よくある話である。 (メディペール)
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1話

死んだと思っていたら神に会って転生させられた。稀によくある話である。……よくある話である。

 

よくある話同様、例に漏れず転生特典なるものを貰った。神さんに『サイキョーにして下さい』と言ったら却下された。めんどくさかったので『神さんが考える、俺に最も適してる能力を下さい』とお願いしておいた。おかげでどんな能力を貰ったのか俺は把握していない。別に知らなくても構わなかった。能力を使うつもりも、原作に関わるつもりもなかったからだ。

 

転生先は家庭教師ヒットマンリボーン。数年前アニメ放送されていたが残念ながら内容はあまり覚えていない。覚えていようがいまいが、主要人物に関わらなければ一般人として行きていけるだろう。ドンパチするのは前世でもう懲り懲りだ。

 

 

 

 

 

 

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一般家庭に生まれ、小学校3年生の頃に並盛町に引っ越しやって来た。あの時は冷や汗をかいたものだ。しかし主要人物とは一度も同じクラスになることはなかった。それどころか廊下ですれ違うこともなかった。

 

 

前世では幼い頃から球技(・・)をしていたが、現世では特に運動はしていない。平均的な身長体重に中肉中背。前世で成績が良かった訳ではない俺は今世でも頭が良い訳ではない。小学校では美術クラブに入り、同級生と和気藹々と絵を嗜んでいた。

 

中学1年でも特に主要人物と関わっていない。パンツ一丁男なんぞ見てないし、持田先輩がボコられるサマも見ていない。運動会は高熱で休み、黒曜の連中に絡まれては華麗にスルー。風紀委員に目を付けられることもなく、日々青春を謳歌していた。

 

 

そんな平々凡々な生活を送ってきたにも関わらず、今朝ポストにとあるリングが入っていた_____!

 

そう!アレである。なんちゃらリング!!

 

 

 

………。もう、十数年以上前のアニメの内容などほぼ覚えていない。確か、バリアフリーなんたら集団と後継を賭けて戦うヤツだ。

 

正直油断していた。今までなんの接点も関わりもないのに何故これが届いたのか。どこで選択をミスったのか。思い当たる節が全くない。考えられるとしたら神さんの悪戯か、転生者の運命、もしくは妖怪の仕業である。

 

あれこれ考えるのをやめた。届いてしまったものは仕方がないのだ。そうやって拭えないモヤモヤを割り切った。

 

 

偶然に、両親が商店街で当てた旅行券で昨日から2週間家を空けているのも、叔父叔母の家に何故か虫が大量発生しているのも、全て仕込まれていたに違いない。

 

本来は両親が家を空ける2週間の間、祖父祖母の家にお世話になる予定だったのだ。しかしそれは中止となった。というか行きたくない虫コワイ。その結果、私は1人お留守番する羽目となった。

 

いくらなんでもタイミングが良すぎる。

 

きっと私が如何なる抵抗をしてもこの運命には逆らえないだろう。リボーンがどのような性格だったかあまり覚えていないが、この陰湿な手口。某魔法学校ならスリザリンに組み分けられるに違いない。

 

 

 

そろそろ家を出なければ学校に遅刻してしまう。

大きくため息を吐き、肩まで伸びている後髪を一本に束ね姿見を見る。

そこには黄色いブレザーにスカート。黒髪黒目にややつり目。凛として、しかしどこか幼さも残す顔の女の子が立っていた。

 

 

そうそう、今世の私は女だ。だが、完全に死に設定である。

 

TS転生なんぞ、本当に、よくある話である。

 

 

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家を出て一番近くの十字路を曲がるとツンツン頭の男の子がいた。

誰あろう、ヤツである。ヤツの足元には偉そうな服を着た赤ん坊もいる。

 

「ちゃおっス」

 

 

 

