死の支配者と六道と (バックス)
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第1話 転移

気分転換に


DMMORPG,仮想世界で現実にいるかの如く遊べる体感型ゲーム。数多あるDMMORPGの中でユーザーの自由度とその拡張性の幅広さでナンバーワンの人気を博したタイトル

 

YGGDRASIL(ユグドラシル)

 

 発売から十二年経った現在、ユグドラシルは様々な人達から親しまれ絶大な人気を誇ったこの世界の、十二年に及ぶ物語に終止符が打たれようとしていた

 

「もう…終わりか」

 

そう小さく呟いたのはナザリック地下大墳墓にあるギルド『アインズ・ウール・ゴウン』の長であるモモンガ

 

彼はアンデッドの最高位種である死の支配者オーバーロードだ。かつてのギルドメンバーが次々にこのナザリックから引退していく中、彼は最後までこの『ユグドラシル』に留まり、拠点たるナザリック地下大墳墓の維持のために奮闘して来た

 

つい先程までいたアインズ・ウール・ゴウンのメンバーの一人古き漆黒の粘体(エルダー・ブラック・ウーズ)のヘロヘロさんが明日朝早くから仕事があるため帰ってしまった。無理もない。彼の勤めている会社は所謂ブラック企業だから。睡眠は大事だ

 

ヘロヘロさんがログアウトしていくのを見送ったモモンガは、また一人となり、虚しさを覚えていた

 

「あの頃は楽しかったな。ウルベルトさんとたっちさんが毎回喧嘩していたのが昨日のように感じる」

 

モモンガは仲間達との思い出に浸り、胸に空いた決して深くはない穴を楽しい思い出や感情で埋めようとするも、一向にその穴が埋まることは無かった

 

「…クソッ!!」

 

ダンッ!と思わず握った手をテーブルに叩きつけた

 

自分でもどうしようもないことだと、仕方がないことだと分かっていても、彼は溢れ出る激情を抑えることは出来なかった

 

「ふざけるな!ここはみんなで作り上げたナザリック地下大墳墓だぞ!?なんでみんなそんな簡単に切り捨てることができるんだ!!」

 

恨み言を言ってしまうのは自然な流れであろう。彼は仲間達が次々と去って行く中、一人でナザリックを守って来たのだ。モモンガはかつての仲間達と汗水流し苦労して作り上げたギルド武器を見上げた。これを作るために有給取ったり家族と揉めたりして参加してくれたメンバーもいたほどの思い出が詰まっているアインズ・ウール・ゴウンのギルド武器【スタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウン】を手に取り部屋を出る

 

途中見かけたセバスや戦闘メイドのプレアデス達を最後に働かそうかと思い一緒に連れて行くことにした

 

「玉座の間で待ってますよ…弥彦さん」

 

喋ることのできないNPCの誰も反応することなく最後まで残った友への言葉を残して玉座の間へと歩を進めた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さてと…これは一体どういう状況だ?」

 

ユグドラシルでのオンラインサービスが本日終了した……筈だったのだが、何故か終了していない

 

その事に頭を抱えるオレンジ色の髪をした青年。彼は何処からどう見ても只の人間にしか見えないが、実際は“忍者”の上位種にあたる“六道仙人”である弥彦だった

 

装備はゲームをやめた時のままで、彼のトレードマークである赤い雲をかたどった黒い外套が妙に目立つ。そして彼の顔には無数の杭がピアス感覚でつけられている為、見ているだけで痛そうだ

 

それに彼の目は紫色の波紋模様をした目が特徴だが、それはなんとワールドアイテムでありその特異な瞳はユグドラシルのコラボイベントをクリアした証で運営が彼に与えた。これのせいで彼は人間種でありながら人間種のプレイヤー達に異業種としてハブられ襲われていたが彼はこれを苦も無く撃退し続けた。良い加減しつこいと感じていたところをモモンガとたっちさんが助けアインズ・ウール・ゴウンに勧誘したという過去がある

 

そして、彼は最後ということで色々なアイテムを見たり買ったりしていたとこ、もう終了まで時間がなく同じギルドに所属しギルド長であるモモンガに会うために玉座に間に行こうとした所、意識が途絶え目を覚ましてみると、見知らぬ森の中にいた

 

この時点でおかしいのだが何よりおかしいのが風や匂いを肌で感じることができた。手を握りしめたり開いたりしても肌の質感なども感じ取れた。何れもユグドラシルではあり得ないことだ。何故ならそのような感覚はユグドラシルには無かったから

 

運営が終了を延期したのか?とも考えたがあれだけ終わると言っていたからそれはあり得ないと結論付ける

 

試しに地面に生えた草を口に含む

 

案の定、苦味を感じた

 

ここで弥彦の脳裏には自分でも馬鹿馬鹿しいと思う考えだった

 

(…この身体ごと異世界に転移したのか?)

 

考えにふけっていると茂みが動く音がして、そちらから飛び出して来たものを反射的に腕でカウンターを入れ攻撃した

 

(…何だ?)

 

攻撃したのは鋭い歯を持ったネズミのような動物でソコソコの大きさの個体だったが弥彦が感じた違和感はそれではない

 

「モンスターを倒したのにドロップアイテムが落ちない」

 

ユグドラシルではモンスターを倒すとモンスターのレベルに応じてアイテムがドロップし霧散して消えるのだがそのモンスターは依然として留まり続けている

 

「…消えないとこを見ると、やはり異世界に転移したという事で間違いはないか」

 

ここが異世界だと推測した弥彦は、同じく転移しているかもしれない仲間を探す為に異世界を少し冒険する事になった

 

 

 

 

 

 

 

 



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第2話 救済と再会

『巫山戯んな!何だよ、あのチート野郎!?運営!チートがいるぞ!仕事しろよぉ!』

 

『テメェ!魔法詠唱者じゃねぇだろうがアァァ!!何でそんなもん落とせんだよぉぉ!!』

 

『魔法攻撃は変な膜で吸収されるし物理攻撃にしたって吹き飛ばして来やがる!ナザリックは化物の宝庫か何かなのか?』

 

『ちょっ!?攻撃したら増えるのは反則だアァァ!!』

 

ナザリックへと侵攻してくる1500人ものプレイヤー達が悉く倒されていく

 

たった一人の忍者にだ

 

彼の忍術で、彼の所有する武器や獣達で、はたまたその目に宿す力で体術で

 

彼による攻撃は加減など一切ない

 

目の前に立つ敵を1人残さずに蹂躙していく

 

そして、揃ってプレイヤー達はこう言う

 

『『『この運営公認チートがぁぁぁ!』』』

 

「…ん?朝か」

 

弥彦は起きた。彼はかつてギルドの仲間達と激しく戦った戦争の夢を見ていた

 

「懐かしい夢を見た。チートか…ふん。いつだって戦争は殺るか、殺られるか。あちらは1500人いたんだ。対してこちらは42人…多勢に無勢も良いとこだ。それに自分の能力だ…使って何が悪い」

 

木にもたれ掛かって寝ていた弥彦は下に降りて辺りを見渡す

 

「久々に使うか。周辺を感知するとき楽だからな」

 

彼は両手を合わせ仙術チャクラを練り生命体の感知を開始した

 

チャクラとは

 

精神エネルギーと身体エネルギーの二つを練りあげたものの事。そして自身に存在するチャクラを使いきってしまうと死んでしまう。チャクラ量は人によって違うが弥彦のチャクラは輪廻眼のおかげでカンストしている。チャクラを使って忍術を発動させる。術の発動には、多くの場合は手で印というものを結ぶことが必要になる。またチャクラはコントロールすることができ壁を登ったり水の上を歩くこともできる

 

仙術チャクラとは

 

体内にある精神エネルギーと身体エネルギーの他に、外から自然エネルギーを体内に取り込んで成り立つ術である。仙人から教わることができ弥彦はクリアした特典としてユグドラシルで会得した

 

精神エネルギー・身体エネルギー・自然エネルギーの3つを練り合わせたチャクラを「仙術チャクラ」と言う。仙術チャクラを練った状態を「仙人モード」と呼ばれ隈取りが現れそれが仙人の証である。だか、弥彦は輪廻眼がある為、隈取りは出ないが仙術を扱える。上手く利用すれば、忍術・幻術・体術が大幅に強化されるが自然エネルギーは取り込む量が少なすぎると仙術が使用できず、逆に多すぎると姿が元となった動物に変わり、最悪の場合は石像と化す

 

弥彦は周囲を探ると、此処より少し北に離れた場所に多くの命の気配がある事に気付いた。彼はそこに向かって歩き出す

 

 

しばらく歩き村の様な物が見えてきた所で、そこから煙が上っているのが見えた

 

仙人モードである弥彦は生命感知で村で何が起こっているのかが目視で確認できた

 

「…人間による虐殺か?」

 

鎧を着た騎士達が村人達を襲い屍をきづきあげる

 

フム…騎士が民を襲っているのか…この世界の騎士は虐殺などをするのか?

 

「助けるべきか?何の関わりもないのに?」

 

弥彦は考えた末、ある言葉を思い出す

 

『困っている人がいたら助けるのが当たり前』

 

「…たっちさん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁはぁ」

 

「ネム!頑張って!」

 

襲撃された村−カルネ村に住んでいる少女、エンリと妹のネムは逃げていた。血の付いた剣を掲げ自分達を殺そうとしている騎士達から

 

(何で、こんな事になったんだろう。何時もと変わらない日常。豊かではないけど、お父さんとお母さん、ネムと、村の皆と生きていくには困らない生活をしていた。なのに、どうして私達は襲われてるの?殺されそうになっているのだろう?)

