖って言って、切れたら死ぬんだけど、断面から徐々に侵食されて最後は孔が空いて虚って悪霊になるの」

「わかった。でもどうやって逝くの?」

 私は斬魄刀を取り出し、柄を霊の額に当てた。

 霊は魂葬された。

 私はカイを飲み込み、死神と化した。

「教室行ってて」

 そう言い残し、事件現場へ戻る。

 屋上で捜査の様子を盗み見る。

 被害者は奥山(おくやま) 美津子(みつこ)。三年生だ。

 成績は並。喧嘩もしたことがなく、恨まれるようなことはないとのことだ。

「いい匂いがするなあ」

 虚が現れた。

 やはり虚の仕業だったか。

 しかし、こんなところで戦ったら、捜査員の邪魔をすることになる。

「場所を変えるわよ」

 私は面積の広い校庭に虚を(おび)き寄せた。

 



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第04話:始解

 空座第一高校の校庭で、私は虚と対峙している。

 身の丈ほどもある斬魄刀を背中の鞘から抜く。

「かかって来な!」

 私は虚を挑発してみた。

「その手には乗らん」

 虚は手下たちを呼びつけた。

 周囲を囲まれる。

「このぐらい相手にできなければ見当違いだ」

 私は斬魄刀をぶん回して雑魚兵どもをなぎ倒した。

「ほおう?」

 虚が襲いかかってくる。

 私は跳躍で攻撃を躱し、虚の背後へ着地する。

 そして、振り返りざまに繰り出して来た攻撃を斬魄刀で受け止めた。

「は!」

 攻撃を押し返し、腹部を斬り付ける。

「ぐっ!」

 怯む虚。

 私は瞬歩で頭上へ飛び上がる。

「私に喧嘩を売ったのがそもそもの間違いなのよ!」

 急降下で接触する刹那、虚の姿が消えた。

「あ?」

 着地する。

 視界から消えるどころか、霊圧も探知できず、完全にロストしてしまった。

「どこ!?」

「後ろだ!」

 背後から攻撃。

「うわ!」

 私は殴り飛ばされ、腹ばいに墜落した。

「くっ!」

 立ち上がり、血反吐(ちへど)を吐く。

「なかなかやるじゃないの」

 私は振り返る。

「お前じゃ俺には勝てん。(いさぎよ)く俺に食われ、俺の力となれ」

「いやに決まってるでしょ!」

 私は斬魄刀を前方に突き出す。

「切り裂け、鎌鼬(カマイタチ)!」

 斬魄刀の始解。

 私の斬魄刀が、大刀から風をイメージした細い剣に変わる。

 一振りで真空の突風が虚を襲う。

 虚の右腕を削ぎ落とした。

「うおおおお!」

 虚は痛みに悶え苦しむ。

「これで終わりよ!」

 私は瞬歩で間合いを詰め、斬魄刀で虚の仮面を叩き割った。

 虚の背後に妖しげな扉が開き、虚は引き摺り込まれて行った。

 地獄に落ちた。地獄のことは死神もあずかり知らぬところである。

「うっ……!」

 背中に痛み。

 先ほどの攻撃で痛めたか。

 私は校舎に戻り、カイと合流する。

「お疲れ、聡美」

 私はカイを取り出し、自分の肉体へと戻る。

「はあ……」

 疲れからの溜め息。

 私は教室へと向かう。

 ちなみに死亡事件の方は容疑者が浮上しないまま未解決事件となったようだ。

 教室に着き、席へ座る。

 お昼が終わるまで、五分となかった。

 これでは寝れない。

「どうしたの? 坂上さん」

「え?」

「なんか疲れたような顔してるよ?」

 クラスメイトの問いで気づいた。

 表情に出ていたか。

「大丈夫だよ。心配してくれてありがとう」

 私は笑顔でそう言った。

 チャイムが鳴り、教師が入ってくる。

「今日は、抜き打ちテストだ!」

 何いいいい!?

 予想外の展開に私は驚いてしまったが、常日頃から行っている勉強のおかげで、テストは難なく終えることができた。

 



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第05話:地獄先生

 私は今、空座町に隣接する町、童守町に来ている。

 この町には、私が小学生の時、童守小学校でお世話になったぬ〜べ〜という先生がいる。

 本名は鵺野(ぬえの) 鳴介(めいすけ)で左手に鬼の手を持つ最強の霊能教師である。

 同じ霊が見える者として、私はこの先生を尊敬していた。

 私は小学生の頃、霊圧が異常に高く、うまくコントロールもできず、垂れ流しでいたため、よく妖怪に憑かれたりしていた。そこを、ぬ〜べ〜に救ってもらった恩義がある。

 今、童守町は逢魔ヶ刻(おうまがとき)に入っているらしく、妖怪たちの動きが活発化していた。

 私は童守小学校にやって来た。

「懐かしいなあ」

 校門を潜る。

 そこへ、警備員が現れる。

「君、ここは関係者以外は立ち入り禁止だよ」

「私はぬ〜べ〜に会いに来たんだけど」

「鵺野先生?」

「母校にも入れさせてもらえないんだ?」

「ごめん。そういうことなら行ってもいいよ」

 私は校舎に入り、職員室を訪ねた。

「うん?」

 お昼。カップ麺を食べていたぬ〜べ〜がこちらに気づく。

「おう! 聡美じゃないか!」

「最近、こっちに戻ったって聞いて会いに来たわ」

誰、その子?──と、稲葉(いなば) 響子(きょうこ)という先生が訊ねる。

「北神 聡美って言ってな、お前の四歳後輩だ。あいつには同じ力があるんだ」

「え、それじゃあ鬼の手を?」

 まさか、とぬ〜べ〜が笑う。

「霊能力だよ。当時は随分と危なかったけどな」

 こっちへ来い、とぬ〜べ〜が手招きした。

 私はぬ〜べ〜に歩み寄った。

「今日はどうした?」

「だからさっき言ったでしょ。会いに来たって」

「お前が何の用もなく俺を訪ねることはないと思ったがな」

「流石、ぬ〜べ〜。何でもお見通しなのね」

 私がここに来たのは、空座町で妖怪を見たからである。

 妖怪事件は死神の専門外なので、こうして訪ねて来たのである。

「何? 空座町に妖怪が流れ込んだだと?」

「うん。それで、ぬ〜べ〜には妖怪を除霊して欲しいの」

「よし、わかった。早速行こう。だがその前に、麺が延びてしまう」

「もう、ぬ〜べ〜ったら……」

 苦笑いをする響子先生。

 ぬ〜べ〜がカップ麺を平らげると、私たちは空座町へ向かう。

「空座町か。初めて来る町だが、いいところだ」

 と、ぬ〜べ〜。

「しかし、妖気は感じないな。本当に見たのか?」

「見たわよ。虚でも霊でもなかったわ」

「虚って?」

「仮面を被った悪霊。胸に孔が空いてるのが特徴よ」

「あれか?」

 ぬ〜べ〜が指差した先で、虚が霊を襲っていた。

 私は代行証で死神化する。

「うりゃあ!」

 瞬歩で虚の頭上へ移動し、後頭部に斬魄刀を突き刺して消滅させた。

「聡美、その姿は?」

「ああ、私、死神なんだ」

「死神?」

「悪霊の退治したり、霊を成仏させたりする職業よ」

 私はそう言いつつ、霊を魂葬する。

 



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第06話;侵入者

 霊を成仏させると、私は肉体に戻った。

「さて、妖怪捜しますか」

 私たちは本来の目的に戻った。

 だが、どこを回っても、妖怪は見つからなかった。

「やっぱりお前の見間違えじゃないのか?」

「そんなことないわ。クラスメイトの石田くんも見たって言うし」

「石田くん?」

「ああ、石田(いしだ) 雨竜(うりゅう)くんって言う、滅却師(クインシー)って能力を持った霊能者のことね」

「滅却師? 弓を使った除霊者か。噂には聞いたが、本当にいるのか。とりあえず、その石田ってやつにも話を聞こうか」

 私たちは石田家を訪ね、情報を仕入れた。

 彼の話によると、コンビニへ買い物へ行った帰り、上空を飛翔する鬼童丸を見たと言う。

 鬼童丸は、古今著聞集によると、酒呑童子討伐で知られる武将・源頼光が弟・源頼信の家へ行ったとき、厠に鬼童丸が捕えられていた。頼光は、無用心だから鎖でしっかり縛っておくようにと頼信に言い、その晩は頼信の家に泊まった。鬼童丸は縛めの鎖をたやすく引きちぎり、頼光を怨んで彼の寝床を覗いて様子を窺った。頼光はこれに気づき、従者たちに「明日は鞍馬に参詣する」と言った。そこで鬼童丸は鞍馬に先回りし、市原野で放し飼いの1頭の牛を殺して体内に隠れ、頼光を待ち受けた。しかし頼光はこれをも見抜き、頼光の命を受けた渡辺綱が弓矢で牛を射抜いた。牛の中から鬼童丸が現れて頼光に斬りかかってきたが、頼光が一刀のもとに鬼童丸を斬り捨てたという。鳥山石燕の妖怪画集の今昔百鬼拾遺には「鬼童」と題し、鬼童丸が雪の中で牛の皮をかぶり、市原野で頼光を待ち受ける姿が描かれている。

「ぬ〜べ〜、鬼童丸って?」

「鎌倉時代の説話集である古今著聞集などに登場する鬼のことだ。空想上の妖怪だと思われていたが、実在すると言うのか。だとしたら、源家の人物が狙われるだろう」

「そういえば、石田くんの言ってたコンビニの近くに源家が」

「行ってみよう!」

 私たちはコンビニの近くにある源家へ訪れた。

 そこには数台のパトカーが止まっており、ブルーシートが張られていた。

「お父さん」

 私は捜査員である父に声をかけた。

「聡美。こんなところで奇遇だな」

「お久しぶりです、お父さん」

 ぬ〜べ〜が父に挨拶する。

「おお、あなたは鵺野先生。その節は娘がお世話になりました」

「お父さん、この家の人、亡くなちゃったの?」

「ああ、そうなんだよ」

「私たち、鬼童丸って妖怪の仕業だと考えてるんだけど……」

「妖怪をどうやって逮捕しろと言うんだ……」

 ぬ〜べ〜が真剣な表情で源家を見つめる。

「ぬ〜べ〜?」

(かす)かに妖気が残ってる。間違いなく妖怪の仕業だ」

 



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第07話:鬼童丸と虚

「微かに妖気が残ってる。間違いなく妖怪の仕業だ」

「本当に妖怪なんですか?」

「十中八九間違いないでしょう」

「では、我々警察は手を引きます」

 ぬ〜べ〜は水晶玉を取り出した。

 ガラスを通して、鬼童丸の行方を追う。

 辿り着いたのは、一軒の牛牧場だ。

「鬼童丸! いるのはわかってる!」

 ぬ〜べ〜の叫びに、鬼童丸が現れた。

 これが鬼童丸……。

「同じ鬼の力を持つものとして言う! 地獄へ帰れ!」

「嫌だね。俺は源に(まつ)わるもの全てを根絶やしするんだ」

「ならば、仕方ない」

 ぬ〜べ〜がお経を唱え始める。

「南無大慈大悲……、我が左手に封ぜられし鬼よ、今こそその力を示せ!」

 ぬ〜べ〜は左手の手袋を外し、鬼の手を露わにした。

「行くぞ、鬼童丸!」

 ぬ〜べ〜と鬼童丸が戦い出す。

 戦闘は数多の戦地を経験してきたぬ〜べ〜の方が優勢だった。

「喰らえ!」

 ぬ〜べ〜が追い詰めた鬼童丸にトドメの一撃を刺した。

 消滅する鬼童丸。

「ふふふ……」

 どこからか笑い声が聞こえてきた。

「誰だ!?」

「上玉が揃ったな」

 虚が姿を現した。

「鬼童丸をけしかければお前たちは来ると思った。お前たちを食らって俺の力にしてやろう」

「虚なら私の専売特許。覚悟しなさい」

 私は死神化すると、虚と戦い始める。

「は!」

 私は虚に斬撃を浴びせるが、ガードされてしまう。

「ふん!」

「きゃあ!」

 反撃に遭い、殴り飛ばされる。

 吹っ飛んだ私は空中で体勢を整えてうまく着地しながら背後へと滑る。

「切り裂け! 鎌鼬!」

 始解し、カマイタチを放つ。

「ぐわ!」

 真空の刃が虚を襲う。

 私は虚の頭上に瞬歩してその体を一刀両断した。

「うわああああ!」

 虚は悲鳴を上げながら粒子となって天に昇って行く。

 私は斬魄刀を大刀に戻すと、鞘にしまい込んで肉体に戻った。

「手こずらせやがって……」

「まあ、倒せてよかったじゃないか。終わりよければ全て良しってな」

 私たちは駅へ向かう。

 駅に着くと、別れの挨拶をし、それぞれの場所へと帰って行った。

 家に着いた私は、夕飯の支度をして康太と一緒に食べる。

 父は残業のため、帰りは遅くなると電話があった。

「ねえ、康太。明日から連休だけど、行きたいところある?」

「僕、海へ行きたい! 連れてって!」

「海ね。わかったわ」

 私たちはご飯を食べ終え、それぞれの部屋に入った。

「さてと」

 私は出されていた宿題を始める。

 作業は夜遅くまで続き、終わったのが一時ごろだった。

「寝るか」

 私はベッドに潜り、眠りに就いた。

 いい夢が見られそうだ。

 



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第08話:地獄先生、再び

 翌朝、私は目を開けた。

 朝の用を済ませ、着替えて朝食を用意すると、康太の部屋で弟を起こす。

「康太、ご飯できたよ」

「うーん……もう少し……」

「起きなさい。今日は海に行く約束でしょ?」

「う、海!」

 慌てて起き上がる康太。

「起きたら顔洗って歯を磨いて支度して降りてきなさい」

 私は康太の部屋を出る。

 階段を降り、リビングへ。

 先に食事を済ませていた私は、ソファに座って新聞を睨めっこをする。

 その間に康太がやって来た。

 新聞には特に珍事件は載っていない。

 ま……虚の事件が載るようものなら世も末だが。

 康太が食事を終える。

「お姉ちゃん、行こうよ!」

「そうだね」

 私は部屋へ行き、荷物を持って康太と共に家を出ると、二人で海へ出かけた。

 今日こそは逆ナンして男を作るんだから。違うか、草。

 電車を乗り継ぎ、茨城県の海へやってくる。

 私たちは水着に着替えて海に入った。

 私は泳ぎ疲れ、浜に上がる。

 康太は相変わらずの疲れ知らずで、まだ泳いでいる。

「ん……?」

 何だろう、突然の眠気?

 私は砂浜に倒れ、意識を失った。

 *

 気がつくと、私は浜辺にうつ伏せで倒れていた。

「は!」

 沖を見ると、康太の姿が見つからない。

「あれ? 聡美じゃないか」

 ぬ〜べ〜が姿を現した。

「ぬ〜べ〜! 康太知らない!? 小学生の弟なんだけど!」

「残念だが、俺はその子を知らないな」

「ていうか、何でここに?」

「ああ、それはだな……」

 ぬ〜べ〜は学校の生徒たちと遠足で海水浴に来ていると話した。

「遠足か」

「お前はなんで来てるんだ?」

「弟が海に行きたいって言ってね。肝心の弟の姿が見えないけど」

「聡美の守護霊に聞いてやろう」

 ぬ〜べ〜がお経を唱えると、武士が現れた。

「え?」

「うむ、お前の守護霊は明治時代の武士のようだな」

 ぬ〜べ〜が武士に聞く。

「聡美の守護霊よ、弟の康太の居場所を教えてくれ」

「あそこの洞穴に入って行くのを見た」

 私たちは武士が指を差した先を見る。

 そこには、海の上にポツンと建っているようにも見える洞穴があった。

「あの先は!?」

「やばいの?」

「ああ。あそこには怨霊が封印されているとされるいわくのある場所だ。下手なことをしてなきゃいいが」

 私は以前、石田くんに教わった飛廉脚(ひれんきゃく)という高速走法で洞穴の前に移動した。肉体のままでは瞬歩ができないので、その方法を取ったのだ。

 ぬ〜べ〜も泳いでやってくる。

「アナログなのね」

「うるさい」

 私は洞穴を見つめながら、唾を飲み込んだ。

「行こう」

 私とぬ〜べ〜は洞穴に潜入した。

 



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第09話:魔界

 洞穴の中は真っ暗で何も見えない。

 私はスマホの懐中電灯の機能で明かりを点けた。

 かろうじて明るくなり、奥へ進むことができる。

 奥まで辿り着くと、康太が倒れていた。

「康太!」

 私は康太に駆け寄る。

 康太は意識を失っていた。というか、魂魄が入っていない。

「大丈夫だ。シルバーコードはまだ繋がってる」

 ぬ〜べ〜が言う。

 確かに、因果の鎖はまだ切れていなかった。

 更に奥を見やると、そこに霊道が開いているのが見えた。その先がどうなっているのかはわからない。

「この先は霊界だ。お互い、体外離脱して行ってみよう」

 私とぬ〜べ〜は肉体から離脱して霊道を抜けた。

 その先は冥界へと繋がっていた。

 尸魂界ではない。

 禍々しい空気を感じる。

 魔界、と言ったところだろうか。

 因果の鎖を辿る。

 その終点は高台の上で女性と楽しそうに話をしていた。

「康太!」

「お姉ちゃん?」

 女性が康太を庇う。

「あんた何者よ!?」

「ふ、死神と人間風情が何をしに来た?」

「決まってっだろ! 康太を連れ戻しに来た!」

「康太は私のモノだ。お前たちには渡さない」

 康太は疑問の表情をした。

「お姉さん?」

「いいのよ、康太。気にしないで」

 私は瞬歩で接近しようとするが、結界によって弾かれてしまった。

「お姉ちゃん!」

「行きましょう、康太」

 女性は康太を連れて去って行く。

「待て!」

 私は斬魄刀で結界に切れ目を入れた。

「ぬ〜べ〜、ここから行けるよ!」

 私とぬ〜べ〜は結界の中へ。

 康太を追いかけた。

 先へ進むと、先ほどの女性が魔物と話していた。

 私たちはそれに耳を傾ける。

「シルバーコードが切れたら、これを飲ませます。あらゆるものを魔物にすることができる薬品です。康太は弱々しいが霊感をお持ちだ。きっと素晴らしい逸材になってくれることでしょう」