目が合うや否や話しかけてきた。私は反応に困り、取り敢えずリボーン、ではなくヤツ…もとい沢田をゴミを見るかのような目で睨みつけることにした。私は元々目つきが鋭い。大抵のやつはこれでビビり道を譲ってくれる。沢田はヒッと情けない声を上げた。しかし道は譲ってくれないようだ。どうやら私の前に立ちはだかるらしい。

 

 

仕方がない。時間ギリギリで遅刻の恐れがあるが、沢田&リボーンと会話をしなければならないようだ。

 

 

「…何か?」

 

淡々と短く、不機嫌に喋る。

 

 

「あの…その…えーと」ヒィィ

「しっかりしやがれ」ダッ

「」イッテー

 

ビビる沢田にリボーンが蹴りを入れ落ち着かせる。

立派にカテキョ?してやがる。

 

「痛っー!えーと!隣のクラスの沢田です。白木恵さんですよね?」

 

 

白木 恵

 

そう、それが私の名前である。

それにしても名前の確認をするということはやはり初対面。なぜ私が選ばれたのだろうか?駄目だ、このことについて考えるのは辞めにしたのだ。平々たる日常を送っていたら非日常な厄介に巻き込まれることなど、よくある話だ。

 

 

「…そうですけど、何か?」

 

取り敢えず簡潔に返事を返す。相変わらず沢田はおどおどしている。ちらりと腕時計をみる。時間がやばい。このままでは遅刻してしまう。

 

駄目元で提案してみることにした。恐らく話の内容は今朝届いたリングについて。そしてマフィアについて。歩きながら話していいような内容ではない。だから駄目元だ。

 

 

「話は歩きながらでいいですか?」

「その必要はないぞ。学校には俺から欠席の連絡をしておいたからな」

 

 

案の定、リボーンにより私の案はひと蹴りされた。今日私は学校に行く必要がないようだ。しかし本当に?嘘かも知れない。

 

もちろん、原作のリボーンなら本当に連絡をしているだろう。でも、目の前にいるコイツは?私というイレギュラーがいる以上、何かしら、原作との相違があってもおかしくない。

 

そもそも原作知識があったとしても、私と彼らは初対面。初対面の人をいきなり信じるほど私は優しくない。

 

 

「証拠は?」

「これだぞ」

 

 

リボーンはどこからともなく一枚の紙を出した。何今のすごい後で教えてもらおう。紙を受け取ると欠席届と大きく書いてあった。承認者には雲雀恭弥の名前が彼の字で書いてある。どうやら私はインフルエンザで約2週間学校を休むらしい。初耳である。

 

 

このプリントは偽物なのではないか?———流石にそこまで疑うとキリがない。

 

それに私は雲雀恭弥を知っている。知り合いではない。並盛中に通っていれば嫌でも知ることになる。彼は間違いなく原作通りの雲雀恭弥であった。

 

 

 

_________ハァ

 

思わずため息が漏れる。なんとなく空を見上げた。清々しいまでの青空が広がっていた。

 

 

 

 

 

_______________________________________________________________

 

 

 

 

一先ず沢田とリボーンを家に招き入れ、苦っいお茶とマッズイお菓子を出し、詳しい話を聞かせてもらった。

 

 

マフィアのこと。ボンゴレのこと。次期後継者のこと。守護者のこと。私が雪の守護者に選ばれたこと。ヴァリアーのこと。来るべき戦いが差し迫って来ていること、などなど。3時間みっちり聞かされた。沢田は何度も何度も謝っていた。巻き込んでごめんなさいと。

 

私を選んだ理由について追求すると、明確な理由ははぐらかされた。

何を求めて、何に期待して私を選んだのか。前世はともかく、今世の私は喧嘩したこと愚か、殴ったことも殴られたこともない。つまり一般人である。

 

 

 

「______少し、考えさせて欲しい」

 

リングが届いた時に割り切ったつもりだったが実際に当人から話を聞くとやはり不安が強くなる。

 

沢田とリボーンの客間に残し、逃げるように自分の部屋に籠った。

 