 

「痛っ!」

 

「ネム!?」

 

倒れた妹に駆け寄るエンリ。直ぐに後ろから4人の騎士が追って来た

 

「やっと追い詰めたぜ」

 

「悪く思うな……これも任務なんだ」

 

「待て、まだ殺すな」

 

「そうだぜ。味見してからだ」

 

 騎士達はそう言うと、その手に持つ剣で斬り掛かる前に自分たちを犯すために近づいてきた騎士達からエンリはネムを守るため抱き締め、願う

 

「神様でも悪魔でもいい。誰か助けて!!」

 

 

ーボガッ!ー

 

何かを殴る音が聞こえ、目を開くと、顔を上げてみるとそこにはオレンジ色の髪をしていて耳からでく痛々しいものをした青年が私達を守るようにして立っていた。騎士達は彼の登場が予想外だったのか混乱している。エンリからは見えないが彼らは弥彦の輪廻眼を見て恐怖を感じていた

 

「女子供を襲うとはな。お前達それでも騎士か?何故この村や子供を殺している?」

 

「ぶ、部外者が口を出すな!これは任務だ、邪魔をするならお前も殺す」

 

「子供を殺す事が任務だと…【神羅天征】」

 

弥彦は掌を騎士達に向けると、不可視の衝撃が騎士達を襲った。すさまじい衝撃で辺りの木々が少し吹き飛んだ

 

「なら死んでも構わないな?」

 

放った神羅天征から運良く生き延びた騎士を見つけ視線を向ける。弥彦の紫色の瞳−輪廻眼から睨まれ身体を硬直させ恐怖する

 

「かひゅ…たったしゅけ」

 

「そう言った村人達をお前達は殺したのだ。お前だけ助かるわけないだろう?…死ね」

 

弥彦は服の袖から出した先の尖った黒い棒を死にかけの騎士に目掛け刺してとどめを刺した

 

「さてと」

 

弥彦は助けた少女達に向き直る。少女達は弥彦の目を見て怯えた

 

「ひっ!」

 

「め、目が」

 

「ん?あぁ…怖がらせたか。これは生まれつきでな。お前達が怖がるのは無理はない」

 

「す、すみません!た、助けていただきありがとうございます!!」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

「気にしないでいい…それよr…ん?」

 

少女達の感謝を受け取っていると

 

転移門(ゲート)

 

 そう声が聞こえると、エンリ達の後ろの空間に黒い穴が開いた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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第3話 死の支配者

黒い渦から現れた人物を見て、エンリ達は再び恐怖した。豪華な黒いローブに、怒っているのか、笑っているのか判別できない奇妙なマスクをした大柄な人物…いや、それだけじゃない。その人物の後から現れた赤い鎧を着込んだ女性らしき人物も現れた。エンリ達は無意識に弥彦の後ろへと隠れまた弥彦もエンリ達を庇うように前へ出た

 

「モモンガ…何故、嫉妬マスクなんて被っている?」

 

弥彦を見つけた死の支配者ーモモンガは喜びの声をあげた

 

「あっ!弥彦さん!良かった!」

 

その人物は笑いながら弥彦に駆け寄る。弥彦も同じように駆け寄り熱く握手をした。エンリ達は弥彦と奇妙なマスクをした人は握手をしているのを見て知り合いなのだろうと結論づけた

 

「…まさか、あなた様は弥彦様!?」

 

「…誰だ?」

 

「申し訳ありません、私です、アルベドでございます!」

 

「アルベド…タブラさんが創ったNPCの?」

 

「はい!そうでございます!」

 

「そうか、フルプレートの鎧を着てるから分からなかったな。モモンガはどうして此処に?」

 

「…実は」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

豪華な装飾が施された部屋で書類を纏める異形の姿があった。豪華な黒いローブを身に纏った骸骨…モモンガは今、ナザリックの周辺には何があるのか探るため隔視の鏡(ミラー・オブ・リモート・ビューイング)で操作してるとそこに映っていたのは小さな村で近くには大きな森があり、村の周囲には麦畑が広がっているのを見ると、この世界の文明はさして高くないように見えた

 

しかし、すぐにモモンガはなにか違和感を感じた

 

「…祭りか?」

 

村人らしき人影が、家を出たり入ったりと、朝早くなのに慌ただしく走り回っている

 

 

「いえ、これは…」

 

これに答えたのは、モモンガの横に控えていた老執事セバスだった。眉間に皺を寄せ、鋭い視線で鏡を見ている

 

確認のために、映像を拡大したモモンガは骸骨の顔でない眉をひそめるのを感じた

 

村人らしき服を着た人々が全身鎧で武装した騎士風のものたちの手に持った剣を振り下ろし殺している映像が出た

 

それは、まぎれもない殺戮だった

 

武器を持たない村人はただ逃げるしかない。騎士達は村人を捕まえては犯し、殺しを繰り返す。この様子から騎士達は虐殺を楽しんでいるように見えた

 

「…チッ!」

 

嫌なものを見たと吐き捨て、映像を変えようとして、違和感に気が付く

 

自分は人が殺されているのに何も感じなかった。テレビで、どこか遠いところで殺人が起きたというニュースを見たときの気分だ。関心がないのだ。実際に起きているにもかかわらず自分には関係無いから、特に何も思わない

 

人間だった頃は、こんなものみたら間違いなく吐き、気絶していただろう

 

(身体だけでなく、心も人間を止めたということか…それとも自分の種族に引っ張られているのか?)

 

鏡に映し出されている、騎士たちから必死に逃げる姉妹を見ても何も思わない。殺されそうな姉妹を見てモモンガは映像を切ろうとしたがそこに突如、黒い外套をした人が現れた。彼は騎士達と話すと交渉が決裂でもしたのか騎士達は青年に襲いかかったが青年は掌を相手にかざした次の瞬間、騎士達を含め前方の木々までも吹き飛ばした

 

自分はこの現象を知っている!

 

そう思い風が晴れたとき青年のかをがはっきり浮かび上がる

 

オレンジ色を髪をしていて、顔には無数の杭をさし、紫色の瞳を持つ青年

 

「モ、モモンガ様!この方はもしや!?」

 

「あぁ!そのまさかだ!セバス!私は先にこの村へと出向く。ナザリックの警戒レベルを最大限に上げておけ。それとアルベドに完全武装で来るように伝えよ」

 

「はっ!承知いたしました」

 

モモンガは急いで転移門(ゲート)を開き飛び込むように潜った

 

 

 

 

 

 

 

「という訳なんです」

 

「そうか…一先ず、話は後だ…村人を助けるがいいか?」

 

「えぇ…それでそこの騎士達の強さはどれくらいだ?」

 

「レベルは20…いや、10にも満たんだろう。鎧も剣も吹き飛ばしただけで簡単に壊れた。魔法詠唱者(マジック・キャスター)のお前でも素手で簡単に屠れる」

 

「そうですか…なら

【中位アンデッド作成:死の騎士(デスナイト)】」

 

モモンガが弥彦が殺した騎士に向かい手を翳すと、黒い何かが騎士を包み込み変貌させ始めた

 

死んだ騎士はやがて、巨大な骸骨の騎士へと変貌する。装備は大きな盾ーバスターシールドにフランベルジュを装備している

 

死の騎士(デスナイト)よ、そこの鎧を着た騎士達を殺せ」

 

 《グォォォォォォ!》

 

デスナイトは咆哮すると、そのまま村へと向かって走って行った

 

「えっ……」

 

「モモンガ…あいつは指定した相手を守るモンスターじゃないのか?」

 

「えぇ。命令したとは言え守る対象から離れることはないはずなんですが」

 

「ふむ…魔法やスキルは一部が変化しているのか?まぁそれより…大丈夫か?」

 

考察し終えた弥彦は先程から置いてけぼりのエンリ達に向き直り安否を確認する

 

「はっはい…大丈夫です」

 

エンリ達は脅えた表情でまだモモンガを見ている

 

「大丈夫だ、彼は俺の友人だ…見た目は恐いが、まぁ根は優しい奴だ。ん?お前背中を斬られたのか…ならこれを飲め治癒のポーションだ」

 

「はっはい」

 

エンリは見たこともない赤いポーションを受け取ると、覚悟を決めそれを飲んだ…すると騎士に付けられた背中の傷は始めからなかったかの様に消えた

 

「これでいいな……モモンガ。彼女達に防御の魔法を唱えてやってくれ」

 

「あぁ」

 

モモンガは、姉妹に向けて魔法を唱える

 

 

「〈生命拒否の繭〉(アンティライフ・コクーン)

 

〈|矢守りの障壁《ウォール・オブ・プロテクションフロムアローズ》〉」

 

姉妹を中心に半径三メートル程度の微光を放つドームが作り出される。この魔法は魔法と射撃を防ぐ魔法だ

 

 

「それで…その下等生物の処分はどうなさいますか?見られた以上口封じのために…」

 

アルベドは、命令があれば即座に斬りかかるという意思を見せ、右手のバルディッシュを握る手に力を籠める

 

しかし―

 

「―アルベド」

 

弥彦から、今まで聞いたこともないようなドスのきいた声が発せられたと同時にアルベドは見てしまった。弥彦の目が怒気をはらんでいることに。アルベド、そして友であるモモンガはそれを見て身を強張らせた

 

「も、もうしわけありません!!」

 

「この村を救うことに何か異論はあるか?」

 

「い、いえ…情報源に、何人か生かしておいてくれれば…」

 

だが気圧されつつも、なんとか、必要なことは返答した

 

「あぁ…分かった」

 

弥彦はそういうと、煙が出ている村に向かって、猛スピードで走っていった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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第4話 虐殺と戦士長

騎士の1人は戦慄した。任務ではこの村を襲撃する際に、四方から村人を追いたてて、広場の中心に集めた。1人残さず虐殺し逃走者を出さないためだ

 

今回の作戦は重要な意味を持つため何度も訓練したし同じように村を3つほど襲った。あとは何時も通り、集めた村人を適当に殺して終わり。あとは任務での結果が出るのを待つだけだった(・・・)

 

 

そう、本来ならそうなるはずだった(・・・)のだ

 

ほんの数分の間に起きた出来事は、今まで自分が生きてきた人生で、どんなことよりも鮮明に思い出せる

 

兵士達の一瞬の隙をつき村から逃げようとした数人の村人を、後ろから斬りつけようとした仲間の一人が、まるでボロ雑巾のように空高く吹き飛び、ゴミのように地面に叩きつけられた

 

その仲間は既に原型を留めていない。巨大な盾と特殊な剣を持った巨体なスケルトンによってグシャグシャのミンチに変えられた。生きていないのは目に見えて明らかだった

 

そしてまだ悲劇は終わらない。有り得ない光景を作り出したのは、まだ1人いたのだ

 

赤い雲をかたどった漆黒の服に身を包み、顔には妙な杭と額当てをつけていて、そして…何より目を引いたのは奴の目だ。あの目、紫色の波紋が浮かぶ目に睨まれると体が恐怖で支配され動くことさえできない!