「そう言うことだったのね!?」

 私は女性の側に躍り出た。

「貴様!?」

「あんたを倒して、康太を連れ戻す!」

 私は瞬歩で女性の懐に潜り込んだ。そしてそのまま背後に抜ける。

 その刹那、女性の鎖結(さけつ)魄睡(はくすい)を破壊した。

 女性は血しぶきをあげて倒れた。

「あんたの鎖結と魄睡は破壊させてもらったわ。次に目覚めた時、あんたはただの霊となるわ」

「貴様、私の可愛いシモベをよくも!」

 魔物が飛びかかってくる。

 私は斬魄刀で魔物を真っ二つに切り裂いた。

「ぎゃああああ!」

 消滅する魔物。

「康太!」

 私は因果の鎖を辿り、康太の元へ向かった。

「康太!」

「お姉ちゃん!」

 私と康太は抱き合った。

「さ、元の世界に帰ろう」

 私は康太を連れて、ぬ〜べ〜と共に現世に戻った。

「僕の体……僕、死んじゃったの?」

「ううん」

 私は首を横に振るう。

「体外離脱しただけよ。さ、重なりなさい」

 康太が自分の体に重なる。

 私とぬ〜べ〜も自分の体へ入った。

 夕暮れ時になり、私と康太、そして遠足組はそれぞれの帰路に就くのだった。

 



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第10話:童守小の虚

 童守小学校。

 ぬ〜べ〜が校庭で体育の授業中の児童を守るため虚と対峙していた。

 左手は鬼の手が露わになっている。

「なんなのよあの化け物? 妖怪には見えないわ」

 と言うのは、児童の一人である女の子、(たちばな) ユリアだ。

 ユリアはクラスメイトの(きた) ケントが気になっているようだ。

「今、誰か余計なこと言わなかった?」

 言ってません。

 ぬ〜べ〜は虚相手に苦戦しているようだった。

「ぬ〜べ〜、頑張れ!」

 と、ケントが言う。

 そこへ私が到着し、戦いに加勢する。

 当然、みんなに私の姿は見えていない。

「子どもたちに手ぇあげるなんざ、一億年早いのよ!」

 私は斬魄刀で虚を斬り付ける。

 虚から血が噴き出す。

「一気に畳み掛けるよ!」

 私とぬ〜べ〜の渾身の一撃が、虚を昇天させる。

「やったぜぬ〜べ〜!」

 児童たちがぬ〜べ〜の周りに集まってくる。

 そこへ、私の肉体に入ったカイがやってくる。

「逢魔ヶ刻が原因で虚まで寄せつけられるなんてね」

「誰だ、姉ちゃん?」

 と、ケント。

「ああ、私は北神 聡美。響子先生の後輩よ」

 カイが答えた。

「じゃあ俺たちの先輩か」

「そう言うことになるね」

 このカイ、改造魂魄(モッド・ソウル)尸魂界(ソウル・ソサエティ)の技術開発局に依頼して、特別に作ってもらった私の性格を丸々コピーした言わば分身のような存在である。

 浦原(うらはら) 喜助(きすけ)の技術で記憶も共有できるから、大変重宝していた。

「ぬ〜べ〜」

 私はぬ〜べ〜に声をかけた。

「最近の霊の動き、かなり活発だよね。やっぱり逢魔ヶ刻が原因なの?」

「恐らくな」

「それより、お前はいつからそんな力を身に付けたんだ?」

「身に付けたって言うか、元々この力があったのよ。亡くなった母が死神でね。その力を譲り受けてたみたい。それに気づいたのは、虚に魂魄取り出された時。母の戦うところ見てたから、見よう見まねで戦って、それで実力を身につけていったの」

「そうだったのか。俺、お前の力に全然気づかなかったな」

 そこに響子先生が割って入る。

「ぬ〜べ〜、そこに誰かいるの?」

「死神代行がね」

「なんで妖怪が見える私たちなのに、見えないの?」

「妖怪より霊的濃度が高いからさ」

「そうなんだ」

 私は子どもたちを見る。

 すっかりカイと打ち解けていた。

 その時、私の通信機に連絡が入った。

 空座第一高校で虚が暴れているとの情報だった。

「ぬ〜べ〜、私もう行くね」

 そう言って、私は空座第一高校へ瞬歩で飛んだ。

 高校では、眉間にシワを寄せたオレンジ頭の黒崎くんが死神化して戦っていた。

「黒崎くん、あなた死神だったの?」

「今更かよ。てか、お前も死神なのな」

 私は黒崎くんの顔を見ながら、接近してきた虚の脳天を斬魄刀で貫いた。

 先ほどから虚が、「ギュー! ポーク!」と、叫んでいたので、「牛か豚かどっちかにしろ!」と、苦情を吐き捨てて昇天させた。

「お前、確か同じクラスの北神だったか?」

「北神 聡美よ」

「お前、いつから死神だったんだ?」

「生まれつき」

「そうか。俺はルキアから譲り受けたんだ」

「ルキア? 人間への死神の力の譲渡は犯罪よ」

「知ったことか」

じゃな──と、去って行く黒崎くん。

 



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第11話:呪いのインコ

「お姉ちゃん、起きて」

 その日、私は康太に起こされた。

「うん? 何よ、こんな朝っぱらから」

 私は重い体を起こした。

「パパがインコを拾ってきたんだ」

「インコ」

「ただのインコじゃないんだよ。喋るんだよ」

「そりゃ、インコは喋れるさ」

 私は父が持ってきたと言うインコを見るため、リビングに移動した。

「こんにちは、僕の名前は柴田(しばた) 勇一(ゆういち)。お姉ちゃんの名前は?」

「柴田?」

 私は腹をよじって笑った。

「アハハ、インコに柴田って、なにそのネーミングセンス、ハハハ」

「違うよ、僕は人間だよ」

「はいはい、人間だと思い込んでる頭のいいインコさんですこと」

「本当に人間だったんだってば!」

 インコはぷくっと膨れた。

「え、だった?」

 よく観察すると、霊圧は確かに人間のそれだった。

「お姉ちゃんたち、僕の近くにいると危ないよ」

「危ない?」

「僕の近くにいる人たちはみんな不幸になっちゃうんだ」

 その時、家の壁が倒壊した。

 外には虚の姿が。

 状況を察した私は、鳥かごを手に、家を飛び出した。

 虚が追いかけてくる。

「勇一くん、君の家は?」

「一丁目のタバコ屋の向かい側だよ」

「そっか」

 私は勇一の家へ急いだ。

「それそれ、逃げろ逃げろ」

 背後から迫り来る虚が言う。

 なんとか虚を撒いて、勇一の家に着くと、私は中に入った。

 だが、そこはすでに(もぬけ)(から)。遺体は愚か、家具すらなかった。

 私はとりあえず、鳥かごを置いた。

「勇一くん、お母さんは?」

「ママ、さっきのやつが、生きてるときに殺されちゃったの。でもね、三ヶ月無事に逃げれたら、生き返らせてくれるって」

 そんな生き返らせるなんて不可能だ。

 ばき!

 天井が剥がれた。

「見つけた」

お前──と、続ける虚。「うまそうな匂いだ。この匂いは死神か?」

「だったらどうするって?」

 私は代行証を体に当てがい、死神化した。

 虚がカエルのような生物を投げてきた。

 私はカエルを大刀で切り裂いた。

 すると、中からヒルのようなものが飛び出し、私の体に張り付いた。

 虚が舌を鳴らすと、ヒルが爆発した。

「きゃあ!」

 爆風で吹っ飛ぶと、私は地面に転がる。

「くっ!」

 徐に立ち上がる。

「さて、そろそろ食ってやろう」

「あんたに食わせる霊なんていないわよ」

 爆弾を飛ばしてくる虚。

 私は咄嗟に爆弾を掴み、瞬歩で間合いを詰める。

「……!?」

 爆弾を虚の口内に思いっ切り突っ込んだ。

「速く舌鳴らしなさいよ」

「ぐう……」

「鳴らせないんだったら、その舌いらないよね!」

 私は虚の舌を引きちぎった。

「ぎゃあ! 俺の舌があ!」

「トドメ!」

 私は虚を一刀両断した。

 虚の背後に扉が現れ、その中に吸い込まれて行った。

 私は勇一の元に戻る。

「ありがとう、僕のために」

「いいのよ」

「でも、ママは?」

「……ママなら、尸魂界で待ってると思うよ。勇一くん、向こうまで送ってあげるね」

 私は勇一を魂葬した。

 



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第12話:Aの正体

 私は童守町の童守小学校の宿直室にやってきた。

 相変わらずカップ麺が散らかっている。

「それで? Aを魂葬できないかって?」

 私はぬ〜べ〜にそう聞いた。

「死神であるお前ならできるんじゃないか?」

「そのAが出るって噂があるものね、最近」

「幸い童守町にはまだ出てないがな」

 その時、ユリアが入ってくる。

「ぬ〜べ〜、ケントがAに!」

 慌てた様子で言うユリア。

「なんだって!?」

 ぬ〜べ〜が私に目配せ。

「うん」

 私たちはケントが入院する病院に向かった。

 幸い、軽い怪我だったが、ケントはとても怯えていた。

「ケント、Aとはどこで会ったんだ?」

「家の近所の公園」

行くぞ──と、ぬ〜べ〜が病室を出て行く。

「待って!」

 私も後を追い、公園に同行する。

 ぬ〜べ〜が水晶玉で霊気を追う。私はそれについて行く。

「きゃああああ!」

 と、悲鳴。

「セイラの悲鳴だ!」

 私たちは現場に駆けつける。

 セイラという、ぬ〜べ〜の教え子がAに襲われていた。

 私はカイを飲み込んで死神化した。

「カイ、セイラちゃんを」

 カイがセイラを保護する。

「赤が好き? 白が好き? それとも、青が好き?」

 Aが私に向かって言ってきた。

「三つとも嫌いよ!」

 私が斬魄刀を振り回すと、Aは俊敏な動きでそれを躱した。

 Aがカマを取り出した。

 斬魄刀とカマがぶつかる。

 キン!

 音を聞いて違和感を覚える。

 まさか、斬魄刀!?

「お前は何者だ!?」

破面(アランカル)だ」

 風でAのマントがめくれ、胸に孔があるのが見えた。

 なん……だと……?

「破面とはなんだ?」

「破面は、虚が死神の力を身につけた存在よ」

 私は手の平で顔を覆い、精神を集中させて仮面をつける。仮面の軍勢(ヴァイザード)化。

「そっちが死神なら、こっちは虚の力よ!」

 私は斬りかかるが、カマで防御される。

「あなたはなぜ子どもばかりを!」

「子どもの魂魄は大人より美味でな。食べさせてもらってる」

「罪もねえものを次から次へと殺しやがって! 貴様はいったい何人殺せば気がすむんだ!?」

 私は一旦飛び退き、斬魄刀を振るって衝撃波を放つ。

 Aの右腕を削いでやった。

 だが、その右腕はすぐに再生する。

「だったら!」

 瞬歩で間合いを詰め、鎖結と魄睡を砕いて背後に抜けた。

「ぐわああああ!」

 悲鳴を上げて倒れるA。

 Aは虚から人間の姿になった。

 私は斬魄刀の柄をAの額に当てがうと魂葬をした。

「まさか、Aの正体が虚だったとはな」

「虚っていうか、破面なんだけどね。どっちでもいいけど」

 私は仮面を消失させた。

 こうして、Aが現れることは、二度となくなった。

 



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第13話:恐怖! 七人ミサキが来た!

 私はかつての母校である童守小学校に来ている。

 宿直室には、ぬ〜べ〜と、生徒数人。

 どうやら、ぬ〜べ〜が宿題を教えるとのこと。

 そして私は霊が出た時、万が一に備えての応援員だった。

 車の音が聞こえる。

 何者かが車を校庭に駐車させて降りて来た。

 それは二人組の男女だった。

 我々は校庭に出て行った。

「助けてくれ! 追われてるんだ!」

「誰から?」

「け……いや、悪者から」

「そうか。とりあえず、中に!」

 私ちは二人を中に入れて匿うことにした。

 ぬ〜べ〜が怪訝に思っている。

「どうしたの?」

「いや、こんなことが前にもあったような気がするんだ」

「前……!?」

 言いかけて、とてつもない力を感じる私。

 なんだ、このものすごい霊圧は?

 今までに感じたこともない霊圧だった。

「はぐれはおらんか」

 と、声が聞こえてくる。

「これは、まさか!」

「ぬ〜べ〜?」

「七人ミサキだ! 厄介なものを連れて来たようだな」

 ぬ〜べ〜は宿直室を飛び出した。

「お前たちはこの部屋から絶対に出るな!」

「待って!」

 私はぬ〜べ〜を追った。

「はぐれはおらんか」

 校舎に侵入する七人ミサキ。

 ぬ〜べ〜が鬼の手を出そうとしたところで、七人ミサキが杖でその手首を叩く。

「ぐっ!」

 痛みに怯むぬ〜べ〜。

 私はカイを飲み込んで死神化した。

「カイ、子どもたちのところへ」

 カイが宿直室へ駆けていく

 私は斬魄刀を手に取った。

「とりあえず、斬る!」

 私は七人ミサキをぶった斬るが、てんで効いていなかった。

「聡美、魂葬はどうだ?」

「魂葬? やってみる」

 私は七人ミサキの額に斬魄刀の柄を当てがうが、しかし、尸魂界に送ることができなかった。

「バカな!?」

 宿直室を目指す七人ミサキ。

「行かせない!」

 瞬歩で前に回り込み、衝撃波を浴びせるが、しかし、それも物ともせずにそのまま進んで行く。

「はぐれはおらんか!?」

 鬼のような形相(ぎょうそう)で、宿直室に侵入する七人ミサキ。

 宿直室では、子どもたちやカイが拘束されており、二人組の男女が排水管を伝って逃げるところだった。

 だが、排水管がポキリと折れ、二人組の男女は落下してしまう。

 七人ミサキが二人組を囲み、七人ミサキへと変えてしまった。

「あの二人、何をしたんだ?」

「宝石強盗やって、逃げる途中にあの霊たちを轢き殺してしまったらしいわ」

 私は肉体に戻りざまにカイの記憶を読んでぬ〜べ〜に言った。

「そうだったのか」

「まさか死神にも魂葬できない霊がいるなんて……」

「奴ら、前にもここに乗り込んで来たことがあってな。その時も除霊ができなかった」

「そういえば、あいつらには因果の鎖がなかった。何者なの?」

「さあな」

 ぬ〜べ〜が子どもたちの拘束を解いた。

 




皆様からのご感想、お待ちしております。どしどしお送り下さい。


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第14話:みえるひと

 空座(からくら)町。

 私は学校にいた。

「北神さん」

 午後の授業が終わり、教室でボーッとしていると、クラスメイトの精悍(せいかん)な顔立ちをした男子に声をかけられた。

「うん?」

 私は男子の顔を見る。

「あの、良かったら、一緒に帰らない?」

 彼は稲垣(いながき) 啓太郎(けいたろう)。転校生だ。

「いいよ」

 断る理由もない。

 了承した私は、支度をして啓太郎と帰路に就く。

「啓太郎くんは、なんで転校して来たの?」

「え? それは……」

「言いたくないなら聞かないよ」

「うん。ごめんね」

「あ……」

 私は道端で泣いている魂魄の男の子に気づく。

「どうしたのかな?」

 霊が泣いている、なんてとてもじゃないけど言えない。

「あの子、どうしたんだろう?」

「え?」

 どうやら、啓太郎にも見えていた。

 啓太郎が霊に声をかけた。

「君、どうしたの?」

「うえーん。お母さんとはぐれちゃったよ。ひっく」

「そうかそうか」

 啓太郎が霊を撫でる。

「お母さんとはどこではぐれたのかな?」

「わかんない。気がついたらいなかったの」

 その時だった。

「いい匂いがするなァ」

 虚が現れた。

「え? なんだよあれ?」

 啓太郎にも見えていた。

「二人とも、逃げて!」

「北神さん?」

 私はカイを飲み込んで、死神化した。

「カイ、頼むよ!」

 カイが二人を誘導した。

 私は虚を切りつけた。

 腕を削ぎ落とすが、すぐに再生する。

「死神か。うまそうだ」

 着地し、振り返る私に虚が迫ってくる。

「お前を食らってやる」

 虚が攻撃して来た。

 私は上空に飛び上がり、虚の攻撃を(かわ)した。

「くたばりやがれ!」

 私は落下の勢いを利用し、虚の額に斬魄刀を突き刺した。

「ぎゃああああ!」

 虚は悲鳴を上げながら消滅した。

「はあ……はあ……」

 そこへ、三人が戻ってくる。

「北神さん、その姿は?」

「あなたには言っとく。私、死神なの」

 私は肉体に戻りながら言った。

「死神?」

「そう。代行だけどね」

「死神って、人を殺して魂を連れて行くっていう?」

「それとは違うわ」

「よくわかんないな」

「死神は尸魂界から現世に派遣され、さっきの化け物や成仏していない霊を尸魂界に導く職業のことよ」

「そうなんだ」

「それより、虚や死神が見えるってことは、かなりやばいわよ」

「どうして?」

「虚はね、より霊圧が高いものを好むの。あなた、襲われやすいわよ」

「じゃあ、どうしたら?」

「とりあえず、出会ったら逃げなさい」

「うん、わかった」

「さあ、帰ろう?」

「うん」

 私たちは、改めて帰路に就いた。

 もちろん、魂魄の魂葬もしておいた。

 



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第15話:襲われたのは?