 

 

 

 

 

 

 

side リボーン

 

白木(しろき) (めぐみ)

冷静な判断力と俊敏さは是非ファミリーに欲しいと予てより考えていた。

 

 

並盛中ケンカの強さランキング20位、足の速さランキング1位。今まで何度も接触を試みるも全てが失敗。何度もツナをけしかけたが、自然に、たまたま、運悪く、合わすことが叶わなかった。ただ偶然が重なり、どんどん後回しになっちまった。

 

六道骸の時も、黒曜の生徒に襲われるが無傷で逃走。柿本千種、城島犬でさえ傷1つ付けることが出来なかったらしい。

 

調べた結果、白木家は代々足が速い家系であることがわかっている。その中でも白木恵はずば抜けて速いが。

 

 

裏社会の話をする時も黙々とあまり表情を変えることなく聞いていた。恵が部屋を出て行ってから数十分。全く戻ってくる気配がない。ツナも表情が暗く、俯いている。

 

 

ヴァリアーが来るっていうのにこいつはやべぇな……。

最悪なファーストコンタクトになっちまった。

 

 

 




主人公の足の速さは遺伝である。……遺伝である(無茶振り)





次の更新は一ヶ月後とか二ヶ月後とか、もうしないとか、なんとか。

評価感想くれたら嬉しいです。


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2話

……。

考え事をしていたら眠っていた。よくある話である。

 

きっと妖怪ネムリンボウに憑かれたに違いない。妖怪のせいなのね!そうなのね?!……あ、そんな妖怪いないか。

 

大きく欠伸をして眠気を覚ます。涙線が緩み涙が出たのでティッシュで拭いた。

 

さて、あれから何時間たったのか。時計を確認すると意外や意外まだ1時間しかたっていない。体感では4時間5時間は寝たつもりでいた。

 

もう一眠りするか。いや、流石にマズイか。それに寝ていたとはいえ考えはまとまった。そもそも初めから結論は出ていたのだ。足りなかったのは私の覚悟だけ。

 

身だしなみを整え客間に戻る。

 

沢田とリボーンは大人しく待っていたようだ。

お茶とお菓子が少しなくなっている。あのマズイ菓子を食ったのか…。オタネニンジン味。またの名をチョウセンニンジン、コウライニンジン。

 

「…おまたせ」

 

 

相変わらず沢田はビクビクしている。

そんなに怖いか。流石に傷つくぞ。

 

 

 

 

 

黙っていても仕方がないので早速本題に戻る。

 

 

「覚悟はできた。ただし、条件がある…」

 

 

1つ、親を巻き込まない、安全を保障すること。

 

2つ、親には秘密にすること。

 

3つ、私は親と自分の命を優先して行動する。

 

4つ、ボンゴレに所属するが、ある程度の自由を保障すること。

 

 

以上、4点である。

 

 

 

「勿論だよ!!」

 

沢田が急に大声を上げたのでびびった。

 

しかし沢田よ、もう少し考えてから発言した方が良い。もし私が命の危険があるのでリング争奪戦を棄権する、と言ったらどうするつもりだ。勿論そんなことはしないが。

 

すんなり承諾してくれたことはありがたいが、沢田はマフィアのボスには向いていないな。優しすぎる。

 

後、息臭い。オタネニンジンの匂い。ワタシ、アレ、キライ。

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、私の就活が終わった。まぁ、それはさておきこれからどうするか。

 

ヴァリアーが来るまでに何とか前世の感を取り戻したい。戦いの経験や己に似合った特訓方法は体が、いや魂が覚えている。しかし14年のブランクはデカいし私は一般人だ。

 

時間が限られていることを鑑みても数週間体作りした程度ではプロには勝てない。下手に家庭教師を付けられるよりも実戦に近い環境に体を置き、前世の感が蘇ることに賭けた方が良いかもしれない。

 