 

「う、うわぁぁぁあ!!」

 

仲間の一人が悲鳴を上げながら逃げ出す

 

しかし、それに合わせて逃げるものは、一人もいない

 

何故なら

 

「手を煩わせるな【万象天引】」

 

その男の発言とともに逃げ出した仲間はそいつのかざした掌に吸い寄せられ先が尖った黒い棒に刺され、地面に倒れその命が散る

 

最初は斬りかかっていった仲間がいたが奴はただ手をかざしただけで仲間達を吹き飛ばした。今とは全く違う現象だった

 

勝ち目はないと知り、多くの仲間が逃げ出そうとしたが、その度に、謎の吸い寄せる力が発動し黒い棒に刺され全員が地面に倒れていった。奴の武器は的確に心臓を貫いていたのだろう。刺された奴は苦しまずに死に絶えた

 

攻撃しても吹き飛ばされ、逃げようとしても吸い寄せられ殺される

 

仲間達は抵抗を止めいっそのこと命乞いをし助けて貰おうとした。他のやつも一緒のことを思っていた

 

「き、貴様らぁ!あの男を抑えよ!!」

 

誰もが皆で生き残ることを考えているときに、自分だけでも助かろうという魂胆が見え見えの耳障りな声で、部下に命令を下す男がいた

 

ベリュース隊長だ

 

彼は重大な作戦よりも、己の下らない欲望で村の娘に襲いかかり、父親と揉めあって自分の身が危ないと部下に助けを求め、引き離してみれば八つ当たりで何度も父親に剣を突き刺す屑だ

 

国ではある程度の資産家であり、この部隊にも自らに箔を付けるために参加した正真正銘のクソッタレだ。国のために働くなんて一欠片も持ち合わせていない

 

 

「俺は、こんなところで死んでいい人間じゃあない!おまえら、時間を稼げ!俺の盾になるんだぁ!!何してる!?早くせんかぁ!!」

 

 

その割れたような必死な叫び声にその場の者たちの視線を集めた

 

…無論、押さえろと命じた対象の視線も

 

 

その男はベリュース隊長にゆっくりと確実に近付いていく

 

 

「ひぃぃぃ!く、来るな!まま、待て!?お前、冒険者か!?誰かに雇われたんだ!そ、そうだ!金をやる!いくら欲しい?200金貨!いや、500金貨だぁ!」

 

男はピタリとベリュース隊長の前で足を止めた

 

「…金か」

 

「そ、そうだ!見逃してくれれば金をやる!なんなら望んだ金額を出そう!」

 

だが、現実はそれほど甘くはないということを我々は身をもって知る羽目になる

 

瞬間、ベリュース隊長の四肢が一瞬のうちに斬り飛ばされ、頭と胴体のみになった。四肢を切断したのは先ほど兵士達が刺されていた棒だが形状が棒から鋭い剣のようになっていた。アレで四肢を切断したのだろう。ベリュース隊長が地面に落ちる前に男はベリュース隊長の頭を持ち顔の前へと持ち上げた

 

「おぎゃあぁあぁぁあッ!!?」

 

ベリュース隊長の絶叫により希望は打ち砕かれ、その場は再び恐怖と絶望に支配された

 

「1つ聞くが…命乞いをした村人達に耳を傾けたか?…その様子だと無いに等しいか?」

 

「あ、アガが」

 

「お前達のような屑どもの命乞いと尊き村人達の命乞いが同等だと思うな」

 

頭を掴まれていたベリュース隊長は奴が何かを引き抜く動作をすると動かなくなり死んだのが分かった

 

「…国の資産家か。大した情報では無いな」

 

な、何故それを知っている!?ベリュース隊長の事は国のものしか知らない

 

「さて、まだ居るようだな。逃げられると思うな」

 

その言葉を最後に、騎士は男に頭を掴まれ意識は闇の中へと消えた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まぁ、こんなものか?」

 

弥彦が去り、村の周辺に展開していた鎧の騎士たちを皆殺しにしたモモンガー改めアインズは、実験を終えて、弥彦のもとに向かっていた。弥彦が去った後、モモンガはエンリ達に自分はアインズ・ウール・ゴウンと名乗った。これはこの世界に自分たち同じユグドラシルのプレイヤーがいないか確認する為、この名を広げようとした結果だ

 

「それにしても、本当に弱かったな。まぁ、お陰で魔法やその他の実験は円滑に進んだから良しとしよう。アルベド、急ぎ弥彦さんのもとへ向かうぞ」

 

「かしこまりました」

 

 

二人は〈飛行(フライ)〉の魔法を唱え、空に浮かび上がる

 

そしてそのまま村の中央に向かい、そこに集まっている村人たちと待機している死の騎士、そしてその場でただ一人立っている黒い外套を纏う男、弥彦の姿を確認した

 

そこで、弥彦に〈伝言(メッセージ)〉の魔法を発動した

 

 

〈お疲れ様です、弥彦さん〉

 

〈…これは伝言、モモンガか?〉

 

〈えぇ。あっ!あの騎士達残してくれましたか?〉

 

〈すまない、1人残らず始末した。数人から魂を引き抜き情報は得たが特に重要なものはなかった。精々下っ端だ〉

 

〈えっ!?魂を引き抜いた!?〉

 

〈…自分の目の能力は後々確認しようとした事だからな。今回はちょうど良かったが後で情報を共有しよう〉

 

〈そ、そうしましょう(魂引き抜くとかこっわ!!)。あ、それと俺、世界征服するに当たって、名前を、アインズ・ウール・ゴウンに変えたいんですけど、大丈夫ですか?〉

 

〈…世界征服だと?聞いてないんだが?〉

 

〈…後々お話しします〉

 

〈まぁ、いい。ひとまず置いておこう。それを名乗るのはお前以外にはいないだろう。反対はしない〉

 

〈ありがとうございます。ではそんな感じで〉

 

「我が友よ、無事かな?」

 

突如、空から軽い声が響く

 

アインズはアルベドとともに、ゆっくりと地上に降り立った

 

弥彦はてっきり歩いてくるものだと思っていたので空から来た時は少し驚いていた。表情は少ししか変化しないため分かりづらいが

 

その後アインズは村長達と話し合い周辺の国々やこの世界での知識を教えてもらった

 

アインズが村長の話を全て聞き終わる頃には、既に空には夕日が浮かんでいた

 

途中、アウラとマーレが率いてきた後詰めの部隊が村を襲撃しようとして慌てて止めさせたこと以外は特に何事もなく終わった

 

 

 

 

 

 

 

 

弥彦とアルベドはアインズが村長達と話をしている間、先ほどのことについて話していた

 

「弥彦様、先ほどは申し訳ありませんでした」

 

「…アルベド」

 

「はっ!」

 

アルベドは先ほど弥彦が騎士達を蹂躙する為、村に行く前に弥彦の怒りを買ってしまったことを謝罪していた

 

「お前には姉のニグレドと妹のルベドがいたな」

 

「はい?それがどうかなさいましたか?」

 

アルベドは不思議に思った。何故今そのようなことを聞くのかと

 

「…俺には妹が2人いたんだ」

 

「弥彦様の妹君ですか?」

 

「…あぁ

 

 

先日亡くなったんだ」

 

「!?」

 

至高の方々のご家族のことはあまり知らなかったアルベド。それは他の守護者達やメイド達も知らぬ事だろう。その御家族が亡くなったと話し始める弥彦様の顔は悲しみであふれているようだった

 

「さっき助けた娘達がいただろう?俺の亡くなった妹達と瓜二つでな。つい重ねてしまい勝手に体が動いていたんだ」

 

実際に弥彦のリアルでは妹が2人とも亡くなっている。死因は殺人だった。すぐ病院に駆けつけた弥彦は変わり果てた姿をした妹達に絶望し泣き叫んだ過去がある

 

エンリ達を見つけた時、弥彦は妹達と瓜二つの姿に戸惑いわ感じたがなんとしても守らねば!と表情などには出さず救った

 

そこにアルベドが排除するなどと言った為、弥彦はアルベドに対して怒った

 

「で、では私は、な、なんということを!弥彦様の妹君達を侮辱してしまっ!?申し訳ありません!!この失態はこの命で償います!!」

 

「…しないでいい」

 

弥彦は己の失態で命を断とうと首に手をやるアルベドを止める

 

「お前は知らなかったんだ。それに誰にだって間違えるんだ。この俺でも間違える。アインズでさえもだ」

 

「アインズ様も…」

 

「そうだ…次からは無いようにな」

 

「っはい!」

 

アルベドにそう言い聞かせ広場に戻ろうとしたらアインズがこっちに来た

 

「ここにいたかアルベド。弥彦さんも。もう、ここですべきことは終わった。撤収しましょう、弥彦さん」

 

「…そうだな。一旦ナザリックに…ん?」

 

弥彦は村のはずれから二十人ほどの騎兵たちが隊列を組み、広場へと進入してくるのを見た。その装備に統一性はなく、まとまりのないものだった

 

先ほどの騎士達の別働隊だろうかと警戒を強める弥彦

 

アインズたちの前で見事な整列をすると、その中からリーダーと思われるガタイの大きい人物が名乗り出てきた

 

「私は、リ・エスティーゼ王国、王国戦士長ガゼフ・ストロノーフ!この近隣を荒らし回っている武装集団を討伐するために、王の御命令を受け、村々を回っているものである!」

 

「王国戦士長…か」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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第5話 戦士長と鏖殺準備

ガタイの良い男が名乗ると周りからざわざわ…ざわざわ…と村人達のざわめきが起き、村長が「王国戦士長…」と呟いた

 

「…あの人はどのような人物で?」

 

「この村に来る商人達の話では、昔行われた王国の御前試合で優勝を果たした人物で、王直属の精鋭騎士達を指揮する方だとか」

 

「目の前の人物がそれだと?」

 

「いえ、なにぶん私もその話を噂話程度でしか聞いたことがないもので…」

 

モモンガが村長と話している間、俺はくだんの騎士達の鎧の紋章に目を向けていた。ガゼフとか言う男が連れている騎士達の紋章はさっきまで殺していた騎士達の紋章と酷似している。その為、俺は警戒レベルを一段階引き上げた。目線でモモンガにも注意を促す

 

「さて、貴方がこの村の村長だな? 横にいるのは一体誰なのか教えてもらいたい」

 

モモンガを暫く凝視していた戦士長の視線が村長へと向けられる

 

「それには及びません。どうも、はじめまして王国戦士長さん。私の名はアインズ・ウール・ゴウン。しがない魔法詠唱者です。そして私の隣に立って居るのは友人、弥彦です」

 

「弥彦だ、後ろに控えている者は部下のアルべドだ。この村が襲われているの見かけて助けに来た者だ」

 