 自宅。

 目覚まし時計の音で目を覚ます。

 時刻は六時。

 私はベッドから出ると、生理現象と洗顔を済ませ、制服に着替えてキッチンへ行き、朝食を用意すると、康太を起こした。

「おはよう、康太」

 寝ぼけた康太がトイレへ行き、用を済ませて出てくると、洗面所で顔を洗ってリビングへ。

 二人、食卓で朝食を食べ始める。

 今日から私と康太は夏休みに入っている。

「うらめしー」

 霊が寄って来た。

 私は拳で霊を払いのける。

「うらめしー」

 康太の方に行く霊。

 しょうがない。

 私は代行証で死神化すると、魂魄の額に斬魄刀の柄を当てがう。

 魂魄が魂葬された。

 私は体に戻る。

「お姉ちゃん」

「うん?」

「大変だね、いつも戦ってばかりで」

 康太は私ほどではないが、霊感が強く、死神や虚が見えるレベルである。

 そのためか、たまに虚に狙われたりする。

 ピンポン。

 チャイムが鳴る。

 私は玄関へ行き、扉を開けた。

「マイ一番弟子よ! 来てやったぞ」

観音寺(かんおんじ)!……って、誰が一番弟子だ!」

 私は観音寺の顔面に足をめり込ませた。

「で、何の用?」

 私はとりあえず、観音寺をリビングへ通す。

「あ! ドン・観音寺だ! 本物だ!」

 康太が感激している。

 そうか。確か康太は観音寺のファンだった。

「ていうか、家って教えたっけ?」

「お前さんのスピリチュアルスメルを嗅ぎ取って来たのだ」

「何をわけのわからんこと言ってんのよ。で?」

「実はな……」

「言えよ!」

 額に青筋を立てる私。

「この間、お前さんの言っていた虚とかいうのが大量に発生してな」

「そんなけは……!?」

 私は虚の気配に気づいた。

「バカな」

 こんなに大量にいるなんて。

 寝起きでセンサーが狂っていたみたいだ。

 私はカイを取り出し、飲み込んで死神化した。

「カイ、康太を頼む」

「了解」

「行くよ、観音寺」

「私もか? しかし、私には君みたいに虚を倒す力は……」

「つべこべ言わず来い!」

 観音寺の襟を掴んで外へ出て行く。

「フシャア!」

 虚が襲いかかって来た。

 私が斬魄刀に手を伸ばすと、どこからか光の矢が飛んで来て虚を消滅させた。

「誰だ?」

 メガネをかけた男子が姿を現した。

「石田くん?」

 石田(いしだ) 雨竜(うりゅう)滅却師(クインシー)だ。

「済まない。うっかり転んだ拍子に撒き餌を砕いてしまったみたいだ。頼む、虚を倒すのに協力してくれ」

「断る!」

「なんでだい?」

「これはあんたが招いたことだってのがよくわかった。あんたの尻拭いをするほど暇じゃないし、昨日も寝ずに虚と戦っていたから、正直眠いのよ」

「はあ? 君は死神じゃないか。寝る間も惜しんで戦うのが死神だろ?」

「黒崎くんに頼めば?」

「いや、黒崎は……」

「観音寺、あとは任せた」

「任せたって……」

 観音寺が疑問符を浮かべた。

「もう寝ないとやばいのよ」

 私は家に入ろうとした。

「うわああああ!」

 悲鳴。康太か。

「康太!」

 中に入ると、康太が虚に捕まっていた。

「うまそうな人間。ん?」

 虚が私に気づく。

「ほう。死神もいたか」

「康太に手え出すんじゃねえよ!」

 私は斬魄刀を鞘から引き抜いた。

 



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第16話:メノス・グランデ

 斬魄刀を構える。

「私の食事の邪魔をするとはな」

 カイは何やってんだ?

 私は辺りを見渡した。

 傍に私の体が倒れており、義魂丸が口元に落ちていた。

 殴られた衝撃で抜けたか。

「ああああ!」

 私は虚の懐に迫る。

「おっと、こいつを殺されたくなければ動くな」

 と、虚が康太を突き出す。

「くっ!」

 私は立ち止まる。

「そうだ。そしてそのまま私に食われろ」

 虚が迫ってくる。

 康太を人質に取られては何もできまい。どうしたものか。

 と、その時、光の矢が飛来し、康太を握る虚の腕が削ぎ落とされた。

「ぎゃああああ!」

 悲鳴をあげる虚。

 今だ!

 私は虚の懐に迫る。

「はああああ! やあ!」

 私は刀を一振りし、虚を縦に真っ二つにした。

「ぎええええ!」

 虚は粒子になって昇天した。

「助かったわ、石田くん」

「なに、これは僕が招いたことだ。自分の尻拭いくらいはするさ」

 私は康太に歩み寄る。

「お姉ちゃん!」

 康太が私に抱きついてくる。

「怖かったね。もう大丈夫よ」

「ありがとう、お姉ちゃん」

 私は石田を見る。

「石田くん、手伝うよ。今みたいに襲われたりするやつがいるのは嫌だからね」

「だったら最初からそうしてくれ」

 私は体に落ちている義魂丸を入れた。

「助かったよ、聡美」

「カイ、あなたは優秀な義魂丸ですこと」

 皮肉を言った。

「ごめん」

「康太を頼むわ」

「うん」

 私は二人を置いて、家を出る。

「って、何あれ!?」

 空が割れていた。

「まさか! あの時みたいな!?」

「あの時?」

「以前、黒崎とやりあった時、現れたんだ。その時は黒崎一人で追い返したけど……」

大虚(メノス・グランデ)か」

 予想通り、割れ目から大虚が姿を見せる。

「黒崎くんに追い返せて、私にできないはずはない!」

 私は大虚に接近した。

「ちょっと待つんだ! 君一人では危険すぎる」

 後ろから石田が追ってきた。

「うっせえ!」

「全く、黒崎みたいなやつだな、君は」

 大虚に辿り着く。

 虚閃(セロ)を放つ大虚。

 私は斬魄刀を構え、攻撃を受け止めた。

「ぐっ!」

 足が地面にめり込む。

「はああああ!」

 私は渾身の力で、虚閃を押し返す。

「死神様を、舐めんなよ!」

 虚閃を押し返し、衝撃波を放った。

 大虚が真っ二つになり、粒子となって消滅した。

「ばかな! 黒崎ですら追い返すのがやっとだった大虚を、浄化しただと?」

「はあ……はあ……」

 息が上がる。

「う!」

 私は力を失って倒れた。

「大丈夫かい?」

 と、心配した石田が寄ってくる。

「ちょっと、力出しすぎた」

「待ってろ。今霊力を分けてやる」

 石田が私の手を取り、霊力を注ぎ込む。

 失った力が、湧いてくる……。

「もういいだろう」

 石田が私の手を放した。

 私は徐に起き上がり、家へと歩き出す。

「北神さん、大丈夫かい?」

「なんともない。ありがとう」

 私はそう言って、家へ帰り着いた。

「聡美、大丈夫?」

 カイが心配してきた。

「うん」

 私はカイを体から抜いて入れ替わった。

 



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第17話:虚園

 童守町。

 駅に着き、私は電車から降りる。

 辺りには禍々しい霊気が漂っている。

 逢魔ヶ刻に入っているのだ。致し方ない。

 私は童守小学校を目指す。

「なんか久しぶりね。四話ぶりかしら」

 などと(つぶや)いていると、童守小に辿り着いた。

 校門を抜け、校舎の宿直室に入る。

「ぬ〜べ〜、用事って何?」

 傍に老人の死神の姿が見える。

「死神に憑かれてしまった。俺はもう長くないようだ」

「そんなの鬼の手で……」

「死神といえど神だ。そんなことはできない」

 ぬ〜べ〜が言った後、死神様が口を開いた。

「ほう、尸魂界の死神か」

「なっ……!?」

「見ただけでなぜ? というような顔をしているな」

「なんで……そんなことが……?」

「これじゃよ」

 霊絡を掴む死神様。

「霊絡じゃ。死神の霊絡は赤いんじゃ」

「知ってるよ」

それと──と、ぬ〜べ〜を見る。「それは死神様って言うのよ」

「死神様? 死神だろ?」

「いや、ぬ〜べ〜に憑いてるのは死神様だよ」

 死神様……死神は尸魂界の魂のバランサーであり、対して生きてるものの魂を連れいて行くのを、死神様と呼んでいる。

「死神様、ぬ〜べ〜を連れて行かれると、色々困るのよね」

「しかし、デスノートには鵺野 鳴介は死ぬと書かれておる」

「以前にも連れて言ったよね。生き返ったけど」

 わからなければ、ぬ〜べ〜無印のあぎょうさんの回をお読み下され。

「ぬ〜べ〜を連れて行かないで下さい」

「ではお主が行くか?」

 死神様に刈り取られた魂魄は、尸魂界には行かず、生前の行いにより、天国や地獄へ導かれるという。

「冗談じゃよ。デスノートの内容は変えられない。鵺野は予定通り連れて行く。今日の夕方じゃ」

「夕方?」

 私は時計を見た。

「……って、もう時間が!」

「それじゃ、連れ行くからな」

 死神様がカマを取り出し、ぬ〜べ〜を刈った。

 体から魂魄が抜け出し、ぬ〜べ〜の肉体が倒れる。

 ぬ〜べ〜の因果の鎖が断ち切れた。

「死んだ……のか?」

 と、ぬ〜べ〜。

「助けられなくてごめん。死神様の決めたことは、死神でも変えられないんだ」

「構わんよ。行ってくるな」

「私も行く」

「え?」

「一緒に行って、生き返らせる方法を探す!」

 私はカイを飲み込んで死神化した。

 霊道が開き、私たちは天国へ(いざな)われた。

 何もない、真っ白な世界。

 ここが、天国だというのか。

「尸魂界のように街があるのかと思ったら、何もないんだ?」

 霧のようなものが晴れ、船が姿を見せた。

「三途の川か」

「三途の川……本では読んだことあったけど、本当にあるなんて……」

「これを渡れば冥界だ」

 私たちは船に乗り込んだ。

「な、なぜ死神が?」

 と、船渡し。

「この人を連れ戻る方法を探しにね」

「そ、そうか。しかし、できるとも思えんがね」

 船渡しは船を漕ぐ。

 やがて向こう岸に辿り着く。

 辿り着いた先は、辺り一面、砂漠だらけの大地だった。

「まさかとは思わないけど、虚園(ウェコムンド)?」

 と、振り返って船渡しを見るが。

「船渡しいねえ!? それどころか川もねえ!」

「聡美、虚園ってなんだ?」

「虚の世界。虚化した魂魄はここで暮らしているのよ」

「でも、なんだって虚園に連れてこられたんだ? 天国じゃないのか?」

「死神様は虚園の使いなのかもね」

「冗談じゃない。速く帰るぞ」

 こちらを向いたぬ〜べ〜の胸に、因果の鎖。しかも侵食が始まっている。

「ぬ〜べ〜、それ……」

 私は因果の鎖を指差す。

「シルバーコードが短くなって行く!?」

 虚園に連れてこられた魂魄は、最終的には虚に墜ちる。つまり、ぬ〜べ〜は虚になる。

「俺が虚に? 止める方法は?」

「虚化に抵抗して死神になる? 私も一度、死神の力を失った時、その方法で戻ったのよ。おかげで虚の力が手に入ってね」

 そこへ、精悍な顔立ちをした、胸に孔のある男性が現れる。

「ウルキオラ・シファー!?」

 私は思わぬ知人に驚いた。

「知り合いか?」

「うん。戦友」

 ウルキオラが口を開く。

「誰が来たのかと思ったら、聡美か。何しに来た?」

「死神様に刈られたぬ〜べ〜を生き返らせるためにね。グリムジョーは元気?」

「ああ」

 ウルキオラがぬ〜べ〜を見る。

「無理だな。こやつに死神の力はない。ただの霊媒師と言ったところか」

 



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第18話:鬼

「無理だな。こやつに死神の力はない。ただの霊媒師と言ったところか」

 その間も因果の鎖は侵食を続ける。

「あ……」

 侵食しきった因果の鎖。

 刹那、ぬ〜べ〜の虚化が始まった。

「うわああああ!」

 悲鳴をあげるぬ〜べ〜。

「ああああ!」

 ぬ〜べ〜の顔が仮面で覆われ始める。

 だが、通常の虚化とは違った。

「これは……」

 刹那、ぬ〜べ〜は光に包まれ、鬼と化した。

「え?」

「こ、この姿は?」

「なるほど。鬼の手の力が虚化を抑えたってことね。元に戻れる?」

 私の問いにぬ〜べ〜は答える。

「え? いや、どうすればいいか……」

「現世に戻れるのではないか?」

 と、ウルキオラは言う。

「どうして?」

「胸に孔がない。死神のような存在ではないのか?」

「そうか!」

 私は斬魄刀で扉を開き、ぬ〜べ〜と共に宿直室に戻った。

「お、戻ったみたいだね……って、その鬼は!?」

「ぬ〜べ〜だよ」

「向こうで何が?」

「よくわかんない」

 ぬ〜べ〜が自分の体に重なり、中に入り込んだ。

 起き上がるぬ〜べ〜。

「お、ちゃんと生き返った!」

「きっと、魂魄が鬼化したのね」

 私もカイと入れ替わって自分の体に戻る。

「おい、てめえ!」

 私は死神様を()め付ける。

「なんじゃ?」

「てめえ、本当に死神様か?」

「え? わからないです」

「わからない、じゃねえよボケ!」

 私は死神様を蹴り飛ばした。

「ひええええ!」

 部屋中を縦横無尽に飛び交う死神様。

「年寄りには優しくするもんじゃあ!」

「死神様が虚園に霊を連れて行くのか!?」

「ごめんなさい。私は死神様ではありません。許してー!」

 死神様を名乗る老人が宿直室から逃げ去って行く。

「二度と来んな!」

「聡美」

「あ?」

「今の、胸に孔があった。虚じゃないのか?」

「低級な虚でしょ、あんなの」

「だといいんだがな」

「何はともあれ、生き返れたんだから、それでいいじゃない」

「それじゃ、私は帰るね」

 私は童守小を後にすると、駅まで向かった。

 駅に着き、電車に乗って空座町に戻った。

「はあ」

 疲れからの溜め息。

「いい……なあ」

 何か聞こえた。

 私は声がした方へ急ぐ。

 辿り着いた公園で、虚が霊を襲っている。

「何やってる!?」

 私は虚を蹴り飛ばした。

「ぎゃああああ!」

 悲鳴をあげて吹っ飛ぶ虚。

「貴様、わしが見えるのか?」

「てめえの相手、私だ!」

 死神化し、虚を一瞬で斬り裂いた。

 真っ二つになった虚は粒子となって消滅した。

「大丈夫?」

 魂魄に訊ねる。

「恩にきるよ」

 私は斬魄刀の柄で霊を魂葬した。

 光に包まれ、成仏する霊。

 



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第19話:力を失った日

 それは、私が中学を卒業し、高校に入学する前の時だった。

 とてつもなく強い虚、グランドフィッシャーにやられ、死神の力を失った。

 地に伏している私。

「グランドフィッシャー」

 そこに現れたのは、後に友人となるウルキオラだった。

「そいつに手を触れるな」

「なんだ? 私の邪魔をするというのか?」

 ウルキオラが刀を抜き、グランドフィッシャーに深手を負わせて追い返した。

「大丈夫か?」

「あ、あなたは……」

 胸の孔を見て、虚だと気づく。

「虚が助けた?」

「助けたかったから助けた。ダメか?」

「いや……そういう虚もいるのね」

 死神の姿からただの魂魄になり、因果の鎖が出現し、肉体と繋がる。

「うっ! 苦しい……」

「お前、名は?」

「北神……聡美……」

「力、取り戻す気はあるか?」

「今の私は鎖結と魄睡を破壊された魂魄よ?」

「霊力さえ開放できれば望みはある」

「どうでもいいけど、あなたの名は?」

「ウルキオラ・シファーだ」

「ウルキオラ。かっこいい名前だね」

「立て」

 私は立ち上がる。

 体が重く感じる。

 ただの魂魄になるとこんなにも負担がかかるのか。

「俺の攻撃を躱してみろ」

 ウルキオラのパンチが迫る。

「うお!?」

 私は咄嗟に躱した。

「いきなり危ねえだろ!?」

「これぐらい躱せなければ、見込みはない。が、どうやら霊力は回復したみたいだな」

 そういえば、あれだけ重かった体が、嘘のように軽い。

「では、このまま第二レッスンと行くか」

 ウルキオラが斬魄刀で私の因果の鎖を断ち切った。

「な!? 死んじゃったじゃないのよ!」

「お前の体にはこいつを入れておこう」

 ウルキオラが義魂丸を私の肉体の口に突っ込んだ。

 起き上がる肉体。

「聡美、共に来い」

 私はウルキオラに虚園へ案内された。

「ここは?」

「虚園だ。虚だけしかいない」

「ここで何を?」

 因果の鎖を掴むウルキオラ。

「え?」

 ウルキオラは私の胸から因果の鎖を引っこ抜いた。

「え? うわああああ!」

 虚化が始まる。

「うわああああ!」

 刹那、私の意識は内なる世界に飛ばされた。

「ここ……は?」

 ビルの窓のようなものに座っている私。

「聡美」

 声のした方を見ると、女が立っていた。

「私はあなたの斬魄刀。名は鎌鼬。ところで、なぜそのようなところに座っておいでで?」

「え?」

 壁に座っていると気づいた刹那、私は落下した。

「うわああああ!」

「崩壊する世界の中から、私の入っている箱を見つけなさい。それができなければ、あなたは虚になるわ」

「そ、そんなことを言われたって、一体何をすれば!?」

「ヒントを教えるわ。赤いやつよ」

「赤いやつ?」

 私は水面に突っ込んで水中に潜った。

 水中なのに、呼吸ができる。

 で? えっと、なんだったかな。

 箱を見る私。

 どれに斬魄刀が? 確か赤いものって。

 私は精神を集中させた。

 霊絡が現れる。

 その中に一つだけ、赤い霊絡がある。

「これのことか?」

 私は霊絡を引っ張って箱を開けた。

 案の定、中には斬魄刀が。

「大当たり!」

 私は箱から斬魄刀を引っこ抜いた。

 内なる世界から戻ると、私は仮面を被っていた。

 死神化に失敗したのか、疑問符。

「……成功したようだ」

「ああ?」

 よく見ると、私は死覇装を身に纏っていた。

「でも、この仮面は?」

「虚の仮面だ」

「そんなことはわかってるけど?」

「お前は死神と虚の両方の力を手にしたのだ」

「ありがとう、ウルキオラ」

 ウルキオラが現世への扉を開いた。

 私は扉に飛び込む。

 現世に戻った私は、代行証で体から義魂丸を取り出して肉体に重なった。

 