だとすれば、老若男女問わず気に食わなければ咬み殺しに来る雲雀恭弥とその家庭教師の人と共に実践を積むのが良いかもしれない。ならば今からでも学校に行くべきだろうか。

 

 

いや、その前に改めて挨拶をしよう。曲がりなりにも組織に所属したのだ。そして目の前には私のボスとなる男がいる。

組織の活動においてコミュニケーション、チームワークは大事だ。それによく考えれば私はまだ彼らに自己紹介していない。

 

 

 

 

「改めまして、私は白木恵。並盛中2年、美術部所属。これからよろしく、ボス」ニッコリ

 

 

スッと右手を差し出す。

 

 

「こちらこそよろしく!白木さん!!」

 

沢田が私の手を握り元気よく答えた。

 

「それと…。えっと、俺別に10代目を継ぐ気はないんだけ…」

 

「あ゛」

 

聞き間違いかな?継ぐ気がないとか聞こえたけど?私にここまで覚悟させておいて?

思わず右手に力が入る。女の子が出しちゃいけない声を出してしまった。

 

「イダダダダ?!なります!頑張ります!!」

 

「よく言ったぞ。ツナ!」ニヤリ

 

「?!」ヒィィ

 

 

どうやら空耳だったようだ。良かった良かった。

 

リング争奪戦が落ち着いたら、組織運営や会計を勉強しよう。そうしよう。

 

まあ、それまで生きていればの話である。

 

 

 

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リボーンに家庭教師の提案をされたが断った。

その代わり雲雀恭弥の居場所と彼の家庭教師ディーノに私がそちらに行く旨を電話で伝えてもらった。どうやら中学校の屋上にいるらしい。

 

その後、リボーンは嫌がる沢田を引き連れ修行に向かった。ねっちょり嫌だー、と沢田が騒いでいたのが印象的だった。ねっちょり……?

 

 

並盛中指定のジャージに着替える。

そういえば私はインフルエンザらしい。ならば顔見知りに見られるのはマズイ。そこで去年ハローウィンで使った鼻メガネ〈ちょび髭付き〉を装備し、変装した。完璧である。

 

 

 

学校に着いたが、あいにく授業中。誰ともすれ違うことなくすんなり屋上の出入り口ドアの前へたどり着いた。少し期待していたのに拍子抜けである。

 

 

ドアの向こうからは何かが空を切る鋭い音と何かがぶつかり合う鈍い音が聞こえてくる。2、3分すると音が鳴り止んだのでドアを開けた。

 

そこにはトンファーを構えている我らが風紀委員長雲雀恭弥と金髪のイケメンが睨み合っていた。

私が腐っていたらいらぬ妄想をするところだが、あいにく俺は健全な…。ケンゼン?けんぜ、ん…な!!

 

 

 

 

……。今まで考えたことがなかった。正直に言おう。俺の恋愛対象は女性である。しかし、今私は女性である。果たして健全と言えるのだろうか。

 

 

やめよう。この事を考えるのは私にはまだ早い。早いったら早い。

 

少し暑くなった顔をパチパチ叩き、2人の戦いに集中しよう。と、思ったら雲雀恭弥が私の方を睨んでくる。いつもの5倍鋭い目つきだ。

 

 

「咬み殺す…!」

 

 

 

気がついた時にはトンファーが目の前まで迫っていた。鼻メガネ〈ちょび髭付き〉が宙を舞い、私の意識はドロップアウトした。

 

 

並中生として、雲雀恭弥に噛み殺されることなど、よくある話、で…あ、る。

 

 

 

 

 

 




雲雀恭弥
ディーノと会ってイライラ+授業時間に出歩くふざけた格好の生徒→咬み殺す


次の更新は一年後とか、二年後とか、もうしないとか、なんとか。

評価感想くれたら嬉しいです。




※注意※この物語は多大なる御都合主義が含まれております。


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3話

ハッと意識が覚醒する。目の前にちょび髭メガネのおじさんがいた。よくあるは…じめての体験である、びっくりした。

 