自己紹介すると、それに対して戦士長はは即座に馬から飛び降りる。そして同じ大地に立った戦士長は重々しく頭を下げる

 

「この村を救っていただき、感謝の言葉も無い」

 

驚いたな。普通なら俺たちのような、いかにも怪しい奴らなら疑ってもおかしくはない筈だ。だが「王国戦士長」という地位がある人間がこうも真摯に頭を下げてお礼を述べるとはな

 

…どうやら悪い人間ではないらしい。警戒してるのがバカバカしくなるな

 

ガゼフとモモンガが話している間、俺はもう一つ気になることを考えていた。あの死の騎士が未だに消えない事だ。ユグドラシルでは役目を果たすか、死ぬか、時間制で消えるのだが奴は一向に消える気配がない

 

もし時間制限が無くなったのなら、そのままナザリックの戦力になるのか。なら俺のあの力も多少変化していると見て間違いないと思ってると俺の方にも話を振ってきた

 

「すまない。弥彦殿、その目は?」

 

「…これか?これは生まれつきでな。気になるか?」

 

「あぁ。ゴウン殿にも話しは聞いたのだが」

 

「毛色の違う相手ほど気味が悪い…か?」

 

その言葉に戦士長とその部下達は皆、顔を顰め気まずそうな顔をした。

 

まあ嘘はついてない。実際、この目を手にした時から周りからは気味悪がられた

 

「…いや、失礼した。不快にさせてしまったのなら謝罪しよう」

 

「謝罪はいらん」

 

こういう自分の失態を素直に認める者は貴重だ。個人的に敵として処理したくはないな

 

「ストロノーフ隊長!!」

 

考えにふけっていると突如ガゼフの部下の兵士が広場に駆け込んできた。兵士は余程慌てていたのか、息が大きく乱れている

 

そして、兵士は大声で緊急事態が起こったことを告げた

 

 

「周囲に複数の人影あり!村を包囲するような陣形で、接近しつつあります!」

 

「なに?」

 

((また厄介事か…))

 

俺もモモンガも考えていることは同じだと思いたい

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なるほど…確かにいるな」

 

この村から見える範囲に、魔法詠唱者と思われる者たちが三人。村の包囲網を狭めるようにゆっくりと近付いてきていた

その三人の傍らには、それぞれ一体ずつ、魔法で召喚されたであろう下位天使たちが付き従ように浮いていた

 

村全体が緊張に包まれるなか、それを全く意に介さないものが2人

 

「弥彦さん。あれは確か」

 

炎の上位天使(アークエンジェル・フレイム)で間違い無いだろうな。現に視界にいるしな」

 

「やっぱり、ユグドラシルと何かしらの関係があるんでしょうか?…それにしても、なんであんな弱い天使を連れているんだ?」

 

「先程、始末した騎士達を見ているとこの世界のレベルを考えた場合、あれでも結構強い部類に入るんじゃ無いか?」

 

「いや、まさかぁ」

 

ガゼフの部下達はこの緊張した場面でなぜそのように落ち着けるのか怪訝な視線を向ける。この妙な魔法詠唱者と忍者らしき者たちはどうしてそんな態度でいられるのか

 

モモンガがガゼフに質問を投げ掛ける

 

「戦士長殿、彼らは一体何者で、狙いはなんなのでしょうか?不謹慎ですがこの村に、それほどの価値があるようには思えません」

 

「…確かに、この村には襲うほどの価値はない。ゴウン殿にも心当たりはない。とすれば、狙いは…恐らく、私だ」

 

「成る程…この村は単なる囮であり餌でもある。本当の狙いは戦士長殿ということですか」

 

「本当に困ったものだ…まさか、この村への派遣自体が私を陥れる罠だったとはな…さて、これだけの魔法詠唱者を揃えることができ、尚且つあの天使まで召喚しているとなれば……恐らくスレイン法国、その中でも神官長直轄の特殊工作部隊、六色聖典のひとつだろう」

 

「スレイン法国?ではこの村を襲った騎士たちも…」

 

「ああ、恐らくスレイン法国の手の者だろうな」

 

話を聞いていた弥彦は鴨がネギを背負って歩いてきたと感じた。あの騎士達の魂ではあまり情報を得られなかった。そのスレイン法国でも有名な部隊ならば、より有益な情報が得られるだろう

 

そんなことを考えているとガゼフがこちらに交渉を持ちかけてきた

 

「ゴウン殿、良ければ雇われないか?報酬は望まれる額を約束しよう」

 

「ふむ…」

 

〈どうしますか?弥彦さん?〉

 

〈情報は欲しいところではあるがな。此処は一旦退いといたほうがいいだろう〉

 

〈理由はなんです?〉

 

〈王国戦士長とやらの実力が知りたくてな。お前もそうではないか?〉

 

〈えぇ。彼はこの世界ではなかなか強い人みたいなのでこの世界の人がどれだけ強いのか確認したいです〉

 

〈ならその方向で行こう〉

 

「申し訳ありませんが、お断りさせていただきます。我々は旅の者ですので」

 

「そうか……ならば王国の法を用いる事も考えざるを得ないが?」

 

そう戦士長が言うと周りにいたガゼフの部下達は俺たちを囲むように配置した

 

「それはやめておいた方が良いでしょう、戦士長殿」

 

「その手段をとるなら俺達も抵抗せざるを得なくなる。正確に言えば…死体の山ができるぞ?」

 

「…怖いな。そうなれば我々が敵と会する前に全滅か…」

 

…やっぱりこの戦士長は警戒したほうがいいな。仮に「もしも」敵対する事になったら真っ先に警戒すべき相手かもしれないな

 

モモンガも戦士長に「御冗談を…」と言っているがモモンガも同じことを考えてるだろう

 

「…戦士長殿、行く前にこれをお持ちください」

 

モモンガが渡したアイテムって500円ガチャのハズレアイテム。あれの効果は確か…成程そういうことか、考えたなモモンガ。これなら邪魔もせずに見れるし仮に奴が危なくなっても大丈夫だな

 

「君からの品だ。ありがたく頂戴しよう」

 

 

そして戦士長は部隊を引き連れて出立した

 

この村を巻き込まないよう、村人達を守る為、囮の役目も同時に果たす過酷な任務に赴いた

 

 

さて…おうさつする準備を始めようか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺は王国戦士長だ!この国を愛し、守護するもの!貴様らのような国を汚す者たちに!負けるわけにはいかんのだあぁぁぁあッ!!」

 

彼の魂の叫びは、一時的にとはいえ、間近まで迫っていた天使たちを後退させる気迫が籠っていた

 

しかし、それでこの危機的状況が覆るわけではない

 

「ハッ!そんな夢物語を語ってどうする、ガゼフ・ストロノーフ」

 

敵の指揮官の冷ややかな声が掛かった。その視線は、既に膝をつき剣を支えにしている満身創痍の標的に向けられていた

 

スレイン法国、神官長直轄特殊工作部隊、陽光聖典隊長、ニグン・グリッド・ルーインは下らない理想をのたまう敵に、もはや哀れみさえ感じていた

 

ここまで来ればあとはガゼフ・ストロノーフの息の根を止め、奴が立ち入った村を滅ぼして本国へと帰還する。

 

これで任務完了だ。終わってみれば実に呆気ない

 

「せいぜいたっぷりと後悔して死ぬがいい、ガゼフ・ストロノーフ。そして喜べ。お前を殺した後に、あの村の者たちも皆殺しにする手筈だ。全員仲良く神のもとへと送ってやる。だが、神が貴様らのような愚か者をも受け入れてくださるというのであればの話だがなぁ」

 

「くっ…くっくく…」

 

 

「…何を笑っている。何がおかしい?ハハッ、この期に及んで笑うとは狂ったか? ガゼフ・ストロノーフ」

 

「狂ってなど、いない。お前達の死に様を思ったら滑稽でな…あの村には俺より強い御仁がいる」

 

「ふん、そんなハッタリが何になるというのだ。見苦しいぞ?ガゼフ・ストロノーフ」

 

この近隣にそのようなものがいるはずはない。可能性としては『青の薔薇』と言う冒険者がいるが、奴らは今は王都にいるという連絡を受けている。ならば奴の言うことはハッタリだろう。何も気にすることはない。何も問題はない

 

「天使たちよ、ガゼフ・ストロノーフを殺せ」

 

部下たちが召喚した天使をガゼフに突撃させようとした、次の瞬間だった

 

 

その場にいたガゼフが消え、先程までガゼフがいた場所に、三つの異様な人影が立っていた

 

 

 

 

 

 

 

――そろそろ交代だな。

 

――良くやった

 

 

そんな声が聞こえたと思ったときには、ガゼフは何処かの建物のなかに、横たえるような体勢でいた

 

辺りを見回すと、瀕死の自分の部下たちと、驚いたようにこちらを見詰める村人たちの姿があった

 

「……こ、こは…?」

 

「ここは、村の倉庫です、戦士長殿。アインズ様が魔法でこの倉庫全体に防御を張られています」

 

その声に答えたのは、この村の村長だった

 

「……ゴウン殿たちは…」

 

「そ、それが、戦士長たちと入れ替わるように、姿が掻き消えまして…弥彦様はどこかへ行きました」

 

も、もしや!?

 

ガゼフは戦いに行く前、アインズから貰った彫刻を取り出す。取り出した瞬間、それは瞬く間に崩れ去り、淡い光となって消えた

 

「…そう、か…」

 

「それと気になることがありまして」

 

「気に…なること?」

 

「はい、先程から小規模な地震(・・・・・・)が発生しているのです。地鳴りとも言いますか…幸い危険はないのですが心当たりはありませんか?」

 

「さ…さぁ…な」

 

そこで、戦士長の意識は途絶えた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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第6話 鏖殺開始と帰還

評価バーに色が付いていて驚いている作者です

評価ありがとうございます


「…何者だ」

 

ニグン・グリッド・ルーインは先程まで、標的であるガゼフ・ストロノーフを始末する直前だった

 

たが、不思議な現象が起きた

 

標的であるガゼフ・ストロノーフは消え、変わりに現れたのは魔法詠唱者のようなフルプレートにバルディッシュを持つ戦士

 

ニグン達の目の前に現れたのは見たこともない二人組だった。しかもその装備品の数々はどれもが一級品と思えるマジックアイテムだろうことは一目見ただけでも分かる

 

「はじめましてスレイン法国の皆さん。私の名前はアインズ・ウール・ゴウン…親しみを込めて、そうですね…アインズと呼んでいただければ幸いです…そして後ろにいるのがアルベド。まずは皆さんと取引をしたいことがあるので、すこしばかりお時間をもらえませんでしょうか?」

 

アインズは先ほどの口調とは一転、途轍もなく冷たい口調に変わる

 

「実は…お前と戦士長の会話を聞いていたんだが……本当に…あぁ…本当に良い度胸をしている」

 

そして仮面の奥にある眼光を赤く光らせながら喋った

 

「お前たちはこのアインズ・ウール・ゴウンが、そして我が盟友がわざわざ手間をかけて救ってやった村人たちを殺すと公言していたな。これほど不快なことがあるものか…!」

 

その言葉の後に何かが飛んでくるような音が聞こえ、ニグン達は上を向いた。

 

「な、なんだあれは?」

 

部下の誰かが呟いた

 

そこには巨大な鳥のような物体がこちらに向って急降下してきたのだ

 

ボフン!