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第20話:襲われるものたち

 私は童守町の童守公園にいた。

 特に目的もなく、何となくやってきただけだが。

 椅子に座りながら、ボーッとしている。

 すると、(プラス)の霊がやってきた。

「お嬢さん、可愛いね……って、聞こえないか」

 私は死神になると、魂魄を魂葬した。

「うわああああ!」

「きゃああああ!」

 ケントとユリアの悲鳴がした。

 私は現場に駆け付ける。

 そこには、驚いて腰を抜かしているケントと、妖怪に捕まっているユリアの姿が。

 妖怪は二本足で立つ虎のような姿をしている。

「ちょっとあんた! その子を放しなさい!」

「ああ? いやなこった」

 私は眉間に青筋を立て、斬魄刀で衝撃波を繰り出した。

「ぎゃああああ!」

 ユリアを握っていた手を削ぎ落とされ、悲鳴をあげる妖怪。

 妖怪とて魂魄。斬魄刀で斬れないわけがない。

 解放されたユリアがケントの前に移動する。

「今のうちに逃げるわよ!」

 二人は私に気づかず去っていく。

「貴様、俺の食事を邪魔しおって。それになんだ、そのダサい格好は?」

「死神代行、北神 聡美。覚えておくがいいわ」

「死神様? た、大変失礼いたしやした!」

「へ? 死神様じゃなくて、尸魂界の死神なんだけど」

「そうか。ならば!」

 妖怪が襲ってくる。

「遅い!」

 私は妖怪を真っ二つにした。

 消滅する妖怪。

「戻るか」

 私は童守公園に戻ると、ベンチで座っている体に入った。

「さてと」

 私は立ち上がり、童守小に向かった。

 童守小に着き、宿直室へ。

 宿直室に入ると、ぬ〜べ〜がカップ麺を食べていた。

「そんなものばかり食べていると体壊すよ」

「おう、聡美か。何か用か?」

「さっき虎のような妖怪にあった。倒したが」

「それは虎男(とらおとこ)だな。肉食で獰猛(どうもう)なやつだ」

「ぬ〜べ〜、最近、妖怪多くない?」

「逢魔ヶ刻だからな」

「それなんとかならないの?」

「元凶を倒せばな。だが、元凶がどこにいるのかもわからん」

 その時、咆哮がした。

「グオオオオ!」

 虚の咆哮だった。

「虚?」

 私は咆哮のした場所へ向かった。

 そこは童守小の校庭。警備員が襲われていた。

 私は迷わず死神化。虚に攻撃を仕掛けるが、躱された。

「避けるなよ!」

「死神風情が私に勝てるとでも?」

「ずいぶんと余裕ぶっこいてんじゃねえか。それが命取りにならなきゃいいがな!」

 私は斬魄刀で衝撃波を放った。

 虚は衝撃波を躱す。

 私は斬魄刀を始解。

 カマイタチが、虚に無数の傷をつけた。

「ぎゃああああ!」

 姫をあげ、血しぶきが吹き出す。

「トドメ!」

 私は飛び上がり、落下の勢いを利用して、虚の額に斬魄刀を突き刺した。

 消滅する虚。

「おーい、大丈夫か?」

 ヒーローが遅れすぎての登場。

「大丈夫よ」

「そうか。ならいい」

「じゃあ、帰るね」

 私は童守小を後にした。

 



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第21話:虚との同居

 空座町。

 駅に着くと、啓太郎が待っていた。

「待った?」

 今日は啓太郎とデートをする日だ。

 昨日、啓太郎からお誘いがあり、私は快く承諾した。

「ううん、今来たとこ」

 ずっと待ってたパターンだこれ。

「行こっか」

「まだ聞いてないけど、どこへ行くの?」

 それにしても、ウルキオラにそっくりだ。

「秘密」

 そして連れて行かれたのは、遊園地だった。

「ガキっぽい」

「ええ!? なんで!? せっかく高いチケットを買ったっていうのに!」

ドーン!──園内から爆発音。

「爆発!?」

 霊力を感じる。虚だ。

 私はカイを飲み、死神化すると、園内に突入した。

 広場で虚が暴れている。

 私は虚を斬魄刀で斬り付けた。

 だが、急所を外した。

「邪魔者は殺してやる」

 虚が襲ってくる。

 私は斬魄刀で攻撃を受け止めた。

「くっ!」

 足が地面にめり込む。

 強い……。

 その時、虚が真っ二つになった。

 消え去る虚の先に見えたのは、白服の男。

「大丈夫か?」

 振り返る男。

 ウルキオラだった。

「きゃー、ウルキオラ様ー!」

 私はウルキオラに抱きついた。

「ウルキオラ、どうして?」

「お前に会いに」

「ウルキオラ、私のこと好きなの?」

 ウルキオラは頰を赤らめた。

「私もウルキオラ好きだよ」

 そういったところで、私は思い出した。

「あ、そうだ! ウルキオラにそっくりな男の子がいるんだけど」

「俺にそっくりな?」

「啓太郎っていうんだけど」

「啓太郎……」

 ウルキオラは考え込む。

「どうしたの?」

「何でもない。もう行く」

 ウルキオラは飛び立った。

 入れ替わりにカイと啓太郎がやってくる。

「聡美、無事?」

「愛しのウルキオラが来てくれてね」

「そのウルキオラなんだけど、実は」

 啓太郎がカイの口を塞ぐ。

「啓太郎、あなたまさか?」

「違うよ! 俺が虚なわけないじゃん!」

「誰もウルキオラが虚だなんて言ってないけど。あなた、ウルキオラね?」

「バレてしまったか……。その通り、俺はウルキオラだ」

「ウルキオラはどうして現世の高校に?」

「お前の側にいたいからだ」

「その体は?」

「とある強欲商人に作らせた」

「そうなんだ」

「聡美、これからもよろしくな」

「こちらこそ」

「さて、ハメを外すか」

 ウルキオラが私を引っ張って歩き出す。

 せっかくのウルキオラとのデート。楽しんでる姿を見せないと悪いよね。

 私は遊園地デートを盛大に楽しんだ。

 夕方になり、遊園地を出る。

「夕飯、行くか?」

「うん」

 私たちは近くのレストランで夕飯を食べることにした。

 ……。

 …………。

 ………………。

 レストランから出る。

 私たちは電車で空座町に戻って、それぞれ帰路に就いた。

「そういえば、ウルキオラってどこに住んでるの?」

「知りたいか?」

「いや、別に」

「なら聞くな」

 ある交差点でウルキオラと別れる。

「じゃあね」

「ああ」

 私は一人で家まで向かう。

「ただいま」

 家に帰った私は、開口一番にそう言った。

「おかえり、お姉ちゃん」

 康太が出迎える。

「作り置きした晩ご飯は食べた?」

「うん。それより、お姉ちゃんの部屋にネズミがいるみたい。時々、物音がするんだよね」

「後で見てみる」

 私は洗面所で手を洗い、二階の自分の部屋に入った。

 見たところ、ネズミはいなさそうだが……。

 ゴソ。

 と、押し入れから物音。

 私は(ふすま)を開けた。そこにはウルキオラが横たわっていた。

「私の部屋──っ!」

「金がなくなってアパート追い出されたから、しばらく厄介にならせてもらう」

 ウルキオラと一つ屋根の下で暮らすことになるなんて。

 気まずいことこの上ない。

 




×ウルキオラって、僕は何を書いてるんだか。


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第22話:宿題

「起きろ、朝だ」

 その声に目を覚ます私。

 目の前には啓太郎……いや、ウルキオラが立っていた。

「夏休みくらい遅くまで寝かせてよ」

「ダメだ。生活リズムは整えないと、肌が荒れる」

「余計なお世話よ!」

 ベッドから出る私。

「今、朝食作るね」

 私はキッチンへ行き、三人分の朝食を用意し、内一食を部屋に持ち込んだ。

 ウルキオラが私の手料理を食べてくれている。

「口に合うかしら?」

「美味いよ」

 やがて、朝食を食べ終えるウルキオラ。

「ごちそうさま」

 私は食器をキッチンへ運び、全員分まとめて洗った。

 部屋に戻る。

「ねえ、ウルキオラ。散歩しない?」

「ああ。先に出てる」

 ウルキオラが窓から外に出て行く。

 私は玄関で靴を履き、表に出た。

「行こ」

 私たちは目的もなく歩き出す。

{ホロウ……ホロウ……}

 代行証が音声を発する。

「虚?」

 私はカイを飲み込んで死神化した。

「行ってくる!」

 虚のいる方へ飛び立つ。

 現場に着くと、私は斬魄刀で虚を真っ二つにした。

 消滅する虚。

 なんだってこんなにも虚が出やすくなってんだ? まさか、逢魔ヶ刻が原因じゃないだろうね?

 そう思えて仕方がなかった。

 私はカイのところへ戻った。

 カイを代行証で取り出して体に入る。

「せっかくの散歩が台無しだね」

「構わん。お前にはもっともっと強くなってもらいたいからな」

「あ! そうだ、ウルキオラ!」

「なんだ?」

響転(ソニード)の使い方教えて」

「滅却師の飛廉脚でも飽き足らず、虚の高速歩法も手にするというか」

「だって響転って探査神経(ペスキス)すり抜けられるじゃん? それって不意打ちに使えるってことでしょ?」

「お前が覚えたいのなら教えてやるが……」

 私は響転の使い方を教わった。

「ありがとう。あとでやってみるね」

「どうでもいいが、行く当てがないなら帰らないか?」

「うーん……帰ろっか」

 私たちは家に戻った。

 当然、ウルキオラは窓から直接部屋へ。

 私は玄関で靴を脱ぎ、二階に上がって部屋に入る。

「ウルキオラ、夏休みの宿題やろう?」

 私はウルキオラと共に夏休みの宿題に取り掛かった。

 お互いのわからないところをそれぞれ補い、宿題を進めて行く。

 そうして宿題に熱中したその夜、全ての宿題が終わった。

「一日でできちゃった」

「これで休みが終わるまで遊べるな」

「そうね」

 ぐー。

 ウルキオラの腹の虫が鳴いた。

「お腹すいた」

「何か作るね」

 私は食事を用意し、部屋に持ち込んでウルキオラと一緒に食べた。

「お前の手料理は最高だな。どこの料理よりも美味い」

「ありがと」

 私は料理を褒められ喜んだ。

 



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第23話:力に気づいた日

 それは、私が中学生に上がった頃だ。

 童守小を卒業した私は、親の都合で童守町を離れ、空座町に引っ越した。

 新しい家に上がり、階段を登って自分の部屋となるそれに入る。

 そこには、(プラス)の男女の霊が二人、コトを起こしていた。

「失礼ました」

 私は部屋を出て扉を閉める。

「って、ちゃうわー!」

 私は再び部屋に入る。

「あんたら今日からここは私の部屋なんだけど?」

「なんだ、お前? 俺らが見えてんのか?」

「見えるわ!」

 私は男性の霊を窓の外へ蹴り飛ばした。

「ああああれええええ」

「がんちゃん!」

 後を追っていく女性の霊。

「ふう……」

 その時だ。

「近い」

 その声に振り返ると、死覇装を身につけた、女の死神がいた。

「近いじゃねえ!」

 私は死神を蹴り倒した。

「貴様、私が見えるのか?」

「見える! ってか、勝手に人んちに入るんじゃないよ!」

「それはすまぬことをした。しかしこちらは急いでるのだ」

「ぐおおおお!」

 どこからか叫び声が聞こえてきた。

 なんだ、いまの?

「虚の霊圧が感じ取れん」

「虚って、今の叫び声がそうなの?」

「叫び声?」

 その時、再び叫び声がした。

「ぐおおおお!」

 ドカーン!

 爆発音のようなものが階下から聞こえた。

 私は階下に急いだ。

 リビングでは、虚が赤ん坊の康太を襲おうとしている。

「やめろ!」

「うん?」

 虚がこちらを向く。

「お前もうまそうだな」

 虚が接近してきて攻撃を繰り出した。

「きゃっ!」

 私は吹っ飛ばされ、崩れた壁から外へ放り出された。

 そこへ虚が追い打ちをかける。

「うっ!」

 私の体が、肉体から飛び出した。

 その姿は、死神のそれだった。

「貴様、死神か」

「死神?」

「道理でうまそうな匂いがしたわけだ」

 虚がゆっくりと迫ってくる。

 そこへ、死神がやってくる。

「死神だったのか」

「死神?」

「死神を知らぬのか?」

「知らない」

 死神が下手くそな図解で説明した。

 突っ込むべきか、疑問符。

 そう思ってる間に死神が戦い出す。

「うっ!」

 吹っ飛ばされる死神。

「私では勝てぬか……」

 私は虚の懐へかけ、身の丈ほどある斬魄刀を抜いて振り回した。

「弟に手えあげようとした罰よ!」

 虚の右腕を削ぎ落とす。

「ぎゃああああ!」

 悲鳴をあげる虚。

「てめえ、よくもやりやがったな?」

 虚がもう片方の腕で攻撃をしてくる。

 私は攻撃を躱し、もう片方も削ぎ落とす。

「ぐわああああ!」

「足も行っとく?」

 と、私は両足を斬り裂いた。

「うわああああ!」

 悲鳴をあげる虚。

「トドメ!」

 額に斬魄刀を突き刺した。

 粒子になって消え去る虚。

 血だらけの死神が立ち上がる。

「貴様、名をなんと申す?」

「人に名を訊くときは自分からって習わなかったの?」

「それはすまぬ。朽木(くちき) ルキアだ」

「北神 聡美」

「貴様にはこれを渡しておこう」

 ルキアがドクロを模した代行証を取り出して渡してくる。

「現世で死神が誕生したという噂を聞きつけてな。その死神に死神代行という理由で渡してくれと尸魂界から頼まれて持ってきたのだ」

「ふーん……」

 私は受け取った代行証を見つめる。

 なんか、呪いのアイテムっぽい。

 身につけたら呪いでセーブデータが消えてしまうのではなかろうか。

「ちなみに、それがあればいつでも死神化できる」

「ありがとう」

「それじゃあ、私は去る」

 ルキアが霊道を開き、尸魂界へと消えて行った。

 



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第24話:鏡面世界の兎

 現在、夏休みを謳歌中の私は、ぬ〜べ〜の元にいた。

 ぬ〜べ〜の話によると、最近、学校の女子トイレの鏡の中から、霊が出てきて、生徒たちを脅かしているという。

 これまで、ほとんどの女子が襲われた。

 怪我はしていないというが、しかし、いずれ大惨事を引き起こすと考えたぬ〜べ〜に頼まれ、私は死神化して鏡の中に入っていた。

 鏡面世界には、生物は存在していない。

 存在していないはず、なのだが……。

 兎が駆け回っているではないか。

 あの兎が生徒を脅かしているのか。

 私は兎を追う。

 兎は私に気づき、立ち止まってこちらを振り返る。

「人間?」

 兎が言う。

「残念、死神です」

 それに答える私も私だが。

「死神?」

 と、兎の方から近づいてくる。

「あなたは鏡の中と外を行き来できるのですか?」

「うん。兎さんは霊体?」

「はい。ですが、呪いで出れなくなってしまいまして」

「なんの呪い?」

「あれです」

 と、兎が示した鏡面世界の童守小の校庭には、大きな(まゆ)が転がっていた。

「繭?」

 繭が動く。

 亀裂が入り、中から蛾のようなモンスターが現れる。

「何あれ!?」

「あれが呪いの元凶です」

 私は校庭へ飛び出した。

 モンスターが粉を振り掛けてくる。

「うっ!」

 私は斬魄刀を抜いた。

「斬れるかしら!?」

 と、私は蛾を斬り付けた。

 蛾の体から体液が吹き出す。

 斬れた。

 斬魄刀で斬れると言うことは、こいつは霊体。

「ならば容赦しない!」

 私は瞬歩で背後に回り込み、羽を切り落とした。

 飛び立とうとする蛾だが、浮かぶことができない。

「はあ!」

 私は斬魄刀を蛾の額に突き刺した。

 消滅する蛾。

「ありがとうございます。この鏡面世界が繭により呪われてから、鏡に出入りできる霊体が出入りできなくなってしまったのですが……」

「これで出入りできるようになったのかしら?」

「多分……」

「じゃあやってみよう」

 私と兎は鏡の前にやってくる。

 外にぬ〜べ〜の姿が見える。

「せーの!」

 鏡に飛び込むと、私は通れるが、兎は引っかかって出れなかった。

「聡美、向こうの様子はどうだ?」

「兎がいたわ」

「兎が?」

「あれよ」

 私は鏡の中に映り込む兎を指差した。

「霊体らしいけど、なんか呪いで出てこれないんだって」

「兎の他には何か?」

「蛾がいたわ」

「蛾?」

「うん」

 ぬ〜べ〜は考え込む。

「多分、鏡蛾(きょうが)だな」

「鏡蛾?」

「鏡に霊体を引きずり込んで閉じ込める妖怪だ。子どもたちを脅かしていたのもやつか?」

「兎さんを助けたいんだけど……」

「もう一度、中に入って魂葬してやったらどうだ?」

 兎って魂葬できるのか?