 

「あぁ、ちょび髭メガネの妖精が見える…」

 

 

きっと鼻メガネ〈ちょび髭付き〉の精に違いない。崇めておこう。

しかし妖精とはここまでリアルなおっさんなのか…。知らなんだ。

 

私の友達モブ山モブ子ちゃん、通称、モッちゃんは手のひらサイズのおじさんを見たことがあると言っていた。可愛げのあるおじさんと言っていたが、私の目の前にいる1/1スケールのおじさん型妖精は渋いな。渋カッコいい。

 

 

 

「こいつぁ、頭を強く打ったみたいだな。俺はロマーリオ。妖精じゃなくて悪かったね。はいどうぞ」

 

 

妖精さん、もとい、ロマーリオさんは苦笑いをしながら、水の入ったペットボトルを渡してくれた。

 

 

 

 

_______________________________________________________________

 

 

 

 

現在、学校の屋上にてロマーリオさんと雲雀恭弥vsディーノの戦いを観戦している。

 

夕日が綺麗に見える。かれこれ5時間休憩を挟むことなく戦っている。帰りの会はとっくの前に終わり、現在学校に残っているのは部活勢ぐらいだ。

 

2人の動きは鈍るどころか、良くなっている。雲雀恭弥はこの数時間でかなり強くなった。つい1時間ほど前では、攻撃一辺倒で攻め、不規則に見えるムチにてカウンターを受けていたが、今ではカウンターを見切り始めている。ディーノの足さばきや回避、攻撃手法を無意識に吸収して応用している。ものすごいセンスである。

 

 

恐らく、雲雀恭弥の十数年の人生において良きライバルや格上がいなかったのであろう。大抵のヤツは持ち前のパワーとそこそこの技術で噛み殺せた。しかし、いくら雑魚を倒しても経験値は得られない。一定以上で成長は止まり伸び悩む。だがらこそディーノが雲雀恭弥に与える影響は大きい。

 

 

それからも2人は休むことなく戦い続けた。辺りもすっかり暗くなりもう少しで完全下校時刻になる。さて、そろそろ頃合いか。

 

私も2人の動きやスピード感に目が慣れた。

雲雀恭弥の戦い方。足や手の動かし方、トンファーの攻撃パターン、間合い、瞬きのタイミング、そして重心の置き方。

 

 

 

私は片レンズが割れている鼻メガネ〈ちょび髭付き〉を装着する。

 

「おう。もう帰るのか?」

 

「えぇ。お疲れ様です。ロマーリオさんまた明日」

 

「はいよ。また明日」

 

 

私は出口、ではなく雲雀恭弥の方へ歩いて行く。

 

 

 

 

「やーい、お前ん家おっばけやーしーき!!」棒読みー

 

 

ダメだ。ピクリとも反応しない。頑張れ私の挑発スキル。

 

「風の噂で聞いたんですが!黒曜中の人にやられたって本当ですかー!?」

 

雲雀恭弥が私の方を向く。

 

「黒曜の生徒に負けるなんて!!」

「先輩実はちょろい人!?」ニヤニヤ

 

これしか思いつかなかったんや…。あ、でも釣れそう。

 

 

「君から先に、咬み殺す!!」

 

やっと標的を私に代え突っ込んで来た。

 

雲雀恭弥なら五歩で詰められる距離まできた。1,2,3,4,5。左足踏み込みの右手トンファーの大振りである。大振りといってもかなり早い。現に数時間前私はこの攻撃でのされた。この攻撃を見切れるかが彼にとっての線引きなのであろう。しかし今は目が慣れ事前情報十分、もはや止まって見える。

 

 

私は身を縮め、低い体勢にて攻撃を回避。一歩踏み込み雲雀恭弥の懐に潜り込む。頭上をトンファーが切る。私の顔のすぐ横には彼のがら空きの左足(ひざ)がある。

 

 