 

巨大な鳥は地面に衝突する訳でもなく緩やかに着地し、そして着地するや否や白い煙を上げながらその姿を消した!?

 

「友よ。準備はできたのか?」

 

「…あぁ。抜かりなくな」

 

白い煙が晴れるとそこにいたのは赤黒い雲をかたどった黒い外套を纏い紫色の目を持つ異様な男だった

 

突然降ってきた男と親しげに話しだした魔法詠唱者達。六色聖典の一つ、陽光聖典である我々を前に雑談を始めている。ニグンはこの上ない怒りを感じたが怒りを抑え冷静になろうとする。それに先程からこの者達に嫌な予感がしてならなかったが、現状此方の戦力のが圧倒的に上回っている事は事実。即座に天使を集結させ、再召喚し数を増やし攻撃陣形をとった

 

「それで先程の取引の話に戻るのだが、内容はいたってシンプルだ。抵抗する事無くその命を差し出せ、そうすれば苦痛無く死を与えよう。抵抗すれば……」

 

「て、天使達を突撃させよ! こちらに近づけさせるな!!」

 

ニグンは半ば悲鳴のような号令をあげながら天使達をモモンガに目掛け突撃させる

 

「やれやれ、まだ言い終わってないというのに…」

 

「…先手は譲るぞ」

 

「そうか。なら遠慮なく…アルベドは下がっていろ」

 

「はっ!」

 

負の爆裂(ネガティブバースト)!!」

 

ブォン!、と黒い半円状の光の波動が発生した。それはアインズを中心に発生し、その波動が周辺を飲みつくす。一瞬でその波動は消え去ったが、その結果は…

 

「た、隊長! て、天使達が居ません! 消えています!」

 

「何故だ! 何故消えたっ!」

 

「分かりません! あの爆音と衝撃波のせいとしか」

 

仲間がうろたえる中、弥彦達は

 

「…危ないぞモモンガ。吸収していなければ怪我をしていたぞ?」

 

「え!?な、なんで弥彦さんも下がってないんですか!?負の爆裂は俺を中心に発動する魔法ですよ?忘れたんですか?」

 

「…忘れてた。波動を正面に変更できないのか?俺はできるぞ?」

 

「いや…貴方は別ですよ…規格外ですし」

 

「…解せん」

 

「ありえん! あれだけの天使が一瞬で消えるなんて……ありえんだろう!な、何なんだ貴様等は!? 我々の天使を事も無げに一瞬で滅ぼす…そんな存在が今まで無名の筈がない! アインズ・ウール・ゴウン!貴様の本当の名を言え!!!」

 

あの波動はあの男にも当たっていた。なら無傷のはずがないのだ!

 

「まぁ、敵対行動をとられた以上は、もう此方が黙っている必要はない。いいな?モモンガ」

 

「そうだな、我が友よ。ここはあなたに任せるとしよう。私は後ろで見学させてもらおう」

 

 

そう言うと仮面の魔法詠唱者が下がり、変わりに前に出てきたのは弥彦と呼ばれた男

 

やられる前にやるしかない!!

 

「〈監視の権天(プリンシパリティ・オブザベイション)〉、奴らを殺せぇ!!」

 

ニグンの絶叫とともに放たれた命令を聞き動き出した天使の一体が光り輝く巨大なメイスを振りかぶり襲い掛かってくる

 

(アレ動かすと確か効果が消える筈だが…)

 

(彼方には余裕がないのだろう。さて…)

 

弥彦はアインズの前に守るように立ちふさがる。人間の骨を粉々に粉砕することが可能なメイスを常人では目視できない速度で弥彦に振り下ろされる

 

が…

 

「【神羅天征】」

 

天使に向けて弥彦は掌を向け唱える

 

次の瞬間、何かが跳ね返る音と共に天使は霧散していった。その衝撃波地面にも走り大地を抉っていった

 

「こ、これが弥彦様の…【六道の力】。なんと凄まじい」

 

「流石だな友よ」

 

「まだまだだ。出力をもう少し抑えたいんだがな。あと1回だけ全力で放ちたい」

 

「…やめておいたほうがいいだろう。ここら一帯が無くなる」

 

声も出なかった。奴は何をしたのだ!?

 

「う、うわぁぁぁ!!」

 

悲鳴のような声を上げながら魔法を乱射するニグンの部下達。監視の権天使が…上位天使が手をかざしただけで葬られる現実を見て正気を保てる者など居る筈が無い。ただ死にたくないという思いで呪文を叫び続けた

 

「知ってる魔法ばかりだな【餓鬼道:封術吸引】」

 

部下達が放った魔法は奥にいる魔法詠唱者には当たらず全て紫色の目をした奴の突如出現した白い膜のようなものに吸収されて行く

 

「…少しだけチャクラが回復したか。低下位の魔法ではこんなもんか」

 

「ま、まさか!奴は魔法を吸収しているのか!?」

 

だとしたらマズイ!自分達の部隊は魔法詠唱者を中心に組んだ部隊だ。魔法を吸収されるのなら生半可な魔法じゃ此方がやられる

 

「た、隊長!私たちはどうすれば…」

 

部下に苛立ち、怒鳴り付けようとしたが、残された最後の希望の存在を思い出し懐から取り出す

 

「最高位天使を召喚する!生き残りたいものは何としてでも時間を稼げ!」

 

ニグンが懐から取り出したクリスタルを確認するや否や、部下たちは絶望した顔を無くし希望にすがりようにニグンの前に壁として立ち塞がる。ここにきてようやく見えた、自分達が助かる一筋の希望の光を守るために

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〈弥彦さん?アレって確か魔封じの水晶じゃないですか!?〉

 

〈そうだな。だが慌てなくていい〉

 

〈え、なんでですか?もしあの中に熾天使級がいた場合、俺達も本気でいかないと〉

 

〈その必要はない〉

 

〈ですがっ!?もしかしてここに来る前に言っていた準備のことですか?〉

 

弥彦はガゼフがモモンガと交代する前に事前に準備をするため先に行っていてくれと頼んでいた

 

〈察しがいいな。その通りだ〉

 

〈準備って何をしたんです?〉

 

〈時期に分かる。サプライズだ〉

 

〈サプライズですか…って、もしかしてアレ使う気ですか!?〉

 

〈思い出したか…つまらん。だが、奴らを絶望のドン底に突き落とすには十分なものだ〉

 

〈んん…面白そうだからよし!〉

 

〈話が早くて助かる〉

 

 

二人が《伝言》でそんなやり取りをしているとは露知らず、ニグンの手の水晶が輝きだした

 

〈そろそろだな〉

 

〈任せましたよ弥彦さん〉

 

〈…あぁ〉

 

「…アルベドよ」

 

「はっ!」

 

「よく見ておけ。これから起こる現象はかつて弥彦さんが嘗てナザリックへ1500人もの侵攻を食い止めた至高の一撃の1つだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クリスタルが砕け散り、それに合わせて上空に光が登った。夕日もほとんど落ち、闇に包まれようとしていた周囲が一瞬で白い光に染め上げられた

伝説の天使の降臨に、ニグンが今までの屈辱を塗り替えるほどの歓喜の声を上げた

 

 

「見よ!最高位天使の姿を!〈威光の主天使(ドミニオン・オーソリティ)〉ィィッ!!!」

 

 

それは、光り輝く翼の集合体だった。王権の象徴でもある笏を持つ手が生えているだけで

ほかに頭や足などといったものはない。

 

かつて、魔神をも単騎で滅ぼしたとされる最強の天使。人類の至高善

 

これで勝てる!

 

生き残れる!

 

ニグンを含め、部下の誰もがそう信じた!

 

あの忌々しい化け物どもに目にもの見せてやれ!

 

誰もがそれを願った!

 

 

だが、現実は残酷だった

 

自分達に大きな影がさしたのを見て一人一人と空を見上げる

 

「う、嘘だろ?」

 

「む、無理だ」

 

「冗談だろ!?」

 

ニグンはただ1人口にした

 

「神 の 力 か !?」

 

そこに広がるのは巨大な隕石のような岩の塊だった

 

「やっと気づいたか?だが今更知ったとこで何も変わらん」

 

「ま、待ってほしい!いえ!下さい!! 弥彦殿……いや様ぁ!! 取引を! 私たち…いえ私だけで構いません!! 命を助けて下さるのならば、望む物を望むだけご用意します!!!」

 

流石のニグンでもこの状況で命乞いの選択肢しかなかった。たとえ、最高位天使がいてもアレには敵わない

 

「お前は確かガゼフやらにこう言っていたな?「無駄な足掻きを止め、そこで大人しく横になれ。せめてもの情けだ。苦痛なく殺してやる」と」

 

「安心しろ痛みは一瞬だ」

 

「散れ 【天道:天碍震星】」

 

その直後、後ろの方から部下の悲鳴が聞こえてきたが、振り返る間もなくニグンの意識は消失した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの後俺たちはスレイン法国の奴らをナザリック送りにした

 

おそらく、明日から拷問官ニューロニストが仕事するようだな…

 

個人的にニグンの自体は此方で預かった。アレ(・・)を作るのに必要だからな

 

カルネ村に一旦戻り戦士長達の様子を見に行ったのだが、体はボロボロでも眼は力強く輝いている

 

これなら大丈夫だな

 

そしてモモンガさんと少し話をした後、俺たちはナザリックに戻るため人気のないところを歩いていた

 

「…アルベド。先にナザリックに戻り守護者達と戦闘メイドプレアデス達を玉座の間に連れてきてくれ。正式に弥彦さんの帰還を伝える」

 