 考えていても仕方ない。

 私は鏡に飛び込んだ。

「お姉さん、どうするの? 地獄とかには落ちないよね?」

「生前に悪行を犯していなければ、尸魂界に送られる……と思うよ、多分」

「尸魂界?」

「魂の故郷よ」

 私は斬魄刀の柄を兎の額にあてがう。

 すると、兎は光に包まれ、成仏をした。

 私は鏡をすり抜け、外の世界に帰還する。

「しかし霊体が鏡の中に入れるなんてね」

「俺は生身のまま鏡に入ったことがあるぞ」

 と、自慢気にいうぬ〜べ〜であった。

 



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第25話:敵討ち・グランドフィッシャー

 私は、母親のお墓参りに、康太を連れてやってきた。

 実を言うと、母親は謎の病で死んだのではない。

 これは最近知ったのだが、表向きには謎の病だが、クロサキ医院の先生の話では、虚に殺された可能性が高いとのこと。

 母親を殺したのは、グランドフィッシャーだ。

 力を失った日、グランドフィッシャーと対峙していた理由がそれだ。

 私はあの時、グランドフィッシャーに敵討ちをしようとしていたのだ。

「母さんの敵、取れなかった」

 と言っても、母さんが現れて慰めてくれるわけでもなし。

 墓石に水をかけ、線香を炊いた。

「母さん、近々遊びに行くよ」

「お姉ちゃん、ママのとこ行くの? 僕も行きたい」

「尸魂界は死神にしか行けないところなのよね」

 強欲商人に相談してみるか。

「さて、線香もあげたし、帰るか」

「うん」

 私たちはお墓を離れる。

「お姉ちゃん、後ろから誰かついてくるよ」

「え?」

 振り返ると、泣きそうな顔をした女の子がこちらに向かってゆっくりと歩いていた。

 どうしたんだろう、と気になって近づいてみる。

「どうしたの?」

 少女はニヤリとほくそ笑み、グランドフィッシャーに姿を変える。

「なっ!?」

 突然のことに、私は驚き戸惑う。

「康太、逃げて!」

「行かせないぞ」

 グランドフィッシャーが私を拘束し、康太に近づく。

 康太はガクガクと恐怖で膝が揺れて逃げ出すことができない。

「お姉ちゃん……」

 私は代行証に手を伸ばそうとするが、もう少しのところで届かなかった。

 その時、虚閃(セロ)が飛来し、私を掴んでいた手首が切断された。

 虚閃が飛んできた方角には、ウルキオラがいる。

「聡美に手を出すな、グランドフィッシャー」

「ウルキオラか。なぜ人間の味方をする?」

 私はグランドフィッシャーから距離を取った。

「別に人間に味方しているわけではない。俺は聡美の味方をしているんだ」

「たわけたことを」

 私はウルキオラに言う。

「ウルキオラ、手を出さないで。こいつは私が倒すわ」

 私はカイを飲み込み、死神化する。

「カイ、康太をお願い」

 私はグランドフィッシャーの懐にかける。

 グランドフィッシャーは私の攻撃を躱し、反撃をしかけてくる。

「ぐわっ! がはっ!」

 衝撃で吐血する。

「死神ごときが私に勝てると思っているのか?」

「さすが、何人もの死神を退けてきたことはあるわね」

「そうだろう?」

「でもね、これならどうかしら?」

 私は虚化する。

「なに?」

「はああああ」

 衝撃波を放ち、グランドフィッシャーの腕を切り裂く。

「ぐわああああ! 私の腕があ!……なんてね」

 超速再生で腕を復元するグランドフィッシャー。

「だからなんだ?」

 私はグランドフィッシャーの頭上へ移動した。

「今度こそお前を倒す!」

 落下の勢いを使って、斬魄刀を振り下ろす、が、しかし、相手に躱されてしまった。

 斬魄刀が地面に突き刺さって抜けなくなる。

「うわ! 抜けねえ!?」

滑稽(こっけい)だな、死神」

 やっとの思いで斬魄刀が抜ける。

「笑ってんじゃねえよ!」

 私は右手を正面に(かざ)す。

「破道の三十三、蒼火墜(そうかつい)!」

 ルキアに教わった鬼道でグランドフィッシャーに攻撃した。

 だが、攻撃は躱され、反撃を食らってしまう。

「きゃっ!」

 私の体が吹っ飛ぶ。

 空中で姿勢を整え、地面にうまく着地をした。

「切り裂け、鎌鼬!」

 斬魄刀の始解。

「はあ!」

 斬魄刀から斬撃が飛ぶ。

 だが、グランドフィッシャーは響転で躱した。

「なんだと?」

「遅いぞ遅いぞ」

 グランドフィッシャーに背後を取られた。

「甘い!」

 私は振り返りざまにグランドフィッシャーを斬り付けた。

「ぐわ!」

 怯むグランドフィッシャー。

 私はトドメの一発に、斬魄刀をグランドフィッシャーの額に突き刺した。

 粒子となって消滅するグランドフィッシャー。

「やったわね」

 と、カイ。

 私はカイを抜いて体に戻った。

 



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第26話:黒崎、再び

 かんかん照りの空座町。

 私は汗をかきながら、虚と戦っている。

 敵の強さは大したことないが、この炎天下の中だ。体が鈍る。

「はあ!」

 虚の攻撃を弾き、斬魄刀を額に突き刺す。

 虚は粒子となって消滅した。

「はあ……はあ……」

 異様に暑い。

 私は体に戻り、クーラーのある家へ急ぐ。

 道中、通りかかった公園で人だかりを見つけた。

 なにが、と様子を見ると、どうやら殺人事件が起きたようだった。

 死神の出る幕じゃないね。

 そう思って歩き出そうとすると、被害者の霊が現れた。

「あなた、普通の人間ではありませんね?」

「わかりますか?」

「さっきの怪物との戦い、見ていました」

「そうですか」

「お願いします! 僕の敵を取っていただけませんか!?」

「敵って、誰を?」

「僕、あなたが戦っていた怪物みたいのに殺されたんです。食べられそうになって、なんとか逃げ回ってまして」

 その時、何者かの声が聞こえてくる。

「どこ行った!? 隠れても無駄だぞ!」

 虚の声だった。

「見つけた!……ん?」

 虚が私の霊的濃度の高さに気づく。

「お前の方がうまそうだな」

 私はカイを飲み込んで死神化する。

「カイ、家帰ってて」

 私は斬魄刀を抜いて虚に迫る。

「死神か。上玉じゃないか」

 虚が攻撃を躱し、反撃してきた。

「ぐわ!」

 吹っ飛ばされ、地面に叩きつけられる。

「お嬢ちゃん!」

 魂魄が駆け寄ってくる。

「逃げて」

「で、でも!」

「逃げろって言ってんだよ!」

「ひい!?」

 魂魄を守りながらじゃ無理だ。

「逃げないなら……」

 私は魂魄の額に斬魄刀の柄をあてがおうとするが。

「魂葬はさせんぞ!」

 虚が猛スピードで迫ってきた。

 魂葬の暇がない。

 私は魂魄を抱えて飛び退き、攻撃を躱した。

 魂魄を守りながらじゃ戦えない。

 その時だった。

「月牙……天衝!」

 黒い衝撃波が飛来し、虚を一撃で真っ二つに切り裂いた。

「な、仲間がいたとは……」

 虚は粒子となり消滅した。

「大丈夫か?」

「ありがとう、黒崎くん」

「なんで知ってんだ?」

「クラスメイトでしょ!?」

「ああ! えっと、誰だっけ?」

 私はずっこけた。

「だから、クラスメイトの北神 聡美! 覚えてよね!」

「おう、悪い……」

 私は魂魄の額に斬魄刀の柄をあてがう。

 魂魄は光に包まれ、尸魂界へ送られた。

「お前の斬魄刀もでけえな」

「華奢な女の子が持つにはでかすぎだと思うんだけどね」

「違いねえ」

「黒崎くんはなんで死神化してるの?」

「ああ。そこの公園で事件あったろ。あれ、虚の可能性があってな。調べてたんだ。じゃ、俺はもう行くな」

 一護は消え去った。

 



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第27話:霊子

 私は空座町内を散歩していた。

 不良どもが、殺人事件の被害者の霊を困らせている。

 私は連中に近づき、まず一人を蹴り倒した。

「トシリンに何すんじゃわれえ!?」

 迫ってくるもう一人の顔面に拳をねじこむ。

「ゴフ!」

 倒れる二人目の不良。

「お前ら、全員あれを見ろ!」

 私は倒れて割れた花瓶を指差した。

「問一、あれは一体なんでしょうか?」

はい、そこの臭そうなお前!──と、真ん中の不良を指差した。

「この間、ここで殺された女の子のお供え物?」

「大正解!」

 私はその三人目を回し蹴りで壁に叩きつけた。

「グフ!」

「では、あれはなぜ倒れているのでしょうか?」

「俺たちが、巫山戯(ふざけ)てて倒したから?」

「じゃあ、この子に謝んな!」

 不良たちは「ごめんなさい! もうしません!」と、慌てて逃げていった。

「そんじゃあ、魂葬と行きますか」

 私は代行証で体外へ離脱すると、女の子の額に斬魄刀の柄をあてがった。

 女の子は光に包まれ、尸魂界へと送られた。

「いい匂いがするナア」

 そこに、カエル風の虚が現れる。

 私は声の方を振り返って構えた。

「お生憎、私はまずいわよ」

 斬魄刀に手をかける。

 虚が液体を飛ばした。それを躱すと、地面に張り付いた瞬間に、その一帯から煙が立ち込めた。

 酸か。

 再び酸を飛ばしてくるが、それを私は躱した。

「当たらなきゃ意味がないわよ」

 私は虚の眉間に斬魄刀を突き刺した。

 粒子となって消滅する虚。

 私は体に戻り、散歩を続ける。

「うわああああ!」

 横からいきなり石田 雨竜が吹っ飛んで来た。

「石田くん!?」

 飛んで来た方を見ると、強そうな虚がいた。

 私は代行証で死神化する。

「ふ!」

 跳躍し、一撃で虚を仕留め……損なった。

 仮面が硬く、脳天を貫けなかったのだ。

「ち!」

 私は斬魄刀を仮面から引っこ抜いた。

 さて、どうするか。

 と、考えてると、私の体が吹っ飛んだ。

「え?」

 見えなかった。何が起こったのだろう?

「北神さん、やつは不思議な力で攻撃してくるんだ」

 サイコキネシスか?

 私は斬魄刀を一振りし、斬撃を飛ばした。

 斬撃が虚の前で消え去る。

「貴様では俺には勝てん。諦めて俺の餌食になれ」

「お断りだ!」

 私は虚に接近する。

「無駄だと言ってるのがわからないのか?」

 虚の眼前で、再び吹っ飛ぶ。

 空中で体制を整え、着地する。

 どうしたものか。

 私は考え込んだ。

 その間にも、虚は迫ってくる。

 死神には、空中で霊子(れいし)を固めて足場にする技術がある。それを応用すれば。

「やってみるか」

 私はチャレンジしてみた。

 すると、一発で成功し、虚を霊子の塊で吹っ飛ばすことができた。

「ほおう?」

 落下した虚が起き上がる。

「見切った!」

 私は虚に迫る。

 虚は霊子で吹っ飛ばしにかかるが、私は跳躍で躱し、背後に回り込んで首を切り落とした。

 粒子となり消滅する虚。

 私は体に戻った。

「助かったよ、北神さん」

「いいっていいって」

 私はそう言って、歩き出す。

 



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第28話:脳男

 空座町。

 空座第一高校の登校日。私は学校に向かった。

 校内は荒れ果てていた。

「何があった!?」

 霊圧を感じ取る。

 井上(いのうえ) 織姫(おりひめ)の霊圧と別のそれが一緒に動いていた。

 私は織姫の元へ急いだ。

 すると、栗色長髪の織姫が盾舜六花(しゅんしゅんりっか)を使って校内を荒らしていた。

「織姫!」

 織姫が振り返る。

 ん?

 私は織姫の肩に、脳みそのような形をした何かが乗っているのに気がついた。

「貴様、何者だ?」

「ほう? お前は私が見えるのか?」

「まあね」

「ということは、霊的資質が高いということか」

 織姫は考え込む。

「お前の名を教えてくれ」

「なんで? あんた脳男(のうおとこ)だよね? 自分の姿が見える者に名前を言わせて体を乗っ取る」

「よく知っているな。そういうことだ。だから名前を教えてくれ」

「バーロー、誰が教えるか」

 私は代行証で死神化すると、瞬歩で織姫の懐に移動し、脳男を摘まみ取った。

「な、何をする!?」

 私は脳男を指で潰して粉砕した。

「あれ? 私、何を?……って、聡美ちゃん?」

「戻ったのね、織姫」

「え? え?」

 何もわかっていない織姫。

「織姫、あんた脳男って妖怪に操られてたのよ」

「脳男? あ、あれ妖怪だったんだ!?」

「あんたのことだから、名前訊かれて素直に答えたんじゃない?」

「うん」

 織姫は校内の惨状を見て言う。

「あー! 酷いよ聡美ちゃん! 私を助けるためとはいえ、学校破壊しちゃダメだよ!」

「いや、これあんたが……いや、脳男が!」

 私は言いながら体に戻った。

「さてと」

 私は自分の教室へと向かう。

 後からやってきた一護が、何事かと聞いていたが、誰も答えることができなかった。

 *

 私は家路に就いていた。

 道中、泣いている男の子の霊を見かけた。

「どうしたの?」

 私は霊に声をかけた。

 霊は私を見る。

「お姉ちゃん、僕が見えるの?」

「見えるけど、どうしたの?」

「僕、さっきここで車に撥ねられて死んじゃって。僕はここにいるのに、ママもパパも、誰も気づいてくれなくて」

「そっか。よしよし」

 私は霊の頭を撫でた。

「でも、いつまでもここにいる訳にはいかないわ。ここにいたら、悪霊に襲われちゃうからね。やり残したことある?」

「大丈夫」

「そっか。じゃあ、お姉ちゃんが尸魂界に送ってあげるね」

「怖いところ?」

「大丈夫。そう言うところじゃないよ」

 私は死神化して男の子を魂葬した。

 光に包まれ、男の子は尸魂界に送られた。

「死神、見っけ」

 虚の声。

 振り返ると、虎のような虚がいた。

 私は虚の懐に潜り、額に斬魄刀を突き刺した。

「ぎゃああああ!」

 虚は悲鳴をあげながら消滅する。

 



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第29話:ウルキオラの外出

 虚と対峙している。

 斬魄刀で攻撃を防ぎ、反撃のチャンスを窺う。

「くっ!」

 私の体が後方へ押される。

「ぐおおおお!」

 虚の咆哮。

 刹那、隙を見つけた私は、虚の体を斜めに斬りつけた。

「トドメ!」

 と、怯んでるところを、額に斬魄刀を突き刺した。

 粒子となって消え去る虚。

 私は家へ直行する。体があるからだ。

 家に着き、部屋に入ってベッドに横たわる自分の肉体に戻った。

「帰ったのか?」

 押入からウルキオラの声。

「うん」

 襖を開けるウルキオラ。

「最近、よく出るな」

「そうね」

 私はベッドから抜けてドアの前に移動すると、扉を開けた。

「シャワー浴びてくる」

 部屋を出ると、階下に降りて脱衣所へ。

 服を脱ぎ、浴室に入る。

 シャワーを出し、頭からお湯を被る。

 頭と体を洗い、貯めてある湯船に入った。

{ホロウ……ホロウ……}

 脱衣所から代行証の電子音が聞こえる。

 風呂くらいゆっくりさせてよ。

 私は脱衣所に飛び出すと、急いで体を拭き、服を着て現場へ向かう。

 辿り着いた先で、虚が魂魄を襲っている。

 私はカイを……カイを……。

「あれ?」

 ポケットを(まさぐ)るが、改造魂魄が出てこない。

「あ! 忘れた!」

 脱衣所に置きっぱなしだった。

 私は代行証で死神化した。

「はあ!」

 跳躍し、落下の勢いを利用して、虚の額に斬魄刀を突き刺して昇華した。

 虚の消滅を確認した私は、急いで体に戻り、家へと帰った。

「お姉ちゃん、魂抜けちゃった」

「え?」

 康太が玄関先に現れた。

 肉体から抜けた魂魄の姿になっている康太。

「何したの?」

「飴玉。舐めたら抜けちゃった」

 それってまさか!

 私は因果の鎖を辿った。

 その先には、康太の肉体に入っているカイがいた。

「待ってたよ、聡美。自分じゃ出れないからどうしようかと思ったよ」

 私は代行証でカイを取り出した。倒れる肉体。

「康太!」

 康太がやってくる。

「重なれば戻れるから」

 康太が肉体に重なった。

「康太、おやつ抜き」

「ええ!?」

「だってお姉ちゃんの仕事道具でいたずらするんだもん。反省してなさい」

「う、うえーん……お姉ちゃんのバカ」

 泣き出す康太。

「バカはどっちよ! 男が泣くんじゃない!」

 私は康太を残して部屋へと戻った。

「弟、泣いてるけどいいのか?」

 と、ウルキオラ。

「放っておけばいいのよ。どうせすぐに忘れるんだから」

「そうか。俺、ちょっと出かける」

「どこ行くの?」

「虚園に戻るんだ」

「帰ってくる、よね?」

「ああ。暫く留守にする。すまんな」

「うん、行ってらっしゃい」

 ウルキオラは窓から出て行った。

 



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第30話:Soul society

 私は尸魂界に来ていた。

「こっちは空気が美味しい」

 現世は排気ガスや二酸化炭素などで空気が汚染されている。

 私が今いる場所は、瀞霊廷(せいれいてい)ではなく、流魂街(るこんがい)の一角だった。位置的には東流魂街か。

「お姉ちゃん」

 その声に振り返ると、そこには第11話:呪いのインコで魂葬した柴田の姿があった。

「無事に着いたんだ?」

「うん。ママにはまだ会えてないけど」

「そっか。でも、探してれば、きっといつか会えるよ」

「うん、そうだね。お姉ちゃんはどうしてこっちに?」

「ちょっと野暮用でね。そんなことより、どこか寝泊まりできるとこない?」

「じゃあ家においでよ。僕が今住んでるとこ。部屋は狭いけど、寝泊まりには困らないはずだよ」

「ありがとう」

 私は柴田の家に同行した。

 そこは、木造でかろうじて雨風が防げるといったボロい家だった。

「尸魂界って思ってたのと違うね」

「そうだね」

「あ、そうだ! 私、尸魂界のお金ないんだけど、どうしよう?」

「心配しなくていいよ。ここではお腹も空かないからね」

「死神は霊力使うから減るのよ」

「そうなんだ。じゃあお兄ちゃんに相談してみようか」

「お兄ちゃん?」

「もう戻ってくると思うよ」

 と、その時。

「柴田、帰ったぞ」

 柴田より背の高い男の子がやって来た。

「その死神は?」

「このお姉ちゃん、現世で僕を虚から命がけで守ってくれたんだ」

「ああ、その節は柴田がお世話になりました」

「お礼なんていいのよ。それより、来たばかりでお金がなくて困ってるんだけど……」

「食事くらいなら俺がなんとかするよ」

「ありがとう」

「お姉さん、名前なんていうの?」

「聡美」

「聡美さんね。名前も知らずに死神さんなんて呼んだら失礼だもんね」

「別にどう呼んでもいいよ」

「そう。それより、聡美さんはお腹は大丈夫?」

「そういえば、お腹空いて来たかな」

「じゃあ昨日作ったカレーがあるから、温めるよ」

 少年が調理場でカレーを温める。

 やがてグツグツと音を立て始めるカレー。

 少年がご飯をよそり、その上にカレーをかける。

「さあ、どうぞ」

 私はカレーを食べた。

「甘」

「甘いか。柴田は甘口じゃないと食べられないっていうから甘口にしたんだけど」

「私は辛口くらいのがいいね。大辛と激辛は挑戦したことないからわからないけど」

「じゃあ、近所のラーメン屋で辛いラーメンの度数選べるのあるから、明日のお昼にでも行く?」

「何段階?」

「十段階。二倍がカレーでいう中辛ってとこかな」

 カレーを食べ終える。

「うーん……でも、明日はこっちにいるとは限らないし。瀞霊廷内に用事があるからね」

「別に用事済ませてからでもいいよ」

「じゃあその方向で」

 少年が食器を片付ける。

「そういえば、君の名前は?」

「洋一って呼んで」

「洋一くんね」

 それにしても、平和っていいわね。

「あ、そうだ。柴田にお土産」

 私はジャンプコミックスから切り抜いたBURN THE WITCH(バーン・ザ・ウィッチ)の読み切り漫画を柴田に渡した。

「これは?」

「BURN THE WITCH。久保帯人の漫画だよ。面白かったからあげる。こっちには漫画とかなさそうだからね」

「ありがとう、お姉ちゃん」

 柴田は大喜びで漫画を読み始めた。

 