雲雀恭弥は左足重点に右トンファーの遠心力により体が引っ張られている。この体勢から右トンファーの振り下ろしは不可能。左トンファーは後ろに下がり追撃は来ない。左足は重点。唯一の右足は動く気配がない。

 

油断したな。この一言に尽きる。

私は両手で雲雀恭弥の左足ももを掴む。

 

 

「そぉい!」

 

 

気の抜けた掛け声とともに思いっきり揺さぶりバランスを崩す。

バランスを崩した雲雀恭弥は尻餅をついた。私は一歩、二歩、三歩と後ろに下がりドヤ顔とともに鼻メガネ〈ちょび髭付き〉をクイッと掛け直す。少しヒヤリとしたが上手くいった。

 

ディーノやロマーリオさん、雲雀恭弥でさえポカンとしている。雲雀恭弥だけ徐々に表情が険しくなって来た。

 

 

 

さて、帰るか。一泡吹かせたし余は満足じゃ。

 

怒り狂っている完全戦闘体勢の雲雀恭弥にはまだ勝てない。彼の油断を誘った一回限りの裏技だった。

 

 

「それでは、さようなら。また明日。」

 

 

 

雲雀恭弥が立ち上がる前に挨拶を済ませ素早く退散。全力全開ダッシュで家まで帰った。

 

 

 

 

 

_______________________________________________________________

 

 

 

 

 

 

家に帰り、シャワーを浴びて汗や砂汚れを落とした。

 

ソファにて一息つく。携帯を取り出しメールを確認するクラスメイトから何件か来ていた。

 

『インフル大丈夫かー?』とか『お大事に!』とか『嘘乙www』などなど、取り敢えずモッちゃんは後日しばくとして「大丈夫だ、問題ない」と返信しておいた。

 

 

 

冷蔵庫を確認するとピーマンが大量にあったのでピーマンの肉詰めをたくさん作った。これで3日は乗り切ろう。

 

 

テレビを付け夕食を食べながら今日のことを振り返る。

 

激動の1日であった。今世で一番精神力を消費した気がする。あと体中が筋肉痛で痛む。

 

これから原作と深く関わっていくのか……。まだ余り実感がわかないが、充実することを願うばかりだ。覚えていることをノートにまとめた方がいいのだろうか。果たして私は生き抜けるのか。考えれば考えるほど不安が強くなってくる。

 

 

夕食を食べ終わり洗い物を済ませた。気を紛らわすために携帯ゲームをしていると電話が鳴った。

 

 

『はぁーあい。めぐみちゃん元気ー?!』

 

ママンである。

 

「元気よー。どったのー?」

 

『本当に大丈夫?なんだか声が疲れてるみたいだけど…』

 

なんてこった。いつも通りを装っていたが一発で看破された。恐ろべきかーちゃんである。

 

「げ、元気!ワタシ、ゲンキヨ。ちょーゲンキ」

 

『相変わらず嘘が下手ね。誰に似たのやら』ウフフ

 

『ちゃんとご飯食べてる?』

「うん」

 

『朝起きれた?』

「うん」

 

『学校行った?』

「ウン」

 

『余り夜更かししちゃダメよ?』

「うん。わかってるよ!」

 

 

 

その後もたわいのない話を30分少々。母との長電話などよくある話である。

 

 

 

『___それじゃ、また明日ね。おやすみなさい』

 

「ハーイ、おやすみなさい」

 

 

マジでか。明日も電話来るのか。これは間違えなく毎晩電話来るパターンだな。もう私も中学生だ。心配性にもほどがある。

 

まぁ、前世の歳も含めたら両親と余り変わらないわけだが…。しかし精神年齢は体にだいぶ引っ張られている気がする。こんな私を愛してくれる両親には感謝感謝である。

 

ママと話し少し不安が安らいだ。やはりマミーは偉大である。あ、もちろんとーちゃんもである。

 

 

 

 

_______________________________________________________________

 

 

 

 

ハッと意識が覚醒する。目の前にはちょび髭メガネの妖精さん…もといロマーリオさんがいた。私の右頬には湿布が貼られている。

 

場所は学校の屋上。相変わらず雲雀恭弥とディーノの戦っていた。

 

 

 

 

 

あ、ありのまま今、起こったことを話すぜ!