「はっ!ではナザリックにてお待ちしておりますアインズ様、弥彦様」

 

アルベドは転移門をくぐり先にナザリックに帰還した

 

「…なぜ先にアルベドを帰らせた?」

 

「いえ、先に言っておかなければならないことがありまして」

 

「…何だ?」

 

コホン、と合図わ態とらしく咳をしてから話し始めた

 

「アルベドを見て分かったと思うんですがNPC達の忠誠心がものすごく高いんです。自分達が俺たちに対して失態を犯した場合、すぐに自害しようとしました。それほどNPC達の忠誠心が高いです。ですので信頼を崩さないためボロを出さないようにお願いします」

 

「それほどか」

 

「えぇ。後、弥彦さんは人間種なので一応、気をつけてください」

 

なるほど…敵対を避けるためか。ナザリックの殆どが異業種、たいして俺はモモンガ達とは違う人間種だ。敵対されてもおかしくはない

 

「…あぁ。分かった」

 

「それでは転移門を開きます」

 

転移門を開きナザリックの玉座の間の扉の前に転移した

 

「では、お呼びしましたら入って来てください」

 

「あぁ」

 

そしてモモンガは玉座の間の扉に手をかけた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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第7話 帰還した六道と守護者達

 ~ナザリック大墳墓 玉座の間~

 

ナザリック大墳墓の玉座の間にある玉座に座るモモンガ…改めアインズ・ウール・ゴウン。そして、その前にはナザリックの各階層の守護を任されたNPC達が跪いていた

 

 「第1、第2、第さん階層守護者シャルティア・ブラッドフォールン 御身の前に」

 

「第5階層守護者コキュートス 御身ノ前ニ」

 

「第6階層守護者アウラ・ベラ・フィオーラ 御身の前に」

 

「お、同じく第6階層守護者マーレ・ベロ・フィオーレ… お、御身の前に…」

 

「第7階層守護者デミウルゴス 御身の前に…」

 

「守護者統括アルベド 御身の前に…。モモンガ様のご命令通り、第四階層ガルガンチュア及び第八階層守護者ヴィクティムを除き、各階層守護者、御身の前に平伏いたしました」

 

アルベドが集まったメンバーについて、モモンガに報告する

 

「皆よく集まってくれた。では始めに、私が勝手に何も言わずに動いた事を謝罪しよう」

 

それを聞いて守護者達は目を見開き驚く。彼等にとってモモンガはこのナザリックの絶対なる支配者であり王だ。そんな王が勝手に動いた事を謝罪したのだ、守護者達にとっては畏れ多い事に当たるだろう

 

「それから、これより私の事はモモンガではなくアインズ・ウール・ゴウンと名乗ることにした。このことに異論があるものは立つがいい」

 

モモンガはそういうもの守護者達は誰1人として立たない

 

「いないようだな。勝手で申し訳ないがギルドの名を名乗るのは重要な意味を持つ。これからは私の事を呼ぶときはアインズと呼ぶ様に」

 

「「「はっ!」」」

 

「そして本日、何があったか。その詳細はこの後アルベドから詳しく聞くように。ここに皆を集めたのはこの事を伝えるだけではないのだ。我々にとって大変喜ばしいことが起きた…入ってくれ!」

 

アインズがそう言うと、玉座の間の巨大な扉が開いた。各階層守護者は扉の方を振り返る

 

だが、そこには誰もいなかった。その後…守護者、アインズでさえも首を傾げた

 

(や、弥彦さん!!何でいないんですか!?どこ行ったあの人!?)

 

モモンガは弥彦がいないことに困惑するが必死に表情に出さないようにした

 

「お、お姉ちゃん」

 

「ん、どうしたのマーレ?」

 

「え、い、いや…変な気配を感じて。な、何かに見られてるような」

 

マーレは何者かの視線を感じるのだと言う

 

「うーん?私は感じなかったけど…」

 

「あ、あれ?気のせい…だったのかなぁ?」

 

他の守護者達はマーレの言っている視線は感じない。アウラとマーレはぶくぶく茶釜さんが作ったNPCである。動物に対して調教師(テイマー)のスキルを持つアウラに対し、マーレは植物や大地を動かすなどの自然系の魔法を使うためマーレは感知能力が高い。その視線はマーレだけに感じるものなのかわからないがマーレの感知能力は信頼できるほど正確だ

 

「マーレよ。その視線は大体どのあたりから感じた?」

 

「え、えっと…アインズ様の…『油断はするなと俺は以前、教えたはずだが?俺の視線に気づいたのはマーレだけか』ッ!?」

 

「「「「!?」」」」」

 

マーレが視線がする方向を示す前に、その場に突如、この場にいない者の声がした。声の発信源はモモンガが座っている玉座の上に足を組んで座っていた

 

「…なっ!?」

 

「あ、あなた様は!?」

 

「ア、アノオ方ハ!」

 

「ほ…本当に弥彦様でありんすか?」

 

シャルティアが唖然とした表情で聞いた

 

オレンジ色の髪

 

横一文字に傷がついた雨のような紋章が刻まれた額当て

 

紫色の波紋模様をした目

 

顔にある無数の小さな尖った杭

 

これだけの情報があれば彼が至高の42人の1人である弥彦だと言うのはすぐに判断がついた

 

弥彦は座っていた玉座の上から飛びアインズの前に降り立つ

 

「六道仙人、弥彦。本日付けでナザリックに帰還した」

 

アインズはすぐ様、弥彦に《伝言》を飛ばす

 

〈弥彦さん!なにやってるんですか!?呼んだらいなくて気がついたら上にいたんでびっくりしましたよ!?〉

 

〈ここに来る前、俺は人間種だから念のため注意しておけとモモンガも言っていただろう?〉

 

〈それはそうですが…〉

 

〈…此処で印象付けば誰も逆らわんだろう。ちょっとしたサプライズだと思えばいい〉

 

〈はぁ…分かりました〉

 

アインズは弥彦との《伝言》を切り会話に戻る

 

「良くぞ、帰って来てくれた。我が友…弥彦よ」

 

守護者達はまるで幽霊を見たかの様な顔をしている。だが我に帰ると同時に守護者達は彼の帰還を喜んでいたが何故かアルベドは何やら辛そうな表情を浮かべていた。守護者達はなぜアルベドだけ辛そうな顔をするのか気になったが後でそのことについて話があるだろうと思い黙った

 

「守護者達よ!彼の帰還に意見がある者はいるか!?あるならば立って異を唱えよ!」

 

アインズは守護者達に聞いたが、誰も意を唱えるものはいなかった

 

「いないか。なら【忠誠の儀】を行う!私の時と同じように弥彦に対し思うがままを言うがいい」

 

「シャルティア」

 

「弥彦様はナザリック最強の存在でございます。その御力の前では神々さえも平伏すでしょう」

 

【シャルティア・ブラッドフォールン】

 

ペロロンチーノの作ったNPCで外見は14歳程の少女だが、吸血鬼でありナザリックのNPC達の中でも、その戦闘力は最強の部類に入る。だが、ペロロンチーのが作っただけはあるのか色々設定、アウトな設定があるらしいな

 

 

「コキュートス」

 

 

「我等ヨリモ強者デアリ、我ガ創造主ヤ御方々トノ親交二厚ク、決シテ慢心スル事無ク、更ナル高ミヲ目指ス為二日々修練ニ励マレテ居ラレマス。ワタシトモヨク模擬戦ヲシテイタダイタオ優シイ方デス。正二武人ノ鏡…私ガ目指ス御方ノ御一人二在ラセラレマス」

 

【コキュートス】

 

常時、体全体に冷気を纏った2.5m程の巨大な4本の腕を持ち2足歩行の昆虫の様な外見をしている。武人建御雷が作ったNPCで、見た目も鎧を想起させ能力も性格も武人そのものである

 

こいつとは武器有り能力なしの模擬戦をよくしていたからな。その印象が強いのだろう

 

「アウラ、マーレ」

 

「はい!弥彦様は強く、優しく、大変慈悲深い御方です」

 

【アウラ・ベラ・フィオーラ】

 

外見は10歳程の少女であり金髪のショートヘア、金と紫のオッドアイのダークエルフ。制作者はぶくぶく茶釜で、彼女の趣味で男装させられている。違和感ないためはじめ見た時は性別は分からなかった

 

「マーレ」

 

「え、えと…その…かっカッコ良くて、御強く、御優しい方です」

 

 【マーレ・ベロ・フィオーレ】

 

アウラとは双子の弟である。彼もまたぶくぶく茶釜に生み出されたNPCで、彼女の趣味により女装させられている。こちらの方も違和感がないため最初は分からなかった

 

…ぶくぶく茶釜は男の娘と言っていたな。顔が中性的と言う意味で良かったのかアレは?

 

 

「デミウルゴス」

 

「弥彦様は忍者の頂点である最強の種族、六道仙人で在られながらも力だけで全て解決させず、凄まじい知識による念密な計画と様々な経験により、まるで未来を見通されるような御方であり、ナザリックの最強の矛と言われたお人です」

 

【デミウルゴス】

 

今は人間の姿をしているが、その実は人を陥れ破滅に追いやる事を愉悦とする悪魔。制作者はアインズ・ウール・ゴウンのメンバーの中で最も「悪」と言う言葉に拘った男…ウルベルト・アレイン・オードル

 

最強の矛か…ナザリックの最終兵器とは言われた事はあるが最強の矛とは言われたことが無い為、少し新鮮だ

 

たっちとウルベルトの喧嘩が懐かしい。止めるのはいつも俺かモモンガだったな

 

「セバス」

 

「アインズ様を始め、至高の御方達に絶大な信頼を寄せられ、最後まで私共を見捨てずに残って下さった慈悲深き御方です」

 

 【セバス・チャン】

 

執事の姿をしており、至高の42人の生活面を支える家令。製作者は正義感溢れるたっち・みーだ。普段は人の姿だが種族は竜人な為、立派な異業種に分類される

 

たっちに作られたからか、たっちに似た雰囲気があるな…懐かしい

 

「では最後にアルベド」

 

「その大いなる力と以てナザリックに繁栄をもたらし、至高の御方々から絶大な信頼を受けられた素晴らしい御方。そして私の愛するアインズ様の友に御座います」

 

 【アルベド】

 

彼女も人間の姿をしているが、腰から出る黒い羽と頭の角、人間ではなく純白のサキュバスであり、守護者統括という守護者達のまとめ役の様な立場にいる。製作者はタブラ・スマラグディナ…ニグレドとルベドを作った人でもある