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第31話:母を訪ねて霊界

 私は瀞霊廷内に入った。

 そこは流魂街と打って変わって白一色の無機質な建物が立ち並んでいる。

 辺りには死神達しかいない。

 私は上空の霊王宮を見上げた。私はそこに用事がある。

 霊王宮へ向かい、霊王に謁見する。

「現世の死神が何用だ?」

「私の亡くなった母、黒崎(くろさき) 早苗(さなえ)の居場所が知りたい」

 黒崎 早苗は一護の母・真咲の妹である。つまり、私と一護はいとこなのだ。彼とは高校に入って初めて会ったのだが。

 そして、早苗にも滅却師の力があった。

 虚に魂魄を食われてなければ、こっちに来ていると思ったのだが。

「黒崎 早苗……戌吊(いぬづり)へ行ってみろ」

 私は流魂街の戌吊へ向かった。

 

 

 南流魂街七十八地区戌吊。

 記憶の中の母の顔を頼りに、私はこの地でそれらしい人物を捜す。

 母と思しき人物は、旅館で働いていた。

「いらっしゃいませ」

 受付でその女性が頭を下げる。

「黒崎 早苗さん」

「どうして名前を?」

「やっぱりお母さんだ」

「え?」

「娘の聡美だよ」

「そ、そんなことって!」

「三年ぶりかしら?」

「わざわざ会いに?」

「うん」

「そうだったのね。私も会いたかったわ」

 母が私を抱きしめる。

「聡美、あなた死神の格好してるけど」

「これは元々そうだったよ」

「え?」

「私、最初から死神だったの。なんでかは知らないけど」

「そうなの? ああ、康太は元気? 戻ったら育てられなくてごめんって伝えてくれる?」

「うん。じゃあ」

「もう行くの? もう少しゆっくりしていけばいいのに」

「それがそうもいかなくて。最近、逢魔ヶ刻のせいか、やけに虚が出やすくてね」

「そうなんだ。無茶して死なないでね」

「心配してくれてありがとう。でも大丈夫だよ」

「それならいいのだけど」

「また来るね」

「待ってるわ」

 私は母に見送られ、東流魂街の柴田の元に向かった。

「おかえり」

 洋一が出迎える。

「瞬歩繰り返してたからお腹空いちゃったわ。ラーメン案内してよ」

「いいよ」

 私は洋一とラーメン屋に入った。

 辛いラーメンを注文した。度数は十倍だ。

「いきなり? きついんじゃない?」

「大丈夫よ、多分」

 ラーメンが運ばれて来る。スープが真っ赤だ。

「いただきます」

 一口。

「辛!」

 でも大したことなかった。

 私は黙々と十倍辛いラーメンを食べる。

「すごい。こんな辛いのを平気で食べれる人初めて見た」

「ごちそうさま」

 ラーメンを平らげると、周囲の他の客が拍手をした。

 店員も驚いた様子でこちらを見ている。

「洋一くん、お会計して」

「うん」

 洋一がラーメン代を払った。

 私は洋一と柴田に挨拶して、現世に戻った。

 




ご感想はご自由に。


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第32話:BURN THE WITCH - Soul society west branch

 イギリス・ロンドン。

 ヒースロー国際空港に、私はいた。

 私がイギリスに渡英した理由。それは、ロンドンに住む英国人の友達、新橋(にいはし) ノエルに会いに来たからだ。彼女とは、とあるSNSサイトを通じて知り合った。まだ、お互いどういう人物かもわかっていない。

 私は空港を()つと、サウス・プラクストン高校まで向かった。ノエルはその校門前で待っているとのこと。

 現地に着くと、黒い制服で身を包んだ、端正な顔立ちをした黒色長髪の少女が立っていた。

 私は少女に英語で声をかけた。

「新橋さんですか?」

 すると、彼女も英語で答える。

「あなた、聡美さん?」

「北神 聡美です」

 私が握手を求めると、ノエルが手を握ってきた。

「……!? あなた何者? ただの人間じゃないですよね?」

 その問いに、ノエルは驚く。

「ど、どうして……?」

「私にはわかるわ」

「あなたこそ何者なの?」

「私は、死神です」

「私はWB(ウィングバインド)一等保護管、笛吹き隊(バイパーズ)の新橋 ノエル。死神って確か、尸魂界・東梢局(とうしょうきょく)の」

「WBって?」

「尸魂界・西梢局(ウェスト・ブランチ)のことよ」

「聞いたことあります。ドラゴンの保護と管理を目的とした機関ですよね?」

 ドラゴンなんて実在するわけなかろうて。

「ええ、そうよ」

 その時、どこからかダークドラゴンがやってきた。

 足音に気づいた私たちが振り返る。

「ど、ドラゴン!? ロンドンには実在するわけ?」

「あなた、あれが見え……って、死神なら見えて当然ですね」

 私はカイを取り出した。

「斬っていいのかしら?」

「粉砕して下さい」

 私はカイを飲み込んで死神化する。

「は!」

 ドラゴンに蹴りを思いっきり浴びせ、吹っ飛ばした。その先にはカイが。

「しまった!」

 ドラゴンがカイに突っ込んだ。

 カイは素早く躱した。

「どこ狙ってんのよ!?」

「ごめん、カイ」

 ドラゴンが塀へと突っ込んだ。倒壊するコンクリートの壁。

「痛えんだよ!」

 ドラゴンが接近する。

 私は斬魄刀を構えた。

キン!──ドラゴンの攻撃を斬魄刀で受け止める。

「はああああ!」

 ドラゴンを押し返し、その体を真っ二つに切り裂くと、そいつは粒子となって霧散した。

 私はカイと入れ替わる。

「さて、行きましょうか。新橋さんの家に」

 私はそういうと、ノエルと共に彼女の家へ向かうことにした。

 その途中、コンビニエンスストアに寄って、飲料水等を購入した。

「聡美さん」

「何かしら?」

「一旦、WBに寄りますけど。あなたのことを報告しておかないといけません」

「いいよ。付き合う」

 ノエルが電話ボックスに入る。

「あなたも」

「え?」

 疑問符を浮かべながら電話ボックスに入ると、私は(リバース)ロンドンに(いざな)われた。

 




読み切りで、連載になっていないのに、ノリでやってしまいました。


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第33話:絶鬼

 私は帰国した。

 空座町に戻る前に、童守町へ寄った。

 童守町は異様な空気に包まれていた。

 鬼天帝でも現れたか、疑問符。

 ぬ〜べ〜の霊圧を察知して現場へ行くと、覇鬼(ばき)の弟、絶鬼(ぜっき)がヴィムクと戦闘(たたか)っていた。

 絶鬼は怪我をしていた。

縛道(ばくどう)(いち)(さい)!」

 私は絶鬼に有利になるよう、ほんの一瞬だけヴィムクの動きを止めた。

 捨て台詞を吐き、逃げ去るヴィムク。

「ぬ〜べ〜!」

「聡美!?」

 倒れる絶鬼。

「なんで絶鬼が?」

「う……、お前、死神か」

 絶鬼は私を見ただけで、その魂魄が死神であることを見抜いた。

「とりあえず、運ぶぞ!」

 絶鬼を医療施設に運ぶ。

 病室で、絶鬼が地獄で起こったことを説明した。

 鬼天帝のことはぬ〜べ〜から聞いていたが、まさかそんなことになっているとは思いもよらぬ私である。

「ぬ〜べ〜のことは助けたいけど、私は専ら虚退治が専門だからなあ……。まあ、妖怪とて魂魄。斬魄刀で斬れないこともないけどね」

 私は病室を出た。

 コツコツと足音を立てながら廊下を歩く。

「おい、お前!」

 男に声をかけられ、振り返る。

「あなた、さっきぬ〜べ〜たちと一緒にいた。……誰?」

「カルラだ。そんなことよりも、死神ってなんだ? 斬魄刀? 虚?」

「そんないっぺんに訊かれても……」

 私はカルラの問いに困惑した。

「説明するより見せた方が速いか」

 私は死神化した。

「これが死神」

「そっちの本体にはもう入っていないのか?」

「空っぽよ」

「その身の丈ほどある大刀は?」

「斬魄刀。霊を斬るための刀よ」

「死神って言ったらカマじゃないのか?」

「それは死神様。私たち死神は尸魂界から派遣される悪霊退治専門の戦闘員よ」

「そうか。よくわからんが、そういうのが存在するのか。ちなみに、尸魂界ってなんだ?」

「あの世のことよ。何回かあっちへ行ったけど、いいところよ」

「行ったって、お前死んでるのか?」

「死神だから自由に行き来できるだけよ。勝手に殺さないで」

「う……すまん」

「ついでに、虚ってのは悪霊よ」

「そうか」

「話はそれだけ?」

「ああ」

「そう。じゃあ、行くわね」

 私はカルラに背を向けて歩き出した。

 駅へ行き、空座町に戻る。

 空座本町駅で電車を降り、改札を抜けて帰路に就いた。

「イイ匂イガスルナア」

 虚の霊圧。

 振り返ると、イカのような虚の姿があった。

「あら、あなたも美味しそうね」

 私は死神化した。

「死神ダッタノカ」

「虚の分際で私に挑もうなんざ、百万年早いわ!」

 私は虚の懐に潜り込んだ。

 



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第34話:康太、死す

「……!?」

 攻撃を躱された。

 背後に回り込まれ、攻撃を受ける。

「ぐわ!」

 私の体が吹っ飛び、地面に転がる。

「くっ!」

 体を起こし、姿勢を整える。

「隙アリダ!」

 虚が突進してくる。

「うわ!」

 受け身で躱す。

 虚は壁に突っ込んだ。

「はあ!」

 虚の頭部を背後から斬魄刀で突き刺した。

「ぎゃああああ!」

 虚は悲鳴を上げながら消滅した。

 私は肉体へと戻る。

 立ち上がり、家路に就いた。

 

 

「ただいまー」

 家に着く。

 静かだった。

「康太? お姉ちゃん帰ったよ」

 ……………………。

 誰の反応もない。遊びに行っているのだろうか。

「……?」

 血腥(ちなまぐさ)い。

 臭いを辿ってみる。

 康太が寝室で血を流して倒れていた。

「康太!?」

 魂魄が入っていない。

 因果の鎖は断ち切れている。

 私がいない間に何があった?

 携帯で父に電話した。

 血相を変えて飛んでくる父。

「康太捜してくる」

「捜してくるってお前……」

「何者かに殺されたんだとしたら、康太の魂魄が彷徨ってるはず。もしいたら、魂葬してあげないと」

 私は康太の霊圧を探る。

 何も感じない。近くにいないのか。

 私は死神化して外へ出た。

 浮遊霊に康太を見ていないか訊ねる。

「いや、見てないな」

「そう」

 ついでに魂葬しておく。

「どこ行ったのよ、康太」

「お前が捜しているのは、この魂魄か?」

 その問いに振り返ると、虚が康太の魂魄を握っていた。

「貴様か!? 貴様が康太を!?」

「お姉ちゃん!」

 康太が虚の手の中で暴れる。

「生きのいい魂魄だ。これは美味そうだな」

「嫌だ! 僕まだ死にたくない!」

 いや、もう死んで……って、突っ込んでる場合じゃない。

「康太を離せ!」

「嫌だね。お前が代わりに食われるってのなら放してやってもいいが」

 その時、虚の背後から光の矢が飛んでくる。

 康太を握っていた手が吹っ飛んだ。

「康太!」

 私は康太を受け止めた。

「ぎゃああああ! 俺の手がああああ!」

 矢の飛来した先には、石田の姿があった。

「石田くん」

「たまたまコンビニの帰りに通りかかったのでね。あ、別に虚の霊圧を感じて家から買い物袋を提げてきたわけじゃないからな」

 うわー……。

 おっと。

 虚を見ると、逃げようとしていた。

「逃すか!」

 石田が矢を放った。

 矢が虚の後頭部に突き刺さる。

「ぎゃああああ!」

 虚は消滅した。

 私はしゃがんで康太を見る。

「康太、あなたはこれから、行くべき場所へ行かないとならないの」

「行くべき場所?」

「そう。残念だけど、こっちではもう暮らせないんだ」

「そんな……」

 康太は涙を流し始めた。

「お姉ちゃんと一緒じゃないのは嫌だ!」

「北神さん、浦原さんに相談してみたらどうだい?」

「いくら強欲商人でも死人は生き返らせられないと思うよ?」

 そこへ、下駄を履いた帽子を被った男が現れる。

「おやおや、私の力が要りようで?」

 



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第35話:康太、旅立つ

「浦原さん!?」

「どうやら、康太くんの因果の鎖が切れてしまったようですね。でも、大丈夫ですよ!」

「なにが大丈夫なんだよ!?」

 私が浦原を蹴り倒そうとすると、すんでのところで(かわ)された。

「康太くんにもわずかながらにあるでんすよ」

「何が?」

「死神の力がね」

「え?」

 突然のことに、私は動揺した。

「康太くん」

 と、浦原が康太に近づく。

「生き返りたいですよねえ?」

「うん。でも、死んだ人間は生き返らないんでしょ?」

「それが、君の場合は特別でね。黒崎さんとこの息子さんにやったことを、君にもやってもらおうと思ってね」

「そうすれば、生き返れるの?」

「いや、正確には死神になる、かな」

「死神? 僕が?」

「はい。ということで、こちらへ」

 一同は空座町の地下空間へと案内された。

「はあ!? なにこの広い空間!? 浦原商店の地下にこんなものがあるなんて!」

 私は地下空間を見て驚いていたが、石田はそうでもなかった。

「久しぶりだな、ここ。尸魂界(ソウル・ソサエティ)へ行ったとき以来だ」

「石田、尸魂界に? どうやって?」

「ああ、浦原さんの霊子(れいし)変換装置を使ってね。それがあれば、死神じゃなくても尸魂界へ行けるんだ」

「そうなんだ」

「さて、それじゃあ……」

 うるるという女の子が現れた。

 うるるが突然と康太に襲いかかった。

「うわ!」

 康太はとっさに躱した。

「はい、合格」

「何の試験だったの?」

「霊力テストですよん」

 そう言って、浦原が杖で地面をつつくと、康太の足元に深い穴ができて落下していった。

「七十二時間以内にそこから死神になって這い上がってきて下さい。それを過ぎると、虚になりますので、その時はお姉さんの手で葬られて下さいね」

「は!? 私はしないわよ!」

 タイムリミットは三日。それまでに康太は死神になれるのだろうか。もしなれなかったら……。

 康太が、壁をよじ登ろうとするが、しかし、滑落(かつらく)してしまう。

「お姉ちゃん、助けて」

 私は飛び降りたい気持ちでいっぱいだった。しかし、ここを降りて康太を助けようものなら、彼が死神になるという浦原の計画が頓挫(とんざ)してしまう。

「康太、頑張って死神になるのよ!」

「無茶言わないでよ。第一、僕は死神へのなり方すら知らないんだよ?」

「浦原さん、普通の魂魄が死神になるにはどうすればいいの?」

「尸魂界で死神の学校に入校すればいいんす」

「じゃあそうすればいいんじゃない?」

「ですが、そうすると現世にいたころの記憶は全て消えてしまうんすよ」

「え……?」

「だから、無謀な賭けに出たのですよ」

「うわああああ!」

 康太が穴の底で悲鳴をあげた。

「康太!?」

「鎖が! 胸の鎖が短く!?」

「それは自ら侵食します! 侵食しきる前に死神になって下さいね!」

「浦原さん、やっぱり尸魂界に!」

「いいんすか?」

「死神の学校に行かせて、現世に来た時に浦原さんの技術で記憶を元に戻す手段の方がいいかなって」

「できなくはないですが……」

 浦原が考え込んだ。そして。

「わかりました。聡美さん、康太くんを救出して下さい」

 私は穴の底に飛び降りた。

「お姉ちゃん!」

 康太が私に抱きつく。

「康太……」

 私は康太を抱えて穴を飛び出した。

 浦原が康太を連れて地下空間から出て行く。

 店の奥に康太を招き入れた浦原が、康太の記憶を機材を使ってバックアップを取った。

「では、康太くん尸魂界(むこう)で死神の学校へ行って下さい」

「そうすれば、生き返れるの?」

「元の肉体には戻れませんが、義骸を着てこちらで活動することができます。私みたいにね」

 浦原さん、義骸だったのか。

「それじゃあ、少しの間……」

 私は溢れ出そうな涙を必死に堪え、斬魄刀の柄を康太の額にあてがう。

 康太は光に包まれ、尸魂界へと旅立っていった。

 



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第36話:康太、帰る

 尸魂界。

 康太は流魂街にやってきた。

「えっと、死神の学校は……」

「なんだおめえ?」

 草むらで一休みしていたハゲ頭……もとい班目(まだらめ) 一角(いっかく)が訊ねる。

「おじさんは?」

「おじさんじゃねえよ。班目 一角だ」

「お姉ちゃんと同じ服ってことは、班目さんも同じ死神なの?」

「ああ。てか、姉貴?」

「僕、虚に殺されて、お姉ちゃんに魂葬してもらったんだ」

「お前、流魂街の新入りか」

「うん。僕、死神になりたいんだけど」

「お前が死神に? やめとけ。お前みたいな子どもじゃついていけねえところだからよ」

「それでも、僕はお姉ちゃんの元で暮らしたいんだ!」

「そうか。けどよ、死神になったら、生きてた時の記憶はなくなるぜ?」

「浦原さんって帽子のおじさんがなんとかしてくれるって」

「浦原? よりによってあいつかよ」

「それより、死神の学校ってどこにあるの?」

「あ? 瀞霊廷内にあるぞ。案内してやる」

 康太は一角に死神の学校である真央霊術院へと案内される。彼はそこで簡単な入院試験を受けて合格した。

 やがて、力をつけた康太は、真央霊術院を卒業し、死神として護廷十三隊の十三番隊に入隊した。

「うーん……なんか大事なことがあったような気がするんだけどなあ」

 康太は思い出そうとするが、何も覚えていなかった。

 