 

 

私は今朝、鼻メガネ〈ちょび髭付き〉(新品)を装着して学校に向かった…!だが、屋上のドアを開けてからの記憶がまるでねぇ……!

 

 

な…何を言ってるかわらねーと思うが、私も何をされたかわからなかった…。

 

痛い…。頭がどうにかなりそうだぜ…。拳だとかトンファーだとかそんなチャチなもんじゃあ、断じてねぇ。

 

もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ……!!

 

 

 

ロマーリオさんに話を聞くとどうやらロマーリオさんのボス、ディーノの鞭がアゴに当たり軽い脳震盪を起こしていたようだ。事故だったらしい。どうやら雲雀恭弥がうまく誘導して私に当たるように…まて、それは事故ではなくないか。故意だよな。雲雀恭弥マジ許すまじ、まじまんじである。

 

昨日の仕返しか?なんて大人気ない手口だ。いや、中学生はまだ子供だ。落ち着け俺クールダウンだ。深呼吸だ。スーハースーハー。

 

 

 

「……、あと、コレな」

 

ロマーリオさんに粉々の何かが入った透明の袋を渡された。

 

ハッ!!

コレは鼻メガネ〈ちょび髭付き〉(新品)の残骸っ?!

 

「コレも雲雀恭弥が?!」

アイツマジ許さない。いつかメッタメタのギッタギタにしまくれるわ……!!

 

 

「いや、コレはボスが間違えて踏んづけちまって……」

 

「ギルティ」

 

「……」

 

有罪だ!ディーノは許そうかと思っていたがアイツも許さん。

いつかメッタメタのギッタギ(ry

 

 

閑話休題。

 

 

 

 

 

 

私は今、ロマーリオさん協力の下ゆっくり組手をしている。

 

形をしっかり構え、ゆっくり拳を突き出す。ロマーリオさんがゆっくりとそれを避ける。

 

次にロマーリオさんがゆっくりとパンチを繰り出し、私がそれをゆっくりと体の動きを確認しながら避ける。ただ、ひたすらこれの繰り返し。

 

なぜこのようなことをするのか。それは昨日感じた違和感の確認と修正である。昨日雲雀恭弥に一泡吹かせた時、違和感を感じヒヤリと嫌な予感がした。

 

前世の感覚で体を動かしたら体の重心が合わなかったのだ。もちろん頭脳は大人、体は子供、重心のズレはあるだろう。しかしそれだけじゃない。前世には無くて今世にはあるもの……。胸である。む、胸である!

 

大層なものがあるわけではないが、違和感がすごい。発育が悪くてよかった。少しでもこれ以上大きかったら修正できる気がしない。ちっぱいさまさまである。あれ?おかしいな。目から涙が……。

 

 

 

 

 

 

_______________________________________________________________

 

 

 

 

 

 

 

それから数日間。ひたすら組手と観察、筋トレ。そして1日2回雲雀恭弥に挑み、苦渋を飲まされた。初日以降傷1つ付けられない、惨敗である。

 

 

 

 

 

「そろそろ、起きろー」

 

 

ゆっくりと意識が覚醒する。目の前にはロマーリオさんがいた。よくある話である。

 

そうか…。また負けたのか。強ずぎる。日に日に差が広がっていく感じがする。ロマーリオさんに起こしてもらい、いつものごとく水を貰った。

 

 

 

ピロリン♪

 

 

 

 

ちょうどメールが来た。リボーンからだ。

 

 

『ランボを保護してほしい』とのこと。

 

?。ランボ?だれ?

 

 

 

 

 




原作を余り覚えていない系主人公





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