 

「…なるほど、お前達の考えは十分に理解した。それでは、私と弥彦さんは今後のナザリックの方針について話し合いをする。円卓周辺の人払いを頼む。今後とも忠義に励め。弥彦。何かあるか?」

 

「そうだな…アウラ、マーレ」

 

「「は、はい!弥彦様!」」

 

「1時間後、お前達が守護する第6階層の闘技場に行く。そこで待っていろ」

 

その言葉を最後に、至高の方々の姿は一瞬のうちにかき消えた

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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第8話 守護者達の話し合い

今回は短いです

守護者達の語り合いが難しいです(;ω;)


至高なる御方々の気配が消えると、静けさと各守護者だけが残っていた

 

しばらくし、アルベドから立ち上がり一人、二人と立ち上がり始めた

 

「す、すごく緊張したね!お姉ちゃん」

 

「ほんと。あたしあの威圧で押しつぶされるかと思った」

 

「アインズ様トハマタ違ッタ威圧感デアッタナ」

 

「えぇ。あの時のアインズ様からは支配者としての力を感じましたが弥彦様からは全てを見透かされているような感覚でしたね」

 

「流石、弥彦様ですね」

 

「アインズ様とはまた違うゾクゾク感がありんした」

 

それぞれが先程の感想をぽつりぽつりと言い始めた

 

「マーレ。なんで、あの時誰かいるって分かったの?」

 

「な、何となくだよ」

 

「でも、良いなぁマーレ!弥彦様から褒美をいただけるんだから」

 

ぴくりと声を発したアウラ以外の守護者が反応する。特にアルベドとシャルティアが…

 

「それでは皆様、私はこれにて失礼させていただきます。お二人で会議をなさるのならお茶を入れねばなりませんので」

 

「待ちたまえセバス」

 

 執事として御傍に仕えなければならない事を理由にさっさとこの場をあとにしようとするセバス

 

だが、それをデミウルゴスが止めた

 

「何でございましょう?デミウルゴス様」

 

「先程アインズ様は今回の事の詳細をアルベドから聞けとおっしゃいました。それを聞かずに行くのですか?」

 

「私としたことが。これは失礼致しました」

 

「アルベド!妄想はその辺にしたまえ。あなたがそんな事では話が始まりませんよ。シャルティアもだ」

 

はっと、デミウルゴスの言葉で我に返った2人

 

 「そうね。では…何があったのか話しましょう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何と…そんな事が」

 

アルベドの話を聞いていた各守護者達は改めて我がナザリックの至高の方々の力に心酔した

 

話を聞き終えたコキュートスがアルベドに問い詰めた

 

「弥彦様ハドノヨウニ戦ワレタノダ?素手カ?」

 

武人であるコキュートスは戦いにおいて純粋だ。弥彦様がその身に宿る力の一端を振るったと知って、我慢できなくなったのだろう

 

「どのように?はじめはずっと黒い棒で攻撃をしていたわね」

 

「黒イ棒…ナラ弥彦様ハ【外道の棒】ヲ使ッタノカ」

 

「コキュートス?外道の棒とは何だね?」

 

デミウルゴスも興味があるのかコキュートスに聞き返す

 

「弥彦様ガ使ウ武器ノコトダ。アレハ唯ノ黒イ棒デハナイ…刺シタ対象ノ魔力ヲ乱シ魔法ニヨル攻撃ヲ一切出来ナクサセル武器ダ」

 

「すごい武器でありんすね。魔法詠唱者からしたら天敵でありんすね」

 

「流石、弥彦様」

 

「唯デメッリットトシテ【外道の棒】ガ対象ニ刺サッテイル間ダケ無効ニナル」

 

「それでも十分に強いと思うがね私は。アルベド。他にはどのような攻撃をしていましたか?」

 

「アインズ様と一緒に敵を倒す際に弥彦様は魔法の吸収や不可視の衝撃波、更には空を覆うほどの巨大な隕石を落としました。下等な人間どもが慌てふためき死んで行く様は見ていて楽しかったわね」

 

「「「「「隕石!?」」」」」

 

「そ、そんな事ができるんですか?」

 

「弥彦様は忍者だよ?隕石は落とせないんじゃ」

 

「隕石…凄マジイ」

 

「魔法の吸収や不可視の衝撃波。遠距離も近距離も隙がないですね」

 

デミウルゴスは思案した

 

弥彦様が下等な人間を倒したのは人間が憎い我々も大変嬉しく思ったが到底信じられない話だった。私はこれでも防衛時のNPC指揮官を務めている為、至高の御方々の近くに居ることも多少なりともあった。いろんな話を聞く機会があったのだが弥彦様の話はほとんどなかった。あっても

 

あのワールドチャンピオンのたっち・みー様と互角に戦う

 

忍者のスキルによる索敵、奇襲、隠密行動から単独潜入まで行う専門家(スペシャリスト)

 

何が起ころうとも動じることのない精神力

 

冷静な判断力と時に見せるという残忍さを持ってナザリックを守る為に敵を殲滅する

 

と言うものがある

 

その上でデミウルゴスはアルベドから聞いた話も含めるとあまり信じられなかった

 

アルベドの話を聞いていたシャルティアは何か引っかかるのか難しい顔をしていた

 

「シャルティア?何か気なる事でも?」

 

私が問いただすと話し出した

 

「弥彦様のワールドアイテムである、紫色をしたあの波紋模様の目。アレは相当強力な能力を持つはずでありんす。リスクは無く様々な戦法が取れるはずでありんす。なのでおそらく隕石を落とすという事も容易い筈では?」

 

「言い方を変えればまだまだ本気では無く複数の能力があるのでしょう」

 

では、あの時、ウルベルト様が言っていたことは本当なのでしょうか

 

『我が従僕デミウルゴス。良く覚えておけ。モモンガさんと弥彦さんはコインの表と裏の関係だ』

 

正しくこの事を言い換えれば

 

アインズ様がナザリックの表の王(・・・)ならば

 

弥彦様はナザリックの裏の王(・・・)という事になる

 

モモンガ様が統率を行い弥彦様が殲滅する。何という強固な信頼による関係だ。お互いをわかっていなければ成立しない関係だ。だが、これは私の予想であり事実ではない。今は憶測で話すべきではない

 

「アルベド。何故弥彦様ガ帰還シタ際辛イ顔ヲシテイタノダ?」

 

「私もそれは気になっていました。理由はなんです?」

 

コキュートスと私でその事を問い詰めるとアルベドはまた辛そうな顔をする

 

「…私が弥彦様を怒らせてしまったの」

 

アルベドが語った事実に私たちは驚愕し恐れた。嘗てナザリックを去っていった他の方々と同じように弥彦様も去ってしまうのではと思ったのだ

 

「えっ!?」

 

「何したのよあんた!?」

 

「不敬デアルゾ!」

 

守護者達が責め立てるが

 

「待ちたまえ」

 

私は待ったをかける

 

「弥彦様の怒りを買ったのは分かったが原因は何かね?」

 

するとアルベドは話し出した。曰く

 

人間を助けた時に自分が処分すると言った時とてつもない殺気を浴びせられた事

 

弥彦様は妹君が2人おりすでに亡くなり助けた人間がいる瓜二つだった事

 

アルベドはすぐに謝罪するも弥彦様はそれを許された

 

という話だ

 

「や、弥彦様に」

 

「亡くなられた妹様がいらっしゃったのですね」

 

「…助ケタ人間ガ瓜二ツトハ」

 

「酷でありんすね」

 

話を聞き終えた守護者達は心が痛んだと同時に怒りを覚えた。至高の御方である弥彦様のご家族を殺した相手をズタズタに引き裂き、有りとあらゆる拷問をしたいとこだがそれはもう過ぎた話であり弥彦様も割り切っているようだとアルベドは言った

 

「アルベド。今後はより一層、御身のために働かなくてはならないですね」

 

「えぇ。そのつもりよ。話はこれで終わりよ。各自持ち場に戻りましょう」

 

アルベドの号令で皆自分の階層へと帰っていく中、チラッと見たアルベドの背中は話す前よりも暗い雰囲気が幾分か晴れてるような気がした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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第9話 支配者の話し合い

お久しぶりです。一応、生存報告をさせていただきます


モモンガと一緒に玉座から転移して来た弥彦はモモンガから転移してから分かった事と自分の情報を共有して話したとこでさっきの守護者達の話になった

 

「どうでしたか?弥彦さん?」

 

「モモンガが言っていた通りだったな。アレは敵対と言うよりはむしろ、忠誠の域を超えている…もはやアレは崇拝に近いな」

 

「敵対されずに良かったじゃないですか。理由はわかりませんが。俺転移した時1人で大変だったんですよ?」

 

「…よく1人であの空気に耐えられたな。だが、俺も1人で外に転移したんだ。お前より大変とは言わないがな」

 

NPC側アイツらからしてみれば俺達ギルドメンバーは自分達の創造主でありいわば神のような存在なのだろう。そう考えた場合、プレアデスや他のメイド達、配下のモンスター達も同じと考えた方がいいだろう

 

「一先ずはこれからのことを決めましょう」

 

「そうだな…奴らから奪った魂の情報では冒険者というやつが近くの国にあるらしいな」

 

「冒険者…ですか?」

 

「あぁ…何でも提示されている依頼をこなして行き報酬を貰うものらしいな。階級があり、信頼や実績があれば上がるようだ」

 

モモンガに話しているとモモンガは見知らぬ世界に転移してしまった為か少し魅力を感じているのか弥彦の話を聞いてワクワクしているようにも見えた

 

まぁ…見た目が骸骨なためなんとなく雰囲気でだが

 

「階級が違うとどうなるんですか?」

 

「単純に依頼の内容の違いだろうな。階級が低い冒険者は良くても薬草採取とかの雑用が主だろう」

 

話を聞いたモモンガは俯きながら考えていたが時間が経って決心したように顔を上げた

 

「俺、冒険者になろうかと思います」

 

「何故?」

 

「だって未知の世界に来たんですよ?折角だから自分の目で見てみたいじゃないですか!それにこの世界の情報を集めたいですし、ユグドラシル通貨は使えないでしょうから、この世界でのお金も必要ですしね」

 

「お前は冒険者として活動してくれ」

 

「良いんですか?弥彦さんはどうするんです?」

 

モモンガは自分だけ好きにやって良いと言っているようなものなので少し負い目を感じたが弥彦はそれを手で制しながら言った

 

「自己犠牲…それが忍しのび本来の姿だ。陽の目を見ることのない影の功労者。お前がナザリックの表の王なら俺はその裏の王だ。それぞれの役割があるだろう?」

 

「ですが…」

 

「良い…気にするな」

 

ユグドラシルの時もこのような役割分担をしたことがある為、モモンガは納得した為、決まるのに時間はかからなかった

 

「外見の問題はどうするんだ?モモンガは骸骨だろう?全身鎧フルプレートだけではいざという時、言い訳できんぞ?」

 

「それならご心配なく」

 

そういうと、モモンガはアイテムボックスからひとつの指輪を取り出し、骨となっている指にはめた

 

すると瞬く間に、モモンガの容姿が変化し、黒髪黒目の20代後半辺りの人間の姿になった

 

「…人化の指輪か」

 

「はい。これがあるので外見は大丈夫です。次はお供ですね。誰にしましょう?見た目が人間に近い者に限られてきますが…」

 

知っての通り異形種がほとんどのナザリック地下大墳墓。大半の者が除外される訳だ

 

その中でも人型に近い各階層の守護者たちはどうだ?