 

 

 

 

 私は尸魂界にやってきた。というのも、浦原が尸魂界からの情報で、康太が十三番隊に入隊したというからだ。

 十三番隊といえば、朽木 ルキアの所属する隊だ。

「康太!」

 十三番隊の宿舎廊下を歩いている康太に声をかけた。

「え?」

 振り返る康太。

「えっと……?」

「入隊おめでとう」

「お姉さん、誰?」

 記憶を失ってる……。浦原の言う通りだった。

「あ……僕、北神 康太。お姉さんは?」

「聡美よ」

「お姉さんも死神なんだ?」

「うん」

「ここにいるってことは、十三番隊の人、だよね?」

「いや、私はどこにも所属してないんだ。現世で代行やってる」

「死神代行?」

「うん」

旅禍(りょか)?」

「そうなるわね」

「ここへはなんの用なの?」

「康太を呼びに来たの。現世に行こうよ」

「現世に? でも、滞在許可が出てないし」

「それは問題ないわ」

「どういうこと?」

「いいからいいから」

 私は康太を強引に現世へ連れ帰った。

「浦原さん!」

 浦原商店に入る。

「お帰りなさい、康太くん」

「おじさん、誰?」

「後で思い出しますよん」

 康太は疑問符を浮かべた。

「それじゃ、奥へお入り下さい」

 私と康太は店の奥へ移動した。

「康太くん、これを頭に被って下さい」

 浦原が記憶をバックアップするときに使ったキャップを康太に渡した。

「これで何を?」

「失われた記憶を戻すのです」

「失われた記憶?」

「あなたには、死神になる前、つまり流魂街に現れる以前の記憶を取り戻してもらいます」

「……?」

「説明より実行! さあ、被って下さい!」

「こんな訳のわからないものいきなり渡されて被れ? 怪しすぎでしょ」

「お願いよ、康太。被って」

 私が言うと、

「……………………」

 康太は無言で被った。

「さて、うまく行くでしょうか」

 浦原が機械を起動した。

 康太の脳裏に、生前の記憶が蘇る。

「康太?」

「お姉ちゃん!」

 康太が抱きついてきた。

「おかえり、康太」

 私は康太を抱きしめた。

 



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第37話:鬼天帝ラミア

 空座町。

 隣接する童守町からは、ものすごい霊圧がひしひしと伝わってきていた。

「まずいな」

 私は代行証で死神化し、肉体を部屋のベッドに置いて童守町へ急いだ。

 降臨した鬼天帝にラミアが憑依した瞬間に立ち会う私。

 ぬ〜べ〜が三体の鬼、覇鬼(ばき)絶鬼(ぜっき)眠鬼(みんき)と合体し、鬼の装甲を身にまとって鬼天帝ラミアを圧倒している。

 だが、圧倒もつかの間、ラミアは更なるパワーアップをし、ぬ〜べ〜をフルパワーで跳ね飛ばした。

「うわ!」

 合体が解除された。

 そこへ、ぬ〜べ〜の妻であるゆきめが参戦。ラミアの妖力を吸収し始めた。

「先生、今です!」

 力を失ったラミアに、ぬ〜べ〜の鬼の手NEOが炸裂する。

「うわああああ!」

 悲鳴を上げ、消滅した……かに思われた。

 ラミアは激しい怒りを抱き、虚へと堕ちる。

 胸部に穴が空き、ラミアの顔に仮面が現る。

「切り裂け、鎌鼬!」

 私は斬魄刀を始解させた。

「虚なら私の専売特許!」

 私は虚と化したラミアを斬りつける。

「はあ!」

ガン!——ラミアが腕を盾に斬魄刀を受け止め、フルパワーで押し返す。

「ぐおおおおああああおおおお!」

 ラミアの咆哮と共に私は後方に吹っ飛んだ。

 ゴロゴロと地面を転がる私の体。

「ぐっ!」

 その体はボロボロとなっていた。

 覚束(おぼつか)ない足取りで立ち上がる。

 本当はやりたくないが、アレをやるしかなかった。

「うおおおお……!」

 私は霊圧を暴走させ、完全なる虚と化した。

 その後のことはよく覚えていないが、ラミア虚を呆気なく倒してしまった。

 標的を失った私は、敵味方の区別もつかず、見境なく暴れた回ったが、それをぬ〜べ〜が必死になって止め、暴走した霊圧を沈めてくれたのだ。

「全く、無茶しやがって……」

「ごめん。ありがとう」

 かくて、鬼天帝の脅威は終わりを告げ、童守町は平和な日々を取り戻し始めた。

 

 

 ラミアを倒した私は、空座町に戻ってきた。

 肉体に帰還した刹那、ドアが外側からノックされた。

 ドアを開けると、康太が立っていた。

「お姉ちゃん、帰ってきたところ悪いんだけど、ご飯」

「うい」

 私は部屋を出ると、キッチンへ移動して食事の支度を始めた。

 何を作ろうか、疑問符。

「あ!」

 両手を一回、パンと叩く。

 康太はハンバーグが好きだ。ハンバーグを作ってやろうではないか。

 私は冷蔵庫からひき肉を取り出し、ハンバーグを作り始めた。ついでにソースのオリジナルで。

 ハンバーグが完成し、食卓に並べる。

 タイミングよく康太がやってくる。

「あ、ハンバーグだ!」

 席に着く康太。

「いただきまーす!」

 康太はハンバーグを頬張り始めた。

 




とりあえず、ぬ〜べ〜編はこれで大団円。


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戦闘執事編 第01話:いなくなった教師たち

 私は空座町にほど近い、杉並区に来ていた。

 最近、ここ杉並で、怪奇現象が後を絶たないという噂があったからだ。

 死神である以上、怪奇現象と聞いて黙ってはいられない。

 現地の霊能力者I.S氏によると、私立白皇学院の時計塔(ガーデン・ゲート)の封印の力が弱まっているからだという。

 私はくだんの件を調べるべく、白皇学院に学籍を移した。

「初めまして! 空座第一高校から来ました、北神 聡美です! よろしくお願いします!」

 黒板の前に立ち、自己紹介をする私。

 すると、クラスメイトから大歓迎された。

 ……。

 …………。

 ………………。

 休み時間、私はクラスメイトたちに囲まれていた。

「彼氏いるの?」とか、「どこに住んでるの?」とか、色々と質問ぜめにあっていた。

「おい、お前たち。北神が困ってるじゃないか」

 と、金髪ツインテールの小さな女の子が言った。

 周囲を囲っていた生徒たちが散らばっていった。

「あ、ありがとう。助かったよ」

「いや、当然のことをしたまでだ。私は三千院(さんぜんいん) ナギだ。ナギと呼んでくれ」

それから——と、水色短髪の童顔の男子生徒を示すナギ。「こいつは綾崎(あやさき) ハヤテ。私の執事だ」

「羊……?」

「執事だバカヤロー!」

「冗談」

「ぶう」

 ナギはふてくされて黙り込んだ。

「北神さん」

 と、桃色長髪の女の子が声をかけてきた。

「あなた、剣道やってるでしょ?」

「え?」

「あ……私、(かつら) ヒナギク。ヒナギクでいいわ。あなたの佇まい、剣道をやってる人の佇まいだわ」

「ま、前の学校で剣道やってたのよ」

「やっぱりね。……うん、決めた。あなた、剣道部に入りなさい」

「そういうあなたは部長で、私を勧誘してるの?」

「いけないかしら?」

「いや、別にそういうわけじゃ……」

「だったら、いいわよね?」

「うん、まあ……」

「それじゃ、早速入部の手続きをしに行きましょう?」

「うん」

 私とヒナギクは入部手続きをしに、職員室へ行った。だが。

「変ね。誰もいないわ」

 (もぬけ)(から)だった。

 微量だが、霊圧を感じる。霊的なものの仕業だと思われる。

「ん? (かす)かだけど、何かの気配を感じるわね」

 ヒナギクには霊圧を感知する力があるのだろうか。

「ヒナギク? ひょっとして、あなた、霊が見えたり?」

「はっきりと。嫌いだけど」

「そうなんだ。じゃあ話は早いわね。これ、霊の仕業よ」

「霊が? なんでまた?」

「とりあえず、霊圧を辿りましょう」

 私は霊圧を辿る。後ろからはヒナギクがついてくる。

 



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第02話:アレキサンマルコ教会地下迷宮

 霊圧を追う。

 たどり着いたのは、教会。

「ここは……?」

「アレキサンマルコ教会よ」

 と、ヒナギク。

「ここにはダンジョンがあるわ」

「だ、ダンジョン?」

 ダンジョンって、RPGに出てくるあれか? ここはそういうあれなのか?

「そう、ダンジョン! 名付けて、アレキサンマルコ教会地下ダンジョン!」

 まんまだー。

「と、とりあえず、中に入って確認しよう」

 私とヒナギクは中に入った。

「えっと……?」

「階段はこっちよ」

 ヒナギクに案内され、階段の前にやってくる。

 私はカイを飲み込み、死神化した。

「北神さんが二人に?」

「私は一人だよ。こっちは改造魂魄(モッド・ソウル)のカイ」

「もっどそうる?」

「うん。尸魂界で作られた魂のこと」

「そうるそさえてぃ?」

「説明がめんどいから割愛するわ」

 私は階段を降り始めた。

「カイはそこで待ってて」

 ヒナギクが「ちょっと待って」と追いかけてくる。

 階下に着く。

「暗いわね」

「いつものことよ」

 だんだん目が慣れてきて、辺りのものが見えてくる。

「あ、あれは!?」

 先ほど学校で見かけた、(かつら) 雪路(ゆきじ)の姿を確認した。

 雪路は私たちに気づくとこちらへやってきた。

「ヒナー、お金」

「貸さないわよ! ていうか、こんなところでなにを?」

「最高級のお酒を売ってくれるっていうから来たのー。ヒナ、買いたいからお金貸して」

 ヒナギクが木刀を構える。

「ひやああああ!」

 逃げていく雪路。

「ダメ人間は放っておいて、先を急ぎましょう?」

 ヒナギクが歩き出し、私は後を追う。

 少し進むと、頭に輪っかをつけた、羽を生やした天使が現れる。

 ヒナギクが天使を木刀で真っ二つに!

「ちょっと、ヒナギク! 天使殺しちゃダメだって!」

「殺らなきゃこっちがやられてるわ」

「え?」

 その時、私の体が吹っ飛んだ。

「ぐわ!」

 放物線を描き、地面に落ちて転がる。

「北神さん!」

 私を吹っ飛ばした犯人は、天使だった。

「え?」

「よくも北神さんを!」

 ヒナギクが天使に斬りかかる。

 天使はヒナギクの攻撃を()なし、思い切り吹っ飛ばした。

「きゃ!」

 吹っ飛んで壁にぶつかるヒナギク。

「がはっ!」

 ヒナギクは吐血した。

 この霊圧、悪霊の類か。

 私は立ち上がり構える。

 天使がこちらに気づき、猛スピードで迫ってくる。

 私は瞬歩で攻撃を(かわ)すと、背後に回り込んで首筋にチョップを浴びせた。

 天使はバランスを崩す。そこにすかさず蹴りを入れて倒した。

「天使さんはなんで私たちを攻撃するの?」

 天使が立ち上がり、振り返る。そして反撃を浴びせてきた。

「どわ!」

 不意打ちで吹っ飛ぶ私。

「ぐ!」

 壁に背中から激突した。

「悪霊が! お尻ペンペンしないとわからないかしら!?」

 私は斬魄刀に手をかけた。

風牙招来(ふうがしょうらい)!」

 斬魄刀から放たれた風撃が天使を切り裂き消滅させる。

 テレレレレッテッテーン!

 謎の音声と共に私とヒナギクのレベルが二になったようだ。

 その後も何度か戦闘を繰り返し、遂には九十九レベルに。そして、最下層に到達した。

 最下層では、連れ去られた教師たちが、宙に浮くカプセルのようなものに閉じ込められていた。雪路も例外ではない。

 教師たちは眠っているのか、動く気配がない。

「お姉ちゃん! みんな!」

 と、ヒナギクが叫ぶ。

 すると、そこへ筋骨隆々のゴリ◯ーマンのような姿をした女が現れる。

「待っていたぞ、死神。こうすればそちらからやってくると思ってな」

「なぜ私を?」

「貴様の体が欲しいからだ」

「『体』がほしい『からだ』? 寒いギャグ言ってんじゃないよ」

「バカか。私は貴様になりたいのだ」

「どういうこと?」

「貴様は端正な顔立ちをしている。だが、私はこの通り醜い」

「……フッ、くだらない」

「なんだと?」

「人は外見じゃないんだよ」

「うるさい! 私は可愛くなりたいんだ!」

「そんなに言うんだったら、こいつは貸してやる」

 そこへカイが現る。

 私は代行証でカイを肉体から取り出した。

「い、いいのか?」

「いいわ」

 女が私の肉体に重なった。

 起き上がる肉体。

「ありがたく頂戴しよう」

 去っていく肉体。

「北神さん、いいの?」

「いいわ。あれ、義骸だから」

「義骸?」

「こんなこともあろうかと思って、尸魂界の技術開発局で作ってもらったの」

「何を言ってるのかさっぱり」

「本物はこっち」

 私は懐からカプセルを取り出した。

 カプセルを開くと、中から本物の肉体が飛び出した。

 私は肉体に重なって元に戻った。

「さて」

 私は蒼火墜(そうかつい)で宙に浮くカプセルを破壊。教師たちを解放した。

 



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第03話:破面の帰還

 私は白皇学院に登校する。

「おはよう、北神さん」

 と、ヒナギクが言う。

「おはよう」

 校門を抜け、校舎へ。

「北神さん」

 後ろでヒナギクが声をかけてきた。

「何?」

 振り返る。

「歩くより電車の方が速いわ」

「電車?」

 学校内にそんなものが。

 私の横を電車が減速しながら通り過ぎた。

 ヒナギクが乗り込む。

 私も駆け足で乗り込んだ。

「なんで電車が?」

「校門から校舎まで距離があるからよ」

「どんだけ広いのよ」

「これに乗れば一分で着くわ」

 電車が発車し、一分ほどで校舎の前に着く。

 私とヒナギクは電車を降り、校舎に入った。

 靴を履き替え、教室へ行く。

 クラスメイトが何か話している。

「おい、聞いたか? 北神に続いてまた編入生が来るんだってよ。しかもうちのクラスらしいぜ」

「女の子か?」

「いや、男。しかも美男子らしい」

 そこへ教師が入ってくる。

「ホームルームの前に新しい仲間を紹介する!」

 入れ!——と、促すとウルキオラ、もとい啓太郎が入ってきた。

「ウルキオラ!」

「よう」

 と、啓太郎が私に向かって手を挙げた。

「なんだ、北神は稲垣と知り合いだったか」

 教師が私の隣へ座るよう促した。

「いつ戻ったの?」

「さっきだ」

「お帰りなさい」

 ホームルームが始まる。

 ……。

 …………。

 ………………。

 昼休み。

 私は、ヒナギクと啓太郎と三人で屋上で弁当を食べていた。

「確かに、巷ではここのところ怪奇現象が頻発してるわね」

「伊澄さんっていう霊媒師によると、時計塔の力が弱ってるみたいよ」

「そうらしいわね。鷺ノ宮さんと会ったんだ?」

「うん」

「稲垣くんは?」

 唐突に話を振られて、「へ?」と、素っ頓狂に疑問符を浮かべる啓太郎。

「……言葉足らずだったわね。なんで編入してきたの?」

「俺は……聡美のことを守るためだ」

 その言葉に私は「嬉しいわ、ウルキオラ」と答える。

「ウルキオラ?」

「ああ、ウルキオラってのは(ホロウ)としての名前よ」

「虚?」

「悪霊の類。ウルキオラは別だけど」

 その時、「きゃああああ!」と、悲鳴が聞こえてきた。

「……!?」

 大きな霊圧。虚のものだ。

「なにこの気配?」

「虚のものよ。放っておけば大変なことに」

 弁当を食べていた私は箸を置き、代行証に手を伸ばした。

 死神化する。

「ウルキオラ、体見張ってて」

「ああ」

 私はヒナギクと共に悲鳴の元へ駆けつける。

 そこでは、女の子の霊が虚に襲われていた。

「あの子は!?」

「霊ね」

 ヒナギクは虚を見る。

「なにあの化け物!?」」

「あれが虚。人間だった(もの)が堕ちた魂魄よ」

 私は大刀を鞘から引き抜いた。

 ヒナギクも木刀を構える。

「なんだ?」

 虚がこちらに気づく。

「ほう。これはまたうまそうなのが現れたな。一人は死神か」

「ヒナギク、霊をお願い」

 私は虚に斬りかかる。

 斬魄刀の刃先が虚を掠る。

「浅い!」

 虚が反撃してきた。

「どわ!」

 吹っ飛ばされ、地面を転がる。

「北神さん!」

「大丈夫よ」

 私は立ち上がる。

「黒崎くん、技借りるわよ!」

 私は大きく振りかぶった斬魄刀を。

「月牙……天衝!」

 一気に振り下ろし、飛翔した黒い斬撃が虚を真っ二つに引き裂いた。

 虚は粒子となって消滅した。

「死神さん」

 襲われていた霊が声をかけてきた。

「ありがとう」

「魂葬、するわね」

 私は斬魄刀の柄を霊の額にあてがう。

 霊は地獄蝶に導かれて尸魂界へと昇っていった。

 私は校舎の屋上へ飛び上がり、肉体へと戻った。

 



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第04話:入れ替わり

 放課後。

 帰り支度をしていると、鷺ノ宮(さぎのみや) 伊澄(いすみ)がやってきた。

「あら、鷺ノ宮さん」

「お帰りなんですね、死神さん」

「そういえば、今日は見かけなかったけど、どこにいたの?」

「道に迷ってフランスに行ってました」

 なんで道に迷っただけでそんなところに行くのだろう?