 

アルベド。守護者統括という立場なのでナザリックに残したい。それにこれはナザリックに住む奴ら全員に言えることだが、ナザリック以外の存在が冒険者となったモモンガに少しでも無礼を働けば黙ってはいないだろう。忠誠心が高いのも考えものだな

 

デミウルゴスは言わずもがな、その頭脳は出来ればナザリックに残したい。もしもの際に即座に動けるようにだ

 

アウラとマーレは人間種だからいいと思ったが、スレイン法国の騎士たちから得た魂の情報だと、エルフなど、人間以外の存在は疎まれているようで討伐の対象になる可能性が高い為、却下。二人には別の仕事を頼むか、何かあった場合はモモンガの指示を聞くように言っておこう

 

シャルティアは…不安要素がだいぶ多い。まず、アイツの創造主はあのペロロンチーノによって作られた。不安要素も多々あるが、何より不安なのが与えられた設定だ。何しろ、ナザリックのメンバーの大半が認める変態である彼の理想をこれでもかと詰め込んだ存在がシャルティアだ。それだけで行動の予測がつかないというのに、後先考えずに行動する危険がある

。中でも危険なのは彼女が持つ『血の狂乱』だ。吸血鬼特有のこの特性は、状況によっては大惨事になる可能性がある

 

コキュートスは色々アウト…ダメだ

 

同行させるには階層守護者たちでは駄目だな…ならばプレアデスたちはどうだ?

 

ユリ…性格的に申し分ないがデュラハンである彼女は、首が落ちやすい。何かの拍子に首が落ちてしまったりしたらと考えると却下

 

ルプスレギナは人当たりがいい常識的な人狼だが、中身はサディストだ。彼女はすでにカルネ村での仕事をする様に考えているので却下

 

ナーベラルだが、人間を見下す傾向が強そうだ。創造主の意向により、仕事が出来るようで出来ないように作られている。数少ない見た目が人間のNPCなので保留

 

シズは性格、外見ともに合格なのだが、銃火器が発達していないこの世界では、シズの武器は目立ち過ぎる為、却下

 

ソリュシャンは隠密能力が高いため、冒険者よりかは何処かに調査員として送り込んだ方が適切だ。お供には向かない

 

エントマ…食欲が旺盛過ぎる。お腹が減っていたら食料や人間を食べる。そうなっては不味いので却下

 

となるとやはり

 

「ナーベラルか?」

 

「ナーベラル?ルプスレギナではダメですか?」

 

「お前の言わんとしていることは分かるが、ルプスレギナはカルネ村に滞在させる。一緒にストッパー役のユリも一緒にな。この世界で最初に友好関係を築けた村なんだ。不仲になることはこちらとしても都合が悪い」

 

俺はさっき考えたプレアデス達の特徴をモモンガに話した。モモンガは話を聞いているうちに納得したが

 

「ナーベラルだけだと不安ですね」

 

「そこはお前がフォローをしてやれ。今の俺達はこの世界での知識がない。俺が奪った奴らの魂だけの情報では不十分だ。お前は冒険者をしながら集めてくれ。俺は俺で動く。だが…問題は…」

 

「アルベド、ですね…」

 

どう守護者統括を納得させるべきか二人は考える

 

この話を切り出した途端に『ダメです!』『むしろ私を連れて行ってください!』と言う可能性がある

 

デミウルゴスは、『流石はアインズ様と弥彦様!』といった具合で納得してはくれるだろう

 

結局、その話はモモンガからすると言う話になり話し合いは終わった

 



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第10話 冒険者

夜中投稿


~エ・ランテル~

 

此処は堅牢な三重の城壁に守られた城塞都市エ・ランテル

 

この街には冒険者組合というものが存在する

 

冒険者とは

 

この世界の職業の1つである冒険者は基本的には厄介なモンスターの退治を請け負う事だが、秘境の探索なども行う。もちろん、貴重な薬草採取なども行う

 

そして、冒険者になるには組合に登録する必要がある。冒険者には誰でもなる事ができる。そして登録時に銅のプレートを身分証として貰う。プレートとは簡単に言えば階級の様な物であり、最低位が銅、次に鉄、銀、金、白金、ミスリル、オリハルコン、そして最上位のアダマンタイトがある

 

そして、つい先程、冒険者の登録を行い真新しい銅のプレートを首から掛けている二人組がいた。2人は堂々と、宿屋に入って行く

 

全身鎧姿の人間が入って来たのを見て、この宿屋にいる冒険者達が彼に視線を集めたのは必然であろう

 

鎧姿の人間の隣にいるのは女性で何人もの男達がその女性を見ていた。それほど夢中になるような美貌を持つ女性である

 

「宿だな……相部屋で1日10銅貨、「2人部屋を希望したい。食事は不要だ」」

 

 店の主が視線を上げ、大男のプレートを見る

 

「はぁ…お前さん、銅のプレートだろう?だったら此処は「先程、組合で登録してきたばかりなんでな。手短めに頼む」ッチ…1日10銅貨、前払いだ。さっさと行きな」

 

それを聞き、店の主は前の机を叩きそう言った

 

「そうさせてもらおう」

 

鎧の人物は声からして男のようだ。大男がそう言うと、10枚の銅貨取り出し、店主の前に出した

 

「部屋は2階の奥だ。その階段上がりゃあすぐだ」

 

店主に示された階段に鎧の人物が行こうとすると、柄の悪いの冒険者が通る場所に足を出す。完全に嫌がらせだ。大男は溜息を吐きと、それにあえて引っかかる

 

「いってぇ!どうしてくれるんだよ、ぁあ!」

 

 男の冒険者は立ち上がると大男に絡み始めた。そして彼の後ろにいた女性に目を付ける

 

「おっ、えらくいい女じゃねぇか。こうなりゃそっちの姉ちゃんに手当てをして貰わないとな」

 

厭らしい笑みを浮かべてそう言う冒険者

 

「「くっククク……アハハハハ」」

 

 その冒険者の態度に笑いを上げる、大男

 

「あ?何笑ってんだテメェ!」

 

「いや、すまない。雑魚に相応しい台詞だと思ってな。ふむ…こう言うのをお約束と言うのか?」

 

「なんだと!テメェ!」

 

 

「モモンさー…ん。どうしますか?」

 

「手を出すな。この程度、遊びにもならん」

 

大男はそう言うと、目の前の冒険者の頭を掴み床に叩きつけた

 

ガゴンッ!という音とともに、床が少し割れた

 

 

「…あへ?」

 

周りで見ていた男たちも、その冒険者の仲間も何が起きたか理解できていない様子だった

 

白目を剥いて気絶している仲間と、鎧の大男を交互に見ながらボケッとしている

 

それなりに手加減はしているがLv,100プレイヤーの一撃だ。軽くは無いだろう

 

「さあ、次は誰だ?」

 

「ひっ!仲間が悪いことをした!許してくれ!」

 

「…次は無いぞ?わかったか?」

 

「わかりましたぁ!」

 

その低く寒気がするような声が何よりも恐ろしい。肩に置かれた手が、自分の骨を砕くのではないかと、腕自体がなくなるのではと不安で仕方がない。裏返った声で何とか答えると、男は肩から手を離した

 

「新人を歓迎するのはいいが、ちゃんと相手は見て選んだ方がいい。行くぞ」

 

そういうと2人は、二階への階段を上っていった

 

 

 

   

2人は部屋にはいると、すぐに扉を閉めた

 

中には、荷物をいれるための箱が備え付けられた木製のベッドが二つだけで、その他には特に無い

 

全体をよく見てみると汚れている箇所が多々ある。比較しているのがナザリックだとしても、この宿の汚れは目につくほどひどい

 

「ここに泊まるのか…仕方がないとはいえ、これはちょっと…ひどいな」

 

「この様な場所に至高の御方が滞在されるなど!」

 

「落ち着けナーベ…それにしてもあれが冒険者か。組合に管理され、モンスターを駆逐するか薬草採取の毎日。弥彦さんから聞いた通り夢のない仕事だな」

 

ヘルムが光りだし、現れた顔は骸骨………アインズ・ウール・ゴウンの物だった

 

「ナーベよ。人間の事をどう思う?」

 

「何の価値もないゴミです」

 

「…その考えを捨てろとは言わんが、態度には出すな。後々面倒な問題になる」

 

「はい」

 

「まぁそれは徐々に慣れて行けばいい」

 

「もう一度確認しよう。私はモモン、ナーベラルはナーベだ。いいな?」

 

「はい。モモンさー…ん」

 

「…はぁ。そこも練習だな」

 

額に手を当てながらモモンは言う

 

「我々の目的は冒険者としての身分を作り、この世界での強者、何より私たちと同じユグドラシルプレイヤーの情報を集めることだ。冒険者としてのランクが上がれば、そのランクに見合った情報も得られるようになる。そのために、冒険者として名を売る事を我々の第一の目標とする」

 

それに加えて金銭の問題もある。カルネ村を復興した際にもらったお金はあるが、もともと裕福ではない村人たちから、負担にならない程度の金額を寄せ集めたものを貰ったが高額ではない

 

「まず手始めに今日はこの周辺の散策することにして、依頼の件は明日にする」

 

「地形把握…の為ですね?」

 

「そうだ。何処に何があるのかを確認するのは非常に大事なものだ。今日は休み明日に備える。いいな?」

 

「はっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回は弥彦視点です


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