 日本とフランスの間には海がある。飛行機にでも乗らない限り行けないのだが。

「死神さん、ちょっと来てもらえますか?」

「いいけど……」

 私は伊澄に案内され、理事長室へ。

 金髪縦ロールの女の子、天王州(てんのうす) アテネ理事長が出迎える。

「理事長さん、連れてきました」

「北神 聡美さん、あなたにお話がありますわ」

「お話?」

「ハヤテのことについて」

「綾崎くんの?」

「はい」

「実は、ハヤテがハヤテじゃないんです」

「え?」

 意味がわからなかった。

「どういうこと?」

「昨日あたりから、ハヤテがまるで別人のようになってしまって」

「綾崎くんが、別人?」

「はい」

「もしかしたら、虚とかいう悪霊の仕業なんではないでしょうか」

「うーん、別に何も感じなかったけどな」

「とりあえず、ハヤテを呼びますから、その死神代行……なんでしたっけ?」

「死神代行戦闘許可証。略して代行証」

「そう、それでハヤテの魂を引っ張り出してみてもらえないでしょうか。もしかしたら、別の魂が」

「なるほど」

 理事長が綾崎を呼び出した。

「なんでしょうか、天王州理事長」

 おかしい。彼は一昨日は理事長をアーたんと言っていた。

 私は綾崎の体に代行証を押し付け、魂魄を引っぺがした。

 魂魄はナギだった。

「ナギ?」

「ハヤテは?」

 ナギはことの顛末を話す。

 どうやら、ナギとハヤテは階段で転げ落ち、入れ替わってしまったようだ。

 胸の因果の鎖も結びついてしまっている。

「これは私の手には負えないわ」

「ハヤテはどこ?」

「ハヤテなら屋敷で寝てるぞ。体調不良だってな」

「そう……」

「どうやったら戻れるのだ?」

「もう一度、綾崎くんと転げ落ちる」

「いやだ。痛いだろ」

「うーん」

 私の脳裏に浦原の顔が。

「浦原さんに相談してみるか」

 私は携帯で浦原に相談した。

 浦原の答えでは、やはりもう一度同じ衝撃を与えるしかないとのことだ。

「やっぱり転げ落ちないとダメなのか……」

 私たち三人はナギと共に彼女の屋敷に向かう。

 寝室のベッドに横たわるナギの姿をした綾崎。

「お嬢様に、みなさん?」

「綾崎くん、具合悪いところ申し訳ないんだけど、ナギとまた階段から落ちてくれる?」

「構いませんが……」

 私たちは屋敷の階段に移動した。

「ここの階段で入れ替わったんだ」

 と、綾崎姿のナギ。

「じゃ、やってみよう」

 綾崎とナギが階段を登り、転がり落ちる。

 そして——。

 



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第05話:観音寺、再び

 綾崎とナギが階段から転がり落ちた。

「痛……!」

「う……!」

 綾崎とナギが起き上がる。

「も、戻ってる」

 と、ナギは言って気を失った。

「ナギ!」

 と、鷺ノ宮。

「体調不良なのに無理させちゃったのね」

「お嬢様……」

 綾崎がナギを抱えて歩き出す。

「お嬢様を部屋まで運びます」

 綾崎はナギを部屋まで運んで行った。

「帰りましょうか、鷺ノ宮さん」

「にゃー」

 猫のような鳴き声。振り向いた先には——。

「ホワイトタイガー!?」

「まあ、タマ」

「タマ? それ猫なの?」

「いいえ、白虎です」

「猫にしてはでかいわよね」

 ……。

「いやいや、ホワイトタイガーは危ないでしょ!」

「大丈夫よ」

 タマという虎は、鷺ノ宮に(なつ)いていた。

「ていうか、虎がにゃーと鳴くなんて」

「普段は猫に扮してるからな」

 タマが言った。

「虎が喋ったああああ!?」

「あ!」

 タマが慌てて口を塞いだ。

「もう遅いわよ、タマ」

 と、鷺ノ宮。

「俺が喋れるのは執事以外には内緒だぜ?」

 タマはそう言うと、去っていった。

「鷺ノ宮さん、あの虎って何者なの?」

「ナギが外国で拾ったのよ」

 ナギも何者なんだ。

「そんなことより、用も済んだから、帰りましょう?」

 と、鷺ノ宮。

「あ……うん」

 私たちは屋敷を後にした。

「ピギャアアアア!」

 虚が現れる。

 鷺ノ宮がお(ふだ)を飛ばして虚を粉砕する。

「死神さんは、いつもこんなのと?」

「ええ、まあ」

「大変ね」

「もう慣れたわ」

 鷺ノ宮と別れ、帰路に就く。

 と、そこへ「ボハハハハハ!」という聞き覚えのある笑い声。

 探ってみると、観音寺の撮影が行われていた。

「げ! 観音寺!?」

 観音寺がこちらに気付く。

 撮影を中止させ、近付いてくる。

「Youはあのときの!」

 2話ご参照

「な、なんのことでしょうか?」

 関わりたくない。

「あのときの死神ではないか」

「バレた?」

「お前さんの霊圧はすでに既知だからな」

「あんたは撮影か?」

「おうよ!」

「にしては、虚もプラスもいないね」

「そうなんだ。番組のやらせさ。編集で霊を合成させるみたいでな。私は断ったんだが、どうしてもってな」

「そうなんだ」

「Youは何をしてる?」

「知人宅からの帰宅途中だけど」

「頼む! 死神になってあいつらのカメラを破壊してくれ!」

「人のものを壊すのは犯罪だよ?」

「魂魄に法は適用外さ」

 その時、クルーたちのカメラが次々に破壊された。

 なんと、ウルキオラが破壊していた。

 手回しのいいことで。

「あやつは?」

「私のカレよ」

「そうか。しかしあの胸の孔は?」

「そりゃ虚だからね。意思のある」

「それじゃ悪霊か!」

「ウルキオラに手出したら殺すからね?」

 笑顔で言う。

「こ、怖い」

 一方でクルーたちはなにが起こっているのかわかっていなかった。

 



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第06話:異界

 白皇学院。

 時計塔の上空に、上下が反転した街が浮かんでいる。

 生徒たちは何事かと、時計塔を見上げている。

「封印が解かれました」

 と、鷺ノ宮 伊澄。

「あれは何を封印してたの?」

 私は鷺ノ宮に訊いた。

「異界よ。あそこから沢山の魔物たちがやってきたことがあって、それで封印していたの」

「鷺ノ宮さんが封印を?」

「私と、他の霊媒師たちと一緒にね」

 いずれにせよ放っておけない。

 私はカイを飲み込み、死神化した。

「あんなの根元から断てば」

 異界に向かって飛び上がる。

 魔物たちが異界から飛び出してくる。

「うわりゃ!」

 迫り来る魔物どもを蹴散らし、敵陣に乗り込む。

 異界に突入した瞬間、引力の向きが変わる。

「うわ!」

 私は地面に向かって落ちていく。

 体勢を整え、着地する。

 私は敵の根城を霊圧で辿った。

「ここか……」

 お城のような建物の前で立ち止まる。

 扉が開き、歓迎されるかのごとく、中に入る。

 玉座にやってくると、椅子に座る魔物の長が言った。

「ようこそ、我が城へ。私の城に何用か?」

「城もろともこの世界を破壊しに来た」

「ほう。侵略者か」

「侵略者はそっちだろ」

「貴様、何者だ? 見た所は人間のようだが、その格好は?」

「死神代行、北神 聡美。よろしく!」

「死神だと?」

 魔物の長が立ち上がる。

「我を刈るつもりか? ならんぞ!」

 魔物の長が頭上から刀を取り出す。

 二人同時に前進し、剣を交える。

 互いにぶつかりあった刃が金属音を掻き立てる。

 めきめきと斬魄刀が悲鳴をあげる。

 折れる!

 私は飛び退いた。

「あんたのその剣……」

斬魔刀(ざんまとう)のことか? これはこの魔界に伝わる伝説の秘宝でな、あらゆるものを切り裂く剣。貴様のただの剣では適うまい」

「ただの剣? これは斬魄刀……ただの刀じゃないわ」

「ほう」

「この刀はね、霊体なら斬ることができるのよ」

「霊体を斬る?」

「あなたは!?」

 私は斬撃波を飛ばした。

 衝撃で魔物の長が後退する。

 ポタポタ、と血が滴れる。

「む……」

 魔物の長は自分の腹部を見た。

「お、おのれえ!」

 魔物の長が高速接近する。

「ぐわ!」

 体当たりされて後方に吹っ飛び、壁に激突する私。

「がっ!」

 衝撃で意識が朦朧とする。

「月牙……天衝……!」

 その声とともに、どこからか斬撃波が飛来し、魔物の長が吹っ飛んだ。

「大丈夫か? 北神」

「黒崎くん!」

「おめえの霊圧が消えたと思って来たら、なんなんだ、ここは?」

「ここは魔界らしいわ」

「魔界?」

「うん。魔物たちが現世に侵攻を始めてね。根本を潰せば、勢力落ちるかなって思って、あいつと」

 私は魔物の長を差した。

「ていうか、誰が助けてなんて言った?」

「素直に礼ぐらい言ったらどうだ?」

「うるさい!」

 私は仮面の軍勢(ヴァイザード)化して、立ち上がった魔物の長に接近する。

「やああああ……!」

 渾身の一撃が、魔物の長に大きな傷をつけた。

「がはっ!」

 吐血する魔物の長。

「き、貴様! 一度ならず二度までも!」

 私は無言を回答に、瞬歩で背後に回り、魔物の長の首を切り落とした。

「な、なんだ……と……?」

 動きを止め、倒れる魔物の長の体。

 ごとりと音を立てて落ちる魔物の長の首。

 ゴゴゴゴゴ……!

 辺りが揺れ始めた。

「崩れるぞ!」

 私と黒崎は城を脱出すると、杉並の時計塔の前に戻った。

「お帰りなさい、死神さん」

 と、鷺ノ宮が出迎える。

 上空の異界が消滅していく。

「魔物の長を倒したのね?」

「うん」

「これでもう、魔界は現れないはず……」

 と、鷺ノ宮は言う。

「で、そちらの殿方は?」

「黒崎だ」

「黒崎様ですか」

「死神代行だ」

「死神って沢山(たくさん)いるのですか?」

「まあな。現世には少数しかいないが、尸魂界ってところには沢山いる」

「ソウル・ソサエティ……?」

「あの世のことだ。死んだ人間は皆そこへ行くんだ」

「そうなんですね」

「それじゃ、俺は行くぜ」

 黒崎はそう言うと、飛び立っていった。

 



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東の高校生探偵編 第01話:東の高校生探偵

 白皇学院上空の異界の消滅後、私は空座町に戻っていた。

 あの街も、もう私は必要ないだろう。

 私は家の自室でベッドに横たわっている。

「さて」

 起き上がり、ベッドを降りる。

 スマホを確認すると、メールが来ていた。

 メールの内容を読む。

 差出人に工藤と表示されている。

 言わずと知れた東の高校生探偵のことである。

 私は工藤とは、幼稚園の時、同じクラスだったクラスメイト。

 当時、私と工藤は幽霊はいるいないでよく喧嘩をしたことがあった。

 その工藤からメールが来たのである。

 メールを読んで、私は工藤と会った。

 工藤は謎の犯罪組織に薬を飲まされ、小さくなったという。

 今は江戸川(えどがわ) コナンと名乗って父親が探偵をしている毛利(もうり) (らん)の家に居候しているらしい。

「へえ、薬で小さくねえ」

 にわかには信じがたい。

 だが魂魄はコナンの身長を抜いており、工藤のものであると窺える。

 小さくなる薬は魂魄には影響しなかったみたいである。

「で?」

「で?」

「私を呼びつけたのには理由があるんでしょ?」

「うん、まあ」

「話しなよ」

「おめえ、まだ霊が見えるのか」

「見えるどころか悪霊と戦ってるよ。でもさ、あなた霊はいないと言ってたじゃん。それがどうして?」

「実はな……」

 コナンはたまたま目撃した事件で、被害者がいきなり血飛沫(ちしぶき)をあげ、肉体が消えるという現象に遭遇したという。

 マジックのタネかとも思ったが、現場を調べてもそんな痕跡などは見つかっておらず、依然、解決はしていなかった。

 私はコナンに連れられ、現場である米花公園にやってくる。

 コナンはここで小学校のクラスメイトと一緒にサッカーをしていて、たまたま茂みの中に入ったボールを取りに行った際に事件に遭遇したという。

 私は現場を霊視した。

 微かにだが、虚の霊圧が残っている。ここで人が襲われたのは間違いなかった。

「工藤くん、被害者の容姿は?」

「金髪で痩せた男だったぜ」

「……………………」

「なにか見えるか?」

「ここで悪霊が暴れたのは間違いないわ」

「悪霊か。どんな姿なんだ?」

「もう完全に怪物よ」

「そうか」

「恐らく、肉体ごと食われたんだと思う」

 ……!?

「いい匂いがするなァ」

 背後より虚の声。

 私は振り返る。

「工藤くん、逃げ……」

 ドン!

 コナンの体から工藤の魂魄が飛び出す。虚に肉体から押し出されたのだ。

「うお、なんだこれ!?」

 工藤はだるそうにしながら大勢を整える。

「体が重い。それにあの化け物は?」

「こいつが悪霊よ!」

 私は死神化し、虚を斬りつけた。

 しかし、顔面には入るものの、攻撃が浅く、致命傷には至らなかった。

「ち!」

 私は一旦距離を置き、もう一度攻撃を浴びせる。

 会心の一撃! 虚は消滅した。

「北神、俺どうなったんだ?」

「ああ、魂が抜けたのよ。肉体に重なれば戻れるわ」

 工藤はコナンの体に重なった。

「お! って、北神が消えた!?」

 私は肉体に戻る。

「さっきの黒服の私は霊体だから、普通の人には見えないよ」

「霊ってほんとにいるんだな」

「うん。犯人もわかったことだし、私はもういいよね」

「いや、もう一つ付き合ってほしいことがあるんだ」

「もう一つ」

「ああ。この間、近所に住む阿笠博士(あがさはかせ)と回転寿司に行って、そこで殺人事件に巻き込まれてな」

「ほうほう」

「犯人は追い詰めて警察に逮捕してもらったんだけど、それ以来寿司屋で不思議なことが起こるようになってな」

「不思議なこと?」

「もしかしたら被害者の霊がいるんじゃないかって思ってな」

「どういう現象なの?」

「回ってる寿司が皿の上から消えるんだ」

「霊が食べると消えるよ」

「やっぱりそうか。成仏させれるか?」

「うん、まあ」

「よし、そこ行こう!」

 私とコナンは回転寿司店へ。

 中に入ると、魂魄が寿司をパクパク食べていた。

「食べても食べても満たされない……」

 私は魂魄に声をかける。

「そこのお兄さん」

「え?」

 振り返る魂魄。

「僕のこと?」

「うん」

「なにかな?」

 私は死神化した。

「うわ!?」

 驚く魂魄。

「腹が減ってるんでしょ?」

「うん」

「尸魂界に行けば、腹は減らないわ」

 私は斬魄刀の柄を魂魄に当てた。

「いやだ、僕はまだ地獄には……」

「あなたのいくとこは天国よ」

 魂魄は光に包まれて天に昇って行った。

 私は肉体に戻る。

「成仏させたよ」

「霊はなんで寿司を食べてたんだ?」

「腹が減ってたらしいけど、たぶん殺されたときに食べられなかったから、それが未練で食べ続けてたんじゃないかな」

「そうか。一段落したら腹減ったな」

「奢らないよ」

「ち!」

 私たちは寿司屋を出た。

 



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第02話:殺された殺人犯

 私はコナンと米花町内を歩いている。

「ん?」

 コナンが立ち止まって背後を見る。

「どうしたの?」

「いや、今誰かにつけられてるような気がして」

 霊圧を感じる。

 振り返ると、血だらけの女がこちらを見ていた。

「それ、気のせいじゃないと思う」

「なにか見えてるのか?」

「血だらけの女がね」

 と、その時だ。

「うわああああ!」

 アパートの一室から悲鳴が聞こえたかと思うと、男性が部屋から飛び出してきた。

「なんだ?」

 私とコナンは現場へと駆けつけた。

「どうしました?」

「あ……あ……あれ……」

 男性が指し示す先には血だらけの女の遺体。

 先ほどの霊と同じ姿をしているから、その霊は恐らく被害者。

「君は真犯人を。私は霊を解決するわ」

「おう」

 コナンが携帯を取り出す。

 私はカイを飲み込み、死神化した。

「お姉さん」

 と、被害者と思しき霊に声をかける。

「あなた、私が見えるのね」

「それは死神ですから」

「死神?」

「あなた、誰に殺されたの?」

「それがわからないのよ。気がついたら、死んでて」

 なるほど確かに因果の鎖は断ち切れている。

 部屋の中から(かす)かに虚の痕跡を感じた。虚が犯人か。

「とりあえず、あなたはここにいては危ないわ」

 私は斬魄刀の柄をあてがう。

 すると、地獄の門が出現し、女は大刀で貫かれ、その門の中に吸い込まれて行った。

 なにをした?

 私は部屋に入る。

 霊圧を辿り、虚にたどり着く。

「見つけたわ」

 休んでいた虚がこちらに気づく。

「死神か」

 虚が戦闘モードで襲ってくる。

 私は攻撃をかわし、背後に回って頭部に斬魄刀を突き刺した。

 虚は光の粒子となって消滅した。

 コナンの元に戻る。

 私は肉体に重なる。

「進展は?」

「どうやら人間のなせる業じゃないぜ」

「犯人は虚よ」

「そうか。あ、でも亡くなった女の情報ならあるぜ」

「情報?」

「亡くなった女、過去に人を殺してた」

「じゃそいつが虚になって復讐したってことかもね。いずれにせよ倒しておいたから安心して」

「そんじゃあ帰るか」

「そうね」

 私とコナンは後を警察に任せ、アパートを離れた。

「そういえば、工藤くんの言ってた阿笠博士って……」

「ん? ああ。発明家だよ。小さくなった俺にいろんなメカ作ってくれてな。例えば」

 コナンは蝶ネクタイをいじり、それを口の前に持ってきて私の声で喋った。

「すごい!」

 コナンはネクタイをしまう。

「変声機なんだ」

 あとは、とコナンは腕時計を示す。

「この時計からは麻酔銃が飛び出す仕掛けになってて、普段はこれで小五郎さんを眠らせて、変声機を使って代わりに事件を推理してるんだ」

「だから眠りの小五郎?」

「うん」

「そっか」

 



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